衆議院

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第11号 平成19年4月25日(水曜日)

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平成十九年四月二十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西川 公也君

   理事 岩永 峯一君 理事 金子 恭之君

   理事 近藤 基彦君 理事 谷川 弥一君

   理事 並木 正芳君 理事 篠原  孝君

   理事 松木 謙公君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      今津  寛君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    岡本 芳郎君

      北村 茂男君    土井  亨君

      土井 真樹君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      鳩山 邦夫君    原田 憲治君

      広津 素子君    福井  照君

      福田 良彦君    古川 禎久君

      御法川信英君    森山  裕君

      渡部  篤君    岡本 充功君

      黄川田 徹君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    高山 智司君

      仲野 博子君    福田 昭夫君

      山田 正彦君    井上 義久君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   農林水産大臣政務官    永岡 桂子君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   政府参考人

   (水産庁長官)      白須 敏朗君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局次長)          桝野 龍二君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     土井 真樹君

  北村 茂男君     土井  亨君

  斉藤斗志二君     原田 憲治君

同日

 辞任         補欠選任

  土井  亨君     北村 茂男君

  土井 真樹君     小里 泰弘君

  原田 憲治君     斉藤斗志二君

    ―――――――――――――

四月二十五日

 種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 水産業協同組合法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)


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     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、水産業協同組合法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として水産庁長官白須敏朗君及び国土交通省自動車交通局次長桝野龍二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。

 まず、上程された法案審議に入る前に、冒頭、一言松岡大臣にお尋ねしたいと思います。

 外遊をされて、向こうでさまざまな神経を使いながらお疲れかと思いますけれども、日本から離れて、向こうの方に行かれまして、長い機中で、長旅で、その間に大臣もさまざまな政治活動等をお考えになりながら、やはり今大変深刻になっているWTO、FTAのことでどう相手国に臨むのかという強い決意を持って行かれたのかな、そのように推察されるところでございます。

 その中で、お気持ちのどこかに、きょうのこの委員会がこうして開会されるに当たって、この間の一連のさまざまな、大臣に対する、多くの議員から、もうそろそろ多くの国民の方たちに対して説明責任を果たしていただきたいという思いが募っていらっしゃいます。そのことで、大臣から誠意ある答弁をまずいただきたい、そのように思います。

松岡国務大臣 その点に関しましては、もう何度も先般来申し上げたことでございますが、既に申し上げたとおりでございます。それ以上のことはございません。

仲野委員 この後、また同僚の議員がお尋ねするかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 一昨年来、私は、さまざまなこういった機会を通じまして、漁業用燃油価格の高騰が漁業者の経営に与える影響について取り上げてまいりました。今漁業者を取り巻く環境というのは大変厳しく、輸入水産物の競合による魚価安に見舞われ、その中で、燃油などの石油関連資材のコストが上昇しても販売価格にそのコストを上乗せできない現状にある、その結果、漁業経営が追い詰められている、水産業はそういった衰退をたどってしまっているのではないかと憂慮しているわけであります。

 その中で、また漁協は、こうした漁業者を組合員とする組織でもあります。漁協の経営状況の悪化は、すなわちこうした漁業の危機的状況と表裏一体の関係にあります。

 今回の改正案で予定しております漁協の事業運営全般の健全性を確保するための措置などの必要性は認めるものでありますが、重要なことは、どのように漁業者の経営の安定を図り、安心して漁業に取り組んでいただける環境を構築していくのか、この議論が求められるのだと私は思います。

 本日は、そうした観点に立ち、幾つか質問してまいりたいと思います。

 地元の話で恐縮でございますが、北海道というのは、御案内のとおり、我が国の食料生産基地として、新鮮でおいしい、安全、安心な食べ物を全国に供給しているわけであります。そして、北海道は広大な地域であり、鉄道網など公共の交通は限られておりますから、物流の主役を担っているのは道路運送、つまりトラックであります。

 先日、地元の標津町に伺い、地元の方々とお話をさせていただく機会がございました。この標津町の地域は、地元の標津漁業協同組合を中心に、水産業界を挙げまして、安全、安心を求める消費者の声にこたえるため、水産物の漁獲から卸売市場での荷さばき、加工場における加工、そして小売店への運送という一連の過程におきまして衛生管理の徹底を図る標津町地域HACCPシステムという、全国的に見ても極めて先進的な独自の取り組みを行っているわけであります。

 このシステムの中では、運送業者の方々も、安心、安全な食料の供給に向け非常に重要な役割を果たしているわけであります。皆さんが、この燃料の軽油が高値で推移しているため、経営状況が大変厳しいとおっしゃっておりました。

 全日本トラック協会のアンケート調査によれば、荷主との交渉により軽油価格の高騰分を運賃にほぼ転嫁できているという回答はわずか一・六%にすぎず、約六割の事業者が全く転嫁できないという回答をしております。

 まず、国において、軽油などの燃料価格の高騰を受け、物流対策としてどのような取り組みを行っているのか、また、北海道に特化した取り組みとしてどのようなことが行われているのか、桝野自動車交通局次長にお尋ねしてまいりたいと思います。

桝野政府参考人 先生御指摘のように、トラックの燃料である軽油につきましては、非常に値上がりしておりまして、事業者は困っております。ただ、運賃をどう設定するかにつきましては、基本的には民間対民間の交渉で決まることでございますが、安全、安心とか一定のサービスを維持するために、サービスとして再生産可能な運賃を収受するというのは非常に大切だと私ども思っております。

 そういった観点から、経済団体、経団連でございますとか商工会議所、あるいは地方のそれぞれの商業所、そういうところに対して理解を得るために、例えば経団連につきましては、国土交通大臣あるいは国土交通事務次官等から働きかけを行ってまいったところでございます。

 さらに、それぞれのトラック事業者の方が個別の荷主と交渉するときに、一つのノウハウとして、燃料分だけを一つの別建てとして取り上げるいわゆるサーチャージ制と呼ばれる運賃の交渉の方式等について、中央団体で一つの方式をつくって、こういうものの徹底を図る、あるいはそれを啓蒙するというような作業も行ってきておるところでございます。

 あわせまして、軽油をできるだけ使わないようにするための機器、いわゆるデジタコ、デジタルタコグラフというものがございますが、そういうものを導入するための補助金制度、また低公害車を導入するための補助金制度、こういうようなものも設定いたしまして、適宜推進に努めております。

 また、北海道につきまして、先生、特別ということでございましたが、ある意味では全国均一の議論でございますが、北海道におきましては、北海道運輸局長が先頭に立ちまして同様の行動をしているところでございます。

 今後とも、鋭意やってまいりたいと思っております。

仲野委員 国土交通省の担当所管の方からは鋭意努力してまいりたいという御答弁をいただいたんですが、軽油引取税の暫定税率の一部撤廃、あるいは一時的な凍結など、税制面を含めた抜本的な対応を求める声もまた多々あります。国民に対する安全、安心な食料の安定的な供給という観点から、農水省としても真剣に政策的な対応を考えていただきたいと思いますが、運送業界が置かれているこうした現状に対する副大臣の認識について伺ってまいりたいと思います。

山本(拓)副大臣 今仲野先生が御指摘のとおりの統一的な認識を有しております。

 御案内のとおり、物流業界、水産に限らず、全体的に、どこのトラック業界も物流業界も、燃料コストで、売り上げは上がるんだけれども利益は上がらないということで、悲鳴を上げているのが現状であります。

 そういう中で、特に水産業の場合は、いわゆる産地そのものの流通コストといいますか、合理化がまだまだ進んでおりませんので、そういう意味からいたしますと、農林水産省といたしましては、産地市場の統合というものを前提に、新たな市場の整備、そしてまた電子商取引による取引の実施、買参権の開放等の、まずは産地の流通改革という方針で取り組んでおります。

 また、産地から小売業者へのダイレクトな物流ということで、できるだけ産地直送という形の概念をさらに徹底してまいる中で、多様な流通経路を構築してまいりたいというふうに考えておりますし、消費地市場の再編合理化、また手数料の弾力化の消費地市場改革といった、いわゆる産業全体の、他業界が積極的に進めております流通基地の合理化の手法を遅まきながら積極的に、今回の法改正によって産地の漁協の協力を求めて改革してまいりたいというふうに考えております。

仲野委員 農林水産業を初めとして我が国の産業を支えている地域の、こうしたトラック業界等を含む中小零細の声というのは、なかなか声にならない声、国政に届いてまいりません。こうした方々が置かれている状況にもぜひ関心を持っていただくとともに、また、しっかりと行政のサポートを切にお願いして、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 今回の改正案の中で、漁協の組合員資格審査の適正化のための措置を導入することにしております。法律上、漁協の個人組合員資格は、「組合の地区内に住所を有し、かつ、漁業を営み又はこれに従事する日数が一年を通じて九十日から百二十日までの間で定款で定める日数を超える漁民」と規定されているわけであります。

 この組合員であるかどうかの審査については、漁協自身が審査基準を策定し、少なくとも毎年一回の資格審査を実施するべき旨が通達により指導されていると認識しておりますが、その手続などについては基本的に漁協の判断にゆだねられており、適正に実施されていない例もあると聞いております。

 まず、漁協における資格審査の実施状況と、今回、組合員の資格審査の方法を定款の絶対的な記載事項とする理由、そのねらいにつきまして、政務官に御説明を求めたいと思います。

福井大臣政務官 おはようございます。仲野先生には毎回質問にお立ちいただきまして、まことにありがとうございます。

 今御指摘のように、漁協は、本来、漁業者の協同組織として、漁業権の管理とか、水産物の販売とか、資材の購買とかの事業を通じて、組合員に対して総合的なサービスを提供するというのが本来的な機能でありますけれども、近年、その漁協の経済活動の停滞でありますとか、漁業権の管理に絡んだ漁業補償金をめぐって、組合員資格を有しない方の組合への加入によって、漁業者の意思が必ずしも反映されていないケースが多々見られるということがございましたので、このような事態を防ぐために、今先生御指摘の資格審査の基準とかあるいは手続を定款に記載することを義務づけるということによりまして、組合員の資格審査が公平で適正に行われる、特に適正に行われることを意図して、今回の法律を御提案申し上げているところでございます。

仲野委員 この資格審査の厳格化によって、例えば病気、けがなどにより漁に出ることができなかった、その結果、九十日に若干満たない、例えば八十八日しか漁に出ることができなかった、こういう方々も一律に組合員資格がないと判断されてしまうおそれがないのかどうなのか。

 また、漁業経営は海に出ているときがすべてではありません、海に出ていないときであっても、例えば船の掃除をしたりだとか、網の補修をしたりだとか、機械の補修をしたりだとか、さまざまな作業に追われます。こうした作業はどのように判断されるのか。

 資格審査の規定の仕方とも絡むものであると思いますので、このことについては水産庁のしっかりとした考え方をお聞かせください。政務官、お願いいたします。

福井大臣政務官 今、手続の厳正化によりまして組合員さんに不利益が生じないようにというまことにごもっともな御指摘でございますので、ちょっと整理して手続を申し上げます。

 役員となった者の日数のカウント方法とか、それからやむを得ない事情によって出漁できない者の取り扱いでありますとか、あるいは着漁準備日数、出漁するための準備日数の取り扱いなど、その地域によっていろいろさまざまに事情が変わるということでございますので、これは十分配慮する必要があるということでございます。

 その前に国がモデル的な定款例というのをお示しして、そして県庁がそれを踏まえて、県ごとの事情を今申し上げた項目に特に配慮して定めるということで、適正に漁業をやっていらっしゃる方に特に不利益が生じないように、そういう配慮もさせていただきたいというふうに思っております。

仲野委員 そのことは一番大事なことでありますので、何事もボタンのかけ違えがなく、最初が肝心でありますので、ぜひしっかりと、そのことは国の方から指導をしていただければと思っております。

 先ほどもお答えいただいたんですが、これまで組合員となっていた方を組合から除名するという可能性も出てくると思うんです。そういったときに、個々の漁協が取り組むには相当な決意とエネルギーが必要かと思うんです。末端レベルの漁協に対してどのように周知徹底を図っていくつもりなのか、また福井政務官にお伺いいたします。

福井大臣政務官 今回の法改正の趣旨とか内容につきましては、漁協系統組織、そして都道府県などの関係者を対象にした説明会を開催しました。一部これからでございますけれども、そういうことで関係者の皆様方に周知徹底を図っていくということでございます。

 今、東京と仙台と福岡では説明会は実施いたしましたが、残念ながら、札幌と神戸と予定をしておったんですが、ちょっと延期をさせていただいたりして、これから神戸と札幌については説明会をするということでございます。その場所で周知徹底を図らせていただきたいということでございます。

 その中身は、今申し上げました項目でございますけれども、組合員たる資格審査の基準あるいは手続を記載した定款を作成する漁協、あるいはその定款について認可及び指導を行う都道府県が、その内容についてしっかり理解してくださいというのがその中身でございます。

 いずれにしても、二十年四月を施行日ということで予定しておりますので、二十年度いっぱいまでに総会をして定款変更することになりますから、さらにまた周知徹底をその期間の中で図らせていただきたいというふうに思っております。

仲野委員 まだ北海道の方が行っていないということで、これから行われるということでありますが、この都道府県ごとの対応をきちっとやっていかないと、ばらつきが生じれば不公平感というものを助長することになりかねない、そういったこともちょっと危惧するものであります。

 水産庁として、非常にこの資格審査というのは難しいものであって、それを監督するのが都道府県となれば、このことについても丸投げするようなことではなくて、やはり法案を出した責任として、しっかりとこのことについても取り組んでいただきたいなと私は思います。

 この資格審査、最後に一点また確認したいと思うんですが、行政庁には解散命令という権限がありますけれども、資格審査が適正に実施されていないと判断した場合、最終的に漁協の解散命令にまで踏み込む可能性もあると理解してよろしいのかどうなのか。また、こうした場合、その組合に所属している漁業者が漁業を続けていくことができるよう、一定の配慮が必要と考えます。どのような対応が考えられるのか、また福井政務官の見解を求めたいと思います。

福井大臣政務官 もう一度先ほどのを整理させていただきますと、国の方は模範の定款例ということで関係者の皆様方にお示しをして、県としては、地元の御事情によって、バリエーションといいましょうか、出漁準備日数の考え方でありますとか、そのほかの考え方についても事情に合わせることができるということでございます。

 今御質問の、適正に行われない場合の手続でございますけれども、水協法に違反することになった場合、行政庁は漁協に対して指導監督を行うというのは、今御指摘のとおりでございます。具体的には、行政庁から漁協に対しまして報告徴収を行うということでございます。そして、それを踏まえて必要な措置命令をかけてもそれに従わない場合には、最終的には解散命令を発することができるようになってございます。

 この場合、解散して整理された漁協に所属していた組合員さんにあらせられましては、隣接する漁協がその区域を解散漁協の区域まで拡大する、隣接の漁協が解散した漁協の区域までその区域を拡大することによって、解散漁協の組合員はこれに加入することができるようになるということでございます。この結果、解散漁協が保有していた漁業権の取り扱いにつきましては、区域を拡大した隣接の漁協がその漁業権の免許を受けるということによりまして、解散の憂き目に遭った漁協の組合員さんには、漁業権に基づく漁業を継続するということになるわけでございます。

 以上が手続でございます。

仲野委員 全国の漁業協同組合、それぞれ経営状況、小規模から大規模ありますが、北海道は比較的、合併するところまでいかなくても、その額が一けたも違うようなことになっておりまして、そういった意味では、非常に地域によって実情がそれぞれ違う。そういった意味で、私は、この資格審査の適正化に関してというところでは、非常に漁協の関心が高いものと思われます。

 それで、各地域の実態等の把握をしていただきながら適切な運用がなされるように、このことについて期待をしたいと思っておりますので、取り組みをしっかりとしていただきたいなと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、法改正の二つ目のことでありますけれども、共済事業の健全性確保ということで、今回一部改正されておりますけれども、漁協が実施する共済事業、いわゆるJF共済について、その健全性基準の設定と行政庁による早期是正措置の導入、最低出資金制度の導入などを行う予定とされております。これらの措置は、民間保険については保険業法の改正により既に措置されており、また、農協組織が実施しているJA共済についても、平成十六年の農協法の改正により同様の措置が講じられておりますので、今回の改正は、いわば民間保険、JA共済と足並みをそろえるということであるかと思います。

 こうしたさまざまなことを考えるときに、共済事業について、民間保険、JA共済と一律に同じような措置を導入する必要が本当にあるのかどうなのか。今回の共済事業の健全性の確保を図るための措置の導入が単位漁協レベルにどのような影響を与えるのか、政務官に確認をしておきたいと思います。

福井大臣政務官 まさに、健全性を確保しなければならないということで御提案させていただいておるわけでございます。漁協の共済事業につきましても、先生今御指摘のほかの業態と同様に、健全性の確保と契約者の保護に必要な措置を講じているということでございます。

 今、農協の共済事業との比較でございますけれども、共済掛金につきましては、農協は五兆五千六百六十三億円、漁協は六百九十億円ということで、八十対一、総資産も農協が四十三兆五千六百三十三億円、漁協が五千四百二十三億円ということで、これも八十対一ということで、掛金のレベル、事業規模で見ましても八十分の一、農協対漁協は八十対一ということでございますので、そのレベルに応じた対策を講じなければならないということだと思います。このため、漁協については、共済事業に係る最低出資金、農協の場合は一億円なんですけれども、漁協は今回一千万円、最低出資金を一千万円にしてくださいというふうにさせていただきたいと思います。

 最低出資金に満たない組合は、平成十六年度の調査によりますと三十六組合ございます。その三十六組合が共済事業を継続していく場合には、今後、増資とか漁協の合併とかを行っていただくことによりまして、今回の規制の内容を満たしていっていただくという必要がございますので、このためには一定の期間を要しますから、施行日より三年間の経過措置を設けております。この三年間の間に、共済事業を行う組合はすべて最低出資金一千万円を満たすことができるのではないかというふうに考えている次第でございます。

仲野委員 契約者保護のための措置についてちょっと確認していきたいんですけれども、共済事業の推進を図っていくために、クーリングオフ制度や、契約に際し虚偽のことを告げてはいけないなど、契約者保護のための措置を導入する必要性は十分理解できるものであります。

 しかし、現実の共済事業の実施体制を見ると、共済事業専任の職員を置いている例は少なく、実際には、職員がほかの事業を兼務しながら共済商品の紹介、販売などを行っているのが実情ではないのかなと思います。こうした現状を踏まえますと、この措置の実効性を確保していくためには、専任職員の設置に向けた支援、あるいは研修などの充実が求められると思いますが、水産庁としてどのようにお考えになっているのか、また政務官にお伺いいたします。

福井大臣政務官 問題意識、そのとおりだと思いますので、例えば、漁協共済ライフプランナー養成研修会というのはもう既に実施をしておりますし、これからも必要だというふうに思いますし、共済基幹職員養成研修会、あるいは全国女性共済担当者研修会、AFP、ファイナンシャルプランナーの資格取得の講座などなど、今先生おっしゃるような、ライフプランについての知識、あるいはコンプライアンス、あるいは契約者保護についての知識がその職員についてあるように、漁協職員の研修等についてさらにまた徹底を図らせていただきたいというふうに思っております。

仲野委員 先ほども話をさせていただいたんですけれども、こういった新しい制度が入ってくるたびごとに、現場が大変混乱をするということが聞こえてくるんです。

 去年ですか、省エネ対策ということでさまざまな制度ができて、一番混乱を招いたのが漁業協同組合でありました。そこで働く担当の職員が、もう利用者との対応に追われて自分の仕事ができないという状況がございますので、そういったことがないように、しっかりとした研修というか、専任の職員を配置するためには、それなりの研修に係る費用だとか、やはり漁協にそういったところで遜色のないようなことを責任を持って徹底していただきたいな、そのように思います。これは強く要望させていただきたいと思います。

 最後の質問になるんですけれども、これは中小漁業融資保証法とも関係しますけれども、漁業金融の現状について、考え方を尋ねていきたいと思います。

 最近の漁業関係融資残高の状況を見ますと、平成三年度末の二兆八千四百八十一億円から、十七年度末には一兆五千五百六十三億円と四五・三%も減少しているという状況にあります。また、漁業近代化資金など制度資金の貸付残高も同様に減少しております。今、漁業経営を取り巻く環境が厳しさを増している中で、漁業における新規の資金需要が大きく減退していることが原因ではないかと思われます。

 漁業者が新しい船をつくりたくてもなかなかその余裕がないということで、こうした漁業向けの貸し付けが減少している現状を踏まえて、金融面からより積極的に経営支援していくという観点から、漁業者の負担を軽減し、より利用しやすい制度が必要なのではないのか、あるいは既往債務についても何らかの対応が必要ではないかと考えますので、国として、制度金融の今後のあり方について、この機会に尋ねておきたいと思います。政務官、お願いいたします。

福井大臣政務官 今先生御紹介いただきました漁業関係融資残高、平成三年は二兆八千四百八十一億円、平成十七年度末で一兆五千五百六十三億円ということで、四五・三%減少しているというのは事実でございます。

 こういう事実関係の理由は、漁業経営環境の悪化、そして投資意欲の低下、そして収益力の低下などなどによりました債務償還余力が縮小しているということだというふうに思っております。

 このため、政策金融におきましては、融資率の改善とかあるいは償還期間延長とか、貸し付け条件の改善は行ってきたつもりでございますけれども、特に、平成十五年度から、一定金額までは物的担保、保証人の提供なしで漁業信用基金協会が債務保証を行う仕組みを構築したところでございますので、これらの融資円滑化措置の周知と活用の促進を図ってまいりたいというのが政府の考え方でございます。

 いずれにしても、国際競争力の向上とか、とにかく担い手の皆さん方に創意工夫、経営を積極的にやっていただくということが目的でございますので、今後とも現場の情報をひとつよろしくお願いいたしたいと思います。

仲野委員 本当に厳しいこの一次産業、とりわけ漁業経営が厳しい環境の中で、そこで従事している方々の目線に立って、そういった安定した漁業経営ができるように、担当行政としてしっかりやっていただきたいということを要望して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 民主党の黄川田徹であります。

 政治と金の問題そしてまた政治資金の透明化については、膠着状態が続いていますといいますか、行き詰まりを見せているような感じでありますけれども、これを打開できるのは松岡農林水産大臣その人だと私は思っております。

 それで、重ねての質問でありますけれども、一点だけ御質問させていただきます。

 事務所費などへの領収書の添付の是非について、大臣個人の見解はどうなんでしょうか。お尋ねいたします。

松岡国務大臣 これは、党でも議論され、また与党でも議論されておることでありますし、そういった議論の推移を見守りたいと思っております。

黄川田委員 先般も質問いたしましたけれども、私は法令遵守でやっているんだ、それからまた、この問題については各政党それぞれ議論しているだろうから、個人的な見解は差し控えるというような感じでありますか。

 であるならば、引き続き、質問に関しては副大臣そしてまた政務官にということになりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 先ほど仲野委員さんからもお話しのとおり、本当に水産業を取り巻く環境は厳しいわけでありまして、漁協の経営の悪化というものは、農山漁村の衰退を本当に招くんじゃないのか、集落が崩壊するような形になるんじゃないのか、漁協を本当に立て直し、そしてまた器を大きくし、そして力を出すことが地域社会の活性化に本当につながるんじゃないか、そう思いますので、その点を絡めてこれから質問していきたいと思っております。

 まず、新水産基本計画における資源管理の取り組みと漁協の役割についてお尋ねいたしたいと思います。

 資源管理の取り組みについては、特に水産資源は、適切な管理を行うことにより、持続的な利用が可能な資源であると私は思っております。

 そういう中で、この新基本計画のもとで、資源管理の取り組みをさらに強化していくことになると思われるのでありますけれども、資源管理の当事者であります漁業者でありますとかあるいはまた漁協は、資源管理に対してどのような役割を果たすべきだと考えておるのか。

 そしてまた、この漁業者、漁協でありますけれども、日常、漁を通じて、海の状態あるいはまた水産資源の状態を日々肌で感じておるわけなのでありますけれども、資源管理に主体的に取り組んでいくことが求められている漁協であるとかあるいはまた漁民のそれぞれの位置づけでありますか、これもあわせてお尋ねいたしたいと思います。

福井大臣政務官 今先生御指摘の水産資源の管理でございますけれども、漁業者と漁業者団体による自主的な取り組みが不可欠、これが基本でございます。今先生御指摘のとおりでございます。

 このため、水産庁といたしましては、漁業者団体の自主的な資源管理措置が図られるような指導助言、必要な支援を行うというのが行政行為でございます。平成十四年からは、サワラやズワイガニなど、特に資源回復が必要な魚種につきまして、漁業者間の話し合いに基づく減船でありますとかあるいは休漁でありますとかによる漁獲努力量の削減などを内容とする資源回復計画を作成、実施しているところでございます。

 漁協も、今先生御指摘でございました自主的な資源管理の中核として活躍をしていただいておりまして、平成十五年には千六百八組織、団体が自主的な資源管理をしていただいております。これは、平成十年には千三百十二組織でございましたので、二百九十六組織、二二・六%、この五年間でふえているということで、皆様方の御努力に感謝をさせていただいているところでございます。

 このように、漁協は資源管理の中核的立場を担っておりますので、今後とも一層の取り組みを積極的に進めていただきますように指導を行っていきたいというふうに思っている次第でございます。

黄川田委員 平成十四年の水協法の改正のときに、漁協に資源管理規程を定めることができるとなっておることでありますけれども、平成十六年時点で六県において二十九漁協が設定しておるということでありまして、十四年の改正のときの趣旨が十分生かされているのかなというところもあるのでありますけれども、その点は政務官の認識はどうでしょうか。

福井大臣政務官 全体数で二けただったら少ないのか多いのかというのは評価が分かれるところだと思いますけれども、役所としては、最大の課題として考えておりますし、現場でも頑張っていただいているものというふうに認識をさせていただいているところでございます。

 さらにまた、足らざるところは御指導いただいて、頑張っていきたいというふうに思っております。

黄川田委員 今の質問はちょっと通告しておらなかったものですから、もし事務方の方でつけ加えることがあれば、お願いしたいんですが。

福井大臣政務官 漁協、漁協で自主的に管理をしていただいているというのが実態だと思いますので、今後ともその動きをドライブさせていただきたいというふうに思っております。

黄川田委員 それでは、二点目なのでありますけれども、新たな経営安定対策については漁業共済制度をベースに制度設計を行うと聞いておりますけれども、その具体的な内容と資源の回復施策との関係について、現時点での考え方をちょっとお示しいただきたいと思います。

福井大臣政務官 新たな経営安定対策についてのお尋ねでございますけれども、ちょっと長くなりますが、整理して申し上げますと、収入の変動によります漁業経営への影響を緩和するということのために、漁業者の経営改善の取り組みを支える新しい漁業経営安定対策の検討を行っているところでございます。この対策につきましては、新たな水産基本計画において、平成二十年度を目途に導入することといたしております。

 その具体的な内容につきましては四項目ございまして、一番は、積極的かつ計画的に経営改善に取り組む漁業者を対象にするということ、二番目には、漁業共済制度の経営安定機能を補完するということ、三番目には、漁業者の拠出を基本として、国費も合わせた積立方式で対応するということ、そして四番目には、漁業共済団体の知見や組織を活用して実効性の高い仕組みを構築するということでございます。

 以上が内容でございますけれども、お尋ねの資源回復施策との関係につきましては、資源状況に見合った持続可能な生産構造を実現するという観点から、この対策の対象者につきましては、地域において行われている資源管理のための集団的な取り組みに積極的に協力することを必要とするということでございまして、各県ごとに関係者によります地域地域の協議会を設立していただいて、地域全体に御貢献いただく方について対象者とするという方向で実際としては考えているということでございます。

黄川田委員 きょうは三十分しか時間がないので、次から次と質問していきたいと思いますが、漁協の経営状況について、ちょっと確認したいと思います。

 事業の利益ベースでは、漁協全体の七四%、約四分の三の漁協が赤字であるという結果になっておるはずであります。もちろん、協同組合でありますから、営利を目的とするものではありませんけれども、水産庁としてこの原因をどのように分析しているのか、それを具体的にお尋ねいたします。

 それから、単位漁協については、連合会に会員組合に対する監査権限、それから都道府県に監督権限があると認識しておるわけでありますけれども、こういう権限を通じ、これまで経営改善に向けてどういう指導監督が行われてきたか、これもあわせてお尋ねいたしたいと思います。

福井大臣政務官 平成十六年度で、赤字組合の割合は七六%でございます。いずれにしても、赤字が多いということでございます。

 漁協の次期繰越損失金は、漁協全体で十六年度、四百五十一億円で、その九割が、次期繰越損失金が一億円以上を有する七%の特定漁協。七%が一億円以上抱えていて、この四百五十一億円の九割を占めているという状況にございます。その原因の多くは、過去における大口取引先の倒産でありますとか、みずからの過剰投資でありますとか、あるいは自営の漁業の不振ということが考えられているわけでございます。

 こうした中で、平成十六年度の漁協系統内の監査、法定と任意とございますけれども、法定の方は、貯金などの合計額が二百億円以上の信用事業実施漁協に対しまして、全国連合会の法定監査、三十五組合行っております。これは一〇〇%、やらなければならないところはすべて実施をしているということ。

 そして、任意でも、都道府県漁連の指導監査をしているわけですけれども、対象組合の千四百七十二組合のうち百三十九組合、実施率は一一%ですけれども、監査を実施しております。日常的にも、漁協の監事さんによります監査というのは水協法の規定により毎年実施をしているということで、各層各層で監査をさせていただいているということでございます。

 都道府県につきましても、おおむね二年に一回の割合で定例検査を実施しております。ちなみに、数を言いますと、平成十六年度は、対象の千四百七十二組合のうち六百三十二組合、実施率が四二・九%、都道府県でやっていただいております。

 今御指摘の、それでもいろいろ問題があるじゃないかということで、平成十九年度から、漁協経営改善計画策定事業ということで、経営不振漁協を対象に経営コンサルティングを行う、モデルプランをつくったりするという、事業費ベースでいくと三千二百万円のお金を使いまして不振の漁協を助ける、支援をするという取り組みを始めたところでございます。

黄川田委員 さまざまな場面場面で監査そして指導監督を行っているということでありますけれども、各漁協、体力をつけなきゃいけないということになれば、やはり合併の話なんかが当然出てくるわけなのでありますけれども、合併に関しても、最近は、少しずつでありますけれども、ふえてきておる。ただ、農協あるいはまた森林組合と比べても、合併の率はまだまだだというような感じがします。こういう中で、十九年度末までに漁協の数を全国二百五十構想を打ち出しておるはずでありますけれども、この目標達成には相当な努力が必要ではないかと思うわけであります。

 副大臣にお伺いいたしますけれども、漁協系統の合併構想の実現見通し、まずこれをお尋ねいたします。そしてまた、水産業の将来展望を見た場合、全国の漁協数、適正数というものがあれば大体どのぐらいなのかというところも含めて、もちろん一県一漁協になっているところもありますけれども、その辺をちょっとお尋ねいたします。

山本(拓)副大臣 今先生御指摘のとおり、二百五十という数字を一応目標にいたしておりますが、大変厳しいものがあるのも事実でございます。

 御指摘のとおり、千百九十六の漁協数が四月一日現在の数でございますけれども、漁協系統が掲げておりますのが、二十年三月に二百五十漁協という目標を立てております。これは、今日の達成率からいきますと、目標の六割達成というのが現実でございます。

 ただ、先ほど来御指摘がありますように、厳しいという中には、合併に必ずしも前向きでないというか消極的な漁協もあるのも事実でございます。その消極的な漁協を大きく分けますと、一つには、多額の欠損金を抱えている漁協でございます。二つ目は、主として漁業権管理のみを行うような漁協で、経済事業をもはやほとんどやっていない、実質やっていない小規模な漁協でございます。そしてまた、三つ目が、都市近郊で多様な事業を実施して、合併する必要もなく、経営状況が非常に良好な漁協も逆にあるわけでございまして、それら、ざっと数的には六百ほど、聞き取り調査では読めるところでございます。それ以外の四百漁協については、来年の三月に向けて、さまざまなテーブルにのっていただいて議論をして、その達成に向けて全力を挙げて取り組んでいるところでございます。

 そういう中で、今後、先生が今お尋ねになりました適正規模という話につきましては、今後、経営がそれぞれ成り立たなくてはなりませんし、そしてまた、御存じのとおり、漁村活性化ということで、各地域でいろいろな、漁村を中心とした、漁港を中心とした活性化策が各自治体から今年度の法改正によって出てまいることも予想されますし、その地域の活性化の実態に合わせた運用によって対応も変わってくるだろう。いわゆる魚をとるだけという漁業から、これから遊漁というか、スキューバとかアクアとか、そういうレジャー産業を受け入れたような形での計画も立てているところもございますし、また、前向きに都市住民を受け入れるような漁村のあり方とか、また、そういう人たちに漁業を使うというような形で売り上げを上げるという、多様な計画も相談を受け付けているところでもございます。

 それは結果的に、地方分権の流れの中でしっかり、幾つになるかということを、一県一つということよりも、経営が成り立つ漁業ということで、少なくとも合併協議を進めていく計画の上においては、二百五十という目標のもとで達成されることが、まず確実に効率的な経営が成り立つものと期待をいたしております。

黄川田委員 合併促進法については、来年の三月、日切れみたいな形で、議員立法で五年延長みたいな形にどうもなりそうな感じで、そうしなければならないのかなという感じもしますけれども、先ほど副大臣がお話しのとおり、合併に関しての一つの問題は、財務体質が脆弱といいますか、大変厳しいところがあって、なかなかお隣と合併できないということであります。市町村合併、平成合併も三千二百から千八百になったんですが、なかなか、市町村にあっても、財務体質が厳しいところは、周辺から、ちょっと整理してから来いみたいな形になっておりますので、ここのところが大変なのであります。まさか現ナマでもって国家が支援するというのもなかなか難しいんでしょうけれども、財務体質の改善に係る何か支援施策というものが、難しい答弁だと思うのでありますけれども、政務官、どうですか。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

福井大臣政務官 難しい問題であるという御指摘、そのとおりだと思いますけれども、今のところ、漁協が合併する際の欠損金の処理につきましては、通常、合併に参加する漁協の全体の準備金とか積立金等で相殺されますけれども、相殺できない場合は累積欠損金として残ることとなるわけでございます。

 このため、欠損金を抱えて合併に参加する漁協につきましては、関係漁協間の不公平感の解消を図るために負債相当額を借り入れていただいて、そして漁協合併後においても、欠損金を抱えて合併する旧漁協の組合員さんの負担で当該借入金の償還を行うという対応がとられる場合が多くなってございます。これは、先々週、山田先生とのやりとりでお答えしたとおりでございます。

 支援策でありますけれども、漁協合併の円滑な実施を支援するために、漁協が当該借り入れ、つまり、負債相当額を合併時に借り入れる、その借り入れを行う場合に、県が一・二五%の利子補給を実施することによって組合員さんの負担の軽減を図るということにしておりますし、さらに、県が一定率以上の利子補給を行う場合には、国が拠出した基金から支援される措置も講じられているところでございます。これも山田先生とのやりとりで議論したところでございます。大日本水産会からの利子補給の上乗せ分があるということでございます。

 さらにまた、先ほども御答弁させていただきましたけれども、平成十九年度から、新規事業として、経営不振漁協を対象に、経営コンサルタントによるアドバイス、経営改善のための具体的方策の策定という、事業に対する支援を行うことにしております。その事業の名前は、漁協経営改善計画策定事業ということでございます。平成十九年度からこの仕事を開始したところでございますので、さらにまたその仕事を一生懸命やらせていただきたいというふうに思っております。

黄川田委員 山田先生も前回聞きましたし、私もそこのところが一番大事なところだと思っていますけれども、十九年度が新しいコンサルタントとか、そういう事業展開だということなんですが、実のある政策になるように本当に願うものであります。

 それで、時間が少なくなってまいりましたので、ちょっと飛びまして、販売事業改革等のあり方についてちょっとお尋ねいたしたいと思います。

 漁協系統自身が作成した新しい運動方針においては、販売事業改革の方向性として、漁協みずからが市場で直接競りに参加する買参権というんですか、これの取得等による産地市場の取引機能の強化などが挙げられておるわけであります。

 これは、安定的な取引先の開拓ができれば、漁業者の経営の安定にもつながるものでありますけれども、その姿勢は評価するわけでありますけれども、現実はどうかなというところをちょっとお尋ねいたしたいと思います。

 販売戦略のない買い取り販売の拡大は、漁協自身が経営上の在庫リスクを抱えることにつながる場合もあるわけでありますので、その意味で、行政は、販売調査を側面からサポートするための環境整備でありますとか、あるいはまた実需とのマッチングを図るための仕組みの構築など、漁協系統の取り組みに具体的な支援策が必要だと思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。

福井大臣政務官 今おっしゃいました買参権の取得といいますのは、仲買人さんの今果たしていらっしゃる役割を漁協でも果たしていくということになりますので、今先生御指摘の販売のリスク、魚を買ったはいいけれども、どこに売ったらいいか、売れなかったらどうするのかというリスクを、買参権を取得することによって漁協が負うことになるわけでございます。

 そのための取り組みについての御指摘でございますけれども、今のところ二点ございまして、量販店を中心とする大口の需要が見込まれる主要水産物については、市場を核とした流通拠点の整備を行って、ロットとか規格をそろえて供給の安定化を図るという努力は必要だろう。そしてもう一方、それぞれの前浜でとれる多様で少量の水産物につきましては、産地が外食産業などの需要者とかあるいは消費者に直接販売するなど、多様な流通経路を構築するということが重要であろうということでございます。

 いずれにしても、今までは、販売事業、いわば八割が取り組んできていた販売事業だけだったわけですけれども、産地市場の統合によって販売事業の規模を拡大するとともに、漁協みずから買参権を取得して水産物を高く売る努力を、今後とも重要と思っておりますし、支援を申し上げていきたいというふうに思っております。

黄川田委員 また、平成十六年でありましたか、卸売市場法の改正で規制が緩和されまして、都道府県レベルの対応、条例等ですか、この移管により、いわゆる産地市場においても漁協による買参権取得への道が開かれたわけでありますが、現場レベルでは、実際の参入に当たって、既存の任意団体であります仲買人の資格と競合することになる、そこでこうした方々の理解を得る必要があるわけでありますが、これがなかなか難しいという話も聞き及んでおります。

 制度として参入が可能になったとしても、実際の商取引の現場では、対立とは言いませんけれども、いろいろなことが起こるのではないのか、こう思っているわけであります。ですから、調整というものが極めて大事だと私は思っておるわけであります。

 そこで、行政が第三者的な立場でこういう調整をする仕組みといいますか、システムの構築等を考えられるわけでありますけれども、いかがでしょうか。それから、道府県レベルでの参入の実態はどのようになっておるか、尋ねておきたいと思います。

福井大臣政務官 産地市場において、漁協みずからも買参権を取得して、流通業者の一員としての役割、機能を果たしていくことが重要だという御指摘でございました。そのための支援、全容を明らかにせよという御命令でございますけれども、平成十七年十一月、JFの全国漁協の代表者会議において採択されました漁協系統の運動方針におきましても、産地市場を開設する漁協がみずから買参権を取得するなど、販売事業の強化に取り組む方向が打ち出されているということで、それについては同じ気持ちでございます。

 このような状況を踏まえて、漁協が産地市場でみずから買参権を持って買い取りを行う、あるいは量販店、加工業者等の消費地業者と契約をするという安定的な取引を行うことに対しまして支援を行う新たな事業を平成十九年度より開始したところでございます。その名前は、国産水産物安定供給推進事業の一環で、安定供給契約型特別事業という、これは役所だけのネーミングでありますけれども、より高い補助率で助成ができるような、そういう事業費を平成十九年度から用意させていただいたところでございます。

黄川田委員 残り時間三分ぐらいですので、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 私の地元の三陸はワカメの養殖が盛んでありまして、全国の生産量の大体四〇%ぐらいあるんじゃないか、こう思っております。

 ところが、ワカメ養殖、それから製品加工の間に、労働集約型といいますか、物すごい人手がかかる仕事でありまして、海上に行って刈り取りします、それから岸壁に着いて、湯通し、塩蔵、それからしんを取らなきゃいけないという、さまざま手数がかかるのであります。

 生産工程の効率化であるとか合理化の関係で、水産庁も大分研究なさっておるということで、水産工学研究所でありますか、ワカメ養殖業の省力化の技術開発に取り組んでおると聞き及んでおりますけれども、ワカメ収穫の自動刈り取り機と自動しん取り機の省力化の開発の現状、それから実用化に向けた見通し、そしてまた具体的な財政的な支援体制等々があればお尋ねいたします。

福井大臣政務官 全国四〇%のシェアを占める三陸ワカメ、まさに先生の御指導で生産が進んでいるものと思いますけれども、今御指摘の水産工学研究所におきますワカメの自動刈り取り機につきましては、まさに、岩手県広田町漁協及び所属組合員さんの御協力によりまして、実用化のめどが立ちました。そして、製品化に向けた取り組みが期待されているということでございます。

 それから、しん抜き機につきましても、同じ岩手県の広田町漁協及び所属組合員様の御協力によりまして、まさに、今般、ことし四月、今月から、全漁連から製品化されたということでございますので、本当に先生の御指導に感謝を申し上げたいと思います。

 今後、こうした省力化機器を漁協が共同利用施設として導入する場合には、強い水産業づくり交付金、トータルでは八十七億強ありますけれども、強い水産業づくり交付金による支援の対象となります。漁業生産基盤等の整備のうち、水産物加工処理施設等というところで読めることになっておりますので、ぜひ御活用をいただきたいというふうに思っております。

黄川田委員 時間が終わりましたので、最後、要望なのであります。

 強い水産業の交付金という話でありますけれども、採択要件なのでありますけれども、例えば受益戸数であるとか、あるいはまた事業費であるとか、使い勝手がよいために補助金から交付金という名にしたんでしょうから、その辺の要件緩和もよろしくお願いいたします。要望であります。

 終わります。

近藤(基)委員長代理 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうも質問の機会をいただきましたが、私も、本来であれば、まず水産業協同組合法に関する質問に入りたいわけでありますが、大変残念ながら、今の状況はそういう状況にございません。確認をしなければならないことが何点かありますので、それが終わり次第、水産業協同組合法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきたいと思います。

 これまで、委員各位が指摘をしておりますとおり、松岡大臣におかれましては、法律に求められていること以上のことはするつもりがないということを繰り返し答弁されております。確かに法治国家ですから、法律に書いてあることまでが要求事項ではあったとしても、多くの国民の皆さんが疑問に思い、そして何でだろうと思われているこの観点。とりわけ、政治家に対する不信感を強く持たれてしまっている現状に責任をお感じになられることはないんでしょうか。私は、このことについて大臣の見解をお伺いしたいと思います。

 今の事務所費問題を端にした、いわゆる政治家の政治資金の領収書公開を求める流れ、この統一自治体選挙でも、各地で政務調査費の問題が取り上げられたわけでありますけれども、こういった中でも、領収書を添付してほしい、皆様方のこういう思いに対して、大臣が、法律がそうなっていないんだから各党会派で話し合ってください、こういうことで、前回も聞きましたが、本当に大臣としての規範に、そして、よく総理も言われますけれども、道徳という言葉、こういうものに照らし合わせても、大臣は一点の曇りもない、心さわやかに、私には関係がない、こういうふうに言われるんでしょうか。

 それとも、やはり国民の皆様方がそういう思いを持っている、そうであるならば、そこは対応しなきゃいけないところもあるんじゃないか、そういうふうにお考えいただけないのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

松岡国務大臣 もう何度も申し上げておりますが、私は、法律に基づき、必要なことについてすべて尽くしているつもりでございます。このことにつきましては何度も申し上げましたとおりでございまして、それ以上のことはございませんので、以上であります。

岡本(充)委員 大変残念な答弁でありますが、もう一点だけ確認しておきますが、大臣、今、緑資源機構が公取委などにより、これまでの談合について捜査の対象になっていると報道されております。

 大臣は、林野関係にも大変明るいというふうに承知をしておりますけれども、こういった林業関係各企業、団体から献金をお受けであるようでありますが、収支報告書を書くに当たって、今後訂正をされる御予定はないのか。今、現時点では、これで正しいという確認をされているのかどうか、その一点だけお伺いしたいと思います。

松岡国務大臣 これはもう収支報告書に報告をしているとおりでありまして、今、現時点において、それ以上申し上げるべきことはないと思っております。

岡本(充)委員 こういった大臣の資金にかかわる国民の不信感、私は感情的にお話をしているわけじゃなくて、実際に、報道等各紙を見ても、松岡大臣の説明では大変に不満が残るというのが、自民党の支持者の方でもそう言われる。私の地元でも、おれは自民党を支持していると言われる方がそう言われる。これは党派を超えて、やはり疑問を感じている人が多いというのは皆さんが思ってみえる。

 大臣、そこを考えても、法律以上のことはする気がない、こう開き直られるのであれば、私は、大変残念だけれども、私も大臣に聞きたいけれども、大臣に聞くことができないわけなんですね。大臣としての任にあらずと私は思いますし、そういう意味では、今回の質問も副大臣、政務官に聞かざるを得ない。

 本当は議論が深まるべきところを、聞かない民主党が悪いのでしょうか。私は、大臣が真摯に御答弁をいただければ、御公開をいただければ、私たちは、大臣に対しては日ごろより、むしろエールを送ってきた。私なんかも、一番冒頭に大臣にお話をしたことは、御就任おめでとうございますという話から始まったと私は記憶をしています。そういう意味では、大変残念だと思いますし、ぜひ大臣の改めての御一考をお願いいたしまして、それでは、次に気がかりな部分に入りたいと思います。

 次に気がかりなのは、本当は水産業協同組合法の質問をしたいんですが、これもどうしても聞いておかなきゃいけない、きのうの松岡農林水産大臣とジョハンズ農務長官との電話会談についての内容でございます。

 そもそも、昨年の六月の日米の共同記者発表ということで、日米合意、この日米合意に基づいて査察は当然行われるべきものであったであろうに、今回、米国が査察をすることにしばらく渋っていた。そして、結論として、渋っていた査察を認める、全施設に査察をするかわりに全箱確認を終了しましょう、こういう話になったわけですね。

 これはそもそも、では査察はどう行われていたんだという思いを持つわけですが、昨年六月の合意にありました、まず、AMSの査察、少なくとも年一回、通常年二回の査察とは別に、少なくとも年一回、すべての対日輸出認定施設を対象として抜き打ち査察を実施するということはなされていたんでしょうか。

山本(拓)副大臣 やっていると聞いております。

岡本(充)委員 今回の査察は、その年一回のAMSの対日輸出認定施設の抜き打ち査察とは別に行われるということですか。

山本(拓)副大臣 これから協議することでございますが、事前に、いろいろな多様なやり方があると思いますので、現実的にはこれから取り決めることでございます。

岡本(充)委員 これから決めるでは、それでは質問にならないですよ。だって、これは決まっているんですよ。年一回抜き打ち、全施設査察に行くというのが共同記者発表で発表されているわけですね。その査察と今回日本が全施設へ行く査察はまさか一緒じゃないですよね、それとは別に今回追加的に行うんですよね、そう聞いているわけなんですね。それについてはこれから協議するであっては、すべてを丸めて一回で終わるという話になってしまいますよ。

山本(拓)副大臣 御案内のとおり、昨年七月に輸入再開をされたわけでございまして、今日まで全箱検査を、これは厚生労働省の方でやっておるわけでありますが、数的に言うと百万箱を超える全箱検査をやってきているところでございます。

 その中で、三件ほど指摘案件があったわけでありますが、二件は、箱を検査するまでもなく、書類審査によってこれはおかしいとチェックできる案件でありまして、あと一つにつきましては、確かに牛タンにつきましては、全箱を検査したということで発見できたところでございます。

 そういう中で、今回の合意というのは、百万箱を超えて一応検査した結果、いわゆる確率的にいくと〇・〇〇〇〇四%ですか、そういう形でのものでございました。それで、今回は、必ずしも、一回こちらから、日本側からオファーしておった全部のところの査察というものを、これは今後、我々が査察をして、そして、それで完璧であるという結果を受けて、それからどうするという話でありますので、先日の合意のもとで、あすからやめるとか、そうやってアバウトな、詳細まで決まったわけではございません。

 だから、ここで正確に申し上げますと、今、電話会談の合意で正式に細かいところまで合意したと、相手があることでございますから、そこで明確にどうなこうなということは私の段階では言えないということでございます。

岡本(充)委員 私の質問に答えていませんよ。これは、少なくとも年一回の、すべての対日輸出施設を対象とした抜き打ち査察と一緒なのか違うのか、それは当然、別段の日米合意なんだから、別の話なんですよね、こう聞いているわけですから、これと包括した日米合意ではないわけでしょう、だから別段の査察をするんですねという確認をしているだけです。ほかのことは答えなくて結構です。的確にお願いします。

山本(拓)副大臣 基本的には、これは農林水産省単独というよりも、厚生労働省、そしてまた相手側のある話でございますので、査察については、今、先日の合意というか、おおむねの話し合いの中で、詳細を具体的に決めようということで米国側と調整中、調整が始まったという現時点でございますので、そういう調整が始まった現時点で、一方的にこちらから行こうというのは申しかねるというのが現実でございます。

 だから、決して、先生が御指摘のように、米国の言ったとおりな形でやらせ的にとか、そういうことを御懸念のようでございますが、そういうことにはならないということで、きちっと話し合いは進めていくということでございます。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

岡本(充)委員 何もやらせ的なんて一言も言っていないんですけれどもね。

 私は、聞いていることは一点ですよ。これはちょっと公正な裁きをお願いしたいですね。

 委員長も帰ってこられましたから、委員長が戻ってこられて、改めて聞き直します。委員長、今、私……

西川委員長 聞いていました。

岡本(充)委員 聞いていましたか。ぜひ、そこを明確に、日米の今回の合意を受けて行われる査察というのは、当然のことながら、AMSが少なくとも年一回、全施設の対日輸出認定施設を対象として抜き打ちによる査察を実施すると言っている、この査察と一緒なのか違うのか、ここ一点だけを、それは当然確認をされているべき話ですよ。

山本(拓)副大臣 先生がおっしゃるその抜き打ちか定例かという意味合いがよく、誤解を受けますので、いわゆる普通の、例えば企業でいきますと、外注工場の査察なんかは定例査察であっても、いついかなるときにどういう形というのは伏せてやるものでございます。

 だから、そういう意味では、改めて何月何日告示という話、先生がおっしゃる抜き打ちかどうかという話でなしに……(岡本(充)委員「違うんです、一回のうちに数えるのかということ、回数」と呼ぶ)一回を数えるか数えないかというのは、まず、これからアメリカ側と合意を、合意というか、向こうが受け入れてくれるわけですから、まずそれを先にやるわけでありますから、それが定例の一回にカウントされるか、二回にカウントされるか、それは二回目以降の話であります。

 まずは、今、現時点で私がお答えできるのは、先日の電話会談によって、向こうがおおむね受け入れると。だから、受け入れるということであれば、それはこちらとしてはその準備の話し合いをしていこうという、そこだけの決定しか今の現時点ではしておりません。

岡本(充)委員 少なくとも、今副大臣が言われた、では、これまで行った年一回のすべての対日輸出認定施設を対象とした抜き打ち査察の結果、もしくは、いつ行った、いつ行ってどういう結果だったとか、これを早急にお出しいただきたいと思いますので、委員長、理事会で御協議いただきたいと思います。私のところにも持ってきてください。

西川委員長 理事会で協議いたします。

岡本(充)委員 続いて、そもそも、FSIS、AMSは、抜き打ち査察を行うときに、日本政府は、日本側が行う通常の査察に加えて、AMS、FSISが行う抜き打ち査察に同行し、対日輸出認定施設における対日輸出プログラム遵守状況等を検証すると言っていますが、これは過去に行われた冒頭の八施設の査察以外に行われていたんですか。

山本(拓)副大臣 確認をいたしますけれども、確認しておりません。

岡本(充)委員 ちょっと待ってください。私、質問をすると言っているんですから、これはちゃんと言ってください。

山本(拓)副大臣 二カ所やっておりますけれども、その査察のことに関しては、これはなすり合いするわけじゃないけれども、ちょっと厚労省と、私、聞いていましたので。

 私の段階ではそういうお答えしか今のところはできません。

 第一回目が八カ所やりまして、そして二カ所抜き打ちでやっております。そこに日本も同行しておりますということでございます。(岡本(充)委員「違う、その後の話を聞いている」と呼ぶ)その後はやっておりませんとお聞きいたしております。

岡本(充)委員 これは、結局のところ、この条項は守られていないわけですね。守られていないこの条項、なぜこれは守られないんですか。

菅原大臣政務官 昨年の十二月に、御指摘のありました八カ所につきまして、その結果が、特に問題点はなかったということと、若干の課題につきましては、アメリカ側で改善をすべき、そういうお話が当方に参っております。

岡本(充)委員 詳細に言ってください。何を改善するんですか。

西川委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

西川委員長 速記をお願いします。

 それでは、菅原厚生労働大臣政務官。

菅原大臣政務官 マニュアルの改善方法ですとか文書等のことについて、アメリカ側からのそういうお話がございました。

岡本(充)委員 それは初めて聞く話なんですけれども、具体的にどういう話なのかと聞いているんですから、答えてください。

菅原大臣政務官 ただいま詳細については手持ちの資料がございませんが、十二月の際に公表しているところでございます。

岡本(充)委員 違うんですよ。今言ったのは、その後に査察に行かなかった理由は何なのか。このいわゆる日米共同記者発表の日本側の措置として、二番に書いてあることをなぜやらなかったのかと言ったら、若干のマニュアル等の変更があったと言ったでしょう、改善するところがあったと聞いておりましたのでと言っている。だから、そういうことであれば、どこがどう変わったのかということを聞いているんだから、十二月の時点での変化じゃない。なぜそれ以降行かなかったのか、なぜこれが遵守されていなかったのかということについて聞いているわけですから。

 いやいや、菅原大臣政務官がそのままお答えいただきたい。

菅原大臣政務官 その状況について、厚生労働省としては認識はいたしておりますが、査察そのものは農水の所管でございますのでということでございます。

山本(拓)副大臣 この問題は、厚生労働省と農林水産省の役割分担が非常に難しいので、ちょっと私も整理させていただきましたが、昨年七月に再開をいたしまして、一年以内ということでございますので、まだ一年たっておりません。そういう中で、今まで、もう少し時間をいただきたい。

岡本(充)委員 これを、では今からやるわけですか。それを確認したい。

山本(拓)副大臣 だから、基本的にこれはアメリカの判断でございますから、今回の電話合意を受けての項目の中に当然入っていると思っております。

岡本(充)委員 では、今回、くしくも今副大臣が言われた、電話会談の合意の中に入っている、電話会談の合意の中のがまさにこの二番、改めて合意するまでもない話じゃないですか。

山本(拓)副大臣 誤解のないように申し上げておきますが、いわゆる事務方の、今度新たに査察をさせていただくという協議の全体の中で、しっかりと今までの約束と整合性をとるというのは、これは合意するまでもなく、当然の、インクルードの問題であることは当たり前のことであります。

岡本(充)委員 では、何で当たり前のことと全箱確認、これはもう全箱確認は、これは去年の六月の日本側の措置として三番目に書いてある。「輸入業者の協力を得て全箱確認を行うことも含め、現物検査における開梱数を増やすなど水際での検査を強化する。」と書いてある。これを緩めることとかわりに、二番のことを実施するから三番は緩めてくれというんじゃ、これは両方ここに載っている合意事項ですよ、この合意事項を、二番をやるのに三番を緩めるというのでは、これはバーターにも何にもならないじゃないですか。

山本(拓)副大臣 基本的には、昨年の再開合意をしたときのいわゆる結果、いわゆる国民に対する安全な、安心なものを提供できる枠組みをどう双方合意で構築していくかというのが基本でございまして、御案内のとおり、先日の、伝えられております、先生が御指摘のようなことにはならない、そういう解釈ではないということでもございます。

 アメリカ側が……(岡本(充)委員「そういうは何を指す」と呼ぶ)だから、そういうことで、いわゆる、先生が一連のを全部結びつけて御指摘するようなことにはならない。もともとの、昨年の七月に再開をして、ちょうど一年まだたっておりませんので、そういう中にあってさらに、要は、何遍やろうと、要するに、普通の、契約を実行していく上で、そういう約束どおりのことをやっているか、そして、もともと、前々からこちらからオファーしておったものを受け入れたという向こうの事情もありまして、共同してやっていく、これからすべてにおいて事務的に煮詰めていくということでございますので、今の時点で個別に、これはこうと違うじゃないかという御指摘は、今、何とも申し上げられないというのが現時点での答えでございます。

岡本(充)委員 では、何でこんな電話会談についてプレスリリースする必要があるんですか。決まってないならプレスリリースする必要ないじゃないですか。これは全箱確認をやめるといって報道もされていますよ。今、きょうの朝だって、ワイドショーも随分やっていた。

 これは今の副大臣の説明じゃ成り立たないですよ。では、この電話会談自体が合意に至っていないというふうな、これから事務作業を詰めるわけだから、このプレスリリースはちょっと勇み足だった、こういうことでいいんですか。

山本(拓)副大臣 直接聞いていただくと早いのでありますけれども。

 御案内のとおり、電話会談で、今報道されているように、再三言いますけれども、昨年再開をいたしまして、全箱検査をして、百万箱を超える箱を検査してきました。そういう中で、我々として、前々からお話ししておったことを向こうは受け入れたということだけでありますが、手続的に電話会談をして、即あしたからやめるとか、条件なしで全箱検査をやめるという話では決してございません。

 もともとこちらが当初に約束していたとおりのことを、向こうの、査察を受け入れてまず見させていただいて、それでもうだれが見ても納得できるような形で完璧に直されているということで、持ち帰ってどうしようかという話になるわけでありまして、一部マスコミで報道されるような形で、電話会談で即全部終了ということでは決してございませんということだけ申し上げておきます。

岡本(充)委員 違うんです、副大臣。きょうやめると言っているわけじゃないんですよ。この査察の結果が出次第やめるということを言っていること自体が、これは、そもそも二番と三番の案件の整合性がないということを言っているんです。

 これは、では米国が一体この一連の中で何を最終的に譲ったんですか。一連の牛肉のこのBSE騒動から始まって、米国は今、三十カ月齢まで輸出基準の月齢を上げてくれと言っている。これでは、米国が日本に配慮しているかと言ったら、二番と三番のバーターなんかあり得ないんだから。そういう意味では、これを私は指摘しておきたいと思います。

 時間の関係もありますから、端的に答えてください。

山本(拓)副大臣 決して譲っているわけではございません。先ほども申し上げましたように、百万箱近い全箱検査を今までやってきて、それでちょっとおかしいと思われたのが四箱であります。いわゆるパーセントで直しますと、今、〇・〇〇〇〇四%でちょっと不手際が見つかったということであります。それも、その特定の、おかしいものを、牛タンを出してきたそこは、今回の査察には、現時点では対象になっておりません。そこの工場からの一連の、経過措置とかいろいろな事情聴取とか、そういう米国側の監査があって、そして、それ以外のところであります。

 そういう意味では、どこを譲ったかと言われますけれども、これは従来の、再開したときのもともとの約束を再確認しよう、さらに確認をしようという手続が、今向こうが合意を受け入れてくれたところでございまして、新たに、合意を、今言われているように、誤解であります、テレビでいろいろ言われているのはちょっと誤解でございます。

岡本(充)委員 米国がどこを譲ったのかと聞いているんですよ。そんな、何箱あけたとか、そういうことじゃない。どこを譲ったのかと聞いている。

山本(拓)副大臣 だから、明確に申し上げておきますが、今回、いろいろ報道をされておりますけれども、今の質問に対しては、日米双方とも何にも変わっておりませんし、お互い譲り合ってもおりません。再開したときの約束事を、前後はありますけれども、お互い確認し合おうという、信頼関係の原点に戻った手続のスタートをとりあえず合意したということでございます。

岡本(充)委員 米国は何も譲っていないと言ってみえましたけれども、まさにそうなんですよ。米国は何も譲っていないんですよ。日本は譲っていますよ、これ。だって、日本は、当面全箱開梱するというのをやめるんでしょう。米国は何も譲っていないですよ、これ。だって、もともと査察を受けると言っていたんだから。何も譲っていないじゃないですか。日本だけ譲っているじゃないですか。(山本(拓)副大臣「いや、だから、何遍も申し上げていますが」と呼ぶ)

西川委員長 指名してから答えてください。

 山本副大臣。

山本(拓)副大臣 それでは、深呼吸をして冷静に答えさせていただきますけれども、最初の原点に戻りまして、全然譲っておりません、冗談抜きで。

 だから、昨年の再開をしたときの合意事項の確認でございまして、それに、全箱検査を終了するとか終了しないという話は、もともとが、完璧に、向こうがこちらのリクエストどおりの工場の運営をやっていただいていたら、もともとする必要ないわけでありますから、だから、アメリカ側に査察に行って、改善されていないとか疑問な点が残ったら、それはまだ終了する手続にはならないわけであります。それは国内問題でありますから。それは決して譲っているわけではございません。

岡本(充)委員 この問題は、後刻、一般質問でもまた取り上げさせていただきます。

 最後に、水産業協同組合法も聞かなけりゃいけない。時間もなくなってきましたので聞きますけれども。

 全漁連の監査の問題、内部監査で、監査士という資格をつくって監査を出している。漁協の部門別事業の利益の状況などをつまびらかに明らかにしたところであっても、内部の監査では、その監査の正当性がほかの企業に比べて担保できるとはなかなか言いがたいところが出てくるんじゃないか。そういう意味では、この監査の問題が一点。

 それからもう一点は、漁協はかなりの補助金なりいろいろな形での国からのお金が入っている一方で、その漁協もしくは関連施設に、一部の政治家、政党のポスターが張ってあることがあります。これは、多額の国の公金が入っている施設でこういう政治活動をしているということは、前も聞きましたが、ロッチデールの原則に照らしても、協同組合のあり方としても、私は、問題があるんじゃないかと思っている。実際どのようになっているか、一度調査をされてみてはいかがかな、こういうふうに提案をしたいと思うんですが、それについての御答弁、二点をお願いしたいと思います。(発言する者あり)いや、公じゃないです。

福井大臣政務官 お答えをいたします。

 監査の問題からでございますけれども、通常、漁協の監事さんという方がいらっしゃいますが、監事さんが、決算書類を監査することによりまして、事業別の損益書面が適正に作成されているかどうかを毎年確認しているというのがまず基本でございます。さらに、系統の上部団体によりまして、その会員である漁協、漁連の業務及び会計に関する監査が行われているというのが実態でございます。

 なお、この監査に当たりましては、水協法に基づく資格試験に合格した水産業協同組合監査士が適正に監査を実施しているということ、そして、全漁連は、漁連、信漁連に対する監査の結果について審査会を設置して審査している、そして適正な監査を確保しているかどうかをそこで審査していただいているわけでございます。なお、この審査会の構成メンバーは、大学教授、公認会計士、外部の人材ということでございますので、客観性、中立性が確保されているというふうに考えております。

 それから、漁協の施設にポスターが張っているのは問題ではないかということでございますけれども、漁協の設立目的の達成に資する限りにおいて行う政治活動については、ほかの法人と同様、公職選挙法や政治資金規正法に抵触しない限り認められているものと認識をしております。そして、農林水産省としましては、政治団体や政治活動のあり方そのものを指導する立場にはございませんので、個別具体の事案に対する指導は別としましても、政治活動一般に対して関与していくことは難しいものと認識をさせていただいております。

 ちなみに、もう既にあった事実関係をさらにまたきょう御報告させていただきますと、ことしの一月三十一日の参議院の本会議におきまして、谷先生からの農協施設に関する云々の御質問に関しまして、松岡大臣の方から、これは農協でありますけれども、同じことだと思いますので御報告しますと、農協組織につきましては、農業生産力の増進及び農業者の経済的、社会的地位の向上を図ることを目的とする団体であり、このような目的の達成に資する限りにおいて行う政治活動については、ほかの法人と同様、公職選挙法や政治資金規正法に抵触しない限り認められているものと認識をいたしておりますというふうに大臣からの御答弁もございました。

岡本(充)委員 一つだけ言っておきます。

 他の法人と言いますけれども、生活協同組合や中小企業関係の協同組合、これは政治活動を認められておりません。認められているのは、農業関係、水産、林業だけですよ。

 それから、今言われた、監査士が公正公平な調査をするといっても、帳簿にアクセスできるのは監査士だけです。審査会の皆さんは、出てきた書面を見て、それを審査しています。そういう意味では、実際に帳簿を見ているのは、大学教授じゃない、公認会計士じゃない。そのことは指摘をしておきます。

 これで終わります。

西川委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 我が国の漁業を取り巻く状況は、まくら言葉として、魚価安、燃油高、資源の枯渇等で厳しい状況というのが叫ばれているのが現状であります。そして、漁業者の減少、高齢化、後継者難という状況も相まって、今、漁業協同組合の事業経営も年々悪化しており、赤字経営に追い込まれているのが現状であります。このような中においても、協同組合として、資材の共同調達や販売事業の積極的な事業展開を行わなければならない状況でもあります。

 このような漁業環境を踏まえて、我が国の漁業生産活動を維持発展させていく上で、この漁業協同組合の位置づけをどのように考えておられるのか、山本副大臣にお聞きいたしたいと思います。

山本(拓)副大臣 菅野先生御指摘のとおりでございまして、漁協は、いわゆる漁業者の協同組織として、組合員のための利益をもたらす組織でなければならないわけでありまして、そういう中で、大変厳しい漁業経営や漁協経営が行われているのが現状でございます。

 今後は、漁協が原点の役割を十分に果たしていくために、組織、経営、事業の改革が重要になっているわけでありますので、今般、事業部門別の損益管理の徹底、共済事業の財務健全性の確保等に係る水産業協同組合法の改正をお願いしているところでございます。

 さらには、今般新たに策定された水産基本計画に基づき、今後、組合員たる漁業者の経営安定対策を講じるとともに、漁協による買参権と申しますか、今までは、よく言われるのは川下と川上、そういう表現が各業界されるんですが、ただ、注文があって売れるものをという観点で漁業も物事を進めていかなくてはならないわけでございまして、そういう観点から、いわゆる提供する側からまた販売する認識を、十分力をつける意味で、産地の販売力の強化の一環としてさまざまな提案を受け入れて、それに応援をしていくという体制もとっております。

菅野委員 今回の水協法の改正で、今副大臣が答弁したとおり、漁業の経営体質の向上を目指していくという方向はわかるんですけれども、実際に、今、漁業協同組合を取り巻く現状は、大臣、副大臣、認識していると思うんですが、事業利益を考えたときに、もう七六%が赤字という状況です。そして、事業外利益で賄っているという状況ですね。そして、事業外利益で賄っていて、経常利益でいうと六八%が何とか黒字という統計が出ているわけです。

 今言ったように、今回の水協法の改正で事業利益の部分をしっかり明確化していったとしても、ここは改善が図られていく状況ではないというふうに思うんです。

 今日の漁業の状況を見たときに、行政庁、国や都道府県が何ができるのかというふうに考えれば、監督のあり方というと報告の徴収及び検査しかまずできないという状況であるわけですから、この漁業協同組合の経営全体を考えて、そして漁業を維持発展させていくために国や都道府県が何をしなければならないのかというのは、私は、今回の水協法の改正だけじゃなくて、国全体として、都道府県も巻き込んで、今日の現状打開に向けてしっかりとした取り組みというものを明確に打ち出す必要があるというふうに思うんです。

 そして、水産基本法に基づく水産基本計画においても、後でも触れますけれども、そこが明確になっていないがゆえに後継者が育っていかない。そうすると、後継者が育っていかないということは、漁業協同組合の経営も落ち込んでいくということにつながっているというふうに思うんです。そういう意味でも、水産基本法に基づく水産基本計画において、国や都道府県の果たす役割というものを私はしっかりと明確に打ち出すべきだというふうに思うんです。ぜひ、この点に対する見解を副大臣にお聞きしておきたいと思います。

山本(拓)副大臣 長官の方でしっかりと答えていただきますが、基本的に役割分担というのは、あくまでも事業者がしっかりと体制をとっていただかなくてはならないわけでありまして、今回の改正案の中で、いわゆる組合組織の資格とか、漁協の人たちがまず自分の経営状況、現状把握をしっかりしていただく目を持っていただくということも前提でございますし、そういうことを今回の柱といたしているところでございます。

 あとは、水産庁長官の方からしっかりと答えさせていただきます。

白須政府参考人 ただいまの委員のお話のとおり、全体として水産業をめぐる状況は大変に厳しいものがあるわけでございます。

 それは、ただいま委員からもるる御指摘がございましたとおり、やはり漁協の全体としての組織、経営、事業、そういうものをとにかく健全性を確保する、あるいはまた、全体として漁協をめぐる資源状況の悪化、生産構造が脆弱化しておる、そういう状況の変化に対応しまして、今回この法改正をお願いいたしているわけでございます。

 その前提といたしまして、委員からもお話しのとおり、漁業全般の厳しい中で、私どもとしては、国の役割、地方公共団体の役割、そういうものを、実は先ごろ三月に策定をさせていただきました新たな、水産基本法に基づきますこれから五年間の基本的な水産施策の方向性というものを打ち出させていただいたわけでございます。

 そういう中で、まさに委員からもお話しのような、資源状況の悪化でございますとか、就業者が減少しておる、大変に魚価が低落をいたしておる、あるいはまた燃油高である、協同組合のみならず、漁業全般が大変厳しい、そういう中で、国民の要請にこたえる水産業の確立あるいはまた国民に対する水産物の安定供給を図りますために、私どもとしては、新たな水産基本計画を策定させていただいたわけでございます。

 その中で、まさに委員からお話しのとおり、国の役割、そして地方公共団体の役割というものをしっかりと位置づけさせていただきまして、まさに国民の要請にこたえる水産業の確立という観点から、しっかりとした対策を、政策改革の方向を打ち出させていただいたということでございます。

菅野委員 水産基本法ができて、そして水産基本計画がつくられて、この間、施策の展開が行われてきたんですが、それでは現状がどうなのかというと、一向に厳しい状況の改善が見られないという中で今議論しているわけであります。

 そういう意味で、この水産基本計画の中にしっかりと位置づかっているのかということを、私は位置づかっていないがゆえに今日の状況が生まれているんだということを申し上げているわけです。私は、ぜひそういう意味で施策の展開というものを、副大臣が先ほど申されておりますけれども、新たな経営安定対策というものも施行して平成二十年から具体化していくという方向も示されておりますから、それらも踏まえて、しっかりとした対応が必要なんだということを申し上げているわけです。

 それでは、個別の部分でお聞きいたしたいというふうに思います。

 私は宮城県の気仙沼出身ですから、遠洋マグロ漁業の基地と言われています、ここが今日的な水産業の不振によって本当に厳しい状況に追い込まれているんだ、このこともずっと言い続けてきているんですが、一向に改善というものが見られない。そして、ことしも事業から撤退していくという状況が生じているわけです。昨年からも、多くの遠洋マグロ漁業経営者が事業から撤退していくという状況が生まれています。その厳しい状況の中で、マグロの魚価安、そして資源の枯渇、それから燃油の高騰、これまた遠洋マグロ漁業を取り巻く状況は、このことによって大きな打撃を受けています。

 この遠洋マグロ漁業の現状認識をまず伺っておきたいと思いますし、これから政府として、この現状を踏まえて、この現状の打開策をどのように考えておるのか。冒頭、これをお聞きしておきたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの遠洋マグロ漁業についての委員からのお話でございます。

 まず、世界的なマグロを取り巻く状況につきましてお話をさせていただきますと、まず一つには、やはり全体として資源の状況の悪化が指摘をされる中におきまして、大西洋クロマグロ、そういった一部のマグロ類につきましては特に資源状況の悪化というものが指摘をされておるわけでございまして、したがいまして、マグロにつきまして、やはり今後、国際的な資源管理の強化というものが想定をされるわけでございます。

 また、御案内のとおり、日本がこれまで世界最大の刺身市場であった、それは現在も変わらないわけでございますが、しかしながら、諸外国におきます、特に、国際的な水産物あるいはまたマグロの需要というものが大変に高まってきておるという状況の変化があるわけでございます。

 また一方では、ただいま委員からもるる御指摘があったわけでございますが、我が国の遠洋マグロ漁業、いわゆる蓄養マグロといったものの輸入品が相当このところ伸びてきておる、そういったものとの競合、あるいはまた、先ほど申し上げました国際的な漁獲枠の規制というものの強化によります漁獲枠の削減というものもございます。あるいはまた、お話がございました燃油価格、一時よりは若干下がったということが言われておりますけれども、依然として燃油価格が高どまりということで、大変に厳しい経営を強いられておる、私どももそこのところは認識をいたしているわけでございます。

 その中で、今委員からもお話がございました、マグロの魚価がどうなっておるかというふうな点でございます。

 具体的に、これにつきまして、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダ、こういった四種類の冷凍マグロ、これを平均いたした価格を見てみますと、昨年の春から上昇いたしておりまして、本年三月まで前年同月に比べますと一割から二割高というふうな状況で推移をいたしているわけでございます。

 しかしながら、長期的なスパンで見ますと、十年前と比べてみますと、クロマグロ、ミナミマグロにつきましては、当時、大変にバブルもございまして高かったわけでございますが、当時の水準と比べますと七割から九割の水準、あるいはまたメバチにつきましても十年前と比べますと七割から八割、あるいはキハダにつきましても七割から九割の水準というふうな状況になっているわけでございまして、長期的な価格動向につきまして見ますと、依然として低い水準にとどまっておるというのが魚価の実態でございます。

 そこで、マグロ類の資源状況につきましては、冒頭申し上げましたが、世界的には五つの地域漁業管理機関によりまして資源評価をやっているわけでございますが、大西洋クロマグロでございますとか東太平洋のメバチ、そういった一部のマグロ類の資源は悪化をいたしておりまして、その他のいわゆる大衆的なマグロにつきましても、資源が満限まで利用されておるといったようなことで、今後、資源が悪化しておるといったものを中心に、やはり資源管理の徹底が必要になってくるというふうに考えているわけでございます。

 いずれにいたしましても、このマグロ、有限の天然資源でございまして、これをやはり、国民に対する安定供給という責務も一方ではあるわけでございまして、こういった資源の持続的な利用を図りますためにも、何といいましても、科学的な根拠に基づきました資源管理の徹底というものが必要不可欠であろうというふうに考えておりまして、私どもとしましては、世界最大のマグロの漁業国であり市場国でございますので、申し上げました世界の地域漁業管理機関あるいは関係各国とも協調しながら、今後とも、マグロの資源管理、あるいはまた、それを踏まえた安定供給に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

菅野委員 今、水産庁長官から現状は説明なされたというふうに思います。では、それを踏まえて今後どのようにしていくのかという観点が、先ほど私も質問したんですが、示されていないというのが現状であります。

 私はなぜこの部分を言うのかというと、すべて市場競争にゆだねていて、そして、どんどん時が過ぎていくという中で、廃業に追い込まれていくという現実があるわけです。そして、このことを放置しておくということは、日本の漁労文化等も含めて後世に伝えていくことができないんだ、そして関連で言えば、漁船建造の技術というものも廃れていってしまう、そして、魚食たんぱく類の確保ということで、食料自給率がどんどん低下していくということを招くということが危惧されるわけですから、もう早急の課題だというふうに私は思っています。

 資源の枯渇の状況というのは、後でも触れますけれども、国際的な枠組みで協議されていて、一定程度の進展は見られると思うんですが、魚価安に対しては、これは私は放置できないというふうに思うんです。

 それで、先ほども議論いたしましたけれども、漁業全体というふうにとらえるのではなくて、私は、この魚価安に対して、新たな経営安定対策というものをマグロ漁業にも取り入れることが必要なんだというふうに思っています。

 岩永筆頭が農水大臣のときに、このことも、何とか燃油高に対応して検討するというふうには言っていますけれども、燃油高騰対策の取り組みの状況、ことしの一月に出された、一月付のものを見させてもらっても、これについて対応はしっかりなされているとは思えないというふうに思うんです。

 できるところで最大限やっているということは理解できるにしても、やはり、抜本的な経営を安定させていくという視点からの直接所得補償制度というものを国の施策として打ち出さない限り、私は、この漁労文化というのは継承していかないんじゃないのかな、危機的な状況にあるというふうに思うんです。そういう観点から、今後どのように対応していくのか、この点もお聞きしておきたいと思います。

白須政府参考人 ただいま委員からるるお話がございましたように、やはり大変に厳しい経営の状況というものは、私どもも十分認識はいたしているわけでございます。

 そこで、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、この三月に新たな基本計画を策定いたしたわけでございます。その中でも、ただいま委員からもいろいろとお話がございました、そういう厳しい状況、あるいはまた、需給の構造も変化しておるといったような中で、まずは、やはり省エネなり収益性重視の漁業、もちろん遠洋マグロもそうでございますが、何といっても、そういうものへの転換というものを初めといたします漁船漁業の構造改革、あるいはまた経営安定対策の導入といったようなことで、何としてもこの現在の状況を打破して、国際競争力のある経営体を育成するというのが、私どもとしては、政策的に見ましても大変大きな課題であるというふうに考えているわけでございます。

 そこで、特にこの遠洋マグロ漁業につきましては、当然のことながら、漁船漁業構造改革の事業の中でも、私どもも目標としております大変大きな一つの柱でございまして、今年度から、この事業につきましても、漁船漁業の構造改革につきましても、予算化をさせていただいたわけでございます。そこで、省エネあるいは生産体制の合理化というものを行いましてコスト削減を進める必要があるというふうに考えているわけでございます。

 具体的に申し上げますと、これは、現在、全国の各地から、あるいはまたそれぞれの漁業種類ごとに、いろいろなプロジェクトが手が挙がってきておる段階でございまして、ちなみに気仙沼につきましてお話を申し上げますと、まだ手は挙がってはきておりませんが、検討といたしまして、経費が従来のものよりはかからない小型のマグロはえ縄漁船と凍結設備の整いましたマグロはえ縄漁船、これを組み合わせることでの新たな船団操業の導入といったような形によりまして、コスト削減、こういうものを検討しておられるというふうに聞いているわけでございます。

 また一方では、経営の安定という観点から考えますれば、漁場の探索でございますとか、あるいは移動に大変多くの油が消費されるわけでございますけれども、高緯度でとれますクロマグロやあるいはミナミマグロ、そういったものをねらいますと、これは、当たるときはよろしいんでございますが、当たり外れが大変に多いわけでございまして、そういったクロマグロ、ミナミマグロを一発当てるということでねらうよりは、やはり、比較的漁獲が安定をいたしておりまして、あるいはまた、漁場の移動あるいは燃油の消費という観点から見ましても、燃油の消費が少なくて済みます低緯度におきますメバチ、キハダといったようなものを対象とする操業形態に、操業形態自身を変えていくというふうな工夫も、あるいはそういう経営としての方向も必要ではないのかというふうに考えているわけでございます。

 またさらに、今日まで我が国のマグロ漁船が余り利用をしておりませんインド洋でございますとかあるいは西アフリカ、そういったところにおけます資源調査というものも今年度から実施をいたしておりまして、そういった意味で、新たな漁場の開拓というものも図ってまいりたい、あるいはまた、二国間の漁業交渉も積極的に展開をいたしまして、現在のところ、それぞれ外国の排他的経済水域に我が国の漁船がなかなか入漁できないという状況を解決いたしまして、外国の排他的経済水域における漁場の確保というものも努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。

 そういった努力、工夫をいたしながら、経営の収支改善あるいはマグロ漁業の構造改革というものは推進してまいりたいわけでございます。

 またさらに、委員からもう一点御指摘ございました、新しい経営安定対策、これは遠洋マグロについても適用すべきではないか、そういう新たな経営安定対策を行うべきではないかというふうなお話もあったわけでございます。

 御案内のとおり、現在私どもが考えております経営安定対策、収入の変動によります漁業経営への影響の緩和、それによりまして漁業者の経営改善の取り組みを支える、こういう新しい漁業経営安定対策、これは新しい基本計画に基づきまして現在検討いたしているわけでございますが、これは、お話のとおり、沿岸漁業におけます経営体を主たる対象として私どもとしては考えているわけでございます。

 しかしながら、遠洋のマグロ漁業につきましても、決してこれは排除をしておるわけではございませんで、遠洋マグロ漁業、こういった経営体につきましては、一定の経営基盤もあるわけでございますし、あるいはまた、沿岸と比べますと企業的な経営だというふうなことで、経営に伴いますリスクはみずから吸収できる余地が大きいというふうに一般的には思われているわけでございますけれども、こういった企業的な経営体が、今委員からもるるお話がございましたが、経営実態でございますとかあるいは操業実態、それによりましては、みずからのコスト、あるいは一方ではリスクがあるわけで、そういったコストとリスクに関します経営判断に基づきましてこの新しい漁業経営安定対策に参加をされるということにつきましては、申し上げておりますように、可能性としては、私どもとしては高くはないとは思っておりますけれども、排除を決してしておらないわけでございますので、そういうことは十分想定はされるわけでございます。

 そんなことで、この経営安定対策も活用の可能性は十分あるのではないかというふうに考えている次第でございます。

菅野委員 漁業者の経営改善努力というのは、本当にこの間血のにじむような努力をしてきている、そして、この今日的な状況の中でもう限界に来ているという状況だということを申し上げておきたいというふうに思います。

 そして、今年度からということで、十八年度から省エネ型漁業への転換という形で示されておりますけれども、これは今からやったって、これまで非常に厳しい状況をくぐり抜けてきて、そして廃業に追い込まれているときに、経営体力がない中で新たな漁業というものに意欲を示し得ないというのが今日の状況だということを申し上げておきたいというふうに思っています。そこを、よし、経営を続けるぞという意欲を持つような国としての施策というものをぜひ検討して、しっかりと打ち立てていただきたいというふうに思っています。

 そして、魚価安と資源の枯渇について密接な関係にあります便宜置籍船の問題です。

 これが乱獲につながっていて、今日の資源の枯渇、そして、これが日本に入ってきて魚価安を招いているというのが言われて久しいわけです。ここに対してどう対応してきたのか、今現実にどう対応しているのかということも、漁業者から、本当にどうなっているんだということが声として上がっているわけです。そして、今日の状況をどうとらえていて、今後どのような対応策を考えているのか、この点についてお聞きしておきたいと思います。

白須政府参考人 マグロにつきましては、広く海洋を回遊するということでございまして、五つの世界の海域ごとに設けられております地域漁業管理機関、これを通じまして、国際的に資源を管理しておるところでございます。

 そこで、私どもとしましては、こういった地域漁業管理機関を通じまして、今委員からもお話がございましたいわゆるIUU漁業、違法でかつ無報告、無規制な漁業の排除というものに取り組んでいるところでございます。

 具体的に申し上げますと、こういったIUU漁船に対しましては、統計証明制度、いわゆる原産地証明みたいなものでございますが、この実施によりまして、それぞれ、船籍でございますとかあるいは漁獲海域、漁獲量等の実態を把握いたしまして、IUU漁船の船籍国として地域漁業管理機関で特定をされた国に対しましては、もう当然のことながら禁輸措置をとっているわけでございます。

 またさらに、ポジティブリスト対策というふうなことで、正規に許可をされました漁船あるいは蓄養場、これはリスト化をいたしまして、これら以外からの漁獲物については国際取引の場から排除する、そういう対策もとっているわけでございます。

 さらに、我が国への陸揚げ時に、マグロの種類とか海域を偽った輸入につきましては、これは未然防止ということでDNA分析事業も行っているわけでございまして、そういうことで、適切な是正措置を講じているところでございます。

 また、実は、ことしの一月には、我が国がリーダーシップをとりまして、神戸で初めて五つの世界の地域漁業管理機関が一堂に会しまして、こういった地域的な漁業管理機関のそれぞれの連携を図りまして、統計証明制度の改善を行っていく、あるいはまた正規許可船のリストの共通化、一元化、IUU漁船リストの一元化といったようなIUU漁業対策を行うということにしておりまして、こういったことを通じまして、今委員御指摘のとおり、IUU漁船に対する対策は最大の課題でございますので、しっかりと私どもとしても資源の管理に努めてまいりたいと考えている次第でございます。

菅野委員 国際的な資源管理の方向というものを考えていくときに、この問題というのが大きな課題として残っているわけですから、日本として、そういう便宜置籍船の魚は水際で入れないんだという強い決意で臨んでいくことが、将来的にそういう操業をなくすることだというふうに私は思っています。

 ぜひ、これからもしっかりとした取り組みを要請して、質問を終わりたいというふうに思います。

西川委員長 次に、金子恭之君。

金子(恭)委員 自由民主党の金子恭之でございます。

 これまでも再三、我が国の漁業をめぐっては、周辺水域の水産資源の半数以上が低位水準にあるとか、藻場、干潟の減少やいそ焼けが進行しまして水産動植物の生育環境が悪化している、あるいは、漁業就業者が減少し、その一方、高齢化が進行している現状でございます。さらに、漁船の老朽化など、漁業生産構造の脆弱化についても問題となっております。

 このような情勢の変化に対応して、我が国の水産業の振興に重要な役割を果たす漁協系統についての基本的な法律である水産業協同組合法の改正案が今回提出されていると理解しております。

 そこでまず、今回の法案提出の背景となっている資源状況の悪化について、これまで政府はどのような取り組みを行い、今後その回復に向けてどのような対策を講じようとしているのか、お伺いしたいと思います。

山本(拓)副大臣 今ほど金子先生から御指摘のあった認識は我々も共有しているところでございまして、我が国周辺水域での資源評価を実施している水産資源については、回復の動きがございますが、まだ一部でございまして、半数以上の資源が低位水準にあるわけでございます。

 そういう中で、緊急に資源の回復が必要となる魚種を対象として、平成十四年度から資源回復計画を策定しているところであり、現在、四十三の計画を実施中でございます。さらに今後、二十八計画を作成する予定をいたしております。この資源回復計画の成果により、瀬戸内海のサワラや日本海側のズワイガニなどの魚種で資源の回復が見られているところでもございます。

 資源回復計画においては、回復させる期間や目標数値等を定めて、休漁や減船などの漁獲努力量削減、そして、種苗放流等による資源の積極的培養、藻場の造成による漁場環境の保全等を行うことにより、資源の回復に努めているところでございます。

 これらの措置を総合的に実施することにより、水産資源の持続的な利用を図り、今後とも適切な資源管理を図ってまいるところでございます。

金子(恭)委員 次に、先ほども申し上げましたとおり、漁業就業者の減少、高齢化、漁船の老朽化などの漁業生産構造の脆弱化に対応して、今後どのような対策を講じることとしておられるのか、お伺いしたいと思います。

山本(拓)副大臣 今ほど先生が御指摘されたように、大変厳しい状況に対しては、この三月に策定いたしました新たな水産基本計画をもととして実行いたしたいと考えております。

 一つには、低位水準にとどまっている水産資源の回復、管理の推進、いわゆる今まで手つかずであった二百海里、その地域での資源回復の施策を国が直轄してやるということが一番いい例でありますが、その他国際競争力のある経営体の育成、確保と活力のある漁業就業構造の確立、三つ目が水産物の安定供給を図るための加工、流通、消費施策の展開を初めとする水産政策の改革に取り組むといたしております。

 いずれにいたしましても、具体的な対策としては、平成十九年度から、早急に漁船漁業の収益性を改善し、漁船の更新を促進するための漁船漁業構造改革総合対策事業、いわゆる平成十九年度で予算額五十億を認めていただいたところでございますが、これを実施することといたしております。

 さらには、水産物の安定供給の担い手となる漁業者の経営改善に積極的に取り組める環境を整備するために、収入の変動による漁業経営への影響を緩和し、漁業者の経営改善の取り組みを支える新しい漁業経営安定対策について、平成二十年度をめどに導入することを検討いたしているところでございます。

 このような対策を講じることにより、国民に対する水産物の安定供給を図るとともに、漁業振興に結びつくように積極的に推進してまいりたいと考えております。

金子(恭)委員 一方で、流通構造は、スーパーマーケットの販売シェアが上昇するなど、大きく変化しておりますので、こうした状況に産地も対応して、販売力を強化する必要があると考えております。

 そこで、産地の販売力の強化に向けてどのような取り組みを推進していくのか、政府のお考えをお聞きいたしたいと思います。

山本(拓)副大臣 今、金子先生御指摘のとおり、まさしく少量多品種生産を特徴とする産地の生産と大口需要者の需要との間で、非常に従来の形では対応できない状態が生じております。そういう中で、水産物の産地やしゅんの情報が需要者や消費者に的確に提供されにくくなっている状況が見られております。

 このような水産物の消費流通の変化に対応して、産地が販売力を強化するためには、特に、一つ目が、量販店を中心とする大口需要が見込める主要水産物については、市場を核とした流通拠点の整備を行い、ロットや規格をそろえて供給の安定化を図る一方、また、それぞれの前浜でとれる多様で少量流通の水産物については、産地が外食業などの需要者や消費者に直接販売する多様な流通経路を構築することが重要でありまして、これらにつきましては、今回のいわゆる漁協の経営対策という中で、しっかりとそういう計画を今後独自で立てていただくような、また、それに対してしっかりと国として応援できるような枠組みをつくらせていただいたところでございます。

金子(恭)委員 これまでお聞きいたしました対策を講じていく上では、沿岸漁業者が組合員となっている漁業協同組合の果たす役割は大変重要だと考えております。そして、こうした対策を強力に推進するためにも、その位置づけ、役割を不断に見直すとともに、必要な改革を促進することが必要じゃないかと考えます。

 そこで、漁協についての現状と課題及び今後の改革の方向性についての政府のお考えをお聞きいたします。

山本(拓)副大臣 現在の漁協の現状というのは、もう御案内のとおり、非常に厳しいところが多い中で、積極的に合併を進めていただいておるところでありまして、先ほど来申し上げておりますように、合併が二百五十体というものを目標にして、今それぞれ話し合いを進めていただいているところでございます。

 そういう中にあって、どの事業体も、いわゆる現状認識、それぞれの組合員がそれぞれの総会においてしっかりと事業経営のチェックができる、またそれぞれの組合単位で事業経営が監視できる、そういう認識をしっかり持っていただく必要があるわけでありますので、それを促すという意味での今回の法改正でもございます。

 そういう中で、水産庁といたしまして、さきに決定されました水産基本計画に即して、いわゆる組織改革について、合併の加速化を図るとともに、漁協の業務執行体制の適正化を促進いたしております。そして、経営改革については、今般の水産業協同組合法の一部改正法により、事業部門別の損益管理の徹底を図るとともに、経営不振漁協に対する再建計画の早急な策定、実施を促進し、事業改革については、今回の法改正により共済事業の財務健全性の確保を図るといたしておるところでもございます。

金子(恭)委員 次に、水協法改正の具体的な内容についてお聞きいたします。

 今回の水協法の改正は、先ほど答弁のございました漁協の現状と課題及び今後の改革の方向性を踏まえて改正するものと思いますが、まず、法改正の概要について伺います。

白須政府参考人 今回の水協法の改正の概要というお尋ねでございます。

 ただいま委員からもお話がございましたとおり、やはり漁協は、漁業者の協同組織ということでございまして、組合員に対しまして、漁業経営に関する総合的なサービスの提供ということでございますけれども、近年、資源の問題あるいは魚価の問題等々ございまして、経営状況は大変厳しさを増しているわけでございます。

 そこで、今回の水産業協同組合法の一部改正は、こうした漁業をめぐります情勢の変化に対応いたしまして、漁協の組織、それから経営、そして事業、この三つの大きな柱につきましての健全性を確保する、このための措置を講じようというものでございます。

 具体的に申し上げますと、柱は三点でございまして、一つには、漁協の経営状況の的確な把握ということでございまして、その的確な把握によりまして、経営改革を促進していこうということでございます。このためには、現在のところ、事業別損益というのは信用事業を行う漁協だけに書面の作成が義務づけられておりますけれども、これを、信用事業を行います漁協だけではなく、すべての漁協を対象といたしまして事業別損益を明らかにした書面の作成の義務づけを行うということでございます。

 二点目といたしましては、組合員の資格審査を公平かつ適正に実施いたしていこう、これを確保しようということでございまして、組合員の資格、そして、その審査の方法に関します事項を定款の絶対的な記載事項というふうにいたします組合員の資格審査を適正化していこうということ、これが二点目でございます。

 三点目といたしましては、漁協系統が行います共済事業につきまして、財務の健全性の確保を図りますための健全性基準の設定、あるいはまた、契約者保護を強化いたしますためのクーリングオフ制度の導入、こういった三本の柱でもって改正を行いたいというふうに考えております。

 これは、先ほど来お話し申し上げております、この三月に策定をされました新たな水産基本計画に基づきます水産の政策改革の一環として行うというふうに位置づけているところでございます。

金子(恭)委員 法改正の概要は今御説明いただいたとおりかと思いますが、漁協の経営改革の取り組みを推進するためには、まず第一に、どこでどれだけもうかっていて、どれだけ損失が出ているかを組合員が明確に把握しないと経営改革に取り組めないと考えますけれども、今回の改正内容である事業部門別損益の状況を明らかにした書類の義務づけ漁協の拡大はどのようなもので、これにより漁協の経営改革はどのように促進されるのでしょうか。お伺いいたします。

白須政府参考人 今回の改正内容でございます事業別の損益の状況を明らかにいたしました書類の義務づけ漁協の拡大という点でございます。

 現行制度におきますと、事業ごとの損益状況につきましては、信用事業を実施いたしております漁協についてのみ明らかにすることとされておりまして、信用事業を実施しておらない漁協につきましては明らかにされないということでございます。したがいまして、個々の事業の問題点が組合員に明確化をされない、結果といたしまして、事業改革と経営改善がおくれる、こういうケースが見られるわけでございます。

 したがいまして、今般のお願いしておりますこの改正によりまして、すべての漁協に対しまして、事業区分ごとの損益状況につきまして組合員への開示を義務づけることによりまして、漁協の現状に対する組合員の認識そして理解を進めていく、それによって、組合員の自主的な判断のもとで、漁協の経営改革に向けた取り組みが促進されるということが期待されるところでございます。

金子(恭)委員 今御説明いただきましたけれども、漁協改革に組合員みずからが取り組みやすくなり、漁業者のために漁協が役立てるよう、経営基盤が強化されることを期待したいと思います。

 次に、漁協については、先ほどからお話がありましたように、一年間に九十日以上漁業を営むか従事していないと正組合員になれませんが、地域によっては、その資格を満たさない方々が大半を占め、真の漁業者による運営がなされていないため漁協の活動が停滞しているという話も聞きます。このようなことが起きるのは、組合員の資格審査が地域によってかなりばらつきがあることに原因があるとも聞いております。

 そこで、今回、組合員の資格審査についてどのようなことを義務づけ、それによりどのような効果があるのでしょうか。お伺いいたします。

白須政府参考人 組合員の資格審査の点についてでございます。

 全漁連が平成十七年度に実施をいたしました一斉調査によりますと、定期的に資格審査を実施しております漁協は全体の三分の二程度でございまして、全体の約二割の漁協では、一年以上この資格審査を実施しておらない、そういう実態にある。

 あるいはまた、組合員資格の審査基準を定めております漁協というのは全体の五割にすぎないわけでございまして、お話のとおり、必ずしも適切な資格審査が行われているとは言えない状況にあるわけでございます。

 そこで、今回、定款に資格審査の方法を記載する、これを義務づけることにしているわけでございますが、これによりまして、お話のとおり、組合員の資格審査が公平かつ適正に行われるということでございまして、また一方では、都道府県の担当部局によります指導というものも有効に行われることが期待されるわけでございます。

 その結果、実際には正組合員資格を満たさない組合員が多数を占めておる、そういう実態も一部にはあるわけでございまして、こういった漁協におきまして、真に漁業活動を活発に行っております漁業者の意思が反映された健全な漁協の運営というものが行われるようになるというふうに期待をしている次第でございます。

金子(恭)委員 ぜひ一層の御指導をよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、共済事業に関する質問に移りたいと思います。

 漁協の共済事業は、保険会社のサービスが十分でない漁村部において、相互扶助の理念のもと、漁業者の営漁や生活を支えるセーフティーネットとしての役割を担いつつ発展してまいりました。

 一方、近年、超低金利の長期化、金融、保険業界における規制緩和の流れなどを踏まえ、漁協の共済事業についても、将来にわたり健全に運営され、組合員が安心して利用できるようにすることが重要であることは言をまたないわけであります。

 そこで、漁協の共済事業の現状をどのように認識し、今回の改正ではどのような措置を講ずることとしているのか、お伺いいたします。

白須政府参考人 漁協の共済事業についてでございますが、この共済事業は、全体の漁協の約七割に当たります九百強の組合が実施をいたしておりまして、今委員からもお話しのとおり、組合員の漁業経営あるいは生活の安定に大変重要な役割を果たしているというふうに考えている次第でございます。

 近年、そういった中で、組合員のニーズの多様化あるいは高度化ということがございまして、共済の商品の種類あるいはまた保障の範囲も拡大をいたしているわけでございます。また、組合員全体に対します共済事業の普及率も高くなってきておる、あるいはまた、一方では員外利用も増加しておるといった状況にあるわけでございます。

 こういった中で、仮に共済事業の健全性が脅かされるといったようなことになりますれば、漁協の経営のみならず、組合員を初めといたします漁業経営の継続あるいはまた漁村地域そのものの経済にも大変大きな影響を与えるおそれがあるわけでございます。

 また一方、近年、他の保険あるいは共済事業につきましては、その健全な運営でございますとか、あるいは契約者保護の観点からの規制というものが強化をされてきておりまして、したがいまして、この漁協の共済事業につきましても、こういった商品の多様化あるいは複雑化といった点を踏まえまして、ほかの保険なり共済事業と同様に適切な規制を課すということが必要であるというふうに考えているわけでございます。

 そういうことで、今回のお願いしております改正によりまして、一つには健全性基準の設定と早期是正措置の導入、二つ目としましては最低出資金制度、それから三つ目としてはクーリングオフ制度、こういったものを導入させていただきまして、共済事業の健全性の確保、そして契約者保護に必要な措置というものを講じてまいりたいと考えている次第でございます。

金子(恭)委員 ありがとうございました。

 今回の法改正を踏まえ、今後とも、漁協の共済事業が健全に運営をされまして、契約者の一層の保護が図られることにより、契約者に安心と満足を与え、将来にわたり漁業者の営漁や生活を支えるセーフティーネットとしての役割を適切に果たしていけるよう、しっかりとした事業運営を行っていただくよう要望いたします。

 最後に、今回の法改正では、水産業協同組合法だけではなく、漁協の信用事業の機能を十分に発揮させるための措置として、中小漁業融資保証法の改正も盛り込まれております。漁業者の経営状況が必ずしもよくない中ですが、今回の中小漁業融資保証法の改正の趣旨及び概要についてお伺いいたします。

白須政府参考人 中小漁業融資保証法の関係でございます。

 近年、やはり資源の悪化あるいはまた生産構造が脆弱化をしておるといったようなことで、漁業を取り巻きます環境が大変悪化をいたしているわけでございますが、そういう中で、漁業者が事業に必要な資金を円滑に調達いたします上で、ただいまお話しのこの中小漁業融資保証法の対象でございます漁業信用基金協会、これが行います信用補完事業の重要性というのが大変に増しておるというふうに考えているわけでございます。

 こういった状況に対応いたしまして、漁業信用基金協会におきましては、無担保、無保証人保証でございますとか、あるいは漁協などが漁船リースを行います事業体への保証、こういったものを幅広く漁業者の保証ニーズに対応いたしておりまして、その事業基盤の強化、そして財務の健全性の確保というものが大変に重要になっておるというふうな状況にあるわけでございます。

 そこで、今回のお願いしております改正によりまして、一つとしましては、基金協会の経営の健全性の確保ということで、経営の健全性の基準の設定、そして員外監事の導入、公認会計士等による監査の義務づけというものを行いますとともに、二つ目といたしましては、基金協会の事業基盤を強化するための措置としまして、漁業者一般がみずから出資して基金協会の会員となること、また二つ目としては業種別の漁協等の子会社で水産物の販売を行うものも業種別の基金協会の会員となるということを可能とするといったような改正。それから大きな三つ目といたしましては、基金協会の再編整備を図りますための措置といたしまして、経営が困難となりました基金協会からの事業の円滑な承継が図られるように、合併に加えまして、事業譲渡を可能とする、そういう規定を導入するということにいたしている次第でございます。

金子(恭)委員 丁寧に、そしてわかりやすく御説明いただきまして、ありがとうございました。

 今回の一連の法改正が漁協系統の組織あるいは経営、事業の改革の促進につながることを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 水産業協同組合法及び中小漁業融資保証法の一部改正案について御質問を申し上げたいと思います。

 初めに、今回の水協法の改正案では共済事業の健全化ということが一つの大きな柱となっておりますけれども、この共済事業の健全化とともに、契約者の保護ということの立場に立って質問をさせていただきたいと思います。

 さて、最近、生命保険それから損害保険の各社で、大規模な不払いそれから支払い漏れということが社会をにぎわわせております、大きな問題となっております。金融庁では、保険金の支払い状況について、生命保険、損害保険各社に調査を求めているということが報じられております。

 全国共済農業協同組合連合会の自動車共済でも共済金の不払いが判明した、こう言われておりますが、農林水産省では、共済に関して、支払い状況について調査を命じているのかどうかをお伺いしたいと思います。また、不払いに関して状況を把握していれば報告をしていただきたい。そして、原因をどうとらえて、このことについてどう対応されているのか、しようとしているのかということについてもお答えを願いたいと思います。

福井大臣政務官 JA共済におきましては、十七年の十一月に自動車共済、生命共済などに共済金の未払いがあるということが判明いたしました。そのため、農林水産省といたしましては、翌十二月、十七年の十二月に、全共連に対しまして、過去の共済金支払いについての徹底的な点検をしなさい、未払い事案の支払いを対応しなさい、そして再発防止策の構築をしなさいということについて、業務改善命令を発出いたしたところでございます。

 これを受けて全共連では、十八年一月に業務改善計画を策定いたしました。そして、十八年度以降における未払いを防止するためのチェックシステムの構築など再発防止に取り組んでおります。そして、並びに、十七年度以前の共済金支払いについての徹底した点検を開始したところでございます。

 この三月三十日に、十七年度以前の共済金支払いにつきまして報告が農水省に対してございました。平成十四年度から平成十七年度の間の自動車共済における支払い漏れ件数五万三千件、支払い見込み金額が二十二億円であったことが報告されました。そして、生命共済におきましては、七月末を期限として調査を実施しているという、この二点につきまして、三月三十日に全共連から農水省が報告を受けたところでございます。ちなみに、この二十二億円のほとんど、九五%が支払いを済ませているということでございました。

 いずれにしても、今先生御指摘のように、不払い、未払いというのは極めて遺憾であるという認識を共通化させていただいたところでございます。

 そして、発生原因につきましては、共済金の未払いを防止するチェックシステム、やはりこれが不十分であったということに尽きるのではないか、大きいのではないかということから、農林水産省といたしましては、全共連に対しまして、業務改善計画の進捗状況を定期的に報告しなさい、そして、新たに構築した共済金支払い漏れのチェックシステムなどが十二分にその機能を果たしているかどうかも含めて、業務の適切な実施について十分農林水産省としても指導を今後ともさせていただくということにしております。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

西委員 これからきっちりと対応していただけるように、厳正な調査並びにその対応をお願いしたいと思います。

 大臣、お忙しいところを早速帰っていただきましたので、ちょっと予定を変更して、大臣に御質問を申し上げたいと思います。

 漁業を取り巻く経営環境、これは大変厳しいものがございます。幾つかの原因があると思われますが、まず、二百海里という体制のもとで、限られた海域内での水産資源を前提とした操業を余儀なくされている。それから、円高・ドル安傾向の中で、輸入の水産物の増加によって魚価が低迷をしております。また、右上がりの経済成長はもう今後は余り見込めないということ、それから燃料の高騰でコスト高に苦しんでいる、さまざまな要因の中で今の漁業を取り巻く環境というのがあるというふうに考えられます。

 そんな中で、平成十三年に水産基本法が制定され、漁業者はその基本理念を実現するために、水産資源の適切な保存及び管理に関するさまざまな努力を今現在しているところでございます。

 漁具の改良、それから禁漁期、禁漁区の自主決定、さらには、平成十四年からは、広域を回遊する魚種に対応するため、漁業者、都道府県、国が一体となって資源の回復計画に取り組んでいる。一昔前からすると本当に自助努力並びに自治体、国の努力も大変なものだというふうに思っております。

 資源管理型の漁業に対応すべく、漁業協同組合などは、いかに安定的な経営を行うか、いわば暗中模索の状況が続いていると言ってもいいと思います。

 漁業協同組合に関しましては、さまざまな研究が行われていますが、金融税制面での優遇措置、それから許可、免許の取得のしやすさ、それから行政の補助事業など経済的なメリットを今つけている反面、漁業に従事する組合員を基本とするということがもとになっておりますので、地域外、組合員以外からの出資を求めることができない、そのために資本蓄積の制約がございます。また、事業拡大についても制約があるというふうなデメリットが言われていることも事実でございます。

 こうした漁業協同組合のデメリットとして指摘されている点に関して、この課題をどういうふうに克服しようとしているのか、基本的なことを大臣にお伺いしたいと思います。

松岡国務大臣 ただいま西先生が御指摘になられましたように、さまざまな要因が絡み合って、漁業、それから漁協もそうですが、大変厳しい状況に置かれている、まさにそのとおりであります。

 したがって、それをどう乗り越え、克服し、将来の発展を図っていくのか、このような観点でしっかりと取り組んでいかなければならないわけでございますが、先生の御指摘の御趣旨は、漁協については非常に大きな制約もある、その制約の中で今後の発展に向けてどのような展開がしていけるのか、そこに今回の漁協の事業改革の意義をどう見つけるのか、こういう御指摘だと思います。

 全くそのとおりでございまして、漁協が果たしている役割というのは、漁業の振興はもとよりですけれども、漁村全体の発展にとっても大きな役割を担っております。そこで、今、新たな観点としては、水産加工会社や、そういった関連する事業体、こういったところと連携や協力を深めながら、幅広にといいますか前広に展開がしていけるような取り組み、こういった点をまた一つの大きな今後の方向としてもそれを進めていく。

 いずれにいたしましても、漁協自体の足腰の強化、それからまた、今申し上げましたような関連する産業や関連するいろいろな団体、こういったところと一体となってその力をつけていく、こういったことも必要だと思っております。

 そういう観点に立って、水産行政としてもしっかり、私どももその方向を目指してできるだけの取り組みをしてまいりたい、このように認識をいたしております。

西委員 大臣がおっしゃるように、確かに魚をとるというだけの一次産業だけに完結するのではなくて、製造、加工、それから流通も含めた、そういう一体的な流れというものをこれから模索していくというのは一つの大事な視点だと思いますので、またよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 さて、日本の近代漁業制度は、明治漁業法という法律に始まって、農村集落ごとに漁業組合をつくらせ、その前浜の漁場に関する権利を、地先水面専用漁業権という権利を設定して、その組合だけに免許を与えていた。その後、経済事業それから信用事業が組合の事業に加わってきたという経緯がございます。そういう結果、漁協は、一つは、水産業協同組合法の立法趣旨に基づく漁民の経済連合体という性格と、それから漁業権の管理団体という二つの性格を備えるということになっております。

 水産庁は、基本的に、漁協についての合併の促進や事業の譲渡による基盤強化を今進めようとしております。経済的な観点から、経済性や効率性を考慮しなければならないということは当然のことですが、各地で合併の動きが今現在見られておりますが、一方では合併に慎重な態度をとる漁協も現実には少なくありません。市町村合併同様、漁協間の財政格差の問題、それから組合員のそれぞれの負担の問題、さらには合併に伴って本所機能がなくなって地域が活気を失っていくというような不安なども理由となっているというふうに思われます。

 合併が大きくなればなるほど協同組合としての本来の性格が希薄になって、そして地域共同体としての機能も同時に薄れていく、こういう側面もございます。

 漁協はもともと漁業の集落を基本としております。そして、その地域の海を守ってきたという側面もあります。

 最近、環境問題、それから海のレクリエーションなどの需要に伴って、一般国民が海へのアクセスを求める、そういう傾向も強くなってきております。ダイビングそれからジェットスキー、マリーナ、さらには悪い面では密漁ということに見られるように、ルールを無視する者に対して十分取り締まるすべがないことから、漁協にそうした海の守り人としての役割、管理をさせてはどうかという案もございます。

 海の守り人として漁協が自然保護やレクリエーションも含めた沿岸管理業を、事業、これは事業と申しましても管理という面では司法という、司法権はもちろん難しいわけでございますが、そういう仕事もできるようにしてはどうかということも私は考えておりますが、大臣のお考えをお伺いしたいということが一つ。

 それからもう一つは、漁業、漁村が有する物質循環、それから環境の保全など多面的な機能を客観的に評価して、そしてその機能が発揮されるように直接支払い制度を導入したいと私は考えております。漁業関係者がそうした自然保護やレクリエーションも含めた公益的な役割となる沿岸域の管理を行うということになれば、直接支払い制度の導入などへの国民の理解が深まるというふうに考えております。

 そう考えてまいりますと、農業でいいますと、農地、水、環境保全向上対策、これは議論がございました。こういうことを参考にした取り組みが漁業においてもできないかということ、これを検討すべきだと私自身は思っておりますが、大臣のお考えをお願いいたします。

松岡国務大臣 先生今お尋ねの点の、逆に後の方からお答えをしたいと思っておりますが、私も先生と全く同様の考えであります。

 といいますのは、先生、農業においてとおっしゃいましたが、農業では、農政として、中山間の直接支払いをやっております。これはもうWTO上も認められました制度でございまして、まさに中山間という立地条件に着目をいたしまして、そしてそこに直接支払いをする、こういうことであります。

 水産関係におきましては、それと同じような発想に立ちまして、離島、これはやはり出荷とかそういう漁業活動の上でどうしても不利な条件に置かれる、したがって、その不利な条件を克服するということに着目をいたしまして、十七年度から、これについてはそのような対応を、中山間の所得補償と似たような対応を実は図っているところでございます。

 今、そして、さらに加えて、離島だけではなくて、漁村全体にそういったような、農業でいえば、今回、ことしから農地、水、環境政策、こういったものを実施することになっておりますが、そういうまさに漁村というか漁業の海域全体が持っている多面的機能に着目をして、先生はそういう補償をすべきじゃないか、そういう助成をすべきではないか、こういうお考えであります。

 実は、それに取り組みますために、今年度から、平成十九年度から、環境・生態系保全活動支援調査・実証事業ということを実施いたしまして、こういったことを踏まえまして、水産業、漁村の有する多面的機能、それによって藻場や干潟の維持管理等、沿岸域の環境、生態系が守られる、そしてまたそれが国民全体にとって一つの大きな役割を果たしていく、こういうことでありますので、この実証事業をしっかりとやることによりまして、先生御指摘のような方向に向かった取り組みをひとつやってまいりたい、このように思っております。

 それから、先ほど先生は、海の守り人、こういった形で御質問がございました。いろいろな役割を与えてはどうか、そしていろいろな事業ができるようにしてはどうか、こういうようなことでございます。

 これは、端的に申し上げまして、農業と比べて、比較してというか、例に倣ってというわけじゃありませんが、私も先生の御質問を聞きましたとき、これはまさに市民農園的な、そういう意味合いも持つものなんだろうなと思いまして、遊漁ということも含め、いろいろなその働き、役割、こういう中でそういった面にも大きく寄与していく、こういったことがやはりある。

 そこで、この事業をどう仕組んでいくかということでありますが、ただ、漁協はどうしても水産業協同組合法、この法律に基づいてということでございますものですから、いろいろな制約といいますか、いろいろな決まりがございます。したがって、そういう制約がございますが、その範囲の中で、海を守るための漁協の取り組み、こういったことについては、私ども、最大限、できるだけの範囲を広げながらといいますか、考えながらといいますか、先生御指摘のような取り組みもしっかりと行えるような、そういう促進について水産行政としてもしっかり取り組んでまいりたい、このように考えております。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

西委員 農業も、市民農園と今大臣は例示されましたけれども、そういう形で一般国民に少し参入ができるような仕組みができましたので、漁業も林業もすべて、やはり一次産業もそういう方向性を目指していくというのが大事なんじゃないかなというふうに思っております。

 ちなみに、私も、去年の七月から、日曜、市民農園を始めまして、毎週ブログにそれを書いているという努力をしておりますが、土日だけでも農業ができるよ、こういう例示をやらせていただいておりますので、またごらんいただければと思います。

 ちょっと質問がまたもとに戻りますが、水協法の方に移らせていただきます。

 今回の水協法の改正では、共済事業を行う組合の健全化を図るとともに、契約者の保護の観点から、所管である農林水産省も監督指導体制の見直しをしなければならないというふうに思っておりますが、法改正で、この点に対してどう対処しようとされているのかを御説明いただきたいと思います。

山本(拓)副大臣 今ほど御質問の中身でありますが、今回の法改正によりまして、いわゆる共済事業における経営管理、財務管理などの監督指針を定めまして、そしてこれに基づき国は共水連を指導して、都道府県は漁協を指導するといたしております。

 共水連は漁協に対し、契約者保護を図るための重要事項の説明、クーリングオフ制度等に関する研修会を開催し、契約者保護の立場から徹底的に周知徹底を図ることといたしております。

西委員 少し細かくなるかもしれませんが、水協法の第二章第二節「共済契約に係る契約条件の変更」について質問させていただきます。

 現在、景気が長く低迷し、ゼロ金利政策が導入されたことなどに伴って、予定利率に基づいて想定していた予想収益を下回るいわゆる逆ざや状態が発生して、そして最終的には破綻という事態に追い込まれた生命保険会社も出てまいりました。平成十五年、保険業法改正、それから平成十六年、農協法改正があり、予定利率の引き下げと契約条件の変更を可能とする改正が今回盛り込まれておるわけでございます。

 法案第十七条の八に「共済調査人」という規定があります。その前の法案第十五条の十七の共済計理人には選定の規定がありますが、この共済調査人に関しては特段の規定がないので、具体的に少しお聞きをしたいと思います。

 共済調査人とはどのような人がどのような手続で選任されるのか、その人数は何人ぐらいなのかということの御説明をお願いしたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの委員のお話の共済調査人についてのお尋ねでございます。

 今回の改正のお話の契約条件の変更に係ります共済調査人につきましては、契約条件の変更を行わなければ共済事業の継続が困難になる、そういうふうな蓋然性があるということと、それから共済契約者等の保護のために、一方では契約条件の変更がやむを得ない、そういうふうな場合に、行政庁におきまして共済調査人を選任する、それによりまして、契約条件の変更の内容等を調査させることができるというふうにしているわけでございます。

 そこで、この共済調査人についてはどういった手続で選任するのかというふうなお尋ねでございます。

 これにつきましては、この共済調査人の選任に当たりましては、契約条件の変更の内容等の調査を行える者ということで、いわゆるアクチュアリー、保険数理人と言われておりますけれども、アクチュアリーでございますとか、あるいは公認会計士、それから弁護士、そういったそれぞれから、やはりそれぞれの状況に応じまして必要と認められる人数を、そういった必要があります都度に公正な選任ということで共済調査人の選任を行ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

西委員 行政庁は、必要があると認めるときは、共済調査人を選任するということになっております。共済の契約者の権利が不当に侵害されていないかチェックするのが今回の調査人の役割だということでございますが、必要があると認められるときというのはどのようなときを指すのかということを説明していただきたい。

 それから、行政庁、すなわち大臣、知事が契約条件の変更を承認するときは、法律の規定上、必ずしも共済調査人の調査が必要条件ということでもなさそうです。これは、保険業法の規定をそのままこの法案に移したからこういうふうになっていると思われますが、行政庁となる農林水産大臣は、金融庁と異なって必ずしも専門的なスタッフが十分そろっているというふうには言えないのではないか、したがって、金融に関する判断を行う場合には、いかに専門性、妥当性を確保するかということが課題になってまいります。

 この規定は、共済事業が破綻するか予定利率引き下げかという大変厳しい選択を迫られる局面でもあり、高度な公平性が求められると私は思っております。調査人の報告書がない場合、大臣はどのように契約変更内容が公正かどうか判断をするのかということが問われるわけですが、このことについても政府の考え方をお伺いしたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの共済調査人の選任という点についての重ねてのお尋ねでございますが、委員からのお話のとおり、この共済調査人の調査というのは、契約条件の変更の申し出がございました場合には、やはり、予定利率の変更でございますとかあるいは契約条件変更、そういう内容が適正であるかどうかにつきまして専門的な知見を有する者の意見を求めるということでございまして、私どもとしても、基本的には、そういった共済調査人の調査というものに対して意見を求める必要があるというふうに考えている次第でございます。

 したがいまして、お話のとおり、この契約条件の変更というのは、やはり共済の契約者にとりまして大変不利となる可能性も十分あるわけでございますので、私ども行政庁が契約条件変更の承認を行います場合には、基本的には、共済調査人を選任いたしまして契約条件の変更の内容等を調査し、その結果、この点につきましては適切に対応していくことといたしてまいりたいと考えている次第でございます。

西委員 契約者にとっては大事な条件変更の局面でありますので、公平性を保つことができるようにきちっとしたそういう選任方法等のお考えを定めていただきますようにお願いをいたしたいと思います。

 それから、もう時間が参りました、最後、一問だけにしたいと思いますが、水協法の第三十二条でございます。

 「定款に記載し、又は記録すべき事項」ということになっておりますが、このことにつきまして、組合員の資格及びその審査の方法を定款で定める、こういうことになります。

 これに関して、モデル的な定款をつくるお考えはあるのか。もしそういうことをお考えならば、どういうふうな内容についてモデル的な定款の様式をつくろうとしているのかということについて最後にお伺いをしたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの組合員の資格審査の関係でございます。

 この組合員の資格審査に当たりましては、各地域におきまして漁業の実態はそれぞれ異なるわけでございます。したがいまして、この具体的な基準につきましては、当然、地域性に応じました独自性がある程度生じてくるのはやむを得ないというふうに考えているわけでございます。

 したがいまして、ただいまお話がございましたが、国といたしましては、やはりモデル的な定款として、大臣が定めます漁協の模範定款例、そういう中に組合員の資格審査の方法に関する規定というものを定めたいというふうに考えているわけでございます。

 そこで、具体的には、国が定めます模範定款例の中では、組合員の資格審査の基準でございますとかあるいは手続についての基本的な考え方、また外部の有識者を含みます資格審査の委員会といったようなことを規定いたしまして、これを踏まえて、都道府県が地域ごとの実情を踏まえた取り扱いをすることができるようにいたすことによりまして、資格審査の実行の適正化を図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。

西委員 今回の改正は、水産行政の改革の意味でも大変重要な意味を持つものだと思っております。これからもまた、大臣を中心に、水産業の復活に向けて頑張っていただけますようにお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

西川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西川委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、水産業協同組合法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

西川委員長 次回は、明二十六日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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