衆議院

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第10号 平成18年4月26日(水曜日)

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平成十八年四月二十六日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 原田 令嗣君 理事 二田 孝治君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 山田 正彦君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      今津  寛君    小野 次郎君

      金子 恭之君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    斉藤斗志二君

      谷川 弥一君    中川 泰宏君

      並木 正芳君    丹羽 秀樹君

      西村 康稔君    鳩山 邦夫君

      広津 素子君    福井  照君

      御法川信英君    若宮 健嗣君

      岡本 充功君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    篠原  孝君

      神風 英男君    仲野 博子君

      松木 謙公君    森本 哲生君

      山岡 賢次君    丸谷 佳織君

      菅野 哲雄君    古川 禎久君

      森山  裕君

    …………………………………

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   参考人

   (有限会社神林カントリー農園代表取締役)

   (社団法人日本農業法人協会副会長)        忠   聡君

   参考人

   (日本消費者連盟副代表運営委員)

   (明治大学法学部兼任講師)            山浦 康明君

   参考人

   (日本放送協会解説委員) 合瀬 宏毅君

   参考人

   (NPO法人夢大地専務理事)           岩瀬 義人君

   参考人

   (農事組合法人酒人ふぁ〜む理事)         福西 義幸君

   参考人

   (専業農家)       土門 秀樹君

   参考人

   (前時事通信解説委員)

   (株式会社農林中金総合研究所顧問)        野村 一正君

   参考人

   (全日本農民組合連合会副会長)          鎌谷 一也君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  渡部  篤君     広津 素子君

  小平 忠正君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  広津 素子君     若宮 健嗣君

  篠原  孝君     小平 忠正君

同日

 辞任         補欠選任

  若宮 健嗣君     渡部  篤君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、午前の参考人として、有限会社神林カントリー農園代表取締役・社団法人日本農業法人協会副会長忠聡君、日本消費者連盟副代表運営委員・明治大学法学部兼任講師山浦康明君、日本放送協会解説委員合瀬宏毅君、NPO法人夢大地専務理事岩瀬義人君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、忠参考人、山浦参考人、合瀬参考人、岩瀬参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、忠参考人にお願いいたします。

忠参考人 おはようございます。

 桜の見ごろも過ぎまして、私どもの農場は間もなく田植えの時期を迎えようとしております。先週はずっとトラクターに乗っておりました。

 新潟の県北、稲葉先生の地元から参りました。本日は、このような重要な会議にお招きをいただきまして、本当にありがとうございます。現場の率直な声を申し上げたいというふうに存じます。

 まず、経営の概況でございますけれども、お手元の資料にまとめてございますので、詳しくはそちらをごらんいただきたいと存じます。

 当社の特徴は、安定的な収益を確保するために、稲作を基本として、農産加工事業、具体的には、付加価値の高い切りもちの製造販売を取り入れていることや、近隣の農家の協力を得まして野菜の直売施設を運営するなど、事業の多角化を実践していることでございます。

 私は、社会人になって二年で農協の営農指導員を退職しまして、家業を手伝い始めました。ちょうど地域の農業後継者の活動に参加したことがきっかけで、気の合った仲間たちと楽しく続けられる、若者に魅力ある農業を目指して、機械作業の請負組織を立ち上げました。二十五年前のことでございます。

 そしてさらには、家計と経営を分離し経理の一元化を図り、収益性の高い安定した経営を実現するために、法人化について一年間検討した後に設立したわけでございます。

 当時はまだ法人化した事例も少なく、農業会議を初めとする関係機関の指導と家族からの理解、そして励ましを受け、法人経営を立ち上げましたけれども、経営が安定したのは十年ほどたってからでございました。今日でも、大規模稲作経営の難しさというのを感じてございます。しかし、高齢化と担い手不足の解消のために、稲作農業の発展に向けた改革はぜひ実現していただきたい課題だと強く感じております。

 続いて、品目横断的対策について述べさせていただきます。

 戦後農政の大転換と銘打たれました経営所得安定対策等大綱、とりわけ品目横断的対策において対象者を認定農業者等に絞り込んだということにつきましては、我々のように農業一筋に取り組んできた者にとっては大変ありがたいことであるというふうに思っております。その絞り込み、重点化、集中化につきましては、地域における将来に向けた農業ビジョンの十分な話し合いが行われることが何よりも大切だというふうに考えます。

 その上で、本州地域では、認定農業者、法人も含めてでありますが、四ヘクタール、集落営農では二十ヘクタール、この面積は登竜門としては妥当かもしれません。ただ、認定後のさらなる経営努力がなければ、所得を含めて継続可能な経営体とはなりにくい状況が予想されます。

 継続可能な経営ということは、構成員の適正な所得、それから利益が確保できることであると私は考えてございます。とりあえず対策に乗るということでの担い手認定では、本来の目的を逸脱するばかりか、中途半端な経営体をつくり上げてしまうという結果で終わってしまうのではないかなと感じてございます。

 その点、今回の対策で集落営農が法人化を前提として推進されることはとても重要なことだと思います。従来の生産調整のための麦あるいは大豆の生産組合のように、助成金の平等分配主義が基本の運営を引きずっていては、今後発展することは望めません。

 担い手になるための受験資格は平等に与えていただきました。しかし、受験するかどうかは農業者自身が決断することでございます。

 私は、地域の条件格差はあっても、個の経営を確立するという明確な目標を掲げる認定農業者の育成が最優先であると考えます。それが確保されない場合のみ、集落営農集団ということになるのではないかなと考えてございます。

 よく、個別経営と集落営農を対立的にとらえる見方をされる人がいます。認定農業者及び他の農業者との正当な協議の場を設けて、地域農業の将来を見据えながらの徹底した話し合い、合意形成が重要だと思います。集落営農を大義名分とした一方的な組織化にはならないように御配慮をいただければと存じます。

 当社の例を申し上げますと、お預かりしている農地が多くの集落に点在しております。春、秋の機械作業は構成員で行いますけれども、特に日常的な稲作における水管理等は構成員だけでは手が回りません。そこで、各地域の高齢農家の方に十アール当たり年間千五百円程度で管理をお願いする一方、当社の運営いたします野菜直売所の重要な生産農家という位置づけにもなってございます。既に農業者年金を受給されているお年寄りが中心で、地域のことには詳しく、こちらも安心してお願いできます。また、そういった方々からは、いい小遣い稼ぎだということで大変喜ばれております。これは、広い意味での集落農業と言うこともできるかと思います。

 ただ、三年前、新たな米政策改革が始まったとき、水田農業交付金の交付要件を確保するために、にわかづくりで集落営農組織が生まれ、全国の農業法人の仲間は悲鳴を上げました。それまで長年の努力と信頼関係で利用集積を進めてきたにもかかわらず、経営面積の縮小を余儀なくされました。今回も同様なことが我々の仲間の間で散見されています。国や関係機関に対し、十分な御配慮と対応をお願い申し上げたいと思います。

 米については、高い関税措置がとられているとして、ゲタ対策からは除外をされています。もちろん、WTOの交渉に当たっては最後の最後まで頑張っていただきたいと思いますけれども、関税水準が大幅に下がった場合については、対象品目について柔軟な対応をお願いしたいと思います。

 ナラシ対策についてでございますが、基準期間を、現行の担い手経営安定対策の直近三年から五中三年平均とし、農家負担も一対二から一対三へと軽減するなど、参加者のメリットをそれなりに厚くしていただいたと存じます。

 ただ、協会会員のアンケートによれば、六十キロの平均生産原価は約一万四千円程度となっていることを見れば、現状米価は原価割れ寸前に来ております。要は、販売価格が低下する以上に生産コストを下げられれば経営としては安泰なわけでございますけれども、コスト低減は我々の経営努力では限界もあり、今回の交付金に対応した税制措置を御検討いただくなど、コスト軽減に直結するような制度検討もあわせてお願いしたいと存じます。

 米づくりをしている立場から、米政策についても触れさせていただきたいと存じます。

 売れる米づくり、米政策のあるべき姿において、需要実績を反映した翌年への生産目標数量配分の考え方は、一種のやる気を起こさせたと言うことができると思います。

 米の生産調整は、日本農政が抱える永遠の課題と言うことができると思いますけれども、いまだに流通実態が不透明で、市場のシグナルがうまく農業者に伝わらない現状にございます。みずからのこととして生産調整に取り組むためには、今後、対象となる担い手が年間二十玄米トンの取扱量を確保して、生産調整方針作成者になる必要があると思います。

 全国の生産調整方針作成者のうち、農業者自身が方針作成者として登録されている件数は全国で百三十一あると聞いております。当社もその一つでございますけれども、地域協議会の構成員になって配分作業に参加できる、そういう位置づけがあればよろしいなというふうに思っております。地方農政局は、方針作成者の育成のために、その全員を協議会に参加するように御指導いただき、実効性のある生産調整を実現していただきたいと思います。

 最後になりますけれども、農地・水・環境保全向上対策について触れさせていただきます。

 十アール当たり二千二百円という助成金だけが地域ではひとり歩きしているという印象を受けます。県、市町村が同額助成とも聞いており、水田面積、私の集落は六十五ヘクタールでございますけれども、二百八十六万という数字になります。集落の運営費を超えるような額になりますけれども、示された活動に対して支払われるとすれば、とても利用価値の高い対策と言えます。

 さらに、二階建て部分もあり、担い手になれない農家にとっても大変魅力的なのではないかなと思います。ただ、現地での説明会では品目横断に集中しており、詳細な説明がなされていません。地方公共団体の取り組みも、何か中途半端なような気がしています。担い手育成だけが進行することによって、担い手になれない農家の反発が予想されます。そして、担い手がどうしてもいない地域の集落農業への展開もままならなくなってしまいます。

 基本計画に産業政策と地域振興政策を明確に区分すると明記されてございますけれども、品目横断的対策が産業政策であり、農地・水・環境保全向上対策は地域振興政策と、まさに車の両輪であると思います。品目横断的対策を円滑に農業の現場、特に担い手になれない方々にも御支援いただくために、農地・水・環境対策に対する詳細な説明、それから十分な財源の確保をお願い申し上げまして、意見を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、山浦参考人にお願いいたします。

山浦参考人 おはようございます。日本消費者連盟の山浦康明と申します。

 きょうは、意見を述べさせていただく機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございました。

 私ども、日本消費者連盟は、食べ物から原子力発電所問題、あるいは平和問題に至るまで、幅広い消費者問題、生活者問題、環境問題を扱っている団体であります。私は、その中でも食料、農業問題、食の安全問題に日々取り組んでおりまして、そういった消費者の視点から、今回の四つの法案につきまして意見を述べさせていただきます。

 今回討議されております四つの法案、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、そして、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、そして、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、以上、内閣提出の、四五、四六、四七号、そして民主党提案の、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案、これにつきまして意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、この法案を拝見いたしまして、内閣提出の四五、四六、四七号につきましては、現在の段階ではこの法案の成立には私は反対という立場できょうは意見を申し上げたいと思います。また、衆議院法第一一号の民主党提案の法案につきましては、後ほどコメントを述べさせていただきたいと思います。

 今回のこの法律が提案された背景というものは、申し上げるまでもなく二〇〇五年三月に決定された新たな食料・農業・農村基本計画において、食料自給率の目標を新たに策定し、また食料の安定供給とともに農業の持続的な発展が掲げられて、その中で、この品目横断的経営安定対策を導入すること、そして、米政策における生産調整支援策を見直すこと、また、農業生産の基盤整備、自然循環機能の維持発展、こういった目的のために農地・水・環境保全向上対策を盛り込むということが明記されて、これの実施のための法案が提出されているわけです。

 この中で、消費者としても、食料の安定供給、食の安全、自然環境の保護、こういった観点から、食料・農業・農村基本法の施行、そしてその具体的な計画については注目してきておりますけれども、今回のこの新たな経営所得安定対策の関連法案三法案につきましては不十分ではないか、そういう意見を持っております。

 この第四五号法案につきましては、これまですべての農家、二〇〇五年度二百八十万戸余りだと思いますが、こういった農家に対して一律に与えてきた施策を、認定農業者、二〇〇五年度で十九万余りの経営体に当たると思いますが、こういった少数の事業体、事業者に限定すること、また集落営農に限定して、個別の品目ごとにこれまで支援していたものを、対象品目を限定した上で、国境措置については四品目、収入変動の影響を緩和するための対策は五品目ですが、こういった限定をするということがその一つのねらいになっていると思います。

 また、二番の内閣提出四六号の砂糖につきましては、てん菜及びでん粉原料用ジャガイモ生産の補助金の支給方法を変更しよう、そういったものというふうに理解しました。すなわち、ここにおいては、最低生産者価格を廃止して、担い手経営安定資金を交付する、こういった手法を提案しているわけです。

 また、四七号の主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、これにつきましては、麦を民間流通に移行させているわけですけれども、政府が需給見通しを立てて備蓄し、輸入制度を整えることを図る、こういったものであります。

 この三つの内閣提出法案につきまして、私の考えと申しますのは、まず、対象となる担い手が、認定農業者であるということが規定されておりまして、都道府県では四ヘクタール、北海道では十ヘクタール以上の耕地を耕作しているという条件がつけられております。あるいは、一定の条件を有する集落営農組織であるということが必要で、代表者を定め、地域の農用地の三分の二以上の利用集積をする。また、農業生産法人化の目標を掲げるといった条件が必要となっております。

 これは、外国の農産物との格差是正のために、この経営対策の対象品目を絞り、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用バレイショを掲げて、また、これについて、国内販売価格を超えてかかった担い手の生産コストを支援する、こういったやり方でございます。そして、その方式は、現行の品目別の価格政策ではなく、外国との生産条件格差是正対策として、経営全体での品目を横断して一括して行う、こういうことが特徴というふうに理解しました。

 また、収入の変動による影響の緩和のための対策としては、対象品目は、米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用バレイショを掲げて、減収額の九割について積立金の範囲内で補てんする、こういうふうな手法を提案されているわけですけれども、これにつきまして、私ども消費者の立場といたしましても、日本農業のこれまでのあり方というものが非常に危機的な状況になるのではないかというふうに考えます。

 まず、この大規模化、そしてこの効率化を考えてこういった法案が出ているのではないかというふうに理解いたしますけれども、これは小規模農家を切り捨てることになるのではないかというふうに考えます。また、農業というものは、水の問題をとりましても、かんがい施設をとりましても、地域で営農の方法が確立してきているわけですけれども、地域の営農の仕組みをこれは破壊するのではないか、こういうふうに考えます。

 また、この効率化によって、外国の農産物の輸入に対応するということが一つのねらいだろうというふうに考えますけれども、例えば、アメリカと日本の農地の比較をしてみた場合に、幾ら日本国内でこういった効率化を進めるとしても、これがアメリカの農産物に対抗できる、そういうふうなものにはなり得ないのではないか、むしろ、発想を変えるべきではないかというふうに考えます。

 私どもは、国内生産の質的、量的な拡大を目指して食料自給率の向上を図ることが大切だというふうに考えております。具体的には、今国会議員の方々も有機農業の振興を目指して法案を検討されておりますけれども、日本における有機農業を中心とした持続可能な農業のあり方というものを農政の中心として位置づける、そして、安全でおいしい日本の国産の農産物を振興する、こういった政策こそが重要ではないかというふうに思います。

 今回のこの法案につきましては、食べ物をやはり商品としてどういうふうに生産し、販売して、利益を上げたらいいか、こういったねらいが中心ではあると思うんですけれども、私どもとしましては、食べ物は、単なる商品としてとらえるべきではない、その値打ちはお金で計算できるものではない、こういった立場から日本の国内の生産のあり方を考え直すときではないかというふうに考えます。

 また、今回の法案を提出するに当たっての提案理由の中に、WTOの交渉との関係についても触れられておりますけれども、今日本政府が進めておりますWTO交渉あるいはFTA、EPAの交渉において、これはやはり貿易の自由化といったことが最終的なねらいになってしまうと思うんです。

 これにつきましては、農業のあり方というものはこの貿易の自由化のルールの対象にすべきではないと私どもは考えておりまして、例えば、WTOの交渉においても、環境直接支払いといった発想を各国が持てるようなルールを定める、そういった各国の食料主権あるいは農業の多面的機能を実際に実現する、そういうルールは各国に認められるべきである、そういう立場で交渉をしていただきたいというふうに思います。貿易ルールは最低限のルールとして、貿易自由化のためのいろいろな交渉に妥協すべきではないというふうに考えます。

 最後に、民主党提出の食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案につきまして、コメントを述べさせていただきます。

 食料自給率目標を五〇%とするというふうに書かれております。これは、現在の基本計画は四五%、こういった目標が掲げられておりまして、現実には四〇%が続いておるわけですけれども、私どもとしては、この五〇%はもう最低限として、できればより高い目標を掲げて、それに対する実効性ある政策をとるべきだと考えておりますので、自給率目標を高く掲げるという発想には賛成いたします。

 また、主要農産物に直接支払いをする。こういった考え方につきましても、直接支払いあるいは環境直接支払いといった考え方を充実させて、これは、すべての農家に対して与えるべきではないかというふうに考えます。

 また、環境保全の取り組みを重視する。こういったねらいを示されておりますけれども、これにつきましても、私どもは賛成いたします。その実効性ある措置をとる必要があるというふうに考えます。

 また、米の生産調整は廃止する。これにつきまして、私どもも考え方としましては賛成をいたします。各自がやはり経済的な自由権に基づいて自由な生産を行うということは、この社会の基本的ルールであるというふうに考えますし、一九七〇年代からの日本の生産調整の歴史を見ましても、農村における非常にゆがんだ仕組みを生産調整が生み出してしまった。こういうことを考えましても、生産調整は廃止すべきではないかというふうに考えます。

 また、漁業者に直接支払いをする。こういった発想も非常に尊重に値すると思います。

 また、輸入食品につきすべての加工食品に原料原産地表示を義務づける。この点も、今例えば牛肉問題で非常に消費者の不安が高まる中、こういった発想は非常に大事ではないかと思います。

 また、輸入検疫体制を整備する。これにつきましても、私どもも賛成をいたします。

 総じて、今回のこの内閣提出法案三法案につきましては、農業の構造改革を加速する、そして国際競争力を強化する、こういったねらいのもとに提出されておるわけですけれども、私どもは、そうではなく、やはり日本の農業あるいは各国の農業をどう充実させていくか、そして安全な、そして地域の生産体制といったものを尊重する体制をいかにつくるか、こういう発想から、一定の農家だけに、あるいは生産法人だけに限定するのではなく、幅広い支援をこれからも行っていく必要があると思います。

 それから、補足ではありますけれども、いろいろなニュースを見ておりますと、現在この新たな担い手に対する経営安定のための交付金の制度というものが実際には予算もつけられ進行しております。さまざまな政策が各自治体においてももう既にとられようとしておりまして、今回、重要な問題につきまして審議が行われているわけですけれども、この国会での審議というものに先んじてさまざまな政策が先取りされているということにつきましては、私は、非常に遺憾に感じております。この点につきまして、十分な御審議を行った上、国民の意見が反映されるような法案の審議ということを私は望みます。

 以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、合瀬参考人にお願いいたします。

合瀬参考人 おはようございます。

 NHKの解説委員の合瀬宏毅と申します。

 きょうは、このような場を与えていただきまして、大変ありがとうございます。私の解説委員としての担当は、農業、漁業など第一次産業と食料問題でありまして、日々のニュースの解説のほかに、日本各地で頑張る農家の姿を描きます「たべもの新世紀」という番組に出演してコメントしております。毎週日曜日の朝に放送する番組なんですが、既に六年続いておりまして、消費者からの反応も多くて、消費者の農業の生産現場に対する関心の高さというものを感じているところです。

 私が解説委員になりましたのは七年前で、それまでは経済番組のプロデューサーをやっておりました。農業を専門とするようになって感じましたのは、農業政策の複雑さと難解さでありました。政策を読み解き、取材してわかったのは、産業政策であるべき農業政策に社会政策だとか地域政策というものが多く入り込んでいるということでした。また、ほかの産業が、いろいろな人とか企業が入ったり出たりして活性化しているのに比べて、農業というのは固定されたメンバーが、親子代々ずっと農業を続けているということでした。産業という視点から見ますと、極めて特殊で、またこれが今の農業が元気がない原因なのかなというふうに感じました。

 農業を活性化させるためには、普通の産業がやっているような、やる気のある人がみずからの知恵と工夫で自由な発想でやっていくということが必要だと思います。そうしてできた農産物が消費者に支持されて、生産者と消費者が非常にいい関係を築く、そういう関係をつくることが今の農政に課されている宿題だと私は思います。

 そうした視点から、きょうは、今回提出されております法案のことについて述べさせていただきますが、私がこれから述べることはあくまでも私の意見でありまして日本放送協会の意見を代表するものではないということをあらかじめお断りしておきます。

 さて、今回、農水省から出されました品目横断的経営安定対策なんですが、私は三つの点で注目すべきだというふうに考えています。一つは、残すべき担い手を絞って施策を集中させたことです。二つ目は、一定の所得を保障した結果、農家の経営上の選択の幅を広げたということです。三つ目は、日本農業を関税で守る構造から税金で守る方法に転換したということです。

 まず、担い手を絞って施策を集中した点です。

 品目横断的経営安定対策は、これまですべての農家を対象としていた作物別の価格補償を、個人あるいは法人の所得に注目し、結果的に守るべき農家に集中させたものであるというふうに理解しています。現在の農村の状況を見てみますと、農業を主にしている人ですとか、サラリーマンをやりながら農業をしている人など、さまざまであります。こうした人たちすべてを守るのではなくて、農業政策ですから、やはり今後の農業を担っていく人を育てていく、これは極めて妥当なことだと思います。

 農家にとりましても、一定の所得が保障されるわけですから、その所得のもとで、いろいろな作物を組み合わせながら経営を考えていくということができます。経営の自由度というのがより増していくものと思います。

 さらに、価格で保護する方法をやめたことで、WTOにおける交渉の選択の幅が非常に広がったというふうに思います。現在、WTO交渉というのは非常に難航しておりますが、自由貿易が、ますますこれから、とめようもない、加速していく中で、遅かれ早かれ、多分米も無傷ではいられないというふうに思います。

 これまで、日本のWTOなど国際規律への対応というと、常に後手後手に回っておりまして、交渉が決まってから慌てて対策を講ずる、こうしたことを繰り返してきました。交渉は交渉として、国内の改革を進める、こういうことがこれからは必要になってくるんではないでしょうか。今回の法案は、国際規律への対応という面でも評価できるというふうに私は考えています。

 実は、農政改革ということで私がぱっと思い浮かぶのは、以前取材で訪れました静岡県大東町の農業法人のことであります。ちょっとこのことを話したいんですが、この地区は、浜松市の近郊で、兼業農家が多くいる地域なんですね。三十年ほど前に、百五十ヘクタールほどの農地の圃場整備をやったんですが、このときに、町がすべて費用を負担する、そのかわり農地をすべて吐き出しなさいということをやったわけですね。それで、百五十ヘクタールほどの農地を、現在、六人ほどの農家が米づくりを中心とした農業をやっていらっしゃいます。近くに工業地帯がある地域ですから、会社勤めの人は会社勤めに集中してほしい。それから、野菜、園芸も盛んな地域ですから、園芸の人は園芸に集中する。そういう人たちは、農地を出して、そこで米づくりをやる人は米づくりをやる、こういうふうに分けたわけですね。

 その結果、この地域では米づくりをやる人は非常に低コストで米づくりをやっておりまして、現在、これは去年の価格なんですが、コシヒカリを六十キロ当たりおよそ一万六千円で地権者の人たちに販売している。これは十キロ当たりにしますとおよそ二千七百円でありまして、私たちが東京でコシヒカリを買うとおよそ五千円ぐらいはするわけですね。この価格は、消費者としても非常にハッピーでありますし、生産者としても非常に高い利益を上げている。地元のものを地元に売るわけですから流通経費はゼロでありまして、ここでは生産者と消費者の非常にいい循環ができている。米の消費もこの地域では落ちていないというふうに言われております。今では、この地域は、全部、およそ一ヘクタールほどの区画にし直して、さらにコストダウンを目指して、多分、六十キロ当たり一万円ぐらいまでは引き下げられるだろうというふうに言われております。

 私は、最終的には、こういう地域を日本じゅうにつくることが結果的に日本の農業を強くすることだというふうに思うんですね。今回の農水省の法案が直ちにこうした姿をつくるわけではありません。ただ、構造改革のスタートに立っただけだと言うべきだと思うんですね。逆に言うと遅過ぎるぐらいだということです。しかし、重要なのは、着実にこれを実行して活気ある農業をつくることだというふうに思います。

 今回の法案をより実効性の高いものにするためにはどうすればいいかというと、参加者をふやすことであります。これまでの国会の議論を聞いておりますと、当初の参加者というのは、面積ベースでおよそ五割ですか、百六十万から百七十万ヘクタールとされています。ただ、現場の話を聞いていますと、かなり苦労されているようなんですね。

 原因の一つと私が考えるのは、この法案が非常に難しくて難解である、理解しにくいということと、もう一つは、農家がメリットをなかなか感じにくいということなんです。農水省で出された試算によりますと、支援水準はこれまでの支援水準と余り変わりないというふうにされています。この法律の大きな目的の一つが、構造改革を加速するという面であることを考えると、やる気を引き出すためには、最初は若干手厚くやって、その後、効率のよい経営ができた段階で徐々に引き下げていく、そうした工夫も必要なんではないでしょうか。

 一方で、農家にも考えてほしいのは、積極的に参加に取り組んでほしいということなんですね。私も取材などで農山村をよく歩きますが、かなりやはり皆さん高齢化していらして、耕作放棄地も目立ちます。高齢者の方が生き生きと農業をやるということは、それはそれで結構なんですが、それはそれとして、体力のあるうちに、これからの国際情勢の変化に対応して、きちんとしたやはり産業としての農業をつくり上げておく、地域も活性化していく、そういうことも考えなければいけない時期に来ているんではないかというふうに思います。そのためにも、やはりきちんと取り組んでほしいというふうに思います。

 最後に、民主党の案について少し触れたいと思いますが、農水省の案と最も違いますのは、対象者を絞り込むのかどうかという点です。民主党案では、すべての農家を対象とした直接支払いというふうになっています。確かに、小さい農家で、知恵や工夫を駆使して、きちんとした経営をやっていらっしゃるというところがあることは私も存じております。

 ただ、これからの農業を担う、日本の食料生産ということを担う農家となるとこれはどうかというふうに考えるのは、私の知っている農業法人の人は、これは社員をいっぱい抱えているわけなんですが、その方を独立させるときは五ヘクタールからやらせるんですね。小さい面積ではやはり農家としてはなかなか自立しにくい、五ヘクタールあれば、いろいろな作物を分散してやはりリスクヘッジができるんですね。農業を経営として考えることができるという理由からです。

 やはり、私たちの税金を使うわけですから、対象者にはこれからの日本農業を担う経営者としての視点を持ってもらいたいというふうに思うわけです。

 最後に、活力ある日本農業を実現するためには、実はこの問題だけではなくて、農地問題など非常に多くの解決しなければならない問題が多いことも事実であります。ただ、政府には、一刻も早く構造改革というスタートラインに立って、とにかく進めてもらいたいというふうに私は思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、岩瀬参考人にお願いいたします。

岩瀬参考人 ただいま御紹介いただきました、NPO法人夢大地の岩瀬でございます。

 私は、こういう場所で話すことがふなれでございまして、今現在、農業をやっております。十八の年から五十年、専業農家として一貫してまいりました。また、昨年六月までは、地元の農協の組合長として務めたこともございます。その間、私、非常に学ぶことがたくさんございました。前々から、このような状況で日本国民の食料を支える日本農業が大丈夫かということは常に思っておった次第でございます。

 それで、結論として、この問題を解決するには、農業関係者だけではどうにもならない問題であるという見地から、組合長退任後直ちにただいまのNPO法人を、農業の支援策とか食育の支援策とか安心な食料の推進とかいうことを事業目的に設立したものでございます。ですから、私どものNPO組織は、農業者は無論のこと、経済界、消費者団体、すべての方々で組み立てております。

 そういう中で今活動しておるんですが、いかんせん、国の農業の施策が今回問われておるわけでございます。

 今まで、私は、農業人生五十年、最大のショックは何であったかということでございます。それは、昭和四十五年でしたか、例の減反政策が始まりました。私はまだ若かったです。それまで、米づくり日本一を目指して挑戦したこともございました。麦づくり多収穫競争に参加もしてまいりました。そうしたら、ある日突然、金をやるから米づくりを一割やめろ、これは、大変私は、夢多きまだ若い時代にショックでございました。

 その後、今日を迎えておるわけでございますが、五十五年後半から六十年にかけて、農業たたきというような現象も出てまいりました。私の子供、三人ございますが、当時小学校でございます。先生が、この中でうちがお百姓さんの子、手を挙げなさいと聞きました。でも、私は挙げることが恥ずかしかったと娘が申しました。というのは、農業は日本の経済発展の足かせなんだというような風潮が流れた時代のさなかであります。当時、私は、非常に残念に思ったわけでございます。

 現在、いろいろな国際化の自由貿易の中で、私の住む愛知県東三河は全国でも有数な農業地帯でありますが、しかしながら、ハウスミカンの大産地である、日本一の産地である蒲郡市ミカンは、今、もう経営が成り立たずして伐採をしておる農家がかなり出ております。中には、制度資金を借りて施設を拡大して、まだそれの返済が済まぬうちに、この燃料の、油の高騰の中で経営が成り立たなくなった、そういう事態も起きております。

 渥美のキャベツは、三浦、千葉と並んで三大産地の大型産地でありますが、昨年は二度にわたって産地廃棄がされました。しかしながら、その裏では、輸入野菜は増加の一途をたどっておる。高原のレタスもやりました。今、こういうことが日本の農業の実態の中で生まれておると思います。

 私は、JAの組合長として、多くの農家の経営状態をつぶさに見てまいりました。いわゆる、調達した資金が払えなくて、農協も回収ができなくて、農家の資産を差し押さえた。私も判をつきました。そういう事例も多々あるわけです。今日ほど、日本農業が壊滅寸前になっておる、いわゆる農業の平成恐慌だ、農業恐慌だと私は申し上げても過言でないほど今の農業が本当に大変な状況になっていることを、現場におって、また、そういうJAの立場から見て、実態がそうであるということをまずお話し申し上げておきたいと思います。

 このことは、二〇〇五年、去年の農林業センサスの数字の中にも、販売農家がどうだとか、どれだけ減ったとか言われております。それが、如実に数字にあらわれていると思います。今回、政府から出されておりますいろいろな法案、特に現場の農家の皆さんが関心を持っております経営安定に伴う担い手の部分が非常に今ささやかれております。このことが今、前段の参考人からお話があったように、非常にわかりにくい部分もたくさんございます。しかし、私は今回の政府案を見たときに、本当にこれを遂行していったときに、日本の農業が活性化されるのかという疑問を持っておる一人であります。

 なぜなら、日本の農業の置かれておる立場、環境はどうであるか。世界の国々の農業の実態とは立地条件が違っております。降雨量一つとっても全然違うわけでして、しかも南北に長いこの島国の中の背骨には山が連なっております。そこから北と南に川が流れて、そういう立地条件の中で農業をやるには、やはりその地域の特質を生かした、本当に大きな農業だけという動きでなくて、いろいろな知恵と工夫の中でその地域に合った農業を構築していく。とにかく今は、やる気のある農業者、完全にもう夢も希望もなくなっておる農業者の多い中で、そういうところから灯をともして、地域に密着した農業を構築していくことが将来の大型農家をつくっていく一つのスタートラインになってこようかなというふうに考えておりまして、当面、今、あなたは規模別要件で担い手ですよどうですよということは、だれがそれをやり、だれがそれをやっていくのかということは非常に難しいな、かように思っております。

 なぜなら、今私のところの地域でも、米作につきましては、もう受託組織で何十町歩、何町歩という規模の拡大でほとんどこれに近い形ができ上がっておりますが、私も今、田畑合わせて三町弱、二町九反ほどつくっておりますが、複合経営なんですね。今、日本の農業を支えておる園芸作物等の販売価格が国際化の中で輸入に圧倒されて立ち行かなくなっておるというのが現状で、ここが一番農家が疲弊しておる最大の要因だと思います。農村の集落で、個々の農家によって成り立たせていくということが一つ大事だということを私は申し上げておきたいと思います。

 それから、我が国の農業は、あくまで家族経営でずっとなされておりました。そういう中に、あなたは認める担い手農家ですよ、いや、あなたは長年御苦労さんでしたという切り捨て論が、果たしてその影響がどう出てくるかということも未知数だろうと思いますし、また、法人の経理の一元化も、集落単位でそれぞれの地域の農業が成り立っていることを考えると、将来への助走期間があってという話ならまた別問題ですが、十九年度からという話になりますと、非常にこれもなじまないところかなというふうな考え方を持っております。

 しかしながら、ここで農政改革、農業構造改革を断行するということはとても大事なことだと思います。このままほっておくわけにはいきませんので、当然のことでございますが、一つだけ大事なことは、農村現場の実態をよくよく精査して、それぞれどうあるべきかという結論を出していただきたいと思うわけでございます。

 これは地域農業の声を無視したり、いろいろな中でやってまいりますと、例えば転作もそうでした、転作を完了させないと補助金はやらぬよという文句がいつもついて回っておりました。それで、制度上、麦、大豆もふえておったんですが、これからはそうじゃないわけですね。ですから、現場の理解と協力なくしては、この農業構造改革はできないと思います。私は、そういうところを本当に痛切に感じてきたものでございます。

 なお、この案について、民主党さんの方から別の案が出ております。私は、そういう意味で、すべての農家ということを言われておりますが、これにはあくまで絶対条件がある。将来、日本の農業の活力になっていくであろう農家にあくまで限定をしていく、だれでもかれでもいいわけじゃないと私は思います。この辺のところは、今までの農村の風土とか、そこに携わる人々の人間関係等を考えてみると、やはり日本の場合は、耕地面積の拡大ということもある程度のところまではいきますが、世界に並ぶところまでは到底無理な話であります。

 ですから、家族経営を中心とした、意欲のある、将来は地域の農業をしょって立てるだろう、そういう農家を早く育成し、励まし、夢を持たせるということが、農業改革の施策の以前の問題として非常に大事なことになってくるのではなかろうかと思っておるわけでございます。

 農業はどういう意味でほかの産業と違うかというところは、工業と違って効率だけでは物差しが当てられない。特に、日本の農業はコストがかかっております。ですから、コストだけ削減するということは到底、これは日本の立地条件からいって不可能だと思います。食は人の命であるという大原則、日本の農業は日本国民の命であるということが大原則になろうと思います。ですから、一番大事なのは、日本の国民すべてが、日本農業はどうあるべきかというコンセンサスをとっていくことが非常に大事だろうと思います。

 最後に、昨日、日本農業新聞にこういうようなことが論説として書いてございます。

 「後半国会 農業再建に向け論戦を」ということでございますが、要旨は、担い手経営安定新法案を審議しているが、法案は、直接支払い政策支援を一定の基準を満たした担い手に限定するものである、一律農政からの大転換を図ることは大きな意味がある、こういうことから始まりまして、一番強調しているのが、農業者が積極的に取り組める環境をつくることは国会の責任である、中でも、予算規模とその財源を明らかにさせることは、これは安全保障の問題だろうと思いますが、明らかにさせることは極めて重要で、経営安定対策は、WTO、FTAに伴う市場開放の国内対策の要素も持っておる、自由貿易で恩恵を受ける自動車や電機などの輸出産業が、犠牲を払う農業、農村の振興のために、国内対策費を負担する仕組みを国会としてしっかり方向づけをしていただく必要があるということが書いてございます。

 私は、こういった日本農業の重大な局面において、今後後半国会、先生方によりまして本当に議論されまして、あすの日本の農業の再構築のために築き上げていただくことを切にお願い申し上げて、終わらせていただきます。

 大変ありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。並木正芳君。

並木委員 自由民主党の並木正芳でございます。

 参考人の皆様には、お忙しい中を御出席いただき、貴重な御体験あるいはお考えを御教示いただきまして、本当にありがとうございます。私からも心から感謝を申し上げたいと思います。

 最初に合瀬参考人にお伺いいたします。

 考え方として私と通じるものがあるわけですけれども、十分という中でお話しできなかった点も含めてお話しいただければと思うんです。

 農業構造改革という視点を持った、そうした意味での法案という、その辺についてなんですけれども、今、御存じのとおり、世界はメガコンペティションの時代、大競争の時代と言われて、あらゆる分野、あらゆるレベルでの厳しい競争が行われているわけであります。こういう時代にあって、例えば教育の分野でも、日本的な文化とか伝統を重んじ、日本的心性というかそういうものを持った日本人をつくる、一方では国際的に競争し得るような日本人をつくる、こういうものがテーマになっているわけですけれども、農業においてもしかりではないかというふうに思うわけです。この日本の国土を涵養し、そして文化をはぐくんできた、そういう農業の役割を再認識するとともに、さらに国際的な競争に耐え得るような農業をつくっていかなければならない。

 そうしたときに、農業を取り巻く環境というのは、まさに先ほどのお話にもあるわけですけれども、WTOの農業交渉あるいは東アジアを中心とするEPA、経済連携協定、こういうものが進められて、自由貿易化が進んでくるわけです。こういうことを見ますと、主要な作物とはいっても、品目を価格維持していく、こういう保護のあり方ではもうどうしても国際的に立ち行かない、そこで、担い手なり経営を支える、あるいは環境保全、こういう面から日本の農業を守る、こういう視点が当然必要になってくると考えるわけです。

 また、国内的には、非常に高齢化してしまっている農業である、若い後継者の育成あるいは確保が急務だというところで、魅力ある経営、所得が安定するような経営を図っていかなきゃならない、あるいは世襲的な農業を企業感覚というか経営感覚を持った農業にしていかなきゃならない、そういうような点で、この政府提案の担い手三法案はまさに改革、対外的、対内的事情に合わせたそうした政策の方向性を明確に持った法案だと私は考えるわけです。

 一方、民主党の案は、先ほどもお話が出ましたとおり、すべての方を対象にして交付金というか直接払いというのをやっていくということで、そういう意味ではばらまき助成策というようなところも感じられる、本当に日本の農業を強化していくのか、その辺が不確かではないか、こういうふうに感じる、それが私の考えなんです。

 その辺についてもう一度、今ちょっと整理させていただいたんですけれども、合瀬参考人の御意見を聞かせていただきたいと思います。

合瀬参考人 済みません、私、きょう風邪を引いておりまして、なかなか声が出ませんで、大変失礼いたします。

 非常に農業を取り巻く環境が厳しくなっている、国際的にも厳しくなっているということなんですが、私は、WTOの問題は、結局国内の消費者と生産者の問題だと思うんですね。結局、どんなに関税が下がろうと、国内の生産者が消費者に支持されるものをつくれば、別に海外からどんなものが入ってきても関係ないわけですね。生産者としては、今消費者がどういうものを望んでいるか、経営としてどういうふうに自立できるかということを考えて生産をやっていく。これまでの日本農業というのは、そうした生産者と消費者のパイプの、考えのミスマッチといいますか、その辺がかなりやはり大きかったんだろう、そこをまずどうするかというのが私は非常に重要なんだろうと思います。

 それで、農村が非常に今危機的な状況にあると言われるんですが、一番危機なのは、先ほどの参考人のお話にもありましたけれども、やっている人が自信をなくしているんですね。農業はだめだ、だから息子にも農家を継がせない、どんどん後継者が減っていく、一体どうすればいいんだ、そういう悪循環に来ているわけなんです。

 ただ、本当に、最近は環境だとか食べ物だとか有機農業だとかを考える若い人たちも多くて、実は、私どもの番組で、三月にそういう若い人たちを呼んで、二時間ほどスタジオで討論番組をやりました。そのときに来てくれた長野でトマト農家をやっている人は、これは三十二歳の人だったんですが、その人はかつて銀行に勤めていて、それから保険会社に入って、そのときの年収が何と七千万だったんですね。トップセールスマンで、ただ、銀行にしても保険会社にしても経営を支えるということですから、やはり自分で事業を起こしてみたい。そのときに何かというと、農業だ。農業はこれから大きな可能性がある。それは、今やっている人たちがだれも気づいていない。本当に消費者との関係をきちんとやるとか、いいものをつくれば、特に日本のマーケットはいいものをつくる人が非常に不足している、そうでないものはいっぱいあります、ここのマーケットはすごく可能性がある。その人は、非常に糖度の高いトマトをつくったり、イチゴをつくったりしているんですが、二年目にしてとんとんだというふうに言っていますから、きっとそうなんでしょう。

 これからの農家に本当に必要なのはそうした経営感覚といいますか、先ほど私五ヘクタールの話をしましたけれども、どうしても新規就農者というのは怖いですから小さいところから始める。でも、大抵そういう人たちは失敗しているんですね。それは、一つのものをやってそれが市場に受け入れられなかったらそれで終わりですから、でも、広い農地を持っていろいろなものをつくればリスクヘッジもできる、そうした感覚を持った農家があらわれていることも事実なんですね。

 今の政策の役割というのは、そういう人たちが本当に生き生きと農業ができる環境をつくってあげる、私はそういうことに尽きると思うんです。

 私も、農村に出かけますといろいろな人を見ます。別に農業をやらなくてもいいんだけれども代々土地を受け継いできたから土地を守っていますとか、耕したいんだけれども体力がないとかという人もいます。そういう人たちの農地を集めてやはりやる気のある人たちにやってもらう、そういう構造改革が私は今一番必要ではないかというふうに思います。

並木委員 農水省が発表しました二〇〇四年の農業経営統計、これは皆さん御存じですけれども、二十ヘクタール以上の集落営農組織の一戸当たりの農業所得というのが四十三万円、〇・五から一ヘクタール規模の個別経営農家の所得が八万円と五倍以上になっている。労働一時間当たりの農業所得では、集落営農が三千五百九十五円ということに対して、個別営農は百二十二円と三十倍近い差になっているわけです。

 こういうことからすると、今、農地を集めてというような話もありましたが、集落営農の効果がこの数字から見てとれるということになると考えるわけです。十年後の農水省の見込みでも、「農業構造の展望」というところで、しっかりとした暮らしが立つ農業経営というのを展望して、こうしたことを見込んでいるわけです。

 合瀬参考人にもう一度、その辺、今、魅力あるビジネスとしていくことが必要なんじゃないかというような御意見があったわけなんですけれども、もう一つ、自給率ということで、民主党さんが非常に意気込みを語っているところなんですけれども、こういうあり方も含めて、政府の見込みというのが見込みどおり行く上での留意点、そういう御意見がありましたらお聞かせください。

合瀬参考人 自給率ということでございますけれども、自給率については、これはやはり日本人の食生活がかなり変わってきた、今回の基本計画でもかなり言及されておりますけれども、生産者の問題とともに、やはり消費者の問題でもあるわけですね。

 先ほど私は、生産者と消費者のいい循環というふうに言いましたけれども、今回の基本計画でも、食育ですとか、それから自給率を上げるために、まず食品産業、より消費者に近い食品産業と農業現場とが産業クラスターを一緒につくって、それを農業現場に戻す、そういう消費者により近いところの政策も用意されるというふうに理解しています。

 そうしたことが結果的に自給率を伸ばしていくのだろうというふうに私は思いますけれども、ただ、十年後に五〇%になるのかどうかという件につきましては、どうでしょうか、私はなかなか難しいのではないかというふうに理解しています。

 実際に食品産業の中にも、これだけ安心、安全ということが言われておりますし、地場産野菜とかというものにも興味が高まっていますから、例えば、ロイヤルなどは、地場の野菜を使った地場のメニューというものも展開しておりますし、地元産の野菜を使った漬物とかというものを展開していこうというところもあります。そういうところの加工業者といいますか、業者を巻き込んでやっていくということがやはり重要なのであって、数字は結果としてついてくるものなんだろうというふうに考えております。

 私も、五〇%になり六〇%になるのは大変すばらしいことだとは思っているんですが、そこは本当に生産者、消費者、それから食品業者、それぞれの取り組みにかかっているというふうに思います。

並木委員 時間が余りございませんので、ほかの方に聞きたいところなんですけれども、忠参考人にお聞きしたいと思います。

 参考人は、先ほどのお話のように、いち早く法人化を進めて、現場でいろいろ携わっていらっしゃる。その辺の集落営農よりさらに先を行っているようです。仲間を集めて法人化したといういきさつも先ほどお聞きしたんですけれども、こういうメリットがあるだろうというような思いもあってだと思います。その辺の現実のメリットについて。

 それと、説明会がなかなかきちっと説明ができていないというような、現場がやや混乱しているというようなお話もあったんですけれども、農地、水あるいは環境、この環境直接支払い、こういうところも含めて説明すると余計わかりにくくなるから、その辺はやっていないのかわかりませんけれども、そういうものも説明すべきだというような意見もありました。そういう説明会のあり方。

 さらに、高齢者に軽作業とかを再委託して、生きがい対策にもなっているということなんですけれども、この辺の実態と効果というか、それについてもう一度お話しいただければと思います。

忠参考人 お答え申し上げます。

 まず、法人化のメリット、その前にいきさつでございますけれども、私は、農家の長男として生まれて育ってまいりましたけれども、実は地元を離れて営農指導、農協に入所してございました。ただ、母親がちょっと病弱なこともありまして、当時、わずか二ヘクタールの農地でございましたけれども、父親から、うちへ帰ってこないかというような誘いもございました。

 私は、そこで生まれ育った者がその地域で生涯生活していくならば、農業というのも捨てたものではないんじゃないかな、ただ、やり方を工夫していかないと農業だけでは食べていけないだろう。事実、私の同級生はみんなサラリーマンをやっておりましたので、中にはそういう人間がいてもいいだろうかというような思いもありました。それが、青年活動で知り合った他の若い農業者とのきっかけになったわけであります。

 当時は、法人化のメリットがどこにあるのかということは、細かなところまではわかりませんでした。ただ、どんぶり勘定で家計と経営というのがごっちゃになっていては、どこに問題があるのかということがわからないまま農業をするということについては不安もありましたし、これではいかぬというふうに考えておりました。それをまず分離することが、農業を経営として見るきっかけにもなりますし、改善にもつながる、そしてまた、目標を設定しながらそこに進んでいくという力にもなるのではないかな、そんな思いでございました。

 たまたま早くから農産加工事業を手がけていたこともあって、おかげさまで、当時から有名なデパートさん等々の引き合いもございまして、取引をしたい、では、取引をするには何か確かなものが必要だ、あなた方は農業者の集まりだとは聞いているんだけれども、口座はどうなんだとか、そういったことを求められたときに、ああ、これはやはり法人化というのが必要なんだろう。いわば、今申し上げれば対外信用力とでも申しますか、そういったことがやはり経営としては重要になってくるんだろうというようなことで、それを一つのメリットにしたということも言えるかと思います。

 ほかにもさまざまございますけれども、あちこちで言われていることでございますので、省略をさせていただきたいと思います。

 それから、今回の法案の各地への説明につきましては、私ども、地域においては集落ごとにその説明に入ってございますが、現在、具体的な説明に入っているのは大豆、それから特に麦でございます。秋まきしなければならないというようなことから、重点的な指導がなされてございます。

 ただ、しかし、他の参考人もおっしゃいましたけれども、制度がちょっと複雑でなかなかわかりにくいというような部分もあったり、もう一言言うならば、現場で説明に当たる方も、何かちょっとあやふやなところなきにしもあらずというようなこともあって、十分な理解が進んでいるかといえば、そこは少し時間が必要なのかなという気がいたします。

 ただ、先ほど発言もさせていただきましたように、どうしても担い手になれない農業者が出てしまう。では、そこはどうするんだという部分が、まさに地域環境の維持保全を目的としている環境保全向上対策なんだろうというふうに思いますので、一緒に説明するとわからないということではなくて、これはこうだ、こっちはこうするんだ、そういう整理の仕方をした上での説明があっていいのではないかなというふうに思います。

 それから、お年寄りの生きがい対策とでも申しましょうか、私どもには、先ほど御案内した作業のほかに、延べ人数でありますけれども、年間で千五百人日ほどの臨時の方がいらっしゃいます。この方々も高齢農家の方々でありまして、特に農産加工の時期に、日によっては二十人、三十人という農家女性の方に来ていただいております。これは、まさに地域と法人の密接な関係づくりが実現されているのではないかなというふうに思っております。

 以上でございます。

並木委員 時間でありますので、残念ながら質問はこの辺にさせていただきますけれども、もちろん法律ができただけですべて農業が強化されるわけではありませんので、きょう、にわかづくりの、交付金目当ての集落営農ではいけないとか、岩瀬先生からも、しっかりと農家が希望を持てるような農業の制度づくりをしてほしい、そういうような御意見をいただきましたので、皆さんの御意見を参考に、これからもしっかりと国会の方でも頑張らせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 ただいま参考人の皆様方には貴重な御意見、そしてまた熱弁をいただきました。心から感謝申し上げる次第であります。

 私は東北の出身でありまして、生まれ育ち、骨を埋めるところ、丸ごと中山間地でありますので、その視点からの質問になるかもしれません。順次質問していきたいと思っております。

 まず最初に、忠参考人にお尋ねいたしたいと思います。忠さんは農業法人の経営者として、本当に意欲と能力を十二分に発揮しておられると思います。深く敬意を表する次第であります。

 ところで、政府の法案なんでありますけれども、担い手に対する直接支払いなんでありますけれども、この用意されている支払い額は、これは現状を維持するにすぎないのではないか、あるいはまた、増産意欲あるいは規模拡大、そういうところに持っていくものではないんじゃないかと言う方もおられるのでありますけれども、こういう言い回しに対してどのような認識でしょうか。

忠参考人 お答えいたします。

 そういう見方は確かにできるとは思いますけれども、不安を言えば切りがないんじゃないかなというふうに考えてございます。

 もちろん、いただけるものはたくさんいただくにこしたことはありませんけれども、もらった人の経営努力がそれによって鈍るのではないかな、そういう政策ではやはり困るのだろうというふうに思っております。

 合瀬さんもおっしゃっていましたけれども、市場の変化に対応する、そしてコスト低減を図る、あるいは良質なものをつくる、そしてそれをしっかりと消費者の皆様方に届ける、そういう経営努力というのがむしろ必要なんではないかな、私はそんなふうに考えてございます。

 以上でございます。

黄川田委員 本当にみずから農業を若いころから法人化して頑張ってきた、努力してきたというその意味合い、よくよくわかります。

 また一方、先般、農業委員会の一部改正とかで、農地の集積とかいろいろな仕組みをどんどん進めておこう、あるいはまた、知事にいろいろな力をつけて政策を進めておこう、あるいはまた、受委託も可能な限り担い手に集積されるようにというふうな形になっております。

 忠さんは、農協さんとかあるいは普及員とか、いろいろとそういう連携が一番大事だということを常々感じておるでしょうから、農業委員会の農地集積なんかの関係で、どちらかというと、財政状況が厳しい中で市町村の農業委員会も十二分な力を発揮できないでおるんじゃないのか、そういう気もしますので、よろしくお願いいたします。

忠参考人 農地の集積ということにつきましては、確かに、いろいろな方々の努力があったりしても、やや鈍いといいますか、思うような成果が上がっていないというようなことも耳にはしますけれども、私は、そういった時代がようやく終わってしまうのかなと。

 と申しますのは、やる気と能力のある農業者がいるいないにかかわらず、昭和一けた台の農業者の方々が、いよいよ体力的に、申しわけありませんけれども、もたなくなってきている。これからは、まず受け皿がないと流動化も進まないのではないか。農業委員会の機能にも、いま一歩そういった意味で御努力をお願いしたいと思いますし、期待を申し上げたいというふうに考えてございます。

黄川田委員 それでは次に、山浦参考人から御意見をいただきたいと思っております。

 先ほどお話ししたとおり、私は中山間地のところにおりまして、まず農業の前に集落があって初めて成り立つといいますか、農業がひとり立ちで動いているんじゃなくて、その地域社会における農業というふうなことをいつも思っておるわけであります。

 そしてまた、今の政府の政策は担い手に集中するということでありまして、非担い手の関係といいますか、産業政策の農業政策ではなくて、地域政策の中でさまざま展開していかないと、毎日毎日川のさまざまな集落が消えていく、集落が消えていくということは村もなくなっていくというふうな感じを強くしておるわけであります。

 そしてまた、総務省の政策。昭和三十年の昭和の大合併から平成の大合併ということで、三千二百の市町村が千八百台になるという形の中で、やはり集落があっての一万人未満の町村なんかは、どうやって生きていこうかということで大変な難儀をしておるわけであります。

 小泉総理の、いわゆる構造政策であります。光と影といいますか、光が強ければ逆に影も大きなものがあるというところがあると思っております。市町村の合併も、この新しい農業政策大転換という政策も、どうも暗い影を起こすような形。あるいはまた、今でも耕作放棄地、遊休地があって、そして十年後、二十年後の町や村の、合併したとしても、その周辺部にある地域の姿が本当に暗い感じが私にはしてまいります。

 環境を基本とした形の中での農業政策を本格的に実施して、ある意味では車の両輪と言われている農地・水・環境保全対策、まあ政府提出でありますけれども、むしろその部分の方を本格的な政策として確立しなきゃいけないと私は思うんですが、こういう考え、いかがでしょうか。

山浦参考人 私も中山間地のいろいろなヒアリングに出かけたことがございますけれども、今回提示されておりますような集落営農の条件、あるいは認定農業者のこういった条件というものは、やはり日本の多くの中山間地域においては当てはまらない場合が非常に多いということを実感しております。

 例えば、私が参りました京都府の山間地の方の集落ですけれども、やはり耕地面積が非常に狭い谷合いにありまして、集落の営農規模としてこういうふうな条件をつけようと思っても、これはとてもできない、そういう実態が各地にやはりあると思うんですね。

 現在、やはり政策として掲げなければいけないのは、非常に過疎化が進んでいるこの状況について、どうやって元気な農村社会をもう一度つくり上げるか、そういうことですから、やはりこういった規模による切り捨てというふうなことは非常におかしなことになってしまうと考えます。

 先ほどからも、やる気のある農家を育てなければいけない、これは私も大賛成でありまして、このためには、さまざまな例えば今回の予算措置をするに当たっての条件をつけて、そこでなければいけないというふうな縛りをかけるのではなくて、本当に元気のある農村社会というものが消費者と結びつくような、そういう環境を自由にできる、そういうふうな条件をつけていくことではないかと思います。

 それから、今回の、担い手について非常に限定することにつきましては、担い手の限定という意味だけではなくて、日本の基本的な農業生産基盤というものをやはり充実させなければいけないわけですから、これについてはやはり十分な手だてをとらなければいけない。こういうやる気のある農家、生産者といったものの意欲をそがないような政策はまず必要ですけれども、基本的な生産基盤をしっかりとこれからも確立していくということはやはり重要ではないかというふうに考えます。

 私ども消費者は、よく生産者との提携活動ということをやっております。私も三十年来、茨城の七軒の農家と産直提携をやっておりますけれども、やはりその地域でなければできないおいしい野菜、お米、こういったものを消費者は非常に期待しておるわけですね。こういうふうな太いパイプを各地域につくれるようなネットワークをつくっていく、こういうふうなものを支援することがこれからは必要ではないかと考えますので、過疎化を食いとめるための積極的な対策をこれからとっていかなければいけないというふうに考えます。

黄川田委員 私も、認定農業者というだけではなくて、やはり集落はそれぞれの持ち分で構成されておりますので、農家の方々が地域で共生するというふうな仕組みをぜひともつくっていかなければならないと思っております。

 それでは、時間も半分過ぎましたので、引き続き、合瀬参考人にお尋ねいたしたいと思っております。

 もう私が申すまでもなく、農業とか林業の多面的機能といいますか、例えばお金に換算すると、農業であれば八兆円ですか、林業であれば七十兆円とか、そういうふうな形で言われておるのであります。産業政策ということで、ある意味では新しい農業ビジネスということで、農業関連の加工とかじゃなくて、新たな産業との連携とかいろいろなこと、合瀬さんはもうよくよくわかっておるし、また具体的事例もいろいろと示してくださるわけであります。また一方、先ほど言ったように、第一次産業の国土保全であるとか、いろいろな意味での多面的機能があるわけなのであります。

 農業、林業だけじゃなくて、私は水産もあると思っているんですよ。例えば、四方を海に囲まれた我が国日本であります。やはり、国土を守るといいますか、日本の国はここまでこういう形で、住んで生活し、そして日本国民の一員として頑張っているんだ。特に、離島であります。日本という島国におりますと余り国境を感じないわけでありますけれども、離島におる方は日々感じておると思います。そういうところで暮らしていく中で、本当に、国土保全といいますか、その最前線の中で頑張っておるという気も私はするわけであります。

 そういう中で、民主党も、もちろん政府も最近、直接支払い、所得補償という政策がだんだん出てきましたけれども、これは特に、農業に限らず、林業、そしてまた水産業にも私はあってしかるべしと考えておるんですが、この点についての御認識はいかがでしょうか。

合瀬参考人 質問に答えさせていただきます。

 既に水産に関しては、たしか離島というか国境警備というふうな意味合いもあって、若干の直接支払いがあるように認識しております。

 多面的機能ということであれば、私も実は九州の田舎の非常に山の中の人間でありまして、人をいやす価値というか、大変あると思うんですね。そういうものも実は、私も田舎というか地方の出身ですが、地方にいるとなかなか気づかないんですね。そういうものをきちんと評価してあげるという面では、先ほどのお金で何兆円だとかということで評価してあげるというのは大変いいことだと思うんです。あとは、そのすばらしい価値をいかにビジネスというかお金にしていくのか。もちろん、直接補償というのは必要なんでしょう。そのために中山間地の支払いとかそういうものも設けているというふうに私は理解しています。

 ただ、やはり、産業としての農業政策と環境を守るということの社会政策とは、基本的には分けて考えるべきだ。そのことはそのことできちんと評価をしてあげる。それをもって、地方では、ビジネスにグリーンツーリズムなりマリンツーリズムなり、今、漁村なんかでも、例えばカツオの町が、そこにある道具なんかも全部含めて博物館的な、ミュージアムにしようというふうな取り組みも始まっているようです。

 そういう地方の財産を、風景なりそういう財産をもとにして自立する道というのを探っていく、それが健全な農山村の姿なのではないか、元気を取り戻す姿なのではないかというふうに理解しております。

黄川田委員 直接支払いといいますか、国民一人一人の皆様方に、やはり農林水産業のいろいろな役割があるんだということは本当に理解していただきたいと思っております。

 そしてまた、何度も言いますけれども、私は地方から来ておりますので、昔であれば、その市町村、市町村の顔が見えるといいますか特色ある町づくりということでみんな頑張ってきた。丸ごと水族館みたいな形で沿岸地区では頑張ろうとか、私のところは岩手でありますので、遠野というところがありまして、どぶろく特区というような形で、グリーンツーリズム、滞在型の観光と農業とか、いろいろな意味で頑張っておるわけなんであります。

 しかしながら、我々一人一人、生きていかなきゃいけません。生きていく中での所得というのは、いわゆる東京でいろいろな雇用の場があって、選択肢が幾らでもあるというところで住んでおる人間とそうでない人間のまた基本的な認識の違いもあるかと思っております。

 それでは、お待たせしました。岩瀬参考人であります。

 先ほどは、熱弁、ありがとうございました。本当に、組合長として愛知の農業を支えてきたということが篤とわかった次第であります。そしてまた、NPO法人の夢大地でありますよね、やはり大地に夢をということで、ますます元気で頑張っていただいておるところであると思います。

 農業は農業者団体だけではだめなんだ、いろいろな方々との連携とか、あるいはまた農業を通じて社会福祉、あるいはまた食育、あるいはまた国際交流とか、いろいろな意味合いの中で頑張られている法人なんでありますけれども、他団体との具体的な連携というのは、具体的にお話しできますでしょうか。

岩瀬参考人 お答えを申し上げたいと思います。

 私どものNPO法人は、活動してまだ一年に満たないわけでございまして、いまだ基礎づくりの段階でございますが、他団体との連携につきましては、特に食の安全問題につきましては、生活協同組合の皆さんと常に意見交換をしたり、地域の養護施設の子供さんまたは施設の皆さんと福祉活動の中で活動を展開いたしております。

 ただ、私がまだ一年に満たない経験の中でお話を申し上げますと、今までになかった、農業の問題を多くの外部の方々が非常に理解してくれる、日本農業はこうあるべきだという応援部隊が外郭にどんどんできていくということが、先ほど私が説明の中で申し上げましたように、将来日本農業の活性化に非常に功を奏するということで、NPO法人活動は、至るところに農業に関した活動ができる組織が生まれることを私は切に願っておるわけでございます。

 特に、耕作放棄地をどうするんだというところで、私どもの方の、まだこれは全くの白紙の案でございますが、耕作放棄地を使って食品加工場をつくって、そこの放棄地で原材料を生産しようというふうな取り組みを今始めたところでございます。

 ですから、いまだ、ここで他団体との連携の中で何を目指してやるという具体的なところまでいっておりませんが、計画の中にはそういうことを十分含んで、総合的な効果を発揮していくという取り組みにしていきたいと思っております。

黄川田委員 もう残り時間、最後であります。引き続き、岩瀬参考人にお尋ねいたしたいと思います。

 先ほど耕作放棄地の話が出ました。遊休地、耕作放棄地ということであります。産直組合とか、モチ米をつくって頑張ろうとか、いろいろな具体の取り組みが見えておるのでありますけれども、今の政府の政策で、プロ農家に任すんだ、そして自給率を四五%ということになりますが、今の政策で耕作放棄地が解消し、そして自給率は上がると思われるでしょうか。端的にお願いいたします。

岩瀬参考人 私は当面、将来はわかりません、十年先とかそういうことはわかりませんが、直近の期間は上がらないと思っております。

 私が地方の農業のことを先ほど申し上げまして、私が関係しておる農協は、兼業農家、しかも女性の皆さんの力を結集したわけですね。そこに何を入れたかというと、旬果旬菜の産直なんです。今、千数百人の会員がおると思いますが、年間十二、三億を売っております。本当にわずか二十アール、三十アールの農家でも、法人とまではいっていないんだけれども、いわゆる一つの組合組織の中で、一つの目的のためにやれば、地域の消費者にそういった安心で安全で新鮮なものが年間十二、三億供給できるということは、地域の農業を支える本当に力になっておると思います。

 そういう意味で、今回の法制度の、担い手に対する制度は、農家がやる気を起こして、私もひとつ経営規模を拡大して法人化していくよとか、担い手になっていくよとか、そういう機運が出てくる一つのスタートラインだと思えば結構なことだと私は思いますが、当面は、即効果が出てくる問題ではなかろうと思います。

黄川田委員 時間でありますので、終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。北海道出身でございます。

 本日は、四名の参考人の皆様から、本日議題となっております四法案について、現場からの率直な御意見を賜ることができまして、心より感謝を申し上げます。

 四名の方々、それぞれ、法案については賛否両論、御意見の違いがございました。一つには、農業を経営という概念から見るのかといいますか、経営という概念を農業政策の優先順位の高いところに持ってくるのかどうか、この点で御意見が分かれているのではないかというふうにも感じながら、お話をお伺いしておりました。

 そこで、まず、山浦参考人にお話をお伺いさせていただきたいと思います。

 山浦参考人は、農業構造改革の結果が農業、農村の維持発展に役立つかどうか疑問だというふうに発言をされておりますけれども、大規模化、効率化というのが小規模農家を切り捨てるのではないかという懸念からこういった御発言になっているものと思います。

 しかしながら、現在の日本、少子高齢化が深刻でございまして、一次産業の後継者、担い手というのは非常に深刻な状況になっております。今後、日本の農業の安定的な発展に資するような後継者、そして担い手の育成ということをどのように考えていらっしゃるのか、この担い手育成という観点でもう少しお話をお伺いさせていただきたいと思います。

山浦参考人 お答えいたします。

 担い手の今後の育成につきましては、現在非常に私はチャンスではないかと思っております。

 といいますのは、アメリカ産の牛肉問題で、各国の安全基準の違い、安全対策の違いというふうなことがありますと、やはり日本の消費者としては、近場の、国産のものがいいのではないか、そういうふうな世論調査の結果も出ております。それから、従来から、日本の国産の農産物をどうとらえるかということについて、なるべくそれを食べたいというふうな世論調査の結果もありまして、やはりさまざまな危機に直面しますと、日本の消費者というのは、安全で安心な農産物を日々食べたい。そしてまた、最近も、地産地消といった考え方とか、あるいは海外から運んでくるデメリット、さまざまなエネルギーロスがあります。また、日本は非常に食品ロスも多いわけでして、こういうふうな無駄なことをやっていいのか、最近ではもったいないという言葉もブームになっておりますけれども。

 そういうふうな食べ方の問題について、国民の意識というものは非常に最近高まっていると思いますので、私はこの担い手問題につきましても、日本においてやはり、例えば有畜複合の生産体制をもう一度見直してみる、畜産業において、日本の飼料を、えさをどうやってつくっていくかといった、そういうサイクルをもう一度考えるチャンスではないかと思っております。

 こういうふうに日本農業のあり方を考え直しますと、私が知っている人々も、例えば生協の職員だった若い人が結婚して農村でみずから新規就農をしている例とか、さまざまな新規就農の若い人たちの活動ということを見聞きしておりますので、やはり高齢化が進むことはあるわけですけれども、一方で、新しい試みとして、自分たちが日本の消費者の食を支えるんだといった、そういう人たちの意欲というものは出てくる可能性があると思うんですね。

 したがって、現在、そういうふうな新規就農についてのさまざまな措置を手厚く考える、あるいは日本の農業をこれまでのやり方ではないものに変えていくというふうな大胆な提案をすれば、かなりこれからの後継者問題ということもいい方向に出てくるのではないかと思います。

 そういうふうに、全体的に農業を見直すという中で、新規就農の問題なども考えて、後継者問題も考えるということは、非常に私は有望な視点ではないかというふうに考えます。

丸谷委員 ありがとうございました。

 同様に、担い手育成という観点から、岩瀬参考人にお話をお伺いしたいんですけれども、岩瀬参考人も、専業農家五十年の経歴について先ほどお話をお伺いしまして、大変に感銘を受けました。

 また、JAひまわりですとか、あるいは現在のNPO法人の活動の資料を拝見していく中で、特に私が感動しましたのは、積極的に女性の力を活用されて、それを実績として挙げられている点です。JAの経営、運営体制の中に女性の参画が少ないということが議論となっている中で、本当に率先して女性の力を取り入れられてきた、あるいはJAの青年部の皆様と一緒に日ごろからいろいろな新しい試みをされているものと思います。

 こういった試みによって担い手の育成に資するところが多いと考えますけれども、この担い手育成の観点から御意見をお伺いしたいと思います。

岩瀬参考人 お答えを申し上げたいと思います。

 私どもの農協では、早くから女性の活性化に取り組みました。恐らく全国で一番早く産直活動に入ったと思います。私が常に言ってきたことは、現実に地域の農業を支えるのは、一種、二種、兼業を含めて、女性が圧倒的に多いわけですよね、これを戦力にしない限りは地域の農業の活性化にはならないと。ですから、農協の正組合員も、一軒二人正組合員制、どんどん正組合員にしなさいよということでやってきまして、恐らく全国平均をはるかに上回っておると思います。

 担い手の育成で一つだけ、私が体験しておることを申し上げたいわけですが、今、三十一歳になる青年が私のところへ農業を勉強に来ております。彼は、私のところへ来る一年前の三月まではサラリーマンでありました。それから一年間、県の農業大学校で就農のための基礎勉強をしてまいりまして、私が学校から頼まれて、午前中三時間の授業をちょっとやってくれということでお話をしておるときに、三十数名の生徒の一人として一番前列におった人なんです。一週間ほどしたら、岩瀬さんのところで農業の体験実習をさせてくださいということで飛び込んできたので、私も、申しわけないけれどもちゅうちょしたんですね。ということは、今農業が厳しいですから、あくまで研修生で無料ということで来てくれればいいんですが、彼も家庭を持っておりまして、生活がかかっておりますから、若干の費用は払わなければならない。そうすると、彼の年間所得だけ私のところの収入は上がらないわけですよ。私は、恥ずかしい話というよりか正直な話で、自分の年金の一部を彼に出しているわけですよね。言っていることは、必ず君が将来日本の農業の一人の後継者に育ってくれよ、そうすれば私の犠牲は報われるということで、一緒に今仕事をしております。

 そういう人が、一年の研修を終えてどんどん農業の世界に行こうという人が、愛知県の農業大学だって三十数人おるわけですよ。全部が成功するとは思いませんけれども、ただ、そういった新しい、未知の研修生が就農した際に、最後まできちっと面倒を見てくれる仕組みがないわけですね。

 今、農業を一人の青年がやろうとすると、トラクター一台買えば三百万、三百五十万、ほかの機械もろもろ入れて、格納庫まで入れると一千万の金が要るだろうと私は踏んでおるんですよ。それがなくしては、農地とは別に当初資本がなくては就農できない。そこまで面倒見る人が、行政にもあるではなし、農協団体にもあるではなし、結局そういう余力のある人しか入っていけない。しかも、農地は全部借地になりますから、地主さんに、彼が六十まで三十年間、安定して農地を貸していただければ結構なんですが、いや、五年更新の契約ですよといったときに、彼は一生懸命土づくりをしたけれども、五年、十年たったら返してもらうよという話になったら、その子は挫折する。現場では、こういう問題も起きておるわけです。

 それから、私、豊川市なんですが、相続で権利を主張して農地をもらって、東京におる相続人が農地をもらって、耕せるわけがないわけなんですね。そういう非農家の耕作放棄地が際立って多くなってきた。その実家の後継ぎさんも、農家でやっていないからつくることはできない。こういう耕作放棄地の現状を見たときに、今、後継者の問題も含めて何とか考えなければいけないという深刻な問題が現場にありますから、私どもが、先ほど申し上げたとおり、NPO活動の中でそういうところを何とか打開していこうじゃないかということで勉強をしておるところでございます。

 ありがとうございました。

丸谷委員 ありがとうございました。

 続きまして、食料自給率と食育という観点からお話をお伺いいたします。

 まず、合瀬参考人にお話をお伺いしたいと思います。

 合瀬参考人におかれましては、一次産業、現場である農家と消費者といいますか視聴者、いわゆる消費者の皆さんとを結びつけていただいているお仕事をしていらっしゃること、非常に重要なことだと思います。

 今ほど、BSEの不安を初めとして、消費者の皆様が食の安全と安心を求めている時期はないと考えております。それだけに、今、食に対する関心が高いわけでございますけれども、実際に食料自給率を高めていくということは、生産面からの考え方では私は不十分だと考えております。需要面からこの自給率というのを考えていかなければいけない側面もあるわけでございます。

 もちろん、食料自給率、日本にとって、高ければ高いほどいいわけでございますが、需要面から食料自給率を考えたときに、政府の四五%という案が私は妥当であろうというふうに考えるわけでございますけれども、こういった視点で何か御意見があればお伺いしたいのと、同時にまた食育については、基本法が制定をされ、基本計画が先日制定をされたところでございますけれども、番組づくりの経験を生かして食育のあり方について何かアドバイスがあれば、お伺いいたします。

合瀬参考人 御質問にお答えいたします。

 テレビで実際に食べ物番組をやっておりまして感じるのは、本当に消費者が自分の舌に自信がないというか、自分の感覚がなくなってきていると思うんですね。ですから、すぐ情報に流されるといいますか、私どももいろいろな食材を取り扱いますが、テレビで取り上げると電話が殺到しまして、大体二百件とか三百件とか来て、その農家はすぐに売り切れということになるわけですね。

 生産者、消費者両方の、こういう状況にはあれがあると思うんですが、一つは、消費者が本当に自分の、本当に食の現場と農業というか生産の現場とが離れて、自分で食べ物を食べたり、かいだりとか、そういう感覚がどんどんなくなっていく。結局は、やはり情報に頼らざるを得ないということになっていて、そういうテレビで流される情報に、私も流す一人ではあるんですが、右往左往するわけですね。まずは、やはりそうしたことへのきちんとした情報を消費者に持ってもらう。

 それともう一つは、今の人たち、本当につながりということを考えるのが下手です。つながりといいますか、今自分が食べているものが一体どうやって生産されているかとか、ここに来るまでにどういうふうになっているかという想像力というのがすごく低下しています。

 これは、一つには、二十世紀に非常に効率化社会を目指した。物事は今まで、分断すればするほど効率だというふうに言われてきたわけですね。その中で一生懸命やる。ところが、その中にいると、今度は全体が見えなくなってくるんですね。

 今、本当に子供たちにというか消費者に教えなきゃいけないのは、つながりというか、物はつながっているんだ、生産者と消費者もつながっているし、地域ともつながっている、そういうことをやはりきちんと伝えていかなければならないというふうに考えまして、私はテレビをつくっております。

 以上です。

丸谷委員 ありがとうございました。

 では最後に、時間も参りましたので、忠参考人に同様の質問をさせていただきたいと思うわけでございます。

 食料自給率の目標の設定と、また、需要の観点から、非常に重要なことだと考えますが、忠参考人はどのようにお考えになるか、この点をお伺いいたします。

忠参考人 お答え申し上げたいと思います。

 自給率は高ければ高いにこしたことはないとは思いますけれども、今、国民の多くがいろいろな機会、いろいろな情報があって、それを選択するというのも、これもまた自由かなというふうに考えてございます。

 私どもはあくまでも、生産するときに、もう既にこれはどなたにお届けするんだということをある意味では決めて、それでその方々の御意向も踏まえながら生産しているという、いわゆる消費者と生産の信頼関係を既に構築しながら進めている、こういう経営スタイルをとってございます。こういった生産と消費のあり方がどんどんどんどん広がっていけば、おのずと食料自給率も向上していくのかなという気がしてございます。

 食育に関しましては、地域の小学校に招かれることもありますし、小学校の社会科の授業で私どもの農業を訪れてくることも多くございます。そうした身近なつながりが一番私は大切なのではないかな、それともう一つは、家庭生活において、親が子にしっかりとした食事をまずとらせるということも大事なことかなというふうに思います。

 以上でございます。

丸谷委員 以上で、質問を終わらせていただきます。

 四名の皆様、どうもありがとうございました。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 参考人の方々、本当に、自分の実践をもとにして意見陳述なされましたことに、心から敬意と感謝を申し上げる次第でございます。

 最初に、忠参考人にお聞きいたします。

 先ほどの話の中で、二ヘクタールから、現在、六十八ヘクタールという規模拡大を二十年かかってやってきたという状況を知ることができました。ただ、今の法律案が施行されてみんなが直面する課題というのはこのことだというふうに思っております。二十年かかってここまで来たと一言でお話しなされていましたけれども、並々ならぬ苦労があったのではないかなと私は察するわけでございます。こんなに簡単にいく話ではないなというふうに思っているわけですけれども、農地集約への苦労などについてお話しいただければと思います。

 そして、今後、日本農業は若者に引き継いでいかなければ持続的発展というのは考えられないわけですけれども、若者へどう引き継いでいかれる考えなのか、その点についてお聞きしておきたいと思います。

忠参考人 お答えをいたします。

 当初、五人で始めたときが十五ヘクタールほどでございました。それが今、先生おっしゃいましたように、二十数年かけてこの面積にということでございました。

 私ども地域で農業をしておりますと、やはりいろいろ、だれかが作業受託組織を立ち上げた、だれかが田んぼをお借りして規模を拡大していくというのがぽつぽつとあらわれ始めますと、では、私もやってみようという農業者も、多くはありませんけれども、出てきます。

 そういった方々とうまく調整を図りながら、人に田んぼを任すという、農業者の心理から考えれば、恐らく年をとられた農業者の方ほど人に田んぼを預けるということは、農家の恥みたいな思いはあったんでしょうけれども、やはり、できないとなれば、それをだれかにゆだねざるを得ない、そういうのが徐々に浸透してきたのかなというふうに私は思っております。

 いろいろな制度、施策も用意はしてくださって、徐々にそれも整備されつつありますけれども、まずは農家のそういった、ある意味での踏ん切りといいますか、それをどう引き出すかといいますか、思っていただけるのかというところが一番大事なところかな、信頼関係を築きながらそういった活動をしてきたわけであります。

 ただ、今のところ、その圃場は他の市町村も含めまして八カ所に分散をしているというのも事実でありまして、新しい施策が進むとすれば、今度はそれをなるべく効率のよいところに、交換分合等しながら、それこそ集約していくということが必要になってくるかなという思いもしてございます。

 若い農業者に対するメッセージでありますけれども、私のところにも、過去、十名近くの、短期、長期にわたる研修生が出入りをしました。中には従業員になった者もございます。一番大事なことは、農業への思い、やる気、能力はもちろんでありますけれども、もう一つ、覚悟を持って臨んでほしいなということを期待しますし、それにこたえるためには、しっかりとした経営基盤をつくり、従業員としてそこで働く者の生活をある程度保障してやれるということが大事なのではないかなというように考えてございます。そうした形態がしっかりとそこにあれば、当初、従業員であっても、場合によればのれん分けしたりしながら、新たな担い手が育っていくのではないかな、そんなふうに思っております。

菅野委員 どうもありがとうございました。

 次に、山浦参考人にお聞きしますけれども、これまで消費者の立場から農業というものをずっと見詰めてこられたし、実践なさってこられたということは承知しておりますけれども、やはり、将来の日本の農業というのは有機農業という形で展開されていくべきだと私も感じているんですけれども、今回、農地・水・環境保全対策としてその方向が示されております。このことに対する評価をどのように考えておられるのか、このことによって有機農業が進んでいくというふうにとらえているのかどうか、その点について考え方をお聞きしておきたいと思います。

山浦参考人 お答えいたします。

 やはり、実効性の確保がどれだけできるかということがかぎになると思うんですね。有機農業という言葉自体、社会的に公認されてきたのがここ数年のことではないかというふうに考えますけれども、例えば、EUにおけるこういった持続可能な農業、有機農業といった言葉が既に定着していたように、やはり日本社会においてこの重要性ということをもっと拡大、定着させていかなければいけない。そのためには、やはり、何といっても予算措置だと思うんですね。今回さまざまな予算措置も始まると思うんですけれども、この有機農業というものを中心に据えるような大胆な予算提案がなければ、これはなかなか進まないのではないかというふうに思います。

 農産物をつくった場合に、いろいろなハンディが出てきてしまうということは当然あるわけでして、そういったことに対して、当面の間、さまざまな助成措置をとるということは当然必要ですし、それから、日本農業の構造的な問題としても、しっかりとした有機農業に向けた予算措置をとって政府が支援をしていく、自治体が支援をしていくといったシステムをどうつくっていくかということがまず大事だと思いますので、機運が出てきたということ自身については私は評価いたしますけれども、要は、やはり実効性をいかに確保していくかということだと思います。

菅野委員 消費者の安全、安心ということに注目していけば、今後の農業の方向というのは、有機というかそういう方向に進んでいくべきだというふうに思っていますし、私も、これからの大きな政策課題として掲げて取り組んでいきたいというふうに思っています。

 次に、合瀬参考人にお聞きいたしたいというふうに思っています。

 産業政策として今回の政策は評価する、もう一方で、地域政策として農地・水・環境保全対策というのが存在して、これが車の両輪だということで評価なさっておられるんですが、実際に、先ほど黄川田委員も話していましたけれども、中山間地域農業が耕作放棄地が目立っていて、集落の崩壊という状況にまでつながっているというふうに私は思っているんです。

 合瀬参考人、私も、NHKの日曜日の朝、ちょいちょい見て、条件のいい地域で成功した例は紹介していますけれども、本当に中山間地域で苦労している実態というのもあわせて報道してもらえればなというふうな思いを持っているんです。

 実際に、農地・水・環境保全対策が中山間地域農業にどういう役割を果たしていくのか、私は期待はしているんですけれども、合瀬参考人の考え方をお聞きしておきたいというふうに思っています。

合瀬参考人 質問にお答えいたします。

 農地とか水の環境政策の方は、今現在法案にするための研究会を立ち上げてやっているところでありまして、現在は単価まで決まったんでしょうか、四千四百円を出すと。地域で混住化が進む農村の水なり資源を、これからもずっと続けていけるように保全をしていくんだというふうに理解しているんですが。

 先ほど先生、番組でも中山間地の苦労を扱ってほしいということだったんですが、実は「たべもの新世紀」の三回目か四回目に群馬県の甘楽富岡の例を放送させていただきまして、ここは、先生御存じのように、中山間地といいますか、非常に山が入り込んで、もとは桑畑だったところなんですね。すごく高低差がありまして、本当に山にへばりつくように畑がずっとあるんですが、実はそこで今、直売といいますか、そういう取り組みをされております。

 そこは、小さな畑というか、高低差がありますから、野菜が順々にいろいろなものがとれるわけですね。逆に、それを生かして、例えば朝どり野菜というふうに称しまして東京の三越だとかそういうところに出荷されて、今非常に農村が活性化している。そこは小さい農家の人たちの集まりですけれども、知恵を絞ればそういうことができるというのが番組のメッセージだったのが一つと、そこは桑畑なりコンニャクをつくっていて、どんどんそれまでの自由化とかで痛めつけられたといいますか、疲弊した地域だったんですね。でも、そういうところから、そういう狭い土地を、高低差を利用してそういう知恵が出てきた。私は、そこに地域の底力といいますか、日本人の工夫というのがあるんだろうなと。ですから、決して中山間地だからいろいろな工夫ができないということではないと思うんですよね。

 日本は、これだけ北から南までいろいろな風土があって、それを生かした農業というのが非常に盛んです。本当に地方を見てみるといろいろな取り組みをされています。重要なのは、やはり地域の自分たちの資源というものは何か、自分たちの強さは何かというものをもう一回考え直して、地域の人たちが力を合わせてもう一回その価値を全国にアピールしていく、そういうことなんだろうと思います。

菅野委員 地域の創意工夫でやっていくということは本当にわかるんですけれども、中山間地域農業には、私たち世代が、農家を引き継いでやってきたその世代が、若者に農家を引き継いでいこうという形で呼びかけられない。だから、今の団塊の世代以上の人たちが中山間地域から姿を消したときにそこの農業がどういうふうになっていくのかというのは、私は危機的だというふうに思っているんです。

 そういう意味における政府の支援というものがどうあったらいいのかということで、一つは、農地・水・環境保全対策というものに注目はしているんですけれども、これで十分なのかなという思いは持っているんです。本当にこれが、この制度があるから、若い人たちに、一緒にやっていこうという形で呼びかけられるのかなという思いをいたしているんですね。だから、今の就農者は創意工夫してやっていけるんだろうけれども、ここまでやったよ、だから一緒にやっていこうという声がけができるかどうかというところが、今の日本全体の農業の持っている、農業というよりも第一次産業の持っている業病だと私は思っております。そういうことを申し上げながら、一緒になってこれからもしっかりとした体制を築いていきたいなというふうな思いを申し上げておきたいと思います。

 それから、最後になりましたけれども、岩瀬参考人にお聞きいたします。

 先ほどの意見陳述でも、やはり日本農業の主体は家族経営的な農業というものがずっと引き継がれてきたというふうに思っています。ただ、それが今回の政策によって担い手に集中していこうという政策に切りかわっていくわけですけれども、やはり根底は家族経営的な農業というものでやる気のある人をどう育てていくのかということだというふうに思うんですが、これまでの経験からして、家族経営的農業をどのように持続させていこうと考えておられるのか、そして今回の政策がこのことにどういう影響を及ぼすと考えておられるのか、この点についてお聞きしておきたいと思います。

岩瀬参考人 お答え申し上げたいと思います。

 私は、家族農業が日本農業の基本だということを申し上げてまいりましたし、ずっとそういうことで考えておりました。しかし、今の現実を考えて、ここで農政改革、農業構造改革が断行されようとするとき、一つの選択肢としては至極当然だろうと思います。

 ただ、政府なりどういう機関がこうだよという仕組みを示して、果たしてそれにうまくマッチして現場が回転していけるかということは、これまた別問題になるだろうと思います。というのは、うちの息子にはもう農業なんか、まあ、おまえの好きなようにやれよ、農業なんか継いでくれぬでもいいよと言う親が大半なんですよね。それは、今の現実がそうであるからということなんですよ。

 だけれども、私の地域でも生まれておるんです。家族農業を一生懸命やっていく、では、私と君とだれとやって会社をつくろうじゃないかという機運ももう出ておるんですよね。ですから、そういうふうに、本当に農家の考え方が変わって、将来は農業の時代が来るよという夢と思いが非常に大事であるし、農業というのは、私もそうなんですが、五十年の中で、一銭にもならぬものを、小麦なんか、当時一町二、三反つくっておったんですが、みんな火をつけて、三十年の間に二回あったんですよ。白菜、キャベツをみんなトラクターの下敷きにしたことだって、二度や三度じゃないですね。だけれども、農家というのは、来年、時が来ればまた同じように麦をまき、種をまいてきたんですよ。それは農業者としての思い、私はやるぞ、そんなことじゃへこたれぬぞという思いがあったんですが、今はやる前から、私やめたという人間ばっかりになっちゃったという問題が農村地帯に非常にあるということであると思います。

 ですから、私は、家族農業をしっかり構築して、そこから自然に企業的農業が出てくることを期待したいと思うんですが、あくまで、今のこの時点では、農家に夢とやる気を起こさせるということが非常に大切だと思っております。

菅野委員 どうもありがとうございました。これで終わります。

稲葉委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

稲葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案審査のため、午後の参考人として、農事組合法人酒人ふぁ〜む理事福西義幸君、専業農家土門秀樹君、前時事通信解説委員・株式会社農林中金総合研究所顧問野村一正君、全日本農民組合連合会副会長鎌谷一也君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、福西参考人、土門参考人、野村参考人、鎌谷参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、福西参考人にお願いいたします。

福西参考人 それでは、ただいま委員長の許可をいただきましたので、あわせて、このような場所で意見を述べる機会を与えていただきまして、先生方に我が集落等々の取り組み内容等について、あるいは今提出法案について私の意見を申し上げとう存じます。

 それでは、早速でございますが、我々の集落内部の取り組み等々ということで、きょう、手前勝手な資料なのでございますが、先生方の方に、こんなパンフレットと、それからもう一部「「人の輪と集落の和」で農地を守り「儲ける農業」にチャレンジ」と銘打った参考資料をお届け申し上げておると思うんですが、その内容についても触れながら意見を申し上げたい、このように思っております。

 まず、見ていただきますと、このパンフレットは、我々の集落内の取り組み内容を説明させていただきますと同時に、今我々の集落でも、今後農業を続ける上で、これが一番キーだ、これが大変だというところをまとめ上げた中の、何を隠そう販促グッズです。そういう意味合いの中でごらんを賜りたいな、こんな感じに思います。

 申しおくれましたが、私は、農事組合法人酒人ふぁ〜むの理事で福西義幸と申します。忌憚のない意見を申し上げますので、よろしくお願い申し上げます。

 では、まず我々の集落あるいは農事組合法人として等々の考え方の中で、食料あるいは環境も、あわせて私どもの集落が持っています農村の景観等々がすべて輸入できれば、我々の地域に集落営農というものができなかった。あわせまして、我々の集落の中で、農地の相続人、農地の権利者じゃない農地の相続人の価値観の違いが、我々の集落の中で集落営農組織を生んだと言っても過言じゃない、実はこんなふうに考えさせてもらっています。そういった内容等々につきましては、コピー刷りの資料の中に多少ドキュメンタリータッチで書かせていただいておりますので、後でまた先生方の方でお目通しを賜りたいな、こんな感じに思わさせていただきます。

 まず最初に、では、我々が集落営農そのものを語るときに、農村集落、我々は酒人という農村集落なんですが、農村集落酒人のことを語らずして集落営農を語ることはできない。何でなのと言われますと、それは、我々農村集落、全国津々浦々ありますすべての農村集落が持っています農村集落の持つ機能、このことを語らずして集落営農なり農業そのものが語れない、こんな感じに思っていますものですから、そんな申し上げ方をしております。

 我々が集落営農をどういう形の中で位置づけていくかということは、まず一つに、まさに集落営農そのものは、農村集落を支える手段であるというふうに位置づけています。

 なぜなのと申されますと、先生方、お考えください。大型あるいは大規模農家等々にとりましても、我々がやっています農業法人にとりましても、集落機能がなくては米づくりはできないんです、残念ながら。こんなことから、何度も申し上げますように、集落営農のことを語るについては、農村集落のことを語らずして集落営農を語れない、これが大前提でございます。そんなことの中から進めてまいりたいなと思います。

 よく誤解を受けるんですが、我が集落に集落営農組織の話があるよ、その話が大きくなれば、その中で今日まで農業を続けてきた認定農家なりあるいは大規模農家がぶっつぶれるんじゃないかというような、それこそきな臭い話も場所によっては出ていますが、これはもう全くの見誤り、考え違いでございまして、私は、そのもとはどこにあるかと申しますと、そういういろいろな不穏材料を打ち消すためには、その集落内での話し合い、これがかぎだと思っています。ややもすると、そういうニュースが流れています地域あるいは集落については、そういった話し合いができていないんです。

 それはなぜかと申し上げますと、大規模の農家さん、それから認定農家さん、我々のような集落営農組織も、みんなあわせてその地域、その集落の住人、一員なんです。その地域から離れては生活することができないんです。だから共存体制をとるしかほかにないんです。共存体制がとれないというのは、地域の話し合いができていない、まさにそうじゃないかなと思っています。

 それはなぜかと申し上げますと、想像してみてください、米づくりの圃場というのは全部水路でつながっているんです。つながっていない農地というのはないんです。その中で、二者なり三者がいかに話し合って、いかに効率のいい農業をやっていくのか、これがその地域におけるかぎ、こういうふうに見ています。

 したがいまして、そんな雑念は全く捨てていただいて、我々のような弱小農民の集合体は集落営農で、大規模に立派にやっておられます農家さんは大規模農業で、認定農業者さんも含めて地域全員が、あるいは地域全体が将来に夢の持てる農業経営をやっていきたい、恐らくきょうはそのための法案審議をやっていただいているんじゃないかなと思っています。まさに、我々集落営農組織等々におきましては、今法案審議が今後これから我々の生きる道、こんなふうに一部認識もしています。

 そんな中で、言葉がなかなかまとまってこないんですけれども、よろしく御審議の方をお願い申し上げたい、こんな感じに思っています。

 もう一点だけ申し上げておきます。

 集落営農組織というのは、集落あっての集落営農組織ですから、経理の内容でちょこっとだけ触れておきますと、我々の集落には実は二つの財布がございます。農村集落酒人の財布が母の財布とするならば、農事組合法人酒人ふぁ〜むの財布はおやじの財布なんです。どちらにしろ、集落内でのお金、母の財布から父の財布に移る、これは貸借勘定の動きでございますから、損益勘定には影響しない経理本体を二つ抱えながら、いかに効率のよい農業を進めていくかが我々集落営農の課題であり、今後の取り組みの施策、方策と考えています。

 そんな中から、今回の法案は、先ほど申し上げましたように、まさに今日の日本農業を変え、国民の食料を生産する意欲と生きがいを持った農業者や我々のような集落を生む法案であると考えています。

 ちょうど時間が参りましたものですから、私の集落内容の報告と、今審議されております各法案、特に担い手経営安定対策法案への御意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、土門参考人にお願いいたします。

土門参考人 どうも皆さん、初めまして。

 私、山形県の日本海側の一番北部の町、遊佐町から参りました。実は私は東京の出身でして、二十年前に婿入りして、そちらの方で農業を始めた者です。現在、面積にして三ヘクタールの稲作と約六百坪の切り花をつくっております。ちょうど今月は田植えの準備がピークでして、私にとってみれば一年のうちで三番目に忙しい月であります。きょうは、往復十時間かかるんですけれども、やってまいりました。それはひとえに、皆様に行政あるいは農協のフィルターを通さない生の現場情報をお届けしたいという気持ちで参りました。

 なお、お手元に資料があると思います。一番上に「コメニケーション」と書いた資料ですけれども、このたび法案関係の資料を私はどっさりいただきまして、そのお返しにしては本当にささやかなものなんですけれども、ぜひ目を通していただきたいと思います。

 きょうお話ししたいことは二点です。

 まず一つは、今回の法案で担い手を絞り込むというのは、私も実は賛成なんです。しかし、その対象のピントがずれてはいないか、かなりぼけているんじゃないかな、そんな気がしてなりません。そういうことについて、まず一点です。

 それからもう一つは、私のような自立経営を志向しているプロの農業者、あるいはこれから新しく農業を始めようという若い人たちに夢を与えてくれるような本当に公平な仕組みとはどんなものかなと私なりに考えたことをお話ししたいと思います。

 まず一点目なんですけれども、最近、専業農家、プロ農業者が経営的に大変ピンチであるという話をよく聞きます。私自身もかなり苦戦しておるところです。農産物の価格の低迷が続きまして、時給、この場合の時給というのは時間給です、一時間当たりの所得ですね、これが大体千円前後です、畜産を除いて農業全般的に見ますと。こういう世界では、プロとして生計を立てるということは非常に厳しいのが実情でして、我々とすれば、食料自給率の自給よりも、時間給の時給の方がはるかに重要な問題なんです。

 ちなみに、皆様、自分の所得を一度時間で割ってみていただきたいと思います。私は、常に時間給を考えながらやっております。皆さんの仕事はいいななんて思うこともあります。このままでは、恐らくプロ農業者は、時給五百円でも耐えられる生きがい農業者とか、年金を受けている年金受給者の農業者に駆逐されてしまうのではないかということを非常に心配しております。

 では、果たしてプロ農業者、これは日本の農業にとって必要ないんでしょうか。これまで技術の先駆者として、あるいは地域のリーダーとして大いに貢献してきたのはこのプロ農業者だったはずです。この先もプロ農業者は、恐らく、日本の農業を進化させる一番の原動力として期待されるんじゃないかと私は確信しております。ですから、守るべき担い手というのは、第一にプロ農業者というふうに考えています。

 今から、我が家自身をまないたの上に上げまして、説明させていただきます。

 今回の法案の仕組みによれば、プロの農家は原則的には、私のようなプロの農家、本当は認定農家だったらいいんですけれども、まず面積的にいいまして、我が家の場合、四ヘクタールありません、三ヘクタールしかないのでクリアできません。土地を借りればいいじゃないかといいますけれども、私の方の地域では土地が簡単には動かない。どうも皆さん勘違いされているようなんですけれども、農業の活発なところというのは土地が動かないんですね。むしろ中間地、山間地とは言いませんけれども、中間地ぐらいのところが非常によく土地が動いています。我々のところは土地の売買、貸し借りというのはなかなか進みませんで、我が家もずっと現状維持で、自作地三ヘクタールでやっております。

 あと、私は現在認定農業者ではありません。実は以前は認定農業者だったんです。我が遊佐町でも本当に真っ先に認定農業者になりまして、いろいろと将来に夢を抱いてやっていたんですけれども、実は昨年の秋、認定取り消しの通知を役場の方から受けました。理由は何かというと、おまえは減反一〇〇%消化していないだろうと。確かにそうなんです。

 今から四年前までは、ずっと私も減反に協力してまいりました。ところが、どうしても我慢できなくなったという理由は、あの稲経というやつですね、稲作経営安定化基金、あれができまして、稲経というのは名目は基金なんですが、生産者が一出すとなぜか四戻ってくるという非常にありがたい価格補償制度で、周囲の農家というのはみんなその恩恵を受けていまして、とにかく米価が毎年下がっていたものですから、かなりの金額を獲得してきました。

 しかし、我が家のように農協にもあるいは卸業者にも出していない、それで小規模ながら直接販売をしている農家というのは、そういうのに参加できなかったんです。となりますと、減反協力しても何にもメリットがないじゃないかということで、減反をしないことに決断したんです。ちなみに、役場に、じゃ、どうしたら復帰できるんだいと言ったら、今まで四年間全部さかのぼってやってくれと。それはちょっと無理ですね。我が家の場合はもう既に固定客を抱えていまして、米を供給しないわけにいかないものですから、とても四年分はさかのぼることはできない。

 ところで、認定農業者というのは、これは地域のビジョンに基づいて、地域で認められなくてはならないわけですけれども、果たしてだれが決めるのかといいますと、役場、農業委員会、そこに農協が絡んできております。それが実際です。最近非常にはやっているようですけれども、農協と役場のワンフロア化、我が町もそのワンフロア化になっておりまして、どうも役場に足を運びづらい。農協に出していない生産者は、そのわきを通っていくというのはなかなか行きづらいような関係になっております。その結果、私どものような中ぐらいの規模で直接販売で自立している農家というのは、まず蚊帳の外になってしまっているというのが実情です。

 そんなわけで、認定農業者の面からも、それから、さっき言った作付面積の規模からいっても、二重に今回の政策は我々にとっては閉ざされてしまっているということになります。このとおり、やる気は満々、能力もほどほどあると思うんですが、足りないのは所得だけという感じです。

 一方、地域を見ますと、担い手形成というのは、集落単位というのはやはりなかなか難しいようで、最近はやりの、この間、四月二十一日付の農業新聞に出ていました、岩手県紫波町の集落営農誕生、五百十五ヘクタール、こういう旧村単位の大きな地区特定農業団体、この方向でいくような様子です。経理面も農協が全面的にバックアップするということで、地区内の大半の農家に網がかかるわけで、お金もほとんど以前と流れが変わらないような感じです。ただ、唯一違うのは、私どものような真に自立して努力している農家に回ってこなくなったということだと思います。

 二点目の、それではどうしたらいいかということで、資料の最後の方につけましたけれども、私の提案ですが、やる気と能力を評価する最も公正な仕組みは、これは国家試験を含む資格制度をつくるということですね。人材さえ整えば、経営の規模拡大とかあるいは地域の農地管理というのは、おのずと後からついてくると確信しております。

 命をはぐくむ仕事というのは世の中にいろいろあって、はぐくむというか命関連は、医師、看護師、保健師、教師、調理師もそうかもしれませんが、みんな師の字がついています。農業に農師がないというのが、むしろ不自然ではないか。

 もしこの資格制度をつくれば、三つのメリットがあると思います。

 一つは、消費者の信頼が今以上に高まるというのは、検査とか表示義務は既に大分強く求められておりますが、所得がある程度高く、安定してきますと、まずモラルが向上する。それは非常に大事なことです。

 それから二つ目が、生産者の生産現場における努力を促し、それから誇りを持たせてくれるということです。現在、我々は、生きていくために、生産よりもむしろ売ることに力を入れる傾向があるんですね。どちらかというと商人化している。これは本来、職人の方がいいのではないか。いいものを、やはり安全なものをつくる。だから、そういう職人に徹しても生活が保障されるような方向に向かうのではないか。

 三つ目は、国民のだれもが、新規就農者もみんな、資格制度で所得がある程度保障されれば、成功するチャンスがあって、入ってくる。そうすれば、すべてのみんなが農業に対して理解を持ってくれるんじゃないか。例えて言えば、認定農業者というのが選挙でいえば地方区とすれば、農師の資格というのは全国区ですね。あるいは、大学入試に例えますと、認定農業者は、AO入試というのが最近あるんです、自己推薦して、面接を受けて、大学の要望に合った人は合格だよと。それに対して農師資格の農師というのは、これは一般入試。ですから、両輪あってもいいんじゃないかということで、我々にもぜひチャンスをいただきたいと思います。

 以上です。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、野村参考人にお願いいたします。

野村参考人 野村でございます。

 まず、本委員会が、現地視察も含めて、この農政改革関連法案の審議に大変力を入れているということに対して、敬意を払いたいと思います。また、そういう中で私の意見を陳述する機会を得ましたことを感謝申し上げます。

 私は、約二十年ほど時事通信というところにおりまして、農業問題を取材してまいりました。そういう経験から、今回の政策に関する私の意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 まず、今回の品目横断的対策の導入ですが、これは、申すまでもなく、WTOの規制強化の中で、削減対象とならない緑の政策に政府の支援をいかに移行させていくかというのが第一点だと思います。

 それから第二点は、従来画一的に、あらゆる農家、あらゆる作物に行われていた支援策、これを、対象農家を絞る、あるいは品目も関連した品目に集中していく、こういうことを行わなければならない、そういう情勢になってきたということが第二点の理由だと思います。

 とりわけ今回は、土地利用型農業、その農業の中で、農業を業として、なりわいとして将来にわたって継続的にやっていこう、こういう農業者を中核的な農業者として育てていこう、こういうところに特色があるんじゃないかなというふうに思います。

 実は、私が思うには、非常に重要なのは、その農業をなりわいとしてやっていくというところなんでございますが、私の取材経験からしまして、従来、農業政策というのは、地域政策的あるいは社会政策的な色合いと産業政策的な色合いというのが割と明確に区分されないまま運営されてきたというように私は思います。そういうことから、今日の社会情勢からすると、その政策効果というのがなかなか効果を上げ得ない、そういう問題点を抱えているなということは私も以前から感じておりました。

 そういう意味では、今回、農業をなりわいとする、その部分に重点を置くというのは、産業政策というものを明確に分離して対応していこう、こういう意味合いを持っておりまして、これは農政の上から見ると大変な大転換だというふうに思います。そういう意味では、私は、今回の対応、これは昨年十月にまとめられた経営所得安定対策等大綱の中でも示されておるわけですけれども、この方向は大変正しいものであるというふうに思います。

 また、品目、対象農業者が絞られているということも、いろいろございましたけれども、一定の財源の中で効果的に産業政策をしていくという面から見れば、これはある程度やむを得ないのかなというふうに考えます。

 今後の品目横断政策の課題でありますが、どの産業でも一緒ですけれども、産業が活性化していくには新規参入が活発に行われる、こういう土壌がないといけないということでございますので、この品目横断対策がより効果を上げるには、より自由に新規参入ができる、そういう運用が必要かなということが考えられます。

 それから、地域の実情を反映した支援策、これを実施できるかどうかだと思います。地域の特性を生かして農業を展開していくということがこれは欠かせないことでありますので、そういう面での対応をどう強化していくか、これからの必要なテーマかと思います。

 それから、最も重要なのは、従来、農業に非常に欠けていた需要者の側、消費者とか外食産業とか、それから食品産業、こういう需要者の側をどれだけ意識した生産構造に転換できるかということであると思います。

 また、消費者のニーズをつかむということがよく言われますけれども、実は消費者の側から見ると、農業、これは農林水産業はあらゆる分野について言えることですが、そういう農業の実態が十分知らされていないということが言えると思います。

 したがいまして、農業者の側からいかに的確な情報を発信し、消費者の的確なニーズの形成に資するか、それをまた生産者側がいかにうまく吸収して生産に反映させるか、そういう好循環の情報の流れ、こういったものをつくらないといけない。

 こういうことが行われない限り、この政策も有効には動かないのではないかという思いがいたします。

 また、今回の政策は、あくまで中核的な農家に対して経営を安定させるという支援であります。つまりこれは、経営を維持していこう、こういう色合いが非常に濃いというふうに言えます。したがいまして、このままでは日本の農業の進歩はとまってしまうということでありますから、真の経営者を一人でも多く育てる、自立していける、こういう方向にこれからどう政策を組み立てていけるか、そのための対策が必要であるというふうに考えております。

 それからもう一つ、私もいろいろな農家の意見、話を聞きますけれども、多くの意見として、複合経営という形が求められております。したがいまして、従来、野菜、果樹、畜産、今回、品目横断的政策の中に入りませんでしたけれども、そういう政策との連携、これをどう進めていくか、私はここが強く求められていると思います。

 さらに重要なのは、先ほど、品目横断的政策は産業政策である、そういう色合いが強いと申しましたけれども、私はそれだけで農業政策が進むとは思っておりません。したがいまして、従来からの社会政策、地域政策的な要素のある政策、こういうものを今後強化していくべきだというふうに思います。

 今回の政策の中には、車の両輪という位置づけで、農地・水・環境保全向上対策というのが提示されております。これはこれからまた恐らく審議されていくのでありましょうけれども、こういう分野に本当に力を入れていかないと、先ほども話がありましたように、産業としての農業、これが育っていかないというふうに思います。

 例えば、環境や景観、それから農業、農山漁村の持つさまざまな機能をどう生かすか、こういった政策もあわせて充実して実行していかなければいけない。また、産業政策としての品目横断的対策、車の両輪のもう一方の品目横断的対策、これらをどううまくかみ合わせながら連携させて進めていくか、今後の運用が重要であると思います。

 それから最後に、もう一つ非常に重要なのは、せっかくでき上がった車が順調に走っていくにはちゃんとした道路がないといけない。その道路に当たるのは農地対策であるかと私は思います。この農地の問題について、なかなか難しい問題でありますけれども、もうそろそろこの問題を抜本的に考え直していく必要があるのかなという気がいたします。

 以上、どうもありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 次に、鎌谷参考人にお願いいたします。

鎌谷参考人 全日本農民組合連合会の副会長をしております参考人の鎌谷です。よろしくお願いします。

 私は、農民組合のみならず、資料に少し紹介しておりますように、農協の事業運営や現場での耕畜連携の取り組み、それから水田農業推進協議会等に籍を置いて活動を行っている者であります。つきましては、日ごろの現場での活動を通じて感じている問題点とあわせて、今回の経営所得安定対策についても、今後どういう影響をもたらすか、非常に危機感と不安を持っているものであり、ぜひいろいろ意見をお聞き願いたいということで参加をさせていただきました。よろしくお願いします。

 早速、今回の法律についての意見を述べさせていただきたいと思います。

 第一点は、収入減の九割補てんという問題であります。

 現在制度としてあります担い手経営安定対策については、稲得の上に、さらに担い手経営安定対策として、収入の減少額の九割まで補てんするという絵がかいてありました。しかし、実際は、資料を一枚配っておりますけれども、表三を見ていただければわかりますように、十六年度の鳥取県の稲得、担い手安定対策での補てんは、基準との差額、減収率が一六・九%となっていますが、担い手で一〇・五%の補てんで、稲得だけでは六・五%にしかなっていません。つまり、一割以上の減収に終わっているというのが実態であります。

 こうなりますのは、やはり積立金の範囲内ということになっているからであります。今回の経営所得安定対策につきましても、一割をめどにしていわゆる積立金の基準以内ということがあります。そうなってくると、一割をめどに積み立てを行い、収入減の九割までということになれば、なるほど、九九%が補てんできるように見えるわけですけれども、実際はそうならないのではないかという危惧をしております。

 BSEの発生のときに、出荷牛の下落による所得減に対して、生産者も一部負担をしています積立金からの所得補てん、いわゆる通常のマル緊対策ですけれども、そのほかに、それ以上下落した場合は、特別マル緊ということで十割補てんする制度がありました。

 逆に言えば、今回の制度において、積立金が払えない、補てんができないという状況は、より深刻な事態になっているわけですから、十割といかなくても、農家の積立金の部分は差っ引いて、七五%ぐらいはぜひ国の責任において補てんをしていただいて、経営維持が図られるようにしていただければ非常にありがたいなと思っております。これは図一に参考として挙げておりますけれども、補てんできない部分、特に農業共済は七割から六割でありますので、ぜひ、そこら辺のところを考えていただきたいと思います。

 次に二点目ですけれども、ゲタとナラシの横断的な経営安定対策と言われていますけれども、地域や気象条件などを考慮すれば全く横断的と言えない実態にあるのではないかと思っております。特に、結果的には補助金と助成金が削減されて、鳥取で何をしているんだよという話になるかもしれませんけれども、我が鳥取県みたいな地方にとっては、農業そのもの、兼業農家の切り捨てにつながりかねない、農村も農業も崩壊しかねないという危惧を非常に持っているわけです。

 それはといいますと、例えば、鳥取県の場合、四月から十月まではほとんど太平洋側の降雨量と変わりませんが、通常、十月の後半から三月にかけて多雨降雪の状態に突入します。そのため、一時ビール麦をつくっていた時期もありましたが、表二を見ていただきたいと思います、麦はほとんどありません。さらに、大豆についても、全水田面積の三・九%の作付にしかすぎません。しかも、今回の安定対策で対象になろうと思います、品質向上の対象になっているのは、現在〇・六%であります。麦の〇・二%を入れても、経営所得安定対策の対象となる水田面積は一%弱にしかならない。たったの一%であります。

 これは、鳥取県の農業者が怠けているというわけではなくて、そういった気象条件や地域の状況があるということを考えていただきたいということであります。私が住んでいる町でも、九十ヘクタールや数十ヘクタールの水田を担っている認定農業者や法人もいます。しかし、先ほど申しましたような気候、地理的条件などで現状以上の作付になっていないのが現状であります。また、こういった現状を固定化するわけではありませんけれども、これまでも交付金や産地づくり対策があったにもかかわらず、こういった状態だということを認識していただきたいと思います。

 ですから、経営所得安定対策になったからこういったものがふえるのかといえば、見通しはありません。むしろ、鳥取の場合、認定農業者も、多分交付金水準は収穫が少ないわけですから従来より減額になることが予想されますし、それから、大豆の作付は減少することが懸念されている実態であります。といいますのは、最終的な決定は秋だろうと思いますけれども、大豆交付金は、収量や品質が全国水準と比べてどうしても落ちてくる、そのため、大豆の従来の交付金水準より下がる見込みですし、それから、米が少し高く売れても、ナラシ対策ですから、相対的に収益が下がるということになります。

 さらに、表四を見ていただきたいと思います。大豆の全体の作付は水田面積の四%弱の作付ですが、それでも、従来の大豆交付金があったからこそ、一ヘクタール未満の作付の小規模兼業農家がその面積の半数を担っております。ただし、新制度になれば、規模や品質などで経営所得安定対策の対象にならない可能性が高く、作付が減少する懸念すらあります。

 まさに、恩恵があるとすれば、価格下落のときの米しかないのではとすら思えます。しかし、その米ですら、基準価格の実態を見ると、売れる米づくりという名のもとで、地域間競争の中で衰退しかねないという懸念があるわけであります。

 つまり、三点目になりますけれども、都道府県別の基準価格による補償制度からくる問題であります。

 鳥取県の場合、ナシ等の果樹、あるいはスイカ、ラッキョウ、ブロッコリー、白ネギなど、かなりの農産物を生産していますが、水稲を中心とせざるを得ない地域もかなりあります。

 表五の平成十八年度稲得の基準価格や、最近の入札価格の下落を見ると大変なわけでございますけれども、全国の中で鳥取米は、地域のブランド力とか販売力の違いから、淘汰されざるを得ないのではないかという懸念すら出てくるわけでして、二千円から四千円の価格差というのは、産地間競争の中で、米作農家は非常に大変な状況に置かれてくるのではないか。そういった意味では、下限とか下支えの価格政策がぜひ必要になっていくのではないかと思っております。

 当然、米の生産性が高ければいいわけですけれども、中国山地の狭隘な地理的条件の中で、むしろ非常に難儀な状況にあるというのが実態であります。

 それから、第四点目は、所得安定対策となります農業者数や面積の見通しであります。

 表六に、これは各市町村ですけれども、各推進協議会での取り組み状況をまとめておりますけれども、非常に低いです。集落営農についても、とりあえず、行政的な支援にかかわりなくやっていかなければ集落がもたないのではないかという話をしておりますが、実際に今の集落営農を行っても、経営所得安定対策では、今の鳥取県の状況ではいかほどのメリットがあるのか、全く不明であります。

 ぜひ、そういった意味では、地域に応じた品目なり制度の修正をお願いしたいというぐあいに考えておるところであります。

 現状の取り組みについて、私のところは、二〇〇一年から、二十ヘクタール、現在は九十ヘクタールになっておりますけれども、いわゆる飼料稲に取り組んでおります。特に、農協でコントラクターを組織して、全面積の刈り取りのほかに、二十ヘクタールぐらいは田植えから全面受託という形でやっております。その中でいろいろな局面に遭遇するわけですけれども、今の農村の実態としましては、大変厳しい状況だと思っております。

 先ほど言いましたように、九十から五十ヘクタールを請け負っておる生産法人がありますけれども、カバーできておりません。ですから、耕作放棄地があります。これについては、つくらせてくださいということで私たちが頼みながら、何とか飼料稲をつくっておりますけれども、全般的に見まして、七十から八十前後のじいさん、ばあさんが水田を担っている。しかも、いずれかの連れ合いが亡くなったときには、水田が維持できず、全面委託という話が次から次に出てきております。

 中山間地では、一反規模の水田もあって、例えば、この五年間、二ヘクタールぐらい飼料稲をつくってきた専業農家がおりますけれども、最終的には、イノシシに荒らされ、今年はあきらめざるを得ないというような状況も出てきております。

 つきましては、所得横断と言われるのであれば、最終案では引っ込んだわけですけれども、民主党の骨子で出ていましたように、水田の利用及び総合的な環境保全対策、食料安全保障に着目して、飼料稲を中心とした飼料作物をこの中に入れていただきたい。特に、水田利用や保全の有効性、さらには、牛乳、肉の供給の重要なえさであり、自給率の向上という上でも、この横断品目の中に飼料作物を入れていただければありがたいかなと思います。

 あと、いろいろ訴えたいこともありますけれども、時間となりましたので以上で終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

稲葉委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丹羽秀樹君。

丹羽(秀)委員 自由民主党の丹羽秀樹でございます。本日は、質疑の時間をいただき、委員長を初め理事の皆様方に心から本当に感謝申し上げます。

 また、本日お越しの四名の参考人の皆様方、本当にお忙しい中、それぞれ専門的なお立場から御忌憚のない重要な御意見をお聞かせいただきましたことを心から感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。

 さて、今回の自由民主党の法案でございますが、まず、私が感じます点は、三点、非常にすばらしい点があると思います。

 まず一点として、担い手育成という面では、今後の日本の農業の担い手を育てる面では、この法案がやはり一番合っているのではないか。また、第二点目は、構成員の所得の確保、農業従事者の所得の安定、そういった面でも、この今回の法案が、今からでも、遅過ぎたと感じるぐらいの法案でございます。また、WTO交渉関係の中におきましても、今まで関税で守られた部分を今後は税金を使って農業を産業として育成しよう、そういった面においても今法案はすばらしいものであると考えております。

 まさに今回の法案、時期が遅過ぎたのではないかと感じるぐらい、今後の日本の活気ある農業、農業の構造改革へのスタートライン、やっと今始まったと感じております。少々、この法案の説明がわかりにくいということもございますが、そういった部分は除いても、今回の法案はぜひとも通さなければならないと考えております。

 そこで、質問の方なんですけれども、まず、福西参考人の方にお尋ねをしたいと思います。

 現在、集落一農場方式を始められた理由、またきっかけはどうしてかと。また、福西参考人の資料の方を見させていただきますと、滋賀県の甲賀市水口町、これはまさに、戦国時代の賤ケ岳七本やりの、長束正家の御地元であり、豊臣家臣団の中でも長束正家は財務大臣的な立場であったと思っております。さすが滋賀県の方は経営がうまい、うまくいかれるのかなというのもその辺があると思いますが、そういった面で、福西参考人に、集落一農場方式を始めたきっかけをぜひお答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、二田委員長代理着席〕

福西参考人 それでは、ただいまの御質問に対して端的にお答えを申し上げます。

 まず、我々が集落営農を始めたきっかけ、意見陳述の中にも若干申し上げましたけれども、基本的には、農村集落そのものをどうして守っていくんだ、あわせて農地をどうして守るんだ。我々の集落の若い世代、すなわち、今後これから農地を取得していく、あるいは相続していくであろう相続人が出した知恵なんです。

 きょうまで、我々の被相続人、すなわち現地権者世代につきましては、農外所得の中から何割かを差し引いて、農地あるいはうちを守ってきたんです。今後の、恐らく引き継ぐであろう農地の相続人は、みずからの農外所得の中から何割かを割いて農地を保全していくだけの余力がないんですね、残念ながら。そういった場合、どうやっていこうか、みんなが力を合わせてやるしかない、ただそれだけなんですが。それを、やはりバランスを見ながらやっていこうということに決めました。

 以上です。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 集落一農場方式を始められてよかった点と悪かった点、これは本当にあると思いますが、その辺、もしよろしければお答えいただきたいと思います。

福西参考人 お答え申し上げます。

 まず、悪かった点というのは何があったかなと思って探さなくちゃならないかな、こんな感じに思うんですが、一つには、確かにまずかったなと思うのは、農業意欲を非常に持っておられる農家の中堅世代をリストラした、これは確かに言えると思います。でも、そのまま続けておられたら今以上に借金がふえる、それをとめたというプラス要因もある。私は、そういうふうな感じに思っていますのと、集落営農によって集落が一つになった、これがメリットだと思っています。

 以上です。

丹羽(秀)委員 現在、農業だけではなくて、社会情勢も核家族化また個人主義化しておる。その中で、この集団農業を推進していくということが、今後全国おいても可能であるかどうか。例えば、今、参考人のところではできていると思うんですけれども、そういったことが全国で可能であるかという観点についても、ちょっとお答えいただきたいと思います。

福西参考人 お答え申し上げます。

 特に、価値観なり観点の違いということは言えるんですけれども、先生、一つ考えてみてください。先ほども申し上げましたお話の続きなんですが、本当に、二十代、三十代の前半なんというのは、私も含めてだったんですけれども、農地とは何ぞやということがわからないんですよ。農地とは何なんですかと。二十代の農家の跡取りに聞いたってわからないんですね。そこで我々の集落の葛藤が始まったんですが、農地というのは、あくまでも農業者が持っています事業用の資産なんですね。事業用の資産というのは使ってこそ値打ちが出るんです。すなわち、入居者のいないマンションが資産価値ゼロと一緒なんですよ。日本国の中から農家、農民がなくなったら、あなたが相続する農地ゼロだよと。それに決起したんです。

 それは共通認識、全国どこへ行ってもあると思いますから、私は、それに若い世代がいつ気がついてくれるか、それによって全国に集落営農ができると思います。

 以上です。

丹羽(秀)委員 また、集団農業の方が盛んになってまいりますと、今後、農業の株式会社化、また有効的、合理的ではないといった議論が出てくると思いますが、例えば株式会社が農業に参入してきますことによって、利益優先の農業が推進されていくことになってくる、私、そういった不安がございますが、その辺の不安がもしございましたら、福西参考人、お答えいただきたいと思います。

福西参考人 お答え申し上げます。

 先生、我々は農事組合法人という非営利団体を形成していますが、組織が安定的に維持存続できるためには、ある程度の収益、利益が必要なんですね。これについては株式会社も一緒なんです。私はそう見ています。

 ただ、土地利用型農業に株式会社が進出するかどうかは、私も何とも申し上げにくいところなんですが、仮に私が株式会社の社長であるならば、私は土地利用型農業には進出しませんね。一年に一作、一回しかとれぬというのは経営じゃなくしてばくちです。あえて我々はその産業を余儀なくされながら取り組んでいるのも事実ですから。

 以上です。

丹羽(秀)委員 私も、株式会社の農業への参加というのは、株式会社というのはもちろん利益が優先になってきますので、農業というのは利益だけでできることではないと思っております。ある程度義務感も忍耐も必要になってくると思いますので、そういった面では福西参考人と同じ意見でございます。ありがとうございました。

 また、現在、農業は担い手不足等でさまざまな問題を抱えていると思います。先ほどの福西参考人のこの資料の方を見させていただいても、若い世代の方がなかなか写っていなかったり、いろいろとそういった面で、農業には若者、特にフリーター、ニートの農業に対する関心を向けさせるという観点から、魅力ある農業への転換を図る上で、集団農業の効果、携わり方等でもしお考えがございましたら、こちらをお教えいただきたいと思います。

福西参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生、このパンフを見ていただきましたものですから、あわせて、一番最後のページの右下の方を見てください。

 これは、もう長くかけて、今現在、この右下に写っているのは幼年オペレーターなんて言っているんですけれども、保育園の年中、年長組あるいは小学生の低学年齢層。一年に一回もしくは二年に一回、お母さんともにこういった祭りを仕組んであげるんです。本当に、小さな子供、男の子、女の子と問わず、こういう機械に乗ったらおりませんよ、お母さんが幾ら呼びに来ても。私も、僕も大きくなったらこれで百姓やるねんと。恐らく、潜在意識をそこから高めておくということも必要でしょう。

 それともう一つ、あわせて、先ほども申し上げましたように、我々の集落の若者、このページ、一つ見開いていただいたところに茶髪の兄ちゃんが写っています。まさにこれが農作業をやっているんです。農業はやっていません、農作業をやっています。こういった茶髪の兄ちゃんの若い世代が、この作業をやることによって私の住んでいる集落の価値を上げることに貢献している、こういう意欲なんです。農業をやっているという意識は余りないんです、残念ながら。

 私の息子もオペレーターをやっていますけれども、笑い話なんですが、時給千二百五十円に日当がつくものですから、おやじ、あす土曜日、酒人ふぁ〜むで仕事あるかな、おお、あるよ、来い来い、後で女房に聞いてみると、いや、ゆうべパチンコでたくさん負けてきよってんというようなものなんです。それが私どもの集落のオペレーターの実態なんですが、それも一つの集落のコミュニケーションじゃないかなと思っています。

 以上です。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 私も家の方が農業をやっておりまして、小さいときに田植えの方をやらせていただいて、それで潜在的に農業が好きになったか、そう思っておるんですけれども、途中、田植えの最中で、私、またの間を蛇がくぐっていきまして、それで倒れてしまいまして、それ以来田植えがなかなか気が向かないというふうに、いまだに蛇も嫌いなんですけれども、そういったトラウマもあるんですが。

 今後の日本の社会問題として、少子高齢化現象が起きてきております。同様に、農業従事者の高年齢化も進んでおります。

 現在、酒人ふぁ〜むで働かれている皆さんの、農業に従事している、もちろんこれはさまざまな部署の方がいらっしゃると思いますが、そういった方々の年齢の構成の方、もしお教えいただけたらありがたいと思います。

福西参考人 集落民全員が取り組んでいますというと、我々の集落、三百三十人ほどおりますから、三百三十名がやっているということになるんですが、我々、集落営農組織ですが、実は定年制をしいています。先ほど見ていただいたああいうオペレーターというのは五十五歳定年制なんです。我々理事、役員は六十五歳定年制。六十五歳になったら役員じゃなくなるんですね。

 六十五歳以上の年齢層を、じゃ、どうするのというのは、作業別に、三つの年齢別、体力別に分けましてグループをつくっています。六十五歳未満の女性グループがなごやか営農グループと言っている。六十五歳以上の男女グループ、老人会のグループなんですが、合わせて百名ほどおられます。その中で、足腰の立つ人が約五十名集まっているのがすこやか営農グループです。水稲の水管理とか畦畔管理をやっています。八十歳以上、残念ながら、先生、女性は八十歳以上でも十分間に合いますけれども、男性の方はやはりだめですね。八十歳以上は、やすらぎ営農グループと申しまして、ボランティアなんですけれども、暖かいハウスの中で雑草取りをやるとか、それを楽しみにやっています。

 総勢、合わせて三百三十名、土日、祭日のみの勤務体制です。ただし、六十五歳以上の方々につきましては、現役を外れていますから、フルタイムの勤務体制をしいています、仕事のある日はということでやらせていただいています。

 以上です。

丹羽(秀)委員 ありがとうございました。

 次に、野村参考人の方にお尋ねをしたいと思います。

 先ほど参考人の方の意見陳述をお聞きして、さすが、すばらしいお話で、わかりやすいなと感銘を受けておりますが、魅力的な農業の件で、今回の法案に対していいますと、今若者の間の起業家、特にソフトウエア関連やIT関連の分野でこの起業家の数がふえてきておると私も実際感じております。また、マスコミ等で取り上げられる成功者、ほんのごく一部の成功した起業家でありまして、それらが、一部の方が全体というわけではないと思っております。農業でも、そういった面で、私は、ぜひこの日本の若者が将来農業で起業家になれる日が来ることを夢見ております。

 松谷明彦氏の「「人口減少経済」の新しい公式」という本の中でも、将来、日本の労働力不足という問題が起こってまいります、これは、産業だけじゃなくて農業にも言える話だと考えております。

 そういった専門的な観点から見ておられて、集落営農に関する、期待する部分についてお伺いしたいと思っております。

野村参考人 私は、前から主張しておるのは、農業というのは大変すばらしい産業であり、なおかつ、先ほどちょっと申し上げられなかったんですが、現代では、観光からエネルギーまでさまざまな分野を含む非常に魅力的な産業であるというふうに思っております。

 ただ、なかなかその担い手が育っていないということ、それから、昔から非常に小規模農家が多いというふうに思っております。だけれども、そういうところでもいろいろな、総合的に発想して物を考えていけば、おもしろい経営ができるという例は幾つか出ております。

 その集落営農の問題でございますが、私は、法人という担い手、中核になる農家があって、どうしてもそこはある程度、取りこぼしと言っては変ですけれども、手が回らないところもあるというふうに思います。それから、全くそういう法人格のない、余り大きくない農家ばかりのところもあると思います。

 そういうところで集落営農、集団でいろいろなことをやっていく、その中から、先ほど申しましたようなさまざまな創意工夫をしていって、一つの経営者、立派な経営者が出てくる、そういう場を設けるという意味では、私は、集落営農の存在は大変大きいというふうに思いますし、恐らく、なければならないものであろうというふうに考えております。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 先ほど野村参考人の話の中で、従来の地域、社会、産業のそれぞれの農業に対する政策が各分野で不透明な部分があったと。今回は産業を中心として法案が構成された、今回の法案は産業がメーンになっているとおっしゃっていただきましたが、ただ、その中で、地域の特性を生かす、それぞれの農業というのは地域の特性があると思っております。そういう面で、野村参考人の、地域の特性を生かすためには集団農業がどのような携わり方をしていけばいいのかということ、もしお答えいただけたら、お願いいたします。

野村参考人 さまざまな方法があると思うんですが、まず私は、一つ、先ほど申しましたように、産業と、社会政策あるいは地域政策的なところが今まで農政は未分化であったという面、そこが割と分化したのが今回の法案なり政策じゃないかなというふうに思っております。

 それからもう一つ、起業家というのは、先ほど出ておりますが、ただ金をもうけるというのは、これは最近の動きを見ましても、それだけではもたないということは言えるわけで、社会的な存在意義、あるいはコンプライアンスとかCSR、こういう言葉でよく言われていますが、そういう社会性というのは非常に重要になってくると思います。そういう企業的なあり方というのが重要だと思います。

 それから、農業に関して言いますと、今までの何でもいいからつくっていればいいという時代は過ぎまして、それが消費者にいかに受け入れられるかということだと思います。そうしますと、やはり地域の特色をどうやって生かすかということになると思います。私は、これからは多品種少量型である、自動車でさえそうなっていると申し上げているんですが、この多品種少量型の一つの特性というのは、地域の特性をどう生かしていくか、そのためには、先ほど申しましたように地域一体となった運用が大事でありますし、集落営農でなくても、法人でも恐らく相当地域に根差したそういう対応が求められるんじゃないかなというような気がします。

丹羽(秀)委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

二田委員長代理 次に、神風英男君。

神風委員 民主党の神風英男でございます。

 本日は、参考人の皆様方には、大変お忙しい中、また遠いところをお越しいただきまして、本当にありがとうございます。時間も限られておりますので、早速質問の方に入りたいと思います。

 まず、福西参考人にお伺いしたいと思いますが、集落営農が成功したポイントについて伺いたいんですが、以前私も、これは集落営農ではありませんが、日本全国の稲作、米の大規模経営者のところを訪ね歩いたことがございます。サカタニ農産とか岡山の国定さんであるとか、そういったところを初めとして幾つか回ってきたんですが、そういう方々とお話をしている中で、農家の組織化ほど難しいものはないなということを痛感いたしました。

 もう亡くなってしまいましたけれども、酒谷さんがお話をされていたのは、かみそりが送られてきたこともあるというようなお話であるとか、あるいは田んぼ、畑の中に相当大きなごみを捨てられたりというようなことがあったようでありまして、これも農家の方から伺った話では、隣の家で何百万円もするような新しい農業機械を買えば、無理をして借金をしても自分たちも買うというようなお話がありました。

 そういうふうに農家心理というのは非常に複雑でありまして、そういう中でこれだけの集落営農を組織化されたというのは大変な御尽力があったのではないかと思いますが、この成功のポイントというのはどこら辺であると御自身で分析をされているのか、その点についてまずお伺いをしたいと思います。

    〔二田委員長代理退席、委員長着席〕

福西参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、確かに農村集落というのは、ねたみの渦巻く地域社会と言った方がいいかもわかりませんが、そういうところがやはりあるんですね。だから、そんなところで、特に農地の所有権を持っておる世代、すなわち戦後農政を支えてきた世代なんですが、そういう方々というのは、今先生おっしゃいましたように、みんなまとまって共同で農業をやるよということには非常に難しい面がございます。

 では、我々の集落の成功の秘訣は何だろう、こう聞かれますと、我々はもうそういうこと等々がわかっていましたものですから、何度も申し上げますが、相続人に目をつけたんです。我々の集落も、私もそうなんですが、親の言うことは余り聞きませんけれども、ありがたいことに、親は息子の言うことを聞いてくれたんです。それが我々の集落の成功例であった。また、現役農家あるいは農地権利者、平均しますと六十代後半から七十代です。今後の農村集落の十五年、二十年、三十年、五十年先のことを描けといったってこれは無理でございますから、そういう若い世代の結束が集落営農組織の成功につながるんじゃないかな、私はこう認識をしています。

 以上です。

神風委員 先ほどのお話の中でも、集落営農と個別の担い手農家、認定農業者であるとかあるいは規模拡大を図っていくような農家との競合というのは現状ではないというお話でありましたが、これは全国的に見ると、結構いろいろな地域でそういう問題が起こっているのではないかなという気がしておるんですが、そこら辺、滋賀県の方では随分集落営農の展開が図られていると。地域性の問題であるのか、あるいはそれ以外に何か、そういった問題が起こらない、あつれきが起こらないポイントがあるのか、それがあるのであれば、ちょっと教えていただければと思います。

福西参考人 お答え申し上げます。

 先生、やはりお互いに人間でございますから、基本的なかぎは、やはり話し合い、心の通じ合いだと思うんですが、その前に、よくよく煮詰めていきますと、我々のような集落営農組織も、四ヘクそこそこの認定農業者も、二、三十ヘクやっている大規模農家も、みんな継続して農業をやっていきたいんです。そのためには、少なくとも今の販売価格に見合うコストで農業生産をやっていかないと続けていけないものですから、持っております課題は皆一緒でございますので、では、どうすればコストが下げられるのか、もうただ一点、そのことの追求なんですね。

 だから、例えば百ヘクタールある一つの集落でそういう三つの組織がある、我々の集落だってそうだったんです。我々は、では、どうしたらコストを下げられるのか、ゾーン設定をしよう、すなわち、大規模農家さんのゾーン、あるいは認定農業者のゾーン、自作農家のゾーン、我々の受託営農組織のゾーン、地権者の合意と理解のもとにゾーン設定をしました。でも、基本的には水稲の生産は水がかぎでございますから、水系を十二分に考慮した上でゾーン設定をやって、コストのかからない農業を目指そうということは、三者、皆考え方は一緒でございますから、それしかまとまるところがなかったんですが、以上、お答えになっていないかもわかりませんが、先生、以上です。

神風委員 先ほどのこちらのパンフレットを拝見しますと、農家数六十九戸で、専業農家は一戸、残り第二種兼業農家が六十八軒ということでございますから、そこに参画をされている大半の農家というのは、農外収入が一番大きな収入になっている。ある意味では、他産業並みの生涯賃金を獲得するという法人ではないということであろうかと思いますが、そういう中で、多少これは失礼な質問になるかもしれませんが、農業者が農業だけで食べていけない、それがある意味では本来あるべき農業の姿と言っていいのかなということは、私自身は多少疑問に思っている部分がございます。それについてどうお考えになるのか。

 あるいは、この集落営農組織というのが、これから先、農業として発展していく形態であるとお考えになるのか。あるいは、先ほど来お話がありましたように、地域を守る、あるいは集落を守るという視点からの、ある意味では非営利団体であると割り切った方がいいと考えられて、逆に、最後の選択としてこの集落営農というのがあるんだというお考えであるのか。そこら辺、どうお考えになっていますか。

福西参考人 先生、お答え申し上げます。

 まず第一点に、我々も含めて、なるほど二種兼農家の息子たちでございますから、本業が農業じゃないんですが、一つに、我々が食する食料の生産をやるという意欲と気概は、兼業農家であっても十二分に持っています。まず一つ。あわせて、先ほど来もお話し申し上げていますように、地域への貢献、これも次の要件。

 当然ながら、我々だって欲はありますから、地域への貢献と食料の生産だけでいいのかと言われたらうそなんです。羊の皮をかぶったオオカミですか、そんな形の中で虎視たんたんと利益を上げることをねらっています。でも、今のあの現状を見ますと、では我々だけが特別な利益を上げられるかというと、非常に難しい選択なんですね。

 そんな中から、きょう現在の我が集落におきましては、そういう時期、あるいはそういう計画、そういった見通しが立つまでの間、現状を維持保全しよう、こう実は考えていますが、そんな形の中で集落営農としての今の位置づけを行っています。

 もっとも、利益を上げるということについては、集落を挙げてみんなそう考えていることもあわせて、近江商人発祥の地ですから、こけてもただでは起きませんので、それは十二分に考えていますので、よろしくお願いを申し上げます。

神風委員 ありがとうございました。

 次に、土門参考人にお伺いしたいんですが、土門参考人の場合には、農水省からまた実際の農業に携わられることになったというお話でございますが、先ほども時給についての、時間給約千円であるといったお話があったんですが、この時給についての概念、あるいは、それについてもう少し詳しく御説明を願えればということと、また、新食糧法施行後、米価が相当に下落をしているという中で、こちらの新聞記事の方にも、受験生を抱えているというような家庭の事情も書かれておりまして、農家の所得の実感というのがどのようなものなのかなということをちょっとお聞かせいただければと思います。

土門参考人 お答えしたいと思います。

 時給というのは、どうも公のちゃんとした統計はないようでして、私もあちらに行って、どうももうからない、働く割にもうからないので、いろいろ普及センターとか回って事例をかなり具体的に調べてみました。

 そうしますと、野菜あるいは果樹園芸、これが大体五百円から千円ぐらいなんですね。一つだけ、山形ではサクランボというのがありまして、これは別格で、時給三千円と言われています。それから、米は、私があちらに行った当時、二十年前は一俵二万円つけていまして、そのころは、さすが政府米価、生産費所得補償方式をやっているだけあって、時間給にして二千五百円ぐらいつけていたんですね。でも、今は、我々の方の米で、手取りにしてもう一万五千円は切っています、手数料を取られますので。そうしますと時間給はぐっと下がる。

 ちょっと具体例でお話ししたいんですが、作業日誌というのをつけています。これは、いわゆるトレーサビリティーの原本になるものですね。日々の作業、それから肥料とか農薬、どれだけやったかとか、だれが何時間働いたか、その原本です。私は二十年前からつけていまして、毎年、年が終わりますと、人別、作業別、全部分析しているわけです。

 昨年、ちょっと落ち込んだ年ですけれども、申しますと、米が時給にして二千三十三円でした。花の方が、これはちょっと相場の低迷もありまして、七百六十六円。労働時間で加重平均しまして千三百七十八円だったんですね。もちろん社長も家内も含めてその時給なんですけれども。大体、年間、私と家内で四千時間程度、その他パートさんも雇っていますけれども、働いています。それが所得になるわけです。時間給掛ける時間ですね。

 それで、さっきの米価の話、新食糧法になりましてどんな状態かといいますと、これは、以前、生産調整研究会というのがあって、そのとき現地検討会で使ったものなんですけれども、ちょっと数字が古いかもしれませんが、本当に大ざっぱに丸めて言います。

 米の生産費の視点ですね。自作地でやった場合、大体私の方で、あるいは全国ほぼ同じに近いんですけれども、今から二十年前、いい米は一俵二万円で売れたんです。大体その半分がいわゆる経費ですね。肥料、農薬の資材、それから機械とか建物の設備費、これで半分なんです。これは最後の玄米までやった場合ですけれども、一俵つくるのに大体四時間かかる。途中でライスセンターに出しちゃえば、それはその人はかからないわけですけれども、全部やった場合、一俵四時間かかる。それが当時ですね。そうしますと、残りの、懐に入るのが一万円で、これを四時間で割りますと、あの当時は時給二千五百円の世界だったんですね。

 ところが、新食糧法以来ずっと米価が下がってきて、今では手取りにして一万五千円を切ってしまった。例のあの価格補てんがあるので何とか保っている面もありますけれども。そうしますと、こっちの経費がどれだけ詰まったかというと、実際はほとんど詰まっていないんです。ですから、所得が半分の五千円で、時間は若干短くなっていますが、割ってみますと、千二、三百円ということですね。同じようにやっていてそれだけ落ちているわけです。そんなような時給の推移をしておりまして、これは、それだけで生計を成り立たせるのは非常に難しいということです。

 以上です。

神風委員 先ほどのお話の中でも三ヘクタールぐらいの農地を耕作されているということでありましたが、必ずしも大規模とは言えないわけでありまして、今でいえば、五ヘクタール以上、あるいは十ヘクタール以上でないと、なかなか専業でできないというお話が通常聞かれるわけですが、そういう中でどうやって専業だけでやってこられたのか、そのポイントは何なのか、ちょっと教えていただければと思います。

土門参考人 我が家は、先ほど言いましたように、米を三ヘクタールつくりまして、あとビニールハウス六百坪でユリをつくっているわけです。米はほぼ全量直接販売で、花の方は大体半分が直接販売で、半分が市場出荷をしております。

 とにかく、土地が動かないんですよ。遠くだったら借りることはできるけれども、それはかえって効率がよくないので自作地で頑張るしかない。今の機械化体系でしてみれば、稲作だったら一人で十ヘクタールぐらいがちょうどいい規模だと思うんですが、それができない。

 価格はどんどん低迷していく中で、とにかく価格を何とか守らなきゃいかぬ、今の十年前、新食糧法前のお米の値段をキープしないとやっていけないということで直接販売したんですが、その秘訣は何かといいますと、まず、当然いいものをつくらなきゃならない、いい自然環境を地域で維持しつつ、そこでつくったおいしい米ということで、技術と環境維持ですね。それはもちろん丁寧につくらなきゃならぬ、それは余り規模拡大すると難しいと思います。あともう一つは、売ることにやはり力を入れてきました。いろいろと知り合いとかに初めPRして、ある意味で義理人情頼みですね。私はそのころ思ったんです。日本農業は義理人情に頼まなきゃ難しいと。お客さんと交流したり、あるいは口コミということを主に大事にして広げてきました。

 ある意味で、いいものづくりと義理人情にもう一つ加えまして、あとは意地ですね。これはもうおれがやらなきゃだれがやると。私は、九州の佐賀県に行っていたときに、現場を見てきたんですけれども、一番感じたのは、若い人がいないな、これでいいんだろうかということを感じましたので、意地みたいなもので何とか続けています。

神風委員 ちょっと、かつて農水省にいらっしゃったということも含めて伺いたいんですが、所得補償の財源としてどれぐらい必要だと考えていらっしゃいますか。

土門参考人 資格制度の資料の最後に、ちょっととんでもないことを書きましたけれども、何か医療費の方をちょっと交渉して少しこっちに分けてもらったらいいんじゃないかとか、そういうことも書きましたが、これはまじめな話で、以前、徳田虎雄さんの本を読んで、ああ、結構医療費というのは余裕があるんだなと感じまして、そのほんの一部でも農業予算に回してもらえれば、これはいけるんじゃないかと思いました。

 どれぐらいか、これはざっくり言います、本当にざっくりで申しわけないんですけれども、さっき言いましたように、土地利用型だったら、今の機械化体系ですると、十ヘクタールぐらい丁寧につくれます。それで、大ざっぱに、日本の耕地を全部一緒にして五百万ヘクタール、まあ、四百七十万ですけれども、五百万ヘクタール。そのうち、プロが半分やる。全部とるわけにいきませんので、半分やると二百五十万ヘクタール。一人十ヘクタール、二十五万人のプロがいればよしと。

 今の私の所得実感からすると、年間、プラスアルファで二百万円ぐらいはないとちょっとやっていけない。それぐらい実感として一般のサラリーマンより低いんですよ。二百万円ぐらい今の価格水準だったら欲しい。そうすると、二十五万人掛ける二百万で、五千億円ですね。これぐらいが今の価格水準だったら毎年必要になるんじゃないか。

 残り二百五十万か二百二十万ヘクタールぐらいが、生きがい農業者の方々が耕作するわけですけれども、こちらは環境保全対策等でいいのではないかと思います。

神風委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、これで終わります。

稲葉委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 きょうは、午後、四人の参考人の皆さん方に大変有益なお話をちょうだいいたしました。また、先ほどからお二人の皆さんから御質問もありましたけれども、引き続いて御質問を申し上げたいと思います。

 初めに、福西参考人にお願いをしたいと思います。

 先ほどの神風委員のお話とも若干関連するんですが、集落を一つにまとめて経営をしていくというこの考え方の中に、できるだけ皆さんがそれぞれの役割を持って、集落として面的にある程度運営をしていくことの重大性ということが一つのキーポイントになっているかなというふうに思います。

 これをおまとめになるには大変な御苦労があって、歴史的ないきさつも拝見したのですけれども、そんなこともあって、とは言いながら、現実の問題として、皆さんが了解をして、一つの法人化するということの御苦労を察して余りあるのは、私も和歌山の中山間地に住んでおりまして、今も家はそのまま置いていますが、そういう地元の状況を見てみますと、とても大変なことだなというふうな感じがしみじみとしております。

 農地の問題なんですが、先ほど、ちょっと初めのお話の中に、最後の課題として、農地というのは、若い人たちにこうなんだという話を若干されたということをお伺いいたしました。このことについては、野村参考人も、最後の課題として農地ということをお挙げになったことがちょっと僕もひっかかっておりまして、初めに福西参考人に、地元にこの法人をつくるに当たっての農地というものの考え方を、どういうふうに皆さん方に理解をしていただいたのかということをお伺いしたいと思います。

福西参考人 お答えを申し上げます。

 実は、きょうおつけをしました資料の中にも、「平成の一揆」という項の中にちょっと実は書かせてもらっておいたのですが、なるほど、確かに先生御指摘のとおり、我々の集落というのは、昭和の終わり、平成の初めころに、今からいいますと十五、六年前に、二度にわたって集落農家の経営破綻が起こりました。

 それまで七十戸あった農家が、昭和の終わりに二分の一、三十五戸に減り、三十五戸に減ったと思ったら、次の年、十七戸になった。最後まで十七戸でその集落営農組織をつくるまで来たんですけれども。そうなってくると、集落の中でどういう話が出てくるかといいますと、やはり、米づくりをやっていましたものですから水が要る。水を引くについては、七十軒の農家が、毎年毎年、二、三日奉仕作業で出て水を引いてきていた。十七軒になったらもうできないんです。大規模農家さんに来ていただいたって到底だめなんですね。だから、集落機能のないところで米をつくれないというのはそれでわかりました。それを実体験、当時の若者も前に見てきたんですね。

 そうこうしているうちに、集落内でぽつぽつぽつと不耕作地ができる、背丈ほどもある雑草が生える。その雑草を防除するがため、あるいは刈り取りをするがために集落民が汗を流す。そこで、若者の中で、農地とはどういうものかの話が出てきたんですね。

 あわせて、今後これからの世代を生きていく、我々も含めて、我々よりももっともっと若い世代については、やはり集落の値打ちを上げることが我々の使命だというふうに感じかけてきてくれた。あわせて、農地というのはだれでもみんなが持てる土地じゃないよ、農民、農業者が持てることのできる特権の土地である、あわせて、あなたの好むと好まざるにかかわらず、相続が発生すれば必ずあなたのものになる、そういうふうな話をお互いに淡々としていったんですね。それがきっかけでございました。

西委員 まことによくわかるおもしろい話でございます。自分の土地でありながらみんなの土地というのが今の状態ではなかろうかと思います。それゆえに、その人たち、各個人個人のおうち、それぞれが、自分の土地という自覚を持ちながら経営としては全体的にやっていらっしゃる、ここに非常に法人化の妙があるんだなというふうに思うんです。

 そこで、続いて野村参考人にお伺いしたいんですが、最後のこの課題は農地問題だというお話がありました。そこで、結論になっちゃったんですが、そこの農地の問題について敷衍することがございましたら、もう少し詳しくお教えをいただきたいというふうに思います。

野村参考人 私は、今度の所得安定対策を考えるに当たって、いろいろ考えていますと、結局、先ほど申しましたように、仮に、環境保全対策ということを十分手当てして、所得対策があって、これは車の両輪だ、じゃ、これが本当にスムーズに動くかなと深く考えますと、これはやはり農地問題にどうしてもぶつかってしまうんですね。

 それで、実は私は、農業に対しては非常に大きな夢を持っておりまして、小泉首相がおっしゃる観光立国も、僕は農村が美しくなることが非常に重要だというふうに思っています。そういうことをさまざま考えますと、そちらから見ても、やはり農地の問題を解決しなきゃならないというのが一つの結論でございます。

 それで、今、参考人の方から話が出ましたけれども、時代は大変大きく変わっていると思います。とりわけ土地をめぐっては、非常に公共性ということが大きな位置を占めるようになってきたというふうに思います。

 中でも農地というのは、この公共性というものをしっかり持たないと農地そのものの価値がなくなってしまう、そういう時代になったんじゃないかなということでございまして、私は、これは今の農地政策あるいは農地問題を放置しておきますと、これは、幾ら経営安定対策をやっても、環境保全対策をやっても、農村は荒れてしまうんじゃないかなと。

 そこで、簡単に言ってしまいますと、その公共性ということが非常に大きなポイントとして、網をかぶせて、いかに私権を制限するかというのはあれですが、その見返りは当然必要だとは思いますが、私権、単なる所有権ではなくて利用権をどううまく共同体として使っていくかということにむしろこれから力を入れるべきだ、この後の対策というのはそこが重要じゃないかなというふうに考えております。

西委員 先ほどの、初めに御質問申し上げた福西参考人のお話もありまして、法人としての、少し公共的な土地利用型の農業を今展開されていると。もう少し公共性のある土地というものの考え方もあるんじゃないかと思うんですが、そういう意味で、法人化という考え方はそういう役割もまた果たしていくのかなというふうに私自身は思っておりまして、これから先、農業経営安定化対策のためには、いろいろなタイプの農業のあり方、同じ担い手、大規模化という形にしてもいろいろなタイプがあると思うんですが、一つの大きな展望のある行き方だなというふうな感じを持っております。

 それでは、続いて土門参考人にお伺いをしたいと思います。

 先ほどから、新しい農業に関して、生きがいで農業をやっている皆さん、それから年金農業者の皆さんと専業農家のことを比較されて、ある意味では駆逐されるというようなおっしゃり方もされていたように思うんですが、これからの農業はプロがやっていくことが大事なんだという趣旨のお話だったかと思うんです。

 私は、そういう考え方は将来的には確かに大事だと思うんですが、今は全く過渡期だというふうに思っているんです。だんだんと、やはり消費者のことも考え、経営的側面も、みんながそういうあり方をこれから見直しながらいわゆるプロ化を目指す。本格的な農業者として、業として、一つの産業として確立していくというところの過渡期だというふうに今思っているんですが、その辺の考え方について御質問申し上げたいと思います。

土門参考人 私としては、仕事というのはそれぞれ個人の自由だからそれぞれの人の価値観でやっていいと思うんですが、今の現状を見る限り、私が実際に現場でやってみて、つくづく、若い人、しかも積極的に農業に向かっている人は少な過ぎると思うわけです。

 最近、やれリストラだとかあるいは団塊世代の定年で、ああこれはみんな農業に向かうぞなんという、そういうことであおっているようでは、これはいつまでたっても農業の位置は向上しないんじゃないかと。したがって、本当にばりばりのというか、生き生きした若い人は目指そうとしないと思うんですね。

 ちょっと資料にも書いておきました。新聞のコピーみたいなものを入れてありますけれども、基幹的農業従事者、六十歳以上が七一%です。三十九歳以下が五%です。ずっと定年された方が農業を担うというサイクルを一つ築いてもいいかもしれませんが、それではちょっと日本の農業は世界に通用しなくなるのではないかということ。

 何も私は大規模大規模と言っているんじゃないです。適正規模でいいんですけれども、その中で有機農業とか安全性の高いことをやるためには、より一層技術の向上と体力が要るんですよ、どうしても。やはり若いうちに、徴兵制じゃないけれども徴農制みたいな感じでやってもいいぐらいなんですね。だから、そういう意味でも、若い人が入ってこれるような、他産業並みの所得は必要だと思います。

西委員 続きまして、野村参考人にもう一つお伺いをしておきたいと思います。

 それは、先ほどもちょっとお話があったと思うんですが、福西参考人もそうだったかなと思うんですが、これからの農業は多品種少量の農業ということが経営的にもやはり重要な側面であるというお話があったように思います。

 そうしてまいりますと、大量に一つの品目をつくって例えば市場に出す、市場に持っていくというようなことではなくて、私は地産地消というのが一つの大きな流れにこれからはなっていくと思うんです。それがまた、具体的には価格をある程度自分たちでつけて、それを売りに出すというようなことにもつながっていって、農業の経営的側面を加速するのではないかというふうに思っているんですけれども、その辺の考え方について、御意見がございましたらお願いしたいと思います。

野村参考人 私も、地産地消は大いに進めるべきであると。というのは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、我々、食生活あるいはちょっとした旅行などをふだん経験していましても、農林水産業に対する消費者や需要者の知識というのは非常に限られている。僕はこれは非常にまずいなとしょっちゅう思っております。

 農林水産業に関する現状がきちんと消費者や需要者に伝わり、そのことが理解されて的確なニーズが形成されるという必要があると思います。そういうことをまず地域で始める。地域で始めれば、非常にその地域の農業を理解しやすい。そういう経験をもとに、今度は全国レベルあるいは世界レベルで打って出る体質をつくっていく。

 非常に簡単であれですが、私は、地産地消についてはそういう位置づけをしております。

西委員 福西参考人にもう一度お願いします。

 このパンフレットを拝見いたしますと、作物の中に、野菜なんかもかなり頑張ってつくっていらっしゃるように見えるんですが、地元でそういうふうに販売をされたりというようなことも組み合わせてやっていらっしゃるんでしょうか。

福西参考人 お答え申し上げます。

 先生、最初私どもが野菜づくりを始めたのは、まず、集落内で、集落営農組織を始めましたものですから、手のすいたお母さん連中が、孫や息子に食べさせる野菜がつくりたい、その思いから実は始めました。それがだんだんだんだん発展しまして、いつぞや酒人の旬なんて名前をもらったものですから、県の進めますこだわり認証をとりまして、野菜づくりにゴーサインを出したんです。

 私は、将来、米で経営を成り立たそうとは、うちの集落営農組織は思っていませんから。野菜と、きょうの参考人の先生に教えていただこうかななんて思ったりしているんですが、花と果物、こういうもので経営体として成り立たせていこうという将来の夢を、我々の集落は持っています。

 以上です。

西委員 次に、鎌谷参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど種々お話をお聞きして、私も、和歌山の中では中山間地で、なかなか農業の集積は現状でも難しいところに今家がありますけれども、拝見すると、冬場の農作業のできない時期もあり、さらに厳しい環境の中で農業を展開されているなという印象を持ちました。

 とはいえ、やはりこれからの農業、それぞれの参考人の皆さんもおっしゃいますように、ある程度リーダーシップを持った人を育成していって、その人たちを核にやはり新しい農業の展開というのは、私はある意味では避けられない、これからの国際情勢の中においても、そういう条件になってきているというふうに思うわけですが、先ほどちょっと福西参考人がおっしゃられたように、大規模化したときにマイナスは何かといったら、少し、兼業をしている人たちがその仕事がなくなったというのがマイナスといえばマイナスかなというお話もございましたけれども、これからの農業のあり方において、いわゆる担い手を中心とした大規模化に向けて、もっと簡単に言えば、今の法律にございますような形に持っていくことについて、どのように考えておられるのかということを御質問申し上げたいと思います。

鎌谷参考人 お答えします。

 認定農業者は、私たちのところでも、先ほど申しましたように九十ヘクタールとか五十ヘクタールとかという大規模農家もおります。ただ、私のところが今ホールクロップサイレージをいろいろ認定農業者と提携してやっておりますから、彼らの状況はよくわかるんですね。大変なわけなんです。

 そういったところを見てみると、認定農業者も、ある程度平場のところなわけですが、水田が散在していて、九十ヘクタールも耕作を行えば大変だという実態なんですね。だから、私は、認定農業者や集落営農が合体をしてやらないと、多分もたないというぐあいに思っております。ただ、今の政策につきましては、正直言いまして、先生方に怒られるかもしれないですけれども、認定農業者の皆さんに、蜂起すべきではないかと言っています。実際、従来よりも厚く手当てがやられているわけではないのではないかという感じがしております。ですから、銭で農業をするわけじゃないですけれども、やはり、政策的に、財源的には変わらないけれども、おまえらが日本の農業を支えよということだよと。

 いろいろなところで今回の政策について聞きますけれども、正直言いまして、鳥取の場合は、前向きの評価を私は認定農業者の中からもいただいておりません。ぜひ、そこのところの、認定農業者と、兼業農家、営農集団を分けるわけじゃないですけれども、そこが本当に、一体的にやらないともうもたない状況だというぐあいには思っております。

西委員 また戻って申しわけないんですが、今の課題なんですが、ちょっと先ほどもお話があったと思うんですが、具体的に法人化されている認定農業者と、それから小規模の農業者と、それから大規模の農業者、それぞれの皆さんがいらっしゃる、それをうまく仕分けしないともたないんじゃないかという御意見のお話がありましたけれども、実践されておられる福西参考人にもう一度そのことについてお答えをお願いしたいと思います。

福西参考人 お答えを申し上げます。

 私どもの地域の例で申しわけないんですけれども、認定農業者の皆さん方、大規模農家の方、個別経営体の農家、我々のような集落営農組織、みんな集まって将来の農業の話し合いをやはりやるんですね、我々の目のつけどころをどこへ持っていくんだと。

 きょうまで、私どもの地域で、お茶農家がつぶれました。これは、鹿児島県に産地間競争で負けたんです。これから我々がやっていく穀類農業で、産地間競争は、先ほどの先生の話にちょっと出ていましたけれども、諸外国だな、国内に目を向けていたんじゃだめだよと。そうなったら、みんな、地域の者が力を合わせて闘わぬ限りは生き抜いていけないんじゃないかな、そういう結論の中から、認定農業者は認定農業者、大規模農家は大規模農家、我々集落営農組織は集落営農組織、すみ分けをしながら、ゾーンも設定し、お互いに効率のよい、一番利益の上がる手法で農業を継続しようかという話し合いができただけなんです。それ以上の施策はないんです。

 以上です。

西委員 大変にありがとうございました。これで終わります。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 参考人の方々、大変御苦労さまでございます。貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、四人の方々に、それぞれの立場からお聞きしたいというふうに思うんですが、農地・水・環境保全対策、これは平成十八年度モデル事業として取り組んで、実質来年度から具体的に政策として打ち出されてくるという状況なんですけれども、これらの現時点での評価をどう考えておられて、これから私は地域政策として大事なことだというふうに思うんですけれども、それに対しての注文的なものがありましたら、ぜひ述べていただきたいというふうに思うんですが、よろしくお願いします。

福西参考人 ただいまの先生の御質問でございますが、まさに集落の機能というのはそれなんですね、先生。それがまた農業用資源でもあるということに結びつきますものですから、今審議をいただいています内容等々については我々は大歓迎でございまして、一日も早く設定されてそういうふうにならぬかな、実はそういうふうに思っておるんですが、みずからも今日までそういう部分については投資もし、農家みずから投資をやってきましたものですから、早く、一日も早い時期に成就させていただきたいという気持ちでおります。

 以上です。

土門参考人 具体的に言いますと、農道の補修とか水路の草刈り、それから土砂上げがイメージされるんですけれども、私どもも、集落で、これは今のところ全員でやっています。出ないときは三千円という感じで負担していますけれども、もしも集落で四、五人の結構大きなプロ農業者がいれば、恐らく、その人たちが土地を全部集めることができれば、自分たちでやるのではないかと。ただし、そのプロ農業者はある程度もうかっていなきゃだめです。もうかっている場合、シルバー人材を頼んだり、あるいは、場合によっては、土建屋さんが今請け負うようになってきましたので、そういうところに任せて、やれる自信はあります。ただし、今過渡期で、その集落にそういうもうかっている農家がいない場合は、やはりみんなでやらなきゃならないとしますと、環境保全対策、あのような経費がありますと非常に我々もありがたいです。

 ちょっと話は違いますけれども、私、集落の一番奥に住んでいて、ことしの冬の大雪で、除雪車が余りの雪の多さに入ってこれなくなったので、毎日、朝夕、除雪しました。もう本当にこれは、ボランティアだったんですけれども、延べ約九十時間、油代で三万円使いましたけれども、何もなかったですね。だから、そういうのも含めて、集落を維持するためにそういう対策があるといいと思います。

野村参考人 先ほど申し上げましたように、この環境対策という問題は経営安定対策と並ぶ非常に重要な対策であると思いますが、若干私が不安に感じるのは、内容的にまだちょっと十分な詰めができていないかなと。とりあえずあの線でスタートしまして、後はやはり地元の方々といろいろ詰めて、本当に農村を維持していくにはどうしたらいいのか、もっと深い視点から対応していただきたい。

 それからもう一つは、周知徹底がおくれているんじゃないかと。本当に現場でこれを理解されているのかどうか疑問があります。その点もやっていただきたい。

 それからもう一つは、地方財政の問題ですね。それは表裏一体になっておりますので、そこの辺についても将来問題が生じかねないということでありますので、そこはきちんともう一度検討していただければというふうに今考えております。

鎌谷参考人 お答えします。

 水利については、いわゆる日照りとか、時には、どこの部落からとってくるかということで、非常に先人たちが知恵を使って水利をやっておるわけですね。

 そういった中で、毎年、いわゆる底を上げたり、掃除なんかをしておるわけですけれども、そういったことをやっている中でも、やはりぼつぼつと人夫に出てこれない、集落でなかなか取り組めないという状況がある中で、今回、お金ではないわけですけれども、一つ位置づけをしていただくということは非常にありがたくて、いわゆる集落の人間関係、いわゆる共同社会を少し先延ばしにするにはいい手だてかなと思っております。

 ただ、集落だけでなしに、私は思いますのは、もう少し田んぼと、あるいは、水利をしても耕作放棄地があったら何にもなりませんので、やはり、血液と体という形で、水田も含めて、全体的な環境保全やいわゆる環境対策までこれを一つの起点にして広げていただきたいたいなと思っております。

菅野委員 集落の再構築という意味においては大切な施策だというふうに私も思っているんですが、先ほど野村参考人、少し議論したいんですが、国側二千二百円というので、そして県や市町村が二分の一、二千二百円という仕組みをつくって、北海道での参考人質疑のときも、この問題が、地方財政が厳しいからということで、裏負担の二千二百円が出せないからということで、国の制度も使えないような状況というのは仕組みとしておかしいんじゃないかという疑問も、意見として述べられております。そのとおりだと思うんですね。だから、国の制度としてしっかりと位置づけて、そして地方自治体が裏負担じゃなくて上積みするという仕組みをつくらないと、これは定着していかないんじゃないのかなというふうな思いもいたしております。

 野村参考人、この点、先ほどの地方財政との関係というのは、こういう理解でよろしいんですか。

野村参考人 私もほぼ同じように、あるべきかなというか、なってしまうのかなと言うのも変ですが。というのは、動かないということは非常にまずい。こちらが、まさに先ほどの話じゃないですが、車の両輪と位置づけるのであれば、とにかく動かすことが大事であるというふうに思います。

 それからもう一つは、これは難しい話なんですが、環境と経済というのは、これもまた非常に表裏一体でございまして、環境がよく守られると経済効果が上がるという面がありますので、そういった点を含めてもう少し議論を深めていただければというふうに思います。

菅野委員 ありがとうございました。

 では次に、土門参考人にお聞きします。

 四ヘクタール未満で、認定農業者じゃないということで品目横断的経営安定対策の該当者じゃないという意見陳述をなされた、このことをどう考えていくのかという問題なんですが、問いただしていくと、政府の言い方は、都道府県が認定した一定規模以上の所得がある人は、所得に応じた特例を設けているからそこで配慮するんだ、周辺にもそういう人たちがいるというふうに思うんですけれども、政府の言い方に対する土門参考人の考え方をお聞きしておきたいというふうに思います。

土門参考人 私のような人は結構います、周りに。現にそういう者同士でグループをつくっているぐらいでして。今のままでいくと本当に蚊帳の外で、特例というのは本当に例外的なあれですよね。ところが、こういうのがいっぱいいるんだったら、これはやはり原則にしてほしい。現場には特例なんという情報はほとんどつながっていません。私も、恥ずかしながら、今回ちょっと勉強して、もしかしたらなんという可能性を考えたぐらいで、これは特例を取っ払っていただいた方がいいかと思います。

 それ以前に、私の主張していることは、そもそも、規模だとかそれから反当幾らとか、そういう感覚じゃだめなんですよ。人、担い手という人間をこれから何とかキープしていこうというのだったら、統計も全部、人単位でとって、さっきの時間給ですね、それを維持するという観点で根本的にやり直さないと残らないような気がします。

菅野委員 ありがとうございました。

 だから、私は特例というのではなくて一つの標準的な基準とすべきだというふうに思っているんですね、四ヘクタールというのは一つの基準だと。ただし、本当にプロとしての専業農家としてやっている人たちは、少々満たさないからといって、はじくんじゃないよという主張をしているわけですけれども、なかなかそこは議論が煮詰まっていないという状況ですから、これからもしっかりと議論していきたいなというふうに思っております。

 ただ、鎌谷参考人にお聞きしますけれども、品目横断的経営安定対策に該当する人が一割という状況の中で、この政策が中山間地域農業でどれだけ威力を発揮するのかというのは、非常に私は疑問を呈して、これまでも議論してきたんですが、こういう政策が展開されていくとすれば、鳥取も中山間地域農業の地域だというふうに理解しているんですけれども、どのような方向に行ってしまうんだろうかという危機感を私は持つんですけれども、鎌谷参考人の意見をお聞きしておきたいと思います。

鎌谷参考人 お答えします。

 今の状況を放置しておくと大変な状況になるのではないかと私は思っております。先ほど申しましたように、認定農業者それから集落営農ということについても、逆に言えば、集落営農をしてどういったメリットがあるのかという問題になってくると、はっきり言えないところがあります。

 ただ、私も地域のリーダーとして、担い手育成総合対策事業ですか、四十万円だかを払うのがありまして、これを買って出てもやらなきゃいかぬなと思っておる状況なんですけれども、どっちにしても、担い手がいない、あるいは専業農家がいないということになってくると、集落で先祖代々の水田を守っていかなきゃならない、こういった対策をやっていかなきゃいかぬというぐあいに思っております。

 それから、そうは言いながらも、担い手も集落も守りができない山間地の水田をどうやっていくか。こうなってくると、これまで飼料稲等をつくってみたわけですけれども、なかなか収穫は難しい。となれば、やはり耕畜連携の水田放牧とかあるいは里山放牧なんかも、ひとつ牛の力もかりなきゃいかぬのではないか。それから、さらに難しいということになると、私は専門農協ですけれども、いわゆる集落も認定農業者も難しいとすれば、農協に農業経営をやれる、トリガーを外して、やはり準公共的な機能としてやらせるというようなことも考えていくとか、あらゆる知恵を出していかぬと、どうもこれからもたぬなという感じがしております。

 そういった意味では、各地区の推進協議会とかあるいは専業農家とか、集落で、とにかく今、田んぼに出たがっておりませんので、若い者を引っ張ってやるしかないだろうとは思っております。そういった意味では、非常に心配をしております。

菅野委員 日本の七割を占める中山間地域でございます。ここをどう施策としてしっかり打ち立てていくのかということなしには、環境も守られないし日本の食料自給率も向上していかないという立場に私は立っているんですが、一つは、耕畜連携を取り組んでおられるということなんですけれども、これもしっかりとした政策として打ち立てていかなきゃならないというふうに思っていますし、もう一つは、農業と林業をどうセットで考えていくのかということなしには、中山間地域というのが集落として存続していかないという問題意識も持っているわけでございます。

 木材が、外国から八二%、自給率一八%という状況の中で、林業が業として、なりわいとして成り立っていかない姿というのは、これは異常だというふうに思うんです。農業も危機的な状況だと言われておりますけれども、山もそういう意味では危機的な状況だというふうに思っております。

 鎌谷参考人にもう一度お聞きしますけれども、耕畜連携と林業との連携をどう図っていったらいいのかという考え方がありましたら、披瀝願いたいというふうに思うんですが。

鎌谷参考人 森林組合の皆さんと話をしますけれども、経営は大変ですね。やはり、林間放牧とか山の守りをしながら畜産をやるとか、あるいは里山放牧とか、いわゆる耕畜連携で牛の力を使っていかないと、どうにも人間の力だけでは難しいのではないかというような話をしております。

 それから、耕畜連携といいますと、水田にしたって、例えば鳥取みたいなところでは、なかなか畑作が育たない。ということになれば、水田を使った飼料作物でいわゆる堆肥との循環をやっていく。その取り組みにより、地域の水田自体を守っていく、あるいは里山や山を利用する関係をつくっていって、外国から粗飼料を輸入しておってもだめですから、山で腹いっぱい草を食わせて育てるとか、こういった形態も模索をしていかないと、農村、山村の景観保全は少し難しいのではないかなというぐあいに思っております。

 簡単ですけれども、以上でございます。

菅野委員 最後になりますが、野村参考人にお聞きいたします。

 先ほど西委員の質疑で大体わかったんですけれども、農地の耕作者主義という立場に立って今日まで推移してきた、これを抜本的に見直していく必要があると先ほど申されたんですけれども、一方では、福西参考人の意見でいえば、土地利用型農業への株式会社というのは、もう私は見込めないんじゃないかというふうな言い方をされております。

 私どもは、農地への株式会社の参入というものは、日本農業を根本から変えてしまうんじゃないかというふうな危機感を持って、そういうのはおかしいよということを言ってきたんですけれども、野村参考人としては、見直す方向というのは、そういう方向じゃなくて、利用権をどうつくるかという観点からの発言だと理解していいのか、その辺について再度答弁願いたいと思います。

野村参考人 私は、今のままで今の株式会社が参入するということに一〇〇%賛成しているわけではありません。私は、その前提として、農地の問題が解決される必要があるというふうに考えております。

 したがいまして、例えば、妙な使い方がされることのないような農地の使い方、これがきちんと網がかぶらない限り、今のままの状態で株式会社が入ってくるというのは、非常に問題を生じかねないというふうに私は考えております。

菅野委員 どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

稲葉委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る五月十一日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分公聴会を開会いたします。

 なお、委員会は午後から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二分散会


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