衆議院

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第5号 平成21年3月24日(火曜日)

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平成二十一年三月二十四日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 遠藤 利明君

   理事 今村 雅弘君 理事 木村 太郎君

   理事 七条  明君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 笹木 竜三君

   理事 筒井 信隆君 理事 西  博義君

      安次富 修君    赤澤 亮正君

      井上 信治君    伊藤 忠彦君

      岩永 峯一君    江藤  拓君

      小里 泰弘君    小野 次郎君

      近江屋信広君    河井 克行君

      木原  稔君    斉藤斗志二君

      谷川 弥一君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      茂木 敏充君    森山  裕君

      山内 康一君   山本ともひろ君

      石川 知裕君    大串 博志君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      田名部匡代君    高井 美穂君

      仲野 博子君    横山 北斗君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       石破  茂君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   農林水産大臣政務官    江藤  拓君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         實重 重実君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房協同組合検査部長)      江口洋一郎君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           竹谷 廣之君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  本川 一善君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            吉村  馨君

   政府参考人

   (林野庁長官)      内藤 邦男君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山田 修路君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            数井  寛君

   政府参考人

   (国土交通省河川局砂防部長)           中野 泰雄君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十四日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     山内 康一君

  西川 公也君     山本ともひろ君

  神風 英男君     田名部匡代君

同日

 辞任         補欠選任

  山内 康一君     飯島 夕雁君

  山本ともひろ君    西川 公也君

  田名部匡代君     神風 英男君

    ―――――――――――――

三月二十三日

 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官實重重実君、大臣官房協同組合検査部長江口洋一郎君、消費・安全局長竹谷廣之君、生産局長本川一善君、経営局長高橋博君、農村振興局長吉村馨君、林野庁長官内藤邦男君、水産庁長官山田修路君、中小企業庁経営支援部長数井寛君及び国土交通省河川局砂防部長中野泰雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村太郎君。

木村(太)委員 皆さん、おはようございます。トップバッターで質問させていただきたいと思います。

 早速でありますが、最初に、農林水産省におけますやみ専従職員の問題についてでありますが、十九日に特別調査チームというものを発足したようであります。今後、その調査の徹底と、いつごろまでにその調査をまとめ、その結果というか事実を把握した上で、石破大臣の厳格な対応と決意というものを語っていただきたいと思います。

石破国務大臣 御指摘のとおり、特別調査チームをつくりました。これは、今までの目とは違う視点から見なければならないという思いに基づくものであります。

 昨年ですが、四月一日の調査において無許可専従が疑われた百四十二名につきましては、出先機関から、本人及び上司、同僚からの聞き取りの結果、本人の勤務実態を示す書類、それは出勤簿、休暇簿、旅行命令簿、決裁文書などでありますが、この提出を求め、三月十六日までにこの資料を提出いたさせたところであります。これらの中身は相互に突合していかねばなりません。これで十分でない場合には、追加的な調査が必要になると考えております。

 とにかく、形式的に調査をいたしましたということでは絶対にだめなので、徹底的にこの調査をやるということであります。これは私自身がそこにかかわって見ていきたいというふうに考えております。

 無許可専従というのは、とにかく、職務専念義務違反である、そしてまた全体の奉仕者である公務員の立場を自覚しないものである、このように考えておりまして、不適切な事例が明らかとなれば、法令に照らして厳正に対処しなければならぬと思っております。極力、作業は急ぎます。

木村(太)委員 調査がどのように行われていくのか注視していきたいと思いますが、社保庁のときもそうでありましたが、もちろん個々の職員一人一人を対象として調査するということも大事だろうし、また、そこに組織的な、いわゆる組合というようなことが存在していくのかどうか、こういったこともきちっと踏まえて調査するということでよろしいでしょうか。

石破国務大臣 御指摘のとおりであります。

木村(太)委員 もちろん、調査をした上で、その後明らかになる事実を踏まえての大臣の対応がそこに生まれてくると思いますが、社保庁のときもそうでありましたが、場合によっては刑事告訴ということも対応するということでよろしいでしょうか。

石破国務大臣 先ほど、法に照らして厳正に対処をするということを申し上げました。つまり、この調査は、今後適切な労使関係を築いていくために行うものだというような報道が当省の関係者の発言として報ぜられましたが、それも大事なことですが、その前にというか、その前提として、かつてそういう行為があったということであれば、これに厳正に対処をしなければ、今後のきちんとした労使関係は築けないと思っております。間違っても身内に甘いというような御批判をいただくことがないように、厳正に対処をいたします。

木村(太)委員 大臣のリーダーシップに御期待をしたいと思います。

 では二つ目に入りますが、北朝鮮によります弾道ミサイルの発射が現実味を帯びてきているようであります。私ごとでありますが、二〇〇六年の日本海へ向けての発射の際は額賀長官のもとで副長官を防衛庁で務めておりまして、その際、いろいろと対応したことを少し思い出しております。

 ここは農林水産委員会でありますので、防衛大臣を経験しております石破大臣、水産漁業関係に対して省としての万全を期しているかどうか、お聞かせください。

石破国務大臣 三月十三日に、山田水産庁長官を本部長とする緊急事態対策本部を設置いたしました。漁業無線、都道府県等を通じた漁業者への情報提供、注意喚起、社団法人大日本水産会、全漁連など漁業関係団体を水産庁に集め、発射時の傘下会員等への連絡、安否確認等の早期体制整備の依頼を行ったところでございます。

 注意喚起、情報提供を漁業者等に行い、安全に万全を期したいと思っておりますが、これは当省だけでできるお話ではありませんです。本当にそういうような情報があったときに、万が一そこにいたらどうするかとか、そういうことは全省庁的に対応していかねばならないことであります。私は、この問題の対応に当たっては、各省がもちろん万全を期すのでありますが、政府全体として、ありとあらゆる場合を想定して、その場合にはどうするかというシミュレーションをきちんと行わないと、万全を期したことにはならないと考えております。政府の一員として、政府全体の対応も万全が期されることになるよう、当省として全力を挙げることはもとより、その点にも努力をしてまいりたいと考えております。

木村(太)委員 では、農業の分野に入ってまいりたいと思いますが、日本の農家の経営状況、経済状況は今どのような姿になっているととらえているか、お聞かせください。

高橋政府参考人 農家の経営状況でございますけれども、平成十九年の数字でございますが、販売農家の約二割を占めます主業農家、これにつきましては、一戸当たりの総所得は五百四十八万円、うち農業所得は四百二十五万円、農業粗収益千二百二十四万円、農業経営費七百九十九万円でございます。

 販売農家の二三%を占めます準主業農家、これにつきましては、総所得五百九十二万円、うち農業所得は四十八万円、農業粗収益三百七十二万円、農業経営費三百二十四万円となっております。

 また、六割弱の副業的農家、これにつきましては、総所得四百四十五万円、農業所得三十二万円、農業粗収益百五十一万円、農業経営費百二十万円でございます。

 これを平成十五年段階と比べますと、主業農家につきましては、総所得は九五%、農業所得九八%となっておりますが、準主業農家の場合、総所得は九八%でございますが、農業所得は六六%、副業農家の場合に、総所得は九四%でございますけれども、農業所得は七三%というようになっております。

木村(太)委員 つまり、少し低下してきているということでよろしいでしょうか。

 もう一つ、例えば主たる農家でいいますと、その収入を得るための構成人員というか、人数は何人でその収入というふうになっているんでしょうか。

高橋政府参考人 今申し上げましたように、十五年段階に比べまして、それぞれの種類、タイプごとに、すべて農業所得については減少しております。主業農家の場合につきましても九八%、準主業の場合については農業所得については六六%、副業農家は七三%となっております。

 主業農家、それぞれごとのタイプでございますが、ちょっとお時間をいただいて、後で御説明したいと思います。

木村(太)委員 今局長から御答弁いただきましたが、こういった現状を踏まえて、石破大臣は、今後十年後の姿、日本の農業のビジョンをどのように描いておられるでしょうか。

石破国務大臣 これは所信でも申し上げましたが、農業の持続可能性そのものが、人、金、物、つまり、人でいえば基幹的農業従事者の高齢化が著しく、後継者がいないということ、金であれば農業の所得というものが、平成二年から十七年までに半分になっちゃったということ、物でいえば農地の転用というものがとまらない、耕作放棄地が激増しているということで、農業の将来展望という漠然としたことを言ってもだめなので、これは、人、金、物、それぞれに有効な施策を打っていかなければどうにもならぬ、その具体論の議論をしなければいけないと思っております。

 加えて、農業じゃ食えないんだ、食えるようにしてくれというお話は、全国津々浦々でよく聞くところでございます。今局長から御説明申し上げましたが、それぞれのタイプ別に分けてやっていかねばならないだろうと思っております。

 かつても、農業の改革というのは何度も試みられたことでございます。その都度、小農切り捨てという言葉が出てきて、規模拡大というものも進まなかった。それが今の現状になっているということを本当に正面から見詰めていかなければいけないのだろう。そして、他国において、どのようにして規模拡大が進んだか、どのようにして農業所得が向上したか、家族経営というものはどのように扱われてきたか、それと比べて我が国はどうなのかということを子細に、冷静に検討、分析をしなければ農業の未来は開けない、これはもう感情論でやるものではないと私は思います。

木村(太)委員 そこで、その所得、収入にも関係するわけですが、例えば東京には大田市場や築地市場などありますし、全国各地でその地域の市場があるわけですが、私の地元の市場関係者の声を聞きますと、こういう御意見をよく耳にします。

 その日その日の値の動きというのはもちろん市場で取引されて決まっていくわけでありますが、今日、社会的背景として、大型チェーンストアあるいはスーパーマーケットの店頭での価格という巨大なふろしきに覆われてしまっている。もちろん、消費者にとっては安くて安全でおいしいものを望まれるのは当然でありますが、第一次産業に携わる方々の所得が厳しいのはこういったことが最大の理由ではないかということを市場関係者の皆さんが御意見としておっしゃっておられます。こういう声を大臣はどうとらえますか。

石破国務大臣 大型量販店等が中央卸売市場におきましてどれぐらいを取り扱っているかということでございますが、中央卸売市場におけます仲卸業者の生鮮農水産物の販売額の約六割を占めております。委員御指摘のとおりに、価格形成に大きな影響力を有していると認識をしております。特に最近では、消費者の低価格志向を反映して、より低価格での仕入れが行われている、卸売市場での青果物の価格は低水準で推移しておるということでございます。

 一方、青果物の小売価格における農家手取りの割合は平均で約四割、平均ですから、もっと低いものもあるということです。農家所得の向上を図るためには、生産段階のコスト削減も大事ですが、あわせて流通の効率化を図っていかねばならないと考えております。このため、農家が生産した多様な農産物を直接消費者に販売する直売所の整備、地域の農林漁業者と商店街の小売店などが連携して行う直接取引の推進などの施策を展開いたしておるわけでございます。

 今後におきましては、卸売市場流通と市場外流通とが相互に補完しながら、消費者ニーズも踏まえた安定的な流通が行われることが重要であると考えておりまして、私は、今のシステムを否定するものではありませんが、多様な流通システムというものは確保されなければならないと思っております。多様な流通システムの確保というものをどうやって行っていくかということ、これは、多くの施策を講じたいと思っております。

 あわせて、私の選挙区でもそうですが、例えば二十世紀ナシというものが何でこんな安くしか売れないんだというお話を聞きます。ここは、流通のあり方をどう考えるか、そして委員御指摘のように、大手量販店なるものがその優越的地位を利用しているということがないのかということであります。

 こういう議論はよくあるのでありますが、ただ、そこで優越的な地位を利用しているというふうに公正取引委員会が認定した、言い方はいろいろあるんだろうと思いますが、そういう例が余りございません。

 仮にありとせば、売り子さんというんですか、販売に携わる方というんですか、そういう方を、それはあなた方の負担で、生産地が出してくださいね、青森からリンゴを売りたいのであれば、どうぞ寄ってらっしゃいみたいな形でそれをセールスする人は、それでは青森県の方々が御自身の負担で出してくださいねということになれば、これは優越的地位の濫用というんでしょうか、そういうことに当たるのかもしれない。しかしながら、価格形成の面においてそういうことが指摘されたということが今までないわけでございます。

 実態、つまり、生産地の方々の思いと実際の間に乖離があるのではないだろうか。だとすれば、どういうやり方が考えられるか。多様な流通の確立ということも考えていかねばなりませんが、これは私個人としては、大手量販店と生産地のあり方というのはもう一度見直してみたいと考えております。それは、だれがいいとか悪いとかいう話ではなくて、本当にお互いが、消費者も生産地もあるいは流通もすべてが利益を得るようなやり方というのは、もっとほかにシステムがないだろうかということは私自身の問題意識の中にございます。

木村(太)委員 では、次に入ります。

 先週、舛添厚労大臣はさらなる雇用対策を発表しましたが、もちろん、農林水産省の予算としても、農林漁業分野における雇用創出のための予算化というものをしているわけでありますが、百年に一度の厳しい経済状況ということをむしろ第一次産業ではチャンスととらえるためにも、厚労省とも連携してさらなる対策を考えているかどうか、お聞かせください。

吉村政府参考人 雇用の関係、それから厚労省との連携について、お答え申し上げたいと思います。

 委員御指摘ありましたとおり、今の状況というのが、農林水産業への就業を促進するための大きなチャンスになり得るものであるというふうに受けとめております。このため、二十年度の二次補正予算において、例えば、農業法人が就業希望者を雇い入れて実践的な研修を行う費用として一人一カ月当たり最大九万七千円を支給する農の雇用事業を創出するなど、農林漁業への新規就業を強力に促進することとしております。

 また、御指摘のとおり、雇用対策を進めていくに当たりまして厚労省と連携していくということは非常に重要だと思っておりまして、これまでも、ハローワークに就農等支援コーナーを設置してもらうというような取り組みを協力して進めているところであります。

 また、このほかに、雇用機会を創出するために都道府県が主体になって行う厚労省の事業であります、ふるさと雇用再生特別交付金といった取り組みがございますが、これについて、農山漁村での活用が図られるように、厚労省と連携して農林漁業分野の事業例の提供を行っているところであります。

 さらに、本年二月十八日に、厚生労働省と農林水産省の局長級で、農林漁業の雇用拡大連絡会議というのを設置いたしました。この会議によって、両省の連携、取り組み体制を強化したところでありまして、こういった場を十分に活用して雇用対策に取り組んでいきたいというふうに考えております。

木村(太)委員 では次に、今回の予算の中で一つの目玉になっているわけですが、これから水田のフル活用ということに向かっていくわけでありますが、全国の稲作農家の共通の声として、土地改良負担金の軽減を図っていただきたいという声がたくさんあるわけであります。このことについてどうこたえていきますか。

吉村政府参考人 土地改良負担金の軽減についてのお尋ねでございます。

 これまでも、土地改良負担金の年償還額の一定額を超える額について、借りかえをして無利子化するという平準化の取り組みを行ってまいりました。また、特別型の国営土地改良事業地区などにおいて、公庫の貸付金利と同率になるように利子助成をする。さらに、経営所得安定対策の加入者などの担い手への農地の利用集積を要件とした無利子資金の融通により農家の負担金の利子を軽減するという施策を通じて、農業を取り巻く情勢の変化に対応した内容の充実を図ってきたところであります。

 また、二十一年度予算におきまして、米価の下落等の情勢変化や水田フル活用等の農政改革の流れに即して、担い手への農用地の集積や面的集積に取り組む地域に対して、平成二十七年度までの七年間、当該年度の償還利息を無利子化する助成を行う新たな予算を計上したところでございます。

 今後とも、土地改良事業を取り巻く状況の変化や農政の展開方向を踏まえて、農家負担の軽減に努めてまいりたいというふうに考えております。

木村(太)委員 よろしくお願いします。

 では次に、これも私ごとですが、亀井善之農林水産大臣のときに私、政務官をさせていただいておりまして、そのとき省内に、輸出促進を図る対策室というものを立ち上げたわけであります。攻めの農業ということで、日本の農林水産物を海外に輸出する努力が続いているわけでありますが、私は順調に来たと思っております。

 ただ、いわゆる百年に一度のこの世界的な不況ということが今世界じゅうを駆けめぐっておりますので、改めてこの時点で、いわゆる攻めの農業、農林水産業というもの、輸出促進の目標値を初め、いま一度見直しを図った上で取り組む必要があるのではないかなと考えますが、いかがでしょうか。

實重政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産物、食品の輸出につきましては、近年、二けた台の伸びで推移してまいりました。昨年来の円高や世界的な不況といった状況のもとで、平成二十年の一年間で見ますと、対前年〇・六%減の横ばいとなっております。また、月別に見ますと、平成二十年十月からは対前年マイナスとなっておりまして、平成二十一年一月には対前年二九・九%減となっております。このように、委員御指摘のとおり、輸出をめぐる環境は厳しさを増しております。

 輸出促進対策につきましては、従来、日本食、日本食材等を海外にアピールするための各種のイベントや広報、それから輸出に取り組む事業者や団体などが行います市場調査や商談に対する支援、これらを中心といたしまして、約二十一億円の予算を計上して取り組んできたところでございます。

 しかしながら、御指摘のように、輸出をめぐる環境は悪化しておりますので、こうした状況を踏まえまして、従来開拓してきた販路の維持や定着、あるいは逆風下にある産地や事業者、団体等のニーズへのさらにきめ細かな対応、こういった視点も踏まえまして、施策の運用面を含めて検討してまいりたいと考えております。

木村(太)委員 ですので、聞いたことに真っすぐ答えてほしいんですが、目標値など、そういった目的というか目標をいま一度見直しをするのですかということを聞いているんです。

實重政府参考人 一兆円の目標を立てております。これは平成二十五年までに一兆円規模ということを目標にして輸出に取り組んできたわけでございまして、一昨年までは二けた台で伸びてきておりました。

 御指摘のとおり、最近数カ月における輸出環境には極めて厳しいものがございます。そういう意味で、施策の見直しを検討していくということは必要かと思っております。

 一方で、輸出については息の長い取り組みとして努力していく必要がございますので、現在の目標は、平成二十五年までに一兆円規模という輸出目標でございます。現段階で直ちにこの目標を見直さなければならないものとは考えておりませんが、施策の全般については検討してまいりたいと思っております。

木村(太)委員 その輸出に関連するわけですが、いわゆる中国における商標登録問題、事の発端的に「青森」という字が登録されようとしたショッキングなニュースがあったわけです。私はこの委員会で何回か取り上げてまいりましたが、その後も、さまざまな日本の地名などが商標登録されようとしていることが発生してまいりました。

 よって、その都度対応するのではなくて、中国側と抜本的な対応を協議する、そういった場が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

石破国務大臣 おっしゃるとおりであります。

 今までいろいろな取り組みをしてまいりましたが、先月、政府と民間企業が合同で中国の政府機関を訪問いたしました。高市副大臣も行かれたと承知をいたしております。

 その際、中国工商総局、商標制度を管轄するセクションでございますが、そこの副大臣クラスであります付双建さんという方から、外国の地名の商標出願問題については厳正に審査することを約束するという回答を得ております。これはこれで一つの前進だと承知をいたしております。

 もう一方におきまして、今、青森のお話をなさいました。青森は、二〇〇三年四月に公告された青森という出願について、その七月に異議申し立てを行われましたが、登録されないことになりました、異議申し立てが認められたのは、五年後の二〇〇八年三月、相当に時間がかかっておるわけでございます。

 そういうことから考えまして、来年度から、当省といたしまして、地方自治体や農林水産業の関係団体が、海外におきます商標出願状況を一体的に監視する体制を整えました。これは、インターネットで常に監視をするということでございます。疑義のある出願を発見したときは関係者の方に速やかに通知される、そういう仕組みを整備するということにいたしております。これによりまして、通知を受けた関係者が直ちに異議申し立て、無効取り消し請求を行うことが可能になるというふうに考えておりまして、地名の保護の強化につながるというふうに考えております。

 このシステムが円滑に動きますように、政府としてあらゆる対策を講じていきたい、このように考えております。

木村(太)委員 よろしくお願いします。

 では、地元的な話で恐縮ですが、リンゴについてお伺いします。

 リンゴの価格が大変厳しい状況が続いておりますので、価格下落防止対策ということを考えているでしょうか。

本川政府参考人 御指摘のとおり、リンゴにつきましては、昨年四月から六月なり九月のときの霜とかひょうの被害によりまして果実の品質低下が非常に大きく、さらに、傷を受けた果実を中心に果実の出荷が前倒しをされて、三月上旬までの市場の出回り量が平年比で一五%増となっているようなことによりまして、価格が低迷をいたしております。

 こういう中で、農林水産省といたしましては、昨年より、青森県からも要望があった被害リンゴの加工利用の促進、消費拡大対策などに対して緊急支援を行っているところであります。

 私も、被害果実のひょう太君というのを買わせていただいて食べさせていただいておりますし、先日も加工されたジュースを購入させていただきました。このような形で消費拡大を図っていく等、御支援申し上げているところでございます。

 それから、現在、過剰となっている果汁在庫の調整保管、こういうのを実施する方向で検討を進めているところでありまして、今後とも被害対策に万全を期してまいりたいと考えているところでございます。

木村(太)委員 そこで、今考えますと、果樹経営安定対策を廃止して支援対策に移行していったわけですが、今ごろ安定対策が残っていますとこういうとき大変有効だったのではないかな、こう思っております。当時、私は慎重にすべきじゃないかということを農林水産省にも伝えた記憶がありますが、これから、一たんやめた果樹経営安定対策を復活することは可能でしょうか。

本川政府参考人 御指摘のとおり、平成十三年度から十八年度まで、温州ミカンとリンゴにつきましては価格補てん対策という形で経営安定対策を実施しておりました。

 ただ、その際に、いろいろな産地で関係者の方々から、産地や品質の違いによって価格差が非常に大きいという果実の特性、そういうものからいいまして、高品質な果実の生産なり販売に努力をしている産地が受けるメリット感が非常に少ない、むしろ、余りよくない品種、品質のものをつくっておられる産地がメリットを受けているのではないかというような批判が主な産地からは寄せられたというようなことがございます。

 そういうことを踏まえまして、当時は価格補てん対策については廃止をいたしまして、平成十九年度から、今実施しておりますような高品質果実への転換なりそういう前向きな対策に対する支援、あるいは温州ミカンとリンゴにつきましては、先ほど来申し上げたような需給調整対策の強化、こういうことを柱とした新しい対策に移行したという経緯がございます。

 これは十九年度からのものでございますけれども、こうした経緯を踏まえれば、今後、価格補てん対策を復活させるというよりは、私どもとしては、新対策である果樹経営支援・需給安定対策の円滑な実施によりまして、果樹農家の安定が図られるように努めることが肝要ではないかと考えております。

 今後、具体的な果樹振興策のあり方につきましては、食料・農業・農村基本計画の見直し、今行われております。及び、これと並行的に行われる果樹農業振興基本方針の見直しの中で、さらに検討を深めてまいりたいと考えているところでございます。

木村(太)委員 私は、農家が生産をして収穫を終え、農家の手から離れて今度市場に出回る、その二つのところで危険の分散を図るということでも経営安定対策というのは必要ではないかなということを思っておりますし、そのことをいま一度指摘しておきたいと思います。

 最後に、今、青森県と岩手県の間で漁場の範囲の線引き等について裁判ざたになっているわけでありますが、水産庁、これにどう対応しますか。そして、大臣、知事許可漁業の仕組みや整合性を全国的に見直しをすべきではありませんか。

山田政府参考人 委員から今お話がありました青森県と岩手県の県境、いわゆるなべと言われている漁場でございますが、ここの漁場におきまして、マダラを対象とする底はえ縄漁業の操業に関して両県の間に争いがあるということでございます。

 水産庁といたしましては、関係者が話し合って操業ルール等を決めるということが基本であると考えております。したがいまして、まずは両県の関係者が十分に協議を行うよう促しているところでありまして、今後とも両県と連絡を密にして、解決が図られるよう努めていきたいと思っております。

 それからもう一つ、大臣許可制度等の仕組みの見直しについてという御質問でございます。

 漁船漁業につきましては、水産資源の状況あるいは国際関係といった観点から、一部のものが大臣許可、あるいは一部のものが知事許可というようなことで役割分担をしている状況にございます。

 お話がありましたマダラの底はえ縄漁業につきましては、先ほど言いましたように、青森県、岩手県の地先沖合において小型漁船漁業により営まれているものでございます。国が統一的に規制を行うべき漁業とは言えないと考えておりますので、先ほど申しましたように、両県の間で話し合いのもとで解決していくのが適当であると考えております。

遠藤委員長 高橋経営局長、時間ですので短くお願いします。

高橋政府参考人 先ほどお尋ねの農家の構成人員でございますけれども、主業農家については二・二二人、準主業農家は一・〇八人、副業的農家は〇・五〇人でございます。

木村(太)委員 終わります。

遠藤委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。民主党の仲野博子でございます。

 石破大臣、先般は酪農関係におきまして、これまでの歴代大臣の中で、私は、木で鼻をくくったような答弁でなくて、非常に前向きに意欲ある御答弁をされたということで、地元でも石破大臣に大変期待をしているところでございますので、きょうもまた引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、海岸における侵食対策についてお伺いしてまいりたいと思います。

 昨年四月二十二日の農林水産委員会では、根室管内標津町の危機的な海岸侵食の状況について紹介をした上で、海岸侵食対策への取り組み状況について質問させていただきました。その際、水産庁からは、水産基本計画に沿って海岸の整備、保全に努めるといった答弁がありまして、また、国土交通省からも、今後とも関係省庁と連携を図りながら侵食対策事業を進めてまいりたいとの答弁をいただきました。

 平成二十年十二月三日の北海道新聞現代かわら版では、道立地質研究所海洋地学部の調査によれば一メートルから三メートル以上後退、これは海岸侵食ですね、そういったところが釧路市、釧路管内、別海町、この北海道でも合計二十九カ所あると報じられているわけでございます。

 さらに、社会資本整備重点計画の策定手続が進められているわけでありますが、平成二十一年二月十四日から、二十四年までの期間で、社会資本整備重点計画の素案について広く国民からの意見の募集も行ったと伺っているわけであります。

 水産業の基盤というべき海岸の消失は、漁業振興を図る上で大きな障害になるものと考えます。海岸侵食の状況についてしっかりとした実態調査を行った上で、国として海岸侵食対策に重点的に取り組んでいくべきと考えますが、このことについて山田長官に伺い、あわせて、社会資本整備計画における海岸侵食対策の位置づけを含めて国土交通省の方にも御答弁いただきたいと思います。

山田政府参考人 仲野委員から今お話がありましたとおり、北海道の漁村あるいはそれ以外の多くの漁業地帯は、まさに前面が海、後背地が山という狭隘な土地に立地しております。こういうことから、地震、津波、高潮、侵食等の自然災害に対して漁村地域は脆弱な面を有しております。

 委員からお話がありましたとおり、海岸におけます防災力の強化等につきまして、平成十九年三月に策定しました水産基本計画の中で、堤防等の海岸保全施設の整備を推進するということを述べておりますが、お話がありました調査の件につきましては、関係省庁で実施しております砂浜侵食海岸における堤防等の緊急調査といった実態調査がございます。これを行いながら、侵食が著しい海岸における侵食対策の推進、また損傷や機能低下が進行している海岸保全施設の老朽化対策等を推進していきたいと考えております。

中野政府参考人 委員からお話がございました社会資本整備重点計画につきましては、本年の二月から三月にかけまして、パブリックコメントを実施いたしました。

 素案には、海岸の侵食対策に関しまして、海岸侵食の急速な進行は海辺の環境や利用に影響を与えるだけではなく防災機能の低下を招き国土の喪失につながる、このため国土保全の観点から適切な対策による汀線の防護、回復を図ること等が記載されております。

 今後決定されます社会資本整備重点計画を踏まえて、関係省庁と連携を図りながら、重点的に海岸侵食対策を進めてまいる所存でございます。

仲野委員 ただいまお二方から御答弁いただきましたけれども、海岸侵食の保全事業というのは、北海道、都道府県が事業主体となるわけでありますが、今御案内のように北海道も財政的に大変厳しい状況にありまして、実施が困難ということが言われているわけであります。そういったことを踏まえまして、大変危険な状況にあるわけでありますので、計画をつくったならば、実効あるものにしていただきたく、早急に対策に努めていただきたいなとお願いをさせていただきたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 加工食品の原料原産地表示についてお伺いしてまいります。

 昨年九月に農林水産省が実施したアンケート調査結果によれば、加工食品全般について、国内の約八割の方々が原材料の原産国を表示すべきと考えていることが明らかになりました。

 また、私の地元、根室、釧路管内は昆布の生産が多い地域でありますが、中国から輸入される昆布巻きなどの加工品がここ数年で急増し、安価な輸入食材と競合するため、国内生産者などから原料原産地の表示の義務づけに対する要望がなされているわけであります。

 私は、この昆布巻きなどの昆布加工品について、消費者に対する商品の選択の幅を広げ、また、中国産と道産品との差別化を図り、安全、安心な国産品をアピールするとともに、生産者の努力が正当な評価を受けられるよう原産地表示を義務づけるべきと、これまで再三にわたって主張してまいりました。

 政府は、これまでの委員会で私の質問に対し、加工食品の原料原産地表示については、食品の表示に関する共同会議において一定のルールに基づいた議論をしており、昆布加工品については、加工度が低いと言えないため、表示義務づけの対象とすることが適当でないとの趣旨の答弁をずっとしてまいりました。

 しかしながら、先週、修正の上全会一致で可決された米トレサ法案の附則第五条第二項において、政府が検討すべき事項に、同法施行後、加工食品について速やかに主要な原材料の原産地表示を義務づけることについて検討を加え、必要があると認めるときはその結果に基づき所要の措置を講ずるものとするとされたところであります。

 そこで、修正後の米トレサ法案の附則第五条第二項による加工食品への原料原産地表示の義務づけの検討において、条文上、昆布巻きも加工食品に該当することからその対象となると考えますが、この点について大臣の考えを確認しておきたいと思います。

石破国務大臣 結論から申し上げますと、加工食品一般が検討の対象でございますので、昆布巻きも対象から除外されるものではないということがお答えに相なります。除外されるものではございません。

 ただ、昆布巻きというのは、これはもう委員の方が私の何倍も御存じなんでしょうが、加工度が非常に高いわけでございますね。昆布があって、その中にシャケを入れたり、あるいはニシンを入れたり、そしてまた味をつけるのにいろいろな秘伝のわざみたいなものがあるんだろうと思います。そこにおいて原料原産地表示をどのように行うのか、そしてどのようにして消費者に有用な情報を伝達するのかという、技術的には相当に詰めていかねばならぬ点があるだろうというふうに認識をいたしております。それがまた業者さんの過度な負担になってはいかぬわけでございますが、御指摘のように、昆布巻き、これは対象から除外されるものではないということは申し上げておきたいと存じます。

仲野委員 きょう初めて、この昆布巻きについて、除外されるものでないと大臣からお答えをいただきました。

 今まで、半調製品で中国から輸入されてまいりまして、味つけしたところが日本であると、ここが最終的な原料原産地ということで、今まで日本ということになっておりました。しかし、そういった、最初に中国から半調製品で来たものに対して、もうそれは中国であるんだよということをしっかりとやっていただきたいということであります。

 昆布巻きは、めでたい、お正月によく大臣も奥様の手づくりで召し上がられると思うんですが、そういったことで今消費者は大変賢くなって、スーパーなどへ行ったら、私も週末に帰るとたまにスーパーで買い物するんですが、本当に今の消費者の方たちは必ず表示を見ているんですね。ああ、これはどこ産のものなのかなと。それだけ本当に安全、安心なものを求めたいという消費者の気持ちがあります。

 ですから、一日も早くそういったことに対しても対応していただきたく、これも大臣が本当に今大臣でいるときにやっていただきたい、歴史に残る一ページをぜひつくっていただきたいなとお願いをさせていただきたいと思います。大臣、よろしいでしょうか。

石破国務大臣 確かに消費者の方々が裏を見て何だろうねとごらんになることは、今そうだろうと思います。

 似たようなお話は、私の選挙区にもラッキョウがございまして、ラッキョウは中国でつくられているのだ、しかし、それの加工は鳥取県で行うのだ、さあ、表示はどうなりますかみたいな議論は十年ぐらい前からずっとあるお話でございます。

 そこにおいて、生産者の利益がきちんと図られ、そしてそれが消費者の安全、安心につながるような方策、これが昆布巻きのように加工度のかなり高いものについてどのように行えるか。ここで除外されないというふうに答弁しただけで終わってはどうにもなりませんので、これはいろいろな方々の御意見を聞きながら、生産者、そして消費者の方々の利益に資する方法を確立してまいりたいと思っております。

仲野委員 次の質問に移らせていただきます。漁業分野の加工、流通への取り組みに関しての質問であります。

 水産加工業は、漁獲物の最大の仕向け先であるとともに、漁業地域における基幹産業として、地域経済の重要な柱であり、雇用と収入の機会を提供しているわけでございます。

 このような中、私の地元、根室管内では、昨年、非常に秋サケの不漁によって加工する原魚が不足していることに加え、価格が上昇し、水産加工業が影響を受けました。実際、水産加工業者の撤退により社員の解雇などの事例も見られ、地域の経済にも影響を与えているわけでございます。

 こうした厳しい中にあって、水産加工業の現場ではいろいろな創意工夫の取り組みが見られております。私の地元、釧路市で事業を展開されておられる昭和冷凍プラントは、冷凍冷蔵設備に関する会社であるんですが、最近、窒素氷製造システムを発明し、全国の漁業関係者の注目を集めているわけであります。

 このような取り組みが、先般、第三十四回発明大賞の発明功労賞を受賞したほか、経済産業省の元気なモノ作り中小企業三百社にも選ばれております。このような技術は中小企業における尽きない研究心と技術開発に向けた絶え間ない努力のたまものでありますが、食の安全性の確保を図る観点から、水産物の鮮度保持を図っていく上で有益な技術と考えております。

 このような窒素氷の技術への認識と今後の可能性について、石破大臣のお考えを伺いたいと思います。

石破国務大臣 この窒素氷は、一昨年の八月にはものづくり日本大賞におけるものづくり地域貢献賞を受賞しておられる、また、昨年の六月には、元気なモノ作り中小企業三百社に選定されておる。今御発言にありましたとおり、ついこの間でございますね、三月の十六日に表彰式があったんでしょうか、九日付の新聞で拝見をいたしましたが、発明功労賞を受賞なさったということでございます。これだけいろいろな賞を受けておられるからには、それだけ技術が高いものであり、これから先、普及の余地が多分にあるものだというふうに私も認識をいたしておるところであります。

 鮮度を保つというのはなかなか高度なわざでありまして、私の鳥取県にも、これは赤澤代議士の選挙区になるんですが、氷温貯蔵という技術がございまして、完全に凍らせてしまうのではない、パーシャルみたいな話でしょうか、氷温で貯蔵してというので、これももう商品化をされて相当に出回っているものでございます。

 こういうような発明の導入につきまして、私どもとして、強い水産業づくり交付金でありますとか漁業近代化資金の活用が可能であるというふうに考えておるわけでございます。

 地域の雇用を維持し発展させ、そして地元でとれたいいものをいい状態で消費者の方々に購入をしていただく、そのために私ども水産庁を中心にいろいろなプログラムを組んでおるところでございます。ぜひ御相談をいただいて御活用いただいて、このような技術というものが多くの方々の幸せに資するように、また私どもも努力をしてまいりたいと考えております。

仲野委員 今後は、この漁業分野における生産から流通、加工部門まで含めた取り組みに対し、経済産業省においても、今大臣がお答えになったんですが、どのように評価されているのか、改めてこの場でお尋ねをしてまいりたいと思います。

数井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、このような技術を持つ中小企業が農林水産事業者と協力する場合には、農商工連携法というものにおいての支援が可能となっております。

 具体的には、現場で農業、林業、漁業と商工業の事業者の方々がお互いの強みを生かして連携し新しい事業に取り組む、こういった場合につきましては、法の認定を受けた事業そのものについて、補助金、税制措置、政府系金融機関からの融資などの支援を受けることが可能となっております。

 また、当省においては、このような農商工連携を推進するため、全国各地で案件の発掘事業あるいはフォーラムといったものを実施しておりまして、当該事業者も、去る三月九日に札幌で行われました農商工連携フォーラムにおきまして、会社の概要あるいは技術の発表の場を設けさせていただいております。広く広報の機会にもなっていると思います。

 また、御指摘のように、すぐれた技術を有する中小企業を、モノ作り三百社として私ども毎年選定しておりますが、平成二十年度、この当該技術を持つ会社についても選定をされております。この会社の概要あるいは技術力についても、冊子を通じまして広く全国に広報し、一定の技術力を持つ事業の会社として広くPRを進めておるところでございます。

 当省として、このような施策を通じまして、あるいは農商工連携を通じまして、こういった技術を持つ企業については広く支援していきたいと考えております。

仲野委員 以前に、省エネ対策ということで、かなり漁船なんかが漁場に行くとき、出漁するときには急速で、スピードアップで漁場に行く、そこで魚をとって漁船に積んで、それで競りまでに間に合うように戻ってくる。そのときに、行くときは急速で帰りは低速でとなれば、生きのいい魚もかなり鮮度が落ちるということもありますので、そういったことを考えたときに、これは一つの例なんですが、こういった漁船が普通の氷じゃなくてこういった窒素氷を使うなど、水産庁として今後こういったことに取り組むことも必要ではないのかなと思っておりますので、長官、お願いいたします。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今委員からお話がありました窒素氷を加工なり陸上施設で使う場合、それから、今お話がありました船上で利用する場合、いろいろなケースがあると思います。それにつきましても、私ども、例えば、先ほど大臣からお話がありました資金の利用ですとかそういった面で支援できるものがあると思いますので、そういう御要望があれば適切に対応していきたいと考えております。

仲野委員 いずれにいたしましても、よくこれは検討していただいて、本当に日本の食の安全、安心ということを考えていただいて、こういったこともあるよということで前向きに考えて研究をしていただきたいなと要望させていただきたいと思います。

 そこで、今度、我々民主党の農山漁村の六次産業化について申し上げさせていただきたいんですが、農山漁村といった地域全体を六次産業化することを構想しており、いわゆる産業政策と地域政策を融合した考え方として、民主党が新たに創造した概念であるわけであります。

 そこで、この六次産業化を推進するに当たって、具体的に、所得補償制度について、加工、流通への取り組みの要素を加味した支援や、六次産業化への取り組みとして負った債務はその借り入れにより導入された資産を限度に償還すればよいとする無利子資金を含めた制度、いわゆるノンリコースローンを創設することなどを提案しているわけであります。

 そこで、民主党の提唱する農山漁村の六次産業化という構想について、石破大臣の見解を求めたいと思います。先般も、このことについてよく勉強させていただきたいということで、大臣のことですから、あれから慎重に勉強されたと思いますので、よろしくお願いいたします。

石破国務大臣 一足す二足す三は六ですとか、一掛ける二掛ける三は六ですとかいうお話であります。これもなかなか斬新な発想でございます。

 これは、私どもの方は余りそういう斬新な発想がありませんで農商工連携などという言葉になっちゃうわけですが、いずれにしても、農業というものに商業そして工業の要素を組み合わせて、それを六次産業と言おうが農商工連携と言おうが、新しい発展をつくっていかねばならないということは、私どもも御党も、考え方としては一緒なんだろうというふうに思っております。

 問題は、それを実現するための政策手法として、例えば、債務をどう考えるか、あるいは所得の補償をどう考えるかというときに、六次産業という新しい産業のジャンルを開発するということが、そこにどれぐらいの意味を置いておられるのか私はよくわからないんですけれども、他産業と比べてどうなんだ、ほかの産業ではそんなことやってくれないのに、なぜ農業においてそれが行われるのかということについて、では、ほかの産業で所得補償という概念があるかといえば、それは余り明確なものはないわけです。そこについて税金の使い道をどう考えるかというお話を詰めねばならぬでしょう。

 もう一つは、所得補償を行うというときに、御党の法案で見ますと、生産目標を設定する、主要産品について設定するということになっていますが、どのようにして具体的に設定をするのか、そしてまたそれを、北海道なら北海道、それが十勝にどれだけ、あるいは空知にどれだけ、士別にどれだけ、それをどのように市町村に配分をしていくのか。実際に、お米の生産調整でも、七転八倒とは言いませんが、これはもうJAの関係者はよく御案内のことかと思いますが、もうそれだけで物すごい作業量、負担になっているわけですね。これを全産品に本当にどうやってやっていくんだという議論、そしてそれが生産過剰になったとするならば、それにどのようにして対応するのか。私は、その辺の議論をきちんと詰める必要があるんだろうと思っております。

 御党の法案は、もう私、日々よく読んでおるところでございます。そしてまたそれの、要は実現可能性がどれだけあるんだろうか、そしてそれがWTOにおいてどういう整合性があるんだろうか、そのあたりは本当に、またこの法案を議論するときによくお話をさせていただきたいと思っております。

 私が持っております問題意識は今申し述べたようなものが主なものでございますが、農商工の連携、そして、産業の持続可能性という意味では、基本認識は一緒だと思っております。

仲野委員 かなり大臣も石橋をたたいて慎重なんだなということでありますが、民主党が自信を持って提案しているこの事業の中身については、今後、この委員会を通じて、さまざまな場を通じて、先輩議員からも大臣の方にまた質疑があると思いますので、そのときには大臣はさらなる勉強をしていただけるだろうから、またそのときにもお答えをいただきたいなと思っているわけであります。

 次に、林業関係についてちょっとお尋ねしたいんですが、造林補助金について尋ねてまいりたいと思います。

 森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるために、森林の適切な管理、保全が不可欠であります。特に立木の伐採後に再造林を行うことは大変重要でありますが、近年、北海道や九州を中心として、再造林を放棄した森林が増加しているわけであります。

 林野庁によると、人工林を伐採した後、三年以上経過して更新が完了していない森林を造林未済地と呼んでおり、平成十七年度末現在、全国で約一万七千ヘクタールもの造林未済地が存在しているとの調査結果が出ております。特に北海道にはこのうち半数以上の九千ヘクタールが集中しておりまして、平成十五年度から十七年度までの間に新たに四千ヘクタールもの造林未済地が発生しております。

 この要因の一つに、輸入の減少したロシア材の代替材として北海道のカラマツの合板材などの需要が増大し、伐採量が増加したことがあります。カラマツの材価は本州のヒノキや杉に比べると安いことから、立木の伐採後、植林しても採算が合わず、森林所有者の再造林に対する意欲がわかないため、そのまま放置していることなどが考えられております。さらに、北海道は気候風土が本州と異なるため、伐採跡地を放置しておいても天然の更新は期待できません。

 現在、造林費用に対する一般的な国の負担割合は、北海道においては六〇%程度であり、個人負担分が一五%程度必要となっているわけであります。再造林の促進のために、この負担の取り扱いが課題となっております。

 これに関して、また、我が民主党は、既に国会に提出しております農山漁村再生法案において、再造林などの適正な森林管理により、森林の有する多面的機能が適切かつ十分に発揮されるなどの観点から、森林所有者の負担がゼロになるよう、直接支払い制度を導入することとしております。

 こうした再造林に対する支援策の拡充について、また大臣に見解を求めたいと思います。

石破国務大臣 これもよく議論をさせていただかなければいけません。私どもは、再造林が必要であるということについては強い認識を持っております。

 北海道の御指摘をいただきました。確かにお値段も安いんです、丸太価格なんか見ると確かに安いですよね。しかしながら、内地に比べまして平たん地が多うございますので、生産コストはどうなんだろうかということもあわせて議論をしていかねばならないのだと思っております。したがいまして、北海道に特別に政策を用意するというのは、今のところ私としては難しいのではないか。

 それでは、所得補償の政策でどうなんだろうかということですが、それは本当に需要と供給のマッチングをどう図っていくべきなのかというお話、そしてコストの低減をどのように図るべきなのか。私は、北欧諸国あるいはドイツ等と比べまして、生産コストがなぜこのように高いのか、そして一人当たりの生産量がなぜこんなに低くなったのか、路網の密度というものをどう考えるべきなのか、私は、その辺を子細に議論した上で、では直接所得補償なのかどうなのかというお話はその後に来るんだろうと思っております。

 林業において農業と同じような議論を、ヨーロッパと日本と比べてできるかといえば、その前にもっともっと議論を詰めておかねばならない要素が非常に多いなという感じを今のところ私は持っておりまして、林業に直接所得補償的なものを即座に導入するという考え方には、私としてはネガティブにならざるを得ないところでございます。

仲野委員 一次産業の中でも、農業、林業、水産とあるわけでありますが、この三つの大きな産業を見たときに、林業に対しての国の施策が私は非常に手薄でないのかなと思っているわけであります。

 林業の持つ本当に多面的機能というのが私は大変重要なものだと思っているわけであります。例えば、水源涵養機能は、林業だけではなくて、森は海の恋人、すてきなキャッチフレーズがあらわすように、漁業、水産業の発展、さらには持続的な農業経営に対しても大きく貢献しているわけであります。

 国土を守り、次世代へ豊かな森林資源を引き継ぐために、この再造林というものは不可欠であります。再造林ができないということでさまざまな課題があるがゆえに、これからは私はやはり、一次産業、農業、漁業、林業に対する、イコール命の産業というとらまえ方をしていただきまして、国家戦略の中でしっかりとやっていただく、これは私は大臣の今後の政策判断でないのかなということを申し上げておきたいと思います。

 大臣、いかがでしょうか。

石破国務大臣 現状に対する危機感は一緒です。

 私が議論したいのは、本当になぜこんなに生産コストが高いのか。山岳地帯という意味で言えば、北欧諸国あるいはオーストリアなんかも一緒なんですよ。何でこんなに生産コストが高いのか、なぜ一人当たりの生産量が低いのか、路網密度というのは何でこんなに粗になったのか、そういうことをまず議論すべきなのではないのか。

 そこを再生するためにいかなる政策手法を講じ、だれがどのような理由によってどのような負担を行うかということをきちんと議論したいということを申し上げておるわけでございまして、林業に対して施策が十分であったと私は正直言って思っておりません。それはいろいろな理由があるんだろうと思いますが、いわゆる林業先進国と言われる国々といろいろな指標を比較してみたときにその差は歴然でございますので、私は、その点に対して施策はいろいろと改善の余地があるだろうと思っております。

仲野委員 大臣は、決して完璧ではない、こうおっしゃっておりますので、いろいろな議論をしなければならないということですので、しっかりとした議論をしていただいて、やはり、林業というものは重要な産業だということを十分理解していただいているので、次に私が質問させていただいたときには、いい結果を出していただければなということをお願いしたいと思います。

 そこで、地域における製材工場に対する金融支援措置について尋ねていきたいんですが、本当に、昨今の米国発の金融危機を背景として不況が続いているわけであります。輸出産業、とりわけ我が国の自動車、電機などには非常に深刻な影響が生じているわけであります。

 北海道では、輸出企業向けにカラマツからこん包資材を生産する製材工場が数多くありまして、不況によって受注が激減し、本当に多くの工場が相次いで休業、閉鎖に追い込まれているんです。特にお隣の十勝管内は大変厳しい状況にあるわけであります。そういったことから、経営不振の工場数のさらなる増加、従業員の人員削減等による雇用不安の増大等が危惧されています。しかし、こうした状況下でも、当座の運転資金があれば景気回復まで何とかしのげる工場もあると伺っております。

 そこで、こうした地場産業とも言える地域の中小製材工場に対する経営支援策として、現場からは無利子融資かつ据置期間三年間といった金融措置の要望も出されているんですが、これについて、政府の対応方針を伺ってまいりたいと思います。

内藤政府参考人 委員御指摘のように、北海道では輸送用こん包材の需要が大きく減少しておりまして、こん包材を製材する工場が大変厳しい状況になっているということは我々も承知しているところでございます。

 このため、金融対策としまして、我々といたしましても、平成二十年度の第二次補正予算におきまして、独立行政法人農林漁業信用基金に追加出資を行い、経営体質の改善に取り組む製材業者に対しまして、既存の枠とは別に最大五千万円まで担保なしで保証ができるというふうにいたしたところでございます。また、業況の悪化によりまして資金繰りに支障を来しております製材業者に対しまして、日本政策金融公庫による低利の運転資金の貸し付け、それから民間金融機関から貸し付けする場合には信用保証協会による債務保証を実施するというふうな対策をとっているところでございます。

 御指摘のございました無利子あるいはそういった新たな融資制度につきましては、当然、加工業者である製材業者のことを考えますと、他の中小企業分野はどうなっているかということを我々考えなければいけません。そういったことも考えながら検討していかなければいけないわけでございます。

 林野庁としては、引き続き、金融危機に伴う木材産業への影響の把握に努め、円滑な資金調達ができるように努めていきたいと考えております。

 以上です。

仲野委員 ぜひ、こうした厳しい実態があるということに対して、しっかりと政府として対策を講じていただきたいなとお願いさせていただきたいと思います。

 次に、山林取得資金に対する利子負担の軽減措置について尋ねてまいりたいんですが、例えば、経営の規模拡大を図ろうとする林業経営者が十ヘクタールの山林を取得しようとした場合、北海道では現在二千五百万円ほどの費用が必要になり、こうした資金を森林組合から借り入れると年利は三・五%程度となっているわけであります。昨今の経済情勢や木材価格の状況から考えると、こうした高金利の資金を活用して経営の規模拡大をすることは、経営者にとっては大変なリスクを背負うことになるわけであります。

 一方で、外材需給をめぐる状況、森林資源の充実、技術開発等により木材自給率も年々向上し、国産材の利用拡大に向けて追い風が吹いている状況にあります。こうした状況において、我が国の林業、木材産業の国際協力を強化する意味でも、林業経営の集約化、規模拡大に向けた取り組みを推進すべきであり、それには国の十分な支援が不可欠であります。

 先ほども内藤長官からお答えいただいたんですが、こうした意欲ある林業経営者を支援するため、日本政策金融公庫資金による低金利政策を、利息一・五%程度への軽減措置をぜひともお願いしたいと考えますが、改めて内藤長官にここのところを確認しておきたいと思います。

内藤政府参考人 規模拡大のための資金でございますが、林業経営の規模拡大を図ろうとします意欲的な林業者を支援するということを目的にしまして、日本政策金融公庫資金におきましては森林の取得に必要な資金を措置しております。内容は、現在、利率でいきますと固定金利で年率一・六%と低い水準になっております。それから、償還期限も最長三十五年という長期で融資を受けることが可能となっております。

 さらに、平成二十一年度からは、所有山林面積おおむね百ヘクタール以上の森林所有者が、一定規模以上のまとまりを持ってさらに林地の取得を行う場合につきましては、貸付限度額を、例えば個人であればこれまでの千二百万円から五億円に大幅に拡充するといった条件改定を行うこととしております。

仲野委員 いずれにいたしましても、本当に厳しい状況にあるわけですので、先ほども何か信用保証協会のお話も出されたんですが、これは昨年末、麻生総理が総合経済対策の大きな柱ということで高々とアドバルーンを上げたんです。ところが、実態がかなり、どこがどう変わったのかなというくらい非常にお粗末な政策であったということが、これは多くの関係者から私のところにかなり指摘の声をいただいているわけであります。

 つまり、資金繰りに困って窓口に行っていろいろ相談をしているのでありますが、会社の経営実績だとか償還能力がないからといってけられているという実態であります。言った割には何だか全然中身が伴っていないという指摘もありますので、きょうは石破大臣もおりますので、閣僚会議のときに麻生総理に言っていただければなと思います。

 最後になりますけれども、今、日ロサケ・マス交渉が行われております。本来でありますと今月十九日までの交渉であったんですが、何か期間を延長して今その交渉の協議が行われているのだと思いますが、とにかく、根室管内において、経済の八割が水産業、サケ・マス漁に依存しているわけであります。それで、水産加工から運輸、資材に至るまで、地域とのかかわりが大変大きく、このサケ・マス漁の苦境が地域経済にとって非常に大きな打撃となっているわけであります。

 それで、入漁料の問題でありますが、昨年はキロ当たり二百九十二円台であったのが三百七円にまで上がってしまい、負担額は中型船でも八千四百万円、小型船で何と五千五百万円に上りまして、結局、このことによってもう操業ができないということで、減船、船をやめなきゃならないという状況にまでなっているということであります。

 そういったことについて、現段階の漁業交渉におかれまして、この入漁料について相手国に対してしっかりとこの実態を訴えていただき、経営安定ができるような形にしていただきたいなということで、山田長官にお尋ねしたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 委員からお話がありましたように、サケ・マス漁業は、入漁料の上昇ですとか、そのほかに魚価の低迷といったもの、また燃油高騰が昨年特に厳しかったわけですが、そういう厳しい経営状況にありまして、お話がありましたように地域への影響も非常に大きいというふうに認識をしております。

 お話がありましたように、ロシアとのサケ・マス漁業交渉につきましては、水産庁といたしましては、今お話ししたとおり、関係漁業者の置かれている厳しい状況、また地域への影響、それからまた漁業者の要望等を踏まえながら、入漁料の水準あるいは漁獲割り当て量などの操業条件について、安定した操業の継続が可能になるようにロシア側に求めてまいりたいと考えております。

仲野委員 時間になりましたので、終わらせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 次に、横山北斗君。

横山委員 私は、分収造林と呼ばれる制度とその現状についてきょうはお尋ねしたいと思います。

 この制度は、国有林野法の定めの中にあるもので、国と契約した造林者と呼ばれる方々が木を育て、成木、成林にしたものを国が買い取る。その際、分収という形で、収益の七、八割を木を育てた造林者が受け取って、国が二、三割を受け取るというものなのだそうですが、まずは、この分収造林の制度について、その始まり、概要、目的等についてお聞かせ願えればと思います。

内藤政府参考人 分収造林制度についてのお尋ねでございますが、今日の国有林の分収造林制度は、昭和二十六年に制定されました国有林野の管理経営に関する法律に基づきまして、地域の住民の生活の安定、林業の振興等を目的にしたものでございます。国有林野におきまして、契約により、国以外の人が造林をしまして、その立木を国とその人が共有し、そして共同で森林経営を行いまして、その収益を共同事業者である国と造林者が分収する制度として創設されたものでございます。

 内容は、分収木は造林者と国との共有になります。持ち分は契約に定められた収益分収の割合、契約期間は最長で八十年間等となっているところでございます。

 経緯でございますが、この制度は、国有林はそもそも、主として幕藩時代における藩有林が明治に入りまして国有林になったものが多いわけでございます。幕藩時代の諸藩におきましては、藩財政を賄うため、領民がその労働と資金によりまして造林を行うものについて、一定の割合で分収するということが行われておりました。これらを引き継ぐ形で、明治十一年に部分木仕付条例というものができまして、部分林制度というものが発足いたしました。その後、戦後になりまして今日の分収造林制度に至っているものでございます。

 以上です。

横山委員 それでは、この分収造林の契約者、全国的にどのくらいの契約があったのか、また、いつごろこの制度を利用した人たちが多かったのか、それから、最近の状況、再契約とかあるのでしたらお聞かせ願えればと思います。

内藤政府参考人 まず、契約状況でございますが、分収造林の新規契約件数は、昭和四十二年度の約一千件というのがピークになっておりまして、その後、減少傾向にございます。ここ数年を見ますと、大体五十ないしは六十件というふうな契約となっております。これを、契約が現在存続している件数で見ますと、平成十九年度末時点で、件数で約二万二千件、契約面積で約十三万ヘクタールとなっております。

 以上です。

横山委員 それでは、先ほどの分収についてなんですけれども、割合は都道府県ごとで違いがあるみたいなんですけれども、現状がどうなっているのか、国の取り分、造林者の取り分。それから、違う数字になっているとすれば何か根拠があってそういうふうにしているのか、お聞かせ願えればと思います。

内藤政府参考人 分収割合は、通常、造林者七、国三。ただ、北海道にあっては、造林者八、国二ということで、北海道は造林者の方が持ち分が多くなっております。

 この分収割合を定めてきた経緯でございますが、先ほど申しましたように旧藩時代にその根源を有するわけでございまして、そういった戦前の部分林制度、それから、民間で借地林業というものが行われておりました。その実態をもとに、こういった割合を設定したものでございます。

 国の分収割合は北海道は二、それ以外は三でございますが、これは地代相当額を土地所有者である国に帰属させるという観点から定められたものでございます。

横山委員 それでは、今のこの制度の現状、造林者たちが受け取っている収益について、私が住んでいるところの隣町でやっている人たちに言わせると、これで得られる利益、収益なんというのはほとんどないと皆さんおっしゃるわけですけれども、現実にどうなのか。

 この制度がピークであった時期や、例えば五十年前、三十年前、今日との比較において、この制度を利用してこの仕事をなさっている人がどれだけ収益を上げておられるのか、数字的なものでわかりやすく示せるものがあったらお教え願いたいと思います。

内藤政府参考人 分収林に限りましたこういったデータは、現在、保存期間の関係もございまして残っていないわけでございます。

 したがいまして、一般的なデータという格好で御説明したいと思いますが、例えば、国内の杉の立木については、我々は山元立木価格と言っておりますが、日本不動産研究所のデータがございます。これによりますと、五十年前の昭和三十四年は全国平均で一立米当たり六千七百二円、三十年前の昭和五十四年を見ますと一立米当たり一万九千八十七円。

 他方、経費でございます伐採経費を見ますと、これは五十年前のデータはございませんけれども、三十年前の昭和五十四年の国内の杉主伐の素材生産費の全国平均というもののデータがございます。それによりますと、一立米当たり八千百四十一円でございます。

横山委員 済みません、今どれぐらいですか。五十年前だと六千七百円、三十年前だと八千円引けば一万円ぐらい、今大体どれぐらいですか。

内藤政府参考人 同様に、財団法人日本不動産研究所のデータによりますと、平成十九年の杉の山元立木価格は一立米当たり三千三百六十九円。これを、仮に一ヘクタール三百七十五立米の立木があるとして試算しますと、ヘクタール当たり百二十六万円となります。

 他方、造林経費でございますが、東海地方におけます、これは地方によって違うものですから、とりあえず東海地方で見ますと、標準的な再植林、それから下刈りの費用という例で見ますと、一ヘクタール当たり百三十五万円となっております。当然、その後においても除伐等の費用が必要になってくるわけでございます。

 そういう意味でいきますと、伐採から造林、保育、間伐等、林業経営全体の採算性は大変厳しい状況になってきていると考えております。

横山委員 そうすると、マイナスになっているということですか。もう一回。

内藤政府参考人 これは、造林経費についてはすべての経費を申し上げました。当然のことながら、造林をするときには国の補助を受けます。したがいまして、国の補助を受けた場合には、当然、黒が出てくるということでございます。

 ただ、全体のいろいろなケースがございますので、すべてを集計しているわけではございません。

横山委員 五十年前に六千七百円ぐらいで、三十年前に一万一千円ぐらいで、今は幾らぐらいなんですか。

内藤政府参考人 単価だけを比較しますと、山元立木価格は、五十年前が六千七百二円、三十年前が一万九千八十七円に対しまして、現時点、十九年は三千三百六十九円でございますから、相当下がっているということでございます。

横山委員 ありがとうございました。

 改めて、確認ですけれども、造林者たちは国から無償で土地を借りているわけですよね。無償で土地を借りているんですけれども、この間、長期間にわたってそこで造林をしてきたということは、一般に、山を守り、森を守り、水を守り、環境に対して奉仕してきたわけですけれども、そういうことに対して何か別途助成してきたとかいうことはあったんでしょうか。それとも、土地は無償で貸すけれども、特段何か助成制度みたいなものは存在していなかったのか、お尋ねいたします。

内藤政府参考人 国有林で分収造林を行う場合についても、これまでも造林補助制度というものが活用できまして、植栽ですとか、下刈り保育等の助成を受けられたわけでございます。

 それから、最近いろいろな状況が厳しいということもございましたので、国有林におきましては、かなり齢級の高い間伐を行う場合についても補助対象にするというふうな措置を二十年度から講じているところでございます。

横山委員 そうしますと、その制度については、この分収林制度に参加している人たちに対して周知徹底されているものなんでしょうか。少なくともこれは、話を聞くとそんな制度は知らないと恐らく答えると思うんですけれども、どういうやり方をしているのか教えていただければと思います。

内藤政府参考人 当然のことながら、国有林でございますので、全国の森林管理署あるいは森林官がこの制度を周知しているわけでございます。したがいまして、地元の方々は、森林管理署あるいはその職員の方からいろいろな説明を受けているわけでございます。

 また、我々も地元にはそういったことを説明するようにということは当然指導しているわけでございますけれども、その周知が十分には至らず、まだ知られていないとすれば、我々も反省しまして、さらに周知に努めたいと考えてございます。

横山委員 そうすると、この制度が、ほとんど収益もない、助成制度もないといって不満を持っている方は、森林管理署に質問してくればいいということになりますね。はい、わかりました。

 では、この制度、ここまで聞いてきて改めてなんですけれども、過去の農林水産委員会では、最初に林野庁長官がお答えになったとおり、さかのぼってみても、昭和二十九年ごろにも、国有林野と経済的に密接な有機的な関連を持っていただく、将来において地元経済に総合的に寄与し得るとか、一番この制度を利用する人が多かったころでしょうか、市町村というようなものにそれらの林業を通ずる経済的向上というものを政策的に目標ともいたしましてとか、昭和五十四年には、地域振興のために国有林を活用していただいて、その地域の林業を中心とした地域振興を図るための国有林の協力という姿勢からも、この部分林制度については今後とも積極的に対応を図ってまいりたいと。

 一貫して、国有林野と密接な関係を地域が持つことを通じて地域経済の振興、発展に資するという内容の答弁なんですけれども、ここまで現状について見てきて、正直、なおそういう状況にあるとお考えですか。

内藤政府参考人 御案内のとおり、この分収造林契約は大変長い期間を要する契約でございます。その間、いろいろな経済情勢の変化というのもあるわけでございますけれども、私どもとしては、やはり国有林の成り立ちからしましても、地元と密接に結びつきながら経営をやっていく、そして地元の振興に役立つような国有林にならなければいけないという気持ちで事業を行っているところでございます。

 したがいまして、できるだけ、造林者に対しましてもその負担が軽くなるよう、あるいは造林者にとっても利益となるようないろいろな手だてを講じながら、これからも国有林が地元に受け入れられ、愛され、そして役に立っていると言われるような国有林の管理経営を目指して頑張りたいと考えております。

横山委員 この制度、契約期間が最長八十年、まあ五十年とか長いわけですけれども、それだけ長い期間があれば、当たり前のごとく、社会の情勢は変化します、物価も変わってきます。その間、その状況の変化に応じて、収益をふやすための策を講じるとか制度の見直しをするとか、そういう検討とか、あるいは現実になされているのかについてお聞きしたいと思います。

内藤政府参考人 今、木材価格が低迷をしているわけでございます。そういう意味では、そういった収益性の低下という負担を受けているわけでございますけれども、この負担につきましては、やはり共同事業者である国と造林者がともにその分収割合に応じて負担していかなければいけないのではないかと考えております。

 しかしながら、例えば、伐期を長くする、あるいは契約の伐採時期を変えることによりまして、より有利な販売あるいは伐採ができるということはあるわけでございます。そういうことに対しましては、造林者の申請によりまして、そういう存続期間あるいは伐採時期を変更することができますので、私ども、そういった要望があればできるだけその要望にこたえていきたいというふうに考えております。

横山委員 もう一つ、林野庁長官にお尋ねしたいんですが、五十年前六千七百円で、三十年前一万九千円、今三千三百六十九円。物価も全然違っているわけですから、ほとんど収益はないという、やはりやっている人たちの実感というものはあると思うんですね。制度的にどこを変える、あそこを変えるというような展望が今の段階で示されることなく、引き続き地域に対して地域振興をしとか、今、愛されるとかおっしゃいましたけれども、そういうことで果たしていいのかどうかという問題があろうかと思います。

 では、長官じゃなくて、ちょっと時間が早いですけれども大臣にお尋ねします。

 国の収益は今二割、三割ということなんですけれども、これは、先ほど林野庁長官によると、地代とかそういうものを含めて、それぐらいは国の取り分としてあるんだというようなお話だったと思うんですけれども、経営状況が厳しい中、二割、三割ぐらいの負担というのは国は放棄してもいいんじゃないでしょうか。どうお考えですか。

石破国務大臣 大変形式的なお答えになって恐縮なのですが、要は、財政法第九条からいってそれはできないという、何か身もふたもないお答えになっちゃって恐縮なのですが、「国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」ということになるわけでございます。

 その「適正な対価なくして」というところに抵触をすることに相なりまして、財政法をそのまま使う、まあ昭和二十二年の法律でございますが、確かに、三割しかないんだ、大した利益にはならないから持ち分を放棄してもいいじゃないか、そういうお考えがあることは承知をいたしております。ただ、それは財政法に抵触をすることになりますので、現行法体系からいってそれは難しい。

 では、それをクリアするような手だてがあるかどうかということについて、私自身、今知識があるわけではございません。よって、このようなお答えになってしまいますが、もし仮に、そういうような考え方としてこのようなものがどうかというような御提案があれば、また私個人として考えたいものだとは思っております。

横山委員 法律でそうなっているんだということで、別に形式的ではない、大変明快なお答えだったと思います。ただ、要は、今の政治のままではこの状況は改善されないまま続くということでもあろうかと思います。

 最後に大臣、今後の国有林と地域との関係についてどうお考えなのか、所信表明もされましたけれども、改めて、林業者の置かれている現状、分収造林されているのは別に林業をされているだけの方じゃなくて、漁業や農業をされている人でこの制度に参加した人も大勢いらっしゃいますので、総合的に考えるところを述べていただければと思います。よろしくお願いいたします。

石破国務大臣 国有林野の管理経営に関する法律第三条でございます。管理経営の目標であります。何を目標として管理経営するか。「国有林野の管理経営の目標は、国土の保全その他国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るとともに、あわせて、林産物を持続的かつ計画的に供給し、及び国有林野の活用によりその所在する地域における産業の振興又は住民の福祉の向上に寄与する」。何で「又は」でつないであるか、ちょっと私、今よくわからないんですが、いずれにしても、地域の産業、住民の福祉の向上ということを目標としておるわけでございます。

 そういたしますと、委員御指摘のように、地域との関係というものが、地域の発展、住民福祉の向上、これがなければ目的を成就したことにならないのだ、こういうお話になるんだろうと私は思っております。

 一方、青森の実情を私はつまびらかに存じませんが、ある地域において、木は海から来るという話がありまして、山から来るんじゃなくて、そこの流域の木がそこで生産をされるという話じゃなくて、ほかの地域で生産された木が船によって運ばれてということが起こっている。

 これはいろいろな流域ごとに見てみなければならないことなのですが、本当にその地域の材というものがそこで使われていない。それはなぜなんだ。木の流通のシステムに問題があるということなんだろうと私は思っております。

 ワンストップサービスですとか、その地域で生産された木がその地域で消費される、その率を上げていかないと、またこの法律の目的を達することにはならないと思っております。

 これは、その地域地域によっていろいろな事情がございますので一概に申し上げることはできませんが、どうかこの委員会におきましては、多くの地域を代表される委員がお集まりでありますので、その地域における材がなぜそういうことになっているか、私どもとして適切な施策を講ずるべく今後も努力をしてまいりますが、どうか地域における現状というものを御教示いただいて、よりよい施策を確立し、この法律が目的どおりに動くように努力をしたいと考えております。

横山委員 どうもありがとうございました。

 なかなか難しい問題があるようですけれども、八十年前、五十年前にできた制度が余り見直されることなく今日に至っており、分収造林をやってきた人たちの不満が募りに募っているという現実はあろうかと思いますので、この制度につきまして、民主党としては筒井大臣がしっかり対応してくれるものと思っておりますので、先生によろしくお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 議事の途中でございますが、ただいま、マレーシア、パンディカー・アミン下院議長御一行が当委員会の傍聴にお見えになっております。下院議長は、マレーシア・サバ州におきまして農業大臣も務めておられました。御紹介申し上げます。

    〔起立、拍手〕

    ―――――――――――――

遠藤委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 本日は、森林行政についてお伺いいたします。

 森林、林業、木材産業の危機的な現状については、私は大臣と認識は共有しているというふうに思っているんですが、まず、そのことを問いただす前に、細部にわたって少し質問していきたいというふうに思っています。

 一九九〇年と比べて六%の温室効果ガスを減らすという京都議定書の約束に対して排出量が大幅にふえている現状、森林吸収源対策で三・八%分を達成させることは至上命題だと思います。二〇〇七年から毎年二十万ヘクタール以上の追加間伐を目標としてきたわけですが、まず、この実績についてお答え願いたいというふうに思います。

 それから、実績を上げるためには間伐が遅滞なく実施されることが大切であります。これまで比較的間伐が容易な地域で実施されていて、今後は大変という話も聞いています。

 そこで、追加間伐の予算措置ですが、二〇〇七年度から来年度予算に至るまで、毎年度補正予算と当初予算を合わせて何とか必要額を確保している現状なのですが、国を挙げての施策のはずなのに、なぜ当初予算で確保できないのでしょうか。もし補正予算が編成されない場合は、追加間伐の費用はどうやって捻出されるのか、これについてお答え願いたいと思います。

内藤政府参考人 まず、実績でございますが、御案内のとおり、毎年二十万ヘクタールの追加的な森林整備を行いますと、従来の三十五万ヘクタールと合わせまして毎年五十五万ヘクタール、計三百三十万ヘクタールの間伐を六年間行っていく必要があるわけでございます。

 初年度に当たります平成十九年度につきましては、補正予算も合わせまして二十三万ヘクタールの追加的な間伐に必要な予算措置が行われまして、約五十七万ヘクタールの間伐に取り組みまして、十九年度内に約五十二万ヘクタールを完了しております。残りの五万ヘクタールにつきましても、本年度、平成二十年度中には完了の予定でございます。

 また、平成二十年度につきましては、補正予算も合わせて二十一万ヘクタールの追加的な間伐に相当する予算が措置されているところでございまして、その実施に現在取り組んでいるところでございます。

 続きまして、必要な予算の確保でございますが、御案内のとおり大変厳しい予算状況がございますが、私ども、平成二十一年度に向けましては、平成二十年度第一次補正予算におきまして二百六十八億円を確保するとともに、平成二十一年度当初予算案におきまして、間伐が進みにくい条件の不利な森林を対象に定額助成を行います事業を創設するなど施策の拡充を図ったところでございます。昨年度を上回る約三百五十二億円を計上できたところでございます。これらを合わせますと、二十一・五万ヘクタールの追加整備に相当する総額約六百二十億円が計上されております。

 森林吸収目標達成のためには、約束期間でございます二十四年までの間に、追加的な森林整備のための財源を継続的に確保するということが不可欠でございます。今後とも、厳しい予算状況の中ではございますけれども、当初予算に必要な安定的財源確保のための税制要望も含めまして、間伐等の森林整備に必要な財源の確保に努力してまいりたいと考えております。

菅野委員 なぜこの問題を取り上げるかというと、当初予算で不十分な予算措置をして、あとは補正でという形をずっと繰り返してきているわけですね。やはり政府としての地球温暖化防止対策に取り組む姿勢をどこで示していくのかということを内外に明らかにして、そして森林吸収源をしっかり確保していくんだという姿勢を明らかにすること、このことが私は大事じゃないのかなというふうに思っております。

 そういう意味で、今危機的な状況を打開するためには、山村振興も含めて、森林吸収源対策にしっかりと取り組むことが山村地域を復興させていく大きな力になるんだということを、ぜひ政府としても内外に明らかにしていただきたいし、予算をしっかりと確保していただきたいというふうに私は強く要望しておきます。

 この追加間伐を着実に実施していく上でどうしても必要になるのは、不在村森林所有者、境界線が不明確になっている森林への対応策です。来年度予算案では境界線画定に向けて十億円の予算が盛り込まれていますが、民有林全体で境界が不明確な森林はどの程度を占めているのでしょうか。また、来年度の予算でそのうち何%確保できるんでしょうか。これについてお答え願いたいと思います。

内藤政府参考人 私どもも、間伐等森林整備を進めていくために、森林境界の明確化が重要だと考えているわけでございます。

 その原因でございますけれども、世代交代などに伴いまして境界が不明となってしまう、あるいは森林所有者の所在が明らかでないために境界画定あるいは施業の声かけが難しくなっている、こういう森林を対象にこれから間伐を進めていかなければならないわけでございます。

 このため、委員御指摘のように、平成二十一年度予算案では、森林境界明確化への支援を本格化するための森林境界明確化促進事業を創設いたしました。この事業におきましては、いわゆる私有林のうち森林境界の確認と間伐の施業の双方が一年間で完了できないような厳しい状況にある森林を念頭に置きまして、四年間で約九万ヘクタールの森林の境界を明確化することを目標として取り組んでいきたいと考えております。

 以上です。

菅野委員 四年間で九万ヘクタールというのは、数字としてはわかりました。

 それでは、私有林の中に境界不明確な私有林がどの程度存在して、四年間で九万ヘクタールやればどれくらいの進捗率になるのかという点はどうなんですか。再度お答え願いたいと思います。

内藤政府参考人 私ども、事業を創設するに当たりまして、森林組合等へアンケートを実施いたしました。

 それによりますと、森林の境界が不明あるいは森林所有者の所在が不明であるために間伐を進めることが難しい森林面積がどのくらいあるか、あるいは、そのうち所有者の特定等に時間と費用を要することから現在の事業ではなかなか難しいと思われる森林がどのくらいあるかというものの面積をお聞きしました。

 それによりますと、これから森林間伐を行わなければいけない面積の約五・五%がそれに相当するということでございますので、これから間伐を行います百七十七万ヘクタールの五・五%分ということで、約九・八万ヘクタールを対象にこの事業を行いたいと考えておるわけでございます。

菅野委員 地域においては、本当に、不在村地主もそうなんですが、境界未画定という状況の中で初回間伐さえ行われないという実情があって、どうしてああいう山になっているんだろうか、森林になっているんだろうかといったときに、ここへの対応というのは、防災の観点も含めて、確かに今緊急にやらなきゃいけないんだというふうに思っております。

 そういう意味において、このことは積極的に取り組んでいく必要が、本当に緊急的な課題だというふうに思っていますし、確かに難しい点はあるというふうに思います。初回間伐を行う場合に、まだ全額公費負担というふうにはなっていないわけですから、そこを間伐促進していくためのあらゆる検討というのは行われなければならない大きな課題だというふうに私は思っています。十億円の事業がスタートしたわけですから、あらゆる問題点を解決する方向で取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 それから、森林吸収源対策を進めるといっても、その担い手が確保できなければ何も進まないわけです。林業では、六十歳以上の人口が四割近くを占めており、若い世代の就業は待ったなしの現状です。平成十五年から緑の雇用担い手対策事業が実施されてきているわけですが、研修を終えて林業労働者として定着している率はどのようになっていますか。答弁願いたいと思います。

内藤政府参考人 御案内のとおり、緑の雇用はオン・ザ・ジョブ・トレーニングという形で研修を実施しているわけでございます。

 平成十五年度から平成二十年度までの六年間の研修の修了生は、二十年度の見込みを含めまして、総計約九千五百人でございます。このうち、平成二十年四月一日現在で継続して林業に就業しているということについて確認をしましたところ、これが定着率になろうかと思いますけれども、平成十七年、十八年、十九年度の研修修了者のうち八一%が平成二十年四月一日現在でも林業に就業しているということでございます。

菅野委員 今言うように、林業の技術を習得するには一定の時間がかかるわけですから、研修期間や研修内容が現状のままでいいのかどうか、さらに検討していただきたいというふうに思っています。

 加えて、林業労働者が安心して就労できるようにするには、事業体が安定した事業量を確保する必要があります。現状では、森林事業の発注に当たり一般競争入札の手法がとられていると思うんですが、林業の事業体は、小規模ながら地域に密着している企業が大変に多いわけです。ところが、一般競争入札となると、他地域の企業が落札する一方、結局は下請で地元の企業が仕事を請け負う。そうなると、当然、以前よりも収入が減ってしまう。このようなことが実際に起きているわけです。

 林業事業の発注において一般競争入札という手法が適当なのか、大変に疑問です。入札の透明化はもちろん必要ですが、地元の企業が事業を確保できるような仕組みにすべきではないかと思いますが、考えをお聞きしておきたいと思います。

内藤政府参考人 国有林野事業におけます造林事業等の発注は、平成十九年十月以降、一般競争入札を原則としております。

 しかしながら、価格のみで落札が決定される現在の一般競争入札方式では、事業品質の確保などの点で懸念があるということがございますので、二十一年度からはその方式の改善を考えていきたいと思っております。

 具体的に申し上げますと、価格以外の技術力あるいは創意工夫を評価しまして、価格との総合点で落札者を決定する総合評価落札方式の導入などによりまして、一般競争入札制度がより適切に、適正に運営されるよう取り組んでまいりたいと考えております。

菅野委員 それから、林業労働者の賃金についてですが、建設労働者と比べても大変に低い水準にあります。加えて、日給制あるいは日給制と出来高制の併用が全体の七割くらいを占めています。

 林業労働者を確保していくためには、安心して生活できる賃金の保障が不可欠なわけですが、この日給制中心の賃金体系を何とか月給制中心に変えていく必要があると思いますが、国として何らかの条件整備はできないんでしょうか。答弁願いたいと思います。

内藤政府参考人 御指摘のとおり、森林組合の雇用労働者に、日給または日給・出来高併用が対象になっている者は多いわけでございます。これは、造林、保育、間伐などの林業作業が季節や天候に左右されるということから、必ずしも通年雇用とする必要がない、あるいは雇われる側も農閑期を利用して林業に従事しているというふうな、森林組合、雇用者それぞれの事情もあるものと考えております。

 他方、緑の雇用の研修生などを対象にアンケート調査をやってみましたけれども、やはり月給または月給・出来高制併用の給与形態を希望する人が多いわけでございます。こういった給与形態を実現していくためには、まず森林組合が森林整備などの事業量を安定的に確保し、それを拡大していくということが必要になってまいります。まず事業量がなければ人は雇えないということでございます。

 このため、森林整備の内容、経費などを森林所有者に対して明示し、森林所有者に負担を求めない施業提案を行うことのできる人材を育成する、あるいは条件が不利な森林の整備を定額助成方式により行う、こういったことによりまして、森林吸収源対策を初めとする森林整備事業を着実に実施できる森林組合の育成に努め、雇用労働者が安定的に給与を得られるような環境整備に努めてまいりたいと考えております。

菅野委員 最後に大臣に聞いておきたいんですけれども、今、こうやって議論をやりました。緑の雇用対策事業等を含めて、若者の林業に対する就業機会を提供しているんですが、地域にいて、本当に林業に携わっている若い人たちがふえているかというと、そうじゃないというふうに言われています。その大きな原因は、何といっても、私は賃金体系にあるというふうに思っています。労働条件がどう確保されているのかということで決まっていくんだというふうに思っています。

 森林組合の経営は厳しい状況だというふうに思うんですが、大臣として、若者がどう森林事業に携わっていくのか、これからの政府としての積極的な施策が求められているというふうに思うんですが、石破大臣の今後の決意をお聞きしておきたいというふうに思います。

石破国務大臣 今、長官からもお答えを申し上げたところでございますが、繰り返しになったら恐縮ですが、緑の雇用の研修生の方々を対象にしてアンケートを行えば、月給または月給・出来高払い併用の給与体系を希望される方が多いわけであります。森林整備などの事業を安定的に拡大していかなければいけません。では、そういう方々の希望を満たすために、どうやって森林経営を安定させるかということです。

 先ほどもお答えをしたのですが、林野はやらなきゃいけないことが物すごく山積しているんだろうと思っております。林道網の整備もそうでありますし、あるいは、一人当たりの生産量をどうやって拡大していくかということもそうです。コストをどうやって下げていくかということもそうです。そういうことをやっていくことによって、そこで雇用される人たちの生活も安定をするのであって、私どもとして、林業というものが本当に危機的な状況にあるというのは、委員が冒頭おっしゃったとおりです。その認識は私は全く共有するものでございます。

 どうやって林業経営というもの、あるいは林業事業というものに予算をつけ、それが自立的にやっていけるようにするか、それが雇用の安定につながる、それを両々相まって考えていかねばならない問題だと思っております。緑の雇用で応募をし、働いておられる方々、そういう方々の気持ちをきちんと生かすような、そのことはよく念頭に置いて今後もやってまいりたいと思っております。

菅野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

遠藤委員長 次に、内閣提出、漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣石破茂君。

    ―――――――――――――

 漁業災害補償法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石破国務大臣 漁業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 漁業災害補償制度は、昭和三十九年の創設以来、漁業再生産の確保と漁業経営の安定に重要な役割を果たしてまいりました。

 しかしながら、近年の我が国水産業を取り巻く厳しい環境の中で、漁業経営は一層厳しさを増していることから、今後とも本制度が漁業経営の安定に資する役割を着実に果たしていくことができるよう、漁業者のニーズや漁業実態に即し、本制度の健全かつ円滑な運営を確保するため、この法律案を提出することとした次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、漁業共済事業の見直しであります。

 現行の養殖共済は、すべての災害を共済事故とすることを原則としておりますが、共済契約者の任意の選択により、病害を共済事故から除外することができることとし、また、これまで養殖共済の対象にならなかった生産額の小さい魚種について、病害を共済事故から除外することで、養殖共済の対象とすることを可能にすることとしております。このほか、養殖共済の共済責任期間について、都道府県知事が設定する水域ごとに単一とする義務を廃止するとともに、漁業施設共済について、特約が設定できる仕組みを導入することとしております。

 第二に、漁業共済組合に係る制度の見直しであります。

 漁業共済組合の広域合併が進んでいる現状にかんがみ、漁業共済組合に、総会にかわるべき総代会の制度を導入するほか、漁業共済組合の地区を一または二以上の都道府県の区域とし、現在、二以上の区域とする場合に必要としている承認制を廃止することとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る四月二日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    正午散会


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