衆議院

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第6号 平成18年3月23日(木曜日)

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平成十八年三月二十三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 原田 令嗣君 理事 二田 孝治君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 山田 正彦君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      今津  寛君    小野 次郎君

      金子 恭之君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    斉藤斗志二君

      谷川 弥一君    中川 泰宏君

      並木 正芳君    丹羽 秀樹君

      西村 康稔君    鳩山 邦夫君

      福井  照君    御法川信英君

      渡部  篤君    荒井  聰君

      岡本 充功君    川内 博史君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      神風 英男君    仲野 博子君

      松木 謙公君    森本 哲生君

      山岡 賢次君    丸谷 佳織君

      菅野 哲雄君    森山  裕君

    …………………………………

   議員           山田 正彦君

   農林水産大臣       中川 昭一君

   厚生労働副大臣      赤松 正雄君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       松本 義幸君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  西川 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   政府参考人

   (水産庁長官)      小林 芳雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       迎  陽一君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  南川 秀樹君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  仲野 博子君     川内 博史君

  松木 謙公君     神風 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  川内 博史君     仲野 博子君

  神風 英男君     松木 謙公君

    ―――――――――――――

三月十七日

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省大臣官房技術総括審議官染英昭君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長中川坦君、生産局長西川孝一君、経営局長井出道雄君、農村振興局長山田修路君、水産庁長官小林芳雄君、内閣府食品安全委員会事務局長齊藤登君、厚生労働省大臣官房審議官黒川達夫君、健康局長中島正治君、医薬食品局食品安全部長松本義幸君、経済産業省大臣官房商務流通審議官迎陽一君、環境省自然環境局長南川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、農林水産関係に関する一般質疑ということで、私は幾つかの項目について御質問させていただきたいと思います。

 まずは、民主党として取り組んでおります食の安全議員連盟、こちらの方で私は事務局長をさせていただいております。食の安全というのは、委員各位も大いなる関心をお持ちのことだと思いますし、大臣も大いなる関心をお持ちのことだと思いますけれども、昨日、私、茨城県にあります食品の安全に取り組んでいる研究所を訪問させていただきました。この研究所の中で行われているさまざまな研究、食品総合研究所という名前なんですけれども、本当に、私たち、食の安全に大いに関心のある議員メンバーにとっても大変に興味深い、意義深い視察をさせていただきました。

 まさしく今国会に、政府は、食料の今後の供給、また農家のために大いなる期待を持っていただかなければならない、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、そしてまた我が党は、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案、こういった法律を提出させていただいて、それぞれ審議を進めていこうというところであります。

 そういった中で、昨日拝見をさせていただきました、例えば小麦を微粒子に粉砕して、本来小麦の外側にあるたんぱく質、そしてうまみ成分グルテン等を含んで、例えばパンがつくれる。これまで強力粉のような粉がなかなかつくれなかったと聞いていたのに、パンがつくれて食べれるようになった。なかなか商品価値としてもあると思います。そしてまた、その一方で、ソバも同様に微粒子へ粉砕することで容易に十割そばをつくることができ、これがまさに現場において、十割そばをより容易に供給する方法となるという期待が込められています。

 この独立行政法人、別によいしょをするわけではないけれども、特許等を幾つか持って、自己収入も今後確保していくよう努力していく、こういうふうに言われている。大変に私としては心強かったんですが、そういった中で、今回のこの諸般の研究が、私たち、我が党が主張している食料自給率五〇%、政府案は十年後に四五%というふうに伺っておりますが、今後の食料自給率上昇にどのように寄与していくおつもりか、また研究をどのようにお進めいただくのかどうかについて、お答えをいただきたいと思います。

染政府参考人 独立行政法人食品総合研究所の研究についてお答えを申し上げます。

 食料自給率の向上を図るためには、やはり消費者ニーズに対応した農作物の供給を行うことが極めて重要であると考えております。

 特に、最近の農作物の消費におきましては、加工食品や外食などの比率が高まっておりますことから、試験研究の分野におきましても、食料・農業・農村基本計画に定められておりますように、加工適性にすぐれた品種や新たな加工技術の開発導入を推進することとしております。

 この一環といたしまして、食品総合研究所では、委員に御視察いただきましたように、小麦の品質、加工適性についての基礎研究を通じまして、風味と栄養性に富む小麦の加工技術の開発に関する研究などを行ってきたところでございます。

 このほかに、消費者ニーズに対応した研究、あるいは食料自給率の向上に資する研究という意味では、食品の持つ機能性の解明と評価技術の開発や食品の新たな加工利用技術に関する基盤的研究、また食品の安全性に関するリスク分析のための手法開発など、食品に関する研究を総合的に推進しているところでございます。

 今後とも、消費者のニーズに対応した食品研究を総合的に進めまして、食料自給率の向上に寄与してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

岡本(充)委員 ぜひ食料自給率の向上に寄与していただく研究をしていただきたい。

 実は、以前の一般質問、農林水産委員会の質疑の中でも、私、スパゲッティの話をさせていただきました。なかなか日本産の小麦でスパゲッティをつくるのが難しく、何年後にできるかどうかはちょっとお約束しかねるというような答弁だったやに記憶をしておりますけれども、スパゲッティだけとは言いませんけれども、日本の消費者の食のニーズというのは非常に多様化しておりまして、例えば、スパゲッティも、国産の小麦でできるようになればなお一層食料自給率の向上に寄与すると思いますし、国産の小麦でつくったスパゲッティ、ちょっと付加価値をつけて売ることも可能なんじゃないかと想定をするわけでありまして、こういった取り組みもぜひお進めをいただきたいということを改めてお願いをしておきます。

 さて、もう一点目は、鳥インフルエンザの状況について、同じく、私、視察にきのう行ってまいりました。茨城県の旧水海道市、今は常総市という名前に変わっているそうですけれども、こちらで天王原養鶏園というところにお邪魔をし、現地視察をさせていただいて、そして、実際にその経営者、古平さんという方でしたけれども、お話を伺い、県の担当者からもお話を伺ってまいりました。

 そういった中で、大変苦労をされて経営を再開されている経営者の方、そしてまたその経営者の方からのいろいろなお訴えの中で、ぜひ大臣にもお聞きをいただきたいという部分がありましたので、それについてもぜひお伝えをしたいと思っています。

 今回、鳥インフルエンザにおいて発生したウイルスのタイプは弱毒タイプのH5N2亜型という形の、ウイルスが分離されたり、また抗体が陽性であったりという状況で、要するに鶏自体が死んだという状況ではなかったそうなんですね。そういった中でも、もちろん抗体が陽性であったり、ウイルスが分離されたということで殺処分をされたわけですが、こういった養鶏場の経営者に対して行われている支援、この支援の中で一つ御要請があったのは、実際にお支払いされる、例えば互助金なり、助成金なり、いろいろな手当金など、交付金があるわけなんですが、こういった交付金を合算していくと、鶏一匹当たりおよそ千五、六百円のお金にしかならないというところの中で、もう少し上積みはできないのか、こういうような御要請がありました。

 政府において実際にいろいろな試算をされているんだとは思いますけれども、もう一段の経営安定に向けた支援というのができるのか、また、その経営者の方も言ってみえましたけれども、これまでの負債等を抱える中での決済が来る、現金収入がなくなる、鶏がいなくなりますからね。そういった中で、非常に苦しい思いをした時期もあるというふうに伺っております。

 そういった意味での交付金、例えば今回の天王原養鶏園での実際の交付金の支給の日は、互助金の方が十月七日、手当金の方が十月二十一日、助成金はことしの二月十四日、それぞれ八月に今回殺処分が行われて、十月までの間、現金収入が途絶えるという形になるのかと私は思うわけなんですが、こういった部分について、例えばもう少し手直しを加えるとか、そういった御予定もしくはお考えはありますでしょうか。お答えいただきたいと思います。

中川政府参考人 農家に対します支援策の具体策ということでございますけれども、先生も今御質問の中でも引用されましたが、まず家畜伝染病予防法に従いまして、患畜あるいは疑似患畜に対しては手当金が出されます。その疑似患畜の場合の手当金というのは評価額の五分の四でございますから、その時点で八割はまず補てんされるということでございます。

 それから、その他、移動制限がかかっているような場合のかかり増し経費につきましては、またこれも家畜伝染病予防法に従いまして、売り上げの減少額あるいはえさ代等についても助成がございます。

 さらに、農家の方とそれから国とが一対一で積み上げました家畜防疫互助基金に入っておられる方につきましては、この互助基金が経営再開のための計画を立てた時点で支払われることになります。こちらの方も一羽当たり六百七十円ということでございますので、先ほどの手当金なりそれからこの互助基金を足しますと千五百円ぐらいになります。

 他方で、新たに鶏を導入しようとしますと一羽当たり大体七、八百円ではないかというふうに思います。

 したがいまして、確かに一定の期間、販売がなくなるという期間はございますけれども、互助基金の積算におきましては、その間の固定費なども根拠にしてこの単価を設けておりますから、そういった面では、国のお金も使いながら経営を支援していくという限りにおきましては、私どもとして適正な根拠、積算単価というものに基づいてこれが定められているというふうに理解をいたしております。

 ただ、その間にあっても運転資金がどうだというところは確かにあるかと思いますが、この点につきましては、経営維持の資金という、融資でございますけれども、低利の融資というものが別途ございます。こういったものも御活用いただきたいというふうに思っております。

 それぞれ現場の農家の方々の御意見を聞きながら、都道府県の方を通じまして適切な経営再開ができるように、私ども支援をしたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 恐らく今局長が言われたのは、家畜疾病経営維持資金の活用をするように、こういう話だと思いますけれども、これも申請できる金融機関が決まっているというふうに伺いました。例えば、自分の取引している銀行がその指定金融機関でない場合には、新たな取引先を探す、信用関係をそこから築かなきゃいけない、こういう話も聞いておるわけです。

 大臣、ちょっとまた突然で申しわけありませんけれども、今お話をさせていただきました、インフルエンザが発生してそして初めてのお金が出るまでに、この方の場合、大体二カ月強かかっています。この間の運転資金の問題。それから、今融資があると言われましたけれども、融資だって、たまたまこの資金の対象になっていない取引先銀行と取引をしていたという場合にはすっと融資も出ないし、そういった意味で、私はぜひこの部分、前向きに検討していただけないかというふうに思っているわけですけれども、御答弁いただけませんでしょうか。

中川国務大臣 おはようございます。

 今お話を伺っていて、今から七、八年前に私の地元で牛の口蹄疫というのが出まして、一戸の農家で七百頭の牛、成牛を処分して、大変に厳しい状況を私も視察してまいりました。

 そういう中で、地元あるいはまた道、国でいろいろな対策をとったわけですけれども、今御指摘のように、殺処分にしてから新たに経営が再開できるまでの間にタイムラグがある、まして収益までタイムラグがあるというときには、今消費・安全局長からもお話があったとおりでありますけれども、経営体として緊急、不測の事態があった場合には、農林水産省の所管のいろいろな支援策だけではなくて、例えば政府系金融機関からのいわゆるセーフティーネット貸し付けというものが、私も以前所管していたところでございますので、できるだけ早くこれが発動できるように今までもしてきたところであります。

 生き物相手、そしてまたタイムラグがあるということでございますから、これは政府一体となって、こういう緊急かつ、極端に言うと本当に運転資金、あるいはもっと言うと生活資金にまで影響するような経営活動に対して、政府全体となって迅速に対応できるようにしていくことが最大のポイントだろうというふうに思っておりますので、私も、今後ともこういう事態が万が一、万が一というか起こっておるわけでありますけれども、全力を挙げて対応できるようにさらに努力していきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 しっかりとした御答弁、ありがとうございました。

 その上で、今経営者の方に視点を当てた話をしましたけれども、今度は都道府県の対策としての方向に焦点を当ててみたいと思います。

 茨城県の職員の方ともお話をしました。今回は弱毒性のH5N2亜型というインフルエンザウイルスで、鳥の実際のインフルエンザによる死亡は確認をされていない。そういった本当に弱毒タイプであったということではありましたけれども、今後強毒タイプのインフルエンザウイルスが発生する可能性は否定できないわけです。

 そういった中で、H5N1の強毒株、もしくはそれが変異をして人から人への感染の可能性のある新型インフルエンザ等が確認をされたというような状況を想定した対応というのはどのようになっているのか。

 まず一点目。例えば、自然の湖沼で野鳥が大量に、五、六羽、十羽、二十羽死んでいた、検査をしてみたら強毒株のインフルエンザウイルスが見つかった、こういう事態が起こった場合に、一つは、周辺の養鶏場に対してどのような措置をするのか、マニュアルがあるか。また、人への感染はあるのかないのか、人への健康という意味で、どのようにこの部分について調査をするのか。さらに、周辺の野鳥に対する調査をどのようにしていくのか。それぞれお答えをいただきたいと思います。マニュアルがあるのか、対応する方策をお持ちなのか、お答えをいただきたいということであります。

南川政府参考人 お答えいたします。

 私どもでは、十六年度からでございますけれども、渡り鳥における高病原性鳥インフルエンザ、これはH5型と7型でございますが、これにつきまして野鳥の調査を行っております。今年度も九月から、シベリア、中国大陸、朝鮮半島あるいは東南アジアからの渡り鳥の渡来地において調査を行っておりますけれども、今のところすべて陰性でございます。

 もちろん、これが陽性となった場合のことも想定をいたしておりまして、これが発見された場合の対応についての考え方を昨年十一月に周知をしたところでございます。

 この中では、野鳥などでこのインフルエンザ感染が認められた場合には、各都道府県の家畜衛生保健所などが実施する防疫調査や疫学調査と連携いたしまして、一つには、周辺の野鳥に大量死が見られるかなどの野鳥の生息状況に関する調査を行う。二つ目には、野鳥の捕獲あるいはふん便の検体採取によるウイルスの保有状況調査を行う。三つ目には、このインフルエンザが貴重な鳥類に感染しないような衛生管理を徹底する。また、四つ目には、一般の国民の方における不安の軽減のために野鳥への接し方について注意をする。そういったことにつきまして有識者の御意見も伺って周知を図っているところでございます。

中川政府参考人 私の方からは、鶏あるいは野鳥での高病原性鳥インフルエンザが発生を確認された場合の対応ということでお答えを申し上げたいと思います。

 高病原性鳥インフルエンザにつきましては、特定家畜伝染病防疫指針、いわゆる防疫マニュアルというものが既に策定をしてございます。これは、中心は家禽で発生した場合のことでありますけれども、その前段階として、ふだんからいろいろと、経営者を初めとして地方自治体において注意いただくことが書いてございます。

 今先生が挙げられました、野鳥で高病原性鳥インフルエンザのウイルスが見つかったような場合でございますけれども、まず、その発見場所周辺の飼養家禽の異常の有無を調べる必要がございます。一定の半径の範囲内にいる経営者の方々のところで感染しているかどうかといったことについてまず調査をしたいと思っております。

 それからさらに、飼養農家にウイルスが入らないようにするためには、ふだんから防鳥ネット等の整備ですとかあるいは定期的な消毒というものは指導してございますけれども、改めて、野鳥あるいは小動物などが入ってこないようにということの点検を徹底するというふうなことを通じまして野鳥から家禽への感染防止をする、まずこれが最初にそういった野鳥で見つかった場合にとるべき措置だというふうに考えております。

中島政府参考人 厚生労働省としての対応を説明いたします。

 高病原性鳥インフルエンザ感染による死亡が疑われる飼育鳥または野鳥を確認した場合の対応につきましては、平成十六年三月に関係省庁合同で、国民の皆様に対しまして、マスクや手袋などの感染防御措置をした上で取り扱うとともに、獣医師、家畜保健衛生所または保健所等に御相談をいただくよう要請したところでございます。

 また、医師は、診察した患者におきまして高病原性鳥インフルエンザへの感染が確認をされた場合には、感染症法に基づきまして直ちに保健所に届け出ることが義務づけられており、その確定診断のための検査につきましては、保健所を経由して都道府県の衛生研究所等で実施をされているというところでございます。

 さらに、家禽で高病原性鳥インフルエンザの感染が確認をされました場合、養鶏場の従業員等に対して健康調査を実施いたしますとともに、防疫従事者に対しては十分な感染防御措置と必要に応じた検査を実施するよう、自治体に対して助言を行っているところでございます。

 引き続き、関係省庁とも連携の上、感染の予防及び感染者の早期発見等の対応に努めてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 周知徹底を図るという話でありますけれども、大臣、例えば死んでいる野鳥が見つかったときに、一般の国民の皆様方がこれを保健所に届けなきゃいけないという周知徹底がなされているとお思いでしょうか。恐らく、これは、マスクをして手袋をしてその野鳥に接するようにというような周知徹底はほとんどの方が御存じないと私は思いますよ。そういう意味で、確かに、どこまで広く周知徹底するか、僕は正直言って難しいと思う。

 国としての対応指針、今言われたように、例えば環境省は貴重な野鳥に対して感染しないように取り組むんだと。野鳥ですから、どこに飛んでいくかわからない、どこから来たかわからない鳥も多い。そういう鳥に移動制限をかけるわけにもいきませんし、現実的に、野鳥から野鳥への感染を防止するというのは私は難しいと思うんです。

 そういった意味で、政府としても、改めて、今回のような弱毒タイプじゃない、今回のような、はっきり言うと、いわゆる健康被害が起こりそうもないようなウイルスではなくて、本当に高病原性の鳥インフルエンザもしくは新型インフルエンザが日本で確認をされたときの対応策はもう一度練っておく必要があると思います。

 ぜひ、大臣、前向きな御答弁をいただきたいと思います。

中川国務大臣 岡本委員御指摘のとおりで、この問題というのは、空を飛んでくる、したがって、日本の周りに何百メートルも何千メートルもネットを張るというわけにはいきませんし、それから、突然変異によって強毒性になる、あるいは人間に感染するというその恐ろしさというものも我々としては非常に心配なわけでございます。

 先日、私がフランスに行ったときにちょうど鳥インフルエンザが確認されたわけでありますけれども、これも室内で飼っている七面鳥に発症したと。なぜなんだろうと、フランスの関係者に聞きましたら、渡り鳥が空を飛んでいて、あるいは、ひょっとしたら地面についたのかもしれませんけれども、畑に積んである敷きわらにどうもそのウイルスが感染して、それを鶏舎の中に持ち込んで発生したのではないかということを、これはフランスの農務省の人が言っておりました。これはあくまでも可能性が高いという次元であります。

 そういう意味で、本当に、空を飛んでくる、いつ飛んでくるかわからない、しかも、高いところを飛んでくるから捕まえるわけにもいかないということでありますので、今御指摘のように、とにかく発見をしたら、いきなりマスクとか、いきなり手袋とか、いきなり何とかというのはすぐには難しいんでしょうけれども、とにかくきちっと、まずわかりませんから感染しないように、そして、すぐに関係のところに伝えるようにということは、これは国民に周知徹底しなければいけません。

 そういう意味で、リスク管理は政府にあるわけでございますから、我々も今まで以上にこの問題は国民の皆さんに御理解をいただかなければならないと思いますし、必要以上に危険をあおるということもある意味では避けなければいけませんけれども、正しい情報、正しい知識を御理解いただくためには、政府だけではなくて、ぜひ御専門の岡本委員初め各党の皆さん方にも、これは党派を超えた、国民に対する政治というか公の仕事をしている立場の、ある意味では共通の責務ではないかと思いますので、ぜひまた委員にも御指導いただきながら、国会の方にもいろいろとまたお力添えをいただいて、全国の御地元等でこういうことについて正しい知識が正しく国民の皆様に理解できるように、我々も一層一生懸命頑張りますので、またお力添えのほどをよろしくお願いいたします。

岡本(充)委員 確かに、おっしゃるとおり、国民の命と健康を守るのは日本の政治家の責任だということは常々私も各所で私自身が発言をしております。そういう意味では、後段お話をしますBSEの問題も同様ですけれども、そういう日本人の命と健康にかかわる問題は、ぜひ、変な政治的妥協ではなくて、科学的知見に基づいてきちっとした対応をとっていく、それを私も大臣に、改めて、私自身もそうしていくということはお約束を申し上げたいと思います。

 さて、今くしくも大臣がちょうど言われました、例えば今回のフランスにおいての感染経路、この可能性が高いのではないかといういろいろな説が流れていますが、翻ってみて、今回の茨城県におけるインフルエンザの蔓延、諸説流れておりますが、感染経路の究明というのは極めて難しい、今大臣が言われたとおりです。

 そういった中でもどの可能性が高いのか。いろいろ指摘されています。今回見つかったH5N2亜型は、グアテマラ、メキシコで発見されている鳥インフルエンザと遺伝子が一致している。基本的に、グアテマラやメキシコから直接渡り鳥が来ることがない中で、人を介して運んできたのではないかという指摘がされています。では、なぜ人を介してやってきた鳥インフルエンザが茨城県だけに限局したのか。こういった部分を総合的に考えてくると、未承認のワクチンが持ち込まれたのではないか、そういう風評もちらほら聞こえています。

 そういった中で、今回の原因究明、いつごろまでにどういう形で農林水産省として取り組まれるのか。また、その未承認のワクチンが持ち込まれた可能性については否定し得ないというふうに考えてよろしいのか。お答えをいただきたいと思います。

中川政府参考人 今回の茨城県の弱毒タイプの高病原性鳥インフルエンザについての感染究明でございますけれども、六月ごろからこの感染というのは確認をされました。私ども、昨年の七月に専門家の方々に集まっていただきまして、感染経路の究明チームを立ち上げまして、十月にはその中間取りまとめが行われてございます。

 既に先生今おっしゃったことが大半その中間取りまとめの中にも含まれているわけでありますけれども、今回見つかったウイルスの特性、グアテマラあるいはメキシコと非常に近縁性があるというふうなこと。それから、日本までどうして来たかという際に、渡り鳥あるいは人を介した、あるいはまた何らかの物品の輸入というふうなもの、三つぐらい考えられますけれども、渡り鳥という点からいきますと、直接中米のあたりから日本に来るようなものはない、またアラスカ経由ということも、観念的にはありますけれどもなかなか具体的なものとしては想定しがたいというのが専門家の御意見でございました。それから、二番目の貿易を介してというのも、生きた鳥類ですとか、あるいは物品からそういったものが持ち込まれるという可能性も低い。そうすると、残るのは、違法ワクチンも含めた何らかの人為的なものによるのではないか、そこが一番可能性としては高いというのがこの中間取りまとめの段階でございます。

 ちょっとそこのところを引用いたしますと、「中米由来ウイルス株から作出された未承認ワクチン又はウイルスそのものが持ち込まれて不法に使用された可能性については、引き続き、その解明に努める必要。」があるということで、可能性の一つとして、なかなか現時点でもまだ確たることは申し上げられる状況にありませんけれども、可能性の一つとしてそういうことが疑われるというのが現段階での専門家の見解でございます。

 他方で、今、茨城県におきましては、この鳥インフルエンザの検査のところでいろいろな不正がございまして、刑事事件として県の方から告発もされております。片一方でこういった動きもあります。そういったところも我々としては注視をしていかなければいけないと思います。違法ワクチンということであれば、そういったところとの関連も出てまいりますが、まだそこのところは確たることを申し上げる段階ではございません。

 いずれにいたしましても、感染経路の究明というのは防疫対応する上でも大変大事な点でございますから、引き続きその究明のために努力をしていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 きちっとした究明をしていただいて対策を打つことこそが、次なる感染、発症の防止に大きく寄与するということで、ぜひ可能な範囲で努力をしていただきたいと思います。

 さて、話は今度、米国からの牛肉輸入にかかわるさまざまな問題について話を移したいと思います。

 三月六日に日本政府が行った米国からの報告書に対する照会事項に対して、三月十八日に米国からの回答が来たということになっています。

 大臣、この回答をもちろんお読みになられたと思うんですけれども、今回のこの回答を見て、どのようなこの回答に対する御評価をされていますでしょうか。率直にお伺いをしたいと思います。

中川国務大臣 二月の十七日に大部にわたる報告書が参りまして、精査と翻訳に若干時間がかかったわけでありますけれども、いわゆる再質問といいましょうか、確認をしたところが、今御指摘のように、日本時間で土曜日の午前中についたわけで、それについてまた日本語にして二十日に公表をしたわけでございます。

 これは、一つ一つ具体的に物事を解決していかなければならないということで、質問事項に対して回答としていただいたわけでありますけれども、現在、その回答内容について、これは農林水産省だけではなくて、屠畜場の中の問題であったり、月齢の確認の方法だっていろいろあるわけでありますので、政府全体として、これは我々としてもしっかりとやっていかなければならないので、もう少しお時間をいただいて、きちっとした精査をした上で対応を考えていきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 詳細については、この中の私が感じた疑問点については後ほどちょっとお伺いをしたいというふうに思っております。

 そういった中で、報道等によると、実務者協議が今週中にも日米間で行われるんじゃないかというような報道を週初めにしていた報道機関もありました。

 今後の実務者協議の予定、そしてまた前回、大臣、ジョハンズさんとフランスでお会いになられたんですかね、今回の問題に対する農務長官の考えを含めて、その中で協議されたこと等について御報告をいただけますでしょうか。

中川国務大臣 一月二十日にこの事件が起きまして、すぐ先方から電話で、ジョハンズ長官を初めいろいろなルートで、日本側に対して、きちっとやる、再発防止そしてまた原因究明、徹底的にやるということ、以来、何回も電話、あるいはお会いをする機会がWTO等々であったわけでございます。御指摘のようにロンドンにおいてもお会いをいたしましたが、そのときには内容について具体的な突っ込んだ話は先方からございませんでした。したがって、私からもあえて申し上げませんでした。

 先方としては、あの一月二十日から一週間ぐらいの間に、国務省の幹部もすぐ飛んできたわけでありますけれども、もちろん、いろいろと、会うあるいはまた説明に来たい、これについて拒否する理由はないわけでございますけれども、しかし、やはり両国間が公式にといいましょうか、きちっとした形で会う以上は、次に向かってのステップがまず前提にならなければいけない。ただ何回会ったとか、会って話をしたけれどももう全くの平行線だったとかいうことでは、これはせっかく、国民もアメリカの方も注視をしているわけでございますので、仮に会うとするならば、何らかの成果がある形で会うべきであるというふうにも考えます。

 したがいまして、先方は、いつも説明したい、あるいは来たい、会いたい、電話をしたいということで、拒否はいたしませんけれども、これはあくまでも先方が、今回も希望として言っていることでございますので、公式にいついつ来るという話でもございませんので、これはこれとして、日本側として現在やるべきことは回答に対する精査ということに今全力を傾注して日々その作業に取り組んでいるところでございます。

岡本(充)委員 ということは、実務者協議は今週、来週等は実質的に開く予定はないというふうに理解してよろしいでしょうか。

中川国務大臣 けさ、三月二十七日、日本では二十八日ということでしょうけれども、日本に来て政府と会いたいということを先方が、一方的にといいましょうか、合意という形じゃなくて発表をしたようでございます。ホームページを今見たところでございます。

 ですから、日本としては、来るものについてはもちろん、会わずにお帰りいただくとかそういうことは我々としてはするつもりはございません。せっかく来られる以上はお会いをいたします。ただし、我々としては、それによって前進、成果が出るということでできればお会いをしたいということでありますけれども、先方がどういう形で何を持って、持ってというのは発言を考えてくるかについては、現時点では確認はしておりませんけれども、我々としては、来ると決めた以上は、お断りするということもなんでございますので、会って先方がどんなことを言うのかお伺いをするということは、我々としても拒否する必要はないというふうに考えております。

岡本(充)委員 そうすると、それは協議ではないですね、今の大臣のお話だと。協議というのは、お互いに字のごとく議論するわけなんでしょうけれども、今の話は、一方的に先方が報告に来るのか、一方的に先方が話しに来るといったたぐいの話だというふうに理解をさせていただいてよろしいんでしょうか。

中川国務大臣 両国政府の代表、責任者が会うということですから、協議なのか話し合いなのか、その辺はやはり公式のものであるということは間違いないんだろうというふうに思っております。

 ただ、先方も、一日も早いこの問題の解決に向けて来られるんであろうことは私も想像できるわけでございますし、また日本としては、さっき申し上げたように、回答に対して今精査をしている段階でございますから、仮に来るのであれば、さっき申し上げたように、会わないということは、それは外交儀礼上失礼ということにもなりますので、お会いをすることになるんだろうと思います。

 そのときには、向こうがどういうことを言うかわかりませんけれども、日本側としては、質問に対する回答について、何かこちら側から確認すべきこと、あるいはまたこちら側から向こう側に要求することがあれば、それは向こう側にぶつけるということもあります。

 とにかく、協議、話し合い、どちらでも否定はいたしませんけれども、話し合う以上はきちっとした形で、日本の立場で、面会といいましょうか協議といいましょうか、なかなか、だんだん言葉が、厳密に言わなければならない状況になってまいりましたけれども、会った以上は、日本側の立場をきちっと向こう側に理解をさせるという姿勢で臨んでいきたいと考えております。

岡本(充)委員 もちろん、先ほどもお話ししたとおり、安易な妥協をする、政治的な決着を図る問題ではないということをきちっと確認していただきたい。大臣もうなずかれておりますので、私もそのように信じたいと思います。

 そういった中で、今回の回答書の中で、委員各位の中でも読まれた方もみえましょうが、例えば、一番最初の全般的な事項の質問の中で、脊柱のついた子牛肉や対日輸出のできない内臓が輸出された今回の事案は、英語ではユニークとなっていますが、特異的なものであったのかという問いかけに対して、米国はこう答えています。

 「現在実施中の監査、検証及びEVプログラムを要求している様々な他国の顧客からのフィードバックにより、他の承認された工場のFSISの担当者は、条件をよく認識しており、承認された製品だけが輸出されると、我々は確信している。」こう言っているんです。

 ところが、これも報道によると、どうやら香港で同じく骨つき肉が見つかったというふうに私は聞いております。農林水産省は、今回のこの香港の事案について照会中と伺いましたが、実際にどのような骨がついていたのか写真等をお持ちでないと私は伺ったんですが、こういった事案についてもきちっと調べなければいけない。

 また、韓国も、今後、牛肉の米国からの輸入再開に向けて延期をする、本当は四月一日から輸入開始予定だったのを延期するという報道等も私も聞いておりますが、この辺についてもきちっと、他国がどういう対応をとって、どういうことをしているのか把握をする必要があるということをまず指摘させていただきたいと思います。

 今回のこの報告書の中で、我々は確信していると米国は言っているんだけれども、結局香港に骨つき肉が到着しているという状況を考えると、この確信というのは一体何から来ているのかということを私としては疑問として禁じ得ないわけです。

 また、この報告書の中では、いわゆる今回問題となった二つの社があります。輸出のプログラムを遵守することを求められていながら、その遵守を果たせなかった二つの社の責任者、それぞれの対日輸出条件の適合を確保する責任を有していた者がなぜその責任を果たせなかったのか、こういう日本の問いかけに対して、まだ終了していないOIGの調査を我々は待っている、その完了後にさらなる情報が入手できると期待していると。

 例えばこういう情報もきちっと入手してから実務者協議に入るのが当然ですし、その先に書いてあります、「米国内や諸外国向け輸出における子牛肉の取扱いと日本向けEVプログラムの条件の違い(SRM除去や月齢制限)について、具体的にどのような研修が行われたのか。」これについても、具体的な研修がどのように行われたか書いていません。中川局長、きっとお手元にお持ちだと思いますけれども、ぜひこの七ページ目のところを見ていただきたい。

 ここでは、「例えば、日本向けの条件を満たしていない「ビール・ホテルラック・セブンリブズ(脊柱を含む)」に加え、アトランティック社は、日本向けの条件を満たしている「ビール・ホテルラック・チョップレディー・セブンリブズ(脊柱除去済)」も出荷していた。この例は、当該施設責任者がどのようにしてビール・ホテルラックから脊柱を適正に除去するかに関する知見を有していたことを明確に示している。」こう書かれておりますけれども、例えばこの部分も、極めて私はあいまいな話だと思っております。

 時間の関係上、余り詳しくは聞きませんが、例えばこういう部分、これから子細に検討されるんだと思いますが、中川局長、どういうふうな意味をなすのか、今おわかりであればお答えいただきたいし、おわかりでなければいつかにきちっと例示をしていただきたいと思いますが、お答えいただけますか。

中川政府参考人 今回アメリカ側から接到いたしました日本側の質問に対する回答につきましては、現在精査をしているところでございますけれども、私どもとしても幾つか疑問点があるのは事実でございます。

 こういった点につきましては、今、先生も御指摘がございましたけれども、我々担当の者として、きちっと精査をして、アメリカ側にきちっと確認をしなければいけないところは確認をするという形で臨んでいきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 続いて、少し指摘をさせていただきたいと思います。

 この先さらに、公表された資料の十ページの方に載っておるんですが、「今回の事案に関与した検査官は、どのような周知・研修を受けていたのか。」こういうところから始まって、「具体的に、検査官が閲覧していたことの確認や必要事項を習得したことの確認はどのように行われていたのか。」この部分について、こう回答しています。「検査プログラム担当職員は参加したことについて証明を求められた。」と書いています。

 この問題について、どうやら今回の新しいプログラムでは、検査プログラム担当職員が大きなキーを握り、この担当職員が、検査官がそれぞれ研修に参加したかを確認するように私には見受けられます。この部分についても、本当にこの担当官のケアレスミスが起こらない仕組みがどうなされているのか、私はこれから読み取ることができない。この点についても確認をいただきたい。

 また、十一ページ目に、「AMSからFSISへの施設認定の通知の仕組みはどのようになっていたのか。」そしてその中で、「他の三十八施設についてはどのようにしてFSIS検査官は施設の認定を認識したのか。」その際、今回の事案と同様の問題の発生の可能性は全くなかったのかというところについて、また同じく、今後同じようなことは起こらない、他国の顧客のフィードバックを通じて、他の認定施設のFSIS職員も条件を承知しているものと確信していると書いていますが、冒頭と同じく、香港で事案が起こっています。これについてもきちっと確認をされることを私は望みます。

 さらに指摘を続けさせていただきます。

 十二ページの部分、「再発防止のための改善措置に関する事項」、この中で「AMSは、日本政府による米側改善措置等の受入れ後二週間以内に、全てのEV認定施設の再調査を行うこととされているが、この調査の具体的な内容や期待される効果は何か。」と書いてあったら、この点については、「脊髄や脊柱の除去といった条件は観察、評価される。」と例示は書いてありますが、これも極めてあいまいで、具体的な内容や期待される効果は書いていません。

 「四月以降に施設の現場で行うこととされるAMSによる抜き打ち審査について、具体的な方法等をお示し願いたい。」こう書いていますが、「日本向けの生産再開後、AMSは無作為に抽出した施設に対し、抜き打ち現地監査を行う。」抜き打ち審査の具体的な方法はといったら、抜き打ち検査をします、こう書いている。これも極めて不誠実な答弁です。

 さらに、その先、FSISとAMSの連携方法、これについても、AMSからの署名入り書類を確認し、この書類をもって連携だというふうに書いている。こんな書類だけで本当にいいのか。この部分についても御確認いただきたい。

 さらに、もう一枚めくって、十三ページ目以降についても、(4)の「検査官の検査についての抜き打ちチェックの具体的な方法等」、これも示されていないし、これまでの実施していた研修等の活動に比べ強化された点も書かれていません。

 さらに、六番、最後のページから二枚目ですけれども、OIGの調査部門も実施中であり、いつごろこの今回の調査についてOIGの報告がされるかということについては、OIGの調査は米国政府の職員は調査の対象となっていないと。こんなことは、米国政府の職員を調査しなければFSISの検査官は調査できないわけです。この調査の完了日は現在未定であると。つまり、いつ報告できるかわからない。さらに加えて言えば、この報告書がどういった内容になるかもまだわからないです。

 こういった中で、最後に書いてある一行、非常に気になりました。下から二行目。米国は、子牛肉輸入のための別のプログラムを一月二十日の時点で協議中だった、こういうふうに書いてありますが、新しく子牛肉についてのみ別の条件で輸入再開をしよう、そんな協議をしていたという事実があるんですか。それについてはお答えをいただきたい。

中川政府参考人 日米間の貿易再開に当たっての基本的な要件というのは、二十カ月齢以下の牛からつくられた牛肉であるということと、あとは、すべての特定危険部位の除去ということでございます。当然、二十カ月齢以下の牛ということになりますと、子牛も含めて、定義上入るものでありまして、日本としては、平成十六年の十月二十三日に局長級協議でもってその共通の認識を得たとき以降、輸出証明プログラムの具体的な中身を検討するその期間を通じまして、終始一貫して、二十カ月齢以下の牛からつくられた牛肉ということでアメリカ側とやってきたものでございます。

 昨年の十二月の十三日以降、第一回目の現地の査察に行きました。その際に、アメリカ側から、A40以下というのが一つの月齢を判別する方法でありますけれども、そこのところで、子牛肉の場合の判定について向こうから少し相談があったわけであります。ただ、私どもとしては、そのことについては、これからさらに二回目の査察というのも予定されているので、その際に何か具体的な提案があるのであれば、それを受けて、そして議論をしましょうというふうには確かに受け答えしておりますけれども、日本側の立場は、二十カ月齢以下ということがきちっと証明されれば、それは適格なものである、今回のEVプログラムの対象になるものという意味で、終始一貫しております。

岡本(充)委員 とすれば、この部分についても、事実と異なる回答であるならばきちっと抗議をする、ここにも事実誤認だということを書いていますけれども、それについてはきちっともう一度抗議をするべきであります。

 最後に、今回の香港の事例で判明をしました、米国の大手食肉業者における香港向け輸出規格に反した牛肉の輸出に関して、この食肉処理をした工場は日本の査察チームが査察に行っていました。そこで、厚労省、農水省の共同査察チームが、この施設はEVプログラムの遵守をしている、もしくは、輸出に向けた適格な食肉処理工場だという認定をしているわけですね。

 本来であれば、ここは日本の査察の段階で、こういう事案が起こる可能性のある施設だということを指摘するべきだった。しかし、それを指摘していなかったことに対して、私は、今回の査察は一体どうなっているのかと改めて疑念を持ったわけです。

 しかし、残念ながら、査察の内容、そしてまた、私は一月末以来二カ月にわたって厚労省、農水省にそれぞれ、今回の査察の出張命令書、帰朝報告書を含めて、査察の内容についての具体的な報告をいただきたいということをお願いしてまいりましたが、この段に至っても、大臣、まだいただけておりません。いつまでにこの報告書をいただけるのか、明確な御答弁をいただきたいと思うわけですけれども、農水、厚労、それぞれ責任ある立場の方でお答えをいただきたいと思います。

中川政府参考人 お答えいたします。

 日本が行いました査察の報告書でございますけれども、その概要については、既に一月の十二日に安全委員会にも報告をし、また十六日には消費者に対し説明を行っております。

 具体的な最終の形での報告書につきましては、その内容について、個別企業の秘密あるいは利害に関するところがあるということでございますので、これはまずアメリカ側に今照会をしております。既に二月の中旬にアメリカ側にこの報告書を渡しまして、そのチェックを依頼しているところでございます。これを今待っているところでありまして、私どもとしては、その回答が得られ次第、一切の公表をしたいというふうに思っております。

松本政府参考人 十二月に行いました査察の結果につきましては、先ほど農林水産省からお答えいたしましたように、帰国後速やかに食品安全委員会や消費者への説明会を経て、報告を行ったところであります。

 なお、委員御指摘の各施設ごとの詳細な報告書につきましては、引き続き、公開できる情報か否かについて現在米国側の確認をお願いしているところでございまして、その確認を得た上で公表することとしております。

岡本(充)委員 残された時間も少ないので、大臣、聞いてください。

 私は一月の下旬から言っている。二月の予算委員会のときも、私は質問取りに来たそれぞれのスタッフに、いつになるのかと言っている。二月の中旬に照会した、そして、二月の中旬に照会したっきり、回答がまだ来ていないのに、まだ請求していない。これは私は大変不誠実じゃないかと思うわけです。

 大臣、トップとして、ぜひ早急に回答がもらえるようにきちっと指導していただきたいと思うわけですが、明確な御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

中川国務大臣 今回の件は、日米間だけではなくて、香港でも同じようなことが発生したわけで、日本側としても、再発防止あるいは原因の徹底究明のために、必要な情報は徹底的に集めなければならない、これは御指摘のとおりでございまして、それがあって、国民の食の安全、安心、そして満足につながっていくわけであります。

 何回も申し上げているとおり、不透明な部分が多いと消費者の皆さんはやはりこれはなかなか口にしない。そうすると、アメリカ側だって、せっかく門戸は仮に開いたとしても、売れないということになれば、アメリカ側の目的とも違うわけであります。したがいまして、我々は、国会で御指摘されたことも含めまして、今回の回答書に対する質問等も含めて、あらゆる疑問点あるいはまた確認事項については、先方に問い合わせをしているところであります。

 岡本委員御指摘のように、もう既に予算委員会、農水委員会でも、この報告書に対していろいろなわからないところ、あるいはまた視察した内容について確認したいところ、いろいろありました。一部、既に答えているところもありますし、現在もまだ問い合わせ中のところもあります。

 ただし、この問題は、もう一つの次元としては、やはり企業秘密とか個人の情報に関する問題とか、日本でもそういうルールがあるわけでありますし、アメリカ側にも当然そういうルールがありますので、その中で、アメリカ側がどの程度答えてくるのかということについてまだまだ返事が来ないということであります。時間がたっているということは、私も率直にそうだというふうに思います。

 したがいまして、何回も私自身も、これに限らず、確認すべきこと、既に確認をして返事が来ないことについては、これはこれからも、必要に応じてというか、既に答えるように要求していることについては、これからも答えるように要求をし続けていかなければならないと思っております。

 ただ、アメリカ側にもアメリカ側の合理的な理由があるとするならば、そこから先をどういうふうに判断していくかということについては、またもう一つ別の要素を考えていかなければならない。何でもかんでも日本が要求したものを先方が出してくるということであればいいんですけれども、アメリカ側にはアメリカ側の法制度、ルール、その他いろいろと事情もあるわけでありますから、その辺もやはりある程度は日本側としても頭の中に入れながら、しかし、答えられないのであれば、何で答えられないのかということの説明等も含めて、我々としては、再度、今の御指摘のことも含めまして、アメリカ側に対して、あるいは香港側に対して、聞きたいことについてはこれからも要求をし続けていかなければならないというふうに考えています。

岡本(充)委員 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。

 きょうは、委員長を初めといたしまして本委員会の理事の先生方にお許しをいただきまして、発言の機会をいただきましたことにまず感謝を申し上げさせていただきたいというふうに思います。本当にありがとうございます。

 きょうは、私は、BSE問題とPSE問題、二つのことについて聞かせていただきたいというふうに考えております。

 まず、PSEの方から先に聞かせていただきたいというふうに思いますが、このPSE問題というのは、経済産業省所管の電気用品安全法という法律が、平成十一年に電気用品取締法から安全法に、大臣、ここ大事なところなのでもうちょっと我慢していてください、あと十分ぐらい我慢してください、電気用品取締法から電気用品安全法に改正をされた。その際に、PSEマークを付したものでなければ販売してはならないというふうに法律に書かれたわけですね。

 そうすると、中古の電気用品の販売事業者の皆さんは、PSEマークが張ってないものについては、みずから製造事業者の届け出をして、技術基準適合というのを確認して、さらには自主検査をしてPSEマークを張る、そして販売するということをしなければならなくなった。

 大臣、技術基準適合を確認するというのは、大臣、大臣、こっちを見てくださいよ、これ、九百七十六ページの本ですよ。これが、この技術基準を中古の電気用品販売業の方々に確認しろ、さらには自主検査もしてPSEマークを張りなさい、そうでなければ売ってはいけませんということになったんですよ。

 安全性の基準は旧法と新法では全く一緒なんですからね、安全性の基準は全く変わらない。にもかかわらず、販売業者にこんな分厚いものを確認させよう、これははっきり言って実態としては無理だ、だから今大変な問題になっているわけですね。

 実は、私は、これは農機具も関係しますから、地元のJAの方に、状況としてはどうでしょうか、この電気用品安全法の本格施行を間近に控えて、御存じでしたかということをお聞きいたしましたらば、この電気用品安全法の本格施行については全く知らなかったと。

 それで、文書で、私の地元のJA中央会の農政部から回答をいただいて、「影響がある事業」「中古農機事業」「中古として流通が考えられる規制対象品目」「その他下取等で発生する規制対象品目」ということで、さまざまな品目がこの電気用品安全法で該当している。さらには、「実施による組合員・JA・経済連への影響」ということで、「規制対象品目について、下取品として取れなくなる。」「組合員からの委託販売ができなくなる。」というようなことが書いてありまして、「今後の対応等」というところで、同法の施行に伴い、電気用品安全法の施行に伴い中古事業として行うことに制限が出てくるため、多大な影響が出てくると考えられるというふうに大変に心配をしていらっしゃるわけです、この電気用品安全法。

 ちまたでも今大問題になっているわけでございますが、これは農水、本委員会にも大いに関係することであるということで、きょう質問をさせていただくわけでございます。

 全国的には六十万の古物商、下取るところは大体古物商の許可をとっているんですけれども、六十万の古物商の中にJAで下取りなんかをするところも全部含まれるわけですが、六十万の古物商、質屋がある。そしてさらに、その中の三十万社が中古電気用品を扱っているというふうにされているわけです。それで、全く知らなかった、そんなことがあるんですかということだったわけですね。これから周知徹底をしていかなければならないという状況なんだそうです。

 そこで、農水省の西川生産局長に伺いますが、きのう私がレクで担当の方にお聞きしたところによると、この電気用品安全法の問題について農水省は二月下旬に報道で知った、農水省自身は報道で知ったというふうにおっしゃっていらっしゃいますが、確認をしていただきたいというふうに思います。

西川政府参考人 いつ知ったかという御質問でございますけれども、私自身は報道で知りましたけれども、担当の方は、二月の下旬に関係団体から問い合わせを受けたということ、それですぐ経済産業省のホームページを開きまして、中古の電気用品も対象になるということを確認したということでございます。

川内委員 だから、全く、大臣、このPSE法というのは物すごく広い範囲に影響があるわけですよ。

 個人間の売買は規制されていないというふうに経済産業省は説明をするわけですけれども、しかし、業として行っている場合は、農機具として使っている場合はこれは業ですから、業としての売買になりますから、農家は自分で技術基準適合を確認して、絶縁耐力試験といって一分間千ボルトかけて、もしかしたら千ボルトを実験しているときに感電して大変な目に遭うかもしれないんですよ。

 私、実際にメーカーの方の話を聞きましたけれども、素人がそんな千ボルトの試験なんかしたら危ないですよと。実験の条件というのがあるわけですから。そもそも、中古の販売事業者にこんな技術基準適合を確認させるとか、大体普通の電気用品というのは百ボルトとか百五十ボルトとか二百ボルトですからね、自主検査として千ボルトかけなさいと、もともと無理なんですよ。こんな、当初想定されていなかったことが、無理無理、今もう四月一日を間近にしてやられようとしているという状況なんですね。

 迎経済産業省商務流通審議官にも来ていただいていますから、大臣は最後に聞きますので。これは、そもそも法律の中に、中古電気用品の販売の業に携わる人たちの義務というものがしっかりと別途に分けて規定されないと、新品と中古と分けて考えないと、もともと無理があると思うんですよ。販売している人たちが製造業の届け出をして、こんな分厚いものを確認するなんておかしいですよ。

 普通に常識で考えておかしいと思いませんか。大臣、そう思いませんか。感想でいいですから、おかしいと言ってくださいよ、あり得ないと。

中川国務大臣 平成十一年に改正された法律ですが、連日私もテレビで、中古の売買やお仕事をされている皆さん、あるいはビンテージ楽器というんですか、ああいうものに関心を持っている皆さん含めて、毎日大変報道されて、私も関心を持っているわけであります。

 七年前に法律が改正されたんだからその間猶予期間があるのではないかという議論も一方にあるでしょう。また、この法律の目的も電気製品の安全性という観点からの法律だということもあるでしょう。ただ、過去においても、施行ぎりぎりになって関係業界あるいは国民が大変だ大変だと言って大騒ぎになったことがあります。例えば、トラックの過積載の問題でありますとか、トラックのスピードリミッターの問題ですとか、そういう問題も過去において私も承知をしております。

 この法律自体は、経済産業省が電気製品全体を所管しているわけでございますので、おかしいかおかしくないかと言われれば、我々の方は農機具関係が一番影響があることが想定されるわけでありますけれども、過去の数年間をどう見るのかということが一つと、もうあと数日に迫っていると言われている状況をどう見るのかということと、一般の人たちが六法全書みたいな本を全部見て、千ボルトで一分ですか、テストしてみなさい、それで合格だったら個人同士で売買してもいいですよということについては、この法律は、大変恥ずかしながら私が前いたところの所管の法律ではございますけれども、施行したのはその前という、決して責任逃れしているつもりはございませんが、経済産業省の方も、今一生懸命、普及あるいは社会実態に合うように努力をしているやに私も報道で聞いておりますので、ぜひ経済産業省の方の今の状況をお聞きいただいた上で、後ほどまた川内委員からの御質問があれば、お答えしたいと思います。

川内委員 いや大臣、トラックの過積載とかスピードリミッターは、別にトラックに荷物が積めなくなるわけでもないし、トラックが走れなくなるわけでもないですね。トラックは、スピードリミッターがついてスピードは落ちるが、走れる、荷物の量はきちんと定められてしまうが、きちんと荷物は載せられる。しかし、この電気用品安全法は、中古の電気用品が売れなくなる、農機具が販売できなくなる、さらには農作業に支障が出るということが予想されるわけです。

 ちょっと大臣、個人間の売買はいいんです、個人間の売買は。しかし、農機具の場合は、農家は業として農業をやっているので、業としての販売の場合には技術基準適合確認と自主検査というものをやってPSEシールを張らなければならないということで、これは農家の人たちにも大変大きな影響があるわけです。

 せんだって私の同僚の松木謙公議員が大臣に申し上げたと思うが、酪農家から連絡があって、この法律が施行されると、コストを少しでも圧縮して利益を出していこうという大変一生懸命な農家の努力の中で、中古の農機具を有効に活用しながら頑張っている、そういう状況に支障が出るということを、せんだって委員会で、松木謙公議員も大臣にその状況を御報告申し上げたというふうに思うんです。

 中川大臣は、農水行政にも造詣が深くていらっしゃるし、もちろん経済産業の大臣もされていらっしゃったわけですから、産業政策についても大変深い造詣をお持ちになっていらっしゃるというふうに思うんですね。

 そういう中で、七年前に法改正がされた。しかし、周知については、ホームページあるいは通産省公報に載せられただけ、あるいは、パンフレットは二十万部刷ったとか、説明会は何百回やったとかいいますけれども、利害関係人としての古物商あるいは中古電気用品販売業への、あなたたちの仕事はこれからこうなるんですよという明確な周知は一切なかった。それがことしの二月十五日に始まったばかりだということは、警察庁も経済産業省も委員会の場でお認めになっていらっしゃるわけです。

 そういう状況の中で、これは流通に大きな影響がありますし、四月一日から本格施行が始まる。私は、どう考えても、これはこのままやるには余りにもリスクが多過ぎるんじゃないかというふうに思うんです。

 そこで、迎審議官にお伺いしてまいりますが、このPSEマークのない中古電気用品を販売あるいは販売目的で陳列した場合、四月一日以降どうなるのか。違法行為になってしまうわけです。三月三十一日までは適法だったものが、四月一日から違法になる。これはどうするんですか。ちょっとお答えいただきたいというふうに思います。

迎政府参考人 今先生のお話のとおり、四月一日に経過措置の猶予期間が切れました以降は、PSEマークのついていないものを販売してはならない、あるいは販売の目的で陳列してはならない、こういうことになるわけでございます。

 したがいまして、私どもとしては、その法律は遵守していただくということで、そういった違反行為のないようにしていただかなければならない、こういうふうに考えております。

 実際に、私ども、いろいろ業者の方に伺いますと、自分たちが検査体制が整ってPSEマークを付せるまでの間は、既に二〇〇一年以降に生産をされたPSEマークのついた製品の販売を行って、検査体制が整った上で、ちゃんと付して売るようにしたいというふうな業者の方もございますし、あるいは、そういった体制が整うまではレンタルの事業に切りかえるというふうな企業もあるやに伺っております。

 そうしたことで法を遵守するということで、各事業者いろいろ工夫をして、対応を考えておられるというふうに承知をしております。

川内委員 大臣、今、迎審議官が、自分で検査をする業者もあります、あるいはレンタルに切りかえる業者もありますというふうにお答えになられたが、販売業をする人たちが自分たちでこの技術基準を確認して自主検査できる、そんな販売業者が何社あるのか、三十万社のうち何社がこの技術基準を確認できるのか、自主検査できるのか、数字を答えていただきたいですけれども。

 さらには、レンタルに切りかえると。販売はだめでレンタルならいいと、みずから脱法的行為を経済産業省が指導しているわけです、ある意味で。PSEマークを張っていないものは販売はしちゃだめだ、しかしレンタルはいいですよと。それで、レンタルに切りかえる業者もいらっしゃる。

 与党の先生方も、おかしいと思われないですかね。販売の業に携わる人たちに製造業の届け出をさせて、製造業者としてPSEマークを張って売りなさいと。これはどう考えても、私には常識的に受け入れられないと思うんです。

 そこで、もう一問だけちょっと商務審議官にお伺いしますが、もうこれは法改正をされた方がいいと思うんですよ。経済産業省が所管する安全法制全体の体系をしっかり見直す。中古電気用品、これからリサイクル、リユースというものがますます発達するわけです。もったいない精神というのは小泉総理もおっしゃっていらっしゃることですからね。そういうリユース、リサイクル、リデュースを進めていくために、安全法制全体を見直して、その中には中古の電気用品というものに関しての位置づけもしっかりするという法改正をしなければ、今のままではとてもとても現実の問題に対応できないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

迎政府参考人 現行の電気用品安全法は、国民が電気用品を使用する際の漏電、火災の事故を防止する観点から法改正を行って、現在、この法制を円滑に施行すべく私ども全力を挙げておるところでございますので、そういう段階でこの法体系を見直すというふうなことは今現在私ども考えておりません。まさに五年の経過措置終了を目前に控えて、先般発表いたしました対策の具体化を進めると同時に、きちっと施行していくというふうなことが必要であると思っております。

 ただ、中長期的に、一般論として申し上げれば、そもそも法律というのは常に不変というふうなものではなくて、安全法制についても、安全確保の観点から、技術進歩、取引の実態等の変化に応じて、必要に応じて不断に見直していくべき性格のものである、こういうふうに認識しております。

川内委員 ここは経済産業委員会ではないので商務流通審議官に対する質問はここまでにさせていただきますが、私は、何回も繰り返しますが、今、円滑に施行させることが自分たちの役目であるというふうに審議官はおっしゃられたが、円滑に今の状況で施行できるとは恐らく審議官御自身もお考えではないというふうに思うんですね。これはちょっと問題が大きいなというふうに思っていらっしゃると思うんです。まあ、それは問題が大きいですとはとても御自身でこの場でおっしゃられることはできないと思いますが。

 しかし、常識で考えて、販売業者に製造業者の届け出をさせる、さらにはこんな、いいですか、せっかくですから、この中に書いてあることは、大臣、その商品を七十センチの高さから落として強度試験をしろと書いてあるのです。その商品を、電気用品を七十センチの高さから落として強度試験をしなさいと書いてあるのです。新品の場合には、型式試験で一つだけやって、あとは生産する、それを販売するということでいいわけです。しかし、中古の場合は、一品しかないですから、それを七十センチの高さから落としたら壊れますよ。売れなくなっちゃうじゃないですか。そういう矛盾したことがいっぱい書いてあるんです、この中に。それを販売業の方々に製造業者の届け出をさせて、義務づけていく、これは法的拘束力のあるものですからね、というのは、どう考えてもやはりおかしいんですよ。

 これを無理無理やるのは私は大きな問題があるということを申し上げておきたいというふうに思いますし、中川大臣は経済産業大臣でもいらっしゃったし、閣僚の一人として、きょうのやりとりをお聞きになられて、再度これはちょっと閣議でも話題にしてみたいくらいは言ってくださいよ、ぜひ。

中川国務大臣 まず、我々は法治国家ですから、国会できちっと成立したものを予定どおりにやる。さっき迎審議官は、もちろんそれが絶対ではないけれどもということでありますけれども、いよいよそれが間近に迫ってきている。国民的関心も大きい、プロの関心も大きい、そのことは私も連日のニュースで承知をしております。

 川内委員の御質問の前提には、まず法は法として、常識からいっておかしいのではないかという質問が多分質問の大前提にあるんでしょうけれども、そこは、やはり五年の周知期間ということで、私は、今になって一部の販売の人たちが、確かに一般の国民の人は知らなかった人も多かったのかもしれません。ましてそんな分厚い、まくらにできそうなものを一般の人が読んでどうするということは難しいんだろうと思いますけれども、しかし先ほど、個人の話は別にしてということでありますから、これはプロ同士の話としてやっていくとするならば、やはりそこは、プロにはプロに求められるものというものも、私は、一般人とは違うものがあるんだろうというふうにも考えます。

 全体の法の話は私は立場ではございませんけれども、例えば農機具とか、稲わらの何とか機とか、いろいろございまして、御質問に際して、鹿児島県の方にもいろいろお聞きをしたり、全国の関係者の皆様にもいろいろと問い合わせをして、農林省としても御質問に当たっていろいろデータを調べたところでございますけれども、とにかくこの法律をスタートさせる以上は、農林水産関係に関しては支障のないように全力を挙げてやっていくのが私の仕事だというふうに考えております。

川内委員 期待する御答弁がいただけなかったことは残念でございますけれども、そもそも、電気用品取締法から電気用品安全法へ改正をされるというのは、規制緩和推進三カ年計画の中で、国の基準・認証制度を見直すということで、規制緩和の一環として法改正が行われた。しかも、経済産業省、当時通商産業省所管の十一本の法律が同時に見直された。さらには、その十一本の法律を見直す過程で、産業構造審議会あるいは消費経済審議会の合同部会というものの中で議論をされたんだけれども、中古電気用品に関しての扱いというものは、その審議会の中でも一切議論をされておりませんし、さらには、国会の中でも十一本の法律をまとめて一日で審議しておりますから、これも全く触れられていない、全くブラックホールというか、抜け落ちていたんだというふうに思うんですね。

 そういう中で、それが昨年末になって突然、本格施行間近に中古販売の方たちが、これはひょっとしたら自分たちも関係するんじゃないかということで気づいて、今大きな騒ぎになっているということでございまして、これは私の意見でございますけれども、再度、大臣も経済産業大臣もお務めになられていらっしゃったわけですから、事情をしっかりと確認していただいて、閣議の中ででも、電気用品安全法について、農水省としてはこうするんだというようなことでも結構ですから、御発言をいただくようにお努めをいただきたいということを意見として申し上げさせていただきます。

 それでは次に、私の時間が四十分までということですからあと十分になってしまいましたが、どうぞ行かれてください、BSE問題について聞かせていただきます。

 私は、以前からこのBSE問題についてずっと取り組んでまいったわけでございますが、米国においてこの牛肉の日本向けの輸出の認定の申請、要するに、日本向けに牛肉を輸出したいという米国の食肉加工処理会社の、USDA、米国政府に対する申請というのがいつ始まったんですかということをずっとお聞きしてまいりました。その回答がやっと参りましたので、そのことについて伺わせていただきます。

 まず、委員の先生方には資料をお配りしておりますが、お手元にある資料の資料四、一番最後のページをごらんいただきたいと思います。米国の食肉加工処理施設の米国政府、USDAの申請接受日、現地査察日、認定日というふうに出ております。

 まず、これらのことについて、中川消費・安全局長にお聞きしたいと思います。これは、いつ政府としては手に入れられた資料でしょうか。

中川政府参考人 この資料につきましては、委員の方から二月六日に資料要求がございまして、私どもとしては、在京の米国大使館にこの旨を要請しておりました。その結果、三月十六日にアメリカ大使館の方から私どもの方に送られてきたもの、それをお出ししたというものでございます。

川内委員 三月十六日に入手したと。その日までこれらのことを日本の農水省、政府は御存じなかったということなわけでございますけれども、これは、委員長、委員長の手元にも行っていますか、ごらんいただきたいと思うんですけれども、一番早いのは昨年一月、米国内において。食品安全委員会で、EVプログラムつき米国産牛肉の輸入再開に当たってのリスク評価が始まったのが二〇〇五年の五月です。昨年の五月です。昨年の五月に米国のことは議論が始まっているんだが、そのさかのぼること四カ月前、昨年の一月にはアメリカではもう申請の受け付けが始まっている。これは一体どういうことなんでしょうかね、局長。

中川政府参考人 日米間の牛肉の貿易再開について、大枠に関します共通の認識というのは、平成十六年の十月二十三日の局長級協議のときの共同プレス発表で明らかになっております。その直後から、アメリカ側におきましてはEVプログラムというものの作成が始まっておりまして、たしか平成十六年、二〇〇四年の十一月三日には、ウエブサイトに本当の意味でのドラフトですけれども、掲載されたというふうに承知しております。

 この時点では、確かにこれはまだまだドラフトの段階でありますから、あくまでも、最終的には日米間で合意をして初めて成案になるわけでありますけれども、この早い段階から企業が準備をすること自体はアメリカ農務省も認めておった、そういう性格のものだというふうに思います。

川内委員 私が何を申し上げたいかというと、このように早い段階から申請が始まっている。一番早いもので二〇〇五年の一月。さらには、二〇〇五年の八月にはもう対日向け三十八施設の申請はすべて出そろっているわけです、昨年の八月には。食品安全委員会の答申とか家畜衛生条件の合意とか、それより随分以前にすべての施設の申請が出そろっている。

 日本の政府としては、幾らでもこの三十八施設について、その施設を視察なり査察なりすることが可能であったのではないか。これは事前調査の件ですよ。事前調査することができたのではないかというふうに私は、このいただいた資料を拝見いたしまして考えるわけですけれども、局長、いかがでしょうか。問い合わせることをされなかったわけですよね。三月十六日、要するにことしになって初めてこれが出てきたわけで、去年の段階で、もうとっくの昔にアメリカ側ではいろいろな手続が進んでいたのに、そのことを一切問い合わせなかったということでしょう。どうですか。

中川政府参考人 私ども、EVプログラムの案という形でアメリカ側で公表されたことを承知しましたのは、先生もおっしゃいましたけれども、食品安全委員会に諮問をする際につけた、それがドラフトの段階で私どもとして認識をしたものであります。そういう意味では、もう少し早い、数カ月早い段階からドラフトが公表されて、そして企業から申請が始まっていたということ自体は承知しておりませんでした。

川内委員 大臣、お戻りいただいて、ありがとうございます。私のお配りした資料の四ですね。一番早い施設は二〇〇五年の一月からですよ、申請の受け付けが。我が国の国内で議論を始めるその四カ月も前から、アメリカではもう既に着々と準備が進んでいたということをこの資料は物語っているわけです。

 この三十八施設、一番遅いものでも二〇〇五年の八月。調査する気であれば、中川大臣が、十月三十一日の事務次官会見を違うと、ちゃんと事前調査するんだと昨年の十一月一日の会見で農水省としての方針を示されて、それが質問主意書に対する答弁書としてあらわれて、その方向で進んでいたとすれば、幾らでも事前調査できたんだということなんですけれども、大臣の御見解はいかがでしょうか。

中川国務大臣 今も局長から答弁がありましたように、これは何もアメリカの立場を私は弁護するつもりは毛頭ございません。ただ、売る側と輸入する側、食べる側、特に食べる側は安全というものが大前提になるわけでございます。他方、アメリカの方は、アメリカにはアメリカのルールがあって、おのずからそこは違っていたわけでございますけれども、そういう前提で、食品安全委員会がきちっとした答申を出さなければ認定されないということは当然アメリカ側も承知しているわけでございます。

 そういう中で、しかし少しでも早く事前に仮の準備ができるとするならば、これはあくまでも条件つきではございますけれども、やれるとするならば、できるだけ早く申請を食肉業者が出す、それをアメリカ政府がとりあえず受け付けをしておくということは、アメリカ側の考え方といいましょうか、気持ちとしては、それはアメリカ側の勝手ですよねというふうに私は理解をいたします。

 日本側の四施設についても、再開が同日、十二月の同じ日に認定をしているわけでありますけれども、日本側の施設についてもやれるところは着々と条件つきで準備をしているわけでございますから、そういう意味で、確かに安全委員会の作業の数カ月前にアメリカ側が申請を出して、アメリカ側の政府がとりあえず受けとめたとしても、これは日本側には何の影響も与えないことであって、安全委員会の作業を粛々とやっていただき、答申を受けて、そして認定が十二月十二日もしくは十三日、川内委員からいただいた資料のとおりでございますけれども、ということで、アメリカ側が何をおやりになるかはこのリスク評価の作業には影響を与えないというふうに私は理解をしております。

川内委員 大臣、私は、リスク評価の作業に影響を与えるとか与えないとかいうことを申し上げているわけではなくて、リスク評価はリスク評価機関が議論をしていらっしゃったわけですよね。さらに、他方、リスク管理側として、農水大臣が、事前調査をすることも含めて考えているんだということを十一月一日に記者会見でお述べになっていらっしゃるわけです。それは政府の認識でもあった。そして、どんな施設がその中にあるのかということをアメリカ側に聞いていれば、それは十分に、もう申請は出そろっていたわけですから、調査をすることもできたはずです、リスク管理側としてですよ。

 リスク評価機関が議論を進めているのはそれは議論として進めていただいて、さらに、他方、管理側としてできることはいっぱいあったはずだが、やっと三月十六日、ことしになってこんな表が出てくるようでは、これは不十分だというふうに思うんですね。

 十一月一日から十一月二十二日、政府統一見解の中に示された、米国側から認定施設の査察を日本側も調査できることという実務者レベルでの回答があったとされる十一月二十二日の協議の間、十一月一日から十一月二十二日までの間、大臣の事前調査をするんだという意思が表明されてから二十二日までの間、アメリカ側に対して、事前調査をさせてくれ、あるいは事前調査を日本側としては希望するということを農水省のしかるべき方がどなたかお伝えになられたかということが一点。これは事務方で結構です。

 それから、大臣、ジョハンズさんにお会いになるのであれば、飼料規制のことを大臣のお口から直接ジョハンズさんに、アメリカは飼料規制が甘い、肉骨粉の交差汚染の可能性が払拭できないということを言うというお約束をいただきたいというふうに思います。この二点を。

中川国務大臣 資料四、これは三十八施設ですから、残りあと二つが後ほど認定になっているんだろうと思いますけれども、十月三十一日に、事務次官が後だというような趣旨の発言をいたしましたが、私としては、選択肢としてあらゆることを考えるべきであるというのが当時の認識、考え方であったわけでございます。

 したがいまして、その次の日に、再開決定に当たっては、再開前にも云々というあの答弁書でお出ししたような文章になったわけでございます。たしか十一月の四日に、中川消費・安全局長を通じて、再びアメリカ側に事前調査ができるものであれば、事前調査も含めてできるだけ日本のいろいろなやるべきこと、必要なことについてやりたいという旨の意思は先方に伝えております。

 ただし、十一月二十二日になりまして、それも、調査をやることは結構ですよ、ただし、実際に現物の処理がしっかりと確認できた方がいいのではないかということで、日本側の厚生労働省と農林水産省の方の認識もその方がより確実であるという判断になったので、結局、ああいう形で処理作業を行ったということでございます。

川内委員 飼料規制のこと。

中川国務大臣 飼料規制につきましては、食品安全委員会の附帯の御意見にもあるとおりで、より安全を期すというか、日本と同じようなルールに近づけなければならないということで、あの御意見のように、折に触れて米側に、私だけではなくて事務方も含めてこちらから言っておりますし、今後もそれを言っていかなければならない、アメリカの方も飼料規制については改善する作業をやっているやに聞いておりますけれども、日本としても引き続きアメリカ側に要求をしていかなければならないというふうに考えております。

川内委員 ジョハンズさんに言いますよね。

中川国務大臣 ジョハンズさんにも当然言います。

川内委員 終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、神風英男君。

神風委員 民主党の神風英男でございます。

 久しぶりに農水委員会で質問をいたしますが、きょうは、一般質疑ということで、国営土地改良事業を中心に質問をさせていただきたいと思っております。

 私ごとで恐縮でありますが、私の生まれは茨城県というところでございまして、まさに農業県であります。ですから、子供のころから、田んぼであるとかあるいは畑の風景というのは本当に日常の見なれた風景でございました。それだけに、逆に、田んぼであるとかあるいは畑を多額の費用をかけてつくるものだということを子供のころは全く知らなかったわけでありまして、随分後になってから土地改良という概念を知ったわけでございます。

 そこで、まず最初にお伺いしたいわけですけれども、いわゆる農地といった場合に、その農地の定義というのか、あるいは基準というんでしょうか、どういう状態であればそれが農地と呼べる状態であるのか、その農地の基準について教えていただきたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 土地改良事業を実施する場合に、いつから農地になるかということについてお答えをいたします。

 農地開発事業につきましては、測量あるいは木の伐採、伐根、それから基盤の造成等、こういった工程を経まして、また、必要な場合には、用水施設、排水施設等の整備を実施いたしまして、こういったすべての工程が完了した時点で農地として実態的に利用可能になるということでございます。

 なお、農地開発事業を実施した場合の農地としての所有権については、確定測量を実施しまして、換地処分の公告、登記を終了した時点で所有権は確定するということになっております。

神風委員 今、お手元に資料をお配りしているかと思いますが、そちらの写真をごらんいただきたいと思います。

 この写真というのは、まさに昨年の平成十七年四月十三日の農水委員会において、農業経営基盤強化促進法の一部改正法案の審議に際して、参考人としてお越しをいただきました福島県の大建工業有限会社の遠藤社長が耕作をされている国営総合農地開発事業、雄国山ろく地区の現状の一部でございます。

 その委員会の後、私も遠藤社長の会社にお伺いしまして、実際に、その耕作地、農地を拝見させていただきまして、写真に私自身が撮ってきたのがこの六枚の写真であります。

 この一番目の写真をごらんになっていただければすぐにわかるように、大変大きな石ころだらけの、農地というよりは土地であります。また、二番目の写真というのが、農家の皆さん方がこの石ころを除石したその石が山積みになっている光景。そして、三番目に至っては、大きな松の木、直径十センチあるいは十五センチぐらいに成長しているような、松の木がこれだけ成長しているような状態であるわけであります。

 当然、こういう状況であれば、除石あるいは伐採、伐根あるいは土壌改良といったものが必要であろうかと思っておりますが、これがこの状態で農地と呼べるものなのか、あるいは仮にこれが農地であればここで何が作物としてとれるのか、それについて大臣の見解を伺いたいと思います。

山田政府参考人 今、写真を提示されて質問がありましたけれども、この写真だけではこれが農地であるかどうかというのは、実はなかなか判断がしにくい状況でございます。

 先ほど言いましたけれども、農地開発事業におきましては、さまざまな工事あるいは施設の整備がございますけれども、そういったすべての工程が終了した時点で、農地として実態的に利用可能になるということでございます。

 一方、農地法なり農地制度におきましては、現況が農地であるかどうかということを判断して農地性を判断することになっておりますが、この写真だけではそこのところはなかなか判断できない、農地であるかどうかについては判断できない状況でございます。

神風委員 私は大臣にその見解を伺ったわけでありまして、引き続き伺いますが、写真で判断できなければ現地に行っていただきたいと思うわけであります。

 逆に、それではこの農地で何の作物がとれるとお考えですか。

山田政府参考人 先ほどの繰り返しになりますけれども、この写真だけではどういった作物が作付可能かどうかということについては、ちょっとお答えしかねる状況でございます。

神風委員 実際にここで栽培をされているのはソバ、あとはタラの芽だけで、だけというかそれくらいしかつくれない状況であります。

 四番目の写真が実際に遠藤社長が栽培をされているタラの芽の写真でありまして、やっとことしで三年目になってこういう状況になっている、ここまでするのに、先ほど二番目にありました、石れきがこれだけ山積みになっておりますが、これ以上の石を除去した上でこういう状態になったということを遠藤社長は話されておりました。

 この国営総合農地開発事業は福島県の喜多方市の雄国地区で実施をされた事業でありまして、それが、平成十四年には、全体の三割にも相当する五十八ヘクタールが遊休農地となっている状況であります。ちなみに、総務省の福島行政評価事務所の行政評価によりますと、もっと多い約六十八ヘクタールが休耕地あるいは管理不良地となっているということであるわけであります。

 そこで、平成十五年、農業生産法人を除くあらゆる法人の農業参入と、市民農園の開設者の範囲拡大を図ることを内容とした喜多方市アグリ特区が導入されたということであるわけであります。しかしながら、これはある意味では、国営土地改良事業の失敗というものをアグリ特区という形でまさにごまかしたものにすぎないのではないか、まさに、失敗を隠ぺいして責任を転嫁しようとする姿勢、あるいは農水省の失敗を民間企業に押しつけるという姿勢に映るわけですが、これについて、大臣の御見解を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、岡本(芳)委員長代理着席〕

中川国務大臣 私もプロではございませんので、今の写真、二度御指名いただきましたが、水はけだとか、あるいは土壌の性質だとかによって、何がつくれるのか、写真だけ見てもとても答えられなかったということでございます。

 私の地元も、たかだか百年ぐらいの開墾の歴史でありますけれども、非常にメリットがある部分と、つまり、平らで広大な農地であるという部分と、今でも石がごろごろごろごろ下から出てまいります、これを除去するという作業が農業者には非常に大きなことであります。

 要は、土地を農地として持続的に、地力その他をどうやって確保していくか、これは農家の皆さんだけの御努力では限界があって、例えば水管理の問題であるとか、あるいはまた先ほどの瓦れき、石をどうやって除去するかということになりますと、みんなでやっていかなければならないというふうに思っております。

 まあ、ここでソバとタラの芽ができるということになると、これはこれで私から見ると大変いい農作物ができるのかなと。収益面はよくわかりませんけれども、よくここまで御努力されたなとも思うわけでございますし、引き続き、こういういろいろな基盤整備をやって、少しでも優良農地にして、いいものをつくって、そしていいものを消費者に届けて、そして経営自体がよくなっていくように我々も、優良農地の確保、そしてまたいい農産物を消費者に供給するというために、これからも努力をしていきたいというふうに考えております。

神風委員 こうした農地を貸し付ける場合には、少なくとも作物がとれるような状態で、開墾費用とかも民間企業の負担ではなくて、きちんと整地をした上で貸し付けるべきであろうと思うわけでございますが、それについてはいかがですか。

山田政府参考人 土地改良事業の実施につきましては、先ほど工事のお話をしましたけれども、基盤整備をし、あるいは、必要な場合には用水の施設、排水の施設の整備を実施するというようなことをやりまして、農地として使えるような状況にするというのが土地改良事業の趣旨でございます。

神風委員 というと、この状態というのはそれに合っているとお考えですか、今の写真の状態というのは。

山田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来申し上げておりますけれども、この写真だけを見て、これがどういう状況、農地であるのかどうかというのを判断するのはなかなか難しい状況であるということでございます。

神風委員 今の答えを聞きまして、本当に農水省の方というのはどういう感覚を持っているのかと疑うわけでございます。

 こうした遊休農地のうち、こういうふうに、農業上の利用の増進を図る必要がない、あるいはもう図れないというような判断を下された場合には、ある意味で、例えばグリーンツーリズムに関連した宿泊施設であるとか研修施設であるとか、そういった利用の仕方を考えてもいいのではないか。

 実際に、先ほどの行政評価の改善意見の中にも、地域の特色や地区の創意工夫を引き出すことに配慮した有効活用を図れという指示があるわけでありますし、先ほどの写真の六番目、ちょっとこれは写りが悪いんですが、非常に風光明媚で大変美しい地域でありまして、できればそういった宿泊施設みたいなものをつくって、特区をより具体的に活用を図りたいといった要望が地元の中でも相当あるわけであります。

 ですから、そういった面でもう少し、特区というのであればなおさらのこと、そういった有効活用を図るようなことも検討すべきではないかと思いますが、それについてはいかがでしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 現に、作付がなされていない農地等が存在するわけでございます。農林水産省といたしましては、先ほど大臣からもお話ししましたけれども、できるだけ農作物が作付されて活用されるということが非常に重要だというふうに考えております。

 そういった観点から、農林水産省としては、県、市町村、あるいは土地改良の受益代表者等で組織される土地利用促進協議会という協議会を開催いたしまして、その中で、営農指導をしたり各種の支援策を検討する、また、遊休化しているとする農地がありましたら、その解消の事例等の情報提供を行うというようなことで、農地の有効活用を促進しているという状況にございます。

神風委員 今の大建工業さんが一番今苦労されている面というのは、やはりお金の面、資金面でございます。

 そういう意味で、農業に参入をしたこういった建設会社のような場合、低利であるとか、あるいは無利子の農業資金を借りたくてもなかなかそれが借りられない、あるいは金融措置が何もないというのが実態でございます。

 しかも、建設会社の経営状況でいえば、こういった新規に農業分野に参入をすることによって、本業も非常に悪影響を受ける。つまり、農業はもうからない分野でありますし、ましてやこういう状況でありますから、それを知らずにこのアグリ特区に参入をして、今農業分野に入っているわけですけれども、本業にも悪影響が及んでしまうというような悪循環に陥っているわけでありますけれども、そういう面で、異業種から参入をされた法人に対して、農業分野がうまく回転していくまで何らかの資金的な援助というようなものを検討される御予定はありませんか。

井出政府参考人 建設業から農業に新規参入する場合につきましても、委員も御承知のように、認定農業者になればスーパーL資金等の農業経営改善関係資金が借りられるということになっております。

 建設業から参入した場合に認定農業者になれるかということでございますが、この認定は市町村が行うことになっておりまして、将来にわたって効率的かつ安定的な農業経営を営むことができるかどうかということで判断することになっております。現在、農地をリース方式で参入した法人でありましても、実際に認定を受けてこういった資金を借りているという例はございます。

神風委員 認定農業者になればということでありまして、例えば大建工業さんの場合にもそういうことをほとんど最初は御存じないわけであります。ですから、昨年の九月にできたというパンフレットも見せていただきましたけれども、いかにそれを周知徹底させるかということが必要であろうかと思いますし、早急にそういう対応は図っていただきたいなとお願い申し上げるところでございます。

 また、その資金の問題についてでありますけれども、農業経営基盤強化措置特別会計という非常に予算の執行率が低い特会がございます。農業改良資金貸付金は、平成十五年度はわずか三%という特会であったわけでありますけれども、こういうものを活用したらという思いでいたんです。そうしたところが、昨年の十月二十五日の記者会見で、これは当時の岩永農水大臣が、食管の特別会計と農業経営基盤強化措置の二つの特別会計を廃止して、かわって新しい特別会計を創設する、この新しい特別会計は、一定の条件を満たす大規模農家などに対象を絞る新農業助成制度を扱うと発表されていたようでありますが、この内容というのは具体的にどういうものなんでしょうか。

    〔岡本(芳)委員長代理退席、委員長着席〕

井出政府参考人 農業経営基盤強化措置特別会計につきましては、従来から担い手への農地の利用集積、まさに農地の流動化の関係の事業、それから農業改良資金の融資、そういったことに関係した事業の経理を行ってまいりました。

 このたび、主要食糧の需給、価格の安定を図る事業を経理しております食糧管理特別会計と一緒になって、新たな特別会計として発足するということを考えております。これは今回、この国会に提出をいたしました新たな担い手に対する経営安定対策を実行するという観点から、担い手の経営安定を通じて食料の安定供給を図ることを目的としますこの二つの会計を一体的に実施することによりまして、新たな経営安定対策を実施することが適当ということで十九年度に統合することといたしておりまして、先般国会に提出されました行革推進法でもその旨の規定がなされているところでございます。

 この統合によりまして、担い手による食料の安定供給の推進という農政上の重要な一連の施策に関する経理を一つの特別会計で行うことになりまして、予算の透明性が高まるとともに、限られた財源で担い手の重点化を図る施策を経理面からも担保できるということで、行財政改革の方向にも即していると考えております。

神風委員 この農業経営基盤強化措置特別会計、先ほど申し上げたとおり予算の執行率が非常に低い、異常に低い、ある意味では隠れ予算と言ってもいいような特会であったわけでありまして、そうした批判が非常に多い中で、逆に食管の特別会計と一緒にする中で、最初に特会の確保ありきという中でこれが進められているんではないかという気がするわけでございます。

 つまり、余っている農業経営基盤強化措置特別会計を新しい特別会計という形で、ある意味では衣がえをして特会そのものの温存を図る、まして、もともとこの経営基盤強化措置特別会計、自作農特会と言われていた時代があったというか、自作農特会から経営基盤強化措置特別会計になって、また新しくそれを単に衣がえしてくるだけにすぎないというようにしか見えないわけですが、いかがですか。

井出政府参考人 先ほど申し上げましたように、新たな担い手に対する経営安定対策という大きな事業を実施するに当たりまして、この事業は、従来、麦ですとか大豆ですとか、あるいは甘味資源作物等に個別に講じられておりました価格安定対策を総合して、経営体としてのいわば所得安定対策を講ずるという大きな事業でございます。

 その事業を実施する上で、特別会計という形でその予算の流れを把握することが妥当である、そういう観点からこの特会の統合を図ったものでございまして、単に売れていない事業を抱えている特会を名前だけ変えたということではございません。

神風委員 基本的には、やはり行政改革という観点からいえば、一般会計に戻すのが筋であろうかと思うわけであります。

 昨年の十月三日の予算委員会でも、民主党の松野議員がその点を当時の岩永大臣に随分指摘をしていたところでございますが、一般会計にするつもりというか、検討ということは文字に入っておりますけれども、その予定というのはいつ一般会計化されるのか、その時期について教えていただけますか。

井出政府参考人 農地の利用集積とか流動化に関する事業につきましては、十年、十五年といった長期にわたる農地の貸し付け、そういうものを担保するためにお金を動かしておりますので、現在の実績の十数年分の事業規模があるわけでございます。

 今回は、まずこの両会計を統合し、その中で、そういった農地の流動化についても、当然担い手への集中ということを強めていくことを実行するということになっております。それをやった上で、果たしてそういった形で本当に完全に回っていくのかどうかということを検証した上で、次の段階として、一つの選択肢として、一般会計へということも選択肢であるということは行革推進法の中にも規定されております。

神風委員 この新しい特別会計の規模は幾らになりますか。

井出政府参考人 規模は、今度新しくやる事業、担い手に対する経営安定対策、これにどの程度の所要額がかかるかということは、今度の十九年度予算で初めて予算を計上いたしますので、それについては現時点では明らかでございません。

 ただ、現時点での農業経営基盤強化措置特別会計の歳入歳出規模は、十七年度で五百六億円、それから食管の方は、これは米の出し入れをしておりますので、一兆五千億を超えるというような歳入歳出規模になっております。

神風委員 この特別会計の問題というのはこれからもいろいろ質問をさせていただきたいと思っているわけでありますが、きょうは少しまた話を土地改良の方に戻したいと思っております。

 お手元の方にB4判の表の資料を二枚お配りしているかと思いますが、これはちょっと私がこれまでの間、いろいろ国営土地改良事業の資料を読みながら、自分でまとめたいろいろな現況の事例であります。

 一番左側が筑後川下流の国営土地改良事業、これは最初の工事期間の予定が十一年間であったものが三十六年間、ただ、これは三十六年間といっても、まだ、二〇一一年に完了の予定ですから、本当に三十六年間で完成をするかどうかはわからないというような状況であります。現時点で伸び率が三・三倍。事業費については四百九十億円が三千四百十七億円、七倍。また、受益面積の予定が当初五万四千三百八十ヘクタールであったものが、四万八百九十九ヘクタール、四分の一が減少している。

 あるいは、左から四番目の青蓮寺地区に至っても、工事期間の予定が当初五年間であったものが十八年間、三・六倍。事業費予定は三十億円であったものが百九十億円、六・三倍。受益面積は八百十ヘクタールであったものが五百十四ヘクタール、マイナス三七%。

 その隣が先ほどお話しした雄国山ろく地区でありますけれども、あるいは一番右側の福島県母畑地区、これも工事期間、当初七年間の予定が三十年間、実際には四・三倍に延びている。また事業費予定も、四十七億円が五百六十一億円になっている、また伸び率が十二倍ということでございます。また受益面積も、二千四百三十一ヘクタールが二千九十三ヘクタール、マイナス一四%。これは農家の負担金も、それぞれ農地造成が五倍、区画整理が三・七倍、かん排が一・五倍というような状況であります。

 なかなか自分で調べ切れなかったものですから、この表を農水省の方にお渡しして、正確なデータを教えてもらいたい、このあいている部分を埋めてくださいという形でお渡ししたところ、返ってきたのが二枚目の表であります。つまり、ほとんどは空欄になって戻されてまいりました。右側の方に、農水省国会連絡室、昨年やりとりをしたものですから、昨年のデータであるわけですけれども。

 注の一に「益田地区、御浜地区、青蓮寺地区、雄国山麓地区については、事業完了後、事業計画に関する文書の保存期間(十カ年)を経過していることから把握できない。」という注意書きで、こういうデータが突き返されてきたわけでございます。この意味はどういう意味なのか。つまり、データを消却してしまってもう何もわからないということなのか、あるいは、データはあっても公表する義務はないんだということなのか。

 実際に、ごらんになっていただければわかるとおり、土地改良、三十年以上も、大変長期間にわたって、また何千億円という資金をかけて行う事業であるにもかかわらず、十カ年、その保存期間が経過しているから何もお示しできない、これでは、どれだけの税金が使われ、どれだけの資金が使われ、どれだけの効果が上がったのか、全くその検証ができないと思うわけですが、これについて、どうしてこういうことになるのか、教えていただきたいと思います。

山田政府参考人 ただいまの御質問でございますが、先生のお話がありましたように、文書の保存期間、これはそれぞれの文書ごとに保存期間が決まっておりまして、この国営土地改良事業に関します文書の保存期間、これは十カ年ということになっております。

 したがいまして、先生いろいろなところで資料を見てそういう数字を書いてこられたということなんですけれども、これについて農林水産省として正確に確認することができない状況でございましたので、把握できないということでお答えをしたところでございます。

神風委員 これが十年経過せずに、五年であるとかあるいは六年であればわかっていたわけですよね。いかがですか。

山田政府参考人 今お話がありましたように、保存期間内のものは文書が保存されておりますので数字はわかるということでございます。

神風委員 というと、十年たつとそれはデータを消却するわけですか。消滅してしまうわけですか。いかがなんですか。

山田政府参考人 保存期間が過ぎますと、基本的には廃棄されるということと承知をしております。

神風委員 そうすると、その後、その事業の成否というか、その成果をどうやって農水省としては検証されるんですか。全くデータがない状況で、三十年、あるいは、何千億円、一千億円以上かけている国営土地改良事業というのも相当多いわけでありまして、その検証というのは、もうそれ以降なされないというか、できないという状態にあるわけですか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今の土地改良事業の事業についての評価につきましては、工事を開始する時点、事前の時点、それから事業実施中は五年ごとに再評価をする、その際に事業の変更が必要かどうかというようなことを評価します。さらに、事業が終わりました後は事後評価ということで、その事業が効果を発揮しているかどうかというようなことをチェックするということで事業の評価をすることといたしております。

神風委員 大臣、この点、どういう御見解でいらっしゃいますか、どういう感想をお持ちですか。

中川国務大臣 文書保存規定というのは、きちっとしたルールにのっとってやられているというふうに理解をしておりますので、結局こういうふうに資料が廃棄されたということ、答弁のとおりだと思います。

神風委員 それでよしとされるお考えですか、そういう状態がいいんだと。しかし、今これだけパソコンも発達している、データの保存なんというのは何十年でもとっておけると思いますけれども、それで十年間たったらばデータを消却してしまう、後はもうそれについて何ら検証はできないんだという体制で農水省としていいとお考えですか。しかも、税金を使って、何千億円、ましてや三十年以上もかけるような大型事業で、十年たったらもう資料はありません、そういう状態が農水省の体制として、姿勢としていいんだというお考えですか。

中川国務大臣 私の地元にも大規模な土地改良事業がありまして、これも大分予定より延びる、あるいはまた投入資金も多くなるということがございます。しかし、その問題と、工事が完了した後の書類の保存期間、これは文書であろうがフロッピーであろうが何であろうが、そのルールとは直接結びつかない議論だろうというふうに私は思います。

神風委員 いや、直接結びつかないといっても、それではどうやってそれを検証されるわけですか。どれくらいの経費がかかって、どれくらいの効果が上がったのかということを、二十年後、三十年後に調べたいと思ったときには、その検証の仕方というのは全くないわけでしょうか。

中川国務大臣 それは毎年、決算、あるいは会計検査院の調査、あるいは国政調査機関、いろいろなところでそれをチェックしているわけですから、二十年、三十年後になっていきなり調査をするというのは、まあ何か特別な事情があるのかもしれませんけれども、文書は文書で保存規定というルールがあるわけでございますから、ですから、何でもかんでもというのはちょっと訂正しますけれども、とにかく、やった事業を二十年も三十年も書類はすべて残しておけというのも、これはこれでまた役所側にも一つの廃棄する合理性があるんだろうというふうに考えます。

神風委員 少し以前は悪徳リフォームというのが話題になりまして、今は耐震偽装というのが非常に社会的な問題になっております。そういう意味では、この国営土地改良事業をマイホームの建築に例えれば、最初、工期が三カ月であったものが一年に延ばされて、しかも、設計が当初の四分の一ぐらい削られて、しかも、その建設費用も三倍ぐらいに伸びてしまった、しかも、それでいて欠陥住宅であったというような状況ではないかなと思うわけでありますが、これが今の国営土地改良事業の実態ではないかという気がしておりまして、ある意味では、お上が、なかなかめったにお目にかかれないような悪徳ぶりを発揮している、民間企業でもこれだけの悪徳ぶりの悪徳業者というのはいないのではないかなと思うわけであります。

 そういう中で、先ほど、私の方がまとめました資料をごらんになっていただいてもわかるとおり、こういった工期、資金あるいは受益面積、これだけ差があって、これについて、この不当性、違法性というのを何らかの法律によって問えるのが民主国家であり、法治国家であると思いますが、これは何の法律によってこの違法性というその責任を問えるんでしょうか、大臣の見解を伺いたいと思います。

中川国務大臣 罪刑法定主義という大原則がありますから、違法性、不当性という今の御質問の言葉に対しては、むしろ、御質問されている方が、何に基づいて違法性、不当性があるということを御指摘されるのが通常ではないかと思いますが、振興局長の方で何かあれば、どういうふうな違法性、不当性があるのか、答えられたら答えてください。

山田政府参考人 国営農地開発事業、先生お話がありました国営の土地改良事業について、こういうふうに農家負担が大きくなっている、あるいは事業期間が長くなっているという御指摘でございます。

 これの原因は、もちろん地区によってさまざまでございますが、例えば、地元の要請によって整備水準を変更するような場合、あるいは実際に工事をやっていきますと現地の地形あるいは地質が当初予定していた状況と違うということで工事内容を変更する必要があるもの、あるいは権利の調整に時間がかかるということで工事期間が長くなるというようなこと、そういったいろいろな要請があるいはいろいろな要因があるわけでございまして、この事業費が高騰したあるいは期間が長くなったからといって違法であるとは考えておりません。

神風委員 土地改良の場合は、一般の公共事業とは違うわけですよね、性格は。一つには、事業の発意が受益農家であるということ、もう一つは、公共事業でありながら受益者負担を伴う、この部分が普通の公共事業とは全く違う。

 そういう中で、先ほどもお話ししたように、福島県の例えば母畑地区であれば、農家の負担金の予定が、当初、農地造成で反当たり三千円であったものが一万五千円、また、区画整理についても三千円であったものが一万一千円、実に、五倍、あるいは三・七倍になっている。これで違法ではないんですか。大臣、いかがですか。

中川国務大臣 先ほども申し上げたように、私のところも、国営土地改良事業、草地事業、かんがい排水事業、いろいろな土地改良事業があって、それは受益者の皆様方の長年にわたる希望によってやっと採択されて、そして、一日も早く実現をして、水はけがよくなった、土地の条件がよくなった、それによっていい農業ができるようになった。しかし、本当に、私の経験しているだけでも、大変に長くなっている事例がございます。

 その原因は、今、山田局長が答弁いたしましたように、国の方の財政状況もあれば、設計変更もあれば、地元の事情もあれば、いろいろな事情があるわけでございますから、それを一つにまとめて、悪徳何とかよりも国のやっている国営事業の方が悪いと言うのは、ちょっと、私は国会の場での御発言としては、私も受益農地をよく知っている立場からは、できたときの、竣工式のときのあの農家の皆さんの喜び、成果が上がっている喜びというものが、多少おくれたにしても、この事業が完成してよかったねというあの喜びを、何回も参加をさせていただいた経験からいって、やはり、これは農業にとってもまた日本の食料政策にとってもプラスであったというふうに私は理解をしております。

神風委員 この国営土地改良事業、土地改良事業の場合、三分の二の同意が得られればそれで強制的にその事業をされてしまう、中には、反対をしていても強制的にそういう負担を押しつけられる農家が非常に多いわけでありまして、幾ら何でも当初の五倍、そういった金額の負担を強いられる、しかも、それをお上がやる、これは納得できない話であろうかと思いますので、この点、これから改善をぜひ進めていただきたいと思います。

 質問の時間が余りなくなってしまいまして、ちょっとほかの質問を省きますが、現在、国営土地改良事業によって造成した農地で、先ほどお示しをした雄国山ろくのようなこういった状態になっている、つまり、未利用地、あるいはもう耕作放棄をされているような農地というのはどのくらいありますか。

山田政府参考人 国営土地改良事業によって造成された農地のうち、遊休化している農地の面積ということでございます。

 過去十年以内に農地造成を完了した国営事業地区、これは八十一地区ありますけれども、そのうちの五十二地区について平成十四年度から平成十六年度にかけて作物の作付状況の調査を実施いたしました。これによりますと、その造成面積合計で二万七千五百ヘクタールございましたが、調査時点で作付がなされていなかった農地の面積は約六百ヘクタールとなっております。この作付されていない農地の割合は約二・二%という状況でございます。

神風委員 この土地改良についても、正確な実態調査がいろいろな面で必要であろうかと思っておりますので、ぜひそういった実態の調査を進めていただきたいと思うわけであります。

 そして、そういった実態調査をしないで、逆に言えば、平成五年度から平成十八年度の十四年間において総額四十一兆円の事業を予定していた第四次土地改良長期計画というのが実施をされていたわけでありまして、その中で、農用地造成事業として、一兆四千百億円をかけて、当時で農用地約十万ヘクタールの造成を行う計画になっていたということであるわけでありますが、平成十二年の時点でもう既に三十四万三千ヘクタールの耕作放棄地が発生をしているにもかかわらず、これだけの費用をかけて十万ヘクタールを造成しよう、全くもって納得がいかないというか、矛盾に満ちた政策であろうかと思いますが、いかがですか。

山田政府参考人 ただいま先生がお話しされました土地改良長期計画、これは今お話がありましたのは第四次の土地改良長期計画でございます。この第四次土地改良長期計画は、平成五年度から平成十八年度まで、先生お話がありましたように、十四年間の事業費の目標を四十一兆円ということで実施をしてきたわけでございます。

 この土地改良の長期計画につきましては、その後、今の土地改良長期計画に変わっているんですけれども、事業費ベースでどれだけの事業をやるか、つまり、総体としてどれだけ事業をやるかという、目標にしていた計画を改めまして、第四次の土地改良長期計画、十八年度まで実施するということになっていたんですが、それを途中で打ち切る形で新しい土地改良長期計画に乗り移ったというか、新しい計画を策定したところでございます。

 今お話がありましたように、どれだけの事業をやるかという目標を立てるのではなくて、今の考え方は、成果目標といいますか、どういう目標を達成していくかというような考え方で整理をしておりまして、例えば、整備地区の耕地利用率をどういうふうにしていくか、あるいは、汚水処理施設の普及率をどういうふうにしていくかというような事業の投資そのものではなくて、先ほど申しましたような達成される成果に着目した事業ということに長期計画を変更している状況でございます。

神風委員 ちょっと時間がなくなってしまいましたので、最後に、農水省の中で、土地改良の完了の日というのは一体いつ来るんだろうかということが非常に疑問であるわけです。ある意味では、土地改良を日本全国やってもアメリカの生産性の向上には遠く及ばないわけでありますし、では、生産性の向上を上げるために土地改良をやって、一体農家の所得あるいは農業収入がどれくらいふえたんでしょうか。それをお答えいただきたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 土地改良事業によって農業の生産性がどういうふうに向上したかということでございますが……(神風委員「いや、農業所得ですよ、もう生産性の向上はいいです」と呼ぶ)農業所得。ちょっと御説明をいたします。

 農業所得それ自体の統計はございませんけれども、生産コストの減ということでいいますと、土地改良事業実施地区においては、生産コストを約三割低減するというような効果があらわれております。このほか、圃場整備地区の担い手の経営規模は約二・二倍に増加をしておりますし、稲作の労働時間も六割短縮されるということで、土地改良事業によりまして、コストなり労働時間なりは大幅に改善されているというふうに理解をしております。

神風委員 一番肝心なのは、生産性の向上云々よりも、農業所得あるいは農家の所得がどれだけそれによってふえるかということが一番大事な視点だと思いますから、ちょっともうきょうは時間がなくなってしまいましたので、また改めて時間をいただいて質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 大臣にお聞きしたいと思います。

 今、閣議でもって査察した後に米国のBSE問題ですけれども、いわゆる牛肉をアメリカから輸入する、そういった決定もあったんですが、十二月の十三日から二十四日まで査察をした、その結果報告書を大臣に見ていただきたいんですが、資料一につけております。

 その中に、特定危険部位、これでは、「脊髄などのSRM除去、牛枝肉の高温・高圧洗浄などの適切な処理を確認。」適切な処理を確認とあるわけです。端的に、この報告書がいわゆる適切なものであるか、あるいは、この報告そのもの、農水、厚労が行った報告そのものが不満足なものであったか、大臣として満足なものであったか、そのどちらかで答えていただきたいと思うんです。

中川国務大臣 輸入再開後、十一施設を見てまいりました報告書につきましては、概要を報告しておりますし、消費者の皆さんにも御説明しておりますが、今の山田委員の資料にあるとおり、あのプログラムどおりになされていたというふうに理解をしております。

山田委員 大臣、私が提出した資料二を見ていただきたいんです。

 この中で、いわゆるアメリカの農務省の監察局、そこが、この資料の中の後ろの方、特定危険部位の除去違反とか月齢判定違反とありますが、これを見ていただきたいと思うんです。そして、左手の方にアメリカの査察した、あるいは認定した工場を書いておりますが、その中で、実際に、この前香港から脊柱が出た会社、スウィフト・ビーフ・カンパニー、コロラド州ですね。ここにおいては、既に特定危険部位違反が、OIG、いわゆる監察局の指摘だと一件、月齢違反が二件もあったわけです。それについて、この厚労、農水の査察チームは、事前にそういった情報、既にOIGは発表して半年以上たっていたんですが、全くそういった資料といいますか、そういったことを持たずに行った。

 そして、向こうに査察しに行って、当然いわゆるEVプログラムについては、査察に行った以上は、少なくとも目を通しただけではなく、それについての資料としてコピーなり持ち帰ってくる、そういったことが必要だと思うんですが、そういったことすらしていなかった。そういう査察が、まさにこの報告書、国民に消費者にみんなに発表した報告書どおり、適切なものであると大臣はお考えかどうか。

中川国務大臣 この資料二は、アメリカの消費者団体が入手した記録という資料のようでございますけれども、その中で、日本政府の査察、それから民主党が先日行かれた査察ということがあるわけでございます。

 香港のスウィフト社で今回、三十カ月以下の骨つきの肉が発見されたということでございますけれども、これは御指摘のように、スウィフト・コロラドの工場、食肉処理場で日本が査察をしたものでございます。そもそも香港向けと日本向けでは仕様が違うことは言うまでもないことでございますけれども、再開後に日本が行った十一施設の一つでございまして、これについても視察をした結果、厚労、農水の専門家が見た結果、きちっとやられているというふうな報告を受けております。

山田委員 適切な、いわゆるきちんとした査察が行われていた結果、日本の成田に脊柱が入っておった。香港においても、危険部位だから脊柱は絶対入れちゃいけないということになっている。

 それが、日本の成田であれだけ騒がれた後二十日たって、このコロラド州のスウィフト社は、予算委員会で松岡議員が、朝日新聞の「米国牛、安全どう証明?」こういう記事を見せて、米国のいわゆるパッカーはこのように安全じゃないかという説明をしたスウィフト社です、マスコミにも報道した。いわゆる成田でもそういう脊柱があったということはわかっていて、米国農務省は、そういうことがないように周知徹底させると、ペン次官が日本に来て我々にも直接説明した。その二十日後にこのような危険部位を香港に入れておった。そこを農水省の査察は行って、適切であったと。

 大臣、今の話であっては、やはり適切であった、査察に抜かりはなかった、そう言われるのかどうか。

中川国務大臣 一月二十日に成田でわかったのは、アトランティック・ビール・アンド・ラムという会社とゴールデン・ビールという会社の二社が、特定危険部位がついたまま発見されたということでございます。それから、香港につきましてはスウィフト社、先ほども申し上げましたが、日本が十二月の初めに査察をして、日本向けのプログラムに基づいてきちっとやっているということを専門家が見て、その報告書が出されたわけでございます。

 今回のこの報告書、アメリカ側が一月二十日以降きちっとやっておりますということにつきましては、これは日本向けのEVプログラムに基づいて、アメリカ、そしてまたそれに基づいてスウィフト・コロラドがやっているということでございますから、十二月の時点での査察が、きちっとプログラムどおりにやられているという確認が行われたという報告については、私は、そういう報告について、その時点での前提が変わったというふうには理解をしておりません。

山田委員 査察が本当に、我々国会議員として、国政の場として、大臣として、適切なものであるか、日本の査察が。それについては、十分に、その十一施設においての査察、私も査察に行った党員たちからお話を聞きましたが、危険部位の除去の仕方、私も三工場を見て、二田筆頭も見られてわかるように、それぞれの工場において違う、危険部位の除去の仕方から、背割りの仕方から、若干違う。そういったものについてそれぞれの報告がなされているはずで、そういった報告書をオープンにしない限り、本当に安全なものが日本に入ってくるかどうか確認できないと思うんです。

 その中で、査察報告を私は主意書においても出し、明らかにされている。そして、この二十日の日に、大臣あてに、この査察報告がなければBSEの集中審議ができないじゃないか、一体どういうふうに日本の農水、厚労省の査察チームがこれは適切であると言ったのかということがわからない限りできない、そういうことで、きょう、査察の資料を求めた。大臣、これに対して、査察についての報告書が私の手元に届いていない、何度も請求したけれども。これではとても質問できないと思われるが、大臣、どう思われる。

中川国務大臣 まず、山田委員は何でも御存じですけれども、繰り返しになりますが、成田で発見されたのは特定危険部位でございます。香港で発見されたのは三十カ月以下の骨つきの肉であります。まずここが、まず日本と香港向けでアメリカのプログラムが違うというところでございます。

 その上で、御指摘の十二月に行った報告についてきちっとした資料がないではないかということでございますが、午前中も答弁申し上げているとおりでございまして、報告書の結論については既に公表しているところであり、私も報告を受けているところでございます。さらにきちっとした報告書、十二月の十一施設についての報告書が必要であるという御指摘については、何も日本政府が出せないと言っているわけではなくて、日本政府としてもアメリカ側に照会をしているところであり、何回も、けさも、打ち合わせのときに、督促するように事務方に指示を出したところでございますが、現時点においては、報告書の全容について、アメリカ側からきちっとしたものが我々のところには来ていないということでございます。

山田委員 大臣、間違っていると思われます。

 その調査において、向こう側の企業に云々というのはわかる。日本においては安全か否かの、安全な牛肉が入るかどうかの査察をしたわけで、査察の中身についてはそれぞれ各工場で違う、現場の担当者はそれぞれの工場についての意見をちゃんと、報告を農水省に出して三カ月になるわけです。その査察の内容については、当然オープンにしなければならない。企業の秘密に関するものがあるからということだったけれども、それは最近になって言い出したことで、企業の秘密に関するものがあるならば、文書においてそこは黒く塗りつぶして、向こうの工場の各企業の秘密に関するものであったら、その上で出してほしい。私は、そういう書面を大臣に渡している。大臣、届いているはずだ。そうすれば、それに対してきちんとお答えいただきたい。

中川国務大臣 山田委員から私に対してそういう要請があることはもちろん承知しておりますし、一月二十日以降、予算委員会、農水委員会でもそのような御指摘が何回もあったことも承知をしております。ですから、アメリカ側に対して、この報告書について日本の国会で要請が出ているということでございます、これも先方に伝えているところでございます。

 しかし、先ほど別の委員に答弁申し上げたように、これは企業の秘密、つまりEVプログラムに基づいて各企業のやり方が少しずつ違うのでありますが、これはもう山田委員も御視察されて状況はよく御存じだろうと思いますけれども、あるいはそれ以外にも企業の秘密あるいはまたいろいろな表に出せないものもあるということもアメリカ側の立場であり、また日本にもそういうことに対して信頼関係といいましょうか、お互いに、アメリカ側の根拠に基づくような事情というものがどういうものなのかという今返事を待っているところでございますので、それにつきましては引き続きアメリカ側に、どこを黒く消していいのかとアメリカに聞くというよりも、向こう側からどういう形で返事が来るのか、ここはいいよ、ここはだめだよと言ってくるのかどうかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、私としてももう一度督促をしろ、何が出せて何が出せないのか、アメリカ側にはアメリカ側の事情がある、日本側には日本側の事情があるということで、今返事を待っているところでございます。

山田委員 その査察の内容もアメリカの企業の同意を得なければ出せない、そういうような査察をしたところだけをアメリカから牛肉を輸入しようじゃないかという話が既に実務者同士でなされているようなうわさも聞いております。

 そこで、私も大変気にしているわけですが、この査察自体、これは非常に大変重要なことでありまして、中川大臣、大臣は向こうのパッカー、工場、この処理が、幾らEVプログラムを決めても、今度のアメリカの監査報告にあるように、なかなか守られるような体制ではないということ、構造的に。それは実際に、中川大臣、向こうに見に行って、工場をみずから視察し、そしてみずからそういった中身を実際に見るという気持ちはないのかどうか、あるかないかだけでお答えいただきたい。

中川国務大臣 いろいろな報告書、査察結果が出ているわけであります。政府あるいは民主党、自民党、その他出ているわけであります。

 私自身としては、素人ですから、これは専門家に、厚生労働省、農林水産省の専門家に任せた方がいいと。行きたい気持ちはありますけれども、実際にそれだけの判断ができるかどうか不安でございますので、私は、自分の責任において専門家に行かせたいと思っております。

山田委員 大臣は、そういう意味では専門家に任せながら、農水省のいわゆる検査体制、チェック体制、監査体制、それは十分だと。例えば先般、成田の牛肉があったときに、これだけ検査体制が十分だったから日本としてはこうして事前にチェックできたんだと、どこかの、かつて農水だったあの幹事長さんがそう胸を張って言ったようですが、大臣も、そういう検査体制に全く抜かりはなかったと大臣として言い切れますか。

中川国務大臣 リスク管理行政、農林水産省、厚生労働省等々の政府のリスク管理の機能が発揮されたからこそ、成田でああいう形で、アメリカで二つの関門をすり抜けてしまったものが発見できたと思っております。

 完全か完全でないかと言われますと、これは何をもって完全と言うのかというまず定義からきちっとお互いに共有しないと、完全かと言われると、私だって、自分自身完全な人間じゃございませんので、なかなか答えにくいことでございますけれども、成田においては一月二十日は機能したというふうに理解しております。

山田委員 それでは一月二十日の件ですが、いわゆる内臓部分、牛タンと胸腺部分が入っていたわけですが、この内臓部分について、アトランティック社、ゴールデン社も同じですが、そこから入ることについては、いわゆるアメリカの承認、認定した工場であることを農水省、大臣としてはつかんでおったか、つかんでいなかったか。

 ちょっと、後ろからいろいろ言わずに、大臣に答えてほしい。

中川国務大臣 私も一から百までわかりませんので、いろいろ資料を見たりなんかして答弁しなければいけないことをお許しいただきたいと思いますが、もちろん、特定危険部位が入っているということは、成田で発見するまでは承知をしておりませんでした。

山田委員 私が言っているのは、認定工場からの内臓であったかどうか、農水省として知っておったかどうか。

中川国務大臣 もちろん、アトランティック並びにゴールデン社は、EVプログラムに基づきましてアメリカ側が認定をした工場ではございますけれども、内臓その他入ってはいけないものが入っていたということについては、事前に承知はしておりませんでした。

山田委員 赤松厚労副大臣、厚労省としては、その内臓が入ってくることについて、アトランティック、ゴールデン社、これはゴールデンでつぶしてアトランティックで箱詰めしたものですが、それについて、厚労省として、その工場がいわゆる認定工場でなかったということをつかんでおったか、つかんでいなかったか。わからなかったらわからないで結構です。質問事項としてははっきり言っていませんが、打ち合わせのときには話しておったはずです。

赤松副大臣 山田委員の御質問ですが、EVプログラムの認定対象であるということはわかっておりましたけれども、実際、個別具体の部分については承知していなかったということでございます。

山田委員 大臣も副大臣もよく考えていただきたい。検査・チェック体制が立派だったから、こうして水際で防げたんだと。ところが、実際にあの入ってきた内臓は認定工場からの内臓ではなかった。これを厚労省も農水省も知らずにチェックしておったんですか。そんな検査がありますか。お答えいただきたい。

中川国務大臣 アトランティック・ビール・ラム社もゴールデン・ビール社も認定工場でございます。

山田委員 内臓については入ってきた。内臓については認定工場じゃなかった。それは、お二人ともお認めになった。それではチェックできていないじゃないですか。

中川国務大臣 認定施設であるということと、入ってはいけないものが入ってきたから、そこで、動物検疫のところで書類を見たり、あるいは中身を開いて、こういうものが入っていたんだということでストップにしたわけであります。

山田委員 大臣、いわゆる認定工場から入ってきていけないものが入ってきたんですよ。内臓は認定工場じゃないんですよ。肉と内臓があって、内臓についてはあのアトランティック社は認定されていなかったんです。だから、もともと内臓は入ってきちゃいけなかったんですよ。それが入った。

 それについて、脊柱はいろいろプレス発表もしたけれども、内臓について違反というのはプレス発表もしなかった。アメリカからの監査報告を見て初めて農水、厚労省は、内臓については認定工場じゃなかったんだということがわかったというんです。そんなばかなことがありますか。わかったんだったら、何で国民に対してあの内臓は認定工場じゃないところから入ってきたものですとプレス発表しなかったんですか。

中川国務大臣 たしか、あのときは四十一箱ですか、十三部位についてチェックをしたところ、脊柱つきの子牛の肉が入ってきて、三箱だったと思いますけれども、それですべてをストップしたわけでございます。

 御指摘のとおり、米国からの報告書では、内臓についてもアトランティック並びにゴールデンからは日本向けに輸出してはならないということについての御指摘が報告書の中であったことは御指摘のとおりでございます。

山田委員 大臣、先ほど、検証・検査・チェック体制は十分だった、だから発見できたんだ、完全とは言えないまでもと言った。ところが、大事な、内臓そのものが入ってきちゃいけない、いわゆる認定工場じゃないところから内臓が入ってきた。そんなばかな、農水省、厚労省のそういうチェック体制。大臣は先ほど、十分だった、完全とまでいかなくてもと言ったけれども、大変な間違いを既に当初からやっているじゃないですか。それについて国民に対してどう思うか、今はっきり弁明していただきたい。プレス発表もしていないんですから。間違った、それをつかんでいなかった、謝罪したい、そうはっきり言っていただきたい。

中川国務大臣 日本の中に入っていないんですね、脊柱も内臓も。とめたんです、すべて。もうその瞬間に、すべてアメリカから入ってくるものをとめたんです。そして、アメリカからの報告書の中でそういう指摘があった。これはもう既に公表しているところでございますので、これはもうきちっと水際でストップした、こういうことでございます。

山田委員 脊柱が入っていたので驚いたから、それで内臓までとまったんですよ。脊柱がなかったら、内臓は流通しておったんです、大臣。いわゆるその内臓が認定工場から来たのか来ていないのか、それすらつかんでいなかったわけですから。そういう検査体制、それで胸を張れるようなことが、大臣、言えるのかと言っているので、そうでなかったことが、ここではっきりしているわけですから、この場で国民に対して、プレス発表もしていないんだから、謝罪していただきたい、すべきじゃないかと言っているわけです。

中川国務大臣 四十一箱を一月二十日の夕方調べたときに、まず、この脊柱つきの、つまり、脊髄を抜いたものが発見された瞬間に、四十一箱だけではなくて、当時、七百五十トンですか、たまっていたものをすべてストップしたわけですから、これはまさに検査機能として機能したということでございます。

 それ以外にも、いっぱいとまっているものがあるわけでございます。まだいろいろなところでとまっていた牛肉がいっぱいあったわけであります。それにつきましてアメリカ側で精査したところ、それらをチェックして、アメリカ側が、それに加えてそういうものも入ってきた、これはEVプログラム違反であるということでしたので、それについてはすべて報告書の内容は公表しているところでございまして、入ってきていないということは事実でございます。

山田委員 大臣は、まあ委員会の席で。いいですか。脊柱がなかったら内臓は入ってきたんです。既に、それ以前に入ってきた内臓だけでも随分あるんです。その内臓も、農水省は認定工場が内臓と肉と別々の認定がなされておったということを知らなかったわけだから、厚労省も知らなかったわけだから、内臓はもしかしたらその認定工場じゃないところから入ってきて、もう皆さん、国民が食べてしまったかもしれない、ホルモン屋さんで。そういう状況があるということを、いまだに、それはとまったんだから、とまったんだからと。はっきりそれを認識してくださいよ。時間がなくなるから、もうこれ以上この質問はやめます。

 次に行きますけれども、大臣、これから先いろいろ問題になってくるかと思いますが、アメリカのその工場、いわゆるパッカー、実務者会議等々が始まるかと思いますが、そんな中でどこの工場から入れたらいいかどうか、いわゆる日米の合意の条項の中では、アメリカが認定した工場からじゃないと入れられないということになっていますね。それはいかがですか。

中川国務大臣 これは、山田委員も御承知のとおりだと思いますけれども、日本とアメリカが合意した、日本の輸出衛生条件に基づく輸出プログラムで合意されたものについてアメリカが認定するということでございます。

 アメリカ側も日本の処理機関を視察いたしましたし、日本もアメリカ側、とりあえず十一施設から、全部やる予定でございましたので、これはアメリカ側が決定するんじゃなくて、日本とアメリカとの合意、つまり、日本の場合には決定は厚生労働省と農林水産省がやるわけでありますけれども、我々の根拠となるのは、例えば家畜伝染病予防法であるとか、あるいは厚生労働省のと畜場法であるとか、そして何よりも食品安全委員会のリスク評価といったいろいろなルールに基づいて日本側が提示をして、お互いに合意ができなかったらアメリカ側も認定できないわけでございます。

山田委員 アメリカ側が指定した工場について日本側が承認するという形でないと、アメリカ側が認定する、それについては事前協議すると言っても、おかしいんじゃないか。韓国の場合は、アメリカ側が指定した工場を韓国が査察して、韓国がこの工場だったら安全で大丈夫だと思うところだけ承認して入れるということになっている。当然、大臣、そうすべきではありませんか。

中川国務大臣 ですから、その前提にEVプログラムという日米間の約束があるわけですから、それに基づいたものであれば認定できる、そして、そのEVプログラムは、日本として、先ほど申し上げたようないろいろな諸制度の中でオーソライズされたものである、こういうふうに私は理解をしております。

山田委員 そのEVプログラムは遵守されたんですか。

中川国務大臣 日本とアメリカとの間のEVプログラムですか。ですから、一月二十日にEVプログラムが遵守されなかったから、現在輸入がストップされているわけでございます。

山田委員 それであれば、大臣が言った前提を欠くじゃありませんか。EVプログラムが遵守されるから、アメリカを信用してアメリカの認定する工場を入れればいいんでという言い方をしましたよ、今。

中川国務大臣 山田先生は何でもわかっていらっしゃる上で質問するから御存じだと思いますけれども、EVプログラムそのものの信頼性というのは失われていない、EVプログラムの運用がきちっとされていないからEVプログラム違反、したがって輸入をストップしているということでございますから、今後アメリカ側がどういう作業をしてくるのか、日本側がどういう作業をするのかによって、改めてEVプログラムに基づいて再発防止と原因の徹底究明ということを今日本側が求めているところでございます。

山田委員 EVプログラムそのものは、安全にこうしますというんだから、だれが見たってそれは間違いあるものじゃないでしょう。問題は運用ですから。運用が適正になされるかどうかのために査察もあり、定期的に検査する立入検査もこれから考えるというわけですから。そういうことがあってもなお運用において間違いのないように、韓国では韓国政府がいわゆる安全な工場を決めると言っている、日本はアメリカが決めて、日本が決められないというのはおかしいじゃないですかと言っているわけです。端的に答えていただきたい、私の時間もなくなっていくから。

中川国務大臣 済みません、メモが入ったので今答えようとすることを忘れてしまったんですけれども、EVプログラムは問題ないというのが食品安全委員会の現時点での評価でございます。EVプログラム自体が仮におかしいかおかしくないかという判断は、食品安全委員会がされるものというふうに理解しております。

山田委員 どうも大臣、後ろばかり振り向いていていろいろ聞いているんで、大臣が考えて答弁されればいいんで、だからちょっとかみ合っていないと思うんですけれども。

 だから、それはこれ以上質問してもしようがないんでしょうが、大臣、そこのところは、日本も独立国だから、大臣もWTOでも一生懸命頑張ってもらっているのはよくわかっておりますし、そういう意味では、このBSE、食の安全の問題でも、日本側の主張を貫いて、少なくとも韓国がやっているように、いわゆる日本が承認する工場じゃないと、アメリカが決める工場じゃなく、輸入できないという形を貫かなければ、形式的な査察だけでここを認めるというんじゃまた同じことの繰り返しになりますよ。そういうことを主張して、次の質問に移りたいと思います。

 大臣、クリークストーンという会社のジョン・スチュワート、オーナーですか、先般日本に来ていただきました。いろいろお話を聞いたんですけれども、あそこの工場においては、いわゆる生産者から月齢識別、トレーサビリティーというのができている牛を買うとしたら、五ドルしか違わないと言うんです、一頭。日本円で六百円です、これは。それだけ高いだけなんですと。

 クリークストーンの工場も見せていただきましたが、二田筆頭も見たと思いますけれども、その工場は、工場の中にラボがあって全頭検査できるようになっています。そして、自主的に全頭検査して、ELISAでやった検体を日本に送る。日本に送って、そして日本でも確認してもらって、そのような日本国民が安全、安心できるようなものから輸出しましょうと。クリークストーンは一日千頭つぶしていると言っていましたから、芝浦の三倍ぐらいの規模です。

 今、私ども民主党は、各工場に、そういうところがあるがどうかというアンケートをやっていますが、ただ、クリークストーンは、USDA、アメリカ農務省はいわゆる日本向けの出荷の全頭検査についてなぜとめるかと裁判をする、そういうことがけさのホームページに載っておりました。

 いわゆるそういうところから輸入を再開する、本当に国民が安全、安心なものから輸入を再開する、それが必要だと思われるが、大臣としてはその点についてはどうお考えなのか、お聞きしたい。

中川国務大臣 日本としては、日本と全く同じやり方、つまりOIEとか国際的な基準よりもさらに厳しいもの、これが国民的な理解と信頼を得ていると思います。

 クリークストーンの話は、去年の今ごろ、私もそういう話をちらっと聞いたことがありますが、当時は所管でもございませんでした。そういう中堅の会社もあるのかなというふうに思っておりましたが、クリークストーンが、結局そういうやり方をせずにアメリカのやり方に至ったという経緯は、日本側の原因によるということではないということだけは、私、理解をしております。なぜそうなったかについては、私は承知をしておりません。

山田委員 大臣、私が言っているのは、大臣に経緯を聞いているんじゃなく、そういうところから入れようというお考えがあるのかないのか。そういう考えは全くないんだったらないで結構です、それをお聞きしているんです。国民が望んでいる安全、安心な、いわゆるトレーサビリティーもして、しかもきちんと自主的な全頭検査もします、普通に考えればそこから入れましょうというのがごく自然だし、ごく当たり前だと思うんだけれども、大臣はそう思いませんかと言っているので、思わないなら思わないで結構です。

中川国務大臣 今私どもが求めているのは、徹底的な原因究明と再発防止であります。これが、EVプログラムそのものの信頼性ではなくて、EVプログラム違反だということでの現状でありますから、私どもは、EVプログラム違反でなければ、アメリカとの約束、協議の結果として、EVプログラムに沿ったものであれば、アメリカに限らずほかの国からもこういうものを輸入することに対しては拒否する理由はないというふうに考えております。

山田委員 大臣、EVプログラムが遵守されなければ食品安全委員会の答申も成立しない。松田大臣も、この前の予算委員会で、EVプログラムは遵守されていないから食品安全委員会の答申は成立しない、予算委員会でそう答弁しているんですよ。

 EVプログラムといっても、それが遵守されなければ、それが正しく運用されなければ全く意味がないんですよ。それで今大臣がとめているじゃありませんか、アメリカの牛肉。それを再開するとしたら、今言ったように、本当に自主的に全頭します、トレーサビリティーもしっかりします、そういうところから入れる気持ちはあるんですかないんですかと聞いているので、それに答えていただければいいんです。

 委員長、それ以外の答弁は私はおかしいと思いますので、よく聞いていてください。

中川国務大臣 EVプログラムが回復されれば、それは輸出再開の前提条件になります。その中にはクリークストーンを含めて現在三十七社がEVプログラムに基づいて認定済みでございますので、その中から、もちろんクリークストーン社もきちっとした遵守が政府によって担保されればこれは問題ないということであります。

山田委員 そういうところから入れる気はないかどうかと言っているので、それについての答えになっていないので、ひとつ委員長、私の質問に正確に答えるように正してください。

中川国務大臣 そういうところからも入れるということでございます。

山田委員 私が言っているのは、そういうところから入れ始めるべきじゃないかと。そうじゃない、そうであるという、ただ二つに一つの答えを言ってもらえばいいんです。委員長、正してください。

中川国務大臣 山田委員、私どもが今やるべきことは、きょう何回も申し上げておりますけれども回答書に対しての質問、戻ってきたことについて今精査をしている段階なので。御指摘の気持ちはよくわかります、さあ抜き打ちでやるのか、さあ全部まず事前にチェックしたところからやるのか、いろいろな御指摘を委員会でもいただいております。

 その段階に来たら、そういう日本として行動しなければいけないこともあるということも当然予想されますけれども、どの部分、会社からどういうふうにしてやったものについて最初にやっていくかどうかということについては、現時点ではとにかく回答書の精査をするというのが最重要の我々の仕事でございますので、次の段階についてどう判断するかについては、現時点では御勘弁をいただきたいと思います。

山田委員 大臣は、私の質問に対して、結局御勘弁願いたいということで、答弁できなかったと解します。

 次に、時間がないので質問に移らせていただきたいと思います。

 寺田委員長、お答えをいただきたい。いわゆるEVプログラム、大臣が先ほどから言っていますが、EVプログラムが遵守されない場合、食品安全委員会でも、遵守されない場合は評価は成立しない、これは間違いありませんね。はい、結構です、今うなずきましたから。

 それで、いいですか、予算委員会で、岡本委員の質問に対して、いわゆる食品安全担当大臣、松田担当は、ここに議事録も持ってきておりますが、結果として、「そこで輸出プログラムが守られていない、いなかった。したがって、評価は成立していない。」とはっきり答えているわけです。

 そうすると、寺田委員長、結局、食品安全委員会の評価はなかったということになりますね。イエスかノーかで答えていただきたい。時間がない。

寺田参考人 大事な問題なのでイエス、ノーではちょっと答えられないんですが、評価はEVプログラムが守られなかったら成立しない、そのとおりでございます。

 それで、管理側は、成立しないので、それをちゃんとやっているんだから、答申案全体に関しましては管理側は守っていると私は思っております。

山田委員 成立しないということを言われた。後でごちゃごちゃ言ったようですが、質問したことだけに答えていただければいい。

 それで、今回、EVプログラムは守られていなかった、成田において。それで、もう一回再開するとしたら評価しなければいけないんじゃないかという質問に対して、記者とかいろいろなところの質問で、委員長はきっぱりとその必要はないと言われている。それは間違いないですか。うなずくだけで結構です。

寺田参考人 おっしゃるとおりでありまして、私どもは、プリオン専門調査会で、本当に時間をかけてできるだけのことをやりましたので、再評価の必要は現時点ではございません。

山田委員 それでは、委員長として再評価しないとはっきり言い切ったけれども、その権限はどこにあるんですか。お答えいただきたい。

寺田参考人 権限は、科学に基づきます。科学的な判断で、今の状態で再評価をする必要はないと私の立場で言ったわけです。

山田委員 委員長が一人でそう判断されるのかどうか。どういう権限で。

寺田参考人 権限というのはあれですけれども、少なくともプリオン専門調査会、座長を含めまして再評価はないということを、当然のことながらこういう大事な問題は前もって聞いて新聞記者などにお話ししております。

山田委員 時事通信社の質問に対して、吉川プリオン専門調査会の座長は、データがそろえばもう一回再評価したいと言っているじゃありませんか。委員の意見を全部聞いて言ったんですか。

寺田参考人 吉川座長のその話は知りませんが、吉川座長とも頻繁に話をしておりまして、今の段階では再評価をする必要はないということであります。

山田委員 今の段階ということは、今、EVプログラムが遵守されていなくて輸入再開がストップしている、再開されるとなれば、例えば委員の中には山内先生とか金子先生とかいろいろな先生方がプリオンの専門委員でもいらっしゃる。その先生方から聞いているのでは、当然、アメリカからデータもなかったので、EVプログラムが遵守されることを前提にやったんだから、これについて前提を欠く以上、もう一回再評価すべきだという先生方は私が聞いた範囲でも結構いらっしゃる。それを、委員長はどういう権限で、もう一回聞きますが、言う権利があるのかどうか。

寺田参考人 プリオン専門調査会の先生、委員会の先生方に聞いた話は、そういう話は聞いておりませんで、今の段階で、先生、新しいデータが出てきたとか、これは管理に関する条件が変わったということですから、科学的にはこれ以上評価し直すことはなかなかできません。

山田委員 委員長、委員長も科学者であれば、食品安全委員会の報告書は、あなたの所管の大臣ですらEVプログラムが遵守されなかったんだから成立しないと言っている、成立しなければ当然再評価しなきゃならない。いいですか。

 この中で、食品安全基本法の二十三条、食品健康影響評価の結果に基づき、食品の安全性の確保のため講ずべき施策について内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告する、そういう権限があるんですよ。ところが、それをやっていない。

 実際ずっと調べていきますと、何をやるかやらないかということについては、企画を決める専門委員会というのがあるわけでしょう。企画専門委員会。二十一条を受けて、委員会は国の内外における科学的知見及び食品の安全性の確保に関する情報の収集、分析またはと書いてありますが、その中に、委員会はみずからの判断による食品健康影響評価を行うべき対象について定期的に検査するとなっているんです。

 しかも、それについて食品安全委員会の運営計画をつくり、各専門調査会により運営委員会で何をしてどうするかということを検討し定めるようになっている。その運営委員会の見解を聞いてやると言っているのか言っていないのか。それをはっきり、運営委員会を開いてそれについての意見を聞いた上でやったのか、そういう権限を全うして今言っているのか言っていないのか。ここは正式な国会の委員会の席で、無責任なことを言ってもらっちゃ困る。

寺田参考人 運営委員会を開いてはやっておりませんが、これは委員会あるいは私、委員長の権限でできると思いますし、皆さんの意見を聞いてやっております。専門調査会の人、山内さんでさえやる必要はないと言っているんです。そういうことを、こういうところでこう言われた、あれがこう言った、こう言われると本当に答えに困ります。

山田委員 運営委員会の決定で決めずに勝手に委員長権限でできるのですか。

寺田参考人 現在は再評価の話をされているわけですね。再評価に関しては、委員会全体で、私自身も含めまして今の段階でやる必要はないと。どういう状態が起きてくるかもわかりませんし、検査の方法ががらっと変わったりしますと、科学が進歩しますとまたあるかもわかりません。今の状態は、私どもは科学的評価の立場からする必要はないと思います。

山田委員 定期的に検査するとここにきちんと書いているじゃありませんか。それをなぜやらないと言うんですか。法令に違反するじゃありませんか。

寺田参考人 みずから評価するといいますのは、おととしの六月から内容を決定するに当たっては、私どもの企画専門調査会で検討して、その結果を委員会に上げて、そこで決定をするということになっております。

山田委員 私が言っているのは、定期的に検査するとここに書いていながら、それを無視して、新しい変化がない限りやらないとかというのは、法令に違反しているんじゃないかと言っているんです。

 これ以上言っても私の持ち時間がなくなってくるので、最後に一つ大臣にお聞きしておきたいことがございます。

 私ども、担い手法案に対する新しい農業再生プラン、漁業再生プランの実用化の法案を今出したところですが、その中で一つ、前々から私どもが、漁業再生プランについても、漁業に対する直接支払い、これをやらなければ、今漁村は、漁業者は、ガソリンあるいは重油、軽油等の値上がりで漁にも行けない状況が続いている。そんな中で、離島に対する直接交付金、これがようやくできることになった。

 そして、浜を回っていますと、それこそ、いわゆる海の清掃、いわゆる藻場対策に対してのいそ洗い、そういったことから、種苗の放流、いろいろ自主的に漁業者が、漁村集落が取り組み始めて、大変いい政策だと思っていますが、一点だけ、これは水産庁長官でも結構ですが、お聞きしたいのは、こうして一生懸命やるけれども、漁村集落は、実際に事業をやるにしても種苗を買うにしてもお金がない。領収書と引きかえじゃなければ交付金を出さないという問題が生じています。

 この件について、そうではなく、請求書とかそういったもの、そういった事実があれば出せるんだ、そういうふうに解し、それだけに限らずいろいろ具体的に必要な問題がありますが、それを柔軟に取り扱っていただきたいと思います。それについてお答えいただきたい。端的に、時間がないので。

小林政府参考人 この事業を適正に進めるために、やはりいろいろな物品購入とかについて、それをきちんと証明するものは必要でございます。

 今の運用で、それを購入した際の領収書の保管ということをやっておりまして、要は、そういった証明能力、ちゃんとそれが発揮できるかということでありますので、私どもとしては、この領収書というのは一番明快でわかりやすい形かということで進めておりますけれども、もちろん、これが現場の運用の中で、例えばこれにかわる、こういったものがあるとか、そういうまた考え方が出てくれば検討いたしますが、今の段階では、この領収書というのは一つの形だと思って進めております。

山田委員 せっかく漁民が自分たちでいい事業を考えても、大臣、お聞きになったと思いますが、実際やるとしたら、領収書がなければ金を出せないというのは絵にかいたもちに終わってしまう。大臣、そういった問題が幾つかありますが、時間がありませんのできょうは聞きません。しかし、そういった問題を弾力的に大臣に解決していただきたい。

 同時に、大臣、非常に私は前々からこういう施策を望んでおったので、私どもの今度の法案にもはっきりそれをうたっているわけですが、これから全国の、単なる離島の漁村集落でなく全国の漁村集落に対して、まあ離島の五、六倍ぐらいしかありませんから、数からしても、それをぜひやっていただきたいと思います。

 最後に大臣、それにお答えいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

中川国務大臣 日本は、漁業、漁村、非常に大事な、まさに農業、林業と同じように、文化と産業と地域でございます。山田委員の御地元も大変漁業あるいは離島等多い地域でございます。そういう意味で、農林水、バランスのとれた発展がやはり必要だろう、国土の七割を占めるということでありますから。そういう意味で、漁業の皆さんが抱えている問題、あるいは夢の実現のために、生きがいの持てる漁業、漁村発展のためにより頑張っていかなければならないと思います。

 基本計画の見直しの作業も始まるわけでございますので、地域地域、北海道の漁業、長崎の漁業、もういろいろな漁業、地域、違うわけでございますから、それぞれの地域に合った形のオーダーメードの漁業あるいは漁村づくりをしていくことが持続的な漁業、漁村の発展になりますので、引き続き、またいろいろと山田委員にも御指導いただきながら、いい成果ができるように頑張っていきたいと思います。

山田委員 終わらせていただきます。

稲葉委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十三分開議

稲葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中川泰宏君。

中川(泰)委員 中川泰宏、質問いたします。

 私は、今回のBSEの関係のアメリカからの回答につきまして、私自身、思うことを御質問させていただきます。

 私自身は、自由民主党の部会の中でも、アメリカと日本の考え、BSEに関する、食の安全に関する基本的考えに大きな違いがありますから、十分そこを調整して始めるべきではないかと訴えた一人であります。

 例えば、私が十五年前にアメリカに行きましたときには、屠畜場を見ましてびっくりいたしました。日本の屠畜場しか知りませんでした私が、何とすばらしい屠畜場かなと。肉の加工場もびっくりをしたところであります。

 その大きな問題は現在でもあると考えております。例えば、平成十六年、二〇〇四年の屠畜の頭数を見てみますと、日本が百二十五万頭、アメリカが三千三百七十六万頭であります。最近見た屠畜場におきましても、私は、さすがアメリカの国だなと。日本よりもはるかすばらしい技術を持ってやっておりました。多分、査察に行った皆さん方は、感動して帰ってきたのではないかなと。

 また、HACCPもアメリカでは取り入れておりますし、日本では法律の中に、屠畜場の法律の中に書かれておりますけれども、まだまだ日本の屠畜場は現在でもおくれておると考えております。

 また、アメリカの人のBSEの発生をしたときの状況でありますが、全米農業団体連合会が調査した二〇〇四年のデータにおきましては、千人対象で、発生をしてから食べる量を減らしたという人はたったの一五%であり、ふやした人が七%、以前と変わらないという人が七四%であります。日本の場合は、BSEの発生と同時に、今日まで毎年、肉を食べる量が減っておるところであります。

 私は、こうした基本的な考えの違いを、解決を、やはり両方がしないと、私自身、この解決はできないと。確かに、アメリカは契約に違反したので悪いのでありますが、アメリカの答えを見ておりますと、安全には問題ない、技術的な問題、一部の人が悪いような結果であると書かれておりました。

 私は、大切なことは、そうしたきちっとした契約をすることも大事でありますが、もう一つ大事なことは、その屠畜場、食肉加工場の、我々が査察をして我々が契約をし、認定したところは、我々からも、日本の条件、日本の現状というのをきちっと伝えることをやらなかったら、また再発をするんではないかなという心配をいたします。また、日本の輸入業者についても、アメリカと日本の違いは大きくあります。ここをきちっと、日本の業者にも徹底した指導をすることが私は大切だと思います。

 また、アメリカでは、二十カ月齢以下の牛が九〇%、屠畜場で処理されます。日本の場合は、逆に八五%が二十カ月を超す牛なのであります。この辺から考えてみますと、私は、もう一度やはり、取引を行うとしても、きちっとそうしたことを説明しなくてはいけないと思います。

 さらには、査察に行った人、我が自由民主党からもたくさん行っておられますし、民主党さんからも行っておられますが、やはり一つは、屠畜場のことがわかるプロを連れていかなかったら、私自身は、この問題は解決しないし、さらには、消費者、この代表を連れていくことによって、消費者にも理解をしてもらうということをやらなかったら、私は大きな問題があると思います。

 まず教育をすることと、もう一度検査や査察に行くときにはそうした専門家や消費者の団体の代表を連れていくということをやるべきではないかと思いますが、大臣の御意見を賜りたいと思います。

中川国務大臣 今、中川委員御指摘のように、各国それぞれ、食に対する考え方、あるいは食文化というものがそれぞれ違うわけでございます。御指摘のように、日本に比べて約二十倍の牛がいて、今御指摘のように三十倍近い屠畜を毎年やっている、牛肉文化の国と言ってもいいであろうアメリカでございます。

 私も、二年ほど前、つまりアメリカでBSEが発生した直後にアメリカに行ったときに、レストランへ行っても、また、私の友人も平気で、平気でといいましょうか、当たり前のように、私に対してステーキを食べる機会を何回も与えていただいたわけでございます。

 日本においては、二〇〇一年の九月に発生して、国産を中心に大変に消費が落ちたわけで、国内の畜産業界あるいはまたレストラン等が大変な打撃を受けたわけでございますけれども、どうもアメリカの場合にはそんなに影響がなかった。もちろんアメリカも食の安全に対して注意を払っているわけでありますけれども、このBSE、あるいはまた屠畜方法、御指摘のように日本とシステムが違うわけでございます。

 そういう意味で、今回二年ぶりで再開したわけでありますけれども、輸出と輸入、売る方と買う方でありますから、お互いを理解するといいましょうか、買う方の文化あるいはまた要望というものをやはり十分理解してもらわないと、再開はしたけれども売れない、買わないということになれば、これはアメリカにとっても決してプラスなことではないというふうに考えます。

 そういう意味で、今回またこういう事件が起きたわけでございますから、再発防止あるいはまた原因究明を徹底的にやらなければならないわけでございます。また、御指摘のように、こういうことが二度とあってはなりませんので、再開に当たっては、専門家の皆さんの御意見、あるいはまた専門家の皆さんのいろいろな、これから考えていかなければならないことが必要になってくることも十分、考えていくことが今後必要になってくるということも十分予想されるわけでございます。

 そういう意味で、食品衛生の専門家あるいはまた動物の専門家を初めとして各般の皆さん方のいろいろな御意見を聞きながら、つくって売る方も、また買って食べる方も、お互い満足な関係が再構築できるということが両国にとってプラスになることだと思いますので、お互いの食文化の違い、また考え方の違いを何とかブリッジできるようにするために、今まさに我々は原因の徹底究明と再発防止のために最善のことをやらなければいけない、アメリカ側にはそれに十分こたえてもらえるように努力をしてもらわなければいけないということで、現在、日本側としても作業をしているところでございます。

中川(泰)委員 ありがとうございます。

 まず、私は、先ほども申しましたが、やはり日本の輸入業者もきちっと指導をしていただきますよう。そうせぬと、私どもの業界でいうと、あの問題の肉を注文すると、世界じゅうでは大体骨がついておるというのが常識でありますから、やはりその辺は、日本の業者も知らなかったのかなというか、知っていてやったのかなという思いもしますので、きちっと日本の輸入業者の指導もよろしくお願いをいたします。

 また、アメリカの輸出する人たちにも、日本の状況がこうであるということを、契約書だけではなく、きちっと説明していただきますようお願いを申し上げます。

 次に、アメリカの肉が入らなくなってから、日本の海外からの輸入状況を見ますと、アメリカ以外の、例えばメキシコやチリやオーストラリア、ニュージーランド、いろいろな国々から、中国も含めて、肉が輸入されておるところであります。しかし、メキシコから一挙に、十五年度のデータを見ますと、十五年、十六年と、びっくりするほど輸入量がふえております。八トンが二千七百六十トンに、十五、十六年でふえておるわけであります。

 そうしたとき、これもニュースで流れておりましたが、メキシコから韓国に輸入された肉が、アメリカの肉が経由をして入っておったというような状況も、朝鮮日報に載っておったところであります。また、チリからも日本は輸入をしております。一千十六トンであります。しかしながら、これはニュースでありますが、クリコ市の女性二人がBSEに感染をしたのかなというチリ発信のニュースが流れておりました。

 私自身、牛を飼った経験が、好きでやった経験があるわけでありますが、当時は日本も含めて、乳量をふやしたり、先日、出ないと言われておった和牛がBSEを発生したわけでありますが、子供を産ますためには、いい子を、数を産ますため、牛乳をとるためには動物性たんぱくを与えた方がより効果的だということが、デーリィマンやいろいろな専門雑誌に載っておったことを記憶しております。恐らく世界じゅうがそんな状況であったのではないかなと。

 そうしたとき、まだ発生が確定していないから、そのまま、メキシコを初めチリ、アルゼンチン、ブラジルから相当数の輸入がなされておるわけでありますが、私は、このことを考えますと、日本人の安全からいくと、確実に検査をしてくれるところ、確実にできるところから輸入するべきであると考えております。

 そのためには、やはり日本側がやっておる全頭検査も義務づけるのか、同じように二十カ月以下を義務づけるのか、何らかの形をして、確実な、安心な肉が入ってくるという対策をしなかったら、逆に、アメリカから輸入をしないから違うところから輸入して、日本の消費者を危険な目に遭わすということになりますので、私はこのことも早急に解決をしなくてはならないと考えますが、大臣の御意見を賜りたいと思います。

中川政府参考人 少し技術的な、手続の問題もありますので、私の方からお答えをさせていただきます。

 まず、メキシコとチリの例を挙げられました。

 確かに、ここ一、二年の間に大変輸入量がふえております。こういった両国に対しまして、これはほかの国に対しても同様でありますが、牛肉などの畜産物の輸入に当たりましては、あらかじめ相手国との間で家畜衛生条件を定めまして、動物検疫を実施いたしております。

 この中で、例えばメキシコの例で申し上げますけれども、メキシコから入ってくる牛肉につきましては、メキシコ政府に対しまして二つの条件を要求しておるわけでございます。一つは、メキシコ国内で出生をしているか。あるいはまた、BSEの発生国でないところで生まれた、そういった生きた牛を輸入し、そしてメキシコの国内で育てた、そういう由来のものであるということが一つでございます。それからまた、特定危険部位は牛肉を輸入する際に全部除くようにということも言ってございます。こういった証明を相手国に求めることによりまして、第三国などから紛れて入ってくることがないようにということを担保しているところでございます。

 なお、付言をさせていただきますが、メキシコなどにつきましては、今、食品安全委員会の方で、リスク評価、それぞれの国のBSEのステータスというものについて、検討していく方向で、中で議論を始めたところというふうに承知をいたしております。

中川(泰)委員 私は、現実面からいったら、韓国にもそうした間違った肉が入っておるということは、日本にもあり得ると。逆に言いますと、私もメキシコへ行きましたが、アメリカの使えなくなった農薬をメキシコ側に売りつけて、メキシコで使ったもので処理してしまうというような現状も、現実に私自身、この目で見てきましたし、それが日本の国へ農産物が入っておるというのを見ましたので、やはりきちっと安心な国から入れるという対策を早急に立てるべきだと私は考える次第であります。適当な国から入れると、逆に国民に迷惑をかけることになります。

 引き続きまして、大変時間がせいておりますが、私は、ヨーロッパなんかやアメリカではもう今Tボーンステーキを二十四カ月齢までは食べてもいいよというような規制緩和をしておるところでありますが、日本ではまだできておりません。できていない理由は、きちっと裏づけがあると厚生省は言っておりますけれども、では、裏づけがあるんだったら、今のは、私は見ておりますと、私もイギリスへちょっと仕事で何度か行って血液が上げられないんですが、一九八〇年から一九九六年の間ではなく、今でもなおその肉を食べるということになっておるのでありますから、本当に、日本の厚生労働省が危険という条件があったら、やはり血液も輸血ができないじゃないですか、私はそのように考えます。

 これは、逆に、日本だけが条件が厳しいんだということになりますと、今後輸入とか輸出するときにも同じような厳しさが出る。といいますのは、日本も今全農を通じてアメリカにも肉を輸出しております。これは、もう三十カ月齢を超した肉でありますから、そういうことを考えると、同じように私は厳しさを感じるのではないかなと。

 その点について、もし本当に危険というなら、血液も輸血をやめるべきだというように考えますが、どのようにお考えですか。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 英国において肉骨粉の流通禁止、特定危険部位除去等のBSE対策が十分に実施される一九九六年以前、これにつきましては、高濃度の異常プリオンが摂取された可能性があるため、一九九六年以前に英国に一日以上滞在された方については、当面の措置として献血制限を行うこととしたところであります。

 一方、一九九七年以降は、英国において危険部位を摂取する可能性はほとんどないわけでございますので、滞在期間に応じて感染するリスクが高まるという考え方も一方ではあるところから、米国、カナダ等の規制を参考に、念のため、六カ月以上滞在した方の献血制限を行っているところであります。

 以上の措置は、専門家の意見を聞いた上で、より予防的な配慮を徹底し、当面の暫定的な措置として実施しているものでございまして、世界的に見ても最も安全に配慮した措置であると考えております。

中川(泰)委員 時間も参りましたので、私はこれで質問を終わりますが、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア等を見ても、それぞれの場所で、年数、月数が違います。やはり我々日本も、理由があるならきちっと理由をつけて、月数は世界に合わすのか、日本に合わすのか、日本側からきちっとせぬと日本の消費者は悩むのではないかなと。というと、日本の消費者が海外へ行った場合は肉は食べない、そういうことになるのかという問題もあるし、先ほど大臣も、アメリカでは一緒に食べたという記憶があると思いますので、そう考えると、やはり日本だけがいかがなものか、これから日本も輸出をしなくてはならぬという時代にそれでいいのかなという疑問を感じますので、以上申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、小野次郎君。

小野(次)委員 小野次郎でございます。

 きょうで三回目の委員会の質問、予算委員会の分科会を含めてですけれども、いずれもBSEの関係を聞かせていただきました。きょうもその続きを聞かせていただこうと思います。

 私は、この問題につきましては、二つの基本的な立場に立つことが重要だろうと思っています。

 一つは、科学と事実に基づく判断ということでございまして、それは、別の言葉を使えば、政治問題化すべきじゃないということが、一つの基本的な立場だろうと思います。

 他方で、もう一つは、消費者の信頼を回復するという解決でなければ本当の解決にならないだろうというのが二つ目の基本的な立場だろうと思います。

 つまり、外交交渉で話し合いがついた、もしくは、表現はよくないかもしれませんが、霞が関のレベル、行政のレベルで、一応、米側の説明でいいんじゃないかというようなことで済むかというと、実は済まない。実際に、スーパーかお肉屋さんで買ってくれるかどうか、あるいは消費者が食卓で、家族の方を含めて、口にしてみようと思うかどうかというレベルで信頼が回復されなければ、本当の解決策にならないだろうというのが私の考えでありまして、この二つの立場に立つことが、この問題解決にとって重要だろうと思っています。

 きょう、朝から民主党の方のやりとりなんかも聞かせていただいていて、私の用意した質問をする前に、どうしても一つ確認しておきたいことがございます。

 これは答弁は多分中川局長になるんじゃないかと思いますが、それは、皆さん何度も質問しています米側回答というのがございますが、この一番最後のところ、十五ページ、末尾から二行目、これは民主党の岡本議員も言及されたところでございますが、「米国は、子牛肉のための別のプログラムの作成を日本政府と協議中であった。」という記載がございます。この「子牛肉のための別のプログラム」というのは、実は、子牛の肉については米側は骨つきの肉の輸出を認めさせようという提案をしていたんじゃないんでしょうか。お伺いします。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 そういうことではございません。これは、けさほどもちょっと申し上げましたけれども、月齢を確認するという手法におきまして、生産記録がない場合はA40という格付基準を使うことになっておりますけれども、そのA40というものを使う際に、日本の、我々の理解は、二十カ月以下であれば、そういう形で証明されれば問題ないということでありますが、アメリカには子牛肉には子牛肉の格付というのがまた別にあるということで、そこのところについて、昨年の十二月に現地に査察に行きました際に、アメリカ側からそういう話があったということでございます。

 決して、子牛肉について、骨つき云々といった例外措置について議論をしているわけではございません。

小野(次)委員 一応疑問に思ったもので、済みません、確認させていただいてから質問に入りたいと思います。

 そういう、日本側で、官邸というか総理も含めて、非常に慎重でありまた深刻にこの問題をとらえている割には、アメリカ側から聞こえてくる声というのは、最近でも、ライス国務長官あるいはシーファー駐日大使、いずれも私が直接会ったわけじゃないので、報道で知っているだけなんですが、何か、いつになったら再開するのかみたいな感じの、やや政治的な発言が目立つような気がするのでありますけれども、日本の政治サイドがこの輸入をとめているわけじゃないんだということを先方に理解させるのは日本の政治家の責任なんじゃないか、お役人というよりは、政治家の責任なんじゃないかと思うんです。

 これは私の感じですけれども、何かアメリカ側に、輸入を日本側がとめているのは、日本の生産者サイドがかかわっているんじゃないかという先入観が向こう側にあるんじゃないかと思うんですね。そうじゃないんだと、やはり日本の一人一人の消費者が、どの家庭の人に聞いたって、今、安心だと思っている人はいないわけで、その不安を解消しなければいけないということは、まずアメリカ側に理解してもらう必要があるんじゃないかと思うんですが、その点について、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 まず基本的に、この問題に対する取り組みは小野委員と全く一緒でございます。

 その上で、一月二十日にああいう出来事が起きまして、その後何回も、ジョハンズ農務長官あるいは米国のシーファー大使その他とお話をして、確かにアメリカは、先ほどの中川委員との質疑のとおりで、アメリカにはアメリカの、日本と違うルールといいましょうか、基準があるわけでありますけれども、それからまた、アメリカは、禁止前までは約十億ドル以上、一千億円以上の牛肉を日本に輸出していたわけでありますから、早く再開したいというふうに思っているであろうことは想像はできますけれども、今小野委員御指摘のように、きちっとした形で、つまり消費者の信頼なくして仮にルールどおりにやったとしても、これは消費者が買わなければ、アメリカにとってはメリットがないということであります。

 したがいまして、私は何回も、急がば回れである、それから政治問題にしてはならない、あるいはまた外交問題にしてはならない、あるいは単なる貿易問題以前の問題であるということを、常に私からも、また総理からもいろいろな機会に答弁で言っているところでございます。

 アメリカにはアメリカの気持ちといいましょうか、そういうものが確かにあるのかもしれませんけれども、日本としては、急がば回れということできちっとやっていかないと、これはアメリカ側にとっても決してプラスにはならないということは何回も私から申し上げているところでございますが、アメリカを代表する方々からいろいろな発言があるということは、解決に向かって決してプラスになることではないんだということも私から何回も申し上げているところでございます。御理解いただいているかどうかはわかりませんけれども、折に触れて申し上げているところでございます。

小野(次)委員 ただ同時に、私が思うのは、この問題について、もし私の認識が大臣と余り違わないのであれば、一方で、アメリカ側は日本の消費者に対して、もっと説得力のある米国側からの説明、メッセージというのがあってもいいのかなという気もいたすわけです。その意味で、午前中の審議を聞いておりますと、近々来るとか来ないとかというのは、どうも事務方のようでございますけれども、米側がもうちょっと政治レベルの方から日本の消費者にわかるようなメッセージを説明してもらう必要があるのかなという気がするんですが、大臣、そういう感じについてはどういう認識をお持ちでしょうか。

中川国務大臣 全くそのとおりだと思います。

 ただ、アメリカの政府関係者の皆さん方の発言はほとんどがアメリカで行われるわけでありますが、これはすぐ日本のマスコミを通じて、新聞、テレビで大きく報道されるわけでございます。アメリカの議会での証言の直後でありますとか、記者会見等で報道されるわけですから、アメリカ向けの報道なのかもしれませんが、すぐそれが日本の報道になる。そうすると、日本の消費者あるいはまた関係者から見ると、先ほど申し上げたような印象を、私自身も率直に言って持つわけでございます。

 私ども日本の立場の人間がいろいろな機会に発言してどの程度アメリカで報道されているのかはよく知りませんけれども、アメリカ側で、アメリカだけではなくて、日本のマスコミも含めたやりとりに対してああいう報道がされ、それが日本にああいう形で報道されているということは、日本の消費者にとっては決して安心に向かっていいメッセージになっていないのではないかという印象を、私も残念ながら持っております。

小野(次)委員 ちょっと話題を変えまして、日本サイド、日本の海空港での検査の話を聞きたいと思うんですけれども、日本側で輸入牛肉を検査する際には、輸入肉のすべての箱について開披検査を実施するという建前なんでしょうか。それとも、一定の割合でサンプリングというか、抜き打ちで検査を行うという仕組みなんでしょうか、そこをちょっと、これは農水省と厚労省、それぞれ事務方の当局にお尋ねしたいと思います。

中川政府参考人 農林水産省は、動物検疫所でそういった輸入の畜産物につきまして動物検疫を行っておりますけれども、昨年の十二月の米国産牛肉の輸入再開に当たりまして、こういった動物検疫所で行っております現物検査の対象につきまして、従来、通常の場合ですと、貨物の中の全体の六割を対象といたしまして、また、その六割の中から一定の抽出率でもってサンプルをとっていたわけでありますが、アメリカ産牛肉の輸入再開に当たりまして、申請がありました貨物すべてを対象とする、従来の六割のところを全部に対象を拡大するということと、もう一つは、いろいろな部位が入っている場合には、そういった部位ごとに少なくとも一箱は現物をきちっと開封をして確認するというふうな形で、従来よりも輸入検査の強化を図ってきたところでございます。

 この結果、従来ですと、現物確認されるものの割合は、全体の対象数量から見ますと抽出率が〇・五ということでございましたが、実際に成田で一月の二十日にああいう形でとまりますまでに入ってまいりました航空貨物で見ますと、平均の大体四割が対象になってきておりますし、また、バルクといいますか、少し量が多い船舶貨物の場合、これは東京港の例でありますけれども、抽出率というのは大体三%程度になっているというものでございます。

松本政府参考人 日米間で合意した対日輸出プログラムに基づきます安全性につきましては、輸出国である米国政府の責任で遵守されるべきものでありますけれども、輸入時の検査につきましては、念のため実施しているというものでございます。

 昨年の十二月に輸出再開いたしましたけれども、予定では三月三十一日までの間に、それまで二年間入っておりませんでしたので、米国産牛肉のすべての輸入届けについて、農林水産省による動物検疫に加えまして、厚生労働省といたしましては、米国農務省発行の衛生証明書によりまして、対日輸出が可能な施設で処理された品目であるかどうかということと、保税倉庫におきまして、輸入届けごとに約一〇%程度に相当する箱数を開梱いたしまして、現物を確認して、衛生証明書との同一性、あるいは特定危険部位の混入がないかどうかについて確認を行うこととしておりました。

 通常ですと、コンテナ、ロットのうちの幾つかを抜き出してやりますけれども、アメリカ牛肉の輸入再開後につきましては、全ロットにつきまして、その中から抽出して、箱をあけて見ているということでございます。

小野(次)委員 伺いますと、全ロットについて見ているとはいうものの、すべての箱をあけているわけではないという意味でいいますと、見つけられた担当官の方というのは大変功績ものじゃないかなと思います。そういう意味では、私が前に勤めていた警察なんかだったら、これは脊柱つき牛肉発見適切の功か何かで表彰でもしてあげていいんじゃないかなと思うぐらいでございます。日本側がそうやって真剣に、深刻に、まじめにやっているということをぜひアメリカ側にも伝えていただきたいなと私は思います。

 さっき山田委員の指摘にありましたけれども、仮に今回の事件のときに脊柱が含まれていなければ、舌とか胸腺だけが混入していた場合には輸入検査をすり抜けてしまったのではないかという指摘が現にあるわけです。私が聞きたいのは、舌とか胸腺の輸出を認められた施設かどうかというのは、日本側で、箱を見た日本側当局の人はわかるようになっているんでしょうか。そこをお聞きしたいと思います。

松本政府参考人 今回の事案につきましては、当該施設というのは認定された施設だということでございまして、日本向けの輸出が認められていなかった舌あるいは胸腺につきましても、農務省食品安全局の検査官により対日輸出プログラムに合致しているという旨の衛生証明書が添付されておりました。そういう点からしますと、脊柱などの特定危険部位につきましては、輸入時の検査において確認可能ではございますけれども、舌とか胸腺など、これは特定危険部位ということではありませんで、輸入が認められておりますけれども、そのようなものが入っておったといった場合には、今回の事案のように、米国政府発行の衛生証明書が添付されているという場合には、輸入検査所において確認するということは困難であったというぐあいに考えています。

 なお、今回の事案を踏まえまして米国側に確認いたしましたが、一月二十日までに検疫所に輸入届け出があった米国産牛肉等については、すべて対日輸出プログラムの対象になっている製品であるということでございました。

 いずれにしましても、米国に徹底的な原因究明と再発防止のための調査報告の提出を求め、また、それにつきまして日本側の照会事項に対する回答が来たわけでございますけれども、農林水産省と連携いたしまして、現在精査しているところでございます。

 また、米国側の専門家からの説明の聴取等もそのうちできると思いますけれども、御指摘の点も踏まえまして、今後の対応について適切に対応してまいりたいと考えております。

小野(次)委員 時間がほとんどなくなってきましたけれども、私がこの米国からの回答を読んで要約した中で、一番アメリカ側の伝えたかったエッセンスというのは、今、関係当局が精査しているところだと思いますけれども、私なりに見たところは、当該製品は安全で、衛生的で、粗悪品にあらず、ただ日本向け規格を満たしていなかっただけだというのが十二ページに記載がございます。そこが多分アメリカ側の一番言いたかったところだろうと思うんです。

 ところが、日本の国内の方はやはり依然として不安がぬぐえないわけでございますから、最後にお尋ねしたいのは、アメリカ側の施設の認定というのは前提にしつつも、今後はやはり、将来もう一遍再開しようということを考える際には、アメリカ側が認定した施設について日本側もちゃんともう一遍査察をそれぞれ行って、日本側でも納得できた施設から順次認定していく、つまり、ダブルの認定というようなシステムを採用することでもしないと、国民の信頼の回復というのは難しいんじゃないかと思うんですが、こういうダブルの認定をした施設で輸出を行うということの考え方について御意見をお聞かせいただきたいと思います。

中川国務大臣 一月二十日以降、衆参の予算委員会、農水委員会あるいはいろいろな場で、今後に向けてのいろいろな御指摘をいただいております。これから一つ一つ作業を進めていって、いつの段階か、再開に向けてのいろいろな作業が日本側においても必要になってくることがあるわけでございます。そのときには、今、小野委員の御指摘のようないろいろな御意見等を参考にしながら、アメリカ側だけではなくて、日本側においても、さらにやることがあればやっていくことによって、冒頭、小野委員の御議論のありました合理性と国民の信頼という二つの前提を満足できるように、さらにレベルアップができるように努力をしていきたいというふうに考えております。

 現段階におきましては、この報告書に対する質問の回答を今精査しているという状況で、一つ一つ作業を前に進めていきたいというふうに考えております。

小野(次)委員 質問を終わりますが、関係当局、よく連携を図っていただきまして、また中川大臣の陣頭指揮をいただきながら、何よりも日本の消費者の信頼を回復できる解決方策を拙速に陥らずに考えていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 以上でございます。

稲葉委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 引き続いて、アメリカ産牛肉の脊柱及び内臓の混入したこの問題について、大臣並びに厚生労働、農水省に御質問申し上げたいと思います。

 まず初めに、これも先ほどから議論が若干出ていたんですが、香港での骨つき牛肉の混入の話でございます。これも先ほどからの話のように、既に日本向けのプログラムの認定施設であるということで、同時に、査察も行っていた施設で、もちろんプログラムは香港のプログラムだと思いますし、日本ではないんですが、そういうクラスの処理場からの香港向けの牛肉の中に骨つきの肉がまざっていた。香港では、その骨つきはだめだということでございます。

 この件に関して、日本の政府として、香港の政府とどのように協力してこの問題に当たっていこうとされているのか。私は非常によく似たケースであるなと。詳細はまだ十分には存じ上げておりませんが、ぜひ協力して問題の解決に当たっていただきたいという趣旨を込めて、大臣にお伺いをさせていただきます。

中川国務大臣 香港において発見されましたいわゆる香港とアメリカとの間の輸出プログラム違反、これは、日本とは月齢のところが違います、それから、危険部位かすべての骨つきかというところが違います、それから、わかった食肉加工処理業者だけをストップしたのが香港でございますが、日本はすべての米国からの牛肉をストップしたという幾つかの違いはございますけれども、いずれにいたしましても、米国産牛肉の安全性につき、今、多分香港側でもいろいろとやっているんだろうと思います。

 日本といたしましては、香港並びにアメリカに対して、もっと詳しいデータを我々としても確保すべく今問い合わせをやっているところでございますが、現在のところ、アメリカ、香港からは、これに関しての情報というものはまだ来てございません。

西委員 私は、この問題は行政のシステムとしての問題なのか、民間施設の何らかのミスなのかという観点から考えましても、日本のこの問題の対処とよく似たといいますか、参考になるべき事案ではないかなと思いますので、その点についてまた大臣の御協力といいますか、御連携をぜひともよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 続いて、アメリカの農務省の監査官室で大部の書類が出ておりますが、日本向け輸出証明プログラムに対する農務省の管理に関する評価ということが発表されております。この評価を見ますと、関係者に対するかなり詳細な事情聴取が行われておりますが、逆に言えば、そのことに終始していると言っても過言ではないというふうに考えられます。

 現在、アメリカのこの農務省の監査官室では、民間関係者それから設備について調査中というふうにこの書面ではなっておりますが、民間だけではなくて、やはり私は、行政関係者初め施設の認定、検査体制など、この行政システムにかかわる検証も必要ではないかというふうに思っておりまして、この点についてアメリカ政府に調査を要求するのかどうか、これについても農水大臣にお伺いをしたいと思います。

中川国務大臣 今回の回答、その前の報告書につきましては、監査官室、OIGという組織から、食品安全検査局、FSIS、それから販売促進局、AMSに対していろいろと指摘がございますけれども、現在精査中でございまして、再発防止あるいはまた原因究明のために日本として最大限この情報を精査した上で、今後どういうふうに対応していくかを考えていかなければならないというふうに思っております。

西委員 これからは、調査報告書について認識を御質問申し上げたいと思うんですが、二月十七日にアメリカ農務省の調査報告書が発表されました。そして、三月十九日、日本政府の照会に対してアメリカから回答が返ってまいりました。かなり詳細な内容がありまして、これによってさまざまなことが判明してきましたけれども、まだまだ私の印象では、脊柱の混入問題に関して原因究明は成ったというふうな感じは残念ながらいたしません。

 それで、これについて、まず脊柱と内臓の輸出というこの二つの問題が実は絡まっているということがございまして、それぞれについてお伺いをしたいと思います。

 まず内臓についてお伺いをします。

 アメリカの農務省の農業販売促進局、これは施設認定を行う以前に、ゴールデン社、アトランティック社は内臓を識別し管理する体制がない、だから、内臓の輸出について、日本向けの輸出プログラムの上ではこれは適さないというふうに認識していたというふうに理解をしておりますが、まずこの点について質問をしたいのが一点。

 また、このように、肉と内臓の扱い、肉はいいけれども内臓はだめ、こういうふうな扱いの異なる施設認定の現地監査の際には、この農業販売促進局の監察官は、処理から出荷までの全プロセスを一体的に検証すべきではないかと。これは、ゴールデン社とアトランティック社を経由して、解体をして、それから加工して輸出、こういうふうになっているんですが、農務省とゴールデン社の間で、出荷の報告書をめぐって意見も食い違っているようです。

 施設の認定に当たっては、プロセスの検証を全体として行ったのか行わなかったのかという確認がぜひとも必要ではないかというふうに思いますが、御意見をあわせてお願いしたいと思います。

中川政府参考人 日本側からの質問状に対しますアメリカ側の回答によりましても、AMSの両施設に対する認定そのものには問題がなかったというふうに回答が来ております。

 ただ、そういう回答は来ておりますけれども、具体的に報告書などを見ますと、まず、ゴールデン社は、内臓を分離管理しておらず、日本向け輸出プログラムに不適合であった旨が明記をされておりますし、AMSの担当者も同様の見解であったことも報告書の中には記載されているわけでございます。

 そういう意味でいきますと、ゴールデン社から供給を受けるアトランティック社、つまり、屠畜場から処理業者でありますアトランティック社、そこが受け取った内臓が日本向け輸出プログラムに不適合であったことは、AMSも認識をしていたというふうに理解をされるわけでございます。

 AMSは、現地調査におきまして、ゴールデンそれからアトランティック両社のすべての施設の査察を行ったというふうにされておりますけれども、今申し上げましたように、回答で言っております認定上問題がなかったということと具体的な証言なりそういったところに若干そごがあるように思います。そういった点につきましては、近々来ることが予定をされております専門家にもきちっとそこのところはただし、具体的な事実関係について解明をしていきたいというふうに思っております。

西委員 これからさまざまな御質問を申し上げるんですが、必ずしも各省庁が当事者じゃないので難しい部分もあるかと思うんですが、ぜひともこれは当事者に聞いていただきたいという質問の内容であるということも踏まえて、ぜひお答えをいただきたいと思います。

 そうしますと、内臓がそもそも混入したということについては、初めに解体する業者であるゴールデン社に第一義的に私は責任があるのではないかというふうに思っております。その資格のないゴールデン社がどうしてアトランティック社に内臓を出荷してしまったのか、こういうことなんですね。

 工場の生産、出荷手順についても、これは二つ、一貫しているわけじゃなくて、一つの工場で解体して、輸送して、次の工場で加工してというような会社のようですが、今後、この一貫した手順についても検証が必要であるというふうに思っておりますが、御意見をお聞かせ願いたいと思います。

中川政府参考人 今回の場合、アトランティック社の内部の手続によりますと、これはそこを監査したUSDAの担当官の証言であったと思いますけれども、アトランティック社は中の処理を分別するというマニュアルは整備をしていた、だから、内臓なら内臓について解体をするところできちっとした処理ができる、そういう業者からであれば、それを受け入れて、そして適正に輸出をすることができた、そういう理解がされていたと思います。

 ですから、今回の場合は、ゴールデン社とアトランティック社というそれぞれ役割の違う二つのものが一つのセットになって申請が上がってきた、その際に、AMSが認定をする、そのところで、両社の二つの事業所の関係をよく理解した上で本当にそこが認定のチェックができたのかどうかという点については、改めて確認をするポイントだというふうに思っております。

西委員 続いて、このアトランティック社、いわゆる後の加工業者ですね、品質システムマニュアルでは、荷物の受け取りの際に、日本向けの輸出プログラムに適合したというふうに書いている出荷申請書ですか、これのついた積み荷証券をチェックする、こういうふうになっておりますが、これはアトランティック社、ゴールデン社のどちらがこれを決めてこういう仕組みにしたのか。つまり、輸出する前のA社からB社への流れの中でのチェック体制です。これがはっきりわかりません。

 品質システムマニュアルがあいまいなために、この間に、先ほど御答弁いただいたようなそごが生じたのではないかというふうに、私自身はその可能性もあるのではないかというふうに考えておりますが、この点について、どのように政府としてお考えなのか、お伺いをしたいと思います。

松本政府参考人 米国調査報告書によりますと、農務省食品監査官室OIGによる当該食肉施設の原因調査はまだ終了していないということでございますが、アトランティック社の品質管理プログラムにおきましては、入荷条件として、対日輸出認定施設から納入されるということ、製品には対日輸出条件に適合している旨記載された積み荷証券が添付されていること等が規定されており、製品に関する情報を入荷日誌に記録することとされております。

 今後、御指摘の点も含めまして、今回の回答をさらに精査いたしまして、近々来日が想定されております米国側の専門家に、どうしてこういうことになったのかということについての説明等を求めて、確認、照会を進めていきたいというぐあいに考えております。

西委員 次に、脊柱について御質問申し上げたいと思います。

 日本まで脊柱のついた牛肉が到達したということは、当然のこととして、これは初めの解体といいますか、屠畜業者であるゴールデン社が出荷した肉が脊柱つきでアトランティック社に送られたということは、これは事実だということですね。

 そのゴールデン社は、脊柱を除く作業を行わない施設にもかかわらず、これは単独で施設認定をされています。ゴールデン社、アトランティック社。それから、ゴールデン社は脊柱は除去しません。それでも、これは一つの施設として単独で施設認定が行われていると私は理解をしているんですが、それでは、アメリカ農務省の言う日本向けの輸出証明プログラムを満たす条件というのは、特定の施設では脊柱を外さなくてもいいという施設認定を行っているのかどうかの確認をお願いしたいと思います。

松本政府参考人 お尋ねの、ゴールデン・ビール社からアトランティック・ビール・アンド・ラム社に対して出荷された対日輸出用の子牛肉というのは、米国側の調査報告書によりますと、脊柱がついた状態で出荷されたものというぐあいに理解しております。

 農務省から提出された報告書によりますと、それについても日本側は質問して、それに対する回答によりますと、今回の事案の原因につきましては、問題の食肉施設アトランティック社がマニュアルに従わず、農務省食品安全局の検査官がそれを見逃したことにあるということが記述されておりますけれども、その農務省農業販売促進局、AMSによる施設認定に問題がなかったかどうかということについて、理由がはっきりしません。そういうことにつきましては、さらに確認すべき点があると考えております。

 いずれにしましても、これまでの回答だけではなくて、近々来るであろう専門家にそういう点がどうであったかということも問いただしながら、確認、照会を進めていきたいというぐあいに考えております。

西委員 今の私のをちょっと整理しますと、初めにゴールデン社で屠畜します、それで、アトランティック社に送って加工して、日本に送ってきます、それで、ゴールデン社は、施設として、既にこの施設の中で脊柱も外すべきという施設認定を行っているのか、ここは外さなくてもいい、ここに行って外せばいいという施設認定を行っているのかということは不明確で、このこと、外さなかったことそのものが違反なのか、ここは外さなくてもいいのか、だったとしたら、ちょっと施設の認定基準としては当てはまらないなという問題点があるという意味でございますので、御理解をお願いしたいと思います。

 時間が押してまいりました。あと一問で終わりましょう。

 最後に、食品安全検査局の検査体制においては、消費者安全検査担当職員と管理公衆衛生獣医官、これは獣医さんですね、この二人で検査をしているということになっております。どちらも日本向けの輸出プログラムに関する認識がなかったというふうに、これも言われております。

 特にこの獣医師の方は、着任前に研修を受けて、そこで直接検査とは異なる指示を上司から受けて、書類検査だけでいいというふうに言われた、そのために日本向けの輸出プログラムの再確認をしなかったというふうに述べているんです。この上司である地域事務所副所長という人がいるんですが、この人は、本来の役割や研修と異なる仕事をいわば獣医師さんに指示をしたということだと思うんです。

 これ自体が適切ではないというふうに思っておりますが、そんなことを考えますと、その民間施設のそれぞれの皆さんの証言をまとめて報告をいただいていますけれども、行政上の観点からも私は確認が必要なのじゃないかというふうに思っておりまして、この点について最後に御質問を申し上げたいと思います。

松本政府参考人 米国側の調査報告書及び先般返ってきました日本側照会事項に対する回答によりますと、農務省食品安全局の担当検査官は対日輸出プログラムを知らなかったということが明らかになっておりまして、当該事案の原因の一つというぐあいにされております。

 具体的には、二〇〇五年の十二月に、FSIS本部は、日本への輸出のための条件を確認するために地域の責任者との電話会議を開催した、しかしながら、このアトランティック・ビール、そこの当該施設はまだ日本向け輸出の認定を受けていなかったというために、当該施設を担当しているFSISの地域事務所副所長はこの電話会議に参加していなかった、その後、副所長は、いつ当該施設が日本向けの輸出認定を受けたのか知らされることはなかったことから、日本向けEVプログラムの条件を地域の検査官に提供しなかったというぐあいにされております。

 今後、今回の回答を今精査中でございますけれども、御指摘のFSISの輸出証明プロセスに関する職員の役割と責任というものを含めまして、米国側の専門家からの説明の聴取等を通じまして、確認、照会を進めていきたいというぐあいに考えております。

西委員 今、行政上の観点からも不明な点はただしていくというような御回答だったと思います。両国国民注視の内容ですし、食の安全にとって大変重要な今後の交渉になっていくと思いますが、精力的に頑張っていただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 BSEの問題については各委員から議論がなされましたから、私は、視点を変えて、やはり輸入農産物あるいは畜産物に頼っていては問題解決になっていかないんだという立場から、日本における食料自給率をどう向上させていくのか、これは非常に大きな命題なんですが、ここに政府一丸となって取り組んでいかなければならないなというふうな思いを持って、質問に、ここに立っております。

 平成十二年の三月に、食料・農業・農村基本法に基づいて、基本計画で、平成二十二年の食料自給率を四五%に設定いたしました。私もこのときもかなり議論したんですが、四五%達成に向けてどう取り組んでいくのかという議論を行ってまいりました。そして、五年経過した今、四五%という目標に対して、ずっと四〇%台で推移してきたというのが今日の実情であるというふうに思っています。

 そして、なおかつ、今度の基本計画において、平成二十二年度を五年間延ばして、平成二十七年度までに四五%達成するという変更をしているわけでございますけれども、それでは、この間、本当に食料自給率向上に向けてどう取り組んできたんだろうか、そしてこの間の取り組みはどういうところが不十分だったのか、このことを、五年間の総括をしっかり行わない限り、今後十年間で五%の目標達成というのは、また同じ轍を踏むのじゃないのかなというふうに思えてならないわけでございますけれども、五年間の総括と今後の自給率向上に向けての具体的な取り組みについて、考え方を示していただきたいというふうに思っています。

 この三月に、「我が国の食料自給率とその向上に向けて」ということで、総合食料局食料企画課から、ついこの間私どもに配付になったんですが、これを見ただけでは、私は四五%達成に向けて進んでいくなどというのは読み取れなかったし、これまでの五年間の総括というものが、これを見ただけでは不十分な総括でしかないというふうに私は思えてならないわけですから、その点も踏まえて答弁願いたいというふうに思っています。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 食料自給率の向上を図るためには、委員御指摘のとおり、消費者、生産者、食品産業事業者あるいは政府、行政機関も含めまして、関係者が一体となってそれぞれの課題に取り組むことが不可欠であるというふうに考えております。

 前回の自給率目標四五%を達成するためには、米の消費量を維持する、具体的には、平成九年度六十六・七キログラムであったものを平成二十二年度六十六キログラムに置く、あるいは需要に即した農業生産の拡大などを前提としていたところであります。

 しかしながら、現実には、米の消費量は平成十五年度には九年度と比べまして四・八キログラム減少した六十一・九キログラムになるなど、一方で、飼料や原料の多くを輸入に依存する畜産物や油脂の消費が増加し、また農業生産量は総じて減少してきました。

 このように、消費、生産両面で当初見込んでいた姿とは異なっており、また、課題解決のために重点的に取り組むべき事項や具体的な取り組み手法を明示していなかったことから、食料自給率は上昇するに至らなかったところでございます。

 こうしたことから、新たな基本計画の中では、生産及び消費の両面において重点的に取り組むべき事項や、地方公共団体、農業者、農業団体、食品産業事業者、消費者、消費者団体などの関係者の役割を明確化した上で、これら関係者が一体となって計画的な取り組みを推進するため、関係者から成る食料自給率向上協議会を設立し、工程管理を実施しているところございます。

 具体的には、昨日、第四回目の食料自給率向上協議会を開催いたしました。その中でも、消費者、生産者、食品産業などのさまざまな立場から、例えば、行動計画の取り組みと食料自給率向上との因果関係が必ずしも明確となっていないなどの厳しい評価がありました。一方で、消費者からは、ライフスタイルの変化なども考慮した食育、消費拡大の推進、生産者からは、認定農業者など担い手への支援の充実などの意見も出されております。

 こうした御意見も踏まえながら、十八年度には、より実効性ある行動計画を策定し、関係者一体となった取り組みをさらに強化してまいりたいというふうに考えております。

菅野委員 この食料自給率の問題は、私、とらえているのは、第一次産業全体の振興を国としてどう図っていくのか、そのことに私はかかっているんだというふうに思っています。そして、生産したものを消費してもらう、そういう活動に結びつけていく、この本体の生産体制がどんどんどんどん衰退してきている中で、自給率が向上していかないという現象だというふうに私は思っています。

 かつて、ここにあるんですが、昭和四十年代というのは、各地域地域で本当に農家、農村集落が生き生きとして食料生産が行われていた時代ですが、自給率は、昭和四十年で七三%、昭和五十年で五四%、そして、どんどんどんどん下がってきて、平成十年、今から七年前に四〇%という状況になっているという現状ですね。

 そして、魚介類でいえば、かつては、昭和五十年代までは魚介類は日本は輸出国だったんですね。それが今、大臣、五〇%台の自給率なんです。木材は言うに及ばず、二〇%を切って一七とか一八という数字の自給率、今日そういう自給率の数字が言われております。

 第一次産業全体が、この自給率の低下とともに衰退してきている。ここに歯どめをかける政府としての意気込みが存在しなければ、私は、平成二十七年の四五%目標達成には結びついていかないんじゃないのかなというふうに危機感を持っているんです。

 そして、今回、品目横断的経営安定対策が示されております。この品目横断的経営安定対策というのは、自給率向上にどういう役割を果たしていくんだろうか、このことを私は点検してみました。

 米でいうと、米をしっかりと生産したとしても、自給率九五%。だから、米の自給率九五%、ミニマムアクセス米を除いてほぼ自給しているんですから、これをいかに強化したとしても自給率向上に結びついていかないんじゃないのか。小麦でいえば一三%、大豆でいえば一六%、砂糖類、でん粉等を含めていくとという数字でありますから、この品目横断的経営安定対策をしっかり行っていくことが自給率向上に結びついていくという説明が一方ではされていますけれども、どういう形でこれが自給率向上に結びついていくのか、説明していただきたいというふうに思うんです。

井出政府参考人 品目横断的経営安定対策の対象者につきましては、我が国農業の構造改革を加速化する観点から、やる気と能力のある担い手を対象とするといたしております。

 生産性の高い担い手が生産の相当部分を占める強靱な農業構造の実現を通じまして、農産物の生産コストの低減や品質の向上が図られるとともに、消費者や食品産業の需要に的確に対応して、農産物を安定的に供給できる体制が確立される、このことによりまして、国内の農産物の生産拡大と食料自給率の向上に資すると考えております。

菅野委員 局長、そういう答弁で、本気になって平成二十七年までに四五%を達成していくんだという意気込みが私には感じられないんです。品目横断的経営所得安定対策を行って、一方では、条件に該当しない人たちを、ある意味では切り捨てていく政策を今とろうとしているんじゃないですか。

 そして、これは本法のところで議論しますけれども、法律案が出たときに議論しますけれども、この間の本会議の中でも、どれだけの人が該当するんですか、そして、日本全体の農地がどれだけこの品目横断的経営安定対策に該当するんですかと言っても、今の段階でははっきり数字を申し上げるわけにはいかないという答弁が返ってきているわけです。

 だから、私は、今局長が言ったように、生産性向上を図ろう、担い手に農地を集約していって生産性向上を図ろうとする、一方で、この集落が、該当しないがゆえに切り捨てられていく状況もつくられていったときに、本当に食料自給率が向上するんだろうか、このことに大きな疑問を持っております。

 それで、このことを考えたときに、今、食料自給率の向上に向けて局長が答弁していましたけれども、地産地消という言葉が今叫ばれております。地産地消というのは、地域で生産されたものが地域で消費される体制をつくっていこうという流れですから、地域地域で、全国津々浦々で農業生産が行える体制をつくっていくこと、このことが生産面からいえば地産地消という言葉の持つ大きな重みだと私は思うんです。

 それで、それを消費者と結びつけるために食育基本法というものが議員立法でつくられて、今、この三月末までに食育基本計画というものがつくられようという流れになっています。

 そうするときに、この地産地消と食育というのを密接に結びつけて取り組んでいかなければならないというふうに思うんですが、地産地消の大原則は、私は、その地域で多品目の農産物が生産されなければ地産地消に結びついていかない、そして、このことは、品目横断的経営安定対策と結びつけて考えたときに、多品目生産に本当に結びついていくんだろうか、こう思えてなりません。

 そういう意味では、地産地消作物に政府として、農林水産省としてどのような支援策をしていくんだろうか、このことが見えないわけでございます。このことをどう考えているのか。地産地消と食育と、それから今後の支援策について答弁を願いたいというふうに思います。

西川政府参考人 地産地消と食育という関係についてのお尋ねでございますけれども、委員御案内のとおり、地産地消は、地域で生産された農産物をできるだけ地域で消費しよう、そういう活動でございます。消費者にとっては生産者と顔が見える関係で新鮮な農産物を購入することができる、生産者にとっては消費者ニーズを直接確かめながら付加価値を高めた販売をすることができる、そういったメリットがございまして、現在各地で活発に取り組まれているところでございます。

 具体的には、農産物の直売、加工販売のほか、学校給食においての地産地消にも盛んに取り組まれておりまして、食育の推進の観点からも、子供たちにとって地域の農業生産の姿や伝統的な食文化などについての生きた教材となることから、そういった面でも重要なものというふうに考えているところでございます。

 地産地消を全国的にさらに浸透していくために、農林水産省といたしましては、食育の推進と関連づけながら各種の施策を進めることとしております。

 具体的には、十七年度中に全国で六百地域を目標に地産地消推進計画の策定というのを進めておりますが、達成されるだろうと。さらにこれを進めていきたいと考えております。次に、学校給食への地場農産物の提供を進めるための地域のリーダーでありますとかコーディネーターの育成などにも取り組みたいと。あるいは、生産者、流通業者はもとより、教育関係者、栄養士など広く関係する方々との情報交換の場づくり、こういったことにも取り組みたいということでございまして、文部科学省等関係省庁とも連携しながら積極的に推進してまいりたいと。

 あと、野菜とか果実、これが地産地消を進める上では、花なども含めまして大変重要な品目になると考えておりますけれども、これらは品目別の対策ということで、農林水産省として各種の施策を展開するということにしているところでございます。

菅野委員 私が言いたいのは、地産地消作物を多品目少量生産している、少量と言ったら語弊がありますけれども、多品目生産している農家というのは、中山間地域農業を担っている人たちなんですね。

 この品目横断的経営安定対策は、目指しているのは、北海道農業や平場農業をどう育成強化していくのか、そういう視点での政策だというふうに私は思うんです。それに関して、山村集落、中山間地域集落をどう育成強化していくのか、このことと地産地消という部分を結びつけていかない限り、日本農業は、日本の食料自給率は向上していかないという基本的なスタンスに私は立っているんです。

 そういう意味で、地産地消と地域における食育というのを進めていきながら、農村集落をどう活性化していくのかというその視点が、今の農林水産行政の中で不足していることだというふうに私は思うんです。そのことをしっかりと取り組んでいかない限り、平成二十七年までの食料自給率の四五%は、私は達成できないと思うんです。十年間かかってそこにしっかりと支援策をしていくという基本的なスタンスにどう立つかに今あるというふうに私は思うんですが、このことに対してどうお答えになりますか、答弁願います。

西川政府参考人 需要に応じた生産をするということが、自給率向上を図る上での基本であるというふうに考えております。

 やはり消費者は、いいものを身近で得ることができればそれが一番好ましいのではないかというふうにも考えておりますが、地産地消を、現在計画づくりを進めている中にあっては、市町村あるいは消費者団体などが計画主体になっておりますけれども、その計画内容を見ましても、やはりいい物づくりをするということを基本に、また、できるだけネットワークを広げまして、関係者の広い食に対する理解を求める、そういう計画内容になっておりますので、これをしっかりと展開することによって日本の農産物のよさというものがしっかりと認識され、また結果的に消費されるということだろうと。それが最終的には消費者に選択されて初めて自給率向上につながるというふうに思います。

 ただ、最後につけ加えたいと思うわけでございますけれども、物の生産をするに当たっては、いいものをつくらなければ、健康を支える物づくりをするというのがやはり基本であろうというふうには考えております。

菅野委員 局長、答弁になっていないんですが、中山間地域農業に政府としてどう支援していくのか、その視点をしっかり樹立しない限り、私は、地産地消の実現に結びついていかないんじゃないか、こういう危機感を持っております。

 一方では、品目横断的経営安定対策というものを行っていきながら、地域における家族経営的な農業を政府としてどう支援していって、そこにおける農産物の増産を図りながら、地域で生活している人たちに消費してもらう体制をどうつくるのかという課題なんです。そこに対して、政府として今後どう支援していくのかという方向が示されない限り、私は、また五年たった、あるいは十年たったときに食料自給率は下がっていたという状況になりやしないかという危機感を持っているんですけれども、もう一度答弁願いたいと思います。

西川政府参考人 中山間ということでのお尋ねでございます。

 中山間については、農林水産省としては、中山間への直接支払いといった措置も講じておりますし、その地域の自然条件に合った物の生産というものを振興しているということでございます。

 あと、作物につきましても、野菜でありますとか果実につきましては、これは今後とも品目別対策ということで、いい物づくり、いい産地づくりといったものを推進したいというふうに考えておりますので、そういった政府の支援措置なども活用しながら、中山間地域においてもいろいろなアイデアを出していただきまして、物づくり、いい物づくりを展開していってもらいたい。そのことがやはり地域の活性化につながるんだろうというふうに考えているところでございます。

菅野委員 これからもこのことは議論していきたいと思うんですが、中山間地域への直接支払い制度というのは、ある意味では活性化に結びついてきている側面は持っております。ここの充実強化を図っていくという視点は私は欠かすことができないことだというふうに思うんですが、要するに、今の農漁村集落の状況というのは、今農業経営をやっている人、家族経営をやっている人が、そこから手を引いたならば、農家はそれで農業をやめてしまわざるを得ない状況になっているんだと。そこを、後継者、こういう制度があるから、おまえ、うちの農地を引き継いで農業に従事しろということが言える状況をつくらないと大変なことになるというふうに思うんです。

 大臣、今までの答弁を聞いていて、日本全体の農業、食料自給率をどう上げていくのかという決意のほどをお聞きしておきたいと思います。

中川国務大臣 私は、六年前の新しい基本法のときにも農水大臣をやらせていただいておりましたので、審議のときからずっとこういう議論を、何十時間も参加をさせていただきました。

 今の菅野委員のお話をずっと聞いていまして、私は、ある意味では、今回の基本法は、農村部と都市との対立から、農村部と都市とが協力し合ってこそ、日本の食料政策あるいはまた食料というものがあるんだろうと。ですから、農業基本法と違いまして、新しい基本法では、国の役割、自治体の役割、農業、農村の役割、食品加工の役割、あるいは消費者の役割、それぞれみんな役割を持って、責任を持って頑張っていこう、それが新しい基本法の精神なんだということがまず大前提にあるわけで、その上で自給率を向上しようということであります。

 自給率は、もう言うまでもないことだと思いますけれども、カロリーベースの自給率ですから、これはもう米と芋と菜っぱを食っていれば一億二千万人生きていけるんです。でも、果たしてそれで消費者は満足するでしょうか。やはり消費者は、おいしいものを食べたい、できれば日本の、地産地消も含めて顔の見えるものが食べたい、そのためには、生産者も努力してもらわなければいけない、消費者も生産サイドの御努力を評価しながら感謝して食べなければいけない、こういう関係をつくり上げていくことが、これからの目指す方向だと思います。

 ですから、今北海道の、私のところは平均三十ヘクタールありますけれども、そこと都市農業、あるいは中山間地域、決して対立するものじゃなくて、その地域地域の特性があるわけですから、食育もあるいはまた地産地消も大事です、進めてまいります。ブランド化あるいは差別化によって、多品種少量か多品種多量かわかりませんけれども、消費者が好まれるものは、気仙沼や宮城のおいしいもの、魚や農産物が食べたい、行って食べたい、東京で食べたい。そして、一生懸命つくっていこうという中山間農業もあるでしょうし、また都市近郊の農業もあるでしょう。

 ですから、自給率一本やりで議論をしていくと、結局は、これは肉は食べるなとか、野菜は余りカロリーに反映しませんから食べるなとか、そういう議論になっちゃいますので、そういう意味で、消費者にとって満足のできるものをどうやって、中山間地においてもあるいは都市近郊においても、私のような今度の基幹的な大規模の土地利用型農業でつくるようなものでも、一生懸命つくって、午前中議論がありましたように、国産で消費者に好まれるようなスパゲッティをつくろうとか、めん用の小麦をつくろうとか、そういった努力を生産者の皆さんが一生懸命やることによって、消費者と生産者とが共生できるような関係。

 その中で、担い手の位置づけ、あるいはまた中山間地域の位置づけ、都市農業の位置づけというものを、それぞれ役割分担をしながら、そして食育、食育は大事であります、特に子供の食育は大事であります。学校も大事でしょう。農林省の農政も大事でしょう。やはり家庭教育でもって、本物あるいはまた家庭の味をまず生まれたときから親が教える、そこから食育はスタートすると私は思いますので、みんなで頑張って、日本のいい食を通じて、国が発展していくようにしていきたいというふうに考えております。

菅野委員 大臣の考え方はわかりました。

 ただ、本当に、今のこの食料自給率が四〇%台でずっと推移している、これを、二十二年目標を、四五%が全然達成できなくて、二十七年まで五年延ばして、四五という数字を設定しました。これに向けて、本気になって政府全体が、この食料自給率というのがいかに第一次産業の振興に重要なファクターなのかという、私はそうとらえているんですけれども、そこに向かって精いっぱい努力してほしいし、私どももそれに向かって提言していく決意を申し上げて、もう一問質問を用意していたんですが、時間が来ましたので、これで終わります。

     ――――◇―――――

稲葉委員長 次に、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣中川昭一君。

    ―――――――――――――

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中川国務大臣 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 近年の我が国農業をめぐる情勢を見ますと、農業従事者の減少、高齢化による農業の生産構造の脆弱化が進む中、その構造改革を加速化するとともに、WTOにおける国際規律の強化にも対応し得る施策への転換を図ることが喫緊の課題となっております。

 政府といたしましては、このような課題に対処し、国民に対する食料の安定供給の確保に資するよう、これまですべての農業者を対象に品目ごとに講じてきた施策を見直し、認定農業者等の担い手の経営全体に着目してその安定を図るために必要な交付金を交付する措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、交付金の交付対象となる農産物及び農業者の範囲であります。

 対象農産物として、米穀、麦、大豆、てん菜、でん粉の製造の用に供するバレイショのように、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であって、相互の組み合わせによる生産が広く行われている農産物を定めるとともに、対象農業者として、認定農業者または特定農業団体その他の一定の要件を満たす農作業受託組織、すなわち一定の要件を満たすいわゆる集落営農であって、その耕作の業務の規模が一定の基準に適合する等の要件を満たすものを定めることとしております。

 第二に、我が国の農業における生産条件に関する不利を補正するための交付金であります。

 我が国の地理的条件が悪いこと等に起因する諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正するため、対象農産物のうち、その生産費が販売価格を上回るものについて、両者の差額に応じた交付金を交付することとしております。

 第三に、収入の減少が農業経営に及ぼす影響を緩和するための交付金であります。

 豊凶変動等による対象農産物に係る収入の減少が農業経営に及ぼす影響を緩和するため、みずから一定の積み立てを行っていることを要件として、収入減の一部を補てんする交付金を交付することとしております。

 第四に、交付金の交付業務の適正な執行の確保についてであります。

 交付金の交付業務の適正な執行を確保するため、不正の手段で交付金の交付を受けた者に対し交付金の返還を命ずるとともに、必要な場合にはその徴収ができることとしております。

 なお、これらの措置を講ずることに伴い、大豆交付金暫定措置法を廃止することとしております。

 続きまして、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 砂糖及びでん粉は、各種食品の原材料として、国民生活上必要不可欠な物資でありますが、これらの原料作物である甘味資源作物及びでん粉原料用芋の生産につきましては、我が国の農業の生産条件が諸外国に比して不利となっており、これを補正していくことが重要な政策上の課題となっております。

 現在、砂糖及びでん粉につきましては、政府が定める最低生産者価格または原料基準価格以上の価格で取引された甘味資源作物またはでん粉原料用芋から製造された砂糖またはでん粉を対象に支援する措置が講じられており、これらを通じて甘味資源作物及びでん粉原料用芋の生産者の所得の確保が図られております。

 しかしながら、このような仕組みにおきましては、砂糖またはでん粉の市況が生産段階に的確に伝達されないことから、需要に即した生産を今後より一層推進し、国内産糖及び国内産芋でん粉の安定供給を図っていくため、その支援手法を見直すとともに、でん粉の価格調整制度を創設することとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、砂糖の価格調整制度における政策支援の手法を見直すこととし、最低生産者価格を廃止して、甘味資源作物の生産者及び国内産糖製造事業者に対し、それぞれ交付金を交付する仕組みに転換いたします。

 第二に、でん粉について、新たに価格調整の仕組みを創設することとし、輸入に係るでん粉等について独立行政法人農畜産業振興機構への売り渡し及び買い戻しの義務を課すとともに、でん粉原料用芋の生産者及び国内産芋でん粉製造事業者に対し、それぞれ交付金を交付する等の措置を講ずることとしております。また、これに伴い、砂糖の価格調整に関する法律の題名を砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律に改めることとしております。

 第三に、独立行政法人農畜産業振興機構について、新たにでん粉の価格調整の業務を行わせる等の措置を講ずることとしております。

 なお、これらの措置を講ずることに伴い、甘味資源特別措置法及び農産物価格安定法を廃止することとしております。

 次に、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 麦は、米と並んで主食としての役割を果たすとともに、我が国農業において、水田営農にあっては転作作物や裏作作物として、また、畑作営農にあっては輪作作物として、重要な地位を占めております。

 一方、麦をめぐる現下の情勢を見ますと、国内産麦については、需要動向に応じた計画的な生産が求められている中で、品質、生産性の向上におくれが見られ、また、製粉業等の麦の加工産業につきましては、安価な小麦粉調製品等の輸入が増加する中で、コストダウン等を通じた一層の国際競争力の強化に向けた取り組みが必要となっております。

 他方、我が国農業全体を見れば、構造改革を加速化するとともに、WTOにおける国際規律の強化にも対応し得るよう、これまですべての農業者を対象に品目ごとに講じてきた施策を見直し、担い手の経営全体に着目してその安定を図る新たな施策に転換することが喫緊の課題となっております。

 こうした農政全体の課題に対応するとともに、需要に応じた良品質な麦の生産をより一層推進する観点から、民間流通を基本とした麦の需給及び価格の安定を図る新たな麦政策を構築することとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、担い手の経営全体に着目した新たな経営安定対策を導入することとしていることに伴い、また、既に平成十七年産麦の全量が民間流通していることも踏まえ、国内産麦についての政府による無制限買い入れ制度を廃止することとしております。

 第二に、麦の需給及び価格の安定を図るため、新たに麦の需給見通しを策定することとし、これに基づき、麦の備蓄の円滑な運営を図るとともに、麦の適切な輸入及び売り渡しを行うこととしております。

 第三に、農林水産大臣が定める標準売り渡し価格を廃止し、政府が保有する外国産麦については、輸入価格の変動を反映した価格で売り渡すこととしております。

 第四に、国家貿易の枠内で製粉企業等の多様な需要に柔軟に対応できるよう、米穀について既に制度化されている特別な方式、いわゆるSBS方式による輸入を麦についても導入することとしております。

 以上が、これらの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

稲葉委員長 次に、提出者山田正彦君。

    ―――――――――――――

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山田議員 私は、提出者を代表して、ただいま議題となりました食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案につきまして、その提案理由及び趣旨を御説明申し上げます。

 最近、スーパーに行くと、中国産の野菜はもちろん、米国産のブロッコリー、チリ産の養殖サケなど、外国産が所狭しと並んでいます。さらに、我々が毎日食べている食用油、そのほとんどは、米国からの遺伝子組み換え大豆や、カナダからの遺伝子組み換え菜種でつくられています。その食用油を搾った遺伝子組み換え大豆のかすで、日常使われているみそ、しょうゆの大半が賄われているとしたら、どうなるのでしょうか。EUは遺伝子組み換え食品を厳しく規制しています。

 最近の調査によれば、アトピー症がこの十年間で二倍に増加していること、また、このところの杉花粉症の蔓延など、我々日本人は、過去に経験しなかった体質変化を今、来しつつあります。米国からの輸入牛肉、BSEのおそれもさることながら、鳥インフルエンザの脅威など、今日ほど、食の安全について、我々政治家がその責任を果たさなければならないときはありません。

 一方、日本の食料自給率はカロリーベースで四〇%、穀物自給率に至っては二七%、世界で百二十四番目と北朝鮮よりも低くなっています。世界の人口が爆発的に増加し、地球温暖化などの影響もあって、このままでは、近い将来必ず世界的な食料危機がやってきます。また、水産においても、資源の枯渇もさることながら、輸入魚の増大によって魚価が大幅に下落し、かつては一〇〇%を超えていた水産物の自給率が今や五五%、水産国としての面影もありません。

 日本にとって、今こそ食の安全、食料安全保障が大事なときはありません。

 さて、政府提案の法律案に触れさせていただきます。民主党は直接支払いを政府に強く求めてきましたが、構造改革に反するとしてこれまで拒否されてきました。今回、初めて直接支払いを取り入れたことは画期的なことです。それだけに、国民、農業者の期待も大きく、我々も強い関心を持って迎えたのですが、残念ながら大きく期待外れの内容となっています。

 何となれば、この法案の前提である基本計画では、十年後に自給にとって最も大切な小麦は八十六万トンと横ばいで、大豆に至っても二十三万トンから二十七万トンとわずか四万トンの増加計画でしかありません。これでは、政府の自給率目標四五%の達成は到底及びません。もともと政府が予定していた四五%の自給率目標は、相も変わらず食育で米の消費を伸ばすとか、カロリーベースでの消費を十年後には四%も落として自給率を上げるというまやかしのものでしかありません。

 さらに、直接支払いの対象となる農家も農地四ヘクタール以上の認定農家に限られるとされていますが、それでは、長崎県の場合を例にとりましても、農家の耕作面積の平均は一・二ヘクタールですから、五百人ほどの農家しか直接支払いの対象にならなくなります。集落営農に対する助成をするといっても、経理を一元化するとなれば、現実的にはなかなか難しいものがあります。しかも、予算額は明らかにされていません。千七百億円ほどだと聞いていますが、もしそうだとすれば、政府案では、自給率目標の達成はおぼつかないお粗末なものだと言わざるを得ません。

 本法案は、このような考え方をもとにして、ここに提出するものであります。

 以下、法案を御説明申し上げます。

 まず第一に、食料自給率は、十年後には必ず五〇%以上にすること、将来は六〇%にすることを法案に明記し、国民に約束します。そのために、大胆に単年度で一兆円の直接支払いの予算を組みます。その財源は、橋や道路などに使われている農業土木事業予算一兆三千億円から五千億円、民主党が予定している地方への一括交付金十八兆円のうちから五千億円を充てることにいたします。

 そして、国が、米、小麦、大豆、菜種、飼料作物、地域振興作物としてのてん菜など、主要農産物を定めて、生産数量の目標を設定し、内外生産条件の格差を是正するために直接支払いを行います。こうした直接支払いを通じて、具体的には、小麦は八十三万トンから四百万トンへ、大豆は二十七万トンから五十二万トンへ、現在わずかしか生産されていない菜種も三十二万トンへ、それぞれ大増産を目指します。これによって、残留農薬の心配のない国産のパン、うどん、遺伝子組み換えでない国産の大豆を利用した豆腐、納豆、みそ、しょうゆ、昔懐かしい菜種油など、安全、安心なものを食べることができるようになります。

 我々は、それらの確実な実現を図るために、計画を立てて販売するすべての農家に一兆円の直接支払いをいたします。ばらまきとならないよう、農地を集約する者への規模加算、捨てづくりにならないよう、品質加算、棚田の維持、有機農業の実践など、環境保全への取り組みに応じた加算も行います。

 米国では新農業法のもと、今や農家所得の四六%は国からの直接支払いで賄われています。また、EU諸国もその所得の五二%は国からの助成金で占められています。欧米諸国は、このようにして自給率を八〇%から一〇〇%以上の水準に維持しています。

 一方、日本の農家は、国からの助成がほとんどない状況の中、外国との厳しい競争にさらされ、農業では食べていけなくなり、深刻な状況に置かれています。一刻も早く一兆円の直接支払いを実現する必要があります。

 また、米の生産調整は廃止いたしますが、米については、市場に出回ることがないよう、棚上げ方式で備蓄を行い、バイオマス利用などの活用を法案に盛り込んでおります。

 第二に、水産行政に関しては、何としても枯渇した資源の回復を図るために、漁業者ごとに漁獲量を割り当てるTAC制度を取り入れます。同時に、漁業者への収入の安定を図るため、直接支払いを実現します。また、沿岸、沖合漁業に係る漁業権制度について、新規参入の促進を含め、現行制度を抜本的に見直します。さらに、いその清掃、藻場や海中の森の造成、種苗の放流など、自主的に漁場の生産力の向上に取り組む集落に対して、直接支払いを行います。

 第三に、食料の安全、安心についてですが、例えば、米国から牛肉を輸入する場合、ステーキ肉に塩コショウをかけただけで加工食品の扱いとなり、原産地の表示をしなくてもよくなっています。今回の法案は、すべての加工食品等の原料原産地表示を義務づけることにいたしました。また、日本は、世界で最大の食料純輸入国でありますので、主要な輸入食料に対して、輸入先国での検査官による査察を含め、輸入検疫体制の整備を図ります。

 ただいま申し上げましたこのような改革を実施することによって、食料の自給率目標は達成され、食の安全、安心も確保されるのです。

 以上が、本法案の提案理由及びその概要であります。

 委員各位の御審議と御賛同をお願いいたします。

稲葉委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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