第11号 平成18年5月11日(木曜日)
平成十八年五月十一日(木曜日)午後三時三分開議
出席委員
委員長 稲葉 大和君
理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君
理事 原田 令嗣君 理事 二田 孝治君
理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君
理事 山田 正彦君 理事 西 博義君
赤城 徳彦君 赤澤 亮正君
伊藤 忠彦君 小里 泰弘君
小野 次郎君 金子 恭之君
近藤 基彦君 佐藤 錬君
斉藤斗志二君 谷川 弥一君
中川 泰宏君 並木 正芳君
丹羽 秀樹君 西村 康稔君
鳩山 邦夫君 福井 照君
御法川信英君 渡部 篤君
岩國 哲人君 岡本 充功君
小宮山泰子君 神風 英男君
仲野 博子君 松木 謙公君
森本 哲生君 石井 啓一君
菅野 哲雄君 古川 禎久君
森山 裕君
…………………………………
議員 山田 正彦君
議員 篠原 孝君
農林水産大臣 中川 昭一君
農林水産副大臣 宮腰 光寛君
農林水産大臣政務官 金子 恭之君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 布村 幸彦君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 佐藤 正典君
政府参考人
(農林水産省大臣官房統計部長) 小西 孝藏君
政府参考人
(農林水産省総合食料局長) 岡島 正明君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 西川 孝一君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 井出 道雄君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 山田 修路君
政府参考人
(林野庁長官) 川村秀三郎君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 加藤 利男君
農林水産委員会専門員 渡辺 力夫君
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委員の異動
五月十一日
辞任 補欠選任
小野 次郎君 小里 泰弘君
神風 英男君 岩國 哲人君
松木 謙公君 小宮山泰子君
丸谷 佳織君 伊藤 渉君
同日
辞任 補欠選任
小里 泰弘君 小野 次郎君
岩國 哲人君 神風 英男君
小宮山泰子君 松木 謙公君
伊藤 渉君 石井 啓一君
同日
辞任 補欠選任
石井 啓一君 丸谷 佳織君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)
砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)
食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)
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○稲葉委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、大臣官房統計部長小西孝藏君、総合食料局長岡島正明君、生産局長西川孝一君、経営局長井出道雄君、農村振興局長山田修路君、林野庁長官川村秀三郎君、文部科学省大臣官房審議官布村幸彦君及び国土交通省大臣官房審議官加藤利男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○稲葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田令嗣君。
○原田(令)委員 自由民主党の原田令嗣です。
農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案について、まず伺いたいと思います。
我が国の農業は、多様な形で行われているばかりでなく、まさに多様な役割を担っています。そのために、経営安定新法の実施とともに、農地・水・環境保全向上対策を車の両輪として実施することは、午前中の公聴会でも取り上げられました。具体的には、第一に、農地や農業用水などについての共同活動への支援、第二に、環境保全に向けた営農活動に対する支援とされています。また、こうした対策については既に、今年度、全国約六百地域においてモデル的に地域の共同活動として支援を行い、平成十九年度からの施策の本格導入に備えていると聞いています。
この対策は農業集落の機能を守っていくために極めて重要と思いますけれども、そのねらいと取り組み状況についてまず伺いたいと思います。
○山田政府参考人 お答えいたします。
ただいまの農地・水・環境保全向上対策のねらいとその取り組み状況ということで御質問がございました。
農業の持続的発展と多面的機能の健全な発揮を図るためには、農地、水、環境の保全と質的向上を図るとともに、農業が本来有する自然循環機能を維持増進することが重要であるというふうに考えております。
このような中で、農地、農業用水等の資源につきましては、近年、農村における高齢化あるいは混住化の進行によりまして、集落機能が低下をしてきております。これに伴って、こういった農地、農業用水等の資源の保全管理が難しくなってきているという現状にあります。このような現状を踏まえた対応が必要であるということがございます。また、農業生産活動につきましても、環境に対する国民の関心が高まる中で、環境保全を重視したものに転換していくということが求められております。
このようなことから、先生からお話がありました二つの内容を持ちます農地・水・環境保全向上対策を実施することとしたところでございます。先生からお話がありましたように、地域ぐるみで農地、農業用水等の適切な保全あるいは施設の長寿命化、環境の保全に取り組む共同活動、これが一つ目の内容。
それからもう一つは、これも先生からお話がありましたように、相当程度のまとまりを持って化学肥料や化学合成農薬の使用を原則五割以上低減するというような内容の先進的な営農活動、この二つについて支援をしていきたいということでございます。
これの現在の取り組みの状況ということで御質問がございました。
先生からお話がありましたように、本年度に全国約六百地区でモデル的な事業に取り組むということにしております。現在、各地域において施策の実施主体となります地域協議会あるいは活動組織の設立が順次進められているということでございまして、速やかにこの地域協議会あるいは活動組織の設立を受けましてモデル事業の実施に取り組んでいきたいというふうに考えております。
○原田(令)委員 今も御説明いただきましたけれども、二つの活動への支援というのを一体的に地域振興策として位置づけられているその積極的な理由について、私はこれは非常に重要なことだと思いますので、それについても御説明いただきたいと思います。
○西川政府参考人 二つの対策を一体的に地域振興策として位置づけるその積極的な理由というお尋ねでございます。
本対策におきます営農活動への支援は、個々の農家の取り組みではなくて、地域でまとまった取り組みを支援することにより地域の環境保全を効果的に進めるということと同時に、こうした取り組みを生かした農産物のブランド化などを通じまして地域農業の振興にも資するものであるということで、地域振興対策として位置づけて実施するものでございます。
その際、化学肥料や化学合成農薬の使用の大幅な低減などの先進的な営農活動を効果的かつ安定的に進めるためには、農地周辺の環境についても適切に保全管理されまして、病害虫でありますとか雑草の発生しにくい環境が維持されているということなどが必要である。
これらのほかに、水質や生態系の保全を効果的に進める観点からは、環境保全に向けました先進的な営農活動と水路やため池などを保全向上させる取り組みを一体的に実施するということが重要だというふうに考えているところでございます。
加えまして、こうした営農活動を通じまして、消費者との連携も図られ、地域の共同活動への都市や地域の住民の参画も促進される、それらのことにも役立つのではないかというふうに考えているところでございます。
こういったことで、営農活動への支援につきましては、より効果的な施策とする観点から、共同活動への支援と一体的な地域施策として位置づけたというところでございます。
○原田(令)委員 品目横断的経営安定対策と今お答えいただいた農地・水・環境保全向上対策を真に車の両輪として推進し、地域ごとの日本の多様な農業を維持発展させられるよう政府に強く望みたいというふうに思います。
次に、民主党提出法案のうちの漁業、水産業に関する部分についてお伺いしたいと思います。
四方を海に囲まれました日本では、古くから水産物が国民の重要な食料となっているばかりでなく、魚は日本の食文化の象徴とも言えます。しかしながら、近年、我が国周辺の水産資源は、全体として、残念ながら、以前に比べて低い水準にあります。漁業経営も、資源の減少、魚価安、輸入増、そして燃料油の高騰という四重苦にあえいでおり、日本の漁業、水産業をどう守っていくかは極めて重要な問題であると考えています。
そうした意味で、民主党提出の農政等の改革に関する基本法案で、漁業、水産業に関する対策を打ち出されていることに対しましては敬意を表したいと思っておりますけれども、法案の内容については不明な点、そして理解できない点も多いと感じております。この点について、民主党に質問いたしたいと思います。
法案では漁業、水産業について五条にわたる項目を提案しております。第十八条を除くと、基本的に現行の水産基本法やそれに基づく水産基本計画で実施されている対策と同じなので、ここでは第十八条に絞って質問をしたいと思います。
民主党提出法案では、漁業者登録制度とそれに基づく漁獲限度量の個別割り当て及びこれによる収入減少に対する直接支払いが提案されています。
我が国では、海洋生物資源法により、漁獲可能量、すなわちTAC制度を設定している魚種について個別漁獲割り当てができることになっています。しかし、我が国のように多数の漁業者や漁船がさまざまな漁のやり方で漁業を行っている実態を踏まえると、漁業者に対して個別に漁獲量を割り当て、適切に管理することは、現実的には非常に難しい状況であると思います。そのため、現在は、科学的な資源調査を根拠に魚種を特定し、資源回復計画などを通じ、漁業者の理解と協力を得て資源管理を実施しております。
民主党案においては、現在、TACを定めているサンマ、マアジなど七魚種だけでなく、しかも、遊漁船業者まで含めて、すべての漁業者に個別に漁獲割り当てをしようとしていますが、こうした提案が現場に受け入れられるのかどうか、また、二十三万人の漁業者、三十万隻に上る漁船にどのように不満なく割り当てを行い、どのように割り当て量を管理するのか、まず伺いたいと思います。
○山田議員 今原田委員の質問がございましたが、まさに我が国を取り巻く漁業の状況というのは深刻でございまして、殊に油代の高騰が直撃して、最近漁にも行けなくなっているという状況が続いている浜の現状です。
そんな中で、私どもは、何とか漁業経営を安定させなきゃならない、そういう見地から、二つ問題があると思いますが、魚価の低迷と資源の枯渇、これをどうするかということなんです。
一つは、資源の回復において、今、確かに、海洋生物資源法第十一条によれば、個別TAC制度をうたっております。しかしながら、実際に、TAC制度というのは、今日本では、例えばサンマ等々についての上限の枠を決めているだけで、個別TACがなされておりません。
個別TAC、三十万の漁船についてやるとしたら、大変だということはよくわかります。しかし、そのために、私どもの法案で第一に挙げているのは、期限を切って、魚種を定めて、そして各都道府県の水産試験場及び国の試験場において徹底的な資源調査をするということ。そして、その資源調査に基づいて、資源回復を行うための各漁獲の割り当てですが、原田委員が指摘されたように、我々は、遊漁船も含めて、漁船漁業者、いわゆる漁業者に対して、個別の魚もそうですが、その中で、今TACで決めている部分とそのほかの魚種も含めてとなっております。
それはなぜかと申し上げますと、いわゆる個別の魚について云々ではなく、漁業者の経営、いわゆる収入、そういったものに着目して、例えば資源の保護に、いわゆるTAC制度を導入して、漁業の収入が減った部分については直接支払いをしていこう。いわゆる各魚種ごとにやるんじゃなく、漁業者の収入、そこに着目してやるというふうになっておりますので、原田委員が指摘しているような御懸念はないんじゃないか。
私どもは、そういう意味で、例えば漁業者、そして漁業組合、そういったものの意向を聞きながら、個別のTAC制度を設計していくというか、運営していく、そういう慎重な態度で臨みたい、何せ資源回復のために努力したい、そう思っているところです。
○原田(令)委員 今お答えになりましたように、民主党案では、個別割り当て制度の導入に伴う漁獲量の制限によって、漁業者の収入が減少した場合には直接支払いを行おうとしているということでありますけれども、そもそも、漁業者というのは、個別割り当ての対象魚種以外の魚を漁獲するということも可能でありますし、また、漁獲量の増減とは別に、魚価の変動によって漁業収入というのは変動するというふうに考えております。
直接支払いを行う場合の積算根拠、そして財源措置というのはどういうふうにお考えになっているのか、伺いたいと思います。
○山田議員 確かに、漁船漁業者にとって、そのときそのときとれる魚種、今までですと、とれるだけとってしまおうという形でやってまいりました。ところが、それをやりますと、どうしたって魚価の低迷は招くし、いろいろな不都合が生じてまいります。それで、各都道府県ごとに、各漁船漁業者ごとに登録制度を設ける、そして国がその登録制度のすべてを網羅した基本台帳を整備する。
そんな中で、仮に、いわゆるTACで定められた量以外の魚をとってその報告義務を怠った場合には、直接支払いの対象にならない、もしそういった違法な、個別TAC制度に反するようなことを行ったら、場合によっては罰則も考える、そういう形で、その前提としては徹底的な資源調査が必要ですが、そういったものを含めて具体的にやっていくということと、もう一つ大事なのは、遊漁船業者も含めて、沖合あるいは沿岸等々の漁業権、また各都道府県での漁業調整規則、それぞれ異なっておりますが、そういったものの調整、根本的な見直し、これも同時にやっていかなきゃいけない、そう考えておりますので、一方的に得をする、得をしないということは避けられるんじゃないかと思っています。
財源についてですが、財源は、我々は、農林水産予算、三兆足らずですけれども、その枠内で、例えば一部は公共事業、あるいは非公共事業からも捻出したいと考えております。何せ基本法ですので、具体的にどの部分を、例えばどこの漁港予算を、もうここは必要ないからやめて、これを直接支払いの対象に持っていくとか、そこまでは今のところまだ詰めておりません。
私ども、代表が小沢一郎代表になりまして、小沢一郎代表はかなり大胆なことを考えております。全体として一兆円の直接支払いをうたっておりましたが、一兆円では足らぬだろう、二兆、三兆もかかるのではないか、そういう言い方をしておりますので、これからまた、どのようにして国民に理解の得られる財源、しかしながら、最近殊にそうですが、一般国民、消費者としては、食の安全あるいは食料安全保障、そういう理解がかなりできつつありますので、魚介類についても、十分その財源において、私どもが政権をとることができましたら、それなりの対応措置を考えていきたい、そう考えております。
○原田(令)委員 今御説明を伺いまして、民主党の提案している案はなかなか意欲的ではありますけれども、実現はなかなか難しいのではないかというふうに思われます。そしてまた、すべての漁業者への直接支払いという形になりますと、ばらまきという批判を受けかねないのではないかというふうに思います。むしろ、今全国的に行われている資源回復計画などによる資源管理を徹底的に進めるとともに、農業と同じように経営対策や担い手対策などを重点的に実施して、経営基盤のしっかりした、競争力のある、意欲のある漁業者を育成していくことが重要ではないかというふうに考えております。
漁獲限度量の個別割り当てと、それに基づく直接支払い制度を導入する、そのねらいというのをもう一度御説明いただければというふうに思います。
○山田議員 原田委員の今のお話で、民主党案のいわゆる意欲的なところは評価するけれども、現実的に難しいじゃないかという言い方のようでございますが、私どもがこの第十八条を設けた趣旨というのは、余りにも今の漁業者の現状というのが、油代の高騰等も含めて、本当に漁にも出ていけないような状況で、このままでいくと、林業がほとんど壊滅的な状況に陥ったように、早晩、早い時期に漁業もそういう運命をたどってしまうのではないか、そういう危機感がございます。
そんな中で、どうしたらいいかというと、やはり漁業の経営の安定を図る、そのための直接支払いの導入。ところが、単に補てん的にいわゆる所得補償を漁業者にするだけではやっていけない。やはり資源回復、魚価の安定、そういったものを含めてやっていくために、個別TAC制度、十八条を、我々は考慮を重ねて、いわゆる今回の改正案として準備した次第です。
○原田(令)委員 世界的に見ますと、今、アジアの経済発展及び世界的な健康志向の高まりもありまして、水産物に対する需要はこの十二年間で三五%も増加しております。我が国の周辺水域は世界で第六位の面積を持ち、また、世界三大漁場の一つと言われております。このようなすぐれた漁場を高度に利用し、国民に安定的に水産物を供給することによって自給率を高めていくことは、我が国にとって非常に大きな課題であります。
私どもは、最も重要なことは、これは山田議員、民主党の方からもありましたが、水産資源の回復を積極的に図ることであるというふうに思っておりますけれども、もう一つ、やはり農業と同じように、競争力のある漁業経営、足腰の強い漁業の担い手を育成することも重要だというふうに思っております。そして、今、日本からの魚の輸出も伸びております。そうした日本の食文化の発信も視野に入れ、漁業地域や漁村の振興に配慮しながら、我が国の水産業を力強く再生させていくことが重要だと思っております。
現在、水産基本計画の見直し作業も進められておりますけれども、そうした中で、資源管理と漁業経営の強化、これをともに目指した抜本的な対策を打ち出すことが非常に重要であるということを強調しまして、私の質問を終わらせていただきます。
○稲葉委員長 次に、岩國哲人君。
○岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。
本日は、民主党の法案と、それから政府提出の法案、両法案について質問させていただきたいと思います。
まず最初に、農水大臣にお伺いいたします。
農水大臣、ノーと言える日本という言葉について、御存じですか。御存じか御存じでないか、ノーと言える日本。
○中川国務大臣 一般的に、ノーと言える日本というのは、今から十数年前でしょうか、日本を代表するお二人の対談を中心にした本のタイトルとして、そのノーはイエス、ノーのノーという意味の本のタイトルとして大変話題になったというふうに承知しております。
○岩國委員 そういうタイトルで本を出版された方もいらっしゃいますけれども、私は、今日本にとって、イエス、ノーのノーよりも、むしろ農業の農が大切ではないか、そんなふうに思います。
今、教育基本法、六十年間、教育の荒廃きわまれりということがありますけれども、もう一つ、日本の農業の現状を見ると、教育問題以上にもっと深刻なのは日本の農業の現状ではないか。私も典型的な農村県と言われた島根県の出身であり、大臣も、全国津々浦々、その実情は御存じだと思いますけれども、農村がどうなっているか、農家がどうなっているか、日本の農業はどうなっているのか、やはり農ということをしっかりと政策の中心に据える、もう最後の段階に来ているのではないか。私は、そういう意味で、ノーと言える日本、イエス、ノーのノーを農業の農に書きかえて、中川大臣がしっかりとこれからの農業行政をやっていただきたい、そのように思います。
かつて日本は、江戸時代以来、農業を中心として日本の文化を支え、地方の村落を支え、そして産業を支え、人口を支えてきた。農本主義という言葉がありました。その農本主義というのは、今はもう辞書を見てもめったに出てこない。死語辞典の中に入っているのじゃないかと思うんですね、残念なことながら。そして、今あるのは、農本主義にかわって、のほほん主義です。食べるものは外国から入れればいい、買えばいい、そういう世の中に変わってきたことが、今の日本の農業、農村、それをこういう状態に落としているというふうに思います。だからこそ、私は、農業基本法、そして今回の、担い手をどのようにこれから支えていくかという法律は非常に重要だ、そのように思います。
かつて、中川農水大臣に私は陳情したことがあります。島根県の中海・宍道湖、あそこを埋めて、そして米をもっとつくろうと四十年前の事業がだらだらと続いておって、そのうちに世の中はすっかり変わって、今度は減反政策が取り入れられた。要するに、あっちを向いたりこっちを向いたり。そして、翻弄されたのは地方の自治体であり、地方の農家であることは御存じのとおり。当時の農水大臣、中川大臣の御英断で島根県の中海・宍道湖は救っていただきました。私は感謝を申し上げたいと思います。
そういう観点からも、農村は、山村は、漁村はどういう現状にあるのか。まず、中川大臣は、農山漁村の活性化ということを自民党のマニフェストでもうたっておられるし、今回の法案でもうたわれております。農山漁村の数は幾らあるか、おっしゃっていただけますか。
○中川国務大臣 岩國委員にはいつも御指導いただき、今お話がありましたように、わざわざ私のところまで来ていただいて、岩國委員の思いの一端を御指導いただいたことを今もはっきりと覚えております。
島根あるいは北海道あるいは東京、九州、沖縄、それぞれ多様な農山漁村地域が、世界の〇・二%という大変狭い国土の中に一億二千万以上の国民が暮らしていけるのも、農山漁村がきちっとあって、そして国土として保全されているから最低まず生きていける。そして、今御指摘のように、日本の中でできた農林水産物を供給し、それを確保することによって我々、先人たちが生きてきたのが日本の基本形であると思います。そういう中で、これを荒らしてはならないという御指摘は全くそのとおりでございまして、活性化というのは非常に大事であるという御指摘は全くそのとおりだと思います。
農山漁村の数につきましては、どういう定義で幾つあるのかということは、申しわけございません、大変私勉強不足でございますので、御指導いただければありがたいというふうに思います。
○岩國委員 農水省では、農村の数は幾ら、山村の数は幾ら、漁村の数は幾ら、数字もわからないでこんな法案出しておられるはずはないでしょう。では、きちっと具体的に、今現在、どの県に幾らあるのか、それをはっきり言っていただけませんか。そうでなければ、やみくもに二十年、三十年前の日本だけをイメージして、どこかでだれかがこの法律を喜んでくれるだろう、対象になるだろう。対象になる農村は幾らなのか、それもわからないでこんな法案を出しているんですか。お答えください。
○山田政府参考人 お答えいたします。
農林水産省の統計でございますが、農業集落という統計がございます。これは、農業上形成されている地域ということでございますが、この農業集落の数は、平成十二年で十三万五千の集落となっております。
○岩國委員 そうすると、こういう制度あるいは補助金も含めて財政的な支援は、農業集落という自治体か行政組織を使って行われていくんですか。そのとき市はどういう立場なんですか。村はどういう立場ですか。あくまでも日本の行政組織であるならば、市町村がこれを実行するわけでしょう。この新しい政策の担い手、そしてそれを末端にまで浸透させる責任は農業集落にあるんですか。だからその数をおっしゃっているんですか。そうじゃないでしょう。自治体の数で答えてみてください。
○中川国務大臣 農林水産行政というのは、最終的には国が責任を負っているわけでございますし、また、今御指摘のように集落単位で施策をやる場合もございます。例えば中山間地域対策、あるいはまた今法案を御審議いただいておりますけれども経営安定対策等々、集落単位でやる場合もあります。林業の場合には流域単位でやる場合もございます。いずれにいたしましても、国、自治体が、その仕事の中心といいましょうか、きちっとした行政事務の責任を負っているわけでございますので、国が直接市町村にまたがる施策をやる場合もございますし、また県単位でやる場合もございますし、また市町村単位でやる場合もございますし、そしてまた集落単位でやる場合もございます。
いずれにいたしましても、行政の責任を負うのは国と市町村だというふうに理解しておりますが、その市町村の数について、農村あるいは山村、漁村について、数ということになりますと、事務方の方で把握しているかどうか、わかれば答弁をさせたいと思います。
○岩國委員 大臣の御答弁をいただきましても、担当の方の御答弁をいただきましても、自治体の数のきちっとした把握もできていなくて、これで本当に効果を発揮するものなんですか。自民党のマニフェストの中にも、農村、山村、漁村という言葉は随分出てまいります。数は幾らあるんですか、村の数は。村がどこの県にもあるという前提はもう崩れておるんじゃないですか。村のない県があるのは御存じでしょうか。
かつてはどこの県にも村があったんです。今はもう農村も山村も漁村もない、村という名前が一つもなくなっている県が日本の中で十三あるんです。私が調べたのでは、栃木県、石川県、福井県、静岡県、三重県、滋賀県、兵庫県、広島県、山口県、香川県、愛媛県、佐賀県、長崎県、十三の県において農村という言葉をもう使ってはおかしい時代になっているんですよ。そういう村が全部市に合併されて、もう農市です。農市状態を迎えておるんです。それでもなおまだ、山村だ、漁村だという言葉をこうやって法案の中に使うことの違和感ということを皆さんお感じにならないかどうか。実態はそれぐらい法案の方がおくれているということなんです、現状に比べて。
民主党の案でお伺いしたいと思います。
民主党の方では、マニフェストで、農山漁村における女性支援策を、この農業を通じて実現していきますと。この農山漁村における女性の数は幾らですか。農山漁村の数もわからないで、そこにいる女性の数をどうやって考えておられるんですか。お答えいただけますか。
○山田議員 大変岩國委員に怒られそうでございますが、今、政府の農村振興局長でしたかね、十三万あるというお答えでございましたが、私ども、市町村合併の中で、各集落、かつての村単位というのが大体一つの市に、私どもの長崎県を例にとりましても、二十から三十ぐらいの集落が今あるかと承知しております。そんな中で、漁村集落もありますれば農村集落もあります。どこもかなり今厳しい状況にありまして、このままではどんどん離村といいますか、集落そのものが崩れつつある。
そういう状況で、岩國委員が指摘するような、大変私どもにとっても、集落については今度の民主党案でも、漁村集落も農村集落も、それに対するいわゆる維持、例えば、あぜ道の補修とかあるいは水路とかあるいは水利とかあるいはいその掃除とか、そういったものに対しても一つの支払い制度というものを考えているところです。
○岩國委員 大変作業的にやりにくいことでしょうけれども、私が一貫して申し上げたいのは、政府にも民主党にももう少しこういった、これからの農政というのは数字をしっかりとつかんで、押さえて、目標を立てて、実行して、それがなかったことが今までの六十年間の一つの欠点だったのではないかと思うんです。イメージやロマンだけで農政をやるわけにはいかないと思うんですね。
次に、政府・自民党の目標としておられる自給率、現在、自民党は、四五%の自給率を達成するための攻めの農政を実施する、四五%。民主党では、これが五〇%。民主党案では五〇%を、政権をとれば六〇%、将来的には八〇%という目標を立てておられますけれども、これに間違いありませんか。御確認いただけますか。
○山田議員 私どもは、自給率の達成で、十年間で五〇%以上、そしてそれ以後、目標を六〇%、そういうふうに約束する法案になっております。
○岩國委員 八〇%という数字を民主党案で出されたことはないということですね。小沢代表は、一〇〇%ということを最近おっしゃっていますけれども、代表の一〇〇%とこの法案の六〇%の落差はどこにあるんですか。
○山田議員 小沢代表は、自給率一〇〇%、そう最近おっしゃっております。
この法案においては、民主党においてネクストキャビネットを重ねてきながら、その中で、一応五〇%以上を十年以内に達成し、それ以後六〇%を目標とするというふうに決議しながらやってまいりました。
つい最近でございますが、小沢代表と、その一〇〇%の自給率、それと我々が今法案で約束した五〇%、六〇%について議論をしたことがございます。小沢代表の考え方としましては、イギリスだって、かつて四〇%だったものを七〇%、八〇%に持ってきたじゃないか、一〇〇%をできないことはないだろう、それに対して、内外生産費のコストの直接払い、いわゆる不足払い、これを導入すれば、それは一兆じゃ足りないだろう、先ほども話したところですが、二兆、三兆かければできるんじゃないか、そういうお話でございました。
殊に、私どもも中身においては今の小沢代表とは変わらないと思っておりますが、確かに、麦にしても大豆にしても菜種油にしてもそうですが、米並みの収入を直接支払いでやっていけば、かつて数年前に、農水省が麦と大豆で反当たり七万円から七万三千円出したときに十年目標を二年で達成できたように、お金さえ出せば、本当に一兆、二兆、三兆と出していけば、自給率の七〇%、八〇%は可能であります。
そういう意味では、私どもも、その財源をどうするか。今私どもは、その財源をぎりぎり一兆円という形で五〇%を実現しましょう、そういったところですので、これから新代表の小沢代表のもと、さらに私ども党内での議論を重ねながら、場合によっては七〇%、八〇%、場合によっては一〇〇%ということもあり得る、そういう見地から考えていこう、そう思っているところです。
○岩國委員 そういうお考えはよくわかりました。
しかし、日本が仮に自給率一〇〇%、私は難しい目標だと思いますけれども、一〇〇%を可能にしたときの日本は、アジアの周りの国から食料をある意味では買わない国になってしまうんですね。
このアジア外交の中で、食料外交というのが私は非常に大切な武器だと思うんです。買うという立場にいるということがどれだけ大切なのか、あるいは売るという立場もまた大切だと思います。ある程度は買う、ある程度は売る、食料戦略の中でお互いに譲り合う、分け合うという関係をすべて断ち切るというのが一〇〇%。これは、ある意味では外交において、食料外交とは無縁の日本になってしまうという意味で、私は理念的には疑問を感じます。
そこで、中川大臣にお伺いいたします。
大臣は、日本の食料自給率四五%を目指していらっしゃる、将来的にはどこを目指せば、どこがいわゆるアジア外交の中で一番日本の居心地のいい自給率とお考えになっていらっしゃるのか、政治的な意味合いも含めてお答えください。
○中川国務大臣 いつものことながら、岩國委員、大変問題提起として考えなければいけない御質問でございます。
まず、自給率四〇%というのはカロリーベースでございますから、金額ベースでいくと七〇%、これもじりじり下がってきているわけでございます。
そういう中で、日本の場合には四方を海に囲まれ、またいわゆる日本にエネルギーとか食料とか物を輸入するときのいろいろなリスクというものがあるわけでございまして、輸出国のリスクあるいは途中の交通のリスク、いろいろなリスクの中で日本が食料、エネルギーその他を輸入しているという、ある意味では非常にデリケートなバランスの上に日本の生命あるいは産業が成り立っているという大前提を忘れてはならないと思います。
それから、今大変な御指摘がありましたけれども、アジアあるいはまたアフリカも日本に対して農産物を輸出したい、あるいはブラジルも輸出したいという、いわゆる途上国の側から見て、日本は先進国なんだから、向こう側の理屈としては、わざわざ高い農産物を非効率でつくるよりも、自分たちにとってプラスになるし、また日本にとってもプラスになるような、特にアフリカやアジアといった国々から、ぜひ農産物を買ってもらいたいという切なる要望があることも事実でございます。
そういう観点から、広い意味で外交という観点から、食料その他を途上国という立場でぜひ日本に買ってもらいたいということに対して、我々としては、そういう声もある、アジアの一員として、また、先進国でありますけれども、つい数十年前までは、日本も食うや食わずという先輩方の苦い経験の中から今日ここまで来たわけでありますから、世界があっての日本という観点から、そういう声も全く無視して、今御指摘のように、一〇〇%ということになれば、もう外交から食料というものは一切隔離された世界に入っていっていいのかどうなのかという視点も、私は御指摘のとおりだと思います。
それから、やはり日本としては、万が一ということもございますけれども、他方、逆に、食糧援助ということもWTO上限定的に認められているわけでありますので、そういう観点も必要だということで、そういう意味で、食料という生命に直接かかわり合いのある物資が、日本だけではなくて、世界の中できちっと位置づけられなければならない、それがドーハ開発ラウンド、今交渉しているポイントの大きな問題点になっているわけでございます。
他方、日本の国内だけを考えてみますと、一〇〇%を目指せばいい、あるいは輸出国になればいいのではないかというのは、非常に言葉としてはいい言葉でございますけれども、まさに岩國委員が言葉あるいは数字を極めて大事にしながら御質問されているように、果たして、日本の中で一〇〇%というのは一体どういう状況を指すのか。つくればいいのか、つくっても買う人がいなければ、これは国民にとっても意味がないのではないか。
あるいはまた、消費者に好まれるものをどうやってつくったらいいのかという場合に、この三千七百万ヘクタールの国土の中で、いろいろな条件があって、その中でぎりぎり最大限つくれるものというものをどういうふうにこれから位置づけていったらいいのかというときに、我々は、理想ではなくて、五年先、十年先というものを見据えて、先ほどおしかりを受けましたけれども、いろいろな数字をできるだけ正確に把握しながらやっていくとするならば、我々がお示ししておりますように、平成二十七年にカロリーベースで現在の四〇%前後のものを四五%までやっていくということが、当面の、努力をして、目標としてぎりぎり設定できる線だろうというふうに思います。
もちろん、我々の試算の中には、国内の中で米と芋を中心に、時たま野菜や魚をとるというぎりぎりの選択の中でやっていけば国内でもできますよという試算もございますけれども、それについても、では、肥料をどうするんだ、燃料をどうするんだ、電気を、エネルギーをどうするんだという大前提もあるわけでございますので、日本としては、自給というものを前提にした農政というのは、現時点では予想を立てることが極めて難しい。それよりも、一ポイントでも自給率を上げていく、カロリーベースあるいはまた重量ベース、金額ベース、いろいろなとり方がありますけれども、一ポイントでも上げていく、これは国民的コンセンサスだろうというふうに考えております。
いずれにいたしましても、我々は、そういうものを総合的に考えた上で、現実的な努力目標として、平成二十七年度にカロリーベースで五ポイントを上げていくことを何とか目標として実現したいということで御議論をいただいているところでございます。
○岩國委員 日本の農家を重視し、そして私も農業、農家に愛情を持つ者の一人ですけれども、だからといって、一〇〇%ということを政治家あるいは政策として打ち出すことは、いろいろな外交面で誤解を与えかねないという面があるということだけ指摘しておきます。もちろん、一〇〇%にほど遠い現状で、一〇〇%議論をこんなところでやるのは時間の無駄かもしれませんので、この辺でその点についてはやめたいと思います。
さて、現実的に、今、四〇から四五にしたいと大臣はおっしゃいました。それは、時間スパンとしてはどれぐらいの期間を考えていらっしゃるんですか。
○中川国務大臣 今から十年後、つまり新しいこの制度がスタートしてから十年後ということで、平成二十七年を目標年度としております。
○岩國委員 では、民主党案についてお伺いいたします。
現在の四〇を五〇、それから五〇を六〇、それぞれのタイムスパンとしてはどういう時間的な数字を頭に置いて考えていらっしゃいますか。
○山田議員 私どもは、実際に私どもの政策が実現されてからという考えでやりますが、例えば、来年もしそうなったとすれば、平成十九年度から十年間かけて、二十九年度までに必ずカロリーベースで一〇%アップさせる、これについては自信がございます。
○岩國委員 それでは、農水大臣、それから民主党法案提出者の方にお伺いしますけれども、十年間で五%上げた工業先進国の例はどこにありますか。十年間で一〇%上げた国の例を挙げていただけますか。いや、カナダがやった、ニュージーランドがやったと、安心を与えるような答えをいただきたいんです。
○中川国務大臣 例えばアメリカですと、ちょっと、図表なので一、二年のずれがあるかもしれませんけれども、一九七七、八年から八二、三年の間に、アメリカのカロリーベースの自給率が一三五%ぐらいから一六二%に一挙にはね上がっております。しかし、逆に、八〇年代の前半にまたどんと落ちておりまして、一二二、三%まで落ちております。これは、やはり自然相手、生き物相手の典型的な例だと思います。しかし、御指摘のように、アメリカの場合には非常に高水準でありますけれども、折れ線で見ますと、かなり乱高下しております。
他方、フランス、ドイツ、イギリスは、戦後、着実に数字がトレンドとして伸びております。イタリアは、ほぼ横ばいから若干の減、日本は、一貫して減少して、そして、現在横ばいという状況でございます。
○篠原議員 お答えいたします。
自給率、日本を除いた先進国は皆、戦後、上げようと努力しております。今ここに、手元に細かい数字がございます。
イギリスの例で、一番上がったときのことでお答えいたしますと、一九七六年、カロリー自給率が四八%でしたけれども、一九八六年、十年後には七四%になっております。七〇%ぐらいにはすぐに行きまして、その後はちょっと減ったりふえたりいたしまして、今私の手元にあります数字によりますと、一番最近の二〇〇二年では七四%というふうになっております。このところにありますとおり、イギリスの場合は、一番自給率が急激に下がった先進国として特徴的な国だと思います。
そのイギリスの場合は、戦後、これではいかぬということで、自給率を上げるということに国が全力を挙げて取り組みました。最初の十年ぐらいは余りうまくいかなかったんですが、小麦の単収増があったわけです。これは、ノーリンテンと呼ばれていますけれども、盛岡の農業試験場の小麦がアメリカに渡り、それがアメリカでも飛躍的な単収増をもたらしたんですが、それがまたヨーロッパにも参りました。
アメリカの場合はボーローグ博士で有名で、ノーベル平和賞をもらわれました。小麦の単収がふえて飢えを救ったということでノーベル平和賞をもらった方がおられるわけですけれども、それがイギリスにも渡りまして収量が倍になったわけです。それで、その恩恵を受けて、イギリスは小麦の収量が相当ふえて、自給率を一〇%あるいは二〇%上げることに成功しております。
日本の場合も、ですから、米の収量が一気に倍になるということはわかりませんけれども、小麦だとか大豆だとかいうのに米並みの研究開発費を投入したりした場合は一気にそういうところで収量が倍になり、小麦の面積をふやすことによって、あるいは面積はそう大してふやさなくても収量が倍になったりということがあり得るのではないかと思っております。
○岩國委員 民主党案は、イギリスという国の一つのことを参考にして、ある意味では現実的におつくりになったと評価したいと思います。
さて、政府案にかえりまして、中川大臣が御答弁いただいたアメリカの百何十%が百何十%に、我々、一〇〇%にもいかない国の政策を今ここで論じているのであって、つくり過ぎて売れ過ぎているような幸せな国の自給率が五%上がったか一〇%上がったかを論じているわけではないわけですから、アメリカのような全く例外的な、一〇〇%以上の国の例を挙げて答弁していただくのはいささか不本意に私は思います。
次に、農業の担い手について、具体的にどういう対策を考えておられるのか、この点についてお伺いしたいと思いますけれども、民主党案についてまずお伺いします。
農家への直接支払い、これについては、他の先進国でどこの国を参考にされたのか、あるいはそういう例は全くないのか、端的にお答えください。
○篠原議員 お答えいたします。
直接支払いは、EUでかなり前から導入されております。
EUの場合、日本と同じでございますけれども、価格支持政策、プライスサポートという形でやっておりました。EUが統合されたけれども財政負担がふえた、一番ひどいときは七割近くのEU全体の予算が農業に使われている、これは問題じゃないかという声が起こってまいりました。ほかにも理由があるわけですけれども、それじゃいけないということで、それで、インカムサポートというので所得支持に変えていこう。
それには、今の財政負担がふえてきたという理由もあるんですが、これは日本にはない理由でございますけれども、岩國委員、ヨーロッパはロンドン、パリと住まわれておわかりいただいていると思いますけれども、規模が違うわけです。イギリスは平均でも六、七十ヘクタール、フランスの場合、パリ盆地の周りは百ヘクタール、二百ヘクタールです。価格を高くしておくとその人たちはそれで相当不労所得が得られる、こういう人たちには補助は行く必要ないんだ。それに対して、フランスの場合でいいますと、南の方のアルプスの山ろくの人たちは零細農家で必要である。そういった人たちに、本当に社会保障的な感覚で補助をしていくべきではないかということで、直接支払い制度というのが導入されました。
これをOECDやWTOが認めまして、本当に必要な人のところに行くのであったらそれはある程度構わないということで、国際的にも認められておりますので、日本もそれに倣って、そういった施策を導入したらいいんじゃないかということで考えました。
○岩國委員 こうした、農家の担い手をしっかり支えよう、そして数をふやしていこう、日本の農業の足腰を強くしていこうというのが、民主党でもあり、また政府提案の御趣旨だと思いますけれども、参考人の御意見の中には、この法律、難しくて読みにくいと。
参考人としては、これからの、特に農家の方が読解力が低いという意味でおっしゃったのではないと思いますけれども、決して高い方ではないと思います。どういう工夫をしておられるのか。政府提案あるいは民主党提案にそういう工夫があるならば、端的にその例を示していただけますか。これは農業関係だからこそ、こういうわかりやすい表現で、特にこの辺は今までの法案にないような表現を使っておると。どうぞ、よろしく。
○中川国務大臣 法律案でございますけれども、これは全国に広がる農家に周知徹底をしていただくことが大事でございますので、御理解をしていただく努力をしなければいけないということは当然のことでございます。
四月末の参考人の意見陳述の議事録が手元にございますけれども、NHKの合瀬解説委員の御指摘の中でも、この法案が非常に難しくて難解で、理解しにくいと。したがって、そういうことに対してのきちっとした努力をしなければいけないということを今重く受けとめているところでございます。NHKの解説委員が難解だというふうにおっしゃるぐらいでありますから、まして農業者の皆様、法律の専門家でもございませんし、しかし御理解をいただかなければならない、ということは、我々が努力をしなければならないということでございます。
そういう意味で、全国で説明会をできるだけ多くやっておりますし、パンフレット、QアンドA、これも、私もいつも事務方に言うんですけれども、次々と新しいものが出てきて、どこがどういうふうに読みやすくなったのか正直言ってよくわからないということをちょっと打ち明け話的に申し上げているところでございまして、そういう意味で、これは法案の審議中も、ホームページあるいは報道等を通じて、現在進行形で、きょうの岩國委員と政府案あるいは民主党案含めてのやりとりはぜひ知っていただきたいというふうに私は思うわけでございますけれども、現在進行形的に知っていただきたいと同時に、法案が仮に成立したとするならば、その後がまた一段と大事なことだろうと思います。
そういう意味で、私としては、いよいよ法律ができたという段階で、自分もこの対象者になりたいとか集落営農として指定を受けたいとかいう方々に対して、電話、あるいはメールでもいいんでしょうけれども、マンツーマンで自分の疑問点をきちっと、しかるべき人間、これは国か都道府県か市町村かはわかりませんけれども有権解釈ができる立場で、ある意味ではマンツーマンで御疑問に答えるということも今後ひょっとしたら必要になってくるんだろう。
そうしないと、真の意味の疑問点、このパンフレットを読みなさいと言っても、なかなか自分の疑問点にすとんと落ちるということがない場合もありますので、今後はますますきめ細かくやっていくことが、この法律の真の目的でございますので、窓口相談とか相談室とかいう言葉が適切かどうかわかりませんけれども、マンツーマンで、メール等を通じれば二十四時間ということになるんでしょうけれども、ある意味ではそういう対応も必要ですし、とにかく御理解をいただくということに最善の努力が必要だというふうに考えております。
○岩國委員 私は、大変大切な、大事な点だと思うんですね。これから、法律を理解してもらおうというときに、国会の法律は、一般的に言って我々でも理解できない難しいものが多いわけです。また、法律である以上、制約はあると思います。しかし、本当に、読んでもらって、理解してもらって、アクションにそれはつながっていくということを考えたら、特にこの分野ではもっともっとわかりやすい法律というのが必要ではないかと思います。
私は、出雲市長のときに、一般市民の人がわかりにくいとおっしゃったから、二人の中学校の国語の先生に委託して全部書き直してもらいました。中学校の国語の先生の国語能力で書き直してもらう。わかりやすい条例、規則にしなければ、市会議員と役所の職員だけがわかるようなものをもてあそぶというのは、これは民主主義社会では許されないことだと素朴に私は思ったからです。
私自身も、小学校二年生から、父を亡くしたために母を助けてずっと農業をやっておりました。小学校時代も中学校時代も高校時代も、麦踏みをし、そして芋の苗を植えて、あの日本海の寒い寒い風を受けながら、私は母の背中をいつも見ながらずっと農業をやってきました。私は、今でも母の背中が大好きです。母の背中を見ると、いつも農業をしておったときの姿が浮かぶからです。
ロンドン、パリ、ニューヨーク、いろいろな国を回りました。どこの国へ行っても、私は、ドライブしながら、農村地帯の風景、特に農家の人が農地で働いている、ちょうどミレーの「晩鐘」のような場面がありますけれども、そういう働いている人たちの背中を見ながら、ああ一生懸命やっていらっしゃるな、そんなことを思ってきました。
五風十雨という言葉、大臣は御存じだと思います。五日に一回風が吹いて、十日に一回雨が降る。これが、中国古来から農村地帯における一つの願いだったんですね。天地、自然の流れが、五日に一回風が吹いて、十日に一回雨が降る。その言葉が、弱い農家の人たちの天に対する願い。それがいろいろな家に、農家のところには張ってあります。私はその言葉が好きで、色紙を頼まれるとよく書いてまいりました。
また、農家の人たちが、日本の農政に対して、不信感というと失礼ですけれども、非常に不安を持っておられる。心配。自分たちの農業は本当に生き残るんだろうか。息子に農業をさせてもいいんだろうか。市役所に勤めさせるか、農業をやらせるか。出雲市で一番の農業をやっておられた方が相談に来られました。息子は出雲市役所を受けたいと思うけれども、後継ぎを本当はしてもらいたいけれども、市役所へ勤めたいと言っている、市長さん、どう思われますか。私は本当は後継ぎをしなさいと言いたかったけれども、その青年のために、あえて面接をし、私は採用することにしました。そのお父さんに聞きました。後継ぎはそれでどうするんですか。息子は定年になったら私の跡を継ぐと言っております、と。こういう例は、全国各地に私はあると思います。
市議会で、農業に関する答弁を、私は六年間一遍も部長にさせませんでした。市長みずから全部やってきました。農家の人は、そんなことでも喜んでくれるんです。おわかりでしょうか。そういう代理答弁をさせて、道路とか、あるいはほかの問題は代理答弁もたくさんありました。しかし、農業だけは、市長みずから、責任者が直接答弁してくれる、それだけがわずかな島根の農家の人たちの支えの一つにもなっておったんです。
二年して、うれしいことがありました。私が、農業の大切さ、そして、こういう言葉を言っておりました。尊皇攘夷と私は学校で習ったことがありますが、(尊農上位というパネルを示す)この皇の字を私は農の字に変えておりますけれども、私は、農業を大切にし、それがこれからの社会を支えていくんだ、そういう話をしておりましたら、私のところへ訪ねてきた農家の人が名刺を持ってきました。名刺の肩書は百姓と書いてあったんです。百姓という言葉には若干差別的なにおいがあるので、注意して使わなければならないという方もいらっしゃいますけれども、百姓という言葉は、釈迦に説法ですけれども、昔は立派な職業、あるいは一番立派な職業だったかもしれない。それを名刺に堂々と刷り込んで、そして、誇らかに農業に取り組んでいらっしゃる。
私は、決して社会教育をしたわけではありませんけれども、やり方によっては、そういう弱い地域の弱い農家の人が自信を持って、農業を誇りにしてくれる。私は、それは一つの例として御紹介させていただきました。
さて、これからの農家を支えていくのは、定年になったら農家をやりますという人ばかりではなくて、若い人に入ってもらわなければならない。そのために、学校教育の中で、どれだけ農業教育あるいは食産教育、食育基本法等にありましたけれども、食べ物を自分で生産する、自分の手と足で自分たちの食べるものをしっかりとつくるという体験を持たせる、そういう農業実習、農業教育にどの程度農水省としては力を入れておられるのか。あるいは、文科省と一緒に、どの程度こういった点を充実してこられたのか。一つか二つの実例があれば、教えていただきたいと思います。
○井出政府参考人 お答えいたします。
子供たちを対象にしました農業体験学習につきましては、平成十六年度に実施した調査によりますと、小学校では七七%、中学校では三四%の学校で農業体験学習が行われているという調査結果がございます。
こういった子供たちへの農業体験学習の場を継続的に提供していくためには、学校や教師の方々の知識の不足、あるいは体験を提供する場所の不足、さらに外部の指導者の不足といった課題を克服していかなければなりません。
このため、農林水産省といたしましては、文部科学省と連携をいたしまして、主として学校教育における体験活動を推進するために、小中学校の先生方を対象にした体験学習指導者養成のための研修を実施するとか、体験活動を企画される小中学校のために、受け入れ農家等に対する情報を提供するということもやっておりますし、さらに、学校内における活動の支援ということで、地域で体験活動に取り組む子供たちのグループの全国的なネットワークづくりを図ります子どもファーム・ネットといったものを推進し、さらに、この受け入れに積極的な農家あるいはJA等の活動についても支援を行っているところでございます。
○岩國委員 そうした学校教育の中で、教科として、あるいは実習として、もう少し農業を見直して、そしてそれは、農業を支えるためだけではなくて、自然こそ最良の教師であるという言葉があるように、パソコンから学ぶのではなくて、液晶スクリーンから知識やそういうことを勉強するのではなくて、やはり自然の中で、自分のまいた種が花を咲かせた、そういう驚きの中に本当の感動があり、感激があり、教育につながるものがあると私は思うんです。
そういう点では、私は、農業教育、農業実習というのは、もっと教育の観点からも重視すべきじゃないかと思います。
民主党のこの御提案の中で、そうした、学校における、あるいは社会全体を含めて、農業に対してどういう教育、職業教育あるいは農業教育、いろいろな言葉があると思いますけれども、どういうものを参考にし、どういうことを実行しようとしておられるか、お答えいただけますか。
○篠原議員 食育基本法の議論のときに、私も内閣委員会で差しかえで質問させていただきました。たしか岩國委員も質問されまして、イタリアでは、マンジャーレ、カンターレ、アモーレですか、この三つは、食べて、歌って、愛して、これは政府が介入するべきものではないので、食育基本法などはまかりならぬという質問をされまして、その点は私とちょっと意見が違って、珍しく意見が違った場面だったと思います。
今回の法案ですけれども、我々は、先ほど質問がありました、直接支払いの導入による自給率の向上というのを一つの大きな柱といたしまして、漁業も入れましたけれども、食育までは頭が回らなくて、基本的な考え方としてはありますけれども、法案には入っておりません。
それで、岩國委員、いろいろ言葉をおつくりになって、印象的な言葉で皆さんにわかりやすく説明されて、今おっしゃいましたけれども、こういう本がございまして、「食農教育」というものです。これは格調高いというか、農文協というのを農業関係者なら皆御存じだと思います。農文協は「現代農業」とか「地上」とかを出しています。日本の伝統的な食事をみんな洗いざらい調べ上げて、立派な冊子にしてございますけれども、それがもう四十六号です。大分前からその点に気がつきまして、やはり農業の教育的機能に着目いたしまして、食育だけじゃなくて食農教育とも言っております。そういった精神は、我々も当然理解しております。
ですから、法案には入っておりませんけれども、死活的な重要性を帯びてくるのは、そういう点では学校給食だと思います。岩國先生の地元の木次町というのがありますけれども、そこでは有機農をやっておられる佐藤忠吉さんという立派な方がおられまして、町長さんもその方の意見を聞いたりされておりまして、地元の農産物をなるべく使うということ、それで、では学校給食に使ってくれるのならということで、今までやめてしまった野菜や何かをみんなつくり出して、域内の自給率も上がるということが起きております。これは、まさしく我々の法案の目指すべきところでございます。
○岩國委員 こういった学校教育、特にこれからの中学生、小学生に農業に親しみを持たせ、農業の大切さを知り、それを頭だけではなくて、自分の手と足を使って汗と涙の中でしっかりと身につけさせる、それが自信にもつながると私は思うんです。ですから、食育基本法ができたときには、今、篠原委員おっしゃっていただきましたように、私は、世界のどこの国が食べ方についての教育をしているところがあるのか、食べ方の教育よりも食べるものをつくることの教育の方が大切だと思うんです。今の食農教育もそう。それから、私が今紹介しました食産、食べるものをつくり出す、つくり出すことの大切さ。
食べることというのは、要するに自分だけよければいいという考えにつながるんです。人のために何か食べている人は一人もいない。常に食べるときは自分のためにしか食べない。自分さえよければいいという教育につながるのが食育基本法なんです。
それに比べて、食べるものをつくるというのは、自分だけではなくて、人のために何をつくれば喜ばれるか、これこそ公共の心につながる大切な教育だということを私は申し上げたいと思います。
そこで、中川大臣にお伺いします。
出雲市長の公舎の周りは、東西南北全部水田でした。稲を植えて、そして稲刈りの時期を迎える。しかし、夏を過ぎると残酷な場面を見なきゃならないんです。青田刈りです。
これを子供たちはどういう思いで見ているのか。植物を大切にしなさい、出雲市は木のお医者さんまでつくって、木にも命がある、草にも命がある、命のあるものを大切にしなさいと教えているときに、せっかくお百姓さんがつくったものが、ある段階で、穂をつける前にそうやって刈られてしまう。こういう残酷な場面を見せることは、子供の教育にとって大変悪いことじゃないかと思うんです。
これを改めることはできないんですか。青田刈りは、これからも毎年毎年、こういうことをやってはいけないという反面教師としてお続けになるんですか。今の農業実習、農業教育というのは、稲を大切に、麦を大切に、芋を大切に、それを教えるんです。一方では、こういうことをお金を出してまで政府はやっている。
私は、これは反省し、そしてこの政策は改めるべきじゃないかと思います。御意見があれば、おっしゃってください。
○中川国務大臣 青田刈りを子供たちが残酷と思うか思わないか、そこがまず非常に大事なポイントではないかと、今、御指摘を伺いながら思いました。
先ほどの御発言にもありましたように、本物を知らない、田植えや農産物をつくる苦しみ、そして喜び、そして、これが自分にとって、あるいは周りの仲間にとって、自分がつくった、おいしいという共有ができる、これは生き物なんだという実感があって、そして、そういう前提の中で青田刈りを見たときに、何とかわいそうな、何と残酷なということにつながっていくんだろうと思います。
そういう前提で、青田刈りというものは、子供たちの自然体験あるいは自然との対話の中での喜びにとって、マイナスであって、決してプラスではないということは御指摘のとおりだと思います。
他方、農業政策上からいいますと、水田というものが、消費が落ちてくる、生産はどんどん伸びていくというギャップを埋めていくという観点から、あるいはまた農地保全という観点から、当時は選択肢として、そういう青田刈りということで農地を保全する、農家を保全するという政策をとってきたわけであります。
しかし、これはもったいない、残酷だという御指摘もそのとおりだと思いますので、優良農地をいかに活用して、そしてやる気と能力のある農家を中心にして、米の需要が仮に落ちるとするならば、ほかの農作物をつくること等によって、食料の需給の発展といいましょうか、先ほどの御議論でいうと消費者と生産者との間の協力によって自給率の向上に何とかつなげていきたいということで、この法案もそういう観点からぜひ御議論をいただき、御理解をいただきたいというふうに思っております。
○岩國委員 もう一つ、農業教育、これは農業とは言えないかもしれませんけれども、そういう自然を大切にという観点から、林業、山を大切に、森を大切に、林を大切に、木を大切に。
温暖化防止の効果として、これは林野庁の外郭団体がおつくりになったパンフレット、ここに、年間七十二兆円の効果があると。その前に私が直接いただいたのは、年間七十四兆円でした。そして、三週間前に議員会館のところを通ったら、こういったパンフレットがたくさん置いてありましたから皆さんも手にされたと思いますけれども、そうすると、いつの間にか七十二兆円。それにしても大きい金額で、私はうれしく思いました。改めて問い直して、もう一回提出してもらったら、今度は七十兆円が正しい。聞くたびに二兆円ずつ減っていって、私があと三十回聞いたらゼロになる、こういうまたいいかげんなことでも困るわけです。私は、七十兆円でも七十二兆円でもうれしいんですよ。私は、山が好き、森が好き、そして樹木医、樹医制度をつくってきましたから。
ですから、こういう教育効果について、それから、特にこの場をかりてお願いしたいのは、これは県別の価値がなぜ出てこないのか。島根県の山の価値は幾らなのか。鳥取県の価値は幾らなのか。県別の価値がわからないで合計しかわかりませんと。それぞれの県の積み上げがあって初めて合計が出るものじゃないんですか。農水省の皆さんの頭というのは、全体があって県別はわからない。
この程度の数字では、島根県へ行って、あるいは静岡県で、長野県で話をするときに、長野県の皆さん、元気を出しましょう、皆さんが大切にしている山はこれだけの、一年間に一兆五千億円の価値があるんだと。みんなその数字を聞いて、元気を出しますよ、山を見る目が違ってきますよ。やはりこういう森林を大切にしよう、そういう気が当然わいてくるでしょう、子供たちも。私は、ぜひその点を徹底して、県別のデータを出していただきたいと思います。
最後に、中川大臣に一つ質問させていただきます。
農業の担い手、これを強調して法案を出しておられますけれども、中川大臣自身は、いろいろな国の政策と比較して、これが一番いいと思っておられるんでしょうか。生まれ変わって農業の担い手として新たな人生を歩むときには、どこの国に生まれたいと思っておられますか。あの国の農業の担い手政策なら、自分は生まれ変わったらあの国に生まれたいという国はどこの国ですか。お答えください。
○中川国務大臣 私も国会議員になってからずっと農政をやってまいりましたので、各国に行くと、必ず見たい、そして時間等が許せば見るところは二カ所ございます。一つは、農地でございます。それからもう一つは、その地域の一般の人々が行く食品マーケットにできるだけ行くようにしております。そういう中で私も、ヨーロッパ、あるいは東南アジア、あるいはアメリカ、豪州、そして先週はブラジルのサトウキビ畑を見てまいりました。
私は、やはり農業というのはどこの国にとっても御指摘のように大事な産業であり、そして、総じてみんな農業者は誇りを持っているんだろうというふうに思っております。誇りと生きがいがなければ、私は、農業という仕事が業として、産業として成り立っていかないというふうに思っておりますから、どの地域の農業もそれぞれ一生懸命努力しているし、誇りを持っていると思います。
しかし、私が生まれ変わるとするならば、やはり日本人として生まれたいし、そして、担い手になるのであれば、当然、日本の農業の担い手になりたい。日本の農業は立派にこれからも誇れる農業ですし、誇れる農業者になっていただきたいと思っておりますので、そういう誇れる農業者として、生まれ変わるならば日本の担い手になりたいというふうに考えております。
○岩國委員 我々政治家は、二度と日本に生まれることを許されることはないというのが運命だと思います。これだけいろいろな悪い法律をつくってきて、六十年間国民に苦労をかけてきて、日本に生まれることは許されないとしたら、どこの国の農業だったらやってみたいと、今までいろいろ研究された中で、日本以外で生まれなければならないときは、どこの国に生まれたらやりがいがあると思われますか。
○中川国務大臣 これは、岩國委員、お言葉ですが、岩國委員も大変、出雲、島根に誇りを持って、先ほどそれを前提に御質問されているわけでありまして、私も、日本、そして十勝というところを地元として政治をやっております。岩國委員の御質問、何が飛んでくるかわからないので、失礼しました、どういう御質問の趣旨が来るかわからないので、訂正させていただきますが、実は、地元のことをさっき地元に電話して調べたのですけれども、ちょうど二十五年前、ほぼ私が当選する直後に比べて、農家戸数は五五%減っております。しかし、農地が一万二千ヘクタールふえて、農業粗生産が全体として八百億ぐらいが二千六百億にふえているんです。つまり、一戸当たりの農業所得が約三倍にふえているんです。
そういう地域もあるわけでありますから、そういう地域で誇りを持って今頑張っている農業者を地元としてやっている以上は、私は、日本の政治家、あるいは農村地帯を地元としてこれからも農政に取り組んでいきたいし、もちろん、困っているところがあることも重々承知をしておりますので、しかし、原点はそういうところの出身だということもぜひ御理解をいただきたいと思います。
○稲葉委員長 岩國哲人君、質問時間が経過しておりますので。
○岩國委員 時間が参りましたので、ここで同僚の小宮山泰子委員にかわらせていただきます。
ありがとうございました。
○稲葉委員長 次に、小宮山泰子君。
○小宮山(泰)委員 民主党の小宮山泰子でございます。
農林水産委員会におきましては初めての質問となります。私、住んでおりますところが埼玉県第七区というところ、非常に住宅地でもありますし、農村地帯ということももちろん兼ねております。
本日は、政府提出の法案、また民主党提出の法案に関連して質問させていただきますが、先般、私自身、国土交通委員会等で都市計画法の審議もしておりました。そのときに、やはり、都市と農地というものは切り離せないのだなという思いをしておりますし、また、先ほどの岩國委員の指摘にもありましたけれども、全国で村がもうなくなっている県が十三もあるという、ある意味非常に都市化も進んでいるし、そして行政単位も変わっている。その中において、特に都市近郊農業の振興や発展を願う立場という点から質問をしていきたいと思います。
私、先ほどありました、私の住んでいるところ、JAでいいますと、いるま野農協というところのエリアになるんですが、この地域は東京の都心から三十キロから六十キロの地域、簡単に昔から言う言葉であれば、栗よりうまい十三里というサツマイモをつくっているこの地域が私のところのそばでございます。昔でいえば、本当に江戸時代の日本というのは大きなことを考えていたのだなと思います。
江戸の飢饉のときに、やはり、サツマイモ、やせた土地でも実際には育つということで、それを植え、育て、そしてそれをちゃんと都市に供給をする、その地域というものを舟運でつないでいったという、非常に大きな意味で農業というものをとらえ、そして、その地域にいる人たちの食料生産、そして生活というものを守った。そういう意味で危機管理ができていたし、農業というものがやはり都市を守り、そして人々の、国民の、江戸の庶民かもしれませんが、その人たちを守る、非常に大きな意味でとらえていた。やはり、こういった基本的なところを考えていかなければいけないという思いをしております。
そして、もう一点指摘させていただきたいのですが、当時でいえば、都市のそばではない、十三里離れていれば、まあ遠くはないですけれども近くもない場所だったと思います。やはり、そういったところで、必ずしも土壌は豊かな場所ではありませんでした。しかし、その中において、雑木林を開拓し、そして開墾をし、土地を、堆肥をつくり豊かにしていった、これは一年や二年でできることでもない、非常に長い年月をかけて豊かな農作物ができる土地をつくり上げていった先人たち、これが、先ほど大臣の答弁にありました、やはり誇りを持てる農家、そして岩國先生のお知り合いの方からいただいた名刺にある百姓というものなんだと思います。
日本の農家の一番の特徴は、土地に対しての思い入れというものが非常に大きいということと承知しております。それは、限られた国土の中において、自分たちが開墾し、豊かにし、そして作物に一番適した土地を、土をつくり続けたという、だからこそ、その土地に対し誇りを持っていったんだ、そしてそれが、日本の食料を、その地域の食料をしっかり守る、そういったものにつながっていったんだと確信しております。
さて、埼玉県は八百万人近くいますけれども、統計でいえば、県全体で七百万人ぐらいの大体二二%に当たる百五十八万人が、このいるま野農協のエリアでは住んでおりまして、そして農家の戸数というのは一万四千戸ございます。本当に、皆さん、若手も含めて努力しているところもありますし、後継者、担い手は、なかなか次は見つけられない。元県議会議員で私の知っている方は、息子には続けさせられないといって、もう今七十過ぎられましたけれども、自分でトラクターを操作し、米をつくっている。そういう意味では、いろいろな面が見える土地でもあります。
また、畑と田んぼの割合というのは七対三で、県内でも平地面積が大きいところでもありますので、非常に畑の割合の多いところでもあります。特に、先ほども話しましたけれども、川越芋や、ダイオキシンのときに非常に話題になりましたホウレンソウやお茶、また花卉、そして家畜、そういったものでも知られているところでもあります。
そこで、都市近郊農地というものについて伺ってまいりますけれども、まずもって、先ほどからもデータの話が出ておりますので、都市近郊農地と言われたもので、全国の全耕地面積に当たる割合というのはどのぐらいなんでしょうか。また、都市近郊農地の生産が全体の農産品の生産に占める割合というのはどのぐらいなのか、お答えください。
○山田政府参考人 お答えいたします。
都市近郊農地それから都市近郊農業の生産額でございます。
都市の農地なり農業というのは、農業区分、四つの区分がございまして、そのうち都市的地域とするデータがございます。この都市的地域のデータで申しますと、平成十六年における耕地面積は、この都市的地域では百十九万ヘクタールとなっておりまして、全国の四百七十一万ヘクタールに対しまして二五%を占めております。
また、農業生産額ですが、これは平成十六年ですが、この都市的地域は二兆六千億円となっておりまして、全国の九兆円に対しまして二九%を占めているという状況でございます。
○小宮山(泰)委員 今データを言っていただいたとおり、これは本当に大きな数字ですし、農業に対する割合としても非常に大きいものだと思います。
この点に関して、もう一点ぜひ伺いたいところでありますけれども、やはり、自給率の問題、先ほどからもずっとこの話は出ておりますが、私自身は、現実としてどのあたりがいいのかというのは政治的な問題もありますが、やはり、日本人、何かあったときに一〇〇%食べられるというのは安心だなと。食べるのは私自身も大好きですから。そして、それが何よりも、今、鳥インフルエンザの問題もあります、BSEのこともある、そして農薬の問題、いろいろな問題があります。その点は、食料自給率という点に関しては、今エネルギーの高さというのでしょうか、その点だけで見られますが、栄養素の問題とかいろいろな問題もございます。それで考えますと、なかなか葉物とかそういったことに関しては、とらえ方というのは、実際には余りとらえられていないところも多いかとは思いますが、この都市近郊農業の食料自給率に対する現在の貢献度合いというものを述べていただきたいと思います。
あわせて、将来に、この近郊農業の果たすべき分野、お米だけ食べていても栄養素は偏ってまいります。健康でしっかりと動けるために、この食料自給率というものはもちろん考えていかなければいけません。
その点に関しまして、将来像についても農水省の考え方を伺わせていただきたいと思います。
○山田政府参考人 都市近郊農業が国内の食料供給にどういう役割を果たしているのかという御質問でございます。
先ほど申しましたように、都市近郊地域の耕地面積、先生おっしゃいましたように、二五%、非常に大きいわけですけれども、さらにその産出額、先ほど言いましたように二九%ということで、やはり都市的地域の農業は都市近郊であるというその立地条件を生かして、先生がお話ありましたように、付加価値の高い農産物に比重を置いた生産が行われているというふうに考えております。
それぞれの農産物ごとの全国のシェアで見ましても、野菜が三八%、全国の三八%が都市的地域で生産されております。また、果実が三四%、花卉が四〇%ということでございまして、新鮮で安全な農産物を都市住民に供給するという、非常に国民のニーズにこたえていると考えております。
自給率の話ですけれども、昨年三月に新たな食料・農業・農村基本計画が策定をされました。それまでは、食料自給率は主にカロリーベースで目標を立てているということでございましたが、昨年三月につくりました基本計画の中では、このカロリーベースとあわせまして、生産額ベースの自給率も目標とする、これまでは参考値として示されていたわけですが、目標値とするということにいたしました。これは、先生がおっしゃいましたように、都市で頑張っておられる、都市農業をやっておられる農家の方々、野菜その他の農家の方々の努力を評価していかなくちゃいけないというようなことでこういう措置になったところでございます。
このように、先生のお話のように、都市近郊農業、食料供給の観点からも非常に重要な役割を担っておると考えておりまして、今後とも、その振興を図っていきたいというふうに考えております。
○小宮山(泰)委員 カロリーベースだけでは当然立ち行かない部分があると思います。
また、自給率に関しましてですけれども、民主党に質問させていただきます。
民主党案は、都市近郊農業の振興、発展に対しても役に立つ法案なのか、また、都市近郊農業の振興、発展で自給率を引き上げるという視点があるのか、その点について、どうか御説明をお願いいたします。
○篠原議員 先ほど政府側の答弁にありましたとおり、都市的地域が農地面積の二五%、それから、抜けていましたけれども、農家戸数の二四%、農業粗生産額の二九%も占めるわけです。
今、自給率ということで、専ら食料安全保障上問題になるのはカロリー自給率でございますけれども、最近、政府は金額自給率というのも言い出してきているわけです。そういったことから見ますと、当然ですけれども、都市近郊農業というのは付加価値の高い野菜、果実、それから花卉等でございますので、非常に自給率が高くなるということでございます。
都市近郊農業の重要な点でございますけれども、我々がこの法案をつくるに当たって考えましたことは多面的機能です。農業は何も食料生産しているだけじゃないんだ。埼玉県にいろいろな公園がございますが、すぐ電車で行けるというのがあります。ですから、緑を提供し、景観を提供し、レクリエーションの場を提供し、ヒートアイランド現象もこれで和らぐということで、そういったものをやはり評価すべきではないかということを考えております。
我々の法案の骨子は直接支払いの導入による食料自給率の向上でございますけれども、ほかに付随的な目標もたくさんございます。その一つが多面的機能の発揮です。そういう点では、都市近郊農業も当然対象にしております。
ですから、カロリー自給率についてはそれほど貢献いたしませんけれども、我々が指定するようなカロリー自給率を高めなければならない麦だとか大豆ばかりではなくて、地方公共団体が、これはこの地域の農業振興上重要だというふうに考えて、かつ、農家がちゃんと生産販売目標をつくった場合は、そうした販売農家に対して直接支払いをするという仕組みになっておりまして、こういった仕組みを通じて、都市近郊農業も十分自給率の向上に資しますし、都市近郊農業の発展にも資する法案となっております。
○小宮山(泰)委員 非常に心強い答弁、ありがとうございます。
非常に自給率を考えたときに、私は、今回のことで改めて考えてみたのが、当然、カロリーベースも必要でしょう。そして、栄養素という意味では、いろいろな果物とかそういうものも必要だと思う。しかし、ふと考えたときに、こういった事態というもの、緊急事態ということは考えてはいけないんですが、今回の法案を見ていて、都市近郊農業のことが余りにも政府案には出てこない。しかし、実際、都市部に一番多く人口というものが集積しています。そういう人たちが緊急なときにどうやって食べるのかなということを考えると、輸送距離というものを非常に考えなければいけないんだという思いをしております。
そうされますと、今回は、大臣の場合ですと北海道、バレイショのこととかありますが、日本の場合は、空輸でも何でも、そういう意味では原油とかそういうものを輸入に頼っている国。そうなってくると、輸送手段というものも非常に難しくなる。ある意味、人間が住んでいるそばでつくっていなければ、自給率、どんなに地方でたくさんできていても、それを人口の多いところに持ってくることができないんじゃないかという危惧をしております。
実際、私の母の世代は、子供のころ、東京から川越のあたりとかまで、戦時中ですけれども、買い出しにずっと歩いて歩いていった。そうすると、行ける範囲というのは、やはり川越のあたりとか、もうちょっと先までは何とか行けるかなというところではありますが、それ以上、東北であったりとか北海道までは歩いていけないんですよ。行くまでにもたない、人間が。そうやって考えると、やはり都市近郊農業というのは、ある意味、本当の意味で、この自給率を上げるというところを考えると、非常に重要なポイントが出てくるのではないかなという気がしてなりません。
その点に関して、ちょっと通告にはありませんが、大臣、結構うなずいていただいておりますので、御意見がございましたら、御見識、伺わせていただければと思います。
○中川国務大臣 全く御指摘のとおりだと思います。
この点については提出者の篠原委員とかなり意見を同じにするのではないかと思いますけれども、都市近郊農業の位置づけは、先ほどから政府委員も答弁しておりますように、極めてウエートが高いわけですね。三割近い数字をそれぞれの数字で上げているわけであります。
都市近郊農業の多面的役割というのはいろいろあるということは言うまでもございませんが、いわゆる顔の見えるところでつくられる。つまり、それは距離が短いということで、万が一ということがあってはなりませんけれども、万が一のときに最も頼れるのが、都市に住む人にとっては都市近郊農業である。これに対する概念が、フードマイレージという、食料がどのぐらいの距離をかけてやってくるかという、ある意味では地産地消に対する一つの指標として、よく我々も引用するわけでございます。
そういう意味で、私は、個人的な話で恐縮ですが、小学生のときにサツマイモ掘りに埼玉県に行った記憶がございますけれども、先ほどの岩國委員との質疑のときにもありましたように、自分で掘ったものはやはり大切にするし、おいしい。掘ったものを帰って親に食べさせたり、近所の人に配って食べてもらったり、もうそれだけで感動なわけですね。先ほど岩國委員もおっしゃったように、食育は自分のためだけだけれども、芋掘りが生産活動と言えるかどうかわかりませんけれども、農業体験がみんなのために何か貢献できたような喜びを今でも記憶しているわけでございまして、そういう多面的な役割もあるわけでありますから、そういう意味で、都市近郊農業が果たす多面的役割は、私のところのような農業専業地帯とまた別の意味で大事である。だからこそ、日本の農業というのは、国土は狭いかもしれませんけれども、多様な農業があって、それぞれが多面的な機能を総合的に果たしているというところが我々にとって大事な基本認識であり、これは多分与野党通じて共有できるのではないかというふうに考えております。
○小宮山(泰)委員 御理解いただいていると思います。ありがとうございます。
地産地消という言葉、私も、篠原議員、この場合は提案者ですが、昨年いろいろ教えていただきまして、JAいるま野さんでシンポジウムがあったときに、やはりこの地域というものは地産地消に適している場所だということを教えていただきました。
実際に、いるま野さんの方では、毎年度作成しておりますけれども、「平成十八年度農政課題」というものの中で、「消費者ニーズは今後とも「安心、安全、新鮮」であり、より身近な農産物の生産と供給が果たす役割は重要となることから、担い手の育成、新たな農業者の創出及び直売施設の大型化対策を推進し、そして消費者への安心、安全に関する情報発信を積極的に行います」という方針を出されております。
今大臣も御理解いただいていると思いますが、フードマイレージの問題とかいろいろございますが、この地産地消を最近農水省もお力を入れていると思いますが、その点に関して、農水省の考えと振興施策というものに関してお伺いしたいと思います。
○西川政府参考人 地産地消に関する取り組みというお尋ねでございます。
地産地消は、委員御案内のとおり、地域で生産された農産物をできるだけ地域で消費しようとする、そういう活動でございますけれども、消費者にとっては、生産者と顔が見える関係で新鮮な農産物を購入できる、生産者にとっては、消費者ニーズを直接確かめながら、また付加価値を高めた販売をすることができる、そういったメリットがありまして、最近各地で活発に取り組まれているところでございます。
特に都市近郊ということを考えますと、生産と消費の間の距離が近いということから、生産者と消費者のコミュニケーションや農業生産の多様化などの形で地産地消が特に活発に取り組まれているということでございまして、都市近郊にとってこの地産地消というところは大変重要な意味を持つというふうに考えているところでございます。
こうしたことを踏まえまして、私どもとしては、この取り組みを促進する、全国的に拡大するということが必要ということで、さまざまな取り組みを現在しているということでございます。
具体的に申し上げますと、地産地消の推進のための地域での計画策定をしようじゃないかということで、これを平成十七年度から取り組みました。平成十七年度は、全国市町村のうちの六百でつくろうということでスタートしたわけでございますけれども、六百十八地区で計画が策定されたということでございます。またさらにこれを拡大しようということで、平成十九年度末までに、全国の市町村の約半分に相当すると思いますけれども、九百地区を目標に現在その推進を図っているというところでございます。
また、食育推進基本計画におきましても、学校給食におきまして、地場産品の使用を平成二十二年度までに現状の二一%から三〇%以上にするということとされておりますけれども、その達成にも資するという視点から、私どもとしても、食育関係者との連携の強化に努めている、そういうことを推進することとしておりますが、さらに、先ほどもお話ございましたけれども、地産地消の核となる直売施設、そういったものの整備、あるいは地域のリーダー、そういった者についての育成なり情報交換の場ということにつきまして積極的に取り組んでいきたい、そういうことを考えているところでございます。
○小宮山(泰)委員 詳しくありがとうございました。
地産地消、実際には、収穫から市場に出すというところにおいて、このエリアの人たちというのは、特に葉物なんて、九時、十時に行っても夜こうこうと電気をつけて、朝の出荷のために、また夜中の出荷とかそういったために、本当に時間を惜しまず長時間一生懸命働いていらっしゃいます。一枚一枚、汚いところの売り物にならないところの葉っぱを外したりとか、そういう意味では、家族総出でしているからこそ、新鮮な野菜というものが都市もそうですし全国に流れていくという、非常に努力の上に成り立っているものであります。
その割には、まだまだ地産地消といってもなかなかその点が理解されていない点もあるのではないか。特に、都市計画法を審議している中において、国土交通省が所管ということもありますが、縦割り行政の弊害で、農水省の方は非常ににこにこと穏やかに座っていらっしゃって、なかなか農地を守るということに関して押しの強い発言が出てこないということは、これでいいのかなという思いをあの審議の中で私は非常に感じました。
日本の人口は既に減り始めているということもあります。これは、思った以上に早く統計的にも来ています。少子高齢化という中において人口が減ってきた中、そうやって、今までの町づくりというのは、高度化といいますと、上に上に建てる、またコンクリートとか、駅前とかは大きな商業ビルを建てて、そして建ぺい率とか容積率が大きくなることによって利用率が高くなるから、そこの土地の部分が非常に有効に使えるんだと。だからこそ、今生産緑地の問題等残っておりますけれども、そういった中で、農地をバブルのころの土地の急騰ということもあって手放して、そこを宅地にする。しかし、住む人間が減ってきている。もちろん、学生とかも減ればアパートを借りる必要もない。
そういった中で、都市近郊農業の担い手の人たちというのは、その時代の流れ、そして政策的な、ある意味、もしかすると失敗かもしれない、そういったはざまにおいて、大きな固定資産税であったり、また後継者の育成の問題、そして何よりも地道な作業という、休みのとれない、葉物はどんどん育ちます、そういう意味においては、なかなか後継ぎというのも言いづらい。子供が頑張ってくれるから、また統計的に見ても、アパートの収入とか、本当は農業だけやりたいけれども、それだけじゃ食べていけないからほかのこともやって、そして収支を合わせ、そして誇りある農業、昔からの代々続く農業というものを守っているという、ある意味、非常に個人に頼っている面も否めないのが現実だと思います。
そして今、農業というものは農作物だけではない。その点に関しては、緑地でヒートアイランド対策の役割もあります。そして今、観光立国と言っている中で、私たちも海外に行けば、田園風景を見て、トスカーナの方のあのばあっとした風景、私は映画でしかそれは見たことはないんですが、ああいった風景を見てすばらしいなと思う。別に何があるわけではない。昔から守り続けた農地のその風景というもの自体が日本の資産になるんだということを、これからは、恐らく私たち政治家はしっかりとそれを守っていかなければいけない時代に入ってくるんだと思います。
そこで、ぜひお伺いしたいんですけれども、環境やそして観光資源としての近郊農業というもの、この点に関して、農水省として、できれば本当は大臣にお答えいただきたい、こういった現状と、そして今後の展望について農水省はどのように対応していくビジョンをお持ちなのか、お答えいただければと思います。
○中川国務大臣 何回もお答えしておりますように、農業あるいは農地、農村は、これは篠原提出者もおっしゃっておられましたけれども、単に一つの経済的な財をつくるだけではなくて、多面的な効果があるわけでございます。
そういう意味で、都市農業も極めて重要な位置づけがありますし、そして今、田園風景、あるいは田園で体験する、そしてそういう景観を守る、それから子供たちを初めとして、先ほどの芋掘りや稲刈りじゃございませんけれども体験をする、生きているものと触れ合う、自然と触れ合うということは、私は、子供の発育段階において極めて重要な要素だろう、これが欠けるということがあってはならないというふうに確信をしております。
それだけに、そういうチャンスにできるだけ触れさせるように、家庭も地域も、あるいは教育の現場においても今後さらに努力をしていかなければならないと思っております。
この委員会でも前にも申し上げたかと思いますけれども、毎日食べている御飯というものがどういう稲というものからできているのか、あるいは、私の地元のシャケというものは、切り身でしか見たことがなくて、一匹で見たことがないという都市の子供たちもいるわけでございまして、本物と触れ合うということが極めて大事であります。そういう観点から、今御指摘のように、そこに行って体験をする、あるいは、田園でいわゆる観光といいましょうか自然と触れ合うということも極めて大事だというふうに思っております。
今後ますます、御指摘のように、人口減少、特に子供たちの構成比がどんどん少なくなっていくという中で、そういう子供たちに対してのいろいろな対応を初めとして、都市と農村との交流あるいは共生というものがますます重要になってまいりますので、これは農林水産省だけではなくて、小泉内閣といたしましても、稚内から石垣島まで、それぞれの地域で誇りを持ってその地域が発展できるように、また総理がよく言っておりますように、青森県では、私の地元は誇りの持てる田舎であるというふうに青森の人たちが自慢をしているという話もよく答弁しております。
それぞれの地域、小宮山委員の御地元、あるいは北海道から九州、沖縄に至るまで、それぞれが誇りを持ってその地域で生きていけるように、そして、全国からその地域に行きたいと思うし、来た人に対して歓迎ができるようにというようなことを、その地域が主役となって、その地域に住む人々が主役となって、そしてそれを自治体あるいはまた国が後押しをさせていただくということで、今後、また一層努力をしていきたいというふうに考えております。
○小宮山(泰)委員 農業というもの、風景もそうですけれども、日本の国土という中において、農作物をつくる、生産をするということというのは切っても切り離せないことだと思います。
この点に関しましては、省庁横断的な観光立国という中においても、大臣もかかわっていらっしゃるとは思うんですが、部会みたいなところはやっておりますけれども、大臣同士の話し合いという場というのはどうも少なそうな気配もございます。しっかりと、各省庁すべて、これは日本の経済発展にもつながることだと思いますので、ぜひこの点に関してはもっと議論を活発にしていただきたいなということを伝えさせていただきます。
それでは、この政府提出の法案の適用の条件を伺わせていただきたいと思います。
どうしても気になることがあるのは、対象者が認定農業者であるということ。これは、恐らく何度もこの委員会では質疑に出ているとは思いますが、改めて聞かせていただきたいと思います。
この条件というのが、認定農業者の経営規模要件というのが都府県で四ヘクタール以上、北海道で十ヘクタール以上となっております。山田代議士提案の法案の中にも書いてありますけれども、私のところのこのいるま野の地区においても、埼玉県の資料を見れば、農家戸数は約一万四千戸ありますけれども、耕地面積が約一万三千ヘクタールですので、一農家当たり、今、平均耕地面積ということで考えれば、一ヘクタールにも満たないという計算になってしまいます。これが現実なんだと思います。
ということは、この法案を考えてみれば、多数の農家というのが、認定農家の要件である四ヘクタールに届かない。その自治体とかでいろいろなことを認定したりとか努力はしているかもしれませんが、現実にはそこまでもいかないというのが、これが現場の声であって、そして近郊農業というものは立法の恩恵を受けられないのではないかという思いがしてなりません。
この点に関して、農水省の意見を伺いたいと思います。
○井出政府参考人 お答えいたします。
今委員御指摘のとおり、今回の品目横断的経営安定対策の対象者の要件につきましては、こういった米、麦、大豆を中心にした土地利用型農業、水田農業ですが、そういったものの構造改革を推進していくという観点から、認定農業者にありましては、経営規模が都府県では四ヘクタール以上、北海道では十ヘクタール以上のものを基本とするということにいたしております。
ただ、我が国の農業経営実態を見るに、特に西日本あるいは都市近郊を中心といたしまして、非常に経営規模が零細である、あるいは既に農業を主業とされている農家がいないという集落がたくさんございますので、そういった地域では既に内発的にいわゆる集落営農組織というものが形づくられておりまして、集落の全農家が参加をする形で、その中で役割分担をし、比較的若くて力のある方はオペレーターとして大きな機械を動かし、御高齢の方は非常に細かな神経が必要な野菜づくりをされたり、あるいは全員が出役して、管理をしなければならない水路とか農道の管理をするといった役割分担をしながら、集落全体で農業を守っていく、こういった集落営農組織というものができ上がっておりますので、一定の要件を満たす集落営農組織につきましても、経営規模が二十ヘクタール以上のものについては対象にするということにいたしております。
さらに、集落営農組織につきましても、集落の農地が少ない場合については特例を認めることにいたしておりますし、また一方では、経営規模が小さくても、今御指摘のように、野菜作等である程度の所得を確保されている農家もございます。こういったものについては、その所得確保をされているということ自体が担い手としての将来性を予定するということでございますので、複合経営などによって相当水準の農業所得を確保されている場合については規模がこの要件に満たなくても対象にするということで、地域の実態に合わせた工夫をいたしているところでございます。
○小宮山(泰)委員 すっきりしない答えで、近郊農業、結局のところ、面積で区切ってしまうと、それはなかなか対象にならないという、また品目でも、これは後で質問しようと思いましたけれども、対象農産物を区切っていってしまっているということも考えれば、やはりこの都市近郊農業というもの、そして、これだけ生産額、経済ベースでいえば非常に大きな割合を占めているというところは締め出しを食らっているのではないか。そして、何よりも、今兼業をしている、実際数字で見れば、農業収入以外のところで生計を立てている人、もしくは、家族の中でサラリーマンをして、親は確かに専業かもしれないけれども家族は別の仕事についている、そうやって家計を助けている、暮らしている方たちも多くいます。
そうやって考えてみると、先ほどくしくもおっしゃいました集団でするといったようなことは、結局、今までの担い手をちゃんと支えるということが失敗したからこそ、次の人たちがいなくて地域で支えざるを得ないという、そこにまで追い込まれているのではないかなということを今の答弁を聞きながら感じました。人数ももちろん多いですし、経営的にも多いものであります。
ぜひ、民主党案の方で伺っていきたいと思いますけれども、民主党案においては、対象の農業者についてはどのようにされているのか、限定されているのかそうでないのか、この点についてお答えいただきたいと思います。
○山田議員 お答えいたします。
私ども民主党案でいきますと、いわゆる都市近郊農家、今の政府法案でいきますと四町歩、あるいは、特例があっても二・六町歩、二・六ヘクタール以上という形になってしまいますが、私どもの法案では面積に制限ございません。したがって、本当に意欲を持って農業に取り組む、しかも計画的に生産、販売する農家はすべてです。
ただ、閣法、政府提出の法案でいきますと、麦、大豆、あるいはてん菜とかジャガイモとか、そういう形になっております。私どもの法案でいきましても、主要農産物として、麦、大豆とか、いわば自給率を目標としたものもございます。
ただ、法案をよく読んでいただければわかりますように、地域振興作物を地域の農業者あるいは市町村長から上げていただければ、国の方でそれを決める、そこに対して直接支払いの対象になり得る、そうなっておりますので、いわゆる近郊農家、一ヘクタール未満の農家、今おっしゃったような兼業農家、あるいは西日本の農家というのも一ヘクタール未満というのが大半なんですが、そういった農家も私どもはすべて対象にしております。
しかも、さらにもう一つつけ加えますと、今、農地法上、小宮山委員にしても農地を取得することは無理であると。ところが、団塊の世代とかいろいろな方々、若い意欲のある人、そういった方が農地を取得しよう、あるいは株式会社、NPO法人が農地を取得しよう、農業をすることについても、我々は今度の法律で参入を容易にいたしております。
ただしながら、その農地が農地として利用されない場合には、厳しくその出口を制限する。例えば、農地を農地として利用しない場合には、強制的にその農地に利用権を設定するとか、いろいろな形でそういう対策を考えております。
そういう意味では、都市型農業に対して十分配慮しているのが私どもの法案であると考えているところです。
○小宮山(泰)委員 農家をやるということを考えてみれば、都市も地方もないんだと思います。作物をつくる、それに関しては、当然、おてんとうさまが上ってきて当たる日照時間というものは、そういう意味では、その土地土地、天候はありますけれども、均一であり平等であります。だからこそ、そこを区切るということが、実際にはそれによってひずみが出てきてしまっているのではないかという思いがしてなりません。
そして、政府案に関して言いますと、作物、今まで交付金を出してきた、そういって、あと、これは農協さんの方とかそういう方に聞けば、本当に自分たちで夜中まで働いて努力をして、そして、そのときのトレンドとかで農作物、今、私のエリア、ゴールデンウイークに聞いていますと、そういえば昔はニンジンをたくさんつくっていたけれども、今、ミズナの方が売れるからということでミズナに変えていく、日もちの問題とかありますけれども、だから、どんどんどんどんつくっては、ともかくパッキングをして出荷をする、また無農薬でやる、有機野菜をつくる、本当に努力をされています。
こういった対象農産物というものを区切るということが、本当の意味でこれからの農業の次世代の担い手というものをきちんと支えていけるような、本当の意味で対処でしかないんじゃないかという思いがしてなりません。ぜひその次の世代を、きちんと誇りを持って農業を続ける、食料生産ができる、そういった仕事につくということを考えると、やはり経済的な安定というものは非常に大切だと思います。しかし、これに関しては、政府案ではその対象品目が限られてしまいます。
民主党案の方はタイトルは基本法になりますけれども、政府案には経営安定のためと書いてありますが、民主党案において、その経営安定という観点に関して、都市近郊農業の振興、発展を応援する内容になっているかということをもう一度しっかりと聞かせていただきたいと思います。
○篠原議員 基本的には、自給率を向上できる作物ということで、法案の第七条に明記してあります。これが中心でございます。米、小麦、大豆、菜種。それから二番目として、これ以外に我が国の食料自給率の向上に資すると認められるもので国が定めるもの、これはソバ等の雑穀ですね。それから飼料作物が考えられます。
大事なのは三番目でして、先ほどもちょっとお答えいたしましたけれども、地域の農業の振興を図るために必要があると認められるものとして、地方公共団体の意見を踏まえて国が定めるもの。ですから、典型的な例で申し上げますと、川越の場合の芋というのがございます。
ですから、我々の法案は、自給率の向上ということについては、食料安全保障という観点から、国が相当しゃしゃり出て、責任を持ってやらなければいけない。しかし、自給率向上の作物だけつくっていたのでは、経営としては成り立たない場面があるだろう。やはり、広い土地では穀物をつくり、一部の土地では付加価値の高いものをつくって収入を得なければいけない。しかし、そういった作物も対象にしてもらわないと経営として成り立たぬというのがあるわけです。
参考人の質疑のときに土門秀樹さんが、自分は専業農家でずっとやってきた、米をつくっていた、しかし、一部でユリ、花をつくっておる、しかし四ヘクタールにはならない、これだけ専業でやってきたのに対象とならないのはいかがなものかということをこの場で持ち上げていかれましたけれども、私は、そういった農家を絶対救わなければならないと思っております。こうした人たちは都市近郊農家にはいっぱいおるんじゃないかと思います。
JAいるま野農協ですけれども、ちょっと私ごとになりますけれども、私の記憶している限りでは、最近でも二度ほど講演に行っております。そこで、地産地消、旬産旬消、都市近郊農業は十分やっていけるんだということを数年前にさんざん力説して帰った覚えがあります。ですから、そうした思いを法案にもちゃんと入れ込んでありまして、三番目のところで、都市近郊農家も十分やっていけるようになっております。
それから、もう一つ触れさせていただきますと、井出局長はいろいろ長々と答弁されていましたが、しかし、やはりわかりにくいんですね。先ほどの岩國委員の御指摘のとおりでございます。
こういった制度というものは単純明快を旨としなければならないわけです。どうしてかというと、予算が少なければいいと言っていますけれども、予算の額だけ少ないというだけじゃないんです。行政がうまくいかなけりゃいけない。つまり、行政コスト、この政策を実施するのに、農家も何日も何日も会合を開かなければならない、国が何日も何日も説明に行かなけりゃいけない、間に入った県も市町村も、何日も説明したりしなくちゃならない。これは経済学用語では取引費用とか言うんだそうですけれども、簡単に言うと行政コストですよ。莫大にかかってしまう。そういったものは政策としては余り好ましくないのではないかと私は思っております。
その点、我々は、主要なものは品目をきちんとし、それで、地方分権を考えております。地方にも相当柔軟性を持たせて、地方がこれがしたいというのを、それを全部認めるわけにはいきません、我々国が判断しますけれども、それで認めて、地域全体として農業がうまくいくようにということを考えております。
○小宮山(泰)委員 地域全体で農業というものはやっていかなければいけない、本当にそのとおりだと思います。そしてそれが、安心して子育てができ、そして、いろいろな意味で食育、教育につながっていく。一日で農作物はできるものではない、じっくり待つということも子供たちは知るべきだと思うし、いろいろな面があるんだなということを思います。
農作物をつくると、本当に一日ではできない。でありますから、担い手ということは、後継者という問題、非常に多くのところが持っている。これは日本だけではない。私も県会議員のときにアメリカの農家を視察に行きましたけれども、アメリカにおいても、後継者を見つける、そしてつくる、引き継ぐというのは非常に大変なんだという農家の方のお話がありました。
私、JAの埼玉と意見交換をさせていただいたときに、担い手づくりを進めるために、これは笑うに笑えない名前なんですが、JAグループ担い手づくり冬の陣と、ほとんど戦いの状態になっている。そういう取り組みも、本当に真剣に後継者づくりというのを地域ではされています。もう必死なんですよ。
政府提案の担い手経営安定新法では、耕地面積の下限設定とか対象作物の限定で、地域農家、特に都市近郊農家の悩みというのを反映しているようには、それをしっかり受けとめられるようには私自身は思えません。所得に応じた特例だということはわかるのですが、これを納得するわけにもいかない。また、特例ということは、結局、原則は例外であるということの裏返しの言葉なんだと思います。
このままでは、やはり農家というもの、都市近郊農業という、数字の上からもこれだけ大きなウエートを占めているところに関しては、やはり後継者というものはなかなか難しいのではないか、この点に関して、政府案というものは落ち度があるのではないか、しっかりとした意味で、本当の意味でこのタイトルどおりにはならないのではないかという思いがしてなりません。この点は指摘させていただきます。
民主党案について、続けて質問させていただきます。
後継者づくりという意味において、担い手に苦しんでいる地域農家を支援する案という形にこれはなっているのでしょうか。その点に関して簡潔にお答えいただければと思います。
○篠原議員 我々の法案では、担い手ということに着目した支援という仕組みにはなっておりません。しかし、それは、だからといって担い手支援を無視しているというわけじゃないんです。逆でございまして、政府案が、四ヘクタール以上じゃないとだめだ、あるいは、きょうもありましたけれども、二十ヘクタール以上で一元経営じゃなきゃだめだというような集落営農ですね、そんなのじゃなくて、意欲的に生産する農家だったらだれでもいいんだ、その中から立派な担い手が育っていけばいいということで、農業全体をかさ上げすることによって担い手が生まれやすくするというふうに考えているわけです。
ですから、我々の方が幅広く担い手を育成しようと考えていると思っております。
○小宮山(泰)委員 ありがとうございます。
幅広く多くの方が、しっかりとこの分野、持続可能な産業であるべきであると思いますので、どこからどこはいい、あそこはいい、ここはだめとか言っている場合ではないんだと思います。JAさんの話で、意見交換をしていたときにあるのが、ともかく猫の目のように変わるのが農政で、それに翻弄されているんだということが、最後の最後になって、だからこそそのはざまで自分たちは苦しんでいるんだ、今の施策や農水省のやり方というものでは本当に大変なんだということをおっしゃっていました。やはりきちんとした基本をつくっていただきたい、それがこれからの日本の後継者や次の世代や、そして、安心して食料自給率を高めるための基盤になると私自身信じております。
そこで、もう時間が大分なくなってまいりましたので、急ぎ足で聞いていきたいと思いますが、では現実に、次の担い手に何でいかないか。そういったことになると、地域の中で必ず出てきますのが、相続税納税猶予の適用という問題に必ずぶち当たります。特に固定資産税などを比べてみれば、やはり都市近郊について、駅から近いところでは固定資産税もどうしても高くなる。宅地の部分とそうでないところ、相続税も含めましても、非常に負担が多くなるから結局のところ手放さざるを得ない。それが高じて、今対応されましたけれども、ダイオキシンのときの相続の問題で、産廃業者に売らざるを得なくなった、そんなこともありましたので、平地林、屋敷林を守る。これがあるからこそ、ある意味、堆肥をつくる、そういった場所でもありました。かけがえのない都市周辺の緑ということで、循環型農業をあの土地はしてきた、そうやって土地を肥やさせて、そしていい作物をつくる、そうやって守ってきたからこそ、平地林、屋敷林というものに関しての相続税猶予制度の創設というものを要望させていただきたいと思います。
そしてもう一点が、農業施設用地ですね。当然、トラクターを置いたりとか、用具はちっちゃくないんですよ。そして、農地、都市とはいっても、近郊とはいえ、必ずしもとても駅に近いという場所ではありません。そうすると、いろいろな意味で、用地に関して、耕運機、農機具も含めて、もちろん自家用車もありますけれども、農地同様、相続税納税猶予とか免除制度、先ほど言いました観光立国でいえば、本当に農地の風景というものは非常にノスタルジーがあり、見るだけでも昔風の農家というものが資源になる、ある意味、日本の新しい資産となるものでもあります。
この二点についての相続税猶予、免税制度の適用拡大についてお答えいただければと思います。簡潔にお願いいたします。
○川村政府参考人 私の方からは、平地林の問題につきましてお答えを申し上げます。
農地につきましては、委員の御指摘のような相続税の猶予制度がございます。これはなぜかと申しますと、農地につきましては、転用でありますとか、取得、譲渡が非常に厳格に制限をされております。権利移動につきましての農業委員会のチェック体制ということが背景にあるわけでございます。一方、山林につきましてはこのような仕組みはないわけでございまして、農地と同じような形で相続税の納税猶予制度をつくるということは難しいというふうに率直に考えます。
ただ、山林の場合は、長期にわたる生産活動という林業の特質もございますし、また保安林のように、森林の公益的機能の発揮のために一定の制約を所有者に加えているという実態がございます。こういう実態を踏まえまして、例えば課税の価格を、立木の場合は時価の八五%に軽減をするとか、あるいはまた、さらに加えて、森林施業計画の対象になれば、林地と立木についてさらに九五%に軽減するということがございます。また、保安林につきましても、林地と立木の評価について、制限の度合いに応じて最大八〇%の控除が得られるというようなこともございます。また、納付面につきましても、延納の利子税率の軽減でありますとか、延納期間の延長等が措置されております。
今後とも、こういう林業等の実態、こういうものを把握しながら、そういった適切な評価がなされるような努力はしてまいりたいというふうに思っております。
○井出政府参考人 農業用の施設用地についてのお尋ねでございますが、この農業用施設用地につきましては、これも農地と異なりまして、農地法上の権利移動の規制対象にはなっていないわけでございます。そうしますと、これを納税猶予の制度の対象にするにつきましては、同じ施設用地でも、例えば中小企業ですとか自営業者、こういった他の業種とのバランスということを考えますと、施設用地について納税猶予を認めるということは困難であると考えております。
○小宮山(泰)委員 先のは少し検討してくれるような、努力をしていただけそうないいお答えだったのに、後の方は取りつく島もないような、ひどいなと思うんですが、これは中小企業とまたちょっと違うんですよ。トラクターはそうそう公道をそんなに、まあうちの近くでは田んぼから家へ帰るまでは走ったりとかしますけれども、あれは普通の車庫には入れられないんですね。やはり面積も要る、当然高価なものであります、しっかりしまわないと危ないというのもあります、そうやって考えていくと、普通の扱いでは、農業施設用地というものに関しては、非常に面積と、ある意味、普通の宅地というには余りにも要素が違い過ぎるということは、ぜひ検討していただきたいと思います。大臣、その点はぜひお願いしたいと思います。
そしてもう一つ、最後になりますけれども、私、今回農家を回らせていただいて、非常に日本というのは国際化の中に入っているんだなと。どこへ行っても聞くのが、WTO、EPAの動向と農家の支援をということでお話が来ます。二年ほど前に菅代表そして山田代議士とともに四国に行ったときも、その農業の方もこの話をしておりました。委員会でも、恐らく大臣はよくおわかりになっていると思いますけれども、最近ではマレーシアとの協定の批准案件が国会で審議もされ、また個別国とのEPAの動向というのは日本の農業に大きな影響を及ぼしております。
改めて、農業の多面的機能への配慮とWTOへの日本提案に掲げられた基本的な考えを貫いていかれるのか、大臣の所見と決意を最後に伺いたいと思います。
○中川国務大臣 まず、小宮山委員の御地元で一九九九年に起きましたホウレンソウのダイオキシン誤報、虚偽報道事件のときの農林大臣は私でございましたので、あのときの御地元の農家の皆さんの御苦労は私もよく存じております。そういう思い出を、今御質問を伺いながら思い出しながら聞いていたわけでございます。
何回も言いますけれども、都市農業も極めて大事であります。先ほどニンジンからミズナへというお話がありましたが、ミズナの方が消費者にとって喜ばれるからと。あのときは御地元の農家からいっぱいホウレンソウをわざわざ差し入れをいただきまして、私はお昼に毎日ホウレンソウをいただいていた記憶もございます。とてもおいしくいただきました。この場をおかりいたしまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。ということで、私の地元ではホウレンソウもミズナもつくりません。つくっても、さっきのフードマイレージじゃありませんけれども、多分売れないでしょう。
ということで、多様な日本の農業というものが、まさに多様な地形、多様な自然条件の中で農家の知恵によって成り立っていく、またそれを育てていかなければならない。これは何も生産サイドだけの話ではなくて、国民全体がそれを求めているところであります。他方、先ほど岩國委員からもお話ありましたように、日本は輸入も含めて諸外国と農産物の貿易をやっていかなければなりませんし、それからまた備蓄というものも必要になってくる、この三本立てで日本の農業をやっていかなければならないわけであります。
そういう中で、EPAあるいはWTOにつきましても、こういう時期でございますから、全国の農業者の皆さん、大変御心配のことだろうと思います。これは、埼玉であろうと、北海道であろうと、沖縄であろうと、みんなそういうふうに思っていらっしゃるのはもう当然のことだろうと思います。
そういう声を踏まえ、また当委員会初め議院内閣制において国会のいろいろな御指摘等も踏まえながら、日本としては、特に、いろいろな分野の交渉がございますけれども、農業あるいはNAMAの中の林産物交渉、水産物交渉につきましてはいわゆる守る立場でありますけれども、守るところを守りながら、しかし、輸出国側にも、我々が攻めるべき理屈といいましょうか言い分もございますので、相手に対して攻めるところは交渉として攻めながら、そして、交渉としてまとめようというコンセンサスがある以上は、お互いに譲れるところは譲りながらやっていきたい。
日本は家族農業が中心であります。そして、アジア・モンスーン地帯という条件もありますし、世界一の食料純輸入国という立場もありますし、またアジア・アフリカの途上国の立場も十分配慮するという観点から、この交渉に臨んでいって日本の農業をきちっと守っていく。これは何も農業サイドを守るだけではなくて、消費者ニーズの期待にもこたえていかなければならないという観点から、今大詰めを迎えております交渉の中で、守る立場でありますけれども、できるだけ攻めるところは攻めて、相手の痛いところを突きながら交渉に臨んでいきたいと思います。
これは、当委員会挙げての御支援、つまり国会の支援なく政府だけではできません。生産者の支援なくしてできません。そして、消費者初め国民の支援なくしては交渉ができませんので、どうかそういう立場で当委員会挙げての御支援をいただきながら、六月、七月の交渉に向けて政府一丸となって頑張っていきたいと思いますので、小宮山委員にもどうぞ御支援をお願い申し上げます。
○小宮山(泰)委員 今基地の移転費の問題が出ておりますけれども、やはり日本のことであります。ぜひしっかりと、まずは日本のことをきちんとする。限りある農地をつくり上げるという意味においては、日本は、山あり谷もあれば、そういう意味では海岸線も多い。作物をつくったりするには非常に先人たちが苦労をし、開墾をしていって、そして今つくっている。その創意工夫の先人たちの志をしっかり引き継ぎ、基本的に、きちんと基本法なり、長期間において安心して次世代まで農作物がつくれる、そういう日本をつくっていかなければいけないと思っております。そのために力を尽くしていくことを伝えさせていただき、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○稲葉委員長 次回は、来る十六日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時三十四分散会