衆議院

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第7号 平成18年4月5日(水曜日)

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平成十八年四月五日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 原田 令嗣君 理事 二田 孝治君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 山田 正彦君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      今津  寛君    小野 次郎君

      金子 恭之君    木原 誠二君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      斉藤斗志二君    鈴木 馨祐君

      寺田  稔君    冨岡  勉君

      中川 泰宏君    並木 正芳君

      丹羽 秀樹君    西村 康稔君

      鳩山 邦夫君    福井  照君

      牧原 秀樹君    御法川信英君

      宮下 一郎君    渡部  篤君

      荒井  聰君    岡本 充功君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      篠原  孝君    筒井 信隆君

      仲野 博子君    松木 謙公君

      森本 哲生君    山岡 賢次君

      丸谷 佳織君    菅野 哲雄君

      森山  裕君

    …………………………………

   議員           山田 正彦君

   議員           菅  直人君

   議員           篠原  孝君

   議員           仲野 博子君

   農林水産大臣       中川 昭一君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       松本 義幸君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  西川 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   政府参考人

   (水産庁長官)      小林 芳雄君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     鈴木 馨祐君

  谷川 弥一君     冨岡  勉君

  丹羽 秀樹君     牧原 秀樹君

  福井  照君     寺田  稔君

  松木 謙公君     筒井 信隆君

  山岡 賢次君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     木原 誠二君

  寺田  稔君     福井  照君

  冨岡  勉君     宮下 一郎君

  牧原 秀樹君     丹羽 秀樹君

  篠原  孝君     山岡 賢次君

  筒井 信隆君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     飯島 夕雁君

  宮下 一郎君     谷川 弥一君

    ―――――――――――――

四月四日

 学校給食の国内産米・小麦粉使用に対する補助金に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一〇七七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房技術総括審議官染英昭君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長中川坦君、生産局長西川孝一君、経営局長井出道雄君、農村振興局長山田修路君、水産庁長官小林芳雄君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長松本義幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。二田孝治君。

二田委員 きょうはしばらくぶりで質問に立たせていただきました、自由民主党の二田でございます。

 私は、中川大臣と、ここ二十年来、農政の問題でいろいろ勉強させてもらっております。大変若いときから、中川大臣は自由民主党の部会長といたしまして、私が代理といたしまして、また、その後いろいろ、WTOの関係にも何回かお供を申し上げておるわけでございます。農政に対する熱意というものは大変なものでございまして、食料の方の改革、そして農政の改革というものをともに進めてきて、一生懸命頑張ってきたという認識でありますので、きょうは、多分、大変中身のある、いい答弁をちょうだいできるのじゃないのかなと御期待を申し上げておるところでございます。

 そしてまた、担い手経営安定対策法案につきましては、民主党さんの方から、きょうは菅さんにはお忙しいところをこうやって御出席いただきまして、それで、農水委員会の方も大変活気を帯びさせてもらっておりますので、また後ほど御質問を申し上げたいと思います。

 考えてみますると、世界の農業の状況を見てみますると、先進国に共通の現象といたしまして、人口の伸びの停滞や食肉の消費の増加による食用穀物需要の伸び悩み傾向が見られます。飼料もございますので、穀物は全般的に伸びているわけでございますけれども、食用に関しては各先進国が停滞している、こういう現象が見られるわけでございまして、それぞれの国でもその政策において対応が迫られているということは、これは自明の理でございます。

 一方、私どもの方の国を見てみますると、農業においては、他の先進国には見られないようなスピードで農業従事者の減少や高齢化等が進んでおるということは、皆様方御案内のとおりでございます。このまま農業の生産構造の脆弱化が進行すれば、食料の安定供給の確保に大変な支障を来すおそれが生じているということは、国民みんなが認識してもらわなければならないことじゃないのかな、こんなふうに思うわけでございます。

 こんなような状況を踏まえて、昨年十月の経営所得安定対策等大綱の内容を、これは恐らく最後の手だてとして練りに練った、与党としてもそうでございますけれども、政府といたしましても練りに練った政策である、このように私どもは認識しておるわけでございますけれども、担い手経営安定新法が今回提出されておるところであります。農業の構造改革を進めるためには、この対策を円滑に導入することこそが、今の我が国にとりましても、農政の問題にとりましても大変重要なことであるということは、御認識のとおりであります。

 そこで、大臣に対して、品目横断的経営安定対策の導入が今後どのように日本農業の構造改革につながっていくのか、そしてまた、食料の全般的な確保に将来ともつながっていけるのかどうかということをお伺いいたしたいと思います。

中川国務大臣 おはようございます。

 御指摘のように、大変長年にわたって農政に造詣の深い二田委員から、まず世界的、また中長期的な食料、そして我が国の食料、農業、農村といったことについての御指摘がございました。

 まず、世界の状況を見ますと、もちろん穀物等食料の確保というものは極めて大事でありますが、何といいましても自然相手、生き物相手でございますから、豊作、凶作といった変動が極めて大きいわけでございます。また、一部の発展している国々の食料事情によりまして、世界的な影響があるわけでございます。特に、八億人以上と言われております飢餓人口という問題が、やはり我々としても常に頭の中に入れておかなければいけないというふうに思っております。

 また、日本におきましては、安定的な国内生産、あるいは備蓄、そして輸入といった三本柱で、国民に対して安全、安心な食料を供給するという大事な責務があるわけでございますが、今後、我が国は高齢化、また人口減少といった方向に入っていくわけでございますし、生産サイドの方の農業サイドにおいては、ある意味では一層この問題が非常に大きくなっていくわけでございます。食料でございますから、いっときたりとも食料不足、あるいは国民に対して食料に対する不安というものを与えてはならないということで、持続的かつ力強い農業生産サイド、そして消費者のニーズに合った食料生産が今後ますます重要になっていくというふうに考えております。

 そういう意味で、今回、政府として提出をさせていただきましたいわゆる農業改革三法案につきましては、国民に対して安定的に食料を供給するために、中長期的な観点に立ちまして、力強い農業生産、そのためのいわゆる担い手というものの位置づけをきっちりと明確にしまして、幅広い農業者を一律に対象にしたものではなくて、これから、担い手がきちっとした生産ができるといった、明るい農政の展望に向けての意欲と能力のある担い手に対して施策を重点化していくということによって、国民的な、ひいては世界的な食料事情にもある意味では貢献をしていかなければならないと思っております。

 他方、WTO農業交渉のように、国際規律の強化という議論も今大詰めを迎えているわけでございますから、これにも耐えられるような日本農業というものを位置づけていきたいという観点から、この法案を提出し、御審議をお願いしているところでございます。

二田委員 本法案に対する大臣の意気込みは十分わかりましたけれども、それでは、本法案の内容について少しくお伺いしてまいりたいと思います。

 まず、今回の法案による支援の対象者の経営規模等の要件については、拝見いたしますと省令に委任されているわけでございますけれども、その具体的内容というものはいかなるものであるのかということを政府にお伺いいたしたいと思います。

 そこで、政令あるいは省令に規定する見込みの事項を、これは随分多くなると思うのでございますので、次回は資料として、ほかの方々の資料のためにも提出していただきたいな、こう思います。あらあらの御答弁をひとつこの場ではお願い申し上げます。

井出政府参考人 お答えいたします。

 認定農業者の経営規模につきましては、法の二条二項一号のイにございますけれども、北海道にあっては十ヘクタール以上、都府県にあっては四ヘクタール以上であること等を定める見込みでございます。

 また、集落営農組織が満たすべき要件につきましては、これも法の二条二項一号ロにございますけれども、一定の区域内の農地の相当部分について利用集積を行う目標が定められており、かつその達成が確実と見込まれること、あるいはその組織を変更して、その構成員を主たる組合員、社員、株主とする農業生産法人となることに関する計画を有しており、かつその達成が確実と見込まれること等を定める見込みでございます。

 また、集落営農組織の経営規模につきましては、二十ヘクタール以上であること等を定める見込みでございます。

 なお、集落の農地が少ない場合や、経営規模は小さいものの、複合経営などによりまして相当水準の所得を確保している場合につきましては、地域の実情を踏まえた適切な経営規模要件を設定できるようにすることについても省令に定める見込みでございます。

 政省令規定見込み事項については、次回、速やかに提出したいと考えております。

二田委員 それでは次に、対象農業者について質問いたしたいと思います。

 今回の品目横断的経営安定対策は、これまで、すべての農業者を対象に、品目ごとに今までは講じてまいったということでございましたけれども、その価格政策を見直し、今度は担い手のみに対象を限定した上で、その経営安定を図る対策に転換するという、まさに今までにない農政の大転換と言えるものと私は認識しております。

 特に、対象者をすべての農業者から担い手に限定した点が大きな政策転換と言えますけれども、なぜ今回の対象では対象農業者を担い手に限定することといたしたのか、全農業者ではだめであったのか、この点の明確な答弁をお願い申し上げたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 農業の構造改革を進めていくに当たりまして、農業を産業として振興する産業政策と他の政策の関係を整理した上で、効果的、効率的で国民にわかりやすい政策体系を構築することが必要だと考えております。

 産業政策の観点からは、望ましい農業構造の実現に効果的に結びつけるために、農業経営の改善のための規模拡大や、機械・施設の導入への支援など、農業経営に関する各種施策につきましては、その対象をできる限り担い手に限定し、集中的、重点的に実施すべきものと考えております。

 このため、十九年産から導入することとしておりますこの品目横断的経営安定対策につきましても、その対象を担い手に限定することとしたところでございます。

二田委員 大臣、私どもの国は、地形上、小さな農地しか存在していないような地域がたくさんあります。このような地域では、物理的に小規模な農家のみで営業を行わざるを得ないのでございます。よく御案内のとおりでございますね。

 今回の対策を説明する中で、対象を担い手に限定したことにより、小さな農家はどうなっていくのか、これが一つの大きな問題点であるということは、私どもがこの法案に携わってまいりました場合にも大いにこれは党の中で議論されたわけでございます。

 そこで、今回の対策は、小さな農家や兼業農家を全く対象から外してしまうのか、外された人はどうなっていくのか、こういう大きな問題点を含んでいるのじゃないのかな、こう思います。さんざん議論した点でございますけれども、ひとつ明確な答弁をお願い申し上げたいと思います。

中川国務大臣 今、局長から答弁ありましたように、面積要件は、四ヘクタール、十ヘクタール、二十ヘクタールということを答弁いたしましたが、どうもそういう、日本の平均耕地面積が一・五、六ヘクタールの中で、四とか十とか二十というと、余りにも広くて、ではそれ以外は切り捨てではないかというふうによく御指摘をいただくわけでございますけれども、決して面積要件だけではございませんで、さっき申し上げたように、これからの産業として、食料生産という観点から、きちっとした、やっていける農家、これを担い手として認定するわけでございます。

 その担い手というのは、もちろん面積要件を前提とした担い手だけではなくて、例えば集落営農として、一定の要件を踏まえてこれから集団でやっていこう、これは二十ヘクタールですから、個々の農家の規模は問わないわけでございますし、それから、仮に面積が小さくても、効率的で高収益で高品質の農産品を生産するような農家であれば、これはそれぞれまた認定をいたしますので、決して面積要件だけではなくて、要は、冒頭申し上げたような、今後の食料生産、あるいはまたこれと車の両輪であります多面的な機能の保全のためにやっていくという、車の両輪の片方の生産サイドの方は、決して面積要件だけではなくて、今後の日本農業をしっかりと文字どおり担っていくに値する農家については、仮に小規模であっても担い手として認定をさせていただき、いろいろな支援をしていきたいというふうに考えております。

二田委員 対象は必ずしも硬直的なものでないというふうに解釈してよろしゅうございますね。いろいろな要件のもとに対象者をまた認定することができる、こういうふうな御答弁であったということで、しかと認識してよろしゅうございますね。(中川国務大臣「はい」と呼ぶ)

 そうすると、門戸は開かれておるんだ、いろいろな方策によってこの門戸は開かれておるんだ、こういう答弁を、心強い答弁をいただきましたので、次の質問に移ります。

 農林水産省では、品目横断的経営安定対策の円滑な導入に向けて、対策の対象となる担い手の育成、確保の全国運動を展開しております。現在盛んに私どもの方の秋田の地域でも行われているわけでございます。

 認定農業者への誘導や集落営農の組織化、法人化をそういうふうに組織的に進めているところでありますけれども、対策のスタート時、すなわち十九年度におきまして、一体どの程度の面積が対象になっていくのかということを見込んでいるんでしょうか。面積がどのぐらいであるのかということを見込むことなしには政策は進められませんから、その点はいかがですか、井出さん。

井出政府参考人 お答えいたします。

 本対策の対象者の要件につきましては、先ほど御答弁いたしましたように、基本は、認定農業者または特定農業団体その他の一定の要件を満たす農作業受託組織であって、一定の面積以上のものでございますが、先ほど大臣からも申し上げましたように、面積は小さくても、複合経営などによりまして相当の所得を確保している場合につきましては、面積要件に達しなくても、国が別途の基準を設けて対象とすることができるようにしております。

 したがいまして、本対策の要件を満たす対象の割合につきましては、本来ですと、この所得特例に当たるものがどのくらいあるかということも踏まえて、対象者となり得る農業者なり営農組織の実態、意向を積み上げる必要があるわけでありますけれども、そういったことを現時点ですることは不可能でございますので、仮にということで、基本としております面積要件等を満たしている者、個別経営について申しますと、農林業センサスで言う経営耕地が、都府県四ヘクタール、北海道十ヘクタール以上の経営体、集落営農につきましては、集落営農実態調査に基づきまして、現在存在するとされております約一万の組織がございますが、これらの認定農業者あるいは特定農業団体等が一定の要件を満たすように構造改革の努力を行ったという前提を置いた場合に、現時点で、これらの経営耕地総面積に対する割合は五割程度と試算されております。

 もとより、現在、行政と農業団体が連携協力して担い手の育成を強力に推進しておりますので、このような規模拡大とか集落営農組織化の取り組みの進展度合いによりまして、対策スタート時における対象面積は当然大きく変わってくるものと考えておりますが、一応の現時点での試算ということでございます。

二田委員 ただいまの答弁では不足なんでございまして、要するに、スタート時において、我が国の農地のどのぐらいのもののカバーができるのかということを明確にお答え願いたい、こういう質問でございますから、ひとつよろしくお願い申し上げます。

井出政府参考人 長々と申し上げましたのでお聞き取りにくかったかと思いますが、現時点におきましては、我が国の経営耕地総面積に対する割合は五割程度というふうに試算されております。

二田委員 そうすると、スタート時において大体二百万ヘクタールぐらいになるんですか。農地の二百万ヘクタール弱というふうに認識しておいてよろしいということでございますね。いいですね、それで。

 また、次は、当然参加する人数というもの、農民の数、農業者の数というものが問題になるのでございますけれども、これは、人数としてはどの程度の農業者が対象になっているのか。スタート時ですよ、将来設定は別にしまして。スタートしてからどんどんどんどんふえていくということはわかりますので。勇気を持って、スタート時はどのぐらいであるのかということを、ひとつ政府からお答えいただきたい。

井出政府参考人 人数としてのカバー率についてのお尋ねでございます。

 人数につきましても同じような状況にございまして、先ほど来申し上げておりますように、複合経営等でどのくらいの人が入ってくるかということが見通せないわけでございますが、基本になっております面積要件を満たす人がどのくらいいるかという点に絞って試算をいたしますと、現時点で、全販売農家に対する割合は三割程度というふうに試算されております。

二田委員 面積にして五〇%、人数にして全農業者の三〇%ということになりますと、七〇%の農業者が当初においては参加できないということになりますけれども、私としては、局長にとって非常にきつい質問だと思うのでございますけれども、その辺を、将来の見通し等を含めて、どのぐらいの参加人数、三〇%ではやはり私は努力は足りないと思いますので、いかがになるものか、ちょっとひとつ考え方をお聞かせいただきたいと思います。

井出政府参考人 先ほどもお答え申し上げておりますけれども、スタート時点の見込みといたしましても、複合経営等で対象になる人がどのくらいあるのかということが見通されないという状況でございまして、将来的にこれがどういうふうになるのかということについても確たる試算は持ち合わせておりません。

 ただ、食料・農業・農村基本計画では、十年後の平成二十七年の目標といたしまして、認定農家といいますか、効率的かつ安定的な農業経営で三十数万から四十万戸というふうに言われておりますし、集落営農組織も二万から四万、法人経営で一万というものをしっかりした農家としてつくっていく、そういう目標は十年後の目標として立てております。

二田委員 としますれば、本対策による参加者というものは飛躍的に増大していかなければだめだということになりますので、その努力というものをまた大いにお願い申し上げたいと思います。この点がやはり一番大きな問題じゃないのかな、私はこういうふうにも認識しておりますので、少しくしつこく聞かせていただいたわけでございます。

 としますると、品目横断的経営安定対策によりまして力強い農業構造を構築するといたしましても、その対策を担い手だけに絞ったのでは、農業、農村の持続的発展、多面的機能、いろいろな要素を含んでおりますので、こういうのに大変やはり支障を来しておると思う。というようなことから、農業用水等や資源の保全が十分には確保されず、農業が本来有する自然循環機能の維持増進にも支障を来すのではないかと懸念をいたしておるところでございます。ということは、集落の維持というものをどういうふうに図っていくのか、人的なつながりというものをどういうふうに農村というのは図っていくのか、これはやはり日本の一つの基礎的なものだと思いますので、そういうものに非常に支障を来すのではないかということが懸念されます。

 そこで、この対策と車の両輪とされる農地・水・環境保全向上対策を地域振興政策として実行していかなければならないわけでございますけれども、この実行につきましての政府の考え方をひとつお願い申し上げます。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策についてでございますが、先生からお話がありましたように、農地、農業用水等の資源は、食料の安定供給あるいは多面的機能の発揮にとりまして非常に重要でございます。そういう意味で、社会共通資本というふうに考えております。このため、これらの資源の保全と質的向上を図るとともに、農業が本来有する自然循環機能を維持増進するということが必要でございます。

 農地・水・環境保全向上対策は、こうした状況に対応するため、二つの内容を持った施策でございます。

 一番目が、地域ぐるみで、農地、農業用水等の適切な保全とあわせて施設の長寿命化や環境の保全にも取り組む、いわゆる共同活動の推進でございます。二つ目が、地域の中でまとまって、化学肥料や化学合成農薬の使用を原則五割以上低減する先進的な営農活動の推進でございます。

 これら二つの対策を協定に位置づけまして、多様な主体の参画を得て、総合的、一体的に実施する活動に支援をするという考え方でございます。

 本対策は、効率的、安定的な農業構造の確立と合わせまして、農地、農業用水等の資源、さらにはその上で営まれております営農活動を一体として、その質を高めようとするものでございまして、将来にわたって地域の資源を保全するための、先生からお話がありました地域振興対策として推進をするということでございます。

二田委員 私どもがこの品目横断的経営安定対策を勉強いたしましたときに、地域の維持というようなことで、必ずしも農業者でなくても参加できるというシステムを提言してまいったのが、そのことがこれに生かされているということでございますね。

 次に、それでは、品目横断的経営安定対策の仕組みについて、ちょっとお伺いいたしたいと思います。

 今回の対策による交付金のうち、生産条件に関する不利を補正するための交付金については、過去の生産実績に基づく支払いと毎年の生産量、品質に基づく支払いを合わせて交付いたしております。

 既に直接支払いを導入している欧米諸国では、WTOルール上、緑の政策に該当する過去の生産実績に基づく支払いのみの制度としておるわけですが、今回の対策では、欧米諸国の制度と異なりまして、なぜ毎年の生産量、品質に基づく支払いを講ずることにいたしたのか、その辺の違いというものも、ひとつ説明をお願い申し上げます。

井出政府参考人 お答えいたします。

 新たに導入いたします品目横断的経営安定対策、これを持続的、安定的に運用していくためには、現行のWTO農業協定におきまして削減対象とされておりません緑の政策に該当するものにする必要があると考えております。

 しかしながら、欧米諸国で実施されております直接支払いのように、緑の政策に該当する過去の生産実績に基づく支払いのみの制度とした場合には、捨てづくりをする場合でも支払いを受けられるなどのモラルハザードを招く可能性もございます。

 また、我が国におきましては、まだまだ小規模、零細な農業構造の中で、規模拡大等による生産性の向上を図る必要があることに加えまして、品質の面でも、消費者、実需者のニーズに生産者サイドが十分に対応し切れておらず、需要に応じた生産の確保を図る必要があるというようなこともございまして、WTO農業協定上は削減対象の黄色の政策ではありますけれども、毎年の生産量、品質に基づく支払いを緑の政策とあわせて講ずることが必要だと考えておりまして、今回の制度の仕組みを構築したものでございます。

二田委員 としますと、過去の生産実績に基づく支払いは、過去の基準期間における生産実績に基づいて支払われるものとなっております。具体的には、平成十六年から十八年度と伺っておりますが、一定期間経過後、この期間というものを見直す必要があるのかどうなのか。期間の経過後の見直しについてどういうふうなお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。

井出政府参考人 基準期間の見直しについてのお尋ねでございますが、過去の生産実績に基づく支払いにつきましては、現行のWTO農業協定におきまして削減対象とされない緑の政策として仕組むことにしているわけでございまして、基本的には、制度開始時に決定する期間で固定する必要がございます。そのため、現時点におきましては、その期間の見直しは考えていないところでございます。

二田委員 国際的なWTO上のルールによって見直しはできない、こういうことでございますか。

 では、それは、国際上の問題でありますならば、後ほどまた検討することといたしまして、しかし、大臣、基準期間中に災害が起きた場合や、新たに大豆や小麦に取り組む人も出てくるわけですけれども、過去の生産実績に基づく支払いの対象とはならないということでございましょうか。あるいは、十分な支払いが受けられないことになってまいります。

 すなわち、新規参入者というのができなくなってくるんじゃないのか。農業者の大きな営農の意欲というものは、これは、やろうと思っている人が、もうこれはできないんだから、おれはやめたよ、こういうことになるんじゃないのかなと。このようなケースについては特段の配慮をすると考えているのかどうなのか。

 これは極めて政治的な問題でもございますから、大臣の見解はどういうものでございましょうか。

中川国務大臣 先ほど局長から答弁ありましたとおり、過去実績が前提として、そして見直す必要がない。これはWTO協定上の緑の政策ですから問題がないわけでありますが、御指摘のように、我々は、意欲のある、能力のある新規就農というものを大いに歓迎したい、また必要であるというふうに思っております。

 一時期に比べて、新卒者の新規就農もふえておりますし、また、団塊の世代で退職を迎える方々が、農業に取り組みたいという方も随分いらっしゃるというふうに聞いておりますので、我々としては、この法案の趣旨に合った意欲と能力のある新規就農は大いに歓迎であります。

 それから、規模拡大をしたり、あるいは、現在土地改良等でやっていないけれども、今後また農地として戻ってくるというようなところは、過去払いという前提に立つと該当しないわけでございますけれども、これは、目指すべき農業の方向性からいうとまことに大事な部分でございますので、緑の政策ではございませんけれども、別の政策でもって大いに支援をして、この目的の達成のために、そういう方々あるいはそういう農地を、我々としては支援をしていきたいというふうに考えております。

二田委員 大事な点でございますから、再度確認申し上げますけれども、新規参入者にも門戸が開かれる、そしてその政策は、緑の政策ではないんだけれども、別の対策上で考えてまいる、いま一度大臣の明確な答弁をお願い申し上げます。

中川国務大臣 今言ったような新規就農等々の方々に対しては、毎年の生産量、品質をベースとして品目横断の支援をするということで、むしろ大いに歓迎をしたいということで、その政策を進めていきたいというふうに考えております。

二田委員 力強い御答弁ありがとうございました。

 次に、対象の農産物についてお伺いを申し上げたいと思います。

 今国会には民主党さんの法案も提出されております。担い手経営安定対策新法と同様に、直接支払いを導入することとされておるわけでございます。しかしながら、両法案には、その仕組みにおいて異なる点が見込まれると思います、当然でございますけれども。

 例えば、民主党案では、直接支払いの対象農産物を米、小麦、大豆のほか、菜種などとしているが、担い手経営安定新法による交付金の対象農産物は、政府案の方は、米、麦、大豆、てん菜及びでん粉原料用バレイショの五品目とされているところであります。

 そこで、今回の対策の対象農産物をこの五品目とした理由を伺いたいと思います。これは大臣にお伺いいたしたいと思います。

中川国務大臣 冒頭申し上げたような世界の情勢、また日本の現状、将来をかんがみますと、やはり食料・農業・農村基本法の趣旨でもございますけれども、まずメーンとして国内生産があるんだ、自給率が四〇%と大変低いわけでありますけれども、これも向上して、自給率を少しでも向上していくんだと。

 この場合、自給率を何でとるかというのは、また、二田委員も御承知のとおり、いろいろな議論があるわけでございますけれども、何といっても日本の国民の最も重要なといいましょうか、ぎりぎりのところで必要な農産物というのはカロリーでございますから、カロリーベースをベースにして計算をいたしますと、やはり向上していくためには、土地利用型の農作物、輪作体系、何作かを交互につくっていくという観点から、この土地利用型の一定要件以上の担い手農家等を、担い手を育成していくということが最も重要なことだというふうに判断をしたわけでございます。

 そういう観点から、何でもかんでもということでは、これはもう農政あるいはまた国民の御理解というものも得られませんので、カロリーベースで少しでも向上する基幹的な主要作物ということで、今回は米、麦、大豆、てん菜、それから原料用バレイショというものに限定をしたわけでございます。

二田委員 そうすると、食料自給率向上のために資するもの、国内で従来行われているもの、こういった我が国の主要農産物に限定した、こういうことに解釈してよろしゅうございますね。はい、わかりました。

 次に、収入変動影響緩和対策、すなわちナラシ対策についてお伺いいたしたいと思います。

 民主党法案では、収入の変動が経営に与える影響を緩和するための、いわゆるナラシの対策が措置されていませんですけれども、この担い手経営安定新法では、このナラシ対策を講ずることといたしております。

 そこで、なぜナラシ対策を政府案の方では講ずる必要があったのか、この点について政府の見解をお伺いします。

井出政府参考人 ナラシ対策の必要性についての御質問でございますが、諸外国との生産条件の格差が顕在化しておりますこれら対象農産物につきまして、そこから生ずる不利を補正するために、販売収入にかかわらず、生産条件格差是正対策の交付金が交付されるという前提になっておりますので、販売収入の変動は、一定程度はその生産条件格差是正対策で抑制されると考えてはおりますけれども、本対策の対象者であります一定規模以上の担い手につきましては、販売収入の変動が経営に与える影響が大きいと考えられますし、米や大豆につきましては、現実に市場価格等の変動が大きく、現行制度におきましても収入変動影響緩和対策が講じられております。さらに、これら以外の対象農産物につきましても、今後、市場原理の導入等によりまして市場価格の変動が拡大することも考えられます。

 こういった状況を踏まえまして、担い手の経営の安定を図るためには、収入変動影響緩和対策もあわせて講ずる必要がある、こう判断したところでございます。

二田委員 では、ナラシ対策というのは、収入面に視点を置いて、このナラシ対策を行う。総合収入に対して行ったということで解釈してよろしゅうございますか。

井出政府参考人 今回の担い手経営安定対策のうちの、いわゆる収入変動影響緩和対策につきましては、直近三年間の平均収入に比べまして当該年にどの程度収入が減ったかということに着目して、その差額の一定部分について補てんをしていこう、そういう仕組みとして構築するように考えております。

二田委員 収入変動の影響を緩和する対策の重要性ということに着眼した、これは理解いたしました。

 一方、災害等による減収に対しては、従来から農業災害補償という制度があります。すなわち、農災がございます。今回のナラシ対策はそれと重複することと考えられますが、両制度の調整をどのようにして図っていくのか、またナラシ対策は農業災害補償制度の加入に対してどんな影響を及ぼしていくのかということを、井出さん、ひとつ明確にお答えいただきたいと思います。大事な点だと思いますので。

井出政府参考人 今の御質問にお答えする前に、先ほどの御質問の訂正をさせていただきます。

 先ほど、直近三年の平均収入と比較してと申しましたが、これは現在講じられております担い手経営安定対策のことでございまして、ちょっと勘違いをいたしました。今後は、五中三といいますか、過去五年のうちの上下をはじいて、その中葉の三カ年と比較するということにしております。

 それから、お尋ねの農業災害補償制度との関係でございますけれども、今申し上げましたように、今度の新しい収入変動影響緩和対策は、その価格の下落とか収量の減少によります収入の減少の一定割合を補てんするという仕組みでございます。

 一方、農業災害補償制度というのは、自然災害等によります一定以上の収量の減少を補てんするものでありまして、両制度の補てんが重複する場合がございます。このことから、両制度の調整をするということで、収入変動影響緩和対策の補てんから農業災害補償制度による補てんを控除するということで調整をすることにいたしております。

 具体的には、現行の米の担い手経営安定対策におけます取り扱いと同様でございますけれども、農業災害補償制度への加入、未加入や加入した引き受け方式にかかわらず、品目ごとに農業災害補償制度の最高補てん割合の水準で共済金相当額を算定いたしまして、これを収入変動影響緩和対策の補てん金から控除するという方向で今検討いたしております。

 したがいまして、農家としましては、両制度に加入していただいて初めて対象となる担い手の経営安定が図られるものであるということでございまして、今後とも、農業災害補償制度を積極的に活用することが重要でありますことについて、周知徹底を図ってまいりたいと思っております。

二田委員 世上では、今回の対策の導入によって農業災害制度が要らなくなったんじゃないのかという話も出てまいっておりますので、この点を十分留意しながら、政府においては、このことも重要であるということの御認識をひとつ徹底させるようにお願い申し上げたい。

 この問題は以上で終わりたいと思います。

 次に、現在、御案内のとおり、米価が非常に下落傾向にある中で、稲作農家は、今後の営農に大変な、品目横断的安定対策においても不安を抱えているということを諸所で聞きます。今回の品目横断的経営安定対策や米政策改革により稲作農家に対する支援はどうなるのかということは、この法案の中では余り明確化されておりません。どのようになるのか、ひとつお答えをお願い申し上げたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 米につきましては、現在、諸外国との生産条件格差から生ずる不利の補正が国境措置により実質的になされているわけでございまして、そのことから今回の生産条件格差是正対策の対象としてはおりませんが、収入変動が担い手の経営に与える影響が大きいことも踏まえまして、収入変動影響緩和対策の対象とすることといたしております。

 一方、この品目横断的経営安定対策の導入に伴いまして、現在実施しております稲作所得基盤確保対策、いわゆる稲得と担い手経営安定対策は廃止されますけれども、品目横断的経営安定対策の対象とならない担い手以外の方々が米の生産調整を適切に実施せず、米価が下落することによりまして、結果として、担い手の経営にも大きな悪影響が出るおそれがあると考えられております。

 このため、十九年度以降も米の需給調整に対する支援策として措置されます産地づくり対策の中で、当面の措置として、担い手以外の者に対しましても一定の米価下落対策が行えるよう措置することといたしております。

 このように、米につきましては、担い手の経営安定と担い手以外を対象とした需給調整の円滑な実施のための対策をあわせて講じることによりまして、水田農業の構造改革を促進しつつ、稲作農家に対する米価下落の影響緩和の支援を行うこととしております。

二田委員 それでは、米に対しても従来のように十分な支援を行う、このように解釈してよろしゅうございますね、大臣。よろしゅうございますね、今ちょっと米のことについてお伺いしたんですけれども。

中川国務大臣 米は言うまでもなく日本の主食であり、また、全国各地でつくっており、また、水田の果たす多面的な機能という観点からも、いわゆる価格変動に対する対策等々含めまして、引き続き最も重要な農産物としてこれからもきちっと対応していきたいというふうに考えております。

二田委員 以上をもちまして、私の政府に対する、大臣に対する質疑は終了いたしたいと思います。

 次に、民主党さんの法案につきまして、せっかくお見えでございますから山田先生にも、答弁をしたくてうずうずしているようでございますから、菅先生の方ですか、私、ひとつ質疑いたしたいと思います。

 この法案を拝見いたしますと、第八条に、都道府県から市町村、地域、これの生産数量の目標というものが書いてございます。これを拝見いたしましたところ、大体政府の今やっている形態と同じような形態に見られますね、私から見ますると。ということは、実態的にやると、やはり国で生産目標を決めて、そしてそれを地方におろしてやって、そこでそれぞれの生産目標を決めるということでございましょう。この点につきましてはどうですか。

山田議員 地方の方で、それぞれの米とか麦とか大豆、菜種とか、地方で決める振興作物でありますが、それをこれだけやりたいというものを地方から出してもらって、そして国の方で自給率に資する主要農産物を決めるという形にしております。

二田委員 これはあなたたちがつくった法律ですよ。第八条は、「第六条の食料自給率の目標の達成に資するため、主要農産物について、」「国は、」ですよ、「国は、」と書いてある。そこはそれでいいです。ですから、私の解釈によると、国が主要目標を決めて、そして地方に配分してやる、これは同じだと言っても過言ではないと私はそう思っております。

 そこで、そのほかに第十条を見ますと、第十条で、「米の生産調整は、前条第一項の直接支払の実施の時に廃止する」。廃止するということと八条と、どういうふうな連関があるのか。そうすると、生産目標は国で決めてやったものを、それを今度は一方で直接支払いというものを前提にしながらこの法案はできております。そして、そういう中で、何ゆえに今度米の生産調整のみ廃止する。これは、私から見ますると全く実現不可能な、そして、こういうことをやったら大変なことになる。農業者に対する、私どもは米の生産調整をやれませんよ、こういうアピールにすぎない、こんなふうに見受けられますので、一言お伺いいたしたわけでございます。

 ということは、例えば、米の生産調整をやめた場合に、直接支払いの実施のときに廃止することにしているんですけれども、生産調整を廃止したことでどういう結果になるかということは、法案の提出者、皆さん方、御案内のとおりでございます。先ほどから、米の生産過剰というものがある、これをお話し申し上げている。そうすると、米をどんどこどんどこつくって、備蓄三百万トンとかするというこの金倉料をどうするのか、こういった問題は、この法律、まじめにつくられたのかどうなのか。

 私は、今こそ与野党で真剣にこの品目横断的安定対策に基づき議論をし、日本農業が将来どうあるのかということは真剣に議論しなきゃいけない問題だ。そのためには、今現在どうなっているのかという認識を踏まえて、そしてそこから、その現実というものを踏まえながら、私どもはこうあるべきだという姿を今回この法律の中で出した。

 しかし、こういうばらまきみたいな、一兆円という予算を先に決めて、そしてそれに一つ一つ合わせていくというのは、こんなことは私はないと思う。やはり、どのような政策が必要なのか、そして、そこから何が派生していくのかということによって初めて予算というものはできてくるんです。初めに予算ありき、その中から政策を整合して、これだけ与えていけますよということは、これはもうちょっと練り直してお出しになった方がよろしいんじゃないのかなという感覚を深くいたしました。

 今日、立候補いたします菅先生に、ひとつ御答弁をお願い申し上げます。

菅(直)議員 二田先生の方から大変本質的な御質問をいただきましたので、私も本質に戻ってお答えをしたいと思います。

 まさに今の日本の状況は、農山村の地域社会が崩壊を始めているという、この危機感は多分二田先生も共通だと思います。(二田委員「あなた、大潟村に来たでしょう」と呼ぶ)はい、伺いました。

 私、二〇〇三年に民主党の党大会、当時私は代表でしたけれども、農山村の再生なくして日本の再生はない、こういう方針を打ち出しまして、きょうも一緒に提案者になっております山田さんや篠原さん初め、その中から生まれたのが、この法案のもとになっております農林漁業再生プランであります。

 私がその皆さんに申し上げたのは、二つの政策目標を持って日本の農業の再生を考えてほしいということを申し上げました。政策目標が何かによって、当然ながら政策の中身が変わってまいります。その二つの第一は、まさに農山村の中で子供を産み育てることができるような、そういう地域社会を維持する、再生する、これが目標の第一であります。そして、第二は、自給率がカロリー計算で四〇%を切ろうとしている、先進国の中でも圧倒的に低い水準にあるこの水準をもっと向上させる。本当なら七割、八割と言いたいわけですけれども、まずは五〇%に、そして将来の六〇%を目指して向上させる。自給率の向上と農村の地域社会の中で子供を育てるという長期的な展望の中で地域社会が成り立つ、こういう考え方で政策をまとめてもらいたい、そういう中から生まれたのが今回のこの法案であります。

 今、二田先生は、予算の方から考えるのは逆じゃないかと言われました。まさにそのとおりであります。日本社会を再建させるために必要だということになれば、優先度が高ければ、もっと費用がかかっても国民の理解があればいいわけでありまして、その意味では、一兆円で本当に足らないのであれば、そういうことが全国民から支持されるのであれば、それをもっとふやすことも選択肢に入って決しておかしくない。少子化社会の対策はいろいろな面がありますけれども、農村の方が出生率はまだ比較的高いわけでありますから、そういうことを考えますと、国民のしっかりした理解が得られるならば、そういうことも十分あっていいのではないかと思っております。

 そこで、今お話のありました米の生産調整について、これは具体的な制度等については他の提案者の答弁にもまちたいと思いますが、私の理解しているところでは、お米だけが現在日本の中で穀物の中で自給率が一〇〇%、場合によっては、備蓄を含めればそれを超えているけれども、麦や大豆や他の穀物の多くは自給率が大変低い状況にある。そういう麦や大豆などの穀物をつくったときに、お米をつくると同じような水準の収入が保障される、そうすることによって、結果として麦や大豆をつくる人がふえ、そして自給率が上がってきて、安定的な農村地域が復活していくんだ、こういう考え方であります。

 ですから、米の生産調整をやめる、そういう見方ではなくて、米の生産調整が必要がなくなる、つまり、自由に選んでもお米だけに集中するのは、これまでお米の方が他の穀物に比べて経済的に有利だから、そこでお米の方だけが一〇〇%の自給率を超えた生産があって、麦や大豆は極めて低い水準だということがあるわけですが、それはあくまで米が有利で他が不利だからですから、他の穀物が米と同様に有利になれば、その中で生産調整が不要になる、そういう考え方に立っているわけであります。

 まさに二田先生がおっしゃったように、農村地域の再生、日本の再生を考えたときに、米だけを集中的にある意味で保護してきたやり方から、穀物全体に対して、直接支払いを軸として、どの穀物をつくっても同じ程度の収入が、もちろんまじめに働けばですよ、保障されるという制度を提案しているのが我が党のこの提案でありまして、私は本質的には、二田先生が言われたことを最もより積極的に満たしているのは政府案ではなくて民主党案だと思いますので、ぜひ御理解と御支持をお願いしたいと思います。

二田委員 今の菅先生の話は、私はあえて言いますけれども、農政というものの御理解が少しく不足なように思います、失礼でございますけれども。

 なぜならば、現下の日本農政の今までの努力というのは、中川農林大臣が一番御案内のとおり、米のまず生産過剰というものを、いかに私どもはそれからシフトさせて、麦や大豆、そして国民の必要なエネルギー源にシフトさせていくかということの努力に昭和四十年以降は費やされてきた、こういうふうに私は解釈しております。そういう中で、もし十条のとおり米の生産調整をやめたということになるならば、米はこの日本国じゅうにあふれます。今でも過剰なんですから。そして、米の生産力が一番強いのでございますから、その誘導策をもし大豆や麦でとっていくとするならば、恐らく膨大な費用がかかってまいる、こう思います。

 でございますので、本法案に対しては、私は、実態的になっていった場合には決して国民的支持は得られない、日本農政の崩壊の一助に通じていっていると言っても過言ではない。これは見解の違いがございますから、後ほどまた山田先生とゆっくり議論を申し上げますけれども、私はそういう解釈に立たざるを得ない。

 私は、政府案であり与党案こそが最適の今回の法案であるということをあえて強く申しまして、質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 今、二田先生、民主党に対してはトラのごとく迫力のある質問をされました。ぜひ政府案に対してもそういう厳しい質問をしていただきたいというふうに思うわけでございます。

 民主党案は、これは四本の柱といいますか、以前からの民主党の主張でございました、一兆円規模の直接支払い制度、そして減反をやめる、さらには減反をやめることに伴う過剰米対策をきちんとする、過剰米対策の一つとして棚上げ備蓄制度を充実させて、その備蓄の役割を終わった米に関してはバイオマス活用等々含めた活用を図る、こういうものを今度の法案でも出しているところでございまして、これは、二田先生御存じのとおり、大分前に民主党の案として提案をして、私も当時は答弁席に座って二田先生から質問を受けたことがございます。そしてこれらについて、菅答弁者が前面に立たれて、農業再生プラン等々でまさに中身を充実させていったわけでございます。

 だから、一兆円規模の直接支払い制度、先ほど二田先生の表現では政府案と同様と言っていましたが、これはそう言ってもいいんですけれども、しかし、これは当時は、自民党、与党の皆さんも政府もこういう考え方そのものに反対だったんですよね。まさに品目ごとの、わかりにくいああいう補助制度だったんですよ。今度初めて民主党の考え方に近づいたんですよ。だから、これは正確に言えば民主党案と同様と言うべきだ。

 この今度の法案について、政府案については先ほど中川大臣がその意義やそれについての意気込みを述べられました。民主党案について、再生プランからずっと深くかかわってまいりました菅答弁者の方から、民主党案の法案の意義、それからそれに対する意気込み、これをお答えいただきたいと思います。

菅(直)議員 私も、先ほど二田先生から、農村地域についてまだ認識が十分ではないのではないかと言われました。

 私、生まれは山口県の宇部という田舎町でありますので、田んぼがたくさんある中で育ったんですけれども、かといって、そんなに農業に精通しているとはもちろん申し上げるほどの知識はありません。しかし、幸いにして、この数年間、二田先生の地元の秋田を含めて、あるいは北海道や九州、多くのところでいろいろな農業を見てまいりました。

 そういう中から、先ほどの答弁でも申し上げましたように、日本の社会がこれからどうなるんだろうかということを考えたときに、私も十七歳から先はずっと東京で生活をしておりますけれども、では、すべてが東京や大阪になったら日本が高度の生産性を持った豊かな社会になるのか。そうではないんではないか。その象徴が、東京の出生率が一ないしは一時的には一を切る、こういう状況であります。つまり、生産性といったって、子供が生まれない中で幾ら物が生まれても、生産性がとても高いからいい社会でいい国だということは言われない、そういうふうに考えたわけであります。

 そういった意味で、日本はほとんどが海で囲まれておりますけれども、ヨーロッパや他の国々では、自分の領土全体の中で、自分の国土全体の中で国民が生活をすることによって、逆に言えば国境線も維持され、そしてその地域が自分の国の領土として他国から侵害されることも抑えることができる。

 そう考えますと、農山村地域を切り捨てて生産性の高い国にするんだという、私は今の小泉政権のやり方はそういう方向に向かっていると思いますが、そういう方向ではなくて、日本のこの四つの島を中心とした、すべての離島を含めたところにそれぞれ生活が成り立つ社会をつくっていく、これには農業、林業、漁業の再生が必要だ、こういうことを痛感いたしました。そういう中で、二〇〇三年に、そういう方向性を持った考え方を政策としてまとめていただきたいということで、山田さん初め皆さんにお願いをしたわけであります。

 そういった意味で、今、筒井さんからもお話がありましたけれども、この民主党の案は、決して技術的なところからスタートしたわけではありません。民主党の中でも、あるいは御存じかもしれませんが、ある時期までは、農業も産業として競争力を持つ農業でなければいけない、最近、小泉総理もそういう言い方が強調されておりますが、そういう考え方も民主党の中にもかなり強く存在をしていたし、今もあることは事実であります。

 しかし、私は、農業は産業であるということは言うをまちませんけれども、産業であると同時に、先ほど申し上げましたように、一つの国の本質的な意味の全体のあり方を、他の産業とは別な意味で、国そのもののあり方をやはり原理づけているところがあると思います。

 私も当時は不勉強で、アメリカやヨーロッパは自由競争で強いんだ、日本は自由競争だと弱いんだと思っておりましたが、決してそうではないことは二田先生初め与党の皆さんも御存じのとおりでありまして、直接支払いを軸として、山の大変不便なところでも酪農が成り立つように、あるいは生産性の若干低いところでもいろいろなものが成り立つように、それぞれの国が国家戦略として農業政策を考えている。

 ただ、貿易上のルールとしてはいろいろとルールがありますけれども、直接支払いを軸とした考え方は多くの先進国でとられているということを私も改めて多くの方から教えていただきまして、そうした中から、この崩壊しつつある日本の農山村の現状と、そして場合によれば、二言目には、いや、日本から自動車を買っているんだ、テレビを買っているんだ、なぜ自分の国の麦や牛肉が買えないんだと言われることに対して、それとこれとは、貿易という面では共通な土俵ではあるかもしれないけれども、それぞれの国の社会のあり方、それぞれの国の地域社会のあり方という意味では、それぞれの国としての政策があっていいという、これもまた国際ルールでありますから、そういう根本的な考え方の中から生まれてきたのがこの農業再生プランであり、ある意味では、今回は漁業も一部含めたプランになっていると思っております。できれば、ことしじゅうに林業の再生プランも提示をしていってもらいたい、あるいはいきたい、こう思っております。

 一言だけ、もう一つだけ、私が印象に残っておりますのは、熊本に行ったときに、イグサ農家がどんどんつぶれているという話を聞きました。なぜイグサ農家がつぶれていると聞きましたら、中国からだんだんいいイグサが入るようになった。中国で畳を使っていましたかと言ったら、日本の商社が向こうにイグサの技術を持っていって、さらす土まで持っていって、そして向こうの安い労働力で安いイグサをつくるから、日本のイグサ農家がどんどん倒れている。場合によったら、その商社のいろいろな作業にはODAの資金も使われているんじゃないか、こんな指摘もいただきまして、一体、日本の農業をどう考えているのか、自分で自分たちの足を食べているんじゃないか、そんなことも感じました。

 そういうことも含めて、日本が大都市、六本木ヒルズばかりで成り立っているわけではないことは、もちろん皆さんも御承知のとおりでありますから、まさに、そうした日本のあり方という原理から一番いい政策を打ち出していきたいし、そういう中で生まれてきたのが今回の民主党の提案である、このことを重ねて申し上げておきたいと思います。

筒井委員 この民主党案の柱の最後に、先ほど御紹介申し上げました、回転備蓄から棚上げ備蓄に変えて、その備蓄の役割が終わったものについてはバイオマス活用も提起をされている。これはまさに、与党の皆さんにも政府にも、本当にその高い意義をぜひ御理解いただきたいと思うわけですが、この点について菅答弁者にもお聞きをしたいと思います。

 今は、石油を初めとした地下の資源によって、世界じゅうがと言っても間違いないと思いますが、特にこの日本は成り立っている。ある意味で、地下資源に浮かぶ国、石油に浮かぶ国になっている。その結果、地球温暖化を初めとしていろいろな弊害、いろいろな問題点が起こっている。これを、やはり緑を中心とした地上資源の活用に転換していくことが、そっちの方に徐々に移していくことがいかに大きな意義があるか、これがバイオマス活用の点だと思いますが、そのバイオマス活用について民主党案に出されている意義と、どういう方向でそれを進めていきたいか、菅答弁者の方からお答えをいただきたいと思います。

菅(直)議員 ここに「バイオマス文明構想」という本をいただいております。これは一九八六年ですか、著作は筒井信隆と書かれておりまして、筒井さんが本当に二十年近く前からこういうことを、私のよく知っている方の中では最も早い時期から取り組まれてきたということを、今の質問をお聞きしながら改めて思い出していたところであります。

 ちょっと突拍子のない話になりますけれども、火星と金星という星の大気は、大部分が二酸化炭素で成り立っております。なぜ地球だけが二酸化炭素が〇・〇三%という低濃度になっているか。学者の説明によりますと、それは、地球上に植物が発生して、そして、それが地球上の大気の中にあった炭素を固定化したことによって大気中からCO2がなくなって、石炭とかいろいろな形で固定化されて現在の大気になって、そして、その中から今の動物あるいは哺乳類が生まれたと説明をされております。そして、最後に生まれたある動物がもう一度CO2をふやして、この地球を、場合によったら動物がすめない国に戻してしまいそうな危機感を私は強く覚えております。

 そういった意味で、バイオマスというのはまさに、植物が光合成、炭酸同化作用で大気中のCO2、海水中のCO2と太陽エネルギーでそれを炭水化物に変える、それを食料としたり、あるいは江戸時代でいえば、まきとして、炭として、エネルギーとして使う、そして現在の技術でいえば、今お話のありました、醸造技術によってそれをアルコールに変えていく。

 御承知の方も多いと思いますが、ブラジルでは、サトウキビからエタノールをつくって、自動車燃料に相当程度活用しているわけであります。そういった意味で、我が党提案のこの法律の中で、備蓄に充てたお米の中から、場合によってはそれを活用して、バイオマスによるエネルギー資源としていくことを一つの選択肢として提起されているのは、私は、一つの大きな見識というか、前進だと思っております。

 もちろん、今の経済的な側面から、それを大々的に今の石油にどんどんかえていくというところまで、これだけでいけるとは思っておりません。しかし、醸造技術を活用すれば、米に限らずそういうサトウキビとかいろいろなものがあります。また、醸造技術によらないバイオマスのエネルギーが今どんどん開発されております。

 農林省が進めておられる農林一号、二号、三号というバイオマスの発電などの現場を、私は、三号については見てまいりましたけれども、直接、木材やそういうものの廃材からガスをつくって、将来は、そのガスからメタノールをつくって、そして石油にかわる自動車燃料にもかえていこうではないか、こういう研究が農林省も支援して進んでいるということを私も知っているわけです。

 そういった意味で、バイオマスというのは、決して、ただ全体のエネルギーの〇・一%を置きかえるとか、〇・二%を置きかえるということではなくて、場合によっては、日本のあるいは地球上のエネルギーの大半をこうしたバイオマスによるエネルギーに置きかえることができれば、それはまさに地球環境と同時にエネルギー問題の根本的な解決になる。

 ある学者によれば、一年間に成長する植物、それは、草から海藻から、ありとあらゆるものをうまく活用すれば、地球上に必要な、現在あるいは現在を超えるエネルギー量はすべて賄えるはずだという試算も出ておりまして、そういう点で、バイオマスの可能性というものを、私は、もっともっと大きく見ていいのではないかと。まして、この緑豊かな日本という国の中で、バイオマス先進国になることは、ある意味では世界の環境に、場合によってはエネルギーという最も重要な世界の安全保障にもかかわる問題でイニシアチブをとっていく、そういう道につながってくる、このように思っておりますので、この問題が法案の中に盛り込まれるということは大変意義深いことだ、私はこのように思っております。

筒井委員 ありがとうございました。

 実は、きょうはほかの点でも質問をいろいろ菅答弁者にも予定しておりましたが、ちょうど大変な状況になってしまいましたので、もし、菅答弁者、必要なら、どうぞ退席してもらっても結構でございます。

 では、質問、もとに戻ります。

 先ほど二田先生の方からばらまきという表現も出ました。今度の直接支払いについてを中心にでよろしいですが、なぜ農業についてだけこうなんだ、そういうのを払うんだ、あるいはばらまきじゃないか、こういうふうな批判が考えられるわけでございますが、そういう批判に対して、どう反論し、どう説明しているか、まず政府の大臣の方に質問をしたいと思います。

中川国務大臣 過去、一部の皆様方、特に都市あるいは一部の専門家の方と、随分、農業、農政は、ある意味では論争、対立していた時代がございました。私自身もその中に参加をしたことがあります。

 まず、戦後、食料不足の中でどうやって国民に食料を生産し、供給するかということが、ある意味では戦後政策の大きな柱の一つであった。ですから、例えば肥料に重点的に生産を持っていくとか、いろいろなことをやってきたわけでございます。そして、高度経済成長時代の昭和三十六年に旧農業基本法ができたわけでありますけれども、あれは、生産サイドの方をどうやって都市並みに力強くさせていくか、所得の面でも、そしてまた食料供給の面でもやっていくかという中でできた法律でございます。たしか、農村も都市並みの生活をしようというキャッチフレーズであの法律ができたというふうに先輩から聞いたことがございます。

 そういう中で、筒井議員御指摘のような農業、農村についてはばらまきではないかという御指摘が一部でございましたけれども、日本の農業というのは、決して国として主要農産物輸出国のように広大な面積を持っているわけでもございませんけれども、しかし、国土の七割は農山漁村地域であって、しかも、そこに住んでいる数多くの人たちがいて、主な産業が農業であった。他方、工業導入みたいな政策もあったわけでありますけれども、全国、九州、沖縄から北海道に至るまでの農山漁村にはいろいろな農業形態があったわけでございます。私の北海道のような地域もあれば、中山間地域もあれば、新潟県のような地域も、いろいろとそれぞれあって、それぞれが重要な役割を果たしていたわけであります。

 そういう中でいろいろな政策をとってきたわけでございまして、それをばらまきと批判する人たちがいたわけでございますけれども、私どもはその時々で、とにかく農村と都市との格差の是正、あるいは食料供給のためにいかに増産体制をやっていくか、そのときに米を中心にやってきたわけであります。御承知のとおり、米の自給、ほぼ一〇〇%になったのは昭和四十年前後でございまして、米の自給率が一〇〇%になった直後に米の過剰問題があって、この処理のために第一次過剰では約一兆円、第二次米過剰では約二兆円でございました。

 ですから、先ほどの、いらっしゃらなくなったのであれですけれども、菅委員の御指摘、あるいは二田委員の御指摘のように、米の生産調整をなくして棚上げ備蓄にしていけばいいんだ、つくりたい人はつくればいいんだといったときの過剰処理は、物価修正しただけでも一体どれだけのコストがかかるのかということを、我々はやはり、生産サイドだけではなくて、消費者に対する責任という観点からもきちっとしていかなければならない。そこでできたのが平成十一年の食料・農業・農村基本法でございます。

 どうも民主党の先ほどの御提案を伺っておりますと、生産サイドは思い切ってどんどんやりなさい、しかし、加工、流通、消費者との関係が全く議論として今出ていないというのが、私が伺っていて最大に印象を持ったところでございます。

 基本法においては、生産者の役割、加工業の役割、流通業の役割、消費者の役割、地方団体の役割、国の役割、それぞれの役割が位置づけられているわけでありますから、今回の法律も基本法に基づいて進めている施策でございますので、どうぞ基本法の趣旨を踏まえて、この法案あるいは民主党さんの法案についても、ぜひとも御議論をしていただきたいと思います。

 そういう中で、都市あっての農業、農村、漁村、山村、そしてまた日本の国産の資源あっての都市の健康と安全という観点から、決してばらばらでもなければ、まして対立するものでもない、共存共栄の中でこれからやっていこう、この辺は菅委員も先ほど御指摘になったところでございます。

 そういう意味で、今回の法律は、そういう基本法の精神をさらに実態的にやっていくという観点から、担い手あるいはまたその集団等々、一定のやる気と能力を持った農業、農民、農業者、あるいはまた農業組織等に施策を重点化することによって、より効率的で、コスト低減等も含めて、そして国民の理解をより得ながら安定的な国内生産をやっていくという観点から、この施策を進めさせていただきたいということをぜひとも御理解いただきたいと思います。

筒井委員 いろいろなことを同時に言われているから。

 私の質問は、なぜ農業だけにそういうのを支給するんだ、あるいはばらまきじゃないか、そういう批判に対して、どう反論し、どう説明しているか、この点だけを今聞いているわけでございます。

 そして、今民主党の方の案に対して言われましたが、先ほども菅さんも言われましたし、山田さんも言われましたし、地方から上がってきた生産計画がある、それに従ってつくるんだ、それでもまだ過剰になった部分については政府備蓄米としてするんだ、一つだけじゃなくて、二つの対策をきちんと言っておられるわけで、何でもつくれるだけつくれというふうには先ほどから民主党は言っていないと思います。後でそれは民主党の方で聞きます。

 大臣の方には、そういう批判に対して、どういう説明、どういう反論をしているか、これだけに限定してお答えをいただきたいと思います。

中川国務大臣 では、棚上げ備蓄については別の機会に答弁させていただくといたしまして、先ほど申し上げましたように、全国十四万集落あるいは国土の七割があると言われておる農山漁村、ある意味ではみんな、農村として、漁村として、山村として都市との格差を減らしていこうということで、いろいろな優遇策をとってきたわけでございますけれども、北海道の農業と都市近郊、あるいは新潟や九州、それぞれ違うわけでございます。

 ある意味では全国一律、イージーメードで政策をやってきたということについては、生産サイドにおいてもいろいろな御不満や問題点が出てきたということ等を踏まえまして、今回は担い手というものに絞った形で、ある意味では重点化して、そしてもちろん、さっき言ったように、規模にこだわらず、あるいはまた中山間も大事であります、水田地帯も大事であります、畑作地帯も大事であります、もちろん、我々の法案には書いてはございませんけれども、水産も林業地帯も大事でありますということで、ある意味ではオーダーメードの政策として的を絞って、それぞれ適切な施策を講じていきたいということで、ばらまきという御指摘は当たらないような法律を今御提案しているところでございます。

筒井委員 だから、今のような答えを求めていたんですが、負担を行う国民の理解を得るには対象を担い手に限定する必要がある。国民の理解を得るというのは、そういう批判を受けないようにということでございまして、担い手に限定することがそういう批判を受けないことにつながる、あるいは、ばらまきだという批判を受けないことにつながるという考え方なんだと思うんですが、ほかの産業において、こういう直接支払い制度に相当するような制度はありますか。

中川国務大臣 まず、ばらまきを避けるために担い手に絞ったというよりも、さっき菅委員もおっしゃいましたけれども、効率的な産業とそれ以外の役割、多面的な役割がありますが、あえて産業という面だけに絞りまして、やはりやる気と能力のある人たちに効率的でいいものをつくってもらおうということ、これが結果的といいましょうか、両立する、消費者、国民からの御理解がいただけるという組み立てで、今回、担い手というものに施策を重点化しているところでございます。

 農業というのは、それぞれ産業は特殊でございますから、農業あるいはまた製造業、製造業の中でも、組み立て産業もあれば素材産業もあります。あるいはまたサービス業、いろいろなお仕事がありますから、それぞれ特徴があるわけであります。農業の場合には、何といっても、人間の生命と健康に欠くことのできないものであり、しかも、生き物相手、自然相手でございますので、その特殊性というものが農業の特殊性だと思いますけれども、農業と同じような一律の施策を過去とっていた産業があるかということについては、何か事務当局の方で答えがあれば、答弁をさせたいと思います。

筒井委員 まず、前段で言われたのは、農水省が言っていることですよ。負担を行う国民の理解を得るには対象を担い手に限定する必要がある。結果として担い手に限定になって、それが国民の理解を得るんだという説明じゃないんですよね。だから、担い手に限定した理由は、そういう生産サイドからの理由と、国民の理解を得るために、この二つがあるんだということでよろしいんでしょう。それともそうじゃないのか、それをもう一回。

 それから今、今度の直接支払い制度、日本型直接支払い制度ですか、農水省の表現で言えば。これに相当するような制度は他の産業にありますかという質問なんです。今、最後がよく聞こえなかったんだけれども、回答を差し控えるという回答だったんですか。

中川国務大臣 ですから、先ほども申し上げましたように、これはあくまでも食料・農業・農村基本法に基づいて施策を前に進めているわけでございます。基本計画、大綱、そして、それに基づく法律ということでございます。

 もう繰り返しませんけれども、基本法の中には、それぞれの分野、川上から川下に至るまでの役割があって、お互いに共通に理解をしていきましょうということでやっているという精神というか、条文に基づきますと、やはり国民が期待する日本の農業、生産サイドの期待にこたえるという観点から、担い手というものに施策を重点化しているということでございます。

 それから、二点目のこういう支援策というのは、我々としては、国民の理解と、それから特にWTO上、先ほどから緑だ、黄色だという議論があります。この議論というのはあくまでもWTOの農業協定の中での議論でございまして、ある意味では、農業の特殊性、あるいはまたWTO上の整合性といった観点から、こういう施策、整合性といっても、緑じゃない部分もあるわけでございますけれども、そういうものを視野に入れながら、この施策を考えているわけでございます。

 一概に、工業とどうだとかサービス業とどうだとか、あるいはまた日本型の直接支払い、品目横断支払いというものは緑とそれ以外との組み合わせでございますけれども、ほかの国にもいろいろな形のものがございまして、日本と全く同じものがあるかどうかについては……(筒井委員「それは聞いていないです」と呼ぶ)よろしいですか。これは日本型の制度ということでございます。

筒井委員 まだ答えられてないんですが、他の産業にはこれに相当するような制度はないと思うんです。だけれども、なぜ農業にそういうことを導入できるのか、それを聞きたいんです。私は、導入していいし、導入すべきだと思う。その根拠は、やはり農業の多面的機能にある、こう考えるから聞いているわけなんです。

 多面的機能は、後でもお聞きしますが、学術会議の貨幣評価によれば、農業だけで年間七、八兆円ある。これが、個別農家としては無償で果たしているというふうに私は考えますが、その対価のほんの一部なんだ。多面的機能をこれだけの規模で全国民に提供しているのは、農業しかないんですよ。これが物すごい大きな意義がある。農林漁業と言ってもいいですが、もっと広げて言えば。一次産業、これがほとんど無償で果たしている。農産物を売れば、もちろんその代金はもらえるけれども、多面的機能の額は莫大と考えられるのに、それを無償で果たしている。これはやはり農業の特質だと思うんです。

 だから、その多面的機能の対価のほんの一部として、こういう直接支払い制度を導入する、そのことを国民にきちんと説得し、納得してもらう。今は、多面的機能が農業でどれだけ果たしているかなんというのは、多くの国民は知りませんよ。多面的機能を根拠としてこのことを出していくべきだということを聞きたいがために聞いているんです。

 もう一度確認しますが、この直接支払い制度に相当するような制度が他の産業にありますか、ないんですか、それとも答えないんですか、この三つのどちらか、はっきり言ってください。

中川国務大臣 農業は、国民に大事な生命産業、生命にかかわる財を生産しております。それと同時に、御指摘のように、多面的な機能が大変重要な位置づけとしてあるというふうに考えております。

 そういう意味では、先ほどから申し上げているつもりでございますけれども、農業の果たしている役割というものは、どっちがいい、悪いとあえて比較する必要はありませんけれども、もう個々の個人にとっても、また国家にとっても、極めて大事な生産活動と同時に、多面的な機能を果たしているというふうに理解をしております。

筒井委員 だから、まだ答えてないんだよね。この直接支払い制度、他の産業にないものを農業でやることができる。それが必要だという根拠は多面的機能しかないと思うから、さらにその後の質問をするんだけれども、この直接支払い制度に相当する制度は他の産業にあるんですか、ないんですか、わからないんですか、はっきり答えてください。

中川国務大臣 多面的機能だけで直接支払いというと……(筒井委員「いや、それはいいです。あるのかないのかだけ」と呼ぶ)あります。

筒井委員 日本型直接支払い制度に相当するような制度が他の産業においてありますかという質問、それだけでいいです。

中川国務大臣 農業が果たす多面的機能と同じような制度があって、それに対して直接支払い制度があるかと……

筒井委員 そんなことは聞いていない、その前段を聞いている。

 今、多面的機能云々のことじゃなくて、それはその後の質問なんです。今度の政府案にある直接支払い制度、日本型直接支払い制度、これに相当するような制度が他の産業にありますか、こういう質問です。

中川国務大臣 ですから、農業が果たすような多面的機能と同じような産業というのは、それはないと思いますね。

筒井委員 農業と同じような多面的機能を果たす他の産業はありっこないじゃないですか。だから、それは先ほどから私も強調しているんです。

 私が聞いているのは、多面的機能のことではなくて、直接支払い制度、これに相当するような制度が他の産業においてありますか、こういう質問です。あるいは、大臣が答えにくいんだったら生産局長でもよろしいですが。

中川国務大臣 ですから、ないというふうに申し上げているわけです。

筒井委員 他の産業にないのをなぜ農業において導入できるか、こういう制度をつくることができるのか、この問題になるわけで、私は多面的機能がまさに根拠だと思うんですが、今度の政府案の担い手経営安定対策、まず、そこからでいいです。担い手経営安定対策としての直接支払い制度、これの根拠は、この理由、位置づけは多面的機能ですか、それともそれとは全然別ですか。

中川国務大臣 先ほどお答えしちゃったかもしれませんけれども、農業が果たす役割というのは、国民に対して食料等の安定供給、と同時に、これまた国民にとって極めて大事な水源涵養機能であるとか、最近はよく自然体験であるとか、昔よく議論になりました水田の果たす、ダムでいうとどのぐらいになるとか、あるいはまた、公益的機能が三十九兆円でしたか、いろいろな数字が一時試算されました。

 そういう意味で、総合的に農業、そしてまた、農業の中核的といいましょうか、担い手が果たす役割というものは、特に生産の方にほかのところよりはより重点を置いていることは事実でございますけれども、今回の直接支払いというのは、担い手の生産活動とその果たす多面的機能、総合的なものに対して支払われるというふうに御理解いただきたいと思います。

筒井委員 そうすると、多面的機能もその一つの根拠になっているというふうにお聞きしてよろしいですね、今の答弁は。

中川国務大臣 今回対象としている担い手に対する直接支払いの中には、もちろん多面的機能という部分も入っております。

筒井委員 そうすると、もちろんそれ以上の意味で、農地、水の対策、今度もまた入っていますが、極めて小規模ですけれども、これもそれ以上の意味で多面的機能が根拠になっている、そういうふうにお聞きしてよろしいですね。

中川国務大臣 もちろん、農地、水、環境、こちらの方がより、もちろん生産にも寄与しますけれども、みんなで、農業と関係ない人も参加してやっていこうということでございますから、多面的機能という役割は非常に大きいというふうに理解しております。

筒井委員 今大臣の方に聞いたところについて、民主党の方の考え方、多面的機能あるいは直接支払い制度の根拠について山田答弁者にお聞きしたいと思います。

 前回のときは、たしか逆転して、私が答弁席に座って、山田委員から私が質問を受けたことがございますが、ぜひ答弁をお願いしたいと思います。

山田議員 もう三年前になるかと思いますが、筒井委員が初めていわゆる直接支払いを一兆円政策として打ち出して、その法案を出されて、筒井委員がこういう答弁席に座り、私が質問したことを覚えております。

 まさに、当時私がもう一つ覚えているのは、大臣に直接支払いをする必要があるのかとお聞きしたときに、当時の大臣が、構造改革に反するから直接支払いは絶対にできない、そう答弁されたわけですが、今回政府の出している直接支払い、いわゆる品目横断的な担い手に対する支払い、これに対して先ほどから筒井委員が大臣にお聞きしているわけであります。

 政府としては、そういう直接支払いを今こうして政策として打ち出してまいりましたが、これは本当に、筒井委員が最初から、三年前から言い出したことなんですが、その根拠、先ほどから大臣とやりとりしておられました。

 それについて私どもの考えているところ、いわゆる多面的機能、それの有する貨幣的価値、それは七兆から八兆にわたるというお話で、まさに自然環境とか景観とか水とか緑とか、そういった大変大事なものでありますが、同時に私どもは、内外生産条件の格差、いわゆる中国で食料を生産するコスト、そして、アメリカの大農場、オーストラリアの大農場で生産するコスト、それと今の日本でのコストでは大きく違う。そしてまた、他の産業、いろいろな自動車とかテレビとか、そういう産業と比べても、日本における農業というのは非常に弱い立場にあるわけです。

 そういったことを考えますと、将来、世界的な食料危機が来た場合に、それに対する食料の安定的な確保、また、農薬汚染とかいろいろなことを考えた場合に、食料に対する安全の確保、そういった意味からもこの直接支払いは何としても必要となるものであり、私どもとしては、そのために、かつて筒井委員が示したような一兆円の直接支払いを、食料自給率の確保に向けて、米、麦、大豆、そしてカロリーにとって大事な菜種、それにいわゆる重要品目として今日こういう法案をまとめてきたところです。

筒井委員 今山田議員の方から言われました構造改革ということでございました。私も覚えております。当時の大臣が、こういう制度は構造改革に反すると言って全面否定を何回か繰り返して言われた。しかし、その後、その理由づけもなく転換になったわけで、変わったこと自体はいいことなんですが、以前と一体どういう関係になったのかなと。それは今でも不思議に思っているところでございます。

 この民主党案は、その構造改革の点ではどういうふうな考え方に立っているんでしょうか。構造改革に反するかどうかという点も含めて、ぜひお答えをいただきたいと思います。

篠原議員 お答えいたします。

 直接支払いというのは、三年前の政府の答弁のような考え方がございます。直接支払いということは、今はこの言葉だけで言われていますけれども、昔は言い方がいろいろございまして、直接所得支持あるいは直接所得補償と言われて社会保障的な考え方が取り入れられたものです。

 この対極にあるのは、所得支持の反対ですけれども価格支持です。価格支持をしていると、あるいは、米とか麦とかの価格を高くしておくと大規模な農家にばかり補助金が行ってしまう。それはよくないから、本当に必要な人たちにだけ社会保障的に直接支払いでやりましょうというのが直接支払いの考え方です。ですから、直接支払いは、そのままべたに導入したら、根源的な問題として構造改革に資さないという点では確かです。

 しかし、運用が幾らでもできるわけです。例えば大規模な農家にはやらない。EUではいつもその議論が行われております。日本と規模が違いますから、百ヘクタール以上の農家にはもう直接支払いはやらないと。しかし、大体失敗しております。例えば小麦でいいますと、あちらも小麦が過剰で困っております。ですけれども、二十ヘクタール未満は転作しなくてもいい、二十ヘクタール以上は転作をしなければ直接支払いはしないというような形で、やはり零細な農家を優遇しているわけです。

 ですから、我が国で導入する場合はどのような運用が考えられるかというと、規模の大きな農家になるべくたくさん直接支払いが行くようにする。しかし、それも千差万別でして、米のような場合、例えば自給米農家には最初からやらなくてもいいんじゃないかと。米が余って困っているわけですから。それに対して、菜種等これから振興を図らなければならないような農家に対しては、たくさん出す。かつ、本格的に生産してもらいたいので、三反歩、四反歩の人よりも、五反歩あるいは一ヘクタールをまとめてつくるような人の方が単価を高くするということによって、規模拡大の方向に誘導できる。

 直接支払いというのは、そういうふうに、運用いかんによっては構造改革に資するような形で使えるということでございます。我々はそのように考えております。

筒井委員 それが、民主党案で言う規模加算とか品質加算、環境加算、こういうものがあるんだろうと思うんです。運用によって、まさに構造改革に資する形のものができる。中山間地の所得は、直接支払い制度を含めたら、民主党案は四階建てになるわけでございますが、そこの点でちょっとお聞きしたいのが、品質加算と環境加算、これはそれぞれ、この二つはどういうふうに違うんですか。

篠原議員 直接支払いというのは、形としては転作奨励補助金と似ているわけです。米が余っている、だからそれ以外の作物をつくってほしいと。転作の場合は、米もただ減らしたいだけということだったわけですけれども、我々の方は、先ほど菅さんが答弁されましたけれども、もっと前向きに考えて、米が余っているから、それを是正するためにというのじゃなくて、自給率が下がりに下がってしまった麦、大豆、菜種、そちらをつくってもらいたいというので出す。

 ところが、転作のときに、モラルハザードということをよく言われますけれども、起きてしまったわけですね。もう収穫なんかするつもりはない。だから、つくったふりをして収穫なんかしない。おれは麦をつくった、菜種をつくった、大豆をつくったということで、ほったらかしにしている、それで転作奨励補助金だけはもらう、こういったことをやはり避けなければいけない。

 ですから、例えば単収でいいますと、小麦は今、田んぼと畑両方で合わせますと四百十一キログラムぐらいだったはずですけれども、それらの平均よりも高くて、単収で五百キロあるいは五百五十キログラムのものをつくっているという人には奨励的にもっとたくさん出しましょうと。まじめにやる農家ですね。それに対して、単収が二百キロだと、従来使われていた言葉で申し上げますと、これは捨てづくりになるわけです。こうした農家には、わかりませんけれども、やらなくてもいいぐらいということにして、大規模な農家、まじめに取り組む農家には単価を高くするというのが一つです。これが品質加算でございます。ですから、これはある意味では構造改革に資する運用の一つです。

 それに対して、環境加算というのは全く違った概念でございます。よりよい方向に誘導する、規模拡大にも誘導するのに直接支払いを使うというのはあるわけですけれども、それだけじゃなくて、我が国の農業を、消費者が、日本国民が望んでいる安全な食料の生産の方に向けて誘導する。例えば、農薬の使用を半分に減らす、それによって収量が落ちる、それは補てんしてあげましょうというのが環境加算です。

 それから、これはマイナスが出たときに補てんする、コンペンセーション、補償的なものですけれども、ポジティブなものとしては、例えば菜種があります。菜種、棚田がある。棚田も維持したいと。そのために、みんなにそれを認識していただきたいということで、山ろくに皆が相談して菜種を復活させるといったような場合、お金がかかるわけです。手間がかかる。ですから、景観を高めているわけです。そうした方たちには、そうしたポジティブな、前向きな行為に対して、景観を維持してくれているという分の費用等を負担するという形で加算していく、そういったようなことが考えられると思います。

筒井委員 民主党案の直接支払い制度の対象面積はどのぐらいだと考えておられますか。

篠原議員 先ほどの政府答弁の方では、大体今の耕地面積の五割、二百万ヘクタールというお答えでしたけれども、我々もそれなりに計算してみました。

 それで、販売農家を対象にすると、主な対象作物としては米、麦、大豆、飼料作物、雑穀、菜種、それから、それに加えて地域振興作物等を入れているわけですけれども、米絡みの販売農家で見ますと大体百五十万戸ぐらい、その他のいろいろな地域振興作物というのはわからないんですが、主要作物をやると約百五十万ヘクタール、それから百三十万ヘクタール、合計で二百八十万ヘクタールになると思います。

 しかし、米もつくり麦もつくって、あるいは米をつくって大豆とかいうのはありますし、そのダブりが七割ぐらいだとすると、大体同じで、二百万ヘクタールぐらいが対象になるのではないかと思っております。

筒井委員 その対象面積と農家数について、先ほど政府の方から比率五割、三割という答弁がなされて、今篠原さん、専門家ですから、それが二百万ヘクタールという絶対数が出されましたが、政府の方にお聞きしたいんですが、五割というのは二百万ヘクタール程度でよろしいんですね。それから、三割というのは、農家数として絶対数でちょっと示してほしいと思うんですが。

井出政府参考人 対象面積ですけれども、先ほどのような前提を置いて試算をいたしますと、対象面積では、およそ百六十八万から百七十八万ヘクタール程度というふうに試算をいたしております。

 それから、対象者の方でございますけれども、こちらの方は、集落営農に参加される農家も含めまして五十二万戸と計算上出てきております。

筒井委員 それと、今のはスタート時点での対象面積であり、対象農家数ですが、政府は将来の目標を掲げております。十年後の農水省の目標からいうと、十年後においては今の対象面積や対象農家数はどうなりますか。

井出政府参考人 平成二十七年度を想定した「農業構造の展望」におきましては、効率的かつ安定的な農業経営と言っておりますが、これは周辺の他産業従事者並みの、農業でしっかりした暮らしが立っている人ということでありますけれども、家族農業経営で三十三万戸から三十七万戸程度、集落営農で二万から四万程度、法人経営が一万程度というふうに見込んでおります。また、これらの経営によりまして経営される農地が、全体の農地面積の七、八割になるというふうに見込んでおります。

筒井委員 農地の方の七、八割というのは、今、面積の方で、それはさっきの割合で七、八割という計算をすればそれでいいんですね。絶対数で今出せるならば、出してください。時間がないから、いいです。

 それと、金額の問題ですが、平成十八年、ことしの秋で決めるということを言っているわけですが、現時点でゲタに相当する部分、大豆交付金だとかその他いろいろありますが、これらを合計すると、それがみんな今度のゲタ部分の方に移ると思うんですが、これらを総合すると幾らになって、それから、稲得とかあるいは減反関係のものでやはりナラシとかの方に移行するものもあると思いますが、現時点でそれらに対応する金額の総計は幾らですか。

井出政府参考人 委員御指摘のうち、いわゆるゲタに相当する部分でございますが、今、麦、大豆、てん菜、でん原バレイショの四品について、個別に講ぜられているものを合計いたしますと、ゲタの部分が一千五百億から一千七百億程度ございます。

 それから、ナラシですが、これは今、米と大豆について行われておりますけれども、今委員のお話の中にありました稲得というのは、今回の切り分けでいきますと、担い手の部分とそうでない方の部分に分かれますので、それについての切り分けの数字が、ちょっと持ち合わせがないわけでありますけれども、現在、大豆と米の担い手対策としてやっております担い手経営安定対策、この二つを合算しますと百億から百四十億円程度ということでございます。

筒井委員 時間がなくなったので、最後に、先ほどの、政府案にとっても重要な多面的機能の内容について一つ確認しておきたいと思いますが、食料・農業・農村基本法で多面的機能についての、定義ではありませんが、第三条で規定されております。

 これによりますと、食料その他の農産物の供給以外の機能が多面的機能であるというふうに規定されております。それは、もちろん農水省もそう考えているんだろうと思うんですが、農水省の諮問によって学術会議が答申をされました。その学術会議の答申では、そういうのとちょっと違うのがありますね。その点どうですか、農水省。

中川国務大臣 平成十三年の答申でございますから、五年ぐらい前の答申で、ちょっと古いということになるかと思いますが、その間、食の安全、安心あるいはまた食育といったいろいろな、新たなといいましょうか、多面的機能のさらなる質的な深みが出てきたわけでございますので、結論から申し上げますと、安心というものも重要な多面的機能の一つだというふうに理解をしております。

筒井委員 そうすると、政府の日本学術会議の答申にある、未来に対する持続的な供給の信頼性を国民に与える安心機能、この食料供給機能のこれも関連するわけですが、これも多面的機能の一部として考えておられる、こういうことでよろしいですか。

中川国務大臣 ですから、安心というのは、今の安心と将来に対する安心とあって、特に将来に対して不安を持っている国民が非常に多いというデータもございます。そういう意味で、安心というものは重要な多面的機能でございます。

筒井委員 そうしますと、それは、基本法三条との関係ではどうなりますか。

山田政府参考人 先生お話ありましたように、基本法の三条では、「農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能」というふうに書いてございます。

 それで、大臣がお答えしましたように、先生も御指摘ありましたけれども、未来に対する持続的な食料供給の信頼性という未来における不安を解消するという意味では、学術会議が言うように多面的機能の一つであると。そういう意味で、その三条と整合性はとれているというふうに理解をしております。

筒井委員 その点、多面的機能について、民主党の方はどうですか。お考えを聞かせてください。

篠原議員 直接支払いの理由でございますけれども、筒井委員の御指摘のとおり、いろいろな理由があります。

 一つは食料の安全保障、それから地域社会の安定、それから景観、自然環境の維持というのがありまして、我々が算定するときには、どの部分が幾らかというようなことまでは考えておりませんけれども、ずっと議論されてきておりますとおり、農業には違う機能がある。

 マルチファンクショナリティーというのは、先ほど大臣と筒井委員の間で議論が行われましたけれども、ほかの産業にはあるのかないのか。ないことはないんだろうと思います。地域社会の安定などというのは、小さな小売業者がいっぱいひしめいているようなことが地域社会の安定につながるというのも、そういった面ではあるんだろうと思いますけれども、自然にかかわってきたりすると農業独特のものになってくるんだろうと思います。

 ですから、全体として、そういったことが認識されて、OECDの中でいろいろ議論されてきたわけですけれども、農業保護の一手段として、農業は多面的機能を持っている、だからそれなりの保護を出していいんだ、しかし、それが生産に直結したり、あるいは貿易を歪曲したりしてはいけないんだという議論がなされておりますけれども、その限界はどこだというのは明確じゃないですけれども、直接支払いの考え方の基本として多面的機能があるということは認識しておりまして、それを踏まえていろいろなことを考えてきております。

筒井委員 その多面的機能の貨幣評価を先ほど申し上げましたが、学術会議は農業だけで七兆から八兆という計算を出してきております。これも、しかも、農業の多面的機能の一部の貨幣評価でございまして、これらのものを、個別農家としては、先ほど申し上げましたが、基本的には無償に近い形で、先ほど大臣の話によりますと、今度の直接支払い制度はそれも根拠の一つとして出すということですから、一部は補完を、対価の一部として払われていることになるんだろうと思うんですが、しかし全然額が違う。

 先ほどお聞きしましたが、全然額が違うわけで、この多面的機能の額が莫大、膨大であるということ、それが払われたとしてもほんの一部しか払われていないということ、これを、もうちょっと国民にやはりはっきり理解を求めて、そして農業のこの直接支払い制度だってもっと充実していくべきではないかというふうに考えますが、その多面的機能の貨幣評価との関係において、これからの直接支払い制度の充実、金額における充実、あるいは対象面積、対象農家における充実、これについてどう考えられるか、まず大臣の方にお聞きします。

中川国務大臣 まず、先ほど、多面的機能、三十九兆円ではないかとちょっと記憶で申し上げましたが、あれはたしか森林の公益機能でございまして、訂正させていただきます。

 筒井委員のおっしゃっていることと私が申し上げたいことは、多分結論的には同じだろうと思うんですけれども、いわゆる品目横断的な経営安定対策の中で、農業活動をこの三法の趣旨に基づいてやっていくということは、生産活動にとってもプラスになりますし、また多面的機能という観点からもプラスになりますので、あえて申し上げれば、このうちこの部分が多面的機能で何億円、この部分が多面的機能で何億円というふうに区別できないところが、農業、農村あるいは漁業、漁村、林業、山村のある意味では特徴であり、ある意味ではメリットではないか。

 日本の水の利用の約三分の二は農業用に使われているということでございますけれども、きれいな水が流れていたり、きれいな水田があったり、そしてきれいな圃場があったり、おいしい農産物ができるということは、消費者にとってもプラスになるし、子供たちにとってもプラスになるし、消費者に好まれる生産物をつくる生産者にとってもプラスになるということで、私は、トータルの意味で、これを進めていくことは生産サイドにとっても消費サイドにとってもプラスになっていくという意味で推し進めていきたいというふうに考えております。

筒井委員 多面的機能の部分はこれだけとか、そんなものを区別ができるはずがないことは私も前提にしております。ただ、多面的機能一つとってみても、今度の直接支払い制度が、面積の点でも、想定される金額の点でも、農家数の点でも、極めて不十分であることは間違いないんじゃないか。民主党案が一兆円、多過ぎるというふうな声がありましたが、前回のときもその予算措置の中身についてまで民主党としては具体的に提案をしたわけで、一兆円だってそんなに多過ぎるということは私はないと思っているんですよ。

 だから、今の政府案は、想定されるものとしては極めて小規模過ぎる。これを早急に、もしこれがこういう形に決まったとしても、早急に大幅にふやしていかなければいけない。そのためには、国民の理解を得るために、多面的機能についての本当の宣伝といいますか説明をきちんとやっていかなきゃいかぬというふうに考えるわけで、だから、その点のことについて、これからのことについても含めて、大臣にもう一度答弁をお願いします。

中川国務大臣 先ほど事務方が答弁しましたように、スタートは面積ベースで約五割、二十七年に向かっては何とか七、八割までにしたい、もっとしたいですね。つまり、そういう担い手がどんどんどんどんふえてきて、いい方向でこの法の趣旨に基づくようないろいろな経営体がふえてきて、そして消費者に好まれるいいもの、品質のいいもの、安いものが提供できるという形で、どんどんどんどん担い手がふえてきてその比率が上がっていく、その結果、我々が今試算をしておりますというか、このぐらいの単価がかかって、したがってこのぐらいの予算がかかるだろうというものがふえていくということであれば、それは我々としても、いい方向でのプラスでありますから、ぜひそっちの方向になるようにすら私は期待したいと思っております。

筒井委員 民主党の方にお聞きしますが、対象面積は先ほどお聞きしました。金額はもう前から出しておりまして、それがさっき二田先生の方から批判されましたが、今の同じ質問についてはどう考えられるか。金額、対象面積について、民主党の考え方、これをお答えください。

篠原議員 金額については菅さんが答弁されておられたのでおわかりいただいていると思いますけれども、とりあえず一兆円でございまして、このほかに、例えば、国民の理解がどんどん進んだ、八兆円なりの農業の多面的機能についてきちんと都市サイドも負担していい、そうじゃないとますます過疎化してしまうというような、そういう認識が高まってきたりして、理解を得られるのなら、我々もふやしていいのではないかと思っております。ですから、それにしたがいまして対象面積も当然ふえていく。

 菜種などは今はほとんどつくられなくなってしまって、全国で八百ヘクタールぐらいしかつくられておりません。かつては二十六万ヘクタールもつくられまして、菜の花というのはそこらじゅうで見られたわけです。これが二十六万ヘクタールに復活したりすると対象面積が格段にふえるわけでして、我々の直接支払いの手法がどの程度農家なり農村側に定着するかどうかにかかっているんじゃないかと思っております。

筒井委員 大変ありがとうございました。これで終わります。

稲葉委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民主党の荒井聰でございます。農水委員会では二度目の質問をさせていただきます。

 先ほどから聞いておりまして、武蔵野市選出の菅国会議員が、まるで農本主義のような、農業、農村政策について情熱を込めてしゃべっているというのは私にとっては隔世の感がある。このところ、農業政策というのは、マイナーな政策と言うと怒られてしまいますけれども、BSEですとかそういう食の安全の対策については大きな関心を呼んでいるんですけれども、農業政策そのものについて大きな国民的な関心を本当に呼んでいるのかどうか大変危惧をしていたところなんですけれども、二〇〇三年に菅さんが民主党の代表になりまして、農業政策を民主党の大きな政策の一つとして打ち上げていった、それを契機にして、各政党が極めて大胆なというか、あるいは今までの農政の流れからは少し違う方向の農政の展開を試み出したなという印象を持っております。

 そこで、先ほど菅議員から、日本の農村についての考え方、子育てだとかあるいは歴史だとか文化だとか、そういうものに言及しつつ、農村についての彼なりの考え方があったと思うんですけれども、ここのところは、農林大臣、いかがでしょうか。政策の基本スタートとして農村をどうとらえるのかというのはかなり大事なことなんだろうと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

中川国務大臣 そこは全く荒井委員の御指摘のとおりでございまして、今食育というのをやっておりますが、別にこれは子供に限りませんが、特に子供の場合、味覚あるいは好みが本当に小学校の段階で決まってしまうという中で、やはり生き物、本物というものを体験しておく、そして体験し続けるということが大事であるというふうに理解をしております。

 したがいまして、先ほどから多面的機能をいろいろ質疑いただいておりますけれども、その中で、全国津々浦々それぞれに自然があり、そしてまたそれに基づく文化、伝統、あるいはまた農山漁村地域があるわけでございますから、そこからつくられるものが、全国の消費者にできれば感謝して食べていただきたい、またつくる方も喜んで食べていただくことに喜びを感じていただきたいというだけではなくて、そういう空間同士、人同士、文化等の、あるいは自然等の交流というものがやはり必要であり、それぞれの地域を知って、そして国を知って、世界を知って、これから特に子供たちが健全にすくすくと育っていただきたいというふうに思いますので、全くおっしゃるとおりだと思います。

荒井委員 農業政策の難しさというのは、単に経済政策だけではない側面を、先ほど筒井さんが多面的側面、多面的効能というような話を盛んにされておりましたけれども、あるいは社会的な側面でありますとか、あるいは文化とか、あるいは歴史とか、そういう側面をあわせ持っているわけで、それらを国民にしっかりと理解してもらえないと、本当の意味の農業政策、農村政策にならない。その理解のさせ方が、まだまだ農林省は少し甘かったんじゃないのかなという感じを私は持っています。

 ところで、農業政策の中で、食料を提供していくわけですから、食料の自給率というのはとても大事な側面であります。これは、国としての安全保障の基本だと思うんですね。どこの国でも、安全保障を考えるときに食料とエネルギーというのは基本ですよ。我が国は、これはどっちも物すごく低いわけで、その意味で、日本の安全保障というものは、単なる防衛庁を防衛省に上げるとかそういうような話ではなくて、食料をどういうふうに確保していくのか、自給率を高めるのか、エネルギーの自給率を高めるのか、そういう側面をもっと安全保障の面で議論するべきだと思うんです。

 そこで、食料自給率というのは主要先進国の中で最低の水準になっているわけですけれども、この食料自給率を向上するということは、先ほど言いましたように、我が国の安全保障という側面からも国民的な課題だと思うんですね。平成十二年に策定された食料・農業・農村基本計画では、カロリーベースでの食料自給率を平成二十二年度までに四五%まで向上させるという目標を掲げているわけですけれども、しかし、現時点でも自給率というのは四〇%でございまして、全然施策の効果があらわれていないというのが現状なんだと思うんです。

 この食料自給率を上げるために、政府は一丸となって抜本的な対策を講じなければならないと思うんですけれども、この点について大臣はいかがお考えですか。また、同じ質問を民主党に対して。民主党は、この自給率を上げるためにどのような具体的な政策を講じようとされているのか、それぞれ御説明願えますか。

中川国務大臣 今、荒井委員御指摘のとおり、基本計画で四〇%を四五%にしようということでありますが、丸めて何とか現状維持という状況、しかも、穀物自給率が三〇%を切っている。他方、自給率というものあるいは自給力というものをどういうふうに考えるかということも、ある意味では議論を深める必要があるのかなとも思うわけであります。

 農林省が試算した、もうぎりぎり国内で食生活を維持していくためには米と芋を中心に三日に一遍魚を食べるとか、これで一億二千六百万人が何とかやっていけるという試算もありますけれども、そのときに、今委員御指摘のように、では、温めるためのエネルギーをどこから持ってくるんだとか、電気はどうするんだとか、そういう問題を総合的に考えますと、日本は極めて脆弱であるわけであります。つい四十年ほど前は自給率が七〇%あったとか、あるいは諸外国の方はむしろ逆にふやしているとか、そういう観点を考えたときに、まさに国家の基本が食料とエネルギーであるというふうに考えます。

 ただ、先ほども申し上げましたが、米だけつくれば一千三百万トンも四百万トンもできちゃうけれども、食べないわけでございますから、消費者に好まれるようなもの、つまり、そこは当然、安全、安心、顔の見える、あるいはまた情報がよくわかるという意味で、国産志向という国民の志向は高まってきているんだろうと思いますし、将来に対する不安という観点からも、消費者に理解をいただけるような品質、価格、安全性あるいは表示等々をさらに努力していけば、先ほどの農林省は努力が足りないという御指摘は、私は謙虚に受けとめたいというふうに思っております。

 そういう意味で、消費者あっての生産サイド、また国産の生産サイドあっての国民の真の意味の安全、安心、健康、喜びという観点から、やはり、消費者と手を携えて、また、先ほど筒井委員からも何回も御指摘がありました、国民に対する理解をしていただくための努力といったものも含めて、今は、とりあえずは、ここ数カ月は少なくとも、あるいは数年は少なくとも欲しいものは世界じゅうから買えるという状況でありますけれども、食料とエネルギーはもう常に持続的に、安定的に供給をしなければなりませんので、供給サイドだけの一方的な増産努力ではなくて、消費者、国民の理解を得ながらみんなで努力していく。その中には、特に子供たちの理解、農山漁村に対する理解、国産食料品等に対する理解を啓蒙、教育することも大事なポイントだろうというふうに思っております。

篠原議員 我々の法案は、一言で言いますと、直接支払いの導入により食料自給率を高め、農業、農村全体を活性化するというふうに言えるんじゃないかと思います。

 食料の安全保障でございますけれども、長らくというか、国際交渉では一番の眼目でした。外国から、ミスター・オンリーワン、ミスター・フードセキュリティー。もうフードセキュリティーという言葉がOECDの閣僚理事会の文言に入っている、サミットの文言に入っている、それさえ入れば満足すると。

 今、二田筆頭理事はおられませんけれども、一九九〇年のウルグアイ・ラウンドのさなかですけれども、ブリュッセルに参りまして、ほとんど寝ずに交渉しなくちゃならなかった。まだ初々しい議員のころですけれども、一緒に参りました。今は筆頭理事で貫禄十分でございますけれども。

 そのころは、本当にフードセキュリティーという言葉、食料安全保障が絶対大事なんだ、だから米は別なんだということをずっと言ってまいりました。しかし、つらつら考えてみますと、国際交渉の場でそれだけ言っているんですが、一体、国内政策としてそれをどの程度具現化したかというのは、大臣が今直前にお答えになりましたとおり、少々サボっていた面というか、あるのではないかという気がします。経営対策とかいうのには力を注ぎましたけれども。

 それで、我々は考えました。やはり食料自給率を高めなければいけない。なぜかといいますと、総理府の世論調査、ずっと繰り返して毎年同じことを聞いてきていますけれども、なるべく国内で生産すべきだという答えが多くなってきているわけです。荒井委員御指摘のとおり、食の安全問題について国民の関心が高まってきた、それと符合するわけですね。どうも、外国はいかがわしいつくり方をしているんじゃないか、日本と違う安全基準があるんだと。BSEが典型的だろうと思います。それから、中国野菜の残留農薬の問題等があって、やはり国内できちんとつくってもらいたいという声がある。我々は、その声を感じ取って、直接支払いの導入というのも国民の理解が得られるのではないかというふうに考えました。

 それで、自給率、なかなか向上しておりません。カロリー自給率でいいますと、情けないんですが、スウェーデンとかスイス、スウェーデン八七%、スイス五四%、イタリア七一%、フランスは当然一〇〇%を超えていますけれども、それらと比べても日本が断ペケというか、下なわけですね。やはりどこか抜けているんじゃないか。しかし、過去を見たら、二十年前、三十年前はそれなりの自給率を保ってきていたわけです。

 ですから、生産サイドを考えた場合、それなりの生産の能力がある、潜在能力はあるんだ。では、一体、どの程度の生産能力があるのかということを調べてみました。そうすると、麦類全体で四百十万トンもつくっていた。先ほど申し上げましたけれども、菜種も二十六万ヘクタールで三十二万トンもつくっていたというのがあるわけですね。

 ですから、そういったものを復活させたら一体どうなるか。そうすると、我々が直接支払いの対象としている主要な作物、米以外の五品目を検討したわけですけれども、それの過去の最大生産量を復活したならばというのを計算していくと大体五〇ぐらいいける、とりあえずそれに向けて頑張ってみようということですね。

 これは、ほかの国でみんなやっていることなわけです。例えばEUですけれども、自給率がうんと下がったわけです。ですから、四十年ぐらい前になりますけれども、もう油糧種子はアメリカから全部輸入しようということで、そして断を下して関税をゼロにしたら、一九八〇年ごろですけれども、小麦の収量が十アール当たり二百五十キロぐらいだったのが、いきなりというか、一年でぱっと上がったわけじゃないですけれども、五百キログラムになった。そうすると、収量が倍になりますから面積は半分で済む。それで、輸出補助金をつけて小麦を輸出せざるを得ない。あるいは、一たん関税をゼロにした油糧種子をEUでつくらなければならないという意味で、ヒマワリ、菜種の増産が始まったわけです。そして、アメリカとEUで油糧種子問題の交渉が盛んに行われるようになったわけです。

 ですから、先例があるわけですね。日本も、それなりにお金を出し、いい品種を開発して自給率を高めようと思ったらできるということで、それを我々の法律の中にぎっちり埋め込みました。

荒井委員 そうなんですね。今までの農政の流れからずっといくのならば、抜本的な自給率向上というのは一%、二%さえも難しいんだと思うんです。やはりどこかで抜本的な大きな転換というのが必要なんではないかと。それをやっても、この一兆円の直接支払いという制度を導入しても、五%ぐらい上げられるかどうか、そういうお話だったわけですけれども。

 私は、どこかで大胆な農政の転換というものをしなければ、食料の自給率というのは上がっていかないんだというふうに思うんですね。食料自給率を上げるために、さまざまな国民的理解のある政策を展開することが必要なんで、それは、農林大臣にしかるべき人が座っているとき、それが私は物すごく大事なポイントだと思うんです。国民に対するアピール力のある方、私は、ぜひ中川農林大臣にその役割をしていただきたいというふうに思います。

 さて、今度の品目横断安定対策についてなんですけれども、政府案については、今回、導入することとしている品目横断的経営安定対策は、その対象者を、認定農業者と一定の要件を満たす集落営農ということに規制をしてございます。

 しかしながら、担い手の経営規模の拡大が余り進んでいないということからもわかるように、これまで講じてきたこの種の対象を絞っていくという政策は、私は、ことごとく失敗してきたと言っても過言ではないと思うんですね。品目横断的経営安定対策は、一部の担い手を対象に絞るのではなくて、すべての販売農家を対象とするという考え方の方が、私は、最終的には成功するのではないかというふうに思うんです。

 私は農村政策、農業政策をずっとやってきたんですけれども、もう三十年以上前から、財政当局と議論をするとき、財政当局の農業に対する考え方というのは、対象農家、補助金の対象でもあるいは施策の対象でもいいんですけれども、対象農家をいかに限定するか、絞るか、そういう一点に絞られてきたかと思うんですが、結果的には、それはことごとく失敗してきたんです。

 なぜなのかというと、農業というのは、そういう一部の農家だけで支えられている、担われているというものではないんですね。そこに農村という、農業活動、生産活動を展開する場というものが、一部の農家だけで展開しているのではなくて、さまざまな農家、それは、小さな農家もありますし、あるいは大きな農家もあるし、兼業農家もあるしという人たちで調和がとれているのが農村という場なんですね。

 そういう観点を、農業政策を展開、特に財政面から見ていく、あるいは経済政策優遇の面から見ていく人たちは、どうしてもそこの部分を見落としがちになっちゃう、あるいはそれを考慮に入れなくなっちゃうんですね。そういう意味で、私は、この販売農家、一定の対象農家を絞っていくという考え方については、非常に心配な点というか、大丈夫なのかなという点を持っているんですけれども、大臣、ここはいかがでしょうか。

中川国務大臣 確かに農村という一つの集落といいましょうか、水管理の面でも、また圃場整備の面でも、みんなでやっていくことがどうしても大事でございますから、そこにはいろいろな農家がいらっしゃると思いますし、また、農村地域も、荒井委員や私の北海道から都市近郊、あるいは中山間、いろいろな農業形態があるわけでございます。

 そういう中で、先ほどから自給率の話、あるいはまた消費者、国民に好まれるような国内農業生産をしていこうという観点が一方にあるわけでありますけれども、これからこれをどういうふうに関連づけていくかというときに、朝から二田委員からも御指摘がありましたが、ただ規模だけで切るわけではないということは、もう荒井委員も御理解いただいているというふうに思います。

 一時期、プロ農家の育成なんという言葉もございましたけれども、とにかく、一言で言えば、農業には、産業面とその他の非経済的といいましょうか、多面的といいましょうか、そういう面と、あえて二つに分けますと、経済的な合理性といいましょうか、つまり、収益を上げる、もうかる農業をやってもらう、そのためには売れるものをつくってもらうように努力してもらうという観点から、そこにはいわゆるやる気と能力というものが前提にあって、しかも、もちろん規模の要件もありますけれども、規模以外の要件、みんなで集団でやっていきましょうと。そのときに、集落営農を一定要件でやる場合には、その中には、高齢者の方で後継者のいない方もいらっしゃいますし、若い人たちもいらっしゃるわけでありますから、そこはおのずから集団の中で役割分担をして、総合的に担い手として該当される集落の集団がみんなで頑張っていくということによって、面的な面で、これからぜひいい農業経営、そしてその前提となる農業生産をやっていただくということです。

 決して、地域全体を対象にしないとか、あるいは規模で対象にしないということではなくて、どうぞ、この担い手、つまり認定農家を前提とする担い手に参加をしてください、個人でできないのであれば集団で参加をしてくださいということです。三割とか五割とか、さっき申し上げましたのは、あくまでもスタートあるいは予想でございます。御承知のように、我々の北海道では、そういう認定農家は当初の予想よりも多く参加をしているというところもあるわけでございます。

 そういう意味で、今まで確かに認定農家のメリットというものが余り理解されていなかった、あるいはメリットがなかったということでございますけれども、いよいよこれからはやる気と能力で結果を出す努力をすれば、こういう新しい画期的な制度の対象になるぞということも含めて、スタートに向けて大いに参加をしていただくように我々も努力をしなければいけませんし、また、これは荒井委員初め当委員会の委員の皆様方にも、ぜひともそれぞれの地域で御協力をいただきながら、先ほど申し上げたように、予想よりももっと事業体が多くなった、対象面積が多くなった、その結果、いい農業生産、農業地域ができるようになったという逆の意味の意外な結果が出れば、荒井委員とともに喜びを分かち合いたいなというふうに思っているところでございます。

荒井委員 政策を打つ場合に、今回もそうですけれども、集落を単位としてという一種の逃げ道といいますか、あるいはそういう例外みたいなものもつくっているんですね。ここにこの政策の矛盾点があって、認定農家という経済的に自立する農家に対して政策を集中するという経済政策の側面と、それだけでは全部カバーできないし、あるいはうまくいかないということは皆さん方も知っているんですね。知っているから、集落を単位として契約をしていく云々という部分をつくって、全体として整合性を保とうとしているのだと思うんです。

 しかし、これは、農村とかあるいはそういう地域というものに着目した政策、それと経済政策、本来別々のものを一緒くたにした考え方で整理をしようとしているんです。私は、ここに政策の矛盾があり、また失敗する遠因があると思っているんです。篠原さん、ここはいかがでしょうか。

篠原議員 荒井委員の御指摘のとおりの面があるかと思います。私は、担い手に重点を絞った政策もあっていいと思います。あっていいんですが、今までの実績から見ますと、今大臣、一番最近ではプロ農家というふうにおっしゃいました。その前に、中核的農家、自立経営農家、いっぱい美辞麗句が並びました。それで、それを育成しようとしましたけれども、なかなか育成できなかった。

 見てみますと、どういうところに後継者、担い手農家が育っているかというと、これは皆さんすぐおわかりいただけると思います。花の農家とか、野菜の農家とか、果樹の農家が育っている。なぜそういうふうに育っているかというと、花とか野菜とか果樹は小さな面積でもそれなりにやっていけるからです。ですから、農業全体、その作物にかかわる感じがうまくいっていると自然と後継者も育つということ。ですから、我々は、担い手というか、ピンポイントで人を絞るんじゃなくて、農業、農村全体の活性化を図ることによって、その中から立派な担い手が育つ、そういう形の方が自然じゃないかと思っております。

 そういう点では、荒井委員の御指摘のとおり、農業、農村全体のことを考えたら、やはり全体の底上げというのが大事だ。例えば、担い手ということで、現場に入っていきますと、立派な専業農家がある、ではその息子さんはそれを全部引き継ぐかというとそうじゃなくなるわけです。小さな兼業農家の息子さんがいて農業をやりたいということで、それが育っていく。

 もっと歴史的に見ますと、東北の山村で三百年、四百年、一体、経営耕地規模はどうだったかというのを全部調べてみたんです。そうすると、あるときはでかい農家になって、あるときは小さい農家。ところが、三百年、四百年すると、不思議なんですが、その農家全体も平均化しているんです。つまり、どういうことかというと、労働力とかそんなことを考えるといろいろあるけれども、農村全体として生き残っていて、そのとき大きいか、小さいかというのはそんなに大事じゃないということ。ですから、そういった日本の農村の持っている独特の事情というのも勘案して農業政策はやらなければいけないんじゃないかと私は思っております。

 そういう点では、後から集落営農というのを入れて、二十ヘクタール以上の集落営農で一元経営とかいうのを入れ込みましたけれども、主と従を余り分けずに、両方大きな柱としてやっていった方が、おこがましいですけれども、余計なことかもしれませんが、うまくいくのじゃないかという気がしております。

荒井委員 もう一つ、私、北海道ですから、政府案の認定農業者の場合の経営規模要件を北海道十ヘクタール、都道府県四ヘクタール、こうなっているんですね。これは、経済的な自立あるいは経済的なそういう認定農家を育てるんだという意味だと、なぜ都道府県と北海道と差別するのか、ここはちょっと合点がいかないというふうに思うんですけれども、仲野議員、北海道選出の議員として、民主党としてどうお考えですか。その後、農林大臣、お答えください。

仲野議員 ただいま荒井委員の、対象農家についての絞り込みを懸念する、対象農家についての御質問にお答えをさせていただきます。

 ただいま篠原議員がお答えしたことに尽きるのでありますけれども、これまで農水省は専業的農家を育成する方針をとってまいりましたが、専業農家は一向にふえず、むしろ逆の結果となっております。こうしたことから、農家に着目した政策は実を上げにくいのではないのかと考えられるわけであります。

 農村はそういった意味で柔軟な構造を持っておりまして、第二種兼業農家の息子が専業農家だったり、あるいはまた専業農家が兼業農家になったり、その時期に応じて構成が大変異なってきているわけであります。その要因となるのは、結局、農業を続けることへの展望があるかないかが重要になってくると思っております。大規模農家は、育成するのではなくて、生産者が抱く農業の将来性への不安を打ち消していけば、結果として生まれてくるものと考えております。

 先ほど来からお話が出ているように、今、農業に対して希望と夢を持って携わっていくということがだんだん薄れていっている状況にあります。もしかしたら今世紀は、食料受難の時期を迎えるのではないかというぐらい深刻になってきているという研究者方のレポートなどもいろいろと昨今書かれているわけであります。

 そこで、民主党はすべての販売農家を対象に生産面積に応じた直接支払いをまず行い、その中から徐々に大規模農家が生まれるように誘導していく方針をとってまいる決意でございます。

中川国務大臣 北海道は国土の二二%を占めて、そして農地も当然、一戸当たりが大きいわけであります。御承知のように、北海道のカロリーベースの自給率は二二〇%というふうに承知しておりますが、金額ベースでいうと一八〇%、つまり、二二〇生産しているんだけれども売り上げは一八〇しかない。つまり、やはり平均に比べて付加価値が低いというのが北海道の実態である。つまり、これは卵と鶏の関係かもしれませんけれども、規模拡大をしてやっていかないとその地域の他産業並みの所得を確保することができないという現実があるわけであります。

 一方、北海道も広うございますからいろいろな地域がありますけれども、私のところなんかは、農家戸数は減っておりますけれども、農地が足りない、もっと規模拡大したい、畑作と酪農、畜産が中心でありますけれども、そういう地域もあるわけでございます。

 そういう意味で、その可能性のある北海道においては展望がないのではなくて、今仲野委員も御指摘ありましたように、もっと大規模化できるんだと民主党さんも言っているわけでありますから、そういうインセンティブを生かす意味でも、また現状においても、北海道以外の地域と比べて厳し過ぎるというような実態はございませんし、逆に、本州並みの四ヘクタールぐらいではなかなか経営自体が厳しいという二つの側面があるわけでございますから、規模拡大あるいはまたいい経営を目指す、これは北海道に限らず全国一律、この法案の目的でもございます。

 そういう観点から、北海道において十ヘクタールということをスタートにして、大いにさらにいい経営、規模拡大を目指してやっていくような方向性を目指していきたいというふうに考えております。

荒井委員 私は、やはりそれは納得できないんですよね。何で北海道と本州と、そういう四ヘクタール、十ヘクタールという形で差別をするのか。このあたりについては、またゆっくり機会がありましたら議論したいと思います。

 時間がなくなりましたので、米政策について少し議論させてください。

 私は農林省に四十五年の年に入ったんですけれども、四十五年のときからお米が余り出しました。先ほど二田先生もおっしゃっていましたけれども、この間の農業政策の中心というのは、どうやって米の過剰から脱するか、そういう政策をずっとやってきたということだろうと思います。

 そこで、政府は昨年十月に決定しました経営所得安定対策大綱において、十九年度からは品目横断的経営安定対策を導入するということにしており、表裏一体の関係として米の生産調整についても支援措置を講ずることとしていますけれども、私は、この対策では米の生産調整が本当にきちんとできるのかどうか、極めて疑問に感じています。

 まず、政府は品目横断的経営安定対策の対象を絞り込むこととしており、私の地元は先ほど言ったように十ヘクタールの経営規模が要件ということでありますけれども、北海道においてもその十ヘクタールに満たない農業者など、十九年度以降の品目横断的経営安定対策の対象とならない農業者がたくさん出てくるのではないかと考えられます。

 これらの対象とならない農業者に対して、米の需給調整の支援策が講じられないとすれば、今まで生産調整に協力していた農業者が協力しなくなり、生産調整がうまくいかなくなるということになるのではないかというふうに思います。この点、政府はどうお考えでしょうか。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 米につきましては、平成二十二年度における米づくりの本来あるべき姿の実現を目指して、需要に即応した米づくりの推進を図るため、需給調整対策、流通制度の改革など、各般の施策に取り組んでいるところでございます。

 委員御指摘の十九年度からの米の需給調整に対する支援策につきましては、担い手を対象とする品目横断的経営安定対策が導入されることなどを踏まえまして、大きくは三つの点について見直しを行うこととしております。

 まず一点目でございますけれども、需給調整メリットとしての米価下落による影響緩和対策でございます。現行の稲作所得基盤確保対策及び担い手経営安定対策に関しましては、担い手を対象とする対策につきましては、品目横断的経営安定対策へ移行するとともに、担い手以外の方々につきましては、米の需要に応じた生産を誘導するため、当面の措置といたしまして、産地づくり対策のメニューの一つとして米価下落の影響を緩和するための対策を行えるよう措置することといたしております。二点目といたしましては、産地づくり対策につきましては、現行対策の実施状況などを踏まえた見直しを行うこととしております。それから、三点目の集荷円滑化対策につきましては、その実効性を確保し、実施することといたしております。

 こうしたことによりまして、生産調整の実効性を確保するため、品目横断的経営安定対策の対象とならない農業者であっても、生産調整の実施に着目した対策を講ずることとしているところでございます。

荒井委員 そういう対策で本当にうまくいくのかどうか、これから注目をしていきたいと思うんです。

 十九年度以降も、担い手以外の生産調整実施者も対象とした支援措置を講じるということであります。経営所得安定対策大綱では、米の需給調整について、水田における品目横断的経営安定対策の導入ともあわせて、十九年産から農業者、農業団体の主体的な需給調整システムへ移行するということを目指すとされたわけでありますけれども、本当にそれで十分かなという感じはします。しかし、それでも、生産現場では、結局、国が生産調整への関与を、極めて消極的なあるいはやめるというふうにとるんじゃないだろうか。そういうことでは、本当に、さっきからずっと言っているんですけれども、今の話でうまくいくのかなと思うわけですけれども、そこを重ねてどうぞお願いします。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 十九年産からの移行を目指す新たな需給調整システムは、農業者、農業者団体が地域の販売戦略に基づき、主体的に需要に応じた生産に取り組むことにより、米づくりの本来あるべき姿の実現を図るものでございます。

 具体的には、これまで国を初め行政による生産目標数量の配分を行っておりましたけれども、新たなシステムにおきましては、国、都道府県、市町村のそれぞれが提供する需要量に関する情報や市場シグナルに基づいて、JAなどの生産調整方針作成者が生産目標数量をみずから決定するとともに、傘下の農業者へ配分するということ、JA、市町村などを構成員とする地域協議会が、配分の一般的なルールの設定などにより、生産調整方針作成者による主体的な需給調整を支援し、地域全体の調整機関としての役割を果たすということを考えております。

 このような新たなシステムにおきましては、農業者、農業者団体の主体的な取り組みに対して、国が生産調整への関与をやめるのではなくて、国を初めとする行政が各段階で支援を行うことにより、需給調整の円滑な推進を図るものと考えております。

荒井委員 そうすると、今まで需給調整というのは、市町村とか都道府県というのが非常に大きな役割をしてきたと思うんですけれども、そこのところの関係はどうなるのか。特に、市町村、一番現場でよく知っている市町村の役割というものが見えなくなるんじゃないだろうかと思うんですけれども、そこはいかがでしょうか。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、地方公共団体の役割、非常に大きなものがあろうと思います。そうした中で、新たな需給調整システムにおきましては、国、都道府県、市町村のそれぞれが需要量に関する情報の提供を行う。

 地方公共団体におかれましては、それぞれの段階において、農業者団体などとともに構成する協議会への参画などを通じまして、地域農業の振興の観点から、地域ごとの創意工夫を生かして作成される水田農業ビジョンに即して、需要に応じた産地の育成などを進めるために必要な助言、指導、その他の支援を行うこと。

 国につきましては、地域水田農業ビジョンの実現が図られるよう、構造政策、経営政策及び生産政策を総合的かつ有機的に連携を図りつつ実施することとしております。

荒井委員 民主党は全く別な形での需給調整ということを考えておられるわけですけれども、今の政府の方針あるいは民主党の考えているものと、そういうものについて、どのような考え方をお持ちなのか、ちょっと御説明ください。

篠原議員 米の過剰というのは、先ほど二田委員が一番最初に御指摘になりましたように大問題だろうと思います。しかし、やりようがあるということです。まずは市場原理に基づくというのが一番なんでしょうけれども、そこに直接支払いがかかわるということで解決できるんじゃないかと思います。

 例で言いますと、もう既に転作奨励補助金というのでやりましたけれども、先ほども言いましたように、捨てづくりとかいうので余り生産する方に身が入らなかった。それを逆転して、生産するんだという方に重点を置く。それからその後、二〇〇一年から、食料・農業・農村基本計画ができまして、麦、大豆、飼料作物について相当生産をふやそうということで、転作奨励補助金と同じような形ですけれども、相当お金が出たわけで、十アール当たりでいいますと六万から七万出たわけです。そうすると、十年後の計画を二年ぐらいでもう達成してしまったわけです。つまり、奨励補助金がちゃんとあって採算が合えば、同じように、農家はつくる余力がある、つくりたいという気持ちを持っている。

 私もあちこち農村を回りましたけれども、麦について問いただされました。そのころまだ農林水産省におりましたので、篠原さんと電話が相当かかってきました。何回目かだけれども、また農林水産省は麦をつくれと奨励し始めた、しかし、二、三年するともう要らないと言う、今度は本当だろうなと。私は答えに困りましたけれども、今度こそ本当だと思うと答えました。

 二度目の食料・農業・農村基本計画を見ますと、今八十三万トンぐらいつくっている、この数字は正確かどうかわかりませんけれども、私の記憶だと、今度の計画では八十七万トンぐらいしか、三、四万トンしかふやさない。大豆も二十三、四万トンなのに、十年後二十七万トンぐらいにしかふやさない。どうも意欲に欠けるんじゃないかと思います。それを、ちゃんと国が、倍にふやすんだ、あるいは三倍にふやすんだ、四倍にふやすんだということをきちんと言って、そちらの方に誘導すれば、生産サイドは幾らでもついてくるんじゃないかと思います。

 そして、米も、我々は直接支払いの対象にしています、生産条件が違いますから。しかし、直接支払いの対象にするわけですけれども、先ほどの規模加算、品質加算の説明に関連するわけですけれども、自給的な農家、例えば三十アール未満の農家にもう出さないというような形、それから直接支払いの金額を、単価を少なくしてということでできるわけです。そういったことをすることによって、幾らでもいろいろなことが解消できるんじゃないか。

 それから、これは二田委員から御指摘を受けましたけれども、我々は、逆に、今まで転作というのはみんな通達ベースでやっていましたけれども、国、県、市町村がきちんと生産目標をつくって、それほどがっちり、ぎちぎちやるということではないですけれども、ちょうどうまく調整できるような形にしていったらいいんじゃないかと思っております。

荒井委員 先ほど、私、自給率向上の話をしたんですけれども、自給率向上の話とこの米の生産調整の話というのはある意味で裏表なんですね。

 自給率が下がっているというのは、植えるものがないということなんだと思うんです。ただ、植える場所はある。片一方で、お米のように黙っておくとどんどんどんどんふえてしまう、それで過剰対策をしなければならない。

 そこで、どういう政策を打ったら、ちゃんと植えるものとそれから余るものとの調整がしっかりできるのかということを私は政策の柱として考えるべきだと思うんです。どうもそこのところを、私は、農林省はずっと間違えてきたんじゃないか、米の政策と自給率の政策というのを、ある意味では別々の対策として打ってきたところがあるんじゃないだろうか。

 自給率を向上させるための場はあるんですね、水田という場は。そこで、どうやって、今足りないものをもっと植えていくような、あるいはそこに栽培していくようなシステムをつくれるのかということに尽きるんだと思うんですけれども、そこのところが、民主党は、直接支払いというある種の新しい手法を導入して、そこに大胆に切り込んでいくという手法を提示したんだと私は思うんです。しかし、残念ながら、農林省の方は、まだまだそこのところの新しい大胆な手法というところまで踏み込めていないような気がしております。

 このあたり、中川農林大臣、もう何年農林大臣をやられたでしょうか、二回目ですし、いろいろな知識も、あるいは政府の中での発言力も強いわけですので、大胆な展開ということをぜひ期待しております。

 ところで、今度の政府案では、私は、農村政策をずっとやってきましたから、農村政策という意味では非常に関心もあります。その関心の面からいけば、農村という地域を支えてきたのは、零細農業とか兼業農家、そういうものも含めた農村全体、農家全体ですよね。今度の政策では、零細農家とか兼業農家が脱落して、集落の社会的な機能というものが損なわれていくことになりはしないだろうか。特に、地域農業の基盤となる農業用水とか、環境の保全管理機能というのが放棄されるんじゃないだろうかというおそれを持っております。これは、食料の供給というものを不安定にするばかりでなくて、農業とか農村の持っている多面的な機能といったようなものまで失われてしまうんじゃないだろうか。

 民主党の提出している法案では、このあたりを直接支払いということで、そういう農家を分けないということである種の整合性を保つことをやっておられると思うんですけれども、農林省の今度の政策はそこをどういうふうに切り抜けようとされているのか。これはいかがでしょうか、農林大臣。

中川国務大臣 荒井委員は、本当に、私が当選以来、ずっと農村政策等々、大変プロとしてやってこられて、ある意味では私の家庭教師みたいな方でしたけれども、御指摘のように、いわゆる農業、農村の果たす多面的機能、先ほどからいろいろ議論が出ておりますけれども、農村そのもの、住んでいる方たちにとっての地元である農村、あるいはまた都市の皆さん方における農村のすばらしさというもの、両面からも、また生産基盤としての農村という観点からも、やはりこれは荒廃させたり消滅させたりすることはもうできないわけでございます。

 そういう中で、例えば水でいいますと、約九百億トンのうち六百億トン近くが農業用水として使われているということから、水一つをとっても極めて重要であるわけでありまして、水がなければ農地の保全もできない、農業活動ももちろんできないわけであります。

 十六年度に実施した意向調査のデータがございますけれども、将来にわたって、水、農地の資源を管理維持していくことが難しくなる、高齢化、混住化等々によって今後難しくなると八割の方が不安を持っていらっしゃる。また、農業者以外の方と連携協力してやっていかなければならないという考えを持っている方が九割いらっしゃるわけでございます。

 この制度は、やはり地域によっていろいろとまたオーダーメードといいましょうか、個々の地域によっても違うわけでございますから、御承知のように、今、六百地域でモデル的な活動で、特に今回の政策の農地・水・環境保全向上対策という観点から、いろいろな施策をモデル的に試験的にやっているわけでございますけれども、それを前提にして、十九年度からの導入の中で、地域に合った形での農村政策等々をきちっとやっていきたいというふうに考えております。

荒井委員 この農村政策の側面から、民主党のどなたか、コメントありますか。

山田議員 農村における集落、その中での農地の利水等々については、前回も荒井委員がこの委員会で質問しておりましたが、利水については大変大事なことであって、私ども民主党の案でも、集落に対して直接支払いをすることにより、いわゆる水路の補修、あるいは畦畔、あるいは大事な農業用道路等についての集落での補修等々についても直接支払いを実施する予定であります。

 また、これは実際に、今は離島の漁村集落に対して、自主的に海の清掃とか、あるいは種苗の放流まで取り組ませておりますが、そういう意味での自主的な取り組み、それも考慮した農村の整備振興、そういった面も民主党ではこの法案において明らかにしているところです。

荒井委員 集落の、あるいは農村のそういう地域資源を守っている団体として、土地改良区という団体がありますよね。その土地改良区というのは、農家を中心とする、農家が参加する組織なわけですけれども、その農家がどんどん脱落をしていく、そして今農林省自体が認定農家という形で農家自体を、差別と言ったらおかしいですけれども、ある種の選別をしていく。私は、地域資源を守るという意味では、むしろ農家だけじゃなくて、そこに住んでいる人も含めたような団体にしていかない限り、農村の水だとかあるいは土地だとかというものをしっかり資源管理していくことはできないと思うんです。

 そういう意味では、私は、今、農林省がやろうとしているこの認定農家に政策を集中させていく、この地域資源をどうやって守っていくのかというところについてはまだ見えないところがあるんですけれども、今の農林省の向かっている方向というのは非常に大丈夫かなという感じを持っております。

 ところで、この地域資源を守る、あるいは集落をしっかり支えていこう、これは一つ一つがエレメントですから、そこをしっかり守っていこうというのは行政の基本だと思うんですけれども、これは今のところ、この集落が幾つか集まったものは町村になりますから、町村がどういう形でこの集落の環境なり資源の管理というものとかかわっていくのかということが極めて大事なポイントになるわけでありますね。ところが、最近の町村財政というのは極めて厳しくなっています。どこもかしこも国以上に実際には使う。国は国債をどんどん出して何とかできるという観点があるんですけれども、地方はもうその余地もなくなっている。

 したがって、地方の町村が能力的にできなくなってきているということについて、その対策なり、あるいはそれに対する考え方というものをどういうふうに整理していくのかということは極めて大事だと思うんですけれども、そこは農林大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 農業用水あるいは農村の資源を守っていくということは、最終的にはその食料政策、国土政策等々からいって国でございますけれども、最も身近な集落単位でやっていくということも、ある意味では一義的に極めて大事でございますから、その役割というものは、今後もいささかも損なわれるものではないというふうに理解しております。

荒井委員 せっかくだから、民主党の考え方も聞かせていただけますか。

山田議員 民主党では、今度の法案での財源ですけれども、一兆円の直接支払いということにいたしました。そのうち、国の予算から五千億、そして地域、地方、今荒井委員が御指摘のように、非常に財政困難な状況で各市町村疲弊しているわけですが、十八兆円の直接交付金というのを民主党では予定しておりますので、その中から、その地域に応じた、地域の振興に最も役立つようなものから、集落に対する利水とか資源の活用等々に対する直接支払い、そういった形で、資源の活用にも十分配慮した方向で法案を準備いたしました。

荒井委員 だんだん、時間がなくなりましたので、私の関心があるもう一つ二つ、質問させてください。

 一つは、バイオマスです。筒井さんがバイオマスの専門家なんですけれども、先ほどバイオマスについて御質問をしておりましたけれども、中川農林大臣は経産大臣もされておりまして、バイオマスについて非常に見識も深いと思うんですね。私は、大臣のときにバイオマスに関するしっかりとした農政の中での位置づけというものをするべきだと思うんです。

 現にアメリカは、ブッシュ大統領は、あれだけ石油の好きなブッシュさんですけれども、中近東からの輸入の約七五%をバイオマスに置きかえるんだということを演説されている。あるいは、ブラジルだとかドイツだとかというのは、政策的にバイオマスをエネルギーの総消費量の何%にするというような法律もつくって、バイオマスの振興というのをやっております。

 日本も、これは経産省になるのかもしれませんけれども、農林省が必死になって努力をしてバイオマスの振興策というのを経産省と一緒になってやるということがなければ、私はバイオマスの普及というのはないんだと思うんですね。技術的には、まだまだいろいろな越えなければならないハードルというのはあるんだと思うんですけれども、要は、民主党が出したように、バイオマスというのを法律の中にしっかり位置づけて国民にそこのところを訴えていく、そういう姿勢というものが農林省の中の政策に少し弱いんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、農林大臣、いかがですか。

中川国務大臣 法案には直接ございませんけれども、私、それから農林水産省を含めて、今積極的に取り組んでいるところでございます。

 バイオマスといいましても、例えば肥料とかえさ、あるいはまたエネルギー等々を、さっき農林三号の話が出ましたけれども、木質系あるいは食物残渣、あるいはまたいわゆる資源作物からやっていくということで、御承知のとおり、宮古島、伊江島、それから私の地元でも、C4作物を中心に、あるいは小麦の規格外を中心に今実験をしているところでございます。

 御指摘のとおり、ブッシュ大統領は一般教書で脱石油ということをはっきり言っておりますし、あの資源大国のブラジル、オーストラリアでも目標値を立ててやっているわけであります。まして、化石燃料に過度に依存している日本が再生可能エネルギーを利用しないということは、ある意味では、エネルギーのポートフォリオ上からいっても、また環境政策あるいはまた農業政策からいっても、これはもう遅まきながら必死になってやっていかなければならない。

 この前の総合エネルギー戦略におきましても、また、昨日の食料・農業・農村、政府の会議におきましても、この位置づけを急速にやって、五年後にはE3ベースでガソリンの約三分の一を生産していこう、原油換算で五十万キロリットルを生産していこうと、かなり厳しい計画になりますけれども、今ハイピッチで、農林水産省、環境省、経済産業省共同で、そして政府全体挙げてやっていきたいと思いますので、御支援をよろしくお願いいたします。

荒井委員 民主党の方に聞きますけれども、こういう農業政策の基本的な政策の中にバイオマスというのが突然ぼんと出てきて、これはある意味ではちょっと唐突な感もするんだけれども、しかし、バイオマスというものを世の中に広めていく、認知してもらう、この意味としては私は非常に意味のあるものだというふうに思うんです。

 そのあたり、突然この種の直接支払いの政策の中にバイオマスがぼんと出てきた、直接支払いの考え方とバイオマスとの間に何かしらの関連性というものを整理されたんでしょうか。そこをちょっとお聞かせください。

山田議員 バイオマスについての重要性というのは、民主党は、筒井さんとか、午前中菅さんもそういうお話をしておられましたように、大変大事にしてきておったわけです。今回、米の生産調整を廃止する。その中で、先ほど何回も説明しておりますから、過剰な生産というのはできるだけ誘導的に、あるいは生産目標を立ててやっていくので抑えられるとは思っておりますけれども、それでも一時的な過剰になった場合にそれを棚上げ備蓄、今政府がやっているのは回転備蓄で、倉庫料とかそういったものがかなりかかっておりますが、棚上げ備蓄にして市場に出さない。それで、棚上げ備蓄した米等については、いわゆるバイオマス利用によってエネルギーに転換するとか、そういった方向を計画的にやっていくことができる。

 そういう意味で、バイオマスは突然出てきたかのように見えますけれども、いわゆる主要食糧の直接支払いあるいは生産調整等々に基づいての備蓄利用におけるいわゆるバイオマス展開というか、そういう関連性を持っているもの、そう考えております。

荒井委員 中川農林大臣、バイオマスがいろいろな周辺産業、新しい技術、そういうものも生んでいくんだろうというふうに思うんですね。

 特に、税制面、例えばガソリン税をバイオマスにかけるのかどうかということも含めた極めて幅の広い制度の改革というのがバイオマスの普及にはかかっているんだと思うんですね。

 そこで、農林省だけではなかなかできないんだと思うんですけれども、経産省や財務省、あるいはガソリン税の話ですと国土交通省とかですが、関係する省庁とこのバイオマスの普及についてしっかりとした議論をしていって、農業政策の中にそれをしっかり位置づけていく。そのための必要な制度を農水省が中心になって、特に中川農林大臣は経産大臣もされたわけですので、ぜひバイオマスを進めていただきたい。京都議定書などで炭酸ガスの削減が大きな政策課題になっているわけですので、ぜひこれを国の大きな政策の柱として進めていただきたいというふうに思います。

 大臣の答弁を、決意を聞かせてください。

中川国務大臣 全く御指摘のとおりであります。

 実は、いわゆる輸送用のバイオマスエネルギーということになりますと、あのブラジルですらガソリンの価格とのバランスでE100にしたり、一〇〇%サトウキビにしたり二五%にしたり、こういうふうにポートフォリオを常に変えておりますから、そういう意味で、御指摘のように、税制、補助金、あるいはまた、どういうふうに使っていったらいいのか、地域省エネルギーとして使っていったらいいのか、全国的にガソリンの中にまぜていったらいいのか等々も含めて、まだ実験あるいはまた一部の地域で実験的に実用化しているという段階でございますけれども、その辺のシナリオは、もうきちっとしたものをつくっていかなければいけないのではないかというふうな認識を持っております。

荒井委員 時間がなくなりましたので急ぎますけれども、最後に、輸入食品の安全確保についてちょっと聞かせてください。

 米国産牛肉の輸入問題で、国会でも盛んに議論されておりますが、私たちの考え方というのは、山田議員や山岡議員からもたびたび表明をされているところでありますけれども、政府の食品の安全確保の取り組みというのは、厚生労働省の食品衛生法に基づいて水際で監視を行うという考え方でありますけれども、いっそのことというか、私たちがよく主張しております、専門家をそれぞれの国に派遣して常駐させて、そこで監視をしていくという体制に踏み切ってもいいのではないか、そういう時期ではないか、そんなふうに思います。

 また、各国の、日本からの食料品の輸出、これは余り例がないんだと思うんですけれども、水産物の輸出などには、当該輸入国から検査官が来てその産地をしっかり調査していくということを時々やっていますよね。それぞれの国の法律に基づいてやっているわけですけれども、そういう体制を、この食品輸入大国である日本がそろそろそういうものにしっかり取り組むべきときに来ているのではないかというふうに思います。

 役人の数が余っているから減らせみたいな話が片方であるんだけれども、しかし、行政需要は、別なところで物すごい行政需要が生じているのに、そこのところには目をつむってというように私には見えて仕方がないんですけれども、ここは、大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 食品の安全、安心という観点から、この前のあの米国産牛肉については、成田で、動物検疫でストップしたわけであります。おかげさまで、今御指摘のような状況の中で、この検疫業務に従事する職員の数はふえているわけでございますし、また、この前の、十二月十二日の再開の後のときのように現地に行くということもやっておりますので、そういう意味で、必要があれば積極的にこれはやっていく必要があるというふうに考えております。

荒井委員 一九八七年だったでしょうか、当時、竹下登総理大臣が、米の生産調整に絡んで国際会議に出席をすることになりました。たしかマニラだったと思います。そのときに、国際的に日本の米政策を納得してもらうということで、私やあるいは篠原さんが一生懸命資料をつくりました。どういう資料をつくったかというと、農業の多面的効果、ちょうど私はそのとき、日本の水田が国土保全に資している、ダムに換算するとどのぐらいなのかという計算をした覚えがあります。

 まだそのころは、多面的な効能というものについては違和感を感ずる方々がたくさんおられました。農業、農村というのは、あるいは農業という産業は、もっと経済的な側面で純粋に考えるべきだという議論の方が多かったかと思います。そういう中で、多面的な機能の話、効能の話というのは違和感を覚えたのかもしれません。

 しかし、ここに来て、多面的な機能とかあるいは直接支払い、そのころ、私も篠原さんも、直接支払い、スイスの傾斜地帯農業の直接支払い、ドイツの環境保全に対する直接支払いというようなものを随分勉強した覚えがあります。そういう意味では、日本の農業政策、ここへ来て、こういうことをこの委員会でしっかり議論するような、あるいはそういう関係の法案が出てきたということ自体物すごいことだというふうに私は思います。

 国民的な理解を得る努力はまだまだ必要だと思うんですけれども、ぜひ、政府・与党と民主党で競い合いながら、国民にしっかりとした農業政策を訴えていく、そういう基盤をつくるようにお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十六分開議

稲葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 通告に従い、順次質問していきたいと思っております。そしてまた、午前の各委員の質問と重複するところがあるかもしれませんけれども、確認の意味で重ねて聞くことをお許しいただきたいと思っております。

 それでは、まず法案、民主党案そして政府案、本当に国家の農政の転換期を迎える法案でありますので、一つ一つかみしめて質問していきたいと思います。

 さて、我が国の農業政策でありますが、大臣、WTOの関係で、モダリティーの関係で大変お忙しいところだと思います。まさに正念場だと私も思っております。

 そしてまた、この品目横断的な経営所得安定対策にかかわる交付金の法案だけでなくて、やはりそれに伴う担い手の育成やあるいはまた農地の流動化なども、これまた議論をする必要があると私は思っております。

 そのためには、一つ一つを見ていかなきゃいけないのでありますけれども、大臣もこの四月の末にはまたWTOの関係で会議だということで、追いまくられて、緑の政策だとかあるいは黄色の政策だとか、カメレオン政策じゃないですけれども、例えば猫の目農政にならないようにまずもってよろしくお願いいたします。

 そしてまた、やはり重要な法案でありますから、戦後六十年の農業政策、きちっと総括をしておかなきゃいけないと思っております。明治学院大学の神門先生によりますと、戦後の農業政策のゆがみの典型として、政府主導の生産カルテルである減反政策、そしてまた農地の転用規制、加えて農協政策、この三つを挙げておるところであります。

 小泉総理は、農業も構造改革、これを聖域にしないということであります。戦後六十年を振り返り、日本の農業の構造改革がおくれた原因、そしてまた国際競争力、そしてまた自給率の低下、一体、本質的なものはどこにあるのか。まず、大臣にお尋ねいたします。

中川国務大臣 私が今六十年を振り返るほどの知識はございませんけれども、荒廃の中からまず食料をいかに確保するか。私の父親の世代の話を聞きますと、白い御飯をおなかいっぱい食べたかったとか、私自身も、子供のころは学校給食で脱脂粉乳で育った世代でございまして、そういう中で、時々北海道に帰るとおいしい牛乳を飲むことができたという食に対する思い出があるわけでございます。

 やはり安定的に食料を国民全体に確保できるようにすること、これが戦後の政策の大きな柱の一つであったわけでございます。だから、傾斜生産方式という中で、肥料なんかを一生懸命増産したりしてきたわけでございます。

 そして、昭和三十六年に農業基本法というものができたわけであります。また、その前に、戦争直後に農地法という戦後の新しい概念、これは占領政策下の政策であったわけでありますけれども、そういう農業に関する法制度がいろいろとつくられてきたわけであります。

 そのときは、食料増産と同時に、農村と都市との格差をいかに是正していくかということで、旧基本法はとにかく生産拡大、そして、少しでも所得をふやすということでとられてきたのが価格政策であったわけでございますけれども、徐々にそういう政策から構造政策。と同時に、今御指摘のように、四十年代に入ってやっと米の自給ができるようになった途端に一次、二次の米の余剰、たしか両方で七百万トンだったと記憶しております。処理に使われた国費が二回合わせて三兆円という、今から四十年近く前の三兆円でございますから、大変な国費が余剰米処理に使われてきたわけでございます。

 そういう中で、構造政策という方向転換をしてきたわけでありますけれども、多様な農業が存在する日本において総じて一律の政策をとってきた結果、規模拡大でありますとか、あるいはまた、都市と農村の所得の格差も、時には冷害があったり価格暴落があったり、いろいろな面でなかなか目的が達成できなかった、これがまさに自然相手、生き物相手の農業の一つの特徴であったわけでございます。

 そういうことを踏まえまして、今から七年前、平成十一年に新しい食料・農業・農村基本法という法律がスタートしたわけであります。

 これは、単に生産サイドが生産しただけであとはおしまいということではなくて、消費者、あるいはまた加工、あるいはまた流通、自治体、国がそれぞれ役割分担をしながら、日本の食料というものをみんなで守り発展していこう、国内生産を基本として、備蓄あるいはまた輸入と組み合わせをしながら安定的に食料を供給していくという方向になってきたわけであります。

 その流れの中で、より具体的な農業政策を推し進めるということで、基本計画の見直し、大綱、そして今御審議いただいております、民主党の案も含めまして、今回の私どもの農政改革三法の御審議に今日至ったというふうに理解をしているところでございます。

黄川田委員 大臣も触れましたけれども、農林水産省の永遠の課題と申しますか、大規模農家の育成、この部分は、かつては、中核農家あるいはまた主業型農家ですか、認定農業者、そして最近ではプロ農家という呼び名もあるわけなんでありますけれども、必ずしも所期の目的が達成されたとはちょっと言えないと私も思っております。

 そこでまず、この法案の前提となりまして、昨年の経営基盤強化促進法等の一部改正がありまして、担い手の育成や担い手への農地集積はどの程度成果が上がっておるのか、あるいはまた上がりつつあるのか、現状をちょっとお聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、二田委員長代理着席〕

井出政府参考人 お答えいたします。

 昨年決定されました新たな食料・農業・農村基本計画におきまして、担い手への農地の利用集積を促進すると同時に、価格政策から所得政策への転換を図るということが述べられているところでございます。

 このうち、担い手に対する農地の利用集積の促進につきましては、昨年の農業経営基盤強化促進法の一部改正によりまして、一つには集落営農の組織化、法人化の促進でありますとか、農地保有合理化法人による農地の仲介機能の強化でありますとか、農業への新規参入の促進等の観点から所要の見直しを行い、昨年の九月に施行いたしました。この九月から十二月までのわずかな期間でございますが、その間に、認定農業者の新規認定数が一千八百六十六経営体増加するなど、徐々に成果が出始めているところでございます。

黄川田委員 お話しのとおり、この経営基盤強化法ですか、昨年九月に施行され、そして大綱が十月に出されたということでありまして、まだ時も間もないわけでありますけれども、この法案が出るまでにやはりしっかりした担い手と農地の集積をやっておくべきだったんじゃないのか、むしろこの基盤強化の法案はもっと早く出るべきだったんじゃないかと思っておるのであります。これから家を建てるのに土台がまだまだしっかりしていないという状況では、本当に法律として現場で生かされるのかという心配がちょっとあるわけであります。

 そもそも、この品目横断的な政策の導入でありますけれども、既に平成十年九月の食料・農業・農村基本問題調査会の答申において明記されておったわけであります。であるならば、もっと手順を踏んだ法案化、そしてまた政策展開があるべきだと思っておるわけでありますけれども、どうでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 今回の品目横断的経営安定対策の導入に当たりましては、平成十一年の七月に制定されました食料・農業・農村基本法におきまして、価格政策から所得政策への転換という政策方向が示されて以降、平成十四年十二月には米政策改革大綱が発出されまして、また昨年三月の新たな基本計画、十月の経営所得安定対策等大綱の制定等、この間着実に検討を積み重ね、望ましい農業構造の確立に向けた施策展開の方向性を具体化してまいりました。

 戦後農政の大転換となるものであることを踏まえますと、この法案化の作業については、順当に推移して今日を迎えたというふうに考えております。

黄川田委員 それでは、今回の経営所得安定対策の評価でありますけれども、学識経験者の中でもさまざまに意見が分かれているようであります。

 担い手の限定については、これまでの価格政策はばらまき的であったが、少ない費用で大きな政策効果が期待できるとする方もおります。また一方、特定産品を過去に生産していただけで国民の税金が農業者に支払われる理由、それが明確でないという方もおられます。そしてまた、農業の公共性やあるいはまた食料の安全保障の観点からこの保護対策を制度化するなら、規模要件の必要性があるのか、食料の安全保障の強化が目的であれば、また想定する危機に対応した別の施策が展開できるということでありまして、担い手保護は直接寄与しないんではないか、そういう主張をされる方もおります。

 そこで、農業の公共性あるいはまた公益性、多面的機能とか、いろいろこれまで議論されましたけれども、改めて大臣、農業の公共性ということについてお話をいただきたいと思います。

中川国務大臣 農業は、農産物という人間にとって欠くことのできない貴重な財を生産すると同時に、その農業生産活動、あるいはそこに住んでいらっしゃる方々の、農村の果たす役割というものも極めて大きいものがあると思っております。

 黄川田委員が先ほど御指摘になりましたWTO交渉におきましても、農業と工業を何で区別するんだという一部の国々がありますけれども、加盟百五十カ国のほとんどの国々が、例えば農村開発であるとかあるいは国の発展のために農業が必要であるという主張をする国々、途上国が大変こういう主張は強いわけであります。また、日本を初めそれ以外の国々も、農業の果たす、WTOで申し上げますと貿易、単に工業品の貿易と違う大きな役割があるんだ、これが多面的な機能であり、また多様な農業の共存が必要であるということを主張しているところでございます。

 そういう観点から、日本におきましては、我々の住んでいるこの日本は、非常に急峻な国土で、そしてまた雨も一時期にどっと降る、そして川が諸外国に比べて非常に短いといった観点から、農業が果たす国土保全、水源涵養、あるいはまたそれ以外にも、日本の文化をある意味では決定づけております景観とか歴史とか、そういった経済的な要素以外の部分でも極めて大きな役割を果たしておりますし、特に、小さなお子さん方が健全に育っていく上でも、私は、農山漁村の果たす役割、またそこでできる生産物の子供たちに与えるかけがえのない影響というものは、これからますます大事になっていくと思います。

 そういった意味で、黄川田委員は公共性というお言葉をお使いになりましたが、いわゆる農業の果たす多面的役割というものは、過去の日本の歴史におきましても、また現在も、そして将来も大事であると確信をしておりますので、それを守り、そしてまた発展をさせていくのが我々の責務だというふうに理解をしております。

黄川田委員 午前の質疑でも、多面的評価、農業は七、八兆円ぐらいの価値がある、日本学術会議か何かで多分試算したところだと思うんですけれども、林業の方では、何か合算すると七十兆円ぐらいの多面的機能があるというふうなこともちょっと私は聞いております。

 いずれ、総合食料基地というふうな考え方だけではなくて、やはり公共性に富んだ地球環境あるいはまた国土保全であるとか、そういう目線あるいは視点というものがあるということを、我々はふだんこういうふうな多面的機能を使っていますけれども、国民一人一人にしっかりと理解してもらう、そういうことによって我々の政策が発揮されるというふうな形だと思っておりますので、この国民に対する目線の部分をしっかり持たなきゃいけないと私は思っておるわけであります。

 そしてまた、先ほど来、WTO交渉ということで、欧米におくれをとっているんじゃないのかとか、EPAとかFTAとかさまざまありますけれども、そういうふうな時代の流れの中で、これは取り繕うための部分の中でさまざま政策が出ているんじゃないのかという思いと、もう少し地域で汗をかく農業者の目線に立った、そういう行政なのかなとちょっと思うところがありますので、その点をお尋ねいたしたいと思います。

井出政府参考人 現在進めておりますこの農政改革につきましては、近年の食料、農業、農村をめぐる情勢の変化を踏まえまして、十一年に制定された新たな基本法におきまして基本的な施策の方向性が既に示されております。それを総合的かつ具体的に推進するために、食料・農業・農村基本計画を策定し、各施策の具体的な実施工程もあらかじめ明らかにするということで、これに基づき着実に施策を実施してきているところでございます。

 もちろん、今回の対策の実行に当たりましては、基本計画の策定時から、地方での説明会のみならず、各地域では集落リーダーの皆さん方にお集まりいただくなど、地域の実情もしっかり把握しながらその政策の基礎固めをしてきたところでございます。

    〔二田委員長代理退席、委員長着席〕

黄川田委員 設問の趣旨がちょっと余り明快でなかったかもしれませんけれども、大臣の命を受けて役人はそれぞれ法案をつくっていくわけでありますけれども、その法案が生かされるのはやはり現場でありまして、その現場は、生産者だけではなくてやはり消費者も見据えてということになると思います。

 小泉総理は、スローガンで、攻めの農業、意欲と能力だ、キーワードはやる気だと。もちろんやる気はみんな持っているんだけれども、なかなかスタートラインが難しいというふうなところとか、いろいろな農業者もあるわけでありますよね。そういう中で、さまざま段取っていこうとすれば、現場に行く中でいろいろな意見を吸収されるはずなのであります。法案は条文が余りないですけれども、そういう中でどうやって農業者、生産者が理解していけばいいのか、そういう思いがあるものですから、ちょっと聞いたわけであります。

 それでは、農業の現実といいますか、調査報告書から見た形をちょっと話したいと思います。

 昨年九月、農水省は五年ごとに行います農業版の国勢調査、二〇〇五年の農林業センサスの結果を発表いたしました。それによりますと、農業生産法人などの生産組織と販売農家を合わせた農業経営体数が、二〇〇〇年に比べ一五・五%減の百九十九万九千戸。そのうち、販売農家戸数は百九十五万三千戸となっておりまして、二百万の大台を割っておるところであります。そしてまた、耕作放棄地も一二・二%増の約三十八万ヘクタールにまで拡大している。これが現実であります。

 国内の農業基盤、一層弱体化しているのではないかと思っておりますけれども、このセンサスの報告書を踏まえまして、大臣、どのような認識を持っておられますか。

中川国務大臣 この農業センサスで、黄川田委員御指摘のとおりでございまして、販売農家百九十五万、経営体百九十九万ということで、減少しているわけでございます。また、耕作放棄地も御指摘のように三十八万ヘクタールということで、農地の一五%ぐらいが耕作放棄地になっているということ。

 これは一つには、日本全体が今そういう時代に入ってきたわけでありますけれども、少子高齢社会、あるいはまた人口減少社会という状況が、特に農山漁村においては高齢化がより進んでいるという認識を私も持っております。

 だからこそ、我々としては、消費者、国民に対して、国民が望んでいる、また不安を回避するためにも、国産の農産品を供給していく、しかも良質でできるだけ価格の面でも安いものを供給していくという責任が大きいわけでございます。先ほど申し上げましたように、基本法はあくまでも国産、国内生産を基本としてということになっているわけでございます。

 したがいまして、我々の今回の農政改革は、文字どおり待ったなしという状況であるわけでございますので、やる気と能力のある農業者あるいは経営体が、文字どおりそれが思う存分力が発揮できて、いい結果が出るような方向に政策を思い切って誘導していきたいというふうに考えているわけでございます。

 地方によって若干のばらつきがあるわけでございまして、都市農業、あるいは中山間地農業、あるいはまたそれ以外の地域、また私のところのように、農家戸数は減っているけれども農地が足りないといって規模拡大をさらに求めている地域も、ごくわずかのようでありますけれども、あるわけでございます。

 いずれにしても、総じてやる気と能力のある経営体が、その意欲が現実に実現できるように、そしていい結果が出るように、そして収益、もうかる農業が目指せるようにやっていく必要がある。そういう観点から、今回、品目横断の経営所得安定対策という施策を平成十九年度から実現したいということで御審議をお願いしているところでございます。

黄川田委員 これは通告していないのでありますけれども、現実が報告として出ます五年後のセンサスでありますけれども、そういうものに結果としてあらわれればいいなというふうな、例えば具体の数字なんというのはあるんでしょうか。農家戸数はこうであるとか、遊休地、耕作放棄地がこういう形になってほしい、そういう部分というのはどうでしょうか。

中川国務大臣 経営体が百九十九万で、担い手の経営体、午前中から数字を、目標の数字、スタート時の数字、あるいは二十七年に向かっての数字を申し上げておりますが、それは一つでも多くの経営体が担い手として認定され、思い切って経営ができるようにということで、数字が減っていく方向から、経営体全体、あるいはまた我々が今予想しております担い手の数よりも上回っていく。あるいは、耕作放棄地、貴重な農地が放棄されているという状況はできればゼロを目指して、少しでも小さくなっていって、その結果、国産の生産がより消費者に選ばれていって自給率が向上していく。そしてさらには、我々が目指しております、輸出も五年間で倍増しようという計画を今実行しているところであります。そしてさらには、世界の貧困の撲滅に貢献もできて、今我々の農政の基本であります立ち上がれ農山漁村という政策の目標が、少しでも実現、もしくは実現に近づいていければいいなというふうに思っているところであります。

黄川田委員 大きなスローガンで、それはそれでいいわけであります。今度のこの経営安定対策でありますけれども、対象でありますが、認定農業者及び特定農業団体ということに限定しておる、そして、非担い手は対象の外であるということであります。

 それで、食料・農業・農村基本計画に示す、この十年以内の四五%自給率の達成でありますが、二〇〇五年の農林業センサスを見ますと、本当に現状の四〇%を維持するのも大変かな、こう思っているわけであります。自給率の関係では、午前に大臣お話しされましたので、事務方にお尋ねしたいのであります。

 政府案の平成二十七年度にカロリーベースの四五%の目標の達成なんでありますけれども、さまざま個別具体に自給率の向上策を考えておると思いますが、マクロ的に、あるいはまた逐次的なシナリオ、そういうものがあると思いますので、事務方からちょっと答弁をいただきたいと思います。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、昨年三月に閣議決定されました食料・農業・農村基本計画におきまして、平成二十七年度の食料自給率の目標をカロリーベースで四五%と設定したところであります。この目標達成に向けましては、生産及び消費両面におきまして重点的に取り組むべき事項を明確化したところでございます。

 具体的には、一つは、消費面では、日本型食生活の推進に向けて、食事バランスガイドの普及でございますとか活用に努める、あるいは、わかりやすく実践的な食育を進めてまいるとしたところでございます。一方で、生産面につきましては、食品産業と農業の連携の強化でございますとか、経営感覚にすぐれたやる気と能力のある担い手の育成、確保を図ることにより、需要に即した生産を進めているところでございます。

 今回の基本計画に当たりましては、工程管理ということをもう一つ前面に打ち出しております。今後、地方公共団体、農業者、農業団体、食品産業の事業者、消費者団体、消費者などの関係者から成ります食料自給率向上協議会において策定されました十七年度の行動計画、各年度の行動計画がございますけれども、その推進状況と評価を踏まえまして、また十八年度の行動計画の策定に反映していくこととしておりまして、このような工程管理を適切に実施することによりまして、自給率向上の取り組みが迅速かつ着実に実施されるよう、関係者と一体となって取り組んでまいりたいと考えております。

黄川田委員 オーストラリアの外務貿易副次官ですか、先般、日豪自由貿易協定、FTAを締結した場合に、日本の農業が受ける影響は限定的だとする豪州政府の試算結果を示したところであります。

 これは日経新聞の記事なんでありますけれども、豪州産農産物の日本向け輸出額は日本の国内生産額の六%程度である、日本が農産物輸入を完全自由化しても、二〇二〇年までの農村雇用縮小は一・五%にとどまるということであります。そしてまた、日本の農村雇用の縮小幅一・五%でありますけれども、日本の農業人口の自然減よりも小さいはずではないかというふうな主張もされながら、FTA締結を図ろうとしているわけであります。

 安全、安心な食料を日本の中できっちりと生産し、そして自給率を向上するということの中で、本当に大事な取り組みをしっかりやらなきゃいけない、そう思うわけであります。

 時間も進んでまいりましたので、次に、品目横断的な経営所得安定対策が実行された場合の、農業所得が最も少なく、しかしながら、五五%、販売農家の過半を占めるこの副業的農家、この切り捨ての問題があるわけでありますけれども、そういう中で、先ほど言った自給率のほかに、耕作放棄地がふえていくんではないか、こういう問題を私も本当に思うわけでありますが、この点に関してはどう理解しておるでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 品目横断的経営安定対策の対象者につきましては、我が国農業の構造改革を加速化する観点から、認定農業者、または一定の要件を満たす集落営農であって、一定の経営規模以上のものを基本としてはおりますが、小規模な農家や副業的農家につきましても、一定の要件を満たす集落営農に参加していただいたり、また、経営面積は小さくても複合経営等によりまして一定の農業所得がある場合には対象となることができるとするなど、門戸は十分に開かれているところでございます。

 耕作放棄地につきましても、このまま農業従事者の減少、高齢化が進行してまいりますれば、さらに一層その増大が懸念されるわけでございまして、かえって、本対策の導入によりまして、意欲のある担い手、これは集落営農組織も含むわけでございますが、その担い手によります農地の有効利用が図られる中で、耕作放棄地の発生を防止し、さらにそういった農地についても復元をしていくということは可能ではないかと考えております。

黄川田委員 入り口は広くあけておく、対象者も十二分に捕捉するような形で頑張るという話なんでしょうけれども、どうも、私から見て、格差の問題といいますか、これはちょっと外れますけれども、今国会の大きな問題は、衆議院でも参議院でも社会の格差というのがいろいろ出ておるわけであります。地方、特に農山漁村の社会では、こういう一つの政策的な落としどころがどんな形で結果としてあらわれるかというところが非常に想定されるわけなのであります。少子化、そして高齢化、担い手の担い手が本当にいるのかとか、いろいろな課題があります。十年後、二十年後の農村社会を思い起こすと、どういう形の中であらわれるか、そういう農山漁村の風景というのが本当に心配になるわけなのであります。

 この政策を実行する中で、地域社会がきっちりと存続し、そして立派な風景になっていると思うか、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになって恐縮でございますが、このまま農業従事者の減少、高齢化が進みますれば、まさに委員御指摘のように、農業のみならず、農村地域社会の維持発展にも大変な支障が生じかねないと考えております。

 今回の対策でも、一定の要件を満たす集落営農組織をその担い手として認知していくということにいたしましたのも、既に主業農家はおらず、集落の中に農業の主たる担い手が見当たらないという集落が西日本を中心に非常にふえている、こういう現状にかんがみまして、まさに集落機能を維持しながら集落ぐるみで営農をしていく集落営農組織というものを、これからの農業の担い手としてやはりしっかりと認知をしていかなければならないだろう、そういうことを考えております。

 現在、各地で説明会あるいは意見交換会、私どもも既に、一月以降、十道県を回らせていただきまして、各地の認定農業者の方とか集落のリーダーの方とお話をしながら、この集落営農というものを、一歩でも半歩でも踏み出していただければ対象になってくるんだということを御理解いただいた上で物事を進めている。その中で、特定農業団体に既になったというところも出てきておりますので、そういった取り組みに期待をかけ、また私たちも応援をしていきたいと思っております。

黄川田委員 小泉構造改革のしわ寄せが一体どこに来ているかということであります。農山漁村に一番来ているのかなと私は思っております。農山漁村をつぶすのは総務省と農林水産省ではないかと思っております。かつては、総務省そして農林水産省は、地方にとってはパートナーでありましたけれども、どうもそうは見えなくなってきたようであります。

 規模の拡大、平成の合併が終わりました。まだ、特例法もありますけれども。三年前までは三千二百の市町村がありましたけれども、今は千八百二十の市町村であります。小さな一万、二万の町村が合併すれば足腰が強くなる、そして地方交付税の受け皿もしっかりとなれるんだという形の中で、ちょうど集落営農みたいな感じですよね。個々の一万、二万の町が集まって、例えば十万の町になった。首都圏に昔からある、従来からある十万の都市とは違って、弱い足腰の人たちが集まったからといって本当に足腰が強くなるのか、そういう問題があります。

 そしてまた、規模拡大の中で、しっかりとした財源移譲ができるんだよということになったら、とらの子の地方交付税にメスを入れるということであります。そしてまた、倒れたところはどうするか。町村の自治体、かつては財政再建法、そういうものがありましたが、最近、竹中さんは破綻法であります。もうつぶれていくところはしようがないじゃないのかというふうな感じであります。

 また一方、農業政策も、規模の大きなところとそれ以外のところとの区分けだと思っております。どうもその原点は、財政の問題から全部来ているような気がします。かつては、顔が見える行政ということで、市町村も特色ある町づくりにみんな頑張ってきた。農業もそうだと思います。ところが、財政構造の中で、あるいはまた財政環境が厳しい中での、それ一点張りの政策じゃないのかとも思うわけであります。

 大臣から一言、御見解なりあるいはまた所見なりがあれば伺いたいと思いますが、このことについて。

中川国務大臣 確かに、今の地方あるいは農業者の皆さん、全部とは言いません、でも、一般的な農業者の皆さんは、景気回復の中で、大都市よりも地方の方がまだ景気回復がおくれている、多分、黄川田委員の御地元も私のところもそういう認識を持っておる人が多いんだろうと思います。

 それから、WTOにつきましては、今月末に向かって非常に今心配をされている、あるいはまた、この法案が一体どういう形になっていくのかということについても大変強い関心を持っていらっしゃるということで、今まさに、農政あるいはまた自分の住んでいる農村地域について、期待と不安と入りまじった形でこの審議等々を見守っていらっしゃる大勢の農業者の方がいらっしゃるという認識を私自身も持っております。

 だからこそ我々は、厳しい話ももちろんあるわけですけれども、本当に戦後の農政のいろいろな経験を踏まえて、文字どおり、二十一世紀に向かって、国民に向かって、いいものを自信を持って生産していくんだ。

 午前中の質疑の中で、それぞれの地域で同じものをつくるようなことになりかねないというような御発言がどなたか、委員からありましたけれども、自然あるいはまた地域によって、同じものをつくってもやはり差別化していく努力、あるいはまた、自然によって差別化されていくことによって、黄川田委員の御地元での特産物あるいは全国それぞれの地域での特産物をつくることによって、消費者というのは、本当にそういうものに対しては、ある意味では期待をし、敏感に思っているわけでありますから、いいものをつくって、そして消費者あるいは世界に向かって供給をしていけば、私は、やる気と能力でやっていけばいい結果が出てくるというプラスの面を大いに発揮できるような農政というものを目指していきたい。したがって、この法案によってこれをぜひ裏打ちしていきたいというふうに思っております。

 全国それぞれ、一様ではございませんけれども、希望を持って頑張っていこう、この法律によって頑張っていこうという農家もいっぱいあるし、また、この先どうなっていくんだろうかという農家も、私はないとは言いません。しかし、そのいいところはさらに頑張ってもらえるような農政が、今後、この厳しい先行き、高齢化あるいはまた人口減あるいはまたWTO、いずれにしても厳しい交渉の中で我々も精いっぱい頑張ってまいりますけれども、そういう中で、やはり農業者の皆さんも頑張っていただく、努力をしていただく、そしてその結果が報われるというような農政を目指していくことが、我々が期待をし、また支援をしていく今後の日本の方向だと確信しながら、私は、この法律というものをぜひとも実行に移させていただきたいというふうに思っているところでございます。

黄川田委員 竹中総務大臣には、大臣になる前に一万人ぐらいの町や村の町長なり村長をやってみれば一番いいんじゃないですか、破綻法を受けるような状況にあるところもあるということを身にしみて感じてほしいということをお話ししましたし、中川大臣には、この農業政策で、農林水産省の組織が肥大化するばかりで現場の集落はどんどん消えていくというふうなことにならないようによろしくお願いいたしたいと思っております。

 それでは、午前中にもちょっとあったのでありますけれども、確認であります。認定農業者としての担い手の育成、これは喫緊の課題であると思っておりますが、現在の認定農業者の数はどのくらいなのでしょうか。全国の人数、それから特に多い都道府県があったらお答えいただきたいと思います。

井出政府参考人 認定農業者数でございますが、平成十七年十二月末現在、昨年の末でございますが、全国で十九万四千八百七経営体でございます。その中で、認定農業者が非常に多いといえばまず北海道でございまして、そのうち二万七千八百八経営体が北海道でございます。都府県では、その次に多いのは熊本県でございまして、九千九百十二経営体というところでございます。

黄川田委員 先ほど、筒井先生が何か時間になっちゃって、後ろの方がちょっと聞こえなかったものですから確認なんでありますけれども、制度の対象となる認定農業者ということで、耕地面積であれば五割ぐらいだ、それから農業者であれば三割ぐらいだというふうな答弁だと思いますが、間違いないでしょうか。

井出政府参考人 あくまで農林業センサスに基づきます経営耕地面積四ヘクタール、北海道で十ヘクタール以上、あるいは集落営農については実態調査に基づき現在存在するとされています一万組織、これをベースにして試算をいたしますと、今申されましたように、面積で五割、農家で三割程度という試算ができます。

黄川田委員 そしてまた、これから加入される方々ということで、制度の加入ということがあるんですが、認定農業者が、さらに自分の認定農業者はいるぞというふうな形の調査なんかはあるんでしょうか。現実の認定農業者はあるわけなんでありますが、さらにそれぞれ認定農業者が次の代の認定農業者としてこれぐらいはあるというふうな統計数字とか、何かそういう材料というのはあるんでしょうか、持っているんでしょうか。

井出政府参考人 認定農業者自身は、将来において計画的に経営改善に取り組むということで、計画をお出し願って、近い将来にしっかり農業で、俗な言葉で言えば飯を食っていけるということを、本人も思い周りの方も間違いないとした方でございますので、次の世代の認定農業者候補者がどの程度いるかということについては、数字の上では確たる把握はいたしておりません。

黄川田委員 もちろん、認定されるから認定農業者であって、されるかどうかわからない、子供がいてもさまざまあるんでしょうけれども、ただ、制度を始めて、これが本当に十年後、二十年後に生かされるというのであれば、次の認定農業者といいますか、後継者がしっかりととらえられなきゃいけないと思うわけであります。

 さらなる認定農業者になるような形の若い人たちとか、今でさえもたしか六十歳を超している方々で認定農業者だと思いますけれども、そういうふうな育成の対応といいますか、支援といいますか、そういうものは具体的に何かやっているんでしょうか。

井出政府参考人 一般的に、農家の後継者対策でありますとか、新規参入者の対策については、さまざまな角度から考えられることは何でもやっているというくらいやっていると思っております。

 さらに、次世代の担い手を確保していくためには、現在、認定農業者になられている方々が、本当に効率的かつ安定的な経営に発展していく、自分の間近でそういう農家がどんどんふえていく、あるいは自分の父がそういうふうになっていくということがはっきり見えるということが、やはり後継者とか新たに農業に参入してくる人たちにとって力になるわけでございますので、私どもとしては、一方では、新規就農者とか後継者対策を打ちながら、この認定農業者として認定された方々に経営施策をできる限り集中的、重点的に実施する中で、効率的かつ安定的な経営に育てていく、この両面で次世代の担い手を確保していくというふうに考えております。

黄川田委員 わかりました。

 では、法案の根幹のところなんでありますけれども、この法令の第四条であります。収入の減少が農業経営に及ぼす影響を緩和するための交付金の交付を定めていますが、この短い条文中に農林水産省令に定めるところによりの表現が五カ所もあるわけであります。

 簡潔明瞭な法律ということであるかもしれませんが、逆に、さまざま書かなきゃいけないところ、裁量行為といいますか、政省令に落とし込んでいるんじゃないのかというところがあります。そういう部分で、きちっと書くことによって議論ができるというところもあるわけなんですが、その部分はどうなんでしょうか。

井出政府参考人 今回の法案におきましては、対象者や交付金の基本的枠組みにつきましては明確に規定をさせていただいた上で、具体的な経営規模要件ですとか交付金の算定方法等につきましては、法律に規定する事項としては技術的であることから、政省令等で定めることとしております。

 また、これらの内容の多くは、昨年十月に決定、公表いたしました経営所得安定対策等大綱において明らかにしてきているところでございますが、午前中の御審議でもございましたので、政省令規定見込み事項として速やかに当委員会に対してお示ししたいと考えております。

黄川田委員 午前中に二田先生から御指摘があって、出してくれないのかという話がありましたので、それはいただいてしっかりやりたいと思っておりますけれども、集落に入って、この法案の説明といいますか、同時進行で説明しても、顔が見えないとか中身が見えないと言う人がさまざまあって、都道府県の職員であってもなかなか説明し切れないところがあるとか、あるいはまた疑義が生じているとか、たくさんあるようでありますので、その辺はしっかりやっていただきたいと思います。

 うがった見方で、隠したいあるいはまた裁量行為の部分はどんどん政省令に回そうというふうな感じの、別にこの法案というだけではなくて、どうもそちこちの委員会に見られているような気がしましたので、確認の意味でちょっと質問したわけであります。

 もう残り時間がなくなってまいりました。それでは、三位一体改革の中で、補助金も、例えば交付金化とか、手続がどんどん変わっておると私自身は思っておるわけなんでありますけれども、地方分権の時代、そしてまた効率よい行政をやるということでありますから、書類は少なく、そしてまた簡潔明瞭な補助金体系になっているとか、交付金体系になっているというところが一番大事だと思っておるわけなんであります。補助金から交付金への金の流れとか、そしてまた、今回の法案ではどんな事務手続で実際に申請し、そして金がもらえるのか、それに都道府県とか市町村とか、あるいは農協さんとか、どんなかかわりがあってやられておるのか、その辺をちょっとお聞きしたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 今回の品目横断的経営安定対策につきましては、基本的には、交付金の交付を受けようとする農業者の方が国に交付の申請を行い、国が農業者に対し直接交付金の交付を行うということを考えております。

 これは、本対策が食料の安定供給という国の責務を果たす観点から、基本的に国費により実施するものであること等から、国が中心になって行うことが適当との考えによるものでございます。

 また、国以外の機関、団体につきましては、都道府県は、現在もやっておりますが、経営規模要件の特例の申請をしていただくとか、市町村については認定農業者や特定農業団体の認定をしていただく、農協については農業者の過去の生産実績や当年の生産数量に関する情報の提供をしていただくといった面で本対策にかかわっていただくことによりまして、この対策の円滑な実施が図られるように側面からサポートしていただくということになっております。

黄川田委員 従来であれば、農家の方々、書類を書くということ、申請するということで、手間暇といいますか、生産現場で汗をかくのは上手なんだけれども、書類手続とかさまざまあるということで大変難儀をすることがあって、農協であるとかあるいはまた市町村とかがかかわりながら、滑らかに交付金が流れていくというかそういうことなんであります。

 これは、確認しますけれども、農家が直接国へということでありますが、そうしますと、国の出先機関といいますか農林事務所とか何かとか、そういう形の中なんでしょうか。そしてまた、交付に至るまでの申請であるとか、あるいは確認であるとか、物すごく何か面倒な書類の動きとかがあるんでしょうか。確認であります。

井出政府参考人 お答えいたします。

 基本的には、国ということで、農政事務所の窓口に申請をしていただくということを考えております。

 ただ、今委員から御指摘のように、事務手続はできるだけ簡素化するつもりではございますが、場合によりますと、やはり農協でありますとかそういったところで、その申請についてお手伝いをいただくということが必要になる場面もあるかということで、現在、その手続及び書式、そういうものについてどういうものになるかということを詰めておる段階でございます。

黄川田委員 改革と称されて、例えば地方の下水道、集落営農、農林水産であれば漁村集落排水とか、あるいはまた、環境省ですか、合併処理浄化槽とか、内閣府の方で全体計画を出せばスムーズにやってやるよということの中で始まりましたけれども、事務は煩雑で、何のための改革か、実務的な事務手続の部分でありますけれども。

 あるいはまた、これは一緒じゃない話なんでありますが、例えば国民年金、これはどこの仕事だと。地方事務官がおって、社会保険庁といいますか、そして国民年金は市町村に窓口があってやっておりました。その後、これは国の仕事だということで、これは地方分権一括法の中で決まった話なんでしょうけれども、そうしたところが翌年からすぐにもう収納率が落ちるとかさまざまあって、この部分は国家が責任を持ってやるという所得補償であり直接支払いでしょうから、さまざまやっていいのでありますけれども、ただ、仕事のための仕事といいますか、農林水産省の職員だけが忙しくなって、その部分の事業、事務だけが肥大化して、本来的な意味での現場が本当によかった政策だったなと思えるような中身にしないと、本来的ないいものにはならないのではないか、私はこう思ったわけであります。

 そろそろ、あと残り十分になりましたので、農政というだけじゃなくて、民主党案には、水産の関係、水産振興についての部分も触れられておりますので、ちょっとその部分についてお尋ねいたしたいと思います。

 民主党案でありますけれども、農業者への直接支払い、政府提出法案の対案であると同時に、安全な食料、食料は何も農業だけじゃありません、水産業でも食料の安定的な確保という観点からさまざまな政策を展開しなきゃいけない、こう思っておるわけであります。

 そしてまた、かつて日本の水産は本当に世界に冠たる水産王国でありまして、私なんかは岩手の三陸海岸で生まれましたので、七つの海を本当にマグロはえ縄漁船が行き来した。船は帰ってこないで、もう二十年、三十年前にもなりますか、船乗りたちは飛行機で戻ってくるんですよ。ガーナから戻ってきたとかそういうふうな時代がありました。

 しかしながら、今は輸出産業じゃなくてもう輸入に、魚市場で一番大きいところはどこだというと成田である、こういうふうな感じになっております。二百海里の排他的経済水域の設定とか、世界の情勢は本当に変わりました。自給率は水産関係は五五%ですか、こういう状況になっております。そしてまた、輸入水産物の激増でありますね。それから、デフレ経済でありまして、魚価は低迷しておる、むしろ下落しておるというのが実情じゃないですかね。それから、最近のエネルギー、重油の高騰等々、本当に日本の漁業は瀬戸際にあるんじゃないか、こう思っておるわけであります。

 そうした状況を踏まえまして、民主党案でありますけれども、資源の回復と漁業経営の活性化の観点から、水産行政の抜本的見直しということが触れられております。そのポイントをお示しいただきたいと思っております。

山田議員 今、本当に漁業は大変な状況にありまして、油代がなくて出漁もできないというようなところが多々見られると思っております。

 そんな中で、やはり本当に、漁業の再生、そういったものを考えて、民主党案では、今回、安全な食料、安定的な食料確保の一環として水産政策も大きく取り上げさせていただきました。

 特に、水産において一番問題なのは、資源の枯渇、魚がとれなくなったということ、もう一つは魚価の低迷、かつての魚価の半分とか三分の一とかといった中で、まず、どうしても資源の回復を図る、そのためには、国による期間を定めたあるいは海域を定めた徹底的な魚種の資源調査、そして、それに基づく資源回復事業、直接支払い、そういったものを考えていきたい。

 その一環として、TAC制度、これが名目上に今陥っておりますが、これを個別TAC、各漁業者ごとにTAC制度を定めていく、そういった大胆な資源回復の事業に取り組むことと、価格安定については、いわゆる農業におけるナラシ政策、いわゆる安定的な収入を得るための直接支払い制度、それを考えております。

 また、今離島の漁村集落に対する支援、直接支払いが、自主的に種苗の放流とかあるいは海の藻場づくりとかそういった取り組みをしておりますが、それは大変効果的な事業だと見られますので、漁村集落に対してもそういった対策を、直接支払いを我が民主党のいわゆる水産政策においては大胆に取り入れて、漁業の活性化を十分図っていく所存であります。

 以上、説明いたしました。

黄川田委員 今、山田先生からTAC制度、漁獲割り当て制度ですか、そういうものを個別のものも考えながらということでお話がありました。譲渡性を持つ個別の漁獲割り当て制度でありますけれども、これは欧米諸国においては類似の制度を導入されておると聞いておりますけれども、山田先生、どうでしょうか、欧米諸国では。

山田議員 EUでは個別TAC制度が導入されている、私もEUのブリュッセルに行ったときにそういうお話を聞いてまいりましたが、EUにおいては、何よりも個別TAC制度で、この漁船でこれだけとっていい、それを例えば病気になったりなんなりしたときには譲渡もできる、そういう制度をとられているようです。

 それと、何より、やはりEUにおいて我々が学ぶべきことは、二十八種類の魚において、過去三年間の平均価格より下回った場合においてはそれを買い支える、買い支えた魚を焼却処分にするという事実上の価格支持制度が行われてきている、そういったことでありまして、やはり個別TAC制度と同時に魚価の安定性、少なくともナラシ制度というのは絶対に必要ではないか、そう考えております。

黄川田委員 一方、我が日本の漁業権制度のもとでは、必ずしも資源管理がうまくいっていないんじゃないか、こう思っております。また、現行制度では漁業経営をがんじがらめに規制している結果、経営の改善も図れない。そしてまた、現場の漁業者からの声もあるわけであります。

 政府においては、食料・農業・農村基本計画の見直し、それから林業の基本計画の見直し、そしてまた水産基本計画の見直し、これが三本柱だと思うのでありますけれども、水産基本計画の見直しにも着手していると思うわけであります。資源を回復しまして、そしてまた漁業経営の活性化を図るためには、現行制度はゼロベースからもう一度見直すということが大事であると私は思っております。

 そこで、今、民主党法案に言うところの譲渡性を持つ個別漁獲割り当て制度、これを含む漁業権制度の抜本的見直し、そういうものを検討する気はないか、政府の見解を求めます。

小林政府参考人 御指摘の個別漁獲割り当て制度でありますが、これはメリットといたしましては、漁獲競争を抑制できる、したがって、高い魚価が得られる時期に計画的に漁獲することができるとかさまざまなプラス面があるわけであります。

 今御指摘がありましたEUでも、一部の国で導入しております、イギリスとかオランダ。一方で、スペインとかフランスはまだ導入しておりません。そういった導入した地域での問題点としまして、例えば、割り当て量を超過した際に報告が虚偽になるとか、それから非常に価値の低い小型魚はむしろ投棄されるとか、こういったマイナス面もございまして、そういったところがまず一つのポイントとしてございます。

 翻って、私どもの日本で、ではこれを導入することになったらどうなるかということでありますけれども、まず、この制度を生かすための大前提としまして、各漁船による漁獲量を正確に把握する、これがまず大前提であります。これは、違反操業にならないようにきちんとするためのシステムが必要だということでありまして、我が国の漁業の場合は、御承知のように、特に沿岸、沖合等では多くの魚を対象に多様な漁業をしているわけでございます。ですから、そういった中で、水揚げ港の数も多く、また非常に流通経路も多様だということでありますから、きちんとした的確な制度が動くという意味でのシステムづくりとか、それから、そのための行政のコストあるいは民間の負担、こういうところを考えたときに非常に難しいというふうに評価しておりまして、そういう意味では、我が国におきましては、御提案のような個別漁獲割り当て制度を現時点で導入するということは非常に難しいということが率直なところでございます。

 ただ、では一体、今御指摘ございました漁業の資源と経営、これをどういうふうに資源回復をやっていくんだということにつきましては、これはTAC法が平成九年にできまして、それから平成十年から資源回復計画を進めております。これは先生御承知のように、できるだけ漁業者の自主性、漁業者が納得して、自分たちの海域のところの特徴を踏まえてやってもらうという形で、例えば休漁、減船でありますとか、それから種苗放流、さらには藻場、干潟の造設、こういったことを総合的にやってもらう。それから、さらには、休漁、減船等で負担が増す分につきましては、これも一定の支援措置をする。こういった形で進めておりまして、現在、三十九魚種、二十四計画ということで進んでおります。こういった、一方で漁業者の自主性なんかも見ながら進めていくという取り組みも大事かと思っております。

 それから、もちろん、私ども今、水産計画の見直しに入っておりまして、さまざまな事柄について検証しております。こういった資源あるいは漁業権、漁業許可ということにつきましても、これからいろいろなところの御意見をいただきながら検証を進めていきます。

 そういった中での検討はもちろん進めていきますけれども、個別漁獲割り当て制度につきましては、今申し上げたような問題点があるということで御理解をいただきたいと思います。

黄川田委員 いずれ、農業の次は林業、水産であります。取り組みがおくれますと、議論が大きくなってしまいます。早く取り組みをすれば、法案も早く通るかもしれません。よろしくお願いいたします。

 終わります。

稲葉委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 今回の農業担い手に対する経営安定交付金法案等三法案について、御質問を申し上げたいと思います。

 初めに、ここに私、今、古いノートを持ってきたんです。実は、これはうちの父親が昔書いた「我が家の農業経営」という古い和紙でとじた本なんですが、一番最後のところに昭和十年二月という記載があります。小山六郎といいますのは、養子ですので、昔は小山と言っておりました。そんな和紙でとじた三百ページほどのものです。十七歳ですので、昔で言う農業実業学校のちょうど卒業年度に書いた、自分のところ、小山家の一年間の農業について調べたもののようです。

 随分細かいことが記載されておりまして、よくもこれだけ調べたものだなというふうに思いますが、この中では、全体の面積が畑と田んぼで一・八ヘクタール程度の農家でございます。農作物が二十八種類、果樹が十種類、家畜、山林、竹林、みそ、しょうゆ、縄、草履に至るまで調べ上げておりまして、それぞれ生産量、価格それから労働日数、それぞれの家族の月別の労働日数なんかも調べておりまして、一家の収入と支出を計算してその経営状況を分析したという、いわば今で言う高校の卒業研究みたいなものでございます。

 その中で、将来の計画としてこういうことが書かれております。農業簿記を徹底して、農業に経営の観点を取り入れること、共同購入や共同出荷等により、安く仕入れ、計画的に高く販売すること、それから、栽培記録をつけ、研究しながら省力化や増収を図ること、さらに、労働日数など現在で言う人員管理、それから流通に着目した販売改善計画などを経営の改善策として訴えております。

 今、農業経営の改善はまさしく議論にある大きな課題ですけれども、七十年前の昭和十年、十七歳の当時に調べて課題を摘出したという意味では、おおむね現在の議論とそう変わらない議論がそのまま七十年後にされているのかなというような気がしております。

 それでは、具体的な質問に入らせていただきたいと思います。

 農業の担い手のあるべき姿は、農業の技術、それから豊かな創造性を持った農業経営者が輩出されることだというふうに思うんですが、知識、情報を活用して、新しいノウハウを創造しながら経営することが今後求められてくると思います。農業の中核として期待される担い手像とは一体どのようなものかということを、農水大臣にわかりやすくお示しをいただきたいと思います。

中川国務大臣 まず、西委員のお父様のこの七十年前の資料、ざっと拝見いたしましたけれども、これだけいろいろな作物、果樹から除虫菊からいろいろと見事に、高校生、十七歳ですか、昔の人は立派だったと言うと何かちょっとこれは語弊がある発言かもしれませんけれども、本当に何か情熱が伝わってくるような、和歌山であるにもかかわらず雪のときの対策なんというのも書いてございますね。後でじっくり拝見をさせていただきたいと思います。

 西委員のお父様が多分精魂込めて書かれ、また実践されたであろう七十年前の、まさに西委員のお父様のやる気と能力、これがまさに我々が期待をし、またこれからの日本農業の文字どおり中核といいましょうか、プロといいましょうか、いろいろな言葉がきょうも出てきておりますけれども、あるべき担い手の姿ではないか。

 そして、こういった農業者が日本の農業を支えていく。「我が家の宝物」、表紙のところに、「農山村地域に雇用を生み出す」、これは最近のあれでございますけれども、まさに中山間地帯ではないかと拝察いたします。中山間地帯には中山間地帯でのやる気と能力のある担い手、あるいは都市農業には都市農業の、その他にはそれぞれの地域に合ったやる気と能力のある担い手がそれぞれ支えて、そして消費者、国民の皆さんに品質のよい、そして喜んでもらえるような農産物を供給できるという共生関係、信頼関係がこれからますます強固に構築されていくことによって、日本の食料の多面的な、文字どおり単なる栄養源、健康の源だけではない、いろいろな意味での信頼関係、つくった人に対する感謝の気持ち、また食べてもらうことに対する喜びというものが、いい方向でますますこの担い手の皆さんの意欲が、もちろん農業経営者としてのきちっとした成果も生まれて来るという形で前に進んでいくことが、日本の農業の将来に明るい展望が持てるし、そうなってもらえるようにこの法案が実現し、お役に立てたらいいなというふうに思っているところでございます。

西委員 私のおやじのこのノートに対する感想までいただきまして、本当にありがとうございます。

 実は、その中に犬一匹というふうに書いておりまして、これはイノシシ対策に犬一匹という意識で、我が家の一員としての感覚があるんだろうと思うんですが、やはり昔からいろいろな工夫をしながら、農家として努力をしてきたんだなということが犬一匹にあらわれているような気がいたしました。

 次の質問を申し上げたいと思います。

 現在の世の中では、経済の方面では、ひとえに付加価値を求めて発展をしているというのが今の一般的な流れだと思うんですが、どういうものが多くの付加価値を生むかということ、これがいわば経済の革新につながっていく。そして、新しい事業を創造していくということは、携帯電話一つをとってみましても、次々と新しい機能を付加し、また最近ではワンセグとかいう新しい機能もでき上がるというようなことを見ましても、新しい事業の展開はひとえに付加価値をどうつけていくかということではないかというふうに思います。

 食料・農業・農村基本計画においても、付加価値を生み出す施策として、直接販売や新規販路の開拓への取り組みを含め、需要に即した生産に取り組めるよう環境を整備する、こういうふうに記述がありますが、現在どのような環境整備を行おうとしているのかについて、お答えをいただきたいと思います。

西川政府参考人 委員御指摘のとおり、農業を取り巻く情勢が大きく変化する中で、いかにして付加価値を高めていくかというのは極めて大事な問題でございます。私どもとしては、今、直接販売であるとか新規販路の開拓を含めまして、消費者や実需者の多様なニーズに対応して、生産性の向上や高品質化、高付加価値化を図った農産物の生産に取り組む、そういうことが重要だと思ってこれを進めているというところでございます。

 具体的にどういうことかということを少し御説明いたしますと、一つには、地元産の農産物を極力地元で消費しようという地産地消というのがございますけれども、これを今一生懸命進めております。具体的には、十七年度で全市町村の約三割に当たります六百地域での地産地消推進計画の策定を推進しておりますし、また直売所の整備でありますとか地域のリーダー、コーディネーターの育成などについて支援をしております。

 また、消費者、実需者のニーズに即しまして、新たな需要を創造していくということもこれまた重要なところでございます。例えば、最近花粉症が非常に話題になりますけれども、こういったアレルギー症状の緩和成分を含む緑茶で、べにふうきという新しい品種ができておりますけれども、これを使いまして新しいタイプのお茶飲料をつくるとかあるいはキャンデーをつくるとか、そういった取り組み、新品種の開発なり新商品の開発といったことについても推進をしているということでございます。

 さらに、農業は最先端の産業だとおっしゃる方もたくさんいらっしゃるわけでございますけれども、ITを活用いたしまして、情報提供等による生産者と消費者の関係づくり、あるいはそのITのセンサー技術を用いまして、環境保全型の農業といった未来志向の革新技術の導入、普及といったことについても推進することとしているところでございます。

 いずれにいたしましても、需要に即しました生産を進める上で、地域の実情を踏まえた多様な取り組みを推進すること、これが重要であると考えておりまして、都道府県が提案する事業を実施することができます強い農業づくり交付金といったものもございます。こういったものを通じまして、多様で創意ある地域の活動といったものをこれからも支援していきたいというふうに考えているところでございます。

西委員 今までの農業を考えてきますと、旧農業基本法以来、農政としては、基本的には生産性をいかに高めるか、こういう目標であったように思います。限られたこの日本の国土の中で、限られた農地をいかに生産性を高めていくかということなんですが、そのことについてはもちろん重要なことなんですが、これは一つの向上のための手段だと私は思うんですね。

 例えば、一般企業でも、この企業側の都合、すなわち企業の持っている技術、それから論理、思い入れというものを優先して企業独自でつくっていくプロダクトアウトという戦略では、これは今まではどちらかというとそういう企業が主体的に生産を行っていく、こういう考え方だったと思うんですが、今ではどちらかというと消費者のニーズに合わせたマーケットインという考え方ですが、こういう考え方が大きく取り入れられております。顧客の要求を予測して、そして自社のプロダクトアウトにする力、これを技術革新によって磨いて、これまでにない商品、それからサービスを提供しよう、これが一つの流れかというふうに思います。

 このようにして、一般企業では、生産から流通、消費ということを見通した経営戦略をとっているわけですが、農業も同様に、これからは生産性向上というだけではなくて、経営という戦略、また視点、これがぜひとも必要になってくる、こう思うんです。

 今後、農業においても流通、消費まで見通した農業経営ができる、そういう担い手、また経営者、これを育成していくという方向が非常に大事だというふうに思うんですが、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

中川国務大臣 まさに西委員御指摘のように、買う人、お客様は付加価値を求めるわけでございますし、付加価値があれば、今度はブランドというふうな世界に入っていくんだろうと思います。この商品はブランド、いいブランドだ、そうではない、これはつくる側が判断するんじゃなくて、買う側がブランドというものは決めていくんだろうと私は思っております。

 トリノ・オリンピックで金メダルをとったあのフィギュアの選手のスポンサーの精米会社、あれはもともとは和歌山県だそうでございますけれども、精米にするときに胚芽の一番栄養分の高い部分は削らずに精米にしていくという、この場でブランド名を言うと宣伝になってしまいますから言いませんけれども、そして無洗米ということだそうでありまして、特許を持っているそうであります。

 簡単で、しかも健康にいい、こういった機能性食品であるとか、ああいったものを生産者側が一生懸命消費者ニーズにこたえられるようにつくって、そして、これはつくっただけじゃだめなんでありますから、消費者の、あるいは加工メーカーでも、とにかくお客様がこれはいい商品だというふうに判断をすれば文字どおり付加価値のある商品として買う、多少高くてもそちらの方がいいということになる、もちろん安い方がいいんでありますけれども。ということで、いいものをつくる努力をするだけではなくて、そのよさを宣伝していく、わかってもらうという努力も大事なんだろうと思います。

 去年、日本は農産物の輸出が一二%伸びまして、五年間で倍にしようという計画の第一年目、順調なスタートを切りましたが、一つは、愛・地球博があったんじゃないかというふうに私は思っております。

 もう一つは、中国、東南アジア、アメリカ等で宣伝をしたところのものがやはり伸びているという報告も受けておりますので、もう御指摘のとおりでありまして、基本法に書いてあるとおり、川上から川下、そして川下からまた川上へ、情報が常に双方向で向かっていくことによって、生産側も、売り上げだけではなくて利潤が伸びていく、ほかとの競争に勝っていける、そして、消費者あるいはお客様の方も、これは付加価値がある、いいブランドだというふうに、お互いに満足感を介して信頼関係が深まっていく、こんなようなことを農産物の世界においても目指していきたいし、その努力のための支援をこの法律三法によってさせていただきたいというふうに思っております。

西委員 無洗米の話が出ましたので、ちょっと言わせていただきたいと思うんです。

 洗わないでぬかだけを除去する、この技術は大変画期的なものでございまして、最近、お米に石が入っていない、昔はよくじゃりっと石をかみましたが、石が入っていない。この技術も実は同じ会社が開発をいたしまして、いっとき、十年ほど前に不作のときに、外国から、中国とかタイとかから米が入ってきましたが、あのとき、久しぶりに石をかんだ覚えがあるんですが、大変優秀な農業機械のメーカーでございまして、そういうことも相まって、農業というものが我々にとって安全、安心な、農業の主体の一つに農業機械もなるのではないかなという感想を持たせていただきました。

 話は変わりますが、昨年九月、農業経営基盤強化促進法の改正が行われまして、リース方式による一般企業の農業参入、これを全国展開するという道が開かれました。一般企業の農業への参入によって、新しいビジネスのノウハウが取り入れられる可能性が出てきております。農業の創造性が発揮されるチャンスになればいいというふうに期待をしております。農業従事者の意識改革の上からも、企業が参入する意義は大きいのではないかというふうに思っております。

 一般企業が直接農業を営む形態だけではなくて、ノウハウを農業に移転するために、経営コンサルタントによる経営ビジネス支援というものがぜひともこの時期に必要ではないかというふうに思っておりまして、そういう考えがおありになるのか、それから、自治体の担い手育成総合協議会では農業経営に関する相談を具体的に受けられるようになっているのかということについて、お伺いをしたいと思います。

井出政府参考人 認定農業者等の担い手につきましては、その経営改善を図るため、これまでも、簿記記帳ですとか青色申告の方法など、経営能力の向上に向けた研修などを実施しているところでございます。

 具体的には、普及指導センターにおきまして、担い手の要請に応じて個人ごとの経営指導をするとか、加工、販売などのアグリビジネスに取り組む際につきましては、実践的な知識や技術を習得するための経営アグリビジネススクールを開催したりしておりますが、十八年度からは、新たに中小企業診断士の方とか税理士の方にお願いをいたしまして、個別の認定農業者に対します濃密経営診断指導といったものも補助事業として実施することにいたしております。

 さらに、委員から御指摘のございました、各地域に設けられつつあります担い手育成総合支援協議会でございますが、そのメンバーに中小企業診断士や税理士の方にも入っていただくというようなことで、協議会としてまさに担い手の経営能力の向上に対しての支援が真の意味でできるように、今そういう仕組みの強化も図っているところでございます。

西委員 意欲のある担い手ということが今回の課題ですので、ぜひとも充実をしていただきたいというふうに思います。

 次の質問でございます。

 農水省が行いました農業振興地域・農地制度等の実態把握及び効果分析に関する調査委託事業報告、これは平成十六年三月に発表されておりますが、農地の流動化について、これが進まない理由として、自分でつくる、自分で耕作する、それから資産として保有する、こういう理由がありますが、そのほかに、借りてほしくても借り手がいないという理由もございます。

 土地があるのに借り手がいない、借り手がいるのに土地がないというようなミスマッチが続いているわけですが、このことに関してどのような分析をされているのか、またその対策についてお伺いをしたいと思います。

井出政府参考人 農地の流動化が進まない理由といたしまして、今委員から御紹介のありましたように、従来の資産保有、あるいは自分が元気なうちはやるというようなことが主流だったわけですが、最近では、貸したいんだけれども借り手が周りにいないんです、一方では、借りたい側からいうと、そんなことを言っているけれども、周りにいないんですというミスマッチが非常に顕著に出てきていると思います。

 これは地域性もございまして、先ほど大臣からお話がありましたけれども、大臣の御地元のようなところでは規模拡大したいという人がたくさんいて出物がない、岡山県もそうなんですが、中国地方を初めとする中山間地域では、貸したいんです、高齢化して、もう農業はとてもできないんだと言うけれども、周りを見渡しても、集落の中にも周りの集落にも借り手がいない、そういう事態が現出いたしております。

 従来は、集落の中で担い手を明確化してその人に集積していこうとか、あるいは、今も話題になっております、集落営農の組織化、法人化を図って、集落ぐるみでそういう借り手のいない農地をしっかり耕作していこうとかいうことをやっておりました。最近では、農地保有合理化法人や農業委員会があっせんをして、集落を超えた広範囲での利用調整活動もやってきておりますが、さらに最近では、インターネット等を活用しまして農地情報を公開いたしまして、地域外からも広範に農地の引き受け希望者を募集するというような仕組みも構築しているところでございます。

西委員 ぜひ、そのようにお願いしたいと思います。ただし、やはり借り手に対する信頼という問題も、土地のことですから、依然として大きな要素になっております。いずれにしても、流動化が進むようにぜひとも努力をしていただきたいというふうに思います。

 次ですが、今度は、平成十七年三月に「農業構造の展望」ということで結果を発表されておりますが、将来の担い手として期待される新規就農青年、これは結果的にはずっと一万二千人程度で横ばいで推移しております。これをは、さらなる新規就農を促す方策はあるのかどうかということが一つ。それから、若手の担い手確保対策として、私の出身の和歌山県が、山林労働者に対する緑の雇用を積極的に展開しておりまして、全国に呼びかけてキャンペーンをいたしました。東京からもたくさんの皆さんがお見えになっていますし、全国的に、九州からもお見えになって、今山林の仕事に頑張っていただいているんですが、そのようなキャンペーンを農水省としてやってはいかがか、こんな気持ちでいるわけですが、大臣、いかがお考えか、お聞かせを願いたいというふうに思います。

中川国務大臣 山につきましては、緑の雇用、農林水産省としても一生懸命推進しておりますが、和歌山が非常に熱心にやっておられるということは大変ありがたいことだなというふうに思っております。

 新規就農、農の方でございますけれども、御指摘のように、最悪の時期に比べれば大分ふえてきたというか、戻ってきたわけでありますけれども、いわゆる若い人たち、新規学卒あるいは三十代ぐらいで就農する人たちに支援をする。これは私、前の仕事の経験からすると、ある意味ではベンチャーみたいなもので、特に担い手ということを目指すとするならば、まさに経営的感覚、ベンチャーという意識が大事ではないか。

 そうしますと、ノウハウがない。例えば、試験研究のノウハウ、あるいはまた営業化のノウハウ、あるいは広告宣伝のノウハウ、販売のノウハウ、そのたびごとに、いわゆるデスバレー、死の谷というものを乗り越えていかなければいけない。そうすると、いろいろな産学官含めた連携あるいは支援というものが大事になってくるというその類似性でこれを考えてまいりますと、やはり相談役あるいはまた土地のあっせん、資金のあっせん、技術の提供等々を立ち上がるまで、それこそ意欲はあっても、極端に言えばゼロから始めるみたいな方に対して、我々としてはできるだけ支援を今まで以上にやっていく必要がある。ニート、フリーター対策で担い手にどうぞというのも何となく、ちょっと別の次元の話を結びつけるような感じがしないでもありませんけれども、若い人たちに大いに農業者として誇りを持って頑張ってもらいたい。

 また、いわゆる団塊の世代の皆様方も農業をやってみたいという方が随分多いようでありますから、そういう方々に対しても、先ほど申し上げましたような、きめ細かなニーズに対して支援を担い手育成事業の中でも、新規就農に対しての支援の話が午前中ありましたけれども、できるだけ相手の立場に立って、実現できるように、きめ細かく、地元の農業団体あるいは自治体と連携をとりながら支援をさせていただきたいというふうに思っております。

西委員 法案の具体的なところに入るにはもう時間がございません、質疑時間が終了いたしましたと出ましたので、これで終了させていただきます。

 大変ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、森山裕君。

森山(裕)委員 無所属の森山でございます。

 二田筆頭を初め与党の皆さんの御配慮をいただいて、質問の時間を与えていただきましたこと、厚くお礼を申し上げます。

 きょうは、品目横断政策とは別に、砂糖の価格調整に関する法律の改正法案に基づいて品目別経営安定対策が講じられますサトウキビとでん粉原料用カンショについて、絞ってお尋ねをしたいと思います。

 御承知のとおり、サトウキビにつきましては、鹿児島県の南西諸島、沖縄で主につくられておりますし、また、でん粉用のカンショにつきましては、鹿児島県が大部分であり、宮崎に一部あるかなという程度の話でありますが、この両作物とも四百年ぐらいずっとつくり続けてきているわけでありますけれども、四百年もの長い間、このカンショとサトウキビというものをどうしてつくり続けてくることができたのかということをよく考えてみる必要があると思います。

 まず、鹿児島県あるいは沖縄県というところの地域的な特徴としては、毎年毎年と申し上げていいぐらい台風が襲来をするということであります。どんなに台風が参りましても、サトウキビの場合には収穫がゼロになることはありませんから、そういう意味では非常に適した作物だったのかなというふうに思います。また、カンショにつきましては、特に鹿児島県と宮崎県はシラス土壌でありますから、なかなか適地適作というものが見つけにくいんですけれども、カンショがまさにその作物であるということだろうと思います。また、輪作体系の中で非常に大事な基幹作物として位置づけられてきたのではないかなというふうに思います。

 もう一つ、私は最近、それぞれの集落をお訪ねして先輩方と話をしますと、やはりサツマイモ、カンショをつくってきた、あるいはサトウキビをつくってきたということに非常に農家の皆さんが誇りを持っておられるということに実は、大臣、気づきます。御承知のとおり、サトウキビというのは、昔の薩摩藩の財政をしっかり支えてまいりましたし、そのことで薩摩藩は近代的な事業を進めることができたのだろうと思います。また、木曽三川の河川改修というものを、幕命を受けましたけれども、これも、黒砂糖を担保にして資金調達をして、薩摩藩がやり遂げたという歴史を考えますときに、やはりサトウキビをつくっている人たちは、自分の先祖がつくってきたサトウキビが明治維新というものを裏で支えてきたんだという誇りをやはり持っておられるなということに実は気づきます。

 カンショにしても、今まで何回も飢餓というものを救ってまいりましたし、また休耕作物としての位置づけがなされてきたという歴史的な背景もありますし、不測の事態が生じた場合には熱量の高い芋類への作付転換をしていくということになっておりますから、我々がそのときの、種子用の芋というのは、種芋というのは、我々がやはりつくり続けていくことが大事なんだという意識が農家の皆さんにしっかりある。こういうことが相まって、私は、四百年という長い間、カンショがつくられ、サトウキビがつくられてきたんではないか、そう実は思っております。

 そこの政策が大きく変わるわけでございますから、地元には期待もありますし、不安もあります。しかし、私は、やはり政策の方向というのは今回の方向というのが正しいと思いますし、そのことにまた農家の皆さんと一緒に頑張っていかなければいけないなというふうに思うところでありますけれども、御承知のとおり、サトウキビ及びでん粉用原料カンショというのは、極めて高齢化が進んでいる中で作付が行われておりますし、依然として零細な生産規模の農家が大部分であります。

 サトウキビの平均作付面積というのは八十アールぐらいでございまして、サトウキビのところは少しずつ作付面積は伸びてはおりますけれども、依然として八十アールという低いものであります。また、カンショの平均作付面積はこれまた五十四アールでございまして、ここのところもなかなか零細な農家で行っているというところが現状でございます。

 今後は、地域農業の基幹作物として、高品質なものを安定的に生産をしていくためには、やはり生産構造の転換というものがどうしても必要だというふうに思いますし、この観点から考えましても、担い手を育成していくことを政策目標とした今回の品目別経営安定対策というものは評価ができるというふうに思っております。

 もう一つ実例を挙げて少し話をさせてほしいと思いますが、鹿児島県の種子島で、実は農業公社を設立いたしまして、地域の農家で構成をいたしますきび振興会と連携をしながら、機械による作業の受委託というものを推進して、サトウキビの生産に積極的に取り組んでおります。

 種子島は北限でございますから、条件は非常に厳しいのでございますけれども、そういう厳しい中にあっても、全国平均を大きく上回る収穫面積というものがありますし、また、糖度についても随分頑張りまして、安定化してきているということがありますから、このような実例を考えましても、今回の政策の方向というのは私は間違っていない、こういうふうに思っています。

 ただ、農家の皆さんの中では、やはり今まで最低生産者価格制度のもとでやってまいりましたので、本当にこのことが守っていけるのだろうかという心配もありますし、こうした大きな政策転換というのは、やはり地域の事情というものをよくわかっていながら進めていくということが大変大事なことだというふうに思うんです。

 ここでお尋ねでありますが、サトウキビ及びでん粉用原料カンショの品目別経営安定対策において、対象要件を新たに設定をするということになるんだろうと思いますけれども、どのような生産者を対象とされるのか。現状を御理解いただいていると思いますので、ぜひそのことをまずお答えをいただきたいと思います。

西川政府参考人 サトウキビ、でん粉原料用カンショの経営安定対策における対象要件ということでございますけれども、この二つの作物につきましては、今先生お話ありましたように、代替作物に乏しい自然条件下で、高齢で零細な規模の農家が生産の大宗を占めている、そういう実態を踏まえまして、担い手等への農地や作業集積を図りまして、機械化による作業の効率化を推進することを通じまして、担い手の育成と生産の安定を図る、そういった必要があるという認識をしております。

 そういった観点から、本対策の対象者は、認定農業者、特定農業団体などに加えまして、将来的に担い手となることが期待できる、収穫作業につき一定の作業規模を有する者、さらに、小規模生産者等から認定農業者等への農地の流動化が円滑に進められますように、一定の作業規模を有する共同利用組織に参画している人、認定農業者に作付や収穫等の基幹作業を委託する人、そういった方を対象とすることとしております。

 さらに、現場実態等を見ますと、受託組織等が存在しない地域があるという地域もございます。そういった実情に配慮いたしまして、三年間に限りますけれども、地域のサトウキビ及びでん粉原料用カンショ生産農家の二分の一以上が参加して、担い手の育成を行うことを目的とする組織を立ち上げた場合、これに参加する人を対象とする、そういった特例を設けることとしております。

 このような対象要件の設定によりまして、担い手を中心とした安定的な生産が図られる体制を構築してまいりたいというふうに考えているところでございます。

森山(裕)委員 局長、ぜひ担い手学校にみんなが入学ができて、三年で卒業ができればいいんですけれども、なかなか三年で卒業できるかなというところが正直なところでもありますが、まず、とにかくみんなが担い手という方向に向かってしっかり歩んでいくということが大事なことだと思いますし、非常に厳しい条件も、いろいろなことで条件がありますけれども、我々は地元と一緒にそのことはしっかり頑張らなければいけないなというふうに今思っておりますので、今後とも、特殊な事情があるということを御配慮いただいて、対応方をまずよろしくお願いをしておきたいというふうに思います。

 次に、品目別経営安定対策の支援水準に関して伺いたいと思います。

 従来は、最低生産者価格によって再生産というものが、確保が図られてきたところであります。ところが、今回大きく政策が変わるわけでございますから、砂糖の内外格差というものを見てみましても、甘蔗糖では八・四倍の格差がございます。でん粉でも、カンショでん粉の場合は、コンスターチと比べて三・九%の格差がございますし、タピオカでん粉だともっと大きいんだろうというふうに思いますが、サトウキビ及びカンショにつきましては、最低生産者価格を廃止して新たな品目別経営安定対策に移行することになりますけれども、その支援水準というのはどう考えておけばいいのかということをまずお聞かせいただきたいと思います。

西川政府参考人 平成十九年度から新たに導入する経営安定対策でございますけれども、これにつきましては、諸外国との生産条件格差を是正するために、品目横断的政策と同様、生産コストのうち、生産物の販売額では賄えない、そういった部分に着目いたしまして、標準的な我が国における生産コストから販売額を差し引いた額を交付するという考え方をとっているところでございます。

 このことによりまして、対象者におきましては、サトウキビ及びでん粉原料用カンショの再生産を可能とする所得水準、これが確保されるものというふうに考えているところでございます。

森山(裕)委員 局長、もう一遍、一つ関連して伺いますが、大体いつごろはっきりした数字をお示しいただけることになりますか。

西川政府参考人 どのぐらいの額になるかということにつきましては、昨年の十二月に、その時点におけるデータで試算をいたしまして、現状の水準と同水準という試算を提示したところでございますけれども、この法律成立の後に予算要求ということになりますけれども、その時点で、新たなデータでこれを再計算して提示をするということにしているところでございます。

森山(裕)委員 そうしますと、概算要求のときまでには数字がはっきりしてくるというふうに理解をしておけばいいですか。では、そのように理解をさせていただいて、次の質問に入ります。

 これまでは、生産者がサトウキビあるいはカンショを工場に搬入いたしますと、早いときには二日ぐらい、遅くても二週間ぐらいには、それぞれ工場から生産者にお金が支払われてきたということでありますが、今後は、制度の見直しによりまして、工場から支払われる原料代というのは今の状況になるんだろうと思いますけれども、政策支援として、国からの交付金がいつどのような形で支払われるのか、それがどれぐらいの期間がかかるのかというのは、農家の現場にとっては大変大事なことのようでございます。皆さん、そのことをよくお尋ねになります。

 私は、できるだけ早く支払っていただくシステムというものをぜひつくっていただきたいというふうに思いますし、そうすることがやはり農家の再生産の意欲を高めることになるんじゃないかなというふうにも思うところでありますが、そのことについて少し教えていただきたいと思います。

西川政府参考人 農家への交付金の支払い時期ということでございます。

 サトウキビ、でん粉原料用カンショの経営安定対策の交付金の支払い業務、これは独立行政法人の農畜産業振興機構において行うこととなっておりますけれども、現在、交付申請に係る事務の簡素化や提出書類の確認方法等について検討をしているところでございます。

 委員御指摘のように、生産者から交付金の早期支払いの要望があるということは私どもも承知いたしておりまして、交付金支払い業務の効率化を進めまして、できるだけ迅速な支払いができるよう、現在も検討させていただいているというところでございます。

森山(裕)委員 ありがとうございました。

 次に、カンショでん粉の販路確保に関連をして伺ってまいりたいと思いますが、これまでは、カンショでん粉につきましては、コーンスターチ用の輸入トウモロコシとの抱き合わせによって販路がもう確保されていたわけでありますけれども、今後これが大きく変わってくるわけでありますが、カンショでん粉の販路を確保するためには、抱き合わせ廃止後も、輸入でん粉等が急激に増加しないような関税割り当て制度の適切な運用というものがどうしても必要であるというふうに思うところでありますが、ここのところについての考え方をぜひお示しいただきたいと思います。

西川政府参考人 抱き合わせ廃止後における国産でん粉の引き取りということでございますけれども、これは、国産芋でん粉につきましては、こういった抱き合わせ廃止後におきましても、輸入トウモロコシを原料とするコーンスターチ等から調整金を徴収し、これを財源として生産農家等に対して政策支援を行うことによりまして、国産芋でん粉の価格を関税割り当てによるコーンスターチ等の価格と同水準とする、競争条件を同一にするということ。それと、コーンスターチ用トウモロコシの関税割り当て枠につきましては、国産芋でん粉の需要に影響を与えないよう、国内のでん粉総需要量から国産芋でん粉供給量を差し引いた水準とするということ。それともう一つ、枠外のコーンスターチ用トウモロコシ等につきましては二次関税を課す、輸入を抑制するということによりまして、国産芋でん粉の販路が確保されるように努めてまいりたいと考えております。

森山(裕)委員 そこはやはり一番制度の根幹だろうと思いますので、強く要望申し上げておきたいと思います。

 次に、カンショでん粉工場の再編についてお尋ねをしたいと思います。

 御承知のとおり、ウルグアイ・ラウンド農業合意の対策によってでん粉工場の再編が進められてまいりました。平成六年、五十八工場あったのが、現在は二十八工場になり、三工場休止しておりますから、カンショでん粉工場につきましては今二十五の工場が操業をしているということになります。それでも操業率が平成十七年産で五七%でございますので、なかなか厳しいというふうに思います。製造コストの低減を図っていって国民負担を軽減化するためには、でん粉工場の再編というものがどうしても必要だ、そう思っております。

 いろいろな議論がありまして、しょうちゅうブームなものですから、かなりしょうちゅう用のカンショというものも需要がふえてまいりまして、平成十一年度が五万五千トンぐらいでしたけれども、平成十六年は十六万トンちょっとになりましたので、三倍ぐらい伸びております。これは恐らく、鹿児島県産は、昨年度の分については、初めてのことでありますが、でん粉よりもしょうちゅう向けの方が上回るのではないかなというふうに思っておりますけれども、これももうそろそろ頭打ちではないか、そんなにしょうちゅうが売れるはずもありませんので、大体いいところに来ているんじゃないかなという気がいたします。

 そういうことを考えましても、どうしても工場の再編というのは必要だと思いますし、私は、小さいころからでん粉工場というのはよく見てきたんですけれども、私どもが幼きころのでん粉工場と今のでん粉工場というのは、実は何にも変わっていないわけです。ここに一つの問題があるように思いますし、カンショ用でん粉を、糖化用以外にも用途を広げていく努力というのが必要なのではないかというふうに思いますし、そのためには、もう少し衛生面も考え、工場の設備というものももう少し考えていく必要があるというふうに思うところでありますが、でん粉工場の再編と設備の近代化について農水省はどう考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

西川政府参考人 カンショでん粉工場の再編の件でございますけれども、委員御指摘のように、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策によりまして、平成七年度から十二年度の六年間、再編事業を行っております。

 その結果、工場の操業率が実は五四%から九〇%まで向上しまして、コスト削減にも寄与したところでございますが、さっきお話がありましたように、近年のしょうちゅう用需要の大幅な増加等によりまして、原料用芋の集荷数量が著しく減少し、操業度が低下しております。速やかに原料処理量に見合った生産体制とするということが大事ということで、平成十八年度から二十年度までの間に芋でん粉工場再編整備事業を実施するということで、工場の合理化を支援してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 また、でん粉工場の近代化というお話でございますけれども、これにつきましては、特定農産加工業経営改善臨時措置法によります金融や税制による優遇措置を受けることが可能でございまして、これらを使いまして今後とも適切に指導してまいりたいというふうに思います。

 また、新たな利用ということにつきましては、研究開発などにつきましても、提案公募型の農林省としてのそういうシステムもございますので、いろいろな面で御活用いただければというふうに考えております。

森山(裕)委員 工場の再編というのはやはりコストと直接つながってまいりますので、対応方をよろしくお願い申し上げておきたいと思います。

 次に、サトウキビの増産プロジェクトのことについて伺います。

 農水省に、宮腰副大臣を主査とされまして、さとうきび増産プロジェクト会議を立ち上げていただいて、副大臣、わざわざ現地まで足を運んでいただいて対応していただきましたこと、大変ありがたく思っておりますし、また農家の皆さんも大変感謝をしておられます。

 どうしても一定の増産を図りませんと、一島一工場という政策でありますし、その一島一工場の工場の操業率がどうなるかということが大変大事なところでございますので、どうしても鹿児島県においてももう少し増産を図っていかなけりゃいけないということは、もう論をまたないところだろうというふうに思います。

 副大臣にお尋ねをいたしますけれども、このプロジェクトの今後の展開方向と現在の進捗状況について、お示しをいただければと思います。

宮腰副大臣 御指摘のとおり、離島の基幹作物であるサトウキビ、残念ながら、製糖工場の稼働率が一部地域では五〇%を割るところまで落ち込んできているといったような状況にありまして、このままいけば、島から製糖工場が撤退した場合に、その島のサトウキビ生産はゼロになってしまう可能性があるというような大変厳しい状況にあるわけであります。

 これまで、それぞれ一生懸命やっておいでになったわけでありますけれども、必ずしも、例えば製糖工場と生産者との連携がうまくいっていないとかそういうようなことがありましたけれども、今回のさとうきび増産プロジェクトにつきましては、製糖工場を含む関係者の方々が本当に真剣に一緒になって考えていただいておりまして、現在のところ、それぞれの島から、鹿児島県あるいは沖縄県に対して島ごとの増産計画が提出をされているというふうに伺っております。

 その中で、調整の後、農水省の方に上げていただくということになるわけでございますけれども、政府として、農水省としては、生産組織の育成などの経営基盤の強化、あるいは防風林やかんがい施設の整備、高性能機械の導入等の生産基盤の整備、あるいは土壌害虫対策や新品種の育成、普及など技術対策、この三点を重点的に考えております。今ほどお話のありました平成十九年産から始まる品目別のサトウキビ経営安定対策とあわせて、一体となって進めていきたいというふうに考えております。

 現在のところ、例えばサトウキビ共済についてでありますけれども、これまで地域ごとに一定の掛金率でやってまいりました。これを危険段階別の掛金率へと変更いたしましたところ、沖縄県の例でございますけれども、伊江島では加入率が二四%から七〇%にはね上がった。すべての地域で加入率が向上しているということでありますので、やはり頑張る農家をしっかり支えていくという仕組み、それから品目別の経営安定対策と一緒になって、三年間で必ず増産の方向が、流れが打ち出せるように頑張っていきたいというふうに考えております。

森山(裕)委員 どうぞ今後ともその増産対策についてはよろしくお願いを申し上げたいと思います。農家の皆さんも、最近少し意識が変わってまいりまして、会社と、企業と自分たちは車の両輪だということもよく言われるようになりましたし、我々もまた、増産対策というものについてはしっかり取り組みをしていく必要があるなというふうに思っております。

 時間が参りましたので、最後に大臣に伺っておきたいと思いますが、今回の制度改正を初めとする我が国の農業改革を実り多いものにしていくためには、どうしてもWTO交渉というものが関係をしてまいりますし、ここでどういう結果が出るかということが制度にも大きな影響があるわけでございます。大臣、大変御苦労をいただいているところでありますが、大臣の決意を最後にお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

中川国務大臣 今回のWTO交渉、二〇〇一年の十一月にスタートいたしまして、もう四年以上経過しているわけであります。

 御承知のとおり、農業を初め幾つかの分野、それぞれ交渉をやっておりますが、全体としてパッケージでまとめるということになっておりまして、昨年末の香港閣僚会議におきまして、ことしじゅうに交渉を終了するということになっておりますが、その中でも、加盟百五十カ国ほとんどすべての国にとっての関心事項は農業であるわけであります。農業といっても、先進国と途上国、輸出国と輸入国、また関心品目もそれぞれ違うという中で、いろいろなレベルで交渉をやっているところでございます。

 日本といたしましては、世界最大の食料純輸入国という立場、それから、ずっと本日も議論をやっておりますけれども、いわゆる多面的機能、多様な農業の共存といった立場から、日本としての主張、これは何も日本だけではございません、同じ立場にあるG10、あるいはまたアジア・モンスーン地帯、あるいは、とりわけ後発途上国への十分な配慮といった立場から主張をしているところでございます。

 農業につきましては、輸出競争、国内支持、マーケットアクセスと三本柱で議論をやっておりますが、今月末にいわゆるその基本ルールを決めるという状況で、もうあと数週間ということでございますけれども、なかなか各国、とりわけ主要国の主張が対立したままであるということでございまして、日本としては、日本の立場、あるいはまた、他方、小泉総理からも積極的にこの交渉に貢献するようにという立場でございますが、日本としては守るべきところは守っていく。

 つまり、具体的な品目は決めておりませんけれども、センシティブ品目というものについてきちっと守り、また、交渉ですから、譲れるところは譲っていく、そしてまた相手に対して攻めるところは攻めていくということで、日本農業の根幹が揺るがないように、これから最大限頑張っていきたいと思っております。

 政府一体でやってまいりますけれども、当委員会の委員の皆様方、そしてまた、ウルグアイ・ラウンドのときと違いまして、国民的な御理解と支持というものは極めて大事だと現時点までを振り返ってもそう思っておりますので、最後の最後まで国を挙げてこの交渉に臨んでいきたいと思いますので、引き続き御指導のほどをよろしくお願いいたします。

森山(裕)委員 日本農業あるいは農村の面から、譲れない面があるというふうにも思いますので、ぜひ頑張っていただきますようにお願いを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 本日の最後の質問となりましたが、三十分ですので、おつき合いのほどよろしくお願い申し上げたいと思います。

 今回の経営所得安定対策、戦後農政の大転換だと言われておるわけですけれども、この法律案あるいはいろいろな資料等を読んでみても、これからの日本農業をどういう方向に持っていこうとしているのか、私は疑問をぬぐい去るわけにはいきません。そういう観点から、若干、これまでの取り組みとこれからの方向性について質問してまいりますので、よろしくお願いします。

 平成十一年に食料・農業・農村基本法が公布、施行されて以降、十二年に基本計画が定められて、今日まで鋭意取り組んでまいりました。そのときも、私もこの場で議論してきましたけれども、あれからまだ七年の歳月しか実際は流れていません。そういう中で、この間、食料・農業・農村基本法、基本計画に基づいて担い手育成というものが図られてきたというふうに思うんですが、認定農業者の推移というのがどうなっているのかなというふうに、私なりに分析してみました。

 確かに、十六年、十七年度という形でふえていますけれども、認定農業者の数は十九万四千八百七人、その前が十八万二千三百四十五人という数字が出ていますけれども、一年に一万二千人程度の増加でとどまっています。そして、年齢構成はどうなっているんだろうというふうに分析したところ、大臣、二十九歳以下で一・五%、三十歳から三十九歳で一〇・三%、四十歳から四十九歳で二八・八%、五十歳から五十九歳で四二・八%、それから六十歳以上が一六・六%。そして、もう一つ数字があるんですが、主業農家における認定農業者というと、割合でいうと四五・五%なんですね。まだ五割いっていないんです、認定農業者という部分が。

 こういう実態で、私は、先ほど冒頭で言ったように、今の日本農業というのが五十歳から五十九歳代、戦後、団塊の世代によって支えられているんだと。この団塊の世代が農業に従事できなくなったとき、これから十五年、二十年先ということを考えたときに、日本農業はどうなっていくんだろうという危機感を持っている状況なんです。それに今回のこういう政策転換でございますから。

 まず初めに、この認定農業者等の取り組みを含めて、担い手育成強化をこれまで基本法のもとにどう取り組んできているのか、その実態について報告、答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 委員お尋ねのとおり、食料・農業・農村基本法にもございますように、望ましい農業構造を確立するためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成、確保することがぜひとも必要でございます。これまでも、基本法制定以来、制度資金の融通や経営・技術指導、機械・施設整備等の農業経営の改善に向けた各種施策を講じてきたところでございます。

 この結果、認定農業者の数は、平成十一年三月では十三万六千だったものが、平成十七年の十二月には十九万五千となるなど、担い手の育成につきましては着実に図られてきているところと考えております。

 ただ、委員御指摘のとおり、主業農家に占める割合は五割に満たないということでございます。これは、私どももいろいろ分析してみるに、従来、認定農家になりましてどういうメリットがあるのか、主に、認定農家になられるときの動機が、農林公庫で言うスーパーL資金をお借りになるとき、そのときに認定農家にエントリーされた方が、動機としては非常に多いということでございまして、そういった必要性を感じていらっしゃらない方は認定農家へのエントリーをなさっていないのではないかと考えております。

 現在進めております担い手育成運動の中におきましても、主業農家であって認定農家になっていらっしゃらない方、そういう方の意向確認、あるいは、認定農業者になることによるメリットをそういった方によくお知らせするというような試みもしてきているところでございます。

菅野委員 井出局長、これまでずっと、食料・農業・農村基本法を制定してから、主業農家という部分をどう育成強化していくのかという視点で取り組まれてきたにもかかわらず、認定農業者制度をつくって、それでまだ半分にもいっていない。こういうことは、今までの政策の誤りという立場から今回の政策見直しという状況なんですか。

井出政府参考人 先ほども御答弁しましたように、さまざまな角度から、認定農業者を育成するということでやってまいりましたけれども、先ほど御説明いたしましたように、認定農業者育成の道具立てとして必要かつ十分であったかという点については、いろいろ考えるところはございます。

 また、これも委員御指摘のとおり、団塊の世代がリタイアする時期が徐々に徐々に近づいてきておりますから、このまま推移すれば、農業従事者の減少、高齢化は従来にも増して加速度的に、雪崩を打って起こる可能性が日に日に近づいているわけでございまして、そういった中で、こういった生産構造の脆弱化がもたらす農村地域に対する影響というのは大変なものがあろうと。

 そういう点で、この品目横断政策を導入し、担い手たらんとする人、現在担い手となっている人に、やはり勇気と力を与えてその地域を活性化していくということに着手しませんと、本当の意味で手おくれになる、そういう認識のもとに、今回この経営安定対策の法律として提出しているところでございます。

菅野委員 私は、第一次産業というのは、相当な、弥生時代から米づくりというのは続いてきて、本当にこれからも未来永劫続いていかなければならない産業だというふうに思っています。

 そういう観点から戦後農業を考えたときに、ちまたでささやかれているように、日本の農政は猫の目農政という形で、本当にじっくりとした政策展開がなされてこなかった。そして今回も、まだ平成二十二年までの計画の途中で、もう政策転換をしていく。日本の農業が今手を打たなければならないという形で、平成十一年に食料・農業・農村基本法をつくったんじゃないですか。そして、基本計画を立てて、平成二十二年までに食料自給率を四五%に持っていこう、ここに全精力を傾けている途中でもって、こういう政策展開がなされるということに対して、農家の人たちは戸惑いを感じているというのが率直な気持ちなんです。

 そしてまた、これからどうなっていくんだろうという不安を抱えていて、そして中山間地域農業も含めて、担い手育成というのを継続してやっていきながら、今度は集落営農への移行を積極的に取り組んでいこうという流れに変わっていくわけですよね。そういう農家の不安がまた高まっている中で集落営農への移行といっても、スムーズにいく話じゃないというふうに思うんです。

 だから、集落営農を目指すということであれば、今言ったように、団塊の世代が離農するときを見越して集落営農をしていかなければ大変なんだという状況なんですけれども、こういう地域の実情に応じて、どのような取り組みをなされていこうとしているのか、答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 今回御提案をしております新たな経営安定対策につきましては、既に、平成十一年七月に制定されました食料・農業・農村基本法の中で、価格政策から所得政策への転換という政策方向が示されておりまして、それを具体化するものだと認識をいたしております。

 その具体化に当たりましても、平成十五年の十二月以降、食料・農業・農村政策審議会におきまして、長期にわたり十分な御議論をいただきました。その審議過程については、広く全国に、あらゆる手段を講じまして伝達をしてきたところでございます。

 また、昨年三月の新たな食料・農業・農村基本計画、十月の経営所得安定対策等大綱、それぞれの取りまとめの各段階におきましても着実に検討を積み重ねましたけれども、この検討経緯についても、その都度あるいはその途中で、私どもも、それぞれ、各地域、地方に出向いたり、いろいろな情報手段を使いまして、発信をしてまいったところでございます。

 集落営農につきましては、御承知のように、北陸とか中国地方では、その歴史性とか伝統、あるいは、もともと認定農家あるいは主業農家がほとんど存在しないという中で、これは役所が進めたことではございませんで、農家の中から自生的、自発的にそういう集落営農というものができてきたわけでございますが、今回は、主業農家がいないとか、そういう状況が、従来はそういうことのなかった東北地方とか、いわゆる農業の主産地と言われるところにも既にひしひしと忍び寄っている、そういった状況の中で御提案を申し上げているわけでございます。

 私も、実は、この取り組みについて、みずから北海道・東北担当というのを志願して数年間やってきておりまして、東北各県にはもう年間に数回お邪魔いたしておりますが、確かに、西日本に行きましたときの反応と比べますと、やはり東北に参りますと、まだおれたち頑張っているのに何を言っているんだというような反応が来ることもございます。その中で、集落営農組織を立ち上げられたリーダーの方々にお話を伺いますと、なかなか理解をしていただくのに時間はかかったけれども、五年後、十年後を考えると、東北地方においても、やはりこういう集落営農組織でもなければ村を守っていけない、村の農業を存続できないということについては、時間はかかったけれども理解してもらったというようなことでございます。

 私どもも、まだまだ十分ではございませんが、そういう努力を、県、市町村、JA、農業委員会、すべて糾合しまして繰り広げる中で、理解を深めていただき、また、地域の問題を地域でよく御議論いただくような雰囲気づくり、体制づくりを頑張っていきたいと思っております。

菅野委員 局長も私も共通認識には立っているというふうに思うんですが、大臣もそうだと思うんですけれども、担い手を育てていく、それから地域の集落営農をどうつくり上げていくのかというのは、これは相当なエネルギーというものを必要とするんだ、きめ細やかな対策というのが必要なんだというのは、これは、すべての人たちが共通認識に立てるというふうに私は思うんです。

 それで、政府としても、十八年度、どういう支援をしていくのかということで項目を挙げています。リーダーの育成、行政、団体による総合的支援、集落内の調整活動支援、経理の一元化支援、農地の利用調整、小規模基盤整備、農業用機械の整理合理化、基盤整備、自己資本の充実、資金調達への支援、この十八年度からこういうことをやっていかなければ集落営農としてやっていける状況に立ち至らないんだということも分析しているわけですね。

 一方、地方においては、大臣、市町村合併がどんどんどんどん進んでいっています。それから、JAも統合が進んでいって、本当に、全県一つなどという方向も今打ち出されています。

 私の選挙区のことを言うんですが、十カ町村が合併して栗原市という一つの市になりました。それから、九町が合併して登米市という一つの市になりました。面積は、相当広い面積を有しています。そして、平場農業地域であるし、一方は中山間地域農業も抱えている地域で、市になりましたから、農政という部分は市役所の方にほぼ一元化されていってしまっています。

 かつての町村時代だったならば、きめ細やかな営農指導というものができたんだろうというふうに思うんですが、そういう体制、集落営農に持っていこうとする体制が一方では崩れかかっているという状況の中で、今回の経営所得安定対策が打ち出されました。面積要件、個人で四ヘクタール持っている農家というのはほとんどいないんですから、集落営農という方向を目指すしかない。そうしたときに、先ほど申し上げた、本当に総合的支援をしっかりと行っていかなければならないという状況の今日的な実情を踏まえて、政府としての支援体制をどうやっていかれようとしているんですか。答弁願いたいと思います。

中川国務大臣 まず、菅野委員も御指摘になりましたが、農業の基本法を抜本的に平成十一年に変えたわけですね。たまたま私、そのときも農林水産大臣をやっておりました。長時間、衆参で御審議いただきました。また、当時の農政審議会でも何十時間も御議論をしていただいて、そしてスタートをしたわけであります。

 先ほど猫の目云々という御指摘がございましたが、確かに、そのときに戦後農政の大転換をしたわけでございますけれども、今、その流れの中で、ある意味では第二段階に入ってきた。いよいよそれを名実ともに、あのときの四十前後の条文、もう大分忘れてしまいましたけれども、あれは、基本計画をつくるということ、そして、きょう何回も申し上げておりますが、それぞれの役割とか責任とかいうことで、こういうことで頑張っていこうという目標を掲げた。それから五年たって、基本計画を今回見直しして、いよいよ農業サイドにおいて、実態的に、担い手あるいは集落営農その他の形でもって、文字どおり日本の食料の生産を担っていこうという体制を来年からスタートしていくということに入ってきているわけでございます。

 ですから、正直申し上げて、国会に法律を提案して、ゼロからこれをスタートしたわけではないので、平成七年はたしか二万弱の認定農家が、先ほどお話ありましたように、平成十一年には十三万になり、現段階で二十万弱でございます。比率的に言うと、さっき御指摘のように、主業農家でもまだ半分以下という状況でありますけれども。

 とにかく、面積の要件でやっていける人、それから集落営農としてやっていく、集落営農は、今経営局長からも話がありましたが、ある意味では自然発生的というか、長い歴史の中で生まれてきたものもあると思いますけれども、しかし、市町村合併あるいは農業団体の合併といった形で、みんなでこれからより力強く、自治体もあるいは農業組織も頑張っていこうという中での、まさに集落営農という位置づけの中でやっていこうという一つのインセンティブになるわけでございます。

 ですから、さて、今から一年弱の間に果たしてできるのかという御指摘、これは現実、それは不安がある方もいらっしゃると思いますけれども、例えば経営管理、あるいはオペレーターあるいは機械の共同利用、これはともにプラスになる話でございますから、ぜひともこれは前向きに考えていただいて、これによってさらに力強い農業経営集団ができるんだと。それに向かって、もちろんスタートですから、町村合併も多分、十市町村ですから、さぞ御苦労があったと思います、しかし、それを乗り越えてスタートをされていかれたわけでありますから、それと同じように、農業経営についても、まさに東北の御地元の経営体が、日本の食料を担っていくんだという目的のために、ぜひとも御努力いただきたいと思いますし、必要があれば、何回でもまた御説明あるいはまた御相談、あるいはまた御要望も承りたいと思いますので、ぜひとも前向きに考えて、新しい、前進できる体制に、菅野委員にもぜひ御指導いただければありがたいなというふうに思う次第であります。

菅野委員 十九年度からこの制度が発足いたします。それで、これまでの転作作物で、大豆を集団的に転作をやってきた地域は今回の制度を歓迎しているんです。しかし、四ヘクタールというのは、日本全体を見ても、本当に北陸、中国、四国、九州、東北の北上山系を含めて、中山間地域においては、四ヘクタールを個人で所有するというのはもう不可能なんです。そういう地域は、後で触れますけれども、十九年度からもう乗りおくれてしまう状況になるんじゃないのかという物すごい不安を持っているんですね。

 そして、その不安を払拭して、かつての町村単位だったら、そこには農林課という農政担当がいて、小さな地域で懇談会を持つことができたんです。市が大きくなったことによって、そのきめ細やかな指導体制がもうない地域へ、ここは集落営農から取り残されて、今回の制度恩恵から外れてしまうという状況だと、本当に地域間格差がついてしまうんじゃないのかなという危機感があるんです。

 だから、スタート時点でもそういう地域間格差がつかないような体制というのはとる必要があるんじゃないのかなという思いから私は今質問しているわけでございますけれども、こういう地域実情になっているんだというところを踏まえた、しっかりとした支援体制というものをつくっていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 それから、私は、これまでもずっと主張してきたんですが、日本農業は家族経営的農業で支えられてきているし、今もそうだというふうに思うんです。農業生産額においても、兼業農家の生産額というものは、本当に専業農家よりも多いわけですよね。こういう農業というものを、今回の品目横断的経営安定対策の対象としての担い手と対比して、小規模農家や兼業農家について、日本農業での位置づけをどう考えていかれるんですか。局長、答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 今の御質問の前に、先ほどの市町村合併や農業団体合併との絡みをちょっと御説明いたしたいと思いますが、私どもも、この運動を進める中で、市町村合併や農業団体の合併によりまして、地元でのそういう集落のグリップが弱くなるとか、そういう懸念があるという声はたくさん聞いております。

 その中で、JAグループも主唱しておりますが、地方自治体、県の出先、市町村あるいはJA、農業委員会、共済組合、そういったところが、いわゆるワンフロア化と言っておりますが、関係諸団体、関係行政機関が一つのフロアに人を集めて、この問題について共通の認識で集落単位で取り組んでいく、そういう試みが各地で随分行われるようになりました。これはやはり、町村合併とかそういうことで、行政や農協の状況が変わってきたということを踏まえて、その団体間の力を結集してこの問題に当たろうということではないかと思っております。

 先ほど御指摘のありました、たまたまでございますが、宮城県の登米市につきましても、JAと土地改良区と共済組合、農業委員会のそれぞれの担当者が一つになりまして、農村戦略推進室というものをつくられたそうでございまして、そこを中心に……(菅野委員「そこは平場だから、条件のいいところだから、いいんです」と呼ぶ)そういうふうに、地域地域で非常に工夫をしていただいている、また我々もそういうものを支援していくということではないかと思っております。

 それから、兼業農家、小規模農家の扱いでございますが、これも何度も御答弁しておりますが、この制度の中でも、集落営農組織への御参加という形で、ぜひそういう農家にも入っていただきたい、また、そういう集落営農組織づくりに、先ほど御紹介いただきましたけれども、各方面、いろいろ工夫をしまして、百七億円の予算も計上しておりますので、こういうものも効果的に使っていただきたい、こういうふうに思っております。

 しかしながら、集落営農組織に参加しなければもう道はないのかということになりますれば、前回、たしか委員から御指摘のありました地産地消の問題もございましたけれども、やはり少量多品目生産とか有機農業などによって、規模は小さくても付加価値の高い農業をやっていくということは可能でございます。

 また、最近、私どもも岩手県等で拝見しまして、目からうろこが落ちたんですが、集落営農になる過程で、集落営農になりますと労働時間が非常に短縮されますので、みんな力が余るわけでございまして、従来野菜をつくっていなかった地域で、麦や大豆や稲作は四十代、五十代の方にお任せして、その余った力を野菜づくりに結集されて、かなりな規模で野菜をつくられ、それをまさに地産地消としてかなり売っておられるという集落営農組織も出てきております。

 ですから、そういった形で、小農あるいは兼業農家といえども、いろいろな形での営農活動の継続というのはあり得ると。また、私どもも、大きければいい、あるいは経営安定対策に結集すればいいというだけではなく、一方では、産業政策以外の政策の中できめ細やかな対策も講じていきたいと思っております。

菅野委員 また、継続して質疑をさせていただきたいと思います。

 きょうはこれで終わります。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査の参考に資するため、議長に対し、委員派遣承認の申請を行うこととし、派遣地、派遣期間、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査中、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、その出席を求めることとし、人選及び日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十分散会


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