衆議院

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第8号 平成18年4月12日(水曜日)

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平成十八年四月十二日(水曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 二田 孝治君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 山田 正彦君

   理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      小野 次郎君    金子 恭之君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      斉藤斗志二君    谷川 弥一君

      中川 泰宏君    並木 正芳君

      丹羽 秀樹君    西村 康稔君

      西銘恒三郎君    鳩山 邦夫君

      広津 素子君    福井  照君

      馬渡 龍治君    御法川信英君

      盛山 正仁君    渡部  篤君

      荒井  聰君    岡本 充功君

      小平 忠正君    後藤  斎君

      佐々木隆博君    仲野 博子君

      松木 謙公君    森本 哲生君

      山岡 賢次君    丸谷 佳織君

      菅野 哲雄君    古川 禎久君

      森山  裕君

    …………………………………

   議員           山田 正彦君

   議員           篠原  孝君

   農林水産大臣       中川 昭一君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       松本 義幸君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  西川 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     西銘恒三郎君

  西村 康稔君     馬渡 龍治君

  福井  照君     盛山 正仁君

  渡部  篤君     広津 素子君

  荒井  聰君     後藤  斎君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     今津  寛君

  広津 素子君     渡部  篤君

  馬渡 龍治君     西村 康稔君

  盛山 正仁君     福井  照君

  後藤  斎君     荒井  聰君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として、農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長中川坦君、生産局長西川孝一君、経営局長井出道雄君、農村振興局長山田修路君、外務省大臣官房審議官木寺昌人君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君、医薬食品局食品安全部長松本義幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野博一君。

松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。

 品目横断的担い手の安定施策に関する法案につきまして質問をさせていただきます。

 現在、日本の農業政策におきます最も重要な課題は担い手の育成にあります。私の地元の千葉県の千葉市や市原市におきましても、圃場整備が終わった優良な水田ができ上がっている地域においても、担い手が高齢化をして将来への継続の不安が聞こえてまいります。現在、日本の水田耕作者の平均年齢は六十五歳と言われております。このままでは、他のあらゆる農業振興策がとられるとしても、十年後の継続が大変厳しい状況となります。

 この時期に、農業従事者を対象とする抜本的な農業政策の変換、改革が行われることは、まさに待ったなしの重要な改革であることは言うまでもありません。この政策が成功するか否かは、いかに、対象の農地を集約して対象の農業者数を上げていくか、合理的で競争力のある農業経営をつくっていくかということにかかっているわけでありますけれども、前回の委員会におきまして、我が党の二田委員の質問に対して、現時点において、対象となる農地面積は五割程度であり、農業者数としては三割程度が対象になるとの試算が示されました。正直、少ないなというような感想を持ったわけであります。

 この農政の転換を成功させるために、将来にわたりまして、どのようなビジョン、見通しを持ち、どのような個別具体的な政策によってそれを達成しようと考えているのかについて質問をさせていただきます。

井出政府参考人 お答えいたします。

 平成十一年の七月に制定されました食料・農業・農村基本法におきまして、国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するために必要な施策を講ずるとされております。

 このため、基本法に基づきまして、施策を推進していくに当たりまして、目指すべき効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の姿を明らかにすることとし、平成十七年三月には、「農業構造の展望」としてお示ししたところでございます。

 この「農業構造の展望」におきましては、平成十六年に二百九十三万戸であった総農家数が、平成二十七年には二百十万戸から二百五十万戸程度になり、このうち効率的かつ安定的な農業経営は、家族農業経営で三十三万戸から三十七万戸程度、集落営農経営が二万から四万程度、法人経営が一万程度と見込んでおります。また、これらの経営によりまして経営される農地が全体の七、八割程度になると見込んでいるところでございます。

 農林水産省といたしましては、そういった望ましい農業構造の実現に向けまして、今般の品目横断的経営安定対策を初めとしまして、予算、金融、税制など、農業経営に関する各種施策について、その対象をできる限り担い手に集中して重点的に実施することによりまして、効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保を図ることといたしております。

松野(博)委員 対象農地の拡大や担い手の拡大の問題といいますのは、本法案、政策に対します対象者の理解が非常に重要であります。広報に関してはきめ細かく、特に、直接の相談窓口になります地方行政の関連部署や農業関係団体等への十分な指導を行っていただきたいというふうにお願いをさせていただきたいと思います。

 続きまして、本法案の対象については、小規模農家や兼業農家、こういった農家が集落営農に参加することで対象となるということでありますけれども、集落営農に参加できないような高齢者の農家や零細な農家についてはどのように対応していくのかについて、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

金子大臣政務官 松野委員御案内のとおり、農業の生産構造の脆弱化が進行いたしまして、強靱な農業構造の構築が待ったなしの課題となっている中で、品目横断的経営安定対策など、農業経営に関する各種施策の対象については、できる限り担い手に限定し、集中的そして重点的に実施することが重要だと考えております。

 今御質問のようなことは、現場をよく回っていらっしゃるのでよくお聞きになると思います。私もたまにこういう質問を聞くわけでございますが、今回、新たに導入する品目横断的経営安定対策につきましては、一定の経営規模要件を満たす認定農業者と集落営農組織を対象として支援を実施することにしておりますが、そもそも、集落営農組織とは、一定の役割分担をするとともに、年齢とか性別とか専業、兼業等を問わずだれでも参加することができるものでございまして、参加しない方はいても参加できない方はいないというふうに考えております。

 仮に、集落営農組織に参加しない場合であっても、例えば、少量多品目生産とか有機農業等を行い営農活動を継続するなどの選択をすることも可能でございまして、こうした取り組みによって、地産地消への貢献など、地域農業において一定の役割を担っていただきたいというふうに考えております。

松野(博)委員 今後の日本の農業の競争力を考えたときに、やる気のある担い手に集中をしていくということは非常に重要な点でありますけれども、また一方で、高齢者の農業従事者の方々や零細な農家の方々は、山間部や過疎地においては現在では主要な農業の担い手でもあります。日ごろからの委員会の議論にもありますとおり、日本の文化の源泉である農村をいかに維持していくかということを考えれば、こういった高齢者や零細農家は農村の主たる構成者でもあるわけでありまして、こういった観点からも、今回の法案の対象者とならない農業従事者に関しても十分な配慮をいただきたいというふうに思います。

 農地の集約と担い手の育成、この二つの課題を考えるときに、両方とも難しいことでありますけれども、私は、農地の集約の方がどちらかといえばやりやすいのかなというふうに考えます。農地の集約が成功しても、そこで従事する担い手が育成されなければ意味がないわけであります。

 現在、若い世代の農業への参加者が少ないという現実はありますけれども、彼らが農業に関心がないというわけではありません。いわゆる自然回帰の志向でありますとか、新たなライフスタイルに適合する面も農業にはあるわけであります。待遇や条件面の整備がされれば、十分に農業に今後とも参加をしていただけるのではないかなというふうに考えます。

 その観点で、私は、現在、社会全体といいますか、行政案件が官から民へという流れがありますけれども、農業政策においては一部民から官へという考え方も必要ではないかというふうに日ごろから考えております。

 農業に官、公が携わるといいますと、かつての中国の人民公社でありますとかソ連のソホーズ、コルホーズのイメージがあって、非常に非効率なイメージがあると思いますけれども、当時と社会意識も全く変化してきております。農地の集約をするという点において考えても、公の信頼というのはまだまだ我が国においては大きいわけでございまして、それを利用するということは効果を発揮していくのではないかというふうに思います。担い手の供給、育成においても、公、国、県、基礎自治体が相当部分かかわっていくということが今後重要であるというふうに認識をしております。

 今回の法案におきましては、民間の農業関係者の活力を十分に発揮していただく、そのためのシステムをつくるということでありまして、これが柱となっていくわけでありますけれども、これをしても足りない部分に関して、農業に対する官の直接的な関与に関しては、今後また場を変えて改めて議論をぜひさせていただきたいというふうに考えております。

 次に、自給率に関して質問、議論をさせていただきたいと思います。

 先ほど、現在、日本の農業政策における最も深刻な問題は担い手の育成にあるとさせていただきましたけれども、今後の日本の農業政策のあり方、方向性を考えるに当たりまして、自給率をどうとらえていくかということが大変大きな要素になっていくんだろうというふうに思います。

 民主党案は、自給率六〇%を目指すとされております。この自給率といいますのは恐らくカロリーベースでの自給率ということであるかと思いますが、一口に自給率と言っても、カロリーベース換算のもの、金額ベースのもの、また自給力と称されるもの等々の考え方があります。農業を産業としてとらえた場合、産業政策的に有効な自給率の指標といいますのは金額ベースではないかと思われます。他の産業において、いわゆるシェアという考え方は生産額ベースであらわせるわけであります。また、いわゆる食料安全保障の観点からいえば、非常時にどれだけの食料を国民に安定的に供給できるかという視点においては、自給力という概念が近いであろうというふうに考えます。

 そこで、カロリーベースでの自給率というのは消費者の食生活の嗜好というのが非常に大きいわけでありますけれども、民主党の食料自給率に関する考え方、それと、それに対する農業政策についてお伺いをさせていただきます。

山田議員 松野委員からもっともな質問でありますけれども、我々、自給率を考えた場合には、いわゆる食料危機になった場合にどれだけ国民にカロリーベースで食料を供給することができるかという考え方に立つもので、やはりこの自給率の考え方そのものが食料安全保障という見地に立つのが最も至当じゃないか、そう考えております。確かに、産業政策でいけば金額ベースなんでしょうが、食料に関しては、食の安全、食料安全保障という見地からやはりカロリーベースじゃないか。

 自給力というのは、非常時にどれだけ自給力があるか、例えばゴルフ場をつぶして芋畑にするとか、そういう話があるかと思いますが、それは大変不確かなもので、どこまでの自給率を換算できるかというと、非常に難しい。そう考えると、やはりカロリーベースで考えていくべきだ、そう考えております。

松野(博)委員 私は、個人的には、非常時における食料供給、いわゆる食料安全保障というのは、エネルギーの自給率等々も考えて総合的に判断をしていったときにどういう意味を持つかというのは、これもまた議論を深めていかなければいけないというふうに考えております。

 今、山田先生の方から民主党の自給率に対する考え方を御披露いただいたわけでありますけれども、法案の中に、六〇%のカロリーベースの自給率の達成ということが書かれてあります。

 この達成に関して、例えば、国内の需要との整合性の問題、小麦等々ですといろいろな使用目的、用途があるわけでありますけれども、また数量の問題、こういった国内需要との整合性、また、この六〇%を達成するに当たっての農地面積等の国土条件、こういった問題に関して、具体的な施策についてお聞きをしたいというふうに思います。

山田議員 大変厳しい質問なんですが、私どもは、五〇%を十年間で達成し、その後目標として六〇%まで持っていく。

 そうなりますと、過去最大の収量、大豆の場合には八十六万トン、菜種の場合には六十四万トンまでいっています。ただ、小麦をどこまで、過去最大七百七十九万トンまでいっていることはいっているんですが、確かに松野委員がおっしゃっているように、小麦に関する需要、これはせいぜい六百万トンぐらいだろう、そういうところかと思います。六〇%まで自給率を達成するとなると、小麦とか大豆とか菜種とか、それだけではなく、畜産物あるいは魚介類、そういったものも含めて六〇%まで持っていきたい、そう考えております。

 ただ、耕地面積についてですけれども、確かに、我々が考えている裏作の利用についても、現在裏作している部分、あるいは裏作を容易にできる部分の面積からすれば非常に足りないんじゃないか、耕地面積が少ないんじゃないか、不可能じゃないか、そういう御指摘じゃないかと思います。

 かつて昭和四十四年の水準からいきますと、裏作、耕地利用率が既に一三七%あったわけでして、さらに昭和四十年でも、あるいはもっと前、昭和三十何年にいきますとかなり裏作に利用しておる。今、基盤整備事業がかなり進みまして、水田においても、乾田率といいますか、排水して畑に裏作利用できる、それが七〇%を超えていると思うんですが、それから、畑に菜種を利用するとかソバを利用するとか、そういった形でいきますと、将来的に考えれば、さらに畜産物とかあるいは魚介類等々を入れていけば、今ある耕地面積を十二分に利用できて、穀物とか農産物においては達成可能であると考えているところです。

松野(博)委員 お答えが水産、畜産までわたる多岐な内容でございますので、今後、その現実性に関しては、まだまだ委員会の議論が続きますので、検証していきたいというふうに考えております。

 政府側に質問をさせていただきたいと思いますが、新たな食料・農業・農村基本計画では、平成二十七年度の食料自給率目標を四五%としております。これもカロリーベースでの自給率でありますけれども、この目標の達成に向けて具体的な施策をどう考えているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

宮腰副大臣 先ほど松野委員の方から御指摘がありました、カロリーベースのほかに、生産額、金額ベースの自給率もあるということであります。

 カロリーベースで申しますと、現在四〇%になっておりまして、国民の約八割の方々がこの自給率について不安を抱いておいでになるというふうな結果が出ております。カロリーベースの場合は、例えば野菜、果樹についてはほとんどカロリーに換算されないということで、そちらは、幾ら需要にこたえる生産を行ってみてもカウントされないという面があります。逆に、畜産物の場合、えさの自給率が低いということでありますので、国産の牛肉、豚肉、鳥肉あるいは卵を食べた瞬間に、カロリーベースでは国産のものであっても自給率が落ちるというような逆の面もあります。

 でありますので、自給率につきましては、もちろんカロリーベースを基本としながらも、生産額ベース、これも自給力という面から考えていくとやはり必要なのではないかというふうに考えております。

 具体的な施策につきましては、まず消費面におきまして、日本型食生活の推進に向けまして、食事バランスガイドの普及、活用に努めるなど、わかりやすく実践的な食育を進めているところでありまして、去る三月三十一日に食育推進基本計画ができましたので、ぜひ、食育について、みずから食を選択する能力を身につけるということで、これを国民運動としてこれからしっかりと展開してまいりたいというふうに考えております。生産面におきましては、食品産業と農業の連携強化、あるいは経営感覚にすぐれたやる気と能力のある担い手の育成確保を図ることにより、需要に即した生産を進めているところであります。

 先ほど申し上げたえさの自給率の問題でありますが、粗飼料で一〇〇%、それから濃厚飼料で一四%、これが目標になっておりますけれども、仮に達成された場合には、自給率はカロリーベースで二、三%上昇するということでありまして、個別作物ごとの目標を基本計画に書き込んでおりますけれども、それぞれの個別作物について、しっかりと自給率向上に向けて頑張っていきたいというふうに考えております。

松野(博)委員 食育に関しては、農業政策とも極めて今後密接に関連をしてくる分野でありますから、十分に議論を深めていきたいというふうに思います。

 私は、今議論をさせていただきました食料自給率の問題、また、産業政策としての農業の問題、こういったこともございますけれども、もう一つ、今後の日本の農業のあり方を考えるに当たって、長期的な視点においては、予想される世界的な食料不足の時代において、日本の農業が果たすべき責任とは何かということもしっかり認識をしていかなければいけないというふうに考えております。

 海外で拡大する砂漠や荒れ地を見るにつけ、日本がいかに世界で有数の農業適地であるかということを改めて考えるわけであります。土壌、気候、雨量等、恵まれた日本の農業条件の中で、また一方で、世界では子供たちが飢餓状態にある国もある、そして、先進途上国と言われた国々も、社会の発展段階において食生活も変化をしてきた。こういった国際的な状況変化の中で、日本の農業が、自国の自給率も重要でありますし、産業としての日本の農業という視点はもちろん重要でありますけれども、日本が農業適地として世界的に果たしていくべき責任、このことも今後の日本の農業政策の中に織り込んでいかなければいけない、そう個人的に考えております。

 最後に、需給調整システムについてお伺いをさせていただきたいというふうに考えております。

 長年にわたりまして、生産調整というものは日本の農業政策の大きな柱の一つでありました。ネガティブな批判もあるわけでありますけれども、しかし、一方で、価格を維持することによって、農業従事者の生活を守り、トータルで日本の農業政策に寄与してきたという側面は、やはり率直に評価をしなければいけないという点もあるかと思います。

 今回、新たな需給調整システムが導入をされるということでありますけれども、生産現場においては、新たな需給調整システムは生産調整というのをしっかりされるのかなという不安の声も聞くことがあります。その新たな需給調整システムは、現行のシステムとどのように違うのかについて説明をしていただきたいというふうに思います。

岡島(正)政府参考人 お答えいたします。

 十九年産からの移行を目指しております新たな需給調整システムにつきましては、農業者、農業者団体が、地域の販売戦略に基づき、主体的に需要に応じた生産に取り組むことにより、米づくりの本来あるべき姿の実現を図るものでございます。

 新たなシステムのもとでは、農業者、農業者団体の主体的な取り組みに対しまして、国を初めとする行政が各段階で支援を行うことにより、需給調整の円滑な推進を図るものを考えております。

 すなわち、これまで、国を初め、行政による生産目標数量の配分を行っておりましたけれども、新たなシステムにおきましては、国、都道府県、市町村のそれぞれが需要量に関する具体的な情報の提供を行います。その上で、JA、市町村などを構成員といたします地域協議会が、地域全体における需給調整の調整機関として重要な役割を果たすこととしておりまして、ここでは、このように行政から提供される情報をもとにいたしまして、配分の一般的なルールなどを関係者の協議により決定していただき、JAなどの生産調整方針作成者による主体的な需給調整を支援することといたしております。

 こうしたことを受けまして、JAなどの生産調整方針作成者は、地域協議会からの需要量に関する情報や、市場シグナルに基づいて生産目標数量をみずから決定するとともに、傘下の農業者へ配分することといたしております。

松野(博)委員 農業者の主体的な生産調整を取り入れていくということでありますが、しかし、全体としてより有効に機能するためには、これまでどおり、政府ももちろんでありますけれども、都道府県、市町村の行政もしっかりと関与していかなければいけないというふうに思います。その点に十分留意をしていただきたいと思います。

 そのことをお願いし、質問を終わらせていただきます。

稲葉委員長 次に、梶山弘志君。

梶山委員 自由民主党の梶山弘志でございます。

 松野委員に続いて質問をさせていただきます。

 今、我が国の農業人口は三百三十三万八千人、平成十七年現在でございます。そして、平成十二年から比較をいたしますと一四・二%減少しております。また、その三百三十三万八千人の中で、約六割に当たる五八・六%が六十五歳以上の世代であり、この世代がリタイアすると、急激に日本の農業の基盤というものは脆弱になっていくわけであります。

 そういった中で、新たな就農者、そして新たな担い手を確保、育成するのが急務であり、そのためには、農業を産業としてとらえていくこと、そして、他産業並みの所得を確保していくことということが大変重要な要素になってくるわけであります。

 また、今、きょうは中川大臣おみえになっておりますけれども、WTOのモダリティー確立ということで、四月末に向けて大変な御尽力をいただいておるわけでありますけれども、WTOにおける国際規律の強化にも我が国としては対応していかなければならないという現実があるわけであります。これらの内外の状況下、この法律案があり、そしてこの制度が出てきたものと認識をしております。我が党におきましても、長い時間を割いて激論をし、検討をしてまいりました。そういったことを踏まえて、何点か質問をさせていただきます。

 まず、品目横断的経営安定対策では、対象者を担い手に限定しているわけであります。この対策の成否は、対策の導入までにどれだけ担い手を育成、確保できるかということにかかっているわけであります。そして、それぞれの地方、私の地元も含めてですけれども、行ってみますと、その対策、周知の方法、周知の程度につきまして大変濃淡があるような気がいたします。担い手の育成、確保に向けた国、地方公共団体等の取り組みの状況、現状をお聞かせいただきたいと思います。

宮腰副大臣 品目横断的経営安定対策は戦後農政の最大の転換となるものでありますので、これを円滑に導入するため、行政と農業団体とが連携協力し、昨年十月の経営所得安定対策等大綱の決定後速やかにブロック単位あるいは都道府県単位での説明会等を開催いたしまして、農閑期には全国各地で精力的に集落座談会等を実施いたしております。農林水産省の担当者、これは局長、審議官、課長クラスで県別の担当を決めて精力的に回っているわけでありますけれども、対策の内容の正確な周知や担い手の育成に全力で取り組んできたところでございます。

 地方公共団体等におきましても、市町村、JA、農業委員会等の関係機関による総合的な支援組織といたしまして、全国各地に担い手育成総合支援協議会の設置を推進いたしているところでありますけれども、このほか、各地域の実態に応じて、市町村、JA等が一体となった集落営農の育成支援チームを編成するなどの支援が行われているところであります。

 こうした取り組みの結果、対策の内容や担い手育成、確保の必要性に関する理解につきましては、現場レベルまで相当程度浸透してきつつあるのではないか、地域によっては、認定農業者の大幅な増加、対策の対象となる集落営農組織の設立など、具体的な成果も出始めているというふうに理解をいたしております。

 また、農業団体、例えば全農につきましては、担い手をリスト化して集中的に支援をするための人員の確保も既に行っているようでありまして、現状では、担い手がカバーする見通しとなっておりますのは面積で五割、それから農家戸数で三割という状況でありますが、この後、知事特例などもありますので、これがどういうふうな形になってくるのか、よく見きわめてみたいと思っております。

 今後とも、本対策の十九年産からの円滑な導入に向けまして、対策の趣旨、内容等についてきめ細かな説明に努めるとともに、我が国農業を担う意欲と能力のある担い手の育成、確保に全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えております。

梶山委員 今お答えをいただいたわけでありますが、さらに地域的なばらつきが出ないような努力をお願いいたしたいと思います。

 続きまして、対象農業者、さまざまな要件をクリアした担い手に限定するわけであります。そして、今副大臣のお答えにもありましたように、この制度のスタート時には農地で五割、そして販売農家数で約三割の方がこの制度に組み込まれるわけでありますが、その反面、対象とならない農家や農地も出てくるわけであります。そして、食料自給率の低下や耕作放棄地の増加を招くおそれはないのか、もしそういったことを考えているのであれば、どういった対策を講じているのか、お聞かせいただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 品目横断的経営安定対策の対象者につきましては、我が国農業の構造改革を加速化する観点から、やる気と能力のある担い手を対象といたしております。

 食料自給率につきましては、本対策の導入によりまして、生産性の高い担い手が生産の相当部分を占める強靱な農業構造の実現を通じまして、農作物の生産コストの低減や品質の向上が図られますとともに、消費者や食品産業の需要に的確に対応し、農作物を安定的に供給できる体制が確立されることによりまして、国内農産物の生産が拡大し、食料自給率の向上に資するものと考えております。

 また、耕作放棄地につきましても、現状、農業従事者の減少、高齢化の進行によりまして耕作放棄地の一層の増大が懸念されております中で、本対策の導入によりまして、担い手による農地の有効利用を図っていくことが耕作放棄地の発生を防止する上で重要であると考えております。

 また、本対策の対象となりにくい小規模な農家などにつきましては、集落営農経営に構成員として参画していただくことなどを後押しすることによりまして、結果として農地の有効利用が図られ、耕作放棄地の発生も防止されるものと考えております。

梶山委員 次に、集落営農についてお伺いいたします。

 二十ヘクタールの要件のほかに経理を一元化するという条件があるわけでありますが、現場においては、大変ハードルが高くて実現が困難である、精神的な部分が多分にあろうかと思うんですけれども、困難であるという声を聞きます。具体的にどのようなことをすればいいのか、どこまでできていればいいのか。

 そして、現場での経理の一元化が円滑に導入されるようにどのような支援を行っていくのか。例えば、これだけいろいろな技術が進展した時代でありますから、模範的な会計ソフトをつくって個別の家に渡す、個別の農家に渡す、そしてそれをあわせて集落営農の決算、またそういったまとめをするというようなことができないのかどうか、そういったことも含めてお聞かせいただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 経理の一元化につきましては、集落営農組織が経営主体として将来にわたって安定的に農業経営を行っていくためには、集落営農組織全体の収益とかコストの現状等を把握し適切な営農方針を策定できるようにしておくことが必要だ、この観点から要件としているわけでございます。

 具体的には、三点お願いをいたしております。一つは、集落営農組織名義の口座を設けていただきたい、二つ目は、農産物の販売名義をこの集落営農組織名義にしていただく、三つ目が、農産物の販売収入をこの集落営農組織名義の口座に入金する、この三点がポイントだと申し上げております。この三点については、よく御説明すればそんなに高いハードルということではないと私たちは思っておりますが、初めてのところでは戸惑いもあろうかと思います。

 現在、現場で経理の一元化を円滑に導入するためにさまざまな形での支援が必要なのは御指摘のとおりでございますが、例えば、JAが営農センターにパソコンや会計経理ソフトを導入しまして、専門スタッフを配置して集落の経理事務を支援している、あるいは支援しようとしているところ、それから地域の担い手育成総合支援協議会の構成員に中小企業の経営診断士や税理士の参加を呼びかけまして支援体制を強化しているところ、そういった取り組みも行われてきておりますが、農林水産省としましても、十八年度予算におきまして、この集落営農の経理等に関する基礎的な知識についての講習会の開催等を支援することにいたしております。

 それから、今委員御指摘の会計経理ソフトにつきましては、地域によりましては普及員、普及所等が独自の開発をされたようなものもございまして、そういったものが適切であれば頒布するというようなことも考えていきたいと思っております。

梶山委員 ありがとうございました。

 我が国の農業の営農実態、地形や気候等によって、自然条件等によってさまざまな形で行われているわけであります。

 経営規模要件を全国一律にすると、それぞれの限られた条件下で規模を拡大しようとする農業者の意欲をそいだり、かえって構造改革の推進に支障を来すおそれがあるのではないかと考えるわけでありますが、この対策の経営規模要件は地域の実態や地域の意向を踏まえたものになっているかどうか、ぜひお伺いをしたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 品目横断的経営安定対策の対象者の要件につきましては、土地利用型農業の構造改革を推進していく観点から、認定農業者であって経営規模が都府県では四ヘクタール以上、北海道では十ヘクタール以上のもの、または一定の要件を満たす集落営農であって経営規模が二十ヘクタール以上のものを基本とすることといたしております。

 一方、地域の実情を踏まえますと、中山間地域など物理的に集落の農地が少なく規模拡大が困難な地域もございます。こういった場合には、この基本要件の規模を適用することが必ずしも適当ではないと考えられますので、別途の基準を設けて対象とすることができることといたしております。

 また、対象品目を経営上の重要な構成要因としつつ、有機栽培、複合経営などによりまして相当水準の所得を確保している経営、野菜とか果樹に特化されて、一部米、麦もつくっていらっしゃる、そういった経営の場合には、経営規模に関係なく、実情に応じて個別に認定することができるというふうにいたしております。

 このように、私どもとしては、地域の実情、意向を踏まえた適切な対象者要件を設定できるようにすることによりまして、意欲と能力のある担い手に十分な門戸を開くと同時に、担い手の経営改善の努力を促しまして、その結果、力強い農業構造の実現に資するものと考えております。

梶山委員 次に、この制度の交付金の支払いについてお伺いをいたします。

 支払いにつきましては、諸外国との生産条件格差を是正するための対策、いわゆるゲタ対策、そして、収入の変動による影響緩和のための対策、ナラシ対策があるわけでありますが、そのうちのゲタ対策についてお伺いをいたします。

 過去の生産実績に基づく支払いについて、農家が十九年以降規模拡大をした場合や新規参入した場合、その生産実績はどのように取り扱われるのか、教えていただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 過去の生産実績に基づく支払いは、WTOにおける国際規律の強化にも対応し得るよう、緑の政策として制度を構築するものでございます。したがって、過去の生産実績のない人から農地を取得した場合ですとか、対象農産物の作付が拡大した場合については、緑の政策としての今回の制度の枠組みの中では対応することはできませんので、黄色の政策でございます毎年の生産量、品質に基づく支払いのみでの対応が基本となります。

 ただし、御指摘のような事例については、それぞれ担い手による主要食糧の安定供給ですとか、新規参入支援といった政策目的に沿ったものでございますので、これについては、本制度とは別に、十九年度予算概算要求における対応も含めまして、それぞれの施策体系の中でしかるべき対応を検討してまいりたいと考えております。

梶山委員 今の答弁の中にもありましたけれども、もう一つの対策、毎年の生産量、品質に基づく支払いにつきましては、農業者の生産性、品質向上に対するインセンティブを生かす観点から、一定の水準が必要と考えております。

 過去の生産実績に基づく支払い、これは緑の政策であります。そして今の、毎年の生産量、品質に基づく支払い、黄色の政策でありますが、この切り分け方については、政策を将来とも安定的に講じていくために緑の政策が中心となるような考え方が必要であり、その意味で、この二つの政策の比率については大変大きな関心を持っております。もし現時点で答えられるのであれば、お聞かせいただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 国内支持に対する国際規律の制約の中で、本対策を長期にわたり安定的かつ継続的に講じていくためには、緑の政策でございます過去の生産実績に基づく支払いが、生産条件の格差を補正する支払いにおきまして、できる限り多くの部分を占めるようにすることが必要であると考えております。

 他方、このような仕組みを導入する場合でありましても、需要に応じた生産や生産性向上に資するような工夫が必要でありますので、生産量等の変動に応じて支払い額も変動させることから、WTO農業協定上は削減対象の黄色の政策になりますが、毎年の生産量、品質に基づく支払いをあわせて講ずることとしております。これにつきましては、農業者の生産性、品質向上等に対する適切なインセンティブを働かせる観点から、品質格差を的確に反映できるような水準を維持することが必要ではないかと考えております。

 例えば小麦ですが、現行の麦作経営安定資金におきます品質格差の幅程度を当面継承することとした場合には、現在、この格差の幅は、昨年秋にお示ししました生産条件格差補正支払いの試算値の二、三割を占めることになります。

 このことを踏まえますと、毎年の生産量、品質に基づく支払いの割合につきましては、生産条件格差を補正する支払いの二、三割とし、残りの七、八割を過去の生産実績に基づく支払いに充てることが適当であると考えておりますが、いずれにしても、法案第三条第七項に基づきまして、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞いた上で、具体的に単価水準として決定してまいる考えでございます。

梶山委員 十九年度からこの制度が導入されるわけでありますが、米の需給調整を引き続き適切に実施する観点から、担い手以外の農家に対しても、米価下落の影響を緩和するような支援策を当面、しばらくの間、実施していくべきではないかと考えますけれども、その辺のお考えはいかがでしょうか。

岡島(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点、非常に重要な点だと思っております。

 米につきましては、平成二十二年度におけます米づくりの本来あるべき姿の実現を目指しまして、需要に即応した米づくりの推進を図るために、需給調整対策、流通制度の改革など、各般の施策に取り組んでいるところでございます。

 十九年度からの米の需給調整に対する支援策につきましては、担い手を対象といたします品目横断的経営安定対策が導入されることなどを踏まえまして、次のように見直すことといたしております。

 まず、需給調整メリットとしての米価下落による影響緩和対策でございます稲作所得基盤確保対策及び担い手経営安定対策に関しましては、担い手を対象とする対策につきましては、品目横断的経営安定対策へ移行いたしますけれども、委員御指摘の担い手以外に対する対策につきましては、米の需要に応じた生産を誘導するため、当面の措置といたしまして、産地づくり対策のメニューの一つとして米価下落の影響を緩和するための対策を行えるよう措置することといたしております。また、産地づくり対策につきましては、現行対策の実施状況などを踏まえた見直しを行いますとともに、集荷円滑化対策については、その実効性を確保し実施することといたしております。

 このように、生産調整の実効性を確保するため、品目横断的経営安定対策の対象とならない農業者であっても生産調整の実施に着目した対策を講ずることとしているところでございます。

梶山委員 続きまして、環境保全についてお伺いをいたします。

 これまでも環境保全型農業を推進してきたわけでありますけれども、これまでの成果についてまずは総括をしていただきたい。そして、今回の農地・水・環境保全向上対策で、農村が持つ多面的機能向上のためにさらにどのような展開を進めようとしているのか。そして、中山間地、特に過疎化の進む中山間地、今度の、担い手というのも非常に少ない地域であると思っております。そういったところの環境保全のためにどういったことを考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

金子大臣政務官 農林水産省におきましては、平成四年から、環境保全型農業を全国的に推進するために、技術の開発、実証等を行うとともに、持続農業法に基づく土づくりと化学肥料、農薬の低減に取り組む農業者、いわゆるエコファーマーに対します金融、税制上の支援を行ってきたところでございます。

 こうした支援の結果、エコファーマーは着実に増加しておりまして、平成十七年九月末時点で、前年に対して約二万六千人増の約八万九千人となっております。

 梶山委員の御地元の茨城県でございますが、大変積極的に取り組んでいただいておりまして、全国で八万九千人でございますが、茨城県においては平成十七年九月末で五千百人のエコファーマーの方に取り組んでいただいておりまして、大変意識の高い農家の方が多いんだなというふうに感心しておりますし、ぜひこれを進めていただきたいと思います。

 また、農業、農村が有する多面的機能というのは、農村において適切な農業生産活動が持続的に行われることによりまして発揮されるものでございます。農地・水・環境保全向上対策は、農地、農業用水等の資源、さらにはその上で営まれる営農活動を一体として、その質を高めながら将来にわたり保全するために、一つには、地域ぐるみで、農地、農業用水等の適切な保全とあわせて施設の長寿命化や環境保全にも取り組む共同活動、二つ目には、地域の中でまとまって化学肥料、農薬の使用を大幅に低減する先進的な営農活動、こういったものを支援するものでございまして、農業、農村の有する多面的機能の発揮に資するものと考えております。

 最後にお話をされました中山間地域でございますが、耕地面積の大体四三%、国土面積でいきますと六五%、農家数でも四三%、農業産出額におきますと三八%、そういう意味では、我が国農業、農村の中で大変重要な位置を占めていると思います。

 今、中山間地域直接支払い制度というのを実施しておりますが、中山間地域においても、この事業はすばらしいということで大変感謝されていると思うのでございますが、このことも含めながら、多面的機能が発揮できるように、担い手がきちんと残れるように、その効果が出るように、これからも梶山委員の御意見等も踏まえて取り組んでまいりたいと思います。

梶山委員 今、金子大臣政務官からお答えがあったわけでありますけれども、中山間地域、特にやはり過疎化が進む中山間地域は、担い手というか、その後農業をやっていく人たちも少ない、そしていなくなったときにどうなるかという不安があるわけであります。そういったことも含めて、万全の対策というものを重ねてお願いしたいと思います。

 続きまして、麦に関することでありますけれども、麦製品に対する消費者や加工業者の多様なニーズにこたえられるように、国家貿易の枠内で麦製品の製造業者の需要に柔軟に対応できる輸入方式として、SBS方式、売買同時契約方式というものをこの制度で導入することとしておりますが、これにより従前とどのように変わっていくのか、またどのような麦が輸入されていくことになるのか、お答えをいただきたいと思います。

岡島(正)政府参考人 お答えいたします。

 現在の国家貿易におきましては、輸入を効率的に行うために、実需者ニーズの最大公約数的な銘柄の麦を大ロットで輸入しております。

 一方、今回導入されますSBS方式につきましては、委員御指摘のとおり、実需者のニーズがきめ細かく反映される輸入方式であるという特徴を持っております。このため、新たにSBS方式を導入することによりまして、近年、安全、安心志向の高まりを背景に多様化する消費者ニーズにきめ細かく対応した多様な銘柄の麦の輸入が可能となるものと考えております。

 具体的には、年間の需要量が比較的小さなデュラム小麦でありますとかプライムハード小麦、あるいはフランスパン用にこだわったフランス産の小麦でございますとか、自然志向に対応したオーガニック小麦などが想定されているところでございます。

梶山委員 最後の質問になりますが、民主党案に対して質問をさせていただきたいと思います。

 民主党の案は、民主党案が成立をして施行をされるのであれば、生産調整は廃止、そして、先日の本会議の答弁の中では、備蓄は約三百万トンの棚上げ備蓄を行うということでありますが、それに関して何点か質問をさせていただきます。

 まず、第一点目。これは具体的な数値が述べられておりませんけれども、毎年の生産量の見込みの数量はどのくらいに考えているのか、そして、毎年どのくらい備蓄として買い入れを予定しているのか、また、何年間保管をし、どのような形で売却していくのかということがまず第一点。

 そして、第二点目。三百万トンの米の保管ということでありますが、現状は百万トンの政府備蓄をしているわけであります。大体一トン当たり年間一万円の費用がかかるわけでありますけれども、また新たな備蓄用のサイロ、そして建物の確保も含めて、どのような財政負担を考えておられるのか。

 そして、三点目。備蓄米のうち一定期間を経過したものについては飼料やバイオマスなどに利用するということになっておりますけれども、そのバイオマス利用の詳細を教えていただきたい。そして、この場合、私どもの計算では、大きな差損が生じ財政負担が必要となるわけでありますが、その財政負担はどのくらいになると積算をしておられるのか、また財源はどのようにするのかということを教えていただきたいと思います。

山田議員 梶山委員からの質問でございますが、私どもの備蓄量ですけれども、かつて、一九九三年でしたか、冷害のときに二百五十九万トン米を緊急輸入せざるを得なかったということがありまして、少なくとも三百万トン備蓄しておかなきゃいけないというのが我々の基本的な考え方です。

 その三百万トンをどうして備蓄するかというと、今まで回転備蓄方式で各倉庫に保管しておった。これが、トン当たり一万から一万二千円の保管料がかかるわけです。我々は、棚上げですから市場に出しません。そのために、カントリーエレベーターに隣接したサイロ、もみサイロで十五度C以下に冷蔵してやっていくやり方で考えておりますが、これをやりますと運送賃とかその他ほとんどかかりませんので、三百万トンの保管料だけで四十五億円、今のいわゆる回転備蓄の十分の一の費用でできると我々は試算いたしております。

 そのためのサイロ建設、仮に一年間で百万トンつくっていったとしても、約五〇%の補助で三百億円ぐらいだろうと考えております。

 さらに、五年間備蓄を重ねていって、五年後にバイオマス利用とかえさ利用とかした場合には、それだけの差額といいますか差損が出るわけですが、その差損だけで、五年分と考えますとかなりの金額にはなると思っております。大体、私どもの試算でいきますと、トン当たり約二十万の差損を計算しまして、年間のいわゆる償却は四百億円ぐらい、それくらいは必要になっていくんじゃなかろうかと考えておりますが、これは食の安全保障のために必要なコストだと考えておりまして、米の備蓄、日本国民にとって米を備蓄していくこと、少なくとも三百万トンの備蓄、それにかかる費用としては当然必要なものだ、そう考えているところです。

梶山委員 今お答えをいただいたわけでありますが、バイオマスの利用の中身についてはお答えをいただきませんでしたが、まあ結構です。

 バイオマスの利用というのは、我が党においても将来の環境を考える意味でいろいろな形で検討しているわけでありますが、なかなかやはり、実用化、かなりの量を使うというところまでいっていないというのが現実であると思っております。

 そして、政治というのは、理想を目指すのはいいんですけれども、その道のりがあることを忘れてはならないと思います。やはり、現実を踏まえた上で一歩一歩進んでいく、それが法律のあり方ではなかろうかという感想を最後に申し上げさせていただきまして、私の質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 きょうは、ピンチヒッターではありません、意を決して、長年の懸案でありました直接支払い、経営所得安定対策にかかわる法律が八年ぶりかのいろいろな議論の経過を経て本日に至っておりますので、その質問をさせていただきたいと思います。

 大臣、その前に、この法案が出たいろいろな経緯というのは、今触れさせてもらいましたこの八年間、それ以上のいろいろな戦後の農業政策の基本的なあり方、そして、海外も含めて国際需給が中長期的に見てどんな形で推移するか、この数年間、特に中国、インドという、中国とインドの人口を足すと二十億人を優に超える人口が、急速な経済成長を遂げながら世界の輸出国から世界の輸入国、胃袋に変わっているという大きな背景もあるというふうに承知をしております。

 そして、世界のこれからの穀物を中心とした需給がどんな形でまず推移をするか、そして、それを国民の皆さんにどんな形でお知らせをしながら、先ほど梶山委員も最後に御指摘をしていたように、確かに農政、食料問題は一朝一夕に解決できる問題ではないということはよく承知をしております、だからこそ、今日本が置かれた世界の中での位置、特に食料という位置づけをまず明確にしながら議論を進めるべきだというふうに私自身は思っております。

 大臣、大きな意味合いも含めてですが、特に、アメリカも含めた世界の大輸出国、そしてある意味では輸入と輸出のバランスをとったEU、そして世界の胃袋に転じた中国という三つの地域に限定していただいて結構でございますが、その需給と今後の需給見通しについて冒頭お尋ねをしたいと思います。

中川国務大臣 おはようございます。

 まず、後藤委員から、大変大局的な、そして極めて大事な御質問でございます。

 御承知のとおり、日本は、世界一の食料純輸入国であり、そしてまた、世界じゅうと貿易をしながら国民の生命あるいはまた経済活動をしていくわけでございます。そういう中で、日本としては、もうたびたび議論になっております自給率の問題が非常に大きいわけでございます。

 そういう中で、後ほど申し上げます世界の状況との関連におきまして、基本法に位置づけられておりますように、今後の食料政策というのは、自給率の向上、それから適正な備蓄、そして輸入という三つによって行っていかなければならないわけでございます。

 そういう日本の状況というものがあるわけでございますけれども、他方、世界の食料生産あるいは消費の状況につきましては、まず、消費の方あるいは食料不足との関連におきましては、世界の中で貿易ができない国々、つまり、途上国あるいは後発途上国があるわけでございまして、食べる方に関しては八億を超える飢餓人口が存在をしているという実情がございます。

 それから、御指摘のように、経済発展をいたしますと、中国のように穀物からだんだん動物性たんぱくに移行していく。それも、よりカロリーが必要な鳥から豚、豚から牛というふうになってまいりますと、当然えさというものの確保といいましょうか投入が必要になってくるわけでございます。そして人口がふえていくという、この大きな消費の圧力というものがあるわけでございます。

 他方、生産の方につきましては、これも後発開発途上国のように、まず農業をきちっと確立していこうと。インドのように、WTOにおきましてもよく議論になりますけれども、自分たちは食料を自給すると同時に今後輸出をしていきたいんだというインセンティブがあるわけでございますし、アフリカのように、今後農業でも輸出をしていきたいという希望が大変強うございまして、よくアフリカの人たちと話をしていると、アフリカでできた農産物あるいは魚類をぜひ日本に輸出をしたいという要望が非常に強いわけでございます。

 したがいまして、日本といたしましては、昨年末に発表いたしました開発パッケージという形で、後発途上国で生産される農産物あるいは水産物が世界じゅうあるいは日本で消費できるようなシステムをつくっていこうという支援をしているわけでございます。

 それから、一般的に農業の生産性は上がっているわけでありますけれども、他方、農地の荒廃といった大きな問題があります。例えば、中国における水不足、あるいはまたアメリカにおける水不足、オーストラリアでも数年前に干ばつによって小麦の生産量が大変落ちたとか、あるいはまた天変地異、あるいは土地、水の問題等々の不安要素もあるわけでございます。

 そこで、御指摘の、まずアメリカにつきましては、生産量は近年高い水準にありますけれども消費もふえてまいりまして、輸出国でありますけれども天候その他の不安定要因もあるわけであります。

 EUにつきましては、干ばつ、あるいは最近は大雨といった異常気象が続いておりまして、生産が極めて不安定な状況にあるということでございます。

 中国につきましては、先ほど後藤委員からも御指摘ありましたし私も申し上げたように、生産、消費両方で、需給という観点からは不安定、あるいはまた、消費の、輸入の方の圧力があるわけでありまして、たしか中国は米の生産世界一でありますけれども、しかし食料の純輸入国に転じている、今後ますますその方向が強まっていくんだろうというふうに思っております。

 そういう世界の飢餓も含めた食料の状況というものもよく頭に入れながら、日本だけの問題ではなくて、世界の中で貢献ができる、あるいはまた、自給率を上げていくという政策上のいろいろな観点から、食料政策というものを世界の中でも位置づけていくことが今後大事になっていくんだろうというふうに理解をしております。

後藤(斎)委員 大臣が最後の方でも触れていただきましたように、確かに今、いろいろな事情が急速に変化をしつつあります。

 特に、WTOの中でも、大臣も含めて繰り返し御発言になっているというふうにお聞きをしておりますが、いわゆる食料安全保障論であります。これは、大臣が今、全体の需給も含めたお話の中で触れていただいたように、従来であれば、食料安全保障というのは、量はいっぱいある、でも、自然災害、不作であるとか港湾危機であるとか、ある意味では短期的な、特に供給面の不足ということから多分生じてきたのかなというふうに思っています。

 そして、今の食料安全保障というのは、ある意味では、需給の特に需要の部分が、従来予想もしなかったような形で、中国、インドを含めた国が、アジアの国も、ほかの国もそうですが、急速に需要の面で変化をしてきたということで、私は、食料自給率、食料自給力ということが必要になってきていると思うんです。

 ただ、食料安全保障ということについても、質的に大きく変わったと思うんですが、もっと必要なことは、国民の皆さんにどこまでそれが周知をされるか。確かに大臣がおっしゃるように、アフリカを中心とした、いわゆる飢餓状態に近い人口が八億人いる、ああ大変だなというふうな気持ちがあります。私も、昨年、他の委員会でアフリカの視察に行かせていただいたときに、一日一食しか食べられない地域というのがたくさん現存をし、その国も、大臣がお話しされたように、食料輸出をするということ以前に、まず自分たちで三食食べられるようにしていきたいという状況の国がまだたくさんございます。

 そして、この新たな経営所得安定対策制度をスタートするにしても、消費者という視点ですが、国民の皆さんがこの制度をどう認識し、そして、私たちが納税者としてこの仕組みが正しいんだという、いわゆる国民全体のコンセンサスがまず必要だ。それには、中長期的に見て、もっともっと需要と供給のアンバランスが進んでいき、やはり日本の国内で対応できるものはという意識はあっても、例えば、スーパーに行ってお買い物をする、八百屋さんに行って野菜や果物を買うときに、その意識が常にあるかというと、そうではないと思うんです。

 ですから、農業白書も含めて、従来からいろいろな工夫をやっている。確かに読みやすいようになって、告知は、周知はしているというふうに多分おっしゃるので、あえてお聞きはしませんが、ただ、そこの理解というものがどう得られるかというのがやはり私は必要だと思うので、そのメッセージをこれからどんな形でやっていくのか。大臣でなくても結構ですので、農水省がこれからどういうメッセージを、今回の経営所得安定対策の必要性というものを、全体の世界の需給や、国内で自給力を高めるという必要性も含めて、その中にどういうふうに位置づけるんだという、そのメッセージをどんな形で発信をしていくのか、お尋ねをしたいと思います。

中川国務大臣 先ほどの御質問あるいは私の答弁、後藤委員と多分共有できる点がほとんどだろうというふうに思っております。

 したがいまして、当委員会の議員の皆様方、つまり、国会の意思と政府の意思というものは、食料に関しては基本的には共有している。しかし、それを国民に御理解していただき、御支持をしていただけるかどうかという前提として、きちっとしたメッセージを発信するということは、御指摘のように極めて大事なことであります。

 政府が出す白書、確か三十何種類あるというふうに記憶しておりまして、そのたびごとに閣議決定をしておりますが、読みたい白書ばかりでありますけれども、片っ端からとても読む気にならない、量的にも、また、見た瞬間に。白書も随分と、カラーになったり、写真をいっぱい入れたり、図を入れたり、また、農水省の場合には、ジュニア農水白書とか、あるいはホームページとかメールマガジンとか、いろいろやっております。

 それから、後藤委員も、農林水産省に来たときに、最初に多分びっくりされるんじゃないか。私も、久しぶりで農林水産省に昨年行って、改めてびっくりしたのは、何と農林水産関係のポスターの多いこと。一体ポスターは何百種類あるんだと。精査してポイントだけ絞らないと、ポスターだらけです、農林水産省の中。これが、宣伝といいましょうか、周知をしていただくためのポスターがこれほど山ほどあると、逆に何が何だかわからない。

 だから、今担当に言って、きちっとした、ポスターはみんな大事なんですけれども、余りにも多過ぎて、ちょっと脱線ぎみの答弁になるかもしれませんけれども、この階に行くとこれが大事だ、これを食べなさい、上の階に行くと、これを食べなさい、そのまた上に行くと、水産庁に行くと魚だと。これを全部そのとおりやっていると、多分、食のバランスどころか、食べ過ぎておかしくなっちゃうんじゃないかというぐらいです。個々には大事なんです。でも、省として、食に対する責任を持っている、生産に対する責任を持っている役所としては、全体としての統一を考えなければ、バランスを考えなければいけないということで、無数にある広報ポスターを統一するように、今作業をやっているところでございます。

 いずれにいたしましても、国民、とりわけ食育の一番大事な対象でありますお子さん方に、きちっとした情報が、できれば御家庭を通じて、あるいは学校を通じて、マスコミあるいはインターネット等を通じて、できるだけ理解していただき、実践していただけるように、発信すればいいんだということじゃなくて、きちっとその情報が伝わるように、これからもさらに努力をし、場合によっては、我々発信サイドだけの知恵ではなくて、消費者サイドや広報の専門家の皆さん方のお知恵も拝借しながら、とにかく情報がきちっと届くような努力を今後も一層していく必要がある。

 白書だけではなくて、御指摘がございましたので、常日ごろ思っていることも含めて答弁をさせていただきましたが、きちっと情報が届くように、我々も今後とも努力していかなければいけないというふうに理解をしております。

後藤(斎)委員 ぜひ、大臣が御発言いただいたように、確かに、たくさんの情報があり余るほどあって、ただ、そのときに何が一番必要なのかという、大臣が御指摘いただいたようなことだと思うんですね。ぜひこれからも、そういう視点に立った周知をお願いしたいと思います。

 そして、この経営所得安定対策の前段として、昨年、食料・農業・農村基本計画がバージョンアップになりました。第一次というか、前基本計画の中では、二〇一〇年の食料自給率という部分で四五という数字を目標数値に置いて、確かに、いろいろな御努力をされたり、予算も投入をしてまいりました。しかしながら、結果は、昨年度でも四〇のまま変わらずということであります。そして今回、再改定というか、二次基本計画の目標数値、平成二十七年、二〇一五年の部分でも四五という数字を出されています。

 なぜ、前基本計画で自給率の目標というのをなかなか達成することができなかったのか、簡潔に理由をお聞きしたいのと、そして、その責任というものはどんな形で御認識をされているのか、あわせて簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

岡島(正)政府参考人 お答えいたします。

 前回の自給率目標四五%を達成するためには、米の消費量の維持でございますとか、需要に即した農業生産の拡大などを前提としていたところでございます。

 しかしながら、御案内のとおり、米の消費量につきましては、平成十五年度には、九年度と比べまして四・八キログラム減の六十一・九キログラムまで減少する一方、飼料や原料の多くを輸入に依存する畜産物や油脂の消費が増加し、また農業生産量は総じて減少しているところでございます。

 このように、消費、生産両面で当初見込んでいた姿とは異なっており、また、諸課題の解決が十分ではなかったことから、食料自給率は上昇には至らなかったところでございます。

 食料自給率の向上を図るためには、政府だけではなく、地方公共団体、農業者、農業団体、食品産業事業者、消費者、消費者団体などの関係者が一体となってそれぞれの課題に取り組むことが不可欠であるというふうに考えております。

 このため、新たな基本計画におきましては、生産及び消費の両面において重点的に取り組むべき事項でございますとか、地方公共団体、農業者、農業団体、食品産業事業者、消費者、消費者団体などの関係者の役割を明確化した上で、これら関係者が一体となって計画的な取り組みを推進するため、関係者から成る食料自給率向上協議会を設立し、工程管理を実施しているところでございます。

後藤(斎)委員 確かに、需要面のいろいろな変化の中でなかなかそれに対応できなかった、端的に言えばそうなのかもしれませんが、一方で、今回民主党が提出をしている法案の、第一条の目的というのは、今の世界の穀物を中心とした食料の需給関係のこれからの不透明さ、また不安、それをどうしても国内生産を強化するということで払拭をしたいという思いが強く伝わります。

 しかし、四五という数字も、なかなかこの目標に五年以上たって達成できなかった、それをまた五年、言葉は悪いかもしれませんが、とりあえず先送りをせざるを得なかったという中で、民主党の食料自給率は十年以内に五〇まで持っていけるという強い目標を掲げています。その点について、政府が五年以上やってきたものがなかなかうまくいかなかったということも踏まえて、この五〇という数字は確かに必要だとは思うんですが、それについてのアプローチをどういうふうに上手にするかという点も含めて、山田担当の方にお尋ねしたいと思います。

山田議員 後藤委員から非常に大事な質問でございますが、私ども民主党は、十年間で今の四〇%から五〇%に必ず自給率を達成させる、そう約束しているわけでございますが、その一環として、私ども、小麦、大豆、菜種等について、かつて二〇〇一年に、食料・農業・農村基本計画で政府が、後藤委員も承知のように、大豆と麦に対して六万七、八千円から七万三千円ぐらいまで出したときに、目標をたった二年で達成してしまった。いわゆるお金をかければ必ずそれだけのものを農家はつくるということなんです。

 お金を本当にかけることができるかどうか、そこが達成できるかどうかの勝負だと思っていますが、我々は、麦、大豆、トウモロコシについて、少なくとも米並みの収入が得られるような、具体的に収量に対する支払い、直接支払いをやれば必ず実現できると確信いたしております。

 もう一つ問題なのは、今六十五歳以上の農業就労者がほとんどになってきてしまった。そのためには、農業に対する新規参入を要件緩和して、だれでも意欲のある人であれば農業に参入できる、農地も取得できる、ただし、農地を取得したからといって、その出口を厳しく規制する、農地として利用しない場合には、農地の利用権、強制的な利用権のあるいは撤収も考慮する、そういった厳しい形での要件にした農業への新規参入、あるいはNPO法人、株式会社等々も含めて、具体的にやれば非常にその達成は可能であると考えております。

 以上です。

後藤(斎)委員 確かに、コストというか、農家で見れば、後でも触れさせていただきますが、いわゆる農業所得がどんな形で安定的に確保できるかということが一番の基本だというふうにも思っています。

 あわせて農水省の方にお尋ねをしたいんですが、バージョンアップをした基本計画において、生産努力目標を平成二十七年について明示されております。その中で特に、米は横ばい、麦についても横ばい、大麦については若干増ということで、今回いろいろな形で経営所得対策というものが、余り何か生産努力目標というのが変化しないような数字になっているようにしか見えないんですが、まず、この新基本計画で、生産努力目標をどんな前提でお立てになったのか、概括的で結構なので、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

西川政府参考人 生産努力目標の設定の考え方というお尋ねでございますけれども、新基本計画では、食料消費や農業生産の諸課題が解決された場合に実現可能な国内生産量として、平成二十七年度における品目別の生産努力目標というものを設定しているところでございます。

 その設定に当たりましては、脂質の摂取過多などの国民の栄養バランスの崩れを是正して、食べ残し、廃棄の発生量を抑制するといった望ましい食料消費の姿から求められる需要量を基礎としつつ、品目ごとの課題、事情を踏まえ、輸入品の国産品への代替可能性、そういったものも最大限に見積もって設定しているというところでございます。

 主要品目で見ますと、お米については、望ましい食生活の実現によりまして消費減少に歯どめをかけ、これに見合った生産量を確保する、麦、大豆については、品質向上などに努力することによって、近年の最大生産量に見合った需要を定着させる、輸入に押されがちな果実であるとか野菜につきましては、ニーズに応じた産地の取り組みを推進いたしまして国産シェアを拡大する、そういった考え方によりまして水準を定めているところでございます。

後藤(斎)委員 民主党の提案者にお尋ねをしたいんですが、今の数字ですと、特に麦、民主党案の再生プランの部分と、麦の生産努力目標というか、平成二十七年度の目標がかなり差があります。

 政府の努力目標では、小麦と大麦を足すと百二十万トン程度でございます。特に、小麦だけを見ますと八十六万トンということで、民主党側の目標にされている四百万トンというものに対する五倍近い開きがあって、その場合、麦の基本的な輸入も含めて国内需給のバランスのとり方というのは、確かに国内生産で足らざるものを輸入していくという基本的なルールの中で現在でもやっておるというふうに承知をしておりますが、では、国内生産をして麦粉をつくって、需要の面と価格の面で、消費者の方には、国産を例えば四百万トンに増加をして消費者価格が上がっちゃうとか、豪州産やアメリカ産とは何か違ったパンやうどんになってしまう、そういう実需の面での悪影響はないんでしょうか。

篠原議員 価格の問題はいろいろあるかと思いますけれども、そもそも論でちょっと答えさせていただきますと、直接支払いというのは、今までの価格支持と比べると、価格支持は、消費者の負担において価格を高くしておいて、消費者の負担で生産者にたくさんお金が行くというのをやめまして、EPAとかFTAがあるわけですけれども、それは入ってくるのは仕方がない、しかし、その分、今度は消費者負担じゃなくて納税者負担で農家にちゃんとお金が行くようにしましょうというのですから、理論的にいきますと、価格の面の差というのはそれほどなくなってくるのではないかと思います。

 そもそも、それが基本ですから、価格面で、国産の小麦と輸入小麦というものの差で、高過ぎるから国産の小麦は使わないという事態にはなっていかないんじゃないかというふうに承知しております。

後藤(斎)委員 農水省の方にお尋ねをしたいんですが、先ほどもお尋ねをしたように、今回、経営安定対策を導入して、米まで含めるかどうかは別としても、麦、大豆、てん菜、でん粉用バレイショということで、先ほども御指摘をしたように、平成十五年の生産目標の数字と平成二十七年の目標というのがほとんど変化をしていない。確かに消費という裏返しの部分は当然なんですが、経営所得安定対策を制度として新設したら、自給率には変化が出てくるんでしょうか、向上に寄与するという前提でこの制度を設計されたんでしょうか、お尋ねをしたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 今回の品目横断的経営安定対策の対象者につきましては、土地利用型農業の構造改革を加速化するという観点で、やる気と能力のある担い手を対象とすることといたしております。

 このことによりまして、生産性の高い担い手が生産の相当部分を占めるような強靱な農業構造の実現を図る、そのことによって、農産物の生産コストの低減や品質の向上が図られると考えておりますし、一方、消費者や食品産業の需要に的確に対応して、農産物を安定的に供給できる体制が確立される。その二点によりまして、国内農産物の生産の拡大と食料自給率の向上に資すると考えております。

後藤(斎)委員 順序がちょっと前後して大変恐縮なんですが、この交付金の交付に関する法律、経営安定対策法、この中で、米を含めると五品目、それに、その他農産物と組み合わせたという形で、当面五品目でこの法律の体系はスタートはするものの、これから、必要があればほかの品目もこの直接支払いの対象に入ってくるというふうに理解してよろしいでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律におきましては、いわゆるゲタと称する部分については、内外価格差があって生産者の努力によってはカバーできない差がある、そういった作物を土地利用型農業の振興という観点で五品目選んでいるわけでございます。

 ですから、本法の趣旨に即して、土地利用型作物としての主要作物について事情の変更があれば、将来対象になることは、本法の上では、政令で品目を追加指定するという形で可能ではございます。

後藤(斎)委員 今回の法律は確かに、冒頭にも御指摘をさせていただいたように長い間検討されて、ある意味ではWTOの規律にも合致をしながら国内農業を拡大していくという視点の中では私は評価をしたいと思うんですが、ただ、今、局長からも御答弁をいただいたように、あくまでもこの法律は土地利用型の作物である、その規模拡大ができれば日本農業はより強化するんだという視点であります。

 ただ、そうはいっても、確かに地域的にいろいろな、日本農業はばらつきというか特性があって、果樹しかできない地域、野菜が中心の地域、畜産が中心の地域というふうにあります。食料・農業・農村基本法という大きな法律の体系の中ではそれを網羅しております。ただ、確かに土地利用型ということに限定をしながら、必要があればその他というところで対応できるような仕組みになっていますが、将来的には、ほかの農産品、畜産も含めて、やはり日本農業全体が担い手という部分、そして土地、そして生産要素という三つの部分がきちっと連携を、先ほど大臣もお話しになったように対応していくことでしか、多分、日本農業全体が前に向いて前進をすることはできないというふうに私は思っています。

 そして、今回の総予算は、この法律が通ってから、これから検討するというふうにお聞きをしておりますが、やはり品目横断的経営安定対策というふうに称する以上、対象品目をもっと幅広くとらえて、土地利用型であるとか地域特産型であるとか、そういう枠組みの絞り込みをしながら、これから制度づくりをさらにバージョンアップしていただきたいと思うんです。果樹や畜産など、ほかの部分にこれからどのような形で対応していくのか、お尋ねをしたいと思います。

西川政府参考人 個別品目の野菜であるとか果樹、畜産等に対する対策ということでございますけれども、これらにつきましては、今回の品目別の横断対策ではなくて、それぞれ、野菜は野菜としての特徴があり、果樹には果樹の特徴がある、畜産もそうでございますけれども、また、かなりの部分が主業農家に担われている、そういったこともございます。そういったことで、今回の品目横断ではなくて、それぞれの品目別対策ということでこれからも生産振興を図るということにしているところでございます。

 いずれにいたしましても、例えば野菜の場合でありますと、果樹もそうでございますけれども、まさに海外との直接品質競争の中で闘っているわけでございまして、そういった面での海外競争力をさらに強めるといった方向での対策、そういったものを講じていきたいというふうに考えているところでございます。

後藤(斎)委員 局長、それはほとんど農家の方の本質の気持ちを多分理解されていないと思うんです。なぜならば、農家の方が、確かにおやじやおじいさんが農家だったからということで農業をお継ぎになっている方、これがまだ大宗であります。そして、新規産業といっても、まだまだ十二分にいっていない。そして、果樹農家や野菜農家も土地利用型農家と同じというか、それ以上に毎年毎年の、例えば、努力をして収量がふえたら価格が下がるというのは、野菜や果物の方がはるかに大きいわけですよ。

 では、それに今の対策が十二分になっているというふうにお考えですか。

西川政府参考人 野菜につきましては、主要品目につきまして価格安定制度というものを講じておりまして、価格暴落に対しては価格補てんといった制度を設けているところでございます。畜産は畜産としてさまざまな対策がございまして、子牛の対策でありますとか、あるいは肥育牛の対策でありますとか、あるいは酪農対策、それぞれ個別の品目に応じて、それぞれの価格対策ということも講じているということでございますので、これらを適切に運用することによってこれまでも主業農家が育ってきている。

 ただ、先ほど申し上げたように、最近、野菜とか果樹につきましては、海外との競争というのが非常に強まっておりますし、高齢化も進んでいるということもございますので、これらのところについてやはり施策としては重点を移していくことが、将来の我が国の持続的な農業の発展に資するのではないかというふうに考えているところでございます。

後藤(斎)委員 確かに、いろいろな施策があることも十分承知をしております。

 ただ、先週ですか、今の畜産の話でいえば、北海道で消費低迷から千トン以上の牛乳が廃棄をされた、要するにぶちゃっているわけですよね。野菜にしてもそうなんです。

 農家の方は、確かに出荷調整とかいろいろな、制度の中のルールとして農家として協力しなければいけないという部分、それも承知をしています。ただ、年変動が、表年、裏年というのが果物しかないのかどうかは別としても、消費というものは常に動いている。そして、その消費がどうしても調整できなければみずからがいろいろな御苦労をされているということは、局長や大臣もそれは多分十分承知をしておるはずなんです。だから、この農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律という、農業の担い手ということを大上段に掲げて初めてこの法律をつくるわけですよね。大臣、そうですよね。

 ですから、ほかの畜産や果樹や野菜農家の方々にとっても、この対象にはならないけれどもほかに制度があるからということではなくて、もっと違った、もちろん今までも対策や制度もあるのは承知をしていますが、より拡充をした形で見直しを常にしていくことが、やはりこれからも、これはまだ法律が通っていませんけれども、必要だという視点で私は言わせていただいているんです。

 例えば、規模が都府県で四ヘクタール、北海道で十ヘクタール、集落営農の二十という一つの規模的なルールをつくっても、何が必要かということは、農家の方にとってみれば、例えば夫婦で五百万農業所得が取れる、今、その五百万が高いかどうかというのはおいておいても、それだけでは生活ができないからもっと頑張ろう、来年は八百万取ろうというのが、例えば二ヘクタールで、今回法律で切られたらその人たちは対象にならない。六四%まで、いろいろ緩やかにする規模の柔軟条項もあるようなんですが、まずこの基準の、規模だけで切るということも、もっと力強くなってもらうという農家とそうじゃない農家をまず峻別する、確かにこれもわかります。でも、そうではない農家というのに、大臣、これからどう対応なさっていくんでしょうか。

中川国務大臣 御指摘のように、一般形といいましょうか、代表的に言われるのは面積要件と集落営農でありますけれども、特例要件というのも一方ではあるわけでございまして、では、北海道でなぜ四ではなくて十なんだ、現実に規模が広いからと。

 他方、北海道の場合には、どちらかというと、基幹作物といいましょうか、私はよく北海道と言っているんですけれども、もう少し付加価値をつけて生産してくださいというふうに言っておりますが、どちらかというと付加価値がつく前の原料的なものが多いわけであります。ですから、逆に言うと、十ヘクタール以上でないとやっていけない、専業でありながらやっていけないという、ある意味ではそちらの方の必要性もあるわけであります。

 他方、面積は小さいけれども、うまく回転をしたり付加価値をつけて、規模は小さいけれども高収益を上げている農家もあるわけでありますから、後藤委員御指摘のように、インセンティブを与えると同時に、主に農業でもって生計を立てていこうとしている、あるいは現にそうしている人たち、それは、やはりその地域地域の他産業との比較というものもあるわけでありますから、東京の物価と私の地元の物価では少し違いますし、そういう面も勘案しながら、必ずしも面積要件ではなくて、生活ができるという収益面、現に生活ができる、あるいは地域においての他産業との比較においてやっていける、そして、御指摘のように、大事なのは、さらにそれを収益を上げていけるような、もうかる農業になっていくということがこの法案の一つのポイントであり、そういう方向に向けてやっていけるような諸対策をとっていきたいということでございます。

後藤(斎)委員 これからぜひお願いしたいのは、これからもちょっとお話をしますが、やはり品目横断的農業の担い手に対する経営安定という大きなかさをかぶせる以上、やはりそれに向けて、これからいろいろな工夫をしながら、日本農業全体の対策という制度に持っていってもらいたいなという気持ちが私はあります。

 ただ、すぐできないというお話もあると思うんですが、五年ほど前から農業共済と直接支払いの部分がいろいろミックスをされて議論されたというふうに承知をしております。

 品目横断的という幅の広さでいえば、多分農業共済の方が、畜産共済もあれば果樹共済もあるということで、今回の五品目に限定した品目横断的な対策よりも幅が広い。そこに、一部は方式として導入をされていますが、むしろ、カナダが非常に農業で生産力もある、もちろん面積は日本と比べ物にならないほど広いわけなんですが、カナダでは、この共済に近い形で、農業保険法という法律に基づいて収入保険という制度をつくられています。

 ですから、この農業共済をもう少し工夫しながら、要するに農業収入をどう確保するかという視点でこれからまず対応を進めていただきたいと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 委員の方から収入保険のお話がございました。

 収入保険と申しますのは、災害の発生によらずとも、収入の減少があれば当該減少分を補てんするという制度でございますが、いわゆる収入保険の導入につきましては、個々の農家の収入を的確に捕捉する必要があるわけですが、これがなかなか容易でないということ、それから、輸入も含めました需給事情による価格低落というものは、いわば社会的、経済的要因で起こるわけでございますから、経験から得られた事故の発生する確率に基づく保険料率の設定が困難であります。また、一般的に需給事情による価格低落というのは、全国的に同時に発生しますので、地域的な危険分散を図ることも困難であるというような、保険設計上、または事業実施上において課題があると考えております。

 それから、委員御指摘のカナダの制度でございますが、調べてみますと、カナダの場合には、生産品目のいかんを問わず、農業所得が基準所得、これは過去五年中の三年平均をとるようでありますが、これを下回った場合に、これを補てんするために、農家と政府が拠出して積み立てをしまして、当該年の所得が基準所得を下回った場合に当該積み立て分を取り崩して補てんするという仕組みのようでございます。これは、保険というよりは、私どもが考えている収入変動緩和のためのナラシに近いのではないかと考えております。

後藤(斎)委員 局長が今最後に御答弁いただいたように、共済で全部できるかどうかというよりも、むしろ幅広く対応ができる制度にしていただきたいというお話の一環なんです。ですから、ナラシに近いということであれば、ナラシに近いものをもう少し幅広く品目をふやしてということは、それだったら検討は可能なんでしょうか。

井出政府参考人 私どもが今回提出しております法律は、あくまで、土地利用型農業の担い手不足あるいは規模拡大の進展が非常に遅々として進まない、これを解消するための仕組みとして、ゲタとナラシを組み合わせていけばこういった隘路が打開できるのではないかということで提案をしておりますので、ナラシについて、さらに土地利用型作物以外のものにそれを拡大していくべきかどうかという点については、今後の検討課題と思っております。

後藤(斎)委員 都府県で四ヘクタール、北海道で十という基準でとりあえず線を引く。それから、先ほど来お話がありますように、もっとこれから規模拡大をしていくんだというインセンティブは、例えば、農地を使う、規模を拡大したいと思う方と、そうではない、出してもいいよ、それが高齢者の方であるとか、もう農業をやめるよ、こんなもうからないのはだめだといういろいろな思いの中で農地をお貸ししたり売ったりするんでしょうけれども、そこのインセンティブというのが、今のゲタとナラシというものが、今の水準で規模拡大というのがどの程度進んでいくか。

 一回線を引いて、それで終わりということであれば、規模拡大というのは逆になかなか進んでいかないと思うんです。むしろ、もう一歩のインセンティブを農地の出し手も含めてしないと、規模拡大というのは起こっていかないというふうに普通思うんですよね。その点についてはどんな形でやっていくんでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 担い手の規模拡大ですとか農地の流動化に関しましては、委員も御承知のとおり、従来から農地保有合理化事業ですとか利用権設定等促進事業、あるいは農林公庫からスーパーL資金を融資するというようなことで、さまざまな形で推進を図ってきたわけでございます。

 昨年、農業経営基盤強化促進法の改正を行いまして、その中で、農地保有合理化事業に農業生産法人への金銭出資あるいは貸付信託の事業を追加するなどしまして、農地の仲介機能を強化するとか、あるいは、集落合意を基礎にした農用地利用規程を充実しまして、担い手を明確化することで、農地の利用集積を図る仕組みを整備するなど、農地の利用集積を加速化するための仕組みを強化したところでございます。

 また、十八年度におきましても、農業委員会におきます農地の利用調整や遊休農地の解消のための濃密指導でありますとか、地域の担い手の育成、確保に結びつく機械・施設等の整備、あるいはインターネット等も活用しまして、集落外あるいは町村外の人にも農地の売り渡し、貸し出しに関する情報を集積、公開するというようなことから、地域外からも広範に農地の引受希望者を募集できるような仕組みも構築いたしております。

 こういった農地の流動化を促進するためのさまざまな取り組みとともに、今回の品目横断的経営安定対策をあわせ加味することによりまして、担い手の規模拡大のインセンティブがさらに一層高まるものというふうに考えております。

後藤(斎)委員 では、具体的にお尋ねをしますが、お話をお聞きすると、今回の四ヘクタール、十ヘクタールで切った農家の方が、大体、現行でどのくらいの農地面積を占めていて、例えばその農家の方たちが、数が同じかどうかは別としても、将来的に何割までの農地面積を所有しながら、この土地利用型農業の核となって、担い手となって農家経営をなさっていくんでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 今回の品目横断的経営安定対策の対象者の基本となります四ヘクタール、十ヘクタール以上層というところだけをカウントいたしますと、農林業センサスのデータによれば、これは販売農家の所有面積でございますが、面積で約五割をカバーすると考えられております。

 これに対しまして、平成二十七年の構造展望、経営展望が目指すものにつきましては、効率的かつ安定的な農業経営と言われるものが、全農地の七、八割、これは集落営農組織とか法人経営も含めてでございますが、そういったしっかりした、効率的かつ安定的な農業経営が、農地の七、八割を所有なり貸借して耕作している姿というものを想定いたしております。

後藤(斎)委員 だから、七、八割ということは、大体四割から六割くらい生産性が上がっていくということに逆算すればなるのかもしれませんが、それでもまだ生産性というのは十二分でないという中で、先ほども局長から御答弁いただいたように、ぜひほかの土地利用型というものが、ある意味では地域が偏在をしているという私は認識なんですが、そうではない農家の方にも、やはり主な担い手というよりも準じた担い手として対応していただく必要が当然あるとは思っています。

 特に、国内の需給だけで価格が決定されているというよりも、むしろ、余剰ないしほかにマーケットがあるものは、当然、積極的に出していくという発想が必要であります。ただ、品質はいいものの価格は高いというふうな大きな前提の中、農産物輸出というのもそんなに多く進んでおりませんし、例えば米とか麦ということであれば、麦の援助というのは余りありませんけれども、食糧援助ないし、今検討していてまだ十二分に進んでいませんが東アジアの備蓄庫みたいな、そういういろいろなものを大きく組み合わせてやっていくしかないというのが多分現状だと思うんです。

 もう時間が来ておりますのでそろそろまとめに入りたいんですが、やはり大きな枠組みとしたら、国際的な需給は緩んでいる地域もあれば非常に強まっている地域もある。国内でも同じなわけですね。先ほど牛乳や野菜のお話をさせてもらっていましたが、私の地元は、特に果物をよくつくっている地域であります。そこでも、昨年は大変暑くておいしい桃やブドウができたんですが、果物消費というのは、この消費のあるべき姿のように、実際、そんなに伸びたりしていないんです。むしろ、海外から来る果物との競合関係というようなもので大変苦しんでいます。

 例えば、一町歩つくっている桃の農家でも、去年の所得というのは一昨年に比べて半分以下になりました。それは、ある意味では、暑くて、桃というのは日もちが悪いわけですね。ですから、集中しちゃって、この数日間の需給関係だけで価格が決まるというのがやはり現状で、これはもう大臣が御案内のとおりであります。

 ですから、世界の、これからの中長期的に見た非常にタイトな需給関係、そして、国内では、依然として、その品目別には需給の関係で価格がやはり下落をしていく。むしろ、生産性を強化して価格も国際競争力があるということは、農家から見れば価格が下がる、それを直接支払いで補てんしながら国内農業を守っていこう、生産力を高めていこう、当然といえば当然です。

 ですから、率というものに余りこだわり過ぎると、多分五年後に同じ委員会で、やはり四五は無理だったよというふうなことになりがちなわけです、少なくとも今までは。私は、むしろ、自給率という数字も確かに必要ですし、この五年間の前基本計画の中で四五にいかなかった一番大きな要因は、需要、消費を見誤ったということだと思うんです。それに、国内生産も、価格が下落をするだけで農家の意欲もないと。そして、多分、平均年齢は、品目や地域によって違うかもしれませんが、もう七十少し手前くらいの方が、ほとんどの農業経営の主体としてやられていることが多いわけですよね。ですから、私は、人、担い手の問題、これがスタートになって、もっと品目も多く導入をして、この制度が真に直接支払いということになっていっていただきたいと思うんです。

 それと土地、まだまだ壊廃が進み、耕作放棄地もまだ三十九、それがゼロになるかどうかは別として、四百五十万という目標を設けております。あわせて、生産要素と言われている水も、もっときれいにしようというものも一方の対策でやっているのは評価をしますが、やはり、生産要素の肥料や、例えば灯油みたいなものが必要であれば、その確保、前経済産業大臣ですから、エネルギーの問題も含めて、いろいろなものがバランスのとれた形で、やはりこれからの国内農業をより強化する。

 先ほど、国民、消費者の皆さんにメッセージを出してくださいよと言ったのと同じようなことをたくさんの国民の皆さんに、国内の生産、輸入輸出、そして、それをバッファーする備蓄というものを組み合わせた設計図を、もっと明確な形で核として出していただきたいというふうに思いながら、この直接支払いのあり方がもっと前進することも含めて、ぜひ大臣の御決意を最後にお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 冒頭申し上げましたように、今の我々の基本的な方針は、国内生産を基本とし、備蓄と輸入ということでありますが、今、後藤委員のお話を伺っていて思い出したのは、平成五年のあの米不足、作況七四で、二百五、六十万トン輸入したんだけれども、消費者ニーズにこたえられなくて余ってしまった。あのことを見ますと、やはり、消費者ニーズあるいはその他いろいろな要因、御地元の桃の天候との関係とかいろいろあります。牛乳の消費は何で伸びないんだといえば、新しいいろいろな飲料がどんどん出てくるあるいは気温によって需要が変化するということもあります。ですから、基本法においては、何も、生産サイドの法律ではなくて、消費者の責任、役割まで実は規定をしているわけであります。

 ですから、基本的に、今、後藤委員のお話を伺っていて思ったのは、逆に、そこまで細かく政府がきちっと、ある意味では、はしの上げ下げまで入っていいのかどうか。むしろ消費者サイドが、買う方が、欲しいものをどうやって生産するか、あるいは生産者の皆さん方が、いいもの、売れるものと思ったものを、先ほどの広報じゃありませんけれども、どうやって消費者サイドに届けるかという、文字どおり、需要と供給の間の双方向の要求が合致したところに、食料という問題の最大の目標があるわけでございますから、もちろん、セーフティーネット的なところは、政府、その他がやっていかなければなりませんけれども、つくる人、食べる人という役割分担を、共同、共生・対流というような関係でうまくやっていくことが本来の日本の食料のあるべき姿であり、そのセーフティーネットを我々は担っていくことが必要ではないかというふうに、今、後藤委員のお話を伺いながら私は思ったところでございます。

後藤(斎)委員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

稲葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。森本哲生君。

森本委員 民主党・無所属クラブの森本でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、議題となっております政府提出法案の担い手経営安定新法ほか二法案、民主党の議員立法であります農政改革法案について質疑をさせていただきます。

 本題に入る前に、来月、五月二十九日から始まる新しい農薬規制について、いわゆるポジティブリスト化の問題について少し質問をさせていただきたいと存じます。

 なぜこのような質問に触れるかということでございますが、これは、新制度導入までそれほど時間がないということと、政府案、担い手経営安定新法の法案第二条二項二号で、「環境と調和のとれた農業生産に関して農林水産省令で定める基準を遵守していること。」との文言があるわけでございますが、政府案スキームと無関係とは言いがたいことというふうに考えております。

 委員の皆さんは既に御承知のことと存じますが、農薬七百九十九品目について個別の基準値が定められて、これまで基準のなかった農薬品目についても一律、基準がそれぞれ厚生労働省の告示によって定められているということでございます。

 新しい農薬規制については、私は二つの問題意識を持っておりますので、質問させていただきますが、一つ目はコストの問題でございます。

 新しい基準に適合しているかどうか、検査対象がふえることなどから、コストがかかるというふうに考えます。これは生産サイドが負担するのか、消費サイドが負担するのか疑問に思いまして、厚生労働省の食品安全部のウエブサイトを拝見させていただきました。そうしましたら、QアンドAコーナーがございまして、検査にかかるコストについて補助金や税金の控除は受けられるのかというような質問に対して、厚生労働省が何と回答しておるかということでございますが、義務づけているものではないので一切ないということでございます。生産原価に加えるのか、売価に反映することになるのか、市場原理にゆだねるという発想なのか、後ほど政府の見解をお願いいたします。

 二つ目は、ドリフトの問題でございます。すなわち、農薬飛散の問題でございます。

 今の時期、先般も黄砂の問題で、私の地域も非常に風がひどかった日がかなり続いたわけでございますが、そうした問題とか、気圧の不安定ということでああいった強風が吹き荒れたということでございますが、同一の農地でAとBという野菜の生産が行われまして、それぞれ、例えばXとYという農薬が使用されているとしますと、ドリフトが生じて、Aに例えばYが、BにXが降りかかったということで出荷停止になってしまうのではないかという心配でございます。

 生産現場には、そういった混乱が少し起きているようでございます。私の地元の三重県の松阪市には県の中央卸売市場があるわけでございますが、ちょうど数週間前に県主催の研修会が開催されたようでございまして、多くの皆さんが詰めかけたという情報もいただいておるわけでございます。

 最近、中古家電のPSEというような問題があったわけでございますが、生産サイドそして消費サイドにしかるべき周知はなされておるのか、これは当然のことなんですが。特に、規制導入による追加コスト負担の問題をどう認識しておられるのか、あるいは全く認識をされておらないのか。政府の答弁を求めます。

 まず、これまで制度の周知、広報がなされてきているという点について、厚生労働省の方からお願いをいたします。

松本政府参考人 国内外で使用されます原則すべての農薬等につきまして、残留農薬等の基準を設置いたしまして、基準を超える食品の販売等を禁止する制度、いわゆる残留農薬等のポジティブリスト制度の導入に当たりましては、平成十五年五月の食品衛生法の一部改正案の御審議、成立を経まして、平成十五年六月から薬事・食品衛生審議会で検討をしてまいりました。平成十五年十月に第一次案、平成十六年八月に第二次案、平成十七年六月に最終案を公表しますとともに、その都度国内外からの意見を募集してきたところであります。昨年の十一月二十九日にその告示をしたところであります。

 また、周知活動でございますけれども、平成十六年度にはやっておりますけれども、平成十七年度におきましては、輸入食品の安全対策と残留農薬等のポジティブリスト制度の導入ということを厚生労働省のリスクコミュニケーションの基本テーマといたしまして、全国八カ所での意見交換会を開催いたしますとともに、約百回に及ぶ食品関係団体等が開催する説明会等に積極的に参加し、周知に努めてきたところであります。

 本年五月二十九日の施行が円滑になされるよう、今後とも、農林水産省とともに連携し、さらなる、関係事業者、当然その中には消費者も含んでおりますけれども、周知徹底に努めてまいりたいというぐあいに考えております。

森本委員 了解をしました。

 それでは、生産現場を預かっていただいております農林水産省からも答弁をよろしくお願いいたします。

中川政府参考人 生産現場での対応ということのお尋ねでございますけれども、まず、残留基準が定められているものにつきましては、これは現場でその基準に従った農薬の使用をしていただくというのが何よりも基本でございまして、これを実行していただきますと、今回の制度においても、基本的には問題がないわけでございます。

 ただ、先生がおっしゃいますように、飛散をする、ドリフトというところにつきましては、現場において注意をしていただく必要がございますが、この点につきましては、これまでも全国ベースで三十八回、それから各県ベースでは約八百回にわたりまして、制度につきます説明会を行ってきております。

 既に一定の周知のための努力はしておりますけれども、だんだんと五月二十九日の実施の期間が迫ってまいりまして、現在は、現場に近いところでいろいろと不安を抱えておられる生産者の方もいらっしゃるというふうに伺っておりますので、具体的に、JAとそれから普及指導センターなどがチームを組みまして巡回指導を行う、それからまた、御心配があればそういった相談窓口を設けるというふうな形で、きめ細かく対応していくということを今やっている最中でございます。

 それで、先生、AとBの作物にXとYの薬品がということがございましたが、これは、個別に調べてまいりますと、二つの作物に、両方に残留基準が設定をされているというふうなものが結構な数ございます。ですから、それはその地域、地域の作物の体系に合った形で、具体的にこの農薬を使うというきめ細かな指導が大変大事になってまいりまして、これは、各都道府県でそういった観点を含めた新たな防除暦をつくるというふうな工夫もしていただいているところでございます。

 問題ができるだけ生じないようにということで、現場での対応を一生懸命やりたいというふうに思います。

森本委員 この問題は余り深く入るつもりはないんですが、机の上で鉛筆を持って仕切るような、なかなかそういう簡単なものではないと思うんですよ、現場の場合。いろいろな、残留農薬の期間も違うでしょうし、ですから、非常に微妙な差が、これはかなり具体的な事例では出てくると思うんですよ。ですから、そういった面で、農家の方々が非常に戸惑ってみえるのではないかなという気持ちを私は感じます、現場として。

 それと、これは通告にはないので後でも結構でございますが、例えば、青空市とかイベントなんかで出される野菜等がございますね。そのあたりへはどの辺まで規制が入ってくるのか。その辺の御見解を伺えたらというふうに思いますし、厚生労働省の方は、これは規制する側は案外問題はないと思うんです、喜ばれることになりますから、それは余り問題はない。しかし、現場の方の単価の問題とか、それから、どこへ、検査も随分これは大変だと思うんです。そういった、くどいようですが、転嫁されていくウエートが農家の方に厳しく入っていくと、これもまた経営上大変なことになるというふうに思っておりますので、後段の方は結構でございますので、イベント等とかその辺について、できたら回答をお願いできませんですか。

松本政府参考人 イベント等で販売等をされる場合には、一応この規制はかかってまいります。

 ただ、先ほど農水省の中川局長の方から話がありましたけれども、適正に使用していただければ、これまで国内で認めている農薬についての基準をいじったわけではありませんので、これまでどおり適切に使っていただければ、御心配のことはまず問題ないかと考えております。

森本委員 農林水産省の方にももう少しお伺いしたいんですが、これは時間の関係で次に移らせていただきますが、あと一月余りでございまして、これはもう間近に迫ってこないと、今大臣が言われたように、いっぱいポスターがあって、本当に周知がなかなか難しいという話もあると思うんですけれども。そういったことで、とにかくこれは両省がしっかり連携をとっていただいて、やはり生産者側にも、これは消費者側には当然喜んでいただける趣旨でございますので、ここは了といたしますが、生産者関係につきまして、余りいろいろな問題が出ないように十分御配慮をいただきますことをお願いいたしておきまして、次に移らせていただきます。

 前回の委員会では、黄川田委員などから既に指摘がありましたが、政府三法案には多くの委任立法が実は含まれております。ざっと数えてみましたところ、政令で二十二、農林水産省令で、つまり大臣が出す命令でございますが、三十四ございます。法律案本則の条文数をはるかに上回っておるわけでございます。政府案は、実質的な意味ではいろいろな施策が含まれていることは重々承知をしておりますが、国会での形式上の法案審査ということになれば、政省令に多くをゆだねることの当否を論議しても仕方ないわけでございます。

 戦後農政の大転換だとちまたでは言われておりますが、政府は、法律案の技術的な内容を強調する余り、国会、国民に対して説明責任を果たす真摯な姿勢が欠如しているのではないかというふうに思っております。もっとも、本日の委員会には約束どおり、こちらの方へ省令の委任事項のペーパーが配付されております。しかしながら、このことも、国民の皆さんには内容すらなかなか認知できないというようなわけでございます。

 反対に、民主党提出法案がどうなっているかといいますと、六条で食料自給率目標を、そして九条三項では直接支払いの総額をそれぞれ法定できっちりと約束しているわけです。行政裁量の幅を極めて限定いたしておりますし、議院内閣制のもとでの責任体制、執行体制を明確にしようとする決意が見てとれるところでございます。

 国会による農業政策のコントロール、民主的統制というものに対する理念、哲学が全く反対の方向に向いているような気がいたしております、これは政府案、民主党案でございますが。そのことについて、民主党のお考えを、理念を聞かせていただきますようにお願いいたします。

山田議員 森本委員の質問は大変大事な質問だと思いますが、今回の担い手法案、政府が、農地において五〇%、農業者において三〇%、いわゆる担い手としての支払いがなされるんじゃないか、そう言われましたが、その中身については、本当に一番大事なところが政令において任される。国民が一番知りたいところは、政令において見込みであるということで、何にも審議されない。これでは何のための国会か、そういうことになってしまう。いわゆる行政、司法、国会のうち行政だけが突出して今の農政をやっていて、国会での審議がほとんど無視されているのが今の実態じゃないか。

 そういう意味で、私どもの今度の法案では、法律で、国会で審議して決める事項というのを明確にさせて、国会が最高機関である、そういう意味での立場を明らかにしたい、そう考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、政府の方からも何かコメントがございましたら、よろしくお願いをいたします。

井出政府参考人 私どもの提出しております法律案につきましても、その対象者、仕組み等、制度の枠組みについては法律にきちっと書き込んでございます。すべてを法律に書き込むということは法律の仕組みからいって不可能でございますので、技術的なこと、あるいは手続にわたるようなことについては、従前から、この法律以外でも政省令で規定するということで、本日、規定見込み事項もお示ししているところでございます。

森本委員 そのことについては私も今評価もさせていただいておるわけでございますが、やはりしっかり約束をして、後で逃げ場をつくるようなことだけは、やはり国民の皆さんの信頼がなくなるというようなことでございますので、約束してできない場合は責任をとる、そのような厳しい対応で臨んでいただくことが大事だということを申し上げて、次に移らせていただきます。

 三月三十一日に規制改革・民間開放推進三カ年計画が閣議で決定をされました。三カ年計画の二年が過ぎたということで、再改定という位置づけでございます。例によりまして、農業分野においても幾つかの措置事項が掲げられております。

 「担い手への直接支払制度の具体化」という事項がございます。まさに今回の法案が関連しているわけでございますが、「農業経営基盤強化促進法に基づく特定法人」、つまり、農地法が規律するところの「(農業生産法人以外の株式会社等の法人)が農業参入する場合についても、当該要件を満たせば直接支払の対象になるよう担保するとともに、当該要件を定期的に上方修正することができるよう、所要の措置を講ずる。」とされております。

 まず大臣にお尋ねいたしますが、三カ年計画の内容は、閣議決定がなされたものとして、今私が触れたところを含め、すべて年度内に措置内容を達成するということで間違いはございませんか。よろしくお願いします。

井出政府参考人 お答えいたします。

 規制改革・民間開放の推進に関する第二次答申におきまして、今委員御指摘のとおり、株式会社等の農業参入についても、「要件を満たせば直接支払の対象になるよう担保する」ということとあわせまして、「当該要件を定期的に上方修正することができるよう、所要の措置を講ずる。」べきである、こういうふうに規定されてございます。

 前段の、株式会社の農業参入につきましては、既に農業経営基盤強化促進法の改正を昨年行いまして、特区でやっておりましたものを全国展開を認めたわけでございまして、株式会社でありましても、参入法人の中には、既に認定農業者の資格を取っておられる法人がたしか十法人ぐらいございます。ですから、こういった認定農業者になっておられるような法人については直接支払いの対象になってまいります。

 それから、定期的な見直しでありますが、これにつきましては、今回の土地利用型農業の構造改革の推進のための品目横断的な対策について、基本的には、認定農業者であって、都府県では四ヘクタール以上、北海道では十ヘクタール以上のものといっておりますが、これは、あくまで他産業並みの所得を確保し得るに必要な規模そのものではございませんで、そういった対策の対象となる担い手が、将来的に他産業並みの所得を確保し得る農業経営に発展していく、そういう努力を促すための、あくまでもスタートラインとしての規模を定めたものでございます。

 したがいまして、昨年十月に決定、公表しました経営所得安定対策等大綱におきまして、既にその大綱の中で、制度開始後については、「構造改革の進捗状況を定期的に点検し、その結果を踏まえ、望ましい農業構造の実現に向けた見直しを行う」としてございまして、規制改革・民間開放推進三カ年計画については、その十月の、既に公表しております大綱を受けた形で記述がされているということでございます。

森本委員 いろいろ述べていただきましたので、また後で整理しないとちょっと理解に苦しむところもあるわけでございますが、確認ですけれども、特定法人の農業参入の要件を定期的に上方修正するということで、大臣、今のは間違いございませんか。

中川国務大臣 平成十八年の三月三十一日の閣議決定に基づきます三カ年計画に基づいて、今、局長が答弁をしたわけでございます。閣議決定でございますから、閣議決定の重さは私自身重々承知をしているところでございます。

森本委員 大臣、ありがとうございました。

 それでは、意欲と能力のある担い手に絞っていくという、いわゆるサプライサイドからの改革が今後強力に進められていくということで理解をしておるわけでございますが、民主党案は、直接支払いの対象農業者は、「販売に供する目的で主要農産物を計画的に生産する」農家と定義するだけで、経営規模の要件などは特に課しておりません。ここが、政府案との違いが顕著なところでございます。

 荒井委員が、前回の委員会で、対象を絞っていく政策はことごとく失敗してきたと指摘をされておりましたけれども、民主党案が対象を限定していないことの意義を改めて答弁をお願いします。

山田議員 これまでの農政におきましては、いわゆる中核農家とか、プロ農家とか、そして認定農家、今十九万ちょっといるようですが、そういった農家を中心に補助事業とかいろいろな形でそれを伸ばそう、それで自給率も上がるんだ、食料生産も上がるんだということでやってきましたが、これは、その事実が大きな間違いであったことを示しておりまして、実際にどんどん生産は下がり、自給率は下がり、農業は疲弊してきている。

 やはり、本当はそういったふうに峻別しないで、実際に農業をやりたい、意欲のある農家、そして意欲を持った企業、株式会社とかNPO法人でもいいわけですが、そういったところを絞らずに、まず広く機会を与えるということが、これからの自給率を上げ、日本の農業にとっては一番大事なことじゃないか。

 ただ、ばらまきになってはいけないというのは共通の認識でありまして、そのために、私どもは、計画的に生産する販売農家と、歯どめはかけておりますし、構造改革に資する農家に対しては規模加算という形、直接支払いにおいてばらまきにならないような配慮をしながら、広く意欲のある農家に門戸を開く、これが一番大事なことではないかと私ども民主党は認識して、今回の法案を準備いたしました。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、次に移らせていただきます。

 三月の二十二日に食料自給率向上協議会が農水省で開かれております。二〇〇五年度の食料自給率向上に向けた行動計画の推進状況と評価がまとめられておるわけでございます。担い手育成、確保のための全国キャンペーンが展開されているということでありますが、認定農業者の目標が二十二万五千人に対し現在十九万五千人と、現状と約二万五千人という目標には差があるわけでございます。

 配付資料によりますと、担い手を加速的に育成、確保していく必要があるとされておりますが、何をどのように加速されていかれるのか。品目横断的経営安定対策のポイントという、いわゆる雪だるまパンフを通読いたしましても、今後の対応が必ずしも明らかではございません。そのことにつきまして明確な御答弁をお願いします。

井出政府参考人 お答えいたします。

 現在、農業団体等で構成されます全国担い手育成総合支援協議会という場で、認定農業者を十七年度中に約二万、十八年度中にはさらに約二万五千育成するといった具体的な数値目標を設定いたしまして、担い手の育成、確保に向けた全国的な運動を推進しております。

 また、都道府県や地域段階におきましても、それぞれ行政、農業団体等関係機関から成る担い手育成総合支援協議会が設置され、この全国協議会が定めている目標数を踏まえまして、それぞれの段階での担い手育成目標を定め、各地域で品目横断的経営安定対策の普及推進や、担い手の育成、経営改善への支援が行われてきております。

 農林水産省におきましても、当然、説明会の開催や集落座談会への参加等を通じまして、新たな経営安定対策の内容の正確な周知に努めるとともに、認定農業者の経営改善計画の作成や、その達成に向けた指導等に対する支援を行ってきているところでございます。

 こうした取り組みの結果、昨年の四月から十二月まで、この九カ月間ですが、認定農業者の新規認定数が約九千四百増加をいたしておりまして、担い手の数としては着実に増加していると考えております。

 今後とも、実際には経営規模要件を満たしておりながら、従来、スーパーL資金等をお借りになる需要がなかったりしまして、認定農業者にエントリーをされていない方がかなりまだおられますので、そういう方も含め、その認定農業者への誘導を今全国各地域で図っているところでございます。

森本委員 気合いを入れてしっかり頑張っていただきますことを要望させていただきます。

 それでは、担い手の問題でございますが、数を確保するという量の問題と、質の問題がございます。農業従事者の能力開発、能力証明という質の問題については、委員会で余り取り上げられておらないようでございます。

 二〇〇四年の三月ですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が、「農業と雇用労働力 そのあり方と今後の方向」という報告書をまとめております。農業分野における労働市場の現状について検討がなされておりますが、中でも職能資格制度の創設を提言されております。きょうは法案の審議でございますので参考人を呼んではございませんが、機会を改めて、報告書の内容をお伺いできたらというふうに思っております。

 私が理解するところ、農業生産の総括的な能力をとらえる認定農業士に対して、個別の作業に対する職能資格の創設という位置づけとなっておると思っております。既に認定農業士という制度はあるわけでございますが、これとは別個に資格制度を設けることには一定の意義があると思っておりますし、労働力の移動の契機になるのではないかとも考えるわけでございます。

 農業従事者があくまで任意に行うものであれば、民主党案とも矛盾するものではないと思っております。将来の課題として検討に値すると考えますが、いかがでございましょうか。これは民主党の方からお願いします。

篠原議員 若い農業者に意欲を持って農業に取り組んでもらったり、それから、今現在やっておられる方に励みになるような資格を与えてというのは考えられないわけではないんじゃないかと思います。

 農業の分野でもほかの分野でも同じなんですが、ドイツは昔からそういう制度が確立しておりまして、農業の分野でも農業マイスター制度というのがあります。もちろん、工業分野でも多いわけですけれども。

 農業の分野でもそういうのがあってもいいんじゃないかということでございますけれども、既に政府の方で、農業改良普及事業の延長線上で、指導農業士とか青年農業士とかいう制度がありまして、それぞれ一万人前後おられます。そういった形で動いているんじゃないかと思っております。

 私、あちこち講演に行かせていただいて、意欲的な農業者と接する機会が多いわけですけれども、結構この要望が強いわけです。我々がこんなに一生懸命やっている、兼業農業家とちょっと違うんだ、だから、我々にも一生懸命やっている農業者としての資格を与えてほしいと。その認定農業士というのは、ちょっと違った観点から、我々も技術をちゃんと評価して、それを資格として認定するようなものをという希望はたくさんいただきます。

 しかし一方で、これは森本委員も御存じかと思いますけれども、山ほどいかがわしい何とかかんとか士というのがあるわけですね。それで資格ビジネスがはやったりしているわけですね。そういったところにまじめな農業者まで巻き込まれるのは何かと思いますので、やはり農業改良普及制度の延長線上で資格を与えていったりするというのは、非常に有効なことではないかと考えております。

森本委員 この際、その資格取得はあくまでも個人ということでございますが、その能力は個人に帰属するものでもありますから、訓練にかかった費用は法人の経費として税法上の損金算入に認めるということは非常に難しいかもわかりませんが、個人の所得税の控除などは検討に値するものではないかなというふうに思っておりますので、その辺はまた今後御検討いただきたいということと、それと私は、国の方で、この認定農業士、今、職能資格制度についてお話しさせていただきましたが、認定農業士等は、もっともっと、各県レベルでもう少し活用というものをうまくやっていただくような、そういった指導というものももっとやっていただいたら、さらにこの農業の関係のリーダーとして私は充実していくんじゃないかなというようなことも考えておりますので、そこは提案としておさめさせていただきます。

 それでは続きまして、政府案の担い手経営対策新法案第五条は、交付金の申請に関して定めております。しかし、内閣法制局のミスと言ってはちょっと言い過ぎなのかもわかりませんが、交付金の申請に関して不服がある場合の認定規定がございません。自分は認定農業者である、または、一定の集落営農として交付金を申請し、不許可の処分が下ることは往々にして想像ができるわけでございます。そういう人たちが、団体が争う場を制度的に設けるのはどうかという問題でございますが、一般的な行政不服審査法令に従うのか、それとも省令事項となるのか、さらに別のルートが用意されているのか、お聞かせをいただきたいと存じます。

井出政府参考人 お答えいたします。

 この法律に基づいて行われる交付金の交付決定に対する不服申し立てにつきましては、行政不服審査に係る一般的なルールでございます行政不服審査法の手続に従い、不服申し立てを行うことができます。

 このため、交付申請者が交付決定の内容に不服がある場合や、交付申請をしたにもかかわらず交付決定が行われない場合には、交付申請者は、行政不服審査法の手続に従いまして、交付決定を行う農林水産大臣に対し、異議申し立てを行うことができることになります。

 したがいまして、本法案につきましては、行政不服審査に関する特別の規定は設けておりませんで、省令等においても特段の規定を設けることは考えておりません。

森本委員 わかりました。

 それでは、ナラシ対策の原資として準備されている積立金について、法案の第四条は詳しく定めておりません。積立金の管理方法が問題になるというふうに考えます。

 担経、これは一般の国民の皆さんはさっぱりわからぬ質問だろうと思うのですけれども、担い手経営安定対策のことをこれは省略するんですけれども、ここから省略がたくさんありますけれども、都道府県協議会が、大豆は全農と全集連が実施主体でございますし、その他の対象品目である麦、てん菜、でん粉原材料のバレイショも含め五品目の積立金をどこがどのように管理することを想定しておるのか、答弁をお願いします。

井出政府参考人 お答えいたします。

 私どものいわゆる収入変動影響緩和対策につきましては、現行におきまして、収入・価格変動緩和対策が講じられております米、大豆に加えまして、麦、てん菜、でん粉原料用バレイショも含め、担い手の収入の変動による影響を緩和するものとして措置することとしております。

 具体的には、農業者と国が一対三の割合で拠出を行い、これを財源に、対象品目ごとの前年度の収入額と過去の標準的な収入額との差額を農業者ごとに合算、相殺し、その減収額の九割について補てんを行うという制度でございます。

 この場合、農業者が拠出しました積立金につきましては、品目ごとではなく、農業者ごとに管理することになるわけでございますが、その管理主体や具体的な管理方法につきましては、今後、積立金の適正な管理を図ることを基本にいたしまして、担い手から見た利便性や事務の効率化に配慮しつつ検討してまいりたいと考えております。

森本委員 それで、検討はされるんですけれども、大体どのぐらいで、ある程度のところはわかってくるというのは、まだまだ先、難しいですか。もし無理だというなら結構ですけれども。

井出政府参考人 ただいまこういった積立金あるいは資金の流れにつきましても鋭意検討いたしておりまして、これはやはり大事なことでございますので、できるだけ速やかに成案を得たいということで、今関係団体とも調整を一生懸命やっているという状態でございます。

森本委員 それ以上は無理だと思うんですけれども。一生懸命やってください、なるべく早く。笑っておられる場合じゃないんですけれども、時間もありませんので、次に移ります。

 民主党案につきましては、前回委員会でも議論がございました、ナラシ対策が含まれておりません。市場管理や経営努力のインセンティブとは無関係なモラルハザードが生じるということは理解できますけれども、国内の農産物市場において価格暴落が起こるかもしれない、生産調整をやめてしまえばその危険は高まるのではないかという心配がございます。その点について、答弁をよろしくお願いします。

篠原議員 その点については森本委員の御指摘のとおりだと思います。ですけれども、我々はその部分は農業共済制度等で賄っていただけるのじゃないかと思っております。それよりも何よりも、我々の直接支払いですけれども、一兆円ということですので、それなりの手当てはそちらの方でできるのではないかと思っております。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、もう一つ、また民主の関係で。

 昨年九月にいわゆるリース特区が全国展開をされました。土地の所有と土地の利用が分離して遊休地対策になるというふうに思いますが、そのほか、不動産鑑定など都市の不動産に関する評価手法を導入して、その評価を農地も対象としていくことによって、土地制度全体について評価制度を整備する時期に差しかかっているというふうに認識をしておるわけでございますが、その点について見解をよろしくお願いします。

山田議員 私どもの基本法案で、農地については、農業者でなくとも農業に意欲のある人であれば、あるいは株式会社等においても農地の利用ということであれば、優良農地以外については取得できる、そういうふうにしておりまして、抜本的に見直しを図りたいと考えているところです。

森本委員 それでは次に移らせていただきますが、特定農業団体に対する課税の取り扱いについてお尋ねをいたします。

 全国各地でやや混乱があったようでございますが、法人化していない集落営農ですから、法人格なき社団ということになります。法人税の納税義務がその場合発生をするのか、税務署の判断が分かれたケースが報告をされております。現場が混乱しないようにどのような指針を定めておられるのか、よろしくお願いします。

井出政府参考人 特定農業団体に対する課税の取り扱いでございますが、特定農業団体につきましては、その実態が任意組合等であるとして構成員に課税される場合と、人格のない社団等として特定農業団体そのものに課税される場合がございます。この場合、課税の対象となります人格のない社団等に該当するか否かは、単なる個人の集合体ではなく、団体としての組織を有して統一された活動を行っているかといった運営実態等に基づき個々に判断をされるものということでございます。

 ただ、特定農業団体が、人格のない社団等に該当した場合の法人税の取り扱いにつきましては、収益事業を営む場合に限り、納税義務があるとされております。そのため、例えば農協などの特定の集荷業者に農産物の売り渡しだけを行う場合については、収益事業に該当しないことから課税されないということになっております。

 このような具体的な取り扱いにつきましては、私ども、ホームページやパンフレットに掲載をしているところでございますが、今後ともこれらの内容の周知を図ることによりまして、集落営農の組織化のさらなる推進につなげてまいりたいと思っております。

森本委員 それはそのとおりであろうと思うんですが、例えば、個人で売買というんですか、そういうところで販売されていく場合は対象になるという見解でよろしいんですね。

 それで、売り先で税金のかかり方が変わってくるという判断は、具体的にそのあたりはPRをしっかりされておりますか。

井出政府参考人 私どもが普及、広報に使っておりますいわゆる雪だるまパンフの中でも、そういった場合につきましては、「人格のない社団等については、収益事業を営む場合に限り、法人税の納税義務があります。」とした上で、「特定の集荷業者への販売は収益事業には当たらないので、法人税は課税されません。」ということを明確に書いてお伝えをしているところでございます。

森本委員 できるだけ易しく、わかりやすく書いていただくことを要望させていただきます。

 それと、経営安定対策の要件を満たす受託組織は、法人税法上の特定農業法人と取り扱いが同様なのでしょうか。取り扱いが異なるということになるのでしょうか。お聞かせください。

井出政府参考人 品目横断的経営安定対策の対象になります農作業受託組織につきましても、基本的には特定農業団体と同様の要件を満たすものということにいたしております。

 このため、農作業受託組織に対する法人税の取り扱いも、特定農業団体と同様に、人格のない社団等に該当した場合については収益事業を営む場合に限り納税義務がある、ただし、農協などの特定の集荷業者に売り渡しだけを行う場合には、収益事業に該当しないので課税はされないということになります。

森本委員 それでは次に、少し方向が変わりまして、食料自給率が先進国中最低のレベルであるということはさまざまな原因が考えられますが、長期的な実効対策としては、幼少期からの食育の推進、とりわけ学校給食における地場産物の活用による地産地消を着実に進めていくことではないかというふうに思っておりますし、現に各都道府県では非常に頑張っていただいているところもあります。

 過日、文部科学省に問い合わせをいたしましたところ、平成十六年度学校給食における地場産物の活用状況調査の結果が出ておるわけでございまして、全国五百二の小中学校を対象としたものでございますが、全国平均で二一・二%、これをカロリーベースで見ますと五三・二%ということでございます。数字の解釈なので、高いか低いかということはさておきまして、自給率向上をさせようというかけ声だけでは、人の食生活、食べ物の嗜好がそんなに簡単に変化するとは考えられないわけでございます。官民挙げて相当強いインセンティブ、政策誘導が必要と考えますが、その点について、民主党の案としてよろしくお願いします。

篠原議員 お答えいたします。

 自給率の向上について、我々の法案では専ら生産サイドのことだけ書いておりますけれども、やはり食生活がキーポイントになってくるのではないかと思います。やはり食生活は相当乱れ切ってしまっている。その一番の原因は、風土と隔絶した食生活に陥ってしまったことにあるんじゃないかと思います。

 少々長く説明をさせていただきますと、いろいろなところに原因があるんですけれども、大きな原因の一つとして、戦後食料難のときに学校給食でパン食を導入したということですね。

 これは、歴史的経緯を調べてみますと、いろいろなことがわかってくるわけですけれども、アメリカは余剰小麦がいっぱいありました、脱脂粉乳も余っておりました、それを援助物資として各国に与えたかったわけです。日本だけではありません、台湾、インドネシア、フィリピン、韓国、皆そういう要請をして、要請というより押しつけをしようとしたわけですけれども、ほかの国は全部拒否しました。日本だけがおめおめと引き受けたわけです。そして、私なんかも小学校三年のときに学校給食が導入されました。パンなどはめったに食べたことがないので、さぞかしおいしいと思って期待していましたら、ろくでもないパンでした。私、脱脂粉乳も嫌いでして、というふうになりました。

 ですけれども、一つだけ、今考えてみるといいことがあったんです。給食当番というのがありました。何かというと、給食当番、白衣を着て盛りつけするんじゃないんです。農村ですから、何組に分けたか知りませんけれども、うちにある野菜を持っていくということになっていたんです。後ろにランドセル、前にふろしきに包んだ野菜。みんな同じ、大根ばかり、白菜ばかり、出てくるおかずはそればかりです。しかし、結構こっちの方がおいしかったですよ。まさに地産地消をやっていたわけですね。

 それを今、森本委員御指摘のとおり、二一%しか地元のを使っていないと。私は、地産地消を提唱し始めた手前もありまして、これについては目を光らせて数字等を調べております。地元でも、長野市ですね、何とエノキダケとリンゴしか完全地元のを使っていないわけですよ。田中知事は、地域食材の日というのを設けられております、一カ月に一遍。それで、いいことをやっていると褒めたら有頂天になっておられましたので、私は厳しく言いましたよ、知事、何をぼけたことを言っているんですかと。十九日地産地消であって、一カ月に一回だけ、どこかでとれたへんちくりんな食材を原料にした食べ物を食べる、そういうふうにしなければいけないんだというお話をいたしました。

 ですから、この日本の食生活の乱れを直すのは、まさに学校給食から始まっていくんじゃないかと思います。その意味では、食育基本計画ができまして、その率も三〇%にするということで、女性大臣張り切っておられますし、頑張っていただきたいと思っております。

森本委員 ありがとうございます。

 いろいろ申し上げたいことがあるんですけれども、時間もありませんので、次に、関連として。

 廃棄される食品のロスを減らすことも自給率向上につながると思っております。もちろん、私たちの食生活の中で、供給カロリーと摂取カロリーがどれほどで、どれだけの差があるのか意識することはなかなか難しい面がありますが、食品のロスを減らしていく努力、これは、もったいないという言葉が今はやっておるんですけれども、そういう施策について、法律のスキームの中でどのように考えておられるのか、答弁をよろしくお願いいたします。

 まず初めに民主党の委員から答弁をお願いします。時間がせってきましたので、簡潔によろしくお願いします。

篠原議員 お答えいたします。

 残念ながら、先ほど申し上げましたとおり、我々の法案は生産の方を重視でございまして、法案には入っておりません。しかし、趣旨としては大賛成でございまして、なるべく丁寧に食べる、ロスは出さないようにということでやっていく以外にないんじゃないかと思っております。

森本委員 御協力いただきましてありがとうございます。

 それでは、また政府案。

 食品のロスについて統計をとっておられるというふうに思っておるんですけれども、原因を分析し、それぞれ政策に反映されているのかどうか、お尋ねをいたします。

中川政府参考人 まず、食品ロスの統計でございますけれども、平成十二年から毎年、世帯あるいは外食産業におきます食べ残しなどを把握するための食品ロス統計調査というのを農林水産省の方で実施をしているところでございます。最近の調査結果ですと、家庭での食べ残しあるいは廃棄の率というのは、一人当たりの食品ロス率ということで見ますと四・二%、また、食堂やレストランなどの外食におきましては、この割合が三・二%ということでございます。

 家庭でのこういった廃棄なり食べ残しの要因ですけれども、やはりこれは食品の鮮度が落ち、そして腐敗をしたあるいはカビが生えたというふうな、そういうところが六割ぐらいございますし、また、賞味期限あるいは消費期限が過ぎたためというのも四六%等々ございます。

 こういったロスを減らしていくために、何よりもやはり消費者の方々、国民の方々、それぞれが食に関する知識をきちっと持っていただいて、そしてまた、食を選択する力を身につけるという意味で、食育というのは大変大事だというふうに思っております。

 この点につきましては、先般決定をされました食育推進基本計画の中でも、感謝の念を持つというふうなこと、あるいは食の生産現場に対しての理解を深める、知見を深めるといった、そういう位置づけとして記載をされているところでございまして、資源の有効活用という点も含めて、こういう、今先生が御指摘になりました食品ロスを少なくするための政策というものは、農林水産省としても進めていきたいというふうに考えております。

森本委員 よろしくお願いをいたします。

 それでは、WTOの交渉の見通しについてお伺いをさせていただきます。

 四月中のモダリティーの合意は本当に可能なのでしょうか。年内には約束表の合意までが予定されているようでございますが、交渉がかなり難航しておるというふうにも認識を持っています。特に、米などの重要品目の合意について、どのような見通しを持っておられるのか、お伺いをいたします。

中川国務大臣 御指摘のように、率直に申し上げて、昨年の十二月の香港閣僚会議以降、これは農業に限らずでありますけれども、各分野、特に農業、非農産品、あるいはサービス、ルールといった分野はほとんど進展がないという状況であります。

 それで、今月末に農業とNAMA、非農産品につきましては基本ルールを決めるわけでありますが、特に途上国の場合、いきなりその場でぽんと出されても困るものですから、たたき台を出してくれということになりますと、それよりも前にということになりますと、もうほとんど時間がないという状況であります。しかし、日本としては、あるいは私としては、四月末という合意があるわけでありますから、それに向けて最大限の努力をしていきたいという決意は変わっておりません。

 米等の重要品目につきまして、あるいは日本が断固認められません上限関税の導入につきましては、その他いろいろ、削減率等々ありますけれども、日本の、あるいはG10の、あるいは輸入国にとっての最大の関心事項として、引き続き日本の立場を堅持して交渉に臨んでいきたいと考えております。

森本委員 頑張っていただきますようにお願いをいたします。

 では、最後でございます。要望として申し上げておきますので、大臣、もしコメントがあれば、お伺いをさせていただきます。

 四月十日付で、共同通信社が有料発信しているニュースを拝見いたしましたところ、これは松阪牛ということで、松阪牛で申しわけないんですけれども、地元でございますので、私、うし年でございまして、松阪牛は大事なブランドでございますので。和牛の遺伝子が海外の業者に不正に利用されることを防ぐため、十八日、省内で検討会を立ち上げるということでありました。知的財産の保護という観点から、国内生産者を守るための抜け道のない政策を早急に講じる必要があるというふうに考えておりますので、現状認識を含め、今後の取り組みの方向性について、大臣からお聞かせいただければというふうに思っています。

中川国務大臣 知的財産の保護というのは二つ意味がありまして、いいものができたらそれはきちっと権利者に権利が帰属される、と同時に、知的財産が守られるということがあれば、いいものをつくろうというインセンティブにもなっていくという両面あるんだろうと思います。

 そういう観点から、生物系、つまり農林水産関係につきましても、松阪牛を代表例にして、世界に冠たる知的財産の結果としての生産物があるわけでございまして、今御指摘のようなことは明らかな権利侵害であるというふうに私は考えて、そういう、今御指摘のような検討を、副大臣を中心に知的財産に関する本部をつくったところでございます。

 その代表例として、和牛というものを今どういうふうに守り、あるいはまたそれを表示していくかということ等の検討を十八日からスタートをするところでございます。

 ただ、逆に、知的財産についてはブラックボックス化して、特許あるいは育成者権として届け出をしないという戦略もあるわけでありまして、聞くところによると、松阪牛なんというのは、むしろ外に出さない、その育成方法とか特殊な技術というものは。それはそれで一つの戦略だろうと思います。

 権利として守られるということは、ある意味ではオープンにするということでありますから、オープンにしていかないというのが一つの戦略だという地域あるいは品種もあるようであります。その両面を踏まえながら、生物系における知的財産、日本における知的財産の権利の保護と、それに基づいていいものをつくっていただくような関係者の御努力というものも、両面推進していくように、今、部外の方のお知恵もかりながら、これから推進をしていきたいというふうに考えております。

森本委員 大臣、先ほどのブラックボックスの件はもう少し、また個別にいろいろお話しさせていただきたいと思っております。

 時間がちょうど参りましたので、終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 政府の担い手法案を含めた三法案と民主党提案の農政等改革法について、できるだけわかりやすくするために、同じ質問を両方にさせていただきたい。そして、よいものをそれぞれ取り入れていただければという視点で質問をさせていただきたいと思います。

 日本のさきの農業基本法のモデルになったのがドイツ農業法だというふうに私は記憶をしているわけでありますが、ドイツ農業法というのができたのが一九五五年。日本の前の農基法ですが、これができたのが一九六一年。その後、ドイツは例のバイエルンへの道とか緑のヨーロッパとかいうことでどんどんどんどん改正をしていって、このバイエルンへの道ができたのが一九七〇年で、緑のヨーロッパとして、EUで大体今の制度が確立されたのが八八年というふうに言われているんですが、新しい食料・農業・農村基本法ができたのが九九年ですから、やや、十一年ここでおくれているわけですね。モデルがドイツ農業法だということに見習って、新しい農業基本法も一定程度ドイツを参考にしたというふうに思うんです。

 その後に、今回論議をされている直接支払いとか水・環境対策がことしですから、実に十八年おくれたということになるわけでありますけれども、おくれたことがとやかくということではありません。モデルとするドイツの農業法と比較したときに、そういう時間的な推移があったというだけのことでありますが、ただ、おくれたとはいっても、今回、直接支払いとかあるいは環境対策というものに踏み込んだというか導入したということは、大変私は評価をしているところであります。

 そういった観点で何点かお伺いをしたいというふうに思うんですが、まず、今回、新しい基本法のもとで政策をある程度大きく転換をしたわけでありますけれども、政策転換というからには、もとの政策をしっかり検証しなければならないわけでありまして、そうした意味では、今まで果たしてきた基本法の反省点ということがあって今度のものになったんだというふうに思うんですが、その点について、まず政府の見解をお伺いします。

中川国務大臣 佐々木委員御指摘のように、新しい食料・農業・農村基本法というものに基づいて基本計画をつくり、五年ごとに見直しをするということになっているわけであります。そこはやはり、生産サイド、消費サイドあるいはその間の各段階、あるいは国、地方自治体の役割というものも明記されているわけでございます。それに基づいて、今御審議いただいているこの法案が、前提として基本法に基づく新しい基本計画に基づいてやっているということで、全く基本法の前提で作業を進めているということでございます。

 見直し、あるいはまた、それに基づく新しい法律ということになりますと、小泉内閣としてよく使っている言葉でありますが、プラン・ドゥー・チェック・アクション、それの循環でやっていくわけで、まさにプランをして、ドゥーをして、今チェックをして、そしてアクション、新しい法律を今御審議をいただいているという段階であります。

 そのチェックにつきましては、自給率の向上が当初の目標どおり達成できていないとか、あるいはまた、担い手への政策の集中、重点化が十分に図られていない、特に土地利用型農業についてですけれども、こういうことが言えると思います。あるいは、食品の安全性あるいは表示の問題等々が、ここ数年の間に、非常に大きな出来事として、今我々の責務になってきているわけでございます。

 そういった問題等々を踏まえた上で、改めて、生産者から消費者へ、あるいはまた輸入の問題、備蓄の問題等々も含めまして、新しいプランというものを現時点でやっているというのが現段階でございます。

佐々木(隆)委員 また後で少し触れさせていただきたいと思いますが、今までの基本法を変えるに至った経過については、私もやや同じ認識だというふうに思ってございます。

 ただ、プラン・ドゥー・チェック・アクションですか、そのチェックなんですが、特にこれからは、どう国民の皆さん方の前にきちっと評価を指し示すかというのは、これはいわゆる説明責任という観点からも必要だというふうに思うんです。

 どうも、これは農業だけではなくてすべてそうなんですが、今までの評価の仕方というのが、いわゆるアウトプット方式と言われる方式で、この施策によって、例えば道路が何メートル延びたとか下水道が何メートルできたとか、どちらかというと、今までそういう評価だったんですよ。これからは、アウトカム方式というふうによく言われていますが、所期の目的がどのように達せられたのかとか、あるいは利用者側から見たときにどうなったのかとか、そういう評価のシステムをぜひつくっていただいて、消費者あるいは一般国民の皆さん方にもわかりやすい評価方式というものをぜひ農水省が率先して確立していただきたいなということを要望しておきたいと思います。

 それで、今度の法律ですが、政府案というのは、この前も少し論議をさせていただきましたが、表裏一体、車の両輪と言われた、三つ横に並べてあるわけであります。それから、民主党の案はいわゆる加算方式という方式だと私は理解をしているんですが、それぞれのそういう方式にした理念というのがあると思うんですが、それについて、それぞれお伺いをいたしたいと思います。

中川国務大臣 御指摘のように、政府案につきましては、品目横断所得経営対策それから米に関する政策、そして環境・水等の政策が、特に環境・水対策とほかの二つとは横に並んでいる、三つとも横に並んでいるんですが、基本的な考えは、米関係と品目横断関係はあくまでも産業政策、農業政策。しかし、これは念のため申し上げますが、生産サイドだけではなくて、消費者に至るまでの、基本法に基づく観点に立った農業政策でございます。

 それと、文字どおり車の両輪、表裏一体という濃密な関係はありますけれども、政策的に言いますと、あくまでも環境政策あるいはまた水政策あるいは国土保全等の多面的機能政策というものが、文字どおり一体となって横に三つ並んでいる。とりわけ環境・水云々とほかの二つとは車の両輪という位置づけで、ともに密接に連携しながら前進をさせていこうというのが基本的考え方でございます。

篠原議員 加算方式を導入した理由は三つございます。

 一つは、直接支払いはどうしてもみんなにべたに行くということで構造政策に資さないということで、その欠点を補うために、年金に例えれば基礎年金に当たる部分、みんなに平等にいく部分については、それはそれである程度確保しましょう、あとは違うものにということ、これが一つでございます。

 二番目は、生産調整のときに、転作のときに起きたわけですけれども、米以外をつくればいいよと、つくったところが、まともにつくらないで、つくったふりをしているだけというモラルハザードというのが大問題になりました。直接支払いをもらうためにつくったふりをしている、これを直さなければいけない。二番目の理由でございます。

 三番目は、直接支払い、ただつくればいいよというだけではなくて、これを機会に、やはり政策目的に沿った誘導をしたい。せっかく一兆円も使うわけですから、いろいろな方向に誘導するということをも考えなければいけないということでございまして、今、佐々木委員の御指摘のとおり、環境に優しい農業をやっている人、あるいは品質のいいものをたくさんつくっている人、それから規模拡大に相当熱心に取り組んでいる人、そういう人たちについてはたくさん出しましょうということで、三つの理由から考えて加算方式を導入いたしました。

佐々木(隆)委員 ありがとうございます。

 両案とも共通している部分があると思うんですが、それは、今までの産業政策というものから、地域政策、環境政策、いろいろ言い方があるんですが、環境政策や地域政策を導入したということなんですね。

 これが今回の極めて大きな特徴の一つだというふうに思うんです。それを横に並べたか縦に積んだかというところの違いはあるようでありますが、それが今回の改正の一番大きな特徴だと思うんですね。そこのところをどうやって実効あらしめるものにするかというところが、一つのポイントになるのではないかというふうに思ってございます。それは、後ほどまたちょっとお伺いしたいというふうに思います。

 農業というのは、天候とかにも大きく左右をされるというのが一つ特徴ですし、もう一つは、九州や何かは別ですけれども、一年に一サイクルしかしない産業だということで、途中でなかなか変更がきかないというのも、これは産業として見た場合の特徴だと思うんですね。

 そういうことからいうと、私は、今政府がつくっている品目ごと生産努力目標というのがありますが、もっとこれを強力に推進していく必要があるのではないか、特に我が国の場合は自給率が非常に低いわけですから、そういった観点からもここを推進していく必要があるというふうに思っておりますが、まず、政府にその点についてお伺いをしたいというふうに思います。

西川政府参考人 生産努力目標をもっと強力にという御指摘でございます。

 この基本計画の中で、供給熱量ベースの総合自給率目標として四五%を定めまして、生産量の目標と、これを達成するために農業者その他の関係者が取り組むべき品目別の課題を明らかにした生産努力目標、これを掲げているところでございます。

 この実現に向けましては、政府のみならず、関係者が一体となって、望ましい食生活を実現するための食育、地域の消費者と農業者を結びつける地産地消など、消費面に着目した取り組みを推進いたしますとともに、消費者、実需者ニーズに即して、品質や生産性の向上といった品目ごとの課題の解決を図っていく、これが重要だと考えております。

 このような生産、消費両面からの取り組みを推進、検証していくために、昨年四月に、政府や農業団体等の関係者から成る食料自給率向上協議会を設置しているところでございまして、その中で、生産努力目標に関する各年の行動計画を策定して、その着実な実施に努力しているということで、きちんと工程管理をしながら進めていきたいというふうに考えているところでございます。(発言する者あり)

佐々木(隆)委員 後ほどそのことにも触れたいと思いますが、民主党の案の中では、品目ごとのというところは別にして、幾つかの品目を挙げられているわけでありますが、この品目についてお伺いをいたします。

篠原議員 民主党の案では、主要な農作物の自給率が減ってしまった、これをふやしていかなければならない作物ということで数品目を指定しております。一つが小麦であり、大豆であり、それから菜種、飼料作物、雑穀ですね、中山間地域でつくりやすい作物。そこが遊休農地が三十八万ヘクタールもある、それをまず埋めていただいて、それで自給率を高めるということを考えております。

 それで、一番最初の議論のときに、二田委員から非常に厳しい御指摘がありました。生産調整を廃止して、米が余ってくるんじゃないか、これはもっともな御指摘だと思います。長年農政に苦労されてきた方だったら、だれでも思う懸念だと思います。

 ですから、その心配を払拭するために、我々も法律の中の第八条におきまして、それぞれ主要な作物において生産目標を都道府県、市町村別に定めてもらう。これは、言ってみれば生産調整をしているのと同じに当たるのかもしれません。

 しかし、この趣旨は、例えば麦をつくろうということを考えても、気候風土が違うわけです。北陸とか新潟あるいは秋田、あちらの方は麦をつくって米をつくるという二毛作はできません。それに対して、関東平野以西は皆、麦をつくって麦を刈ってから、あるいは菜種をつくって菜種を収穫してから米をつくったわけです。ですから、地域によって違う。そういったところはちゃんとつくっていただくという国、政府の方針等を示し、各県にも各市町村にも考えていただいて、そして目標に従って増産していただくということを考えております。

佐々木(隆)委員 今、篠原提出者からお答えをいただきましたが、目標を示すということは、いわゆる品目誘導の効果だと思うんですね。

 確かに品目誘導を余りしますと、これは黄色の政策になってしまうので、そこは微妙なところがあるわけでありますけれども、ヨーロッパなんかを見ますと、例えば砂糖大根、ビートと言われるものですけれども、それはもう契約以外は一切買わない、一トンでも余計には絶対に買わないというふうなことがあったり、それからインセンティブをつけていくというような方式のやり方など、これは実質的には誘導策であり、ある意味では制限策だと思うんですね。

 そういうことというのは、私は、ある種、この農業という分野においてはやっていかなければならない、統制経済にしろとまでは言いませんが、農業の特殊性からすれば、一定程度そういうものは、国の責任において、あるいは行政の責任においてやらなければいけない政策なのではないかというふうに思ってございます。

 そこで、先ほども少し論議がございましたけれども、なぜこのことにこだわるかというと、日本において、とりわけ戦後だと思うんですけれども、私は戦後の生まれですけれども、一つには粉文化、一つには油文化を失ってきたのではないか。

 要するに、どこどこ産の粉とかどこどこ産の油とかというのがなくなっちゃったんですよね。そのほかのものは大体あるんです、どこどこ産というのが。この二つがいわゆるアメリカから大量に輸入される、その仕組みの上で、この二つの部分だけが、ほかにもあるのかもしれませんが、この二つが文化を失ったのではないかというふうに私は思っております。

 このことについて、特に民主党案の中では、小麦四百万トンというふうに見込んでいるわけでありますけれども、その実需が確保できるかということもあわせて、そこの点をお伺いしたいのと、もう一つは、先ほど言ったように、生産目標は生産調整の機能を果たしていくということからすれば、先ほど政府案で三つ横に並んでおりましたけれども、確かに環境対策というのはこれは少し別なものですけれども、米対策と品目横断というのは、これは産業対策でありますから、そういった意味でいえば、今すぐ合体することは難しいというふうに思いますけれども、将来的にはやはり合体していく、一本化するべきではないかというふうに私は思っております。

 そうすれば、これは私の勝手な解釈ですけれども、例えば、米に使われている、生産調整に使われているのが三千億です。今、畑作物の不足払いなどに使われているのが千七百億です。環境対策で、これはうわさですけれども、四百億ぐらいではないかというふうに言われております。全部足すと五千百億になるんですね。民主党は、一兆円のうちの半分、こう言っているわけですが、この金額とほとんど同じになるわけですよ。

 そういうことも含めて、品目誘導について今後どう取り組んでいかれるのかということについて政府にお伺いしたいのと、それから、特に小麦の分野を含めて、民主党の方にお伺いをいたします。

西川政府参考人 品目誘導ということでございますけれども、先ほどお答えいたしましたように、努力目標を立てて、政府だけではなくて関係者一体となった目標を立てて、それに向かって努力するということだろうと思います。

 先ほど小麦の話がございましたけれども、小麦について今後どうするのかということだろうというふうに理解をするわけでございますけれども、小麦についても、これはやはり、今の我が国の小麦というのはめん用の品種なんだけれども、めん用としての品質特性が十分に発揮されていないというところに大きな問題があるわけでございます。

 最近、パン用の小麦、新しい品種も育成されまして、各地で、北海道でも春小麦を活用した地域独自のラーメンをつくるとか、あるいは喜多方あたりでもそういう動きが出てきております。

 そういうことはあるわけではございますけれども、やはり品質をしっかりと内需に適合させるというところに一番の焦点を当てて、内需を確保する。そこの中で、小麦について見れば八十六万トンというのを確保する。一方、大麦は、現状においてはもっと欲しいということがあるわけでございまして、それは拡大する。

 そういったもので目標が立っておりますので、それらについて情報をしっかり提供する中で、品目誘導といいますか、情報提供する中で国内生産を維持拡大していきたい、そういうふうに考えているところでございます。

篠原議員 小麦についてのお尋ねでございます。お許しいただきまして、この点は少しじっくり答えさせていただきたいと思います。

 小麦については、私がつらつら思うに、余り熱心にしてこなかったのではないかと思うんです。大臣の地元は小麦の生産地でございます。実需がないんだとあきらめてかかっている節があるんですよね。

 ちょっと具体的な例を申し上げますと、例えば美瑛町という、日本で一番美しい村、美しい村サミットとか何かNPO法人をつくられたという話も聞きますが、そこに行ったときの実話でちょっとお話しいたしますと、本州から来たお姉さんたちが、きれいな景色にうっとりしてパンを食べているわけです、さすが北海道でできた小麦でつくったパンはおいしいわねと。そのパンは北海道でできた小麦でつくったのかというと、違うんです。パン屋さんに聞いたら、胸が痛むと言うけれども、北海道パンと書いてあるんです。北海道産小麦と書いていないから不当表示じゃないと言い張っていましたけれども。全然つくっていないわけです。北海道の小麦を使っていない。

 それから、帯広に農業青年との勉強会に参りました。私は、地産地消の大切さを説きました。そうしたら、終わってから一杯飲んだときに、篠原さん、地産地消と言うけれども、うちでつくったものは、芋も大正金時も大豆もみんな食べておる、しかし、小麦はつくるんだけれども、生まれてからこの方、一回も自分のつくった小麦を食べたことがないと言うんです。どうしてですかと言ったら、製粉工場がみんななくなっちゃっているんです。全部輸入小麦になったので、製粉工場はみんな海岸にしかない。そして、江別に、西山製粉でしたか、そこに行っちゃって、どこか本州に行っちゃって帯広に戻ってこないというんです。こういうことをしていてはだめですね。

 それで、先ほど御質問ありましたけれども、学校給食にしても、きらら三九七、一生懸命地元で消費しようというので、週三回、学校給食でやっている。しかし、道東では、帯広とか網走では米はできないわけです。そうしたら、北海道の米を食べてやっているんだから、二回のパン給食は道東でつくった小麦のパン給食にしろと言っていいはずなんです。しかし、そういうことをしていないんです。米ばかりに行っているんですね。こんなことだらけなんですね。

 それから、今、西川局長から喜多方ラーメンの話が出ました。喜多方ラーメンは、あれはちょうど小麦に向いていたんです。小麦は、降雨量が五百ミリ、冷涼な地が原産地です。ですから、福島とか栃木とか長野の盆地みたいなところがちょうどぴったりなんです。そこで、ラーメンに向いているいい小麦があったから喜多方ラーメンというのはできたのに、ところが、ずっともう輸入小麦になっちゃって、喜多方の人たちはあっさりあきらめて、よく言われる遺伝資源が消滅しちゃったわけです。これは、讃岐の人はしぶとくて、ずっとつくっていた人がいるから、讃岐にはちゃんとその小麦が残っているんですけれども。

 それで、喜多方ラーメンは、あれは言ってみればインチキ喜多方ラーメンでして、喜多方の小麦を一粒たりとも使っていないわけです。ですから、白井市長は、八年前になられた市長は、これはいかぬということで、喜多方でできた小麦で喜多方ラーメンにしようということで、喜多方の小麦でつくったのが本物喜多方ラーメン、あとはインチキ喜多方ラーメンと売り出すべきだというふうに、原産地表示をきちんとしてやっていくというぐあいに。私は、こういうことを考えていかなければならないんじゃないかと。

 それで、今、八十六万トンなんという情けない目標しか政府は立てていないわけですよ。それは、本当はもっとつくりたいという願望があるんだろうと思います。しかし、実需がないという、これは誤解ですね。本当は、あったらみんな使うんです。ですから、もっと意欲的にぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 今、企業の方はもう先行しています。山崎パンは、皆さん余り食べておらないかもしれませんけれども、一〇〇%国産の小麦の食パンというのを売り出して、飛ぶように売れているんです。やはり国産志向というのは非常に多いわけです。ですから、ちょっとした努力で幾らでも国産の小麦というのは広まっていくんじゃないかと思います。

 これは粉文化についてですけれども、今度は、菜種あるいは大豆ですね。油文化というのは、大豆から油を絞っておりませんでした。それに対して、菜種は、日本全国真っ黄色だったわけです。仲野委員が本会議で、菜種をごらんください、見てください、地元の横浜町、いっぱいつくっていると。あれは全国津々浦々で見られたわけです。ぱっと消えてしまった。これも輸入の菜種です。

 ぜひ皆さんも見ていただきたいんですが、第一議員会館の土手に、私が去年の秋こっそりまいた菜種がちょこちょこ生えております。私は、国会の周りを真っ黄色にしたいと思っておりまして、一生懸命事務方と折衝したんですが、やらせてくれと言ったら断られましたけれども、夜中に秘書と二人でまきました。その成果がちゃんと出ておりますけれども。なぜそこまでこだわっているかというと、循環の代表ですね、菜種は。

 それで、みんな油屋というのがあったんです。油屋さんというのは、どこの町、村にもあったんです。菜種を絞って、少々お金持ちでちょっと意地悪で、意地悪じゃなかったかもしれませんけれども、そういうのがあって、必ず地産地消を実践していたんです。

 そういう過去の我々の生活をちょっと考えて、あるいは生産の仕方を考えたりしたら、私は、幾らでも日本にある粉文化、油文化を復活できるのではないかと思っております。

    〔委員長退席、二田委員長代理着席〕

佐々木(隆)委員 十分に思いのたけを語っていただいたのかと思うんですが、御紹介ありました美瑛町は、私の選挙区でございますので、あと二、三度訪れていただければというふうに思います。

 先ほどありました、めん適性あるいはパン適性という話がありましたが、それは、今篠原提出者も言っておられましたけれども、結局アメリカの小麦を中心に考えた結果として出てきた話だと思うんですね。だから、地域ブランドの粉があれば、それは別に、それに合わせためんができてそれに合わせたパンができたと思うんですが、一つの、外国から持ってきた小麦と全部一緒にしてしまうために、めん適性、粉適性というものも、それに合うとか合わないとかという基準をつくらざるを得なくなったということであって、もともとそこに粉があれば、そこのめんができてそこのパンができたんだと思うんですね。

 だからそこも、私は、そういった意味では、外国の小麦に合わせた技術を開発するのではなくて、それよりも地域のブランドの粉や油をつくるということの方が大切なのではないかというふうに思っています。

 私は別にアメリカに何の敵対意識もありませんけれども、アメリカの戦略は、まず食文化を輸出する、その次にスポーツ文化を輸出する、それは野球ですが、その次にハリウッド映画を輸出する、これで芸術、発想を輸出するんだ、この三戦略だというふうに聞いているんですが、まさにアメリカらしい、スケールの大きい長期的な政策ではないかと私はある意味で感心をしているんですが、それぐらい、いずれも長期的に効果を発するものだということだと思うんです。

 ちょっと篠原委員に感化をされて余りしゃべり過ぎると私の時間がなくなりますので、次の課題に移りたいというふうに思います。

 畑作というのは、輪作というものが基本だと思うんですね。その輪作の中には、特に近ごろは品目が限られてきていますから、そういった中では、いわゆる休閑緑肥というのがかなり大切な分野として入ってきています。もう一つは不耕作地をなくすという観点からも、休閑緑肥というのはこれから注目をしていかなければならないテーマだというふうに私は思っております。

 この休閑緑肥が、今度の政策の中では過去の実績にカウントされていないわけですね。これをまずカウントするということ、これはそういう要望も出ているというふうに伺っておりますけれども、この休閑緑肥をカウントする、あるいは、次の交付金にも、これは対象になるのかと思うんですが、この辺について政府にお伺いをいたします。

井出政府参考人 お答えいたします。

 畑作地帯におきます燕麦等の緑肥作物につきましては、委員御指摘のとおり、合理的な輪作体系を構築する中で、農地の土壌の肥沃度等を高めるのみならず、化学肥料の施用を削減する上でも重要な作物であると認識はしております。

 一方、このたびの新法におきましては、担い手の経営全体に着目し、その安定を図ることによりまして国民に対する食料の安定供給を確保しようとするものでありますので、その対象農産物につきましては、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要なものとしております。

 このような観点からは、地力の増進等を図るために生産され土壌にすき込まれる緑肥作物につきましては、国民に対して熱量を直接供給しているものでもございませんし、また、それ自体が販売されて農家収入になるものでもなく、生産条件の格差や収入の変動が明らかになるものでもないということから、今回の支援対象にはしてございません。

佐々木(隆)委員 ちょっと今理解しかねたのですが、食料の安定供給を図っていく上で緑肥は非常に重要だけれども作物を生産しないからカウントしないというふうな、ちょっとこれは、重要だけれどもカウントはしないという話とかというのは、何かちょっと整合しないような話のように受け取られたのですが。

 ちょっともう一度そこを説明していただきたいのと、要するに、過去の実績のカウントもしないし、今度の交付金の対象にもしないのかということについてもう一度お願いいたします。

    〔二田委員長代理退席、委員長着席〕

井出政府参考人 緑肥作物につきましては、合理的な輪作体系を構築する上では重要な作物です。しかしながら、今回の私どもが構築している制度につきましては、国民に対する食料の安定供給を確保するために、担い手の経営全体に着目してその経営安定を図るということでございまして、その対象作物は、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要なものということで限定をいたしております。

 したがいまして、緑肥作物というのは、熱量供給という点では直接供給はありませんし、それ自体がそもそも販売されて農家収入にもともとなるものでもないと。ということは、生産条件の格差も収入の変動も、もともとが価格のないものでございますから、明らかになることもないということで、今回の交付金の対象とはなっていない、できないということでございます。

佐々木(隆)委員 過去のカウントをされないのはもちろんですが、今度の交付金の対象にもならないということなんですが、後ほど触れたいと思うんですけれども、環境維持の作物、いわゆる有機農業のような種類のものが環境対策の中にあるわけですけれども、こういうものにインセンティブをつけて片っ方で奨励をしておいて、それのもとになるべき休閑緑肥作物が熱供給に関係ないからというのは、私は、今の時代の政策、これから始めようとする政策としては少しどうなのかな、考え直す必要があるのではないかなというふうに思います。

 最初に申し上げたように、今度の政策の大きな違いというのは、今までの農業生産、農業というものだけから、環境とか農村というものに注目しようということをプラスしたというところに大きな転換点があるんだと思うんですね。その一つとして、休閑緑肥というのは、そんな三分の一も四分の一もつくるわけではありませんけれども、しかし、私は、いい品質のものをつくるという意味で非常に大きな意味があると思うんです。

 そういう点からして、いわゆる千七百億という今まで出していたお金のところの範疇からどうしても発想が出ていないような気がするんですね。だから結局またそういうところに戻ってしまうのかなという気がするんですけれども、私は、やはりこのことは、これから先を見越していったときに非常に重要だというふうに思っておりまして、それをどの程度見るかとか仕組みの仕方というのはいろいろあると思うんですけれども、これは畑作の場合の輪作体系の中には将来絶対に必要になってくるものだというふうに思いますので、そこは、答えは要りませんけれども、ぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 民主党の方なんですが、ここで実は菜種の話を聞こうと思ったら、先ほど菜種の話も出てまいりましたけれども、休閑緑肥について何かありますか。

 それでは、次に移らせていただきたいというふうに思います。

 次に、今までの農政を検証する上で、ばらまき、ばらまきということがよく言われております。ばらまき農政から転換をしなければいけないとか、ばらまきをというような話がよくあるんですが、このばらまきというのは、一体何を指してばらまきと言うのかというのは、いまだかつて余り検証されたという記憶が、私の中には余りないわけであります。

 私は農家ですが、そんなにばらまかれていただいたというような記憶は全くございませんし、そういう意味では、何を指してばらまきと言うのかというのは、新しい制度に入るわけですから、ぜひ一度検証しておく必要があるのではないか。対象農家を絞ることを言うのか、予算を縮めることを言うのか、ぜひ、この点については、政府として今までの説明責任を果たしておいていただきたいというふうに思います。

中川国務大臣 佐々木委員、農業者として、受け取ったものがばらまきじゃないという御認識は、ある意味では自然だろうというふうに思います。

 ただ、別にばらまきという言葉が法律や政令、省令の中に入っているわけではございませんけれども、この委員会でも随分そういう議論、先ほど別の観点から、篠原提出者も、直接支払いはばらまきではないかというような単語が使われました。

 まず、ばらまきというのは、お金の出どころがどこかということになると、国民の税金、一般会計、あるいはまた、いわゆる輸入との関係から出てくるお金、いずれにしても国家国民のお金であるということですから、端的に申し上げると、最終的に判断するのは負担者あるいは国民だろうというふうに私は思います。もらう方は、いっぱいもらった方がいいし、出す方は、こういう財政状況でもありますから、なるべく少ない方がいい。ここはトレードオフの関係にあるわけであります。

 我々は、ばらまきと指摘されるような施策は行いたくないというのは、国民的なコンセンサスといいましょうか、国民的な御批判に耐え得るような施策として、税金なり公的なお金を農業者個人あるいはまた農業者の集団に差し上げるということによって、先ほどの環境保全や、あるいはまた、よりよいものを消費者が買うことができるということに理解を示す、性格と金額の量、両方を国民が理解をしていただく、支持していただくということがポイントだろうということでありまして、その次に、では対象者がどうだとか、あるいはまた、どういう要件でとかいうことが細かく定義されるんだろうと思います。

 つまり、我々は、公的なお金を使い、公的な政策を行っているわけでありますから、この国会の場も、国民を代表している最高府で御審議をいただいているわけでありますから、常に、基本法の趣旨、つまり、国民全体を意識しながら政策をし、また審議をしているわけでありまして、そういう意味で、我々は、ばらまきという指摘というものに対しては、極めて神経質に対応していかなければいけないというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 ばらまき、多分マスコミがつくったのか、大臣はさすがに、今までも、答弁書を見ましたが、一度もばらまきということを答弁していることはなくて、ただ、新しい資料をつくるときに、ばらまきと言われないためにとかというのは出てくるんですけれども。

 いずれにしても、マスコミが言ったか、だれが言ったかわかりませんけれども、そのことに対して政府がきちっと説明をしてこなかったのではないかということはあると思うんですね。だから、それはぜひ、説明責任の一端として、これから、これからはそういうことはないというふうに大臣はおっしゃるんだと思いますが、それと、要するに使われ方の問題だったというふうに思うんです。そういうことを含めて、民主党の方のお考えを伺っておきたいと思います。

山田議員 先に休閑緑肥の件で少し話させていただきたいと思います。

 いわゆる佐々木委員がおっしゃっているのは、今度の担い手対策の直接支払いの中で、政府案でいきますと、過去三年間の生産実績、そうなった場合に、休閑緑肥も入らないし、新しく農業をやろうという人、そういう人に対してどう評価するのか。過去三年間の生産実績がないわけですから、そういった問題で、新規参入が本格的に農業をやる場合に非常に支障になるのではないか。私どももそう考えておりまして、もちろん、休閑緑肥等は次の新しい農業生産のための糧でありますし、かつまた、新しく農業参入する人については全く過去の実績がないわけですから。

 しかし、よくよくWTOの黄色の政策あるいはアメリカの不足払いの新青の政策等々を考えてみた場合に、私ども日本にとっては、もっとさらに過去の、昭和三十年代、四十年代、五十年代の実績、その面積、農地を利用した過去の実績があるわけですから、広く過去の生産実績等を見れば、何も三年間に限らず、だれがそこで耕したかというものではなく、生産に利用されておったという過去の実績で勘案して、緑の政策としての主張はできるのではないか、そう考えております。

 一方、先ほどばらまきと言われましたが、そのばらまきについて、他の産業ではなく、農業にだけなぜ税金をつぎ込むのか、助成金をやるのか、直接支払いするのか、その理由ですけれども、これについては二つの側面があるんじゃないか。

 一つは、他の産業に比べて、農業の場合においては、いわゆる生産条件の格差が諸外国と違い過ぎる、構造的に生産が合っていない、生産と比較した場合。どうしてもそこに対する助成が必要である。それは食の安全保障と食の安全のためであるという側面。

 もう一つの側面というのは、いわゆる多面的機能、自然環境とか環境保全とか、日本学術会議では、それに対する農業の持つ貨幣価値を八兆円と評価しておりますが、そういったものに対して直接支払いをするということは、国民も納得のできることであって、ばらまきでは決してない。そういう直接支払いが、さらに国民が納得いくような形でやれる方法、これを民主党としては、自給率を確実に達成する具体的な方法、食の安全に直接寄与する方法、これを勘案して今回法案として出したところです。

佐々木(隆)委員 新規参入の件は、また機会を見てやらせていただきたいというふうに思います。

 私は、先ほど来、きょうの論議のテーマにさせていただいているのが、いわゆる産業政策一辺倒からの脱却といいますか、地域政策、環境政策を取り入れたということが今回の新法の大変大きなテーマだというふうに思っております。

 言葉を言いかえれば、余り適当な表現ではないかもしれませんが、戦後の産業政策というのは、農業ばかりじゃなくて、全部そうだったと思うんですが、農業がよくなれば農村はよくなるという発想に基づいていたのではないかと思うんですね。だから、その産業がよくなればその地域はよくなるしという感覚で来たのが、産業政策だけではどうも立ち行かなくなった。それで、地域政策とか環境政策とかというものを加味した総合的な政策にしなければいけないというところに、時代の背景もありますけれども、転換をした一つの大きな理由があると思うんですね。

 そういう意味で、今、山田委員からもお話がございましたけれども、多面的機能の評価というものの位置づけについて、それぞれお伺いをしたい。政府の方からお伺いをしたいというふうに思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農業の多面的機能についてでございますが、これは、食料・農業・農村基本法におきまして、「農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能」というふうに規定をしております。その具体的な内容といたしましては、国土の保全あるいは水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、また、文化の伝承ということを例示いたしております。

 この農業の多面的機能の評価としまして、平成十三年に日本学術会議から答申をいただいておりますが、それによりますと、例えば、洪水防止機能では三兆五千億円等の貨幣試算がなされたところでございます。

 この農業の多面的機能につきましては、先ほどお話ししましたとおり、農業生産活動が持続的に行われることにより発揮されるものであるということであります。このため、農業の持続的な発展と、その基盤であります農村の振興を図ることが極めて重要でありまして、農林水産省としては、これまでも担い手の育成あるいは農業基盤の整備等、各般の施策を講じてきておるところでございます。

 また、先生、先ほどお話ありました、平成十九年度からは、社会共通資本としての農地、農業用水等の保全等を内容とします農地・水・環境保全向上対策等を、地域振興対策として本格的に導入することといたしております。

 以上でございます。

篠原議員 今、佐々木委員から非常に重要な御指摘があったのではないかと思います。

 戦後の農政、変わってきた、産業政策一辺倒から地域政策というふうに変わってきたんじゃないかという御指摘でございますけれども、法律的には、基本法的にはそのとおりだと思いますけれども、戦後の農政、いつのころからかというのはわかりませんけれども、予算的な措置としては、地域政策、農村振興策を相当入れてきたんじゃないかと思います。旧構造改善局、そして今は農村振興局、それを法律的には追認したのじゃないかと思っております。これが一つでございます。

 それから、多面的機能の評価、どのようにしているかという御質問ですけれども、これはもう我々、直接支払いを導入するに当たって、多面的機能を評価したからこそ一兆円も使うというふうに結論づけたわけでございます。

 多面的機能、いろいろありますけれども、完全に含まれるかどうかは別の、本来的な役割なのかどうかはわかりませんけれども、一応食料の安全保障というのも農業の持つ多面的機能の一つだ、国民に安心を与えるという意味で。それから、中山間地域における雑穀、菜種等について直接支払いをするというのは、景観の維持、すなわち多面的機能を評価したことにほかならないんじゃないかと思っております。

佐々木(隆)委員 それぞれお答えをいただきました。

 多面的機能、直接的な部分と、さらに間接的な、まあ多面的機能を直接的という表現はないのかもしれませんが、農業に極めて限定した部分と、そうでない、空気などの、水とかという部分まで含めていると、たしか八兆円という試算があったというふうに思うんですけれども、後ほどちょっと時間があれば触れたいというふうに思いますが。

 多面的機能の発揮は農業生産活動が行われることによってというふうに今説明をいただいたんですが、農業生産が行われなくても、なくてもというのは変なんですが、農村というものの存在自体が一定程度社会的に果たしている役割というのはあると私は思うんですよね。私は対価だというふうに思っているものですから、農村に住んでいて、とりわけ大きな、主体的な農業でなくても、小さな農家でも、そこに住んで農村生活をしているということは、それはその多面的機能としての機能をそれだけで果たしているわけですから、それの対価について、今まで全く支払われていなかったというふうに私は思っております。

 ですから、生産活動がなければだめなんだというのは、私はそういうふうには思わないわけでありますが、今回の政策を見ると、例えば三条で言っている多面的機能というのが、結果的に、今度の環境・水対策でいいますと、二十四条の生産基盤のところに少し矮小化されてしまったのではないかというふうに思いますし、もう一つは、土地環境保全対策の中の先進的な取り組み、いわゆる有機農業のようなものですが、それが農地・水・環境対策に位置づけられているということも、これもこの前もちょっと論議させていただいたんですが、どうもこれは不自然だと思うんです。

 それはなぜかというと、環境対策というほとんどの農村に住んでいる人たちが当たる政策があって、そのほかに、政府案で言うと、品目横断という限定された人たちがあって、そして、有機農業に取り組むというのはそのまた先鋭的な人たちだと思うんですよ。それが下から積み上げていった場合に、環境で支払われる人たちがいて、品目横断で支払われる人たちがいて、そのさらに上に先進的な取り組みとして有機農業のような人たちがいるんだとすれば、それが環境対策のところにぽつんとのっかっているというのは、組み立て方として非常に無理があるのではないか、かえってわかりづらくしてしまっているのではないかというふうに思いますので、そこのところについてはこの前も少し論議させていただいておりますので、指摘だけにさせていただきたいというふうに思います。

 環境対策は、そのほかにも、例えば、通い耕作者の場合はどうなるんだという問題点があります。そこの地域には住んでいないけれども、通ってきてかなり大きくつくっているという人がいる。あるいは、そこの地域、農村という地域には住んでいるんだけれども非農家の人たちがいる。こういう人たちをどうしていくのかということについても、やはりこれからきちっと整理をしていかなければならないというふうに思いますし、そうした意味で、そうした問題点も抱えております。

 しかし、私は、この環境対策に取り組んだということは、先ほど来申し上げているように、非常に評価をしているわけでありますが、ただ、私は、予算が余りにも少な過ぎるのではないかと。品目横断が一千七百億、まあこれはうわさですけれども、言われている。片や四百億だということになれば、余りにも違い過ぎる。それで、環境対策はやはり遜色のない、品目横断の方を削れとは決して言いません、やはり品目横断に遜色のない予算にしていくべきではないかというふうに思うんです。

 そして、もっと言えば、私は、産業政策というのは、直接国が投入するというよりは、産業政策というのであれば、国はシステムをつくることだと思うんですね。その後、融資をするとかいろいろな仕組みをつくってあげることが、産業政策として行政がやらなければいけないことで、地域政策こそむしろ国がお金を投入すべきものではないかというふうに思っているんです。

 そういったことを含めて、この環境政策に対する予算について、政府の見解を伺います。

山田政府参考人 農地・水・環境保全向上対策の予算の件でございますが、十九年度から本格的な導入をしようということで検討しておりますが、十八年度に全国約六百の地区で実際に活動組織を立ち上げて、モデル的な支援等を行っております。このモデル的な支援によりまして施策の実効性を検証し、その状況を、支援の規模、予算の規模ですが、こういったものを含む本対策の具体化に反映をさせていきたいというふうに考えております。

 なお、先生の方から、品目横断的経営安定対策と農地・水・環境保全対策の予算額について比較をされたようなお話がありましたけれども、先生御指摘のとおり、その趣旨ですとか、目的ですとか、あるいは対象者が異なるものでございますので、それぞれの対策ごとに必要な予算を検討していくということでございます。

佐々木(隆)委員 それはそのとおりだと思うんですけれども、ただ、今のまま想定しますと、環境対策は恐らく二百万戸のかなり近い部分の人たちが対象になるわけですよ。

 それで、品目横断は、今の政府案でいくと、四分の一か、広げても半分、まあ三分の一ぐらい。三分の一ぐらいのところに千七百億積まさっていて、全体の二百万戸のところに四百億というのでは、これは、金額は別にして、対象農家は全然違うわけですから、それは政策ごとに組み立てるのは当たり前の話ではあるんですが、遜色ないものにしていただきたいということであります。

 最後の質問にさせていただきます。

 今、ずっと今回論議をさせていただいてきたのは、新基本法で最も特徴的な部分というのは、直接支払いと農村対策というか環境対策を導入したことだというふうに思っております。

 そこで、先ほども、生産活動を通じてと多面的機能のところでお答えをいただきましたが、多面的機能を唱えている三条、そして持続的発展というのを唱えている四条、そして農村の振興というのを唱えている五条。この三条のところでは、確かに、生産活動が行われることによってとなっていますが、四条の方では、農業構造が確立されるとともに、農業の自然環境がと言っているわけですね。それから、農村の振興のところでは、農業の生産条件の整備及び生活環境の整備となっていて、「及び」とか「とともに」というのは、これは全く同じという意味ですから、上下関係はないわけです。ですから、これは両方きちっとやるという意味だというふうに私はとらえております。

 そういった意味からしても、先ほど言った、今のところはスタートだから仕方がないと言うのなら、それはそれで認めるとして、この先、将来にわたって、やはり「及び」とか「とともに」という表現に匹敵するだけのものにしていかなければならないということと、EUなんかの例を見ると、環境対策と言ったり農村対策と言ったりするんですが、ここだけとらえても、計算の仕方によっていろいろ違いますが、五%から一五%ぐらい、直接支払いというところを含めると、もう七五%ぐらいはそういう予算になっているわけですよ。これは、日本で例えば四百億だとして三兆円弱ですから、一%強ぐらいなことになるわけです。

 ぜひ、そういった意味では、将来的にこの分野というのは非常に重要だというふうに私は思っておりまして、この対策に将来きちっとシフトするというか、遜色のないものにしていくということについて、政府の決意と、それから民主党の方の決意を最後にお伺いをしたいと思います。

中川国務大臣 先ほどから佐々木委員は、あえて申し上げれば、生産的側面、経済的側面と環境的側面をきちっと分けて、その上で、金額も含めて多い少ないという御議論をされておりますが、これは佐々木委員も御認識いただいていると思いますけれども、あくまでも車の両輪ということで、例えば水一つとっても、水管理というのは農業者のためだけじゃございませんし、したがって、環境の方は農業者だけではなくていろいろな参加者とともにやっていこうということでありまして、それは、その地域あるいはその水系全体がよくなると同時に、農業の方も生産性が上がったりということになっていくわけでありまして、文字どおり車の両輪であるということで、両方とも大事だということで、今、山田局長の方から答弁をさせていただいたわけでありまして、いろいろと調査をした上で、きちっとした対策を十九年度からとらせていただきたいというふうに思っております。

篠原議員 ヨーロッパの例を出されましたけれども、EUの農業大臣もたしかそうだと思いますが、農業の後にルーラルディベロップメントという、農村開発というのが大臣の名称についているわけです。イギリスとかフランスもそうだったと思います。もう一つ言いますと、そこに環境がついている国も非常に多いわけです。

 そういう点では、佐々木委員の御指摘のとおり、農業政策というのは、農業生産だけではなく農村地域全体のことを考え、環境のことも考えていくようになっているんじゃないかと思います。そういった点では我が国も見習うべきじゃないかと思っておりまして、農政に長く携わっておられる松岡議員が予算委員会で、たしか、環境食料省にすべきじゃないかという質問をされておられました。私もそのとおりだと思いまして、今、小池環境大臣は病気療養中でございますけれども、こういったときは率先して農林水産大臣が臨時代理になり、WTOであちらに行かれるときは小池大臣が臨時代理になるとか、融合を図っていったらいいんじゃないかと思っております。

佐々木(隆)委員 終わらせていただきますが、日本の新しい基本法も前の基本法もドイツに倣ったということからいえば、ドイツの新しい基本法のもとになったのがバイエルンへの道という理論だというふうに思っています。そのバイエルンへの道には二つの理論がありまして、だれにもチャンスをというのと、農業は万人のためにというこの二つが理念だというふうに聞いております。その理念が今度の新しい政策の中でしっかりと生かされるように、私もこれからも論議をさせていただくことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 本日は、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案について質問をさせていただこうと思います。

 私は、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案、民主党案でございますが、こちらの提出者の一人でありますので、質問は政府案に対してのみ行わせていただこうと思っております。

 まず冒頭でございますが、この審議に入る前に、かねてよりこの農水委員会においても、また予算委員会においても私が提出を要求しております、米国食肉工場の査察、農林水産省が行った、厚生労働省が行った査察の調査結果の公表そして資料要求について、今の進捗状況を含め、お話があればいただきたいと思います。

中川国務大臣 岡本委員から予算委員会の場等でも御指摘のあった、昨年の査察を行った、一部の施設でありますけれども、その報告書の全容について、いつ公表できるのか、また岡本委員に御報告できるのかということでありますが、御指摘を受けまして、二月の中旬に、米国側にその報告書を渡したわけであります。日本がアメリカ側の報告書がいつ来るんだといって、その後来たわけでありますけれども、それを訳すのに多少時間がかかったわけでございますが、これは日本文で渡したものでございますから、今、向こうで英訳をして作業を進めているというふうに聞いております。

 私も質問を受けるたびに、またそれ以外にも、どうなっているんだと何回も事務方に督促をし、また、事務方から米国側に問い合わせをしているところでございまして、どういう形でそれに対しての向こう側の作業が終わるかということも踏まえまして、できるだけ早く公表をしたい、できれば四月中に公表したい、こういうふうに私は事務方に今作業をさせているところでございます。

岡本(充)委員 四月中にぜひ提出をいただきたいと思います。

 それでは、法案の内容についての議論に入りたいと思います。

 まず、質問通告をしておらなかった質問から入るのは恐縮でございますが、先ほどの佐々木委員の質問で私も非常に感じたところがありまして、このばらまき政策というのは一体何を指すのかなということで考えてまいりました。

 広辞苑なんかを引くと、ばらまきという言葉は載っておりません。恐らくばらまくという言葉の名詞形なんではないかというふうに考えると、一体ばらまくという言葉は何なのか、こういう話になるんです。ばらまくとは、一番、ばらばらとまく、二番が金銭を多くの人に気前よく与える、こういう意味で載っています。このばらまくという動詞の名詞形がばらまきだとすれば、これの名詞なんだろうというふうに考えるんですが、よく言われるばらまき政策というのは一体何なんだろう、何のためにばらばらとまいてきたのか。

 イメージとしてあるのは、多くの農家が施策の対象になった価格政策を指すのかなというようにも思います。零細経営を含むすべての農業者に効果が及ぶため農業構造の改善を制約している、こういう評価すらあったやに聞いておりますこの価格政策、これを指しているのかもしれませんが、ばらまき政策とは一体どんな政策で、そして、なぜこれが批判の対象になるのか、ぜひ大臣からお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中川国務大臣 私は、広辞苑の今の御指摘、一番、ばらばらとまく、それから、いっぱいまく、特に農水省に対しての批判をする方々から見れば、多分両方当たっているのかなと。これは推察であります。批判する人はこういうつもりで言っているんだろうなと。

 予算ですから、きちっと査定をして、そして決算もしなければいけないわけでありまして、しかも、限られた財源でありますから、ばらばらとまくわけはございませんし、また、多くのものをお渡ししているわけではございません。

 ただし、言うまでもなく、ばらまき政策という政策は、農林水産省としては過去一度もそういう名前の政策はとったことがないわけでございますし、また、先ほど佐々木委員もおっしゃっていたように、多くをもらっているつもりはないという、これは生産者の方の御意見だろうというふうに思います。

 要は、先ほども申し上げましたように、限られた、そして貴重な、そして国民もしくは国民的なお金を特定の産業あるいは産業に従事する人たちに与えるに当たっては、極めて厳格かつ抑制的にやっていく必要がある。しかし、その政策は、農業政策あるいはまた基本法に基づく食料政策にとってプラスになるという観点からやっているわけでございます。しかし、御批判がある。

 しかも、先ほどの旧農業基本法の議論にもありましたように、生活を都市並みにしていくという旧基本法、あるいはまた、より力強い農業をつくっていこうという現基本法、あるいは今回の御審議いただいている法律が、目標とするような農業経営の方向に必ずしも行っていなかったという反省が、そのばらまきと称する人たちの御批判が、ある意味ではそっちの方にもつながっていっているということになりますと、我々としては反省をしなければいけない点があるわけでございます。

 そういう過去のいろいろな経験、あるいはまた、そういう言葉を使って批判をしている方々の批判にも耐えるようなあるべき農業、あるいは農業者、あるいは食料政策の推進に向かって、この法案が法律となり、そして実施されて、その方向に向かっていくべきことを期待しながら、こういう法律を御審議していただいているということでございます。

岡本(充)委員 大臣おっしゃるとおり、多くの農業者も、これまで気前よく金銭をもらったという思いもないでしょうし、農作物の対価としてのお金はもらったとしても、税金は払ったとしても、国からそういう意味でお金をもらったという印象は持っていないと思います。

 そういった中で、ばらまき政策というのは一体何なのか、なぜいけないのかということを原点に立ち返って今お伺いをさせていただいたわけでありまして、この点については引き続きまた、大臣含め農林水産省各部局の皆様にもお考えをいただきたいと思っております。

 さて、まず最初に、食料・農業・農村基本計画、昨年の三月に策定されましたこの計画の中で、平成二十七年度における望ましい食料消費の姿、こういった話から始まって、自給率をどのようにしていくのか、また、今回の法案の対象品目を含めて、さまざまな農産品目の生産努力目標はどのようにしていくのかということが書かれています。

 お配りをさせていただいた資料のまず一枚目なんですけれども、カラーじゃないものです。平成二十七年度における望ましい食料消費の姿。例えば米はこのようになっています。六十一・九が平成十五年。二十七年は六十二だ。例えば麦は三十二・九が三十二だ。大豆は六・七が七・四。それぞれキログラムですね。こういうような消費の姿だ。

 その一方で、こういう消費をする中でどういうような食料自給率になっていくのかというのが二枚目なんですが、それぞれ、米は例えば九五が九六だ、麦は、麦は計ですけれども、一二%だったのが一四%、大豆は四%が六%、うち食用は二二%が二四%になる、こういう目標を掲げています。

 三枚目をごらんいただくとわかるんですが、では、どうなんだと。米の消費の推移は、これはいただいた資料ですけれども、見たところ、このように経年的にどんどんどんどんその消費量を減らしてまいっております。その減り方が鈍化をしているという指摘もありますけれども、このペースで減っていくと、どう考えても六十二という数字は難しい。そんな中で、後段にもお話をさせていただきますが、いろいろ食育という話なんかも出てきているんだというふうに私なりに理解させていただいています。

 では、そもそも、生産努力目標、例えば米をどれだけつくるのか、それから大豆や麦をどのようにつくっていくのか、こういった目標というのはどのようにして設定をしたのか。米と麦と大豆、それぞれについてお答えをいただきたいと思います。

西川政府参考人 生産努力目標で、米、麦、大豆について、どういうことで設定したのかというお話でございます。

 生産努力目標は、望ましい食料消費の姿から求められる需要量、これを基礎にいたしまして、平成二十七年度において実現可能な国内生産の水準を示したものでございます。

 米につきましては、消費量の減退に歯どめをかけるなどの対策を講じることによって現状程度の生産量を維持するという考え方でございます。小麦と大豆ということで申し上げますと、この目標の達成の前提として、実需者ニーズに即した品質のもの、あるいは、安定供給面でのいろいろな課題があるわけでございますけれども、それの課題を解決するといったこと、あるいは、品質管理の徹底、出荷単位の大型化など、実需者ニーズに応じた生産をする、生産技術も改善する、もろもろの問題解決をする中で、最近年における生産量の最大値として、小麦であれば八十六万トン、大豆であれば二十七万トン、そういった目標生産量とした、そういう経緯でございます。

岡本(充)委員 先ほども御指摘させていただきましたけれども、望ましい消費の姿といっても、年々減っていく米の消費のみならず、残念ながら、その努力目標を達成するには現状ではかなり厳しいことが予想されるわけでありますが、とはいいながら、目標でありますから、この目標はある程度望ましい目標を立てなければいけないのは事実でしょう。

 しかし、例えば望ましい食料消費の姿ということであっても、今お話しした、現実から離れた数字であってはならないわけでありまして、今回の例えば米、今グラフをお示しさせていただいたとおり、このペースで減っていくと、推計をしていくと、今、私、厚生労働委員会の委員でもあるんですけれども、医療費も同様です。医療費も、総理は言われていた。平成七年から平成十一年の医療費の伸びの推移をとって、これをずっと伸ばしていくと平成二十五年にはこれだけの医療費になる、こういうような推計を出すわけですね。こういうような推計を出すと、明らかに米のグラフは六十二を指さないわけなんですが、この数値設定のあり方、どのように設定をしたのか、大臣、お答えいただけますでしょうか。

中川国務大臣 岡本委員はお医者さんですから、医学あるいは予防医学の専門家でいらっしゃるわけでございます。

 どういうふうに設定をしたかということにつきましては、やはりこれも基本法に戻るわけでございまして、消費者というものを意識しながら生産サイドも対応していかなければならない。

 あのときも、私、農水大臣をやっておりましたので、思い出すんですけれども、審議会の中で消費者団体の代表の皆さん方からも随分消費者サイドの方のお話も伺いながら、あの法律案あるいは計画をつくり、そして、国会で長時間にわたって御審議をしていただいたわけであります。それに基づいて基本計画というものに、望ましい食料消費の姿ということで、かなり細かく書いてあるわけでございます。

 それに基づいてということになるわけでありますが、生産サイドだけから見ますと、それは、つくりやすくて、お金になって、もうかるものであれば何でもつくればいいんですけれども、そこが消費者につながっていかなければならない。また、消費者の方も、自分が期待するものをできれば国内でつくりたいという、お互いに密接な関連があるわけでございます。

 そういう中で、後ほどお話があるんでしょうけれども、資料の方にいわゆるバランスというもの、あるいは、前のときには農林水産省の食堂のメニューに、国産自給率何%、何とか定食は自給率何%、何とかそばは自給率何%と自給率の表をくっつけて食堂でやっておりましたが、今はこま形のバランス、いろいろなことをやっております。

 いずれにいたしましても、ただつくればいいとか、また、消費者サイドの方も、ただ食べられればいい、おいしければ何でもいいんだということではないんだろう。先ほどの篠原提出者の昔からの専門的なお話にあるような食育の問題、地産地消の問題、いろいろなことが大事だということは私も農水省も認識しておりますので、そういう中で、あるべき消費、そして、それに国内生産を基本としてというところを結びつけた形が望ましい消費の姿であるというふうに私は理解をして、いろいろな指標をお示ししているということでございます。

岡本(充)委員 そういった意味では、望ましい姿というのであれば、目標を高目に設定して、それに向けて努力をしていく、そういうことも可能なわけであります。実際に、では食料自給率を向上させるために、本当は、生産努力目標自体ももっと高く設定をして、もっとたくさんつくってもらうようにしたらいいのではないかという思いも私は持っています。

 これまでも議論がありますとおり、需要がそのようにないんだと言われる。しかし、篠原提出者、同僚でありますけれども、先ほど答弁されていましたが、私も実際に見てきたところとして、農林水産省の研究所にお邪魔して、国産の麦からパンをつくる、それも比較的簡単な、簡単なと言っては失礼かもしれませんが、御苦労されて、工夫されてつくった技術とはいえ、そういうふうにすることでパンができるのかと。例えば、たんぱく質の多い部分を抽出する、どのようにして選ぶのか、こういう話も聞いてまいりました。工夫をすれば需要はふえる、そういう印象を私は強く持っているし、だからこそ、研究を重ねられているのではないんですか。

 そういう意味では、需要をこれだけ低く見積もる必要はないわけであって、私は、ある程度の高い需要を求められる、そういう技術も開発します、だから、生産をたくさんしても国内で消費されます、したがって、努力目標はここまで高くてもできますと。過去最大の生産量を民主党案は出しておりますが、政府案は、恐らくは直近の過去最大の生産量をもとに今回この生産努力目標を立てられているんだと思いますが、そういう意味では、消費、需要をもっと喚起し、そして生産量をもっと高くする、そういった目標設定はできなかったものなんでしょうか。私としては、そこの部分を大臣にお答えいただきたいと思っています。

中川国務大臣 言うまでもなく、食料ですから、胃袋は一つ。多少多く食べるとき、少なく食べるときはありますけれども、基本的に胃袋は一つ。そして、日本は、少子高齢の社会にもう既に入って、人口減少の時代に入っていっているということは、胃袋の全体が少なくなっているということも事実です。特に、育ち盛りの子供たち、あるいは働き盛りの人たちに比べて高齢者の方々がふえていく。元気な高齢者の方々がいっぱいいていただきたいわけでありますけれども、世の中としては胃袋全体が小さくなっていくという現実があるわけであります。

 もう一点は、今岡本委員はカロリーベースの議論をされておりますけれども、先ほどもお話がありましたように、正直言って、物事すべてカロリーベースだけで判断していいのかということもあります。脂肪、たんぱく質、でん粉はほどほどに、野菜と果物その他をいっぱい食べましょうというと、サラダにドレッシングをかけずに食べればカロリーはほとんどゼロということになりますから、片方で健康のためにこういう食生活、片方でカロリーベースで自給率を上げましょうというと、先ほどのポスターじゃありませんけれども、一体総合的に何をやりたいんだという論理矛盾にもなりかねないということもあります。

 したがって、私は、金額ベースの自給率も大事でしょうし、潜在自給力という考え方もあるでしょうし、最低の、ぎりぎりの状況に置かれたときに、日本の国内だけで、米とジャガイモ、サツマイモだけで、時々魚や野菜を食べながらというスターベーションランチ的なモデルも一応つくってはありますけれども、消費者はこれは耐えられないと思うんですね、外国から買えればいいじゃないかと。

 しかし他方、平成五年、米を二百六十万トン緊急輸入したときは、逆にそれが売れ残ってしまったとか、いろいろな要素がありますので、要は、消費者に好まれるようなものをつくると同時に、消費者も、自分の健康、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんや自分の子供のための健康、発育を考えて食というものを考えていただきたいし、そうなったときに、日本の生産サイドに対してどういうものを期待していくか、それで期待にこたえるようなものをつくっていくという関係が必要であって、そういう中で、望ましい自給率、望ましい食生活というものが結果的に出てくるんだろう、政府がこれを食べなさい、あれを食べなさい、食べちゃいけないということは言えないわけでありますから。

 そういう中で、しかし、国産の比率を少しでも高めていくということは、消費者ニーズにもこたえていくことだと思いますので、そういう関係で、消費者と生産者とが協力といいましょうか連携し合いながら、できるだけ私としては、自給率を高めていきたい、カロリーベースも含めていろいろな意味での自給率を高めていきたいというふうに考えておりまして、岡本委員の御指摘については、私も結果としては同じ考えであります。

岡本(充)委員 大臣、確かにカロリーベース以外の自給率の計算方法はありますが、これまで、一つの理由として、政府はカロリーベースの自給率で比較をしてきた、それをこの段になって、ちょっとなかなか上がるのが難しいから金額ベースに移したんじゃないかといううがった見方をされるという話もあります。それはもちろん違うと大臣は言われるかもしれないが、そういううがった見方をする向きもあるわけだし、それから、これから先、どういう状況で日本が国産の食料に頼らざるを得ない状況が来るやもわからぬ中で、外国産の農作物に頼っていることに対する国民の不安感があるのは事実です。

 野菜に塩をかけて食べたら確かにカロリーはゼロかもしれないが、人間は絶対にカロリーが必要なわけです。野菜に塩をかけて食べていたら生きていけるわけではありません。もちろん、それも必要なんですけれども。しかし、そういった観点に立って考えるのであれば、私は逃げることなくカロリーベースでの食料自給率向上を求めていくべきだと思うし、そういう意味でいえば、今回の農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案も、食料自給率を上げるための一つの重要なツールなんだろうというふうに思っているわけです。

 では、ここで伺いたいのは、この法案が通った暁には、今後の食料自給率の上昇にどういう寄与をしていくのか。はっきり言いますと、金額的に今幾らの予算がこれにつくのかがはっきりしない中で、農家に直接的な補償を含めて、生産の振興を図って、もって自給率の向上を目指すんだ、民主党案はそういう金銭的なインセンティブを与えていますが、政府案はまだ金銭的なインセンティブが一体幾らになるかがはっきりしていない。

 そういう意味では、農家としてもその部分には大きな関心があると思いますし、今後、この法案が通った後の農業のあるべき姿、どういうふうなビジョンを持つのか、それがひいては食料自給率にどういうふうな上昇の寄与をするのか、その辺のところの明確なお答えをいただきたいと思うわけなんですけれども、お答えいただけますでしょうか。

中川国務大臣 これは、もう一言で言えると思います。面積要件、あるいはまた面積要件にかかわらない集落営農、あるいは、規模は小さくても経営の質の高いところに支援をするわけでありますから、もうかる農業を支援する、トータルでいえばそういうことになります。

 もうかる農業というのは売れる農業であります。売れるということは消費者が買うということでありますから、消費者に買ってもらえるような経営あるいは農業をするところに対しての支援でありますから、この政策が推し進めるところは、より農業経営がよくなる、つまり売れる農業を支援するということであります。

岡本(充)委員 今大臣、売れる農業を支援すると言った。では、売れない農業の方は一体どうなっていくのか。つまり、これがまさに四ページ目なんですが、今後の「農業構造の展望」、平成二十七年はこういう展望になると御説明いただきました。

 例えば、総農家数はおよそ八十万戸ぐらい減るんでしょうか。こういう方は、例えばどういうふうな産業に行くのか。もしくは、農村を離れる、こういうことを想定されているのか。また、この「効率的かつ安定的な農業経営」と平成二十七年に書いてある枠の外にいる「その他の販売農家」、百三十万戸から百四十万戸もの人がいるわけです。この人たちの生活はどういうふうになるのか。もっと言えば、土地持ち非農家の数は今よりぐっとふえるという話になっていますが、この理論で土地の集積は進むのか。

 こういった部分についてはどのようにお考えになられているのか、お答えをいただきたいと思います。

中川国務大臣 さっき余りにも簡単に申し上げましたので、逆にそういう御質問が来るのだろうというふうに思っておりました。

 集落営農、あるいはまた規模は小さくても経営の質の高い、あるいは中山間地に対する配慮等も含めまして、そういうものをクリアできれば、だれでもその支援の対象になるわけでありますから、特定のところを今から排除しているということでは決してございません。

 ただ、この中には、この表、四番の資料は、全農家の中で農業を主業とするということでありまして、私は、都市近郊農業も非常に大事だと思っております。都市周辺の農業の粗生産は全体の四分の一ぐらいあるわけでありますから、そういう意味では、多様な農業はありますけれども、しかし、支援を仮に受けなくても、もう生活が十分にできるという農家といいましょうか、農地を持っているといいましょうか、そういう経営体といいましょうか、いっぱい実はこの外枠にあるわけですから、農業がやっていけなければいけない、また農業でやっていきたい、また農業でさらに収益を上げたいというところを対象にするわけでありまして、全部を対象にするということは、私からは申し上げませんけれども、冒頭の言葉の議論に行き着いていくのではないかというふうに考えているわけであります。

岡本(充)委員 そういったお話になるんだと思いましたけれども、この図の、ただ、大臣、御指摘をさせていただきたいのは、それでも、販売農家として残るこの百三十万から百四十万の農家は農地を持つわけです。土地の集積が本当にできているのかといったら、この農家はいわゆる効率的かつ安定的な農業経営をされていないわけですから、恐らくここは小規模農家というイメージなんだろうというふうに思いますけれども、そのほか、残念ながら今回のこの法案の要件に当たらない、だけれども、意欲的に農業をしている農家というのは幾つもあるわけです。

 例えば、私の地元は愛知県の西部でありますけれども、この地域は、確かに大臣おっしゃるとおり都市近郊農業です。残念ながら、四ヘクタールの土地を持っている農家は本当に数少ない。こういう土地にあって、これまでの政策ですらなかなか土地の集積が進まなかった。

 実は、ちょっと、後で話そうと思ったんですが、農林水産省の方に、一体どういう収入イメージになるのか、その収入イメージを持ってきてくれと言った。現時点での調査で、二十ヘクタール以上のいわゆる集落営農を行っている農家の所得と、そして〇・五から一ヘクタール、いわゆる五反から一町歩ぐらいの個別経営をしている農家の一戸当たりの農業所得の差を見ると、集落営農が四十三万円、そして個別経営が八万円、こういうようなデータを持ってこられました。

 現時点でもこれだけの格差がもしあったとしても、にもかかわらず、なかなか土地の集約が進まない現状がある。残念ながら、私の地元もそういう意味では土地の集約は進んでいない。では、意欲的な人たちじゃないのかといったら、みんな意欲的にやっている。こういう人たちは、今回この適用になりません。恐らくは、平成二十七年でいう、その他の販売農家というところに入ってしまうかもしれない。この人たちは、一体どうなってしまうのか。

 そして、もっと言えば、もう一点、お聞かせいただきたかったのは、総農家数が二百十万戸にまで減るとすれば、これだけの方が農村を離れるというふうな理解で、都市で暮らせということで理解していいのかということについて改めて確認をいただきたいと思っています。

中川国務大臣 細かいことは経営局長から答弁させますけれども、私の答弁の流れですので。

 まず、農地を集積して規模拡大をしなさいということを強制的にはこれはできませんね、言うまでもなく。あくまでも売り手と買い手とが自由な意思で、あるいはまた、自由でなく、自分が高齢になって後継ぎがいなくなったとか、いろいろな事情で農業を離れなければいけないという事情もありますけれども、いずれにしても売り手と買い手とのマッチングが必要なわけでございます。

 その制度は、特会を移して、今度一つの特会の中で引き続きそういう促進をしてまいりますけれども、今回は、買い手側のインセンティブをより強めるという効果は極めて大きくなる、そういうふうに私は期待をしているわけでございます。

 お許しいただければ、経営局長の方から答弁をさせていただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 「農業構造の展望」で、総農家数が減少するということについては、これは主として、やはり高齢化によるリタイアが新規参入者の数を大幅に上回っていくということで、ある程度総農家数が減少していくのは趨勢値としてやむを得ないというか、頑張りますけれども、やはりこの程度は減っていくであろう、今六十五歳の人が十年たてば七十五歳でありますので、そういったことで総農家数は減少するというふうに見ております。

 それから、「その他の販売農家」と「自給的農家」のところからこの構造展望を見ていただきますと、「集落営農経営」の方にちょっと曲がった矢印がついております。こういった、その他の販売農家とか自給的農家になってしまう、あるいはなっている、そういう人たちの中から集落営農の組織化、法人化をして、二十七年時点で集落営農経営を、現時点では一万と言われているものを、二万から四万つくっていき、集落営農全体として効率的かつ安定的な農業経営のグループに入るということを努力してやろうということでございます。

 また、集落営農経営に参加をしない方々につきましても、今大臣からお話しいたしましたように、例えば、非常に面積が小さくても収入が上がる野菜作であるとか、都市近郊で面積は小さいけれども手間暇かけてやっていらっしゃるような方もあるわけでして、土地利用型農業という面で規模拡大をしたり集落営農に集まってくるというだけでなく、そういった小回りのきく営農形態というのも当然あるわけでございます。

 そういったことを考えまして、効率的かつ安定的な農業経営に行くグループと、その他の販売農家としては残るけれども、米や麦に頼らない、野菜とか果樹とか畜産とか、そういうもので生きていくということもあるんじゃないかと思っております。

岡本(充)委員 今、そういう経営局長の答弁をいただきましたけれども、土地利用型農業はやはり主業農家が少ない。野菜はそれより随分多く主業農家がいるわけですね。もっと言えば、酪農なんかは主業農家がはっきり言ったら主ですよ。そういう意味でいったら、土地利用型農業に今回焦点を当てたのは、まさにその土地利用型農業をやってみえる皆さん方の経営効率、それから安定的な営農ということを目的としてこの法案が出されているわけですね。

 ですから、私が問いかけたかったのは、残念ながら、土地利用型農業をやっているけれども、私の地元のようにこの規模要件に満たない、そういう農家の方々が、これまでもさまざまな施策をもって農地の集約化を進めてきた農林水産省にあってそれができなかった、しかし、今回の法律ではそれがさらに進むんだという何らかの総括ないし反省を踏まえた改良点というものが見えてきてしかるべきじゃないかというふうに考えています。

 経営局長で結構ですけれども、何らかのインセンティブを設けている、もしくはこれまでになかった一工夫があるんだ、これまでの反省を踏まえて、今回は「農業構造の展望」がこの展望どおりに進んでいくんだという何らかの工夫があればお聞かせをいただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 先ほど委員の方から、私どもから提供いたしました小規模農家等、この人たちが集落営農に参加した場合の所得がどうなるかというシミュレーションといいますか試算についてもお話をいただきましたけれども、従来、やはり集落営農というのは、北陸地方や中国地方のように、非常に個々の農家の経営規模が零細でありながら、かつ地域に安定的兼業機会などもあって、それぞれが土曜、日曜だけで耕しておられたようなところが、さらに高齢化が進んで個人ではできないということで、集落で話し合われて、集落全体でやっていこうと。そういう中で、機械も個人個人で持つのはやめて集落に大型機械を一台か二台持つ。そういうふうにやってみると、機械費や何かで目に見えなかったコストが削減されまして、集落営農に参加される農家の、個々の、つまり戻ってくるお金が自分一人でやったときに比べて目に見えて多くなる。これはもう実態であるわけでございます。

 こういったことも、私どもは、今回、私どもの雪だるまパンフなどにもしっかり掲載をして、集落営農のメリットというものについても全国にお示しをし、働きかけているところでございます。

 集落営農というものは現にあったわけでありますが、政策として、こういう法律の中に担い手として位置づけるということは今回初めてでございますので、私どもも、今農業団体も一生懸命に、この小規模な農家の人たちもぜひ集落営農に参加されて、ただ参加されるだけでなくて、個別経営のときに比べて経済的なメリットも享受できるということをいろいろな角度から申し述べ、応援をしていきたいと思っているわけでございます。

岡本(充)委員 局長、もうそれはこれまでもやってきた話ですね。今回この法案を出す前から、規模拡大がどれだけメリットがあるのか、そして、もっと言えば、どうすればより収益が上がるのかということは農林水産省がこれまでお話をされてこられたじゃないですか。しかし、今回あえてこの法律を出すことでより土地の集約が進むのか、つまり、これまでの総括をして、反省を踏まえた上でこの法案が出ているのかということについて問いかけたわけです。

 今ちょっと話題が出ましたので、農林水産省からいただいた、これはホームページでも公開しているようですけれども、大臣官房統計部が出している、水田作経営のうちの集落営農で、水田作経営で一体どのくらいの農業粗収益があるか。これまた次回、私、時間をもらってじっくりやらせてもらおうと思っていますが、この数字を見ても、十ヘクタール未満の農業粗収入は三百六十二万三千円だ。ところが、十ヘクタール以上になると急に一千四百七十二万六千円になる。さらに、二十ヘクタール以上になると三千四百五十三万六千円になる。これは、何でこんなに十ヘクタール未満と十ヘクタールとで、倍ではないですよ、もう四倍ぐらいの農業粗収入が出るんですね。先ほど言われた、粗収入ですから経費は入っていません。

 この計算の方式についても、私は、八万円と先ほどお話しした四十三万円のもとになっているデータですけれども、大変に数字として疑問が残るなというふうに思っています。八万円と四十三万円というインセンティブで、さあ、皆さん集落営農しましょうと。では、そのデータの数字のもとになっているのは何ですかと。細かい数字を私もらったんですよ、大臣。ずっと調べていった。ここの比率が極めて大きい。

 これは、もちろん集落営農した方が経費が削減できることを否定はしませんが、そもそもの数字を繰っていくと、そういう疑問点も感じているわけでありまして、この点について、もしきょう答えられるのならきょうで結構ですし、答えられないのであれば、後日また質問で聞きたいんですが、お答えいただけますか。

 後日ということですね。局長、では、後日答弁の機会をつくりますので、そのときにお答えをいただきたいと思います。

 そういうことで、私は、農家の方がどういうふうにすればより効率的な農業ができるのか、農家の方にとってどういう政策が本当にいいのかというのは大変難しい課題だと思っています。私は法案提出者の一人ですから自分の法案がいいと思っていますけれども、これは別に政府を責めるだけではなくて、皆さんで知恵を絞らなきゃいけない課題ですし、やはり現場の皆さんの声もよく聞かなきゃいけない。

 かつて私はこの委員会で、局長、皆さん方に聞いたことがあります、皆さん、どのくらい農業をされていたんですかと。そうしたら、それぞれの皆さんがお答えになられました。私は実家はミカン農家ですとお答えになられた局長もみえましたけれども。そんなこんなで、私、聞いたことがありますが、ぜひ皆さん方にもやはり現場の農家の方のお声を、霞が関では聞こえない声を聞いていただきたいというふうに思っています。

 ここから先、ちょっと時間が少なくなってまいりまして恐縮ですけれども、食育の話に少し移りたいと思います。

 次回を含めて、もう一回質問の機会をいただける可能性がありますので、そのときにもう少し詳しくやりたいと思いますが、きょうは食料自給率の観点から食育を考えていくというスタンスに立って、後日私は別の機会に、生活習慣病予防の観点に立った食育のあり方ということについても同じく質問を厚生労働委員会でやろうと思っていますが、きょうは、食料自給率という観点で。

 そもそも、では、何で食料自給率が政府の思惑どおりにいかなかったのか。食料・農業・農村基本計画の「農業生産面の検証」という中で、前基本計画が描いたシナリオが実現していない要因としては、ニーズが農業者に的確に伝わっておらず、生産性の向上や品質の改善を図るための取り組みが不十分であった。それから、食品産業のニーズに対応し得る生産供給体制が構築されていなかった。三つ目もあるんですね。三つ目は、効率的な農地利用が実現しておらず、逆に耕作放棄地が増加していること、こういったことが書いてあります。

 この内容の最初の二つですけれども、ニーズが政府の思ったようなニーズでなかった、私たちが立てた計画どおりに消費者のニーズ、需要者のニーズが来なかったということで、今回この食育という話が出てきたんでしょうか。

 消費者のニーズをこちらに向けよう、そういう思いで出てきたのか。これまたうがって見たくなるんですが、結局、ニーズに沿う農業ができなければ消費者のニーズをこちらに向ける。先ほど大臣、そんなことはしないよ、あれを食べなさい、これを食べろだとか、そういうことを言うのは無理だというふうに言われましたね。そういう意味でいえば、私は、この食育というのが本当にうまくいくのか非常に疑問を持っている。

 特に、食育の中で、教育の分野はまだわかる。だけれども、きょうお配りをしたこの食事バランスガイドなるもので、皆さん、これを食べましょう、あれを食べましょう、こういうふうなことがうまくいくのか、非常に疑問に思っています。

 まず、これをつくられた経緯を伺いたいんですが、これはどういう方を対象に、何を目的としてつくられたのか、これについてお答えいただけますでしょうか。

中川政府参考人 食事バランスガイドをつくったときの目的でございますけれども、実はこれは、平成十二年の三月に食生活指針というものを三省でつくってございます。これは、食生活を送る上で心がけたい十項目というもの、ポイントだけを書いたものでございますが、今から振り返ってみますと、残念ながら実践に結びつかなかった。大事な点はいろいろ書いてあるわけですけれども、日々の食生活の実行、実践に必ずしも結びつかなかったという点もございます。そこで、もう少し一人一人が望ましい食事のとり方やおよその量をわかりやすく理解してもらう、そういうためのツール、道具として今回の食事バランスガイドというものがつくられたわけでございます。

 もちろん、我々日本人の食生活、いろいろな面で問題を抱えているというのは、もう先生御存じのとおりでございます。そういったさまざまな食をめぐる問題を解決する、それに対応していくという意味で食事バランスガイドというのがあるわけでありますけれども、もう少し具体的に言えば、一つは、三十代から六十代の男性というのは肥満率が非常に高うございますし、また、独身者、単身者の世帯というのは、なかなかバランスのとれた食事が行われがたいという面もございます。また、子育て世代には子育て世代の問題がございます。

 この食事バランスガイドも、広く国民、消費者一般という面もありますけれども、もう少し個別具体的な、今申し上げたようなターゲットを定めて、そして、それぞれのターゲットの人たちが心がけるべき事柄という意味で、わかりやすくイラストのような形で、日々の食生活に反映をしていただくという目的でつくったものでございます。

岡島(敦)政府参考人 ただいまのお答えと基本的に同じでございます。食生活指針をより実効性のあるものとするために、一人一人が望ましい食事のとり方やおおよその量を理解するためのツールとしまして、昨年の六月に農林水産省と共同で作成したものでございます。

 厚生労働省としましては、生活習慣病予防という観点から、何をどれだけ食べればよいかということを示すものとして、非常に重要なツールの一つとして位置づけているところでございます。

 国民全般を対象としているところでございますけれども、特に肥満が気になる方、それから単身者、子育てを担う世代につきまして特に焦点を当てまして、食事バランスガイドの啓発普及を図っているところでございます。

岡本(充)委員 きょうは時間がないので、また後日、深く入ろうと思っていますが、ざっと、大臣、ちょっとこの表を見てください。大臣もきっと恐らく食堂で、農林水産省の食堂に張ってあると言われましたから、見られたことがあると思います。私、これは非常にわかりづらいんじゃないかと思っているんですね。なぜかというと、自分がきょう食べたものが一体どこに入るのか。大臣、これだけ見て、例えばこれは、失礼ながら、栄養学の専門じゃない人もターゲットにしているわけですね。いや、私は栄養学の専門じゃありませんからと言われずに、大臣、御自身が、例えばきのうのお昼に何を食べたのか、きのうの夜何を食べたのか、これに当てはめると自分は何サービングになるか、わかりますでしょうか。

 いろいろな食材がある。例えば、カツどんでもいい。カツどんは、豚カツものっていれば、卵もかかっている、それから御飯もある。中華どんは、魚もいるかもしれないし、野菜もいるかもしれないし、御飯もある。上にかかっているあんの部分のカロリーは、一体どうすればいいんですか。わかりづらいと思うんですね。

 結局、最終的にはカロリーベースでこれは考えていないんです。きょうはちょっと時間の関係上、深く入れなくて残念ですけれども、カロリーベースで考えていないということは、この表のとおりにとっていったら、目標としているカロリーよりももっと多くのカロリーをとるかもしれない。先ほど言われた、三十代から六十代の肥満を気にする人たちがターゲットだ。いやいや、そんな人たちはカロリーをやはり気にしていますよ。

 先ほど、大臣、カロリーからこれにスイッチした、切りかわったと言われるけれども、やはりカロリーを気にするんじゃないかという思いがあるし、単身者で食事にある程度関心のある方は、これを考えながらやるかもしれない。もっと言えば、栄養学に関心のない、普通の生活をしている一般のサラリーマンの人たちが、この表を一体どれだけ認知して、これに当てはめた生活ができるのかどうか。これも難しいんじゃないかと私は率直に思うんです。

 大臣、感想をお聞かせいただけませんか。

中川国務大臣 岡本委員から、きのう一日何を食べたかという質問が出るかもしれないというので、正直言って、朝と昼はすぐ思い出せたんですけれども、夜は料理屋さんで仕事の話をしながら食事をしていましたので、半分ぐらいしか思い出せないんですね。例えば突き出しで、ちっちゃな鉢の中にいろいろなものが五、六種類入っている、あれ何だったっけとか、刺身はどういう刺身、刺身はいいんでしょうけれども、非常に一生懸命考えました。朝と昼はすぐ思い出したんですけれども、特に夜の食事になりますと、多少時間もとりますし。そういうことで、別にカロリーからこれに転換したわけじゃなくて、カロリーも大事ですし、これはこれで大事です。

 ただ、岡本委員から質問が出るかもしれないというので一生懸命考えたということに、私、自分自身意味があったなと。改めてこれをじっくり見て、ほとんど一日じゅう座って仕事をしている人の適量を示していますとか、それから、真ん中に、今、水分をきちっととりなさいというのが基本にあるとか。御飯。それから、お昼は専ら、きょうも含めておそばなんですけれども、ただ、そばも、ざるそば一枚も店によって量が全然違いますから、国会の中のそば屋さんでも、ざるそば一枚の量が全然違いますよね。三、四店そば屋さんがありますけれども、どこも私、よく食べますけれども。

 そういう意味で、ぜひこれをきちっと、わかりやすくするように、ホームページ等で、意義を認めていただけるとするならば、これをさらにわかっていただけるように、カロリー、あるいはまた適切な食事、あるいは塩分控え目、お酒控え目、いろいろな要素が多分、御専門ですから、次の機会におっしゃりたいことがいっぱいあるんでしょうから、ぜひまた御指導いただきたいと思います。

岡本(充)委員 そういう意味では、大臣、これまでもいろいろやってきたんですよ。今、カロリーの話をした。厚生労働省だったと思いますけれども、三十品目、食品とりましょう、こういう話もあった。今度はあれだこれだと言ったら、さっき大臣が、午前中言われたとおり、いろいろなポスターがあってわけがわからないというのと同じで、一体何が重要なんだという話がぼけてくる。

 したがって、私は、今回の、残念ながら、デザインはきれいだけれども、わかりづらいんじゃないかということを指摘させていただいて、もしやられるのであれば、よりわかりやすいものにしていかなきゃいけない。これから決められると言っていましたけれども、塩分と脂肪のバランスについても書かなきゃいけないし、そもそも日本型の食生活に戻したいというのに、何で水とお茶が一緒なんですか。水を飲めばお茶と一緒なんですか。日本型食生活は水というよりはお茶だ。お茶と水は、これは同じところにあるんです。例えばこういうような議論もあるかもしれない。

 そういう意味で、次回を請う御期待いただくということにさせていただいて、最後にちょっと、せっかく来ていただいたので、がらっと話は変わります。

 今回のこの法案のもう一つの重要な肝でありますWTOとの関係ですね。今回、この法案の中では、過去の生産実績に基づく支払いに加えて、毎年の生産量、品質に基づく支払いということで、あえて、もしかしたらWTOで削減対象と指摘をされるかもしれない黄色の政策も、つまり、現在の生産量に連動する支払いを加味しているわけなんですけれども、今回こういった政策を入れているというのは、アメリカやEUはもう既に国内の必要量十分の国内生産量がある、片や日本はこれから生産量を拡大しなきゃいけない、さっき、生産量を拡大することについては異論があるやに聞いておりますけれども、小麦でも私は生産量を拡大しなきゃいけないと思っているし、大豆だって拡大しなきゃいけないと思っている、横ばいでいいと思われている望ましい姿では私はいけないと思っているので、そういう意味で、これから拡大をしていこうという意味も込めて、恐らくはこういう政策をつくってきたんだろうと思います。

 今後の、WTOにおいてこれらの政策が黄色と認定される場合を想定する中で、いわゆる日本としての対応、なかなか表向き答えにくいと思いますが、我が国のいわゆるAMS水準が、これまでの農政改革により約束水準の一八%まで下がっている、こういう状況もある中で、あえて黄色の政策と言われても仕方のない政策を入れたのか、もしくは、いやいや、これは黄色じゃないと言って突っぱねるという手もありましょうし、いろいろ手のうちをお示ししてくださいというわけではないけれども、今後の交渉に当たって、これをどのように各国に理解をしていただくのか。まだしばらくWTOに通告するまでには時間があるとはいいながら、いずれはその時期はやってくるわけですから、どのような方針で臨まれるのか。外務省、農林水産省、それぞれお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

中川国務大臣 岡本委員御指摘のように、これは、別に次の交渉を目指してどうだこうだということではございませんで、現行ルールにのっとってやっているわけであります。

 岡本委員御指摘のように、もう一つの柱という言い方をおっしゃいましたけれども、まさに前段の、先ほどの、議論を進めていくということが第一のポイントであり、その上で、新しい政策をとるときには、それがWTO農業協定上のどの部分に入るかということも、当然農林水産省あるいは政府としては考えていかなければなりません。

 御指摘がありましたように、通報する、そしてまたそれに対して仮にどこかの国が異議を申し立てる、これには多少の時間があります。そういう意味で、緊急にどうだということではありませんけれども、第一の柱を進めていく上で、我々はWTO加盟国としてWTO上どの部分に入っていくか、御指摘のように、AMSは先進国中最小限の実行水準に日本はあるわけでありますけれども、だからといって、では、堂々と黄色の政策をふやすということは、逆にそれは交渉にとっては、大事な時期ですから、決してプラスにならない。

 むしろ、私としては、交渉上は、新しい農業法、EUのCAP、あるいはアメリカの来年からやろうとしている農業政策についていろいろな議論をしていますけれども、日本も新しい農業政策上、黄色の政策についてはさらに減らしているんだぞということをふやすということによって突っ込まれないようにしていくということも、当然これはWTO加盟国としては、農政を進める上で重要なポイントだというふうに私は考えております。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省、農水省、政府一体としてWTOに当たっておりまして、中川大臣のお答えにつけ加えることもございませんけれども、一言申し上げさせていただけますれば、御指摘の各支払い、経営安定対策等の支払いですけれども、これが、現在WTOの交渉が行われておりまして、新たに導入されます国内支持のルールに基づきまして、緑、青、黄のいずれに該当することになろうかという点につきまして、今後の交渉の結果を踏まえて検討する必要があろうかと考えております。いずれにいたしましても、外務省といたしましては、農水省と協力して、我が国の政策とWTO協定との整合性を確保してまいる考えでございます。

 中川大臣からも御指摘がございましたけれども、我が国はこれまでの農政改革によりまして、総合AMSにつきましては他の先進国よりも大幅に削減してきております。これを踏まえまして、今回の交渉におきましても、貿易歪曲的国内支持の大幅削減を主張するなど、積極的な提案を行ってきております。

 WTO農業交渉につきましては、昨年十二月の香港閣僚会議の閣僚宣言において合意されました、本年四月末までのモダリティーの確立に向けて、現在さまざまな形で議論が集中的に行われております。WTO体制のもと、貿易自由化を進め、多角的貿易体制を強化していくことは、我が国及び世界経済の発展にとって重要でございます。ドーハ・ラウンド交渉の本年中の妥結のため、農業交渉を初め、各交渉分野において引き続き積極的に取り組む考えでおります。

 外務省といたしましては、関係省庁と協力をして、政府一体となって、我が国の主張がドーハ・ラウンドの成果に最大限反映されるよう努めてまいる所存でございます。

岡本(充)委員 終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 答弁者の皆さん、大変に御苦労さまでございます。あと一時間ですから、よろしくお願い申し上げます。

 私は、前回にも、また今の委員会でも地産地消ということが一つの話題になっておりますけれども、この日曜日にファーマーズマーケットに行ってまいりました。その説明を聞きまして非常に感動したものですから、若干そのことをお話し申し上げたいと思うんです。

 紀ノ川上流、和歌山市の隣の少し上流のところに、五カ町村が合併をして紀の川市という市ができております。そこの一角、つまり大阪との県境の近くなんですが、そこに、郊外のスーパーマーケットの規模というふうに見ていただければ大体想像がつくんだろうと思うんですが、ファーマーズマーケットがございます。そのファーマーズマーケットに登録されている生産者は、千五百人いらっしゃいます。

 私が日曜日に行きましたところ、その千五百人の中の七百人が、当日朝いろいろな種類の農産物を持ってまいりました。朝六時から八時ぐらいまでの間に持ってまいりまして、そして、自分でこういうものをつくるんですね。機械でできるんですが、これは、例えば、名前が入っていまして、品名、サツマイモ、百円、バーコードが入っております。自分で値段をつけて、そして、二十個といいますと、ざらざらざらと二十のシールが出てまいります。それを自分の製品に張って、所定の位置に陳列をして帰る、こういうシステムになっております。

 値段は自分でつけるものですから、一日の間で売れるかどうかというのが勝負です。その生鮮の野菜類は、一日で全部引き取ってもらうということが約束ですから、個数を自分で考える、値段も自分で考える。さらに、興味があるのは、自動的に携帯電話で、百姓ですから田んぼに帰って、電話をファーマーズマーケットにするんですね。そして、そのマーケットにしますと、バーコードですから、あなたは四十個持ってきましたけれども、今何個売れていますという情報が自動的に機械に入ってくる。三十個今売れていますということなので、あと十個。残りの時間、五時までの時間を計算して、また二十個だけ持って走る。そして、またバーコードをつけて売る。

 こういうことで、非常に新鮮な野菜をその日のうちに売り切るということを原則にして運営がなされているんです。これは、JAさんが五カ町村の農家千五百人を集めて運営をしているわけですけれども、日曜日に行きますと、大変な人でして、カートを持って移動するのが大変という状況でした。お聞きすると、一日三千五百人か四千人ぐらい日曜日だといらっしゃると。駐車場は満杯で、入れなくて周辺の道をうろうろしているという状況でございました。

 何が人気かといいますと、やはり新鮮な野菜、これを購入できるということが大きな特徴だと思います。私もネギのところへ行きますと、一束一束名前が違うんです。そして、値段ももちろん違います。背丈も若干違います。品種も若干違う。そういうものがいっぱい売られているという状況ですが、大変な活況でして、一年間の総売り上げが二十四億という規模でございます。

 ただ売ればいいわということではなくて、実は営農指導もきっちりしておりまして、例えば、これはウスイエンドウの例をもらってきたんですが、いつ種をまいて、いつどういう作業をするか、消毒は、どれを何回やるか、いつごろやるということまできっちり決めておりまして、この作業の記録がきちっとつけられない人は持ってくる資格なし、こういうことを守らせた上で出させているというのが特徴でして、大阪はおろか京都からも自動車で何人か一緒になって買いに来るというようなことをされておられました。

 もちろん、これは小さな規模の農家だけではなくて、大きな規模でやっていらっしゃる方も、一部ここに持ち込む。これはどうしてかというと、その現実のマーケットの中で、この製品がどういう購買の状況になるのか、売れるのか売れないのかということが、次の経営戦略、自分の経営戦略に応用できるから一部こちらに持ってくる、こういうことも結果としては起こっているようです。

 やはり、自分で値段をつけて、売れるか売れないかということを毎日やっているのが大変おもしろい。土日になったらどれだけ売れるか、ふだんの日はどれだけになるかということを毎日毎日考えながら農業をやっているということの喜びというのか、そういうものが如実に伝わってくるような、そんな仕組みをつくっておられました。

 そのことを目の当たりにして、やはりこれから農業は、前回も父親のノートを例に出して申し上げましたけれども、やはり、一歩も二歩も工夫をしていくことが必要だなということをつくづく感じました。

 概略のことで余り長々と申し上げている時間はないんですが、もし大臣、何か御感想でもございましたら、何も予告はしていないんですが、一言お言葉をちょうだいできればと思います。

中川国務大臣 前回は、御尊父の七十年ほど前の大変貴重な資料の一端を知りまして、すごいなというふうに思いました。当時の先端的な農業をまとめられたということであります。

 今回は、二十一世紀の先端的な農業、しかも、多分紀ノ川の農業と私のところの農業とは全く農業形態が違うわけでありまして、そういう中で、紀ノ川に合った形の、そして消費者ニーズに即時に対応できる体制を農業者みずから、あるいは農協がやっている。しかも、先端技術の最たるものである携帯電話、あるいはコンピューターシステムを使って、ある意味では知恵とそれから技術、そして、自然相手、生き物相手の農業とをうまくミックスして、いい成果を上げられているということで、大変今回も感動しながらお聞かせいただきました。ありがとうございました。

西委員 実は、組合長さんにもお目にかかったんですが、組合長さん自身が毎日最低一つの商品は自分でお出しになる。やはり、そういう現場体験を踏まえながら、皆さんのリーダーシップをとっていらっしゃる。やはりこれからの農業は、そういう各地各地におけるリーダーシップをとれる、そういう人が出てきてこそ新しい農業の出発があるんじゃないかなというふうな印象を持ちました。

 具体的な質問に行きたいと思います。

 引き続きまして、担い手について御質問申し上げたいんですが、就農支援策についてちょっと調べさせていただきました。そうすると、ニューファーマーズフェアというような形で、合同の就職説明会が行われておりまして、平成十六年には四千九百五十人が参加されている。さらには、道府県の農業大学校、それから就農の準備校、そんなところで何らかの研修を受けた人、この人数も四千五百人ぐらいいらっしゃる。その中で、約四割は具体的に就農されているという結果が出ております。あとの六割は何らかの都合で就農はしなかったということなんですが、この理由につきまして、農水省ではアンケートなどで実態を把握しているのかどうかをまずお伺いしたいと思います。

 担い手をふやすということであれば、この研修をまず受けた人の定着率をいかに高めるかということが重要でありますので、就農の妨げになる要因を全体としてどういうふうに見ているのかということを、見解をお伺いしたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 道府県の農業大学校や就農準備校におきまして、研修、教育を修了しながら就農していない人が六割程度いるというお話でございます。この中には、卒業後すぐには就農していませんが、一定期間他産業に従事した後に就農している者も存在すると考えられますが、実数は定かではございません。

 また、平成十四年の三月に新規参入者の就農実態に関して調査をいたしました。そのデータによりますと、実際就農に際し苦労した点について複数回答で聞いておりますが、営農技術の習得というのは三割にすぎないのに対しまして、資金の確保あるいは農地の確保が難しかったというのが五割、住宅の確保が難しかったというのが三割ということになっておりまして、技術の習得以外の課題により就農に至らない場合も多いことが推測されております。

西委員 今お答えがありましたように、そういう意味では大学校、それから準備校等では、研修は主に農業技術を教えているんだと思うのですが、現場にいざ行くとなりますと、それ以外の要素として、資金が足りない、それから農地が十分に確保できない、さらには住宅が確保できない、こんな要件で就農に障害を生じている、こんなお話でございました。

 その中の一つの問題として、住宅の確保というのがあるというふうに言われています。私も中山間地に住んでおりましたので、この田舎には空き家がいっぱいあります。残念ながら、初めて来た人にはだれが持ち主かもわからない。それから、もし持ち主が見つかっても当人はいなくて都会にもう行っている、若い人たちは都会に住んでいる。そして、地域でそういう売買のやりとりをしてくれる人もなかなかいないというようなことで、不動産屋さんもそんなところまではなかなか面倒を見てくれる機会がないというようなことで、住宅を確保するのは結構私は困難だと思います。農家は、土地も農地も、それから住宅も手放すことに対して結構抵抗があるものですから、いざ就農しようと思ってもかなり難しい面があるんじゃないかというふうに思います。

 一方、都道府県では、新規就農ガイドセンターなどにおいて居住に関する情報を提供しているというふうに言われておりますけれども、なかなか十分ではありません。

 私の和歌山では、農業ではないんですけれども林業で、緑の雇用で住宅問題も随分苦労しまして、逆に県が真剣に取り組まざるを得なくなって、かなりいろいろなシステムができております。県の中にも、実は新ふるさと推進課という課がありまして、これは林業につこうという人たちに住宅をあっせんしたりというようなことも含めてこの課が面倒を見ている、さらに、それぞれの土地に専門のいろいろな職種のアドバイザーがいらっしゃって、その人がいろいろお世話をしている、こういうような実態があります。

 そんなことを考えてみますと、やはり国の方でこういういろいろな方策を考えるんですが、やはりもっと近いところ、少なくとも県、できれば市町村が一番いいんだと思うんですが、そういうところの積極的な取り組みがぜひとも必要だというふうに実感をしておりますが、農水省の見解をお伺いしたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、新規就農者のさまざまな希望や能力に応じまして、就農希望地での円滑な就農に結びつけていくためには、地域段階における支援体制の充実が重要であると考えております。

 現在でも、都道府県によりましては、就農時の住宅対策として、地域の実態を踏まえまして、空き家等の賃借料に対する助成をするとか住宅のあっせん等を実施する例は、まだ数は多くございませんが、見られております。

 特に岡山県におきましては、昨年四月に担い手対策推進本部を立ち上げられまして、県が主体となって市町村、農協等と連携しながら、就農前の研修から始まりまして、住宅対策、それから就農後、経営が安定、定着するまでの取り組みを一体的に支援していくという、入り口から完成品になるまでちゃんと面倒を見るシステムというのを岡山県はつくられております。

 私どもとしても、こういった地域段階の取り組みに関する情報を収集し、インターネット上か何かで情報を的確に提供するとともに、今後とも、相談活動を通じまして、住宅に関する情報についても提供に努めてまいりたいと思っております。

西委員 ぜひとも先進的な自治体の取り組みをインターネットなど通じて就農希望者に、これはひいては各自治体の参考にもなると思いますので、取り組みをよろしくお願いしたいと思います。

 それから次に、新規就農・定着状況の調査、これは中国四国農政局が行っております。それから、農水省の、新規就農者の就業状況に関する調査があります。主な新規就農者の就業に対するアンケート調査は、この二つだと思うんです。

 この結果、若干先ほどもお話がありましたけれども、まず、新規就農には二つあって、家族が既に農業をやっている、そこに帰ってくる、こういうケースと、全く何も持たずに、農家の出身ではない、こういうケースがあるんです。

 まず、農家の子供が新規就農者として帰ってくる、こういうときには、当然のこととして、三年から五年ぐらいしますと、この本人が経営主になる、また、少なくともある部門の責任者として責任を持ってやるということになってまいります。そうしますと、当然これは、栽培の技術はもちろんのことですが、経営に対する能力、ノウハウも必要である、こういうことに支援をしていく必要があるのではないか。

 一方で、農家の出身じゃなくて、全くの素人で飛び込んでいく、いわば新規参入者ですね。この人が三年から五年を経過してどういうことになるかといいますと、先ほども若干話がありましたが、意外に収入が上がらない、もちろん面積は拡大したいけれどもなかなか拡大しにくい、それから、販売面でもなかなか思うようにいかない、また、労働力がもう少し欲しいんだけれどもなかなか広がらないというようなことがアンケートで指摘をされております。これらのことが原因となって、頑張って農業をやろうと思って行ったんだけれどもやめてしまう、こんな結果が出ているように思います。

 この定着率を向上させるには、それぞれの原因に対する対策を考えていく必要があるというふうに思うんですが、新しく農業に取り組む人々に対する定着率の向上、それから離農の防止、農業をやめさせないようにするためにどうしたらいいかということで、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

中川国務大臣 せっかく農業の専門の学校を卒業しても、今御質問に対して答弁があったように、やりたくても、技術の問題、それから資金、土地までは何となくわかるんですけれども、住宅というものが非常に大きな問題だということで、地域も大変だな、また御本人も苦労しているんだなと。そして、その後定着をしてもらわなければいけないということで、なかなかこれも難しいという西委員の御指摘、これも非常に大事なポイントだろうと思っております。

 要するに、一般企業でいうと、業を起こすときに幾つかの死の谷を乗り越えなければいけない、デスバレーというものをどうやって乗り越えていくかということが中小企業対策で議論になりますけれども、同じようなことが、志を持って農業に入っていったけれども、幾つかのその谷を乗り越えていかなければいけない。

 農業というのは、集落というか、組合というか、協力関係というもののウエートがより大きいというふうに私は理解をしておりますので、先輩の方々を含めた仲間の人たちの支援というものも大事でしょうし、また農協や普及活動等の支援も極めて大事でしょうし、少したって、現役の農業者として、また改めて研修あるいは学校等へ行くということの支援も大事だというふうに思っております。

 御本人の意欲、あるいはまた地域社会の協力を、我々としても自治体と一緒になって今後ますます支援をしていくことが大事だというふうに今決意をしたところでございます。

西委員 少し観点を変えまして、続いて、農地・水・環境保全向上対策についてお伺いをしたいと思います。

 まず一点目ですが、品目横断的経営安定対策と農地・水・環境保全向上対策は車の両輪である、こういうことが言われております。経営安定対策は、これは今まさしく審議しているとおり、法制化をしようとしているわけですが、車の両輪の一方の農地・水・環境保全向上対策は法制化されていない、いわば予算を中心に措置していくということになろうかと思うんです。といっても、これもやはり、今後の農政を考えますと、ずっと継続をしていくべき内容のものであろう、こういう事業であろうというふうに思っておりますが、まず初めに農水省の見解をお聞きしたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策は、ただいま先生からお話がありましたように、品目横断的経営安定対策と車の両輪ということで、特に食料の安定供給や多面的機能の発揮に必要な社会共通資本である農地、農業用水等の資源、さらにその上で営まれる営農活動を一体として、その質を高めながら将来にわたり保全するための対策というふうに考えております。

 こういった重要な施策でございますので、先生のお話にありましたように、農地・水・環境保全の取り組みは継続的に行われていく必要があるというふうに考えております。

 本対策の実施中に、地域地域で自主的な体制あるいは仕組みを考えて、それをつくり上げていっていただくということが非常に重要であると考えておりまして、本対策は、先生のお話にありましたように、立法措置を講じておりませんけれども、一定期間実施をいたしまして地域の自主的な体制の整備を促していくことといたしまして、その期間が終了した時点で、そういった自立的な体制あるいは仕組みができているかどうか、あるいは、さらに対策が必要であるかどうか、そういったことも含めてしっかりと評価をしていくというふうに考えております。

西委員 当然のこととして、一定期間を終えた後しっかりと評価をするということは大切だと思いますが、事の性格上、何年やったらこの目的が達するということではなくて、不断にやはりその対策をすることによって維持されていく性格のものであろうというふうに思いますので、よろしく御理解をお願いしたいというふうに思います。

 次に、営農活動に関する支援に関して、これは、現状維持にとどまらずに質的な向上を図る効果の高い活動を実施する、これが前提だというふうに思いますが、環境をよい環境に改善していくという前提に立つわけですが、必ずしも今の状況が悪いから改善するというところだけではなくて、今の状況を維持していくということも必要であろう、場所によっては環境はもう既に悪いところもあるんですが、そうではない、今の状況を維持していくことが大事だというようなところもあるように私は思います。

 そこで、よりすぐれた環境保全向上活動について、「地域の取組の更なるステップアップへの支援」こういうパンフレットというか紙面があるんですが、具体的にどのような支援を行うことが大事なのかということをまずお伺いしたいということと、それから、十八年度のモデル事業を活用して詳細を決めていこうというふうに予定されているようですが、実は、十九年度実施のためには、概算要求とかいろいろ作業もあると思います。このことについての検討のスケジュール、これはどうなっているのかということをお聞きしたいと思います。

山田政府参考人 ただいまお尋ねのステップアップへの支援でございます。

 これは、ただいま先生からお話がありましたとおり、農地、農業用水等の資源の向上に資する共同活動や、あるいはその環境保全に向けた先進的な営農活動、両方につきまして、さらにその活動を促進、補強し、ステップアップさせていくという活動を地域で行っていただくものを支援していこうということですが、具体的には二つの内容を想定しております。

 一つ目は、取り組みの質の向上等のステップアップを誘導するという観点から、活動組織に対していわば促進費を交付するということでございます。これが一つの内容でございます。

 もう一つの内容、二つ目でございますが、特に先進的な取り組みを行う地域を評価していくということによって展示的な効果を引き出したいというようなことを考えておりまして、この展示的効果を引き出す仕組みを構築していきたいということでございます。

 ただいま先生からお話がありましたように、十八年度にモデル事業を実施しておりまして、十九年度のこの対策を実施していくためには、夏の概算要求までに農林水産省として一定の方向づけ、整理をする必要があります。十八年度のモデル地区はもう既に相当の地域で立ち上がり、あるいは立ち上げの準備をしておりますので、早急にこのモデル地区の実施状況を把握いたしまして、夏の概算要求までに整理をしていきたいと考えております。

西委員 まず、組織に促進費を出す、先進地域を評価していくということなんですが、もう少し具体的に、やはりそれぞれの地域も準備のこともあると思いますので、概算要求に間に合うと同時に、広報といいますか、この評価のあり方、モデル事業の内容についても、早く具体的にそれぞれ各地域にお知らせをしていっていただきたいというふうに思います。

 それから、この支援の対象ですが、農用地区域ということに限定をされております。農用地区域以外の都市農業、これも頑張っていますし、そういう意味では、これは、環境保全等、また、さらなる取り組みについてもステップアップするためには大事な地域には違いないというふうに私自身は思っているんですが、今回、農用地区域以外のところはこの対象とならないということですが、その理由を明確に説明していただきたいというふうに思います。私自身は、そこは入れてもいいんじゃないかというふうに思いますが、はっきりした考え方を述べていただきたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 先生から先ほど来お話がありましたように、この農地・水・環境保全向上対策、非常に重要な施策でございまして、ぜひ永続的な形で取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 そういう意味で、本対策の対象地域は、こういった農地や農業用水等の資源が将来にわたり良好な状態で保全されて農業上の利用に供される地域であることがやはり必要ではないかというふうに考えております。

 そこで、先生御案内のとおり、農振農用地区域につきましては、今後相当長期にわたって農業の振興を図ることが相当であると認められるいわゆる農業振興地域のうちで、農用地等として利用するべき土地ということでございまして、今申し上げました農地等の資源が将来にわたって保全され農業上の利用がなされるという地域でありますので、本施策の対象としたところでございます。

西委員 時間が来ましたので終わりますが、相当長期にわたってという、農用地区域は当然なんですが、市街化調整区域に入るところも、今の施策がどこまで続くのかという長期と、この長期の度合いによるんですが、私は、その与えられた範囲の中でこの保全も必要なことだ、この制度にのせるかどうかは別にして、やはり環境という側面の一環としてぜひともお考えをいただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 まず初めに、民主党案について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 食料の自給率目標を将来的には六〇%、十年後には五〇%という設定をしておりますけれども、この間、私も、政府に対して、食料自給率の向上対策ということで議論してまいりました。ここ十年間ほぼ四〇%台という形でずっと推移しているわけでございますけれども、この一〇%自給率を上げていくというのは私は並大抵のことではないというふうに思っております。

 それで、ぜひ、五〇%、六〇%とした理由と、この目標達成に向けての具体的対応というのを法案提出に当たってどう考えておられるのか、この点をお聞きしておきたいというふうに思います。

山田議員 菅野委員とは三年前、新食糧法のときに、当時、私、自由党でしたが、菅野委員が社民党、そして筒井さんが民主党で、共産党も含めて四野党、大変この食料自給率については議論いたしました。

 あのときに、最終的に、当面目標五〇%と話し合って決めたと思いますが、あのころからずっと議論を重ねてまいりました。この五〇%がどうしたら具体的なものになり得るか、現実に、十年後にあと一〇%達成できるか、その辺随分議論させていただきました。

 その結果、自給率で一番カロリーが高いもの、カロリーベースでありますから、食用油、これはほとんどが輸入ですので、かつてあった菜種油、これはかつて六十四万トン日本で生産されておったんですが、少なくともその半分、これを里山、中山間地域でつくることができればと。実際、農家に当たってみましたところ、米並みの収入を直接支払いしてもらえば、菜種は裏作で青森県までできますので、だれでもそれをやれるんじゃないかと。そういうところから、菜種を三十二万トン。

 また、麦、大豆にしましても、菅野委員も御承知のように、食料・農業・農村基本計画で、二〇〇一年でしたか、麦、大豆に七万三千円まで支給したことがありました。あのときに、目標をたった二年で達成してしまった。

 お金さえ、いわゆる直接支払いさえできれば、農家にしてみれば、お金になればつくる。そういうことから、単にお題目を今までみたいに並べておって、農業政策だ農業政策だといっても、決して自給率は、私は政府案ではできないと思っていますが、私どもの案では一兆円直接支払いをする、かなり具体的な対策をとりますので、必ず自給率の達成はできると確信いたしております。

 あと、問題の将来において六〇%ですが、なかなか六〇%の達成は難しいんですが、先進国、例えばドイツ、イギリス等においては、三十年前に六〇%前後、イギリスは三七%まで自給率が落ち込んでおったわけですが、いわゆる将来の食料危機に備えて、イギリスにおいても八〇%前後、ドイツにおいては九七%まで自給率を上げた。

 では日本はと考えますと、将来、中国の爆発的な食料需要、インドの人口爆発等を考えますと、少なくとも、国際的に見て、日本の自給率六〇%の達成というのは、食料安全保障上必要欠くべからざる要件である、そう考えて六〇%の目標達成にいたしました。特に、六〇%は小麦とか大豆、菜種だけでは無理ですけれども、魚介類そして畜産物等々、みんな合わせれば、六〇%は将来においては達成できる目標だと考えております。

 以上です。

菅野委員 まさに私は、食料自給率を上げていくためには、中山間地域農業も含めて農業の徹底した振興策を図っていかない限り達成できないんだということだというふうに思っています。

 そういう意味で、次の質問とも絡まるんですが、私も山田提出者とともに議論し合ってまいりましたし、今の担い手に集中していくという方向においては、私は自給率向上には結びついていかないという観点から議論し合ってまいりました。

 政府案と徹底的に違うのはこの点だというふうに思うんですが、政府の今の担い手に集中していこうという政策に対して、民主党案は、販売農家の農地に対して直接支払いを行っていく、そして数値目標は一兆円と法律案に明示して書いている、ここが決定的な違いだというふうに思うんですけれども、ここを再度、国民に知らしめるためにも、この考え方、理由というものを示していただきたいというふうに思っています。

山田議員 菅野委員と本当にその辺も含めて今まで議論してまいりましたが、まさに私どもにとって今大事なことは、自給率を五〇%、六〇%達成するといっても、担い手、四町歩以上の耕作者とかあるいは認定農家とか、そういった形で絞ると、かつて、中核農家、プロ農家あるいは中核的な営農農家とか、いろいろな形で、そういうところだけを峻別して補助事業とかその他を厚くやろうとした政策は、ことごとく失敗したわけです。

 そういう意味で、門戸を広く開放して、本当にやる気のある農家、これから意欲のある農家、そういった対象を広くやるとする。そうすると、すべての農家に対して、兼業農家、例えばサラリーマンでどこか市役所に勤めている人に対してもという形になりますと、ややばらまきの感が否めませんので、全農家ではなく、計画的に生産をする販売農家、そういった対象にのみ直接支払いをする、そういう形で絞り込みましたが、それだけでも約二百万戸を数えるんじゃないかと思います。

 そういう意味では、中山間地域における、里山における農家、そういった人たちも、やる気のある人に対しては広く直接支払いを一兆円やっていくということですから、かなり広範にやっていただけるんじゃないか、そう考えております。

 一方、政府の集落営農ですが、政府案の集落営農によりますと、いわゆる販売する農産物あるいは購入する資材等、経営を一元化するとか、今現在、集落営農という名目で農協とか役場あたりで説明に行っておりますが、農家は、現場に行きますと、さっぱり何が何だかわからない、とてもじゃないけれども、これはどういうことだという話で、不平不満がいっぱいであります。こういうことで、集落営農の実現というのは事実上難しい。

 そう考えますと、我々民主党案が現実的であり、かつ非常に有効な、いわゆる自給率達成農業政策であると確信いたしております。

菅野委員 やはり自給率目標をしっかり立てて、そこに向かっていくプロセスというのをつくり上げていくこと、そのためにも、私はずっと議論しているんですが、中山間地域も含めたやる気のある農業者を政府が支援していく制度なしには、農業という第一次産業は持続していかないという観点から、ぜひこの方向に私は取り組んでいきたいという強い意思を表明しておきたいというふうに思っています。

 それで、政府にお聞きしますが、品目横断的経営安定対策について、先日二田委員の質問に対して、現時点で、いろいろな要素を加味して、面積で五〇%、人数で三〇%という答弁をしているんですけれども、この面積要件五〇%、人数で三〇%の中身に、集落営農、現在行っている法人経営の集落営農的な部分を含めればというふうになっていますけれども、実際には、物理的制約に応じた特例も設けております。それから、生産調整に応じた特例も設けております。所得に応じた特例も設けております。そして、現時点で、出発に当たって、これらの特例要件は私は全然入っていないというふうに思うんですが、そのことを確認しておきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 本対策の要件を満たす対象面積、対象者の割合についてでございますが、先日御答弁いたしましたものは、仮に、個別経営につきましては、農林業センサスに基づいて、経営耕地が四ヘクタール、北海道では十ヘクタール以上の経営体、集落営農については、集落営農実態調査に基づいて、現在存在するとされている一万組織、これが対象者になるといたしまして、現時点で、経営耕地総面積に対する割合が五割程度、全販売農家に対する割合が三割程度と試算されるというふうにお答えいたしました。

 それから、委員御指摘の、中山間地域などの集落の農地が少ない場合、これは特例を設けているわけでございます。また、経営規模が小さいものの、複合経営などにより相当の所得を確保している場合、これは所得特例ということでまた別途の基準がございます。

 こういった特例による対象につきましては、別途基準の設定におきまして、集落単位でやったり旧市町村単位でやったり市町村単位でやるということで、地域の範囲の定め方がさまざまになりますし、それから、所得特例の場合も、個々の農業者の所得額を現時点で把握することが困難でございますので、こういった特例によってどの程度対象になるのかという点については試算ができておりません。ですから、五割、三割にはこういった特例による対象者は入っていないというふうに御理解いただきたいと思います。

菅野委員 そうすると、平成二十七年度までに面積で七〇%から八〇%に持っていくんだというふうに答弁されておりますけれども、出発に当たって五〇%、それで二〇%から三〇%は特例に該当する部分なんですかという私は疑問が生ずるわけなんですけれども、この七〇%から八〇%に持っていこうとするところを、どこを対象にして考えておられるんですか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年の構造展望で、農地七、八割程度が集積されると言っておりますのは、これは効率的かつ安定的な農業経営に七、八割程度を集積することを見込むと言っております。

 効率的かつ安定的な経営というのは、その農家の近傍類地で、サラリーマン世帯で得ている収入並みの収入が確保できて、農業でしっかりと暮らしが立っていく経営体ということでございまして、今回我々が対象にしておりますのは、四ヘクタール、十ヘクタールというのは、これは、現時点で効率的かつ安定的な経営には到達していないけれども、そういう経営に到達し得る、まさに意欲と能力を持っている方々として基準を基本的に定めているわけでございます。

 ですから、先ほど申し上げましたように、基本の面積をクリアしている方あるいは集落営農、それに加えまして、所得特例や面積特例あるいは生産調整特例で今回対象になってくる人、そういう人をとらえまして、さらにその方々が規模拡大をする、あるいはそういう営農の高度化をしていくということを期待するわけでございます。

 現在、行政と農業団体で一生懸命連携協力して担い手の育成をやっておりますので、実数として、この対策がスタートする時点において対象となる人がどのくらいで、対象面積がどのくらいかということは、現時点では把握が困難でございますが、何にしろ、対策の内容を、特例もあるんだよということも含めまして、現在、市町村、農業団体等とともに、現場、農業者にさらに徹底的に周知徹底を図っていくということでございます。

菅野委員 今度の品目横断的経営安定対策において、二田委員の質問に対して、人数でいえば三〇%、七〇%の人たちはスタート時点では該当しないという状況であります。この七〇%というのは、中山間地域農業を営んでいる人たちという形で考えられているわけでございますけれども、ここにどう支援していくのかということは今後の大きな課題でありますし、特例というものをしっかりと説明して、経営安定対策に該当するような取り組みというものを行っていかなければならないというふうに思っております。

 ただ、そう考えたときに、一方で、「集落の資源・環境を守ろう 農地・水・環境保全向上対策に向けて」というこのパンフレットをもらいました。この説明を受けても、このごろ少しはわかってきたんですが、当初出てきたときには、これは何なんだと。そして、聞かれても私は説明できない状況でありました。ここが今言った、要するに、車の両輪という言葉の意味もわからなかったんですが、やはり経営安定対策に該当しない部分をもう一つの車でカバーしていこうという流れであるなというのがこのごろわかってきたんですけれども、この農地・水・環境保全向上対策の全体スキームについてまず説明していただきたいというふうに思っています。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策は、二つの内容を有しております。一番目に、地域ぐるみで、農地、農業用水等の適切な保全とあわせまして、施設の長寿命化や環境の保全にも取り組む共同活動と言っておる部分でございます。それから二つ目が、地域の中でまとまって化学肥料や化学合成農薬の使用を原則五割以上低減する先進的な営農活動でございます。これらを協定に位置づけて、多様な主体の参画を得て、総合的、一体的に実施する活動に支援をするということでございます。

 具体的に若干その手続なり仕組みを御説明いたしますが、まず一番目に、集落単位あるいは水系単位などで、地域の実情に応じて共同活動の範囲を決めていただく必要がございます。地域を設定していくということでございます。

 二番目に、農業者のみならず、地域住民などの多様な主体も参画した活動組織を設立していただきたい。これは、地域ぐるみで取り組むということ、農家以外の人も関係者として含んでいただきたいということでございます。

 それから三番目に、資源の適切な保全に加えて、資源の長寿命化や生態系保全、景観保全といった環境保全活動などの効果の高い取り組みを行う活動計画を策定していただいて、市町村と協定を締結していただくというのが三番目でございます。

 四番目に、この協定に位置づけられた活動を行った場合に、この活動区域の農振農用地区域の農地面積に応じて支援交付金が交付されるということになっております。

 それから、先ほど二つの内容を言いましたが、二つ目の営農活動への支援ということでございますが、こうした地域において、相当程度のまとまりを持って化学肥料、化学合成農薬の大幅な使用の低減等の活動について協定に位置づけをされて取り組んだ場合に、実施面積に応じて支援交付金が交付されるということでございます。

菅野委員 車の両輪と言われておりますけれども、完全に私は別政策だと理解しております。だから、今度の品目横断的経営安定対策ができたからもう一つ別の車というものをつくらなければならないという理由、大体わかってきたんですけれども、私は、車の両輪というのは使わない方がいいと思うんです。環境保全対策を国として、農水省として進めていくんだというふうな私は説明の方がいいと思います。

 それで、十八年度予算については資料をもらいました。それから、十九年度以降の予算について、先ほど佐々木委員と議論しておりましたけれども、もう一回私に対しても、十九年度以降、将来どれくらいの予算規模を考えているのか。そして、このパンフレットを見れば、環境に優しい農業への支援というのは、十八年夏を目途に支援単価を明らかにしていくという中身になっていますから、どういう形で新たな農地・水・環境保全向上対策を考えているのか、これを説明していただきたいと思います。

山田政府参考人 今委員からお話がありましたように、十八年度におきまして、モデル的な事業を全国約六百地区で実施しております。このモデル的な実施を通じまして、その実施の体制ですとか支援の内容等につきまして、施策の実効性あるいは現場で適応できるかどうか、こういったことを検証していくということがこの十八年度予算の内容でございます。

 したがいまして、十九年度以降の対策につきましては、十八年度のモデル事業の中でさまざまな検証をし、あるいは情報収集しまして、十九年度の具体的な内容につなげていきたいということでございます。

 先ほどもちょっと申しましたけれども、いずれにしましても、十九年度予算、概算要求が夏に来ますので、それまでの間に各種の情報収集を行い、あるいは状況を把握いたしまして、さまざまな内容について詰めていきたいと考えております。

菅野委員 全体スキームを構築するに当たって、四百億という数字が出ているんですか。だから、全体スキームをつくるに当たって、どれくらいは確保していくよという決意がなければ、私は地域に浸透していかないんじゃないのかなと。

 後でも言いますけれども、もう一つのスキームとして、財政措置のあり方として、国、地方、一対一と言われておりますけれども、私は、環境保全対策ですから、国土保全というのは国の責任で行うべきではないのかなという強い思いを持っています。これに対してどう考えているんですか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 まず、委員の方から四百億円という数字があるのかということでございますが、これはどこかの新聞の観測記事でそういう記事があったということでございまして、先ほど説明をいたしましたように、十八年度のモデル事業の実施状況を踏まえて検討していくということになっておりますので、まだ予算規模については全く何もないところでございます。

 それから、地方の負担の件でございます。この農地・水・環境保全向上対策は、先ほどちょっと御説明をしましたが、食料の安定供給あるいは多面的機能の発揮を通じて、農業者のみならず、地方、国、それぞれが利益を受けるという施策であると考えております。

 具体的に申し上げますと、当然国は利益を受けるわけですが、国としましては、国民の食料の安定供給ですとか国土保全、先生おっしゃいましたけれども、あるいは環境といった国民全体の視点からの利益を受けるわけでございますが、一方、地方公共団体といたしましては、地域農業の持続的発展でございますとか地域コミュニティーの維持発展といったこと、あるいは地域の活性化ということもあろうかと思いますが、こういった観点からも受益するというふうに考えております。

 このように、国、地方がそれぞれ受ける利益に応じて負担を行っていくのが適当ではないかと考えているところでございます。

菅野委員 国が一、地方が一という形で制度設計がなされておりますけれども、今、地方自治体は非常に財政的に厳しい状況に追い込まれております。当面は国の施策として行っていかなければ、制度として浸透していかないんじゃないのか、国の制度はこういうふうにつくって、半分は県や市町村が持ち出せという形になったときに、裏財源をつくりかねるからという形で県や市町村がブレーキをかけるということのないような仕組みにしていかなければならないというふうに私は強く思っております。

 それで、今後検討するに当たって、確定したものじゃないというふうに伺っておりますから、ぜひその辺も配慮して全体スキームをつくっていただきたいというふうに思っています。

 最後になりますけれども、中山間地域と直接支払い制度との関係はどうなっていくんですか。これは、中山間地域への適用というのが大多分になるというふうに思うんですけれども、答弁願いたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策、これは先ほど来説明をしておりますが、地域を対象としまして、共同活動への支援を通じて、社会共通資本でございます農地、農業用水等の資源を将来にわたって適切に保全管理していくという考え方でございます。一方、中山間地域等の直接支払い制度、これは個々の農家を対象とした対策でございまして、先生御案内のとおり、平場、平地と中山間との農業生産条件の格差を是正するということで中山間地域の農業生産活動の継続を図っていくというものでございます。

 この両者、基本的にそのねらいが異なるわけでございます。ただ、先生御案内のとおり、この中山間地域の直接支払いについては、中山間地域等で農業生産活動を継続していくというためには、集落ぐるみで共同取り組み活動を行いまして、一定の農業用の用排水を管理するとか、そういう活動も一部行われているところでございます。そうしますと、そういう意味で、両施策の若干の重複が起こり得るということでございますので、両施策の実施に当たっては所要の調整が必要であるというふうに考えております。

 今後、十九年度からの本格的な施策の導入に向けまして、先ほど言いましたモデル支援等の結果も見ながら、両施策の調整について検討していきたいというふうに考えております。

菅野委員 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次回は、来る二十日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


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