衆議院

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第3号 平成18年2月27日(月曜日)

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平成十八年二月二十七日(月曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 原田 令嗣君 理事 二田 孝治君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 山田 正彦君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    今津  寛君

      小野 次郎君    金子 恭之君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      斉藤斗志二君    篠田 陽介君

      杉村 太蔵君    谷川 弥一君

      中川 泰宏君    並木 正芳君

      丹羽 秀樹君    西村 康稔君

      鳩山 邦夫君    福井  照君

      藤井 勇治君    御法川信英君

      やまぎわ大志郎君    安井潤一郎君

      渡部  篤君    荒井  聰君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      園田 康博君    牧  義夫君

      松原  仁君    森本 哲生君

      丸谷 佳織君    菅野 哲雄君

      森山  裕君

    …………………………………

   農林水産大臣       中川 昭一君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  西川 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   政府参考人

   (林野庁長官)      川村秀三郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            高原 一郎君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 桜井 康好君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小林  光君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     篠田 陽介君

  谷川 弥一君     やまぎわ大志郎君

  丹羽 秀樹君     藤井 勇治君

  岡本 充功君     園田 康博君

  仲野 博子君     松原  仁君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     杉村 太蔵君

  藤井 勇治君     丹羽 秀樹君

  やまぎわ大志郎君   谷川 弥一君

  園田 康博君     岡本 充功君

  松原  仁君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  杉村 太蔵君     安井潤一郎君

  牧  義夫君     仲野 博子君

同日

 辞任         補欠選任

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

    ―――――――――――――

二月二十四日

 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第一九号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、政府から説明を聴取いたします。農林水産大臣中川昭一君。

中川国務大臣 おはようございます。

 まず冒頭、米国産牛肉輸入問題に係る米国側報告書に関する報告について御報告させていただきます。

 委員長初め委員各位におかれましては、日ごろから農林水産行政の推進に格段の御理解と御指導をいただき、厚く御礼を申し上げます。委員会の冒頭にお時間をいただきまして、米国産牛肉の輸入問題につきまして発言させていただきたいと思います。

 米国産牛肉につきましては、食品安全委員会における科学的な議論を経て昨年十二月十二日に輸入再開を決定し、あわせて水際における輸入検査の強化を行ってきたところであります。

 このような中、本年一月二十日に、成田空港に到着した米国産牛肉の検査で特定危険部位である脊柱を含む子牛肉が確認されました。農林水産省及び厚生労働省では、直ちにすべての米国産牛肉の輸入手続を停止いたしました。

 農林水産省及び厚生労働省といたしましては、今回の件は、あくまで日米間で合意したルールが遵守されなかったことにより生じたものであり、そのルールは輸出国である米国政府の責任で遵守されるべきものであるとの考えから、二度とこうしたことが起きることのないよう、米国に対して徹底した原因究明と再発防止を求めてきたところであります。

 これを受けまして、去る二月十七日に、米国農務省から我が国に対し、今回の件についての報告書の提出があったところであります。この報告書は、米国農務省食品安全検査局、FSIS及び監察官室、OIGがそれぞれ調査を実施し、取りまとめたものであります。

 この報告書の結論において、米国農務省は、今回の事案は、輸出業者と農務省職員が日本に輸出できる製品の範囲を理解していなかったため発生したものであり、その結果、対日輸出条件で認められていない脊柱入りの製品が輸出される事態となったとしております。

 また、その加工場からは、同時に内臓も日本に輸出されておりましたが、その内臓は日本向けの処理を認められていない屠畜場で処理されていたとしております。農務省食品安全検査局の検査官は、日本向けの輸出プログラムを十分理解しておらず、こうした不適格な製品に検査証明が発行されていたとしております。

 米国農務省では、今回の事案は輸入再開後唯一の子牛肉の輸出によるものであり、異例なものとしております。

 そして、これらの調査を受けまして、米国農務省におきましては、検査官等への研修の強化や関係部局間の連携強化など、再発防止のための措置を実施するとしております。

 この報告書は、問題となった事案につきまして幅広い調査が行われているようでありますが、約四百七十ページと大部に及ぶものであり、現在、厚生労働省と連携して報告書の内容を精査しているところであります。

 その精査結果を踏まえまして、今後、関係省庁とも十分連携して、国民の食の安全、安心の確保を大前提に適切に対応してまいりたいと考えております。

稲葉委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、大臣官房技術総括審議官染英昭君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長中川坦君、生産局長西川孝一君、経営局長井出道雄君、農村振興局長山田修路君、林野庁長官川村秀三郎君、厚生労働省健康局長中島正治君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長高原一郎君、環境省大臣官房審議官桜井康好君、地球環境局長小林光君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤基彦君。

近藤(基)委員 自由民主党の近藤基彦でございます。時間が短いものですから、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 ただいま中川大臣より、アメリカの報告書の御説明をお伺いいたしました。消費者においては、BSE問題等を背景に輸入食品等の安全性について不安と不信感が大変高まっております。こうした中で、不安が高まる要因には、BSEに係る問題が長期化し、議論の趨勢が国民に大変わかりにくいことも大きいと思います。

 今回の一月二十日に発生した問題は、万が一にもあってはならないことが起きたわけでありますけれども、その原因と責任について、改めて政府の御見解をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 今、近藤委員から改めて御指摘がありましたが、我々政府は、国民に対して食の安全、安心というものを大前提にしていかなければならないということは言うまでもございません。

 そういう中で、二〇〇三年の十二月にアメリカでBSEが発生した。日本は二〇〇一年に発生がわかったわけでありまして、日本として万全の体制をとってきたわけでありますけれども、アメリカ側と日本側でシステムあるいはやり方、考え方が違うという中で、約二年間、日米間でいろいろ調査をしたり協議をした結果、いわゆる輸出プログラムというシステムの中で輸出再開を十二月十二日に決定したわけでございます。

 御報告の重複を避けますけれども、今回の問題は、アメリカ側がプログラムに違反をしたということもアメリカ側も認めているわけでございます。食肉加工業者それから農務省の検査官がこれを見逃してしまった、責任はアメリカ側にあるということは先方も認めているところでございます。

 日本は、検査体制を強化した結果、水際でこのプログラム違反の肉を発見して、国内に入らないということにできたわけでございますけれども、この間、アメリカ側におきまして再発防止あるいはまた原因究明を徹底的にやるということをすぐに私どもに約束をいたしまして、過日報告書が来たところでございます。

 日本側としても、この報告書を精査した上で、二度とこういうことが起きないようにさらに何ができるかということを、今後またいろいろと考えていかなければならないというふうに考えております。

近藤(基)委員 日本政府としても、事前にアメリカのすべての施設を現地調査するなど、丁寧な対応をすれば未然に防げたのではないかということを言う人もいるわけでありますけれども、この点に関して、政府の御見解をお尋ねしたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 現地調査の実施に関しましては、当初、事前の現地調査も含めまして、さまざまな可能性を視野に入れまして、アメリカ側と調整を行ってまいりました。

 その後、昨年の十一月の二十二日でありますけれども、日米間で話し合いが行われました。その際に、日本側が査察に行く場合には、アメリカが日本向け輸出プログラムの認定を終えた施設について、それ以降に、米国が認定時と同様の認定作業を行い日本側がそれを調査できる、そういうアメリカ側の提案がございました。

 この提案につきましては、このような調査方法をとることによりまして、日本向けの特定危険部位の除去ですとか、あるいは二十カ月齢以下であることの月齢確認などもあわせて、実際に現地で調査することが可能になるということから、輸出再開後でなければ幅広く効果的な査察ができないというふうに私どもも判断したところでございます。

 こうした日本側の査察は、念のための措置として行うものでありますけれども、今回の事案は、今大臣の方から御答弁申し上げましたように、日米間で合意したルールが遵守されなかったことによって生じたものだということで、現在、アメリカ側からの報告書を精査しまして、今後の対応について、この報告書の内容も踏まえてまた検討していきたいというふうに思っております。

近藤(基)委員 いずれにしても、国民への十分な説明と理解、これが今後一番大事なことだと思いますので、よろしくお願いをしておきます。

 次の質問に移りたいと思います。

 現在佳境を迎えているWTOの農業交渉についてでありますが、今後の我が国の農業を大きく左右する大変重要な時期に来ております。また、昨年十二月の香港閣僚会議において、我が国は、農業の問題を含めて積極的に議論をリードして、香港閣僚宣言を採択したわけであります。その間の中川大臣の御努力には大変敬意を表すものであります。

 我が国は、G10のリーダー国としてWTO交渉の主要六カ国の一角を占めており、四月末のモダリティー確立に向けても我が国が積極的にリーダーシップを発揮することが大きく期待されているところであります。

 今後、モダリティー確立へ向け交渉がどのように進展していくものとお考えなのか、また、大臣の交渉に臨む基本的な姿勢をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 今回のラウンド、二〇〇一年の十一月にドーハでスタートしたわけでありますけれども、言うまでもなく、農業あるいは非農産品、あるいはサービス、ルール、幾つかの大きな柱立てがあるわけでございまして、それぞれが重要であり、今交渉をやっているところであります。

 忘れてはならないのは、それぞれが交渉しておりますけれども、十二月末までに全体をまとめる、しかも、これはシングルアンダーテーキングという一括受諾でございますから、仮に農業だけがまとまってほかの分野がまとまらなければ、これはシングルアンダーテーキングになりません。そういう意味で、ほかの分野とのバランスというものも大事でございます。そういう中で、ある意味では農業が一番交渉に時間をかけているという実感もあるわけでございます。

 そういう中で、もう一つの大きな柱は開発ラウンドであるということでございます。

 多くの途上国あるいはLDCと言われている国々が、貿易によって、あるいはまた、いろいろなサービス等によって恩恵をこうむるということが今回のラウンドのもう一方の大きな柱であるという観点から、世界で二番目の経済大国、農業の世界一の純輸入国という立場から、積極的に貢献をしていかなければならないと考えております。そういう中で、去年の十二月に香港で閣僚宣言が決まりましたけれども、農業におきましても、まだまだいろいろと議論が大きく分かれている部分がございます。

 私は、この問題はバランスが大事だというふうに考えております。輸出国と輸入国とのバランス、あるいはまた、本当に発展途上の国々に対してのバランス。そしてまた、農業においては三つの分野、言うまでもなく、アクセス、それから輸出競争、あるいは国内支持といったバランス、こういったものがバランスよくとれて、そして、譲るべきところは譲りますけれども、攻めるところは攻めて、守るべきところは守っていくという観点で、四月末のいわゆるモダリティー、ルールづくりをやって、そして、それに基づいて各国でそれぞれのいわゆる譲許表を七月末までに出して、そして、全体のパッケージの中で十二月に進んでいくという状況でございますから、今近藤委員からもお話がありましたように、佳境といいましょうか、いよいよこれから本当の意味の、私がよく使う言葉で言いますと地上戦という感じを持っておりますけれども、そういう中で、日本として、積極的にプレーヤーとして動きながら、守るべきところを守りながら、先ほど申し上げましたラウンド全体の成功に向けて努力をしていきたいと思いますので、近藤委員を初め、当委員会の先生方の御指導を改めてよろしくお願い申し上げます。

近藤(基)委員 経産省あるいは外務省ともよく連携をとって、頑張っていただきたいと思います。

 WTO交渉に当たっては、我が国は、先ほど大臣も申されましたけれども、世界最大の食料純輸入国としての立場を踏まえつつ積極的に交渉する必要があると思います。それと同時に、攻めの農政として輸出の促進にも力を入れるべきと考えております。

 我が国の農林水産品の輸出拡大方策について、お伺いをいたしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 日本食ブームの世界的な広がりや、あるいはアジア諸国の所得の向上などによりまして、我が国の高品質な農林水産物の輸出を拡大する機会が到来しておると存じます。

 この機会をとらえまして、攻めの農政の重要な柱の一環として、平成十六年の三千億円から平成二十一年までの五カ年間で農林水産物の輸出金額を倍増することを目指しております。初年度である平成十七年には、一二・一%の増加を達成することができたところでございます。

 この目標を実現するため、昨年四月に、総理の御出席のもと、幅広い関係者から成ります農林水産物等輸出促進全国協議会を設立いたしまして、六月には農林水産物等輸出倍増行動計画を定めたところでございます。民と官が一体となって取り組んでいるところでございます。

 農林水産省といたしましても、十八年度において、本格化しつつある輸出をさらに育てていくため、総合的な対策を展開することとしております。具体的には、海外でのPR、展示・商談会を通じました販路創出・拡大、あるいは、果実や水産物等特定品目の輸出拡大プロジェクトへの支援、それから、検疫面あるいは知的財産面での輸出環境づくりなどに力を入れていくこととしております。

 今後とも、こうした取り組みを基本といたしまして、国産農林水産物の輸出促進にさらに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

近藤(基)委員 五年間で倍増計画はいいんですけれども、最近、私どもも輸出促進をしている中で、一生産団体、あるいは一個人というか集落団体が、直接海外と契約をし、取引をしているという姿がよく見られます。

 ぜひそれを全体把握していただかないと、どうも一部には、日本でとれ過ぎたから輸出をしているとか、あるいは、加工品でも余り質のよくないものが海外に出回るというような面が見られがちでありますので、やはり我々は少ない生産力しか持っておりませんので、そういうことはぜひ気をつけて、政府としても監視をしながら、よりよい日本の生産物が海外で喜ばれるように、ぜひ御指導していただきたいと希望しておきます。

 先ほどもお話が大臣の方からありましたけれども、我が国は世界のリーダーとして、アジア地域を初め開発途上国の立場を理解し、南北問題を含めた世界の食料問題の解決に向けて積極的な役割を発揮することも大変重要なことだと思っております。香港閣僚会議に先立って、我が国が中川大臣の御努力のもとに取りまとめられた、そして発表された開発イニシアチブもこの考え方に基づくものであったと思っております。

 WTO交渉の中で、我が国が、開発途上国の立場に立って、国際協力にどのように貢献していくお考えなのか、お伺いをいたします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月のWTO香港閣僚会議に際しまして、小泉総理の指示のもと、政府一体として開発イニシアチブを打ち出し、LDC産品の輸出を多面的に支援すること等を発表したところでございます。

 具体的には、原則として、すべてのLDC産品に対する無税、無枠を供与すること、今後三年間に、貿易・生産・流通インフラの関連分野での合計百億ドルの資金協力を行い、専門家、研修員の交流は合計一万人を目指すことなどが盛り込まれているところでございます。

 昨年末の香港閣僚会議におきましては、この開発イニシアチブを踏まえまして、開発途上国に対する支援を包括的に打ち出すよう各国に働きかけを行ったところであります。閣僚宣言の取りまとめに当たってリーダーシップを発揮することができたと考えております。

 開発途上国におきましては、農林水産業の振興が極めて重要であるとの認識のもとに、開発イニシアチブを踏まえまして、南南協力等を通じた売れる農林水産物づくりに向けた人材育成の支援や、あるいはLDC産品に対する原則無税、無枠の供与等を行ってまいりたいと考えております。

近藤(基)委員 ぜひその目標に向かって頑張っていただきたいと思っております。

 一方、現在東アジアを中心にEPA交渉が進められているところであります。我が国はアジア地域のリーダーとして積極的にそれに対応する必要がありますが、こうした地域は米を初めとして我が国の重要産品の生産国でもあります。WTO交渉以上にもしかしたら難しい立場での交渉になるとも考えられますが、東アジア地域を中心とした現在のEPA交渉の進捗状況と今後の対応方針についてお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国のEPAにつきましては、WTOを中心とした多国間貿易体制を補完するものとして位置づけられ、現在東アジア地域を中心に政府間交渉を行っているところでございます。

 これまでシンガポールやメキシコとの協定が発効いたしまして、マレーシアとは昨年十二月に協定に署名をしております。また、タイとは、昨年九月の大筋合意を受けまして本年二月初めの交渉会合で協定条文が基本的に確定いたしまして、春ごろの署名を目指して最終的な調整を鋭意進めているところでございます。

 また、フィリピンとも既に大筋合意に至っており、現在はASEAN全体やインドネシア、さらに今月からはチリとの間で政府間交渉を行っているところでございます。

 今後とも、EPAの締結に当たりましては、お互いの国のセンシティブ品目についての相互理解を十分するということを前提にいたしまして、我が国と相手国の農林漁業や、あるいは食品産業の共存共栄といったものを図りながら、農山漁村の発展を図るとの観点に立ちまして、関係省庁と連携しつつ、スピード感を持って交渉に取り組んでまいりたいというふうに存じております。

近藤(基)委員 今審議官がお話ししたように、これはWTOの補完的な部分でありますので、その辺をお忘れなくぜひ交渉に臨んでいただきたいと思います。

 これまでお伺いしてきましたように、国際化の進展の中で日本の農林水産業の構造改革を積極的に進めていかなければならないと思っております。しかし、我が国は、水田農業を中心とする土地利用型農業の分野では担い手不足が大変深刻な状況になっております。このまま推移した場合、将来の食料安定供給にも不安を生じかねない状況だと思っております。

 こうした観点から、平成十九年から導入予定の新たな経営安定対策が日本農業の体質強化にとって決定的な重要性を持つと考えますが、現在の基本法を制定した当時の農林水産大臣でもあった中川大臣として、今回の経営安定対策導入のお考えと今後農林水産業の構造改革を推進していく御覚悟のほどをお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 今御指摘ありましたように、今から八年前ですか、農業基本法から食料・農業・農村基本法に、新しい農業の基本法をつくったとき、その務めをやっておりました。

 あのときは、単なる川上といいましょうか、農家サイドを中心にした基本法から、文字どおり農村そしてまたつくったものを消費者、国民に買ってもらえるような農産品、今御指摘があったように品質のいいもの、喜ばれるものを供給していこう、つまり、対立から、文字どおり国民あっての農業、農村であり、また、日本の農業、食料政策あっての国民であるという、同じ方向でやっていこうという基本理念でつくったところでございます。そして、五年後の基本計画の見直しという観点から、現在、今御指摘のような考えで法案を提出させていただいているところでございます。

 自給率の向上であるとか農村の活性化であるとか、いろいろな目標を立てましたけれども、御指摘のように、高齢化あるいはまた従事者の減少といった問題、あるいは自給率も目標に対してほとんどふえていないという状況の中で、何としてもこの法律の目標、本来の目的を、国民のためにも、もちろん農業、農村のためにも、実現をしたいという目的でやっているところでございます。

 したがいまして、例えば、価格政策から所得政策、やる気と能力のある経営体、集落営農も含めた経営体に、ある意味では、前から言われている言葉ですけれども、本当の意味のプロの農家に食料供給の役割を担ってもらいたいという観点から今いろいろな作業を行い、基本計画あるいはまた大綱、そして法案の審議をこれからしていただくということでございまして、そういう新基本法のもとでの趣旨にぜひ合致できるような観点から、十九年度からスタートできるように鋭意努力しておりますので、これもまた近藤委員初め当委員会の先生方の御指導のほどを心からお願い申し上げます。

近藤(基)委員 十九年から始まる経営安定対策、これを今後の農政の展開の柱の中心に据えてしっかりと推進していっていただきたいと思います。

 一方、食の安全、安心の観点からは、国産の安全で安心な食料を供給する我が国の農山漁村の果たす役割は極めて重要なものだと考えます。

 昨年十二月以来、我が県新潟県等における寒波や大雪によって大変多くの方々が被災に遭い、被災者の皆さん方には心からお見舞いを申し上げる次第であります。

 農林水産大臣の所信表明にもありましたように、そこで改めて痛感させられたのが、農山漁村が、食料の安定供給を初め、国民の命や暮らしの基盤をなす重要な役割を担っているということであります。

 今後、農山漁村の振興についてどのように対応するお考えなのか、お伺いをいたします。

金子大臣政務官 政務官として初めての答弁の機会をいただきまして、心より感謝申し上げます。

 近藤委員におかれましては、農山漁村の振興においては、自由民主党の都市と農山漁村の共生・対流を進める調査会の事務局次長として、積極的に議論をし、また意見を取りまとめ、昨年六月には貴重な提言もいただいております。その取り組みに対しまして、心より敬意を表します。

 今、近藤委員からお話がありましたように、農山漁村は、食料を安定的に供給する役割のほかに、国土を守り、水源や自然環境を保つなど、さまざまな役割を有しております。先般内閣府が公表いたしました世論調査におきましても、約八〇%の人たちが都市と農山漁村の交流を必要と考えるなど、農山漁村に対する国民的な関心が高まっている中で、国民共有の財産として広い視点からその振興を図ることが重要だと考えております。

 具体的な施策といたしましては、一つには、地域の特産物や景観を活用した産業の育成をしていくこと、二つ目には、農地、水、環境等の保全を図るための地域共同の取り組みを促進していくこと、三つ目には、グリーンツーリズムを初めとする都市と農山漁村の交流などを柱といたしまして、地域の意欲、能力を引き出す施策を推進することとしております。

 近年、高品質な農産物の輸出や都市住民との交流による活性化に取り組んでいる農山漁村がふえております。このような地域の特性を十分に生かした、みずから考え行動する取り組みを支援していく所存でございます。

 今後とも、近藤委員、貴重な御意見、御提言、そして御指導を賜りますようによろしくお願い申し上げます。

近藤(基)委員 本日お誕生日を迎えられた政務官の御丁寧な初答弁、本当にありがとうございました。

 最後の質問になりますが、先週末、大臣、海外に御出張なされたとお伺いをいたしておりますけれども、その目的と、何か成果あるいはお土産話的なものがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

中川国務大臣 国会のお許しをいただきまして、実質土曜日一日でございましたけれども、パリで、数カ国の農業大臣、EU、それからアフリカのモーリシャス、セネガルの大臣、それからノルウェー、スイス、フランス等々の大臣と、個別それから全体のお話をいたしました。

 いずれも輸入に対して非常にセンシティブな国々の農業大臣ばかりでございましたので、冒頭申し上げましたように、何といっても、まず、非農産品でありますとかサービスだとかいった全体の議論とある意味ではバランスがとれていなければいけない、それから、農業の三分野についてもバランスがとれていなければいけないということをそれぞれ確認したところでございます。

 G10の中には、今申し上げたモーリシャスといういわゆる途上国の大臣ともお話をしたんですけれども、途上国でも、NAMAとかサービスといったものとのバランスが大事であるということを言っておられました。それから、EUのマンデルソン委員それからフランスのビュスロ農業大臣含めまして、全体のバランス、それから、何といっても、一部のいわゆる先進国、あるいはまた途上国とはいいながらも一部の大国が、ある意味では我々ともっと腹を割って、彼らも譲るべきところはきちっと譲らなければいけないというところで合意をしたところでございます。

 そのついでといいましょうか、大きな農業見本市がございまして、一日十万人ぐらいの人が来るという大変大きな農業見本市で、たまたまシラク大統領にもお目にかかる機会がございましたけれども、ビュスロ農業大臣、シラク大統領と、日仏の間でも共通点が非常に多い、農業についても多いということで、これからもよく連絡をとっていくようにという大統領から我々二人に対しての要望もあったところでございます。

 積極的にやっていくということは、発言をし行動していくことでございますので、ただ提案を出しておしまいということではなくて、頻繁に、電話もございますしテレビ会談もございますけれども、やはり顔を合わせて何時間もやるということがある意味では信頼関係にもなります。そういう意味で、日本と立場の違う国も含めて、これから四月に向けて、七月に向けて、また十二月に向けて、日本政府として積極的にやっていきたいと思います。

 これにつきましても、御指導を賜ると同時に、できるだけこの委員会の御迷惑にならないようにしながら、しかし、必要なときにはまたいろいろと御判断をいただくことをお願い申し上げさせていただきますが、一月末のダボス、今回のパリでも、委員会の皆様の大変ありがたい御理解をいただきましたことを、この場をおかりいたしまして、厚く御礼を申し上げさせていただきます。

近藤(基)委員 WTOの交渉というのは相手があるわけでありますので、リーダーシップを発揮して、積極的に今後も大臣には海外にお出ましいただいて頑張っていただきたい、希望を述べさせていただいて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。大臣の所信に関連して、まず、都市と農山漁村の交流、それから林業の活性化、それからBSE等について御質問を申し上げたいと思います。

 初めの質問ですが、都市と農山漁村の交流ということにつきまして、農山漁村の大変な過疎化の中にあって、農村が都市部にいる人それから企業などの力をいかに活用して、お互いに満足していただける、そういう環境をつくっていくかということが大きな課題だというふうに考えております。また、農山漁村の担い手につきましても、私どもの地元和歌山の緑の雇用という事業がございますが、都市部から多くの人が来て、そして積極的に生き生きと仕事に打ち込んでいるという現象も、私も何回か現地へ行って拝見をいたしました。

 また、最近の内閣府の調査でも、農山漁村に住みたいという願望のある人、これは平均で二〇%を超える。私は、この数字、非常に大きな意味のある数字だなというふうに思っておりまして、特に年齢別でいきますと、五十代の男性が三八%、二十代でも、男性の方が若干多いんですが、男女平均で三〇%、こういう大変前向きなといいますか、農山漁村に対して大変興味を持っているという感じがいたします。

 昨年の七月に、私も当時副大臣をさせていただいていたんですが、副大臣会議で、都市と農山漁村の共生について、共生・対流を進めるための社会実験を検討していただきたい、こんな提言を皆でいたしました。その後、昨年の十二月に、農水省がオーライ!ニッポン会議と連携しながら、社会実験の募集を具体的に行っていただいているというふうにお聞きしております。また、経団連も協力をしていただいているというようなこともお聞きしておりますけれども、大臣にもまた、ぜひ全面的な御協力をお願いしたいと思います。

 まずは、引き続いてまた議論を継続していただいている副大臣の方から、一言御見解をお願いできればと思います。

宮腰副大臣 西委員御指摘のとおり、先ごろ発表になりました内閣府の都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査におきまして、例えば、都市地域と農山漁村地域の交流の必要性について、全世代通じて約八割の方々が必要であるという回答を示しておいでになりますし、また、二地域居住の願望についても三七・六%、それから、先ほど御指摘のありました定住ということにつきましては二〇%、そういう希望を持っておいでになるということが明らかになりました。

 御指摘のとおり、昨年七月に、西委員もメンバーとして取りまとめに参画をしていただきました副大臣プロジェクトチームの提言の実現に向けまして、現在、当省としても、関係省としっかり連携しながら取り組んでいるところでございます。

 今ほどの社会実験の件でございますけれども、昨年十二月から、オーライ!ニッポン会議、経団連とも連携をいたしまして公募いたしましたが、全国から四十四件の応募がありまして、関係省とも協力をいたしまして、その中から十一の候補を選定いたしました。

 例えば、和歌山県の方も大変熱心でございまして、企業と連携した企業農園設置モデル事業ということで、企業の森の農地版という御提案がありまして、十一の候補の中の一つに選定させていただきました。

 今後、社会実験の実施を通じまして、自治体や企業を含め、都市と農山漁村双方の具体的な連携方策を検証してまいりたいというふうに考えております。

 また、引き続き今月の十六日に第十二回目となる副大臣プロジェクトチームを開催いたしまして、先ほどの世論調査にあらわれた数字、例えば団塊の世代を含む五十歳代の二地域居住の意向が約四六%、定住の意向が約二九%というその結果をどう見るか、あるいは社会実験の取り組み状況などを参考にしながら、関係省において、今後、共生・対流の推進に関する施策の再点検を行いまして、連携や強化策について検討していくということになったところでございます。

 御案内のとおり、二〇〇七年から三年間で団塊の世代六百三十万人がリタイアする。そういう世代の方々が、都市、農山漁村共生・対流に大変関心を持っておいでになる。そのニーズにどうこたえていくかというのが政府の責任であるという気持ちで、これからもしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

西委員 この課題は、農林水産省だけではなくて、さまざまな省庁にかかわる課題でもあると思います。私どももそういうつもりで議論してまいりましたが、また副大臣会議でも積極的な御議論をお願いしたいと思います。

 大臣、このことに関して何か一言コメントをいただければと思いますが、よろしくお願いいたします。

中川国務大臣 西委員や宮腰副大臣が中心になって都市と農山漁村の共生・対流の中心的な役割を果たしていることを高く感謝申し上げたいと思います。

 日本の農山漁村は、いわゆる多面的機能というものがある。これはどこでもあるんだろう、世界じゅうであるんだろうと思いますけれども、日本ほど、狭いといえば狭い、しかし多様な、そして多面的な機能を持っているところを発展させていくということは、単に住んでいる地域やそこでの産業だけではなくて、日本国民にとってかけがえのない財産であるから、過去から受け継いだだけではなくて、未来からの借り物である、これはある万博でのある国のキャッチフレーズにあった、いい言葉だなと思っているんですけれども、我々は、未来からの借り物なんだから、これを少しでも守り、また発展をさせていく、そのために都市と農村の共生・対流が大変大事だということは、日本は昔から認識があったわけでございます。

 多面的な例の一つとして、西委員に御関係のあることをちょっと一点、余談的な話で恐縮でございますけれども。

 香港閣僚会議で一週間ほど、我々、ほとんど徹夜でけんけんがくがくの議論をやっていたんですけれども、二階経済産業大臣が、真夜中になって御地元の南高梅を、梅の形、錠剤の形、いろいろな形、数種類出してきまして、これを食べて頑張ろうと言って出していただきました。もともと大変好きだったものですから、大変ありがたかったんですが、二人が何かごそごそ食べているのを見て、アジアの大臣たちが、それは梅だろう、自分たちも食べたいと言って、随分配りました。

 それから、欧米の人たち、けんけんがくがく、くたびれ果てたある欧米の閣僚も、何だか知らないけれどもそれをくれと言って、ほとんど初めて食べたんでしょうね。最初のうちは酸っぱそうに不思議な顔で食べていましたけれども、二日目、三日目になると、あれくれあれくれと言って、余り相手に元気をつけるのは我々にとって得策ではなかったんですけれども、ある意味では、香港において日本が一定の役割を果たした一つの要因は御地元の梅だったということを、この場で西委員に厚く御礼を申し上げたいと思います。

 多面的な機能を果たすということは、もちろん水源涵養だとか国土保全だとか、あるいはまたいい農林水産物をつくるということもありますけれども、心の面、特に子供たちに対して、食育という今は大事なキーワードがありますけれども、本物を知る。和歌山の山に行って、そして歴史と自然を見ながら、何か感じるもの、あるいは海を見て感じたり本物を見るという観点からも非常に大事でございますので、農業政策としてやるというよりも、むしろ、都市政策、教育政策からもっともっとやっていただくということによって、我々が、自然の、国民の人たちのそういう流れを後押しするんだという意識でやっていくことが、本当の意味のこの政策の、そうなったらいいなと常日ごろから思っているところでございますけれども、引き続き西委員のリーダーシップを心からお願い申し上げさせていただきたいと思います。

西委員 ありがとうございました。

 大変幅広い観点から教育に至るまでの、日本のこの広い国土をいかに有効に活用していくかということも含めて、お話をいただきました。

 次の問題でございますが、今、農業経営基盤強化促進法の改正を受けまして、一般企業も土地を借りて農業生産に参画できる、こういう形態ができました。さらに、考えてみますと、企業が直接農業を営むということだけではなくて、企業が生産に携わらずに経営に参加する、また販売、営業面を担当するというような農業生産法人のパートナーの形態、それから市民農園、滞在体験サービス等の提供が、企業がそのまま生産に携わることではなくて、企業のノウハウを生かして活性化できるというような考え方があっていいのではないかというふうに私は考えているところでございますが、このことについて農水省の考えをお聞きしたいと思います。

宮腰副大臣 今ほど大臣の方から紀州南高梅のお話がありましたけれども、私も質問通告を受けて調べてみましたら、これはなかなか大変びっくりするような取り組みでありまして、紀州南高梅クラスターとして、目標、産業規模約五百億円。これは、農家、あるいは食品産業、加工メーカー、あるいは小売、直販等々で二千六百人の雇用をしていくという、大変意欲的な取り組みであるというふうに聞いているところでございます。

 地域の農業と食品産業が連携した食料産業クラスターの形成を推進する、そして地域の農林水産物を活用した高付加価値食品の供給及び産地ブランドの形成を図る。このことに関しまして、企業ノウハウを取り込んで展開していくということは、極めて大切なことであるというふうに思っております。

 また、御指摘のありました基盤強化促進法の改正によりまして、企業がリース方式により農業に参入する道を開きまして、地域の耕作放棄地などの有効活用を図るということでありますとか、加えまして、特定農地貸付け法の改正によりまして、従来は農協でありますとか地方自治体にしか認められていなかった市民農園の開設、これを企業が行えるように拡充するということなどの取り組みも行っております。

 また、平成十八年度におきましては、農村コミュニティーの活性化を図るために、NPO法人など地域の民間団体が地域企業との連携を進める取り組みに対して支援をするなど、農林水産省といたしましても、農業以外の分野の企業との連携も視野に入れて、農業、農村の活性化をこれから進めてまいりたいというふうに考えております。

西委員 ありがとうございます。

 次に、林業の活性化についてお尋ねをしたいと思います。

 先ほどもちょっと申し上げましたし、大臣の所信の中にもキーワードとして入っておりました緑の雇用という事業がございますが、私も何回か現場に行って、現場で働いていらっしゃる、東京、大阪はもちろんのこと、全国各地からおいでになっている若者に話を聞いてみました。大変意欲的に取り組んでいらっしゃる。

 一人は、営業をやって、一日じゅう本当に夜遅くまで働いていたけれども、この仕事は暗くなったらできない、切りがついて非常に精神的にも豊かになった、家族と団らんしながら過ごす時間ができて本当に満足している、こんなお話もありました。

 そういう一方で、次の課題として、低コストで一定量を安定的に供給できる林業の川下の対策、中流から川下の対策をぜひともこれからの課題としてやっていく必要があるだろう。特に、国産材につきましては、丸太の生産現場初め製材、加工、それから市場、それぞれ全国各地にありますけれども小規模です。それから、原木の流通と製品の流通、それぞれに私はどうもまだまだ課題があるような気がいたします。

 そう考えておりますときに、林野庁は、強い林業・木材産業づくり交付金、こういう交付金を今回設定されているようです。その中で、新生産システムを追加して、木材流通・加工体制の大胆な見直しを行い、また、木材安定供給圏域システムをつくるなど、新しい木材供給体制の整備を行おうとしておられます。

 これらの施策を地元として、また地元の林業関係者、製材関係者として、どのような視点でこれからとらえていったらいいんだろうか、その視点で御答弁をお願いしたいと思います。

川村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員から御指摘ございましたとおり、木材の生産、流通、加工というものが極めて小規模、分散的かつまた多段階ということでかなり不効率になっておりまして、特に、住宅メーカーでありますとか、大型のユーザーのニーズに十分対応できておらないというのが現状でございます。

 これから国内の資源も、戦後造林の資源がだんだん本格的に活用できる時代になりますので、いかに下流のニーズに応じていくかということが必要でございます。そのためには、まず山元で、やはり森林経営、木材生産、丸太生産をできるだけ集約化して団地化していくということでございます。

 御案内のとおり、森林所有者という方はたくさんおられますが、それを施業を引き受けておられる方々にできるだけ集めていくといいますか、そういう努力が必要だろうと思っております。まず、そこの出発点で単位を大きくする、そういうことによって低コストで木材の生産もできるという体制ができてくると思いますので、まず、そこのロットをまとめるということがございます。

 それから、やはり、住宅メーカーが希望するような形での製材なり、そういうものをしなくちゃいけない、いわゆるカスタマーの視点から見た木材の供給というものをやっていかなくちゃいけないということでございます。しかも、かつ大ロットで安定的な供給ということでございますので、川上から川下まで契約を結ぶということで、きちんと約束したものが、どんどんユーザーにも使っていただきますし山元からも出ていく、こういう形をぜひつくっていきたいということでございまして、来年度はモデル的にやってまいりたいということで、これを核に国産材の利用拡大を進めていきたい、こういうふうに思っております。

西委員 川上から川下まできちっと契約ベースで供給ができ、また、生産、流通ができるということは大変重要な観点だと思います。ぜひとも、そういう形を実現していただきたいというふうに思います。

 外材につきましては、供給量が大変多い、それから販路も安定しているというようなこともありまして、商社などが、在庫量初め木材の供給の情報、それから生産に至るまでのすべての情報を、センター的一元管理を商社ごとにしているんだというふうに思いますが、現状を見ますと、市場がその機能を果たすかといいますと、それほどの規模もございませんし、なかなか情報という意味では、これまた十分機能を果たしていないというふうに考えます。

 今回のこの木材広域総合情報整備事業、こういう事業をなさろうとしているんですが、ユーザーの方が国産材に関する情報を利用できる、こういう事業だと思うんですが、ユーザーの立場に立って、これはどういう機能を備えた事業にしようと考えているのかということについて、御質問申し上げます。

川村政府参考人 お答えいたします。

 最近、原木あるいは資材の調達あるいは販売エリアというものが、都道府県のエリアを越えましてかなり広域化しております。そして、先ほど言いましたようなシステムもそうですけれども、物流の合理化を含めまして改善をしていくためには、やはり情報というものが重要な役割を果たすわけでございます。

 それで、これまでいろいろございましたけれども、国産材、外材を含めた木材の消費動向あるいは供給動向、価格動向、これも総合的にですけれども、かつ非常にきめ細かく、例えば合板用のラミナというものをつくりますけれども、そのラミナがどういう状況で今どこでどうできているとか、こちらの川下の方でどういう要望があるとか、そういう仲立ちをするところがございません。それで、そういうきめ細かな情報をできるだけデータベース化しまして、インターネット等でアクセスできる、例えばそういうことを構築していきたい、そういうことによって技術の合理化なりコストダウンも含めて図っていただきたいということで、そういう仕組みを取り組んでいきたいということでございます。

西委員 今御質問申し上げました、それぞれの施策が一つに融合して、情報と、それから川上から川下の木材生産、こういうものがまとめられることによって新しい林業の活性化が行われるんだろう、このように考えております。

 戦後、一九五〇年代ぐらいでしょうか、一斉に造林されました。その森林が成熟して伐採期に近づいているんですが、残念ながら、今の木材価格並びにその労働賃金といいますか、それが引き合わないということで、十分な国産材の生産が流通に回っていないという現実がございます。しかし、考えようによっては、資源の蓄積は十分今あるわけです。成熟、これからさらに大きくなっていくとともに価格競争力もついていくんだろう、先ほどの施策も十分活用しながら、そういう流れをつくっていかなければならないというふうに思います。

 今ではむしろ国産材の方が、価格だけでいいますと安くなっているという状況すら生まれている。これは不幸なことではありますが、もういわばどん底まで来たわけですから、これから本格的にやはりビジネスとしてこの林業の再構築に向けて頑張っていかなければならない、そういう時期に来ているんではないかと思います。

 林業政策、また林業の再生にかける大臣の抱負をお聞かせ願いたいと思います。

中川国務大臣 日本は木の国であり、和歌山は文字どおり木の国でございますけれども、多面的機能を持っております。水源涵養であるとかいろいろありますけれども、業としての森林業、あるいは林業地域に住んでいる方たちの生活というものも当然大事なわけでございまして、そういう意味で、今改めていろいろな議論を審議会等でもこれからやっていただくことを考えております。

 何といいましても、今長官からも答弁がありましたけれども、木というのは大変大事な役割、あるいは森林の役割は極めて大きいわけですが、時間がかかるということ、そしてまた、昭和三十年代に自由化をして、今、自給率は多分二〇%ぐらいだと思いますけれども、これがまたどんどん低下をするということがあっては、これはもう多面的機能が根本から損なわれてしまう。そういう意味で、今やらないと、再生ということがもうどんどんどんどん取り返しがつかないということにもなります。

 そういう意味で、業である以上は川下との連携というものが非常に大事になってきますし、林野庁、農林水産省としても今全力を挙げておりますが、やはり大事なのは、これは先ほどの農村、漁村と一緒で、和歌山の森林地帯と北海道の森林地帯とまた九州では、これは少しずつ違ってまいりますので、オーダーメードでやっていくことが本当の意味で生き物を相手にする施策として大事なのではないか。

 そういう意味で、和歌山あるいは紀伊半島の地域の森林活性化、林業活性化のために、どういうふうにしていったらいいのか。また、ユーザーとして、どういうユーザーがそういうものを求めているのかということを、まず情報把握を的確にきちっとやっていくことが大事でありますし、また、国民そのものが、やはり子供たちを初めとして、木に親しむという気持ちは、これはもう皆さんあると思いますので、そういうチャンスをできるだけやっていく。私も小さいころ林間学校なんというのに行った記憶がございますけれども、やはり、先ほどの食育ではございませんが、今思いついた言葉で恐縮ですけれども、余りスムーズな言葉じゃありませんが、林育、木育といったものもこれから大事になってくるのではないか。

 いずれにしても、林野庁、我々が政策の取りまとめではありますけれども、オーダーメードで、本当の意味の再生を目指すためには、各地域地域の状況あるいはまた森林の状況を産業としてもどうやって生かしていくかということにアンテナを高くして対応しながら、二十年、三十年先、百年先を見た森林政策をやっていきたいと思いますので、これにつきましても、引き続き御指導のほどよろしくお願いいたしたいと思います。

西委員 時間がなくなってまいりました。

 最後に、BSEという予告をしていたんですが、十分な時間がございません。アメリカの農務省関係者は、既に再開のめどは第二・四半期だというふうに述べていたり、非常にこれからの交渉は難しい局面に入ってくるんではないか、ぜひとも、大臣、食の安全ということに関して毅然たる態度で臨んでいただきたい、このように思っております。

 アメリカの調査報告書、先ほども中間報告がございましたけれども、大部な報告でして、両省で大変精力的にそのことについて分析をされているというふうに伺いましたが、まだ日本語版が我々の手に入っておりませんので難しいんですが、私も若干調べさせていただきましたところ、私どもで判別する限りでも幾つかの疑問点が実は出てきております。質問の予告で既に何点か具体的に書いたものをお渡しもしているんですが、そのことについて細々としたことは申し上げません。

 特に、今回のこの問題に関して、この二つの会社の個別の問題としてとらえるのか、それから、もっと大きく、やはりアメリカの農務省のシステムの問題、若干私は農務省内のシステムの問題も心配だなという部分もあるような印象も受けます。そんな問題等も十分、農水省、厚生省ともに分析をしていただいて、そして不明な点は明確にアメリカ政府に回答を求めていただきたい、日本の食の安全を守るためにぜひとも御活躍をいただきたい、こんな思いでございます。

 時間の関係で十分な質問にはならなかったんですが、大臣の御所見をお伺いして、終わりたいと思います。

中川国務大臣 全く御趣旨はそのとおりでございまして、そういう方針で今やっているところでございます。

 報告書が出た、さあ、再開はいつなんだ、ある意味では、そういう短絡的な作業ではないんだろうと思っております。もとより、時間を必要以上にかけるつもりもございません。しかし、私は、農務長官あるいはアメリカの関係者にいつも言っているのは、急がば回れ、目的をきちっとするためには、急ぐことはアメリカ側にとってもプラスになりませんよと。

 再発防止あるいはまた原因の徹底究明という観点から、今回はリスク管理を前提とした運用の問題でございますけれども、しかし、我々がリスク管理上問題ないと判断しても、国民が納得しなければ、仮に再開しても、売れなければアメリカの真の目的は達成できないわけでありますから、無理にやればやるほど国民はまた再々開に対して慎重になるのではないかということであります。

 我々も説明義務が大事だ、先ほど近藤委員からも御指摘があったとおりでございまして、徹底的に説明をする義務は感じておりますけれども、しかし、国民の皆さんの御理解をいただくということがある意味では輸入再開の真の目的だと考えておりますので、十分御趣旨を踏まえて、これから一つ一つ作業を進めさせていただきたいと思っております。

西委員 ありがとうございました。終わります。

稲葉委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

稲葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小平忠正君。

小平委員 民主党の小平忠正です。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは大臣、フランスに行かれてお帰りでお疲れのところ大変御苦労さんです。訪欧の成果をお聞きしたいところですけれども、準備しましたのでそれにのっとって進めます。ひとつよろしくお願いいたします。

 昨年三月に、新たな食料・農業・農村基本計画が策定されまして、その後、施策の展開の中で、農業の持続的な発展に関する施策として品目横断的政策への転換、これが大きくうたわれ、これは、我が国農政において長年基本とされてきたこれまでの価格支持政策、これを所得政策へ転換し、さらに、一律農政から担い手へ、いわゆる絞り込み、施策を集中、重点化する、そういう選別政策の導入、そんな転換だと受けとめておりますが、十九年からこの施策が導入される、そういう予定を聞いております。その概要について、昨年十月末ですか、じりじり関係者は待っておりましたが、昨年選挙もありましたが、その後、経営所得安定対策要綱としてやっと世に出されました。

 農家に対して、この政策の周知徹底、これを目的として製作された、いわゆる雪だるまパンフですか、それを見ますと、今回の対策が必要とされる理由をこう述べております。国際ルールが厳しくなって生産に影響を与える施策は削減対象となり、我が国においても、いわゆる緑の政策である直接支払いを導入する必要がある、そういうことを特に強調いたしております。

 もちろん、これは我が国農政を国際規律に整合したものとしていくためには、WTOドーハ・ラウンドにおける農業交渉を横目でにらみながら、国内政策のかじ取りをせざるを得ない、そういうことでしょう。それはわかりますが、心配というか非常に気になる点があります。それは、このラウンドで米国、欧州等が交渉の中心勢力とされる新四極ですか、その中にこの世界最大の農林水産物の純輸入国である我が国の姿が見えない、これが気になるところです。

 中川大臣は、経産大臣も含めてこのWTO交渉の最前線におられるわけですから、そのことは私が言うまでもなく肌で感じておられると思います。だからこそ、大臣が言っていらっしゃるんでしょう、総理に対し、これからできるだけメーンプレーヤーになって発言を積極的にすると。そう受けとめております。

 そこで、外交交渉は国益が直接ぶつかり合う困難なものであって、ましてやWTOの多様な多国間交渉は非常にハードであって、大臣が再々口にされる、譲るところは譲る、守るところは守る、それはよくわかりますが、そういう中で、昨年二月にはラミー事務局長との会見、記事が後で出ましたが、ちょっと誤解を生むような報道もありました。今回のこの品目横断政策への移行も、見方によっては同時に大きな誤解を生む可能性はある、こう私は思います。

 国際規律との整合性を理由にして、これだけ大きな政策変更を、激変緩和措置などなしにこの時期に経営安定対策を一気呵成に進めようとしている。そのことが諸外国においても誤解され、そして我が国の外交スタンスに関して間違ったメッセージが海外に伝わるようなことがあってはならない、こんなふうに私は思うんです。

 大臣に、この通常国会冒頭に当たり、WTO交渉に臨む決意というか、フランスのことも含めて決意のほどをまずお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 今、小平委員の御指摘、結論的に言うと、交渉をやった後の記者会見でありますとか、マスコミのインタビューなんかでも、随分言ったことと違う報道、あるいは相手方に言おうとしたことがうまく伝わらないというか、相手が聞き違えたという例が、これは私に限らず時々あることでございます。結果的に、当委員会を初め、また農業関係者の皆様を初め、御迷惑をおかけしたとすれば、これはもうおわびをしなければいけない、これしか申し上げることはないわけであります。

 そういう中で、まず、現在行われておりますラウンドは、私は去年の十月まで経済産業大臣をやっておりまして、実は交渉に当たって、守るべきところは守る、攻めるところは攻めながら譲るところも譲るというのは、実は経産大臣時代からずっと言い続けていたところでございます。

 経産省所管はどちらかというと攻めの部分が多いわけで、NAMAだとかそういったところが多いわけでありますが、経済産業省関連でもセンシティブな分野がありますし、またNAMA交渉の中には、林、水といった我々の重要な分野も入っているわけでありますので、そういう中で私はそういうことを言い続けてきたわけであります。基本的な考えは現在も変わっておりません。

 それを折に触れて申し上げた大きな理由の一つは、今、小平委員が御指摘になったように、今から二年ほど前ですか、新四極、あれは新五極ですかね、FIPs、ファイブ・インタレスティッド・パーティーズと言われる、アメリカ、ブラジル、インド、オーストラリアそしてEUといった国々が、非公式とはいいながら農業について実質的にそこで決めてしまおうと。

 実際におととしの七月のジュネーブの枠組み合意も、我々入っていなかっただけに、一週間の間は、最後の一日、二日までは、あのときはスパチャイ事務局長を含めて主要メンバーが一体どこで何をやっているのか、もうほとんど蚊帳の外、漏れ伝わってくる程度であって、途上国の多くの国々も大変怒りましたし、日本は、先ほども申し上げましたように、経済においては世界のメーンプレーヤーである、また農業においても世界最大の純輸入国である、それを無視したまま決めるということはまことにけしからぬということを個々に随分強く申し上げたわけでございます。

 この仕事を随分長くやっておりますので、当時のスパチャイさんにしてもUSTRのボブ・ゼーリックさんにしても、EUの当時のパスカル・ラミーさんあるいは農業担当のフィシュラーさんを含めて、率直に話し合える間でございましたので、おかしいではないか、日本を外して、あるいはまたG10を外して、あるいはアジアを外して決めるというのはおかしいではないかということを随分と言い、ただ言っているだけではなかなかそういうことが実際かないませんので、いろいろな提案をし、また、アジアの国々あるいは途上国の国々、あるいはアフリカの綿花で本当に困っているブルキナファソ、ベニン、マリ、チャドといった国々とも積極的に話し合いをしながら、我々は、DDAの趣旨である途上国、とりわけLDCに対しても積極的に貢献をしたい、あるいは、農業についてもNAMA、サービスについても、あるいはルールについても貿易円滑化についても、LDCの立場を基本的に日本は支持するというようなこと等々をやりながら、去年の秋以降にFIPsプラス1という形で日本が、経産大臣、農水大臣が参加をすることができたわけであります。

 そこで、日本として、これは農業だけの会議ではございませんし、これも非公式でありますけれども、積極的な提案もし、香港でも、開発パッケージ、あるいはまた、農業途上国が主張しておりますようなことについても積極的に支援をしながら交渉に臨んできているところでございます。

 その過程において、いろいろな会合、また私自身も外国のプレスからいろいろインタビュー等を受けまして、それが、私自身の言葉が足りなかったりあるいはまた誤解されて報道されたりということが、私自身記事を見てびっくりしたこともございます。それが現在の交渉の状況でございます。

 そして、おとといのパリにおきましては、長くなりますのでポイントだけ申し上げますが、参加国は、これはフランスの農林大臣の招待でありましたけれども、どちらかというと農業の市場アクセスに非常に神経質になっている国々でございまして、だからこそ、農業の三分野のバランス、それからほかにもいろいろ大事な分野があるでしょう、それから、開発ラウンドですからアフリカの国々等々に対しての十分な配慮が必要ですねというのが行ったときの確認事項であり、具体的には、アメリカとかブラジルとか豪州とかいった国々の主張がバランスを欠いた形で流れをつくっていくということに我々は納得できないということで確認をし、そして、今後より連携を強めていこうということを決めてきたというのが最大の成果であったというふうに理解をしております。

 他方、今回これから御審議をいただきますいわゆる新しい政策というのは、新しい基本法に基づく基本計画の見直し、そしてそれに基づく大綱、そして法律の審議をこれからお願いするわけでございますけれども、その中での、今小平委員が御指摘されたことは、WTOの今度のラウンドが一体いつ、どういう形でまとまるかわからない。よく我々の世界で言われるのは、一番早くても、ことしの十二月に仮に合意がされたとしても、国内手続があります。特にアメリカの場合には、六月がいわゆる一括授権条項の期限が切れるということもございますし、他方、アメリカ、ブラジル、メキシコといった国々は選挙もあるわけでございまして、そういう状況になりますと、どんなに早くても発効するのは二〇〇八年以降ではないかというのが関係者の一致した意見でございます。

 しかも、内容はどうなるかわからないという中で、それを前提にして新政策を今から考えるということは、これは技術的にいっても、また、日本はそういうことを考えているのかということを相手に、ある意味では誤解も含めて情報を与えてしまうことにもなりますので、その辺は我々もきちっと説明をしていかなければなりません。

 ここで申し上げている、国際的なルール、状況を配慮してというのは、現在の置かれているWTOの中での日本の農業政策、例えば緑の政策、青の政策あるいはまた黄色の政策、あるいはまたデミニマスとか国内支持の問題であるとか、それから、日本は余り関係ありませんけれども、輸出競争の問題をどうするか、あるいは国内支持についても、ヨーロッパがどのぐらい高くて日本とアメリカが二番目だというようなことが香港で決まりましたけれども、それはあくまでも先の話であります。現時点のルールにおいては、でも、我々としては、やはりヨーロッパ、アメリカがやっているような直接支払いという緑の政策でやっていくことプラス日本的な所得安定対策というものが、日本の農業が、それでなくても国際競争力、さっき輸出の話もしましたけれども、外国も日本で買ってもらえるような農産物を一生懸命つくろうとしております。場合によっては、日本の育成者権を侵害してまで日本のいい農産物を外国でつくって日本に輸出しようとしている。

 あるいはまた、この前、これは報道でありますけれども、日本産の牛肉かどうかわかりませんが、アメリカの大統領が神戸ビーフはおいしいと言ってテレビの前で食べていたということ等もありますので、今の状況においてもやはり国際的な競争、あるいはまた国際ルールとの整合性というものが非常に重要であると同時に、やる気と能力のある農業、農家というものを育成していくことがそもそもの基本法の趣旨であるということでこの政策を推し進めているのでございまして、決して次期WTO交渉の結果を予断した形でこの政策を、この法律案を御審議いただき、成立をお願いしているわけではないということを御理解いただきたいと思います。

小平委員 大臣から約十分強御意見の開陳をいただきまして、基本的なことですから、WTOそれから経営安定対策、まず冒頭に所見をお伺いいたしました。

 そこで、確かに今の経営安定対策、新しい農政への転換、これは、WTOのこれからの、いわゆる上限関税、重要品目、米がどうなるかを軸に、それによっては今の経営安定対策も基本的に、また必然的にいじらざるを得ない、これもあり得るでしょう。しかし、今大臣が言われたように、WTOは国益の問題ですから、頑張っていただきたいと思います。

 今お話の中にあったフランスのこと、私も感じましたことは、昨年ジュネーブで、私もIPUのWTOの集中会議に行きまして、WTOというのは政府間交渉ですが、しかし、議会人として我々に何ができるか、それをメーンテーマにしていろいろな角度から各国との意見の交換をいたしました。そのときに、いろいろな中身はあったんですが、感じたことは、今のフランスの話に出たように、アフリカ諸国はやはりかつての宗主国のフランスに対して非常に強い反感を持っている。ですから、非常に開発のおくれたあの地帯において、感情的なものとして、これは非常に根強いものがありますよ。

 そんな中で、フランスも、いわゆる純農業国というか、厳しい状況があると思うので、微妙に立場は違っても通ずるところがあると思うので、そこは同じ思いでしっかり頑張っていただきたいと思います。

 きょうは、佐藤審議官、出席ですね。少し具体的に。一応、四月の末にモダリティーが予定されていますね。そこで大体の枠組みを決めなきゃならぬ。

 そういう状況で、まだ今はその前にありますけれども、やはり今回大きいのは市場アクセス、ここだと思うんですよね。国内保護とか輸出補助金、これは大体方向が見えてきた、市場アクセスだと。そのときに、いわゆる上限関税の問題とか、あるいは重要品目をどうするかとか、あるいは四階層に、そこまでは合意されましたよね、具体的なことはこれからだけれども。そういう中で、非常に難しい問題を抱えていますけれども、今の段階で、どの程度までこの委員会の場で話ができるのか。ここは事務方で結構なので、政府の方から話を。

 あなたとは、かつてジュネーブで一緒に、ウルグアイ・ラウンドのとき、向こうに一緒に行ってやった経緯もありますから、その長い歴史はあなたも承知している、私もよく承知しています。今回、新たなこういうものがふえましたよね。交渉なので言えること言えないこと、あるでしょうけれども、ひとつお聞かせいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、委員から、市場アクセスの関係について、交渉の現状のような御質問がございました。

 主な点につきまして御説明いたしますと、例えば、上限関税につきまして、我が国を含むG10は、各国の生産条件や関税構造の違いを無視したものであって受け入れられないというような主張をしておりますのに対しまして、米国、EU、G20は、その導入を主張しているところでございます。

 さらに、米国やG20は、一般品目に加えて重要品目も含めた導入を強く主張しているところでございます。また、重要品目の数につきましても、G10が十分な数を確保すると主張しているのに対しまして、米国やG20は、その数をごくわずかに限定することを主張しているところでございます。

 このように、輸出国と輸入国とまだ大きな意見の対立が存在するところでございまして、十分にしっかりとした交渉をしてまいらなければならないと考えているところでございます。

小平委員 その程度しか言えないでしょうね。いずれにしても、これからまさしく胸突き八丁、正念場へ行きますので、頑張っていただきたいと思います。

 特に最後に、これに関しては、今BSEの問題が、大きくこの事件が出ちゃって、これにもう世間の耳目というのが、注目が全部集まっていますよね。これは確かに、食の安全、大事な問題ですから、ここはしっかりとアメリカに物を申して、いわゆるルールをしっかりつくっていかなきゃならぬですよ、これは大事な問題です。でも、やはり今のこのWTO、これはもうまさしく、ことしでこの国の農政の方向、農業の方向が決まります。同時に、国内的には経営安定対策、こういう大事な大事な一年です、この年は。そういう大きな問題が出ておりまして、そこにBSE。ですから、それはそれとしてしっかり追及するけれども、これらについても政府としてしっかり取り組んでいただきたい、そう申し上げて、次の質問に移ります。

 経営安定対策のところなんですが、今回は、いわゆる全農家対象から担い手というか、いわゆる平たく言って絞り込みですね、そういう表現が妥当かどうかは別として、そういう方向の転換になる。

 そこで質問いたしますが、この雪だるまパンフの中で、農水省は、農家人口の減少、高齢化の進行、耕作放棄地の増加を挙げて、担い手の育成、確保が農業の緊急課題である、そして、担い手の主役は認定農業者であり、集落営農だ、こううたっていますね。この担い手に施策を集中、重点化しよう、前段申し上げたような方向で政府は考えておられるようですけれども、この担い手の明確化が問題だと思います。

 この対象者の規模については、認定農業者は、北海道が十ヘクタール、都府県が四ヘクタール、集落営農は二十ヘクタール、こうなっていますね。ただし、さまざまな特例を知事からの申請に基づいて国が別途基準を設けることができる、こうなっておりますが、制度のスタートの時点で、一体どこまでを本対策における担い手と位置づけるのか。

 それと、政府は昨年から、行政と農業団体で担い手協議会、こういうものをつくって、この対策の対象者となる認定農業者を二万増、農業生産法人を五百増、集落営農組織を二千ふやす、そういう目標設定をして、全国各地に散らばって説明会を何百回も開いたり、審議官クラスに地域担当官が同行し全国を歩かせ、新制度の周知徹底を図っている。そういうことから、生産者にも十分に理解されている、このように言われておりますが、実際、私が聞くところ、末端の反応は、説明会についても一方的な説明で、また、質問しようにも、数字が不明なのと複雑な要素が絡み合ってよくわからない。政府と計らって農協が決めた政策なんだから、後は農協がうまくやってくれるだろう、こういうあなた任せ的な、そんな投げやりな気持ちも伝わってきます。

 これだけ大きな政策の転換であるにもかかわらず、今申し上げましたように、末端は、また現場はよく理解できておらない、将来の営農に対して不安が不安を生む、こういう状態になっていることも事実であります。これが現場の今の実態であります。

 これは、当委員会の委員の皆さんにおかれても、生産者と接触されておれば、少なからず同じような御意見を現場から聞いておられると思います。また、集落営農の組織化に当たっては、既存の認定農業者が集積をしてきた農地について貸しはがしが起きている、こんな事例もあると聞いております。

 来年度予算を見ても、これまでの認定農業者支援に比べて、集落営農にはさまざまな支援措置が仕組まれているようですけれども、集落営農のみならず、担い手となるすべての農業者に対して、この大きな政策転換に当たって、スムーズな移行支援措置、また激変緩和措置が欠けているのではないか、こう思います。

 そこで、これらのことを含めて、この対策における担い手とはいかなるものなのか。政府がこの経営安定対策において想定している担い手は、具体的にどこまでの範囲なのか。制度スタート時におけるそれぞれの数、あるいは耕作面積はどれくらいを考えておられるのか。また、同じく稲作においては、この対策における担い手が、どのくらいの面積、生産数量で需要量の何%ぐらいをカバーすると想定しているのか、そういうことを含めてお答えをいただきたいと思います。これは局長で結構ですから、答えてください。

井出政府参考人 ただいま品目横断的経営安定対策につきまして小平委員から多角的な御質問がございまして、それぞれについて、意を尽くせるかどうかわかりませんが、お答えをいたします。

 まず、担い手育成の取り組み状況でございますが、今委員御指摘のとおり、その要件につきましては、基本となりますのは、個人、法人につきましては、まず認定農業者であって、規模要件が、都府県で四ヘクタール、北海道十ヘクタール、集落営農で二十ヘクタール以上というのが基本である。ただし、その地域の農業の特性がございますので、所得の特例でありますとか、生産調整組織の特例でありますとか、そういったことも大綱の中では既に認めてきております。

 そういった前提で、現在、行政と農業団体が連携協力をいたしまして、個別経営については、やる気と能力があると市町村が認定する認定農業者へ、既に、例えば規模要件は満たしておられても認定農業者になっていらっしゃらない方もおられますので、そういった方は認定農業者に誘導していく。さらに、小規模な農家等につきましても、集落営農に参画することにより担い手の構成員となり得るということになっておりますので、集落営農組織の組織化、法人化を推進しております。

 お話にもありましたように、私どもも既に昨年末までに三千五百回を超える意見交換会、説明会を地域で開催いたしまして、対策の周知徹底に努めてきております。

 それから、ただ、これは農閑期であるこの冬場に、やはり集落段階でよくお話し合いをしていただくべくということで、その大綱の中身等についても昨年末に取り急ぎ説明会を行いましたが、現在、各地域で、集落段階での説明なり、あるいは意見交換が行われているところでございます。

 制度スタート時において、どの程度の農家、面積が対象になるのかというお尋ねでございますが、これにつきましては、今申し上げた対象者の要件が、基本的には認定農業者または集落営農組織で、規模要件を満たすということでありますが、そのほか、地域の農業の実態に合わせましてさまざまな特例を認めておりますことからも、また、現在、行政と農業団体が連携協力してこの担い手の育成運動を強力に行ってきておりますので、この制度スタート時においてどの程度が対象になるのかということにつきましては、この取り組みの進展いかんという面もございまして、現時点で確たる数値を見通すことは難しゅうございます。

 それから、全国の協議会におきまして、目標を定めて頑張っていただいておりますが、これは、各県あるいは旧町村あるいは旧郡単位の段階でも協議会が結成をされまして、その担い手の育成について、今努力をいただいているところでございます。

小平委員 そういう説明をされて各地を歩かれたようですけれども、そういうことを考えておられるんでしょう。でも、実際には、入ってみなきゃ具体的にはどうするかわからないというのがあなたたちの率直な思いだと思うんですよね。

 それで、私は思うんですけれども、今回、いわゆる日本型直接支払いということで、これはこの後、ゲタ、ナラシの方でまた質問しますけれども、そのことは今、先ほどWTOとの絡みもあって、緑とか黄色がありましたけれども、これが出回っていますね。

 そこで、私は思うんですけれども、確かにこういうことをうたっておりますが、このゲタ、ナラシ、ゲタのところでも、過去の生産実績に基づく支払いですとか、これはまた後で聞きますけれども、あるいは、それに加味して、毎年の生産量、品質に基づく支払い、そういうことをいろいろと仕分けしておる、これが日本型直接支払いのゆえんでしょう。

 それは説明を聞きましたけれども、その前段に、対象農家を全農家からいわゆる認定農業者、担い手というふうにスライドするわけでしょう。そこのところは、別にしなくたってWTOには抵触しないんですよ。大臣、そうでしょう。ゲタについて緑も黄色もある。それはそのとおりですよ、国際ルールの中で、それに合わせてやっているんだから。でも、対象農家を全農家から一定の基準を満たしたものに絞っていく、これが新たな国際競争に伍していける日本農業の形をつくっていくんだという説明はわかりますけれども、今この時点で、私はこれは荒療治だと思う。

 まず、この時点では、やはりその全農家対象的なこともしながら、あるいは段階的に、そういう方向に行きたいんだったら進めていく、これが激変緩和措置ですよね。それを一気にばっさりやってしまう。そこのところが私はどうも理解できない。

 私なんかは北海道ですから、どっちかといったら専業農業が主体ですよ。この状況にはまだ、近いところにいます。でも、西の方ですよ。府県の方は、いわゆる零細な二種兼農家を含めて、小規模農家がまだまだ多くいらっしゃる。そういう方々には、ちょっとこれでは、血も涙もないというのは言い過ぎなんでそう言いませんけれども、温かみのない政策に私は感じるんですよね。

 この国の戦後の復興から発展をつくってきた基礎は、やはり二種兼農家でしょう、あるいは零細農家でしょう。週末に自分の田畑を耕して、平日は工場に出ていって、その労働力として我が国の経済的な発展の大きな礎になった、それが農業者の大宗でしょう。それが、いわゆる昭和一けた世代ですよ。そこがまだ現存というか、頑張っているときに、こういうことは私はいかがなものかなと思うんですよ。そういうことに対して、どういうふうにお答えいただけるんですか。

井出政府参考人 先ほど委員から、私どもが配布しておりますパンフレットの冒頭に書いてございます、我が国、特に土地利用型農業における高齢化の進行とか、そういった点について触れていただきましたが、そこにもございますように、既に六十五歳以上の方が圧倒的多数を占めておられて、この先十年以内に、我が国の土地利用型農業に従事する人口は激減するということは必至でございます。

 また、既に、全国の水田集落八万余と言われておりますが、そのうち半数余り、四万余についてはいわゆる主業農家がおりません。西日本の方では、本当に、まさに片手間にやっていらっしゃる方がどんどん高齢化をいたしまして、それこそ、ただで貸すと言っても借り手がいないというような状況が現出しつつあります。

 そういった中で、この我が国の米を中心とする大切な土地利用型農業の生産構造をどうにかして立て直し、強靱な構造に構築していかなければならないという点で、余り時間的余裕が私たちはないと考えております。そのため、今回は、個別農家の認定農業者だけでなくて集落営農組織という形で、西日本や北陸地方を中心に、先進的、先駆的な地域では取り組まれている例が多数ございますので、そういった中に集落の皆さん方が役割分担をして入られて、土地利用型農業をしっかりやっていっていただく、そういう方々、そういう地域も当然担い手であるということで、この対策を構想いたしております。

 そういった現状認識のもとに、担い手農家として個別経営農家のほかに集落営農組織というものも認め、また、その育成について、先ほどこれも委員から御指摘のありましたように、来年度予算でもかなりな予算を割いてそれを推進しようといたしているところでございます。

小平委員 局長、これは私、正確には通告していなかったので、これでやめますけれども、先ほど質問でお聞きしたように、この集落営農にはそれなりの予算措置が講じられている、確かにそこはわかります。だから言っているんでしょうけれども、しかし、やはり現場の率直な受けとめ方は、ちょっと冷た過ぎると。いわゆるばっさりという感じなんですよね。これから、この新しい農政大転換へスムーズに入っていくためには、いわゆる切って捨てられるところにどういう光が当たるのか、そこのところをしっかり、これからも考えていかれることをこの機会に要望しておきます。

 次に、いわゆるゲタ、ナラシの方に移ります。過去の実績ということに触れて、生産条件格差是正対策、そこなんですが、質問いたします。

 今回の対策は、品目横断というと聞こえはいいが、実際には、麦、大豆、てん菜、バレイショ、現行政策で措置されている金額をこれらの作物に限って新たに名目を変えて張りつける、そういう方向ですね。そしてまた、これまでの水田作においては、これらの作物は、生産調整に伴う転作作物として、地域特性に見合った作物等に今までは扱われてきた、そういう経緯があります。その経緯の中で、限られた少数の品目における過去の作付実績に対応する、そういうことであれば、十九年から導入される新たな需給調整システムのもと、生産調整離脱者の増加によって、生産調整参加者の転作率も増加をするのではないか、そういうことが容易に想像できるんですが、どうでしょうか。また、そのときに、新たな転作物としてこの品目横断の対象作物が選択をされる可能性は極めて低くならざるを得ない、そのように考えますが、そこはいかがですか。

 また、過去の生産実績における基準期間の設定も、その設定が固定されるのか否かもまだ明確には定まっていないんでしょう。これでは、農家の今後の営農計画がきちんと立てられません。そういうことを含めてきちんと明確にする必要があると思うんですが、この点についてはいかがですか。

井出政府参考人 お尋ねの件でございますが、もちろん、今度の新しい品目横断的な直接支払いの制度につきましては、眼目は、大宗は緑の政策にするということでございますから、緑の政策にするためには、基準となる期間における過去の生産実績に基づいて支払う、これが緑でございます。ですから、過去の一定期間を定めまして、そのときに麦とか大豆とかビートをつくっておられた実績に応じて支払われる、これが緑でございます。

 あわせまして、収量や品質の向上を目指す生産者にも一定の配慮をするということで、黄色の部分を組み合わせる、この二つの組み合わせをするということがいわゆる日本型でございます。

 その基準期間につきましても、十八年度を対象の期間にするかどうかというふうな点について現在検討をいたしておりますが、これは技術的に、大豆のいわゆる従来の交付金の支払い時期と、それと今回の品目横断的な直接支払いの交付金の支払い時期、それをどういうふうに考えるかによりまして、生産実績をとるための技術的な問題もございますので、そういうことも含めて、今検討を急いでおります。

小平委員 いや、要するに自信がないんでしょう。

 私は、過去の生産実績に基づく支払い、これに、今言われたように、黄色の部分ですか、毎年の生産量、品質に基づく支払い。だから、その比率もこれからのWTOの交渉いかんでは変わってくるわけでしょう。どのくらいを過去の実績にするのか。ですから、いわゆるAMSのこともWTO交渉いかんですよね。そこもまだあいまいなんですよ。これじゃ、農家はたまったものじゃない。

 また、逆に、過去の生産実績、過去のある時点の経営面積でそれをしっかり固定してしまう。これはある意味では見通しが定まるかもしれぬけれども、そうすると、今度は、農業の経営規模拡大というそっちの面に、過去の実績は入りませんから支障が出てくる、そういう問題点が、矛盾する両方がぶつかり合っているんじゃないか、このように思うんですが、そこのところは、答えられますか、いかがですか。

中川国務大臣 細かいというか、具体的なところは、今、井出局長から補足があるかもしれませんけれども、なぜ日本型で緑と黄色にしたか。これはもう言うまでもないことかもしれませんが、黄色は、生産刺激的であるとかそういうことで、WTO上、現在も……(小平委員「それはわかっているんです」と呼ぶ)したがって、過去の生産刺激じゃないものが緑として置かれていますけれども、あえて黄色の部分で、今局長からも話がありましたが、収量だとか品質向上だとか、この基本法、基本計画に基づいて、さらに、認定農家、あるいはやる気のある人たち、あるいはやる気のある集落が、より主要な食料のプロの生産の経営体として頑張ってもらうためのインセンティブにする、これはまさしく黄色なんですよ。

 しかし、その黄色の政策を導入してでも、日本の国際競争力の面もあります、小規模で、そしてまた、ある意味では、いわゆる農業の占める収入あるいは投入労働時間が少ないところと、これを例として出すとほかの地域に怒られるかもしれませんけれども、小平委員や私のところのように、もう農業でしかやっていけない地域とは、施策がおのずから違うでしょう。じゃ、ほかのところは切り捨てかというと、ほかのところにはほかのメニューとして、やる気や能力のあるところには、ほかの農業、例えば熊本県の農業、あるいはまた果樹や何かで一生懸命やっている農業に対して、あるいは沖縄、鹿児島のサトウキビ、カンショの農業に対しても、これは大事な農業なんですから、それに対しても新政策として対象にしましょうということで、そういう意味で、黄色の政策をあえてミックスしてこの新政策を導入しているというのが趣旨であります。

小平委員 大臣がかわって答えられましたが、そのことに関して、ナラシのことにちょっとつながってくるので、また後でこれについて私は重ねてお聞きしますので、ちょっと先に進みます。今はゲタの方でしたね。ナラシの方です。

 いわゆる担経、担い手経営安定対策、稲作所得、稲得、こういうものをやめて新しい方向に移行する。これは、基本は、担経、稲得、これをやめるということですね。

 しかし、この稲得、担経について、制度がスタートしてから、私は、この委員会で前も言いましたよね、全然機能していないと。もう、単純に、政府、全中というか農業団体のミスリードによって、ただ被害を受けているのは生産者ですよ。それは指摘しましたよね。基準年度の変更を含めて、多少の手直しはあった。少しはよくなった。でも、基本的に、ああなったということは、この制度がやはりおかしかったからですよね。その総括なしに新しい方向にスライドする、そういうことはどうかなと思います。

 やはり私は、これはセーフティーネットになるのかどうか、そういうことであるならば、この制度設計においても、生産可能な価格と収入を考慮する、それをしっかりまず前提にしていくことが肝要だと思います。

 そんなことであったんですが、市場原理一辺倒という状況がありまして、平成十五年の不作の年を除いては米価の低落傾向は続きまして、頼みの収入・所得変動緩和策であるこの稲得、担経は、物の見事に生産者の期待に反して機能不全になってしまったわけですね。私は、今回のこの対策は、農家の経営を安定させるというものではなく、専ら価格暴落時にしかも拠出金の範囲内で限定的に作用する、そういう対策ではないか、そこまで言ってしまうのはどうかと思うんだけれども、そんなふうに感じます。

 まさしくこういう状況では、生産者の皆さんは、将来に向かって暗たんたる気持ちというか、営農に対しての希望を持てないのが今の状況だと思うんです。しかも、今回も、あれを見ると、いわゆる五中三、五年のうちの三年、そういう基準設定など、この機能不全状態の現行対策を放置して、そして農家の体力減少、これを看過して反省、いわゆる総括はどこにもないんですね。

 私は何もモラルハザードを起こすと言っているんじゃないんですよ。せめて再生産が可能な収入変動緩和対策でなければ、またそういう前提に立った制度設計でなければ、農家の理解は得られないし、農水省が描くこれからの担い手の確保も絵にかいたもちになってしまうんじゃないか、こんなふうに危惧いたしております。

 そういう状況を見て、どのような対策をこれから講じていくのか、この状況の中では、私は限界があると思うのだけれども、何か意見なり、反論でも結構です、どうぞ。

井出政府参考人 まず最初に、先ほどのゲタについてのお尋ねでまだ答弁していないところがありますので、お伝えしておきます。

 基準期間については、緑にするためには過去の一定期間で固定しなければならないということが一つはございます。それから、規模拡大の場合でございますが、これは、拡大農家がいれば一方で縮小農家があるわけでございますので、その縮小農家の生産実績を拡大農家につけかえる、実績を移動するというようなことが必要ではないかと現在検討いたしているところでございます。

 続きまして、ナラシでございますが、従来の稲得と担経、二階建てになっておりました。今回の品目横断対策の担い手対策としましては、このナラシ対策は一本化をいたしまして、米に加えて麦、大豆等を対象作物とするとともに、従来、稲得と担経を合わせますと、生産者と国の拠出比率が約一対二でございましたけれども、これを根っこから、国の負担割合を引き上げまして一対三とするという改善を図っております。

 それから、最後にお尋ねのありました件ですが、やはり米の価格は、現在まさに市場で決まっております。その市場で価格を立て直すためには、やはり需給調整をしっかりするということが基本であろうと思います。このナラシ対策で一定の所得の方を補償するということになりますと、従来、米政策改革で進めておりました、消費者ニーズに合った米を生産していく、そういった米がたくさんつくられるように誘導していく、そういうことと逆行することになりますし、需要のない米が生産されて米全体の価格がかえって暴落するというふうなことを引き起こす可能性もございますので、こちらの制度で一定の所得を補償するということは、そういった米政策の進め方と相反するものでとり得ないと考えております。

小平委員 時間がないので、これはまだ聞きたいんだけれどもこのくらいにしておきます。またどうせ、この法案についてこれから十分審議がありますよね。

 大臣、先ほど御答弁になった。それがいわゆる日本型直接支払いだ、こういうお話なんですよね。でも、ゲタのところでは毎年の生産量、品質に基づく支払い、それとナラシで言う九割補てん、これはWTOで言ういわゆる黄色の世界でしょう。これがあるので、日本型直接支払い、そういう表現を政府は言っていますね。でも、一方、欧米ではこういうことをやっていないんですよね、直接所得補償のスタイルは。

 だから、日本の農業の実情に沿ったことで進めたといえばそれまでだけれども、でも非常にわかりづらいし、それから、この黄色の部分は、これからのWTOの交渉いかん、進展ぐあいでは、この中身がまた変わってくる、そう思いますので、私は、農家が安定、安心して先行きが読めないということを言っているんですよ。その点、ヨーロッパ、アメリカはもっと明快に、わかりやすい形の所得補償になっている。これからの施策として、それを参考にしながら進めてもらいたいと思います。

 もう一つ聞きたいものですから、次に進みます。いずれこれは、また改めて。

 次に、集荷円滑化対策、これについて質問いたします。

 御案内のように、この制度は、稲得、担経に合わせて、十六年にスタートしてやっていますよね。生産者の拠出は、反当千五百円でこの制度が始まりましたね。ちなみに、この制度の趣旨は、豊作時に余剰米があると米価が低迷するから区分出荷をして別にやってしまおう、そういうことでスタートした制度ですね。

 ところで、ちょっとお聞きします。

 まず、十六年、十七年、この両年度で生産者から集めた、拠出を受けた金額は、総額幾らですか。それから、この二年間で政府が集荷円滑化機構に予算づけをして出したお金は幾らですか。まずそれを答えてください。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 生産者拠出金の分でございますけれども、平成十六年度、百六十億円余でございます。それから、平成十七年度につきましても、同額の百六十億円余でございます。それから、国からの無利子貸し付けでございますけれども、平成十六年度、平成十七年度、ともに七十五億円でございます。

小平委員 そうすると、政府からは二年間で百五十億円。それで、政府が用意した百五十億円、これは二年間でどのくらい使いましたか。

岡島政府参考人 まず、平成十六年度につきましては、平成十六年産が作況九八ということで、本対策は発動されておりません。したがいまして、生産者拠出金あるいは国からの無利子貸し付けは、全く基金にそのまま積まれたという状況でございます。

 それから、十七年産については、御案内のとおり、現在発動しておりまして、見込みとしては、生産者拠出金、国からの無利子貸付金、合わせまして、トータルで約四十億円というふうに見込まれているところでございます。

 あくまでも、これは本年三月までに申請があったものに交付するので、現時点におきましては見込みということになっております。

小平委員 局長、それにさらに、昨年度は豊作でしたから七十五億円とは別に、例の過剰米の短期融資それから集荷奨励事業補助金、この二つが出ていますよね。両方とも十四億八千万ぐらいずつ出ていますね。これは機構や農協に支払う分ですね。これは別途ですね。それで実際に使った。

 こういう状況で、これは政府も委員の皆さんも御承知おきいただきたいんですけれども、政府は二年間で百五十億円を出したうちで約四十億円を使った。ですから、百十億円が剰余金、平たく言うと繰越金です。機構に残っていますね。

 問題は、生産者が拠出した分ですね。今お話しのように、百六十億円が十六年ですね。それは使えなかった。昨年は百六十億円も集めたわけでしょう、十七年度は。そうですね。そのうち、例の豊作分については、一俵当たり六千円ですよね。それで生産者の拠出分が三千円でしょう。そうすると、昨年は約八万トンが豊作分だったんですね。生産者の拠出分からそれに充当したお金はどのくらいですか。

岡島政府参考人 先ほどお答え申し上げました、十七年産、約四十億円の見込みでございますけれども、そのうちの半分が生産者拠出金、半分が国からの無利子貸し付けというような構成でございます。

小平委員 いや、局長、そうじゃないでしょう。四十億円が拠出で、両方合わせて八十億円でしょう。違うの。私が聞いているのは、六千円のうち、生産者の拠出分ですよ。それが四十億円で、政府はまた別でしょう。今のお話ですと、両者合わせて、だったら二十億円、二十億円なの、六千円の中身は。違うでしょう、それは。ちゃんと答えてよ。

岡島政府参考人 今小平委員御指摘の六千円、一俵当たり六千円でございますけれども、そのうちの三千円部分が融資という形で、社団法人米穀安定供給確保支援機構、それが、その三千円の融資の部分は二分の一ずつということでございますから、千五百円。その部分だけで四十億円でございます。

 それと別に、翌年度、生産者支援金という形で、一俵当たり三千円。その部分が四十億円です。これは、すべて全額生産者からの拠出になっております。

小平委員 では、局長、生産者からは、拠出分、百六十億円出しましたよね、反当千五百円で。それで、この八万トンの余剰米に使ったお金は四十億円でいいんですね、生産者から出した分は。

岡島政府参考人 くどいようですけれども、十七年度末までには一俵当たり三千円部分が出ます。その部分が四十億円でございます。その四十億円の構成は、半分が国からの無利子貸し付け、半分が生産者拠出金でございますから、そういう意味では二十億円でございます。

 ただし、十八年になって、生産者支援金として、さらに一俵当たり三千円が出ます。その部分は、トータルとして同額の四十億円、それは生産者からの拠出になる、そういう計算でございます。

小平委員 いや、私が明快に聞いているのは、生産者は幾ら出したかと聞いているんですよ。拠出した分の中で、この一俵当たり六千円の余剰米の、これに該当する分で、生産者拠出金から割り当てたお金は幾らですかと聞いているんです。

 要するに、昨年産米の八万トンの余剰米についての生産者の拠出分、それを聞いているんです。

稲葉委員長 岡島総合食料局長、端的にお答えください。

岡島政府参考人 申しわけございません。

 これまで、百六十億円、百六十億円、三百二十億円出していただいているわけですが、そのうちの二十億円が生産者拠出金として融資の原資となっておるということでございます。

小平委員 そうすると、二十億円しか使っていないんですか。二十億円しか。(岡島政府参考人「今の時点では」と呼ぶ)いや、今の時点ではそうだけれども、この制度の趣旨は、年度が十八年に入っても、さらに二十億円出して、四十億円いくんでしょう。

岡島政府参考人 十七年度末に出されたお金の中では二十億円。それから、十八年産に、また出していただくところから四十億円出る、そういう設計でございます。

小平委員 そのことを聞いているんですよ。だから、四十億円だ、一俵当たり六千円で。政府が七十五億円用意した分は、三千円のものは四十億円。生産者は二十億円。

 私から説明しましょう。

 この国の農地面積は、大体四百万ヘクタールですね。そのうち、畑作、それから休耕地含めて、いわゆる水田の水張り面積は約百六十万ヘクタールですね。そのうち、この集荷円滑化に加入しているのは約六八%。ですから、この集荷円滑化の対象面積は百九万ヘクタール。これを単純に、反当千五百円を掛ければ、集荷円滑化事業に加入している生産農家は全部で百六十億円出しているんですよ。

 十六年度は、それが豊作でなかったから使えなかった。昨年は豊作だったので、その豊作の県は使われた。このトータルは八万トン、四十億円。そうすると、年百六十、百六十で、二年間で三百二十億円。四十億円使った。残り二百八十億円だ。これが余っているんですよ。残っているんですよ。これは、生産者から集め過ぎ、反当千五百円も。

 しかも、もう一年、十八年度がありますね、この制度が。しかも、政府は、いわゆる新たな経営安定対策に向かって、担経、稲得は廃止して、新たなナラシの方向に、いわゆる九割補てんに持っていくのですけれども、集荷円滑化はそのままつなげていくんでしょう。

 そうすると、まず、とりあえずこの十八年度、ことしも同じように生産者から反当千五百円集めるんですか。そこをお聞きします。

岡島政府参考人 小平委員からの御指摘でございますけれども、一方で、基金から支出されました短期融資につきましては、回収され再び短期融資に回るためには、金銭弁済の場合には一年程度、米穀機構に現物弁済された場合にはさらに数年を要する。そういうことから、一定の基金残高が必要であるということでございます。

 それからまた、国からの無利子貸付金、百五十億円につきましては、二十二年度までに国に返還する必要があるといったようなこと、そういったことから、十八年度だけではなくて、十九年度以降も継続的に集荷円滑化対策を円滑に運用していくためには、一定規模が必要ではないかというふうに考えております。

 一方で、四百三十億円の基金残高のもとで、当面の集荷円滑化の円滑な運営は可能と判断されるということから、十八年度の生産者拠出金につきましては、これ以上基金に繰り入れないこととし、その使途につきまして、基金の適切な運営を確保しつつ、生産者にとって過大な負担とならないよう、生産者団体と十分協議してまいりたいと考えております。

小平委員 局長、あなた、予算委員会の大臣と違うんだから、はぐらかさぬで、私の単純な質問は、この集荷円滑化対策事業で、この十八年度もいわゆる生産者から反当千五百円のお金を徴収するんですか、拠出をさせるんですかと聞いているんですよ。それだけなんです。ほかのことは要らないから、それだけ答えて。

岡島政府参考人 十八年度の生産者拠出金につきましては、これ以上基金に繰り入れないことといたしまして、その使途につきましては、基金の適切な運営を確保しつつ、生産者にとって過大な負担とならないよう、生産者団体と十分協議してまいりたいということでございます。

稲葉委員長 小平議員の質問に的確に答えてください。

小平委員 答えてください。

 集めるんですか。拠出金、千五百円分集めるんですかと聞いているんです。

岡島政府参考人 基本的には集めるという方向で、生産者団体と協議してまいりたいと考えております。

小平委員 いや、それを最初に言ってくれればいいんですよ。時間がなくなっちゃう。

 集めるんでしょう。そうすると、加入率は大体六八%、変わらないようですから、十八年度も百六十億円集めるわけですね。そうすると、今残っている、集めて使われていないお金が二百八十億円、さらにことし百六十億円集めると四百四十億円というお金が、これは生産者から拠出を受けて機構がため込んでいる金なんですよ。これは剰余金で、世間一般的に言うと繰越金ですよ。どんな組織も団体も、次年度のために多少の繰越金というのは残しますよ。いわゆるこれは世間の一般常識ですよ。でも、余りにも多過ぎないですか、これを集めたら、残っているのが。そんなに持っている必要がありますかね。しかも、一方では、生産者は厳しい営農をしている。

 だったら、それを無事戻しという表現がどうかは別にして、戻す方向を考えるか、あるいは十八年度は拠出金の徴収をやめるか、そういうことの柔軟な転換ができてもいいんじゃないですか。政府は、自分たちは懐が痛まないから、集めるのは集めよう、それは決めたんだからと。これでは全然おかしな農政じゃないですか。そのことをお聞きしたいんです。時間が来たんですけれども、答えてください。

岡島政府参考人 繰り返しになりますけれども、一方で、これからの毎年の作況等もあり、やはり一定規模の基金は必要だということがございます。

 そういった中で、関係者と十分協議してまいりたいというふうに考えております。

小平委員 時間が来たので終わりますが、私が政府の皆さんにも御理解いただきたいことは、集め過ぎだということ、それはきちんと柔軟に対応しろということ、このことを強く指摘をして、時間が来ましたので、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民主党の荒井聰でございます。

 私は、数十年前、大臣の父君の中川一郎先生の薫陶を受けました。こういう形で議論をさせてもらうというのは、大変光栄であると同時に、何か面映ゆい感じがしてございます。きょうは一般質疑でございますので、二つの観点からちょっと議論をさせていただきたいと思います。

 小泉さんも、小泉改革がかれこれ五年になろうとしており、また、さきの選挙で小泉流の改革が是認されたとして、この改革を強めていく、そういう後継者を充てたいという考え方なんだろうというふうに思います。

 そういうことでいくと、小泉改革と農業政策というのは一体どういう関係になってくるのかという点と、それからもう一つ、私もかつて農業政策をやっていた者から見て、農林行政というのは比較的省内でワンパッケージになっているというか、省内でほとんどのものが処理できるという特色をかつて備えていたんですけれども、このごろいろいろな関係で省内だけではおさまりつかない、各省庁と多くの連携をとらなければできないような行政分野が非常にふえてきております。そういう分野というのは、私は、比較的農林省は不得手なんではないかというふうに思いますけれども、そういう点で、幾つかの課題について大臣と御議論をしたいなというふうに思います。

 まず第一番目なんですけれども、小泉改革との関係なんですけれども、小泉さんの志向している改革、これは竹中平蔵さんの改革路線なんでしょうけれども、すべてのものを市場で解決させていく、市場で勝ったものが正しいというところまで言うと極論かもしれませんけれども、そういう考え方で小さな政府にしていく、規制を外していく、あるいは証券市場で勝ち負けを決めていくという改革が特色なんだろうというふうに思います。

 そういう改革と農業政策、農業政策というのは、どちらかというと、農業協同組合でありますとか、あるいは、余り競争性のない人々がお互いに協力をしながら農業の政策を進めていくということを私は基本にしているように思います。そういうものと非常に相反するのではないか。

 例えば、極端ですけれども、林業などの面では、民間の林業者もたくさんいますけれども、しかし、市場性ということで、それが証券市場なり市場の世界の中で競争して勝たなければ残らないよというような政策が中心であるならば、民間の林業者なんか残らない。

 農協の問題などでも、私は、農業協同組合というのはまだまだ改革は必要だと思います。改革の点はたくさんあるんだろうと思うのですけれども、しかし、市場が全部決めていくみたいな考え方でいくと、農民は要らなくて、株式会社になればいいというようなところまで突き進んでいく可能性すら私はあるんじゃないかというふうに思うんです。

 そういう意味で、小泉改革が進めようとしている改革と、今までの農業政策、あるいはこれから推し進めようとする農業政策について、大臣はどのような所見をお持ちなのか、それをお伺いさせていただきたいと思います。

中川国務大臣 荒井委員は私が二十三年前に初めて当選したときの農業の先生でございますので、何か先生から試験を受けているような感じで、大変緊張しますけれども。

 まず、今我々がやろうとしている、きょうの議題の大きな二つ、一つはWTOの問題、それからもう一つは新しい政策をどういうふうにしていくかという問題。特に後者の問題につきましては、午前中の質問にもありましたように、ちょうど平成十一年に私が農林省にいて、農林水産委員会で、たしか衆議院だけでも数十時間議論をしていただいて成立をしたあの基本法、そして基本計画、その見直しという一つの大きな流れの中の今回の、先ほどの小平委員とのやりとりもその流れの中での問題でありますから、今回の政策が、小泉さんが五年前になって、それによって新たにこういう政策が出てきたものではないということは荒井委員も御承知のとおりだろうというふうに思います。

 そういう中で、小泉総理は、農業であろうと中小企業であろうと何であろうと、とにかく民間でできるところは民間で、地方でできるところは地方でという大原則があることも御承知のとおりだろうと思います。

 他方、農業の特殊性というのは、言うまでもなく、自然あるいは土、水、空気、こういうものを大前提として、しかも、IT関連の仕事であれば一瞬にして地球上を回る、あるいは製造業でも、自動車を一台つくるのに数週間でできてしまう。他方、農業は基本的には一年一作、林業については何十年という単位でありますから、まず時間が全く違うという特殊性があるわけであります。この辺は小泉総理とも話したことがありますけれども、当然御存じのことでございます。

 それからもう一つは、よく言われるように、稚内から石垣島まで、どんどんいいものを広げていきましょう。特区がその一つの典型例でありますけれども、そういう中で、農業に関しての特区も随分とふえて、成功例もあるわけでございます。輸出についても大変熱心である。あるいは、生物系のバイオ、あるいはまた廃棄物を利用したもの、去年の愛・地球博では、場内で出たごみで全部エネルギー、電化をしていく、外から一切エネルギーを使っていないということに大変な興味を示し、また世界じゅうからも注目されたところでございます。

 そういう意味で、農業に関して、どんどん強い、ある意味では外国とも伍していける、あるいは、いいものは世界じゅうに売っていこうという政策に対しては大変に、むしろ私のしりをたたくような状態にあります。

 問題は、困っているところをどうするかということになるわけでありまして、日本経済も大分よくなってまいりましたけれども、一部の地域、私や荒井委員の北海道等々の地域はまだまだ景気の回復が非常におくれております。ほかの地域でもそういうところがまだございます。そういうところに対して、我々が、まさに農政の面から、あるいはまた中小企業政策の面から、あるいは地方自治との連携の面からやっていかなければいけない。

 それについては、切り捨てではなくて、その地方地方の特性を最大限生かしたいろいろな処方せんを我々が一生懸命後押しをしていくということで、当初は、地方切り捨てではないかとか、農業切り捨てではないかとかいうふうに一部で言われておりましたけれども、むしろ地方の活性化、あるいはまた、強い農業、強い林業、水産業は世界と伍しても十分勝っていけるんだということを折に触れて言っているところでございまして、そういう理念を我々は具体化して、施策を実行していきたい。

 そして、それはオーダーメードで北海道の施策、九州、沖縄の施策というものを、その地域のスペシャルオーダーとして自治体や地方の関係者とよく連携をとりながら、そういう施策を進めていきたいというふうに考えております。

荒井委員 今の大臣の御見解を聞いて少し心強くなったんですけれどもね。

 今、地方は、小泉改革ということで随分疲弊をしているというか、あるいは被害者意識が強くなっているというか、そういう感覚が非常に強くなっているんではないかというふうに思うんですね。地方の主産業は農業ですから、あるいは農林水産業ですから、農林水産業をどのようにてこにして地域の景気を回復していくのか、あるいは活力をもたらしていくのかという観点が小泉改革にもっともっとなければならない。

 特に、今まで国際的にも、農林政策の中で、国際的な競争力だとか市場性だとか、そういう議論になるときに、我が国は、農業の持っている多面的な意味合いですとか役割ですとか、あるいは国土保全的な役割というものを強調して、単に経済性だけの問題ではないんだということをずっと主張し続けてきたわけですから、その路線というのは、私は、日本の農政の骨太の路線としてしっかり守っていき、またその形で地域を振興していただきたいというふうに思っています。

 ところで、小泉改革の二番目に大きな柱といいましょうか、それは三位一体改革に象徴される地方分権という名のもとに、中央の借金体質を地方に押しつけているというように私はとらえているんですけれども、この三位一体改革によって、地方財政が非常に疲弊をしてきています。農業行政というのは、地方の自治体を手段として、そこに協力を仰ぎながらさまざまな行政を行っているというのはもう御存じのとおりだと思うんですけれども、そこの地方自治体そのものが大変疲弊をしてきた。

 特に私の北海道庁なんて、来年度の予算を組めるのか、あるいは財政破綻状態になっているんではないかといったようなことが毎日のように新聞に出ているわけですけれども、そういう状況の中では、北海道庁が主体的に農業政策を推進していくということはできなくなります。

 こういう地域があちこちにあらわれているんではないかというふうに私は思うんですけれども、これらに対する現状の認識と、そして、それらに対する対策というものについて御見解をお持ちでしたら、ぜひお聞かせください。

中川国務大臣 確かに日本経済、大分よくなってきて、名目成長率も直近では非常によくなってきている。デフレからの脱却もかなり近くなってきているという個人的な予測も持っております。

 他方、地方は非常にまだまだ、北海道を初め東北の一部、あるいは高知、長崎、鹿児島といった地域はまだ非常に経済全体が厳しい。特に去年の場合には、石油の値段の影響というものも、これは農業だけじゃございません、水産業も影響が大きかったですし、それ以外の、クリーニング屋さんとか運送関係とか非常に大きかったわけでありまして、それがもろにその地域の産業、地方の産業に影響してきているわけであります。

 いずれにしても、農業を中心にした地方というのは、今、私も申し上げ、荒井委員もおっしゃったように、時間のサイクルというものが違うわけでありますので、そういう中で、ほかの経済との時間的な跛行性というものがあるわけでありますけれども、先ほども申し上げましたように、北海道と東京近郊と、あるいはまた静岡の農業と九州、沖縄の農業と違うわけでありますから、確かに工業のように、いきなりお隣の国が経済がよくなるとどんと売り上げが伸びるとか、その結果、設備投資もどんとふえるとかいった状況とは違う経済体質、あるいはまた経済外要素が非常に大きいわけでございまして、その辺は私も基本として認識をしているところであります。

 他方、全部が全部悪いかというと、それも一概には言えない。元気に農業をやっている地域もあります。手前みそで大変申しわけありませんけれども、私の地元北海道十勝なんというのは、畑作、酪農を中心に、ある意味では非常に元気にやっているわけであります。しかし、私の地元がいいといっても、全部の農家が一様にいいかというと、必ずしもそうではないということでございます。いい例と、それから悪い場合にはどういう対策をしていったらいいのか、それがまさに農業協同組合の一つの大きな仕事でもあると思いますので、その辺を、全国津々浦々、それぞれの地域の状況あるいはまた一戸一戸の農家の状況も踏まえまして、きめ細かくやっていく。

 これがまさに、地方の情報を知りながら、霞が関で、あるいは永田町で我々がこうすべきだということではなくて、こういう問題をどういうふうにしたらいいのか、それについて国はどういうお手伝いをしたらいいのかということが非常に大事なことであるということで、また引き続き注意深く見守っていきたいし、いい事例と、また困っている地域、困っている事例とをよく両方を見ながら、荒井委員にもいろいろとまた教えていただきたいというふうに思います。

荒井委員 私は、今、地方自治体の財政問題との関係を質問したんですけれども、そこについては余りお答えがなかったんですけれども、また次回に譲りましょう。

 ところで、行政改革の対象として、北海道がさまざまな形で紙上に上がってございます。特に北海道の公共事業のかなりの部分を担当している北海道開発局の行政改革が大変大きなやり玉に上がっているというか、そういう状況にあります。

 私は、地方自治体の財政が非常に困窮していますから、北海道のインフラ整備をするのには、開発局というものの役割というのは現時点ではかなり大きなものがあるんじゃないかと思っているんですけれども、このあたりにつきまして、北海道選出の大臣として、北海道開発局の役割とか、あるいは、このあたりの小泉改革が進めようとしている行財政改革そのものについてどのようにお考えなのか、お聞かせいただけますか。

中川国務大臣 先ほどのことから申し上げますと、地方自治体は、おおむね多くの自治体が財政的に困っていることは承知しております。

 他方、地方分権あるいは三位一体で、むしろ地方からこういう権限を下さいということで、随分、去年、おととし、要望が地方六団体からあって、前にいた経済産業省なんかでも、基本的にもう全部上げたらどうですか、ただし、権限と同時に財源そして責任もちゃんと持ってくださいよということを私は常に言っていたわけでございます。

 農林省は、前に私がいた役所とは必ずしも同じ理屈が通るとは思いませんけれども、地方分権を進めてくれというのは地方の基本的な考え方だと思います。ただし、そのときに、もちろん財源あるいは補助金も税源も含めてセットでお渡しをしますということでありますし、権限も義務もお仕事もちゃんとやってくださいというその三点セットでぜひ地方の御要望に最大限沿っていきたいというふうに考えております。

 それとは別に、北海道の場合には、北海道開発局が果たしてきた役割というのは非常に大きいということは、私も、自分の父親が、役所ができて以来、あそこの役所で仕事をしていた者の息子として、非常に個人的にも愛着があるところであります。北海道開発局の果たしてきた役割は非常に大きい。

 そういう中で、地方ができることについては地方でという基本的な考え、あるいは、逆に言うと、国の行政をできるだけスリムにしようというのも小泉内閣の流れであります。今、北海道出身の我々がいろいろ議論をしておりますが、道も含めて、一体何をどういうふうにしていったらいいのかというのが少しずつ出てきつつありますけれども、まだまだ今の段階では、私は内閣の一員でありますし、地方の声といっても、道だけではなくて、今二百ちょっとある市町村、それぞれまたいろいろお考えがあるんだろうと思います。

 私の地元を初めきめ細かくできるだけ聞いて、また、これは与党、野党を通じて、北海道あるいはまた関係、関心のある議員の皆さん方の御議論を聞きながら、私は、現時点においては内閣の一員として、この問題を、北海道のために何が一番いいのかということを考えていきたいと思います。

 いずれにしても、この問題は農業だけをねらい撃ちにしたものではないということだけは確信しながら、この問題を考えていきたいというふうに考えております。

荒井委員 開発局の問題というのは、今北海道庁が財政再建団体になるおそれが非常に高いというところで、北海道開発局の職員を引き受けるとか、あるいはその実施をしていくというのは、私は、非現実的なんだろう、非常に難しいんだろう、そういうことを提起しているというのは、むしろねらいは別なところにあるんではないかというふうにさえ思っております。

 いずれにしろ、この開発局問題というのは、行政改革の問題、あるいは北海道の振興という問題と密接に絡んでいますので、ぜひ丁寧な議論を閣内でも行っていただきますように要望をいたします。

 さて、行政改革ということでは、もう一つ、農林省にも大変厳しい。農林省の食糧、統計についても、今までもかなり計画的に人員の削減なり行政改革というのは、私は、比較的農林省という役所はまじめにやる役所だというふうに思いますし、そういうふうにまじめにやってきたんではないかと思うんですけれども、ここへ来て突然、さらに名指しで食糧、統計といったような議論が出てまいりました。

 これらについては、これから農林省がどういうふうに受けとめて、どういう対策をするのかというのは注意深く見守っていきたいというふうに思うんですけれども、一方、農林省の行政というのはかなりいろいろなところで行政需要が発生しているんではないか。

 例えば、動物検疫施設ですとか植物検疫施設、あるいは食品の安全について、今回、BSEの問題も、山田議員がアメリカにまで行っていろいろ調査をしてこられたんでしょうけれども、食品の安全の問題について、それを提供するような外国の食品について、外国まで行ってしっかりと審査をしてくるというような制度を農林省が中心になってつくっていってもいいんじゃないんだろうか。そこまでしっかり厚生労働省と調整をしながら、定員が多いんだから削減するということではなくて、そういう行政需要のあるところにどんどん積極的に転化していくということが私は必要なんではないかというふうに思います。

 これらについて、大臣、御所見がございましたら、お願いします。

中川国務大臣 ここ数日のニュースの中で、人員削減について、農水省を含む四つほどの省庁が何か随分報道されております。

 私が事務方に指示をしている二つの機関と一つの独立行政法人については、もちろん職員の生活あるいは雇用というものが大前提でありますけれども、しかし、学生時代にちょっとかじったパーキンソンの法則も、逆がどの程度できるのだろうかと。つまり、公務員の数がふえただけ仕事がふえる。逆に言うと、スリム化してもどれだけ行政サービスのレベルが落ちないで済むのかということに大いに積極的に対応すべきだというのが私の基本的な考えです。

 ただしという条件がつきまして、今御指摘のような検疫とか、あるいは入国管理、ほかの役所の話ですけれども、食品の安全とか、そういったところは、先ほどの米国産牛肉再開のときにも、仕事量を当然ふやしたわけでありますから、大変な負担を現場にかけているんだろうと思います。

 動物検疫については、幸い来年度も、数人ベースですけれども、ふやしていただく、二百五十六人になる、七、八人たしかふやしていただくという予算案になっておりますけれども、本当にぎりぎり、食の安全とか、あるいは人間や動植物の健康というか衛生状態とかそういったものについては、これからますます大事な仕事になってまいりますので、そこについては必要な人員をきちっと投入するということが大事だろうというふうに考えております。

荒井委員 動物、植物の検疫施設関係というのはこれからますます重要になると思うんですよね。世界で最大の食料輸入国がこういう防疫体制で本当にいいのかという気持ちを持っておりますので、数人ということじゃなくて数百人、農林省の中にそれの定員があるわけですから、そういう体制、人材の育成ということもそれに絡んでくるんだと思うんですけれども、そういうことをぜひ御検討いただけますようにお願いします。

 さて、小泉改革との関連性ということはこれで終えますけれども、この後に、幾つか、個別の事案なんですけれども、お話をさせていただきます。BSEの話は、これは山田議員がずっとやっていますので、私は、それではなくて、鳥インフルエンザの話を少しさせていただきます。

 現在ヨーロッパでは、鳥インフルエンザに対して、非常な警戒心といいますか、注意、アラームを発しているような感じがしますけれども、我が国では少しそのあたりが弱いんではないかなという気がいたします。

 今、欧州やあるいはアジアにおけるこの鳥インフルエンザの発生状況、そして、それが人間にうつっていっている状況、さらに、これは厚生労働省の方がいいんでしょうか、鳥インフルエンザが変異をして、かつてのスペイン風邪のような新型インフルエンザになる可能性といったものについての現在の見通しというものをお知らせいただけますでしょうか。

中島政府参考人 ただいまの御質問でございますが、高病原性鳥インフルエンザ、いわゆるH5N1の人への感染の状況につきましては、WHO、世界保健機関の公表によりますと、二〇〇三年十二月以降現在まで、ベトナムを初め七カ国で患者百七十人が発生しておりまして、そのうち九十二人が死亡しているという状況でございます。

 昨年十一月に策定をいたしました新型インフルエンザ対策行動計画におきましては、過去の例を参考にいたしまして、我が国全人口の二五%が新型インフルエンザに罹患するという想定を置いた場合、医療機関を受診する患者数は約一千三百万から二千五百万人、中間値として約一千七百万人としておりますが、推計をしているところでございます。

 また、これまで大流行いたしましたアジア風邪、あるいはスペイン風邪を参考にした場合、その病原性が中等度の場合であれば、これはアジア風邪程度ということでございますが、入院患者数は最大五十三万人、死亡者数は十七万人。重度であれば、これはスペイン風邪のような状況でございますが、入院患者数は最大二百万人、死亡者数は六十四万人と推計をしているという状況でございます。

荒井委員 鳥インフルエンザと人間のインフルエンザとの関係というのは、どういうふうに理解をしたらいいんでしょうか。これは厚生労働省の方かな。

中島政府参考人 鳥インフルエンザと申しておりますのは、いわゆる鳥の間で広がっている型のものでございまして、これがまれに鳥から人に感染する場合があるというものでございます。先ほど申し上げました百七十、あるいは九十二人の死者というのは、そういったケースでございます。これが鳥から人に感染している間に変異を起こしまして、人から人にうつり得るような状況になった場合、これを新型インフルエンザというふうに区別しております。

 以上でございます。

荒井委員 かなり重度の場合には二百万人の患者が入院するだろうと言っていますけれども、この二百万人の医療施設、これはある時期に集中するんだと思うんですけれども、その体制というのは整備をされているのかどうか。

 それから、新型に変わるというのは、どのぐらいの確率で変わるのかという点についてはいかがでしょうか。

中島政府参考人 まず、新型インフルエンザに変わる可能性の方でございますが、これは正直申し上げて、世界各国、大変にその懸念を強く持ってきておりますし、また、昨今の状況を踏まえて、その可能性が高くなってきているというふうに推測をしておるわけでございます。

 では、いつごろ起こるのか、どのぐらいの確率で起こるのかということについては、何とも予測ができないというのが世界の関係者の共通した見解というふうに認識をしております。

 それからまた、この新型インフルエンザが発生をいたしました場合の治療体制の問題でございますが、厚生労働省といたしましては、新型インフルエンザの発生に備えまして、昨年十一月に策定した行動計画に基づきまして準備を進めているところでございます。

 治療体制といたしましては、約二千五百万人分の抗インフルエンザウイルス製薬を国及び都道府県で確保することとしておりますし、また、各都道府県におきましても、行動計画を作成していただき、流行期の入院病床等の医療体制を地域において整備することを迅速に進めていただいているところでございます。

 さらに、発生した新型インフルエンザに対する医療に関する最新の知見等につきまして、国の方からも情報提供を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

荒井委員 鳥インフルエンザの発生状況は、今、農林省はどういうふうにつかんでおられるんでしょうか。また、アジアとか、あるいはヨーロッパでは相当出てきているように、きょうも新聞でフランスの話が出ていましたけれども、そこのあたりとの関係性というのは現状ではどうなんでしょうか。

中川政府参考人 世界におきます高病原性鳥インフルエンザの発生状況というお尋ねでございますけれども、まず、アジアにおきまして、二〇〇四年の年初ぐらいから、ASEAN諸国を初めとして中国、北朝鮮あるいは最近ではインドなどで、野鳥あるいは家禽での発生が報告をされております。

 また、欧州におきましては、昨年末から、東欧諸国それからトルコにおきまして、野鳥や家禽での発生が報告をされておりましたけれども、これに加えまして、今月に入りましてから、ドイツあるいはオーストリアなどで野鳥での感染が報告をされておりますし、さらに、先生も今おっしゃいましたが、二十四日のことでありますけれども、フランスにおきまして七面鳥においての発生が報告をされております。

 さらに、アフリカでも、昨年末からナイジェリアあるいはエジプトなどでの家禽での発生報告がございまして、最初は東南アジアから発生が確認されたものが、その後だんだんと、一方はユーラシア大陸を西の方へと、それからさらには最近ではアフリカまでというふうに、発生が拡大しているというふうに認識をいたしております。

荒井委員 いずれにしても、これは死亡率が物すごく高いですよね。二〇〇三年から百七十人発生して九十二人死んでいるというんですから、死亡率が五〇%以上。先ほどの厚生労働省の方からの御説明ですと、約二千五百万人ぐらい罹患するだろう、そのうち二百万人ぐらいが入院するだろうという事態が想定されているということなわけで、これは、実際に感染症が広がっていくと大変大きな社会問題になりますでしょうし、日本経済にも大きな影響を与えていくんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、農林省も厚生労働省も、この鳥インフルエンザ、そして人感染のインフルエンザ対策について、ぜひ万全を期していただきたいというふうに思います。

 大臣、おられなかったんですけれども何かありますか、この鳥インフルエンザ問題なりあるいは感染症対策について。私は国際的な協調体制を政治の場でつくり上げていかないといけないと思っているんですけれども、何かございましたら。

中川国務大臣 失礼しました。

 鳥インフルエンザにつきましては、たまたま、おとといパリにいるときに、フランスで七面鳥にH5N1型が発生して、とりあえず全面的にストップをしたということに直面しました。フランスの農業大臣からそんなに強い要請は今のところ来ておりませんけれども、フランス、ヨーロッパでも非常に発生をしている。これは、だんだん暖かくなって、どうも南の方から渡り鳥が飛んできて、干し草の上にふんをしたのか、そこにさわったのか、いろいろな説が推測されておりますけれども、ヨーロッパの場合にはきちっとしたシステムができ上がっていると思います。

 私は、モーリシャスの大臣に、ナイジェリア等で高病原性の鳥インフルエンザが発生したということを、日本としては、私自身は非常に強く関心を持っていますと。残念ながら、アフリカの場合には、ほかの感染症あるいは病気、あるいは人間の体力が弱っているといった人たちも大勢おりますので、日本として、あるいはOIE等の機関を通じてできるだけ協力をしたいということを申し入れて、ぜひそれをお願いしたいという話し合いをいたしました。

 既に答弁があったかもしれませんけれども、日本も、近隣の東アジアの国々との協力体制の中で、日本ができる最大限のことをやっていきたい。何といっても、税関を通って入ってくるだけじゃなくて、空から飛んできちゃうわけでございますから、これは幾ら検疫を整備したところで、上から飛んでくるということになりますと、いかに早期発見をするか、そして万全の対策をとるかという別の難しさもあるわけでございますので、その辺は、厚労省あるいはまたいろいろな機関ともよく連絡をとりながら、万全の対策をとっていきたいというふうに考えております。

荒井委員 この鳥インフルエンザ変性のインフルエンザというのは大変大きな影響を与えると思いますので、ぜひ、厚生労働省と一緒になって、農林省の万全な対策を講じていただきますようにお願いいたします。

 さて次に、バイオマスの話をさせてください。

 バイオマスというのは、ブラジルだとかドイツなどでも、かなりクリーンなエネルギーということで、あるいは、京都議定書にのっとって炭酸ガスを削減していくという方向性から、極めて可能性の高いというかクリーンなエネルギーということで、これからも振興していく必要がある。

 しかし、このバイオマスの場合は、エネルギー庁と農林省との間で密接な関係性を持った議論をしているんだろうかということが大変心配なんですけれども、バイオマスの利用に関する研究や開発の現状、それから農林水産省とエネルギー庁との関係は現在どのようになっているのか、お答えいただけますでしょうか。エネ庁の方、来ていますよね。

高原政府参考人 お答え申し上げます。

 バイオマスのエネルギー利用は、現時点ではコストが高いといったような場合もございますけれども、エネルギーの自給率の向上でございますとか、あるいは地球温暖化対策に資する貴重なエネルギーだというふうに考えております。

 バイオマスのエネルギー利用の将来的な導入見通しでございますけれども、京都議定書の目標達成計画におきまして、二〇一〇年度の新エネルギー導入目標、原油換算で千九百十万キロリットルと置いておりまして、その中で、廃棄物発電を含むバイオマス発電として原油換算で五百八十六万キロリットル、あるいは、バイオマス熱利用として原油換算で三百八万キロリットル導入することといたしております。

 なお、今申し上げましたバイオマスの熱利用の目標三百八万キロリットルの中には、バイオエタノールなどの輸送用のバイオ由来燃料五十万キロリットルも含まれております。

 この目標を達成するために、経済産業省といたしましては、財政上の支援でありますとか法律上の導入の義務づけ等々、さまざまな措置を講じておりまして、その推進を図っております。例えば、下水汚泥や食品廃棄物のメタン発酵による燃焼利用でございますとか、地域におけるバイオマス熱利用の技術的、経済的な実施を行う事業を農林水産省とも協力しながら行っております。平成十八年度の政府予算にこのような事業で三十八億円の計上を行っています。

 いずれにいたしましても、バイオマス・ニッポン総合戦略などを通じまして、農林水産省とよく協力をいたしまして、バイオマスのエネルギーの利用拡大を図っていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

荒井委員 農林省にとっては、食料を増産する、食料を生産する、あるいは食料の安全な供給というのが中心の政策であるので、エネルギーという点に関しては、いろいろな可能性があるんですけれども、その点少し軽視しているところがなきにしもあらずかなという気がします。しかし、栽培する作物がないとか、あるいはお米の場合ですと余っているとか、あるいは森林の場合ですと間伐が思うようにいかないといったような点があって、こういうものをエネルギーに利用していくという発想をもっと農林省は持ってもいいと私は思うんです。

 こういう点に関して、農林大臣、御見解がもしおありでしたら。

中川国務大臣 私は、数年前にブラジルでエタノールから自動車燃料をつくるという話を聞いて、実は、石狩地区と十勝地区で植物由来のエタノールをつくろうという研究を今やっているわけであります。石狩地区は米でございますし、私のところは小麦とかビート等からエタノールをつくろうということでやっております。

 他方、二週間ぐらい前のあるテレビ番組を見ておりましたら、沖縄の伊江島でサトウキビからエタノールを、実際にもう役場の車に、あれは三%だったか五%か忘れましたけれども、やっていると。他方、ブラジルはたしか五〇%以上がエタノールということで、もともと、そのときの印象的な言葉は、土から石油をつくるんだという非常に印象深いことでありました。

 まさに、コストの問題とか税をどうするかとかいろいろな問題がございますけれども、今御指摘のように、私自身も、これからのクリーンな、そして場合によっては地方の、小さな地域のエネルギー源ということも含めて、この問題に積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。

荒井委員 地球温暖化対策という意味では森林の整備が極めて重要です。しかし、今回、予算では、京都議定書にのっとった目標の経緯からいくと、恐らく森林の整備関係の費用というのは半分ぐらいにしかなっていないんじゃないかと思いますけれども、そのあたりは、恐らく環境省もあるいは農林省も、環境税という新たな財源というものを目指していたと思うんですけれども、いまだにそこは実現されていないわけであります。

 このあたり、京都議定書にのっとって、環境税というもののありようとか、あるいは農林省としての取り組み方とか、森林整備のこれからの見通しとか、そういうものについて、大臣、御見解をいただけますでしょうか。だんだん時間がなくなってきたもので、恐縮ですけれども。

中川国務大臣 京都議定書の約束、六%を果たすという大前提があるわけでありますが、その中で森林の果たす役割は非常に大きい、三・九。ただし、現状ではなかなか見通しが、六%そのものも含めて難しいわけであります。

 そういう中で、実は、前いた役所と農林水産省とでは若干考え方にずれがあるわけでありますが、いずれにしても、今やれることを、どこの部分であってもやれるように努力をしていこう、あるいはまた、クールビズ、ウオームビズではありませんけれども、一番大きいのは一人一人の心がけ、認識と同時に、何かをやっていくことだろうと思っております。

 そういう意味で、最初に環境税から議論をしていって六%をクリアしようよという前に、いろいろとまだやることがあるのではないかというのが、余り時間もありませんけれども、現時点での私の考え方でございます。

荒井委員 一昨年、大型の風台風が東北、まあ全国ですかね、全国横断をして、日本の山は物すごく荒れていますよね。その風倒木が今でも無残な姿をさらしている山を見ると、非常に心が痛む。この山を整備していくというのは、私たち、未来の子供たちに対しても責務であると思うんですね。そういう意味では、私は、この小泉改革の中で、極めて厳しい環境の中にある森林業者や国有林をしっかり運営していくということをぜひやっていただきたいというふうに思います。

 ところで、私はこの十日の休みの連休を使いまして台湾に行ってまいりました。

 台湾というのは、戦前、日本が植民地として経営をしてきたんですけれども、非常に親日的なところがございました。なぜそうなのかということを幾つか調べてまいりますと、戦前に八田與一さんという、これはかんがいの技術者ですが、この方が台湾の農地の整備なり、あるいは、今でいうと日本の農協に当たるんでしょうか、営農組織をつくることまで指導されて、台湾の農家の皆さんに大変な尊敬を受けているのを見ました。銅像があってお墓があったんですけれども、その銅像にはいつでも花が絶えたことがないというふうに言っておりました。

 同じ植民地経営の中でも、こういうふうに地域に根差した、地域の人々と生きてきた人がちゃんといたということはすばらしいことだなと。ここに、ある意味の日本のODAの理念とか、あるいは対外的なつき合いの理念というものの原型が私はあるんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味で、この八田與一さんが培ってきた農業水利施設というものは、その地域の文化とか伝統とか地域力とか、そういうものと極めて深い関係があるなということに気づかされてきたわけです。最近、日本では、このかんがい施設、水利施設が、そういう特色が忘れ去られているのか、あるいは農家の数が減っているということもあってか、少しおろそかにされているんではないだろうかという危惧を持っております。

 地域というのは水がなければ何の意味もないということに気がついたこういう先人が、この水利施設を大切に守ってきた、そこに地域の活力の源泉みたいなものがあるんではないかというふうに思いますので、大臣には、こういう水利施設、地域の施設、地域が維持してきたそういうものを大切に守っていくということをぜひやっていただきたいなというふうに思います。

 最後に、私の質問になりますけれども、大臣の御所見をいただければと思います。

中川国務大臣 まず、八田與一さんのことは私も大変興味があります。八田與一さんが亡くなられた後、奥様は八田與一さんがつくった貯水池に身を投げて八田與一さんと一緒に天国に行ったという話も我々知らないところで、台湾の方からよく聞きますね。台湾では、八田與一さんの水利、それから疫病対策というものが、庶民にとって、日本の時代、一番感謝されているという話をよく伺います。

 日本のように、水はあるけれども極めて急峻な地域で水管理をいかにやっていくかということは、これはもう荒井委員の方が専門家ですけれども、日本の有史以来の為政者の一番大きな仕事の一つだったんだろうというふうに思います。

 そして、その機能は現在でも大事でありますし、かてて加えまして、その地域に水があることによって、生態系というものも特有になってまいりますし、また、伝統、文化あるいはまた歴史というものがその水利施設を中心に、それぞれの地域に特色のあるものがありますから、そういう将来に向かっても、また過去の大事な遺産という意味からも、私は、水利施設はこれからも大いに守っていく、大切にしていく必要があるというふうに考えています。

荒井委員 ぜひそういう考えを閣内の中でも、特に竹中平蔵さんやあるいは小泉総理に理解をしていただけるように、農林大臣としても努力をしていただけますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 先ほど来、午前中からずっと論議になっております経営安定対策を中心に大臣と議論をさせていただきたいというふうに思います。

 午前中を含めて大分論議が交わされてきたので、ダブるところがありますけれども、一期生でありますので、ぜひこのことは大臣と論議をしたいという思いで国会に参りましたので、その点御容赦をいただきたいというふうに思います。

 午前中からずっとお話がありますように、世界の農政というのは、WTOのことばかりではなくて、いわゆる価格政策というものから、いわゆる消費者負担、価格政策というのは消費者負担型になるわけでありますが、価格政策、消費者負担型と言われるものから、環境資源対策、財政負担型というふうに変わってきている、世界じゅうがそうなってきているわけであります。

 我が国も、先ほど来お話がありますように、九九年の新しい農業基本法が制定をされて以来、あのときは、価格は市場へ、所得は政策でというようなキャッチフレーズだったというふうに思いますが、そういったことで転換をしてきた。私は、価格政策というのは一物一価の中にすべての農家を押し込めると言ったらちょっと表現が悪いんですが、一つの価格帯の中に農家をそれで補償しようとする政策ですから、ある意味で、下を支えてもきたけれども、上も抑えてきたわけですね、同じ価格の中で買い取るわけですから。

 そういった意味でいうと、今度の政策で市場に価格を任せたということは、ある意味で、上に伸びようとする方は、大臣も時々おっしゃっていますが、世界に伸びようとする方々はどんどん伸びていけるというふうになったと思うんですね、逆に言うと。しかし、問題は、上も下も抑えて支えてきた価格というものから、市場へ行ったときに、下側をどう支えるかということ、これが政策として問われることなのではないかというふうに私は思っているわけです。そういった観点で少し論議をさせていただきたいというふうに思っています。

 その論議に入る前に、一点だけ、間もなく畜産物の価格が決定をされるわけでありますが、きょうは大臣の地元からもたくさんの方が要請に上京しているようであります、ここには来ておりませんが。間もなく決まるのですが、生乳生産では、飲用乳の消費が非常に今低迷をしているということで、いわゆる乳製品の在庫過剰というような状況になって、厳しい状況にあります。

 私の北海道の例を申し上げますと、北海道の生乳生産も、ちょうどこの三月になりますと学校が休みになりますから、学校給食向けの需要がなくなるというようなことも含めて、道内で約一万トンぐらいの廃棄が迫られるのではないかというようなことを懸念されているわけであります。北海道としては緊急事態宣言をしたところでありまして、その中で、次の対策として、増産志向タイプと減産タイプ、減産の方にはみんなで共補償をしようということなのですが、そういうことで緊急事態として対策をしたのですが、二月時点で、いわゆる減産を希望する酪農家というのは、目標は実は三〇%だったのですが、五・三%ぐらいしかないわけですね。要するに、搾れないということは酪農家にとって非常に大変なことで、価格以上に大変なことなわけです。

 そういったことから、これは間もなく決まるのだろうというふうに思いますが、政府は、まず、飲用乳の消費拡大、それと、単なる需給の観点ではなくて、減産というものについて慎重な検討が必要なのではないかというふうに私は思っておりまして、生乳需給安定対策の確立に向けて、大臣の決意をお伺いいたします。

中川国務大臣 我々、北海道ですから、この時期、乳価あるいは限度数量が非常に大きな問題になってくるわけでありますが、牛乳というのはなぜか、新しい嗜好飲料が出てくると消費が減るとか、あるいは冷夏だと何か夏に飲まないとか、何か同じほかの飲み物とトレードオフのようになっている。しかし、牛乳というのは、生まれたばかりの赤ちゃんから育ち盛りの人、あるいは私の母親のようにそろそろ骨粗鬆症になるような人も含めて、神様がつくった飲み物だということで、もっと安定的に飲まれる必要があると。

 消費拡大策も、私もこの問題に随分取り組んでやってまいりましたけれども、やはり何か消費のばらつきがあるということをいつも悩んでいるわけであります。生産者の皆さんは少しでも多くいい牛乳をたくさんつくりたい、当然のことだろうと思います。しかし、現状は、今御指摘のように余っている、特に生乳が余っているという状況でございますし、生乳ですから、本当に数日しか賞味期限がない。他方、バターのようにある程度在庫のきくものもありますけれども、現時点での状況というのは、減産にしていかなければいけないということで、関係者の皆さんには大変御心配だろうと思います。

 しかし、牛ですから、一頭で五産、六産するわけでありますので、長期的にはもとよりですけれども、中期的に見て、それもそんなに長くない中期的に見て、ある程度の展望があれば、まあ御理解していただけるのかなと。例えば生クリームとか、あるいはまたある種のチーズでありますとか、こういったものの需要は、やはりメーカーの御努力もあって展望があるというふうに思っております。

 いずれにしましても、近い、短いタームの中期的な視野の中で、この牛乳の生産量が皆さん方の意欲にこたえられるように、また限度数量もそれにこたえられるようにという形で何とかやっていきたいと思いますが、現時点ではまだデータがきちっとしたものが出ておりませんので、それからまた審議会、あるいはまたこういう場での御議論もまたあると思いますので、気持ちとしては全く同じ気持ちでございまして、しかし、政府決定でございますので、きちっとしたルールにのっとってやらせていただきたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 中期展望と今大臣はおっしゃられましたけれども、価格と、搾るという乳量と、両方で成り立っている産業でありますので、短い中期展望をぜひお示しいただきたいというふうに思います。

 次に、もう一点、WTOでありますが、昨年の秋に香港の閣僚会議がありまして、私も参加をさせていただきましたが、これを受けて、二〇〇六年中の交渉終結ということで、大臣も帰国をされたばかりというふうに伺っております。

 先ほど来、たくさん論議がありますので、重要品目の取り扱いなどいろいろ論議されているんですが、これからのWTOのポイントだけ、先ほど来、論議されていますけれども、これから先の論議のためにポイントだけ確認をさせていただきたいというふうに思います。

中川国務大臣 まず、各分野、シングルアンダーテーキングで、一括受諾だ、この分野だけは決めるけれどもこの分野は決めない、いわゆるアーリーハーベストはやらないという大原則があります。それから、開発ラウンドであるということがあります。

 そして農業、農業というのは、ケネディ・ラウンド、東京ラウンド、ウルグアイ・ラウンドとずっと長く戦後やってきていますけれども、農業の議論が始まったのは、この前のウルグアイ・ラウンドから始まったという一つの特色もあるわけであります。農業といっても、農業の果たす特別の役割があると同時に貿易の一つでありますから、売り手と買い手があるわけですから、やはり売り手と買い手、輸入国と輸出国は対等のバランスがなければいけないということは言うまでもないわけであります。

 農業についても、特に農業の場合には、世界じゅうの国が、農業のない国はほとんどないと言ってもいいぐらいに各国の関心事項でありますから、この部分についても、やはり途上国に対する、特にLDC等の本当に困っている途上国、はっきり言って、ブラジルとかアルゼンチン、途上国と言っていますけれども、これは農業の中では最強の国ですから、こういう国とアフリカのLDCを一緒にして議論するというのはおかしいということを私は香港でもしょっちゅう議論していたところであります。真の意味のバランスが必要だということであります。

 それから、農業というのは、NAMAのように関税一本でどうするという世界じゃございません。御承知のように三本柱がある。マーケットアクセスの中でもいろいろなやり方があります。今、重要品目というお言葉が出ましたし、上限関税もあるでしょうし、階層の数もあれば、その階層を何%で切るか、階層の中で削減率をどうするかとかいろいろな要素があるわけで、極めてテクニカルなことを今ジュネーブで、きょうも今ごろやっているんだろうと思います。

 すべてがバランスということが、これからの交渉の、私どもが主張する最大のポイントだというふうに考えています。

佐々木(隆)委員 与えられた時間がありますので、経営所得安定対策等大綱について論議をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど来論議になっておりますが、三つの対策があって、今私が経営安定対策と言ったのは、三つをひっくるめて、全部を総称してちょっと経営安定対策というふうに今言わせていただいたんですが、先ほどもお話を申し上げましたが、新しい基本法ができて、そして今回対策大綱が出たわけでありますが、基本法の理念というものがやはりこの対策の中にしっかり、どう生かされているかということだと思うんですね、必要なことは。

 このいわゆる経営所得安定対策等大綱の導入の目的では、先ほどもお話ありましたが、一つには、我が国の構造改革を加速する、もう一つは、WTOなどの国際規律の強化に対応し得る、この二つの要素というふうに言われているわけであります。

 そういった意味では、WTOとこの安定対策というのはいわゆるコインの裏表みたいなところがあるんだというふうに思いますけれども、しかし、とりわけ今度の対策を、品目横断などの対策を出すときに、戦後農政の大転換にというふうに言ったわけでありまして、そういった意味からいうと、やはり単なるWTOというよりは、これからの日本の農政をどうするかという基本法農政の理念に沿った対策であるかどうかということが非常に重要だというふうに思いますが、その辺の大臣のお考えを伺いたいと思います。

中川国務大臣 まず、戦後政策の大転換ということは、この法律自体が戦後政策の大転換であって、最初の基本計画が終わって第二期目に、今まさにこれから御議論をいただくわけでありますけれども、そういう大転換の流れのいよいよ第二段階に入ったというふうに、私自身は、当時から関係していた人間としてはそういう認識でおります。今冒頭佐々木委員がおっしゃったように、いよいよ価格政策から所得政策へ、しかもそれは品目横断的にやりましょうという、いわゆる実施の時期に入ってきたというふうに考えております。

 それから、WTOとの関係におきましては、WTOにおける確固たる交渉の条件整備、これは現在行われている結果を予断してやるのではなくて、日本は、現在決められているこのWTO、あの九四年のマラケシュ合意に基づくWTOルールの中で、できるだけそのルールを守るようにさらに努力しますよ、黄色の政策も今のルールの中でもさらに減らしますよ、総合AMS自体は既に八二%ぐらい日本はカットしていますけれども、こういうものも含めて日本は今のルールをきちっとやっていますよという、交渉の条件を有利にするという観点からもプラスになるとは思いますけれども、これは交渉上の問題であって、関係する農家の皆さんにとっては直接これが、デメリットとは言いませんけれども、今我々がジュネーブで交渉していることにとっての有利な条件、バックグラウンドがより強固になるという観点から、WTOの交渉との関連があるというふうに認識をしております。

佐々木(隆)委員 そこはまさに大臣のおっしゃるとおりだというふうに私は思うんですが、そのことについては後ほどちょっと論議をさせていただきたいというふうに思います。

 実は、この新しい政策、とりわけ品目横断の政策が出たときの説明会のことについてちょっとお伺いをしたいんですが、新しい政策が出てくるという場合には、法案や予算が成立した後に現場に行って説明をするというのが私は普通だというふうに思っているんですが、事このことに関して言えば、昨年、十月二十七日ですか、大綱が出されて、その直後に現場にずっと説明会に回られているんですよね。これはなぜかということについて、担当者でも結構ですが、お伺いします。

中川国務大臣 結論から言うと、今度の政策といいましょうか、法律改正も含めたこの問題が、農家の皆さんだけではなくて、今は消費者の皆さんも大変日本の農業に関心があります。やはり国産の、安心しておいしいものを食べたいという気持ちはウルグアイ・ラウンドのときとまさに正反対と言っていいぐらいに、目標は同じだという認識を持っております。だからこそ、農業関係者だけではなくて、いろいろなところへ行って御説明をしている、大事な今度の政策でありますから説明をさせていただいている。基本法の審議のときにもたしか三十二回ぐらい審議会を開いたり、いろいろなところに行って説明をさせていただいております。

 法律に大事と大事じゃないとあるかと言われれば、ちょっと言い方を変えなければいけないんでしょうけれども、これはまさに日本の食料政策を推し進める上で、生産サイドだけではなくて消費サイドに対しても、ぜひ御理解や御意見をいただきたい。そのために、できるだけ多くの国民の皆さんに御理解をいただくと同時に、また御意見もいただきたいということで、大事な政策だからこそ国民に、審議に入ると前後して、決まってから、こういう法律が決まりましたではなくて、まさにこれから審議しようとしていることに関して国民的な御理解をいただきたいという意味でやっているということを、ぜひ御理解いただきたいと思います。

佐々木(隆)委員 そのことについては、正直言って余り理解はできないんですけれども、法律を提出される前ですから、審議によって変わるかもしれないわけで。そういった意味では、なぜそのことをお伺いしたかというと、決して意地悪をしようと思って言ったわけではないんです。

 結局、この基本法が出てから七年たつわけですよね。その間に、中間論点整理とか計画決定とか大綱とかという形でずっとやってきた。十分な時間の余裕というものはあったと思うんですよね、ずっと、基本法をつくった時点から基本計画をつくると言ってきたわけですから。結果として、WTOの対応というものをかなり意識していたからそうなってきたのではないかというふうに思わざるを得ないわけですね。

 先ほど大臣は、交渉条件ではあるけれども、農業者がどう考えるかが一番大切なんだとおっしゃられた、それは私もそのとおりだというふうに思うんですが、やはり、新しい基本計画に基づくこの戦後の大転換こそが、長い視点に立った農業者の確固たる一貫した政策でなければならないというふうに思うんですね。その理念をどうつくっていくかということからいえば、技術的なことはいろいろあると思うんです。

 しかし、そういった意味からいうと、どうも、それがもし要因だったとするならば、WTOの交渉の行方が要因だったとするならば、それはまさに本末転倒なのではないかというふうに思うんですが、再度、答弁をお願いいたします。

中川国務大臣 WTOを意識してというのは、今のドーハ開発アジェンダ、DDAを意識してという意味ですか。ですから、それは、今交渉をやっているポジションをよくするためという意味では関係してまいります。

 さっき申し上げたように、日本は黄色の政策がこんなにあるじゃないかとか、あるいはまた、直接品目ごとにやっているじゃないかとか、生産刺激的にやっているじゃないかとかいうこと、アメリカもヨーロッパもそういう政策はもうとっていないわけですから、日本だけがそういうものをやっている品目がいっぱいあるじゃないかということからの脱却を今目指しているんだという、交渉ポジションを有利にするという意味では、関係がないとは決して申し上げません。むしろ、交渉する上で、我々も国内で今こういう改革をやっていますよと。

 アメリカなんかも、二〇〇七年農業法に向かって今いろいろなことをやっていますし、さっきの御質問に関係しますけれども、アメリカでは今、公聴会を全米じゅうでやっていますね。別に、日本もたまたま同じ時期に同じようなことをやっているわけでありますけれども、私がさっきから申し上げているのは、どういう結果になるかわからないけれども、ひょっとしたらこういう結果になるかもしれないから、それに備えて政策をつくっているんだというんだとすれば、どういう交渉になるか全くわからない。

 特に、マーケットアクセス交渉というのは、農業三分野の中でも一番センシティブでありながら交渉がおくれている部分でもありますので、これからどうなるかわからない交渉を、私も予知能力ありませんし、多分事務方も予知能力ないのに、それについて予見して交渉をやるほど、今回の交渉は、ある意味では、現時点においても話はかなりそれぞれの立場で広がっておりますし、立場立場でもっていろいろなケースをお互いに考えているわけでありますので、結果を前提にしてこの法案を御審議いただいているということではないということは、ぜひ御理解いただきたいと思います。

佐々木(隆)委員 すべてを予測してという意味で申し上げているわけではありませんけれども、今まさに戦後の大転換と言われる農政の転換にあって、基本法ができてから七年間、現場の皆さん、要するに農家の皆さん方は、次の対策というものにある種期待をずっとしているわけであります。そういった意味でいうと、この七年間というのはちょっと余りにも長過ぎたというふうに私は思うわけですね。そういう意味で、できるだけ農家の皆さん方に次の展望というものをしっかり示していくということが必要なのではないかという意味で申し上げさせていただきました。

 次の質問に入らせていただきますが、この安定対策大綱では、三つを一つの固まりとして打ち出してきているわけでありますけれども、真ん中に品目横断があって、そして米対策の方とは表裏一体、そして資源、環境対策とは車の両輪と。こっちは表裏一体で、こっちは車の両輪、こういうふうに表現をして、言ってみれば、この三つは全部一固まりでないと一つの対策にならないよという意思のあらわれとしてそういう表現がされたというふうに思うんですが、この三つの対策のそれぞれの関係、そして、実施に当たってのお考えを伺います。

井出政府参考人 委員お尋ねの品目横断、それから米政策改革、農地・水・環境保全対策の関係でございます。

 今回の農政改革につきましては、先ほど来御議論いただいておりますように、農業従事者の減少、高齢化や経済のグローバル化が進展する中で、昨年三月に策定いたしました基本計画に沿って、我が国農業の構造改革等のための施策を具体化するものでございまして、昨年十月の大綱でもこの三本柱をお示しいたしました。

 この三本につきましては、御承知のように、品目横断的経営安定対策への転換をする、それから、この導入に合わせまして米の生産調整支援対策も見直す、さらに、地域の共同活動によりまして、農地、水等の資源や環境保全の向上を図る対策を導入するということでございまして、我が国の力強い農業構造の実現や農村の活性化を着実に推進するため、この三つをあわせて一体的なものとして実施していきたいと考えております。

佐々木(隆)委員 基本法にのっとって、新しい、まさに戦後の大転換を進めていくわけですから、しかも、ちょうど米の政策、ちょうどという言い方をしたら怒られますが、米の政策も十九年から新しい対策に入るわけで、一斉に十九年からスタートということになるわけですので、ぜひこの三つの相互関係について、この後少し論議をさせていただきますが、まさに表裏一体、車の両輪で進めていただきたいというふうに思ってございます。

 実は、食料自給率のことであります。食料自給率の向上というのは、私は大変重要な政策だというふうに思っていまして、九九年に基本法の法案が審議をされているときに、衆議院の農水委員会において、その論議の中で、その向上を図ることを旨として定めるべきであるというふうに修正されたというふうに私は理解をしています。

 今回、これだけ大きな戦後の農政の大転換ということでこの三つの対策が出てきたわけでありますので、食料自給率の向上がこのことによってどう図られるのか。あるいは修正があってもしかるべきだというふうに思うんですが、そのことについての考えをお伺いいたします。

    〔委員長退席、梶山委員長代理着席〕

井出政府参考人 今回の品目横断的経営安定対策の対象者につきましては、我が国農業の構造改革を加速化する観点から、やる気と能力のある担い手を対象とするということにいたしております。

 こういった生産性の高い担い手が生産の相当部分を占めるような強靱な農業構造の実現を図ることによりまして、農産物の生産コストの低減や品質の向上が図られる、また、消費者や食品産業の需要に的確に対応しまして、農産物を安定的に供給できる体制が確立される、この二つのことによりまして、国内の農産物の生産拡大と食料自給率の向上に資すると考えておるところでございます。

 もちろん、食料自給率は、生産だけではなくて、国民の消費のあり方によっても左右されますので、食生活の見直しに向けた取り組みの強化についても、今努力をいたしているところでございます。

佐々木(隆)委員 向上が図られるのはもちろんだと思うんですが、このことによって、今までどおりの計画と自給率の目標というのは何か変わるかどうかということを、また、変わらなければならないのではないかというふうに思うんですが、その点についてお伺いしました。もう一度お願いします。

井出政府参考人 三月に策定されました基本計画、見直しされました基本計画におきまして、その食料自給率について四五%を目標にするというふうに定められておりますけれども、その前提としまして、今申し上げましたこういった品目横断的な経営安定対策を導入し、我が国の特に土地利用型農業について、やる気と能力のある担い手に集中していく、そういうことによりまして、先ほど申し上げましたような点が向上することによって、その四五%達成に資するということで、基本計画の中に、既にこういった品目横断的経営安定対策を実施するということがビルトインされているというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 そこのところは随分長期的だったんだというふうに思うんですが、既にこのことを想定してつくられていたということでありますが、そのことはそのこととして、実は、自給率向上というものを図っていく上で作付指標というものがあると思うんですが、基本法でいうと十五条の二項になります。

 例えば、作付指標というものは自給率を向上する上で、先ほど大臣もおっしゃっておりましたが、私は、農業というのは特殊性があって、経済の論理に全部当てはまらないところがたくさんあると思うんですね。資本の回転が非常に遅いとか、あるいは気候に左右されるとか、あるいは集落、コミュニティーとしての要素を持っているとか、食の安全とか、いろいろな要素を持っているわけでありまして、そういった意味からいうと、その農業の特殊性からして、私は統制経済を標榜するものではありませんけれども、農業というのは、やはり国が一定の指標というものをちゃんと示して、そしてその指標をきちっと守ってもらうということをやはり徹底していく必要があるのではないかというふうに思うんですね。

 そういったことがきちっと守られなければ、ある意味では一定の、どんなペナルティーかわかりませんが、ペナルティーを科してでも、指標をきちっと守っていくし、そのことによって、自給率というものをこういうふうに高めていくんだというようなものでなければならないというふうに思うんですが、そういったことについてのお考えをお伺いしたいと思います。

西川政府参考人 基本計画の中では、自給率四五%を目指し、その中に生産努力目標というものも掲げているところでございます。この生産目標を掲げる中にあって、それを達成するために農業者、その関係者が積極的に取り組むべき課題といったものも明らかにしている。ただ、先ほど大臣から申し上げましたように、つくるだけでそれが達成するわけではなくて、それがきちんと消費者に受け入れられて初めてこの国内生産というものが成り立つということでございます。

 そういった面から見れば、消費者に受け入れられる物づくりをする、その物づくりをする過程において努力目標を達成するということが基本的な考え方ではないか。具体的に、その生産調整等する場合は、きちんと自給目標等を定めるわけではございますけれども、やはりここは生産者側の自主的な取り組みということがベースになるのであって、計画的に守らなければという話ではないのではないかというふうに考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 どこまで強制力を持たせるかというのは別なんですが、農業の特殊性というものからして、私は、全くの自由の中で、生産者の努力だけですべてが賄われるというふうには思いません。そういった意味からいうと、国が、そういったところでの農業に対しての自給目標と、そして、その自給目標を達成するための指標というものをきちっと示すということは、私は必要なことではないかというふうに思っておりますが、このことについては、もうこれ以上論議をいたしません。

 次は、この三つの中の真ん中の品目横断のことについてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 先ほども少し論議がありましたが、従来の価格対策というものから、生産条件格差是正対策、いわゆるゲタと、それから収入変動影響緩和対策、いわゆるナラシ、この二つで経営全体に着目したという、経営全体という点では私は評価をしたいというふうに思うんですが、しかし、先ほどもお話がありましたが、生産条件の格差是正の中で、いわゆる過去の実績と、それから生産品目に基づく支払いという、これまた二つに分かれているわけであります。

 片方はWTOで言う緑の政策で、片方はWTOで言う黄色の政策ということになるわけですが、これを日本型直接支払いというふうに称している。なぜこれを日本型の直接支払いというふうに言うのかということについてお伺いしたいと思います。

井出政府参考人 日本型直接支払いと呼んでいるゆえんでございますが、御承知のように、需要に応じた国内生産の確保や構造改革の加速化に資するようということで、過去の実績に基づく支払い、いわゆる緑を基本にいたしまして、毎年の生産量、品質に基づく支払いという黄色の部分もあわせて講じる、こういう点で我が国農業の実情に即した工夫を行っている、この点を称して日本型の直接支払いと呼んでおります。

佐々木(隆)委員 先ほど来論議になっているところで、欧米では、いわゆる環境支払いなどにシフトした、いわゆる直接支払いが進んでいるという話があるんですが、私は、ヨーロッパは確かに直接支払いというものに近いというか、かなり緑を中心にした政策だと思うんですね。アメリカの場合はどちらかというと不足払いに近いものですから、緑というよりは青に近い政策が中心になっているのではないかというふうに思って、これは、一概に欧米と一くくりにはできないのではないかというふうに思っています。

 直接支払いというのは、本来、ヨーロッパではデカップリング政策というふうに言われている政策で、デカップリングですから、カップルを切り離すという意味ですから、くっついていたものを切り離すわけですよね。ということは、今まで価格というもので農業の所得を賄っていたものを、価格と所得を切り離すからデカップリングなんだと思うんですね。ということは、これは将来緑にしていくということが前提にならなければいけないわけです。

 ただ、いきなり緑にしていくと、これはまた先ほどあったように、品質向上の部分と過去の実績という新たな問題が生じてくるんですが。このデカップリングといいながら、日本型デカップリングという、言ってみれば日本型直接支払いですから日本型デカップリングというわけですが、そこの矛盾みたいなものがあるわけで、それは私は、将来的には緑に軸足を移していく、わかりやすい制度にすべきだと思うんですね。一つの政策があって、ここにも二つの要素があります、こっちの中にまた二つの要素がありますというような仕組みで今成り立っているわけですから、そういった意味では、緑というところに将来的にはやはり軸足を移していくべきだというふうに思っています。

 そこに移していくについても、先ほど小平委員からも質問がありましたけれども、とりわけ品質向上の方ですが、基準年が直近の三カ年というふうにされていまして、いわゆる十八年のデータを入れるかどうかというところが一つ大きな課題になってくるわけですね。時間がないから昨年の暮れにもう説明に回ったという話がありましたが、ことし、間もなくもう作付になるわけですね。このことが入ると入らないとによって、農家の皆さん方は、作付、今直前に控えていてどうしようかというところに来ていて、非常に混乱をしているわけであります。このことが早く示されないと現場に混乱を起こすということになるわけでありますので、このことをできるだけ早急にやはり示すべきだと思うんですよね、その十八年産のデータをどうするのかということを。去年の作付までの段階では、このことは何も農家に知らされていないわけですから。そして、去年までの作付の三年間をデータとりますよ、ことしは入れませんよと言われても、これもまた農家は困ってしまう。

 そこのところと同時に、これはちょっと言いづらいことですが、ことしの分をどれだけ入れるかによって、駆け込みということの心配もある、それは私は承知しています。しかし、去年までのところで切ってしまうというのは、私は、その前から知らされているのであれば、これは去年までで切っても仕方がないと思うんですが、ここのところの考え方についてお伺いします。

    〔梶山委員長代理退席、委員長着席〕

井出政府参考人 基準期間についてのお尋ねでございますが、直近の三カ年をとるということにいたしておりますけれども、その十八年産のデータを含めるか否かにつきましては、この新しい交付金の支払い時期、それから、従来の大豆交付金の手続、両方を見比べまして、その支払い時期までにデータの確定が本当に間に合うのかどうかということを今真摯に検討を行っているところでございます。

 私どもとしても、できるだけ早く決定をしてお示ししたいと思っておりますが、何しろお金のお話でありますので、本当に皆さんに納得できるデータをそろえられるのかということについて、関係方面とも今調整中でございます。

佐々木(隆)委員 稲得、担経についてもお伺いしたいんですが、この制度もそうですけれども、一度決めたらもう絶対動かせないというものではないと思うんですね。ですから、この稲得や担経についてもそうですが、制度をやってきたら、三年たったらやはりちょっと矛盾も感じてきたというようなことがあったら、やはりそれは直せばいい話だと思うんです。そういうことからすれば、十八年産のデータをどう入れていくかということは、現場の農家の感情を考えたときに、これはやはり早急に何らかのメッセージを送らなければならないのではないかというふうに思っております。

 稲得と担経についてお伺いいたします。

 今回の対策によって、米政策改革推進対策、こちら側の左端の対策の中での稲作所得基盤確保対策、いわゆる稲得、それから担い手経営安定対策、いわゆる担経、この中で担経は廃止をされて品目横断の対策のナラシの部分に行くわけですね。それから、稲得は担い手の部分はそこに入るんですが、それ以外の部分については産地づくり対策の中に残っていくわけであります。

 その産地づくり対策なんですが、産地づくり対策は、地域の事情に応じて組みかえることができるということになっております。都道府県によっては、米価下落のための支えになっていた対策という要素もあったわけでありますが、その交付金を、転作部分、担い手育成支援など、ほかのメニューに使うことも可能なわけでありますね、この産地づくり交付金は。

 そういった可能性も出てきて、結果として米価が下落したときの対策としては、担い手の方は収入金変動の中に入るからいいんですが、それ以外の方々というのは、補償されないというか、下落のときの補償がないということになってしまうわけであります。

 そういった意味からすると、先ほど申し上げました、私がこだわっている、表裏一体と言われる対策なんですから、この米政策対策というものも同時に示さなければ、片方で残っていってしまう人がいるときにこちらの対策がおくれているというようなことになっては、やはりそこに残された農家の皆さん方というのは非常に不安になっていくわけですので、ここの米対策についても早急に示すべきというふうに思うんですが、お答えをいただきたいと思います。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、平成十九年産以降につきましては、米を含めた収入下落対策であります品目横断的経営安定対策の導入に伴い、担い手に対するものにつきましては、品目横断的経営安定対策へ移行します。一方で、担い手以外の方に対するものについては、米の需要に応じた生産を誘導するため、当面の措置として、産地づくり対策のメニューの一つとして、米価下落の影響を緩和するための対策を行えるよう措置するといった見直しを行うこととしております。

 しかしながら、今御指摘のとおり、産地づくり対策そのものにつきましては、地域の創意工夫ということも一方でうたっておりまして、地域でどのように使うかということが決められる部分があることも事実でございます。

 いずれにいたしましても、これらの見直しを通じまして、担い手の育成や需要に応じた売れる米づくりの実現に向けて、両対策を整合性を持って進めてまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 時間がなくなってきましたので先を急ぎます。

 品目横断の中での最大のテーマというのは、その仕組みの話を今までしてきましたが、もう一つは、やはり対象者だと思うのですね。対象者を、一定規模の認定農家と集落組織、いわゆる担い手と言われる人たちに限定をしているわけでありますが、経営安定対策の対象者を担い手に絞るということは、ある意味で支援の打ち切りになる人たちがたくさん出てくるということを意味するわけであります。

 例えば、農産物が急激に下落をしたというときに担い手に認定されて、この品目横断の対象者になっているところは、それは補われるけれども、そうでない人たちは何ら補われないということになって、これはまさに不公平な政策になってしまうわけであります。

 あるいは、もっと言えば、集落組織に入ろうとして、抜け駆けという言い方はおかしいですが、中で、組織のあつれきになってしまう、集落をつくろうとするために、法人をつくろうとするために。

 だから、農村というのは、そういったコミュニティーという大きな要素を抱えてきたにもかかわらず、そういったものが、コミュニティーが壊れるというようなことさえも懸念をされるというふうに私は思うのですが、こういった懸念に大臣がどうお答えになるのか。

 私は、民主党が提案しているのは、全農家、全耕作農家ということなんですが、家族経営というふうに法律の中では言っているわけでありますので、やはり私は全農家に対象を広げるべきではないかというふうに思うのですが、大臣のお考えを伺います。

中川国務大臣 今佐々木委員がおっしゃりたい全農家というのは、どういう農家のことをおっしゃっておられるんですか。

佐々木(隆)委員 耕作農家という意味です。

中川国務大臣 例えば、一反歩だけ米をつくってもうほとんどあとは会社に行ったり工場に行ったりする農家も含めてという意味ですか。

佐々木(隆)委員 今、私が聞いているのですから。

 大臣が、どこまで広げるかということなんですが、俗には、販売農家あるいは耕作農家という二つの考え方があるというふうに思うのですが、せめて販売農家ぐらいまではやはり広げなければいけない、私は、全農家でも、耕作農家でもいいと思っているのですが、少なくとも販売農家ぐらいのところまでは広げるべきではないかというふうに思います。

中川国務大臣 もちろんこれは、我々は、この基本法をつくるときに、足腰の強い、そして、日本の中で、農業、あるいは農家が産業としてもやっていけるように、つまり、多面的機能を果たす役割は大前提でありますけれども、経営体としてもやっていけるようにということで、担い手だとか中核農家だとか、いろいろな言葉が今まで出てきたわけでありますけれども、やはりやる気と能力があって、経営として成り立っていける農家を育成していくことが、これが、国際競争力の問題もありますし、また、先ほど、いい物を消費者が求めて、それにこたえられる、何も規模が小さいから消費者にこたえられないというわけでは決してありませんけれども、先ほどの黄色い政策のところで、局長からも答弁がありましたけれども、その黄色い部分をなぜ残したかというと、いい物をつくっていくためのインセンティブにする、それは、質の問題あるいはまた経営規模の問題もあります。

 したがって、何も規模だけで切っているわけではないことはもう委員も御承知のとおりだろうと思います。いい経営をしていれば該当になります。あるいはまた、言うまでもなく、集落営農をきちっと要件をやっていればいいわけでありますけれども、個々の経営でもって、販売だけやっている、しかも、その販売は、その家族経営体の中で、極端に言えば、もうほとんど数%、小遣い以下程度というところを、我々北海道のように専業的なところ、あるいは熊本県のように、面積は小さいけれども、いい野菜やいい果物やいいイグサをつくって頑張っているところ、この前、熊本の人の話を聞いて大変びっくりしましたけれども、年間三千時間ぐらい営農のために時間を投入するそうです。もう全くのプロ農家です。これは規模の問題じゃないんです。そして、高収益を上げている。そういうところと販売農家すべてというところを一緒にする政策というのはこれからはいかがなものかということは、原則論として私ははっきりと今回の政策の中で位置づけておく必要があるんだろうというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 もう時間が来ましたのでやめますが、結局、今の話ですと、農家が半分ぐらいになったときに日本の自給力というものを確保していけるのかという問題に必ずしも答えていないと思うんですね、それでは。そういった意味で、できるだけ担い手に絞るという意味での危険性というのは私はあるというふうに思っています。

 もう一つは、今大臣がおっしゃっていたんですが、産業政策としてこの品目横断というものがあるのなら、きょうは論議できませんでしたけれども、もう一つ、こちらに環境資源対策というのがあります。これが地域対策だというのであれば、この二つがセットで出されてこなければ意味がないというふうに思うんです。

 これは全国農業新聞という新聞の記事ですから、どこまで信憑性があるかということは私は調査をまだしておりませんけれども、例えば、品目横断安定対策には千七百億から千八百億ぐらい使われるだろうというふうに言われています。資源対策と環境対策を合わせて三百億から四百億ぐらいだろうと。三分の一ぐらいなんですね。片や、産業対策としてそれだけ使うけれども、もう一つの要素である地域対策には三分の一程度の予算しか使わないということで、本当に農村全体を守っていくことができるんだろうか。

 私は、農業は、あってはならないですけれども、だれかがやっていくだろうと。株式会社かだれかかもしれない。私は、小さな農村に住んでいて、つくづく思うんですが、しかし、毎日、農村は間違いなく崩壊しているんです。そういった意味では、農業を守ると同時に農村という地域を守らなければ、今度の政策転換の意味は私はないというふうに思っておりまして、その論議はまたいずれやらせていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、中川大臣には、さきの大臣所信についてお尋ねをいたします。

 「Do! our BEST」と称される施策の六つ目の柱で、森林・林業政策の推進について触れておられます。ポイントを少し紹介させていただきますと、

  森林の整備保全や木材利用を進めるため、間伐などの実施、緑の雇用による担い手の育成や低コストで安定的な木材供給システムの構築などを推進いたします。また、本年九月を目途に森林・林業基本計画を見直しすることとし、多様で健全な森林の整備保全、林業・木材産業の再構築などについて総合的に検討してまいります。

と述べておられます。

 そして、先ほど西議員の質問に、多面的機能ということでお話をお伺いいたしておりますが、森林・林業の現状と問題点等、大臣がどのように認識しておられるのか、お伺いをいたします。

中川国務大臣 午前中もお話ししたかもしれませんが、今、日本は国土の三分の二が森林であり、木の国と誇ってもいいのにもかかわらず、自給率が二〇%に落ちてしまった。いい材があるのに、あるいはまた一生懸命木を育てたいと思うんですけれども、コストの面、あるいは投入時間の問題等々で、山がともすれば荒れてくる、あるいはまた、川下の方のニーズとのミスマッチという問題もあるということで、いろいろ多くの問題を抱えているというふうに認識をしております。

 一つの日本の林業の特徴というのは、いわゆる一ヘクタール以上の森林を保有する林家で林業に頼っているものが全林家の〇・二四%しかいない。これでは、手入れをするどころか、相続のときにすら相続放棄をしたいという話もどこかで私聞いたことがあるんですけれども、こういう問題が存在します。

 それから、川下と川上、つまり、日本の木材をつくりたいというふうに、例えば国内の木材メーカー、あるいは国産の木を使いたいと思っている人たち、つまり、お客さんのニーズに十分こたえられない。これは、そういう小規模林家が散在しているということもあって、なかなかロット的にも難しいんだろうというふうにも理解をしております。他方、人工林の、戦後植えたものがもう伐採期に来ているという状況もあるわけでございます。

 しかし、日本の山、木、そして林業を守っていかなければなりません。これはどうしても守っていかなければなりません。産業としても、あるいは山の果たす多面的機能という面からも守っていかなければならないということで、いろいろな諸施策を考えているわけでございまして、林業・木材産業の活性化であるとか森林の適切な整備保全でありますとか地球温暖化対策ということも必要であります。

 私は、素人ではありますけれども、やはり人がどんどん山に親しめるようにする、特に子供たちが親しめるようにするということも大事なことではないかと。私も子供名義で分収育林を一口持っておりますけれども、まだ行ったことはありませんが、大分育ったときには、子供を連れて、分収育林、一応自分の権利の山だぞ、木だぞと言って連れていくのを楽しみにしておりますし、連休中には、高尾山の林野庁の桜を見に行くことも何回かございました。家族そろって山に見に行くというところから、国民の木、山に対する親しみというものを育成していくことも大事でありますし、林業という産業という観点も、観光も含めて、何とか振興していきたいというふうに考えております。

 そういう意味で、審議会において基本的な御議論を改めてお願いをしたいというふうに考えているところでございます。

森本委員 大臣、どうもありがとうございました。

 そして、大変うれしかったのが、分収育林を持っていただいておるというようなことを聞かせていただいて、ぜひ、こうした背広姿でなしに、大臣ならきっと、リラックスした雰囲気の中で山へ入られたらさぞお似合いかな、そんな思いもいたしておりますので、どうぞいろいろな意味で、本当に地味なところからこの問題は語っていただかないと、山は遠くから見ておってもなかなかわからないし、さらに今、私は、危険、災害というようなことで非常に前から心配しておりますので、人間もそうなんですけれども、私も子供があります、これも私と妻とで共同作品なんですけれども。山も、実は人工林が一千万ヘクタールぐらいですね。ですから、これも、自分たちで植えた責任というものは、大臣、あると思うんですよ。

 ですから、これは、山の木を植えれば、下草を刈って、そして余分な枝を払って、そして間引きをしていって、それで五十年ぐらいには、一ヘクタールで大体北海道ですと五千本、九州の多いところでは我々の地域でも五千本か六千本植えて、それを私の年代でちょうど一千本にしていくと、かなりそれを放置しておっても健全な山、まさに間伐の、このしおりにあります、こういうすばらしい、下草が緑に生えて、雑木が生えて、いい山が育っていくということになるんですけれども、それまで着実に手入れをしていくということは、教育でも、生きたものを育てていくということは私は一緒だというふうに思っておりますので、そういう面で、それを放置したときにどういう天罰が下るかというようなことも大変大切な我々の使命だというふうに私は思っております。

 分収育林の話がまさかきょうこちらで出てくると思っておりませんでしたので、もうそれを聞かせていただいたらそう難しい質問はしなくてもいいんですけれども、どうぞ地域に入っていただいて、交流をしていただいて、入っていただく方が、この東京の農林水産の委員会で話をしておるよりも、大臣、これは随分プラスになります。ですから、ぜひ一度現場に入っていただいて、いろいろな方の御苦労を聞いていただきませんと、人材育成といいますけれども、この山の仕事は、そう簡単に覚えられて入れるものじゃないんですよ。簡単にやる、緑の雇用の問題についても、命を落とす問題にも関係してまいりますから、この問題については、本当に林家の方々と十分ひざ突き合わせながらお話しをいただくところから、私は、本当に山の方々がこの国政、国会を理解していただくということにつながりますので、その点につきましても、ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 きょうは、時間が私の前で食い込んできておりますので、少し急がせていただきます。また後で関連については質問させていただきますので。

 それでは、次に移らせていただきますが、十八年度予算は、原案ベースで全般的に減少している中で、林野の公共予算では森林整備が前年並みとなっております。それから、林野の公共予算全体は九七・七%と、二・三ポイントの減少をしておるわけでございます。林業の活力が喪失し、森林の荒廃が著しく進んでいる現況の中で、森林施策の執行のための予算が減少していることは、これらの事態を加速させてしまうことにはならないかというふうな気がしておるんですけれども、林野庁長官、よろしくお願いを申し上げます。

川村政府参考人 お答えいたします。

 今お尋ねございましたとおり、林野の公共事業は対前年比で九七・七%を計上しているところでございます。全般、非常に厳しい財政状況の中でこの数字となっておるわけでございますが、私どもとしましては、この予算をできるだけ効率的、効果的、コストの削減等も行いつつ実施していきたいと思っております。

 具体的には、森林整備では、団地的な間伐の強化等をやります間伐等推進三カ年計画、あるいは天然更新を活用しました広葉樹林化の促進対策、こういうものに重点化をする、また、治山事業につきましては、近年非常に山地災害が頻発しておりますが、山地災害の防止上緊急性の高いところ、こういうものを重点化するといったようなことで、効率的、効果的な事業の実施ということに心がけたいと思っておるところでございます。

森本委員 ありがとうございました。

 その数字から、実は京都議定書の関係について少し心配をするわけでございます。

 昨年二月に発効した京都議定書では、条約の締結国として日本が負う温室効果ガス削減目標の六%のうち、三・九%が森林の吸収ということになっておるんですけれども、この点、森林・林業基本法の第十一条が定める森林・林業基本計画に沿っての森林整備が適正に実施されれば達成可能であると推計されているようですが、実際には、基本計画どおり、先ほども大臣のお話もありましたが、森林吸収量は二・六%にとどまって、目標達成のための新たなる追加的事業経費が必要とされております。初めからあきらめるのはどうかと思うんですけれども、京都議定書の目標遵守に向けての林野庁としての今後の対応、そしてまた、環境省はどのような認識を今されておるのか、お伺いをさせていただきます。

川村政府参考人 私ども、京都議定書の温室効果ガス削減目標を踏まえまして、平成十四年に地球温暖化防止森林吸収源十カ年計画を策定しまして、現在、これに基づいて、健全な森林の整備保全、それからまた木材・木質バイオマスの推進といったようなことで総合的に取り組みをしているところでございます。

 ただ、現在の整備状況、これを見ますと、この三・九%の吸収目標からすると、まだ格段の努力が要るという状況がございます。私どもは、この対策の着実な推進を図るということでは、一般財源はもとよりでございますけれども、やはり安定的な財源の確保というものが必要と考えておりまして、この森林吸収源対策の意義につきまして、国民各層の御理解をいただくということがまず必要でございますし、また、関係府省とも連携を図りながら、引き続き必要な対応を検討していきたい、こういうふうに思っております。

小林政府参考人 環境省でございます。環境省としての吸収源対策についての認識いかん、こういうお尋ねであったかと思います。

 御案内のとおり、我が国の森林、放置されているもの、あるいは人手がちゃんと加わっているもの、いろいろあるわけでございます。そのすべてを見渡しますと、相当量のCO2を吸っている、こういうことでありますけれども、先ほど委員御指摘のとおり、我が国については年間千三百万炭素トン、これを上限にそれを見込んでいい、こういうことが国際的なルールとして認められております。しかしながら、この千三百万トン、何もしなくても認められるというわけではございませんで、森林経営といった人為の活動がきちっと行われている、そういった森林区域での吸収量に限って排出量から差っ引くことができる、こういうことになっているわけでございます。

 今後は、このような森林経営活動となる対象の森林区域、こういったものを我が国がどれだけ計上し得るか、これは条約事務局のもとで専門家のチームによる審査を経て最終的に決定される、こういうことになっているわけでございます。そういうことでございますので、先ほど御指摘ありましたように、我が国としてはきちっとした森林経営活動をしていく、そしてその計算された数字を証明していく、こういったようなことがぜひとも必要だ、こういうふうに考えております。

 そうした厳しい目で見てみますと、長くなって恐縮でございますけれども、森林整備の現状、そして木材供給、利用の現状、こういうものを見てみますと、環境省といたしましては、この千三百万炭素トン、先ほどおっしゃっていた三・九%相当分でございますが、これを獲得するには一層の努力が要るというふうに考えてございます。

 今後とも、条約事務局や専門家の理解を得るべく、また財源の検討も含めて、必要な対策について、国内では林野庁とも連携をとって取り組んでまいりたい、大変厳しい状況だというふうに認識をしてございます。

森本委員 ありがとうございました。

 林野庁長官、この間伐の三カ年対策をいただいておりまして、人工林が約一千万ヘクタールに対して三十万ヘクタール、これは、これでは少ないということはわかっておりながらこのぐらいの予算しか組めないということなんですけれども、ちょっと私、林野庁長官の、聞き漏らしたらお許しをいただきたいんですけれども、このままではなかなか、今言われた環境省の基準はもうとてもじゃないけれども無理ですし、しかし、この予算をもう少し獲得してでも林野庁がやらないと、こういう問題は、結局最後はやれなかったでは済まないように思うのです。

 しかし、これは人材の問題もありますから、今の三十万ヘクタールの間伐は限界と言われるのか、予算の問題でできないのか、その辺は林野庁長官、少し手短にお願いできませんですか。

川村政府参考人 お答えいたします。

 今委員が申されました三十万ヘクタールというのは年間の伐採面積でございますが、これは三カ年計画に基づいてそういう目標を立ててございます。

 端的に申し上げますと、やはり対象となる森林の間伐必要量というのはもっとあるわけでございまして、やはりある程度財源的な裏づけがないと、これは、そういう現状のままでは七割程度の水準にしか過ぎないということで、格段の努力が要るということでございます。

森本委員 ありがとうございます。

 しかし、長官、これは環境省ともいろいろ詰めていただきながら、京都議定書の問題だけではないと思うんですよ。先ほど長官が言われたように、必要な林分がありながら実際に間伐がやられない。この間伐をやれないのが最悪な状況の災害に結びつくということになりますので、このあたりは、災害復旧等いろいろな観点から林野庁ももう少し頑張っていただくことを申し添えて、これを余りやっておりますと時間がございませんので、次に移らせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 これは私の地元のことで恐縮なんですけれども、実は松阪市というところも七割は山林でございます。これまで大変、県やら国の補助事業をいただいて進めておるわけでございますが、来年度に、これは私、大変評価もしておるんですけれども、千二百万円の事業費で、放置林約二十二ヘクタールを大規模間伐して、生産林活性化モデル事業を始めさせていただくんですけれども、山林の傾斜上下に沿って行う列状間伐の方法で約二千五百立米の木材生産を見込んでおります。

 そして、あわせて、小学校に、何とこれは五年かそのぐらいの計画だと思うんですけれども、木製品の机、いすに全部導入していくというような、こういううれしい予算をつけて頑張っていただいておるんです。

 特に間伐の推進とか、森林整備の実効性の面と、間伐の用途開拓と供給促進という点から、喫緊の、緊急の政策課題として私は実は認識しておるところでございますので、そういう意味におきましては、これからそういう予算と間伐促進に対する予算確保を十分にしていただくということで、よろしくお願いいたしたいと思うんです。

 ここで少し、間伐材の用途開発をどう具体的に進めていくかということだけ答弁いただければありがたいと思いますので、よろしくお願いします。

川村政府参考人 これから間伐材というのがますます量としては出てくるわけでございまして、いかに間伐材の利用拡大を図るかということが一つのキーポイントになるかということは、委員御指摘のとおりでございます。

 そして、幸い技術等がかなり発達をいたしまして、従来なかなか利用できなかった合板への利用、それからまた集成材への利用、また集成材の中でも、従来はかなり直径が大きくないと利用できなかったものが、小さな直径のもの、小径木でも縦型に使うとか、いろいろな工夫をしていただいて使えるようになってきたということがございます。そういうこともございますし、また、バイオマスとかそういう利用もございますが、とにかく間伐材の利用を促進する、供給に見合って利用の方をちゃんとふやさないことには、まただぶつくということになりますので、そこは十分留意しながらやっていきたいというふうに思っております。

森本委員 ありがとうございました。

 それと、間伐の有効利用はやはり木材だと思うんですよ。木の利用というのは一番、いろいろなものに利用しますが、それは限界もありますし、ですから、木造住宅供給をどう促進していくかということが、究極的には森林整備と資源の再生産という健全なリサイクル社会を生むというようなことを私は信じております。

 その点、林野庁として、国土交通省の住宅局などとどのような政策の連携を図ってきたのか、そしてまた、それはどの程度の政策効果を上げてきたのか、少し聞かせていただけるとありがたいのですが。

川村政府参考人 木材の利用を高める上では、住宅への利用、これが大切だということは御指摘のとおりでございますし、量的にはくためにも、住宅の使用量がかなり多うございますので、ここで促進するということがやはり量的にも伸びるということになると思っております。

 そして、お尋ねの国土交通省との関係でございますが、いろいろ木材を利用する場合、住宅に利用する場合、技術的な問題、基準の問題等もございますので、それをできるだけ共同で開発をし、普及をしていくということで、共管の日本住宅・木材技術センターというところがございます。そこで木材の利用と木材住宅の生産に関する技術の開発なり普及ということをやっておりますし、品質、性能の向上、また木材住宅の近代化、合理化に関する試験研究、こういうものを共同で実施をさせていただいております。

 また、国土交通省とも合同で、課長レベルでございますが、勉強会を開きまして、これまでどういう基準緩和なり利用促進のための措置が講じられたかということもお互い確認をし合いまして、木を使う、ここまで使えるという資料を、パンフレットをつくって普及する、そういった活動もしております。

森本委員 ありがとうございます。

 先般、質問の通告の際に、「木材需要(供給)量の推移」という一枚の資料をいただいておるんです。これによりますと、平成十六年の木材需要が八千九百八十万立米なんですね。そのうち国産材は何と千六百五十六万立米。ここから今大臣が言われた一八%が出てくるかと思うんですけれども、例えばこの中で、平成二十二年の目標を二千五百万立米と、一・五倍にしていただいておるんです。この目標というのは可能なんでしょうか。

 これはかなり高い目標が掲げられておりまして、私、これは通告にもなかったと思いますが、ちょっとこの資料、ないですか。ごめんなさい、ないようでしたらまた……。時間も、私の時間が少し食い込んでしまいましたので、時間を終わらなければいけませんので。あと十分ほどでございます。

 例えば、一八・四%の自給率を景気のいい時代まで伸ばしていく、大体七から八伸ばすと、かなり健全な林業としてのなりわいができた時代なんですね。もう少し木造率を上げていく。

 それと、参考資料として、例えば五%、この一八・四を五%上げていくことがどれぐらいの面積につながるんですか。それを上げていくと間伐促進の、京都議定書の数字にずんずん上がっていくと思うんですよ。国の補助分だけでなしに、あと五%上げていくということですと、自家所有の山林の、自分たちが独自でやっていただく力になると思うんです。今の状態ですと、補助金以外入らない山林は、ほとんど山に手が入っていないという状況が現実にあるわけですね、片一方。その辺は、長官、よろしいですか。

川村政府参考人 自給率の上昇と木材の利用の関係、これは確かに概念としましては、自給率の上昇というのは、国産材の利用量が増加して林業の採算性を好転させる、それによって森林所有者等が行う間伐等の森林整備が一層進む、こういうふうなことは定性的には考えられます。

 今も申されたように、では、ある程度の量で定量的にできるのかということになりますと、これはいろいろな前提を置かなくちゃいけないので、ちょっとお時間をいただいて、勉強させていただきたいと思います。

森本委員 結構です。後から資料としていただけたら大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それと、今、輸入材の問題があるんですけれども、これは通告していないんですが、これはどのように大臣、お答えいただけますか。

 今、欧州のホワイトウッドにほとんどを押されながら、日本の杉材というのが壊滅的な状況になっておるんですよ。これは品確法とかいろいろあるんですけれども、北欧の材というのは、それは余り突っ込むといかぬと思うんですけれども、緯度が違うし、日本の風土には恐らく私は大変な問題が出てくるんじゃないかと思うんです。

 ですから、この辺をどんどん使っていくということが日本の住宅建築に私は大きな問題を起こしていくんじゃないかなという指摘をさせていただきたいんですけれども、これは売り手側と買い手側がありますから、商いの世界なんですけれども、大臣に少しその辺についてコメントいただけたら、ぶしつけで申しわけないんですけれども、お願いできないかなと思います。

中川国務大臣 私はもとより素人でございますけれども、先日、私のところで、ある住宅メーカーが国産材を使っているということで表彰を私からさせていただきました。やはり国産材を使っていい住宅ができるんだと。ただし、一つは乾燥の問題とかいろいろ難しい問題があるけれども、これからは国産材を、先ほど申し上げたように、ニーズにこたえられる、そしてまた、きちっと品質がそろったロットが確保できれば、国産材でどんどん住宅をつくっていきたいんだ、これは大手住宅メーカーの社長さんがわざわざおっしゃっていました。

 したがって、先ほど冒頭、問題点から森本委員とのやりとりが始まったわけでありますけれども、そういうところがクリアできれば、やはり木というのは地産地消であると思いますので、卑近な例で恐縮ですけれども、例えば北海道の木を、木といっても小さな木ですけれども、私の東京のささやかな庭に植えてもなかなかうまくいかない。まして、遠い、何千キロも離れたところの木を持ってきて材としてやるというのは、なかなかこれは難しいんだろうというふうに、私はある意味では期待も込めて、木も当然生き物ですから、地産地消、その地域でやはり一番木らしさを発揮するんだろうと思いますので、そういう目的を持ちながら、国産材、いい木を大いにいろいろな場面で活用していくために我々も仕事をしていきたいし、また大変お詳しい森本委員にもいろいろお知恵をいただきながら、そういう木の地産地消という面からも、この夢の実現に向かって何とか努力をしていきたいというふうに考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 そういうところからつけ込むわけじゃないんですけれども、地域では、地域材を使った住宅建設に対して低利の融資とか利子補給とか補助金とか柱材を無償提供、いろいろな支援で頑張っていただける地域があるんですけれども、これらを国が補完するというようなことは非常に難しいのかなと。例えば、交付税算入とか特別な地方の財政措置等に支援をいただくというようなことが、国としてはWTOの関係で難しいのかどうか、この辺についてちょっと簡単に、時間もございませんので結構でございますので、よろしくお願いいたします。

川村政府参考人 それぞれの地域でとれました材を使って地域で住宅をつくっていく、これはもうまさに今大臣からもお答えを申し上げましたとおり、非常に意義あることで重要なことでございますし、この気候風土にも合うことだと思っております。私どもは、そういう意味で、住宅におきます地域材の利用、こういうものを積極的にPRをしております。

 一方、自治体レベルで今申されたような各種取り組みがなされていることも承知しておりまして、我々も総務省サイドにいろいろお願いをしまして、地方交付税の中でそういうものに対応していただくということで始まっておりまして、今、年間六十億ほどの地財措置が講じられておるというふうに承知しております。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、最後にちょっとバイオマスについて、これも急ぎますが、今の点については林野庁長官、またいろいろな面で後でしっかりこれからも質疑をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 木質バイオに移らせていただきますけれども、利用促進は、徐々にではあるが整備をされてきていると認識をしております。

 新エネルギーの利用等の促進に関する特別措置法、これは荒井議員も触れていただいたんですけれども、バイオマスが新エネルギーとして位置づけられたことと、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法、これは通称RPS法と呼ばれておるようでございますが、本法律が二〇〇三年四月から全面施行されて、電力供給者は、電力の一定割合を新エネルギーで供給する責務を負うことになったわけです。

 一方、一般及び産業廃棄物の処理に係る法規制が強化されて、事業者には分別とリサイクルが義務づけられております。製材工場から排出される残廃材、開発工事等で除去される支障木や、ダム等に蓄積している流木も産業廃棄物に該当をいたします。さらに、集材や造材に伴う林地残材も、現場以外のところで処分するとなれば産業廃棄物扱いになるわけでございます。

 バイオマス利用という点では、法制上の環境が整ってきているとは言えますが、実態はどうなっておるのか、お尋ねをさせていただきたいのと、環境省は、産業廃棄物行政の推進との関連でどのような認識を持っておられるのか、もうここは聞かせていただいて終わらせていただきたいと思うわけでございますが、よろしくお願いいたします。

川村政府参考人 バイオマスの問題は、我々も非常に重要な課題だと思っておりまして、御質問の中にありましたような製材残材等を利用しました木質バイオマスの発電施設、あるいは熱供給施設、あるいはペレット製造の設備や公共施設へのペレットボイラーの導入等を支援しております。

 そして、現実にも、木材資源を活用いたしましたそういったところで発生をいたします電気や蒸気、こういうものを活用されまして木材乾燥に利用されているといったような事例が増加をしております。

 そういうことで、我々も引き続き十八年度も、バイオマスとして木材の成分を抽出するとか、あるいは木質系の粗飼料に使う、そういったものも含めて、今後総合的に利活用する体制をさらに進めていきたい、こういうふうに思っております。

小林政府参考人 環境省としての木質バイオマスについての取り組み、こういうことでございます。

 まず、廃棄物についてのお尋ねがございました。

 現在、産業廃棄物になっております木くずの排出量、全国では五百九十一万トン強というふうに承知をしてございます。こういったものが、マテリアル利用、ボードになったりあるいは熱利用されたりというようなことでございますが、全然利用されないで最終処分されておりますのが七%ぐらいある、こういう状況でございます。

 また、こういったバイオマス、これから間伐等々いたしますと、さらに出てくるということも考えられます。こういったものを、ただ埋めるというのではなくて、例えば、エネルギーのかわりに使うということですと、森林を元気にし、かつ石油代替にもなるということでございまして、一挙両得と。私どもとしても、大変大事だというふうに思っております。

 環境省の方では、石油特会等を利用いたしまして、例えば、間伐材を火力発電設備で混焼させるというようなこと、あるいはエタノールを製造すること、あるいは、先ほども委員の方から御指摘ありましたけれども、公共施設、住宅、こういったことにもちろん使うこともありますが、そこに、燃料としてはペレットストーブにして供給すること、予算としては少なくて申しわけございません、数十億ではございますけれども、こういったようなことを現在進めているところでございます。こういったことを引き続きやってまいりたいというふうに考えてございます。

森本委員 これで終わりますが、大臣、今回の質問は、木材の住宅の問題でも、税制の問題は総務とか財務とかいろいろ絡んできますし、環境省、費用対効果の中でやはりいろいろ問題はあると思うんですけれども、そういった全体の中で、一部署でなしに、通産の方からもいろいろ勉強していただいておりますし、どうぞ、そういう大臣のキャパを生かしながら、ひとつ全体でまとめていただくような、そういういい政策をつくり上げていただくことを御要望申し上げまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 アメリカからの輸入牛肉問題について、大臣の考え方をお聞きしておきたいというふうに思います。

 予算委員会で集中質疑を行って、私もその場で発言しております。ただ、この問題、クリアしなければならない大きな問題がまだまだ山積しているというふうに私は思っています。

 予算委員会での答弁では、輸入再開に向けてどう考えているのかということも質疑されました。そのときに、アメリカからの調査報告書が来なければそれは議論することはできないと大臣がおっしゃっておりましたけれども、この調査報告書が来て、今農林省と厚生労働省で鋭意検討している段階だというのは承知しておりますけれども、現段階で、輸入再開プログラムというか、乗り越えなければならない多くの課題があると私は思うんですけれども、そのことをどのように考えているのか、第一番目にお聞きしておきたいと思います。

中川国務大臣 一月二十日のあのプログラム違反が発覚して以来、原因究明と再発防止をアメリカ側に強く求め、アメリカ側も、自分たちの考えられないミスであったということで、徹底的に我々の要求にこたえるということで、十七日に報告書が参りました。

 四百数十ページにわたるものでございまして、しかも、かなり専門的なデータも入っているようでございますので、現在、英文、あるいはまた仮訳の日本文でもって、厚生、農水で徹底的に分析をしているところでございますが、一つは、できるだけ早くこの文書を、ここは日本でありますから、日本文にきちっとした形でして、公表をまずすべきであるということを指示しております。

 これは、当委員会初め国会、その他、国民の皆さんも含めて、一体どういう報告書が来たのかということは一刻も早くお知りになりたいでしょうし、また、何か時間延ばしをしているように思われるということも、デリケートな時期だけに、これも避けなければいけないということで、正確かつ迅速にやれという、かなり無理を私は命じているところでございます。できるだけ早く報告を公表させていただきたいと思います。

 それから、プログラム違反であって、プログラムそのものの問題ではございませんので、これについて運用上どういう問題点があったのか、再発防止についてどういう、向こうが言ってきたのかについて、日本側としてもいろいろまた質問をしたり、あるいは疑問を投げかけたりする作業も今後出てくる可能性もあります。そういうことを次の段階で、アメリカに対して、今度はこっちがボールを投げなければならないということを考えております。

 目標は、二度と起こらない、安全な、日本の基準に合った米国産牛肉の輸入が再々開をするためにやっておりますが、いつその時期になるかということは、現時点では全く私は想定をしておりません。

 今やるべきことは、きちっとした報告を国民の皆様に公表をし、そして、日本側から向こうに対して、この報告書に対して、必要があれば問い合わせをしたいということを次の段階の仕事として今考えている、現在は、その文書の精査中であるということでございます。

菅野委員 大臣から触れられると思ったんですが、国民の前に公表する、調査報告書を公表するということは、消費者の国民の理解を得ていくということだというふうに思うんですね。このことなしには、先ほども午前中の質疑で、大臣は、輸入再開したとしても、消費者の理解を得なければ輸入再開したって意味がないんだ、消費者の理解を得ることが非常に重要なことだというふうな答弁をなさっておられました。この輸入再開のプログラムの中にそのことがしっかりと位置づけられていかなければならないというふうに私は思うんですね。

 そして、消費者の理解を得るというのは、BSEが日本国内で発生して、そして多くの議論がなされて、そして、食品安全基本法をもとにして食品安全委員会がつくられました。これは、リスク管理機関とリスク評価機関を完全に、前は一緒に行っていたのを、分離して、独立性を保つということなしには、食の安全、安心を確保することができないんだという立場だったというふうに思っています。

 そうしたときに、私は、予算委員会でもこの議論を行いました。食品安全委員会の委員長や担当大臣は、この評価は生きているんだという一点張りの議論だったというふうに思います。今も、中川大臣がそのことをにおわせているわけでございますけれども、この食品安全委員会の、結論への附帯事項として、輸出プログラムが遵守されない場合は評価結果は成立しない、こう言っていること、この重みというのは非常に大きいというふうに私は思うんですね。

 そうしたときに、消費者の理解を得るためには、リスク管理機関として、完全にこのEVプログラムがアメリカの国内政策と照らし合わせて守られるんだというのを、独立した食品安全委員会、評価機関としての評価を得る必要があるんだというふうに私は思っているんです。

 そのことは、厚生労働大臣や農林水産大臣が、この輸出プログラムが完全に守られるかどうかという、この諮問を食品安全委員会に行うべきだ、そのことなしには消費者の理解を得ることはできないんじゃないかというふうに私は考えるんですけれども、この考えについて大臣の見解をお聞きいたします。

中川国務大臣 まず、報告書を公表すれば消費者の判断が出るかどうかということについては、私は、それが消費者の最終判断かどうかは、もちろん消費者の判断ですけれども、その前に我々がやることがあるということでありまして、我々がやることも含めて最終的に消費者に御判断をいただく。

 消費者に御判断をいただく最終というのは、これが今回、アメリカ側、場合によっては日本側も含めて、リスク管理のためにやるべきことがあればきちっとやることによって、消費者は、米国産の牛肉の輸入がまた再々開されても、それはそれで問題はないんでしょう。

 ただ、食べる食べないというのは消費者の判断でございますから、リスク管理がきちっと守られるということと消費者が食べる食べないとは、これまた別問題でございます。

 他方、今回の問題は、あくまでもリスク管理、そして、リスク管理機関である厚生、農水とアメリカ側とでつくられた約束にアメリカ側のリスク管理が違反をしたわけでございますから、このプログラム自体の信頼性が揺らいだということではないということは、今も御指摘のように、農水、厚生とは全く別組織の食品安全委員会の委員長さんがおっしゃっているわけでありますから、それについて我々が賛成とか反対とかいうことではなくて、事実関係において食品安全委員会の委員長さんの御判断があるわけでございます。

 したがいまして、我々は、リスク管理機関として、アメリカに対して、アメリカのリスク管理機関であるアメリカ農務省、それから何よりも食肉処理関係の企業が、きちっと原因究明と再発防止、特に再発防止についてきちっと日本が満足するような形でやっていただくということが、我々にとって今アメリカに要求することであり、我々の使命であるというふうに認識をしております。

菅野委員 農水省と厚生労働省とで輸出プログラムを、アメリカとともに、リスク管理機関としてつくり上げました。そして、それが完全に守られたならば、国内のBSEリスクの違いというのは小さいという結論ですよね。完全に守られたならばという表現です。

 それで、なぜ、それじゃこの特定危険部位が日本に入ってきたのか。それは、アメリカの食肉処理場の問題あるいは農務省の問題だけじゃなくて、アメリカの牛肉全体の、アメリカと日本の考え方の違いというものが存在するから今回の事態が生じたんだと私は思うんですね。断言してもいいと思うんです。特定危険部位は三十カ月齢以上しか国内流通する部分は処理していないんですから、そういう違い。それから、輸入牛肉に対する、日本向けの、日本の消費者の感覚とアメリカの国内の感覚の違いというものも大きいというふうに思っています。

 そういう体制の中で、違いがある中で輸入再開をしようとしていくわけでございますから、それは、この違い、原因が根絶、必ず輸出プログラムが守られるアメリカの国内体制が整うということを第三者の評価機関に評価してもらうことが必要なんじゃないのかな、これが私の主張なんです。それはずっと平行線でございます。

 しかし、私は、消費者の理解を得るという立場からすれば、このことは避けて通れないことだというふうに思っているわけでございますけれども、大臣、もう一度その辺について答弁願います。

中川国務大臣 去年の十二月の八日に出されました食品安全委員会の答申は、EVプログラムが守られていれば日米のリスクの差は非常に小さい、しかし、最後のところで、もし輸出プログラムが遵守されない場合はこの評価結果は成立しないと。

 これは食品安全委員会の御判断でございまして、そして、今回はそのリスク管理機関である、日本でいえば厚労省と私どもが、アメリカに対して、きちっと約束したはずのことを、食肉業者、それから何よりも検査官である農務省の職員が、危険部位の脊柱が入っていたということが問題なのでありまして、これが二度と発生しないということが担保されなければ、再開のめどは現時点ではもうこれはいつだということは当然申し上げられないわけでありまして、再発防止のための、この報告書が来たというのは第一段階でありまして、今度はその報告書を我々は精査しなければいけない。そして、食品安全委員会に対して御報告もいたします、あるいはまた、国民に対しても政府のホームページか何かを通じてこれは当然公表をさせていただきます、しかも、それを早くやれということを私は命じております、そういう作業を今やっているということでございます。

菅野委員 調査報告書の中身とかこれからの推移を見ながら、これからもこの議論は行っていきたいというふうに思っています。

 ただ、今大臣が答弁しているように、これは原因は確かにアメリカにあると思います、第一義的な責任というのは。ただ、これまでの輸入再開までに至る経過と、それからその後の国内的な日本政府等の対応について、今日、再度輸入停止を行った責任というのは免れないというふうに私は思うんですね。

 私は、食肉業界に多大な影響を及ぼした今日の事態であるということを考えたときに、大臣として、政府のこれまでの一連のことに対する責任をどのように感じているのか、この点をお聞きしておきたいというふうに思います。

中川国務大臣 責任と損害が生じたことの間に因果関係があるかないかということを区別しながら、まず答弁をさせていただきます。

 確かに、御指摘のように数百トンの米国からの肉が税関でストップをしているわけでございます。そういう状況でありますから、輸入をした方々あるいは米国産牛肉を久しぶりに食べられると思って楽しみにしていた消費者の方々を含めて、金銭的あるいはまた食の安全、安心あるいは満足という観点から、それができなくなったということは我々も承知をしております。

 しかし、仮にこれが日本の動物検疫あるいは厚生労働省の検疫所を通過して、税関も通過をして、水際をすうっと通ってしまって、後になって国内で発見されたということは、これは大問題であり、リスク管理機関としての我々の責任は極めて大きいものがありますけれども、我々は、それを水際のぎりぎりのところでありますけれどもきちっととめたわけでありますから、しかも、伝染病予防法四十条に基づいてすべての米国産の牛肉等を停止したわけでございますから、我々は、評価をしてくれとは申しませんけれども、きちっと水際でとめてそういうものが国内に入らなかったということでございます。

 そのことと、輸入業者、あるいは期待をしていた食肉関係のお仕事をされている皆さん方、あるいは食べたいと思っていた消費者の方々に対して、いろいろな意味で、ダメージあるいはまた期待外れ、あるいは失望を与えたということも否定はいたしませんけれども、それと我々のやっているリスク管理の話とは、これは直接的には結びつかないというふうに答弁をさせていただく以外にないというふうに考えます。

菅野委員 この点についても、これからの推移の中で、いろいろな形で議論していきたいというふうに思っています。

 次に、大臣に、先ほども議論がありましたけれども、品目横断的経営安定対策については、法律案が出てきますから、そのときに議論をさせていただきたいと思うんですけれども、その政策によって非常に打撃を受けるであろう中山間地域農業、こういう集落の崩壊を招きつつあるこの中山間地域について、大臣、今の現状をどうとらえているんですか。これを冒頭お聞きしておきたいと思います。

中川国務大臣 中山間地域等いわゆる条件不利地域につきましては、本当に厳しい条件の中で農業等をやられているわけでありますが、他方、そういう地域で農業に従事されていることによる多面的な効果、機能というものは非常に重要なものがあるわけでございます。

 したがいまして、我々も、中山間地域、条件不利地域での農業、あるいはまた林業も含めて、いろいろな支援をしているわけでございます。直接支払い等々、あるいはまた生活基盤整備、あるいは、産業基盤としてのいろいろな整備等々をやってきているところでございまして、今後もこういう地域について、山が荒れれば、これはもう下流も含めて大変な被害にもなるわけでありますし、また、中山間地域で非常にいい農産物、林産物をつくっているところもありますから、そういうところの支援も含めて、中山間地域に対する積極的な応援を今後ともやっていきたいというふうに考えております。

菅野委員 大臣、本当に中山間地域農業というものが、減反政策で転作作物は植える状況ではなくて、耕作放棄という状況になっていっています。そして、その結果として、多面的機能が、本当に後世に伝えていくことができるんだろうかという非常に厳しい状況になっております。担い手もその中山間地域では育っていなくて、廃屋が目立つというような状況にもなっています。

 こういう危機的な状況をとらえて、そして、緊急に品目横断的経営安定対策というものを一方で打ち出しました。この政策というのは、私は、北海道や条件のいい地域に対する施策と思えてなりません。そう考えたときに、中山間地域に新たなもう一本の筋金というものを入れて、将来、政府としては中山間地域をこういうふうに育てていくんだという指針というものをつくるべきだというふうに思っています。そのときに農業だけの指針ではだめであって、そして、中山間地域ですから、農業と林業政策と一体となったもう一つの柱を私は立てるべきだというふうに思うんです。

 そして、林業の問題でいえば、先ほども議論がなされました。木材価格が本当に低迷して、価格の上昇という傾向は見られません。そして、山に育っている木を切って、そして売ったとしても、林家に入るお金というのはほとんどないという状況で、今売ったってどうしようもないということで、そして売るのをためらっている状況であります。

 そうしたときに、農業に対する経営所得安定対策と同じように、林業に対しても、木材を売ったときに手に残る、そういう施策も含めて検討すべきじゃないのかなというふうに私は思っています。そして、農業と林業の複合的な一体経営ができて、その集落に残れるという状況を国として保障していくことが今必要なんじゃないのかなというふうに思っています。

 確かに、この条件不利地域への農業での直接所得補償というか、そういうものを行っているのも知っています。林業政策としての直接所得補償的な考えでもって行っている施策も知っております。そういうものをしっかり再度見直して、中山間地域における集落を存続させていく、農林水産省としての政策をぜひ考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

中川国務大臣 いわゆる都市圏以外の地域、つまり農林水産地帯を、農政だけ、林政だけ、水産行政だけで縦にぶつっと切って、それぞれでやるということがその地域にとって真にプラスの政策かというと、御指摘のように、私は総合的にやるべきだというふうに思います。農業と漁業一緒の地域があるわけですし、山と農業一緒の地域がありますから、総合的にやっていくべきだと。それが、そこに住んでいる方々、お仕事をされている方々、地域全体にとっての本当の意味の施策になっていくんだろうと思います。中山間地域対策なんというのは、森林率だとか傾斜だとか、いろいろな条件でもってそういう施策が一部取り入れられておりますけれども、もっともっと総合的にやっていくという御指摘は、私もそのとおりだろうというふうに思っております。

 ただ、今回、経営所得安定対策、品目横断的にやるんだ、だから林の方もやったらどうだということになりますと、御承知のように、毎年毎年、あるいは場合によっては年に何回も収穫ができるものと、林のように、間伐材を含めても十年か、そしてまた、伐採期になると五十年とか四十年とかいうものと同じように考えられるかというと、施策として同じようなものを導入しろというと、そこはなかなか現時点では難しいものがあるんだろうと思っております。

 いずれにしても、林の方も水の方も基本的な議論をこれから始めてまいりますので、私としては、農は農だけ、林は林だけ、水は水だけということじゃなくて、面として考えていくという観点から、できるだけ実態に対応できるような政策ができますように努力をしていきたいというふうに考えております。

菅野委員 大臣のその決意は、ぜひ取り組んでいただきたいと思いますし、中山間地域においてはもう本当にこの担い手が育っていないんです。山に手をかけようとしても、かける人が育っていないという現状なんですね。そして、間伐も行われないで本当に荒れてしまっている民有林というのが存在します。そういう危機的な状況の中で、よし、私はこれから農山村にあるいは漁村に住みついて頑張っていくぞという決意を抱かせるような一つの方向性をつけていかなければならないというふうに私は思っております。

 いろいろな方途が私なりに頭の中にあるのですけれども、政府として、ぜひいろいろな十分な検討を行っていただきたい、このことを強く申し上げて、質問を終わります。

     ――――◇―――――

稲葉委員長 次に、内閣提出、独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣中川昭一君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中川国務大臣 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 政府におきましては、これまで小さくて効率的な政府の実現を図る観点から行政改革を積極的に推進してきたところであり、この行政改革の一環として、平成十六年十二月に閣議決定された今後の行政改革の方針等において、平成十七年度末に中期目標期間が終了する独立行政法人の組織、業務全般の見直しを行うこととしたところであります。

 この法律案は、こうした政府の方針を受け、平成十七年度末に中期目標期間が終了する農林水産省所管の独立行政法人について、農業・生物系特定産業技術研究機構等四法人の統合、水産総合研究センター等二法人の統合、役職員の身分の非公務員化等の見直しを行うものであります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構法の一部改正であります。

 農業・生物系特定産業技術研究機構、農業工学研究所、食品総合研究所及び農業者大学校を統合し、農業生産から食品の加工、流通に至るまでの一連の技術についての試験研究を一体的、総合的に行うとともに、研究成果を活用して先端的な農業技術の教授を行うことができるようにすることとしております。

 また、民間において行われる生物系特定産業技術に関する試験研究に係る業務について、出資・貸し付け方式から委託方式に変更することとしております。

 第二に、独立行政法人水産総合研究センター法の一部改正であります。

 現在、さけ・ます資源管理センターが行っているサケ類及びマス類のふ化及び放流の業務について、民間による実施体制が整った資源増大目的のものを除き、水産に関する試験研究を担う水産総合研究センターに移管し、これらの業務の効率的、効果的な実施を図ることとしております。

 第三に、独立行政法人種苗管理センター法の一部改正であります。

 現在、種苗管理センターが行っている茶樹の増殖に必要な種苗の生産及び配布の業務について、府県等による供給体制が整ってきたこと等から、その役割を終えたものとして、これを廃止することとしております。

 第四に、役職員の身分の非公務員化であります。

 民間との人事交流等の面でより自由度を高くするため、統合後の法人を含む十法人の役職員の身分を非公務員とする一方で、業務運営の中立性、公平性を確保する観点から、役職員に秘密保持義務を課すこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

稲葉委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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