衆議院

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第1号 平成21年3月4日(水曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成二十一年一月五日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 遠藤 利明君

   理事 今村 雅弘君 理事 木村 太郎君

   理事 七条  明君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 筒井 信隆君

   理事 西  博義君

      安次富 修君    赤澤 亮正君

      井上 信治君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    岩永 峯一君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    近江屋信広君

      河井 克行君    木原  稔君

      斉藤斗志二君    谷川 弥一君

      徳田  毅君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      西川 公也君    茂木 敏充君

      森山  裕君    石川 知裕君

      大串 博志君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    笹木 竜三君

      神風 英男君    高井 美穂君

      仲野 博子君    横山 北斗君

      井上 義久君    菅野 哲雄君

平成二十一年三月四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 遠藤 利明君

   理事 今村 雅弘君 理事 木村 太郎君

   理事 七条  明君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 笹木 竜三君

   理事 筒井 信隆君 理事 西  博義君

      安次富 修君    赤澤 亮正君

      井上 信治君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    岩永 峯一君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    近江屋信広君

      片山さつき君    河井 克行君

      木原  稔君    斉藤斗志二君

      清水清一朗君    谷川 弥一君

      徳田  毅君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      西川 公也君    西本 勝子君

      橋本  岳君    松本 洋平君

      茂木 敏充君    森山  裕君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      石川 知裕君    大串 博志君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      神風 英男君    高井 美穂君

      仲野 博子君    横山 北斗君

      井上 義久君    菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       石破  茂君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   農林水産大臣政務官    江藤  拓君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         針原 寿朗君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  本川 一善君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            吉村  馨君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            羽藤 秀雄君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月四日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     安井潤一郎君

  小野 次郎君     片山さつき君

  永岡 桂子君     西本 勝子君

  丹羽 秀樹君     橋本  岳君

  西川 公也君     松本 洋平君

同日

 辞任         補欠選任

  片山さつき君     小野 次郎君

  西本 勝子君     清水清一朗君

  橋本  岳君     丹羽 秀樹君

  松本 洋平君     西川 公也君

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

同日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     矢野 隆司君

同日

 辞任         補欠選任

  矢野 隆司君     永岡 桂子君

同日

 理事細野豪志君平成二十年十二月二十六日委員辞任につき、その補欠として笹木竜三君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

一月五日

 牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案(山田正彦君外六名提出、第百六十三回国会衆法第七号)

 輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案(山田正彦君外六名提出、第百六十三回国会衆法第八号)

 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(古賀誠君外四名提出、第百六十八回国会衆法第九号)

 食品情報管理伝達システムの導入の促進に関する法律案(筒井信隆君外三名提出、第百六十九回国会衆法第一二号)

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律等の一部を改正する法律案(筒井信隆君外三名提出、第百六十九回国会衆法第一三号)

 食品の安全性の確保を図るための農林水産省設置法等の一部を改正する法律案(筒井信隆君外三名提出、第百六十九回国会衆法第一四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件

 平成二十一年度畜産物価格等に関する件


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴いまして、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に笹木竜三君を指名いたします。

     ――――◇―――――

遠藤委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 農林水産関係の基本施策に関する事項

 食料の安定供給に関する事項

 農林水産業の発展に関する事項

 農林漁業者の福祉に関する事項

 農山漁村の振興に関する事項

以上の各事項について、実情を調査し、その対策を樹立するため、本会期中調査をいたしたいと存じます。

 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

遠藤委員長 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、農林水産大臣から所信を聴取いたします。農林水産大臣石破茂君。

石破国務大臣 農林水産委員会の開催に当たりまして、所信を申し上げます。

 現在、我が国農林水産業は、生産額の減少、就業者の減少や高齢化、農地面積の減少などにより、まさに存亡の危機に瀕しております。全農業所得は平成二年から十七年までの十五年間に六兆一千億円から三兆四千億円へと半減し、農家戸数は三百八十三万戸から二百八十五万戸に減少し、基幹的農業従事者の六割は六十五歳以上となり、耕作放棄地は埼玉県の全面積を上回る三十八万六千ヘクタールに達し、農地転用にも歯どめがかからず、農地面積も五百二十四万ヘクタールから四百六十九万ヘクタールへとなりました。人、金、物、すべての面において持続可能性そのものが危うい状況になっております。

 この一方で、世界には、九億人を超える栄養不足人口が存在し、一日に二万五千人の人々が、六秒に一人の子供が餓死しております。そして、今後も世界の食料需給は逼迫基調で推移すると予測されております。しかるに、我が国においては、供給される食料の約二割に相当する千九百万トンが毎年廃棄され、その量は世界じゅうの食料援助の総量を上回っております。

 我が国農林水産業の持続可能性を確固たるものにし、世界全体の食料需給の安定化に寄与することは、独立国家として、そして世界に責任を負うべき国家としての我が国に課せられた責務であります。このような観点から、過去から現在に至る農業政策をあらゆる角度から検証し、見直しが必要なものについては思い切った改革を行うことが絶対に必要であると私はかたく信ずるものであります。

 以下、当面する農林水産行政の主な課題と取り組みの方針を大きく六点に分けて申し上げます。

 その第一は、農業の持続可能性の確保による食料自給力の強化です。

 およそ独立国家において、農業を持続的に発展させ、食料自給力の強化と食料自給率の向上を図ることが国家安全保障の観点からも重要な課題であることは論をまちません。しかるに、我が国は世界最大の食料純輸入国であり、カロリーベースの自給率は主要先進国中最低水準にあります。自給率が大幅に低下いたしましたのは、主にカロリーの供給源が米から肉類、油脂類へとシフトした結果でありますが、食料自給力を構成する農地、農業用水、農業者、技術等々の個々の要素そのものが危機にあるとの認識に立ち、現状を分析し、実効ある対策を講ずることが重要です。

 最も基礎的な生産基盤である農地については、転用規制を強化し、優良農地の確保を図るとともに、制度の基本を所有から利用に転換し、貸借を通じた農地の有効利用や意欲ある主体への面的集積を促進すべく、今国会に関連法案を提出いたしたところです。また、農村の資源の保全向上に関する地域全体での共同活動への支援や、農業用用排水施設の整備による安定的な用水供給機能の確保により、農業水利を中心とする農業を支える基盤を保全します。

 農業就業者の減少、高齢化などにより生産構造の脆弱化が進み、戦後一貫して我が国農業を支えてきた昭和一けた世代の方々が今後リタイアされることを考えれば、意欲ある担い手の育成、確保は喫緊の課題です。経営所得安定対策を初めとした担い手支援策を着実に推進するとともに、就農に関する相談活動や農業法人による実践的な研修の推進などを通じて、意欲ある若い世代などの新規就農を支援します。

 本年を水田フル活用への転換元年と位置づけ、連作障害がなく半永久的に使い続けることが可能な、我が国の貴重な食料生産基盤である水田をフル活用し、自給率の低い大豆、麦や飼料作物の生産拡大を図るとともに、米粉用、飼料用等の新規需要米の本格生産に取り組みます。今国会においては、新規需要米の利用促進のための法案を提出したところです。省エネルギー、省資源、コスト低減に向けた先導的な技術の開発、導入を加速するとともに、知的財産の戦略的な創造、保護、活用を進め、農業の潜在的な力の発揮を図ります。

 おいしくて安全な国産食材の積極的な活用に向け、我が国の農林水産物、食品の輸出額を平成二十五年までに現在の四千三百億円から一兆円規模へと倍増することを目指し、輸出環境の整備や意欲ある農林漁業者等に対する支援を行います。

 WTO農業交渉においては、引き続き、我が国の年来の主張であります多様な農業の共存を理念として積極的な議論を行い、将来の我が国農業のために何が必要かを十分に踏まえ、国益が適切に反映されるよう、戦略的に交渉に臨みます。一方、日豪を初めとしたEPA交渉については、我が国全体としての経済上、外交上の利益を考慮し、守るべきものはしっかりと守るとの方針のもと、食料安全保障や力強い農業の確立に向けた取り組みの進捗状況にも配意しつつ、政府一体となって取り組みます。

 第二は、地域に雇用とにぎわいを生み出す農山漁村の活性化です。

 農山漁村は、農林漁業の持続的な発展の基盤であるとともに、雇用の場の提供や多面的機能の発揮を通じ、国民の暮らしにおいて大切な役割を担っております。現下の厳しい経済情勢の中で、農山漁村を活性化し、地域経済の再生や雇用の拡大を図るべく、地域の創意工夫を生かした取り組みを推進します。

 地域の基幹産業である農林水産業と商業、工業等の連携を強化し、地域産品の販売促進や新商品開発など、新たな地域ビジネスの展開を促進します。また、地域のリーダーとなる人材の育成や地域資源の保全、活用を通じて農山漁村集落の再生を図るとともに、都市と農山漁村の共生・対流や、農産物直売所の設置による地域経済の活性化、鳥獣被害から農山漁村の暮らしを守る対策の展開に取り組みます。

 雇用情勢が急速に悪化する中、農林水産分野における雇用の創出を図るため、農業法人に対し、就業希望者を雇い入れ実践的な研修を行うための経費を助成するなど、農林漁業への新規就業を強力に促進いたします。このほか、基盤整備等の公共事業の実施を通じた雇用の確保に取り組むとともに、厚生労働省と連携し、バイオマスの利活用など、農山漁村の創意工夫を生かした新たなビジネス展開による雇用創出を図ります。

 第三は、食の安全と消費者の信頼の確保です。

 昨年の事故米穀の不正規流通問題や中国産冷凍ギョーザの問題等により、消費者の不安が高まっていることを極めて重く受けとめ、食の安全と消費者の信頼確保に向けた取り組みを強化しなくてはなりません。

 まず、科学的原則に基づいたリスク低減対策を推進し、農薬など生産資材の適正使用の指導、GAPやHACCPなどの工程管理手法の導入等により生産から消費の各段階を通じた食品の安全確保に努めます。

 主食である米については、トレーサビリティーの導入や、米関連商品の原料米の産地情報の消費者への伝達、用途が限定された米の横流しを防止するためのルールの導入を内容とする法案を提出し、米流通システムの見直しを行います。

 また、食品表示Gメンによる不適正表示の監視、取り締まりや、食品の製造、流通等に携わる企業の法令遵守を徹底するなど、消費者の視点を大切にして、関係省庁と連携を図りながら消費者の信頼を確保します。

 米国産牛肉の輸入問題については、現在、日米共同で技術会合の報告書の取りまとめを行っているところであり、食の安全と消費者の信頼確保を大前提として、科学的知見に基づいて対応します。

 第四は、資源、環境対策の推進です。

 農林水産業の持続的発展を図るに当たっては、その自然循環機能の維持増進を図り、環境との調和に十分配慮することが必要です。

 美しい森林(もり)づくりを国民的な運動として展開し、間伐等の森林の整備、保全による森林吸収源対策を着実に推進するとともに、農地土壌の温室効果ガスの吸収源としての機能の向上や農林水産分野における温室効果ガス削減効果の表示に取り組むなど、低炭素社会の実現に向けた取り組みを促進します。食料供給と両立できる持続可能なバイオ燃料の生産に取り組むとともに、農林水産分野における地域の生物多様性を保全するための取り組みを推進します。

 第五は、森林・林業政策の推進です。

 森林は、地球温暖化の防止、国土の保全や水源の涵養などの多面的機能を有しています。この緑の社会資本としての森林の有する機能が将来にわたって発揮されるよう、適切な整備、保全を進めることが必要です。我が国は世界有数の森林国でありながら、木材自給率はわずか二〇%にしかすぎません。機械化は進まず、就業者は高齢化し、森林の整備は相当に立ちおくれており、多くの林業経営が極めて深刻な状況にあります。

 このため、国民のニーズをとらえた多様で健全な森林(もり)づくり、国民の安全、安心の確保のための治山対策を推進するとともに、森林施業の集約化、路網整備等によるコスト削減、林業の担い手の育成、確保、国産材の加工、流通体制の整備、国産材住宅に関するワンストップ相談窓口の設置など、川上から川下に至る施策を総合的に展開し、国産材の利用拡大を軸とした林業・木材産業の再生を図ります。

 第六は、水産政策の展開です。

 我が国の水産業は、漁獲量のピークである昭和五十九年から平成十九年までの間に、遠洋漁業で約八割、沖合漁業で約六割、沿岸漁業で約四割漁獲量が減少するとともに、漁業者の減少、高齢化や漁船の老朽化等による漁業生産構造の脆弱化などにより、極めて厳しい状況に置かれております。

 低位水準にある水産資源の回復、管理を推進するとともに、省エネルギー、生産性向上のための取り組みへの支援による漁業経営の体質強化や、我が国漁業の将来を担う経営体の育成、確保を図ります。また、多様な流通経路の構築を通じた産地販売力の強化など、加工、流通、消費施策を展開するほか、漁港、漁場、漁村の総合的な整備等を行います。これらの施策を通じて、将来にわたって持続可能な力強い水産業の確立を目指します。

 平成二十一年度の農林水産予算の編成に当たりましては、ただいま申し述べました農林水産政策を展開するために意を用いました。必要な法整備につき、今後、御審議をよろしくお願いいたします。

 以上、所信の一端を申し上げました。

 国民本位の農林水産行政を実現するためには、農林水産省の抜本的な改革が必要です。昨年の事故米問題は、農林水産省が抱える幾多の問題を象徴したものであったと私は考えております。私のもとに設置した改革チームから提出された提言には、「農林水産省は廃止されて然るべきとの審判が国民から下されたと、職員一人一人が自覚するべきである。」「この改革を契機に、」「伝統的でなじみ深い調整型政策決定プロセスと訣別しなければならない。」とあります。私は、ここに示された強烈な危機感、責任感そして緊張感をすべての農林水産省職員と共有し、行政はサービス業であり、生産、流通、消費にかかわるすべての方々がお客様であるとの意識を徹底させ、親切で丁寧で正直な農林水産行政の確立に向け、昨年十二月に取りまとめた農林水産省改革の工程表に沿って、政策決定プロセスを見直し、業務と機構の改革を進めます。

 経済情勢が厳しさを増す中で、農林水産業は、我が国に残された数少ない成長産業であり、その限りない潜在力を引き出すことは、日本に新たな底力を生み出します。適切な気温や降雨量など恵まれた気象条件。豊かな土壌。四面環海であり、世界第六位の面積を有する排他的経済水域。国土の六六%を占める世界有数の森林率。我が国は、第一次産業にとって世界で屈指の恵まれた環境にあるのです。百年に一度とも言われる世界的な経済危機のただ中にあって、外需依存型経済から内需に重点を移すこと、新たな雇用を創出することが大きな課題となっておりますが、第一次産業はその中で大きな役割を果たしていかなければなりません。その限りない潜在力を引き出し、底力を生かすことこそが、日本の輝ける未来を切り開く原動力となるものと私は確信いたします。

 先般、政府に農政改革の推進に向けた関係閣僚会合が設置され、新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けた議論が開始されました。農政改革はただ農林水産省のみで行い得るものではありません。私は、農林水産業の問題は、広く国民的な、国家的な課題でありながら、農、林、水の現場は国民から遠く、消費者、納税者との一体感に乏しかったのではないかと思っております。

 大切なものはただではなく、だれかがそのコストを負担しなくてはなりません。どの国も農業を保護しており、我が国が際立って高い保護水準にあるわけでもありません。問題は、何を、だれが、どのような負担によって、どのように守るかということであります。

 スイスにおいては、国産の卵は日本円にして約六十円、輸入品は二十円であるにもかかわらず、多くの消費者が、これで農家の生活が支えられ、私たちの生活が支えられるとの理由で国産を選択しているとの話を聞いたことがありますが、我が国はこれとはなお遠い状況にあるのではないでしょうか。政府を挙げて広く議論を喚起し、この課題に取り組んでまいります。

 先般も申し上げましたように、我々に与えられた時間は極めて少なく、選択の幅は著しく狭いものであります。私は、あらゆる議論はすべからく透明性を持って、徹底して行われるべきものと考えており、委員長を初め委員各位におかれましては、今後とも一層の御指導、御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げます。

 以上であります。(拍手)

遠藤委員長 次に、平成二十一年度農林水産関係予算の概要について説明を聴取いたします。農林水産副大臣石田祝稔君。

石田副大臣 平成二十一年度農林水産予算の概要を御説明申し上げます。

 平成二十一年度一般会計予算における農林水産予算の額は、関係府省計上分を含めて二兆五千六百五億円となっております。その内訳は、公共事業費が九千九百五十二億円、非公共事業費が一兆五千六百五十三億円となっております。

 平成二十一年度の農林水産予算は、食料安全保障の確立、農山漁村の活性化、資源、環境対策、林業、山村の再生や力強い水産業の確立などを進める観点から、既存の予算を見直した上で大胆に予算の重点化を行うなど、新たな政策展開が図られるよう編成いたしました。

 以下、予算の重点事項について御説明いたします。

 第一に、国際的な食料事情を踏まえた食料安全保障の確立に取り組みます。

 まず、水田等を有効活用し、米粉・飼料用米、麦、大豆等の需要に応じた生産を拡大する取り組みを総合的に支援するとともに、米粉・飼料用米等の利用拡大や飼料自給率の向上を図り、食料供給力を強化します。また、国産野菜、果実等の利用拡大や耕作放棄地解消のための取り組み等を支援してまいります。

 あわせて、意欲と能力のある担い手を育成すべく、水田・畑作経営所得安定対策を着実に実施するほか、食料の生産基盤である農地の確保、有効利用を促進し、国内農業の体質強化による食料供給力の確保を図ってまいります。

 さらに、国際協力等を通じた世界の食料問題解決への貢献や、我が国農林水産物の輸出拡大、省エネ、省資源化の推進、生産現場から食卓にわたる食の安全、消費者の信頼確保と食生活の充実、先端技術や知的財産の活用等に取り組みます。

 第二に、農山漁村の活性化対策を展開します。

 まず、地域活性化の推進役となる人材育成への支援や、小学生の宿泊体験の全国的な展開等を通じて、都市と農山漁村の共生・対流による農山漁村の活性化を推進します。

 また、地域の基幹産業である農林水産業と商工業等との連携、いわゆる農商工連携を強化し、それぞれの強みを十二分に発揮した事業活動を促進します。

 さらに、鳥獣被害から農山漁村の暮らしを守る対策を展開するとともに、防災・減災対策を講じ、安全、安心で活力ある農山漁村づくりを推進します。

 第三に、資源、環境対策を推進します。

 まず、農林水産分野における低炭素社会の実現のため、温室効果ガス削減効果を表示する取り組みや、農地土壌の温室効果ガスの吸収源としての機能を高める取り組み等を通じて地球温暖化対策を強化します。

 また、食料供給と競合しない非食料原料を用いた国産バイオ燃料の生産拡大等、バイオマス利活用を推進します。

 このほか、田園地域、森林、海洋を保全し、生物多様性を重視する農林水産業を推進します。

 第四に、低炭素社会に向けた森林資源の整備、活用と林業、山村の再生に取り組みます。

 まず、低炭素社会の実現に不可欠な森林吸収源対策の一層の推進に向け、間伐等の森林整備が進みにくい条件不利森林の早期解消に向けた取り組み等の充実を図り、国民ニーズをとらえた美しい森林(もり)づくりを推進します。

 また、充実しつつある人工林資源の循環利用を担う林業経営体等の育成を支援するとともに、需給変化に対応した木材産業構造を確立し、国産材利用の拡大に取り組みます。

 さらに、社会全体で森林資源を保全、活用し、山村の再生を図ってまいります。

 第五に、将来にわたって持続可能な力強い水産業を確立します。

 まず、省エネや構造改革の推進により、漁業経営の体質を強化するとともに、漁業の担い手を育成、確保します。

 また、産地販売力を強化すること等により、新鮮で安心な国産水産物を消費者に届けるとともに、漁業者手取りの確保を図ります。

 資源管理、回復を推進するとともに、漁港、漁場、漁村の総合的な整備や多面的機能の発揮に向け、安全で活力ある漁村づくりや環境、生態系保全の取り組み等を支援してまいります。

 次に、特別会計については、食料安定供給特別会計等について、それぞれ所要の予算を計上しております。

 最後に、財政投融資計画については、日本政策金融公庫等による財政融資資金の借り入れなど総額二千三十六億円を予定しております。

 以上で、平成二十一年度農林水産予算の概要の説明を終わります。(拍手)

遠藤委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官針原寿朗君、生産局長本川一善君、農村振興局長吉村馨君及び資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長羽藤秀雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。民主党の仲野博子でございます。

 石破大臣にこの農水委員会で初めて質疑させていただくこと、私、大臣に対して大変期待もしておりますし、また、農水省の職員の皆様方からは、我が大臣はとにかく一生懸命頑張れと毎朝激励をいただいて、職員の士気も大変高まりつつあるということで、私は、そういった意味では、これからの農水省に期待をしてきょうの質問をさせていただきたい。よろしくお願いをいたします。

 我が国の酪農は、国民に対する牛乳・乳製品の安定供給の基盤に加えて、地域経済そして社会の維持発展に重要な役割を果たしているわけでございます。しかしながら、近年の配合飼料の価格の上昇により生産コストが上昇したことなどにより、昨年は特に畜産危機と言える状況になってしまいました。

 酪農家は、平成十八年度の過剰在庫による生乳廃棄処分などに見られたように、時には減産、時には増産といった生乳の生産調整や配合飼料価格の高騰などの経営外の要因に翻弄され続けてまいりました。このため、現場からは、中長期に安定した経営ができるよう需給見通しをきちんとしてほしいといった切実な声もありまして、現場の実態に即して、中長期的な視点に立った施策の展開が必要と考えるわけでございます。

 酪農は、地域において、生産、供給のみならず、加工、運輸、流通などの産業分野とも密接なつながりがあり、酪農の崩壊は、地域経済、雇用に影響を与えかねません。このため、酪農経営を支えることが地域経済を支えるという視点に立って施策を講じていくことが極めて重要であると思います。

 以上を踏まえまして、現在の酪農の状況についてどのように大臣は認識をされているのか、今般の畜産物価格及び関連対策は緊急対策なのか、または中長期を見通した対策とするつもりなのか、今、大事な政策的なものが求められると思います。大臣の見解を求めたいと思います。よろしくお願いします。

石破国務大臣 私も、今から何年ぐらい前でしょう、二十年ぐらい前ですか、自民党で畜産、酪農の対策委員長をいたしました。また、委員と議論させていただくのはこれが初めてですが、ふと思い出しますと、宮沢内閣の政務次官当時に、やはり酪農、畜産でこうやって答弁をしたことを今思い出しております。

 当時も今もそうですが、酪農というものが地域経済にとって極めて重要な産業であるということ、そして、労働時間も極めて長く、本当に専業で取り組んでおられる方々を支えていかねばならないという意識は委員と共有するのではないかというふうに考えております。

 緊急対策ということで、飼料が高騰しました、えさが上がりましたということでありまして、配合飼料価格安定制度により、配合飼料価格の高騰が畜産経営に及ぼす影響を緩和するということをいたしました。あるいは、補完マル緊事業などと言っておりますが、緊急的な経営安定対策を講じたところでございます。

 これはあくまで緊急的な対応でございまして、委員がおっしゃいますように、中長期的な視点から政策を組み立てていかなければなりません。それは、国産飼料の生産、利用拡大をしていかねばならぬということであります。あわせて、自給飼料基盤に立脚した畜産経営を構築するということが重要だと認識をいたしております。そういう形であるべき酪農の姿というものを構築していきたいということで、青刈りトウモロコシの作付拡大あるいは放牧の推進など、飼料自給率向上対策を推進しております。

 二十一年度についてでございますが、配合飼料価格や生産物価格の動向など、最近の我が国の畜産をめぐる情勢を十分踏まえ、明日開催予定の食料・農業・農村政策審議会畜産部会で御意見を伺った上で、畜産農家に希望を持っていただけるように、必要な対策を決定いたしたい。

 また、今は、この委員会の議論をこの決定前に行っております。当然、ここで出ました御議論というものも、国権の最高機関において議論されておることでございますから、適切に反映をされるべきもの、かように考えております。

仲野委員 大臣が二十年前、酪農にかかわってやられてきたということで、酪農経営にかかわる方たちが朝早くから夜遅くまでの大変な重労働であるということも認識をされておりまして、昨今、経営状況が大変厳しいということで、これは配合飼料だけに依存するのではなくて、これからやはり国産飼料の拡大を充実させていく必要があるのではないかという御答弁をいただきました。

 そこで、先ほど私が中長期的な見直しが必要であるということで、実は、ことし二月六日に開催された食料・農業・農村政策審議会畜産部会においては、今後の酪農業の見通しが何も見えない中で生産者に規模拡大だとかあるいは生産量をふやせとは言えないので、十年先を見据えた抜本的な経営安定対策が必要だという意見も出されたということを伺っているわけでございます。

 そういった意味で、場当たり的な対策ではなくて、日本の酪農業、特に北海道は農業といえばイコール酪農とも言われる中で、やはりしっかりとした安定経営ができるような仕組みを石破大臣が農水大臣でおられるときにぜひやっていただければなということで、もう一度御答弁を求めたいと思います。

石破国務大臣 委員御指摘のように、やはりあるべきというのは、自給飼料というものに重きを置いて考えなければいかぬというものだと思っております。

 北海道というのは、別に北海道だけが酪農ではございませんが、いろいろな条件においてEUとそんなに遜色があるものだと考えておりません。しかるに、経営がそんなに楽ではないということもよく存じております。そこにおいて、負債というものが大きな意味合いを持っているということもよく認識をしておるつもりであります。

 北海道のいろいろな条件というものが最大限に発揮できるように、そして自給飼料というものがきちんと定着をするように努力をしていかねばならないし、恐らくこれから御議論があるのかもしれませんが、昔から南北戦争とか南北対立とかいうお話がありまして、北海道と内地における酪農の役割分担をどういうふうに考えるかということについてもきちんとした議論をしていかねばならないのだと思っております。

 ただ、需要につきまして、やはり年によって相当の振れがございまして、涼しい夏だったりすると需要が伸びないとか、そういうことがございます。しかしながら、大体トレンドとして畜産物あるいは乳製品の消費というのは伸びる傾向にはございますので、これをどのようにして定着させていくか、それが、経営の安定というものに将来的にきちんとした展望を持っていただくべく、政府としても努力をしていかねばならないと思っておりますので、今後とも御教示賜りますようお願い申し上げます。

仲野委員 次に、加工原料乳生産者補給金制度について伺ってまいりたいと思うんです。

 平成二十年二月の畜産物価格決定時においては、補給金単価十一円五十五銭、限度数量百九十五万トンとされ、また、この補給金単価については、昨年六月の追加対策において期中改定が行われ、十一円八十五銭とされておりました。

 今、酪農経営においては、配合飼料価格が一月に入り下がったとはいえ、二年前に比べてまだ高い水準にあるわけであります。肥料価格や粗飼料価格も上昇している状況にあり、また、飼料高騰で生産コストが上昇した時期と乳価の引き上げ時期にタイムラグというものがありまして、前年度に生じた赤字を解消するには相当な時間がかかる、そういう厳しい状況にあることには変わりはありません。

 以上を踏まえて、生乳の再生産確保と生産意欲の向上、経営安定の観点から、限度数量及び補給金単価については現行以上とすべきと考えますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

石破国務大臣 御指摘のように、期中改定を行いました。期中改定を行いましたことにより、加工原料乳地域における牛乳の再生産の確保が図られているということではないかというふうに私自身分析をいたしておるところでございます。

 補給金単価と限度数量につきましての御指摘がございました。

 確かに配合飼料価格というのはピーク時よりは低下をいたしておりますが、依然高い水準にあるということはよく認識をしておるところでございます。

 補給金単価につきましては、暫定措置法に基づきまして、加工原料乳地域におきます生乳の再生産を確保することを旨として、生乳の生産費その他の経済情勢を考慮し、食料・農業・農村政策審議会の御意見を聞きまして決定するということになっておるわけでございます。

 では、二十一年度の補給金単価についてでございますが、これは、直近の物価等の状況を踏まえます。直近の物価等の状況を踏まえなければ、おっしゃいますようにうまく現状を反映したことになりませんので、繰り返しになりますが、直近の物価等の状況も踏まえました上で、一定のルールに基づき算定をいたします。

 また、限度数量につきましては、生乳の需給見通しを基本に、生産者団体の皆様方が行われます計画生産等を考慮し、設定をしてまいるということでございます。

 委員の御認識は承りました。

仲野委員 この制度というのは、言うまでもありませんが、補給金の水準については、決定過程の透明性、客観性を確保する観点から、十三年度から、これまでの不足払いによる算定方法を改め、生産費の変動等に基づく一定のルールにより算定するとされてまいりました。

 しかしながら、社団法人全国酪農協会あるいは全国酪農業協同組合連合会、日本酪農政治連盟、日本ホルスタイン登録協会の四団体が平成二十年十一月に取りまとめた日本酪農の持続的発展のための提言、中間答申においては、平成十三年度から導入された算定方式について、確実に生産費をカバーできる水準になるかは制度的に担保されないとし、旧制度下での所得補償機能が大きく後退したことが現在の経営苦境の一因になっていると指摘もされているわけであります。このため、酪農家が中長期的に経営の見通しが立てられる経営安定対策であることや、また、価格の変動のみではなくて、生産費の変動も考慮に入れた生産者の所得安定対策であることが必要と我々民主党も指摘しております。

 また、政府の食料・農業・農村政策審議会畜産部会の委員を務められております東京大学の鈴木教授も、現行では乳価の大幅な改定は不可能であり、目標価格との差額を補給する不足払い型の補給金算定方式の変更が必要になると述べられているんですね。

 加工原料乳生産者補給金制度についても今後見直していく必要があると考えますが、今私が申し述べました新たな食料・農業・農村基本計画または酪農及び肉用牛の近代化方針などにおける検討方針を含め、もう一度大臣に伺いたいと思います。

石破国務大臣 この制度がベストだというものはなかなか世の中には存在しなくて、不足払いのやり方には不足払いなりの問題点がございます。また、鈴木教授がそのような御所論を述べておられるということは、私自身よく承知をいたしておるところでございます。

 結局これは、いろいろな御議論があるのかと思いますが、中長期的に畜産、酪農経営を発展させるということを実行していきますためには、需要に応じた生産を行っていくということをやっていかねばなりません。そのためには、生産者と乳業メーカーというものがなるべく対等な立場で交渉するということが必要なのだろう。乳業メーカーと生産者が対等な立場で交渉できるということ、そしてそれによって市場実勢を反映した価格を決定していくということが必要なのではないかというふうに思っておるところでございます。

 そうしますと、では何ができるんだ、生産者にとって望ましい乳価を実現するためにはどうするんだということになりますが、結局、生乳販売権限を一元化する、生産者団体の交渉力を強化したい、それが重要なのではないかという認識を持っておるところでございます。

 したがいまして、生乳販売権限の一元化が図られるためには何をするかというと、大規模な貯乳施設あるいは大型ローリー車の整備といったような集送乳合理化を進めるためのハード整備などを通じまして、生産者団体の交渉力の強化を支援したいというふうに思っております。

 当面、生産者団体の交渉力を強化し、生産者団体、生産者に納得していただけるような価格が実現するような、そういう力をつけるために政府としては支援をしたい、今そのように考えております。

仲野委員 大臣も御案内だと思うんですが、牛乳・乳製品の安定供給のために一番重要なのは、酪農家が安心して生乳の生産を継続できるよう、中長期的視野に立って経営環境を整えて、必要量をしっかり確保することにほかならないのではないのかなと。

 このようなことを踏まえて、我々民主党が、生産数量目標に応じた販売農業者に対して生産費と販売価格との差額を補てんする新たな畜産・酪農所得補償制度を導入することを提案しているわけであります。これにより、飼料価格の高騰による生産費の上昇や販売価格の下落など、経営に与えるあらゆる事態に対応することができると同時に、生産数量目標に応じた生産を推進していくことにより、食料自給率を確実に向上させることができると考えているわけであります。

 我々の提案している畜産・酪農所得補償制度について大臣はどのように、大変いいものであると思われていると思いますけれども、よろしくお願いいたします。

石破国務大臣 この所得補償制度というものにつきましては、またよく議論をさせていただきたいと思っております。予算委員会でも筒井議員からいろいろな御質問があり、議論をさせていただきました。まだまだ私どもとして、御党が唱えられておる制度の詳細までよく理解をしておるわけではございません。また、いろいろな実施に当たりましての法律につきましても、御見解を承りたいと思っております。

 現在のところ私として思っておるところを申し述べますと、恐らく、今委員がおっしゃいます所得補償制度、生産数量目標に即した生産を行った販売農家に対し生産費と販売価格との差額を基本として交付金を交付する、こういうようなものだというふうに理解をいたしております。

 そうなりますと何が起こるんだろうということを心配するのですが、畜産農家による生産コストの低減あるいは生産物の高付加価値化に向けた努力、これはどうなるんだろうか。払ってもらえるということになると、もっとコストを下げましょうねとか、付加価値をつけましょうねとか、そういう努力をしなきゃいけないねということが阻害されるようなことになりはせぬか。(発言する者あり)ですから、そこはどうなんだろうかということについて今私は思っておって、そうではないのだということを今おっしゃいますので、また議論をさせていただきたいというふうに思っておる、これが一点。

 第二点は、国が生産コストと販売価格の補てんをするわけであります。そうすると、当然のことですが、販売価格は低くなっちゃうんだ。販売価格が低くなっちゃうと、財政支出というのは物すごくふえるのだ。ここの財政支出の部分を、まあ、幾らでも払えばいいんだと言えばそれまでのことなんでありますが、どのようにしてそれを払っていくか、また財源はどうするのか、それが非常に大きなものになりはしないかという懸念を今のところ私は持っております。

 第三点についてでありますが、食肉等について申し上げれば、仮に生産数量を調整するということがあったとしても、それは輸入分で相殺されちゃうことになってしまうんではないだろうか。つまり、国内で調整をしたところで、それが輸入によって相殺されちゃいますと、一体何のことだかよくわからぬということが起こってしまうわけでございます。

 それは、私として三つの懸念を持っております。今、私個人として、御党の法案、あるいはそこから出てくるいろいろな可能性について詳細に分析、検討いたしておるところでございますので、また議論をさせていただきたいというふうに考えております。

 私どもといたしましては、実態に応じた経営安定対策を実施するということによって経営の安定が図られるよう支援をしたいというふうに考えておりますので、御党のお考えと異なるところが多いかと思います。先ほど私、所信の中で、議論は透明性を持って行いたい、そして徹底してやりたいというふうに申し上げました。何が本当に畜産、酪農にとってベストなのか、そして今後の日本の酪農、畜産の発展ということにとってベストなのか、そして納税者、消費者にどのように理解をされるか、いろいろな角度から議論をさせていただきたいと考えております。

仲野委員 大臣、いずれにいたしましても、我々の提案しております畜産・酪農所得補償制度について中身をもう少し詳しく調査したいということですので、やっていただきたいんですが、ただ、今の答弁を聞いていますと、農家は頑張っても頑張っても収入につながらないんです。ですから、さまざまな昨今の状況の中で、だれが一番困っているかといったら、やはり農家なんですよ。そういったことがあるから、そういったときにしっかりと対応できるような政府としての後押しをやるべきことを私はそこで言いたいのであります。

 したがいまして、それをやったからといって努力をしないんじゃないのかじゃなくて、やってもやっても報われない仕組みであるからこそ、私はあえて強くこのことを、本当に我々自信を持って出させていただいた提案でありますので、大臣は非常に前向きな方だと聞いておりますので、しっかりと中身を見ていただければなと思っております。また、これは次の機会にその結果を、大臣からいい答弁を聞きたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、チーズのことなんですが、日本のチーズ、外国から輸入されているのは大体八割と聞いております。

 そこで、本当に残念なことは、飲用牛乳の消費が減少する中で、生乳需給を安定させるためには、今後需要拡大が期待できる発酵乳あるいは液状乳製品、チーズへの供給拡大を進めていく必要があるのではないか。このため、国産生乳の需要構造の改革を推進する観点から、発酵乳あるいは液状乳製品、チーズの供給拡大を支援する生乳需要構造改革事業が平成十九年度より措置されているわけであります。

 現在、我が国で消費されているチーズの八割が輸入ということで、今後どれだけ国産チーズが市場を奪えるかが課題と言えるわけであります。我が国の生乳生産の拡大と自給率の向上を図る観点から、チーズの生産拡大が必要不可欠と考えるわけであります。

 北海道ではチーズ工場の設置など生産拡大に向けた機運が高まりつつある中で、国産乳製品の需要拡大を図る観点から、このような動きを国として後押しし、この生乳需要構造改革事業の拡充を含めて積極的に取り組むべきと考えますが、大臣のお考えを求めたいと思います。

石破国務大臣 おっしゃるとおりです。ですから、十九年度末から大手乳業三社のチーズ新増設工場が稼働しておるところでございます。

 チーズというのは相当に勝負できるねと思っておりまして、供給をふやせばそれに沿って需要がふえるだろうというふうに見込んでおるところでございます。したがいまして、生乳の拡大数量に応じて奨励金を交付するという生乳需要構造改革事業を実施しているところでもございますし、工場が順次稼働しているところでもございます。

 供給拡大への取り組みについて今後とも積極的に進めてまいりたい、このように考えております。

仲野委員 我が国酪農において、今、ホルスタイン種が九九%を占めているわけであります。しかしながら、近年、ブラウンスイス種の登録が増加してきております。このブラウンスイス種は、放牧適性が高く、牛乳にはチーズに適した良質なたんぱく質が豊富に含まれるとされておりまして、経費を抑えながら特色ある経営を目指す酪農家の導入の動きが見られているわけであります。

 このような現状は、ホルスタインが九九%を占める乳牛品種構成は世界でも特異とされており、国がこれまで規模拡大と効率性のみを追求してきた結果であって、国産乳製品の需要の開拓に取り組んでこなかった、つまり、多様な酪農の可能性を封じてきたことに問題があったと言わざるを得ません。

 そこで、ブラウンスイス種などの多様な乳用種の導入についてどのように考えておられるのか、また、国産チーズの振興などによる国産乳製品の新たな需要の開拓に向けて政府として積極的に取り組んでいくべきと考えますが、改めて大臣の見解を求めたいと思います。

石破国務大臣 済みません、私、これは見たことがなかったので知りませんでした。北海道と関東でちょっといるのかな、日本全体で千頭ぐらいかしらというふうに思っております。

 おっしゃったような特色を持っておるブラウンスイス種でございまして、これら乳用種の海外からの輸入につきましては、品種を問いませんが、純粋種を繁殖用に利用する場合には、輸入関税、一頭当たり六万三千七百五十円ということでございますが、これを免除するという措置を設けておりまして、さまざまな特徴を持っております乳用種の導入を支援しておるところでございます。

 需要拡大については今後もやってまいりたいと思っておりまして、ブラウンスイス種を導入して特色あるチーズの生産を行うことは、国産チーズの消費拡大及びナチュラルチーズ向けの生乳の需要拡大につながる、このように考えておるわけでございます。国産ナチュラルチーズ等の製品開発の取り組みについて、技術研修の実施、製品展示会の開催、このような支援を行っております。

 ごめんなさい、冒頭申し上げましたが、ブラウンスイス種を使ったチーズというのを私はまだ見たことがなくて、恐らく北海道ではあるのだろうと思いますが、こうすればもっともっと需要がふえるよということについて委員から御提案があれば、また承りたいと存じます。

仲野委員 ナチュラルチーズということで、今、北海道も、十勝管内芽室町に明治乳業が、そういった意味でチーズ向けをどんどんやっていくということで建設されました。私の選挙区でありますなかしべつ工場も、家庭用ナチュラルチーズの製造を開始すると発表いたしております。そしてまた、これも私の地元でありますJA浜中町においても、導入に向けた協議会を設立したと聞いているわけであります。

 北海道では、平成十九年度から、特色あるチーズづくり等を通じて付加価値を高めて農家の所得確保を図るねらいから、このブラウンスイス種の導入を推進する事業を開始するとされてきているわけであります。そういったことから、このブラウンスイス種というのは、本当にこれから非常に注目をしていいのではないのかなと。そういったときに、農家が経営する選択をされたときに、やはり政府として後押しをしていくような環境整備というものをやっていただければなと思っているわけであります。

 そこで、大臣、またこれも私ども民主党が、農林漁業の生産ということで六次産業化を進めているわけであります。生産が一、そして加工が二、販売が三、足しても掛けても六になるわけであります。このような観点からも、このブラウンスイス種の導入を初めとする国産チーズの製造、販売など、国産畜産物の販売、加工への取り組みを支援する必要があると思います。

 こういった良質なチーズ向けに適しているブラウンスイス種の導入の推進は自給飼料への転換を図る上でも重要であるものですから、ぜひこれも大臣が農水大臣でいるときに積極的に取り組んでいただければなということで、また答弁を求めたいと思います。

石破国務大臣 きのう、立ち上がる農山漁村というものに選定された農家の方々の認定式というものを行いました。そこでは、なるほどね、こうやって売るんだ、こんなにおいしいんだというようなもの、そういうものをたくさん見せていただきました。乳製品もたくさんありました。

 六次産業という言い方、私どもは農商工連携というような言い方をしておりますが、目指すところはそんなに大差がないのだろうと思っております。これはやはり、生産の現場、つくるだけじゃなくて、それをどうやって売るのか、そしてどうやってそこに雇用を創出し、どうしてそれを、私つくる人、あなた売る人みたいな話じゃなくて、そこを一つのシステムとしてつくり上げていくということがとても大事なんだろうというふうに思っております。

 ですので、ブラウンスイスというものだけに着目して何か支援をするということにはなかなかなりにくいのかなというふうに思っておりますが、そういうような地域の特色を生かした取り組みというものについて、政府として支援ができる方法をいろいろ考えていきたいと思います。

 済みません、不勉強で存じませんので、ブラウンスイスというのはこんなにおいしいんだということがあれば、ぜひ御教授をいただければありがたいと存じます。

仲野委員 私、大臣はこれまでの歴代農水大臣の中で非常に積極的に取り組まれる方だなと思っているわけなんです。ですから、私は、石破大臣だからこそ、地域の特色を生かすことはもちろん重要なことだと思っています、それぞれの可能性を引き出していくというのがやはり行政の仕事でもあるわけでありますので。そういった意味で、多様な選択の中からブラウンスイス種もあるんだよということをわかっていただければ、導入をしたときにそういった意味でどんと後押しをしていただければということでありますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 もう時間もなくなってまいりましたので次の質問なんですが、中山間地域の直接支払い制度、これは十七年度から二十一年度までで、現在二期目の対策が講じられてきているわけであります。この制度については、北海道では、交付面積約三十二万三千ヘクタールのうち約八五%の二十七万三千ヘクタールが草地比率の高い地域の草地とされており、交付金額も約五〇%の四十億円が草地比率の高い草地に交付されております。このように、中山間地域の持続的な発展のみならず、畜産、酪農における自給飼料基盤の整備においても重要な役割を果たしていると言えます。

 大臣は、九月二十五日、就任会見においても、中山間地域などの条件不利地域に対する支援対策について、恒久化するかどうかも議論のポイントになると述べられておりました。中山間地域直接支払い制度の法制化も含め検討する考えを表明したとも言われている中で、やはり、二十二年度以降の継続を含め制度の充実強化を図るべきだと考えております。

 先ほど来、私、大臣のリーダーシップに大変期待をし、継続に向けたメッセージをこの場で発していただければなと思っておりますので、御答弁をお願いいたします。

石破国務大臣 私の選挙区なんかはジス・イズ・中山間みたいなところで、本当に限界集落もいっぱいあります。この間、選挙区へ帰りましたときに珍しく褒めてもらいまして、この制度というものはぜひ続けてね、これがあるから村はもっているんだよというお話も聞きました。恐らく全国でそうだろうと思っております。

 これが恒久化されていないというのはそれなりの理由がございまして、効果というものが本当に発現されているかどうか、それは検証が必要なのだということを聞いております。ただ、恒久化しちゃうと検証ができなくなっちゃうかといえば、それは必ずしもそうでもないのだろうというふうに思っておりまして、これだけ全国津々浦々、いい制度だというふうに言っていただいておりますわけで、それが、検証というものをきちんと伴いながら恒久化というものができないものだろうかという検討を私自身今命じておるところでございます。

 これは余り軽々なことは申し上げられませんが、この制度というものをもっと安定的なものにしたい、それからもっと使いやすいものにしたい、そして、集落というものに着目をしておりますので、そこの特色というものはきちんと維持をしていきたい、このように考えております。

 また、北海道から内地、また私どもの山陰みたいなところから東北あるいは九州、いろいろな地理的な条件が違っておろうかと思いますので、そのあたりもよく精査をしながら、よりよい制度というものを目指してまいりたいと考えております。

仲野委員 やはり政府としては、制度化したときに、本当にその制度を利用する方たちから喜んでもらったときに、ああ、よかった、よかったとすごく満足するわけですよね。私はやはりそこだと思うんですよ。せっかく努力して制度化しても、何か不満だけたらたら言われるというよりも、喜ばれる制度だったら、ああ、やってよかったと。そういった意味では、やはり職員の本当に血のにじむような努力、これが士気を上げていくと思うんですよ。

 ですから、今言われた、中山間の直接支払い制度が非常にいい制度であるから二十二年度からもぜひ継続していただきたいという声をきょうはこの場で私が申し述べさせていただいて、ぜひまた、引き続きの職員の皆さんの努力、そして大臣に最後の決裁の判こをぼんと押していただければいいかなと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 最後の質問になるんですが、バイオガス発電の推進についてちょっとお尋ねしてまいりたいと思っているわけであります。

 畜産分野における資源循環型及び環境保全型への転換を図り、エネルギー供給源の多様化を推進していく観点からも、家畜排せつ物のバイオガス発電を推進していく必要があると考えます。

 民主党畜産酪農小委員会が、先般、私の地元釧路市阿寒町にある仁成ファームを視察してまいりました。こちらでは、家畜ふん尿の処理方法としてメタンガスを使ったバイオガス発電に取り組んでおられ、しかしながら、電力会社の買い取り価格がキロワット十円と大変安い、太陽光発電や風力発電の場合の単価とされるキロワット二十円に比べて安いという課題があって、その差を埋めるためにも国の政策的なインセンティブを講ずる必要があると思っております。

 ドイツなどでは既に、電力会社が高価格で電気を買い取ることを保証する固定価格買い取り制度が導入されて、バイオガス発電の推進が図られております。

 最近の報道によりますと、経産省は、二月二十四日、電力会社に太陽光発電の余剰電力を一定価格で買い取るよう義務づける新制度を検討する方針を正式に表明したとも報じられておりました。しかしながら、二月二十五日の電気新聞によりますと、「制度はあくまで太陽光発電の普及拡大を目的にしており、風力発電、バイオマスなどのほかの新エネルギーは含めない。」とされておりました。

 今後、バイオガス発電についても太陽光や風力発電と差を設けずに、遜色のない価格で買い取る固定価格買い取り制度の構築が必要と考えますが、経産省の羽藤エネルギー部長、よろしくお願いいたします。

羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 バイオマスはもとより、風力、水力など新エネルギーの導入の拡大というのが課題であるというふうに認識しておりまして、このために、導入者に対する補助制度、あるいは新エネルギーについては電力会社に導入義務を課しておりますRPS法といった規制措置がございますけれども、こういったものを組み合わせることによって、当省といたしましては、バイオマスを初めとする新エネルギーの導入の促進に取り組んでおるところでございます。

 なお、ただいま委員御指摘ございました、二月二十四日に経済産業大臣が発表いたしました新たな買い取り制度についてでございますけれども、これは、買い取りの対象を太陽光発電というふうにさせていただいております。

 太陽光発電にしております理由、これは補完的な措置でございまして、太陽光発電につきましては、技術革新や需要の拡大によって発電原価の低下が見込まれること、国民が直接かかわることができるということで効率的なエネルギー利用を図ることができること、そして、太陽光発電の産業が国際競争力を有しておる、我が国の将来の核となる産業としての育成が重要である、また、すそ野の広い産業であって地域経済の活性化にも資するのではないか。こういうふうな理由から、今後三年から五年間が正念場であるという認識に基づいて、太陽光発電については補完的にこういった措置を特に講じることとしたものでございます。

 いずれにいたしましても、バイオマス・ニッポン総合戦略を踏まえて、農水省の施策との連携を図りながら、バイオマス発電につきましてもその導入拡大についてはしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

仲野委員 実はきのう、民主党は、地球温暖化対策本部において、太陽光、風力、バイオマスなどを対象とする固定価格買い取り制度の導入を基本方針とすることを決定いたしました。

 最後に、石破農水大臣からも、このバイオマス・ニッポン総合戦略の推進を図り、あわせて畜産振興の観点からも重要と考えますので、このことについて大臣の力強い決意を聞いて、質問を終わらせていただきたいと思います。

石破国務大臣 バイオ関係につきましては、先般の予算委員会で菅委員からも、農林バイオ三号でしたかについて力強い御発言をいただきました。あるいは、筒井委員からもそういうようなお話を承っております。

 私どもとして、これから先の日本のエネルギー政策、当省が申し上げることではございませんが、やはりこういうものをどうやって使っていくか、食用と競合しないものの力をフルに出していかねばなりません。ただ、そのためにはインセンティブが必要でございますので、よく経済産業省とも御相談をしながら、インセンティブというものを考えていかねばならないと思っております。

 将来的に日本の発電の相当部分をこのバイオで賄うことができるのではないか。そのようなものについて技術開発を進め、また実用化を図る、そのために当省として努力をしてまいりたいと考えております。

仲野委員 石破農水大臣、畜産、酪農、日本の農業の推進をしていくために、本当に石破農水大臣に期待をしておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 次に、大串博志君。

大串委員 ありがとうございます。民主党の大串博志でございます。

 きょうは、質疑の時間をいただきました。今、仲野博子議員から、酪農、畜産は非常に重要な問題でございますと。私の住まう九州においても、酪農、畜産産業、農業の皆さんは大変頑張っておられます。そのことも改めて申し上げつつ、きょう私は、諫早湾干拓の問題、漁業の問題ですね、それから後半の方で、品目横断的経営安定策を初めとする農業政策の問題について議論をさせていただきたいというふうに思います。

 まず大臣、諫早湾干拓問題です。大臣とは、この問題に関してお話をさせていただくのは初めてでございます。

 私、この委員会でも、去年この問題を取り上げさせていただきました。諫早湾干拓の潮受け堤防が締め切られて、この四月で十二年になろうとしています。潮受け堤防が締め切られた後、有明海の異変が生じ、有明海で漁業をされる方は、非常に厳しい、深刻な状況を迎えられていらっしゃいます。

 その中で、私たちは、中長期開門をして有明海の様子をきちんと見ていこうというような主張をしておりましたが、前回ここで審議させていただいたときからして一つ進展がございました。これは、きょう資料をお配りしてもおりますけれども、去年の夏前に佐賀地方裁判所で、漁民の方々を初めとした原告団の方々が出された訴訟に対して出された判決でございます。

 この資料、ここにありますけれども、ちょっと見させていただきますと、この判決の中では、下線を引いているところですけれども、潮受け堤防の締め切りと諫早湾内及びその近傍の環境変化との因果関係については、相当程度の蓋然性が立証されていると言うべきである、こういうふうに言われています。つまり、潮受け堤防の締め切りと有明海の変化に関しては相当程度の蓋然性で因果関係があるんだと。

 そして、「多大な人員費用の負担を必要とする有明海の海況に関する詳細な調査を漁民原告らに要求することも酷に過ぎるから、漁民原告らに対し、これ以上の立証を求めることは、もはや不可能を強いるものといわざるを得ない。」漁民の方からいろいろな立証をするというのはこれ以上は不可能なんだと。

 さらにそれに引き続いて、「中・長期開門調査は、諫早湾内の流動を回復させるなどして本件事業と有明海における環境変化との因果関係に関する知見を得るための調査として有用性が一応認められており、また、その実施についても様々な工事を伴うものの、不可能を強いるものではない。」と判示しています。

 そしてさらに、最後のくだりですけれども、「被告」、国ですね、「被告が中・長期開門調査を実施して上記因果関係の立証に有益な観測結果及びこれに基づく知見を得ることにつき協力しないことは、もはや立証妨害と同視できると言っても過言ではなく、訴訟上の信義則に反するものといわざるを得ない。」という大変厳しい判示がなされており、そして結論として、「五年間に限り本件各排水門を開放する限度で許容できる。」と、中長期開門を認めております。

 こういうふうな状況でありますが、政府は、これに対して控訴した状況にあります。

 大臣にお尋ねしたいというふうに思います。控訴をするのではなく、裁判で争うのではなく、もうこれだけの明らかな判示がなされているわけでございます。ですから、まさに中長期開門をすること自体が有明海の真の姿を取り戻すその一歩だと私は思っています。即座に開門調査を行うべきではないのか、大臣に御意見を賜りたいと思います。

石破国務大臣 この因果関係についてでございますが、これは、高裁とか最高裁の決定におきましては、因果関係は認められないというふうに述べられておるところでございます。他方、今委員おっしゃいましたように、地裁ではそのように言われておる。私どもといたしましては、これが異なっておる、高裁、最高裁という上級審の決定と抵触をしておりますので、控訴をしないという選択肢はないと思っております。

 もう一点は、これは委員御地元でありますのでよく御案内のことかと存じますけれども、仮に佐賀地裁の判決のとおり開門するということをいたしますと、それはいろいろな被害が起きるのだと。つまり、農家であるとか漁業者であるとか地域の皆様であるとか、その排水門の開放について、それによる被害というものを懸念、憂慮、心配、そういうお声を私どもはたくさんちょうだいいたしております。

 したがいまして、この二点から控訴をしておるということであります。

 しかしながら、開門調査を含めまして、今後の方策については、農家、漁業者、地域の方々、多くの御意見がございます。開門調査のための環境アセスを行い、その結果を踏まえ、関係者の御同意を賜りながら検討を進めるというやり方をとってまいりたいと思っております。

大串委員 開門した場合にはいろいろな影響が出るかもしれないというような意見は、前回の国会の審議でも聞きました。どういうふうな影響が出てくるのかということを農水省の方々に聞いていくと、予見できない被害が起こる可能性があるから開門できないんだと言われました。予見できない被害とは何ですかと聞くと、それは予見できませんと、禅問答のような答えが返ってくる。これが今、裁判の中でも提示されている国側からの主張、この繰り返しです。

 大臣、今、いろいろな憂慮の声があるというふうなことをおっしゃいましたけれども、私たちは、いきなりどんとあけるような開門を求めているわけじゃないんです。潜り開門といって、下の方から少しあけて、潮の流れの速さを見ながら、それが過度に速くならないように、被害を起こさないようにするような措置をとりながら、非常に制御された形での開門を求めているんです。だから、被害が起こらないような形の調査を求めている。

 農業に関する代替水源の問題等々のことも言われます。しかし、これに関しても、代替水源はこういうふうにしたらどうですかというような提案もし、かつ、それが十分実現可能なものであるという案も提示しています。

 防災上の観点も言われますけれども、防災上の観点に関しては、防災上の必要性が生じたときには閉めるというようなことができるぐらいのあけ方を提示しているわけでございます。

 ですから、そのような被害の点に関してはいろいろなセーフガードがある、そういうふうな制御された形での開門を提示しているわけであって、そのようなコントロールされた開門を、予見されない被害があるから、しかしそれは、どういうものかわからないけれども予見されないものがあるかもしれないからというのは、論理にならないのではないかと思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。

石破国務大臣 禅問答というのはなかなか論証するのが難しくて、予見できないから怖いんだ、何で怖いんだと言われると、予見できないからと、こういうのを禅問答というんでしょうが、委員のおっしゃることも理解できないわけではありません。ただ、予見できないもの、つまり、自然災害というのは予見できないものが実は相当数あるのだということを考えた場合に、やはり憂慮の声というものを等閑視することは難しいかしらと思っております。

 アセスというものをやるわけでございまして、これはあくまで環境影響評価法に準拠してと、準拠ということを申し上げておるわけでございます。つまり、この法の対象事業ではありませんが、透明性、公正性を確保するのだということで、環境影響評価法に準じた手続に準拠してやっていきたいというふうに思っております。

 いずれにしても、評価の透明性、公平性というものをきちんと確保しながらよりよいものを目指してまいりたいということで、何が何でもやると決めたらやるんだというようなことを申し上げているわけではございません。

 また、委員おっしゃいましたように、開門方法にもいろいろな方法があることはよく承知をいたしております。私どもとして、複数の方法も検討しておるわけでございまして、関係者の御意見を聴取した上で決定してまいりたいと思っております。

 多くの方に納得していただけるものでなければいけませんので、そういうようなことを透明性、公平性を確保しながらやっていきたいというふうに思っておるわけであって、決めたものは何が何でもそのとおりというようなことではなくて、パブリックコメントなぞも活用しながら、地元の御意見あるいはいろいろな影響の精査、そういうものを踏まえた上で今後進めてまいりたいと思っております。

大串委員 大臣、今、控訴して、まだ開門という言葉には至らないわけですけれども、大臣今おっしゃいました禅問答という言葉、まさにそのような状況に陥っているのが今だと思うんです。禅問答のような議論の中で、その禅問答があるがゆえに開門できていない。これは行政としてはあってはいけないような状況にある。それが大臣がおっしゃった禅問答の状況なんだと私は思います。大臣自身が禅問答だというふうにお認めになったということは私は非常に大きいことだと思いますし、その禅問答の中で開門が行われないという今の行政のあり方、私は非常に問題が大きいと思います。

 そして、大臣に一言お尋ねしておきたいんですけれども、控訴されたときの法務大臣は鳩山邦夫法務大臣でございました。鳩山邦夫法務大臣は、この秋に出された「地球船」というNPO法人の雑誌に寄稿されておりまして、そこで述べておられます。これも資料の三ページ目に載せております。線も引いております。

 控訴権限や上告権限は私にありますと。そして、農水大臣、当時の若林農水大臣ですね、二度法務大臣室に見えて、徹底的に話し合い、基本的に私の考え方を了解してくれましたと。それは何かというと、「1農水大臣は開門調査をする腹を決めて、そのためのアセスを実施する。」「この二点の約束をとりつけた上で、私は福岡高裁への控訴の手続きをとった」と。

 「農水大臣は開門調査をする腹を決めて、そのためのアセスを実施する。」大臣、開門するという腹を決められたんですね。

石破国務大臣 これは、若林大臣が鳩山大臣の大臣室をお尋ねになって意見交換をされ、それを受けて鳩山大臣がそのように記述をなさったということなのであります。ですから、おい、おまえは腹を決めたのかと言われますと、私は若林大臣ではありませんという、そういうような話になってしまいます。ですからそこは、農水大臣としてどうなのだ、あるいは閣内で意見が違うのかというようなことではないかというふうに考えております。

 私どもとして、これは委員と前も議論をさせていただいたんだろうと思いますけれども、政府としてどう考えるかということは、当時の若林大臣が、鳩山大臣とも議論をされた、その上で、談話という形で発表しておるわけでございます。この大臣談話の案につきましても、当時の若林大臣から当時の鳩山法務大臣に御説明をし、その結果を踏まえて案のとおりの談話が発表された。すなわち、談話というものが政府全体の考え方ということなのでございます。

 当省といたしましては、この談話にございますように、開門調査のための環境アセスメントを行い、開門調査を含め、今後の方策につき、関係者の同意を得ながら検討を進めていくということに変わりはございません。政府の見解は、あくまで鳩山大臣に対して御説明をした後に若林大臣が談話として発表された、これが政府の方針でございます。

大串委員 私は、ここには閣内の大きな不一致があると思いますよ。

 なぜなら、先週、現在の鳩山総務大臣に対して、民主党の原口一博議員が総務委員会でこの件に関して質問をされています。鳩山大臣に対して、鳩山大臣はある前提を持って農水大臣と議論されたんですね、その前提とは何ですかと問われたことに対して、鳩山大臣が何とおっしゃっているか。そういう意味で、私は当時の若林農水大臣にそのことをさんざん申し上げて、とにかく開門をする、開門を前提にしてそのためのアセスをやるというんだったら、開門のためのアセスをやりなさい、その腹を固めてやってくださいよということを言いましたと認めていらっしゃるんですよ。

 談話は談話であるのは理解しています。談話のもう一つの付加条件として、鳩山大臣はこういうことを認めていらっしゃるんですよ。

 ですから、これは、私は閣内でおっしゃっていることに大きなそごがあると思います。この閣内の不一致を大臣はどう考えていらっしゃるのか、私はいま一度大臣のお答えを聞きたいと思います。

石破国務大臣 議論のための議論をするつもりは私はないのですけれども、繰り返しはいたしません、当省として大臣の談話を発表した、それが政府の考え方でございます。

 それは、なぜアセスを行うのかということについて当時の農水大臣から当時の法務大臣によく御説明をした、そしてその御理解を得た上で談話を発表した。そのことの内容に変更があるわけでもございませんし、変更を加える必要性も農林水産省として認識をいたしておりません。

大串委員 ここにはやはり異常な閣内の不一致があるというふうに思っています。この問題はさらに詰めさせていただきますけれども、今の段階での質問はここで打ち切らせていただきます。

遠藤委員長 次に、飯島夕雁君。

飯島委員 自由民主党の飯島夕雁でございます。どうぞよろしくお願いします。

 まず初めに、大臣にお伺いをいたします。

 私の選挙区は、北海道の空知、留萌地域でございまして、米の作付面積が日本一の地帯です。そこで良質のお米、おいしいお米がとれております。しかし、その中でも、米の生産調整をしっかりと守り続けて頑張っている地域でございます。三月に入りまして、年度末も間近に控える中、まだ雪深く、寒さ厳しい中でも、春に向けての農作業の準備が今始められようとしています。こうして頑張っている地域の生産者に対するエールも込めて、大臣、先ほど所信をいただきましたけれども、改めて思いをお聞かせいただければと思います。

石破国務大臣 委員の御地元で、本当に生産調整をきちんと実施をしながら努力しておられる。北海道のお米というのは、私も幾つかの地域でいただきましたが、最近本当においしくなってきました。きちんと生産調整を実行しながらいいものをつくる、そういう御努力に対して本当に心から敬意を表する次第でございます。

 一生懸命努力をしておられる方々が努力してよかったねと言ってもらえる、それが農政の基本でございますし、また、先ほどの仲野議員の御質問にもございましたが、農林水産省の担当者たちには、とにかく生産者の方が、あるいは消費者でも流通業者でもそうですが、その方が喜んでくれるかどうかということを考えながら仕事をしなさいということを申しております。委員御指摘のような、それぞれ地域の方々の気持ちにきちんとこたえられるような農政を今後も展開いたしたいと考えております。

飯島委員 どうもありがとうございます。

 昨年は大変な豊作でございました。その中で十万トン余りの余剰米が出るということで、本当に素直に喜んでいいのか、一瞬生産者の皆さんには衝撃が走りましたが、政府の方で米の買い上げをしっかりとしてくれる、集荷円滑化対策を発動しないで一万二千円以上で買い上げるということが決まったときには、本当にほっと一息をつきました。どうかこれからも、頑張ってルールを守っている生産者がばかを見ないような農政、手が届くような農政の政策に向けて、よろしくお力添えをお願いいたします。ありがとうございました。

 私の選挙区は、米だけでなくて、留萌を中心として酪農、畜産業も大変盛んでございます。ちょうどけさ方、乳価改定を初めとしました本年度の畜産、酪農対策が自民党内でも取りまとめられたところでありますが、この一年余りの間、酪農、畜産業をめぐる情勢は大変大きく変化をしております。

 例えば配合飼料についてですが、最近は少し落ちついてきたものの、配合飼料価格はわずか一年余りの間にトン当たり二万四千円以上も上昇し、生産者の自助努力ではいかんともしがたい状況に陥りました。地元の酪農家を回ってみれば、経営状況がよくなると思って、国の勧めもあったから規模拡大もしてきたけれども、環境は厳しくなるばかりだ、そういう声が聞かれます。また、借金ばかり残って返済がままならない、子供に仕事を継がせたいがとても継がせられない、そんな声も聞こえてまいります。

 そこで、近年激変している酪農、畜産業に対して、石田副大臣、恐れ入りますけれども、御認識や御見解をお聞かせください。

石田副大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 畜産、酪農にありましては、十八年の秋以降の配合飼料価格の高騰、かつてない厳しい状況が続いておりましたけれども、二十一年の一月―三月期は配合飼料価格も低下し、また、酪農にあっては、三月から再度乳価が引き上げられることにもなっております。

 しかし、配合飼料価格が、昨年十月―十二月期をピークに低下しているとはいいますけれども、やはり十八年度と比べてなお高い水準にある、こういうこと、そして、景気の低迷等を背景に、比較的単価の高い牛肉の消費が大きく低迷している、食肉の卸売価格が下落している、こういう状況がございますから、改善しつつあるものの、やはりなお厳しい状況にある、こういう認識でございます。

飯島委員 石田副大臣、ありがとうございます。

 まさに本当に、一番ピーク時のときよりは少し落ちついたんだけれども、実はまだまだ厳しいというのが現状でございまして、そうした御認識の中で、今回の酪畜の対策を決めていく時期がまたやってまいりました。どうかそうした背景を踏まえて御検討いただければと思います。

 昨年の初めから、政府・与党、自民党、公明党、緊急対策を幾つも打ち出して、こうした緊急事態に対して備えてまいりました。例えば、加工原料乳の生産者補給金単価の例を見ない期中改定であったり、また配合飼料価格安定制度であったり、それぞれ一定以上の効果を上げてきたと思います。もしこれらが行われなかったとしたら、もう既に日本の酪農、畜産業は立ち直れないほどの打撃を受けていたかもしれない、そんなふうにも思います。

 しかしながら、先ほど御返答いただきましたように、今なおまだ厳しいのが現実でございます。昨年の対策だけで済ませてしまうのであれば、日本の酪農、畜産業は決して遠くない未来に衰退してしまうと思われます。政府の掲げるカロリーベースでの食料自給率五〇%目標に対し、日本の酪農、畜産業が貢献できる可能性は極めて高いにもかかわらず、みすみす衰退させてしまうわけにはもちろんいきませんし、それから、安全で安心で国民に欠かすことのできない牛乳を冷蔵庫からなくすことがあってはならないというふうに思っております。

 そういう意味で、副大臣に再度お尋ねいたしますが、今後、酪農、畜産業に対するセーフティーネットを含んだ、今、目の前にある厳しさを乗り越えるための短期的対策、及び未来に夢を描いて酪畜に取り組めるようにするための中長期的な対策についてのお考えを、それぞれお聞かせください。

石田副大臣 今、御質問いただきましたように、短期と中長期、こういう観点からのお尋ねでございますが、短期的な面から申し上げますと、配合飼料価格の高騰等により我が国酪農、畜産経営は厳しい状況にある、これは先ほど申し上げました。配合飼料価格安定制度により、配合飼料価格の高騰が酪農、畜産経営に及ぼす影響を緩和する、こういうこととともに、例えば肉用牛の肥育経営におけるいわゆる補完マル緊事業など、緊急的な経営対策は講じている、こういうことがまず一点でございます。

 さらに、中長期的な観点からは、国産飼料の生産、利用の拡大を図り、自給飼料基盤に立脚した畜産経営を構築する、こういうことが重要ではないかというふうに思っております。そのために、青刈りトウモロコシの作付拡大、また放牧の推進などの飼料の自給率向上対策、これをどうしても進めていかなければいけないと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

飯島委員 ありがとうございます。

 私もまさに同感で、今回の酪農、畜産業、襲った最大の原因は配合飼料の高騰であったと思っておりますし、また、外国の安価に手に入る飼料に頼ってきた農家にとって、今回の高騰は大きな痛手を受けたということだと思います。

 これから、世界情勢がまだなかなか見えないので、そういったことの中で今回のことを一つの教訓として、自給飼料作物をしっかりと国内で生産していくということが大切だと思います。草地整備改良や草地更新の促進に向けてより一層の支援も必要だと思いますし、また、畑地などにおける、今おっしゃっていただきました飼料用トウモロコシの作付、こうしたものにもめり張りある魅力を添えて、大きな全体のうねりにする必要があると考えます。

 そこで、現在の青刈りトウモロコシの生産緊急拡大事業についてお尋ねしたいと思います。

 現在、飼料作付確保期間が五年となっておりますが、これでは、麦や大豆をつくっている地域では輪作体系の中に組み込むことができません。そこで、少なくとも三年ぐらいに短縮するなり、毎年度の促進交付金を創設するなど、提案をさせていただきたいと個人的に思うのですが、御見解をお聞きします。生産局長、お願いいたします。

本川政府参考人 御指摘のように、青刈りトウモロコシにつきましては、青刈りトウモロコシ生産緊急拡大事業によりまして、十アール当たり一万二千円の御支援を申し上げるという事業を今年度まで実施をしてきております。この事業につきましては、平成二十一年度からは、この事業にかわるいわゆる水田フル活用事業の中で、十アール当たり一万五千円を支援させていただくことにしております。

 先ほど御指摘いただきました事業要件、五年間でございます。飼料作物を事業実施後五年間は植えつけていただきたいということをお願いしているわけでありますが、これについてはまさに先生からも、それからその他現場の方からも、長過ぎるという御意見をいただいております。これにつきましては、輪作体系に組み込む形の作付拡大を図るために、作付期間の要件を三年程度に短縮する、そういう方向で最終的な調整を行っているところでございます。

飯島委員 生産局長、ありがとうございました。

 三年ということで、五年の重たい足かせが外れるということで、輪作体系に大きく組み込んでいけるものと思います。これからも、現場で使える制度、せっかくつくりましても現場で使えない制度であればどうすることもできませんので、現場の状況を見ていただきながら、またお声を聞いていただきながら、農業政策がうまくいくように、これからもお力添えをお願いいたします。

 農業政策といいますと、地元農家を回っていますと、大変喜んでいただける政策と、それからなかなか不評な政策とがあるように思います。例えば酪畜の関係でいえば、去年は期中改定などで迅速に対応してくれて助かったよ、そういう声も伺いますけれども、しかし一方では、制度が難し過ぎてわからない、そういう声も正直ございます。それから、要件が厳し過ぎて制度に乗れないんだといったお声もいただくことがございます。

 これらは酪農、畜産だけでなくて、農業政策全般に言えることだと思うんですけれども、普通に頑張っている農家が安心して国が打ち出した政策を活用して、そして元気を出してもらえるようにするには、事務の簡素化や条件の緩和、こうしたものにはぜひ早急に取り組んでいただきたいと思います。

 改めて生産局長の御意見をお伺いいたします。

本川政府参考人 私どもが実施をしますいろいろな政策、これは、一つの政策の目的があるわけでございます。それを実現するために、必要最小限の要件をしつけざるを得ないということがございます。

 ただ、この点につきましては、やはり達成に必要な範囲内で必要最小限のものとすべきであるというふうに考えておりまして、大臣あるいは両副大臣からも、厳しく、その点については留意をするようにというふうに言われております。今後とも、そのような方向で心がけてまいりたいというふうに思っております。

 それから、申請手続につきましても、補助金の交付申請でございますので、補助金適正化法という法律がございます。それに基づく手続というのは最低限必要でございますけれども、できる限り、申請書類の削減でありますとか、申請回数を減らす、そのような努力を今後ともしてまいりたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、現場の皆さん方の御意見をよくお伺いしながら、効果的な運営ができるように努めてまいりたいと考えているところでございます。

飯島委員 ありがとうございます。

 具体的にはいろいろとありますので個別具体的には申し上げませんが、例えば、肥料、燃油高騰対策。昨年は、肥料高騰、飼料高騰、いろいろ上がりまして、大変打撃を受けたわけでございます。そういった対策について、国が七割しっかりと見ますよというところで一安心をしていただいたんだけれども、それを受けていただくには、極めて低いハードルで全員が受けられるという話で安心をしておったんですけれども、あけてみましたら、雪深い中で土壌分析をやらなきゃいけない、そんなことがございました。

 北海道から沖縄まで、日本は広いですから、気象条件も何もかも違います。そういう中で一律に条件を満たすようなことがなかなか難しいのも実情でございます。例えば、こういう、もう雪が降り積もってしまってから土壌分析をしろといったって、かき分けてやるわけにもいきませんし、また収穫期の忙しいときにやるわけにもいきません。そういう意味で、一律でありながらも、やはり地方地方、地域地域の実情に配慮した政策を打ち出していただけるように、再度お願いを申し上げます。

 私自身の持ち時間はあとわずかとなりましたけれども、きょうは三月の四日ということで、あす三月五日には補給金単価と限度数量が決定されるという、非常に貴重な時期に質問の機会を与えてくださったことに心から感謝をいたします。

 昨年、一昨年と非常に厳しい時代を乗り越えて、今必死になって三百六十五日、家族みんなで力を合わせて働いているごく普通の酪畜農家の皆様が、昨年の期中改定や緊急対策で、今ようやく一筋の光を見出そうというところまで来ております。どうか、こうした一筋の光が本当の光に変わりますように、最後の最後までの御支援、御理解を心からお願い申し上げまして、私からの質問を終了といたします。

 本日はありがとうございました。

遠藤委員長 次に、井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 まず、畜産、酪農対策について何点か質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどから出ていますけれども、配合飼料価格、下落傾向にあるとはいうものの、二年前に比べて依然として高い水準にございます。一方、世界的な景気後退等の影響で食肉価格が低迷しておりまして、消費減退が懸念されている、したがって畜産、酪農経営は依然として厳しい状況にある、こういう基本認識に立って、まず初めに、肥育牛対策につきましてお尋ねしたいというふうに思います。

 最近の景気悪化の影響から、消費者の低価格志向が強まっておりまして、和牛の枝肉価格も下落しておりまして、マル緊対策、補完マル緊対策について、乳用種、交雑種に加えて肉専用種でも発動されるような事態になっておりまして、採算性の悪化が非常に顕在化しております。

 こういう状況ですから、このマル緊対策及び補完マル緊対策につきまして、肥育牛経営の再生産を確保する観点から、制度の見直しを含めて拡充を図るべき、このように考えますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。

本川政府参考人 御指摘のとおり、肥育牛経営につきましては、二十カ月ぐらい前に子牛を導入されまして、最も高い時期の配合飼料を食べさせて育てた牛が今お肉になっているという状況でございます。したがいまして、非常に厳しい状況に直面しておられるということは十分認識をいたしております。家族労働費ばかりでなく物財費の部分にまで割れが生じておるというような状況を私どもも認識をしております。

 そういう中で、家族労働費の部分につきましては通常のマル緊事業、それから物財費が割れている部分につきましては補完マル緊事業を実施しているところでございます。その取り扱いにつきましては、最終的に近く決定をするわけでございますけれども、今申し上げたような状況、先生がおっしゃったような状況を十分踏まえまして、あり方を検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

井上(義)委員 次に、繁殖子牛対策につきましてお伺いしたいと思います。

 肉用子牛生産者補給金制度の保証基準価格、それからさらに合理化目標価格について、繁殖経営の経営基盤を確保するという観点から、現行価格を維持するということを基本に設定すべきではないかということを申し上げたいというふうに思います。

 それから、生産性向上の取り組みに努力している生産者の皆さん、この生産者補給金に加えて、肉用子牛資質向上緊急支援事業とか子牛生産拡大奨励事業というふうに、事業が三重になっていて非常にわかりづらいという声があるわけでございます。

 そういう観点から、繁殖に取り組んでいらっしゃる方々の経営を取り巻く環境というのは、先ほどからも指摘がありますように、配合飼料価格の上昇とかあるいは子牛価格の低迷が続いておりまして、依然として厳しい。そういう中で、生産性向上の取り組みに努力していらっしゃる、そういう生産者の方が再生産可能になるように、現場にとってわかりやすい対策、なおかつ、この生産性向上対策をさらに充実強化すべきではないか、このように思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

本川政府参考人 御指摘のとおり、肉用子牛の支援制度につきましては三重の仕組みを講じているところでございます。

 その中でも、御指摘の肉用子牛の保証基準価格、これにつきましては再生産を確保する基礎的なものでございます。これにつきましては、生産条件や需給事情、その他の経済事情を考慮いたしまして適切に決定するということで対応してまいりたいと思っております。

 それから、御指摘のありました肉用子牛の資質向上を図るための緊急対策でございます。これにつきましては、意欲ある生産者の方々に対しまして、実質的に四十万円という水準を、子牛価格を確保するという形で実施をいたしておるところでございます。これにつきましても、今の環境のもとでその必要性というのは私ども十分認識をいたしております。そういうことを踏まえまして決定をしてまいりたいと考えているところでございます。

井上(義)委員 次に、酪農対策につきまして三点お伺いしたいというふうに思います。

 まず第一点目は、いわゆる加工原料乳生産者補給金制度、これは昨年六月に異例の期中改定をして、生産者の方には大変喜ばれておるわけでございまして、現在、十一円八十五銭というふうになっております。

 配合飼料価格が依然として高どまりしているという状況を考えますと、酪農経営をめぐる環境は依然として厳しいわけでございまして、加工原料乳の再生産を確保する、そして酪農経営の安定を図るという観点から、この加工原料乳生産者補給金の単価につきましては現行価格を維持すべきではないか、このように考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

本川政府参考人 御指摘の補給金単価につきましては、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法という法律に基づき決定をするということになっております。直近の物価状況も踏まえながら、一定のルールに基づき算定してまいりたいというふうに考えております。

井上(義)委員 次に、酪農の生産基盤維持という観点で都道府県酪農緊急経営強化対策事業、これが設けられたわけでございますけれども、二十年度限りということになっているわけでございます。

 酪農の大変厳しい経営状況を考えますと、酪農における生産基盤を維持強化するという観点で、この事業の延長を含めてさらに対策を強化すべきだ、このように思いますが、この点についていかがでしょうか。

本川政府参考人 御指摘の都道府県酪農経営緊急強化対策事業でございます。

 これにつきましては、昨年、配合飼料価格が高騰している中で、一方で、生産者団体の方々は乳業メーカーと飲用乳価の価格引き上げの交渉をしておられる状況でございました。そういう中で、価格が引き上げになるまでの間、国がその分を支援申し上げるというようなことで発足した事業でございます。

 現在のところ、本年三月より飲用向け生乳価格は十円引き上げになっております。それから、一―三月、配合飼料価格というものは御承知のように一万一千九百円引き下げられている。なお高どまりの状況でございますが、そういう価格の引き上げと配合飼料価格の引き下げという状況が出ておりますので、この事業を二十一年度も継続実施するということは極めて困難ではないかと考えております。

 ただ一方で、本年三月の値上げによりまして消費減少が生じるのではないか、それに対するセーフティーネットというものが求められております。それから、引き続き乳用牛の遺伝的能力の向上などを通じた酪農生産基盤の強化ということも必要でございます。さらには、国産飼料に立脚した酪農経営の展開ということも課題でございますので、こういうようなものにつきまして、引き続き酪農家の経営安定が図られるように、いろいろな対策を検討してまいりたいと考えているところでございます。

井上(義)委員 今ちょっとお話が出た飲用乳価、本年三月から引き上げられることになったわけでございますけれども、一方で、これは当然、小売価格に反映をするということで、小売価格の上昇が見込まれるわけで、牛乳消費への影響というのが懸念されるわけでございます。

 この牛乳の値上げによって消費が減少した場合に、価格の低い加工向けに振り向けられることになって、プール乳価が低下するおそれがある。そのための共補償制度があるわけでございますけれども、これに備えた、先ほどお話が出た牛乳・乳製品の消費拡大対策を徹底してやっていただきたいということ、これを具体的にどうやるかということとあわせて、飲用牛乳の減少に対応する共補償制度に対する支援の充実強化ということが必要ではないか、こう思いますが、この点についてもお伺いしたいと思います。

本川政府参考人 酪農家の方が今一番心配しておられますのは、飲用乳価が十円引き上げになったわけでございますけれども、それに伴って消費が減退してしまったのでは元も子もないということでございます。

 昨年も、飲用乳価が三円引き上がるという状況の中で、やはり同じような心配がございました。それを踏まえまして、全国の酪農家の方々が一を拠出され、私ども国が三を拠出いたしまして基金を造成いたしまして、その基金によりまして、消費が減退した場合の補てんをする、共補償をするというような仕組みをつくっております。

 昨年は三円の引き上げでございましたが、ことしは十円でございますので、消費減退のおそれというのは格段に大きいわけでございます。したがいまして、この基金なり事業につきましても、昨年並みの規模では不十分だというふうに十分認識をいたしております。そういうことも踏まえまして、新しい事業のあり方について検討を深めてまいりたいというふうに考えております。

井上(義)委員 それでは、先ほどからも議論が出ています牛乳・乳製品の消費拡大ということについて、農水省としての取り組み、具体的に今検討されておりましたら御答弁いただければと思います。

本川政府参考人 牛乳の消費拡大を図るために、私ども、いろいろな方策を講じてきております。

 牛乳は、やはり非常に栄養素の高い飲み物でありますし、特に、青少年の方々により多く飲んでいただくことによって、体力の基礎をつくるというようなものでもございます。飲用の消費拡大には業界を挙げて、私どもも協力しながら取り組んでいきたいというように思っております。

 我々といたしましても、専門家によるセミナーなどを通じた機能性なり有用性の普及啓発、こういったことを行っております。それから、酪農教育ファーム、そういう取り組みなどによりまして、生産者団体が中心となった酪農と牛乳に対する理解の醸成、こういったことを行っております。それから、中小乳業が連携をいたしまして、共通のブランドを開発して、地域の特色を生かした新商品を開発なさる、こういったような取り組みも行っております。

 関係者と協力をしながら、こういう消費拡大に取り組んできているところでありまして、今後とも、牛乳の消費の維持拡大につながるように、関係者が共通認識のもとで消費拡大に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

井上(義)委員 次に、養豚対策につきましてお伺いしたいと思います。

 養豚については、円高などの影響で輸入が増加して、枝肉の卸売価格が前年同期に比べて低迷している、こういう状況でございます。

 昨年の緊急対策で、価格差補てん緊急支援特別対策事業、これが措置をされたんですけれども、当事業については、一月―二月期で財源が枯渇している地域があるということで、先般の食料・農業・農村政策審議会の畜産部会でも、「ほとんどの県で二月には財源がなくなる現状にある。」という指摘がされております。

 この肉豚価格差補てん緊急支援特別対策事業について、経営安定対策としての機能を十分発揮させる観点から、まず財源の確保が必要というふうに考えますけれども、制度の拡充の有無を含めて、具体的な対応方針についてお伺いしたいと思います。

本川政府参考人 この肉豚の価格差補てん特別支援事業につきましては、各都道府県で自主的に運営されている、そういう価格差補てん事業がございます。これに対しまして、その財源が不足をした場合に補てんするという事業を私ども実施してきておったわけでありますが、配合飼料価格の高騰の中で、その基金の運用事業を、基本的には四百円という保証水準を四百八十円に引き上げる、それに伴って、引き上げに必要な財源を私どもの方から各県に支援申し上げるという仕組みをとらせていただいたところでございます。

 ただ、基本的には、そこの保険設計と申しますのは、各都道府県の基金で税務署と交渉して取り組まれるということで、自主的に運営をされている基金でございますから、私ども、余り口を挟んではこなかったわけでありますけれども、その基金がそれぞれ少し見込みの違いで不足をしておるというような状況にあることは、十分認識をしているところでございます。

 これは、二十年度、二十一年度にわたる事業として私ども認識しておりますので、二十一年度につきましても必要な財源を確保する、そのようなことで対応したいと思っておりますし、それからもう一つは、各県の保険設計におきまして、途中で不足が出ることのないよう、私どもも指導助言に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

井上(義)委員 大臣がお戻りになりましたので、最後に大臣に、農政の基本的な考え方ということにつきましてお伺いしたいというふうに思います。

 私は、この農業問題につきまして、食は命、食は農ということで、農業というのは命を支える、言うなれば生命産業というふうに認識をしてきました。そういう観点から、農というのは国の基であって、農をおろそかにするような国は滅びる、こういう強い決意でこの農業問題に取り組んできたわけでございます。

 いろいろな地域を回っていろいろな人と意見交換する中で、私は、日本の農業を支えていくという観点で、やはり消費者の方、一般の国民の方が、農業生産の現場が見えていない。農業を支えることが実は自分たちの命、自分たちの食、命を支えることになるんだ、こういう基本的な認識がやはりまだまだできていないんじゃないかと。そういうことが、ある意味で、農業補助金の水準が諸外国に比べても決して高くない、低いということにもあらわれているんじゃないかな、私はこういう認識を非常に強くしています。

 昨年来、世界の食料が過剰から不足に大きく潮目が変わった、それから食に対する国民の関心が非常に高まってきて、私は、そういう意味で、国民の理解を広げる、いわゆる農家を支えることが実は自分たちの命を支えることなんだという認識を国民全体が共有する大きなチャンス。食料の国内供給力、自給率と言われていますけれども、私は一貫して海外依存率と言っているんですけれども、この海外依存率、要するに六割を海外に依存しているわけでございますから、これを引き下げる大きなチャンスがめぐってきている、こういうふうに思っております。

 そこで、今、農業改革の推進に向けた関係閣僚会議が設置をされて、石破大臣を中心に議論が行われている。それから一方で、食料・農業・農村基本計画の策定に向けて議論が開始をされて、来年三月をめどに結論を出すという形で、農業問題についての議論が行われているわけでございます。

 私は、農政について多くの人を巻き込んでオープンの場で議論するということは、食料・農業・農村に対する国民全体の理解が深まるきっかけにもなるし、それ自体は大変歓迎すべきことだというふうに思います。ただ一方、今これから田植えをしよう、そういう農家の皆さんに不安を与えるようなことがあっては、これは農政に対する信頼を失い、農家の営農意欲にも影響を与えるわけで、ひいてそれは国民全体が不利益をこうむることになるというふうに思うわけです。

 それで、大臣御案内のように、平成十九年から農政改革三対策というのがスタートいたしました。このスタートした直後から、農水省も幹部職員が現場へどんどん赴いて、いわゆる地方キャラバンという形でさまざまな意見を吸い上げてきた。私どもも党内に対策本部を設置いたしまして、私も東北、九州、北海道を含めていろいろな地域を回りまして、農業の現場の皆さんの意見を聞いてまいりまして、それを踏まえて十九年の十二月にこの三対策の見直しが行われたわけで、それがスタートしているわけです。

 そのときに、皆さんからやはり一番痛切に言われたことは、結局、農業政策に振り回されてきた、よく猫の目行政というふうに言われますけれども、やはり将来を見通したしっかりした農業政策をともかくしっかり出してくれ、農業改革三対策についても、これは信頼していいんだね、こういう非常に強い意見がございました。私は非常にそのことについて身にしみたわけでございます。

 そういう中で、今また農業改革の推進に向けた関係閣僚会議が設置をされる。食料・農業・農村基本計画、これは十年をめどとした計画なんですけれども、五年単位ぐらいでこれを見直すということですから、当然、見直しの議論というのが今しっかり行われていることはこれはこれで大変重要なことだと思うんですけれども、そういう議論が行われているということが、先ほど申し上げたように何か農家の皆さんに不安を与えるようなことになっては、これは結果的には大きなマイナスになってしまうわけでございまして、その中心でやっていらっしゃる石破大臣の、今の時点で何をどう議論されようとしているのか、またその星は何なのか。議論の過程でも、やはり将来を見通したメッセージを農家の皆さんにきちっと出し続けていくということが今極めて大事な時期だ、私はこういうふうに思うわけでございます。

 このことについての石破大臣の基本的な考え方をお伺いしておきたいと思います。

石破国務大臣 委員の御見識に敬服するとともに、全くおっしゃることに一〇〇%同意をいたします。

 現場をきちんと把握をしなければできませんので、農水省幹部職員、とにかく現場へ出てくれと。それも、公民館とか役場とかそんなところでやるんじゃなくて、できれば現場で一升瓶でも持ってやってくれということであります。それはざっくばらんな議論という意味であって、酩酊とかそんな話では何でもないのですが。事務次官は毎週末現場へ出ておりますし、幹部職員皆そのようにしたいと思っております。それが一つ。

 それからもう一つは、おっしゃいますように、どういう議論がどこで行われたかということを可能な限り透明性を持って発信をしたいと思っております。これが二つ目。

 そして三つ目は、まさしく委員御指摘のように、消費者、納税者が理解をしなければ農業は支えられないということだと思います。消費者、納税者の方から現場が遠いのはそのとおりであって、スーパーへ行けば何でもあるじゃないのということで、どこでだれが何をつくっているのかよくわからぬと。この一体感を醸成させなければいけない。そして、広く実際に支える人たちの意識のもとに農政というのを組み立てた上で、政府としての強い意思というものを発信する必要があるだろうと思っております。

 この国会に農地関係の法案を提案させていただき御審議を賜りますが、今までも、農地法が基本であって、その後、農用地利用増進法とかいろいろな法律を出してきました。しかしながら、必ずしもきちんとした実効が上がっていないという反省を持っております。そうすると、猫の目と言われますが、変わらないんだという強い意思、それは、かくかくしかじかこのように議論を積み上げ、その経緯においていろいろな方の意見を聞き、決めたからにはこれで行くのだという強い意思というものが必要だと思っております。

 強い意思をつくる前提として、議論を透明にすること、そしてあらゆる方々の現場の意見を聞くこと、そして与党のみならず多くの、国民を代表される国会議員の方々の意見を聞いた上で、決めたからには強い意思を持って実現するということが必要だと思っております。

井上(義)委員 また改めて中身についていろいろな意見交換をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

遠藤委員長 次に、大串博志君。

大串委員 ありがとうございます。民主党の大串博志です。

 先ほどに引き続いたところを少しまた大臣と議論させていただければと思いますが、先ほど大臣からお話のあった、鳩山邦夫前法務大臣との意見の食い違い。国会答弁も食い違っている。そして、さらに言えば国会答弁が食い違うのみならず、先ほど大臣がおっしゃったように、若林大臣と鳩山大臣のもとで話されたことに関しては、私はよく知らないみたいなことの発言も国会である。このようなことが国会で起こるということは、あり得ない、とんでもないことだと思うんですね。なぜこういうふうな状況になっているかというと、いかにこれが、すなわち控訴をしたということが、非常に無理のあった決断だったかということを如実に私はあらわしているんじゃないかと思うんです。

 そして、なぜそれがそんなに無理のある決定だったかということをあらわす背景として、先ほど大臣がおっしゃった、やはり禅問答。どのような被害があるかはわからない、それを予見できないけれども、予見できない被害があるかもしれないから開門できないという、禅問答のような形で開門できないという形になっているから、いろいろな無理が生じてきているんじゃないかと思うんですね。

 実際、いろいろな被害があるかもしれないとおっしゃいましたけれども、二〇〇二年に短期開門調査を行ったときには、地元の方々から、タイラギが立つようになった、あるいはアサリもとれるようになったという声も聞こえてきております。このように、先ほど申しましたように、これまでノリ不作検討委員会などでもきちんといろいろな検討が既に行われているので、被害が起こらないようなコントロールされた形での開門を行っていくということで、私は、開門自体が非常にすぐれたアセスメントの一翼をなすんだというぐらいの感覚で進めていくべきだというふうに思うんです。

 先ほど大臣、一つおっしゃいました。確認をさせていただきたいんですけれども、複数の方法を検討していて、関係者の理解を得て決定していきたいというふうにおっしゃいましたけれども、この複数の方法というのは、すなわち、いきなりどんとあけるような開門を私たちは提唱しているわけじゃないんですということを先ほど私申し上げました。コントロールされた形で、被害が起こらないように少しずつ少しずつ潮の流れをコントロールしていく、それを提案しているんですと申し上げましたけれども、そのような被害が起こらない形での開門のあり方を複数考えていて、検討していて、それを関係者の方々の理解を得て決定していきたいという理解でよろしいんでしょうか。

石破国務大臣 委員おっしゃいましたように、開門方法は、例えば佐賀地裁判決で示された全開門という方法、あるいは原告の弁護団の方々から示されております、段階的にあけていき最終的に全開門をするというやり方、あるいは平成十四年に実施しました短期開門調査と同様の方法であります制限開門、複数の方法がございます。

 環境アセスの前提となりますのがこの開門方法でございまして、これまで各方面で議論、提案をいただいております開門方法を参考にしながら、複数の方法を検討しておるところでございます。

 委員おっしゃいますように、今後、関係者の御意見をお聞きしました上で、どれにするかという決定をするということでございます。

大串委員 確認させてください。今おっしゃいました全開放、弁護団等が申し上げている段階的な方法、そして短期開門調査のときに行ったような制限された方法、これが環境アセスの前提であって、これらを参考にしながら、このうちでどれにするかを関係者の意見を聞いて決定していきたい、そういう理解でよろしゅうございますか。

石破国務大臣 参考というふうに申し上げました。この三つしかないということを断定的に申し上げているわけではございません。この三つの方法が現在提案されておる、あるいは御議論いただいていることを承知しております。これを参考にしながら、この三つに限局するということを今私は断定するものではございませんが、これを参考にしながら関係者の方々の御意見を聴取した上で決定するということを申し上げました。

大串委員 ぜひ大臣、開門をするという決断をしていただきたい。やり方は、被害の起こらない、いろいろなやり方が確かにあると思います。被害の起こらないいろいろなやり方をよく検討していただいて、決定していただきたい。それが、先ほど大臣がおっしゃった禅問答、これを排していく最大のやり方であり、これしか私はないというふうに思っています。

 大臣に一つこの諫早湾干拓の関係でお伝えして御意見を賜りたいのは、今、有明海の、私の地元でもあります鹿島市の南部より南の方、鹿島市の南部から、そして太良町の方で赤潮が生じて、ノリの色落ちが生じています。地域によって事情が違いまして、有明海の北部の方はちょっと状況が、影響の度合いが違いまして、いろいろな努力をしながら、毎年のような高品質のノリがとれるように頑張っていらっしゃいますし、私も期待しています。

 しかし、南の方では、赤潮がことしは例年よりかなり早く生じたことからノリの色落ちが生じて、ほとんどノリがもうことしに入ってからとれないという状況になってきています。私もいろいろ見せてもらいましたけれども、普通は真っ黒なノリになっているのが通常なんですけれども、今、この一月以降とれているノリはこのように非常に黄色い形のノリになっています。

 このような被害が生じる中で、一月以降、こういう状態ですから、ノリ漁家の方々の収入は、半分以下あるいは三分の一とも言われる非常に厳しい状況になっています。漁民の方々はこれまでいろいろな投資も行って、金融上の措置も国から行い、そういう意味での借金も抱えながら、あるいは国からの借金だけじゃなくて、地域の金融機関あるいは信漁連みたいなところからも借財を抱えながら投資をしてやってきた方々もいらっしゃいます。そういうふうな負担もある中で、今回収入が激減しているという状況がございます。この状況をぜひ大臣にもよく知っていただいて、まず原因の究明をよくしていただきたい。そして、地元の方々からは、北部排水門からの排水をぜひならしてやってほしいというふうな声もありますので、よくその辺も踏まえていただきたいと思います。

 ただ、根本的な解決は、やはり諫早湾の中の水質をよくする、そのためには開門だろうと私たちは思っていますけれども、そのような根本解決に向けていただきたいし、いずれにしても、原因の究明をきちっとやっていただき、そして、漁民の方々、ことし、本当に半分以下あるいは三分の一とも言われる収入減、ここに対してしっかりとした支援、対応をしていただきたいというふうに思います。

 大臣の所見をいただきたいというふうに思います。

石破国務大臣 被害が極めて甚大であるということにつきましては、我が党の議員からもよく聞いておるところであります。また、委員から今ノリもお示しをいただきました。

 この原因究明につきましては、佐賀県から、この色落ちは赤潮が海水中の栄養を奪ったということと考えられるというふうに聞いておるところでございます。

 色落ちにつきまして、国といたしまして、独立行政法人であります水産総合研究センターに委託をし、原因の解明と防止技術の開発を行っておるところでございまして、よく佐賀県と協力をしながらその解決に努めてまいりたいというように考えておるところでございます。佐賀県だけにお任せ、こういうことを申し上げるつもりはございません。

 開門につきましては、これはまた機会をいただいて議論させていただきたいと思いますが、政府としての認識はただいま申し上げましたとおりのことでございます。

 では、支援が何ができるかということでございますが、ノリ養殖につきましては、災害の損失を補てんする漁済の対象となっております。国として、漁業者が支払われます共済掛金の半額を助成しておりますし、佐賀県におきましては、多くのノリ養殖業者の方々がこの漁業共済に加入をしておられるわけであります。

 また、災害を受けられました漁業者に対しまして、日本政策金融公庫によります長期の運転資金、借りかえ資金の制度が設けられており、これらの利用につきまして公庫に御相談をいただきたいというふうに思っております。

 既存の借入金の取り扱いにつきましては、それぞれの業者さんごとの事情に応じまして、償還猶予などの対応をとり得るか、金融機関とよく御相談をいただく必要があると思っておりますが、政府といたしまして、金融機関に対しまして、必要であれば指導を行いたいというふうに考えております。この被害の状況というものをよく掌握をいたしました上で、金融機関に対しまして、償還猶予等々の対応につき、養殖業者の方々の経営安定、経営改善、窮状の打破、それにきちんと資するように、政府としても指導を行うことが将来あり得ることだというふうに認識をいたしております。

大串委員 ノリの漁家の皆さん、夏、暑い時期から準備を始められて、今、春まで、寝ないようにして長い漁期を過ごされて、ところが最近、本当に厳しい状況に直面されています。その中での今回の状況です。ですから、大臣が今おっしゃったように、非常な借財も抱えながら、そして現在の収入減に直面されている、このようなことに対して万端の措置をとっていただきますように、繰り返しお願いしておきたいというふうに思います。

 さて、次の課題に移らせていただきたいと思います。

 農業の問題でございます。品目横断的経営安定策、とりわけ集落営農の問題に関して私は議論をさせていただきたいというふうに思います。

 私の佐賀県、農業の非常に盛んなところでございます。品目横断的経営安定策のもとにおける集落営農あるいは認定農業者への加入率も非常に高いところでございまして、私自身も、親戚も含めていっぱい農業をやっている、そういう中から育ってまいりました。

 大臣、率直にお尋ねしたいんですが、今の品目横断的経営安定対策、そして、とりわけこの集落営農という制度、うまくいっているというふうに御認識でしょうか。

石破国務大臣 それは、よりよいものに変えていくという努力は今後もしていかねばならないと思っております。

 経営安定対策並びに集落営農、これはやはり、法人というものを単位としていかねばならないということ、そして経営というものを御認識いただきたいということ。経営というものを認識することによって、いかにしてコストを低減するかということによっていろいろな実効が図られるというふうに思って制度を仕組んだものでございます。

 基本的な考え方において私は正当なものだというふうに考えておりますが、なお地域地域でいろいろな御意見があることもよく承知をいたしております。使いよいものにする、そしてまた効果がより発現しやすいものにする、そのための努力は今後もしていかねばならないと思っております。

大串委員 今大臣は、私の問いに対しては、ストレートにはうまくいっているという言葉は一度もお使いになりませんでした。基本的な考え方は間違っていないと思うけれども、よりよくしていかなければならないというのが答えだったと思います。

 ストレートにうまくいっていると言えない事情があられるのではないかと私は思うんですけれども、そういうふうな気持ちになられないんじゃないかというふうに思いますけれども、私自身も地元で、まさに大臣がさっきおっしゃった、現場の声を聞いてこいというふうにおっしゃいましたけれども、私も日々それを続けております。どこかの大きな集会場でそれをやるんじゃなくて、それこそ農家の方々の作業小屋や座敷や、あるいは田んぼの端で声を聞くと、最もいい声、実情の声が聞こえてくるし、そういう中で本当の声が聞こえてくるんだと思うんですね。

 そういう中で聞いていると、やはりまず導入の過程で、非常に現場の実態を無視した性急過ぎたところがあったんじゃないかというふうに思います。例えば、これは二年半前に法律が通ったわけでございます。二年半前の六月に法律が通って、その秋の秋まきの麦からは集落営農だ、こういうふうになっています。

 しかし、確かに政令、省令、そして要綱、要領などは法律が通った直後につくられたと言われていますけれども、当時、農民の方々にどういう制度か知っていますかと聞いても、ほとんどの方がまだ知られない。当時、質問を国会で行って、周知徹底やっていますか、こう聞くと、周知徹底を一生懸命やっていますと答えられていましたけれども、ほとんどの皆さんは当時、よくわからない。秋まきの麦が始まって以降も、よくわからないという声があちこちで聞こえていたのが現実です。

 まさに六月に導入されて、十一月の秋まきの麦から、数カ月ありますけれども、でも大臣、農業の現場は、秋まきの麦というのは十一月から即座に始めるわけじゃないんです。種の契約、あるいはそれをどういうふうにしていくかという考慮も含めて、もう夏ぐらい、あるいは夏前ぐらいから農家の方々は作業を進められているんですね。法律が通ったのが六月、そしていきなり、周知徹底も図られない、よくまとまっていない。これだと、農家の方々は大変戸惑われた、難しかった。

 このような農業の現実と非常に離れた政策が行われたということに関して、大臣、どういうふうにお考えですか。

石破国務大臣 委員は、経緯をよく御案内のとおりでございます。

 今、秋まき麦につきまして御指摘がございましたが、十九年産の秋まき麦におきましては、十八年産麦の作付面積全体の約九割となります二十四万四千ヘクタールの加入申請が行われておりまして、制度の趣旨、内容等について一定程度の浸透が図られたというふうに評価をいたしておりますが、これは、当省の中でも議論をしておりまして、政策が本当に現場にわかっているの、おりているのということは、やはりよく点検をしなければいかぬ。いろいろな政策はつくりましたが現場に全くおりていない、おりたとしても周知徹底が図られていない、それは、やり方に問題が相当にあったのではないかと反省はいたしております。

 したがいまして、書類は簡素化する、そしてまたDVDとかビデオとかいうものも併用いたしまして、だれが見てもわかるということ。わからなければ政策ではございませんので、私、先ほどの所信でお客様という言い方をしましたが、お客様にわからなければそれは商品としての意味を持ちませんので、その周知徹底というものについて最大の工夫をしていきたいと思っております。

 ですから、この秋まき麦につきましては一定程度の周知が図られたというふうに私は認識をしておるところでございますが、ほかの政策について、本当に実際にその政策を実行される農家の方一人一人が読んでわかるかということです。わからなきゃ聞きに来いみたいな話はだめなのでありまして、読んだらすぐにわかる、そして、わからなければお問い合わせにすぐ応じるというような体制をつくっていかなければ、親切な農林水産省にはなり得ないと思っております。

大串委員 恐らく、役所の皆さんの方からの答弁書としては、秋まきの麦が九四%を超える加入率だったから一定程度の理解があったのかなという答弁が上がってくるでしょう。大臣はそれを読まれて、うっと思われたと思います、大臣のことですから。それで、本当に一定程度の理解があってうまくいっている組織かどうかというのも、きちんと検証しなきゃいけないと思うんですね。

 何せ、先ほど大臣は、基本的な考え方とおっしゃいました。経営をしていく、法人化していく、そしてコストを下げていくというようなことをおっしゃった。コストを下げるためのある意味一つのステップが、共同で作業を行っていくということだと思うんですね。共同で作業を行い、それによってコストを下げる、それで収益が上がるようになっていく、こういうふうな考え方だろうと思います。今の集落営農の仕組みに関して、このパンフレットにもあります。「共同で営農を行う実態が存在せず、形式的に組織名義の口座のみ設けて、収入を個人に一〇〇%分配するようなものは、当然認められません。」当然、そういう考え方がこの「品目横断的経営安定対策のポイント」という農林水産省のここに書かれています。

 ところが大臣、どうでしょうか。本当に共同作業まできちっとやれている集落営農が日本の中にどれだけあるか。やっていらっしゃらない方々が悪いんじゃないんです。やれないんです。やれているところがどれだけあるかというのを調査されているんでしょうか。しかも、まさにここのところが、収入、所得が上がっていくかどうかのかぎのところであります。どの程度本当に集落営農の皆さんで所得が上がっているのかというのを大臣、調査、認識されているんだろうか。

 私、ちょっと手持ちで、私の地域のある集落営農の皆さんの総会の資料を見ておりました。ここは、耕作の仕方としては非常に広い土地を持って、四十ヘクタール近い土地、これを二十戸強でやられています。米のみならず麦、大豆も加えて、分配される決算が、今回の場合四千万ちょっと。四十ヘクタールで二十数戸、そして米、麦、大豆、全部やって、集落営農の形として、黄ゲタ、緑ゲタ、これも全部入った上で四千万ちょっとです。ということは、一ヘクタール当たり百万円ですよ。

 きょう、資料にもおつけしました品目横断のパンフレットの中に「集落営農と小規模個別経営の比較」ということで書かれています。これは約一ヘクタール当たりの小規模個別経営と集落営農でどれだけ違いが出るかということを書かれていますけれども、農業労働時間が五百七十八時間から百三十二時間に減ります、そして所得は四万円から四十七万円にアップします、こういうふうな夢のようなことを書かれています。

 しかし、これは労働力とかをまだ抜きにした数字ですよね。労働力とかも抜いた数字で、純粋な収益として四十七万円。しかも米だけですよね。ところが、先ほど申し上げました、ある地域では、米、麦、大豆、全部収入を入れて、そして労働力はその中の換算材料として考えて、一ヘクタール当たり百万円しか上がっていない。そして、これはそこの地域だけではありません、恐らくほとんどの地域がそうです。

 大臣、これが一定程度の理解を得た、そしてうまくいっている仕組みと言えるでしょうか。

石破国務大臣 これも委員御案内のことかと思いますが、昨年五月に、農林水産政策研究所におきまして、水田・畑作経営所得安定対策に加入した集落営農組織五百経営体を対象として経営状況に関するアンケートを行いました。

 十九年度の収支については、黒字だったとお答えになったのが五二%、差し引きゼロだったが二六%、赤字だったが一九%。サンプルが五百ですから、これで全体がわかるというようなことを私は申し上げるつもりはありません。ただ、こういう数字が出ておるということは確かでございます。

 北海道から九州、沖縄まで、集落営農がどれぐらい実施をされているか、そしてまた、されているところとされていないところでかなりの差が出ているというふうに思っておりまして、それはなぜなのか、そして、収入というもの、経営というものが実際にどうなっているかということを正確に把握いたしませんと、今後の政策展開というのはなかなか難しかろうという認識は持っております。

 私自身、自分の選挙区に、この集落営農を取り入れるところもあれば、取り入れようと思っているけれども、なかなかうまくいかないというところもございます。それは一体なぜこのようなことになるのかということを、ミクロ的にも、あるいはマクロ的にも、両方から分析をした上で、私は、集落営農の考え方というのは基本的に正しいと申し上げました。今後もそうあらねばならないと思っております。それをさらに実効あらしめるように、いろいろな問題事例、優良事例を分析するのはまあいいんですが問題事例、不良事例、不良というのはかぎ括弧をつけますが不良事例というものをよく検証しながら、よりよいものを目指したいと思っております。

大串委員 ぜひ大臣、現場の実態に目を向けていただきたい。現場の声というのは、本当に入っていかないとわからないんです。ぜひぜひ、入りに入って分析していただきたいと思います。

 問題は、集落営農だけではありません。認定農業者の方々にも大きな苦しみがあります。

 例えば、ある地域で集落営農が立ち上がろうとしている。認定農業者の方は、長い間かけて規模も拡大し、認定農業者としてしっかりやっていこうとされていた。しかし、地域が集落営農をやろうとする、その中で集落営農に入らざるを得ない。本来は認定農業者としてやっていける力、底力、そして規模もあるにもかかわらず、集落営農に入らざるを得ないというふうに仕方なく言われている、そういう認定農業者の方もいらっしゃいますし、その方が、いや、私は認定農業者としていくんだということでやられる場合には、何か集落との関係で最近うまくいかなくなったんだよねというふうな悩みを述べられる方々もたくさんいらっしゃいます。

 この認定農業者の方々は、それ以前は、まさに地域の中核的な農家として地域全体を引っ張っていらっしゃった方々が、今そういう形で集落営農の外になってしまって、それで集落との関係がうまくいかなくなっているようなところの声も多々聞きます。実際、公民館で行われている農業者の方々の会合に行くと、集落営農の方々と認定農業者の方々と分かれて座っていらっしゃる。昔は一緒に車座で話していらっしゃった。どういうことだと。こういう実態もあるんです。

 これは大臣、どう思われますか。認定農業者に対しても非常な苦難を与えている。いかがでしょうか。

石破国務大臣 そういう実態があることは承知をいたしております。

 集落営農と認定農業者、ともに地域の担い手として重要な役割を担っておるわけでありまして、市町村等関係機関が仲介をし、双方の土地利用調整や営農活動が円滑にいくよう適切な指導を行っていくことが重要だということなのですが、制度をつくったのは国でございますので、これは直接御相談くださいということをやってまいりました。すなわち、農林水産省の中に集落営農の組織化に伴う土地利用調整に関する相談窓口というものを設けまして、多くの御相談を今まで賜ってきたところでございます。

 これは、やはり制度がうまくいかないときに地元の市町村にお任せというのは余りいいことだと思っておりませんで、実際にそういうお困りの方々、ましてや、人間関係がおかしくなっちゃったというようなことが制度に起因するものであっては本当に申しわけのないことでございますので、本省として丁寧に親切に対応するということでやっております。

 なお、現場において、こうしたらいい、ああしたらいいというふうなお考えがあろうかと存じますので、また御教授をいただければ、適切に実施をしてまいりたいと考えております。

大串委員 ありがとうございました。

 最後に、法人化に対して一言だけ申し上げたいと思います。

 法人化は正しいとおっしゃいましたけれども、佐賀県の場合は、集落営農そして認定農業者に対する加入割合が、米、麦、大豆、非常に高うございます。この中で本当に法人化を推し進めるとなると、例えば佐賀県なんかの場合には、麦、大豆のみならず米も含めて、米も七割近くの集落営農もしくは認定農業者の加入の率ですので、佐賀県全体が最終的には認定農業者もしくは法人化になっているというような状況が想定される制度になっているわけです。本当にそれが農業の実態として正しいことなんだろうか、そこまで本当にいけるんだろうかという実態からの危惧といいますか、懸念といいますか、これを私はぬぐい去ることができません。

 これに対して最後の一言をお願いして、私の質疑を終わります。

石破国務大臣 法人化のメリットにつきましては、今ここで私がくだくだと繰り返すことはいたしません。青色申告で欠損金として七年間繰り越すことができますとか、いろいろな準備金制度が活用いただけますというようなことが法人化のメリットでございます。

 今まで、集落営農を法人化するに当たりましては、事業、構成員等につきまして制約がございます農業生産法人になるしかないということでございました。今回、農地法等の改正案を提出させていただいておりますが、この中で、農業生産法人に限らず、地域の実情に応じた多様な形態の法人を選び得るということにいたしました。

 ですから、繰り返しになりますが、事業ですとか構成員については、農業生産法人、結構制約があったものでございますから、農業生産法人でなきゃだめだよということではなくて、多様な法人というものを用意することによりまして、より法人化に道を開きたいというふうに思っておるところでございます。

大串委員 また議論させてください。

 ありがとうございます。

遠藤委員長 次に、石川知裕君。

石川委員 民主党・無所属クラブの石川知裕でございます。

 大臣、先ほど仲野議員とのやりとりの中でブラウンスイスのお話がございました。質問の前に、北海道の十勝の新得町というところで共働学舎という農場を経営されている宮嶋さんという方がこのブラウンスイスの飼育では先進的な農家の方でありまして、そこでつくられている「さくら」というチーズが、たしかナチュラルチーズとしては世界一の賞を受賞されているチーズでございます。

 大変お忙しいとは思いますけれども、先ほど現場に出てというお話でございました。チーズも味わってみないとわからないものでございますので、ぜひ、北海道までお越しをいただいて、お忙しい場合は職員の方に取り寄せていただいて、ブラウンスイスからつくられたものを御賞味いただきたいと思います。たしか北海道へ行かないと買えないと思います。調べておきます、済みません。大臣のために調べておきます。質問の冒頭で、まずは地元の宣伝をさせていただきました。

 まず、農政改革関係閣僚会合について、大臣にお尋ねをしたいと思います。

 食料・農業・農村政策推進本部長の麻生総理が、ことしの一月二十八日に、食料自給率の向上や国際化の進展にも対応し得る農業構造の確立に向けた政策の抜本的な見直しを検討するため、内閣官房長官及び農政改革担当大臣の主宰による農政改革関係閣僚会合を設置いたしました。そして、農政改革担当大臣に石破農林水産大臣が御就任をされたわけであります。

 農業に関して特命担当大臣が設置をされるというのは恐らく初めてだと思いますし、政府の農政改革にかける思いというものが伝わると思うんですけれども、ただ、残念に思うのは、農林水産大臣が兼務をしてしまったことによって国民もしくは農業者に対してのアピール度が薄れたのではないのかなと思っております。

 例えば、それぞれの内閣で、自分たちがこうしたテーマに特化してやっていくんだというときに、少子化担当大臣、また、小泉内閣のときは、麻生さんは自分は反対していたから外されたんだと言っていましたけれども、総務大臣から郵政民営化担当大臣を創設して、郵政民営化の是非は別として、小泉内閣の意思を示したわけでありますけれども、農政改革担当大臣を農林水産大臣が兼務するというのはちょっとメッセージ性が弱いと思いました。

 しかしながら、石破大臣に、一生懸命、ほかの六閣僚、今与謝野さんが兼務をされておりますから五閣僚と一緒になって農政改革を進めていただきたいわけでありますけれども、今回の農政改革担当大臣として何を一番主眼に置かれるのかということを、まず冒頭、お尋ねをしたいと思います。

石破国務大臣 持続可能性というものを取り戻すということです、一番やりたいのは。

 私は、自給率を軽んずるつもりはございません。しかしながら、国民の食生活が昭和三十年ぐらいに戻っちゃいました、結果として自給率が上がりました、よかったよかった、政策目標達成というのは、相当に倒錯したお話でございます。むしろ、自給率というよりは、それを構成する要素である人、金、物、農地、農業者そしてまた所得、この三つが上がるようにしていかなければいけない。結果として自給率は向上するものだというふうに思っております。自給率自体を自己目的的に政策目標にするという手法、それは結果として正しいのでありますが、そこに至るプロセスはもっと精緻でなければいけないと思っております。それが一つ。

 もう一つは、先ほど井上委員の御質問にもありましたが、消費者、納税者、それがきちんと理解をして農業を支える、そういう意識を国民全体でシェアしたいということであります。

 私が若いころ、まだ当時は食管制度が残っておりましたので、米価というものを維持するんだということで、もう二晩も三晩も徹夜をして米価の議論をいたしました。米価が決まったときに新聞にちょこっとしか出なかったですよね。そしてまた、自民党が、あるいは農林関係議員が圧力を加えてというふうに新聞には出て、すごく悲しかったのを覚えているのでありますが、実際に食料が危機的な状況に陥って困るのは消費者でしょうと。

 実際にそういう状況が起こって、ああ、無関心だったのはいけなかった、もっと支えておけばよかったと言ったって、もう時既に遅いわけでございますよね。本当に、消費者、納税者が、かくかくしかじか、かくなるものをかくなる理由によって支えるのだという、国民全体で支える農業という意識が比較的希薄だったのじゃないか。それはおまえの努力が足りぬのだと言われれば率直に反省せざるを得ないのですが、人、金、物において反転したい。

 そしてまた、国民すべてが支えるのだという実はほかの国では当たり前の意識が、なぜか日本では醸成をされていない。昨年からことしにかけて食についての関心が高まった今、それを一過性のものにしてはいけないのだと思っております。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

石川委員 今大臣の御答弁の冒頭で、一番の主眼は持続可能性を農業に取り戻して、そして消費者にも安心を与える、こういうことでございました。

 この点については後でまた議論をさせていただきたいんですが、もう一点、農政改革関係閣僚会合について、この農政改革関係閣僚会合のメンバーとして、財務当局、そして経済産業大臣、経済財政政策担当大臣がお入りになられておるわけであります。今後、日豪のEPA交渉、またWTOの交渉、きのうの農業新聞では石破大臣と事務局長との二時間の会談の中で、ことし後半に本格的な交渉事になるのではないかという予測記事が掲載をされていましたけれども、この関係閣僚会合によって今後の交渉というものは変わってくるのか、農業者にとっていいものになってくるのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

石破国務大臣 ラミー氏と二時間近くワーキングディナーを行い、議論をいたしました。

 閣僚会合の見通しは、正直言って、今、断言できるような状況にはございません。開いたはいいが何にも決まりませんでしたというようなことになったらば大変なことでありますので、開くに当たっては、合衆国新政権の動向というものもよく踏まえながら、そしてバイでいろいろな調整を行いながら閣僚会合をやって、意味のある状況をつくっていかねばならないと思っておりますし、日本としてもそれに協力するに全くやぶさかではございません。

 閣僚会合はどうなるかわからないというかなりあやふやな前提で恐縮でございますが、そこにおいて、委員のお言葉をかりれば、農業者にとって本当によいものにならねばならないということだと思っております。例えば、重要品目の数でありますとか、関割りの新設でありますとか、上限関税でありますとか、そういうことについて、我が国として年来の主張というものをきちんと申し述べておるわけでございます。

 キーワードは多様な農業の共存というものであって、それは、日本はこんなだからもうよそから入れないよということを言っているわけではありません。地域地域によっていろいろな多様な農業が共存するべきだということ、そして、工業、商業でこんな利益を受けているのだから農業はこれぐらいの不利益を甘受しなさいみたいな、そういう理屈にはならないのだということだと思っております。

 所信でも申し上げましたが、日本農業の保護水準というのは決して高いという認識を私は持っておりません。高ければ自給率がこんなに低くなるはずはないのです。そのこともよく主張しながら、G10諸国とも連携をし、多様な農業の共存、日本の農家の利益に資する、国益に資するような交渉を行うことが政府の責任であると考えております。

石川委員 さきの交渉の中でのインドのナート大臣のように、本当に日本の農業者のために石破大臣に体を張って頑張ってもらいたいとまずはお願いをするところでございます。

 次に、先ほど持続可能性を一番の主眼に置かれているということでございました。

 今回のこの関係閣僚会合、農政改革担当大臣として四月前半をめどに農政改革の検討方向を取りまとめるということでございますけれども、今回のこの農政改革関係閣僚会合の文書の中で一番主眼に置かれているのが、どうも水田の生産調整の問題、農地制度の問題というものが主眼に置かれているのかなと、この開催についてという文書からは見受けられるんですけれども、酪農、畜産対策についてはどういう方向性でこの四月前半の取りまとめ、議論をリードしていくのかということをお答えいただきたいと思います。

石破国務大臣 それは委員が今おっしゃいました文書の中に、「水田の有効活用方策」あるいは「食料自給力の向上」というふうに書いてございます。

 広くあまねく、畜産も酪農も果樹も、すべてのものを書けばよかったのかもしれませんが、いわゆる自給力と書いた中にはいろいろな含意がございまして、まさしく自給率、言葉を分けて使いますが、自給率が低下をしちゃいましたねというのは、米にかわってパンを食べるようになったというよりは、米にかわって肉類あるいは油脂類をとるようになりました、しかし、そのえさは外国から入れておるのですということになっておりますわけで、やはり構造全体を考えていきますときに、自給力の向上という中に実際に畜産をどのようにして持続可能なものにしていくかという最も強い問題意識が入っております。

 自給力の向上の中の一番核心部分は、やはりこの自給体制というもの、畜産あるいは酪農における自給体制というものをどうやって確立するか、それがまさしく持続可能性ということなのだ、サステーナブルなのだというふうに考えておるところでございます。

 したがいまして、ほかの分野と同様に、畜産、酪農についても検証を行い、議論をするということであらねばならないと認識をしております。

石川委員 その持続可能な体制ということでございますけれども、生産局長にお聞きをしたいんですけれども、近年、配合飼料価格の高騰、または生産資材の高騰、きょうの与野党含めた各委員からの質問の中にも酪農、畜産の現場における状況が大変厳しいということがありますけれども、ここ三年ぐらいで酪農について言えば都府県や北海道でどれぐらい離農率が高くなっているのか、また所得が落ちているのか。ほかの畜産も含めてお答えをいただきたいと思います。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

本川政府参考人 お答え申し上げます。

 畜産農家の戸数は、昨年の二月一日現在までの動向によりますと、乳用牛につきましては近年三、四%台の減少となっております。肉用牛については減少率がひところよりは鈍化している傾向があるものの二%から五%台の減少となっております。

 昨年二月以降の状況について、まだ統計はございませんが、関係団体が調べた状況で、酪農家の戸数で見ますと昨年十二月末現在では一年前と比べまして六・四%の減少となっておりまして、同じ統計ではございませんので連続性があるかどうかということは検証が必要でありますが、これまでよりも減少度合いが上昇しているというふうになっております。これは、飼料価格の高騰でありますとか、酪農経営を取り巻く厳しい状況を反映した数字ではないかというふうに考えております。

 また、畜産農家の所得を畜種別に見てみますと、酪農経営につきましては、十五年の一戸当たり八百六十六万円から十九年には五百三万円へ減少いたしております。肉用牛の繁殖経営につきましても、十六年の百七十九万円から十七年、十八年と増加をいたしまして、十九年はそこから減少して百八十九万円となっております。肉用牛肥育経営につきましては、十六年の九百五万円から十九年には五百三十一万円へ減少しているという状況でございます。

石川委員 先ほど大臣の所信のときにも、所信表明参考資料ということで、農業総産出額は平成二年の十一・五兆円から十七年は八・五兆円まで減少している、農業所得も平成二年の六・一兆円から平成十七年の三・四兆円に減少していると。まさに農業の現場、酪農、畜産の現場は大変厳しい現状にあるということであります。

 そこで、大臣、端的にちょっとお答えをいただきたいんですけれども、現行の酪農、畜産の経営安定対策において、畜種ごとの経営安定対策は制度疲労を起こしているのではないのかと私どもは考えておりますが、大臣の所見はどうでしょうか。

石破国務大臣 制度として疲労を起こしているという認識は持っておりません。やはり中長期的にどうするかということをよく認識しながら、緊急対策、緊急対策ということで、その場その場の対策だけ講じてきたのではないかという御批判をいただかないように、政策は組んでいかねばならないと思っております。

 北海道の酪農というものを考えましたときに、これはもう事情が都府県とは相当違いますので一概に議論はできませんが、北海道の酪農の規模とかそういうものを考えればかなり順調にいっている。問題は、所得とか経営というものをどうするんだということでございますので、そこをどう考えるかということなんだろうと思っております。ですから、例えば、規模という話をしておるのですよ。一戸当たり経産牛頭数が約六十頭と比較的大規模になっておる、生乳生産量も年間を通じて比較的安定をしているということをとらえて、私は申し上げておるわけであります。

 ですから、そこに経営の安定というもの、所得の増大というものをどのようにして仕組んでいくかということについて、よく配慮しなければならないと思っております。

石川委員 時間があれば、その生乳の生産体制についてはまた後で御質問させていただきたいと思いますけれども、先ほど与野党の、特に与党の議員の中からも、今の経営安定対策は、不要なものもある、または要件が非常に厳しい、また複雑過ぎるというお言葉もありました。

 今、酪農、畜産の現場の中で、この今までの経営安定対策が果たしてこれからも有効に活用をしていくのか、現場の方々が大変疑問に思っているのではないのかと思います。例えば肉牛のマル緊制度。以前は、家族労働費、その下の物財費割れまで想定をしていなかった。去年の緊急対策で、そこを、物財費割れした部分の六割を埋めようと。さらに六割の上にまた埋めて、今回も対策がどれぐらいできるのかというのが大きな争点になっているというところだと思います。

 また、酪農家の現場でも、先ほど北海道は比較的規模として順調ではないかということでありましたけれども、北海道の現場も、私も地域を歩くと、余裕がある人が、じゃ、このあたりでやめておこうという方も多いわけですね。そして、厳しい方ほど、ここでやめたら大変だ、五千万、六千万円の費用をかけていろいろな新しい機械を入れて。そういう状況が、実は大規模酪農家にも非常に厳しい現状があるということをどうか御認識いただきたいわけであります。

 今、枝肉価格が少し下がっていますけれども、右肩上がりの経済状況のときは、国民の所得が、それぞれ購買能力が上がるので、ある程度価格転嫁をしたものに対応できるわけでありますけれども、去年、酪農の現場では、バイイングパワーが強いんじゃないかということで公取が調査に入りました。結果はそうではないということでありましたけれども、現場は価格転嫁はできない、生産資材は上がっていく、内部留保を取り崩してという現状が続いている。

 そして、政府も今本当に財源も厳しいと思います。だんだん財源がなくなってきた、どうしようと。そういう中で、関係閣僚会合の中で、納税者も踏まえて、国民的な議論の中でどれぐらい負担を納税者に理解をしてもらえるのかというのが、この農政改革担当大臣を新しくつくったということの意義は恐らくそこにあるのではないか。産経新聞の大臣のインタビューにも、そこが取り上げられておりました。

 ここについてきちんと議論をした上で、畜種ごとの経営安定対策が今厳しいわけですから、新しく、耕種農業の場合は品目横断、今は水田・畑作経営所得安定対策ということで変わったわけでありますけれども、酪農、畜産に対して持続可能な体制にするために新しい方策を考えるというお考えは大臣にないのか、お聞かせを願いたいと思います。

石破国務大臣 マル緊は緊急だからマル緊なのでありまして、補完マル緊はまたそれを補うものだということで、ある意味、ポジティブにとらえれば、機動的に政策を実行し得る制度だということも言えようかと思っております。物は見方次第なのでありますが。

 ですから、持続的にどうなのだということになった場合に、なおかつ消費者の動向に適切にこたえるものであるというのはどういう制度なんだろうかということは、それは検討しなければいけないと思っております。私は、今のいろいろとっております政府の対策が、その場その場の状況に応じた機動的なものであるというふうに自負はいたしております。

 最近、きのうはファルコナー氏と話をしておりまして、この人はニュージーランドの人であります。あるいは、先般、ロイタードというスイスの副大統領兼経済大臣というのがやってまいりました。それぞれの国がどのような酪農政策をとってきたか、どのような経営対策をとってきたかということは、現在の政策は日本の状況にマッチしたものであるということをよく認識し自負した上で、各国がどのような制度をとってきたかということはよくよく認識をし勉強したいと実は私は思っております。

 我が国も、スイスの酪農政策なり、あるいはニュージーランドの酪農政策なり、これはオーストラリアと比べてもほとんど意味がございませんので、やはり国土が狭隘で、山岳地域が多くてというようなものを念頭に置いて考えなきゃいかぬと思っております。ただ、ニュージーランドの場合には酪農国でございますから、輸出に回っている部分は相当ありますので、全く同一に論ずることはもちろん意味がありません。ただ、各国の制度をよくよく勉強するということは必要なことだと思っております。

石川委員 今、ある程度機動的な政策であるということでありましたけれども、現場からすると、なかなか先が見通せない中で、続けていくべきかどうかという判断に大変困っておられる。肉牛の繁殖農家、この間、岩手県にお伺いをしました折に、短角牛の繁殖農家の方々も、今までずっと生活をしてきた中で、これが生活の一部だからということでやっておられるお年寄りの農家も多いと聞いております。先の見通しがない中で、安定した政策をとっていくのがやはり一つ考えるべきところなのではないかと思います。

 また、この所得補償の問題については、もちろんモラルハザードが起きないようにするということも十分検討しなければいけませんし、財源をどうするんだということも当然財務当局と議論しなければいけないところでありますけれども、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 そこで、生乳の生産体制に戻りますけれども、都府県の酪農家の離農率が大変高いという状況が続いております。

 生産局長にお聞きをしたいんですけれども、都府県の酪農家の離農率が高いことによって、飲用乳の供給が不安視をされている部分がありますけれども、そのあたりについてお聞かせを願いたいと思います。

本川政府参考人 都府県の酪農家の方の離農はございます。ございますけれども、その方々に対して経営を下支えする事業を実施いたしております。

 先ほども議論がございましたけれども、乳価が上がることに伴う、それが上がるまでの間の経営の支援対策を講ずるとか、さまざまな支援対策を講じておりますし、その生産性の向上なり、そういうものに対しても支援対策を講じて、何とか生産を継続していただくようなことも取り組んでいきたいと思います。それから、農家の方々が離農された場合にその経営資源を継承するようなことも取り組んでまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 そのような形で、生乳生産が減少することのないように、下支えをしながら取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

石川委員 一方で、北海道の場合、搾りたくても搾れない、こういう状況もございます。八百万トンの体制の中で、それぞれ三百、五百と四百、四百と変遷をした中で、都府県の酪農のあり方、また北海道の酪農のあり方の今後も見据えて、そのあたりの政策というものをやはり国が示していただきたい。そうでないと、いつも生産調整の影におびえながら、そして一たん生産調整をして、また搾ってくださいという中で酪農家が経営をしていかなければいけない。また、乳価の場合は、先ほど仲野先生からも御質問がありましたけれども、タイムラグの中で悩みながら経営をしていかなければいけないという問題もございます。

 今度、新しい近代化方針がこれから議論をされるところだと思います。来年度、二十一年度の最後に、今後五年間、見直しを含めて考えるところだと思いますけれども、この点についても十二分に議論を進めていただきたいと思います。

 時間がないので次に進みます。

 次は、牛乳の消費拡大について質問をさせていただきたいと思います。

 きょう資料の二ページ目に、ちょうど牛乳の効用についての記事が載っておりましたので、引用させていただきました。これは、全酪新報で、「リン過剰でCa欠乏 牛乳乳製品の摂取を」というJミルクセミナーの記事が載っております。

 牛乳の消費拡大で、今年度予算というのはどれぐらい計上をしているのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

本川政府参考人 牛乳・乳製品の消費拡大特別対策事業ということで、約七億円、六億九千九百万でございます。

石川委員 大臣、牛乳の消費は大変落ちております。当然、酪農家のために牛乳を飲んでくださいというのではなくて、戦後の日本人のカルシウムをどう補給してきたのか、また、動物の命をとらないで、それを人間の口に入るものにかえるという循環を考えると、牛乳とハチみつというのは非常に優良なんですね。また、人間にすばらしい恵みを与えてくれているものだと思います。

 中学校卒業まではある程度飲用乳として飲むわけでありますけれども、その後なかなか飲まなくなってしまう、文化的にそうなっているわけでありますけれども、この牛乳の消費拡大について、やはりトップセールスマンの石破大臣が一生懸命この効用をきちんと伝えていただくように。何か話によりますと、売店では希望戦士イシダムというのが非常に売れているということでありましたけれども、牛乳の消費拡大について、大臣の意気込みとそしてお考え、ちょっと時間がないんですけれども、お聞かせをいただきたいと思います。

石破国務大臣 おまえはこうやって売れというお知恵があれば、また実践をしたいと思います。

 イシダムなるまんじゅうは、米粉を入れまして、あとはナシのジュースなんか入れておるのでありますが、どういうような形で牛乳の消費拡大ができるか。ただ、私がやたらめったら飲んでも、それが拡大になるというわけでもございませんでしょう。本当に、委員とともに、皆様方とともに、健康に非常に有用なものでございますから、どうすれば消費が拡大するか、この七億円というものはどういうふうに有効な使い道があるか、私自身も努力をいたしますが、余り知恵もございませんので、また御示唆を賜りたいと存じます。

石川委員 きょうは北海道から酪農の生産者も大変傍聴に来ておられまして、大臣の発言には大変期待をしておられますので、どうか牛乳の消費拡大については、先ほども言いましたように生産者のためではなくて国民のためにどう行っていくのか。七億円という予算を使う中で、やはり有効に考えていただきたい。

 今回アイデアを全国から募集しているということで、項目の四番目に牛肉の消費拡大も入っておりました。ちょっと書類が今見つからないんですが、たしか二月中に締め切りをしておると思いますので、そのアイデアを大臣自身がきちんとごらんいただきたいと思います。

 最後の質問にいたしたいと思います。

 酪農ヘルパーの関係について質問をさせていただきたいと思いますけれども、せっかくなので副大臣と政務官、酪農家のところに泊まって朝晩搾乳というのは経験されたことはありますでしょうか。

石田副大臣 まことに申しわけありませんが、経験はございません。

江藤大臣政務官 朝行って経験というより、そばで見せていただいたことはありますが、泊まって朝晩はございません。

石川委員 この間、農林水産省の方とも議論をさせていただいたときに、財務当局としては、酪農ヘルパーというのは酪農家の方が休むための予算でしょう、こういう認識だということでございました。これは大変な認識違いでありまして、時間があれば本当はもっと議論をしたいところなんですけれども、きょう資料の三ページ、四ページ、五ページ、これは酪農ヘルパーの利用実態ということで資料を提出させていただいております。

 通常は搾乳の間に大体十二時間あけますので、朝四時なり四時半なりに起きて五時から搾乳をして、二時間から二時間半やって八時ぐらいに終わって、御飯を食べた後いろいろお仕事をした後、そしてまた夕方からやられます。私も何度かお伺いをして、実習をさせていただいたこともあります。

 この酪農ヘルパーに関しては、酪農家の方からのお声を、やはりきちんと体系化してほしいと。また、ヘルパーさん自身も、身分が不安定だからということもお聞きをいたします。地元の町村会の方々も、これはもう都道府県どこもそうだと思うんですけれども、酪農ヘルパー利用拡大中央基金が平成二十一年度までに事業を終了するとあるのに大変不安を抱いておられます。

 確かに酪農ヘルパーの問題はまた別にもありまして、仕事も専門的なものですから、酪農ヘルパー利用協会、私いつも、そこのホームページで募集というのをクリックすると急募だとか募集がたくさんあるのに、なかなか埋まっていないのはやはりミスマッチが起きているのかなと思ったら、きのう農水省の担当の方から、いや、来ても消していないだけですという話ではありましたけれども、そこはちゃんと指導をしているということでありましたので、それは大した問題ではありません、大きい問題ではありません。

 この利用拡大中央基金が二十一年度、そして酪農ヘルパー事業円滑化対策補助基金というのが平成二十五年度までに事業を終了すると。もちろん、利用組合ということですから、酪農家の方々の協力で運営を行っていくというところでありますから、税金をどこまで投入するのかというのはもちろん納税者や消費者のいろいろな理解がなければいけないわけでありますけれども、大臣としてはこの二十一年度終了予定の基金について継続をされる御意向があるのか、または酪農ヘルパーについてどういう認識を持っておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

石破国務大臣 昔話ばかりするつもりもありませんが、二十年前に私が自民党で委員長をやっているときにこれがいかに大事かということをよく認識いたしました。つまり、労働時間がとにかくやたら長い、そして朝昼晩がないという状況であって、これにヘルパーは絶対に必要なのだということを当時随分と議論した覚えがございます。

 二十一年度に終了することになっておりますが、二十二年度以降につきまして、今までの実績というものを踏まえながら、これをどのようにするかということは議論をしたい。ただ、酪農家の労働時間が極めて長い、労働が極めて過重であるということ、そして時間的にも制約が非常に多いということは、当時とそんなに変わっていると思っておりません。重要性の認識は変わっておりませんので、実績を踏まえて二十二年度以降の取り扱いというものを前向きに検討したいと考えます。

石川委員 ぜひ、財務当局に、特に家族酪農の大変厳しい状況をお訴えいただいて、頑張っていただきたいと思います。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

遠藤委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 まず、酪農、畜産対策について質問いたします。

 各委員も話されていますが、飼料価格の高どまり、食肉、乳製品価格の低迷で、酪農、畜産農家の経営は本当に危機に瀕しています。出荷すればするほど赤字、しかし、借金を抱えて、やめるにやめられないといった状況が蔓延しているのではないでしょうか。当面でいえば、生産者の皆さんが要求しているように、加工原料乳の生産者補給金単価の据え置き、マル緊あるいは補完マル緊事業などを継続、充実させていただくよう冒頭申し上げておきたいというふうに思います。

 他方、この二十年間、乳用牛や肉用牛の飼育農家は三分の一、豚の飼育農家は六分の一に減りました。鶏卵の飼育農家は三十分の一にまで激減しました。牛や豚、鶏の頭数は二十年間維持されていますから、それだけ大規模化が進んだとも言えるわけです。逆に言うと、小規模経営が成り立たないどころか、大規模化しても所得がふえない実態です。

 廃業と背中合わせにある酪農、畜産経営の実情を大臣はどのように認識していますか、私の方からもただしておきたいと思います。

石破国務大臣 おっしゃいますように、畜産農家戸数は、最近、小規模層を中心に減少しているということだと認識をしております。何でやめるのということにつきましては、後継者がいない、高齢化が進んでいる、あるいは病気、けが、災害ということでおやめになる方が多いというふうに承知をしております。

 配合飼料は十八年度と比べてなお高い水準にあります、牛肉の消費が落ちておりますということで、極めて厳しい状況にあると思っております。

 また、先ほど石川委員からのお話にありましたでしょうか、経営がいい人がやめていく。足元が明るいうちにという言い方をいたしますが、これから先やっていける状況にあるかもしれないという方が今のうちにやめておこうというのも、これもゆゆしい事態だというふうに認識をしておりまして、将来展望がきちんと持てるということを、言葉だけではなくて実行する緊要性を痛感しておるところであります。

菅野委員 厳しい経営状況、だから、今の酪農、畜産価格というものをどう設定するかという議論がされているんだというふうに思うんですね。産業として継続できるようなしっかりとした体制をつくっていくこと、今がその大事なときじゃないのかなというふうに思っています。

 そこで、具体的な問題について何点か質問させていただきます。

 肉用牛の生産では、先ほどもありましたけれども、所得が物財費を割り込む、すなわち家族の労賃さえも出ていません。昨年、補完マル緊事業を実施しましたが、その際、所得の物財費割れに対してマイナス分の六割まで国が補てんすることにしていますが、まず、六割という数字はどこから出てきたのか。

 それからもう一つ、肉用子牛の市場価格が暴落しているわけですけれども、肉用子牛の補給金制度は保証基準額が三十一万となっています。四十万という数字を目標にしているわけですけれども、四十万でないとコスト割れすると言われています。三十一万円という設定は時代にそぐわないと考えますけれども、三十一万円を維持している根拠というのを説明してください。

 二つです。

本川政府参考人 まず、マル緊対策でございます。

 マル緊対策につきましては、補完マル緊は六割の補てんとなっております。その上にあります家族労働費を割り込んだところのマル緊対策につきましては、割り込んだ場合の八割を補てんするということになっております。その補てんの財源につきましては、国が三で生産者の方々が一、国が四分の三を造成するということになっています。

 したがいまして、その八割掛ける四分の三でありますと六割になります。これが国が造成している部分でございます。物財費を割り込んだ部分につきまして同じような考え方で補てんを講じた場合に、国が御支援申し上げる分を積算しますと同じように六割ということで、そういう考え方に基づきまして六割を助成申し上げているということでございます。

 それから、肉用子牛の生産者補給金制度でございますが、これは、牛肉を輸入自由化したときに、最終的に輸入自由化の影響が子牛にあらわれてくるのではないか、転嫁されていくのではないかということで、肉用子牛のセーフティーネットをつくったものであります。したがって、その価格の積算につきましては、自由化前七年間の農家販売価格を基礎にいたしまして、その後の生産コストの動向等を踏まえて算定するということになっておりまして、そのような形で、きちんとルールに基づいて算定したのが御指摘の三十一万という価格でございます。

菅野委員 補完マル緊の六割、あるいは三十一万という数字、これが大きな問題を醸し出しているんだというふうに私は思うんです。

 大臣、ぜひ聞いていただきたいと思うんですが、例えば六割という状況は労働者でいえば四割賃下げされたという状況ですから、暮らしていけないわけであります。今、根拠というものは説明いただきましたけれども、私は、補完マル緊の制度というのはもう制度疲労を起こしているんだ、そういう意味を含めて、ぜひ検討していただきたいというふうに思っています。

 もう一つ、基準価格は三十一万では低過ぎる。それで、政府としても四十万を目標にして緊急的に単年度でやっているわけですけれども、そういうことが制度を非常に複雑にしていると言わなければならないというふうに思っています。

 このマル緊事業や子牛生産者の補給金制度、あるいは飼料価格安定制度もそうですが、労賃さえ出てこないような価格低迷あるいは飼料価格の高どまりといった事実に対応できないというか、そういうことが起こることをそもそも想定していない制度だと言わなければなりません。だとすれば、直面している酪農、畜産農家の危機に対する支援とは別に、中長期的には経営対策のあり方を抜本的に見直す時期になっているのではないでしょうか。とりわけ、制度を単純化するには、販売価格と生産費の差額を補てんする所得補償がこの分野でも必要になってきているというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。答弁願いたいと思います。

石破国務大臣 なぜ六割かということ等につきましては、生産局長から御説明を申し上げたとおりであります。

 では、これを十割にすればいいか。補完マル緊の補てん割合を十割にすればいいんじゃないか。そうすると販売価格というのは低くなるわけで、恒常的な収入減となるということも予想されます。十割にするというのは余りよくないなと私は思っているのです。

 そこへぽんと、ぽんとという言い方はいけないのかもしれませんが、価格差を払うんだ、これしかないんだという話ですが、本当にそれしかないのかということは多面的に議論をしていかなければいけません。産業として永続するということ、納税者の理解が得られるということ、そこにおいてはもっともっといろいろな議論を積み重ねていかねばならないのだと思っております。

 先ほど少し石川委員に対しましてスイスとかニュージーランドとかいうお話をいたしました。これは筒井議員にもどこかでお答えをしたかもしれませんが、どういうような営農をしたことに対してお支払いをするのか。単に価格とコストに差があればそれを払うのか。そのことによって納税者の理解が得られ、産業として永続性を持ち得るのかといえば、私は実は相当な疑念を持っておるところでございます。

 いずれにいたしましても、今の畜産、酪農の経営は極めて厳しい状況にあるということはよく認識をいたしておるところでございますので、今後とも広範な議論をさせていただきたい、国民の皆様方の御理解をいただける政策をよく検討したいと思っております。

菅野委員 先ほども与党の公明党の井上さんの方からも議論がありました。猫の目農政と言われている、今もそう言われているわけですけれども、なぜかというと、中長期的な視点に立った政策が打ち出されていない、そして、こういう状況が起こったから単年度で処理していこう、こういうスタイルでずっと繰り返されているわけです。やはり、今大臣が言ったように、多様な意見を闘わせながらというふうに言って先送りすることによって、先ほど言ったようにまた撤退していくという状況があるわけですから、私はこのことが、後でも議論しますけれども、早急な課題だというふうに思っています。ぜひ、畜産、酪農、農業だけじゃなくて、農業全体あるいは第一次産業全体の議論を行っていきたいというふうに思っています。

 次に、飼料価格の高騰、さらには水田のフル活用の観点から、国産飼料をふやそうという動きが進んでいます。政府も、飼料米の生産農家に十アール当たり五万五千円の助成を予算化しています。そこでお伺いしますが、来年度の飼料米の作付面積と生産量について、政府の目標数値または見通しをお聞かせください。

 そして、生産者だけ奨励しても、飼料米を使う飼料メーカーや農家がなければどうにもならないわけですね。いわゆる耕畜連携が問われているんだと考えますが、いずれにしても、生産奨励にとどまらず、えさ米の利用拡大、保管や流通網の整備がセットでないと絵にかいたもちに終わることは間違いないと思うんですけれども、どのような対策を考えているのか、答弁願いたいと思います。

本川政府参考人 飼料用米の作付につきましては、飼料自給率を上げていくために非常に有効な政策だと思っておりまして、これまでも稲発酵粗飼料でありますとか飼料用米の生産を推進してきております。例えば、具体的には、稲発酵粗飼料につきましては、この五年間で四千四百ヘクタールから八千九百ヘクタールへと約二倍になっております。飼料用米につきましては、この五年間で四十ヘクタールから千六百ヘクタールへと拡大をしてきております。

 ただ、まだ残念ながら点的な状況にとどまっておりまして、これを面的に広げて取り組んでいきたいということで、今年、先生御指摘いただいたような助成制度なども導入しながら取り組んでいきたいと思っております。現在、まさに今取り組んでいるところでございまして、二十一年度の面積等は今のところまだお示しできる状況ではございませんが、力を入れて取り組んでいきたいと思います。

 そういう中で、御指摘のように、耕種農家の方々だけにお願いするわけではなくて、私どもとして、畜産農家の方々にも、例えば飼料用米を給与したときに豚肉の脂肪酸とかそういうもので品質が向上するとか、そのようなことのメリットをきちんと伝えていきたいと思いますし、そういう飼料用米を給与することによって畜産物をブランド化しているような事例、こういうこともきちんとお示しをいたしながら、メリットをお示ししていきたいというふうに思っております。

 また、御指摘のあったような、いろいろな施設、そういうものにつきましても補助制度を用意しておりますので、そういうようなものを活用してお勧めをしていきたいと思います。

 最終的には、畜産農家の方々から希望数量を聞き取りまして、それを耕種農家の方にもお示しして、また逆に耕種農家の方々の希望を畜産農家にフィードバックする、そのようなこともやりながら進めておりますので、さらに力を入れて取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

菅野委員 ふえてきたというのは、やはり配合飼料価格の高騰という状況の中で、今言った数字、答弁の状況になっているというふうに思うんですけれども、要するに、米の生産者側と家畜経営側がどう連携していくのか、ここが大きな課題だと私は思うんです。ただし、大規模になればなるほど、やはり配合飼料に頼らざるを得ないという状況にあるわけですから、今の政府のとっている政策と相矛盾する部分もあるわけですから、そこら辺の整合性はしっかりとっていただきたいというふうに思っています。

 次に、新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向け、農政改革が検討されております。米の生産調整をめぐって、選択制だ、いや、それではだめだという与党内の議論がたびたび報道されているわけですが、きょうは具体的な点には触れません。

 農政改革に向けて、与謝野大臣が兼務ですから五大臣になるのかな、閣僚会合が設置され、そのもとに特命チームが置かれて作業が進められております。他方、経済財政諮問会議でも農政改革が議論になっています。それとは別に、本筋で、食料・農業・農村政策審議会で一年かけて、来年の三月まで議論が行われるものと承知しております。

 一体どこが改革の方向性を決める本丸なのでしょうか。骨太の方針は六月か七月には出されるわけで、財政諮問会議が一番早く、ここが改革の中心だとすれば、政策審議会が何を議論していくのかということにもなりかねません。オーストラリアとのEPA促進や株式会社の農業参入などを見てもわかるように、経済財政諮問会議が改革の本丸になるとすれば、財界の意向が強過ぎると大変懸念するわけです。改革の進め方について、大臣、答弁願いたいというふうに思います。

石破国務大臣 それぞれがそれぞれの立場においていろいろな議論をいたしております。

 食料・農業・農村政策審議会というのは、おおむね五年ごとに変更いたします食料・農業・農村基本計画を議論しておるわけでございます。農水省内にございます。また、経済財政諮問会議は今委員から御指摘があったとおりでございますし、政府の中に食料・農業・農村政策推進本部というのはもともとあるわけでございますが、そのもとに農政改革関係閣僚会合というものを設置いたしました。

 ですので、それぞれいろいろな観点からいろいろな議論はいたしてまいります。しかしながら、広く国民の皆様方の御意見を聴取しました上で政府として骨太の方針というのが決まる、また、将来的には基本計画が定まるということになるわけでございます。

 よく、経済財政諮問会議というところで議論をすると財界寄りになっちゃって、農の立場とか農の現場とかそういうものが軽んぜられるのではないかというお話がありますが、私、何回か議論に参加しておって、本当に、農業に対する思い、農業なんかだめになってもいいんだ、そんなものは工業が稼げばいいんだ、そういうような認識を感じたことは一度もありません。農業を守るためにはどうすればいいか、だれが負担をすればいいかという極めて真摯な議論が行われておるというふうに理解をいたしております。工業や商業の犠牲に農業がなってもいいというようなことを言っておる者は一人もおりませんし、そんなことはございません。

 だれが負担をすべきかということについて、そして、効率性というものは、当然、産業である以上、維持をしていかねばならない、高めていかねばなりませんが、あわせて、条件不利地域、あるいは零細な農家、そういうものに対してどういう配慮をしていくべきかという議論をしなければ改革そのものが実現しないという認識もすべての者が持っておるというふうに私は承知をいたしております。

菅野委員 このことについては、これから議論が進んでいくわけですから、あらゆる機会を通じてまた議論を行っていきたいというふうに思っています。特に、今回、農地法という大きな改革案が提出されておりますから、この部分でも議論していきたいというふうに思っています。きょうは入り口論にとどめておきたいというふうに思います。

 次に、これから改革を進めていこうという石破大臣の強い意思は感じ取れるわけですけれども、その前に総括は重要だというふうに思います。例えば、先ほどの酪農、畜産対策でも、制度設計が現状にそぐわなくなっていることは改革の対象だとだれもが思うわけです。まず、総括をしっかり行い、成果と失敗、とりわけ失敗した点の原因を国民に率直に明らかにするよう、大臣にはお願いしたいと思います。

 現行の基本計画でいうと、経営所得安定対策が大きな柱だったわけです。今、改革に当たって、農家への所得補償制度導入の声がちらほらと政府・与党からも聞こえてくるわけですが、だとしたら、耕作面積で支援対象を限定する経営安定対策が本当に正しかったのか、この点の総括を特にしっかりやっていただきたいと思います。

 水田・畑作経営所得安定対策の総括を大臣としてどう考えているんですか。

石破国務大臣 先ほど所信の中で、私、あえて過去から現在という言葉を使いました。総括と言おうが検証と言おうが、それが一体どうであったのかということをちゃんと認識しないと次の政策にはならない、当たり前のことだと思っております。委員とそんなに認識が変わっているとは思いません。

 それでは、水田・畑作経営所得安定対策はどうであったかということでございます。

 恐らくは、担い手に対する支援ではなくて、全農家を対象とするべきだったのではないか、選別主義的だったのではないか、こういうような問題意識をお持ちなのではないかと推測をいたします。

 ただ、その場合に、集落営農というものをどう考えるんだ。それぞれはちっちゃいけれども、集落営農として法人化をして、いろいろなコスト削減を図る。そして、経営としての、できたものをどう売ろうかということではなくて、売れるものをどうつくるかという認識もやはり醸成をしていかねばならない。

 そこにおいて法人というものに着目をしてやってきているわけでありますが、私は、やはり集落営農というものを設けたということによって、小規模な農家を切り捨てたということにはならないんだと思っております。ただ、その運営に当たって、まさしく検証というものが必要だというふうに認識はいたしております。

 先ほども答弁をいたしましたが、うまくいった事例、うまくいかない事例、うまくいかないとすればそれはなぜなのか。集落営農というものの考え方は堅持をしながら、どのようにしてより使いやすいものにしていくかということは考えていきたいと思っております。

菅野委員 この点についても、今後しっかりと議論していきたいというふうに思っています。

 最後に、農政改革に当たっての大臣の基本的な考え方を聞いておきたいと思います。

 経営所得安定対策もそうですし、今国会に提出されている農地法改正もそうなんですが、政府の農業政策は、農業の集約化、大規模化あるいは株式会社化を制度の側面から支援していく方向にかじを切ったと考えざるを得ないわけです。しかし、これは中山間地の農家あるいは家族、小規模農家を農業生産から追いやることにつながるわけであります。

 大臣、農政改革に当たって、大臣の目指す農業の将来像は大規模企業経営なのか、それとも小規模農家も暮らしていける多様な担い手の保障なのか、今の考えをお聞かせ願いたいと思います。

石破国務大臣 それは当然、多様な担い手ということなんだろうと思います。ただ、それが大規模経営というものを捨象して議論するのかといえば、そういうことにはならないのだということだと私は思っております。

 農地法の改正といいますのは、今まで自作農主義、耕作者主義から、利用に焦点を当てていくということで、これはもう相当に思い切った法改正だと私は認識をいたしております。

 委員の宮城県もそうだと思いますが、例えば私の選挙区でもそうなのですけれども、中山間地の物すごく条件不利なところでなぜ農家というものが存続してきたか。それは農業だけで存続してきたわけではなくて、兼業機会というものがきちんとあって存続してきたのだと思っております。

 この兼業機会の存続、兼業農家の存在というものをどのように評価し、どのように支えていくかという議論をきちんと正面からしないと、日本の農業というものを零細と大規模というふうに二極分化して考えるというのは、余り正しい考え方だと思っておりません。どういうようなものをどのようにして支えていくかという場合に、この兼業機会の確保というものをよく議論させていただきたいと思っております。

 多様な担い手というものが、多様な農業経営体というものが、いろいろな農業主体というものが共存していく、それを目指していきますが、いろいろなタイプの農業というものにどのような支援を行うかということは、相当精緻に、子細に構築をする必要があるだろうと認識をいたしております。

菅野委員 大臣、私の基本的認識は、北海道農業あるいは本州における平場地域の農業、それと七割を占める中山間地域農業、この三つをどう発展させていくのかという視点でやっていかなきゃならないんですが、政府はこの三つを一体的に政策展開しているとしか私は思えないわけです。

 例えば、これから農地法の議論をしますけれども、そういう意味でこの三つをどう政策課題に挙げていくのかという視点で今後ともしっかりと議論していきたいというふうに思っています。

 終わります。

     ――――◇―――――

遠藤委員長 この際、宮下一郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による平成二十一年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。

    平成二十一年度畜産物価格等に関する件(案)

  平成十八年秋以降の配合飼料価格の高騰、世界的な経済不況と景気悪化による国産畜産物の需要と価格の低迷、WTO農業交渉及び各国とのEPA交渉の進展等により、生産現場では経営不安が増している。

  よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成二十一年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 配合飼料価格安定制度については、同制度による補てん金の支払が農家にとって重要な役割を果たしていることにかんがみ、今後とも畜産・酪農経営の安定に寄与するよう万全の措置を講ずること。

   また、農家の負担を軽減する観点から、制度の見直しについても検討を行うこと。

 二 飼料の輸入依存体質を転換し、国産飼料に立脚した畜産・酪農を確立する観点から、水田フル活用による飼料用米・稲発酵粗飼料・青刈りとうもろこし等の生産拡大、エコフィードの活用、水田・耕作放棄地への放牧等の耕畜連携を強力に推進するとともに、国産飼料の保管・流通体制の確立に努めること。

   また、国産飼料の利用拡大には、輸入飼料に対する価格の優位性等が必要であることから、飼料用稲の多収化や低コストの播種技術等の開発を推進すること。

 三 加工原料乳生産者補給金単価については、酪農経営の安定を図る観点から、意欲を持って営農に取り組めるよう、再生産の確保を図ることを旨として適正に決定すること。

   また、加工原料乳限度数量については、バター及び脱脂粉乳の安定的な需給を確保する観点から、生乳の生産事情、牛乳・乳製品の需給動向等を踏まえて適正に決定すること。

 四 平成二十一年三月から、飲用牛乳向け乳価が改定されることに伴い、飲用牛乳の消費者価格の上昇と需要の減少が懸念されるため、牛乳の有用性と機能性を消費者に訴えるなど、消費拡大策を強力に講じること。

 五 牛肉・豚肉の安定価格及び肉用子牛の保証基準価格等については、畜産農家の経営安定に資するよう、需給動向、価格の推移、飼料価格の高騰などに十分配慮し、再生産の確保を図ることを旨として適正に決定するとともに、肉用牛農家及び養豚農家の経営安定対策の充実・強化を図ること。

   また、経済状況の悪化等により、国産牛肉への需要減少が生じ、枝肉価格の低下傾向が顕著になっていることにかんがみ、消費者ニーズを的確に把握しつつ、消費拡大に向けた取組を強力に推進すること。

 六 家畜の生産性向上を図るため、乳量の増加や乳質の改善、出荷頭数の増加に向けた繁殖性向上対策や事故率低減のための家畜疾病対策を強化するとともに、効率的な飼養管理技術の普及を推進すること。

   高病原性鳥インフルエンザ等悪性伝染病の侵入防止に万全を期すとともに、万が一発生した場合には早急にまん延防止の措置を講じ、その原因究明に努めること。また、生産者による疾病予防の取組に必要な支援を行うこと。

 七 WTO農業交渉及びEPA交渉に当たっては、平成十八年十二月の本委員会決議の「日豪EPAの交渉開始に関する件」の趣旨を踏まえ、我が国の畜産・酪農が今後とも安定的に発展できるよう、適切な国境措置等の確保に向けて、確固たる決意をもって臨むこと。

 八 新たな食料・農業・農村基本計画の策定に当たっては、食料自給率の向上と安全な畜産物の安定供給を目指した生産者が意欲を持って勤しめるよう、必要な措置の在り方の検討を行うこと。

   右決議する。

以上でございます。

 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

遠藤委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣石破茂君。

石破国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従いまして、最近の畜産をめぐる情勢を踏まえつつ、十分検討してまいる所存でございます。

遠藤委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十二分散会


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