衆議院

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第11号 平成20年5月8日(木曜日)

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平成二十年五月八日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 宮腰 光寛君

   理事 岩永 峯一君 理事 江藤  拓君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤  錬君

   理事 七条  明君 理事 筒井 信隆君

   理事 細野 豪志君 理事 西  博義君

      阿部 俊子君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      小里 泰弘君    小野 次郎君

      近江屋信広君    金子 恭之君

      亀井善太郎君    北村 茂男君

      斉藤斗志二君    谷川 弥一君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      西川 公也君    西本 勝子君

      平田 耕一君    福井  照君

      福岡 資麿君    藤井 勇治君

      松本 洋平君    水野 賢一君

      森  英介君    石川 知裕君

      大串 博志君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    階   猛君

      神風 英男君    高井 美穂君

      仲野 博子君    石田 祝稔君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   参議院議員        平野 達男君

   参議院議員        高橋 千秋君

   参議院議員        舟山 康江君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 堀田  繁君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   鵜瀞 恵子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          石野 利和君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         伊藤 健一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         吉村  馨君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            中條 康朗君

   政府参考人

   (林野庁長官)      井出 道雄君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 黒田大三郎君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     福岡 資麿君

  中川 泰宏君     藤井 勇治君

  渡部  篤君     松本 洋平君

  横山 北斗君     階   猛君

  井上 義久君     石田 祝稔君

同日

 辞任         補欠選任

  福岡 資麿君     今津  寛君

  藤井 勇治君     阿部 俊子君

  松本 洋平君     渡部  篤君

  階   猛君     横山 北斗君

  石田 祝稔君     井上 義久君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     西本 勝子君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     中川 泰宏君

    ―――――――――――――

五月七日

 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業者戸別所得補償法案(参議院提出、第百六十八回国会参法第六号)

 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

宮腰委員長 これより会議を開きます。

 第百六十八回国会、参議院提出、農業者戸別所得補償法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官伊藤健一君、総合食料局長町田勝弘君、生産局長内藤邦男君及び経営局長高橋博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西博義君。

西委員 委員さん少ないようですけれども、委員長の指名ですので、始めさせていただきたいと思います。

 発議者の皆さん、本当に御苦労さまでございます。民主党提出の農業者戸別所得補償法案に関して、これまでの議論を踏まえながら、重複することもあると思いますが、御質問申し上げたいと思います。

 まず初めに、農業の将来展望について御質問申し上げます。

 昨年の十一月一日の参議院の農水委員会において、我が党の谷合議員が農業構造の望ましいビジョンについて発議者に質問をしております。農業構造といいますのは、一般的に農業生産それから経営の規模、農業経営の形態を指しますが、発議者はこの質問に関して、農業をこのまま続けていける、農村がそのまま生き残っていけることが農業の望ましい姿というふうに答弁をされております。

 ずっと議論を続けておりまして、本当にこの答弁のとおり、現状のままでいい、また課題はないというふうにお考えなのか、まずお伺いしたいと思います。

高橋参議院議員 おはようございます。御質問、どうもありがとうございます。

 答弁をさせていただきたいと思います。

 参議院でも何度もこの話が出てまいりました。議事録の中で、後の方にも出てくるのかもわかりませんが、私たちは、農業というのは、今の食料状況等を見ても、自給率の話を見ても、中国の食品の安全の問題を見ても、ビジネスとしてはこれからすばらしい可能性があるものだというふうに考えております。

 その中で、現状を見たときに、自給率が四〇%を割って、それぞれの地域の農業者の平均年齢も随分高齢化をしてきている、将来的には大変厳しい状況の中で、今、品目横断のやり方でやってきている中で、私たちとすれば、今の農業をやり続けていただく、それがまず大事なことだ、そのことが地域を守っていくということにもつながっていく、その「まず」という言葉が抜けていたのかもわかりませんけれども、そこからさまざまな可能性のところに発展をしていくというふうに考えております。

 しかし、現状を見ると、今の農業すら、このままでは維持がしていけない、それぞれの地域で今のままではもう農業をやめていかれるという方が多分ここ数年で多く発生してくるのではないかというふうに思われます。

 その意味で、私たちは、この農業者戸別所得補償法案の中で出した目的の一つとして、今の農業をまずやりたいと思っておられる方々にやり続けていただくということが大変重要なことだ、その上でさまざまな可能性に発展をしていけるのではないかというふうに考えておりますので、委員の方で御疑念があるかもわかりませんが、その「まず」という言葉が抜けていたのかもわかりませんが、後の議事録の中を読んでいただくと、そのような話をさせていただいております。

西委員 私は、ずっとこの議論を通じて、農業の改革に対するスピード感の問題ではなかろうかと思うんですね。

 今、変えていくことが必要だということで、農政のいろいろな改革が進んでおりますけれども、まずはどれぐらいの時間を想定されているのかなということも気にはなりますが、その部分について発議者の考え方と違うのではないかというふうに思っているところでございます。

 続いて、農地の流動化への影響についてでございます。

 農地というのは、もちろんこれは農業の最大の生産の手段でございます。将来にわたって持続的に農業が行われるようにするという目的については、与野党ともこれは同じ考え方でございまして、したがって、農地が農業を行う人へ継承されていくことが必要であるという点についても、これは異論がないというふうに思います。今後の農業構造を考えるときに、農地の継承をどのようにスムーズに行えるかというのが私は大きな課題だというふうに考えております。

 そこで、農地の継承という観点から、この法案がどのような影響を及ぼすのかということについてお伺いしたいと思います。

 法案では、販売農業者交付金の交付対象は販売農家ということになっております。昨年十二月の十九日、当委員会で、農作業を委託している場合は委託している人に交付金が交付されるというふうに答弁をされております。民主党法案が目指すところは、本来は実際に農業を行っている人に交付金を交付するということで、これは本来の考え方ではあろうと思いますが、農作業の委託の場合は、実際に農業を行う人、つまり受託者に交付金が交付されないわけでありまして、民主党の本来の趣旨に反しているというふうに思われますが、このことについて発議者はどうお考えかということ。また、委託には農作業の委託と経営委託というのがございますが、経営委託の場合に交付金の交付対象はだれになるのかということもあわせてお答えをいただきたいと思います。

高橋参議院議員 委員も御指摘のとおり、農作業の委託と農業経営の委託、委託の分類を二つされました。

 確かに、おっしゃられるように、参議院の答弁の中で、委託者に対して支払われるということを答弁していると思いますけれども、農作業の委託の場合、労働力の委託でありますから、これについては委託者になると思います。ただ、農業経営の委託ということになると、経営そのものを委託するわけで、農家はだれになるのかというと、その農業経営を受託する方ですね。ですから、この場合は、農業経営の委託の場合は受託者に対して支払われるという形になります。

西委員 農地を賃貸している場合、交付金はどなたに交付されるのかということをお伺いしたいというふうに思います。

 農地を貸している人は、農地を貸しているだけで、販売農業者ではありませんから、交付金の交付対象ではないんだろうというふうに思っております。農地を持っている人が交付金の交付を受けようとすると、農地の賃貸や経営委託というのが減少して、農作業の委託、これは自分に入ってくるわけですから、土地を持っている本人に入ってくるわけですから、農作業の委託がふえるのではないかというふうに考えられます。

 その結果、農地の賃貸など農地の流動化、それから農業のスムーズな継承を阻害することになるのではないかというふうに危惧いたしますけれども、農地の流動化に対してどのような影響があるのかということについて発議者のお考えをお伺いしたいと思います。

高橋参議院議員 御指摘のように、農地の継承はこれから大きな問題になっていくと思います。特に、近年、農家の高齢化が顕著に進んでおりまして、北海道とかそういうところはまた別として、私の地元の近畿地区、東海地区あたりなんかは非常に高齢化が進んでおりまして、私の実感としては、大体七十を過ぎているんじゃないか、そういう方々が、体もだんだん動かなくなってきて大変だということで、御近所の方に経営なり農作業をやむを得ず委託するということがふえてきているのも事実だと思います。

 ただ、これは先ほど申しましたように、農作業の委託の場合であれば労働力の委託でありますから、経営者というのはやはりその委託者でございます。その意味で、交付金の支払いは委託者に、農作業の委託の場合はそういう形になるわけでありますけれども、そのことによって農地の流動化が阻害されるというふうには私たちは考えておりません。

 そしてまた、参議院でも何度も御指摘があったんですけれども、農業の法人化それから集落営農化、そういうものについては我々も否定をしているものではございません。そういうものも同時に進めていくということも大変重要なことですし、質問者の方々から何度も出るんですが、農業の大規模化というのも、これも一方で必要なことだろうと思います。

 ただ、現状として考えていくと、先ほどスピード化というお話がございましたけれども、確かにスピード化も必要ですが、そのことによって悪い方向に行ってしまうスピード化であってはいけないというふうに考えておりまして、私たちとすれば、その地域の方々が納得をして農作業の委託、農業経営の委託というものをしていくというのが前提でありますし、そのことによって農地の流動化が阻害をされるというふうには考えておりません。

 むしろ、今の品目横断のやり方でいけば、何かとられるような気分になってしまうのではないか。私たちとすれば、農家が一番危惧をしているのは、農作業の委託という形は違うかもわかりませんが、例えば農業経営を委託してしまうと、何か永遠に土地をとられてしまうような気分になってしまって、流動化が阻害をされるというような要因になっているのではないかというふうに考えます。

 その意味で、私たちは、この法案によってそのことが阻害をされるというふうには考えておりません。

西委員 私は、この交付金が農業経営に効果ありとするならば、やはりこの方向性というのは逆のベクトルに働くのではないかというふうに思っているところでございます。

 農地の流動化という観点から、この法律案が施行された場合にどのような影響があるというふうに見ているのか、政府の見解を示されたいと思います。

高橋政府参考人 今回の戸別所得補償法案でございますけれども、先ほど発議者からも御説明がございましたように、この法案の仕組みは、原則すべての販売農家を対象に所得補償を行うということでございます。

 したがいまして、現状の農業構造ということを前提、ベースとしておりまして、ここが抱えております脆弱な生産構造を変えていくというような仕組みというものを包含しているものではございません。また、そこへ向けてのインセンティブというものが働くというふうには私どもとしては理解しておりませんので、このような観点から農地の流動化を促すということではないというふうに考えております。

 なお、本法案につきましては、制度の詳細につきまして、今もお答えがございましたけれども、まだ私どもとしても十分判然としていないというところがございます。

 したがいまして、この影響というものを現時点で正確に申し上げることは困難でございますが、今御指摘の交付金の交付対象者の問題につきまして、農作業を委託している人には交付され、農地を貸している人には交付されないということでありますと、委託の内容、形態等にもよるわけでございますけれども、農地の所有者といたしましては、流動化の促進の仕組みが内包されていないということもあるわけでございますので、当面、農地の貸借による流動化という手法を選ぶよりも農作業の委託を選択する、そういう可能性が高いということは当然想定されるというふうに理解しております。

西委員 本格的な経営の移転が行われずに、農作業のみの移転が優先されるのではないかということについては、今の政府の答弁の中でも同様の見解が示されたということだと思います。

 続きまして、経営のあり方についてお伺いしたいと思います。

 これまでの農業政策は、生産ということに偏っていた嫌いがあります。同様に、生産する側も、専ら生産に努力を集中してきて、販売、需要の拡大というようなことについては余り熱心に取り組んでこなかったという認識を私は持っております。そういう意味で、生産する側も経営の形態やあり方を変えていかなければいけない、これが今後の農業の一つの課題ではなかろうかと私はずっと思っております。

 その意味で、今、ファーマーズマーケット、直売所などで、出荷のタイミング、販売量、価格などを自分で考えながら販売する高齢農家の皆さん、それから女性の農家などがふえてきております。マーケットへの参加を通して、彼らの経営感覚はいわば磨かれているんだろうと思います。さらに、アジア市場など海外市場の需要が増大している状況を踏まえて、農業法人などを中心に、輸出を強化しようという動きも見られるようになってまいりました。これらの動きこそが、閉塞的な日本農業の突破口になるというふうに考えております。そのためには、ファーマーズマーケット、直売所などの整備、さらに農業経営者や農業会社のような経営体の育成、支援が必要であろうというふうに思います。

 農業構造、すなわち農業経営のあり方についても、これまででよいというのではなくて、積極的に変えるべきであるというふうに思いますが、経営形態や経営のあり方について、発議者にお伺いをしたいと思います。

高橋参議院議員 先ほども述べさせていただきましたけれども、私どもは、農業の法人化、積極的な農業のやり方等について否定をしているものではございません。当然、農業をさらに進めていくためにも、そういうものも同時に進行させていくことが大変重要なことだというふうに考えております。

 私の家も農家なんですけれども、農家というのは、うちの米はどこよりもおいしいんだ、うちの野菜はどこよりもいいんだというふうに大体言うんですね。うちは米をつくらせたら技術は日本一だと言うんですが、それでは販売はどうなのか。これは昔から言われていることでもありますし、特に最近、いい農産物をつくっても、いい売り方はできないという農家がはっきり言って多い、多いというか大半ではないか。それを手助けするのがJAであったりそういうところであるべきなんですけれども、実はそういうふうにもなっていないというのも事実であります。

 その意味で、これからの農業ということを考えれば、マーケティングができたり、きっちりといいものをどういうふうに売っていくのか。私たちは、一次産業の生産、二次の加工、販売の三次、全部足して六次産業が農業ではないかというふうにも言わせていただいておりますけれども、まさに委員の御指摘のとおり、ファーマーズマーケット等で売っていくについても、情報の共有なり、そういう新しいやり方というのは大変重要なことで、そういう農業の法人化、会社化と言っていいのかどうかわかりませんけれども、そういうことも大変重要なことです。

 私たちは、この戸別所得補償法案でそのことを否定しているものではございません。そういうことも同時に進行しながら、日本の農業の今の現状を考えるのであれば、さまざまなやり方をやっていく、これが大変重要なことだろうというふうに思います。委員の考えておられることとほぼ同じようなことではないかというふうに思いますけれども、私たちは決してそのことを否定しているものではございませんので、そういうことに対して、農水省の側も今までも御努力をしていただいているんだろうと思います。

 ただ、私たちが考えてきているのは、今の品目横断的なやり方でいけばその基礎自体もなくなってしまうのではないかという心配を持っているわけです。私たちは、今、やりたいけれどもやれないという方々、その方々に対して、この戸別所得補償法案という形で補償をして、さらに前へ進んでいっていただきたい、そのことでこの法案を出させていただいております。

西委員 経営的な努力が必要だということについては共通の考えというふうに理解をさせていただきました。

 次に、民主党の考える生産調整についてお伺いをいたします。

 生産調整という言葉自体が当初いろいろやりとりがありましたけれども、そういう言葉でもいいというふうに理解をして、そういう言葉を使わせていただきました。

 民主党案では、生産調整に参加しない農家は交付金を受けられないということになっております。昨年十一月の六日の参議院農林水産委員会で、生産調整に参加しなければ、米価が下落したとき不利益をこうむるので、結果的に農家は生産調整に応じるだろうというふうに発議者は答弁をされております。

 民主党の生産調整への参加、不参加についてお伺いしたいんですが、米価の下落というリスクを負わないように生産調整に参加するのか、またはそうしたリスクを負うことを覚悟して生産調整に参加しないのかについては、個々の農家の選択にゆだねるという理解でいいのか、もう一度確認をさせていただきたいと思います。

高橋参議院議員 現在の中でもそうなんですけれども、米だけに限らないかもわかりませんけれども、基本的に米をつくるかつくらないかというのは、最終的には個々の農家の判断になると思います。

 ただ、同時に答弁をさせていただいておりますけれども、私たちは生産調整と呼ばずに需給調整というふうに呼ばせていただいておりますが、今まで国のやってきた生産調整が、ここのところ、生産者団体にもうほとんどお任せをするという状態になってきていることは委員も御存じだと思います。そのことによって、昨年産の米については大幅に余ってしまうことで、急遽、政府が緊急買い付けをやるという事態になったわけでありますけれども、その中でも論議が出ました。正直者がばかを見ているのではないか。きっちりと生産調整をしようとしても、それに従わないところがある。しかし、それに従わなくても従っても、利益それから損害は同じように享受をしてしまうというところに大きな問題があると私たちは考えています。

 その意味で、私たちは、国、県、市そして生産者団体、それから農家も含めて、それぞれがお互いにもっと緊密に連絡をとり合いながらつくっていく、そこに参加をしていく、そういう準備段階も当然必要だろうというふうに思っております。今の状態で、ことし生産調整をさらに厳しくするという農水省の考え方もあるようでありますけれども、しかし、厳しくするといっても、利益も損害も同じように享受するということであれば、それに逆らう方が当然出てくるわけで、今のままではその生産調整というのはうまくいかないだろう。その三者がきっちりと需給調整をした上で、そこに参加をすることでこの戸別所得補償というのが受けられるわけで、そこに参加をしない方にとってはその利益を享受することができない、そのことをこの中でうたわせていただいております。

 このことによって、今以上に、完全にできるかどうか、そこは難しいところがあるかもわかりません。しかし、今のやり方よりはさらにきっちりとできるというふうに私たちは考えております。

西委員 販売価格が高い米、人気の米を生産している農家、それから消費地である大都市圏に近い農家、そういう条件の方もいらっしゃいます。それから、販売先を既に確保している農家、兼業農家、こういうさまざまな農家の人は生産調整、いわゆる需給調整に参加しないという選択肢ももちろん考えられるわけです。特に、転作に不向きな土地で農業を営む農家や、転作を行う時間的な余裕のない兼業農家などは、結果的には生産調整に参加しない、もしくは参加できないということになるのではないかというふうに思います。

 これらの点について、発議者はどういうふうに考えておられるのか、さらに御答弁をお願いしたいと思います。

高橋参議院議員 おっしゃられるように、特に米については、銘柄米とそれほど人気がない米があるのも事実です。その中に価格差があるのも事実でありまして、入札によって大幅な価格差が開く場合も当然ございます。これは避けられない部分もあると思います。

 そして、委員が御指摘のとおり、生産調整に参加できないところ、そういうことはしたくてもできないという方々、それから、したくないという方々、そういう方々は当然あると思います。先ほど申しましたように、需給調整の中に参加をしていただけない方には当然不利益になるわけでありますので、私たちは、そのことをつくっておくことで、そこになるべく参加をしていただけるようにしていきたいというふうに思っております。しかし、先ほど話もしましたが、これは農家の努力も当然必要です。何でもかんでもいいんだというわけにはいきません。それはもう委員も同じような意見だろうというふうに思います。

 その中で、きっちりと需給調整に参加をしていただいて、このシステムに乗っていただくことで利益を享受できるようなシステムになっておりますので、それはそれぞれの方々に参加をしていただくという努力が必要になってくると思います。

 そのことによってこのシステムももっていくわけでありますので、当然、今の品目横断の中でも同じような話はありますけれども、米以外のものをつくり続ける、例えば大豆なりそういうものをつくり続けるというメリットも今以上に出てくるというふうに考えております。そのことによって、転作したくないというふうに思っておられる方も、お金が入るということになれば転作をしようかなという形にもなるわけでありますから、そのことのメリットということも私たちは考えていきたいというふうに思っています。

西委員 先ほど発議者の方からちょっと紹介がありましたけれども、昨年、米価の下落が大きな問題となりました。米の需要減少傾向と、それから過剰作付を背景として、直接的には全農の仮渡金の変更が影響を及ぼしたというふうに言われております。このように、市場は時に予想しがたい動きをするものであります。民主党の生産調整が米市場などにどのような影響を及ぼすのかということについてお聞きをしたいと思います。

 生産調整不参加の動きが米市場に及ぼす影響については、全体的に米価が下がるという単純なものにとどまらないのではないかというふうに思われます。例えば、人気があり販売価格も高い米については、生産量をふやしても、増加した分もまず優先的に売れると考えられます。供給量がふえますから、少し価格が安くなるかもしれません。そうした米が今までよりも安く手に入るわけですから、人気のない米はその分売れなくなり、現在不利な立場の米はますます不利な状況に全体的に陥っていくのではないかというふうに考えられます。

 そんな意味で、発議者は市場への影響というのをどのようにとらえておられるのか、お伺いをしたいと思います。

高橋参議院議員 先ほどの中でもお話をさせていただきましたけれども、銘柄米というか人気がある米と人気のない米、人気のないと言ってしまうと語弊があるかもわかりませんが、当然そこに価格差が生まれる、これはもういたし方がないところがあるというふうに思います。

 しかし一方で、委員も御案内のように、ここ一カ月ぐらい、アジアでの米の急騰、それから、きょうの日経にも、胡錦濤さんが来られて、中国への米の輸出についての進展があったようでありますけれども、そういうことを考えていくと、日本の米はまだアジアのほかの米とは価格差がございますけれども、私は実はおとといまでマレーシアへ行っていたんですが、向こうの新聞では、新聞一面に米の価格の話ばかり出ています。そのことを考えれば、私たちは、日本の米のこれから生き残る道というものも考えられるのではないかと思います。

 一方で、日本の中で見ると、最近の景気の動向等を見て、所得は上がっておりません。ガソリンの問題もございましたけれども、非常に価格に敏感でございます。その意味で、安い米に対する需要というものも当然あるというふうに考えておりまして、安全ということも考えれば、やはり国産の米を食べたいという志向も当然あると思います。その意味で、安いからさらに安くなっていくんだということにはつながっていかないというふうに私は考えております。お酒でも、非常に高い酒も売れるし、しかし、飲みやすい、飲みごろのお酒も売れる。それと同じでございまして、米についても、買いごろのお米もちゃんと売れていくということになっていくというふうに私は考えております。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

西委員 そこはそういう考えもあると思いますが、残念ながら、米の場合は農地に限りがありますから、数で稼ぐ、増産をするということに限界があるわけですね。ですから、安いお米がさらに圧力で下がっていきますと、結局、倍つくろうといったってそれはできないわけですから、限りある農地の中でどれだけ生産するかというところなので、かなり苦しい部分は出てくるのではないかというふうに思います。

 次に、交付金を交付されている農家と取引先との関係を考えてみたいと思います。

 生産者側が交付金を受け取っていることを見越して、買い手が価格の引き下げを要求してくるということも実際の経済取引では十分予想されるのではないでしょうか。そうなりますと、実質的には生産者は交付金額分もまともに確保できないということになりますが、この点について発議者はどういうふうに理解をされているのか、お伺いしたいと思います。

平野参議院議員 一般的に、補助金あるいは交付金、どういう形態でもいいんですが、そういったものが直接農家あるいは直接農家でない形で出されますと、それが直接間接的にいろいろな形で農産物の価格に影響を与えるということについてはよく言われているところであります。

 今回の場合は、直接農家への交付金ということになりまして、一部の学者には、これが農産物の価格に少なからず影響が出るんじゃないだろうかというような御指摘をされる方もおられます。

 しかし、あくまでも、農産物価格は必要性と供給との関係、需要と供給の関係で決まってくるというふうに私どもは考えております。例えば、市場の中で、ある特定の取引の買い手が、おたくは交付金をもらっているんだから米の価格はもうちょっと安くてもいいんじゃないかと言う方がいるかもしれませんが、それが市場全体の声になるかというと、そういうふうにはならない。そういう方はいるかもしれませんが、そういう方がいた場合には、生産者はもっと高い価格で引き取っている方々、引き受け手を探して販売することになると思いますから、大きい目で見れば、価格はやはり需要と供給の関係で決まってくるというふうに私どもは考えております。

西委員 民主党の提案している生産調整に関して、どのような影響があると考えられるのか、先ほど発議者に質問いたしました米市場への影響それから取引への影響について、政府の見解も聞いてみたいと思います。

町田政府参考人 今回の農業者戸別所得補償法案につきましては、米の生産調整実施者に対しまして、その所得補償をするための交付金を交付するということとされているわけでございますが、例えば、現行の産地づくり交付金のような転作に対する支援についての具体的な取り扱いがどうなるかなど詳細を承知しておりませんので、米市場や米取引に与える影響につきまして、現時点で見解を示すということは困難であるのではないかというふうに考えております。

 一般的な申し上げ方になりますが、米の販売価格に関係なく一定の水準の収入や所得を補償するような仕組みにつきましては、先ほど来、委員また発議者の方、議論ございましたが、価格面でどういった影響があるかといったことについてはさらに十分な議論が必要かなというふうに考えております。

西委員 大変慎重な御答弁でしたが、何をおっしゃっているのかよくわからなかったということです。

 最後に、法の規定について何点か、時間の範囲で質問させていただきたいと思います。

 これは前回も質問させていただいた内容ですが、交付金をいざ支給するという際の面積単価を決めるプロセスでございます。

 例えば、農業の担い手経営安定交付金法では、「農林水産大臣は、面積単価等を定めようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。」こういうふうに規定されております。公正、客観性を保つための審議会に関する規定は必要だろうと思うんですが、このことについてのお考えを発議者に御質問申し上げたいと思います。

舟山参議院議員 御指摘のとおり、法案上には特に規定はございませんけれども、具体的な単価を決定する際には、標準的な生産費はどれをとるのか、販売価格はどれをとるのか、どう設定するのか、もう既に前回もお答えしておりますけれども、審議会という組織かどうかはともかくとしまして、専門家、有識者、生産者、さまざまな方の意見を踏まえて、当然検討を行ってまいります。

西委員 新しい制度ができるというときには、できないということを想定されてこの法案を提出したわけじゃないと思いますので、そのときにはきちっとした形態を整えないと、いざやるというふうになってもなかなか動かないのではないかというふうな感じがいたします。

 もう一つ、昨年十二月十九日の当委員会で、法案の附則第五条の関係法令の整備に関して、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の改正が同時に必要だというふうに指摘をされております。食糧法の改正法案を今国会に提出されないと、今までの、例えば品目横断的経営安定対策なんかの例を見ましても、これが時間的には実際は間に合わないという矛盾が生じるのではないかというふうに思っておりますが、お考えをお聞かせください。

平野参議院議員 御指摘のように、附則の第五条で、関係法案の整備をしなければならないという規定が置かれておりまして、その中で、食糧法の改正が必要だというふうに私どもも考えております。

 基本的には、需給調整については、今は農業者あるいは農業団体の自主性にゆだねられておりますけれども、そこに国、地方公共団体が入ってくるといった規定をどのように置くかとか、あるいは、生産数量の目標につきましては、特に米に関してそうなんですけれども、都道府県あるいは市町村にも生産数量の目標を、私どもの法律では設定するようにしておりますけれども、食糧法との関係をどうするかとか、そういった調整が必要だと思っています。

 今の委員の御指摘は、今国会でないと間に合わないじゃないかということだと思いますが、全くそのとおりであります。施行が二十一年の四月一日からというふうに予定しておりまして、本来であればこの時期には食糧法もあわせて議論をしておくはずでありましたけれども、戸別法案の方が審議がちょっとおくれて、現在の段階では出していないという状況です。

 ただ、私は、この農業者戸別所得補償法案が皆様方にお認めいただければ、あとは需給調整あるいは生産調整をどのようにやっていくかということについての問題でございますから、これは与野党協議でその方向性が一致すれば、あとは技術的な問題をクリアするということでございますから、今国会での成立ということは問題ないというふうに思って、そんなに大きなハードルはないのではないかというふうに思っているところです。

西委員 時間がなくなりましたが、一番初めの議論に尽きると私は思うんです。

 これからの農業というものをどう展開していくかという基本的な部分、先ほども、今の現状を続けていって、そして農村がそのまま生き残っていけるという環境をつくることが、まずというふうにおっしゃいましたけれども、まず必要だという考え方、今の現状認識はそう変わらないと私も思っております、危機的な状況になっている、特に後継者の問題なんかは本当に急を要する問題だと思っておりますが。

 今の現状認識の上に立った今後の方向性は、今回出された戸別所得補償法案では切り抜けられないのではないかということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

七条委員長代理 次に、小里泰弘君。

小里委員 自由民主党の小里泰弘でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 参議院審議そして当委員会における審議を通しまして、民主党提出の戸別所得補償法案につきましての多くの矛盾点、問題点が明らかになってまいりました。

 まず第一に、対象農産物の範囲、生産調整の仕組み、支援単価や加算の仕組みなどを具体的には何も詰めていない、したがって、法案の体をなしていないということであります。

 すべての販売農家について所得補償するとしていながら、対象が限定され、畜産農家、酪農家、野菜農家、果樹農家等は対象から外されております。対象品目としての米、麦、大豆等につきましても、生産数量目標を課して、これに従わない農家は対象から外されます。

 補てん水準につきましても、所得を補償するとしていたにもかかわらず、米について提示をされた試算値を見ますと、所得どころか生産費すら補償しないものであります。麦、大豆に至りましては、生産費の補てん、転作加算のいずれも現行の補てん水準より低いものとなりまして、これでは、新たな交付金を払う米に対して、麦、大豆の収益性が逆進をします。そのために生産調整は阻害をされる、麦、大豆の生産拡大にはつながらないというものであります。

 廃止するとしていました米の生産調整も、名目を変えて需給調整としてさらに強化をして実施するというものであります。

 補てん単価は全国一律であります。したがって、コスト削減の厳しい小規模農家あるいは高齢農家を救う手だてとなっておりません。その上、小規模農家や高齢農家に対応せんがための集落営農などの処方せんに乏しいと言わざるを得ないのであります。

 さらに危惧すべきは、どうしてもこの法案の裏に貿易の完全自由化への意図があるということがぬぐい切れないわけであります。

 また、最も本質的なところでは、補てん以外の政策の用意がない、したがって、あるべき農業、農村のビジョンも、そこに行かんがための体系立った政策もないわけであります。

 一兆円の算定根拠は今に至るまで不明確であります。財源の手当ても二転三転をし、制度全体として現実性に乏しいものであります。

 以上のような問題点を踏まえまして、きょうはさらに個別具体的に詰めさせていただきたいと思います。

 まず、一兆円の積算根拠、財源についてお伺いをいたします。

 民主党は、戸別所得補償に要する費用を一兆円と一貫してやってまいりました。この一兆円という数字は民主党のマニフェストや政策ビラ等を通じて派手に宣伝をされまして、いわゆる一兆円の所得補償として参議院選挙を戦う上で大変強烈なインパクトを持ったと推測をされるわけであります。ところが、国会審議における答弁では、「この一兆円は宣言であって積算根拠はない」ということでありました。我々一同唖然としたわけであります。

 あるいは、販売価格が生産費を下回る農産物は対象とし得るとしながら、今に至るまでまだまだ具体的対象品目が不明確であります。潜在的需要がわからないわけであります。

 補てんの水準につきましても、私どもが、「麦、大豆の試算値が現行の補てん水準よりも低い、したがってこれでは生産が拡大をしない」ということを指摘いたしますと、「そうであるならばもう一回検討し直す」旨の答弁でありました。全くもって、補てんの基準があるようでないような状態であります。

 経済法案であり、一兆円という莫大な額をつぎ込むのに、まず、納税者に対して何にどう使うのか、あるいは生産者に対して何にどうもらえるのか、そういった説明がなされていないわけであります。具体的積算がないと予算の必要性を論証できません。法案審議にたえられない、法案の名に値しないと考えます。

 財源につきましても、当初は、農林公共事業の予算や生産調整の予算を充てる、あるいは農林予算を組み替えて捻出するとおっしゃっていました。それでは難しいと判断されたのか、最近では、予算全体の無駄を削って調達すると言われております。二転三転しているわけであります。

 一兆円の積算根拠、そして財源について、改めて見解をお伺いいたします。

平野参議院議員 まず、一兆円の考え方につきましては、こういう答弁で一貫させてきたつもりであります。

 まず、現行の農林水産予算の中で、品目横断経営安定対策関連の予算を初めとして、それがそっくりそのまま化粧がえといいますか衣がえして使える予算が大体三千六百億円ぐらいあるというふうに考えています。あと残りにつきましては、農林水産予算が二兆七千億ございますから、これについてはさまざまな工夫をして一割程度の圧縮をしていただいて、節約をしていただいて財源に充てる。残りの部分について、大体三千億から四千億ぐらいになると思いますけれども、国全体の予算の見直しの中で財源を生み出していくということで考えているということでございます。

小里委員 民主党は、一兆円の所得補償で食料自給率五〇%を目指すとされております。

 ちなみに、自給率五〇%と仮定した場合の麦、米、大豆の生産量を前提として、まず、民主党の公約にありますように生産費まで米を所得補償する。そしてこれに見合うだけの補てんと転作加算を麦、大豆に行う。そのように仮定をいたしますと、米、麦、大豆だけで約一兆五千億円かかるという計算になります。ほかの品目もあります。

 また、これも民主党のビラにあったところでありますが、もし貿易の完全自由化を前提とした価格下落分まで補てんしようとなりますと、途方もない金額、四兆、五兆以上の金額が必要になると試算をされます。

 予算全体の無駄を省いてとか、事あるごとに民主党はおっしゃるわけであります。そうおっしゃるならば、例えばおっしゃるように基礎年金の全額国庫負担をしようとすれば、これだけで新たに十五兆円かかります。子供手当で五兆円、あるいは高速料金の無料化、中小企業の対策費、道路財源等も含めて、民主党がおっしゃる政策を全部実現しようとすれば、ざっと数えても三十五兆円以上が必要になるわけであります。今、国の、政府の一般歳出が四十七兆円でありますから、もう一つ国の財布が必要になる、そんな計算になります。全くもって、全体の整合性もない、ただ単に国民受けだけをねらった無責任な議論であるということを指摘させていただきたいと思います。

 続きまして、集落営農についてお伺いをいたします。

 三反でもいい、五反でもいい、みんなで農地を持ち寄って経営の効率化を図っていこう、一台の機械を上手に使ってみんなでやっていこう、あるいはまた、みんなで共同で肥料や資材を仕入れて効率化を図って、コストを下げて所得を上げていこう、これが集落営農であります。また、集落営農は、先ほどもありましたように、加工や販売といった経営の多角化にも道を開く、マーケットに有効に対応していこうという、そんな機能も期待をされているところであります。

 そして今、現にいる担い手を大切にすると同時に、新たな担い手をしっかり確保して育成を図っていく、これが大事な要素であります。そのために、所有する農地の規模に関係なく、たとえ農家の子弟でなくても、農業に意欲を持ってやっていこう、そういう人材に対して開かれた営農環境がなくてはなりません。そういった観点からも、集落営農には担い手予備軍の受け皿としての機能がまた期待をされております。

 民主党案には、このような視点が極めて薄い、集落営農自体に熱心ではないという印象を受けております。お金さえ渡せばあとは現場が考えるとばかりに、集落営農にしても担い手育成にしても、具体的に導こうとしないわけであります。ただ戸別にお金を渡すだけ、まさに戸別でありトベツなんですね。これでは農村はばらばらになってしまいます。集落営農に対する民主党の考え方をお伺いいたします。

平野参議院議員 まず冒頭、先ほどの財源問題について若干の御答弁をさせていただきたいんですけれども、自給率を上げるということを旗印として掲げる以上、生産費と市場価格との差を補てんするという制度はどうしても必要であります。その差をだれが補てんするかということになりますと、これは市場が補てんするのか国が補てんするのかわかりませんが、私どもの考え方とすれば、国が補てんをする、その中で所要の財源が必要になってくるということでございまして、私どもは、まず一兆円という額を提示申し上げた。その一兆円の額を上手に使いながら、何とかして自給率を五〇%に上げていきたいということを提示したということであります。

 それから、集落営農につきましては、私どもも集落営農の必要性については再三答弁申し上げてきましたけれども、十分認識しておるつもりであります。ただ、政府の集落営農の考え方と私どもの考え方の違いは何かといいますと、政府はこういう経営体をつくれということを指示したということでありまして、集落営農につきましても、例えば経理の一元化でありますとか生産法人の計画をつくらなくちゃならないとか、規模についても原則二十ヘクタール以上とか、後でこの規模要件については見直しをされておりますが、さまざまな条件をつけている。それから、品目横断対策の要綱を見ても、大変分厚い要綱になっております。高齢者農家が大半を占める農村において、その高齢者がわかるような仕組みになっていない。

 そういうことよりは、むしろ、今やっている農家の方々の生産意欲を大事にしながら、支えながら、しかし、やはり農業構造、農村構造は急速に変わっていくというふうに考えておりまして、その中で、地域に合った集落営農、生産組織、法人化あるいは流動化、こういったものを集落ごとに計画をつくってやっていくような仕組みが大事ではないか。その前提としてこういった農業者戸別所得補償法案を提出させていただいたということでございます。

小里委員 ありがとうございました。

 集落営農あるいは品目横断につきましても、その手続書類は半分とか三分の一になったわけでありまして、かなり簡素化はしておる。その要件につきましても弾力化を図りまして、希望すれば、意欲を持って取り組めばだれでも参加できる、そんな制度に改善をされつつあるということは御存じであろうと思います。

 小規模農家も高齢農家もみんなで手をとり合って担い手になるのが集落営農であります。兼業で忙しかったら、あるいは高齢で作業がきつかったら若い者に任せてください、そういう機能もあります。集落営農は、産業政策であると同時に農村政策でもあり、いわば新しい村の形とも言えるわけであります。その集落営農が着実に生まれつつあります。さらに規模拡大をしよう、販売の仕方も工夫しようという、そういった意欲も出てきております。そして、若い人が、あるいは定年組が、こんなに頑張っている集落だったら飛び込んでみよう、そう思える集落を目指してまいりたいと思います。

 集落営農に無関心ではないという御答弁でありましたが、さらに素直に取り組んでいただければと思います。

 続きまして、本題でございます直接払いのありようについてお伺いをいたします。

 民主党農政には担い手育成の視点がどうしても薄いと感じます。農業基盤整備も農村振興策も視点が薄いものであります。あたかも、直払いさえすればすべてが解決できるかのような主張であります。我々も直払い自体を否定するものではないんです。現行制度でも五千億近いものをやっております。さらに、状況に応じてこの直払いを充実拡大させていく必要性も感じております。

 しかしながら、直払いだけではやはりだめなんですね。国民に安定的に食料を提供するという食料政策、産業として自立できる農業経営を目指す農業政策、そして地域振興策としての農村政策、さらには、国境措置等も含めて総合的な政策のパッケージ、すなわち総合農政でもって初めて農業、農村は守られ、育っていくんだと思っております。失礼ながら、民主党案のようにビジョンも哲学もない、ただ無原則にお金だけ配っても、農業の実力が上がるわけではありません。担い手が育成されるわけでもありません。コストを下げて所得を上げていこうという動きが出てくるわけでもありません。そのきっかけすらつくらないものであろうと思います。

 農村には、若者が見たときに参入したいと思える魅力ある経営環境が必要であります。幾らかお金はくれるらしい、でも、現状固定的で発展性がない、効率が悪い、産業として成り立ちにくいでは、若者が農業に入ってこないわけであります。農業は、ただ単なる社会保障の対象ではありません。やれるものはそれを目指して頑張る、産業としても成り立つ農業構造を目指していかないといけないと考えます。いかがでありましょうか。

平野参議院議員 まず、小里委員と私どもの間には現状認識に随分差があるなということを改めて感じております。

 まず、望ましい農業構造とか農地流動化を進める以前に、今の農村、特にも中山間地域の農村はどういう状況になってきているか、この認識をどのように持つかによって、今回の農業者戸別所得補償法案の見方が変わってくるのではないかというふうに私どもは思っています。

 これは何回も申し上げたとおりでありますけれども、基幹的農業従事者の六割以上はもう六十五歳以上。岩手県なんかでは、基幹的農業従事者の方々は、多分、六十八歳以上が六割以上とか、もっと高齢化が進んでいると思います。しかも、日本は人口減少社会にもう入ってきている。その人口減少社会の波は特にも農山村に押し寄せているという状況の中で、現に農業従事者が減りつつある、しかも急速に減りつつあるというこの状況をどのようにとらえるかということだろうと思います。

 その中で、自家労賃をとらない高齢者の方々が農業をやっておられる、農家、農地を守っている。そういう状況の中で、もうけていただくまでの所得補償はできませんけれども、まずは、一定の所得補償をして経営の安定を支える、経営の安定に資するような制度を用意する。その中で、あの家はあと五年、十年すれば後継者もいないというのはみんなわかっていますから、先ほどの答弁の繰り返しになりますけれども、そういった地域の状況を踏まえながら集落営農をつくっていく、あるいは農地の流動化を進めていく。その延長線上に、望ましい経営体、地域としての経営体あるいは担い手、そういったものができるような基盤づくりをまずはするんだということが非常に大事だというふうに私どもは思っております。

 私は、少なくとも、食料・農業・農村基本計画の中で示されているような望ましい経営体、このことについてはこの委員会でも申し上げましたけれども、ここにおられる委員のだれか一人でも、この望ましい経営体が将来の日本の農業の経営体だということを地元に帰って自信を持って言えますかということだろうと思います。それ以前に、まずは支えなくちゃならないものがある、しなければならないものがある、そういうことでこの農業者戸別所得補償法案は位置づけられるのではないかというふうに思っています。

小里委員 その現状認識はほとんど変わらないと思いますし、一緒の思いを持っております。

 ただ、その「まず」の部分が、この補てんの基準にしても対象品目にしても、財源の積算根拠にしても、全くあいまいでありまして、「まず」の部分にも対応できていないんです、民主党のおっしゃるこの制度は。やはりこの民主党案というのはちゃんとした処方せんが準備されていないと思うんです。高齢農家や小規模農家をひとりぼっちにする政策であると思います。ただ幾ばくかのお金を渡して、後は一人で長らえろ、そう言っているように私には聞こえます。

 このお金は一時的な痛みどめにすぎません。やはり痛みの原因を根本から治療するものではないと思うんです。痛みどめを打たれた人たちは、まだ頑張れるんだと、そのことには気づかないで、やがて体力の限界が来ます。やはり直払いだけではだめなんですね。それも大事だけれども、総合的な政策で構造改革を図っていかなければいけない。そのことをあえて申し上げておきたいと思います。

 それと、ついでで恐縮ですが、民主党は、先般のこの質疑におきましても、ヨーロッパ、EU、特に英国が直払いでもって自給率を上げてきたということをおっしゃっていました。

 あれは、確かに、一九七〇年代から生産を上げ、自給率を上げてきました。その過程では、価格支持政策、そして国境措置としての輸入課徴金でもって生産を上げてきたんです。その背景には、規模拡大が進んでいた、あるいは食生活の変遷がなかったというものがあります。そして、一九九〇年代に入りまして、さすがに財政需要が過大になってまいりました、あるいは生産が過剰になってまいりました。そこで、生産を抑制するために、価格支持を引き下げながら直払いを本格的に導入したわけです。その延長線上では、当然、生産は下がったし、自給率は下がっていったわけであります。イギリスと我が国とは全く背景が違うし、制度が違う、制度の目的も違うわけであります。

 そういったEUからもし学べるものがあるとすれば、規模拡大、あるいは確固とした国境措置である、そのことをやはり学ばなければいけないんだ、そんなふうに思います。ただやみくもにEUのことを信じてそのまねをするとするならば、これも失礼ながら、「鵜のまねして水におぼれるカラス」という言葉がありますが、そんなふうになってしまいかねない。そのことをあえて申し上げておきたいと思います。

 続きまして、食料の完全自給なるものについてお伺いをいたします。

 民主党の公約には、「食料の完全自給への取り組み」が記載されております。完全自給、すなわち食料自給率一〇〇%を目指すものとして有権者に対してかなり強烈なインパクトを持ってきた、そのように理解をいたします。

 ところが、公約をよく読むと、国民が健康に生活していくのに必要な最低限のカロリーは国内ですべて生産する体制を目指すとあります。これを見る限り、現在の食生活水準のまま一〇〇%の自給率を目指すものではないというふうに考えられます。もし不測の事態への対応を想定しているとすれば、それは、輸入が途絶えたら自給をしなければいけないと、当然のことを言っているにすぎないわけであります。そのような不測の事態には、使える農地を総動員してカロリー効率の高い芋を主体にして作付をすれば、いわば芋を食うような生活をすれば、いや応なく自給率一〇〇%になります。こういうことをもし想定しているとすれば、あえて食料自給率一〇〇%を目標として打ち出す意味はないということになるんですね。

 逆に、今の食生活水準をそのままにして食料自給率一〇〇%を目指すとすれば、現在の農地の三・五倍の農地が必要になります。これは現実的に不可能であるということは御理解いただいていると思います。

 民主党の主張は、食料自給率と不測の事態における食料安保の概念を混同して、あたかも今の食生活水準を維持したまま自給率一〇〇%が可能であるかのような印象を与えるものでありまして、全くフェアではない、まやかしではないかと思うところであります。

 大事なことは、食料生産に必要とされる農業資源を利用可能な状態にしておくこと、すなわち、農地と水と人材を確保して食料の絶対的な供給力を確保することにあると思いますが、見解をお伺いいたします。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

平野参議院議員 まず、今の御質問の答弁に入ります前に、またヨーロッパの話に関してちょっと触れさせていただきたいと思います。

 小里委員御指摘のように、国境措置あるいは価格支持でもって農業を保護してきたということは、そのとおりだと思います。日本の場合も、国境措置と、特に米なんかでは顕著にあらわれているわけでありますけれども、価格支持によってこれまで農業を守ってきたということです。

 違いは何かといいますと、ヨーロッパは、まさに小里委員御指摘のように、国境措置も徐々に下げてきている、そして価格支持政策の見直しもやってきた、そのセットとして直接支払いを入れてきたということなんです。日本は、貿易の自由化の中で、農産物の自由化も随分進めてまいりました。米については、価格政策についても、市場で米価を決定するというシステムを入れてきました。その結果、価格が下がりました。外国の安い農産物が入ってきました。本来、農家、農業振興を図るために必要な直接支払いというのは、日本は全然やってこなかったわけです。それがヨーロッパと日本との違いであって、少なくとも、ヨーロッパの中で今まで進めてきた政策の中では見習うべき政策ではないかというふうに私は考えているということで、この委員会でも、あるいは参議院の委員会でも答弁を申し上げてきたとおりであります。

 それから、二点目の完全自給につきましても、これは、今いろいろデータを挙げられまして、今の食生活を前提として一〇〇%の自給率というのは、例えば農地面積が三・五倍必要だというような御指摘がございましたし、それは大変なコストがかかるんだろうと思います。現実問題として、今の食生活を前提とする限りにおいて、一〇〇%の自給率を達成するというのは大変難しいことだろうということについては共通の認識に立っております。

 一〇〇%というのは、国として農政を進める上では、やはり国民が食べる食料については一〇〇%の方向を目指すべきではないかということでの一つの方向性を言ったものだということについては、この委員会でも答弁を申し上げてきました。そして、自給率を上げるということについては、何としてもこれはコストがかかるということでございまして、今回の場合、一〇%上げるのに一兆円の中で七千億というふうな試算を私どもは発議者試算で出しましたけれども、これを前提にしますと、一%自給率を上げるのに七百億円かかります。これだけでも大変なコストがかかるわけです。しかし、それでもやはり進めていかなくちゃならないということであります。

 自給率については大変なコストがかかるんだということを意識しながら、しかし、小里委員がまさしく言われましたように、利用可能な資源を将来にわたって保存していくんだという意味において、今、三十九万ヘクタール以上の耕作放棄地がありますけれども、そういった耕作放棄地の解消、あるいはこれ以上耕作放棄地を拡大させないためにも、やはりしっかりとした支援が必要だということで、今回の農業者戸別所得補償法案を提出させていただいているということでございます。

小里委員 ありがとうございます。

 我々も直払いは大事であると思っております。ただ、EUの場合は、生産抑制に向かう過程で、そのために直払いを導入した、そういう歴史があるということは御認識をいただきたいし、かの国々と日本とは事情が違うんです。そして日本では、直払いにプラスして、例えば国境措置等も入れますと五兆円以上の国内農業のための支持を行っているわけであります。そういった総合的な中でやはり評価をいただきたいし、その一部分だけをとらえて他国と比較をして、そこだけを責める、そういうやり方はやはりフェアではないということを申し上げておきたいと思います。

 前回も指摘しましたように、民主党は、過去最大生産量をもとにした自給率五〇%コース、過去最大単収と過去最大作付面積をもとにした自給率六〇%コース、果ては世界最大単収をもとにした自給率一〇〇%コースといったように、全く現実離れをした、政策とは言えない食料自給率なるものを振り回して人心を惑わしてきたということを私は危惧しております。やはり反省はされるべきではなかろうか、そんなふうに思います。

 続きまして、規模拡大についてお伺いをいたします。

 民主党の法案をよく見てみますと、交付金額の算定に当たりましては経営規模の拡大を加味するとあります。すなわち、民主党法案におきましても規模拡大の必要性を認めております。政府・与党の政策を大規模農家優遇として批判をしておきながら、一方で、目立たない形で規模加算を書き込んで規模拡大の担保をとっておく、このようなやり方はどうなんでしょうか。これも余りフェアではないと思いますが、見解をお伺いいたします。

舟山参議院議員 構造改革の必要性や規模拡大につきましては、今までも何度も御答弁させていただきましたとおり、全く否定するものではありません。

 ただ、名前は変わりましたけれども、今の品目横断との違いは何かというと、入り口段階で縛りをかけて、国が、この経営体を育成するんだ、こういった望ましい経営体でなければ支援の対象外にするといった今のやり方ではなくて、入り口で、意欲を持って生産活動をしている農業者をしっかりと支えて、その上で、規模拡大を促したり、まさに法人化を促したり組織化を促したり、そういった違いでありまして、私は、今の農村の現状というのは、この人は助けるけれどもこの人は対象外ですと選べるほどぜいたくな状況にないと思っています。

 そういった意味で、望ましい経営体を一つ提示するのではなく、すべてを支えて、その上で、もちろん規模拡大も必要です、組織化も必要です。でも、あえて組織化について言わせていただければ、集落営農とか法人化というのは強制的にできるものではありません。やはり現場での長年のいろいろな取り組みが必要なわけであります。ですから、私の住む地域でもそうですけれども、なかなか組織化、法人化が進まない、確たるリーダーがいない、うまく動かない。でも、そこがやる気がないのかというと、そうではないわけです。

 今、法人化に行ける、組織化できる、そこだけを救うだけでは農村は崩壊してしまう。そういった意味で、私たちは、入り口で選抜する、縛るのではなく、すべて下支えして、その中で、では、少しでもこの規模を拡大しよう、何か組織化しよう、例えば環境に優しい農業をしよう、そういう動きに対して支援をして構造改革を促すというものでありまして、そこのスタート地点の考えが違う。目指す方向は否定するものではないということであります。

小里委員 ありがとうございました。

 そもそも、戸別に補てんすると言いながら、規模拡大を書き込んでおられます。これはやはり論理矛盾なんですね。戸別とは、ばらばらに払うという強烈なメッセージであります。それは、規模拡大や組織化あるいは農地の集積といったような概念とは相入れない考えであります。どうしてもそのことは指摘をさせていただきたい。ただ単純にばらばらに払う仕組みでは、経営規模の拡大、効率化は進んでまいりません。やはり将来へつながる取り組みに払ってこそ、お金が生きてくると思います。

 続きまして、米の備蓄三百万トン体制についてお伺いいたします。

 民主党の参議院選挙時の公約では、米の備蓄三百万トン体制を確立し、それを超える余剰米と一定期間保有した備蓄米を海外援助やバイオマス利用に充てるとしております。そして、これは棚上げ備蓄であるとの答弁もありました。

 備蓄米や余剰米を海外援助やバイオマス利用に充てる場合、多額の差損が発生をする、保管費用もかかるということは、既に御指摘があったとおりでございます。仮に一俵一万円で買い入れたとしても、約五千億円の費用がかかります。三年間で償却するとしても、年間一千六百億円以上であります。所得補償はこの三百万トンにもかかってくるでありましょうから、実際の費用はもっとふえるという計算になります。

 備蓄三百万トンの具体的根拠も乏しいし、余剰米についても海外援助用等に用いて処理するといった姿勢を示せば、いよいよ生産過剰となり、米価は暴落する懸念すらあります。今でも年間七十万トンのMA米の処理に苦労しております。国際価格との関連におきまして、簡単に援助先が見つかるわけでもありません。そこに三百万トンの備蓄構想とは、およそ現実的感覚を欠いたものと言わざるを得ません。

 今、民主党においてこの構想は検討中であるやに聞いておりますが、実際どんなふうになっておりましょうか。

平野参議院議員 今の御質問の中に三百万トンという御指摘がございまして、これにつきましては、仮に三百万トンを棚上げ備蓄でやるということになりますと、その必要性、それからコストといったことが大きな問題になるということについては、まさに委員の御指摘のとおりだと思います。そういったことも含めまして、まだ今党内では議論をしておるところであります。

 ただし、備蓄の方式については、私どもは、回転方式ではなくて棚上げ方式がいいという認識では一致しております。棚上げ方式と回転方式の違いについてはきょうこの場ではあえて触れませんけれども、その方向性では一致をしているということでございます。

 あと、今お話ありました、MA米を備蓄の中にどのように位置づけるかといったことも含めて、今検討しているということでございます。

小里委員 三百万トンの備蓄構想は一たん引っ込めて、今いろいろな問題点を再検討しているという答弁であったと思います。それでよしとするのか。

 例えば、「すべての農家の所得補償」「貿易自由化の推進」「食料の完全自給」「そして備蓄三百万トン」と、いかにもいいとこ取りでインパクトのある打ち出し方をして、これで国民の歓心を相当買われたわけであります。票も集められたわけであります。そして、いざ法案を出して議論にたえられないとなると、いとも簡単に引っ込める、はぐらかす、修正をする。それで責任ある政党の対応と言えるのでありましょうか。反省を求めたいと思います。

 続きまして、小規模農家切り捨て批判についてお伺いをいたします。

 民主党は、現行の制度について、小規模農家切り捨てとのいわれなき批判を繰り返してこられました。民主党の新しいビラにおきましても相変わらず、現行の制度が、四町歩以上、二十町歩以上ないと支援の対象とならないかのような表現であります。

 まず、従来の制度において、高齢者や小規模農家であっても、集落営農にまとまったり、あるいは認定農家に賃貸借をしたり、作業委託によりまして、農地を集めることでみんなが安定対策に参加できる仕組みになっております。集落の農地が少ない場合の面積緩和要件の特例措置もあります。

 さらには、今年度からは、制度の改善によりまして、地域に認められた認定農業者を経営規模や年齢に関係なく経営安定対策の対象とできるようになりました。これは、地域農業の牽引車たる生産者について、地域で定める認定農家と品目横断対策上の担い手といういわばダブルスタンダードが存在していた、これを現場に合わせる形で一致させたとも言えるわけであります。あるいは、制度の弾力化、手続の簡素化などによりまして、さらに小規模農家や高齢者が参加しやすい仕組みになっております。農家の皆さんが知恵を絞ればみんなが対策に参加できる仕組みになっているわけであります。

 また、米につきましては、言うまでもなく、品目横断策に参加をしなくても従来どおりの支援を受けられます。畜産、酪農、野菜、果樹などの経営安定のための対策、農業生産基盤の整備、農業災害の補償、農地、水、環境保全向上対策などのいわゆる農村振興策、それぞれが経営規模に関係なくきめ細かく農業、農村の支援を実施しております。小規模農家切り捨ての批判は全く当たらないと考えます。

 民主党の批判は、新たな経営安定対策によりまして喫緊の課題である土地利用型農業の構造改革に取り組もうという、その姿勢を逆手にとって中傷しているにすぎないと思うわけであります。この期に及んでなおかつ切り捨てだ、選別だと言われるのであれば、新たな制度を実施した結果、一体どの品目でどのぐらいの人が切り捨てられたのか、お答えをいただきたいと思います。

高橋参議院議員 先ほどからお話を聞かせていただいておりまして、平野発議者の方からもお話ありましたが、私どもと現状認識が随分違うなということを感じさせていただきました。

 先ほどの集落営農についても、そのような形でやれるのであれば、確かに、大規模化をして、集落営農化をして積極的な農業をしていくというのは、これはいいことだろうというふうに思います。

 しかし、現状は、先ほど平野発議者が言ったように、大変高齢化が進んできていて、岩手では六十八歳ということでありましたが、私の地元であればもっと高いのではないかなというふうに思います。そういう中で、品目横断に乗ろうとして、それぞれの地域でみんな必死に頭をひねりながら、集落営農二十ヘクタール、緩和はされたということでありますけれども、あくまでも基本はそういうことでありますから、それに乗っかろうということで今一生懸命やっておられますけれども、それに乗れない地域というのはかなりございます。

 その意味で、最初のところから基準を決めて、大規模でないとそれに対して助けていかない、そういうことから私たちは小規模農家の切り捨てではないかということをずっと言わせていただいているわけで、現状をぜひ見ていただきたい。それぞれの地域では、そうやろうと思ってもできないという現状が物すごく日本じゅうに広がっているということをぜひ御認識いただきたいというふうに思います。

 そして、先ほど来委員もおっしゃっておられますけれども、今の日本の農業を発展させていく、救っていくためには、私は、一つの法律でできるものではないというふうに感じております。そのために農水省としても過去何十年もいろいろな政策を打ち出してそれぞれ努力をしてきていただいているわけでありますし、私たちの出している戸別所得補償法案で今の日本の農業が全部完璧になるというふうには考えておりません。しかし、それぞれのさまざまな施策の中で、それと総合的にやっていく。

 私たちは、大規模農家も否定をしておりませんし、集落営農も否定をしておりません、積極的な農業をやっていくということも否定をしておりません。それぞれのいろいろな部分をあわせた上でやっていくということが大変重要なことだろう。それは委員も同じような感覚だろうというふうに思いますけれども、まず現状を考えたら、今このままほっておけば多分あと数年で大変なことになってしまう。その中で、日本の農業を守り、そして地域を守っていくためには、私たちのこの戸別所得補償法案、まずそこが第一歩ではないか、そのように考えてこの法案を提出させていただいております。

小里委員 強い農家も必要だ、あるいは効率化も必要である、規模拡大も必要であると。大分考え方が近づいてきたような気がいたします。

 ちなみに、新制度になりまして、米や大豆では以前の施策を上回る加入実態があります。担い手の数も認定農業者数で二十万人から二十四万人、あるいは集落営農の数でも一万から一万三千へと、この一年だけで着実にふえております。こうした実態を見れば、小規模農家切り捨てではない、みんなで手を携えて担い手になろう、そういう政策であることが御理解いただけると思います。ぜひ、そういったいわれなき批判はお互いもうやめにして、これからしっかりお互いに議論をしていきたい、そんなふうに思います。

 続きまして、民主党農政と貿易自由化の関係について触れないわけにはいきません。

 まず、小沢代表は党首討論の中で、自由貿易によって市場価格が生産費より下がった場合に戸別所得補償で不足分を補うと言明しております。民主党の公約には、「WTOにおける貿易自由化協議及び各国とのFTA締結の促進と、農産物の国内生産の維持・拡大を両立させます。そのために、「戸別所得補償制度」を創設します。」とあります。まさに貿易自由化と戸別所得補償がセットになっております。

 こう言っておいて戸別所得補償制度を進めるとするならば、貿易自由化への準備がいよいよできた、そういうメッセージを発することになるんじゃないかと思いますが、いかがでありましょうか。

平野参議院議員 この件につきましても何度も取り上げていただきましたけれども、何度も答弁したとおりの答弁をさせていただきたいと思います。

 日本は貿易立国でありますから、貿易の自由化ということについては積極的に進めなくちゃならないということだろうというふうに思っています。しかし、だからといって、自給率が三九%まで落ち込んでいる、農業従事者もどんどん減っていくというこの状況を看過するわけにはいかないということでありまして、守るべきものは守っていく、それから振興すべきものは振興していくんだ、そういう考え方でこの農業者戸別所得補償法案を提出したということでございます。

 それで、何か、自由化を前提に、自由化を前提にということを何度も何度も繰り返しておられますが、これも申し上げてきたとおりですけれども、どうも与党さんはそういうふうにしたいんですかね、民主党の位置づけを。少なくとも、今まで農産物の自由化も、政策として、オレンジの自由化あるいは牛肉の自由化じゃないですけれども、与党さんもずっと進めてきました。結果として、今このような日本の農業の状況になってきている。これでいいのかという問題意識については、恐らく私どもは与党さんよりはもっと強い意識を持っているのではないかということだけは申し上げておきたいと思います。

小里委員 ありがとうございました。

 そうしたいということじゃなくて、どうしても心配なんです。例えば、既にさんざん指摘をしてまいりましたし、この委員会審議を通じても御指摘がありましたが、民主党の政策ビラの中で、中国からどんなに安い野菜や果物が入ってきても、その下落分を補てんするとあるんですね。米一俵一万五千円が五千円になっても補てんするとある。明らかに貿易自由化を前提にした記述になっているんです。あなた方の公式の文書がそうなっているんです。

 小沢代表も、みずからが貿易自由化論者であるとの立場を今に至るまで変えておりません。国会対策上いよいよ大事な場面というときに、小沢代表のツルの一声で民主党の方針がひっくり返るということを痛いほど経験してきております。小沢代表の意思が民主党の最終的な意思なんです。もし小沢代表が自分は貿易自由化論者ではないとおっしゃるんだったら、自分の口でそうおっしゃるんだったら我々も納得をいたします。ぜひそこをお願いしたいと思います。

 続きまして、補てん単価について別の角度からお伺いいたします。

 国会論議の中で、民主党案における補てん単価は全国一律であることが明らかになりました。気候条件や地域条件、経営条件が異なる中で、同じ米でも、産地、品種、銘柄によって値段が異なります。そういった中で、全国一律の補てん単価でいいんでしょうか。何より、大規模農家と小規模農家で生産コストが違います。コスト削減のできている大規模農家は救えても、コストの高い小規模農家、高齢農家はカバーできないんじゃないかと思います。本当に困っている、助けるべきところを助けられないのではないか、そういったことを危惧するわけであります。

 この補てん単価につきましては、後ほど赤澤委員も質問をされる予定であります。そのときにあわせて御答弁をいただきたいと思います。

 さて、時間もあとわずかとなりました。そこで、民主党農政に改めて意見を言わせていただきたいと思います。

 民主党農政と貿易自由化の関係、今お話にございました。そこはぜひ、今後、公の場でしっかり詰めていただきたいと思います。

 民主党案では、生産費と価格の差を埋める努力もせずに、ただ補てんだと言うだけで、その先にあるべき農業、農村の姿は見えてまいりません。むしろ、安定的、効率的経営に向けての努力を阻害するものと言わざるを得ません。

 民主党は、参議院選挙時における国民との約束を果たすためにこの法案を出されたはずであります。ところが、対象品目にしても補てん水準にしても、随分と話が小さくなりました。あるいは、生産調整にしても規模拡大にしても、随分と話が違ってまいりました。国民との約束を果たすものになっていないと言わざるを得ません。

 一兆円の算定根拠や財源はいまだに不明確であります。具体面については政令や省令にゆだねる部分が多いものとなっております。これこそ官僚任せであります。法案に哲学がないから、投げられた方も困るだろうと思います。立案不能だと言わざるを得ないわけであります。

 民主党案は、真にあるべき農政を語っておりません。露骨な選挙対策であり、農家を民主党に引き寄せんがための戦術的なスローガンであると言わざるを得ないわけであります。

 最近思うに、本来政党や政治家が信念として持っているはずの政策と選挙向けの政策との間に乖離ができつつあるんじゃないかと。国民に耳ざわりのいいことばかりを言うのが政治ではありません。困難な時代だからこそ、説明すべきを説明しながら、あるべき方向に、正しき方向に導いていく、これが真の政治のリーダーシップであると思います。

 この十五年間の農政論議の積み上げを経て、やっと新たな農政がスタートを切りました。担い手の創出と支援という改革の原点に立って、担い手を守り立てていく取り組み、集落営農を組織していく取り組みが各地で始まっております。民主党のネガティブキャンペーンによりまして、どうせ自分たちは対象にならないんだ、そういう誤解をしていた人たちが制度の本質を知るようになりました。新たな農政が浸透するにつれて、徐々に新農政の掲げた目的に呼応する動きが出てくるようになりました。小規模農家も高齢農家も、地域総参加で地域活性化を図っていこう、強い農業もつくっていこうという確かな動きが出てまいりました。こうした芽を大切に育てていかなければならないと思います。

 民主党案は改革の展望がありません。農政の針を十年前、十五年前に戻すものであります。たまたま昨日、地元の市長さんがお見えになりました。市長さんがおっしゃるには、民主党の戸別所得補償法では前向きに取り組んでいこうという農家の意欲を阻害してしまう、農業基盤整備であるとか、農家が前向きにやっていこうという、そのための環境整備を全体としてやっていただきたい、そうおっしゃっておりました。そのとおりであると思います。

 私たちは、国民の理解を得ながら、食料の安全保障を図っていきたい、農業、農村の多面的機能を守っていきたい、地域総参加で農村の活性化を図っていきたいと思います。だからこそ、残念ながらこの民主党提出の法案には賛成できかねるということを申し上げて、質問を閉じたいと思います。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。自由民主党の赤澤亮正でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 昨年十一月の当委員会の審議の際、十二月だったですかね、思うところを申し上げたものでありますけれども、基本的に、それ以後の事情変更はないものと認識をしております。確認的に申し上げますけれども、昨年末以降、民主党の農政、そして民主党法案やそれらに含まれている数字、予算額あるいは試算といったようなものについては、特に何らかの変化、修正はないという前提でお話を伺っていきたいというふうに思います。

 それでは、昨年十一月以降変更はないということでありますけれども、民主党の農政、民主党法案には変更がない一方で、国内外の食料情勢には大きな変化があったということを一点触れさせていただきたいと思います。

 国際的な穀物価格の高騰あるいは国内外における食の安全にかかわる事件の頻発など、食料安全保障に関する国民の意識の高まりというのは大変なものがございます。食料自給率の維持向上による国民への安全かつ良質な食料の供給、さらに言えば合理的な価格での供給という食料安全保障に今ほど国がしっかりと取り組む必要があるときはほかにないという感じがいたします。このような観点からも、政府・与党の農政と民主党の農政や民主党法案の実効性といったものが一段と厳しく評価される必要があるというふうに思います。

 そこで、まず冒頭、短時間、政府にお伺いをしようと思います。

 例えば、今、飼料価格高騰にあえぐ畜産、酪農分野においては、政府の現行の対策であります配合飼料価格安定対策あるいは畜種別の経営安定対策、さらには価格転嫁の努力、働きかけといったようなものが効果を上げて、大変厳しい状況の中でも何とか国内の畜産、酪農家を支えている、こういう状況だろうと思います。

 一方で、昨年時点で、政府の世界的な穀物需給に関する認識は必ずしも十分とは言えないところがあったように思います。党の勉強会などで今後間違いなく国際的な穀物需給は逼迫するよというような指摘を申し上げると、いやいや、アメリカとアルゼンチンの作付面積がふえる見込みなので、穀物需給は落ちつく可能性もあるというような楽観論もよく聞こえたところであります。しかしながら、私は、今後このような国際的な穀物需給の逼迫といった傾向は中長期的に続くと考えます。

 そこで、今、畜産、酪農家が大変厳しい存続の危機にあるというような状況も踏まえて、政府の見解を伺います。国際的な穀物需給について現時点における政府の見通し、さらには食料安全保障の観点からこれに取り組む政府の方針について伺います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 国際穀物価格は、小麦、大豆、トウモロコシは一昨年秋ぐらいから、米は昨年秋ぐらいから大変高騰しております。

 こういった穀物価格の高騰につきましては、いろいろ理由が言われておりますけれども、その中には例えば投機資金の流入といった御指摘もありますけれども、私たちとしましては、やはり需要の増大に対して供給が追いつかないという需給の逼迫が基本的要因になっているというふうに思っております。また、そういう中で、輸出国に輸出規制の動きが広がっているといったことも影響しているというふうに思っております。

 こういった要因につきましては、今御指摘のとおり、一時的なものではなくて、中長期的に構造的に継続する要因ではないかというふうに考えております。そういう意味で、こういう事態に対応して、食料安全保障を確保していくという観点からは、何よりも国内の農業資源を有効に活用して国内農業生産を強化していくということをまず基本に置くべきだろうというふうに考えております。

 ただ、資源に制約のある我が国におきましては、すべて国産というわけにはいきませんので、必要な輸入の安定確保、さらには短期的な変動に対する備蓄といったものを組み合わせていくということが基本的に大事だろうと思っております。そういう意味で、昨日決定しました対策におきましてもそういう方針を出しておりますけれども、組織的にも食料安全保障課を新しく設置するなど、体制を強化して取り組んでいくという考えでございます。

赤澤委員 時間がないので簡潔にお願いをしたいと思います。

 それから、党においても、五月末、今月末を目途に畜産、酪農家を何とか支えていくための方策というのを取りまとめる方向で検討しているところでありますけれども、政府においても、存続の危機にある我が国の酪農や肥育経営といったものをしっかり支えていくためにどのような取り組みを行うのか、決意と方針をお伺いしたいと思います。これも簡潔にお願いをいたします。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 飼料価格の高騰に伴います畜産経営の収益性低下を踏まえまして、二十年度におきましては、加工原料乳生産者補給金制度など、補給金単価等のすべての行政価格を引き上げるとともに、新たに、都府県の酪農に対する交付金の交付、あるいはいわゆるマル緊事業に加えまして、肉用牛肥育経営の粗収益が物財費を割り込んだ場合の補てんなど、畜種ごとに緊急対策を実施することとしたところでございます。

 今後とも、生産コストの上昇が生産物価格に適切に反映されるような環境づくりを進めるということが重要だろうと思っております。また、配合飼料価格安定制度の運用状況、それから畜種ごとの経営の動向にも十分留意しながら、畜産農家が安心して経営を行っていけるよう、必要な支援について検討を進めてまいりたいと考えております。

赤澤委員 本日のお題であります民主党の所得補償法案の対象外の畜産、酪農ではありますけれども、与野党の政策論争も大変重要でありますけれども、今そこにある畜産、酪農の危機ということでありまして、国民に対する安全かつ良質な食料の安定供給の観点から政府・与党が万全の対応を講じる必要がある、しっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げて、民主党法案に関する質問に入ってまいりたいということでございます。

 昨年以降、特に変更はないということでありました。確認させていただきましたので、当時私が申し上げた指摘は基本的にそのまま生きているということになります。若干の時点修正を施して、再度要点をまず申し上げたいと思います。

 第一に、民主党の農政や民主党法案は、そのうたう目的や食料安全保障の観点から見て、政策が持つべき総合的な体系がないと思います。そしてまた、目的と手段がうまくマッチしておらず、予算規模があいまいで、さらにはより現実的な問題として予算配分方法について現場との突き合わせがない、これは実需者とも生産者とも十分でないということでありまして、一たび示された試算によれば、政策の実効性もないなど、一言で言えば、政策としての体をなしていないと言わざるを得ない。これは昨年も申し上げたとおりでございます。

 第二点目として、小規模農家切り捨てということを与党に盛んにおっしゃるわけでありますけれども、実のところ、後ほど申し上げるように、特に小規模農家が民主党の農政や民主党法案を信じてついていった場合、出口のない窮状に追い込まれて、いつしか退場を余儀なくされるおそれが非常に大きいというふうに思います。

 また、第三に、民主党の農政や民主党法案の広報においては、選挙のときだけ選挙前後の一貫した主張を曲げて有権者の歓心を買う、農業関係者に対する誠意を欠いていると言わざるを得ない。

 以下、これらの点について質問をさせていただきます。

 先ほどの小里委員の御質問との流れもありますので、ちょっと広報の問題を最初に伺いたいと思います。第三点目の、問題のある広報ということであります。

 先月の八日火曜日のときに、篠原委員から意外な御発言がありました。参院選のときのビラについて、「一つだけ言いわけを、言いわけなんか今ごろしたってしようがないんですけれども、」「もともとのビラは私がつくりました。途中で山岡賢次現国対委員長の発案により、ちょっといかがわしい、品の悪いビラがつくられまして、これがいろいろ皆さんに攻撃されておりましたけれども、仕方ないところもある」、こう御発言をされたわけであります。

 意外と申し上げたのは、私は、かなり民主党は一枚岩で、政策は政策、選挙は選挙といったような統一的な行動をされているのかなとずっと思って、その点を問題視していたわけでありますが、そういった篠原委員の発言などを踏まえると、あの参院選のときのビラの評価、換言すればあのビラによる広報が適切であったか否かについて、民主党内では見解が分かれているんでしょうか、それとも党内一致団結して選挙に勝つ目的でビラと国会質疑や政策の実際の中身は使い分けると言った方が実態に近いのか、その辺について平野発議者のお考えを伺いたいと思います。

平野参議院議員 党の政策につきまして、特にも選挙期間中においては、核心となる部分についてはできるだけそこがわかりやすいように、場合によっては多少デフォルメして有権者の方々にいろいろアピールするということは、よくあるということではありませんけれども、各党共通して見られる傾向ではないかというふうに思います。

 いずれ、それは評価の問題でありまして、それがいいか悪いかという問題については、そのおのおののテーマにおいて各党がきっちり判断していくべきだと思いますし、誤解が与えられるようなそういったもの、あるいはうそのものを仮にやったということであれば、これは必ず後で有権者から何らかのしっぺ返しというか、おしかりといいますか、その形で来るものですから、そういうことも意識してやるということは十分大事だというふうに思っています。

 今、先般の篠原委員の発言についての御指摘がございましたけれども、これはビラに対しての個人的な評価ということを言ったんだと思います。党としてあのビラに対してどうのこうのとかという総括をしたというような経過はございません。

 前回の参議院選挙はあのビラをもって戦ったということは事実でございまして、あのビラがよかった悪かったということにおいて今御指摘があった党の中で分裂しているんだとか、そういった状況はないということだけは申し上げておきたいと思います。

赤澤委員 デフォルメという言葉がありましたけれども、何かもとの政策から見ると原形をとどめていないような感じが私はするのでありまして、うそであればおしかりをと言われて、本当におしかりを受ける状況にないんだろうかというのは胸に手を当ててぜひ考えてみていただきたいというふうに思います。

 自然な流れから若干外れますけれども、小里委員からの流れということでありますので、広報の問題をもう少し聞かせていただきたいと思います。

 小里委員の質疑でまさに触れられたとおり、我々与党にとっては、民主党の農政や民主党法案の背景には小沢代表がかねてから御執心の農産物の貿易自由化の思想があるのではないか、こういう疑念がぬぐえないわけであります。しかしながら、そういったことはないんだと民主党の発議者の皆様は断言をされ続けているということであります。

 そこで、まず一点政府に伺いたいのは、農産物の貿易自由化を念頭に置いていないのであれば、参院選のときの民主党のビラに登場した米一俵五千円というような事態というのは想定できますか。どのような場合があるのか、ちょっと政府に答えていただきたいと思います。

町田政府参考人 主食である米につきましては、国民生活や地域経済にとって極めて重要であるということから、食糧法に基づきまして、生産調整の円滑な推進と不作などに備えた備蓄の運営を図ることによりまして、その需給と価格の安定を図っているところでございます。また、輸入米が国産の主食用米の需給等に影響を与えないよう一定の国境措置が講じられているところでございます。

 国産米の価格につきましては、市場におきまして、需要と供給のバランスのほか、品質や銘柄別の需給動向、売り手、買い手の動向、他品目との相対的な価格関係など、さまざまな要素により決まるものでございますので、価格の動向を一概に見通すことは困難であります。

 ただ、現在の米価が六十キログラム当たり一万五千円程度で推移していることを踏まえますと、生産調整がある程度の実効性を確保できれば、現在の国境措置のもとでは米価が五千円を切るような事態は想定しがたいのではないかと考えているところでございます。

赤澤委員 またいつもどおり割と長い説明だったんですが、大事なのは最後のところでありまして、国境措置を前提にしている限り一俵五千円というようなことは想定できない、そういう答弁でありました。

 だとすると、農産物の貿易自由化はおよそ考えていない、であれば一俵五千円というようなことは想定できないと思うのでありますけれども、そういうことでよろしいのか。あるいは、さらに言わせてもらえば、想定できない事態を農家の前に提示して、ある意味不安をあおってでも何か民主党への支持を取りつけたいと考えられたのか、その辺についてはどういう感じを持っておられますか。

平野参議院議員 このビラにつきましては、米を完全に自由化するというようなことを念頭に置いてつくったビラではないというふうに私は思っております。

 この件に関しては、何回も答弁申し上げましたけれども、所得補償という考え方をできるだけわかりやすくという意図でつくったものでありまして、五千円という価格を取り上げて議論されますと、先ほど言ったようにこんな価格というのは、恐らく完全自由化したとしても五千円までは下がらないんじゃないかぐらいの価格なんだろうと思います。ですから、そういった意味の数字というふうにとらえられますと、ちょっと私どもの想定したところとは違うということであります。

 なお、この農業者戸別所得補償法案を提出した後は、米についての考え方についても、例えば発議者試算という形で、全算入経費ではなくて労賃の八割あるいは六割ぐらいの補てんをまず想定して単価を算定すれば、一俵当たり二千円あるいは三千円となるというような数字もあわせて今各地域でいろいろな形で説明をして、かなり賛同を得ているのではないかというふうに思っているところであります。

赤澤委員 本当に苦しいの一言といいますか、私から申し上げれば、まさに五千円ということを書いたビラを配って、しかも、ほかのマニフェストとかいったものは大部でありますから、農業関係者、特に高齢の農家なんかはそれだけを見て政策について判断をしたわけでありまして、与党のような五千円の議論のされ方をしても困ると言われても、まさに五千円で議論を始められたのは民主党なわけであります。その点についてしっかりとやはり反省をしていただきたいし、およそ想定できない事態のことを書いて選挙を戦いましたというのであれば、私は非常に無責任だと思う。こういうことは二度とやらないでいただきたいというふうに思うところでございます。

 それでは、民主党法案の目的について伺いたいと思います。

 法案の目的に、食料の国内生産の確保、農業者の経営の安定、食料自給率の向上、地域社会の維持、活性化などの農業の多面的機能の確保と非常に盛りだくさんで、四つの目的が書かれております。発議者の皆様は、この法案でこのすべての目的が達成できると考えておられるのでしょうか、お伺いをしたいと思います。

舟山参議院議員 我が国の農業、農村の現状は、高齢化、後継者難、集落の過疎化といった問題に直面して急激な構造変化に見舞われているということはもう御承知のとおりだというふうに思います。

 このような中で、先ほども御答弁申し上げましたけれども、入り口段階で規模要件という高いハードル、結局、ここを越えられる人はしっかりと守っていきます。それを越えられた一部のいわゆる担い手の経営の安定には現在の制度というのは貢献するとは思いますけれども、それを越えられなかった多くの農家が営農継続を断念せざるを得ず、構造改革を目的としていますけれども、それよりも先に農村の崩壊を招き、我が国農業の生産構造を壊滅的な状況に押しやるおそれがあるというふうに私たちは現状認識を持っております。その結果、結局は、食料の安定確保も、まさに多くの農家によって担われている多面的機能の発揮も果たせず、自給率もごらんのとおり低下の一途をたどっている、このような現状になってしまった。

 そのような現状認識のもとで、私たち民主党は、厳しい状況を真摯に受けとめまして、まずは、これ以上の農地、農家、そして農村や生産基盤の崩壊を食いとめるために、規模要件といったハードルを設けず、国内での食料の安定供給のため、また地域社会の維持、活性化のために地道に頑張っておられるすべての農業者を対象として直接支払いを行って経営を安定させる、さらには、現在自給率の低い作物への生産誘導も図りながら、もって食料自給率の向上を図る、そして、多くの農家の方がしっかりとその地域で生産活動を続けることによって、まさしく農村の維持、活性化、多面的機能の発揮にもつながるといった、そういう仕組みをつくっていきたい。まさに、こういった流れの中で私たちが提示した目的を達成していけるものと考えております。

赤澤委員 二点御指摘を申し上げますけれども、まず一点目は、先ほど高橋発議者が一つの法案で何でもできるものではないということをはっきりおっしゃったのと今の舟山さんの話はどう関連をしているのかなと思います。この法案でその目的がすべて達成できるという御答弁なのか、あるいは、先ほどおっしゃったように一つの法案で何でもできるものではない、私はその方が正直な答えだと思いますけれども、そうであれば、率直に言ってその一つの法案以外はどこにあるのかというのが私は問題になってくるというふうに思います。

 時間の関係でちょっと私がコメントするにとどめさせていただきますけれども、もう一つは、ぜひ今後の答弁でもその点御注意をいただきたいのは、今の舟山発議者の答弁は、結局、与党のがうまくいってないんだからということが必ず前置きに非常に長くくっついて、与党のがうまくいってないんだから民主党のも余りうまくいってないけれどもいいじゃないかというように聞こえるような答弁に常になってしまうところがあって、私は、それではいかぬと。政権交代を目指すと宣言されている以上は、別に与党のどこが悪いと言う前に、自分たちのはしっかり政策として成り立つ、自分たちので完結的にできているんだという説明に努めるべきであって、いつも前置きとして与党もだめだから我々のもちょっとだめかもしらぬけれどもいいじゃないかみたいにならぬようにぜひお願いをしたいというふうに思います。

 その部分の説明が非常に長いので、まだ四十分時間があるので申し上げさせていただきました。

 私は、政策には総合的な体系が必要だと考える、それが一番申し上げたいことであります。民主党の法案は、個別の経営の直接支払いを通じた所得の安定を図るということにはなっていると思います。直接支払いを、現行の政府・与党の約五千億円を一兆円に実際は倍増する、純増の部分は先ほどの財源の議論などを聞いていると約五千億円ぐらいなのかなと思いますけれども、倍増するということであります。しかしながら、そういった直接支払いを除けば、食料自給率の向上や今の農業、農村が持っている多面的機能の確保も含めて地域活性化など、すべての政策効果をこの法律の中で期待することは私は無理だと思います。

 この点については、四月八日に若林大臣がおっしゃったとおりだろうと思います。換言すれば、明確な政策目的を定めて、それぞれの目的にマッチした幾つかの政策手段をそれぞれ効果的に講ずるといったことによって総合的な政策体系を構築する、さらには、そのための予算の手当てをしっかりと行うことで目的達成を目指して初めて責任ある政党の政策立案と呼べると考えます。

 先ほどからお話があるように、何かというと与党の政策はまずいから、現状がよくないから、だから自分たちの政策についての議論は余りしないというのでは、私はよくないと思います。残念ながら、民主党の農政や民主党法案には欠けるところが多いんじゃないかというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 四月八日の舟山発議者の答弁、「効率的かつ安定的な農業経営の育成、そしてそれが相当部分を担う農業構造を確立する、」「そういう大きな目標は全く異議はありません。」という答弁がございました。また、経営規模の拡大を加味して支援の内容を決定するという法案の考え方も、詳細は全く詰まってないように思いますけれども出ております。規模拡大については、民主党法案の目的には書かれていないように思いますけれども、政策の目的に含まれているのかどうか、その点について再度確認をさせていただきたいと思います。

平野参議院議員 まず一点、政府あるいは与党の批判をしているという御指摘がございましたけれども、あえて弁明をさせていただきますと、御質問の際に、与党あるいは政府の政策をまず宣伝されて、その後に私どもの批判をされるものですから、それに対しての的確なコメントをしているというつもりであります。

 それから、御質問の件でございます。

 規模拡大は目的ではないかという御指摘でございましたけれども、これも何回も答弁しているとおりでありますが、農業従事者が減ってきている、高齢化が進んできているという中で、日本の農業生産力あるいは農村を維持しようということであれば、必ず流動化を進めなくちゃならないということだと思います。農地の流動化あるいは生産の組織化というのは不可避だと思います。

 問題は、きょう御指摘ございましたけれども、それをいかなるスピードで進めていくかということだと思います。スピードを進めるという以前に、農業従事者が相当な勢いで減っていくのではないかというふうに私どもは認識しておりまして、ここに相当の危機感を私どもは持っております。

 そういった減っていく中で、繰り返しになりますけれども、農地あるいは農村をどのように維持していくか、そのためには何が必要かということで、私どもは、まずは、今やっている農家の意欲を大事にして、今の現状を支えていく。その中で、変化のスピードに合わせた農地の流動化なり生産の組織化、こういったものに地域が一体として取り組んでいくような方向性が最も望ましいんじゃないか。これがまた、今現状を踏まえた上で、遠回りのように見えるかもしれませんけれども、最も的確な措置ではないかというふうに思っているということでございます。

赤澤委員 生産の組織化や農地の流動化は不可避という御指摘でありますので、規模の拡大といったものも志向しておられるという理解でよろしいのかと思います。

 しかしながら、そういった部分が所得補償をするだけできっちり実現をしていくのか、本当に所得補償するだけで地域一体となるのかといった点については、後ほどまた触れさせていただきますけれども、大いに非現実的な政策の立て方になっておらないかと感じるものでございます。

 民主党発議者の皆さんも共有してくださる大きな目標が、すなわち、効率的かつ安定的な農業経営の育成、そしてそれが相当部分を担う農業構造を確立するといったことでありますけれども、できた暁には、民主党としてはどのような効率的かつ安定的な農業経営を、換言すればどのような担い手像を、割合といったものでもいいですけれども、描いておられるのか、これをお伺いしたいと思います。

平野参議院議員 今、私どもは、少なくとも政府の食料・農業・農村基本計画の中で示されるようなあるべき経営体という姿を数字で示すようなことはする必要がないというふうに思っています。まずは、先ほどから申し上げておりますように今一生懸命やっている農家を支えていく、その中で変化に応じた構造調整を進めていくということが肝要だということでありまして、それをしないと、その先の、将来の日本の農業がどうなるかとか、構造をどうするかというような議論は、私は意味がないというふうにも考えております。

 それからもう一点、所得補償だけですべての問題が解決つかないという御指摘がございましたけれども、全くそのとおりでありまして、これはあくまでも食料の国内生産の確保あるいは農業者の経営の安定等々の大きな目的を達するための一つのツール、しかし重要なツールであるというふうに認識しておるところであります。

赤澤委員 本当に与党と考えの全く違うところだなと思います。担い手像について数字で示す必要はない、こう明言をされたわけであります。

 冒頭申し上げたとおり、本当に食料安全保障について国民の意識は高まって、まさに国の仕事として絶対にそこをきちっと取り組んでいかなければならない、そういう分野だと思うんですが、どういった担い手像、そして、どういった割合でそういった人たちが将来の農業を支えていくのか、そこについて全く示すことなく所得補償だけやっていれば、あとは地域任せ、農家任せで地域が一体になるだろうと。この楽天主義は、本当に大楽天主義であって、そんなことでは食料安全保障に決してつながっていかない、食料自給率も向上しないと私は確信をするものでございます。そこは指摘にとどめさせていただきます。

 「農村と都市をむすぶ」の二〇〇八年三月号に掲載をされました平野参議院議員の論文、「大きな岐路に立つ米作り、そして農村 ―米を生産する農家へ所得補償を―」これを私も読ませていただきました。「安定的な収入の見通しのあることが、規模拡大の必須条件である。」「今、小規模高齢農家によって農地と農村が救われている、との現状認識が大切ではないか。」こういった御指摘は私はごもっともだというふうに思います。

 しかしながら、翻って、それでは、規模による政策の区別を小規模農家切り捨てと決めつける民主党の法案により、所得補償さえうまくやれば円滑に規模拡大が図られるかといえば、それは全く疑問だと思います。この点については、民主党法案に関する広報の問題も大いに関係をしておりますけれども、全体として民主党は農業関係者に対して現状維持でいいというメッセージを強く発したと評価できると思います。将来の担い手を育成することについてはほとんど無関心、構造改善視点の欠落のそしりは免れないものと私は考えております。ここは指摘をさせていただきます。

 次に、民主党法案の支援対象範囲について若干お伺いをしたいと思います。

 これも確認的にお伺いをいたしますが、果樹、野菜は現時点で生産価格と販売価格の逆転が生じていないということで想定外、それから、畜産は対象外。換言すれば、民主党のうたう一兆円の中には、果樹、野菜農家や畜産、酪農家に支給される金額は含まれていないということでよろしいでしょうか。

平野参議院議員 まず、今の御質問に対しての答えは、おっしゃるとおりであります。野菜、畜産については、今のところ対象外になるというふうに考えています。

 それから、一点、御指摘されましたからどうしても反論をしなければならないものがあります。それは、農業構造を固定するというふうに言われましたけれども、これは何回も申し上げましたけれども、今農村は急速に動いているんです。固定するどころじゃないです。今、その動いている農村にどのような支援をすることによって、農地、農村を守れるかという問題だろうというふうに思っているわけです。

 それから、あるべき経営体について、今必要ないと確かに申し上げましたけれども、あえてもう一つ付言させていただきますと、実現不能な数字を幾ら出したってだめですよ。例えば個別経営体については十五ヘクタール以上とか、複合経営で畜産をやって畑作で何ヘクタールというような数字を幾ら出したとしても、農家が本気にしません。今、これから五年後、十年後、十五年後、大体二十年ぐらいのタームでいいと思いますけれども、農村で何が起こっているかということを踏まえた上で、この中での農地の流動化をどうやって進めていくか、あるいは生産の組織化をどうやって進めていくか、そういったことをしっかり考えていくための基盤づくりがまず必要だというふうに私は思っています。

 その上で、本当に日本の農業の構造というのはどうあるべきか、もっともっと私は議論した上で、少なくとも、食料・農業・農村基本法において示されたような、到底実現できないような、繰り返しになりますけれども、与党の議員でさえ地元に帰って説明できないような、そういった構造の目標を示すのではなくて、これならいいじゃないか、日本の農村にいいじゃないかというような、そういった農業構造をやはり示していくということが私は大事ではないかというふうに思っております。

赤澤委員 質問しなかったことまで答えていただきまして、まことにありがとうございました。

 あえてコメントをさせていただくと、まさに農家の現状が動いているからこそ、国がしっかりと食料安全保障につながる、自給率の向上につながるような物の考え方、担い手像といったものを示してリードしていくのが必要なのでありまして、動いているからほっとけばいいというような議論は私は全く受け付けられないというふうに思います。

 それからまた、あえて申し上げさせていただけば、これは実現不可能と決めつけましたけれども、小規模切り捨てということについて言えば、我々の政策というのは、中山間地の直接支払い、あるいはいわゆる稲構と言われるものも、現状どおりやりたい方は現状どおりどうぞと。もし集落営農といった方向に動いてくだされば、特典をつけますといったような方向で動かしているのでありまして、切り捨てているわけでは決してありませんし、先ほど小里委員からも指摘があったように、実現不可能と言われながら、担い手について言えば一年間で万単位でふえている、集落営農も一万から一万三千にふえたというような御指摘もあったとおりでございます。実現不可能とは考えておりませんし、苦しい中でも、困難な状況の中でも、しっかりと見るべき方向、ビジョンを定めて進んでいくというのがあるべき姿ではないかと私は思います。

 そしてまた、基盤づくりさえすればいいというような御指摘もありました。全くスピード感のない考え方であります。基盤をつくった先でどこに行けばいいかがわからないから農家は困っているのでありまして、基盤づくりはわかりますけれども、先ほどの高橋発議者の話にもあった、一つの法案では足りないというなら、なぜ残りの法案が同時に出てきていないのか、その点についても私は非常に疑問に思います。基盤づくりだけやれば何かすべてがうまくいくというのは、私は絵にかいたもちではないかなと思います。

 質問外のことまで答えられたので、また想定外のことまで私が言わされて時間が無駄になりますけれども、先に進ませていただきたいというふうに思います。

 支援対象農産物については、先ほど指摘のとおりというお答えをいただきました。生産価格と販売価格の逆転が生じているものという以外限定がないということで、支援水準も規定は形式的で行政が任意に決めるイメージであります。ある意味、丸投げじゃないか。このため、対策の所要額が一兆円必要となる根拠も、その金額におさまる根拠もありません。農家の期待と財政運営の間で生じる混乱について私は大いに危惧をいたします。

 参院選のときのビラでは、すべての販売農家が支援対象とうたっておりました。御記憶されているとおり、そのビラには白菜畑のイラストがかかれておりました。篠原委員の言葉をかりれば、「ちょっといかがわしい、品の悪いビラ」によりまして、農家の期待が大いに膨らんでいる中で、実際に出てくる政策はそれより大分小さいということで、誤解が生じていないことを私は切に望むものでありますし、それについては、先ほど平野発議者が誤解というものがあるのであれば解いていく努力をされるような御発言もありましたので、誠実に対応していただきたいという思いであります。

 続きまして、民主党法案の支援水準についてもお伺いをいたします。

 生産目標について、特に米などを除けば現場の希望優先であると。現場の希望優先の生産目標を定める必要があるのか、定める意味があるのかというのはまた別の論点でございますけれども、今ここで御指摘をしたいのは、支援水準について現場との突き合わせが十分に行われないために食料自給率の向上につながらないのではないかと考えますが、この点はいかがでしょうか。

平野参議院議員 現場との突き合わせが十分でないという御指摘の意味が、若干、私、理解できない部分があるんですが、単価水準等につきましては、この法案が通った後には、専門家の意見を聞きながら、かつまた生産者、農業団体の意見も聞きながら、これぐらいの水準で生産振興が図れるかどうかということについてのしっかりとした詰めがなされるということを想定しております。

 試算というのは、これは発議者試算ということでありまして、まず一兆円というのを前提として、米あるいは自給率五〇%を達成するのにどういった作物を振興していけばこの一兆円の範囲におさまっていくかというようなことも念頭に置きながらやった数値でございまして、後で多分質問があるんだろうと思うんですが、あるいは先ほど小里委員の御質問にもございましたけれども、畑作物については若干低目ではないかという御指摘がございましたが、これは全算入経費をとっておりません、労賃だけを念頭に置いた単価をとっております。その点で若干低目に見えるかもしれません。ただ、私どもは、これは将来の農業構造の問題等々も視野に置きながら、この段階ではこういう単価を設定したということでございます。

 さらに、この単価でどうしてもできないんだというようなことがございますれば、私どもは、生産振興を図るということが大前提でございますから、そのために必要な単価水準についてどうあるべきかということについては、先ほど冒頭で申し上げましたように専門家あるいは生産者団体、生産者の意見を聞きながら決めていくということになるというふうに想定しております。

赤澤委員 大分先回りをしてお答えいただきましたけれども、まさにその辺のところをちょっと指摘したいと思います。

 民主党が政権交代を目指すとおっしゃって、その中の主要な争点の一つがまさに農政ということでありますから、ここについては農業関係者がしっかり判断ができるように、その予算の裏づけでありますとか試算、支援水準といったようなものはこういった経済法案でしっかり示していただくことがぜひ必要だと思いますけれども、その手がかりになるのが、昨年十一月末に民主党の発議者が発表された「農業者戸別所得補償金算定の基本的考え方(総額一兆円に基づく発議者試算)」ということです。

 これについては、まさに今お話がありましたように米以外の作物、小麦、大豆などについても、収量増やコスト削減を促すため、単位収量を政府の二〇一五年目標にする、実際より高い数値で計算することで単価を抑制したなど、いろいろ説明が書いてございます。麦、大豆について言えば、発議者が試算した戸別所得補償の単価は、現在政府が実施している対策よりも、その単価よりも低目であるということです。これは私が言っているだけではなくて、昨年十一月三十日の日本農業新聞も同様の分析ですので、間違いのないところだと思います。

 今、全算入経費をとっていないとかいろいろな説明がございましたけれども、ここが実は本当は肝の部分なんですね。なぜかといえば、民主党は自給率向上を目指すんだ、麦、大豆については生産振興を図っていくんだということだと思います。しかしながら、今の説明を聞くと、米については所得補償が入る分、民主党がおっしゃるところによれば現行より手厚く支援をする、麦、大豆については現行より低目の支援を行うということでありますから、法案の目的である食料自給率の向上は期待できないばかりか、米の大増産につながる。考えておられることと全く逆進をする数字が出てきております。そういった数字を、全算入経費を入れていないし、これでもしどうしてもできないということならまた考えるというようなことでいうと、冒頭申し上げたとおり政策の体をなしていない最も典型的な点の一つじゃないかなと私は感じます。

 実は、もうちょっと聞いていただきたいのは、地元のJAの大会で私はこのような指摘をしました。同席していた地元の民主党議員とある意味政策論争になったんですが。そのときに民主党議員が間髪を入れずにお答えになったのは、いやいや、一兆円を二兆円にすればいいんだよとおっしゃったわけであります。こういう話を聞いていると、民主党は本当にまじめに試算する気がないのか、財源の根拠のあいまいな予算関連法案、しかも自分たちが示した一兆円の中では、現実的に自給率の向上がとても図れない試算しか出てこない。こんなことで本当に法案を世に問う資格があるのかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

平野参議院議員 まず、単価水準については、先ほど私が申し上げたとおりでございますので、繰り返しません。

 それから、一兆円を二兆円にすればいいんだというような発言があったということでありますけれども、それは一議員の発言なんだろうと思いますが、私どもは、この一兆円をしっかりまず確保することも随分大変だと思っています。そして、これをいかに効率的に使うかで、本当に自給率五〇%が達成できる、あるいは農地もこれ以上の壊廃を防ぐことができる、こういったことにまず全エネルギーを注ぐことが大事ではないかというふうに思っております。

 質問に対する答弁になったかどうかわかりませんが、とりあえず答弁にかえさせていただきます。

赤澤委員 平野発議者と質疑をやっていると、しばし禅問答みたいになっちゃうことが多いものですから。今、十分お答えになっていないという点は御自身で認められたと思うので、それはそれで結構でありますけれども。

 私が危惧したのは、一兆円を二兆円にと地元の議員が叫んだ、それに平野発議者が同感だとおっしゃるんじゃないかと前の答弁を伺って心配になったものですから。その点については、違う、一議員の発言であるというようなことであったので、その点でとどめさせていただきたいというふうに思います。

 政府・与党の見解は、当然のことながらまことに明快でありまして、支援水準も実際に支給されているからあいまいさはないということであります。繰り返しになりますけれども、民主党が次期衆院選で政権交代を目指す、そしてその大きな争点の一つに農政を据えるとおっしゃっているわけですから、民主党の見解ではないと断って使われている非現実的な発議者試算しか公表されず、農業関係者は支援水準に関する民主党の見解を示してもらえないまま政権選択を迫られるというのは、私は、責任政党のやり方として全く不適当だというふうに思います。

 次に、民主党法案の財源についてもお尋ねをさせていただきます。

 一兆円という金額は、言うまでもなく再生プランあるいは農政改革基本法案、農業者戸別所得補償法案などで一貫して示されたので、もう民主党の公約と言っていいと思います。過去の国会審議で大きな争点となって、一兆円の積算根拠は何だ、その財源はどのように調達するかが頻繁に議論されたので、手短に結論だけ確認させていただきたいと思います。

 まず、これは特に質問しなくてもいいかと思いますが、一兆円については明確な積算根拠がなく、平野発議者の過去の御答弁のとおり宣言にすぎないということで基本的によろしいですよね。そこは特に質問しなくていいのですが、宣言であるということでよろしいですね。もし何かあれば。

平野参議院議員 そのとおりでございます。

赤澤委員 一兆円の調達方法でありますが、ここについて若干伺いたいと思うのは、当初は農林予算、特に農林土木予算の無駄を削って捻出するというふうにしてこられました。先ほど平野発議者が小里委員に対する回答の中で、いや、そうじゃない、一貫して今の国の予算、直払い三千六百億プラス農政の二・七兆円の一割、さらには無駄を削れば出てくるんだ、そういう答弁をずっとしてきた、こういうお話でありますけれども、私はその点について若干疑義を持ちます。

 というのは、民主党内において、最近でもというのは昨年のこの法案の審議があった前後でありますけれども、平野発議者の意に反して、農林土木の予算から出すんだと。これを言っておられる方は、単なる議員というよりはネクストキャビネットの当時農水大臣であられた山田正彦衆議院議員でありますとか、あるいはネクストキャビネットの農水大臣経験者である篠原孝衆議院議員であるとか、そういった方たちが、まさに農林関係の予算から、特に農林土木予算から捻出するんだとおっしゃっています。

 農林の公共事業費といえば、総額は当時であれば一兆一千四百億、農業関係七千億、林野関係三千億、水産関係千六百億。一体どこからそんなお金が出てくるんだと本当に思います。

 あえてちょっとここで指摘をしたいのは、どうも民主党が立て続けに出してくるものは地方に非常に冷たいんではないかというふうに感じます。というのは、農業プラス建設業が地方の基幹産業であることは御案内のとおりでありまして、農業の方を助けるけれども、そのためには農林土木の方を削って建設業に大打撃が出てしまうといったような物の考え方を、党のネクストキャビネットの農水大臣の関係者がばんばん言われている。実は、それと違うことをこの場で平野発議者が説明をされているということであります。これについて言えば、例の暫定税率を廃止して地方の建設業界に大変な混乱が起きている。これも言うまでもなく地方の基幹産業にとって大打撃でありまして、このようなことについて平野発議者はどのように危惧をされているのか、お伺いをしたいと思います。

平野参議院議員 まず、今回の一兆円の財源の多くを農業土木を初めとした農林公共から出すということについては、繰り返しになりますけれども、この法案に関してはそういう考え方はとっておりません。もちろん、農業土木を初めとした林野公共、そういったものはすべて再チェックの対象になりまして、そういう農業経費、あるいは政府全体の予算の見直しの中で一兆円を出していくという考え方であります。

 それから、今、公共事業費を削るということに対して、地方の経済に対する大きな影響があるじゃないかという御指摘がございました。確かにそのとおりだろうと思います。しかし、同時に、国の予算の中には限りがある、そういう中で農地、農業あるいは自給率の向上を達成するためにはどういった予算、私ども資源と言っておられる先生もおられますけれども、この予算をどのように配分するかということについては、今までの考え方にとらわれず、根本的な見直しが必要ではないかというふうに思います。その結果として公共事業が相当程度削られて、それが直接支払いに回る、あるいはほかの政策に回る、そういうことはあり得るというふうに考えております。

    〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕

赤澤委員 党の中で行われている議論が外に聞こえてくるのを聞いていると、最終的には農林予算の枠内で処理するのは困難であるというふうに認めざるを得なくなったということなのかなと私は理解をいたします。

 一兆円でさえ財源が不明確との批判が絶えない中で、一兆円の積算根拠も財源調達見通しもはっきりしない。さらに、今価格逆転が起これば、野菜、果樹も対象とし、この点は先ほど小里委員が指摘されましたので細かく触れませんけれども、三百万トンの棚上げ備蓄も行うと。これは議論中ではあるけれども、棚上げのところは決めているんだという話でありますから、数字が正しければ本当に数千億の予算が追加で必要になってくるだろうと思います。

 こういった夢のような公約のオンパレードでありまして、財源の裏づけがない、積算根拠も財源調達方法もはっきりしない耳ざわりのよい公約を連発することは、責任政党としてはいささか見識に欠けるというふうに思います。これらの財源を手当てする当てがいわゆる埋蔵金のたぐいということであれば、お答えいただくまでもなく、私はちょっと無責任ではないかなというふうに感じるということを指摘させていただきます。

 次に、民主党法案の効果についてお尋ねをしたいと思います。

 既に触れた民主党の発議者が昨年十一月末に発表した試算によれば、すべての対象農家が受け取れる所得補償というのは、補償交付金と呼ばれる「各作物の標準的な生産費と標準的な販売価格の差額を基本として補てんする交付金」である、この交付金の算定に当たっては各作物の需要及び供給の動向が考慮される、米については生産の抑制が必要なため家族労働費は全額補償しない、八割補償などは先ほども御指摘があったとおりであります。それから、補償交付金単価というのは全国一律であるけれども、補償する面積単価については地域の単収によって異なってくるといったようなのがおおよその仕組みであります。

 これらの点を踏まえて、平野発議者は、昨年十二月十二日の御答弁の中で、繰り返し「生産費と農家の手取り価格の差額を全額補てんするというのは必ずしも適切ではない」「所得補償については、全額所得補償をしなければならないという前提には立っておりません。」とおっしゃっているわけであります。

 この点についても、広報の問題から本当に農家はかなり誤解をして、単純に赤字が全額補てんしてもらえるんじゃないかとはかない期待を抱いている向きがないわけではないように私は思いますけれども、こういったことが明らかになったことを前提にお話をさせていただくと、各作物の標準的なコストと標準的な販売価格の差額で全国一律に補償交付金単価を決めていくわけでありますから、現実問題として、標準的コストを上回る生産コストで麦、大豆を生産しているほとんどの小規模農家は、軒並み毎年の赤字計上を余儀なくされかねないということであります。米について言えば、家族労働費の約八割しか所得補償しないのでありますから、標準的コストで米を生産している農家でさえ毎年赤字計上を強いられるということであります。

 この点については、おおよそ以下のとおり昨年十二月十九日の当委員会において私がお尋ねしたところですけれども、そのときの平野発議者のお答えが、実は今回の質疑で冒頭御指摘したとおり、現行の与党の対策が今の農業、農村の実情に合わないから民主党法案でよいのだというような、ちょっと禅問答的な回答だったんですね。ですので、改めてお尋ねをいたします。

 民主党の農政について言うと、まず現状維持でいいというメッセージを発して安心させておいて、その実、規模拡大によるコスト削減などを図らないと、標準的な生産費よりも高コストの農家、すなわち、多くの小規模農家が先々苦しめられて徐々に淘汰されていくという方式になるのではないかと危惧をいたします。さらに言えば、この方式は、政策的に見てスピード感がない、正面から集落営農などへの誘導を図ることをうたう政府・与党の農政と比べて不誠実なやり方で、結果的に小規模農家が切り捨てられるのではないか、政策目的を明確にして持続可能な経営形態へ誘導するのが責任ある政党のすべきことではないかと私は考えますけれども、もう一度回答をお願いしたいと思います。

平野参議院議員 今さまざまな御指摘がございましたけれども、簡単に申し上げますと、所得補償、米に関して言いますと、少なくとも物財費まで割り込んでいるような状況にある地域が今あるんだろうと思います。せめて、物財費まで耕作者がみずからお金を出して補てんするというようなことについては何とか解消していきたいと思っています。

 それから、これは繰り返しになりますけれども、農業構造を固定するという認識は全くありません。これは、この現状の認識が違うためにそういう議論になると思うんですが、今、物すごく変わっているんです。スピード感も、スピード感というふうに言っていられないほどの勢いで変わっていくんじゃないか、そういう危機感を持っているということであります。

 その中で、拡大する耕作放棄地をどうやってこれ以上拡大しないようにするのか、農村をどうやって維持していくのか、まずはこれに対しての取り組みをするための基盤となるような所得補償を用意した上で、地域ごとに、集落ごとにそのあるべき姿について模索して取り組んでいくような環境づくりをしようということを言っているわけであります。

赤澤委員 今の答弁だと、私はやはりおかしいと思います。

 というのは、もしおっしゃっている意味が高コスト体質の小規模農家でもしっかりと物財費まで補償するというのであれば、逆に言えば、全国一律で単価を定めてやっていくわけですから、体質がいい農家について言えば、むしろある意味では政策の目的以上のものを差し上げるということになってまいります。やはり政策の根本的なところは全国の標準的なコストで試算をするということでありますから、小規模の農家について言えば、物財費までも面倒を見てもらえるとは全く限らない、そういう仕組みになっているというふうに私は思います。何かちょっとわからない感じがいたします。

 もし何かコメントがあるなら、次の質問の前にしていただいても結構ですが、余り時間がないので……。

平野参議院議員 いずれ経営規模によって、規模の大きいところについては生産費が安い、規模の小さいところについては生産費が高い、これは事実であります。その中で、標準的な生産費と市場価格の差額を補てんするということでありますから、その補てんの額が規模の大きいところと小さい農家によって重みが違ってくるというのは御指摘のとおりです。

 しかし、これを是正するのではなくて、やはり規模拡大をしている農家についてはそれなりのメリットが与えられるべきだというふうに考えているということについては、この委員会で何回か答弁してきたとおりであります。

赤澤委員 しかし、それを認められるのであれば、篠原委員の言葉をかりて言うと、「ちょっといかがわしい、品の悪いビラ」的に言えば、決して意図は明らかにしないけれども、小規模の農家について言えば、何だかんだ言って赤字が出て淘汰されていくようなことについて、しかもそれが時間をかけて起こるようなことについて放置しているように私には見えます。その点について言えば、今のところやはりお答えがないなという感じを強く持ったという点を指摘させていただきたいと思います。

 それから次に、民主党法案の手法についても、ちょっとこれは御指摘をさせていただくにとどめようかと思いますけれども、一つは、これは二〇〇〇年の食料・農業・農村基本計画の策定で、小麦生産が五十七万トンから三年目に約三十万トンふえて八十六万トンになったという、直接支払いの大きな成果が実際過去に一回あったんです。しかしながら、このときに大問題だったのは、実需者である製粉業者が、こういった品質では今後引き続きこの三十万トン増の分も含めて引き取ることは非常に困難だと。これが苦い経験として政府・与党の中に蓄積をされているわけであります。直接支払いをやることで単に生産をふやせばいいというものじゃない、売れるものをつくらなければやはりだめなんだ、こういうことだろうと思います。

 しかしながら、農家の言い値の生産数量目標を設定するような民主党法案の基本的な考え方は、供給側の論理ありきの仕組みで、実需者との突き合わせができていないために需給のミスマッチが生じて、つくっても買ってもらえずに余るだけ。これでは食料自給率の向上につながらないのではないかという点を強く危惧するものであります。

 四月八日の篠原委員の質疑でも見られたように、実需のないものをつくったら余ってしまうからそこでとまるというのでは自給率は向上しない、実需のないものでもつくれば食料自給率は向上するといったような考え方があるように見受けられますけれども、その辺の根拠はどこにあるんでしょうか。実需者のニーズときちっとマッチさせずに食料自給率が上がるものなのか、お伺いをしたいと思います。

平野参議院議員 まさに今委員が御指摘されたようなことは、今までの農政が実需者との突き合わせを全くやってこないような政策を進めてきたんだというふうに思います。

 今の御指摘にありましたように、八十六万トンまで麦の生産が拡大しましたけれども結局ストップしてしまったということについては、品質がそれに追いついていなかったということだと思います。今までの政策は米中心、米偏重だったと思います。本当に自給率を上げるためには、実需者が必要とするような麦、大豆、そういったものをつくらなければならないということは当然のことでありまして、こういった所得補償とあわせまして、今までやってこなかったような、今まで余りエネルギーが注ぎ込まれてこなかった麦、大豆の品種改良あるいは肥培管理、こういったことに対しても、もっともっと政府あるいは自治体が関与すべきだというふうに考えております。

赤澤委員 今の点も本当に認識がちょっと違うのでありまして、与党は、その二〇〇〇年の教訓を踏まえて二〇〇五年に策定した新しい食料・農業・農村基本計画で、生産拡大も大事だけれども、やはり売れるものをつくらなければ安定的な生産拡大にならないということで、品質向上や生産性の向上による安定供給の確保に軸足を移してきたところであります。

 ところが、その中で、今、その状態を踏まえてというふうに平野発議者からお話がありましたけれども、そうして出てきた民主党法案というのが、品質については加算の項目として出てきておりますけれども、そこについての詳細な議論がないということであります。

 私は、先ほど高橋議員がおっしゃった、一つの法案で何でもできるとは限らないという言葉、まさにそのとおりでありまして、与党の方がよっぽど先に進んで品質とか生産性向上を目指して取り組んでいるんだという点を指摘させていただきたいのでございます。この民主党法案については、やはりその点でも逆戻りといった感じが私はいたします。

 それからもう一つ、これも伺いたかったことでありますけれども、全体を底上げすることによって農業の構造強化が図れるということを決まり文句のように舟山発議者も四月八日におっしゃっております。過去に、民主党の戸別所得補償で農家の手取りをふやせば、地域がみずから将来像を考えるようになるという趣旨の答弁も繰り返されております。私は、そこは論理の飛躍があって、所得補償をすればなぜ地域がみずから将来像を考えるようになるのか、その辺についてはなぜ国がきちっとビジョンを示して誘導しないのか疑問に思っております。その点についてもお答えをいただきたいと思います。

    〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕

平野参議院議員 これも何遍もお答えしたとおりでございますけれども、まずは、自家労賃を勘案せずに米づくりあるいは畑作をやっている高齢者農家、この現状をどのようにとらえるかということがスタートだと思います。

 そういった方々が今支えているから、耕作放棄地も、三十九万ヘクタールで大騒ぎになっておりますが、まだこの程度におさまっている。今、高齢化が非常に進行している中で、このまま放っておきますと、その方々はいずれリタイアせざるを得ない状況になります。しかし、後継者はいない。そういう中でどういう政策が必要かということであります。

 まずは今頑張っている方々の、このまま放っておけば従事者が減っていくわけですから、頑張っている方々の意欲を大事にしながら支えようと。そういう中で、地域の中での農業構造をどのようにするかということを、これをやれというふうに国が指示するのではなくて、自治体が指示するのではなくて、地域の中で考えてもらう。その中で集落営農が出てきますし、生産組織が出てくると思います。そういったものに対しての取り組みを国も自治体も支援していくんだ、そういう考え方に立っているんだということでございまして、そういう意味でのまず底上げをして、今の状況の中で支えながら、次の五年、十年、あるいは十五年、そういった先を見ながら地域の農業を考え、農業構造を考え、そしてそれを実行に移していくということが大事だというふうに考えております。

赤澤委員 こちらも、繰り返しになってしまうんですが、やはり全然考えが違うように思います。私には、絵にかいたもちと言って悪ければ、論理に飛躍があるように思えます。

 要するに、将来の担い手づくりをどのように進めるかというのは、私が冒頭申し上げたとおり、国が今ほど食料安全保障についてしっかりとビジョンを持って国内の農家あるいは農村といったものをリードしなきゃいけない時期に、将来の担い手づくりについては全く農家任せ、地域任せという感じがいたします。民主党法案では、国家としては無策であると言うに等しいのではないでしょうか。農家の現状維持を奨励し、変革をおくらせる方向で放置しているようなものだというふうに私は思います。

 結局、農業の構造強化については、標準よりも高コスト体質の小規模農家が民主党法案の所得補償でも生じる赤字に耐えかねて規模加算に走る、あるいは退出するのを期待することになるのが落ちだと思います。論理がつながっていない以上、結果的に駆り立てられる農家が私は気の毒だと思います。

 政府・与党の農政は、現状をきちっと変えていくというメッセージを明確に発している点だけでも、民主党法案と比べて日本の農業、農村の発展に誠実かつ真摯に向き合っていると考えるものでございます。

 冒頭申し上げましたとおり、きょういろいろと質問させていただきましたけれども、私は、やはり民主党の農政や民主党法案は、そのうたう目的あるいは食料安全保障の観点から見て、政策が持つべき総合的な体系もないし、目的と手段が合っていない、予算規模もあいまいで、予算配分方法については現場との突き合わせが不十分、一たび示された試算も政策の実効性がないなど、やはり政策として体をなしていないというふうに考えます。

 第二に、最後に触れた点です、特に小規模農家が民主党を信じてついていけば、出口のない窮状に追い込まれて、いつしか退場を余儀なくされるんじゃないかというふうに思います。

 また第三に、広報の問題でありますけれども、ぜひこれはお願いをしておきたいのは、選挙期間の前後はきちっと一貫した政策をとっていながら選挙のときだけそれを変えたような広報をする、生産調整廃止でありますとか、支援対象はすべての販売農家でありますとか、そういったことを打ち出して、実態と違う、耳ざわりのいい広報宣伝で、農家のある意味信頼というか、それを損ねるようなことは今後やらないでいただきたい、そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

 ちょっと時間を過ぎましたけれども、近藤部会長からいただきまして、申しわけありませんでした。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、近藤基彦君。

近藤(基)委員 自民党の近藤基彦でございます。

 私が最後の質疑となりますので、これまでの質疑を総括して、本法案に対する問題意識を改めて明確にしたいと思っております。

 ここ数年来、民主党が、我が国の農業、農村の現状を熱心に勉強され、みずからの見解をまとめて、政策として世に問う努力をなされているということは、今後の食料、農業、農村のあり方について国民的な関心を高めることにもつながっておりまして、我が党としても深く敬意を表するところでございます。

 国民の理解のもとで必要な予算をしっかり確保し、我が国の農業、農村を守り発展させていかなければならないと考えている点では、民主党も我々自民党も同じであろうと思っております。

 しかしながら、事昨年の参議院選からの民主党の主張、あるいは本日議題となっております法案の内容については、我が国農業、農村の将来を描く上で看過できない問題点を含んでいると考えております。この点をはっきり指摘させていただく必要があると思っております。

 本法案は議員立法ですので、まず、我々政治家としての基本姿勢にかかわる問題を改めて指摘しておきたいと思います。

 今までも小里議員、赤澤議員から指摘されてきているところでありますけれども、民主党は、昨年の参議院選に向けて、ある意味わかりやすい農業政策ビラをおつくりになり、一人区などを中心に選挙区民に大量に配布をなされました。

 そこには、野菜や果樹を含むあらゆる農産物のすべての販売農家を対象に、おおむね一兆円をかけてどこまでも所得を補償するという意味にとれる書きぶりやイラストが躍っておりました。さらに、米の生産調整をやめるとまで書いてあった。多くの農家がそういうことを恐らくすっきりと頭に入れたんだろうということは容易に想像ができます。

 ところが、法案の審議を通じて明らかになったことは、農家については、価格が生産費を上回っているだろう野菜や果樹、あるいは法案の対象外である畜産物、あるいは予算に限りがあるために優先順位が低く対象に選ばれなかった品目しか生産しない農家、あるいは米を含め行政と約束をした生産数量目標に従った生産をしない農家、これらは対象にならないということでありました。

 また、所得補償といえば、農家は、コスト割れしていようがいまいが、現在の収入が少しでも減れば補てんしてくれる仕組みと理解したと思います。農家にとっての所得というのは、わかりやすく言えば、販売収入から物財費などの費用を支払った後に財布や口座に残るお金のことですから、これが守ってもらえると思ったと思います。

 ところが、この法案は、標準的な労賃を含む生産費を基準に支払いをするもので、これも需給状況を見て単価を引き下げるという。農家の期待とこの法案には大変大きなギャップがあると思います。

 それから、米の生産調整を廃止するということは、すなわち、農家の自由な判断で米をつくってよいということであります。

 ところが、民主党の案は、生産数量目標を守る農家に支払うものであって、自由に米をつくることを進めるものではありません。米にも支払いをするとかしないとかというのは関係がないことであります。米を好きなだけつくっていいわけではないという点で、生産調整を残すものであり、公約違反とまでは言わないかもしれませんが、近いものがあると思います。

 一兆円も問題であります。聞けば、何らの積算根拠もない。結局、どの品目にどの程度の支援をするのかさえはっきりしないという極めてずさんな制度設計の政策に一兆円ありきの予算を組むことを、国民が容認してくれることはないと思います。予算編成の際に行き詰まることは明白であります。

 民主党議員の中には、先ほども赤澤議員の指摘にありましたけれども、地元で、一兆円で足りなければ二兆円出せばよいなどと軽口を言っておられる人もいると聞き及びます。これはガソリン税の暫定税率廃止の議論にも通じますが、いかに財政健全化という重大な国民的課題を軽々しくとらえているかがうかがい知れる点だろうと思います。

 このように、農家に大きな期待を抱かせて選挙戦を戦い、結局、それをほごにするような法案が提出されているわけであります。農家の頭に残るのは、一番最初に申し上げた、わかりやすい、平野議員の言葉によれば、デフォルメされたイメージであります。万一、民主党提出であるこの法案が成立するようなことがあれば、現場では、高まった農家の期待が行き場を失い、大混乱に陥ることは明白であります。

 これまでの質疑で、こうした選挙戦での宣伝と実際の法案の内容にギャップがあることを認め、ちゃんと農家に説明するとおっしゃっていましたけれども、その後、先ほど平野議員から、農家に支援額等を説明している、それが農家に理解をされているというお話もありましたが、それも含めて、具体的にどういった説明の努力を行ってきたのか、あるいは、選挙時にビラを配った農家にくまなく説明ができているのかどうか、御質問したいと思います。

平野参議院議員 この法案につきましては、私どもも、リーフレットをつくりまして、約百万部でございますけれども、それを各地区で配布するということをやっております。

 あわせて、この法案提出後は、農業団体を初めとした各組織に対する説明それから各地域における集会などで、ぜひ農業に関しての、特にも農業者戸別所得補償法案についての説明をさせていただきたいという運動を党を挙げてやってきております。先月も広島と山口でやってきたところでありますけれども、そういった運動をこれからも全国的に広げていく必要があるというふうに考えています。

 そのことを通じて、今回の農業者戸別所得補償法案の考え方、今、この国の農業政策では何が必要なのかということをしっかり訴えていきたいというふうに思っております。

近藤(基)委員 民主党がとった参議院選前後の行動で、何より問題が大きいと思うのは、農家に対して、工夫や努力を何もしなくても、現状どおりの農業をやっていれば所得は幾らでも補償してもらえるといった強いメッセージを発信したことであります。それは農家にとってはうれしいでしょうし、期待もするでしょう。

 しかしながら、国民の食生活が多様化し、また近年の厳しい景気動向の中で、食品であっても無条件に高いお金をかけてくれるような時代ではなくなっております。そのような中で、我が国の農業には、高品質な農産物を効率的に、できるだけ安く、安定的に供給する農業になっていくことが求められております。高齢化が進みゆく状況にあれども、こうした課題にこたえる工夫と努力は絶対に欠かすことができません。集落営農をつくって、コストを引き下げ、より品質がそろった農産物をつくろうとすることなどもその工夫や努力の一つであります。事実、地域にはそうした気風が着実に広がっておりますし、経営感覚にすぐれる農家、集落も多数出てきております。しかし、仮にそういう努力がなくなってしまえば、早晩、我が国農業は国民からの理解と共感自体を失うことになりかねません。

 民主党のメッセージには、そういう努力と工夫の停滞を呼び起こし、結局は農家、農村に不幸な思いをさせかねないという点で、大変大きな問題を含んでいると言わざるを得ません。制度設計のずさんさなど、本法案に賛成できない理由はほかにも山のようにありますけれども、こういった心理的な悪影響については、この法案を否決することによってしっかりと断ち切りたいと思う次第でございます。

 次に、貿易政策とこの法案との関係について御質問をいたします。

 この点は私が最初の質疑でも取り上げたことでありますけれども、百歩譲って、平野議員初め提出者の先生方は、農産物の関税をいたずらに引き下げてよいと思っておられないということはわかったつもりであります。

 しかしながら、小沢代表は、再三、農産物を含めた貿易自由化論に言及しておられたまま、発言を公の場で別に修正されたわけでもありません。また、参議院選のマニフェストでは、「農産物の国内生産の維持・拡大と、世界貿易機関(WTO)における貿易自由化協議及び各国との自由貿易協定(FTA)締結の促進を両立させます。そのため、」「「戸別所得補償制度」を創設します。」と書いてあります。

 にもかかわらず、戸別所得補償制度が国内生産の維持、拡大に役立つという面だけは国会の審議でさんざん御主張なされ、この制度によって両立させるはずの農産物の貿易自由化協議あるいは自由貿易協定のことになると、急に、それはこの法案とは全く関係がないような答弁をなされます。この点においては提出者の答弁には懐疑的にならざるを得ないわけでありますけれども、いま一度、御確認を申し上げます。

 マニフェストの記述から見れば、戸別所得補償制度と貿易自由化協議の促進などが無関係であるはずはありません。戸別所得補償制度を実現した上で、農産物貿易交渉にどのような姿勢で臨み、どのような提案をするつもりなのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。

平野参議院議員 まず、貿易の自由化の問題について答弁する前に、一点だけちょっとコメントをさせていただきたいんですが、何も努力しない状態で所得補償だけを受けるという御指摘がございましたけれども、この点の認識が、何回も申し上げているように、根本的に違うんです。

 今、米に代表されるように、あるいはほかの畑作物についてもそうなんですが、生産費を大きく割るような市場価格が形成されているという中で農業を継続しているというのは、それはその農家の意識と努力以外の何物でもないと思います。そういった努力に対してどのようにこたえていくか。

 そしてさらに、また繰り返しになりますけれども、農業、農村が急速に今変わっていくという状況の中で、どういう政策をとればいいか、これは、少なくとも、これに対しては、こういう形態をつくれということを上から指示することではない、ボトムアップ方式でやるべきだということが、これが今の農地を守る、農村を守るということに最もふさわしいのではないかという考え方に立っているということでございます。

 それから、貿易の自由化につきましては、これも何回も委員会で答弁申し上げたとおりでございますけれども、守るべきものは守るということに立っております。しかし、過去のガット交渉、農産物貿易交渉においてもそうでしたけれども、守る守ると言いながら、結局、結局と言ったら語弊がございますけれども、交渉事でございますから、結果的に関税が下がってきたという経過もあることは、もうこれは委員が最も承知していることだと思います。そういった状況に対応するためにも、こういった直接支払い、戸別所得補償といったものがやはり必要ではないかというふうに考えています。

 さらに、本法案を実現した上で、農産物貿易交渉にどのような提案をするつもりかということでございますけれども、基本的には先ほど言ったとおりでございますが、これにつけ加えて何点か申し上げさせていただきますと、これはもう私の個人的見解が強く入りますが、昨年来からずっと言っておりますが、穀物由来のバイオエタノールの生産、これは日本が主導権をとってぜひ反対すべきだというふうに思っております。

 それから、WTOは貿易の自由化ということを言っている一方で、今、各国においては輸出の制限が課されているということもございます。こういったものをどのようにとらえるか。こういったことについては、各国の事情、状況も踏まえながら、もしそれを是とするのであれば、WTOの枠組みを根本的に考える必要があると思いますし、こういったことをぜひ日本がリードしてやっていくべきだというふうに思っているところであります。

近藤(基)委員 参議院で加治屋議員も指摘をされておりますけれども、民主党のマニフェストの書きぶりを読んだ多くの国民は、今、平野議員からも御説明があったわけでありますが、そうとった人はなかなかいないと思います。農産物輸出国や途上国が強く要求している農産物関税の大幅削減に思い切って応じて工業製品などを含めた交渉全体の主導権を握る、そういうカードが切れるように、農産物の関税を大幅削減したときのための農業政策を準備しておくといったことがこの戸別所得補償法案だと受け取ったと思います。

 外交、通商も含めた民主党の政策全体を見渡したときに、農業政策は通商交渉を有利にするための一つの道具であるという考えが潜んでいると思わざるを得ません。このことはどうしても見過ごすわけにはいきません。

 また、そういう民主党の考え方の根底を感じ取ったのは国民だけではなくて、逆に農産物の輸出国を初めとする諸外国の人たちも、この戸別所得補償制度が貿易自由化の前提であると思ったと思います。発議者が幾ら、違う違うと繰り返されても、また、百歩譲って本当のところがどういう考えであったとしても、常識的に考えれば、日本の民主党が農産物貿易自由化の準備をしているととらえさせる表現をマニフェストという形で世界じゅうに広めてしまったということは言えると思います。

 こうした観点からも、貿易自由化を期待する人たちの期待が向けられてしまうこととなったこの法案、戸別所得補償制度を明確に否定し、我が国の、本当に守るべきは守るという従来からの一貫した姿勢を再度しっかりと世界に発信することが不可欠だと思っております。

 政府・与党の農政に課題がないとは言えません。すべての農家、そして将来の農家が安心して取り組める体質の強い農業、可能性にあふれた農村をどうつくるか、一朝一夕に解決する問題ではありません。民主党の主張のように、パンフレットのように、戸別所得補償制度さえ導入すれば、農業の問題も農村の問題もすべて解決してバラ色の将来が訪れるというようなことはあり得ないわけであります。

 農業、農村が直面している課題を直視して、具体的できめ細かい政策を労を惜しまずに講じていく道しか残されておりません。我が党はそういう決意でこれからも農政に取り組んでいくことをお約束して、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 この際、本案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣若林正俊君。

若林国務大臣 参議院提出の農業者戸別所得補償法案につきましては、政府としては、反対であります。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。岩永峯一君。

岩永委員 私は、自由民主党を代表し、民主党提出、農業者戸別所得補償法案に反対の立場から討論を行います。

 昨今、国際的な食料価格の高騰や諸外国の輸出規制の動きなどを端緒に、国内農業の重要性が再認識されつつある反面、国内農業は、農業従事者の減少、高齢化に見られる生産構造の脆弱化、これに伴う耕作放棄地の発生、農地、農業用水の維持管理の困難化など、厳しい状況に直面しております。

 こうした状況に的確に対応して、国内農業、農村の将来を切り開くことは、我々与党に課せられた重要な使命であり、野党からの御提案にも真摯に耳を傾け、この難局に対峙していきたいと心から思う次第であります。しかしながら、民主党提出、農業者戸別所得補償法案は、残念ながら、農家、農村、さらには国民の利益につながらない法案であり、賛成することはできません。

 以下、反対の主な理由を申し上げます。

 反対の第一の理由は、今回提出された法案は、法案審査に値する具体的内容を伴っていない点であります。

 審査を通じ、支援対象となる農産物の範囲、生産数量目標の設定、配分の考え方や実施状況の確認の方法、支援単価の水準、単価に加味するとしている要素などについて答弁を求めてまいりましたが、あいまいかつ観念的な説明に終始し、結果、具体的にはほとんど何も明示されませんでした。所要額も、一兆円という宣伝はありますが、結局、積算根拠も財源も説明なしであります。

 生活コストの上昇と財政健全化という国民的課題のはざまで、きめ細かくかつ効率的な財政運営が不可欠の折、どの品目にどの程度の支援をするのかさえ明確でなく、国民生活にどういう効果があるのかさえもわからない政策に一兆円ありきの予算を組むことが国民に容認されるはずはありません。

 一方では、米、麦、大豆ほか、多くの作物について行政による計画生産をする仕組みでは、農家の創意工夫を阻害するのみならず、都道府県、市町村にも過大な事務負担を課すおそれがあるという制度設計上の弊害も指摘されるのであります。

 反対の第二の理由は、我が国農業の将来の発展を阻害しかねない仕組みである点でございます。

 提出者の答弁にもあったように、我が国農業においては、現在でも小規模な農家や高齢な農家が重要な役割を果たしていることに全く異議はありません。しかしながら、すべての販売農家を同列に支援するというのでは、先ほど申し上げた国内農業が直面する厳しい状況を固定化し、農業の将来を危うくするおそれさえあると危惧します。

 提出者は、この法案の支援で地域がみずから将来を考えるようになると極めて楽観的な考え方を披露しますが、戸別農家への支援を強調する仕組みは、地域の農家が知恵を出し合って将来を考え合うような機運の醸成を阻害しかねないと考えます。農家に甘い言葉をかけながら、実のところ、その農家の将来を、そして国民の食を十分に考えているとは言いがたい法案と断じざるを得ません。

 また、今回の法案の最大の問題は、さきの参議院選以降の宣伝を通じて、農家に対して、工夫や努力を何もしなくても、現状どおりの農業をやっていれば所得が補償してもらえるという誤ったメッセージを発信していたことであります。

 いかに高齢化が進展しようとも、高品質な農産物を効率的に生産し、国民の豊かで安定した食生活を支えるという国民からの期待にこたえる工夫と努力は欠かせません。さきの参院選からこの法案の提出に至るまで、民主党はそういう努力と工夫の停滞を呼び起こし、結局は農家、農村に不幸な思いをさせるおそれがあるという点で大きな問題を含んでおります。

 最後に、誤解なきように申し上げますが、自由民主党は、しっかりと予算を確保し、農家、農村、そして国民の安心につながる政策を示そうという法案提出の動機そのものを否定するものではありません。農家にさまざまな誤解を植えつけ、また、将来につながらない今回の法案の制度設計について、はっきりと反対の意思を表明するものであることを申し添え、私の反対討論といたします。(拍手)

宮腰委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、農業者戸別所得補償法案に賛成の討論を行います。

 法案に賛成する第一の理由は、農業、農村の多様性に富んだ現場実態に即した制度設計となっていることです。

 農業、農村の現場では、多種多様な農業者が有機的に結びついて生産活動と集落活動を行っています。これらの多様な農業者は、ひとしく農業、農村維持発展のために欠くことのできない貴重な担い手となっているのです。戸別所得補償法案は、多様な農業者を幅広く支援対象とし、農村地域全体の底上げを図ろうとしています。

 これに対し、品目横断的経営安定対策のように、基本として、原則としてであっても、大規模農家のみを担い手だと限定することは、小規模農家を農村から追い出して集落を崩壊させるだけではありません。面積格差を生み出して、農村社会にあつれきを生み、対象外となった小規模農家の意欲を喪失せしめ、農業活動も集落活動も総体として低迷し、農業、農村は疲弊、崩壊へと向かうことは自明であります。

 法案に賛成する第二の理由は、食料自給率の向上を目指した制度で、そのことを法律の目的に明記している点です。

 農産物生産数量の目標を設定して、その目標に従って生産する販売農業者に対して所得補償を実施するのですから、食料の自給率は確実に向上します。

 ところが、鳴り物入りで導入された品目横断的経営安定対策は、自給率を無視し、その根拠法である担い手経営安定新法でも一言も言及されておりません。

 法案に賛成する第三の理由は、所得補償を農業の多面的機能に対する対価と明確に位置づけ、地球温暖化防止にも大きく寄与しようとしている点です。

 空気、水、土の維持浄化等々という多面的機能、これを正しく評価し、さらに強化するためにも、その対価の一部として所得補償するのです。多面的機能は大規模農家だけではなく小規模農家も面積に応じて果たしていますから、面積に応じて支給することが理論的にも当然です。

 法案に賛成する第四の理由は、農業、農村の六次産業化ともいうべき、農業、農村再生の方向性を示し、正しい意味の農業、農村の構造改革を提起しているという点です。

 消費者のニーズに対応した生産への質的転換に加え、米粉や米菓といった加工、二次産業や、直売所のように販売、三次産業にも主体的に取り組むことを通じて、一次、二次、三次産業を統合化する農業の六次産業化、また、農業者と二次産業者、三次産業者とが協同した取り組みを行い、さらには、農村という地域の広がりの中で面的、集団的にもそれらの取り組みが行われる農村の六次産業化、これらへの支援を規模にかかわらず行うものです。

 それに対し、政府・与党は大規模効率化路線ですが、そのような市場原理に偏り過ぎた選別政策こそが、農業構造を改革するどころか、農業、農村を崩壊に導く第一歩となっていることは、既に述べたとおり明白であります。

 以上が、法案に賛成する理由です。

 与党の委員各位には、与党としてのメンツにこだわり、いこじになることなく、みずからの政策判断の誤りを率直に認め、農業者戸別所得補償法案に賛成されることをお勧めします。仮に与党の委員各位が法案に御賛同をいただけなかったとしたならば、それは、とりもなおさず、与党が農家の支持が圧倒的に高い所得補償制度をつぶして、農業、農村を見捨てたことを意味します。委員各位の良識ある御判断をお願いします。

 民主党が政権を取得した暁には、農業者戸別所得補償制度を導入し、危機に瀕した我が国農業、農村を再生し、国民に対する食の安全、安心を盤石なものとすることを申し上げ、私の討論といたします。(拍手)

宮腰委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより採決に入ります。

 第百六十八回国会、参議院提出、農業者戸別所得補償法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮腰委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

宮腰委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

宮腰委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官伊藤健一君、大臣官房総括審議官吉村馨君、総合食料局長町田勝弘君、消費・安全局長佐藤正典君、生産局長内藤邦男君、経営局長高橋博君、農村振興局長中條康朗君、林野庁長官井出道雄君、内閣府大臣官房審議官堀田繁君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長鵜瀞恵子君、外務省大臣官房参事官小原雅博君、文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官石野利和君及び環境省大臣官房審議官黒田大三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部俊子君。

阿部(俊)委員 自由民主党の阿部俊子でございます。本日は、このような貴重な機会をいただきましたことにまずお礼を申し上げまして、三十分間質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、林家の負担の軽減につきましてお伺いしたいというふうに思います。

 林家負担の軽減について、特に、地球温暖化に伴う温室効果ガスの削減、自然災害の防止など、地球環境問題により、我が国の森林・林業の再生に対する社会的な要請が高まっているところであります。

 先月一日から京都議定書の取り組みが本格的に開始されて、日本は、一九九〇年を基準年とし、二〇一二年末までに温室効果ガスを六%削減することとし、政府では、このうち三・八%分、炭素換算で一千三百万トンを森林による吸収で賄う計画を立てています。現在は年間約三十五万ヘクタールの人工林が間伐されているところでありますが、この目標を達成するには、二〇一二年までに毎年二十万ヘクタールを上乗せして間伐する必要がございます。これについては、森林の追加的な間伐促進策を盛り込んだ森林間伐実施促進特措法と、それに基づく十億円規模の交付金が創設されたところでございます。

 しかしながら、三・八%分の排出削減を行う効果は約三百八十億とも言われておりますが、森林の手入れをするには、切り捨て間伐の場合でも一ヘクタール当たり十四万円程度かかると言われています。これは、作業路網の整備されていない場所では、そのコストはさらに高くなるところであります。材価が低迷する中、林家にとっては、間伐に投資することも、さらに間伐に必要な自己負担の二割を支払うことも非常に困難になっているところであります。また、森林組合の手数料を考えると、その負担は三割とも言われているところであります。

 国民総がかりで京都議定書達成のための取り組みを求めている三・八%の森林吸収による排出削減に対する手当てとしては、今回の交付金はやや少ないのではないかと考えるところであります。京都議定書の炭素税分としてもっと森林に投資するなど、いわゆる林家負担の軽減対策についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えさせていただきます。

 今委員からお話がありました間伐の促進でございますが、御指摘のように、ことしから京都議定書の第一約束期間が始まりまして、これから毎年五十五万ヘクタールの間伐を推進する必要がございます。このため、森林所有者の自己負担の軽減ということは特に重要な課題でございます。

 このため、林野庁といたしましては、森林組合等を中核として森林施業の集約化を図るとか、作業道等の路網と高性能の林業機械の組み合わせによりまして間伐材の生産コストを低減していく、あるいは、新生産システムと言っておりますが、川上と川下の連携によりまして低コスト、大ロットの安定供給体制をつくりまして、そのことを通じて国産材の利用拡大を図っていく。そういう中で、間伐の収益性を高めまして、そのことによって実質的に森林所有者の自己負担の軽減が図られていくように措置をしているところでございます。

 このほか、この平成二十年度におきましては、森林所有者の自己負担の軽減につながりますように定額助成方式のモデル事業を創設いたしましたし、また、民間事業体の森林整備への意欲を最大限活用いたしまして、事後精算方式で損失の一部を補てんするといった対策も実施をいたしてきております。こういった諸対策を総合的に講ずる中で、間伐におきます森林所有者の自己負担の軽減にさらに努めてまいりたいと考えております。

阿部(俊)委員 ありがとうございます。

 材価の低迷する中、投資効果が全く見えない林家負担の軽減は森林を守る上でも非常に重要ですので、よろしくお願いしたいと思います。

 また、間伐促進、先ほどお答えいただきましたように、インセンティブを川下にしっかりつけていくということが、これまで補助金の切れ目が事業の切れ目となってきました政策では非常に重要だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、肉牛に関してお話をお伺いしたいと思います。

 先日、地元の酪農家の方から、市場に肉牛として出荷している交雑種、その他肉専用種について、その名称が消費者にとってイメージが悪いんじゃないかということで、喜んで買えるような名前に変えてほしいという要望がございました。

 これについては、牛肉を販売する際に品質を表示するかどうかは任意となっているということをお伺いいたしまして、独自のブランドや地域名を冠した銘柄をつけて、企業努力で商品イメージを上げている例も多いと伺いました。

 交雑種に関しましては、和牛よりも安く、ホルスタイン種の乳用種牛肉より味がいいという点において、日本人の食生活においても非常に大切な肉牛であると考えます。また、和牛とアンガスをかけたその他肉専用種に関しても同様であります。それを消費者に定着して理解を図り、イメージアップを図っていくための施策について、お考えをお聞かせください。

内藤政府参考人 まず、牛肉の表示について、繰り返しになりますけれども、若干御説明したいと思います。

 小売店で牛肉を販売する際、当然これは、JAS法、食品衛生法による規制に加えまして、公正取引委員会の認定を受けて食肉事業者団体がみずから設定しました食肉の表示に関する公正競争規約に基づきまして、食肉の名称、すなわち種類とか部位、それから原産地などを表示する必要がございます。しかしながら、交雑種等の品種の表示については、委員御指摘のように任意となっております。

 小売段階で、交雑種という品種名、あるいは黒毛和種かける乳用種といった品種の組み合わせで表示される場合がございます。これは、ホルスタイン種等の乳用種が通例国産牛と表示されて販売される場合が多いわけですが、乳用種よりも肉質がよい交雑種を差別化する観点からこのような表示が行われていると承知しております。

 他方、交雑種の牛肉について、単に国産牛と表示するのではなくて、独自のブランド名、あるいは地域名を冠した銘柄名を付すことによって付加価値をつけて販売している事例もあるところでございます。

 農林水産省としても、交雑種を含みますこういった国産牛肉の生産基盤強化と需要拡大を図る観点から、生産者が流通販売業者と一体となって地域ブランドを進めていくこういった取り組みを促進していきたいと考えております。

阿部(俊)委員 ありがとうございます。

 特にえさの高騰する中、えさ効率というのが非常に重要でありますが、ホルスタインと比較すると、F1、特にアンガスをかけた肉専用種に関しましては非常にその効率がよいということでありますので、市場の流通をもっと促していただく、さらにその活性化をしていくということで、ぜひ後押しをお願いしたいと思います。

 次に、中山間地域直接支払い制度についてお伺いしたいと思います。

 中山間地域は、農業生産、自然環境保全、景観の維持などさまざまな面において重要な地域でございますが、耕作に不利な条件から、農業の生産性が低く、農業所得、農外所得ともに低い状態となっています。平成十二年に導入された中山間直接支払い制度は、本来は、農業生産条件が不利な状況にある中山間地域における農業生産の維持を図ることを目的に設立されましたが、耕作に有利な地域との生産コストの差額を埋めるだけではなく、今では、地域を守るための大切な重要な施策として定着しているところであります。

 平成十七年より五年計画で新たな対策がスタートし、現在四年目を迎えておりますが、その以後の継続を含めて、今後の方向性についてお聞かせください。

中條政府参考人 中山間地域等直接支払い制度についてのお尋ねでございます。

 現在、十七年度から二期目の対策に入っておりまして、耕作放棄地の発生防止、農業の多面的機能の維持増進、あるいは集落機能の活性化などの面で大きな効果を発揮しておりまして、農家、地方公共団体から非常に高い評価をいただいているところと認識しております。

 十九年度の実施状況の見込みを御紹介いたしますと、交付市町村数も一千四十市町村に至りましたし、締結協定数も二万八千七百十二協定ということで昨年に比較しましても百九十七協定増加しておりますし、また、交付面積も六十六万五千ヘクタールということで前年度に比較しまして二千ヘクタールふえている状況となりまして、対象となります八十一万ヘクタールの農用地の約八割で実施されているところでございます。

 委員御指摘のとおり、この交付金につきましては、これを活用しまして、農業機械の共同利用、担い手への農地利用集積など、これまで以上に積極的かつ質の高い取り組みが実施されているところでございます。

 本制度の継続に関してでございますけれども、まずは、現在の対策が着実かつ効果的に実施されまして、その成果が都市の住民も含め広く国民の方々に理解されることが重要であるというふうに考えておりまして、各地域の創意工夫による取り組みを引き続き意欲的に行っていただくことが肝要と考えております。

 いずれにしましても、本制度のあり方、それから継続の必要性につきましては、現在、第三者委員会を開催しておりまして、ここの意見を聞きつつ、また、同時並行して実施しております中間年評価等の結果も踏まえまして今後の展開方法につきまして検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございます。

 中山間直接支払い制度は、条件不利地域対策だけではなく、限界集落と言われる小規模・高齢化集落、十九戸以下、高齢化率五割以上の地域を守る上では非常に重要であると思われます。また、第三期になる次に関しましては、やはり傾斜の部分をもっと細かく見ていく、さらにはいわゆる農業計画と連動させていくということを考えながら、ぜひとも継続をお願いしたいと思うところであります。

 次に、米政策に関しまして、生産調整、消費拡大という観点から二点お伺いをさせていただきます。

 まず、米政策に関しましては、従来、ばらまき型と批判の強かった助成金制度が、産地づくり交付金により、全国一律の助成金額から地域ごとに自由に単価を決めて助成できることになりました。計画的な生産の実施、実効性を確保していくためには、生産者や生産団体が中心となった取り組みを進めていくことが基本ではございますが、それには市町村や県行政の強力な行政指導や積極的な関与が不可欠となります。しかしながら、現状では、市町村合併等の進展により、生産調整の推進や事務処理という観点から市町村のかかわりが薄らいでいるということを聞いているところであります。

 生産調整に関して、市町村や県行政の役割をどのようにこれからお考えになっているのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 米につきましては、産地ごと、銘柄ごとに市場評価や販売状況の差が生じている状況でございます。でありますので、生産調整につきましても、全体として需給バランスがとれるように留意しつつも、こうした動向を踏まえて、生産者、生産者団体が、どのような銘柄の米をどの程度生産するかを主体的に決定していくということが適切であると考えているわけでございます。

 このため、食糧法におきましては、生産調整については、農林水産大臣が定める国全体の需給見通しを踏まえた上で、生産者団体等が生産調整方針を定めて生産調整に主体的に取り組んで、行政はこれを助言指導する、サポートする、そういう仕組みとなっているわけでございます。

 平成十九年産米につきましては、生産調整の実効性が確保されなかったという残念なことがございまして、米価が大幅に下落するという異常事態となったところでございます。そこで、二十年産以降の生産調整につきましては、その実効性が確保できるように、国、都道府県、市町村といった行政側と農業者団体側がそれぞれの役割を果たすとともに、相互に連携しながら生産調整目標を達成するために全力を挙げるというふうにしたところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 特に米価の下落に関しましてはこの生産調整がかなりかぎとなると思っておりますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 次に、米の消費拡大についてお伺いをいたします。

 食料自給率の向上のため日本型食生活への転換が必要と言われておりますが、中でも、政府の目指している国内食料自給率アップに最も結びつきやすいのが米の消費拡大であります。白米を中心とした日本型食生活を進めるなど国内の米消費を進めていくことが重要ですが、若者を中心とした食生活の変化などを考えると、白米としての消費には限界がございます。

 そこで、白米以外の米の消費を考えたときに、現在、米粉パン、米粉めんが話題になっています。参議院の売店でも売っておりまして時々食べておりますが、非常においしいものでございます。

 米粉パンは、小麦粉を使用した従来のパンとは違い、しっとり、もっちりした食感があり、高たんぱくで低カロリーと言われています。特産地である新潟や北海道を初め、宮城や神奈川などの都市部でも学校給食に米粉パンを採用しておりまして、小麦アレルギーのある子供も食べられるものがあることから、大変人気が出ているようでもあります。

 平成十八年度、麦はパン用として百五十五万トン、めん用として百二十二万トン利用されています。輸入麦が四百六十八万トンであるのに対して、国産はわずか六十九万トンです。主食の白米とともに、六〇%が輸入した麦でつくられているパンを米粉でつくったパンにかえていくことは、米自給率が九六%ある日本の実情にも合いまして、米粉パンの普及には大変期待が持てるのではないかと考えています。例えば、パン用麦の十分の一でも米粉に代替することができましたら、年間十五万トン、水田面積にしまして三万ヘクタール分の需要が拡大できます。平成十八年度に米粉パンとして使用された米は六千トンだけでありますので、それをしっかりと実行すると、米の需要としては二、三%拡大する計算になります。

 現在、農水省におかれましても、農業団体と連携し、米の消費拡大に向けてさまざまな取り組みに御尽力いただいておりますが、米の消費拡大の一環として、この米粉の活用、どのような見解をお持ちなのか、ぜひともお聞かせいただきたいと思います。

若林国務大臣 我が国の食料自給率を引き上げる、さまざまな課題がございます。そして、その努力をしなければならないわけでありますが、中でも、やはり消費の大宗であります、また日本の国の生産条件に一番適合しております米の消費の減退に歯どめをかけて米の消費の拡大を図っていくということは、一番大きな課題だというふうに考えております。

 そこで、これまでの消費拡大対策としては、委員も御承知でございますが、米飯学校給食の週三回実現に向けた働きかけを強化いたします。また、都市部では米飯学校給食フォーラムなどを開催いたしまして学校給食における米飯給食を進める努力をしてまいりましたし、また、御飯食によります生活習慣病の予防効果を啓発する意味で食育健康サミットなどの開催をしたり、あるいはテレビコマーシャルを通じた食事バランスガイドの普及啓発をしたりしてまいっております。その一環として、米加工品の新規需要開発への支援を行ってきたところでございますし、昨年の十一月からは、若年層が朝御飯を食べない傾向が強まってきておりますので、食品関係の企業とか団体などとも連携をして、官民挙げてのキャンペーンとして、「めざましごはんキャンペーン」というのを実施してきたところでございます。

 今後ともに、米の消費拡大を進めていくためには、朝食欠食の改善を図るために、今申し上げました「めざましごはんキャンペーン」を企業、大学などの協力を得ながら一層推進しなければいけないと思っております。特に、四月の新入学、新入社の時期、六月の食育月間、また秋以降の新米の出回り時期など、三つに分けて、メディアミックスの手法によりまして効果的な働きかけを行っていくつもりでございます。

 そのほかに、若い人が朝、駅で食事をするということがふえております。その意味では、駅における中食の事業者によるおにぎりスタンドなどの新業態開発を行う朝御飯ビジネスを推進する。また、御飯レシピの多頻度提供など簡便化、個食化への対応を推進する。そして、新たなライフスタイルの提案として、「家族揃って夕ごはん」というようなキャンペーンを推進するというようなこと、御飯食の健康面からの情報発信など、健康志向、環境問題への対応などの推進に積極的に取り組んでいきたいと考えております。

 しかし、それらの努力に加えて、今委員が御指摘になりましたように、米の新たな需要の拡大の方向としまして、米粉の利用を推進していくということも必要だというふうに考えております。

 御承知のように、小麦の国際需給は大きく変化しております。そして、その大宗を輸入に依存している小麦の価格も高騰している状況にあるわけでございます。一方、国内では主食用の米の需要が今なお年々減少してきておりまして、委員も御承知のとおり、水田の六割で需要が賄えるというような状況になっておりまして、生産者が主体となって主食用米の需要に応じた生産に取り組んでいるところでありますが、四割に当たる水田が調整の対象になっているというようなことでございます。

 そこで、この水田の調整対象になっております四割を最大限に活用いたしまして自給率の向上につなげていくことは極めて重要だというふうに認識いたしておりまして、麦、大豆等の生産とあわせまして、米粉、そしてさらに言えば飼料用米などの非主食用の米の低コスト生産を進めていく必要があると考えているところでございます。

 特に委員御指摘の米粉につきましては、産地、製粉メーカー、製パン、製めんのメーカー、スーパーなどが連携をいたしまして、これを確実に流通、加工、消費する体制を構築しなければならない、このように考えているところでございます。

 こうした観点から、実は昨年の十月から検討会を開催してまいりました。これは、「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会という検討会でございまして、引き続き米粉などの非主食用米の利用拡大に向けて幅広く検討をしてまいりたいと思っております。

 このような新たな需要、委員もおっしゃられました米粉のパンも、私も実は農林水産省の地下の食堂で朝これを購入して食べますけれども、大変人気がよくてすぐ売り切れてしまうんですね。今までのパンの認識で見ますとあれはパンではないと言う人がおりますけれども、それは考え方の差でありまして、その嗜好によりまして、なおこれから相当需要、人気が出る可能性を秘めているというふうに私は考えているところでございます。

阿部(俊)委員 米粉パン、また飼料用米についていろいろ教えていただきまして、ありがとうございます。

 特に飼料米に関しましては、前回予算委員会の分科会でも質問させていただいたところでございますが、政策の多くが単年度で、農家や畜産農家にとってみれば、将来を見通すことができず、安心して飼料米の生産に取り組むことができないという声も実は聞かれているところであります。

 本格的に飼料米を定着させるために、今後いつまでにどのぐらい作付面積を確保するのかという中長期的なビジョンを設定し、その実現に向けた支援策が必要ではないかと考えていますが、これに関しまして、政府としてのお考えを聞かせていただければというふうに思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 飼料米につきましては、畜産サイドからも、えさ価格が高騰している中、非常に要望の強いものでございますけれども、やはりまだまだ生産コストが高いという問題がございます。現時点で、畜産サイドといたしましては、そういった実証試験をやりながら、低コスト生産、あるいは畜種ごとにそれぞれ事情が違いますので、畜種ごとにどの程度まで飼料米を供与しても畜産物の品質に影響がないかということを実証的に確認しながら現在進めているところでございます。

 こういったことを積み重ねていって、畜産農家、それから飼料米を生産する生産農家ともども、安心してその生産に取り組めるような体制、環境をつくっていきたいと考えております。

 以上であります。

阿部(俊)委員 ありがとうございます。

 やはり、単年度を何回出されても、中長期的なビジョンが出ない限り酪農家も農家も手を出さないわけでありますので、ぜひ御検討をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、食料自給率に関してお聞きしたいわけでありますが、前回も質問させていただいたところでありまして、これに関しまして、政府としても対策をしっかりと立てていらっしゃるんだと思いますが、今、日本が、バイオエタノールの問題、いろいろの問題から、世界最大の食料純輸入国になってしまっていると考えてもおかしくはないという段階であります。

 これに対しまして農林水産省はどのように認識し、具体的にどのような計画を立てて取り組んでいるかを、もう時間がございませんが、簡単にお知らせください。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 食料自給率につきましては、平成十七年三月に策定されました食料・農業・農村基本計画におきまして、平成二十七年度までに四五%に向上させるということが目標として設定されておるわけでございます。

 一番直近のデータでわかっておりますのは平成十八年度の数字でありますが、残念ながら前年度から一ポイント下がって三九%ということになってしまいましたけれども、現在、国産農産物に対する関心あるいは食料安全保障という問題に対する理解が深まってきておりますので、こういった状況の中で、この目標を達成するべく、施策の推進に最大限努めてまいりたいと思っております。

 具体的には、委員から御指摘がありましたような、また大臣から御答弁申し上げたような、米粉利用の推進を含みます米の消費拡大、また、飼料自給率の向上、油脂類の過剰摂取の抑制等といった取り組みのほかに、加工、業務用に向けまして野菜の供給をしっかりやっていこうというようなこと、さらには、耕作放棄地の有効利用ですとか農産物の輸出の促進といったいろいろな取り組みをもって進めていきたいと思っております。さらに、国民の理解を深めていただくという観点から、食育あるいは戦略的広報といったことにつきましても力を注ぎまして、具体的な成果につなげてまいりたいというふうに考えております。

阿部(俊)委員 ありがとうございます。

 時間切れになりましたので最後に簡単に一つだけお聞きしたいのですが、酪農家や農業に関する経営安定対策に対してであります。

 EUなどでは、直接支払いという作付面積や頭数に基づく支払いから、生産要素から切り離した農村開発ということに振り向けている段階でありますが、これからの経営安定対策、日本はどのような形で進めていくのか、ぜひ一言でお答えいただきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御案内のとおり、飼料価格の高騰によりまして、畜産経営の収益は非常に悪くなっておるわけでございます。

 私どもは、そういった生産コストの上昇に対しましては、できる限りの生産性向上に努めるということ、しかしながら、経営努力では補えない部分がございますので、そういった補えない生産コストの上昇については生産物の価格に反映させていくということが基本であるべきだと思っております。

 他方、生産性向上それから生産物価格への反映につきましては、これは一定の時間がかかるわけですから、その間は、配合飼料価格安定制度によりまして飼料価格への補てんを行う、あるいは畜種の実態に応じた経営安定対策を実施しまして畜産経営への影響を緩和する、こういう施策を講じているわけでございます。

 委員御指摘のような、欧米諸国、特にEUにおけるそういった制度なんかも当然我々は参考にしながらやっておるわけでございまして、今後とも、生産コストの上昇が生産物の価格に適切に反映されるような環境づくりを進めながら、配合飼料価格安定制度の運営状況、それから畜種ごとの経営の動向、こういったいろいろなものの関係に十分留意しながら、畜産農家が安心して経営を行っていけるようなそういった必要な支援について検討を進めていきたいと考えております。

 以上でございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございます。

 ぜひとも、食料自給率に関しましては、食料安全保障、特に食料を守らなければ我々は国際競争力も、しっかりと戦えないのだという観点から、農林水産省の方々にもしっかり頑張っていただきたいと思います。

 本日は質問の時間をいただきまして大変ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、丹羽秀樹君。

丹羽(秀)委員 自由民主党の丹羽秀樹であります。

 本日は、日ごろの農業政策について御質問させていただきます。

 先ほど阿部先生から御質問がございましたが、私もちょっとかぶるところがあります。食料自給率について、これは本当に、今、日本の国の農業の非常に重要なテーマになっているんじゃないか、そのように考えております。

 現在、我が国の農業が直面する問題は本当に多くあると思いますが、その中で食料自給率が、平成十八年度の総合食料自給率、概算値のカロリーベースでございますが、前年度比で一%減少し、三九パーということでございます。

 我が国のカロリーベースの自給率は、昭和四十年の七三%から五十年度の五四パーへと、短期間に大きく低下したということでございます。その後、ほぼ横ばいでございましたが、また昭和六十年度以降、さらにこれが低下し、ここ直近では自給率はほぼ四〇%というところで推移してまいりました。

 我が家庭においてもそうでございますが、近年、食生活やライフスタイルが随分多様化してまいりました。それに伴いまして食の外部化が進んでいく中で、外食や中食、食品加工業等による加工や業務用の需要の高まりに国内の生産が十分に対応し切れていないというのも問題であるのではないかと思っております。

 そこで、今後、政府がこの食料自給率を上げるために、どのような、その具体的措置を実際にお聞かせいただきたいと思っております。

若林国務大臣 昨日、総理を交えまして、二十一世紀新農政二〇〇八という政府の方針を決定いたしました。その前提は、有識者から成る戦略会議、私が主催をしてきたわけでありますが、食料の未来を描く戦略会議というのを開催いたしました。そこで国民の皆さん方にメッセージを発したわけでありまして、食料をめぐる種々の情勢に対します国民の共通認識の醸成を図りながら、消費者、生産者、事業者、行政機関といった各主体によります食料・農業・農村に関する諸課題への取り組みをさらに促進するという方向を明示したわけでございますが、その中で、国際的な食料事情を踏まえて、食料の安全保障という観点から、食料の国内の供給力を強化する必要があるということを改めて確認したわけでございます。

 その中で、まず第一は、米の利用の新たな可能性を追求するということでございます。委員も御承知のとおりでございますが、何といっても貴重な食料生産装置とも言えます水田、これは国土保全とか景観保持、多面的な機能も有しているわけでございますが、何としても米をつくるという意味で、米粉としてパン、めん類の活用の取り組みを本格化する、そして飼料用としても活用するための課題に積極的に取り組むということを決めることにしたわけでございます。

 また、二番目としましては、飼料、えさの自給率の向上を図る必要があるということでございまして、青刈りトウモロコシでありますとか稲発酵粗飼料という形の飼料の生産の促進、また耕作放棄地におきます放牧の促進というような形、さらに言えば、大変な食品残渣が出ておりますが、この食品残渣を飼料化したエコフィードや、それに加えて飼料用の米の生産、利用も促進するということを決めたところでございます。

 また、三つ目として、農林水産業と食品産業の連携を強化いたします。いわゆる農商工連携というものを積極的に推進いたしまして、地域におきます農業資源というものが最大限に活用され、そして商工業者のノウハウも活用いたしまして、国産のニーズの高い農作物、野菜、畜産物などの供給体制とあわせまして加工、販売の力をつけていく、そしてブランド化に基づいて生産に取り組んでいく産地、そういう意味での地産地消というものを推進していく。

 四番目に、食料供給コストの縮減でございます。何といっても食料の供給コストを下げていかなければ、国民の皆さん方の食費負担がふえていくようでは消費の拡大も難しいわけでございます。その意味で、御議論をいただいてまいりましたいわゆる品目別の経営安定対策というようなものなどを通じまして、経営規模を拡大する、集団的な生産組織を進めるというようなことを通じまして生産性を上げる方向で政策を強化いたしたい。そういう中では土地利用の集約ということが大事でございますので、農地制度の改革につきましても積極的に取り組んでいく。

 これらのことを決めたわけでございます。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。非常に詳しく御説明いただきました。

 私も、きょうの質問に先立ちまして、一週間前から朝昼晩すべて米を食べようという努力を本当にしてまいりました。ゴールデンウイーク中もでございますが、ふと、お店に入って注文するときにメニューを見たら、米以外のものを頼んでいる自分がいるわけですよね。だから、米をとにかく食べなきゃという意識を常日ごろ持っていないと、今の世の中、お米に対する意識というのが薄れてきているんじゃないかな、これが私が実感したものでございます。朝も、おなかがすいたら、電子ジャーをあけるよりも先にパンを焼いている自分がいるわけですよね。そういった面でも、お米に対する意識というのは、今後、子供のうちから植えつけていくことが必要かなと思っております。

 そこの中で、最近、学校給食で主食に米飯を出す頻度についてお尋ねしたいと思っております。

 小さな子供を持つ家庭というのは、学校給食というものが食生活の中で非常に重要になってまいります。食料自給率の面から考えましても、学校給食における米飯というのが非常に大きなウエートを占めてくるんじゃないか、そのように考えております。さらには、農産物への意識、地域の食文化への理解という面でも、子供たちの学校給食というのが非常に重要になってくると思っております。

 そこで、文部科学省の方にきょうはお越しいただいておりますので、学校給食に対する文部科学省の取り組み等をお尋ねしたいと思います。

石野政府参考人 お答え申し上げます。

 学校給食は、子供の成長、発達あるいは活動の源泉となるものであると同時に、子供に望ましい食習慣、あるいは食に関する実践力を身につけさせるため、学校におきます食育推進にとって大変大事な生きた教材になるものと認識しております。

 学校給食におきましては、地場産物の積極的な活用が図られているところでございますが、その中でも特に御指摘ございました米飯給食は、日本人の伝統的食生活の根幹であります米飯の正しい食習慣を身につけさせること、あるいは地域の食文化を通して郷土への関心を高めることができることなど、教育的意義を持つものと認識をしておりまして、米飯給食の普及、定着に努めているところでございます。

 平成十八年度の米飯給食の実施状況の調査によりますと、全国の学校給食を実施しております小中学校全体の九九・七%、校数で申しますと三万一千三百八十六校で米飯給食を実施しておりまして、その週当たりの平均実施回数は二・九回となっております。

 文部科学省におきましては、米飯給食の推進につきまして、従来より各種会議等での啓発のほかに、米や地場産物を教材として活用した食に関する指導のあり方などについて調査研究を行うモデル事業を実施するとともに、教師用の指導の手引、あるいは児童生徒用の学習教材の作成、配付等を行ってまいりました。また、二十年度におきましては、引き続きこのモデル事業を実施するとともに、新たに、米飯を含めました新たな地場産物の活用方策等に関する調査研究を実施することとしております。

 今後とも、このような方策を通じまして、米飯給食が持つ教育的意義を踏まえ、そのより一層の普及、定着に努めてまいりたいと考えております。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、本当に学校給食で米飯の方をより推進していただいて、子供たちにとにかく主食は米だというふうに、それぐらいの意気込みを、これから植えつけると言ったら失礼ですけれども、学んでいってもらいたいと考えております。

 続いて、家庭での食についてお尋ねしたいと思います。

 我が家は古くから農家をやっております。最近の農業を見ますと、どうも農業が家庭の食卓から随分離れてきているんじゃないかなというのが私が実感するところでございます。これはさまざまな要因があると思いますが、食料というものは、我々が生きていく上で一日たりとも欠かすことができない、これは非常に基礎的な物資でございます。農業と食卓の意識が離れてしまったら、農産物の最大の市場である食卓の消費者の意識が農業に向くということは非常に難しいと思います。

 そこで、食卓と農業をどのようにこれから結んで、さらに魅力的な農業にしていくにはどのようにしていくことがいいのか、その辺をお尋ねしたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のように、食料消費と生産現場との距離が拡大をしている中でございます。自然の恵みを受けて食料生産が成り立っていることや、あるいは農業者を初め多くの方々の努力によって食生活が支えられていることをなかなか実感しにくくなっているところがございます。

 このような中、地産地消あるいは農林漁業体験の推進により生産者と消費者との信頼関係を構築いたしまして、地域の農林水産業への理解が深まるよう、食育の推進を図っていくことが大変重要だというふうに思っているところでございます。

 このため、農林水産省では、優良事例の提供や加工、直売施設の整備などによりまして、地場産の農産物の安定供給体制づくりを進めております。また、自治体、生産者、教育機関等が連携した教育ファームの取り組みの促進も行っているところでございます。また、体験施設の整備、あるいは体験学習指導者への研修などの実施、さらにはインターネットによります体験活動受け入れ可能な農林水産業者あるいは団体等に関する情報提供、交流ネットワークづくりへの支援などにさまざまな取り組みを行っているところでございます。

 今後とも、食育を通じまして消費者の農業への理解、関心が深まるように、積極的に取り組んでまいる所存でございます。

若林国務大臣 委員から家庭におけるいわば食卓と農業との距離感が拡大してきているんじゃないかという御指摘がございました。私もそのことを大変危惧しているところでございます。

 今、局長から食育についての御答弁を申し上げましたけれども、実はこの国会に学校給食法の改正の提案を政府はいたしております。やはり子供のときからの食習慣というのは非常に大事だというふうに思います。今、文部科学省の方からの御答弁の中にそのことがございませんでしたけれども、私の方から学校給食法の改正について申し上げさせていただいて、ぜひとも委員の御理解をお願いしたいと思っております。

 この学校給食法では、現在は「国民の食生活の改善に寄与するもの」としておりますけれども、これを「食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たすもの」というふうに積極的に位置づけておりまして、「この法律の目的」に、学校給食を活用した食に関する指導の実施に関して必要な事項を定めて、学校における食育の推進を図るということを規定しております。

 そして、この第二条の「学校給食の目標」というところで種々の改正をしておりますが、新しく設けようとしております条項について申し上げますと、四号では、食生活が自然の恩恵の上に成り立っていることへの理解を深め、生命、自然を尊重する精神、環境の保全に関する態度を養うというふうに農業との関係を明らかにしているところでございますし、また、食生活が食にかかわる人々の活動によって支えられていることの理解を深め、勤労を重んずる態度を養うということを教育の面で、学校給食の中で明らかにする。

 さらに言えば、第六号としまして、伝統的な食文化への理解を深める。そして、食料の生産、流通、消費について正しい理解に導いていくというようなことをこの学校給食の目標として明らかにしているところでございます。

丹羽(秀)委員 大臣、答弁ありがとうございます。

 正しい食生活というのは非常に重要なことだと私は思っております。例えば、我が国では、御飯を食べる前に、手を合わせて必ずいただきますという言葉を発します。言葉の話になりますが、おはようという言葉は、英語でグッドモーニングといいます。こんにちははハローです。いただきますというのは、英語では直訳するとレッツイートになるわけでございますが、このレッツイートと我々の使っているいただきますというのは全然意味合いが違ってきます。我々の使ういただきますというのは、先ほど大臣がおっしゃるように、食の生産者に対する感謝の気持ち、つくってくれた人に対する感謝の気持ち、もちろん、すべての自然に対する感謝、食の恵みへの感謝の気持ちというものが含まれる、これが我々が小さいころから教えられてきた正しい食生活じゃないかと思っております。

 どうぞ、その辺も今後農水省と文部科学省の方でしっかりと連携をとって、正しい食に関する理解を進めていっていただきたいと思っております。

 BSEの問題についてちょっとお尋ねしたいと思います。

 先日、内閣府が出した資料、社会意識に関する世論調査の中で、現在の日本で悪い方向に向かっている分野は「食糧」と答えた人が実は四〇・九%と前回調査の約三倍に急増いたしております。これは、国民生活に影響を与えた食品の偽装表示や中国製のギョーザ中毒事件が影響したというふうにも思っております。さらに、食料品の値上げや食の安心への懸念拡大を裏づけたものであると思っております。

 そういった中で、このBSEが先日新聞に報道されたとき、大臣がこれについてコメントをされておりました。チェック機能がきちんとしていたから今回見つけることができたというコメントをされておりました。これはまさしくそのとおりだとも思っておりますが、なぜもっと早い段階でのチェック体制でBSEの危険部位の混入を見つけることができなかったのかということでございます。そこの今後の対応についてお尋ねしたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明を申し上げます。

 平成十九年の六月に、対日輸出プログラムの遵守状況の検証期間の評価が行われまして、その結果、米国側のシステムが機能しているとの認識を共有したことから、日本側で不適格な製品の輸入が確認された場合には、米国農務省の原因究明と改善措置を踏まえて、事案の性質に応じた適切な措置を講ずることとされたところでございます。

 それで、平成十八年七月の輸入手続再開以降でございますけれども、これまで本件以外に七例の混載事例が確認されたところでございます。いずれの場合も徹底した原因究明と改善措置の実施が確認されるまで輸入を保留してきたところでございます。

 今回の事例につきましても、現在、米国政府に対しまして、徹底した原因究明と改善措置の実施を含む詳細な調査結果の報告を求めているところでございます。また、厚生労働省、農水省ともに、抽出率のアップ等をいたしまして対応しているところでございます。今後、これ以上の措置が必要かどうかにつきましては、米国から提出される調査結果の報告を踏まえまして、適切に対応していく考えでございます。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。

 このBSEの問題については、輸入牛肉なので各省庁が関係してくると思いますが、先ほども申し上げましたとおり、消費者の根底には安心、安全という考えが大前提であるわけでございます。そういった中で、行政はもちろん縦割りでできているかもしれませんが、我々の生活というのは縦割りでできていない部分が基本でございます。そういった面で、しっかりと対応をスピーディーに進めていただいて、消費者重視の観点から食の安心と安全についてもお計らいいただきたいと思っております。

 その中で、中国製冷凍ギョーザの中毒事件がございましたが、これも消費者重視の観点から、私は、この責任の所在をきちんとすべきであると考えております。できましたら大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。

若林国務大臣 中国産冷凍ギョーザの問題につきましては、昨日の日中首脳会談の際にも、それぞれの首脳がこの問題は国民の食の安全に対します重大な課題であるという認識を共有し、その原因の究明について各国それぞれが努力すると同時に、両国間の同分野の専門家、担当者レベルでのさらに一層の協力を強化してその原因究明に努めるということを確認されたところでございます。

 今、両国の担当部局間におきます原因についての認識にかなりの距離があるということは事実でございますが、原因が明確にされないと、これへのしっかりとした対応措置をとることができないわけでありますし、また、国民の側におきます、中国産の冷凍ギョーザのみならず、中国産の輸入食品につきます不信感というものもなくならないわけでございます。その意味では、その原因究明について、両国間でなお一層協議を深め、その原因の究明を一日も早くしなければならない、このように認識しているところでございます。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

丹羽(秀)委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣のお考えのとおり、消費者というのは、最近、食の安心と安全ということに本当に敏感でございます。先日も発表がございましたが、最近、我が日本の中国産農産物の輸入が減ってきているというのも、これも消費者が望んでいる実際の声なんじゃないかな、そのように考えております。

 そこで、消費者の観点からという面で、先月二十三日に福田総理が消費者行政推進会議で消費者庁の創設を表明されました。この秋の臨時国会に関連法案を提出し、二〇〇九年度の発足を目指すという消費者庁でございますが、食の安心に関心が高まり、この食をめぐる消費者被害が相次ぐ中で、消費者行政の強化はもちろん時代の要請であると私は考えております。しかし、大切なのは、器よりもむしろ中身であります。この新しい庁をつくるからには、消費者の期待にこたえられるような組織でなければならないと思っております。その辺について、消費者庁について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 福田総理は、就任以来、一貫して消費者の目線に立った消費者行政の展開ということを最重要政策として掲げてきたところでございます。

 消費者の側から見ましてわかりにくい行政というものがあることは事実でございまして、国民生活に関連の深い消費者行政の部分は、実は、食品の安全性のほかに、皆さんも御承知のとおりでありますが、悪徳商法というものも国民に対し大きな被害を与えているわけでありますし、金融商品などの問題、あるいは電気製品などの安全性の問題など、大変幅広い分野でございます。

 そういう意味で、それらの分野につきまして、これを一元的に推進できるような強い権限を持った新組織が必要なのではないか、こういう認識が国民生活審議会などでもございますし、また、総理が内閣に設置しました有識者から成る消費者行政推進会議におきましても、そのような議論が行われているところでございます。総理御自身は、積極的に消費者庁の創設に向けまして関係各省庁が協力してこれに当たるようにという強い指示を出しておられるわけでございます。

 農林水産省としても、当然、消費者から見てわかりやすい行政を推進していくということは重要だと考えているわけでございますが、委員がおっしゃられるように、組織を一元化して、組織をつくれば、それで消費者側の不信とか不安とかにこたえられるかというと、必ずしもそうではないと私は思います。どのようにこれを仕組むかというところがポイントでございます。

 その意味で、今まさに、その消費者行政一元化の組織のもとで、各省庁の仕事との関係を調整しながら消費者行政の司令塔としての消費者庁というものが本当に機能するようになるにはどのような役割を果たしていけばいいのか、消費者側から見てわかりやすい行政の機能について政府全体として検討をしているところでございます。

 食品の表示を中心としまして、その安全性について責任のあります農林水産省としても、政府全体の検討の中で積極的にこれに参加しながら、食品の安全についてさらに一層の精度を高め、国民の皆さん方の御期待にこたえなければいけない、このように考えているところでございます。

丹羽(秀)委員 ありがとうございます。本当に大臣の御丁寧な説明で、私も消費者庁には非常に期待しておるところでございますので、消費者の観点に立った庁の運営を目指していただきたいと思っております。

 最後に、我が国の食料事情についてもう一度お尋ねしたいと思います。

 本当に、最近の世界のグローバルな中での食料事情を見ますと、非常に先進国の勝手気ままなエネルギーへの転用、または食料に何の不自由もしていない人たちのマネーゲームによる穀物価格の高騰、これが私は世界の食料事情が非常に危機に陥って問題になっているとも思っております。

 そこで、ことしの洞爺湖サミットでも、これは環境もテーマでございますが、私は、我が国の食に対する取り組み方も、これは大臣にぜひ頑張っていただいて、サミットの課題にももし入るようでしたら入れていただきたいなと思っております。食料問題について大臣がサミットでどのような発言、対応をしていくのか、また、今後の我が国の対応を少しでもお聞かせいただけたらありがたいと思います。

若林国務大臣 洞爺湖サミットでございますが、サミットは御承知のように各国の首脳の会合でございます。食料を担当しております農林水産大臣自身は、このサミットの中で発言をしたりする機会はございません。その前座でいろいろな会合が進められているわけでございます。

 まず、洞爺湖サミットにつきましては、福田総理が、G8諸国と国連その他の主要な国際機関、またG8サミットを機会に参加をいただく途上国の主要な国々に対しまして書簡を出しております。これは、現下の世界の食料の需給をめぐります不安定な状況、さらに短期的に言えば、食料をめぐります紛争というようなことを念頭に置きまして、この洞爺湖サミットにおきまして、国際的な食料の需給、さらに食料安全保障という観点から、食料問題を主要な議題に取り上げたいという書簡を発出いたしております。

 その書簡を受けまして、今、各国の高級事務レベルでありますシェルパ会合などでどのような形でこれを取り上げるか協議をしているところでありますが、いずれにしましても、この会議で取り上げられるということは間違いがないと思います。

 この背景としては、中国やインドなど、十三億の中国など、そういう人口の多い国で所得が上がってきております、経済成長に伴って所得が上がりますと食料需要が増大をします。とりわけ質の高い食料需要ということになりますと、肉類。肉類の需要がふえますと、そのえさの需要が高まるというようなことでございまして、そういうような食料需要の増大というのがベースにございます。

 それからもう一つは、やはり地球温暖化に伴います気候変動が激しくなってきているというようなことで、主要な穀物の生産国であります豪州などにおきまして干ばつ被害が連続して起こる、そのために供給が不安になっている。また、国際的な穀物の在庫量が非常に極端に少なくなってきていたという中で、このようなことが起こってきているということがあると思います。

 また、委員御指摘のように、近年、アメリカにおきまして、石油代替製品としてのエタノールをトウモロコシから生産する、そのエタノール生産に優遇措置を講じているということもございまして、かなりの農地がトウモロコシの作付にシフトをする、そういう事態もございます。

 食料生産というのは、その生産量が想定されるわけでございます、石油以上にその生産が見えるわけでございますが、そういうマーケットに株式市場その他に入っておりました国際的なファンドが流入をしてきているということも問題にされている。

 さまざまな要素がここにかかわっているわけでございますので、国連の事務総長も、今度六月にありますFAOのローマの会議の際に食料サミットを開くべきだということも言っております。そういうようなことも含めまして、今おっしゃられた問題は一筋縄でいかないわけでございますが、世界共通の課題として議論を進める。日本は最大の輸入国でありますので、そういう視点でこの議論に参加していきたいと思っております。

丹羽(秀)委員 持ち時間が過ぎました。大臣、本当にわかりやすい御説明、ありがとうございました。以上で終わります。

七条委員長代理 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木隆博でございます。

 きょうは、一般質問ということで、生産調整のことについてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 〇七年度の補正で米の緊急対策というものを打ち出したわけでありますが、昨年の米価というのは、作況九九でありながら、大幅に下落するというような結果になったわけであります。結果として生産調整の実効性というものが問われる結果になったわけでありますが、こうした事態を受けて、政府は米緊急対策というのを打ち出して、平成二十年度の生産調整については主食用米の需給バランスが確保できるよう、農協系統と行政が適切に連携して全都道府県、全地域で目標を達成できるように全力を挙げることとするということで、目標の都道府県間調整のスキームを設ける。二つ目として、配分、作付、収穫の各段階での取り組み状況を把握して、強力に指導する。三つ目として、非実施者、面積にすると約一五%ぐらいいるわけでありますが、に対して強力に指導する、そして産地づくり対策を調整する。

 インセンティブとペナルティーと両方を織りまぜながら、あめとむちとはあえて言いませんが、等の対策を打ち出したわけでありますが、それから大分経過しておりますので、この間の取り組み、現状についてお伺いをいたします。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 米の価格の安定を図りますためには、需要に応じた生産を行うことが基本でございます。今委員御指摘いただきましたように、十九年産米につきましては、生産調整の実効性の確保といった面が十分でなかったということで、価格が下落したということでございます。

 こうした点を踏まえまして、二十年産米につきましては、農協系統と行政が適切に連携しながら生産調整の実効性の確保を目指すということが何よりも必要だというふうに考えておりまして、昨年末に農政改革三対策緊急検討本部におきまして決定した「当面の生産調整の進め方」に基づきまして、現在取り組んでいるところでございます。

 具体的な取り組みでございますが、昨年末に、生産者団体、卸売業者、小売業者の全国団体と当省が生産調整目標の達成のための合意書を締結するなど、関係者が気持ちを一つにして生産調整目標の達成に全力を挙げる体制を構築したところでございます。

 また、従来から措置されております産地づくり交付金に加えまして、十九年度の補正予算で、生産調整の拡大を推進するための緊急一時金を交付する地域水田農業活性化緊急対策を措置したところでございます。

 これら助成金をうまく活用いたしまして、農協系統と行政が適切に連携することによりまして、全都道府県、全地域で生産調整が達成できるように今全力で取り組んでいるというところでございます。

佐々木(隆)委員 適切に連携するという表現を使っておられるんですが、言ってみれば政府が積極的にかかわるという意味だと思うんですね。これは、午前中の論議もいろいろありましたけれども、私は計画段階で行政というのはしっかりかかわらなければいけないと思うんです。製品になってしまえばそれは商品ですから、それは市場に任せてもいいんですが、計画の段階では、私は行政が積極的にかかわらなきゃいけないというふうに思っておりますので、そういった意味では、少し修正をしてそこに来たということは、ぜひ実効性を上げてほしいなというふうに思っております。

 結果が出なければ新たな農政展開が崩れる、失敗は許されないというふうに白須次官がハッパをかけたということがどこかで報じられておりましたけれども、結局、出来秋になってから過剰米の市場隔離などを今までは繰り返してきたわけでありますが、そういうことの失敗を踏まえて、今回、新たな対策を打ち出されたんだというふうに思っております。

 まさに、今は田植えの時期を迎えているわけでありまして、いわゆる作付前にどれだけのことができるかというのは一つのポイントだと思うんですね。農家の皆さん方にそういうメッセージを送らなきゃいけないんだと思うんですが、いろいろ努力しているということは先ほどいただきましたけれども、農家の皆さんが安心して取り組めるようなメッセージを、ここまで大丈夫な状況にあるんですよというメッセージを政府として送るべきだと思うんですが、これはいかがでしょうか。

町田政府参考人 作付前が一番重要であるということ、また、農家へきちっと情報、メッセージを出すということが重要、おっしゃるとおりだというふうに思っています。

 本当に二十年産米の価格が安定するかどうかは、この生産調整目標の達成ができるかどうかにかかっているというふうに考えております。

 特に、昨年十月末に決定いたしました米緊急対策の二本柱の一つでございます全農の飼料用処理が、結果的に十万トン予定が一万五千トン弱にとどまったということによりまして、その重要性はさらに高まっているというふうに考えております。

 また、政府の国産米在庫につきましても、既に適正備蓄水準でございます百万トンというふうになっております。二十年産米での在庫の積み増しは行えない、こういう状況にあるといったことも考慮しなければいけないというふうに考えております。

 二十年産米の生産調整につきましては、配分、作付、収穫といった各ステージごとに状況を把握して、必要な場合には適切な善後策を講じるということとしておりますが、作付前の段階が最も重要であるということから、四月の四日でございますが、都道府県や農業者団体等に対しまして、先ほど言ったように、生産調整目標の達成の重要性がさらに高まっているといったことを踏まえまして、作付前の段階における取り組みをもう一段強化するように、文書による指導を行ったところでございます。

 引き続き、生産調整の実効性確保に向け全力で取り組んでまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 力を込めて言っていただきましたが、多少不安になりました。四月四日に、もう一段強めるようにということは、余り達成されていないという意味、裏返すとそういう意味にもとれるんですけれども、そういう意味では、できるだけ農家の方が安心して取り組めるようなメッセージを送らなきゃいけないので、もう一段文書ということは、何か私としてはより不安になったんですけれども、ぜひ取り組みを強めていただきたい。事後処理にならないように、まあ事後処理も必要ですが、事後処理よりもできるだけ前処理でできるようにということを求めておきたいというふうに思います。

 それで、大臣にお伺いしたいと思うんです。

 〇四年に米政策改革というのが始まって、計画流通というのを廃止して、いわゆる安定供給というのはできるようになったんだという前提になっているわけですが、原則自由化に踏み切ったわけであります。〇七年からは生産調整というものも農業者、農業団体が主体の取り組みに転換をしたわけでありますが、結果として、昨年のようなことになって、過剰作付というのが毎年ふえているというような状況にあるわけであります。

 過剰生産、過当競争になり、播種前契約などということもやっておられますが、結局、米がだぶつくというような可能性があれば、これは播種前に契約しようとしても契約相手が契約しないわけですね、秋の状況がだぶつくような予想があれば。そんなことになれば、結果、効果がないということになってしまうわけで、適正価格というものをきっちり保障するということには生産調整というのが大前提になるわけですね。したがって今日の状況にあるわけでありますが、〇四年からのいわゆる市場原理の導入という方式が農業という特殊性になじむのかというようなことについて、大臣として今後どのように考えていかれるのか。

 もう一つは、この緊急対策で、約十万ヘクタール転作を強化すると言っているわけですね。一〇%ふえるわけですね。ということは、産地づくり交付金の面積当たり単価水準が下がるのではないかということになるわけですね。産地づくり交付金の方はそのままになっているわけですから、これも一〇%ふやしたというのだったら、転作が一〇%ふえるんですから、本来は産地づくり交付金も一〇%ふえなきゃいけないんですけれども、ここはそのままになっているわけですね。こういうことも、むしろ農家の中には、特に大方の地域ではそういう不安というものも抱えているようなのであります。

 政府として、この二点についての対策をお伺いいたします。

町田政府参考人 まず、先ほどの答弁の補足を若干させていただきたいと思うのでございますが、もう一段の強化ということにつきましては、先ほど来の状況もありますし、あと、具体的な転作の推進の手法ということで、調整水田というのがございます。これは、水田に水を張って常に水稲の生産力を維持できる、こういった状態での管理を指すわけでございますが、この調整水田につきましても、先ほど来言っております補正予算の緊急一時金の対象となるといったことにつきましてよく周知をして、最大限活用していただきたいといったようなことも触れさせていただいているところでございます。

 また、米価の価格形成についてでございますが、米につきましては、やはり産地ごと、銘柄ごと、いろいろな市場評価、販売状況に差がございます。そういった状況でございますので、やはり需要に応じた生産、生産調整をやっているわけでございますが、全体としての需給バランスということは十分留意しなくてはいけないわけでございますが、産地ごと、銘柄ごとの動向等を踏まえて、やはり基本は生産者、生産者団体が、どういった銘柄の米をどの程度生産するか、こういったことを主体的に決定していくことが適切であるというふうに考えております。

 このため、食糧法におきましては、生産調整におきまして、農林水産大臣が全体の国の需給見通しを定めた上で、生産者団体が生産調整方針を定めて生産調整に主体的に取り組む、配分も生産者団体等が行う、行政はこれをサポートするという仕組みになっているところでございます。

 これが十九年度から始まったわけでございますが、初年度目ということもありまして、行政とそういった団体との連携が必ずしも十分でなかったのではないかといった御指摘もいただいたわけでございまして、そういった点を踏まえて、先ほど申し上げましたように、二十年につきましては行政も積極的に関与をするというふうにしたところでございます。

 二点目でございますが、この十万ヘクタールの問題でございます。産地づくり交付金とこの緊急一時金の関係ということについて御説明をさせていただきたいと思います。

 十九年産の米の価格が大幅に下落した要因、やはり一つは、生産調整目標を達成していない都道府県の数が年々増加しているということにあろうかというふうに思っております。十九年では三十一県ということでございます。

 このため、二十年産米につきましては生産調整の実効性を確保していく、これが何よりも重要でございまして、これまで生産調整を実施してこられた農業者の方々や都道府県に引き続き生産調整を実施していただくこと、これはもちろん重要でございますが、それだけではなく、これまで生産調整を実施していなかった、そういった農業者の方々、また都道府県にも生産調整に取り組んでいただくということがぜひとも必要ではないかというふうに考えたわけでございます。

 この場合の生産調整のインセンティブということで、従来から産地づくり交付金が措置されているわけでございますが、これに加えて十九年度補正予算で緊急一時金を措置したところでございます。これにつきましては、十万ヘクタール拡大をしたわけでございますが、二十年産の拡大面積を踏まえた配分になっているということでございます。

 したがいまして、ともに生産調整推進のためのメリット措置でございます産地づくり交付金、また地域水田農業活性化緊急対策、補正予算でございますが、これをうまく活用いたしまして、全都道府県、全地域での目標達成に向けて全力で取り組んでいるというところでございます。

若林国務大臣 今局長が御答弁申し上げました。委員がしきりと首をかしげておられます。

 まず一点、四月に入って局長が再度の形で通達を出さざるを得ないような状況だったんではないか、それについてやや不安を感ずる、こういうお話でございます。

 この時期に通達を改めて出しましたのは、当委員会においても議論がございました、いわゆる全農が自主的に十万トンをえさ用に隔離しまして、隔離といいますか、えさ用に用途変更して米の供給量を減らしていくんだということを約束しましたけれども、一万五千トンしか達成できなかった。そういうことから、緩むんじゃないか、そういう危惧が大きく広がったということも背景として私は認識いたしております。

 それと同時に、政府が適正在庫として百万トンを保有するわけでありますが、三十四万トンを買い入れたことによりまして、百万トン限度いっぱい政府が持っているわけであります。その意味では、二十年産については動きの幅が非常に狭くなっているというようなことから、危機感を強めたということがございます。

 それで、そういう状況を、中央レベルの生産者団体のみならず、県のレベルの生産者の諸団体、関係者の皆さん方に、こちらからも出かけていきまして、県を交えてかなりひざ詰めのお話をしてきたところでございます。

 今局長からもお話がございましたが、なかなか生産目標をしっかりと単位、市町村レベルまでおろし切れない、約束し切れない、そういう県がはっきり申し上げると七つあるわけでございます。その七つの県は自信がないんですね、おろしていくことにつきまして。県も自信がない、生産者団体の方もなかなかこれをしっかりやる自信がない。そういうことですと、正直にやっている地域、県の生産者が本当に割を食ってしまうわけでありますから、そういう地域に特に重点を置いて、幹部職員が出かけていってしっかり事情も聞き、話もしてきたところでございます。

 余剰になってから隔離するといっても、もう効果としては知れているわけでございます。さらに、ことしの天候がどうなるかということも影響がありますから、やはり作付段階からきちっとしなければいけない。育苗の配分からそういうことをきちっとやる決意を示せ、こういうことでしりをたたいて、四月にそのような体制を組んだわけでございます。特に重点の県を中心にしましてしっかりおろしていく、作付が終わりましたら、青刈りも含めまして、それが実取りの状態で過剰にならないようにさらにステージごとにしっかりとやっていきたい、このように考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 大臣から決意をいただきましたので、しっかりとやっていただきたいということで、これについては作付後にもう一度論議をさせていただかなきゃいけないというふうに思うんですね。決意が空回りしないようにぜひしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 先ほど局長は緊急対策などでしっかりやると言ったんですが、それは転作をするためのお金であって、転作を進めるためのインセンティブであって、産地づくり交付金ではないですよね。だから、産地づくり交付金そのものは、もしも十万ヘクタール目標どおり達成されれば、それは今の予算では足りなくなるということになるはずなんですよね。そこのところについてはちょっと答弁が不十分だったのではないかというふうに思いますが、別の質問に入りたいので、後で一緒に答えてください。

 次に、先ほども論議がございましたが、米粉について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほども、阿部委員でしたでしょうか、その論議がございましたけれども、農水省としては米粉の増産支援は新法も含めてやるんだというようなことが新聞報道されておりました。私は、一つは自給率の向上、二つ目には世界的穀物の需給状況、三つ目には米並びに水田の有効活用などなどの視点から、評価できるというふうに思っています。

 そこで、現在どのような検討をされているのかということについてお伺いしたいというふうに思います。

 一日一人、小麦粉食品の約七グラムを国産米粉に代替すると、自給率は一%アップするというふうに言われています。そういった意味でも私は非常に取り組む価値があるというふうに思うんですが、現在の検討内容についてお伺いをいたします。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、最初にございました産地づくり交付金、これが薄まるのではないかというお話でございます。

 産地づくり交付金があるわけでございますが、二十年度の拡大分については、この産地づくり交付金だけでは必ずしも十分でないんじゃないかということで、別途この一時金を用意したというわけでございます。この産地づくり交付金をどうやって配分するかというのは、それぞれの地域の協議会にゆだねられております。今までの使途で配るところもございますし、新しく拡大した使途で配るところもあるわけでございますが、地域内の公平性の確保に十分うまく留意していただいて両資金を使っていただきたいというのが私どもの今の考えでございます。

 また、米粉利用の推進の必要性、また、今どういうことをやっているかということでございます。

 お話しいただきましたように、穀物の国際需給が大きく変化する中で、自給率一三%程度ございますが、大宗を輸入しております小麦の価格も高騰しております。

 一方で、国内では、主食用米の需要が年々減少してきた結果、水田の六割で需要を賄える状況になってきておりまして、生産者が主体となって主食用米の需要に応じた生産に取り組んでいる、これは今るる御説明をさせていただいたところでございます。

 今後とも、こうした取り組みを推進しつつ、水田の約四割を最大限に活用して自給率の向上につなげていくことは極めて重要であるというふうに考えております。麦、大豆等の生産はもちろんでございますが、これとあわせまして、米粉などの非主食用の米の低コスト生産を進めていく必要があると考えております。

 こうした観点から、昨年十月から、「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会を開催しておりまして、この中で、米粉の利用推進についても検討を深めているところでございます。引き続き、米粉など非主食用米の利用拡大に向けて幅広く検討してまいりたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 先ほどの生産調整の話はこれ以上繰り返しませんけれども、協議会でうまくやってほしいという話なんですが、要するに、全体のパイがふえるんですから、予算が同じであれば、それは地域の中で縮小するしかなくなるわけですよね。そのことについてどうするんだということを私は問うているわけです。

 結局、一〇%ふえないという想定でやっているのなら別なんですけれども、転作を一〇%ふやすという目的なんですから、一〇%ふえれば、同じ予算でやれば、それぞれの協議会の中では圧縮せざるを得なくなるわけです、ほかにふえるわけですから。そのことを言っているわけで、検討しておいていただきたいというふうに思います。

 米粉についてお伺いをいたします。

 今、幅広く検討をということでありますが、例えば、もう少し具体的に検討を進めなければいけないのではないか、やろうというのであれば。私は、一つには、まず、生産段階あるいは流通段階、消費段階、それぞれの段階においてどういうことが課題になっているのかということをそろそろ整理しなければいけないのではないかというふうに思うんです。

 生産のところでいえば、主食用米並みの収益をどうやって確保することができるのかということ、それから転作や網下米をどうやって活用するのかということ、流通の段階でいうと、適正価格というのは一体どのぐらいなのかということ、それから製粉技術や新しい商品の開発、消費の段階でいうと、米粉製品の理解、普及あるいは国産ということの優位性等々ということが考えられるわけであります。

 積極的に進めたいというお話を先ほどいただいたんですが、具体的にどうしていくのかということをもう少し踏み込んでいただきたいなというふうに思います。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 米粉につきましては、御指摘いただきましたとおり、確実に流通、加工、消費する体制をきちっと構築するということが必須だというふうに考えてございます。そのためには、産地、製粉メーカー、製パン、製めんメーカー、スーパー、外食企業、川上から川下までの連携が何よりも重要であるというふうに考えているところでございます。

 こうした連携を図ることを基本とした上で、どんな課題、対応があるかということでございますが、まず、産地段階では原料米の低コスト生産の定着を図っていくということ、小麦粉とまだかなり価格差がありますが、それになるべく近づけていくということ、二つ目として、効率的な原料米の物流体制を構築するということ、三つ目として、消費者ニーズに合致した商品開発と製粉技術、製パン技術等の向上、またそのコストダウンを図るということ、さらには、販売ルートの確立と消費者へのPRといったようなことが必要だというふうに考えてございます。

 特に、消費者といいましょうか、国民へのメッセージという点では、昨日の食料の未来を描く戦略会議といったことでも、米利用の新たな可能性の追求ということで米粉の問題についても御提言をいただいておりますので、こういったことも踏まえまして、さらに推進、また検討、対応を深めてまいりたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 時間的に最後の質問になろうかというふうに思いますが、米粉は将来的に約百万トンぐらいを目指したいというふうに何か報道で出ておりました。今十万トン弱ぐらいですか、現在、米粉の流通がそのぐらいだと思うんですが、小麦粉の輸入が五百数十万トンだというふうに思うんです。

 実は、先ほど四割の水田面積、要するに転作面積をどう活用するかというお話だったんですが、転作面積四割、いわゆる百十万ヘクタールで、ヘクタール六トンとれますと六百六十万トンになるわけで、小麦粉の輸入量をはるかに超えるわけであります。それから、かつて収穫量で一番多かったときのマックス、千四百二十六万トンという米の収穫があるんですが、それの四割が転作だとして四〇%掛けますと五百七十万トン、これも小麦粉の輸入量を超えます。転作のすべてが米粉にかわるとは言いませんけれども、それだけの潜在力を持っているということだと思うんですね。それを今まで有効に利用してこなかった。

 私は粉文化、油文化というふうに言っているんですが、国の名前を出すのが適当かどうかわかりませんが、戦後、アメリカに席巻されてしまって、粉文化と油文化をこの国は失ったわけであります。それはどういうことかというと、例えば北海道十勝産小麦粉とか岩手県産小麦粉とかというのをなくしちゃったんですね。油も同じです。ほとんどを輸入に頼ったものですから、輸入と製粉業者が結びついて米の粉をつくったり油をつくったりしてきているものですから、地域の特性のある粉とか油とかというものはこの国から全部消えちゃったんですね。そういう意味では、私は米粉で地域文化というのを取り戻していくというぐらいな大きな目標を掲げてやっていただきたいなというふうに思っております。

 先ほど、パン適性、めん適性の話がありましたが、私もつくっていましたけれども、日本の小麦粉をつくっているときに、めん適性はあるけれどもパン適性はないとか言われた時代があるんですが、それは私は大変腹立たしい思いをしてきたんですが、本来は国産の小麦に製粉業者が合わせるべきものであって、何で製粉業者に生産者が合わせなきゃいけないんだという思いをしながら私はつくってきた経験があります。

 そういった意味でも、本来、米というのは粒文化として発達してきたわけでありますが、世界の需要あるいは米の今の置かれている状況を考えたときに、この米、粉の文化としてどうやって普及させていくのかということぐらいな大きな目標を持ってぜひ取り組んでいただきたいというふうに思うわけであります。

 私は飼料用とかバイオというのは本当に限定的であるべきだというふうに思いますが、それに優先して、やはり米の粉、人が食べるものをまず第一に考えていただきたい、そういう将来目標を明確に示すべきときなのではないかということを思うのでありますが、これについて、決意を含めてお伺いいたします。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

若林国務大臣 今、委員の御卓見を伺いまして、基本的な認識としては私も共有しているつもりでございますが、コストの面で、これを打ち出すということがなかなか難しい状況、厳しい状況がずっと続いておりました。しかし、事ここに至って、食料安全保障という中長期的な視点に立ちますと、日本の水田という一つの社会資本、装置、これが有効に利用されていないということは、もう一度、資源の有効活用という点から見直さなければいけないだろう。さりとて、しかし、幾ら金がかかってもいいんだというわけにもまいらない。

 そういうような葛藤の中で、先ほど申しました「食料の未来を確かなものにするために」という、食料の未来を描く戦略会議というものを昨年来私が議長になって進めてまいりまして、昨日ようやく、総理も入っていただいて取りまとめをしたところでございます。そして、取りまとめは、政府に対して言うとかいうのではなくて、国民に対するメッセージだというふうに位置づけをしたところでございます。

 そのメッセージの中で、部分的にちょっと申し上げますと、「長期的・戦略的な取り組み」が必要だという事項の中、七項目めですが、「食料の未来を確かなものにするためには、長期的かつ戦略的な観点に立った取り組みが欠かせません。例えば、米粉製品の開発・普及や水田における飼料米の生産、食品廃棄物の飼料化が、食料需給のひっ迫に対処する農業資源の活用方策として重要性を増しています。」というような入り口のところで、有識者の中でそういう認識をしてもらいました。

 それで、実は国民へのメッセージとして、先ほど粉文化というお話がございましたけれども、もう一度自分たちを取り巻く食生活、これは食習慣、食文化でございますけれども、それらからちょっと乖離をしてきた今の食生活をもう一度見直した中で、どこまで粉食というものの展望が描けるか、これは今までの大手製粉に任せてはいけないと私は考えておりまして、その意味では、二次加工、粉にする加工の技術のみならず、どういう製品、商品が消費者に今後受け入れてもらえるか、そういうような研究開発というものも必要になってくるだろうというふうに考えております。

 ちなみに、私も長野県ですけれども、一日に一回は粉食を食べるという食習慣がございまして、私の子供のころも一日に一遍は必ず粉をベースにした食事でございました。それがほとんど今は消えてしまっているということは委員の御指摘のとおりでございまして、その意味で、これは地場の中小の製粉企業、あるいはその製粉企業と組んだパンだとか、そういう食品加工産業というようなものをもう一度掘り起こしていかなければいけない、そういう問題だというふうに認識しております。

 中長期的には、今委員がおっしゃられたような基本認識のもとに、これから政策を組み立てていく、関係方面、特に財政部局には大変な抵抗はもちろんあるわけでございますが、匍匐前進、その方向に向かって努力をしていきたいと思っております。

佐々木(隆)委員 終わります。

 大臣も積極的に取り組むという姿勢をお見せいただいたということについては評価をさせていただきたいというふうに思います。

 例えば、網下米なんかをそのまま結構な値段で製粉業者が買っていってやっておられますし、転作しても、ふるうことが今度はないわけですから、選別する必要がないわけですから、一俵ぐらいふえることになるわけです。製粉技術もかなりアップしていますので、私は可能性としてはかなり高いものだというふうに思っております。

 ただ、実はきょう時間がなくて論議できなかったんですが、これから備蓄米とか米粉にする食糧援助とかということも含めて考えていけば、まだまだ検討の余地のあるものだというふうに思いますので、今後また論議をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、石川知裕君。

石川委員 民主党の石川知裕でございます。

 先週も酪農について御質問をさせていただきました。今週も引き続き、大変厳しい状況にある酪農の関係について御質問をさせていただきたいと思います。

 飼料価格の高騰等で、酪農家は、本当に後継者に後継ぎをさせたものかどうかというところにまで追い詰められている、搾れば搾るほど赤字になる。そういう中で、政府もいろいろと対応策を立てられているわけでございます。

 今回、公正取引委員会が、乳価について、適正にきちんと価格にそれぞれ反映されているかどうかということで、ヒアリングの調査に入ったということでございました。

 きのう私、この調査の中間報告等はどうなっているのかということで質問を出したところ、きょうの朝、牛乳の流通に関するヒアリング結果についてということで御報告をいただきました。

 指定生乳生産者団体、乳業メーカー、量販店、消費者と、牛乳をつくってから消費者に行くまで流通ルートがある中で、きちんと価格転嫁がされているかどうかということが一番の問題、課題だと思います。そうした中、生産者が今大変厳しい状況に置かれている中で、今回のこの公正取引委員会の調査結果というものに対して大変関心を払っているわけでございますけれども、今回のこの調査結果について公正取引委員会の方から御説明をいただきたいと思います。

鵜瀞政府参考人 酪農家における生産コストの増加が小売価格に転嫁されにくい状況について、牛乳の流通のいずれかの段階に何らかの独占禁止法上の問題があるのではないかという指摘がございまして、それを受けまして公正取引委員会では、三月上旬から四月下旬にかけて、実態を把握するために、生産者団体、乳業メーカー、量販店等からヒアリングを行いました。

 調査の結果、乳価につきましては、当初、関東地域において大手乳業メーカーと生産者団体が飲用向け乳価キログラム当たり三円の引き上げというような条件により妥結したところ、他の地域における乳価交渉もおおむねこの水準に収れんしている状況が見られました。

 また、量販店等への納入価格につきましては、各乳業メーカーは、乳価の引き上げを受けまして、希望小売価格の改定を行い、また量販店等に対して納入価格の引き上げ交渉を行いましたところ、おおむね量販店等は納入価格の引き上げに理解を示している状況が見られたところでございます。

 小売価格につきましては、四月一日以降、多くの量販店等において順次小売価格が引き上げられている状況が見られました。

 今回の調査におきましては、量販店等のバイイングパワーを背景とした交渉力の強さを指摘する声が一部に見られましたけれども、今回の乳価改定においては飲用向け乳価の引き上げ幅が三円にとどまったわけでございまして、これにつきましては、大手乳業メーカーが消費への影響を懸念したことによるところが大きいと考えております。

 また、今回の調査においては量販店等による優越的地位の濫用等の独占禁止法上問題となる行為に関する情報には接しておりませんが、そのような情報に接した場合には、公正取引委員会としましては厳正に対処してまいりたいと存じます。

石川委員 公正取引委員会の方では、この調査結果のまとめとして、大型量販店が、バイイングパワーを背景とした交渉力の強さを指摘する声は一部に見られたけれども、不当に、いわゆる法的な部分でひっかかるようなことはなかったということで結果報告があったわけであります。

 そうした中で、もともと乳業メーカーがもうけているのではないか、いや、そういうこともない、量販店がもうけているのではないか、いや、そういうことでもないということになると、生産者、いわゆる酪農家の方々が搾れば搾るほど赤字になってくる中で、消費者に対して適正な価格転嫁が何らかの形で行われるような形をとっていかないと。昨年一年間で酪農家の五%に当たる千二百戸が廃業している、今、年々厳しい状況になっている中で、また、資材価格そして肥料の価格も高騰している中で、私は二月にも一度大臣に対して質問をさせていただきました。例えば、資材価格だとかそのほかのものが高騰したときに、何らか政府が介入をして、資材価格等とリンクした形で、今度も指定生産者団体が乳業メーカーに対して期中改定を要望していくようでありますけれども、政府自体がやはり率先して、厳しい酪農家の現状を考えて、何らかの形で期中改定に介入をしていくべきではないかという質問をさせていただきました。

 今後、審議会等を含めてこうしたことを検討するような余地はあるのかどうか、大臣にお伺いをしたいと思います。

若林国務大臣 委員には、今お話ございましたように、当委員会において、私、生産者と乳業メーカーとの間の取引価格に関しての御質問にお答えしたところでございます。

 基本的には、製品の特徴からいいまして、やはり価格は、あくまでもそれぞれの地域におきまして、民民ベースで交渉によりまして決定を見ていくという基本を変えるわけにはまいらない、このように私は考えているところでございます。

 そうした中で、生産者団体の中では、委員もお話しのように、乳業メーカーに対しまして、二十年度の乳価の決定過程におきまして継続して交渉をしたいというふうに申し入れているところもあると聞いておりまして、この乳価交渉というのは、先ほどお話ししましたように、各生産者団体と乳業メーカーがそれぞれの経営判断を踏まえて交渉していく性格のものであるということでございますので、私の方から、期中において改定を進めるべきである、改定交渉をすべきであるといったようなことなど、直接これに関与するという考え方は持っておりません。

 ただ、基本としましては、委員も御指摘になりましたように、結局は、乳業メーカーの方も、でき上がりました製品、牛乳をどうやって消費者に買ってもらうかということにさらに一層の努力を必要としているわけでございますけれども、先ほど公正取引委員会の方からもお話ございましたが、どうも乳業メーカーの方は、このことによりまして消費の減退が起こることを危惧しているという要素もかなりあったように私も伺っております。

 農林水産省としては、今の生産者の置かれた状況、そして乳業メーカー、加工の経営の実態、これらを考えますと、やはり適正なコストのアップの部分については消費者にも御理解をいただきたいという意味で、環境づくりにはかなり前から努力をし、いろいろな機会を通じまして、他の商品に見られるおそれがございます便乗値上げのようなことは事乳価に関してはないわけでございますので、そういう状況を説明しながら、できるだけ消費者の皆さん方に、安定的、持続的に牛乳を購入し消費していくためには生産諸条件への御理解をお願いしたいということを繰り返し私はお願いして、環境づくりに努めているところでございます。

石川委員 指定生産者団体から乳業メーカーに申し入れる、乳業メーカーとしては、いや、これ以上上げると消費者離れが起こるから、そこはもう我慢してくださいというのがずっと続いてきた。でも、ここに来てこれだけ資材が高くなるとさすがにもうやっていけないから、頼むと。乳業メーカーも、わかったと。そして、量販店とも話していく。

 こういう構図の中で、例えば、農林漁業金融公庫は二月に、牛乳・乳製品について、五%までの値上げなら買うという消費者が四割、一〇%高くなっても買うという人が二八%、それ以上でも買うという人が一五%、こういう調査結果を発表しております。こういう客観的な視点でサジェスチョンするとなると、やはり農林水産省、政府としても、生産者団体、乳業メーカー、そして量販店の三者とお話し合いをするという立場においては、別の視点からぜひ農林水産省としても今後取り組んでもらいたいと思います。これはあくまでも意見でありますので、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 先々週、四月の二十二日に、バター不足について大臣並びに農水省に対して質問させていただきました。

 私も、実際どれぐらいバターが不足しているのかなと思って、自分の選挙区をちょっと回ってみました。何店か大型量販店を回って、ちょうど私が行ったときには、一点はこのよつ葉のバターで、もう一つはこの森永の北海道バターしかなかった。私、ひとり者で料理しないものですから、中身はそのまま実家に置いてきましたけれども。

 そうした中で、このバターの問題に対して私が先々週御質問させていただいたときに、大臣の方からは、「現場において不測の事態で価格が上がったりあるいは供給がとまったりしている実情は、新聞に報じられているようなことは心配していない、ないということを申し上げた」という答弁をいただきました。

 その後、これは農業新聞でありましたけれども、「バター品薄 さらに深刻化」ということで、農水省が異例の要請ということで、四月三十日、大臣の方で記者会見をされていらっしゃいました。

 大手四社に対して、家庭用や業務用の冷蔵バターを優先的に生産、出荷するよう検討を要請したのはいつの時期でしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御質問の大手四社に対する検討要請でございますけれども、農林水産省は、昨年の秋以降、さまざまな機会をとらえまして、乳業メーカーに対して冷蔵バターの供給確保をお願いしたところでございました。さらに、四月に入りまして、バター生産の大手四社に対しまして、家庭用、業務用の冷蔵バターを優先的に生産、出荷するよう事務方から検討を依頼しまして、先月十八日にも、社団法人日本乳業協会の理事会で大手乳業メーカー代表者が集まる機会を利用しまして、担当課長から改めて要請を行ったという経緯がございます。

石川委員 四月のいつでしょうか。

内藤政府参考人 四月の十八日でございます。

石川委員 それでは、乳業各社が要請にこたえて冷蔵バターを優先的に生産すると決定したのはいつになりますでしょうか。

内藤政府参考人 私ども乳業メーカーにこういった要請をしていたわけでございますけれども、乳業メーカーもそういったものに踏み切るためには生乳の確保が必要でございますので、生産者団体とも我々原料乳の確保につきまして情報交換を行い、四月以降、バター向けに優先的に原料乳の生乳を供給するよう要請を行っておりました。

 こうしたことを踏まえまして、四社から、先月末までに、五月分としまして家庭用バター二百三十トンの増産を図るといった対応をとる方針を固めたと聞いたところでございます。

石川委員 バター不足について二十二日に御質問をさせていただきました。それで、私が質問する前に、既に四月の十八日に農林水産省の事務方の方から冷蔵バターの増産を要請することになったということで、その後、四月の末に乳業メーカーが決定したということですね。

 そこで、五月から主要な加工食品の小売価格動向調査の対象にバターを加えるということでございますけれども、バターの値上がり感というか、この間大臣に御質問したときは、不当に高くは上がっていないと。それは確かに私も回ってそうだとは思いましたけれども、バター価格の動向、この三カ月間、また今後の見通しについて、ちょっとお答えいただけませんでしょうか。

内藤政府参考人 バターの価格でございますけれども、国内の原料乳価が引き上げられております。それから、包装材料等の製造コストも上がっております。こういったことを受けまして、乳業各社は、企業努力によりコスト削減に努めてはきたものの、値上げをせざるを得ないということから、四月から五月にかけましてそれぞれ希望小売価格を引き上げたと聞いております。

 ただ、これを機会に小売価格において便乗値上げのような行為があってはいけませんので、バターを五月から小売価格動向調査の対象に加えたところでございまして、今後ともそういった小売価格をウオッチしてまいりたいと思っております。

 ただ、今後の価格につきましては、特売の実施状況等によっても変わり得るものでございますので、どうなるか見通すことは非常に困難であるということを御理解いただきたいと思います。

石川委員 今の小売価格でありますけれども、大臣の四月三十日の記者会見を拝見しますと、事実いろいろ私の方も量販店などに少し回ってみましたけれども、確かに品薄感がございますという記者会見でございました。

 私も回りました。確かに不当に高くなっていないかもしれないですけれども、田舎なんかに行きますと、人口二千人、三千人のような町ですと、余りメーカー名を出すとあれですけれども、私が買ってきたこのバター、新聞の報道だと、四月二十一日から三百四十一円から三百七十八円に値上げだと。実際、田舎の余り人も住んでいないような集落で、うちが店を畳んだら近所に住んでいるじいさん、ばあさんたち大変だろうと頑張っているようなお店屋さんで買うと、これは値段がついているんですけれども、四百三十八円でございました。近くにお店がないということで、問屋さんとの関係で従来よりも随分高い値段になっているわけであります。

 二十二日の私の質問の時点では、大臣は、そこまでの品切れ感、または不当に高くならない、心配していないということでありましたけれども、実際は、十八日に事務方の方から要請をしていたわけであります。その要請にこたえて各乳業メーカーが二百数十トンの増産を決めたということであります。

 実際見回って、大臣、このバターの現況とこれからの見通しについて、ちょっとお答えいただきたいと思います。

若林国務大臣 その前に、私は、二十二日に委員の御質問に対しましてお答えをいたしました。そのときは、委員の御質問ですから委員御自身も御承知のとおりでございまして、「実は乳業メーカーにも事情を聞いておりまして、また、加工原料乳を供給するホクレンとの間で情報交換を進めております。」と申し上げた後で、「今バターが、委員がおっしゃられるように、また新聞で報道されているように、末端で、家庭用が品切れになる、あるいはまたバターの価格が他の食料品に比べて非常に高騰しているというような状況は、今のところは見られない。」というお話をしまして、「そんなことにならないように、今申し上げたような対策を講じてまいりたい」、こう答えておりまして、心配がないということは申し上げていなかったと私は思うのです。

 実は、商品特性からしまして、大量に貯蔵して置いておく冷凍と違いまして、冷蔵の家庭用バターというのは、お店まで行きますとそれほどいっぱい商品を抱えているわけじゃございません。問屋のベースでいいましてもそんなにいっぱい持っているわけじゃありませんので、当時言われました品薄感といったようなものが出、場合によっては上がるかもしれないぞというような話が巷間に出てまいっておりましたので、この連休中にいろいろな需要が高まった際に、家庭の主婦の皆さん方が少し買いだめをする、今まで一つだったのを二つ買うとか、そういうようなことに走り始めますと本当にすぐ品切れになってしまう、そういう商品でございます。その意味で、家庭用の需要が一気に買いだめをするというように動くことを恐れていたわけでございまして、心配はしていないということではございませんでした。

 そこで、事務方を通じてかなり綿密に、乳業メーカーのみならず生産者団体の方にも、バター向けの生乳出荷というのはどこまでふやせるのかというようなことをずっと調べ、意見を聞いてまいりました。そして、連休前に、これだけの手当てをするから近々に品切れを起こすというような状況にはならないようにいたしますということを、それだけの裏を一応とった上で三十日の日にプレスにお話し申し上げたところでございます。

 そういう性質のものでございますから、不安が広がるということを一番警戒しておりまして、そういうことがないようにするために、生産量も二百三十トンふやす、前年同まではとりあえず手当てはできていますよと。そして、今年度輸入する輸入バターにつきましても、もう全量発注済みでございますから、夏から秋にかけてそれらが市場に出てくるという手当てもしているという意味で、消費者側の不安が広がらないように、そういう意味で安心してもらいたいと。定量買いのいつものような購買行動であれば、そういう品薄というような状況によりましてパニックを起こすようなことはないというふうに申し上げているわけでございます。

石川委員 確かに大臣の一言は大きい一言でありますので、今回のバター不足でも、実際私もそこのスーパーさんに行くと、一ケースに二百グラムが三十個入り、一カ月十ケース仕入れて、大体は十日前になくなる、十日間ほとんど品切れの状態で、また入荷をするというような状況であるということでございました。

 私も別に不安をあおるために大臣に発言をしていただきたいということではありません。ただ、実態の認識として、地域としてはそういう状況があるということを踏まえて、一番大切なのは、実際、生乳廃棄をさせられた酪農家の方々にしてみると、こういう不足が起きるのであれば何のための減産計画であったのかということが酪農家の頭をよぎるわけであります。

 そういう点でも、私冒頭に申しましたが、今回、公正取引委員会が入って調査結果が出ました。しかしながら、過去の補給金は別として、生乳の方に対して何らか政府としてこれからいろいろ連携をとっていくべきではないかということを私は申し上げたわけでありまして、引き続きこういうことに関してもぜひ一生懸命取り組んでいただきたいとお願いを申し上げるところでございます。

 次に、きょうも韓国の方でまた発見をされたという報道がありましたけれども、北海道の根室管内別海町でオオハクチョウの死骸から強毒性の鳥インフルエンザウイルスが発見されたという報道がございました。従来、大体西日本の方で発見をされていたのが、今回、青森県ですか、十和田湖を初めとして北日本の方で発見をされるようになりました。遠く北海道地域の養鶏農家の方々においても、今、大変な不安の中で過ごされていることと思います。

 そうした中、もともと、渡り鳥が飛来するようなとき、十二月から三月までが危険な時期と言われていたのが、今回、飛び立つ時期にウイルスが発見されたということで、従来とまた違った形で発見をされているわけであります。定点監視を含めてきちんとサーベイランスをやっていたのかどうかということが問われるわけでありますけれども、このあたりについて、今回どういう対応をとってきたのか、また今後どういう対応をとろうと思っているかについて、ちょっとお伺いしたいと思います。

黒田政府参考人 お答えします。

 別海町で収容されたオオハクチョウでございますが、これは四月二十四日に収容された個体でございまして、鳥インフルエンザウイルスの保有状況につきまして検査を行いました。五月五日に、高病原性鳥インフルエンザウイルス、型としてはH5N1亜型、強毒タイプ、こういうものが検出されたということを確認しておるところでございます。

 秋田県十和田湖のオオハクチョウから同じく高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されたことも踏まえまして、環境省では、既に、野鳥において異常がないかどうかの監視を強化するとともに、十和田湖周辺、それから北海道内の渡り鳥の主要な渡来地、こういうところでガン、カモ、ハクチョウ等のふんを集めまして、検体約一千につきましてこの分析を今鋭意行っているところでございます。

 この対応といたしまして、今後とも北海道と一緒に協力をしながら野鳥の監視を十分行っていくとともに、今回確認されたウイルスがどういう由来か、ウイルスの遺伝子分析を行いましてその由来の調査を行う、さらに、採取したふんのウイルス保有状況の分析等をさらに進めていきたいと考えておりまして、専門家に意見も聞きながら、また農林水産省とも十分連携を図りながら、的確に対応していきたいと思います。

 それから、野鳥の調査につきましては、過去にも西日本を中心に発生しているということでございまして、渡り鳥が多く来る国の鳥獣保護区を中心といたしまして監視を続けておりまして、ふんの分析で、この春まで、十九年度で約七千五百ぐらいの検体を集めて分析しておりますが、その結果では高病原性鳥インフルエンザウイルスは確認をされていない、こういう状況でございます。

石川委員 時間が参りましたので終わりますけれども、帰っていくときに起こったということは、もしかしたら潜在的に持っていたのではないかということで、感染ルートを含め、原因追求にぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 では、質問を終わります。ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、神風英男君。

神風委員 民主党の神風英男でございます。

 昨日、福田総理と中国の胡錦濤国家主席との日中首脳会談が行われ、懸案であった中国製のギョーザ事件についても言及がなされて、両国の捜査協力の強化ということで一致をしたという報道がございました。

 この天洋食品のギョーザ事件については、それはそれとして、私がそれ以上に気になっておりますのは、それ以外の中国産の冷凍食品についての例の残留農薬の問題でございまして、ある意味でまさにこれからの日中間の戦略的な互恵関係という観点からいえば、こちらも見過ごすことができない問題ではないかなという気がしております。こちらのそれ以外の残留農薬の問題について、首脳会談あるいは事務レベルの協議の中で何らかの言及がなされたのかどうか、まずその点からお伺いをしたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 食の安全は両国国民の最大の関心事でありまして、中国製ギョーザ問題の一刻も早い真相解明が何より重要と考えております。昨日行われました日中首脳会談におきましては、かかる観点から中国製ギョーザ問題につきましても意見交換が行われました。

 福田総理からは、双方の協力を通じて一刻も早く真相が解明される必要がある点を強調されまして、胡錦濤国家主席に対しまして、関係当局に一層の捜査強化の指示を要請なされました。これに対しまして、胡錦濤国家主席からは、食品の安全は両国民の利益にかかわる問題であり重視している、関係部局で調査を続け、結果を日本に連絡したい、さらに捜査を深めて協力を強化し、できる限り早く真相を解明し解決したいと述べられました。

 というわけでございまして、日中両首脳は捜査と協力をさらに強化していくということで一致したところでございますが、ただいま委員から御質問ございました中国から日本に向けて輸出される中国製冷凍食品の残留農薬の問題につきましては、時間の関係もございまして、昨日の日中首脳会談では議論されておりません。

神風委員 それは事務レベルの協議の中でも何も言及はなかったんでしょうか。

小原政府参考人 お答えいたします。

 事前の事務レベルの協議では、日中間に横たわります多くの問題につきまして、限られた首脳会談の時間内で何を取り上げるかということにつきましては、当然ながらいろいろな意見交換をしてまいりました。その中で、今申し上げましたように、当面、我々が直面している最大の問題でありますこの中国製の冷凍ギョーザ問題、これを捜査当局間の協力を一層強めて一刻も早い真相解明をすることが大事だろうということで、この点に絞って首脳間で意見交換が行われた、そういうふうに理解しております。

神風委員 わかりました。

 ただ、これからの日中間の関係を考えたときに、本当に日本が中国に対して安心した体制で食を依存できるのかどうかということにかかわる大きな問題であろうかと思いますので、ぜひ今後ともそれについてお取り組みを進めていただきたいと思います。

 次に、今、お手元に資料をお配りいたしました。一枚目に六枚の写真が掲載をされておりますが、六番目の写真をごらんいただければわかるとおり、これは福島県の喜多方市の雄国地区で実施をされた国営総合農地開発事業の一部の写真でございます。実は、平成十七年の農業経営基盤強化促進法の一部改正の審議のときに参考人としてお越しをいただいた大建工業有限会社の遠藤社長に現地を御案内いただいたときに私自身が写した写真でございます。

 一番目の写真をごらんいただければわかるとおり、直径にして十センチあるいは十五センチぐらいの松の木が相当生い茂っている。あるいは二番目、三番目、これは整地したばかりの状況でありますが、相当、石れきというんですか、かなり大きな石が畑の中に散乱をしている状況。四番目は、一年近くかけてそうした石をその畑から除石した、その除石をした石の山が向こう側に見える山であります。そして、五番目の写真が、ほぼ三年ぐらいたってやっとウドが栽培できるようになったというような状況の写真であるわけですが、これが、平成十四年時点でこの雄国地区全体の三割にも相当する五十八ヘクタールが遊休農地あるいは耕作放棄地化している。

 そこで、これは確認をしたいんですが、土地改良事業あるいは国営の農地造成事業という形で造成をされて、造成をされたにもかかわらず一回も耕作をされない、そういった農地というのはやはり耕作放棄地という範疇に入るんでしょうか。

中條政府参考人 お答えいたします。

 耕作放棄地につきましては、平成十七年の農林業センサスにおきまして、以前耕地であったもので、過去一年以上作物を栽培せず、しかも、この数年の間に再び耕作するはっきりとした考えのない、予定のない土地と定義されております。

 したがいまして、国営総合農地開発事業によりまして造成されました農地でも、一度も耕作されていない農地につきまして、今後、この数年の間に耕作される見込みがない農地は耕作放棄地に該当する。その一方で、所有者に耕作する意思がある場合や企業等の新規参入者が存在する場合には耕作放棄地には当たらない、このように考えております。

神風委員 済みません、もう一度。

 この場合には耕作放棄地にはならないわけですね。そういう理解でよろしいですか。

中條政府参考人 お答えいたします。

 委員は、耕作放棄された状態、つまり耕作されていない状態の農地を見て、国営で造成されたものについても耕作放棄地とみなすかどうかという御質問でございましたけれども、私が申し上げましたのは、その状態であっても、その所有者があるいはその農地が今後数年の間に耕作される見込みがないものであれば耕作放棄地というふうに考えております。仮に、その所有者なり、例えば所有者でない企業が参入するような場合も考えられるわけでありますけれども、それらの者が数年の間に耕作する予定があるというものについては耕作放棄地とみなさないということでございます。

神風委員 通常は、こういう状態になっているというのは、耕作する意思がないからこういう状態になっているわけでありまして、そういう意味では、それも耕作放棄地に該当するんではないかなと思います。

 いずれにしても、今年度から、農水省の方ですべての耕作放棄地の状況について現地調査を行い、実態把握をした上でそれに応じた対応策あるいは解消策を講じるとされているわけでございますが、この農村振興局で出されております「今後の耕作放棄地対策の進め方について」の資料を拝見しますと、これから緑、黄色、赤に三分類すると。緑については人力、農業用機械で草取り等を行うことにより直ちに耕作することが可能な土地、あるいは黄色は草取り等では直ちに耕作することはできないが基盤整備を実施して農業利用すべき土地というような形で分類されております。

 また、こちらの方にこういう形でイメージの写真も載っているわけですが、これは漠然とした質問で恐縮ですが、この一番のような写真の場合、これはこの三分類の中のどれに当たるんでしょうか。

中條政府参考人 ちょっと私、現地を確認しておりませんので、正確な答えは現地を確認した上でお答えしたいと思いますけれども、私どもが分類しておりますのは、先ほどの区分分けでいいますと、一番最初に委員がおっしゃった区分については、ともかく基盤整備を必要としないところでありますから、耕作者がその中に入っていって、耕作を始めて、耕作の範囲内で対応可能なものというふうに考えておるところでございます。

神風委員 現地を視察しないとそれははっきりしたことはわからないと思いますが、私が見た限りでは、限りなく三番に近い二番なのかなというぐらいの感想を持っております。

 いずれにしても、一口に耕作放棄地と言いますが、例えば国営の土地改良事業あるいは農地造成事業、この中で発生をしている耕作放棄地あるいは遊休農地というのがある意味で一番悪質なんだろうと思うわけであります。これはかつて、株式会社のワタミファームの武内社長様がこちらに来て、委員会の参考人として発言をされた中で、国営農地開発事業というのは農地造成ではない、国営事業の遊休農地に何か作物をつくろうとすれば、まずは伐根、伐採、除石といった開墾の作業が必要になってくる、土づくりを全く考えていない単なる土木事業だといったような御指摘をされておりました。ある意味では、この写真に出てくるような事業というのは、全くやる必要のなかった無駄な事業であったんではないかなと思うわけでございます。

 それに加えて、多少しつこい質問になりますが、今年度の耕作放棄地の実地調査というのが完了すれば、結局、これまで国営で農地を造成してきたその全体の面積、それに対して現状はこういう状態で全く未使用の農地も含めて耕作放棄地化している、そういった農地の面積というのは正確に把握できるという理解でよろしいですね。

中條政府参考人 今年度、国、県を挙げまして、市町村とも協力いたしまして、この八月から各地の農地の実態調査をかけようとしております。四月の十一日にも各県の担当者に集まっていただきまして、その辺の手順等を打ち合わせをさせていただきました。各県にも直接本省からも参りまして、市町村の関係者と意見交換をして具体的な進め方を打ち合わせたいというふうに思っております。

 一年間かけまして、委員御指摘のとおり、各地の耕作放棄の状況、現地がどうなっているのか、所有者がだれなのか、そしてまた耕作している者はだれなのか、何が植わっているのかといったところを把握したいというふうに考えております。

 これまでも、これまで御答弁いたしましたように、五年ごとに農林業センサスでそういった農地の状況を把握しているわけでございますけれども、これはあくまでも農家の聞き取り調査をベースにしたものでございまして、現地の確認を必ずしも十分行っているわけではございません。今回は、図面にそれを落としまして、具体的にどこでどんなことが起こっているかということまで把握したいというふうに考えておりまして、そういう意味では、丁寧に、なおかつ円滑にやっていきたいと思っております。

 申し上げましたとおり、これは国だけではできませんし、もちろん、県、市町村一体となって行わなきゃならないものでございますので、ともかくこの一年間精力的にやってまいりたいというふうに考えております。

神風委員 また加えて、前回の委員会の中で、平成二十七年時点で目標としている四百五十万ヘクタール、同時に平成十七年時点で三十八万六千ヘクタールの耕作放棄地が発生をしている、その基本計画の中でそれが反映をされていないのかという質問をさせていただきましたが、それについては余り明確な回答が得られませんでした。

 ある意味では、同じ十七年時点であったのでそれが反映できないというような言い回しであったかなと思いますが、ただ、耕作放棄地については平成十二年の時点で三十四万三千ヘクタール発生をしているということが、当時もう既にわかっていたわけでありますよね。それがなぜこの基本計画の中では二十六万ヘクタールこれから発生するであろうという数字だけが出てきていて、この三十四万三千ヘクタールという当時の耕作放棄地の面積が全く反映されていないんでしょうか。

中條政府参考人 お答えいたします。

 食料・農業・農村基本計画に基づきまして、平成二十七年度の農地面積の見込みでございますけれども、委員御指摘のとおり四百五十万ヘクタールというふうに見込んでいるわけでございます。

 これには、前回御説明しましたように、何らの対策を打たないで自然に推移したとした場合にどのくらいの農地が残存するかという推定と、それから、必要な対策を打ったときにどのくらいの農地が確保できるかという、いわば出し入れの計算をいたしまして、それで四百五十万ヘクタールという推定をしているわけでございますけれども、その中で耕作放棄地等を再生するなり発生を抑制するといった面積が、十九万ヘクタールのうちの十八万ヘクタール見込んでおったわけでございますけれども、これにつきましても特に一つ一つ積み上げたということではございませんで、施策としてこれを打った場合にどのような効果があるかということで、過去の事例等も参考にしながら推移として推定したものでございます。

 したがいまして、十七年時点でこの計画をつくるときに、十七年時点の農地の状況を踏まえまして、これから十年先のところを見込んでいるわけでございまして、委員御指摘の十二年度の耕作放棄の発生状況等については、十七年度時点での確認をした上で行っているということでございます。

神風委員 いや、その数字を確認すれば、なおさらこの数字は二十六万では済まないという数字になるんではないですか。

中條政府参考人 二十六万という御指摘がございましたけれども、先ほど申しましたように、繰り返しになるかもしれませんが、平成十七年ですから、算定しましたのは平成十六年時点の農地面積でございますが、四百七十一万ヘクタールというふうに私ども確認をしておりまして、それがおおよそ十年後、二十七年時点で確保される面積としまして四百五十万ヘクタールというふうに推定をしております。

 これが、耕作放棄の発生ですとかあるいは転用等の推移を見ましたところ、恐らく農地が四百三十万ヘクタールに減るのじゃないかというふうに私どもは推定しておったわけでありますが、そのときに施策を対応することによりまして、この施策の効果としまして、先ほど申しました十九万ヘクタールの耕作放棄の発生防止あるいは耕作放棄の再活用、それから先般来委員から御指摘ありました農地の拡張が一万ヘクタール、こういったものが効果として見込めるのではないかというふうに考えておりまして、出し入れしますと四百五十万ヘクタールというのが二十七年時点の確保面積というふうに推定しておったわけでございます。

神風委員 この計画の推移を見ますと、結局、平成十六年時点で四百七十一万ヘクタールですね。そこから恐らく二十七年までに二十六万ヘクタールぐらいが耕作放棄地になるであろう、プラス農地の転用が十四万ヘクタールぐらいあって、四百三十一万ヘクタールまで減るであろうという見込みの中で、何とかそれを抑制するために十九万ヘクタールを耕作放棄地の抑制なり農地造成をしようということでこれは四百五十万ヘクタールという数字になっているわけですよね。

 これと今お話をした三十四万三千ヘクタールあるいは三十八万六千ヘクタールというのは、これは全く別ではないんですか。

中條政府参考人 先ほど耕作放棄の発生抑制ですとか再活用の分が十九万ヘクタールのうちの十八万ヘクタールを予定しているというふうに申し上げました。

 これは、十六年時点の農地が、実は、耕作放棄でなかったものが耕作放棄になったり、あるいは耕作放棄が再活用されて農地に戻ったり、出たり入ったりという面があるかというふうに思います。そこは、そういう推定ではなくて、私どもとしましては十年間の政策の効果としてどのようなものがあるかということを推定しておりまして、そこはふえる分、減る分の積算という形ではやっていないということでございます。

神風委員 今の説明を聞いている限りではなかなか納得できないんですが、既にその時点で耕作放棄地が三十四万三千ヘクタールあるわけですよね。増加傾向にあるわけですよね。しかも、平成十七年にも三十八万六千ヘクタールというのが出ているわけですね。それを存在しているものと理解するのであれば、こういう計画にはならないのではないですか。

中條政府参考人 ちょっときょうは十分な準備ができていませんので一度御説明をしたいと思いますが、とりあえず申し上げますと、この四百五十万ヘクタールあるいは四百七十一万ヘクタールにつきましては、その時点の耕作放棄地を含んでいない面積でございます。そこから耕作放棄が新たにふえたり減ったりということで、先ほど申しましたように耕作放棄としていた農地が再活用される場合には農地としてここへ入りますし、あるいは耕作放棄になったものについては農地としてカウントされないことになるわけでございますから、十七年時点の三十八万六千ヘクタールにつきましては、時点は一年違いますけれども、およそ同じと考えれば四百七十万に近い農地の外にあると御理解いただければというふうに思います。

神風委員 だから、その外にあるわけですよね。耕作放棄地のセンサスで判明をした三十四万三千ヘクタールなり三十八万六千ヘクタールというのは、この外にあるわけですよね。そういう理解でよろしいわけですよね。

 わかりました。いずれにしても、本当は次のテーマが本題だったんですが、もう時間がなくなってしまいまして、正確に耕作放棄地の実態把握を本当にことし一年かけて進めていただきたいと思います。

 ちょっと時間もありませんので、最後に大臣に、所信の中でも「農地政策の展開方向について」を取りまとめをされたというようなお話がありまして、農地情報のデータベース化ということを言及されておられたんですが、これが完成をすれば、今のように答弁のやりとりで行き違いがあるような問題というのは解消されることになるのかどうか、その点を最後にお伺いをしたいと思います。

高橋政府参考人 農地情報のデータ整備化の件でございますけれども、今委員御指摘のございましたとおり、昨年十一月に農地政策の今後の展開方向ということで、まず、農地政策の基本となります農地の状況について、御承知のとおり担い手に対しまして農地の集積というものが、特に府県の場合に分散錯圃の状況になっている、これを何とか集約をしてまとめ上げていくためには、一筆ごとの地片ごとにどのような権利関係になっているのか、所有者、借り受け人、あるいはその間におけます賃借料等の関係、賃貸借期間等々、これが地図の上できちんとわかりませんとなかなかこれを集約するような運動もできないということで、その基本となりますデータベース化を行おうということでございます。

 したがいまして、当然のことながら、そこには耕作放棄地の状況というものも今回調査をしている部分も含めて入れ込むことになるわけでございますが、基本的に、今、当面集中的に行わなければいけませんのは、農振の農用地区域を中心にやってまいりますので、なるべく早くデータ整備はしてまいりたいと思っておりますけれども、最終の耕作放棄地の調査とセットしてデータベースの更新に努めてまいりたいというふうに思っております。

若林国務大臣 耕作放棄地の一筆ごとの確認調査、これは市町村、農業委員会の皆さんに汗をかいていただいて、本当に一筆ごとに耕作放棄地というふうに見られるものについて全体確認をしようという調査でございます。

 一方、農地情報のデータベースというのは、全体の農地が分散錯圃で利用しにくい状況になっているとよく言われます。事実、確かにそういうことが大問題でありますが、その農地というものをどういうふうに所有し利用されているのかというような現状を、その土地に近い人だけじゃなくて、土地から離れているいろいろな、その地域で農地の利用を進めたいと思っている人たちなど、関係者が情報収集できるような形でデータベース化しようという趣旨のものでありますから、全筆を一筆ごとに調査をするという趣旨でこのデータベース化というのを進めているわけじゃありません。できるだけ拾っていくつもりでおります。

 そこで、農用地として集約的に利用することがねらいでありますから、農業振興地域の中における農用地区域を重点的にまずデータベース化を図っていくということでございます。しかし、最終的には、農用地区域外、外縁部についても、データベース化の対象に入れないというわけじゃありませんので、理論的にはそれらは一致していくはずのものだというふうに思いますけれども、ねらいとして言えば、行政需要なり一般的な農地需要というのを想定しますと、すぐさま整合性が合ってフィットするというようなものではありません。

神風委員 きょうはできれば食料自給率の問題を中心にやりたかったんですが、時間がなくなってしまいましたので、また次の機会にお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 今、世界を見渡せば、穀物価格の急激な上昇で、発展途上国では深刻な食料不足が起こっています。国内でも、飼料価格や原材料費がはね上がり、農家が悲鳴を上げています。食料危機あるいは穀物戦争と呼ばれる深刻な事態であります。

 最初に、いわゆる今日の食料危機と呼ばれる問題の原因はどこにあるのか、農水大臣の考えをお聞かせ願いたいと思います。

若林国務大臣 穀物価格が急激に高騰しているために、世界じゅうで、もう詳しく申し上げませんけれども、食料の需給、現況あるいは将来見通しについて、重大な関心が寄せられている。

 この七月の洞爺湖サミットにおいても、福田総理、議長のもとで取り上げる用意があるということを書簡で伝えておりますし、また、国連の事務総長も、六月の初旬にFAOの総会がございますが、その機会に、世界の主要国でございますが、世界の食料サミットを開きたいということのアナウンスが行われるなど、大変大きな関心を呼んでいるところでございます。

 このような関心を呼んでおります穀物の国際価格の高騰、どのような状況であるかは時間の関係がありますから申し上げませんが、一体なぜこういうような食料の価格高騰が起こっているのか。そして、これに対して、今大変な抗議行動だとか、地域によっては暴動が起こっているというような事態にまで発展しているわけでございます。

 その背景といいますのは、大きく言えば、私は三点あると思います。

 一点は、中国やインドなどの途上国、これはもう人口大国でございますが、この経済発展が著しい。そのために食料の需要が増大する。そして、肉類の需要が増大しますと、それに伴ってえさの穀物の需要も増大するといった背景が一つございます。二つ目は、世界的なバイオ燃料の原料という意味で穀物が注目をされまして、とりわけアメリカのトウモロコシというものは、バイオ燃料の原料としてそちらにシフトしていく、そういう需要の増大があるということがあると思います。三つ目は、これは一昨年から起こっているわけですが、豪州で二年連続の干ばつがございまして、また、地球温暖化の影響等で地球規模の気候変動が穀物の生産地で起こっております。

 そういったような要因があるものと考えているわけでありますが、さらに、それに加えて、そういう穀物の在庫が少なくなってきているという事情を念頭に置いて、株式市場などに流れておりましたファンドが穀物の取引市場などにも投機的な資金として流入してきている、そのことが最近の価格高騰の一因になっているということが言われております。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

菅野委員 食料安全保障や農業の多面的機能という考え方、言ってみれば、農産物の生産は工業生産とは意味合いが異なるという考え方が定着し始めている一方で、食料としての穀物がエネルギー燃料として栽培される、あるいは、今も大臣の答弁にありましたが、農産物が自由化の波にのみ込まれ、投機の対象にされるというように、余りにも商品化、市場化が進み過ぎたことも食料危機の大きな原因だと私も認識しているところであります。

 今答弁にもありましたように、国連の潘事務総長が六月に食料サミットの開催を呼びかけたり、洞爺湖サミットでも食料問題を議題にすべきという声も強まっております。この二つの重要なサミットで政府としてどのような主張をするおつもりなのか、現時点での大臣としての基本的な姿勢についてお聞かせ願いたいと思います。

若林国務大臣 これらの食料危機とでも言われます世界的な現象への対処としては、私は、短期的な対策と中長期的な対策、これは分けて考えていかなきゃいけないだろうと思っております。

 短期的な対策としましては、もう本当に今困っている国、暴動が起こっている、食料不足のために飢餓状態がさらに深刻になっている、そういうような国々に対する食糧援助のあり方の問題。それからもう一つは、それらの国々に輸出をしております輸出国が、国内の不安をもとにして輸出規制を始めています。例えば、インドなんかも輸出規制を始めています。中国も、規制というほど強いわけではありませんけれども輸出の制限をかけているというような事態になっております。そういうような農産物の輸出規制をどうするかといった、短期的にはこの二つの点が問題として取り上げられるだろうと思います。

 しかし、中長期的な対応としましては、各国の食料供給体制を再確立する。例えば、アフリカなどはもう深刻なんですね。援助はもちろん必要であると思います。輸出規制も、それをチェックしなきゃいけないでありましょう。基本的には、アフリカにおきます食料生産の増大ということを考えないと、問題の解決はしていかないというふうに思うわけでございます。そういう意味では、各国の食料供給体制をしっかりとしていくということだと思います。WTOの中で我が国は常に主張をし続けてきましたけれども、やはりそれぞれの国が、多様な農業を共存していかなきゃいけないという視点で、それぞれの国の農業政策を考えなければいけなくなっている、そういうふうに思います。

 そしてもう一つは、やはり長期的にはバイオとの関係でありまして、食料とエネルギーとの競合が生じないような形でのバイオ燃料生産の推進ということを考えていかなきゃいけないんじゃないか、こんなふうに考えております。

菅野委員 今の大臣の答弁にもありましたけれども、やはり今の食料危機の中で、食料輸出国の多くが輸出規制あるいは輸出制限に走っています。

 政府は、輸入国の立場から、輸出規制に当たってのルール化をスイスと共同で提案したと聞いておりますが、この提案の意図するところについて、大臣の考え方をお聞きしておきたいと思います。

若林国務大臣 農産物の貿易というのは、基本的には余剰が出たものを取引するというような基本がベースとしてあると思います。しかし、アメリカとか豪州とかカナダとか、特定の地域は輸出を目標にした形の国内生産を行っている。そういう国はごく少数の食料輸出大国でございます。

 いずれにしても、しかし、米国もかつては大豆の輸出規制をしたことがあるわけでございますが、食料というのは、それぞれの国が国民に対して安定した食料を供給するというのは国家の責任でありますから、国民の食料不足が生じて、そのことにより混乱が起きるというような事態は、まず政治の原則としてこれを優先するというのは当然起こってくるわけでございます。昨今アジア地域などで起こっております米を中心とした問題というのは、そういう要素が非常に強いと思いますね。

 そこで、私どもは世界の大食料輸入国でございます。そういう立場から、今度のWTOの交渉が始まったときから日本提案というものをいたしておりまして、日本提案の基本というのは、やはり輸出国と輸入国とのバランスのとれた貿易ルールができないと基本的に安定した貿易の拡大というのは図れないということを認識いたしておりまして、その限りで、やはりそれぞれの国は、多面的な役割を含めまして多様な農業の存在というものをお互いに認め合わないと世界の食料需給というのは不安定化する、そういう意味で、輸出に対して国際的な輸出規制のルールというものが必要ではないかということを提案してきたわけであります。

 こういう提案を受け入れまして、ファルコナー議長も、抽象的ではありますが、今回の議長ペーパーの中にそのような趣旨のものが書かれているわけでございまして、それなりの進歩が見られるわけでございますけれども、私どもは、もっとこのことを明確に規定する必要があるということで、ついこの四月の三十日でありますが、WTOの全体の改訂議長案をベースとした論議の中で、改めて実効性のある規律強化というものを提案したわけであります。

 この提案に当たっては、やはり同じく輸入国でありますG10のスイスとの共同提案という形でございまして、輸出規制を発動しようとする輸出国については、どういう場合には輸出規制を妥当とするのか、そういうルールを明確にする必要があるのではないか。また、こういう輸出規制が行われる場合には、輸入国側として、こういう影響があるからそのままでは困るというようなことを言える立場を表明するというようなことの仕組みが必要になってくるのではないか。さらに、具体的なことを言っておりますけれども、時間の関係がありますから具体的には申し上げませんけれども、そういう主張をいたしております。

 ところが、輸入国であると同時に輸出国であるというような国がアジアの中には意外と多うございまして、そういう国々からは、やはりアジア、途上国などについては、特別それとは別のもので考えてもらわないと国内の政治がもたないというような意見があったりしまして、そのことも御意見としてはもっともだというふうに思われる部分もあり、なお、今最終的な大詰めを迎えておりますけれども、この段階で、各関係国との間では緊密な連絡をとりながら、我々の大輸入国としての立場というものを、国際上もこれを立場としては認めてもらえるように、最終段階の努力をしているところでございます。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

菅野委員 輸出規制が突然無原則に行われれば、ますます食料価格が高騰します。また、農産物貿易自由化を求める国が、一転して輸出規制に走るということも矛盾していることは理解できます。しかし、食料不足が懸念される現状で、いかに輸出国とはいえ、第一に国内の食料を確保することも当然といえば当然です。六割以上の農産物を輸入に頼っている日本にとっては、当たり前に食料が手に入るわけではないという警告として受けとめることも必要です。私は、食料の安定的な確保には、食料自給率を高めていくこと、最終的にはそれ以外にないのではないかと思います。ぜひ、二つのサミットで、この観点から積極的な提起をお願いしておきたいと思います。

 関連して、WTO農業交渉閣僚会議が六月か七月に開かれるのではないかと言われています。大詰めを迎えつつあるということだと思いますが、現状はどのように推移しているのでしょうか。

 また、日本にとっての重要課題は、上限関税を設けさせないこと、重要品目の数を十分に確保すること、重要品目の関税削減率の柔軟性を確保すること、この三点で変わりはないのかどうか、お答え願いたいと思います。

若林国務大臣 今お話がございましたように、閣僚会議がいつになるか、日程すらも明確でございませんけれども、年内の終結を考えますと、六月が限界じゃないかというふうにも言われ、そのことを目標に、各国が交渉を加速しているという状況でありますが、今委員がお話しのように、場合によっては七月にならざるを得ないかもしれないという声も出てきているところでございます。

 交渉の状況でございますけれども、まずはファルコナー農業交渉議長がモダリティー案の改訂版を再改訂という形で、これをいつ出されるかということでございます。全体会議が終わって、関係各国の意見の調整をしているところであるというふうに承知しておりまして、モダリティー合意に向けまして、交渉はまさに正念場を迎えているわけでございます。

 我が国の主張は、委員がおっしゃられたことで変わってはおりません。そのことを最重要事項として主張しつつ、さらに、今申し上げました四月三十日に新たに具体的な提案としてなされました輸出国側における輸出規制をするときの規制のあり方ということについても合意を得たいということで、ファルコナー議長の方に申し入れをしているということでございます。

菅野委員 非関税の例外となる重要品目の数を確保したとしても、MA米のような不必要な農産物の輸入を押しつけられ、国内の農業に打撃を与えることは間違いありません。農産物を工業製品と同様に扱い、市場原理化することが果たして正しいのか、甚だ疑問です。

 貿易の自由化が進めば、各国で適地適作が進み、食料問題も解決できるという議論もあるわけですが、農業の市場開放化で現在の食料危機が回避できると考えているのでしょうか。こういうふうには考えていないと思うんですが、見解をお聞きしておきたいと思います。

若林国務大臣 先ほど来申し上げておりますが、日本の基本的な姿勢は、農業の持っている多面的な役割というのは、各国それぞれの事情であるわけでございます。そういう農業の役割ということを念頭に置き、さらに食料の安全保障という点を各国がそれぞれ認識するということを考えますと、やはり多様な農業が共存していけるようなものでなきゃならないということ、そのことをお互いが認めなきゃならないということを基本理念としながら、しかし、また、開かれた貿易秩序ということが食料の全体の生産量を増してきたことも事実でございますし、そういう食料の大生産国がさらに生産を拡大し、輸出余力を持つということは世界の食料の需給の中では大事な要素でもあるわけでございます。その辺の調整をどうとるかということでございまして、輸入国と輸出国、輸入のルールと輸出のルールというものの調整を図りながら決めていかなきゃいけない、このように思います。

菅野委員 次の質問に移ります。

 政府の国民生活審議会が生活安心プロジェクトの最終報告を取りまとめました。福田総理も、消費者の立場から、強い権限を持った消費者庁創設に意欲的です。この最終報告では、複数の省庁が所管する食品の表示方法を改め、食品表示法の創設を検討すること、あるいは消費期限で表示する食品の対象を拡大することなどが盛り込まれたわけですが、農水省としては今後どのようにこのことに対応していくのか、見解をお聞きしておきたいと思います。

堀田政府参考人 まず、内閣府の方からお答えさせていただきたいと思います。

 福田総理がことしの施政方針演説の中で、ことしを生活者や消費者が主役となる社会へということで、そのスタートの年となると位置づけられたことを受けまして、現在、あらゆる制度の見直しが、消費者、生活者の視点に立って行われているところでございます。

 御指摘の食品表示につきましては、四月三日に国民生活審議会の意見として総理に出されました「消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて」という報告の中におきまして、消費者にとってわかりやすい食品表示のあり方について御意見、御提言をいただいたところでございます。

 政府としましては、この提言を真摯に受けとめるとともに、現在行われております消費者行政一元化に向けた消費者行政推進会議の議論といったものも踏まえながら、今後検討していかなければならない課題だと認識しております。

若林国務大臣 今内閣府の方からお答えがございました。総理の御意向は今お話しのとおりでございまして、やはり消費者にとってわかりやすい仕組みの中で、それが消費者のためになるようなものでなきゃならないということでございます。

 そのためには、司令塔とでもいいましょうか、各省縦割りになっている消費者行政を統括できる消費者庁というような新しい行政組織が必要だという認識を持っておられるわけでありまして、私も、そのような認識はそのとおりだというふうに考えております。

 しかし、消費者行政といいましても、非常に複雑でございます。そういう悪徳商法の問題を初めとして、金融商品の取引の問題から電気製品の取引の問題を含めまして、非常に多様でございますから、それらをどのような形で内閣府が統括的に消費者行政を展開するかということは、これからの中身の詰めの話になると思います。

 食品行政に関して、JAS法の運用の面について言いますと、JASの規格とか基準とかいうようなものの制定、取り締まりを実効あるようなことにするには、農業などの生産実態とか、加工は中小企業が多いわけですけれども、そういう加工食品の製造の状況などについてかなりの専門的知見を持っているということが不可欠だろうと私は考えております。また、今後の食料の生産をどのような方向に誘導していくかということを考えると、つくったものが売れるというのではなくて、売れるもの、消費者が望んでいるものをつくっていかなきゃいけないというような全体の方向性がございますので、消費者のニーズというものをしっかりと掌握し、そしてまた、食料品の表示に当たっても、そういう生産誘導的な機能を持つような基準ということが大事でありまして、そういう意味では、生産担当部局との密接な連携も必要になってくる、こういうふうに思うのでございます。

 そこで、新たな消費者行政の中にあって、どのような形で役割を分担し、そして、それが効果を上げるような新たな食品の安全の行政というものを推し進めるか、中身は今関係者間で鋭意詰めているところでございます。

菅野委員 この問題については、引き続き議論をしてまいりたいというふうに思っております。

 ギョーザ中毒事件や食品の表示偽装で、国民の食の安全への関心は急速に高まっているわけですから、総理大臣のおっしゃるように、企業側ではなく、消費者の目線に立った対応を図るべきだと指摘しておきます。

 さて、以前も加工食品の原料原産地表示の義務づけについてお伺いしましたが、非関税障壁や表示スペースの問題を挙げ、大臣は難しさを指摘していました。ところが、東京都は、加工食品の原材料の重量で上位三品目について、原産地表示を義務づける方向を固めました。大臣は、この東京都の対応をどのように評価しているのでしょうか。また、国と都道府県で対応がばらばらになること、ましてや、地方ができて国ができないというのもおかしな話なんですが、この点、どのようにお考えですか。答弁願います。

若林国務大臣 東京都が新たに設けようとしております調理された冷凍食品というのがどういうものであり、それに対してどのような原料原産地表示を中身として義務づけようとしているのかというのは、私どもまだ明らかでございません。

 しかしながら、今我々が承知している限り、原料原産地表示を義務づけるということにつきまして、その表示の方法については、容器とか包装への表示に限らずに、例えば、ホームページに出してもいいんだ、ファクスなどの表示方法も含めるんだ、あるいは、電話の問い合わせがあればちゃんと答えができればいいんだといったような、そんなお話も聞こえてくるわけであります。

 いずれにしても、もう少し詳細を聞かないとわかりませんが、東京都が消費者からの疑問に対してあるいは不安に対してこたえよう、そういう姿勢で、これが今のような形であるならば、我々も各事業者に対して、自主的な、可能な限り、そういう表示も、する場合はこういう表示をしたらいいじゃないかというようなことを指導しているということもございますので、事業者がいろいろな形で行います積極的な情報提供を促すという意味で、これ自身は有意義な試みではないかというふうに私は考えているわけでございます。

菅野委員 この点についても、これから少し推移を見ながら議論していきたいというふうに思います。

 関連して、アメリカではトウモロコシ栽培の八割が遺伝子組み換えになり、日本の商社も食用として遺伝子組み換えトウモロコシを輸入せざるを得なくなったと報道されています。遺伝子組み換え食品については、安全性が確保されたとはとても言えないわけです。消費者の目線にも大変厳しいものがあります。

 現状では、遺伝子組み換え農産物の使用比率が全体の五%以下なら表示義務はないわけですが、少なくとも、消費者の選ぶ権利を保障するため、遺伝子組み換え農産物を使った食品にはすべて表示義務を課すべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘ございましたけれども、一つには、遺伝子組み換え農作物でございますけれども、高品質、高機能、あるいは低コストでの生産というような可能性を秘めているわけでございます。

 一方、新しい技術によって生み出されますものでございますことから、食品としての安全性の確保、あるいは生物多様性への悪影響の防止ということを図っていく必要があるわけでございます。

 この関連で、食品衛生法あるいは飼料安全法、カルタヘナ法等に基づきます審査をいたしまして、問題のないものだけが承認されるという形になっているわけでございます。

 それで、五%未満の関係の表示でございますけれども、現在、遺伝子組み換え農作物につきましては、品種ごとに科学的な評価を行いまして、安全性が確認されたものだけが輸入、流通、生産される仕組みとなっております。現在、大豆、トウモロコシなど七種類の遺伝子組み換え農産物及びその加工品について、食品衛生法及びJAS法に基づきまして、表示を義務づけているところでございます。

 このうち、加工食品の原材料として使用される遺伝子組み換え農産物の表示につきましては、加工食品は、多種多様な原材料を使用いたしまして、さまざまな加工段階を経るというようなこと、それから、コーデックス規格で、全原材料中で重量が五%未満の複合原材料については、その原材料名の表示を省略できること等を踏まえまして、重量比で五%未満の原材料については表示を義務づけていないところでございます。委員の御指摘のとおりでございます。

 このように、遺伝子組み換え食品の表示制度につきましては、食品加工の実態や関係者の意見等を総合的に検討した上で定められております。したがって、直ちに制度を見直す状況にあるとは考えておりませんが、今後、国際的な規格制定についての新たな動きがあれば、その検討状況等を注視してまいりたいと考えているところでございます。

菅野委員 今答弁ありましたけれども、やはりまだまだこの遺伝子組み換え作物に対する消費者の安全性への不安というのがぬぐい去られていないわけでありますから、消費者サイドに立った検討というものをしっかり行っていただきたい、私はこのことを強く申し上げて、質問を終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

宮腰委員長 次に、内閣提出、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣若林正俊君。

    ―――――――――――――

 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

若林国務大臣 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 本法は、食品の安全性の向上と品質管理の徹底に対する社会的要請を踏まえ、国際的にも推奨されている管理手法であるHACCP手法の導入を促進することにより、食品の製造過程の管理の高度化を図るため、平成十年に、その適用期限を限った臨時措置法として制定されたものであります。

 本法のもとで、HACCP手法の導入に必要な施設の整備についての金融上の支援措置を講ずること等により、食品の製造または加工を行う事業者においても、この手法に基づく高度な製造過程の管理の考え方が着実に広まってきております。しかしながら、大手企業に比べ、中小規模の企業におけるHACCP手法の導入率が低位にとどまるとともに、昨年以来の食品に関する事件の相次ぐ発生を背景として、食品についての安全性、信頼性の確保や品質管理の徹底に対する社会的要請は、一層の高まりを見せております。

 このため、食品の製造過程の管理の高度化を引き続き促進することとし、本法の適用期限を五年間延長するとともに、株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う規定の整備等を行うこととした次第であります。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

宮腰委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十一分散会


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