衆議院

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第12号 平成20年5月15日(木曜日)

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平成二十年五月十五日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 宮腰 光寛君

   理事 岩永 峯一君 理事 江藤  拓君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤  錬君

   理事 七条  明君 理事 筒井 信隆君

   理事 細野 豪志君 理事 西  博義君

      井澤 京子君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    今津  寛君

      上野賢一郎君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    近江屋信広君

      金子 恭之君    亀井善太郎君

      北村 茂男君    坂本 哲志君

      杉田 元司君    谷川 弥一君

      寺田  稔君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    長島 忠美君

      丹羽 秀樹君    西川 公也君

      西本 勝子君    橋本  岳君

      平田 耕一君    福井  照君

      藤井 勇治君    馬渡 龍治君

      水野 賢一君    盛山 正仁君

      森  英介君    安井潤一郎君

      石川 知裕君    大串 博志君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      神風 英男君    高井 美穂君

      仲野 博子君    松野 頼久君

      横山 北斗君    井上 義久君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   議員           筒井 信隆君

   議員           仙谷 由人君

   議員           岡本 充功君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   厚生労働大臣政務官    伊藤  渉君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 井上 美昭君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           土屋 定之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         伊藤 健一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         吉村  馨君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       吉田 岳志君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            中條 康朗君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           竹谷 廣之君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山田 修路君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 黒田大三郎君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十五日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     杉田 元司君

  飯島 夕雁君     安井潤一郎君

  金子 恭之君     坂本 哲志君

  亀井善太郎君     上野賢一郎君

  斉藤斗志二君     馬渡 龍治君

  永岡 桂子君     井澤 京子君

  西川 公也君     長島 忠美君

  福井  照君     藤井 勇治君

  渡部  篤君     西本 勝子君

  石川 知裕君     松野 頼久君

同日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     永岡 桂子君

  上野賢一郎君     盛山 正仁君

  坂本 哲志君     金子 恭之君

  杉田 元司君     橋本  岳君

  長島 忠美君     西川 公也君

  西本 勝子君     渡部  篤君

  藤井 勇治君     寺田  稔君

  馬渡 龍治君     斉藤斗志二君

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

  松野 頼久君     石川 知裕君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  稔君     福井  照君

  橋本  岳君     赤澤 亮正君

  盛山 正仁君     亀井善太郎君

    ―――――――――――――

五月十五日

 食品情報管理伝達システムの導入の促進に関する法律案(筒井信隆君外三名提出、衆法第一二号)

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案(筒井信隆君外三名提出、衆法第一三号)

 食品の安全性の確保を図るための農林水産省設置法等の一部を改正する法律案(筒井信隆君外三名提出、衆法第一四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)

 食品情報管理伝達システムの導入の促進に関する法律案(筒井信隆君外三名提出、衆法第一二号)

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案(筒井信隆君外三名提出、衆法第一三号)

 食品の安全性の確保を図るための農林水産省設置法等の一部を改正する法律案(筒井信隆君外三名提出、衆法第一四号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

宮腰委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官伊藤健一君、総合食料局長町田勝弘君、消費・安全局長佐藤正典君、水産庁長官山田修路君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長藤崎清道君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀井善太郎君。

亀井(善)委員 自由民主党の亀井善太郎でございます。

 本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。また、若林大臣にも御出席をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、HACCP法に関する審議ということで、御質問の機会をちょうだいいたしました。どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず初めに、HACCP法につきましては、皆様御存じのとおり、十年前のO157の大量感染を契機として、五年間の時限立法とされたわけでございます。その後、BSEですとかノロウイルスですとか、記憶に新しいところでございますけれども、やはりこういったことは続けていかなければいけないということで継続をされたもの、このように認識をしております。

 まず初めにお伺いをさせていただきたいんですけれども、このHACCP法の当初の施行から十年を経ておるわけでありますけれども、この法律の目的が、衛生管理及び品質管理の確実性及び信頼性の向上というところでございます。この目的にかんがみて、政府としてはどのような成果があったというふうに御認識をされているのか、御見解をお伺いしたいと存じます。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 本法は、食品の安全性の確保と品質管理の高度化に資するHACCP手法の導入を促進するために平成十年に制定されたわけでございますが、食品製造業全体の導入率は、制定前の平成九年の六・八%から平成十八年度には一四・六%に増加しております。中でも、販売規模五十億以上の大手企業では約七割の導入となっております。

 また、当省の調査によりますと、HACCP手法を導入した企業の多くは、その効果といたしまして、品質、安全性の向上、従業員の意識の向上、企業の信用度やイメージの向上などを実感しているとしておるところでございます。

 以上から見まして、本法は、食品の安全性、信頼性を高めるため一定の効果を上げてきているものと考えている次第でございます。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 やはりきちんと現場を見ておかなきゃいけないなと思いまして、今回質問させていただくに当たって、ちょうど私の自宅の数キロ圏内にHACCPをやっているところが二つほどございまして、ただ一方で、今お話がありましたけれども、実際私、検索して自分でホームページ等々で見てみたんですけれども、案外HACCPをやっているところが少ないのも現実でございます。これらについてはまた後ほどお話をお伺いさせていただきたいと思います。

 今回、二つの工場を拝見させていただいたんです。きょうは委員長の御了解をいただいてお手元に資料を配付させていただいておりますけれども、一つはコンビニエンスストアで、お弁当とかおにぎり、から揚げ弁当とかお赤飯のおにぎりとかをよく選挙中食べるんです、選挙中以外も食べますけれども。私は大体お昼はそれが主食になっておりますが、まさにそれをつくっております株式会社武蔵野の神奈川工場、ここにお伺いをさせていただきました。そしてもう一つは、赤いパッケージのメグミルクでおなじみの日本ミルクコミュニティ株式会社海老名工場というところにお伺いをさせていただきました。この資料をそれぞれごらんいただきながら、少しお話をさせていただきたいわけでございます。

 一枚目が、これはお弁当だとかおにぎりについてのHACCPであります。赤いところが重要管理点でありまして、これはもちろん先生方は既によく御存じかと思いますけれども、HACCPというのはもともと、細菌感染、細菌の増殖によります食中毒を防止するということを目的につくられたわけでございますから、加熱処理、あるいは、温めたままじゃまずいわけで、これを冷やすところ、ここに主眼を置いた形になるというのが一つの特徴でございます。

 お弁当の場合は、原料が入ってきたところから、それぞれ一般衛生管理を経て、加熱処理、冷却、さらには金属探査、この三つのところが重要管理点になっておりまして、ここを実際に拝見させていただきましたけれども、例えばから揚げ弁当のから揚げであれば、その幾つかの中から、棒を突っ込んで温度を確認して、ちゃんと八十度から何度の間に入っているか、こういう形で確認をする、そうした形でやられているわけであります。これを監視し記録するという形でHACCPは回っているわけであります。

 一方で牛乳の場合はどうかというと、次のページの「メグミルク牛乳のできるまで」というのをごらんいただきたいわけでありますけれども、最初に牛乳が入ってきます。この牛乳が入ってきたところで、抗生物質が混入していないかだとか、そんなところの原材料のチェック、これは一般衛生管理としてやらせてもらって、そしてその後牛乳をおいしくするプロセスがあって、九番のところですね、殺菌して冷やす、百三十度、二秒間。だんだん上げていって、二秒間ちゃんとやったよ、それからちゃんと冷えたよというところを監視、記録、管理するという形でHACCPというのが行われているわけであります。

 実際に拝見して感じましたのは、これは極めてきちんとやっておる。私も毎日牛乳をいただき、あるいは先ほども申し上げましたとおりお弁当をいただいておるわけでありますけれども、もちろん、お米をつくるところから牛を育てるところから農家の皆さんに感謝をしなければいけないわけでありますけれども、最後、消費者に至るところまであらゆるところに目を配られているということで、これはやはり改めて感謝をしなければいけないな、このような感想を持ったわけであります。

 そうした中で実際に拝見して感じましたのは、食の安全を確実に担保する仕組みとして、HACCP手法というのは大変有用である、あるいは現場の努力を促す仕組みになっているのかなと。やはり一つの大きなモデルがあってそれをもとに動いているわけでございますから、非常にうまく回っているのかなというような形で考えております。

 一方で、先ほど局長からもお話しいただきましたが、導入企業については一割台でありまして、せっかくのいい手法がなかなか導入できていない。これはやはり考えなきゃいけないなというふうに考えております。

 そこで、まず政府にお伺いさせていただきたいんですけれども、このHACCP手法の導入が全体として見た場合一割台と低位にとどまっている理由について、どのような御見解があるのでしょうか、教えていただきたいと存じます。

町田政府参考人 HACCP手法の導入が低位にとどまっている理由のお尋ねでございます。

 当省が実施した調査によりますと、HACCP手法の導入を検討している企業にとっての問題点ということでございますが、施設整備に多額の資金が必要ということを挙げる企業が七〇%、また、責任者、指導者の人材不足を挙げる企業が五九%ということでございまして、特に中小規模の食品企業におきましてこうした資金面と人材確保が大きな課題となっているというふうに認識しているところでございます。

亀井(善)委員 ありがとうございます。お話しのとおりだと思います。

 実際に私も拝見させていただいて感じましたけれども、先ほど申し上げたとおり、HACCPにおいては、監視をし、そしてそれを記録するということでは、これは人の手間がかかり、かつ、設備が相当程度必要なわけであります。これはしっかり進めていかなければいけない。

 その一方で、ちょっとまず先にお伺いをさせていただきたいんですけれども、海外諸国等々を見ますと、HACCPを義務化するべきではないか、こういうような御意見があります。しかしながら、私自身拝見をさせていただいて、先ほども少し申し上げましたけれども、HACCPというのはあくまで、細菌が増殖をする、それによる食中毒を防止する手法として極めて有用なわけでありますが、先ほど申し上げた例えば抗生物質が混入されていないかといったようなチェックというのはHACCPでは難しいわけでありまして、消費者の皆さんから重要に見られる安全というものをしっかり担保するためには、恐らく複合的な管理というものが必要なのではないか、HACCPだけではなかなか難しいんじゃないか。

 さらに一方では、先ほど来お話がありますとおり、大変金がかかります、人手もかかります。そういう中では、町のお豆腐屋さんまでHACCPを導入しろという義務化というのはなかなか難しいのかな、このように考えております。

 そういった点で、諸外国の例もいろいろあるわけでございますけれども、我が国政府として、HACCP手法の義務化について、これは恐らく厚生労働省の方の所管になるかと思いますけれども、御意見をお伺いできればと存じます。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省の観点からHACCPの義務化はどうなのかという御質問でございます。

 まず、厚生労働省は、設置法に基づきまして、国民の公衆衛生の向上及び増進ということが任務となっております。これを受けまして、食品衛生法上、その目的として、「食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。」ということになっておりまして、そういう意味で、具体的な規制方法をいろいろと設けてございます。例えば、個々の食品の特性に応じた製造加工基準でありますとか、微生物や残留農薬基準等の成分規格でございますとか、あるいは食品製造施設の構造、設備に関する基準でありますとか、また、食品の衛生的な取り扱い等を規定しました管理運営基準等がございまして、体系的な規制を設けているところでございます。

 そういう意味で、これらの規制を通じて我が国の食品の安全性は確保されているというふうには考えておりますけれども、このHACCPというものにつきましては、その水準の一層の向上を図るという観点から考えておりまして、そういう意味で、国際的な動向ですとか、先生御指摘ございましたけれども、我が国の食品製造施設等における取り組み状況、こういうことを勘案しながら、その実効性も踏まえて、HACCPの義務化の必要性につきましては慎重に検討してまいりたい、このように考えております。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 ただいまお話がありましたとおり、まさにいろいろなリスク、新しいリスクも生まれています。消費者の皆さんからは、やはり食品の安全、安心はまた別の話でありますけれども、食の安全に関して国民の皆さんが大変心配をされているところでありまして、このところは、総合的なさまざまな検討、これは国際的なところも含めて、ぜひ引き続き御検討いただきたいというふうに考えております。

 そうした中で、またHACCPに少し話を戻させていただきますけれども、HACCP手法はやはり有用な手法なんですね。これをまたここで五年間という形で時限で立法するという形になるわけでございまして、私は、やはりこれから五年間何をしていくのかということが政府として求められているのではないかなと。単に立法するということだけではなくて、具体的に何をしていきますということがここは極めて重要なことなのではないかなというふうに考えています。特に食品製造業に対して、一定の導入目標の設定であるとか、あるいは具体的な普及計画であるとか導入計画であるとか、こうしたものが必要ではないかな、このように考えております。

 これはぜひ大臣にお答えいただきたいと考えておりますけれども、政府としての基本的なお考え方、どのようになっておりますでしょうか。

若林国務大臣 HACCP手法が食品の安全の確保という観点から大変有用であるということは、委員が御指摘のとおりでございます。

 その意味で、先ほど局長が答弁しておりますが、五十億以上の大企業は七〇%程度までこれが普及しているわけですが、五十億未満の中小規模の導入率が非常に低いという状況になっているわけでありますので、これからの推進方策としては、ごくごく小さい地場の企業はともかくとして、販売額一億から五十億といった中規模の企業に対して積極的にこの導入を進めていくという姿勢が必要だというふうに思うのでございます。

 いろいろとこれらの企業の意向調査をいたしましたところ、一億から五十億の販売をしております規模の企業の意向としては、この導入を検討すると言っております、そういう積極姿勢をとっております企業が全体で三四%、三四%もそのような積極的な姿勢を示しているのでございます。そういう意味では、このように導入を積極的に検討したいと回答している企業について、この五年間でその導入が実現できるように促進を図っていかなければならないというふうに考えているわけであります。

 この三四%の導入が行われますと、五年後には、全体として約半分、五〇%の企業がこれを導入済みということになると思いますので、そのことを目標に進めていきたいと思っております。

亀井(善)委員 大臣、ありがとうございます。

 そうした中小企業の皆さんに向けて、特に、今お話がありましたように、導入意向がある、そういうお気持ちでいらっしゃる企業さんにしっかりと入れていただくような形でぜひ行政を進めていただきたい、このように考えております。

 ここから、では具体的にどうするんだというところについて少しお話をお伺いさせていただきたいと思います。

 先ほど来申し上げましたとおり、結構設備面の投資が負担である、あるいは人の面、二つの課題のお話が先ほど局長からもありましたけれども、設備面の負担は結構大変なんですね。やはり普通に工場をつくるよりは大変だなと正直感じさせていただきました。まさに監視をし、記録をする、そしてそれをとっておく、これを常にきちんと見続ける、これを運用していくという意味で、恐らく、工場を立ち上げるときに、あるいは今の工場を改修するときに、それ相当のお金がかかるんじゃないかな、このように考えております。

 こうした施設整備面のサポートというものは極めて重要なわけでございますし、法案においては融資制度等々こうした手当てについて盛り込まれているわけでありますけれども、特に中小企業に導入する上においてどのような対応を具体的に御検討なされているのか。

 また、融資となりますと、これはどうしてもすぐ物に対する話ばかりになってしまいます。ところが、最近は物だけではなくて、これをつくり込む、例えばシステム構築のための人的コストであるとか、あるいはそれを最初に研修するためのコストであるとか、そうした物にはならない、これは最終的には企業が無形資産で償却をしていくんだと思うんですけれども、そういったことも含めてやはり融資対象にするべきではないかなと私は考えております。

 そうしたところについて今どういう状況で御検討されているのか、ぜひお聞かせをいただきたいと存じます。

町田政府参考人 御指摘いただきましたとおり、導入に当たりましては、施設整備の資金と人材不足、これがやはり大きな課題というふうに認識しております。この法律によります長期低利融資とあわせまして、人材育成のための研修といったことの支援につきましても、平成二十年度から大幅に拡充したところでございます。

 また、HACCP手法の導入によります施設整備投資ですとか人材育成経費につきましては、中小企業投資促進税制あるいは人材投資促進税制などの税制特例の適用が可能であります。こういった特例の活用も推進してまいりたいというふうに考えております。

 また、融資対象のお尋ねでございますが、本法に基づく融資につきましては、HACCP手法の導入に伴います施設整備だけではございませんで、それと一体的に行われますソフトウエア開発費、また研究員の人件費、職員研修費といった経費も対象としているところでございます。

 こうした点につきましては、今後さらに関係者に周知いたしまして、その活用が図られるように努めてまいりたいと考えております。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 今、いわゆる金の面でのサポートについてお話をいただいたのかと思います。

 そういう中でもう一つ大事なのが、ノウハウ、まさに人にどういうふうにやっていくのかというところであります。HACCP手法というのは、先ほど来お話をさせていただいておりますとおり、基本的には人が回す仕組みでありまして、まず、そもそものところで言うと、経営者の理解というものが必要である、やはりこれは必要なんだと。何かHACCPってよくわからないなという話じゃなくて、まず経営者にわかってもらうことが必要である。そしてまた、実際に私も現場を拝見させていただいて、女性の方が出てこられた会社がありましたけれども、大変実務に精通した、この会社のHACCPというのはどういうふうにあるべきなんだろうかとHACCP全体をデザインする、そしてそれを常に見直していく、そういうスタッフの育成というものが必要であります。

 そしてまた、実際にHACCPを回すのは、現場の社員さんでいらっしゃったり、あるいはアルバイトさんでいらっしゃったり、特に食品製造工場は、今、大変人手不足に悩んでいらっしゃって、いわゆる日系人の方々もいらっしゃいます。なかなか日本語が普通に通じない方も実はいらっしゃって、例えばローマ字で表記をされていたりということもあるわけであります。こういう中で、それぞれの階層に応じた中身の教育というものが私は必要なんじゃないかなというふうに考えております。

 こうした研修体制について政府としてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、どのような企画を立てていらっしゃるのか、ぜひお伺いをさせていただきたいと存じます。

町田政府参考人 人材研修等につきましては二十年度から大幅に拡充したということを申し上げましたが、少し具体的にお話をさせていただきたいと思います。

 まず、お話ししました企業のトップ層への働きかけということで、企業の経営トップを対象といたしまして、HACCP手法導入による従業員の意識向上あるいは企業イメージの向上といった具体的な成功事例を紹介するトップセミナーを開催するということでございます。また、社内の人材という点におきましては、HACCP手法の導入を具体的に検討する企業等を対象といたしまして、企業の責任者養成のための研修や技術的サポートのための情報発信、さらには、社外におきまして、当該企業を指導助言できるような指導者層を確保するための指導者養成研修やコンサルタントの登録、紹介、こういった取り組みを支援していきたいというふうに考えております。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 先ほど大臣からもお話がありましたけれども、まず、導入を考えている会社さんをふやしていくこともやはり必要であります。そしてまた、実際の実務をよりブラッシュアップさせていくという意味では、ぜひぜひそうした研修の充実を図っていただきたい、あるいは専門家でいらっしゃるコンサルタントの紹介等々もぜひ進めていただきたい、このように考えています。

 今、金の話と人の話がありましたけれども、それ以外にも結構実は障害があるのかなというふうに感じております。

 例えば、これは私自身よく拝見をさせていただくんですが、HACCPマークというのがいろいろなところであります。全部同じなのかなと思うと、結構違ったりする。それから、HACCPを認定しているところが、いろいろなHACCP認定団体がある。そうなると、これは何なのかなというのが素朴に感じるところであります。

 私も少し勉強させていただきましたら、国際規格ではISO22000というのがどうもHACCPに関連する話なのかなというところであります。あるいは、今回の視察では、実は、お弁当屋さんの方、武蔵野さんでいらっしゃいますね、この方々は業界団体のHACCP認定というものを受けていらっしゃいました。

 このISO22000であるとか、あるいは業界のそれぞれのHACCP認定であるとか、こういったものがHACCP法との関係でどのような位置づけになるのか、政府の御見解をお伺いしたいと存じます。

町田政府参考人 二点お尋ねをいただきましたが、まず、ISO22000とHACCP手法との関係でございます。

 このISO22000、食品安全マネジメントシステムでございますが、国際規格の作成を行う民間団体であります国際標準化機構、ISOが食品関連企業向けに開発した品質管理のためのトータルマネジメントシステムでございます。

 その内容といたしましては、品質に関して組織を指揮管理するシステムとしてのISO9001に、食品製造工程に直接かかわります一般衛生管理とHACCP手法を統合したものでございまして、二〇〇五年九月に発行しております。

 次に、業界団体等による認証とHACCP手法との関係はどうなっているかというお尋ねでございます。

 私どものHACCP法につきましては、これからHACCP手法を導入しようとする食品企業に対しまして長期低利融資による支援を行うものでございます。一方、御指摘いただきましたように、一部の自治体また業界団体におきましては、HACCP手法を導入して食品製造の管理を行っていることを認証する、そういった独自の仕組みを設けているところでございます。

 農林水産省といたしましては、食品企業が私どもの本法を活用していただいてHACCP手法を導入するとともに、導入後は、これら業界団体また自治体の認証の取得に積極的に取り組むことで食品の安全性、信頼性が高まるということを期待しているところでございます。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 やはりわかりにくいところはあるかと思いますので、ここら辺はHACCPを意識して見てもそういう話であります。これは、消費者の皆さんから見ると、結局何なのよ、HACCPというのは結局牛乳のものなのみたいな、そういう誤解もあるのも事実でありますし、これとこれが違うと何となく信用ができない、どこのHACCPを信用していいんだみたいな話になってしまう。

 せっかく皆さんが現場でいろいろな御苦労をされています。そうした御苦労がきちんと消費者の皆さんに届くように、国民の皆さんにわかりやすく伝えることができるような工夫というのをぜひ政府の方でも考えていただきたいな、このように考えております。

 それからもう一つ、そもそもの話として、HACCPというものの認知度が低いわけであります。

 私も、実は今回慌ててHACCPを一生懸命勉強させていただきました、正直に言ってしまいますが。HACCPというのが何なのかということについて、実際にアンケートの結果があります。見たことがある人三二%、意味を知っている人が二三%。この法律ができて十年たっております。十年たっているのにこの水準というのは、やはりまだまだというふうに考えざるを得ないのかなというのが正直なところであります。

 実際に、同じようなアンケートを拝見させていただきますと、制度そのものが全然違いますから比べることすら違うんじゃないかというような御指摘もあるかもしれませんけれども、例えば有機JASですとか特定JAS、これは農水省も頑張っていただいているからかもしれませんけれども、極めて認知度は高いですね。消費者の購入意欲も高いです。有機JASがついているものを見てみよう、あるいは特定JASがついているものを見てみよう、こういう話があります。

 実際に、HACCP手法の導入をちゅうちょされている企業さんがありまして、この経営者さんに私もお話をお伺いさせていただきました、何でHACCPをやらないのと。いや、いいのはわかっているんだよと。だけれども、先ほどお話があったとおり、金も大変、設備も大変、それから人も大変。さらに言えば、これをやったからといって消費者さんが評価してくれないんだよと。こういうお話があるわけであります。

 そうなりますと、実際、消費者さんが評価するというのは、これは要は価格に乗せられるかどうかなんですね。価格転嫁できるという意味では、これは全然違うものだとわかっているけれども、有機JASだとか特定JAS、こっちの方をまずやろうという話になるわけでありまして、ここのところは、やはり消費者さんに対して、HACCPというこういういいものがあるよ、これによって私たちの食の安全は守られているんだよ、そういったことをお伝えする工夫というのは政府としてしていく必要があるのではないかなと私は考えております。

 そういう中で、消費者にとって認知度が低いという問題について政府としてどのような方策を考えていらっしゃるのか、御見解を伺いたいと存じます。

若林国務大臣 もう委員が御指摘のとおりでございまして、やはり最終ユーザーである消費者がこれをどう評価するか、消費者の認知度を高めていくということが、実は事業者側も意欲を持つことになると思うんですね。そのためには、やはり消費者団体ともう少し連携を深めなきゃいけないんじゃないかというふうに思うわけでございます。各地の普及のためのセミナーとかシンポジウムとか、そういうものに消費者団体の皆さんも入ってきてもらうというようなこと、また、消費者にわかりやすいようなPR用のパンフレットを作成して、消費者団体と連携して普及啓発活動を進めていく、そういうことが大事じゃないかなと今お話をお聞きしながら感じたところでございます。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 単に行政だけで紙をつくって終わりということではなくて、今まさに大臣お話しされたとおり、消費者団体との連携というのはすごく私は効果があることだと思っています。

 実際、今、食の安全あるいは品質については、大変消費者の皆さんの目が厳しくなっていらっしゃいます。それを実際に民間で相当真剣に今までやってこられた消費者団体さんは幾つもあられるわけでありまして、こうしたところと連携することによって、恐らく今までよりも波及の仕方というものは変わってくるんじゃないかな、このようにも考えております。

 今大臣がお話をされたような形での従来型のPR、さらに加えて消費者団体との連携というものをぜひぜひ進めていただき、ああ、HACCPね、これは安心なんだよね、こういうふうに消費者の皆さんが感じていただくようなことができる、そして、スーパーですとかお店で、店頭で手にとったときに、ああ、こっちにしよう、そういうふうに思えるような形にぜひこの五年間で進めていただきたいな、このように考えております。

 最後に、ぜひ若林大臣にお伺いしたいことがございます。

 食品産業、今回もいろいろと拝見をさせていただきまして、大変厳しい経営環境にあるな、このように感じております。

 一つには、原材料価格の高騰あるいは原油価格の高騰、これは経営努力ではいかんともしがたい部分があるわけであります。

 さらには、実は私の地域で回りましたときに、二社さんともおっしゃったのが人手不足であります。考えていた以上に実は工場に人が少ない。かなりオートメーション化が進んでいる一方で、例えばお弁当の製造ですとかそういったプロセスにおいては、やはり人の手がかかわらざるを得ない。あるいは、牛乳においてもそうですけれども、やはり人が見なきゃいけないところというのが多々あるわけでありまして、それも、今、二十四時間ぐるぐる回しているわけであります。常に二十四時間稼働している。そういう中で、こうした人手不足の問題があります。

 もちろん、HACCP手法を導入していくというのがこの法律の趣旨でございまして、それを強化していくということが趣旨でありますけれども、この導入施策だけではなく、やはり食品産業全体の競争力強化施策、特に、グローバル競争において我々が何をやっていくのかということが非常に必要なのではないかな、このように考えております。

 ぜひこれは、大臣として、政府として、食品産業の競争力強化のための支援策、どのような対策を講じていかれるお考えがあるのか、お伺いをさせていただきたいと存じます。

若林国務大臣 委員も御承知のことでございますけれども、飲食料品の消費というのは急速に伸びていったわけでございますけれども、全体をどういうシェアでいくかといいますと、直近のデータでいきますと、外食が二九・五%、約三〇%、加工品が五一・七%ということでございまして、そして生鮮品としての消費が一八・八%と、圧倒的に外食あるいは加工品にシフトしていっているわけで、これらを供給する事業というのがすべて食品産業ということになっていくんだと思います。

 しかし、食品産業をめぐります状況は、お話しのように各種困難な状況がございます。原料価格の高騰でありますとか、あるいは人手の調達の難しさとか、それから、できた製品の消費者への合理的な転嫁というのが非常に難しい。それだけに、生産性を上げていかなきゃいけないというようなことになってくると思います。

 そういう意味で、HACCP手法の導入促進やコンプライアンス体制の整備を支援するのはもちろんでございますけれども、そのほかには、委員御質問もございましたが、我々としては、今国会で審議いただいています農商工等連携促進法案というようなものを活用しまして、食品産業と原料供給者たる農林漁業者の連携を強めまして、新たな需要の拡大だとか、あるいはそういう経営、販売ノウハウとか、そういうようなことを進めていかなきゃいけないんじゃないかというのが一点でございます。

 二番目は、やはり消費者ニーズに対応した形の新食品、新素材の技術開発を進めなきゃいけないだろう、これはやはり産官学の連携を強化しながら進める必要がある。

 三つ目は、やはりある程度のスケールを持たないとコストダウンができません。国内市場だけではそれがうまくいかないというようなことがあるわけでございますので、今着目していますのは東アジアの国々でございます。東アジアの国々に進出する、あるいは商品を売り込む、そういう意味で、今、東アジア食品産業活性化戦略というものを組み立てまして、海外展開を支援していこうということを考えているわけでございます。

 東アジアは、我が国との間では、食文化の面などの認識などで共通している部分が非常に多いですし、所得もこれから伸びていくところですから、食生活が変わっていくわけですね。そういうチャンスをとらえて、加工度の高い食品を供給できるような将来のマーケットとしての見通しもつけられるわけでございます。そういう意味では、東アジア食品産業活性化戦略の中で、我が国の食品産業の皆様方には、各国の情報を提供したり、それから、そちらに立地する場合にはどういう点に留意したらいいのか、そういうような指導も強めていかなきゃいけないという意味で、連携を深めていきたいと思っております。

亀井(善)委員 ありがとうございました。

 質疑の時間ももう終了というふうに来ておりますので、最後に一言だけ。

 やはり食品産業は極めて厳しい状況にあります。そういった中で、恐らく世界で一番厳しい消費者に育てられてきたのが日本の食品産業である、このように私は考えております。やはり、一番最初の生産者の皆さんから含めて、消費者の皆さんの口に入るまで、ここをトータルとしてぜひぜひ政府としてはしっかり取り組んでいただきたいと心からお願いをさせていただきまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、石川知裕君。

石川委員 民主党の石川知裕でございます。

 きょうは、HACCPの改正法案について質問させていただきたいと思います。

 昨年は、食の安心、安全で大変偽装に揺れた一年でございました。このHACCPは、法の成立過程の中で、O157の発生によって食の安心、安全に関する規定を強めようということで導入が図られたものと思います。

 この食の安心、安全は二つあると思います。

 一つは、先ほど申し上げましたように、商品や製品そのものを偽って表示をすること。まだ何か船場吉兆さんは問題を起こしているようでありますけれども、商品や製品そのものを全く違う表示をすることによって消費者に対して不当な支払いをさせて不利益をこうむらせる。去年はこのことが大変大きく話題になったわけであります。

 そしてもう一つは、O157、牛乳の問題等もありました、そのほかにもたくさんありましたけれども、商品そのもののずさんな管理、たとえ管理をしていても、たまたま不慮の、いろいろな発生原因によって人体に影響を及ぼしてしまうような事態になる。

 大きく分けてこの二つが食の安心、安全にかかわることではないかと思っております。その後段の人体に影響が出ないようにという部分、消費者の体に影響が出ないようにという部分を今回のHACCPの法案というものは十分意識をしてつくられ、導入をされている。

 その中で、大企業に関しては、十分この導入が進んできたということが農林水産省の統計であらわれているわけであります。一方で、中小企業、零細企業は、先ほど亀井先生の御質問にありましたけれども、なかなか進んでいない状況があるということであります。

 今回、この法改正において、ポイントとして、銀行そのものが変わる。適用期限を五年延ばすということと、大きなポイントが、融資対象者を大企業、中小企業ともに貸付対象から中小企業向けに限定ということになっております。また、償還期限十年以下の資金も貸付対象を、償還期限十年超の資金に限定して、長期にわたって経営を考えながら進めてもらいたいという意図があると思いますけれども、現在、どれぐらい中小零細企業が導入をしていて、今後、これは五年間となっておりますけれども、どれぐらいふえていくという見通しを農水省としては持っておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。

町田政府参考人 HACCP手法の導入の現状につきましては、今御指摘もいただきましたが、年間販売額五十億円以上の大手企業では七〇%程度まで進展をしておりますが、食品製造業の大宗を占めます販売額五十億未満の中小規模層の導入率は約一割程度、低位水準にとどまっている状況でございます。

 これらの中小規模層の中でも、地場食品を中心と考えられます小規模の食品企業は別といたしまして、私ども、販売額一億円から五十億円の規模層における導入促進が特に重要だというふうに考えております。

 農林水産省が十八年に調査したところによりますと、この規模層の三割から四割の食品企業が今後導入を検討するというふうに回答をしていただいております。意欲があるということでございます。こうした回答をいただきました企業におきまして、今後五年間にその導入の実現を図っていきたいというふうに思っております。この導入が図られました場合には、一億円から五十億円の規模層のHACCPの導入率は、現状の一六%から、五〇%になるわけでございます。この五〇%を目標に計画的な導入に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

石川委員 中小零細企業に関しては、一六%から、五〇%を目標にということで今答弁がありましたけれども、平成十八年度の農林水産省の食品産業動向調査によっては、十年に導入していますよね、平成十二年から十八年の導入状況で、導入する予定はないというのが二九・四から三七・八に増加をしているということであります。

 そう考えると、導入する予定はないという企業がふえているわけでありますけれども、今、一六%から五〇%にというお答えがありましたけれども、そのふえる要因というものをちょっとお答えいただきたいと思います。

町田政府参考人 導入に取り組む予定がないといった方につきましては、特に中小規模の方になるかと思いますが、やはり設備投資等の資金面、また、HACCP手法を運営していく場合の人材面の不足、この二つの課題があって現状のような数字になっているのではないかというふうに考えております。

石川委員 余りきちんとお答えいただけなかったようでありますけれども、一六パーから五〇%にふえる予定だということであります。

 大企業の場合、導入がふえていったまたはある程度導入されているのは、やはり業界の論理というものがあると思います。大量生産をして、大手のスーパーや多くの問屋さんやいろいろなところに商品を納入してもらおうという場合に、いわゆる安心、安全をより高めることが販売の促進につながるということで導入を進めてきた経緯がある。大企業の場合は人員もおりますしそれぞれ企業の財務状況も余裕がありますので。

 しかし、今回のこの法案の趣旨は、導入の進んでいない中小企業、零細企業の導入をふやそうということで法改正を進められるのだと思いますが、私は、今回の法改正によって、中小企業、零細企業というものが、今一六パーから五〇%にふえるというお答えでありますけれども、とてもそのようにふえるとは思えないんですね。

 というのは、業界の論理の中で、大きいところはそれぞれ自分たちの商品をいろいろなところに販売していく、そのためにこの過程でより安心、安全の精度を高める、ブランド力を高めるということもあると思いますけれども、中小零細の場合は人員も少なくて、財務状況もいいわけではない、人員も割けるわけではないという中で、このHACCPを導入しようかどうか迷っているところもたくさんあると思います。いいとはわかっていても、それ以上に、先ほど御質問、受け答えがありましたけれども、余りにも消費者の認知度が低いために、導入をしても余りにもメリットが少ないという現状があると思います。

 きのう、私、赤坂見附のスーパーに行って、HACCPの商品をどういうものがあるかと思ってちょっと探してまいりました。飛行機の中は牛乳を持ってこれないのです、地元の北海道のものを持ってこようと思ったんですけれども。この牛乳は、HACCPのマークがありました。ほかにも探したんですけれども、そのスーパーではこの牛乳の一点だけでありました。ウインナーのコーナーには結構ありましたし、食肉のコーナーは大抵HACCPの商品がありました。冷凍食品の場合は、この冷凍食品の認定証というものが張ってありました。

 スーパーによってそれぞれ品数は違うと思いますけれども、自分の選挙区で三つほどスーパーに行って、実際にそれぞれ店員さんに聞いてみました、HACCPは御存じですかと。先ほど、見たことがあるは二割でしたか三割でしたか、意味を知っているは二割、三割ということでありましたけれども、私は自分でスーパーに行って、並べている店員さんに聞いたら、知っていると言ったのはゼロでしたね。見たことあるというのもゼロでした。HACCPの商品を教えてもらえますかと聞いたら、みんな、わからないということでした。一時間半、スーパーをうろうろしていると、怪しまれた。それ以上に大変だったのは、衆議院の石川ですと言ったら、どちらのシュウギインさんですかと言われたところが一軒ありました。

 私はこの間もお話しさせていただきましたけれども、農林水産省の方々が、今回、融資対象を中小企業に限定する、そして五年間延ばす、これは導入を進めるということで私は賛成であります。しかしながら、認知度を高めないことにはメリットが余りにも低過ぎると思います。

 だから、この調査は、調査室の資料によると、これは農林漁業金融公庫が行った調査だと思うんですけれども、HACCPの認知が本当に三割もあるのかというのは、実際食品を売っているスーパーの店員ですらほとんど知らないのに、まあ、聞き方にもよりますし、どういう対象者だったかにもよりますが、現場を歩いた結果、融資をふやしても五年間延長しても、ちょっと今のところ厳しいのではないかと思います。

 大臣にちょっとお伺いをしたいんですけれども、きのう赤坂を一時間半回ったんですが、この三つだけで、あと二つは同じ商品でした。あとは、重度障害者の方のハートフルマークがJASだとか有機だとかとは違うマークだなと思いました。大臣、今回のもので果たして中小零細にふえていくのか、消費者の認知度を上げるために大臣としては予算をどうしていくのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

若林国務大臣 決め手は、やはり消費者がその商品をどう評価してくださるか、どう評価していただくかということだと思うんですよ。

 その消費者の評価というのは、やはり消費者にHACCP手法による製品を認知、知ってもらうということでございまして、農林漁業金融公庫調査がどこまで信憑性があるかというような御疑問を出されましたが、いずれにしても、そんなに認知度が高くないということは言えると思うんですね。その認知度を高めることによりまして、HACCP手法によって製造した食品だとか、そういう導入企業の製品が消費者に評価されて、企業は激しい競争をしているわけですから、大企業に打ちかっていくには、やはり大企業に負けないだけの商品の安全性の価値について消費者の理解が得られることが前提なんだという認識が企業側にだんだん広がってきている。ですから、消費者側にそれがわかっていただけるような環境づくりをするのは、やはり行政の大きな責任ではないかというふうに私は考えております。

 そこで、私は、消費者への接点と言えば、いろいろな組織がございますけれども、どうしても消費者団体の皆さん方を通じまして参加をしてもらって、消費者団体の皆さん方もセミナーとかシンポジウムに積極的に参加いただくことによって消費者の認知を広げたいと思いますし、いろいろなパンフレット類をつくりますけれども、そういうパンフレット類も、消費者団体と連携しまして、消費者にそれが伝わっていくような努力をしていかなければいけない、こんなふうに思うのでございます。そこのところがやはり決め手になるというふうに私も考えているところでございます。

石川委員 先ほど亀井先生の御質問の中にもありましたけれども、JASマークですとか、有機農法でつくった何々だとか、無農薬でつくったものだとか、これを例えば商品の一番先頭に書いて、販売促進、販売拡大を図っているというのが実態だと思います。消費者も、これが有機農法でつくったものだ、無農薬でつくったものだというものに関しては、自分の体の安心、安全を考えて、多少価格転嫁されたものでも購入をするという実態があると思います。

 そうした中で、HACCPの認知度が進んでいない現状の中で、もし中小零細企業が導入をしたとしても、価格転嫁をした場合、ほかとの競争に敗れる。だから、むしろHACCPの認知度を高める作業が今回の融資よりも先に来るんではないかと思っております。そして、このHACCPのシステムを導入されている企業の場合は製品表示にあらわれないわけですから、大企業、大きいところはシステムに導入することによって大きなスーパーや大きな業者との取引に対して安心、安全を与えるということでやられていると思うんですけれども、次はやはり消費者に目を向けた対策を講じていかないと、融資もふえないのではないかと思います。

 もう一つ、ホームページ上で、HACCPを導入するための食品コンサルタント会社と言っていいんでしょうか、いろいろな企業がありまして、私が見た中では十幾つありましたが、その中でハシップ、ハセップというような表示をしている企業が、特にハセップと書かれたものが、まあ、大したことはないといえば大したことはないわけでありますけれども、それを専門にプロの業者とやっているところですら片仮名表示が統一をされていないということがあります。これは農水省とそういう業者さんとの間でいろいろ連携をとられていらっしゃるんでしょうか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

町田政府参考人 本システムにつきましては、確かに、ハセップ、ハサップ、さまざまな呼び方があるわけでございますが、私どもと厚生労働省におきましては、ハサップ手法という呼び名で統一をしているところでございます。民間団体等とは今の時点でそういった統一というようなことはやっておりません。

石川委員 この呼び名はいろいろありますけれども、もう一つ都道府県、市町村で取り組まれているもので、北海道の場合は北海道と札幌市になっておりました、それぞれ取り組まれている認証マークというものがあります。消費者の認知度が上がれば、当然、商品のここにHACCPマークみたいなものをつけることによって自社ブランドを高めていく、販売促進を高めていくというようになるのが消費者にとってもプラスになりますし、農水省も厚生省もそれぞれ目指すところだと思いますけれども、余りにもマークがはんらんし過ぎてよくわからないといった部分がございます。HACCPと書かれていない認定マークもございまして、この融資を拡大して中小零細企業に導入してもらおうと思っても、これだけマークがはんらんしていると、消費者の方が実際スーパーに行って、より認知度が高まれば別ですけれども、探すのすら大変ではないかなということが想像されるわけであります。

 このマークの認定について、統一をすればいいというものではないですけれども、今後検討会などで何かお考えがあるのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。

町田政府参考人 地域HACCPについてのお尋ねでございます。

 私どもが現在把握しておりますところによりますと、二十一の自治体で自主的な取り組みが行われているということでございます。こうして認証しましたら、ほとんどの自治体が製品への表示を認めている、こういう実態にあるわけでございます。

 それぞれの認証制度の運営、また、どんなマークをつけるか、どういった場合につけるかといったことにつきましては、基本的に地方自治体または業界団体等の責任のもとで行われているということでございまして、特に私どもの方から、厚生労働省さんも含めてですが、一定のマニュアルとかそういったものを示しているということはないというふうに承知しております。

石川委員 わかりにくいという現状がありますので、農林水産省、厚生労働省は、都道府県、自治体の関係者の方々の意見をよく聴取して、また、先ほど消費者との連携ということも大臣の御発言にありましたので、ぜひ消費者、消費者団体の方々の意見も踏まえて、せっかく導入をされるわけですから、何か対策を講じてもらいたいと思うんですけれども、大臣、いかがでございますでしょうか。

若林国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、HACCPは手法でございまして、そういう手法に基づいて工場はできても、そのメンテナンスがそのとおり行われているかどうかというのをその後引き続き検証するという仕組みではないんですね、このHACCP導入の法律というのは。

 それで導入をした後、その後のチェックというのは、実は食品衛生法上の世界になっていくわけでございます。食品衛生法十三条だと思いますけれども、そこでは定期的なチェックをして、そのほかの要素も加えて承認をしていくという仕組みがございます。そこで、これを表示するときに、HACCPという表示ではなくて、そちらの方の認証を得ているというような形の表示が間々あるわけですね。

 そういう意味で、両省間でこれを普及させるための考え方、進め方についてよく協議していかなければ、委員がおっしゃるように広く進めるにはそのことが一つのネックになっているという認識は持っております。

石川委員 その融資後のチェックに関しては、ミートホープが北海道の低利融資の枠を利用して融資を受けていたということもありましたので、今回進めるに当たっては、ぜひチェックというものを十分に、また対策も考えていただきたいと思います。

 時間がなくなったので、次に質問をちょっとかえたいと思うんです。

 この法案というのは、最初に申しました食の安心、安全には、一つは商品、製品そのものを偽装してしまう、もう一つはたまたまずさんな工程管理やずさんな在庫管理によって商品、食品そのものが変質してしまう、また、工程管理の場合、くぎが入っていたりだとか異物が混入をされていたりして人体に影響があるということがあるわけであります。

 前段の食品の偽装そのものに関しては、私は、せんだって、ウナギの偽装について御質問させていただきました。その中で、昨年からJAS法の適用に関して、農水省の中でも、検討会議でいろいろな方々の御意見をいただいて、四月から告示の改正ということで、今後この偽装問題が起きないように鋭意取り組まれていらっしゃると思います。

 私は、JAS法の規定に関して、せんだっての質問の中でも、今まで罰則を適用されたのがゼロ件ということで大臣から御答弁をいただきました。最初の指示、公表。それに従わなかった者は命令、公表。その後で罰則ということであります。実際、まだ私も調べたわけではありませんけれども、一回目、二回目となった時点で、もしかしたら会社そのものを廃業してまた別の企業を起こして、抜け道としてもともとの問屋さんと取引をする可能性もなきにしもあらずなのではないかなと思います。

 そうした中で罰則が今までのところゼロということは、まじめに規則に従ってウナギを輸入されている業者さんがいるのに、これだけ偽装問題が多くなってもまだ後を絶たないということを考えると、やはり罰則を三段階から二段階に、最初の指示、公表の次に持ってくるべきなのではないかなと思いますけれども、大臣のお考えを再度お聞かせいただきたいと思います。

若林国務大臣 今、ウナギの例をお話しになりましたが、ウナギ以外にもそのような罰則の適用に及んでいないというような指摘があって、生ぬるいんじゃないかというお話は間々承るわけであります。

 これは見方でございますけれども、私は、迅速にそのことを世に公表して、公表することを通じて消費者から厳しい指弾を受けると。これは企業の存亡にかかわるんですね、実際は。そのために罰則ということになりますと、警察、刑事上の問題の処理だとかいって、公にするときには非常に慎重にやっております、時間がかかっております。ですから、そういうことの前に、不正の表示などの場合、これを迅速に是正するように指示し、それをすぐ公表していくということで早期の適正化を図る効果というのは、非常に大きな効果を挙げていると私は思っているんです。そういうことを経て、社会的に厳しいペナルティーを受けるという抑止効果が私は大事じゃないかというふうに考えております。

 ただ、お話しのように名義を変えて、同じ人が同じようなことを繰り返しやっていくという悪質なものにつきましては、表示の問題を超えまして、不正競争防止法だとか刑法の詐欺罪だとか、そちらの罰則の対象にもなるわけですから、警察庁の方とよく連携をとりながら、食品にかかわる偽装表示事案などについては警察の方で不正競争防止法だとか刑法上の罰則の対象になるんじゃないかというようなことで、連携の中で捜査に着手してもらうことによって抑止効果が出てくるのではないか。また、そちらの方の罰則の対象として処理をしていただくことが有効ではないかと私は考えております。

石川委員 またせんだっての話に戻りますけれども、私、ウナギを調べたら、あのときに指示、公表された企業でつぶれたところが果たしてあるのかなと思います。また、一緒の土俵で戦っているほかの業者さんにしても、たまらない思いというものが当然あると思います。

 もう一つは、そこの業者が指摘されたとしても、例えばウナギに関してそのまま輸入をすることはできるわけですね。そうすると、トンネル会社をつくって、そこにまず売って、そこの会社とは全く関係がないように見せかけてそこに売って、そこからまたもとの問屋さんに卸していくという方法も幾らでも考えられるわけでありまして、私自身は、今回いろいろな事例を考えますと、やはり厳しくすべきではないかなと思います。

 今大臣の方から警察との連携というお話もございました。実際、前回の質問でも、警察は、たくさん指摘があったウナギに関してたしかまだ一件も摘発に至っていないという現状であったと思います。このことに関しては調査をしてまたお伺いをしたいと思いますけれども、やはり三段階から二段階にすべきではないかと私は思っております。

 時間がなくなったので、最後に別の質問をさせていただきたいと思います。

 総務省の方で、補助金の適正化、今まで目的外に施設を転用できないということがありましたけれども、通知によってそれぞれ目的外に使用できる方向になるということでありますけれども、農水省としてはこれから自治体に対していつその通知を行うのか、お答えいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 補助対象財産の転用処分に関しましては、これまでも緩和措置を講じてきておりますけれども、去る四月十日に、関係省庁により構成しております補助金等適正化中央連絡会議におきまして、補助金等適正化法第二十二条の規定に基づく国の承認手続についての決定が行われました。

 その内容は、地方公共団体が保有するおおむね十年を経過した補助対象財産につきましては、補助目的を達成したものとみなすというのが一点であります。また、これらの財産処分につきましては、原則国への報告等をもって国の承認があったものとみなす。これが主な内容でございますけれども、こういう趣旨の緩和措置を各省庁において講ずるようにということが決定されました。

 これを受けまして、農林水産省では今検討を進めておりまして、社会経済情勢の変化に対応いたしまして、地域活性化のために補助対象財産を有効活用する観点から、財産処分に関する新たな承認基準の検討を今進めておりまして、関係府省と協議を行っております。間もなく、近いうちにこの新しい通知をこの承認行為を行います地方農政局長等に発する予定にしております。

石川委員 ぜひ早く行っていただきたいと思います。

 それでは、これで質問を終わります。ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。民主党の仲野博子でございます。

 先ほど来HACCPの一部改正法案ということで質疑されているところでありますけれども、まず、地域を挙げたHACCPの取り組みに対する支援について聞いてまいりたいと思っております。

 私の地元北海道標津町は、国内有数の秋サケの漁獲高を誇っておりまして、イクラ、すじこ、ホタテなど、水産加工業も大変盛んな地域でございます。この標津町におきましては、標津町地域HACCPと呼ばれる独自の取り組みを進めておりまして、水産加工品の衛生管理の徹底を図るための取り組みとして非常に高い評価をいただいているわけでございます。

 具体的には、船を洗浄し、清潔な氷と海水を満たしたHACCP対応漁船による秋サケの漁獲から始まり、とったサケは一定の温度のもとで低温管理されたまま床面に接することがないように市場で競りにかけられ、加工場においてはHACCPマニュアルに基づいた適切な処理が施され、さらに流通業者においても輸送の際の徹底した温度管理が求められるといったように、関係者の協力のもと、消費者の手に製品が届くまで、小売段階を除くフードチェーンを通じたHACCPによる衛生管理を実行しているところであります。

 しかし、残念ながら現行のHACCP法は、食品の製造、加工工程へHACCPを導入することが目的となっており、こうしたフードチェーン全体を支援する仕組みとはなっておりません。

 今後、国として、このようなフードチェーン全体を通じた取り組みについても、地域ごとにモデル的に支援していく取り組みも必要ではないのかなと考えますが、大臣の見解を求めたいと思います。

若林国務大臣 委員がおっしゃいますように、生産から消費に至るまでのフードチェーン全体が適切な衛生確保対策ということが講じられることが食品の安全性や信頼性を確保し、これを高めていく上で極めて重要であるという認識は持っております。

 一方、フードチェーンのすべてにHACCP手法のような厳密な衛生管理を求めるということになると、非常に現実の問題とすれば無理があるのではないか。その意味では、施設の投資あるいは人材の確保という観点から見ますと、食品の製造、加工、流通、販売の工程のうち、まずは安全の確保が極めてポイントとして重要であります工場におきます製造、加工、出荷段階、この段階をきっちり押さえることが先ではないかという認識を持っております。

 それでもなお、普及が、先ほど来、大企業は七割も普及していても、中小規模になりますとまだ普及度が一六%ですから、この普及がある程度までいかないと、その先のところまではなかなか一般的な指導をしていくのに無理があるのではないか。

 しかし、認識としては、こういうような食品の変化が起こってきた前提というのは、我々も記憶がありますけれども、コールドチェーンなどといったものであります。そして、今ではもう町の小売屋さんもそういう冷凍のショーケースなんかが普通に入っているようになりました。そういう消費段階に至るまでの一つの流れをしっかりしていくということが大事なことだというふうに認識はいたしております。

仲野委員 それでは二つ目の質問です。

 地元の漁業関係者の方々と話をしていてよく耳にするのは、漁獲してから水揚げ、そして産地市場において取引されるまで衛生管理を徹底しているにもかかわらず、消費地市場である中央卸売市場などにおいてきちんとした衛生管理が行われていないのではないかといった指摘もございます。漁業者が新鮮でおいしい魚を消費者に届けようとせっかく努力をしても、自分の手の届かないところでそれが無駄になってしまうのでは納得できないと。

 そこで、現在、消費地市場においてどのような衛生管理が行われ、どのような指導がなされているのか、大臣にお伺いいたします。

若林国務大臣 おっしゃるように、消費地の卸売市場というのは、消費者との接点という意味で非常に大事なところでありますし、食品、特に水産のような足の早い、品質変化が起こりやすい食品を扱うものとしては、卸売市場というのは非常に大事なポイントだというふうに思っております。

 制度的には、卸売市場法に基づきまして農林大臣が定めています卸売市場整備基本方針の中で「物品の品質管理の高度化に関する事項」というのがございまして、温度管理による鮮度保持などの品質管理の徹底を図るということを定めているところでございます。

 ただ、市場の開設者は地方公共団体でございますから、今お話がありました、築地であれば東京都知事の管理下にあるわけでございます。そこで、この整備基本方針の中で「物品の品質管理の高度化に関する事項」というのを細々と定めているわけでございますが、荷受けの段階では、トラックからの積みおろし体制の話から、物品が結露しないための輸送温度、場内温度の設定だとかいろいろ定めておりますし、卸売段階では、低温卸売場での取引だとか見本競りを活用して本体は低温の状態で置いておけとか、床に直接置いたり引きずったりしてはいけないとか、いろいろな注意事項を実は定めてやっております。そのとおりやられているかどうかというのは、卸売市場の管理者である都道府県にお願いをしているというのが実情でございます。

 そういう意識がだんだんと高まっておりまして、売り場の低温化を初めとして、貯蔵の定温倉庫だとか冷蔵庫などの保管期間も短縮するとか、いろいろな努力をしているようであります。市場管理者にそのような努力を一層要請していきたいと思います。

仲野委員 東京の台所と言われております築地市場の移転問題ということで、その移転先が江東区豊洲地区の東京ガス工場跡地ということで計画されているようでありますけれども、実は、この跡地から国の環境基準の四万三千倍に上るベンゼンが検出されるなど、事態が極めて深刻であるのではないのかなと。

 先ほども大臣からるるお話があったんですが、国として、平成十七年三月に卸売市場法に基づいて第八次中央卸売市場整備計画を策定されているわけであります。都道府県ということでありますが、東京都から「環境規制を十分にクリアした対策を実施するとの説明を受けて、今後十分な土壌汚染対策が講ぜられることを前提として」盛り込まれた旨の答弁が農林水産省からなされております。

 こういったことから、中央卸売市場の開設の認可は農林水産大臣が行うこととされておりますし、また、若林大臣が環境大臣のときに、この問題に関連して、「農林水産大臣が開設者たる東京都に対して厳格な開設上の指導を行うと同時に、その開設が間違いなく安全であるという認識がなければ卸売市場の開設の認可はできないものと、すべきでない」というふうに思うと、平成十九年三月二十日、参議院の環境委員会で答弁されているわけであります。

 まさに御自身が農水大臣の職責を担われているわけでありまして、国民に対する食の安全、安心の確保という観点から、第一義的な責任は開設者である東京都にあるということは重々わかっておりますが、やはりこれは農水省、国の責任として、この問題に慎重にこれから対処していく必要があると私は考えているわけであります。かつて卸売市場課長も務められた若林農水大臣の改めての見解を求めたいと思います。

若林国務大臣 委員から今御指摘がありました参議院の環境委員会におきます十九年三月二十日の答弁、そのときの認識は全く変わっておりません。何といっても食品を扱います卸売市場でございますから、開設者である東京都に対しては厳格な開設上の指導を引き続き行っていかなきゃいけないと思っておりますし、同時に、その開設が間違いなく安全であるという認識がなければ卸売市場の開設認可はすべきものではないというふうに考えているわけでございます。

 そして、問題の築地市場につきましては、これは移転の問題でございますけれども、その移転予定地の土壌汚染対策については、東京都が今大変集中的に土壌の検査をいたしております。その状況を申し上げますと、東京都では、土壌汚染の現状とか防止対策を検証する場として、豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議というのを設置いたしておりまして、この専門家会議では、国の方の土壌汚染の基準といいましょうか、調査基準を超えて、それよりもかなり厳しい形で今調査をしているというふうに承知いたしております。

 その意味では、農林水産省としては、この専門家会議の検証状況というものを注目しております。その結果については、環境省とも連携をしまして確認していきたい、こう思うのでございます。そして、築地市場の移転に関します認可の申請が東京都からあった場合には、当然、土壌汚染対策等に関する専門家会議の検討結果など詳細に聴取いたしまして、安全であると判断ができるようしっかりと見きわめた上で適切に判断してまいりたい、こう思っております。

仲野委員 疑わしきものは使用せずという言葉がありますけれども、そういった結果に基づいて国として十分その重要性を認識していただきたいなというふうに思うわけであります。

 最近、世界的な日本食ブームやアジア諸国の経済発展によって、高品質な日本食材が高く評価されまして、国産農林水産物の輸出拡大の可能性が増大しているわけであります。十九年の輸出額を見ますと、四千三百三十八億円と前年に比べ一六%もの高い伸びを示しているわけであります。

 国においても、安倍総理のときに、二十五年までに農林水産物の輸出額を一兆円にまで拡大するとの大きな目標を打ち出されまして、十九年五月には我が国農林水産物・食品の総合的な輸出戦略を策定し、その戦略的取り組みを推進していると伺っているわけであります。

 アメリカやEUなどに水産物を輸出するためには、相手国政府が求めるHACCPに基づいた衛生管理規制をクリアしているとの認定を受ける必要があります。この対アメリカと対EUの認定施設数を比べてみると、対EU向けの認定取得がなかなか進んでいない状況が見てとれるわけであります。地元の水産加工業者からも、EU向けにイクラの輸出を行いたいがなかなか難しいというふうな話も伺っているわけであります。

 今後のさらなる水産物輸出の拡大に向け、こうした各国における衛生規制の状況などについて積極的な情報提供を行っていくとともに、輸出拡大意欲を持つ個別事業者がこうした規制をクリアできるようより積極的に支援していくことが求められていると考えますが、政府の現在の取り組みと今後の方針について伺いたいと思います。

山田政府参考人 委員からお話がありましたように、米国、EUなどへ水産物を輸出するに当たりましては、これらの国や地域で適用されます基準を満たす水産加工施設で生産されたものであるということが求められております。

 委員からお話がありました認定の状況でございますが、現在、米国向けでは二百二十四施設、EU向け施設として二十一施設が認められております。これが全国でございます。北海道の例で申しますと、米国向けが五十七施設で、お話がありましたようにEU向けは六施設と少ない状況でございます。

 北海道におきましても、大変頑張っておられる例もございます。網走管内のホタテ加工業者は、平成十年に米国向け施設の認定を受け、また十五年にEU向け施設の認定を取得しておりまして、さらに、水産加工施設資金の融通を受けるなどしまして、品質管理を徹底するための施設整備を行うなど、輸出を含めた販路の拡大や品質の向上等の経営改善に積極的に取り組んでおられるというようなことで、大変いい事例もあるというふうに聞いております。

 委員からお話がありましたように、各国の衛生基準に関する情報の提供、あるいは米国向けや特にEU向け施設の認定取得を推進するということは極めて重要であると考えております。

 水産庁におきましては、パンフレットの作成あるいは講習会の開催を行うほか、HACCP導入を検討している水産加工業者に対しましてコンサルタント等による直接指導を行うとともに、これに対する助成を行っております。また、施設の改修等に対する長期低利の融資等も実施をしております。今後とも、これらの支援措置を通じまして、施設の認定を促進し、水産物の輸出が拡大するように努めてまいりたいと考えております。

仲野委員 全体にやはり少ないんですね、全国的に。これからこのことは検討課題であるのかなと思っておりますけれども、今長官からもお答えいただいたんですが、EUのような厳格な規制をクリアするためにも、例えばHACCP法に基づく低利融資よりも一歩踏み込んで認定取得を条件に無利子融資を行うなど、より積極的な支援も考えていくべきではないのかなと思いますけれども、山田長官、もう一度お答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

山田政府参考人 お答えいたします。

 支援措置につきましては、現在もさまざまな措置が講じられております。私どもとしては、今ある措置をできるだけ利用していただいて、この施設の認定について進むように努力をしていきたいというふうに考えております。

仲野委員 次に、今回、公庫の融資体制などについても改正法案で盛られておりますけれども、この対象範囲についてちょっと伺います。

 現在のHACCP資金の融資対象は、HACCPを導入するに際しての建物だとか機械、装置などの施設整備が基本となっているわけであります。これは導入するに当たっての初期投資への負担を軽減させることに主眼が置かれていると考えられますが、一方で実際にこの資金を利用した事業者からは、先ほど来もちょっと質問があったんですが、コンサルタント費用や食品安全マネジメントシステムであるISO22000の取得費用など運営資金にも充てられるようにしてほしいとの意見があると聞いているわけであります。

 このHACCPとは、施設整備を行えばそれで終わりというのではなくて、その運用管理を適切に行っていく体制の構築こそが重要ではないかなと思われるわけであります。その意味で、このHACCPの導入促進を図っていくためには、その資金について事業者の意向に沿った見直しを行い、より使い勝手をよくしていくことも必要と考えますが、大臣の見解を求めたいと思います。

若林国務大臣 施設整備だけではなくて、これと一体的に行われるソフトウエア開発費だとか研究員の人件費だとか職員の研修費といったようなソフトの部分についてもこの融資の対象にしているわけであります。

 それによって施設ができる、そして後の施設の管理運営ということになりますと、このHACCP法は、そういう施設をつくっていく、導入を促進するという法制として組み立てられているわけでございますから、その後の部分というのは、HACCP法というよりも、むしろそれが今後適正な管理状態が維持されることについての通常の管理の問題だというふうに考えております。もちろん、その管理の水準を上げる、あるいはそのための特別のモデル的な仕事をするというようなことがあれば、必要に応じてそれらについても検討をしていくということは今後の問題としてあろうかと思いますけれども、このHACCP法自身について言えば、まずはこれを導入してスタートを切ってもらうということが目的になっているわけであります。

 また、この資金につきましても、できるだけ審査の期間を短くしまして、融資決定までの期間を短くするといったような形で使い勝手がいいような状況、そして申請をした人の立場に立って審査が行われるようにする。この融資条件は、もちろん十年以上の長期の資金でありますけれども、金利の面でも、この種の企業関係融資としては最低の条件で条件設定をすることになっているので、これを大いに進めていきたいと思います。

仲野委員 ぜひ使い勝手のいい制度にしていただきたいなと要請をさせていただきたいと思います。

 それで、先ほど来いろいろ意見が出ていたんですが、皆さんが口をそろえて言っていたことは、HACCPの重要性は十分理解しているが、導入してもそのメリットが具体的に感じられないということであると。

 今、中小の水産加工業者というのは大変厳しい経営環境に置かれておりまして、周辺水域の水産資源の減少に伴う供給事情の悪化、資源価格の高騰、輸入加工品との競合の中で大半の業者が赤字経営を強いられております。HACCPを導入することは当然ながらコスト上昇要因となりますが、このような状況下においてその分のコストを製品価格へ転嫁することができるほどとは到底思えない。そこで低金利の融資制度があったとしても、新たな設備投資には二の足を踏んでしまうというのが現実ではないのかなと。

 また、先ほど来指摘しておりますとおり、農林漁業金融公庫のHACCP資金自体にもさまざまな制約があって、現在の低金利時代において、手続が煩雑とされる公庫を利用することの特段のメリットが感じられなくなってしまっているということもあると思います。

 政府は中小企業におけるHACCPの導入率が低いことなどを理由としてさらなる延長を求めているわけでありますが、このような状況下にある中小企業において、現行法の支援の枠組みだけでHACCPの導入を推進していくことが果たして可能なのかどうなのか、非常に懸念するところであります。私は、先ほどから支援措置をされていくということでありますけれども、さらに踏み込んだ支援措置が必要ではないのかなと思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

若林国務大臣 HACCP手法によります投資をする予定だというふうに答えておられる五十億以下の企業の皆さん方、三四%いるわけでございます。

 しかし、委員がおっしゃられるように、そういう予定は立てているけれどもなかなか決断して踏み切っていきにくいということの中には、確かに施設整備の資金の問題がありますけれども、やはり一番私が感じていますのは人手じゃないかと思うんですよ、人手不足ということがあります。この合理的な手法を導入して全体に労働力の省力化を図っていくという部分はありますけれども、新施設を入れますと、新施設の管理運営に対しては水準の高い人をまた新たに雇用しなきゃいけないというようなことになってくるわけでございます。

 その意味で、人材育成のための研修などについてもまずは支援をしていこうということで、平成二十年度予算においても大幅にそちらの方を充実させることにしているわけでございます。同時に、これによって成功した具体的事例を、いろいろな事例がございます、そういう成功した事例を紹介するなどというトップセミナーを開催する、また、企業の責任者を養成するための研修とかこういう技術的なサポートをしますといったような情報の発信をするとか、指導者養成研修やコンサルタントを紹介する等、いろいろなソフトの面での支援をしていきたい、このように考えております。

 しかし何はともあれ、消費者側がHACCP手法を導入した工場でつくったものは信頼性があるんだという認知を高めていくことによって販売競争で勝ち抜くことができるということを業者としても非常に考えているわけで、黙っていればじり貧に陥ってしまう危険というのがあるわけですから、そういうことをしていかなきゃいけない、こう思います。

仲野委員 今大臣からお答えいただきましたけれども、ソフト面でも支援をしていく、人を育てていくということでは、私は非常にいいことだと思っているわけであります。

 しかし、今、中小の加工業界の方たちも厳しい状況の中にあって、ソフト面でも支援をしていくと大臣からお答えいただいたんですけれども、そういった意味ではなかなか周知徹底をされていない状況もあるんですね。HACCPとは何ぞやみたいなことから、いろいろさまざまな広報、あるいは国から都道府県へ、都道府県から各自治体へ、特にこういった食の安全、安心が求められている時代だからこそ、本当に国としても胸を張って、自信を持って多くの国民にHACCPの重要性あるいはHACCPの意義というものをしっかりと伝えていくことが大事ではないのかな。

 最後に、今回この一部改正法案が上程された機会に大臣の決意を聞いて、終わりたいと思います。

七条委員長代理 時間が過ぎておりますから、簡潔明瞭にお願いいたします。農林水産大臣。

若林国務大臣 まずは、食品をめぐりましてさまざまな信頼を裏切るようなことが不幸にして起こったわけでございます。そのことで改めて食品関係企業者には安全な食品を供給しなければ企業の存亡にかかわるという危機感も出てきていると思います。その意味で、そういう企業者との間で研修、普及を進め、これを徹底していくことをセミナーなどを通じてやっていく。そして、消費者にもこれを評価いただくような環境条件を整備していくということで、この手法の導入を積極的に進めていかなきゃいかぬ、このように思っております。

仲野委員 それでは、大臣の決意を伺いましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

七条委員長代理 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 この間も、加工食品の表示問題などについて質問してきました。食品安全の観点からすると、HACCP制度のあり方も大きな課題です。ただし、現状のままでHACCP手法の導入が進むのか、疑問に感じる点もありますので、何点か質問させていただきます。

 さて、HACCPにつきましては、一九九五年の食品衛生法改正でHACCPを基礎にした衛生管理方法が導入され、その後、九八年にHACCP法が施行されました。今回、さらに五年間の延長が提案されているわけですが、法が施行されてから二〇〇六年までの間、HACCP法による高度化計画の認定件数は二百五十件にとどまっています。この件数について、どのような評価をされているのでしょうか。

 それから、高度化計画が認定された事業者への低金利の融資制度につきましても、活用された件数は百十三件、額で四百二十九億円にとどまっています。この点につきましても、農水省の見込みどおりだったのかどうか、お答え願いたいと思います。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 HACCP法が施行されました平成十年度から十八年度の間、これまで二十一の業種におきまして本法によるHACCP手法の導入のための取り組みが行われております。御指摘いただきましたように、高度化計画の認定件数は二百五十件、融資実績については、貸付先数は百十三件、貸付金額が四百二十九億円というふうになっているところでございます。

 こうした取り組みによりまして、食品製造業全体の導入率は、本法制定の前の平成九年には六・八%といったものでございましたが、平成十八年度には一四・六%に増加してきているということで、中でも、大手企業、販売規模五十億円以上では約七割の導入率となっているということでございます。

 導入した企業につきまして、私どももいろいろと調査させていただきましたが、効果として、やはり品質、安全面の向上、従業員の意識の向上、企業の信用度やイメージの向上を実感しているということでございます。

 これまでの評価でございますが、こうしたことから見まして、私ども、食品の安全性、信頼性を高める上で、本法は一定の効果を果たしてきているのではないかというふうに思っているところでございます。

菅野委員 率直に申し上げると、高度化計画の認定件数、それから優遇措置の活用件数も、必ずしも大きな成果を上げているとは言えないというふうに思います。

 今回の法改正は、法の期限を五年間延長することが主な内容で、それ以外に大きな変更点はありません。このまま法律を延長してどの程度の成果を期待しているのか。また、法を実効性あるものにするためにはどのようなことが必要と考えているのか。大臣の方からお答え願いたいというふうに思います。

若林国務大臣 食品関係関連の諸企業に対して、HACCP手法の導入についての意向の調査をいたしているわけでございまして、その意向の調査をいたしますと、五十億円以上の大規模はもう既に七割が導入しておりますが、さらにあと八五%ぐらいまでが導入をするという意欲を持っています。

 しかし、一番著しいのは、実は一億から五十億という中堅の食品企業でございまして、この中堅の食品企業の皆さん方は、三四%の皆さん方が導入を検討する、検討したい、こういう意欲でございます。

 不幸な事件がいろいろあって、食品企業に対する不信感が強まっているという背景もあるんだろうと思いますけれども、それだけ信頼のある製造をしないと消費者から見放されてしまうというような危機感も背景にあるように思います。

 私どもは、そういうコンプライアンスを徹底していくという意味でも、製造過程をきちっとしなきゃいけないということをしっかりと関係企業の経営者あるいはその企業の指導的立場にある人たちに普及、徹底するとともに、消費者の皆さん方にも、そういう施設で製造されたものについての信頼度が高まるような制度の普及に努めてまいりたい、このように考えております。

菅野委員 農水省の平成十八年度食品産業動向調査を見ますと、HACCPの導入状況は、今も答弁にありましたけれども、販売額が百億円を超えるような大企業は「導入済み」「導入途中」「導入を検討」で八二・七%に達しています。ところが、販売額が五千万円未満の中小企業になると、同じ項目でわずか一六・八%にまで低下するだけでなく、HACCPをよく知らないという答えが四割近くに達しています。このような現状になっている要因はどこにあると思いますか。お考えをお聞かせ願いたいと思います。

町田政府参考人 規模が小さいほどHACCPの導入がなかなかうまく進んでいないんじゃないかという御指摘かというふうに思います。確かに、そういった点がこの調査からもあらわれているというふうに思っております。

 当省が調査したところによりますと、この手法の導入を検討している企業にとって、挙げている多くの問題点は、施設整備に多額の資金が必要だということ、また責任者、指導者の人材不足であるということでございます。特に、規模が小さいほど、こういった資金面と人材面が課題だというふうに考えているわけでございます。

 先ほど大臣からも御答弁いただきましたが、私どもは、地場の食品を扱っている一億円未満のところは別といたしまして、一億から五十億の中堅規模層におきまして、支援措置、融資、税制、予算面といったものを活用いたしまして、導入を計画的に進めてまいりたいというふうに考えております。

菅野委員 HACCPを導入するための資金と、今も答弁にありましたけれども、人材確保が中小企業の大きなネックになっているわけであります。他方、消費者にHACCP制度がそれほど浸透しているとは言えませんから、導入のメリットが感じられないのだと思います。このままでは、期間を五年間延長しても、劇的に導入件数をふやすのは難しいのではないでしょうか。

 融資や税制の支援措置以外に導入企業が具体的なメリットを感じる措置が必要だと私は思いますが、どうでしょうか。答弁願いたいと思います。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

町田政府参考人 まず、人材面の課題は大変大きいというふうに思っております。この点につきましては、私ども、研修等の支援をやるということで、二十年度から予算を大幅に拡充したところでございます。

 きめ細かく各層にということでございまして、具体的に申し上げますと、企業の経営トップを対象といたします、HACCP手法の導入によります従業員の意識の向上、企業イメージの向上等の具体的な成功事例を紹介するトップセミナーの開催、また、社内におきましてHACCP手法の導入を具体的に検討したいという企業を対象といたしました、企業の責任者養成のための研修や技術的サポートの情報発信、さらには、これは社外になるかと思うんですが、企業を指導助言できる指導者層を確保する、指導者養成研修やコンサルタントの登録、紹介、こういった取り組みを支援していきたいというふうに思っているところでございます。

菅野委員 HACCPの導入については、HACCP法のほか、食品衛生法の総合衛生管理製造過程承認制度、都道府県や自治体独自の食品衛生管理制度、さらにはISO22000など、複数存在しています。東京都の食品衛生管理認証制度は飲食店の営業まで対象にし、これまで二百三十七施設が認証を受けており、HACCP法での高度計画認証件数と大差ありません。

 トータルでHACCPの導入が進めばいいというのも一つの考えですが、HACCPを一つの権威あるステータスにしようとするのであれば、整理も必要ではないのかなと思うんですが、この点についての考えをお聞かせ願いたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 HACCP手法につきましては、国際的に食品衛生管理の手法として推奨されているということでございますので、私ども、その普及を推進するという観点から、また、多様な食品に対して、画一的な基準を適用するのではなく、その食品の製造方法に応じた衛生管理を導入することを可能とするという観点から、平成七年の食品衛生法改正の際に、HACCP手法の利用を条件といたしました総合衛生管理製造過程承認制度を導入したところでございます。先生御指摘のとおりでございます。

 都道府県等によります認証制度の問題につきまして、これが有効に働くと判断していくのか、それとも、むしろ権威がなくなるのではないかというお尋ねでございますが、私どもとしては、広い意味で、HACCP手法というものが食品のより高度な衛生管理、安全管理というものに有用であるということから、やはり多くの事業者の方々が、この問題についての認識を深めていただき、その活用に向けて御努力いただくことが今の時点では大事ではないかなというふうに考えておりまして、そういう意味では、HACCP手法の普及の観点から、さまざまな自治体等でさまざまな取り組みがされておりますことは望ましい姿ではないかな、このように考えております。

菅野委員 EUやアメリカは、中小企業に対して柔軟性を保ちつつ、HACCPに法的な強制力を持たせています。これもまた食品の安全確保という観点からは一つの考え方だと思いますが、将来的な義務化についてはどのように現時点で考えているのか、答弁願いたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、全体としての食品の安全の確保のための体制がどうなのかということになろうかと思いますけれども、私どもは、厚生労働省設置法に基づきまして、公衆衛生の向上及び増進というのが厚生労働省の任務でございますので、それに基づきまして、食品衛生法におきまして、公衆衛生の見地からさまざまな規制を設けているところでございます。それを通じて国民の健康の保護を図っていく、これが厚生労働省の使命だというふうに考えております。

 そういう中で、食品衛生法に基づきまして、さまざまな規制措置がとられておるわけでございます。具体的には、個々の食品の特性に応じた製造加工基準、あるいは微生物や残留農薬基準等の成分規格、さらには食品製造施設の構造、設備に関する基準、また食品の衛生的な取り扱い等を規定した管理運営基準など体系的な規制を設けているところでございます。

 そういうような規制の部分とHACCPとの関係ということになりますが、HACCP手法につきましては、国際的に食品衛生管理の手法として推奨されているものでございますので、私どもも、先ほど申し上げましたように、まずこれが広く認知をされて、多くの事業者の方がその意義を認めて推進していただきたいというふうに考えておる性格のものでございます。

 そういう意味で、これまでの規制のさまざまな取り組みを通じて、基本的には我が国の食の安全というものは担保されているというふうに我々は考えておりますので、現時点で義務化を急ぐという考え方は持っておりませんで、今後とも、国際的な動向、我が国の食品製造施設等におけるHACCPの取り組み状況などを勘案しながら、その実効性も踏まえて、HACCP義務化の必要性については慎重に検討してまいりたい、このように考えております。

菅野委員 わかりました。

 法案とは少し離れて、食品の安全全般に関して伺いたいのですが、食品表示の監視体制強化の観点から、ことし四月に食品表示特別Gメンが東京や大阪の農政事務所に配置されましたが、Gメンの役割や権限あるいは配置体制などについて、お聞かせ願いたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、本年四月一日に、食品表示特別Gメンを全国で二十名配置したところでございます。東京、大阪、福岡の各農政事務所にそれぞれ十名、七名、三名配置しております。

 食品表示特別Gメンにつきましては、JAS法違反に係る事案のうち、複数の県にまたがるもの、それから、重大な事案が発生した際に、機動的にJAS法に基づく立入検査等を実施するために置いたものでございます。

 立入検査等におきましてJAS法等に違反する事実が判明した場合には、JAS法に基づき指示、公表を行う等、厳正に対処することとしていることから、食品表示に対する消費者の信頼を確保するために、食品表示特別Gメンが大きな役割を果たすものと考えているところでございます。

菅野委員 せっかく配置するわけですから、この間繰り返されてきた食品偽装問題に対して、有効に機能させることができるような検討をぜひお願いしておきたいというふうに思います。

 関連して、現行のJAS法は、違反行為に対して、是正の指示から始まり、最後の最後に懲役、罰金が科せられるといったように、直罰規定になっておりません。また、ミートホープ事件では、当時、業者間取引での品質表示が義務づけられていなかったため、品質表示違反にも問えませんでした。

 最近の船場吉兆の使い回し問題、これも大変に世間を騒がせているわけですが、モラルの問題ではあっても、お客さんの健康に問題が生じなければ、食品衛生法には抵触しないと言われています。

 これらを考えると、食の安全、安心に関する法制度は、もう少し生産者や事業者に厳しくあってもいいのではないかと思います。消費者行政の一元化が進められているせっかくの機会ですから、食の安全、安心に関する法制度のあり方について、消費者の具体的な声や意見を踏まえて包括的に点検するようなことがあってもいいのではないかと思いますが、大臣の考えをお聞かせ願いたいと思います。

若林国務大臣 委員がいろいろ御指摘なされておりますように、食というのは国民生活にとって一日も欠かせないものであります。また、食品表示に対する消費者の信頼を揺るがすような事件が相次いだことなどによりまして、国民の関心も大変高まっている現状にあると思います。食の安全と消費者の信頼を確保するための施策を総合的に実施するということは、国を挙げての重要な課題になっているというふうに認識しております。

 農林水産省といたしましては、科学的な原則に基づきますリスク管理の推進、生産資材の適正使用の指導、委員も御承知のGAPという生産過程における工程管理やHACCPなどを導入すること、さらには食品表示の適正化の取り組みなど、生産段階から消費段階にわたります総合的な施策を推進していかなければならない、このように考えております。

 特に食品の表示につきましては、消費者が選択するということが非常に重要でございます。このために、昨年発生したような業者間での取引の不適正表示事案に対処するために、ことしの四月から、JAS法について業者間取引の表示も義務づけをいたしました。また、関係省庁間で食品表示連絡会議というものも開催をいたしまして、監視体制を強化したところでございます。

 また、加工食品の原料原産地表示についても、多くの方々から関心を示されております。このことに事業者が積極的に取り組みを進めるという観点から、情報提供に当たっての基本的な考え方や留意点に対する通知を発出いたしまして、相談窓口の設置などを行うようにいたしております。

 さらに、コンプライアンスを徹底する。これは食品事業者の一番大事な、存立を揺るがすような問題になるわけでございますので、食品事業者による消費者の信頼確保に向けた取り組みを進めるために、零細な事業者が多い、中小業者が多いということを念頭に置きながら、食品業界の信頼性向上自主行動計画というものをそれぞれの業種ごとに定めてもらう、それを定める場合の策定の手引というものをつくりました。この中で五つの原則というのを取りまとめまして公表をし、食品事業者団体にこの手引に即した対応を要請しているところでございます。

 今後とも、食品安全基本法の理念に基づきまして、国民各層への情報の提供だとか意見交換に努めながら、国民の健康保護を第一義としまして、消費者に信頼される食料の供給体制の確立に取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

菅野委員 最後の質問になりますが、このHACCP法もそうですが、食品安全行政については、事業者の良心といいますか、自主性に期待するものが多いように見受けられます。もちろん、企業がみずから法令を遵守すること、消費者の立場に立って施策を講じることは大変重要ですが、頻発する食品偽装の実態を直視すれば、残念ながら、企業の自主性だけに期待して食の安全性が担保できるとは思いません。

 食の安全について、強制力を持った規制と企業の自主的な努力のバランスをどのように考えているのか、答弁願いたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 食の安全を確保するために、企業の自主的な努力と法による規制とのバランスをどのように考えるかという御質問でございます。

 まず、食品の安全を確保するためには、企業者あるいは事業者、この努力が一番基本になるというふうに私ども考えております。この考え方は、食品安全基本法におきまして、その責任の第一義的なものは食品関連事業者にあるというように規定をされております。また、食品衛生法におきましても、食品等事業者の安全性確保の義務が規定されているところでございます。さまざまな規制を設けましても、事業者みずからが安全を確保するという努力がなければ、安全の確保は困難であろうというふうに考えております。

 しかし、もう一方で、国民の食の安全を守るという観点からは、やはり法に基づく規制が重要でございまして、食品安全基本法におきましては、行政機関が施策を総合的に策定して実施する責務を有しておるという立場をとっておりますし、また、私ども厚生労働省の食品衛生法におきましては、先ほど申し上げましたように、厚生労働省設置法の目的の中に、任務として公衆衛生の向上及び増進ということが規定されておりますので、この任務に従って、私どもは、公衆衛生の向上、増進の観点から食品衛生法を定め、その中で、公衆衛生の見地からさまざまな基準を設けて規制を行っているところでございます。

 この規制を適切に行って、国民の皆様の健康を守るということが、厚生労働省の設置法によって定められました責務であろうと私ども考えておりますので、さまざまな規制を駆使して、食品等事業者がこの基準を遵守するように監視、指導の徹底を図ってまいりたい、このように考えております。

菅野委員 食の安全、安心というものをどう確保していくのか、そして信頼を取り戻していくのかというのは、HACCP手法は一つの手法であるというふうに思いますけれども、トータル的な観点で私はしっかり取り組んでいただきたい、このことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

宮腰委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮腰委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

宮腰委員長 この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時一分開議

宮腰委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長岡島正明君、大臣官房総括審議官伊藤健一君、大臣官房総括審議官吉村馨君、大臣官房技術総括審議官吉田岳志君、総合食料局長町田勝弘君、消費・安全局長佐藤正典君、生産局長内藤邦男君、経営局長高橋博君、農村振興局長中條康朗君、農林水産技術会議事務局長竹谷廣之君、水産庁長官山田修路君、警察庁長官官房審議官井上美昭君、文部科学省大臣官房審議官前川喜平君、大臣官房審議官土屋定之君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君及び環境省大臣官房審議官黒田大三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野次郎君。

小野(次)委員 本日は、農林水産関係の基本施策に関する質疑という機会をいただきました。三十分という時間ではございますけれども、大臣、また同僚の委員の先生方にもおつき合いをいただきたいと思います。

 きょうは、有機農業の推進の関係と鳥獣被害対策の二点について質問をしてまいりたいと思っています。

 最初に有機農業の関係でございますが、御存じのとおり、有機農業推進法ができたのは平成十八年十二月、施行からまだ一年ということでございますけれども、その法律の制定以降、本省あるいは地方自治体における有機農業推進の取り組みというのは進展を見せているのかどうか、まずお伺いしたいと思います。

内藤政府参考人 有機農業に対する取り組み状況をお答えいたします。

 農林水産省では、有機農業推進法の制定に伴いまして、昨年の四月に基本方針を策定しまして、基本方針に掲げた取り組みを計画的に進めているところでございます。

 具体的に申し上げますと、これまで、地方農政局あるいは全国単位での会議の開催、パンフレットの配布等を通じて都道府県などに対して有機農業推進法及び基本方針の周知を図りますとともに、都道府県の推進計画の検討に必要な情報提供、助言に努めてきているところでございます。

 また、全国段階における推進体制の整備、優良な有機農業者の顕彰なども行っておりますし、全国における有機農業の振興のモデルを育成するため、本年度から有機農業総合支援対策を実施することとしたところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、都道府県の推進計画でございますけれども、三十三道府県で計画の策定または策定に向けた検討が行われているところでございます。また、有機農業の振興のモデルにつきましては、公募によりまして全国で四十五団体を採択することとしたところでございます。

 今後とも、有機農業推進法、基本方針に即しまして、有機農業の着実な推進に努めてまいりたいと考えております。

小野(次)委員 次に、有機農業に関する教育の現状についてお伺いしたいと思います。

 農業について言えば、教育機関と申しますと、農水省の関連で言えば都道府県に農業大学校があるわけですけれども、それと並んで、文部科学省所管の方になると思いますけれども、各大学に農学部があり、また農業高校というものもあるわけです。そういった教育機関に当たるところでどういった有機農業に関する教育を行っているのか、十分な教育が行われているのかどうか、お尋ねしたいと思います。

 特に、私が地元で聞きますのも、そういったカリキュラムができているのがまだまだ少ないということ、さらには、それを教えられる先生がまだまだいないということ、さらにもっと大事なことは、OJTというんですかね、オンジョブトレーニングというのか、どういう場でそういう実習みたいなものをさせることができるのか。それについても非常に限られたものしか教育の機会がないというふうに私は理解していますけれども、農水省あるいは文部科学省、両方からお話を伺いたいと思います。

高橋政府参考人 道府県の農業大学校におきます有機農業の関連教育でございます。

 御承知のとおり、有機農業は、地域の気象条件あるいは土壌条件に応じた栽培管理が必要となる、ある意味で極めて高度な農法でございます。したがいまして、基礎的な教育という関係では、すべての農業大学校におきまして有機農業に関する科目がまだまだ認定されているわけではございません。

 しかしながら、例えば福島県、岡山県、佐賀県などにおきましては、養成課程のカリキュラムの中に、有機農業に関する教育について必修として取り組んでいるというようなところもございます。また、有機そのものではございませんけれども、環境保全型農業ということについては、より多くの大学校で取り組んでいるところでございます。

 さらに、今年四月、茨城県つくば市の独立行政法人農業・食品産業技術研究機構の中に農業者大学校を新たにつくりました。これは、より高次の大学院的な教育機関としての位置づけでございまして、ここでは有機農業を必修科目として位置づけ、さらに、大学の研究者あるいは有機農業の実践農家といった方々を講師として実践教育を行うというようなことを考えております。

 いずれにいたしましても、先ほどお答えいたしましたとおり、今後、有機農業の推進について、有機を目指す農業者に対する研修教育ということに努めてまいりたいと思っております。

前川政府参考人 農業高校あるいは大学の農学部におきましては、農業が、自然循環機能を促進する、環境への負荷を大幅に低減する、さらに生物多様性の保全に資する、また食の安全に資する、こういった観点から、有機農業に関する教育にそれぞれ取り組んでいるところでございます。

 農業高校におきましては、高校によりまして、独自に有機農業あるいは有機栽培といった科目を置きまして、例えば、植物を利用いたしました忌避剤、虫の嫌がるにおいの成分を含む薬剤でございますけれども、こういった忌避剤についての学習をする、あるいはアイガモを活用した水稲栽培についての実践を行う、こんな学習をやっているところでございます。

 また、文部科学省といたしましては、地域社会と連携した先端的な教育に取り組みます専門高校を支援する事業といたしまして、目指せスペシャリストという事業を行っているわけでございますけれども、この中で、有機農業に関しましては、鹿児島県立加世田常潤高等学校というところを指定いたしまして、家畜の排せつ物等から堆肥を生産して資源として有効活用する、こういった循環型農業の実践を目指した学習について調査研究をしてもらっております。

 また、大学の農学部におきましては、園芸学、栽培学、作物学、土壌学といった講座の中で有機農業に関する教育が行われておりまして、持続可能な農業や環境適応型の農業の実践に資する高度な専門人材の育成が進められているところでございます。

 文部科学省といたしましては、こうした農業高校あるいは大学における農業教育の実践の状況、さらに有機農業の進展等の実態を踏まえながら、今後とも農業を支える人材の育成に努めてまいりたいと考えているところでございます。

小野(次)委員 お話を伺いましたけれども、スタンダードなカリキュラムというか必修科目というのか、基本的な教育課程の中にぜひ有機農業に関する時間を割いていただきたいし、またそれは、今まで以上に実践的なものとして取り入れていっていただきたいということを、農水省ももちろんですけれども、文科省の方にもお願いしておきたいと思います。

 次に、私も、地元で有機農業をやっている方たちの勉強会に参加させていただきました。大変興味は持っていたんだけれども、実際に接してみると近寄りがたい面もあるんですね。それは、農業をやっているだけなんだけれども、こんなことを言っていいかどうかわかりませんけれども、今まで、有機農業をやってきた方というのは個性的な方が多いわけですよ。何か食べるものも玄米食でなきゃだめだとか、健康法みたいな感じで有機農業をとらえている方が結構いるものですから。それは人の趣味ですからいいんですけれども、ベジタリアンの方だとかそういう方が健康法と有機農業を一緒におっしゃるものだから、一言で言えばハードルが高過ぎる感じがちょっとするので。

 後でも触れますけれども、一般の普通の消費者ももちろん有機でできた野菜を食べたいという気持ちは大変強いわけですから、標準的な有機農業について指導できる方を全国的にぜひ早く育成してほしいなと。寄ってくるんだけれども寄りつきがたい部分もあって、個性的な部分があってなかなか定着していかないという面もあるのかなと思うので、ぜひ農水省でお考えになっている指導者の育成プログラムについてお伺いしたいと思います。

内藤政府参考人 有機農業の指導者の育成でございますけれども、農林水産省では、昨年四月に策定しました基本方針に基づきまして、有機農業者あるいは民間団体の協力をも得まして、都道府県の普及指導員等による有機農業の指導体制の整備を進めることとしております。

 具体的に申し上げますと、農林水産省の研修施設におきまして、有機農業を実践されている方あるいは学識経験者の方々を講師に迎えまして、有機農業に関する知識、技術の習得のための研修を行う、あるいは、平成二十年度から新たに、民間団体等への委託によりまして、先導的な有機農業の技術に関する講義それから圃場実習などを行うこととしているところでございます。さらに、県によりましては、全県を管轄します専任の有機農業担当普及指導員を普及指導センターに配置している例もございます。こういった例も示しながら推進したいと思っておりまして、有機農業の総合支援対策におきましては、こういった地域における有機農業に関する技術の指導、研修の拠点を整備することとしたところでございます。

 こういった取り組みを通じまして、今後とも、有機農業の指導者を計画的に育成していきたいと考えております。

小野(次)委員 次に、私としては、有機でつくられた農産物の販路の確保や流通体制の整備に向けた農水省のお考えをお伺いしたいと思うわけです。

 というのは、どうしても、直売式というんですか、農家の方が有機でつくったものをどこかで買ってもらうという形で今までやってきたというのが多いように聞いています。私自身も実際仕事の中で、学校とか老人ホームみたいなところで有機でとれる野菜を食べてくれませんかと、仲人みたいなことを頼まれたこともあります。

 そういう形でやっていくのも大事だと思うんですが、ただ、それにはそれで限界があるわけで、やはり、距離的に離れたところでも有機の野菜が買える、食べられるというような形の販路の確保、流通体制の整備というのは急務だと思いますので、農水省におけるお取り組みについてお伺いしたいと思います。

内藤政府参考人 有機農業で生産された農産物の販路の問題でございますけれども、委員御指摘のとおり、まず、有機農業に対する消費者の理解、あるいは実需者が評価をしていただくということが重要でございます。

 これまでは、直売施設で販売したりとか、有機農産物の表示・認証制度を活用して販売しているということがあったわけでございますが、二十年度から実施しております有機農業総合支援対策では、直売所での販売に加えまして、インターネットを活用する、あるいはバイヤーが集まるイベントへ出展していただく、さらには学校給食での利用の促進、こういった地域における一層の販路の拡大に向けた活動に対しまして支援を行っているところでございます。

 また、有機農業によって生産された農産物につきましては、現状では、委員御指摘のとおり、やはり特定の消費者あるいは実需者に結びついた相対での取引が中心になっているわけでございますが、今後、この取り組みが拡大するに伴いまして、一般流通への対応が検討課題になると思っております。

 こうしたことも踏まえまして、農林水産省では、昨年十月、農業団体、あるいは外食、流通販売業界の各界の関係者に参加していただきまして、有機農業の推進体制を設置、整備したところでございます。こうした場を活用しながら、一般の流通への対応についても関係団体と意見、情報交換を進めていきたいと考えております。

小野(次)委員 今のお答えにもありましたけれども、表示・認証制度というんですか、これは非常に大事だろうと私は思います。というのは、消費者が安心して有機の農産物を口にする、買って食べるというためには、こういった表示・認証制度、有機のJASというのもあるようですけれども、これについて実際農家の方からは、ハードルが高過ぎるという不満というか、声を聞くわけです。どういうことかというと、手続が煩雑で個人の農業者ではなかなか取る意欲がわかないということと、経費が一回だけじゃなくて毎年かかるということがあって、個人農業者には大きな負担になっているというような声を聞きます。

 この有機JASの認証を取るのに年間どれぐらい経済的負担がかかるのか、また、もっと安くて簡便な方法がないんでしょうかという声に対して、運用を改善するお考えがあるのかどうか、農水省の認識をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 有機JAS制度は、有機という表示に対する消費者の信頼を確保するために、生産者が有機のJAS規格に従って生産を行っていることを登録認定機関が認定する仕組みとなっております。

 登録認定機関は、この認定を的確に行いますために、生産方法等を定めた内部規程ですとか生産行程の管理記録方式とか、必要最小限なものを生産者に対して求めているところでございます。

 また、このため経費が必要になるわけでございますが、その経費は、認定手数料とか、検査員の認定のための圃場への出張費用などでございまして、各登録認定機関が的確な認定を行うための必要な額をみずから設定して公表することになっております。現在、登録認定機関は約六十ほどございますけれども、認定に係る経費はそれぞれの団体によっていろいろとございまして、総じて年間数万円から最大でも三十万円程度というふうに承知をしているところでございます。

 なお、個人農家の方の負担を軽減するために、グループによる認定の取得も認めているところでございまして、このような制度も活用して取り組んでいただければというふうに思っているところでございます。

小野(次)委員 私は年間四十万ぐらいかかるという話を聞いたこともありますけれども、三十万だとしてもやはり個人農家にとっては大き過ぎる負担だろうと思いますので、グループ取得の方法があるというのであれば、それについての広報についても力を入れていただきたいと思います。

 大臣にお伺いいたしますが、私は、この問題は、消費者の方の関心は一般に極めて高いと思うんです。どんな調査を見ても、有機のものを食べたいという声は、もう六割、七割、大半の、特に主婦は関心が強いわけでございます。それと比べて、生産サイドの方の体制というか、準備というのがまだまだ。理解が広まっていないというのは、何か消費者が理解していないみたいに言う場合がありますけれども、消費者は求めているんだけれども、生産の方がどうもそれまで達していないんじゃないかという気がしております。出おくれているような気がいたします。

 その意味で、有機農業について国としても強力に推進していくことが必要だし重要だと思うんですが、農水大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 今、委員と各局長とのやりとりを聞きながら、有機農業もやっとこれで一人前の農業の一つの型として一般化していく時代を迎えているなというふうに思います。それは、有機農業推進法を制定いただいて、それによって国の基本的な方針を定め、全国にわたってそういう方針のもとに展開できる体制が整ったということによるんだと思います。

 そこで、この有機農業推進法の基本理念に即して、農業者が容易に有機農業に取り組めるようにしなきゃいけませんし、消費者が有機農業によって生産される農産物を容易に入手できるような体制をつくっていかなきゃいけない、こう考えております。

 一方、有機農業は、現状では栽培技術が十分に確立していないなどの問題を抱えておりまして、消費者からのニーズは大変大きいものがございますのは委員御指摘のとおりでございますが、いまだにその生産体制の方の取り組みが少ないというふうに私も認識いたしております。

 このために、有機農業につきましては、栽培技術の確立、普及や販路の確保を初め、有機農業に対する消費者の理解の増進、地方公共団体における体制の整備など、農業者が有機農業に積極的に取り組めるようになるための条件整備に重点を置いて推進することが重要だというふうに考えております。平成二十年度におきましては、有機農業総合支援対策など、有機農業の推進に必要な対策を講ずることとしたところでございます。

 今後とも、有機農業推進法の基本理念に即しまして、地方公共団体、民間団体と連携しまして、我が国における有機農業の発展に一層努めてまいりたい、このように考えております。

小野(次)委員 大臣、どうもありがとうございました。

 それでは次に、鳥獣被害対策関係の質問に入らせていただきます。

 昨年、我が党の議員が中心になって、議員立法で鳥獣被害防止特措法が制定されたわけでございます。その内容を周知することが極めて重要なわけでございますが、農林水産省におけるその取り組みをお伺いしたいと思います。時間が迫ってきましたのでちょっと質問を飛ばしているところがございますが、本省における取り組みについてお伺いしたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 農水省の取り組みでございますが、基本方針を策定、公表したのが、法律の施行と合わせて二月二十一日でございます。それから、本省の担当者が直接各ブロックに出向いて、市町村、団体等の担当者向けに説明会を開催いたしました。

 こうした周知を通じまして、市町村においては、本法に基づく被害防止計画の作成に向けた取り組みが進みつつある状況でございまして、四月末、都道府県から聞き取ったところによりますと、五百四十四の市町村で今年度中に被害防止計画を作成する意向が示されているところでございます。農業団体も同様に、全中から説明会を実施していると承知しております。

 引き続き、本法の内容についての周知、それから市町村によります被害防止計画の作成、着実な実施を推進してまいりたいと考えております。

小野(次)委員 引き続きその点についてはよろしくお願いしたいと思います。

 次に、市町村が被害防止計画をつくるにしても、その実効性を確保するためには、実際に人を指導できる人材の確保というのが極めて大事だと思うんです。

 去年のことですけれども、私の地元山梨県で、猿を中心とした鳥獣被害対策の勉強会をやるといったら、ショートノーティスでしたけれども、百人以上の農業関係者がぱっと集まりました。実は、その講師にお呼びしたのは、山梨県の人ではなくて、長野県の富士見町の町会議員で小池一夫さんという方がいるんです。肩書がサル専門検討会代表となっているんですが、この方が地元で軽トラをとめて長靴に履きかえると様子を見ていた猿がぱっと散っていなくなるというぐらい、名物な、猿退治というか鳥獣被害対策の方がおられて、その人の話を伺ったことがございました。ただ、当日、私の地元でちょっと現場を見てもらったんですが、やはり山梨の猿は彼を見ても逃げないということなんですね。それは、やはり知名度が足りないということもあるのかもしれませんが。

 やはり各地に満遍なく専門家がいないと、よその県からお呼びしているというだけでは非常に心もとない面がございますので、この人材確保について、現状と今後の育成方策についてお考えをお伺いしたいと思います。

内藤政府参考人 人材の育成確保のために、現在、市町村職員それから団体職員等を対象にしました被害防止技術研修会の開催を行っております。

 また、委員御指摘のとおり、専門家というのが非常に重要でございます。野生鳥獣の生態系、あるいは被害防除、捕獲等の被害対策の専門家、これは現在百名を超える方にアドバイザーとして登録をいただいております。こういった方を被害現場に紹介する取り組みも行っております。

 また、被害現場において活用できるわかりやすい防止マニュアルの作成、配布なども行っているところでございます。

 こういったことを通じまして、人材の育成確保を推進してまいりたいと思っております。

小野(次)委員 今お答えにあった、鳥獣被害対策実施隊の隊員というのは、まだそれは教わる側なんですね。だから、その人に教える人というのはまだまだ本当に少ないと思いますので、国土交通省の観光なんかだと観光カリスマというのがありますけれども、ぜひ猿対策カリスマみたいなものを全国で指名していただくとか、何かそういうふうに慫慂する面もないと。なかなか目立つ分野の仕事じゃないだけに、ぜひそういう面も御配慮いただければと思います。

 次に、警察の方にちょっとお伺いしますが、新法に基づいて設置される鳥獣被害対策実施隊の隊員というのは、ライフルの所持が、今までと違って、これは運用だと聞いていますけれども、十年間という期間条件にかかわらず、業務のために必要だということで認められる場合があるというふうに運用について考えをまとめられたそうでございますけれども、全国の現場への周知というのはどのように行われているのか、警察庁にお伺いいたします。

井上政府参考人 銃刀法上の取り扱いにつきまして、本年四月、各都道府県警察に対して資料を送付し、周知徹底を図ったところであります。

 内容につきましては、ライフル銃の所持許可は散弾銃等に比して厳しい要件が課されております。市町村が農家の依頼を受けるなどして鳥獣保護法に基づく鳥獣の捕獲を行う場合には、その職員がライフル銃を所持する必要があるときは、銃刀法に定める「事業に対する被害を防止するためライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」に当たり、許可の対象となり得ることを明示しております。

 また、具体的な要領といたしまして、手続を円滑に進めるために警察署に連絡担当者を置くこと、市町村から必要な文書の提出を受けた上で所要の審査を行うこと、ライフル銃の保管管理が適切に行われるよう市町村に厳格な監督を求めること等を示しているものであります。

小野(次)委員 法の施行がことしになってからでしたか、二月二十一日か何かですから、それはいたし方ないことかもしれませんが、今でもやはり地元の会合なんかだと、猟友会の方から、十年の期間が長過ぎてなかなかライフルの許可がもらえないんだという話をいまだに繰り返し繰り返し聞かされています。警察は、内部に通達を出すだけじゃなくて、やはり猟銃の許可を持っている人が多分ライフルの許可を取りに行くんだと思うので、猟友会が一番その母体になると思いますから、全国の猟友会には、そういう運用が図られているんだということをよくお示しいただく必要があるのかなというふうに思います。どうぞその点はよろしくお願い申し上げます。

 最後になりますが、私は、何かこういうテーマを突っ込んでやっていると、動物に対しては思いやりが足りない人間かと思われるかもしれませんが、農業者の利益を代弁すると同時に、やはり動物についても思いやるゆとりというのは人間だれでも必要だろうと思います。

 その意味で、私は、猿やシカ、イノシシが捕獲される、捕獲と言うと言葉が、要するに、殺されてしまうということが一番いいことかどうか、かねてから疑問に思っていまして、できれば、逆にイノシシ、猿、シカが人間の姿におびえることなく暮らすことができる、周りから区切られた特別保護区みたいなものを各地に設けて、捕獲しても、それは殺すんじゃなくて、捕獲した動物をそこの保護区の中に放してあげるんだというような仕組みが必要じゃないかなと。

 ただ、これは前々から環境省の方は余り御熱心じゃないようでございますけれども、たまたま環境大臣と農水大臣の両方をお務めになっておられて、また、私とは南アルプス山脈を背にして山梨と長野の山の反対側御出身の若林大臣に、大臣としての御存念を、どういう鳥獣被害対策というのが今後望ましいのか、お考えをお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 先ほど富士見町のお話がございました。私も富士見町のことはよく承知しておりますが、シカなどについても、イノシシについてもそうですけれども、長野県の方で追い払うと山梨の方に行く、山梨の方でしっかりやると長野県の方に入ってくるというようなことをよく聞くわけでございます。

 しかし、侵入防止さくの設置というようなことに加えまして、捕獲によります鳥獣の個体数の調整も大事ですが、委員がおっしゃられましたような生息環境管理というようなものへの取り組みを総合的に実施するということが必要になってきているものと考えております。

 このため、鳥獣被害防止特別措置法に基づきまして、農林水産省においては、各市町村における被害防止計画の作成を推進するとともに、市町村が計画に基づいて実施する鳥獣の個体数調整とか侵入防止さくの設置などの取り組みに対しては十分な支援をしていかなければならない、こう考えております。

 平成二十年度予算では、委員も御承知のとおり、市町村等が行う被害防止のための取り組みを総合的に支援する鳥獣害対策予算につきまして、十九年度予算は約二億円弱でございましたが、これを二十八億円と大幅に拡充いたしておりまして、今後とも、関係省庁と連携をして鳥獣害対策を着実に実施していく所存でございます。

小野(次)委員 私の地元のある集落で、男衆がみんな三日間総出で猿の捕獲をしようと出まして、三日かかって一頭しか捕獲できなかった。その反省検討会を公民館か何かで開いて、いつもあんなに猿がいるのにどうしてこの三日間に限って一頭しか捕獲できなかったんだろうということを言っていましたら、いつも発言しない村の古老がぼそっと一言言ったそうです、やっぱり情報が漏れたんだべと。

 よく猿知恵という言葉がありますけれども、イノシシとかシカの被害対策のレベルと、やはり猿というのは本当に賢いです。だから、私ども新しい法律をつくっていろいろな対策を打てるようになった面もありますけれども、しかし、それもやはり猿とのまさに知恵比べになっているわけでございまして、力ずくじゃなくて、猿被害防止技術の技術的な開発についても農水省はぜひリーダーシップをとってお力を入れていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

宮腰委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 大臣、大変御苦労さまでございます。初めに、穀物の備蓄のあり方についてお伺いをしたいと思います。

 先日、政府の食料・農業・農村政策推進本部は、安定的な食料確保策などを盛り込んだ今後の農政の指針、いわゆる二十一世紀新農政二〇〇八をまとめられました。この指針は、推進本部と合同で開催された農林水産省の有識者会議、食料の未来を描く戦略会議の提言をも踏まえてのことだというふうに伺っております。この戦略会議では、世界の食料事情が悪化する中、米など国内農産物の活用による自給率向上や、穀物備蓄の強化などを提言しております。

 新農政二〇〇八では、国民への食料需給に関する情報提供の強化、それから、農水省による中長期的な食料需給予測手法の開発、米利用の新たな可能性の追求、農林業と食品・外食産業との連携強化による食品開発の支援等々が柱となっております。

 ところが、戦略会議が、先ほど申し上げました「食料の安定供給は国の責務」という一項を立てて、「主食用・飼料用穀物の備蓄の重要性が増しています。」こういうふうに提言されているんですが、この新農政二〇〇八ではこのことに関して触れられてはおりません。その理由と穀物備蓄のあり方についてどのようにお考えなのか、農林水産大臣にお伺いいたします。

若林国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、食料の未来を描く戦略会議、これを精力的に会議を重ねてまいりまして五月七日に取りまとめました提言をいただいたわけでございます。これは世界的規模で進んでおります食料需給の逼迫の傾向が強まっている中で、国内農業資源の確保、輸入食料の安定確保、主食用、飼料用穀物の備蓄の重要性が増しているということを指摘しているわけでございます。

 当然、政府としての新農政二〇〇八で具体的にことしの施策をどうするかということについて決めたわけですが、そのことを踏まえて、それを前提としながら、これからの安定的な食料の供給確保、そして食料の供給力の向上ということを定めていったつもりでございます。

 実は、国の段階で申しますと、米については十年に一度不作がある、また、通常の不作、これは作況九四ですが、これが二年連続した事態というようなことを想定して百万トンというふうに決めております。小麦については過去の港湾ストなどを考慮して年間需要の一・八カ月分七十八万トン、大豆については過去の港湾スト、米国の大豆輸出規制の経験などを考慮して年間需要の二週間分としての三・一万トン、飼料穀物については過去の輸出障害、供給事情の悪化というようなことを考慮して年間需要の一カ月分として九十五万トン、そういう水準で今備蓄を行っているところでございます。

 今、世界的な穀物を中心とした需給の逼迫の中で、状況がさま変わりをしてきております。そういうようなリスクが大きくなっているということを考慮しながら、今までのような備蓄の水準でいいのかどうかということについても検討をするのは当然だというふうに考えておりまして、これをどのような水準で決めるかということについて、特段これを設定しなかったところであります。

 消費者、実需者の安定的な食料の供給を確保するという点で言いますと、主食である米とか、多くを輸入に依存している小麦、大豆、飼料穀物というものについての備蓄水準をどう定めるかということが非常に大事な問題だと思っております。我が国におきます不作だとか、供給国における災害といった輸出が停止される短期的なことも想定しながら、これまでの需給逼迫の事例も勘案しながら、さらに必要な数量を現在設定しているわけでございます。

 現在のところ、穀物の主要な供給国からの輸入について、現在のところ日本としては量的確保に支障を来す状況、見通しでないということから、直ちにこの備蓄水準を上げなければいけないというふうに認識しているわけではございませんけれども、御指摘いただいておりますような世界の食料需給の逼迫など状況の変化を踏まえれば、食料の需給や価格の動向の収集、分析をこれまで以上に強化しまして、今後の動向をよく見きわめた上で検討していかなきゃいけないことだ、こう考えております。

西委員 多くの主要な穀物の自給率が大変低いという我が国の特殊な事情がありますので、ぜひともこの件については十分な議論をお願いしたいと思います。大臣御自身からも大きくさま変わりをしているというふうなお話がございまして、まさしくそのとおりだと思いますので、よろしくお願いいたします。

 中国への米の輸出が大臣の大変な御尽力で全面解禁となりました。この御努力に対しては心から敬意を表したいと思います。

 さて、最近、米の国際価格が急上昇し、インド、ベトナムに続いて中国など農産国の間で輸出規制の動きが広がっております。また、世界最大の米輸出国タイによる米輸出機構というものの提唱をされたり、サウジアラビアによるタイの稲作への投資検討など、米に関して国際的に大きな動きが今見られる現状です。一方、欧州連合は穀物類の減反政策の見直しを始めた、こういう報道もあります。日本もこうした動きに対応していく必要があり、そのためには、米に関して次の戦略をどう立てるかということが重要になると思います。

 そこで、アメリカ農務省の統計によると、米の上位輸入国はほとんど、インディカ米、これは長粒米ですね、もしくはジャバニカ米、これは中粒種ですが、この消費国ということになっております。そうすると、この主な輸入国に対して、特にサウジアラビアなんか大変な輸入国なんですが、中東やヨーロッパ諸国を日本が輸出先のターゲットにしていくという場合には、インディカ米などの生産を行うのか、日本の得意ないわゆる短粒種のジャポニカ米を普及していくのかという方法が考えられると思います。

 こうしたインディカ米圏もしくは、ジャバニカ米、これは中粒種ですが、ジャバニカ米圏に対する米の輸出戦略をどう考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。

町田政府参考人 お答えいたします。

 世界的な米の種類別の消費実態を見てみますと、生産量の約八割を占めるインディカ米は、これは御指摘のとおり長粒種でございます、東南アジア諸国や欧米等で幅広く消費されております。中短粒種は、中国北部、台湾、アメリカ西海岸等で主に消費されております。

 一方、我が国の気候風土に合致した短粒種でございます日本産米につきましては、近年の世界的な日本食ブームやアジア諸国の経済発展等を背景に、主に現地の高所得者層あるいは高級レストラン向けに輸出が増加傾向で推移しております。国別に見てみますと、台湾が最大の輸出先でございまして、次いで、主として長粒種を消費しております香港、シンガポールという順になっているところでございます。

 今後の日本産米の輸出戦略でございますが、インディカ米の消費国も含めまして、我が国の米が持ちます食味や品質のよさといった特徴を生かしながら、日本食の普及促進とセットにして輸出促進に積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。

西委員 基本的には、日本食にくっつけて今のジャポニカ米、つまり短粒種を出していくという方向だろうと思うんですが、特殊な、例えば先ほど申し上げましたサウジアラビアなんかのケースもありますし、それは必ずしも日本食だけじゃなくて長粒種も消費しているんだろうと思います。そういうところの富裕層に挑戦していくとか、いろいろな可能性があろうかというふうに思って御質問を申し上げました。

 次に、米の食糧援助について。ミャンマーのサイクロン、中国の地震など、大災害が今続いておりますが、米の食糧援助について検討されているのかどうか、お伺いをしたいと思います。

 米の国際価格が急騰し、最近の入札では落札できない状態で、いわゆるミニマムアクセス米、最低輸入義務米の確保が難しいという報道もございます。そんな意味でも、以前とは状況がかなり変わっているのではないかと思います。そういう意味で、食糧援助も、金額ベースではなくて現物を提供するというのがよいのではないかと考えておりますが、この点についてお伺いをいたします。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国におきましては、この援助でございますが、これまでも被援助国や国際機関からの要請があれば、これを踏まえまして、WTO協定などの国際ルールとの整合性、あるいは財政負担等に留意しながら、関係省庁と連携を図りながら政府米を活用した食糧援助に積極的に取り組んできておりまして、一定の実績も上げているところでございます。

 今般、ミャンマー、中国といったところで災害があったわけでございますが、現時点ではこうした国から政府米に対する具体的な要請があったというふうには承知しておりませんが、今後とも、被援助国や国際機関からの具体的な援助の要請を踏まえながら、関係省庁とも協議して適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

 また、現在は、資金を無償資金協力の形で出して、被援助国に供与して、これで被援助国が救援物資を調達するという仕組みになっておりまして、今御提案をいただいたわけでございますが、私の方からは現状の御説明だけにさせていただきたいと思います。

西委員 米を援助するということは、諸外国の米の価格にも影響するということもあって非常に難しい側面はわかっておりますが、日本の今の備蓄ももういっぱいいっぱいということもあって、いろいろな可能性を探られたらいいのではないかというふうに思って御質問を申し上げました。

 さて、戦略会議は、食料事情の変化に対応した食料の安定供給体制の確立に向けて取り組みを行うよう提言しております。安定供給を議論する際、私は忘れてはならないのは、食料としての観点だけではなくて、食料をつくるために必要なものがいろいろございます、例えば種、種苗ですね、それから肥料とか周辺のものが一体となって初めて食料生産ができるわけですので、その実情もともに把握し、認識を共有していくことが大事だ、こういうふうに思っております。

 と申しますのは、先日、肥料用の燐が急騰しているとの報道がありました。肥料の三大要素である燐、窒素、カリウム、この一つの燐ですが。実は、一年間で五倍以上の高騰になっている。もちろん、窒素もカリも二、三倍上がっているというのですから、肥料そのものが、特に化学肥料を中心に大変な価格上昇になるだろうと思うんですが、特に燐は中国が輸出制限を始めたということも聞いておりまして、燐が産出される国はそう多くありません、大変影響が大きいと思うんですが、そういうことがございます。

 また、これも私、地元から電話をいただいて、ああこんなことかと思ったのですが、人工授粉に使われる中国産の花粉の輸入。これはナシのケースだったんですが、四月の作業シーズンを前に一時とまっておりまして、生産農家から不安の声が上がったという事件が最近ございました。ナシは同じ木の花粉をつけるよりも、違う花粉をつけるということが大事だ、先に咲いた花粉をよそにうまく分けるということを通していいナシを生産するということでしたが、一連の安全問題がございまして、ナシの花粉が輸入されないということでございます。依存度はそんなに大きくないとはいえ、日本の食がこんなところで外国に依存していたのかということで、私ちょっと驚いたのですが。

 これら食料のインプット、先ほど申し上げました付随するもの、種苗、肥料等でございますが、十分に確保できるように総合的に把握をし、検討すべきであるというふうに思いますが、お考えをお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 本当に穀物の方にばかり目が移っておりますけれども、世界的な穀物の需要増加に伴いまして、肥料も上がってきているんですね。肥料の需要の高まりということで、その原料の国際価格が大幅に上昇しているということでございます。

 特に、委員がおっしゃられました燐鉱石、それからカリの鉱石、これは資源が限られた国に偏在しているということでありまして、その需要と供給動向については常日ごろから情報収集を行いながら、その安定供給の確保に努めることが重要だと考えてきております。

 このために、経済産業省や肥料関係の業界と連携を図りながら、海外の肥料及び肥料原料の需給動向の把握に努めているわけでございますが、その融資を活用して海外原料の確保に向けた民間の取り組みを促進してまいりたい、こう考えております。

 また、土壌診断などを通じて、実は我が国の場合、燐とかカリについては過剰の施肥がございました、これはやはり貴重な資源となってきているわけでありますから、こういう過剰施肥の抑制ということも大事な要素じゃないかというふうに考えておりますし、下水汚泥など国内の未利用資源から肥料成分が抽出できるということでございまして、そういう下水汚泥などから肥料としての有効利用ができる、そういう抽出、回収をするというような技術もあるわけでございまして、そういうものの普及を図るなどして国内における肥料原料の生産の安定と促進ということも努力していかなきゃいけないなということを感じているところでございます。

西委員 ありがとうございました。

 先ほどお話がありました、特に化学肥料による燐、カリ等の過剰施肥による土質の悪化、そういうことも現実に起こっておりますので、それを解消するための方策についても少し研究をしていただければ、畑の上にはあるわけですから、それをうまく使える方法をこれから研究する必要があろうと思っております。

 次に、先ほども述べましたけれども、輸出しようとする場合、言葉やノウハウがなければなかなかこれは取り組むことができません。大事なのはやはり人でございます。そこで、農林水産省の輸出支援策についてお伺いをしたいと思います。

 農林水産物等輸出促進対策の中に、商社のOBなどが輸出プロモーターとして事業実施主体の取り組みを推進し、同時に人材を育成するという対策があります。輸出プロモーターを活用できるのは輸出協議会など民間団体であり、個人や農業法人は今のところ利用できません。農業経営者や農業法人が、意欲のある人が輸出に取り組むためには商社OB、弁護士、弁理士などのノウハウがぜひとも必要であり、農業経営者などもこうした輸出プロモーターに関する情報が入手しやすいように、例えば輸出プロモーター人材バンクというものをつくってはいかがかというふうに思いますが、お考えをお伺いしたいと思います。

吉村政府参考人 お答えいたします。

 地域の農林漁業者等が海外における販売促進活動等の具体的な輸出の取り組みを進めるためには、委員御指摘ありましたように、貿易実務経験や専門的知見を有する関係者の協力が重要であるというふうに考えております。

 このため、市場開拓に実績があり、知見とノウハウを有する国内外のバイヤーや実際に先駆的に輸出に取り組む事業者などのリストを農林水産省のホームページに掲載して、情報提供を行っているところであります。

 また、個人や農業法人等も利用できるように、地域ブロックで開催される輸出オリエンテーションの会に農林水産物等の輸出に御協力いただける商社OBや経営コンサルタント等に参加していただいて、農林漁業者等とのマッチングの場を提供するということにしております。

 こういった取り組みを通じて、輸出に取り組む農業経営者等が求めている情報やノウハウなどを入手しやすい環境の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

西委員 十分な広報をお願いして、有効にやっていただけるようにお願いします。

 最後に、幾つか知的財産権の保護強化についてお伺いしたいと思います。

 農林水産知的財産ネットワークを構築するというお話がございます。先ほどお話し申し上げましたように、農林水産物の輸出の際に、知的財産の専門家の役割は大変大事でございます。

 農林水産知的財産ネットワークが輸出に当たっても農業者、農業法人を支えていただければというふうに期待しておりますけれども、ネットワークというのはどのような機能を果たそうとしているのか、御説明をお願いしたいと思います。

吉田政府参考人 農林水産業の競争力を強化していくためには、知的財産を適切に保護し、活用することが極めて重要であるというふうに認識してございます。

 そこで、農林水産省といたしましては、農林水産関係者の知的財産の保護、活用を促進するための施策の一つといたしまして、知的財産に関する情報をホームページで一元的に提供いたしますとともに、メンバーが相互に情報交換、連携をする場としての知的財産ネットワークの構築を進めているところでございます。

 このネットワークにつきましては、今のところ、研究機関、大学、技術移転機関、企業などの研究サイドを中心に参加というふうになってございますが、今後は、知的財産を活用する農業者、農業法人の方々にも対象を広げまして、知財に関する幅広い情報提供、連携を促進していきたいというふうに考えております。

 また、農林水産物を輸出する際の我が国の知的財産保護も重要な課題として認識しておりまして、例えばこのネットワークのホームページにおきまして海外の商標や育成者権などの知的財産制度、侵害があった場合の対応方法などの情報提供を行うことなどによりまして、農林水産関係者の知的財産保護の取り組みを支援してまいりたい、このように考えております。

西委員 ネットワークの核としては、研究者を中心とした立ち上げ、もちろん民間も一部含まれているわけですが、それはそれでいいとして、課題は、それをどういうふうに活用していくかということを考えますと、今後、民間、現場の農業者、農業団体等が十分にその中に入っていけるような体制をぜひともお願いしたいというふうに思います。

 知的財産に関して、農業分野に詳しい弁理士などをこれから育成していかなければいけない。工業所有権等についてはかなり伝統がありますが、農業分野はそれに比べてかなり弱いのではないかと思っております。大学の農学部などで講座が受講できるようにするなど、取り組みを今後進めていかれると思うんですけれども、その人材育成について、文科省も来ていただいていますので、文科省と農林水産省それぞれにお伺いしたいと思います。

土屋政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、知的財産の重要性というものについては、近年、特にその重要性が高まっておるというふうに認識してございます。

 こうした認識のもと、農業分野、農学分野における知的財産として新技術、新品種、ブランドなどがあると考えており、これらを適切に保護、活用する観点から、農学系の学部、大学院におきまして、例えば知的財産権概論、あるいは特許法特講、バイオ産業創成学などといったような授業科目が既に開設されており、それらの中で知的財産に関する講義が行われている状況にございます。

 文部科学省といたしましては、昨年の五月に知的財産戦略本部決定されました知的財産推進計画二〇〇七におきまして、農学部を含めました各学部におきまして、それぞれの分野に即した知財教育の展開を促すこととされておりますので、これを踏まえまして、農学分野における知的財産に関する教育の内容の充実が図られるよう促進してまいりたいと考えております。

吉田政府参考人 農業分野におきまして知財を適切に保護し活用していくためには、まずは、知的財産に関する知識を持ち、保護、活用の取り組みを支援できる指導的な人材を確保する。それとあわせまして、知的財産をめぐる問題が生じたときには、それに対して的確に対応できる体制を整えることが極めて重要であろうというふうに考えております。

 そこで、普及指導員など現場の指導的立場にある者に対しまして、知的財産の取り扱いや実践的知識を身につけてもらう研修を実施いたしております。これとあわせまして、経済産業省などとも連携をいたしまして、地方農政局などに知的財産に関する相談窓口を設置いたしました。これは、必要に応じまして弁理士などの専門家につなぐことによりまして、農業者等が迅速に問題を解決できるように体制を整備しているところでございます。

 また、御指摘のございました大学農学部等との対応でございますが、文科省とも連携をいたしまして、農学系学生が知的財産に関する知識を習得できますよう、全国農学系学部長会議というのがございます、そういったところを初めとしたさまざまな機会を通じまして、意見交換あるいは必要に応じた働きかけをやってまいりたいというふうに考えております。

西委員 すぐれた日本の農業に関する知的財産を保護するために、十分な知識を持つ人材をぜひとも育成していただきたいと思います。

 最後の質問です。

 東アジア植物品種保護フォーラムを設置して、品種保護制度の早期整備を働きかけ、DNA品種識別技術の開発を推進する、こういう政策がございます。これが、この七月に第一回目のフォーラムが開催される予定ということでございます。このフォーラムは、当然日本が主導的な役割を負って設置をされているわけですが、どのような国が参加して始まるのか、また、どのようなことが議題となるのか、日本としてはどのような提案を行っていこうとしているのか。この戦略について、最後にお伺いをしたいと思います。

内藤政府参考人 植物品種保護制度でございますけれども、整備状況やその運営能力もアジア各国で異なっています。そういったことから、昨年十一月にバンコクで行われましたASEANプラス3農林大臣会合で、我が国から東アジア植物品種保護フォーラムを提案いたしまして、各国からの支持を得たところでございます。

 第一回の会合は東京で行われるわけでございますが、そこには、中国、韓国、それからASEAN諸国の植物品種保護を担当する政府ハイレベルの方々に参加を呼びかけたいと考えております。また、会合では、各国の制度の整備充実に向けた技術供与、それからフォーラムの今後の進め方につきまして議論したいと思っております。

 我が国としましては、東アジア地域におきまして実効性のある植物品種保護制度が早急に整備されるよう、専門家の派遣や日本での受け入れ研修等の協力、それから育成者権の権利行使に関する情報交換、こういったことについて提案をしていきたいと考えております。

 以上です。

西委員 これから第一回が始まるということですが、まだまだ先は長いと思います。政府レベルでの協議が第一回として、現場の農業者にまでこの植物品種保護という観点がきちっと理解されるまで随分かかると思いますけれども、日本が地道にこれを推進していく以外にないと思いますので、また農水省挙げて努力をしていただけるようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 きょう当委員会におきまして、またこうしてお時間をいただきましたことを委員長初め各党の皆さんに感謝を申し上げます。

 さて、昨日に引き続きまして、また本日、鳥インフルエンザの問題について質問をさせていただきたいと思います。

 大臣、今まで農林省の立場として、発生の抑制はワクチンによって抑えられるけれども、感染には効果がないということで農林省としてワクチンの使用を認めていないという現状、これは昨四月に一度議論をさせていただいたんですけれども、この農水省の根拠というのは一体何からこの姿勢が来ているのか、お答えいただけますでしょうか。

若林国務大臣 委員が鳥インフルエンザの被害に対し大変憂慮し、この予防あるいはまた発生した場合におきます対応について、非常に熱心に専門的な部分に踏み込んで御検討をいただいていることに、まず敬意を表したいと思います。

 今のお話でございますが、このインフルエンザウイルスというのは気道粘膜などから感染するということでございまして、感染を防ぐためには気道粘膜などでの防御が必要になってまいります。

 しかしながら、不活化ワクチンであります現行のインフルエンザワクチンは、体内の抗体の働きによりウイルスの増殖を抑制するというものでありまして、気道粘膜などでの免疫による感染防止効果はほとんどないというふうに承知いたしております。

 このため、鳥へのインフルエンザワクチンの接種では、発症は抑えられるものの、感染に関しては抑止力がないというふうにされているわけでございます。

 なお、発症防止効果につきましても、インフルエンザワクチンの製造に用いられるウイルス株は、流行しているウイルス株と近縁でなければその効果が薄くなるということでございますので、流行するウイルスを予測して、適切なワクチン株を事前に製造して選定をするということが必要になりますが、これはなかなか難しいということがあることをつけ加えておきたいと思います。

松野(頼)委員 今のは余り根拠になっていないかもしれないんですが、大臣、実は昨日からこの問題を取り上げているのは、OIEなりFAOなり、海外のそういう機関のワクチンに対する態度と日本の農水省のワクチンに対する態度に乖離があるから、私はこの問題を何度も言わせていただいているわけです。世界でもそういう話で進んでいるならば、それはそれでしようがないのかなという思いを持つのですけれども、なぜ日本だけがそこまでかたくなにワクチンの使用を認めていないのかということに疑問を持つわけです。

 資料の三ページ目をごらんください。これは食品安全委員会に対して厚生労働省が、ワクチンを打った鳥の食品健康影響評価、いわゆる人体に対するリスクというものを諮問した結果であります。ここに書いてありますように、「鳥インフルエンザ不活化ワクチンについては、適切に使用される限りにおいて、食品を通じてヒトの健康に影響を与える可能性は実質的に無視できると考えられる。」ということを食品安全委員会も結論づけているわけです。ですから、ワクチンを打っている鳥肉が人体に与える影響はないということなんですね。まず、そこを大前提に考えていただきたいと思うんです。

 そういう中で、幾つかの記事を御紹介します。例えば、二〇〇八年二月、ことしの二月十四日の朝日新聞の記事ですが、ワクチンで鳥のウイルス量を減らせば新型の危険性も減るというのが国際獣疫事務局、OIEの国際的な常識であるというふうにおっしゃっているわけです。そしてまた、日本では発生後の対策だけで発生前の対策がおくれていると。OIEの名誉顧問の小澤先生は、先進国は要所を押さえてワクチンを使って効果を上げている、このままでは日本は鳥インフルエンザ対策の後進国になるというふうに指摘をされているわけです。

 以前、日本がBSE最初の一頭目を発生したとき、あのときもWHOが肉骨粉の処理基準というものを定めておりました。その肉骨粉の処理基準を日本は無視して、日本はまだ一頭も発生していない国だから、未発生国だから、そんなルールは関係ないんだと言って無視をしていながら、原因は肉骨粉かどうかいまだにわからないということですけれども、結果的に発生をさせてしまったという、あのときの対応と非常に似ているんですね。せめて世界基準ぐらいの対応を日本はとるべきではないかというふうに私は思って、この質問を繰り返しているわけです。

 特に、昨日、秋田と北海道、野鳥ですけれども、二羽からH5N1のウイルスが発見をされています。また、隣の韓国におきましては、今、鳥インフルエンザが家禽の中で大きな発生をしているという状況です。ですから、日本は全く大丈夫な状態ではないんです。ある意味では、どこまでのレベルかはわかりませんけれども、いつ発生してもおかしくないという状況に今来ているわけであります。そういう状況の中で、いまだに日本は予防的なワクチン接種は認めていないという状況に対して、非常に疑問を持っている。なぜそこまでかたくなにワクチン接種を抑えるのか。

 もう一つ記事を御紹介しますけれども、これはFAOのコンサルタント、レスリー・シムズさんが、これからも感染の脅威がある限り防疫手段としてワクチン接種の使用は続くであろう、高リスクの農場に対してできるだけ追加的予防戦略としてワクチン接種を検討しなければならない、ワクチン接種は防疫の正当な道具であると。

 また、別の機会にOIEの小澤代表は、日本ではワクチンを打つと大変なことになるという風潮があるが、ワクチンをうまく使えれば逆に短期間で問題を処理できる可能性があることも考えた方がいいというふうにおっしゃっております。また、日本の場合、鳥インフルエンザが起きて自殺する人が出てきてしまうような事態が起こっている。これは現実に京都で起こっているわけですけれども、こういうことが起きてしまわないような環境を考える必要がある。このような事実はヨーロッパでは起きていない。ワクチンを打つからには保証をする、一人の犠牲者も出さないという考えを根底に据える必要があるというふうに述べています。

 ですから、どう考えても日本の対応というのは十年前の対応にしか考えられないんですね。インフルエンザワクチンが家禽の中に入ったならば全部殺すんだ、それが最高の防疫手段なんだというのが今の日本の対応であります。

 大臣、その辺のことについて一言いただけますでしょうか。

若林国務大臣 委員は日本が例外的にこのワクチン接種を認めていないというような認識でおられますけれども、実は私どもの認識は全く違うわけでございます。

 世界的な取り組みについて申し上げますと、委員も引用されましたFAO、これはOIEと連動しているわけでございますけれども、家禽の予防接種のことにつきまして、特に流行国での発生時について、家畜、家禽に対する鳥インフルエンザの予防接種を実施するというふうに限定的に言っているわけでありまして、OIEでは、鳥インフルエンザの流行国、今申したものに限って、摘発、淘汰等によるウイルスの拡大が抑止できない場合に限って家禽に対する鳥インフルエンザワクチンの予防的接種を実施すべきであるという勧告がベローナ会議で行われたと承知しております。

 しかし一方、我が国の場合は、水際検疫の徹底と農場の衛生管理の強化を図っており、異常鶏の早期発見、早期通報、感染鶏の殺処分等による撲滅を図るということで、この病気につきましては清浄国という状態を維持しているわけでございます。このような清浄国におけるワクチン接種を行うように勧告をしているものではないと承知しております。

 そして、委員が引用されました国際獣疫事務局の小澤先生、名誉顧問という立場だそうでありますが、委員がおっしゃられた部分のほかに、その前に小澤先生はこういうふうに言っております。それは、清浄国における限定的発生のケースで、ワクチンを緊急用として備蓄し、発生時にはコンパートメンタリゼーションの考え方で緊急ワクチン接種を実施し、早期清浄化を目指す、つまり清浄化すればもうワクチンは要らない、そういう意味で、緊急ワクチンの接種を実施して早期に清浄化を目指すグループでありまして、これは米国、イギリス、ドイツ、日本、オーストラリア、韓国、カナダ等を含めた先進国がそのような対策をとっているというふうに先生もおっしゃっておられるわけであります。

 ワクチンを使用する際の疫学的な条件としては、移動制限区域内での発生の広がりが極めて高く、そして羽数が膨大であって早期の淘汰が不可能であると考えられるような場合、または移動制限区域内の隣接区域で疫学的に感染のおそれが極めて高く、羽数が膨大で早期の淘汰が困難な場合、三番目として、疫学専門家の調査に基づいて、リスク評価と便益対効果から国がワクチン使用計画を策定して決定した場合にリングワクチネーションを行うということにしておりますという紹介がございます。

 そういう意味で、現実に、世界でこのような異常な状態が発生をした場合の対応として、ワクチン使用を限定的に認める、あるいは、もう汚染されておりまして、これはもう淘汰では対応できないというような国についてはワクチンの使用が認められているわけでございますが、イギリス、ドイツ、日本、オーストラリア、カナダなどの清浄国におきましては、ワクチンを使用するということになりますと、先ほども申し上げましたような状況で、これで抑制はしても発症を抑えられない、いよいよ入ってきたときの被害も甚大であるということから、ワクチンの使用はごく限定的に与えているというのが世界の状況だと私は認識しているわけでございます。

 認識の違いで、それはデータもいろいろございますから、もしここで御納得いただけなければ、専門的な知見があります私の方の技術者の方から、その点を十分説明させたいと思います。

松野(頼)委員 今すぐ使えと言っているわけじゃないんですよ。ただ、そういう状況が来たらば使えるような整備をしていく必要があるんじゃないんですかという話をしているんです。

 では、大臣、今までに鳥を何百万羽処分したのですか。

若林国務大臣 突然何百万かと言われても、私はお答えできません。(発言する者あり)

 六百四十万というふうに承知しているということでございます。

松野(頼)委員 ですから、清浄国、清浄国と言いながら、既に六百四十万羽殺処分しているんですよ。

 では、半年間発生をしなければ清浄国に戻るということですけれども、現実に入ってきて、今この状態で使ったらどうですかという話をしているんじゃないんです。危機が来たときには使えるような対応をされたらどうですかということを言っているんです。

 そうじゃなくて、ただ入ってきて、蔓延をしたら全部殺すんですという状態なんですよ。それは世界の国も、大臣さっきおっしゃったように、何でもないときに使っている国なんというのはないんです。そうじゃなくて、危険が来た、これはそろそろ予防的に打った方がいいかもしれないとすれば、大量の家禽を処分する必要はないわけです。そういう意味で、私はずっとこの問題に取り組んでいるつもりであります。大臣、どうぞ。

若林国務大臣 委員がそのような形で万が一の場合というときには使う余地があるのではないかという趣旨でおっしゃっておられるというのであれば、それは我が国の場合も、高病原性の鳥インフルエンザが発生して、同一地域内の複数の農場などでこれが続発をする、あるいは緊急な淘汰が困難になるほど出てくるといったような場合は、これを緊急にとめるという意味で、DIVAシステムに準じた手法に基づいて緊急的なワクチン接種も可能にするということを考えておりまして、そのための備蓄もしているわけであります。

 しかし、通常の状況で、あるいはもっと緩い状況の中でこれを使ってしまうと取り返しがつかなくなるという認識を持っているわけであります。

松野(頼)委員 違うんですよ。さっき言っていたように、それは発生後対策ですよね。発生して蔓延したら使うという話で、ある程度予防的に発生を抑える。発生前対策が日本にはないというふうに記事にも書かれているじゃないですか。その話をしているんですよ。

 これは危ない、リスクが高くなったといった場合には、何百万羽も殺すようなことがないように、例えば韓国で発生をして、九州まで数十キロしかないから、ここのところはある程度予防的に使った方がいいのではないか。今回みたいに秋田でも北海道でもH5N1という菌が発見されているわけですから、もしその近くにそういう大量に飼っている養鶏場があったら、そこのところは予防的に使って、大量に、何十万羽も殺さなくてもいいようにしようじゃないかというような仕組みをどうかつくっておいていただきたいということをお願いしているんですよ。

若林国務大臣 EUにおきましても、EU指令に基づいて、ワクチン接種は原則的に禁止されているんですよ。ただ、リスク評価に基づきまして感染リスクが非常に高い、そして、地域を限定して、それを限定的にやらなければいけない、そういう場合に予防的にワクチン接種を実施することができるという道を開いているわけでございます。

 これはワクチン接種が、摘発、淘汰など疾病管理措置を補完して、大量処分を避けるための有効な手段たり得るという考え方に基づくものであると思います。

 ただ一方で、ワクチン接種された家禽については、臨床症状を防ぐことはできますけれども、感染し、さらに病気を広げる可能性もあるということでありますから、そのときには、サーベイランスと移動と出荷の制限措置とともに実施しなければならない。

 欧州におきましても、このことを行おうとする場合には、ワクチン接種計画については、欧州委員会の承認を得て、その具体的事案に対処をすることが必要だというふうにされているわけであります。

 これまでも、試験研究として認められたドイツを除きますと、オランダでありますとかフランスでありますとか、そういうものが愛玩用の家禽、放し飼いの採卵鶏とか、あるいは屋内飼育が困難なフォアグラ用のガチョウなどだけが極めて限定的に認められているというふうに承知いたしております。

松野(頼)委員 今大臣がおっしゃった、予防的な道が開かれている、その道が開かれるだけでいいんですよ。今すぐ全部使ってほしいとか使うべきだとか言っていることじゃないんですよ。私も、ワクチンがすべて解決をする手段じゃないというのはわかっています。ただ、予防的なワクチン使用というものに道を少しEU並みに開くべきじゃないですかということを言っているわけです。

 日本の場合はかたくなに、絶対にこれはだめなんだ、全部殺すんだといって、今までもずっと殺すだけの対応をしてきたじゃないですか。そうじゃなくて、もちろん最終的には殺さなければならないこともある。それも一つの手段である。しかし、予防的ワクチン使用も一つの手段であるという道を開くべきじゃないかということを言っているわけです。EU並みの対策であれば十分だというふうに思いますよ。すべてそれで解決するわけではないというのはわかっています。

 まして、もう一つ、これは資料の十四につけてありますけれども、排出されるウイルス量は明らかに減っているんですね。その結果、政策は別だけれども、「ヒトへの伝播の可能性を低減させるという他の対策にも寄与する」ということはFAO、OIE、WHOで言っているわけです。

 ウイルスの排せつ量が大体十の八から、ワクチンを打った鳥というのは十の二乗から四乗という量に、要は百万からけたの違うところまで落ちてくるわけです。鳥が排せつする菌の量を明らかに低下させるということは、データ上でも、もちろん日本のデータでも出ているわけですから、人間への伝播の可能性、リスクを下げることができるというふうに言っているわけです。

 きょうは厚生労働省から来ていただいていますけれども、人への変異のリスクに関して、明らかに人への伝播のリスクは低下をすると言っているOIE、FAOのこのことを聞いて、厚生労働省の立場で御答弁いただけないでしょうか。

伊藤大臣政務官 基本的なことからですけれども、鳥インフルエンザは、感染した鳥に直接触れたり、解体するなど濃厚に接触することによって、まれに人に感染するということは否定できないと考えております。よって、感染した鳥との接触を避ける等の注意喚起をこれまでも行ってきたところです。

 一方、家禽への鳥インフルエンザの感染防止対策については、これまでも御答弁ありますとおり、農水省において、感染した家禽の早期発見と殺処分を基本とする対策、これが人への感染リスクの低下にもつながっていると認識をしております。

 鳥インフルエンザワクチンの接種につきましては、一つは、鳥インフルエンザの症状の抑制には効果があるものの、これも繰り返しになりますけれども、ウイルスへの感染や排せつを完全に抑制することができないこと、また、感染した鳥の発見がおくれるリスクもあることによって、迅速で効果的な蔓延防止を図ることができない等の理由から、農林水産省において家禽への接種を認めていないというように承知をしておりまして、現状においては、人への感染リスクの面からも、予防という意味での家禽へのワクチン接種は、かえってリスクの増大もあり得べしというような見解を持っております。

若林国務大臣 委員が資料十四に言及されました。今、その資料十四を見たわけですが、委員が配られた資料十四に下線をずっと引いておられます。この部分は例外の部分なんですね。

 その前の部分が大事でありまして、「発生時には、殺処分が望ましい対策法であり、臨床症状を呈する全ての家禽群に対して用いるべきである。全鳥処分は、伝播の範囲が限定的で、再感染のリスクが低いHPAIの限定的発生をコントロールするのにこれまで非常に有効であった。全鳥処分を実施する際には、プログラムを立案する際に十分かつ迅速的に補償について検討する必要がある。」云々となって、そして、「何らかの状況で、動物を大量処分することが望ましくない、あるいは、適切でない場合には、ワクチン接種が適切な選択肢と考えられる。」云々、こういうふうに書かれているんですよ。この部分だけ線を引かれていますが、原則的には、ここにはっきり書かれていますように、「発生時には、殺処分が望ましい対策法であり、」というふうにしっかりと書かれているわけで、その立場をとっているわけですよ。

 だから、後の、委員が下線で引かれたような状況に関して言えば、先ほど私が申し上げましたように、万が一、我が国でこのような事態が発生をして、そしてその中で、殺処分などによるものでは対応できないような状況になった場合には、DIVAシステムに準じた手法を取り入れて、緊急的なワクチン接種も可能だと考えており、そのためのワクチンの備蓄もしているということでございます。

松野(頼)委員 では、過去に大量発生したときに、広げないためにワクチン接種をしましたか。

若林国務大臣 それはいたしておりません。しなくても、局地的に対処することによって処理ができ、そして清浄国としての評価を得ているわけでございます。

松野(頼)委員 私も全鳥処分を別に否定しているわけじゃないんですよ。ただ、安心感として、大量発生を過去にしているわけですから、例えばここまで広がったら、これ以上広げないためにここにはそういう方策を打ちましたよという道がEU程度に開かれていれば、それはそれで安心するわけですよ。そうじゃなくて、今の場合には全く開かれていないで、発生の抑制には効果があるけれども感染にはリスクがないと。そして、ワクチンを打つと、ほかの感染の鳥との見分けがつかなくなるから、ワクチンは打たないと言い切っているところに問題があると言っているので、別にそれをすべてワクチンで解決するなんという話は全然していないんですよ。

 EU並みの対応、その前段の部分は前段の部分で、日本がやっていることに僕は何一つ文句をつけているわけじゃないんですよ。後段の部分まで日本で行われていれば、それはそれでいいですねという話をしているんです。

 わかりますか。御答弁をお願いします。

若林国務大臣 我が国は、今までも発生をしたときの対処というのは国際的にも注目されていますが、きちっと処理されて清浄を保ったという意味で評価されているわけでございます。

 ですから、私は、万一の場合に備える態勢を整えておけば、やはりEUは我が国よりも若干緩い形でし得るのではないかというふうに考えられますけれども、EU諸国と我が国の今の状況、態勢というのを比較したときに、我が国は今までのやり方で、それが急速に拡大していくというような事態は防げるという判断でございますので、EU並みにするということは考えておりません。

松野(頼)委員 どうも、そのかたくなな姿勢が、これで取り上げているわけですよ。人への伝播のリスクも明らかに減ると言っているわけじゃないですか。常識的に考えて、それに対して備えて、きちんと使える道を一筋つけることが、何がそんなにマイナスの面があるのか、私には理解できないわけです。

 これは、すべて使って、そのまま進めと言っていることでもないし、最終的には殺処分、全鳥処分という道がメーンだということもわかっています。

 ただ、さっき大臣がおっしゃったように、もう一つ道をつくるということになぜそこまでかたくななのかという話をしているのであって、せめて世界の基準並みぐらいに持っていくべきなんじゃないんですかという話をしているんです。(発言する者あり)いや、それは間違ってない。間違ってない。全然間違ってないですよ。世界が間違っているというのは、それは言い過ぎな話だ。

 もう一回お願いします。

若林国務大臣 世界の基準とおっしゃいましたけれども……(松野(頼)委員「EU」と呼ぶ)EUよりも厳しいということはありますが、世界の基準としては、アメリカやカナダの場合、我が国と同等あるいはそれ以上にきつい、私はそう認識しております。

松野(頼)委員 そこまでかたくなな対応をなさるならば、大量発生をさせないようにぜひお願いをいたしたいと思います。

 この問題は、また取り扱っていきたいと思いますけれども、きょうはこうしてお時間をいただきましたことを心から感謝申し上げまして、時間が参りましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、高井美穂君。

高井委員 民主党の高井美穂です。

 本日は、世界の食料危機についてと米のミニマムアクセスについてお伺いしたいと思うんですけれども、それに先立って、一つだけ、きのうの報道にあった談合事件の件でお伺いをしたいというふうに思っています。

 昨日、五月十四日の新聞によりますと、北海道開発局の幹部三名が農業土木工事をめぐり談合を主導していたとして十三日に札幌地検に逮捕されたというニュースが大きく載っておりました。そして、同局にかかわる談合事件では、二〇〇二年の港湾事業にかかわる談合を契機に官製談合防止法が議員立法されておりますけれども、その反省が全く生かされず、脈々と談合が繰り返されていたということになるのではないか。これは立法府としても看過できないというふうに思っています。

 この三名はいずれも国土交通省の幹部職員というふうに聞いてはおりますけれども、そもそも同局内における農業事業は、農林水産大臣の所管事業を開発局が移管を受けて実施しているということでございます。逮捕者三人のうち一名は農水省採用者でありますし、もう一人も農水省の構造改善局に出向経験もあり、農水省と深い関係がある方々ばかりであります。

 同事件に関しまして、東京地検も応援検事を派遣しているなど広がりを見せる様相もあるというふうに伺っておりますけれども、一開発局の問題ではなく、農業土木公共工事全般にもわたる構造的な問題もあるのではないかというふうに懸念をいたします。

 まさにこの新聞記事によりますと、天下りの見返りとか、OB丸抱え、損はないというタイトルで書かれております。新聞報道によりますと、逮捕者はOB受け入れの見返りに工事を落札させたというふうに供述をしておりますが、これが事実なら、天下りが利権や汚職、談合の温床という、まさに我が党がずっと言い続けたことを証明するようなものではないか、構造的な問題ではないかというふうに思っております。

 本当ならば国交省の方もお呼びすればよかったんですが、昨日の決算行政監視委員会におきまして、我が党の高山委員が国土交通大臣に対して、この件に関して質問をしております。その答弁を引っ張りますと、冬柴大臣は、農業水産部というところは農水省の仕事をするところであり、国土交通省が予算を一括してちょうだいするけれども、その農業予算については、即この農業水産部へお渡しするというような仕組みになっていて、その監督は農水大臣のみが行うというような法制度になっていて、特殊な事情だからこういうことが起こっていると。とりわけ、国交省が持っている危機意識が、こういう特殊な状態であるものだから、伝わっていないんじゃないかというようなことを答弁されておりますが、この点についてはいかがでしょうか。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

若林国務大臣 冬柴国土交通大臣がどのように答弁されたかということについては私承知しておりませんので、そのことについてどうだということであれば、それは、よく議事録を見たり、また場合によっては冬柴さんから話を聞いて考えを整理したいと思いますが、いずれにいたしましても、北海道開発局発注の工事の嫌疑によって逮捕されたんだということであったにしろ、農林水産省の所管事業の執行の過程で発生したものであるというふうに認識いたしておりまして、これはまことに遺憾なことだというふうに考えております。

 ただ、農林水産省所管の事業の実施については、農林水産省がこれを指導し監督する権限があるわけでございますけれども、入札とか契約にかかわる部分、つまり、工事実施ではなく、そういう入札、契約にかかわる談合防止のための綱紀の保持ということにつきましては、職員管理の一環といたしまして、国土交通省、そしてその出先であります北海道開発局という行政組織で対処しているのが実態でございまして、そういう問題ではないかというふうに考えております。

 ただ、国土交通省において速やかに実態調査や再発防止策等の検討に向けて対応していくというふうに聞いておりますので、農林水産省としても、その事業実施の関連で言われる、私も確認しておりませんけれども、そういうことが捜査の進展の中で出てまいりますとすれば、国土交通省が……。

 いずれにしましても、国土交通省の調査、検討には我々も積極的に協力をしてこの事態に対処してまいりたい、このように考えております。

高井委員 大臣が冬柴大臣の御答弁を承知していないということですので、もう少し細かく申し上げますけれども、つまり、冬柴大臣は、監督は農林水産大臣のみが行えるような法制度になっていて、沖縄もちょっと特殊ですけれども、ほかのところではそういう仕組みはございませんと。職務については農水大臣の監督を受けるけれども、そういう身分上の問題については私が対処しなければならないことでございますというふうにおっしゃっておりますけれども、その後も含めて、非常に今回の事情が特殊なものでありますから、ほかの支分部局にはない仕事なものですから、この発展ぐあいがいかなるようになるかはわかりませんけれども、調査をさせていただきたいというようなことを繰り返しお述べになっているんですね。特殊だ、特殊だというふうにおっしゃっておりまして、つまり、この談合事件は、逮捕された三人が国交省職員でありながらも農業分野を担当するという、省内で特殊な立場にあったことが事件の背景にあったのではないかというようなことがニュアンスとして受け取られる御答弁をされているんですね。

 実は、昨日事前に通告した段階でも、農水省の方は、国交省の職員の方ですので直接的にはよくわかりませんし、うちの責任ではございませんというようなことに近いことをおっしゃっておられたような気がいたします。今の大臣の御答弁でも、国交省の職員ですからというようなお話に近かったと思うんですが、どっちもが、国交大臣の方は、直接監督責任は農水省にあるから、特殊な事情だけれども、農水省の方に問題があるのではないかとも受け取れるような御答弁をされているし、今の農水大臣のお話を聞けば、国交省の方にきちんとやってもらわなければという御答弁だったので、どっちに問題をなすりつけ合ってもこの税金の無駄遣いという部分は減りませんので、どっちの責任かよりも、むしろ構造的にこういう問題をなくすような御努力をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

若林国務大臣 私は、責任を国土交通省に押しつけるという気持ちは全くありません。

 設置法及び組織令の面でいいましても、事業の実施につきましては農林省がこれを指導監督するという立場でありますし、事業の中身、予算も、農林省で予算をとってつけかえて国土交通省に移してその執行をしてもらっている、そういう事業でございます。そういう意味で、非常に関係が深いわけであります。

 ただ、先ほど申し上げましたように、契約をするという契約事務につきましては、これは工事実施ではございませんし、実際、これは北海道開発局になるわけですけれども、現場の管理の問題として言えば、同じ契約事務は、昔の運輸省の港湾とか建設省の道路とか、そういうのと同じような形で契約事務を執行しているわけで、まさに北海道にしかない一つの形なんですね。

 今、国土交通省は、建設省と運輸省が一緒になったから、そこが一つの省になっていますけれども、もともとは建設省と運輸省の港湾というふうになっていたわけであります。しかし、今、本省組織が一つになっていますから、予算も一本でとっている。農林省の場合は、予算は農林省で農業の事業としてとって、それを国土交通省に移管してそこで執行してもらっている、こういう関係にあるんです。それが特殊であることは間違いないんですが、だからといって、国土交通省の責任だというふうに言うつもりはありません。

 ただ……(発言する者あり)いや、それは、どちらかというのは実態をもっとよく調べた上でですけれども、これらのことについては、両省が一緒になって事態の解明をしなければならないと思います。

 実は、北海道開発局の方が、この職員の逮捕事案について開発局長がコメントをして、今後の対応として、当局としては、今後、具体の容疑事実などを踏まえ、早急に事実関係の調査を行うとともに、再発防止策の検討を行うこととしたいというふうに言っておられます。その開発局の調査、そしてまた今後の再発防止策の検討については、我々も協力をし、できる限りのことはしていかなきゃいけない、こう考えております。

高井委員 冒頭申し上げたように、こうしたことが発端になって、二〇〇二年に、まさに官製談合防止法、入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律というものが議員立法でできたわけであります。それにもかかわらず、今回の事件は、〇六年から〇七年に開発局が発注した数件の事業ということであり、そして事業規模は数億円単位というふうに大きく、関係する業者も数十社に上るということでございまして、いずれも開発局幹部らがこれまでの発注状況などをもとに事実上の受注調整を行っていたということが、今の捜査の状況の中で、新聞等で明らかになっているわけであります。

 それに加えて、これは本当は後で国土交通省に改めて資料要求しようと思うんですけれども、二〇〇五年以降北海道開発局を退職した職員の三分の一に当たる二百二十五人が道内の建設会社などに再就職していたということがわかったと。これは朝日新聞の報道でございますけれども、国家公務員は退職後二年間は関係企業への再就職が原則的に禁じられておりますけれども、北海道開発局は審査で、問題はないとしていたということでございます。就職先としては、約三割が建設会社で、測量会社や建設コンサルタント会社なども多かったということが出ております。

 まさに、官製談合防止法の議員立法をしたにもかかわらず一向に減っていない、しかも単位が大きい、額も大きいということが、特殊な事情であるとはいえ北海道で繰り広げられているということは、かなり構造的な問題があるのではないかというふうに思います。

 大臣も政治家でいらっしゃるし、議員立法したものをまさに骨抜きにするような、しかも今、税金の使い道で大変皆さん苦慮している中で、貴重な税金がこうした談合によって無駄に使われているということは大きな問題でありますので、こういうことをなくすべく、ぜひまた努力をしていただきたいというふうに思っています。

 捜査の状況を見ながらまたいろいろな質問をさせていただきたいと思っていますが、この件についてはこれで終わりにしたいと思っています。

 続きまして、通告どおりやらせていただきたいと思うんですが、世界の食料危機の状況についてお伺いをしたいと思っています。

 農水省が出された海外食料需給レポート二〇〇七、この厚いレポートを初め、「食料の未来を確かなものにするために」という戦略会議がやっているペーパーとかを丁寧に読ませていただきました。

 こうした研究をされているということでありますが、まず、世界の食料需給動向を踏まえて、現在の状況をどのように考えておられるのか、食料危機の状態にあって対外援助を必要としている国が何カ国程度あると御認識なのか、お答えいただきたいと思います。

吉村政府参考人 御説明いたします。

 今御質問のあった、現在の状況のもとで食糧難になっていて食糧援助を欲している国がどれぐらいあるかということでございますが、FAOが公表しております二〇〇八年五月現在の資料によりますと、食料危機に直面して対外支援を必要としている国は三十七カ国ということになっております。地域別に見ますと、アジアで七カ国、中東二カ国、NIS二カ国、アフリカ二十一カ国、中南米五カ国ということで、後発途上国の三分の二を占めるアフリカが半分以上を占めるという状況になっております。

高井委員 合わせると四十カ国以上の国々がそういう状況にあるということだろうと思いますけれども、主食となる穀物が足りないという状況は暴動まで引き起こしているというふうに、この冊子にもいろいろ書いてございました。今後の需給動向の見通しをどういうふうに考えておられるのか、重ねてお伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 世界の食料需給につきましては、今御指摘のとおり、大変逼迫の度合いを強めている。これについては需要面の要因と供給面の要因がございますけれども、そのほかに、投機資金の流入ですとか、あるいは輸出国による輸出規制の動きの広がりといったものが影響しているというふうに思っております。

 こういう中で、今お話がありましたように、アフリカ、アジア等の一部の国では、暴動ですとか抗議行動といったものが起こっていて、中には死者を出すような状況になっている国もあるというふうに承知をしております。

 今後の見通しでございますけれども、もちろん確たることを申し上げられるわけではありませんが、いろいろな要因がございますけれども、やはり基本的には需給構造に基づく逼迫ではないかというふうに考えておりますので、今後ともさらに逼迫の度合いを強める危険性があるのではないかというふうに考えております。

高井委員 今、輸出規制のお話がございましたけれども、インドやベトナム、インドネシアなど生産国が米の輸出を禁止したため、需要が逼迫しそうだという予測のもとにアジアで米の高騰が続いているというふうな調査もございます。輸出規制を始めたのはアジアだけでなくて、他の農産物についても、ロシア、ブラジル、ウクライナ、アルゼンチンなどを初めとする十二カ国が輸出税を課したり輸出枠を設定したりしているというふうな状況でございます。

 今、WTO農業交渉のドーハ・ラウンドが行われているところだと思いますけれども、このWTO交渉、自由貿易を促すための国際交渉であるというふうに思います。その自由貿易を妨げるような輸出規制に対しては、やはり日本国政府としても何かおっしゃった方がいいというふうに思います。この点、大臣はいかがでしょうか。

若林国務大臣 お答えの前に、実は今、FAOのディウフさんが来日いたしまして、きょう、総理とお会いをして、アフリカあるいはアジアなどの首脳からいろいろと聞いている話を総理にお伝えになるというふうに伺っております。また、私のところにも、明日訪ねたい、お会いしたい、こういうお申し出がありまして、時間がとれればぜひ直接ディウフからお話を伺いたいと思います。

 また、六月の初めに行われますFAOの総会の機会に国連の事務総長が呼びかけまして食料サミットを開きたいということで招請が来ておりまして、福田総理が出られれば一番いいと思うんですけれども、これもまた、国会のお許しをいただければ福田総理が出かけられる。私も、何とかこのサミットには、FAO総会に出させていただくと同時に、同時に開かれておりますOECDの理事会でやはり食料問題を取り上げるということになっておりますのと、その機会に非公式のWTOの閣僚会議があるということになっておりまして、その意味で、六月の上旬に世界の農業関係の責任者とも十分意見交換をしてきたい、このように思っています。

 そこで、お尋ねでございますけれども、実は、このWTO交渉が開始をされたとき、日本は、世界最大の輸入国という立場から、日本提案というのを世界に向かって発信しているわけでございます。その日本提案の中で、やはり貿易が円滑に進むということは、輸出国と輸入国のバランスのとれたルールというものが必要なんだ、そういう意味で、輸入国側に対してアクセスなどについて過剰な要求があり、輸出国側が輸出規制のようなものを比較的安易に出せるというのはおかしいということを六年前からずっと問題提起してきたわけでございます。

 そこで、いよいよ大詰めを迎える段階になってきておりますから、公式の場で、日本は、ファルコナー議長の全体会議の中で、輸出規制について実効ある形のルールづくりをすべきではないかということを、スイスと共同して、共同提案国として提案しているわけでございます。

 その意味では、現在のWTOの協定では、輸出規制をかける場合の通報が明確な義務になっていないこと、そしてその実施期間についても何ら期限が定められていないことなど、非常に不十分な今のWTO協定になっております。

 そこで、これにつきまして、今申し上げましたように、四月三十日に、現行の改訂議長案をベースにして、輸出規制についてもさらに実効性のある規律強化を図るべきであるということを、いよいよ最終取りまとめに入った段階で申し入れているわけでございます。そういう輸出規制の発動に当たってのルールの明確化でありますとか、一定の場合に輸入国側がそれに意見が言える、今そういう規定がありませんけれども、意見が言える、立場が表明できる、そういうものを仕組みとしてつくっておくべきであるということを申し上げているわけでございまして、最終調整の中でできるだけこれに賛同する国を広げていきたいと思っています。

 非常に難しいなと思っていますのは、実は、貧困なアジア諸国の中で、わずかな輸出をしている輸出国が国内の暴動を抑えるために輸出を規制しているというような、そういう途上国間の問題もございまして、余り一義的なことが難しいわけで、そこをどのように整理して、そういう途上国における輸出国についてどう扱うのかということについては、よく関係国との間で意見交換をしなければうまくまとまらないんじゃないかというふうに考えているところでございます。

高井委員 ありがとうございます。

 大臣おっしゃるとおり、いろいろと難しい問題もあろうと思いますけれども、できるだけ協定にきっちりとした合理的な規定を書き込めるように、そして法的な義務を明確化するべく努力をしていく必要があるのではないかというふうに私も感じておりますので、ぜひ御尽力をしていただきたいというふうに思っています。

 ウルグアイ・ラウンドが始まったのが一九八六年ということでありますけれども、そのころには農産物というのは世界的な過剰傾向がベースにあったわけでありますので、輸出補助金の多用等が国際市場の混乱を招いたという意識がやはりあって、各国が共同して農業保護を引き下げるということを目指して当時は交渉がスタートしたんだろうと思います。しかしながら、今現在の状況は大きく変わって、先ほど来お話があった世界的な食料危機とも言える状況に入っているというふうに思っています。WTO内で大きな原則を議論するのも必要だと思いますが、さまざまな状況変化に応じて現実に即した協議を進めていただきたいというふうに期待を申し上げております。

 大臣もおっしゃったとおり、先進国の安い輸出農産物で発展途上国の農業がつぶれるというのも心配ですし、食料の輸出規制によって途上国の国民が飢えてしまうということも私も強く心配をしております。そういう面から、大変隘路であるかもしれませんけれども、丁寧な協議を重ねながら、先ほどおっしゃった実効性のある要請を頑張っていただきたいというふうに思っています。

 続きまして、米のミニマムアクセスについて。

 現在の食料危機とも大きく関係するんですけれども、ミニマムアクセスとは最低輸入機会というふうに言うと聞いています。高関税による事実上の輸入禁止を撤廃することが目的でつくられたわけで、そもそも輸入量自体は法的に義務づけられているのかどうか、まず政府参考人の方からお答えを聞かせていただきたいと思います。

町田政府参考人 我が国は、ウルグアイ・ラウンド農業協定に基づきまして、米の国内消費量の一定割合の数量について輸入機会を提供する義務を負っているところでございます。具体的な数量は、ウルグアイ・ラウンド農業協定の譲許表に明記されているところでございます。

高井委員 そのミニマムアクセス米が四月二十二日の買い入れ入札で不調になったというふうに報道なり記者会見なりで拝見、拝読をいたしました。その原因をどのように認識しておられるでしょうか。

町田政府参考人 先月二十二日に実施いたしましたミニマムアクセス米の買い入れ入札につきましては、ベトナム、インド等の米輸出国による輸出規制が行われる中で、タイ産米を中心とする米の国際価格が急騰したことを反映して、全量が落札されなかったところでございます。

高井委員 今お話があったとおり、お米が高騰している、それで予定価格では入札できなかったということだろうというふうに思いますけれども、一応予定されている、これは平成十九年度分、去年度分だと思いますけれども、七十六万七千トンですか、今のところ全く買えていない状況であるというふうに思います。これは、今の認識で、必ず買うべきものなのか、今後政府はどのように対応されるつもりなのか、つまり再入札をされる予定なのか、お聞かせをいただきたいと思います。

町田政府参考人 今回落札されなかった分の取り扱いでございますが、関係方面とよく協議しつつ検討していくと考えているところでございます。

高井委員 恐らく一カ月か二カ月のうちには次の入札がまた来るんだろうと思うんですね。そのときまでにはやはり対応をちゃんと決めておかないといけないのではないかというふうに思うんです。

 九四年五月二十七日の政府統一見解、これは古い九四年の江藤先生の質問をひもといて丁寧に読んでみたんですけれども、このときの御答弁によると、ミニマムアクセス機会を設定すれば、通常の場合には当該数量の輸入を行うべきものであり、ただ、輸出国が凶作で輸出余力がないなど客観的に輸入が困難な例外的なケースにおいては、現実に輸入される量がミニマムアクセス機会として設定される数量に満たなかったとしても法的義務違反は生じないというふうな見解を出されております。

 今回のケースはこの例外的なケースに当たるのでしょうか。

若林国務大臣 大変デリケートだと思うんですね。

 今回は、長粒種を買おうということで、そういうオファーをしているんですね。だから、価格はうんと低いんですよ。タイ米中心ですけれども、その部分が非常に上がったわけですね。だから、それに応札が出てこないわけです。しかし、中粒種であれば価格の上昇ぐあいというのは昨今の国際相場の中でそれほど大きくございませんので、妥当な購入機会を提起するとすれば、あるいは買えるのかもしれない、買えたのかもしれないという、そういう外側の、輸出側の方の判断というのはあるんですね。

 たまたまこれは年度を越えたわけですよね。四月にぎりぎりのところでやったんですが、価格動向が非常につかみにくいものですから、四月になってやった。いよいよ五月に入ってきた。今度は新年度の話になってくるわけで、新年度は新年度としてMA米の輸入の量というのは決まっているわけですから、そこはどっちのもので買ったのかよくわかりませんが、この次買うものは、やはり国際相場をにらみながら、買えるときにその責任を果たすべく量を買っていくということになるんですね。

 トータルとして見て、最後に、それでは前年の積み残しを繰り越すのかどうかみたいな話というのは全く残らないわけではないんですけれども、国際的な、関係国との関係をどう見るかということもございます。WTOの中の判断がどうなるのかというのをにらんでいかなきゃいけないと思います。

 我が国としてはできるだけMA米は買いたくないというのが本音でございまして、そういう意味からしますと、この政府統一見解というのは我が国が了解している政府統一見解ですから、国際的にそれが認められているというわけではないんですね。その意味で、我が国としては政府統一見解の線に沿いましてそういう機会を提供して年度は終わったんだという意味で、義務をなお負っているんだということを私は明示的に申し上げていないということでございまして、ぎりぎりと法律的に、あるいは国際協約の実効上どうなんだということになりますとなかなかデリケートな関係になるように思いますので、条約のことですから、外務省を初め関係者との間でなお協議をしていきたいというふうに思っております。

高井委員 今のような食料需給状況が逼迫しているときならば、購入凍結という選択もあり得ると思うんですね。無理に高いまま入札に応じて調達価格を引き上げれば、米相場の引き上げの要因にもなりかねないですし、他の輸入国から批判すら出かねない。とりわけ、日本は米が足りているにもかかわらず金の力でさらに米を買うのか、けしからぬという批判さえも起きるのではないかということを私も懸念しております。

 大変デリケートな問題ではあるというふうに思いますけれども、ぜひ政府として思い切った決断なり判断なりをしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

近藤(基)委員長代理 次に、大串博志君。

大串委員 民主党の大串博志でございます。

 きょうは、農政に関しまして、まずは、農林水産省予算三兆円弱でございますけれども、この予算の使われ方が効率的、適正になっているかという観点、これまでもたびたび取り上げさせていただきましたけれども、これを取り上げさせていただきたいと思います。

 なぜこれを繰り返し取り上げるかと申しますと、先般、残念ながらこの委員会において私たちの戸別所得補償法案は否決されました。そのとき議論の中にあったのが、私ども、戸別所得補償法案の中で一兆円規模の戸別所得補償というものを予算的に主張していたわけですけれども、その財源はどこから持ってくるんだという声がこの委員会でも多く質問として出され、政府・与党の皆さんからは、財源はないじゃないかというような声が多数ありました。しかし、そういう声は、本当に現行の農林水産省予算のあり方をしっかり見直した上でやはりないなということなのかどうかというと、私は怪しいのじゃないかと。まだまだ見直す余地があるにもかかわらず、今の予算を全く前提としたままでないじゃないかというふうに言っているにすぎないのではないかというふうに思う次第でございます。

 そのような観点で、先般、去年の秋でしたか、公益法人の予算の使われ方の一例として魚価安定基金の問題なんかも指摘させていただきましたし、緑資源機構の法案の際にも公益法人との関係、天下りの関係等も指摘させていただきました。きょうも、今この税金の使われ方との関係で国民の皆さんが大きく問題視されている天下り等々の関係について指摘させていただきたいというふうに思います。

 この天下り問題は、先ほど高井議員の方からも指摘がありましたけれども、この天下りと談合、水増し発注あるいは過度な予算の消化、こういうものと結びついて一連の税金の無駄遣いを構成している、これはかなりみんなの耳に、目に明らかになってきたところでございます。

 そういう意味で、農林水産省の皆さんからもいろいろな資料をいただきました。私も、これはあれっと思うものがたくさんあります。天下りに関するものですけれども、きょうは、委員長のお許しをいただいて、資料を配らせていただいております。

 天下り先が、これはあっせんで行われている例がたくさんあるんですけれども、このあっせんの問題も、私たちは、役所が天下りをあっせんするということ自体おかしいということで主張し続けてきております。人材バンクというのが三年後にできるということになっていますけれども、やはり天下りを役所があっせんするというのはおかしい。そのあっせんをする中で、複数のところにあっせんされている例もあるじゃないかということが目に飛び込んできまして、事実確認等々させていただきたいと思います。

 資料の一ページ。幾つか資料を農林水産省の方々からこの秋から冬にかけていただきました。資料の一は、十四年度から十八年度の間に勧奨退職した局長級以上の職員の再就職状況ということで、丸をつけています四番の竹中さん。これを見ると、畜産技術協会国際総括監ということで十五年七月から十六年の三月三十一日まで勤めていらっしゃいますが、同じく認可法人農水産業協同組合貯金保険機構理事長ということで平成十五年の十月から十六年の六月三十日まで勤めていらっしゃいます。

 すなわち、十五年の十月から十六年の三月三十一日までの六カ月間、二つのところに天下っていらっしゃる。畜産技術協会の方は、これはあっせんの有無は、あっせんありでございます。認可法人の方はシャープマークですけれども、認可法人ですから当然役所の関与があるわけですね。役所も知った上で、この人についてもらっているわけです。すなわち、役所の関与の中で二つの天下り先に天下っていらっしゃる。

 次のページを開いていただいて、二ページですけれども、これは次官経験者です、平成二年以降。

 丸をつけているのは甕さんと浜口さん。甕さんの方は、地方競馬全国協会と農林水産技術会議。農林水産技術会議というのは農水省の会議です。ですから、これは実質的な役職ではないので、ダブルで天下りしているのではないんだということでした。浜口さんの方は、農林中金総合研究所と日本穀物検定協会会長、これが二カ月ぐらいの期間が重なっている。ここに関しては、穀物検定協会の方では給料はいただいていませんでした、こういう説明でした。

 さらに三ページを開いていただくと、丸をつけています石原さん、この方は前の次官の方ですけれども、食生活情報サービスセンター理事長を十八年の十一月から十九年まで勤めていらっしゃったらしいのですけれども、ここと、全国米麦改良協会会長、これも同じく十八年の十一月一日から。同じ日に、しかも両方ともあっせんを受けて、二カ所に天下っていらっしゃる。

 こういうふうな問題でございます。一カ所への天下りのあっせんでもこれだけ問題になっている中で、二カ所に対して天下っていらっしゃる。事実関係としてはこれでよろしいのでしょうか。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

岡島政府参考人 それぞれの勤務先等については、今先生のおっしゃられたとおりでございます。

 ただ、あっせんの定義については、これまでもお答えしているとおり、各府省がその職員の再就職について何らかの関与を行ったものということでございまして、例えば役所が企業、団体などの要請に基づいて退職者の経歴などの情報を提供することなどの行為も含まれているということでございます。

大串委員 あっさりした答えですけれども、あっせんというのは関与の度合いもいろいろあるんだということで答弁を済まされているわけですけれども、事実として、このように役所が関与した形で、すなわち知っている形で二カ所に天下っていらっしゃるんですね。二つのところから職を求めていらっしゃる。これは適当だと思われますか、どうですか、大臣。

若林国務大臣 今、委員もおっしゃっておられますけれども、あっせんという言葉の中で整理した範囲というのは、物すごく広い範囲で、さまざまな形態があるものをひっくくって、この整理として、あっせんというふうに整理したものというふうに承知いたしております。

 ですから、認可法人などの場合のように任命権限のあるところが認可をするというような形のかかわりぐあいと、全く純粋の民間の社団法人、財団法人でそういうところが行う場合に、例えばこの人はいつまで何をやっていた人かという問い合わせに対して、その人についての人事記録、資料を提供するというのもあっせんというくくりの中に入っているらしいんですよ。だから、それがどういうふうになっているのかというのはよくわかりませんけれども、一般論として申し上げさせていただければ、役所として団体などからの要望に応じまして人事に関する情報提供などを行うということは、それが国家公務員法などのルールに従って行われている限りにおいては問題はない、問題があるとは考えていないと私は考えております。

 常勤であるか非常勤であるかというのは、まだお聞きになっておられないけれども、一方が常勤で、一方が非常勤という場合もあるんじゃないかというふうに思われますけれども。

大串委員 では、事実としてお答えください。この竹中さんと石原さんは、常勤ですか、非常勤ですか、この二つのところは。

岡島政府参考人 お答えいたします。

 常勤、非常勤ということについてでございますけれども、まず竹中氏につきましては、社団法人畜産技術協会の方は非常勤でございました。それから、認可法人農水産業協同組合貯金保険機構につきましては常勤でございます。それから、石原氏につきましては、財団法人食生活情報サービスセンターの方は非常勤でございます。それから、社団法人全国米麦改良協会の方は常勤でございます。

大串委員 片方が常勤で、片方が非常勤。言外にどういうことを言おうとされているか私も存じませんが、常勤、非常勤だから大丈夫じゃないですかということなのかもしれませんけれども。片方が常勤で、片方が非常勤、これは当然です。常勤二つというのは理屈上あり得ない。いいですね。常勤二つというのはあり得ない。そんなことがあったら、もう大変なことです。常勤、非常勤、これは当然です。

 当然の上で、今おっしゃったように、竹中さんは畜産技術協会国際総括監の方が非常勤、石原さんは食生活情報サービスセンターの方が非常勤の理事長ということになっていますね。常勤としては恐らく報酬をもらっていらっしゃったんだろうというふうに思います。報酬規程をいただきましたところ、七十万、八十万というふうな形で役員報酬が規程として書かれています。

 非常勤として勤めていらっしゃった畜産技術協会の竹中さん、食生活情報サービスセンターの石原さんは、非常勤として給料はいただいていらっしゃったんでしょうか。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 竹中氏については社団法人畜産技術協会から、石原氏につきましては財団法人食生活情報サービスセンターから、それぞれ報酬を受けていたというふうに聞いております。

 具体的な報酬額につきましては、個人のプライバシーの問題であるとともに、報酬額を含めた勤務条件につきましては各団体が独自に決定するものであることから、役所として把握しておりませんし、またコメントすべきものではないと考えております。

大串委員 その額に関しては団体が決めることだから言えることではないということでしたけれども、常勤、非常勤の両方のところから給料をもらっているという状態であっせんされる、これがおかしいんじゃないかと私は思うんです。天下り一つでも、あっせん一つでもおかしいと言われているこの中で、二つのところから、しかも同時に、お一人の場合は同時にあっせんされていらっしゃるわけですね。これをおかしいと言わずして何が正しいのか、私、税金の使い方として非常に適当でないというふうに思うのであります。

 しかも、先ほど官房長は非常勤の給与に関してはそれぞれの組織が決めることだからコメントする立場にないとおっしゃっていましたけれども、立派な農水省管轄の公益法人です、御案内のように民法上の法人ですけれども、所管大臣は監督権がございます。不適切なことがあれば監督しなきゃならない、そういう立場にあります。

 先ほどおっしゃった石原さんの例、食生活情報サービスセンターの非常勤の理事長です。非常勤だからその報酬はセンターが決めることだ、役所が関知することじゃないとおっしゃっていましたけれども、食生活情報サービスセンターの役職員報酬規程を見ると、「非常勤役員に報酬を支給する場合、その額は、当該役員の勤務の実態、業務の内容を勘案して理事長が別に定める。」となっています。この理事長は、石原さんじゃないですか。自分で自分の非常勤たる給料を定めるんですか。こういうふうな運営をする公益法人を、監督する立場としてほっておくんですか。この辺もおかしくないですか。

岡島政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、食生活情報サービスセンター役職員報酬・給与規程の中には、「非常勤役員に報酬を支給する場合、その額は、当該役員の勤務の実態、業務の内容を勘案して理事長が別に定める。」ということになっております。

 ただ、その前に、これは寄附行為に規定がございますけれども、食生活情報サービスセンターの役員への報酬につきましては、寄附行為の中で、具体的には第二十一条ですけれども、「役員は、理事会の議決を経て報酬を支給することとした役員を除き、無給とする。」ということでございまして、常勤、非常勤を問わずに、まず理事会の決定でどういうふうになるかということが決まっております。

 具体的に、私ども聞いておりますのは、石原氏の場合、非常勤ではございますけれども週二日勤務している、そうした勤務実態や業務の内容を勘案し、理事会の議決を経て報酬額が決定されたというふうに承知しております。

大串委員 理事会が勤務の実態に応じて給与を決定するのは当然です。そこをおかしいと私は申しません。私が申し上げているのは、さっきの役職員報酬規程にあるように、非常勤役員の報酬は理事長が定めるとなっていることからしても、理事長が非常勤で給与をもらいながらここにいらっしゃるのは非常に無理があると。しかも、それが二つ同時にあっせんされていますけれども、非常に無理のあるあっせん、天下りの方式だなということなんです。

 こういうふうな状況があるということを踏まえて、大臣、あと人材バンクセンターが本格的に起動するまで三年あります。三年間は今の制度が続くわけです。ですから、役所によるあっせんというのは続くわけです。この三年間の間においても、同じように複数の先に対して役所があっせんする形を、給与をもらいながら働くというような天下りあっせんを今後も続けるというお考えなんでしょうか。それとも、もう金輪際やめるという考えはないんでしょうか。どうでしょうか。

若林国務大臣 先ほど一般論として申し上げたわけでありますけれども、あっせんという中に、役所に対していつまで農林省でどういう役職をやってきたのかという人事の問い合わせがあることに答えるのもいわばあっせんの整理の中に入っているわけであります。

 しかし、積極的にかかわるような形のあっせんというようなものについては、私は、やはり社会的な常識的な判断というものも尊重していかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思いますので、同一人物が二つの団体の役員となって、そこで報酬を、量は差があるにしても、それぞれもらうというような、そういう形のものに積極的にかかわったりするのは好ましくないというふうに思います。

大串委員 大臣の思いはそうですね。

 ただ、先年の、人材バンク、天下りバンクの審議の中でもあったように、押しつけ的天下りあっせんなのかそうじゃないのか、非常に不分明なんですね。相手側にとってみると監督官庁ですから、監督官庁からこういう人もいらっしゃるよと言われたときに、それが押しつけ的なものにならないかどうか、私は非常に不安なものがあると思います。

 ですから、積極的にかかわって二つの先に給料をもらう形であっせんするのはどうかという立場を今示していただいたのは多としますけれども、本当に今おっしゃったような大臣のスタンスが実行可能か。これは積極的だからやめておこうか、これはちょっと名前を言っているだけだから二つ先に名前を知らせてもいいだろうというようなところが本当に実務上可能なのかというと、私は疑問なんですね。

 ですから、ここはきちっとけじめをつけて、あっせん、そして天下り自体において、二つの先に給料をもらいながらつくというのはおかしいんだというような原則を立てるべきじゃないかと私は思います。大臣、その辺はいかがでしょうか。いま一歩の前向きさがあった方がいいんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。

若林国務大臣 先ほど申し上げました私の姿勢というもので御理解いただきたいと思います。

大串委員 この辺がいま一つどうしても踏み込んでいただけないところがある。これは本当に税金の無駄遣いの問題なんです。天下りと談合と水増し発注、そしていろいろな浪費とがつながっていたことが、道路に関する予算等の問題でも明らかになった今、なぜ農水省においてももう一歩踏み込んで言えないんだろうかというのが私は非常に不思議でならないんです。

 例えば、今回、道路に関する予算の審議の中で、あるいはガソリン税に関する予算の審議の中で、国土交通省は、道路関係業務の執行のあり方に関する改革本部というのをつくって、公益法人に関して大胆な、これが十分かどうか我々も精査しなきゃいかぬですけれども、改革案を出しています。

 道路整備特別会計から五百万円以上の支出があった公益法人五十に対して、その半分に対しては財政支出をもうしないとか、あるいは天下りも見直すと書いています、道路関係公益法人の間で国家公務員出身の役員の兼職はすべて解消ということも書いているんですよ。同じことがなぜ農水省でも、よしここで一丁やってみようかというのができないのか。何か対岸の火事のように見ていて、うちの公益法人は関係ないんだというような形になるのが私は不思議でたまらない。だから、ここはもう一歩前向きにやっていただきたいというふうに思います。

 このことに関しては、実はほかにもまだ取り上げなきゃならぬことがあるので、また今後やらせていただきます。

 公益法人全体で、資料をいただきましたら、天下りもしていてかつ金銭交付を行っている公益法人は、農水省においては四百もありますね。今回、道路特定財源のときのような無駄遣いがあるのかどうか、これは一個一個見てみないとわかりません。しかし、魚価安定基金のときに見たように、魚価安定基金もこの中に入っています。九十億円からの浮いたお金があるということが、それ一つ見てもわかるわけです。そして、天下りの資料一つ見ても、ああ、こんなこともあったとすぐ出てくる。いろいろなところに無駄遣いがある可能性はあるわけでございます。ですから、ぜひ前向きに突っ込んでいっていただきたいというふうに私は思います。

 そして、予算の無駄遣いの関係で、無駄遣いといいますか、予算の効率的な執行の問題でもう一つ取り上げたいと思います。農道です。

 これも資料でお出しさせていただきましたけれども、三月の末に報道がございました。農道の六割が一般道に転換されている。一般道といいますか、市町村道に転換しているという指摘でございました。「維持管理の交付金狙いか」と書かれていますけれども、確かに地方交付税の仕組みを見ると、農道であるよりも市町村道に転換したときの方が交付税算定基準がより明確に算入されるというのが調べてみたらわかりました。ですから、市町村にしてみると、市町村道に転換したいという誘惑にかられるのもわからぬでもないなというふうに思いました。

 しかし、これは補助金を使って農道という性質のものをつくった、その農道がその後どのように使われているのか、管理されているのかという、管理の問題だと思うんですね。そういう点からして、知らず知らずのうちに六割、七割が普通の道路、市町村道に転換されていた。これは、本当に農道としての機能が果たされているんだろうかという疑念を抱かせるんじゃないかと思うんですね。

 大臣、農道でつくったものが一般道たる市町村道に転換されている、これだけ多く転換されている、これは問題ではないんでしょうか。

若林国務大臣 農道というのは、当然のことながら、農業利用を主目的とする道路でございます。農村地域内で整備をしておりますが、この道路につきましては、一般交通を排除するということはその性格上難しいし、排除しなければならないというふうには位置づけられていないわけであります。したがいまして、農道の中には、一般交通がだんだんとふえてくるというようなことの中で、市町村などの判断によりまして市町村道として管理するというようなケースは間々出てくるわけでございます。

 しかし、農道整備事業によって整備された農道というのは、土地改良法に基づき受益農家などからの申請を受けて整備するものでありますし、形の上では受益者負担というのも予定されているというようなことを考慮いたしますと、農業利用の目的が阻害されないというふうに担保されなければならないと私は思うのでございます。

 そういう意味で、地域の実情に応じて市町村道として管理するということを全く排除するという考えではありませんけれども、これがやはり農業利用の目的が阻害されないような形で管理されなければならないということが基本だと考えております。

大串委員 農業利用の目的というものが阻害されないように管理されなければならない。大臣、それは農水省できちっと管理されているんでしょうか。管理の実態はいかがなんでしょうか。そこについてのしっかりした管理がないと、つくりっ放しになって終わってしまうんじゃないかと非常にそこを危惧するわけです。そういう例が多々あるやにも聞いております。その辺についての管理の実態、責任についてはいかがでしょうか。

中條政府参考人 お答えいたします。

 農道の管理につきましては、しっかりとそれが農業用に使用されている、そしてまた保全されているという観点から、私どもも業務上の通知も出して、そこは確認を行っているところでございます。

 あわせまして、平成十六年に調査をかけまして、これまで元年から十四年まで、ちょっと古いところはないということも一部ございますので、元年から十四年に完了しました農道につきまして、管理の実績等を把握しているところでございます。

 それによりますと、農道については三種類あるわけでございますけれども、委員御指摘の道路法に基づく市町村道、それから農道は、今、大体半々ぐらいの実績になっているというふうに承知をしております。

大串委員 今おっしゃった調査も、十六年のときに元年から何年かのところの調査が行われただけなんです。その後一体どうなっているんですかと役所の方にお尋ねしても、そのときの調査はしました、そのときの結果は今おっしゃったようなことですということはおっしゃるけれども、それ以降どうなっているか、あるいはそれ以前のものはどうなっているかというようなことを詳しく聞くと、なかなか出てこないんです。

 確かに、昭和四十年からつくっていますので、非常に長い延長の道路ができています。しかし、それは全部農道としての効果を発揮してほしいということで、今大臣がおっしゃったような趣旨でつくられている道路です。ですから、それが本当に農道としての機能を発揮しているかどうかというのは、きちんとした形でチェックしていかなきゃならない。

 確かに地方公共団体が行う事業に対する補助事業ですけれども、国としては補助金を出す以上、会計検査院だって入るわけですし、機能が発揮されているかというのはしっかり見ていかなきゃならないんだと思うんです。調査をやられるということになっていますね、次官がその旨を発表されています。調査はいつごろまでに、どういう形でやられるんでしょうか。

中條政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申しましたように、平成十六年度に元年から十四年の間に完了しました農道につきまして調査を行いました。それからおよそ五年近く経過しているわけでございまして、その後の状況等の変化もございます。こういった十四年度までに完了した農道に加えまして、その間、現在に至るまで完了したところも含めまして調査をすることとしておりまして、現在、実際のところ、調査のための手続を行っている最中でございまして、遅くともあすか来週早々にはこの調査のための依頼を発出するという予定にしております。

大串委員 これだけ厳しい予算の中で行っている事業でございます。ですから、その効果を発揮しているかどうかというのは、しっかり管理、確認してやっていっていただきたいというふうに思います。

 時間を予想外にとりましたので、最後に一つだけ。きょうは米の生産調整の話と、あと食料自給等の話もしたかったのですけれども、時間がないので、生産調整の話について一つだけお尋ねさせていただきたいと思います。

 昨年の補正予算で、いわゆる生産調整を今後五年間やりますと今約束される方に対しては、一時金をお支払いしますと五百億円つけられました。それによって、ことし十万ヘクタール分の生産調整を促進するというふうなもくろみになっておりました。十九年度補正予算ですから、もう執行しておかなければなりません。十九年度補正ですから、今やらなきゃならない。この五百億円を使って、今後五年間生産調整をしてもらうというその約束の進捗状況はいかがでしょうか。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 生産調整の推進状況につきましては、各都道府県から県ごとに目標配分等をめぐる状況についてヒアリングを実施してきているところでございます。

 各都道府県からは、農業者への米の生産目標数量配分は各県の目標を上回らないように行われたというふうに聞いております。きちっと生産者には目標数量配分の枠内で配分をしたということでございます。

 また、地域水田農業活性化緊急対策の推進状況につきましても、各都道府県から聞き取っているところでございますが、各都道府県におきます作付時期はまちまちでございます、そうしたことから、各都道府県の把握状況も、まだ精査はまちまちでございます。さらに把握に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

大串委員 いつごろまでに、どうやって把握されるんでしょうか。

 というのは、私非常に心配しておりまして、もう作付は始まろうとしています、ほぼ始まっているに等しい。農家の実態からすると、もうほとんど頭の中に入っているんです、ことしどうつくろうかなんて。にもかかわらず、今まだ確認している状態ですと。

 事務方の方に聞くと、六月十五日に一回集約しようというふうにおっしゃっていました。六月十五日に一回集約して、そのときにこれだけできていませんということになって、そこで何がしかの追加的な策ができるか。もうできないのですよ、あり得ない。

 そうすると何が起こるかというと、これだけ生産調整をしっかりやりますというふうに約束した人は約束した、しかし約束しない人は全く約束しない、すなわち、生産調整が非常に中途半端に行われるというこれまでの状況がことしも来年以降も続くということがほぼ確定する。正直者が結局損をするというような話もこの間からありましたけれども、それが長期にわたって固定するということがことし決まってしまうんです。そんなやり方でいいんだろうかと非常に私は疑問を、おかしいなという感じがします。本当にこんなやり方でいいのか。

 これは、きょうは、時間がありませんのでこれ以上突っ込みませんけれども、またこれは議論させていただきますけれども、六月の半ばに統計をとればそれでいいじゃないかというのは私は誤りだと思います。本当に、一日一日、日々状況を見て、どうですかと確認して、かつ、進捗状況を確認し、促進していかないといけない。そうしないと、正直にやった人が損を見るというようなことがさらに続く。この点を申し上げさせていただいて、またこれは議論させていただきます。大臣、ぜひよろしくお願いします。

 質問を終わります。

宮腰委員長 次に、横山北斗君。

横山委員 横山北斗です。

 四月十五日の委員会で、私はホタテ漁業について質問をして、その際、青森県の海域における貝毒検査の調査のポイントをふやしてほしい、今四、五カ所ですから、もう少し細分化してほしいということをこの委員会で話をしました。そうしましたら、それは県がきちんと科学的に調査をして、データを積み上げて、そして国に要望することが前提となる旨、御答弁があったわけです。

 このゴールデンウイーク中に、私はたまたま岩手の新聞を見ましたら、岩手は、その段階で十カ所貝毒が発見されて出荷できなくなっている、今現在出荷できるのは二カ所のみになったという記事が出ていて、あれ、何で青森は五、六カ所なのに岩手は十二カ所もあって、十カ所で今そういうことになっているのかということをそこで知って、少し調べてもらったんです。

 青森県は、ホタテの貝毒の検査に係る経費が百十四万円、岩手県は、これは計算する項目も違っているんじゃないかと思うんですけれども、予算として毎年千二百万から千三百万ぐらいかけて貝毒検査をやっている。岩手県の場合も、もともとは七海域あった。岩手というところは確かに太平洋側に面して、ぎざぎざというか湾が多数あって、したがって箇所が多くなるのかなという気もしたんですけれども、しかし、もともとは七海域での調査だったのが、ホタテ業者からの要望で、もう少し調査ポイントを細分化してほしい、こっちの方ではとれなくなっている、貝毒が発生しているけれども、ちょっと沖の方に出れば大丈夫なんだからというような形で、そういう細分化に対する強い要望があって、そして、平成十七年度から十二海域になったということがわかりました。

 そうすると、私の理解に間違いがなければ、県の担当部局や漁連あるいは漁協の努力の違い、青森が努力をしてないとは申しませんけれども、そういう差となってあらわれているとすれば、少し問題があるのではないかなと。しかも、青森の百十四万というのは県もお金を出しているそうですけれども、岩手県の千二百万から千三百万というのは岩手の漁連と漁協だけで負担しているお金だそうです。

 ですから、そういった差がそれぞれお隣の県なのにあらわれているとすれば、これはまさに、岩手では操業できても青森ではとまってしまう、とまってしまうと困るから未明の危険な時間にも操業に行かなきゃいけない、そんなような状況の中でああいう転覆事故が起きたというようなことを言う人も大勢いるわけで、漁業者同士の所得格差にもつながってきます。

 また、全国的に見て、食の安全という点からも、調査ポイントが多いところと少ないところで差が出てくるということも否定できないのではないかと思うのです。この点、財政支援も含めて、少し国の支援というか指導指針みたいなものがあってもいいのかなと私は思うんですけれども、農水省としてどのようにお考えか。また、それを受けまして、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 ホタテガイの貝毒の関係でございますけれども、委員御指摘のように、また先回の質疑においても御説明いたしましたように、海流の状況とか、それから貝の毒化傾向の共通性とか、そういった過去のデータに基づいて科学的に定めていく、海域を分けていく、そして調査点を設けていくというのが基本でございます。

 したがいまして、先回も細分化の問題があったわけでございますけれども、それを裏づけます科学的なデータとか、あるいはそうしたものをいただいた上でその妥当性を検討していくということになろうかというふうに思うところでございます。

 それで、私どもといたしましても、委員からの御指摘の中にもあったわけですけれども、交付金ということで、食の安全・安心確保交付金の中で財政的な手当てをしているわけでございますけれども、御指摘のように、青森県、岩手県の場合、それぞれ九十万強、六十万強の交付金が出ておりますけれども、その使い方におきましては、県の独自性といいますかお考えで、青森県の場合には、貝毒の分析、あるいは一部に機器等も使っているようでございますけれども、県の検査に百十四万円ということで、漁協の方は二十数万ということのようでございますけれども、岩手県の方では、六十数万円の交付金の方は貝毒の簡易測定法の実証というようなことに、共通経費のようなところで利用されておられまして、現地での貝毒の検査は漁協、生産者の方々の負担において行われているというふうに聞いております。地域地域の考え方で、何に国からの財政部分を使っていくのかというのはあろうかというふうに思います。

 本題に戻りますけれども、御指摘の細分化の問題のあり方につきましては、やはり地域の方でデータを積み上げていただいて、それが科学的に、その海域を一つのものとして見ることが適当かというところが基本にあろうかというふうに思っているところでございます。

若林国務大臣 ただいま局長が御説明、御答弁をしたとおりでございます。

横山委員 そうすると、ここで質問する前に、青森の県議会でやってこいということですか。だって、県の方から積み上げてこいというわけですよね。

 しかし、漁業者の側から要望が出ているけれども、いや、県は予算がなくてやれないよと言ってきていることに対して、国として指導指針とかつくってやらないと、食の安全は確保できないですよ。漁業者同士で所得格差とか出てくるじゃないですかということを言っているのに、そういうことは県の方でやってくれということですか、あくまでも。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 海域の分割等につきまして、私どもの方も、委員からの御指摘もございますので、青森県の方にも話をよく聞いてみたところでございます。

 県の方からは、漁業者の方からはそうした要望が出ていない、また、海域を区分する科学的なデータもないので、自分たちとしてはそういう要請をしていくつもりは現在のところないというふうなお答えでございました。

 現状をお答え申し上げました。

横山委員 要望があっても聞いてくれないから私のところに来ているんですけれども、そういうことを青森県の農林水産部の職員が言っていたというのであれば、それはそれで理解いたしました。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 ホタテガイを、例えば船の上でみんなでホタテを焼いて食べて、そのまま貝殻をぽんと海に捨てるのは、それは海でとれたものを海に返すという自然のことであって、これは何か罪になるわけではありません。しかし、ホタテの加工工場にホタテガイが持ち込まれて、中身をくりぬいて出た貝殻を海に捨てると産廃扱いになりますね。これは、同じことをしていても、罪になるのと罪にならないのはどうしてなんでしょうか。お答え願います。

山田政府参考人 今の御質問は、何が産業廃棄物に該当するかということになろうかと思います。

 これは廃棄物の処理及び清掃に関する法律の解釈というか考え方だと思いますので、本来はやはり所管する省庁にお聞きを願いたいと思うんですけれども、私どもの理解といたしましては、この法律の二条第四項第一号というのがございまして、廃棄物の具体的な内容は政令に委任をされているところです。

 施行令の二条で具体的に書いてあるんですけれども、その中で、食料品製造業において原料として使用した動物または植物に係る固形状の不要物と規定をされているということで、まさに業を決めて、それから出たもの、こういう規定のされ方をしておりますので、今お話がありました加工工場のものはまさに食料品製造業ですが、船の上というのはそうでないので、この産業廃棄物に該当しないというふうに理解をしております。

横山委員 関係する省庁じゃないのにお答えくださいまして、ありがとうございました。

 しかし、結論を言えば、例えば大型クルーザーに何百人と乗って、そこでパーティーをやって、どんと貝殻が海の中にほうられるのと、そうではなくて、本当に町の小さな加工工場で出る貝殻と、そっちの方は加工工場でつくったんだから産廃扱いなんだよ、だけれども、海の上でみんなで食べて、その貝殻を捨てる分には罪にならないんだよというのは、同じことをやっているわけですから、明らかにおかしいと思うんですね。

 そういうところが見直されれば、これによってどれだけ町の小さな加工工場が助かるかということを考えたときに、関係省庁が違うということであれば違うところで、ぜひ御検討願いたいなということです。

 もう少し私の方も考えたいと思いますが、しかし、ここは専門だと思いますので教えてください。今現実にホタテガイの貝殻を海に捨てるというか海に戻すことで、海洋資源の保護を図るという試みがむつ市とかあるいは北海道の方で行われているということを聞きます。これを私が知ったのは、漁場造成における水産系副産物(貝殻)のリサイクルに関するものなんですけれども、どういうことなのか、その成果も含めて、簡単に内容をお聞かせ願えればと思います。

山田政府参考人 今御指摘のありましたのは北海道で行った調査でございます。北海道の枝幸海域あるいは雄武海域において、平成十六年度から十八年度にかけて、国の委託事業でホタテガイの活用に関する調査を実施しました。

 具体的には、ホタテガイの貝殻を砂泥質、砂とか泥のような性質の海底に敷設をして、そこで生息するホタテガイが砂泥、泥の中に埋もれないようにするということで生育環境が改善するのではないか、そういう効果があるのではないかということで調査を実施したわけでございます。

 その結果といたしましては、やはりホタテガイの成長率が向上した、あるいは漁獲時によく貝が割れてしまって使い物にならないという貝割れの発生率というのがあるんですが、それも低下をしたということで、非常に良好な結果を示したということでございます。

横山委員 海もきれいになり、ホタテ、それから別のところではナマコなんかも効果があったというデータが示されたということを私も知りました。

 そうすると、これはまだ早いかもしれませんが、成果が上がっているのなら、やがて実用化等々のめどというのは一体どういうふうにお考えなのでしょうか。お聞かせ願えればと思います。

山田政府参考人 ただいまお話がありました調査の結果、北海道のほかに四カ所実施をいたしましたけれども、一定の成果があったということで、水産庁では、昨年三月にこの結果を取りまとめてガイドラインというものをつくりました。こういうふうに利用していけば使えますよ、そのときの注意事項はこういうことですというようなことを整理したわけですけれども、これを現在普及、推進しているという状況にございます。

横山委員 青森県では、ホタテをいっぱいとって、その貝殻を砕いて、何らかの方法でそれを別のことに利用していくとか、やはり産廃扱いされてしまうものですから、それをどういうふうに処理していくかということは、漁業者の間でも加工業者の間でも大変大きな問題になっております。今ガイドラインを策定した、その段階にあるということで理解いたしますが、この実用化に向けて、海洋資源もふえる、ホタテガイもいい形で成長していくということであれば、早期に実用化できるように、これからも御努力をよろしくお願い申し上げます。

 では、今度は貝にかわって鳥について幾つか質問させていただきます。私の方は非常に単純明快にお尋ねいたします。

 まず、四月に、秋田県側の十和田湖畔で回収されたオオハクチョウから毒性の強いウイルスが確認された。これまで、高病原性鳥インフルエンザウイルスの保有状況調査というのが行われてきて、検出されていないということになっていたはずなんですが、今回、秋田そして北海道、それから、まだ確認がとれていませんけれども、青森側の十和田湖でも見つかったということで、これまでの対象地域とか調査方法に問題はなかったのでしょうか。お尋ねいたします。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 高病原性鳥インフルエンザウイルスの保有状況調査に関するお尋ねでございますが、環境省では、平成十六年春に高病原性鳥インフルエンザ感染が発生されたことを機に、専門家の意見を踏まえまして、その翌年、平成十七年度から、渡り鳥などにおける高病原性鳥インフルエンザウイルスの保有状況、保有していないかどうかの確認のための調査を実施してきているところでございます。

 具体的に申し上げますと、この調査は、西日本において家禽が高病原性鳥インフルエンザに感染したことを受けて、なおかつ、シベリア方面では従来高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認されていない、そういうようなことも受けまして、その事案が発生しました西日本を中心に調査を実施してきたところでございます。

 そして具体的には、十九年度について申し上げますと、約七千五百検体ぐらいをふんを採取して分析しております。それから、森林に生息する野鳥など五百羽余りを捕獲しまして、その血液とか、のどの組織をとりまして、感染の状況を分析しております。いずれも、十九年度の調査の結果は陰性でございました。

 それから、今お話がございましたが、今般、この四月下旬から五月上旬にかけまして、高病原性鳥インフルエンザウイルスがオオハクチョウから検出されたということを受けまして、急遽、十和田湖周辺それから北海道における主要な渡り鳥の渡来地、こういうところで追加的にカモ類などのふんの採取を行っております。これまで千三百検体を分析しておりまして、サロマ湖分の検体、百検体につきましては、現在まだ分析中ということでございますが、それ以外の約千二百検体につきましても陰性ということでございます。

 そういう調査を実施しているところでございまして、環境省では、この五月の十二日に鳥インフルエンザ等野鳥対策に係る専門家グループ会合を開催いたしまして、この会合での意見も踏まえまして、今後、ウイルス保有状況調査の対象地域あるいは調査箇所、調査期間、こういったものの拡大につきまして具体的に検討を進めていきたい、このように考えているところでございます。

横山委員 ありがとうございました。

 この問題が発生するまでは、西日本でしか調査したことはなかった。北海道、青森、秋田方向でこの調査というものを行ったことはなかったということなわけです。

 では、これからどうするかという点について、その後に御説明ありましたけれども、十二日にこの問題を含めて専門家会議が開かれたと思うのですけれども、そこでどんなことが話し合われたのか。この問題が発生して、秋田、北海道、青森の人にしてみれば、ああ、そういう調査というのをこれまでシベリア方面に当たる地域ではやったことがなかったのかというのは、それ自体はやはり知れば愕然たる事実だと思うのですけれども、今後どうされるのかということを含めて、改めて、十二日のその専門家委員会の内容等を踏まえて御説明願えますでしょうか。

黒田政府参考人 お答えします。

 専門家グループ会合におきましては、鳥インフルエンザウイルスが検出された三つの事案につきまして概要を報告し、さらに、先ほど申し上げましたとおり、ふん採取による分析状況等の報告をいたしました。そして、専門家からは、ガン、カモ類の渡りの状況、あるいは今後必要な対応につきまして、例えば監視の強化等につきまして、御議論をしていただいたところでございます。

 その専門家会合の意見を踏まえまして、今後環境省としてどういうことをやるかということでございますが、まずは、先ほど御説明しましたとおり、ふんの分析をしておりますが、野付半島あるいはサロマ湖ということで、高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出された地区周辺におきましては、その周辺の陸の鳥、森林の小鳥などの捕獲をして、ウイルスが広まっていないかを確認する。これに関しましては、既に捕獲チームを現地に派遣いたしまして、本日から捕獲作業に着手しているところでございます。

 さらに、鳥インフルエンザウイルスの保有の確認をさらに強化するために、保有状況調査の拡充強化ということで、対象地域、調査箇所、すなわちそれを北海道あるいは東北地方も含めて大きく拡大していく、あるいは調査期間についてさらに効果的な時期を検討していく、こういうことをしていきたいと考えておりますし、周辺諸国、具体的には韓国あるいはロシアとの連携の強化を図っていきたい、このように考えております。

 また、専門家会合につきましては、今後も引き続き開催をしまして、都道府県における望ましい対応のあり方を取りまとめる、こういったことを、今後必要な追加措置について具体的に検討し、対策を講じていきたい、かように考えておるところでございます。

横山委員 それでは、これからはシベリア方面の地域も含めて、この鳥インフルエンザに関しては随時検査を行うという御答弁と理解いたします。

 それで、端的に聞きますけれども、今回のケースにおいて、先ほどから幾つか回答も見出せるんですが、改めてお聞きしますけれども、周辺住民への感染ということはあるんでしょうか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 鳥インフルエンザは、感染した鳥に直接触れたり、解体するなど濃厚に接触をすることにより、まれに人に感染することは否定できないと考えております。このため、今般の事例に関して、厚生労働省といたしましては、万全を期する見地から、全国の自治体に対しまして、鳥インフルエンザ発生時の対応について改めて周知をするとともに、自治体と連携し、人への感染防止のため必要な措置を講じたところでございます。

横山委員 そうすると、湖畔の周辺で弱っているのがいても、優しさから手を差し伸べたりしない方がいいということですね。大変重要なことだと思います。

 それからもう一つ、北海道、秋田で検出されたウイルスが韓国で鶏など家禽の間で流行しているウイルスに近いと予想される、十二日の会議でそういう見解を述べておられた大学の先生がいたようですが、北海道、十和田湖周辺の鶏とか家禽はどうなるんでしょうか。今どういうお考えでいるのか。最後に、これだけお聞かせ願えればと思います。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 今回検出されました高病原性鳥インフルエンザウイルスに関しましては、遺伝子の解析を専門の機関に環境省からお願いをしております。

 それによりまして、由来調査と呼んでおりますが、どういうタイプの遺伝子の変化が、DNAの変化が起きているのかという分析をしておりまして、その途中段階の分析状況につきまして、担当している研究者から一部発言があって、報道されたということだと思います。

 最終的な分析にはまだなお時間がかかるということでございまして、それによって、過去に日本国内で起きた鳥インフルエンザウイルスへの感染のときのウイルスの型というか、ウイルス株というような言い方をしますが、そういうものと共通するのかどうか、あるいは外国のものと共通するのかどうか、その辺を先ほど言いましたとおり韓国との連携というようなことも含めて、ことし韓国で事案がいろいろ発生しているというふうに聞いておりますが、どういう型のウイルスかという情報はまだ入っておりませんので、そういうものも求めながら、このウイルスの由来をしっかり調査していきたい、このように考えております。

横山委員 いい御答弁をありがとうございました。

 地元の新聞にそういう記事が載っておりますと、そのまま風評被害にもつながりますので、今の段階ではそんなことは言えないという理解をいたします。

 以上でございます。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

宮腰委員長 次に、本日付託になりました筒井信隆君外三名提出、食品情報管理伝達システムの導入の促進に関する法律案、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案及び食品の安全性の確保を図るための農林水産省設置法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。岡本充功君。

    ―――――――――――――

 食品情報管理伝達システムの導入の促進に関する法律案

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案

 食品の安全性の確保を図るための農林水産省設置法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岡本(充)議員 ただいま議題となりました食品情報管理伝達システムの導入の促進に関する法律案、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案及び食品の安全性の確保を図るための農林水産省設置法等の一部を改正する法律案から成る、いわゆる食の安全・安心対策関連三法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 昨年の一月以降、不二家の消費期限改ざん事件に始まり、ミートホープの牛肉偽装事件、赤福の消費期限等改ざん事件、船場吉兆の消費期限等改ざん、原産地不適正表示事件など、相次いで食品をめぐる不祥事が発生し、食の安全や信頼性に対する消費者の不安が高まってきています。

 また、昨年十二月から本年一月にかけて、殺虫剤メタミドホスが混入した中国産冷凍ギョーザによる中毒事件が発生し、輸入食品に対する消費者の不信も急速に高まりました。

 さらに、米国産牛肉については、相次ぐ不適格品出荷事例に加え、本年四月には、特定危険部位を含む米国産牛肉が国内に流通していた事実が判明し、政府の安全管理体制への消費者の信頼を大きく損ねました。

 しかしながら、国民の生命の根源として極めて重要な食品をめぐるこれらの事件に対する政府の対応は極めて及び腰であり、中国産冷凍ギョーザ中毒事件については解決の見通しが立っておりません。また、本年二月に発覚したジェイアール東海パッセンジャーズによる弁当の消費期限偽装問題に至っては、その責任がいまだ問われたかどうかも明らかではありません。

 その上、こうした事件に関して、消費者への情報提供も決して速やかに行われたとは言えません。

 例えば、ミートホープ事件については、疑義情報の提供を受けた農林水産省北海道農政事務所の初動対応がおくれたことや、情報のやりとりに関して北海道庁との事実認識が異なっていたことなど、政府の対応が不適切であったことは明らかです。

 また、中国産冷凍ギョーザ中毒事件では、最初に消費者から食中毒を疑う情報が通報されてから事件の公表までに約一カ月もかかったことから、関係省庁、都道府県機関などの情報伝達が不十分であったことが明白となりました。

 さらに、このような食品事故が発生した場合に食品の回収や原因究明などが迅速に行えるようなトレーサビリティーシステムの構築がいかに必要であるかということも、改めて認識させられました。

 こうした数々の事件を通じて、国民は、これまで以上に食の安全性、信頼性の確保や品質管理の徹底を求めており、国を初めとする関係機関のリスク管理体制、加工食品の原料原産地表示や期限表示、輸入食品の安全性確保措置、食品安全行政のあり方など、食の安全を確保するための国の対応が今まさに問われております。

 民主党は、従来からマニフェスト等において、食品安全行政の一元化、加工食品や外食における原料原産地表示の義務化、トレーサビリティーの拡充、徹底等の実現を目指してきました。食の安全に関するこれらの項目につきましては、現在党内で検討を行っております「農林漁業・農山漁村再生ビジョン 六次産業化プログラム」という農林水産政策の基本的ビジョンの中にも盛り込むこととしておりますが、昨今の政府の不十分な対応では国民の食の安全、安心を確保することは不可能であり、直ちに具体的な法制化に取り組むべきとの判断に至りました。

 それが今回提出をした法案であります。すなわち、トレーサビリティーシステムを構築するための食品情報管理伝達システムの導入の促進に関する法律案、加工食品の原料原産地表示義務の拡大、輸入に際しての安全性確保措置の届け出義務等を内容とする農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案、リスク管理の一元化のための食品安全庁の設置、リスク評価機能強化のための食品安全委員会の拡充、強化等を内容とする食品の安全性の確保を図るための農林水産省設置法等の一部を改正する法律案を食の安全・安心対策関連三法案として取りまとめ、今国会に提出した次第であります。

 次に、これら法律案の主な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、食品情報管理伝達システムの導入の促進に関する法律案についてであります。本法律案は、食品の安全性に対する国民の信頼が低下していること、食品の表示等に関する問題が多数発生していること等の食品をめぐる最近の諸事情にかんがみ、食品に関する情報提供を促進し消費者の食品の選択等に資するとともに、食品に関する事故等が発生した場合に迅速かつ的確に対応するための措置の実施の基礎とするため、食品情報管理伝達システムの導入の促進を図るものであります。

 第二に、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案についてであります。本法律案は、国民の食の安全、安心を守り、食品に関する消費者の合理的な選択に資するため、加工食品について原料または材料の原産地等の表示を義務づけるとともに、食品等を輸入するに当たって当該食品等に係る安全性確保措置の届け出を義務づけること等を内容とするものであります。

 第三に、食品の安全性の確保を図るための農林水産省設置法等の一部を改正する法律案についてであります。本法律案は、食品の安全性の確保等が喫緊の課題となっている状況にかんがみ、その課題に迅速かつ適切に対応することができる体制を整備するため、農林水産省に新設する食品安全庁に食品安全行政を一元化するとともに、内閣府に置かれている食品安全委員会の機能を強化することを内容とするものであります。

 以上が、いわゆる食の安全・安心対策関連三法案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

宮腰委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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