衆議院

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第6号 平成19年12月19日(水曜日)

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平成十九年十二月十九日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 宮腰 光寛君

   理事 岩永 峯一君 理事 江藤  拓君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤  錬君

   理事 七条  明君 理事 筒井 信隆君

   理事 細野 豪志君 理事 西  博義君

      赤澤 亮正君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    稲田 朋美君

      今津  寛君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    近江屋信広君

      金子 恭之君    亀井善太郎君

      北村 茂男君    斉藤斗志二君

      谷川 弥一君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    長崎幸太郎君

      丹羽 秀樹君    西川 公也君

      西本 勝子君    平田 耕一君

      広津 素子君    福井  照君

      水野 賢一君    森  英介君

      大串 博志君    岡本 充功君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      神風 英男君    高井 美穂君

      仲野 博子君    松木 謙公君

      横山 北斗君    井上 義久君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   参議院議員        平野 達男君

   参議院議員        高橋 千秋君

   参議院議員        舟山 康江君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    小田部陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           山下 正行君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山田 修路君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十三日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     宮路 和明君

同日

 辞任         補欠選任

  宮路 和明君     金子 恭之君

同月十九日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     稲田 朋美君

  斉藤斗志二君     長崎幸太郎君

  渡部  篤君     西本 勝子君

  石川 知裕君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     金子 恭之君

  長崎幸太郎君     斉藤斗志二君

  西本 勝子君     広津 素子君

  松木 謙公君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  広津 素子君     渡部  篤君

  岡本 充功君     石川 知裕君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業者戸別所得補償法案(参議院提出、参法第六号)


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     ――――◇―――――

宮腰委員長 これより会議を開きます。

 参議院提出、農業者戸別所得補償法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房審議官山下正行君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長町田勝弘君、経営局長高橋博君、水産庁長官山田修路君、外務省経済局長小田部陽一君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長藤崎清道君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江藤拓君。

江藤委員 自由民主党の宮崎県選出、江藤拓でございます。平野先生、よろしくお願いいたします。

 きょうは、私に質問の時間をあてがっていただきまして、まことにありがとうございます。この法案の質疑に当たりまして、私の姿勢をまず申し上げたいと思います。

 今はねじれ国会ですから、やはり民主党さんの主張にも十分に耳を傾けなければいけない、学ぶべき点は学ばなければならない、取り入れるべき点は取り入れなければいけない、そういう姿勢で私は考えております。

 私は、実は災害対策特別委員会の理事も務めております。この委員会では、与党からも野党からも法案が提出されました。対決法案です。しかし、結局のところ、両案を引き下げて、野党も与党案のいいところを理解する、与党も野党案のいいところをとる、そして委員長提出という形でいい法案ができました。はるかに使い勝手のいい法律、そして被災者の方々にも喜んでいただける法律ができたと自負しております。

 そして、この委員会でも、この間の有害鳥獣、有害という部分は諸般の事情によってなくなってはしまいましたけれども、結局は委員長提出という形で、農家が非常に困っているもので、本当に大変なんですよ。田舎に行きますと、猿なんかは、食べるならまだしも、遊びでシイタケをばらばらっと落としていく。そして、スイートコーンとか露地野菜なんかを、ちょうど熟れごろ、食べごろだなというところになると、先手を打ってシカや猿やイノシシが食べてしまう。そういうことも御理解をいただいて、この間この委員会で、また全会一致でこれは承認をいただきました。大変ありがたいことです。

 そういうことに学びまして、私はこういう性格ですけれども、けんか腰ではいかぬ、まずは心を開いて、皆さん方の言うことにも十分耳を傾けようという姿勢で臨んでおったのでございますが、ここからが私でございます、残念ながら、十二日のこの衆議院での審議が始まりまして、あの日以来、この法案に対する疑念それから不信、そういったものはどんどん深くなってしまっております。

 そして、やはりこの法案の背景にあるのは農産物の完全自由化なんだろうということを私は今も強く感じております。このことについて提案者に御答弁を求めると、あなたたちは、この前と同じように、自民党は何が何でも民主党を自由化論者に仕立て上げたいんだろうというふうに厳しい御叱正を賜ることはわかっておりますので、このことについてはお答えは求めません。もう結構でございます。

 私が聞きたいのは、この法案がどのようにして民主党の中を通過してきたか、その手続を私は知りたいのでございます。

 議員立法でありましたら、私たち、議員立法をやりますよ、当然、平場でがんがん議論します。平場の承認を得るのもなかなか大変です。平場で承認を受けて部会が通っても、その後、政審に通ります。政審で通ったら、その後は総務会です。総務会というのは、当然党の最高意思決定機関、これはいわゆる党大会にかわるものですから、ここを通過したものは当然党の総裁も了解したものということで、その手続をきちっと経た上で法案はすべて国会に提出をされます。

 ところが、私はこの委員会の質疑を聞いていて、一番面妖だな、不思議だな、理解できないなと思うのは、小沢党首は堂々と、自由化だということをいろいろな場面でおっしゃる、後で具体的なものをちょっとお示しいたしますけれども。しかし、提案者にお諮りをすると、我々は一言も、一遍も自由化を前提としているなんということは言っていないというふうに言われるわけなんですよ。

 一体どのような手続を経て、自民党とはちょっと違うシステムなのか、その辺のことを、ねじれ国会ですから今後のこともあります、勉強のためにぜひ教えていただきたいと思います。

平野参議院議員 まず、今の御質問は、法案制定に向けての民主党内の手続ということだったと思いますが、部門会議というのがございまして、これは政調の一つの機関というふうに思っていただければいいんですが、部門会議のトップはここにおられる筒井ネクスト農林大臣でありますが、部門会議でこれを徹底的に審議いたします。

 その審議するに当たって、小委員会というのをつくりまして、この法案については、その小委員会の座長が不肖私でございました。小委員会でも何回も何回も議論を重ねて、それを踏まえて部門会議で議論する。その上で、政調にも諮って、そして、ネクスト大臣が集まる閣僚会議といいますか、私どもの会議がございまして、そこには当然、小沢代表以下、党の幹部は全員顔をそろえます。その中で諮って最終的に決定をする、そういう手続をとっています。

 ちなみに、この法案につきましては、三年半前、前々回の参議院選挙に出した農林漁業再生プラン以来のずっと長い議論がございまして、そういう議論を経て、党内で何回も何回もブラッシュアップされて出てきた法案だということでございます。

江藤委員 なるほど、手続はわかりました。手続はわかりましたけれども、それでも、やはり私は、そこに党首がどの程度コミットしていたのかということについては、私たちは外の人間ですからあずかり知ることはできませんけれども、疑念を持たざるを得ないなというふうに思います。

 では、次の質問をさせていただきます。

 これに関連する問題ですけれども、日豪のFTA、それから日米のFTAに対する民主党さんの考え方、これについて改めてもう一回お尋ねをしたいと思います。いや、ちょっと待ってください。まだです、さらに続きます。

 というのは、どうして私がこういうことをお聞きするかといいますと、平成十八年十二月の七日、これは衆議院で、参議院では十二月の十二日、やはり農林水産委員会でこういう決議がなされました。「重要品目の柔軟性について十分な配慮が得られないときは、政府は交渉の継続について中断も含め厳しい判断をもって臨むこと。」これを全会一致で決議していただきました。私は非常に感謝しています。こうあるべきだと思っています。

 しかし、この後、十九年に入りまして、二〇〇七年になりますと、小沢代表が、こういう決議はまるでなかったかのような発言を繰り返しされるわけでございます。

 この間、近藤先生も御指摘をされましたけれども、二〇〇七年七月一日、二十一世紀臨調で、マニフェスト検証大会、NHKでの放送もありました。小沢党首は、自由トレード、自由貿易協定は私はどこでもやれという主張でありますと明確におっしゃいました。これは電波で流れました。

 そして二〇〇七年十月二十四日、北海道新聞にはこういう記事が載りました。元経団連会長の今井敬氏、今の新日鉄の相談役名誉会長でいらっしゃる方ですけれども、その方が八月に小沢代表と会談した際に、小沢氏は農業の輸入規制は撤廃すべきだと発言したということを明らかにした。そして、これは感想として述べられたことだと私は判断いたしますけれども、その会見の中で、民主党は輸入自由化されても補償すれば問題ないという考え方だという記事が載っております、これは今井さんの意見だと言われればそれまでです。

 さらに私は、小沢党首のホームページ、ウエブサイトをのぞいてみました。ここには、世界の国々とのFTA締結を積極的に推進する、そのためには、それに向けて農業政策を根本的に見直すということを明確に書いてあります。

 これを普通に、政治家でない人、一般に暮らしている人たちが読んで何を感じるかというと、やはり輸入自由化が前提じゃないですか。そして、この間十二日の小里委員の質問に対しても、いわゆる提案者ははっきり、我々はWTO、FTAについては強力に推進する立場をとっておりますということをおっしゃいました。

 ですから、私がここでお聞きしたいのは、この決議というのは、もちろん委員会としては生きていますよ、当たり前の話ですけれども。党の中ではこれは生きているんですか、党の中では。党の全体の、マジョリティーの意見として、ここに出席していただいている民主党の先生方はこのとおり思っていただいていると私は信じています。先生もそうでしょう。だけれども、党全体の総意としては実はそうじゃないんじゃないですか。そのことを、そうじゃないというなら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

高橋参議院議員 御質問ありがとうございます。

 先ほど、被災者生活再建支援法の話もしていただきました。私はそれの責任者をしておりましたので、交渉をずっとさせていただいて、お互いにいいところは取り入れるということでできまして、ぜひこのこともお考えをいただきたいと思います。

 先ほどFTA、EPAのことについて御質問をいただきました。

 我々は、FTAについては積極的に推進をしていく、そういうことには変わりがありません。しかし、守るべき部分はきっちりと守っていく、日本の農業を守っていくというのは当たり前のことで、先ほど御指摘をいただきましたけれども、何度も平野発議者もずっと答弁をしてまいりましたが、どうも我々は完全輸入自由化推進論者だということを、参議院の方でも御質疑をいただきましたけれども、そういうことをはっきり言って決めつけるようなお話でございますが、我々はそんなことは決して言っておりません。FTAについては積極的に推進をしていきますけれども、農業をやはりきっちり守っていかなければならない。

 その意味で、豪州とのFTA交渉については、昨年の十二月七日に、当時の民主党のネクスト農林水産大臣の篠原さんの方から談話を出させていただいております。そのときにはっきりと、我々は、先ほどお話があったように、もし途中で話がまとまらないようであれば中断もすべきだ、むしろ私たちは、この交渉に入るべきではないというようなことも言いながら、このことについてはきっちりとコメントをさせていただいていることには変わりがございません。

 もし御懸念であれば、その中身、談話を読ませていただきます。

  政府は十二月四日、日本と豪州とのFTA締結交渉に入る方針を固めた。

  日豪政府の共同研究報告書には、日本が交渉で小麦・牛肉など重要品目の関税撤廃の「例外化」を主張できると盛り込まれている。しかし、豪州はこれまで他国とのFTA締結において、関税撤廃の「例外化」を認めたのは、米国の砂糖のみという極めて限定的な例しかない。

  共同研究報告書について政府は、詳細を公表していないが、FTA交渉の過程で本当に関税撤廃の「例外化」が実現できるか、もし交渉が難航すれば本当に「再協議」できるのか、不確実な部分が余りに多い。

  民主党は、FTAの推進を否定するものではないが、豪州との間では、ほとんどの鉱物資源の関税はゼロになっており、工業製品の関税も低率であり、早急なFTA締結の必要性は薄い。なぜ今豪州とのFTAを急がなければならないのかを含めて、現在の日本政府のFTA締結の動きには、なんら戦略性が見えない。

そのほか、ずっと書いてはございますけれども、このように私たちはきっちりと談話を提出させていただいております。

江藤委員 いや、そういう談話が存在することもわかっていて実は聞いているんですよ、正直申しまして。

 党首というのは大変な存在なんですよ。私は、小沢さんという方はすごい政治家だと思って尊敬していますよ。この間のいわゆる大連立の話、これが頓挫したときも、自分のそういう考え方が受け入れられないのであれば、潔く党首の座を去ると言って宣言をされました、いろいろ皆さん方が御努力をされて無理やり引き戻したような形に結果的にはなりましたけれども。

 党首というのは、党のあるべき姿をわかりやすく体現したものなんですよ。政治家の発言が軽いんじゃないかとか、政治家の言葉というのはそんなに軽いのかという御指摘がいろいろな場面で今なされています。社会でもなされているし、本会議でもなされています、委員会でもなされている。小沢党首は、いつになるかわかりません、遠い将来だと思いますけれども、いつの日にか政権交代を実現したいと夢見る政党の党首でしょう。その党首がおっしゃることがその談話よりも軽いんですか。それはもう答弁は求めません。そんなことは全然おかしいと私は思いますよ。

 それで、ちょっと時間がないので、さらに続けさせていただきます。

 WTO、FTA、いろいろありますけれども、今WTOがまさに佳境に入っていますよね。ファルコナーの修正案も年明けに出てくる、そして二月にはこれは合意されるんじゃないか、そういう厳しい場面になっている。この間の十二日の委員会でもいろいろ御批判もありました。だけれども、現実はどうかというと、我々自民党の農林幹部の先生方は、私費で、自分の費用でたびたびジュネーブやら各国に飛んでいって、政府要人とも会い、日本の立場を主張して、わかってもらう努力を必死にしていますよ、必死にしている。そして、上限関税であるとか重要品目であるとか、こういったものを、日本にとってよりよき解決、よりよき内容にするように努力を今している最中なんですよ。

 その努力の内容の一つとして、アメリカがやっている百五十億ドル、この国内支持、いわゆる補助金に対する批判を今強めています。では、何で友好国であるアメリカを攻めるのか。当たり前の話ですけれども、これはガット・ウルグアイ・ラウンドの話からいえば、二百七十億ドル分の百五十億ドルですから、ルール上は問題ないですよね、今のところは。

 なぜそこを攻めるのか。日本は攻める手がないんですよ、我々の主張を受け入れてもらえるための。だから、あえて百五十億ドルに切り込んでいって、だけれども、それだけではまずい。アメリカのことばかり言って日本はどうしているんだ、そのときにまずいので、日本はガット・ウルグアイ・ラウンドの枠は三兆九千億持っているけれども、六千億しか使っていないけれども、さらにこの黄色の政策を緑に移行する努力を今必死にしているんですよ、日本農業のために、説得力を持たせるために。

 このタイミングで、この委員会の質疑の中で明らかにされましたけれども、ほとんど黄色の政策でしょう。自民党の政策は、黄色の政策は三割だけですよ。ほとんど色が違う。皆さん方が今回出された法律というのは、ほとんど黄色の政策。これはもう答弁の中で認めていらっしゃいますから、異議はないと思います。

 こういうタイミングでこの法案を提出すること自体、WTO交渉の場での日本の立場を非常に難しくする、つまり、国益を損なうんですよ。何でこのタイミングで出してきたのか。

 将来にわたって直接支払いが悪いなんということを言っているんじゃないんですよ。WTOの新しいルールに移行するんだから、そのルールのもとで、遠い将来いつかそういうことがあるかもしれない。そういうことを指摘だけさせていただいて、言いっ放しで申しわけないですけれども、三十分しかないので、次のものにちょっと移らせていただきたいと思います。

 今さら何でそんなことを言うんだとまた怒られるかもしれませんけれども、民主党のこの法案は、規模にかかわらず戸別に所得補償する法案となっているのか。そして、これは通告書にはなかったんですけれども、簡単な内容ですのでつけ加えさせていただくと、このビラに書いてあるように、すべての販売農家がちゃんと対象になっているのか。このことについて、私はぜひお尋ねをさせていただきたいなというふうに思っております。

 なぜこんなことを言うのか。私は、十二月十四日の衆議院本会議でびっくりしたんですよ。さっき私が言った、規模にかかわらず戸別に所得補償する法案というのは、会期延長の反対討論に立った民主党の議員が本会議場で言った言葉をそのまま言ったんです。規模にかかわらずということになれば、すべての農家ですよね。そうでしょう、すべてですよね、農業をやっている人はすべて。

 ところが、参議院の議事録を私ちょっとひもといてみました。十一月一日、もちろん質疑もお答えされたのは平野さんですけれども、この中で、まず十アール以上だと統計上の数値を持ち出されましたよね。中山間地域というのは、十アール以下の農家というのはいっぱいあるんですよ。私の田舎には、十アール農地を持っていない農民というのはいっぱいおる。では、皆さん方は、この人たちは農家と認めませんか。認めるでしょう。認めるじゃないですか。(発言する者あり)まあ、黙って聞いてください。

 さらに言えば、いろいろな能書き、いろいろありますよ。試算であるとか、仮にであるとか、いろいろな言葉を駆使されていらっしゃいますけれども、結論的にたどり着いた数字が、全農家数が二百八十五万戸でありますが、マキシマムで対象になるのは百七十二万戸ぐらいが一応対象となるんだということをはっきり十一月一日におっしゃっています。ということになると、販売農家であればすべて対象になるんだというふうに思っていたのに、百十三万戸抜け落ちてしまっているじゃないですか。

 ここら辺のところで、本当にこの法案が、皆さん方が地元に帰って、参議院選挙のときに訴えられてきた内容、これとちゃんと合っているものなのかどうか、こういうことをもう一度改めてお尋ねしたいと思います。

平野参議院議員 まず、この法案の対象となる農家でございますが、その対象農家は作物をつくる農家であるというのは言うまでもない話でありまして、その作物についてどのような条件を設定しているか。これは、標準的な生産費と標準的な販売価格の差を基本とした一定の補てんをするんだという考え方に立っています。ですから、その生産費と市場価格の差が逆転していないような作物をつくっておられる農家及びその農地については対象にならない、そういう考え方でありまして、そういった考え方等々からいきますと、販売農家についてはある程度の限定が加わっているというのは事実でございます。

 こういった補てんをやるにつきましては、その目的、それから考え方、設定基準ですね、一定の考え方を設定するというのは、これは普通のやり方でございます。そして、今、地元の方でいろいろ説明しているかという御質問がございましたけれども、私どもは、各地域地域において、あるいは自分の選挙区において、この法案の考え方についてはきちっと説明をしておるということです。

 それから、小規模農家云々という話がございますけれども、農家の規模にある一定の設定基準を設定して、選別政策的な考え方をとるということについては、私どもは反対だということはかねがね申し上げてまいりました。特定の経営体を育成するのではない、特定の経営体に農業経営をゆだねるのではない、地域として意欲のある農家が一体となって農業を守っていく、農業を形成する、農地を守っていく、地域農業を振興する、これが我々の考え方であるということは、今回も繰り返し述べさせていただきたいと思います。

江藤委員 それは、私は違うと思いますよ、根本的に。

 品目横断について党内でも確かに議論はありました。私も、補強すべき点もある、強化すべき点もある、つけ加えなきゃならないこともある、随分激しい意見を党内で言ってきました。

 品目横断、集落営農、これを非常に皆さん方は悪いとおっしゃいますけれども、違うんですよ。集落営農であれば……(発言する者あり)まあ、聞いてください。品目横断などの集落営農組織であれば、十アール以下の農家もちゃんと救えるんですよ。どんなに小さな面積の田畑しか持っていない人であっても、集落営農に農地を委託するであるとか作業を委託するであるとか、そういうことをすれば、すべての農家を救えるわけです。

 さっき、何かそちらの方では自民党案じゃないかと。そうじゃないですよ、全然違いますよ、そうじゃないんですよ。だけれども、皆さん方の案だと、十アールで切ってしまうと、本当に、小さいけれども、猫の額ほどの面積しか持っていないけれども、一生懸命先祖伝来の田畑を守ってきた、そういう田畑を守ってきたような人たちも守れる法案になっているんだということは、これはわかってくださいよ。理解できませんか。答弁は求めません。答弁は求めませんが、御理解をいただきたいと思います。

 それで、さらに続けて言わせていただきますと、仮にというお話を答弁の中で平野先生がよく使われますけれども、私も、今回はその仮にという言葉を使わせていただきたいと思います。

 仮に、この法案が本委員会を通過して、本会議で成立をして、そしてこれが実行に移された場合、十年先、二十年先、三十年先のいわゆる農家の姿、特に中山間地域、条件不利地域、そういう集落の農家の姿というのは、どういう姿をイメージしていらっしゃいますか。

平野参議院議員 まず、今の委員の御質問の中に、民主党は集落営農が悪いんだとか、そういう前提でしゃべっているという御指摘がございましたけれども、そうではないのでありまして、このことは何回も何回も国会で答弁をさせていただきましたけれども、私どもは、農地流動化も集落営農も否定しません。何が問題かといいますと、一定の要件を設定して、この経営体をつくれといったことが問題だと言っておるんです。

 そして、今の委員の御質問の中に、我々の法案が制定されれば、実行されれば、十年後、二十年後、三十年後、どういう経営体ができるか、農業になるか、そういう御質問がございました。

 まず、前提条件としては、これも私は何回も申し上げてきましたけれども、農村、今委員も特に言われましたけれども、特にも中山間地域の農山村は、今までにない大変大きな変化に今直面をしている、そういう現状認識があります。過疎化という言葉ではもう適切ではない。だから、限界集落ということができました。急激な人口減少が始まっていますし、そして農業従事者も減っていく、農家の高齢化も、これから後期高齢者と言われる方々が主体になっていかざるを得ない、そういう状況です。

 その中で、米については、生産費の中の経営費、いわゆる苗代、肥料代、こういったものも割るぐらいの状況の中で、高齢者の方々が、まさに委員がおっしゃられました、小さな面積でも米づくりをやっている。何でそういう米づくりをやっていくか、自分がやめたら農地の受け手がいないからです。なぜ受け手がいないか、米価がこんな下がってくるような中ではだれも規模拡大をしません。だから、このままほっておきましたら、中山間地域の農業というのはどんどん崩壊していく。

 では、どうするか。そこで四ヘクタールつくれと言ったってできない。集落営農で十ヘクタール、二十ヘクタール、何ぼでもいいですよ、五ヘクタールでもいいですよ。経理の一元化をしろとか、難しい理屈であんな設定基準を設定されて、集落営農をつくったってできない。だから、私どもは、まずは意欲のある農家が全部参加して、地域の農業、農業の経営はどうあるべきか知恵を出してもらおうじゃないか。その中で、緩い生産組織ができるかもしれない、すばらしい集落営農ができるかもしれない。

 特にも、これからは農地流動化は不可避ですから、利用権設定をしようと思ったら、将来的には、これは個人か法人しかできませんから、個人がだめになれば生産法人にするしかないんです。だけれども、それは長期的な課題なんです。それをいきなり、集落営農、四ヘクタール以上の個人か生産法人でなければだめだと、これがだめだと言っているんです。

 こういったことをやりながら、まずは今この厳しい状況を乗り切っていく。その先に何があるか。多分流動化が進むかもしれません、集落営農ができるかもしれません。そういう中で地域農業、農山村が守られていく、これが一番ふさわしい姿じゃないかということが私どもが考えていることでありまして、そして、その先に、大きな農家ができるかもしれませんし、小さな農家がみんな頑張ってやるかもしれない。

 そして、これは特にも筒井ネクスト大臣が非常にこだわっている言葉ですけれども、六次産業化ということで……(江藤委員「どういう構想、姿をイメージしているかという質問ですよ」と呼ぶ)ですから、今言っています。自分たちのものをつくるだけじゃなくて、そこに付加価値をつけて販売するような仕組みをつくっていくとか、そういった産業の六次産業化、一次産業、二次産業、三次産業の、こういったものを複合化したような産業が興っていくかもしれませんし、あるいは、場合によっては大規模農家ができていくかもしれませんし、いろいろな経営体があっていいじゃないでしょうか。それは地域地域によって違うということで、それでよろしいのではないかというふうに思っております。

江藤委員 長々と御説明いただいてありがとうございます。しかし、さっぱりわかりませんでした。本当に、私の理解力がなかったらお許しをいただきたいと思います。

 しかし、あしたには、いろいろと補正予算も上がってくるんですよ。さっきもちょっと言いましたけれども、この品目横断的経営安定対策事業、これを補完しようということで我々は一生懸命努力してきました。あした数字が出るので、この委員会の日にちがずれれば、もうちょっとよかったんですけれども、あしたには、いい内容の見直しもできる、予算の裏づけのある内容をきちっと有権者の方々に御説明ができる態勢に私たちは入ります。難しい条件につきましても、どんどん見直していきます。

 例えば、知事特認なんというのがありましたけれども、やはり知事じゃだめなんですよ。県庁というのは遠いんですよ、高速道路がないので、私の選挙区から県庁まで三時間かかりますから。そういうことではだめなので、市町村特認、これに食い込んでいこう。町村長だったら農家の一人一人の顔がわかるんですよ、どこのばあちゃんが何をつくっておるとか。水田協議会の人たちの意見も十分に取り入れて、その人たちが十分に担い手として認められるということであれば、そういう人たちも認めなければならないということで見直していくんですよ。そういうことをやっているということをちゃんとわかっていただきたい。

 全農家にまず参加をしていただいてということを言いましたけれども、全農家参加できないじゃないですか。さっきも御指摘されましたように、限定を設けなきゃいけないのはしようがない、品目とかがあるわけだから。おまけにお金の話もあるわけでしょう、品目を限定するわけだから。限定するということをおっしゃったじゃないですか。すべての農家じゃないじゃないですか。これを私は指摘しておきたいと思います。

 平野先生、どうやって、今まであの厳しい農村とか、今確かに厳しい状況ですけれども、今日まで何とか持ちこたえてきた、どうしてだと思いますか。

 集落、特に中山間地域の農家には、一体感があるんですよ。苦しみも悲しみも喜びも、すべてみんなで味わう。そういうものがあったからこそ、あの厳しい状況の中で集落は守られてきたんですよ。交通も不便ですよ。おかずなんかも分け合うわけですよ、みそ、しょうゆなんかも分け合うわけですよ。それで守られてきたわけですよ。一体感を失わせるような政策というのは絶対だめですよ。

 なぜかといいますと……(発言する者あり)ちゃんと聞いてください。なぜかといいますと、直接支払いに移行した場合、例えば、もうさっき明らかになりましたように、漏れる農家がいっぱい出てきます。小さい集落の中で、江藤拓君は何十万かもらえました。でも伊藤君はもらえません、小里君ももらえませんということになると、これでは今まで培ってきた一体感が崩れてしまうんです、一体感が。(発言する者あり)違いますよ、直接支払いの話をしているんです。そういうことではどうにもならないんですよ。

 そして、生産費と販売価格の差を埋める、そういう政策を述べていらっしゃいますけれども、それでもやはりだめなんですよ。

 私は、農家の青年たちといろいろな議論をしてきました。彼らがどうして農業をやっているか。もちろん、子供を養わなきゃいけない、学校にも行かせたい、飯も食わにゃいかん、仕事としてやっている、それもあるでしょう。だけれども、もっと大きな意義をそこに見つけて農業をやっているんですよ。

 例えば、牛を養っている農家だったら、肛門に指をぐっと突っ込んで、それをぺろっとなめて、きょうは牛が元気がいいというふうに判断する人もいます。そして、田んぼや畑に有機肥料、いろいろなものをすき込んで、その後、土を食べて、おお、いい土ができたと言ってそのことを喜ぶ農家もいますよ。

 そういう人たちが、販売価格と生産費の差額だけを埋めてもらったらやるか、そうじゃないんですよ。彼らがこういう心配をしていました。補てんをするとき、標準的な価格を決めるという話になってくると、今まで農山村の人たちは、まじめに、いいものをつくろう、喜んでもらおう、よりよき製品をつくって、そして消費者の方々に喜んでもらおうという気持ちでやってきたけれども、これからはとにかく植えときゃいいんじゃないかと。農家の人たちはまじめですから、もちろんそういうことをする人はいないと私は信じますよ。だけれども、そういうことが起こることを、私が心配しているんじゃなくて、農業後継者の若い人たちが実は心配しているんですよ。そういうことなんですよ。(発言する者あり)品目横断じゃないですよ。

 そういうことに移行してしまう政策だ、そういう法案だということを私は強く指摘したいと思いますが、反論があればどうぞ、もう、ちょっとしか時間がありませんが。

平野参議院議員 一々反論いたしませんけれども、少なくとも、今言われたことは、全部品目横断に当てはまっていると思います。

江藤委員 いや、もうこれは水かけ論ですから、もう質疑時間が終わりましたから終わりますけれども、少なくともここにあるビラ、三十分の時間しかありませんでしたけれども、ここに書いてあることは、法案の内容とはやはり随分違いますよ。

 私は、最後に、平野先生にお願いがあります。

 ぜひ、まず民主党がやるべきこと。ここで質疑することも大切ですけれども、民主党内の、民主党所属の国会議員に、まずこの法案の内容をきちっと周知徹底してください。これで、年末になって、皆さん方が地元に帰って、またこれと同じようなことを言ってしまったら、恥をかくのは民主党所属の議員ですよ。

 そして、民主党議員がそういうことを言ったら、民主党所属の県会議員も市会議員も町会議員も、みんな同じように間違いを犯して、いずれかのタイミングで、ごめんなさいと謝らなければならないことになる。余計なお世話だと言われるでしょうけれども、そういうことをまずすべきだということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美でございます。

 本日は、初めてこの農水委員会で質問をさせていただきますことに感謝を申し上げます。

 さて、七月の参議院選では、自民党は歴史的な敗北をいたしました。特に一人区、本来であれば自民党が圧倒的に強いところで、農村票が民主党に流れたわけでございます。田んぼをバックに民主党の党首が、民主党が政権をとれば日本の農業は再生するんだ、その言葉に心を動かされた農家の方々がたくさんいらっしゃったと思います。

 また、ことしはお米の値段が下がりました。作況指数は九九、それでもお米の値段が下がった。我が福井県は生産調整にきちんと取り組んでいる県でございます。正直者がばかを見るということで、大変な怒りでございました。地元に帰って、運動会に行っても文化祭に行っても、農家の方々が、自民党に農業を何とかしてほしい、米価を何とかしてほしい、これでは年が越せないんだという声をたくさん聞きました。そして、民主党の、生産調整をやめてすべての販売農家に戸別補償する、これがアピールをしたわけでございます。

 ところが、今回、参議院、衆議院の質疑を聞いておりまして、その参議院選でのビラとは随分変わってきたなという印象を受けております。

 例えば、お米の生産調整、これはビラでは赤字で、米の生産調整廃止と書かれておりました。ところが、参議院の質疑では、生産調整はやめるけれども需給調整はするんだ、ネガではないがポジなんだ、そしてまた、小里委員の質疑の中では、生産調整はやはりするんだ、だけれども、今まで政府がやってきた生産調整とは全く違うんだというように、面妖に答弁を変えてこられたわけでございます。政府が今までやってきた生産調整と全く別物の生産調整とは一体何なのか、これが私は問題であると思っております。

 今までの衆議院、参議院の農水委員会の質疑については、すべて議事録に目を通して私はここに来ております。したがいまして、繰り返しの答弁は必要ございません。また、私は、きょうは法案に即して質問をいたします。発議者平野議員にお答えをいただくということも事前に通告をいたしておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたしたいと思います。

 まず、昨年提出をされました食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案、以下農政改革基本法と申しますけれども、この十条では、お米の生産調整は廃止すると規定をされていました。また、先ほども申し上げましたように、民主党のビラでは、米の生産調整は廃止と赤字で書いてあったわけでございます。

 ところが、今回の法案では、このお米の生産調整を廃止するという規定がどこにもないわけでございます。一体これはどうなったのか。素直にこの一連の経過を見ますと、基本法の十条で書かれていました米の生産調整を廃止するというその方針は撤回されたと見るのが素直だと思うわけです。

 ところが、参議院で、高橋千秋発議者は、主濱委員の質問に答えて、このようにおっしゃっております。「確かに第百六十四回の国会で農政改革基本法案の中で、第十条でそのような生産調整の廃止ということを規定しております。この考え方は変わっておりません。ただ、本法案は戸別所得補償制度に関する実施法ということで、米の生産調整の廃止のような基本的な考え方を示す事項は規定をしておりません。」このように答弁をされているんですけれども、本当に意味不明なんですよ。実施法だから書かないという意味がわからない。

 そして、基本法に米の生産調整というのが書かれているのであれば私もわかるんですけれども、米の生産調整を廃止するという規定は、今の法案のどこにも、ほかの法律にも、どこにもないし、基本法は成立していないんです。にもかかわらず、実施法だから書かないんだ、変わっていないけれども書かないんだということが全く私は理解できないので、この点も含めて、どうしてこの法案の中に米の生産調整の廃止が書かれていないのか、答弁を求めます。

平野参議院議員 まず、当該年度の主食用の米の需要がどれだけあるかを想定した上で、最終的に各生産者に生産面積を割り振らせていただいて、そしていわゆる需給調整をするという意味での生産調整、形としてはこれは継続するということは何回も申し上げてまいりました。

 では、何が違うか、なぜ廃止なのか。これは、まず廃止という意味をもう一回確認させていただきますが、今までの生産調整とは根本的に違う。それは何かといいますと、私どもはつくる農家に一定の所得補償をしますよということを言っているということからまず入らせていただきます。

 その上で……(発言する者あり)いや、今の委員の質問は、私の議事録を全部読んだとおっしゃっていましたけれども、おっしゃった割にはちょっと質問のあれが、ピントがちょっと違っているんじゃないかという意味で、老婆心ながら指摘をさせていただいているということで、ちょっと聞いていただきたいと思います。

 そこで、基本法については、これは基本法でありますから、そういった意味で生産調整の廃止をするという規定を置いて、残念ながらこれは廃案になりました。

 そして、今回は実施法であります。この実施法自身が、実は、新しい、私どもの言っている需給調整の方向に移行するという法案そのものでありまして、これが成立すれば今までの生産調整は廃止されるということでございまして、特段明文化する必要もないし、この法案そのものが今までの生産調整の廃止法案でもあるという位置づけだというふうに御理解をいただきたいと思います。

稲田委員 今のお答えを聞いて、全くわからないんですよ。基本法は廃案になって、ないんですよ。そうしたら、何でその基本法に書くべきだった米の生産調整をこの法案に書かないのか。実施法だからと言うけれども、基本法があって実施法があるのに、何でこの法案に書かれないのか、全く意味不明だと思います。

 次の質問に移ります。

 参議院の山田委員との質疑の中で、平野委員は、今回の法律の中の附則第五条、関係法令の整備ということが規定されるが、その中で想定しているのが食糧法の改正である、このようにおっしゃっております。私も、平野発議者のお答えをずっと聞いておりまして、この食糧法の改正というのは必要不可欠だなと思っているわけです。

 なぜなら、今まで政府がやっていた生産調整とは全く別のものをやるんだとおっしゃっていますから、今の政府の生産調整は現行の食糧法にのっとってやっているわけですので、では、どうして、今の政府がやっている生産調整と全く違うものの食糧法の改正を同時に出さないんですか。その点についてお伺いいたします。

平野参議院議員 まず、食糧法の改正につきましては、今の生産調整が、第二条第二項で「生産調整の円滑な推進に関する施策を講ずるに当たっては、生産者の自主的な努力を支援することを旨とする」という考え方が規定されております。

 私どもは、今回は国、県、市町村という自治体をここにかませるということを考えておりますので、こういった仕組みに改めなければならないという問題意識は共有をしております。

 しからば、この法案をなぜ一緒に出さなかったのか。これは、一緒に出してもいいんですけれども、この実施についてはまだ一年の猶予があります。まずはこの法案の成立を先にさせたということでございます。

稲田委員 それもおかしいと思うんですよね。だって、政府がやっている生産調整と全く別のものをこの法案で出すんだとおっしゃるのであれば、具体的にどう違うかということを食糧法の改正と一緒に出されるべき、そうじゃないと、この法案の審議ができないと思うんです。

 そして、平野達男発議者はこのようにもおっしゃっております。

  今の食糧法の中での生産調整は、たしか自主的に行うという規定になっていたと思います。今回私どもは、国、県、市町村がこの計画を策定するということを規定しておりまして、明確に国、県、市町村の役割を前面に出しておりますから、それは改正前の食糧法ではたしか国という規定が入っていたと思うんですけれども、そこにイメージとすれば都道府県、市町村が入ってくるということの改正は必要だと思っております。

まさに平野発議者のイメージは、今の食糧法じゃなくてその前の食糧法をイメージして、そこに市町村が入ってくるということをイメージされています。それなら、やはりその改正法を一緒に出すべきだと思っているんですけれども、どういった内容の改正を考えていらっしゃるんでしょうか。

平野参議院議員 まず、先ほど言いましたように、考え方は、今の食糧法の規定が「生産者の自主的な努力を支援することを旨とする」ということになっていますので、それ以外の規定は書いておりません。そこに国、県、市町村の役割を規定するということになると思います。

 繰り返しになりますけれども、なぜ出さなかったのか。いずれ、この法案の成立後にこの改正案を出しても、実施には全く影響がございません。それから、その法案の改正の考え方については今申し述べたとおりであります。

稲田委員 それはやはりおかしいんですよ。政府がやっているのと全く違う生産調整をやるんだというのであれば、その具体的内容をお示しになって、そして法案の審議をされるのが当たり前なんですよ。だから、今のは本当におかしいと思います。

 その上で、次に進みますけれども、前回の当委員会で、小里委員とのやりとりの中で、平野発議者は、根本的に今までの生産調整の考え方と違うんだと言っておられるわけです。

 民主党の法案において、今の今まで政府がやってきた米の生産調整と全く別物であることがわかる条文は何かと探しましたら、三条しかありません。

 この三条で、「都道府県及び市町村は、政令で定めるところにより、毎年、農業者の意向を踏まえ、相互に連携して、それぞれ、主要農産物の種類ごとに生産数量の目標を設定するものとする。」これが全く別物の生産調整だというふうにおっしゃっているとしか、ほかに条文がないですからこれだと思うんですけれども、ここの「政令で定めるところ」というのは、一体何を定めるんですか。

平野参議院議員 まず、「政令で定めるところ」の政令ですけれども、生産数量の目標の設定の時期、それから食糧法第四条の基本指針と調和するべきものだというような規定を置くことを想定しているということであります。

稲田委員 非常に抽象的だけれども、この条文を読む限り、手続についてでも定めるのかなと思うわけです。

 この条文を見て、生産調整の考慮するファクターというのは、明確に書かれているのは農業者の意向ということだけなんですよ。しかし、農業者の意向ということだけで米の生産調整ができるのかな。できないと思うんですよ。我が県でも、農家はだれだってお米をつくりたいんです、お米をもっとつくりたい。私の地元の福井県でもそうです。もっとつくりたいだけつくりたいんですよ。そして価格が下がって戸別補償してもらう、それにこしたことはないんですよ。

 どうやって農業者の意向を踏まえて生産目標をつくる、これは実現不可能だと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

平野参議院議員 まず、今の食糧法がどうなっているか、もう一回規定を読ませていただきますけれども、「生産調整の円滑な推進に関する施策を講ずるに当たっては、生産者の自主的な努力を支援することを旨とする」と書いてあります。それが今の生産調整のやり方で、まさに委員がおっしゃったように、本当に生産者の意向だけで、自主的な調整だけで生産調整がうまくいくかと。だから現場は今うまくいっていないんです。

 うまくいっていないんですが、その最大の理由は何かといえば、まずは国、県、市町村の関与がなくなったということもありますけれども、これは政策マターです、法律マターじゃなくて。法律云々のマターじゃなくて政策マターという考え方でちょっと考えていただきたいんですが、需給調整に参加する方としない方との中のメリット措置がない、差がないということが最大の問題だというふうに問題意識を持っているということでございます。

 私どもは、生産目標に従って需給調整に参加する農家に一定の所得補償をしますという極めて明確な、いわゆる生産、需給調整へ参加する農家のメリットを出しているんです。ですから、このメリット措置が、繰り返しになりますけれども、今までの需給調整と大きく違う、今までのつくらないことに対して補てんをするんじゃない、つくることに対して補てんをするんだ、そういう思想でこの法律を貫かれているということで、それがまた今までの需給調整、生産調整と大きく違うんだということでございます。

 ちなみに、今委員の言われた、農家の方々の意思でどうやって生産調整できるんですか、それはまさに今政府がやっている生産調整に対する大きな批判だと思いますし、そのとおりだと思います。そういう問題も踏まえつつこの法案をつくったということでございます。

稲田委員 そう聞いてもわからないんですよ。だって、この法律には「農業者の意向を踏まえ、」としか書いてないわけですから、それ以外の事項は何を、いいかどうかわからないですし、また、食糧法だって、改正すると言いながら、今現行の食糧法を読まれていましたけれども、改正する内容も明らかになっていないのにどうやって生産調整するのか。これは、幾ら平野発議者が答弁をされてもわからないわけです。

 そして、山田委員に対する平野発議者の答弁の中で、「今回は国が、県、そこに市町村が入ってきまして、翌年度の需給状況を見ながら生産の総枠を決めまして、県、市町村、それから地域協議会という中でブレークダウンしていく形」とおっしゃっているんですけれども、そんなことはこの法律からは全く読み取れないし、それが農業者の意向を踏まえてということと同義とは全く思えないわけです。

 しかも、食糧法を改正するけれども、その内容は明らかにしない。そして、交付金を決める単価については、四条で「需要及び供給の動向を考慮」というふうに書いていますよ。でも、生産調整ではその言葉すらないんです。幾ら発議者が今ここで答弁をされても、法律に書いてないものは考慮できないんですよ、法治国家だから。

 そして、民主党のおっしゃっていることはどんどん内容が変わっていく上に、その内容は将来の改正を見てわかるというんだったら、一体何が言いたいのかわからない。本当は、法律にどう書いてあるかどうかなんですよ。農業者の意向と書いてあれば、それだけなんです。それ以上のものをおっしゃるんだったら、食糧法の改正を一緒に出してくださいよ。

 ここは平野発議者の御高説を拝聴する場所じゃないんです、法案の審議をする場所ですから。そうなんですよ。

 次に、質問をいたします。

 政府関係者にお聞きいたします。現行の食糧法における生産調整に関する規定はどのようになっておりますでしょうか。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 米の生産調整につきまして、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律では、まず、国が需給見通しを立てた上で、生産者団体などが傘下の生産者に係る生産数量目標の設定方針などについて定めた生産調整方針を作成し、国の認定を受けることと規定されております。国及び地方公共団体は、生産者団体などの取り組みに対し、生産調整が円滑に推進されるよう必要な助言及び指導を行うことと規定されております。

 具体的には、先ほど平野発議者がおっしゃられた第二条第二項がございますけれども、それ以外に、第四条、基本指針において米穀の需給の見通しに関する事項を立てる、あるいは第五条、生産調整方針の認定、第六条及び第七条において生産調整方針に関する助言及び指導、以上が規定されております。

稲田委員 今の政府関係者の答弁をお聞きになって、平野発議者に重ねてお伺いしますが、現行法の二条そして四条をどのように改正されるおつもりですか。

平野参議院議員 先ほど申し上げましたように、国、県、市町村、そういった自治体及び国がこの生産調整に関与してまいりますから、そういった考え方での法律の改正を考えたいということであります。

稲田委員 いずれにいたしましても、このような重要な点について、法案が成立してから改正をして明らかにするというのは、明らかに私はおかしいと思います。将来改正する食糧法の中身を見ないと一体どんな生産調整かわからないということですから、そういう意味において、この法案の少なくとも三条は将来の食糧法の改正を待たなければ意味不明な条文ということで、条文自体失当ではないか、このように考えております。

 次に、備蓄米についてお伺いいたします。

 当初、民主党は、三百万トンの棚上げ備蓄という、これまた予算を度外視した政治的発言をされていらっしゃいました。ところが、参議院質疑の中で発議者は、「我が方の方針は三百万トンの棚上げ備蓄ということになりますが、今党内では、これ本当にこれでいいのか、三百万トンの棚上げ備蓄やった場合の処理費はどうなるのか、本当に三百万トン備蓄する必要があるのか、」この後もごちゃごちゃと答えられているんですけれども、結局、結論はどうなんですか、民主党は。回転備蓄なんですか、それとも棚上げ備蓄なんですか。そしてまた、数量は三百万トンなのか百万トンなのか。結論が出たか出なかったか。そこの点について、出たのであれば結論を教えてください。

平野参議院議員 またごちゃごちゃと答弁させていただきますけれども、結論から言いますと、まず、備蓄方式については棚上げ備蓄を考えております。数量につきましては、三百万トンというのは前のマニフェストのインデックスに出た数字でございまして、今この数字については、次のマニフェストの改定に向けて党内の議論をやっているということでございます。

 余りごちゃごちゃ言うとまたごちゃごちゃ言われますから、ここでやめておきます。

稲田委員 この三百万トンの備蓄米の買い入れ、百万トンでもいいですけれども、その保管料、最終処理にかかる費用などは一体どれぐらいと見積もられているのか。百万トンですか、三百万トン、まあどちらか。そして、これが、宣言されている一兆円のほかにかかる費用かどうかを確認いたします。

平野参議院議員 ですから、仮に棚上げ備蓄ということになりますと、米を主食用としては使わないということでありまして、それを、いわゆる飼料米とかあるいはエタノールというようなこともあるかもしれませんが、そういったものに回せば、当然かなりの差損が出てまいります。そういった差損がどの程度か、そういったことについては、備蓄の量によって決まってまいります。

 その額については、一兆円の外か内か、これを今厳密に検討しているわけではございませんが、今の段階では、一兆円の中に入るということでは計算しておりません。

稲田委員 ということは、一兆円のほかに、棚上げ備蓄、三百万トンか百万トンかわかりませんけれども、その費用がかかるというふうにお伺いをいたしておきます。

 では政府関係者に、備蓄米の棚上げ備蓄の問題点について簡潔に御答弁ください。

岡島政府参考人 棚上げ備蓄、定義は幾つかあろうかと思いますけれども、平成十三年の備蓄運営研究会では、棚上げ備蓄について、通常の需給操作に組み入れず、一定量を保管し、その後は主食用以外に、例えばえさ用などに振り向けざるを得なくなるということで、そういった備蓄方式であろうということであります。

 その際には、当然莫大な財政負担が必要になるということでございまして、現在、例えば、私ども、食用、備蓄用のお米として一トン当たり二十四万で購入しておりますけれども、飼料用に売りますと三万円でございます。そうしますと、一トン当たり二十一万円の差損が出るということですから、一万トン当たりで二十一億円の差損等々ということでございます。

稲田委員 そうしますと、一兆円のほかに莫大な費用がかかるということでございます。

 次に、試算についてですが、発議者は、一兆円は枠であり、積算根拠はない、一兆円を確保するという宣言であるというふうに参議院で答えていらっしゃいました。私はそれはそれで政治家として納得をしておりましたけれども、最近になってなぜか積算根拠を出されたわけです。試算を出されたわけでございます。

 なぜこの時期に試算を出されたのか、私はちょっとわからないなと思っておりますけれども、お聞きしたいのは、生産調整に取り組んだものの中に、えさ米、バイオ米用につくったものも含まれるのか。この積算の表を見ていますと、えさ米だとかバイオ米というのは除外しているように読めたんですけれども、それでよろしいでしょうか。

平野参議院議員 まず、試算でございまして、これは、積算の根拠は一兆円の積算の根拠ではございません。

 なぜやったのかということなんですが、まず、今までの参議院の農林水産委員会でのいろいろな御議論の中で、補償金の算定の考え方がわかりづらい、それから、一兆円を使った場合に、具体的にどういう、例えば米については幾らぐらいのお金になるんだろうか、そういった姿も見えない、そういった声がありました。

 そして、そういった声を受けまして、今回の場合は、こういった算定をする条件として、政令委任の事項を発議者、私らが定めまして、一定の条件を設定して、米については、今回の積算の場合は一俵当たり約三千円という数字になりましたけれども、三千円で、あと麦、大豆、主要作物ごとに一定の考え方で単価を出してそれを御提示したということで、それ以上の詳しい、例えば今御指摘がございましたえさ米がどうのこうのとかエタノールというところまでの詳細には入っていないということであります。

稲田委員 ということは、えさ米、バイオ米は対象としないで試算をつくられたというふうにお伺いをいたしておきます。

 次に、八条ですけれども、中山間地直接払い、八条で、現在予算措置で行っている中山間地直接払いを恒久法化したことについて、大変意義深いものであるというふうに自画自賛をなさっているわけでございます。

 ところが、そうだとすると、今、農地、水、環境保全という、大変地元でも評判のいい、同じような予算措置で行っている政策があります。これについては、参議院の質疑の中で、発議者は、農地、水、環境保全対策についても廃止することは考えていません、このようにお答えになっていたんですけれども、この農地、水、環境保全対策についてはなぜ恒久法化されなかったのか、この点についてお伺いいたします。

平野参議院議員 まず、この戸別所得補償法案は、何回も申し上げましたけれども、標準的な生産費と市場価格の差ということで、生産費と市場価格の差があるものに視点を当ててつくっている法律です。

 中山間地域直接支払いも、これは生産条件の格差補正でありまして、もともとの視点は、これは生産費を見たんです。平場地域の生産費といわゆる中山間地域の生産費に差があって、そこを補てんするという発想から出ています。だから、その考え方で考え方が一致するからこの法律に入れた。

 しからば、農地、水、環境保全対策については、一部、環境保全対策は若干オーバーラップするところがございますけれども、基本的にこれは活動費に対する補助ですね。ですから、これは、いわゆる生産に対しての一定の所得を補償するという考え方からすれば別の範疇のものであるということで、法律には入れなかったということです。

 そして、農地、水、環境保全対策については、当然、私どもは、これは大変いい政策だと思っておりますし、これからもしっかりとやっていく必要がある政策だと思っているということであります。

稲田委員 私としては、その中山間地払いにしても、農地、水、環境保全対策にしても、どうして恒久法化するというところについて差をつけられたのか、ちょっと今のお答えを聞いてもぴんとこないというか、よくわからないということを申し上げておきます。

 前国会で提出された農政改革基本法、選挙ビラ、今回の法案、委員会質疑の中の答弁と、民主党の農政の内容がどんどんと変化をしておりまして、一体何が言いたいのか、どうしたいのか。果たしてお米の生産調整は将来民主党が政権をとればどういった形になるのか、そしてまたその効果はどうなのか、全く見えてこないわけでございます。

 そんな中で、選挙ビラに書かれました、お米の生産調整を廃止して全販売農家に生産費と市場価格の戸別補償という選挙中のビラだけが、これがひとり歩きを現在もしております。前回の小里委員に対する御答弁の中で、平野発議者は、このビラは品目横断が審議中のときにできていたリーフレットで、それが参議院選で配られてしまったんだというような答弁をされていました。

 でも、配られてしまったという被害者的な言い方はおかしいと思うんですよ。自民党がこのビラを配ったわけじゃなくて、民主党がお配りになったわけです。配られてしまった、変なものが配られてしまって、その被害者は民主党だというふうに聞こえるんですけれども、被害者は民主党じゃなくて、このビラを信じてしまった日本の農家なんですよ。やはりそれは大変罪深いものだということを申し上げたいと思います。

 最後に、週末、地元に帰りまして、農業者から聞き取りをいたしました。福井県のあわら市では、既に五三%が集落営農に参加するなどして担い手になっているわけです。地域農業をどうするか、どうやって担い手をふやしていくか、農業の基盤をどうやって強化するかというのを、小規模農家も含めて、苦しい中、一生懸命議論をして、そして品目横断に加入をして頑張っているんですよ。そこでいきなり戸別補償をするなどと言われますと反対に混乱しちゃうんだ、戸別補償をやった瞬間に農村集落はだめになるという意見があるんです。私の意見じゃない、地元の農家の意見を申し上げているんですけれども、そういう意見があるんです。

 私は、参議院、衆議院の議事録をずっと読んでおりまして、発議者と農業に対する思いは一緒だなと。日本の民族の文化、伝統の農業、そしてまた安全保障のお米、そして日本の美を形づくる水田、農地を守る、そういう熱い思いは本当に一緒なんだなと。時々立ちどまりながら、思いは一緒だということを思いながら読んできたんですけれども、でも、この法案はやはりだめなんですよ。指摘いたしました不備もあるし、食糧法の改正も出ていないし、いたずらに一線で農業に携わっている方々を混乱させるわけです。

 もう一度、十分民主党の内部でお話し合いになって、どういう生産調整にするか、どういう内容にするかを詰めて、食糧法の改正もきちんと準備をされて再提出されることを御提案して、私の質問を終わります。

 以上でございます。ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、伊藤忠彦君。

伊藤(忠)委員 自由民主党の伊藤忠彦でございます。

 私からも、実は生産調整につきましてのことと、それから集落営農につきまして、この二つのポイントから、平野さん、並びに、今日的な問題もございますので政府の方にも御答弁を願いたいというふうに思っております。よろしくお願いを申し上げます。

 さて、答弁につきましては、ちょっと多岐にわたりますので短目に、できれば簡潔にお願いを申し上げたいと思いますので、重ねてよろしくお願い申し上げます。

 まず伺いたいと思いますのは政府の側でございますけれども、今話題になっておりますが、米の生産調整そのものにつきまして、これは本来、一体どういう機能を期待された政策であるのか、そしてまたどういう能力を発揮しているのか、ここのところをまず御説明いただきたいと存じます。

岡島政府参考人 お答えいたします。

 米の生産調整、今まさに米の消費量が年々減少している中で、潜在生産力が需要を大幅に上回っていることにかんがみて、米から、自給率の低い麦、大豆、飼料作物などへの転換を推進しているものでございます。

 これによりまして、米の価格下落や過剰在庫の発生を防止し、稲作農家の経営安定を図るとともに、食料自給率の向上と水田機能の維持が図られるものと考えております。

伊藤(忠)委員 ただいまの御説明に対して、実は民主党の提出された法案を私なりに理解をしてみると、米については行政が生産数量の目標を設定して、その割り当てられた数量目標の範囲内で生産した農家には所得補償を行うというふうに要約できると思うんです。このことというのは、全く生産調整、今の政府のお話のあった生産調整そのものではないかという気が私はいたしております。

 しかし、これを言うと、民主党の方は需給調整であって生産調整ではない、こう言われるわけであります。しかし、例えば需要量をだれが設定するかというだけのことでありまして、我々の生産調整だって、需要を上回るような大量の米をつくればつくるほどに安くなることは間違いないわけですから、だれしも同じことを考えていると私は思っております。

 その点でぜひ政府の方にお伺いをしたいんですけれども、いわゆる民主党が言っている需給調整と私どもがこれまでやってきた生産調整に違いがあるのかないのか、お伺いをしたいと存じます。同じであれば、ほぼ、よく似たことだと御答弁をいただければ結構だと思いますが、いかがでしょうか。

岡島政府参考人 先ほどの稲田委員と平野発議者の質疑を聞いておりまして、食糧法の改正が具体的にどういうことを想定されていらっしゃるのか、現行法案では定かではありませんので、短絡的な比較はなかなかできないのかなというふうに考えております。

伊藤(忠)委員 私は、言われなかったけれども言外には、同じことなんだ、こう理解をいたしております。全く、そういう意味でいうと、この法律の中のまず生産調整の部分についてはよく似たことをやるんだなということを私は理解しておきたいと存じます。

 民主党さんのお話に入っていく前に、ちょっと現下の情勢のことで政府の方にお伺いをしておきたいと思いますけれども、今大変米価が下落をいたしております。大変な状況になっております。生産調整の実効性がなかなか確保されなくて、農家の人たちの経営に直撃をいたしております。多くの稲作農家にこのことは不安を与えておるわけでございます。

 私ども政府並びに自由民主党は、この状況を是正するために、実は先般、米の緊急対策の決定をし、実行して、最近では少しずつ米価に先高感が感じられるようになってきたんじゃないかというふうに思っておりますが、これまた来年以降の米価の安定を図ることは、この水準でいくと大変困難であろうというふうに私どもは推定をいたしておりまして、平成二十年の生産米の生産調整について、この実効性を確保するために徹底した取り組みが必要だというふうに認識をいたしておりますけれども、政府としてどのようにこのことについて対応されていくのか、来年に向けた実効ある中身について、触れられる部分で結構ですけれども、申し述べていただきたいと存じます。

岡島政府参考人 御指摘のとおり、価格の安定のためには需要に応じた生産を行うことが基本である、消費量が年々減少していることを踏まえて、生産調整の実効性の確保に向けて関係機関が連携して取り組んでいくことが何よりも重要と考えております。

 このため、二十年産の生産調整に当たっては、全都道府県、全地域で生産調整目標を達成できるよう全力を挙げていく決意であり、生産調整に関する行政の関与でありますとか、あるいは生産調整の拡大と達成のためのメリット措置、一方で、生産調整非実施者などに対するペナルティー措置のあり方について検討を急いでいるところであります。

 その中で、特にメリット措置、これについては、二十年産の生産調整の拡大ということがございますので、まさにその拡大分に着目しながら、麦、大豆、飼料作物などの作付拡大でありますとか、あるいは一方で、飼料用米等の非主食用米の低コスト生産技術の確立に取り組む農業者に対する支援措置、そういったことを講じられないかということを検討しているところでございます。

伊藤(忠)委員 ぜひ来年に向けましても、米をつくっている農家を初めとする多くの農家の皆さんのためにも、この生産調整のメリットが十分発揮できる措置をしっかりと実行していっていただきたいことをお願い申し上げておきたいと存じます。

 それから、何と申しましても、この四月から品目横断的経営安定対策について実施をされておりますけれども、やはり私も地元に戻りますと、少なからず不安の声が上がっているのも事実でございます。だによって、福田総理が、総理の就任の演説の中でも、高齢者の農家でありますとかあるいは小規模な農家を、特に我々は別に小規模の農家を切り捨てるということは一言も考えているわけではないんですけれども、そう感じておられる人たちが多いのも実態でございまして、ぜひこうした人たちの意見を踏まえて、これは来年度に向けてどんな対応をされていくのか、政府として御答弁をいただいておきたいと存じます。

高橋政府参考人 品目横断的経営安定対策でございますけれども、委員御指摘のような生産現場における生の声、これを私ども、若林大臣の御指示によりまして、御用聞き農政としてお伺いをするということを実施したところでございます。

 その中で、本対策の仕組み、加入要件あるいは事務手続、それから今御指摘のございました集落営農の組織化なり運営といったことにつきまして、率直な意見が多数出されたところでございます。

 これを受けまして、私どもといたしましては、まず、加入要件の問題につきましては、制度上の原則は維持しながら、地域の農業の担い手といたしまして周囲から認められ、また熱意を持って営農に取り組まれているような方々が本対策に加入できるような方策、これについて検討しているところでございます。

 また、収入減少影響緩和対策、先ほどもお尋ねのございましたお米の関係でございますけれども、本年産米の価格につきましては、先般の緊急対策によりまして回復兆しが見えているところでございますけれども、いずれにいたしましても、来年三月までの価格動向を踏まえてこの対策の発動ということになるわけでございますが、万が一この減少幅が大きな事態となった場合でありましても、現在農家にお願いをしております積立金、これが不足することによりまして補てんができないような事態を回避する方策、このようなものについても現在検討しているところでございます。

 また、二十年産以降におきましては、このような事態が生じないためのシステムについても検討しております。

 このほか、これは北海道あるいは九州等において出てきております小麦等の問題につきましても、急速に単収が向上したような一部地域におきます近年の生産性向上努力の過去実績への反映の問題ということにつきまして、小麦の国際相場の高騰の中で、このような先進地域の対策についても鋭意詰めておるところでございます。

 最後に、事務手続でございますけれども、これは非常に御批判が多いところでございますので、交付金の支払い時期、これについて早期に支払うということ、それから提出書類の大幅な削減、簡素化、これはやってまいりたいということでございます。

伊藤(忠)委員 ぜひ、今お話をいただきましたようなきめの細かい、その農家のそれぞれの声をしっかり拾っていただいて、来年に向けて結びつけていただきたいものだというふうに思っております。これは注目をしておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいというふうに思っております。

 さて、平野委員に、せっかくですから一言だけ、まず生産調整のところを終えたいと思いますので申し上げたいんですが、私どもは、私たちが今までやってきたことと平野さんがこれで提案をしようとしていることというのは、全くそんな違いがないという気がしてならないんです、今申し上げたとおり。そこのところに一言だけちょっと答弁をいただきたいと存じます。

平野参議院議員 私は何回も参議院の委員会を通じて答弁してきましたけれども、考え方が根本的に違っていると思っております。

伊藤(忠)委員 私は、実は平野さんたちと私たちと考え方がどこがどう違うのかなと思うほど似たようなことだなという気がしてならないんですけれども、ここはこことして、次に移らせていただきたいと存じます。

 やはり、民主党の案と自民党の案の最大の争点というのは、担い手の育成だとか、集落営農の今後のあり方だとか、農業の人口ですとか年齢ですとか、さまざま起こっている、農村がどうなっていくのか、将来にわたってどうなっていくのかというところで、どう手を打っていくんでしょうかということが実は中身で違っているのかなという気がいたしております。しかし、例えば高齢化が進んでおるとか、あるいは収入形態がこんなふうだ、データのベースで違いがあるわけはありません、同じ国のことを語っているんですから。

 しかし、これまでの自由民主党の成果というのが、集落営農の政策でも、とんでもないことになったのはそのせいだなんということをよく言われるんですけれども、そこできょう、ちょっと理事の方にお許しをいただいてお見せするんですけれども、ここにございますのが、これは私の地元の知多半島の阿久比町というところでつくった「れんげちゃん」、ちょっとかわいらしい名前なんですが、中身はコシヒカリでございます。

 これは、実はまさに長い間みんなで研究をしてきた成果でございまして、昭和六十三年に、レンゲの花を利用してお米をつくるということをみんなでやり始めた研究活動の成果がここに出ているわけでございます。本当に、この人たちがやっていることを中日新聞でも取り上げているんですけれども、このお米に至りましては、ことしですら販売量も伸びて、農村には珍しく、明るい表情が見られるエリアでやっていることなんです。

 これはまさに、昭和六十三年なんという当時に、例えば民主党の政策があったわけでも何でもなく、我が党自由民主党が一生懸命集落営農を進め、そして地域の農政を励まし、やってきた中ででき上がったことでございます。そして今、現に、ことしもこの研究会の成果発表会に私自身が出てまいりましたけれども、本当にこれをつくってきてよかったなということを言っておられるわけであります。決して、何も自由民主党が、あるいは政府が今日までやってきた農政のどこかに欠陥があって全部だめになっているわけでも何でもないと僕は思っているんです。

 これまで政府として集落営農の育成のために取り組んできた政策を、政府としてはどんなふうに評価をし、そしてまたこれからどんなふうに推進をしていこうとしているのか、まず政府の姿勢を伺ってみたいと存じます。お願いします。

高橋政府参考人 今委員御指摘のとおり、地域におきまして地域農業の姿というのはさまざまな形態があろうかというふうに思っております。

 例えば、委員今御指摘のございましたような知多半島の場合、愛知用水の通水というような非常に重大な事績を成果といたしまして、果樹でございますとか野菜あるいは花卉、そういったものを中心とした飛躍的な発展を遂げております。また、その中では、当然のことながら米等の作物も組み合わせた地域が展開されておりまして、今御指摘のような実績等も大幅に展開をされたというふうに承知しております。御出身の愛知県、全国で第五位の農業粗生産額というような形で、工業県だけではなく農業県としても非常に立派な実績を上げておられるというところでもあるわけでございます。

 ただ、一方におきまして、地域の水田農業の半数、水田農業集落の約半数というのが主業的な農家が存在をしないというようなところがございます。このような地域におきましては、高齢の農家の方々が地域の農業、地域社会の維持ということをやっているわけでございますけれども、今の段階で、ともかく自分たちの地域を今後どうするのかということを地域で考えていただくということが非常に重要だと思っております。今回、品目横断というような政策展開を行ったわけでございますけれども、それを契機といたしまして、地域の農業集落の組織化というところが大幅に、このような問題意識を持ちながら進展しているところもあるというふうに承知しているところでございます。

伊藤(忠)委員 今、政府答弁の中で、まさに私どもの知多半島というのは別にお米だけをつくっているわけではありません。

 例えば、私のいる鉄の町東海市、洋ランとフキが日本一の生産量を誇っております。私の、県会議員を務めていた知多市、ペコロスという小さなタマネギの日本一の生産量を誇っております。隣の、空港のある常滑市、ここはイチジクを含めてさまざまな野菜と果樹をつくっております。東浦町は巨峰ブドウが大変有名でございます。半田市、美浜町、武豊町、ここは畜産業が大変盛んでありまして、何とことし黒毛和牛で日本一の評価もいただいております。豚肉も日本一の評価をいただいております。養鶏に至りましては、四十年、組合をつくって、これから赤鶏という地域ブランドを使っていろいろな展開をしていこうと期待を膨らませております。ど真ん中にあります阿久比町がこのお米をつくっております。南知多町というところは、先ほどお話があったように愛知用水の結果、キャベツ、サニーレタス、いろいろなものをつくらせていただいております。水がありがたいということを初めて感じる場所であったと言われております。

 こうした、あちこちで野菜も果樹もいろいろつくっております。品目横断で困ったかというと、この間小里議員が質問したとおり、我々にはまだまだ五十品目以上、こうして手当てをしていく、いろいろな施策を積み重ねてやっておりますので、この人たちが本当に困ったということは、全然声が上がっていないといったらうそになりますけれども、不安視するよりももっと頑張りたいという意欲が強い地域になってきているということも、私は現下の自分の選挙区を歩いてみて、皆さんに知っていただきたいと思っております。

 その中で、例えば民主党さんの言う戸別補償の話になりますと、実は、今私どもの地域で申し上げたとおり、畜産、果樹、野菜、これらの農家の人たちというのは、小島よしおさんの今のはやりの言葉で言えば、「そんなの関係ねぇ」という世界に入ってしまうわけでございます。

 もし、私どもの知多半島でこのようなことになったら、もらえる人ともらえない人が本当に分かれていきます。しかし、今私が特産物をざっと並べましたけれども、やっている人はみんな農家です。違いはありません。その中で何でそんなことが起こるんだろうか。むしろ私は、このような法律でやってしまうと、同じ農家の中で不安をかき立たせるようなことばかりが起こってしまうのではないかと心配をするほど非常に問題があるのではないかというふうに思っております。

 その辺のところを、平野さん、どう思われるでしょうか。

平野参議院議員 まず、今委員の御出身地の話を聞きましたけれども、その地域は恐らく、北海道を除いて、またあるいは北海道を入れたとしても、最も農業条件、農業をやる上では恵まれた条件にあるのではないかと思います。大大量消費地が背後にある、気候も温暖、水もある、そういう中で他の産業に対する兼業機会も恵まれていると思います。そういう中で所得補償政策がどうあるべきか、考え方が、目線がちょっと違ってくると思います。

 今の御質問の中で、もらうところともらっていないところの差が出てくるのではないかということでございますけれども、これは、一生懸命働いていて、その生産費すら賄えないような作物、これについては補てんをするということでございまして、果樹あるいは花卉というふうに、花卉は食べ物ではございませんけれども、それに見合った形で価格が形成されているものをつくっている農家とはおのずと性格が異なってくるというふうに思っています。

伊藤(忠)委員 私は、すべて同じ農家だということもよく考えておかなければならないということは御指摘を申し上げておきたいというふうに思っております。

 それで、特に民主党の方にこれから幾つか御質問をしたいと思うんですけれども、例えば、担い手のいない小規模、高齢農家を中心とする集落において、例えば各農家に毎月それぞれ二、三十万円ずつ所得補償をしていくと、現在、個々に農業を営んでいる高齢者の多い農家、あるいは農外収入に依存する小規模農家が、お金を与えられたときにどんな行動をしていくんだろうか。それぞれのケースについて具体的に想定されることを、ちょっとお考えを述べていただけますか。

平野参議院議員 まず、委員の地域の中山間地域、あるかどうかわかりませんが、想定されている中山間地域と私が今からお話しする地域というのは多分違うかもしれません。違うかもしれませんが、私はその上でお話をさせていただきますけれども、今、中山間地域でどういうことが起こっているか。

 きょうも先ほど申し上げましたけれども、物財費、経営費すら割るような状況の中で高齢者が辛うじて頑張っている。その人たちがなぜ頑張っているかといえば、今まで続けてきたからという気持ちもあると思います。そして、一番大きいのは、やはり今やめてしまったら受け手がいないんだ、だから体が続く限りやる。私もよく聞くんですけれども、では、その後どうしますか。下を向くんですよ、そういう方々は。しかし、集落営農をやれと言われたって、今さらすぐ農地流動化を進めろと言ったって、なかなかできない。

 そういう中で、だから、要するに、たくさん所得補償をするわけではない、ある一定の所得補償をすることで、その中山間地域における、その集落における農地の流動化、農地の管理、それから生産の組織のあり方、そういったことを、できるかできないかわからない、とにかくやるような、そういうことを考えるような土俵を設定することだ。だから、それは四ヘクタールの戸別農家をつくれということではない、二十ヘクタールの集落営農をつくれということではない。その中の、いろいろな今の変化に合わせた、そういった集落に合わせた農地管理の仕組みをまずそこで努力してつくってもらうということが大事だというふうに思っています。

 二点目の、いわゆる特に都市近郊の大きな、兼業農家で、小さな規模で農外収入に多く依存する農家はどのような行動をとるだろうかという御質問でございますけれども……(伊藤(忠)委員「小さい」と呼ぶ)小さい農家ですね。小さい農家はどういう行動をとるかということでございますが、そういった農家も含めて、私どもは、まず地域でいろいろなことを考えてもらうということが平場の地域でも大事だというふうに思っております。

 一方で、その農家に対しては、所得補償することで何か逆差別になるんじゃないかという御指摘も多分あるかと思います。ただ、今、そこの部分については正直言って私どももぎりぎり詰めているわけではございません。特に都市地域の中で資産価値が非常に高いところで、かつまた農業以外の農外収入が非常に高いところについての所得補償のあり方については、あるいは、ひょっとしたら別の観点から考える必要もあるのではないかと発議者なりに今考えているところでございます。

伊藤(忠)委員 今、私話を伺っていて、ますますこれは通しちゃいかぬと思いました。なぜかというと、これはもし通したら、あしたから、一年後と言われましたけれども、施行までに間に合いますか。絶対間に合いませんよ、こんなの、世の中それに合わせていくこと自体も含めて。こんな、差のあるところも含めて今から想定して考えますとかというような答弁を言われたのでは、ますます私は、これは今の手法の、今の農政をどうしていくかということについていろいろと御議論をいただいて、今の農政をなお一層地域に合わせていくようなことをしていただくことについての御議論をしていただいた方が時間は非常に有効じゃないかという気がしてならないのであります。

 もう一つ、戸別補償の件でちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、どんな農家であっても同列に戸別に支払いを行う結果、私なんぞが考えるのは、当座、現状のままでも新たに交付金がもらえるので、当面今までどおりの稲作を続けようという農家がふえることになるんじゃないか。結果において、生産調整なんということができなくなって、待ったなしの集落営農への取り組みをおくらせていくんじゃないか。

 私が申し上げたいのは、戸別補償をしていくと、戸別に立っておってください、考えるのはあなた方に任せます、私どもは、今そうした非常に大変な時期だから、できるだけいろいろな人たちが集まって物を考えて進めていくようにしたらどうか、戸別のまま立たせていって、最後まで、朽ち果てるまでそこでやっておきなさい、こういうようなことに見えてならないんです。このことは痛みを先送っているようになるんじゃないか、私はそのことをつくづく感じます。

 それからもう一つ、戸別補償で、特に生産費との差を埋めるお金を差し上げようということになりますと、結局、高齢化している今の状況の中で、私の知多半島を褒めるわけではありませんが、常に創意工夫を重ねていこうと努力をしております、そうした気力というか意欲がそげていってしまうんじゃないかという気が私はしてなりません。そのことについて、平野委員にお伺いをしたいと存じます。

平野参議院議員 私が先ほどから答弁していてちょっと違うなというのは、知多半島の農村地域を見ておられる委員と私のように東北育ちの委員というのは、おのずとやはり目線が違うというのは、これはしようがないと思います。

 今回の法案の大前提は、きょうも申し述べましたけれども、農村、特にも中山間地域の農村を中心として、今大きな転換点に立っている、補助金を出せば農業構造が固定されるのではないか、そういう御趣旨の御指摘だったと思いますが、確かに理屈はそうなります。理屈はそうなるんですけれども、そういう理屈が適用できないほど、今、日本の農村、特にも中山間地域の農村は大きな変貌の状況に直面している。そういう中で、どういう所得補償が今のこの変化に適した政策なのか、そういうことを考えた上でこういう所得補償法案を出したということでございます。

伊藤(忠)委員 私は、やはりきょうの質疑を聞いていて、実はきのうの毎日新聞の夕刊に小島よしおさんの記事がぽっと載っているんですけれども、そこの下に何て書いてあるか。「「一発屋」じゃ惜しい 不思議な魅力」、こう書いてあるんです。この法案のことを思うに、一発屋なのかなという気がしてなりません。しかし、何となく魅力を感じるからあの選挙結果があったのはなぜかというと、やはりお金をくれる、税金をくれてやる、このことがくすぐったんだと私は思うんです。

 私は、税金でじゃぶじゃぶ漬けていくことがいいとは思いません。思いませんけれども、特にこうやって全部の所得補償をしますなんということが本当にいいことなのかどうなのか、よくよく民主党の皆さんにもお考えをいただきたいと思います。ぜひよろしくお願いをいたします。

 以上で終わります。

宮腰委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 自由民主党の赤澤亮正でございます。

 きょうは、民主党の発議者の皆様に質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 これまでの審議を踏まえ、まず、私なりに民主党の農政法案の三つの問題点を指摘したいというふうに思います。これは指摘でありますので、平野委員にお答えをいただく必要はございません。

 第一に、政策に体系がないと思います。政策目的が必ずしもはっきりしない。したがって、政策手段が整合的かどうかの議論もできない。我が国の発展のためには、明確な政策目的を定めて、総合的な政策体系を構築して、そのための予算の手当てをしっかりと行って初めて責任のある政党の政策立案と呼べます。

 この点、何でそう思うか、後でおいおい質問をしますので、しばらくお待ちください。

 二点目は、民主党法案では食料自給率の向上にはつながらず、今後の日本農業の競争力を弱めるだけでなく、零細農業者も先々苦しめることになるというふうに考えます。

 三点目でございますが、参院選の際に最も農家の目に触れる例の選挙ビラ、民主党ではリーフレットと呼んでおられるようでありますけれども、今後いかなる党が政権を運営しようとも、農家と政治の信頼関係が壊れて回復できないような、いわば青い鳥幻想を日本じゅうの農家にばらまいた上、現在も類似の広報が行われているという点であります。一例は、私の地元でも広く流布をしておりますけれども、つくりたいだけつくった米をすべて政府が一俵一万五千円まで所得補償してくれる、こう根強く信じておられる農家がいるというのは今もお笑いでありますから、平野委員も御案内のことかと思います。

 こういった点は、民主党の発議者もそのような考え方ではないというふうに理解をしておりますので、民主党として、関係者に広報の不備、不適切を謝罪の上、本来はもう出直していただきたいほどだと私は思うところでございます。

 以下では、これらの点について、個別の質問で確認的に質問をさせていただきたいと思います。

 これまでの質疑によれば、農業総産出額を構成するとされます米、麦、豆類、芋類、野菜、果実、花卉、畜産などの販売農家のうち、民主党法案が想定をするのは米、麦、豆類など一部の販売農家であるというふうに理解をしております。参院選の選挙ビラにおいては、御案内のとおり、イラストにはなぜか白菜が用いてございます。野菜ですね。そして、中国からどんなに安い野菜が入ってきても、すべての販売農家の所得は補償されると非常に誇らしげに記述をされているわけであります。

 同じビラで「当面一兆円」とされる支払い総額のうち、野菜農家や果樹農家に支払われる見通しの金額は幾らなのかということを、念のため、農家のためにわかりやすく確認させていただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

平野参議院議員 野菜、果樹については、現在のところ、生産費と市場価格の差が恒常的に逆転をしているという状況になっておりませんので、発動される可能性はないというふうに思っています。

赤澤委員 今の点も大変な幻想を振りまいておりまして、私の地元では、やはりすべての農家、しかも、何しろ選挙ビラのイラストが白菜で、どんなに安い野菜や果物が入ってもと、専ら論じているのは米以外、野菜、果物といったことでありますので、本当に、この一兆円の中では野菜、果樹は想定されていない、地元の農家は非常にがっかりするなと私は心配をするところでございます。

 これはもうお答えは要りませんけれども、畜産については明確に対象外だということをお話しされていたと思うので、これも金額の中には含まれていないということを確認させていただきました。

 十一月一日の米長参議院議員の質問、あるいは十二月十二日の菅野衆議院議員の質問に対する回答の中で、全農家戸数の約六割ぐらいが候補になるという御答弁があったと思います。

 またビラの話で恐縮なんですが、参院選の民主党の選挙ビラでは、「対象農家 全ての販売農家」と条件なしで断っておられます。

 民主党としては、畜産農家は大体約六万ぐらいですかね、野菜農家は単一経営農家で十三万ちょっと、果樹農家は十四万ぐらいあると思います、合計で約三十三万の販売農家、これが畜産、野菜、果樹ということでありますが、これへの支払いは当面この一兆円の中で想定していないということでございます。また、作物の作付延べ面積で見ても、果樹の農家が六%、野菜農家九%、合計一五%の面積に当たる部分は候補に含まれない、こういうことでありますけれども、結論から言えば、民主党が候補とする農家の戸数は全販売農家戸数よりかなり少ないというふうに思います。

 野菜農家、果樹農家、畜産農家を想定していないにもかかわらず、今後とも、この法律はほぼすべての農産物の販売価格が対象ですといった広報を続けるのは正確なことなんでしょうか、御認識をお伺いいたします。

平野参議院議員 これからの広報というお話でございますれば、今国会できちっと御説明申し上げたこと、それから、この法案の趣旨にのっとって、有権者の方々、農家の方々、消費者の方々にきっちりと説明をしていきたいと思っていますし、現にその説明を始めているということでございます。

赤澤委員 もう一度、念のため確認をいたしますけれども、今の平野発議者の御説明であれば、今後の広報について言えば、この法律はほぼすべての農産物の販売農家が対象だというようなことについては必ずしも正確でないので、野菜、果樹、畜産などについてもきちっと説明をしていくというような意味でよろしいでしょうか。もう一度確認いたします。

平野参議院議員 いずれ、誤解が生じないように説明をするということでございます。

赤澤委員 ありがとうございます。現在、誤解が生じておりますので、本当にそこは丁寧によろしくお願いをしたいと思います。

 今うなずいておられますので、しっかりと趣旨を踏まえて、野菜、果樹、畜産農家がこの中で現在想定されていないということを御説明いただけるものと思います。

 それでは次に、農業就業人口の六割が六十五歳以上で、耕作放棄地が増加している現状というのは、これは放置は許されないというのは共通認識だろうと思います。我が国の農業の脆弱な構造といったことも言われます。こういった我が国の農業の体質強化を図っていく必要があると考えるところでございます。

 私は、民主党法案やそれに関する民主党の広報を見ていると、全体として、現状維持でいいというメッセージを日本じゅうの農家に向けて発しているように思いますが、その認識でよろしいでしょうか。

平野参議院議員 本当は現状維持したいぐらいの状況なんですけれども、そんなことはとても言っていられるような状況じゃない、そういう状況の中でどうあるべきかということを考えてこの法案を出したということです。

赤澤委員 では、私はちょっと一つ質問をいたしたいんですけれども、脆弱な農業構造、これを変えていかなきゃいけないわけですね。そういったものについては、先ほど平野参議院議員が、補助金を渡すだけでは構造は変わらない、確かに理論的にはそのとおりだというようなことを伊藤委員の質問に対しても答えておられたと思いますけれども、この脆弱な農業構造を放置しないための仕組みというのは、一体、民主党としてはどのように御説明をされるんでしょうか。

平野参議院議員 まず、脆弱な農業構造という意味が私どもはよくわかりません。農業は集落の機能とセットになって発展するし振興されるべきだということでございまして、小さな農家であっても意欲を持って取り組んでもらえる農家であれば、これは私どもは担い手として位置づけて、担い手というか、政府の言う担い手ではございませんけれども、これからも農業を継続していただけるような農家として位置づけて、一緒に振興を図っていくべきものだというふうに思っています。

 その上で、さらにもう一つ重要なことは、これは何回も申し上げておりますけれども、特に中山間地域、急激な変化を迎えているということでございまして、脆弱な農業構造というところじゃなくて、このままいけば集落そのものが消滅しかねない、農業そのものが存続できないという大変な危機の状況に立っているということでございまして、そういう意識を持ってこれからの農業、農村振興を図っていかなければならない、こういうことだと思っております。

赤澤委員 ぜひ質問を聞いておいていただきたかったのは、脆弱な農業構造というのは、農業就業人口の六割が六十五歳以上、耕作放棄地が増加している現状などということで御説明したつもりなので、どういうことかわからないと言われても大変困ってしまうのであります。

 私の問題意識としては、これは、私の地元なんかで、農地に行くと、本当に年老いたおじいさん、おばあさんがそれぞれ一人で耕作をしていたり、地元では自分のことをわと言うんですけれども、先生、ここはもう、わ一人しかいませんとか、ことしは体がきかなくなったので向こうの四分の一は耕すのをやめましたとか、そういうことなんです。

 では、絞って聞けば、そういう方たちに所得補償をしてあげれば、端的に言うと、行けるところまで行こう、そのままで終わってしまうのじゃないか。そういうことについて、例えば農地を守るために、我が自由民主党、そして政府の考えている、あるいは友党公明党もそうでありますけれども、集落営農への誘導というのは、少しでもまとまってもらえれば、体がきかないおじいさん、おばあさんが出てきても、その一人が入院している間はみんなでカバーする、場合によっては亡くなっても周りの人間が土地を耕し続けるといったようなこともあって、農地を守る効果は大いにあるんじゃないか、そんな思いがするわけであります。

 私は、所得補償ということだけを強調すると、そういったおじいさん、おばあさんが独立に、行けるところまで行こう、あしたは何とかこれで所得補償をもって暮らせるからと、この方向がいいのかというような問題意識についてお答えいただきたいということであります。

平野参議院議員 これは私の思いが強く出過ぎるかもしれませんが、私は、今、特に中山間地域では、小規模農家を救うというのではなくて、そういう高齢者農家が頑張っているから農地、農村が救われているんじゃないかという発想を持った方がいいんじゃないかなというふうに思っています。

 それで、所得補償をすれば、そういう高齢者の方々が最後までやればいいやというふうに思うか。私は、随分あちこち歩きましたけれども、やはり将来のことを皆さん心配しているんじゃないかと思います。

 今回の品目横断対策、集落営農あります。これは私は反対しません。反対しませんけれども、何回も言いますけれども、この経営体をつくれといったことが、彼らを今悩ませているんです。集落営農の二十ヘクタール、十ヘクタール、ヘクタール何でもいいです、難しい要綱を出してきて、経理の一元化をしろとか生産法人の計画をつくれと言っても、そんなに簡単にできない。それは次の次のステップの話です。

 その中で、今、まずは、そういう対策に乗れないけれども体が続く限りやろうじゃないかと言っている農家がいます。だけれども、その農家の方々の意欲を今大事にすることで、この五年、十年というスパンでもいいです、その中で集落の農業振興のあり方、農地管理のあり方を考えてもらう、この発想が大事なのではないか。そのために、その所得補償については、手厚くやることはできませんけれども、一定の所得補償をして、せめて赤字を出さないような経営の中で頑張ってもらう。しかし、あわせて集落の中で考えていってください、こういうものをセットでやっていくことが大事ではないかというふうに思っております。

赤澤委員 少なくとも一つ、政策の名前が難しいということについては、私も議員になって覚えるのに苦労いたしましたので、必ずしも賛同しないわけでもありませんけれども、なかなか期待したお答えが出てこないので、自分でちょっと進めさせていただきます。

 例えば、民主党の政策について言えば、私が思うのは、規模加算、品質加算、環境加算などといった装置はとりあえず、まあお飾りと言うと怒られますけれども、入れてあるということなんですね。私が非常に不満に思うのは、ここについて、どうもきちっと詰めて、働かせようという意欲が余り感じられないということなんです。政策目的を実現するための政策手段も見えないし、このため、もう法案が出てきているのに、効果が期待できるかもなかなか議論できる段階までいかない。

 これらの点について、規模加算、品質加算、環境加算、どういった政策目的があって、そのための手段としてどんな加算を考えていて、なおかつ、それについてはどういう効果が期待できて、今の政策よりどれぐらいすぐれているんだということをかなり議論していただかないと、民主党の農政のもとでは、要するに所得補償で現状維持、今のままでいいんだというメッセージを農家に発しちゃっているというふうに私は強く感じるものでございます。私が感じるだけでなくて、地元の農家と話しても、今のままでええがん、ええがんと、地元の方言でありますけれども、そういう感じが非常に強く見えるということは指摘をさせていただきたいと思います。

 以下では、民主党の発議者が先月末に発表されました「農業者戸別所得補償金算定の基本的考え方」、これはプレスに配られた冊子を私も入手して眺めたところでありますけれども、それを踏まえて伺いたいと思います。

 民主党法案において、すべての対象農家が受け取れる所得補償は、補償交付金と呼ばれる「各作物の標準的な生産費と標準的な販売価格の差額を基本として補てんする交付金」である、ここまでよろしいですね。あと、米については、生産の抑制が必要なため、家族労働費は全額補償しない、八割補償である、それから、単価は地域の単位収量で異なるというふうに承知をしております。事実関係違ったら後で御指摘いただきたいんですが、資料から引っ張っておりますので、以上を前提にお話を。

 これらの点を踏まえて、平野参議院議員みずからが、今月十二日の小里委員の質疑に対する御答弁の中で、「生産費と農家の手取り価格の差額を全額補てんするというのは必ずしも適切ではない」「所得補償については、全額所得補償をしなければならないという前提には立っておりません。」と繰り返しおっしゃっているので、これも先ほどから農家のためにわかりやすい言葉で議論しろという平野委員のそれをそのまま受けまして、念のため、農家のためにわかりやすく確認をさせていただきたいと思います。

 民主党としては、米について、生産費と販売費の差額、例えば生産費が一万九千円だったとします、販売費が一万四千円だったとします。その場合に、差額の五千円をそのまま補償するとは言っていないということで間違いがございませんか。

平野参議院議員 基本的にそのとおりであります。基本的というのは、ええ、そのとおりでございます、失礼しました。

赤澤委員 非常にすっきりとしたお答えをいただきまして、ありがとうございます。

 実は、ここについては、私もちょっとお話をしておきたいのは、地元の民主党の代表、鳥取県の代表が、さきおとといの新聞記事かと思いますが、地元の新聞、八割の人が読んでいるその新聞の中でこの農政を論じて、そしてはっきりと、「この法律はほぼすべての農産物と販売農家が対象です。」と言い切っている上、今の点について言えば、「支援の内容は、品目ごとに生産費と販売価格の差額を補てんします。たとえば、コメ(六十キログラム)について言えば、販売価格が一万四千円で生産コストが一万九千円であったなら、五千円を支払います。まことに明快です。小麦、大豆も同じです。」と新聞記事に載せておられます。必要があれば後でお届けをいたしますけれども、この広報は私はやはり問題だなというふうに思います。

 どうも、これは必ずしも与野党区別ないのかもしれませんが、一生懸命改革をしていると、その改革について十分理解しない議員が地元でちょっと発議者の考えているのと違う広報をしてしまうというようなことが大いにあるようでありまして、老婆心ながら、誤解のないように、ぜひその辺はしっかりと徹底をして、これはもうさきおとといぐらいの話でありますから、広報はこれから誤解のないように気をつけると言っていた以上、ぜひよろしく気をつけていただきたいというふうに思うところでございます。

 民主党法案は、地域の単位収量で標準的な単価を決める、すなわち、地域ごとに画一的な補てん単価を採用するということであります。したがって、当然の帰結として、同一地域内の個々の農家にとっては、生産費と販売価格の差額より多い額の所得補償を受け取ることもある一方、少ない額の所得補償を受け取ることも生じることになります。

 ということは、民主党法案によれば、地域ごとに画一的な補てん単価を採用するため、標準的な生産費よりも高コストの農家、これは私は、すなわち多くの小規模農家がこれに当たると思うんですが、多くの小規模農家は赤字を続けることになる。換言すれば、民主党の農政は、まず現状維持でいいというメッセージを発して安心させておいて、その実、規模拡大によるコスト削減などを図らないと、標準的な生産費よりも高コストの農家、すなわち多くの小規模農家が先々苦しめられて徐々に淘汰されていくという方式になるのではないかと私は大変懸念をいたします。

 この辺が、政策としてなかなか体をなしていない、あるいは先々小規模農家が苦しめられると私が冒頭申し上げたところでありまして、政治的には、スピード感がない上に、正面から集落営農などへの誘導を図ることで、そういう目標を掲げる政府の農政と比べた場合、私は、むしろ民主党案の方が農家との関係で極めて不誠実ではないか。先ほどもあったように、単純に差額を補てんします、極めて明快ですと言い続けて、いざふたをあけると、高コストの農家はどんどん赤字がたまっていく、こういうことでありますから、この点は、民主党法案のもとで赤字を続けることを余儀なくされる標準的生産費よりも高コストの農家について、政策目的を明確にして持続可能な経営形態へ誘導するのが責任ある政党のやることじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。

平野参議院議員 まさに委員がおっしゃられたような思想で、今の経営安定対策、いわゆる品目横断対策が仕組まれているんだと思います。その品目横断対策が今の農業、農村の実情に合わない、合わないから今回の農業者戸別所得補償法案を提出している、こういうことでございます。

赤澤委員 ということでありますので、私があらかじめ予告をしていいかどうかはともかくでありますが、政府においては、これ、確かに民主等の法案について学ぶところはあった、私は少なくともそう思っています。

 その上で、これについては、水田協議会がきちっとした議論をした上で、市町村の了解を得れば、面積要件、年齢要件といったものを取っ払って、きちっと品目横断といった対策の中にも位置づけていくという方向でしっかりと取り組みたい。

 特にこれは私の地元にとっては大きな問題でありまして、中四国は本当に規模が小さい農家が多いのであります。こういったところが救われる方向でかじを切るということで、ますますそういう意味では与党の政策の、あるいは現行の政策の魅力が高まるのではないかと私は期待をしているところでございます。

 小麦、大豆など米以外の作物についても、収量増やコスト削減を促すため、単位収量を政府の二〇一五年度目標にし、実際より高い数値で計算することで単価を抑制するというのが先ほどの民主党の発議者が発表された試算の中にございます。

 小麦、大豆について発議者が試算した戸別所得補償の単価、これを比べますと、現在政府が実施している品目横断経営安定対策の生産条件不利補正、いわゆるゲタですね、ゲタ対策の単価よりやや低目でございます。これは私が言っているだけではなくて、十一月三十日付の日本農業新聞も同様の分析を行っているところでございます。

 この試算が民主党の発議者の計算間違いでないとすれば、民主党の主張どおり、米について現行の政府よりも手厚く所得補償をし、かつ、小麦、大豆など転作作物については現行の政府より手薄いということであれば、明らかに現行よりも米の増産圧力が強まります。これでは、民主党法案によって現在以上に転作を奨励し、米以外の作物の自給率を向上させるというのは絵にかいたもちである、やはり政策の体系をなしていないんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。

平野参議院議員 まず、発議者試算として出した数値については、今御指摘がございましたように、生産数量目標をまず念頭に置いて計算をしております。

 それから、あと、今の対策とちょっと違うのは、全算入経費の中で、自己資本地代と自己資本利子をちょっと外してあります。そこで数字の違いが出てきますが、最終的に単価を設定する場合には、実単収をどれにとるかによってまた違ってまいります。例えば麦については、六百キログラム以上の多くの収穫がある地域については当然単価が高くなってまいりまして、最終的にはそういった要素を加味して地域地域の単価が決められるということであります。

 それから、重要なことは、この単価設定で、農家が、これじゃ生産を続けられません、生産をやることはやっていけませんというようなことがございますれば、さらにその合理的な範囲で、やはり場合によっては全算入経費を全部経費で見るとか、そういった調整はやっていかなくちゃならないと思います。

 だから、これは今回も委員会で何回も言いましたけれども、専門家の意見、そして農家の意見を聞きながらこの単価を決めていくと言ってきたのはそういう趣旨であります。

赤澤委員 丁寧に御説明いただきましてありがとうございます。

 ただ、私は、その辺の単価を決めるのは専門家の意見を聞いても本当に難しいことだなということだけはちょっと御指摘をしておきたいと思います。そう簡単にできることではないぞという感じがいたします。

 続きまして、今月十二日の小里委員の質疑に対する答弁の中で、またこの選挙ビラの話で大変恐縮なんでございますが、「品目横断的経営安定対策がまだ審議中のときにできたリーフレットでありました。ところが、これは事実関係からいいますと、参議院の選挙中にこのまま配布されてしまったということで、」という、ちょっと信じられないような言いわけがあったなというふうに思います。

 この点について、ちょっと改めて伺いたいんですが、現時点においてこの選挙ビラは民主党法案を正しく広報するものと認識されていますか。今後の選挙でも配布するおつもりはありますか。この点を伺いたいと思います。

平野参議院議員 配布されてしまったという指摘をきょう二回も受けまして、そんなこと言ったっけと言うつもりはございません、それについてはちょっと多少舌足らずな答弁をしたのかなというふうな思いはあります。

 それから、今の質問ですけれども、リーフレットについては、そのリーフレットを配るということの御趣旨ですか。(赤澤委員「これと同じ内容の広報をまた続けられるのかなと」と呼ぶ)同じ内容かどうかは別として、きちっとした広報は続けます。

赤澤委員 それでは、ちょっと後でまたこの点も、じゃ、今ちょっとやりますか。

 きちっとした広報ということであれば、ちょっと注文をいろいろつけておかなきゃいけないなと思うので、そのきちっとしていただくために、幾つかちょっと指摘をしたいと思います。

 生産調整を明確に規定する参院選前の民主党基本法案というのがあるんですね。食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案、この中では、第八条で「生産数量の目標を設定する」、第九条で「販売に供する目的で主要農産物を計画的に生産する農業者について、直接支払」ということですので、選挙前の法案でも、明らかに計画生産といった考え方が入っているんです。

 一方、一貫して、今度十九年十月に出てきたこの今審議中の農業者戸別所得補償法案にもしっかりと、生産数量の目標に従って主要農産物を生産する販売農業者に対し、交付金を交付、こういうことであります。

 そうすると、どうも総合するに、選挙期間中にまかれたこの選挙ビラにだけ書かれているのは米の生産調整廃止、こういう宣伝文句が躍っているということであります。

 私は、選挙中に生産調整を廃止しようと思ったけれども、選挙が終わってからよく詰めたらこれはなかなか立ち行かぬ、無理だからというようなことならまだいいと思うんですけれども、一貫して、選挙前に出した基本法も、選挙後に出した所得補償の法案も、生産調整、計画生産と。選挙期間中だけ生産調整を廃止、これが書いてあるというのは、うっかりミスにしては余りにうっかりであるし、意図的であるなら本当に、相当、ちょっとこういう言葉は使いたくないですけれども、悪質じゃないかという感じが率直に言っていたします。

 選挙期間中だけ党の主張を曲げて耳ざわりのよい広報をしたのはなぜでしょうか。(発言する者あり)今いろいろ、趣旨が違うというような御指摘もあるんですけれども、農家がどう受けとめるか。農家にわかりやすい言葉でおっしゃっている平野参議院議員ですから、きっとやじとは違うお答えがあるんじゃないかと私は期待いたしますけれども、いかがでしょうか。

平野参議院議員 いずれ、今回のビラは、私どもの政策をとにかく一生懸命訴えたい、どこがポイントかということを一生懸命訴えたい、そういう観点からつくった広報紙であるということであります。

赤澤委員 であれば、一生懸命訴えたいから最後の一人まで払うと言った総理も私は決して非難されないんじゃないかという感じもいたしますし、やはり何か違うんじゃないでしょうか。やったことで評価をされるというのがフェアでありまして、ここについてはやはりきちっとお答えがいただきたいというふうに思います。

 どうしてももう一度、平野委員に、今のお答えではなくて、というのは、一生懸命ということだけではいかぬのじゃないですか。

平野参議院議員 いずれ誤解のないように、きちっとした広報を今つくっておりますから、それで消費者、農家、国民の皆さん方に説明をしていきたい、このように考えております。

赤澤委員 あと二点ほど、これは指摘にとどめようかと思いますけれども、そういう意味でいうと、本当に施策には一貫性をお持ちなんです。

 十八年三月に出された基本法、十九年十月、今の生産調整の話だけでなくて、基本法においては、例えば所得について言うと、補償は生産費まで、なおかつ、需給動向により生産費も補償されない可能性といったようなことがきちっと指摘をされているわけであります。今回の所得補償においても補償は生産費までということで、需給動向により生産費が補償されない可能性について指摘をされてあります。そういった中にあって、やはりこの選挙のとき配られたビラだけを見ると、所得は補償するとただ書かれている。

 あるいはもう一度さっきの点に触れれば、計画生産を実施する農家のみが対象という基本法、そしてまた、この所得補償法案では計画生産を実施する農家のみが対象、野菜などは念頭になく、畜産は対象外ということでありますけれども、すべての販売農家を対象という文字だけが選挙ビラには躍っているということで、これについてはもうお答えを求めませんけれども、とにかく見るからに、一貫して基本法と所得補償法案で考えについては固まっているにもかかわらず、選挙期間中だけ突拍子もないような耳ざわりのいい広報文句、宣伝文句が躍るということについては本当にぜひ反省をしていただいて、私はこれを平野参議院議員がやられたとは思いません、しかしながら、発議者である以上、それがどう広報されるかまでしっかりと見られて、今後このようなことのないようにぜひしていただきたい、ここは強く申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、ちょっと財源の話を聞かせていただきたいのですが、民主党法案の財源である一兆円について、昨年の民主党農林漁業再生プランなどにおいて農林水産省所管の公共事業費から捻出するとされている。この中には、総額は一兆一千四百億ぐらいで、農業関係が七千億、林野関係が三千億、水産関係が千六百億ぐらいだと思います。ここもかなり一貫して、平野発議者以外の方は、農業土木予算というか、農業分野の公共事業ということを繰り返しているんです。

 本年九月末には、元NCの農水大臣で、元農水委員会の筆頭理事でもありました、当時の民主党農林漁業再生本部長の山田正彦衆議院議員が毎日新聞紙上で、「財源はコメの転作の三千五百億円と、農業予算の四五%を占める公共事業、道路、橋、港湾などが地方も合わせると二兆円使われており、六千五百億円充てることは容易である。」こうおっしゃっているんです、私は、六千五百億円充てるのが容易と決して思えないのでありますけれども。

 本年十月初めにも、またこれもNCの農水大臣の経験者であります篠原孝衆議院議員が日本農民新聞紙上で、「財源は米の生産調整を廃止したその分の予算や、農林漁業等の公共事業費等の予算を充当する。」というふうにおっしゃっているところでございます。

 その一方で、十一月一日に野村哲郎参議院議員の質問に対する平野発議者の御回答、「今、私どもは、この財源問題については、まず必要でないもの、無駄なもの、これをまず全面的にチェックしようということからスタートしております。最初から公共事業、例えば農業土木事業全部予算削るとか、林野の公共を全部削るとかという今はスタンスを取っておりません。」これ、昔はとっていたのかなと不思議に思いますけれども、こうおっしゃっております。

 農山漁村にとって必要不可欠なインフラ整備の予算の約三分の一、三二・五%に当たる六千五百億円もの削減をし、農家や農村に大変大きな損害あるいは悪影響を及ぼすであろう議論を、党の、それもNCの農水大臣経験者が次々におっしゃっている、一方でそれを平野発議者は否定しているという、このような出したり引っ込めたりといった状況は、民主党の農政に本当に体系がなくてその場しのぎである、そのあかしだと私には感じられるんですけれども、そこについてはどうお考えになりますか。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

平野参議院議員 まず財源につきましては、農業者戸別所得補償法案を出すぞということを示したマニフェストとあわせまして、民主党として、今の予算の枠組みを抜本的に変える、さらには、無駄な予算を徹底的に見直して、そこから財源を生み出すということで十五・三兆の予算を捻出する、そこから農業者戸別所得補償法案に必要な一兆円も出すということをマニフェストで言っておりまして、その考え方がまず原点であります。

 そしてその後、今いろいろな御意見があった、今までの考え方があったという御指摘がございましたけれども、まずそれを出発点にして、若干の補足をさせていただければ、今すぐ使える予算、今すぐというか、今ある予算をもってそのまま組みかえで対応できるものが大体三千六百億から四千億ぐらいあると思っております。これ以外の財源については、農業の予算の節約でありますとか、あるいは今の予算全体の枠組みの中での、先ほど言ったマニフェストに示したような考え方で財源を生み出していきたいというふうに考えております。

赤澤委員 これはちょっと法案のあれを外れるかもしれません、一国会議員として平野発議者のコメントを伺いたいんです。

 私の地元などですと、公共事業について言うと、そもそも、道路とかあっちの方も含めて半分以下になっている、非常に苦しい中で、それの削減を議論されているということについて大変な懸念があります。特に、平野発議者が心配されているような、高齢農家が多いような地方で公共事業について予算を切り込むみたいな話というのは、本当に、心理的にも与える影響は大きいと思うんですけれども、その辺についての御議論というのはされたですか。

平野参議院議員 党内でも、またこの法案をめぐっても、そういった議論はございました。

 ただ、では公共事業を絶対守るかということではなくて、特に今大事なのは、繰り返しになって恐縮ですけれども、今この危機に直面している農山村、これにどういうふうに対応すべきか、まずそれを優先させるべきだということで対応しているということでございます。

赤澤委員 ありがとうございます。

 私も、決して民主党の法案を悪く言うばかりでなくて、本当に学ぶところはあったというふうに思っておりますし、その危機を何とか乗り越えていきたい、これは政治の力で乗り越えていかなきゃいけない、そのとおりであります。

 ただ、冒頭申し上げましたように、私は、きょう申し上げたような諸点、これを理由として、やはり、今回の民主党の所得補償法案は政策に体系が十分ないのではないか。政策目的が私から見るとはっきりしていないし、政策手段が整合的かどうかの議論ができるまでまだ詰めていただいておらないという感じがいたします。

 財源の問題についても、とにかく、NCの元農水大臣経験者が言っていることと平野発議者の言っていることが違って、農業土木の予算を出し入れといったようなことになっては、私は、これはまだ財源の問題も十分詰まっていないという感じがいたします。

 また、二番目に指摘しました、民主党法案では零細農業者を実は先々苦しめるのではないかという懸念も消えません。

 さらには、第三番目にありますように、広報の問題については、私は、率直に言ってなぜここまでひどいのかということについては、本当に最後もう一度思いを申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 与党も、当然のことながら、民主党の法案も当然参考にしながら、さらに党内で精力的な議論を深めまして、小規模、高齢者農家にさらに安心をしていただける、小規模農家の多い中国、四国地方などにもきちっとマッチしたような、地域に応じた政策に見直しを重ねてまいります。今後とも政策論争を続けさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 以上でございます。ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 発議者の皆様には、政策を法案の形でお出しになったということにつきましては心から敬意を表したい、このように思っております。

 今回、質疑ということで改めて法案を見させていただきました。「目的」ということで、「食料の国内生産の確保及び農業者の経営の安定を図り、」これは我々も当然、農業のまず一番の基本だと思っていますし、「もって食料自給率の向上並びに地域社会の維持及び活性化その他の農業の有する多面的機能の確保に資することを目的とする。」抽象的ですけれども、目的とするところはある意味で我々も同じ目的だな、こんなふうに感じた次第でございます。

 一般的に、そういう目的が、今、日本の農業の抱える課題、例えば高齢化とか耕作放棄地の拡大とか、極めて深刻な状況で、私自身も東北ブロックから出させていただいていますので、東北各地を回らせていただいて、やはり私は、農業は、よく、命は食、食は農、農というのは国の基、農業を大事にしない国は滅びる、そのぐらいの思いでこの農業問題にずっと取り組んできておりまして、ここにあるような問題意識が、何か農業者戸別所得補償、これをやればすべて解決するというように喧伝されているんですね。まず、そのことについて発議者はどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。

平野参議院議員 この農業者戸別所得補償法案は、あくまでも、今、生産費と市場価格の差に逆転現象が生じている、そこの部分を補てんする、そういう枠組みの法律でありまして、そのほかに、きょうの委員会の答弁でもいろいろ申し述べさせていただきましたけれども、これから農地の流動化をどうやって進めるか、集落の農業の構築をどうやって進めるべきか、いろいろな政策が必要だと思っています。生産調整にしてもそうです。そういったさまざまな政策がパッケージとなって動かしていかないと今の現状の打開はできませんし、自給率の向上とか農業、農村の振興も図っていけないというふうに認識しております。

 この農業者戸別所得補償法案、私どもは大変重要な位置づけをなすというふうに理解しておりますが、それだけではすべてが解決するというふうには考えておりません。

井上(義)委員 ということは、生産費が販売価格を下回る、ここがきちっと埋められれば、何もこの所得補償という形ではなくても、いわゆるこの日本の農業をもう一回再活性化するツールの一つになり得る、こういう認識でよろしいんでしょうか。

高橋参議院議員 質問者が言われたとおりでございまして、我々がこの中で出しているのは、標準的な生産費と標準的な販売費が逆転をしている場合にそれを補てんしていって、つくり続けたいという意欲を持っている農家を守っていこうということがそもそもの目的でありますから、つくらないことに対してお金を払うのではなくて、つくり続けていただきたい、そして、そのことによって地域を守っていくということも兼ねて農業を守っていくということにこの目的がございます。

井上(義)委員 つくらないことにお金を払う、そういうことではないんです。つくる意欲のある人に生産費を補てんしますよ、こういう考えだというふうにお伺いいたしました。

 これは、今政府が進めております品目横断、考え方は全く同じでございまして、要するに、つくらない人にお金を出すということではなくて、つくり続けるためにどうするかという観点で例えばナラシとかゲタの政策があるわけで、ただ、対象者をどういうふうにするかということが実は構造改革とのセットの中で組み立てられているのが今の政府の考え方で、私は、ずっと聞いておりまして、根っこの違いは余りないんじゃないかと。

 例えば、先ほどから話が出ていますように、この品目横断なんかも、四ヘクタール、二ヘクタールというのはありますけれども、対象者をできるだけ、例えば市町村特認なんかを設けて、意欲のあるそういう中規模の農家なんかも参加できるような仕組みをつくる。あるいは、集落営農、さまざまな現場を回ってみますと、事務の負担が過大であるとか、それから、余りに財布を一つにしなさいみたいなことを急ぎ過ぎるとなかなかそこが組み立てられないと。だけれども、やはり方向性としては、そういう担い手を育てていかなければ持続可能な農業というのは私はできてこない、こんなふうに思っておるわけです。

 そういう観点からいいますと、今の政府の施策の延長線上で、そこをきちっと充実していけば今お話しのような考え方というのは十分成り立ち得るんじゃないか、このように思っていますけれども、どうでしょうか。

平野参議院議員 まず、直接支払いを導入したという点においては、これは共通しております。しかし、この直接支払いの仕組みの考え方、例えば過去実績に基づいてやるとか、これからの生産の拡大の面積に合わせてどういう補てんをしていくかとか、いろいろな考え方が違っております。

 それからもう一つは、何といっても、今委員の御指摘の中に、基準を下げていけばいいじゃないかというお話がございましたけれども、私どもは、基準を設定ということ自体がやはり、これは今回の法律の中では想定しておりません。先ほど、今回の委員会の中で、もう何遍も答えておりますけれども、計画にのっとって参加する販売農家、そういう農家がすべて参加できるような仕組みにしたいということでありまして、その考え方の基盤がやはり大きく違っているのではないかというふうに思っています。

 ただ、品目横断対策を、私はすべて否定するつもりはございません。今回、きょうのいろいろ議論の中で私は申し述べませんでしたけれども、例えば、転作を進めるためには集団転作が必要ですね。その集団転作を定着させるためには今回の品目横断対策はかなり有効に効果を発揮していると思います。こういった点は十分私どもも評価しなければならないと思っておりますが、考え方が特に違っているということでありまして、その考え方をどうやって埋めるかというのは、これは簡単ではないなという感じは私は持っておりました。

井上(義)委員 これは、担い手を育てるという政策目的とその施策をどう組み合わせるかということなんだろうと思うんですよ。

 政府の考え方も、この品目横断については、なるほど、これは一定の政策目的に応じて構造改革をしようということですから、一定の基準を設けて、そこに皆さんできるだけ参加をしていただいて、そして中核を育てようと。一方で米の生産調整、これは後でちょっとお話ししますけれども、必要ですから、産地づくり交付金のような形で、生産調整に参加する農家についてはすべてその政策の対象としているわけで、そのことが、平野さん、岩手ですから、これは岩手が一番進んでいる、ちょっと名前を忘れましたけれども、地域ビジョンをつくっています。

 そういう形で産地づくり交付金を組み合わせてやっていく方が、その地域の米づくりの体制をつくり、その地域の農家の体制をつくっていくということにはるかに有効じゃないか、そういう政策の組み合わせによってこれが成り立っていくんじゃないかというふうに私は考えていますけれども、その点はどうなんでしょうか。

平野参議院議員 まず、私どもは、中核となる担い手、そういう農家がいることは決して悪いことじゃない、むしろいいことだと思っています。

 しかし、この法案の中では、特定の経営体をつくる、特定の組織をつくる、こういうことではなくて、地域があって集落があればそこに農業をやっている人がいるじゃないか、その農家の方々が全部参加してその地域の農業の振興を図っていく、農地の管理を図っていく、そういうことをまず頭の中でイメージしまして、特定の経営体に向けた政策を集中するということは考えておりません。

 ですから、この特定の経営体という考え方、あえて言えば、特定の経営体の育成という構図に対して、集落もしくは地域の中での取り組み、その二極化といいますか、その考え方がそこで大きく分かれているのではないかというふうに思っております。

井上(義)委員 そこは認識が全く違っているんですね。

 先ほど言いましたように、産地づくり交付金という形で米ビジョンをつくっていただく。そこは地域の皆さんが全部参加をするという形で、その中で、なおかつ中核の農家を育てていこうというのが政府の考え方ですし、あわせて、多様な農業者の方が参加をしていただくということで、農地、水、環境に対する直接支払い、あるいは中山間地の直接支払いという政策全体の体系の中で実はこの品目横断という体系はできているのであって、そこの相互の関係、スタートしたばかりですから、そこの関係をもう少し整理することによって、十分今おっしゃっているような考え方と最終的には一致するんじゃないのか。

 現場を歩きますと、猫の目農政とか言われて、また変わるんですかみたいなことをよく言われるわけですよ。私は、今回の品目横断というのは、これは不退転の決意でしっかりやらないと、日本の農業は本当に崩壊してしまうというふうに思っているわけでございます。これからの政治がどのようになるかわかりませんけれども、私は今までの議論を聞いておりまして、今の政策の体系の中で、皆さん方の考え方というのは、そこに組み込んで、連続した政策の体系として十分成り立ち得る、このように思いますけれども、その点はどうなんでしょうか。

平野参議院議員 私どもはできるだけ、できるだけというか、今の品目横断対策を一〇〇%否定するわけでもございませんし、繰り返しになって恐縮ですけれども、いいところはどんどん採用できると思っています。あえて言わせていただきますと、私どもは、今の品目横断対策によってできた集落営農、こういったものも農業者戸別所得補償法案の中では十分包括されますし、あるいは費用の算定の方法の考え方についても、実は似通っている点もあります。

 しかし、繰り返しになって恐縮ですけれども、これから自給率を上げていくというシステムとしては、今の品目横断対策、特に過去の実績に応じてその単価を固定するという考え方は、私はこれは合わないと思います。これこそ、きょう何回も御指摘いただきましたけれども、生産を固定してしまうという考え方なんですね。これは運用で改善をするということもあり得るかもしれませんけれども、自給率を本気で上げようと思いますと、多分この政策は合わない。

 それから、あと、繰り返しになって恐縮ですけれども、担い手あるいは特定の経営体ということに、どうしても今の品目横断対策は注目が行き過ぎているのではないか、ここはやはり是正する必要があるのではないかというふうに考えております。

井上(義)委員 今の平野さんのおっしゃったこと、過去実績とか、そこはやはり十分改善の余地があるんだと我々も思いますよ。そうしませんと、これから生産調整を拡大しようというときに、今度新しく生産調整をやっていただこうというところは、それだけ薄まってしまうということになりますから、そこは十分改善の余地があるのであって、法律そのものを変えなければできないという話では全くないなというふうに私は思います。ここは基本的な認識だということだけ申し上げておきたいと思います。

 それで、具体的な農家の皆さんに即して、例えば私、先般、秋田に行きましたら、サラリーマンなんだけれども、親の代から農業ということで一ヘクタールぐらい田んぼを持っていらっしゃって、事実上、自分ができませんから、全部委託でやっている。それこそ苗づくりから田植え、刈り取り、乾燥、すべて委託で、自分でやっているのは水管理ぐらい。そうすると、農業委員会の決めた単価で支払うと、大体反当たり十一万前後かかってしまう。そうすると、ことしの米価ですと、単収九俵としても大体一万四千円ぐらいです。流通経費を入れると一万一千円弱ぐらいになってしまって、十万円程度の単収しかない。そうすると、もう赤字で自分の給料から支払っている、こういう話をされておりました。親の代からやっているので何とか続けたい、当然、生産調整に参加されていますから、産地づくり交付金の対象にはなっているんですけれども、手間がないということで休耕している、こういう状況の方がいらっしゃいました。

 例えばこういう、自分で耕していない、全部委託している、これも当然この戸別補償の対象になるということでよろしいんでしょうか。

平野参議院議員 作業委託を出している場合は、米の生産については自分で責任を負いますので、最終的にその方が支払い対象になると思います。そこから作業の委託料そのものを捻出していくという形になると思います。

井上(義)委員 それで、その議論の中で、やはり生産調整ということが非常に話題になりました。

 この法律によりますと、先ほどから何回も出ていますけれども、「生産数量の目標に従って主要農産物を生産する販売農業者」、ですから販売農業者ですよね。自分の米ですから、自分で売っていらっしゃる販売農業者が対象になると思うんですけれども、この「生産数量の目標に従って主要農産物を生産する」、私は、皆さんもそうだったんですけれども、要するに、民主党の政策は生産調整を廃止するというふうに皆さん理解されている。

 この生産数量の目標に従って生産するということと生産調整とはどういう関係なのか、もう一回、ちょっとよく説明していただけますか。

高橋参議院議員 先ほど、自民党さんの質問の中にも同じような話がございましたけれども、要は、我々は今の転作、生産調整関係は、それまで市町村や県が入っていろいろ調整をしてまいりました。その手が離れて、それぞれのところで調整がうまくいっていなくて、まじめにやった者が損をするような、そういう状況が生まれております。私たちはきっちりと、私たちのそもそもの需給調整の数量に従って、そのルールに従ってやっていただける方に対しては、ちゃんとそのメリットを出していただいて、それぞれお支払いをさせていただく。このちゃんとしたルールにのっとっていただけない方、またこのシステムに入っていただけない方に対してはそのメリットが行かないという、明らかにそのインセンティブがはっきりしてくるわけで、そこが大きな違いになってくると思います。

 今の生産調整というのは、やってもやらなくても結局一緒だ。だから、つくり続ける人がいたり、本当に正直者がばかを見るというような状態があって不公平感があらわれている。それをきっちりと、インセンティブを設けることによって、そういうまじめにやっていただく方々が需給調整に参加をしていただけるというところが大きな違いになってまいります。

井上(義)委員 ということは、要するに、生産調整をきちっと守るか守らないかという違いなんですか。ということですか。要するに、生産調整はする、生産調整を守るか守らないかということでインセンティブが違いますよということなんですか。

 要するに、今の政策も、生産調整に参加するからその政策の対象になっているということなんですよね、生産調整に参加しない人は政策の対象にはなっていないわけですから。そこは変わらないと思うんですけれどもね。意味がよくわからないですね。

平野参議院議員 今、生産調整でありますから、対象は米でありますね。

 今の品目横断対策でも、それに参加すれば、米についてはいわゆる価格下落対策、ナラシ対策が受けられる、対象になる。それに参加しない場合は、稲得ですね。仕組みがちょっと違ってナラシ対策の方が有利になっているんですが、この政策では、これは今までの政策と基本的に変わりませんから、まず需給調整に対してのメリット、需給調整に参加する人と、参加しない人というのは本当にメリットになっているのか、大変疑問です。

 特にこのナラシ対策、稲得でもそうなんですが、価格が下落してしまいますと、下落して下げどまってしまいますと、御承知のようにこの政策は発動されません。そういう政策ではなくて、今回でも何回も繰り返し述べたとおりでありますけれども、生産費と市場価格との差を基本とした一定程度の所得補償をする。これは目に見えた形の所得補償ですから、それが需給調整に参加する、計画にのっとって参加した農家に支給される、交付されるということで、これが、米をつくらない農家にではなくて米をつくる農家にそういう所得補償をされる、しかも需給調整に参加した農家に所得補償がされるんだということが、今までの生産調整あるいは需給調整とは大きく違う点だということ、それが先ほど高橋千秋発議人が述べたことであります。

井上(義)委員 要するに、自由につくっていいですよという意味での生産調整の廃止ということじゃないということですね。要するに、ある意味で今まで以上にきちっと守ってくださいよということでなければ政策の対象になりませんよと。今までも同じだと思うんですけれども、それがより厳密になったということでいいんですか。メリットも違うんだろうと思いますけれどもね。

平野参議院議員 厳密になったという言葉が適当かどうかわかりませんが、いずれにしても、先ほど言いましたように、需給調整に参加する人と参加しない人に大きな、はっきりとしたメリット差が出てくるということで、繰り返しになって恐縮ですけれども、需給調整に参加することでそのメリットがきっちり受けられるということであります。

井上(義)委員 言いかえれば、生産調整にきちっと参加をした人ということですね。言葉は同じですよね。(平野参議院議員「はい」と呼ぶ)そういうことですね。はい、わかりました。では、そのように申し上げたいと思います。

 それから、その数量の決め方なんですけれども、国、都道府県及び市町村が決めると。従来の、これまでの生産調整の決め方と同じだと思うんですけれども。この「農業者の意向を踏まえ、」ということと、それから生産調整の割り当て、具体的に言うと、個々の農業者にまで数量を決めるというふうに理解してよろしいんですか。意向を踏まえるのが、どの時点でどういうふうに意向を踏まえるのか。希望がある程度、意向を踏まえるんですから、農家の、例えば今ですと、生産意欲があるとか、あるいは販売実績があるとかいうことを配慮して地域で決めているわけですけれども、この「意向を踏まえ、」というのはどういう意味なんでしょうか。

平野参議院議員 まさに、一律に生産面積を機械的に割り振るということではなくて、今委員が御指摘ありましたように、これまでの生産調整の中で、いろいろな仕組みもその中であると思います、その仕組みに十分配慮しながら、それを生かす形でやることもあり得るということで、この「意向」の規定を置いています。そして、最終的には、御指摘のとおり、各農家に翌年度、あるいは当該年度になるかわかりませんが、作付面積が割り当てられるという形になります。

 以上が米についてであります。

井上(義)委員 ということは、今ある地域協議会みたいなものをそのまま使って、そこで決めて、それで個々の農家に数量を割り振るということですね。それに違反をしたら政策の対象になりませんよと。それはどこでどういうふうに判断するんですか。

平野参議院議員 違反をしたというのは、まず、最初から私は入りませんという方は、これは入りませんね。

 例えば、違反という意味は、割り当てが一・五ヘクタールだというふうになっていたのを、それがわかりながら意図的に二ヘクタールつくった、そしてそれを販売したということがあれば、やはりこれは明確な違反になると思います。そういった実態でもって判断をするということになると思います。

井上(義)委員 これは行政がやるんですかね。かなりの権限がなきゃできませんよね、あなた違っていますよと。これはどういう仕組みでやるんですか。

平野参議院議員 これは、自治体あるいは先ほど言った地域協議会が一体となってやることになると思います。

井上(義)委員 それから、先ほどの例えば私が例として申し上げた農家の方。当然、今も生産調整に参加されていますから、そういう地域の協議会にも参加をし、政策の対象にもなっている、ただ、手がないのでそこは休耕したままになっているという方が、例えば所得補償されるということになりますと、これは先ほどからもちょっと出ていますけれども、地域でできるだけやはり、例えば集落営農という経営体になるのか、もう少し緩やかなものになるのかわかりませんけれども、できるだけ担い手に、規模拡大ということで農地を流動化して集約しようということは今現場としては非常に努力されているわけですけれども、そういう形で何とかやっていけるということになると、これは先ほどから出ているように、そういう担い手を育てる、規模を拡大していくというインセンティブがそこに働かなくなってしまって逆にブレーキになるんじゃないか、こういう懸念が非常にあるんですけれども、実際どうなんでしょうか。

高橋参議院議員 先ほど御答弁させていただいたように、これは、お金を払うのは、標準的な生産費と標準的な販売費の差額を払うわけでありますから、その標準的な販売費、それから生産費を決めますよね。そうすると、規模が拡大すればするほど当然生産費、コストが安くなるわけでありますから、規模拡大すれば規模拡大するほどそのメリットが出てくるわけです。そういう中でそういう規模拡大のインセンティブは働いていくわけでありますから、それを決して阻害するわけではございません。

平野参議院議員 今、高橋発議人は、受け手というか規模拡大志向農家のサイドからありましたけれども、今度は出し手からちょっとお話ししますと、私らの立場からすれば、農業従事者が減っていく中で、今やりたいと思っている人はできるだけやってもらうという環境づくりが大事だと思います。それをやったとしても、農業者は高齢化が進んでいます、人口減少社会にも入っています、いずれ農地は離さなくちゃならなくなると思います。

 そういったことを踏まえた上で、きょうの委員会で何回も申しましたけれども、農地流動化を進める、あるいは集落営農をつくる、緩い生産組織をつくる、そういったことをやってもらうことが大事ではないかというふうに思っていまして、すぐに担い手、特定の経営体に流動化を進めるということではなくて、まずは地域の中の集落を維持するために、私どもはまず、やりたいと思っている人は頑張れる限り頑張ってください、そういう環境づくりも大事ではないかというふうに思っています。

 そして、では、それは農業構造の固定かというと、そうではなくて、これから急速な勢いでそうでなくても農村、特にも中山間地域の農村は変わっていく、変わっていかざるを得ない、私どもはそういう認識で今見ているということでございます。

井上(義)委員 そこら辺は若干私と認識が違って、私も地域をいろいろ回りましたけれども、やはりその地域にリーダーがいて、その人が本当に、中山間地でも、中山間地の直接支払い、農地、水、環境、それから品目横断、これを組み合わせますと、中山間地で十分やっていけるところはいっぱいあるわけですよ。ところが、そういう個別の農家が、先祖伝来、自分がやってきた、なかなかそこに参加したがらないというケースはいっぱいあるんですよ。そういうことについて、私は非常に危惧をしています。

 もう一方で、そういうリーダーがいないというところについては別な手だてが必要なんだろうと思いますけれども、その辺が、構造改革をどういう手法で、どういうスピードでやっていくかという、これは日本の農業が、基本的に言うと、持続していくためにどのぐらいのタイムスパンを考えるかということに大きく違いが出てくるんじゃないかなというふうに私は思っています。

 いずれにしても、いろいろお伺いして、どうも、今の政府が進めている施策の延長線上に十分政策意図は達成できるというふうに私は改めて思いました。

 この法案、どういう処理になるかわかりませんけれども、ただ、今の法律を廃止するということが何か前提になっているようなので、そこがちょっと基本的な考え方が違うかなということでございますけれども、ぜひそういう形で、これはお互いに、日本の農業をどう持続可能なものにしていくかという観点で、建設的な議論ができればなというふうに思っていますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

宮腰委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木隆博でございます。

 戸別所得補償法案の審議について、基本的な部分について、政府を含めてお伺いをしたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 最初に、最初からこういう質問もいかがなものかというふうに思わないわけではありませんが、ばらまきということについてまずお伺いをしたいというふうに思います。

 実は、ここ半年余りの新聞報道などを検索させていただきましたら、ばらまきという言葉が載っている新聞がこんなにありまして、半年だけですが、大変かまびすしい状態に実はなっております。

 このばらまきということについて、農政を預かる大臣としてどう考えておられるのかについて、まず御所見をお伺いします。

若林国務大臣 お答え申し上げます。

 農政の展開に当たりましては、これまでも、その時々の政策課題に対応するために、効率的、重点的な予算編成、執行に努めてきているところでございます。

 具体的には、現下の農政の最大の課題であります農業従事者の減少、高齢化、耕作放棄地の増大などに対応しまして、力強い農業構造を確立するということが大事でございまして、そういう農政課題に従いまして、公共事業につきましては、コストの縮減などによる事業の効率化に取り組みつつ、効率的な農業経営の展開に不可欠な基幹的な農業水利施設の更新、保全管理など、また非公共事業につきましては、中山間地域などの直接支払いや米政策改革、品目横断的経営安定対策を初めとする担い手の育成などに予算の重点化を図っているところでございます。

 今後とも、このような政策課題に対応して、めり張りのある予算編成、執行によりまして、国民が農業、農村に期待する食料の安定供給という役割を果たしていくことができますように、政策展開に努めてまいるつもりでございます。

 ばらまきという、いろいろな、今委員がおっしゃられましたような御指摘につきましては、政策の重点というものをどのように定め、どのように政策を展開しているかということについて、我々の方も、広く国民の皆さん方に御理解いただけるような、そういう説明、努力ということが必要ではないかというふうに思っているところでありますが、そのような政策課題に即した政策、施策の展開ということによりましておこたえをしてまいらなきゃいかぬ、こう思っております。

佐々木(隆)委員 農政の責任者としてのお考えを伺ったわけでありますが、めり張りをつけていく、重点化をするというと、今は多少ばらまきなのかなということをお認めになっておられるのかという気もちょっとしないわけではなかったんですが、私は、これはもう与党とか野党とか政府とかいう問題ではなくて、いわれなき批判だというふうに実は思っております。

 ばらまきという定義はないのかもしれませんけれども、私自身が農家でありますけれども、ばらまきの恩恵を受けたことは一度もないというふうに思っておりますので、そういった意味でも、農政全体がばらまきと言われる筋合いはないというふうに実は思っております。

 要は、政策目標というものが、どういうふうにしっかりしていて、そのことにどういうお金が使われるかということがはっきりしていれば、それはばらまきでも何でもない、対象が広いとかお金が多いとかということは、それとは全然関係のない話なのではないかというふうに私は思うんですね。

 そういう意味で、ばらまきという言葉をぜひ、農政の責任者として、もし、そういうことが使われるとすれば、マスコミを含めてしっかりと否定をしていただきたいということを申し上げたいというふうに思うところであります。

 その中で申し上げたいというふうに思いますが、このたくさんの報道の中に注目する人の意見があったんです。それは政策誘導効果というものも、この中に、例えば薄くて広くても政策誘導効果があれば、それもひとつ考えなければならないのではないかというのが、これは秋田大学の教授ですが、そういうことを言っておられる方もありました。

 もう一つは、先ほど大臣も力強い農政をつくる、後ほどまた論議をさせていただきたいというふうに思うんですが、効率的な農業をつくるということを基本にされているわけでありますけれども、その中で、これはまだ政府案にはなっていなくて、先ほどの質問ですと、あすあたり、自民党さんが見直されている見直し案というのが出てこられるということのようでありますが、これが当初の政策目的に沿っているのかどうかについては、私どもは報道でしか知ることができませんので何とも言えないわけでありますが、もし、あすあたりに出てくるというのであれば、これは委員長にお願いを申し上げたいというふうに思うんですが、相当な見直しとしてその案が出てくるのであれば、ぜひこの委員会で、両方並べて論議をする場所を、ぜひとも委員長の方で御配慮いただきたいというふうに思いますので、これは要請をさせていただきたいと思います。

宮腰委員長 理事会で協議します。

佐々木(隆)委員 はい。

 同じことでありますが、今のばらまきについて、戸別所得補償法案を提案された提案者の方にお伺いをいたします。

舟山参議院議員 ただいまのばらまき批判でありますけれども、今委員御指摘のとおり、やはり政策目標がしっかりしていれば、その政策対象が広くなっても、そういった批判は当たらないと思うんです。

 そういった意味で、私たちが今提案しております農業者戸別所得補償法案、これについては、第一条で、目的を食料の国内生産の確保、そして農業者の経営の安定、これらを図ることによって食料自給率の向上と、もう一つ、地域社会の維持、活性化等の多面的機能の確保を実現するということをうたっております。

 まさしくこれは、食料・農業・農村基本法の大きな目標にも合致するわけでありますけれども、つまりは、農業というのは、もちろん農産物を生産するという役割がありますけれども、それ以外に、生産によって付随的な多くの役割を果たしていると思うんです。それがまさに多面的機能と言われるものでありまして、そういったものが、今、市場では残念ながら評価されておりません。農家は無償でそのような役割を果たしているということであります。ですから、そういった役割を生産に伴って果たしている農業者に対して、そういった機能をさらに発揮するためには、やはり再生産可能な手助けをするというのが政策の、政府の仕事だというふうに思うんです。

 そういった意味で、私たちは、そういった多面的な役割を持っているのは一部の経営体だけではなく、広く、小さな農家、まさに四ヘクタール、まさに二十町歩の、そういった規模に届かないけれどもしっかりとそういった生産によって役割を果たしている多くの農家にも支援が行き渡るような、そんな政策目標を立てておりますので、私たちの提案している法律はばらまきという批判は全く当たらないというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 きょうは三十分しか時間を与えられておりませんので、次に移らせていただきたいというふうに思います。

 次に、ことしからスタートいたしました品目横断経営安定対策の進捗状況についてお伺いをしたいというふうに思います。

 認定農業者及び面積要件を満たしていない場合には、先ほど来話題になっておりますが、集落営農でそれをカバーするというふうに言ってきたわけでありますが、現状の加入状況といいますか、申請状況といいますか、それについてお伺いをしたいというふうに思います。とりあえずその加入と申請の状況についてお伺いをいたします。

高橋政府参考人 品目横断的経営安定対策の加入状況でございますけれども、十九年産、直近のものは今十九年産が全部まとまっておりますが、これにつきましては、加入申請者数といたしまして、認定農業者が六万七千四十五経営体、集落営農組織は五千三百八十六組織体、合計で七万二千四百三十一となっております。

 このうち、集落営農組織を構成いたします農家数につきましては、個々の組織ごとの構成員数の集計はございませんけれども、ことし二月の時点の統計の別の調査におきまして、一集落営農組織当たりの構成農家戸数の平均が大体四十一戸という形になっております。これから推計をいたしますと、この五千三百八十六の集落営農組織への参加農家数はおおむね約二十二万戸というふうに推定されるわけでございまして、これと認定農業者と合わせますと約二十九万戸ということになるわけでございます。

 これらの農家がつくっております対象面積でございますが、畑作物については、ほぼ従来の品目別の対策と同面積、同じでございます。一方で、米につきましては、飯米農家等の分を除きました市場流通しているお米、大体百十万ヘクタール程度というふうに試算されますけれども、これらと比較いたしますと約四割の水準という状況になっております。

佐々木(隆)委員 今、二十九万戸、面積の話もありましたけれども、戸数でいうと二十九万戸、それは集落営農の人を戸数に置きかえた場合の話ですよね。

 そうすると、百九十五万戸というふうに言われている販売農家の中で二十九万戸というと、一五%弱ぐらいでしょうか、参加農家が。そのぐらいになるんではないかというふうに思いますが、いずれにしても、当初三割ぐらいはカバーできるというふうに言っていたんですが、そういう状況なわけですよね。先ほど来、集落営農で救われる、救われるという話があるんですが、集落営農を含めてそういう状況に今あるということであります。

 集落営農は、地域的には進んでいる地域もあるし、進んでいない地域もあるんですけれども、やはりここの一番の問題は、経営を一元化するというところだと思うんですね、将来にわたって。将来、五年先でしたか。私は、その集落営農という言葉がどうもなじまないんですが、農業法人という言葉が片方にあるわけですから、農業法人を進めていくというのはわかるんですが、集落を一つにして営農の単位にするというのは、これはあくまでも集落は集落ですから、そういう意味で、今の状況が実はそれほどカバーしていないということになるわけであります。

 そこでお伺いしたいんですが、実は、これの一番根拠になっているのは農業基本法なわけでありますが、農業基本法のところでは、「家族農業経営の活性化を図る」ということを明確に書いているわけであります。それに伴ってできた旧農業の基本計画、ここにも「家族農業経営の活性化を図る」、家族経営の活性化ということについて特出しをして記述をしているわけであります。ところが、新基本計画に来たときに、家族経営という言葉がなくなっているんですね。これは平成十七年に見直したんですが、ここで家族経営という言葉が消えております。「家族経営協定」という言葉が辛うじてあるんですが、しかも、これは「女性の参画の促進」というところに出てきているんですね、この言葉が。

 担い手というのは一体何だという話が先ほど来あるんですが、担い手の基本というのは、本来、家族経営であるべきだというふうに私は思っております。長い間、日本の農村あるいは農業というものを担ってきたのはまさに家族経営であって、その家族経営こそが担い手でなければならないというふうに思っているわけでありますが、現在の担い手経営安定法における家族経営の位置づけについて大臣にお伺いをいたします。

若林国務大臣 家族経営ということを、決して否定するとかおろそかにしているという考え方は持っておりませんが、経営体に着目して申し上げれば、それは家族で営まれているか、あるいは農業を担っている個々の農業経営者が雇用を、労働を入れながら経営体としてやっていくとか、いろいろな形態があるわけでございます。その意味では、農業経営体としての認定農業者の行う農業経営というものが、主たる農業経営を担うものとして農産物の供給の相当部分を占めるようになっていくということをイメージしているわけでございます。個々の農業経営の段階で、それが夫婦あるいは子供といったような形の家族で営まれること、このことが、委員がおっしゃられたように、昔からずっと日本農業を今日までつくり上げてきた主体であったと思うし、今後とも、家族が協力し合って農業経営をしていくという姿は一つの経営のあり方として評価さるべきものだと考えております。

佐々木(隆)委員 時間がありませんので、余り繰り返し質問ができないんですが、今大臣が言われたのも、強い経営体をつくっていく、強い農業経営をつくっていくというお話で、そこが農業の主体的な役割を果たすと言いながら、これから家族経営も主体的だと。どっちが主体なんだかよく聞き取れなかったんですけれども。

 私は、日本の農政がこれまで一番大きな間違いを犯してきたのは、産業としてだけ農業を見て、経営体を大きくして農業が豊かになったら同時に農村も豊かになるんだというような幻想といいますか、失政を繰り返してきたわけですよ、ある意味で。今のこの限界集落と言われるような農村の状況を見れば、それはそのとおりだと思うんです。私も農村に住んでおりますが、この三十年ぐらいで半分ぐらいに戸数は減っておりまして、村落として維持ができるかどうかという今本当に瀬戸際に来ているわけですね、年齢の問題ばかりではなくて。

 そういう中で、先ほど来言っているように、基本を変えずにとずっと言われて、そして農政は見直すと言われているので、その基本のところが、力強い農業や効率的な農業ということの基本はやはり変えてもらわなきゃいけないし、同時に、新しい基本計画の中に家族経営という言葉は今欠落しているわけですから、そこのところもやはりもう一度見直していただかなければならないということについては、指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 それと、これは、ついでにと言っては申しわけありませんが、限界集落という言葉がこのごろ使われるんですが、農水省と国交省が限界集落についてデータを出しているんですけれども、データのとり方が全く違って、どちらの数字を使ったらいいのかというのが実はちょっとわからなくて困る場合がありますので、ぜひ農水大臣と国交大臣の間でその辺は整理をしていただくように、ここはお願いを申し上げたいというふうに思います。

 同じく家族経営の位置づけについて、提案者の方に、戸別所得補償法案においての家族経営の位置づけについてお伺いをいたします。

平野参議院議員 法案には家族経営という言葉はございませんが、私どもも、基本的には、農業は家族が協力し合ってやる形態が一番いいのではないかというふうに思っています。

 しかし、その上で、家族経営も、かつては自作農でございましたけれども、最近では借地農というか借地の要素もふえてきている、そういう変化もしっかり見なければならないと思いますし、一方で、私どもは、生産法人も決して否定しなくて、生産法人が合う地域もあるんだろうと思います。そういう中での生産法人も、経営体としては、経営体といいますか、そこの一つの農業者の形態としては評価していいのではないかというふうに思っています。

 しかし同時に、私ども今回の法案の中で言いたいのは、特定の経営体、特定の担い手を育成することではないんだと。たくさんの家族経営体が集まって、その中での地域農業、農村のあり方を考えて、かつ振興を図っていく、それが今最もふさわしい姿だということを考えているということでございます。

佐々木(隆)委員 次に、いわゆるナラシ対策についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 品目横断対策の中に、収入の減少による影響の緩和のための対策、いわゆるナラシ対策が導入をされたわけでありますが、これは品目横断対策の中にあります。表裏一体とされる、いわゆる米政策の中の担い手経営安定対策、先ほど来話題になっておりますが、担経と言われるものでありますが、この部分は、最初のときに何度も私ども説明を受けたんですが、品目横断と米対策と農地、水、環境対策と三つの対策がありますとなっていて、この米対策の中から、この担経の分だけは品目横断の対策と一緒の形になったわけですよね。

 そして、その品目横断対策のナラシ部分は、経営基盤強化準備金、いわゆる積立金として積むことができるというふうになって、今までの産地づくり交付金の税制特例は継続しないということになったわけです。いわゆる一時所得扱いをしないということになったわけであります。

 一方のナラシ対策と言われるものは、価格の変動、収入の変動によって支払われるものです。ですから、次の年の準備金として積まれたり経営基盤の強化のために積まれるというのは、これは理論上正しいと私は思うんですね、ある意味で。

 ところが、これは米のいわゆる転作奨励金ですから、転作による交付金はその転作による収入の減少を補うために支払われて、政策誘導したわけですね、上下するわけじゃないんですよ。常にその部分は、米に比べてマイナスする分を補ったわけですね。片方の、上下するものをならして準備金に積むというのとは基本的に私はちょっと違うものだと思うんです。

 そもそも制度として矛盾しているというふうに私は言わざるを得ないんですが、そこはお伺いしないとして、今まで一時所得扱いになっていた産地づくり交付金が、今度は雑収入になって準備金に積まれることになるわけであります。

 ところが、担い手の対象とならなかった人たち、担い手の対象になった人たちは準備金に積めるからいいんですが、対象にならなかった人たち、先ほどのデータからいっても約半数近い米農家の皆さん方、ここはこの対象にならないわけです。だから、一時所得扱いでもなくなり、普通の農業雑収になって、今度は税金の対象者になってしまうわけですね、言ってみれば。しかも、それは担い手にならない人たちですから、大型でない人たちが圧倒的にその対象になって、一割やそこらは今度も税金かからないという人は出てくるでしょうけれども、大方の人たちは税金の対象者になるという危険性が今出てきているわけであります。

 結果として格差をさらに拡大するということになるわけなのでありますが、このことについて大臣のお考えを伺います。

若林国務大臣 お答え申し上げます。

 委員が御指摘になりました新たな交付金の税制上の取り扱いにつきましては、農業経営基盤強化準備金制度ということでこれを受けとめることにしたわけでございます。

 この制度は、認定農業者などの担い手が、規模拡大や機械装備の高度化等のために、内部留保を通じて経営改善を図ることを目的としたものでありまして、具体的には、品目横断的経営安定対策の交付金、さらに産地づくり交付金などを準備金として積み立て、それを活用して農地等を取得した場合に一括して経費としてこれを認める、こういう仕組みにしたわけでございます。

 したがいまして、その対象は、準備金の経理を正確に行うために青色申告を行うなど、一定の記帳や経営管理のできる農業者に限られてくるわけでございます。

 なお、このように組みかえたことにつきましては、本準備金の創設に対して産地づくり交付金の一時所得扱いの特例が廃止されたわけでございますが、そもそもこの特例自身は、所得区分の変更ということから、政府ではこれは異例の措置といいますか、筋書きとして言えば、こういう所得区分を変更するということは政府側としては認めがたいという姿勢でおりまして、そのために、これは議員の提案として、昭和四十五年の生産調整が始まって以来、毎年度議員立法という形で措置されてきたことでございます。

 しかしながら、平成十六年度及び十七年度の交付金の取り扱いについて、議員立法をする過程において、本措置の特別な取り扱いが問題だというふうに議員内部でなされまして、税制上の措置のあり方について検討をしろということがこの議員立法の際の附帯決議で全会一致で決議されたという経緯がございまして、一時所得扱いの特例が廃止に至ったものでございます。

 そこで、新しく、このような品目横断的経営安定対策における交付金でありますとか、あるいは産地づくり交付金というようなものに、通常の所得として課税されるということではなくて、何らかの形で経営にこれが生かされるような措置が組み立てられないかということで、先ほど申し上げましたような形を、準備金としてこれを積み立て、その活用によりまして、農業経営に資する形で使った場合に一括してこれは経費として認めるという仕組みに切りかえたものでございます。

佐々木(隆)委員 今のは最後の私の質問には実は答えておりません、大臣。経営基盤強化準備金にしたということはそれは私も承知しています。その対象から漏れる人たちが数多く今出てきているんです、だからそれをどうするんですかということを今お伺いしているわけです。

 確かに、議員立法として毎年やってきたわけですから、これは異例だというのは、私も去年参加していましたから、そういう論議があったことは知っています。知っていますが、それは毎年提案をして毎年決めるというのは、継続されているのに毎年決めるというのはおかしいという論議があったことは確かですが、これはやめろという話であったというふうには私は記憶しておりませんで、毎年継続されているものを毎年決めるというのはおかしいじゃないかという論議があったことは私も存じております。

 それと、転作というものを政策誘導してきたわけですよ、奨励金というもので、奨励金というか産地づくり交付金という名前に今は変わっていますが。政策誘導して持ってきたものが、それは政策目的ですから。だから、これと準備金という会計上の処理とは基本的に私は違うものだというふうに思いますが、そこまで論議をしないとしても、少なくとも地域によってはこれから半数近い人たちが対象から漏れるわけですから。しかも、その人たちは、今度のところで、農業雑収入になったことによって、所得税の対象になるということは、地方税の対象者になるということですね。国保の対象者になるということです。ずっとこの後、相当大きな影響を持っていく、格差をさらに拡大させることになるということをぜひ御検討いただきたいと強く指摘させていただきたいというふうに思います。

 余り時間がありませんので、次に移らせていただきます。

 もう一つは、現場では、品目横断にかかわって、先ほどもちょっと自民党さんの中の質問にもあったんですが、ゲタ、ナラシの支払い時期がずれてきて、支払い時期が違う、あるいは支払いそのものが来年に回ってしまうというようなことが起きてきて、結局これは次年度の収入になってしまうわけですが、次年度から後は毎年繰り越しになっていきますからいいんですが、これは、結果として、ことしの収入が相当落ち込むことになるわけですね、次年度に回っちゃうわけですから。

 そういうことなどを含めて、この対策をやはり何とかしなければならないという話は多分大臣のところにもたくさん届いているというふうに思うんですが、私は、農協金融をぜひ使うべきだと思うんですね。農協金融を使えば、個人の方に今度はそこの利子補給という話が出てきますので、そこのところは政府の中でぜひ御検討いただきたいというふうに思うんです。

 もう一点は、単収のあり方であります。面積の方は直近三年を使いました。単収は共済の引受単収を使いますから、いわゆる七中五、二年前までの単収になるわけであります。特にここ一、二年、品質向上、増収などという努力が、麦でいうと北海道とか北九州とか、大変収量が上がってきているわけですね。その努力が今の制度では反映されない仕組みになっています。

 こういうものを含めてぜひ見直しをしていただきたいということについて、これは、時間がありませんので申しわけありません、答弁いただきたいと思ったんですが、答弁いただけますか。

今村副大臣 お答えいたします。

 ただいまの委員の御指摘は、私たちも問題意識としてとらえておりまして、これについては、今対応策を考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 質問時間が終了しましたので、最後に、一点だけ提案者にお伺いします。

 今の品目横断の制度と米対策と農地、水、環境という三つの対策になっているというのが、ある意味で非常にわかりづらくしている原因の一つだというふうに私は思っております。

 先ほども自民党さんの方の質問の中にもありましたが、WTO対策のために少し急ぎ過ぎたのではないかという嫌いを私は持たないわけではありませんが、先ほど申し上げました、ナラシなどによる矛盾ですとか支払い時期のずれ込みですとか、いろいろな問題が今出てきているんですが、こういう懸念というのは農家にとってはまさに大変大きな問題でありまして、今度の戸別所得補償においてこういう事態が起きる心配はないのかどうかについて、最後にお伺いをいたします。

平野参議院議員 ナラシ対策のような考え方はこの法案でとっておりませんので、ナラシに関連しての問題というのはまず起きないと思います。

 ただ、いずれにせよ、制度設計の段階で、課税に係る問題点等々についても十分配慮した上で、矛盾とかあるいは格差の拡大を助長するようなことがあってはならない、そういう制度設計をやることが大事だと考えております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

宮腰委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、農林水産委員会で質問の時間をいただきまして、食の安全に関して質問をしたいと思います。

 まず、民主党の提案者にお伺いをしたいんですけれども、今回審議されております農業者戸別所得補償法案、この法案において、成立した暁に食の安全の向上に資するような環境がどのように整うのか、どういうふうに影響があるのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。

舟山参議院議員 農業者戸別所得補償法案によりまして、今いる農業者にしっかりと営農を続けてもらうこと、そして、生産数量の目標を立てまして、自給率の向上を図ること、これによって、まず国内の農業生産をふやしていく、自給率を上げるということで、食の安全、まさに今世界的に非常に食料需給が不安定であること、また輸入農産物の安全性への不安の懸念が多く出される中で、食料自給率をしっかりと上げていくという方向に向けていくことが食の安全にも影響するものだと考えております。

岡本(充)委員 まさに食料自給率を上げていくという意味でいうと、食料自給率の低いものの代表が牛肉なわけでありまして、ちょっとここから、米国産牛肉の一連の報道を含む情報について、少し指摘をしつつ問題点を明らかにしていきたいと思います。

 十二月八日の新聞において、どうやら町村官房長官が、我が国政府は、今は二十カ月だが三十カ月ということを食品安全委員会に提起しよう、米国産牛肉の輸入条件緩和に向けてこのような発言をされてみたり、三十カ月齢に引き上げるということについては、前からそういう方針だが、それは日米の合意を得て今度諮問することになっている、これはかねてよりの方針、何も新しく出てきた方針ではない、春ごろからずっとそういう方針で米国と話し合いを行ってきたテーマだ、こういうふうに記者会見で発言をしています。

 大変、寝耳に水というかゆゆしき話だと思っているわけでありまして、こういった事実があるのかないのか。ないのであれば、当然、農林水産省、厚生労働省というリスク管理官庁からこの発言に対してクレームもしくは抗議をするべきでありますけれども、ここはどのようになっているか、確認を求めます。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 官房長官の御発言につきましては、我が国としては米国が求めている月齢制限の撤廃は困難であり、仮に輸入条件を緩和するとしても、多くの国が採用している三十カ月齢未満について科学的知見に基づく判断をした上で検討を行うことが適当ではないかという趣旨であったということが、官房長官から私どもの若林大臣に対してお話があったというふうに聞いております。

 いずれにいたしましても、まずは先般の日米間の技術的な会合につきまして、その結果を取りまとめることが重要という我が国の政府の考え方に変わりはございません。

岡本(充)委員 その上でちょっと確認をしておきたいわけですけれども、今回、その一方で、米国側からはキーナム農務次官が会見で、三十カ月齢未満というのを食品安全委員会に諮問すると言っていたと発言をしたと報道を、四つの新聞、読売、朝日、日経、日本農業新聞が十二月八日に報じています。

 これは、四つの新聞が報じている以上は、当然事実ではないかと類推するのが一般的だと思うわけですが、この発言については、外務省、確認をしているのでしょうか。

小田部政府参考人 お答え申し上げます。

 記者会見、報道されていることは承知しておりますが、まずは、米国政府による記者会見でございますので、個別具体的な発言内容について正確に承知しているわけではございません。ただし、もちろん、この記録につきましては、我が方より外交ルートを通じて米国に照会しております。今までのところ、入手しておりません。

 ただ、一言申し上げさせていただければ、記者会見の後にも、私がキーナム次官と直接会談する機会がございました。したがって、その機会におきまして、アメリカの要求している月齢制限の撤廃なるものは応じることができないということ、さらには、ただいま農水省の方から答弁させていただきましたように、まず、この問題については、技術会合が行われましたので、その技術会合の結果を取りまとめるのが先決である、また、外務省としても、食の安全と消費者の信頼確保を大前提に取り組んでいくということを改めて外務省よりもキーナム次官に強調したところでございます。

岡本(充)委員 答弁をそらしてもらっては困るんです。月齢撤廃とは言っていない。三十カ月齢未満というのを食品安全委員会に諮問する、こう言ったんです。月齢撤廃とは言っていない。これは、三十カ月齢未満というのを食品安全委員会に諮問すると言ったのか言わなかったのか。

 これは、少なくともおとといの段階で我が党の議員から質問通告があり、きのうの段階で改めて、米国側に電話なりなんなり、ビジネスアワーに入るわけだからしっかり聞くようにと通告をしてあるはずでありますから、今に至っても確認がとれないというのでは、質問が続けられません。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 外交ルートを通じてアメリカ政府には確認を求めているところでございます。まだ回答を得られておりません。きょう、午前中にも、改めて外交ルートを通じてアメリカに確認を求めたところではございます。

岡本(充)委員 では、はっきり、どちらかで答えてください。

 米国政府の農務次官、キーナム次官がこの発言を言ったのか、それとも、日本政府が、日本政府のだれかがこういう発言を、日米次官級の経済対話で発言をしたのか、このどちらかをはっきり答えてもらわなければ、これは答弁次第ではもう質問が続けられない。

小田部政府参考人 キーナム次官の発言につきましては、繰り返し述べさせていただきますとおり、残念ながらまだ確認できていないところでございます。

 また、日米次官級経済対話のやりとりにつきましては、昨日のこの委員会におきましてもお答えさせていただきましたが、この対話、自由なやりとりということになっておりますので、この大事な問題のみならず、すべての案件について、おのおのがどういうふうに発言したかというのは明らかにしないということになっておりますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。(発言する者あり)

宮腰委員長 岡本充功君、時間は三十二分までになっておりますので。きょうは法案審議ですよ。

岡本(充)委員 ちょっと確認を。ちょっと速記をとめてよ。委員長、とめてください。

宮腰委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

宮腰委員長 速記を起こしてください。

 この問題については、扱いについては、後ほど理事会で協議をさせていただきます。

 質問を続けてください。

岡本(充)委員 いつまでに理事会の協議を調えていただけるのか。大体、そのめどだけでも教えていただきたいと思います。

宮腰委員長 これは、委員会終了後、協議をいたします。

岡本(充)委員 そうしましたら、外務省の方に。

 では、米国側からの答弁は、回答は、いつまでに得るのか。相手があることだからといって延ばされても困ります。必ずこのときまでにと、議会で約束をしたから確認の、だって、発言をしたかどうか確認をするだけですからね、そんな大変なことじゃない。それはいつまでに回答するのか、期日をここで明確にしていただきたいと思います。

小田部政府参考人 キーナム次官の記者会見につきましては、アメリカが責任を持ってやっている話でございます。したがいまして、そもそもアメリカ側がかかる対話の記者会見の記録をとっているかどうかということを含め照会しているところではございますけれども、いずれにいたしましても、これは、我が政府のことでございましたらいつまでと申し上げることはできますが、アメリカ側の記者会見の話でございますので、照会はしておりますけれども、責任を持っていついつまでということは申し上げることができないことは御理解いただきたいと思います。

岡本(充)委員 一つ言っておきますけれども、さっき、これは率直な対話をして、表に出さないと言っている。日本はその信義を守っているんですよ、皆さん。それをアメリカがぺらぺらしゃべっているわけですよ、記者会見で。こういうことであってはお互いの信義則違反ですよ、これは。

 日本は守って、黙って、国会で聞かれても答えられない。ところが、アメリカの農務次官はぺらぺら記者会見でもししゃべっているとすれば、抗議をするべきですよ。それをせずに、いや、それはもうアメリカの話ですからというのでは、とんでもない話ですよ。

 しっかり、いつまでに、この発言をしたのかしないのか。そんな言わないという約束を言っているんだから、それはきちっと確認をするべきです。それはアメリカ政府の問題ではありません。日本と米国との信義則の問題です。確認はいつまでにされるのか、はっきり答弁をしていただかなければ、これ以上質問ができません。

小田部政府参考人 冒頭申し上げましたように、アメリカが日本の立場を誤解するということが一番問題だろうと思います。したがいまして、そのことはないように、私自身を含めまして、日本政府全体としての方針というのはキーナムに申し上げ、強調しているところでございます。

 今御質問ございました、いつまでにアメリカから答えを得られるかというところでございますけれども、この点につきましては、先ほどお答えさせていただきましたように、これは、アメリカ政府がやっている記者会見、その記録の話でございますので、私がこの場で責任を持っていついつまでにと申し上げることはできないという事情をぜひとも御理解いただけたらと思う次第でございます。(発言する者あり)

宮腰委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

宮腰委員長 速記を起こしてください。

 今のことも含めて、理事会で協議するということに決定をいたしました。

 岡本充功君。

岡本(充)委員 では、ちょっと質問の切り口を変えて、期限を決めて回答を求めて、そのときまでに回答ができなければその理由を少なくとも理事会に報告をしていただく。それは、アメリカから返事が来ませんじゃないんです、アメリカがなぜ答えられないかの理由を付記してその期限までに回答をいただきたい。それはできますか。

小田部政府参考人 改めてアメリカ側に対しまして照会いたします。

 照会する際には、まさにきょうの議論を受けまして、早急に出してほしいということを求めると同時に、いつまでも延ばすわけにはまいりませんので、期限、ちょっと時差等もございますので、そこを考えて、まさに、きょうかあすか、ちょっと今のままでは判断がつきませんが、期限を切った形でアメリカに判断を求めます。

 その結果、答えが来ている場合には、当然のことながら御報告いたしたいと思いますし、もしその期限までにアメリカが答えが出ない場合は、なぜアメリカが答えを出せないかということを含め御報告させていただきたい、そのように思います。

岡本(充)委員 その期限をきちっと明確にしていただきたい。それは早急にいつまでということを私にも報告をいただきたいと思います。

 うなずいていただきましたので、宿題は必ずやってください。

 その上で、次の発言について私は聞いていきたいと思います。

 その一方で、今回のこの一連の問題を昨日の参議院農林水産委員会で指摘をされた若林大臣は、現時点で、この輸入条件の見直しについて諮問するのかどうかというふうなことは、日米の技術的会合の報告書を見ないと決められないと言っています。農林水産省はさまざまな組織をつくっているようでありますけれども、この技術的会合というのはリスク管理のあり方であって、リスクを評価するものではないはずであります。

 そういう意味でいったら、このリスクをあたかも農林水産大臣が評価をするような答弁をしていますが、これ自体が問題なのではないかと思っております。それについて答弁を求めたいと思います。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 先般から行っておりますこの技術会合につきましては、まさに米国から今要求があります要件の見直し、これを行うのが適当かどうか、そういったことについて、飼料規制の状況ですとかアメリカでのサーベイランスの状況、そういったことについて技術的に専門家が検証しているものでございます。

岡本(充)委員 検討しているのは評価になるんですよ。それは評価をするのが目的ではない、リスク管理機関が農林水産省であるということを改めて指摘して、時間が来ているようですので、残余の質問は質問主意書で問わせていただきます。

 どうもきょうはありがとうございました。

宮腰委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 最初に、法案提出者に伺います。

 品目横断的経営安定対策では、冷害や台風などの自然災害で収穫量や収入が減収し、農業共済でその補てんがされたとみなされる場合、ナラシ対策の対象にならないと承知しております。

 他方、二〇〇三年に民主党と社民党が共同で直接支払いを実施するための法律案を国会に提出した際には、直接支払いと農業共済を統合し、保険方式と収入保険方式の二本立てにすると提案してきましたが、戸別所得補償法案では農業共済との関係をどのように考えているのか、答弁願いたいと思います。

平野参議院議員 戸別所得補償法案につきましては、生産費と市場価格の差を基本とした補てんをするということで、あくまでも、生産費と市場価格の差に着目した補てんをするという考え方でありまして、単価については三年から五年ぐらい固定することを考えているということは、何回も御答弁を申し上げたとおりであります。

 他方、いわゆる農業共済につきましては、委員御承知のように、これは災害等によって農業収入が減少した場合の一種のセーフティーネットでございまして、その趣旨、目的等々違っておりますので、これは別物だというふうに考えているところであります。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

菅野委員 答弁はわかるんです。ただ、今、細部の設計、組み立てをやっていくときに、この議論をしっかり行っておかないといけない分野だというふうに私は思っております。最終的に直接支払いという考え方がずっと定着していったときに、価格補償という観点だけじゃない要素が加わっていく部分が存在するんだというふうに私は思っています。私は、問題提起だけしておきながら、この議論というのはしっかりと行っていく必要がある部分というふうに思っております。

 次に、戸別所得補償の基礎となる面積単位の交付金単価ですが、新聞報道によりますと、先ほども議論になっていますけれども、米十アール当たり二万七千円とされております。小麦、大豆などには転作助成金の加算もされているようですが、単価の算出に当たっての基本的な考え方をお聞かせください。

 また、現行の品目横断的経営安定対策によるゲタ対策の単価と比較した場合、どの程度の水準に位置するのかについてもお答え願いたいと思います。

平野参議院議員 まず、米につきましてでございます。

 米につきましては、家族労働費について全額という形ではなくて、今回出しました、これはあくまでも試算ですけれども、八割を補てんするという考え方で算定してございます。

 これは、需要と供給の動向、こういったものを勘案しながら設定した水準でございまして、この結果、一俵当たりにつきましては、この前提では約三千円、面積当たりについては二万七千円でしたか、そのぐらいの水準になるということでございます。

 あと、いわゆる生産振興を図るべき作物につきましては、全算入経費ではなくて、自己資本利子とか地代、これは勘案せず、市場価格との差額を補てんするという基本的な考え方に立っていまして、この自己資本利子と地代を見ないということで、物によっては若干今の水準より低く設定される場合があるのかなということを考えておりますが、具体的に今比較をしているわけではございません。それはなぜかといいますと、実単収をどのようにとるかによって単価は変わってきますので、その比較ができないということで、ぜひ御了解いただきたいと思います。

 いずれ、生産振興を図るべき作物の単価については、農家がこの単価だったらやれるんだというような水準を全算入経費を限度として補てんするような仕組みにするのが基本であるというふうに考えております。

菅野委員 この点も、具体的な制度設計にしていったときにいろいろな作物に適用していかなけりゃならない課題ですから、米の部分は今の説明でわかるわけですけれども、品目を拡大していった場合の物の考え方というのは、私は非常に大変だなというふうには思っております。ここを乗り越えていかないと制度として定着していかないというふうに私は思いますので、これからも議論させていただきたいと思っています。

 そして、法案は、生産面積を基本に置きながら、品質、経営規模の拡大、環境保全の度合いなどを加味して所得補償していく考えに立っていると思います。社民党も、意欲ある生産者への直接支払いを一階部分とし、その上に集落営農などの規模加算、環境循環型農業、中山間地域農業などの段階を設け、支払い額を上乗せしていく方式を提唱しておりますので、ほぼ同じような考え方に立っております。

 その際、環境保全の上乗せに際しては、現行の農地、水、環境保全対策とは別体系なのか、それとも現行の対策をやめて吸収していくのか、どうお考えになっているんでしょうか。この点について答弁願います。

平野参議院議員 まず、今の農地、水、環境保全対策の中では、いわゆる二階建ての部分で、先進的な営農地域に対して一定の考え方で交付されているということでございまして、私どもはこれをもうちょっと精査する必要がございますが、いずれ、集落単位で取り組むことが前提になっておりますけれども、ここの部分はさらによく精査するという前提で、考え方そのものはかなり似通っていますので、最終的には、農地、水、環境保全対策の中でのいわゆる先進的な営農の中で低投入農法あるいは有機農法等々に取り組んでいる農家については、この考え方を取り込むこともあり得るというふうに考えています。

菅野委員 この二階建ての部分は、本当にまだほとんど議論されていない部分だというふうに私は思っています。そういう意味では、どういう形になるのかなというふうに思うんです。

 EUの直接支払い制度において、環境支払いは二十年以上も前に導入され、農村振興の柱に位置づけられております。環境保全は、景観の維持や国土保全、さらには生物の多様性の維持に欠かすことのできない重要な要素になっていますから、社民党は、現行の農地、水、環境保全対策における予算措置という考え方を見直して、環境支払い制度として法制化すべきだと私は考えています。

 そこで、再度お伺いしますが、所得補償における環境保全の上乗せ部分は、どのような基準で、財政規模はどのように想定しているのか。この辺、今後議論していくためにも、今の出発点に当たっての考え方というものをお示し願いたいというふうに思っています。

平野参議院議員 一般的な考え方からすれば、例えば低投入農法をやった場合に減収があるということであれば、その減収を、ある一定のモデルを設定して、これを補てんするという考え方があると思います。しかし、減農薬をやりますと減収しないという農家もあるそうですね。そういったことについてはよく実態を見きわめる必要があると思いますが、いずれ、そういった考え方があると思います。

 さらにその上で、これは農地、水、環境の保全事業の中にも取り込まれておりますけれども、それを推奨してくださいということであれば、その差分にさらに一定の補てん金を乗せるという考え方もあるかと思います。

 今、そこの部分については、もう具体的にこうこうこうというところまで正直申し上げまして詰め切っておりません。概算の必要額についても、目の子で一定の額を提示させていただきましたけれども、きちっとしたバックがあるわけではございません。

菅野委員 いずれ、農地、水、環境保全向上対策、一応品目横断と車の両輪という形でスタートしましたけれども、実際にスタートしてみて、私は本当に不十分だというふうに思っています。そういう制度設計の見直し等も含めて、今後議論していく大きな課題だというふうに私は思っております。

 そこで、大臣にお伺いしますけれども、私はずっと、農地、水、環境保全向上対策において、国二分の一、県と市町村が四分の一、四分の一という制度の仕組みを問題にしてきています。特に、今地方自治体が非常に財政が厳しいという中でこの四月からスタートしたわけでありますけれども、大臣は、地方には交付税と特別交付税の組み合わせで手厚い措置をしていると答えているんです。

 実際に、地方自治体でいえば、例えば私の地元の宮城県では全県を挙げて環境保全米づくりを進めているわけですが、財政難から、ことし四月までに手を挙げた農家以外は環境支払いの対象にはできないという状況も出てきているんです。農家が環境保全を進めれば進めるほど地方の財政負担が大きくなって、結果として支援に制限を設ける。これではだめなわけだと思うんです。

 それで、大臣は環境大臣も経験され、農業が環境保全に果たす役割を十分承知しているはずです。だとすれば、国が主体となって、活動組織を満遍なく支援できるよう、制度的にも財政的にも枠組みを見直すべきではないでしょうか、こう思うんですが、大臣の考え方をお聞きしておきたいと思います。

若林国務大臣 地球環境が平穏にあることを前提に農業も林業も水産業も営まれていくわけでありますから、その環境に対して優しい農業のあり方ということはこれからもさらに追求していかなきゃいけないと考えております。

 今我々が取り組んでおります農地、水、環境保全向上の取り組みというのは、いわば農地、水といったような生産基盤とあわせまして、その上での営農のあり方ということを一体として、その質を高めていこうということでございます。その意味では、農地とか農業用水などの資源は社会共通資本とでも言えると思うんです。したがいまして、この対策は、農業者だけでなくて、地域住民全体の利益につながるものであるというようなことから、地方公共団体においても応分の負担をしていただくことが適当であると考えて組み立てたわけでございます。

 本対策における地方財政負担につきましては、委員が御指摘のように、国が二分の一でございますが、地方がさらに、その二分の一の二分の一、四分の一ということで、これは普通交付税で対応をいたしておりますが、そのほかの、残りの四分の一について、さらに市町村分については特別交付税で七割の措置を講じております。また、都道府県分については五割の特別交付税の措置を講じているなど、地方公共団体の負担につきましては非常に手厚い地方財政措置を講じたというふうに考えているところであります。

 このような措置を講ずることによりまして、本年度も約百十六万ヘクタールの農地を対象に一万七千の活動組織が本対策に取り組んでいるわけでございまして、初年度としては順調に取り組まれているものと考えているわけであります。

 農林水産省としても、この施策をさらに浸透を図り、今後とも、さまざまな機会を活用して説明を行い、県や市町村などの理解が一層深まるように努力をしてまいりたいと考えております。

 その対策の中における環境保全型の農業の推進も、そのような基盤整備と地域の諸条件の環境整備と一体として行われるということを期待しているものでございます。

菅野委員 四月一日からスタートして、今ここに来て問題点が明らかになりつつある。これからもずっとこの政策が続いていくわけでありますから、今地方自治体は非常に財政危機と言われて、非常に厳しい状況に追い込まれているときに自治体負担を求めていくというこの制度のあり方そのものが、やはり私は見直すべきだというふうに思うんです。環境保全という観点と農業の持つ多面的機能を維持発展させていくというのは国の施策で行うべきだということを私は主張してまいりましたけれども、この点についてぜひ今後とも検討を加えていただきたいというふうに思っております。

 次に、法案提出者にお伺いしますが、国による半ば強制的な減反は水田の約四割に達したわけであります。結果として、農家が農業をやめ、耕作放棄地の拡大を招くことにつながったと私は考えています。その意味では、本来であれば、稲作経営安定対策が本当に正しかったのかどうか、真剣な総括が必要だと考えています。

 前回、平野議員は、例えば米から麦、大豆に転作を行った場合、基本の所得補償に加え、米をつくったときに得られる所得を補てんする、そのことを通じて転作を誘導する考えに立っている、このことはよく理解できました。

 しかし一方、私は、体力の弱った小規模農家に転作を促す、このことも否定はしませんが、まず所得補償をして生産意欲を育てることこそ重要ではないかと考えています。社民党は、強制減反はやめて、米は三百万トン程度を棚上げ備蓄しつつ、水田の多目的利用を図りたいと提案していますが、提案者はどのように考えておりますか。

 このことは先ほども議論になっているんですけれども、私は、本当に体力の弱った小規模農家というものを、どう体力を回復していくのかという観点にしっかり立たなきゃいけないというふうに思っているんです。このことをどう考えますか。

高橋参議院議員 今、特に小規模の農家が危機的になっているという認識はやはり同じだろうというふうに思います。その中で、やはりそれぞれのつくりたい、農業を続けたいと思っておられる、そういう農家にそのまま農業を続けていただくというのが今の日本の農村を守っていくためにも大変重要なことだろうというふうに思います。

 その意味で、その三百万トンの備蓄のことについてはまたいろいろ議論があるかもわかりませんけれども、やはりつくり続けたいという農家は、そのままつくり続けていただくためにも、この戸別所得補償ということで、つくり続けていただく状況をつくっていくというのは大変重要なことではないかなというふうに思っています。

菅野委員 減反政策が農家の意欲を衰退させてきた、ここは私は正直あるんだというふうに思います。

 それで、小規模農家も減反させられてきている中で、そのことをどう総括していくのかということが求められている、その一方で、では減反政策をやめた場合にどういうふうな過剰米処理をするのか、この二つがあると思います。

 それで、平野委員は、提案者は、政策誘導として米から別な作物へというふうに言っていくんですが、農家は米が一番つくりやすいという側面があるから農家が衰退してきたということがあるというふうに思います。そのときに、当初は三百万トン備蓄せざるを得ないかもしれませんけれども、その政策誘導をすることによってこれがどんどん減っていくということを考えれば、やはり生産調整、減反政策というのは根本的なもう一回見直しというものを行うべきだ、それが戸別所得補償制度を導入すれば可能だということにつながっていくというふうに私は思うんですけれども、再度その点について答弁願いたいと思います。

平野参議院議員 まず、生産調整に参加しても米価が下がり続けていく、それから、他の作物をつくろうと思ってもそれなりの補てんがされない、それが今最大の大きな問題なんだろうと思います。

 私どもは、生産調整、需給調整は必要だと思っています。そのためにも、需給調整、参加することによってメリットが受けられるような措置、これが一つは所得補償ということなんですけれども、それをしっかりやることによって今まで以上に価格の下落にストップがかけられるのではないか、そのことによって、米をつくることによっての収入が今まで以上に安定してくるということをぜひ目指したいというふうに考えています。

 その一方で、やはり、米の総需要が減ってまいりますと、水田の面積が今までのようには必要なくなってくるという面も直視しなくちゃならない。一方、その中で自給率が非常に低い作物、麦、大豆等々もございますから、その生産振興は、これはいろいろな壁はございますけれども、やはり進めていかなくちゃならないと思います。特に、今の小規模農家の場合には集団転作が必要ですから、これも大変なことなんですが、だからこそ、すべての、すべてというか小さい農家でも参加していただいて、集団転作も進めていくような仕組みも、大変難しいけれども進めていかなくちゃならないというふうに思っています。備蓄についても、不測の事態に備えての備蓄ですから、これもきちっと活用することが大事だというふうに考えております。

菅野委員 もう一つ、前回もこの委員会で議論したんですが、今回の法案が需給調整の必要性を指摘しているのは、需要と供給のギャップが、例えば米の価格低下を招いている、逆に言えば、需要と供給を一致させれば価格は安定するという考え方に立っているんだというふうに思うんですね。そして、一般的には私はそのとおりだというふうに思っています。

 ただし、私がずっとひっかかっているのは、仮に需要と供給が一致しても、米の生産農家が所得補償されることによって、市場価格は逆に安値で定着してしまう可能性があるのではないか、このことなんですね。このことはどう考えているのか、答弁願いたいと思います。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

平野参議院議員 まず、直接支払いの仕組みにつきましては、EUもアメリカもとっているということはもう御承知のとおりでありまして、これを入れたことによって価格に吸収されてしまうんじゃないかという指摘は、何人かの先生からもいただいております。

 しかし、私どもは、単価については三年から五年ぐらい固定するよということで、生産と補償というのを完全にデカップルするわけじゃありませんが、固定という考え方で入れていきますので、それが価格の中にすべて吸収されるということは余り考えなくてもいいのじゃないかと。米はやはり需要と供給の関係で決まってくるという原則に立って決まるんだということで考えたいと思っています。

 しかし、どうしてもそれが価格の中に吸収されるということであれば、これは今、法律の外の話になりますけれども、所得補償はいずれ必要なんですから、どういう形かで所得補償する、しかも、生産にしっかり取り組んでいる農家に対しての所得補償をするということだけは、どういう形でもこれは実現をしなくちゃならないというふうに思っています。

菅野委員 この点についても、本当に大きな議論をしていかなけりゃならない点だというふうに私は申し添えておきます。

 それで、これとも関連して大臣にお聞きしたいんですが、農水省は来年の米の生産目標数量を八百十五万トンに設定したと伝えられています。二十三万トンの過剰米が発生したということしの生産目標数量から、さらに十五万トン、面積で十万ヘクタールを削減することになります。政府・与党は、過剰作付県にペナルティーを与えるとか、転作奨励のための産地づくり交付金とは別枠で五百億円の予算を準備すると言われていますが、減反が水田の四割に達している現状、これはもう無理に無理を重ねた対策のように思えてなりません。

 私が一つ疑問に思うのは、米の生産者である農家の側に減反を押しつける格好になっているわけですが、米の集荷、卸売など流通段階での生産調整への協力がない限り、絵にかいたもちに終わるのではないかということです。JAは、米の集荷率では全体の四割にすぎません。他の卸売業者が生産調整枠外で販売店などに安く米を卸している限り、いわゆる過剰作付や米価の下落はとまらないと思いますが、大臣の認識及び講じている対策など、お聞かせ願いたいと思います。

岡島政府参考人 生産調整については、現行法で、生産出荷団体等が生産調整方針を定めて、生産調整に主体的に取り組む仕組みとなっておりますけれども、その中には、当然、農業者団体のほかに、集荷業者についても、生産調整方針作成者として生産調整に取り組んでいるところでございます。

 いずれにいたしましても、二十年産の生産調整に当たりましては、その実効性を確保するために、当然、農業者、農業者団体のみならず、今御指摘のように集荷業者あるいは販売業者に対しても、米価の下落は生産、集荷、販売のすべての関係者に影響を与えること、そういったことを認識していただいた上で、適切な対応をとるように強力に要請してまいりたいというふうに考えております。

菅野委員 本当に米価の下落傾向が長期にわたって続いている、これが現実なんです。それで、これが、需給バランスがとれているということだけじゃなくて、流通という部分もしっかり念頭に置いて対策をしていかなければ、この長期低落傾向を回復するというのはできないことだと私は思えてなりません。

 今、流通業者を支配しているのは、量販店が大量に売りさばくからという形で価格形成に大きく関与しているという点を重要視していかなければならないというふうに私は思うんです。それで、量販店が銘柄米を多くのお客さんに来てもらうために安く売っているという実態も直視していかなけりゃならないというふうに私は思うんですね。この点も含めて、しっかりとした対応をとっていただきたいと思います。

 それで、最後になりましたけれども、原油価格の高騰に対する対策についてお伺いいたします。

 原油価格の高騰は施設園芸農家や漁業を直撃しております。経費に占める燃料コストの割合が非常に高い漁業では、もはや自助努力で対応する領域ではありません。

 この問題について緊急対策を行うべきだと岩永農水大臣のときにここで議論し合ったというふうに思うんですが、どうもこの対策が進んでいないと言わざるを得ないというふうに思うんですね、岩永筆頭。金融支援などの間接支援にとどまらず、漁業経営の安定を目的に、例えば価格調整のための基金制度を創設して、燃油の購買価格を安定させるとか、そうでなければ漁家への直接的な財政支援を行うべきだと考えますが、この点について、今鋭意取り組んでいるということは承知しておりますけれども、やはり漁業経営が継続できない、特に遠洋漁船漁業なんというのは危機的な状況に追い込められているという現実をどう考えてどう対処していくのか、答弁をお願いいたします。

若林国務大臣 現在、漁業用A重油の価格は一キロリットル当たり八万五千円程度となっておりまして、委員が御指摘いただいていますように、これが大変な高騰をしております。それは承知いたしております。平成十六年三月と比べてほぼ二倍の水準になっているということであります。漁業については、生産コストに占める燃油の比率というのは二〇%から三〇%もかかっているということでありますから、他の産業に比べて大変高い比率でありますから、燃油の高騰は漁業経営に深刻な影響を与えているというふうに認識をいたしております。

 政府全体といたしましては、現下の厳しい状況を踏まえて、今月の十一日に原油高騰等に対する関係閣僚会議を開きましてその対策を検討したわけでございますが、漁業対策といたしましても、漁業者の経営体質の強化とあわせまして、省エネ型の漁業への転換などの対策について、迅速にこれを取りまとめるというふうにされたところでございます。これらの対策を通じて、燃油高騰に耐えられるような足腰の強い水産業の確立を図ってまいりたいと考えております。

 ただ、委員から御提案がございましたような、燃油価格の何か基金のようなものを設けて、漁業者に直接、価格の高騰分について財政支援をするような制度を念頭に置かれているのではないかと思うんですけれども、しかし、燃油価格の高騰はいろいろな分野に影響を与えているということから、産業として漁業のみに特別の直接的助成をするということについて、果たして国民の理解が得られるのかどうか、また、その負担については、まずは当事者による自助努力が前提となるわけでございますが、この点について関係者の合意が得られるのかどうかなどを含めて、今慎重に議論をし検討をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、流通過程とか、あるいは使う側の漁船漁業などにつきまして、省エネルギーの対策について、これをさらに積極的に進めていくということが基本になると考えております。

菅野委員 どうもありがとうございました。

 時間ですので、これで終わります。

宮腰委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時八分散会


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