第14号 平成19年5月10日(木曜日)
平成十九年五月十日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 西川 公也君
理事 岩永 峯一君 理事 金子 恭之君
理事 近藤 基彦君 理事 谷川 弥一君
理事 並木 正芳君 理事 篠原 孝君
理事 松木 謙公君 理事 西 博義君
赤城 徳彦君 赤澤 亮正君
伊藤 忠彦君 飯島 夕雁君
今津 寛君 小里 泰弘君
小野 次郎君 岡本 芳郎君
北村 茂男君 斉藤斗志二君
中川 泰宏君 永岡 桂子君
丹羽 秀樹君 鳩山 邦夫君
広津 素子君 福井 照君
福田 良彦君 古川 禎久君
御法川信英君 森山 裕君
渡部 篤君 岡本 充功君
黄川田 徹君 小平 忠正君
佐々木隆博君 高山 智司君
仲野 博子君 福田 昭夫君
山田 正彦君 井上 義久君
菅野 哲雄君
…………………………………
農林水産大臣 松岡 利勝君
農林水産副大臣 山本 拓君
厚生労働大臣政務官 菅原 一秀君
農林水産大臣政務官 永岡 桂子君
農林水産大臣政務官 福井 照君
政府参考人
(厚生労働省医薬食品局食品安全部長) 藤崎 清道君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 佐藤 正典君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 山田 修路君
農林水産委員会専門員 渡辺 力夫君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)
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○西川委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、参議院送付、種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、生産局長山田修路君、水産庁長官白須敏朗君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長藤崎清道君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○西川委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木隆博君。
○佐々木(隆)委員 おはようございます。民主党の佐々木でございます。
種苗法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきますが、その前に、大臣にお伺いをいたします。
与党並びに民主党それぞれから政治資金改革について案が出ておりますが、それについて大臣の御見解をお伺いしたいというふうに思います。
○松岡国務大臣 それはそれぞれ与党のお立場また野党のお立場で出されたことでありますし、これから国会でそのことは議論がされるんだと思いますので、今私は、それに対して私の立場でどうこう見解をまだ申し上げるようなことではないと思っておりますし、議論の推移を見守りながら対応してまいりたいと思っています。
○佐々木(隆)委員 戦後日本が目指してきたものの中に、憲法の精神というのはもちろんあるんですが、そのほかに、平等な社会をつくっていこうという目的もあったというふうに思うんです。しかし、平等というのは本当は、私は最終的には公平というところにいかなければいけないんだというふうに思うんです。なぜそういうことを言うかというと、平等というのはイコールという意味ですが、公平というのはフェアという意味でありますから、要するに、フェアな社会をどうつくっていくかということが最終的な目標だというふうに思います。
そういった意味では、我々、とりわけ政治の世界にいる人間にはフェアということがより求められるというふうに思いますので、そのことをぜひ大臣の口から聞きたかったわけでありますが、きょうもお答えをいただけないようであります。本当は今動きが少し出てまいりましたWTO、EPA、FTAなどについてもお伺いしたかったのですが、残念ですが、副大臣並びに政務官にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
種苗法をお伺いする前に、一点、とりわけ日豪のEPAについてでありますが、私は実は、EPAという表現よりはFTAという表現を使いたいわけであります。EPAというと、何か全体の中の農業がこのぐらいみたいな話になってしまうので、FTAという、いわゆる自由貿易、関税、ここがやはり一番大きなテーマだと思うんですね。そういった意味で、私はなるべくFTAという言葉を使わせていただいているんです。
そこで、政府のこの間の答弁は、大臣も副大臣も含めて、守るべきものは守るという言い方をずっと繰り返しされているんですが、何を守るのかということには一度も触れていただいていないような気がするんです。守るべきものというのは一体何なのかということ。
それと、関税撤廃という表現がよくされるんですが、関税撤廃というのは、撤廃がいきなり来るわけではないわけですよね。いきなり関税がゼロになるわけではなくて、引き下げがあって、例えば十五年とかいう目標があって、そして撤廃に向かっていく。要するに、引き下げから始まるわけですよね、普通は。ということからすると、引き下げであっても、国内農業に与える影響というのは極めて大きいわけであります。そこで心配をするわけですが、撤廃を引き下げにしたから、それが守るべきものは守るだったんだというふうに言われてしまっては困るわけであります。
そのことも含めて、必要なことは、やはり重要品目をどう除外するかということが一番必要だというふうに私は思っているんですが、その点についてお伺いをいたします。
○山本(拓)副大臣 守るべきものは守るというのは、当然のことながら、当農林水産委員会でも決議をいただいております内容項目を念頭に置いているところでございます。
そういう中で、日本とオーストラリアのEPAについては、今まで他国と共同研究をやってきたものと若干異なり、日本とオーストラリア政府間の共同研究の報告書において、関税の段階的削減のみならず除外及び再協議を含む我が国農業を守る上で必要なすべての柔軟性の選択肢が用いられ得ることとされたところでございまして、先般、四月の二十三、二十四日に行われました第一回交渉会合においても、交渉は共同研究報告書を基礎として行われることについて、日本とオーストラリア政府双方が共通認識を確認したところでございます。
今後、この交渉に当たって、この報告書の記述を土台として、国内農業への影響を十分踏まえ、昨年十二月の本委員会における決議の趣旨をしっかりと念頭に、守るべきものはしっかりと守るという方針のもとで、国内農業の構造改革の進捗状況に留意しつつも、日本として最大限の利益を得られるよう、今後ともなお一層政府一丸となって交渉していくという考え方でございます。
○佐々木(隆)委員 今の副大臣の答弁の中にも、段階、除外、再協議、こういう言葉が出てきたんですが、やはり段階というのがどうも少し私としては気になる言葉の一つではあります。
いわゆるファルコナー文書で言う一%ないし五%ですが、一%ということで、きのうも何か論議がありましたけれども、日本の制限品目が今千三百品目ぐらいあるそうなんでありますけれども、しかし、米だけでも十七品目あるわけでありまして、千三百の一%、十三といっても、米だけでもうそれをフローしてしまうわけでありまして、ほとんど意味がないというふうに言えるのではないかと思います。
結果、私は、先ほど副大臣がお答えになった中でも、段階、除外、再協議というふうにおっしゃられましたけれども、やはり除外だと思うんですよね。国内的な重要品目についてはやはりここから外すということを中心にぜひ交渉に当たっていただきたい、そのことを指摘させていただきます。
それでは、種苗法についてお伺いをいたしますが、種苗法で、私は水際対策と知的財産権の二つの点についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
法律改正ですから、法律改正にとって一番必要なことは、まず過去の検証だと思います。種苗法でいうと、UPOVの九一条約を受けて、平成十年に全面改正といいますか全部改正というふうに表現するようですが、全部改正が行われて、ここ数年でも、十五年、十七年と改正をされてきているわけであります。
その十五年、十七年を含めた制度改正による現状並びに成果について、特に水際対策を含めてですが、お伺いをいたします。
○福井大臣政務官 おはようございます。
今先生がおっしゃいましたように、平成十五年、平成十七年、種苗法が改正されました。
そのレビューをさせていただきますと、十五年の改正によりまして、収穫物段階における育成者権侵害も罰則対象になりました。種苗の段階、収穫物の段階、加工品の段階とありますけれども、この十五年においては収穫物も含めた。そして、法人に対する罰則も強化したというのが十五年の改正でございます。十七年では、それを加工品にまで拡大したということ、そして、権利の存続期間を延長したということが主たる改正でございました。
並びに、十五、十七、十八、この三カ年にわたりまして関税法等の改正が行われました。育成者権侵害物品を輸出入禁制品として指定をいたしまして、権利者に無断で生産された農産物等の、まさに先生がおっしゃる水際での取り締まりが強化されてきたところでございます。
これら累次の改正の効果がございまして、平成十年と比較しますと、出願件数は、八百七十八件から千二百九十件、一・五倍。登録件数は、七百八十四件から千二百三十五件、一・六倍。育成者権の譲渡件数が十五件から百六件、七・一倍ということで増加をしてきておりまして、育成者権がまさに知的財産権として定着をしたということが言えようかと思います。育成者権の経済的価値が広く認められてきたというふうに認識ができると考えておるわけでございます。
特に、先生の御地元の北海道育成の小豆登録品種きたのおとめの収穫物を、平成十六年に、中国から違法に輸入、販売しようとした団体に対しまして北海道庁が警告文書を通知して、その結果、当該団体が当該品種及びこれを用いたあんの輸入を自粛したという事例もございました。まさに水際の取り締まりにおいても大きな効果を発揮したものというふうに認識させていただいているところでございます。
○佐々木(隆)委員 今、出願とか育成者権の方のお話は大分具体的にたくさんあったんですが、水際の方が、北海道の事例は出していただきましたが、インゲンとそれから小豆でそういう事例があって、当時、私も地方で議員をやっておりましたので調査にも行かせていただきましたけれども、その水際対策としての事例というのはどのぐらいの数があったんでしょうか。
○福井大臣政務官 数としては十件内外でございます。例としては、今申し上げました北海道のきたのおとめ、小豆、あんを初め、インゲンマメとかイチゴとかイグサとか桜桃とかカーネーションとかエリンギ、輪菊その他で十件ほどでございます。
○佐々木(隆)委員 後ほどちょっとまたその水際対策についてはお伺いをしたいというふうに思います。
種苗法でありますが、かつての種苗法というのは、今もお話がありましたが、どちらかというと登録をするということが主にずっと過去の経過は来たというふうに思うんですが、今お話がありました、北海道でいえばインゲン、小豆、それから九州のイグサも有名でありますけれども、いわゆる育成者権の侵害というのがこの種苗法の中でもかなり近年は大きなウエートを占めてきているというふうに思います。
そういった意味では、知的財産としての権利を守るというところのウエートが非常に高くなってきているのではないかというふうに思うんですが、ほかに類似の、いわゆる特許法とか著作権法とか不正競争防止法というのは既にその辺の整備というのはかなりされてきているわけであります。それから見ると、この種苗法は少し後追いになってきていたのではないかというふうに思うんですけれども、それらとの比較も含めて、今回の改正、どういうところを主にきちっとやりたかったんだということが今回の改正になったんだというところをお答えいただきたいと思います。
○山本(拓)副大臣 確かに、特許法の場合はもう百年の歴史がございますが、種苗法に基づく品種登録制度は昭和五十三年に発足をいたしまして、平成十年に育成者権を知的財産権として明確に位置づける等、いわゆるUPOV九一年条約に沿って全面的に改正が行われたということで、いわゆる歴史の違いというのは確かにあろうかと思います。
ただ、御案内のとおり、育成者権が知的財産権として定着をして、そして植物新品種の登録件数、育成者権の譲渡件数が近年特に増加をいたしているところで、今ほど政務官の方からも答弁をさせていただきましたが、確実に経済的価値が広く認められてきているところでございます。
その反面、当然のことながら、育成者権の侵害、いわゆる顕在化が顕著になってきたところでありまして、侵害行為に対して十分な抑制が働いておらない、また侵害行為を発見しても損害の回復までに至らないといった問題が生じてきております。登録品種でない種苗に登録品種と誤認されるおそれのある表示が付されている問題も大変多く見られるようになってきております。
そこで、今回の法改正をお願いしている案件につきましては、このような状況を踏まえて、さらに保護するために、大きく分けるとポイントは三点に整理させていただきましたけれども、一つ目としては、故意に基づく権利侵害の抑止を図るため、権利侵害罪等の罰則をまず引き上げるということであります。二つ目に、仮に侵害を受けても円滑な損害回復ができるよう訴訟上の救済の円滑化を図るということでございます。そして三つ目が、虚偽の品種登録表示を禁止する等の表示の適正化といった措置も講じたところでございます。
○佐々木(隆)委員 そういった意味では、今回の改正で、この種の知的財産のほかの権利とかなり並んだといいますか、同じような体制がつくられたということは一定評価できるというふうに私も思っているところであります。
今の時代的背景の中からいいますと、安心、安全、それから環境問題、そして知的財産というのは世界的に見ても今日的な課題ではないかというふうに私は思うんです。農林水産分野においても、例えば今の種苗法という育成権だけではなくて、育成権のほかに、育成権の中には新品種だとか遺伝資源、そのほかにも、技術やノウハウという知的財産もあるというふうに思いますし、あるいは、例えば松阪牛のような地域ブランドあるいは地域商標といったような、いわゆる有形無形に農林水産分野においてもたくさん知的財産権というものは起きてきているし、それをしっかりと保護したり確立したりしていかなければならない時代を迎えているというふうに思うんです。
農林水産省内に戦略本部も設置されたというふうに聞いているんですが、それら全体を含めた農林水産分野の知的財産というものを今後どのようにしっかりと進めようというお考えなのか、その辺についてお伺いをさせていただきます。
○福井大臣政務官 まさに情報社会、知識社会の中で農水省がリーダーとして頑張ってきたかというと、まず経済産業省がやられて、文部省が著作権その他をやられて、ちょっとおくれてきたかもしれませんけれども、今先生に御紹介いただきましたように、この三月に農林水産省知的財産戦略というのがこの本部でまとめられたところでございます。今からということでございます。
そこで、農林水産省の知的財産とは何かということを、枠組みをまず考えました。きょう御議論いただいている植物新品種ももちろんそうですが、動物等の遺伝資源も知的財産だ、それから、まさに農林水産業の、我々の業としての技術、ノウハウ、これも今先生御指摘のように知的財産だ、そして、機能性食品の製造技術、これも世界に冠たるものでございますので知的財産だ、そして、農産物や地域食品等の商標、地域ブランドも、今、これも先生も御指摘いただきましたが、知的財産だ、もっと言うと、私どもの農耕民族としての、村落共同体としての暮らし方、景観、これも知的財産だということで、本省の中で今議論が盛んに行われている、進行中でございます。
そこで、この本部では、品質とか食味とか産地、つくり方などの差別化などによる特色ある生産、販売への取り組みが、とにかく最初にやらなければならない重要なことだということでスタートをさせていただきました。
先ほど言いました戦略では、大きく言って二項目ございまして、きょう御議論いただいております種苗法改正案による権利侵害対策、これをまずやらなければならないということ、そして、二番目として、知的財産の創造、活用の促進として、生産現場における技術やノウハウの活用に資するための知的財産の取扱指針、自分たちが持っている知的財産の取扱指針、これをまず六月までにまとめようということでございます。そして、地域ブランド化支援のため、何となくやっているすごい立派なもの、おいしいものを地域ブランド化するという、その支援のためのアドバイザー派遣、これを行うということにしてございます。
いずれにしても、今先生御指摘のように、少しおくれたかもしれませんけれども、戦略を立て、本部を立ち上げて、今後とも知的財産のさらなる創造、活用、そして適切な保護、この推進に当たりたいというふうに考えているところでございます。
○佐々木(隆)委員 今、お話をいただきました。ぜひ早目に、六月ぐらいまでをめどにというお話が今ありましたので、進めていただきたいというふうに思います。
私は、とりわけ地域ブランドだとか地域商標というのは、地域づくりの観点からも非常に効果が高いというふうに思うんですね。たしか経産省でも、何かそういうものについて地域ブランドとしての商標を与えるという政策があったというふうに思うんですが、ぜひ、そうした地域の元気づくりのために、それを活用できるように仕組みをつくっていただきたいなというふうに思うのと、もう一つは、これは侵害の方になるのかもしれませんが、特に近年、遺伝子組み換えだとかいうものも出てきて、これが流通するときにまたいろいろな問題が起きてきたりもしていますので、そういった意味でも、先ほどあった表示の話なんかももし時間があれば少し論議したいんですが、ぜひそういうことも念頭に入れていただきたいというふうに思います。
次に移らせていただきます。
私は、本来、食というのは地産地消が一番いいというふうに思っているんですけれども、しかし、現実には、先ほどのFTAではありませんけれども、グローバル化してきているわけでありまして、とりわけ水際対策というのは極めて重要にならざるを得ない、食の安心、安全という観点からも極めて強化されなければならないというふうに思うんです。
海外、特にアジアにおけるいわゆる植物品種登録制度の整備、アジアで、日本のほかに四カ国ぐらいと言われていますが、しかし、品目については極めてまだ少ないわけでありますし、さらにまた、これも、日本の登録されたものが海外でしっかりと認知をされなければならないわけでありますし、さらに、輸出入業者が、先ほどの小豆、インゲンの、あんにして入ってくるというようなことがあったりもするわけで、輸出入業者に対する周知徹底だとか、あるいは税関を所管する財務省との連携だとかいうことを含めて、水際対策を今後どのように強化をしていかれるおつもりなのか、その点についてお伺いをいたします。
○山本(拓)副大臣 御案内のとおり、今回の法改正によりまして、さらに、まずは海外で一番よく見られる事例が、日本の品種を海外で作付して日本に輸入するというか、日本向けに輸出する、それは国内での排除はさらに徹底するということでありますが、それと同様にして重要なのは、今先生が御指摘のように、特にアジアの各地域で、いわゆる植物新品種の育成者権を、国際的な統一基準による保護を目的として、いわゆるUPOVと申しますが、植物の新品種の保護に関する国際条約というのが設けられておりますので、これは世界で六十三カ国・地域がこれに参加している。この条約に、基本的にアジアの国々の中で、今は、中国、韓国、シンガポール及びベトナムの、日本を除く四カ国しか加盟いたしておりませんけれども、他の国も積極的にそういうところに繰り込まれるような働きかけを積極的にやってまいりたいと考えているところでございます。
そのためには、我が国にとりまして、EPA交渉の場とか、官民合同ミッションの派遣等を通じて、アジア諸国に対して制度の充実整備を機会あるたびに強く働きかけているところでもございます。今後は、東アジアにおける品種保護制度の共通基盤をまずつくるというところでございまして、我が国のイニシアチブのもとに、東アジア植物品種保護フォーラムというフォーラムの設置を今後提唱してまいりたいと考えております。
このような取り組みを通じて、我が国で育成された品種がいわゆるアジア諸国で適切に保護されるよう環境整備をまず図っていくことが現実的な対応でありまして、それをさらに強めてまいりたいと考えております。
○佐々木(隆)委員 今、副大臣から海外との関係についてお答えをいただきました。ぜひその方向を進めていただきたいというふうに思うんですが、同時に、輸出入業者の周知といいますか、日本の輸出入業者ですとか、あるいは、水際は税関が所管することになるわけですから、所管をしている財務省との連携とか、どんどんグローバル化して物が移動していく時代ですので、特に食品は安心、安全ということが何よりも大切でありますから、ぜひそういったことを含めて一層強化をしていただきたいということを要請させていただきたいというふうに思います。
次に、育成者権を今後推進していくに当たって、先ほど来お話がありますように、一つは登録ということと、もう一つは権利侵害ということと、両方の体制が、法律を新しくするわけですから、それに伴ったやはり体制の整備というのが必要だというふうに思うわけであります。
今、権利侵害対策の相談窓口としては、つくばにあります種苗管理センターを中心にしながら、分場を含めて何かこの種のものが十三カ所ぐらいあるんだそうでありますけれども、そこに三百二十二人の人たちと、そこは育種をしているところもありますが、それと、いわゆる品種保護対策官と言われる、いわゆるGメンと言われる方々ですが、これが五カ所に十四人、これも近年ふやしてきたんだというふうに言っておられますけれども、これだけやはり品種の登録とか侵害とかというものが先ほどのお話のようにふえてきている傾向にあるとすれば、十四人が十分だとはちょっと思えないところもあるわけであります。
登録も含めて、体制の充実ということについて、例えば都道府県の、先ほど北海道の例でいいましても、あれは農業試験場がDNA鑑定をやったわけですけれども、都道府県の農業試験場、あるいは改良普及員などとの幅広い連携と体制の強化というのが私は必要でないかというふうに思うわけでありますが、その点についてお伺いをいたします。
○福井大臣政務官 今まさにおっしゃるとおりでございまして、先ほど申し上げました知的財産戦略におきまして、育成者権等の専門的知識を持っている人、普及指導員を三年間で五百人程度、そして、都道府県、市町村の農業分野の研究者や行政担当者、農協の営農指導員、まさに現場で指導に当たられる方の中から地域の指導的立場を担う方を五百人程度、合計千人、今後三年間で研修をして育て上げるということが戦略で位置づけられたところでございます。
確かに、種苗管理センターにおきまして、品種保護Gメン、今できたばかりでございますので、四名から始まって、平成十七年四名、平成十八年十人、そして十九年度で十四人ということで、まだ少ないわけですけれども、今後増員に努めてまいりたいというふうに思っている次第でございます。
○佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、農業分野においても、時代時代によってニーズというのはどんどん変わってくるわけで、やはりそのニーズがふえてくるところに体制をしっかり整備していくということが必要だというふうに思いますので、ぜひ体制の充実をお願い申し上げたいというふうに思います。
表示について少しお伺いしたかったんですが、残念ながら時間が来てしまいましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○西川委員長 次に、北村茂男君。
○北村(茂)委員 自由民主党の北村茂男でございます。本委員会での初めての発言の機会をお与えいただきまして、心から感謝を申し上げます。
私からも、種苗法の一部を改正する法律案について質疑をしたいと思いますが、お許しをいただいて、質問に先立って、去る三月二十五日発生をいたしました能登半島地震に係る、本委員会所管に係る問題もございますので、被災者の一人としても、お与えいただいたこの機会に、能登半島地震についても若干質疑をさせていただきたいと思います。
もう御案内のとおりでありますが、去る三月二十五日午前九時四十二分、私自身、我が自宅で、今まで経験したことのない、恐ろしい、恐怖を覚えた地震を体験いたしました。
これまでの人生の中でも、阪神・淡路大震災も石川県金沢で経験しましたし、中越地震もふるさとで経験いたしました。その経験からすると、地震とは揺れるものという思いでありました。電球であれ、それから飾り物であれ、揺れるものというイメージでありましたが、私にとって、この間体験した地震は、全くその思いを一変するものでありました。振れるものというか振られるものという、そんな思いでありまして、目の当たりにしました、家の中のものが倒れるという言葉がありますが、倒れるというよりも飛んでいくというような言葉が合うのではないか。しかも、逃げようのない、逃げるなどという思いは全く起こりませんでした。ただひたすらしがみついて、揺れるままに、何が起こっているんだろう、夢だろうか、こんなことが本当にあるんだろうかというような思いであの地震を体験いたしました。
ちなみに、ある体育館でバレーボールの大会を開いておったようでありますが、二百名ほどのトレーナーを着て運動靴を履いた人たちで、バレーボール大会がオープンしたばかりだったそうでありますが、逃げたのがわずか三名ぐらい、外へ逃げられる位置にいた人たちが外へ逃げただけで、残りの人たちはだれ一人逃げることもできなかったというような地震でありました。
その後、大変な被害であったことは、マスコミを通じて委員会の皆さん方も御案内いただいていると思いますし、直ちに、当日ですけれども、政府として、溝手防災大臣が現地入りしていただきましたし、冬柴国交大臣、さらには山本農林水産副大臣も直ちに現地入りをして、つぶさに被災状況を御視察いただきましたし、被災者の皆さん方にも励ましの言葉もかけていただきました。いかほど心強かったであろう、そんなことを感じているわけであります。
とりわけ、山本副大臣におかれましては、各市町村や関係者の今の状況等をお聞きする場面をつくっていただいて、農林水産省所管のあらゆる問題について詳細に事情聴取をしていただいたということでありまして、非常に地元の市町村長初め関係者は心強く感じて、感謝をいたしておりました。
そこで、山本農林水産副大臣に、現地を訪問された副大臣として、どのような思いで現地を見られたか、その所感をまずは伺いたいと思います。
○山本(拓)副大臣 私も隣の福井県でありますから、揺れは感じたところでございますが、後で能登の震度の大きさを知りまして、びっくりしたところでございます。
四月十二日に被災地に入らせていただきまして、農業用ため池とか漁港、農林水産関係の被災をつぶさに見させていただいたところでもございまして、激甚災害の早期指定などの地元の皆様方からの要望を直接承ったところでございます。
四月二十日に激甚災害の指定を閣議決定したところでありますが、農林水産省として、県並びに地元の要望については、災害復旧に万全を期しているところでございます。
私が現地に赴きまして感じましたところは、当然、自治体の災害本部の責任者の皆様方は連携よろしく、非常にしっかりと対応していただいていましたが、それ以上にまた感心というか参考になりましたのが、災害を受けましたため池にお伺いしたときに、二段ため池で、一段目のため池が二次災害的にちょっと崩れたわけでありますが、それを当然予想して、初めの段階で、現場、そこに住んでおられる人たちが予想して、反射的にきちっと水門をとめておった。
もしとめておかなかったら、また結果的に大変被害が大きかったわけでありまして、それぞれ地域地域の人が農地に日ごろ愛着というのか義務感を感じているその大切さ、地域の連帯の大切さ、それは、義務感というか反射的というか、やはり地域を愛するという気持ちからきているんだろうと思います。当然のことながら、今回の最大の功労賞は、まだ早いですけれども、検証してみて、現地で日ごろから防災対策に、目立たないけれども、未然防止のためにしっかり対応された皆さんをしっかりと我々認識する必要があるなという思いで帰ってまいりました。
○北村(茂)委員 四月四日の災害対策特別委員会でも質疑の時間をいただいて質問させていただいた段階での集計では、家屋でいうと、全壊三百五十戸、半壊が五百五十戸というような数字を申し上げての質問をいたしたわけでありますが、現時点で、全壊が六百、半壊が一千戸、それから、事業所、住戸を入れて、一部損壊と言われる戸数は一万戸を超えるというふうに言われております。その後の余震でそのように数がふえたのではなく、実態把握がなかなか地震というものはできなかったんだ、実態把握をするたびにその数はふえていくし、被害が甚大になっていくというようなことが言われているわけでありまして、その割には、政府を挙げてスピーディーな対応をしていただいたということについては、私ども非常に感謝をいたしているわけであります。
農林水産省におかれましても、各種災害の査定前の着工もいいよ、早急にやれるところはすぐやりなさいというような措置をとっていただいたおかげで、早急に進んでいるところもたくさんあるわけであります。
ちなみに、数字だけ申し上げますと、農地とか農業用施設、例えば農道等の損壊は六百七十六カ所というようなことにも上っているわけでありますし、林地荒廃二十七カ所、林道被害については二百九十三カ所等と言われております。また、水産関係についても、漁港の岸壁の陥没だとかひび割れだとか、四十一漁港百三十六カ所等の被害を受けているというようなデータもあるわけであります。
そこで、農林水産省所管の中でとりわけ被害が大きいと言われている水産関係について、水産庁としてどのような対応をされておるのか、顕著なものがありましたら御説明をいただきたいと思います。
○山本(拓)副大臣 先生御指摘のように、確かに、だんだん被害を調べれば調べるほどふえているようなところでありまして、そういう中で、わかるところから、できるところから即時対応しているところであります。
そんな中で、特に緊急に復旧を要する漁港関係につきまして申し上げますが、査定前に着工できる応急工事を石川県内の十漁港三十八カ所において行うこととして、富来漁港や鹿磯漁港など、五月からの盛漁期を迎える漁港についてはもう既に工事が完了したところでございます。
また、今後の災害復旧につきましては、五月八日から災害査定チームを現地に派遣いたしまして、引き続き石川県及び同市町村と密接な連携を図りながら、早期かつ着実に、できるところから対応して完了してまいりたいと考えております。
〔委員長退席、金子(恭)委員長代理着席〕
○北村(茂)委員 ありがとうございます。
地震がありました翌々日だったですか、地元の漁協関係者から、地元の輪島市の漁協、今、一県一漁協になりましたので支所になっておりますけれども、赤紙を張られて、もう危険家屋だから近寄ってはいけない、利用してはいけないという判定が下された、しかし行き場がない、何とか近くの、町内の集会所にいるけれども、いつまでもおれないので、沿岸構造改善事業でやった施設に入れないか、こういうような話がありました。
私は、早速水産庁に、こういう緊急時だから、何としても、補助金の交付からいえば目的外利用になるのかもしれないが、暫定措置として早急にこういうものは、書類がどこだとか手続がどこだとかということを省いてでもやってほしいということを申し上げましたら、直ちに対応をしていただいて、地元の関係者もひとまずは胸をなでおろして利用させていただいているという経緯もありました。
このような予期しない災害だけに、当局におかれましても、迅速な対応をすることが何よりも大切だというふうに感じておりまして、今後とも、農林水産省挙げて、各地域の声にこたえていただきたいということを強く要請しておきたいと思います。
それでは、議題となっております種苗法の一部改正案について伺いたいと思います。
最近、スーパーなどに時々行ってみることがあるんですけれども、さまざまな農産物や花などがたくさん並んでおって、ああ日本も大変豊かになって、そういう時代が来ているんだなということを感ずることがあります。また、その農産物の中には何と海外からの輸入物が並んでおって、こんなにも多いのかということを感ずることもあります。特に、果物や花に至るまで海外のものがあることが時々ありまして、大変国際化が進んでいるんだなということを感じております。
一方、逆に、それでは日本の果物やそういう農産物はどれほど海外に輸出をされているのかな、同じ交流貿易国家だから、我が国からも、農産物、生産物が入ってくるのに見合って輸出していくというようなことも必要ではないか。
松岡大臣は、近く一兆円の輸出を目指すんだということをかねがね言われておりまして、非常に頼もしく感じているところでありますが、我が国の輸出促進と、いわゆるこの農産物の中で、きょうの種苗法の一部改正にもかかわることでもありますけれども、知的財産の国際保護体制の確立について、輸出を含めてどのような取り組みをしていこうとしているのか、まずは松岡大臣に伺いたいと思います。
○松岡国務大臣 北村先生の御指摘についてお答えしたいと思いますが、まず、事実関係でございますけれども、十八年は、前年に比べまして農林水産物の輸出が一三%という大変大幅な伸びを示したところでございます。
その背景といたしましては、これはもう日本の農林水産物は非常にすぐれた高級品として、そのような意味で海外から非常に需要が高くなってきている。そしてまた、海外において日本食ブーム、さらにはアジア地域における経済水準の向上、こういったことが大きな背景になっていると思っております。
そこで、安倍内閣といたしましては、この農林水産物の輸出というのを一大柱として掲げて取り組んでいこう、こういう方針でございますが、いろいろな観点からこれは進めていかなきゃならぬ、こう思っています。まず何といっても、輸出を進めるための相手国との検疫交渉、こういったことも大事でございますし、こういったこともしっかり取り組んでまいりたいと思っています。
そこで、米がやっと今度中国に輸出ができるということになりました。また、五月十四日、来週ですけれども、鹿児島から香港に向けて牛肉の輸出が再開、こういう運びになりました。
しかし、これも一朝一夕じゃないわけでありまして、私ども、今ちょっと席を立たれましたが近藤先生、西川先生や皆さんと一緒になって、自民党で輸出促進の会、議員連盟をつくっています。そういう中でずっと取り組んでまいりました。もう三年ぐらい前から中国へも働きかけをし、そして一昨年の十七年の一月に、当時の阿南大使の御協力もいただきまして、試食会を大使館で催した。それから二年たって今日の解禁に至った。また、香港の牛肉も、一昨年、香港閣僚会合のときに先方の衛生大臣と交渉し、それを皮切りに、やはり一年半かかってまいりました。
したがって、大変な積み重ねの結果でありますが、しかしやっとできた。今後とも、そういう形で努力を重ねながら、そして一大輸出産業に発展できるような、そういう取り組みを強化していきたいと思っております。
もちろん知的財産権、やはりすぐれたものがすぐれた形で世界に出ていくことができる。ところが、それが守れずに相手に利用されてしまったのでは、これはやはり全然逆効果でございまして、そういった点で知的財産権との兼ね合わせというのは非常に重要でございます。そういった観点からしっかり取り組んでいきたいと思っています。
そこで、ちょっと時間がかかって申しわけないんですが、きのうも近藤先生の御質問に申し上げたんですけれども、フランスで日本食の価値向上委員会というのが、フランスの人を委員長にして、著名な十一名の方でできている。今度会談をしてまいりました。
やはり私は非常に確信を持ったのは、そのポイントだけ幾つか申し上げてみたいと思うんですが、以前は五十軒程度であった日本食レストランが、十年ほど前から急にふえた。そして日本食とは全然違うものが広がった。これを何とかしなくてはと考えていた。フランス人からも、一体どれが日本食なのかと言われていた。そこで、フランス人と日本人とで準備を開始した。計画はあったがなかなか進まなかったところ、二〇〇六年に日本政府が取り組みを始めると聞いたことが心強く、それが大きな支えになって進み出した。
これは我々が打ち出した方針でありました。間違っていなかったな、そういう確信を持ったところでございます。認証という言葉で誤解をされまして、許認可みたいに受け取られましたけれども、やはりみんなが求めている、どれが本当の日本なのか、こういった点もありました。
そこで、日本の取り組みについてプレスなどが批判しているようですが、自分としては、当地の日本食レストランの現状を前に、むしろ何もしないことに罪悪感を感じていた。本物を提供するレストランを知ることができるとフランス人はほぼ一〇〇%が賛同、三百七十一名に聞いて三百六十八名が賛同、こういったことでございまして、やはりこういったこともしっかり進めながら、日本食の、日本の食材の受け皿をしっかりとつくって輸出にこれを資していく、こういう取り組みをしていくことが大事だ、こんなように思っております。
○北村(茂)委員 大臣、次の予定があるようでございますので、どうぞ退席されて結構でございます。ありがとうございました。
それでは次に、輸出の促進、今ほどのお話のように、輸出の促進についてはなお一層取り組んでほしいというふうに思いますけれども、国際的な競争力のある輸出を展開していかなければ競争に勝てないことは当然であります。したがって、我が国の農業水産分野のいわゆる知的財産である植物の新品種を生かしていくことが重要であると思います。ただし、このような輸出を安心して行っていくためには、外国においても我が国の優秀で特色のある新品種が確実に保護される必要があると思います。
植物新品種保護の国際的な体制については、いわゆるUPOVといった国際機関があり、我が国も一九八二年に加盟していると聞いておるんですけれども、このような国際的な体制を強化していくことがなお一層必要ではないかと思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。
○山田政府参考人 ただいま委員からお話がありましたように、UPOVが今国際機関として設けられております。現在、このUPOVのもとで、我が国を初め世界の六十三カ国・地域が共通の原則に従って品種保護制度を整備しております。
我が国といたしましても、このUPOV体制の拡大、強化及び加盟各国の制度の調和あるいは連携を進めることが非常に重要であると考えております。このため、UPOVへ、年間千五百万円でございますが、拠出金を行っておりますし、それからUPOVにおける新品種の審査基準の作成やDNA技術応用に関する技術的検討への我が国審査官の積極的な参画、さらにUPOV事務局の協力を得まして、権利侵害対策の強化のための国際会議の開催や、EU、韓国といった他の加盟国との間で審査データの交換等の審査協力の促進等を進めております。
今後とも、これらの活動を通じまして、UPOVの強化に一層努めてまいりたいと考えております。
○北村(茂)委員 時間の関係で先へ進めます。
数年前でしたけれども、中国残留孤児が私どものふるさとへ帰ってこられまして、兄弟のところに身を寄せました。その身を寄せられた兄弟の方が、何を食べさせた方がいいのか、口に合うのかということで、多分、中国だから辛いものがいいんだろうというので、日本のできるだけ辛いものを含めて食物で出しました。ところが、みそ汁もどれも含めて甘いから食べられない、こう言うんだそうです。北京や上海で住んでいる人じゃなくて、結構山間部で現地の人として住んでいる人なものですから、それではというので、輪島の朝市へ連れていって何が食べたいと言ったら、まずはネギを買ったそうでありますが、その買ってきたネギも、自分で食べたら、これじゃ甘い、中国人はこのネギは食べない、これは日本人が食べるネギであって、私たちの食べるネギは違うと言われたそうでありまして、そこへみそとトウガラシをかけて食べておったそうであります。
何を申し上げたいかというと、いわゆる中国から、あるいは東南アジアから輸入されるたくさんのものがこうしてあるわけでありますが、それぞれの国のものと、日本から持ち出して中国でつくらせて輸入されているネギというようなものがあるわけでありまして、中国から買って日本に入ったネギにセーフガードをかけて、イグサと同じように一たん阻止をした時代がかねてありましたけれども、それは、日本と競合するネギは日本の人が行って中国でつくらせているネギだということを申し上げたいわけであります。本当の中国の人たちが食べるネギは我が国産の品種のネギとは違うんだということを改めてそのとき知った思いがするわけでありまして、イグサについても同じようなものだというふうに思います。
かねて私は、木材についても一定のセーフガードをかけてやれば、日本の木材は一挙にして、八割以上のものが入ってくるんだから、せめて五%ぐらいのセーフガードをかければ日本の国内林業は一遍に回復するじゃないか、こういうことをかねて地方議会で申し上げたことがあるんですけれども、それはできない、松岡大臣からも、交易国としてそういうことは不可能なんだよ、こういうことを言われたことがあるわけであります。
さてそこで、日本の商社などがそういうふうに行ってつくっているという面もあるということを聞いているわけでありますが、我が国の育成者が一生懸命つくった新品種が無断で外国に持ち出され、栽培されているのではないかという危惧が今ほど申し上げたようにあるわけであります。さらには、熊本県で育成されているイグサのように、外国において無断で栽培された新品種が我が国に逆輸入される問題も発生したと聞いているのであります。このような問題に対し、今回の法律改正においてどのように対処していくのか、副大臣に伺いたいと思います。
○山本(拓)副大臣 先生御指摘のように、種苗法では登録品種の種苗、収穫、加工を育成者権者に無断で輸出及び輸入することを禁止しており、これに故意に違反した者については育成者権侵害罪として刑事罰を科しているところであります。
今回の法改正におきましては、その育成者権侵害罪の罰則を引き上げることといたしておりまして、例えば、今までは、個人でいきますと懲役三年以下または罰金三百万円以下でしたのを、個人の場合、懲役十年以下及び罰金を一千万円以下に引き上げたところであります。また、法人につきましては、罰則一億円であったのを三億円以下に引き上げたところでありまして、そういう不法なことをしても罰則がきついからもうからないよという抑止効果をねらってのことでございます。
品種登録の義務化によって種苗が登録品種であるかどうか明らかにするとともに、意図せぬ形で種苗が育成者権者に無断で輸出入されることを防止することにより、登録品種の海外への違法持ち出し及び逆輸入を撲滅するために一層これが有効であると考えているところであります。
○北村(茂)委員 今ほどの答弁では、今回の種苗法改正では違法品の輸出入の取り締まりの強化は実現できる、海外での無断増殖行為そのものを取り締まることはできないということでありました。つまり、我が国の育成者が海外で育成者権を行使するためには、それぞれの国で品種登録を行う必要があると思います。
そこで、我が国と特に関係の深い中国、韓国、東南アジア等に対しては、我が国からの登録を可能とする品種保護制度の整備について特別な働きかけを行うとともに、あわせて我が国の育成者にそれらの国への申請を促す必要があると考えますが、いかがでしょうか。お考えをお伺いしたいと思います。
〔金子(恭)委員長代理退席、委員長着席〕
○山田政府参考人 ただいま委員からお話がありましたように、アジア諸国におきましては、このUPOV条約への加盟国、これは我が国を含めて五カ国にとどまっておりますし、多くの品目がまだ保護対象になっていないという状況にございます。このため、我が国では、委員からお話がありました中国、韓国等のアジア諸国に対して重点的に働きかけを行っております。
まず第一に、EPA交渉の場、あるいは官民合同ミッションの派遣等を通じまして、制度の整備拡充を強く働きかけておりますし、次に、UPOVへの拠出金を活用しましてセミナーの開催を行いましたり、あるいはJICAと協力いたしまして、審査能力向上のための研修等について支援を行っているところでございます。
また、育成者権については育成者みずからが守るというのが原則でございますけれども、我が国の育成品種について、海外で円滑に権利の取得が行われ、また、仮に侵害に遭っても円滑にその対応が行われるようにする必要がありますので、農林水産省といたしましては、まず、中国へのモデル出願等を行いまして、海外の品種保護制度や許諾の実態に関する情報収集、提供を行っておりますし、また、海外での権利取得、権利侵害対応のためのマニュアル作成、あるいは海外への輸出を図る我が国のオリジナル品種についてのDNA識別技術の開発等を推進しているところでございます。
○北村(茂)委員 なお一層の取り組みをお願いしておきたいと思います。
そのように、今ほどのお話のように、アジア諸国に制度充実の働きかけを通じて、それぞれの国の保護制度のレベルが上がってくることはもちろん期待をするところであります。このようなことを積み重ねていけば、将来的には、植物の新品種の保護について、例えば東アジアで共通の枠組みをつくって、保護の強化や審査の効率化を共同で進めていくようなことも可能になるのではないかと考えます。
このような東アジアでの協力の枠組みづくりに向けた努力が必要と考えますけれども、このことに対する副大臣のお考えを伺いたいと思います。
○山本(拓)副大臣 知的財産権の問題で、特許法の場合は百三十年の歴史がございますが、種苗法関係については昭和五十三年からということで、そういうことを見ましても、特に品種に対する認識というのが、国内は徐々に浸透してきましたが、アジアのそれぞれの国においては何を言わんかということで、まだまだ認識が低いというところもございます。
そういう中で、一つには、にせものをつくる人たちも、お金にならなかったらリスクは背負わないわけでありますから、先生先ほど御指摘がありましたように、日本からそれを持ち込んで、それを買い付けるよというこの行為は、今回の法律改正によって抑止効果、また水際策でしっかりととめていきたいと考えております。
そういう中で、当然、時間をかけてでも、それぞれの国においてしっかりと、先生御指摘のいわゆる東アジアの植物品種保護を目的としたフォーラムをつくっていくということは大事でございますし、この件につきましては、四月四日決定されました二十一世紀新農政二〇〇七において、東アジアにおける品種保護制度の共通の基盤づくりということを打ち出しておりまして、それに沿って、我が国がイニシアチブをとることにより、地域の協力の場としての東アジア植物品種保護フォーラムの設置を提唱、今後精力的に具体化していきたいと考えております。
その中身につきましては、一つ目といたしまして、人材育成等制度運営の能力のための協力、そして品種登録に関する審査、登録義務の共同化、さらには育成者権の侵害対策やDNA識別技術の開発等のための協同した取り組み等を内容とする協力方針について話し合っていきたいと考えているところでございまして、いわゆるUPOVでの会合や、本年十月に我が国で開催いたします植物品種保護制度に関する国際会議等の機会を利用して、それぞれ、その品種の知的財産権の重要性というものを、積極的に、機会あるたびに浸透していきたいと考えております。
○北村(茂)委員 それでは次に、育成者権も含めた知的財産の農林水産分野での創造、保護及び活用に関し、幾つか伺いたいと思います。
まず、輸出の促進も含めた攻めの農政の実現には、農林水産分野において、育成者権のみでなく、特許権の活用、商標権や地域団体商標の活用によるブランド化など、幅広い知的財産を戦略的に活用していくことが不可欠であると考えます。農林水産省の取り組みの基本方針を、農林水産省知的財産戦略本部の本部長である福井大臣政務官に伺いたいと思います。
○福井大臣政務官 御指名ありがとうございます。
今先生おっしゃいましたように、農林水産業の発展を考える際に、品質が違うんだ、食味が違うんだ、産地が違うんだ、つくり方が違うんだということで我が産物が差別化される、特色があるということで生産、販売へ取り組むということが一番重要だということで、おっしゃるように本部ができました。そして、この三月に知的財産戦略がまとまったところでございます。
今おっしゃいましたように、権利侵害対策に加えまして、生産現場、現場で技術やノウハウが活用されるように、取扱指針を六月までに作成いたします。そして、平成十九年度から予算も獲得しておりますけれども、地域ブランド化支援のためのアドバイザー、中小企業診断士とか民間コンサルタントを具体的にはイメージしておりますけれども、アドバイザーを具体的に派遣するということを考えている次第でございます。
いずれにしても、私どもが持っている知的財産、これを戦略的ツールとしてますます活用していきたいというふうに考えている次第でございます。
○北村(茂)委員 今ほど答弁にもありましたが、農林水産分野の知的財産には、技術やノウハウ、ブランドなどの多くのものがあり、これらを多角的に活用していくことが重要であります。
さきに質問しましたが、輸出の促進に関していえば、我が国の質の高い農産物や食品について、おいしさ、高品質、高級感といった他の国にまねのできない日本ブランドを確立していくことも重要であると思うが、政府としてどのように取り組んでいこうとしているのか、伺いたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、輸出を促進するためには、我が国の農林水産物の魅力を輸出先国の消費者に認知してもらうことが必要でございます。高い品質を持つ日本産の農林水産物、食品のブランド化や訴求力のあります情報発信が重要な課題であります。
このため、農林水産省といたしましては、日本産農林水産物、食品の魅力がより多くの海外のバイヤーやあるいは消費者に伝わりますよう、品目ごとの広報戦略に従いましたDVDやあるいはパンフレット等の広報媒体を整備することとしています。
また、他国産との差別化あるいは信頼力を高めるブランド化が図られますよう、果実と和牛について統一マークの作成、導入を推進するとともに、アジア諸国を中心に偽装表示の実態調査を実施することといたしております。
さらに、日本食あるいは日本食材等の海外への情報発信については抜本的に拡充いたしまして、重点的、戦略的なイベントの開催、あるいは日本食レストラン推奨計画との連携、あるいは在外公館等の協力を得まして、既に十三カ国で実施しておりますけれども、日本産の農産物を海外にPRする和食トライ・ジャパンズ・グッド・フード事業などを積極的に推進してまいる考えでございます。
○北村(茂)委員 それでは次に、知的財産を上手に利用していくためには、例えば試験研究機関で開発された新技術や機能性などの特徴ある農産物の新品種を活用して、新たな需要や新しい産業を生み出していく努力が必要であると思います。このような知的財産の利活用は、特色ある産地を育成し、地域の活性化を図っていくことにつながると思います。
政府として、このような取り組みに対する支援をどのように考えているのか、伺いたいと思います。
○山田政府参考人 新技術や新品種の活用についてのお尋ねでございます。
国内農業の体質強化あるいは国際競争力の向上を図るという上では、農業生産における技術革新を興して、これを普及していくということが極めて重要であると認識しております。
特に、最近では、抗アレルギー作用を持つメチル化カテキンを多く含むお茶、べにふうきと言っておりますが、こういったものなど、これまでと異なる画期的な新技術や新品種が開発されております。これらが特色ある新食品、新素材として事業化され、新たな産地形成につながる事例が見られるようになっております。
このため、我が国の技術力を生かして新需要を創造し、新産業分野を開拓するということから事業を実施しておりまして、その事業内容といたしましては、新食品、新素材の画期的な利用方法や市場性に関する情報を提供するとともに、産地と企業とのマッチングを行う。また、産地と企業との契約によりまして、新食品、新素材の原料となる高品質な農畜産物を安定的に供給するための必要な技術指導や機械・施設の整備を行う。
こういったことによりまして、新技術、新品種を核とした特色ある産地の育成や地域の活性化を支援してまいりたいと考えております。
○北村(茂)委員 時間も参りましたので。
私も、このことに関して地元でいろいろな話を伺いました。私自身も、このことについて、種苗法に関する知識は余り十分ではありませんでしたが、地元の農業関係者に伺っても、いわゆる知的財産等にかかわる認識は余り十分でないような気がいたしました。また、これらを利用するノウハウを持った方もそれほど多いとは思えません。
しかし、今後の重要性を考えると、これらの地域における知的財産の一層の保護や活用を図っていくためには、それぞれの地域の生産現場に近いところに知的財産の保護や活用などについての制度をよく知っている人、あるいはアドバイス等ができる人を、人材を確保しておくことが重要だということをつくづくと感じました。
これらのことについて、なお一層農林水産省として取り組んでいただきたいということを最後に申し添えて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○西川委員長 次に、井上義久君。
○井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。
初めに、この種苗法に関連をして、農林水産業分野の知財戦略について、最初にお伺いしたいというふうに思います。
私は、日本の農林水産業については、これは食料の安全保障、あるいは国土保全などの多面的な機能ということを考えますと、やはり守るべきものはしっかり守るということが農林水産行政の基本ではないか、このように思っているわけでございます。
その上で、一方で、国際競争が非常に激化しているということもございますし、あるいは地球の温暖化とか気候変動、さらには人口増加、途上国の経済成長、それから最近ではいわゆるバイオエタノールというようなこともあって、世界的な農林水産資源の争奪戦が始まっているということを考えますと、やはり守るということは基本なんですけれども、一方で攻めということが非常に大事じゃないかなというふうに思っております。その攻めの一番の武器が、私はこの知財ではないかというふうに思います。
そういう意味で、農水省としても、昨年二月に知財戦略本部を立ち上げて、この三月には農林水産省知的財産戦略を策定したというふうに聞いています。
そこで、農水省としてこの知財戦略をどのようにとらえ、今後どのように取り組んでいくのか、また、この知財戦略を推進するための予算措置、これはどうなっているのかということをまずお伺いしたいというふうに思います。
○福井大臣政務官 先生今おっしゃいましたように、昨年二月に農林水産省知的財産戦略本部が設置をされました。自来いろいろ議論を重ねさせていただきましたが、私自身も含めて非常にびっくりしたのは、例えば、今度平泉で、世界遺産のウエーティングリストになったんですけれども、お寺とか寺院とかとは別として、何でもない普通の農村景観というのが世界遺産の指定理由になっているというぐらい、私たちがふだん暮らしている何でもない風景、何でもない食べ方、生き方、心のさまが世界遺産に相当するような知的財産ではないかということで、私たちが持っているものを棚卸ししなければならないというのが議論の中核でございました。
したがって、この身近な景観や食文化も含めて知的財産ということで定義をしようということで、きょう御議論の植物新品種も知的財産、そして動物等の遺伝資源も知的財産、そして根幹的な農林水産業の技術、ノウハウも知的財産、機能性食品の製造技術も知的財産、地域食品等の商標、地域ブランドも知的財産という定義をした上で、戦略を立てさせていただいたわけでございます。
この三月の戦略では、主として三項目ございまして、きょうの種苗法改正案による権利侵害対策、そして地域ブランドの推進、日本ブランドの醸成、そして三番目に、何よりも、先ほどからずっと御議論がございました、意識を持っている人、知識を持っている人、現場現場で指導する人を育成するということで、平成十九年度におきましては十八億円、二億円から一挙に十八億円ということで支援措置を講じているところでございます。
いずれにしましても、この知的財産こそ攻めの根幹的なツールということで推進をさせていただきたいというふうに思っている次第でございます。
○井上(義)委員 今お話がありましたように、農林水産分野における知的財産は非常に幅広いわけですけれども、その最も重要な一つが植物の新品種だというふうに思います。
昭和五十三年に種苗法が制定をされて、植物新品種の保護を通じて育成を促進する、そういう意味では、日本の農林水産業の発展に貢献してきたということについては大きく評価をしたいというふうに思います。
ただ、種苗法の改正内容は、今回、罰則の強化とかあるいは民事訴訟法の特則の整備などでございまして、特許法とか著作権法等の規定にならった改正です。種苗法は平成十五年、十七年、過去二回改正が行われておりまして、この特許法、著作権法の規定にならった今回の改正、既に改正の機会があったのではないか。それにもかかわらず他の知的財産権法に比べて種苗法の規定整備がおくれたというのは、どこに理由があったのか。そのことについてまずお伺いしたいと思います。
○山田政府参考人 種苗法の規定整備の関係の御質問でございます。
委員からお話がありましたように、今回の種苗法の改正の内容、主に三つございまして、一番目が罰則の強化でございます。これにつきましては、近年、政府全体として知的財産権の侵害罪に対する罰則の強化に取り組んでいるという状況にございます。今回の種苗法改正は、特許法、著作権法とは約一年のずれはございますけれども、おおむねこの方針に沿って同時期に改正を行ったということでございます。
それから、第二番目の民事訴訟の救済措置でございます。これにつきましては、委員からお話がありました特許法などはかなり前からやっているということでございます。特許法は、御案内のとおり、現行法が昭和三十四年に制定されたということでございまして、その後実例、裁判例の積み重ねがありまして、民事訴訟法の特例をつくるべきその実態が明確になってきていたということがございます。そこで、平成十年、十一年、十六年と順次規定を整備した。
ところが、種苗法は、平成十年にようやく知的財産として明確な位置づけがなされたということでございまして、最近ようやくその育成者権の実績の積み上げができてきたということで、今回の改正に至ったということでございます。
それからもう一つ、種苗法で特色のあるものが品種登録表示の適正化の部分、三番目の改正でございます。これにつきましては、種苗については特にその外観から区別がつかないということで、品種の識別に当たって名称が非常に重要でございます。ここが特許と異なる点でございまして、この品種登録表示のあり方については、単純に特許法等をならうというわけにいかないところがございまして、植物の品種の利用の実態を踏まえた検討をやってきたということでございます。
○井上(義)委員 今回、改正に当たって実施されたアンケート調査によりますと、権利侵害を受けたというふうに回答した人が全体の三分の一あって、そのうちの四割は何の対抗措置もとらず、民事、刑事の法的な措置をとった例はほとんどないということでございます。
この理由としては、育成者には大企業だけではなくて中小の種苗会社や個人も多いということから、権利侵害に対してどのような対応措置をとったらよいのかふなれな人が多かったということが挙げられるんじゃないかというふうに思います。
そこで、今回の種苗法改正の柱の一つは、この民事訴訟法の特則の整備による民事的救済の円滑化でございます。これによって原告となる育成者側が民事訴訟を行いやすくなることは評価するものです。しかし、法的整備、規定整備だけでは十分ではなくて、法的な対応を支援する体制の整備が重要であって、種苗管理センターやここに所属する品種保護Gメンの役割は飛躍的に増大するのではないかというふうに思います。
今後、この種苗管理センターの機能拡充あるいは品種保護Gメンを増強していくことが不可欠だというふうに考えますけれども、これについてどのような方針をお持ちでしょうか。
○山本(拓)副大臣 今ほど先生が御指摘のとおり、大変重要な問題でございまして、平成十七年度から、そういう意味を込めまして、品種保護Gメンを設置したところでございます。
品種保護Gメンの具体的な活動内容といたしましては、育成者権侵害対策に係る助言並びに権利侵害に関する情報の収集及び提供、さらには、育成者権を侵害しているか否かを判断する試験の実施等でございます。
種苗管理センター及び品種保護Gメンの活動に対するニーズは、侵害が疑われる事案の増加が見込まれる中で一層高まっていると認識しておりまして、このために、農林水産省といたしまして、平成十九年度において、品種保護Gメンを十名から十四名に増員するとともに、その全国配置を進め、求めに応じてどこにでも出向く体制を整えることにより、全国の多くの育成者権者等の支援要請に機動的にこたえていくよう体制整備を整えることといたしております。
そして、同じように、特許庁の方で特許法の改正が同時期になされたところでありまして、その改正によりまして、特許を既に取得している人が、定期的に、弁理士会の方を中心として、既に権利を持っている人に対して更新をする、そのプログラムの中にこの新品種のことについても講座を設けて、そこでみんなに知らしめるということも農林水産省としてもお願いいたしまして、弁理士会の方でもその受け皿をつくっていただいているところでございます。
○井上(義)委員 先ほどの答弁にもありましたけれども、平成十年にようやく知的財産として認められたということでもあるように、農林水産分野では、この知的財産の活用を余り意識してこなかったということはあると思います。そういうこともあって、知的財産に詳しい農業関係者は極めて少ないというふうに思われるわけです。今後の知財戦略ということを考えますと、農業生産者、農業関係者等と日常的に接する地方自治体や、あるいは、JA等による知的財産の活用や権利侵害の防止のための指導、相談体制を強化していく必要があるのではないか。
また、育成者権の侵害等の紛争が生じても、現実的にはすべて裁判で決着するということは考えにくいわけです。そこで、ことし四月から施行されました裁判外紛争解決手続の利用促進法、いわゆるADR法を活用して、日本知的財産仲裁センターなどの裁判外紛争処理機関を活用するということも考えていいのではないかというふうに思いますけれども、農水省の認識及びこの点についての対応をお伺いしたいと思います。
○山田政府参考人 相談、助言体制あるいは裁判外での解決手続についてのお尋ねでございます。
やはり、農家の方あるいは育成者権者が、その居住する地域内で種苗法の専門家に容易に相談できる、あるいは助言を受けられるということは極めて重要であると考えております。
これにつきましては、先ほど委員からお話がありました、種苗管理センターでの相談あるいは農林水産本省での相談もありますけれども、地域におきましては、本年三月に策定しました農林水産省の知的財産戦略におきましても、地域で相談ができるような普及指導員を五百人程度育成する、また、地域におられる都道府県、市町村等の行政の担当者、研究者や農協の営農指導員など約五百人程度を相談ができるような人として育成するということで、研修を実施していきたいと考えております。
また、委員からお話がありました二番目の、ADR法を施行されております、また、紛争処理機関として日本知的財産仲裁センター等もありますので、そういった機関あるいはそういった制度との連携、そういったことができるかどうかにつきましても、その可能性を十分研究していきたいというふうに考えております。
○井上(義)委員 それから、品種登録表示の努力義務化ということについて、一点だけ、ちょっとお伺いしておきます。
農業者等が登録品種であることを知らずに、親切心から外国人に種苗を譲渡するケース、例えば、山形県が育成したサクランボ、紅秀峰というのがありますけれども、農家が登録品種とは知らずに豪州人に渡した、これが現地で無断で大量に増殖されて、その収穫物が日本へ逆輸入されそうになっているという事例があります。このような意図しない権利侵害を防止するためには、品種登録表示をやはり義務化して、その種苗が登録品種であるという事実を農業者等まで確実に情報が伝達されるようにする方が効果的ではないかという指摘があります。
しかしながら、今回の改正案では単なる努力義務にとどめられているんですけれども、それでは、品種登録表示を行うよう努めるべき者の範囲だとか表示方法、これを具体的にどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。
○山田政府参考人 ただいま委員からお話がありました品種登録表示の義務の話でございますが、これは、今お話がありましたとおり、利益を受けることがない流通段階のすべての方に過度の義務を課するのはどうかということで、努力義務化という規定になっておるわけでございます。
この努力義務の範囲でございますが、種苗を業として譲渡する者ということとしております。種苗は、生産されて種苗の利用者である農業者等に到達するまで流通業者を転々として流れていくわけでございますし、種苗が小分けされるということもございますので、容器が変わっていくということもございます。このようなことから、今申し上げたような範囲での対象者としております。
また、表示の内容といたしましては、農林水産省で定めることとしておりますけれども、流通実態や利用者の認識等を踏まえて、わかりやすい、また、適切な内容というふうにしていきたいと考えております。
○井上(義)委員 最後に、大臣にお伺いしますけれども、今回の種苗法の改正によって、育成者権の侵害の抑止効果、これは高まるだろうと思いますし、また、民事的な救済も円滑化されるんじゃないかというふうに期待しています。
しかし、新品種の保護、活用というものを一層促進していくためには、種苗法の整備はもちろんですけれども、農業者等への品種保護制度の普及啓発、あるいは、品種保護制度の整備のおくれているアジア諸国への対応など、関連する政策を総合的、戦略的に講ずることによって初めてその効果が発揮されるのではないか。
この知財戦略を含めて、新品種の保護、活用ということについて、総合的なお考えを最後にお伺いしておきたいと思います。
○松岡国務大臣 結論的に申せば、先ほどから井上先生が御指摘されておられるとおり、また、ただいま御指摘いただいたとおりだと思っております。
何といっても、我が国は、物理的な面でいえば、国土が狭く、地形も急峻であるといったことから、競争力という点につきましては物理的な限界がある。そこで、やはり、競争の代表的な面として、これは有利な面として、また、競争に勝てる面としては、どうしても、新品種による競争力の発揮、強化、これが重要だと思っております。
そういった意味で、今回の種苗法改正によって大きく前進があると思いますが、先生御指摘のように、種苗法の改正だけではなく、総合的な対策を一緒に講じていく、これが重要でございます。おっしゃいましたように、審査体制の充実強化のための審査員の増員、品種保護Gメンの一層の活用によりますところの侵害対策支援業務の充実強化、さらにはまたDNA品種識別技術の開発の促進、そして、今も御指摘いただきましたが、アジア等の国々に対する品種保護制度の整備充実の働きかけ、さらにまた新品種保護制度の普及啓発や審査技術向上のための人材の育成、こういった関連する施策を総合的に展開してその充実を期していく、そのことによって本来の目的を遂げていきたい、このように思っております。
○井上(義)委員 ぜひしっかり、攻めの農業の最大の武器として取り組んでいただきたいというふうに思います。
以上で終わります。
○西川委員長 次に、岡本充功君。
○岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。
きょうは、種苗法の改正について質問に立たせていただきます。
種苗法の改正は、近年、二年ごとに行われておりまして、知的財産の制度、概念の、ある意味では創設期、そしてまたその改変期の中で改正をしてきているということについては、先ほども答弁があり、一定の理解をしているところではありますが、今回の法改正について、冒頭、一点、大臣にお答えをいただきたい部分があります。
権利侵害に対する救済の実効性を高めるということで、訴訟上の救済を円滑化するという中で、権利侵害に対する被告の説明義務というものがあるわけですが、これについて、大臣、どういうことなのか、ちょっと説明いただけますでしょうか。
○松岡国務大臣 今の先生の御質問、お聞きをいたしておったわけでありますが、通告もいただいておりませんでしたので、ちょっと具体的な内容につきましてはにわかに答えかねますが、どのようにお考えかということでございますけれども、いま一度、ちょっと御趣旨を言っていただければと思います。
○岡本(充)委員 農林水産省が提出されたこの法案、私たち議員にも説明をいただいた資料に、農林水産省側の資料にも載っていたものです。
大臣、一番簡単な絵は恐らく今お手元に行っているんだろうと思いますが、訴訟上の救済を円滑化するというのが一つのテーマになっている。その中で、権利侵害に対して被告の説明を義務づける。これまで原告がその権利侵害をある意味説明しなければいけなかったところに対して、被告側の説明義務というのが設けられたそうでありますけれども、これについて大臣からの説明をいただきたいと思っています。
○松岡国務大臣 その点につきましては、育成者権側に立証責任は残るものの、被告が侵害行為を否認する場合には、自己の具体的な行為の態様を示さなければならない、そういう観点からのものだと思っております。
○岡本(充)委員 これまでは、原告がもし私の権利が侵害をされたといって訴えたとしても、被告側には、侵害をしていないということについて説明をする義務がなかったわけですよね。もし違っていれば、そこは違っていると言ってください。
私が言いたいのは、そうでないということであれば、そうでないという資料を被告にも提出して説明をしてもらう、そういった責務を今回負うということになっているという理解でいいのかということを聞いているんです。
○松岡国務大臣 これは民事ですから、立証の責任は原告側にある。しかし、それに対応した形で被告側も対応しなきゃならぬ、こういうことだというふうに聞いております。
○岡本(充)委員 被告側がどのように対応するんですか。
○松岡国務大臣 どのように対応するかと個別具体的なことではありませんから、それ以上は私もちょっと答えかねます。
○岡本(充)委員 これは別に個別具体的な例を私は出しているわけじゃないんです。一般的に訴訟における立証責任また証明の責任がどのように変わるかということを聞いているわけでありまして、これは一般論であります。個別の事例ではありません。
大臣、これは何も細かいことを聞いているわけじゃありません。今回の法案の一番骨格の部分ですよ。これは一番骨格の部分です。そういう意味でいえば、通告がないから私は答えられませんと言われるような枝葉を私は聞いていません。ここは骨格の部分ですから、お答えをいただきたいと思います。
○松岡国務大臣 今回どこが違うのかということは、先生が逆に御指摘をされておりますように、原告が立証責任がございますが、被告もそれに対応しなければならない、こういうことであります。そこが違う。
○岡本(充)委員 それでは全然今回の骨格の部分の答弁になっていないじゃないですか。権利侵害に対する被告の説明義務ということが盛り込まれているんでしょう。これはちゃんと答えてください。重要な部分ですよ。
○松岡国務大臣 具体的には、権利侵害をしていないということを、否定するためには、侵害品の品種なり形状、色、包装の状況等や侵害行為が行われた日時、譲渡等の相手方等がこれに該当するもの、そういったようなことの対応をしなきゃならぬ、こういうことだというふうに思っております。
○岡本(充)委員 そういうことの対応というのは何なんですか。対応とは何ですか。
○松岡国務大臣 具体的には、先ほど言いましたように、侵害品の品種、形状、色、包装の状況等や侵害行為が行われた日時、また譲渡等の相手方等がこれに該当するものと考えております。
○岡本(充)委員 動詞がないですよ。今のはわかりましたよ。名詞は並べられました。それをどうするということなんですか。被告がどうするんですか。
○松岡国務大臣 それを被告が説明するということであります。(発言する者あり)
○岡本(充)委員 今、高山委員からも言われましたけれども、どちらが挙証責任があるんですか。
○松岡国務大臣 挙証責任は原告にあるわけでありますが、被告の方も説明する必要がある、こういうことです。
○岡本(充)委員 被告には義務はないんですか、説明する義務は。
○松岡国務大臣 原告の挙証責任とあわせて被告にも説明する義務がある。
○岡本(充)委員 もう一度繰り返しますと、今回の法改正に当たって、大臣、原告がもしかしたらいわれもないことを被告に言っているかもしれない、そういうときに、被告側にもこれはある程度の説明をしてもらう義務を負わせるわけなんですね。
どちらが挙証責任があるかということについて言うと、これまでの法体系の中では、挙証責任と言われるものは原告側にあったわけですけれども、被告がそれを否定する、否認をする場合には、自己の行為について説明することを義務化したわけですね。この考え方で正しいですか。
○松岡国務大臣 そのとおりだと思います。
○岡本(充)委員 それで、今回、この法案を出される主務大臣として、ある意味、何か、ある事件について、事案について、今回のこういう種苗法のことについては、責められたとすれば、これについて、被告側もそうじゃないというのであれば説明をする義務を負う、こういう法案を出している一方で、御自身は、事務所費の問題について、いわれのないことを言っているのであって、領収書を出す必要がない、説明をする義務はない、こうやって言われる。
片一方で、法改正において、こうやって説明する義務を負うんだというような法改正を出しておきながら、御自身のことについては説明をする義務を負わないというふうにお考えになられるというその御心境はいかにと私は思うわけでありますが、大臣、お答えいただけますか。
○松岡国務大臣 なかなか、岡本先生、頭のいい論理の組み立てでお話をされているんだろうと思うんですが、これは知的財産に関する特別法でございまして、私は既に法律に基づいて行って適切にやっていることですから、これとは該当しないと思っております。
○岡本(充)委員 違うんですよ。だから、これまでの種苗法では、法に基づいて説明義務がなかったんでしょう。これ、今回、説明義務をつくるわけですね。やはり、被告側にも、否認するのであれば説明をしてもらわなきゃいけないよね、だから法改正を出されたわけでしょう。
大臣、これまでの法律の枠組みだったら説明義務はなかったんです。それを、説明義務を設けようといって法律改正出すんですよ。
大臣は、みずからこういう法律案を出しておきながら、御自身のことになると、法律を改正する、そういうおつもりがあるやないやは、それはそれぞれの議員の話だとは言われるけれども、自分は説明も果たそうとしない、こういう話であれば、この法律に対して、私は恥ずかしくないのかと。こうやって、説明義務を設けるといって法改正をするわけですから、御自身もきちっと説明義務を果たされるということが重要なんではないかという観点でお尋ねをしているわけです。
そういう意味で、現状、現行法では種苗法も説明義務はありません。しかし、説明義務を設けるんです。政治資金規正法も、現状では説明義務はないかもしれない。でも、大臣として、こういう法律を出しているんなら、私も自分の事案について説明をしましょう、こういう気持ちにはなられないということなんですか。
○松岡国務大臣 頭が大変いい岡本先生がと、こう申し上げましたが、それを通り過ぎてまさにこじつけでありまして、これは種苗法の世界で、確かに私は種苗法を所掌いたしておりますが、政治資金規正法は、これはまた別の世界でありまして、したがって、そこでそういったようなことが、今の種苗法の改正と同じように、義務づけられるということになれば、これはまたそれに従って対応する、そういう論理なんだろうと思います。
○岡本(充)委員 自分の主管する、所掌する範疇でない法律だということは私も重々承知していますよ。ただ、こうやって訴訟の世界においてもこういう説明義務を設けるように言うということであれば、御自身のこの対応についても説明をされるというのが、私はある意味真摯な姿だと思いますよ。そういうことを指摘しているわけでありまして、私だって、別に政治資金規正法と種苗法が何らかの分野で同じ範疇に入るだなんてことは一言も言っていません。
ただ、それは説明責任、説明義務、こういったことを、否認するのであればですよ、肯定をするのであればこれは恐らく説明義務がないんだと思います。ただ、否認をする場合に限って説明しろということを義務づけるわけだから、これは大臣、先ほどみずから、私がこれでいいですね、そのとおりですと言われましたけれども、これについてきちっと説明をされるということでなければ、これはやはり大臣として、この法案、この部分一つとって言うのも失礼ですけれども、全般としては私も決して悪い法律ではないと思っていますよ。
ただ、この部分を見てみると、大臣として、私の所管する法案でありますということを胸を張って言われるということについて、私は、それでは大変残念だし、それでは皆さん方も納得をされないと思うわけでありまして、残念ながら、大臣、きょうも御自身の政治資金の中身、今の法律の枠を超えて御説明されるつもりがないということであれば、ここから先、副大臣、政務官に御質問をしていきたいと思いますが、説明をされるつもりは、きょうはありませんよね、ありますか。どちらですか。
○松岡国務大臣 ちょっと聞こえなかったんですが……(発言する者あり)
○西川委員長 ここから先、今までの一連の経過について説明する気は、今からありますかと。
○松岡国務大臣 聞こえなかった方はそちらの責任だとおっしゃいますが、これは、しかし、お互いにそこは、聞こえなかったときは、またそれなりのことをするというのも、これはまたある程度の、それなりの配慮じゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、委員長からも今お話を聞きましたところ、もう既に、これは今まで申し上げたとおりであります。そして、御指摘は御指摘として、岡本先生はそのような御見解であると、このように受けとめさせていただきます。
○岡本(充)委員 私が一生懸命大臣の方に向いてお話をしても聞いていていただけなかったということは大変残念ですし、私の声が小さくて聞こえなかったというのであればそれは私の責任ですけれども、私の声が聞こえなかったはずではないはずであります。
大臣、私は、一生懸命話をしているのに聞いていただけていないということが大変残念でならないということをお話をして、時間もありますので、内容に移っていきたいと思います。
ここからは、今の事情により、副大臣、政務官に御答弁をいただくという形で、法律の内容について質問をしていきたいと思います。
まずは、先ほどもお話をしました、たび重なる種苗法の改正であります。
種苗法につきましては、過去にももう何遍か改正をされており、私はその内容についてそれぞれ今説明をしてほしいという気はありませんけれども、この知的財産の世界、例えば、ほかの特許法などと比べて、種苗法もそれにキャッチアップしていかなきゃいけないという思いで改正をしていくということについてはよくわかります。しかし、それにしても余りに頻回ではないか。
もっと言えば、逆に、先を見通してこの法改正をしていくということがこれまでなぜできなかったか、してこなかったわけではないと思うけれども、できなかったか。それを踏まえて、この種苗法の改正、今改正を求めている中で、次の改正はいつですかとは言えないけれども、しかし、今後はどういうような視点でこの知的財産の重要な品目であります育成者権を守り育てていくのか、こういった観点で御答弁をいただきたいと思います。
○福井大臣政務官 今先生御指摘のように、種苗法の制定、これまでの改正、数次に行われたわけでございますけれども、これはUPOV条約の改正、発効とか、あるいは政府全体の知的財産制度の整備の方針とかを踏まえて、しかし、この種苗法というのは、ほかの特許権、著作権の世界とは少し違いますので、種苗法に必要な規定を導入してきたわけでございます。
特許法等との関係でございますけれども、三つに分けて考えることができると思います。
一つは、今回、罰則を強化させていただいているわけですけれども、これは特許法とほぼ同時期に共鳴するように行われております。
それから、二番目には、先ほどから先生御議論の訴訟上の救済措置の円滑化につきましては、昭和三十四年制定以来の実例の積み重ねを踏まえて、順次規定を整備したわけでございます。特に、平成十年、種苗法が知的財産として一人前に歩き始めたわけでございますので、その後の実績の積み重ねを踏まえて今回の改正に至ったわけでございます。
それから三番目には、品種登録表示の適正化でございますけれども、これは名称が重要な意味を持つという特徴、つまり外観では品種が区別できないという種苗の特徴を踏まえて、特許法とは少し異なる検討が今まで積み重ねられてきたということでございます。
いずれにしても、知的財産を戦略的ツールとして、本部を立ち上げ、そして戦略を発表したわけでございますので、その重要性にかんがみて今後も対応してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○岡本(充)委員 せっかく今御答弁いただいて恐縮でありますけれども、私の質問にはお答えいただけていないように思うわけなんです。
これまでの改正の中身は結構ですとお話を冒頭申し上げました。これまでの改正はここが変わりましたということではなく、これまでほかの法律に比べても頻度の高い法改正をしてきたわけであります。逆に言えば、これだけ頻度の高い法改正をしている法律というのはそうそうないわけでありまして、この中で、例えばこれからの知的財産の保護、育成者権の保護を見据えて、これだけ短期間に法改正をしてきたことの、まあ、反省と言っては失礼ですけれども、この現状を踏まえて、これからどうあるべきだというふうにお考えなのか。
もっと言えば、次の法改正はいつかというようなことまでは言えないけれども、しかし、今後、種苗法の世界、育成者権をどのように守り育てていくかということについて、もっと大局的な観点からお話をいただきたいし、場合によっては、特許法の概念を超えて種苗法がさらに知的財産のあり方を示していくというぐらいの意気込みを私は聞きたいというつもりでお話を伺ったわけでありまして、過去の改正についてはお答えをいただかなくて結構であります。
御答弁をいただきたいと思います。
○福井大臣政務官 確かに、これから起こるべきクリティカルイシューといいましょうか、議論、論点もございます。例えば、特許法に倣って判定制度などを導入することは、今回は入っておりませんけれども、今後議論として出てくる可能性がございます。
いずれにしても、今本当に、御指摘のように、長期の視点、そしてグローバルな視点で戦略というのは立てなければなりませんので、戦略的にこの知的財産を育てていくためにどうしても必要なことにつきましては、今後の実態を勘案しながら考えていきたいというふうに考えておる次第でございます。
○岡本(充)委員 大変抽象的なお話で残念なんですけれども、例えば、前回の法改正の審議は平成十七年六月九日であったと承知しておりますが、この中では、品種保護制度の周知徹底を図っていくべきだとか、また、加工原料用農作物の品種名の表示、登録品種の統一マークをつくってはどうか、こういったことが提案をされているわけであります。そういう意味でいえば、今回の法改正をにらんだ提案がなされていて、それについても検討をしていくと当時の生産局長は御答弁をされていると私は思います。
そういう意味でいえば、もう当時からこういうことは課題としてわかっていた。だとすれば、逆に一歩先んじてその分も含めて改正をするとか、今の法律案も、今政務官が言われましたように、課題があることがわかっているわけであります。特許法と比べていま一歩整備ができていない分野もあるわけでありまして、そういう分野を含めて、逆に言えば、なぜ今回改正を求めなかったのか、これについてお答えをいただきたいと思います。
○福井大臣政務官 ことし三月、農林水産省の知的財産戦略本部で総合戦略を立てました。きょういろいろ御紹介をさせていただいてきましたけれども、もう一度整理して柱立てを御紹介しますと、一つは、新品種の審査体制の充実のために育成者権の付与手続の迅速化を図らなければならないということ、そして、品種保護Gメンによる侵害対策支援業務の充実を図らなければならないということ、そして、新品種の保護制度の普及啓発や人材育成をしなければならないということ、そして、後ほど先生も御指摘になるかもしれませんが、アジアなどの国々に対する品種保護制度の整備充実を働きかける必要があるということ、そして、DNAの品種識別技術の開発の促進を図らなければならないということ、これも後ほど先生が御指摘になるかもしれませんけれども、などなど、きめ細かな施策を展開していかなければならないということを戦略として打ち立てたわけでございます。
今回の法律改正は、そういう戦略の基本を推進するために御提案をさせていただいておるわけでございまして、今後の実態を踏まえて、改正が必要なら改正を行っていくということでございます。
○岡本(充)委員 私は、昨日を含めて、説明やいろいろな話に役所の方にお越しいただきましたよ。その皆さん方にもお話をしたんですけれども、この世界というのはやはり先手必勝という部分があるんですね。
状況を見て、現状がこうなっているからそこに手当てをしよう、それも一つの施策だと思いますけれども、今政務官が言われた、例えばこの知財戦略については、まだこれから長い時間をかけて、三年でしたか、検討をしていくわけですね。
この検討をしていくというようなことを考えると、これから先も、時代はどんどん進んでいってしまう、その中でまた手当てが後手に回らないかということを危惧しているわけでありまして、その先を見据えた、逆に言えば、なぜこの知財戦略本部をもっと先に立ち上げなかったんでしょうか。二年前の法改正のときにはもう既に指摘をされていたわけですよ。それをなぜこの三月に立ち上げるというような経緯に至ったのか、その辺については御説明いただけますか。
○福井大臣政務官 冒頭の御質問の御答弁もさせていただきましたけれども、決して日本の省庁としても早かったわけではございません。経済産業省をリーダーとして文部省追随と言うと失礼ですけれども、とにかく、トップを走ってきたわけではありません。しかし、農林水産業にかかわる知的財産権の特徴もあったわけでございますので、すべての歴史と伝統文化と、そして世界的な経済情勢、政治情勢も踏まえた結果として、去年の二月に本部を立ち上げて、ことしの三月に戦略をまとめたということでございます。
これから、まさに現場現場で知的財産の普及に努めてさせていただき、そして本省としても、総合的に、そして戦略的に物事が進められるように頑張っていきたいというふうに思っております。
○岡本(充)委員 先ほどもお話をしましたように、二年前の改正の段階でもこれらの事案は重々わかっていたはずです。それが二年たってしまったということについて、私は遅かったという認識を持っているわけでありまして、これについて十分反省をしていただきたいと思いますし、これからやはり時代が進んでいく、もっと言えば、役所の考えとはまた別の方向に知財のあり方が現場の世界、現実の世界は変わっていく可能性も否定できないですから、したがって、今の段階ですべてを網羅的にやれということまで私も言えないけれども、こういった対策はもっと早くできたのではないかということを指摘しているわけであります。
そして、今ちょっと奇しくもお話もありましたけれども、例えば今後の育成者権の権利のいわゆる認識の普及というか、この戦略でいいますと、農林水産分野の知的ストックを知的財産と認識する意識改革とでもいいましょうか、普及啓発、人材育成、こういうような部分についてこれまた知財本部で検討をされています。
目標としては、知財関係支援、相談できる指導的人材を三年間で千人程度育成する。農林水産業者、研究所、普及指導員等における意識啓発、知識の普及というのもありますが、例えば今政務官が言われましたこういった分野も、本当に推進をしていくためにはかなりの困難が伴うと私は思います。
現場の普及員の方は、今やっている仕事、例えば病害虫防除の話だとか、それから農業生産技術を普及させるだとか、こういったことでもう今は手いっぱい、一生懸命やってみえる中で、今度は知財についても、普及指導員等において意識啓発、知識を普及して、さらに一般の農業者の皆さん方にもこれを広めていくということであっては、かなり大変な状況になるわけでありますね。
しかも、千人の目標という数字は結構でありますけれども、そもそも千人でそれが達成できるのかといえば、これはまた極めて不十分かもしれない。そういうことを考えれば、今の立ててみえるこの戦略、まだこれから練らなきゃいけない部分もあるとは思います、肉づけは。
ただ、これも本当に実現をするのか。現場の普及指導員の皆さん方にとってみればかなりの負担になる中で、本当にこういうことを強いることが現実的に妥当であり、なおかついい方策なのかどうか。こういうことについても私は検討していただかなきゃいけないんだろうというふうに思っているわけです。
そういう意味で、もし、お考え、御意見、逆に私に対する御提案等があれば、お話をいただきたいと思います。
○福井大臣政務官 先ほどから先生がおっしゃっていることは、まさに我々に対する応援、支援というふうに受けとめさせていただきたいと思いますけれども、今御指摘のありました千人というのは、五百人と五百人に分けられておりまして、専門的知識を有して相談に対応できる普及指導員が五百人、そして都道府県や市町村やその他の農業分野の研究者や行政担当者、農協の営農指導員などなどで五百人ということでございます。
まさに、そういった人たち、現場現場にいらっしゃる方に、知的財産とは何か、育成者権とは何かということで、非常に難しいこの特許の関係、知的財産の関係を御理解いただくということ、そして現場で対応していただくということは簡単ではないという認識は、まさに先生の御指摘のとおりでございます。
ですからこそ、予算も立てさせていただいて、そして戦略の重要な柱として打ち立てさせていただいたということでございますので、今後も御支援をいただきたいというふうに思っております。
○岡本(充)委員 それと並んで、予算の絡む話ではありますけれども、例えば育成者権の侵害をチェックする、いわゆるGメンと言われる人たちですね。かつては四人だったと御説明があった時代もありましたが、今は十四名ほどにふえたという話も聞いております。
これは今後、もちろんお金の問題でありますから、財政当局との折衝ということにもなろうとは思いますけれども、こういう人が今十四名になって全国展開がようやっとできました、こういう状況であって、大変心もとないわけなんです。
さっきの千人でも、考えていただければわかりますけれども、我々の選挙区でいえば、一選挙区三人でありますから、三人で育成者権の普及なんというのをやってくれと言われてもなかなかできない。ましてや、このGメンに至っては今十四人だ、各地方にようやっと最低一人ずつ配置ができております、これでは大変心もとない。こういう部分についてももっと拡充をしていく、そういう方針が私は欲しいわけでありますね。
冒頭から、冒頭は大臣に聞きましたから冒頭ではありませんね、その次、たび重なる改正ということで聞いておるところでもありますけれども、これからの視野として何を求めていくかという観点でいえば、私は、本当は政務官から、こういう分野についても取り組んでいかなければいけない課題なんだということで御答弁が欲しかった。
しかし、いただけなかったからあえて聞くんですけれども、このGメンについても、今後どのようにふやしていくのか、また、活動について拡充をしていくのか、もっと言えば、例えば何らかの数値目標を設けてチェックをしていくというようなことまで考えているのか、お答えをいただければと思います。
○山本(拓)副大臣 先生御指摘のように、品種改良にかかわる認識というのはまだまだ意識が低うございまして、ただ、現実問題として、今現在、新しい品種、育成者権の相談事、また、そういう現場においての対応をいただいているのは、むしろ弁理士会、弁理士の皆さんにかかわっていただいている前例が多いようでございます。
だから、今政務官の方からいろいろ説明をさせていただきましたが、それとは別に、特許法の改正が先日なされまして、七千名を超える既に登録されている弁理士の皆さんの更新事業ということで、弁理士会として研修をする事業が付されたわけであります。その中にも育成者権という枠組みを設けていただいて、農水省の方から講師を派遣して、それぞれ全国で活動をしておられる七千名を超える弁理士の皆さんの力もおかりしながら、先生がおっしゃるように、先、先、先ときちっと対応した体制をとればよかったんですが、現実問題として、知的財産権の問題は、弁理士、いわゆる特許の方は百三十年の歴史がございますし、そしてまた、育成者権の品種の方は昭和五十三年、まだ三十年ちょっとでありますから、そういう歴史もございまして、むしろ向こうの方が現実的に体制が整っておりますので、そっちの力も特効薬としておかりをしているという中で、自前のGメンを早急に整えるという準備もことしから始めているところでもございまして、そういう中で、先ほども申し上げましたように、十名から十四名ということでございますが、今後、その配置全般を進めて、需要に応じて対応していきたい。
そしてもう一つは、今までは育成者権というのはむしろ大手の限られたところが主に多かったわけでありますが、今後、国策的な普及として個人個人、また地域地域での発生という新たな需要に応じたGメン体制を、これは予算との絡みもありますので、それを勘案しながら、さらに増員計画を進めていきたいという計画も持っているところでございます。
ただ、一つの考え方として、すべて性悪説でやるんじゃなしに、まずみんな悪いことをするだろう、だからこのぐらいの体制が必要だという観点でやるのではなしに、できるだけ現実に合った、なるたけそういうことがないということを前提にスタートいたしておりますので、先生御指摘のような、ちょっと後手後手になっている点は、そういう見方もあるかもしれませんが、私どもとしては、確信犯というよりも、知らず知らずして、これ違反しているのという方をむしろ未然防止したいということで、しっかりとまず説明に徹したいという方向で先に進めている計画でございます。
〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕
○岡本(充)委員 今の副大臣の話は国内対策ということですね。国内対策は、まあ、知らず知らずに確かに育成者権を侵害している、そういった者に対して対策をとるということも重要です。しかし、その一方で、故意にこれから侵す人がいないわけでもない、侵害をする人がいないわけでもないわけですから、これに対応するのに十四名では余りにも少ないのではないか。
もう一つ、大臣が言われました、七十年の歴史がある特許の法律だという話もされましたけれども、私は、時代背景を考える、時代の状況を考えれば、決して歴史の長さがこの世界での優越性につながるものではないと思うんですね。その時々のまさに知的財産のあり方、また保護すべき対象というのは刻一刻と変わるし、侵害のあり方もまたこれは変わってくるわけです。
そういう意味でいえば、歴史が長いからあっちに一日の長がある、こういうような考えではなくて、これから先の時代を見据えてやるという意味でいえば、決してこの種苗法の方が一歩先んじていけないわけではないはずである。だからこそ、私は、お話を聞いておりますように、このような後追いのような、キャッチアップと言ったのはまさにそういうことですけれども、後追いのような状況はぜひ一度お考えをいただいて、その一つの典型が、知的財産の戦略の考え方をまとめる話も、二年前でも十分できたであろう話であるということを言っているのは、この一連の話であります。
今、国内対策の話が出ましたので、ちょっと国外に目を転じたいと思います。
この育成者権というのは、やはり日本だけで幾ら息巻いていても始まらない話でもあります。実際に育成者権の侵害というのは海外で行われている事例もあるわけでありまして、そういう意味でいうと、海外とどのように連携をしていくかということが重要になってきます。
UPOV条約という条約があり、これには七八年と九一年、それぞれ条約があるわけでありまして、今はもう九一年条約しか加盟ができなくなっているというような説明はもう結構でありますけれども、私がここでお尋ねしたいのは、これから先、例えばアジアでもまだUPOV条約に加盟していない国はたくさんあるわけであります、そういう国々が共通の土台づくりをどのように進めていくのか。ある意味、この分野でも先進国である日本が、他のアジアの国々と土台づくりに汗をかかなきゃいけないのであろうというふうにも思いますし、また、例えば、加盟はしているものの七八年条約のままであり、品目制限がかかっている国、中国などに全品種を対象とするように働きかけていくことも重要だというふうに考えています。
これはまた二年前も同じような指摘があったと思うわけでありますけれども、この二年前の状況等を踏まえて、今回の法改正に至る過程の中でどのように進歩があり、逆に言えば今後どのような進歩をしていくべきだ、そういうお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
○山本(拓)副大臣 先ほど申し上げました特許法との絡みについては、当然のことながら、向こうが先に進んでいる、おくれているという話ではなしに、農水省として、この新品種の需要が大変高まっている中で、Gメンであれ、その対応相談窓口を急いでおりますが、完璧に対応できるためには、とりあえず即座に対応できるためには、役場違いではありますが、先行している弁理士の力もおかりするということを申し上げたかったところでございまして、私の福井県のようなところでは、どこへ行くといったって弁理士しかいませんので、そういう対応をとりあえずさせていただいているということでございます。
そして、今先生の御指摘の外国との問題でありますけれども、日本といたしましては、確かに、確信犯で出てくるものが、日本の業者が海外に持ち込んで、そして日本向けに作成して輸入する事案が最近顕著に見られてきているというところで、一つの抑止効果としては今回の罰則を強化しているところで目指しているところであります。
それとあわせて、それぞれの国においても、全く認識がない、先日のテレビでも中国のどこかの遊園地が物まねしたような話も出ましたけれども、ましてや農産物にかかわるものの知的財産権というものについては、その国々の農民また農業者関係の人には極めて認識がまだまだ低いというのが事実でございます。
そういう中にあって、日本としては、一九九九年にいち早くUPOV条約に中国に加盟をしていただくお手伝いをしてきたところでございますが、そういう中で、まだまだほかの国につきましては至っていない。ただ、先ほど来申し上げておりますが、日本といたしましては、積極的に今後アジアの各国においてUPOV条約に加盟するような働きかけをやっていこうと考えているところでございますが、そのためにはいろいろとセミナーを開いたり、国際的な東アジアの新品種フォーラムの設置を今提案いたしているところでございます。
そういう中にあって、ただ、これも強制的に日本が入りなさいとかどうのこうのとは言えるものではございませんので、とりあえずは東アジア植物品種保護フォーラムという概念の中で、毎年定期的に会議をやっておりますASEANプラス3、いわゆるASEANの国と日本、韓国、中国の農水大臣が出席をさせていただいておりますが、そういう枠組みの中で東アジア植物品種保護フォーラムの設置を提案し、その提案する運びを韓国並びに中国に対して理解を求め、ほぼ韓国については同意を得ているところでもございます。
次の会合において正式にそのフォーラムの提案をさせていただいた上で、それを通じて農産物の知的財産権のこれからの重要性というものに対する普及をさらに強化していきたいというふうに考えております。
○岡本(充)委員 UPOV条約だけが育成者権保護のツールではないということも事実でありますし、そういう国際会議を通じてフォーラムを形成してというような考え方もあるかとは思います。
ただ、事UPOV条約について言えば、二〇〇六年の十二月二十四日にはベトナムも既にこの条約に加盟、発効をしておるわけでありまして、技術の問題もしくはその国の国情の問題だけではなくて、ベトナムにも御加盟をいただいているというような状況を考えれば、他の発展途上の国々の皆さんにも加入していただけない理由は、今言ったような技術的な面での理由はないというふうに考えられるわけでありまして、こういう東南アジアのその他加盟していない国々にいかに加盟をしてもらえるか、インセンティブを設けていくということも一つの方法だと思っております。
そういう意味で、発展途上国の皆さんがこのUPOV条約に加盟をするインセンティブというのは何があるのか、どういうものを提案していけるのか、お話を聞きたいと思います。
○山本(拓)副大臣 今先生お話しのように、確かに二〇〇六年ベトナム、その前には二〇〇四年シンガポール、さらにはインドネシア、マレーシア、フィリピンも品種保護のための制度を今整備いただいているところでございます。
これらも、今まで日本といたしまして、EPAの交渉の場、また官民合同ミッションの派遣を通じて働きかけてきたところでございますし、UPOVへの拠出金を活用して、そういう中でセミナーを開催し、また、JICAとの協力により、審査能力の向上のための研修会も行ってきたところでございます。
基本的に、そのインセンティブと申しますか、もともとかつての日本もそうですし、一部まだ国内にも、一部の農民の皆さんにおいては、私の選挙区においても認識が薄い方もおられますが、農産物の育成者権という権利がいかにこれから重要になるか、また、裏を返せばそれを逆に、みずからが新しいものを何の気なしにつくっておったのが、登録することによって売れるものであれば登録して、その権利でもってさらに自分の農業労働力の対価が、価値が上がるということを知らしめる、そういう構図をしっかりと植えつけるということだろうと思います。
だから、何遍も申し上げますが、性悪説ではなしにもともと性善説で、知らず知らず違反を起こした人にそうならないような普及、徹底もさることながら、今回は、確信犯的に、特に外国で植えつけて日本に送り込もうというやからが出てきた以上は、やはり国内の輸入した者は当然のこと罰則強化ですが、その国においても、それに携わる人たちにそういう認識をしっかり持ってもらう。
それは、立場が変われば逆に、私も最近赤坂宿舎に入らせていただいて、近くのスーパーへ行きましたら、国際市場で外国の食材がいっぱい入ってきて、先ほど北村先生は韓国のネギが辛いと言っていましたが、韓国のネギを買いましたら、結構私は辛い方が好きですから、そっちの方がいいなと思ってみたり、そういうことも考えると、日本国内でも辛いものを物まねしてつくることも、逆に向こうの権利を侵してできる可能性があるわけであります。
そういうことも踏まえて、しっかりとそういうセミナーを通じて、ただ、あくまでもそれは国の自主的な意見を尊重しなくてはなりませんので押しつけはできませんが、いかにこういう権利を、相手の権利を保護することによって自分の権利も目覚めさせて、そして、それが確立することによって今後自分の、それぞれの国の農業の特性が価値が上がるかということを普及していくというための施策を粘り強くやっていくしかないというふうに考えております。
〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕
○岡本(充)委員 インセンティブという話でいえば、最後に副大臣が言われた部分がインセンティブなんだろうと思いますね。やはり、自国の知的財産保護、もちろん他国の知的財産を保護することによってそれぞれの国が共通の度合いの中で製品をつくる、それは工業製品もそうでしょう、農作物もそうでしょう、こういうものをつくっていく、そういう、ある意味価値観の共有をするということが自国の製品、自国の信頼性も高めるということを相手に理解させるというのが、一つの考えられ得るインセンティブです。
しかし、それだけでは今十分に進んでいない状況もその一方であるわけでありまして、そこを踏まえた上で新たなインセンティブを考えていかないと、これだけを粘り強く言っていきますというだけでは、二年前の話と変わらないんですよ。だから、私は新たなものを考えるべきだというふうにお話をしているわけでありまして、それについて、もしあればお答えをいただきたいと思いますが、なければ次の課題がありますので進めたいと思いますが、新たなものがありますでしょうか。
○山本(拓)副大臣 新たなものはいろいろ承っておりますし、時間をとると申しわけないので一言だけお願いしますと、岡本先生の方で提案があれば、ぜひいただきたいというふうに考えております。
○岡本(充)委員 では、それは時間の関係もありますから、後刻またお越しをいただければ、役所の方々、楽しくうちの部屋でお過ごしいただけると思いますので、どうぞお越しください。
その上で、今度は続いて、他の農産物に関するいわゆる知的財産権をどのように保護していくかです。
例えば、私の地元の愛知県においては、動物でいえば名古屋コーチンの新系統の開発を今しています。例えば、羽で雌雄が鑑別できる名古屋コーチンの系統を今つくっていたり、また、地域銘柄豚肉の普及を目指して、雄の品種として発育のよい高品質なデュロック系統豚を、雌系品種としてアイリスL2にかわる繁殖性のすぐれたランドレース系統豚を完成させる、こういうものを一つ目標にして、二〇一〇年をめどに今頑張っているようです。こういう努力をしている。
例えば、こういう系統の豚や鳥を開発した場合に、これはやはり保護をしてほしいという思いが出てくると思うんですね。こういうものをどのように保護していくか。
また、魚についても同様です。ウナギについていえば、例えば、ウナギの卵からシラスウナギ、さらには成魚に至るまで、一貫して管理した形での養殖ができないか、そういうウナギ種苗生産技術の開発と品質向上に向けた管理技術の確立というものも各地で行われていますし、愛知県も、愛知県産ウナギのブランド化を一層進めるために、例えば皮や身がやわらかなウナギを生産するための養殖管理技術、いわゆる管理技術もこういう中に入ってきます。また、私の地元でいえば金魚なども、これは品種がもちろんあるわけでありまして、こういった品種はそれぞれやはり保護していただけるべき対象なのではないかと思うわけです。
生産技術でいえば、例えば畑作もしくは水田作でもいいですが、総合輪作体系なるものも愛知県は検討しています。二年三作だということで、二年間で水稲、麦、大豆を作付する。そうやって、連作障害が出ないような形でどのようにして作高を確保するか、収穫高を確保するかということを検討、努力をしているわけです。
こういう動物、水産物、そして生産技術、こういった分野について今後どのように保護をしていっていただけるのか、また検討をされるのか。先ほどからも、くどいようでありますが、たび重なる改正でさらにということではなくて、ぜひこの分野についても前向きなお考えをいただきたいと思います。
○福井大臣政務官 植物だけではなくて動物もという大変重要な御指摘でございます。根源的な御指摘だと思います。
そこで、農林水産省といたしましては、きょう御議論いただいているこの植物新品種の育成者権と同様、あるいはそれ以上に、魚類や家畜などの遺伝資源、植物の栽培方法、魚類や家畜の養殖、飼育技術などについても重要な知的財産というふうに位置づけて、ことし三月に策定いたしました、先ほどから何回か御紹介しております農林水産省知的財産戦略におきましても、例えば家畜、特に和牛については、遺伝子特許の取得を促進するんだ、そしてこれを生かして育種改良を進める、そして精液の流通管理を徹底する、和牛の表示を厳格化するということを位置づけさせていただいております。
そして、魚類につきましては、人工の種苗の生産技術、そして配合の餌料、そして養殖方法についての特許あるいは商標を取得、活用するということも位置づけております。
そして、人間関係でいきますと、すべての農林水産業関係者が技術、ノウハウを知的財産と認識するように普及啓発を進めるということで、知的財産戦略を位置づけさせていただいております。
申すまでもないんですけれども、畜産に関する知的財産権の種類をもう一度整理させていただきますと、遺伝子部分では特許法の世界がございます。最初の発生の部分で、遺伝子のところでは特許権。そして、今おっしゃるように、きょう御議論いただいている種苗法の世界、育種者権の世界では、植物と同様の世界的な、国際的なルールは動物に関してはございません。その二つを分けて考えてこの戦略が立てられたということでございます。
○岡本(充)委員 一生懸命研究開発をしている皆さん方がみえるのも私はよく知っています。その皆さん方が、例えば愛知県の農業試験場でも一生懸命研究している、国の独法でも一生懸命研究している、こういう技術者の皆さん方は研究開発に熱を入れてみえますが、そこから先の保護の枠組みがなければ、せっかくつくったものが、その技術が、もちろん広く普及することは重要でありましょうけれども、その技術者なり権利者の権利を侵害するということになってはいけないということで、ぜひ御検討をいただきたいと思います。
研究開発という面でいえば、例えば県の農業試験場、そして大学の農学部などと国の独法もきちっと連携強化をして研究していっていただきたいというふうに私は思っておるわけでありますが、今の現状を見ておりますと、例えば、確かに同じような研究を避ける努力もしているのも事実でありましょうけれども、その一方で、事麦になれば、めん用、パン用等小麦品種の開発ということでいえば、県も独法もほぼ同じような目標を掲げていたりするわけですね。
こういうそれぞれの目標がかぶっていては大変非効率だと思いますし、国の独法の方の研究費は八十億円台あると私のところに御報告をいただいておりますけれども、私の愛知県の農業試験場の研究費に至っては本当に少ない金額、年間三億五千万円程度だと聞いております。これで研究をせざるを得ない、こういう厳しい状況の中で研究をしている。少なくとも、ダブりは避けていただけるような努力をしていただきたいということを一つ指摘しておきたいと思います。
時間の関係で、質問させていただきたいのは、その中でダブりをどう避けていくのかということと、それから畑作作物の関連でありますけれども、いわゆる麦、大豆についての育成者権というのは、まだ十分、稲、水稲に比べて確立していないようであります。これからの日本の食料自給率の確保を考えていく上では、今のめん用、パン用小麦等の品種開発だけではなくて、幅広く、ブランド化された麦の開発等も喫緊の課題になってくるというふうに思うわけでありますが、こういった観点で、技術系の開発をどのように進めていかれるのか。もっと言えば、技術者の皆さん方によりよい研究開発の環境を整える、そういう御尽力をいただきたいということもお願いを申し上げて、御答弁をいただきたいと思います。
○山本(拓)副大臣 先生御指摘の、国といわゆる都道府県の関係機関とのダブりをどうするかということでありますが、確かにそれは難しいところがありまして、そこはなるたけ国として、都道府県との役割分担と、連携をとっているところでございます。
現実問題として、いろいろ定期的な会合を開いたり、そしてまた、開発者の会合を開いたり情報交換するとともに、もう一つは、この育成者権というのは、登録を申請しますと申請を受け付けということで公開になりますので、公開したところで初めて、そこに対して同じようなところがやってきた、いわゆる、ちょっと開発争いという競争力が発揮しておりますので、未然になかなか手のうちを明かさぬのですが、先に登録をしたという事実がオープンになった時点で、そこに対して協力要請という動きもあるようでございますので、そういうことで、積極的に情報が開示できるものは開示するようなお手伝いをさらに強固にしていきたいと考えております。
さらに、食料自給率との関係でありますが、麦、大豆については、平成十一年から水田麦、そして、大豆の本格的な生産に取り組み、そして、国産需要に適合した新品種開発や、水田環境等での生産性の向上に資する品種の開発を積極的に推進をいたしているところでございます。
そういう中で、小麦については、平成十一年から開始したプロジェクト研究等により、うどん用では、東北向けのネバリゴシ、また、北海道向けのきたほなみ、また、パン用では、温暖地栽培に適したニシノカオリ等の計二十八品目を育成したところでもございます。
そういう中で、大豆につきましては、いわゆる耐冷性が強い北海道向けのユキホマレが成功いたしているところでございますし、また、サチユタカ等の計二十四種を育成いたしているところでもございます。
今後につきましては、平成十七年三月に策定いたしました農林水産研究基本計画に基づいて、小麦については、パン用やめん用に適し倒れにくい品種、収穫前に穂が発芽しにくい品種、また、大豆等については、豆腐等の加工適正や機械化適正が高く、病虫害抵抗性を備えた品種の開発に取り組んでいるところでもございまして、想像以上にと言うと私怒られますが、いろいろ現状を把握しますと、各地域地域でしっかりとした研究に取り組んでいただいていますので、そういう人たちの意見を十二分に反映できるような対応もとっていきたいと考えております。
○岡本(充)委員 時間が参りましたので、最後に、きょうは厚生労働省にもお越しをいただいております。一点確認をしたい。
きょうの新聞にも載っておりましたけれども、恐らく平成十八年度厚生労働科学研究報告書に基づく報道なんだろうというふうに理解をしておりますが、新聞報道では、今般、以前見つかった生後二十三カ月、二十一カ月齢の牛の「感染性確認できず」というのがタイトルになっているようであります。
今回、厚生労働省の研究班における中間報告だというふうに理解をしておりますが、この中で報告をされましたのは一体どういうことであったのか、その概略を御説明いただき、その上で、これを踏まえて、二十一カ月齢、二十三カ月齢がBSEではなかったということを言っているわけではないということ、また、これで人への感染のリスクがないということの証明にはならないということ、さらには、この実験自体が極めて少ないたんぱく量の実験である中であったわけでありまして、その信頼性の確保についても、確たるそういう科学的な根拠を得られるには十分ではなかったということもあわせてお答えをいただきたいというふうに思うわけであります。
○菅原大臣政務官 御指摘の報告書の中には、異常プリオンたんぱく質の増幅性は認められていないというふうになっております。しかし、だからといって、その感染性が否定されたものではないというふうに厚生労働省としては認識をいたしております。
幾つか、その他質問がございましたが、通告になかったものですから、今わかる範囲でお答えできますのは、そうした中で、人に関する課題についても、この報告書、途中経過でございますので、総合的によく報告を受けまして、厚生労働省としてしっかり対応していきたい、このように考えております。
○岡本(充)委員 時間が来たのでこれで終わりますけれども、この問題については、後刻また取り上げさせていただきます。
○西川委員長 次に、菅野哲雄君。
○菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。
安全、安心な植物を開発することを奨励し、農家の発展に役立てることには異論はありません。しかし、今後のことを考えますと幾つかの点で懸念も抱いておりますので、その点を中心に質問させていただきます。
まず初めに、登録品種の種苗がアジアの国々に違法に持ち出され、逆輸入される侵害が多発していると聞いております。これに対して、平成十五年の関税定率法改正で、育成者権者を侵害する種苗の輸入差しとめの申し立てが可能となり、さらに、十七年の種苗法改正で、その効力は加工品にまで拡大することになりました。
この二度にわたる水際対策によって、違法な逆輸入は減少しているのでしょうか。この効果について御説明願いたいと思います。
○山田政府参考人 ただいま委員からお話がありましたように、十五年あるいは十七年の種苗法の改正、また、十五年、十八年に関税法等の改正もなされておりまして、水際対策ということが講じられているわけでございます。
これについての効果でございますが、事例的に申しますと、平成十六年、北海道育成の小豆登録品種のきたのおとめというものがありますが、これの収穫物を中国から我が国に輸入、販売した輸入業者の団体に対しまして、北海道庁が警告文を出した。その結果、当該団体がこの品種及びこれを用いたあんの輸入を自粛したというような例もございますし、また、平成十八年には、長崎税関が、熊本県育成のイグサ登録品種のひのみどりの収穫物の違法輸入を発見、摘発して、関税法に基づいて輸入業者に刑事罰が適用された事例というものがありまして、こういった事例を見てみますと、この水際でのいろいろな取り締まり対策、その法律改正等が防止効果を発揮しているものというふうに考えております。
○菅野委員 種苗法の根本的な法の持っている理念からすれば、水際対策というものが一つの方法だというふうに思うんですが、もう一つ重要なのは、やはりアジア諸国に対してUPOV条約への加盟を日本として促していくということが重要な課題だというふうに思っています。そして、アジア全体でこの種苗法の理念というものをしっかりと受けとめていくということは重要な課題だというふうに思っています。
この点について質問したかったんですが、先ほどの岡本委員の質疑のやりとりの中で聞いていて十分理解いたしました。でも、やはりこのことの課題というのは重要な課題でありますから、しっかりとしたリーダーシップを発揮して、ASEAN諸国とも連携を図りながら拡大するように、私からも強く要求しておきたいというふうに思っています。答弁については、先ほどのやりとりで理解いたしております。
そして、次の質問に移りますが、種苗の育成者権保護に向けては、独立行政法人種苗管理センターの役割が大変に大きいとされています。その中でも、平成十七年に相談窓口として品種保護対策官、いわゆる品種保護Gメン制度が導入されました。その後、Gメンの活動範囲も拡大され、人数的にも増員が図られています。
この品種保護Gメンにどのような役割や機能を与えるべきと考えているのか、これについても説明願いたいと思います。
○山本(拓)副大臣 今お尋ねのいわゆる独立行政法人であります種苗管理センターにおいては、育成者権者などからの求めに応じ、権利侵害に関する相談、支援を実施するため、平成十七年度から、いわゆる品種保護Gメンを設置したところでございます。
その具体的な活動の内容といたしましては、育成者権侵害対策に係る助言、そして権利侵害に関する情報の収集及び提供、さらには育成者権を侵害しているか否かを判断する試験、いわゆる品種類似性試験の実施を行うといたしております。
侵害が疑われる事案の増加が見込まれる中で、品種保護Gメンの活動に対するニーズは一層高まっていると認識いたしておりまして、このため、農林水産省といたしまして、平成十九年度において、品種保護Gメンを十名から十四名に増員するとともに、その全国配置を進め、求めに応じてどこにでも速やかに出向く体制を整えることにより、全国の多くの育成者権者の支援要請に機動的にこたえるよう体制整備を行っていくことといたしております。
○菅野委員 今後、この品種保護Gメンを導入していくということは私は大切なことだというふうに思うんですが、植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する検討会が昨年十二月に取りまとめた最終報告では、今後、品種保護Gメンの全国配置を進め、求めに応じ国内外どこにでも出向く体制を整えることが望ましいとされております。このことは、Gメンに農家などへの立入調査権を与えることを意味するのでしょうか、この点をお聞きしておきます。
なぜこのようなことを聞くのかというと、米国では、種苗会社が探偵を雇い、農家の畑に勝手に入って調査を行い、賠償請求を行った事例があると聞いているからです。育成者権者の保護は大事かもしれませんが、農家に過度な緊張や不安を招くようなことは慎重であるべきだと思いますが、この点についても答弁願いたいと思います。
○山田政府参考人 品種登録制度の育成者権でございますが、これは育成した品種を独占的に利用できる私的財産権でございます。したがいまして、その活用や侵害への対応は、本来、権利者自身において行うというのが基本でございます。
しかしながら、一方で、育成者権の侵害は単にその方に対する侵害というだけでなくて、地域の生産者にいろいろな影響を及ぼすとか、地域の農林水産業への影響があるということもありますし、また、その育成者権の行使に当たりましては、品種の同一性の判断等がなかなか素人では難しいということもありまして、副大臣からお話をしましたように、品種保護Gメンがこの侵害に対する問題解決の支援を行っているという現状にございます。
先生のお尋ねのありました立入調査権を付与するかということでございますけれども、今お話ししましたように、侵害への対応は、もともと権利者自身において行うということが基本でございますし、それから、先生の御懸念にもありますけれども、私有財産に関する育成者権者と利用者との間の争い事についてはやはり中立的な立場というものを確保する必要があるというようなこともございますので、権利侵害の状況あるいは権利者自身による対抗措置の実施状況を十分踏まえながら、議論を十分していくべき課題であるというふうに考えております。
○菅野委員 これから品種保護Gメンをふやしていくという流れの中で、私は、農家に対する過度な緊張や不安をあおるような、そういうことに対しては十分な配慮をしていくという、少し大きな視点を持って対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
次に、育成者権の保護と農家の自家増殖との関係についてお伺いします。
これまでは、農水省令で定められた八十一種類を除き、農家の自家増殖については育成者権が及ばない、いわゆる自家増殖の原則自由が認められてきました。なぜこの自家増殖を原則自由としてきたのか、その理由を簡単に説明願いたいと思います。
○山田政府参考人 自家増殖を原則自由としている理由でございますが、平成十年の種苗法改正におきまして、育成者権が強化されております。この際に、従来から農業者の慣行として行われてきておりました自家増殖を一律に育成者権の効力が及ぶものとするとしますと、農業生産現場に混乱を生じかねないという判断がございました。
例外的に、委員からお話がありました八十一の種類についてはこの育成者権の効力が及んでいるわけですが、こういったものにつきましては、自家増殖を制限しても現場への影響が少ないと考えられる種類のものを幾つか一定の基準で選びまして、農業者団体あるいは育成者権者の意見も聞きながら決めているという状況でございます。
○菅野委員 先ほども少し触れましたが、農水省の植物新品種の保護に関する検討会が昨年十二月に最終報告書を取りまとめました。そこでは、農家の自家増殖について、育成者権の保護、活用を一層推進する観点から、自家増殖に関する制度改正に向けた具体的検討を開始するべきであるとされています。
ここで言われている制度改正とは、農家の自家増殖の原則自由を、自家増殖には原則として育成者権が及ぶものへと百八十度転換するものと受けとめていいんでしょうか。このことをまず答弁願いたいと思います。
○山田政府参考人 ただいま委員からお話がありました検討会の報告書でございますが、この検討会の報告書の中には、基本的な考え方としまして、UPOV条約においては、自家増殖には原則として育成者権が及ぶというのがUPOV条約の原則になっているということ、それから二つ目として、自家増殖の慣行が、農業者に育成者権についての意識を根づかせる上で障害になっているのではないかというふうな検討会の認識がございまして、こういった認識を踏まえた上で、育成者権の保護、活用を一層促進するために、自家増殖に関する制度改正に向けた具体的な検討をするべきであるという報告がなされております。
ちょっと経緯を申しますと、その前に、平成十六年に農林水産省で研究会が開かれているわけですが、この研究会におきましては、「将来的には、自家増殖には原則として育成者権を及ぼすことを検討すべきである。」という十六年の研究会の報告がありまして、それを受けて今回の検討会の報告になっておりますので、検討会の報告としては、やはり将来的には、自家増殖に原則として育成者権を及ぼすということに向けて検討するということをこの報告書では言っているものというふうに考えております。
○菅野委員 それでは、お伺いしますが、この検討はいつごろから始めて、いつごろ結論を得る予定なんでしょうか。また、結論を得るには、研究会とか審議会を立ち上げて、そこで私は十分議論する過程を設けるべきだと思うんですが、この点について答弁願いたいと思います。
○山田政府参考人 先ほど研究会報告の考え方について御説明をいたしましたけれども、農林水産省におきましては、この検討会の報告もありますので、これについては十分尊重をするというふうに考えておりますけれども、もちろん結論がまずあるということではありませんで、私どもとしては、まず育成者権者あるいは農業団体と連携しながら、植物によって大きく異なる自家増殖あるいは許諾契約の実態の把握を進めるという観点からの調査や関係者からの意見聴取を行うということを考えておりますが、実際に具体的なスケジュール、いつから開始をするか、あるいはいつまでに結論を得るかということについては、先ほど言いました結論ありきということでもありませんし、実際、今から着手するということですので、本年度から着手をしたいとは思っておりますけれども、具体的なスケジュールは今持っていないところでございます。
○菅野委員 冒頭申し上げましたけれども、将来的にこの種苗法をどういう方向に持っていくのかというのがこの検討会報告にあらわれているんだというふうに私は思いながら今聞いています。
それで、いつごろから始めて、いつごろまでに結論を得ていくんだというのは、今の答弁ではまだ全然見通しが立っていないという答弁ですけれども、このことは、日本の将来の農家に大きな影響を及ぼすんじゃないのかなというふうに思うんです。
それで、植物新品種の保護に関する検討会ですが、委員の名簿を見ますと、農協中央会の常務理事は含まれていますが、学者や弁護士、企業の代表らで構成されていて、いわゆる農業に直接かかわる方々が含まれておりません。少なくとも、農家の自家増殖に触れた内容を提言するのであれば、農業に直接従事する当事者の方々を含めて意見を聞くべきではなかったのでしょうか。なぜ農家の方々を含めなかったのか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
○山田政府参考人 今委員がお話のありました検討会のメンバーでございますが、この検討会は、植物新品種の保護強化及びその活用の促進について検討するということで、できるだけ幅広い意見を聞くということと、非常に専門的な事項でございますので専門家の意見を聞く、こういう二つの要素のもとでメンバーをお願いしたわけでございます。
委員御案内のとおり、農業団体のほかに種苗業者ですとか地方自治体、それから大学の教授等さまざまな分野の方、専門家もできるだけ入れながら検討会を立ち上げたということでございますが、お話がありましたように、農家の方々の意見については、農業団体の代表ということで全国農協中央会の役員の方に入っていただいたわけでございます。
それから、検討会の報告書につきましては、パブリックコメントを実施して、広く国民の方から意見を募集して、可能なものは報告書に盛り込んでおります。
農林水産省としては、先ほど言いました検討会の報告はありますけれども、まず自家増殖に関する現状の把握や関係者の意見の聴取ということから開始をしていこうと思っておりますので、十分に委員の言われましたような農業者の方々の御意見も広く伺いながら検討を進めていきたいというふうに考えております。
○菅野委員 なぜこの議論をしてきたのかということなんですが、農業者団体の人を入れれば農業全体を網羅したという形にどうしても考えられがちですけれども、実はそうじゃなくて、脈々と地域で有機農業を推進していこうということで努力してきた人たちも、こういうふうになっていったのならば将来に対して大きな不安を抱いているという声が上がっているわけです。
そういう人たちの声というものもしっかりと受けていくべきだというふうに私は思っていますし、冒頭聞いたんですが、なぜ原則自由にこれまでしてきたのかということなんですが、日本の農家が伝統的に脈々と培ってきたこの自家増殖というところに私は種苗法というものが踏み込むべきではないというふうに思うんです。そのことに踏み込んでしまったならば、疲弊しつつある日本の農業に、ある意味では追い打ちをかけるようにつながっていくんじゃないのかなというふうな思いがいたしています。
このUPOV条約が農家の自家増殖は例外つきで原則禁止を打ち出していることは今までの議論でわかっておるんですが、自家増殖まで育成者権が及ぶようなことになるということに対して、農水省はどのように考えているのか、再度お聞きしておきたいと思います。
○山田政府参考人 委員からお話がありましたように、まず一つは条約との関係がございます。御指摘のとおりでございますが、UPOV条約におきましては、自家増殖には原則として育成者権が及ぶ、ただし合理的な範囲で例外をつくっていいですよ、これがUPOV条約の基本的な考え方でございます。
それをまず踏まえる必要がありますが、一方で、委員が言われましたように、農家の方々がこれまで自家増殖でやってきているんじゃないかという事実もございます。
そこで、私どもとしては、その検討会の報告は報告としてもちろん尊重する必要があると思っておりますけれども、まず、実態把握をしたり、それから意見をよく聞くということで検討を開始していきたいというふうに考えております。
委員がお話のありましたように、農家に負担が生ずるというようなことが余りないように、あるいは混乱が生じないようにということも一つの非常に重要な要素であるというふうに理解をしております。
○菅野委員 今回の法改正もそうですが、農水省は新品種の育成者権の保護や地域ブランドの確立を知的財産戦略の一環として強化する方向で進んでいます。そのことを全面的に否定しようとは思わないんですが、新品種が次々に品種登録され、さらに在来の農産物にブランド確立と称して商標権を与えることになると、農家はこれらを生産するのに多額の使用料を払うことにきゅうきゅうとして、種苗業者やバイオ企業の利益だけが保証されるようなことになるのではないかという懸念から今までずっと議論してまいりました。
育成者権と農家の自家増殖の関係、あるいは知的財産権と農家の関係につきましては、農業の育成の観点から慎重の上にも慎重な議論、検討が必要と思いますが、今後、どのように考えているのか、再度答弁願いたいというふうに思います。
○福井大臣政務官 ことし三月に取りまとめました知的財産戦略におきましては、今先生御指摘の種苗会社とか育成者の権利だけが保護されて、一般の農業あるいは農民のプラスにはならないんじゃないかということでございますけれども、戦略には、知的財産の創造、保護、そして活用、このサイクル全体を総合的に取りまとめて、農業全体で競争力を強化しよう、そして地域を活性化しようということを打ち出しておりますので、ぜひそういう意味で御協力、御支援をいただきたいと思います。
今先生が御指摘の点は、多分、グローバル化するそのプラットホームに乗る部分と、それ以外の部分とを峻別しろという御指摘だと思いますので、まさにそのとおりやらせていただきたいと思いますし、たまたま種苗法ですから、秋田県に種苗交換会というのがありまして、ちょっと御紹介しますと、明治十一年から毎年開かれている歴史と伝統を守る行事で、石川理紀之助さんという明治から大正にかけての農村の指導者、農業の発展、貧しい農家の救済のために生涯をささげたという人が始めたこの種苗交換会で、たくさんの農家が集まって、技術を教え合う、そして種や苗の交換もしたということでございます。
ですから、プラットホームに乗る部分、グローバル化する部分と、この心を絶対侵されないように、ぜひ先生にも御指導いただいて、今後励んでいきたいというふうに思っております。
○菅野委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○西川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
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○西川委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、参議院送付、種苗法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○西川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
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○西川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時一分散会