衆議院

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第12号 平成19年4月26日(木曜日)

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平成十九年四月二十六日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西川 公也君

   理事 岩永 峯一君 理事 金子 恭之君

   理事 近藤 基彦君 理事 谷川 弥一君

   理事 並木 正芳君 理事 篠原  孝君

   理事 松木 謙公君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      小里 泰弘君    小野 次郎君

      岡本 芳郎君    北村 茂男君

      斉藤斗志二君    杉田 元司君

      中川 泰宏君    永岡 桂子君

      丹羽 秀樹君    西銘恒三郎君

      鳩山 邦夫君    広津 素子君

      福井  照君    福田 良彦君

      古川 禎久君    御法川信英君

      森山  裕君    渡部  篤君

      岡本 充功君    川内 博史君

      黄川田 徹君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    高山 智司君

      仲野 博子君    福田 昭夫君

      山田 正彦君    菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   農林水産大臣政務官    永岡 桂子君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  山田 修路君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (林野庁長官)      辻  健治君

   政府参考人

   (水産庁長官)      白須 敏朗君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 寺田 達志君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     杉田 元司君

  今津  寛君     西銘恒三郎君

  仲野 博子君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     赤澤 亮正君

  西銘恒三郎君     今津  寛君

  川内 博史君     仲野 博子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房技術総括審議官染英昭君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長町田勝弘君、生産局長山田修路君、経営局長高橋博君、林野庁長官辻健治君、水産庁長官白須敏朗君、内閣府食品安全委員会事務局長齊藤登君、総務省自治行政局選挙部長久元喜造君、文部科学省大臣官房審議官布村幸彦君及び環境省大臣官房審議官寺田達志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄です。

 この間、松岡農水大臣の事務所経費問題をこの委員会で毎回指摘してまいりましたが、今回、農林水産省所管の独立行政法人緑資源機構をめぐる官製談合の疑惑が持ち上がっています。

 経済産業界からは農業を犠牲にしても市場開放を進めるべきだという論議が強まっている中、農林水産業の政策を一歩誤るならば、私は、壊滅的な打撃を受けかねないと思っています。まさに、今この時期は大切な時期であります。農水大臣、農水省、さらに所管法人で疑惑や不祥事が続いている現状は大変ゆゆしき事態です。

 大臣みずからが光熱水費疑惑を晴らすことは当然のこととして、農林水産行政に対する信頼回復に努めることが何よりも求められていることを強く指摘し、質問させていただきます。

 ただ、今回の問題というのは、大臣に直接質問しなければ議論というのは深まっていかないと私は思っていますので、農水大臣、今の指摘を受けて、早急に私は信頼回復の努力をしてほしいし、今後こういうことのないような農水行政をしっかりと進めてほしいという気持ちで質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、緑資源機構をめぐる、いわゆる官製談合についてお伺いします。

 十九日に、緑資源機構や林道整備の調査業務を受注した公益法人などに家宅捜索がなされました。報道されていることが事実だとすれば、大変に悪質です。大臣が、家宅捜索を受けた法人、企業から献金を受け、パーティー券を購入してもらっていたとの報道もあります。

 そこでお伺いしますが、大臣は公益法人からの献金については返金したと述べられているようですが、公益法人の理事長や個人名での献金あるいはパーティー券購入分はどうされているのでしょうか、お聞かせください。

松岡国務大臣 今、菅野先生の御指摘につきましては、私もこれについては真摯に受けとめたいと思っておりますし、また今御指摘の緑資源機構への家宅捜査、そしてそのもとになった官製談合の疑い、極めて遺憾なことである、そのように深く認識をいたしております。

 そこで、先生のお尋ねの点でございますが、公正取引委員会から家宅捜査を受けた御指摘の五つの公益法人ということでございますが、今私どもが承知をいたしておるところでは、この五つの公益法人は、林野弘済会、それから林業土木コンサルタンツ、日本森林技術協会、森公弘済会、林業土木施設研究所の五つ、このように受けとめております。

 そこで、今先生お尋ねの、この五つの公益法人から私に対して献金、パーティー券の購入はあるか、こういうことでございますが、この五つのうち三つの法人、林野弘済会、林業土木コンサルタンツ、日本森林技術協会、この三つから平成十年以前に寄附金等を受けたことはございますが、平成十一年以降、寄附金やパーティー券の購入はしてもらっておりません。そしてまた、なお、この三つの献金、寄附金等を受けた法人につきまして、平成十一年時点で、その時点で返却すべきと判断したものにつきましては、返却をいたしているところでございます。

 それから、その公益法人の中の、先生から御指摘ございました、理事長等の個人名の献金は問題ではないか、それはどうなっているのか、こういうことでございますけれども、個人献金につきましては、個人の自由な意思に基づくもので、政治資金規正法上も会社等と制限の態様が異なっているということはそのとおりでございますが、調べてみましたところ、今この公益法人の理事長をお務めになっている方、会長をお務めになっている方、こういった方から、私も以前はここに勤務をいたしておりまして、先輩として御指導もいただいた、そういう個人的な関係もありまして、個人的に献金を受けておった。こういうようなことがございまして、先ほど言いましたような、個人献金と会社等との意味合いは違うということはそのとおりでございますけれども、しかしながら、当該公益法人が公取委の調査の対象となったこともございまして、大臣として誤解を生じさせることがあってはならないと考えまして、先日、四月の十二日と事務所からは聞いておりますが、それらの公益法人の代表者、そういった方からの献金につきましては、大臣就任以前のものも含めて返却をいたしたところでございます。

 以上でございます。

菅野委員 大臣、私は、政治家は少なくとも公共事業を受注している企業や法人からの献金やパーティー券の購入は厳に慎むべきだと思っています。

 それで、なぜこういう官製談合の疑惑が起こっているのかということを考えたときに、私は、個人といえども政治献金を受け取っている、そういうところに疑いがかかっていくというふうに思っています。それで、献金を受けていて、返せばいいという問題ではないというふうに私は基本的に思っているんです。献金を受けるときの状況というのをしっかり私は判断すべきだというふうに思っています。特に公共事業を受注している公益法人、発注している公益法人や企業から献金は受け取ってはならないという気持ちで対処していただきたいというふうに思っています。

 それで、もう一点伺いますが、大臣は、今回の疑惑について、こんな話になるまでは全くわかりませんでしたと記者会見で述べています。それは事実なんでしょうか。その上で、家宅捜査にまで至った事態について、どのように認識をお持ちなんでしょうか。

 実は、この家宅捜査に至る以前から、緑資源機構をめぐっては公取委の事情聴取を受けていたという事実があるわけです。その事実を知らないで、家宅捜査が入るまでわからなかったということは、私は大臣としてはあり得ないというふうに思っているんですが、どうでしょうか。

松岡国務大臣 今先生御指摘のこの家宅捜査、強制調査ですか、それに入る以前に、昨年の時点で事情聴取を受けておった、それはもう当然承知をいたしておるところでございまして、今先生御指摘の、私が申し上げたというのは、ちょっとよく私も理解ができないんですが、それはもう当然のことながら、昨年の時点で、そういう事情聴取に至ったこと自体が私は遺憾なことであった、このように認識をいたしていたところでございますし、今も、そのことはより強く、そのように遺憾なことであると思っております。

 そこで、家宅捜査にまで至ったことに対する私の認識いかんということでございますが、先生が御指摘のように、四月の十九日に家宅捜査を受けた、極めて遺憾なことでございまして、そしてまた、本件に関しましては、昨年十月、緑資源機構に立入検査があったわけでございまして、さらに四月三日の犯則調査の開始、そういうことでございまして、私からは、緑資源機構の理事長に対しまして、公正取引委員会の調査に全面的に協力をするよう指示をいたしているところでもございます。

 現在は、公正取引委員会の調査に真摯に協力することが重要な段階、このように認識をしておりまして、事態の推移を踏まえまして、国民の皆様の納得が得られるようきちんと対応していく必要がある、このように認識を持っているところでございます。

菅野委員 大臣、昨年末から任意の事情聴取に入っていたというのは知っていたということなんですけれども、知っていて、献金を受け取っていて、そして四月の十二日、個人からの献金を返したと言っていますけれども、私は、農水大臣として、今回の問題について徹底的な調査に入るという、今大臣が調査に協力すると言っていますけれども、やはり大臣の関与があったんじゃないのかという疑惑はぬぐい去れないというふうに思うんです。こういう形でますます国民の不信が募っていくという状況は、ゆゆしき事態だということを指摘申し上げておかなければならないというふうに思っています。これは後でまた質問します。

 それで、今回の問題は典型的な官製談合です。指名競争入札で入札価格の指示まで出して業者を認定する。受注した法人、企業はそれぞれ下請業者に丸投げして利益を得る。さらに問題なのは、強制捜査を受けた農水省所管の五つの公益法人については、二〇〇五年四月時点で天下りが二百七十七人、そのうち理事長職に四十四人がついていると言われています。この数字は確かでしょうか。このうち農水省からの、林野庁からの天下りは何人なのか、お答え願いたいというふうに思います。

辻政府参考人 家宅捜査を受けました林野庁所管の五つの公益法人の役員につきましては、平成十八年十月時点で、林野庁の退職者が三十七名在籍をいたしてございます。

 財団法人の林野弘済会につきましては十一名、それから社団法人の日本森林技術協会につきましては十一名、それから財団法人の林業土木コンサルタンツにつきましては七名、財団法人の森公弘済会につきましては三名、そして財団法人林業土木施設研究所につきましては五名の役員が在籍をいたしているところでございます。

 これらの公益法人の職員につきましては、平成十八年四月時点で、国家公務員退職者が百六十三名在籍をいたしているところでございます。

 また、平成十四年四月以降の五年間に、林野庁の課長、企画官相当職以上の離職者で離職二年以内にこれらの公益法人へ再就職した者は三十二名でございます。林野弘済会に十五名、日本森林技術協会に八名、林業土木コンサルタンツに九名といったような状況でございます。

    〔委員長退席、金子(恭)委員長代理着席〕

菅野委員 大臣、今林野庁長官の答弁をお聞きになったというふうに思います。私は、今回の官製談合の背景には天下り問題があるというふうに思っているんですけれども、大臣は、今回の官製談合問題について、天下りの問題があるというふうに認識されているんでしょうか。御答弁願いたいと思います。

松岡国務大臣 林野庁の職員の再就職ということにつきましては、公益法人や民間企業において専門的な知見を持つ人材に対する需要があり、この需要に職員の知識や経験が合致することによりまして再就職が行われているものと理解をしているところでございます。

 現在、公正取引委員会が犯則調査を行っている状況にあり、本件事案の具体的な内容にかかわることについてはコメントを差し控えたいと考えておりますが、今の菅野先生の御指摘は十分重く受けとめなければならない、このように認識をいたしております。

菅野委員 大臣は記者会見で、今後、公正取引委員会の調査の推移をしっかりと見守っていくと述べています。今もそうおっしゃっています。しかし、事は所管の独立行政法人、公益法人を舞台として、天下りした役人が起こした問題です。他人事ではいられないはずです。

 ましてや、公正取引委員会は、林野庁発注の事業についても資料の提出を求めていると言われています。

 この際、農水省内部に外部の有識者も交えた調査委員会を発足させ、林道整備にとどまらず、すべての事業について徹底的に調査を行うべきだというふうに思いますが、大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。

松岡国務大臣 今回、緑資源機構及び受注法人に対して公正取引委員会の調査が今先生御指摘の形で行われている、これはもうまことに遺憾なことでございますし、改めてそのことを申し上げたいと思います。

 公正取引委員会の調査等には全面的に協力するよう指示をいたしているところでありますが、調査を妨害しないように留意しつつ、二度とこうした事態が生じないように抜本的な再発防止策を早急に検討していく必要があるということはもう先生の御指摘のとおり、このように認識をいたしています。

 そうした検討の進め方につきましては、事務方に検討をさせているところでございます。

菅野委員 次の質問に移るんですが、一昨日、政府は天下り規制を柱にした国家公務員法改正案を閣議決定して、きのう国会に提出したというふうに聞いております。

 安倍総理はこの改革によって談合は根絶されるとおっしゃっていますが、本当にそうなのかと私は疑問を挟むものであります。政府案は、人材バンクをつくって再就職管理を一元化するだけで、天下りをなくすものではありません。政府の改正案でなぜ談合が根絶されるのか、私には理解できません。

 今般の人材バンク、私からすれば天下りバンクとしか思えませんが、これで談合が完全になくなると大臣は考えているんでしょうか。大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。

松岡国務大臣 官製談合、これはもともとあってはならないことでございまして、公務員制度のいかんにかかわらず、公共調達に当たっては、独占禁止法その他のルールに従った業務執行を確保する必要がある、これは当然のことと考えております。

 一方で、各省による押しつけ的な再就職あっせんが官製談合や不正の元凶と指摘されてきたところでもございます。これについて、今回の公務員制度改革案では、各省による再就職のあっせんを禁止し、官民人材交流センター、先生が今おっしゃいましたいわゆる人材バンクでございますが、そこに一元化することといたしております。

 この法案が成立し施行されれば、各省の再就職あっせんはなくなり、公務員に対する国民の信頼を確保することができるもの、またそのようにこれはなっていくべきもの、このように考えております。

菅野委員 この国家公務員法改正案については、国会に提出されて、そちらの方で私も議論していきたいというふうに思いますけれども、天下り問題というのは公務員制度とも密接に絡まるというふうに思っています。早期退職勧奨を受けた人がこれから生活していく場合にどういう手段があるのかというふうに考えたときに、ここを根本的に解決していかなければ、この天下り問題の根本的な解決にはつながっていかないというふうに思っています。

 そのことが、ずっと改革されてきているにもかかわらず、まだ六十あるいは年金受給時まで勤めることができないという状況は解消されていないから多くの問題が生じているんだというふうに思うんですね。だから、そのことと両々相まって解決していかなければならない課題だというふうに思っています。これは別な機会で議論していきたいと思うんです。

 官製談合を根絶するには、まず天下りの厳しい規制はもとより、公共事業のあり方、入札のあり方を含めて、現状を徹底的に検証し、抜本的に改革する以外にはないと思います。

 しかし、一方、森林整備は、後でも質問しますが、今大変に重要になっています。今回の問題を通じて、その重要性が低くされるようなことはあってはならないことだと思っています。今、政府の規制改革会議において、緑資源機構の業務の縮小や廃止が検討されているやに伺っていますが、業務や入札のあり方の見直しは必要だとしても、機構の改廃に一気に踏み込むのは論点がずれているのではないかと思います。

 規制改革の方針について、大臣の見解をお聞きしておきたいというふうに思います。

松岡国務大臣 農林水産省は、四月十三日に開催されました政府の規制改革会議におきまして、緑資源機構についての業務の現状及び民間開放の状況、今後の事業の見込み等についてヒアリングを受けたところでございます。

 その後、四月二十日の規制改革会議において緑資源機構の業務の縮小、廃止の方向を打ち出すとの報道があったことについては承知をいたしておりますが、報道にあったような事実があったことについては承知はいたしていないところでございます。

 緑資源機構は、先生御指摘のように、豊富な森林資源の利活用のための森林整備、そういった観点に立って、農林業の振興、森林、農地の公益的機能の発揮のために必要な事業を行っているものと考えておりますが、時代の変化や国民のニーズに即して、業務の効率化等のための不断の努力が認められているものと認識いたしております。

 先ほども御指摘ございましてお答えいたしましたが、今後、どのようにこのことも含めまして対応していくのか、検討をしていく中で結論が出ていくもの、また出していくべきもの、このように思っております。

菅野委員 大臣、再度申し上げますけれども、今回の業務や入札のあり方の見直しというのは私は徹底して行うべきだというふうに思うんです。ただし、規制改革会議が言っているように、機構そのものを改廃するような、そんな動きというのは、今の時点でとるべき方策ではないというふうに私は思っています。

 これから少し林業の問題で議論しますけれども、大臣も、今日的な林業の実態というのは重々承知していることだというふうに思っています。このまま放置しておくわけにはいかないことでありますし、緑資源機構の果たしてきた、あるいは今後果たすべき役割というのは非常に大きいものがあるという立場から、今後の方向性を農水大臣としてしっかりと道筋をつけていただきたいということを強く申し上げておきたいというふうに思っています。

 それでは、林業施策について林野庁長官にお伺いします。

 政府は、ことしを森林・林業新生元年と位置づけております。しかし、何度も指摘させていただきましたが、例えば京都議定書の目標計画達成に向けた森林吸収源対策でも、そのための予算措置を見ると、新生元年と胸を張れる内容なのか疑問を抱かざるを得ません。

 加えて深刻なのは林業の担い手の減少です。平成十七年度で約五万二千人、そのうち六十歳以上が三分の一以上を占めており、十年後には森林労働者が三万六千人まで減少するという予測もされております。

 賃金水準の低さに加え、危険と隣り合わせの仕事であることが大きな原因と考えます。緑の雇用対策が一定の成果を上げていることは存じていますが、担い手確保に向けて、農水省はどのような対策をお考えなのでしょうか。所得安定対策や安全確保に向けた研修、訓練の充実が必要だと思いますが、どのように考えておりますか、答弁願いたいと思います。

辻政府参考人 先生御指摘のように、他産業と比べて労働条件が厳しい状況にあります林業の担い手を確保するために、林野庁といたしましては、緑の雇用担い手対策等によりまして、新規就業者の確保、育成を図ってまいりたい。この事業をやる前は、新規の就業者数というのは毎年二千人だったわけでございますけれども、この担い手対策をやることによりまして、毎年三千五百人から四千人ぐらいになってきているところでございます。

 それと、林業事業体の体質強化ということで、森林施業の集約化により、雇用先である森林組合等の林業事業体の安定的な事業量の確保、それから高性能林業機械の導入や低コスト作業道の整備による、いわゆる機械化によります林業労働者の重筋労働の軽減、そして、都道府県の森林整備担い手対策基金を通じた社会保険の助成だとか、あるいは労働安全衛生器具の整備に対する助成、こういった取り組みに重点的に支援を行っているところでございまして、このような施策を総合的に講ずることによりまして、労働条件の改善を含めた林業の担い手の確保に努めてまいりたいと思います。

菅野委員 もう一点、林業をめぐる状況については、森林所有者が不明確な、いわゆる不在村森林所有者の問題だと思います。今や不在村面積は三百万ヘクタールを超えて、民有林の四分の一を占めております。この莫大な森林が整備の対象から外れ、荒廃しているのが現状です。これは災害対策上からも非常に大きな問題だと言わなければなりません。

 不在村森林については、国が適正な価格で買い上げ、必要な森林整備を進めていくことが急務の課題となっているのではないでしょうか。不在村森林に対する対策をどのように進めていくのか、お聞かせ願いたいと思います。

辻政府参考人 不在村森林所有者対策というのは林業政策上重要だというふうに認識をしているところでございまして、林野庁におきましては、これまで三大都市圏で開催するふるさと森林会議を通じまして、不在村森林所有者に対し、森林組合がダイレクトメールを送りまして、所有権の情報提供だとか、あるいは森林施業を働きかける、こういった取り組みを行っているところでございますけれども、平成十七年度に実施した取り組みによりまして、約二千ヘクタールの森林施業を森林組合は受託した。非常に面積的に少ないわけでございます。

 それから先生御指摘の、国なり市町村が不在村森林所有者の森林を買い取ったらどうだというお話でございますけれども、これにつきましては、平成五年度から、地方公共団体が森林公園などの公の施設として保全、活用を図る森林、あるいは公益的機能の維持向上を図るために公有林化が必要である森林の取得に対しまして、地財措置が講じられているところでございます。

 国、市町村が買い取るというところでございますけれども、なかなか財政的な問題もございまして難しい、あるいは寄附につきましても、制度的には可能だと思いますけれども、なかなかそういうのを申し出る方が少ないといったような状況でございまして、不在村森林所有者の森林につきましては、やはり地元森林組合による不在村森林所有者への働きかけが肝要ではないのかなというように思ってございます。

 このため、平成十九年度からは、ふるさと森林会議を三大都市圏に加えまして各都道府県の県庁所在地に拡充して実施しよう。それから、森林組合が、森林整備の内容なり経費などを明確にした施業の提案を行って、不在村森林所有者に施業の委託を促進してまいりたい。あるいは、美しい森林づくり推進国民運動におきましても、都道府県等のレベルで呼びかけをしようということになってございますので、都道府県、市町村と連携をして、不在村森林所有者対策に取り組んでまいりたいというように考えているところでございます。

菅野委員 米国産牛肉について通告しておりましたけれども、時間ですので、次回に質問することを申し上げて、質問を終わります。

金子(恭)委員長代理 次に、古川禎久君。

古川(禎)委員 おはようございます。自由民主党の古川禎久です。

 石油文明の象徴と呼んでもいいアメリカのブッシュ大統領は、一般教書演説の中で、二十一世紀は水素文明である、今生まれた子供が最初に運転する車は水素自動車だというふうに言っております。現代の文明を支える化石エネルギー、石油も石炭も天然ガスもウランも今世紀中に枯渇するのは確実だというふうに言われております。

 石油文明から水素文明へということで、いかにスムーズに転換を果たすかということを心配しておりますが、国土交通省の河川局長をされた竹村公太郎さんが本を出されて、このようなことを言っておられます。日本列島には雨を集める装置がある。それが山である。山から流れる水力エネルギーが二十一世紀の日本文明のエネルギー、電気となる。地球上でエネルギー資源が枯渇し、世界の文明が衰退していく局面になっても、日本文明は国土の七割の山、そして全国に張りめぐらされた川、千年以上の歴史を持つ農業用水路網によって救われるとして、小水力発電、水車による発電と水素供給インフラの整備を提唱しておられます。

 つまり、山が日本文明を救ってくれるということを言っておられるわけで、私も大変救われる思いがいたしております。

 これまで日本列島は山ばかりだというふうに嘆いておった時代から、山があるおかげで日本は救われるという時代になりつつあるのだと思いますが、この日本の宝、山を預かる林野行政の骨格は森林・林業基本計画だろうと認識しておりますが、大臣の山に寄せる熱い思いを込めて、この計画について、お考えをお尋ねいたします。

松岡国務大臣 今いみじくも古川先生が御指摘なさいました。全くそのとおりだと思っております。

 ブッシュ大統領は去年とことしの二カ年間にわたって、連続して、一般教書演説でこの問題を取り上げられまして、そして石油から、緑の原材料をもとにしたエタノール、これへ転換していくんだ、それも大変な加速度的なスピードでこれを達成していく、このことを大きな方針として出されたわけでございます。

 そこで、常々、私も思っておりますが、石油で栄えた人類が、このままいけば逆に石油によって滅んでしまう、このように実は危機感を持っておりまして、したがいまして、私自身の個人的なことで恐縮ですが、もう五、六年前から、緑のエネルギー革命推進議員連盟をつくりまして、この問題には取り組んできたところでございます。そのもとは、やはり何といっても、日本にあっては、国土の約七割近くを占める森林、これをいかに生き生きと活性化していくか、これが根本的に、基本的に重要だ、その認識はもう先生と全く一緒でございます。

 そしてまた、もちろん農地もそうでございますが、緑をはぐくんでいく、生み出していく森林や農地、こういったものをどのようにして、しっかりと活性化を図っていくか、そして、とりわけその中で、先生御指摘の森林・林業基本計画によって、これをしっかりと推進することによって、今おっしゃいましたような生命の源といいますか、緑や水や環境の一番のもとであります森林をしっかりしたものにしていくということは、何よりも大きな政治的な課題だ、このように強く認識をいたしているところでございまして、古川先生の御指摘、全くそのとおりでございまして、しっかりとそのことを体しまして、この森林・林業基本計画の目標達成に向けて取り組んでまいりたい、全力を尽くしてまいりたい、このように決意をいたしているところでございます。

古川(禎)委員 ありがとうございます。

 今総理が肝いりで、美しい森林づくり推進国民運動ということを提唱しておられます。石油文明から水素文明へのパラダイムシフトということですから、国民を挙げて、みんなが山を大事に思う心というものを意識するべきだと思っておりますが、そのためには、林野庁がひとり頑張ってもなかなか足りないわけで、国民すべてを巻き込んでいく必要があると思っております。

 関係省庁との連携も重要になると思われますが、その連携の方策についてお尋ねいたします。

辻政府参考人 総理からの指示に基づきまして、一つは、国産材利用を通じた適切な森林整備、それからもう一つは、森林を支える生き生きとした担い手、地域づくり、そして三点目は、都市住民、企業など幅広い森林づくりへの参画、こういった取り組みを総合的に推進するために、美しい森林づくり推進国民運動を展開しているところでございます。

 先生御指摘のとおり、これらの取り組みを進めるに当たりましては、関係省庁間の連携が重要というふうに考えてございまして、二月の二十三日に官房長官主催の関係閣僚会合が設置をされまして、運動の基本方針が了承されたところでございます。そして、三月二十九日には関係省庁の局長級から成る連絡会議が設置をされまして、公共事業等における木材利用、森林環境教育への支援、森林整備における雇用対策、こういったところの連携を各省が具体的に取り組んでいくというのを取りまとめたところでございまして、今後政府一体となった取り組みに向けた体制の整備を図ってまいりたいと思っております。

古川(禎)委員 ありがとうございました。

 関係省庁、公共事業や環境教育、雇用ということで幅広く連携をとっていただくということですが、さっき申しました電力が山の水力エネルギーを源に発するということを見ますと、やはりエネルギー行政、エネ庁なんか、こういうところも巻き込んでおく必要があるのではないか。国民みんなで山を大事に思うということであれば、電力会社なんかも巻き込んで、国民を挙げてという視点も大事ではないかなと私は申し添えておきたいと思います。

 さて、私、九州でございますが、地元の仲間たちと山に木を植えております。私どものふるさと南九州は本来の自然植生がシイ、カシ、タブ、クス、こういう樹種でございまして、これを山に植えます。そうしますと、植えて十年ほどたちますと沢ができてまいります。

 私の地元の林業関係者なんかにお話を聞きますと、大臣は熊本、私は宮崎でお隣ですから恐らくそうではないかと思うんですが、正五九という言葉がございます。山の神様に対して敬う心、感謝の気持ちを込めて使う言葉なんですが、正五九。ショウは正月の正、ゴは五月の五、クは九月の九、正五九です。これは、山の神様が五月に山からおりてきて田んぼの神様になるんです。そして、田んぼの神様が九月にまた山に帰るという言い伝えがありまして、正五九というふうになっております。要するに、山のおかげで田んぼができるという先人の教えだと思うんですね。

 このように、エネルギー資源ということに着目して山を考えたときに、やはり多様な森林、東山魁夷の絵のように杉がだあっと並んでいるばかりではなくて、多様な樹種の森林というものが大事かなと思っておりまして、人工林の育成、そして木材の利活用というのももちろん大事ですが、そのような郷土の樹種、自然植生に着目した樹種というものの育林も大事だと思っております。

 そのような多様な森林づくりに向けた取り組みについてお尋ねしたいと思います。

    〔金子(恭)委員長代理退席、委員長着席〕

辻政府参考人 先ほどの各省連携のところで、今先生お話がございましたけれども、経済産業省とはエネルギー分野における木材利用というのを一緒にやっていこうということになってございますので、申し上げます。

 今の広葉樹林の話でございますけれども、昨年九月に閣議決定された森林・林業基本計画におきましては、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるということで、百年先を見据えて、広葉樹林化あるいは針広混交林化等の多様で健全な森林整備を推進していくということにいたしているところでございます。

 また、美しい森林づくり推進国民運動におきましても、運動の目標の一つといたしまして多様な森林づくりというのを掲げてございまして、都市住民、企業等の幅広い参画により、整備を進めていくことといたしているところでございます。

 このため、森林整備事業におきまして、人工林の抜き切り、いわゆる間伐に似たようなものでございますけれども、それとその後に広葉樹を植栽していくということに対しまして助成を行っているとともに、森林ボランティア団体、これは最近では二千団体ぐらいになっているわけでございますけれども、森林ボランティア団体、企業等が行う広葉樹の植栽などへの支援の取り組みを行っているところでございます。

 今後とも、美しい森林づくりに向け、広葉樹林化、針広混交林化など、多様で健全な森林整備の取り組みを進めてまいりたいと思います。

古川(禎)委員 ありがとうございました。

 今、針広混交林をつくるために抜き切りをして広葉樹を植栽するということでしたが、やはり実際植えて後の下刈り、何年かしなければなりません。これが大変大変だなと思っておりまして、長官、間伐をするときに強目の間伐をしてそのまま放置しておけば自然と自然の植生がまた戻ってくるのではないかということも聞いたことがあります。この強目の間伐ということも勉強していきたいと思っておりますので、また御指導をよろしくお願いいたします。

 山を守って山を育てるためには、やはり消費者のお金を川上に還流することが大事だと思っております。消費者対策、これが大事だと思っておりますが、この点もお尋ねいたします。

辻政府参考人 木材利用拡大のための消費者対策といたしまして、平成十七年度から国産材利用に係る普及啓発活動を強化いたしまして、国民運動として木づかい運動の取り組みを行っているところでございます。

 その中で、十月を木づかい推進月間といたしまして、NPO、企業、学識経験者、マスコミなどと幅広く連携したシンポジウムの開催、政府広報の掲載、ポスターの配布、各種メディアを通じた広報活動などを集中的に行うことによりまして、国産材利用に対する理解や意義について、直接消費者に訴えているところでございます。

 また、現在、政府一体となって美しい森林づくり推進国民運動を展開しておるところでございまして、木づかい運動につきましてもこの取り組みの一環として位置づけ、国産材の利用拡大を進めてまいりたい。

 さらに、地域材需要の大宗を占めます住宅分野での利用推進を図るため、森林所有者、住宅生産者、施主などの関係者が一体となり、住宅に住む者が納得する家づくりを行います、顔の見える木材での家づくりなど、住宅における地域材利用の推進に努めているところであります。

 今後とも、関係省庁、地方公共団体などとも一層の連携の上、地域材利用拡大のための消費者対策を推進してまいりたいと思います。

古川(禎)委員 ありがとうございます。引き続き頑張っていただきたいと思います。

 私、いつもこれを持ち歩いております。これは地元の方が手づくりでつくってくれたヒノキの集成材です。これを持っていますと皆さん声をかけてくださいます、ああ、それいいねと。ということは、やはり日本人というのは、木の文化ですので、木のよさをわかっているんですね。ですから、見た瞬間に、ああ、それいいねと言う方がたくさんいらっしゃいます。個人の木づかい運動ということでちょっと御紹介を申し上げました。

 さて、エネルギーと並びまして二十一世紀の人類の課題といいますのは食料です。エネルギーと食料だと思っています。エタノールブームでトウモロコシが急騰いたしております。冷蔵庫をあけまして、肉、牛乳、卵、チーズからアイスクリームから、中に入っておりますものは、結局全部トウモロコシを食べさせて育てた動物でございます。こういうものがすべて影響を受けるということでございます。

 人間と家畜と自動車がエネルギーを、バイオエタノールを、トウモロコシを奪い合う、穀物を奪い合うということでして、これはもう大変な時代になったなというふうに感じております。また、大豆の作付もそのあおりを受けて作付が減っているということで、日本の食卓にも影響が出ておるというふうに聞いております。

 国連のIPCC、気候変動に関する政府間パネルの作業部会が報告書を発表しまして、地球温暖化が水不足や深刻な飢餓を引き起こすと警告をしております。

 もう申し上げるまでもなく、オーストラリアの干ばつ、小麦六割減です。爆食の中国、中国の北半分は文字どおり干上がろうとしていまして、黄河も断流をしておる。インドもあるいはアメリカの南部の大平原も地下水が著しく低下をしておる。こういう話はたくさん聞いておるところでございます。身近なところでも、私、南九州ですけれども、この四年にわたりまして、高温障害でお米がまともにとれない状況でございます。こういうふうに、目に見えて食料生産に対する影響というものがあるわけでございます。

 要するに、私は食料危機ということを申し上げたい。食料危機ということは言い過ぎだとしましても、少なくとも食料の需給環境は逼迫をするのは間違いない。今後も劇的に変動していく傾向にあるということははっきり言えるわけですから、将来のこういう変動要因を考慮に入れた上で食料安全保障の議論を深めていくべきではないかなとかねて思っております。

 その際、ちょうどきのうでしたけれども、読売新聞で、気候温暖化に適応するための対応策ということで農林水産省が動いたという記事が出ておりました。大変私は意を強くして頼もしく記事を拝見したんですが、その概要について教えていただきたいと思います。

染政府参考人 先生から、将来の食料需給に変動を与えます影響につきまして、幾つか御指摘がございました。

 エタノール関係でございますが、我が国のバイオ燃料の大幅な生産拡大につきましては、稲わらであるとか間伐材などのセルロース系の原料であるとか、あるいは資源作物を耕作放棄地へ作付するなど、いわゆる食料供給と競合しないような形でそれを実現したいというふうに考えておるところでございます。

 また、御指摘の地球温暖化の影響につきましては、IPCCの第四次評価報告書でも明らかにされておりますように、世界各国の農業生産に大きな影響を及ぼすと指摘されておるところでございます。

 将来の地球の温暖化の進行は、我が国農業におきましても、農作物の収量の低下であるとか、あるいは栽培適地の移動など、我が国の農林水産業においても深刻な影響が懸念されるところでございます。

 それで、御指摘のありました新聞記事でございますが、御指摘のように、昨日、農林水産省におきましては、永岡大臣政務官を本部長といたします地球温暖化・森林吸収源対策推進本部を開催いたしまして、農林水産省における今後の地球温暖化適応策の取り組み方向を決定したところでございます。これが新聞報道の調査報告書となっているものでございます。

 具体的には、まず一つは、現在発生しております、御指摘のありました高温障害などの農作物被害に対する当面の適応策の普及と指導をやっていこう。それと、高温耐性品種の育成であるとか、あるいは生産安定技術の改善などの技術開発を推進しようということ。二点目は、農林水産業への影響に関する精度の高い将来予測。それと、この結果に基づきます適応策の研究の計画的な推進をやっていきましょう。三点目は、やはりこの対策の実効性を上げるためには、気象庁を初めといたしました関係省庁とも十分連携をする必要がありますし、あるいは、地域の研究機関あるいは生産現場との連携も重要でありますので、こういうことをやっていきましょうということを決定したところでございます。今後は、この取り組み方向に沿って必要な対策を推進することとしております。

 さらに、地球温暖化の防止にも貢献するために、森林吸収源対策であるとかバイオマスの利活用の取り組みなども現在推進しているところでございます。

 このような農林水産省における地球温暖化の適応策と防止策、これをあわせまして、昨日決定いたしました取り組み方向に沿いましてさらに具体化した内容を盛り込みまして、農林水産省における地球温暖化対策の加速化の方針というものをことしの七月には策定する予定でございます。これが新聞では行動計画と書いてございました。

古川(禎)委員 ありがとうございます。

 適地適作それから品種改良ということだと思いますが、お話を伺っておりまして、もう一つ踏み込んでいただきたいなと思いましたのは、先ほど申しましたように、トウモロコシが高騰したり、あるいは大豆の供給が減ったりするわけです。そういう食料の国際供給環境がこれから劇的に変わるだろう。日本は食料の輸入が多いわけですから、世界の穀物生産がどうなっておるのか、相場がどうなっておるのかということも多大な影響を与えると思われます。

 したがいまして、その品種あるいは生産の仕方ということのみならず、日本人の食料安全保障という観点からも、食料事情、食料環境、こういうものもあわせて、取り組みの中で織り込んでやっていただければなおいいかなというふうに要望を申し上げておきます。

 それから、もう一つ、食料という観点とまたちょっとずれますけれども、昨年私の地元で大雨が降りました。えびのの水害と言われるものですが、二日三日で千三百ミリの雨が降っております。ふろおけ二杯分の雨がもう滝のように降るわけで、これはもう大変な時代が来たなと。昔、小学校のころの教科書に、日本は温帯気候ですと習ったんですけれども、私たちのふるさと九州はもう亜熱帯になっておるんじゃないかなという気がいたしております。IPCCの報告を見ましても、将来、風速八十メーター、九十メーターというカトリーナ級の台風が列島を頻繁に襲うだろうということも言われておりまして、この災害という問題が大変僕は心配と思っております。

 日本の山と農地が洪水防止機能、保水機能を持っておりまして、これがどこまで耐え得るのだろうかということを心配しておるんですが、聞きますと、山の保水力というのはもう大変なものですけれども、農地も、農地であっても、日本全国の多目的ダムや治水ダム、この総量を合わせたものよりも大きな洪水抑止機能を有しておるということでございまして、改めて、この山や農地の洪水抑止機能、保水機能というものを大事に見直すべきではないかなというふうに感じております。

 この保水機能保持という観点からの政府のお取り組みをお尋ねしたいと思います。

辻政府参考人 先生の御指摘のように、森林や農地は、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全等の公益的機能を有しておるわけでございまして、特に保水機能を初めとする水源涵養機能につきましては、水資源の貯留あるいは洪水の緩和等を通じて、その重要性が認識されてきたところでございます。

 一方で、先ほど先生の御指摘にもございましたように、近年、多雨年と少雨年の降水量差が拡大傾向にあることから地域的な洪水やあるいは渇水が発生しやすい状況にございます。また、本年二月に公表されました気候変動に関する政府間パネルの作業部会の将来予測では、地球温暖化によりほとんどの地域における大雨の頻度は引き続き増加するというふうにされているところでございます。

 このため、森林の有する水源涵養機能等の維持、増進を図る観点から、荒廃地や荒廃森林等の復旧整備を行う治山事業、造林や間伐など適切な森林の整備を推進するための森林整備事業等を推進するとともに、農地につきましても、農業生産活動を通じて洪水防止機能、地下水涵養機能等を発揮しており、担い手の育成や農業基盤の整備、さらに、平成十九年度から、農地、水、環境保全向上対策等の推進を通じて、これらの機能が適切に維持、保全されるように努めているところでございます。

 今後とも、水源涵養機能を初めとする森林や農地の公益的機能の発揮に向け、これらの施策の積極的な推進に努めてまいりたいと思います。

古川(禎)委員 ありがとうございました。

 今、経済財政諮問会議ですとか規制改革・民間開放推進会議などで農業についてさまざまな議論がなされて、それが発信されておりますけれども、私、そういう内容を聞いておりまして、例えば高齢化だとか耕作放棄地だとか、今の状況だけを見て、それを前提として立論しておるにすぎないのではないかというふうに思っています。

 今申し上げたように、これから劇的に食料環境が変わってきたり、災害、気候温暖化ということがあるわけですから、そういうことを踏まえて、なおかつ食料安全保障そして国土保全という観点をもって議論がなされるべきだと私は思っております。特に、今、市場原理という物差しに余りにも偏り過ぎて、これで農という営み、農林水産という営み、国土というもの、こういうものをばっさりやろうという考え方に大変危機感を私は持っております。

 メキシコが北米自由貿易協定、NAFTAを結んだ結果、主食のトウモロコシを大幅に減らしました。そして、今、トウモロコシが急騰しておってえらい目に遭っておる。これは市場のなせるわざです。市場は困った人に対して手を差し伸べてくれるわけではありませんから、そこをよく考えておかなければならない。そういうものをきちんと踏まえた上での議論をこの委員会で重ねていきたいというふうに思っております。

 私たちは、市場原理という単純な物差しよりも、もっと文明的にすぐれた物差しを持っていると思っています。GDPだとか貿易収支だとか投資効果だとか、そういうものだけではなくて、もっと文化を含めた総合的な幸福度といいますか、安定度というか、国の格といいますか、こういうもっと文明的な物差しを日本こそが持っておるのでありまして、農林漁業というものをこういう物差しでもってしっかり議論し、守っていかなきゃならぬということを強く申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、丹羽秀樹君。

丹羽(秀)委員 おはようございます。自由民主党の丹羽秀樹でございます。

 本日は、質問のお時間をいただいたことを、委員長初め理事の皆様方に心から感謝申し上げます。

 実は、昨年、私は、経済産業委員会の方において、北朝鮮に対する我が国の経済制裁措置について御質問させていただいた経緯もございますが、先日、山口県の下関港を舞台にいたしました北朝鮮産アサリの不正輸入事件が発生いたしております。昨年十月の北朝鮮からの輸入全面禁止措置発動以来初の事件でございますが、もちろん、この問題に関しましては、輸入輸出の件もありますので、各省庁の連携や管轄があるわけでございますが、農林水産省の対応についてお聞かせいただきたいと思います。

白須政府参考人 ただいまの北朝鮮産のアサリの関係でございます。

 委員からもお話がございましたとおり、アサリを初めといたしまして、水産物、かつて北朝鮮から日本への主要な輸出品目であったわけでございまして、その輸入は、御案内のとおり、昨年十月から禁止をいたしているところでございまして、この制裁措置を実効あらしめるというためにも、迂回輸入というものは防止をしていくということが大変重要な課題であるというふうに私ども認識をいたしているわけでございます。

 そこで、水産庁といたしましては、もう今御案内のとおりで、まず通関時の段階におきまして、税関で原産地の確認をする、そういうことになっているわけでございますが、これに関連をいたしまして、対北朝鮮の経済制裁措置が発動いたしました昨年の十月と、それから、この措置がこの四月に延長されたわけでございますが、この四月に、輸入の関係の団体、あるいはまた食品の製造、加工、そして外食産業、こういった関係団体に対しまして、北朝鮮産と疑われる農林水産品、こういうものを取り扱うことがないように、発注の相手先から情報入手をいたしまして、原産地の確認、こういうものを徹底するということにつきまして、強く協力を要請いたしているわけでございます。

 また、その後、税関の部局、そういった関係のところからも、これまで北朝鮮から輸入をされておりました農林水産物につきましての、これが周辺国からどういうふうに輸入をされておるかといったような、そういう情報につきましても、私どもとしても積極的に収集をいたしまして、これが国内の需給動向にどういうふうな影響を与えておるかといったようなことをしっかりと押さえるという意味で注視をいたしているわけでございます。

 また、さらに、流通段階におきましても、北朝鮮からの輸入が大変に多かったアサリでございますとかあるいはマツタケ、そういった主要の七品目につきまして、昨年の八月からでございますが、これはしっかりと表示がなされているかどうか、そういった原産地表示に関します監視、指導ということにつきましても徹底を図っているわけでございます。

 いずれにしましても、この関係につきましては、今後とも、私ども、委員からもお話しのとおり、税関なりなんなり、いろいろなところも関係がございますので、そういう関係機関とも連携をしながら、第三国を介しました北朝鮮産品の迂回輸入防止ということで、事業者への指導の徹底、そして輸入の農林水産物の原産地表示の適正化ということで、しっかりと努めてまいりたいと考えている次第でございます。

丹羽(秀)委員 白須長官、ありがとうございます。

 今回の事件、農林水産省だけではなくて、いろいろな各省庁が連携しないとこれは未然に防げないような事件だと思っております。また、我々の食の安心、安全、私もおすし屋さんなんかに行ってアサリ汁を頼むと、これは大丈夫かななんてたまに思うようなことがあります。ぜひとも、そういったことが消費者にとってないような、消費者が安心して食べられる、そういった流通経路、また輸入経路をはっきりとしていただきたいと思っております。

 次に、農業に及ぼす環境の問題についてお尋ねしたいと思います。

 現在、IPCC、気候変動に関する政府間パネル等でさまざまな議論が環境問題についてなされております。このIPCCに参加している省庁は、環境省、経済産業省、気象庁とございます。しかし、気象の影響を一番受けやすい産業は私は実は農業ではないかと確信いたしております。まさに、農業というのは自然との闘いであると思っています。このIPCCに関しましても、ぜひ今後、農林水産省が中心となって、各省庁との連携を強化するという役割を担う必要があると思っていますが、その辺どのようにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。

山田政府参考人 ただいま、気候の変動、IPCCの関係について、それと関連して、特に生産対策を担うという農林水産省の役割についてのお尋ねだったと思います。

 委員御指摘がありましたように、気候変動の農業生産への影響、また、その対策については、農林水産省としても、今後の農業政策を推進する上で極めて重要な課題と考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、まず、現状をしっかり把握するため、生産現場における高温等の影響につきまして全国調査を実施しました。水稲につきましては昨年八月、野菜、果樹等の農産物については本年四月に取りまとめたところでございます。この結果、全国各地において、水稲の高温障害、あるいは果実の色がつかない、着色不良といいますが、あるいは病害虫の多発等が確認されたところでございます。

 また、将来予測につきましても、地球温暖化が我が国の農林水産業に与える影響につきまして、農林水産省所管の独立行政法人であります試験研究機関においてシミュレーションをしたところでございます。この結果、温暖化が一層進行し、今後、平均温度が三度上昇したというような仮定で見ますと、東北以南における水稲の収量の減少や、果実の栽培適地が大幅に移動するというようなことが予測されたところでございます。

 農林水産省といたしましては、これまでも、水稲の高温障害に対する技術指導や高温に強い品種の導入を推進するなど、生産現場における課題に応じた生産対策を講じてきたところですが、これに加えまして、地球温暖化が我が国農業に深刻な影響を及ぼす、委員も御指摘がありましたような、そういう懸念があるわけでございますので、農林水産省では、昨年十月に、永岡大臣政務官を本部長とします地球温暖化・森林吸収源対策推進本部を設置いたしまして、省を挙げて対応を検討しているという状況にございます。

 昨日も推進本部が開催されたところでございます。推進本部におきましては、高温障害等に対する適応策の普及指導や、新品種の育成、生産安定技術の開発、さらには、精度の高い影響評価の実施とこれに基づく研究の計画的な推進等について積極的に取り組むことを決定したところでございます。

 本年の六月には農産物の品目ごとの適応策等を取りまとめることとしておりますし、七月には推進本部において具体的な内容を盛り込んだ省全体の取り組み方針を取りまとめるということで、農林水産省としても、地球温暖化の問題に積極的に取り組んでいきたいと考えております。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 先ほども申しましたが、農業というのは環境との闘いだ、自然との闘いだと本当に思っております。

 そういった面で、例えば、これは長期的な視野で見なきゃいけないんですけれども、あしたこの地域が暖かくなるから、こういった作物に変えろと言われても、土壌の関係もありますし、なかなかこれは変えられるものじゃないと思っています。

 先日も地球シミュレーターの方で地球温暖化の状況を見てきた中で、この地球温暖化がどんどん進んでいくと、農作物というのが、我が日本で食べられる農産品やとれる農産品が随分形態が変わってくると思います。

 ぜひとも、今後、IPCCにおいても、農林水産省の方ももっと積極的に参加していただいて、御意見を言っていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 次に、農業の株式会社参入についてお尋ねしたいと思います。

 株式会社、非営利組織、NPOの農業参入については、二〇〇三年春から特区で認められておりますが、二〇〇五年の九月から全国展開がなされました。市町村は、遊休農地の解消などをメーンの目的としまして、企業が参入できるような区域を設定したり、農地の賃借は企業と農家が直接契約するのではなくて、市町村が介入するというさまざまな施策が行われておりますが、実際、株式会社などの農業参入がまだ想定より進んでいないのではないかというような状況であると思っております。また、株式会社が農業に参入してきても、なかなか利益が得られないというような状況も続いておりますが、そういった面を政府はどのようにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。

高橋政府参考人 平成十五年度から始まりました、いわゆる農地のリース方式によります農業に参入いたしました株式会社などの数につきましては、本年三月現在で二百六法人でございます。この半年間で三十三法人、二割の増加ということでございますので、平成十五年度から開始ということもありますので、徐々にふえてきている状況にございます。

 このような農業参入法人の農業部門の収支状況でございますけれども、参入直後ということもございますので、赤字となっているものが半数を占めております。ただ一方で、既に黒字を達成しているものも一割程度あるほかに、現在は赤字でありましても、今後、営農、経営をきちんとやっていくということで当初目標を達成できると見込んでおります法人も三割強というふうになっております。

 私ども農林水産省といたしましては、このような企業等によります農業参入につきましては、各地域で耕作放棄地の解消、発生防止、あるいは地域活性化への貢献等の役割を果たしているということで、今後とも、地域に貢献いたします農業経営に意欲的な企業等の参入の促進を図ってまいりたいと考えております。

 政府全体の取り組みといたしましても、内閣総理大臣を本部長といたします食料・農業・農村政策推進本部で決定しております二十一世紀新農政二〇〇六あるいは同二〇〇七におきまして、このような企業等の農業参入について、二十二年度末までに五百法人というような目標を掲げておるところでございます。

 私ども農林水産省といたしましては、このような目標達成のために、本年度から、企業等の農業参入の円滑化及び参入企業におけます地域農業の担い手としての経営発展を支援するという観点から、企業等が必要としております農地情報の提供を初めといたしまして、地域と企業の結びつきの推進でございますとか、あるいは参入企業に対しまして制度資金を融資する、さらには生産技術の支援、このような総合的な支援を行います企業参入支援総合対策を新たに実施するということといたしております。このような形で、企業等の参入の促進について図ってまいりたいと考えているところでございます。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 規制緩和以来、公共事業の減少を補う、さまざまな建設会社の参入や、自社で使う食材をつくる食品会社などの農業参入がふえてきておりますが、まだまだ赤字だというところが随分多うございますので、経営を軌道に乗せるには随分時間がかかると思います。

 また、小生の家も農業をやっておりますが、農業を行う上では、赤字になったからやめるというのは、これは本当に責任のない、そういった行動ではなくて、農業に従事しているんだという高貴な使命感を持たなければ、農業というのはなかなか難しいことだと思っております。政府の今後の対応に期待いたしますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 大臣がお戻りになられましたので、大臣の方に御質問させていただきたいと思います。

 WTO、日豪EPAの問題について御質問させていただきます。

 現在、世界貿易機関の、WTO交渉の年内妥結を目指す動きが活発化いたしてきております。先日の大臣が御出席されたインドのニューデリーで開催されたG6の閣僚会合においても、二〇〇七年末をめどに交渉を終結させていくことにつなげていくということを御確認されておりますし、四月末か五月上旬にはファルコナー議長が議長ペーパーを提示するという話も聞いております。昨年のファルコナーの議長ペーパーには、各国の要望や希望が羅列してあるだけというような内容でございましたが、今回の議長ペーパーというのは、多分もう少し一歩踏み込んだ内容になるのではないかと思われております。

 我が国が加入しているグループのG10といたしましては、今後に向かうスタンスを議論して、G10としてしっかりとした具体的な方向性を打ち出していく必要があると大臣もおっしゃられております。

 今月の二十三日、二十四日、豪州のキャンベラで開催された日豪EPAにおいても、第一回の会合では、我が国の農業の重要性を踏まえて交渉するという旨を伝えただけで、今後の交渉手続や手順の確認がなされただけであって、具体的な協議には入らず、再来月の七月、次回開催予定という話も聞いております。

 大臣にお聞きしたいのは、WTOと日豪EPA、これはどちらも重要だと思っておりますが、大臣はその辺どうお考えか、大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

松岡国務大臣 丹羽先生が今情勢も含めて御指摘をいただきまして、まことにそのとおりでございます。WTO交渉、これは国際的な貿易の枠組み、そしてまた、いろいろな分野の貿易の取り決めでございます。国際的な全体の基準をどうつくっていくか、まさにグローバルの観点からの国際貿易の条約ということになるわけでございます。

 他方、それに対しましてEPAというのは、WTOを補完するような形で、二国間なり三国間なり、または地域間、こんなような形で行われるわけでありまして、また最近は、いわゆる二国間や地域間のEPAというのが非常に多く取り上げられ進められている、こういう関係にあると思っておりますし、基本的にはWTOがあって、それを補完する形でこのEPA、FTAというものがある、このような位置づけだ、このように認識をいたしております。

 いずれにいたしましても、どちらにつきましても、日本は貿易立国でございますから、これはしっかりと交渉に臨んでいく。

 また一方で、日本の農業という立場からは、これは多様な農業の共存、こういったことを日本は基本的な方向として強く打ち出し、交渉に臨んでいるわけでございまして、しっかりと農業の観点からも、日本農業の将来を見据えながら、振興、発展が図っていけるような、そういうポジションを獲得していく、こういった形で全力を尽くして臨みたい、こう思っているところでございます。

 この連休にもG10の会合も、これは日本はG10の代表として臨んでおりますので、G10の会合も開きながら、いよいよ本格化してまいりますWTO交渉の場に臨むことができますように、しっかりとした新たなスタンスも構築していかなければならない。そういうことで、この連休にもそのような取り組みをしっかりとやってまいる、そういう所存でございます。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 大臣がおっしゃること、本当に私も同感でございます。今後、貿易交渉の行き方次第では、我が国の食料安定供給や農業のあり方だけにとどまらず、我が日本の国の形、日本人の生き方そのものに大きくかかわってくる問題だと考えております。地域経済の柱であります農業や食品産業が深刻な打撃を受けて、地域社会の崩壊や農業の持つ多面的な機能の低下にもつながっていくと思っています。

 例えば、メキシコでございますが、北米自由貿易協定で主食のトウモロコシの自給率を下げたために、現在のトウモロコシの価格高騰に非常に悲鳴を上げている。日本も、そういったことが絶対ないような状況にしなきゃいけない。守るところはしっかり守って、攻めるところは攻めなきゃいけないと考えております。

 WTO、日豪EPA、これは本当に、車輪の両軸ではございませんが、きちんと同時にうまく進めていかないと、WTOなんかが、アメリカとEUが水面下で交渉して日本を出し抜いたりしますと、本当に今後日本の農業に対して手痛い打撃になってくると思いますので、大臣、その辺は何とぞよろしくお願いいたします。

 大臣の、WTOの今後に対する、今回、WTOだけで結構でございます、WTOの展開や方針ですね、もちろん、これは今後WTOの交渉に参加するわけですから、言えないこともあろうかと思いますが、できる範囲で結構でございますので、お聞かせいただきたいと思います。

松岡国務大臣 お答えいたしますが、その前に、実は、丹羽先生のおじいさん、丹羽兵助先生ですが、自民党のまさに農政の、ドンと言ってはちょっと言い方が語弊がありますが、一番の中心でございまして、私もちょうど役所時代、随分お世話になりました。本当にその後を継いででありますから、先生も農政に対する思いは人一倍なんだろうと思いますが、そのような御認識で今御質問いただいていると思っております。

 そこで、WTOにどう臨むかでありますが、恐らくあしたごろになると思うんですが、ファルコナー議長がペーパーを出すんだろうと思います。どの程度のものが出てくるか、なかなか予測はつきがたいわけでありますが、先生も御指摘のように、前のペーパーよりも踏み込んでくるのかなと。

 しかし、いろいろな各国の主張がまだ入り乱れておりますから、なかなかお互い収れんをしておりませんので、そういう中でどこまで出し切るのかな、こういう思いもございますが、いずれにしても、これは大きな一つの要素として私は注視をしていかなければならない、こう思っております。

 そこで、G4という一つの場面がございまして、これはアメリカ、EU、それからインド、ブラジル、ここがG4ということでずっとやっておるわけでありまして、先生御指摘のように、EUとアメリカが手を組んでと、過去にも何度もあったわけでありまして、そういったことで日本が割を食わないようにということについては、これはもう重々私どもはそれを腹に入れてやらなきゃならない。したがって、EUとの関係をどうやっていくか。

 それから先どういうやりとりをしているかということについては言いがたいところもあるのでありますが、先般もインドでも、私も、マンデルソンとは、しっかり突っ込んでお互いの関係も話し合ってまいりましたし、またインドのナート大臣とは、従来からの関係、かかわりもありまして、これもしっかり話してまいりましたし、またシュワブ代表とも、いろいろアメリカとの関係、日米関係でもありますが、しっかり話してまいりましたし、それからブラジルのアモリム大臣、この方もG20の代表でございますけれども、やはりそれなりの立場と強さを持って臨んでおられる、こことも日本とブラジルの関係、お互いそれぞれの立場を主張もし合いながらも、どう連携を組むか、提携ができるかといったことなども含めまして、もちろん、オーストラリアのトラス大臣とも事あるごとにお会いをいたしておりますが、私どもも油断なく、注意深く、しっかりと相手との関係もはかりながら、そして日本の本来の目的といたしております、目標といたしておりますところがしっかりと確保、獲得、貫くことができるように臨んでまいりたい。

 ちょっと中身のことにつきましては、交渉事でありますので控えさせていただきますが、丹羽先生の意のある御指摘はしっかりと受けとめてやってまいりたい、このように思っております。

丹羽(秀)委員 大臣、ありがとうございます。

 祖父の丹羽兵助の名前を出されると、その後何も言えなくなってしまうので、質問の残り時間をどうしようかと思ったんですが、質問は考えてございますので、続けさせていただきたいと思います。

 大臣、WTOの方、ぜひ頑張っていただきたいと思っております。

 先日の新聞に載った米国産輸入牛肉のチェック体制について、我が日本の国が主張する対日輸出食肉処理施設への査察を米国が受け入れるということは、次のステップに進むためのまず第一歩だと思って、私は非常にこれは評価すべき点もあるなと思っております。

 いろいろ批判される方もいらっしゃいますが、一方で、貿易条件をめぐる日米の主張は平行線であるというきちんとした認識を大臣はお持ちですので、食の安心と安全に配慮された考えだと思っております。

 これは、国際獣疫事務局の総会が今度五月の末にフランスで開催され、その基準を満たしてからの取り組みになってまいりますが、今後の米国産牛肉輸入の展開について、大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

松岡国務大臣 今先生が御指摘なさいました今般のジョハンズ農務長官と私の会談をもとにいたしまして、最終的には両政府間で合意をした。このことにつきましては、私どもは、今日まで、去年の日米共同記者発表というものがございまして、これは六月二十一日にやっております。そして、それを受けまして、七月の二十七日から一月の二十七日までの半年間を検証期間、こういう形でやってきたわけでございます。

 そして、その中にあって、一回目、二回目の査察を行う、これがお互いの合意でございます。もちろん、アメリカはその間、一年に一回の抜き打ち検査を行う、こういったこともお互いの合意事項として位置づけられているわけでありますが、何にいたしましても、この検証期間というプロセスを総括するためには二回目の査察が必要である、こういうことで合意をいたしておったわけでございますから、その査察をずっと求めてまいった。

 しかし、アメリカはアメリカの事情、アメリカのまた考え方で、そこのところがなかなかすんなりとは受け入れてくれずに暗礁に乗り上げておった、こういう事態だったわけでありますけれども、そこのところについて、これはやはり何としても、今の検証期間というプロセスを終わるということが、総括をする、そしてその総括の上に立ってこれを評価する、これが大事な一つのプロセスである、こういったことを、アメリカは今回、二回の私とジョハンズさんとの電話会談によって大筋受け入れていただいた。したがって、あとは事務的に整理をして、二十四日の発表となった、こういうことでございます。

 したがって、それ以降のことにつきましては、将来のことでありますから、そのことに関連して私どもが何かを話し合ったということは全くございません。これはお互いの原則で、向こうは向こうの求めを述べますし、こちらはこちらの立場というものをしっかりと踏まえて日本の立場を主張してまいった、こういうことでございます。

 そういうことでございまして、今後どうなるかということにつきましては、まずは査察が終わって、そして、その施設ごとに、安全だという確認ができれば一般検査に戻すということにつきましては、安全なのになおかつ全箱を続けるということは、これはまたアメリカの方としても、それは一般検査に戻すべきということであって、我々も日本の判断としてこのことは応じた、こういうことでございます。

 しかし、それはあくまでも前提つきでありまして、安全がきちんと確認される、そしてまたああいう混載がないようなシステムの機能改善もアメリカは行っておる、したがって、その改善があって、しっかりと確認されれば、我々はそれを受け入れていく、こういうことでございますので、それ以降のことについてはまだ何ら決まっていない、こういうことでございます。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 実は、きょう質問の中で、今後の取り組みの中で、食品安全委員会の方にも、お呼びいたしまして、お尋ねをしようと思ったんですけれども、ちょっと御意見だけ申し上げさせていただきます。

 今後、牛肉が一般的な輸入再開になった場合、ぜひとも食品安全委員会の方々に取り組んでいただきたいのは、科学的な根拠をしっかりと出していただいて、それをまた提示していただいて、消費者の皆さんが安心して食べられる安全な牛肉をアピールしていただきたいと思っております。

 それから、この後またちょっと、我が日本の国の農業の、就農される方の人口についてもお尋ねをしようと思ったんですが、先ほど私が申し上げた、農業というのは非常に高貴な仕事であると考えております。最近の子供なんかに将来何になりたいなんて話を聞きますと、絶対農業をやりたいという子はほとんどいないというのが現状でございますし、もちろん農家の子供なんかも農家をやりたいという子はなかなかいないというのが実情でございます。

 ぜひとも、文部科学省さんもきょうはお呼びいたしておりますが、文部科学省さんの方も、教育の現場として、農業の重要性をもっと全面的にアピールしていただいて、子供たちが将来農家になりたいんだというような、いつか子供たちの夢の職業ランキングの中に農家というのが入るようになれば、我が日本の国の農業というのは将来安泰できると思っておりますので、その辺まで目指してやっていただきたいと思います。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

西川委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。民主党の川内でございます。

 本日は、築地市場の移転問題、今、国民の皆様方の、これは都民に限らず国民的な大変に大きな関心事であるというふうに思いますが、この問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今、自民党の丹羽先生の方からは、米国産牛肉のことについて最後触れられたわけでございますが、食の安心、安全というものについては、再三私も、本委員会でも、また先日の決算行政監視委員会の中でも、松岡大臣にも申し上げさせていただきましたが、米国内における飼料規制の甘さ、サーベイランスのいいかげんさというものは、OIEの科学委員会でも指摘をされている。とにかく特定危険部位入りの肉骨粉を、回り回っていまだに牛が食べているわけですから、交差汚染があるという実態が指摘をされているわけですから、そのような中で、日本としてどのように米国と向き合うのかということについては、よくよくしっかりお考えをいただきたい。

 これは、後ほどまた時間が余れば議論をさせていただきますが、きょうは、築地の問題に集中をして質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、本委員会の先生方も、築地が移転をするのではないかと言われている豊洲、東京ガスの工場の跡地でございますが、これがどんなところかということを、何か汚染されているらしいとか、そういうことは御存じかもしれませんが、詳しく御存じの方がもしかしたらいないかもしれないので、きょうは資料を持ってまいりました。

 資料の二枚目に写真がつけてございます。この写真をごらんいただきますと、煙をもくもくと上げているコンビナート、このコンビナートの跡地が今築地が移転を予定しているところである。この本当のコンビナートの跡に築地を移転させていくという計画を東京都が今進めているところであるということでございます。

 では、ここにどのような汚染物質があったのか。平成十三年の一月に東京ガスがみずから公表をされたわけでございますが、これは非常に粗い調査でございます。

 その中で、シアンという、これは水に溶けると青酸カリになるそうでございますが、環境基準超過数値が四百九十倍、シアンというのは頭痛や呼吸困難を引き起こす。

 砒素、環境基準値の四十九倍、森永砒素ミルク事件とかカレーライスの砒素事件というものがございましたが、発がん性あるいは吐き気を催す。

 ベンゼン、環境基準値の千五百倍、粘性の液体で、血液循環系に作用して障害を及ぼし、白血病とがんを誘発する。再生不良性貧血あるいは急性骨髄性白血病というものを引き起こす。

 六価クロム、これは基準値の十四倍、土中や水中に長くとどまり、容易に減少しない特性を持つ。この六価クロムも発がん性、下痢、腹痛、鼻中隔せん孔、鼻の中の骨に穴があくというのを鼻中隔せん孔というんだそうです。

 こういうものを引き起こす有害物資が、非常に粗い調査でございます、十三年の、まだ国も土壌汚染対策法など持っていないころに、東京都がつくった条例に基づいて調査した、その数値が、非常に粗い調査に基づく数値がこの数値であるということでございます。

 このような土地の上に、国民の台所、大量の生鮮食料品が毎日毎日集積をする中央卸売市場というものを持ってくるということに関して、私たちは十分に慎重に、かつ科学的にこれを検証しなければならないというふうに思います。

 現在、東京都は、東京ガスが対策する部分については終了をした、あるいは終了しつつあるということを言っているわけですが、その東京ガスが対策をしたところから出ている排水、持ってまいりました。

 大臣は五千円の水を飲んでいらっしゃるということでございますけれども、これは排水です。これは、普通の水に見えるでしょう、pHをはかると一〇を超えているんです。(発言する者あり)これは言っていませんでしたか。では、それはおわびいたします。済みません。

 では、今、御許可をいただけますか。ちょっと理事さんたちで。

西川委員長 はい。質問を続けてください。

川内委員 いいですか、委員長。

西川委員長 はい。

川内委員 pHをはかると、これは一〇を超えるんです、このブルーの色ですね。

 普通、水道水というのは大体pHが六から八ぐらいですよね。これは一〇を超えるpHである。導電率という、どのぐらい電気を通すかというのをはかると、これも、普通の水道水というのは百二十とか百五十とかいう数値ですが、二千を超えている。対策をされた土地からもこういうのが出ているんですよ。

 なぜかというと、健全土で覆土しますというふうに言っているわけですが、しかし大臣、法律とか法令とか条例というのは、全部基準がありますよね。例えば、千立米を超えない場合については健全土であるという証明をつけなくてもよろしいということになっている。そういうようなことだと、要するに、小分けにしてどんどん土を覆土していけば、その土が果たして健全土であるという証明はどこにもないわけですね。健全土であると言っているだけで、健全土であるという証明の書類はどこにもないという形で覆土が行われていく。そうすると、そういうところから出ている水はこういう水であるということになるわけです。

 環境省、このpHが一〇を超える水あるいは導電率が二千を超えている水というものが果たしてどのような水なのかということを、ちょっとこの前も委員会でお聞きしているので、簡単に御説明いただけますか。

寺田政府参考人 お答えを申し上げます。

 水質汚濁防止法上は、pHというのは生活環境項目で規制対象になっておりまして、その際、ただいま御指摘のpH一一を超える水というのは規制値を超えるものでございます。

 ただし、今回御指摘の豊洲については、特定施設はございませんので、したがって、水質汚濁防止法の規制対象ではないという関係にございます。

川内委員 特定施設がないというのはそのとおりですが、特定施設があったわけですね。あったんです、現在はないという話で、そこからこういう水が出ているということでございます。規制値を超えている。要するに、健全土で覆土したといってもこういう状況であるということでございます。

 環境省に幾つか事実確認をさせていただきますが、この築地市場の移転先とされている江東区豊洲の東京ガス工場跡地は、土壌汚染対策法の附則三条により、この法律の適用を免れているわけでございますが、仮にこの土壌汚染対策法が適用されるとすれば、現在の東京都の対策が終了したとしても、土壌汚染対策法による特定有害物質に汚染されている指定区域、すなわち汚染土壌地帯であるということは解除できないということを確認していただけますか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 土壌汚染対策法では、対策の一つとして、汚染物質の拡散を防ぐという意味で封じ込めというようなことも想定しております。人の健康被害を防止するために対策がとられましても、当該地域内になお汚染物質が残存する場合には、当該土地を管理し続ける必要がございます。したがいまして、そういった場合には、土地の管理を引き続き行うための指定区域の存続ということになっております。

 したがいまして、仮に豊洲が土壌汚染対策法の対象となった場合でも、対策が行われた後においても指定基準を超える汚染土壌が残っている場合には指定区域は解除されません。

川内委員 大臣、副大臣、要するに、豊洲は汚染土壌。土壌汚染対策法が適用されれば、附則があるために適用されていないだけの話で、この附則というのは経過措置ですから、なくてもよかったんですよ。適用されれば、土壌汚染の残った地域ということですよ、指定区域になるんです。その上に中央卸売市場が来るということになるわけですね。

 では、さらに確認をさせていただきますが、皆さんのお手元にお配りをした一枚目の資料をごらんいただきたいと思います。

 このA4判横書きの図は、環境省が、土壌汚染対策法の議論をした審議会の前身であった検討会に提出をした資料である。「環境基準の設定に当たって考慮された曝露経路」をわかりやすく図で示したものであります。

 これは環境省が作成した資料であるということをまず確認してください。

寺田政府参考人 間違いございません。

川内委員 では、大臣、この図をよく見ていただきたいんですけれども、一枚目、この図の真ん中あたりに、土壌から地下水、飲料水、人体の中の経口摂取というところがありますね。このルートだけが太線なんです。土壌汚染対策法というのは、この地下水ルートだけを考慮して環境基準を設定しているんです。

 したがって、例えば一番上のライン、土壌から飛散、揮散によって大気に有害物質が吸収をされ、それが人体にどのような影響を与えるのか。

 さらには、下のラインを見てください。土壌から表流水とか土壌微生物とか、あるいは大気から下におりてきて、水産物、農畜産物、それらが加工された食品が経口摂取されたときの人体に対する影響というのは細いラインで描かれています。細いラインで描かれているのはリスクを考慮していないということです。影響を考慮していないということなんですよ。

 環境省に確認をしていただきますが、土壌汚染対策法上は、この環境基準の設定に当たって考慮された暴露経路の中で、大気とか表流水とか土壌微生物によって、水産物、農畜産物を通じての人体に対する影響、いわゆる食の安心、安全という部分は考慮をしていないということを確認してください。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、土壌汚染対策法で具体的に考慮している汚染経路でございますけれども、ただいま御指摘の地下水経由の飲用というものと、もう一つ……(川内委員「土壌そのものですね、ごめんなさい、間違えました、土壌そのものもある」と呼ぶ)土壌そのものの摂取という二経路を想定しております。

 中央環境審議会等の議論でも、この二つの主要な経路による影響を適切に管理し対応するということは、他の経路による人の健康影響の防止にもつながるというようなことで理解をしております。

 ただし、具体的に考慮しております経路はこの二つであるということは、そのとおりでございます。

川内委員 具体的に考慮している経路は土壌そのものと地下水であると。具体的に考慮されていない、考慮していない経路について申し上げれば、水産物、農畜産物を通じて、あるいは食品を通じての人の健康影響については、土壌汚染対策法はそのリスクを考慮していないということを、具体的に考慮はしていないということを答弁していただけますか。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 直接摂取及び地下水経由の汚染以外の経路につきましては、指定要件その他において考慮はされておりません。

川内委員 しつこいようですけれども、さらに確認をさせていただきますが、結論的に言うならば、土壌汚染対策法は、地下水を飲料水として利用する場合は機能するが、食の安心、安全を担保してはいない、担保する法律ではないということを確認させてください。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 二つの汚染経路を遮断するということによりまして、その限りにおいて、他の経路からの汚染についてもそれなりの防除、健康被害の予防という働きはすると思っております。

 ただし、以前も御答弁申し上げたかと思いますけれども、食の安全というような幅広い課題、あるいは卸売市場というような特殊な業態というものを念頭に置いて具体的に運用されているものではございませんから、一〇〇%食の安全を担保できるかといったら、そうではないということだろうと考えております。

川内委員 ここは環境省の方にもあいまいにしていただきたくないのですが、環境基準の設定に当たって考慮をしていない経路について、まあ大丈夫だと思いますが一〇〇%ではありませんとか、そういう言い方ではなくて、科学的に、客観的に、この暴露経路を考慮していないわけですから、土壌汚染対策法は食の安心、安全を担保する法律ではないのだということをはっきりとおっしゃっていただかなければいけないというふうに思いますが、いかがですか。

寺田政府参考人 二つの経路以外の、御指摘になりました他の経路による汚染については、担保はしておりません。

川内委員 それでは、この土壌汚染対策法よりもさらに基準の緩い、平成十二年に東京都が制定をした都民の健康と安全を確保する環境に関する条例、いわゆる環境確保条例というものがありますが、これも土壌汚染対策法と全く同じことであり、都民の食の安心、安全を担保するものではないということを環境省として評価していただけますか。

寺田政府参考人 東京都の条例についてのお尋ねでございます。

 私ども、東京都の条例について所管をしているわけではございませんので、いわゆる有権解釈という意味ではございません。その前提で、私どもの受けとめ方ということで御答弁させていただきますれば、東京都の条例も土壌汚染対策法と同じ構造を持っていると理解しております。

川内委員 ここまでの議論で大臣、副大臣にも御理解をいただけたと思いますが、環境関係の条例、法律というのは食の安心、安全を担保するものではない。

 それでは、この築地市場が豊洲に移転したときに、汚染土壌が残っているわけですから、だれが食の安心、安全というものを担保するのか、科学的にそれを評価するのかということになるわけでございます。

 そこで、農林水産省は卸売市場法という法律を持っております。ここで、卸売市場法の中で、中央卸売市場整備計画というものを農水大臣が定めるということになっております。これは農水省、そういうことでよろしいか、そしてまた、どのようにしてこの中央卸売市場整備計画というものを定めるのかということを説明いただけますか。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、中央卸売市場整備計画は、卸売市場法に基づきまして、農林水産大臣が定めることとされております。

 また、その手続につきましては、やはり卸売市場法に基づきまして、まず食料・農業・農村政策審議会の意見を聞く、それから関係地方公共団体に協議して定めるものとされております。

川内委員 まず食料・農業・農村政策審議会で審議をすると。

 では、その食料・農業・農村政策審議会の何というところで議論をするんでしょうか。

岡島政府参考人 これは、政令に基づきまして、審議会または分科会の設置が認められておりまして、具体的には、食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会というところで審議されております。

川内委員 食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会で議論をされたと。

 では、この築地を豊洲に移転しますということを農水大臣が決定をされたのはいつですか。

岡島政府参考人 平成十七年三月でございます。(川内委員「日にちまで言っていただけますか」と呼ぶ)申しわけございません。中央卸売市場整備計画そのものを策定したのは平成十七年三月三十一日でございます。

川内委員 私がお聞きしているのは、中央卸売市場整備計画が食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会において決定をされた日というふうに理解をいただきたいと思います。

岡島政府参考人 申しわけございませんでした。

 食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会では平成十七年三月十七日に議論されております。

川内委員 その三月十七日、一回だけで決めたんですね。一日だけで決めたんですね。

岡島政府参考人 委員御指摘のとおり、その一日だけでございます。

川内委員 この中央卸売市場整備計画というのは、中央卸売市場整備基本方針にのっとって策定をされるというふうに法律に書いてございます。卸売市場法の第四条、農林水産大臣は、卸売市場の整備を図るための基本方針を定めなければならない。この基本方針に基づいて整備計画が定められるということになるわけです。

 それでは、この基本方針の中に、食の安心、安全という観点が入っていますか。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の卸売市場整備基本方針、これにつきましては、平成十六年十月一日にまず策定したわけでございますけれども、その中において、まず「基本的な考え方」というところで、認識として、消費者の食の安全、安心に対する関心が高まる、そういう中で、卸売市場におけるコールドチェーン、いわゆる低温で物流する方式の確立や品質管理の徹底に対する要請が高まっている、そういう基本的な考え方、そういう認識を書き込んでおります。

川内委員 今御説明をいただいたとおり、大臣、実際に、平成十七年の三月十七日の食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会で、農水省が事務局を務めるわけですが、事務局から委員の先生方にこのように説明をされています。

 「安全・安心問題につきましては、今までの卸売市場法は八十年間、安全・安心という観点は全く軸としてなかったんですが、今回初めてこれを入れました」、安全、安心というものを初めて入れましたと。非常に画期的なことだと評価されております、「卸売市場を通ったものは非常に安全だというようなことが胸を張って言えるような、」というようなことを委員に対して説明をしています。三月十七日ですね。

 では、もう一度農水省の事務方にお聞きをいたしますが、この築地の豊洲移転を中央卸売市場整備計画の中で位置づけた総合食料分科会の議論の中で、築地の豊洲移転に関する食の安心、安全の分野に係る議論というものがありましたでしょうか。

岡島政府参考人 お答えを申し上げます。

 当時の議事録を読みましたけれども、食の安全、安心という観点からの築地市場移転問題についての言及はなかったというふうに承知しております。一方で、物流問題についての質疑ということは記録に残っております。

川内委員 食の安心、安全という分野に係る議論はなされていない。では、そもそも、総合食料分科会の中に、土壌汚染と食の安心、安全のかかわりについての科学的知見を有する委員というものがいらっしゃらなかったという理解でよろしいでしょうか。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会の委員につきましては、国の審議会として、卸売市場法を初めとする関係法律により、審議会の権限に属せられる事項について審議していただくということで、農林水産大臣が任命しているところでございます。

 具体的には、今委員御指摘のとおり、平成十七年三月当時の総合食料分科会委員十七名の中に、土壌汚染と卸売市場との関係に関する専門家はいらっしゃっていなかったということでございます。

川内委員 今までの議論で明らかになったとおり、環境関係の法律や条例は、食の安心、安全を担保するものではない。その中で、では今度は、食の安心、安全を基本方針とする卸売市場法が定める中央卸売市場整備計画を決定するに当たって、食の安心、安全が議論をされたのかというと、されていない。そもそも、その専門家がいなかったということが明らかになったわけでございます。

 私は、この整備計画の決定は、土壌汚染と食の安心、安全のかかわりについて議論がなされていなかったわけですから、極めて議論が不十分ではなかったのかというふうに思いますが、まず事務方の方から、この総合食料分科会、しかも一回だけで決めているわけですから、評価をまずお尋ねさせていただきたいと思います。

岡島政府参考人 まず、私どもの基本認識といたしまして、築地市場の移転予定地に係る土壌汚染対策につきましては、これはまず自治体として環境施策を担われているというお立場、あるいはまた市場の開設者でもあるという二つの立場から、東京都がまず第一義的に責任を持っているというふうに認識しております。

 当時の、築地市場の豊洲移転を盛り込んだ第八次中央卸売市場整備計画を議論した総合食料分科会においては、東京都におかれまして環境規制を十分にクリアした対策を実施するとの説明を受けて、今後十分な土壌汚染対策が講ぜられることを前提として諮問したところでございます。

川内委員 今御説明があったところがまさしく肝でございまして、大臣、卸売市場法第五条三項、「農林水産大臣は、中央卸売市場整備計画を定めようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴くとともに、関係地方公共団体に協議しなければならない。」と書いてありますね。今局長さんが御答弁されたのは、東京都から話をきちんと聞いていたということをおっしゃられたわけですよ。

 では、東京都は何と言っていたかというと、環境規制をクリアした土壌汚染対策をとっているので大丈夫ですというふうに農水省に対して答えていたということは、今御答弁されたわけですね。

 では、その環境規制をクリアしたという言葉が、食の安心、安全を担保する言葉であったのかということが問題になるわけです。環境規制をクリアしたという東京都の言葉が、食の安心、安全を担保するということにつながる言葉であったのか。

 それは、今、前段の議論で環境省さんから御説明があったとおり、環境規制をクリアしたとしても、それは食の安心、安全を担保するものではない。そもそも、そういう暴露経路は考慮されていないのだという説明があったわけですね。

 そうすると、中央卸売市場整備計画、第五条三項の協議というものも不十分であったということになるのではないかというふうに私は思いますが、では、十分であったと思いますか。十分であったとは思いませんと答弁せざるを得ないんじゃないですか、どうですか。

岡島政府参考人 現時点におきまして、御案内のとおり、東京都において、環境影響評価を行っておりますし、またその中で土壌汚染の問題を含めて都民の意見を聞くというような手続を踏んでおられる。それからまた、今般、有害物質、水環境、健康影響などの分野の専門家の意見を聞くというような対応も伺っておりますので、そういったことを注視してまいりたいと思います。

川内委員 東京都は東京都として、おやりになられることをおやりになられるんでしょう。それはそれでいいですよ。私が聞いているのは、農水省として、食の安心、安全を最終的に国民の皆様方に担保していかなければならないお役所としての、その仕事のあり方をお聞きしているわけです。

 平成十七年当時のことですよ、平成十七年三月十七日に中央卸売市場整備計画を決定している。その中で東京都と協議した。東京都からは、環境規制をクリアしているから大丈夫だという説明を受けていた。

 しかし、その環境規制は食の安心、安全を担保するものではないということが論理的に明らかにされているわけですから、私が聞いているのは、この整備計画の策定に当たっての議論が十分だったと思いますかと聞いているわけですから、東京都に任せますというのは答弁にならないんです。

 十分であったのかということを聞いているわけですから、十分だったと答弁するのか、十分ではなかったとお思いになられるのか、どちらかを御答弁いただきたいと思います。

岡島政府参考人 先ほどもお答え申し上げたとおり、まず基本認識としては、これは、環境施策を担われるというお立場、あるいは市場の開設者であるという東京都が第一義的に責任を持たれるということでございます。

 一方で、私どもとしても、当然のことながら、食の安全、安心というのは極めて重要な問題だと考えておりますから、そういった観点から、東京都から逐次お話は伺っているところでございます。

 先生がお尋ねの、当時の十七年の時点での認識としては、私どもとしては、十分であったと当時は認識していたのではないかというふうに考えております。

川内委員 当時は十分であったと認識をしていると。しかし、局長さん、きょうの議論を聞いて、この表を局長もごらんになりましたでしょう、配られていますよね。全く経路として考慮されていないわけですよね。

 汚染土壌が残っているわけですよ。そこに築地市場が移転をしてくるということに関して、では今、私はきょう情緒的な主張をしているつもりは全くないですから、論理的に議論をさせていただいて、科学的に議論をさせていただいているつもりですけれども、この議論を前提にして、きょう、かつての議論を振り返ったときに十分だったと思いますか。当時は十分だったと思っていたと御答弁されたが、きょう、この議論を踏まえた上で、十分な議論だったというふうに思われますか。

岡島政府参考人 まず、現在、東京都で、先ほども申し上げましたように、環境影響評価について手続に入っております。また、これから専門家の方々を集めて検討されると伺っておりますので、それを注視してまいりたいというふうに考えております。

川内委員 ここで大臣に御答弁をいただきたいというふうに思いますが、国民の皆さんは食の安心、安全というものについて非常に大きな関心を持っていらっしゃる。東京ガスのこの工場跡地に世界の台所と言われる築地が移転をすることに関しては、私は、それは科学的に安全が証明をされている、そしてリスクコミュニケーションによって安心も担保をされたということであれば、理解、納得をいたします。しかし、きょうの、科学的にも、科学のことは私は素人ですよ、素人の私から見ても、これは全然考慮されていないということが明らかである。環境関係の法律というのは、もともと、食の安心、安全を担保するものじゃないわけだ。

 では、農水大臣として、この審議会の議論、たった一回しか行われていない、食の安心、安全という分野での議論が行われていない、ただ東京都から話を聞いて、はあ、そうですかと言っていただけの議論が十分だったと、事務方はそう御自分たちで評価をされていらっしゃるようでありますが、政治家として、国民の皆さんの生活に責任を持つお立場として、この審議会の議論は不十分なので、十分ではないので、もう一度審議会の場で議論をさらに重ねるというような御発言を大臣はされなくてはならないのではないかというふうに思いますが、いかがですか。

松岡国務大臣 この問題は、川内先生が御指摘のとおり、食の安全、安心、これはもう国民の生命、健康にとって一番重大な、また最大の問題だ、このように認識をいたしております。したがって、万が一にも、これはもう万全を期さなければならない、そういうような観点で取り組むべき問題だ、まず、そのように基本認識を持っております。

 そこで、今のお話でございますが、岡島局長がお答えをいたしましたように、十七年の時点ではどうであったのかという先生の御質問に対しまして、その時点では、まず環境規制を担う当事者である東京都、そしてまた市場の開設者である東京都、いわゆるこういった立場での東京都が、それをしっかりと環境規制も、十分な安全、安心対策も行いますということを前提にして、総合食料分科会では、これが認められたといいますか承認をされたといいますか、そういったことになったのであろう、このように認識いたしております。

 そこで、この問題は、ことしの予算委員会でも、一度か二度か、二度か三度でしたか、取り上げられました。そこで、私も今先生の御指摘もお聞きをしながら、やはり、食の安全、安心というのは、まず安全という科学的な点でしっかりと担保される必要がある、これは全くそのとおりだと思っております。その科学的な安全という上に立って、やはり人間、気持ちの安心という、気持ちの問題がございますから、ここが大事でして、やはり安心なんだな、大丈夫なんだという理解と納得、これが必要なんだろう、そういうふうに思います。

 したがいまして、そういう観点から、東京都におかれましても、この議論を受けて、私は、どう対応するかということがまずあるんだろう。

 そこで、今局長もちょっと若干言いかけておりましたが、私も、今東京都から聞いていますところでは、豊洲市場で取り扱われる生鮮食料品の安全、安心の観点から、土壌汚染対策について、先生がおっしゃっていました、専門家が入っていない、そういう意味では、専門家の意見も聞くということで、現在、有害物質なり水の環境問題なり、また健康影響、そういった分野からの専門家を人選中だ、そして、五月以降、四、五カ月かけて十分検討をする、そういう予定にしている、こういうふうに聞いているところでございます。

 したがいまして、その結論がどうなるのか、そういったことを私どもはしっかりと見守りながら、その上で、農林水産省としては、環境省とも連携をしながら、検証結果についてどういう結果が出てくるのか、これをまず確認したい。その上に立って、必要なことがどのようにあるのか判断をしたいな、こう思っております。

川内委員 いや、大臣、基本認識として、万が一にも万全を期さなければならないというふうにおっしゃられました。万が一にも万全を期さなければならない、私もそう思います。

 であれば、これだけさまざまな問題がある、さらに、今まで全く考慮をされてこなかったリスクがある。環境規制は、食の安心、安全を考慮していなかったわけですから、この図から明らかですよ。そこに毎日大量のむき出しの生鮮食料品が野積みをされるわけですから、そういうリスクについてどうするのかということを考えたときに、国として、中央卸売市場整備計画が決定をされているということは、豊洲移転が前提だということになるわけですね。

 私は、農水大臣のお立場として、平成十七年当時は話を聞いてよしよしと思ったが、しかし、よくよく考えてみたら、いろいろ話を聞くと万が一にも万全を期さなければならないので、この中央卸売市場整備計画、平成十七年三月三十一日決定は、白紙に戻す、留保する、そして、万全の対策が十分にとられているということを確認した上で決定しても、全然遅くはないですよ。

 せめて白紙に戻すぐらい、大臣としておっしゃらなければ、この食の安心、安全を担保する、万が一にも万全を期すとおっしゃっていらっしゃるわけですから。それは、計画は計画としていいんじゃないのと言っておいて、こっちでよく議論してよというのは、万全を期したことにはならぬと思いますよ。万全を期すとおっしゃっているわけです。白紙に戻すというふうにおっしゃっていただけないでしょうか。

松岡国務大臣 論理明快な川内先生のお話を聞いていますと、一瞬私も気持ちの上ではそうかなと思うんですが、しかし、川内先生の御指摘は真摯に受けとめながら、私は、今申し上げましたように、これまでの議論を受けて、予算委員会でも議論がありました。

 したがいまして、東京都においては、まさに、先ほど言いましたように、先生が、この辺の環境規制は食の安全、安心まで至っていない、そこまで担保していない、こうおっしゃった。そういった御指摘も受けて、東京都ではいろいろな専門家を今人選して、そしてそこでしっかりと検証する、こうおっしゃっておられるわけであります。したがって、私どもとしては、その検証の結果がどうなってくるのか。その検証の結果によって、環境省ともしっかりと連携をしながら、しかるべき判断をいたしてまいりたい。

 川内先生の思いや御指摘はしっかり真摯に受けとめながら、私どもとしては、その思いをしっかりと踏まえながら、今申し上げましたようなことで検証の結果をしっかりと見きわめつつ、確認しつつ判断をしてまいりたい、こう思っております。(発言する者あり)

川内委員 いや、小野さん、全然いい答弁じゃないですよ。

 大臣、大臣は水俣病を御経験されて、環境問題の怖さというものをだれよりもよく御存じな政治家のお一人であるというふうに私は思います。

 そういう中で、汚染された土壌の上に中央卸売市場の移転計画がある。さらに、これは実は国土交通委員会でやろうと思っているんですが、ここは埋立地で大変な液状化が心配をされているわけですね。築地は関東大震災に持ちこたえているんですから、関東大震災でもびくともしなかったんですよ。ここは地震が来たら一発でなくなりますね。そういうところに大量の食料品が集積をする場所、施設を持つということが、リスク管理上の問題からもさまざまな問題をはらんでいるというふうに思います。

 先ほど、流通の観点からというふうにおっしゃいましたが、では、万々が一のときの流通拠点がなくなったらどうするんだという話ですよ。この議事録を見るとその辺の議論もされていないわけです。

 だから、私は、大臣は白紙に戻すと言うだろうと思っていましたけれども、きょうは言っていただけなかった。やはり大臣、大臣は政治資金の問題なんかで大変国民から疑問を持たれているわけですから、これは一発、ちゃんとしたことをやって信頼を回復していただかないといかぬと私は思いますよ。

 こんな、いや、東京都から話を聞きます、話を聞きますと。しかし、築地の生鮮食料品は、全国から集まって全国に出ていく。広域的な中央卸売市場ですから、東京都のものじゃないですよ。開設者は東京都だが、しかしその影響は全国に及ぶ。

 そういう意味で、農水省としての責任のとり方というものが物すごく問われるということを私は申し上げさせていただいて、質問を高山さんに譲りたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 少し早目に川内先生のお時間をいただいて、済みません。

 大臣にまず伺いたいんですけれども、最近、農水省絡みで綱紀粛正を図らなければいけないといいますか、談合問題もそうですし、また大臣御自身の問題もそうかもしれませんし、また先ほども、新聞報道もありましたけれども、海外派遣の植物防疫官というんでしょうか、これの過剰接待の問題というのがありましたけれども、まずちょっとこの点に関して伺います。

 防疫官の過剰接待問題、これは要するに検査する人が検査される側から過剰接待を受けていたということで、国益を揺るがしかねない大問題だなと思うんですけれども、この点、大臣の方で、農水省にどういう指示をされて、今どういう対応をされていますか。

松岡国務大臣 豪州に派遣をいたしました植物防疫官が派遣先の業者等から過剰な接待があったとの報道がございました。

 その報道を踏まえまして、十九日、海外派遣植物防疫官の倫理問題に関する調査チームを設置いたしたところでございます。本調査チームを立ち上げまして、直ちに書面による調査を開始いたしたところでございます。また、書面調査と並行いたしまして順次面接を行う等、今後精力的に調査を進めてまいる予定でございます。

 本チームにおきましては、国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程に該当する違反行為の有無について早急に調査をし、その調査結果についてはできるだけ早く取りまとめてお知らせをいたしたい、このように思っております。

 ちなみに、今、調査対象者は百五名ということでございまして、十八年度に派遣されたすべての植物防疫官及び十四年から十八年度に豪州に派遣された防疫官を対象といたしております。

高山委員 さすが、こういう国益に関する問題ですので、対応が早いなというふうに思うんです。

 この点、まず、緑資源機構の談合問題について先にちょっと伺いたいんです。

 まず、緑資源機構の談合問題ですけれども、これは昨年の十月からもう任意の調査に入っています。それで、四月の三日に刑事調査に切りかわって、四月十九日に強制捜査、こういうことを先ほどから大臣からも御説明いただいていると思うんですけれども、十月の時点で、任意捜査で、談合じゃないかということで入ってきたときに、農水省内でどのような自主的な内部調査をされ、またどういう対策をとられましたか、昨年の十月の任意捜査の時点で。

松岡国務大臣 十月の時点で任意調査、こういう形で調査が開始された、このことにつきましては極めて遺憾なことである、そのようなことで当時も申し上げたと思います。

 そして、公正取引委員会の調査に対して全面的な御協力を申し上げながら事態の推移を見守りたい。そして、その上で、見守りながら必要な適時適切な対応をしてまいりたい、このような認識で取り組んできたところでございます。

高山委員 そうしますと、特に内部調査チームのようなものを立ち上げて、改善をするというようなことは一切していないんですか。

松岡国務大臣 緑資源機構は、独立行政法人といいますか特殊法人でございますので、私ども、もちろん所管の立場で、それは責任はあるわけでありますが、直接、まだそのような、農林省内にチームをつくって調査をするといったようなことはいたしてはおりませんでした。

高山委員 何か、さっきの防疫官のものは国益にかかわる問題なのか知りませんけれども、一日か二日で対応しているんですけれども、どうも談合には甘いですね、松岡大臣。これはもう大臣に就任されているときですよね。

 ですから、こういう談合の疑惑をかけられたら、こういうことは国益に一番反しますよ。一部の者だけの利益にしかなりませんから、国民全体の利益からしたら、談合なんというのは、まじめに税金を納めている人にとって、被害者ですね、一般国民が。だから、まさにやらなきゃいけない問題なのに、随分対応が遅いなと思います。

 この点に関して、まず緑資源機構内で独自の調査委員会みたいな、こういうものが何かつくられたというような報道があります。きょうは林野庁の長官も呼んでいると思うんですけれども、どういう委員会がつくられて、それは、新聞報道によれば三月末に一定の報告書が出るということだったので、どういう報告が出ているんでしょうか。

辻政府参考人 一月に、緑資源機構のところに、入札制度等改革委員会を設置いたしまして進めたところでございまして、委員長といたしましては緑資源機構の理事長、そして関係する職員、そしてさらに、外部から、学識経験者といいますか元検事だとかそういったところの有識者に入っていただきまして検討をしてきたところでございます。

 その中で、平成十九年度の三月の二十七日でございますけれども、同委員会の中間取りまとめをいたしたところでございまして、一つは、測量・建設コンサルタント業務における一般競争入札の導入、それから建設工事における一般競争入札の拡大ということで、それまではおおむね二億円以上の工事について一般競争入札だったところでございますけれども、今後はというか、平成十九年度以降でございますけれども、原則としてすべての工事を対象に一般競争入札にする。それから、物品購入、役務調査費、これにつきましても原則として一般競争入札を実施するというふうに中間報告で報告され、そして、既に十九年度から実施に移している部分もあるわけでございます。

松岡国務大臣 先ほど先生の方から、緑資源機構に対する調査と、それから防疫官に対する調査と、これについて対応の違いがあるじゃないか、こういうことで、談合に甘いんじゃないか、こういうようなお話があったんですが、それは決してそういうことではございませんで、緑資源機構の方は、公正取引委員会という、まさにそういう権限に基づいた調査をここがなされておられるといったようなことに対しまして、私どもとしては、それを見守る、そして調査に全面的な協力をする、こういう立場で臨んでいるわけであります。

 また、防疫官の方は、これはもう直接の農林水産省の職員でございますから、まさにこれはみずからの組織の職員である。こういうことに対しまして、また、これは、私どもの農林水産省がしなければ、他のところが調査するというわけにもいきませんものですからそのようなことをしたわけでありまして、国益に合っているから、ないからというような基準じゃないということについては御理解をいただきたいと思います。

 先生の御指摘は御指摘として受けとめながら、そのようなことにつきまして、今申し上げましたような趣旨につきましては御理解をいただきたいと思います。

高山委員 御理解できません。やはり農水大臣及び農水省は談合に甘いんじゃないのかなという印象を私は持っています。

 それで、またさらに聞きたいんですけれども、緑資源機構の改革委員会ですか検証委員会、これに捜査対象者になっている理事が委員で入っているんだということですけれども、この理事は、今回この強制調査を受けてどういう扱いになっていますか。

辻政府参考人 先生御指摘のように、緑資源機構につくりました入札制度等改革委員会の委員に、今回、強制捜索を受けております理事が入っておるのは事実でございます。そして、現時点では、強制捜査中ということで、ある意味ではまだ白黒がはっきりついていないといったことで、理事に在職をしているという状況でございます。(高山委員「最後聞こえない」と呼ぶ)理事で在職をしているという……(高山委員「在職している」と呼ぶ)はい。

高山委員 疑惑をかけられて捜査を受けている人が改革委員会に入っている、それでまだ在職している。これは証拠隠滅とか大丈夫なんでしょうか。普通に考えたら、まず任意捜査が入った時点で、普通の民間企業であれば、もう情報アクセスを遮断して引き出しをあけられないようにしなければ、もうどんどんこれは証拠隠滅されちゃうんじゃないんですか。

 一番初めに任意捜査が入ってから、もう半年もたっているわけですね。それで、強制捜査が入ってもまだその方が在職している。これは、組織ぐるみの証拠隠滅が行われていて、しかもそれを容認しているというふうにとられても私はしようがないんじゃないのかなと思うんです。

 まずこの点でちょっと伺いますけれども、報道によれば、緑資源機構の林道課長を集めた公式会議の席で、会議の案内文書等はシュレッダーで読了後廃棄してください、こういう指示が出ていたと。これは証拠隠滅の指示だなととられてもしようがないと思うんですけれども、まず、これは事実ですか。

辻政府参考人 今先生のお話のようなことについて報道でなされたというのは承知をいたしておりますけれども、現在、犯則調査中でございますので、その点についてはコメントを控えさせていただきたいと思います。

高山委員 犯則調査とこれは関係ないじゃないですか。内部での文書の管理の方法を聞いているんですけれども、このような、読了後破棄してくださいというようなことは、これは日常的に行われているんですか、教えてください。日常的に行われていたら、これは犯罪ですよ、公文書をどんどん破棄していたら。

辻政府参考人 今申し上げましたように、報道ではそういったことがなされているわけでございますけれども、現在、公正取引委員会が調査中でございますので、まさに調査内容に係る問題でございますので、コメントを差し控えたいと思います。

高山委員 調査内容にかかわりません。これは、日常的にもしこういう文書の破棄が指示されているとしたら、こういう公式文書、これは情報開示請求の対象になる文書ですから、これを破棄しているというのは今回の公正取引委員会の事案とは関係なく違法行為の疑いがあるので、答弁してください。

辻政府参考人 いわゆる不必要な書類は処理をするというのはあるわけでございますけれども、今先生が御指摘のようなことにつきましては、確かに報道ではありましたけれども、先ほどから申し上げていますように、公正取引委員会が調査中で、まさに調査内容でございますので、コメントを控えさせていただきます。(高山委員「いや、それは調査内容と関係ないから。ちょっと委員長、もう一回答弁させてください」と呼ぶ)

西川委員長 いえ、挙手をして質問をしてください。

高山委員 委員長、同じ質問になりますから。

西川委員長 どうぞ。

高山委員 答える気がないのだと思うので、無駄になりますので。

 極めて怪しいなと思っています。だって、今、公取の調査と関係ないですよ。ただ公文書を日常的に破棄しているんじゃないですか。こういう違法行為が見過ごされていいのかなと、これは次に大臣に聞きますけれども。

 大臣に伺いたいんですけれども、今回のこの緑資源機構の談合問題というのは、発注者側である緑資源機構も官僚OBの非常に天下り先である。また、その受注先であるいろいろな公益法人、これも官僚OBの天下り先である。だから、これはもう発注側も受注側も官僚OBの天下りの人がいっぱいで、まさに何か税金を官僚のOBの人が食い物にしているという典型的な構図じゃないのかなというふうに国民の皆さんは思っていると思うんです。

 まず、大臣に伺います。

 このような緑資源機構ですけれども、規制改革会議でも廃止、縮小の方向というような答申も出ているようですけれども、大臣は、記者会見の中でも、これはいろいろ問題があるから検討したいというようなことを随分おっしゃっていますけれども、廃止も含めてこれは検討されているんでしょうか。大臣に聞いているんです。

松岡国務大臣 今先生が御指摘で御質問になられましたことにつきましては、先ほどもお答え申し上げたことでございますが、私ども、今公正取引委員会で行われております犯則調査の支障にならないようなことに十分留意しつつ、どのような形でこの問題に私どもとしては対応していくのか、今省内で、どのようにこれに対応するかということについて検討を指示いたしているところでありまして、まとまり次第それはまた公にしてまいりたいと思っております。

高山委員 まさにこれは、何か、官僚OBを食べさせるためだけにとは言いませんけれども、食べさせることが主目的の機構であり、また公益法人なんじゃないかというふうに私なんかはちょっとこの記事だけを読んでいると思う部分があるんです。

 今大臣がおっしゃいましたけれども、公正取引委員会の調査に協力するようにということですけれども、これは私が先ほど林野庁長官に聞いたように、もし証拠隠滅等あった場合、大臣、これはどのような処分を考えられていますか。

松岡国務大臣 これは、まさに今公正取引委員会が犯則調査という形で調査を行われているわけでありますから、私どもはその調査の内容に係ることにつきまして、ここでまた、まして先生の今の御指摘は、御質問は、そうであった場合という仮定のお尋ねでもございますので、それ以上の答弁は、これはしかねるところでございます。

高山委員 仮定ではございません。大臣が捜査に協力するようにというような指示を、大臣の命令として出されていると思うんですけれども、これは十月の時点で大臣の命令がそういうものが出ていて、仮にシュレッダーにかけたり証拠隠滅をしていたら、これは大臣の命令違反だと思うんですけれども、そのような大臣の命令違反があった場合、大臣はどのように処分されますか。

松岡国務大臣 命令というか指示でございますが……(高山委員「命令してくださいよ」と呼ぶ)その点につきましては、先ほども申し上げたように、私どもは、今その調査が行われておる、その中で、そういったことは、事実がどのようなものであるかということは明らかにされていくことだと思っております。

 したがいまして、これは見守るというのが私どものとるべき立場だ、このように思っておりますし、それとは別に、私どもは、このような事態に立ち至った、そして、やはりいわゆる天下りというものがいろいろ御指摘をいただいているわけでありますから、そういった御指摘をいただいたことに対して、どのようにして抜本的な対策をとっていくかということについては、その調査検討といったことも含めまして、今事務方の方に具体策について指示をいたしているところでありますから、それはまとまり次第明らかにしたいと思っております。

高山委員 ちょっと更問いになるんですけれども、そうしますと、この緑資源機構の廃止、縮小、これは規制改革会議で答申が出ているようですけれども、この答申に関して、大臣、どのようにお考えですか。

松岡国務大臣 高山先生は何を確認されて、規制改革会議が緑資源機構の業務の縮小、廃止の方向を打ち出した、こうおっしゃっているのかちょっとわかりませんが、そういったような報道がなされたということについては聞き及んでおりますが、この点につきましては、農林水産省は、四月の十三日に開催されました政府の規制改革会議において、緑資源機構について、業務の現状及び民間開放の状況、また今後の事業の見込み等についてヒアリングを受けたところでございます。

 その後、四月二十日の規制改革会議において緑資源機構の業務縮小、廃止の方向を打ち出すとの報道があったことについては聞き及んでいるといいますか承知いたしておりますが、報道にあったような事実があったということについては承知をいたしておりません。

 したがいまして、今後の緑資源機構のあり方等も含めて、どのように私どもは対策を講ずべきか、これにつきましては、今後省内において、どのように検討していくかというような、その検討の進め方につきましても、今具体的なその内容について取りまとめを指示いたしているところでございますので、まとまり次第明らかにしてまいりたい、先ほど申し上げたとおりでございます。

高山委員 防衛施設庁の談合のときに、去年の時点で、ほとぼりが冷めるまでは、今の大臣のような答弁を防衛庁長官、当時ずっとされていまして、それで、証拠隠滅はあったのかなかったのか聞いていたら、ごにょごにょ言っていまして、それで結局、そのほとぼりが冷めたころに、防衛施設庁の職員が証拠隠滅をしていたという事実が明るみになったりということがあるんですね。これはそれと同じなんですよね。

 初め任意の調査で入って、その疑いをかけられている職員がずっと通常業務で出てくるわけですよね。そうしたら、引き出しの中のものをシュレッダーにかけたりメールを消去したり、何でもやり放題じゃないですか。こんなことをやっているのは役所だけですよ。普通の民間企業であれば、転職が決まった、あるいは、その人が何か背任などの疑いをかけられた、もうそうしたら自宅待機ですよ。どうしてそういう処分をしないのか。

 そもそも、この緑資源機構も、公益法人も、役人OBの天下りをさせている機関ですから、そういう甘い処分をしているんだと思うんですけれども、大臣がこのようにちょっと甘い処分をしているのは、ひょっとしたら、今問題となったこの公益法人から献金を受けていたからなんじゃないかという疑念も抱かれるような状態だと思うんです。

 この点に関して、先ほども同僚議員の方から質問がありましたけれども、まず初めに、この公益法人、平成十一年のところまでは公益法人から献金を受けていた、それで、それはもう返金をしておりますということでしたけれども、これは政治資金規正法が改正になって、企業、団体からの献金が受けられなくなったのが平成十二年からですから、だから、平成十二年以降はないだけですよね。

 なぜ平成十一年以前のものをこの時点でまず返金されたんですか、せっかくもらった献金を。せっかくもらった献金、どうして平成十一年以前のものは返金されたんですか、まず、この平成十一年時点で。

松岡国務大臣 返却すべきものとして返却をいたしましたという趣旨は、その当時の時点で、公益法人の中に、調査等を対象とするものでありますが、国からの補助金を受けたものがあった。したがって、そういった国から補助金を受けてはいても献金は可能か可能でないかということについては、はっきりだめだということは定かではなかったんですが、私どもとしては、そういう誤解が残るところからの献金はお返しをしよう。こういうことで、誤解といいますかそういう疑問が残るところはお返しをしようということで、十年以前のものにつきまして、そういう疑問の残るところにつきましては、疑問を持たれることがあってはならない、こう考えて返金をした、こういうことであります。

高山委員 これは私も、ああ、公益法人が献金なんかできるんだというふうにちょっと思いまして、総務省にも伺いました。調査研究等をやっていれば受けられるだとか、何かいろいろな基準があるんですけれども、なかなかその当てはめが難しいようで、グレーゾーンというとなんですけれども、実際に献金を受けるときに、これは本当に受けていいものなのかどうなのかというのを随分迷うようなことが多いと思うんですね。

 この点、でも、事務所費問題では法律に基づいて適切に処理されている大臣が、今回はこれはグレーだと判断されて返金されたということですけれども、それはなぜですか。

松岡国務大臣 これは平成八年のものを十年か十一年の時点で返金をしているわけですから、そういうことでございます。

高山委員 いや、だから、その時点で、法律に基づいて適切に処理されているのであれば別にそんな公開する必要ないじゃないかというふうに、大臣はふだんもう何十回もおっしゃられているわけですけれども、法律に基づいて、これは完全にアウトだというふうに判断されたから返金されたわけですか。それだったら、そもそももらわなかった方がよかったと思うんですけれども、その返金された判断は、なぜ、どういう判断をされたんですか。

松岡国務大臣 もうそれは先ほどお答えしたとおりであります。(高山委員「答えになっていないからもう一回聞いているので、もう一回答弁してください。今の答弁はひどい、委員長」と呼ぶ)では、もう一回聞いてくれれば……(高山委員「もう一回聞きません、今の答弁はひど過ぎる」と呼ぶ)では、先ほど答えた……(高山委員「先ほど答えた答弁は答弁になっていないですよ」と呼ぶ)先ほど答えたとおりと申し上げましたのは、平成八年にいただいたものでありましたけれども、先ほど申し上げましたように、これが正確に法律上妥当かどうか、政治資金規正法上といいますか、妥当かどうかということで、私は、では、とにかくそういう疑念、疑問になるようなことであれば、それは返金をしようということで返金をした、こういうことであります。

高山委員 疑念や疑惑を持たれたら返金したり公開したりということであれば、事務所費も早く公開してもらわないと困るんですけれども、今回の事務所費は公開しないで、前回のそれは疑念や疑惑を持たれたので返金したという、ちょっとこの判断の違いを教えてください。

松岡国務大臣 判断の違いといいますか、これはまさに関連する公益法人、これは、私として、そのとき返金をしたといいますのは、いわゆる国から補助を受けている、補助金を受けている、そういった法人については献金はやはり自粛すべきである、こういう決まりがあった。しかし一方、その補助金の性格によっては、それは献金をしてもいい場合もある。そこの解釈は、総務省の方でもなかなか断定しがたい、こういったこともあったものですから、では、まあ、そういう疑問を持たれるということであれば、持たれる可能性もあるということであれば、返金をしよう、こういうことであります。

高山委員 いや、だから、大臣はそのときから今に至るまで、何か基準が変わってしまったのか、ちょっと残念な気もするんですけれども、もう一つ、ちょっと次のことも聞かなきゃいけないので聞きますけれども、平成十二年以降は、公益法人そのものからの献金は政治資金規正法では企業、団体からは献金できませんので、個人名で、理事長の個人名で行われておりますね。

 この理事長の個人名で行われているというものは、先ほどの同僚議員への答弁ですと、何か個人の判断で行ったというようなお話、つまり、大臣はあれですか、今まで公益法人からいただいていた献金と、その後理事長が個人名で献金しているのは、趣旨が異なるんだ、こういうようなことなんでしょうか。さっきはそういう答弁でしたよ。

松岡国務大臣 私が個人献金を受けておられる方は、私の役所時代、勤務時代の先輩の方でありまして、今はそこの、今回対象になっている会長をされておられるかもしれませんが、その時点は、ちょっと確認いたしますけれども、その時点では、たしかそこの会長であったかどうか、これは単なる個人的な関係で献金をいただいているものでありまして、その組織ができなくなったからこの人が個人でという、そのような形ではないということだけは申し上げておきたいと思います。

高山委員 それでは、その個人の方は、大臣、これは大事なところなので聞いてください。大臣、その個人の方は、その平成十二年度以前、平成十一年度以前は献金していませんね。

松岡国務大臣 十二年以前はいただいておりません。

高山委員 そうすると、それはあれなんじゃないですか、法律の規制が出てきて、理事長として公益法人で出せなくなったので、だから、個人名で出していた。これはよくある話じゃないですか。これはこの方だけではなくて、今まで一般企業で企業献金をずっとしていたのが、平成十二年以降はその社長の個人名義あるいは社長の家族などの名義で献金になるというのは非常によくある話だと思うんですけれども、それは、全く趣旨は一緒なんじゃないですか。

 それは、個人的にということではなくて、その何か会社なりあるいは団体なりの利益になるから出していたのであって、もしそうでなければ、その公益法人が大臣に献金するのが公益法人の利益にかなうものでなければ理事長のプライベートなお金から出すべきであって、この理事長の背任ですね。

 だから、これはどっちなんでしょう、やはり同じ趣旨なんじゃないんですか、完全に個人ということで出しているのではなくて。公益法人として献金できなくなったから理事長の個人名で献金するようになったんじゃないんですか。

松岡国務大臣 正確にお答えしますと、この理事長さんというのは、先生がおっしゃっているのはよく御存じでおっしゃっていると思うんですが、森公弘済会、ここからはずっともともと献金をもらっていないんです。もらっていないんです。そこの会長さんですから、だから、そこからはもともともらっていないものですから、そこが、では、団体ができなくなったからかわりにということでもないということだけは申し上げておきたいと思います。

 全く、十三年から個人的に、個人の御判断でいただいておる、こういうことでございまして、一切、ここまでは組織でしておったが、ここから先は個人でした、そういうつながりではありません。それ以前に、そこの、今会長をされておられるその組織からは、それ以前、一切ありません、こういうことであります。

高山委員 もう一つ伺いたいんですけれども、この緑資源機構関連の公益法人やあるいは受注先企業、あとはそこの理事長ですね、こういった方に、松岡先生のパーティー券の購入は、お願いして購入してもらっていますか。

松岡国務大臣 これはもう収支報告書のとおりであります。

高山委員 この点に関して、きのうも同僚議員から聞いていると思うんですけれども、収支報告書、訂正はありませんね。この点に関して、今後、訂正はありませんね。

松岡国務大臣 返すべきものは返しておりますし、また、先生の今のこれは仮定のことについては、今後、あるかないかということにつきましては、今の時点でどうお答えするか、ちょっとそれは差し控えたいと思います。

高山委員 ちょっと次の質問に移る前に、もう一つ、収支報告書の訂正に関してだけ松岡大臣に、これは個人的なことなんですけれども、伺います。

 松岡農水大臣の団体の組織活動費の中の交際費ですか、交際費が、もう全然五万円以上の記載がない。年間二千万近いときもあったり、これがすべて五万円以下の支出ということなのかわかりませんけれども、ちょっと不自然だなという印象を持たれた方がいると思うんですよ。

 といいますのも、松岡大臣の収支報告書の写しを見ますと、交際費は確かに書いていませんよ、交際費は書いていませんけれども、その前の例えば組織対策費なんかを見ますと、五万二千円、高級しゃぶしゃぶ屋みたいな感じで、結構細かいことまで全部書いてあるわけですよね。それなのに、これは交際費に関してはずっと記載なし、五万円以上のものがないんだということですけれども、この点に関しても、松岡先生はこれは訂正はされませんね。

松岡国務大臣 収支報告書のとおりであります。

高山委員 収支報告書は見ているから、それはわかるんですけれども、これを訂正されますかということを聞いているんです。

 というのは、何か最近も、小泉チルドレンの方で秘書給与ピンはねの疑惑を持たれた方が最近になって訂正をしたり、そういうことが多いので、もし、松岡大臣、今後、訂正されるのかな、どうなのかなということをちょっと確認しておきたいんですけれども、大臣は、今のところ訂正される気はないんですか。

松岡国務大臣 何について訂正するかしないかということでありますが……(高山智司「五万円以上の支出があったかということを書かなきゃいけない」と呼ぶ)それは今のところ適切だという報告を受けております。

高山委員 では、ちょっとしつこいんですけれども、事務所費に関しても家賃がただのところで年間二千万近く使っている、あるいは光熱水費、ほぼただのところで年間五百万円以上、光熱水費、何とか還元水とかそういうもので使っている。今回のこの組織活動費も、交際費、二千万近く、全部五万円以下で、内容は明らかにしないということですけれども、何か不自然だなという印象を持つ国民の方が多いと思うんですけれども、これもすべて適切に処理しているので訂正もしないということなのでしょうか。

 先ほどのみたいに、疑惑をかけられたら、献金も受けていたのも、疑惑をかけられるよりはいいからというので返金したりとか、そういうことをやられていた大臣ですので、またこのような疑惑を、今、不自然だなと国民の皆さんは思っているわけですから、公開していただくか、あるいは、間違いがあったのであれば訂正していただきたいなと思うんですけれども、大臣は、この事務所費、光熱費、また組織活動費の交際費ですね、いろいろちょっと不自然だなと思われているんですけれども、これも訂正は、今後は考えていないですか。

松岡国務大臣 今、先生からいろいろな御指摘がございましたが、私は、法律に基づいて、これはすべてそのとおりやっているわけでありまして、不自然か不自然でないかというのは、それはとらえ方、見方でございまして、法律に基づいてそのとおりやっておるということを申し上げておるわけであります。

 人間ですから、世の中ですから、もし間違いがあったり違いがあったりしたら、その時点で訂正するということは、それはあるかもしれません。それはあるかもしれませんが、それはだれしもそういったことはあり得ることかと思いますが、いずれにいたしましても、私は、法律に基づいて、現時点までにおきましては、そのとおりやってきておる、こう思っております。

高山委員 では、現時点で訂正の必要はないというようなことだと思うんですけれども、もう時間がなくなってきたので、ちょっと用意してきたもう二、三問を聞きます。

 ちょっと緑資源の問題に戻るんですけれども、監督官庁は農水省ですので、監督官庁として、今回の、談合をしていたんじゃないかと言われている公益法人、またはこの緑資源機構、これはどのような処分をするべきだと考えていますか。これは、今からどういうものをやるかというんじゃなくて、どういう選択肢があるんでしょうか。この公益法人に対して、どういうような選択肢があるのか。

 この点に関しては、農水省所管法人というのは、これは二〇〇〇年でしたか二〇〇一年かにも、公正取引委員会から排除勧告を受けたりしているわけですよね。だから、是正の機会というのは随分昔からあったんですけれども、今回、監督官庁としてどういう指示が考えられますか。

松岡国務大臣 これは今、先ほどから申し上げておりますように、強制調査中ですから、その推移をしっかりと見きわめ、その結果を待って、その上で、さらにまた、そういったことの結果とあわせて、私どもなりに判断すべきものは判断して、その時点でそのようなことにつきましては対処したい、こう思っております。

 今はまだ途中でございますので、今この時点で予断を持って申し上げることは控えたいと思っております。

高山委員 あと、では、先ほどの調査を受けている理事がまだ改革委員会なるものの中に残ってやっているであるとか、あるいは、いろいろ調査を受けている職員もふだんどおり出勤してきている。これは、私としては、証拠隠滅のおそれが高いなと思うんですけれども、この点は何か改善する必要はありませんか。

松岡国務大臣 その前に申し上げておきますと、これは、私どもといたしましては、今回のこの事態に対しまして、この問題に対しまして、その結果が出た時点、また、結果だけにかかわらず、必要な点につきましては厳正に対処したいと思っております。そして、抜本的な対応、対策をしっかりと立ててまいりたい、このように思っております。

 それから、今の先生の御指摘の点でございますが、この点につきましては、私ども、十分必要なことについては検討しながら対処してまいりたいと思っています。

高山委員 だから、その必要なことで、証拠隠滅の蓋然性がすごい高まっている中で、何か対策をとる必要はありませんかと聞いているんですけれども、それに関しては大臣はどのように考えていますか。別に、証拠隠滅対策で、自宅待機だとか、そういうアドバイスなり命令なり、例えばそういうことをされてもいいんじゃないんですか。例えば、そういうことが望ましいということを、監督官庁の大臣として発言されてもいいんじゃないんですか。

松岡国務大臣 これは、第一義的には、今調査を実施されておられます公正取引委員会の御判断もあると思いますので、私ども、そういったところの御判断をもとにしながら対応していくのが基本だろうと思っております。

西川委員長 時間が来ておりますので。

高山委員 ちょっとこの談合問題、これだけ、今から天下り等々、安倍内閣全体で取り組んでいこうというときに、やはり安倍内閣は天下りに対して甘いなという印象を受けましたけれども、時間だというので、終わります。

     ――――◇―――――

西川委員長 次に、内閣提出、参議院送付、種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣松岡利勝君。

    ―――――――――――――

 種苗法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松岡国務大臣 種苗法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 種苗法は、優良な植物の新品種の育成の振興のため、品種登録を受けた品種の育成者にその業としての利用を専有する権利、すなわち育成者権を付与する品種登録制度を定めております。近年、育成者権は知的財産権として定着し、この制度による植物新品種の登録の件数、育成者権の譲渡件数がともに増加する等その経済的価値が広く認められてきております。

 他方、侵害行為を発見しても損害の回復までに至らず、また、侵害行為に対する罰則が軽いため、侵害行為に対する十分な抑制が働かない等の問題が生じております。さらに、登録品種でない種苗に登録品種と誤認されるおそれのある表示が付される等の問題も生じております。

 このような問題を踏まえ、育成者権の適切な保護に資するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、訴訟上の救済措置を円滑に講ずるための規定の整備であります。

 特許法等他の知的財産権の保護に関する法律に倣い、侵害物品の譲渡数量に正規品の単位当たり利益の額を乗じた額を損害額と推定できること等の規定を整備することとしております。

 第二に、育成者権侵害罪の罰則の引き上げ等であります。

 育成者権侵害罪の罰則を特許法等他の知的財産権の保護に関する法律と同様に、十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金またはこれらの併科、法人の場合は三億円以下の罰金を科すること等としております。

 第三に、表示の適正化等であります。

 登録品種の種苗を業として譲渡する者は、その種苗に登録品種に係る旨の表示を付すように努めなければならないこととするとともに、登録品種でない種苗に品種登録表示またはこれと紛らわしい表示を付すことを禁止する等の措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

西川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る五月九日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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