衆議院

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第7号 平成21年4月7日(火曜日)

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平成二十一年四月七日(火曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 遠藤 利明君

   理事 今村 雅弘君 理事 木村 太郎君

   理事 七条  明君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 笹木 竜三君

   理事 筒井 信隆君 理事 西  博義君

      安次富 修君    赤澤 亮正君

      井上 信治君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    岩永 峯一君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    河井 克行君

      木原  稔君    斉藤斗志二君

      谷川 弥一君    徳田  毅君

      中川 泰宏君    永岡 桂子君

      丹羽 秀樹君    西川 公也君

      松本 洋平君    茂木 敏充君

      森山  裕君    安井潤一郎君

      石川 知裕君    大串 博志君

      川内 博史君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    神風 英男君

      高井 美穂君    仲野 博子君

      福田 昭夫君    横山 北斗君

      井上 義久君    菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       石破  茂君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   農林水産大臣政務官    江藤  拓君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         針原 寿朗君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         實重 重実君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           竹谷 廣之君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  本川 一善君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            吉村  馨君

   政府参考人

   (林野庁長官)      内藤 邦男君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     安井潤一郎君

  徳田  毅君     松本 洋平君

  石川 知裕君     川内 博史君

  小平 忠正君     福田 昭夫君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 洋平君     徳田  毅君

  安井潤一郎君     近江屋信広君

  川内 博史君     石川 知裕君

  福田 昭夫君     小平 忠正君

    ―――――――――――――

四月三日

 農地法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農地法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)

 農林水産関係の基本施策に関する件

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官針原寿朗君、大臣官房総括審議官實重重実君、総合食料局長町田勝弘君、消費・安全局長竹谷廣之君、生産局長本川一善君、経営局長高橋博君、農村振興局長吉村馨君及び林野庁長官内藤邦男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野次郎君。

小野(次)委員 おはようございます。

 きょうは、石破大臣、また石田副大臣初め、日ごろから御指導いただいている方にこういう委員会の場で質問できることを大変うれしく思っているところでございます。

 特に石破大臣におかれては、昨年九月御就任以来、農政改革担当大臣というお立場も兼ねて農政改革に取り組んでこられたわけでございますけれども、やはり、そのタイミングや、この数カ月間の大臣御自身のさまざまな意気込みから見ましても、この農政改革、まだ緒についたところではございますけれども、石破大臣御自身のリーダーシップによるところがかなり大きいというふうに私は理解しております。

 農政改革について検討が今行われているわけでございますけれども、まず、こういったリーダーシップを発揮されて改革に取り組むという姿勢を持っておられる石破大臣の、この農政改革に対する動機というか問題意識というか、認識をお伺いしたいと思うわけでございます。よろしくお願いいたします。

石破国務大臣 人、金、物、すべてが低落傾向にあるというお話は、いつも申し上げておるとおりでございます。

 人の面においては、基幹的農業従事者の六割が六十五歳以上になっている。これはもうオール・ジャパンの話でして、地域によっては、六割が七十歳以上だという地域もございます。我々の中国地方なんかそうでございます。高齢者の方が農業をやることが悪いなんて私は言いません。その後やる人が出てこないと、ある日突然日本から農業を担う人がいなくなるということが起こります。それが問題意識の第一である。

 農地法の改正をお願いしておりますが、農地がどんどん減っている、耕作放棄地がどんどんふえている、これをどうするかというお話。

 そして、お金でいえば、農業所得というものが、十五年間、平成二年から十七年の間に半分に落ちた。これは一体どういうことか。

 その人、金、物の低落傾向にある原因というのは、それをすべて分析して見直していかねばならぬということが政策的にはございます。

 他方、省といたしまして非常に嫌な言い方かもしれませんが、農林省の言うことと逆のことをやるともうかるということを、私は、当選一回、二回のころから聞いたことがあります。それはもう半ば冗談なのかもしれません。ですけれども、そういうことが言われるということ自体、何か問題があるのだ。

 それは、さらに敷衍して申し上げれば、本当に現場のニーズに合った政策を出しているのかということです。これは今村先生から教えていただいたことでもあるんですが、ちゃんとマーケティングというのをやっているのか。どんな政策が必要ですかということを、本当に現場の意見をきちんと聞いて、こういう政策が望ましいということにマッチしたものを出しているのだろうか。これがよかれと思って出したものを、押しつけているわけではありませんが、私どもが出している政策が現場のニーズに本当にマッチをしているのかということも大事な論点なんだろうと実は私は思っています。

 私はいつも言っているんですが、生産者も消費者も、あるいは流通に携わる方も、それはみんな我々農林水産省にとってお客様なのだという意識を持たねばならない、そしてまた、政策というものは商品であるべきなのだと。それが本当に現場に受け入れられているものなのかどうか、あるいは現場のニーズに本当に合った政策なのかどうか、商品設計が本当にきちんとできているか、そしてそれを現場の消費者や生産者の方々にわかっていただくような努力をどれだけしたかということでございます。

 合併によりまして市町村の統合が起こりました。それによって、きめ細かな現場のニーズに対応できる市町村の体制というものがやや傷んできているのではないかという気が正直言ってしております。そのときに、霞が関直送の政策をどんと出して、本当にそれが現場に受け入れられているのかといえば、そこはかなり問題があると思っております。

 それらの全般にわたって、本当に国民がお客様であり、我々が出すものは一種の商品なのだという意識を徹底させていかなければ、農政改革というものは絶対できないと思っております。

小野(次)委員 この農政改革、具体的に、農政改革関係閣僚会合、さらにはそのもとで農政改革の特命チームというのが既に発足していて、一月三十日の関係閣僚会合の申し合わせでは、この四月前半にも特命チームで農政改革の検討方向というものがまとめられるように申し合わせがなされています。前半というのは十五日ぐらいまでを含むのかもしれませんが、いずれにしても、もう数カ月検討してきて、あとわずかでこの農政改革の検討方向というのが取りまとめられるというふうに認識しているわけでございます。

 どのような項目を重点に検討が行われてきたのか、さわりの部分でいいので、確定的なものでないわけでございますけれども、重点的な項目についてお話しいただければ幸いでございます。

石破国務大臣 三点ございます。

 一点は、この言い方をするとまた議論を呼ぶのかもしれませんが、担い手を育成、確保しなければならないということ、そして、農業所得を増大させなければいけない、そのためにはどうするのかという議論をかなり詰めて行っております。

 第二番目は、農地の問題。これはもう法律改正を出しておるわけでございますが、その後の展望も考えていかねばなりません。農地問題、あるいは生産、流通に関する施策というものを見直さねばならない。

 そしてもう一つは、農山漁村対策。これは、漁村と農山村と少し違いはございますが、兼業機会というものが物すごく減ってきたということによって農山村が維持できなくなっているということは、歴然たる事実だと私は思っております。ここをどうするかというお話。

 そして、また委員の御質問にも後ほど出てくるのかもしれませんが、農山漁村の潜在力というものをどのように引き出していくかということ。そこへ新たな分野への取り組み、それは農商工連携ということもそうなのですけれども、点としては物すごく所得が増大したというところもございます。それは高知県の馬路村なんかそうなんですけれども、それを点ではなくて面に広げるためにどういう施策を打てばいいかということでございます。

 そういうような項目について議論を進めておるところでございます。

 これは、四月前半を目途に農政改革の検討方向を取りまとめるということにしておりますので、その目標は絶対に守りたいと思いますし、ある程度クリアカットなものを出していかねばならないのだと思っております。あちらにもいい顔、こちらにもいい顔というものをしておりますと、結局、総花的な政策というものになってしまいかねない。本当に、今いろいろな議論がされておりますことに、方向性はこうであるということをできるだけクリアカットに出したいと思っておるわけでございまして、そのために十分な議論を尽くすということがまさしく今行われているのだというふうに認識をいたしております。

小野(次)委員 特に衆議院の方においては、昨年秋以来、与党がいけない、野党がいけないということを言うつもりはさらさらありませんけれども、どうしても政局の方に話題が移りがちな中で、この農政分野においては、石破大臣のリーダーシップのもとに、私どもだれが考えても、この担い手の問題、あるいは農地の問題、そして農山漁村対策、中期的、長期的テーマで改革が必要だなと認識しながらも、そういう目で見ていた中で、着実にその検討を進めておられるというのは、何かほかの行政分野と比べても確かな感じをしているわけでございまして、このタイムスケジュールをきちっと果たしていこうというふうに大臣も今おっしゃられましたけれども、そういう方向で具体的な、しかも、我々関係者はもちろんですけれども、国民あるいは農政に携わるすべての方から見て議論の土台になるなというようながちっとした内容のあるものをおつくりいただければありがたいと思うわけでございます。

 ちょっと話題がかわりますけれども、三月十六日だったと思いますが、私の地元に梨北米というお米をつくっているJA梨北というところがございますが、ここは実は特Aを四年連続でとったというところでございまして、短時間ではございましたけれども、大臣と意見交換をさせていただく機会をつくっていただきました。ありがとうございます。

 その際に私が感じた印象は、ちょっと意外な面もございました。それは、これだけ品位の高いお米がつくれるんだったら東京へ持ってきて高く売ればいいじゃないかという大臣のお尋ねに対して、いや、安定した量を供給できるだけの量がないんだということを聞きました。規模の小さいJAというか農業者の場合、品位は高い、地域的なローカルなブランドとしては高い信頼があるんだけれども、ならばそれを遠くへ行って高く売れるかというと、生産量の問題もあり、販売ルートの問題もあり、全体としての販売力の不足が課題になっているということを感じました。

 そこで、お尋ねいたしますけれども、都会で高く販売することが内容としてはできる、それだけの品位が保証されているんだけれども、販売先の確保、販売力の不足ということに対して、行政の側からこういう取り組みに対する支援を強化することが重要なのではないかと思うんですが、御認識をお伺いしたいと思います。

石田(祝)副大臣 今、梨北米のお話もありましたけれども、四年間続けて特Aをとられたということで、大変すばらしいお米だというふうに思います。

 農林水産省といたしましては、地域で生産される農産物やその加工品をブランド化して、付加価値のあるものとして販売していくことは、大変重要な要素であるというふうに考えております。

 特に、ブランド化につきましては、そのブランド価値を実需者や消費者に適切に伝えることで販売先を確保することが不可欠な要素だ、このように考えておりまして、農林水産省としてもその取り組みを支援しているところでございます。平成二十一年度の予算では一億三千七百万円でありますけれども、そういう予算も使いまして、しっかりと応援をさせていただきたいと思っております。

 具体的には、平成十九年十一月に、地域ブランド化に取り組む生産者や団体とそれを支援するアドバイザーや販売業者の方々の参加による食と農林水産業の地域ブランド協議会を設立いたしまして、JAや個人の農業者が量販店、卸売業者、外食関連事業者等との交流を通じて販売先を確保する場を提供しております。

 また、ホームページやメールマガジンなどを活用いたしまして、販売先の確保に成功した取り組みなどの先進事例を紹介しているところでもございます。

 今後とも、地域ブランド協議会の活動などを通じて、生産者と実需者の交流を促進し、生産者による地域ブランド品の販売先の確保を支援してまいりたいと思っております。

 なお、大臣からも先ほど高知県の馬路村というお話も出していただきましたけれども、あそこも、私の地元でございますが、ブランドを確立いたしまして全体的な売り上げが大変上がっていった、こういうことも言われております。十年余りで十二億円から三十二億円と売上高も上がってきておりまして、ブランド化ということによって本当に成果が上がっている、こういう例もございますし、ぜひこれは応援をさせていただきたいと思っております。

小野(次)委員 ありがとうございました。

 ただ、さっき僕は説明不足だったかもしれませんけれども、ブランドとしてはこうやって評価をいただいて、それを継続的にやっていけば高い評価を得られるんだと思いますけれども、問題は、東京にも高級感のある食材を売っていますスーパーマーケットのチェーンみたいなのがありますけれども、そこに納めるというと、やはり、店舗の数が十店舗とかあると、そこに常時、梨北という一JAから安定供給できるほどの量はとれないということでございます。今、副大臣の御説明、お話にもございましたけれども、何か一般的に地域ブランド化を支援しますではなくて、欲しいなと思っている消費者の側と、この量だったら提供できるといういいお米をつくっている生産者の間の仲人役みたいなものを、もうちょっと、ケース・バイ・ケースというか、きめ細かいお手伝いをしていただけると、いいベストマッチングになるんじゃないかと思います。その辺についても、ちょっとソフト的な支援かもしれませんが、ぜひ力を入れていただきたいと思うわけでございます。

 この意見交換の際の印象で、もう一問させていただきます。

 では、こういう米をつくっている農家というのは、専業であってさぞかし大規模でやっているのかと思いましたら、実はこのJA梨北は、平均耕作面積が三反、三十アールということで、ほとんどが、公務員をやっていたりお店をやっていたりして、時間を惜しみ、また、仕事が終わってから、あるいは土日ということで、手をかけてこういうお米をつくっているのが実態だという話、もちろん兼業農家だということでございます。

 今の農地法の改正、これは午後からだと思いますけれども、こういった利用という概念を入れて、なるべく大規模なまとまった面積のところで本格的に農業経営をしてもらおう、それを育成していこうという方向というのは間違っていないと思うんですけれども、一方で、規模が小さい、三反程度の兼業農家であっても努力をすれば高品位の生産が期待できるという面もあるわけでございますから、今後とも、一方で経営の合理化というか大規模経営に進めていくという方向はあるでしょうけれども、他方で、農政の重要な対象として、こういった小規模であり、また兼業である、そういった農業者に対してもさまざまな振興策が必要ではないかと思うんですが、この点についての認識をお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 先般、先生の御紹介をいただきまして、JA梨北の方々とお話をする機会をいただきました。私自身教えられることが非常に多かったですし、これだけ高い評価を得たお米というものをつくっておられる、特Aを四年連続して受賞されるということは、やはり相当の努力をしておられるんだろうというふうに思っております。

 兼業で小規模なものはよくないんだということじゃなくて、そういうところでも、でもという言い方はいけないのかもしれませんが、特Aを四年連続してできるような、そういうようなお米がつくれるんだということは、本当に私どもが学ぶべきことだというふうに思っております。

 私どもは、大規模化だけどんどん進めればいいというふうには思っておりません。今副大臣からお答え申し上げましたように、そういうものがもっと売れるように、私どもとして御支援できるものはもっときめ細かくやってまいりたいと思います。

 特に日本の水田営農という形態を考えてみましたときに、そういう小規模の方々がちゃんとやっていけるということもあわせて考えていかなければなりません。そのときに、集落営農というものをどのようにして推進していくか、現場に合わないとするならばそこをどのように直していくかということを考えていかねばなりません。

 また、水田・畑作経営所得安定対策ということもやっておるわけでございますが、それとは別に、産地確立交付金を活用した特色ある水田営農の展開、そしてもう一つ私が考えておりますのは、これからまた委員の方々にも御議論いただきたいわけでございますけれども、農地、水、環境保全向上対策あるいは中山間地域等直接支払いのように、小規模な農家さんも含めた地域住民の方々の役割を支援する、そういうようなものをどのようにして今後さらに拡充していくかということなんだろうと思っております。

 私どもは、選別的なことをやるというつもりも全くございません。しかしながら、なべて直接支払いを行うというやり方が本当に現実的なのだろうかということもちゃんと議論をしなければいけないことだと思っております。

 その中にあって、申し上げましたように、農地、水、環境保全向上対策あるいは中山間地直接支払い、これは日本型の直接支払いとも言えるものでございまして、これをさらに拡充していくということは、また委員の御見解も承りながら考えていかねばならぬことなのではないかと思っております。

 農家一軒当たりに対する直接支払いというのは我が国は物すごく少ないわけでございますが、農地面積当たりの直接支払いの額でいえば、ヨーロッパよりもはるかに多いわけでございます。これをどのようにして活用していくのかということについて、真摯な御議論を賜りながら、私どもとしてまた政策を充実させていきたいと思っておる次第でございます。

小野(次)委員 三月十日に、経済財政諮問会議だと思いますが、その場で石破大臣は発表をされていると思うんです。「農業・農村の潜在力を活かした新たな挑戦」というテーマだったと思うんですが、その内容について勉強させていただきましたところ、大変意欲的な内容であるなという感じがいたしました。中でも、農業、農村の潜在力の例示として、太陽光エネルギーとかバイオマスなど未利用のエネルギーあるいは資源の活用策について、これは一つのエッセーというか、頭の体操の面もあるとは思いますけれども、いろいろな活用策について書かれています。

 この未利用のエネルギー、農村や農業が有している太陽光発電やバイオマスなどによるエネルギーなど未利用のエネルギー、資源の活用策について、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 まさしく委員御指摘のように、未利用のエネルギーあるいは資源の活用策、ここでいろいろな知恵を絞っていかなければいけないんだと思っております。

 委員かねてから御指摘をいただいています太陽光発電でございますが、農地一ヘクタール当たり年間六十万キロワットアワー程度の発電が可能だ、このように言われております。仮に耕作放棄地の一割に当たる四万ヘクタールにこの太陽光パネルを設置したといたしますと、あくまで計算上ですが、毎年二百四十億キロワットアワーの発電量が得られる。毎年二百四十億キロワットアワーとは何だと言われるんですが、これはどういう電力なのかというと、六百五十万世帯の消費電力に相当する。耕作放棄地の一割に太陽光パネルを設置すると、六百五十万世帯の消費電力に相当する発電量が得られる。六百五十万世帯とは何なのだと言われると、東京都が六百十六万世帯でございますから、あくまで数字の話で、発電ロスとかいろいろなものを考えていかねばなりませんし、コストの計算ももちろんしていかねばならぬわけですが、それだけの発電量が可能であるということでございます。

 ここは、どのようにしてこれを活用するかということを本当に実証しながらやっていかねばならない。我が国のエネルギー政策においてこのことは非常に重要だと思っておりまして、農地における太陽光発電につきましては、遊休農地でありましても転用許可が必要だということになっておるわけでございますが、この制度の趣旨は踏まえつつも、地域ニーズを踏まえた施設整備の促進がどうできるか。これは党でもいろいろな御議論をこれから賜るというふうに聞いておりますが、これを我が国のエネルギー政策においてどう位置づけるかということをちゃんと考えていきたいというふうに思っております。

 あるいは、その場で申し上げたことでございますが、植物工場というものがございます。植物工場のメリットは何なのかというと、いろいろな純粋なものがつくれるということでありまして、夢物語みたいな話ですが、花粉症が緩和されるお米、このお米を食べると花粉症の症状が非常に緩和されるというようなお米をつくろうとすると、植物工場などというものが非常に向いているということもございます。

 いろいろな可能性にチャレンジをしながら、私どもとして、農山漁村の持っておるいろいろな潜在力を引き出すために、経済産業省その他ともよく連携をしながら、従来にない発想で取り組むことが必要なことだというふうに認識をいたしております。

小野(次)委員 ただ、農地がそのまま発電所に使えるという話についてはいろいろな異論があるんだろうと思いますけれども、ちょっと余談になるかもしれませんが、私は、例えば物をつくる努力、物をつくる人と食べる人が今現在完全に分離してしまっているわけですけれども、そういうことがありがたみを感じさせないということにもなってしまっているんじゃないかと思います。あるいは、例えば水なら水というものが、私も経験したことはないですけれども、遠くまで行って水をおけに担いで持ってくる人は、多分、水を使うときにも大事だなと思う。そういう部分がだんだん現代はなくなってきてしまっている。

 そういう意味でいうと、私は、農業で使うエネルギーというものを、広い意味で農村というのか、あるいは耕作されていない場所を含めた農業地域で、自分たちで使うエネルギーはつくろうじゃないかというモラルというか考え方というのは、一つの哲学になるんじゃないかと思うんですね。実際、農業でも、ビニールハウスの中の電源であるとか、あるいは、今私の地元も被害が大きいですけれども、猿とかイノシシとかに対する電さくのエネルギーだとか、そういった農業関係のエネルギーは、今大臣がおっしゃった、仮に耕作されていない耕作放棄地の一部を使ってでもということについてはかなりの広い理解が得られるのではないかなと私も思っていますので、ぜひ今後ともそういう御検討を進めていただきたいと思うわけでございます。

 次の質問に移りますけれども、農業というのはそういった農業生産という面がもちろん中心ではございますけれども、一方で、いろいろ考えていくと常に出てくるのは、環境と農業、あるいは国土の保全、さらには防災といった面もあると思うんです。ですから、効率化あるいはビジネスとしての農業ということばかり追求していくときに、忘れてはならないのはこういった農業の多面的な機能ということだと思うわけでございます。今回進めておられる農政改革においても、このような機能をきちんと評価し、位置づけるべきだと私は思いますけれども、御認識をお伺いしたいと思います。

吉村政府参考人 多面的機能の役割についてお答え申し上げたいと思います。

 農業、農村は、委員まさに御指摘のとおり、食料供給のみならず、環境や国土保全などの多面的な機能を有しておりまして、これらは広く国民生活及び国民経済の安定のために重要な役割を果たしているというふうに認識をしております。

 こういった多面的機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるためには、農業の持続的発展とその基盤である農山漁村の振興を図っていくことが必要であるということで、一つは、担い手育成や農業基盤の整備など各般の政策を行う、それから、中山間の直接支払い制度、さらに、農地、農業用水等の資源や環境を保全する地域ぐるみの共同活動への支援を行う農地、水、環境保全向上対策などを実施しているところであります。

 しかしながら、先ほど大臣が冒頭御答弁申し上げましたように、農山漁村は、現在、人口の減少、高齢者比率の高まり、さらに生活基盤の整備のおくれ、地域管理能力の低下などに加えて、兼業機会もますます減少するなど、多くの問題を抱えております。

 今回の農政改革においては、このような農山漁村の現状を踏まえて、農業、農村の有する多面的機能を適切に評価して、位置づけて、特に農村集落に対する支援の充実強化などの農山漁村対策や、農業、農村の潜在力を生かした新たな分野への取り組みを検討していきたいというふうに考えております。

小野(次)委員 私はさっき、三月十日の経済財政諮問会議における石破大臣の「農業・農村の潜在力を活かした新たな挑戦」という資料に基づく説明についてもお尋ねいたしました。こういった新たな挑戦を促進するような農政改革でなければならないと私は思います。

 今月上旬でしたか、前半にも項目がまとまるというふうに聞いていますけれども、この改革の中でも、こういった新たな挑戦を促進するようなものになっているというふうに理解しておりますけれども、そういう認識でよろしいのか、もう一度お伺いしたいと思います。

針原政府参考人 今月前半に検討方向をまとめるわけでございますが、今先生御指摘のとおり、農業、農村自身を元気にして日本の経済を底支えする、そういうものであるとともに、今御指摘になったようなあらゆる可能性を、科学技術の力もかりながら、発揮するようなものにしてまいりたいと思っております。

小野(次)委員 大臣にもう一問だけお尋ねさせていただきますけれども、今、事務方から割とさらっとしたお答えをいただきました。きのう事務方と意見交換をさせていただいたときにも、一方で大臣が経済財政諮問会議でこれだけ力の入った説明をされているにもかかわらず、事務方からはそういう話は、知っているのか知らないのかみたいな話もございました。

 もう一度だけ大臣にお伺いしますけれども、こういった新たな挑戦というのを、大臣のリーダーシップのもとで、今関係省庁も含めて進んでいるこの農政改革の中でもぜひきちっと位置づけられるようにしなければいけないと私は思います。

 別に何も根拠がなくて言っているんじゃなくて、この特命チームのいろいろな検討過程を伺ってみても、最後にちょこっとそのことに触れているだけで、決して何か新たな挑戦というほどの力は入っていないような検討をしている状況が見られるわけでございまして、大臣にもう一遍御決意をお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 大変失礼いたしました。

 私は、潜在力が生かし切れていないとすれば、何らかの原因があってそういう結果になっているんだろうと思っております。それはもう連綿たる政策の積み重ねなのですが、例えて言えば、木質バイオマスが何でこんなに利用されていないのということに立ち返ってちゃんと議論をしなければいけない。何で林道網はこんなに密ではないのだろうか、同じ山岳国家であっても、フィンランドとかオーストリアでは物すごく進んでいる、なぜ日本では進んでいないのか、そういうことまで立ち返って議論をしていかねばならない。

 やはり、大臣もそうですが、与党の方々の後押し、あるいは野党の方々のいろいろな御教導もいただきながら、これは政治主導でやっていかなきゃいかぬ話なんだろうと思っております。

 潜在力って何なのということをもう一度ちゃんと検証する。それを引き出すためには、お金なくしてできるお話ではございません。相当予算を投入していかねばならないことでございます。そこにおいて一体何が実現されるのか。それは、夢物語じゃなくて、先ほどの花粉症を緩和するお米にしても、あるいは木質バイオマスの利用にしても、こうこうこういうことをしてこれを実現するんだという目標を共有しながら、それに向けて政策が本当に実現されているか、予算措置がきちんとなされているかということは、やはり財政民主主義の観点からも検証していかねばならないことだと思っております。

 農政改革の大きな柱として、潜在力を最大限引き出すというような戦略を正面から出していかねばならない。ただ、それが、今までどうしてこんなことになったのかという検証を伴うものでなければいけないと思っておりまして、さらによいものを出すように私どもとして努力をしてまいりたいと存じます。

小野(次)委員 大臣、どうもありがとうございました。

 今そういうお話を伺って、期待をしておりますので、政局の方はいろいろ話題が絶えませんけれども、ぜひこの農政改革の方は、きちんとした、私は当選一回ですけれども、自分としてもこの間において一つの仕事にタッチできたと思えるようないい結果になることを期待しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうはどうもありがとうございました。

遠藤委員長 次に、石川知裕君。

石川委員 民主党の石川知裕でございます。

 きょうはこの後、委員長提案で、JAS法の一部改正によって、たび重なる原産地偽装表示に関して直罰規定を盛り込むということで、起草をなされるということでございます。

 この食品偽装問題、一昨年北海道で、ミートホープの事件、また白い恋人の事件もございました。北海道から食品偽装の問題が大きく始まっていったわけでありますけれども、その後、ことしに入ってからも、やはり原産地偽装を含めて、なかなか食品偽装の問題が後を絶たない。もちろん、全国で二千人に及ぶ食品Gメンの皆様方の活躍、また、農林水産省の方々も本当に時間を惜しんで粉骨砕身頑張っておられるとは思いますけれども、なぜこの食品偽装の問題が後を絶たないのか、副大臣がこの点に関しては御専門だということでありましたので、御見解をお聞きしたいと思います。

石田(祝)副大臣 私は、特に専門というわけではありませんが、農林水産省でこの対策の本部長をやっておりますので、そういうことで御評価いただいたと思いますが、お答えを申し上げたいと思います。

 今委員が御指摘いただきましたようなことは、やはり企業として許されるものではない、私はこのようにまず思っております。

 そういう観点から、平成十九年十月に食品の信頼確保・向上対策推進本部を設置いたしまして、食品業界のコンプライアンスの徹底を図るとともに、食品の表示の適正化のための取り組みも推進をしてきております。

 具体的には、コンプライアンスの確保を図るため、平成二十年三月に、食品関係事業者のコンプライアンスの確立に向けた具体的な取り組みの方向を示した手引、こういうものを策定いたしまして、食品関係事業者がこれに即した取り組みが行えるよう、全国各地で信頼性向上セミナーを開催してまいりました。

 例えば、平成二十年には、全国二十六会場で約二千百名の参加をいただきまして食品業界のセミナー、また、食品関係団体の要請に応じた無料講師派遣の実施、こういうものも行っております。平成二十一年度につきましては、要請がありました団体にはすべて講師の派遣もする、こういうことも今考えております。

 また、食品表示の適正化に関しては、JAS法に基づく指示、公表の指針として、一つは、指示した場合にはすべて公表すること、二つ目には、表示の根拠となる書類を意図的に廃棄していると認められるなど品質表示基準違反の蓋然性が高い場合には指導を行ったときでも公表すること等の考え方を示しまして、本指針に沿って全国的に整合性のとれた運用を行うよう都道府県に要請をしたところでございます。

 今までは、指示した場合には原則として公表すると、原則という言葉が入っておりましたので、各都道府県でそれぞれ受けとめ方に若干差がございました。これにつきましては、一月二十九日に推進本部を開きまして、原則という言葉を取りまして、公表する、こういうことで徹底をいたしております。

 残念ながら、これはまだ周知が完全というところまではいっていなかったようなところもありまして、千葉県のアサリの問題で、この原則が取れているという認識がどうもなかったのではないか、こういう事例もございましたので、これにつきましては再度しっかりと徹底いたしまして、食品事業者に対する消費者の信頼を回復できるよう指導してまいりたいと考えております。

石川委員 従来、この食品の偽装の問題、各都道府県で、今副大臣からお話がありましたように、それぞれ指示、公表すべきところを、公表している県と公表しない県、以前、クエの偽装問題があったときも、公表している県と、していない県、それぞれ対応が分かれておりました。

 こうしたことが起きないようにということで、一月に、「JAS法に基づく指示・公表の指針の改定について」ということを行ったと思うんですけれども、県域業者の場合、それぞれの県の対応によって下される処分が違ってくるわけでありますけれども、例えば、昨年、一昨年、行政指導において、千葉県のことは後でまた質問しますけれども、文書指導及び行政指導にとどまった件数というのは各都道府県全部でどれぐらいになるのか、お答えをいただきたいと思います。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘の都道府県の非公表なり、あるいは指導にとどまった件数でございますけれども、実は、県域業者に対します対応につきましては、都道府県におきまして、都道府県の自治事務としてなさっているわけでございます。したがいまして、都道府県の方から私どもの方に報告が上がってこないということでございますので、指導した件数の全体像というのはなかなか把握していないというのが率直なところでございます。

 ただ、平成十四年に前の古い指示、公表の指針をつくって以来、去年の夏の段階で約六年半ほどたちますけれども、その間におきます運用状況を都道府県にお願いいたしまして調査をしたわけでございます。

 そうした中で明らかになってきた点は、従前の指針におきましても本来指示をして公表すべきであったにもかかわらず、都道府県の御判断で指導にとどめ、非公表になっていたというものが、二十三の地方公共団体におきまして五十四件あったというのが一つございます。

 また、都道府県において指示まで至ったにもかかわらず、先ほど副大臣から申し上げましたように、原則公表となっておりましたので、その原則の例外であるということで公表をしなかったというケースもございまして、これは十三の地方公共団体におきまして十八件あったということでございます。

 ちょっと直接的に全体の数字はつかんでおりませんけれども、こうしたような形で、従来なかなか徹底していなかったというところがあるわけでございます。

石川委員 今回、千葉県が県内の業者の産地偽装を知りながら、JAS法に基づく改善指示をせず、公表もしなかったとして、農水省は三日、千葉県に対し、速やかに同法に基づく指示や公表を行うよう文書で指示したということでありますけれども、合同調査で三回入っているということでありましたが、この千葉県における事実関係をお答えいただきたいと思います。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の千葉県におきます事案におきましては、生鮮の水産物、すなわちアサリでございますけれども、これの産地偽装が行われたわけでございます。これに関しまして、私どもの農政事務所と千葉県とが一緒に調査をしていったわけでございます。

 そうした中で、事業者の方からのやりとりの中で産地偽装の事実というものが確認されたわけでございますので、当然これは私どもとしては指示をすべき事案であるというふうに考えていたというケースであったわけでございます。

 しかし、千葉県におかれましては、これについて事実関係で解明されていない点があるということで、文書で指導をしたというのにとどめた。したがって、公表もしなかったという事実関係にあるわけでございます。

 ただ、そうしたような状況でございますが、私どもと一緒に合同調査もいたしておりますし、そして先ほど副大臣からも申し上げましたように、ことしの一月に指示、公表の運用指針も改めました。そういうことに照らせば、やはりこれは指示、公表すべき事案であると私ども考えておりますので、千葉県に対しまして、直接文書で、指示、公表すべき事案であるということを要請し、またそういう要請をしたということを公表させていただいた次第でございます。

石川委員 今のお話ですと、三回合同調査に入って、農政事務所と千葉県が調査をした。農政事務所としては、産地偽装であるという事実が確認された、千葉県の方では、そうではない、まだ確認しなければいけないと、見解が分かれたということでありました。

 千葉県側が事実確認されていないとしていたわけですけれども、その千葉県の方の考えと農水省の考えが分かれて、農水省としては、いや、これは事実が確認されたとなったわけですけれども、なぜ千葉県は事実が確認されていないという主張をしたのか、そのあたりは聞いていらっしゃいますでしょうか。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 千葉県側におきましては、やはり事実関係の解明を十分に得ていないというのが千葉県側の認識でございまして、そこにつきまして私どもと意見が違うということでございますので、同じ事実関係ではあるんですけれども、ちょっと認識の受けとめ方が違うというところがございますものですから、そこにつきましては今回文書でも要請をいたしましたし、そのことを踏まえましてよく意見交換をして、千葉県としてよく事実関係の解明をしていただきたいというふうに思っている次第でございまして、そこはちょっと受けとめ方の違いという点でございます。

石川委員 今の局長のお話ですと、同じ事実関係で受けとめ方が違う、認識が違うということでありましたけれども、今まで全国でいろいろな食品偽装問題が起きて、その中で、広域業者の場合は、農林水産省が、農政事務所が、食品Gメンさんがいろいろ頑張って調べられる。しかし、県域業者の場合はその県独自の判断で行うものですから、その中で、手心を加えるのかどうかわかりませんけれども、どうしても甘い処分になってしまう。だから、全国の広域業者の方々から見ると、県域業者に対する処分が甘いんじゃないのかという不満があったと思いますし、また、非常に不公平である。また、多少抜け穴的になっている部分もあるということで、ことしの一月に運用指針の改正をして、そして今回、千葉県の事案においては農水省が要請をしたということであります。

 今までそれぞれの都道府県で県域業者に対する行政指導というものの件数は自治事務なのでわからないということでありましたけれども、今回の千葉県と同じような事案がたくさんあるのではないかということが考えられるわけであります。今回の千葉県の場合は、同じ事実で農水省と千葉県の認識が違うということでありますけれども、一月の改善を受けて、まず一件目、こういうことが出てきたわけであります。

 そこで、副大臣にお尋ねしたいんですけれども、今回の事案を受けて、今後農水省としてはどのように対応していくのか、お答えをいただきたいと思います。

石田(祝)副大臣 先ほどお答え申し上げましたとおり、一月に、原則という言葉を取って、公表する、こういうことにしたわけでありますけれども、残念ながら、指示をした場合は全部公表する、こうしたことがやはりそのとおり受けとめていただけていなかった、こういうことではないかというふうに思っております。

 ですから、これは一月の末という指示でございますので、これから、そういう千葉県の例があったということを一つの私たちの教訓といたしまして、やはりこの食品の問題については、県域であろうが全国事業者であろうが、ある意味では同じスタンダードでしっかりとやっていただかなきゃならない。これについては再度徹底をしてまいりたいと思います。

石川委員 この千葉県の事案というのは非常にわかりやすい事例でありますので、せっかく一月に運用指針の改正と、また、きょうこれからJAS法の直罰規定が起草されるということでありますので、農林水産省の皆さん一生懸命頑張っておられると思いますけれども、現場でまじめに一生懸命生産をしている生産者の方々、そして対価を払っている消費者の方々のためにも頑張っていただきたいと思います。

 次に、この食品の偽装問題、後を絶たないわけでありますが、不当に得た利益に比べて、それに対する罰金、科料が少ないように思われるという声もあるわけです。この件に関して、一般論で構いませんが、農水省としてはどのように考えておられるのか。それぞれ、食品偽装の場合はJAS法、食品衛生法、景品表示法、不正競争防止法等で取り締まられるわけでありますけれども、一般論で構いませんので、お答えをいただきたいと思います。

竹谷政府参考人 お答え申し上げます。

 JAS法におきまして品質表示基準を定めておりますけれども、この品質表示基準は、もとより一般消費者の選択に資するという観点が目的であるわけでございます。そうしたことから、私どもといたしましては、不適正な表示があった場合に、これを早く是正していただくということが何よりというふうに考えているわけでございますので、先ほど来委員からも御指摘いただいているように、指示、公表という形で早期の是正を図っていくということをベースに置いております。

 しかし、公表をされますので、これは報道機関などによって大きく報道されますし、また、場合によってはその公表された事業者というものは破産に追い込まれるというような形で、一定の社会的なペナルティーを受けているというふうに考えております。JAS法は、まずこの早期是正をするということ、そしてこういう一定のペナルティーがあるというふうに受けとめているわけでございます。

 そうした中で、私どもさらに、警察と連携をするという協定を平成十九年の十一月に結んでおりまして、特に悪質な案件につきましては早期に事案の情報を警察に提供するという取り組みをしているわけでございます。そうした中で、警察、捜査機関の方に立ち上がっていただくというものに結びつけていくというケースもあるわけでございます。

 それで、JAS法の罰則でございますけれども、これにつきましては平成十四年に引き上げをさせていただいたところでございまして、この罰則自身は、先ほど申し上げました指示、公表をし、指示、公表に従わなくて命令をかける、そしてその命令に従わない場合に罰則をかけるという、その罰則でございますけれども、従来は罰金刑だけであったわけでございますけれども、一年以下の懲役刑を平成十四年の改正において新たに導入したということ、それから罰金刑も、上限が五十万円でございましたけれども、百万円という形に引き上げた。それから、法人の場合の罰則につきましても、従前はやはり五十万円であったものを、大きく一億円に上限を引き上げたという罰則の強化を図ってきているところでございます。

 これがJAS法の罰則でございまして、一定の手順を踏んで、命令違反の場合にかけるという形になっているところでございますが、先ほど申し上げましたような指示、公表による社会的ペナルティーとあわせて、制度的に厳正な対応が仕組まれているというふうに考えているところでございます。

 他方におきまして、不正競争防止法なり食品衛生法におきましてはもう少し罰則が高い水準になっておりますけれども、それは、それぞれの法目的が違いまして、食品衛生法におきますと、飲食に起因する危害の防止という要素も加わってまいりますので、さらに高い水準になっているというふうに受けとめている次第でございます。

石川委員 確かに、指示、公表によって、企業として、また個人としてペナルティーを受けるというケースも当然多くあると思います。

 しかしながら、例えばウナギの偽装問題、魚秀さんというところが去年ウナギの偽装を行って、一説によると、報道機関によると、ウナギの偽装で利益を三億円出したのではないかということが言われております。つい先日、このウナギの偽装事件にかかわる求刑が出たわけでありますけれども、罰金一千万円、そして懲役も求刑された。これは、会社に対して罰金一千万円、本人には罰金二百万を求刑したということであります。

 今回、この魚秀の件に関して、実は、もともと魚秀が経営をしていた会社、同じ大阪本社、福岡営業所、東京営業所が、もともと魚秀の営業所だったところで新会社を設立して、同じところでまた同じような仕事をしているという情報があるわけでございますけれども、農水省としてはそういう事実は把握していらっしゃいますでしょうか。

竹谷政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の魚秀の新しい動き、別会社の動きということにつきましては、私ども把握いたしておりません。

石川委員 すべての偽装事件の中で、ついついということで、指示、公表によって社会的制裁が余りにも大きかった場合もあるわけでありますけれども、今回の魚秀の場合、例えば、企業への罰金が一千万円、しかしながら、利益が三億円と、これは報道機関によるものですけれども、これだけ大きいとなった場合に、社会的制裁を多少受けても、やはりそれを上回る利益を得られるということであれば、これは、幾ら直罰規定を導入したり厳しくしたりしても、後を絶たなくなるのではないか。

 やはり今の場合、JAS法、食品衛生法、景品表示法、不正競争防止法とそれぞれいろいろな知恵を絞りながら、この食品偽装問題に対してどういう罰則を下すのかということを考えているところだと思いますけれども、今回の魚秀の場合、たとえ社会的制裁を受けたとしても、会社名を変えれば済んでしまうということも考えられるのではないのかなと思います。これでは、JAS法の改正だけではなかなか食品偽装はおさまらないということになるわけです。

 副大臣にお尋ねをしたいと思いますが、今回の魚秀のような問題がこれから起きないように、今私が申し上げた四つの法律を含めて、やはり新たに取り組んでいくことを考えざるを得ないのではないかと思いますが、御見解をお聞きしたいと思います。

石田(祝)副大臣 私も、今御質問を聞いておりまして、量刑と不当に得た利得、このバランスが、三億円ということが本当であれば、三億円もうけて百万とか二百万の罰金であると、これだとやはりどうしても心がどっちかに傾いていくんじゃないかなという気も、正直、お聞きをいたしておりまして感じました。

 この問題は、これから消費者庁の中で、消費者庁の議論もされておるわけですけれども、そういう中で、この表示の問題等も含めましてしっかりとこれは取り扱っていただける、このように思っております。

石川委員 食品の偽装の問題は、川上の方を取り締まっても、また川下の方はこれからいろいろ取り組まれる部分もあると思いますけれども、なかなか直らないというところであります。この問題、もとの話に戻れば、県域業者の場合、当然、法人税を納めている、また地元の企業に対してどうしても甘くなってしまうということが挙げられますので、この点についても取り組んでいただきたいと思います。

 また、今の現状では、大きくもうけた場合に、会社名を変えるだけだとか、または社長さんをかえて新たに営業し直して利益を得られるようにするということができるような形になっておりますので、どんなに法改正をして厳しくしても、常に抜け穴を考えるというのはいつの時代でもあるわけでありますけれども、まじめに取り組んでいる業者の方々また消費者のために、ぜひこれからきちんと農水省の中でも議論をしていただきたいと思います。

 JAS法の問題はこれで終わりまして、次に、四月二日、参議院におきまして提出をされた農協法の改正法案が可決をいたしました。この農協法の改正法案の可決について、石破大臣に、この法案についての大臣の考えというものをちょっとお尋ねしたいと思います。

石破国務大臣 農業協同組合の政治活動につきまして、現行の農協法は、立法以来、明文の規定がないわけであります。明文の規定がないということは、これを反対解釈というかどうか知りませんが、農協がその目的の達成に資する限りにおいて行う政治活動について、ほかの一般の法人と同様、公選法や政治資金規正法に抵触しない限り認められてきたということであります。

 といたしますと、今回新たに政治的中立規定を設けることにつきましては、現在既に有しておりますところの政治活動の自由に新たな制限を付加するということでございますので、慎重な検討が必要だということを、四月二日、農協法の改正法案が審議されたときにも申し上げました。

 それぞれの選挙区でいろいろ違うのかもしれませんが、例えば私の県におきましては、いろいろな大会において、我が党の議員も、そしてまた御党の議員も出席をして、いろいろな意見を求められるわけでございます。そこにおいて、どこか特定の政党に偏るということはございません。そのときの農政にかかわるいろいろな問題、それぞれ時間も平等でございます、質疑もございます。そこにおいてそれぞれが意見を申し述べて、そして、農政協でしたか、農協とはまた別の組織において議論が行われ、討論が行われというようなことでございます。それは恐らく全国あちらこちらでそうなのではないでしょうか。

 実際に、農業協同組合が、先ほど答弁の中で申し上げましたが、目的の達成に資する限りということでございます、農業協同組合としていろいろな目的を持っている、その主張をかなえるというか実現するために、どの党のだれの言っていることが一番それに資するものであるかということについて、極めて公平公正に行われているのではないだろうかという認識を私は持っております。それは私の県においてそうなのかもしれません。

 だとするならば、農業協同組合法でそのように定められておる、これに加えてそこに新たな制限を課するということが果たして適当なのかどうかということについて、私としては、慎重な検討が必要だということを答弁申し上げました。それはこの場におきましても変わるものではございません。

石川委員 鳥取県の農協というのは非常にすぐれた農協なのかもしれません。全国のほかの農協では違うという声が多く寄せられていると思いますけれども。

 四月三日の農業新聞で、「政治活動の自由侵すな」と。きょうは時間がなかったので、資料として配る準備ができなかったのですが、私どもは、政治活動の自由を侵すために今回の法律案を提出したとは思っておりません。

 今大臣は、どの党の考え方がすぐれているのかということを農協が判断してそれぞれ政治活動を行っていく、主張を行って、聞いていただけるのはどこかということは農協がそれぞれ判断をしていくということだと思うのでありますけれども、農協自体、いろいろな考え方の組合員の方がいらっしゃると思います。自民党を支持していらっしゃる方、民主党を支持していらっしゃる方、社民党、共産党、国民新党さん、公明党さん、それぞれたくさんの政党の支持者の方がいらっしゃると思います。

 実は私は、中選挙区時代から、私の選挙区で二十一年ぶりの野党議員なんです。私の前に、二十一年前に当選されていた方というのは、幕別町農協というところの組合長さん、そして上士幌町農協の組合長さんと、農協の組合長さんが二代続けて、社会党の議員として、協同組合原則で農家の声を吸い上げるように頑張っておられました。

 二十年たって、昔と比べて今の農協活動というものがどのように変化をしたのかというのは、私は、随分とこれは変化したんではないかと思います、鳥取県では変化していないのかもしれませんが。大臣、どうでしょうか、二十年前と比べても農協の政治活動というものは変化をしておりませんでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

石破国務大臣 昔の記憶を思い出してみますと、私、鳥取県がすべてだとは申しません、ただ、ほかを余り存じませんのでこういう言い方になるのかもしれませんが、例えば、私の選挙区は全県区で、野坂浩賢先生という方がおられました。村山内閣で官房長官をなさり、あるいは建設大臣もその前になさった方であります。非常に農業に御造詣が深い方でありまして、日本社会党の議員として当委員会にも籍を長く置かれ、本当に情熱を傾けてこられた方でございました。やはり、それがどういう形をとるかは別にして、本当に農業者の心を理解し一生懸命やっているという人に対して組合員がそれぞれ支援をするということは、私はあったような気がいたしております。

 この二十年においてどう変化したのかというのは、やはり食管制度というものがなくなった、食糧法というものに移行していった。当時、米は百姓の給料だという言葉がございました。米価運動というものがございました。私は、自分自身もその中におりまして、米価を決めるときは三日三晩徹夜をしたものでございます。

 そこにおいて、農協運動の中核の一つは米価闘争であったように思います。それが、食管法というものがなくなり、食糧法というものに移行していった。その過程においてかなり光景は変わってきたという印象は、印象を申し上げて恐縮ですが、持っております。

 そのことをどう考えるかということが底流にはあるのだと思っておりますが、基本的に、農業協同組合が協同組合の原則にのっとっていろいろな活動をする、そこにおいて制限を加えるということの是非が、どの党に有利だとか不利だとか、そういう話ではなくて、それは協同組合というものの性質にかんがみてどうなのだろう、そして、いろいろな協同組合がございますが、それぞれの立法趣旨等々を勘案してどうなのだろうというような議論が参議院で行われたように記憶をいたしております。

 二十年前と比べてどうなのだと言われたので、光景はかなり変わってきたという、印象めいたことを申し上げて恐縮ですが、私はそのように思っております。

石川委員 過去の農協の政治活動そして選挙活動に関する議事録というのを、私も取り寄せて読ませていただきました。きょう、川内先生がこれから御質問されますけれども、昨年、川内先生または細野先生、それぞれ、他の協同組合、消費者協同組合、また商工会議所、そして中小企業組合等々に書かれている政治的な中立を行うということに関して、ほかの組合等との違いや、または考えというもの、この委員会でも多く議論されてきたと思います。

 今、二十年間の中でどう変わったか、印象的には米価の問題含めて変わってきたのではないかという大臣のお話でありましたけれども、私自身は、昔の方々にお話を聞くと、その社会党の先生が自分自身が農協の組合長としてこの国会の場で仕事をしていたときと比べると、昔と比べると特定政党に対する肩入れが余りにも大きくなり過ぎたというお声をよくお聞きいたします。当時は、各農協、農協の付随施設、個別のことを言うのは時間もないので一例だけ、例えばポスターを張ったりだとか、運動に動員をかけたりだとか、かつてとは比べ物にならないぐらい、余りにも選挙活動において傾斜をし過ぎているのではないのかなという声をよくお聞きいたします。私自身も、そうではないのかなと非常に感じているわけであります。

 農協の活動について、農水省としても、今まで、あり方の検討委員会とか、研究会をいろいろなされてきたと思います。今回のこの農協法に関してもそうでありますけれども、農協の活動に関して、例えば農水省としてアンケートなり、または現場の生産者の声、今回、民主党の一部の議員のところに、生産者の、生産現場の切実な要望を実現させる主体的な活動としての政治活動を民主党の今回の法案は妨げるものではないかという抗議文が農業生産者の団体から来ているわけでありますけれども、私は、一人一人の現場の方々とお話をすると、このような声とは違った声をよくお聞きいたします。

 私は、今の農協のあり方というもの、今回法案を提出したわけでありますから、ぜひ現場の生産者の声を農水省としてきちんとお聞きいただきたいと思うんです。これは経営局長でよろしいんでしょうか、お聞きをしたいと思うんですが、いかがでありますでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 まず最初に、農協の事業についてでございますけれども、農協の行います事業等につきまして、農林水産省といたしましてその運営等について必要な指導を行うこと、これは当然でございますし、また、そのあり方について検討していくのは当然だと思っております。

 しかしながら、一般的な政治活動に関しまして、例えば行政として実態調査を行うというようなことにつきましては、政治活動の自由にかかわるという部分におきまして、行政との関係からも慎重な判断を要するというふうに考えております。

石川委員 今回の問題で、報道でもそうでありますけれども、私どもは、別に普通の農政協による政治活動を制限するということは決して言っておりません。農業協同組合の政治活動には、大きく分けて、農政活動と、選挙に際して特定の候補者、政党を支持、応援する選挙活動の二種類が想定をされるわけでありますけれども、余りにもこの選挙活動に関して、個々の組合員、それぞれいろいろなお考えのある組合員の方々の意思とは別に、特定の政党に選挙活動が傾斜をしているというふうに、今私自身は少なくとも思っているわけでありますけれども……(発言する者あり)今、事実だという筒井先生からの発言もありましたけれども。

 最後に、大臣、選挙活動に関して、私自身は特定の政党に偏り過ぎているのではないかと思いますけれども、もう一度、今回の農協法に関してそういう嫌いはないのかどうかお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

石破国務大臣 私自身、全国のすべての農協について承知をいたしておるわけではございません。それはやはり、それぞれ組合員の方々が、民主党を支持されたり、あるいは共産党を支持されたり、社民党を支持されたり、いろいろな方がおられるんだろうと思います。組合員に対して不利益があるというようなことは決してないし、そういうことは実際にあるべきでもないし、ないと承知をいたしております。

 そしてまた、いろいろな要求を実現するためにどこがいいのかということを、きちんと議論をされた上でそういうことを御判断なさるということについて制限を加えることに、私どもとしては慎重でありたいというふうに考えております。

 それぞれの組合員の方々の自由な意思というものが協同組合の運営において最大限生かされるように協同組合というのは運営をされておるというふうに承知をいたしておりますが、またいろいろな事例がありますれば、御教示を賜りたいと存じます。

石川委員 自由な意思を確認してもう一度質問したいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。委員長、理事の先生方の御許可をいただいて発言をさせていただく機会をいただきましたことに、まず感謝を申し上げたいと思います。

 私も、今の石川議員の質問に引き続き、農協のあり方について、農水省そして農水大臣と議論をさせていただこうというふうに思っております。

 農協の政治的な自由というものを私は否定いたしません。政治活動は自由であるべきだ、それはどんな人も政治活動は自由であるべきだというふうに思います。他方で、政治的中立という言葉と政治的自由あるいは政治活動の自由という言葉は、その意味合いを異にするのだろうというふうに思っておりまして、人間というのは往々にして、余り一生懸命になり過ぎると、えてして行き過ぎた面が出てくるわけでございます。

 最近の農業を取り巻く状況が非常に厳しくなってきている、国際関係においてもWTO交渉で厳しい交渉をしていかなければならない、国内的には農業の衰退を示す各種の指標が統計資料で次々と出てきている、そういう中で、農協幹部の皆様方がどのような活動をしていけばよいのか思い悩んでいらっしゃるというのは、私もわかります。だからこそ、みんなで議論をしながら、日本の農業というものをどう成長、発展させていくのかということについて、真摯な、そして激しい議論が必要なんだろうというふうに思いますし、そういう中にこの農協の政治活動のあり方というものもあるのではないかというふうに思うんですね。

 実は、きのうの午後、私の地元鹿児島の私の後援会事務所に、鹿児島県のJA中央会の常務理事さんと農政課長さんが、テレビカメラを二台、記者さんを十名引き連れて押しかけていらっしゃって、参議院で農協法の改正案が可決をされたことに抗議をする「民主党の農協法等改正法案に関する抗議」と題する文書を置いていかれました。

 実は、この常務理事さんというのは、前の中央会の農政部長で、民主党がこの間、鹿児島県の県産品、特産品である黒豚あるいは黒毛和牛についてのブランド化に果たしてきた役割とか、あるいは米国産牛肉に対する民主党が果たしてきた役割をかねてより高く評価をしていらっしゃる方で、多分、おまえ、抗議に行ってこいと理事長なり会長から言われて、職務上、抗議文書を持っていらっしゃったんだろうと思うんですね。私は、そういう彼の、その常務理事さんのきのう私の事務所にいらっしゃったときの胸中を察するにちょっと余りあるというか、やはりこういうところに農協の政治運動の問題というのがあるのではないかというふうに思うわけでございます。

 例えば、鹿児島の農協の皆さん方の中で、JAの職員の方がJAの支店長さんから命ぜられて勤務時間中に、農協の融資先リストを持って特定政党の政治活動用のポスターを張らせてくれという依頼をして回っているという実態。実は、このことについては衆議院の財務金融委員会で昨年の十月三十一日に私、質問をさせていただいて、金融庁からは「一般論として申し上げれば、御指摘の行為というのが、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱った場合には、個人情報保護法及び同ガイドラインに抵触するものでございます」という答弁がございました。

 そこで、改めてお伺いをいたしますけれども、JAバンクの支店長さんが、融資先リストを持って勤務時間中にJAバンクが融資している融資先のお宅に行って、特定政党あるいは特定の政治家の政治活動用ポスターを張って回っている行為は、個人情報保護法違反に当たると思いますが、農水省の御見解を承りたいと思います。

高橋政府参考人 まず、個人情報保護法との関係でございますけれども、御承知のとおり、個人情報保護法十六条では、五千人以上の個人情報を取り扱う事業者は集めた個人情報を、先ほど金融庁の御答弁にもありましたように、本人の同意を得ないで、集めた目的以外の目的に使用してはならないというふうに定めているところでございます。

 したがいまして、一般論といたしまして、農協を含め事業者が顧客リストを、あらかじめ顧客本人の同意を得ないで、リスト作成に当たって特定されました利用目的の達成に必要な範囲を超えてこの個人情報を取り扱うことは、個人情報保護法に違反すると考えられるところでございます。

川内委員 今、個人情報保護法の違反に当たるという御答弁があったわけでございますが、この件は私自身が現場で確認をしたことでございます。大臣、必要な事実関係の情報は提供させていただきますので、まず事実関係を御確認いただいて、事実関係が確認できたなら、指導官庁として厳正な措置をとるべきことであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 まず、事実関係の件でございます。

 前回、川内委員からも御指摘がございました後、農協等の指導監督行政庁でございます鹿児島県に照会したところ、今のところこのような事案については県としては承知をしていないというふうに回答を得たところでございます。

 しかしながら、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますとおり、法令違反等の実態がある場合には、当然のことながら、行政庁を通じた指導監督が行われるべきものというふうに承知しているところでございます。

石破国務大臣 今、経営局長からお答えをしたとおりでございますが、事実関係というものは、まず第一義的に鹿児島県において把握されるべきものというふうに承知をいたしております。

 私どもとしても、先ほどあくまで一般論でお答えをいたしたところでございますが、そういうことについては望ましくない、好ましくないというふうに考えておりまして、事実関係をきちんと把握するということにおいて、また鹿児島県とよく協議をして、きちんと法令が遵守されるようにしていくことは行政庁として当然のことだと思っております。

川内委員 大臣、不思議なことに、鹿児島県からは私のところには全然問い合わせもないんですよ。川内さん、どうだったんですかとちょっとでも聞いてくれると、ほかにもいっぱい事例を私は収集しておりますので、いろいろお話ししようもあるんですけれども、全然聞いてくれないんです。

 本当に鹿児島県は調査しているんですか。では、無視されているんですかね。

高橋政府参考人 先ほど来お答えいたしております、昨年委員からも御照会ございましたそれにつきまして、県当局に照会したわけでございますけれども、現時点までの間で当該事実は確認されなかったというふうに聞いておるところでございます。

 いずれにいたしましても、ただいま大臣がお答えいたしましたとおり、いわゆる農協の監督行政庁でございます県を通じまして、そのような事態がはっきりした段階において必要な指導監督は行われるべきものというふうに考えております。

川内委員 僕は、農協の政治活動というのは、農協の声の大きい一部幹部が主導して強引にやらせているものであろう、大多数の組合員は、それを苦々しい思いで見ているのか、仕方ないなと思いながら見ているのか、あるいは無関心なのか、それはわかりませんが、とにかく、一部幹部が主導して強引なことをさまざまにしていらっしゃるんであろうというふうに思うんですけれども、例えば、農協と出入りの業者さんたちがいろいろな取引をしますね。その取引関係を利用して後援会名簿を依頼する、集めさせる、あるいは電話動員などに参加をさせる、これらは何か法律的に問題がありますか。

高橋政府参考人 法人一般の行います政治活動につきましては、政治資金規正法等の範囲内においてその活動の自由を有するというところでございますので、他の法令等によります特段の規制、そういったものがない限りにおいては許容されるというふうに認識しております。

川内委員 取引関係を利用して後援会名簿を集めさせる、あるいは電話動員に参加をさせる、これは問題ないんですか。

高橋政府参考人 今申し上げましたとおり、個々の政治活動の態様について、農林水産省といたしましては、その判断というものについて行う立場にはございませんけれども、政治資金規正法等に反しない限りにおいて行われているものについては、その活動の自由を有するということでございます。

 また、そのほかに、さまざまな法令等の枠が、規制がございます。したがいまして、そのような法的な規制の枠の中、例えば先ほど指摘がございました個人情報保護法というような規制の枠もあるわけでございますけれども、そのような他法令の枠、そういった規制の中に行われるものにおきましては、原則としては許されるというふうに認識しております。

川内委員 いや、ごくごく抽象的にお答えになられましたが、私は、一般論だけれども、想定し得る事態としては具体的な事態を申し上げているわけです。取引関係を利用して集会へ動員する、後援会名簿を集めさせる、あるいは電話動員に参加をさせる、これらのことは、これは商取引ではないですからあれですけれども、例えば農協のあり方研究会では、「組合員・会員に対して、その意思に反して系統利用を強制することは、不公正な取引方法となるおそれがあることを周知する」と。要するに、強制しちゃだめよ、いろいろなことを強制しちゃだめなんだよということをこのあり方研究会では言っているわけですね。

 取引しているから、後援会名簿を集めてこい、あるいは集会にも人を出せ、あるいは電話かけやるから人を出して電話かけろということが、農協の活動のあり方として正しいあり方なんですか、農水省としては、それはいいことだ、どんどんやりなさいということなんですかということを聞いているんです。

高橋政府参考人 御指摘の点につきましては、例えば、事業者がその優越的な地位を濫用して行うような態様については独占禁止法等で規制されているわけでございます。したがいまして、事実関係がそのような実態になっているのかどうか等々について詳しく、個別のケースに応じて判断されなければならないと思っておるところでございます。

 なお、先ほど来委員が御指摘されました、例えば不当に取り扱う差別的取り扱いにつきましては、協同組合におきまして組合員に対する差別的な取り扱いは基本的に禁止されている、これはもう当然のことでございます。

川内委員 大臣、例えば農協の職員なんかでも、私を応援しますよということで私の会などにしょっちゅう顔を出す職員の方もいらっしゃるわけですね。ところが、選挙とか、選挙が近くなると、その人まで集会に動員されたり、あるいは電話かけに動員されて、これは職務上命令されるみたいな形で電話動員に参加させられたりするわけですけれども、こういうのは農水省、どうなんですか、許されるんですか。

高橋政府参考人 農協の政治活動と農協の職員との関係でございますけれども、例えば、農協職員が勤務時間中にどのような行為まで許されるか等々につきましては、各農協が定めております就業規則において規定されます服務規律に照らして個別に判断されるべきものでございます。

 当然のことながら、農協については農協法におきまして都道府県が指導監督されることとされております。また、就業規則、服務規律につきましては労働監督行政の監督部局により担当されるべきということでございまして、それぞれにつきましては、それぞれの所管部局が個別事案について判断するということでございます。

 いずれにいたしましても、一般論といたしましては、服務規律に違反している事態があれば、農協の場合には監督部局を通じて是正のための指導というものが行われるということでございます。

川内委員 非常に奥歯に物が挟まったというか、日本の農業が抱える問題を解決していくには、やはりその中心的組織である農協がしっかりしなければならないというのは、これは論をまたないというふうに思うんですね。

 さまざまな農業に関する指標は次々と悪化を示しているわけです。例えば、耕地面積はどんどん減っています。減反面積も、最近は生産数量を減少させる量でいうらしいですけれども、どっちにしたって減反面積は拡大している。休耕田も拡大しています。専業農家も減り続けています。さまざまな数値が悪化している。

 そういう中で、農協の組合員数だけはふえている。これは農水省、そうですよね。

高橋政府参考人 今ちょっと手元の数字を調べておりますけれども、基本的に、農協の組合員数については、最近においても微増しているところでございます。

川内委員 だから、組合員数だけがふえていく中で、その他の指標は生産額を含めて、農協法には農業生産力の増進というものが目的の中に入っているわけですけれども、生産額も落ちている。ほかの数値は全部落ちているにもかかわらず、組合員数だけはふえています。

 全体的に見れば、国民の皆さんの理解というのは、日本の農業というのは担い手がいなくて大変だな、将来どうなるんだろうというふうに思っているわけですよね。

 農水省、六十五歳以下の担い手のいる専業農家の、すべての農家戸数の中に占める割合はわかりますか、今。

高橋政府参考人 今、直接のお答えにならないかもしれませんけれども、基幹的農業従事者の六十五歳未満の数については、四割ということでございます。(川内委員「何の中の」と呼ぶ)基幹的農業従事者に占めます六十五歳未満の数でございますけれども、基本的には四割というところまで達しているところでございます。

川内委員 いや、総農家戸数の中で占める割合は。

石破国務大臣 あるいは委員の御質問の意味を私が取り違えてお答えしたら恐縮なのですが、私が認識をしておりますのは、専業農家と言われる中で、その中で六十五歳未満の者がいる割合は九・五%と承知をいたしております。

川内委員 大臣がおっしゃるとおりでございます。だから、「農協改革の基本方向」というこの農協のあり方についての研究会でも、農協が「「組合員のための組織」というよりも、「組織のための組織」という色彩を強め、」と断定しているわけですね、強めていると。組合員のための組織ではなくなっている、組織のための組織になってしまっていると。これは別に私が言っているんじゃないですからね、農水省の中に設置された研究会が、農協というのは今そうなっているよということを言っているわけですよね。

 それはなぜかというと、「農業者(特に担い手)」、担い手に対する施策が不十分だからであるということを言っているわけですね。担い手というのは、いわゆる今大臣が御答弁された、専業農家であり、かつ六十五歳未満。要するに、国民の皆さんにわかりやすく言えば、若い人たちが農業を一生懸命やって、その人たちを農協が一生懸命支えているよという姿勢にしていくことが、日本の農業を再生させる、あるいは成長、発展させていく唯一の道だと私は思いますよ。

 ところが、農協が組織のための組織になってしまっていて、わけのわからない政治活動をしていたりするから、結果がよくわからないことになっているねということになるわけでございまして、では、そこの問題がどこにあるんだろうかというと、農協法上の農業者とはどういう人たちか、教えてください。

高橋政府参考人 農協法におけます農業者でございますけれども、農協法におきましては、具体的には農協の構成員について、組合員でございますけれども、農業を営む個人という形になっております。

 ではその具体的な基準はどうかということについては、それぞれの組合におけます定款において定められておるところでございますけれども、そこについては、模範定款例におきましても具体的な数値等の記載はございません。各地域におけます実態を踏まえて農業者の定義を行っているところでございます。

 実態的な形で申し上げますと、先ほど来委員御指摘のとおり、現在、農協については、全国で総合農協は七百五十あるわけでございますけれども、一農協当たりの組合員数は約一万一千人になっております。ただし、このうち、いわゆる農業者を中心といたします正組合員数は五千八百人強に対しまして、一方で、地域で農協の施設を利用される准組合員が五千二百人というような実態になっておるわけでございます。

 したがいまして、現在の総合農協の実態を見てまいりますと、構成員から見ますと、主業農家からいわゆる副業農家まで、あるいは専業農家から兼業農家までの幅広い農業者を対象とするとともに、さらに多数の地域住民から構成されているというふうに認識をしているところでございます。

川内委員 さっぱりわからない、何を言っているのか。国民の皆さんには、やはりわかりやすく説明しないといけないわけですよ、農業の未来を語るときに。

 では、現在の農業就業人口と日本全体の総農協組合員数は何人かということを、それぞれ数字を二つ言ってください。農業就業人口は何人です、組合員数は准組合員まで入れて何人ですということを言ってください。現在のがわからなければ、二〇〇五年とか二〇〇六年で結構ですから。

高橋政府参考人 まず農業就業人口でございますけれども、二〇〇五年、平成十七年段階、これは農林業センサスの数字でございますけれども、全国で三百三十五万二千五百九十人でございます。

 一方、農協におけます組合員数でございますけれども、十八年度の総合農協統計表の出典でございまして、これはちょっと古うございますけれども、組合員数で九百三十二万二千四百三十一人、うち正組合員数が四百九十四万二千二百人という数字でございます。(発言する者あり)

川内委員 大臣、農協の組合員数だけが不思議なことにふえ続けているんですよ。

 それで、さっきから西川先生がいろいろおっしゃっているけれども、私は、高齢化された農業者の皆様方が精魂込めて丹精をされる農産物も大事にしなければならないという気持ちはきちんと持っております。他方で、農業の将来というものを考えたときに、担い手にしっかり施策を集中させていく、いわゆる主業農家に施策を集中させていくということによって、若い世代が農業に入ってきて、そしてまた、それでちゃんと生活できますよという環境をつくっていかなければならないというふうに思うんですね。そのときに、農業者を助ける中核になる組織である農協がだれを支援する組織なのかということは、農業協同組合法の中で明確に位置づけなければならないというふうに思うんですね。

 先ほどから農水省の事務方、局長さんの方から、農業者の個別の定義についてはそれぞれ単協の定款で定めるのですという御説明があったわけでございまして、それでは私は本当に日本の農業を再生させていくことにつながらないのではないかと。やはり、農業者というのはこういう人たちなのだ、これを農業協同組合はしっかりとサポートするのだ、この人たちの経済的、社会的地位の向上を目指すのだというふうに農業協同組合法に明確に書くことがまず第一のスタートではないかというふうに思うのです。

 ぜひ農協法の農業者の定義というものを明確にするための議論をしていただきたいというふうに思いますが、大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

石破国務大臣 御指摘のように、農協の構成員を担い手中心にいわば純化することも一つの考え方であります。しかしながら、この方向を追求することは、事業規模が失われる、あるいは農業者及び地域住民への総合的なサービスが提供できるという農協のメリットが失われかねないということでありまして、農業者及び農民の定義を見直すことは慎重に考えなければならないということであります。

 つまり、委員がおっしゃいます担い手集中ということと、小規模の、特に水田営農をやっておりますもので、ヨーロッパのような酪農、畜産とはちょっと違うのですね、これをどう両立させていくか。ですから、担い手に集中させるべきだというお話をすると、すぐ小農切り捨てという話が出てきて、話はとまってしまうわけでございます。

 ただ、委員がせっかく農協法について御言及なさいましたのであえて申し上げておきますと、農協法ができたときの農業者のイメージというのは、恐らく均一のイメージだったんだろうと思っています。農地解放もございまして、農業者そのものがかなり同一性、規模においても均一性を持っていたのではないだろうか。それが、ずっと年月を経まして専業が非常に少なくなった。そしてその中でも、委員が先ほどおっしゃいましたように、六十五歳以下の方がいるのは九・五%というのが専業の実は実態なわけですね。そう考えたときに、当初考えた農業者の均質性というものが相当に失われてきている。そこをどう考えるかというお話と、組合員平等という原則をどのようにして考えていったらいいのだろうかということなんだろうと思う。

 それでは、農協法の第十六条だと思いますが、一人一票制というのが定められている。これは、やはり組合員平等の原則から導き出されるものだと思っております。私はそれを否定するものでも何でもございませんが、本当に農業協同組合の方々は、みんな、どうやってこの農村を維持しようか、農業を維持しようかということで、委員の選挙区も私の選挙区も一生懸命やっておられる、そのことはみんなわかっておる。

 これから先、本当に、農業が持続可能性を回復していくときに、農業協同組合のあり方をどうすべきなのかということは、ともに農業の発展を願う者として虚心坦懐に議論をしていくということは必要なのではないかと思っております。それは、私は今の農協を否定するものでも何でもございません。農協があるから今の農業が維持できている、厳然たる事実でございます。

 これから先、十年先、二十年先を見据えていろいろな議論が必要となってまいりますが、そのときに、農業協同組合あるいは協同組合の組合員平等の原則というもの、ここをどのように考えていくべきなのかというのは、かなり根源論だろうという認識を持っております。

川内委員 農業を考えるときに農協を無視して考えることはできない、そしてまた、一生懸命頑張っている人たちもいるということは私も認識をしております。

 昨年の九月十五日、リーマン・ブラザーズが破綻をした。世界の状況は、昨年の九月十五日を境にしてもう全く違う世界が今後始まるんだというふうに思うんですね。これは農協も無縁ではない。今まで経済事業では赤字だった。しかし、農地を売って、それが農協に預金をされて、農林中金は物すごい預金高を持っていた。それを海外で機関投資家として運用して、利益を出して、それをまた地方の単協に利益補てんをしていた。この農協のビジネスモデルも、昨年の九月十五日を境にして終わったんだと私は思うんですね。農協のビジネスモデルは、新しいビジネスモデルを本当に今考えなければ、今のままでよいのだということで進めていたら、絶対に破綻するときが来ると私は思います。

 だからこそ、実は私、農協法というのはこんなに分厚いのかときのう初めて知ったんですけれども、めちゃめちゃいろいろなことが書き込んであるわけですね。そういう意味で、日本の農業を考える上で農協の組織のあり方というものを、それぞれ立場は違うけれども、激しい議論をしていきたいなというふうに私は思っておりまして、きょうは時間が来ましたから、次に農地法のときにまた大臣とやらせていただきたいということだけ申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 最初に、前回の一般質問に続いて、森林整備について質問させていただきます。

 農林水産省は緑の雇用担い手対策事業による雇用対策を進めているわけですが、この対策を充実させることは大変重要なことと考えているわけです。加えて、有効求人倍率が極端に低下する深刻な雇用状況のもと、このような機会をむしろ積極的にとらえて、環境保全と一体で林業の雇用創出に踏み込むべきだと考えているわけです。

 連合が提案している緊急雇用対策案では、もちろん追加的な財政支出は必要ですが、林業で五万人の雇用創出が可能としています。森林吸収源対策に必要な追加間伐、大きな課題となっている不明瞭境界線の画定事業などを前倒しすれば、そこでの雇用創出は可能ではないでしょうか。また、伐採された間伐材の利用は、間接的に木材製造業での雇用拡大も期待できないことはないと思います。

 森林整備のスピードアップによる雇用拡大について、林野庁長官の御見解をお伺いしておきたいと思います。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、林業の雇用確保、創出のためには、緑の雇用担い手対策事業、これはオン・ザ・ジョブ・トレーニングによります技術習得に対する支援でございますが、これに加えまして、林業事業体による安定した事業量の確保が極めて重要だと考えております。

 このため、まず、森林吸収源対策に必要な間伐予算を確保する必要がございます。それから、森林組合等の林業事業体が、森林所有者の負担を軽減することによりまして、そこから事業が来るという形で安定的な事業量が確保できるよう、間伐等の施業の集約化、それから、高性能林業機械と路網の組み合わせによる低コスト作業システムの構築に対して支援を行っているところでございます。これらの支援を通じまして、これまでほぼ目標どおりの間伐が実施できているところでございます。

 さらに、これを推進していくというためには、まず事業の予定箇所を確定していかなければいけませんので、そのためにも、森林の境界を明確化するということが非常に重要になってまいります。二十一年度当初予算におきまして、地域の方々も加わって、地域一体となって境界の明確化に取り組める事業も新たに盛り込んでいるところでございまして、こういった形で間伐の推進、事業量の確保、拡大に結びつけていきたいと思っております。

 以上でございます。

菅野委員 順調に進んでいるという答弁なんですけれども、これまでは確かに順調に進んでいるというふうに言えると思います。

 ただ、これから間伐あるいは森林整備をしっかり進めようとしていくときに、私は、今言ったような大きな課題が存在しているという認識のもとに、そこをどうクリアしていくのかという方向性を林野庁としてしっかり持って進めるべきだというふうに思っているわけです。特に、これからの条件不利地域での間伐促進をどうしていくのかということも含めていけば、私は、これまで取り組んできた以上の努力が必要なんだということも含めて、課題解決に向けてしっかり取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 それから、森林環境の保全を目的として、独自課税を実施する自治体が大変ふえています。実施している自治体、導入を検討している自治体の数について、まず現状を説明していただきたいというふうに思います。

 あわせて、農水省としてはこの取り組みをどのように評価しているのでしょうか。もちろん肯定的にとらえていることは間違いないと思うのですが、導入自治体が拡大しているということは、逆に言うと、国が森林整備のための税制を創設しても国民の理解が得られる時期にあるのではないかと思いますが、この点、何らかの検討が行われているのでしょうか、お答え願いたいと思います。

内藤政府参考人 森林整備等を目的とする都道府県独自の税の導入状況でございますが、ことしの四月一日現在で三十県において導入されております。

 それから、残りの道府県につきましても、ほとんどのところで独自課税に対する検討が行われていると承知しております。

 評価でございますが、これまで導入した県においては、その税収を使いまして、間伐の推進はもとより、県民参加の森林づくり活動への支援、それから県産材の利用促進など、それぞれの地域の問題、課題を踏まえた事業を展開されております。

 こうした県の取り組みでございますけれども、我々も、地域における森林の整備、保全が促進されるというばかりではございませんで、森林の持つ公益的機能の重要性に対する県民の理解の深まり、それから、森林の整備、保全を社会全体で支えていこうという意識の醸成にも役立つものと考えております。

 農林水産省としての取り組みでございますけれども、間伐等の森林吸収源対策推進のための財源確保の観点から、環境省と連携を図りながら、環境税について税制改正要望を行ってきたところでございます。昨年十一月の政府の税制調査会の答申におきまして、環境税を含む低炭素化の促進に資する税制のあり方について「さらに議論を深めること」とされたところでございます。

 今後とも、京都議定書の森林吸収目標三・八%の達成のため、さらには低炭素社会づくりに向けまして、森林吸収源対策を着実に進めていけるための財源確保のために引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

菅野委員 昨年の今ごろの国会の状況を考えたときに、この環境税をめぐって大きな議論が闘わされていたというふうに私は思っています。

 一年たった今、その声が本当に小さくなってしまっているわけで、なぜなのかということを考えたときに、やはり私は、国民的な理解を得ていく努力というのを国が各都道府県と一緒になって積極的に行っていく、そういう機運をしっかりと盛り上げていかなければならないというふうに思うんですね。今の答弁にあるように、環境や国土保全のための森林整備は国際約束である、国策だという立場を前面に出していかなければならないと私は思うんです。そういうときに、民有林であっても必要な整備は国の責任で行うという覚悟が必要なんだ、これは単に国の責任で国が行うだけではなくて、今言ったように都道府県の機運が盛り上がっているわけですから、都道府県と一体となって進めていくべきだというふうに私は思っているんです。

 そして、前回、森林労働者の賃金、労働条件の改善について大臣にお尋ねした際、安定した事業量の確保が課題だとおっしゃっています。だとすると、事業量と雇用確保の両側面から、現在の農水省が進めている不在村森林所有者対策、これはもちろん大切なことですが、これを進めていっても、何らかの事情でみずからが所有する森林の整備ができない方も恐らく見込まれるのではないか。その際に、国がそのような民有林を買い取ることも含めて、都道府県と一体となって整備を進めていくことも必要になってくると思うんですが、これについての考え方をお聞きしておきたいと思います。

内藤政府参考人 私どもも、間伐等の森林整備を計画的に進めるという観点から、まず、間伐等の経費に対しまして、国と都道府県を合わせまして七割程度の助成を行っているところでございます。また、森林所有者から受託して、効率的、安定的に森林の施業を行います森林組合等の事業体の育成を図る。それから、これらの事業体から不在村の所有者に対しまして施業の働きかけを行うということ、こういった対策を講じているところでございます。

 さらに、整備が進みにくい奥地の水源地域におきましては、これまでも分収方式による森林整備を推進します水源林整備事業、それから、国土保全上本当に重要なところにつきましては、都道府県による治山事業なども行っております。

 二十一年度からはさらに、これからは奥地で路網が整備されていないなど条件が不利な森林についても整備を進めていかなければいけませんので、こういった条件が不利な森林を対象としまして、市町村、森林組合等の公的主体による定額助成方式の条件不利森林公的整備緊急特別対策事業を二十一年度に創設するなど、公的関与を高めた方法での森林整備を行うこととしております。

 今後とも、これらの対策によりまして必要な公的関与を行いながら、森林整備が適切に進むよう努力してまいりたいと考えております。

菅野委員 今長官の答弁で取り組みの方向性はわかっているんですけれども、ここで問題にしているのは、あくまでも、民有林である、個人所有であるということから、どうしてもそこに手をつけることができない、こういう条件をどうクリアしていくのか、これは大きな課題だというふうに思うんですね。

 これまで実績は積み上げてきたんですが、そういう課題の多いところは取り残してきているんだぞ、そして、これからそこに手をかけていくときに、しっかりとした方針を持っていかなければこの間伐というものも進んでいかないよということを申し上げておきたいというふうに思うんですね。ぜひそこを、壁を乗り越えていただきたいということを強く申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、大変びっくりした事案ですが、事故米流通の被害者だったはずの酒造メーカーが、米の等級価格差を利用して三笠フーズから裏金を受領していたことが明らかになりました。まず、この問題に対する農水省の認識をお聞かせください。

 あわせて、大臣は三月三十一日の記者会見で、事実をまだきちんと把握していないことを前提にしつつ、今般、本委員会で可決した米のトレーサビリティー法案と食糧法改正によってそういうことが起こらないようになるというふうに考えているとおっしゃいました。もちろん、この二つの法案で再発防止が可能ならばそれでいいわけですが、法案のどの部分、どの条項を使って再発を防げるのか、簡単にお聞かせください。

 また、私は再三にわたって指摘しているわけですが、米の等級検査によって流通段階で価格差が生じる。しかし、消費段階ではそれは消費者にはわからない。今回の事案のように、流通、販売段階でこの価格差を悪用しようとすればできないことはないわけです。もちろん、むやみに米の品質検査をやめるべきだと言っているわけではないのですが、検査のあり方の改善や流通、販売段階での悪用防止策が必要になっているというふうに思うわけですが、これについても答弁願いたいというふうに思います。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の事案につきましては、現在、美少年酒造からの聴取等によりまして、事実関係の把握に努めているところでございます。現時点で確たることが申し上げられる段階ではないということでございます。

 ただ、一般的に申し上げれば、今回提案させていただいております食糧法改正案におきましては、用途が限定された米穀の横流しを防止するということで、米穀の出荷、販売事業者が守るべき遵守事項を定めるということにしているところでございます。

 仮に、酒造用など用途が限定されたお米を主食用として横流しした場合には、行政による取り締まりの対象となりまして、是正勧告や命令を経て、最終的には懲役刑を含む罰則が科されるということになるわけでございます。

 また、米トレーサビリティー法案におきましては、米の取引や移動について記録を作成、保存するということが必要となるわけでございます。このため、ある米を別の米に差しかえるというようなこと、そういった行為を裏で行いますと、それをきちんと記録しなかったという場合は罰則の対象になるということでございます。

 こうしたことから、両法の施行によりまして、米の流通の適正化と不正の防止に大きな効果が期待できると考えております。

 また、二点目でございますが、等級づけ、こういったことを防止する手だてとして検討すべきではないかということでございます。

 これは前回の法案審議のときにも申し上げさせていただいたんですが、この等級につきましては、大量かつ広域的に流通する米等に関しまして、業者間において現物を確認することなく、等級ごとに価格を分けて円滑に取引するということを可能にするために設けられているものでございます。

 この等級につきましては、精米をしたときの歩どまりぐあいを示すということで、消費者が購入します段階では、等級による品質差はなくなってしまうわけでございます。こうしたことから、精米される前の業者間の取引の段階で適正な流通の確保を図るということが重要と思っておりまして、先ほどの二法案によりまして、防止のために大きな効果が期待できると考えているところでございます。

菅野委員 最後に一言つけ加えておきますけれども、大臣、事故米穀の不正流通に関する有識者会議が取りまとめを行い、その中で、酒類についても他の飲食料品と同様にトレーサビリティー法案の対象とすべしとしているわけですね。この有識者会議の取りまとめを政省令の際にしっかりと組み入れていただきたいというふうに私は思うんです。

 これは管轄が別だからというふうに大臣は言っておりますけれども、財務省としっかり連携して、遺憾のないように取り組んでいただきたい、このことを要望として申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

     ――――◇―――――

遠藤委員長 次に、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、理事会等において協議いたしました結果、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ました。

 本起草案の趣旨及び主な内容につきまして、御説明申し上げます。

 本案は、最近の飲食料品の原産地等についての悪質な偽装表示事件が多数発生している状況にかんがみ、原料原産地等について虚偽の表示をした飲食料品を販売した者に対する罰則規定の新設等を行おうとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、目的規定を改正し、法律の目的として、農林物資の生産及び流通の円滑化、消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護を明示すること。

 第二に、製造業者等が品質表示基準に従い、農林物資の品質表示をしなければならない旨の規定を設けること。

 第三に、品質表示基準違反に係る指示または命令を行うときは、これとあわせて公表する旨の規定を設けること。

 第四に、原料原産地等について虚偽の表示をした飲食料品を販売した者は、二年以下の懲役または二百万円以下の罰金に処する規定を設けることとしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行するものとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

遠藤委員長 お諮りいたします。

 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております起草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

遠藤委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とするに決定いたしました。

 なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

遠藤委員長 次に、内閣提出、農地法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣石破茂君。

    ―――――――――――――

 農地法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石破国務大臣 農地法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 世界の食料需給が逼迫基調で推移すると見込まれる中、食料の多くを海外に依存している我が国においては、国内の食料供給力を強化し、食料自給率の向上を目指していくことが喫緊の課題となっております。このため、国内の農業生産の重要な基盤である農地について、優良な状態で確保し、最大限に利用されるようにしていくことが求められております。

 しかしながら、農業従事者の減少、高齢化等が進む中で、我が国の農地については、耕作放棄地の増加に歯どめがかからない現状にあります。また、経営する農地が分散している状態にある中で、転用期待等により農地価格が農業生産による収益に見合う水準を上回る傾向にあるなど、効率的な利用に必要な集積が困難な状況にあります。

 このような農地をめぐる課題を克服し、将来にわたって食料の安定供給を確保していくため、我が国農地制度を抜本的に見直すこととし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、農地法の一部改正であります。

 同法の目的について、農地は耕作者みずからが所有することを最も適当とするとの考え方を、農地の効率的な利用を促進するとの考え方に改めるとともに、農地について権利を有する者の責務として、農地の適正かつ効率的な利用を確保しなければならない旨を明確にすることといたしております。

 このような考え方のもと、農地を優良な状態で確保していくため、国または都道府県の行う農地転用について法定協議制度を導入するとともに、農地の違反転用に関する行政代執行制度の創設と罰則の強化を行うなど、農地の転用規制を見直すことといたしております。

 また、農地の有効利用を促進するため、地域における農業の取り組みを阻害するような農地の権利取得を排除した上で、農地の貸借について、その適正な利用が担保される場合に許可基準を緩和することとするほか、農業生産法人要件について出資制限の見直しを行うことといたしております。さらに、遊休農地に関する措置を拡充することとしております。

 第二に、農業経営基盤強化促進法の一部改正であります。

 農地のより効率的な利用に向け、その集積を一層促進するため、市町村の承認を受けた者が、農地の所有者からの委任を受けて、その者を代理して農地の貸し付け等を行うことを内容とする農地利用集積円滑化事業を創設するほか、農用地利用集積計画の策定の円滑化、特定農業法人の範囲の拡大等の措置を講ずることといたしております。

 第三に、農業振興地域の整備に関する法律の一部改正であります。

 優良な農地の確保を確実なものにするため、国及び都道府県が、それぞれ確保すべき農用地面積の目標を定めることを法律上明確にしつつ、国は、その達成状況が著しく不十分な都道府県に対し、内容を示して必要な措置を講ずるよう求める仕組みを整備することとしております。

 第四に、農業協同組合法の一部改正であります。

 農地の貸借についての規制の見直しに伴い、農業協同組合みずからが、農地の貸借により農業経営を行うことができることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る九日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十四分散会


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