衆議院

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第5号 平成18年12月7日(木曜日)

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平成十八年十二月七日(木曜日)

    午前十時十分開議

 出席委員

   委員長 西川 公也君

   理事 岩永 峯一君 理事 金子 恭之君

   理事 近藤 基彦君 理事 谷川 弥一君

   理事 並木 正芳君 理事 篠原  孝君

   理事 松木 謙公君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      今津  寛君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    岡本 芳郎君

      北村 茂男君    斉藤斗志二君

      中川 泰宏君    丹羽 秀樹君

      橋本  岳君    鳩山 邦夫君

      広津 素子君    福井  照君

      福田 良彦君    古川 禎久君

      馬渡 龍治君    御法川信英君

      森山  裕君    渡部  篤君

      岡本 充功君    黄川田 徹君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      高山 智司君    仲野 博子君

      福田 昭夫君    山田 正彦君

      江田 康幸君    丸谷 佳織君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   参議院農林水産委員長   加治屋義人君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   経済産業副大臣      山本 幸三君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           高田 稔久君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月七日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     馬渡 龍治君

  丹羽 秀樹君     橋本  岳君

  丸谷 佳織君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  岳君     丹羽 秀樹君

  馬渡 龍治君     永岡 桂子君

  江田 康幸君     丸谷 佳織君

    ―――――――――――――

十二月五日

 有機農業の推進に関する法律案(農林水産委員長提出、参法第八号)(予)

同月六日

 有機農業の推進に関する法律案(参議院提出、参法第八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 有機農業の推進に関する法律案(参議院提出、参法第八号)

 農林水産関係の基本施策に関する件

 日豪EPAの交渉開始に関する件


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     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、外務省大臣官房審議官草賀純男君及び経済産業省大臣官房審議官高田稔久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。

赤城委員 おはようございます。自由民主党の赤城徳彦です。

 私は、きょうは、今課題になっております日本、オーストラリアとのEPAについてお尋ねをしたいと思います。

 時間が限られていますので、単刀直入に伺いたいと思いますけれども、私は、このオーストラリアとの関係、大変外交的にもいい関係にあると思います。日本に対する資源の供給国でもありますし、日本からの工業品の輸出国、相手国、農産物も多くを輸入しておりますので、大変貿易面でもいい関係であります。しかし、事EPAを結ぶ、こうなりますと、大変な困難がありまして、シンガポールに始まって、メキシコとかインドネシアとか、これまでのほかの国とのEPAとは全く本質が違う、状況が違うと思います。

 それはなぜかといいますと、そもそもFTA、EPAというのは、実質的にすべての品目について関税撤廃が必要だというのがWTO上のルールであります。そうなりますと、我が国が重要品目と位置づけています米、麦、牛肉、乳製品、砂糖、これは日豪貿易の中で大変大きな割合を占めております。これをすべて例外とするということになりますと、先ほどのWTOのルール上、これはFTA、EPAとして成り立たないのではないかというふうに思います。

 まず、その点についてどういうふうに考えておられるか、伺いたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 仮に日豪EPAを締結することといたした場合に、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖を関税撤廃の対象から除外すると、二〇〇五年における豪州から日本への総輸入額のうち、約一〇%が関税撤廃の対象外ということになります。EPAに関するWTO協定上の条件でございます実質上すべての貿易の関税を廃止することについて、国際的に定まった具体的基準はございませんけれども、我が国は、貿易額の九〇%の関税撤廃を一つの目安としており、これら五品目だけであれば、あくまで数字上のことではございますけれども、WTO協定との整合性がとれる可能性があると考えております。

 しかしながら、これら五品目以外にもセンシティブ品目があること、また豪州が非常に高い水準の関税撤廃を要求してくることと予想されることから、仮に交渉に入った場合には、関税撤廃の例外品目の確保に向けて、相当厳しい交渉となるものと考えております。

赤城委員 理屈上はFTAとして成り立ち得る、こういうことでありますけれども、今お話がありましたように、ほかの林水産物とか、重要品目、いろいろあります。

 特に、オーストラリアがこれまでほかの国とEPAを結んできた実績を見ますと、ほとんどすべての品目を自由化しておりますし、アメリカとの関係でも、砂糖についてようやく一品目を除外したということでありますから、これからの交渉になるとすれば非常に強い態度で臨んでくる。特に、先ほど挙げました重要品目は、オーストラリアにとって最も関心の高い、むしろオーストラリアがEPAを結ぼうとしている主たる理由というのはここにあるということでありますから、それをこちらとしては完全に除外したい。オーストラリアとの間で、まさにこれが最大の争点あるいは最大のネックになると思います。

 私は以前、随分前ですけれども、こういう問題になる前に、オーストラリアの政府の関係者とかが来られて、EPAをやりたい、こういう話がありました。そのときに、農産物は我が国は大変関心が高いし、これらをすべて除いてくれるなら話をしてもいいよ、しかしそれはあなた方はできないでしょうということを申し上げたんです。ですから、交渉入りすることもやめた方がいいよと。国によって、EPAというのは二国間の関係ですから、お互いにメリットがある、プラスになるのであればそれを結べばいいし、そうでないのであれば、それはやめておいた方がお互いのためだ、こういうふうに思っております。

 そこで、もう一つ大きなポイントがあります。それはWTOとの関係でありまして、WTOの交渉が今ちょっととまっておりますけれども、いずれまたこれが動き出す。WTO交渉において我が国は、この重要品目、タリフラインで一五%は必要だ、それらについては、関税の引き下げとか枠の拡大については特別な扱いをしなければならない、こういう主張をしているわけであります。

 このWTO交渉で最大の相手側はケアンズ・グループで、その中心がオーストラリア。オーストラリアは、その我が国の主張と百八十度反対の主張をしているわけであります。この国とEPAを結ぶ、関税撤廃をしましょうという話をするということ自体が、我が国がWTOで主張しているその論拠を失うことになるのではないか、そういうふうに思うわけであります。

 そういうふうに考えますと、オーストラリアとの間で、ああ、日本はオーストラリアとこういう品目もテーブルにのせて関税撤廃の話をしているね、では、アメリカとかカナダが、我が国も同じ条件でやってくれとかいうふうになってくる。WTOとか、アメリカ、カナダ、ほかの国への波及とか、こういう問題もあるわけでありまして、この点についてはどういうふうに考えておられますか。

松岡国務大臣 お答えさせていただきます。

 今、赤城先生の御指摘の点、WTO交渉におきまして、オーストラリアはケアンズ・グループの中心でありまして、私ども日本というのは、輸入国の代表的な立場、こういう関係であります。そして、オーストラリアは、WTO交渉におきましては、自由化といいますか市場アクセスの改善ということにつきましては一番強硬な立場で主張いたしておる。これはもう先生の御指摘のとおりでございます。

 どういう主張かといいますと、上限関税を設けよとか、そしてまた市場アクセスにつきましては、もう本当にこれは最大限の関税の撤廃をしろとか、そういったことでありまして、我が国といたしましては、多様な農業の共存、これをしっかりと貫いていく、そして、多面的機能、こういったことがきちっと確保される、こういう観点に立って、今農業交渉をやっておるわけであります。

 したがいまして、まさに対極にある、こういう状況の中で、今回EPAの交渉に入るとすればどのような立場でいくかということでありますが、これは私どもとしては、譲れないものは間違っても譲れない、守り抜くものは断固として守り抜く、こういう決意で臨んでまいる、そのような腹構え、決意でおります。

 ただ、全体として、外交的な観点そしてまた貿易全体、経済全体の観点から、政府全体としてEPA交渉を目指すというのは、これは日本の戦略的な意味合いにおきましても、そのような方針にあることはそのとおりだと思っております。そういう中で、どうやってこの農林水産物を、農産物を守っていくか、先生が御指摘になりました五品目、これを中心といたしまして、これはもう皆様方の意を体しましても、我々は断固としてこれを守り抜く、そういう交渉をする、そういうことでございます。

赤城委員 今、大臣から大変強い決意をいただきました。

 そういうことで、政府全体として臨んでいただきたいと思いますが、最初に申し上げたように、オーストラリアも大変厳しい態度で臨んでくる。理屈では何とかFTAは成り立つとしても、やはり交渉ごとですから、かなり追い込まれて、ぎりぎり、ではどれを除外するんだ、どれは再協議だ、どれは猶予期間を設けてみたいな話になりかねないと私は思うんです。

 そこで、仮定の話でありますけれども、もし万が一この重要品目が関税撤廃となったときに、これは大変な影響が起こる、それを農水省として試算していますね、直接の影響で何千億、波及効果で何兆円のオーダーになるという。ちょっとその数字だけ教えてください。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 農林水産省として、仮にEPAにより豪州産の農産物の関税が撤廃された場合の影響について、一定の前提のもとに小麦、砂糖、乳製品、牛肉の四品目について試算したものを公表したところでございます。

 この中で、四品目について関税撤廃が行われた場合の直接的な影響として、合計七千九百億円の国内生産が減少するとの試算をしております。このような農業への直接的な影響に加えまして、他の輪作作物の生産や製粉業あるいは精製糖業、乳業等の関連産業の経営、雇用にも甚大な影響があるものと見込んでおります。また、耕作放棄地等の増加によりまして、国土環境保全との多面的機能にも大きな影響があると見込んでいるところでございます。

赤城委員 今四品目についての試算ということでありましたけれども、これだけ大きな影響がある。そういうマイナスを補って余りあるほど日豪のEPAというのは何か大事なメリットがあるのか。

 このことは自民党の農林水産物貿易委員会の中でも随分議論になりました。一体なぜオーストラリアとEPAを結ばなきゃならないのかというそもそも論。特に、ほかの産業界、鉱物資源はもう関税はゼロですし、自動車等の輸出についても低税率に既になっていますから、これらについて関税撤廃だといっても大したメリットにはならない。一体、何が国益につながるんだ、何がメリットにつながるのかということが、どうもはっきりしない。その点について、明確に説明をいただきたいと思います。

高田政府参考人 お答え申し上げます。

 豪州につきましては、資源、エネルギー等の安定供給の確保でございますとか、あるいは今後の東アジア地域における政治経済関係の面で我が国にとって非常に重要な戦略的パートナーであると認識をしております。我が国が日豪EPAに取り組む場合のメリットとしては、以下の三点が考えられると思います。

 第一に、資源、エネルギーの安定供給の確保でございます。昨年、我が国の鉄鉱石及び石炭の輸入に占める豪州の割合は約六〇%に達しております。先生御指摘のとおり、重要な資源、エネルギーの関税は既に〇%でございますけれども、EPAを締結することによって資源、エネルギーの安定供給の確保を図ることができれば、これは意義は大きいと考えております。

 それから第二は、関税撤廃による貿易の拡大でございます。先生御指摘のとおり、日本から豪州への主要輸出品目、関税率はおおむね五%から一〇%という税率でございます。しかし、豪州は既にEPAをアメリカあるいはタイと締結をしておりまして、これらの国との関係では鉱工業品のほとんどの関税率が撤廃をされております。また、現在、中国あるいはASEANといった国と豪州はEPA交渉を行っております。我が国がEPAを締結することによりまして、これらの国との関係での価格競争力を向上させる、そういうことの意義も大きいと考えております。

 さらに、知的財産権でございますとか、あるいは投資に関する高いレベルのルールの策定ということがございます。日本と豪州という先進資本主義国同士でEPAを結んで高いレベルのルールを作成できれば、これは東アジア地域での経済統合の一つのモデルとなることが期待されるところでございます。

 経済産業省といたしましても、この日豪の関係で、農林水産品それから一部の鉱工業品につきまして重要な問題、センシティビティーが存在するということを認識しております。日豪EPAが交渉入りする場合には、このような日本側のセンシティブ品目の取り扱いにつきまして豪州側の十分な理解と柔軟性が得られるよう、これは政府一体で取り組んでまいる所存でございます。

赤城委員 これまでいろいろな交渉で、一番懸念するのは、経済産業省を初め経済界、産業界が、早く締結しろ、自由化しろ、農業、農産物がネックになっている、悪者になっているみたいな、そういう構図にされるということが非常に心配でありまして、先ほど農水省からの試算でありましたように、大変大きなマイナスがある。一方、プラス面ということで説明はいただきましたけれども、既にそういう安定供給という面で鉱物資源は安定供給されていますし、中国とかに市場を奪われてしまうというふうな話もあるんですけれども、では、EPAを結ばなかったら、突然オーストラリアが日本というのを相手にしなくなるとか、ほかへ貿易相手国をかえるということも、これは自由主義経済でとても考えられないことであります。

 メリット、デメリットということを考えますと、このEPA交渉の中で、もし農産物、重要品目が、ぎりぎり、オーストラリアがどうしてもだめだというのであれば、無理にEPAという枠組みでやらなくても、両国間の関係をより緊密にするという方法は幾らもあるだろう、私はこういうふうに思います。

 外務省に特に伺いたいんですが、そういうほかの方法も含めて、何もEPAだけがすべてではない、こういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

草賀政府参考人 お答えいたします。

 EPAにつきましては、世界経済のグローバル化が進む中で、WTOを中心とする多角的な自由貿易体制を補完するものとして、日本の対外経済関係の発展とか経済的利益の確保に寄与するものでございます。また、EPAは、同時に、政治、外交戦略上も、我が国にとって有益な国際環境を形成することに資するものと考えております。

 特に、日本が進めますEPAは、物品やサービスの貿易自由化だけではなくて、つまり間口の狭いFTAではございませんで、さらにこれに加えまして、投資とかあるいは知的財産権の保護とか競争政策等、いろいろな新たなルールづくりも含む幅広い分野にわたりまして相手国との間で包括的な経済連携を推進するものでございます。

 したがいまして、御指摘のように、いろいろな手段を通じまして二国間関係を維持発展させることはもちろん可能でございますし、重要ですけれども、やはり包括的なEPAというのは、対外経済関係の発展とか我が国の経済的利益の確保、さらに価値観を同じくする仲間づくりを進める上にも、大変有効、効果的であるというふうに考えております。

 これらの観点から、経済連携促進関係閣僚会議で定めました今後の経済連携協定の推進についての基本方針ということに従いまして、これは一般論でございますけれども、今日本は東アジア諸国とのEPAを重要な課題と位置づけて交渉を積極的に推進しているということでございます。

赤城委員 私は、この委員会質疑を通じて、特にお願いしたい、確認したいんですけれども、今、経済産業省そして外務省にもそれぞれ伺いました。国内の一部の産業あるいは地域経済に多大な影響を及ぼしてまで、どれほどのメリットがあるかわかりませんけれども、しゃにむにEPAを進めるということは、必ずしも国益にはつながらない。逆に言いますと、そういう国内の守るべきものはきちっと守る、そういう思いで政府全体が一致して交渉に臨む、特に外務省、経済産業省、農水省、三者が同じ思いでぜひこの交渉に臨んでいただきたい。

 それから、オーストラリアという国ですから、大変強い態度で来る。今お話ししましたような重要品目に対して十分な配慮が払われないということになれば、これはもう交渉を中断する、そのぐらいの決意でこの交渉に臨まなければ打開の道は開けないだろうと思っております。

 改めて、大臣から交渉に向けての決意を伺いたいと思います。

松岡国務大臣 今、最終報告書というものが整理をされつつある、最終的にまだ公表されていませんけれども。その中で、今回、外務大臣ともきっちりとした私は腹合わせをいたしまして、また官邸もここは一体となって、今回、段階的削減、さらにはまた除外、そして再協議といういわゆる柔軟性の選択肢というのを、私どもは最大限にここはしっかりと確保した。この過程におきまして政府は全く一体であった、したがってそれが確保できたと私は思っております。

 私も、もともと、オーストラリアの高官の方とお会いいたしましたときも、あなた方は日本は工業で利益を上げるから農業で譲ってくれという思いかもしれないけれども、それはあり得ないと申し上げておるわけでありまして、メリット、デメリットと言いますと、私がよくギブ・アンド・テークと言うと、とるものはないのに与えるばかりじゃないか、それを逆に理解していただければ、得るものがなければ与えるものはないということを、私はこれは腹構えを持って言っておるつもりでありまして、したがいまして、今赤城先生がおっしゃいましたようなことにつきましても、中断もあり得るというのは、私どもはそういった決意を持ってこのことに対処していく。

 そして、経済閣僚会議、おとといですかやりましたが、このことについては、官房長官、それから外務大臣、経産大臣、財務大臣御一緒の中での確認でありますから、政府一体となってそのような腹構えで交渉に臨んでいただける、それはしっかりと足場はつくられている、このように認識いたしております。

赤城委員 大臣からの決意をいただきまして、我々もしっかりとした決意で臨んでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 赤城先生に続きまして、日豪EPAのことについて御質問を申し上げたいと思います。

 まず、先日、日本、オーストラリアのEPA、FTAに関連して共同研究の報告書がまとまりました。農業分野に関して、その概要を、時間もありませんので端的に御説明をいただきたいということが一点。

 それから、ついでに、タイとの経済連携協定の際に、共同研究報告書の中に、日本とタイとの経済連携協定における農業合意の方向性という添付の文書がついておりました。今回の報告書にそのような内容の文書があるのか、もしあれば、その内容についてもお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 日豪政府間共同研究につきましては、平成十七年十一月より五回開催されまして、農林水産省といたしましては、関税撤廃により日本の農林水産業に悪影響が及ぶおそれがあることや、あるいは、従来のEPAにおけるセンシティブ品目の例外的な取り扱いにつきまして詳細に豪州側に説明をし、我が国にとってセンシティブな品目の取り扱いに関し、具体的な方向性が示される必要があるとの考え方に立った主張を行ってまいりました。

 この結果、共同研究報告書については、その取りまとめに当たりまして、日豪EPA交渉が開始するとすれば、交渉は、あらゆる品目と課題が取り上げられ、また、段階的削減のみならず除外及び再協議を含め、すべての柔軟性の選択肢が用いられるものとして開始されるべきである旨、豪州側と合意したところでございます。

 なお、タイとの共同研究会報告書の添付文書というようなものは、日豪の場合には添付されておらないと承知しております。

 以上でございます。

西委員 この機会にEPAの交渉の一般的な流れを勉強させていただきましたが、幾つかの段階を経て最終の発効ということになるわけでございますが、まず初めに、政府に産業界や学識者の代表を加えた産学官の共同研究会の開始をすることに合意する、これが第一段階だと言われております。次に、第二段階として、研究の結果、両国においてEPA締結が望ましいと判断された後に政府間で正式に交渉を開始する、これが第二段階。第三段階として、全体交渉と分野ごとの専門家会合を開き議論をして、主要な論点について両国間で合意した段階で大筋合意を発表する、こういう段階があります。その次の第四段階は、その後、残された細かい論点を議論し、条文等の調整作業のためのテキスト交渉が行われて署名をする、これが四段階。最後の五段階で、署名の後、国内での批准手続をした後、発効、こういうふうになるというふうに理解をいたしました。

 日本の今の現状はどうかと申しますと、EPAに関する取り組みは、シンガポール、メキシコ、マレーシア、これは協定が既に発効しております。それから、フィリピンとは署名済みという段階。それから、タイ、インドネシア、チリとの交渉は、首脳間で大筋合意をした、署名に向けて調整作業を今実施している。それから、ASEAN全体とも交渉を開始し、その他、韓国、ブルネイ、湾岸協力理事会諸国と交渉中。ベトナムについては、交渉開始について合意をした。そして、今回のオーストラリア、さらに、スイス、インドともEPA交渉に向けた取り組みを行っている。こういう概括的な状況だというふうに理解をさせていただいております。

 これらのほとんどの国との間で共同研究報告書というものが作成されているわけです。しかし、報告書にセンシティブ品目として記載をされましても、その後の合意された協定書を見ますと、最終的には、除外、再協議の対象とされているものもありますが、逆に、関税割り当て、関税削減、さらには関税撤廃に至っている品目があることも事実でございます。

 これまで、合意、それから大筋合意に至っている協定が七件ありますが、これを基本にお答えいただいて結構なんですが、そのうちに、報告書で日本からセンシティブ品目として挙げた品目がどれだけあるのか、そのうちで、除外、再協議、それから、関税割り当て、関税削減、関税撤廃に至った品目、それぞれの数を総括的にお示し願いたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでEPAを締結いたしましたシンガポール、メキシコ、マレーシア、また、大筋合意に至っているフィリピン、タイ、チリ、インドネシアの七件につきまして、共同研究報告書においてセンシティブ品目として個別具体的に挙げられたものは、延べ三十三品目ございます。

 これらの取り扱いが交渉の結果どのようになったかにつきましては、除外とされたものが二十品目、再協議とされたものが七品目、関税割り当てとされたものが二品目、関税削減とされたものが二品目、それから、十年以上の長期にわたって段階的に関税削減をいたしまして、最終的には関税撤廃をすることとされたものが二品目ございます。即時関税撤廃とされたものはございません。

 以上でございます。

西委員 今までの交渉の結果、もちろんそれぞれの国の事情によって違うことは事実ですが、結果的には、こういう形で、必ずしも当初のセンシティブ品目という状況が、大きく分かれて、いろいろな状況の中で協定が結ばれているということを我々は十分理解をしてかからなければならない、私はこう思っております。

 農林水産業に携わられる皆さんが心配するのは、今申し上げましたように、報告書にセンシティブ品目というふうに記載されても、実際に交渉では何らかの譲歩が迫られてくる。一方、日本側が輸出できるのは果実や一部の魚に限定されておりまして、農林水産分野においては一方的に日本に不利な内容となっているということは明らかでございます。

 例えば、タイとの経済連携協定を見ますと、米、鶏肉、でん粉、砂糖及び水産物がセンシティブ品目として明記されております。このうち、鶏肉調製品については関税削減、糖みつについては関税割り当て、でん粉誘導体については関税割り当てという形で、交渉の過程で崩れているということは事実でございます。

 オーストラリアにつきましては、アメリカ、中国に続く第三位の農林水産物の輸出国でありまして、その大半は、牛肉、小麦、乳製品、砂糖といった、日本の農業の地域経済にとって大変重要な品目でございます。そういう意味では、他の今までの交渉国とは大きく異なっておりまして、これは、ひいてはWTO交渉の行方にも大きく影響する、そういう可能性がある、こういうふうに言わざるを得ません。

 日本の政府としては、基本的には、経済連携協定の交渉は速やかにというふうに一応方針としてはありますけれども、このように、日本の農業に大きな影響を及ぼすおそれのある交渉ということで、慎重な対処をぜひともお願いしたいと思います。

 今までの日本のEPA、FTA交渉を総括的に考えてみますと、結果的には、日本の立場を強化するというこの基本的な目標を果たすために、日本農業を犠牲にしているのではないか、こういう印象を私自身としては否めません。

 そういう意味で、このことについて大臣の御所見とこれからの決意をお伺いしたいと思います。

松岡国務大臣 西先生にお答えいたします。

 まず、この結果がWTO交渉にも大きな影響を与えるのではないか、日本が今まで主張してきた立場というものが大きく崩れるのではないか、そういう御懸念を持った御指摘だと思いますが、先ほども申し上げましたように、まさに、WTOの交渉では、我が日本とそれからオーストラリアというのは全く対極にある、そのようなことはもう全く御指摘のとおりであります。

 したがいまして、私ども、WTO交渉というのは、国を挙げて、これはもう国家を挙げて、それは、農産品の世界では我々の主張を掲げて戦ってきたわけであります。それが、EPAという二国間の交渉によって多国間の世界での立場が崩れるといったことは、これは断固としてあってはなりませんし、また、そういったことは間違ってもないように、これはもう国を挙げて貫いていくということについては、これはここではっきりと決意を持って申し上げておきたいと思います。

 それから、農業が、工業というか他の分野の犠牲になっている、どうもそういう印象がぬぐえない、こういう御指摘もございましたが、大体、農業のサイドから見ますと、今まではそういった面がこれは往々にして強かった、私も、それはそのとおりであったと思います。

 したがいまして、今日までは、得るものは少なく、とられるものが多かった、その結果、このような状況になってきた。これはいろいろないきさつ、プロセスがありますが、これも一つの否めない事実だと思っております。

 そこで、私ども、攻めるところは攻め、譲るところは譲り、守るところは断固として守る、今このような方針でおりますが、先般から申し上げておりますように、農産物の輸出というのも、日本農業の将来の道を切り開く大きな柱として取り組んでまいりたい、このような方針でありますが、いかんせん、オーストラリアとの関係については、先生方の御指摘のとおりでありまして、私ども、これはとにかく守り抜くことが基本である、重要である、こう思っております。

 また、それに加えまして、相手の方にも、我々が指摘するもの、求めるものはしっかり求めていこうと思っております。というのは、検疫の問題、これは、オーストラリアの検疫というものは極めて国際的にも厳しい基準でやっております。これは、向こうはどうするのか、これは我々としてはしっかり求めていかなきゃならぬし、攻めていかなきゃならぬと思っています。

 また、もう一つには、WTOでも問題にいたしておりますオーストラリアの輸出体制の問題、輸出国家貿易の問題、こういった点も、これは私どもの主張としては、そういうあり方は全廃すべきであるという我々の主張でありますから、こういったことにつきましても、相手はこれはどのように対応してくるのか、こういった点もしっかり求めて、また、攻めていくのは攻めていかなきゃならないと思っております。

 いずれにいたしましても、先ほどの赤城先生のときにも申し上げましたように、私どもは、この足場をしっかりと強固にして、そして、先生方御指摘の懸念がない、こういった方向を必ずかち取れるように、そういった形で交渉に向かってまいりたい、このように思っております。

西委員 日ごろから国際交渉の経験が大変豊富な大臣の御活躍を心からお祈りしております。

 以上で終わります。

西川委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 質問を始めるに当たって、けさの朝日新聞、松岡農水相に献金集中、鳥インフルエンザ自民対策事務局長時代、養鶏業者、計一千百万円、こういう記事がありますが、もちろん、松岡大臣御承知だと思います。いわゆるこの問題。また、いろいろなことが言われているようですが、そういったこと。これは、大臣として当然身を正さなきゃいけないことで、御自身御承知だと思います。

 そんな中で、大臣自身に私自身お聞きしたいと思うんです。

 一つ。今回のFTAの交渉、オーストラリアとの間の交渉は、まさに農産物の関税撤廃、あらゆるものの関税撤廃、その中で、日本の農業の受ける打撃というのは大変なもので、それこそ自給率が一〇%下がり、そして三兆円もの大きな影響を受けるという。その大変なことの交渉入りをしようとする大臣が、この朝日新聞にこういうことを大きく書かれるようなことで、大臣、このFTAの交渉入りができるのかできないのか。まず、その所信をお聞きしたい。

松岡国務大臣 山田先生の御指摘にお答えいたしますが、私は、政治献金は、政治資金規正法に基づいて適正、適切に処理をいたしております。献金集中という表現がございますが、これはちゃんと、きちんとした、皆様方の善意や好意がそのような形であったと思いますけれども、それ以上のものは何もございません。そこにも書かれておると思いますが、私がそのことによって何か便宜を図ったり、また、特別なことを頼まれたり、そういったようなことは一切ございませんので、そのような中身は一切ないことを、ここではっきり申し上げておきたいと思います。

 それと、今先生が御指摘のFTAの問題でありますけれども、それはまさに、私どもは、今求められております立場、任務、役割に対して全力を尽くして取り組んでまいる、そのような考え方でありますし、また、そのような決意であります。

 改めて申し上げますが、それは、政治資金規正法に基づき適正、適切に処理をしておる、それをそういうとらえ方で書かれた、こういうことであります。

山田委員 いずれ、このようなことについては予算委員会初めその他でいろいろと追及され、そういうことでしょうから、ここは私はあえて何もそれ以上のことは申し上げません。

 しかしながら、この大事な日本の農業が本当に危機的状況、壊滅するか壊滅しないかというときが、まさにこのFTA、オーストラリアとの交渉であると私は認識しておりますが、その中で、大臣は、この交渉入りをするということの意味合い、交渉入りをするということは、大臣御承知のとおり、日本が輸入しているものについては、鉄鉱石その他、農産物以外は関税がかかっていない、無税。ほとんどですよ。自動車とか云々はそのうち五%になりますが。結局、このオーストラリアとの交渉において、撤廃の対象になるのは農産物そのものであるということの認識は、大臣、おありですか。

 私の質問の意味がわかりますか。FTAの交渉で、オーストラリアと交渉入りするということは、農産物の関税を引き下げる、牛肉とか砂糖とか小麦とか、そういったことになるということの認識はおありですかと聞いています。

松岡国務大臣 まだ交渉入りをしていないわけでありまして、交渉入りに当たっては、私どもとしては、農業界やまた農業関係の皆様方が大変な御懸念を持っておられる。その御懸念にこたえ、そしてその心配がないようにするために、政府間の研究報告書におきましても、私どもはしっかりとした足場をつくる。これを政府内でも主張し、また政府全体の意思としてオーストラリアとも交渉してまいったわけでありまして、山田先生の観点から今御懸念を示されたと思いますが、私どもはそのような御懸念が、心配がないような結果を目指して頑張ってまいりたい。

 したがって、山田先生のお立場としても、そういう方向で頑張ってくれ、与野党超えてしっかりそこのところは支えるというようなお考えだと思って聞いております。

山田委員 オーストラリアとのFTAの交渉入りということは、いわゆる農水産物に対する関税下げということではないのか、ほかの産品というのはほとんど関税はないわけですから。自動車がわずかに一〇%であって、それが五%になっても大した状況ではない。

 そうなれば、日本の農業が大変な打撃を受けるということがわかりながら交渉入りをするということで、大臣、ではもう一つ聞きたいんですが、交渉入りはまだ決めていない、交渉入りする気が大臣にあるのかないのか、それをはっきりしていただきたい。大臣は交渉入りしたい、交渉入りしたくない。交渉入りをするとしたら、どういう根拠で交渉入りするのか。大臣はどう考えているのか。

 では、もうちょっと言いましょう。大臣、交渉入りするに当たって、いわゆる除外品目、再協議品目に、さっき言った牛肉とか砂糖とか、そういったものを入れることができる、そういう確信、そういう状況、そういう共同研究の内容、そういったものがおありで入るのか、それとも何にもなくて入るのか。そこはどうですか。

西川委員長 着席しませんと指名できません。

松岡国務大臣 御指摘なのか御質問なのかよくわからなかったものですから、いつ答えていいかわからないのでありますが、お座りになっての御質問と思ってお答えさせていただきます。

 まず、交渉に入るのか入らないのかということでありますが、これは、最終的には政府として総理が判断をし、決断をして決められる、このような性格のものでありますし、おとといの経済閣僚会議におきましても、我々経済閣僚としての申し合わせといいますか合意、これを受けまして、首脳会談までに総理がこのことについては判断、決断をされる、そのように私は承知をいたしております。

 それから、今の重要品目、先生は、牛肉、砂糖、たしかそういった品目を挙げられたと思いますが、これについてはどういう扱いをするのかということでありますが、まだ交渉に入っておりませんから、相手が何を求めてくるのか、何を求めてこないのかということについては、具体的な品目としては、まだ全くそういったものは私どもは認識をいたしておりません。

 いずれにいたしましても、除外、再協議、あらゆる柔軟性の選択、こういったことの根拠はしっかりとこの最終報告書に位置づけられておりますので、まだ合意として発表されておりませんが、位置づけられておりますので、私どもはそれに基づいて、日本のセンシティビティー品目はしっかりと守り抜いていく、このような方針で臨みたい、また、政府一体として臨んでいく、こういうようなことでございます。

山田委員 いわゆる除外品目、再協議、そこに何が入るかということが、これからのFTAの交渉においては最も大事なことになるんじゃないか、そう思います。

 その中で、日本とオーストラリアの間の共同研究、この共同研究の報告書は、私が聞いた限りでは既にできている、そしてそれをもとに、日本とオーストラリアにおいてFTA交渉入りを決めることになっているということですが、この共同研究書の中身そのもの、私はきのう、これを明らかにしてほしいと。これを私どもの国会の審議の場で明らかにしてもらわないと、さっき言った、まだ交渉入りは決めていない、大臣が決めると言ったことですが、この委員会の中で、交渉入りが日本にとって本当にメリットがあるのか、デメリットがあるのか、この場でしっかりと審議しなきゃいけない。

 その大事な共同研究、これをぜひ明らかにしていただきたいと言いながら、実際、私のところに届いていない。これはなぜなのか。ひとつ外務副大臣、お答えいただきたい。

岩屋副大臣 今先生御指摘の、日豪政府間の共同研究の最終報告書の公表のためには、相手のあることでございますので、両国の合意が必要でございます。

 我が国におきましてもいろいろと議論がありますように、豪州においてもいろいろとこの問題については議論が行われているというふうに承知をしておりまして、豪州国内の手続というものもございますので、最終報告書の公表のタイミングについては、お互いが合意するタイミングでなければいけないということで、目下、その調整を行っているところでございます。

 国民の代表たる国会議員の先生からの情報提供の請求に対して可能な限り協力するのは当然のことでございますけれども、今申し上げたような事情で、今公表のタイミングについて協議をしている、できるだけ早く公表できるようにしたい、こう考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。

山田委員 国会の審議において、我々、この委員会、国政の場においては、当然のことながら、憲法六十二条における国政調査権というのがある。国政調査権は、記録の提出を求めることができる権利である、これは国会議員、我々の。また、国会法においてもそのような記録の提出が、国会法の百四条ですか、委員会においての提出が認められています。

 まさに、この共同研究の中身というのは我々にとって大変大事なことである、この共同研究の中身次第で交渉入りをするかしないかということですから。そのような大事なもので、この国会法百四条によれば、記録の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の、いわゆる内閣の声明、国家にこういう場合は重大な影響を及ぼすんだということの声明を要求することができる。それほど大事なものである、私はそう考えております。

 このような内容において、まさにタイミング、単なるタイミングということだけで出せない、国会の審議に、我々の審議に供されないというようなことは、これは絶対許されないことで、私は、改めて委員長に対して、この場で、この共同研究の提出を早急に、そしてそれを今求めます。これがない限り質問はできない。

西川委員長 先ほど外務副大臣が申したとおりで、公表に当たっては相手側の了解も得たいということで、今全力を挙げて協議をしておる、こういうことでありますので、これが公表できるようになり次第、私どももいただいておりません、山田委員にできる限り早くお届けできるようにやりたいと思いますが、後刻理事会で協議をさせていただきます。

山田委員 それでは、交渉入りする前に必ず日豪共同研究の内容を公表してもらうことと、その公表してもらうことを前提に、さらにこの委員会で、それをもとに、交渉入りが是か非か、それの協議をしていただきたい。委員長、それについて御返事いただきたい。

西川委員長 今、山田委員からの提案でありますが、この件につきましても、後刻理事会に諮って方向づけをさせていただきます。

山田委員 限られた時間で、本当にこの大事な問題、非常に不本意なんですが、経済産業副大臣に来ていただいております。

 農業においてこの影響がはかり知れないこと、そしてその数字的な試算というのも、先ほどある程度出していただきましたが、それでは今度の日豪の間のFTA交渉入りをして、それのメリット、例えば、メキシコと日本の間のFTA交渉のときには、経済産業の方にどれだけのメリットがあるという数値を出しております。

 実際に、どういう具体的なメリットがあるのか、何千億のメリットがあるのか、そのメリット、デメリットの関係の比較、それもありますので、それをひとつ経済産業副大臣の方で明らかにしていただきたい。

山本(幸)副大臣 メリットでございますけれども、豪州は、御承知のように資源、エネルギー等の安定供給の確保、あるいは東アジア地域における政治経済関係の面で、我が国にとっては非常に重要な、戦略的なパートナーでございます。

 基本的には、以下の三点、私どもは考えております。

 第一が、その資源、エネルギーの安定供給の確保でございまして、日本の鉄鉱石及び石炭の輸入に占める豪州のシェアというのは約六〇%でございまして、これはエネルギー供給源としては非常に大きいわけでございます。ただ、この関税は既に〇%ではございますけれども……(山田委員「数値で示していただきたい」と呼ぶ)数値としては、今のところ、そういう数値ということには私どもまだ至っておりません。

 それから、貿易の拡大も、五%、一〇%ということでございますけれども、これを、〇%ということになればかなり大きなメリットがあると見込まれますし、特に、既に豪州は米国やタイとEPAを締結しておりますし、それから中国やASEANともやっておりますので、そういうところとの競合関係からも、非常に大きなメリットがあるんじゃないか。

 それから、知的財産権、投資等に関するハイレベルなルールの策定ということもございます。ただ、農林水産品等について、非常にセンシティビティーが存在することは事実でございますので、私どもも、交渉入りした場合には、こうした取り扱いについて豪州側の十分な理解が得られるように、政府一体として取り組む覚悟でございます。

 具体的な数値というのは、メキシコみたいにFTAだけの場合にはあったんですが、これはEPAということで、投資とか知的財産権の問題も含むような交渉になりますので、ちょっと違うと思いますので、これからどこまで数字が出せるか検討してみたいと思いますけれども、今直ちに幾らというように、ちょっと準備しておりません。

山田委員 具体的な数値は、FTAならあったけれども、EPAになるとちょっと難しいような今の答弁だったと思うんですが、そんなことで交渉入りしていいのか。

 いわゆるFTAの部分だけでも、具体的なメリットが、数値として、自動車の場合はこれぐらいとか、あるいは、鉄鉱石とかその他等々については今現在でも関税なしですからはっきりと出るはずで、そういったことで、農産物、水産物のそれを撤廃した場合に、では数値がこれくらいになるからということで、比較考量して、我々はこれを国会の場で、この委員会の場で審議しなきゃいけないと思うんです。改めて、この数値をはっきりさせないで、この審議はこれ以上できない、委員会としては。

 このFTAの交渉においては、政府側の一方的な言いなりで、我々がこの委員会でその具体的な審議をしなければならないのに、それができない。しかも、このわずかな限られた時間で、このような大事な審議をしろという。本当に私は、今回のFTAの交渉のこの委員会の審議でこれほど悔しい思いをしたことはないということで、時間も来ましたので、質問を終わらせていただきます。

西川委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 民主党の仲野博子でございます。

 本日、各委員から、豪州との間のFTAを含むEPAの締結に向けて、先ほど来から議論が進められているわけでございますけれども、この間、大臣も、今国会中、あちこち、御公務なのか外遊されて、さぞかしお疲れのことかと思いますけれども、日本の農業者、農業に従事している方たちが大変不安な気持ちで今過ごしていらっしゃいます。そういったことで、大臣、きょうは本当に、もう日本の農業を徹底して守る、そういった決意でお答えをいただければな、そのように思っているわけでございます。

 私は、日豪EPA交渉において関税が撤廃されたら農業が壊滅するという地元北海道の農業者あるいは畜産業者の深刻な声を踏まえて、その日豪EPA交渉をめぐる問題について質問してまいりたいと思います。

 今、世界の食料需給の動向を長期的に見通すと、人口増加や開発途上国の急激な経済成長に伴う食料需要の増大や気候の変化等により、二十一世紀は食料受難の時代になるのではないか。食料の六割を輸入する我が国にとっては、まさに食料受難と言えるこのような時代にこそ、食料安全保障という観点から食料自給率を高めることが近々の課題となっているわけでございます。

 こういった農業を取り巻く状況の中で、EPA交渉全体に取り組む場合の我が国の対応方針においては、農林水産物の取り扱いについて、我が国の食料安全保障の確保や農林水産業における構造改革の努力に悪影響を与えないよう十分留意することが基本になっていると伺っております。

 そこで、食料安全保障という観点から、日豪EPA交渉において我が国の重要品目の関税が撤廃された場合、食料自給率に対してどのくらいの影響を及ぼすと試算しているのか。これは、一〇%も落ちていくのではないかと試算をされて、与党の先生方も大変心配をされております。そこで、大臣の御認識をお聞かせください。

松岡国務大臣 仲野先生にお答えさせていただきます。

 まず、一番最初に先生から御指摘のありました、今、日本の農業者が大変不安な、心配な気持ちでいっぱいである、それに対してしっかりとこたえてもらいたい、こういう御指摘でございました。

 全く私も仲野先生と同じ思いで、この問題に対する認識を持っております。したがいまして、いかに心配がないように、不安がないように懸念を払拭することができるか、これが我々の責任だし役割だ、このような思いで対処していこうと思っております。思いというより、決意を持って対処していこうと思っております。

 そこで、今いろいろな数字が、試算やそしてまた検討の結果として出されておりますけれども、これが、今先生の御指摘は、一〇%も自給率が下がってしまうことになる、こういうようなことでありますが、そういったことに間違ってもならないような、また、我々が当面の目標として掲げております四五%達成に向けて全力をもって取り組んでいく、それがすべてである。間違っても、オーストラリアとのEPAによって、自給率がそのことによって下がったり、そして、論外だと思っておりますが、一〇%も下がるような、そんな事態や状況になるような交渉結果には絶対にしない、こういう腹構えで取り組んでいきたいと思っております。

仲野委員 大臣、現行四〇%で、政府としては四五%の自給率にしていくんだ、そのことについて全力で取り組んでいくと今決意を述べられましたけれども、しかし、先ほど来の質疑を聞いておりますと、このEPA、FTA交渉に臨むに当たって、もし万が一のことがあった場合の影響額は相当なものであると思います。本当にもう、四五%どころか一けた台になるような危惧さえ今生まれつつあるわけであります。

 ですから、食料というものは、私たちが生活する上でどれだけ大事なものであるか、本当に生きていく上では欠かせない基本のことであります。そういった基本のことを、ぜひとも、四五だとかと言わないで、どんと上げていくような最大の努力をしていく、自給率を高めていくということを目標に掲げていかなければ、まあいいやみたいな感じになる。そういった目標は大きく掲げてそれに臨んでいくというのが、農業行政を担っていく大臣たちではないでしょうか。もう一度お聞かせください。

松岡国務大臣 思いは全く仲野先生の御指摘のとおりだ、私自身もそのように思っております。

 そこで、少しでも、ちょっとでも自給率を高めていく、そして、長期的には我々も、半分は、五〇%はぜひとも達成したい、さらに、その上にも向かって努力をしてまいるし、目標を持って向かっていく、こういうことについてはもう同じ考えであります。

 御指摘のように、世界的な食料需給の問題、特に中国の食料需要というものが大変な伸びを示してきております。そういう中で、この需給関係はタイトになっていく。そういう中ではなおのこと、自給率を高めていくということは、国民の食料安全保障、そういう観点からも重要である。それは、私ども強く認識をいたしております。

仲野委員 豪州は、言うまでもなく世界でも有数の農産物輸出国であって、農業経営規模も日本のおよそ一千九百倍と、我が国農業の構造とは大きな格差があるわけであります。その豪州からの輸入額の二割強を占める農林水産品の多くが、牛肉、小麦、乳製品、砂糖など、我が国農業や地域経済にとって重要な品目となっているわけであります。

 北海道は特に、全国一の畑作、酪農地帯であり、今回の日豪EPAは最大級の関心事項であります。今回もし重要四品目の関税が撤廃されれば、その影響は、さらにほかに波及していくことと思われます。これらの輸入増大は、地域の農産物を加工する地場の関連産業へ悪影響を及ぼすなど、そしてまた、加えて、豪州に関税撤廃を認めるようなことがあれば、先ほど来もいろいろ御意見がありましたけれども、アメリカやカナダも同様に要求してくることが予想され、他国にも影響が波及するのではないのか。

 そして、北海道農政部の試算によれば、関税撤廃によって、北海道の農業生産額だけで約四千五百億円、関連産業も含めると約一兆四千億円という莫大な影響が懸念されております。その結果、北海道内の経済成長率を四・二ポイント引き下げ、失業率は三・二ポイント引き上がると予想されているわけであります。これは、平成九年に北海道経済を大混乱に陥れた、あの北海道拓殖銀行の破綻すら上回る深刻な事態であります。

 日豪EPA交渉による地域経済への影響は、これだけ非常に大きいものであります。大臣の見解を改めて伺いたいと思います。

松岡国務大臣 今、仲野先生から御指摘がございました、北海道庁の試算によるという数字でございます。

 先般も、小平先生それから佐々木先生初め、北海道の方々がお見えになりまして、今の御懸念の点も強く指摘をされておられました。拓銀が破綻した、そのとき以上の影響がある、こういったことも私承っております。また、高橋知事からも、今まで二回ぐらいいろいろな場でそのことを指摘され、承っております。

 先生のそういった今の御指摘、こういったことが間違ってもないように、自給率の問題にいたしましても、それから日本全体に及ぼす影響の数字にいたしましても、また北海道の数字にいたしましても、これは逆にとらえれば、そういう大変な状況になる。

 したがって、我々は、この交渉に臨んで、また交渉に当たって、それで交渉の結果を得る。その中で、間違ってもそういった数字が現実のものとならないような危機感をしっかりと持って対処してまいりたい。そして、必ずや守り抜いて、そういう心配は払拭された、こういうような結果を求めて頑張りたいと思っております。

仲野委員 大臣、大臣の御地元も農業地帯であるということは、私もそのように認識させていただいております。

 この四品目について、牛肉、乳製品が入っている。酪農については本年の通常国会でも質問させていただいたんですが、この三月、過剰になってしまった生乳を約九百トン廃棄するという大変悲痛な出来事が北海道であったことは、まだ記憶に新しいところであります。

 北海道農協酪農畜産対策本部は、二〇〇六年度から二〇〇八年度にかけて、道内の生乳の生産量を二〇〇五年度に比べ三%減産する方針を定めました。現場の農業者にとっては、減産はかなり苦痛なものであると言わざるを得ません。

 現在、明治、森永、雪印の大手乳製品のメーカー三社が、道内に二〇〇七年度中の完成をめどにチーズ生産工場を建設中であり、完成すれば生乳の処理能力は飛躍的に増大すると見込まれているわけであります。しかしながら、乳製品の輸入が増大したならば、こういった北海道が一体となった需給改善に向けたせっかくの動きも水泡に帰してしまいます。消費が落ち込んでいる中、乳製品の輸入が増大すれば、それは生乳の在庫にも波及するものと思いますが、その結果、一番に生産者へ大きな影響を及ぼすのではないのでしょうか。

 大臣、いま一度、こういった生産者の、農家の方たちの心情を察したときに、どのように今お考えになっているのか、お聞かせください。

松岡国務大臣 仲野先生の選挙区の地元の皆さんの思いを受けた切実な今のお言葉というのは、私も身にしみて受けとめております。私も先生の地元をよく知っているんですよ。釧路も、あの付近も何度も行っておりますし、酪農家の方とも、酪農家の女性部の方とも何度も話をいたしておりますから、よくそれは存じております。

 そういう中で、テレビでも出ておりましたが、生産した生乳を捨てなきゃならない、これほど残念な、そしてまた情けないといいますか、そういった思いでおられるその生産者の方々の思いは大変なものだろうと思っております。したがって、そういった皆さんがこれ以上さらに苦しんでいかれるというようなことは絶対に避けなければならない、それが我々政治の責任である。これは与野党を超えて、お互いにこのことはしっかりと体していかなきゃならない、このように思っております。

 一方におきまして、先月の二十二日に、明治乳業から初めてチルドで上海に牛乳が出ました。これは、二年来明治乳業も頑張ってやってきたことであります。我々も政治的な立場からこのことはしっかり後押しもしてきたわけでありますが、いかんせん、どうしてもこれは物理的な問題でありますから、外にも需要を求める、供給先を求めていくということは、一方ではまた大変必要なことであります。

 そういう意味でも、農産物の輸出、初めてチルドで上海に牛乳が出ていった、こういった方向もしっかり目指しながら、そして守る方はしっかりまた守りながら、酪農家の皆様が安心して生産にいそしめるような方向を目指して必ずや頑張ってまいりたいと思っております。

仲野委員 大臣は私の選挙区であります釧路においでになって、現場のお声も過去に聞かれたと今おっしゃっていただきました。

 今回、新聞報道等ではこの日豪のEPA、FTA交渉のことについて報道されて、それを皆さんが読まれるたびに、一体日本の将来の農業はどうなっていくんだろうかという不安、そして、政府として一体本当に生産者の目線に立ってどのように考えていただいているんだろうか、そういった切実な声が今私のところにも寄せられているわけでございます。

 大臣は日ごろから攻めの農業を主張していらっしゃいますが、守備をおろそかにしては国際的に勝てるわけがありません。守るべきものを守ってこそ攻めの農業が、ひいては日本の農業の発展が可能になるのではないでしょうか。

 今回、EPA、FTA交渉に当たって、農業、農村の果たす多面的機能の発揮や、食糧や主菜の確保を図るため、各国の多様な農業の共生、共存が図られるよう確固たる交渉姿勢を貫くべきとの声が上がっていますし、また一方では、交渉をすることはないのではないかという声も多くあります。その観点から、譲れないところは交渉で全力を尽くして守っていく考えについては、その考えを曲げずに頑張っていただきたい。

 先ほど来からおっしゃっておりますけれども、最後に今回の日豪EPA交渉について、交渉事でありますから、今ここでその手のうちを見せられない、それは私もわかるわけでありますけれども、しかし、この国会は国民にとって開かれた場であります。国民に改めて、この不安を払拭するような大臣の最大の決意を聞いて、終わりたいと思います。

松岡国務大臣 仲野先生の本当に思いを込めた御指摘、御質問をいただいたところでございます。

 我々も、その先生の思いにさらにこたえていくことができるような、そして、国民の皆様方も食料の安全保障という観点から、また生産者の皆様方にとっては自分の立場、そういったものがしっかりと心配がないように、そして将来に向かって意欲を持って努力をし、頑張っていただけるような条件、そういう結果を必ずや私どもは実現をする、そういう決意と腹構えで臨んでいきたいと思っております。

 また、それに当たりましては官民挙げて、また、それこそ政治全体の力を上げて御支援をいただきたいし、またお力添えによって我々もなお頑張り抜いていきたい、このように思っております。

仲野委員 この問題については、先ほど来から、赤城委員からも本当に力強い御質問があったわけであります。これはみんなで一緒に日本の農業を守るということでやっていかなければならないと思いますので、大臣、本当によろしくお願いをいたしたいと思います。終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 私どもは、二国間貿易協定について、これまで政府が取り組んできたことに対して、反対を表明しないで賛成を表明してきました。こういう事態になるということは考えもしていなかったというのが正直なところであります。そういう意味で、今回、突然に降ってわいたオーストラリアとのEPA交渉、どこから起こってきたんだという疑問を持ったのも事実であります。

 松岡大臣は、先日のこの委員会の答弁で、経験したことのない台風が押し寄せてくるというふうな表現を使ったんですが、その台風を引き起こしているのはどこなんだというふうに質問したんですが、明快な回答はございませんでした。

 そういう意味で、先ほどの議論にもなったように、平成十七年の十一月から日豪両政府間の共同研究が行われて、これが台風の引き金だったというふうに私は思うんです。この共同研究報告書の中で、今政府が言っているように、農産物の重要品目を関税撤廃から例外化する足がかりを得たんだ、だから、先ほども議論になっていましたけれども、この十三日から行われる首脳会議で交渉入りを決定するんだというふうな報道がされていますけれども、この足がかりというのは何なんですか。これを具体的に説明していただきたいし、私は大臣にも答弁していただきたいんですけれども、このことが今後の交渉にどのくらいの影響力を持っているのか、はっきりさせていただきたいと思います。

松岡国務大臣 菅野先生御指摘の足がかりでございますが、これは今まで、先ほどからお話がございましたように、既に締結したもの、合意に達したもの、七つのEPA、FTAがあるわけでございますが、交渉に入ります前に一定の合意を見て、その合意をもとに交渉をしていく。そして、我が国が求めた三十三のセンシティビティー、そのうち幾つが例外になり、また、どういう扱いになったのかという点については、先ほど事務方の方から申し上げたとおりでございます。

 今までにそういう七つのEPA、FTAの交渉がありました。その七つの例と比べますと、今回、私どもは、豪州との間におきましては、段階的削減、さらにまた除外、再協議というこれまでにない柔軟性の選択というものについて、すべての選択肢を活用できる、こういったようなことをしっかりと盛り込んだわけでございます。

 したがいまして、豪州、先ほどお話がございましたように、今までかつて経験したことがない台風だ、私はそういう表現をしたわけでありますが、それは、皆様方の思いや受けとめがどうもそういったような思いでおられるということでそういう表現をしたわけであります。私もそのような思いに立って、だからこそ、今までにない、足場をしっかりと固めた、その上で交渉に入らなければならない、こういう形で、今申し上げましたような段階的削減、除外、再協議といったあらゆる柔軟性の選択肢を活用できるという足場をしっかりとつくってこれは臨む、こういうことでございます。

菅野委員 交渉入りに当たっては、本当にそれがどれくらいの効力を持つものかというのは、あとは大きな力関係で決まっていくんだろうというふうに思いますけれども、やはり政府としてはしっかりとした対応を私どもと一緒になって行っていただきたいと思うんです。これは、関係団体は物すごく危機感を持っているんですが、国民全体でこのことが議論になっていないんです。これは、政府が国民に対してはっきりと説明責任を私は果たしていないんじゃないのかなと思えてならないんです。

 というのは、オーストラリアと自由貿易協定を結ぶというこの中身において、メリット、デメリットがどこにあるのかということがはっきりしていないんです。私はデメリットの方が非常に大きいと思うんですね。先ほどからも議論になっていますけれども、石炭、鉄鉱石、液化天然ガスなどの鉱物・エネルギー資源は、もうほとんど関税撤廃されているという状況です。そして、牛肉、乳製品、小麦、米、砂糖などの主要農産物、これは説明していただきたいと思うんですが、関税率がどのような状況になっているのか。これが撤廃されていくというふうに言われていますけれども、このことによって、先ほども答弁がありましたけれども、この牛肉、乳製品、小麦、砂糖で七千九百億円ぐらいの損失ということを言われていますけれども、関税の部分でどうなっているのか、この点を国民の前に明らかにしていかないと、国民的議論というふうにはなっていかないんじゃないのかなと思っています。このことを説明していただきたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 先ほど委員から御指摘のとおり、オーストラリアからの輸入品のうち、鉱物・エネルギー資源につきましては、石炭、鉄鉱石、液化天然ガスなどの関税率は無税となっております。主要農産物の関税率につきましては、牛肉が三八・五%、バターが二九・八%にキロ当たり九百八十五円の関税がかかっております。また、ナチュラルチーズにつきましては二九・八%、小麦につきましてはキログラム当たり五十五円、それから砂糖、これは粗糖でございますが、キログラム当たり七十一・八円の関税がかかっているところでございます。

 以上でございます。

菅野委員 トータルで、関税率がゼロになったらどれくらいの影響があるんですか。それだけはっきりしてください。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 一定の前提を置いた試算でございますけれども、その四品目でございますけれども、関税を撤廃した場合には七千九百億円の生産の減少が起こるものと見通しております。

 以上でございます。

菅野委員 メリットはほとんどなくて、デメリットだけが七千九百億円という数字です。これが事実だと思っています。それで、先ほどの議論にも、ちょっと聞いていてはっきりしているんですが、エネルギーの安定供給のためにこの主要農産物、日本の農業を犠牲にしていく、こんなことを国民が知ったら、私は怒り心頭に狂うんじゃないのかなというふうに思うんです。このことがマスコミ等で取り上げられないで、関係団体だけの取り組みになっているということに私は大きな疑問を感じますし、政府としても、ぜひ、しっかりとしたマスコミへの発表というのを行っていただきたいというふうに私は思うんです。

 それで、この農業という部分は、私、地域経済に物すごく大きな影響を及ぼすものだというふうに思っています。先ほど北海道の例が出されました。しかし、この間、日本の地域経済は、地方の経済はすっかり冷え切ったものになっています。

 そこの分析を行ったときに、一つの例ですが、米の部分で申せば、減反を四〇%、つくる能力があっても六〇%しかつくることができないというのが今の農業の米の実情です。それで、価格は、かつての部分の、二万円台が一万六千円、高いものでも一万六千円ですから、八〇%台に価格も落ちてしまっています。それで、面積と価格を掛け合わすと四八%と、米の経済への寄与というのがもう半分になってしまっているんです。これが、地域経済を冷え切ったものにさせてしまっている私は大きな要素だというふうに思うんですね。米の地域経済に及ぼす影響は半減しているというのが統計上からも出てきています。

 大臣、このような地域経済がすっかり冷え切ったときに、またこんな政策がまかり通っていったならば、ますます冷え切ったものになってしまうという私は危機感を持っています。そういう中での交渉だということですから、大臣、本気になって、ここは死に物狂いになってこの交渉に、交渉入りを阻止するくらいの決意を持って当たっていただきたいし、そして最後に、長い地道な交渉をしていただきたいと思うんですが、進展がない場合は中断するという決意も持っているのかどうか、この決意も含めて大臣の見解をお聞きして終わります。

松岡国務大臣 菅野先生の御指摘でありますが、一番最初の赤城先生のときにも私は申し上げましたけれども、我々は、そういう腹を持って臨む、それくらいの決意を持って臨む、このように申し上げたとおりでございます。

 いずれにいたしましても、とにかく強大な相手がいる、それに向かって我々は足場をしっかりつくりましたけれども、この足場を最大限に生かして、そして必ず我々の目的とするところ、目標とする結果を得る、こういう決意でこれは臨んでまいりますので、とにかく、これはまたあらゆる形で、先生方からも、また皆様方からも御支援をいただいて、大きな力として臨んでいかないことにはこれは大変な相手であるということは重々自覚をいたしております。

 いずれにいたしましても、農業者や、また国民全体の食料安全保障の観点から、間違っても懸念が現実となることがないようなことで体していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

菅野委員 終わります。

     ――――◇―――――

西川委員長 この際、日豪EPAの交渉開始に関する件について決議いたしたいと存じます。

 本件につきましては、理事会等におきまして協議を願っておりましたが、その協議が調い、案文がまとまりました。

 便宜、委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえたいと存じます。

    日豪EPAの交渉開始に関する件(案)

  我が国と豪州は、経済関係のみならず、米国などと並ぶ我が国の友邦として深い関係がある。

  日豪EPAについては、この関係を強化し、さらに広く、かつ深化したものとすることを目標とし、なかんずく、資源の安定供給がこのEPAによって確保されることが大きな課題である。

  一方、日豪間の貿易関係の多くを占める農林水産品については、日豪間で大きな生産格差が存在することから、日豪間のEPAによって、国内の農林水産業を中心に大きな悪影響が及び、我が国農林水産業・農山漁村の有する多面的機能が損なわれるおそれがあるとともに、現在進めている我が国農林水産業の構造改革の取組に支障が生じるとの強い懸念がある。

  日豪EPAが、真に日豪両国の友好関係の増進に貢献するためには、このような懸念を払拭し、真に両国の経済関係の深化につながるものとすることが必要不可欠である。

  よって、政府は、日豪EPAの交渉入りをする場合には、左記の事項の実現を図ることを強く求めるものである。

      記

 一 米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農林水産物の重要品目が、除外又は再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉すること。

 二 現在進行中のWTO交渉や、米国、カナダ等との間の農林水産物貿易に与える影響について十分留意すること。

 三 交渉に当たっては、交渉期限を定めず、粘り強く交渉すること。万一、我が国の重要品目の柔軟性について十分な配慮が得られないときは、政府は交渉の継続について中断も含め厳しい判断をもって臨むこと。

 四 交渉を進める中においても、国内農林水産業の構造改革の努力を加速し、国際競争力の強化につながるよう全力を挙げるとともに、交渉の帰趨いかんでは、国内農林水産業、関連産業及び地域経済に及ぼす影響が甚大であることを十分に踏まえて、政府を挙げて対応すること。

  右決議する。

以上でございます。

 お諮りいたします。

 ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西川委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣松岡利勝君。

松岡国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力を尽くしてまいる所存でございます。

 ありがとうございました。

西川委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

西川委員長 次に、参議院提出、有機農業の推進に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。参議院農林水産委員長加治屋義人君。

    ―――――――――――――

 有機農業の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加治屋参議院議員 ただいま議題となりました有機農業の推進に関する法律案につきまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。

 有機農業は、農業の自然循環機能を大きく増進し、農業生産に由来する環境への負荷を低減するものであり、また、安全かつ良質な農産物に対する消費者の需要に対応した農産物の供給に資するものであることから、有機農業により生産される農産物の生産、流通、消費の各過程において、有機農業の推進のための取り組みが求められております。

 しかし、現行法制度においては、有機農業は、環境保全型農業の一つとして、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律に基づき農業生産の側面から支援措置が講じられておりますが、有機農業の推進だけを目的とする法律はなく、また、有機農業により生産される農産物はなかなか増加していない状況であります。

 そこで、有機農業による生産を推進し、これによって生産される農産物の流通、消費を増加させるため、農業生産、流通、消費というそれぞれの側面から有機農業を推進するために必要となる施策を総合的に講ずる法律を新たに設けることが必要であると考えます。

 この法律案は、こうした認識のもと、有機農業の推進に関する施策の基本となる事項を定めること等により、有機農業の推進に関する施策を総合的に講じ、もって有機農業の発展を図ることを目的とするものであります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、この法律において有機農業とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいうこととしております。

 第二に、基本理念として、有機農業の推進は、農業者が容易に有機農業に従事することができるようにすることを旨として行われなければならないこと、農業者その他の関係者が積極的に有機農業により生産される農産物の生産、流通または販売に取り組むことができるようにするとともに、消費者が容易に有機農業により生産される農産物を入手できるようにすることを旨として行われなければならないこと、有機農業者その他の関係者と消費者との連携の促進を図りながら行われなければならないこと、農業者その他の関係者の自主性を尊重しつつ行われなければならないことを定めております。

 第三に、有機農業の推進に関して、国及び地方公共団体の責務を明らかにしております。

 第四に、農林水産大臣は、有機農業の推進に関する基本方針を定めることとし、この基本方針には、有機農業の推進に関する基本的な事項、有機農業の推進及び普及の目標に関する事項、有機農業の推進に関する施策に関する事項などを定めることとしております。

 第五に、都道府県は、基本方針に即し、有機農業の推進に関する施策についての計画を定めるよう努めなければならないこととしております。

 第六に、国及び地方公共団体は、基本的な施策として、有機農業者等の支援、有機農業に関する技術開発の促進のための研究施設の整備、研究開発の成果に関する普及指導及び情報提供、消費者の理解と関心の増進のための広報活動、有機農業者と消費者との交流の促進、有機農業の推進に関する調査の実施、国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための活動の支援などを行うこととしております。

 なお、この法律は、交付の日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

西川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

西川委員長 本案につきましては、質疑及び討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、有機農業の推進に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

西川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十分散会


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