衆議院

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第10号 平成20年4月22日(火曜日)

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平成二十年四月二十二日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 宮腰 光寛君

   理事 岩永 峯一君 理事 江藤  拓君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤  錬君

   理事 七条  明君 理事 筒井 信隆君

   理事 細野 豪志君 理事 西  博義君

      安次富 修君    阿部 俊子君

      赤澤 亮正君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    今津  寛君

      小里 泰弘君    小野 次郎君

      近江屋信広君    金子 恭之君

      亀井善太郎君    木村 太郎君

      北村 茂男君    斉藤斗志二君

      武田 良太君    谷川 弥一君

      冨岡  勉君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    長崎幸太郎君

      丹羽 秀樹君    西川 公也君

      西銘恒三郎君    原田 憲治君

      平田 耕一君    福井  照君

      水野 賢一君    森  英介君

      山本ともひろ君    石川 知裕君

      大串 博志君    小平 忠正君

      後藤  斎君    佐々木隆博君

      神風 英男君    高井 美穂君

      仲野 博子君    横山 北斗君

      井上 義久君    菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       若林 正俊君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  株丹 達也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 田辺 靖雄君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          石野 利和君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         吉村  馨君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       吉田 岳志君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房食料安全保障課長)      末松 広行君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            中條 康朗君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           竹谷 廣之君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山田 修路君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            上田 隆之君

   政府参考人

   (国土交通省河川局砂防部長)           亀江 幸二君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     山本ともひろ君

  今津  寛君     西銘恒三郎君

  金子 恭之君     武田 良太君

  亀井善太郎君     安次富 修君

  永岡 桂子君     阿部 俊子君

  水野 賢一君     長崎幸太郎君

  渡部  篤君     原田 憲治君

  横山 北斗君     後藤  斎君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     冨岡  勉君

  阿部 俊子君     永岡 桂子君

  武田 良太君     木村 太郎君

  長崎幸太郎君     水野 賢一君

  西銘恒三郎君     今津  寛君

  原田 憲治君     渡部  篤君

  山本ともひろ君    飯島 夕雁君

  後藤  斎君     横山 北斗君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 太郎君     金子 恭之君

  冨岡  勉君     亀井善太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案(内閣提出第四一号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

宮腰委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房技術総括審議官吉田岳志君、農村振興局長中條康朗君、農林水産技術会議事務局長竹谷廣之君及び資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長上田隆之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤忠彦君。

伊藤(忠)委員 皆さん、おはようございます。

 それでは、私から、政府提出の農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案、いわゆる農林漁業バイオ燃料法案について質問をさせていただきます。

 ことしは洞爺湖サミットの開催される年でもございます。その主要テーマの一つとして環境あるいは気候変動が挙げられているのは既に皆様方よく御存じのことと存じます。一方で、原油価格の高騰がずっと続いております。世界の厳しいエネルギー情勢を踏まえて、エネルギー安全保障を核として、我が国においても新・国家エネルギー戦略が策定をされるなど、エネルギーの問題と環境の問題というのは世界全体の課題でもあり、我が国においても大変重要な問題であるという状況でございます。

 一方で、もう一つ私たちの大事な問題は、これにまつわる農業の問題でございます。

 さらに、この農業と環境とエネルギーという三つの問題にコーティングしてくるのが、投機を中心とする金融のことでございます。この四つが混然一体となって、さまざまな関係を持って、難しい課題を私たちに提起しているのが昨今だろうというふうに思っております。

 このバイオ燃料と農業とのかかわりを考えたときに、まず、このバイオ燃料の燃料の問題と農作物の農業の問題で世界全体が今厄介な状況にあると申し上げたところでございますけれども、これまで食料でございますとか家畜の飼料として利用されてきた農作物の用途が大きく拡大をされたことによって、食料でございますとか飼料マーケットに極めて大きな影響を与えていることは皆様方もよく御存じのとおりでございます。

 一方で、環境問題が唱えられる中において、例えば家畜の排せつ物の問題に象徴されるように、畜産の環境問題を解決していく上で出口の一つとして、畜産業由来のバイオマスをバイオ燃料として利活用していくなどなど、こうした問題も一方であるわけでございます。

 そして、三つ目のかかわりとして、原料の栽培技術や品種改良、あるいは原料の燃料への転換技術といった技術開発、これもまた大事な問題だろうというふうに思っております。

 原料となる穀物価格の高騰が私たちの国の食料事情に極めて大きな影響を及ぼしている現状において、特に、例えば配合飼料の高騰問題は畜産業にとっても喫緊の課題だというふうに言われている今日、バイオ燃料の生産拡大ということと農林漁業の振興との調和を目指す本法案を提出されたわけでありますけれども、先ほど来私が申し上げましたとおり、この法案、あるいは私たちの国の置かれている背景は極めて厳しい状況になっておりますので、改めて大臣より、法案の背景、そして趣旨について、わかりやすく御説明を願いたいと存じます。

若林国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、環境と農業生産のかかわりというのは大変に深い関係に立ち至っているわけでございまして、環境問題も、地球、人類全体の問題として取り組まなければならない。一方、食料問題も、世界全体として見れば、人口がなおふえていく中で、途上国でありました中国やインドなどの新たな食料需要が拡大をしている。そういう意味では、食料需給が長期的にはタイトになると見込まれる中にありまして、実は環境問題とも関連をしまして、バイオエタノールを石油代替のものに充てていく。アメリカが中心になってかなり力を入れてくるようになったわけですね。

 一方、我が国について見ますと、我が国の農林漁業あるいは農山漁村を取り巻いている現状を見ますと、委員も御承知のとおり、人口が減少局面に入っている、つまり、農産物の国内市場というものが小さくなっていくわけでございます。そういう人口減少局面に入っていく中で、農林水産業の活力もマーケットが小さくなるにつれて低下していくということが危惧されるわけでございます。

 他方、アメリカは、委員も御承知のとおりでございますが、昨年十二月に新たなエネルギー法を制定いたしまして、バイオ燃料のさらなる導入を強力に進めるということにしたほか、ブラジルとかEUなどの諸外国においてもバイオ燃料の生産拡大が国策として行われている、そういう状況にあるわけでございます。

 我が国におきましては、ことしから京都議定書の第一約束期間が開始される、そして七月には洞爺湖サミット、いわゆるG8サミット、我が国が議長国としてこれを主催するという状況にあるわけでございまして、近年の原油価格の高騰や地球温暖化の防止といった内外の諸問題に対処するという観点から、バイオ燃料の生産拡大が我が国にとっても喫緊の課題になっている、こういう認識でございます。

 そこで、食料自給力の低い我が国におきましては、食料やえさと競合しない形のバイオ燃料の生産拡大を図っていくということが大事な課題だというふうに受けとめております。と同時に、委員も御指摘でありました畜産の廃棄物を活用して、メタンを取り出し、メタンを燃料として、あるいはメタン発電といったようなところまで展開をし、エネルギー源にしていくということも大きな課題になっていくわけでございます。

 こういうような状況を受けまして、農林漁業に由来するバイオマスをバイオ燃料の原材料として利用することを促進するため、基本的な方向を示すと同時に、その総合的な支援を図るために、今国会にこの法律案を提案いたしました。こういうことでございます。

伊藤(忠)委員 ただいま大臣から、食料と飼料、こうしたことが競合しないようなバイオ燃料の生産拡大を図るという説明がございましたけれども、つい数日前の新聞にも「穀物急騰 途上国を直撃」、こういう新聞記事が載っておりました。つまり、先ほどアメリカ、EU、ブラジルは途上国ではありませんがBRICsという勢いのある国でございますけれども、こうした強い国がこの施策を実行し、弱いところにしわ寄せが来るということが実はこの記事の中身になっております。私たちの国の中でも、燃料として使うことはいいぞと来るんですけれども、それを受ける弱い側の人たちというのが、私たちはそのバランスをどうとらまえていくかというところに危惧を抱いているわけでございます。

 穀物価格の高騰問題以外にも、私たちの国において、例えば農家の人たちが、飼料米をつくるのかバイオ燃料の原料となるものをつくるのがよいのかといった議論もある中で、資源を共有する畜産業を守るといったことを積極的に考えていかなければならない時代となっているのではないかと私は考えております。

 このことについて、具体的に我が国においてどのように進めようとしているのか。国内にとどまらず、諸外国とも連携をして、このようなアンバランスを解消していくべきではないかと私は考えておりますけれども、いかがでしょうか。

若林国務大臣 委員が御指摘になりましたように、現実問題として、畜産のえさ、飼料と既に大きな競合を起こして、飼料価格の高騰を招いているということがございます。このことは実は米国のような畜産国におきましても大問題になっておりまして、そういう意味で、トウモロコシがエタノール原料に急速に供給されて、飼料価格が高騰するということは、米国の肉牛などを中心とした畜産業にも大きな影響を与えているわけでございます。

 そういう意味で、米国の方も、当面はガソリンを抑制するという観点から、トウモロコシからのエタノール生産に傾斜して力を入れていますけれども、いずれは、トウモロコシからのエタノールではなくて繊維系の、セルロース系の原料によるエタノール生産の方に力を入れていくというような考え方をブッシュ大統領もお持ちのようでございます。

 ことしの洞爺湖サミットでは食料をめぐる問題が大きな課題になり、過日、福田総理の方から、G8諸国あるいは国連の事務総長や世銀、またFAOなどにも書簡を出しまして、食料をめぐる問題、食料とエネルギーとの問題を洞爺湖サミットで取り上げていきたいという表明をしておられるわけでございます。そういう国際的な課題がございます。

 国際的にも大きな課題になっておりますが、基本的には、バイオ燃料の原材料としては、食料やえさとしての利用可能なものでございますので、バイオ燃料の生産拡大が食料やえさ、飼料の安定供給に支障を来すようなことは回避していかなきゃいけないというのが基本路線だと考えております。

 このため、この法律案において基本方針を定めることにしておりますが、当面は、エタノール製造技術が実用段階にあります糖質あるいはでん粉質の原料を利用してスタートを切りますけれども、この場合にあっても食料や飼料の用途には供されない、例えば沖縄のサトウキビから出ます糖みつでありますとか、あるいはくずの食料、農場残渣でありますとか、そのままでは食料や飼料、えさには供されない農産物を利用するということでございますが、中長期的には、食料や飼料の需給に影響を与えない。我が国は森林国であります。その意味では、林地残材になる間伐材などのセルロース系の原料でありますとか、あるいは稲わらのような農場残渣になるようなもの、それからもう一つは、当面は、耕作放棄地などにつきましてこれを有効に活用するということで、従来の農作物では作付が難しいということで耕作放棄に陥っているようなものについては、資源作物をそこに導入するといったようなことを基本として制度運営を図っていくということを明確にしていきたいと思っております。

伊藤(忠)委員 今大臣から、まずバイオ燃料について、推進をしていくことは環境の問題として大切だよ、しかし、これをつくっていくための原材料の問題になると、農業との問題の中で幾つか大変競合するところがありますね、したがって、いろいろな技術を使って燃料になるものの幅をふやしていく技術開発は大事ですね、それ以外にもう一つ、そうはいっても、耕作放棄地でございますとか、あるいは休耕田を使ってさらにカバーアップしていくことも大切ですねと。

 その技術の側面については、後ほど改めてお伺いをさせていただきたいと思いますし、今大臣からの御方針の中で、特にセルロース系の技術開発というのは大事な認識があるということをおっしゃっていただきましたので、これはまだまだ進めていく幅がいろいろあろうかと思いますので、ぜひしっかりとこの法案をつくって進めていただきたいものだというふうに思っております。

 せっかくバイオマス燃料のことでございますので、実はこの委員会で前回も私は質問させていただいたんですが、私の知多半島、知多半島のことを例に挙げさせていただきながら少し質問をさせていただきたいと思うんです。

 前の質問のときも実は申し上げたんですけれども、私の知多半島には、半島で狭いんですけれども、物すごくたくさんの牛がおります。二万数千頭の牛がおるんです。この排せつ物に由来するところの悪臭が、やはり季節、漂ってまいります。だんだん臭くなってくると、ああ、暑くなってきたな、こういうことでございます。冬は冬で、何となく薄いにおいがしてくるわけです。においがないとやはり知多半島じゃないなと思うんですけれども、しかし、だんだん人口がふえてまいりまして、新しい皆さんが住んでくるということになりますと、例えば洗濯物にそのにおいがつくだとかいろいろなことがありまして、非常に苦労をしております。

 そこで、知多半島の首長さんたちと集まりまして、においのない知多半島をつくりたいなと。においのない知多半島をつくりたいなということが一つの夢なんです。夢なんですけれども、これをかなえていくためには大変苦労をしなければなりません。実は先週の木曜日、四月の十七日に私どもの知多半島の五市五町の行政担当者、そしてまたJAの関係者が集まりまして、家畜排せつ物を活用したメタン発酵、発電事業を進めていこうということで検討が始まったところでございます。

 また一方で、先ほどえさの話が出てまいりましたけれども、愛知県のエコプランに沿って、現在県の環境部と農林水産部、私の空港のございます常滑市が、常滑市内にある約百二十町歩ある休耕地を使ってコウリャンを植えまして、これを畜産の飼料として使い、副産物としてバイオ燃料を生産する、そしてさらに排せつ物を、メタンガスをとって、これで発電をすればどうだろうかというようなことも実は進めているわけでございます。

 現在、農林水産省では、バイオマスタウンの推進ということで、地域で発生するバイオマスをさまざまな形で複合的に有効利用を進める運動を推進しており、このような取り組みにおいて、家畜排せつ物を有効利用する方法の一つとして、家畜排せつ物を集めてメタン発酵を行って得られたガスを燃やして電気を得るという取り組みも進めている地域もあると私も承知をいたしております。既に実証しておられるということを私も承知をしておりますが、こうした取り組みは畜産業の盛んな私どもの知多半島においても大変有効であり、私としても、地域の皆さんがこうして既に会議をつくっていよいよ進めようとしている段階でもございますので、ぜひ後押しをしてまいりたいというふうに思っております。

 そこで、この点について、こうした取り組みを進める上で、問題点でありますとか、あるいは成功の秘訣といったものがあれば御答弁をいただければありがたいと思いますし、さらにこれを進めていくための力強い御発言もいただければありがたいなというふうに思っております。

吉田政府参考人 家畜排せつ物を活用いたしましたバイオガス発電についてのお尋ねでございますが、これにつきましては、環境対策あるいは農地の地力向上対策として有効でございます。加えまして、畜産農家の経営にも大きな貢献をするものであるということから、必要な条件整備を進めていくべきものであるというふうに認識をしております。

 本法案におきましても、家畜排せつ物の供給に取り組む畜産農家と、これをメタン発酵してガスを製造するバイオ燃料製造業者が連携する取り組みに対しまして、支援を考えております。

 具体的には、産業廃棄物の処理として家畜排せつ物をガス化するための施設を整備する場合には、産業廃棄物処理事業振興財団が債務保証を行うことができるようにしてございます。このほか、地方税法におきまして、計画に従って新たに取得するバイオ燃料製造施設につきまして、固定資産税を三年間、二分の一軽減をする措置も講じることとしてございます。

 しかしながら、家畜排せつ物を活用いたしましたバイオガス発電につきましては、発酵廃液を液肥として処理できない場合、追加的に処分費用が必要になるといった問題を有しております。

 このため、原料の収集と発酵、発電だけではなくて、地域全体でその副産物であります液肥の利用も含めたバイオマスの総合利用を図る仕組み、これを構築することが成功に向けたかぎではないかなというふうに考えております。

 この意味におきまして、地域の関係者が一堂に会しまして、話し合いの場を持った上で推進するということが非常に意義深いものであるというふうに考えております。先ほど御指摘のございましたバイオマスタウン構想の策定、これもその話し合いの一つのきっかけになると思いますので、ぜひ御活用いただければというふうに考えております。

伊藤(忠)委員 本法案において、固定資産税の減免を加えていただいていることは、非常にありがたいことだというふうに思っております。こうした諸制度を使って、私たちの知多半島でもこうしたことを進めてまいりたいと思いますので、ぜひ農林水産省としても、いろいろな意味で御指導いただいて、後押しを願いたいものだというふうに思っております。

 次に、先ほど申し上げましたとおり、技術開発の重要性というのは大変重要だと思っております。

 さまざまな、まだまだ使っていない、あるいは手を伸ばしてもいいようなセルロース系を初めとする原材料を、できる限り飼料穀物によらないようなところで、どれぐらいつくり上げていくことができるか。そしてまた、それを加工し、バイオ燃料として使えるようにする技術、こうしたことをもっと推し進められていかなければならないだろうというふうに思っております。

 一つ例示を挙げながら、このことについて伺えればと思うんですけれども、農業分野ももちろんでありますけれども、実は水産の中で、特に海藻を利用して、海洋からバイオ燃料を得ようとする取り組みも今進められているやに聞いております。バイオ燃料の原料づくりは何も陸上だけではない、おもしろい事例だと思っておりますが、現在、これはどんなふうになっているのかということと、それから、これらを含めて幅広くフォローをしていくことが私は重要であるというふうに思っておりますが、技術開発の状況と今後の展望についてお示しをいただきたいと存じます。

吉田政府参考人 バイオ燃料に関する研究開発の現状と今後の展望についてのお尋ねでございますが、国産バイオ燃料の取り組みを推進していくためには、原料となるバイオマスを低コストで安定的に供給をしてもらう。そしてまた、エタノールへの変換効率を高める、こういった革新的な技術開発を計画的に進めていくことが必要であるというふうに認識してございます。

 このため、今考えておりますのは、稲わらや林地残材などの未利用バイオマスを低コストで収集運搬する技術の開発。それから、今御指摘がございました海藻の関係でいきますと、アオサなどのバイオエタノール生産が可能な水産バイオマス資源の利用技術の開発。また、エネルギー原料として、バイオマス量の大きな資源作物の育成、作出。資源作物を省力、低コストで栽培する技術の開発。そしてさらには、木質系や草本系のソフトセルロースなどを効率的にエタノールに変換する技術の開発。これに重点的に取り組んでいるところでございます。

 水産関係につきましても、水産総合研究センターで平成十九年度から積極的に取り組んでいるところでございまして、これを確実に進めてまいりたいというふうに考えております。

伊藤(忠)委員 やはり技術開発を進めるということになりますと、技術開発自体も大事なんですけれども、私たち発の、例えば新技術に関する特許でございますとか、あるいは植物の新品種といった知的財産にかかわる点につきまして、国内外においてきちんと保護をしておく必要があるのではないかというふうに思っております。

 私たちできちっと登録をし、保護をした上で、第三国に対してまたこれを供与していくということによって、この方面でも、少なくとも私たちがリーダーシップを握っていけるようにしておく必要があるのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 委員御指摘のとおり、バイオ燃料生産を進めていくためにも、バイオ燃料生産に係る新技術やバイオマス作物の植物新品種などの知的財産を適切に創造し、保護していくことが極めて重要であるというふうに考えております。農林水産省といたしましても、昨年三月に農林水産省知的財産戦略というものを策定いたしまして、これに基づきまして、知的財産の保護強化を図ることとしておるところでございます。

 具体的には、植物新品種の育成者権の保護強化のために、DNAによる品種識別技術の開発ですとか、海外での制度整備を促す東アジア植物品種保護フォーラムの提唱、また経産省と連携いたしまして、農林水産分野の特許と育成者権等の情報を一元的に提供できるシステムの構築、それから特許等の保護のため、海外における知的財産の保護強化に関する情報共有、こういった取り組みを進めているところでございまして、今後とも、この取り組みを強力に進めてまいりたいというふうに考えております。

伊藤(忠)委員 今回の法案というのは、農林水産省と経済産業省と、そして環境省の三省の共管法ということになっております。この三省が一緒になって、バイオマス燃料の利用の促進、そして供給をしていく体制づくり、さらには供給体制をしいていくときに、先ほど来お話を申し上げてきた農業分野におけるアンバランスの解消、そしてまた、弱くなっちゃう産業に対する手厚い保護、こうしたこと全体を取りまとめておられるのが、バイオマス・ニッポン総合戦略会議のもと、事務局となっている農林水産省だということはよく承知をいたしておるつもりでございます。

 しかし、例えば、先ほど海藻のことをお話申し上げましたけれども、実は海藻なんかは、経産省も物すごく興味を持ってやっておられる、水産庁も一生懸命やっている、こういう状況でございますが、みんなの力がとにかく合わさって、上手に前に進めていけるような交通整理をしっかりと農水省でやっていただきたいというふうに思っております。このことは強くお願いを申し上げておきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、このバイオ燃料という新しい取り組みの実施に当たっては、この法案ができるに当たって、一番私は大事だなと思うのは、例えば畜産業の人たちが、えらい法案が出てきた、燃料の方ばかりに向いてしまっている、我々の畜産業がますます端に寄っちゃうような、そんな気持ちにならないように、とにかくこれは時代の要請で、そして大切な法案として農水省によって進められているんだとしっかり理解をしていただけるように進めていただきたいというふうに思っております。

 飼料作物だけではありません。先ほど申し上げたとおり、私どもの知多半島においては、ふん尿の処理を含めた、実はバイオの燃料による、新しい形で進められないだろうかと、こんなことを一生懸命考えている地域は全国にあるだろうと思っております。こうした人たちのためにも、改めて、この法案の推進と実施に向けた大臣の御決意の答弁をいただければありがたいと思います。

若林国務大臣 バイオ燃料の生産拡大につきましては、この法案による措置のほかに、平成二十年度予算におきまして、先ほど申し上げました、食料供給と競合しない間伐材だとか稲わらなどの未利用のバイオマスを有効に活用した日本型バイオ燃料生産拡大対策というものを新たに開始することといたしました。そして、現在御審議いただいております法案におきまして、二十年度の税制改正事項として、バイオ燃料の製造設備に係る固定資産税の軽減措置の創設などの支援策を講ずることとしているわけでございます。

 これらの支援策を関係者の方に周知徹底をしていかなければいけません。そしてまた、そういう関係各地域が、このことを地域開発と関係づけて、地域が元気になるような、そういう基盤にしていかなきゃいけない、このように考えているわけであります。きのうから、全国を九ブロックに分けまして、日本型バイオ燃料生産拡大対策に向けての対話集会、できるだけ多くの人と話し合っていきたいと対話集会を開催いたしまして、関係者に対しまして支援策などの説明を行うと同時に、バイオ燃料やバイオマスの活用の促進について、地域の中でいろいろなアイデアを持っておられる方がおられます、そういう皆さん方の御意見を伺いたい、意見交換をしていきたいと思っております。

 バイオマスの活用につきましては、バイオマスがどんな状況で地域に存在しているのか、それをどういうふうに収集していったらいいのか、そういうようなことが課題でございます。お話がございました知多半島におきます取り組みを含めまして、地域の実態を踏まえて進めるということが非常に大事だと考えておりまして、バイオ燃料の施策の推進に当たっても、こういう現場のさまざまな声をよく聞いて進めていきたいと思っております。

 今後とも、わかりやすくきめ細かな説明を通じて国民の理解の増進に努めるとともに、この法案による措置、補助事業や税制措置などを総合的に実施を図って、バイオ燃料の生産拡大、そして地域の活性化につなげていきたい、このように考えております。

伊藤(忠)委員 ただいま大臣から力強い御発言をいただきました。極めて重要なことは、バランスなんだろうというふうに思っております。

 この間、知多半島の畜産業の皆さんを連れて大臣のところにお伺いをしたとき、悲鳴を上げているだけじゃだめなんだ、一緒に頑張らなきゃだめなんだ、知恵をもっと出そう、その出す知恵もないぐらいのところまで来ていてもまだ知恵を出そうという声をかけていただきました。彼らも、しっかりと頑張ろうというふうに思っております。

 本法案の成立を機に、改めてこうした人たちとスクラムを組んで、この困難を乗り越えて、私たちの国が豊かな農産物であふれるように努力をしてまいることを、私もお誓い申し上げますが、ぜひひとつよろしくお願い申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎と申します。

 きょうは代打なんですが、民主党の中にバイオマス活用推進議連というのがございまして、その幹事長をやっている立場からも、きょうは大臣を中心に質問をさせていただきます。

 大臣、この法案は、確かに画期的な法案であります。ただし、幾つか問題があるのかなというふうに実は思っています。

 と申しますのは、せんだって経済産業委員会の中で農商工連携に関する法律というのが議論をされ、衆議院は今通っておりますけれども、今、時代が変化をした中で、このバイオという、今まで食料、飼料にしか使わなかった、食料と言われているものが燃料というものに新たな価値を見出したということではないかなと。

 過去のいろいろな歴史をひもときますと、私が少なくとも承知をしておる範囲で、大臣の方がずっとお詳しい部分はありますけれども、今、我が国では、例えばバイオ燃料であるとか、米の価格が下落をしているとか、後継者がいないとか、耕作放棄地があるとか、ある意味ではいろいろな農業の負の面があります。

 特に後継者不足というのは、言うまでもなく、要するにつくってももうからないから、耕作放棄地も増大をするし、全農地面積の一〇%くらいにまで拡大をしてしまった。農家の後継者の皆さんも、今お話ししたようなことも確かに将来というか今やらなきゃいけないことなんですが、これは戦後四十年近くも、昔の農業基本法、農業と他産業の所得の格差を是正するとかいうものから始まって、なかなかそれが達成できない。

 ある意味では、今回、食料をバイオ燃料に使うとか、新興国、BRICsの国々が新たに食料を輸入する、飼料を輸入する、お肉を輸入する、それで世界の需給バランスが崩れながら国際相場は一本調子で上がっている。そこにまたファンドという新たなお金が……。

 ただ、大臣、なぜファンドが入るかというと、これは石油もそうなんですが、私の意識は、限られた生産量である、一方で需要はたくさんある、そこでバランスが崩れて、このお金を投入すれば相場が上がるだろうなどというふうなことも含めてじゃないかなと思うんです。

 そこの複合的なものをどうやって解を見つけるかというのは大変厳しいわけですけれども、これは農水省も一貫して、政府全体でもそうですが、食料自給率を上げよう、食料自給力を上げようとこの三十年間ずっと言ってまいりました。でも、一方で米の生産調整をこの四十年間一貫してやっている。ですから、トータルとしての農政のあり方というものが、国際的な環境の変化に合致をした政策に十二分になってこなかったというのも一方であると私は思うんです。

 もう一点は、今回、三省庁共管でこのバイオ燃料の法律をつくられて今議論をしているわけですけれども、今までの新エネルギーというものは、平成十四年のときにバイオマスも新エネルギーの中に入りましたが、今までの新エネルギーの歴史というのは、例えば石油価格の上昇局面では、石油に代替する新しいエネルギーを確保しなきゃいけないという議論はいっぱいあるんですが、がくんと石油相場が下がると、ああ、もういいやということで、国も民間企業も予算の投入や研究開発費の投入というのはなくて、世の中から忘れられはしませんけれども、余り脚光を浴びなくなってしぼんでいくという歴史をずっと繰り返したわけですね。

 今回の穀物相場も、昨年からの高騰というのも、多分、これは短期的な……。一九七〇年代にあった穀物相場は、アメリカで生産調整をし、それが不作になってがくんと落ちて、アメリカの大豆の輸出禁止ということで、我が国も、いや、これは困ったよということで、それが第一次石油ショックと合体をして大変な状況になったわけですけれども、そのトラウマの中で常に今まで食料自給率論が語られてきたというふうに私は思うんです。

 今回の国際相場の上昇局面もやはり構造的であって、石油もそうですが、インドや中国の新興国の皆さん方が需要がどんどん伸びてくる。これは、主食用の穀物もそうですけれども、飼料用の穀物もどんどん伸びている。構造的に全く違うんだという中で、今回のバイオ燃料の原材料利用促進の法律を議論しないといけないのかなと。

 これは一方で、自分たちの国民にまずおなかをいっぱいにしてもらわなきゃ困るということで、輸出規制もこの半年間で世界じゅうでどんどん起こっています。そこで暴動も起こり死者も出るという世界の偏在性の中で、穀物が生産をされ消費をされているというもろもろのことを考えながら、私は、このバイオ燃料の一番大きなポイントは、先ほどお話がありましたが、バイオ燃料に向けるものの単価をどうやって下げていくかということだと思うんですね。そのためには生産量を上げるしかないわけです、バイオの技術を使いながら。

 この裏返しをどうやっていくかということで、戦後の今までの農政というのは、生産量を上げることは基本的にはだめよと、国内の中だけで農業政策をやるというのが大きな流れだったというふうに思います。

 ですから、その大きな転換点の中でこの法律を議論し、そして、今局面がいろいろ変わりながら、バイオの技術で生産量を上げ、この法律をきっかけにどうプラスに転じていくか、その施策を重点的に予算も含めてやっていくか。それがひいては世界の食料需給も正しい方向にバランスがとれた形に戻すでしょうし、国内の中で主食、飼料、燃料という優先順位があるのかないのかよくわかりませんが、少なくともおなかがいっぱいにならなきゃいけないということもありますから、やはり食料自給率の強化というところにどうプラスに転じていくかということが私は大変必要だと思うんですが、まずその点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 基本的に、エネルギーと食料との競合、これは地球人類が抱えている長期的なというよりも現実に明らかになってきた課題だと思うんですね。そういう人類の未来を考えました場合に、食料生産についても、人口増に伴う需要の増大のほか、温暖化の進行に伴って気候変動が大きくなって不安定な状況が生まれてくる。そういう状況に世界の食料生産というものをどうアジャストしていったらいいのかというのは、世界的な農業政策の課題になっていると思います。

 FAOは、六月の三日、四日、五日とハイレベルで世界の食料問題の協議をすることになっておりますが、その中にありましても、バイオの新しいエネルギーに食料の原料が供給されているという問題を含めまして、世界の食料の問題を考えようということになっております。

 我が国におきましては、狭い国土の中で自給力をつけて国内自給率を高めるという観点からしますと、基本的には食料と競合しないような形のバイオ生産の方に力を入れていく。具体的に言えば、七〇%を超える我が国土の森林資源というものを、地域の中にありまして地域資源として活用できるようなバイオ生産の方向に大筋持っていくべきではないかというふうに私は考えているわけであります。

 しかし、と同時に、委員がおっしゃられました大きな社会情勢の変化の中にありまして、米の消費が減ってきている現状の中で多くの不耕作地が発生しているということも現実問題としてあるわけでございます。その意味では、人間の主食としての米生産ということだけではなくて、新しい品種の開発、バイオ燃料の原料として適するような高収量品種の開発の試験研究に今重点を置いております。

 と同時に、このような生産につきましては、コストをできるだけ少なくする、労働力をかけなくても生産可能な新しい栽培技術でありますとか、生産機械の開発といったようなことが不可欠であると考えておりまして、このような取り組みを推進していくことで農産物自身の生産技術の底上げを図っていくことも大事だというふうに認識をいたしております。

 このような原材料となる作物を作付けることによりまして農地を農地として利用することも可能になるということを通じまして、委員がおっしゃられるような食料の安定供給にも資する、そして、我が国の食料自給力の向上への効果が期待できるということもあわせ念頭に置きながら、このバイオマス活用ということを進めていきたい、このように考えております。

後藤(斎)委員 大臣がおっしゃっていることは、私は半分正しいと思うんです。セルロース系の木質の部分を使っていくというのは、これは多分大きな課題だと思うんです。

 ただし、今我が国がやらなければいけないことは、これから人口が減少すると法律の趣旨説明にもありますけれども、我が国の社会経済構造が大きく変化をして、我が国一国だけでは例えば小売業も製造業も成立しないというこの前提というのは昔から変わりませんけれども、それが加速化しているわけですよね。

 一方で、農林省の政策としても輸出産業化、農産物の輸出化ということを一生懸命やられて、平成二十五年までに一兆円という、私は二兆円でも三兆円でもいいというのを経産委員会でも質問させてもらっているんですけれども、そのときに我が国は何が一番農業構造で脆弱だったのかということをもう一度きちっと私たちも含めて理解を共有しなければスタート地点に立てないと思うんです。

 それは、要するに狭い農地で、たくさんの人口がいて、生産量がふえないという今までの農政の前提というのは、国内需給だけでバランスをとろうとした。これは、お米だけではなくて、野菜も果物も畜産物もすべてそうですよね。だから、それを意識も含めて変化させなければ新しいものにはならない。

 これからアフリカやアジアの国も、今は食料危機で死亡者も出ているという。一九二〇年代には、米騒動が起こった当時の農商務省が農林省と商工省に分かれたその時代というのは、大臣が一番おわかりになっているように、必要なものが食べられない。今まで外貨を持っていれば輸入で十二分に買える時代から変化をするというのは、多分ほとんどの委員の方も共通の意識だと思うんです。でも、もうそういう時代ではなくなった。一方で輸出規制をいろいろな国がしている。

 ですから、外交も大切かもしれません。まず国内でということであれば、昔、他用途米、マル他米というのがありましたよね、あれは少なくとも米の需給の中に入れずに、違った形で加工に向かわす仕組みをとって対応した。同じように例えばバイオ燃料で、すごく生産量が高くて、市場で主食用の米と分断できるような仕組みにしておけば、本当に我が国が食料危機になったときに、そのお米を使って転用だってできる。質が違っても形状はお米はお米なわけですよね、長いか短いかと食味はどうかというのを除けば。

 例えばバイオ燃料に使えるお米にしても、主食用のお米にしても、私はいつも言っているんですけれども、これから花粉症の、私は花粉症がひどいんですが、大臣はどうかわかりませんけれども、花粉症の症状を緩和するお米が実際農水省の試験場ではオーケーになって、今実験圃場で研究をなさっているわけじゃないですか。これから多分お米だって三層制の生産体系にし、幾らでも自由につくってもいいという形にすれば、少なくとも耕作放棄地なんてなくなっていくんですよ。もうからないからつくらない。これは当たり前の理屈なんです。

 だから、どうやって農業収入を安定し、農家の皆さん方が本当につくりたいものをつくれる構造に持っていくか。その部分では、輸出のシェアをもっとふやさないといけないし、国内だけではなくて少なくともアジアの市場を、大臣も見ているわけですから、そういう中でするということがまずあってからこの議論をしていかなければ生産的でもないし、変な話、原油価格も高どまりでいくのかもしれませんけれども、また原油が下がったらこの法律の趣旨なんて生かされなくてどこかに行ってしまうんじゃないですか。

 もう一度大臣の御答弁をお願いします。

若林国務大臣 委員は、農業の現場、そしてまた世界的な食料需給の展望というものを踏まえながら、大変御理解のある御意見を拝聴したわけであります。

 そこで、まず技術の面で、多収性の稲作技術の研究状況についてちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 水田農業の将来展望を開きながら、将来の国際食料需給の変動に備えるためには、多収性の稲を開発し、えさ用などの主食用以外の需要に積極的に対応する必要があると私も考えております。

 そういう意味では、多収性の稲の開発につきましては、これまでに十アール当たりの玄米収量として七百キロから八百キロ程度の品種が大体開発されてきているというふうに今の状況を御報告できると思います。

 具体的に言えば、関東以西での栽培に向く「タカナリ」というのが平成二年に育成されております。東北地方での栽培に向きます「べこあおば」というのは、つい最近、平成十七年に育成に入っております。北陸地方で大規模な試験栽培が行われております北陸193号というものがいよいよ育成段階に入っているというふうに、研究者と現場とがより連携をしながら熱心に取り組んでおります。

 一方、我が国では、世界的にも評価されておりますが、イネゲノムの研究は非常に進んでおります。そういう意味で、十六年にはイネゲノムの完全解読を達成いたしまして、これまでにそこからとれます百の遺伝子機能の解明に成功をいたしております。

 このようなイネゲノムの研究の成果を活用して、国内外の食料、環境、エネルギー問題の解決に貢献できる作物の開発のために、新農業展開ゲノムプロジェクトというものを立ち上げたところでございます。このプロジェクトでは、五年後は一トンを目標にする、さらに十年後には一・五トン、現在の単収の三倍ぐらいの収量を目標に多収米の開発に取り組んでいるところでございます。

 そういう研究開発の成果を念頭に置きながら、私は、先ほど申しましたように、基本的にはやはりセルロース系のものを主体とするようなバイオマスの活用が図られることが地域の開発と非常に密接だと思いますが、主食としての米の消費の回復が早急には望めない今の状況の中にありましては、今申し上げましたような一トンから一・五トンといったような展望の中で、このバイオ原料としての稲の生産ということも視野に入れて取り組んでいきたいと思っております。

後藤(斎)委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣、私が思うのは、先ほどもお話をしたように、原油相場が下落をして新エネルギーに余り魅力がなくなってくる事態というのは想定しにくいんですが、新エネルギー同士の競合というか競争も非常に激しいわけですよ。特に、新エネルギーと言われているのは、太陽光発電、バイオマス、風力、水力も含めて再生可能という形でこれからも対応が進んでいくんだと思うんですけれども、バイオマスは、先ほども御答弁をされたように、原料の運搬、収集というのが非常に手間がかかるし、変な話、これをどう効率化するかということを待っていると……。

 実は、太陽光発電では、日本はもともとずっと一番だったんですけれども、昨年は単年度でパネルの生産量も総発電量もドイツに抜かれました、これは固定買い取り制というものが導入をされてそのインセンティブが働いたということで。逆にそれをばねに、今、太陽光のパネルの生産コストを下げようというすさまじい努力を、これは官じゃなくて民の方がどんどんやっているわけですね。大臣御案内のとおり、太陽光のパネルというのは、屋上でもいいしビルの横にでも張っておいてもいいし、土地の上に置いておいても電力を発電してくれるわけですね。

 ということになると、バイオマスの技術が、大臣がおっしゃるように私も地域にぜひ根づいてもらいたいと思いますし、まさに循環型の発電の一番の仕組みだというふうに思っています。ただし、導入のスピードがおくれればおくれるほど……。多分全国の太陽光パネルの普及というのは今三十五万世帯くらいみたいですけれども、十年間で政府はそれを全体で三百二十万世帯にするという政策決定をしているわけですよ。これは、もちろん生き物ですから、パネルと同じようにすぐどうこうというのはできない。これもよくわかっています。ただし、六年前からバイオマス・ニッポンというものがスタートをして、そこに着目をして、大臣がおっしゃられたように、私も木質系のセルロースの方が、これから何とか循環型のエネルギー産業として興せるような形にしたいというふうに心から願う一人なんですが、研究速度がおくれていけばおくれるほどだめなんです。

 ですから、私がぜひ大臣にお願いしたいのは、これは農商工連携の中でも経産大臣にもお願いしましたけれども、今、農水省だけの研究所や農水省が関係している民間の方々だけではなく、例えば経産省も環境省も、政府すべてが、三省が一体になり、関係の業界も一体になってやっていかなければ、そのスピードには国内だけでも負けてしまう。負けるか勝つかというのは全然問題ではないんですが、劣位になってしまう。そこについて、大臣、研究開発していこう、知財も一緒にやっていこう、そういうことをこの一年間くらいで意思決定をする。今までの農水省や通産省の対立の構図から、一緒に、国民のため、世界のため、ひいては私たち一人一人の幸せのためということで当然施策をやられているわけですから、そういうふうに意識を変えていただかないと。

 別に、農林省の悪口を言うわけではありませんけれども、まだまだ施策の連携というものが、まだ縦割りで、省が違うから縦割りもしようがない部分があるのかもしれませんけれども、みんな一人一人が、忙しいのはよくわかるんですが、大臣からもっと他の省庁の知見や他の研究機関の知見を総動員しようと。一応バイオマス・ニッポンになっていますけれども、私は必ずしもなっていないと思うんです。

 大臣、一つだけお話をさせてもらうと、実はある大学の先生が、大臣がさっきおっしゃった遺伝子組み換えの部分で、植物にもストレスがたまると。私もストレスがたまる人間の一人なんですけれども。そのストレスを解消してやると、生産力、要するに単収が倍近くなるという実験の成果を上げたのを大臣は御存じですか。そういうものもいろいろな知見であるようなんです。私も全部はわかりません。ですから、それを総動員するというふうなこと。要するに成長のストレスをなくしてあげると、成長力が高まって生産力が増加をする、生産性が上がるという知見があるというふうなことがある記事に載っておりました。

 そんなことも含めて総動員するということがすごく必要なことであって、今回、三省庁でやられたバイオ燃料だけではなく、そうではない知見についても共同でやる。もうこれは待ったなしだと思うんです。

 ですから、大臣がそういう部分でリーダーシップをとっていただいて、省全体で対応するということをお約束していただきたい、また、関係大臣とも十二分な連携をとっていただきたいと思うんですが、簡潔で結構ですから一言だけ大臣の御答弁をお願いします。

若林国務大臣 委員がおっしゃられますように、だんだん科学技術も他の分野との協力関係、知見を共有しながら、その一番すぐれた部分を結合していくということが大事でありまして、今、政府には科学技術総合戦略を立てる総合科学技術会議がございまして、私もそのメンバーに入っております。その戦略的な技術の中の一つに、実はイネゲノムを中心とした新しい作物の開発、温暖化に関連した作物開発も取り入れていこうとしているわけでございまして、総合的に国家の各機関挙げて結合をして開発に当たっていくということは、大変大事なことだというふうに考えております。

 そしてまた、バイオマス・ニッポンの総合戦略について大変御理解いただいていることを感謝いたしておりますが、これは農林水産省が事務局をやっているということでございまして、全体は内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、これらの各省庁を構成員とするバイオマス・ニッポン総合戦略推進会議というものを設けているわけでございまして、農林省はその事務局を預かっているということでございます。

 例えばその中で位置づけられているバイオマスタウンという構想につきましては、全国で三百市町村にバイオマスタウンをつくり上げていこうという構想を持っておりますが、これについては関係省庁がこれらを共有しまして、構想の実現に向けた地域の取り組みが進むようにその支援を行っていくということで相協力し合っているというのが今の姿だと思います。

 もちろん、それらが十分機能していると言えない部分は反省をしながら、現場での円滑な取り組みが行われますように、補助事業などの関係施策については関係省庁とさらに一層連携をし、バイオ燃料を初めとしますバイオマスの利活用につきまして、一層強力に推進していくつもりでおります。

後藤(斎)委員 ありがとうございます。

 私も、地域の中でこのバイオマスの発電、バイオ燃料を使った部分も含めてですが、それがきちっと実用化、商業化、産業として例えばバイオマス発電所が設立をするということが必要だと思うので、大臣、ぜひその視点からの強力なサポートをお願いしたいと思います。

 大臣のこの法律の趣旨説明の中にもありますように、バイオ燃料の生産拡大というものが地球温暖化の防止にも役立つというふうな視点も、当然のことながら一番の大きな課題として御説明がございました。

 大臣、これは大臣でなくて結構なんですが、実は、メタンガスの抑制というものも地球温暖化の視点から非常に必要な課題だというふうに思っています。これは大臣の所管の畜産、特に牛は、食事の前だからいいんでしょうけれども、牛はげっぷをしますよね。このげっぷというのは、牛一頭が一日三百リットルの、何でリットルなのか僕もよくわかりませんが、メタンを出すというふうなことが言われておりまして、世界の牛を全部足し合わせると地球上で排出されるメタンガスの一二%だというふうに言われています。実は、これは一九九〇年ですから、今から十七、八年前に学会で発表をされ、当時、農水省は熱心に検討するというふうなコメントを報道でも出されているようなんです。

 でも、その後、いろいろ紆余曲折があってお進みになっていないようですが、この数年間で、学者の先生や民間の研究機関も、ここが少なくなるような、簡単に言えば、胃薬ができればいいよなと。それも通常の胃薬だと、余りたくさん飲み過ぎるとじんま疹が出る、発疹が出たりすると困るなということで、天然素材を使ってげっぷを九〇%カットするという、太田胃散みたいな、漢方みたいなものが開発をされた。これは実は、二、三年たつと、商業化、実用ベースになると言われているんですね。

 ですから、さっきお話をさせていただいたように、大臣はもちろんお一人で大臣を担当なさっているわけですから、副大臣も政務官も、農林省の局長以下職員の皆さん方ももちろんそうです、全体の中で地球温暖化にどういうふうに対応していくのかとか、そういうことも含めて検討していかなきゃいけない。さっき大臣は連携しながらやるという話をしていたのですが、この牛のメタンガスの地球温暖化関連について、簡潔で結構ですから、全部言わなくて結構ですから、簡潔に御答弁、御説明をお願いできますか。

竹谷政府参考人 お答えいたします。

 牛のげっぷの問題につきましては、委員御指摘のとおり、温室効果ガスの計算上、一定の量を占めておりますので注目を集めているところでございます。

 これにつきましては、私どもの関係の独立行政法人の農研機構におきまして研究を進めておりまして、委員御指摘のように、牛が粗飼料を食べた際に胃の中で発生いたしますメタンガスを削減するためのえさのやり方を工夫いたしまして、減らす研究というものを進めてきておりまして、一定の成果を見ておりますが、まだ残念ながら実用には至っておりません。

 また、委員御指摘のように民間企業におきましてもいろいろな研究をしておりますが、その中で最近話題になっておりますのは、カシューナッツの殻からとりました植物油を牛に食べさせる、それによりましてメタンガスの発生を抑制する方法というのが最近発表になっております。これらの研究成果が出つつありますので、これらと連携して取り組んでいく必要があろうかと思っておりますが、何分、まだ実験段階、試験管段階でのデータであるというような点、あるいは、げっぷというのは牛の生理作用でございますので、どうしてもすべてを抑え込んでしまうというわけにもまいりません。おのずと限界がございます。そういったような点がございますが、さらに独立行政法人や民間としっかり連携をいたしまして研究を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

後藤(斎)委員 おっしゃるとおりで、全部やめろとは言わないんですが。

 ただ、大臣、もう一度確認だけしておきたいんですが、牛が四百四十万頭くらいいる、メタンが年間で三十二万三千トン、一日三百リットル出す。二酸化炭素換算すると、年間で六百七十八万トンということになるようなんです。ですから、それは我が国の国内の温室効果ガスの年間排出量の二酸化炭素換算で〇・五%ぐらいになる。結構大きいんですよ。ですから、九割くらいでいいと思うんですね、げっぷがなくなるのも。これも知見として集大成をし、民間企業では二〇一一年までには実用化をしたいという強い意思もあるようですから、そういうものに対する官民協力というものもやっていただきたい、そういうことで私はあえてこの素材を出させていただきました。

 もう一点、バイオの技術というのは、今までは試験管、実験圃場の中で、これから何とか実用化に向けて本格的稼働ということでありますけれども、一方でWTOの中でもいろいろな交渉をして、今まで日本国は特に農業分野で受け手というか守りに入っていた。守らなきゃいけないものはたくさんある。でも、これからはそれをどう攻めに変えるかというのは、さっきも冒頭の部分でお話をさせてもらったように、生産量を非常に上げて生産性を高めるという手法と、もう一つは農業の多面的機能というのが、よくWTOの中でも語られるのですが、これはきのうもちょっとお話をお聞きしたら、日本学術会議が「農業の多面的機能の貨幣評価」というのを出していただいていますが、これは平成十三年の十一月ですから、七年前からこの数値は変わってないんですね。そして、新たな機能もある。例えば先ほどの牛のげっぷもそうだと思うんです。そういうものが減少すればプラスになるわけですから、いろいろな評価をする。

 私は、日本農業全体を考えれば、普通に考えれば、私も消費者です、大臣も消費者です、生産者も、全国で三百万人以上農業生産者がいらっしゃいます。そのときに、農家の方々は、できたら昔のように例えば一俵三万円で米を売りたいと。でも、今その半分だ。消費者の方は、ああ、安くなっていいなと。でも、もうおなかいっぱいで消費は伸びないわけですね。果物にしてもそうだと思うんです。農家の方が、例えば桃を一つ二百円で出したいと言っても、消費者の方は同じものであれば百円でいいよと。ここのお互いの価値観の違いというか、消費行動、生産出荷行動の違いというのが、短期的に見れば、市場価格を下落をしたり上昇させる、物の供給量の中で。

 大臣、この貨幣価値も、もう七年もたっているわけですから、きちっと見直す。その中で、いろいろな形で評価を与え、日本国内の一億二千八百万の消費者の皆さん方にも農業は単におなかいっぱいになる、おいしいものを食べるだけではなく非常に評価があるんですよということを、いろいろな何とか機能、何とか機能といっても、値段や貨幣価値の数字で示すことが多分一番わかりやすい指標だと思うんですね。兆というのではわからないんですよ、天文学的で。ですから、もう少しわかりやすく、一人当たりどのくらいみたいなことも含めて、そういうわかりやすい工夫をしながら、それをWTOの交渉にも使っていただく。

 国内の消費者の皆さん方は、例えば、今、海外の小麦の価格が上がればそういう価格転嫁はいいよという御発言を大臣もなさっていますけれども、パンや小麦粉製品というのは当然値段が上がっているわけです、カップラーメンもコンビニで百五十円で買えたものが今百七十円以上になっている、それを消費者の方は受け入れている。でも、その受け入れる前提は、どうしても食べたいものはお金を出してもいいという発想になるのか。その部分は、もちろん収入によって違うかもしれませんけれども。

 そういう中で、ぜひこの見直しは、農業の多面的機能、林業も含めてですが、私は一日も早くしていただきたいと思うんですけれども、本当に一言で結構ですから、ぜひ発言をお願いいたします。

若林国務大臣 委員が多面的機能について大変御理解を持っていただいていることに敬意を表したいと思います。

 簡単に申しますと、これを国際舞台で日本がずっと主張してきたんですけれども、このことがなかなか国際舞台の中で、OECDを初めとして、日本は輸入をふやすのが嫌だからそういう言い回し方をしているんだというようなことを言われ続けましたが、実は、日本は科学的な根拠があるんだということで専門家をOECDの研究チームの中に派遣しまして、その費用の負担をしながら、OECDの研究チームとして、まずはそういう多面的機能というものは大事なんだということを国際舞台の中で一応認めさせた上で、学術会議の方に具体的な算定の方法をお願いしてきたという経緯がございます。今や、WTOの交渉もそうですけれども、農業が多面的機能を持っているということについては国際的に認知を受けているというふうに思っております。

 ただ、この数字の量で、だからもっと一生懸命やろうというと、今でも大きな数字ですからね、委員は詳しく御承知だと思いますけれども、森林から水の関係から全部再計算するとなると、大変な膨大なコストがかかるんですよ、手間暇も。

 だから、その見直しは委員が御指摘でございますので検討いたしますが、一日も早くというよりも、今あるこの多面的機能だけでも国民の皆さんにしっかりと認識してもらえるよう少なくともアピールをしていく工夫は凝らしていかなきゃいかぬ、こう思っております。

後藤(斎)委員 大臣、一点だけつけ加えさせていただくと、この多面的機能の中に土壌の問題があって、今土壌は、昔はメタンを排出するとかいう負の部分が多く語られていましたけれども、そうじゃないという知見が新しく出てきた。これもお聞きしたら、昔からあったんだという話ですけれども、そういうものも含めて精査をする時期に来ていると私は思う。

 そういう部分では、その技術を国内だけに置いておくのではなくて、例えば、今、アフリカやアジアの国々で食料危機で暴動が起きている、死者も出ている地域というのは、昔もフィリピンのIRRIの部分で国際協力しながら食料増産をした時期もありました。それと同じことではないんですが、知的財産をきちっと守りながら、国内の農業に従事する方、消費者のことももちろんきちっと考えながらの上でありますけれども、そういう技術の交流、技術の輸出、要するに、JICAの皆さん方がやっている大切な部分もありますけれども、そうではなくて、新しい技術をどう海外に輸出をしていくのか。

 知財として輸出をして、そこで活用してもらって、その地域がもっと食料増産ができてよくなる。これから輸出規制も多分もっともっと進むかもしれません。もしかしたら、WTOの枠組みも、大臣がおっしゃったような部分で違った部分がもう出てきたなということはこれから多分交渉の中でおっしゃられると思うので、冒頭もお話をしたように、時代は構造的に変化をした、それに対応して後継者の問題や農地の問題や所得の問題や、こういうバイオ燃料という新しい技術の部分も含めての問題をどう位置づけるかということを、大臣、きちっと理解を、もちろん大臣はしているんですが、職員の皆さん方、一緒に理解をしながら、それを国民の皆さん方や関係者の皆さん方にきちっと伝えていただくということだと思うので、ぜひ地域循環型のバイオ燃料を使った発電所が本当に業として一日も早く実現できるように、五年、十年と言わずに、もっと早くスピード感を持ってやっていただくということが必要だと思うので、そのことだけ御要望して、時間がもうとっくに過ぎていますので、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、神風英男君。

神風委員 民主党の神風英男でございます。

 本日は、バイオ燃料法案についての質疑ということでございますが、まず冒頭に、前回の委員会で、時間がなくて質問し切れなかった点からお伺いをしていきたいと思っております。

 例の基本計画における農地の見通しでございますが、これは平成二十七年時点で四百五十万ヘクタールの農地を確保するということになっております。これは平成十六年現在で四百七十一万ヘクタールの農地がある。それが平成二十七年には四十万ヘクタールぐらい減少するであろうということで、プラス十九万ヘクタールを増加して、何とか四百五十万ヘクタールを維持しよう、確保しようということでございますが、この四百五十万ヘクタールの農地面積と、三十八万六千ヘクタールの耕作放棄地との関係というのはどういうふうになっているのか。つまり、基本計画における農地の見通しの中には、三十八万六千ヘクタールの耕作放棄地というのは全く考慮されていないとしか思えないんですが、これはそういう理解でよろしいんでしょうか。

    〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕

中條政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年三月に策定いたしました食料・農業・農村基本計画におきましては、これまでの趨勢等を踏まえまして、平成二十七年の農地面積について、委員御指摘のとおり、四百五十万ヘクタールと見込んでおるところでございます。

 一方で、三十八万六千ヘクタール、これは平成十七年の農林業センサスにおいて報告がありました耕作放棄地面積でございますけれども、これにつきましては、個々の農家単位の申告をもとに集計されたものでございますので、その具体的な場所、営農再開が容易なのか困難なのか等々の状況までは把握していなかったところでございます。

 しかしながら、近年、国際的な食料事情が不安定化する一方で、今後とも農地面積の減少が見込まれる中で、食料自給率も下がってきております。国民に対し食料の安定供給を図っていくためには、優良農地を確保するとともに、耕作放棄地を解消していくことが喫緊の課題になっているというふうに理解をしております。

 このために、昨年度より耕作放棄地の計画的な解消を図ることといたしまして、本年度は、すべての耕作放棄地の状況を的確に把握した上で、それぞれの状況に応じた対応策、解消策を講じてまいりたい、このように考えているところでございます。

神風委員 といいますと、基本計画をつくった段階では、この三十八万六千ヘクタールの耕作放棄地は想定していなかった、そこまでの正確な認識はなかったという理解で、現状でも、平成二十七年度の四百五十万ヘクタールの農地の確保というのは目標としては変わらないわけですか。

中條政府参考人 お答えいたします。

 現在のところ、目標としては変える予定はございません。

 ただ、今申しましたように、これから実態調査といいますか、現在、実態の把握をしようとしておりますので、その実態を踏まえまして、今後どうするか、場合によっては変更ということもあり得るというふうに考えておりますが、今のところそういう状況でございます。

神風委員 同時に、農水省としては、今後、五年間を目途に耕作放棄地の解消を目指すということをうたわれているわけでありますが、その意味はどういう意味なのか。つまり、三十八万六千ヘクタールの耕作放棄地を農業利用ではなくて非農業的な利用に誘導したいという意図なのかどうか、そのあたりはいかがなんですか。

若林国務大臣 この耕作放棄地の問題は、いろいろな農業を取り巻く環境、諸条件の変化の中から発生してきているものでございまして、一つ一つその耕作放棄地があります地域の農業事情によって事情が違うと考えております。地域社会の状況でありますとか、耕作条件など、それぞれ異なっているものをどうやって解消するかというためには、実態の把握が必要であります。

 そこで、ことし、今年度から、すべての耕作放棄地について一筆ごとに現地調査を行いまして、国が策定します具体的な判断基準、こういうような作物の栽培の方向でいく、それを利用するだけの体制をその地域でつくれるかどうかといったようなことの判断も含めまして、これを農地として利用していくのか、あるいは非農地、非農地というのは具体的には植林が多いんですけれども、山手の方ですから耕作放棄地になっていますので。そういうような農地と非農地に振り分けをするということを考えております。

 この調査によりまして、農地とされた土地については、各種の支援策を示した耕作放棄地解消支援ガイドラインといったようなものを定めておりますが、これらを踏まえて、市町村における耕作放棄地解消計画を作成する、そしてそれを実行していくことを推進する、担い手への利用集積などによる営農の再開、集落による保全管理、こういったことを図っていくようにしたいと思っています。

 どんな割合になってくるかというのは、調査を実際やってみないと正確には言えないわけですけれども、具体的には、毎年度の取り組み状況を把握しながら、地域での話し合い、そして、草刈り、耕起、抜根、整地といった条件の整備、担い手への利用集積及び営農指導といった各段階ごとの支援策を講じてまいりたい、このように考えておりまして、平成二十三年度を目途に、農業上重要な地域である農用地区域を中心に耕作放棄地をゼロにするという目標で取り組んでいきたい、このように考えております。

神風委員 その中で、当然、今回のバイオ燃料の資源作物をつくっていくような農地というのも相当程度出てくるのかなと思います。ただ、資源作物であればその耕作放棄地の作付がどんどん進んでいって、解消されるというものではないんであろうと思うわけでありまして、何らかのインセンティブを与えないと、なかなかバイオ燃料用の資源作物の作付というのも進まないんではないかなと思います。

 例えば、EUでは、休耕地でエネルギー作物を栽培する場合には、十アール当たり四・五ユーロ、約六百三十円の補助金が支払われるというようなことになっているようでありますが、今後日本でもそのような予定というか計画というのはあるんでしょうか。

吉田政府参考人 耕作放棄地に資源作物を栽培する場合に、直接的なインセンティブを与えることについて検討しているかというお尋ねでございます。

 耕作放棄地に資源作物を栽培することが可能となりますれば、我が国の食料自給力の向上に寄与するものというふうに考えております。

 ただ、バイオ燃料の製造につきましては、規格外農産物などの安価な原材料を用いない限り、ガソリン並みの価格でバイオ燃料を生産することは困難な現状にあります。大幅なコスト低減を図る必要があるというのが実態でございます。

 そこで、コストの低減を図るためには、まずは原料生産者とバイオ燃料製造業者の連携、それから超多収品種の開発などの研究開発を支援して、低コスト生産を可能とする体制づくりをすることが一番重要ではないかというふうに考えております。

 このため、本法案によりまして、原料生産者とバイオ燃料製造業者の連携及び研究開発を支援し、効率的にバイオ燃料の製造がなされるような体制の強化を支援してまいりたい、このように考えております。

神風委員 これは、平成十七年に策定された京都議定書目標達成計画によりますと、平成二十二年度における輸送用燃料としてのバイオ燃料の利用目標は五十万キロリットルとされているわけでありますが、これまでの三年間の間で、この目標五十万キロリットルのうちどのぐらい目標は達成されているんですか。

吉田政府参考人 京都議定書目標達成計画で、平成二十二年度までにバイオ燃料、これは原油換算で五十万キロリッターの導入という計画になってございます。現時点までに実績がどうかと言われますと、これは極めて小規模な実証事業しか行っておりません。現在の生産は、バイオエタノールでいきますと、エタノール原体で三十キロ程度の量でございます。

 したがいまして、微々たるものでございますが、平成十九年度から大規模な実証事業を農林水産省で始めております。北海道二地区、新潟一地区で始めておりますが、この三地区では、エタノールで三万一千キロリッター、原油換算いたしますと約二万キロリッターの生産を今計画しておるところでございます。

神風委員 この五十万キロリットルの内訳というのも、国産バイオエタノールは約三万キロリットル、あと国産バイオディーゼルが一万から一万五千キロリットルで、大半が輸入ということになっているわけですね。国産バイオ燃料の生産目標が、これだけ導入目標量で差があって、大半を輸入に頼っているというのは余り意味がないんではないかなと思うわけでありますが、これは将来的に国産と輸入とでどれぐらいの比率にしたいという計画でいらっしゃいますか。

吉田政府参考人 御指摘のように、現状ではその五十万キロリッターの相当部分は輸入による対応というふうになろうと思っております。本法案ですとか各種の支援措置によりまして、国産バイオ燃料の生産拡大というものを図ってまいりたいと思っておりますが、現時点でその五十万キロリッターのうちどの程度を国産バイオ燃料で賄うかといった計画は有しておりません。

神風委員 国産で賄う計画はないというのは非常に寂しい限りというか、何のためのこの法案なんだろうかという気がするわけであります。

 ちょっと大臣にでも伺いたいんですが、今世界的なバイオ燃料へのシフトが行われている、あるいは世界的な食料不足、あるいは干ばつであるとか、国際価格の高騰というのがあるわけでありまして、そういう中でのバイオ燃料ということであるわけでありますから、基本的には、今回のバイオ燃料の生産というのは、原則一〇〇%国産を目指すのが筋だと私は思っております。でなければ余り意味がないと思いますけれども、大臣のお考えはいかがですか。

若林国務大臣 まずは実験室の段階から圃場段階におりて、そしていよいよある程度の規模の実証実験に入るという現状を考えますと、一〇〇%を目指すというのは、実現の可能性を考えないと、それを目指して、ではどういう工程表をつくって、どういうふうにやっていくんだというようなのを、やはり段階を踏まないといけないというふうに思います。

 その意味で、実際の温暖化対策として、これだけのものをガソリンから、要するに石油から転換をするんだ、そして全体の抑制を図るんだというのは、そちらの側から決められた数字でございまして、国内生産でどこまでやれるかは、今のまさに試験研究段階、そして実証実験をやっている段階、それらを踏みながら進んでいる段階でございますので、具体的に一〇〇%を目標に目指すのかということを言われましても、まだ、率直なところ、国内におけるバイオ燃料の生産というのは始まったばかりでございます。

 したがいまして、そういう中にありましても、この実証的な実験を展開していくために、固定資産税の二分の一軽減を図るといったようなこと、あるいはその他の支援措置をしていくためにこの法案を提案したわけでございまして、そういう意味でのこの法案というのは、ぜひとも御理解をいただきたいと思うのでございます。

神風委員 ただ、今回の法律案の場合、地球温暖化対策を直接的な目的にはしていないわけでありますが、それは何らかの理由があるんでしょうか。

若林国務大臣 いろいろな手段を総合しながら最終的には地球の温暖化にストップをかけるというのは、いろいろな政策の目標でございます。

 ただ、この法案に関して言いますと、農林漁業に由来するバイオマスをバイオ燃料の原材料として活用する、そのために、まず手法として、農林水産物の新たな需要の開拓とか、あるいは農林漁業における資源の有効な利用の確保だとか、バイオ燃料の生産拡大によるエネルギー資源の確保に直接的につながるということを考えて、この法案の目的を、農林漁業の持続的かつ健全な発展、そしてエネルギーの供給源の多様化というふうに定めておるところでございまして、本法案においては、地球温暖化の防止というのを直接の目的とはしておりませんが、その先のねらいとして、まずは国内体制を整えていくということに直接の目的を置いているものでございます。

神風委員 特に海外のバイオ燃料の生産、製造の推進に際して、地球温暖化対策としての有効性をどう評価されているのか。

 例えば米国、アメリカの場合には、これはトウモロコシを原料としたエタノールの製造というのが非常に盛んであるわけでありますけれども、ただ、温暖化対策への貢献度というのは実は極めて限られているという指摘もあるわけでありますし、自然な植生をバイオ燃料の栽培に変えてしまうというような場合には、そのエネルギー収支というような、そこでできるエネルギー生産よりももともとの植生の方が温室効果ガスの削減の効率が高いというようなこともいろいろと指摘をされているわけでありますが、そういう点から判断をした場合に、どういう評価をされていますか。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 バイオ燃料は、その利用によりまして新たなCO2を増加させないカーボンニュートラルということを言われてございます。地球温暖化の防止にも資するものであるというふうに認識はしてございますが、一方で、バイオ燃料の原料生産時に肥料を使います。また農業機械を利用いたします。それから、バイオ燃料製造時には、発酵ですとか蒸留過程で重油などの石油燃料を利用いたします。こういったところでCO2が排出されてございます。

 したがいまして、バイオ燃料の原料の生産から利用までの全体の過程におきまして、環境やエネルギーに及ぼす影響を評価しながら、バイオ燃料の生産拡大を図っていくことが必要であるというふうに考えております。

 本法案の基本方針の中でも、地球温暖化対策に関する国の計画との調和を図るべきことを法律上明記するとしてございますが、その中で、こういった地球温暖化防止の有効性、LCAと言っておりますが、そういった評価をしっかりすることも実施してまいりたいというふうに考えております。

神風委員 また、今回のバイオ燃料の導入に関して、非常にさまざまな計画が存在していまして、その整合性が正直言ってよくわからない面があります。

 つまり、平成十七年には、京都議定書目標達成計画で、今申し上げた五十万キロリットルというのがありました。平成十八年には、今度は新・国家エネルギー戦略で、運輸部門における石油依存度を平成四十二年までに八〇%に抑える、あるいは、輸送用エコ燃料の普及拡大についての目標があり、また、平成十九年には、今度は国産バイオ燃料の大幅な生産拡大というのが同じように言われている。

 例えばこの二つをとっても、輸送用エコ燃料普及拡大についての中では、平成四十二年には、バイオエタノール、輸入を含めて三百八十万キロリットル。一方で、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大の方では、農水省の試算として六百万キロリットルの国内生産が可能であるというようなことが書かれているわけですが、これらの整合性が一体どういうふうになっているのか。具体的に、これからのスケジュール、あるいはその中での数値目標というのはどういうふうになっているのか、整理をしたものをお示しいただきたいんです。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今出ました数値について先に答えさせていただきますが、輸送用エコ燃料の普及拡大、これは平成四十二年、二〇三〇年までにガソリン需要全体のE10化を目指すということで、今委員おっしゃった三百八十万キロリッターというのは、これは原油換算での量でございます。一方で、私どもが昨年出しました工程表、これも、二〇三〇年に可能な資源量をすべて利用すると六百万キロリッターと言っています。この六百万キロリッターというのはバイオ燃料本体の量でございまして、これを原油換算にいたしますと先ほどの三百八十万キロリッターとほぼ同じ数字になります。ということで、そこについての大きなそごはないと感じております。

 いずれにいたしましても、こういった幾つかの計画との整合性を図りながら、国産バイオ燃料の生産拡大への取り組みに関しまして、平成二十三年度までに国産のバイオ燃料を五万キロリッター、原油換算で三万キロリッター生産すること等を内容とする工程表を出しました。繰り返しになりますが、その工程表で最終的には六百万キロリッターというものを想定してございますが、関係府省との連携を図りながら、また、そういう他の計画との整合性を図りながら、取り組みを進めてまいりたいというふうに考えております。

神風委員 まず、直近のことについてお伺いしますが、これは平成二十二年に約三万キロリットルの国産バイオエタノールを生産、導入するということになっています。ただ、現状では、先ほどおっしゃられたように三十キロリットルしか生産をされていない。これから二年で千倍近いバイオエタノールをどうやって生産される予定なのか、それについてお伺いをしたいと思います。

吉田政府参考人 御指摘のように、今時点で、平成十九年度から始めました大規模実証事業では、北海道二地区、それから新潟一地区でエタノールとして三万一千キロリッター、これ以外にバイオディーゼルも合わせますと約三万五千キロリッターが、今こういった大規模実証事業で生産が計画されてございます。

 一方、平成二十三年までにバイオ燃料として五万キロリッター、だから、残り一万五千キロリッターぐらいの差があるわけでございますが、これにつきましては、いろいろなバイオマスタウンの計画の中で、各市町村がいろいろな燃料生産の計画も立てておられます。そういったものに対していろいろな助成措置も使いながら実現をしてまいりたいというふうに考えております。

神風委員 余り時間がなくなってしまいましたので、ちょっと質問を飛ばして。

 多収量米のことは先ほど大臣からの御答弁がありましたので、そうではなくて、もう一点、きのうお伝えはしていなかったんですが、イネ科の多年生植物ですか、エリアンサスによって、これは一万三千二百七十ヘクタールで生産をし、十万から二十万キロリットルのバイオエタノールを製造する、それによって二〇一五年までに一リットル四十円のバイオ燃料を目指すというような新聞報道があったんです。

 これはきのう質問通告はしていないんですが、現状、その進捗状況というのはどういうふうになっているのか、わかれば教えていただきたいと思います。

吉田政府参考人 お尋ねのバイオエタノールのコスト四十円を目指す取り組みでございますが、これは私どもと経産省で共同で取り組んでおりますバイオ燃料技術革新計画というのがございまして、当面、ソフトセルロースを使ってリッター百円程度のものを目指す技術の組み立てを研究してございますが、そのさらに先に、海外との競争ができるようなものとして、最終コスト目標を四十円に置いた場合に、どのような技術の要素があるか。まだまだこれから大きな研究開発課題が残っておるわけでございますが、どんな技術要素があるか。その可能性を最大限に示したものの一つが今おっしゃったものでございまして、具体的に研究がスタートしておるというわけではございません。

神風委員 また、バイオ燃料であるとかバイオマス利用の取り組みを考慮中の関係者にとって、どういった支援があるのかということを知ること自体が必ずしも容易ではないという面があると思いますが、そこら辺の対応はどのように考えられていますか。

吉田政府参考人 支援策の周知についてのお尋ねでございます。

 現在は、ホームページへの掲載ですとか、各種パンフレットの配布等によりまして、バイオマスについての施策の普及に努めているところでございますが、これに加えまして、関係者への周知と理解醸成を深めるということを目的に、昨日から全国九ブロックにおきましてこの問題についての対話集会を開催しております。関係者に対しまして支援策の説明を行いますとともに、バイオ燃料やバイオマスの利活用の促進についての意見交換を行っているところでございます。

 今後とも、よりわかりやすく、きめ細やかな説明を通しまして、国民の理解の増進に努めるとともに、本法案によります措置、補助事業や税制措置などを総合的に実施いたしまして、バイオ燃料の生産拡大を図ってまいりたい、このように考えております。

神風委員 また、資源作物だけをこれから生産、販売するような農家が誕生した場合、それは農家の範疇ということになるんでしょうか。それと同時に、他の産業から、資源作物のみを生産しようという、ある意味では企業が参入したいとなった場合には、その対応というのはどういうふうになりますか。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 現時点では、バイオ燃料向けの、それ専用の農作物の作付は行われておりませんが、今後、資源作物向けの新品種の開発、あるいは低コストの農業生産方式の開発によりまして、資源作物の作付も可能となるような研究開発を推進してまいりたいというふうに考えております。

 そういった研究が進みましたら、将来的には、資源作物だけを作付する農家ですとか、あるいは農業以外の産業から資源作物を作付する参入企業もあらわれるのではないか、これは想定されるところでございますが、この法律案におきましては、このような農家や企業につきましても、我が国の農業を担う者として、本法案の支援の対象となる農業者として位置づけているところでございます。

神風委員 バイオ燃料については、現状の日本の農業の状況を考えると、ある意味では非常に可能性が大きい一つの手段であることは間違いないと思っております。それをうまく引き出して、そういう形にどう持っていくかというのが非常に重要な点であろうかと思っております。

 先ほども申し上げたとおり、バイオ燃料については原則一〇〇%国産を目指していくという方針のもとに進めていくのが非常に重要であろうと思っているわけでありまして、それがこの法案の成否を握っていくのではないかなという気がしておりますが、時間がありませんので、もし大臣の方からそれについて御意見があれば、一言だけお伺いをできればと思います。

若林国務大臣 私も、バイオ燃料の原材料としての農林水産物、これの、日本においてなおなおその原料供給の可能性というのは、背後地を含めると非常に大きいわけでございます。

 その意味で、新たな農林漁業の需要分野を開くという意味で位置づけていきたい、こう考えておりまして、その限りにおいて、アプローチの方向が違うんですけれども、これだけのバイオマスを原料とするエネルギーが要るんだ、必要なものは国内で賄っていくんだという意気込みで取り組んでいきたいと思っております。

神風委員 ぜひそのような取り組みを進めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

江藤委員長代理 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 今、世界を見渡せば、穀物戦争と言われるような食料危機に直面しています。世界銀行は、食料価格の高騰で三十三カ国が社会不安の危機に直面していると警告し、事実、アジアやアフリカでは暴動も起きています。このようなとき、穀物を燃料の原料にすることは極めて慎重でならなければならないことを、冒頭、指摘させていただきます。

 そこで、最初の質問ですが、日本でのバイオ燃料生産は、コスト的に実用化の段階に至っていないのではないですか。北海道の十勝や沖縄県の宮古島など全国七カ所でバイオエタノールの生産事業が進められていますが、幾つかの事業で結構ですので、製造コストがどの程度の水準にあるのか、お聞かせ願いたいと思います。

    〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、全国七カ所でバイオエタノールの導入のための小規模な実証事業が行われておる、それについてのコストのお尋ねでございます。

 御指摘のように、バイオエタノール導入のために、これまで北海道の十勝地区、山形県の新庄市、大阪府の堺市、岡山県の真庭市、福岡県の北九州市、沖縄県の伊江村、同じく沖縄県の宮古島、この七カ所で、原料作物の生産、バイオエタノールの製造、E3ガソリンの走行などの実証を行ったところでございます。生産量は、先ほども申し上げましたが、二〇〇五年度末時点で一年間合計三十キロリッター程度にすぎません。

 これらの実証地区のほとんどは、我が国でバイオエタノールの製造実績がない中で、バイオエタノールの生産に必要な作物の栽培実験ですとか、あるいは効率的な製造技術の確立を主な目的としたものでございまして、実証規模も極めて小そうございます。このため、これらの実証試験それぞれにつきましてその製造コストを評価することは難しいということで、製造コストそのものを出すことを当初の目的にもしてございません。

 一方、これらの実証によりまして、規格外農産物などの安価な原料から効率的にバイオエタノールを製造する技術等が確立されてきたことから、採算ベースに合った規模での実証が可能な段階に来たのではないかというふうに考えまして、平成十九年度から、大規模実用化プラントを整備して、原料の調達、燃料の製造及び燃料の供給を一貫して行う大規模実証事業、先ほどから申し上げています三地区でございますが、に取り組んでいるところでございます。

 この大規模実証事業によりましては、燃料製造規模一・五万キロリッター程度であれば、五年後に一リッター当たり約百円のバイオエタノールの製造を目指したい、そういう事業計画になってございます。

菅野委員 私は、日本でのバイオ燃料生産は、率直に言って研究開発の途上であり、利用促進に走り過ぎるべきではないと思っております。沖縄の宮古島を視察させていただきました。今、宮古島の状況等も踏まえれば、環境整備に、全体的な条件整備にまだまだ力を入れるべきだというふうに思っているところでございます。

 さて、バイオマスの原料は、廃棄物系バイオマス、未利用バイオマスに加え、資源作物などがあります。法案は、農林水産物の生産、加工で副次的に得られる物品を対象にしているのですが、食料農産物は対象になっているのでしょうか。また、将来的には食料農産物の利用を射程に入れているのでしょうか。このことをお聞かせ願いたいと思います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 バイオ燃料の原材料には、食料や飼料として利用可能なものもございます。そういったことから、バイオ燃料の生産拡大が食料や飼料の安定供給に支障を来すことは絶対回避すべきであるというふうに考えてございます。

 このため、法律案に基づき定める基本方針の中で、当面はエタノール製造技術が実用段階に来ております糖質あるいはでん粉質の原料を利用いたしますが、この場合におきましても、食料や飼料の用途には供されない糖みつなどの副産物、あるいは規格外の農産物、こういったものを利用することとしてございますし、中長期的には、食料や飼料の需給に影響のない稲わら、間伐材などのセルロース系原料、それから耕作放棄地などを活用して作付られる資源作物、これを利用することを基本として制度運営を行っていくことを明記しておるところでございます。

菅野委員 先ほども議論になっていますけれども、やはり食料自給率が三九%の段階ですから、どのように食料自給率を高めていくのか、そのことにどう位置づけていくのかという観点をしっかりとらえていくことが必要だというふうに思いますし、食料農産物の燃料化はあってはならない話で、資源作物や多収量米であっても、家畜飼料の原料にする方が優先課題だということを申し上げておきたいというふうに私は思っております。

 そこで、次の質問ですが、政府は、平成二十三年に国産バイオ燃料の生産を三万キロリットルにすることを目指しています。他方、京都議定書の目標達成計画では、平成二十二年度のバイオ燃料導入目標は五十万キロリットルです。先ほども議論になっておりますけれども、この大きな差は、国外からのバイオ燃料輸入で埋めるものと理解してよろしいんでしょうか。説明願いたいと思います。

吉田政府参考人 京都議定書目標達成計画におきましては、二〇一〇年までに原油換算で五十万キロリットルの輸送用バイオ燃料の導入を行うこととされております。

 一方、我が国におきます国産輸送用バイオ燃料の生産は始まったばかりでございまして、当面の目標といたしまして二〇一一年までにバイオ燃料として五万キロリッター、これは原油換算にいたしますと三万キロリッターを生産することを掲げておるというところでございます。

 こういったことから、京都議定書目標達成計画における輸送用バイオ燃料の導入、これは相当部分が輸入による対応となることとなりますが、本法案ですとか各種の支援措置によりまして、国産バイオ燃料の生産拡大を関係省庁と連携しつつ図ってまいりたいと思います。

 二〇一一年まではそうでございますが、その先については、研究開発の進捗をまちまして、大幅な生産拡大を図ってまいりたい、そのように考えております。

菅野委員 先ほどの議論を聞いていまして疑問を持ったんですが、平成二十二年度までのバイオ燃料導入目標五十万キロリットル、この位置づけはどうなっているんですか。京都議定書で決められたこの五十万キロリットルというのをどう達成していくのか。これが今日本に求められている。五万キロリットルという目標は設定しているけれども、それでは、それ以外の四十五万キロリットルをどのように対処していくのか。これが先ほどから全然答弁なされていないんですね。説明願いたいと思います。

吉田政府参考人 京都議定書目標達成計画の五十万キロリッター、これはCO2削減を目指す、その中から出てきているものでございまして、そのためには、国産で幾ら、海外からの調達で幾らという区別がございません。この五十万キロリッターというのは、今の原油の五十万キロリッターをバイオ燃料に置きかえることによって、CO2の削減効果を達成しようというものでございまして、内外の区別のあるものではございません。

 一方、私どもとしては、国産バイオ燃料の生産拡大が国内の農業の活性化にもつながるということから、その振興を図ろうということでやっているものでございまして、五十万キロリッターが国産バイオ燃料を念頭に置いて策定されたものではないということは御理解いただきたいと思います。

 なお、五十万キロリッターの中で、先ほど三万キロリッターが国産のバイオ燃料と申し上げましたが、それ以外の、現時点での計画といたしましては、石連、石油業界が、この五十万キロリッターの目標数値の達成に積極的に行動、協力するということで、原油換算で二十一万キロリッター相当のバイオガソリンを販売する計画があるということは承知をしてございます。

 以上です。

菅野委員 京都議定書の目標達成計画というのは政府に与えられた目標達成計画だというふうに私は思うんですね。大臣、今、答弁を聞いていて食い違いがあるから、大臣の考え方を聞いておかないといけないのかなというふうに思うんです。

 そして、原油換算で五十万キロリットル。二十万キロリットルは民間の石油会社にそれはゆだねられているんだ。民間にそこはゆだねておいて、政府としては五十万キロリットル達成にと。何か不明確な答弁でしかないと私は思うんですが、やはり政府としても、バイオ燃料としての五十万キロリットルは、こういうふうにして達成していきますというしっかりとした決意は述べていただきたいと思うんですが。

若林国務大臣 この京都議定書上、五十万キロリットルをバイオ燃料で賄うというのは、主として輸送用の燃料、ガソリンを減らすことによってCO2の排出量をこれだけ減らせるという方から出てきたものでございます。

 したがって、輸入であっても、これはニュートラルという意味で、輸入エタノールを使って五十万キロリットル分のガソリンを減らせば、それだけCO2が減るんだ。計画はそういうふうになっているんです。それを国産の農産物を原料とするエタノールでどう賄うかというのは、京都議定書上の計画になっているわけではございませんで、そういう輸入のエタノールでガソリンからの転換を図るというのであれば、できるだけ多くを国産の原材料によって精製されるバイオエネルギーで置きかえていきたい。これは京都議定書の問題では、そのこと自身はないわけでございます。できるだけ多くを置きかえていくという意味での施策をとろうとしているところでございまして、政府としては、ガソリンをそれだけ代替して置きかえていくというところで計画ができている、こう理解をしております。

 なお、石油連盟の方は、イソブテンですかね、石油の精製過程で出てくる、今燃やしているものを有効に利用するという意味で、国内の原油の精製過程で出てくるものから逆算をしますと、二十一万キロリットル分はガソリンにまぜることができるということを言っているようでございますけれども、そのこと自身も、京都議定書の中に計算されているというよりも、中の扱い方の問題になっているわけであります。

菅野委員 なかなかわかりづらい答弁ですが、二十二年度のバイオ燃料導入目標五十万キロリットルという形で内外に明らかにして、そのことに取り組んできている、こういう状況でありますから、CO2削減、先ほども議論になっていますけれども、国内のバイオ燃料をどんどん広げていく、そういう仕組みを法案としてつくったのであって、CO2削減とは直接的な関係は法案的にはないんだということも言われておりますけれども、そうじゃないと私は思います。CO2削減に向かって日本がどう取り組んでいくのかというのをしっかりとした形でつくっていく必要があるというふうに思っております。

 一方、EUでは、穀物価格の高騰を受けて、バイオ燃料導入目標値の引き下げが議論されているんです。このときに、日本がバイオ燃料の輸入を拡大すること、これはまたちょっと違うというんですが、バイオ燃料というものを食料に頼るというスタイルはとらないというんですが、外国ではバイオ燃料は食料に頼っているわけですから、外国から輸入するということは穀物価格の上昇に拍車をかけるという結果に結びついていくんじゃないのかなというふうに私は思うんです。この辺の認識はどうとらえているのか、答弁願いたいと思います。

若林国務大臣 先ほど舌をかむような答弁でございましたが、イソブテンという物質でございます。それをエタノールとまぜていくというのが石連の考え方でございます。

 さてそこで、委員がおっしゃられました、食料との競合問題を避けるというのは、今や洞爺湖サミットにおきましても大きな議題の一つになっております。つまり、エネルギーと食料との関係というのは、食料問題の基礎に出てきたわけでございますので、そういう意味では、国連の潘事務総長も食料サミットを開こうということで呼びかけておられますし、この六月に開かれますFAOの食料の会議においてもこのことが大きな議論になってくると思います。

 委員がおっしゃられましたように、日本が輸入エタノールで石油を代替して減らしたからといって、地球全体の問題、つまり食料問題の解決にはならないのではないかという御指摘、その考え方は一つの考え方としてあるのではないかと私も思いますが、最後まで、あくまでも輸入に依存しなければならないというようなことにならないように、国内の原材料を活用した、国内におきますエタノールの生産に力を入れてまいるのが本筋だというふうに考えております。

菅野委員 最後になりますが、今回、中小企業投資育成株式会社法に特例を設けて、資本金が三億円を超える株式会社にも支援措置を行うとされています。しかし、中小企業基本法では、資本金三億円以上または従業員三百人以上の企業は中小企業の範疇から外れているはずです。そこを崩してまでも特例を設ける理由は何なのでしょうか。また、既に手を挙げている企業や事業体があるのであればお聞かせください。

上田政府参考人 中小企業の投育に関する特例に関してのお尋ねかと思います。

 現在、国産バイオ燃料というものを製造する場合には、例えば、年間一万キロリットルの生産能力を有するバイオエタノールの製造施設をつくるのには、実は数十億円の設備投資という、ある種巨額の金額が必要になるわけでございます。

 したがいまして、こういった事業を実施する株式会社が、資本金が三億円を超えるということも想定されるわけでございますが、御指摘のとおり、現行の中小企業のままでは中小企業投資育成株式会社から直接金融、投資というのを受けることができないわけでございます。

 しかしながら、こういった資本金の大きな株式会社であっても、国産バイオ燃料の製造のリスクというものは大変大きいわけでございまして、資本金が三億円を超える企業であっても、中小企業基本法上の中小企業である等の要件を満たす場合には、中小企業投資育成株式会社による株式引き受け等の支援措置を講じることができるということにいたしたわけでございます。

 具体的な事例というのは今後の話かと思いますけれども、現在さまざまに考えられているプロジェクトにおきましても、その投資額は非常に大きいものがございますので、将来こういったものがあらわれてくる可能性があるということで、こういった特例措置を設けさせていただいたわけでございます。この特例措置は、もちろんのことながら強制ではございませんので、そういった事業者の御要望に応じてこの特例措置が発動されるというわけでございますので、御懸念の点も踏まえて検討してまいりたいと思います。

菅野委員 わかりましたとは言い切れませんけれども、やはり特例措置を設けるという場合はそれなりの大きな理由がなければならないということを主張して、質問を終わります。

宮腰委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮腰委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

宮腰委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十七分開議

宮腰委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官吉村馨君、大臣官房技術総括審議官吉田岳志君、大臣官房食料安全保障課長末松広行君、消費・安全局長佐藤正典君、生産局長内藤邦男君、経営局長高橋博君、水産庁長官山田修路君、内閣官房内閣審議官株丹達也君、外務省大臣官房審議官田辺靖雄君、文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官石野利和君及び国土交通省河川局砂防部長亀江幸二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村茂男君。

北村(茂)委員 自由民主党の北村茂男でございます。

 質疑の機会をお与えいただきまして、感謝をいたしております。時間の制約がありますので、早速質疑に入りたいと思います。

 私は、きょうは水産政策に限っての質問をいたしたいと思います。

 まずは、世界の水産物の需給動向と我が国水産業への影響についてお聞きをいたしたいと思います。

 昨年の水産白書の特集では、世界的な水産物需要の増大と日本の買い負けが起こっていることが紹介されておりました。

 我が国の水産物自給率は、ピーク時には一一三%まで行っておりましたけれども、その後、徐々に低下をし、平成十八年では五九%となっており、約四割の水産物を輸入に頼っているという状況にございます。

 しかしながら、世界の水産物需要は、健康志向の高まりにより欧米における水産物の需要が高まっていることに加え、経済発展を背景として中国では水産物の消費量がこの三十年間で五倍にもふえていると言われております。また、世界の人口も増加傾向にあるということを言われておりまして、世界の水産物需要は今後一層高まっていくものと考えられております。

 その一方で、世界の海洋水産資源は相当程度漁獲がされており、今後、世界の漁獲量が大きく伸びるということは期待できないと思います。将来的にはいわゆる需給が逼迫するというふうに言われているわけであります。

 このような中で、今後、水産物を国民に対して安定的に供給していくためには、我が国の水産業を発展させていくことがより一層求められていると思います。

 そこで、今後の我が国水産業の発展のための施策を考える上で前提となる世界の水産物の需給動向と、それが我が国水産業に与える影響についてどのように考えておられるのか、水産庁長官に伺いたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 世界の水産物需給等についてでございますけれども、委員からお話がありましたように、世界における魚介類の消費量は、中国や欧米等を中心にして増加をしてきております。

 一方、お話がありましたように、世界の人口は急激に増加をしておりまして、二〇五〇年には九十一億人と、現在の一・五倍に達すると見込まれておりまして、水産物需要は一層高まると予想されております。

 一方、供給の方に目を向けますと、国連食糧農業機関、FAOでございますが、これによりますと、海洋水産資源の利用は、約半分が満限利用、ほぼいっぱいに使っている状態、それから四分の一が過剰利用、枯渇の状態となっております。このため、海洋漁業の漁獲量は頭打ちという状況が続いておりまして、FAOの予測によりますと、需要の伸びに供給が追いつかず、世界の水産物需要は将来的にさらに逼迫し、価格が上昇するとされております。

 このような世界全体の水産物需給の変化によりまして、先ほど委員からお話がありましたような買い負けといった現象も出てきております。こうした中で、水産資源は適切な管理さえしっかり行えば、永続的に再生産が可能な資源であります。この水産資源を活用して足腰の強い水産業を確立し、我が国の漁業生産の増大を図ることが極めて重要であると考えております。

北村(茂)委員 まさしく、お話のとおりだと思います。したがって、国内対策としての対応策をあらゆる角度から講じていかなければならないことは当然であります。

 そこで、当面する問題について幾つか伺いたいと思います。

 まず、燃油高騰対策について伺いたいと思います。

 昨今の原油価格の高騰は深刻な問題となっております。とりわけ漁業においては、他産業と比べ生産コストに占める燃油費の割合が高く、漁業者の経営に深刻な影響が出ております。このため、平成十九年度補正予算で水産業燃油高騰緊急対策基金を設置し、いろいろ緊急対策も打っているわけでありますけれども、この燃油高騰対策のねらい及びその進捗状況について水産庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。

山田政府参考人 委員からお話がありましたような燃油をめぐる状況に対応いたしまして、十九年度補正予算におきまして、百二億円の基金を設けまして、省エネルギー型漁業への転換等を緊急に推進しているところでございます。

 具体的な対策といたしましては、第一に、輪番制で休漁する者が行う藻場、干潟の整備等の活動に対する人件費などの支援がございます。第二に、イカ釣りなどで、地域やグループで一斉に集魚灯の光の強さを落とすなど、省エネ型操業形態へ転換するための費用の支援措置。第三番目に、効率の高いエンジンなどの省エネ施設への転換やグループでの共同操業への支援などを行っております。

 これの推進でございますが、この対策を迅速かつ効果的に実施するため、水産庁といたしましては、これまでに全国説明会、またブロックごとの説明会を開催して、漁業関係者への周知を図っております。さらに、都道府県単位の説明会が、各県庁あるいは漁業関係団体の主催で行われております。現在まで二十八道府県で開催されております。今回の対策につきましては、漁業関係者の関心は極めて高いわけでございまして、前向きに取り組まれているところが多い状況でございます。

 今後とも、漁業関係団体と連携して本事業の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

北村(茂)委員 今御説明のように、その基金の中では省エネ対策あるいは輪番制での休漁に対する対応策等々をやっているわけであります。何よりもスピードを上げてやっていただかなければ、まだ現時点で二十八道府県だというのでは、とても燃油の高騰対策にスピードを持って対応しているというふうにはなかなか言えない。何としても地元の方では早くしてほしい、こういう声があるわけでありますから、早急に、それぞれ分野を手分けしてでも、漁業者のための対応策にしていただきたいということをつけ加えておきたいと思います。

 時間がありませんので、はしょっていきます。

 次に、漁船漁業構造改革事業についてお聞きをいたしたいと思います。

 近年の漁船漁業を取り巻く状況を考えますと、漁船の老齢化とそれに伴う修繕費の増加や水揚げの低迷等による収益性の悪化が見られております。

 こうした現状を踏まえ、抜本的な収益性の向上を図り、高船齢漁船の更新を進め、漁船漁業の構造改革を推進することが喫緊の課題であるとの認識から、平成十九年度から漁船漁業構造改革総合対策事業が行われております。この事業は、改革意欲のある漁業者と漁船漁業に関係の深い地域とが一体となって、みずからの創意工夫により収益性の高い漁船漁業経営へ転換しようとする取り組みを支援するものであると承知をいたしております。ぜひとも、この事業が低迷する漁船漁業の経営改善の一助となり、我が国漁船漁業が国際競争力のあるものへと転換していくことを願っている一人でもあります。

 そこで、この漁船漁業構造改革総合対策事業について、取り組みを開始されてから既に一年を経過しておるわけでありますが、この事業の進捗状況がどのようなものになっているのか、そして、今後の見通しはどのようなものなのか、これまた水産庁長官に伺いたいと思います。

山田政府参考人 漁船漁業構造改革事業についてでございます。

 委員お話がありましたような趣旨で事業を開始いたしておりますが、本事業につきましては、これまで十五の地域、グループでプロジェクトが立ち上がっておりまして、そのうち七件について既に改革の計画が認定をされ、改革を進めるための漁船の建造を初めとした取り組みが始まっております。第一号の取り組みは八戸のプロジェクトでございますが、この地域では三月に改革型のまき網漁船が竣工しておりまして、現在、第一次の航海に出ているところでございます。

 この事業は、もともと五年計画、五年間で全国で五十のプロジェクトを実施するということを目標としております。委員の日本海側の方でも、兵庫県、鳥取県、島根県等で取り組みが検討をされております。

 今後とも、全国各地域の浜の声を聞きながら、漁船漁業の構造改革を積極的に推進していきたいと考えております。

北村(茂)委員 それでは、次に移りたいと思いますが、次に、漁業経営安定対策について伺いたいと思います。

 水産資源の減少や燃油の高騰により、漁業を取り巻く状況は、今まで申し上げておりますように大変厳しいものになっております。漁獲がなければ油代で終わり、廃業しようかと。廃業しようにも、借り入れがあって廃業できないというような状況まで起こってきている実態であります。

 こうした中、国民に対して水産物の安定供給を確保していくためには、日本の水産業の将来を担ういわゆる漁業者の育成、確保をしていくことが不可欠であると考えます。そのためには、漁業経営の改善により、持続的な経営が可能となるような足腰の強い漁業経営体を育成していくことが必要であると考えております。

 このような現状を踏まえ、今までの漁業共済制度に上乗せした形で、収入の変動による影響を緩和し、漁業者の経営改善努力を支える漁業経営安定対策事業が平成二十年度から実施されたと承知をいたしております。この事業の現在の取り組み状況について長官に伺いたいと思います。

山田政府参考人 漁業経営安定対策につきましてでございますが、委員からお話がありましたように、二十年度から導入された事業でございます。

 この事業につきましては、やはりスタートダッシュが極めて重要であるということで、既にこれまで各県において説明会を実施するということで、全国では百回を超える説明会を開催してきたところでございます。各都道府県ごとに都道府県協議会が設置をされていますけれども、この協議会が主体となって加入促進活動も進めております。

 今後は、漁業種類ごとに漁業共済の契約を行っていくわけですが、その時期に合わせまして本事業に順次加入が行われるよう、引き続き制度の普及推進に努めてまいりたいと考えております。

北村(茂)委員 ぜひとも共済制度への全漁業者の加入が可能となるよう、制度上の問題もあると思いますので、鋭意速やかな加入ができるような状況をつくっていただきたいということを要望しておきたいと思います。

 次に、能登半島地震の被害の復旧状況についてお聞きをいたしたいと思います。

 昨年の三月二十五日からちょうど一年ちょっとたったわけでありますが、能登半島が大きな地震に見舞われました。私自身、その能登半島地震のとき、輪島の自宅におりました。これまで地震とは揺れるものという感じから、振り回されるものという印象を受けた、生まれて初めての経験でもありました。

 この能登半島地震の被害は非常に大きかったわけでありますが、農林水産関係の被害について申し上げますと、石川県や富山県などにおいて甚大な被害が発生しており、中でも漁港の防波堤や岸壁などの被害が多かったのであります。その被害額は約六十六億円に及ぶと言われております。

 このような甚大な被害に対し、政府は極めてスピーディーな適切な対応をしてくれたというふうに、現場関係者も含めて感謝いたしております。水産庁としても、担当官や専門家を直ちに現地に派遣するなど、技術指導を含めて極めて適切な対応をしていただいたというふうに思っております。

 その後、この地震が漁業活動へどのような影響を及ぼすのか大変懸念をされましたし、とりわけ漁港施設については緊急性を要する工事ということで、たとえそれが査定前であっても着工するよ、こういうような手はずも整えていただきました。地元としては、こういう対応に、災害ならではの対応だということで改めて非常に感謝をいたしているところでもあります。

 地震が発生してから現在に至るまで復旧工事が着実に実施されてきていると聞いているのでありますが、先月で地震発生から丸一年がたちましたので、農林水産関係では最も被害が大きかった漁港関係の被害について、現在の復旧状況を、わかればお知らせをいただきたいと思います。

山田政府参考人 ただいま御質問がありました能登半島地震の関係でございますが、御指摘がありましたように、石川県を中心に四十二の漁港など、箇所数としては百三十七カ所ということでございますが、被害額は、委員からお話がありましたように水産関係で六十六億円の被害があったということでございます。

 今お話がありましたように、水産庁では、緊急を要する箇所の応急工事の実施や、本格的な復旧工事も実施をするということで対応してきたわけでございます。本年三月末現在では、全体のおよそ七割の箇所において工事が完了している状況でございます。残りの工事につきましても、引き続き石川県などと密接な連携を図りながら、早期かつ着実な復旧工事の実施に努めてまいる所存でございます。

 なお、当該災害につきましては局地激甚災に指定をされたところであります。漁港、漁港海岸、あるいは共同利用施設について国庫補助のかさ上げ措置がなされております。この結果、それぞれ相当のかさ上げ措置が講じられることとなっております。

 以上でございます。

北村(茂)委員 もう一点簡潔に、災害関連についてであります。

 本年二月二十三日から二十四日にかけて発達した強い冬型の低気圧により、富山湾を初め日本海を広範囲に襲ういわゆる高波浪が発生し、北日本から西日本の日本海全域にわたって水産関係で多大な被害が発生をいたしました。特に被害の大きかった富山湾や佐渡では、漁港施設の被災、あるいは防波堤や堤防を越えた波により漁船や背後の家屋に被害が生じ、死傷者も出るに至りました。私どもの地元石川県におきましても、二十四日には能登町波並地区及び藤波地区で床上、床下浸水、珠洲市の長橋漁港で倉庫二棟の一部損壊が発生いたしました。

 このような災害があったわけでありますが、これは私どもの北陸地方ではかねてから寄り回り波といって、低気圧が去った後、台風の後の吹き何とかというのと同じように、一日おくれてあるいは半日おくれてやってくる波をかねがねそう呼んでいるわけでありますけれども、このようないわゆる高波浪、寄り回り波と呼ぶのだそうでありますが、この高波浪発生のメカニズム等を既に検討委員会を立ち上げて検討しているということは聞いているわけでありますが、この寄り回り波についての現在までの検討状況はどのようなことになっているのか、伺いたいと思います。

山田政府参考人 本年二月に発生しました寄り回り波につきましては、富山湾あるいは佐渡島で大変大きな被害がありました。石川県でも相当な被害があったと聞いております。これは今まで余りなかったような大きな被害を生じているわけでございまして、水産庁では三月に技術検討委員会を設置いたしまして、高波浪発生のメカニズム、あるいは被災要因等について検討を進めているところでございます。

 現在まで二回開催をしておりますが、今回の発生原因といたしまして、複数の低気圧が北日本に停滞して発達したために、日本海を南向きに伝搬する周期の長い波が発生したというようなことであったと思っております。

 今後、この委員会におきまして引き続き被災要因の解明を進めまして、六月を目途に取りまとめを行い、この結果を災害復旧あるいは今後の整備のあり方に反映させていきたいと考えております。

北村(茂)委員 漁業者を取り巻く環境が厳しいだけに、水産行政の中でもこういう緊急の、寄り回り波という突然襲ってくるような災害に対する対応力をつけておくことが必要なのではないかという意味で、その検討に期待を寄せておきたいと思います。

 最後に、水産業の基本政策についてお聞きをいたしたいと思います。

 これまでいろいろお聞きをしてまいりましたが、世界の水産物需給の動向は、世界人口の急激な増加や健康志向を背景とした栄養特性への注目により水産物の消費量が増大する一方、海洋水産資源の約半分が満限利用の状態にあり、供給量の伸びは期待できない状態にあるということですから、国民に対する水産物の供給について、これまでのように国産で足りない分は輸入に頼るというわけにはいかなくなることが予想されております。このため、将来にわたって国民に対して水産物を安定的に供給していくためには、より一層我が国の国内水産業の振興を図っていかなければならないと考えます。

 しかしながら、国内水産業をめぐっては、燃油価格の高騰に伴う生産コストの増加といった問題のみならず、水産資源の減少、漁業就業者の高齢化が進行するなどさまざまな課題に直面しており、これらの課題に応じた効果的な政策を強力に推進していく必要があると考えます。

 そこで、今後、国民に対する水産物の安定的な供給と水産業の発展に向けてどのような施策を展開していくのか、農林水産大臣の基本的なお考えをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

若林国務大臣 世界の水産物の需要と供給の関係は、先ほど来委員が御指摘になられましたように、大変厳しい環境が続いております。将来見通しでも、その需要の増大、供給の限界というようなことで価格が高騰をしていくおそれがあるわけでございます。

 このような状況を踏まえて、我が国の水産業は、資源状況の悪化、あるいは漁業者の減少、高齢化、漁船の老朽化といったような漁業生産構造の脆弱化や燃油価格の高騰によって、大変厳しい状況にあるわけでございます。平成十九年三月に策定されました水産基本計画においては、平成十七年に五七%、平成十八年に五九%であった食用魚介類の自給率を、平成二十九年には六五%とするという高い目標を定めまして、その向上には生産と消費の両面にわたる取り組みが必要とされているわけでございます。

 このため、水産基本計画に基づきまして、まず低位水準にある水産資源の回復、管理を推進すること。二つ目は、漁船漁業や水産物の流通システムの構造改革をしなければならないこと。三つ目は、新たな漁業経営安定対策の導入とか新規参入を促進すること。四つ目は、漁港、漁場、漁村の総合的整備の推進といったようなことを初めとしまして、水産政策の改革を推進しているところでございます。

 また、燃油価格の高騰に対処するため、漁業者の経営体質の強化や省エネ型漁業への転換を緊急かつ集中的に推進をしてまいりたいと思います。

 これらの施策によりまして、国民に対する水産物の安定供給を図るとともに、力強い水産業と豊かで活力のある漁村の確立を図ってまいりたいと思います。

北村(茂)委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

宮腰委員長 次に、木村太郎君。

木村(太)委員 私は、きょう、一つのテーマに絞って御質問させていただきたいというふうに思います。

 お手元にこれから資料をお配りしていただくと思いますが、よろしいですか。

 まず委員長にお聞きしますが、この資料を見て、リンゴの絵と文字が二つ書いてありますが、どういうふうなイメージを持たれますでしょうか。

宮腰委員長 見た瞬間に、森としか読めない。(発言する者あり)それは、水と言われれば水かもしれませんが、見た瞬間は森としか読めないと思います。

木村(太)委員 ありがとうございます。

 私は、去る二月二十二日の当委員会でも、実は中国の民間企業によります商標の登録申請問題について御質問させていただきました。また、五年前にも、この委員会で同じようなことを質問させていただいたことがあります。

 平成十五年、中国の企業が「青森」という文字を商標登録申請し、農林水産物や加工品について五件申請がなされたわけであります。中国の商標局は、昨年末からことしの四月五日にかけて、すべて私ども青森県サイドの考え方を認め、出願者の登録を認めないという裁定をようやく下していただいたわけであります。このことには敬意を表しながらも、地元としてもほっとしたところでありましたが、しかし、私は五年前質問させていただいたときに、青森だけではなくて、我が国の他の地名、あるいはその他についても拡大されていくおそれがあるのではないかということを指摘させていただいたことがあります。

 四月九日の読売新聞の報道によりますと、四十七都道府県のうち三十六の名称が中国で商標登録され、現在、「鹿児島」も申請がなされている。また、日本の特許庁が地域名を記した特産品などに商標権を与える地域団体商標、いわゆる地域ブランドに認められております、例えば「九谷焼」、「美濃焼」、「松阪牛」、「鳴門金時」など日本の名産ブランドも商標申請され、「九谷焼」や「美濃焼」は既に登録されているという報道があり、私が五年前に心配した姿がいよいよ現実的に広がってきているというふうに受けとめております。

 もう一つ唖然としたのが、お手元にお配りし、今、委員長からお答えをいただいたこの図、リンゴの絵と、多分リンゴだと思うんですが、それから、ぱっと見ると青森と読めるんですが、実際見ますと、水という字を三つ重ねておりまして、これは中国語ではチンミャオと言うんだそうですが、しかし、中国でも実際にはこの言葉はほとんど使われていないそうでありまして、造語というふうに受け取られているそうであります。

 これは、私は本当に腹立たしいというふうに思うわけであります。もし、中国産のリンゴの箱にこの絵と文字が入っていますと、十人中十人は日本の青森県のリンゴととらえるのが自然だと思うわけでありますが、こういうことが中国の商標局で仮に認められたとしたならば、日本の生産者、生産地から見た場合、公に偽装を認めたと受けとめざるを得ないというふうにも思うわけであります。

 政府は、今、農林水産物の輸出額を、平成二十五年までに一兆円を目指す目標を立てて努力している最中にありますし、またその中で、リンゴでいいますと、平成二十七年を目標に三万トンの輸出ということも目指して努力をし、今現在、二万トンを突破している努力の最中であります。よって、時間との闘いも私は忘れてはならないというふうに思うわけであります。今回の異議申し立てを既に関係者がしているわけですが、平成十五年の例を見ますと、五、六年かかる可能性があります。よって、時間との闘いということもやはり重要視しなければなりません。

 また、ますます他の地名や地域ブランドに波及し、あの手この手で申請がされてしまうのではないか。そして、イタチごっこに発展していく可能性がありますので、ここに至っては、どうか事が起きてからの受け身の姿勢ではなくて、毅然とした政府一体となっての対応が必要と考えるわけであります。

 今回、中国などを対象に商標出願の監視というものを、実は県の職員が中国の商標局のホームページを監視している中で見つけたわけでありますので、一地方自治体や一団体に任せるということではなくて、政府一体で努力する必要があるというふうに考えます。

 また、WTOの中でTRIPs協定というのがあり、中国もそれを遵守する義務を負っております。そこで、タイミングとしても、先般、中国の外相が訪日されましたし、来月には胡錦濤国家主席も訪日される。また、洞爺湖サミットにおいては、オブザーバーとして中国を招待しているという外交日程も予定されているわけであります。

 以上、申し上げてまいりましたが、こういう状況を二月の質問のときも大臣にお伺いしましたが、若林大臣、どう深刻に受けとめているか、考え方をお聞かせいただきたいと思います。

若林国務大臣 委員は、かねてから、この商標登録、あるいはまた広い意味での知的財産権の保護をきちっと図らなければ、攻めの農政、積極的な輸出促進に障害になるということを指摘され、警告をしてこられたのでございます。

 今、お話にありましたように、中国におきまして、日本の地名とか特産品の商標につきまして、第三者による出願が行われる事例が数多く発生しているということは承知いたしております。また、委員のお配りしました資料の中にもございますが、このような油断もすきもないような形の商標の出願というものでございます。

 その「青森」という商標出願に対しては、青森県などの大変な御努力によりまして、異議申し立てをされ、それが認められたやさきに、新たなこういうまがいものの商標出願が出されたということは甚だ遺憾でございます。

 政府が平成二十五年までに農林水産物、食品の輸出額を一兆円規模にするという目標を掲げている中で、このような事例が輸出や日本のイメージによくない影響を及ぼすということを大変懸念いたしておりまして、その動向には強い関心を持っているところでございます。

 実は、昨年の暮れに日中のハイレベルの閣僚協議がございました。そのハイレベル協議におきましても、経済対話において、商標を含めた知的財産に関する協力を促進する、お互いに協力していこうということを確認し合っているところでございます。

 農林水産省としては、都道府県や農林水産関係者がみずからの知的財産としての地名とか特産品の商標の保護を図ろうとする取り組みにつきまして、敬意を表しながら、その意識の啓発、情報提供によって支援をしておるところでございますけれども、委員がおっしゃるように、それぞれの地域、関係者のみに任せていましても、このような行為が油断もすきもなくあらわれてくるわけでありますから、常時、このようなことがありましても三カ月以内の異議申し立てというようなことがきちっとできるような形のウオッチングをするような体制は整えていかなければならないなというふうに感じているところでありまして、今後とも、農林水産省、経済産業省、外務省も含めた政府全体として、この保護を強化するようなあり方について検討してまいらなきゃいけない、こんなふうに私は思うわけでございます。

 そして、今委員は胡錦濤主席の来日にもお触れになっておりますけれども、今申し上げました、温家宝首相のもとで行われました閣僚によりますハイレベル協議の中でしっかり問題を指摘して、お互いが協力を確認し合ってきたということでございますので、我々としては、今後、さまざまな機会をとらえて、中国におきますこのような知的財産の保護、商標の問題などについて、この保護強化を求めていくつもりでございます。このような気持ちで、これは大事な問題と受けとめております。

木村(太)委員 時間が参りましたが、次に質問しておこうと思ったことも既に大臣が答えてくれたんですが、済みません、どうしてもお聞きしたいので。

 ぜひ両国間の関係者によるハイレベルの協議の場を早急に求めて、中国の善処というものを求めていただきたい、また、外交日程の中でもぜひ取り上げていただきたいというふうに思いますので、もう一度大臣の決意を語っていただいて、また、外交面から外務省としても一言お答えいただいて、質問を終わります。

宮腰委員長 大臣はもういいでしょう、時間があれですから。

 外務省田辺大臣官房審議官。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、中国における商標などの知的財産の保護というのは、日本にとりまして大変重要な問題でございます。

 そこで、委員も御指摘になりましたように、中国はWTOのTRIPs協定に加盟しておるわけでございまして、御指摘のようなケース、中国で商標登録された日本の地名や特産品名が公衆を欺くと認められるような場合には、TRIPs協定に基づき登録が拒絶されるべきであるというふうに考えられます。

 外務省といたしましては、事実関係をきちんと踏まえた上で、問題がある場合にはこのTRIPs協定に基づいた適切な措置をとってまいりたいと考えておりますし、また、二国間におきまして、若林大臣からも御紹介がございましたハイレベルの閣僚の会議の場で、昨年の十二月におきましても知的財産の保護に関する問題を取り上げたところでございます。またことしもこの日中ハイレベル経済対話が予定をされておりますので、そうした中でこの問題も取り上げていきたい、そういうふうに政府内で調整をしていきたいと考えております。

 また、近く胡錦濤主席来日の予定がございますが、胡錦濤主席来日の際の首脳会談の議題はまだ決まっておりません。ただ、いずれにしましても日中間では戦略的互恵関係を構築していくということが目標になっておりますので、知的財産権保護の問題はこの戦略的互恵関係の中で一つ重要なテーマでございますので、外務省といたしましても、農水省、経済産業省、財務省等、政府内で調整をいたしまして、政府一丸となって今後とも適切な機会に働きかけを行っていきたいと考えております。

木村(太)委員 ありがとうございました。終わります。

宮腰委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。若干寂しい気がしますが、続けさせていただきます。

 まず初めに、先ほど午前中に可決いたしましたバイオ燃料原材料利用促進法案について、質問の機会がございませんでしたので、若干確認のために質問をさせていただきたいと思います。

 公明党は、四月の十一日にバイオマス活用推進基本法案の要綱を発表いたしました。これは党のバイオマス推進プロジェクトチームがまとめたものでありまして、この夏開かれる洞爺湖サミットで大きなテーマとなる地球温暖化対策に有効とされるバイオマスの活用を推進し、持続的に発展できる経済社会を実現しよう、こういう内容でございます。

 私どもは、バイオマスが農林水産業や環境政策、エネルギーの安定など幅広い分野に関連していることから、総合的に推進を図ることが重要であると考えております。現在、政府がバイオマス・ニッポン総合戦略に基づき施策を講じておりますが、各府省によって実施状況に差があり、より一体化した強い取り組みが必要だ、こう思っております。

 先ほど可決いたしました法案でございますが、これは法案の名のとおり、農林漁業有機物資源をバイオ燃料の原材料として利用促進するための法案であります。バイオ燃料については、生産だけではなくて、販売、消費を考えなければ、この法律案の全体的な目的は達することができないというふうに思います。

 そこで、このようなバイオマス活用推進基本法案の必要性について大臣はどうお考えになっておられるか、お伺いをしたいと思います。

若林国務大臣 公明党におきましても、このバイオマス活用について大変熱心に取り組んでいただいていることは承知いたしております。四月十一日にバイオマス活用推進基本法案の要綱を発表されたと伺っているところでございます。

 今さら私が申し上げるまでもございませんが、このバイオマスの活用というのは、化石資源に過度に依存をしてきた今の地球規模におきます経済発展の中にありまして、化石資源への依存を減らして、地球温暖化の防止のみならず、循環型社会の形成に役立たせなければいけない、そういう問題意識を共有しているところでございます。

 また、バイオマスの活用につきましては、食料の供給というこれまでの農林水産業の役割に加えまして、エネルギーや工業製品の原材料の供給という新たな可能性もこれに与えることになるわけでございまして、農林水産業や農山漁村の活性化、また新たな産業の育成というものに寄与するものと考えているわけでございます。

 委員がおっしゃられましたように、政府はこれまでバイオマス・ニッポン総合戦略というものを閣議決定で定めておりまして、その推進本部を設け、農林水産省がその事務局を担当しているということでございまして、関係府省が連携を図りながら、具体的に言えば、バイオマスタウンの構築を進めるとか、国産バイオ燃料の生産と利用の拡大を図るとかいったようなバイオマスの活用を推進しているところでございます。

 このようなバイオマスの活用というのは、農林漁業、農山漁村の活性化、循環型社会の形成など極めて重要な役割を果たすものと考えているわけでありまして、農林水産省としても、そのような総合的な活用を推進していくことが必要であると考えているわけでございますが、これを基本法という法律の形にするかどうかは、今後の与党間あるいは国会の関係の皆さん方の協議にまつわけでございますが、いずれにいたしましても、このようなバイオマスの総合的な活用を推進していくということにつきましては、私は大変必要なものであるというふうに認識をしているところでございます。

西委員 ありがとうございます。

 基本的な方向では一致ということで、各省庁横断で連携をとりながら進めていただきたいと思います。

 二つ目は、これも先ほどから与野党ともに議論がありました、食料との競合についてでございます。

 今回まとめられましたこの法律案の要綱では、国にバイオマス活用推進基本計画や都道府県バイオマス活用推進計画を作成することを義務づけて、バイオマス活用推進会議を設置する、こういうことが盛り込まれております。内閣総理大臣、関係大臣や有識者により構成されるこの推進会議を中心に、総理主導のもと強力にバイオマス事業を推進する、こういう考えを述べられております。このほか、バイオマスの安定的な供給のための基盤整備や事業者への支援、技術開発の促進、専門家の人材確保、養成など、基本施策を定めるということになっております。

 さて、現在、休耕田を利用して多収穫米を栽培してバイオマスエネルギーをつくることを推進しようとしております。基本法案では食料の安定供給に支障を来さないようという基本理念をうたっておりますので、基本法案はこうした取り組みの支障となるのではないかという見方が一方ではございます。これは、基本法案が食料となる農産物を原材料として使わないという立場に立つのかどうかという問題でございます。

 基本法案は、食料の安定供給に支障を来さなければ農産物を原材料として利用するという立場をとっております。日本では、米が生産過剰状態にあり、米はバイオマスに利用しても、計画的に利用する限り、バイオへの利用を拡大しても米そのものは十分満たされるというふうに考えております。

 一方で、バイオ燃料の利用拡大をきっかけとしたトウモロコシなど農産物価格高騰が食品の値上げに波及し、世界各地で食料を原因とするデモや暴動が起こっております。洞爺湖サミットでも主要な議題の一つになるというふうに伺っておりますが、バイオ燃料の食料との競合問題について、大臣はどのようにお考えになっておられるか、お考えをお聞きいたします。

若林国務大臣 バイオ燃料と食料との競合問題についてのお尋ねでございますけれども、バイオ燃料の原材料に食料として利用可能なものが使われるということもあることから、バイオ燃料の生産の拡大が食料の安定供給に支障を来すというようなことはやはり回避すべきものと考えているわけでございます。

 このため、まず当面は、エタノール製造技術が実用段階にあります糖質あるいはでん粉質の原料を利用するわけでございますけれども、この場合にありましても、食料の用途に供されない沖縄宮古におきます糖みつなどの副産物を活用するとか、規格外あるいは農場残渣の農産物を利用するというようなことを考えているわけでございまして、中長期的には食料の需給に影響のない間伐材とか稲わらなどのセルロース系の原料だとか、耕作放棄地などを活用するために新しく開発され作付けられました資源作物を利用するということを基本としてバイオ燃料の生産の拡大を図っていくこととしているわけでございます。

 また、諸外国におきましても、本年二月にバンコクでバイオ燃料政策に関する国際シンポジウムが開催されました。また、三月にはワシントンで再生エネルギーの国際会議がございました。これらの中におきまして、食料と競合しないバイオ燃料の重要性について我が国の考え方を表明してまいったところでありますが、七月に開催される北海道洞爺湖サミットでありますとか関係閣僚会議におきましても、食料と競合しないバイオ燃料の生産拡大の重要性を主張できるように努めてまいりたいと考えているところでございます。

西委員 ありがとうございました。

 続きまして、米の有効成分の利活用についての御質問を申し上げたいと思います。

 日本は、米を生産する余力は十二分にございます。その力を抑えるのではなくて、十分に生かせるように新規需要の拡大に努めていくべきであると考えております。休業状態にある田んぼをフル稼働するような環境をつくらないと、なかなか食料自給率の向上も見込めないというのが現状だと思います。

 食料自給率の向上を図るためには、国産小麦の品種改良を進め、海外に依存している小麦の国産化を進めるとともに、海外に依存している穀物を米で代替する方向に誘導していく、これも重要な施策ではないかと考えております。例えば米粉を利用したパンの普及、また、食用油としての米油などが代替品として期待できるのではないかと思っております。

 さて、ことしの十月二十六日に、和歌山県で「米と疾病予防」と題して国際シンポジウムが開催される予定となっております。このシンポジウムは、米に関して、医学、食品、その他工業での利活用の観点から米の有効成分について議論するというねらいでございます。

 米の有効成分は、白米だけに含まれているのではなくて、多くは米ぬかにある、こういうふうに言われております。有効成分といいますのは、例えば、フェルラ酸、イノシトール、IP6などですが、現在、その機能や利用法については、メタボリックシンドローム、糖尿病、認知症、がんなどの発症予防に効果があるなど、研究が進められているところでございます。

 実際にこうした成分を利用して米油や、これは食用油ですから皆さんよく御存じだと思いますが、栄養補助飲料、例えばこれは私きょう持ってきた某栄養剤ですが、この裏にイノシトールというのが入っておりまして、これは米油からできた栄養成分がここに入っているわけでございます。それから化粧品や石けん。きょうは石けんも一つ持ってきましたが、名前が「イナホ」という石けんでございまして、こういう米油由来の石けんでございます。そういうものなど、商品開発も種々進んでいるわけでございます。お薬も、IP6なんかは栄養剤として販売しているということもございます。米の新規需要拡大の一環になるというふうに思いますが、こうした米の有効成分の利活用について、政府はどのように取り組まれているのか、伺いたいと思います。また、今後、この有効成分の利活用についてどのような支援が考えられるのか、あわせてお伺いをしたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、米の新たな需要を拡大するためには、食品産業ばかりでなく、異業種の民間企業と連携して、米の有効成分を活用した新食品や新素材を商品化していくということが有効と考えております。

 最近の取り組みとしましては、委員からも御紹介されましたように、食品メーカーが米ぬかを活用した機能性のある食品素材、エキスのようなもの、あるいは米ぬか石けん、化粧品を商品化している例、あるいは醸造会社が米から抽出したエキスを活用した保湿剤といったものを化粧品に商品化している例、あるいは最近は、血圧の上昇を抑える作用があるギャバを多く含む巨大胚芽米を活用して、レトルトの発芽玄米を商品化している例などが出てきております。

 農林水産省では、こういった取り組みを促進していく観点から、例えば、新製品の開発のための試験研究用の米の無償交付、機能性成分を多く含む新品種や機能性成分を生かす加工技術等の開発促進、また、こうした研究成果を活用した産地と企業の連携による新食品や新素材の実用化への支援、こういったことを行っております。さらには、今後、現在国会で御審議いただいております農商工等連携促進法案の枠組みなども活用しまして、食品産業だけではなくて、さまざまな業種の中小企業と農業の連携を深めまして、新商品の開発等について支援を行いたいと考えております。

 こうした支援を通じまして、米の有効成分を活用した新商品の開発が進み、米の需要拡大につながっていけばというふうに考えております。

 以上でございます。

西委員 米がそれだけの有効成分を含んでいるということがこれでわかるわけですが、我々は、そういう意味では白米よりももう少し玄米に近いものを食べた方が健康のためにはいいんじゃないかというふうな気もいたしております。

 次に、内容をかえさせていただきますが、ここからは農業経営者及び農業法人の育成、支援策について何点か質問させていただきたいと思います。

 これまで生産する側の農家は生産面に努力を集中して、販売面や需要拡大面については余り熱心に取り組んできたとは言えないというふうに感じております。私は、生産する側も経営の形態を変えなければならない、こう思います。こうした動きこそが閉塞的な日本農業の突破口になるというふうに考えておりまして、農業経営のあり方を積極的に変えるべきであり、そのためには、農業経営者や農業会社のような経営体の育成、支援が必要であると思います。

 そこで、経営者育成の取り組みとして、農業ビジネススクールを開き、人材育成を図ることを提案したいと思います。既に各地で幾つかそうした取り組みが行われていますが、全国的に行えるように支援してはどうかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 農業におきましてその所得を上げるためには、生産面のみならず、加工、販売、需要拡大、そういった分野に進出をいたしまして、販路の拡大でございますとか新商品の開発などを行うことによって経営発展を図っていくことが非常に重要な手法であると考えております。

 このようなことから、従来から、国あるいは都道府県におきまして、これらの取り組みを支援するために、経営相談活動でございますとか、あるいは経営問題に関します専門家の派遣、あるいは、名称はいろいろございますけれども、経営支援セミナーの開催などの事業を実施しております。

 また、道府県の農業大学校におきましてはマーケティング研修等で農業者の経営管理能力の向上を図る、農業ビジネススクールというような名称でやっておるところもございますが、そういったことを実施しております。

 また、民間企業におきましても、独自に、経営学の基礎講義あるいは実践的な農業実習を組み合わせた研修というようなことが行われておるというふうに承知しております。

 さらに、本年四月からでございますけれども、最先端の農業技術及び先進的な経営管理手法等を教授いたします教育機関といたしまして、新たな農業者大学校を茨城県のつくば市に開校いたしたところでございます。農業教育のさらなる充実、経営面も含めまして、大学院レベルの講義を行ってまいりたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、高度な経営管理能力を持ちます農業経営者の育成はますます重要となってきているというふうに認識しておりまして、委員御指摘のとおり、農業者のニーズに十分こたえ、最先端の技術あるいは経営管理能力を総合的に習得できる実践的な研修機会につきましては、その充実を引き続き図ってまいりたいというふうに考えております。

若林国務大臣 ただいま局長が御答弁したとおりでございまして、農業者自身について、経営感覚にすぐれた、アグリビジネスとしてそれを開発していく能力のある農業者の教育というのが非常に大事だと思いますが、同時に、今国会で御議論いただいております農商工連携も、地域の農業者がそういうすぐれた感覚を持つと同時に、外のマーケティング、あるいは外の消費者の需要などの動向を吸収して新商品を作出していく、創造していく、そういう意味での連携、地域であれば主として商工会関係の地場の中小企業者、商工業者が主体になると思いますけれども、そういう人たちとの連携というのが大事だなというふうに考えておりまして、その連携が組めるような農業者、そういう感覚のすぐれた農業者を育てていくことが大事じゃないかと思っております。

西委員 総合的な、実践的なという話がございましたから、ぜひともそうしていただきたいと思います。

 私はよく思うんですが、毎朝、自分で値段をつけて、ファーマーズマーケットに束を幾つ持っていったらいいか、いつ種をまいてどんなものをつくればいいかと日々競争しているあの小規模の耕作をしているおばあちゃん、そういう人たちの経営感覚というのは大変すぐれておりまして、やはり実践的な経営の中からこういう知恵というものは浮かぶのではないかなと。年々洗練されているあの人たちの農作業を見ていますとつくづく思うんですが、そういうことをぜひ具体的に実践できるような場をつくっていっていただきたいと思います。

 続きまして、販売、需要を拡大するために、農業経営者や農業会社のような経営体を育成し、支援することの必要性を今までも訴えてまいりました。そこで、農業経営体への支援策についてお伺いしたいと思います。

 例えば、農業経営者などが輸出しようとする場合、まず行うことは、輸出に係る情報を得ることから始まるというふうに思います。貿易に係る情報については、日本貿易振興機構、ジェトロがホームページなどで情報、実務面で支援しております。経済産業省と連携して、こうしたシステムを充実し、農家等向けの輸出をガイドするコーナー、例えば農林水産物輸出ゲートウエーなんという、ちょっとおしゃれな名前になっちゃいましたけれども、一元的にみんなが相談を持ち込めるものをつくってみてはいかがかと思いますが、御答弁をお願いいたします。

吉村政府参考人 お答え申し上げます。

 政府は、攻めの農政の重要な柱の一つとして、平成二十五年までに農林水産物、食品の輸出額を一兆円規模にするという目標を掲げ、昨年五月に農林水産物輸出促進全国協議会において了承された、我が国農林水産物・食品の総合的な輸出戦略に沿った取り組みを進めているところであります。

 農林水産省としては、この総合的な戦略に沿った具体的な取り組みとして、経済産業省やジェトロなどの関係機関の参画のもとで、各ブロック単位で地域の輸出促進協議会を設置し、地域の農林漁業者などに対して丁寧な情報発信や相談対応を行う体制を整備しているところであります。

 また、地域の農林漁業者などがフェース・ツー・フェースで輸出先駆者や国内外バイヤーなどから生きた情報が得られる輸出オリエンテーションの会を開催して、情報提供を実施しているところであります。

 さらに、ホームページやメールマガジンを通じて、輸出に関係する諸制度や各種支援措置等について幅広く情報提供を実施しているところであります。

 今後とも、関係機関と連携を図りながら、輸出に意欲のある農林漁業者等に対して適切な情報提供ができるように、委員から御提言のありました趣旨を踏まえたきめ細やかな対応を図ってまいりたいというふうに考えております。

西委員 時間がなくなってまいりました。

 きめ細やかな対応をお願いしたいんですが、今の農業者は必ずしも一般企業と比べて人材が多くはありません。個人でやっていらっしゃる方、若干の何人かで共同経営なさっている方、そういう人たちが意欲を持って海外に輸出ができるシステムをぜひつくっていくべきだというふうに思っております。

 最近は輸出のことばかり言っておりますが、そういう意欲のある人が農業を引っ張っていくことによって活気が出てきて、また周辺の人も、挑戦をしよう、国内向けでも頑張っていろいろな農作物をつくっていこう、こういう流れができてくる。その牽引役として、明るい展望を見出すその第一歩の戦略をぜひとも考えていっていただきたい、このように思っておりますので、大臣を初め農水省の皆さんの活躍を期待したいと思います。

 以上で終わります。

宮腰委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 民主党の仲野博子です。

 きょうは、漁業問題について大臣の方に御見解を求めてまいりたいと思います。

 まず、海岸における侵食対策について伺いたいと思っております。

 我が国の海岸延長は三万五千キロメートルと世界第六位の水準にあり、人口や面積当たりで比較しても世界の上位に位置しております。その沿岸地域を見ますと、災害に対して極めて脆弱な国土構造であり、津波や高波、侵食による被害が全国のあちこちの沿岸地域で頻繁に発生しているという状況にあるわけであります。このようなことから、海岸の保全対策は、漁業振興を推進する上で欠くことのできない重要な課題であると考えるわけであります。

 平成十九年三月に決定いたしました水産基本計画におきましても、「防災力の強化」として「地震、津波、高潮等の災害発生時において、居住者や漁港就労者、来訪者の安全を確保するとともに、」「災害に強い漁業地域づくりガイドラインの普及を図り、堤防等の海岸保全施設や避難路・避難地の整備、漁港・市場施設の耐震化を推進する。」とされているわけでございます。

 そこで、海岸の保全対策の取り組み状況について現段階でどのようになっているのか、農水大臣にまず伺いたいと思います。

若林国務大臣 委員御承知のとおり、日本沿岸の海岸線は大変長い海岸線でございます。その海岸線の中で守られている背後地というのは、農地でありましたり、あるいは住宅でありましたり、商業地でありましたり、それに隣接して工業地帯があり、また漁港などもそういう海岸線上にあるわけでございます。

 その意味では、海岸の保全対策というのは、運輸省、建設省、そして農林省の三省にまたがって、三省が分担してこれに対応しているわけでございますが、海岸保全の海岸基本方針というものが平成十二年の五月に三省庁共同で告示されておりまして、海岸の保全に関する基本的な指針を定めております。海岸保全についての基本理念、基本的な事項、そして基本計画を作成するために必要な海岸の区分。その海岸保全基本計画を策定し、三省庁が分担をして防災機能を高めている海岸対策事業を行っているところでございます。

仲野委員 今大臣からお答えをいただきましたけれども、それを実効あるものとして進めていかなければならないことが大事であるわけであります。

 特に北海道は、全国の海岸線喪失面積の五四%が集中しているとされておりまして、この要因の一つには昨今の地球温暖化の影響もあるのではないかということが学者等を通じて言われているわけであります。

 先生方のお手元に写真の資料を配らせていただいておりますけれども、これは根室管内にあります標津町海岸侵食状況ということで見ていただきたいのでありますけれども、標津町などで海岸侵食が非常に進んでおりまして、高波が民家や道路のすぐそばに迫ってきております。いつ台風や地震、低気圧などが起こるかもしれない中、このような状態が放置されれば、漁港などで働いている方、来訪者の安全性の確保、また水産物流通の確保の面からも極めて危険な状況にあると言っても過言ではありません。

 農林水産省の海岸事業では、海岸保全施設の新設や改良を行う侵食対策が講じられておりますが、国土交通省においても、突堤あるいは港の整備についての対策も実施されていると思いますけれども、海岸保全と防災力強化の観点から、関係省庁が縦割りで取り組むのではなくて、総合的な対策を講じていくことが重要と考えるわけであります。

 この海岸の侵食対策について、侵食が進む地域の状況をどのように把握し、これからどのような取り組みをされようとしているのか、農林水産省と国土交通省にそれぞれお答えをいただきたいと思います。

山田政府参考人 委員からお話がありましたように、海岸の侵食の進行はやはり大変大きな問題になっております。海辺の良好な環境を守ったり、あるいはその利用をする上で極めて大きな影響が出ているわけでございます。

 先ほど委員からもお話がありましたように、昨年三月に定めました水産基本計画の中でも、やはり防災力の強化なりそういった観点から海岸整備を進めていくということを決めております。この基本計画に沿いまして、私ども、海岸の整備あるいは保全に努めてまいりたいと考えているところでございます。

亀江政府参考人 個別具体の国土交通省所管の事業実施状況についてお話し申し上げたいと思います。

 標津町におきましては、昭和五十一年より伊茶仁海岸において侵食対策事業を実施しております。また、標津町と別海町にかかります野付崎海岸におきましては、平成十四年度から侵食対策事業を実施しているところでございます。

 先生御指摘のように、今後とも関係省庁と連携を図りながらこの侵食対策事業を進めてまいりたいというふうに考えております。

仲野委員 大臣、地域住民がこうして一つの漁村、コミュニティーを形成して、こちらで働いております。三枚目の写真を見ると、これが国道なんですけれども、波が道路に越波してくるような状況であるわけであります。地域住民の安全を守るため、この対策をすることこそが大事な公共事業なのであります。こういった緊急を要するものは、それぞれ縦割りじゃなくて、横断的に、どう対策を講じていくのかというプロジェクトをつくっていただいて、連携をしっかり図っていただいて、地域住民の安全、安心を守るという観点からやっていただきたいと思います。

 大臣の御決意を伺いたいと思います。

若林国務大臣 委員がおっしゃるように、関係省庁、機関が連携をとってそれぞれの地域の状況に応じた分担をし、対策を講じているつもりでございますけれども、今おっしゃられたような趣旨に沿って連携をさらに一層強めて的確な対応をしてまいりたいと思います。

仲野委員 大臣も御案内だと思うんですけれども、道東の根室管内から特に太平洋側は、中央防災会議にも指定をされておりまして、日本海溝・千島海溝周辺型の、御存じと思いますけれども、中央防災会議のリーダーは総理大臣であります、そういったものをただ名ばかり置くんじゃなくて、太平洋プレートが走っております地震多発地帯でもありますので、そういったことにしっかりと取り組んでいただきたいなと要望させていただきたいと思います。今回初めて私この質問をさせていただいて、これを初回として、二回、三回とやるまでやらせていただきたいと思っているわけでございます。

 次の質問に入らせていただきます。

 先ほど来、自民党の先生方からも漁業経営安定対策について御質問がありましたけれども、本当に今漁業者も大変厳しい状況にあるわけでございます。そこで、この新たな漁業経営安定対策が競争力のある経営体の育成と活力のある漁業構造の確立にどのように資するのか。

 これは、平成十四年度につくったときから見ても、一年度当たりで単純計算をしても、たったの四十七件にすぎないんですね。このことから、この制度が必ずしも漁業者の経営改善に十分活用されている制度とは言いがたいと考えるわけであります。水産基本計画においては、二十九年度までに効率的かつ安定的な漁業経営体を一万五千人から二万五千人に増加させることを高々と目標に掲げていらっしゃるわけであります。その達成には年間二千五百程度の経営体を育成していく必要があるのではないのでしょうか。

 こういったことから、農水大臣に伺いたいのでありますけれども、この漁業経営改善計画の認定数の現状に対する認識と、漁業経営改善計画の認定を今後どのように促進していくつもりなのか、お尋ねしたいと思います。

若林国務大臣 委員御案内のとおりでございまして、このたび新たに導入をいたします漁業経営安定対策でございますが、活力のある経営体を育成していくためには、漁業者が経営改善に積極的に取り組むことを促進していく。そういう考え方で、漁業経営が持っている収入の不安定性を乗り越えていくために設けようとしているものでありまして、現行の漁業共済制度の、これも八割を切った場合の補てんでございますけれども、そういう漁業共済を補完する意味で、漁業共済に加入している漁業者について、その経営安定機能に上乗せした形で、漁業者の拠出と国の助成とを積み立てまして、それを原資として、こうした収入の変動による漁業経営への影響を緩和するために設けられたものでございます。

 そして、これは上乗せでこの制度を新設していくわけですが、その基礎となります従来の漁業経営改善計画におきます認定者数は、平成十八年度末で二百三十四件ということでございます。

 このように認定者数が非常に少ないのは、今までの計画におきましては、計画実施のための具体的な支援措置として、漁船の建造などへの融資をする場合にこれに加入するというような組み立てられ方になっておりまして、その意味ではこういうような設備投資を行う予定のない人にはインセンティブが働かないということになっていたものと考えられるわけであります。

 今後は、先ほど申し上げましたように、新しい漁業経営安定対策の導入を契機としまして、漁業経営改善計画の策定を推進することとしておりますので、具体的には、都道府県、漁業団体などを構成員とします漁業経営安定対策の都道府県協議会という組織が行います加入推進活動を積極的に展開していくことを考えておりまして、漁業経営改善計画の策定についてもその中で指導をして進めてまいりたい、このように考えております。

仲野委員 当初五十二億円という予算措置をしていただいても、前々から多くの議員の方々がこの制度について質疑されてきているんです、やはり五つの高いハードルの要件を満たさなければなかなか該当していかない。

 その中に、きょうこれは少し詳しくお聞きしていきたいと思うんですが、年齢要件が六十五歳未満と定められているんですね。漁業現場では、六十五歳以上であっても海上に出て作業を行う漁業者もいることから、海上での作業従事の状況は漁業現場の判断に任せればいいのではないかと思うんです。なぜ漁業従事者の年齢要件をこうして設ける必要があるのか、伺っておきたいと思います。今、七十歳でも、元気いっぱい、ばりばり働いていらっしゃいますよ。その要件について漁業関係者にどのような周知を図っているのかもあわせて伺いたいんです。余り年寄り扱いをしちゃいけないんじゃないでしょうか。

若林国務大臣 この漁船漁業、漁業経営におきましては、農業なんかよりも非常に条件は厳しいと思うんですよ。農業なんかよりも厳しいと思うんです。悪天候の中を操業しなきゃいけなかったりしますし、なかなか農業よりも厳しい自然条件との闘いが常であろうかと思います。

 さりとて、この六十五歳というのは、その漁業に従事をしている人の中で中心になっている人の年齢が六十五歳、五カ年計画ですから、五年後、計画を達成したときは七十になるんですよ。七十になるわけですね。ですから、六十五というのをめどにいたしておりますが、例えば親子で乗って、息子さんではなくおやじが中心だけれども、数年たてば息子さんにかわるとか、そういう経営計画を持っておればそれは受け入れていくというふうに、その漁業の実態に応じて弾力的な運用を図っていくというふうに指導してまいりたいと思っております。

仲野委員 私は大臣に以前も申し上げたんですけれども、こういった制度をつくるときには、まず役所の方たちは現場に行って、現場で大体平均年齢何歳の方たちが海の男として働いているのか目で見ることも大事じゃないでしょうか。私はそう思います。

 さっき大臣はおやじと言ったんですが、今、本当に厳しい経営状況の中で、おやじさんが息子に稼業を継がせられないといった状況が生まれつつあるんですね。今七十歳といっても、本当に足腰も強く、逆にそういった方たちは海に出ている日数や経験が豊富なんですよ。そういった意味では、なぜこのように六十五歳に要件を設定したのかということを現場に行って十分説明する必要があるのではないかなと私は思っているわけであります。

 その中でも、今度、所得要件というのがあります。これは、私、各漁業協同組合を回らせていただいたときに随分言われました。私の選挙区では、この所得要件が青色申告で二百六十万だとなれば、この所得要件を設定されると、とてもじゃないけれども自分たちの組合の組合員はこの制度には該当しないということで非常に嘆いておりました。それは、昨今の原油高騰あるいは水産資源状態の悪化等が漁業経営に大きな影響を与えて、年々漁業所得が減少傾向にあるからであります。そんなときに経営改善を図ろうとする漁業者が、所得が足りないからといって門前払いをされてしまうのではないのかということを非常に心配しているわけであります。

 このようなことから、漁業経営者の意欲をそぐような所得の下限要件をなぜ設ける必要があるのか、大臣に伺いたいと思います。

若林国務大臣 この対策によって育成しようとしている経営というのは、効率的かつ安定的な漁業経営というものを育成することを目標にするわけでございまして、五年間を経過いたしましたときには他産業並みの所得の確保が見込まれるというのを目標に組み立てている制度でございます。その意味で、五年後の所得目標を達成するというところから今言った所得要件というものを定めているものでございます。

 しかしながら、今委員もお話しのように、いろいろその年によって変動要素がございます。まずは、最近三カ年の中で一年でも定められた所得の範囲内に入っていれば、変動があるわけですからそういうこともある、それは加入できるというふうに指導をいたしておりますし、二十年度に要件を満たしていないとしても、加入申請期間として五年間、二十年から二十四年度まででありますが、この五年間の間に漁業経営の展開の中でこの要件を満たすものと見込まれる場合は加入できるというふうに工夫を凝らしているところでございます。

仲野委員 他産業並みの所得ということで、下限を他産業並みの所得として決めるのであれば、画一的に都道府県にある統計データを前提とするのではなくて、やはり地域の実態に応じて決定するなど、弾力的な運用を図るべきと考えるんですけれども、再度このことについて確認しておきたいと思います。

若林国務大臣 それぞれの漁業形態によりまして、その漁業の力といいますか、その判断というのは違ってくるわけでございまして、画一的にするのは、画一的にしてそこではねるというようなことじゃなくて、先ほども申し上げましたように、加入申請した期間中に目標を満たせる所得が確保できるような経営であれば加入の道を開くというふうに、その地域、その経営の実態に着目して対応しているものと理解しております。

仲野委員 いまだにわからないことは、この予算額五十二億円の算定基礎となった加入対象者の数字を教えていただきたいと思うんですけれども、一体どうしてこういうふうな数字になったのか、この根拠を、山田長官、お願いいたします。

山田政府参考人 お答えいたします。

 二十年度予算で、委員からお話がありましたように、国費分として五十二億円を計上いたしておりますけれども、この五十二億円というのは、この事業の実施がおおむね十年間にわたるということでございますので、この間に国と漁業者が拠出して基金をつくるということで、安定して実施をしていく初年度目の国の負担分を五十二億円として見ているわけでございます。

 それで、この金額につきましては、漁業共済で得られました各種のデータから推計される年間の平均的な支払い予想額、これは例えば漁船漁業の場合ですと四十五万円とか、それぞれの種類ごとにあるわけですけれども、この予想される金額をもとに算出をしておるわけでございますが、初年度に一万経営体程度が加入しても大丈夫な形で基金を積むということで、国が五十二億円の拠出をしているということでございます。

仲野委員 いずれにいたしましても、正直言って、これは二月の七日、釧路市で釧路地域連携会議ということでいろいろな方たちが集まってお話しされた内容があるんですけれども、このような意見が出されておりました。「国の施策である「漁業経営安定対策事業」が新年度から始まるが、所得、年齢、青色申告など要件が厳しく一割程度しか該当しない。必要な対策をとらなければ北海道の漁業を守れない。」、このような意見が出されているわけであります。

 私が申し上げたいのは、この制度をつくるときには、トップダウンじゃなくて、本当に現場の切実な声をしっかりと受けとめて、それをどうしたら皆さん方に喜ばれるような制度になるのかということをボトムアップでつくっていくべきじゃないでしょうか。

 私、もう一つ申し上げたいのは、お役人に実態を把握させるためには、現場に出張させていただくことが大事じゃないでしょうか。ここをけちったらいけません。前に、私がとても尊敬していた亀井農水大臣は、入省したら二年後にはそういった現場を回らせておりますとお答えをしておられました。今はもういらっしゃいませんけれども、そういった方でした。若林大臣もそういった決意でもって、君たち、北海道、あるいは北陸、三陸の漁業をちゃんと見て勉強してきなさいと言ってくだされば、役人の皆さんは喜んで行くと思います。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 まだ時間がちょっと残っておりますので、次はガソリンのことについてお聞きしたいんですね。

 漁業用に使用するガソリン税の取り扱いについて伺いたいと思うんですけれども、うちの選挙区は、六月からいよいよ昆布漁が最盛期となるわけであります。昆布漁の船は船外機でガソリンが使われております。政府はこれまでこのようなことを言っているんですよ、ガソリンが船外機つきの船と自家用車などでの使用との区別が難しく、免税された揮発油の流用防止が非常に困難である事情があり、直接漁業者に還付する減免措置は厳しいとしてずっと難色を示し続けてきました。

 その一方で、免税をするかわりに、漁港関連道を整備して漁獲物の流通及び漁業用資材の輸送の合理化等を図るため、農業用機械に対する農免農道と同様に、昭和四十年度から農林漁業用揮発油税財源身替漁港関連道整備事業が措置されております。

 この身がわり措置については、平成二十年度予算において六億円程度計上されているとされております。また、この漁業用でのガソリン使用量は約八万キロリットルであって、これから推定する課税額は試算で四十四億円とされているところであります。

 しかし、この身がわり措置については、農道で三〇%台、林道で一〇%未満、漁港で一〇%台と道路に対する充足率が低くなってきており、受益者負担もあって、近年事業申請が下がっているとされております。

 昭和四十一年の大蔵委員会の決議では、「農林漁業用揮発油にかかる揮発油税については、」「基本的には、軽油引取税の場合におけると同様、これが免税措置を講ずべきものと考えられる」、政府は「農林漁業用揮発油消費量の正確な把握に努め、これに対する税額相当額を極力完全還元できるよう予算上の措置を講ずべき」としているわけであります。

 このような状況から、身がわり措置そのものが果たして実効性があると言えるのかどうなのか。この四十四億円の課税額に対して予算額が六億円であることからも、漁業者への還元の観点から十分とは言えないのではないのかなと思うわけであります。

 そこで大臣に、もう時間になりましたが、一言要望させていただきたいんですが、ぜひ農林水産省として、昨今の厳しい漁業経営状況にあって、このガソリン税について財務省に働きかけていってほしいと思うわけであります。この具体的な対応方針、大臣はどのようにお考えになっているのか、このことを聞いて私の質問を終わらせていただきたいと思います。

若林国務大臣 ガソリンに対します揮発油税及び地方道路税等につきましては、委員も御承知のとおりでございまして、ガソリンに係る課税のあり方につきましては検討をするということになっております。漁業用のガソリンの取り扱いについても、その全体の検討の中で進められるものと考えているわけでございます。

 なお、農林水産省としては、ガソリンを使用する漁業者の支援を行うという観点から、極力、省エネ型の漁業への転換の施策を講じてまいります。

仲野委員 大臣、終わろうと思ったんですけれども、もう一言。

 農水省として、農林水産大臣として、農林水産行政を執行するリーダーとして、本当に財務省と戦う決意で、本当に今困っているんだということを、最近大臣はすごく元気に感じられるんですけれども、その大臣の元気でばちっと言っていただきたいんです、不退転の決意で。全体のどうのこうのじゃなくて、農水省としてどうなのかということをしっかり訴えていただきたいと思うんです。お答えいただきたいと思います。

若林国務大臣 私は農林水産行政の責任者として、今までの責任者に比して人後に落ちないほどその立場の責任を感じて、農林漁業者及び農林漁業、農山漁村のために頑張っているつもりでございます。

仲野委員 頑張ってください。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

宮腰委員長 次に、石川知裕君。

石川委員 民主党の衆議院議員の石川知裕でございます。

 きょうの午前中、バイオマス促進法案が可決をいたしました。今、世界的に、食料とエネルギーの競合が起きているわけでありますけれども、その中でも、特に酪農業、畜産業においては、一つは穀物価格が、もう一年半、二年前から、予想以上にどんどん上昇してきた。それに加えてこの原油高です。余りにも燃料代が上がって、そして船賃が上がってきた。それがまた穀物価格の高騰にさらに拍車をかけているような現状があり、政府も、せんだって酪農業、畜産業に対して対策を行ったと思います。配合飼料の高騰に関する対策については、これからまた議論を経ながら、長期的な視野に立って行っていく必要があろうかと思います。

 私ども民主党も、先ほど元気でばりばりな仲野博子先生がいらっしゃいましたけれども、畜産酪農対策小委員会の座長として、今、党内の議論を引っ張っていただいております。

 そのような中で、先々週は北海道の酪農家の方々、先週は岩手県の前沢牛の肉牛農家の方々、これは今、合併しましたので、前沢牛とまた奥州牛という名前で、それぞれブランド牛として頑張っておられる方々にお越しをいただきました。

 この配合飼料、当然、国産の粗飼料を増産していこうということで、飼料米の増産に政府として取り組んでおられると思います。あしたは養鶏農家、養豚農家の方に来ていただいて御意見をいただく予定ですが、あした来られる方にお聞きをしたら、養鶏農家の方々はやはり飼料米をどんどん増産していってほしい、こういうお声もありました。

 ただ、先週の前沢牛の方々にお話をお聞きすると、どうも飼料米だけを食べさせていくと、ちょっと肉のサシ方が、入り方が余りよくないと。正確に言わないといけないですね、発言を聞いてみると、飼料米については、モチ米を牛に食べさせている地域もあるけれども、前沢地区では食べさせていない、以前に酒米の削りかすを食べさせたことがあるが、やはりサシの関係でよくなかった、飼料米ができても、それをすべて使っていくということではないということでお聞き取りをいたしました。

 今の飼料価格の高騰は、経営努力をもってしてもなかなか難しい面と、今アメリカから、配合飼料として千二百万トンのコーン、コーンスターチ等を含めて、すべての輸入トウモロコシを含めると千六百万トン輸入をしております。

 そこで、お尋ねをしたいんですけれども、配合飼料用として千二百万トンを米国から輸入している、全体として千六百万トンのトウモロコシを輸入しているわけですが、現行の酪農業、肉牛農家、それらを、今の水準の生産量を保ちながら、さらに粗飼料に、できるだけ海外の飼料を減らしていくという方向で今考えておられると思うんですが、どれぐらいまで国産で賄って、どれぐらいまで輸入で賄っていこう、こういうお考えなのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

若林国務大臣 現在の酪農におきまして、搾乳牛が、一日一頭当たりのえさの状況、ある仮定を置きますと、北海道では、粗飼料が三十二キログラム、配合飼料が六キログラム、都府県では、粗飼料が十キログラム、配合飼料が九キログラム、これが給与されておる、これは平均的な考え方であります。全国では、乳牛向けの配合飼料は三百十八万トン、うちトウモロコシは百三十五万トンが使用されている、こういう状況でございます。

 そこで、生乳生産量を維持するという観点から、一頭当たりの栄養量を同じにしながら、その中で配合飼料から粗飼料に置きかえていくとどうなっていくんだろうということで、これはいろいろな前提をおきながら、単純な試算でございますけれども、先ほどの数量から、北海道では、粗飼料が七キログラム拡大をする、それで配合飼料は二キロ削減する、都府県では、粗飼料を二十六キログラム拡大し、配合飼料を八キログラム削減するというふうにされることとなって、その場合、飼養頭数から計算しますと、全国で粗飼料が五百七十二万トン増加して、配合飼料は百六十万トン、うちトウモロコシ六十八万トンが削減される、こういう試算結果になるわけでございます。

 なお、実際の配合飼料から粗飼料への置きかえに当たりましては、追加の粗飼料を生産するために十八万ヘクタール程度の耕地が新たに必要となります、今の状態を実現しようとしますと。また、生産のための労働力の確保だとか配合飼料価格見合いの生産、流通コストとする必要があること、単純な栄養量の維持だけではなくて、栄養素のバランスへの配慮でありますとか、粗飼料を多給するために、乳牛の育成技術の改良、畜舎や機械体系の変更なども必要になってくるといったような課題があるものというふうに考えております。

石川委員 今答弁をお聞きしたところ、トウモロコシにおいては、大臣、六十八万トンの削減ということでよろしいんですよね。

 ということは、これは配合飼料用として、輸入トウモロコシを千二百万トン輸入しておりますので、これから粗飼料の拡大も図っていっても、ざっとですけれども、一千万トン以上はトウモロコシを輸入しなければいけないということでよろしいでしょうか。もう一度お願いします。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま大臣から御説明しました試算によりますと、トウモロコシが六十八万トン削減されるということでございますので、今、千二百万トン輸入しておりますので、やはり一千万トン以上は輸入が必要だということになります。

石川委員 どうしても現行の量を維持していくためには、一千万トン以上の輸入コーンを量的にも使用せざるを得ないということです。

 もう一つ、先ほどの前沢牛のお話にまた戻りますけれども、お話を聞いたら、今の配合飼料には補給金制度がありますけれども、自分たちの思うような肉をつくりたいとなると、それぞれ秘伝のブレンドがあるのかどうかちょっとわかりませんけれども、それぞれ自分たちの思うような配合飼料の割合があるということで、単味飼料の方にもぜひ補給金をという御意見もありました。

 ただ、私が今申し上げたいのは、総合的な量として、どうしても輸入に頼らざるを得ない現状と、もう一つは、それぞれ思うような牛をつくり上げていく、それぞれつくりたい製品をつくり上げていくといったときに、なかなか国産だけでは賄えない現状があると思います。

 そこで、午前中、バイオマスのエネルギーの促進の法案が可決をされました。経済産業省、また農林水産省、環境省等が牽引をして、全国でバイオマスエネルギーの普及に向けて工場をつくったり、また、案を作成してそれぞれ頑張っておられると思います。

 農林水産省で補助を行っているバイオエタノールの国内工場の原料調達の現状について、お聞かせをいただきたいと思います。

吉田政府参考人 現在、農水省で行っております三カ所のバイオエタノール事業における原料調達の見通しについてのお尋ねでございます。

 午前中も御説明いたしましたように、現在、バイオ燃料の地域利活用モデル実証事業ということで、北海道二地区、新潟一地区、全国三カ所で行っております。具体的に申しますと、北海道バイオエタノール社、ここは、てん菜と規格外小麦を原料にして北海道清水町で実施することにしております。また、オエノンホールディングス株式会社、ここは、MA米や多収穫米を原料にして苫小牧市で行うことにしてございます。さらに、全国農業協同組合連合会が多収穫米を原料にして新潟市で実施する計画になってございます。

 本事業におきましては、各地区ごとに、原料供給者、燃料製造事業者、燃料供給事業者などから成る地域協議会を設立して運営しているものでございまして、原料調達につきましても、これらの協議会を中心に調整が進められていくことになります。

 各地区の原料調達が確実に行われ、本事業が円滑に実施されますよう、引き続き実施主体はもとより関係機関と十分連携を図って進めてまいりたい、このように考えております。

石川委員 今、北海道で二地区、もう一地区は新潟ですか、たしか一万五千、一万五千、千だったと思いますけれども、MA米をこれから苫小牧、オエノンホールディングスですね、恐らく当面はということだと思うんですけれども、四月十八日の日本農業新聞でも、MA米は随分価格が上がっていくということであります。

 国産の原料を使ってやっていこう、できればセルロース系ということになるんだろうと思いますけれども、ずっと苫小牧はMA米を使っていくんでしょうか、もしくは、いつまでというめどはあるんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 オエノンホールディングス社ですが、当面はMA米を利用することになってございますけれども、事業最終年度の平成二十三年には、原料米約三万五千トンのうち約二万九千トンは地元の多収穫米を使用する計画でございまして、さらにその先には、多収穫米だけでという計画になってございまして、今後、地元農協と連携を図りながら、多収穫米の作付を進めていく、そういう計画になってございます。

石川委員 食料とエネルギーの供給という中で、MA米をこれからどう使っていくのかというのは、また議論が別にあるとは思います。

 私は、余りにも国産の原料、国産の原料ということにこだわり過ぎているんではないかと思います。

 例えば、海外からエタノールを輸入してきて、それぞれ政府の目標に達しようということだと思うんですけれども、年間、国内で使用されているガソリンの量というのは、たしか六千万キロリットルですね。全国産でE3をつくるとなると百八十万キロリットル必要になってくるわけです。そのうち、国産でつくったものでエタノールを賄うとなると、二〇一一年度でも結構ですけれども、どれぐらいの量が必要になってきますでしょうか。

吉田政府参考人 お尋ねなのは、まず、二〇一一年では、国産のバイオ燃料生産目標は五万キロリッター。トウモロコシ等を原料にしますと、これの約二・五倍が原料になりますので、十二、三万トン、それだけの原料を使うということになります。

石川委員 そうすると、E3を実施するめどというのは何年でしたでしょうか。今、政府の工程表がないんですけれども、すべてのガソリンにE3を実施していこうというめどはあと何年なんでしょうか。お答えいただけますか。

吉田政府参考人 昨年二月に総理に提出しました工程表では、繰り返しになりますが、二〇一一年に五万キロリッター、そして、二〇三〇年ごろにはすべてのものをE10にする、いわゆる六百万キロリッターを国内の資源を使って生産が可能ではないかという試算を提出してございます。

石川委員 午前中も質疑があったかと思いますけれども、それぞれ国産でつくったものはどれぐらいで賄おうと考えていますでしょうか。

吉田政府参考人 今申し上げましたバイオ燃料六百万キロリッター、これはセルロース系も含めて、すべて国内に賦存する原料を使用して、二〇三〇年ごろに六百万キロリッターのバイオ燃料が生産できるという試算を提出したところでございます。

石川委員 あくまでも試算でありますので、実際、六百万キロリッターというのは二〇三〇年ですね。ただ、これだけ食料とエネルギーが競合している中、今、食料の確保も世界的にどちらかというと輸出規制を強めてきている現状で、もちろん、それだからこそ国産の原料を使ってバイオエネルギーを賄っていこう、そういうことだと思いますけれども、現実問題として、きょう後藤議員が質問に立たれておりまして、一国だけで考えないで総合的にやはり判断をしていかなければいけないんじゃないかと。

 私は、余りにも国産、国産にこだわり過ぎて、どんどんコストがかさんでいくような気がしてなりません。

 そこで、最初、輸入コーンについて質問させていただきました。現状の酪農業、畜産業を賄っていくためには、一千万トン以上の輸入トウモロコシを活用しなければいけないという御答弁でございました。

 例えば、これは去年、環境委員会で私は質問をさせていただきました。同じ質問なんですけれども、どうせ海外でつくったエタノールを輸入してくるのであれば、一千万トン輸入してくるわけですから、これは、例えば大豆から豆腐をつくるときに豆腐とおからができるように、エタノールと残渣のDDGSですか、濡れたものはDWGSですか、それぞれ割合として六対三ぐらいでできてくるんだと思いますけれども、海外で人を雇用してエタノールをつくっているわけですよね。

 そうであれば、原料の確保は、今六百万キロリットルを目指す、こういう目標でありましたけれども、そのまま輸入せざるを得ないんだったら、それこそ国内で工場をつくって、今、田舎は大変ですよ。三%、どんどんシーリングで公共投資が減ってきています。だったら、国内に工場をつくって、国内の飼料が賄える状態になったら、それを国産の飼料に切りかえる、私はよほど現実的なのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。

吉田政府参考人 委員の御指摘は、現在飼料向けに輸入しているトウモロコシをバイオエタノールの生産に振り向けまして、その残渣をもとの需要先である飼料として利用すれば一石二鳥ではないか、何も国産の原料にこだわることではないのではないかなという御指摘だと思います。

 まず、国産の原料というものに我々こだわっておりますのは、やはり国産の原料を使うことによりまして国内の農業の活性化につながるということから、国産の原料ということを繰り返し申し上げておるわけでございます。

 また、今委員御指摘の、輸入飼料をエタノール生産に振り向けて残りをDDGSにやるということは理論的には可能でございますが、これを家畜側から見ますと、やはりエタノール生産の際に減少した炭水化物、でん粉はエタノールに相当部分が振り向けられますから、当然炭水化物が減少いたします。これを別の穀物飼料で補うことが必要になります。結果としてトウモロコシなどの穀物の追加輸入が必要になるということでございまして、世界的な食料需給も踏まえますと、慎重な検討が必要ではないかなというふうに考えております。

石川委員 確かに実をとるわけですから、その栄養価が低くなるのではないか、また新たに穀物を輸入しなければいけないのではないか、こういう御答弁でありましたけれども、帯広畜産大学に高橋潤一さんという教授がいらっしゃいます、もちろん御存じだと思いますけれども。この方の研究によると、DDGSを食べさせると、牛の腸内が活性化し、健康状態がよくなることにより、二産、三産の平均がもう一、二産ふえていく可能性がある、こういうことを言っておられます。

 また、アメリカ、カナダでは、国内消費の配合飼料の大体三〇%をこのエタノールの残滓、残液を利用して行っているということでありまして、海外のは農水省としてお調べになって、その上で今お答えをされていますでしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、DDGSはアメリカ、東南アジアでも使われておりますし、我が国でも二〇〇六年、四万二千トン使われております。

 ただ、私ども、その内容をいろいろ分析したりしておるわけでございますけれども、工場ごとにばらつきがある。あるいは、脂肪分が非常に高いわけでございます。それから、我が国の畜種ごとにそういう配分をどうしたらいいのかということについて知見がないという課題がございます。

 今後、我々、もう少しDDGSについて、その成分等を事細かに調査しまして、畜種ごとにどういう配分設計をしたらいいのかということについては、もう少し知見を深めて、マニュアルのようなものをつくらなければいけないというふうに考えております。

 以上でございます。

石川委員 今それぞれお答えがありましたけれども、海外の例、知見、はっきりしたことはまだわからないということだと思いますので、農水省としてぜひ海外の事例を見てもらって、私は大臣にもう一度お尋ねをしたいんですけれども、余りにも国産にこだわり過ぎて、さっき篠原孝先生とすれ違って、ちょっと意見交換をさせていただいた。篠原さん、いつも毒舌ですから、海外でつくったエタノールをさらに油を使って持ってくるなんて本末転倒だ、こういう御意見をおっしゃっていました。篠原さん、いいですかと言ったら、おれが言ったと言ってくれということでありました。

 大臣、これは一千万トン以上、どっちにしても輸入せざるを得ない状況ですから、ひとつ検討課題として、これは研究してみる価値はあるんじゃないんでしょうか。どうでしょうか。

若林国務大臣 研究もしてみないという大それたことを言うつもりはありませんけれども、今局長が答弁していますように、トウモロコシを輸入して配合飼料にする。トウモロコシの中のでん粉とたんぱく質、脂肪とありますが、そのでん粉部分をエタノール原料に使うと、でん粉部分が消えるわけですよね。でん粉部分は糖分としてエタノール化するわけですから。そのでん粉を補うためにまたでん粉を輸入しなければいけない。そうしないとバランスがとれないんですよ、鶏にしても豚にしても要るわけですから。

 そういうもの、でん粉をエタノール化してしまうということに伴って生ずるでん粉減については、何らかの形ででん粉を補給しなきゃ家畜の飼料としては成り立たない、そう思います。

 と同時に、でき上がったエタノールを輸入する、それでガソリンを減らしたらからといって、私は基本的には決していいことじゃないと思っております。

 これはいろいろな議論が、御党にもあるんですけれども、学者の中にもあります。穀物からエタノールをつくって、そのエタノールをガソリンに代替させて、一体どれだけCO2の排出減になるのかということについては大変議論があるわけです。トウモロコシをつくるにも肥料を使う、あるいは農薬を使う。そして、それを運ぶのに運賃もかかる。そして、工場を動かすのにも熱源がかかる、そしてつくるわけですね。そういうようなものは、実は計算上どこに行っているんだという議論もあって、必ずしも十分詰められていないわけです。

 そういう意味では、そのトウモロコシを輸送費をかけて日本に持ってきて、委員がおっしゃるように、それがそっくりえさになるというのは一つの考えですよね。しかし、えさになる部分というのはたんぱくの部分を中心としたものであって、でん粉はえさにならないわけですね、エタノールにしちゃうわけですから。

 そういうことが果たして本当に意味のあることかどうか、そういう疑問をここで申し上げながら、せっかくの委員のお話ですから、研究もしないなどという大それたことは申し上げないので、いろいろな文献を含め、あるいは識者の意見も聞いて、少し研究をさせていただきたいと思います。

石川委員 地域の雇用という点でも質問させていただきましたので、ぜひ御検討、研究いただきたいとお願い申し上げます。

 次に、最近、食卓やお店、ケーキ屋さん、お菓子屋さんで、バター不足が社会的な問題となっております。

 昨年の秋から業務用が不足して、クリスマスケーキの時期にもバター不足、クリーム不足と言われておりました。大阪府の小学校では、バターパンが献立から姿を消したり、シチューやカレーに使うバターもサラダ油にかえたと朝日新聞の記事に掲載をされておりました。都内のスーパーでも、バターの品切れということが実際起きているそうでございます。

 このバター不足の要因及び現状を政府はどのように認識しておるのか、大臣にお答えをいただきたいと思います。

若林国務大臣 バターの不足につきましては、国際的な乳製品需給が逼迫したことによりまして国産乳製品の需要が強まってきている、そういう中にありまして、十九年度の生乳生産が計画生産の水準を下回って推移したことに加えまして、国内におきますチーズや生クリームの需要が増加したことから、バターに回る、バター仕向けが減ったということであると承知しております。

 このため、生産者団体は、二十年度の計画生産を増産型、つまり十九年度実績対比で一〇二・四%、北海道であっては一〇三・五%、都府県が一〇一・三%、こういう増産型に持っていきまして、生乳生産の増産に取り組むという計画になっております。

 また、独立行政法人農畜産業振興機構がウルグアイ・ラウンドの農業合意に基づきまして輸入をいたしているわけでございますが、二十年度分の乳製品の輸入につきましては、バターについて四千トンの輸入契約を一月に締結いたしましたが、さらに四千六百トンの輸入入札を二十三日に実施するということにしているところでございます。

 農林水産省として、生産者団体が計画生産を着実に実施して、目標を達成できますように指導するとともに、実は乳業メーカーにも事情を聞いておりまして、また、加工原料乳を供給するホクレンとの間で情報交換を進めております。

 今バターが、委員がおっしゃられるように、また新聞で報道されているように、末端で、家庭用が品切れになる、あるいはまたバターの価格が他の食料品に比べて非常に高騰しているというような状況は、今のところは見られない。また、そんなことにならないように、今申し上げたような対策を講じてまいりたいと考えております。

石川委員 見られないということでありましたけれども、報道等、また私が実感しているところでは、やはりお店屋さん、ケーキ屋さんを含めて、バター不足というものは存在しているのではないかと思います。

 十八年二月に生乳の廃棄というものを行いました。その後、また一年たって計画等を立てられてきたことと思いますけれども、その生乳廃棄のとき、私もたまたま十勝の豊頃町という酪農家のところにお伺いをして研修をしていたんですけれども、そこの農家さんが、これを行ったら、間違いなく将来的に生乳不足、バター不足が起きると。地域の農家でありながらも今は世界を見ないとやっていけない状況でありますので、そのときからその酪農家さんはおっしゃっていました。

 これは、去年の十九年二月の時点で、こういう見通しを立てられなかったのかどうか、こういう状況を予測できなかったんでしょうか、政府にお伺いをしたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣からも話がございましたように、私ども、毎年度、計画生産という形で計画を定めて生乳生産に取り組んでいただいております。

 その計画を策定するに当たりましては、生産者と乳業メーカーから構成されます日本酪農乳業協会というものが専門家の意見を聞きながら作成しているわけでございます。その専門家が見通しをつくる際には、当然のことながら、バターを初めとする牛乳・乳製品の需給、在庫の状況、海外における生産、需要の動向も加味して作成されていると聞いております。

 十九年度の計画生産につきましては、この見通しに基づきまして、十八年度の実績対比で北海道一〇一・二%、都府県九八・六%、全国では九九・八%を目標として実施されてまいりました。

 しかしながら、十九年度の実際の生産を見ますと、国際的な乳製品の需給の逼迫により国産の乳製品に対する需要が強まる一方で、生乳生産は、十八年度の減産がまず目標以上となってしまったこと、それから、夏場の猛暑の影響等から前年を下回って推移し、十九年度は最終的には目標水準を一・二%、約九万トン下回る見込みとなっております。

 したがいまして、私どもは、この計画生産どおりに生産が行われていれば、現在のようなバター不足は生じなかったのではないか、この目標以上に生産が落ちてしまったというところに大きな原因があろうというふうに考えております。

 以上でございます。

石川委員 一度減産を命ぜられると、回復をするまでに、生き物ですから、当然計画どおりにはいかないのは仕方がないのかもしれないですけれども、一年、二年、三年と、酪農家がもとに戻すにはなかなか時間もかかりますし、また経費もかかります。

 実際、そういう地域の農家の方々が世界の動向を見て、これは一年後、二年後にはバター不足、生乳不足になるぞと予測を立てていたわけです、もちろん、自分たちが生産者であり、当然、真剣勝負の中やっているわけでありますけれども。

 この四月から、政府の中で世界の動向をよく見られるように組織がえを行ったということであります。今、そんなに見受けられないということでありましたけれども、少なくとも私は不足しているのではないかと思いますけれども、バターの今後の需給の見通しについて、最後に大臣にお尋ねをして、質問を終わりたいと思います。

七条委員長代理 石川君、一応時間が過ぎておりますので。では、細野君の時間の範囲の中でということにさせていただきます。

若林国務大臣 私は先ほど、現場において不測の事態で価格が上がったりあるいは供給がとまったりしている実情は、新聞に報じられているようなことは心配していない、ないということを申し上げたわけでございます。

 世界の需給がどういうふうに動いていくかということについて、今しっかりとした調査及び知見を持っているわけでございませんので、注意深く情報を集めながら対応をしていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

 生産者の方が非常に真剣に国際的な需給の動向から国内の加工品の需要まで心配しておられるのは、それぞれいろいろな情報を持っておられるのかもしれませんが、我々も、行政ベースだけじゃなくて、今申し上げましたように、生産者団体の代表、さらに乳業、加工業者の方の代表、そして実際、お菓子とかパンとか、そういうようなものの業務用需要でバターを使っている人たちの御意見、そういう御意見も全部協議会で集約しながら対応を考えているということを申し上げておきたいと思います。

石川委員 どうもありがとうございました。

 これで質問を終わります。

七条委員長代理 次に、細野豪志君。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

細野委員 私からは、食料安全保障について質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 大臣、私は予算委員会でも少しこの質問をしたことがありまして、そのときに、一九八〇年に総合安全保障研究グループというのが、恐らく我が国では初めて食料安全保障という言葉を使ったレポートをぜひ読んでいただきたいという話をいたしました。私も大学で授業を受けさせていただいた高坂正堯教授が中心となってつくったレポートで、恐らくそれが我が国で初めて食料安全保障という言葉を書いたレポートではないかというふうに言われておるんです。

 大臣、これは通告がなくて恐縮なんですが、予算委員会のときにも申し上げているので、これはお読みになったことはありますか、私はお勧めしたつもりだったんですが。

若林国務大臣 委員が教えていただいたそのものは、まだ読んでおりません。

細野委員 では、後ほど事務方から、もし入手できれば、読んでいただければと思います。

 きょうは、私は食料安全保障について、きょうのさまざまな報道でも、今度の洞爺湖サミットでも食料安全保障については議論をされるという議論もあり、また、世界的な食料危機が言われている中なので、ちょうどタイムリーでいいなというふうに思っております。

 また、ことしの四月から食料安全保障課というのが農水省の中に新設をされたということでございまして、その意味でも時期はちょうどいいのかなという思いも、これが設置されたこと自体は評価をしておるんですね。

 実は、これは高坂教授が中心となって、大平総理の御指名でつくったんですが、出されたときは亡くなっていた、そういうちょっといわくつきのレポートでもあるんですけれども、このレポートに書いてある食料安全保障という言葉と、今回設置をされる食料安全保障課というのは若干ニュアンスが違っているところがあって、そこも含めてちょっとひもといてまいりたいと思うんですね。

 まず、大臣にお伺いします。

 食料安全保障課を設置した意義、きょうはわざわざ課長にも来ていただいているので細かい目的はそちらに聞きますから、概略的な意義、なぜこれがこのタイミングで必要になるのかというあたりについて、まず御所見をお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 先ほど委員が一九八〇年のレポートの話をされました。私も実はちょうどそのころ、一九七七、八年ごろだったと思いますが、食料における安全保障についてという講演を頼まれまして、講演の記録を一九八一年か二年に私も出版をいたしておりまして、食料における安全保障というものでございます。

 一つ一つ申し上げませんけれども、食料というのは基本的に、貿易産品として言えば、まず、それぞれの生産国は国内の国民に対する供給が第一でありまして、アメリカとかカナダとか豪州とか、一部の国を除いては、貿易によって収入を得るという貿易産業としての位置づけをしている国は少ないんですよね。ところが、その少ない国々が世界の穀物の供給量の相当部分を占めているというところに実は危険があるんだという認識を私は持っているわけでございます。

 そういうような国内の生産を優先するという穀物生産の特徴からいうと、全体の生産量の中に占める貿易量が非常に少ないんですよね。だから、その少ない貿易量に依存をして輸入で賄っている国からすると大変リスキーになるというのは、基本的認識としてございます。

 そこで、最近の食料の国際的な需給を見てみますと、一つは、温暖化の影響があらわれてきているのでありましょう、気候変動の波が大きくなってきている。したがって、複数の国について、連年にわたって穀物の作況に影響するような大災害の起こる危険度は前よりも増している。

 一方で、国際的な穀物の在庫率は、今までありました在庫率を大幅に下回った在庫状況になっている。生産国からすれば、在庫は少ない方がコストが安くなって済むという生産国側の事情というのはあるんだろうと思います。

 また、中国、インドに見られるように、急速に経済成長している国々の食料需要が高まる。食料需要が高まると、今後、量だけじゃなくて質も変わってくる。ちょうど日本の戦後の発展期におけると同じように、畜産物などの需要も高まってくるというようなことがあります。

 加えて、トウモロコシがバイオエタノールの生産の方に回っていく。あるいはブラジルなどでは、サトウキビからのバイオエタノールですけれども、大豆などがサトウキビの方にシフトをしていく。

 そういうもろもろの事情が急速に起こってきて、加えて、まだ途上国間でありますけれども、輸出国が国内の食料需要を優先して輸出規制に動いてきている。そんな状況を昨年来、感じ取っておりまして、我が農林省においても、国民に対する食料の安定的な供給を図る。これは国内生産とあわせて、輸入と備蓄で安定的な供給体制をとるというのが基本になっているわけでございますが、そういうことの責任を果たすためには、農林省内で、官房、各局庁と関連をつけて、情報を集中化し、それらに統一的な方針を打ち出せるという意味で、農林省の司令塔としての食料安全保障の担当課を置くのが適当だ、こういう判断をしたところでございます。

細野委員 今、大臣からは非常に包括的な、もうほとんどすべての事情を御説明いただくぐらい十分な御説明をいただきました。そういう状況の中で新しい食料安全保障課が設置をされたということですね。

 きょうは課長にも来ていただきました。通常は課長さんというのは答弁しないことが多いんですが、最近、末松課長は新聞に連日のように顔写真入りで出てまいりまして、今農水省の役所の中では、恐らく一番の有名人じゃないかというふうに思います。一番しっかりしている、エースという話も聞いております。それだけ農林水産省の中でも期待をされているんだと思うんですが、国民の中でも、この食料安全保障、ありていに言うと、本当に日本人は食っていけるのか、そのことに対する懸念が今ほど高まっているときはないと思うんですね。

 課長にまず御答弁をいただきたいんですが、では、この新しくできた食料安全保障課は一体何をするのか、その中で課長は最重点課題としてどういうことを考えられているのか、御答弁をいただきたいと思います。

末松政府参考人 お答えいたします。

 大臣が今御答弁申し上げたとおりでございますが、食料をめぐるさまざまな課題への対応を強化するため、国際的な食料需給情報の一元的な収集、分析、それから食料安全保障につながる政策の企画立案を行う組織として、大臣官房に課をつくったというところでございます。

 この業務の内容は、食料自給率の対策とか食料安全保障対策、食料情報の分析などでございますが、今までも農林水産省としてしていた仕事でございますが、大臣官房に置くことによりまして、局庁横断的、全省的に、有機的に施策を進めていくということで新しい課を設置したというふうに理解しております。

細野委員 課長さん、もしかしたら初めて答弁をされたかもしれないので、ちょっと緊張されているかもしれませんが。

 では、新しく課長に就任をされて、農水省の中で新しい、言うならばスタートを切られたわけですね。これだけはやりたい、これは最優先だと思われるのは、今御説明をされた中で、どの分野、何をされたいというふうにお思いになっているでしょうか。

末松政府参考人 お答え申し上げます。

 一つというのはなかなか難しいわけでございますが、一つは、今国際的な食料の需給事情について、昔、大豆の禁輸とかあったとき、そのときは政府も各商社も非常にアンテナがしっかりしていた。今も同じような組織は民間も持っておりますし、在外の大使館もありますし、私たちも組織的にはあるわけですが、こういう穀物の需給状況のもと、もう一度世界の需給状況をしっかり分析する。情報をとるだけではなくて、それがどういう意味を持つかというのをもう一度分析する力をつけるということは基礎的なことで大切だと思っております。

 加えて、恐縮でございますが、そういう中で、国内での自給率を高めよう、そういう機運というのが盛り上がっておりますので、国内の農業で自給率を高めることの大切性についてきちんと整理して、それをPRするといいますか、国民の理解を得るような、そういう仕事もできたらいいというふうに思っております。

細野委員 今非常に整理をして言っていただきました。国際的な食料の動向について情報を分析するということ、そして自給率を高めるための対策をとっていくこと、この二点について集約してお話をいただきました。いずれも、食料安全保障を考えた場合に大切なテーマだと思います。

 まず、その中身に入る前に、組織的なところで少し確認をしたいんですが、これは大臣に聞きます。

 資料を五枚配らせていただいておりますので、それをごらんいただきたいんですが、まず、食料安全保障課です。それぞれの担当が課長補佐のもとで割り振られているんですが、一番下に食料安全保障専門官というのがあって、今課長が言われたような、国際的な情報を整理しますということが書いてあるんですね。そういう役割を二人の専門職の方で担われるということだというふうに理解をできます。

 一枚めくっていただきたいんですが、それにあわせて、農林水産分野で農水省の中にいろいろな分析官が新しく平成二十年度から設けられておりまして、その主な内容の2と3を見ますと、例えば2番の国際食料情報分析官、これも世界の食料動向を分析すると書かれている。3番の国際情報分析官、これも各国の政策について分析するというふうに書かれている。これは大臣官房の国際部国際政策課の中にあるんですよね。

 若干テクニカルな話になりますが、こういったところを本当に集約してここでやれる体制になっているのかどうか。昨年来の組織の改編を見ていて私は少し疑問に感じているんですが、大臣、この点はいかがでしょうか。

若林国務大臣 委員が御指摘になられましたそれぞれの分析官は、属しております課の中で、例えばWTOの交渉に当たっているとか、あるいは食品安全にかかわっているとか、いろいろありますから分析の手法が違うんでしょうけれども、やはり食料安全保障を中心としました国際的な海外の食料情報の収集、分析、そして、需給見通しをつくったり、海外の食料需給のいろいろな情報を収集することが中心になると私は思いますので、ここを中心によく連携をとってやれるようにしていくべきだと考えております。

細野委員 では、大臣に伺いますが、この食料安全保障課がそういう役割を担うのであれば、なぜ2番に出ている国際食料情報分析官はこちらの課には所属しないんでしょうか。これは共管か何かされているんですか。その点を確認させてください。

若林国務大臣 現実問題としては、実は企画評価課に置きますこれらの専門官は、その人物に対しまして食料安全保障課の併任をかけておりまして、その併任のもとで一緒に、共通の問題は同じように協議してやっていくという形にしております。

細野委員 まだスタートしたところですので、すべての組織がしっかりと確立をされたものでないというのは理解をしますが、この間のいろいろな組織のつくり方を見ておると、こういう新しい分析官をつくるというのは悪くないと思うんですが、見方によっては、役所の中でそれぞれ役職をつくることによってポストを新しくつくっているというふうにも見られがちでありますから、若干懸念を持っているということだけ伝えておきたいと思います。

 その上で大臣に確認をしたいんですが、もう一枚めくってください。これは、民主党がしょっちゅういろいろなところで使っているデータなんです。自給率を上げるんだということを先ほど課長はかなり明確におっしゃいました。大臣も自給率の問題については深くおっしゃっていると思うんです。まず、そもそも本当にこれで日本の自給率が上がるのかということについて、これは一つのデータとして民主党がよく使っているものなので御説明をさせていただきたいんですが、この二つのグラフというのは、それぞれの国の農業所得に占める戸別所得補償の割合、これは右側です。左側が食料の自給率をあらわしています。

 日本の場合には、自給率が四〇%を切ってきていて、ちょっと古いデータなので四〇%になっていますが、もう切っている。農業所得に占める戸別所得補償の割合というのが七・三%と、海外から見ても非常に低い。食料は、日本の場合にはかなり輸入に頼っている、食料輸入国としては世界的に、逆に言うと、大臣の先ほどの言い方を使うのであれば、食料安全保障の立場からすると、正直、弱者の立場になっているわけですね。その弱者の立場にある我が国がこの状態で本当にいいのかどうか。

 何度もこのことについては大臣は聞かれていると思うんですが、単純に比較しますと、例えば、アメリカの場合には、競争力があると言われているんですが、農業所得に占める戸別所得補償は四六%ですね。イギリスの場合には七一%。それぞれでこういう自給率を確保しているわけですね。

 日本の農業というのは、他国の農業と比較をして、同じ条件で競争できているのかどうか。ある程度の所得を補償されている海外の農家の皆さんと、日本は競争条件がそもそも弱いと言われている中で、さらに戸別所得補償の割合が低いという条件の中で、脆弱な日本がさらにそういう厳しい環境に置かれているということに関して、大臣はそもそもどう考えられているのか。自給率の向上というのは大目標だとおっしゃいましたから、これについて少し御所見を伺いたいと思います。

若林国務大臣 よくぞ聞いていただきました。

 自給力というのは、私はそれぞれの国の農業の置かれている条件によって農業のあり方というのは違うと思うんですね。ヨーロッパの場合、長い歴史の中で、平たん地を中心として、三圃制、いわばローテーションをつくりながら畑作農業でございます。アメリカの場合も豪州の場合もそうですけれども、御承知のような自然条件の中で農業が行われているわけであります。我が国は、何といっても、急峻な地形の中で農業が行われているということが言えるでありましょう。

 そこで、食料の供給力という点で見ますと、私は、食料の供給力を規定している要素というのは、いろいろありますけれども、三つあると思っているんですよ。

 一つは、生産基盤である農地であります。そして、日本のように米作が基幹となっている農地については、常に水の利用とそれがセットになって、水供給システムとセットになった形の農地というのが第一の状況であります。

 二つ目は、その農地を耕作して生産を上げていく担い手であります。生産者であります。

 そして三つ目は、それらを組み合わせた中で高めていくための農業技術だと私は考えているわけであります。農地、水という基盤の上にこれを利用していく経営体というものをしっかりと結びつける。そして、経営体は、農業技術を身につけて新しい技術革新をその中で進めてくる。今までよくやってきたと私は本当に敬意を表しているわけであります。

 そういうような意味で、我が国の農業というのを見ますと、今なお、基盤について、畑作物を入れなきゃいけないとすれば、水田について水はけがよくなるような改良もまだしていかなければなりませんでしょう。そして、大型の機械が入ってくるようになれば、今までのような小型の機械でやれた時代から大型の機械になれば、そういう意味での農道の整備も必要になってくるでありましょう。長い間日本の農業を規定していた諸条件というのが変わってきているわけであります。また、農地も分散錯圃でありますから、大型の農業経営を土地利用型でやろうと思えば、それら畦畔を整備して、大型の機械を使った農業経営ができるような基盤投資も必要になってくるでありましょう。そして、選択的拡大で野菜とか果物なんかに変わるには、そちらの方の施設型の農業にも投資しなきゃいけないでしょう。

 そういう意味で、日本の農業の政策に要する種々の投資というのは、欧米と比べて非常に違っていると思うんです。ですから、担い手の部分、またこれも選別をするかしないかということが議論にあるんですけれども、担い手の部分にお金、所得を上げれば自給率が上がるというほど、日本の農業はいわば簡明、単純、明快な農業の状況になっていない、私はそう思っております。

細野委員 いろいろ我が方から出ていますが、品目横断をやられて、戸別所得補償に一歩踏み出したわけですね。今、規模の基準についてもそれぞれ戸別に見ていきますということをおっしゃっている。その意味では、農水省みずからこの問題に取り組んで、徐々にそこの水準を上げてきているわけですね。

 簡潔にお伺いしますが、こういう農業所得に占める割合がわずか七・三%という状況の中で、いろいろほかに対策をやっているのはわかっています。それは、いろいろな対策が総合してトータルに競争力が出てくるというのはわかるんですが、農家それぞれの置かれている環境が、海外の農家と日本の農家を比較した場合に、平等な環境に置かれていると本当にお思いになりますか。諸条件を乗り越えて日本の農業が海外と伍していくだけの力をつけ得る政策をやってきたと自信を持っておっしゃれますか。

若林国務大臣 果樹とか花とか、そしてまた生鮮の野菜類とか、これらの農業者についてはその努力があるわけでございますが、海外における、特にヨーロッパの農業と比較して、私は十分堂々と伍していけるようなことになっていると思うんです。

 酪農などにつきましては、規模についてはほぼヨーロッパの農業に伍していけるような状況になっておりますが、ここに来る集約の過程で、草地の造成あるいは取得というような点で、長い歴史の中でつくり上げてきたヨーロッパの酪農経営に比べて短期に集中的に投資をしたということがありますから、負債を大きく抱えているという意味で、経営的には条件がなかなか難しいわけであります。しかし、牛の資質などについて、ヨーロッパの酪農家の牛と比べまして日本の酪農、乳牛の資質は大変高い水準にある。

 養豚とか養鶏につきましては、規模の点でいいましても経営の中身につきましても、それほど遜色ないような状況になっていると思います。

 問題は土地利用型の農業でございまして、土地利用型農業は主業者が三割ちょっとしか供給をしておらない、いわゆる兼業という形で、自分で行っている稲作の経営に対する依存度が非常に低いという状況でございます。そういう意味で、土地利用型の稲作の経営を中心とした土地利用型農業について言えば、およそ土地利用型農業の比較にならないほどミゼラブルな状況だと思っております。

細野委員 大臣、さっき、日本の農家はよく頑張ってきたとおっしゃいましたね。地元でいろいろな農家の方と話をしていましても、私もよく頑張ってきたと思うんですよ。花卉なんかの、まさに市場でやっていらっしゃる方も、なかなか市場ベースで乗ってこないそういう農業も含めて、それは大変な努力ですよ。逆に言うと、そういう政策的な援助もない中でよく頑張ってきた、よくここまで生き残っていると言えると思います。私どもはそこの政策転換を求めていて、政府・与党の皆さんもこちらに大分近寄ってきたなという印象を持っていますが、そこはまだ開きがある。

 きょうはその話を深掘りしたいと思っているんではないんです。恐らく、政府の側も我々の側も、自給率をある程度上げようという意味では同じ思い。我々は、当面六割を目標にしています。政府は、下がってきている現状をある程度もう認めざるを得ない、そういう立場であるということもあるんでしょうが、四五%から五〇%ぐらいを目標にされるんでしょうか。四五%という数字が出ていますね。

 私が何を申し上げたいかというと、食料安全保障といった場合に、もちろん一番目標にならなきゃならないのは自給率を上げることですね。場合によっては、供給力を上げるということもあるかもしれない。要するに、自給そのものはできていないけれども、いざとなったら食べられる、カロリーベースで潜在的自給率を上げていくということ、これは大事かもしれない。

 もう一つ大事なことは、海外からどうやって安定的に、一〇〇%にならないわけだから、カロリーベースできちっとおなかがいっぱいになるような安定的な供給源を確保していくかということが大変重要なことだと思うんですが、不思議なことに、この食料安全保障課の役割には、海外からの安定的な調達をするということが入っていないんですね。情報を集めると書いてありますし、危機対応マニュアルをつくると書いてありますが、海外からどうやって安定的に供給をするかということは目標に入っていませんよね。課長、どうですか。

末松政府参考人 お答えいたします。

 食料安全保障課におきましては、「食料の安定供給の確保に関する政策の企画及び立案に関すること。」ということを担当しておりまして、具体的な食料の供給の確保それ自体については担当する各局で担当しているというふうに整理しております。

細野委員 課長はそういう分野のプロだと思うので、ちょっと遠いので、出たり入ったり大変で申しわけないんですが、あえてもう一回伺います。

 食料安全保障ということを言ったときに、日本は残念ながら自給率が四割を切っているわけですね。総合的に見ると、六割は海外からのものに頼っている。世界の食料需給は、改めて示すまでもありませんが、農水省自身が説明をしているとおり、四枚目に資料をつけておきましたが、もう各国が輸出規制をするようになってきている。さらには、大臣がさっきおっしゃったように、環境問題もあって、なかなかまともに小麦なんかがとれなくなってきている国が、それこそ大生産地であるオーストラリアなんかでも出てきている。

 そういう中で、食料安全保障課がその調達ルートの確保について具体的に担当しないというのは私にはよく理解できないんですが、そこはきっちりやるべきだというふうに課長はお思いになりませんか。

末松政府参考人 委員お話しのとおり、食料の安定的な調達というのは非常に重要なことだと思っております。

 それで、例えばお米については、今国内で生産しておりますので、お米についての調達ということは国内でやる。それから、小麦につきましては、国家貿易ということで各国から調達しております。それから、民間の貿易で、えさとかいろいろな品目がありまして、そこの担当している部局それぞれ、どうやったら安定的に供給できるかということに今心を砕いているということでございます。

 私ども官房といたしましては、先ほど申し上げましたように、食料をめぐる国際的な状況が全般的に変わっていますので、その全般的な状況をしっかり把握して、おのおのの調達、供給が円滑にいくように協力して進めていくということが大切だというふうに思っております。

細野委員 大臣は御専門だと思うのでお伺いするんですが、今、各国が食料の輸出を制限するようになりましたね。我が国の同盟国であるアメリカも、食料の大輸出国ですが、いろいろなお話を間接的に聞きますと、シーファー大使なんかは、とにかく日本に食料をちゃんと供給するのはアメリカなんだという趣旨の発言もされているやに聞いておりますし、オーストラリアも、FTAで日本に対して食料を安定供給しますというような話が出ておるのは知っておるんです。

 国際法上、WTOのルールもありますし、いろいろな国際的な貿易のルールがありますが、そういった中で、輸出国が確実に日本に食料を輸出しなければなりませんよというルールは、農水大臣として存在をするというふうにお考えになっていますか、それとも、そういうものはないというふうにお考えになっていますか。

若林国務大臣 そういうものはないと思います。

細野委員 残念ながら、そういうものはないんですね。いろいろなルールを見ても、輸出国がいろいろ理由をつければ輸出を途絶させることができるんですね。

 もう一つ、これは外務省の方に聞きますが、今外務省はWTOの農業交渉なんかでこういうものを入れる努力をしているというのは承知をしていますが、例えば、今、日本の商社が出資をして海外に農地を買うようなことを結構やっていますね。株式会社化できる国においては、農地を確保して、そこから日本に安定的に食料を供給することをスタートいたしました。

 これは、商社という仕事でやっているのももちろんあると思うんですが、いろいろな方と話をしていますと、かなり使命感に満ちてやっているところがあるんですよね。日本に安定的に食料を供給するためには完全に海外から買い付けるだけじゃだめだ、出資をして安定的に送れるようにしようという動きをしている。これは相当な努力として多とすべきものだと私は思います。

 そういう状態になったときに、外務省として見解を伺いたいんですが、これは日本の会社が出資しているんだから、日本に送りたいとその会社が思っているとしますね。それを制限することは国際法上認められていますか、認められていませんか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 食料の輸出国が日本に対してその輸出を制限させることができる、制限をとめることができるかという御質問だと思いますが、ガットのルールを申し上げますと、ガットの第十一条におきまして、輸出の禁止、制限というのが一般的な規定として設けられております。具体的に申し上げますと、ガットの加盟国は、ほかの加盟国への産品の輸出等について、いかなる禁止、制限も設けてはならないということになっております。これが原則でございます。

 ただし、食糧等の危機的な不足を防止、緩和するために一時的に課する輸出の禁止、制限については、今申し上げた規定は適用しないということが例外的な規定として設けられておるわけでございます。

 したがいまして、そのような条件を満たす場合には、輸出国は輸出の制限を課すことができるというのが現在のガットのルールでございます。

細野委員 具体的なことを聞いたんですが、では、それは後から聞きます。

 今の御答弁の中で、輸出制限が認められている一時的というのはどれぐらいの期間を指す、どれぐらい以上であれば、一時的ではないので日本に輸出をしなければならないということになるのか、解釈を教えてください。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたように、ガットのルールにおきまして、実は実施期間に関する期限が定められていないという問題点がございます。したがいまして、実は現在、WTOのドーハ交渉が行われておるわけでございますけれども、この中で、日本といたしましても、日本のような輸入国の関心がWTOのルールに適切に反映されるようにということで、これまでも働きかけを行ってきております。

 具体的に申し上げますと、現在、ドーハ・ラウンドの交渉において、農産物グループの議長のテキストが出ておるわけでございますけれども、その中に、輸出禁止や制限措置についての通報の義務の強化ですとか、既存の輸出禁止制限措置については廃止をする、新しい措置を導入する場合も、それは原則十二カ月以内に廃止をするという案が盛り込まれてございます。実は日本から提案をしたことが議長テキストとして盛り込まれたところでございます。

 現在、WTOのルールをさらに強化するということで、また新しい提案をすべく現在政府内で検討しておるというところでございます。

細野委員 食料安全保障上、大変脆弱な立場に置かれている日本として、ルール上、輸入国の権利をきちっと確保するために外務省が前面に立ってやることは大変重要なことだと思います。これからもそれはやっていただきたいと思います。

 ただ、その一方で、ルールが変わるかどうかというのは、これは国際社会のいろいろな変動要因があるわけで、確たることは言えないわけですね。日本が好きなようにルールをつくれるわけではない。そうなってくると、実際に、このルールの中でどう日本が安定的に食料を確保するかということを考えなきゃならない。その一例が、さっきの商社の動きだと思うんですよ。

 後ほど農水省の方にも聞きますが、これはぜひ解釈をお伺いしたいんですが、日本の会社がそこに土地を買って、日本に供給をしたいという場合、いや、それはだめですよととめる権限は、その本国政府にありますかということについて、今のWTO法上はどうなんでしょうか。今のWTO法上、現地で日本の会社が農地を持っていて、日本に供給をすることをしているんだけれども、とめる権限はあるんですか、ないんですかということについて、お答えいただきたいと思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 生産をしている方が、あるいは企業が、どのような国籍であろうと、輸出する国というものがWTOのメンバーでありますと、ガットの十一条の規定が適用されることになるわけでございます。

 したがいまして、先ほど申し上げましたような、例外的に食糧等の危機的な不足を防止、緩和するために、一時的に輸出の禁止、制限をするということは、その食料輸出国においてできるというのがガットのルールでございます。

細野委員 要するに、だめなんですよね。商社が買って、それで、そこに土地を仮に持っていたとしても、その国が、いや、日本には出しちゃだめですよと言った瞬間に、その努力は水泡に帰すわけですね。

 さらに一歩踏み込んで、これは解釈として確立しているかどうかよくわかりませんが、例えば、日本の政府が出資をして、ある国に農地を確保した場合、それも制限することができますか。

田辺政府参考人 現在のWTOのルールにおきましては、食料輸出国において、先ほど申し上げましたような状況下での輸出の制限、禁止というものが認められておりますので、そこで生産をしているのが日本の民間企業であれ、日本の政府が出資した企業体であれ、そのWTOのルールは適用されるということになろうかと思います。

細野委員 要するに、今のWTO法のルール上は、輸入国は、今のルールを前提にすれば、あらゆる手段を尽くしても、最後はその国が、輸出国がだめですよと言った瞬間に、日本に安定的に食料を輸入することはできない、そういうことになるわけですよね。極めてその意味では立場が弱い。

 大臣、ぜひこれは頑張っていただきたいんですが、食料安全保障課という課をつくるわけですよね。ルールは外務省が窓口一元化でやるんでしょうから、それについては、農水省として意見を出してもらうことはやってもらって、交渉は外務省。農水省も農業交渉をもちろんやられるんでしょうが、やはり外務省がどうしても窓口になります。

 ただ、そういう厳しいルールの状況の中で、どうやって日本人が食べていくのか、日本国内で食料を満たしていくのかということについて、本気で考えるべき時期に来ていると思うんですよ。それぐらい今、食料の需給環境というのは厳しいと思っていまして、このルールの中でいろいろな努力を、商社を初めとして海外とやっているところがありますよね。そういうことについて、食料安全保障課としてもっと踏み込んでやるべきだというふうに考えますが、どうお考えになるんでしょうか。

若林国務大臣 食料安全保障課は、いろいろな情報を収集し、そしてまた情報を提供し、分析をするというような仕事をしているわけでありまして、委員が今御指摘のような取り組みというのは、まさに省を挙げてでありますから、生産局はもちろんであります、総合食料局もそうであります、水産物に関して言えば水産物もそうであります。そういう意味で、司令塔として官房にそういう窓口を置いているだけでありまして、結局、これは農林省挙げて、そして農林大臣の責任において対処しなきゃならないことだと考えているわけでございます。

 そしてまた、外務省との関係でございますが、農産物貿易交渉については、今までもそうでありますが、各国の代表は農林水産大臣が出かけていって、切った張ったをやってきているわけであります。ただ、ジュネーブにおります担当の大使は、それらも一緒になって努力をいただいてきているわけでございます。常時私が行くわけに行きませんので、農林大臣が行くわけに行きませんので、そういうふうにやっているわけでございます。

 ファルコナーとも何回も話をしてきたんですが、今のWTOの輸出規制のあり方を見直していこうという意味で、ファルコナー提案というのは一つの前進だと評価はしているものの、私は議長案をベースにしまして、輸出規制については実効のある規律の強化を求めているところでございまして、既にファルコナーの方には私どもの考えを伝えているわけでございます。

 そして、輸出規制を発動するという場合には、やはりルールを極力明確にしておく必要がありますし、輸入国の側が、届け出があったときに、それに意見を申し述べたときに、その意見はどういう場で調整をして、どういうふうに決着をするのか、そういう手続関係を明確にしておきませんと、なかなか実効あるような対応策がとりにくいものですから、そういう提案を、まだ正式ではありませんが、私の方から議長の方には申し入れているわけでございます。これが、来月の中下旬に行われるといろいろ報道されておりますけれども、モダリティー案を決めるに当たって、我が国としてもこだわりのあるところでございます。

 難しいのは、今次々に行われています輸出規制、実は輸出を規制している国が、ベトナムでありますとかカンボジアでありますとか、そういう、いわば途上国同士の中で、比較的貧困の中で輸出をしている国が、みずからの国の食料を確保するために輸出規制をかけるというようなケースが多いんですね。先進国にはまだ及んでおりません。

 そういう意味で、日本がこういう輸出規制について意見を申し述べるということに当たっては、途上国が必要に迫られて輸出規制をしているようなものまで排除するというようなことは、大変反発もありますし、難しいんですね。そういうような調整は、現実問題として、今そこまで踏み込んだ状況になっておりません。

細野委員 私は、これから十年とか二十年、それぐらいの期間で考えたときに、今は確かに、国内が比較的豊かになって、国内の供給を満たすために小さい国がやっているという面があるんだと思うんですが、やがて本当に日本が食料輸入できなくなるときが来るんじゃないかということを心配しているんですね。

 WTOのルールの中で輸入国の権利をきちっと確立するために農水省も外務省も頑張っておられるのは大変大事なことだと思います。ただ、それが日本の思うに任せない、そういう国際状況の中で、これは農林水産委員会ではいろいろな議論があるかもしれないけれども、場合によっては、本当に信用できる国との間ではFTA、EPAを結んでそこから安定的に食料を供給できる体制を整えることも、これも選択肢の一つとしてしっかり頭には入れておいた方がいいんだろうと私は思うんですね。

 農水省といえば、基本的にはEPA、FTAには消極的というのが通り相場なんですが、それについても、WTOに反映されるのが一番いいんですよ、それが世界共通ルールなので一番いいんですが、それがかなわなかった場合には、そういうことも含めて、どうやったら日本の国民が食べられるのかということについて、ある程度踏み込んでやらなきゃならないことも含めて、私は農水省の役割だと思いますが、どのようにお考えになるのでしょうか。

若林国務大臣 今委員がお述べになった限りにおきまして、私と問題意識は共有させていただいておると思っております。

細野委員 この議論はまたの機会に譲りたいと思います。

 残り十分ほど時間がありますので、ちょっと横道にそれますけれども、自給率の話にかかわって、私は学校給食の問題について問題意識を持っておりまして、質問させていただきたいと思います。

 本題に入る前に、年明け以降、農水省がこういう広告を出していますね。納豆はアメリカ産です、タケノコは中国産ですとそれぞれ旗を立てて、国産のものを食べましょう、こういう広告ですね。これは何度かそれぞれ見ていまして、非常にデザインも凝ったおもしろい広告が出ています。

 これは国産品をこれからみんなで食べましょうというキャンペーンの一環でやっていらっしゃるんだと思うんですが、宣伝としてこれをやること自体は悪くないと思うんですね。ただ、これにいかほど効果があるかというと、国産の方がいいとはみんな思っているわけですよ。いいとは思っているんだけれども、値段の問題であるとか、実際に国産のものが全然ないものもあったりして、そういう自給率の向上に必ずしもつながっていない。

 私は、食習慣という意味でむしろ一つの大きなきっかけになるかなと思っておりますのが学校給食でして、この問題に少し踏み込んで、農水省としてやる意味があるのではないかというのが私の個人的な見解です。

 実は私の子供は小学校三年生でして、給食を食べているんです。給食の献立はどんなのかと、この間、子供のものを見てみたんですが、地元では米がとれますから、私の住んでいる三島市の給食では米をどれぐらい食べているのかなというふうに見ましたら、米飯給食が三日、残り二日はパンを食べているんですね。めんも時々食べています。小麦は全くとれませんから、それはそもそも輸入でやっている。

 子供と話していても思うんですが、我々の感覚だと、家で昼御飯を食べるときに、パンを食べるということはほとんどないですね。外食するときはパンを食べることはありますが、基本的には、家でパンを食べることは、昼御飯はないですね、朝御飯に食べる人は多いですが。食習慣として、学校給食でパンを食べるということは、夜も含めて、パン食というのは非常に習慣になっているなというのは子供を見ていても感じるんですね。

 数字を文科省からももらったんですが、週三回米飯給食をしている学校というのは六〇・三%。それより少ないところも相当多いんですね。週五回やっている学校というのは四・二%、児童数でいうと一・九%、非常に少ない。

 どれぐらいお金がかかるか、私もいろいろシミュレーションしてみたんですが、いろいろ聞いていると、例えば学校給食一食で米の方が若干高いようなんですね。最近、いろいろ給食の値段が大分上がっていまして、最近も六円から七円上がって、父兄からいろいろ高くなったねという話が出るぐらいなので、上げるのは非常に難しいんですが、仮に一食十円、二十円上がったと仮定しても、例えば三日を五日にするとか二日を五日にするのにかかるお金というのは、国全体で計算しても、私の計算だと、ざっくり十億円ちょっとかかるかどうかぐらいなんですよ。これで日本の子供の食生活、いわゆる食に対する習慣は変わるんじゃないか。私は給食というのはそういう一つの大きなきっかけになるんじゃないかと思っているんですね。

 何も米飯給食が全部いいとは言いません。北海道で小麦がとれるのであれば、めんを食べてもいいし、場合によってはパンを食べてもいいと思うんです。ただ、せめてそういう食習慣ということを言うのであれば、こういう広告を打つよりは、農水省としてそういう政策に踏み出した方がよっぽど効果があるのではないかと私は思っているんですが、農水大臣、どうお考えになるでしょうか。

若林国務大臣 私は、日本型の食生活が世界でも評価されながら、今それが崩れてきている。そういう意味で、再度、日本型の食生活を見直しまして、炭水化物と脂肪とたんぱく質とがバランスがとれて、そしてオーバーカロリーにならないというような食生活のパターンをしっかりと普及していかなきゃいけないというふうに思っているわけでありまして、そのためには、あらゆる政策手段を動員してこれに当たっていく必要があるというふうに思うわけでございます。

 委員がお示しになりましたキャンペーンについても、これから動かしていく国民運動、食生活改善の消費運動の一環であるというふうに御理解いただきたいと思います。

 なお、学校給食につきましては、委員も御承知のとおりであります。これは政府提案でありますが、この国会に学校給食法の改正が提案をされております。その過程で私どもの方も文部科学省と大分協議をいたしておりまして、学校給食法の目的規定も直して、条文も直しまして、栄養バランスというよりも、むしろ食習慣を身につける、そして、地産地消をベースにして、それをつくってくれた多くの人たち、特に、地域の産物であれば子供たちもわかるわけでありますから、そういう人たちへの感謝の気持ちもそれによって培っていく。そして、食は文化なんだということをしっかりと子供たちに、食を通じて、給食を通じてわかってもらうということを言っておりまして、その目的の中の六項目には、伝統的な食文化への理解を深めるというようなことも書かれているわけでございます。

 回数は今二・九回、三回でございますけれども、これも地域によって非常にばらつきがございます。これにつきましては、一律に四回というふうに高めることは難しいかもしれませんけれども、三回を目標にして二・九回になったわけですから、全国平均なのかある地帯別につくるのか、目標のつくり方もきめ細かくやりながら、もう少し目標を高めたらどうかというふうに思います。

 さらに、これはまだ合意に至っておりませんけれども、運用の中でありますが、関西で朝の学校給食をやって、大変に子供たちもこれについては評価がいいらしいんですよね。お昼ではなくて朝、週に一遍はちょっときついようです、二週間に一遍、朝の学校給食。朝御飯を食べてこなくなった子供たちが非常に多くなってきております。これは若いサラリーマンもそうなんですけれども、成績との相関関係を出したある数字を見たんですけれども、かなり高い相関になっているんですね。

 つまり、子供たちの緊張感とか一つの回転、行動力というのが朝御飯を食べているかどうかで大分違うんだというような結果も出てきていますので、朝の学校給食というのも取り入れることなども含めて幅広く検討していきたい、このように考えております。

細野委員 農水省の資料を見ておりますと、そういう広報活動も食料安全保障課の仕事であるという記述があります。課長も新しくなられていろいろ大変だと思うんですが、自給率を高めるというのはなかなか難しいと思うんですね。そういう中で、いろいろ手はあるんだと思うんですが、司令塔ということでございますので、学校給食の問題も含めて、ぜひ幅広い施策を考えていただいて、提案をいただきたいなというふうに思います。

 時間ちょっと前ですが、皆うんとうなずいていますので、以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

宮腰委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十分散会


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