衆議院

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第4号 平成18年11月28日(火曜日)

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平成十八年十一月二十八日(火曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 西川 公也君

   理事 岩永 峯一君 理事 金子 恭之君

   理事 近藤 基彦君 理事 谷川 弥一君

   理事 並木 正芳君 理事 篠原  孝君

   理事 松木 謙公君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      小里 泰弘君    小野 次郎君

      岡本 芳郎君    北村 茂男君

      斉藤斗志二君    篠田 陽介君

      中川 泰宏君    永岡 桂子君

      丹羽 秀樹君    鳩山 邦夫君

      広津 素子君    福井  照君

      福田 良彦君    御法川信英君

      吉川 貴盛君    渡部  篤君

      岡本 充功君    黄川田 徹君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      田島 一成君    高山 智司君

      津村 啓介君    福田 昭夫君

      丸谷 佳織君    菅野 哲雄君

      森山  裕君

    …………………………………

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   農林水産大臣政務官    永岡 桂子君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐渡島志郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 田辺 靖雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  西川 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   政府参考人

   (林野庁長官)      川村秀三郎君

   政府参考人

   (水産庁長官)      白須 敏朗君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           高田 稔久君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十八日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     吉川 貴盛君

  小里 泰弘君     篠田 陽介君

  高山 智司君     田島 一成君

  仲野 博子君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     小里 泰弘君

  吉川 貴盛君     今津  寛君

  田島 一成君     高山 智司君

  津村 啓介君     仲野 博子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官内藤邦男君、大臣官房総括審議官佐藤正典君、大臣官房技術総括審議官染英昭君、総合食料局長岡島正明君、生産局長西川孝一君、経営局長高橋博君、農村振興局長山田修路君、林野庁長官川村秀三郎君、水産庁長官白須敏朗君、外務省大臣官房審議官佐渡島志郎君、大臣官房審議官田辺靖雄君及び経済産業省大臣官房審議官高田稔久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小里泰弘君。

小里委員 自由民主党の小里泰弘でございます。本日は、質問の機会をいただきまして本当にありがとうございます。

 さて、現在、世界の栄養不足人口は八億五千万人、さらに、人口の増加と食生活の向上で、早晩、水と食料とエネルギーは国際的争奪戦の時代を迎えると言われます。ところが、日本の現在の食料自給率は先進国中最下位に近く、極めて脆弱な食料供給体制と言わざるを得ません。

 先進各国が自給率を向上させる中で、日本の自給率は半減をいたしました。その要因は、食生活の変化とその変化に輸入で対応したこと、円高で国際競争力が弱まったこと、そして、日本の農業も農政も懸命に努力をしましたが、時代の急激な変化に対応できなかったという点も否めません。

 もとより、いついかなるときも国民に安定的に食料を供給する、確保するということは、国家最大の責務であり、国内生産を強化することは最重要の課題であります。食料自給率の向上は、決して容易なことではありません。事実、この八年間で十人、十二代の農林水産大臣がこの向上に挑みましたが、果たせませんでした。満を持して登場された本格派の松岡大臣に心から期待をするところであります。

 自給率目標四五%、この数字に対する評価をまずお伺いしたいと存じます。

松岡国務大臣 お答えいたします。

 今、小里先生御指摘のとおりでございまして、我が国の食料自給率は、昭和三十五年には七九%、まさに八割を自給いたしておったわけでございますが、それからずっと低下の一途をたどりまして、今現在は四〇%、こういうことになっております。

 そこで、この自給率をどう定めるかという議論をいたしましたときに、私も自民党内でこの問題を取り扱う農業基本政策委員長をやらせていただいておりました。そこで、何としても五割以上というのが、まず当面目指すべき目標ではないか、いろいろな議論があったわけでありますが、しかし、最終的にはその五割というものを、これはやはりせめて半分は確保するというのを目指すとして、現実問題として、どうしても実現可能性ということからすれば四五%、このようなことになったわけであります。

 先生御指摘のとおり、食料安全保障の観点からも、また、農政上の最重要課題という観点からも、このことにつきましては、まず目標であります四五%に向けて最大限の努力をし、将来的には何としても半分は確保する、こういう考えで取り組んでまいりたいと思います。

 以上であります。

小里委員 ありがとうございました。心から期待申し上げたいと思います。

 関連して、EU諸国が農業復興に成功したのは、単収の増加と経営規模の拡大が進んだことによります。日本も、技術開発や機械化で単収はふえましたが、規模拡大は思うように進みませんでした。

 原因の一つに、地価高騰と転用への期待があります。そこで、現行の農地制度は、農地を取得するための資格規制は厳格でありますが、一度資格を得てしまうと、耕作の義務や有効活用のための実効ある規制がないのであります。このことをいかにお考えでありましょうか。

 また、兼業農家がふえることで、個々の農家の暮らしが豊かになって、集落の一員として、また貴重な労働力として農村にとどまることは好ましいことでありますが、これが規模拡大への足かせとなっているのも事実であります。悩ましい問題でありますが、兼業農家への評価をお伺いしたいと存じます。

 なお、戦後の農地改革の足かせから脱するべく、農業基本法の制定や農地法の改正で農地流動化を促進し、さらに、農用地利用増進事業の創設、新政策の公表、食糧法の制定、そして食料・農業・農村基本法の制定と、日本の農政は、規模拡大と担い手の育成に向けて政策努力を重ねてまいりました。しかしながら、規模拡大ははかばかしくなく、それ以前に、担い手は激減し、自給率は半減いたしました。

 その時々の政策判断としては最善であっても、時代の変化に対応し切れず、思うように効果が上がらないこともあります。新たな食料・農業・農村基本計画及び経営安定化対策、そして新たな米政策等、日本の農業の切り札として期待をするところでありますが、その目的に沿って功を奏しているのか、なるべく小まめに検証しながら、時代の変化や環境の変化に即応していく仕組み、姿勢が必要であると考えますが、いかがでありましょうか。

 以上、あわせて農林水産省にお伺いいたします。

高橋政府参考人 農地と兼業農家につきまして、私の方からお答えさせていただきます。

 農地は、国内におけます食料供給の重要な基盤でございまして、その効率的な利用を図る観点から、これまでも、権利移動の制限でございますとか、あるいは遊休農地対策を講じてきているところでございます。

 さらに、これらにつきまして、現行以上に農地利用を強制するなどの規制を課すことにつきましては、農地がやはり憲法で保障されました財産権ということもございますので、非常に困難な問題があると考えております。したがいまして、担い手への農地利用集積につきましては、農地保有合理化法人によります農地の仲介機能の強化など、今後とも地域におけます取り組みを中心に進めていくことが肝心であるというふうに考えております。

 兼業農家の問題でございますけれども、農業従事者の減少でございますとか、高齢化によります農業の生産構造の脆弱化が進む中で、農業が秘めております新世紀にふさわしい戦略産業としての可能性を早急に引き出すということが強く求められている現状でございます。

 このため、兼業農家でございますけれども、一方で農地、農業用水といいました農村地域社会の維持発展に必要な機能に一定の役割を果たしている、これはもう事実でございますけれども、このような機能自体は維持すべきものと考えておりますが、基本的に、生産構造については、現在の小規模な農家あるいは兼業農家中心の構造から担い手中心の生産構造に転換することが急務であるというふうに考えておるところでございます。

内藤政府参考人 施策の検証につきましてお答え申し上げます。

 施策の推進に当たりましては、目的を明確化し、その実効が上がっているかについて点検、検証した上で次の施策に結びつけていくことが重要と考えております。このため、新たな基本計画に基づく施策の推進に当たりましては、施策の推進手順、実施時期、手法、達成目標などを示した工程表を作成し、政策評価を積極的に活用しまして、施策の効果を検証し、必要に応じて見直しを行うこととし、的確な工程管理を行うこととしております。

 経営安定対策、米対策等につきましても、今後、その政策効果をしっかりと検証し、必要に応じて適切な見直しを検討してまいりたいと考えております。

小里委員 要諦であると思いますので、それぞれよろしくお願いしたいと思います。

 時間の関係で、二問続けることをお許しいただきたいと存じます。

 まず、輸出促進に向けてお伺いいたします。

 松岡大臣は、攻めの農業の象徴として、農林水産物の輸出促進に大変力強く、かつ戦略的に取り組んでいただいているところでございます。経済成長とともに食生活の高度化が著しい中国やアジア各国を初め、世界の食料需要は拡大の一途であります。日本食ブームも拡大する中、高品質な日本の農産物が海外に打って出る本構想に大きく期待をするところであります。

 そこで、輸出促進を図るに当たりましては、検疫の問題もさることながら、相手を知るということが不可欠の要素であると思います。すなわち、相手国の競合産品のコスト、品質、生産力、技術開発力等、彼我の競争力の実態や消費者の嗜好などを客観的に踏まえた上での対応や、食文化の違いを乗り越える工夫も必要であると考えます。

 また、いかに差別化を図り優位性を出していくのか、ブランド品のすそ野の広がりがどこまで見通せるか、ブランド品以外の有望品目の選定をどう進めるのかといった大きな課題もあると考えます。特に、相手を知るという課題において見解をお伺いしたいと存じます。

 続きまして、豪州とのFTA、EPAでございます。

 貿易立国日本として広く国益を求める観点から、戦略的にWTO、FTA、EPAを進めるべきは当然であります。一方で、安心、安全な食料の供給のみならず、豊かな自然を守り、国土保全機能や、日本古来のかけがえのない歴史、伝統、文化を担ってきたのが日本の農業、農村であります。その機能を維持できるのか、まさに今大きな正念場に立たされております。

 貿易自由化は、恩恵と同時に危険もはらんでおります。最善を望め、しかし最悪の事態に備えよという戒めもあります。相手国をよく知り、それに応じた対応が必要となります。

 豪州を見るときに、農業の平均経営面積は日本の一千八百倍、彼我の生産基盤の差は明らかであります。WTO交渉の経験からも、いかにもシビアな交渉相手国であります。事実、豪州は他の国とのFTAで、関税撤廃の例外をほとんど認めておりません。もし豪州と同じ土俵に置かれるならば、重要品目は壊滅的打撃を受けかねません。さらに、他の産品や他の国々にも波及をして、日本農業そのものの存立を危うくしかねないのであります。

 本来、FTAはギブ・アンド・テークの関係であってこそ国益にかないます。しかしながら、豪州との現状を見るときに、輸出に見る自動車、コンピューター、バイクや、輸入品目で見る石炭、鉄鉱石、天然ガスを初めほとんどの鉱工業品が既に無税かそれに近いものであります。一体、豪州とのFTAにおいて日本に何のメリットがあるのか、一割の例外扱いは担保されるのか、自民党部会等で再三議論をしてまいったところでありますが、いまだに政府から明確な回答はありません。得るものは少なくしてかけがえのないものを失いかねない、それが豪州とのFTAであると思います。

 そもそも、先進各国とも、国境措置や輸出補助金で農業を守り、食料を守ってまいりました。既に日本は、圧倒的に世界一の農産物輸入国であるという現実もあります。国際的競争力のある品目は打って出て、基礎的食料については適度な国境措置によって国内生産を確保するという大きな前提を忘れてはならないと考えます。

 過去、対外問題が議論されるたびに、その本質は理解されないままに日本の農業は悪者扱いをされてまいりました。今回も、もし入り口を間違うと、世論の傾向として、一気に特定の方向に突き進み、取り返しのつかないことになりかねないことを危惧するものであります。国民にとっての農業、農村がいかにあるべきか、真の国益とは何なのかを踏まえた上で、少なくとも、日本の基礎的食料が守られるように、豪州とのFTA、EPAについては慎重に対応していただきたいと存じます。相手と刺し違える覚悟で、大臣の努力をお願いしたいと存じます。

 以上、二問についてお伺いいたします。

松岡国務大臣 小里先生にお答えさせていただきます。

 まず、林、水も含みますが、農産物の輸出でございます。

 この政策に大変大きな評価をいただいた上での、激励も兼ねての御質問でございますが、本当にそのことにありがたくお礼を申し上げます。時間の関係上短くいたしますが、先生御指摘のとおりと思っております。やはり経済的な関係というのは需要と供給がマッチするということでございますので、何といっても、相手国がどんな需要があるのか、これをしっかりと見極めること、そして、それに対して的確な供給をしていくということがまず一番基本であろう、このように思っております。先生、これはまことに御指摘のとおりであります。

 ただ、そこで一つ問題は、需要を掘り起こすといいますか、日本料理というのはこれが本物なのか、こんなにすばらしいものなのかといったことを示して掘り起こしていく、これも大事だ、イギリスの野上大使とも話してまいったのでありますが、こう思っております。それともう一つは、やはり売り方。米を十キロのもので売られますと、毎日は食べないから十キロも一遍に買うと大変だ、一キロとか二キロなら、これはもう相当売れますよ、キッコーマンも、小さいこういうものにして売ると、これは高いものほどどんどん売れますよ。こんなようなあらゆる問題があると思いますし、検疫措置、こういったことも含めて、全体的な、先生の御指摘のとおりの、そういったことをしっかりと念頭に置いて進めてまいりたいと思っております。

 それから、今のオーストラリアとのFTAでございますが、これは一言で言いますと、今まで経験したことのない、見たこともない、聞いたこともないような大変な大型台風が来るぞ、こういうとらえ方だろうと思いますが、私も何度も申し上げておりますように、我々のメリットが農産物分野においてあるのかどうか。だから、私も相手国の方々にも申し上げておりますのは、こちらのメリット、それに応じて受け入れも考える、私はこういうことを基本に申してきておるわけでありまして、反対、賛成というよりも、みずからの、自分たちのメリットがどの程度なのか、それに応じてこちらも受け入れを考える。まさにギブ・アンド・テーク、テーク・アンド・ギブでありまして、そういったことを基本に置いて、そしてまた、先生方の御懸念の点、そういったことを我々はしっかりと体しながら、これは政府内において、また日豪関係の重要性という全体のバランス等もあります。そういう状況の中で、適切に、しっかりと対処してまいりたいと思っております。

小里委員 ギブ・アンド・テークの関係、そして日本にとってのメリットが何なのか、極めてそこが要諦でございます。

 けさの部会の議論でも、このFTA交渉、反対の意見がすべてでございました。こういった意見を体して、相手との交渉の前にしっかり確認をしていただきたい、慎重に対応していただきたいと存じます。

 残り一問、食料安保でございましたが、時間の関係で割愛させていただきます。

 もとより、国内生産力の強化、日本の農業の国際競争力の強化を図ることが、食料安保の観点からも、一番の要諦でございます。

 以上、自給率、規模拡大と担い手育成、輸出促進、EPA、食料安保、それぞれに将来を見据えた適切な対応を期待申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。自由民主党の赤澤亮正です。

 本日は、北朝鮮に対する制裁の結果、被害を受けている地元境港のベニズワイガニ漁業関係者の救済措置などについて、お尋ねをいたします。

 まず、一昨日、二十六日に、鈴木政二官房副長官が、地元米子市内で実施された鳥取県国民保護共同実動訓練に参加された後に、境港にお入りになりました。地元の水産業界が抱える課題について、境港市長や業界関係者と意見交換の上、特に、北朝鮮に対する制裁により迷惑をかけている境港の水産業について、政府として支援できることは全力で取り組みたいという趣旨の御発言をいただいたことは大変ありがたく、感謝をしております。

 また、今からさかのぼること約一カ月、先月の二十五日に、境港水産振興協会の皆様や常田享詳前水産部会長とともに対北朝鮮制裁後の境港の加工業者の窮状を訴えに大臣室に参りました際には、松岡大臣から心のこもった温かいお言葉をいただき、地元関係者全員が本当に励まされたこともこの場で御紹介し、改めて感謝の念を表明いたします。本当にありがとうございました。

 本日は、その松岡大臣へのお尋ねから始めさせていただきます。

 我が国が先月十四日に北朝鮮に対する制裁を実施いたしました結果、ベニズワイガニに係る境港の漁業関係者が、具体的には主として漁業者、加工流通業者になりますけれども、大きな被害を受けております。同漁業関係者は、北朝鮮に対する制裁自体については国策として異論なく受け入れているものの、何らの責めもない立場でございますから、これら関係者の受けた被害について、我が国としてもできる限りの救済措置を講じるべきと考えますが、この点についての大臣のお考えを伺わせていただきます。

松岡国務大臣 赤澤先生にお答えさせていただきます。

 赤澤先生の地元、まさに境港市が、このような、今御指摘のとおりの事情にございます。そこで、先般も、赤澤先生、それから今もお名前が出ましたが、常田先生ともどもにお見えになりまして、お話を承ったところでございます。

 境港におきましては、まき網漁業、それからベニズワイガニのかご漁業、こういったことを中心に漁業が営まれておりまして、そしてまた、そういったものを原料にして水産加工業が行われている。こういう漁業、水産加工といったものが地域経済の非常に大きな部分をなしておる。そういった中で、北朝鮮の核実験に伴う制裁措置ということで大変地元の皆様方が御苦労なさっておられるということは、もう我々は重々、十二分に、先生方の御指摘も踏まえまして、承知をいたしているところでございます。

 したがいまして、先般、金融面の措置もしっかりと講じたわけでございますけれども、なお、さらに必要なことにつきましては、我々は本当に、あらゆる制度を駆使いたしまして、可能な限り最大限のおこたえをしてまいりたい、このように考えておりますので、また今後とも何かございましたら、ぜひ赤澤先生の方からも申していただきまして、我々もしっかりこたえてまいりたいと思っております。

赤澤委員 再度、大臣から大変温かい励ましのお言葉をいただきまして、御理解賜りまして、本当にありがとうございます。地元関係者の一人として、大変心強く思うところでございます。

 北朝鮮に対する制裁の結果、被害を受けたベニズワイガニに係る境港の漁業関係者には、今大臣からも御指摘があったとおり、大別して二種類ございます。

 一つは、北朝鮮の領海においてベニズワイガニかご漁業に従事し、境港に水揚げをしていた三隻の漁船であります。もう一つは、ベニズワイガニの加工流通業者ということになります。

 北朝鮮に対する制裁の結果、三隻の漁船については、北朝鮮の領海における操業が継続できなくなりました。減船しない限りは、今後、我が国の排他的経済水域または日韓暫定水域における操業を余儀なくされます。これにより、これまで安定して操業してきた国内船同士はもとより、韓国のカニかご、あるいは場合によってはバイかご漁業との競合も激化することが予想されます。平成十七年から実施されております日本海ベニズワイガニ資源回復計画への影響も懸念されるところであります。

 また、加工流通業者については、今大臣からも御紹介がありましたように、一定の政策を既に講じていただいております。特に、我が国漁船の休漁期に当たる六月から八月にかけての原料の確保に困難を来すということが予想されるところであります。去る十月二十七日に、加工流通業者については、政府系金融機関などによる資金融通、具体的には、加工流通業者が水産加工経営改善促進資金といったような制度資金を借り受ける際に、最大二%の利子助成を通じて金利負担を軽減するという措置を講じていただいております。この措置と県からの支援が相まって、事実上、加工流通業者は無利子で資金を借り受けられるということになっております。

 その一方で、三隻の漁業者のための支援措置についてはまだ講じられていないものと承知をしております。

 そこで、水産庁長官にお伺いをいたしますが、北朝鮮に対する制裁が発動されるまでの間、北朝鮮の領海においてベニズワイガニ漁業に従事し、境港に水揚げをしてきた三隻の漁業者のための支援措置、具体的には、三隻の漁業者の意見を聴取の上、必要に応じ、手厚い減船の補償でありますとか、既に加工業者のために実施した緊急の実質的な無利子融資並みの支援、こういったものを講じるべきではないかと考えますけれども、政府の御見解はいかがでしょうか。

白須政府参考人 ただいまの、北朝鮮水域で操業いたしておりました三隻の関係のお尋ねでございます。

 今お話しのとおり、この三隻、北朝鮮水域での操業機会を失うということでございますので、その結果といたしまして、三隻は、その水域ではございませんで、暫定水域なり日本の排他的経済水域で操業するということになるわけでございます。その結果といたしまして、この三隻を含みます日本海におけるベニズワイガニ漁業全体のいわゆる漁獲努力量というものが過大になるわけでございます。したがいまして、この状態をそのまま放置しておくということになりますれば、ただいまお話しのとおり、ベニズワイガニ資源の回復といったことにとりましても問題が生じるというふうなおそれがあるわけでございます。

 したがいまして、基本的には、この過大となっております漁獲努力量を削減していくということが必要なのでございますが、減船の措置というものがございまして、これを基本として対策を検討しているところでございます。これを具体的にどういうふうに進めていくのか、お話しのこの三隻の経営者とも今お話し合いをさせていただいておりますし、三隻の経営者を含めました関係団体全体としての考え方も十分私どもとしてもお伺いをしながら、対応してまいりたいというふうに考えております。

 また、お話がございました融資対策につきましては、ただいま申し上げましたとおり、関係の漁業者の考え方も十分に聴取をした上で、その上で経営実態に応じまして相応の対応を検討してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

赤澤委員 よろしくお願いをいたします。

 そもそも、日韓暫定水域における日韓両国の資源管理のためのルールはまちまちであるというふうに承知をしております。例えば、網目の大きさでありますとか使用していいかごの数、あるいは休漁期等に関するルールが日韓で大きく異なっております。このため、操業も無秩序で、いたずらに競合が激化していることが、今回の三隻が北朝鮮の領海において操業せざるを得なかった遠因にもなっているというふうに考えるところであります。

 今回の三隻が北朝鮮の領海で操業せざるを得なくなった原因とも考えられる日韓暫定水域における不適正な資源管理あるいは無秩序な操業を改めるために、政府間協議を通じまして、日韓漁業協定の見直しも含め、日韓共通の適正な資源管理や操業の秩序を定め、韓国漁船に守らせるなど、日韓暫定水域に関する抜本的な対策を講じるべきであると考えますが、政府の見解を伺います。

白須政府参考人 ただいまの日韓の暫定水域の関係でございます。

 お話しのとおり、この日本海の暫定水域につきましては、日韓の漁業共同委員会がございまして、これの協議を通じまして、適切な資源管理を行うべき水域であるわけでございます。しかしながら、ただいまもお話がございましたが、当該水域が、ベニズワイガニあるいはズワイガニの優良な漁場が韓国漁船によりまして事実上占拠されておるといったようなことでございまして、実効ある資源管理措置がいまだに導入されておらないというふうなことで、関係の漁業者からも不満が大変大きいというふうに私どもとしても承知をしておるわけでございます。

 したがいまして、この問題につきましては、この日本海の暫定水域を含みます広い水域の資源管理に関しまして、両国の協力のための政府間協議というものを昨年五月から実は開始いたしております。本年七月までの間に既に五回の協議を行いまして、実効ある資源管理措置の早期導入に向けまして韓国側の協力を強く私どもとしても求めているところでございます。

 しかしながら、いまだ具体的な資源管理方策につきましては合意するに至っておらないところでございます。一方、先日の日韓の首脳会談におきましては、安倍総理からも漁業資源管理につきまして政府間協議を進めていきたいというふうな旨の発言がございまして、韓国の盧武鉉大統領からも漁業資源管理の問題にも誠意を持って対応していきたいといったような発言があったわけでございます。

 私ども水産庁としましても、実は先月からこの政府間の日韓漁業交渉が始まったわけでございまして、この中におきましても、この暫定水域の資源管理問題を取り上げまして議論を行っているところでございます。私どもとしても、この場所におけます実効ある資源管理、これは早急に実現できるようにしてまいりたいということでございますので、引き続きこの点につきましてもしっかりと努力してまいりたいと考えている次第でございます。

赤澤委員 政府がやはり強い姿勢で、毅然として相手国政府に向かうということが大事であると私自身は思っております。民間だけに任せることなく、引き続きしっかりとお願いをしたいと思います。

 引き続きまして、二十六日の鈴木官房副長官の境港御訪問の際にも話題になりました漁船漁業構造改革総合対策事業などについてお尋ねをいたします。

 この事業につきましては、関係者との意見あるいは情報交換を通じて、私の当初の予想をはるかに上回る地元境港を初めとする漁船漁業関係者の期待が大きいことが判明をいたしました。私自身、認識を改め、かつ少々反省しつつお伺いをいたしますが、資源の悪化、魚価の低迷に加え、燃油高騰といった経営環境の悪化により漁船の更新がおぼつかなくなっている、境港を初めとするまき網漁業など漁船漁業再生のために、概算要求中の漁船漁業構造改革総合対策事業に加えて、水産物流通構造改革事業などを強力に推進していただきたいと考えますが、ちょっと時間の関係で、手短に、簡潔に政府の御決意を伺います。よろしくお願いします。

白須政府参考人 ただいまお話がございました、この境港の漁船漁業を初めとする将来展望、どういうふうに支援していくのかというお話でございます。

 実は私ども、十九年度から、やはり全体としてとにかく収益性の高い漁業への構造改革を一刻も早く進めていかないかぬというふうなことでございまして、まず一つは、漁船漁業の構造改革を推進する予算の要求をいたしておるわけでございます。もう一点は、ただいまお話もございましたが、やはり産地の販売力を強化しまして、そういった形で浜の生産者の手取りを少しでもふやしていくという観点からも、流通拠点の整備といったようなことで流通構造改革の推進、この予算も要求しておるわけでございまして、こういう事業を活用しながら、境港、水産都市として今後発展していく将来構想というものを後押ししてまいりたいと考えておるわけでございます。

 いずれにしても、まずはこの十九年度の予算におきまして、ただいま申し上げました必要な予算が確保できますように全力で努力してまいりたいと考えておる次第でございます。

赤澤委員 よろしくお願いいたします。私もしっかりとできる限りの応援をさせていただきたいというふうに思います。

 引き続きまして、野菜価格安定制度の補てん率部分の見直しについてお伺いをいたします。

 野菜価格安定制度は、野菜の安定供給を目的としていると承知をしております。しかしながら、認定農業者を安定的、継続的生産者に位置づけて、その面積シェアのみによって産地を格付して補てん率に格差を設けるという今般の見直しについては、若干制度の目的にかなわない場合があるように思われます。

 例えば、これは全国的にいろいろあると思いますけれども、私の地元の例でいえば、鳥取の西部の白ネギ産地であります。農業経営基盤強化促進法に基づく認定農業者の栽培面積のシェアということになると、実はわずか八%しかございません。大根が例えば七割を超えているとか、ホウレンソウも約五割というのと大きく違いがありますが、しかしながら、販売額を見ますと、二百五十万円以上を超える、そういう意味で一定規模以上の農家の面積シェアが六二%ということで、一定規模以上の、しかもそこそこ採算がよく立派に農業経営をしている白ネギ農家というのが多数あるわけであります。

 このような場合に、面積シェアで、産地全体の半分以上を占める一定規模以上の生産を行っている農家に対して補てん率で不利益な扱いをすることは、むしろ、将来的に見れば、野菜の安定供給を損なうことになるのではないかと危惧いたします。

 そこで、生産局長にお伺いをいたします。

 野菜価格安定制度の補てん率部分の見直しにより、今申し上げました鳥取西部の白ネギ産地のように、一定規模以上の生産を行ってきているにもかかわらず、面積シェアが十分でないという理由だけで今後不利益な取り扱いが行われ、野菜の安定供給に支障を生じるようなことがないよう、認定農業者の面積シェアが十分でなくても、例えば終年栽培に取り組んだり、そういうことで年間を通じて野菜の安定供給に努め、産地の強化に向けて努力しているというような産地については重点的な支援をしっかり行っていくべきだというふうに考えますが、政府の見解を伺いたいと思います。

西川政府参考人 野菜価格安定制度の見直しについてのお尋ねでございますけれども、野菜につきましては、委員御案内のとおり、最近、高齢化の進展等もございまして面積が減っているというのが現状でございまして、今後安定供給を図っていくためには、やはり担い手を中心とした産地づくりが必要だと考えているということでございます。こういったことで、価格安定制度につきまして、産地を対象とする現行の制度の骨格は維持しながらも、認定農業者を基本とする安定的、継続的生産者を育成、確保する産地を重点的に支援するというふうにしたいと考えているところでございます。

 この中で、野菜の生産につきましては、御指摘のように、現状では認定農業者は十分いないというのは御指摘のとおりでございますが、主業農家、要は野菜で所得の半分以上を占めている農家というのは、実は野菜について八割を超えているところでございまして、販売収入も高いということでございます。そういったことから、多くの農家の方々は認定農業者になることが可能だというふうに私どもとしては考えております。

 また、直ちに認定農業者になれないけれども、将来における耕作地の引き継ぎが産地内で合意されているといったような、これから担い手になる道筋が明らかになっている方々、これは認定農業者に準ずる者として都道府県知事が特認することも可能としたいというふうに考えておりますので、こういった制度をうまく活用しながら、安定的、継続的生産者の育成、確保に積極的に取り組んでいただいて、野菜の安定供給に頑張っていただきたいというふうに考えているところでございます。

赤澤委員 ありがとうございます。

 若干コメントしますと、品目横断的経営安定対策というのは大変ヒットでありまして、もちろん期待の政策でありますが、あれ以来本当に担い手、担い手という感じで、水産業も担い手、野菜も担い手ということで、ただ、私は、本件については、先ほど申し上げましたように、やはり野菜の安定供給ということから見た場合に、農家のむしろやる気をそぐ場合があり得るなとちょっと危惧しておりますので、その辺よくお目配りをいただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。

 最後に、時間の範囲内で、一問ちょっと、通告をしておりませんけれども聞かせていただきたいと思います。これについては、心優しい松岡大臣でありますのでお許しいただけると思います。

 大臣にお伺いいたします。日豪FTA交渉についての話でございます。

 私自身、けさの党の部会に出てびっくりしたんです。これは、共同研究をずっとやっているのは承知をしておりました。なかなか詳細は知らないまでも、これは当然、何しろ農家当たりの耕地面積が日本の二千倍はあるという豪州との交渉でありますし、関係するもの全部重要品目でありますから、共同研究の結果、日豪FTAはなかなか難しいというような方向が出るものかと思っておりましたが、いざふたをあけてみると、新聞報道等を見ましても、けさの部会の報告などを聞きましても、交渉を始めることを前提に何か話が進んでいるように聞きまして、大変びっくりしたところであります。

 あえて申し上げたいと思いますのは、農業を守ることは、もう当然のことながら、特定の業を守るということではなくて、日本の食料を守るということであります。私は、我が国及び日本国民にとって最も重要な国益の一つであると確信をしております。

 一農家当たりの耕作面積が日本の約二千倍という条件を見れば、もう横綱と赤ん坊といったような感じの農業を営んでいる豪州から安価な農作物が日本に入ってきて、日本の農業が壊滅しないように守るというのは、まさに国益があるからでありまして、農業分野の対象のすべてが重要品目と言ってよい日豪FTAについては、我が国の食料安全保障それから農業、そして農業を基幹産業とするすべての地方経済を崩壊させるおそれが極めて大きいと言わざるを得ません。

 私自身、元役人のときの日米航空交渉に参加した経験からすれば、もう交渉が始まれば関係者は内容のいかんにかかわらずまとめたいという本能が働くものであります。したがいまして、日豪FTA交渉については、交渉前に我が国の食料安全保障と農業を守ることができる確証が得られない限り、交渉に入るべきではないと考えますけれども、大臣の御見解をいただきたいと思います。

松岡国務大臣 先ほど小里先生からも御指摘のあった点でございますが、その点につきましてお答えいたします。

 先ほども申し上げましたが、いまだかつて経験したこともない、およそ想像もつかないような大変な大型台風が来る、これはもう家も屋根も全部吹っ飛ばされるんじゃないか、そのような思いで皆様方危機意識を持っておられる。そのことについては我々も十分に、そのような皆様方の思いはしっかり受けとめてまいりたい、このように思っております。

 そこで、相手もいろいろあるわけであります。では、検疫はどうしてくれるのか。本当にギブ・アンド・テークで、こちらから行くものは検疫上ちゃんと認めてくれるのかどうか。また、では向こうの輸出の体制はどうなのか。これは、WTO上も問題だ、やめるべきだと言っている輸出国家貿易、こういった体制のまま輸出をしてくるのかどうか。こういった点についてもしっかりとただしながら、やはり我々の主張、問題提起というものがちゃんと解決されない限り、私が申し上げておりますように、メリットに応じて受け入れを考える、それ以上の言葉を使いませんが、このメリットに応じて受け入れを考える。では、メリットがあるのかないのか、こういった点が大きな基本である、こういったことをまず御理解いただきたいと思います。

西川委員長 赤澤亮正君、時間が来ております。

赤澤委員 はい。以上であります。ありがとうございました。

西川委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 きょうは、引き続きまして漁業のことについてお伺いをしたいと思います。マグロの漁獲枠のことでございます。

 世界的に資源量が減っているマグロ類、この漁獲量を決めるために大西洋まぐろ類保存国際委員会、ICCATの年次会合がクロアチアで行われた、これは新聞報道で見たとおりです。そこでは、地中海を中心とした東大西洋の二〇〇六年の総漁獲枠、これは三万二千トンということでございますが、割り当て量を超える国や地域が続出した、こういうふうに言われております。ICCATは、同水域で実際に一・六倍の約五万トンが捕獲されているというふうに見ているわけです。

 地中海沿岸諸国が九〇年代以降、天然のクロマグロをまき網でとって、そしてとろ身をふやしてから出荷する、いわゆる畜養の事業に相次いで参入したことが乱獲の一つの大きな要因だ、こういうふうに言われております。水産庁によりますと、日本国内で供給されたクロマグロの約半分が地中海産である、そのほとんどが畜養場から輸入をされている、こういうふうに言われています。

 日本が今回の会合で消費国としての責任ということを追及されることは確実というふうに見られておりましたが、まず、この大西洋まぐろ類保存国際委員会の結果について、簡単に大臣の方から御報告いただくとともに、この評価についてもあわせてお答えいただきたいと思います。

松岡国務大臣 西先生にお答えさせていただきます。

 先生御指摘のとおりでございまして、この十七日から二十六日まで十日間、クロアチアにおいてICCATが開催をされたわけであります。それ以前に、十月の時点で科学委員会から資源的なことにつきましての勧告がなされた、それを受けて今回協議がなされたわけでありますけれども、先生今御指摘のとおりの結果になりまして、三万二千トンの漁獲が来年は二万九千五百トンということで、二千五百トン減少、これを段階的に進めてまいりまして、二〇一〇年には二万五千五百トンということで、約二割の漁獲減、こういうことになるわけでございます。これが、一つの事実関係でございます。

 そこで、では来年以降の各国別の割り当てはどうなるか、これはまだ決められておりませんで、来年の一月、我が日本において会議が開催され、そこで決められるであろう、このように見通されております。

 そこで、これにつきましての評価でございますが、やはり世界的な漁業資源、特にマグロ資源の持続的な確保を図っていくという観点からは、これはもう一定の評価をして、それを受け入れるということが基本だ、このように思っております。

 そしてまた、これの影響でございますけれども、影響につきましては、今我が国は、輸入も含めまして四万四千トンのマグロというものが供給をされております。そこで、来年は二千五百トンというクロマグロが減るわけでありますけれども、四万四千トン分の二千五百トンですから、一定の割合ではありますけれども、大きな影響になるかどうかという点については、まあそれほどのものではないのではないかと期待も込めて思っておりますが、よく市場の動向を注視しながら、これは国民の食生活にとって大変大事なものでございますので、しっかりと対処してまいりたいと思っております。

西委員 最高級のマグロと言われているクロマグロの半分をヨーロッパ、地中海から日本が輸入しているということもあり、大変重要な問題であるというふうに認識しておりますので、十分な対処をお願いしたい、こう思います。

 次に、一問ちょっと時間の関係で飛ばしまして、中西部太平洋のメバチマグロのことについてお伺いをしたいと思います。

 この海域の資源管理機関である中西部太平洋マグロ類委員会、WCPFCの科学委員会が、メバチは比較的価格が安くて大衆的である、こう言われておりますが、これについても総漁獲量を二五%削減するよう勧告をしております。委員会では、現在の漁獲は多過ぎる、このままでは資源量の減少が深刻化するというふうな評価であります。この海域のキハダマグロについても一〇%削減、こういうことになっております。

 WCPFCは、十二月十日からサモアで開く会合でこの漁獲枠の削減を検討する、こういうことになっておりますが、この中西部太平洋マグロ類条約の会合に向けて日本政府はどういう態度で臨まれるのか、このことについてお答えいただきたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの、中西部太平洋におけますメバチなりキハダの関係でございます。

 本年八月にこのWCPFCの、中西部の委員会におきまして、それの科学小委員会でございますが、そこでこのメバチとキハダにつきまして、資源量としては持続的な利用が可能なレベルにはあるということなのでございますが、将来の資源の減少を食いとめる、あるいはまた持続的な利用を達成するために、漁獲につきまして、メバチにつきましては二五%、キハダについては一〇%削減すべきというふうな勧告がされた、お話しのとおりでございます。

 ただ、私ども、現在このメバチなりキハダの中西部の太平洋におけます資源量は中位で横ばいというふうに評価をいたしておりまして、現時点では良好であるというふうに考えております。直ちには漁獲の削減が必要な状況にはないというふうに考えております。しかしながら、お話しのとおり、この科学小委員会からの勧告が出たわけでございますので、今後、このWCPFCにおきまして、資源の保存管理措置につきまして議論が行われるということでございます。

 私ども、先ほど来議論がございますように、マグロについての最大の輸入国でございますし、最大の漁業国でございます。したがいまして、お話しのとおり、十二月の中旬にWCPFCの年次会合があるわけでございますので、そこでは、このメバチなりキハダの持続的な利用が可能となるような適切な保存管理措置が講じられるように、私どもとしても議論に参加して努力してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

西委員 少し観点を変えまして、現場からの報告といいますか、お話を申し上げた上で、大臣の御感想をお聞かせ願いたいと思います。

 私は、日本のマグロ漁船の割り当てを超える漁獲、先日も議論させていただきましたが、これはどんな理由があろうと許されることではない、決まったことですから、きちっとすべきであるということが前提ですが、しかし、なぜ彼らが過剰な漁獲を行うのかという、一方では原因もやはり探ってみることが必要ではないか、こう思っております。単なる規制強化だけでは、本質的な問題の解決にはならない。私の地元和歌山でも、このマグロ漁船、五十隻から二隻にまで減ってしまったということが言われておりますが、その原因は何なのかということをやはり探らなければならない、こう思います。

 前回のこの委員会でも、資源管理制度、それから検査体制等について質問をいたしましたが、漁業者に、この間、たまたま陳情を兼ねて上京されましたので、お聞きしたことをもとにお伺いをしたいと思います。

 現場の皆さんは、やはり根深い不公平感を持っていらっしゃる、こういうふうなことがわかりました。それは、日本国政府は、日本のマグロ漁船に対して各条約の規制を遵守させ、違反船には重い罰則を与えていながら、一方で、台湾船または便宜置籍船が違法に漁獲したマグロが輸入をされる、現実にそういうことになっているんですが、この点についてでございます。

 例えば、地中海のマグロ漁は六―七月の間は禁漁期間になっておりますが、台湾船だとか便宜置籍船は堂々と営業を繰り返している、こういうふうに言われております。それらの無秩序に漁獲されたマグロは結局日本に入ってきて、そして、日本政府はそれを結果的には認めている、こういう不平等感をおっしゃっておられました。

 日本の漁師が幾ら魚をとってきても、魚価が安くて経営が成り立たない。魚価が上がらないのは、結局、大手商社が冷凍魚として世界じゅうから魚を買い占めて、輸入物を国内にあふれさせているからだ。スーパーの売り場でも、実際には半分以上輸入物が占めているということも少なくないわけでございます。輸入物は市場外の流通がほとんどで、通関したものは大手商社傘下のさまざまな会社によってスーパーに持ち込まれる、こういう構造になっております。

 畜養マグロのことについても先ほどちょっと触れましたけれども、日本の水産会社や商社、スーパーが、よくも悪くも、国際的な資源管理機関や日本の漁業者をある意味では翻弄しているという実態になろうかと思います。

 こうした厳しい状況に加えて、魚の値段は上がらないのに、船や漁具などの工業製品の値段は上がるばかりである。そのほか、自動操舵機、漁業探知機、レーダーもと、企業が次々と新商品を売り込んでくる。彼らにとってみたら死活問題であるこの魚の奪い合い、これを、先を争って重装備を繰り返して、そしてやっていく、こういうことになっております。高度成長時代であればそれも乗り越えたんでしょうけれども、今の低成長では、これはもう漁獲量をふやすしか総売り上げを守ることはできない、こういうことで、投資競争にますます拍車がかかってくる、こんなお話でございました。

 さらに、日本の漁業者は、それでなくても、アジア諸国の競争相手と比べて人件費が高い。最近は燃油も高い。五年に一度の定期検査、二年半ごとに行われる中間検査が義務化されている。そして、世界海洋遭難安全システム、GMDSSというんだそうですが、それだとか、船舶の位置監視装置、VMSを導入することなどが決められて、経費はますます高くなってくる、こういうことが言われております。

 これは、ある意味では、漁業者の一方的な言い分も若干含まれているかもわかりませんが、彼らはそういうふうに見ているということもこれまた事実でございまして、こんなことでは公平な競争が行われる状態ではない、日本の漁業者は非常に不公平な立場に立たされているというふうに彼らは考えているということを、この間、懇談させていただいてよくわかりました。

 こんな状況に対して、大臣のお考えを率直にお述べいただきたいと思います。

松岡国務大臣 今の西先生の御指摘、まさに漁業現場の皆様方と意見交換をされましての率直な、そしてこれは生の声だ、それを先生がこうやってこの場で今お示しになった、このように受けとめます。

 そして、何といいましても、今、WTOでも、水産の世界では何が一番問題かといいますと過剰漁獲でありまして、ドーハ・ラウンドは、とにかく過剰漁獲をなくすということを基本に実は交渉がなされていると言っても過言ではないわけでありまして、そういう観点から、持続可能な資源管理をしていく、こういうことはもう本当に一番基本で大事なことである。したがって、そういった観点から、我々は、マグロの大消費国、または水産物の大消費国であっても、そこはしっかりと受けとめながら対処していく必要があるとまず思っております。

 そういう状況の中で、今おっしゃいましたように、国内は厳正に遵法でやらされておって、海外からのものは、輸入物は甘いのではないか、こういう御指摘ですが、そういったことが絶対あってはならないと思います。

 そこで、もし具体的な事例等があれば、そういったことを踏まえてしっかりと対処していく必要があると思いますが、今までの我々の取り組みを申し上げますと、地域漁業管理機関、こういったものがあるわけですけれども、そこを通じまして、IUU、これは言ってみれば、違法、無報告、無規制、こういった漁船、その船籍国からの輸入禁止、さらにまた、正規許可船をリスト化し、これはポジティブリスト、これら以外からの漁獲物を国際取引の場から排除する、そういった措置をこの漁業機関を通じて行ってきたところでありますし、関係国との間では、便宜置籍船の減船やマグロ漁船数の抑制についても協議をしてきたところでもございます。

 いずれにいたしましても、国内にあってそういう不公平なことがないように、今後とも、なおこれらの措置を徹底するように、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 具体的なことにつきましては、また水産庁長官の方からお答えすると思いますが、なおなお先生の御指摘を踏まえて、我々もしっかりと対処してまいりたいということを申し上げたいと思います。

西委員 ありがとうございます。

 特に、先ほどお話がありました違法、無報告、無規制、IUU、この問題については国際的な問題に絡むわけですが、きちっと対処していただきたいということをお願い申し上げます。

 最後に、先ほど申し上げましたように、漁業者の実態は大変厳しいということで、彼らは、人件費を削減するために外国人を船員として雇ったり、燃油の消費を抑えるために、日本へ一々帰らないで外国の基地を中心に操業を行う、こんなことで必死のコストの削減を行っております。

 そんな中で、安全法、海防法に基づく定期検査、中間検査、先ほども若干申し上げましたが、これが大変重い負担になっているという声が聞こえてまいります。

 この定期検査、中間検査、私もびっくりしたんですが、一回に数千万円かかる。定期は五年、中間が二年半なんですが、一年間にならしますと、一千万円の費用が検査のためにかかるということもお聞きをいたしました。必要な検査は当然行わなければいけないんですが、漁業者の経営努力をできる限り支援するために、検査時期の見直し、それから検査の簡素化、弾力的な運用等、ぜひとも検討をしていただきたい、こう思いますが、お答えをお願いいたします。

白須政府参考人 ただいまの、漁船のいわゆる安全検査等に係ります規制緩和といいますか、その点についてのお尋ねでございます。

 これまでも、ただいま委員からもお話がございましたとおり、そういったことにつきまして、非常にコストがかかる、あるいは期間がかかるといったようなことで、水産業界からもそれぞれ実は要望が出てきておりまして、これは、所管といたしましては国土交通省が、具体的には、それぞれいろいろな形での、安全面あるいは操業における必要性といったようなことから検査が行われているというふうに承知をいたしているわけでございます。

 こういう点につきまして、私どもとして、本来、安全、安心という面から必要な規制であれば、これはやむを得ないと思いますけれども、ただ、今委員からお話がございましたように、例えば、技術革新等により可能とされるといったような規制緩和、そういった費用負担につきまして、もうちょっと期間を短縮する、あるいはまた、本来の必要な回数をもうちょっと簡略化することができるのではないか、るるいろいろな形での可能性もあるわけでございます。やはり、漁業者のコストに非常に響いてくるわけでございますので、そういった規制緩和、これが具体的に可能となるのであれば、そういうことをぜひ私どもとしても、国土交通省を初めといたします関係省庁にも働きかけてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

西委員 持続可能な漁業は当然なことですが、持続可能な経営になりますように、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上でございます。

西川委員長 次に、小平忠正君。

小平委員 おはようございます。民主党の小平忠正です。

 まず、松岡大臣それから山本副大臣、御就任おめでとうございます。時あたかも、内にあっては大きな農政の転換、経営所得安定対策に向かってのスタートの年を来年に控え、また、懸案のWTO、あるいはミクロな二国間交渉、内外ともに農政では大変なときに御就任されて、大変御苦労さまです。

 私は、大臣については、自民党さんにあって農政通の第一人者として拝見しておりますので、ぜひ剛腕を振るって御奮闘あらんことをこれから御期待申し上げます。まず、エールを送らせていただきます。

 きょうは、質問に入る前に、たまたまここ数日、御党の復党問題で大変揺れ動いておりますが、我々、対岸におりますので、岸は違いますけれども大変なことだと思います。それを見るにつけ、私の個人的な感想をちょっと申し上げますと、政治家が信念を通すということはすばらしいことだな、最近そういう政治家が減ってきたな、そういう意味においては称賛をしている方もいらっしゃる、そんなことを申し上げて、本題に入っていきたいと思っております。きょうは一般質疑ですので、質問が多岐にわたると思うんですが、ひとつ御容赦のほどよろしくお願いいたします。

 まず最初に、今申し上げた対外交渉でありますけれども、WTO、アメリカを中心に、中間選挙のこともこれあり、なかなか進展せず、我が国としても、この取り組みに前大臣から含めて大変苦労されております。私も松岡大臣とは何度か国際交渉に、当時は議会人として御一緒いたしまして見てまいりましたが、今度は政府の責任者として当たるわけですから、WTOについては、今具体的にはこの場で大臣からお話しすることはそうないと思いますので、これからに向かってぜひ腕力を発揮していただきたい。これは、政府間交渉ですので、我々議会人としては、これは国益ですから、場合によっては党派を超越して応援したい、しかし、場合によっては政府の弱腰をこれから厳しく追及することもあると思いますので、ぜひ御覚悟の上頑張っていただきたい、こう思います。

 さて次に、FTA、EPAです。今、幾つか既にもう交渉が済んでいるところもありますけれども、先ほども自民党のどなたかが御質問されておりましたけれども、いよいよ豪州とのFTA交渉が控えております。十二月十三日ですか、東アジア・サミットの際、日豪の首脳会談がありますので、そこまでに日本政府としての最終的な判断がしたい、そういうような報道も伝わっております。

 いろいろと私の方からああだこうだと言う前に、これは非常に難しい問題ですね。きょうは外務省、経産省も見えていると思うので、事務方からもこの取り組みについてのお考えをお聞きしますけれども、端的に申し上げますと、特に豪州は、米を盛んにちらつかせて、米は譲歩するからという。アメリカのときは砂糖をやったようですね。日本に向かっては米を譲歩しようという、関税撤廃から外そうという。しかし、問題は小麦、砂糖あるいは酪農。これは、この国にとっても大事な基幹産業、基幹作物であります。今、この国はお米の生産調整をしていますね。その転作の代替農作物として、特に小麦、砂糖は、いわゆるビートを含めて重要な品目ですから、米が向こうから譲ってもらえるからそっちはいいとは軽々に言えないと思うんですね。非常に問題だと思う。

 大臣は、常々、守るところは守る、譲るところは譲るとおっしゃっていますね。そんな観点で、これから政府間交渉ですからなかなか公にできぬところもあると思うんですけれども、まず、それに臨む大臣の基本的な姿勢、この委員会が開かれましたので、この機会にお伺いしておきたいと思います。どうぞよろしく。

松岡国務大臣 小平先生にはエールを送っていただきまして、ありがとうございました。

 長いおつき合いでございまして、私も当選以来ずっと農林水産委員会に、最初は、一年生は自民党はなれなかったものですから途中からでしたけれども、小平先生もずっと農林水産委員会、そして、今お話もございましたように、いろいろな場で、いろいろな形で御一緒させていただきまして、ジュネーブでもまたシアトルでも、党派を超えてずっと交渉にも取り組んでまいった、そういう間柄でおつき合いをさせていただきました。

 私も、小平先生は、民主党の中にあって最も中心的、最も代表的な、農政のお立場で頑張っておられるし、我々もまたいろいろ御指導をいただいてまいった、そう思っております。

 そこで、お尋ねの日豪FTA、EPAにつきましては、先ほど自由民主党の方からも、小里先生、赤澤先生からも御指摘があり、私も基本的なことをお答えしたとおりでございますが、改めてまた申し上げますと、何といってもこれは、今まで歴史上日本にとってはかつてないような、例えば大変な大型台風だ、経験したことのないような大きなものがやってくる、何もかも吹っ飛ばされてしまうのではないか、こういうような危機感を持っておられるということも重々承知をいたしております。

 そこで、申し上げておりますことは、攻めるところは攻め、譲るところは譲り、また守るところはしっかり守るという基本指針がございますし、また別な言葉で言えば、ギブ・アンド・テーク、テーク・アンド・ギブといいますか、とるものがなければ譲るものもない、こういう基本で我々は臨むんだということを再三申し上げてまいりました。

 大臣になります前も、今委員長の西川先生とも、私もオーストラリアの政府関係者の方と何度も会いましたけれども、工業で日本は利益を上げるから、農業はおれたちに譲ってくれ、もしそういうお考え方だとしたら、それは我々は受け入れられない。農業は、農業の分野において我々にとってメリットがあるのかないのか、それに見合って受け入れも考える、そういったことを基本に我々は対処してまいりたい。これはずっと私ども、その基本はしっかりと守っていこう、こう思っておるところでございます。

 それから、今どういう状況にあるのか、十三日から首脳会談があるのではないか、そこでどうなるのか、今こういう御質問だったと思いますが、政府全体として、その場面に向かって、最終的なというか、いろいろ詰めの作業が行われていることは事実であります。そして、我々としても、我々の主張するところ、これがしっかりと位置づけられるか、位置づけられないか、そういったことを踏まえて最終判断が、政府全体としてもちろんそうですが、政府全体の中で、我々の立場、我々の主張、こういったものもしっかり位置づけられるように最大の努力を今払っている、こういう状況でございます。その上で交渉に入るかどうかというのは決定されるものだ、このように考えてとらえております。

 いろいろ相手の方の問題も指摘すべきところはいっぱいございますから、そういったことも含めて、しっかり対処してまいりたいと思っております。

佐渡島政府参考人 簡潔に申し上げます。

 私どもの仕事は、まさに松岡大臣から御指摘いただきました、政府の最高首脳レベルの決定に従って守るところは守る、とるところはとりに行く、こういう覚悟で臨もうと思っております。

 今の交渉の現状でございますけれども、大臣からも御指摘ございました、今まで五回議論を重ねまして、我々の主張を相当に繰り返してやっております。最終的な報告書の作業は、まだ進行中でございます。最終的にどうするかというのは、まさに今大臣の御指摘がありましたとおり、政府レベルできちんとした御判断をいただく、こういうことでございます。

高田政府参考人 経済産業省といたしましては、オーストラリアは、我が国にとりまして資源、エネルギー等の安定供給の確保の観点から、また今後の東アジアの地域統合を考える上でも非常に重要な戦略的パートナーであると考えております。

 一方で、経済産業省といたしましても、物品貿易の分野で自由化を進めるに当たりましては、日本と豪州において、特に日本において非常に難しい問題、センシティビティーを抱えているということは十分に理解をしております。そういう中で政府一体として対処したいと思っております。

小平委員 あえてお呼びしましたので、今御答弁いただきましたけれども、大臣、いわゆる立法府にあられたときは非常に強い姿勢で政府を叱咤激励して、その要所、要所に行かれて頑張っておられたことを、私、拝見してきました。ぜひこれからは、政府の責任者ですから、役人サイドに、守るところは守るというところを、逆にそこをしっかり強く出していただいて、譲るところは、それは政府のお得意です、従来の農水省、譲るところは。逆に守るところは守るということをしっかり、大臣の今までの足跡を拝見しますと、そこはできると思うんですね。ぜひ十分な経験を生かして頑張っていただきたいと思います。

 それでは、次に進みます。

 来年からいよいよ導入される経営所得安定対策、これはいろいろと問題がございますが、きょうは時間も限られておりますので、少し絞って、農地・水・環境保全対策についてお伺いいたします。これは局長答弁でしょうね。

 そこで、政府は、この対策で約三百億の予算を財務省に予算要求しながら、今までモデルケース、随分多くの箇所を実施しながらきょうに至っていますね。ここに来て、いよいよ来年からこれが導入されるというときを前にして、今起きています現象は、やはり地方の厳しい財政難によって、いわゆる府県あるいは関係自治体も含めて、いわゆる財政措置が厳しく、十二分に充当できない、そういうところに置かれていますね。

 そういう中で、政府は、この間私にこう説明がありました。なかなかこれは評判がよくて希望者も多いんだ。例えば、水田においては、反当、府県が二千二百円ですか、北海道は千七百円ですね。したがって、これをさらに特認措置までして対象をふやしたい。そういうことまで言われていまして、それだけ政府の姿勢については、今回珍しくそういう評価があるのかと。従来、猫の目農政というか、三年ごとにいろいろと変えてきた中において、まず生産者は、関係団体を含めて、まゆにつばをつけて、そんなことが通例でしたけれども、そうか、入り口からそういう評価があるのかなと。もう既に、今、中山間の対策でそういう補助がとられていますね。これにオーバーラップする面もあるけれども、こういうことがある。

 これについては、いわゆる用排水路を中心にした整備というのは、これはもう従前から生産者がみずからやってきた、言われるまでもなく。一つはみずからの田畑の病害虫の発生予防、あるいは景観、これを自発的にやってきた。しかし今、言うならば都市との混在によって、あるいは農家人口の高齢化によって、なかなかそれも行き渡っていない。したがって、ここに政府が交付金を投入をすることによって、さらにこの国の農村地帯の良好な状況をつくるためにという説明でありましたので、府県のそういう都市との混在もあり、こういうことも一つの時代の流れかな、そう思って、ならばうまくいくようにと期待しておったんですが、さあ、いよいよ来年からというときを前にして、ここに来て、いわゆる財政的な問題で今大変大きな壁にぶち当たっていますね。

 そこで、まず所管の局長として、これについてどう取り組んでいかれるのか。財源がないから縮小のやむなきに至るのか、あるいはそこに特別な措置を講じていくのか、それについての御説明をいただきたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策でございますが、今委員からお話がありましたとおり、地元での浸透も大分進んできまして、かなり手が挙がってきている状況にございます。一方で、先生のお話がありましたように、地方財政もなかなか厳しいというような状況もございます。

 この農地・水・環境保全向上対策、先生のお話がありましたとおり、農地や農業用水といった社会共通の資本というものを、農業者や非農業者、それから都市住民も含めて、地域ぐるみで保全しようというものでございます。これは、国、それから地方、農業者等がそれぞれ利益を受けるというものでございますので、それぞれの方に応分の負担をしていただくということが基本であるというふうに考えております。

 この場合、地方の負担について、いろいろ御意見がございますけれども、私どもとしては、地方が取り組みやすいように、また、その財源が確保できるように、まずは地方財政措置について確保するということで、総務省に対して概算要求の前から説明をしてきているところでございます。

 今まさに予算の最終段階ということでございますので、この地方財政措置の確保についてさらに努力をしていきたいというふうに考えております。

小平委員 局長、暮れの予算要求に向かって、いわゆる財務省に、地方交付税、つまり地方財政措置の実施ということは総務省ですか、そういうことの意味ですね、今おっしゃったのは。それは相手側に対しての要請ですよね。

 でも、私は、こういうふうに持ってきた背景には、あなた方は、厳しい現下の地方自治体の状況を見て、半分国が負担する、半分は地方に任せる、引き受けさせる、こういうことを考えたときには、当然地域はそれにこたえられる、あなたたちは、言ってみたらその分野のエキスパートでしょう、そういうことをやってきたと思うんですよ。ただ机上のプランで勝手に、自分たちはこれだけ出すから、あとは相手が何とか、地方が何とかするだろう、そんなことではないわけでしょう。

 今こういう状況になるということは、この数年、私はあえてここで小泉政治にまで広げたくないけれども、今の政府の失政によって、これだけ地方が、いわゆる格差ですか、これだけ厳しい状況に置かれている中において、こんなことは当然考えられたことでしょう。それを、ここに来て、地方がもたないから、では暮れの予算要求に向かって総務省に要請するなんということじゃ他力本願じゃないの。やはりあなたたち農水省が、みずからその不足分を補うということを考えることはできないんですか。

 もう一点、いろいろなことはあるけれども、例えば、ついこの間私が追及しましたけれども、いわゆる集荷円滑化対策。米が余ったら米価が下がるから大変だろう、だから農民よ、反当たり千五百円出せ。その金をプールしておいて、米が余ったら、その余った分は主食から隔離をして米価に影響ないようにするから、反当千五百円出せ。こういう指示を出して、作付面積約六十数%に当たる農民がそれに従って拠出しましたよね、反当千五百円。そのトータルが、一年間百六十億円、二年間で三百二十億円でしょう。こんな金が眠っているんでしょう。無事戻ししないでしょう。豊作にならなかった、使わなかったけれども、ではそれを無事戻しするかというと、しないで、政府がため込んでいる、機構の中にため込んでいる。私の追及を避け切れずに、いよいよ十八年度については豊作にならなければ無事戻しします、こういう方向に転換しましたけれども、でも、過去二年間、金をため込んでいるんだ。これは、いわゆる形を変えた税金でしょう。これは、一つの例ですよ。そんな金が眠っているんですよ。

 そうしたら、こういうときに、いいアイデアだとあなたたちが自画自賛するんだったら、地方が厳しい状況でとてもこたえられないと言っているんだったら、そんな他力本願的に総務省に頼むんじゃなくて、こんなことに知恵を絞らなくても、みずから隠している財源を出したら、幾らでも使えるでしょう。これについてはどうお答えになりますか。

山田政府参考人 先ほどお話をいたしましたけれども、この対策につきましては、もちろん国の側も受益をするわけです。地域の資源を守り、あるいは食料供給にもつながるということで受益をするわけですが、一方で地方にとっても、地域住民の方々が、農村の景観を守るというようなことから受益をするわけです。そういう意味で、国も地方も、それぞれその受益に応じて負担していくというのが、まずこの対策の基本的な考え方でございます。

 その場合に、地方の財源はどうするのかということがありますので、それについては、交付税の措置というのがございますので、それについて、先ほど言いましたけれども、概算要求前から、総務省に対して交付税措置についての検討をお願いしてきたということでございます。

小平委員 局長、そういうことを考えているから、地方の負担分について総務省にお願いしてあげているから、何とかそこでというお答えでしょう、自分たちはちゃんとやっているんだと。でも、私が言ったのは、そういうことを超えて、そもそもこういうアイデアを持ったときに、このアイデアでは、地方の負担分は半額だ、約三百億円だ、ちゃんとできるんだという計算をあなたたちはしたんでしょう。だから、こういう案をつくったんでしょう。そんな、片一方のことをやったって意味がないわけでしょう。今に来て、足りないことが露呈されて、では総務省にお願いして何とか地方に対しての財政措置を考えてあげよう。あなたの言い方は、まるで、我々が親切にもそういうことを考えてやっているんだ、そういう答えじゃないですか。

 そうじゃないですよ。そうじゃなくて、こうなったら逆に、半々の負担で始めたけれども、地方財政は厳しいんだから、もとに戻って、国がもっと応分の負担をしようということを考えたらどうですかと言っているんです。

 これは、こればかりやっていると、ほかにも大事なことがあるので、きょうはこれを指摘しておきます。改善がなければ、私、また質問しますからね。きょうはこのことを強く指摘しておきます。

 次に、調査捕鯨について御質問いたします。

 今年度の南氷洋の調査捕鯨船団は、去る十一月十五日に下関から出航いたしましたね。船団は、約一カ月後から調査活動に従事する。長年にわたる我が国の調査は、貴重な科学的データを収集し、国際的にも高い評価を受けております。本年のIWC、セントキッツの総会では、この地道な活動の効果もあり、セントキッツ宣言という極めて画期的な、我が国のかねての主張を反映した内容の決議が、出席国の過半数を得て採択されました。これは御記憶に新しいところですね。

 こうした国際的状況の中で、昨年末からことし初めにかけて、国際的な反捕鯨団体であるグリーンピースとシーシェパードが、このIWC条約に基づき適法に実施をしている我が国のいわゆる南氷洋調査捕鯨船団に対し、極めて悪質な妨害活動を行っております。例えば、調査母船に対して体当たりをしたり、母船のプロペラをいわゆるチェーンで巻きつけて航行不能にしようとしたり、とにかく船体に影響を与え、人命まで危険にさらす。これは、一種のテロ行為ですね。しかも、彼らは、背景があるでしょうけれども、ことしもさらにこの活動を強化しようとしている。そう豪語していますね。

 そこで、お尋ねしますが、まず大臣、今のことは御承知ですね。基本的にどういうようなお考えをお持ちなのか。特にグリーンピース、シーシェパード、この船の船籍は、どうもオランダ、カナダなんですね。そういう国に対し、外交、対外的に、外務省として、我が国の主張を展開されているのか、その両国に対してちゃんと物を申しているのか、そのこともお聞きしたい。

 と同時に、大臣にちょっとお聞きしたいのは、例の今のFTA、EPA、日豪交渉。豪州というのは、一方では我が国に対し非常に好意的なことを言いますね。私も何度か豪州に行って、くすぐられるようなことも言われました。ひどいときは、ある議員団の会議の中で、横に座った豪州の議員が私にこう言うんですね。ねえ、小平議員、実は提案があるんだ、我々はイギリス連邦からの独立を目指している、国旗を変えたいんだ、しかし、我々は、あの南十字星、サザンクロスに強い愛着を持っている、これは残したい、邪魔なのはユニオンジャックだ、これを取っ払いたい、かわりにお国の日の丸を使わせてもらえぬか、こんなことまで言うのもいますけれども。

 とにかくあの国は、このことについても狂信的な、いわゆるエキセントリックな反捕鯨の旗頭ですね。こんなことがありまして、今、FTA交渉というこれからの大きな問題にかかっていくんですけれども、まず、具体的には長官、そして外務省、ちょっとお答えください、どういうふうに進めていかれるのか。

白須政府参考人 ただいまの捕鯨に関する、いわゆる妨害活動の関係でございます。

 お話しのとおり、昨年末から本年一月にかけまして、グリーンピースそれからシーシェパード、そういった反捕鯨団体が、南極海の公海上で、私ども合法的に科学調査に従事をいたしております調査船団に対しまして、不当かつ危険な妨害活動を行ったわけでございます。

 ただ、こういった公海上の妨害活動につきましては、妨害船の船籍国のみがこの妨害船についての取り締まり権限を有しておるということでございますので、私ども水産庁といたしましては、外務省の協力を得まして、ただいまお話しの、船籍国でありますオランダそれからカナダに対しまして取り締まり等の実施を求めているわけでございます。

 また、本年十一月十五日に調査船団が出航いたしたわけでございますが、その出航前に関係者とも協力をいたしまして、妨害が発生いたしました場合の対応手順につきまして意思統一をして備えるということと、あわせまして、外国船等の取り締まりの経験を有します水産庁の職員を監督官といたしまして調査船に乗船させまして、妨害現場におけます対応の指導に当たらせているといったことで対応しているところでございます。

田辺政府参考人 外務省といたしましても、ただいま委員から御指摘のございましたNGOの船舶による妨害行為は、公海上において合法的な活動に従事する船舶の安全に不当な危害を加えようとする是認しがたい行為であると思っております。また、人身の危険を伴う不測の事態を引き起こしかねない危険な行為であるというふうに認識をしております。

 したがいまして、昨年来の事態に対しまして、外交ルートを通して、それぞれの船籍国であるオランダ政府及びカナダ政府に対して、それぞれの国内法に基づいた適切な措置をとるよう要請をしたところでございます。

 また、委員から御指摘のございましたように、いわば多国間の場でございます国際捕鯨委員会におきましても、本年六月の年次会合におきまして、私どもの提案によります決議案、こうした妨害活動の危険性について報告をした上で、この妨害活動の抑止を促す決議案を他の四カ国、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、オランダとともに共同提案をいたしまして、これが採択をされたところでございます。

 政府といたしまして、今後とも、このような場を通しまして適切な対応を関係者に対して求めてまいりたいというふうに思っております。

小平委員 大臣、答弁は結構です。私が大臣に聞いてもらいたかったことは、今、大事な外交交渉を前にして、こういう国がある、こういう団体がある。マグロの問題で前段質問がありましたように、日本国民の大事な食料源であるマグロが今非常に狭められていますね。そういう中ですから、特にこの国の伝統的な食文化、鯨ですね。しかもこの国は、乱獲という過去の反省をしっかり踏まえて、今はしっかりと科学的調査に基づいて調査捕鯨を展開し、いずれ商業捕鯨にという方向にありますね。ですから、この国の大事な海洋たんぱく資源が、今、鯨というのに、マグロがこんな状況でしょう。ですから、大臣、このことをぜひ頭の中に置かれて対外交渉に頑張っていただきたいと思います。

 次に進みます。

 平成十三年に農協法の改正がありまして、その前、平成八年もありましたが、いわゆる兼職、兼業の禁止、制限というものが特に平成十三年にうたわれて、当時は全農業団体をそういう方向に持っていこうとしたんですが、これは自民党の理事、私も当時理事をしておりましたが、与野党合意のもとに、まず初段として、信用事業、金融事業をしておるところにこれを実施しよう、それで、中央会においては一つのワンクッションを置いて五年後の見直しをしよう、そういう方向で決めました。これは附帯決議じゃなくて、法律、附則をつけてしっかり明記した、このことが平成十三年。大臣も、このことは御記憶にありますよね。

 その後、平成十六年、またさらに農協法の改正等もあり、このときは例の監査、言うならば、農協がまあまあという中において、改善しなきゃならぬ、いろいろ全農の不祥事なんかも続発する中において、監査というものを全中に集約し、強化しよう、そういうようなことでだんだんと進められてきました。

 そこでお伺いしたいんですが、当時、私は、平成十六年ですか、お気の毒にもお亡くなりになった亀井さんが大臣で質問いたしました。五年後を目途としているけれども、必要な措置を講じる、そういうことについてどこまで検討しているのか、そんなことを含めてお聞きしましたところ、当時、まだわずか二年足らずですか、ですから、期間の経過がまだ少ないことから、今後さらに意見を聴取し、十分に状況を見きわめたい、こういう趣旨の御答弁がございました。

 そこで、五年後ですから、平成二十年の三月が五年という期限ですよね。そうなると、もう来年、年を越えたら、通常国会ではこれをしっかりと、政府でこのことの検討の結果、行政の遵法の義務として、立法府が決めたことです、それを受けて行政はそれをつかさつかさでやっているわけですね、行政の立場として、遵法の精神からこれをしっかり検討しなければならぬということなんですが、今時点でどの程度まで進んでおられるのか、お聞きしたいと思います。

松岡国務大臣 先ほどから先生に幾つか御指摘もいただきましたが、今の点からお答えしますと、農協法の改正、これは施行が十四年の一月一日となっていまして、それから、今先生御指摘の役職の兼職、兼業の禁止、これにつきましては十五年の四月一日、こういったことなものですから、まだ五年がたっていない、結論的に言いますと。したがって、五年がたつ二十年中には、我々、しっかりそれまでの経過を踏まえまして、整理をして検討してまいりたい、今はそのような方針でいるところでありまして、これがまず一つのお答えです。

 それと、先生、さっきのに一言だけお答えしますが、先ほど先生の農地・水・環境、これはもう小平先生の我々に対する激励だ、農水省が全部持つぐらいの気持ちでやれ、私は、そういう激励だと思って受けとめております。ただ一方で、どうしても国の補助事業というのは、国全体としての仕組みがあるものですから、農水省だけが例えば八割持つとか十割持つとか、なかなかそういうわけにいかないので、そういった国全体としての観点からも御理解をいただきたい、御激励だと受けとめます。

 そして、地財措置につきましては、私もこれは一緒に先頭に立って、この地財措置の確保は今努力いたしておるところでございまして、あの集荷円滑化のものがあるじゃないか、それをこっちに持ってくるというのはどんぶりが違うものですから、そういった点はまたひとつ御理解をいただきたいなと思っております。

 いずれにしても、御激励と受けとめて、しっかり財政の確保ができますように頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

高橋政府参考人 ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおり、この中央会の役員に関します条項につきましては、平成十三年改正の施行について、一般的法律改正は十四年でございましたけれども、この部分は十五年となっておるわけでございます。

 当時、亀井大臣のときもお答えをさせていただいておりますけれども、十五年から、まだ施行後、非常に実績が積み上がっていないという状況もございます。また、その後、例えば全農改革等大きな課題もこの関係で出てまいる。したがいまして、現時点ではなかなかこれについての総括ということが難しい状況でございますので、先ほど大臣からもお答えしましたとおり、二十年を目途とした検討結果の取りまとめということで対応させていただきたいというふうに思っているところでございます。

小平委員 役人の皆さんはそういう法律をつくった。これは今言ってもせんないことですけれども、我々は当時平成十三年に改正をして十四年からこのまま施行だ。しかし、きちんとあなたたちは、うまく附則で、我々の目の届かないところですよ、役職の兼職、兼業制限については一年間おくらせて平成十五年から。まさしくうまいものですよ。そういうことで、一年間の猶予を持ってやられた。だから、平成二十年三月。確かにそうです。大臣もそう答えられた。

 でも局長、では平成二十年三月にいわゆるお約束した期限が来るから、そこから検討したのでは五年目途ではないでしょう。六年、七年でしょう。五年経過した時点で、きちんと新たな方向がつくられていかなかったら意味がないでしょう。ですから、それには前もって、前の年度に、今までのこの四年間ですかの、推移を踏まえて検討した結果を来年ぐらいに出していく、それが行政の遵法義務でしょう。立法府を軽視するんですか。二十年三月になってから始めるんだ、そんなふざけたことは我々には通用しませんよ。そういう考えなら、我々は断固としてまた追及いたしますよ。それまでに間に合うようにしっかり進めていただきたい。

 なぜ私がこんなことを言うかというと、全中というのは系統のトップに君臨する大事な組織です。この国の農政の方向に向かって、農水省と連携をとりながらという大事な機関ですから、立派に頑張って職務、責務を果たしていただきたい。そのときに、全中の役員が単協の組合長なりを兼務していたのでは支障が出るということを私は心配しているんですよ。

 例えば、全中に役員を送り出している単協においては、組合長が留守だったら理事会すら開けないんですよ。ですから、今、優秀な人材が各農協にも、理事もいっぱいおられる。だったら、衆望を担って中央に出てくるんだったら、後は自分たちのふるさとは後輩に託して、若い人に農協組合長をやってもらって、しっかり地域の農協を守ってもらい、農業を守ってもらう。衆望を担って中央に送り出してもらった人は中央で頑張る。これが、理想的な姿だと私は思うんですね。だから、私はそのことを心配して言っているんです。

 とにかく、あのときに大変な議論をして決めたことですね。しかも、あの後、平成十六年にはさらに手も加えて、農協の監査まで踏み込んで改正したわけでしょう。こういう流れの中で、しっかり当時の経緯を踏まえてやっていただきたい、このことを申し上げておきます。大臣、よろしいですね、基本的に。

 山本副大臣、あと一、二分ありますので、よろしいですか。何か、決意のほどを一言どうぞ。大臣を補佐する立場で。

山本(拓)副大臣 出番をつくっていただきまして、ありがとうございました。

 今、小平先生の御発言、一つ一つ拝聴いたしまして、本当に現場の声に沿った代弁をされておられることは重々理解をさせていただいておりますので、しっかりと我々のやっていることが説明できるように、わかりやすい具体例を挙げて、今後、対応を構築していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

小平委員 頑張ってください。

 ありがとうございました。終わります。

西川委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。

 この委員会、この臨時国会で二度目だと思うんですが、初めて質問をさせていただきます。松岡大臣は農政のスペシャリストだというふうに伺ってございますので、ぜひいろいろ御教示をいただければというふうに思っているところでございます。

 最初に、先ほど来、何度か話題になっておりますけれども、経営所得安定対策についてお伺いをさせていただきます。

 さきの通常国会で担い手経営安定新法が成立をいたしまして、大臣も所信の中で、制度の周知、手続の円滑化、担い手の育成、確保等に万全を期すことを表明されておりまして、その後、実施要綱が七月に決定されたというふうに承知をしておりますが、先ほど来お話があるように、農民現場といいますか、農村現場において必ずしも十分に普及しているというふうには言いがたいところもあるのではないかという懸念もありますので、これは事務方で結構なんですが、まず、その品目横断的経営安定対策の対象者について、認定農家及び集落営農組織、これが当初かなり心配をされていたわけでありますが、農民の皆さん方は、これから冬の間に営農計画をつくらなければいけないので、なるべく早く、そのことがきちっと周知をされていなければいけないわけでありますが、この現状をまずお伺いいたします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 この品目横断的経営安定対策につきましては、さきの通常国会で成立をさせていただいたわけでございますけれども、来年四月からの施行に向けまして、現在、この秋に麦を作付けている農業者でありまして、対策の中の収入減少影響緩和対策、これに加入する者を対象に、今月十一月三十日までの間に受け付けを行っているところでございます。それ以外の方々は来年の四月以降ということでございますので、まだ間があるわけでございますけれども、この現在の麦の作付者で収入変動対策に加入されている方でございます。

 手元にございますのは、十一月十五日現在の速報の数値でございますけれども、申請者全体が全国で、認定農業者が一万二千二百四十八経営体、それから集落営農組織につきましては千百二十三経営体ということで、合計で一万三千三百七十一経営体となっております。

 また、このような経営体が作付を予定しております麦の面積でございますけれども、十万九千三百九十六ヘクタールということになっておりまして、十月までの間は農繁期ということもございまして申請等の動きが若干鈍かったわけでございますけれども、十一月に入りまして、代行の申請業務等、農協等からの申請も含めて、急速に今この数字は積み上がっている状況にございます。

 したがいまして、各県別等で若干まだ程度の差はございますけれども、今までの状況を私どもの評価といたしますと、特段おくれている、非常に問題だというような地域は今のところない。それなりに現在この申請というものが進んでいるというふうに理解をしておりますが、いずれにいたしましても、引き続き制度の周知徹底、十九年度からの本格対策に向けまして、四月まで私ども出先等あるいは関係団体等と連携協力を図りまして、円滑な導入に努めてまいりたいというふうに思っております。

    〔委員長退席、岩永委員長代理着席〕

佐々木(隆)委員 実施は四月ですし、後でちょっと触れたいと思うんですが、この制度そのものは、農家から申請が上がってきて、それを認定してお金を払うというシステムなものですから、言ってみれば、政府の方としては秋まででもこれは間に合うわけです。しかし、農家の方はどうなるんだろうというところの計画に基づいて作付計画をつくるわけですから、そういった意味では、できるだけ早くいろいろな政策というものは伝えていっていただきたいということをお願い申し上げたいというふうに思います。

 ちょっと技術的な話でありますが、二点ほどお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、生産条件不利補正交付金、いわゆる緑ゲタと言われるものですが、これの算定単価が、国が示した算定単価と市町村の算定単価に格差が生じてきているということが今起きてございます。それは、片方は作付統計を使い、片方は共済の単収を使っているというようなことがあってそういう格差が起きてくるわけなんですが、これもまた生産現場の混乱を招く原因になっているんです。これの説明と同時に、当初、これは共済の単収を使うというふうになっていたと思うんですが、その辺について事務方の答弁をお願いいたします。

高橋政府参考人 過去の生産実績に基づきます交付金の面積単価、市町村別の単価でございますけれども、これは法律の三条三項、七項に基づきまして、対象であります農業者が生産しました農産物別の標準的な生産費、それから販売価格、そして単位面積当たりの収穫量を考慮した上で、審議会の意見を聞いた上で決めるということでございます。

 具体的には、主産地におけます担い手の生産コストと販売収入の差額に着目しました全国平均の数量当たり単価、これが全国ベースで最初にお示しした単価でございますけれども、これを基準といたしまして、これまで、当然のことながら、地域ごとで生産性の向上努力というものが異なっております、地域別の収量等が違っておったわけでございますので。このような努力については的確にそれぞれの単価に反映させる必要があるということが一つ。

 それからもう一つは、当然作物でございますから豊凶変動ということが年々ございましたものですので、過去の豊凶変動をなるべく排除してこれを平準化させるということから、先ほど申し上げました全国の単価に対しまして、一定期間、平準化しました平年ベースでの市町村別の収量を用いて計算を行っているところでございます。この結果、いわゆる単収水準の高い市町村単価は当然のことながら高い単価になるということでございます。

 その際、平年ベースでの市町村別収量につきましての唯一の客観的かつ公的なデータと申しますのは、農業災害補償制度におけます市町村ごとの平年単収でございます。したがいまして、これを用いまして、先ほど申し上げた趣旨から単価を設定いたしまして、八月七日付で官報に告示をしたところでございます。

佐々木(隆)委員 いや、再度お聞きはしませんけれども、それはそうなんでしょうけれども、片方は共済を使う、片方は、国の方でやるときには作物統計の数字を使うということに現場が不信感を持ってしまうことになるので、そういうことのないようにということもあわせて、ぜひこれから説明をしていただきたいというふうに思います。

 もう一つなんですが、生産実績の方でありますけれども、これは時折指摘をされているんですけれども、例えば生産実績で、新規参入の場合の生産実績はどうなるのかということ、それから、規模拡大、いわゆる賃貸借でありますとか権利移動をした場合の生産実績はどうなるのか、それから、酪農家が畑作に転換した場合はどうなるのかなどなど、今まで想定していなかった部分が考えられてくるわけなんですけれども、その酪農家の部分は、特に今、乳量調整をやっているわけですから、これもある種国策で生産調整しているわけですね。

 そういう中で、例えば畑作に転換をしたという場合に、この面積が実績がないわけで、カウントされないというような心配も、実態がどうなのかお伺いするんですが、こういうことも起きてくるので、これらの要件設定などの対策について事務方にお願いをいたします。

高橋政府参考人 今お尋ねのございました過去の生産実績がない場合の取り扱いでございますけれども、これは当然のことながら、今回の法律で措置しておらないものでございます。

 これにつきましては、明年度の予算要求におきまして、品目横断の経営安定対策加入者の中から、農外からの新規参入者、あるいは生産調整の強化に対応して麦、大豆等の生産を拡大する者、あるいは経営規模を拡大いたしまして麦、大豆等の生産を拡大する者でありまして、当然のことながら、麦、大豆でございますので、需要者の需要に見合った品質、新技術の導入などの要件を満たす者に対しまして、過去の生産実績がない場合であっても、この麦、大豆の作付拡大分につきまして、生産実績に基づきます支払いと遜色ない水準の支払いを行うべく、現在、担い手経営革新促進事業といたしまして、総額七十一億円の要求を行っているところでございます。この事業の詳細、具体的内容につきましては、今申し上げた趣旨でございますけれども、当然のことながら、予算要求ということで財政当局との調整査定事項ということになります。

 私どもといたしましては、生産現場の実態をきちんと踏まえました内容となるよう、現在、財政当局と鋭意折衝しているところでございます。いずれにいたしましても、十二月、本予算が決まりましたならば、当然のことながら、早急にお示ししてまいりたいというふうに思っております。

佐々木(隆)委員 そういう対策をやっていただいているということでありますので、ぜひ減額されないように、またしっかりと予算を確保していただきたいというふうに思います。

 それは、酪農の場合も対象になるんでしょうか。

高橋政府参考人 先ほど申し上げましたように、基本的に品目横断の対策に加入をしていただくということがまず一つの要件でございます。そして、現在想定しておりますのは、新規参入でありますとか、あるいは米の生産調整の強化に対応して麦、大豆の生産を拡大していく、あるいは経営規模の拡大によりまして麦、大豆の生産を拡大するということでございます。

 ただいま御指摘のございました、例えば酪農家の場合、そういったものに関してどの程度の需要あるいは現場の実態等があるのか。あるいは、そういった段階で作付されます麦、大豆というものについて、当然のことながら、麦は御承知のように播種前契約ということでもう既に量等は決まっておるわけでございます。その辺の実態等を見た上での対応措置になっているというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 このことについてはもう終わらせていただきますが、酪農の場合も、今いわゆる生産調整、これは国策で生産調整しているわけですので、そういった意味では、稲作の生産調整と私は同じように考えるべきだと思うんですね、現実に乳量の生産調整がされているわけですから。その点は、ぜひ考慮いただきたいというふうに思います。

 もう一つ、きのうの朝日新聞ですが、皆さん方は余り聞きたくない言葉のようでございますが、農地の貸しはがしというのが報じられておりました。例えば、自主的に農地を賃貸借でつくっている場合に、今度の集落営農に入るからもう貸すのをやめたというようなことが現実に起きてきているようなんですね。そういった場合のことについて、これからそういったことも少し心配をされるのではないかというふうに思うんです。

 その新聞の報道によると、農水省は、農地利用の調整は市町村の農業委員会の役目であり、中央省庁は出ていく立場にないというふうに農水省幹部が答えたというふうに報道はなっていたんですが、どこかの文科省の答弁か何かで聞いたことのあるような言葉なのでありますが、これもいわゆる国の政策変更によるトラブルでありますので、長期的に農地の利用だとか集積という視点からも、これらのことについて何らか対策を講じておられるのかどうか、お伺いをいたします。

高橋政府参考人 品目横断的経営安定対策の導入に伴いまして、従来、認定農業者等が行っておりました営農規模に対しまして、後から集落営農組織を立ち上げるということで、両者間におきまして農地の利用調整が必要となる事態というのは全国各地で生じております。

 私どもも、このような事態につきましては、特に集落営農を立ち上げる際に、認定農業者との間での土地利用については、例えば利用区分を設ける、あるいは認定農業者自身が集落営農に参加をするというような形で円滑な土地利用調整が行われるよう、これまでも県、市町村あるいは担い手育成協議会を通じて指導しております。具体的に申し上げますと、私どもが把握しているものでは、相当程度これが円滑に行われている事例も多数ございます。

 他方、今御指摘の記事にありましたような形で地域間で問題を抱えている事例ということも承知をしているところであります。私ども、これにつきましては、当然のことながら、現場の状況がどうなっているかということにつきまして県あるいは市町村あるいは農政事務所等を通じて聞いておるところでございますけれども、やはりそれぞれの御意見、これは別に違法行為を行っているわけではございませんので、それぞれがそれぞれの今後の経営の中でお考えになった上で議論されていることで、当事者間において同じというようなことにもどうもなっておらないところでございます。また、当然、市町村、県等がこのあっせんを行っているということもございます。

 新聞記事で今御指摘のことがあったわけでございますけれども、土地利用調整につきましては、これまでも、規模拡大、担い手の農地利用集積というのは、やはり現場の実態を知っておられる市町村、農業委員会、あるいは普及等も含めました担い手育成協議会等の支援システムがまず第一にこういったような調整をしていただくということが重要ではないか。国自身が地域の細かい状況をすべて網羅して知った上でこの調整ができるということでもございませんので、やはりそういった形で行っていただくことが重要ではないか。その際には、国が制度上の運用問題等につきまして関係機関に対しまして必要な助言指導を行っていくということは当然必要であるというふうに思っております。

 今回の事態を踏まえまして、このような円滑な土地利用調整の必要性につきましては、昨日、市町村、農業委員会等の関係指導機関に対しまして、各地での農地の利用調整状況の的確な把握とともに、問題がある地区の指導に際しては、必要に応じまして、地方農政局、農政事務所等の国の出先機関に対してこれら指導機関が相談をするよう、改めて指導させていただいております。円滑な調整について、引き続き努力してまいりたいと思っております。

佐々木(隆)委員 指導という言葉がいいのかどうなのかはちょっとわかりませんけれども、国の政策変更によって生じたことですので、それは確かに通常のことであれば農業委員会、農地に関することですから農業委員会ということになりますが、政策変更に伴うものですから、そこのところはぜひ情報をしっかりと密にしていただきたいというふうに思います。

 次は、先ほど来話題になっております農地・水・環境対策についてお伺いをいたします。

 先ほど来、財政難の話は出ておりますが、一部自治体では、同じような制度で先にスタートをしております中山間地等直接支払い、これをやめてこちらに乗りかえるというような、財政難が理由なんですが、そういったようなところも出てきているわけであります。この一年間、モデル事業を実施してきたわけですが、これは担当者の方で、実態などを含めて、いかがでしょうか。

山田政府参考人 ただいまお尋ねがございました中山間地域の直接支払いとの関係でございますけれども、今年度、モデル事業を実施しておりまして、モデル事業の実施地区では、要するに中山間直接支払いと今度の農地・水・環境保全向上対策をそれぞれ交付するということで実施をしておりまして、この中山間地域の直接支払いをやめているというような事例は聞いていないところでございます。

 それから、中山間直接支払いと今度の農地・水・環境保全向上対策の来年度以降本格実施になった段階での対応でございますが、これは今私どもが聞いている話では、例えば、一部の自治体で中山間直接支払いが実施されているところについては、今度の新しい農地・水・環境保全向上対策を実施しないということで調整するというようなことを検討している自治体もあるやに聞いております。

 しかしながら、先生御案内のとおり、中山間直接支払いというのは条件不利の地域についてその生産の格差を補てんするという考え方であります。一方で、農地・水・環境保全向上対策は、そういう地域全体で社会共通の資産、資本というものを守っていこうということで、全然趣旨が異なるわけでございまして、国としては、これは両方実施できる、一定の要件の調整をしながら実施できるという枠組みをつくっておりますので、この辺について、ただいまのところは、県なり市町村などで検討段階でございますので、まだこういうことで決めているということではないと思いますけれども、今言いましたように、国の立場、考え方を十分地方公共団体にお話しして説明していきたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 今、実施できるというお話がございましたが、実施できるというものではなくて、これは当然別の政策ですから、かぶってやるべきものだというふうに私は思っています。

 そこで、これもすべて財政難というのがベースにあるわけでありまして、七月に実施要綱が出ましたね。その中で、地方の裁量を認めるという部分が出てきたんですが、これはどういう内容なのか、お伺いをいたします。

山田政府参考人 お答えいたします。

 七月に経営所得安定対策等実施要綱を農林水産省で決めておりますけれども、そのときには地方からさまざまな要望があって、できるだけ地域の自主性、裁量が生かされるような仕組みにしてほしいという要望がかなりありました。特にその中で単価、直接単価と言っているわけではないんですが、実際には、地域の中で合意ができれば一定の要件のもとに単価を引き下げるというような措置も講じているところでございます。そういった内容を地域で決められるということを要綱で決めているところでございます。

 それから、さらに、そのほかの点で地方の裁量がどういうふうに認められるべきなのかということについては、今後、予算編成の過程でよく詰めていきたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 これは一概に、ちょっといかがなものかというふうには思うんですが、しかし、地方の現実を考えると、私も、なかなかこの先はちょっと言いづらいところがあるんですが、要するに倍までいいですよ、二倍までいいですよということになっておりますので、逆に言うと単価半分までいいですよと言ったのと同じことになるわけで、そうすると、今度またいろいろなトラブルが地域の中で起きないように、これはぜひ丁寧に説明をしていただきたいなというふうに思っているところであります。

 次は、この農地・水・環境対策等の共同活動とセットになっている営農活動、いわゆる環境負荷の大幅な低減に向けた営農活動の支援というものについてお伺いをいたします。

 一点だけですが、一つは、対象活動ということですが、共同活動をやっている活動組織と、それからいわゆる営農活動と言われている人たちというのは必ずしもリンクしない場合が私はあるのではないかというふうに思うんです。それはどういうことかというと、いわゆるこの営農活動、先進的な有機農業などに取り組んでおられる方というのは既にもうグループをつくってやっておられたりしているわけです。それは、今これからつくろうとする共同活動の固まりを超えて、ある意味でもう既に活動されているような方々がたくさんあるわけでありまして、これは組織内でというふうに限定をされているわけですが、そういう場合はどうなるのかということですね。

 それから二つ目には、こういう先進的な取り組みをされている方々というふうに思えば、既にエコファーマーとして認定されている方々がおられるのではないかというふうに思うんですが、その方々と、これから営農活動の組織をつくられる皆さん方との間に差が生じてくるようなことがあるのではないかということ。

 三つ目には、集落営農の場合にはエコファーマーの認定を受けなくても対象になるというふうになっているわけなんですが、これでは、消費者側から見て、今まで認定されていた人たちの評価をむしろ下げてしまうことになる危惧もあるわけですが、その辺の三つについての対策を、余り時間がなくなってきましたので、できるだけ手短にお願いいたします。

    〔岩永委員長代理退席、委員長着席〕

西川政府参考人 農地・水・環境対策の営農活動に対する御質問でございますけれども、この事業そのものは、化学肥料なり化学農薬を大幅に低減する先進的な取り組みについて、個人ではなくて地域としてまとまった場合に対して支援をする、そういうことで、地域振興にも資するんだというところで新しい対策を講じようということにしているところでございます。

 その際に、地域の土地なり水の環境整備のところと営農活動と、活動主体も違うだろう、あるいは範囲も違うんじゃないかというお話でございますけれども、確かに、一方の水管理とか地域の土地管理の場合はいろいろな方々が入ってきて行うわけですけれども、営農活動は農家の方々が行うということで、そういう面では主体は違うし、また、活動の範囲も、集落単位で行うのは基本単位だと思いますけれども、場合によればもっと大きなところで、先ほど有機農家の方々の事例でお話がありましたけれども、例えば、集落ではなくて、農協の部会みたいなところでやっているものもあるということが実態としてあろうかと思います。

 そういうことで、地域のまとまり要件ということの判定につきましては、繰り返しになりますけれども、農協の営農部会などを単位として、化学肥料、化学合成農薬を大幅に低減する取り組みが進められているような場合は、要するにそういう大きな広がりを単位として要件判定をしてもいいといったような運用をしたいというふうに考えております。

 あと、先進的な人々とこれから入る人の関係というか、これは、やはり実績のある方々が中核となって、いろいろな地域のリーダーとして指導もしていただきながら地域全体で取り組んでもらいたいということでございまして、ここに、今回の対策で先にやっている人と後から入ってくる人の差というのはないということでございます。

 あと、エコファーマーについてのお尋ねもあったわけでございますけれども、評価が下がるのではないかというようなこともあるわけでございますけれども、やはりもちろん営農でこれまでの実績がございますので、その方々と個別の消費者との、あるいは結びつきも当然あるでしょうし、あるいはこれからということもあるでしょう。私どもとしては、今回、地域でまとまって、きれいな環境のもとで環境に配慮した営農を行う、その中でいろいろな外部とのつき合いも広がってくる、そういうことを期待しているという面もございまして、そういった面では実績の差というのは当然出てくるだろうというふうには考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 大臣にお伺いをしたいと思うんです。今までのやりとりも聞いていただいたと思うんですが、実は、今の営農活動についていえば、共同活動という村活動、村支援の中に営農活動という業の支援をのせたというところに、ちょっとどうしても無理が生じてきているのではないかという気がしています。しかし、この法律はスタートしていますから、その中でできるだけ柔軟に対応をしていっていただきたいというふうに思います。せっかく先進的な取り組みをされている方々ですから、そういう方々は。そのことは一つ申し上げておきたいというふうに思うんです。

 大臣にお伺いをしたいと思うんですが、今回の経営所得安定対策というのは、いわゆるヨーロッパのデカップリングというものが一つのモデルになっているというふうに思うんです。大臣は、そのスペシャリストとして、これまでもいろいろなところで、法律をつくる段階からいろいろかかわってこられたのではないかというふうに思うんですが、この経営所得安定対策、今回の法律を、そういう視点でどのように推進しようとしているのか、今までのやりとりも含めてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

 この後、ちょっと林業の質問もしたいので、よろしくお願いいたします。

松岡国務大臣 まず最初に、佐々木先生にお礼を申し上げますが、激励をいただきましてありがとうございました。

 と同時に、私も佐々木先生のことはよく存じているつもりでありまして、私、天塩の営林署長をやっておったものですから、先生の士別とは随分近いところでございまして、そしてまた、先生は農業現場から出てこられた方でありまして、一番現場にお詳しい、まさに生の実態をよく御存じだと思っておりますので、そういった観点からも、私どもも御指導をぜひともよろしくお願い申し上げたい、このように思っております。

 そこで、先ほどのお尋ねでございますが、いわゆる昔から言われたデカップリングというのは、これは条件不利地域に対する格差補償制度的な、そのような意味合いが私は強かったんだろうと思っております。それが、ヨーロッパにおきましても幾つか変遷を経て、いわゆる直接支払いという形で、生産やそういったことに直結しない、その直接支払いですね。

 だから、今、世界じゅうWTO農政のもとにあるわけでありますが、目指すところは価格支持ではなくて、価格は市場にゆだねて、そして所得は政策で守っていく、そういう大きな一大方向があると思っておりますが、そういう中で、従来のいわゆる格差補償的なデカップリングも含んで、環境に対する支払い的な面、それからまた生産に直結しないが過去の生産実績等に基づく支払い、こういった幾つかを総称して、今はデカップリングと言っているのかもしれないな、定義がはっきりはしませんが、そう思っております。

 そこで、では、どう進めていくのか、こういうことでございますけれども、今回、農地・水・環境も含めて、私ども、品目横断的経営安定対策、こういった形で、いよいよ中山間所得補償に加えて、平場にも適用してこういったことを進めていこう、こういうことでございますので、一つ一つ先生が御指摘いただいた問題点をお聞きいたしておりまして、ごもっともな点が幾つもございます。そういったことをしっかりクリアしながらまずはこれの定着を図っていこう。

 冒頭申されましたように、受けとめ方とか理解の仕方とか、まだまだ始まって間もないというか、これからなものですから、随分そういった面でまだいろいろそごもございます。そういった点もしっかり理解を求めて、御納得をいただくように努力をしながら、とにかくこの政策をしっかりと定着をして、戦後農政の大転換と言われるこの政策の実現に向けまして、円滑な定着に向けまして、最大限の努力を払っていこう、今はそのような心構えで取り組んでおります。

佐々木(隆)委員 私も、昨年の九月、国会に来たばかりですから、戦後農政の大転換というものに大いに期待をしながら来たわけでありますけれども、ただ、結果として少し残念に思っていることがあります。

 今回の二つ、米対策を入れると三つですけれども、結果として大規模化あるいは補助金農政というものから脱却し切れていないのではないか。それから、今の大臣がおっしゃられた、価格は市場に、所得は政策でという部分についても、大臣もヨーロッパのことをよく御存じですから、そういう意味からいうと、まだとても十分と言えるような状況にはないのではないか。

 そういった意味で、もう一つ、先ほど来の政策は全部そうなんですが、結果主義なんですね。要するに、農業、米もそうなんですが、生産現場の人たちに大枠を示せ。生産現場の人たちに配分やら実際の作付やらというのは任せて、それが上がってきて、それに対してチェックしてお金を支払うというやり方。本当は国政、農政としてはやはり計画主義、こちら側の計画について計画をしっかりと示して、そしてそれに基づいてどうやっていくかというものを示してこそ政策とリンクするというふうに私は思いますので、そういった意味で、走り出した政策がより農民のためになるように、あるいは農村という地域のためになるように、ぜひ大臣の御奮闘をお願い申し上げたいというふうに思います。

 時間が余りありませんが、通告しておりましたバイオ燃料については、ちょっと済みませんが飛ばせていただきます。

 新たな森林・林業基本計画についてお伺いをいたします。

 本年の九月八日に、森林・林業基本法に基づく新しい森林・林業基本計画が閣議決定されたわけでありますが、今回の森林・林業基本法のもとで、二度目ですね、この基本計画というのは。

 この基本計画の取り組みの検証というのが八ページからずっとあるわけなんですが、その中で、一番最初のところの終わりのところですけれども、目標達成状況が低位にとどまっている。この要因の一つとして、課題解決のための重点的に取り組むべき事項が明示されていなかったことが関係者の主体的かつ継続的な取り組みを喚起できなかったというふうに書いているわけなんです。森林の有する多面的機能というところでいえば、育成複層林への誘導については、施業方法や対象地選択の考え方、技術が十分に浸透していなかったなどとしているわけでありますが、こうした考え方あるいは技術、では、どの程度前の基本計画の中で確立されてきたのか。あるいは、浸透が不十分というふうに分析しているんですが、それはなぜ不十分だというふうに分析したのか。

 さらにまた、林産物の供給及び利用というところでは、林業生産活動の停滞や国産材の生産、流通体制が問題だというふうに言っているんですが、これは、森林・林業基本法を制定したときからそのことは言われている話でありまして、旧の基本計画のもとでどんな施策が講じられてきたのか。

 いずれも、新しい計画をつくるのはいいんですが、前の計画をどれだけしっかりと検証したのかという部分においていうと、極めて普通の、どこかもうちょっと外部の人が評価するような言葉で書かれていて、しっかりとした分析に基づいた評価ができないと、新しい計画をつくっても余り意味がないことになってしまうわけなんです。

 そこの評価のところを聞くのは、ちょっとどうなんだと聞いても大変でしょうけれども、そういうことを踏まえて、二十六ページのところから、第三として、講ずべき施策というものがあるわけでありますが、余り時間がありませんので、一つか二つ聞きます。

 公的関与というのが3であります。この公的関与のところについて、公的関与をすべきだというふうな人たちあるいは自助努力でやるべきだというような人たち、それぞれ林業者あるいは消費者といいますか、利用者などなどによって若干違いはありますけれども、やはりそれなりの公的関与というものの声はあります。加えて、不在村の地主の問題もあります。

 そういったことを踏まえると、公的関与というのは必要なのではないかというふうに私は思うんですが、しかし、現実には、三位一体の改革だとか定数削減だとか地方交付税のカットだとかというような状況があります。そういった中で、この公的関与というものについてどのように進めていくのか。

 さらに、その中で、林業公社というのが地方にありますけれども、重要な役割を今まで果たしてきたわけですが、これらについてあわせてお伺いをいたします。

川村政府参考人 お答えをいたします。

 森林整備につきまして、公的関与の問題でございます。

 これは、改めて申すまでもなく、森林は国民全体の資本ということで、緑の社会資本とも言うべきものでございます。この整備は、もちろん森林所有者の役割もございますが、市町村、県あるいは国といった公的な関与も当然必要なわけでございます。

 そして、森林整備、例えば今おくれております間伐でありますとか造林、そういったものにつきましてはかなり高率の補助体系にしております。また、国民の生命財産にかかわります治山事業、こういうものについては、基本的には森林所有者の負担を求めない、こういった形での公的関与をしておるわけでございます。

 また、公社の問題、これも林政の大きな課題だというふうに認識をしております。なかなか造林等が難しい奥地とか、水源涵養上非常に重要なところの植林を公的な立場でやっていただいたわけでございます。ただ、今現在で申し上げますと、材価の低迷もございまして、なかなか手入れが行き届かないということもございます。採算性の問題もございます。

 そういうことで、我々としましても、この公社の問題につきましては研究会をやりまして、いかに援助をしていくかということでの検討をやりまして、この十八年度からかなり思い切っていろいろな措置を講じたところでございます。今、その措置を講じた場合に長期的にどういう収支が図られるのかといったことのシミュレーションを各県の担当者とやっておりまして、またそれを踏まえて、さらなる対策が必要であればそういうものをやってまいりますし、我々としてもしっかりこの問題は取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

佐々木(隆)委員 最後の質問になろうかというふうに思いますが、先ほども申しましたように、基本法のもとで二度目の計画をスタートさせようということですから、まず、前の計画がどこがどうして成らなかったのかというところをしっかり検証していただきたいというふうに思います。

 もう一つ、三十六ページのところから、林産物の供給及び利用というところがございます。

 一つは、林産物としてどう安定供給していくかということになるんですが、民有林から国有林までいろいろあるわけですけれども、ということになれば、当然のことながら、そこの供給体制のために森林組合のウエートというのは非常に大きいと思うんですね。それと、もう一方では民間の林業事業体があるわけで、ここの連携。競争させた方がいいという人たちもいるようでありますが、すみ分けをして、森林組合というのは、地域の中でも、地域づくりという意味でも大変大きな役割を果たしているので、何らかそういう形が必要なのでないかということと、もう一つ、育成というところでいえば、流域管理システムというのが私どもの地域ではそれなりに進んでいるんですけれども、全国的に見ると必ずしも進んでいない地域もあるようなんですが、その点の二点。

 それと、もう一つは、林業労働者ですね。今五万二千人ですか、大体見合っているというふうに言われていますが、しかし、問題は年齢層でありまして、これから先の高齢化というものにどうこたえていくかというようなことなどもあるんですが、この三点についてお伺いします。

川村政府参考人 ただいま三点、お尋ねがございました。

 最初の林業事業体と森林組合の連携の問題でございますけれども、これは非常に大事な問題であると思います。

 つまり、今幸いにして国産材が使われ始めようという明るい兆しがございます。川下側の大型ユーザーのニーズに対応するためには、どうしてもやはり大量に大きなロットで安定的に供給していくというものが必要でございまして、そのためには、今申されましたような林業事業体、そして民有林、国有林も含めて、一体となって安定供給を図っていく、こういうことをしないと本当の国産化時代というものは迎えられないと思っていますので、ここは非常に大事な点だと思っております。

 それから、二点目の流域単位、これも今の答弁と絡みますけれども、やはり経済圏といいますか木材の生産の現場、それがやはり流通をできるだけ効率化しないといけないということになりますと、やはり流域が一つの基本になろうと思っております。そういう意味で、私どもは、今回も新生産流通システムというのを十八年度やりますし、来年もこの基本計画を受けまして安定供給のための事業を考えておりますが、そういった流域全体をとらえたような大きなロットでの取り組みを強化していきたいと思っております。

 それから三点目ですが、労働力。これは、私ども、非常に頭の痛い問題でございまして、緑の雇用対策で幸い若い人も入ってきておりますが、もう一つはやはり効率化のために、路網と機械化体系、こういうことで作業の効率化を図ることによって労働力の足らざるところを補っていくことも大事だろうというふうに思っております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございます。

西川委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 まず、今も多くの委員の中で議論されていますけれども、農地・水・環境保全向上対策についてお伺いしたいというふうに思っています。

 来年の四月からこの政策が実施されます。政府は、通常国会で品目横断的経営安定対策と車の両輪の政策だということでずっと説明してまいりました。そして、先ほども議論されていますけれども、概算要求段階から、そして予算要求、そして予算の確定時期に今あるというふうに思うんですが、この農地・水・環境保全向上対策についてこれまで政府が考えてきたことと地方が取り組んでいること、現時点でどのような状況にあるのか。政府が考えている程度に、各地域では申請が上がってきているのか、それともまだまだそういう状況ではないよという状況なのか、これをまず冒頭お聞きしておきたいというふうに思います。

山田政府参考人 農地・水・環境保全向上対策の全国の状況ということでございます。

 この十九年度から本格導入をするということで、行政機関あるいは農業団体、それから地域住民の方も含めて、さまざまなルートで普及浸透を図ってきております。

 こういった推進活動、普及活動によりまして、全体といたしましては本対策への理解が深まってきております。取り組みの機運も大きくなってきているところでございますけれども、地域によっては、先ほど来御議論がありますように、地方公共団体の財政状況などから取り組みがちょっと鈍いなというようなところも見られます。

 また、地目別で見てみますと、共同活動を行う素地があります水田におきましてはかなり活動が盛んでございますが、やはりそういう素地が余りない畑作、草地での取り組みがやや鈍いというような状況でございます。

菅野委員 具体的に、当初想定したところに達しているのかまだ達していないのかという返事は聞けなかったんですが、過渡期だということで、これから議論されていくんだろうというふうに思うんですが、先ほどからも議論になっていました、私も通常国会のときに、この農地・水・環境保全向上対策について、地方自治体に、都道府県が四分の一、市町村が四分の一という仕組み、制度そのものからくる矛盾点が暴露するんじゃないかということをずっと私は指摘してまいりました。地方自治体は今日的に、財政的に非常に厳しい中でこの制度を導入していくということに対して、問題点があるんじゃないかということで指摘してきました。

 そして、通常国会のときに、この議論をするときに、地方自治体が財政難で裏負担ができないからということで、国の一つの水田における二千二百円という部分も使えないでしまう、そういう状況が生じてくるんじゃないか、そういうことが起こらないようなしっかりとした取り組みを行うべきだということをずっと指摘してきました。

 ただ、先ほども、地方に要綱を示して、地方の自主性、裁量を認めるという方向も示したと言われていますけれども、私は、国として水田でいえば四千四百円を全部負担するんだという気構えで取り組んでいかなければならないというふうに思うんですが、財政難から地方の交付金の引き下げや独自の交付基準を検討する自治体のこのような動きに対して、どのように実態把握しているのか、そして、このような動きに対して国はどのような認識を持っているのか、あわせてお聞きしたいというふうに思うんです。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策、これにつきましては、国ももちろん受益をいたしますが、地方公共団体なり地域住民なりの方々も受益をするということでございまして、国と地方が連携をしながら一体となって、それぞれ負担をしていくという考え方で実施をするのが適当であるというふうに考えております。

 こういった中で、先ほど委員がおっしゃいましたように、地域の方で、できるだけ自分たちの自主性というんでしょうか、裁量を認めるような仕組みにしてほしいという要望があるのも事実でございます。

 そのような要望、いろいろあるんですけれども、実態として、例えば、先ほどもちょっと議論になっておりましたけれども、中山間直接支払いの対象地域を除外するというような絞り込みを検討している地域ですとか、あるいは従来から行われてきたような簡易な、草刈りのような活動については交付金を充てることを認めないようなことを考える、交付金の使途を少し制限していくというようなことを考えている自治体など、いろいろな検討が今地域でなされている状況にございます。

 このうち、中山間の直接支払いにつきましては、中山間直接支払い制度が個々の農家を対象として平地と農業生産条件の格差を補正するということでございますので、この趣旨が、農地・水・環境保全向上対策とは異なるものでございます。中山間直接支払いの対象地域においても農地・水・環境保全向上対策が実施できるという考え方で国としては仕組みをつくっているということでございますので、両対策の趣旨を地方公共団体にも十分御理解いただくように努めていく必要があるのではないかと考えております。

 一方、二番目に申しました、従来行われてきたような活動に交付金を充当しない、より高いレベルの活動を地域では目指していくんだというような形で使途の制限を検討しているところもございます。これについては、私ども、先ほど言いましたように、農地、水、環境というものは地域全体の、あるいは社会全体の資本であって、これをより向上していくんだというような国の考え方、また一方で、地方の自主性のもとに、よりいろいろなものを目指していかなくちゃいけない、目指すべきだと考える、そういう両方の考え方を十分調整しながら進めていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、十九年度概算要求を行って、今まさに財務省と調整を行っている段階でございますので、そういった調整の中でも、地方公共団体と国との間でそごが生じないように準備をしていく必要があるというふうに考えております。

菅野委員 中山間地域への直接支払いとの関係についても、制度設計の段階からずっと議論してまいりました。今言ったように、制度は全然違うものだ。ただし、地方自治体からすれば、都道府県と市町村からすれば、財政が厳しいがゆえにそういう状況を検討せざるを得ないところにあるということなんです。

 松岡大臣、今の議論を聞いていたと思うんですけれども、今日的な地方財政の危機というのは、未曾有の状況の中に新たにこの制度を導入していこうという段階です。そして地方は、今具体的な中身が示されていないから、逆に言うと、申請が上がっても、あなたたちはここをもう少し我慢しなさいよという形で抑え込んでいるのが実態だというふうに私は思うんです。

 それを国として、制度、仕組みをこういうふうにつくりましたと言えば、そして、その仕組みの中で地方交付税をこの制度にしっかり組み入れていきますということを地方に示せば、今言った議論というのは起こらないはずだ。今日の段階でそこが明確ではないということで、地方はこの制度に対して疑心暗鬼になっているというのが今日の状況だと言わなければなりません。

 それで、総務省に地方財政措置をお願いしているというふうに大臣は言っていますけれども、このことを早急に結論づけてそして地方に示していかないと、来年四月から入っていくわけですけれども、地方は混乱していくというふうに私は思っています。財政力のあるところはどんどんこの制度を活用するという方向になると思うんですが、財政力の厳しい地方においては、逆に、中山間地域を活性化していかなきゃならない地方の方が抑え込んでいくという状況が生まれるというふうに思うんですけれども、ぜひ大臣、今後の方向性についての地方へのしっかりとしたメッセージを当委員会で発していただきたいというふうに思うんです。

松岡国務大臣 菅野先生、いろいろとまた大事な点について御指摘をいただいたところでございます。

 今の農地・水・環境の政策、この推進につきまして、地方によっては、今先生おっしゃいましたような、例えば中山間の所得補償を既にやっているから、これはもう、それをやっているところは遠慮してくれとか、そういったような事実もあるといったようなことも承知をいたしております。

 しかし、基本的には、この制度はこの制度、またこれはこれで別なものである。したがって、これはダブって二つ一緒にやることも当然できるし、また可能である。二つ一緒にやるということは、ある意味では、逆に言いますと、やることによってなお相乗効果も上がる、私どもこういうふうに思ってつくった制度でもございます。

 そこで問題は、何でそういうことになるかというと、お金がないということで、今先生御指摘のとおりの状況が起きているところもある、こういうことであります。そこで、地方の方に、自治体の方に、この点についてのいわゆる地財措置、これは十二分とはいかないまでも十分に措置ができるように、我々も努力をするし、それはまた総務省の方でも必ずおこたえをしてもらうということで、ひとつそこは安心してやってくれ、十分そのことを理解して受け入れて進めてやってくれ、こういったことのメッセージをしっかり伝えなきゃならぬということについても、私どもそのように自覚をいたしております。

 ただ、何といっても予算編成を通じてこれが整理されていくものですから、今の時点で、我々、まだ予算編成はこれからでありまして、財務省とももちろんですが総務省との折衝も、また全体の地財措置の枠もこれからなものですから、そういう日程がどうしてもこれは一方にございます。そういう中で、今先生の御指摘も踏まえまして、最大限の取り組みをして、そして私どもの目指すところは満額確保できるように頑張ってまいりたい。

 そのことをしっかりと地方に伝えながら、自治体に伝えながら、この政策が十分に実行されていきますように努力をしてまいりたいと思います。これはまた、与党、野党を問わず、与野党を通じてひとつ御支援を賜りたい、このように思っております。

菅野委員 先ほど冒頭申し上げましたように、品目横断的経営所得安定対策と車の両輪だ。そして一方では、直接所得補償制度を導入していって大規模農家という視点を持っていっている。そして、そこに該当しない人をどう育成、強化していくのかという観点から設けられた制度であります。

 来年、また一月から通常国会が始まります。それでまた私は取り上げて、現状の一致を図っていきたいというふうに思いますから、今が踏ん張りどころだというふうに思います。ぜひ、しっかりとして取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 次に、先ほども議論になったんですが、森林・林業の課題について質問したいというふうに思っています。

 前回の一般質疑でも、私、取り上げました。どうしても、二〇〇八年から二〇一二年までのCO2削減の流れの中で達成できるというふうに私は確信できないでいるというのが今日であります。毎年、期間中二千二百億円の予算の上積みが必要だとずっと言われ続けているんですが、それでは、来年度予算の概算要求では森林整備費をどの程度要求したんでしょうか。本当に、農水省として三・八%、必ず達成するという意気込みが国民に、私どもには全然伝わってこない。どれくらいこの予算を獲得していくという決意でいるんですか。このことをしっかり踏まえていただきたいと思うんです。

 まず、今の答弁を願います。

川村政府参考人 地球温暖化対策の中での森林吸収源対策でございます。

 私どもは、平成十四年に温暖化防止森林吸収源十カ年対策を策定いたしまして、それに基づいていろいろな面からこの対策に取り組んでいるところでございます。ただ、なかなか現状の水準ではこの目標達成は難しいのではないかというふうに考えております。

 十九年度予算でございますけれども、私ども、できるだけ森林整備事業に重点を置いた要望ということをしておりまして、苦しい中でございますが、林道とか治山、そういうものをやや抑え気味にしまして、森林整備にシフトして要求をしておるという状況でございます。

菅野委員 大臣、三・八%、森林吸収源という数字、これは政府全体で決めた数字ですよね。林野庁の問題じゃないと私は思うんですが。一方では、京都議定書の国際公約というのが、政府間で協議して、そしてあと担当者に振って、担当の努力ということで今取り組まれている。そうすると、政府全体でやらなければならないのに、そのことが一林野庁にかかっている、こんな姿は私はおかしいというふうに思うんです。

 政府全体、財政措置も含めて責任を持つべきだというふうに思うんです。だから、大臣、ぜひ森林整備の今日的な状況を、私から言うまでもなく大臣は重々承知しているというふうに思うんですが、こんなことをやっていったならば大変な状況になるというふうに思うんですね。国際公約も果たせないというふうに思うんですけれども、大臣、今後の打開策を示していただきたいと思うんですが。

松岡国務大臣 今の菅野先生の御指摘のとおりでございまして、実は、私がこんなことを言っていいかどうかちょっと自分でもある種ちゅうちょしつつ申し上げますが、先生の御指摘のとおり、これは政府全体のものであります、というよりも、国全体のものであります。官民を問わず、官民挙げての問題だと思っております。ところがどうも、予算折衝の過程でもいろいろな場面がございます、党のいろいろな税制調査会もございますし、予算のまたいろいろな場面がございますが、これは林野庁が自分たちの予算が欲しいから言っているんだろう、こういうような御指摘やそういう批判を受けることもこれまた事実でございます。

 そこで私どもが申し上げておりますのは、そうじゃなくて、これは京都議定書、そういう土俵で日本がCO2を削減していく、それを国際的に約束を果たしていく、そういう中で、森林がまさにその三・九%、今は三・八%というふうに数字が変わっておりますけれども、これを担っていくということでこの京都議定書を日本は受け入れることができた、調印することができた。したがって、もし森林部分でこの部分を達成しなかったならば、他の経済的な、そして他の国民生活的な部分でその分の負担をしてもらわなきゃならない、その部分の達成をしてもらわないといけない、こういうふうにほかに降りかかっていくものであります。

 したがって、これは一林野庁の問題ではなくて、まさに政府全体、国民全体のものである、こう思いますし、今の菅野先生の御指摘は極めて我が意を得たりというか、これは本当にありがたい御指摘をいただいたし、ひとつこれを大きな声で、国民全体の皆様方に御理解をいただきつつ、ことしの予算編成では、何とかそういった財政措置がしっかりと結果として実現ができるように私どもは努力をしてまいりたいと思っております。

 ちなみに、西川委員長も党内にあってこの問題に取り組む一番の中心的なお立場でありまして、そういうお立場でひとつよろしくお願いしたいと思いますが、いずれにしても、菅野先生の御指摘のとおりしっかりやってまいりたいと思います。

菅野委員 大臣、こういう数字も出ているんです。御承知のとおり、ことしも台風被害によって山林が被害を受けました。ここはいろいろな数字があると思うんですが、一つの数字なんですが、平成十二年から十六年まで、森林被害、治山の部分で被害を受けた数字というのが約六千億円を超えているという実態があるんです。

 それでは、災害復旧にどれだけの予算を費やしたのかというと、六千億円の被害が出たにもかかわらず、約千六百五十億円しか投入していない、こんな実情なんですね。だから、林野庁長官、森林の災害被害に対する対策の状況、これはどのようになっているのか、国民の前にしっかりと示していただきたいと思うんです。今の数字は、一例として挙げたんですけれども。

川村政府参考人 近年、大変甚大な被害が各地で発生をしております。本年も梅雨前線の豪雨がございましたし、台風災害もありましたし、最近の低気圧等もあったわけでございます。十一月十五日現在での被害状況、これは国有林、民有林を合わせまして一万六千カ所以上、そして被害額は千百二十六億円に及んでおります。

 こういった被害が出ておりまして、私ども、大きくは林地と施設災と二つございますけれども、林地荒廃箇所につきましては、特に人家なり公共施設に影響のある緊急性の高いところを、まず災害関連の緊急治山といったようなことで、災害復旧と二次災害の防止を図っておりますし、また森林被害につきましても、森林整備事業によりまして迅速な復旧を図っております。また治山施設それから林道施設等の施設災でございますけれども、これもそれぞれの事業がございますので、その事業に基づいて査定を急ぎまして、その査定に基づきまして早期復旧を図っているということでございます。

 私どもも、こういった事業の活用によりまして、被害箇所の早期復旧が図られるように万全を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。

菅野委員 民有林、国有林も含めて、森林から収益を上げることができない状況になっているというのが今日の実情で、多くの問題を醸し出しているのもそのことに起因しているわけです。災害を受けて、みずからその災害復旧に立ち上がろうという地域での力というのはもう本当になくなってしまっている中、それで、国がそういうところにかわって山を守っていかなければ、どこが守っていくんですかという状況が今日の状況だというふうに思います。

 さっきの、十二年から十六年で受けた六千億円を超える被害に対して、本当に三分の一にも満たない額しか投入されていないという実態が如実に物語っているというふうに思っています。十六、十七年度、かなりの被害を受けました。十八年度もかなりの被害を受けました。着実に災害復旧していきますと言葉では言っているんですが、実際に予算が伴わないという状況が、先ほども言ったように、今日、CO2削減の問題と災害復旧の問題と、森林をめぐる状況はそうなっているという状況ですから、大臣、しっかり取り組んでいただきたいということを私は強く申し上げておきたいと思います。

 そして三番目なんですが、国有林野事業特別会計の見直しと森林林野事業の質の確保について大臣にお聞きしたいというふうに思っています。

 通常国会で成立した行政改革推進法によって、平成二十二年までに国有林野事業特別会計は、一部事業の独立行政法人化と一般会計化を検討することになったんです。これは条文上そうなってしまいました。

 ただし、特別委員会の審議でも取り上げてまいりましたけれども、国有林野事業については、松岡大臣は重々承知だと思うんですが、平成十年度抜本改革を行って現在も進行中なんです。そういう状況のもとで、特別国会で行革推進法の中に条文が組み込まれて議論になりました。私は、十年度から現在も進行中だからその結果を見て評価すべきだというふうに言ってきたんですけれども、受け入れられないという状況です。

 ただ、当時の中川農水大臣は、平成二十二年度までの特別会計の見直しに当たって、国有林野事業、森林・林野事業を国の責任で的確に遂行できるよう適正な予算と人員配置を確保するとともに、さらに当該団体職員あるいは関係自治体の意見を十分配慮していくというふうに、二十二年度まで議論を積み重ねていくという答弁がなされておりますけれども、大臣もこの考えをしっかりと受け継いでいかれる考えなのか、そこをお聞きしておきたいと思います。

松岡国務大臣 この問題につきましては、いろいろな地元との関係、そしてまた労働組合の皆様、職員の立場の関係、非常に重要な面があると思っております。

 そこで、私もずっと党にあってこの国有林問題の責任者を務めてまいりました。そして、どこにもないぐらいの思い切った改革をしようということで改革に取り組んで、そして今日進んできておる、先生の御指摘のとおりであります。そこにまた改めてといいますか、公務員改革の問題、さらにはまた一般会計化、独立法人化の問題、こういったことが加わって今日の改革をさらに進めるということになっているわけであります。

 改革に向かっては我々積極的に取り組んでまいりますが、一方におきまして、地域との関係や職員の皆様方の立場との関係、こういった点にも十分意を払いながらしっかり取り組んでまいろうと思っておりますし、二十二年度までは、中川前大臣がおっしゃったということにつきましても、そのような方向のもとで我々も適切な対処をしてまいりたいと思っております。

菅野委員 森林・林業を取り巻く状況というのは、私が今言ったように非常に厳しい状況の中で行われておりますし、森林の持つ多面的機能ということからすれば、果たしている役割というのは非常に大きなものがあります。そこを維持していくということが国の責任であるというふうに私は思いますから、しっかり取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 最後になりました。時間がありませんけれども、オーストラリアとのFTA、EPA交渉について、こんなことを許したならば日本農業は壊滅的打撃を受けるというふうに私は思っています。ただ、言葉では壊滅的打撃を受けるというふうに言うんですが、政府としては、FTA、EPA交渉を、今日まで研究会で共同研究報告書を策定中と言われていますけれども、日本農業に与える影響についてどう評価しているんですか、ここを示していただきたいというふうに思うんです。

佐藤政府参考人 豪州からの輸入農林水産物の多くは、牛肉、小麦、乳製品、砂糖といった我が国にとって重要な品目でございまして、仮に日豪EPAによってこれらの品目の関税が撤廃されれば、我が国農業や農村地域に大きな影響が及ぶおそれがあると考えております。

 日豪EPAにより関税撤廃を行った場合の影響につきましては、一定の前提のもと、例えば牛肉、小麦、乳製品、砂糖の四品目について、関税収入の減少や価格差補てんの増加といった助成の観点から暫定的に試算をしたものはございますけれども、基本的には交渉事にかかわるものでございまして、その詳細を申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

 いずれにしましても、日豪EPAによる影響につきましては、豪州からの輸入農林水産物の多くが、我が国の農業や地域経済にとって大変重要な品目となっておりますので、慎重に見きわめる必要があると考えているところでございます。

菅野委員 私は、農業分野でFTA、EPAで二国間協定をやったならば壊滅的打撃を受けるんだという基本的視点を農水省としてしっかり持って取り組んでいただきたいというふうに思うんです。想像以上の、経験したことのない台風が到来するんだということを大臣は言われました。どこがこの台風を引き起こしているんですか、こんな状況をどこが引き起こしているんですかということなんです。その観点をしっかり見て、日本の農林水産業を守るんだという立場を明確にして交渉に臨んでいただきたいと強く要望して、時間ですので終わります。

 最後になりますが、委員長、農水委員会は重要な議論をしているというふうに私は思います。それが半数にも満たないような状況の中で質疑が行われるということについて、今は大分回復しましたけれども、冒頭に言うと委員会がとまってしまいますから言わなかったんですけれども、そういうことのないよう与野党しっかりと取り組んでいただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。

西川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十七分散会


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