衆議院

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第14号 平成18年5月31日(水曜日)

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平成十八年五月三十一日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 原田 令嗣君 理事 二田 孝治君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 山田 正彦君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      今津  寛君    小野 次郎君

      金子 恭之君    近藤 基彦君

      斉藤斗志二君    谷川 弥一君

      中川 泰宏君    並木 正芳君

      丹羽 秀樹君    西村 康稔君

      鳩山 邦夫君    福井  照君

      松本 文明君    御法川信英君

      渡部  篤君    岡本 充功君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      神風 英男君    仲野 博子君

      松木 謙公君    森本 哲生君

      山岡 賢次君    丸谷 佳織君

      菅野 哲雄君    古川 禎久君

      森山  裕君

    …………………………………

   農林水産大臣       中川 昭一君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   政府参考人

   (林野庁長官)      川村秀三郎君

   政府参考人

   (水産庁長官)      小林 芳雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 細野 哲弘君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小林  光君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  佐藤  錬君     松本 文明君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 文明君     佐藤  錬君

    ―――――――――――――

五月二十九日

 アメリカ産牛肉輸入再開の見直しと牛肉の原産国表示に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二五一三号)

 同(石井郁子君紹介)(第二五一四号)

 同(笠井亮君紹介)(第二五一五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二五一六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二五一七号)

 同(志位和夫君紹介)(第二五一八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二五一九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二五二〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二五二一号)

 食料自給率の抜本的向上に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二五二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長中川坦君、経営局長井出道雄君、農村振興局長山田修路君、林野庁長官川村秀三郎君、水産庁長官小林芳雄君、資源エネルギー庁次長細野哲弘君及び環境省地球環境局長小林光君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷川弥一君。

谷川委員 自由民主党の谷川弥一であります。

 質問に入る前に、私が人生で唯一この人のためなら死んでもよいと思った中川一郎先生に一番近い人である中川農林水産大臣にお尋ねする機会を得たことを、関係者の皆さん方に深く感謝申し上げます。

 四点、お尋ねいたします。役所の方々のお考えは自民党の農水部会でお聞きしておりますので、できれば、大臣、副大臣、政務官の方にお答えを願いたいと思います。

 一つ、林業の不振について。

 農林漁業者は、サラリーマンと違って、その収入は売り上げの一部からしか得られません。何らかの原因で売り上げが減ると、月給が下がった状態と同じことになります。平成十七年度林業の売り上げは、昭和五十五年比六分の一。自給率は一八%前後です。サラリーマンの月給が六分の一になったら生活できません。だから、政府は何らかの政策でこたえるはずです。

 林業政策は、二十一世紀の最重要課題の一つである環境問題解決のために日本が主導した京都議定書で、一九九〇年比で、二〇一二年までにCO2を六%削減する。そのうちの六五%に相当する三・九%を林業が受け持っておりますが、手入れの予算すら得られず、山は荒れ放題です。林価の下落で林業が産業として成り立たなくなったこと。それならば、山の手入れは公共事業としてやるべきではないのか。ところが、必要なだけの予算もとれない状況です。

 なぜこういう状況になったかといいますと、昭和三十六年の輸入完全自由化。その後、水産のIQ制度のようなものはありません。占領政策によって日本の衣食住が洋風化した。品確法によって乾燥経費が立米一万二千円かかるようになった。搬出、伐採その他もろもろ、約一万二千円かかります。ところが、現場では二万四千円で売れません。つまり、木をただでもらっても成り立たなくなっているんです。それに、プレカット工場の普及によって、より乾燥材の需要が大きくなってきた。それなのに、国産材のよさのPRというのはやろうともしない。また、国民がそのよさについて知らなくなってきた。

 日本の木の一番のよさは、中に脂があるということなんです。その脂が長年かかってにじみ出てきます。それが空気に触れ、いろいろなものとまじり合ってあめ色に変わるんです。日本の木というのは、使ってからだんだんよくなるんです。三十年ぐらいでピークが来ます。外国の木は、つくったその日が一番ピークです。だんだん悪くなってくるんです。この日本の木の、杉やヒノキの本当のよさというものを国民が知らなくなってきた、そういうことを言っているんです。

 日本文化というのは、皆さん方に私ごときが言うのはなんですが、冬になったとき、廊下を歩きながらちょっと雪見障子をあけて庭を見たときに、ツバキに積もった雪、これなんです。これが東京のマンションでわかりますか。わからないと私は思いますね。そういうことをよくよく考えていただきたい。

 ここまでで、まず御所見をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 おはようございます。谷川委員にお答え申し上げます。

 もう谷川委員は、林業、あるいは水産、農業、大変造詣が深くていらっしゃるわけでございまして、とりわけ林業につきましては党その他で大変な御見識を発揮されていることは私もよく知っているわけでございます。したがいまして、私がこの場で、山あるいは木、あるいは経済財としての木材の効用についてあえて谷川委員に申し上げることは、もういわゆる釈迦に説法でございますので避けますけれども、御指摘のように、日本は国土の三分の二を森林が覆っており、木とともに日本の歴史、文化、そして現在もあるわけでございます。

 しかし、昭和三十年代の自由化によって、御指摘のように、農業や水産業とは全く違う関税一本、しかも、ほとんど低関税あるいは無税という状況になって、木材産業は大変厳しい状況に置かれております。したがって、それがだんだんだんだん川上の方に行けば行くほど厳しくなるということで、山が大変に厳しい。

 しかし、我々は厳しいからといって放置してはならない。これは末代に対する我々の責任だというふうに思っております。厳しい財政状況その他ございますけれども、そういう中で、谷川委員の御指摘のように、山を守り、また、山から生まれる貴重な材を有効に利用するべく全力を挙げて頑張っていきたい。

 まず感想ということでございますので、そういう決意で、谷川委員に引き続き御指導いただきながら、我々も全力を挙げて頑張っていかなければならないという決意でございます。

谷川委員 二つ目ですが、同じように漁獲量が一割減り、価格は二割減った。林業ほどではないにしても、水産業界が大変であることに変わりはありません。

 その理由は、中韓日の乱獲による水産資源の減少、輸入による魚価の低迷、肉等に比べてにおいが強い、扱いがしにくいという理由での、いわば消費者の魚離れ。それから、商社が外国から買ってきて、それを加工して、ぼっとコンビニとかスーパーに卸す、そういうように流通が変わった。もろもろ、いろいろあるんですが、結果として収入面で漁家は非常に苦労しています。

 きょうは時間がないので細かく触れることができませんが、総論でも結構ですから、本当に困りつつある漁民に対してどういうふうにお考えなのか、お聞きしたいと思います。

宮腰副大臣 水産業の不振の原因として消費の低迷がある、その消費の低迷の理由は、魚のにおいですとか、扱いにくいといったようなことが言われております。いわば、魚を食べるときに面倒であると。消費者の調査からもそういうことがうかがい知れるわけでありますけれども、やはり魚食というのは日本の伝統文化であって、水産日本と言われるように、水産で日本の食は成り立っている。

 そういう中にありながら、どんどんどんどん減ってきて、あるいは輸入もふえてきてという状況でありますけれども、やはり、消費者が買わないことにはこれは始まらない、買ってもらうための努力を着実に続けるべきであるというふうに思っております。

 例えば、においの問題だけではなくて、冷凍技術、あるいは凍結技術といいますが、新たな冷凍技術が日本で開発をされつつある。これを使えば、冷凍した際にその細胞を破壊することなく、おいしいままで半年、一年しっかり食べることができるといったような技術も開発されました。マグロの冷凍にも、それが使われ始めるようになりました。そのようなことも含めて、革新的な技術も使い、あるいは食育を進めていく、そして、やはり地場の魚の魅力を地域の皆さん方にわかっていただく努力をするといったようなことがこれから必要なのではないかと思います。

 それから、生産者側でありますけれども、やはり売る努力をしっかりしていく。とれば売れるという時代ではありませんので、とった魚をいかに消費者の側に上手に提供していくか、魅力をPRして、どうして消費をしていただけるかということの努力も、これから本格的に必要になってくるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

谷川委員 あと二つお尋ねしたいんですが、三番と四番をひっくり返してお尋ねします。

 まず、私のところの諫干についてですが、諫干が原因でノリが色落ちしたとか生育が悪くなったとか、盛んに批判されまして、大変なデモにも遭いまして、苦労しました。おまけに、そのことによって工期も随分延びたわけです。ところが、ここ二年ぐらい大豊作なんですよ。諫干が原因だったら、豊作になるわけがないんです。それはそれでいいんですが、業者というか関係者は、自分の生活を守るためにやるのは一定理解できるので、それについては触れませんが、問題はマスコミです。マスコミ並びに政治家、特に野党のですね。

 日経新聞の四月十二日に、こんな記事があるんですよ。情報がはんらんする社会にあって、人々は時代の羅針盤として新聞の役割に期待している、知る権利にこたえる新聞の使命はますます重くなっているんだ、多様な価値観を持つ読者に、公平な編集でニュースを盛りつけ云々、混迷する時代にこそふさわしいメディアだろう、多様で自由な言論こそ民主主義の土台である、こう書いておるんですね。

 ならば、なぜ豊作のときに豊作だと書かないんだ。不作だったのと同じぐらいの量と紙面でなぜ書かないんだ。結局彼らは、自分がこうだと思った論調にあるものは取材して書く、そうでないものは書かない、こうなんでしょう。私ども自民党も含めて、再販制度は公取委の意見を無視して支持するそうですが、結局、強い者の意見が通っていくんですね、この世の中は。

 猛烈に、農林水産省の立場で、豊作のときに書けよ、不作のときに書いたぐらい書け、公平にしろという交渉をするつもりはありませんか。そうでなかったら、我々諫干関係者は耐えられませんよ。御所見を。

宮腰副大臣 国営諫早湾干拓事業につきましては、おかげさまで、平成十九年度には工事が完成をするところまで来ております。

 ある年にノリの生産量が急激に落ち込んだということは確かにありました。しかし、それ以外の年におきましては、諫早湾の締め切り以前もあるいは以降も、ここ最近、ことしなどは過去最高の生産額、去年もそれに匹敵する生産額。ここ十年間の間で、一年もしくは二年だけが不作であります。

 そういう意味から申しますと、諫早湾の干拓事業は、有明海の環境の変化に何らかの影響を与えているということは間違いありません、あるいはほかの事業も、例えばいろいろなことで埋め立てをした事業も有明海にはたくさんあるわけでありますけれども、それらも影響を及ぼしていることは間違いありませんが、諫早湾の干拓事業にだけ原因を求めるというのは間違いであるというふうに考えております。

 ノリの生産者の方々も、減作をやり、あるいは、これまでのノリの栽培方法にも随分工夫をしていただいて、できる限り気象の影響を受けないようにする。さらには、いろいろな関係者の方々も協力をしていただきまして、例えば、筑後川から、雨が降らない時期には水を流す、それで有明海の栄養塩を補給していくといったようなこともやっていただいております。その結果、先ほど申し上げましたように、ここ十年で、不作になった年は一、二回、それ以外はほとんど豊作である。

 これをなぜ書かないのかと。思いは私も全く同じでありますけれども、とにかく、いろいろな方々の御努力によって、有明海のノリの生産は年間五百億近いというすばらしい生産高を上げておいでになるわけでありまして、我々とすると、書いてもらうことよりも、まずしっかりと生産高を上げてもらいたい。そのために、農林水産省を初め環境省、いろいろなところが一緒に協力をして、有明海の環境をできるだけきれいにしていく、下水道もしかりでありますが、そういう努力を行っていくことが大切であるというふうに考えております。

谷川委員 最後の、四番目のWTOについてお尋ねします。

 農業が果たしている役割、これを一つ。もう一つ、WTOについて内外での世論、これが一つ。この二つの間に実は大きな落差がありまして、一方を立てると一方が立たずというような状況にありますので、まず、その説明からしてみたいと思うんです。

 まず、外の世論ですね。

 引用は、二〇〇二年八月二日、日経の「経済教室」です。米通商代表ロバート・ゼーリック。アメリカの農業提案は、農業貿易における障壁を引き下げ、最終的には撤廃することを目指している、米国が提案している改革案は、この貿易障壁全体を撤廃していく上で、工業製品と同じ土俵をつくるということだ、農業分野での自由化をすることによって発展途上国を支援することは各国の共通の利益になるはずだ、アメリカは、世界全体の農業改革をリードしていくことをかたく決意している。

 二〇〇三年七月十八日、元米通商代表部代表・農務長官クレイトン・ヤイター。日本が農業改革に踏み出すことは、農産物を輸出する発展途上国のみならず、日本の長期的な利益をもたらす、アメリカ国民はイラク戦争とその戦後復興への日本の多大な支援に深く感謝している、日本は期待にこたえた、日本が農業改革でも同じことをしてくれることを期待している、こう言っております。

 全く勝手というか独善的というか、我がさえよければ人はどうでもいいという考え方ですね。

 これだけならいいんだけれども、今度は国内の学者と称される人たちの意見ですが、二〇〇三年九月一日、伊藤元重東大教授、日本の農業保護政策は総じて海外で評判が悪い、協定の中身について話し始めると、いかなる自由化にも否定的な日本の農業関係者のかたくなな姿は海外の関係者から冷ややかな目で見られている、多くの経済学者の考え方を単純化してストレートにまとめると、農業は縮小しても他の産業が拡大すればよい、国内生産では賄えないものは輸入すればよい、貿易自由化を進めたが、オレンジ自由化でミカン農家は生き残り、サクランボ農家もつぶれていない、こう言っているんです。

 なぜ、林業がつぶれているということは書かないんですかね。ここにも、学者が世論に迎合して都合のいいことだけ言っている、そうしないとテレビや新聞に出してもらえないという実態があります。これをまず一つ頭に入れてください。自動車やテレビが貿易戦争で負けても、雇用を失い貧乏になるだけです。ところが、農業戦争で敗れたら、農業をやりたい人、農業しかできない人は職を失います。

 二番目に、食料安保の点から、いざというときに干ぼしにされる。ちなみに、五月三日の日経に、消費拡大が続く中国が大豆や綿花など農作物の輸入を急拡大させている、世界の在庫率は〇五から〇六年度は約一八%で一九七〇年代前半の水準に落ちた、輸入量は二千七百万トンで最近二年間で約六割ふえた、去年からの消費量が四千万トンを超え、一方で国内の生産量は千七、八百万トンで低迷している、こういう記事があります。要するに、よその国の状況によって物すごい影響を受ける可能性があるんですね、これが食料安保の件。

 三つは、日本の文化の件です。文化が破壊される。さっきもちょっと触れました。

  春過ぎて夏来るらし白妙の衣ほしたり天の香具山

こういうのもあります。

  秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

というのもあります。

 農村社会ではぐくまれてきたこういう文化が消えてしまうという問題もあります。

 ほかにも、水の問題、環境の問題、国土保全の問題、崩落の問題、農業問題は工業問題と同列では論じられない、そういう特殊な要素がある。もちろん、政府も非関税何とかということで盛んに交渉しているみたいですが、アメリカ人というのはこういう状況をなかなかわかってくれませんね。わかってもらえない。わかってもらえるならば、やはり先進国といえども、ある一定の農業はその国でやらぬと仕方がないだろう。自給率の五〇パーまでは我々の言うことを聞いてよ、もしそれを切ったらあなたの言い分を聞いて、おたくの農業が守れるようにしていいからとか、こういうふうな結果になって当たり前でしょう。ならないということは、おまえのところの農業はつぶれてもいいんだよ、こういう主張をしているんでしょう。鯨と一緒です。鯨は食うな、牛はいいんだ、そんなことをだれが決めるんですか。要するに、軍事力を持たないとこの国の意見は通らないんですか、今の世の中は。

 学者に対するいわば我々の言い分をどういうふうに伝えるかということを含めて、政治家としての御所見があったらお聞きしたい。

中川国務大臣 今、谷川委員から極めて多面的な御質問でございましたので、私なりに整理をして、お答えをさせていただきたいと思います。

 当たり前のことですけれども、農業、林業、水産業というのは、自然を相手にし、そして生き物を相手にし、冒頭、谷川委員からもお話ありましたように、ちょっとした外部要因によって影響を最も受ける。しかも、その仕込みといいましょうか、活動のスタートから、収穫あるいはまた収益の確認まで極めて時間がかかるという意味で、いわゆるITとか金融の世界はもとより、製造業とも時間軸が全く違うということを忘れてはならないと思います。

 それから、言うまでもなく、食料ということになると、これはすべての国民の根源的な関心事項、重大事項であるということ、これが、工業あるいは金融、ITと全く違うところでございます。これはもう何百年も前から、ある意味では学者間、あるいは各国間で議論があって、イギリスの経済発展、重商主義の時代に、マルサスの人口論とリカードの比較優位説がどっちが正しいんだという大議論が一八〇〇年代の初頭にあったわけでありますけれども、結果から見ると、マルサスの人口論、つまり、人口が幾何級数的にふえていくことに対して工業製品は算術級数的にしかふえていかないから、食料不足というものを常に念頭に置かなければならないということが我々の時代にも証明されているわけでございます。

 と同時に、多様な農業というものがある。日本の国内でも、長崎の農業と北海道の農業と都市近郊農業はそれぞれ違うし、それぞれ大事であるから、守り、育てていかなければならない。まして世界になりますと、アフリカの農業と東南アジア、我々のアジア・モンスーン地帯、あるいはまた北欧の農業、あるいはアメリカの農業、それぞれ違うわけでありますから、それぞれを尊重し合わなきゃいけないということで、文字どおり、冒頭御指摘になりました、多様な農業を尊重していこう、それから食料に困っている国々を尊重していこうというのは、今回のラウンドの一つの大きなポイントでございます。

 それから、自給率を向上しようというのは、日本のある意味では国民的コンセンサス、何も生産サイドだけではなくて、消費者にとっても将来に対しての不安というものが圧倒的に多いわけでございますから、そういう意味で、先進国の中でも極めて低い自給率の向上、改善というものをしていこうというのは、私は、この交渉においても大きな柱の一つだというふうに思っております。

 文化、歴史があるということについては、これはもう言うまでもないことであり、これについては、同じように文化、歴史があるヨーロッパと極めて共通の土台にあるというふうに考えておりますが、どちらかというと、南北アメリカあるいはオーストラリアといった新大陸と旧大陸という仕分け方を時々いたしますけれども、新大陸の方は、先住民の方々がいらっしゃいますけれども、文化、歴史としては比較的新しいということで、我々の旧大陸の議論とはうまくかみ合っていないというのが現状でございます。

 そういう中で、日本には日本の主張がある。アメリカにはアメリカの主張が多分あるんでしょう。ロバート・ゼーリックさん、ストラウスさんの論文、これは、一番の問題点は、これが途上国に貢献をするという結びでありますが、これは、あえて私なりに申し上げますと、アメリカあるいはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドのような先進国とごく一部の途上国に貢献いたしますけれども、残りの大多数の途上国には決して貢献をしない。むしろ、大多数の途上国は、それよりもどうやって自分たちの農業を育てていくか、外から入るのを防いでいくか、あるいは、自分たちが唯一輸出できる産業、コーヒーであったり綿花であったり砂糖、これが実は先進国と綿花、砂糖でぶつかっているわけでありますから、これを何としても阻止したいというのがそういう国々の最大の関心事項でありますので、ここにも、その論文のある意味では誤謬があるというふうに思います。

 それから、最後になりますけれども、マスコミ、学者。特にマスコミは、ある意味では我々と常に戦い続けてきている。私自身が二十数年間そういう体験を持っております。

 でも、御指摘のように、売れなければいけない、読んでもらわなければいけないという商業紙でございますから、私は、ウルグアイ・ラウンドのときに比べると、今回のラウンドにおいては、消費者、国民の、先ほど申し上げた自給率、安全、安心、顔の見える、できれば国産という意識がございますので、あのときよりは国民の、我々に対する主張の後押しというものがかなり強いというふうに思っておりますので、マスコミも、あのときに比べれば、まだ少し変わってきたのかなというふうに思っておりますけれども、しかし、総じて御指摘の認識は私も共有するところもございます。

 学者の引用がございましたけれども、これについても、いろいろな立場のお考えの人がおります。我々の立場を支援していただく学者の先生もいっぱいいらっしゃいますけれども、往々にして紙面に出てくる、国民の前に出てくるのはそういう立場の先生が多いということも、私の感想としてはそういう認識を持っておりますので、そういう中で、国民にとって何が一番大事なのか、国民は何を求めているのか。生産サイドだけじゃなくて、国民全体にとっての立場を考えながら、私なりに日本の立場というものを主張し続けておりますので、谷川委員にも引き続き御指導をよろしくお願いいたします。

谷川委員 時間がないので、時間まで意見を述べて終わりにしたいと思うんです。

 WTOで交渉をして、こっちの立場をわかってもらえなかったらつぶれるんですから。ある意味ではこれは非常に失礼な言い方です、わかってもらわぬと困るんです。ですから、極端に言うたら、交渉力の一番たけた人を雇ってもらいたい。日本人じゃなくても、外国人からでも、どうしても日本の立場を主張して、納得してもらう。そうしなかったらつぶれるんですから。それができなかったら、たとえどんなに苦しくても、農業予算、水産予算、林業予算をふやして、所得補償をしてもらいたい。そうしなかったらつぶれるんですから。そこのところを、なかなか世論がそうなっていませんけれども、何とかそういうふうにわかってもらえるような理解を、私は努力を続けてもらいたいし、我々もまた続けるべきだと思っております。

 最後に、私のところの五島は、全国平均では全産業の五%でしかない一次産業が二六%あるんです、そういうことも踏まえながら言ったということを御理解賜りたいと思います。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 通告に従い、順次質問していきたいと思っております。

 今国会はこの委員会では、農政の大転換ということで、直接支払い制度の導入について、政府案そして我々の民主党案、大いに議論されたわけであります。そして、今その法案は参議院で審議されておるところでありますけれども、それがゆえに、林業あるいは水産業について議論する機会がちょっと少なかったわけでありますので、今般は、林業あるいはまた水産業を基本として質疑していきたいと思っております。

 まず、どんな構想でも、あるいはまたどんな政策でも、財源の裏づけがあって初めて実現するものであります。森林の整備についてもそうだと思っております。御案内のとおり、国土の保全や水源の涵養、あるいはまた二酸化炭素の吸収源としての森林の恩恵ですが、これはもう国民全体が享受しているところであります。

 こういうような森林の持つ多面的機能あるいはまた公益的機能、これを維持するために、新たな森林整備のための新たな財源確保というのが一番大事だと思っておりますけれども、大臣の認識はいかがでしょうか。

中川国務大臣 結論的に言うと、黄川田委員の御指摘と全く同感でございます。

 特に日本の場合には、先進工業国家であり、人口も多いわけでありますから、ともすればCO2の排出というものが多くなりがちであります。

 しかし、産業面においてはかなりその環境面での努力が実っておりますけれども、生活面あるいは輸送面でのCO2の排出が非常に多くなっている。したがって、マイナス六%目標がプラス八%という、これから目標年次までの間に一四%果たして減らせるのかという大きな問題がありますが、その中で、大きく貢献する、また頼りになるべきであるのが森林の果たす役割でございます。

 これにつきましても、森林を整備することによって、そしてまたそこから適正な材がうまく生産されることによって初めて貢献できるわけでございますので、木材をめぐる状況は、先ほどの谷川委員も御指摘ありましたように、財政面あるいは経済面でも大変厳しいわけでありますが、しかし、これは国民的な大事な目標であるということで、我々も、関係の各方面と協力をしながら、森林の整備あるいはまた木材の有効活用に向けて努力していきたいと考えております。

黄川田委員 前段の部分では答弁していただきましたけれども、財源の部分ではちょっと具体の話が出なかったわけであります。

 農林水産省の予算でありますけれども、三兆円を割っている。それから、林業の公益的機能、七十兆円。その中でも、いわゆる景気の回復がおくれているところがむしろ森林県として国家に寄与していると私は思っておりますし、そしてまた、先ほど委員さんが話されましたけれども、京都議定書に言う温暖化対策として、新たな財源が二千億円ぐらい必要ではないのか、三・九%の森林吸収の役割を果たす、こういう役目を果たすためには必要ではないのか、さまざまあります。

 大臣は経済産業大臣もしておられましたので、民間企業の動向等はそのとおりなんでありますけれども、環境税という話がたびたび出るわけなんでありますけれども、これに対する認識等々、森林整備に絡めてお願いいたします。

中川国務大臣 私は、経済産業大臣のときと農林水産大臣のときと、基本的な考え方は経済産業大臣になる前から変わっていないわけでございます。

 森林を守るためには財源が必要である、投入しなければいけない。もちろん財源の有効利用ということが大事でありますけれども、そのためには、恒久的な財源というものが一番安定的であります。

 私としては、環境税というものをもちろん否定はいたしませんが、環境税ありきとか、環境税だけで物事が解決するというものではないんだろうと。七十兆円の効果がある、私もそういう認識でございますが、しかし、今どのぐらいの効果が失われているのかとか、整備をするためにどのぐらいかかるのかとかいうことを考えたときに、どういう形で国民の皆さん方に、例えばボランティアで木を植えていただくとか、食育教育というのはありますけれども、木育教育みたいなものに対する投資であるとかいうことも含めて、総合的な観点から目的を達成する、そのための財源として環境税というものも一つ大きな議論にもなってきているわけでありますので、総合的に財源というものを考えていった中で、環境税というものの位置づけというものがあるのではないか。極めて重要な位置づけにあることは承知をしておりますので、そういう観点から、この問題に取り組んでいきたいというふうに考えております。

黄川田委員 森林県にあっては、目的税として県税で森林の整備であるとか、あるいはまた森林の公益的機能の啓発であるとか、財源ということで、さまざま動きは出ておりますけれども、大臣お話しのとおり、対症療法的な財源の確保ではなくて、持続的といいますか、恒久的な、基本的な財源をしっかりとつくっていかなきゃいけないということだと思っております。

 それでは、関連して、林業公社等の状況等についてちょっと聞いてみたいと思います。

 昭和三十四年に長崎県の対馬林業公社が誕生して以来、全国で三十八の都道府県で四十二の公社が設立と聞いております。もちろん、岐阜とか滋賀とか島根、長崎ですか、それぞれ二つの公社が存在しておるようでありますけれども、この運営、取り巻く環境は大変厳しいものがありまして、県の事業と林業公社が一体化した事業効率化に向けた考え方とか、動きとか出ておるんでありますけれども、そういう最近の組織再編の状況、取り組み状況をまずお尋ねいたしたいと思います。

川村政府参考人 お答えいたします。

 林業公社の問題でございます。

 委員が御指摘ございましたとおり、林業公社は、昭和三十四年に長崎県の対馬に設立されて以来、昭和四十年代前半を中心に、拡大造林の推進あるいは造林事業を通じた山村地域の振興を目的に設立をされまして、現在、三十八都道府県に四十二公社が設立されております。

 そして、これもまた委員が御指摘のとおりでございますが、各都道府県においても、行革でありますとか公益法人等の見直し、こういうものがいろいろ進められておりまして、林業公社につきましても組織のあり方を含めた抜本的な改革の動きということが見られます。

 概括この動きを申し上げますと、大きくは二つの方向で検討がされているというふうに承知しております。一つは、この林業公社を存続させながら各般の事業の見直しに取り組む都道府県がある一方で、先生の御地元の岩手県を初め、長野県、大分県等の林業公社につきましては、森林の公益的機能を重視した施業へ転換するとともに、公社を廃止いたしましてその造林地を県有林と一体で管理する、こういう動きもあるわけでございます。

 今後とも、県の状況等については十分フォローしてまいりたいというふうに思っております。

黄川田委員 国全体、都道府県ごとの公社の債務残高ですか、一兆八百億円とも言われるような状況だということであります。

 そういう面で、さまざま都道府県からも要請などが来ている中で、平成十八年度予算に具体を盛り込んでおると思うのでありますけれども、森林県連合というんですか、そういうところから多分経営改善の要請があると思うのでありますけれども、金融関係の要望が具体的にどんな形で政府として示されているのか、お尋ねいたします。

川村政府参考人 林業公社の経営問題、これは私ども林政全般にとりましても非常に重要な課題だというふうに思っております。また、公社の設置されております森林県連合等からもいろいろな御要望等も出されております。

 お尋ねの金融関係でございますが、これも非常に大きなファクターでございまして、都道府県あるいは農林漁業金融公庫からの借り入れというもので公社の経営が成り立っております。

 この資金関係でございますけれども、まず、公庫資金につきましては、一つは、最長五十五年という長期の造林資金がございます。それからまた、長伐期施業に次第に転換をしております、今までの五十年程度のサイクルでの施業からより長期の、七十年、八十年という長期の施業に変わっておりますが、この場合、施業に転換をする場合に借りかえられるというものもつくってございますし、また、先ほど言いました造林資金とか施業転換資金にあわせて貸し出しをすることによりまして無利子の森林整備活性化資金というものを設けたというところがございます。

 そして、お尋ねのように、今年度でございますが、これを、取り組みを一層推進するということで、今申し上げましたまず施業転換資金につきましては貸付枠を拡大いたしました。また、貸付対象となります林齢も引き上げを行ったということがございます。それから、施業転換の要件がこれまでちょっと厳しかったわけでございますが、それを緩和いたしまして、十年以上延長すれば施業転換と認めるという新たなタイプも創設をしたということがございます。

 また、無利子の森林整備活性化資金でございますが、これにつきましてもあわせて貸付枠を拡大いたしておりますし、その貸付割合、これも特例措置を講じまして、従来七分の二が上限でございましたけれども、最大二分の一まで貸し付けられるという形でのかなり大幅な思い切った改善措置を講じたところでございます。

黄川田委員 多分、都道府県からは平成十三年度あたりから大分要望があったと思う形の中で、具体が進んでおるようでありますけれども、先般、行革法案が通る形の中で、農林漁業金融公庫なども〇八年度あたりですか、中小企業金融公庫と一体となるような方向もあるようであります。

 そういう中で、農林業の政策が本当に従来どおりしっかりと重視されて、そしてまた今の提言が生かされるのかという心配もありますので、本当に林業政策は小手先ではだめだと思っております。本当に長い年月をかけて立て直していかなきゃいけないと思っております。

 それからまた、今の財貨の中では全部売ったとしても赤字が出てしまうということとか、そしてまた、分収林なんかはやはり所有者の国民一人一人の理解もこれまた必要だと思っております。

 しっかりとした形の中でやっていただきたいのでありますが、金融面の措置だけじゃなくて、その他補助事業とか別な面の施策はあるんでしょうか。

川村政府参考人 ただいま金融措置の関係での御説明、御答弁を申し上げました。

 お尋ねのように、それだけでなくて、できる限り経営の改善に資するような形で助成ができないかということでいろいろ検討してまいったわけでございまして、特に十八年度におきましては、先ほど言いましたように森林の施業のあり方が変わってきております。つまり、針広の混交林化を図りますとか広葉樹林化を図るということも一つの流れになってきておりますので、これに対する助成をできるだけ手厚くしたいということで、公社に対しましては、実質的な助成の割合でございますが、八五%から九〇%を補助できるような仕組みも公共の中で新規にまずつくりました。それから、長期の育成循環施業、複層林化等も含めてでございますが、これも今までは公社が対象になっておらなかったわけでございますが、公社にも適用するといった道を開きました。

 それから、やはり都道府県の財政も厳しいので、できるだけ交付税の関係での措置を講じてほしいということで、総務省さんとも大分協議をいたしまして、十八年度からは今申し上げましたような新たな動き、つまり長伐期施業でありますとか複層林の施業、こういった場合の、今まで都道府県さんが利子補給等をなさっておりますので、それに対する経費に対しても交付税が講じられるといったようなことも始まりました。

 こういったように、私どもも、これまで公社は日本の森林の造成、維持、これに非常に重要な役割を果たされておりますし、森林が次代に、次世代に引き継がれますように総合的な支援というものに努めてまいりたいというふうに思っております。

黄川田委員 具体的にお話をいただきました。

 地方交付税あるいはまた普通交付税のほかに特別交付税といいますか、いろいろ見てやるということなんでありましょうけれども、今、地方の財政、国家財政もそうでありますが、厳しいということ。そしてまた、林業雇用者を県が引き取るという形の中ではまたさらに地方債残高がふえる。林業の推進にしろ、あるいはまた、その前の景気回復ということで、十年前には経済対策ということで、いろいろな仕事をしろ、裏財源は起債を発行していいからということで、どんどん国策に沿ってやってきた結果のある意味では債務残高だというところもあると思っております。もちろん国際社会の環境の変化、これも、木材の価格が下がるとかいろいろなことがあるわけでありますけれども。

 ですから、この公社の再建には、それは県の責任だとか、それは農林漁業金融公庫の責任だとか、国の責任だということじゃなくて、国民のためにそれぞれが役割をしっかり果たすという形の中でやっていきたいと思います。

 大臣に一つお尋ねいたしたいのでありますけれども、いずれ厳しい中でも計画的に伐採されるのでありますけれども、しっかりとした対応をしないと、切った後の再造林というのが、森林所有者がまた木を植えるという意欲がわくかどうかというのは本当に心配なんですよ。伐採した後、裸山になっているというのが、散見どころかどこでも見られるというような状況になっているのが現実だと思っております。

 そういう中で、公益的機能をしっかり守っていかなきゃいけないと思うのでありますが、その辺の御所見をお尋ねいたします。

中川国務大臣 おっしゃるとおりで、木材というのは、植えてからいろいろと手間をかけて、そして何十年にわたって初めて伐採する、伐採したものが適正な価格、売る方はできるだけ高くということは当然でございまして、そういういい循環に今なっていないわけでございまして、私もこの仕事になって、初めからずっとこの問題というか同じような議論が続いてきているわけでございます。

 今、黄川田委員と林野庁長官との質疑にもございましたように、我々にとっての厳しい状況の中でできるだけの対策をとっていかなければならないというふうに思っておりますし、また、税等でも、相続税等でもいろいろなことを今までやってきたつもりでございますけれども、要は、森林所有者あるいは木材産業にとってもなかなか厳しいという現状認識は根本的には変わっていないわけであります。

 森林の果たす多面的機能あるいはその資産価値というものを考えましても、国民共有の財産として、しかも、未来に対する我々の責務を全うしていかなければいけないということでございますので、国民的な御理解をさらに得ながら、地域の皆さんあるいはまた森林所有者の皆さんと連携をしながら、国としても、森林を守る、国土を守るというのは最終的に国の責任でございますので、その責任を全うすべく努力をしていかなければなりません。

 そういう意味で、今計画の基本的な見直しの作業もやっているところでございますので、専門家の皆様方の多方面にわたる御意見を聞きながら、また、黄川田委員初め当委員会でのいろいろな御意見、御指導をいただきながら、共通の目標に向かってやっていかなければならないというふうに考えております。

黄川田委員 大臣お話しのとおり、食料・農業・農村基本計画の見直しの後には森林・林業基本計画の見直しだと思っております。林政審議会、この秋からでも始まるんですかね。どうか具体をしっかりと取り込んでいただきたいと思います。

 時間も過ぎてきましたので、次は、バイオマス発電等、新エネルギーの利用促進についてお尋ねいたしたいと思います。

 資源が乏しい我が国でありますので、そしてまた温暖化対策等の地球環境の視点からも、バイオマス等の新エネルギーの利用促進、これが喫緊の課題だと思っております。

 そこで、総合資源エネルギー調査会で、平成二十二年度、新エネルギーの導入目標が一次エネルギー供給量の三%程度と定められております。そのため、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法、いわゆるRPS法でありますけれども、これが平成十四年四月から施行されております。

 RPS法による各電力会社の引き取り義務量の決定の仕組みでありますけれども、これは本当に大変複雑であります。私にとってはそう思っております。平成二十二年度において、全国電気供給量、これを前年度の一・三五%と定められておるようであります。

 義務量決定の仕組みでありますが、概略がどのようなものであるかお尋ねいたしますし、そしてまた、最近やっと各年ごとの引き取り義務量の引き上げが決定されたと聞いておりますけれども、十五年度のスタート時点から目標値を高目に設定しておいてよかったのではないかと思っておりますけれども、エネルギー庁の答弁を求めます。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のRPS法の各電気事業者の義務量についての計算がわかりにくいという御指摘でございます。まことに恐縮でございます。

 この法律に基づく各電気事業者の義務量の算定でございますけれども、まず、各年度の日本全体の利用目標量、これを八年先まで定めまして、これを各年度の日本全体の電気供給量で割った割合をまず算出いたします。これが例えば平成二十二年度でございますと一・三五%になるわけでございますが、これを各義務者の年度ごとの前年度の電気供給量の実績に掛け合わせまして、これによって各事業者の義務量を算出させていただいております。

 御指摘のように、新しい制度でもございまして、しかも新エネの導入につきまして設備が一定程度要るだろうということでございまして、したがいまして、その設立当時、多くの電気事業者にとってはなかなか目標達成量が難しいんじゃないかということが想定をされました。したがいまして、この法律の附則の三条の規定に基づきまして経過措置を講ずることといたしまして、途中の期間につきましては御指摘のような利用目標量を緩和する義務量にさせていただいたところでございます。

 他方、この法律は、全体的に施行後三年を経過したところで必要な措置を講ずることを検討して、必要な措置を講ずることと定められておりまして、今般、残りの年における義務量についても再評価をさせていただいたところでございます。

 その結果、十五、十六年度の義務者でありますところの電気事業者の努力によりまして義務量を上回って達成されているということが判明いたしました。したがいまして、それに基づきまして、御指摘のように、平成十八年度から二十一年度までの期間の軽減されている義務量を引き上げさせていただくことにさせていただいたところでございます。

黄川田委員 お話をいただきました。

 それでは、引き取り価格についてでありますけれども、これは、平成十六年度、単純に全国平均価格、それぞれ電力会社がありますから、風力は十一・九円ですか、キロワットアワーに対し。バイオマスは七・三円と、これは最も安いわけでありますね。これは、一般廃棄物がバイオマスの主要を占めるといいますか、それが理由ではないかと考えられるわけでありますけれども、これはなぜなのでしょうか。

 そしてまた、廃棄物には外材が主体の住宅廃材が多く含まれておるようでありますけれども、林地残材等の国内の木質バイオマスについては、循環型社会を形成し森林整備を促進する観点からも、別枠を持ってより高い価格設定をするべきではないのかと思っておるわけでありますけれども、エネ庁の見解はいかがでしょうか。

細野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、バイオマス発電が他の新エネのものに比べまして平均価格が安いということでございます。

 基本的な理由につきましては、御指摘のように、一般廃棄物発電の割合が約八割ぐらいを占めるということで、それが一番大きい理由ではないかと思われます。

 他方、林地残材などにつきまして、別枠の設定をしてこれを特別に扱うべきではないかというような御提案がございました。

 RPS法は、もとより、新エネルギーの導入を促進する、あるいは後押しをする目的ではございますが、いわゆる個々のエネルギーごとに、個別に枠取りをするというようなアプローチではありませんで、まさに発電事業者間の競争を通じまして、できるだけコストの安い新エネルギーを導入するということを通じまして効率的でかつ優位な新エネルギーの導入を図るということが目標でございまして、現在のスキームにおきましては、エネルギー種類別の義務量あるいは買い取り価格については設定をしておりません。

 他方、御指摘のように、木質バイオマス発電そのものにつきましては、京都議定書においても、二酸化炭素の排出の面で大変優位なものでありますし、地球温暖化にも資するものである、しこうしてまた、石油依存度を国全体として低減するということにも優位でございますので、そういった観点で、ぜひ促進を図るべきだとも思っております。

 その観点で、高効率のための技術開発でありますとか、あるいは実証、それから民間企業や地方公共団体における設備等については、この面からバックアップをしていくということで、積極的に対応させていただきたいと思っております。もとより関係各省もたくさんございますので、連携のもとに、さまざまな施策の組み合わせで対応していきたいと思っております。

黄川田委員 全国的に、循環型社会の形成のために林業政策の中で具体を頑張ろうということで、いろいろな事例が出ておるわけでありますけれども、岡山県の木材業者さんらは、この木質ペレットでCO2の削減をしようということで頑張っているんですが、残念ながらといいますか、その原料は国産材じゃなくて外材を主としたペレットになっておるわけなんであります。

 そしてまた、たくさん生産して、電力会社が石炭火力発電所で混焼といいますか、まぜて燃やすというふうな形で鋭意頑張っておりますので、何とかこの森林整備の中で循環されるような仕組みをつくっていきたいなと思っておるわけでありますけれども、やはりそこのネックは、私も何度も質問させてもらっているんですが、この森林整備にかかわる木質バイオマス発電でありますけれども、原材料を山元から林地残材を里まで持ってくるという、そしてまた小規模発電施設をやるということ、その輸送する費用といいますか、これがかなりかかるわけなんであります。この輸送費の助成策といいますか、何度も聞いておるわけでありますけれども、なかなか明快な答弁が出ないものですから、再度お伺いいたします。

川村政府参考人 お答えいたします。

 この木質バイオマスの有効利用、これは大変な重要な課題であるというふうに思っておりますので、バイオマス発電施設、それから熱供給施設の整備等につきまして支援をしておるところでございます。

 また、この場合の非常に問題点といいますか課題は、御指摘のように、やはり収集、広く散らばっておりますので、収集する費用、それからまた、非常にかさばりますので、これを運搬する費用といったものの物流コスト等が非常にネックになるというのは御指摘のとおりだと思っております。

 こういったランニングコスト的なものを、経常的なものを助成するというのはなかなか難しいわけでございますので、できるだけこのコストを下げるための、効率化するためのいろいろな機材、例えば、現場で、山の中でチップにしてしまうような移動式のチップも今開発をしておるところでございまして、こういったものをいかに普及していくかといったこと、それから、全般的な林業システムを組み立てていくといったことでの新生産システムといったようなこともございます。

 こういったところでしっかり取り組んでまいって、このバイオマスの利用の推進というものに引き続き努力をしてまいりたいというふうに思っております。

黄川田委員 時間も残り少なくなってまいりましたので、それでは、関連して風力発電についてお尋ねいたしたいと思います。

 私の地元岩手でも、風力発電、大変普及しております。御案内のとおり、風力発電、風任せといいますか、そういう発電というところもありますので、電力が変動すること、これがあるわけなんであります。

 そこで、今年度から、高価な、高い負荷変動抑制装置、バッテリーですかね、それをつけることが義務づけられたわけであります。なぜ急に今年度からそうなったのか。

 また、一応国から三分の一の補助が出るようでありますけれども、省エネ促進の理念から、この設置者の負担を軽減する措置を講ずるべきではないかと思っておりますけれども、エネ庁の見解はいかがでしょうか。

細野政府参考人 お答えを申し上げます。

 風力発電、これは大変魅力的なエネルギー源ではございますけれども、御指摘のとおり、風の状況に応じまして出力が不規則に変動するということがネックでございます。それがために、この風力発電がその風の状況に応じて不規則に変動するままで導入をされるということになりますと、当然のことながら、周波数などの変動あるいは全体の電力品質ということについて大変な影響が出てくるわけでございます。このために、一部の電力会社においては、自分の系統に連系するものの量を一定程度制約する、こういうような状況にあるのは事実でございます。

 したがいまして、経済産業省といたしましては、いかにしたらより多くの風力発電が導入されることになるだろうかということで、総合エネ調のもとに新エネ部会というのがございますが、そこで風力系統連系対策小委員会というのを開催いたしまして、専門家の方々の検討によりまして、昨年、先ほどの出力変動、出力の不規則な変動に対応するということの一つの対応策として、蓄電池を併設するということを中心とした対策をまとめたところでございます。

 東北電力におきましては、この結果を受けまして、岩手県も含みますが、管内における風力発電の連系募集につきましては、蓄電池を一緒につくっていただくということで募集をしたというふうに承知をしております。

 ただ、御指摘のとおり、その蓄電池、バッテリーをくっつけるということになりますと、追加設備が必要であるために、事業者の方々にとっては、その分だけコスト負担がふえるということは事実でございます。そうした観点から、既に御指摘いただきましたけれども、風力発電系統連系対策補助金というものを設置しまして、これの補助をさせていただくことにいたしました。

 もちろん、なるべくたくさんの補助を差し上げるにこしたことはないわけでございますけれども、現在のところ、事業者の方を対象とする新エネ設備導入についての補助については三分の一というのが一つ大きな上限になっておりますものですから、それにそろえさせていただいているという事情は御理解を賜りたいわけでございますが、それだけではなかなか大変だということもありまして、これに加えまして、同じような観点から、蓄電池のコストダウンのための技術開発に対する補助、あるいは、どこだったら、その設置場所として採算のよい、いい風力発電ができるかという意味での風況調査を各地点ごとにやるというようなことについても補助をさせていただいておりまして、こういうような各般のバックアップをさせていただいているところでございます。

黄川田委員 いずれにせよ、新エネルギーの引き取りの義務量、これを引き上げて、さらには買い取り価格ももっと高く設定するような形で、地球温暖化に対処するような対策を講じていただきたいと思っております。

 残り時間がわずかとなりましたので、水産に関連してお尋ねいたしたいと思っております。漁業経営の安定化対策であります。

 また地元の話でありますけれども、野田村というところがありまして、人口はもう四千人台であります。小さな村であります。水産で暮らしてきた村と言っても過言ではないと思います。

 今までは漁協などの団体を対象にしてきた従来の漁業補助といいますか、そういうものを個人にも拡大する試み、これをちょっと村独自で開始したわけであります。具体例を言いますと、ワカメとか昆布とかホタテの養殖に使う浮き玉あるいはまたロープなどの施設を対象に、新規整備は二十万円、既存設備の補修は十万円を上限に、経費の二分の一を補助する仕組みであります。本当にわずかな金額でありますけれども、財政の厳しい村にとって、年間百万円もの予算を今年度計上しております。要望があれば、追加で補正も検討しておるというところであります。

 今般の農政の政策の大転換ということで、農業者への直接支払いとか、いろいろな考え方が出ておりますけれども、団体を通じた補助というよりも、農業者個人の直接支払い制度と同じような形の中で、漁業者個人への直接支払い制度、こういうものを少しずつ確立していく必要があるのではないかと思っております。

 ちょっと通告していなかったんですけれども、ほかに自治体レベルでさまざまなそういう補助といいますか動きが出てきたであるとか、あるいはまたそれに対する水産庁の考え方とか、答弁していただきたいと思います。

小林(芳)政府参考人 今お尋ねがございました、まず、私どもの国レベルの政策としまして、いわば漁家個人に対するいろいろな経営上の支援ということについてのお尋ねでございます。

 私どもの政策としましては、漁業経営の安定、これが一つの大きな課題でございまして、今進めています政策上の支援策として、一つが漁業災害補償制度でございます。

 御承知のように、これは水揚げ金額の減少に着目して損失補てんということでありますので、いわば個々の漁業経営にとって、いざというときの対応として一つのすぐれた政策ツールというふうに評価しております。ただ一方で、加入率が低うございまして、そういった意味で、今後の経営安定対策の一つの柱として、加入率を高めるとか、どういうふうにこれを改善していくのかというのが一つの検討課題になっておるところでございます。

 それから、このほか、調整保管事業等を通じて全体の価格安定対策というようなことを進めておりますし、それからさらに、平成十七年度、これは多面的にも着目しました離島再生交付金でございます。こちらは漁業集落に交付しておりますけれども、事業内容は種苗放流とか藻場の改善等々でございまして、こういった集落の取り組みを通じて個々の漁業経営の改善にもつながるというものでございます。

 今、私ども、来年三月を目指して基本計画の見直しを進めておりますので、そういった見直しの中で、今後、国際競争力のある経営体の育成あるいは産地の販売力の強化等々、そういった対策について十分検討を進めていきたいと考えております。

 それから、こういった私どもの国レベルの政策のほかに、地方レベルで、都道府県、市町村、いろいろ取り組んでいただいております。

 ちょっと具体的なデータを今持ち合わせておりませんけれども、今お話のありました市町村で助成されるということでございまして、市町村が、まさに地域の特性に応じまして、国のあるいは都道府県の政策と連携して、そこにまた追加的な助成をしていただくということは、これは非常に貴重ですし、ありがたい対策だと思っております。

 国の方は国の方の一つの助成の考え方というのがありますので、そういう中でどういうふうに工夫していくか。それをまた補う形での地方団体の補助というものがあって、そういうものと連携しながら円滑に対策を進めていきたいと思っております。

黄川田委員 加えて、今度は燃油高騰の対策であります。

 実は、漁業者に対する低利融資、省エネルギー推進緊急対策資金等々が予算化されたのでありますけれども、我々東北に住む者にとっては、その利用実績がゼロというふうな話を聞いております。たしか、七十億円の見込み額に対して、現実、融資実績は北海道とか福岡、長崎、鹿児島等々で二億円ぐらいだという話も聞いておるんであります。

 この燃油高騰対策でありますけれども、原油はもう下がらないんじゃないのか、恒久的にこういう状況が続くんじゃないのかという状況も認識しておりますので、この利用度が低いわけ、そしてまた、これからどうするんだということも含めてお尋ねいたします。

小林(芳)政府参考人 燃油対策につきましては、昨年の高騰を踏まえまして、まず昨年の九月ですけれども、緊急対策を打ち出しました。これは、既存の基金を使いまして、今御指摘のあった省エネルギー推進緊急対策資金、これは当座の燃油等のかかり増し経費、これに対する融資の利子補給であります。これを進めると同時に、年末には補正予算に計上させていただきまして、いろいろな、そもそもの流通効率化対策でありますとか、そういった総合的に取り組んでいただくということを今進めておりますが、その中で、今御指摘ございました九月に緊急対策で始めましたこのかかり増し経費への利子補給資金、これの実績がなかなか進んでおりません。

 七十億の融資枠を設定いたしておりますけれども、現在四億、二億からまた二億ふえましたけれども、四億という状況でございます。これはいろいろな原因が考えられますけれども、一つは、借り受け希望の大宗を占めておりました遠洋マグロはえ縄漁業があったわけでございますが、こちらの方のニーズとしましては系統金融機関の短期資金の方で対応しているとか、そういったこともございまして、その時々の金利等の状況の中でいろいろな資金の優位性の中で借りられていきますので、こういった状況があるかと思っております。

 ただ、先ほど申しましたように、四月二十日時点で見ますと、一カ月で二億円の貸し付け増となってきている状況があり、今後の金利等の動きの中で、三年間、低利、固定という資金でございますので、こういったところに着目していただいて資金需要も伸びていくんじゃないかと思っております。

 ただ、いずれにしましても、こういった資金とあわせまして、そもそも燃油流通効率化対策でありますとか全体のコストダウンをどうするか、漁業の操業形態を含めて、基金、予算も通じまして、今各地域で具体的なプランを練って実行に入っていますので、そういうものを総合的に進めて効果ある対策にしていきたいと思っているところでございます。

黄川田委員 現場へ行きますと、漁業は経営が苦し過ぎて資金を借りる余裕もない、融資制度よりも補助という形の中での声が大きいわけであります。

 もう残り時間二分ぐらいになりましたので、最後の質問であります。大臣にお伺いしたいと思います。農山漁村の現状であります。

 農水省の統計によりますと、一九九〇年に十四万あった農村集落が十年後の二〇〇〇年には十三万五千と、五千も集落が消滅しているというふうな状況であります。年間五百の集落が消滅していることになるということは、一日に一つ以上の集落が消えていっているという状況だと思っております。

 農業政策、これ一つによってその集落が消えるか消えないかという大事な部分を農水省は本当に持っておると私は思います。また一方、総務省というところもその部分ではあると思います。やはり、地域社会そしてまた地方を生かす。そしてまた、別の統計ですか、旧国土庁が二〇〇〇年の調査で、全国二千百集落が消滅の危機にあるとか、そういう現実があるわけであります。

 東京におると景気回復とかいろいろな話ができるわけなのでありますけれども、日一日と集落が消えていくという現状に対して、農水大臣はどのような認識を持ち、そしてまた農水省としてセーフティーネットをどうやって構築していくのかということを答弁いただきたいと思います。

中川国務大臣 黄川田委員御指摘のように、農山村あるいは中山間、山といったものは、国土の大宗を占めますし、また細い日本列島においては背骨の、中核をなす地域でございますから、そこに健全な自然があって、そこから自然の恵みをいただいて我々の生活や産業の活動の中に組み入れていくというシステムが円滑に運用していかなければ、長期的にもたない。したがって、そこにはやはり人が住んで活動をして生活をしていただかなければならないわけでございますが、その中心的な拠点といいましょうか存在が集落ということになるんだろうと思います。

 御指摘のとおり、集落が少しずつ減ってきているというのが現時点での統計でございますけれども、その要因は、戦後を振り返りましても、工業化である、つまり脱農林水であるとか、あるいはまた山が荒れていくとか、経済の関係によって山の整備がなかなかできないとか、あるいは高齢化とか都市の方が暮らしがいいとか、いろいろな要因があってこういうことになっていったんだと思います。

 それに対するインセンティブとして、ぜひとも定住して活動していただきたいということで、今までもいろいろな、担い手の育成であるとか直接支払い、あるいはまた都市と農山村との交流、あるいは生活基盤、産業基盤整備等々やってきておりますし、これからもやっていかなければならないと考えております。

 また、この委員会で御審議いただきました農政改革三法におきましても、いわゆる車の両輪ということで、農地・水・環境対策という形での支援策も、これから、単にそこに住んでいる、業として携わる人だけではなくて、地域のそれ以外の人々、あるいはそれ以外のNPO等の人々も含めて参加をしていただいて、そういう役割を果たしていただきたい。

 あるいはまた、そこで農業なりをなさる方も、これはよく議論になりましたけれども、小規模であっても、計画的な活動をする集団をつくってやっていくことによって、新たな施策を打つことができるといったこと等を含めまして、ぜひとも集落の維持というものに対して、我々としても極めて重要だというふうに思っておりますので、あらゆる施策で、これからも、集落の維持、そこに住んでいる人たちの経済的な、あるいは一般生活面での向上に向けまして努力をしていきたいというふうに考えております。

黄川田委員 大臣、車の両輪と言われましたけれども、車輪も大きい車輪と片方が小さい車輪では真っすぐ進みません。しっかりとやってください。

 時間でありますので、終わります。

稲葉委員長 次に、神風英男君。

神風委員 おはようございます。民主党の神風英男です。

 前回、三月の二十三日に、一般質疑の中で国営土地改良事業の問題について質問をしたわけでございますが、質問し切れなかった部分が相当あったものですから、本日はそれに引き続く形で質問をしたいと思っております。多少の繰り返しになる点は御容赦いただきたいと思います。

 前回、何枚かの写真をちょっとごらんいただきました。その写真というのが、昨年の農水委員会において、農業経営基盤強化促進法の一部改正案の審議に際して、参考人としてお越しをいただいた大建工業有限会社の遠藤社長が耕作をされている国営総合農地開発事業、雄国山ろく地区の現状の写真でございました。

 それをごらんいただいて、それがいわば農地と呼べる代物であるのかどうか、それを伺ったところ、写真だけでは判断がつかないという繰り返しの答弁であったわけであります。その後、現地を訪れるなり、あるいはヒアリングをするなり、実態把握に努められているのか、また、その結果、どういう現状把握であったと理解をされているのか、まずその点からお伺いをしたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 せんだって、三月二十三日に、先生の方から御質問がありまして、現場の状況も、私が直接ではありませんけれども、私どもの関係者がまた見に行ったりしたんですけれども、先生おっしゃるように、かなり石が多いところで、石がかなり出る。それは、周りの地域、全体的にあの地域が石が多いということもあって、石が多いということはどうも事実のようであります。

 特に多くなるのは、耕作をしているところはかなり耕作活動の中で石が除去されたりしていきますけれども、耕作をされていないところで、裸地状態になっていて、雨が降ったりすると石が出てくる状況もあるというようなことは把握をいたしております。

神風委員 そういう形で、ヒアリングなり、あるいは現場をごらんになったのであればわかると思いますが、あの状態は農地と呼んでいい状態なんでしょうか。

山田政府参考人 せんだって、土地改良事業、農地開発事業を実施していったときに農地となるのは一体どういう状態なのか、そういう御質問であったわけでございます。それで、三月二十三日にもお答えをいたしましたけれども、工事の過程で測量、それから木を伐採、伐根する、そして基盤の造成をやるという過程を通じ、また必要に応じて用水の施設や排水の施設を整備するということで、農地開発事業としては、その時点で農地として使えるようになったということで、農家の方にお渡しをしていくというようなことで実施しているということでございます。

神風委員 その先般の参考人質疑のときに、ほかにもワタミファームの武内社長も指摘をされていたわけでありますが、国営事業の大規模開発では、工事完了後も放置されたままの未利用地が多く、そこでは開墾が必要な状態で、そうした開墾費用と時間の負担が非常に大きいということをおっしゃられていたわけでございます。

 そういった国営土地改良事業後、それが完了したという時点で、先般の耐震偽装問題ではありませんけれども、何らかの検査の作業ということは行われないんでしょうか。

山田政府参考人 国営事業実施の完了後の検査についてお尋ねでございます。

 この国営事業の実施、現実には建設業者等々の間で契約をしてやっていただくということになるわけでございまして、その契約が適正に、契約の条件どおり行われているかということを、国営事業の発注者側として、会計法等の基準がありますので、それに従って検査を行う必要がございます。現に、いろいろな国営事業等がございますが、検査を実施しております。

 実際、だれがそれをやっているかといいますと、地方農政局あるいは国営事業所の職員がこの検査を実施しておりまして、その際に、区画形状がちゃんと、規定どおりというんでしょうか、あらかじめ定められた事業計画どおりできているか、あるいは勾配がどうか、また土の厚さがどうかというようなことを、設計の図面あるいは仕様書と照らし合わせてチェックをするという形で検査を実施しております。

神風委員 そうしますと、例の雄国山ろく地区、あそこに最初に入られた遠藤社長は、最初から、工事完了の時点からああいう状態であったということをお話しされているわけでありますが、その場合、だれが一番責任があると言える状態なんでしょうか。発注者側というのは、あの場合だれになるということで理解すればよろしいんですか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど言いました区画の形状、勾配、それから土の厚さ、あるいはどれだけ石がまじっているかというようなことにつきましては、農林水産事務次官の通知でございますけれども、もともといわゆる基準というのがございまして、設計基準と我々は呼んでおりますけれども、その設計基準で定めた基準の中に、最初に事業計画をつくっていくときに、それに該当しているかどうかというのを、まず最初の時点で、チェックをしていくというか、その基準に合った形でまず事業を仕組んでいくということになります。

 せんだっても御説明をしましたけれども、雄国山ろくについては、その設計基準を満たした形で事業計画なりができております。その後、設計基準に合致をした事業計画なり、あるいは先ほど言いました設計の図面とか仕様書等に従って工事が行われたかどうかというのは、その検査をする人が検査を実施するということで、一般的に申し上げて、そういう設計基準に合致しているか、またそれに従ってなされた契約が契約どおり行われているかというのをチェックした上で事業が終了するということでございます。そういう意味で、そういう手続の中できちんとした取り扱いがなされているということでございます。

神風委員 というと、あの現状の場合というのは、設計段階がああいう設計であって、設計に問題があったということなのか。それともう一つ、検査をするというのはだれが検査をされるんですか。

山田政府参考人 ちょっと繰り返しになりますけれども、その事業を実施するときに、いろいろな、土地、農地の最終的な状況については、設計基準を定めておりまして、勾配ですとか、土地の区画ですとか、それから石がどれくらい含まれているかということを、基準がございますので、それに合ったものとして事業計画ができているかということは、それに従ってできておりますので、そこについては特に問題がないということでございます。

 それから、それを実際に建設業者に発注をして、それがそのとおり行われたかどうかというのは、先ほど言いましたけれども、地方農政局や国営事業所の職員がそれをチェックしているということで、その時点でも特段問題、発注したとおりに工事が行われているということであったということでございます。

神風委員 というと、最初の設計段階で石れきとかああいうものを除去する必要がないという設計になっていたという理解になるわけですか。

山田政府参考人 雄国山ろく地区のその当時の事業計画として、一定の区画とかあるいは勾配とかも決めましたし、それから今問題になっています土層に含まれる石については、一定の含有率、何%ぐらいあったらいいかということが基準で決まっておりますので、雄国山ろく地区においては五センチ以上の石を除去するということで事業を仕組んでおりまして、そのとおり実施されたということでございます。

神風委員 現場をごらんになったのであればわかると思いますけれども、五センチどころか十五センチ、二十センチの石がごろごろしている、そういう状態ですよね。ごらんになったわけですから、それは御理解いただけると思うんですが。

 というと、最初の段階でもうそれはそういう計画であったとしか理解できないと思いますけれども、それを取り除かなければ農地として基本的にはその検査が通らないということではないんですか。

山田政府参考人 それがちゃんと取り除かれているかどうかというのをチェックするということでございますが、先ほど言いましたけれども、あの地域、私が直接行ってみたわけではありませんけれども、非常にもともと石の多い地域であるということ、それから、やはり農作物が植えられている状態で毎年毎年耕作が行われていきますと、石は地中にあっても表面に出てくるということはないんですけれども、作物がなくなって裸地状態になって雨が降ったりしますと、だんだん下にある石が出てくるというのでしょうか、表面化してくるということで、工事の時点というよりも、その後の状況であるいは石が出てきているところがあるのではないかというふうに思います。

神風委員 あそこで耕作されている遠藤社長というのは、あそこで生まれ育って、あそこの開発に実際に御自身で携われてきた方。ですから、完了した時点の現状というのをよく把握されている方であるわけですよ。その方が、今あそこでアグリ特区という形で入られて耕作をされている。ただ、その完了した時点で既にああいう状態であったということを御本人がおっしゃっているのです。今のお話はよくわかりますけれども、完了した時点でああいう状態であったというお話をされているわけです。ですから、その点について私は質問をしているのであって、それをどう理解すればいいんですかということ、もう一度だけ伺います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの説明のとおり、雄国山ろく地区の事業では、一定の表層の中から直径五センチ以上の石を取り除くということで実施をいたしましたし、それはその当時はそういうふうに行われていたということを当時確認したということ。

 それから、前回も申し上げましたけれども、御不満のある農家の方がおられるとは思いますけれども、その時点で農家の方々にお聞きをして、さらに石を取るようなことが必要かどうか、あるいは、一時利用の指定ということでとりあえず農地を耕してもらっている状態になるんですが、その後、実際に換地処分をする時点で問題がないかどうかというのを確認した上で実施しておりますので、先生がおっしゃるように、一部の農家の方、いやいや、そんな最初からあったんだとおっしゃっておられる方がおられるかもしれませんけれども、基本的には、その農家の方々の了解をとって換地処分を実施しているということでございます。

神風委員 ちょっと今おっしゃったような内容がなかなか現場の方では浸透し切れていない部分もあるようでありますから、ぜひその対応の方もお願いしたいと思うんです。

 あわせて、今の雄国地区の場合には、結局、全体の三割に相当する五十八ヘクタールが遊休農地となってしまって、平成十五年から喜多方市のアグリ特区という形が導入されたわけであります。そういう中で、先般、昨年の九月に、これは農水省の方で「一般企業の農業参入ができるようになりました 特定法人貸付事業のご紹介」という形で、参入を応援する支援措置というのが書かれておるわけでありますが、その中の例えば補助事業で、遊休農地活用土地条件整備ですか、元気な地域づくり交付金、こういった手当てというのは可能なのかどうか。

 現状では何もなくて、結局、新しく参入された建設会社の皆さん方が、伐根であるとか伐採であるとか除石を自分たちの費用でしている、時間をかけて。なかなか入り手がないので、はっきり申し上げれば、首長さんの方から何とかつき合ってやってくれというようなことも言われているようでございますけれども、そういう点、何らかの補助というものが考えられるのかどうか、これが使えるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方からお話がありました遊休農地活用土地条件整備事業でございますが、これにつきましては、遊休農地を再活性化するために必要な土地条件を整備する、先生御案内のとおりでございます。その事業を支援していこうということでございまして、一定の要件を満たせば、この喜多方アグリ特区においても助成対象になります。

 主な要件を簡単に申し上げますと、農地の整備をするということでありますと、貸し付けをする主体が市町村あるいは農地保有合理化法人ということなので、そこが整備を行うということ、それから貸し付けを受ける側ですけれども、参入する法人を含めて三者以上というルールがあるんですが、そういう要件を満たせば対象になるということでございます。

神風委員 一般企業の農業参入という形で進められているわけでありますが、実態としては、先ほどのワタミファームの武内社長もおっしゃるように、新しく参入する会社にとって開墾が必要な状態である農地がほとんど、ほとんどと言っていいかどうかわかりませんが、それが大半、かなり多いというのが現状であるようでありますから、ぜひそれへの対応もあわせてちょっと御検討をいただきたいと思うところでございます。

 また、前回の農水委員会で土地改良の問題点についていろいろ御指摘をしたわけでありますが、土地改良事業というのは、公共事業でありながらも、ほかの一般の公共事業と異なって受益者負担を伴うということでありまして、土地改良法では、対象農家の三分の二以上の同意があれば、計画に賛同しない農家に対しても農地の利用方法を制限したり事業に伴う受益者負担を強制することができるということになっているわけでありまして、ある意味では、土地改良に反対している農家にとっては非常な負担あるいは犠牲を強いる結果にもならざるを得ない制度であるという面は否定ができないことでございます。

 そういう中で、先般、五月の十一日の公聴会の中で、農業作家の山下惣一さんが意見陳述をされておりました。その中でこんなことをお話しされておったんです。

 基盤整備の償還金というのがみんなありまして、私もあるんですが、うちの近所のもう八十近いばあちゃんが一人で年金で払っているんです、三十万円、それが大変なんですよね、本人は基盤整備はしないと言うのに、役員が押しかけていって、これは残したら基盤整備ができないからと言って、無理やりにさせているわけですよ、だから、長期にわたって担い手に土地を預ける人の償還金は減免してやるぐらいの措置をお願いしたいと私は思っていますということを先般の公聴会の中でお話をされておったわけですが、この意見を聞きながら、私も非常にもっともであるなと納得した部分がございます。

 大臣にお伺いしたいと思いますが、こういった点に関して何らかの措置、減免措置みたいなことが考えられないのかどうか、その点ちょっと御見解をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 その公聴会の模様は知りませんが、今お伺いする限りは、八十歳のおばあちゃんが農業者である、農地を持っている、現に農業は多分年齢的にも、また意思の面でもおやりにならないから、農地をほかの方に貸している。当然、リース代と地代というものが入ってくるんだろうと思います。

 他方、一定の要件のもとで、利子補給でありますとか、あるいはまた無利子貸し付け等々もございますので、そういうものも特例として有効に利用していただきながら、やる、やらない、自分は反対だということと集団として基盤整備をやるということとの関係は、先ほど神風委員が御指摘のとおりのルールがございますので、ルールの上での特例が現にあるので、それを活用していただければというふうに思っているところでございます。

神風委員 この地域だけに限らず全国的にそういった問題というのは相当あると思いますので、ぜひ前向きな御検討をお願いしたいと思います。

 あとは、土地改良事業のある意味でそもそも論についてお聞きしたいんですが、遊休農地、耕作放棄地の問題でございます。

 土地改良事業によって農地をつくりながらも、遊休農地化している農地というのは、これは全国で一体どのぐらいの面積になるのか、あるいはどのぐらいのパーセンテージになるのか、その点を教えていただきたいと思います。

山田政府参考人 国営事業地区のうち、過去十年以内に農地造成を完了した地区八十一地区のうち五十二地区について、十四年度から十六年度にかけて作付状況の調査をいたしました。これによりますと、今言いました調査をした地域ですが、造成面積が約二万七千五百ヘクタールございましたが、作付されていない農地が六百ヘクタールということで、その割合は約二・二%ということでございました。

神風委員 今のは、過去十年間、文書の保存期間がある中でのデータですよね。そうではなくて、全体のデータを教えていただけますか。

山田政府参考人 土地改良事業は非常に長い期間これまで歴史を有しておりますので、国営事業地区全体についてどういう作付状況であるかというものを調査したものはございません。今言いましたように、過去十年以内で造成が完了した地区を対象に調査をしたということでございます。

神風委員 これは、平成十六年五月十八日の第十一回食料・農業・農村政策審議会企画部会でのやりとりでありますが、やはり森本専門委員から同じような点を指摘されて、宮本農村振興局計画部長が、「基盤整備したところで耕作放棄がどれだけ発生しているかはちょっとデータとしてはございません。」それに続いて、「可能な限り資料を整備したいと思います。よろしくお願いします。」という答弁をされているわけであります。

 農水省というか土地改良事業の問題でよく指摘をされるのが、一九七〇年に国が減反政策を行いながらも、一方で農地開拓というのを続けてきたわけであります。羊角湾というのは国営干拓事業中止の第一号であって、投じられた資金が六十億円、周辺開発も含めれば百十億円の資金が消失をしたと言われるわけでありますし、また、有名な宍道湖・中海干拓淡水化事業についても、着工後二十五年目にして凍結をされ、それまで投資をされた事業費七百二十億円がいわば無駄になったという構造になっているわけであります。

 簡単にこういった形で税金が無駄に使われた、その損失額というのは、これは一切把握していない、把握できないという状況であるのですか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 今先生がおっしゃった数字、ちょっと私ども持っていないんですけれども、事業を着手した後に事業計画の決定を取り消したり、あるいは事業を廃止したというような手続を行った国営土地改良事業、今先生おっしゃいました羊角湾ですとか、それから佐賀県の伊万里の農業用用排水事業がございますし、それから中海の干拓に附帯する農業用用排水事業がございます。

 羊角湾地区と伊万里地区、廃止をした事業について言いますと、まだ工事に着手をしていない時期でその事業計画を廃止したということでございますので、廃止に伴う事業によってというか、それ以前に執行した予算というのは、廃止した事業との関係では予算はないというふうに私ども理解をしております。

 それから、中海でございますが、中海は干拓に附帯した農業用用排水事業について事業の廃止手続を行ったということでございまして、それまでに投下した事業費は約百九十億円というふうに理解をしております。この百九十億円のうち、一部の施設、農業用用水路でございますが、これについては別の国営事業で利用するということができましたので、投下いたしました費用、先ほど百九十億円と言いましたけれども、そのうちの約四十億円は有効に活用されているというふうに考えております。

神風委員 今のは中止になった事業であって、先ほど申し上げたように、雄国山ろく地区でも、全体の三割というのは耕作放棄で造成したにもかかわらず使われていないわけですよね。そういうところが相当ある。ワタミの社長さんに言わせれば、そういうところの引き合いが相当来ているということであるわけですから、それを全部足し上げていけば大変な額になるわけですよ。そういう把握はされていないんですか。

山田政府参考人 先ほど言いましたように、耕作放棄地については、過去十年間で完了した地区を調べました。それから、事業を中止した地区として今申し上げたことでございまして、それよりほかのもっと広範なデータというのは持ち合わせておりません。

神風委員 すべて文書の保存期間が十年という規定に基づいているようでありますけれども、農林水産省の行政文書管理規則、保存期間が満了した行政文書の取り扱い、第五十一条、「保存期間が満了した行政文書は、保存期間を延長し、又は国立公文書館へ移管するものを除き、廃棄する。」という形で書かれているわけでありますが、この廃棄するという表現は、廃棄をしなければならないということなのか、あるいは廃棄ができるということなのか、どちらですか。

山田政府参考人 廃棄をするということですから、その時点で廃棄をするということでございまして、してもいいし、しなくてもいいということではなくて、廃棄をするという規定であるというふうに思います。

神風委員 ということは、これは廃棄をしなければならないという規定であって、廃棄をしているということは、それは農水省の中で断言できるわけですね。

山田政府参考人 個々の文書について一件一件廃棄されているかどうかというのは、私、確認ができませんので、すべての文書についてそういうふうに廃棄をされているかどうかわからないんですけれども、文書の廃棄については、もう先生お持ちかもしれませんけれども、文書管理規則やあるいは文書取扱要領というのがございまして、保存期間が満了した文書を廃棄するときは、文書の目録をつくって、庶務課の文書責任者がそれを廃棄するということについてチェックをする、承認をするという手続が決まっておりますので、全部の文書がそうなっているかどうかというのは申し上げられませんけれども、一般的にはそういうルール化したものに沿って文書は廃棄されていっているというふうに思っております。

神風委員 かつては永久保存というような形もあったものが、今は三十年に短縮をされている。全体的にもその保存期間というのが、平成十二年からですか、短くなっているようでありますけれども、今御指摘をしたように、一体幾ら税金を土地改良にかけていて、一体どれぐらい無駄になっているのかということが結局わからないわけですよね。十年間たってしまったからその文書が保存されていない、それ以前のものについては全く把握はできないというスタンスであるわけですから。それ自体非常に問題だと私自身は思うんですが、この点、大臣いかがですか。

中川国務大臣 行政の仕事ですから、きちっとやって、そして国会等に求めがあればきちっと御報告をする、資料もきちっと残さなければいけない。しかし、これを永久に残しておくということの意味が一〇〇%ないとは言いませんけれども、それによる事務のコストとかいろいろなコストもかかるわけでありますから、我々はスリムな効率的な行政を目指すということを一つの大きな行政目標として掲げておりますので、そういう意味で、現行にこういう形でルールがあるわけでございますから、そのルールにのっとってきちっとやっていけばいいというふうに考えております。

神風委員 いや、私もすべての文書を永久に保存しておいてくれと言っているわけではなくて、少なくともこれまでどれぐらいの予算、費用、経費をかけて土地改良を行いながら、それがどれだけ無駄になっているのか、あるいはどれだけ有効に使われているのかを把握していただけるぐらいの資料は保存しておいていただきたい。それがすべて、十年たちましたから、もう保存期間が経過しましたからわかりませんということでは、これはプラン・ドゥー・チェックのチェックが全くできないという状況ではないかなと思いますので、その点をぜひ、これは農水省だけの問題ではないと思いますが、これから前向きに御検討をいただきたいと思うわけであります。

 それに加えて、これは前回も多少伺ったんですが、平成五年度から平成十八年度まで十四年間において、総額四十一兆円の事業費に上る第四次土地改良長期計画というのが実施をされていた。その中で、農用地造成事業として、一兆四千百億円かけて農用地十万ヘクタールの造成を行う計画になっていたわけでありますが、平成十二年の時点で既に三十四万三千ヘクタールの耕作放棄地が発生をしている。十七年にはもう三十八万五千ヘクタールにこれが増加をしているわけですね。これだけ耕作放棄地が発生をしている一方で、一兆四千百億円かけて十万ヘクタールの農地を造成するというのは、これはどういう政策の意図があるんですか。全くの矛盾ではないですか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 第四次土地改良長期計画でございますが、これは平成五年からもともとは平成十八年までの予定だったわけですけれども、十四年まで実施をされたものでございまして、これは旧農業基本法の時代に、平成二年のときに閣議決定をされました「農産物の需要と生産の長期見通し」という閣議決定がございますが、それを踏まえてこの第四次土地改良長期計画を策定したということでございます。

 具体的にちょっと申し上げますと、旧基本法では、この農産物の需給の長期見通しというのを策定いたしまして、それを参酌していろいろな施策を講じていくということになっておりましたけれども、平成二年に閣議決定をされました長期見通しでは、平成十二年の時点の農地面積を五百万ヘクタールということを前提としていろいろな施策を打っていくというようなことになっておりました。

 第四次土地改良長期計画の策定時において、そういう政府全体の閣議決定をした目標があったものですから、それと、現実にその農地の壊廃が進んでいくという趨勢等で見込んだ面積との差について、これが十万ヘクタールでございますが、これを農地造成していく必要があるということで、先ほど言いました、閣議決定をした長期見通しの前提となっております五百万ヘクタールを確保するというような全体の政策の位置づけの中で、この第四次土地改良長期計画も定められたということでございます。

神風委員 いや、簡単に言えば、一方で耕作放棄がそれだけふえている中で、農地造成をする必要というのがあったんですか。

山田政府参考人 耕作放棄地が発生をするのはいろいろな要因がございます。もう先生もよく御存じと思いますが、担い手がいないとか、土地条件が悪いとか、あるいは農産物価格の問題もありますし、いろいろな問題があります。それで、当時、土地改良長期計画を策定するときに、転用の見込みですとか、あるいは耕作放棄地の発生についての、そういったものを含めた壊廃がどれだけ進んでいくかというその趨勢を想定したわけでございます。

 この想定の中で、先生おっしゃるように、耕作放棄地をとにかく発生させないように頑張るんだという政策目標ももちろん持っておりました。それで、耕作放棄地の発生を抑制していくということも織り込んだ上で、しかし、農地面積の推計としてみますと、平成十四年の見込みとして四百九十万ヘクタールぐらいになるということを推計いたしまして、そうしますと、先ほど言いました五百万という政府全体の目標と趨勢値の四百九十万の間というのを農地を造成していく必要があるということで、その土地改良長期計画に十万ヘクタールというものを書いたということでございます。

神風委員 この第四次の土地改良長期計画は四年早めて平成十四年度で打ち切られて、十五年度から十九年度までの五年間の新たな土地改良長期計画が作成をされたということでありますが、その第四次長期計画との整合性というのが、資料を見ていてもこれは全くわからないわけであります。

 例えば、この農用地造成事業について一兆四千百億円をかけて、平成十四年度までの進捗率、この進捗率のデータというのも投資額の進捗率という非常におかしなデータになっているわけですが、それが八二%である。ということは、普通、常識的に考えれば、十万ヘクタールのうちの八二%で八万二千ヘクタールの農地が造成されたということでよろしいわけですか。

山田政府参考人 今先生おっしゃいましたとおり、この進捗率というのが、第四次の長期計画までは投資した額が幾らかということを見てこの進捗率を見ているということでございまして、実際どれだけ農地ができたかというような進捗率ではなかったわけでございます。それで、第五次の、早めて前倒しして見直しをしたのは、こういう投資額自体で進捗率をはかるとか、あるいは額そのものがふえた、減ったということよりも、むしろどういう具体的な成果が上がったのかという考え方に変えなくちゃいけないということで、新たな土地改良長期計画ではそういう投資額の目標とかそういうものは一切書かないという整理で今の新長期計画ができております。

神風委員 非常におかしな、投資額が進捗率で八二%、使った額が進捗率というのは、普通民間企業では逆立ちしても考えられないようなことではないかなと思いますが、八万二千ヘクタールはそれで完成されているわけですか。

山田政府参考人 今おっしゃいました実額と実績とでは全然乖離がありまして、実際にできました実績は二万三千ヘクタールということのようでございます。

神風委員 計画の期間が十四年間、投資額も一兆四千百億円と決まっていて、十万ヘクタールを造成するという目標で、進捗率、投資額にしても八二%、もう予算を使っているわけですよね。その中でなぜそういう状況になるんですか。

山田政府参考人 実際に、当初計画をしております単価というんでしょうか、どのくらいの金額で実施していくかということと、やはりいろいろな物価の高騰ですとかあるいは諸般の情勢で、なかなか当初計画したような単価では工事が進んでいかないということで、今のような結果になっているということでございます。

神風委員 諸般の情勢を言い出せばそれは切りがないわけでありまして、もう計画自体に問題があったという認識はありませんか。

山田政府参考人 先ほど言いましたけれども、それまでの、第四次までの長期計画は、今先生から御指摘がありましたように、投資額を幾らにするとか、そういった観点を重点に置いた長期計画であったわけでございます。これは公共事業一般がすべてそういう形になっておりました。

 当時やはり、先生おっしゃるように、それはおかしいんじゃないかという議論がありまして、もっと、例えば担い手にどれだけ農地が集まるようにできたのかとか、あるいは経済効果がどれだけ上がったのかとか、そういう観点から評価をすべきなので、目標自体も、そういう投資額を目標とするということではなくて、成果目標と言っていますけれども、そういったものに切りかえるということで、新しい今の長期計画ができております。

神風委員 ちょっと時間がなくなりましたので、最後にまた伺いますが、では、その十万ヘクタールの目標をこれからどうされるおつもりなんですか。これから十万ヘクタールやはり必要であるから、今二万三千ですか、それしかできていない、残り、造成をするということなのか、あるいはこれでやめるということなのか、それは新しい計画の中には全く書かれていないわけですよ。その点いかがですか。

山田政府参考人 今の政府全体あるいは農林省全体で農地の造成について考え方を書いているのは、新しい基本法のもとでの食料・農業・農村基本計画の前提として、農地面積がどのくらいになるかという推定を、想定というんでしょうか、しておりますが、その中の考え方として、農地の造成面積は約一万ヘクタールである、これは国営とかそういうことは全然関係ありませんが、造成面積として一万ヘクタールを平成二十七年までの面積として見込んでいるということでございます。

神風委員 時間が来ましたので、終わります。

稲葉委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。民主党の仲野博子でございます。

 きょうは、漁業全般にかかわっての諸問題について質疑させていただきたいと思います。

 冒頭、大臣に一言お願いを申し上げたいのは、それぞれ各委員会の、委員会質疑中にこうしたお水が出されております。大臣、次に私が何を申し上げたいのかわかると思うんですけれども、水でなくて、水よりも安い牛乳を出していただければいいのではないかなと。これはまた、農水委員会の方の予算ではないと言われればそれまでかもしれませんけれども、率先してそこは、多分与党の先生方も同感ではないかと思っておりますので、とりあえず農水委員会から牛乳を置くとまた、それこそ営農されている方たち、今本当に困っている方たちが、ああ、国会でもこうして牛乳の拡大に努めているんだなということで非常にうれしいことでないのかなと思っておりますので、これはあくまでも参考までに申し上げさせていただきたい、そのように思っております。

 大臣、どのようにお考えでしょうか。

中川国務大臣 これは、私は委員会に呼ばれておる立場でございますので、委員会の方での御決定だと思います。

 ちなみに、きのうの参議院での農水委員会では牛乳が出まして、私、六時間の間に二杯いただきました。委員の先生方も盛んに飲んでおられました。私自身、牛乳のおかげで大変元気いっぱい六時間過ごすことができました。

仲野委員 これは委員会で取り決めるということでなくても、また別な機会に、議運等の取り計らいでやっていけるようにできればなと思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 早速ですけれども、燃油価格高騰問題、本当にさまざまな業界に影響を及ぼしております。

 ことし四月半ばに米国産のWTI原油の価格が史上最高の一バレル約七十五ドルをつけるなど、原油価格の世界的な高騰が続いているわけでございます。漁業者が主に使用するA重油においても、値上がりを始めた十六年三月ごろと比較して、約七割も値上がりしております。

 このような中、漁業というのは他産業に比べて経費に占める燃料費の割合が高く、だからといって漁獲物の価格への転嫁も困難であることから、懸命の努力にもかかわらず漁業者の経営が今大変深刻な影響を受けております。

 政府は、このような問題に対処するため、昨年からの燃油高騰緊急対策に引き続き、平成十七年度の補正予算においては、経営体質強化緊急総合対策基金を造成するなどして、厳しい状況に置かれた漁業者の経営体質強化対策を講じているわけでございます。

 まず最初に、政府の燃油価格高騰対策及びその効果について、簡単に水産庁長官から御答弁をお願いいたしたいと思います。

小林(芳)政府参考人 今御指摘ございましたように、燃油高騰が続いておりまして、その中で水産業に与える影響は大きなものがございます。

 その中で、私ども、昨年の九月には緊急対策という形で、運転資金の低利融通、それから漁業用燃油タンクの統廃合を促す事業、これをつくりまして、まず緊急に措置しました。それから、年末には補正予算を計上いたしまして、こちらで燃油流通の効率化に取り組むそういった助成でありますとか、それから、いろいろな省エネ型の漁業に漁業現場で転換してもらうための促進策、こういった事業を創設して現在進めております。また、このほか、経済産業省のエネルギー使用合理化のための支援事業がございまして、こういったものも活用させてもらいながら総合的に進めておるところでございます。

 これまで、補正予算を含む対策として進められてきている状況でございますけれども、十七年度、昨年度中には、例えばタンクの集約化、こちらは北海道を含む二地区で進められておりまして、これは一割程度の燃油価格の供給コストが引き下げられる、こういった効果が出ているわけでございます。

 それから、特に、省エネ型の船外機の導入ということも一部地域で進められておりまして、これは先ほどの経産省の方の事業採択件数で見ますと、この船外機等が十七年度で八十三件、こういった形で幾つか進められているところでございます。

 今後とも、漁業者グループによります共同探索船でありますとか共同運搬船の取り組み、こういったことが今各地で取り組まれておりますので、こういったものを見ながら、効果ある対策を進めていきたいと思っております。

仲野委員 今るる御答弁いただきましたけれども、主に漁協系統の燃油流通の効率化、省エネ型漁業への転換という二つの柱から成っていると考えられます。

 それで、燃油流通の効率化についてでありますけれども、北海道と本州では燃油価格に大きな格差が存在しているという声が地元の漁業者からも聞こえてまいりまして、ぜひ農水省におかれましては、このような地域間の格差も考慮しながら、地方自治体及び漁業団体などと密接な連携を保ちつつ、全国各地の漁業者の皆さんに分け隔てなく、一円でも安く供給できるような体制整備を要望したいと思っております。これについてお答えをいただきたいと思います。

 あと、この船外機のことも、今経産省でも八十三件申し込みがあったと伺っております。従来のツーサイクルエンジンから、より省エネ型のフォーサイクルエンジンを用いた船外機への転換が緊急の課題になっているということでありますけれども、国が省エネ事業として進めているメニューということで、ツーサイクルエンジンからフォーサイクルエンジンとなれば、では、だれがお金を出すのかといえば当然漁業者であります。これでよかったのに、わざわざ、また新しいものをつけていかなきゃならないとなれば、どうしてもやはりお金を出さなきゃなりません。そこで、こういったことに対する補助制度等はどのようになっているのか。

 私も、きょうこうして質問に立たせていただくということで、地元の漁業協同組合あるいは漁業者と意見懇談会をさせていただいたのでありますけれども、せっかく、農水省、水産庁といたしまして、何とか漁業者の期待にこたえてあげたいというその思いは、私は非常にわかって、評価もさせていただきたいと思っておりますが、しかし、長官、残念なことに、水産庁として何とかしてやりたいということなんですけれども、現場は混乱しております。

 それはどういうことかと申しますと、やはり、漁業協同組合が窓口となって、漁業者に対してこういった制度があって、省エネ対策についてこうだよという説明をして、わかったわかった、では申し込みをするよと一たん受けて、帰って家族ともいろいろ話をするんですけれども、手続だとかそういったことが煩雑で、結局、申し込みをやめてしまうというふうなことがあちらこちらから聞こえております。

 私が申し上げたいのは、せっかくいい制度をつくっていただいても、今こういった現場の実態にあるということ、どうせやっていただくのでありましたら、本当に農水省、水産庁頑張っているんだといういい制度に、本当に使用する側の立場に立って使い勝手のいい制度にもう少し改めることができないのかなということで、質問を一気にさせていただいたんですけれども、お答えをいただきたいと思います。

小林(芳)政府参考人 幾つか御指摘いただきました。

 漁協系統を中心にA重油が供給されておりまして、それが地域によって価格差がある、これはそのとおりでございます。これは地域によって輸送コストでありますとかいろいろな施設の維持管理コスト、もちろん市況等もございまして、そういった形でどうしても価格差が存在する、これは避けられないことでございます。

 北海道と都府県の関係でいきますと、いろいろな地区の価格がございますので、必ずしもすべて北海道が京浜地区に比べて高くなっているわけではないというふうにも聞いておりますが、いずれにしても、そこは地域地域の事情で差があるわけでございます。

 こういったことの中で、どうやって効率的な対策を進めていくのかということがポイントでございまして、私ども、各地域、都道府県の漁連中心ですけれども、いわゆる工程表というのをつくろうじゃないかと、要するにプランです、去年から進めておりまして、要は、今御指摘がございました、本当に地域によって差があるから、例えば燃油コストを下げるときにタンクをどういうふうにやるんだとか、いろいろなやり方があります。その一番効率的なやり方を選んでもらう。

 それから、例えば系統としてどうするか、漁業者が共同でどういうふうにするか、今の船外機の話もございますので、そういうまず先行きをちゃんと見て、こういうふうにやれば全体として効率が上がるねとか、どういうふうに投資すればコストが全体として安くなるのか、そういうことをつくってもらうための工程表をつくってもらい、それから、私どもの補正予算の、いわばグループだとか地域だとか、そういうところで一つの目標をつくってもらったものに対して必要なところに助成をしていく、そういった考え方でございます。

 したがいまして、今先生から御指摘がございました、例えて言いますれば、私どものそういった漁業者の協業化を進めるといった事業の中で、例えばいろいろな低速航行みたいなソフト対策だとか、それから、今のハードとしての船外機なんかのそういうのを総合的に導入していく、こういった事業が私どもの事業です。

 それから一方で、先ほども紹介いたしました経済産業省のNEDOの方の事業でございますが、こちらはむしろ機器に着目して、とにかく省エネ効果のある機器を早急に導入していこうという形でございますから、私が申し上げました、地域なり、協業化してどういうふうにうまく取り組んでいくんだ、そういった要件に必ずしもなっておりません。

 その差が、現場から見たときに、例えば手続の面だとかそういうところでもし差があるとしたら、それは私どももきちんとまず説明して、こういう差があるんですよ、そのかわり私どもの補助率は二分の一ですし、NEDOの方は三分の一でして、そういう差もあるわけですから、そこをまたよく、各都道府県の状況もお聞きしながら、また再度徹底しなくちゃいかぬというふうにお聞きしながら思っておりました。

 ただ、昨年からずっとそういったことも現場で結構取り組んでもらっておりまして、もうことしもこの時期になりまして、補正でつくった基金の実行という段階になっておりますので、まだこれは途中経過ですからきちんとした数字は出ておりませんけれども、いろいろな、例えば今のグループとして取り組む申請なんかも今数字として上がってきつつありますので、またもう一度現場の状況も整合して、チェックしながら、効果的にやってもらうために、こういう趣旨なんだ、そこはやはり皆さんも考えてもらわなくちゃいけないし、各事業はこういう趣旨でこういうところが違うんですよということをわかりやすく十分説明して、理解を求めていきたいと思っております。

仲野委員 先ほどのA重油につきましての輸送コスト、確かに価格差はあるということをお認めいただいて、このことについては避けられない問題があると。よく格差社会と言われるんですけれども、こういったところには格差をつけないで、格差があっても、では、差のついた方に対して差を縮めるようなそういった工夫をもうちょっと研究していただきたいなと思っております。

 先ほどNEDOのお話もありましたけれども、どうも、この前中川農水大臣がおられました経済産業省の所管のNEDOの方のエネルギー使用合理化事業者支援事業の方が利用しやすいという声を聞くわけでありますので、その辺、農水省と経産省との整合性をしっかりと持たせながら、まず、長官として、もう一度現場の漁業者の現状を的確に把握して、すべての漁業者へ成果が行き渡るような的確な支援策の実施が早急に求められていると思いますので、これからもぜひ早急にその対応をしていただければなということを要望しておきたいと思います。

 次の質問なんですけれども、これも省エネにかかわっての質問でありますけれども、いわゆる漁業における革新的技術の導入についてということであります。

 私の地元にある冷凍機器メーカーが、窒素ガスを利用し、酸素をほとんど含まない、全国初の製氷システムを独自に開発いたしました。通常、鮮魚は、氷詰めの状態で輸送されますけれども、どうしても氷に含まれる酸素によって、その酸化で鮮度が落ちる。三日間程度が限界とされていたものが、この窒素ガスを利用した氷で五日間程度に鮮度を延長できるようになるということの内容であります。

 この新技術が、商品の配送のみならず、水揚げした魚を港に運ぶことにおいて、燃油対策のため、前回も私質問させていただいたときに、省エネで船は低速航行させるということでありましたので、本当に鮮度を保つためには、低速航行であっても、今のこの製氷システムの窒素ガスを使った氷を使えば、鮮度よく市場の方に卸せるのではないのかなということで、こうした鮮度維持にも活用できるということであります。

 こうした革新的な輸送、保存技術などが、現在行われている燃油価格高騰対策にも活用できるのではないかと思い、あくまで私の知り得る一つの例として御紹介をさせていただきましたけれども、ほかにも同様の、革新的で活用可能な漁業関連の技術があるのかどうなのか、伺いたいと思います。また、これらの革新的技術を全国の漁業者に普及させることが必要ではないかとも考えますが、また小林長官の見解を伺いたいと思います。

中川国務大臣 小林長官という御指名でございますが、仲野議員の御地元はかつて私の地元でもございましたので、今でもとても他人事ではないというふうに思っておりますので答えさせていただきます。

 去年、御指摘のように、私は、エネルギー全体を見る立場にいたわけでございまして、どんどん去年の二月以降、先ほどWTIというお話がありましたが、日本の場合はドバイの指標を見た方がいいんだろうと思いますけれども、同じように上がってきたわけであります。いろいろなところから大変だ大変だという声が来ました。あらゆるところが困っているわけでありまして、その中で代表的だったのが、トラック業界、クリーニング屋さん、そして漁業者でございました。

 当時の農林水産大臣とも、あるいは小林長官ともしょっちゅう連絡をとり合いながら、どうしたらいいのかと、財務大臣も含めていろいろと対策をとっていたところでございまして、省エネあるいはいろいろな制度的な支援、それから新技術というものを、この災を奇貨として新しい技術に変えていこう、例えば、当時、岩永大臣が閣議の席に持ってきたのは、集魚灯を発光ダイオードにしようとか、これによって消費エネルギーが格段に少なくなるなんということを実際に見せていただいたことを今思い出しております。

 さて、今の窒素による、鮮魚を生きたまま、例えばサンマを輸送できる、これは実は、去年、地元の市長さんと組合長さん方が私のところに来たんです。これは水産庁のお仕事じゃないんですかと言ったんだけれども、おまえ、もともと釧路にも関係があっただろうということで、NEDOの方ですぐお手伝いをさせていただいた。

 私は、いいんだろうと思うんですね。水産行政は水産庁だけがやらなければいけない、あるいはまた、エネルギー行政はこれからは農林水産省がある意味ではメーンに立つということがあってもいいんだろうと思いますから、何もけんかする必要もありませんし、縦割りでばつっと切る必要もないし、よく連携をとりながらやっていけばいいんだと思って、長官にも当時御了承をいただいた上で、NEDOの方でやらせていただいたということでありまして、近々、生きたサンマが東京でも食べられるようになることを私も楽しみにしておりますし、当委員会の皆さん方にもぜひお召し上がりいただきたいと思います。

 ということで、漁業においても大変苦しんでいるということは、きょうの朝からの、ある意味では多くの委員の皆さん方の共通の認識でございますので、技術革新あるいはまた漁業者自身の御努力あるいは地域の努力等々を総合的に結集しながら、この厳しい状況、特にこの燃油の問題、大型クラゲの問題等々で、あるいはWTOの交渉、今大詰めを迎えておりますし、これはできるだけ我々も頑張ってまいりますけれども、そういう状況の中で、釧路、根室を初め、日本の水産がこれからも国民に対してかけがえのない仕事ができるようにということで頑張っていくことを、もちろん水産庁、農林水産省が先頭になって、政府全体としてもきちっとやっていかなければならないというふうに思っております。

 その柱が新技術でございまして、今いろいろな新技術の実証実験をやっております。これは公募型というのが水産庁の場合の基本形でございますので、いいアイデアを出してください、そうすると、ひょっとしたら海のものとも山のものともつかないものでも、これはおもしろいぞということで我々も頭を柔軟にして、ぜひそういうものに対して支援をさせていただきたいというふうに思っております。

 長官、何か補足するものがあれば答弁してください。

仲野委員 中川大臣は非常に前向きな方で、いろいろと新しいものにチャレンジしていくということでは、本当に私はいい方に大臣になっていただいたなと思っております。要は、役所の縦割りを横断的にやっていきましょうということ、中川大臣のような方が全部大臣だったら、日本の政治は変わっているのではないかなと思うのでありますけれども、本当に前向きで、今のお答えを聞いていてもよかったなと思っているんです。

 大臣、これはもしかして経産省の補助制度ということで、窒素ガスのことで、昨年大臣のところに来られたということだったんですけれども、サンマを生きたまま流通させようと釧路市内の漁協などが取り組んでいるのがもう一つあるんですね。地域新生コンソーシアム事業というもの。これは、独立行政法人の水産総合研究センター、北海道区水産研究所などが、運搬管理方法を含めた技術協力を行っているわけであります。

 こういった事業もありますので、大臣には前向きにお答えいただきましたけれども、実際、こういった事業に着手するのはやはり事務方の方でありますので、水産庁長官、あなたの方からも一言、こういったことをやっていくのかいかないのかということで、大臣はやると言っていますけれども、長官の方でお答えをいただきたいと思います。

小林(芳)政府参考人 大臣の御指示のもとに、私ども、前向きにやっていくことは当然でございます。

 それで、今お話ございました事例は、いろいろな地域で、例えばサンマとか、そういうところの特徴に応じた、いわばシーズといいますか、それが出てきているわけです。それを、国のレベルのいろいろな公募型研究等がございますので、そういうところに持ち上げてもらって、どうやってうまく実用化していくか、そのプロセスを私どももお手伝いしたいということであります。

 それで、例として申し上げますれば、農水省の方でも、今お話がありましたことのほかに、例えば水産関係では、静岡県で光センサーでカツオの品質測定法の開発、こういったようなアイデアが出てきているわけです。それから、大分県でアジ、サバ、これは産地ですから、そういったものの冷凍、解凍技術、こういったものを拾い上げながら、今の大臣のお話にございましたように、私ども、もちろん関係省庁とも連携をとってやっていきたいと思っております。

 それから、先ほどのお尋ねで実証化の指摘がございました。まさにそういう種をうまく育てて、それを現場にどうやって普及させるか、これも私どもの大事な仕事でありますので、例えて言いますれば、省エネ対策では、十八年度予算で実証試験への支援を行っている、こういった予算もつけておりまして、こういうものを含めて、技術開発と現場への浸透ということに前向きに一生懸命取り組んでいきたいと思っています。

仲野委員 長官も、大臣が最初にお答えをいただいたので、それに従ってやっていくということでありますので、そのように私、認識をさせていただきたいと思います。

 革新的な技術でありますので、省エネ対策ということの一環として、食の安全、安心のことも考えていただいて、ぜひ取り組んで、水産庁としても、全国の漁業者にこういったこともあるよということで普及をさせていくような、今度制度化をしてやっていただければなと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次の質問ですけれども、もう時間がないものですから、ノロウイルス対策についてお伺いをしたいと思います。

 貝類の養殖にとって重大な問題であるノロウイルス及び貝毒に関してでありますけれども、特にこのノロウイルスは、カキなどの二枚貝が海水中のプランクトンをとって食べて、その際に海水中のウイルスを取り込み体内で濃縮することによって生じるものであって、このウイルスは内臓部分に蓄積されるため、生産段階及び出荷段階での予防策が困難であります。このウイルス類似の有毒プランクトンが引き起こす貝毒において、その貝毒の検出検査の手法などを導入した監視検査の研究、技術開発のほか、都道府県の技術者を対象とした研修会の開催などを行っていると聞いております。

 こうした貝毒における研究、技術開発などの各種対策の進捗状況やその成果に関してお伺いするとともに、このノロウイルス対策の現状についてお聞かせをいただきたいと思います。中川局長、お願いいたします。

中川政府参考人 今先生の方から二つの事柄、一つは貝毒、もう一つはノロウイルス、両方についての研究開発等の現状についてというお尋ねでございました。

 まず、貝毒対策でございますけれども、これは、迅速でかつ正確な分析法を開発する、これが一つの課題でございまして、平成十五年度から、貝毒成分を、機械によっていろいろな種類の毒をできるだけ短時間にかつ正確に開発をする、そういう研究を始めております。これが一つでありまして、十五年から始めまして、十九年度、来年度までに実用化の技術を完成させるという目的で今やっているところでございます。

 もう一つは、こういった機械を使って正確にということのほかに、やはり現場での対応が大変大事でございますから、生産現場の近くで迅速に貝毒があるかどうかということを簡便な方法で調べるということも大事なことでありまして、こちらの方は、同じように十五年度からスタートさせまして、これは十八年度、今年度までの予定で現場即応型の貝毒検出技術ということで、簡単なキットを使って判別できる、検査キット、そういうものを今開発をしているところでございます。こちらも今年度までにめどをつけたいというふうに思っております。

 こういった、片一方で技術開発をしながら、他方で技術ができたときに現場で即使われるように、今度は検査員の人たちの技術研修ということも大事でございます。これも同じように十五年度にスタートいたしまして、各都道府県の試験研究機関の貝毒の担当の人を対象に、年間十人前後の数ではございますけれども、毎年毎年そういった研修を行っているところでございます。

 以上が、貝毒についての技術開発、それから研修の現状でございます。

 もう一つ、ノロウイルス対策でございます。

 これは、発見されたのも比較的最近でしたし、なかなか生態がよくわかっておりませんでした。私どもとしては、十八年度、今年度から、生産段階におきますノロウイルスの汚染リスクをできるだけ低減させるため、安全なカキを生産するための技術開発ということで、これは今年度から着手をしたところでありますけれども、三年間という一定の年度を限って、その間に具体的な成果を得るよう今努力しているところでございます。

仲野委員 いろいろ対策をされているようでありますけれども、実際、私の地元におきましては、この二枚貝、カキやらホタテガイやらが生産されるという地域でありまして、実際にノロウイルス、貝毒が発生した場合に、札幌にその検体を送るんです。非常に時間がかかる。検査している間は、どうしてもやはり業者は、回収等の措置がとれるように、検査結果が出るまでとめ置きをしておかなければならないということで、非常に出荷の円滑化が妨げられてしまう、そういった声があります。

 そこで、釧路での検査体制を確立することが地元養殖業者にとって重要な課題となっているわけであります、これは当面のことなんでありますけれども。実際、北水研という研究施設もございます。そういった国の施設も活用した総合的な検査体制の拡充が求められるのではないのか。道東、ずっとオホーツクを見ましても、本当にホタテガイが生産される地域であります。こういった道東に検査体制がなくて、何で貝の生産されない札幌にそういった施設が、あることに対しては言いませんけれども、本来であれば、そういった施設がなぜ生産される道東の地に、しかも釧路は北水研という国の研究施設を持っているわけでございます。そういったところを当面活用していただき、そして、先ほど中川局長から言われましたその取り組みもぜひ精力を注いでやっていただきたいなと思っておりますけれども、御答弁をいただきたいと思います。

小林(芳)政府参考人 まず北水研、私どもの独法の機関が道東にございます。

 御承知のように、こちらの機関はいろいろな基礎研究といいますか、例えば貝毒の原因となるプランクトンの生態とかそういったのが使命であるだけに、その実地的な検査機関としてのいわば器具、機械とか施設、人、こういった体制が整っておりませんので、そういった意味でもまず難しさがあるということが一つでございます。

 それから、一方で、中川局長から答弁いたしましたように、やはり漁業現場から見たときに、ノロウイルスとかそういった状況はどうなんだ、これをチェックすることが現場で早くできれば、その後のいろいろな出荷とか、状況に対応できるわけでして、その意味で、私どもの水産総合研究センターも一緒になって、いろいろな機関と、貝毒検査を簡単に現場でできるキットの開発等を急いでおります。

 これを早くすることによって、今先生が指摘されているような問題が、現場で早く判断して、即座の対応ができるようにまず持っていくということが大事なことだと思って研究も鋭意進めているところであります。

仲野委員 そういったノロウイルス、貝毒に対して即対応できるような研究をされているということで、私理解してよろしいですね。

 いずれにいたしましても、ちょうどこれから、カキあるいはまたホタテガイだとか、どんどん生産の最盛期にあるわけでございますので、本当に去年のようなああいった、おととしのようなそういったことがないように、やはり水産の町はそういったもので生きている町ですので、何とか遜色のないように、一日も早く対応をお願いしたいと思います。

 あと、昆布巻きの原料原産地表示の義務づけ、なかなかこの問題についても本当にいいお話を伺うことができなくて、漁連におきましてもこれは消費者にアンケートをとったら、八割近くがどこの昆布巻きだかわけがわからない、ぜひ早く原産地表示をすべきだという回答もあるわけです。

 そういったやはり消費者のニーズに的確におこたえをしていただくために、行政といたしまして、何とかこういった方たちの声にこたえていただくことと、それともう一つは、どうしても私の地元の昆布は中国の昆布と非常に競合するということで、IQ制度の堅持、このことについては大臣の方からお答えをいただきたいと思います。まず中川局長に、昆布巻きの方から。

中川政府参考人 加工食品の原料原産地表示、特に昆布巻きに限定しての先生からの御指摘、これは去年も私ここで少し御答弁をさせていただきました。課題として、私ども受けとめております。

 ただ、現行のルールというのは、もうここで詳しく申し上げませんけれども、一定の考え方、共通のルールというものを食品の表示に関する共同会議というところで議論をいただいて、そしてまとめていただいております。その考え方からすると、昆布巻きはすぐには対象にならないということでありますけれども、この現行の制度についていろいろまだ御意見もあるのは事実でございます。そこで、そういった御意見も踏まえまして、この食品の表示に関する共同会議で改めて議論もいただきまして、先般、報告書を取りまとめていただいたということでございます。

 今、こういった点につきましてパブリックコメントも行いました、その意見を取りまとめているところでありますので、さらにこの共同会議で、現場の声もよく受けとめて、その関係の委員の方々によく議論をしていただきたいというふうに思っております。

中川国務大臣 まず昆布巻きの表示の問題ですけれども、これはちょっと考え方を変えていただいて、表示を義務化させることによって差別化させるんじゃなくて、仲野委員の御地元の地域の昆布は日本の中でおいしいんだ、まして中国なんかよりもおいしいんだという自信を持ってつくられているはずですし、私は消費者もそうだと期待をしておりますから、義務化しろとかしないじゃなくて、むしろ積極的に、釧路昆布あるいは厚岸昆布、根室昆布というふうにつくる側が表示をぴしっとすれば、買う方は、わけがわからないから、これはひょっとしたら中国産かもしれない、いや、よく見たらこれは厚岸だ、それは厚岸の方がおいしいよねというふうにして消費者が選択するんです。

 さあ国の方でやってくださいといえば、中川さんの答弁にならざるを得ないんですよ。でも、義務化するまで待っているよりも、今一刻も早く自分のところをブランド化して、行く行くは地域商標登録でもしてやっていったらいいじゃないですか。攻めの農政、攻めの漁業行政をやるいいチャンスだと私は思います。

 地元の厚岸のカキ、今もう全国ブランドになっているじゃないですか。昆布、もうブランドになっているところはいっぱいありますよ。だから、どうぞ、中国産と書けば落ちるだろうじゃなくて、地元の何とか産と書けば上がるという観点からぜひやられたらいいんだろう、それだけの力がある、私は、知らない場所じゃございませんので、そういうふうに思っております。

 IQにつきましては、数量制限という制度を持っているのは日本だけでございまして、交渉をやれば非常に厳しいということはぜひ御理解をいただきたいと思いますが、しかし、昆布等々、北海道、日本じゅうの十七の水産物についてのIQの制度というものが、きちっとした需給等々の観点からも有効に機能しているというふうにも考えております。

 この場で余り日本のIQ、IQという議論をすると、いろいろな情報ツールを通じて、そういえば日本のIQ制度があった、これもたたかなければいかぬということにもなりかねませんので、静かに交渉の中で、日本の漁業者の皆さんのお立場というのは私もよく理解をしておりますので、それを踏まえて、厳しい交渉ではありますけれども頑張っていきたいというふうに思っております。

仲野委員 今、中川大臣から昆布巻きのことについて御答弁いただきました。これについて、私はちょっと異論がありますので、また時間をかけてさせていただきたいと思います。

 一つ、大臣、貝殻島の昆布交渉、まだ決まっておりません。見通しはどうなっておりますか。あした出漁できるでしょうか。一言お願いいたします。

中川国務大臣 五月二十九日、おとといから、これは仲野委員よく御承知のとおり、民間交渉という形をとっているわけで、しかし、水産庁もオブザーバーとしてロシア側との交渉に参加をしているわけでございます。

 おとといから始まったということでございますけれども、ここ毎年のことなんですけれども、ロシア側の体制が極めてよくわからないということで、今回も外務省と農漁業省との間の調整ができているとかできていないとかいろいろな情報が来て、多分、交渉している現地の皆さんは大変御苦労をされているのではないかと思います。水産庁、また必要に応じて私自身が、東京において、モスクワに対しても何らかのメッセージを送ることも十分視野に入れております。

 いずれにしても、一日も早くいい形で妥結して出漁できるように、我々も、オブザーバーの立場でありますけれども頑張っていきたいというふうに思っております。

仲野委員 ぜひ、一日も早い出漁ができることを、大臣からもしっかりとモスクワ側の方に働きかけをいただきたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 私は、地球温暖化防止と森林吸収源対策について、今、これ一点に絞ってお聞きしていきたいというふうに思っています。

 先日の新聞報道で、北極における氷山がどんどん減少している実態が報道されておりました。そして、これまで京都議定書と言われて、京都議定書が発効されて、二〇一二年までに六%削減という状況で目標設定がされておりますけれども、まず冒頭、お聞きしておきたいんですが、政府として、達成に向けての取り組み状況と、この削減の達成の見通しをどのように持っておられるのか、これについてお聞きしたいというふうに思います。

小林(光)政府参考人 御説明申し上げます。

 京都議定書の目標達成の見通し、こういうことでございます。

 つい最近発表させていただきました直近のデータがございます。これは平成十六年度の温室効果ガスの排出量でございますけれども、平成二年度比で八・〇%増加をしているということでございまして、京都議定書の六%削減約束の達成は決して容易なものではないというふうに認識をしてございます。

 そういうことで、計画的に時間をかけて取り組む、こういうことになってございまして、私ども、三本の柱の対策ということを考えてございます。結論から先に申し上げますと、その三本の柱がきちっと全部できないと、この目標は達成できないというふうに考えてございます。

 三本の柱は何だろうかということで申し上げますと、温室効果ガスの国内におきますところの排出削減、二酸化炭素等の削減でございます。これで九〇年に比べましてマイナス〇・五%まで持っていきたいと考えております。それに加えまして、委員が冒頭におっしゃっていらっしゃいました森林吸収源対策、これで九〇年比三・九%分をちゃんと減らす、こういうことでございます。そのほか、きょう参議院の方で、本会議で成立をいたしましたけれども、京都メカニズムというものを活用することで一・六%分、合わせてマイナス六%、こういうことでございます。

 こういった大きな柱の対策がそれぞれきちっとできませんと、実際に京都議定書は達成できない、こういうことでございまして、現在、鋭意その進行管理に努めているというところでございます。

菅野委員 今、数値目標が示されました。環境省として今この数値を発表いたしました。

 これから議論するんですが、森林吸収源対策三・九%、これが達成されなければ全体の目標値に到達しないということですよね。そして、そういう状況にあるにもかかわらず、農林水産省としては、これまでの議論をずっと行ってまいりましたが、三・九%目標達成は非常に厳しいよ、このままの現状でいったならば二・六という数字がこの委員会に示されているわけなんです。この差が、一・三という数字があるわけなんですね、厳然として。

 私は、これから議論するんですけれども、そのことを環境省としてどうとらえているのか、この点、もう一回答弁していただきたいと思います。

小林(光)政府参考人 お答え申し上げます。

 吸収源対策に欠けるところがございますと、その分を排出抑制対策等々で賄わなければいけないということで、この排出抑制対策も大変厳しい状況にございます。そういう意味で、私どもとしては、この三・九%の確保ということでぜひ対策を進めていきたいというふうに考えてございまして、林野庁と一緒になってこの取り組みを進めているというふうに考えてございます。

 ちなみに、我が国の森林自体は、放置されているものあるいは手入れされているもの、いろいろございます。それらをすべて見渡してみますと、相当量の二酸化炭素の吸収をしているわけでございますが、京都議定書というのは、それでは、それを全部吸収量としてカウントしていいかというと、そういうものではございませんで、きちっとした森林経営活動といったような人為の活動が行われている、そういった森林区域での吸収量に限って吸収量を認める。その吸収量についても、これは炭素トンでございますが、年間一千三百万トンが上限であるということでございまして、その上限に見合うような、きちっとした人為的な吸収量といったものをこれから考えていかなければいけないというふうに考えてございます。

 最終的にどういったものが計算できるのか、これは外国の専門家のレビューといったものもありまして決まっていくわけでございますが、そういった専門家のレビューチームがそうだねと言ってもらえるような、きちっとした対策をこれからやっていくことが非常に重要だというふうに認識をしてございます。

菅野委員 環境省として、この三・九%目標達成に向けて、省を挙げて、農林水産省と一緒になって取り組んでいく課題だというふうに私は思うんですが、京都議定書の目標達成計画における年平均森林整備量等の目標が、この一千三百万炭素トン程度の吸収量の確保のために設定されています。これは先ほど言ったように三・九ですね。

 そして、森林及び林業の動向、森林・林業白書の中にこの計画の目標数値というものが示されているわけなんですが、それが、現実の林野行政においては、この目標数値とかなり乖離していると言わなければならないというふうに私は思うんです。

 それで、これまで、この三・九、二・六という数字で議論してきて、ここがどうしてこんな数字なのかなと疑問を持ってこの白書を見たときに、ああ、ここなんだという形で私はとらえたんですが、年平均、間伐を四十五万ヘクタールずつやっていかなければ三・九%を達成できないという目標数値なんですよね。それが、現実に今この間伐が施業されている面積というのは、ここ数年、三十万ヘクタールでずっと推移してきています。かつては二十万ヘクタールという時代があったんですが。そして、平成十七年度から、森林吸収源十カ年対策の第二ステップとして、三年間三十万ヘクタールの間伐を行っていきますというのが、この林業白書に書かれているんですね。目標数値は四十五万ヘクタールにもかかわらず三十万ヘクタールでずっとやっていくというこの現実と森林吸収源対策との整合性というのをどう考えているんですか。

 そして、木材供給量、利用量をとってみると、目標数値は二千五百万立方メートルというふうに白書に書かれています。そして、現実の実績というのが丸太換算で一千六百万立方という状況です。ここの乖離が九百万立方メートルあるわけですから、大体一・五倍の木材の供給、利用を図っていかなければ数字上から達成できないという現実であります。

 こういう現実を目標値にどう達成していくのかの具体的施策が示されなければならないというふうに私は思うんですが、どう考えているんですか。答弁願いたいと思います。

川村政府参考人 お答えいたします。

 京都議定書が発効いたしまして、日本としまして、この削減目標六%のうち三・九%を森林吸収量で確保するということを決めているわけでございます。そして、委員の御指摘にございましたとおり、平成十四年に地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策を策定いたしまして、現在、それに基づきまして、森林の整備保全、木材・木質バイオマス利用の推進など、総合的な取り組みを進めているところでございます。

 現在の状況を申し上げますと、これも委員が申されたとおりでございまして、必要な間伐等あるわけでございますが、例えば十七年で間伐の実施面積は年間三十五万ヘクタールということでございます。三十万ヘクタールは民有林の場合でございますので、国有林も加えますと三十五万ヘクタールということになります。ただ、この数字も、今御指摘ございましたとおり、本来実施しなければならない数量に比べますと七割程度ということで、かなり乖離がございます。

 私どもとしましても、一層のこの事業の効率化を図る必要がございますし、各般の施策をやらなくちゃいけないということでございます。

 そういうことで、この実施のためには、安定的な財源を含めて、その措置をする必要があるということを考えておりますので、今後、関係省とも連携を図りながら、こういった目標が達成できるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。

菅野委員 抽象論なんですよね、今の答弁が。予算がないから三十五万ヘクタール、民有林三十万ヘクタール、国有林五万ヘクタール、合わせて三十五万ヘクタールと。現実に山村の地域を考えたときに、これを、年平均ですから、一年間に四十五万ヘクタールの間伐をやる体制というのが今の全体の中にあるのかどうかという検証は私は必要だというふうに一点思うんです。予算があれば一気に十万ヘクタール間伐が行われるなどという問題じゃないというふうに思うんです。

 それからもう一点、答弁なかったんですけれども、木材供給、利用量が二千五百万立方メートルという目標数値ですね。これは、山というものは、手入れして、そして育ったものを利用していかなければならないという宿命を持っているんだと私は思うんですが、現実に丸太換算で一千六百万立方メートルしか利用されていない。

 そして、「木材を巡る最近の動き」という資料を林野庁からいただいたんですけれども、実際に平成十六年ではこの自給率が一八・四%だった。そして、それでは、二千五百万立米を利用していくというときに、現実に三〇%ぐらいの自給率に上げていかなければ達成できないという現実なんです。これをどのように行っていくのかという、この具体的施策が私は示されてしかるべきだというふうに思うんですけれども、再度答弁願いたいと思います。

川村政府参考人 木材の供給量の関係でございますが、国産材の利用がここのところわずかながら向上しております。十七年の速報では、七年ぶりに二割台の自給率が確保できるのではないかというふうに思っておりますが、合板なり集成材への利用拡大、こういうものが技術的な進歩もありまして進んでおります。

 こういった国産材の利用拡大、こういった努力を格段にする必要があるということで、この十八年度におきましては、特に川下のニーズに川上方が十分に対応できていなかったということもございまして、低コストで大ロットで安定的に供給する新生産システムといったようなものも今年度から始めまして、この国産材が復活する兆しを見せておりますので、これを本格的な動きにしていきたいということで、いろいろな努力をしなければならないというふうに思っております。

 現在、森林・林業基本計画の見直しを検討しておりますけれども、その中で、国産材の拡大に向けたいろいろな取り組み、そういうものを盛り込んでまいりたいと思っておりますし、また、ただ、この数量自体は、現行計画から見ますとかなり下方の方に現実が動いておりますので、ある程度の見直しは必要かというふうに思っております。

菅野委員 大臣、森林吸収源対策として三・九%の目標設定になって、現実に今、森林・林業の実態といえば間伐の状況とそれから木材供給・利用量の状況で議論しておりますけれども、本当に三・九%を達成するための農林水産省、林野庁としての真剣な議論が必要だし、取り組み、施策というものが今しっかりと打ち立てられなければならないというふうに私は思うんです。

 一方では国際的に公約していて、そして現実に取り組まれている状況は、今言ったように、四十五万ヘクタールに対して三十五万ヘクタールしかやっていない。木材供給量が二千五百万立方メートルという目標値が設定されているにもかかわらず、一千六百万立方メートルしか供給されていないこの現実。一・五倍という数字をどのように達成していくんですか。大臣としての見解をお聞きしておきたいと思います。

中川国務大臣 森林あるいは木材が果たすとても大切ないろいろな役割があるわけでありますが、その中でも、CO2吸収という観点から、マイナス六の中の半分以上を占める木材、森林におけるCO2吸収であります。

 私は先ほどプラス八%というふうに申し上げましたが、環境省の直近の数字でもさらに悪化しているわけでありまして、全体としても極めて難しいんでしょうけれども、三・九自体も、今いろいろ御指摘がありますように、また長官からも答弁ございますように、正直言ってなかなか厳しいと。

 しかし、これは、CO2対策はもちろんでありますし、そのほかのいろいろな森林あるいは木材に期待する役割を果たしてもらいたいという観点からも、森林利用あるいはまた間伐、整備をやるべき面積等々が予定よりも大幅に下回っているということは大変残念なことでございます。

 残念という言い方は、私にとっては極めて重たい意味がございまして、限られた財源あるいは人材等々、総合的な意味でこういうことにならざるを得ないというのが現状でございますけれども、しかし、これは何としても、先ほど申し上げましたように、今の問題というよりも将来にわたる問題でもございますので、厳しい状況でございますけれども、目標達成に向けて引き続き頑張っていかなければいけないというふうに考えております。

菅野委員 最後になりますけれども、森林・林業を取り巻く状況というのは厳しい環境の中に置かれているということで、各自治体、各県においても、この実態を何とか克服していこうという取り組みがなされてきているというのが今日的な状況だというふうに思います。

 平成十五年の高知から始まって、今十六県において独自の税制をつくりながら森林を整備していこうという動きがあるんですけれども、これと国の施策というのがぴったり呼応していかないといけないというふうに私は思うんですね。

 だから、今大臣が財政的な問題も触れておりますけれども、こういう今日的な都道府県の動きをどう評価しながら、今後、問題解決に向かってどう進んでいくのか、林野庁長官の決意をお聞きしておきたいと思います。

川村政府参考人 お答えいたします。

 今委員が申されましたとおり、各都道府県におきまして、高知県を初めといたしまして森林環境税というものを創設されまして、現在実施中のものが十六県あるわけでございます。

 この税は、まさに県民を挙げて、森林の持つ公益的機能、こういったものを十分に理解して、そして創設されるというプロセスを経ておられますので、本当に、今後の森林吸収源対策を推進する上でも、国民的な理解の促進、支援意識の醸成、これはもう不可欠でございますので、そういったものにつながるものとして高く評価をしてございます。

 私どもも、先ほど申し上げましたとおり、十カ年計画をつくりまして、いろいろな対策を総合的に進めておるわけでございます。先ほど言いましたように、いろいろな努力をいたしますけれども、やはり足らざる部分もあると思いますので、この目標達成に向けまして、ぜひ安定的な財源が確保できるように、引き続き全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

菅野委員 終わりますけれども、白書に政府は目標値を、数値を挙げているわけです。しかし、現実に今行われている施策というのは、その数値とは乖離した形でしか行われていない。こういう現実があるわけですから、私は、少なくとも二〇一二年までにはしっかりとした体制をつくらなければ三・九%の目標を達成できないんだという危機意識を農林水産省として持って取り組んでいただきたい、このことを強く申し上げて、終わります。

稲葉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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