第8号 平成21年4月9日(木曜日)
平成二十一年四月九日(木曜日)午前九時三十分開議
出席委員
委員長 遠藤 利明君
理事 今村 雅弘君 理事 木村 太郎君
理事 七条 明君 理事 宮腰 光寛君
理事 宮下 一郎君 理事 笹木 竜三君
理事 筒井 信隆君 理事 西 博義君
安次富 修君 赤澤 亮正君
井上 信治君 伊藤 忠彦君
飯島 夕雁君 岩永 峯一君
江藤 拓君 小里 泰弘君
小野 次郎君 近江屋信広君
河井 克行君 木原 稔君
斉藤斗志二君 関 芳弘君
谷川 弥一君 徳田 毅君
中川 泰宏君 永岡 桂子君
丹羽 秀樹君 西川 公也君
西本 勝子君 茂木 敏充君
森山 裕君 安井潤一郎君
石川 知裕君 大串 博志君
岡本 充功君 小平 忠正君
佐々木隆博君 神風 英男君
高井 美穂君 仲野 博子君
横山 北斗君 井上 義久君
菅野 哲雄君
…………………………………
農林水産大臣 石破 茂君
農林水産副大臣 石田 祝稔君
農林水産大臣政務官 江藤 拓君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 針原 寿朗君
政府参考人
(農林水産省総合食料局長) 町田 勝弘君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 本川 一善君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 高橋 博君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 吉村 馨君
政府参考人
(資源エネルギー庁資源・燃料部長) 北川 慎介君
農林水産委員会専門員 板垣 芳男君
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委員の異動
四月九日
辞任 補欠選任
伊藤 忠彦君 安井潤一郎君
丹羽 秀樹君 西本 勝子君
小平 忠正君 岡本 充功君
同日
辞任 補欠選任
西本 勝子君 関 芳弘君
安井潤一郎君 伊藤 忠彦君
岡本 充功君 小平 忠正君
同日
辞任 補欠選任
関 芳弘君 丹羽 秀樹君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農地法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)
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○遠藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農地法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官針原寿朗君、総合食料局長町田勝弘君、生産局長本川一善君、経営局長高橋博君、農村振興局長吉村馨君、財務省大臣官房審議官古谷一之君及び資源エネルギー庁資源・燃料部長北川慎介君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○遠藤委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小里泰弘君。
○小里委員 自民党の小里泰弘でございます。
質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。早速入らせていただきたいと存じます。
世界の食料事情を見ますときに、既に八億五千万人の飢餓人口でございます。そして、さらなる人口の増加や新興国の経済発展、エタノール需要等の影響が懸念をされます。そういった中で、諸外国の輸出規制の動きも見られるなど、世界の食料需給の逼迫の度合いが強まっているということが認識をされるところでございます。
各国が持てる食料生産基盤をフルに生かして食料供給体制の増強を図っていくべきは当然でありまして、特に、脆弱な食料供給体制下にある我が国にとりましては、焦眉の急であると認識をいたします。最も基礎的な農業生産基盤としての農地をしっかりと確保する、そしてその有効利用を図っていくことが最も重要な課題であると認識をするところでございます。
我が国の農地につきましては、戦後の農地改革の断行によりまして、農村の民主化が図られ、いわゆる戦後自作農が生み出され、その成果を維持するために農地法が制定をされたわけであります。その後、時代の変化に対応するべく、農業基本法の制定あるいは農地法の改正などが行われてまいったわけでありますが、その目的は達成をされていないと思います。特に、今日におきましては、農地の面的集積や遊休農地対策、経営主体のあり方など、食料の安定供給を確保していく上で克服していかなければならない制度的、実態的ないろいろな課題があると認識をしております。
そういった課題に対応してしっかりとこの農地政策を抜本的に見直していかないといけない、そのような観点から、我が党の中に農地政策検討スタディチームを立ち上げまして、二年間にわたりまして四十一回にわたる議論を重ねてまいりました。そして、取りまとめを行いまして、今回の制度改正に至った次第でございます。
真剣にこの課題に向き合ってまいりました者として、今回の制度改正の重要性を明らかにするとともに、その適切な運用を図っていく観点からの質問をさせていただきたいと存じます。
まずは、今回の改正によりまして農地制度の何が変わるのか、端的にそのポイントを大臣にお伺いいたします。
○石破国務大臣 問題意識は、委員と私は共有するものでございます。
これは、農地法の体系ができまして以来、最大の改正だというふうに私は理解をいたしております。農地を確保し、最大限に活用したいということであります。
したがいまして、第一条、これは私も十数年前から問題意識を持っているのが第一条でございますが、これまでは、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当」、こういうふうに言っておりました。今回、これを改めまして、「農地を効率的に利用する者による農地についての権利」、これは所有に限らず貸借を含むということが重要な点でございますが、ここを、「取得を促進」することに改めた。貸借によるものも含めてでございますが、今回、「農地を効率的に利用する者による農地についての権利の取得を促進」することに改めたものでございます。
具体的には、一つは、農地転用規制を厳格化するということでございます。優良な農地が無秩序に転用されるということは防がねばなりません。罰則を引き上げます。
第二番目、適正に利用する者を確保するために、一定の要件のもと、貸借に係る規制を見直します。意欲ある者が農地を借りやすくするということでございます。
三番目は、日本農業の問題点は、分散錯圃と申しますが、分散した農地、これが一番の問題でございますので、これを面的にまとめていかねばなりません。このために新たな仕組みをつくったものでございます。
適切な利用を促進する観点から農地制度を見直すということでございまして、相続税の納税猶予を受けている農地を貸しても納税猶予が継続する、このような措置も講じておるところでございます。
このような措置を講ずることによりまして、日本農業の強化を図っていきたい。人、金、物、三つにおいて低落傾向だと私はいつも申し上げておりますが、物の最たるものは農地であるというふうに考えておりまして、その適正な確保のためにこのような法改正を提案しているものでございます。
○小里委員 ありがとうございました。
御答弁のそれぞれのポイントに従いまして質問をさせていただきたいと存じます。
まず、農地の利用集積でございます。
農業者の減少、高齢化が進展をいたしまして、耕作放棄地が増加をしている中で、農地の利用集積、有効活用を図っていく必要があります。
その一方で、現場には、農地価格が農業生産による収益に見合う水準を上回ったり、大事な財産としての農地に対する愛着が強い、そういったことから、所有権の移転には限界があると認識をいたします。合理化法人のような調整機関は、農地を一たんプールしようにも、農地価格の変動によるリスク、小作料支払いのリスク等が存在をするために、積極的な活動がちゅうちょされているところでもございます。また、農地を貸してもいいけれども隣の人には貸したくないとか、そういう事例に象徴されるような地域的、感情的な事情もありましたり、あるいは、一度貸したら返ってこないんじゃないか、そういった不安もあるところでございます。
以上のような背景のもとに、今回の農地制度の見直しにおきましては、所有を優位とする考え方を改めまして、利用を本位とする理念のもとに制度を再構築するものであります。
このため、農地法の目的規定を改めまして、農地の出し手が出しやすく、受け手が受けやすい環境をつくるために、それぞれの制度を改めるところでございます。農地を貸しても期限が来たら必ず農地が返ってくるようにする、分散錯圃を解消して農地を面的にまとめて利用できるようにする、さらに、農地を貸しても相続税の納税猶予制度の対象となるようにするといったような、大臣が言われたような措置を講じていくものであります。
そこで、出し手が農地を安心して貸し付けることができて、かつ、中間保有のリスクなく受け手にまとまった形で集積できるように調整をするシステムが特に重要となってまいるわけでございます。この仕組みをどのように構築するのか、また、その予算措置としてどのような措置を準備されているのか、大臣にお伺いいたします。
○石破国務大臣 おっしゃるとおり、そのシステムが一番大事であります。
今回、有効利用を一層促進しますために、新たに、市町村、市町村公社、農業協同組合などが農地の所有者の委任を受け、その者を代理して農地の貸し付けを行う、そういう事業を創設いたしました。これは、貸し手と借り手の間の個別相対の契約の仲介という形ではございませんで、多数の農地所有者から一括して委任を受ける、これらの者全員を代理して一定の担い手と協議、調整を行う、こういう仕組みになっておるわけでございます。繰り返して申し上げますが、個別相対の契約の仲介という形はとりません。
このため、担い手は、毎年毎年多数の農地所有者を相手にしなければならないということはございません。一つの組織とのみ協議、調整を行えばいいということになります。そして、農地の所有者は、みずから借りてくれる人はいないかなということで借り手を探したり個別に交渉したりする、そういう手間が省かれることになります。その所有する農地を適切に利用してもらうことが可能になると考えております。そのようなことから、面的集積を従来以上に円滑に実施できるというふうに思っておるわけでございます。
この事業は、事業実施主体自体が権利を取得する必要はございません。したがいまして、権利取得に伴う保有リスクはなくなります。そして、既存の農地保有合理化事業のように、事業の実施主体が農協、公社などに限定されるものではございません。例えば、土地改良区、さらには地域担い手育成総合支援協議会のような法人格がない組織でもこれが実施できることになります。したがいまして、従来農地保有合理化事業が実施されてこなかったような地域でも積極的な取り組みができるというふうに仕組んでおるものでございます。
委員御指摘のように、仕組みだけではだめでありまして、平成二十一年度の予算におきましては、農地の所有者から委任、代理などで農地を集め、面的にまとまった形で配分する仕組みを実証的に行う取り組みに対しまして、実績に応じて十アール当たり最大一万六千円の交付金を交付するという措置を講じております。これによりまして、実効性のあるものにしたいと考えております。
法律そしてまた予算措置を伴って実施したいと思っているわけでございますが、この出し手が出しやすく、受け手が受けやすく、その取り組みにつきまして、結局、それぞれ個々の人たちが、どうすればいいんだ、どうすればこのような予算措置が講じられるのかということがすぐにわからなければ、これが運動になりません。これを運動論として展開するということが最も重要でありまして、地域のことをよく御存じの先生方の御意向も十分踏まえながら、どうすればこれが運動論として展開できるかということが最も大きなかぎになると私は思っております。
○小里委員 ありがとうございました。ぜひ実効が上がるように運用をお願いしたいと思います。
耕作放棄地対策でございます。
我が国における耕作放棄地は増加傾向にございます。直近の推計では、約三十万町歩に達しているということでございます。先人が営々と築き上げてきた農地をきちんと使う、そして後世に受け継いでいくことは、国土が狭く農地面積が少ない我が国にとりましては、極めて重要な課題でございます。政府におきましても、骨太の方針に「平成二十三年度を目途に農業上重要な地域を中心に耕作放棄地を解消する。」ということをうたっております。もはや待ったなしの状況でございます。
今後、どのような対策を講じ、どのような現場の取り組みを支援していくのか、また、これまで耕作放棄地の利用促進につきましては、例えば農業経営基盤強化促進法の中で農業委員会の指導や市町村長による勧告等の措置が設けられてまいりましたが、指導の対象となったのは全体の耕作放棄地の数%にすぎません。勧告の発動に至ってはほとんど事例がないわけであります。
あるいは、都道府県知事の裁定による利用権の設定や、かつては遊休農地を共同利用に供する制度もあったわけでありますが、裁定や発動に至ったケースはほとんどないわけでございます。何のための制度なのか、甚だ疑問に思います。
今回の見直しでは、農業経営基盤強化促進法上措置されていた遊休農地に関する措置を、内容を拡充した上で農地法に設けるとしているところでございます。本当に機能するのか、大臣の見解をお伺いいたします。
○石破国務大臣 実態はそのとおりでございます。制度があってもそれが動いていないということでございます。
ポイントは幾つかございますが、まず、引き受け手をどうするかということでございます。農地制度におきましては、農地法の第三条第三項でございますが、多様な主体の参入が可能になりますよう農地貸借の規制を緩和いたしました。次に、農地法の第二条第三項第二号でございますが、農業生産法人への出資制限の緩和によりまして、農商工連携事業者などとの連携の強化を図っております。あるいは、基盤法の第四条におきましては、分散した農地を面的にまとめる仕組みをつくる。あるいは、農地法の第三十条から第四十四条まででございますが、所有者がだれだか判明しない耕作放棄地、これは相当の問題でございまして、これについて利用を図る措置の新設を行っておるところでございます。
次に、土地の条件をどうするかということでございますが、その現状を的確に把握する耕作放棄地全体調査を実施しました。これは報道でも御案内のとおりでございます。草刈りとか抜根などの作業をすれば利用が可能とされました耕作放棄地について、再生利用の取り組みを総合的、包括的に支援いたします耕作放棄地再生利用緊急対策を二十一年度予算におきまして創設いたしました。
では、何をつくるんだ、作物をどうするんだという話でございますが、これは、水田等有効活用促進交付金などの関連施策を組み合わせながら、作物選定や営農定着化の取り組みを進めたいというふうに思っておるところでございます。
ずらずら申しましたが、実際に耕作放棄地があって困っているという高齢者の方、自分も年をとった、後継ぎが帰ってこない、そういう人たちは一体どうすればいいんだというようなことを想定いたしまして、市町村などの関係者との連絡を密にしなければいかぬ。そして、わかりやすいパンフレットをつくらなきゃいかぬ。おじいさん、これ見てねというパンフレットができていなければ意味がないわけでございます。全国のモデルとなります優良事例集もつくりまして普及を図る、そのような取り組みを進めることによりまして、農振農用地区域を中心に耕作放棄地の再生利用を進めたいというふうに考えております。
次に、現行の遊休農地に関する措置についてでございますが、基盤強化促進法に規定をされております現行の仕組みは十分に活用されておりません。勧告等につきましても委員御指摘のとおりでございます。
今回の改正法案におきまして、農地法におきましては、農地について権利を有する者の責務規定を明確にいたしました上で、すべての遊休農地を対象とした仕組みといたしております。農地法第二条の二でございます。
次に、遊休化した農地については農業委員会が指導、通知、勧告などの手続を一貫して行うということでございまして、農業委員会の位置づけというものを明確にしております。農地法の第三十条から三十五条でございます。
次に、農業委員会には毎年の利用状況調査を義務づけます。毎年、どのように利用されているか、その調査を義務づけます。そして、農業者などが遊休農地がある旨を申し出ることができる、そういう仕組みをつくりました。農地法三十一条でございます。
所有者が不明であっても利用権を設定することができるような措置、これは四十三条でございます。
このような見直しを行っておるところでございまして、遊休農地に関する措置の実効性を確保したいというふうに思っておるところでございます。
○小里委員 ありがとうございました。
大臣、参議院の御都合があるということでございます。どうぞ急いでください。
続きまして、申し上げてまいりましたように、今回の農地制度の見直しは、戦後の所有権主義から完全に脱却をいたしまして、利用本位の農地制度に転換することを基本理念としております。この利用本位の農地制度への転換は、農地の有効利用のために農地の流動化を促すとともに、値上がり待ちの資産としての農地の保有や投機目的による農地取得を許さない制度への転換でもあると認識をしております。
その前提のもとに、新たな経営主体の参入につきましては、あくまで補完的、限定的でなければならないと考えます。改正案では、農村部における農地の受け手不足が顕著になる中で、この際、利用権の活用によりまして農協による自営を認めることといたしまして、貸借規制の見直しを行うこととなっております。
一般企業におきましても、利用権に限った参入を認めるものとなっております。仮に一般企業に農地の所有を認めますと、農地マーケットが一般の市場原理の中に取り込まれまして、農地価格が高騰し、生産のコストがアップする、そういった事態になりかねないわけであります。また、農地以外の利用に供されるリスクも高くなる、かつまた、事後的な対応も困難なものが予想されるところでございます。
このような観点から、新制度におきましても、企業に所有権を認めることは厳に排除していると認識しているところでございます。そもそも地域の農地は、まずは地域本来の家族労働者や家族労働の延長たる集落営農組織が守るべきでありまして、たとえ利用権によるものであれ、企業経営が本来の現場の生産、現場の経営を阻害するようなことがあってはならない。そのような考え方におきまして、我々のチームにおきましても、この点は特に念を入れて議論を重ねてまいったところでございます。
現場において不安や懸念が生じることのないように、これをどのように担保し、適切な農地利用を確保していくのか、不適切な利用が判明した場合、どのような対応をとるのか、お伺いいたします。
○高橋政府参考人 お尋ねの貸借規制の見直しの点でございますけれども、近年の耕作放棄地の増加等の状況を踏まえますと、担い手が不足している地域では、企業あるいは農協なども含めます多様な農地の受け手が必要となってきているところでございます。このため、今回の改正法案におきましては、農地を貸しやすく、また借りやすくすることによりまして、農地を利用する者の確保、拡大を図ることとしたところでございます。
ただし、その前提といたしまして、農地の権利取得の許可について、地域におけます農業の取り組みを阻害しないよう、周辺の農地の利用に影響を与えないかどうかとの要件を新たに設けることといたしました。また、委員御指摘のとおり、法人の所有権の取得につきましては、現行どおり農業生産法人に限定することとしております。
また、今回拡充いたします農地の貸借につきましても、農地を適正に利用していない場合には貸借を解除する旨の契約を新たに付すことを義務づけます。また、契約によります貸借の解除がなされない場合に、農業委員会は、これは許可をして貸借を認めたわけでございますけれども、この許可を取り消すことを義務づけることとしております。当事者間で不適正な利用が放置されるような場合には、遊休農地対策の拡充により、これに直ちに対応することともしておるところでございます。
このように、法制度上も農地の適正な利用をしっかり担保する措置というものを講ずることとしております。
今後、このようなことを正確かつ丁寧に現場生産者に対しましても御説明することを通じて、現場におけます不安、懸念が生じないよう、最大限の努力に努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
○小里委員 権利移動の許可基準ですが、周辺の農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがある場合という非常に抽象的な規定になっております。制度の運用に当たりましては、申し上げてきたような趣旨が十分反映をされますように、そして排除されるべきものは確実に排除されますように、徹底した対応をお願いしたいと存じます。
農業の担い手不足の現状を見ますときに、これを補完し、農業生産の維持増強を図る観点から、多様な主体の秩序ある参入を検討すべきは理解をいたします。例えば、地域の建設会社は農地や農道の整備に関係をしてきまして、また、従業員も農家であることが少なくありません。農業とは極めて近い関係にあると認識をいたします。食品産業についてもそうであります。日本の農業を支える新たな力として、こういった企業に期待がかかるのは理解をしているところでございます。
民主党案におきましては、大方において政府案と方向性を同じくしていると認識するところでございますが、一般企業の参入につきましては農用地区域以外に限るとされているところでございます。
ただ、現状を見ますときに、既にリース事業により企業が借りている農地の八割以上が農用地区域内の農地でございます。また、農用地区域内に存在する耕作放棄地が、直近の推計値では全国で十三万町歩に達しております。これが企業に整備をされ、有効活用されているという実態もあるわけでございます。
さらに、農用地区域以外に限った場合に、企業への農地の貸し付けを認めたいがために、農地が農用地区域から除外されるといった事態も懸念をされます。その結果、優良農地の確保に支障を来すことも心配されるわけでございます。
農業の収益性は決して高いものではないことからも、企業参入にどこまでたがをはめるべきかは極めて難しい判断を要すると考えているところでございます。したがって、経営主体のあり方をゾーニング制度とリンクさせることは、一見わかりやすくはありますが、実態として、また制度的に矛盾もあるんじゃないか、そんなことも思っているわけでございます。こういった点は、改めて議論をさせていただきたいと存じます。
最後に、転用規制でございます。
我が国の農地面積は、ピーク時の七六%まで減少いたしました。脆弱な食料供給体制をかんがみるときに、もはや農地のこれ以上の減少は許されない。農地転用規制については、さらに厳格であるべきと考えております。
本法案におきまして、農地転用許可を必要とする対象として、新たに病院、学校等の公共施設が組み入れられました。違反転用に対する罰則も強化され、また、農用地区域からの除外につきましても厳格化が図られているところでございます。
一方で、現場の対応状況を見ると、毎年七千件から八千件の違反転用事例が発生をするなど、現場における農地関係法令の遵守意識が低下しているんじゃないか。行政におきましても、農地の確保に向けた努力が不十分であったことは否めないことであろうと思います。制度上の措置だけでなく、目標達成に向けて制度の適切な運用が求められるところでございます。
同時に、今まで農地転用規制につきましては、その権限を地方にゆだね過ぎたんじゃないかという感を強くしております。規制は、住民に近ければ近いほど情実に流されやすいし、なれ合いになりやすいと思います。その結果として、転用が予想外に進んでしまったという側面もあると思っております。
また、例えば、地方部の食料自給率の高い自治体と都市部の食料自給率の低い自治体とでは農地転用に対する期待が違うし、逆に、食料安保に対する危機の意識も違うんじゃないかと認識をいたします。こういった多様な地域事情を調整して国全体の安全保障を図るべきは、当然国の責任であります。
本来、食料安保は最後まで国が責任を持って当たるべき最たるものでありまして、食料・農業・農村基本法におきましても、食料安保のための農地の確保は国の責務とされているところでございます。農地転用規制に関する権限はむしろ国に引き戻すぐらいのことを考えていいんじゃないか、そんなふうに思いますが、政府の見解をお伺いいたします。
○石田(祝)副大臣 まず、農地転用の現状をちょっと申し上げたいと思いますが、昨年の調査によりますと、二ヘクタール以下の農地についてこの調査をやったわけでありますけれども、十分な検討がなされないまま許可されている、そういう事例が相当数見られるところでございます。
また、農地転用許可事務の実態を見ますと、平成十九年の実績は、八万六千三百四十三件、八千七百十二ヘクタールでありますけれども、このうち都道府県知事による許可が、件数で九九・九%、面積で九二・五%と、これはもうほぼ知事の許可だということも言えるわけでございます。
そのような現状を踏まえまして考えていきたいと思いますが、このため、今回の農地政策の見直しにおきましては、四ヘクタールを超える転用許可は引き続き国の権限とする、二ヘクタールを超え四ヘクタール以下の転用許可に係る国の同意を維持する、また、都道府県が農地転用許可制度について適正な運用を行っていない場合には国が都道府県に対して是正の要求を行う、こういう形で、農地の確保に向け国が積極的な役割を果たしていく、こういうことを明確にいたしております。
なお、改正法の附則第十九条第一項にあるように、農地転用許可事務の実施主体のあり方については、今回の改正後における農地法等の施行状況を勘案し、改正法の施行後五年を目途に改めて検討する、このようにしているところでございます。
○小里委員 ありがとうございました。ぜひ、それぞれの課題につきまして、確固たる理想と意思を持って進めていただきたいと存じます。
時間が参りましたので、質問を閉じます。ありがとうございました。
○遠藤委員長 次に、井上義久君。
○井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。
まず初めに、我が国の農地の現状についてお伺いしたいというふうに思います。
ピーク時、昭和三十六年に六百九万ヘクタールあった我が国の農地ですけれども、平成二十年には約七割の四百六十三万ヘクタールまで減少しております。農地の確保は喫緊の課題であって、それが今回の農地法改正の動機にもなっているわけです。
そこで、まず、我が国の農地面積の推移と、それに対してこれまでとられてきた農地政策の総括及び今回の改正の背景等についてお伺いしたいと思います。
○高橋政府参考人 まず、我が国の農地面積の推移でございますけれども、我が国の農地面積は、昭和三十六年に六百九万ヘクタール、これをピークといたしまして、その後、毎年減少している状況にございます。平成二十年には四百六十三万ヘクタールまで減少してきているところでございます。
このような農地面積の減少、あるいは基幹的農業従事者、現状で百九十七万人いるわけでございますけれども、六十五歳以上の方々の割合が約六割になっている現状、さらに、農業所得全体について平成二年と平成十七年とを比べてみますと、半減している状況にある。
先ほど大臣もお答えさせていただきましたけれども、物、人、金、そういったものすべてについて減少、低落傾向にあるわけでございます。これまでも、さまざまな対策、二度にわたります基本法の制定等を行っているわけでございますけれども、現状、このような状況については歯どめがかかっていない状況にある。これを、将来に向けまして持続的な発展が可能な農業にするための農政改革が必要となっているところでございます。
このような農政改革の一環といたしまして、国内の農業生産の重要な基盤であります農地について、これを優良な状態で確保し、最大限利用されるようにしていくことが現状で求められている。しかしながら、耕作放棄地の増加、あるいは経営農地の分散錯圃の状況、農業の所得水準に見合わない農地価格上昇というような形で、農業を効率的に行うために必要な集積もままならない状況になっているところでございます。
このような農地をめぐる諸課題を克服して将来にわたって食料の安定供給を確保していくために、今回、農地法等の一部を改正する法律案を提出させていただいたところでございます。我が国農地制度を抜本的に見直すとの考え方のもと、農地について、転用規制の見直し等によりその確保を図るとともに、農地の貸借について一定の条件のもとにその規制を見直しまして、また、農地の利用集積を図る事業の創設等を行うことにより、その有効利用を促進することとしたいというところでございます。
○井上(義)委員 そこで、今もありましたけれども、今回の法改正の柱の一つが、農地転用を厳格化し、農用地区域内の農地を確保するということでございます。
今回の改正でどの程度農地面積を確保しようとしているのか、食料自給率の目標設定と大きく連動するわけですけれども、政府は確保すべき農地面積をどのように設定しているのか、それについてお伺いしたいと思います。
○吉村政府参考人 確保すべき農地面積についてのお尋ねでございますけれども、委員まさに御指摘のとおりでありまして、この農地面積の減少の主な要因は、農地転用と耕作放棄地の発生でございます。
このため、今回の農地政策の見直しにおきましては、現行法上は農地転用許可が不要となっている国や都道府県による病院、学校等の公共施設の設置について許可対象に移行する、具体的には法定協議という形になります。それから、農用地区域からの除外の厳格化、特に担い手の経営に大きな支障が出るような場合には除外を認めないというような措置を講ずることとしております。また、農業生産法人以外の法人の参入を可能にする、遊休農地に関する措置を強化する、農地利用集積円滑化事業を創設するなどによりまして、耕作放棄地の発生の未然防止、解消を図ることといたしております。
我が国において確保すべき農地面積につきましては、今申しましたような今回の法改正で新たに規定される措置と、これに向けた政策努力を踏まえまして、平成二十二年三月を目途に改定を予定しております食料・農業・農村基本計画を策定するに当たりまして、広く国民の意見を聞きながら、食料自給率目標とあわせて示していきたいというふうに考えております。
○井上(義)委員 そこで、今回の農地法改正の大きな目的は、先ほどからも議論が出ていますように、農地の所有から利用へと再構築するということでございます。
やはり農地を利用するには担い手の育成が必要なわけで、担い手の育成については、これまで、家族経営の発展や法人化あるいは集落営農の組織化、法人化など、農業の内部から担い手の育成を推進してきたわけでございます。
今回の改正では、農外からの参入を推進することで農業の担い手について新たな方向性を打ち出すことになるわけですけれども、担い手育成について、これまでの農業内部からの担い手育成と、今回導入される外部参入の調和をどう図っていくか、施策の整合性をどうとっていくかということは、私は重要だというふうに思います。
農業の現場からは、外からの参加を認めるに当たって、これまでの認定農業者等の担い手の育成、確保や、あるいは、地域の秩序ある農地の利用の取り組みに支障を来さないようにすべきという強い声がございます。
この点について、政府のお考えをお伺いしたいと思います。
○高橋政府参考人 まず、現行の食料・農業・農村基本法におきましては、その第二十一条におきまして、「効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するため、」「必要な施策を講ずる」こととされております。
この効率的かつ安定的な農業経営についてでございますけれども、さまざまなタイプがあるわけでございまして、例えば、家族で営まれている、あるいは法人により雇用労働を活用して営まれている、あるいは家族経営が集まりまして集落営農として行われているなど、さまざまな形態があるわけでございます。
このため、同じく基本法第二十二条におきましては、「家族農業経営の活性化を図るとともに、農業経営の法人化を推進するために必要な施策を講ずる」ことともされているところでございます。
我が国農業の現状を見てまいりますと、農業従事者の減少や耕作放棄地の増加など、これまでのような家族経営あるいは集落営農などの農業内部の担い手だけでは農業の担い手として不十分な地域もふえ続けてきている現状にございます。このような地域では多様な農地の受け手が必要となってきているわけでございまして、今回の改正法案は、農地を貸しやすく、借りやすくすることにより、利用する者の確保、拡大を図ることとしております。
ただ、この多様な農地の受け手につきましては、単に企業等の外部からの参入に限るものではなく、例えば、農業以外の多種多様な事業も行います、農業生産法人とは異なる形態での集落営農組織の法人化、こういったものも考えられるものでございまして、農業内部あるいは農村内部から新たな形態の法人があらわれるということも想定されるところでございます。
ただし、その際、農業内部からの担い手育成と、農地貸借によります外部からの参入の促進とを調和させ、整合性を図る必要があることは御指摘のとおりでございます。
このため、改正法案におきましては、法人の所有権の取得は引き続き農業生産法人に限定するとともに、農地の貸借につきましても、権利取得の許可に当たりまして、地域における農業の取り組みを阻害するような権利取得は排除する、農地の適正な利用が行われない場合のいわゆる担保措置をしっかり講ずることとしているところでございます。
このような今回の改正におけます基本的な考え方あるいは具体的内容につきまして、農業者を初め広く国民各界各層に対しまして、今後、さまざまなチャンネルを通じて丁寧に、かつわかりやすく説明をして、懸念が生じないようにしてまいりたいと考えているところでございます。
○井上(義)委員 今お話があったように、今回、農業生産法人以外の法人の農地利用は貸借に限る、あるいは適正利用されない場合は貸借を解除できるというふうにしております。
しかし、農業者の中には、農地貸借はいずれ一般企業等の農地所有につながり、農業生産以外の投機目的等の農地取得が排除できなくなるのではないか、あるいは、資本力のある企業の席巻で農村秩序の混乱と崩壊が現出するのではないかといったような強い懸念があるわけです。
このような懸念に対して政府はどうこたえるのか。例えば、地域の担い手を優先するというようなことを明確にすることも必要ではないかというふうに考えますけれども、この点はいかがでしょうか。
○高橋政府参考人 今回の見直しに当たりましては、先ほど申し上げましたように、貸しやすく、借りやすくということを改正の趣旨としているわけでございますが、その前提といたしまして、権利取得の許可に際して地域における農業の取り組みを阻害しないよう、周辺の農地の利用に影響を与えないかどうかとの基準を新たに設けることとしているところでございます。
また、法人の所有権の取得は現行どおり農業生産法人に限定することとし、農地の貸借についても、基本的に、適正利用が行われていない場合に貸借を解除する、あるいはこの許可を取り消す、そのような形の対応をすることによりまして、適正利用を担保する措置を講じているところでございます。
また、今回の規制見直しにつきましては、先ほど来申し上げます新たな目的のもとで、権利移動の規制のあり方について見直しをいたしました。その際、所有権と賃借権のそれぞれの権利の性質の違いに応じてそれぞれごとに対処する、所有権については従来どおりの厳しい方策をとる、賃借権についてはその権利内容に応じましてこれを緩和するということにしたわけでございます。したがいまして、今回の農地の賃借権に係る要件緩和が、権利の性質の異なります所有権に係る要件緩和につながるものではございません。
以上のような点につきまして、基本的な考え方、具体的内容について、農業者等に幅広く御説明し、懸念が発生しないように努めてまいりたいと考えております。
○井上(義)委員 農水省は、平成二十七年の農業構造の展望ということで、家族農業経営は三十三万から三十七万世帯程度、法人経営は一万程度、あるいは集落営農経営は二万から四万程度というふうにしておりまして、これら三種の形態で農地の七、八割を集積する、こういうふうに見込んでいたわけです。
今回、農地を利用する者の確保、拡大が進みますと、今後の農業構造も大きく変わるというふうに予測されるわけで、今回導入の外部参入をどう位置づけ、また将来的にどのような農業構造を展望しているのか、また、農村社会の構造変化というものをどのように想定しているのか、この辺についても確認しておきたいと思います。
○高橋政府参考人 食料・農業・農村基本計画に基づきます農業構造の展望、現行については委員御指摘のとおりでございます。
現在、農林水産省といたしましては、新たな基本計画を明年三月を目途に策定すべく、検討を開始したところでございます。その際には、我が国農業の持続的発展に向けまして、いわゆる農業者、農地、水資源、技術、資金等、農業をめぐります人、物、お金、あらゆる面で有効な施策を講じていくことが必要であると考えているところでございます。
今回の農地法等の一部改正案につきましては、現在の農地をめぐります状況に対処するため、農地を優良な状態で確保するとともに、従来の経営体のみならず、多様な主体が農地の受け手になれるようにするということで、利用する者の確保、拡大を図ることとしたところでございます。
したがいまして、新たな基本計画の検討におきましては、今回の改正も踏まえ、より多様な担い手、農業主体が共存していく、このようなことも念頭に置きながら、基本計画の検討とあわせて、将来の農業構造の姿についても検討してまいりたいというふうに考えております。
○井上(義)委員 次に、農業委員会制度につきましてお伺いしたいと思います。
今回の改正で農業委員会の役割と機能が新たに加えられ、農業委員会の事務は質、量ともに増大してまいります。ただし、農業委員会は、この間の地方分権あるいは町村合併等によりまして、かなり厳しい状況になっております。農業委員の員数あるいは委員一人当たりの担当農地面積等、実情がどうなっているのか、これを確認しておきたいと思います。
また、農業委員会に対しては、高度経済成長期や土地バブル期などにおいて、一般商品や不動産などの金もうけの手段になることから農地を守ってきたという評価がある反面、農業委員会自体が農地転用を促進してきたのではないかという指摘もあるわけです。
農業委員会に対する理解を今後一般の市民の方にも深めていく必要があると思うんですけれども、農業委員会の果たしてきた役割に対する評価、総括という点について、まず確認しておきたいと思います。
○高橋政府参考人 農業委員会の実情とこれまで果たしてきた評価についてでございますけれども、農業委員会は、近年、市町村の合併の進展等に伴います委員会数の減少によりまして、活動区域は当然広域化しております。一方で、農業委員あるいは事務局職員の数は減少してきております。
平成二十年十月一日現在の農業委員会数等について見ますと、農業委員会数は、平成十五年に比べまして約四三%減少いたしまして、千七百九十三委員会になっております。農業委員は、約三五%減少して三万七千四百五十六人となっております。事務局職員は、約二五%減少し、七千八百九人となっているところでございます。
また、一農業委員当たりの担当面積につきましては、全国の耕地面積、それから耕作放棄地面積、センサスベースのものでございますけれども、これを合わせた面積について見ますと、一農業委員当たり約百三十四ヘクタールとなっておりまして、平成十五年当時に比べますと五二%増というような状況になっているところでございます。
農業委員会は、農村現場で農地制度の運用に当たる極めて重要な組織でございますけれども、これまで、優良農地の確保、担い手への農地の利用集積において、一定の機能を発揮してきたということは評価されております。
しかしながら、他方におきまして、農地の権利移動の許可等の審議が形骸化しているのではないか、あるいは、公平公正な法の運用が本当に適切になされているかどうか等の厳しい御意見も、当委員会も含めましてあったところでございます。
このため、今回の制度改正を待たず、農業委員会の事務が適正に実施されることとなるよう、農地の権利移動の許可等の事務については、その判断の透明性の確保のための取り組みを行うこと、農地の利用集積、耕作放棄地の解消に向けた事務等につきましては、活発な活動が促され、地域の農業者等からその活動ぶりがはっきりと認められることとなるよう、目標及びその達成に向けた計画の公表、並びにその結果の評価等を行うことについて、指導を徹底してまいりたいと考えておるところでございます。
○井上(義)委員 今もお話がございましたけれども、今回の改正で、権利移動規制の見直し、あるいは遊休農地対策の強化等の措置を講ずることに伴って、権利移動許可後の事後監視あるいは許可取り消しの措置、農地の利用状況の調査、下限面積の弾力的設定、面的集積組織との連携、あるいは遊休農地所有者等に対する指導、勧告等々、農業委員会に多くの新たな業務が加わるわけです。また、優良農地を確保する上で農業委員会の果たす役割は、これまでにも増して大きくなるというふうに考えられます。今後のこの農業委員会の位置と役割について大臣の見解をお伺いしたい。
あわせて、これらの業務を遂行する上で、陣容について大きな懸念があります。農水省としての農業委員会への具体的な支援、例えば人員の確保や実務に精通した人材の確保及び育成、予算措置など、どのようなサポート体制をとるのか、また、農業委員会間や都道府県の判断の格差をなくして透明性をどう図っていくのか、これらについての今後の方針をあわせてお伺いしたいと思います。
○石破国務大臣 農業委員会制度というような制度がどこかほかの国にあるのかねということでちょっと調べてみたのですが、全く同じような制度はどの国にもございません、実は。日本独自の制度であるということでございます。
今局長から答弁申し上げましたが、この農業委員会が果たしてきた役割は大きいのだが、しかし、これだけ耕作放棄地がふえ、遊休農地がふえているというのは一体どういうことなんだということ、やはりここもきちんと正面から見据えなければいけないことだと私は思っておるところでございます。
農業委員会について、これは公職選挙法が適用されるということになっております。実際に選挙が行われている率というのは非常に低いのでございますけれども、この農業委員会が民主的に運営をされて農地の適正な確保に資するということでなければ、その役割を十分担っていただくことはできないわけでございます。
したがいまして、繰り返しになって恐縮でございますが、議事録の公表、これは必要なのだろうと。民主的な運営のために、議事録がきちんと公表されるということは極めて重要なことでございます。どのように議論が行われたか、どうしてこのような決定がなされたのか、そういうことが透明性を持って示されるということが必要なことでございまして、制度改正を待つことなく、できることは先行して取り組みたいと思っております。
どのような予算措置等々を講ずるかという御質問でございますが、ここは、まだ法律が御可決いただいていない段階であれこれ申し上げることもいかがかと思っております。ただ、私どもとして、実際に農業委員会のいろいろな業務に携わられる方々、その方々の御意見をきちんと承りながら、この制度改正が実効を上げるために農業委員会が果たすべき役割、それを適切に支援する、そういうようなことについていろいろな方策を講じてまいりたいと思っております。委員からもこういう形で支援をするべきではないかというような御提案があれば承り、私どもそれを実行に移してまいりたいと考えておる次第でございます。
大変抽象的な答弁で申しわけございません。
○井上(義)委員 具体的には、農業委員会は、透明性確保を図りながら具体的な実務をしっかりやっていただかなければいけないということで、やはり事務局体制をしっかり強化するということが私は非常に重要だと思います。ただ、人員削減等もあってそこがなかなか思うようにならないということで、そういう人員の確保とか、あるいは特に実務に精通した人材の確保あるいは育成、それに必要な予算措置というようなことをこれからしっかり検討していかなければいけないんじゃないか、こう思っていますので、重ねてお願いしておきたいというふうに思います。
次に、優良農地の確保策について、優良農地を確保するため、農地転用については、「農地を農地以外のものにすることを規制する」というふうに法の目的規定に定めております。また、不耕作地については、「農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は、当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。」ということで、責務規定が新たに設けられたわけです。
しかしながら、不耕作や転貸を目的とする利用権取得を防止する具体策がなければ優良農地確保の実効性は担保されないわけで、例えばガイドラインの策定等が必要じゃないか、こう思いますけれども、これについてのお考えをお伺いしたいと思います。
○高橋政府参考人 農地につきましては、国内の農業生産の重要な基盤であり、現在及び将来における国民のための限られた資源であることにかんがみ、これを優良な状態で確保し、最大限に利用していくことが求められているところでございます。このような考え方につきましては、改正後の農地法第一条の目的規定の中で明記しているところでございます。
さらに、このような考え方を農地について権利を有する者に徹底するため、今回の改正法におきましては、「農地について所有権又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者は、」「農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならない。」という、いわゆる責務規定を法律上明記したところでございます。
この責務規定でございますけれども、それ自体は具体的な法的効力を直ちに持つものではございません。したがって、この規定違反というようなことがあったとしても、罰則等の制裁措置を伴うということではございません。しかしながら、今回、この責務規定を具体化するものといたしまして、農地転用規制の厳格化、あるいは遊休農地対策の拡充、農地の貸借に係る規制の見直しに当たっての適正な利用の担保等の措置を講じることとしたところでございます。
これらの措置についてでございますけれども、当然のことながら、それぞれごとに法運用上の重要な基準になってまいります。その処理基準については、ガイドラインあるいは処理基準というものをきちんとつくって実効性を確保してまいりたいというふうに考えております。
○井上(義)委員 先ほども議論が出ましたけれども、一昨日、平成二十年度の耕作放棄地全体調査結果が公表されております。
それによりますと、未報告分を含めた推計値は、耕作放棄地は二十八万四千ヘクタールあり、そのうち農地に復元不能な赤の地域は、判断済みそれから判断未了を含めて十三万五千ヘクタール、また、復元可能な緑あるいは黄色の地域、これが合わせて十四万九千ヘクタールというふうになっております。今思い切った手を打ちませんと、現在復元可能な黄色、緑の地域も復元不能な赤の地域になって、貴重な農業資源が失われることになりかねないわけでございます。
現在、新たな経済対策あるいは二十一年度の補正予算も検討されているところでございまして、予算措置を含めた思い切った耕作放棄地対策を検討すべきではないかと思っておりますけれども、この点についてお伺いします。
○石田(祝)副大臣 お答え申し上げたいと思います。
耕作放棄地を含む農地の有効利用を図ることがまず重要である、そのように考えておりまして、では具体的にはどうかということになりますと、そのポイントといたしまして、引き受け手をどうするか、土地条件をどうするか、作物をどうするか、それぞれが独立したものではなくて相互に関係しておりますので、それぞれを組み合わせた総合的な取り組みが必要だ、このように考えております。
このため、主として引き受け手をどうするかという観点におきましては、農地制度において、多様な主体の参入が可能となるよう農地貸借の規制を緩和する、農業生産法人への出資制限の緩和による農商工連携事業者等との連携の強化、分散した農地を面的にまとめる仕組みの創設、また、所有者が判明しない耕作放棄地についても利用を図る措置の新設等の対策の強化を図る、こういう観点から農地法等の改正案にこういうものを盛り込んだところでございます。
次に、土地条件はどうするか、こういう点を中心に、今委員御指摘のとおりでありますけれども、現状を的確に把握する耕作放棄地全体調査を実施いたしまして、草刈り、抜根等の作業をすれば利用が可能となるおおむね十万ヘクタールの耕作放棄地に対し、平成二十三年度を目途にその解消を目指す。そして、二十一年度におきましては、貸借等により再生利用する取り組み、これに附帯する用排水施設等の整備、農地利用調整、営農開始後のフォローアップ、こういうものを総合的、包括的に支援いたします耕作放棄地再生利用緊急対策を二百六億五千万円の予算をつけまして創設したところでございます。
また、作物をどうするかという観点からは、水田農業ビジョン等の産地戦略や農業者の営農計画の検討と、その実現を支援する水田等有効活用促進交付金等の関連施策を組み合わせながら、作物選定や営農定着化の取り組みを進めることとしております。
さらに、平成二十一年度の追加的な経済対策におきまして、荒廃した農地の再生利用をさらに促進する観点から、重機を用いた再生作業及び新規就農者への研修等を支援メニューに追加する等、耕作放棄地対策の充実を図ってまいりたいと考えております。
○井上(義)委員 時間が来ましたので、ちょっと残余の質問もありますけれども、またの機会にお願いしたいと思います。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 次に、小平忠正君。
○小平委員 民主党の小平忠正です。
石破大臣、御就任以来、精力的に農政のかじ取りとして頑張っていらっしゃる、これについては野党の立場からもまず敬意を表したいと思います。
長らく防衛大臣を務められた後、何か古巣の農水に帰ってきた、そんな感がしますが、往時を振り返って、ここでまた改めて質問する機会を与えられたことをまず感謝し、私から何点か質問いたします。
まず最初に、本題に入る前に、先般、米三法の審議が行われました。これは、過般、いわゆる汚染米、事故米ということもありまして、この反省に立った上で、今同時に消費者庁設置の問題も審議されておりますが、いわゆる消費者と生産者の連携のありようを今、国会においても模索をしているところであると思うんです。
そういう中であるんですが、残念なことは、汚染米だけじゃなくて、悪質業者によって、いわゆる産地偽装ですとか、かつてのミートホープですとか、あるいはウナギですとか、いろいろな農産物の偽装問題がありました。
消費者は、食料品に対する見方がこれによって非常に厳しくなっている。しかし、言うまでもなく、我が国農業者は、消費者に向かって安全で良質な農産物を提供しよう、そういうことで頑張っていますよ。これに水を差すようなことがいわゆる一部の不逞のやからによって連綿と連なっている。非常にゆゆしいと思います。最近も、いわゆる無許可専従問題も取り上げられております。
いずれにしても、今農水省を取り巻く中においていろいろなことが起きていますね。これはやはりどこかたがが緩んでいないかと思うんです。そんな意味において、非常に残念に思いますが、これについて大臣はどう考えておられるのか、まずここからお聞きしたいと思います。
○石破国務大臣 たがが緩んでいるという御指摘は、それはそのとおりだと私は思っております。
就任以来申し上げているのですが、農林水産省はサービス省庁でございまして、生産者、消費者もそうですが、国民はすべてお客様であって、政策は商品であって、生産者一人一人が農水省の政策というものをきちんと理解していただき、それに参加するかしないかということについての御判断をいただく、そういうようなことが十分であったと私は全く思っておりません。
いろいろな政策を立案しますときに、これを実際に北海道なら北海道、九州なら九州、四国なら四国の農業者がどのように受けとめるか、使いやすいか使いにくいか、それによってどれだけ所得が向上するか、どのように農業構造が変化するかということまですべて思い描いて政策は設計をしなければなりません。そして、それを理解していただけるために、わからないことがあるんだったら聞きに来なさいみたいな話は全然だめなので、わからないことがないように、瞬時にこれがわかるということでなければ、農政は意味をなさないと思っております。
そういう意味で、お客様を常に意識した緊張感、商品が売れなきゃ民間会社はつぶれるわけですから。役所はつぶれないので、そこのところに、やみ専従の問題もそうですが、本当に我々は納税者のためにサービスする、奉仕する、そういうような官庁なのだという意識が徹底しているとはどうしても私は思えない。そこを直していかなければ、たがの緩みは解消しないというふうに考えております。
生産者に本当に奉仕するというような意識を持てるかどうか、そして、自分たちが出した政策でどれだけの効果が上がり、どれだけ農業者の所得が増したかということがきちんと評価をされるというふうにしていかなければだめだという認識を持っておりまして、委員の御指摘は私自身として全く異論はございません。
○小平委員 大臣はおっしゃられましたけれども、私は、農業は消費者なくしてはやっていけません。消費者との連携、理解、お互いにという、それは大臣のお客さんですから、わかります。
しかし、どうも現実はちょっと違っているようで、いわゆる農業者と消費者じゃなくて、農業者はちゃんとやっているんですよ。しかし、業者がいろいろなことをしでかす、消費者が批判をする。そうでしょう。そうなると結果的にそれが農業者にはね返っていくという、このことを改めて認識し合っていかなきゃならぬと思うのであります。ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。
さて次に、大臣、いろいろと農業に精通されている中で、就任されてから最近の発言、私も非常に気になっておりました。いわゆる生産調整見直しの発言ですね。最初は廃止論から始まって、選択制ですとかいろいろなことが言われています。しかし一方、現下の農水省は粛々といわゆる生産調整をもとにした今の施策を継続している。その証左に、今国会においても各般の法律を閣法として出してきておられる。
そういう中で、農業者もこれを前提にして、今特に田植えのシーズンにこれから入っていきますね。その作業の準備のさなかにある。そういう中で、大臣の出されるメッセージと農水省の施策とで乖離があった場合に一番混乱するのは現場です。それが私は問題だと思うんです。特に米はこの国の基幹作物ですから。
そういう中で、大臣の真意が伝わっていないのかもしれないけれども、このことはいろいろな場を通じて大臣も発言されていますが、質問の機会を与えられましたので、改めて私からの質問として、大臣は生産調整をどう考えていかれるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○石破国務大臣 生産調整も四十年続きました。生産調整以外の世界は見たことがないという人がほとんどであります。ただ、農業の現状を考えるときに、農村の現状を考えるときに、本当にこのままでいいですかという問いかけ、そして、もしよくないとするならばどうすればよいですかというお話はしていかなければならないことだ、これは私の信念として持っております。
世論調査というのは、どこまで理解するか、どのようにとらえるかということでまた考えは変わってくるのかもしれませんが、例えて言いますと、東北大学と朝日新聞が、米どころでございます宮城、秋田、山形、新潟、この四県の農家の方々を対象に実施した調査、二月から三月でございますが、減反の大幅見直しを求める声は四九%であった、廃止を望む声は一六%であったと。あるいは、けさの日本農業新聞を見ますと、これは農業新聞を読んでおられる方々を対象に三月の下旬に行ったものでございます。これは、専業の方々、水稲中心が一五%、水稲以外の専業の方が二九%、兼業農家が四〇%、農家以外が一五%というようなものでございますが、これを見るとどうなるかというと、生産調整について、転作への助成を充実し、不公平感を減らした上で続けよというのが四三・四、今のまま続けよが七・七、所得補償の実施が二二・八ということになるわけですね。
では、これをどう考えるかという話なんです。現場の声をどのように考えていくか、そしてどのようにしたらいいかという議論、これはきちんとやらねばならないことだと思っております。ただし、平成二十年度米につきましては、いつも申し上げておりますように水田フル活用元年ということでございますから、ことし、そしてまた、これはすぐ変わるものだと私は思っておりません。水田フル活用というお話とその議論をちゃんとしましょうというお話は、私は二律背反でも何でもないのだと思っております。
○小平委員 いろいろな世論の動向を含めて答弁がありましたが、今四十年間と言われた生産調整、昭和十七年から始まった食管会計。この食管会計が廃止をされて、食糧庁の廃止までいって、いわゆる自主流通米、自由経済に米が投げ出された。こういう方向をたどってきまして、そういう中で、非常に今は一種の混乱期にあるというのは事実だと思うんです。
しかし、問題は、大臣は最高責任者ですから、ぜひ農水省と一体感を持って進めていただきたい。そうしないと、官房と原局にそごがあるのではやはりちょっとまずいんですよ。迷惑を受けるのは一にかかって農業者ですから。そこをしっかり踏まえて、大臣の発言は重いですから、大きいですから、そこに留意されてきちんとした方向で農政改革に努めていただきたい、こう御期待申し上げます。
さて、農地法について質問させていただきますが、今ほどいろいろと与党の方から質問もありましたので重複するかもしれませんが、そこはお許しいただきたいと思います。
そこで、今三十八万ヘクタール余の耕作放棄地があると言われていますね。結局、私、今回の農地法の閣法のあれを見ていますと、農政の失敗によってもう農地の管理がどうにもならなくなった、にっちもさっちもいかなくなって。だから、この際、大幅にターゲットを広げて、枠を広げて、そして米と同じように自由に投げ出そう。農水省ももうバンザイしちゃったのかなという感じがするんですよ。
このいわゆる耕作者主義については後で質問しますけれども、そういう状況の中で、まず最初に、農地政策は私は国の責任だと思うんですね。今は農地の確保は国の責任分野でしょう。国土の利用あるいは食料の確保、こういう技術の向上につながる大きなテーマの中にあります。しかし一方、地方分権委員会では権限の移譲を求めている点もありますね。同時に、全国の知事会などでも、国の関与に対し反対の意見も聞こえてきます。
そういう分権の流れの中で農地の確保をどう考えていくのかという、今前段で申し上げましたけれども、国の責任という問題、今後もしっかりと続けていくのか、そこのところの大臣の決意なり抱負をお聞かせください。
○石破国務大臣 委員おっしゃいますように、農地の確保というものは国が責任を持つべきものだというふうに私は思っております。
したがいまして、農振法の改正案におきましては、国が全国において確保すべき農地面積の目標や都道府県において確保すべき農地の面積の目標の設定基準を明確にするということをいたしております。あるいは、国が農地面積の目標の達成状況が著しく不十分な都道府県に対して是正の要求を行うということにいたしております。優良農地の総量を確保する新たな仕組みというものを構築いたしました。
昨年、農水省が、都道府県が行っております二ヘクタール以下の農地に係る転用許可事務について実態調査をやってみましたが、都道府県において十分な検討がなされないまま転用許可がなされているという事例が、調査対象千三百五十件中百六十四件、一二・一%も見受けられたところでございます。
よって、農地法改正案におきまして、四ヘクタールを超える転用許可を引き続き国の権限とする、二ヘクタールを超えて四ヘクタール以下の転用許可に係る国の同意を維持する、こういうことにしております。この一方、都道府県が農地転用許可制度について適正な運営を行っていない場合に、国が都道府県に対して是正の要求を行うということにいたしました。農地転用許可制度におきましても、国が果たす役割というのを明確にしておるわけでございます。
地方分権は地方分権として大事なことです。しかし、農地を確保するのは国の責務である、そういう意識は強く持っておらねばならないと思っておりまして、よって、このような改正を行うということを御提案申し上げている次第でございます。
○小平委員 賛否は別にして、おっしゃったことはわかりました。
そこで、次に、利用権が今回の農地法改正の大きなテーマですけれども、これについてお聞かせいただきたいと思うんです。
まず、今回の改正は、利用権の強化によって、所有権者は、みずから耕作を行わずとも、これにより安定した地代、借地料を手にすることが可能になっていくこと、これはもうわかります。しかし、現行農政では認定農業者や集落営農組織に農地を集積させ、規模拡大と体質強化、生産性の維持向上を図るのを旨としておりますが、今回の改正によって、耕作者と所有の実態が乖離をし、国が求める農業者への農地集積を頓挫させる危険性が大きいと私は思います。政府は、耕作をしない農地保有者の地主化と担い手への農地集積との整合性についてどう考えるのか、まずこの一点。
また、この所有権の問題では、貸与中の所有権移転は、借り受けた一般企業が購入できますよね。しかし、今回の改正にうたっている農地のすべてについて効率的に利用する、この条文は、今後、所有権移転について緩和することも検討していく方向なのか。また、そうなれば農地の転用、農地の維持が難しくなり、特にこの点では、経済財政諮問会議あるいは財界などで所有権規制の自由化の話が散見されております。私は大変危険を感じております。
特に、経済危機克服のための有識者会議が先般ありまして、アメリカのモルガン・スタンレー証券会社の経済調査部長が来日して、その発言では農地の売買自由化あるいは農業委員会の廃止等々の主張があったように聞いておりますが、農村の現場では、特に我が国政府のアメリカ追従をするような方向を危険視し、最終的には所有権の規制緩和まで行ってしまうのではないか、こんな懸念が出ております。
そういう現場で農業に従事する皆さんの不安感を払拭するためには大臣の明快な答弁がここで必要だと思うんですが、ひとつお答えいただきたいと思うんです。局長がされますか。では、事務的には局長がやってください。
○高橋政府参考人 今回の改正が所有権の規制緩和にまで至るのではないかという生産現場における懸念という論点でございます。
現行の農地法は、御承知のとおり、戦後の農地改革を受けました自作農の創設という、その成果を維持することを目的として制定されたわけでございます。小作地についての所有制限、あるいは国によりますこれらの土地の強制買収など、耕作者による農地の所有を基本とする法体系となっております。
しかしながら、その後の実態を見てまいりますと、現時点においては貸借を中心とした農地の流動化が圧倒的なシェアを占めている。その中で、先ほど申し上げたような農地法の当初の法目的は戦前のような少数の大規模地主と多数の零細小作人という農業構造の復活阻止で、このような意味では、その意義を既に失っているということも事実でございます。したがいまして、今回の改正は、農地を確保し、これを最大限に活用する観点から、農地の利用に最大限着目した制度へ再構築をするということにしたわけでございます。
これに伴いまして、それではこのような新たな法目的のもとに権利移動の規制のあり方をどのようにするかという観点でございますけれども、その場合に、権利の性格に応じまして、権利取得後に不適正な利用があった場合の担保措置がどのようになるかということが最大の問題になるわけでございます。
まず、貸借でございますけれども、不適正な利用があった場合には、当然のことながら契約解除あるいは許可取り消し等によりまして原状復帰が十分に可能でございます。したがいまして、これらの措置を制度上きちんと担保した上で、農業生産法人以外の法人でありましても貸借が可能になるようにしたわけでございます。
一方、所有権でございますけれども、所有者に絶対的な管理、処分権限がございます。一たび権利の移転がなされますと、不適正な利用がなされた場合の原状回復という点について、契約の解除等によりましてもとの所有者に所有権を戻すというようなことは事実上困難と言わざるを得ません。したがいまして、現行の法規制を原則として維持するということは当然のことだというふうに考えております。
したがいまして、今回、規制の見直しについて、新たな法目的のもとにあり方を見直した際に、所有権と賃借権それぞれの今申し上げましたような権利の性質の違いに応じまして、所有権については現状どおり規制をきちんと維持していく、一方、賃借権についてはこれを借りやすく貸しやすくするという観点から緩和するということでございます。
今回、賃借権と所有権に関します基準というものを分けたわけでございますけれども、このようなことは、性質の異なる所有権に対しまして今回の賃借権の緩和というものが影響を及ぼすということではない。逆に、このように分けたことによりまして、従来一体的に措置をしていた際に、場合によっては、賃借権で足りたものであっても所有権も一体的に付随的についてくるというような不合理な事態、そういったものが生じかねないという恐れを払拭したものというふうに考えております。
○小平委員 要するに、今回の改正は、いわゆる所有権をどうするかということなんですよね。今、そこは心配するなということの説明がるるあったわけですが、話はすべてそこに行くと思うんですけれども、まずいろいろな観点から質問させていただきたいと思っています。結論は、言いたいことはそこに行き着くんですけれども。
そこで、次の問題なんですが、耕作放棄地の解消がこの国にとっては今、特に自給率向上も含めて我が国の食料生産体制を維持するためにも大事な観点になります。しかし、今言われた利用権の拡大、政府が考えている遊休農地と企業が考えている参入したい土地が同一のものであるかということについては、私はどうも疑問を感じます。
かつて、雇用の問題でミスマッチが生じましたね。雇用の機会を提供しても応募者はやはりいろいろな選択があったり。それと同じように、参入したい場所と遊休農地が一致するとは思えないんですね。これは同床異夢で、今回の改正が耕地の有効利用、遊休農地の解消にプラスとなるのか、私は甚だ疑問を感じます。
一般的には、参入したい場所は当然だれにとっても魅力があるわけですから、やはり大前提として、この国の農業を守る上でも、農振法上で農用地域とされている地域については規制をかけていく必要が、これが今我が党が主張しているいわゆる農業再生法案につながるものです。そこを我々は非常に重視しているんですけれども、これについてのお考えをお聞きしたいということ。
それと続けて、日本の農地というのは、外地もそうかもしれませんが、農地か農外利用かで大きな格差が生じますね。このことが潜在的な転用の動機につながってくる。今回の農地法では、農地取得の下限面積制限の弾力化も図られているようであります。そうでしょう。特に、地価の高い地域においては、資産保有を目的とした権利取得もあるのではないかと懸念されます。これらに対してどのような対策を講じていかれるのか。
そして、きょうは農業委員会がいっぱい見えていますけれども、これをすべて農業委員会に、あるいは現場に丸投げしてしまう、そんなことでは混乱を招くばかりですから、この改正法の実効性に大きな問題となりますので、これらについても政府からの答弁をいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 最初に、農用地区域内への新たな企業の参入等の問題でございます。
農業生産法人以外の法人の貸借によります参入につきまして、これを農用地区域以外に限定することにつきましては、御承知のとおり、現行の特定法人貸付事業、いわゆるリース方式による企業参入と言われているものでございますけれども、これによりまして参入している農地のほとんど、約八割強でございますけれども、これは既に農用地区域内の農地となっているところでございます。したがって、これを農用地区域外に限るというふうにいたしますと、現在の借り手に大きな問題が生ずるということがまず第一点でございます。
加えまして、新たな借り受けがなされる際に、優良農地の確保が重要でございますので、今回も農振法改正の中で所要の措置を講じておりますけれども、万が一、生産法人以外の法人への貸し付けを積極的にといいましょうか、重視することにより、農用地区域では制限をされているというような場合に、逆に、農用地区域からの除外が促進される危惧もあるわけでございます。このようなことを考えますと、この農地区域外に限定するということについての問題点、これは外部からの参入ではないかと考えております。
またもう一つ、実は今回の改正では、農業生産法人以外の法人という形態でございますけれども、先ほども申し上げさせていただきましたが、いわゆる外部からの企業参入というものだけではなくて、農地の有効利用を図るために、家族農業経営の集落営農の組織化、その中で、今は農業生産法人だけしか法人化の道はございませんけれども、農業生産法人以外の、例えば事業をやっている、あるいは地域住民の方々も構成員になり得る、そういうような集落営農組織も、実は今回の改正によりまして可能となるわけでございます。そういった意味で、農業、農村の地域内からの多様な担い手の育成というところについての動きに重大な支障を生ずることになってしまうのではないかなというふうに考えております。
現に、農用地区域内におきまして耕作放棄地が相当量存在しております。そういったような事態を踏まえますと、どちらかといえば、一律のゾーニングで規制をするというよりも、農業生産法人以外の法人参入につきましては、このようなゾーニングではなく個別の参入許可に当たりまして、きちんとした適正利用が図られるのかどうか、周辺地域の農地利用との調和が確保されるかどうか、そういったことを判断した上で参入の是非を判定するということが重要であると考えております。
後ほど申し述べますけれども、当然のことながら、農業委員会がこれについて判断に迷うことのないよう、きちんとした基準を示していく必要があるということは私どもも十二分に承知しているところでございまして、このような基準はきちんと示してまいりたいと思っているところでございます。
この点につきましては、二点目の下限面積要件の引き下げにおいても同様でございます。
現行の下限面積は、基本的に内地府県五十アール、北海道二ヘクタールというのはございますけれども、これについて、実は知事が既にこの下限面積の引き下げをできることになっております。しかし、知事さんよりも、地域の実態を詳細に把握されております農業委員会が設定することがより妥当であるという観点で今回の改正としたわけでございます。従来の知事の設定の際にも、既に省令で基準を定めておりまして、例えば、地域の平均的規模がかなり小さい、あるいは地域に現に耕作放棄地等が相当程度存在するという場合に、この下限面積の引き下げを行うことができるとしております。
今後の改正におきましても、現行と同様の基準を基本としながら、資産保有目的の問題については、当然のことながら他の基準とも相まってこれを排除するということを前提といたしまして、農業委員会が地域の状況に応じた面積設定ができるよう、こちらの方もきちんとした基準を、省令等を含めまして明確に定めて対応してまいりたいというふうに考えております。
○小平委員 高橋さん、説明いただきましたので、何かもっともらしく聞こえるんだけれども、でも、私が感じるのは、数次にわたる規制緩和の結果、特に今の一般企業の農業参入というのは、今の耕作放棄地の問題も含めて、十分に参入可能な状況になってきていると思うんです。
特に、平成十五年に改正された農業経営基盤強化促進法では、一般企業の農業参入も大幅に緩和されました。非常に数もふえてきている。ですから、農業に意欲がある一般企業はきちんと形態さえ整えれば参入可能な状況になっているにもかかわらず、今回の改正になったということに対し、ううんと思うことがあるんですよね。
今までは、参入したい企業に対しては一定のハードルを課していましたね。そのハードルを越えなかったらだめですよと、ルールがあった。しかし、今回はあえてそのハードルを取り払って、しかも、政府が言う改正案では農振地域にすら一般企業の参入を認めるという、これはまるっきり無条件の、いわゆる容認ということなんですよ。
そこで、先ほども私が言った、今回特に条文でうたわれている効率的という表現、これによって利用者の権利取得を促進する、こううたっておりますが、私は、効率的というのは非常に意味が、とりようによっては違うと思うんですよ、あるいは広いというか。例えば、作物の単価が高ければ効率的なのか、一俵でも多く単収を上げれば効率的なのか、あいまいですね。
この部分については、実際に参入についての是非を判断する現場がきちんと了知をすべき事項でもあると思うんです。経済性の高い企業に、効率的という名のもとに既存農家に先行して農地を取得させる、そういうとり方もあるのではないか、そういうふうに思いますので、この際、効率的ということに対する政府の見解をお伺いしたいのであります。
〔委員長退席、木村(太)委員長代理着席〕
○高橋政府参考人 農地法で言いますところの効率的な利用でございますけれども、これにつきましては、その農地をどのように耕作しているかということに着目をいたしまして、必要な機械、労力等を投入いたしまして、通常求められる水準の生産性を備えた農業生産を行っている状態。これにつきましては、実は、これまでの農地法におきましてもこのような解釈のもとに運用を行ってきているところでございます。したがいまして、この効率的な利用については従来と基本的な運用の方針は変えるつもりはございませんけれども、先ほど来御指摘の、いわゆる家族農業経営とそれから外部等の企業との関係でございます。
これについては、先ほど申し上げましたけれども、新たに許可基準を設けることとしております。家族農業経営と外部等の企業等の参入との間の調和を図るという観点。既存の家族農業経営あるいは集落営農組織できちんと営農が行われるような地域におきまして、例えばこれを壟断するような形で企業が参入するというようなことについては、この条項の運用におきまして、当然のことながら排除されるということでございます。
大規模な平地部で非常にきちんとした家族経営あるいは個別の法人経営が展開されているような地域においては、そういった意味で、企業が参入してきて、このようなところに大きな経営を行っていくことというのはなかなか難しいというふうに思っております。
ただ、一方で、先ほど来申し上げておりますように、地域の状況が、本当にどこを探しても担い手がいない、では外部の企業がそこに入ってくるかという御意見もございましたけれども、その中で、地域の内部で、農村の内部で新しい方策でもって集落営農を立ち上げる、その際の選択肢の拡大も今回はできるということでございますので、そのような点、個々の地域の状況を見ながら、家族農業経営あるいは周辺等の農業経営等の状況を判断して、先ほど来申し上げています、これは農業委員会の判断が混乱をしないよう、あるいは判断に困らないよう、きちんとした基準を示してまいりたいというふうに思っているところでございます。
○小平委員 これは禅問答かもしれませんけれども、効率性というと、やはりいわゆる企業農業経営ですよね。どうしても家族経営というのは、効率性というのは、やはりどちらかといったらなかなか難しいんですよ。だから、この言葉が大きくうたわれると、今後の方向は企業参入がもっともっと優先されていくんじゃないかというような危惧があって、お伺いしたんです。要するに、とらえ方の問題ですよね。
次に、言うまでもなく、規制を緩和した分、参入後の農地の適正な利用が本当になされているかどうか、これはきちんと検証せんければなりませんね。この法律では、これを農業委員会に行わせることとされております。そうですね。
と同時に、今回の利用権は、民法上の規定二十年間よりも長期間の設定が可能になっていますね、五十年間という。まさしく長期にわたる利用権です。
そういう状況の中で、この長い年月では、紆余曲折あると思うんです。適正か不適正か。この長い期間、果たしてこんなことが利用権なのかという疑問があるんです。五十年間といったら、人間社会では大体二代から三代にわたる状況です。
それから転貸、又貸しということも想定される。
ここで思い浮かぶのは、かつて香港がイギリスのいわゆる租借地として九十九年間、今返還されたけれども、あれは実際もう譲渡でしょう。五十年間行くということは、もうもとに戻らないですよ。これは利用権じゃなくて、まさしく利用権に名をかりた譲渡になるんじゃないかという、そんな疑問が消えません。
と同時に、差別をするわけじゃないんですけれども、今特に問題になっている外資系企業とか投資ファンドの参入を……(発言する者あり)宮腰さん、抑えられるんですか。
私は、今世界的な潮流として、投資ファンドがいろいろな発展途上国の巨大な農地を買収していますよね。でしょう。もう既にいろいろな国がやっている。日本も一部、商社が海外でやっていますよね。将来の食料不足に備えて、そういうことが今行われている。さあ、日本の大事な、先人が築いたこの農地がその荒波に洗われていくんではないかというおそれを、皆さんが持たなかったらおかしいと思う。これは差別的な対象じゃなくて、そういう危惧を持って聞いているんです。
と同時にまた、産業廃棄物の不正な投棄。こういうような不正な利用も、五十年間という中にはあり得ますよね。原状回復、こんなこともどうかなという危惧もあります。そんなことを含めて、そうなると訴訟の対象になりますよね。あるいは警察権力の出番も出てくるとか。そういう状況の中で、この問題は異常に危険な方向に道を開くことになるというような気がするんですけれども、これについて大臣のお答えはどうですか。
〔木村(太)委員長代理退席、委員長着席〕
○石破国務大臣 それは、どういう場合に適正に利用していないと認めるかというお話、これをきちんと示さなきゃいかぬということなんだろうと私は思っているんですね。
外資系が云々かんぬんということはございません。それはないというふうに私は承知をいたしておりますが……(小平委員「ないの」と呼ぶ)ございません。また詳細は事務方から答弁申し上げますが、それはないというふうに私は承知をいたしております。
また、争いのもとになるんではないか、不適正な利用をしていることをもって契約を解除するというようなことになれば係争のもとになるんじゃないのということでございます。
そこは、混乱が起きないよう、不適正な利用についての明確な判断基準というものは示していかなければなりません。これは運用基準で明確化するということでございまして、こういうような基準でどうかということは、また、先生方の御意見も承りたいというふうに考えております。
この基準は、許可の取り消しにかかわります、法律の運用上、極めて重要なポイントでございますので、そこは明確にして、混乱がないように、争いのもとになることがないようにしていかなければならないと思っております。
委員御指摘の、資材置き場になっちゃっている等、不法投棄がなされておるとか、こういうものは適正に利用していないというふうに認められるわけでございますが、いずれにしても運用基準をきちんと示さなければ混乱が生ずることは御指摘のとおりです。
○高橋政府参考人 お尋ねの外資ファンド等の関係でございますけれども、まず、ファンドが目的といたします農地の売買等については、これはあり得ないということでございます。
次に、貸借によります企業参入ということになります。この貸借によります企業参入につきましては、基本的に構成員の要素というものは今回は問わないことになっております。
では、これまで行われているような形で大規模なものが参入してくるかといいますと、現実の実態から見まして、地域におきます建設業者等々でございますので、事実上、そのような大きな形で入ってくるというのは非常にないだろうということでございます。
ファンドでは、これは制度上もあり得ません。いわゆる資本構成そのものについては、今回は問わないということでございます。
○小平委員 次の質問がちょっとこれに関連します。そこでお聞きしますけれども、五十年間の長きにわたる利用権設定ですから、その間にどうそれが広げられていくかということについては、やはり今から懸念するのは当然でしょう、今の時点でそういうお答えがあっても。
それで次に入ります。
まず一つは、これはちょっと事務的なことなんですけれども、その前に、例の農地基本台帳、これは法的な根拠はないですよね。どうですか、この際、農地の保全のためにも、農地基本台帳、これを法定台帳というか、個人情報保護の関係もあるんでしょうけれども、これについては今後どういうふうに進められていくか、まずこれについてお答えください。これは局長で結構です。
○高橋政府参考人 お尋ねの農地基本台帳でございます。
これは農業委員会がその事務を執行する上での基礎となる資料として活用するために、昭和六十年から農業委員会交付金、いわゆる農業委員会に対します国の助成の対象事業に位置づけまして、農業委員会がその区域内の農家を単位として必要な情報をこれまで整備を進めてきたものでございます。
この農地基本台帳につきまして、法律に基づきます法定台帳にするということでございます。
基本的には、法定台帳の効果として一番に考えられますのは、台帳に記載されている事項が真正であることを前提といたしまして、農地法等に基づきます権利の設定、移転の事務をこの台帳に基づき行うということでございます。
しかしながら、現実の台帳の実態でございますけれども、例えば私どもが調査をしているところによりますと、その補正、修正等について、年一回程度行っている農業委員会が大半であるということでございます。権利の設定、移転の真正な表示事項としての根拠たり得る精度というところにはまだ届いていないという状況にございます。
したがいまして、農地基本台帳につきましては、農地の売買や貸借の許可等を行う際に把握した情報、農業委員の日常の活動により把握いたします情報等を、まずは農業委員会において日々きちんと実態として整備していただくということが重要であろうと考えております。
このため、今回、法律の見直しの中で、農地を相続した場合、このときは農地との関係は一番難しくなるわけでございますけれども、農地を相続した者は農業委員会へきちんと届け出を行うという規定を設ける。また、これまでも農業委員会が行っておりました農地の利用状況の調査を一層促進するために、この調査についての義務づけを行うこと、あるいは農業者等が遊休農地がある旨を申し出できるというような仕組みも設けることといたしております。
あわせて、一番大事なのは、いかにこれを整備するかでございます。
平成二十一年度予算におきましても、農業委員会が農地所有者の相続の発生の状況等を把握いたしまして、耕作放棄の要因となりやすい不在地主を特定することに対します支援を行うとともに、農地情報そのものにつきまして、まず、きちんとした地図に基づきます地籍の確定を行っていく必要がある。基盤となる地図を整備いたしまして、これに農業委員会を初めといたしまして関係の農業団体が保有しております農地の情報を付加いたしまして、これを共同の利用に供するというような措置についても支援をしているところでございます。
まず、予算面等も充実をしながら、制度面の改正も行いつつ、農地の情報を適切に把握し得るようにし、その有効な活用を行っていくことが先決であり、前提であるというふうに考えているところでございます。
○小平委員 長々と答弁、御苦労さまでした。
農業委員会も聞いていますので、しっかりこれについての整理をしてください。
そこで、先ほどの、いわゆる外資系あるいは投資ファンドのことの話があったので、これはきちんと詰めてもらいたいと思うんです。ただ、ちょっと懸念を表したいことは、先般、新聞にも出ていましたけれども、農水省は、七日に、いわゆる農地法で義務づけられている許可を受けずに違反転用した農地、これについての発表をされましたね。そうでしょう。そのときに、二〇〇八年では八千百九十七件に上る違反転用があったと。三年間でも、年間約八千件が違反転用をしていると。
しかし、問題はその先なんですよ。その違反転用の約九〇%が追認許可を受けているんですよ。普通なら、違反転用したのなら、そこで罰則はもとに戻すことでしょう。ところが、実際には、しようがないなというので、九〇%は追認許可を受けている。原状回復が図られるどころか、むしろその違反を追認しているんですよ。この発表を農水省がしているんですね。これは農業新聞に出ていました。そうでしょう。これは農水省発表なんだから。
こういうことがあるので、今の時点では、今あなたたちには法改正が至上命題だから言っているけれども、外資系は心配ないですと。宮腰筆頭理事もこう言ったけれども、今の時点では。しかし、我々は、やはり立法府として将来に向かって責任がありますから、きちんと今ここでもって議論をして、そこを整理しなきゃなりません。だから言っているんですよ。
これはまだこの後も審議が続くでしょうから、また議論してください。今のところはそれ以上答えられないでしょう。
そこで、実は、私、過去を振り返って、第百五十一回国会、平成十三年でした。農業経営再建特別措置法案というのを議員立法で私が出したんですよ。これは、当時、石破さんも農水委員会におられて御記憶だと思いますが、あのとき、私の法案を廃案にしちゃったんじゃないかな、あなたが与党の理事で。これは、つるされて、結果的に廃案になってしまったんですよね、自民党の多数によって。
しかし、この趣旨は、農業者が国の施策に従って規模拡大を行った結果、その負債さらには農産物の異常な急落によって、ダブルパンチで経営危機に陥った、そういう農業者に対し、一たん負担を軽くしてあげようと。ですから、国がその農地を一たん買い入れをして、そして負担を軽くした上で、それを小作として利用し、力がついた段階でそれを買い戻す、そういう猶予を与えよう、これが趣旨でしたけれども、これは今お話ししましたように、当時、自民党の多数によって、つるされて、廃案になりました。
しかし、その後、私の主張が、提案が大分受け入れられて、いわゆる農地保有合理化法人の改善がなされて、その方向が大分よくなりましたので、一応、評価はしております。しかし、さらに農業者の負担を軽減した上で、内地農家に農地が蓄積される工夫をもっとしていくべきじゃないか、こう今でも私は主張したいと思うんですね。
耕作放棄地の問題は大変大事ですよね。農業者が耕作できなければ企業に参入させればよい、これでは安易過ぎると思うんです。
今回のこの法改正で結論的に私が言いたいことは、農地法の一条なんですよ。農地法の一条がこの農地法の精神ですよね。第一条では、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認める、これが一番最初のうたい文句なんです。いわゆる耕作者主義です。これは先人がつくり上げた英知の結果です。それを今回の法改正では、もうどこを見ても一条の耕作者主義はなくなっちゃったんですよ。だって、宮腰さん、改正のどこにも書いてないですよ。
我が国は、戦後の農地解放によって小作制度をやめて、いわゆる耕作者主義にしたわけでしょう、不在地主を否定して。その大事な精神がこの改正によって損なわれようとしている。私は、ここが一番、今回の法改正に大きな懸念を申し上げたい点なんです。
大臣、農地解放によって小作制度が廃止されて、この国の農業の戦後のスタートがありまして、きょうに来た。いろいろな農政の、失敗と言ったらあなたたちは抵抗するでしょう。しかし、外的な、外国からの要因もある、状況は変化してきた。それで、今そういうふうに持っていこうとしている、利用権を広げようと。しかし、基本である精神として、耕作者主義はしっかりとうたい直すべきじゃないですか。これを大臣に問いたいんですが。大臣が答えてください、大臣が。
○石破国務大臣 耕作者主義、つまり、耕作する者が所有することを最も適当と認めるということでございます。
これは、実際に、条文上、第一条というのは改正をいたしておりますので、委員が御指摘のような御懸念というのは当然出るのではないかというふうに考えております。
この第一条の目的規定についてでございますが、改正いたしました後の農地法の内容全体をとらえてみまして、今日的に見て何が農地法の究極的な目的なのであろうか、そしてまた、その目的を実現するための具体的な措置内容をどのように的確にあらわすかという観点から整理し、条文化をいたしました。ということはどういうことかと申しますと、まず国内の農業生産の増大を図り、もって国民に対する食料の安定供給の確保に資するということを農地法の究極の目的と定めたものでございます。
その上で、国内の農業生産の基盤であります農地が、現在及び将来における国民のための限られた資源である、このような認識のもとに、農地を農地以外のものにすることについての規制、農地を効率的に利用する者による農地についての権利の取得の促進、そして、農地の利用関係の調整、農地の農業用の利用を確保する措置という農地法の主要な措置内容を規定したものでございます。
一条では、法目的の一つとして、耕作者の地位の安定、まさしくここが委員の御指摘のところだと思いますが、そのようになっております。
今回、農地の利用を基本とする制度として再構築をするため、耕作者の地位の安定のための主たる措置でありました自作農の維持、創設のための措置は廃止をいたします。このため、耕作者の地位の安定という規定が削除をされました。しかしながら、今回の改正でも、農地を貸借により耕作あるいは利用する方の権利を保護するための措置、これは残しております。
この意味で、耕作者、利用者の地位の安定は引き続き図られることになるというふうに私としては考えておるところでございます。
○小平委員 大臣、お言葉ですけれども、今の答弁は、そういう方向をうたっていますと言っているんですよね。私が言っているのはそうじゃないんです。耕作者の云々と今最後に言われましたですね。そしてここにも確かに、条文で、改正案では、「国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。」これはこれでいいですよ。
そうじゃなくて、私が主張していることは、まず柱として、背骨として、大きな基本的な姿勢として、耕作者主義をしっかりとまず明示する。そこが欠けていては、今大臣がるる答弁されたけれども、どこまでもこれは広がって使われてしまうんです。
拝金主義と言ったら語弊がありますけれども、いろいろなこの国の今の状況の中で、土地がいろいろな意味で利用されております。しかし、農業者がしっかりと農地を守っていくことによってこの国の大宗である国土が良好に維持されているんです。これは森林も林野もそうですけれども、耕作地というものはそういうことがあってきょうまでつながってきた。
これを先ほど言った効率性とか有効利用とか、そんなことの観点にすりかえていったら、この国の農地は将来的にどうなるか。ですから、農地法の精神というのは絶対に曲げちゃいけない。その意味は、耕作者主義をきちんと明示する、そのことが今回のこの法改正の大きな問題点になる、私はこう考えております。
そこで、時間も来ましたので、改正案については与野党理事の協議でもって長時間の審議が予定されているようであります。参考人もあるようです。したがって、この後さまざまな意見が審議を通じて出ると思うんですね。そこでしっかり審議を展開されて、間違っても、先人の英知でもって築いた耕作者主義という精神がゆがめられないように、法改正に向かっては進めていただきたい、このことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 次に、仲野博子君。
○仲野委員 民主党の仲野博子でございます。
きょうは朝から、農地法改正案につきまして、多くの議員方から議論されているわけでございます。多少重複する部分もあるかと思いますが、視点を変えて質問させていただきたいな、そのように思っております。
今回提出された農地改正法案のポイントは、大きく二点あると思うんです。その一点は農地の確保を図ること、二点目として有効利用を促進する、この二点かなと理解しているところでございます。
まず、農業生産法人への出資制限の緩和について伺ってまいりたいと思います。
農業生産法人制度は、農業経営を行うために農地を取得できる法人の仕組みとして昭和三十七年に創設をされ、その後、数次にわたり要件の見直しが行われ、今日に至っているわけでございます。農業経営の法人化が農政の重要課題の一つとされている中、農業生産法人制度のあり方の見直しは大きな意味を持つと考えております。この法律案は、農業生産法人について、地域の農業者を中心とする法人であるとの基本的性格を維持した上で出資制限を見直すこととしておりますが、その理由と見直しの具体的な内容について、高橋経営局長に答弁をいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 農業生産法人制度の今回の改正でございますけれども、一つ目でございますが、農業生産法人の経営の安定、発展を図るためには、農業生産法人が生産いたします農畜産物につきまして、加工、販売等の面で関連事業者との連携を通じた事業展開を促していくことが重要な課題であるというふうに考えているところでございます。
このような連携を行う際に、関連事業者から出資を受け入れるということは、一つには、生産法人の財政基盤を強化するということにもなります。また、出資関係を通じまして、その他のノウハウの提供を初めといたします事業展開に当たって必要な関係を深化させていく、そういったことにもなるものでございます。
このようなことから、今回、食品加工販売事業者等の関連事業者の農業生産法人への出資につきまして、現行の関連事業者一事業者当たりの議決権上限、これは今現在、総議決権の十分の一以下ということにされているわけでございますけれども、この一者当たりの制限ということについては、今申し上げたようなことから、なかなか理由がないということで、これを撤廃するということにしたわけでございます。
もう一つは、いわゆる関連事業者の中でもさらに密接な関連を有するというようなもの、例えば農商工連携事業者等ということが想定されるわけでございますけれども、このような密接な関連が一般の関連事業者よりも高いと思われる者につきましては、このような者の議決権の合計の上限につきまして、今、関連事業者の議決権の合計については、原則、総議決権の四分の一ということになっておりますけれども、例外的に総議決権の二分の一未満まで緩和するということにしたところでございます。
次に、第二点目でございますけれども、法人に農地を貸している農家の方々、これは当該農業生産法人に参加をするに際しまして議決権の制限を受けません。これに対しまして、実態的にはほぼ差がないというような状況にありますが、農業生産法人に農作業を委託している農家の方々、このような方々は、実は現状、関係事業者扱いという形にしまして、議決権制限が課されているという形になるわけでございます。
実態的に、農地を貸すような場合と農業経営を委託するというところで実態的な差というものがあるというふうには考えられません。したがいまして、この差を解消するために、今回、法人へ農作業を委託しておられる農家、こういった方々にも、議決権制限は受けない、いわゆる内部の構成員とすることにしているところでございます。
○仲野委員 この法律案は、関連事業者の議決権を原則四分の一以下とし農商工連携事業者が構成員である場合について、二分の一未満までに緩和するというものであります。
現行制度でも、認定農業者である農業生産法人についても関連事業者の議決権は二分の一未満までに緩和されている。農商工連携の推進、認定農業者の育成、確保は、ともに重要な施策であります。農商工連携事業者が構成員である農業生産法人、認定農業者である農業生産法人は、農政推進上、望ましい担い手であるということになると考えられるわけであります。
ということは、農業生産法人の関連事業者の議決制限が、四分の一以下ではなくて、二分の一未満を事実上のスタンダードにして制度運用していくものと理解していいのかどうなのか。また局長にここをはっきりとお尋ねしていきたいと思います。
○高橋政府参考人 農地につきまして、法人が貸借のみならず所有権も含めた権能を有するという場合について、その法人の要件を定めているのが農業生産法人制度でございます。これにつきましては、個人の農業者と法人というものとの間での均衡等を勘案いたしまして、農業生産法人のあり方を規定しているところでございます。
一方、認定農業者制度は、今委員御指摘のとおり、今後の我が国農業の担い手としてこれを育てていく、育成をしていく、そういう経営対策上の政策目的のための制度でございます。したがいまして、先ほど申し上げておりますような、農地に対して個人と法人との関係をいかに律するかという一般的な法人対個人との関係の特例的な意味合いで、この認定農業者について、これまでも上限の例外措置、特例措置を講じてきました。
今回は、認定農業者制度と趣旨は似ておりますけれども、着目する場面については、連携の度合いがさらに高い、法律に基づきます連携を私ども今想定しておりますけれども、そのような連携。法的にもきちんとした形で認定を、これも計画を認めていきます。そういうようなものについて見れば、認定農業者と形は違いますけれども政策として誘導していくという意味では同じでございますので、個人対法人という関係の一般原則に対しまして、こちらも特例的に行っていくということでございます。
あくまでも、まず個人と法人との関係については、現行の農業生産法人の基本的な考え方というのが一般論でございます。
○仲野委員 農業生産法人のそもそもの基本的性格というか、これは従来から、関連事業者の議決権制限を設けた理由について次のように説明がされてまいりました。
農業生産法人制度の趣旨は、構成員が農地等についての権利と労力を提供し合うことにより、協同して農業経営を発展させるためのものであることから、農地等の権利の提供者またはその法人の事業の常時従事者以外の者の参入を認めることによって、これらの者の意思により農業生産法人の経営が支配されることのないようにするため、農地法第二条第七項第二号ヘに掲げる者、すなわち、関連事業者の議決権を一定の範囲で限定することとしたものである。これは農水省の事務次官通知でありました。
この法律案は、農業生産法人の関連事業者の議決権制限を二分の一未満にまで緩和しつつ、農業生産法人は地域の農業者を中心とする法人であるとの基本的性格を維持すると説明しておりますが、半数近くまで農外資本が入った法人を地域の農業者を中心とする法人と言えるかどうか、疑問に思うところでございます。農業関係者の出資が二分の一を超えていれば地域の農業者を中心とする法人であると言えるのであれば、なぜ原則四分の一以下という出資制限を存続させたのかどうなのか。これは農外資本による支配に対する懸念を払拭できないからではないのか、そのように思うところでございます。
また、議決権制限の大幅緩和は、構成員が農地等についての権利と労力を提供し合うことにより協同して農業経営を発展させるためのものであるという農業生産法人制度の趣旨を百八十度転換し、関連事業者の意思により農業生産法人の経営が支配されても構わないと方針を転換したものと考えられます。
今回の関連事業者の出資制限の緩和により、農業生産法人の基本的性格をどのように考えていらっしゃるのか。また局長からお答えをいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
農業生産法人につきましては、先ほども申し上げましたけれども、いわゆる個人の農業者と、法人格によります農業経営というものの均衡という観点から、それぞれの事業要件、役員要件あるいは出資要件等を定めているところでございます。
したがいまして、今回の改正によりまして、いわゆる連携の程度が高い、かつ、法律によります連携計画というものの認定につきましては、原則でございます四分の一というものを超えまして二分の一未満までにするということでございますが、これは先ほど委員も御指摘のございました、既存の現行の認定農業者と同列の措置でございます。したがいまして、認定農業者の現行の措置を超えるというものではないということは、まず御理解いただきたいと思います。
そもそも、一般の関連事業者につきましては、従来から、いわゆる議決権の合計については四分の一というふうにしているわけでございますけれども、これは、農業生産法人の過半の議決権を有する構成員が総会等に出席をいたしまして、出席した構成員の有する議決権の過半により、通常議決が行われるという際に、この議決権行使に至らないということを前提とした措置でございます。ですから、先ほど来申し上げております、ここの部分は基本的には変えません。
しかしながら、やはり政策的に誘導する必要がある、しかもこれは、法律に基づいて公的な一定の関与が行われる、そういったものについては、特例的なもの、これは認定農業者も同じでございますけれども、今回それと同様な考え方で、先ほど来申しております法的に連携が密接であると認定をしたものについて措置をするということでございます。
○仲野委員 今回、農地法の一部を改正するということでこうした法案が上程されたわけであります。そもそも、農業従事者の減少、高齢化等が進む中で、我が国の農地について耕作放棄地の増加に歯どめがかからない現状にある。こんな中で、効率的な利用に必要な集積が困難な状況にある。こういったことから、将来にわたって食料の安定供給を確保していくため、我が国の農地制度を抜本的に見直すこととするために、この一部改正する法案がこのように上程されたわけでございます。
そこで、局長にお聞きしたいのでありますけれども、先ほど来、個人、法人、その連携の程度が物すごく高い、このようにお答えになっていらっしゃるわけであります。私は、今回、農地を多くの農外の方たちに提供する、かなり門戸を広げられたということは、ある一定の評価をさせていただくわけであります。
ただ、イメージとして、農地で農業に従事する。本来であるならば、いろいろな意味で、日本の本当に古くからの農業のあり方というのは、田畑を耕したり、あるいは果樹をやったり、さまざまな農業の形態があると思います。そこに農外の方たちが、今回こういった法律も変わったわけであるから農業をやってみたいということでやられた場合に、例えば、その地域にその方たちが住んで、そして農業を営んでいく、これが本来の姿であると私は思うんです。たまたま農外の方が新しく農業をやるといって、一年に数回しか来ないでその土地で農業を営むというのは、私は、とても難しいものもあるし、果たして農村というふうに言えるのかどうなのかということであると思うんです。
そういった原点に返って考えたときに、先ほど来から、連携してと、お言葉では本当にそれは理想で、そうであればいいなと思うわけでありますが、本当に農地制度を一部改正するに当たって、どういったことを基本に置かれてこの法案を出されたのかということを、これは局長と大臣に聞いておきたいと思います。
○高橋政府参考人 制度創設の基本的な考え方につきましては先ほど大臣が答弁されたところでございますが、私の方からは、今、委員御指摘の、どのような姿を今回想定しているかということについてお答えさせていただきたいと思います。
当然のことながら、現行制度でもそうでございますけれども、当該農地に対する権利を取得いたしまして、そこできちんと農業が行われる、この実態がなければ権利取得は認められないというのは、これは大基本でございます。
委員御指摘のとおり、年に数回しかその圃場にあらわれないで現実に本当に農業ができるのか。例えば雇用を使ってやるにしても、雇われている者がまたそのような状態ではやはりおかしいわけでございます。経営主と実際に耕作をされている方が違うというのは間々あるわけでございますので、既存の、例えば通作距離等の面でも従来からそのようなことが言われておりますが、どのような形かはいろいろな形があろうかと思いますが、そこで、きちんと圃場で農作業が行われているということが今回の農地取得のまず基本中の基本だというふうに思っております。
○石破国務大臣 先ほど小平委員にもお答えをしたところでございますが、「国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資する」、これを農地法の究極の目的にした、これが一番のポイントなんだろうと私は思っておりまして、そのためには何がいいのかというような法律のつくり方をいたしたものでございます。
これはもう何十回も言っていますので、聞き飽きたと言われるのかもしれませんが、とにかく、耕作放棄地はどんどんふえる、農地転用はどんどん行われる、その中で違反転用も相当に多い、一万件になんなんとする、それだけ違反転用があるわけでございますね。農業の生産は某々大電機メーカー一社に及ばない、所得は十五年間で半分になりましたということでございまして、これを、農業生産を増大させたい、そして国民に食料を安定供給したい、このために農地をどう使うべきなのかという実際論なんだと私は思っております。
今局長から答弁申し上げましたように、年に一回か二回来て、いわゆる小作人搾取みたいな、そういうようなイメージを持たれる方もあるのですが、そうではないのだと。どのように農地を利用されることが一番よいのかということに基礎を置きましてつくったものでございます。
ですから、委員御指摘のような多くの懸念がございますので、その懸念を払拭するようにさまざまな制度を仕組みました。そのことの実効性について、またこの委員会において御議論を賜りたいと思っておるところでございます。
○仲野委員 今、局長そして大臣からお答えをいただいたんですが、いずれにいたしましても、今回、農業生産法人に出資した農外法人の影響力が強まり、農業生産法人の経営に影響が出るのではないのかという率直な懸念の声が地元の農業委員会からも寄せられているわけでございます。
この法律案には、先ほど来からお答えいただいてはいるんですが、農地貸借の規制を緩和し、一般企業が農地を借りやすくする改正も盛り込まれ、直接参入ではないけれども、リースに限定されている。これに対して、農業生産法人の出資制限の緩和は、間接的であれ一般企業の農地所有を可能とするものであります。こうしたことから、地元の農業委員会の指摘は杞憂であるとは言い切れないと思います。
今回の法律案において、農業委員会の業務量が大幅にふえ、責任がとても重くなるわけであります。農地を守り、その利用を確保するために重要な役割を果たされている農業委員会の声には、きちんと対応する必要があります。先ほど、多くの議員からも指摘があったわけでありますけれども、こうした懸念にどうこたえていくのか、大臣、お答えをいただきたいと思います。
○石破国務大臣 それは、御懸念は私どもとして真摯に承らなければいけません。今回、出資要件を見直しますが、これは農業生産法人の経営の安定、発展のために、つまり、どれだけ経営が安定するかということが実はとても重要で、そのために出資要件を見直しておるというものでございます。連携がもっと円滑に行われるようにならなければ、所得の増大も図られないというふうに思っておるところでございます。
しかしながら、要件緩和を行いましても、農業生産法人が地域の農業者を中心とする法人である、この性格は堅持するということは、先ほど来局長から答弁を申し上げておるとおりでございます。
このようなポイントなるものを、農業委員会によく御理解をいただきというような生意気な言い方はよくないのかもしれませんが、このようなポイントについて農業委員会が重要な役割を果たしていただくことになるわけで、そこのところの周知につき、私どもとして考えられる限りの方策は講じていかねばならないと思っております。
この農地法の運用を現場で行っていただくのは農業委員会でございますので、ここに十分御理解をいただけなければ、どんなに立派な制度を仕組みましてもこれは動きません。農業委員会の方々がきょうも大勢お見えと聞いておりますが、ここはこうあるべきだというようなこと、そして、その農業委員会の活動というものの基盤をこういうふうに支援をすべきだというようなことは、私も省内でよく申し上げていることでございますが、虚心坦懐に承っていかねばならないことだと思っております。
この農地法の改正の趣旨というものが本当にできるかできないかは、農業委員会にかかるところが極めて大だという意識を持っておりますので、このように答弁を申し上げる次第でございます。
○仲野委員 きょう、多くの農業委員会の皆様方が傍聴されておりますけれども、この法案を改正するに当たりまして、全国の現場で苦労されている農業委員会の委員の皆様方に、まず、そのお声を聞いたのかどうかを局長に確認しておきたいと思います。
○高橋政府参考人 全国で千七百余にわたります農業委員会がございます。その農業委員会一々に全部をお聞きしたということではございませんけれども、少なくとも、私ども、今回の法律改正の作業に当たりましては、ほぼ足かけ二年以上にわたりまして準備をしてまいったところでございます。その過程におきましては、担当者が現地に赴き、その場におきまして、各生産現場において、当然のことながら、この執行の担当を行っております農業委員会の皆様方とも意見交換をしております。また、全体的な意見の取りまとめにつきましては、私ども、農業委員会系統組織の中央組織でございます全国農業会議所等々とも意見交換をさせていただいているところでございます。
いずれにいたしましても、大臣も今申し上げさせていただいたとおり、生産現場でこの制度を実効あらしめるものは、一にかかって農業委員会でございます。私ども、先ほど来申し上げておりますけれども、農業委員会がその職務の遂行に当たりましてきちんと判断ができる、当然のことながら、法律あるいは政省令、そして基準、これは従来も同じような体系でお示ししているわけでございますけれども、今回の改正に伴いまして必要となる運用基準等についてはきちんとお示しをした上で、自由裁量ではございませんので、やはり羈束的な裁量行為がきちんとできるという形で対応ができるように、私どもとしてしてまいりたいというふうに考えております。
○仲野委員 私、機会あるごとに申し上げているのは、法律改正するに当たりまして、トップダウンではなくてやはりボトムアップ、現場の声というものをどうこの法改正に反映をさせていくかというのが一番大事なところではないのかな、そのように思っているわけであります。
前にも申し上げたかと思うんですが、せっかく事務方の皆さん方が一生懸命制度改正のために日夜努力されておりましても、その制度が本当に多くの方たちから喜ばれるものでなければ、本当に、これだけ頑張ってやったのに何か不満だけが残されるのかなというのではなくて、ああ、いいものをつくっていただいたと現場からやはり喜ばれるものでなければだめでないのかな、そのように思うわけであります。しっかりとニーズに対応していくというのが、よく大臣からおっしゃられる言葉であります。今の石破大臣というのは、作文を読むのではなくて自分の気持ちでお答えしているということで、私は石破大臣に物すごく期待を持っているものであります。
したがいまして、今回のこの農地法改正も、本当に多くの時間をかけて議論をしていただかなければ、本当にこの農地というのは、財産権、いろいろなものが絡んでまいります。非常に複雑なものであるものですから、しっかりと議論をして、国民の合意が得られるようなものにしていくべきものであると思っております。
きょう、私の時間はまた昼からもあるみたいなのですが、ここで午前、何か時間が中途半端になってしまいます。委員長、ここで終わって、午後に残った時間を足してもらっていいですか。
○遠藤委員長 結構です。
○仲野委員 それでは、そんなことで午前の部を終わらせていただきます。
○遠藤委員長 この際、休憩いたします。
午後零時二分休憩
――――◇―――――
午後一時五十三分開議
○遠藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。仲野博子君。
○仲野委員 次に、農地の借り手が撤退した場合への対応ということで、今回の法律案は、貸借の規制を見直して、農業外の法人も個人も農地を借りやすくして、農業への参入促進、農地の利用確保を図ろうとしているわけでありますが、原則二十年以内となっている賃貸借期間も延長し、当事者が合意すれば五十年以内の任意の期間を賃貸借期間とすることができる、その改正が盛り込まれているわけであります。
問題は、この期間中に借り手が何らかの事情で離農せざるを得なくなった場合どうするかということ。プロの農家でも離農せざるを得ないことがあるわけであります。資本力のある一般企業でも、農業ではなくて本業がうまくいかず、倒産のやむなきに至ることも十分想定されます。現場の農業委員会もこの点を心配しておられます。
どのように今後対応されていくのか、まず局長にお尋ねいたしたいと思います。
○高橋政府参考人 お尋ねの、農業を営む主体が、残念な結果でございましょうけれども、撤退をせざるを得なくなったような事態でございます。これにつきましては、今回の改正に伴いまして新たに参入される方ということの場合もあるわけでございますけれども、これまでも、このような事態については、個人あるいは法人を問わずあったわけでございます。
今回の改正のねらいは、先ほど来申し上げておりますけれども、そもそも、周辺に農業を担っておられる方が少ない、自分たちがもう高齢化で農地をこれ以上なかなか管理できないんだけれども、周辺にもおられないというようなところが非常に多いわけでございまして、だれかに貸したいというような場合に受け手となり得る者を広く確保できるようにしようとするものでございます。したがいまして、このような形で参入が行われないような場合には遊休化しやすい土地だということが、まず前提としてございます。
そういうような土地で新たな参入が行われた場合、しばらくして、どうしても経営上うまくいかなかった、撤退をしたというような場合でございます。これは、当然のことながら、当該撤退した後につきましては次の借り手を、今回の改正に伴いましていろいろな形で措置しております集積円滑化組織等々を使いながら、いわゆる新しい借り手を見つけるルートも広げるということになるわけでございます。そういうような農地利用集積円滑化事業等によりまして、次の担い手に円滑に継承してもらうということをまず行ってまいりたいと思っております。
その場合、直ちに見つかるかどうかということも当然あるわけでございます。そのような場合には、農地利用集積円滑化団体あるいは農地保有合理化法人がその農地を当分の間引き受けて管理をする。新たな担い手が見つかるまでの間、このような公的な組織が保全管理をしていただくということが可能でございます。そして、これにつきましては、私どもといたしましても、予算措置を講じまして、このような公的組織が次の担い手が見つかるまでの間お引き受けをして保全管理をするというようなことについても対応するということにしておるところでございます。
いずれにいたしましても、撤退後においてなかなか、今度は、権利だけは持っているんですけれども、実態的には撤退をしてしまって形式しかないような場合、こういったこともございます。そのような場合には、今回、遊休農地対策を拡充することにしておりまして、必要に応じて、周辺から利用を望むというようなことがございますれば、利用権の設定等についても行いやすくするということで、いずれにいたしましても、こういう不幸な事態が生じたときに、次の借り手を見つける道を広げてあげる、それから、見つからないときにはその場合の管理をするということで対応してまいるということでございます。
○仲野委員 新しい借り手を早急に見つけていくということで、本当にこういった場合でも、先ほどから私が申し上げているように、やはり一番現場で対応していかなければならない農業委員会の委員の皆さん方が大変苦労をされると思うのであります。農地が農地としてきちんと利用されていくために、現場の状況を把握し、きめ細かく対応していただかなければならない。そういった意味においても、やはり現場の農業委員会の方たちにきちんと周知徹底、そういったことを指導していただきたい。
あと、先ほど予算措置ということもお答えいただいたので、この予算措置も、ただ丸投げするんじゃなくて、やはり政府としてしっかりそのことについても責任を持ってやっていただけるように、お願いをしたいと思っております。
余り時間もないものですから次に進めさせていただきますが、このたび、標準小作料制度が廃止になったわけであります。これを廃止することとし、別途、地域における借地料について、作物別あるいは圃場条件別等の実勢借地料の情報を幅広く提供する仕組みを新たに設けることとしております。
標準小作料制度を廃止するについて、法律案の概要ペーパーにも、昨年取りまとめられた農地改革プランにも明確に書かれていません。有識者会議に提出された資料などを読み込んでいくと、農産物価格が市場原理によって決定され、個々の農業経営も多様化しているので、この賃借料水準を公定する標準小作料制度は要らない、そのかわり実勢借地料の情報提供の仕組みを設けることとしたという考え方のようであります。
確かに、契約小作料の減額の勧告などという仕組みが活用されたケースは皆無に等しいものと思われます。しかし、実際の農地の賃貸借契約においては、契約書面に具体的な金額を書かずに、賃料は標準小作料としている例が相当あるわけであります。標準小作料は農地の貸借に当たって規範となっておりますが、地元の農業委員会からも、また農家の皆さん方からも、標準小作料制度の必要性を指摘する要望が寄せられているわけであります。
現場が要らないという制度ならこれは廃止するべきであります。しかし、現場が必要だと言っている制度をなぜわざわざ廃止するのかなと。まず、この点、局長に明確にお答えいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 標準小作料制度でございます。これは、昭和四十五年の農地法改正時におきまして、その当時までございました小作料の最高額統制、これにかわるものといたしまして、実際の小作料水準の目安を示すものという形でこの制度を導入したわけでございます。
また、この一つの効果といたしましては、委員今お話のございました、実際の小作料の水準が非常に高額になっている、そういった場合に減額勧告を行う、そういった意味での基準という要素もあったわけでございますが、現実の作用といたしましては、委員御指摘のとおり、この減額勧告というのは近年ほとんど行われている状況にはございません。
したがいまして、今この標準小作料が持ちます機能と申しますのは、やはり実際のいわゆる賃貸借契約の際の賃貸借料、小作料の目安を与えるものということだろうと思っております。
その場合に、それでは目安としてはいかようなものがいいのであろうかということでございますけれども、現在の標準小作料の算定方法につきましては、これは法令に基づきまして、一定のルールに従って定められております。これが、御承知のとおり四十五年以来の制度でございますので、当時の米の政府買い入れ価格等の算定の手順、手法に準じて行われているということでございます。
実際的には、当時いろいろ標準小作料と実勢小作料との間で差があった事例もあるわけでございますが、近年実はこれが非常に接近してまいりまして、ある意味どちらが親でどちらが子なのかというような事態にも立ち至っております。
そういたしますと、実際、何らかの取引で目安を出す、これはもう、例えば地価の水準ですとか、さまざまな制度はございますので、その目安というものを示さなければいけないのは私ども当然だと思っておるわけでございますけれども、それはやはり、より現実に結ばれているもの、これをきめ細かく提供していただく。しかも、提供いたしますのは同じ農業委員会でございますので、機能として、そういったよりきめ細かなものをするということで、この取引水準、小作料水準、賃借料水準の目安たり得るということの方がより現実的であり、また妥当であるという判断のもとに、今回制度改正をしたところでございます。
○仲野委員 今回、新たに導入する実勢借地料の情報提供の仕組みがどのようなものなのか、標準小作料制度にかわり得る、あるいはそれ以上に現場にとって使い勝手のよい仕組みとなるのかどうなのか。今、局長の方から説明いただいたんですが、これについて大臣からも御答弁いただきたいと思います。
○石破国務大臣 今、局長から御説明をいたしました、そういうような趣旨で実勢的な借地料の情報提供を行いたいということでございます。
これは、使い勝手がいいものでなければ何のためにこういうことをやるのかわけわからぬということになるわけでございまして、改正後の農地法第五十二条におきまして、農業委員会は農地の利用関係の調整に資するため借り賃等の動向その他の農地に関する情報の提供を行う、こういうふうに定めておるところでございます。
この賃借料に係る情報の提供ですが、暦年でございますが、過去一年間に実際に締結された賃貸借契約の賃借料に関するデータ、これをベースといたします。旧市町村、大字単位などの地域別、水田、普通畑、樹園地などの種類別、圃場整備の実施状況の別等に区分をいたします。その上で、区分ごとに最高額、最低額、平均額を示すというふうにしたいと思っております。
これは暦年でございますので、お示しするのは大体三月とか四月とか、そういうような時期になろうかと思っておりますが、そのようにきめ細かい情報を提供することによって、現場にとって使い勝手がいいなというふうな実感を持っていただけるものと考えておる次第でございます。
○仲野委員 この法案が通ればのことですが、これからスタートしてやっている中で、いろいろな問題等も発生するのかなと思うんですけれども、いずれにいたしましても、現場が混乱しないようにやっていただけるように、常にその体制をしっかりとやっていただければなと思っております。
次に、農地税制について伺ってまいりたいんですが、今回のこの制度の見直しを前提として、農地の相続税の納税猶予制度を見直し、今までは相続税の納税猶予は農地を貸すと打ち切られていましたが、貸した場合でも納税猶予の適用が受けられるというものです。これは農地の有効利用を確保する上で前進であると、このことは評価させていただきたいと思います。
しかし、現在、農地保有合理化のために農地を譲渡した場合の所得税などの特別控除制度が用意されております。特別控除額は八百万円。農地保有合理化法人の買い入れ協議に基づく譲渡の場合は一千五百万円となっております。これについて特に見直しはされておりません。
特別控除額は、八百万円、一千五百万円の水準では十分とは言えません。意欲ある担い手に農地を集積していくためには、この特別控除額を三千万円にまで引き上げるべきと考えます。
農地の譲渡所得の特別控除については現行のままでよいと考えているのか、見直す必要があると考えているのか、これは大臣に伺ってまいりたいと思います。
○石破国務大臣 現状につきましては、今委員から御紹介があったとおりでございます。
これらの税額控除につきましてですが、今回の農地制度の改正案により新たに創設されます農地利用集積円滑化事業、これにおきましても同様に措置されるということになるわけでございます。
この控除の額のうち、八百万円の特別控除については、制度ができました四十五年にはこれが百五十万円でございました。一九七〇年でございますが。それから順次引き上げられまして、現在の八百万となっておる。千五百万の特別控除につきましては、これができましたのが平成七年でございますので、その額は変わっておらないわけでございます。
この特別控除は、農地だけではなくて、ほかの地目の土地においても措置されておるものでございますので、その水準につきまして、それぞれ私的制限あるいは譲渡の強制度合い、これに応じてバランスをとりながら設定されるということになっておるわけでございます。
農地についてでございますが、過去におきましても引き上げは要望をいたしてまいりました。その際、ほかの土地に対する措置とのバランスの観点から認められなかった、こういう経緯がございます。
私どもとして、今までも引き上げてきたわけでございますし、これがこのままでいいのだ、これから引き上げないなぞということは申し上げるつもりはございません。ほかの制度とのバランスを見ながら、これがさらに実効が上がるようにということは考えていきたいというふうに思っております。
それが三千万まで引き上げるべきかどうか、その額についてはいろいろな御議論があろうかと思いますが、バランスを見ながら適正に考えていきたいというふうに考えておりまして、委員がおっしゃいますように、引き上げるべきという御指摘は、私どもとしてそれは受けとめさせていただきますが、バランス上決定をするということも、あわせ申し上げておかねばならぬかと存じます。
○仲野委員 今、大臣からお答えいただきました。過去にもいろいろ指摘があったということで、今の、引き上げについては他のバランスを見ていろいろ考えていきたいということでありますけれども、とにかく税制特例というのは農地の有効利用を促進する上で効果的であるし、大いに活用する必要があると考えるわけであります。農地の譲渡所得の特別控除額の引き上げについて、悪いバランスでなくて、いいバランスを見て検討と、速やかな実現になるように要望をしたいと思います。
時間もあと五分ということで最後の質問になるんですが、経営移譲年金の弾力化について質問してまいりたいんです。
農地を担い手に利用集積していくための手法はさまざまありますが、旧制度の農業者年金もその一つであると考えます。旧制度の農業者年金は、年金給付による農業者の老後の生活の安定と、農業経営者の若返り、農業経営の細分化防止、経営規模の拡大を図ることを目的として、昭和四十六年一月に創設をされました。そして、年金財政が逼迫したことや、高齢化、担い手不足という現実を踏まえ、平成十四年に農業者の確保に資することを目的とする制度へ改めることなどを内容とする抜本的見直しが行われました。現在は旧制度と新制度が併存しておりますが、本日は、農地の利用集積に資する旧制度の農業者年金による経営移譲年金について質問してまいりたいと思います。
この経営移譲年金は、昭和三十二年一月一日以前生まれで、旧制度の保険料納付済み期間などと特別空期間を合わせて二十年以上満たした者が一定の経営移譲を行った場合に受給できるものであります。
経営移譲は、経営に供している自分名義の農地を、後継者か第三者に所有権を移転するか、使用収益権を移転または設定し、農業経営から引退することであります。
この経営移譲は、六十五歳の誕生日の二日前までに行わなければならないこととされており、六十五歳までに経営移譲を行わないと経営移譲年金が支給されず、年金単価の低い農業者老齢年金の支給となってしまいます。さまざまな事情で六十五歳までに経営移譲を行えなかった加入農家もおられる中、画一的な扱いではなくて、六十五歳になってから経営移譲を行っても経営移譲年金が支給されるような制度に見直すべきでないのかなということで、これは大臣にその見解を求めたいと思います。
○石破国務大臣 制度の経緯につきましては、委員が御紹介いただいたとおりでございます。
改正前の旧制度では、農業経営の若返りを図るというような観点から、六十五歳に達する前に経営移譲を行った、そういう場合に国庫助成による高額の経営移譲年金の支給が受けられる、こういう仕組みでございました。この旧制度はもう既に廃止されておるわけでございますが、平成十三年以前に加入しておられた方に対しましては、その加入期間に対応する給付については全額国庫助成により行うという特別の措置が経過的に行われているところでございます。このような特別の措置はあくまでも旧制度に対する特例ということでございますので、現時点で廃止されました旧制度について、全額国庫助成により給付をする、例えばそのような特例をさらに見直すことは難しいなというふうに思っております。
新制度、つまり平成十四年一月からの制度でございますが、これは確定拠出年金型の新しい農業者年金ということになりました。制度が始まって間もないものでございますから、六十五歳に達して年金を受給される方々が出始めたばかりということでございますが、この新しい年金では、年金の目的が農業者の確保に資するということになりましたので、六十五歳に達せられた後に経営承継を行っていただいた場合でも特例付加年金が支給されるということになっておるわけでございます。
二月末時点で新制度に基づきまして老齢年金を受給している方四千五百八十九名、これに加えて、特例付加年金の支給を受けておられる方四十九名ということになっておるわけでございます。支給を受けておる方は保険料の支払い期間が極めて短いということでございますので、平均年金額は農業者老齢年金で一年当たり二万三千円ということでございますが、全額国庫補助金を原資とする特例付加年金は一万四千円ということになっておるわけでございます。
この年金を、どのように使っていくかということにつきましては、今後ともいろいろなことを考えていきたいというふうに考えておりますが、今のところ、先ほど申し上げましたように、旧制度に対する特例につきましては、これをさらに見直すということは難しいと私は承知をしておるところでございます。
○仲野委員 これは、実際、市町村現場において事務を担当する職員にとって本当に大変わかりにくい。旧制度と新制度、そこら辺の、いろいろな制度が変わって非常にわかりにくい制度であるとの印象をぬぐえないんですね。ですから、市町村現場において農業者年金の事務が円滑になされるように十分な指導を。
それで、今大臣が、大変難しい問題である、こうお答えいただいたんですが、今、六十五歳といえばまだ若い年代なんですね。まだまだばりばりと、六十五歳以上、七十歳でも働いておられるんですね。こういう長寿社会であって、やはり畑に親しむ、そのことによって本当に生きがいを感じられる、そういった方が結構おられますので、そこは余り型にはまったことをしないで、例えば一次産業に従事する方たちの年金制度というものは、これは今ここでお答えするのは非常に難しいかと思いますが、これからの年金の中で仕組みというものをもう少し考えていただければな、そのように思っているわけであります。
時間になりましたので、この法案をじっくりとまた議論していただくということを希望し、終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
○遠藤委員長 次に、佐々木隆博君。
○佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。
農地法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいというふうに思いますが、この法律の最大の特徴というのは、所有から利用へ大きくかじを切ったことだろうというふうに思います。その所有という部分と利用という部分の二点について質問をさせていただきたいというふうに思ってございます。
それに先立って、さきの本会議で私の質問に対して大臣からお答えをいただいております、基本計画における家族的農業経営の位置づけについてであります。
これは確認ですが、大臣の答弁では、〇五年の閣議決定では家族経営を中心とする考え方であったというふうに答えているわけでありますが、その後、今回の見直しについては、その問題も含めて検討すると、大臣の本会議での答弁はそうなっているわけであります。ちょっとこれを聞くと後退しているようにとれるんですけれども、そんなことはないということだろうというふうには思いますが、まず最初に、大臣に確認をさせていただきたいというふうに思います。
○石破国務大臣 本会議におきます答弁、十分なところがなかったとすれば、それはおわびを申し上げるところでございます。
そんなことはございません。
平成十七年の現行の基本計画でございますが、これにおきましては、家族農業経営を中心とする個別経営や集落営農経営を含めまして、農業で他産業並みの生涯所得を確保し得る経営体及びこれを目指して経営改善に取り組む者を担い手としておる、その育成、確保に積極的に取り組むということでございます。
それで、担い手というのは何なんだということをもう一度確認いたしますが、家族で営まれているもの、法人により雇用労働を活用して営まれているもの、集落営農で行われているもの、いろいろなタイプがございます。農林水産省といたしましては、基本計画を閣議決定いたします際に、あわせて、平成二十七年の望ましい農業構造の姿を展望しておるわけでございまして、その中では、家族農業経営が三十三万から三十七万程度、法人経営は一万程度、集落営農経営が二万から四万程度ということを見込んでおるわけでございまして、引き続きまして家族農業経営が大宗を占める、このように考えておるわけでございます。
新しい基本計画につきましては、議員御指摘になりました家族農業経営も含めまして、どのような農業主体がどのように共存していくかということにつきましていろいろな議論を行わねばならないわけでございますが、関係者の皆様方の幅広い御意見も承りながら検討を進めることになろう、このように考えております。
○佐々木(隆)委員 私は、家族農業がやはりこの国の農業の基本だ、大宗という言葉を今大臣は使われましたが、基本であるというふうに思っております。基本計画が策定中という段階で、農地法の問題で今この問題を聞くということで、タイムラグがそれぞれあるものですから、必ず基本計画の中でもきちっと位置づけられるだろう、あるいは位置づけていただかなければならないというようなことを申し上げさせていただきたいというふうに思います。
それで、まず、所有ということについてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。
先ほど来論議になっておりますが、一条、法の目的が、「耕作者みずからが所有する」というところから「効率的に利用する」と大きく転換をしたというふうに思います。先ほど大臣の答弁は、所有もこれには含まれるんだというお話がございましたが、これは農地法の一部改正どころではなくて、全部改正です、これなら。一部改正ではありません。全く目的が変わったんですから、一部改正というようなものではなくて、本当に大転換をしたと思わなければならないというふうに思うんですね。
そういう大転換という中で、一つは、では、日本農業というものを利用を中心にこれからやっていくということに、この農地法を見る限りにおいては、利用というものを主体にこの国の農業をやっていくんだというふうに変わったのかということであります。
あわせて、私は、所有というものが本来原則だと思うんです。所有が原則なのでありますが、しかし現状は利用というものが相当ふえてきているので、それで、やむを得ない措置といいますか、それを補完する措置として利用というものがあるべきだというふうに思うんですが、この第一条の目的にはそのようになっていないわけですね。
ですから、そういう意味でいうと、これはまさに全部改正と言ってもいいぐらいな大転換を今やろうとされているわけですが、そのことについて大臣のお考えを伺いたいと思います。
○石破国務大臣 これは、先ほど小平委員とも議論をさせていただいたところでございますが、要は、農地をきちんと確保したい、そしてその農地を最大限に有効利用したい、もって国内の農業生産の増大を図り、これを通じ国民に対する食料の安定供給を確保したいということでございます。農地は生産の手段でございますので、これが最大限有効に活用されるということが、人、金、物、三つの低落傾向に歯どめをかける、そのために大変大きな手段になるというふうに私は考えておるところでございます。
したがいまして、これはおまえ、全部改正ではないかというお話でございますが、確かに、自作農主義から耕作者主義へというふうに変わってきました。それは、耕作する者がみずから所有することが最も適当と認めということになっておったわけでございまして、ここを転換するというのは、形式論でいえば一部を改正する法律案なのですが、理念を大きく転換するという意味では、委員御指摘のとおりだろうというふうに私は思っておるところでございます。
今回、農地を効率的に利用する者による農地についての権利、これは所有に限りません、賃借を含むということが極めて重要な点だと思っております。この権利の取得を促進するというふうに改めたところでございまして、農地の有効利用を図るにはどうすればいいかということについて私どもとして足かけ二年にわたって検討した結果、このような改正を提案させていただいておるものでございます。
○佐々木(隆)委員 今大臣からお答えをいただきまして、全部改正と言えるかもしれないというようなお話であります。そういう意味では、非常に恐ろしい転換になる可能性があるというふうに私は思っております、私の考え方としてはです。
それは、今、生産手段だというふうに大臣はお答えになりました。効率ということを第一義的にうたわれています。農業というのは農村が一体となっておりますから、そういった意味でいうと、効率と手段、生産手段ということだけで農地問題を語るというのは、非常に危険な発想になるのではないかというふうに私は思っております。ですから今まで耕作者主義ということを言い続けてきたわけです。それを今回捨てちゃったわけですから、書いていないということは捨てたということですから、そういう意味で、耕作者主義が一義的にあって、そしてその次に有効利用というものが図られなければならないという組み立てであればわかるんですが、しかし、これはそうではないんですね。耕作者主義のところが消えちゃったんです。そこが非常に問題だというふうに私は思っております。
その耕作者主義ということ、ここは局長の答弁で結構ですが、耕作者主義の基本というのは何かというと、農地にかかわる権利の取得というのはその地域にあって農作業に常時従事する者というのが基本だったわけですね、耕作者主義の。ですから、その地域に住むことも常時従事することも捨てたということですよ、あの耕作者主義を捨てたということは。だから、そういった意味で、これは大きな転換だと言わなければならないのではないかというふうに私は思っております。これについてはまた後ほど聞きたいんですが。
そういった前提で局長にお伺いしますが、一つのところに所有権と利用権と二つの規制がかぶることになるわけです。要するに、所有の方は今までどおりやるわけでしょう。そして利用権の方は、今度はかなり自由にしたわけですよ。ということは、所有者、そこに住んでいる所有者というのは、今までのように農作業に常時従事しなければならないという要件がそのまま残るわけです。それから、農業生産法人の要件もそのまま残るわけです、所有者の方は。そして今度、利用者として借地権で入ってくる人たちは、だれでもいいし、制限を受けないということになるわけです。同じ地域の中にダブルスタンダードが発生するんです。
そのことについて、これは法律として非常におかしいと私は思うんですが、お答えをいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 今の点についてお答えいたします。
もう委員よく御存じのことと思いますけれども、農地法は、何を目的としているのかは今大臣が申し上げたわけでございますけれども、中身は、権利の移動について統制を行うというのが主要な内容でございます。
今委員御指摘になりました、一つの土地に所有権と賃借権というのが存在することは当然にあり得るわけでございます。所有権者が利用している場合には所有権しかございませんけれども、地主さんから借りて耕作をする場合には、地主さんが所有権を持っており、借りている人が賃借権を持つということでございます。
しかし、農地法が規制をいたしますのは、そのような状態を規制するのではなくて、ある土地についての所有権を移転すること、この場合にどのような規制を行うか、あるいは、ある土地について新たに賃借権を設定する場合にどのような規制を行うのかということがこの農地法で具体的に規制している内容でございますので、ある土地について所有権と賃借権と混合した形で移転をするということがあり得ません。したがいまして、ダブルスタンダードだという点につきましては当たっていないのではないかというふうに思っております。
○佐々木(隆)委員 それではお伺いをいたしますが、前の法律の、耕作者みずから所有することが望ましいと言っている、耕作者の定義というのは何なんですか。
○高橋政府参考人 現行の農地法の一条につきましては、御承知のとおり、昭和四十五年に改正が行われております。昭和四十五年以前の農地法におきましては現行の「目的」の後段部分がない。耕作者については専ら、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当とするということで耕作者の地位の安定を図るというのが、昭和四十五年以前、いわゆる農地改革の成果を保持するという意味での、耕作者の地位の安定でございました。ここで申し上げます耕作者の地位の安定ということでございますけれども、これについては、まず、今の現行第一条について「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当」と認め、これについて必要な統制をかけるということでございます。
これの最大の眼目は何かということでございますけれども、戦後の農地改革が耕作者、これ自身は、労働と経営、それから技術、営農というものについて、これが三位一体の形で実現したものが自作農という形であらわれたものでございます。耕作者の地位の安定というのは、自作農を創設し、その地位を安定するということが、農地法の制定以来の最大の耕作者の地位の安定の内容でございます。
そのためにとられております手法と申しますのが、耕作者に対しては所有権を誘導していく、やむを得ずそのような所有権が認められない、誘導が行われない場合であっても、既存の小作権の保護ということを行うということでございます。
したがって、耕作者の地位の安定の最大の規定上のあらわれ方は、小作地に対します所有制限、不在地主につきましては基本的にはこれを認めない、それから、在村地主にあっても現行の一定の制限のもとに置かれるということ、そして、そのような制限を超える農地については、これを買収して、いわゆる小作の方にこれを売り渡す、現行の規定にもこれはございます。小作地の強制買収及び売り渡しの規定がある。これが耕作者の地位の安定の最大眼目であったということでございます。
○佐々木(隆)委員 ですから、不在地主はある種だめよとして、いる農家はちゃんとつくりなさい、それはそのとおりだと思うんです。その地域にいて、そして、ちゃんとつくるということが目的というか、耕作者というその定義だったんですよ。今度は、そこに住んでいるということの条件がなくなっちゃったわけですよ。そこが大きな違いになるんです。同じだというふうに言いますけれども、そこは相当違うんです。
○高橋政府参考人 委員御指摘の点につきましては、基本的に、人の立場に立って、耕作をする方がその地におられるかおられないかということだと思います。
私どもが今回着目しておりますのは、当該農地がどのような形で賦存しているのか、きちんと使われているのかどうか。私どもが今回考えますのは、農地がきちんと使われているか否かで今後の政策の目標の判断にしたいということでございます。
○佐々木(隆)委員 ここで、これだけの論議をずっと繰り返していてもいけないんですが、今いみじくもおっしゃられたんですが、だから私は、人に着目をするのではなくて土地が有効利用できればそれでいいんだというのが大転換だと言っているんですよ。それはやはりちょっと疑問が残るわけですよ。
人がつくっているんですし、人が地域も耕すし農地も耕しているわけですから、農地だけがつくられればいいんだというふうに、今回そこに着目しましたと今局長は言ったんですが、それで本当にいいのかということがやはり今問われているんじゃないんですか。違うんでしょうかね。私はそのように思うんですが。
次に、その中で、私どもも農山漁村再生法の中で農地問題について提議させていただいているんですが、私どもは、多様な参入というものをできるだけ認める、参入というものは認めていかなければならないというふうに思っておりますが、そこは耕作の義務を課するということによって整理をしていけるのではないかというのが、私ども風に言わせていただく新たな耕作者主義というものであって、別に、所有が前提であっても私は全然そごを来すものではないというふうに思っているんです。
ここについては、大臣も私どもの法案について御存じだというふうに思いますけれども、大臣のお考えも伺っておきたいというふうに思います。
○石破国務大臣 本質論が先ほどから交わされておるわけでございます。耕作者みずから農地を所有するというのが一番いいんだ、こういうお話、今までそうでございましたよね。今何が起こっているかというと、耕作しない人がみずから農地を所有するということが起こっておりゃせぬかと。農地が本当に有効に利用されているかどうかということが、やはり問われているのだろうと私は思っております。
我々の貴重な資源でありますこの農地というものをどれだけ本当に有効に利用するか、そのことに私どもは着目をしておるわけでございまして、耕作者の地位の安定というものを何も、放棄している、そのような考えは全くございません。そのような条文は、そのまま存置をしておるところでございます。また後ほど議論をさせていただきたいと思いますが。
御党が提出されました法律案、この第二十二条を拝見させていただきますと、農地制度の抜本的な改革の方向として、まず農地総量の確保、農地所有者などの農地の有効利用義務、今おっしゃったところでございます。転用の厳格な規制、そして意欲を有する者の農業参入の促進、この四つになっておるという理解をいたしておるところでございます。
そのように考えてみますと、今回の私どもの改正法案で、農用地面積の目標の達成に向けた仕組みを整備する、農振法第三条の二第二項でございます。農地についての権利を有する者の責務を新設する、農地法の第二条の二。そして農地転用規制の厳格化、農地法第四条。それから、一定の要件のもと、賃借に係る規制の見直しによる意欲ある者の農業参入の促進、これは第三条第三項でございます。こういう措置を講じておるところでございまして、考え方として、御党の第二十二条とそんなに異なるところはないのではないかという理解を私はいたしております。
ここが違うんだということであれば、ぜひまた御指摘をいただいて、議論をさせていただきたいと考えておりますが、繰り返しになりますが、農地について権利を有する者、その責務というものをきちんと定めるという点において、委員がおっしゃいます義務というものとそごはないものと私は理解をいたしております。
○佐々木(隆)委員 今の大臣の答弁であれば、私は相当理解できると思うんですが、条文はそうなっていないということを私は言っているんです。
なぜかというと、今耕作されていない土地、これも問題だから、そこを有効利用するようにしなきゃいけないんだ、それはそのとおりだと思うんです。だから私は補完的なものでしょうと言っているんですよ、所有が一番先にあって。ところが、これは所有が抜けているんですよ、この条文から。そこが問題だと言っている。だから、大臣の今の答弁だと、それはそれでかなり私は近いと思うんです。
だから、所有というものがあって、そしてそれが十分に使われていないという状況があって、補完的に利用というものはもっと広げなきゃいけませんというのであれば、そのとおり書いてくれれば何の問題もないんですが、その最初の部分がないんですよ、この条文には、所有というところが。そこが問題だと私は言っているんです。
これは局長でも大臣でも結構ですが。
○高橋政府参考人 今大臣からお答えさせていただきましたけれども、私どもも、詳細は承知しておりませんけれども、御提出されております第二十二条の条文は持たせていただいております。
恐縮でございますが読み上げさせていただきますが、「国は、将来に向けて、農地総量の確保を図りつつ、農業の一層の活性化を図るため、農地の所有者又は農地を使用収益する権原を有する者(以下「農地所有者等」という。)に対し農地を有効に利用する義務を課するとともに、農地について農地以外の用途に転用することを厳格に規制することを前提とした上で、意欲を有する者ができる限り農業に参入することができるよう、現行の農地制度について抜本的な見直しを行うものとする。」というふうに書かれていると承知しております。
この二十二条で書かれている文言と私どもの第一条の目的及び先ほど来申し上げております二条の二の責務規定と並べてまいりますと、大臣が申し上げているとおり、基本的な部分において差はないのではないかというふうに理解しておるところでございます。
○佐々木(隆)委員 いや、違うんですよ。だから、責務規定のところはそれでいいんです。では何で目的になくなった、一条になくなったことが大変だということを私は言っているので、責務規定のところを言っているわけじゃないんですよ。そこは似ているでしょう。それはいいんです。だから、何で一番最初の第一条の目的のところにそれが欠落しちゃったんですかということを言っているんです。
○高橋政府参考人 先ほどからお話し申し上げさせていただいておりますけれども、御承知のとおり、昭和二十七年の農地法の制定というのは、戦後の農地改革の成果を維持するということで、真っ正面から「耕作者の地位の安定」という形で定義をしたものでございます。その後、昭和三十六年の旧の農業基本法におけます基本的な方向、その状況と実際の経済事情の発展の中で、現実の土地、農地の価格が、実際の農業で収益還元する価格との間で非常な乖離をしてきた。
したがいまして、旧の農業基本法で想定しておりました所有権によりますところの経営規模の拡大、これは北海道では大幅に実現したのは、もう大成果として継承されているところでございますけれども、都府県においてはこのような事態が一切生じなかった。したがって、四十五年の改正の段階で、既に、利用権によります権利の取得というものについて新たに講じまして、その後の立法過程は、これは基本的方向はすべてでございますけれども、利用権、いわゆる賃借権の設定によるところを主とし、もちろん、所有権の移転で行われるようなところについては当然その措置は講ずるわけでございますけれども、使用権、利用権のところを中心とした制度にしたわけでございます。
結果として、先ほど来大臣が申し上げているように、現実の今の農業、農村、農地の現状ということを考えた場合に、農地というものについて、きちんと利用するということにもう一度制度の基本を考えていかなければならないだろう。現実に、現行の一条におきます所有優位の考え方があるがゆえに、例えば税制におけます相続税の納税猶予制度につきましても、過去三十年以上にわたりまして要望していたものが一切実現ができなかったというような経緯もあるわけでございます。今回税制が実現いたしましたのも、このような基本的な考え方、農地はきちんと使われるべきであるという考え方のもとに、所有と賃貸借というものを同じ立場、所有を無視しているわけではございません、所有と賃貸借というものを同じ立場で利用という形でとらえるというところに、今回の税制改正の実現にも至ったというふうに理解しております。
○佐々木(隆)委員 先ほどの大臣のお答えと今の局長のお答えは、少し実は違っております。大臣は、耕作されていない土地というものを有効利用しなければいけないという補完的な発言をされたんですが、今の局長は、利用が主だと言ったんですね。違います、そこは。ですから、これは委員長の方で引き取ってください。私は次の質問に行かなきゃいけませんので、よろしくお願いをいたします。
もう一点、所有に関してあります。
先ほども小平委員からのお話にもありましたが、今、世界的な食料の危機の状況の中で、世界じゅうで農地の争奪戦というのが実は始まっております。あたかもその時を同じくして、ここで農地法の改正が行われてしまおうとしているわけですが、本来、私は、農地というのは、地域の人々によって、地域に住んでいる農家の皆さん方によって保有と維持と管理と活用がされてきたものだというふうに思っている、いわゆる地域資源という考え方を持っています。
そういう意味でいうと、繰り返しますが、農地はだれが所有するのが適当なのかということについて、うたわれていません。加えて言えば、かつてあった公共性とか担い手とか地域とかという文言もほとんど見えなくなってしまっているわけです。それだけ、この所有という理念、農地法の理念というものから、いわゆるそういう公共性とか地域性とかというものが軽視されているのではないかという疑念を持っているわけでありますが、これについてお答えをいただきたいというふうに思います。
○高橋政府参考人 農地が国土の重要な資源、地域資源であるということは、私どもも言うをまたないものだというふうに理解しております。
今回の改正につきましても、先ほど来委員御指摘のような、外部からの企業参入というような御指摘もあるわけでございますけれども、一方において、先ほど来申し上げておりますけれども、今回認められます農業生産法人以外の法人につきましては、例えば現在、集落営農組織というものが各地域で立ち上がっております。こういった集落営農組織は、地域におけます将来の農地管理あるいは地域管理の主体として、切実なる思いでつくられているところが全国各地にございます。
しかしながら、この集落営農組織、普通、将来、安定的に行くためには法人化を目指さなければなりませんけれども、現行の法人化の道は農業生産法人しかないというような非常な制限がございます。
したがいまして、このような集落営農組織が、安定的な法人形態をとりつつ、地域資源、農業をやりながら、林業をやりながら、あるいは販売確保あるいは地域の維持管理等々もすべてできるような仕組みにするためにも、今回の制度改正というのはぜひ必要な措置であるというふうに考えております。
○佐々木(隆)委員 ちょっと何か私の質問と大分違う答えが返ってきたんですが、今も、集落営農とか法人が主だと。主ではないんです。先ほど大臣は、大宗は家族経営だと言った。家族経営が大宗で主なんです。しかし、それでは補い切れないというところの認識が、どうも局長の答弁からは違うように聞こえてくるんですね。だから、そこを含めて大臣の方からお願いします。
○石破国務大臣 私と局長が申し上げておることは同じことを申し上げておるのですが、これが所有権に基づくものであれ、賃借権に基づくものであれ、とにもかくにもちゃんと利用されないと、農地というものが本当にその持つ特性を発揮できませんねということでございます。ですから、どっちが主とかどっちが従とかそういうことを申し上げているわけではございませんで、これが所有権に基づくものであれ、賃借権に基づくものであれ、有効に利用されるためにはどうすればいいだろうかということが今回の法律を貫いておる理念だと私は理解をいたしておるわけでございます。
耕作者の地位というものが安定されねばならないということは、もう全く変わるものではございませんで、その条文というのはそのまま残しておるわけでございます。
委員が御指摘の、公共性というものをどう考えるかというお話でございます。
農地も土地であることには変わりはございませんで、土地基本法、これは基本法でございますからすべてかかってくるわけでございますが、これには、土地は、現在及び将来における国民のための限られた貴重な資源であること、国民の諸活動にとって不可欠の資源であることなど、公共の利害に関係する特性を有していることにかんがみ、公共の福祉を優先させる、土地というものはそのようなものなのだということを土地基本法においてうたっておるわけでございます。
したがいまして、この農地というものを、公共性を最大限に発揮して使うためにはどうしたらいいのだろうかということ、つまり、この農地法というものを素直に読んでまいりますと、耕作放棄というものが起こること自体がおかしいんですよね。しかし、実際問題として、耕作放棄がこれだけ起こっている、農地転用がこれだけ起こっている、そして違反転用も八千件以上起こっている。これは一体何なのだということを考えていきまして、本当に農地を有効利用するために、所有権あるいは賃借権、それを問いませんが、耕作者主義から、ある意味で利用主義みたいなもの、これは言葉としては確立をしておるわけではありません、私が勝手に言っているだけですが、利用というものに着目をし、それが最大限に利用されることが国民の福祉に資するものだ、こういう考え方でございますので、公共性を損ねるものだ、あるいは軽視をしているものだとは私は思っておらないところでございます。
○佐々木(隆)委員 次に利用の方にも行きたいので、この所有の問題はここまでにしておきたいと思うんですが、今、土地基本法の話も出ましたが、私は、その土地基本法で言っている公共性というのは非常に大切で、それはそのまま農地にも当てはまるものだと思っています。それは、使うという意味だけではなくて、管理をしているという意味も含めて、やはり農地というものは土地と同じように考えていただかなければならない。だから、使っていれば、使われていればそれは公共に供しているんだということだけではなくて、ちゃんとそこに管理者がいるということとセット物だということをぜひ主張させていただきたいというふうに思います。
次は、利用についてお伺いをいたします。
余り時間がありませんので少しはしょりますが、現状について、どうも外側、経済諮問委員会だとか規制改革委員会だとか地方分権推進会議、経団連、経済同友会、こうした人たちの何か提言がどんどんと行われる形で、当時の副大臣も今お見えでございますが、どうもそっちに押されるような形で農水省の検討というのが進められてきたのではないかという疑念がございます。
これを農水省内部でどのように、この間、前の農地法から今度の農地法を改正するに当たって検証してきて、そしてニーズというものをどういうふうにつかんできて、どんな論議を重ねてこられたのか。先ほど四十一回やったというお話もありましたが、できるだけ簡潔にお願いをしたいと思います。
もう一つ。本会議場でも質問をさせていただきましたが、今日まで何度も規制緩和してきているわけですね。法人においても、それから一般企業においても、特区の全国展開とか、今どんどん規制緩和してきていて、今でも株式会社は農業法人の中に参入できるわけです。今、株式会社そのものも参入できるわけですね。直接参入ができないだけで、参入できないわけじゃない。それから、特区の展開をずっとやってきて、法律が後追いになってきているので今の状況を法的に整備したいというのであれば、今回の改正はある程度意味があると私は思うんです。ところが、それをはるかに超えたところがちょっとあるわけであって、現状の追認で十分だと私は実は思っているんですが、なぜそれを超えなければならない不都合があったのか。
この二点、できるだけ簡潔にお願いをします。
○高橋政府参考人 今回の農地法の改正に至ります経緯でございますけれども、基本的には、新たな食料・農業・農村基本法が平成十一年にできまして、平成十二年に第一次の基本計画を策定しているところでございます。その段階でさまざまな課題が提起をされていたわけでございますけれども、その中で、既に農地についての見直しというものについては触れられております。
具体的な展開については、これは私、古いところはちょっと記憶があいまいでございますけれども、経済団体が経済財政諮問会議等で取り上げます前に、既に大きな農政の改革の三つの方向といたしまして、農地の問題、環境の問題、それからもう一つが経営安定対策の問題ということで検討を開始した経緯がございます。その後、経営安定対策につきまして、あるいは農地、水、環境等の問題につきましては、先般の法律改正、法律制定等々に至っているわけでございます。
その際、米問題等が一緒に合わさってあったわけでございますけれども、その間も、農地については引き続き検討を行っておった。本日おられます宮腰先生が副大臣のときにも内々に検討していたわけでございます。
その後に、ある意味、農政の基本的な問題については、経済財政諮問会議あるいはさまざまな経済団体等で取り上げられた、規制改革で取り上げられた、地方分権で取り上げられた経緯がございますけれども、それぞれに対しましては、私どもといたしまして、当時の大臣等を初め、私どもとしての意見はきちんと言っておるところでございます。
一例を申し上げますと、経済財政諮問会議のグローバル化改革専門委員会の第一次報告、これは平成十九年五月でございましたけれども、所有と利用の分離、言葉は似ておりましたけれども、そこで言われていたのは、利用を妨げない限りは所有権の移動は自由にすべきであるというような意見が出ておりました。これに対しては、私どもとしては、基本的には考え方が違うということで、当時の大臣等がきちんと反論したというような経緯もございます。
それから、もう一点の方の法律改正、既存のリース方式によります方式ではなぜぐあいが悪いのかということについてでございます。
まず、このリース方式については、市町村が、これは遊休農地の場合でも同じでございましたけれども、遊休農地が相当存在する区域について、企業への貸し付けを実施することが適当と考える地域をまず基本構想に定めるということでございます。積極的に定めないという市町村もおられますけれども、ある意味、積極的に定めるわけでもなし、消極的に定めない、要は、定めたくないというわけでもなし、何の気もなしに定めないというような市町村もあるわけでございます。
また、その際には、市町村または農地保有合理化法人を介在して貸し付けることになりますが、御承知のとおり、農地保有合理化法人はすべての市町村にあるわけではございません。市町村自身も必要な予算措置等を講じなければならないということでございますので、本当に積極的にこれに取り組むという市町村以外のところでは、そういったものについて取り上げてくれるというような実態がなかなかないというようなことも、地域におけます地場の企業、建設業者の農業参入のときにも伺っているところでございます。
○佐々木(隆)委員 ですから、その法律が、今度やろうとすることが、今までのいろいろやってきた、緩和してきたことで十分でないから必要だというところまでは一緒なんですよ。だったら、それを追認する法律で十分間に合ったのではないのかと私は言っている。ところが今回それを飛び越えてしまったわけですね。
もう一つは、先ほどの所有のところもそうですが、ほかの農政全体の問題を全部農地法で解決しようとするところに少し無理があるのではないかというふうに私は思っております。
次の質問に行かせていただきますが、もう一つ今回問題なのは、農業の従事者、農業の経営者、農地の権利者、これは今まではある種一体だったわけですよ。ところが、今度この三つがばらばらになる可能性が極めて高いわけですね。権利は権利で持つ、経営は経営でやる。先ほど、外資系なんかが入ってくる心配がないという話がありましたが、可能性としてはあるんです。できるようになっちゃった。
もっと言えば、東京のお金持ちが、例えば、北海道なら北海道の農地を借りて、そこで経営者を雇って、そして農業者をそこで経営者が雇うということが可能になるわけですよ、今度の法律からいうと。利用は自由なんですから。だから、そういうふうになってしまうということ。先ほど、実態がないとか、事実上ないと局長の答弁にあったんですが、それは答弁になっていません。法律上どうなっているのかということがちゃんと規定されていないと、事実上がないからいいんだという問題ではない。想定されることにはちゃんと備えておかなければならないというふうに思うんですが、答弁を求めます。
○高橋政府参考人 現行の農地法でございますけれども、戦後の農地改革によりまして、今委員御指摘の、農業経営、農業労働、農地所有の三つの主体が一致いたしました自作農が農家の主体を占める、こういう状態になったことでございます。これを踏まえまして、その成果を維持するということが二十七年の農地法の基本の考え方であったわけでございます。
しかしながら、実態、現状を見てまいりますと、今の農地の流動化というのは圧倒的に借地による流動化が進んでおります。北海道の場合には基本的に自作が中心でございますけれども、府県におきましては、大規模な農業経営体はほとんどが借地による農業経営を行っているところでございまして、農地所有と農業経営という意味では、府県の場合は、いわゆる主業的な農家を中心といたしまして、ここは分離をしているというのが実態でございます。
また、法人経営につきましても、さまざまな経営体のものがあるわけでございますけれども、最近におきます農村地域におけます農業における雇用問題等々ございますが、このような形で雇用労働力を活用いたしました農業経営というのも幅広く行われているところでございます。
私どもといたしましては、このような現実の実態を踏まえまして、先ほど来大臣が申し上げておりますように、基本的に、農業、農地については貴重な資源である、これがきちんとした形で利用されるように、この利用に最大限着目した制度へ構築するということでございまして、その際には、既に、現実に主業的に行っておられる多くの農業経営に見られるように、農業経営、労働、所有というような一致にこだわるということについては、かえって逆に大きな問題も生じる。
もちろん、一致することが好ましくないなどとは一言も申すつもりはございません。そこは、一致していることについては非常に形としていいものだというふうに私どもとしても理解をしているところでございますが、現実がそのようになっているということについて、私どもとしては、今回のような制度改正をする必要があるというふうに考えた次第でございます。
なお、では、そういった形で措置がされていないのではないかということのお尋ねでございました。今回、このような制度の見直しを行うに際しましては当然の御指摘だというふうに理解しております。
このため、農地の権利取得の許可につきましては、地域における農業の取り組みを阻害しないよう、周辺の農地の利用に影響を与えないかどうかの基準を新たに設けるということをまずいたします。そして、所有権の取得について、これは、法人については農業生産法人に限定する、これは引き続ききちんと限定をするということにするわけでございます。
また、今回、新たに貸借について見直しを行うわけでございますけれども、農地を適正に利用していない場合に貸借を解除する旨の条件をきちんと義務づけます。また、契約によるこのような賃貸借契約の解除がなされない場合には、許可を行いました農業委員会はこれを取り消すということを義務づけるわけでございます。
さらに、当事者間で不適正な利用が放置をされているような場合も想定されるわけでございまして、その場合には、遊休農地対策や違反転用に係る措置ということをきちんと法律上措置するということの担保措置をとっておるところでございます。
最後、もう一つ、つけ加えさせていただきますと、先ほどから申し上げております新たな許可基準、これにつきましては、当然のことながら、地域できちんとした形で家族経営、そういったものが展開をされているところに、先ほど来御指摘のような、ぽんとやってきて、そこのけそこのけ、おれが使うんだというようなこと、こういったことは認めないということは基準できっちりと書いていくことにしていくこととしております。
○佐々木(隆)委員 今の局長の答弁だと、現実がそう進んできたということは、私もそうだと思うんです。だから、現実に合わせなければいけないという状況にあるということは、私は否定しているわけじゃないんです。そのときに、理念を少し曲げてしまったのではないのかということを言っているのであって、現実に合わせなきゃいけないというのは、それはそのとおりなんです。だから、後ぼいになっているのだったら、法の整備だけで、後ぼいの整備だけで十分だったのではないんですかというのは、そういうことを言っているわけです。
次へ進ませていただきますけれども、結局、入り口を緩和したわけですから、入り口を緩和するということは、事後の規制をよりきつめなければならないということになります。入り口も緩めた、出口も緩めたというのでは、これは何にもならないわけですから。
では、出口をどうきつめたのか。今、いろいろな担保をするという話だったんですが、例えば、今までは官が仲介をした契約だったわけですね。今度は民民の契約になるわけですね、その賃貸について。そのときに、農地利用の厳格な事後チェックと言っているんですが、例えば撤退後の措置だとかというのはやっていただかなきゃならないんですが、要するに、借りた農地をきちんとつくり続けてもらうためのチェックが必要だと思うんです。
それは、農業委員会が行ってチェックするんだというのではなくて、借り手側が、借りた側が毎年何らかの報告をしなければならないとか、借りた側にその責務がやはり課せられなければならないというふうに思うんです。そうした条件、例えば農事組合に加入するのかしないのかとか、それからチェックをするためのシステムだとか、あるいは、それをチェックするのがもし農業委員会だとするのであれば、農業委員会の権限をふやしたというような説明を今いただきましたが、ふえているのは権限ではなくて、仕事がふえているだけであって、権限がふえているわけではありません。権限というのは、それを拒否したり命令したりすることができれば権限がふえたということになるんですが、仕事がふえただけなんです。
だから、そういった意味では、それをチェックする体制というものをどのようにつくるのかということについて、ほとんど触れられていないというふうに思っております。
それと、例えばチェーン店のようなところが持って、その一つが賃貸で農業を始めた、そうしたら、本体がだめになって農業がだめになるということだってあるわけですね。では、今それだけの経営診断ができるだけのノウハウを農業委員会に持たせるんですか。持たせるのであれば、やはりそれなりの体制というものをつくらなきゃいけない。それだけの権限を与えていながら、農業委員会の体制整備とかということについては、これは後ほどの措置でできるものがあるのかもしれませんが、今聞こえてくる中では、必ずしも十分だというふうに私の方には聞こえてこないんですが、この点について、あわせてお伺いをいたします。
○高橋政府参考人 事後チェックの体制につきましては、先ほど来、不適正な利用の際におけます契約の解除あるいは許可の取り消し等、問題についての法的な規制、遊休土地対策についての規制を申し上げました。
さらに加えまして、このような利用状況につきましては、農業委員会が毎年一回、その区域内にございます農地の利用状況を調査するということでございます。基本的には、農地に関する利用の状況でございますので、経営のチェックではございません。現実にその農地がきちんと使用されているかどうかという外形的なチェックになろうかと思っております。
ただ、いずれにいたしましても、この問題に限らず、今回の農地法の改正に伴いまして、農業委員会に行っていただく役割というのは画期的にふえるというふうになっておりますし、また逆に、そのような形で地域の農地をきちんと監視、管理していただきたいというのが私どもの思いでございます。
したがいまして、先ほど来大臣が申し上げておりますように、まだ現段階でこの制度、定まったわけではございませんけれども、そのような農業委員会の機能がきちんと講じられることについては、私どもとしてもきちんと検討する必要があるというふうに考えております。
○佐々木(隆)委員 時間が来ておりますのですが、お許しをいただいて、もう一問だけさせていただきたいというふうに思います。
ですから、予算措置だけではなくて、権限というものもちゃんと見直さないと、今言ったのは、例えば農業委員会が行ってチェックします、人をふやします。多分、予算もつける、人もふやすということになるんだと思うんですが、しかし、それが行ったときに、もういなくなっていたなんということになったって、今の体制ではこれは困るわけです。ですから、借りた側に一定のものを課さなきゃだめなんです。農業委員会に全部その役目を担わすだけではなくて、借りた側の責任というものを、やはりもうちょっと明確にしておく必要があるのではないかというふうに思います。
先ほど、諸外国に農業委員会はないというお話が答弁か何かであったと思うんですが、しかし、農業委員会はなくても、極めて厳しい規制はあります。農地以外に使っちゃだめだと、郡や州レベルの極めて厳しいゾーニング規制ですが、あります。ですから、必ずしも日本がきついというわけでは決してないということでありますが、最後に大臣にお伺いします。
先ほども言いましたように、今までは、官というものが中間にあって、そして民と民の、貸し手と借り手の仲介をしていたわけです。ところが今度、官の役割がなくなっちゃったんですね。
私が申し上げたいのは、地方の自治体というのは地域づくりの責任を担っています。ですから、地域を限定して、ここならいいですよということも言ってきたわけです。自分たちの地域づくりの一環として、参入する場合は、この地域なら入っていただいても結構ですということを言ってきたわけです。ところが今度、官が介在しないということは、民と民でやってしまうわけですね。ですから、地域づくり自体が壊れるという危険性があるんですよ、官が入らないということは。自治体が今まで地域づくりの責任者だったんですから。
そこで、今度、自治体を外してしまった。商法でやってしまえばいいんだというような発想でやっていくと、地域づくり自体が壊れるという危険性があるわけです。そういった意味では、私は、事前の官の関与というのは一定程度やはり認めないと、これからの地域づくりに非常に大きな影響を与えていくのではないかという懸念があるんですが、先ほど来の論議も含めて、大臣のお考えを最後にお伺いしておきたいと思います。
○石破国務大臣 農地をめぐる制度というのは、本当に国々で違っていまして、フランス、ドイツ、大陸法の系統でございます、そこにおいてどのような農地制度かというのを私も今一生懸命研究をしておるところでございますが、委員が冒頭に御指摘のゾーニングにつきましては、また議論をさせていただきたいと思っております。
今、市町村の関与がなくなることについてどうなのだ、地方自治体の関与がなくなることについてどうなのだということですが、現在の仕組みでまいりますと、仮に耕作放棄地があったという場合に、市町村がそもそも基本構想に参入区域を設定しない、そういうこともございます。よって、意欲ある法人が借りたくても借りられない、耕作放棄地の解消にも役立たない、こういうことは実際に起こっておることでございます。
今回、一般企業も含めまして農業生産法人以外の法人について、農地を利用する者の確保、拡大の観点から、賃借方式での農業参入について、地域の限定や市町村等の転貸を要件とするということはやめるということにしたわけでございます。
しかしながら、地域における農業の取り組みを阻害してはなりませんので、周辺の農地の利用に影響を与えないかどうかの基準、これをつくる。この運用は地域の実情に精通しておる農業委員会が判断されるということにしておるわけでございます。市町村が介在しないからといって混乱をするかといえば、そうではございません。
委員がおっしゃいますように、何だ、権限がなくて仕事だけふえるのかということでございますが、それはお仕事をふやすというか、これからいろいろなことをお願いはいたします。そうでなければ、この農地の適正な利用というのはできませんので。
お仕事をふやす上において、どのようにすればそれが有効に動くか。午前の井上委員の御質問にもございましたが、人が足りない、あるいはお金が足りない、あるいはそこにおける有効なアドバイス等々、あるいは情報の共有等、そういうことについて、農業委員会が、仕事はふえたけれどもそれに伴ういろいろな措置がなされないということがないように、そこは私ども万全を期していきたいと思っております。農業委員会がどう動くかということがこの問題の一番のポイントであることは、よく理解をいたしております。
○佐々木(隆)委員 時間が来ておりますので終わりますが、例えば自治体がそれを許可しなくても、さっき言った土地基本法にあります公共性が損なわれると思えば、そういうことだってあり得るわけですから、ですから自治体の判断というのは非常に大切だということをあえて申し上げて、終わらせていただきます。
○遠藤委員長 次に、岡本充功君。
○岡本(充)委員 きょうは、委員各位の御配慮、また理事や委員長の御配慮もいただいて、農林水産委員会で質問をさせていただきます。まずは感謝申し上げます。
お手元に資料を配付させていただきました。
まず冒頭触れさせていただきますのは、この農地法の改正に当たって農林水産省がつくってきたペーパー、皆さんもごらんになられたことがあると思いますけれども、この農地法等の一部を改正する法律の背景には、穀物価格の高騰や輸入食料品の安全性への不安、こういったものからスタートをし、食料の多くを海外に依存している我が国においては国内の食料供給力を強化する必要がある、こういうステップがあり、農地法の改正へと入っていく、こういう流れが説明されておりました。
そこで、さまざまな穀物の価格の現状について、改めて確認をしたいと思います。
二枚おめくりいただきまして、まずはトウモロコシのことについてお伺いをしたいと思います。
昨今、穀物価格が高くなるという中で、トウモロコシの価格というのはこういう推移をしてまいりました。特に、二〇〇八年の六、七月ごろをピークとする大変高い時期を経て、今下落傾向にある、こういう状況であります。
では、配合飼料の価格はどうなっているのか。二ページ目でありますけれども、ここに書いてありますとおり、この四月からの新しい価格はおよそ五万二千百円ということになっているようであります。
まず一点目でありますけれども、こういった物価高騰が続く中、この異常な飼料価格の補てんをするという意味で、通常補てん基金、また異常補てん基金からそれぞれ出ております補てんする金額、これがかなりの金額になってきているようであります。そういった中、今後、この基金が大変大きな負担を強いられるのではないかという懸念もあるわけでありまして、この点について確認をしておきたいと思います。
それぞれお答えいただきたいわけですが、異常補てん基金、通常補てん基金、現状どのくらいの積み立てのお金が残り、もしくは借金があり、今後どういう形でこれを支払っていくのか。異常補てん基金から通常補てん基金に利子助成をおよそ二十二億円しているというような報告も受けておりますけれども、政府参考人からで結構でございますので、まずこの現状についてお答えいただきたいと思います。
○本川政府参考人 通常補てん基金と異常補てん基金の残高のお尋ねでございますが、この配合飼料価格の高騰の中で、これまで、平成十八年十月―十二月期から二十年十月―十二月期までほぼ二年間で、通常補てん基金については二千六百三十億円の補てんを行いました。それから、異常補てん基金につきましては、その同じ期間で九百億円の補てんを行っております。
通常補てん基金につきましては、それまで生産者の方々あるいは飼料メーカーが積み立てられた金額では賄い切れませんで、市中銀行から九百億円の借り入れ、それから農畜産業振興機構からたしか三百億円の貸し付けを行っておりまして、その利子補給については異常補てん基金から補てんをしているという状況でございます。したがいまして、通常補てん基金には現在のところ積立金はないという状況でございます。
それから、異常補てん基金につきましては、急なお尋ねでありますが、今確認しましたところ、百五十億円程度の基金残高があるという状況でございます。
○岡本(充)委員 私がきのう聞いたところ、異常補てん基金には百五十五億円のお金がまだ残っていて、先ほどの通常補てん基金は、二百九十二億円、農畜産業振興機構からお金を借りている、こういうふうに聞いております。
その確認をした上で、こういう状況の中、確かに、今後、生産者も一トン当たり五百円、また配合飼料メーカーも一トン当たり千円のお金を積みながら、およそ二年ほどかけてこのお金を返していこうということだそうでありますけれども、もう一回飼料価格が高騰することも考えられるわけで、こういうスキームで本当にいいのかどうかをやはり考える必要があるのではないかという指摘でありますけれども、今現在もそういう意味ではかつかつの状況になっている中、もう一度飼料高騰が来たらこの返済計画自体が御破算になる可能性もありますので、ぜひそこは検討していただきたいと要望した上で、二ページの配合飼料価格の安定制度について、この価格の決め方についてお尋ねをしたいと思います。
現在五万二千百円という金額だという話をしましたが、三ページ目の資料をごらんいただきますと、大体二〇〇七年の冒頭ぐらいのトウモロコシの価格、二〇〇六年末から二〇〇七年ごろの価格になっているということを踏まえると、まだこの引き下げが十分ではないのではないかという指摘もされ得ると思います。この四月から六月までの価格の決め方、そしてまた、今指摘をしました二〇〇六年の年末、二〇〇七年初頭、このころと比べると円・ドルの為替レートも違うわけでありまして、この価格がさらに引き下げられるのではないかという指摘に対して、お答えを政府参考人からいただきたいと思います。
○本川政府参考人 御指摘のように、配合飼料の価格につきましては、主原料でありますトウモロコシの価格、それをパナマ運河を越えて日本に運んでまいります海上運賃、それから為替相場、主にこの三つの要素で価格設定をするという状況になっております。
私ども、配合飼料の価格につきましては、基本的には、商系の業者三十四社、それから全農と四つの専門農協系、これが農家の方々にサービスを提供するということで競争して、その価格ができ上がっているわけでございます。基本的にはそういう民間の競争による農家へのサービスあるいは価格設定というものを優先しながら、ただ、その中で、価格設定をする中で、私どもとしても把握している情報がございますので、四半期ごとの価格設定の中で私どもも状況を聞かせていただきながら、私どもが持っている情報と著しくそごがあるようなものがあればさらに詳しく事情を聞くという形で、価格の監視といいますか、状況を見守っている、そのような形で決められているのが今の配合飼料の価格でございます。
○岡本(充)委員 いや、これはきのう通告したはずなんですけれども。
政府は、三月末に発表された四月からの価格、大体幾らぐらい下がると見越していたのかときのう質問しましたら、私のところに来られた担当の方が、三千円から五千円ぐらいだと思っていましたというような答弁をされました。政府として、これはどういうふうに試算をして、どういう数式で出しているのかということをお答えいただきたいとお願いしておったはずでありますけれども、お答えいただけますか。
○本川政府参考人 申しわけございません、趣旨を少しとらえなかったわけでございますが。
今申し上げたように、トウモロコシにつきましては、予約価格で購入してそれを日本に運んでくる、そういうようなリードタイムがございます。したがいまして、大きく考えれば、例えばこの四月から提供する価格であれば、おおむねその三カ月前の期間のトウモロコシを調達してこの四月から農家の方に配合飼料としてお届けするということになりますので、基本的には、その三カ月前の一月からこの三月までの間の配合飼料の価格変動を見て、それをどのような形で調達したかということをある程度推計いたしまして原料価格が決まってまいります。
それをこの期間で日本に運んでくるわけでございますので、同じように、日本に運んでくる場合の運賃、それからそのときの為替相場、そのようなもので私どもとしてはある程度の推計をして、それと著しく大きくそごがあるような形であればさらに事情を聞かせていただくというような形で見させていただいているということでございます。
○岡本(充)委員 いや、局長、先ほどお話ししましたように、私の三ページをごらんいただくと、要するに、二〇〇九年の一月から三月、もっと言えば二〇〇八年末から大幅に下がっていて、この価格帯というのは二〇〇七年初頭、もしくは二〇〇六年の年末ごろと変わらない国際価格でありながら、結局、それに比べるとまだおよそ一万円ほど高い配合飼料価格になっているという現状を私は指摘した上で、これはどういう計算式で出しているのか、政府が三千円から五千円下がると言う以上は何らかの計算式があるのでしょう、それを明らかにしてくださいというふうにお願いをしてあるはずですので、詳細に、これをこういうふうに掛け合わせて、これをこういうふうに足し合わせてこうやって出しているという式を教えていただきたいんです。通告しています。
○本川政府参考人 私がお伺いしたのは、〇七年一月と比べてこの四月からの価格が少し高どまりしているのではないかということをお伺いいたしました。それについて私、いろいろ聞かせてもらったわけでありますが、〇七年一月といいますのは、このグラフでごらんいただいても、〇六年の十月から上り基調のところの材料を調達して価格設定をするという状況になろうかと思います。それから、今の状況といいますのは、この一月から三月までの間である程度高どまった状況で推移をしておりますので、ここの間に原料としての差はあるというふうに考えております。
私ども、ちょっと、計算式をということで聞いておらなかったものですから、今ここでお答えするのは、今申し上げたようなことをお答え申し上げたいというふうに思います。
○岡本(充)委員 きのう質問通告して、式を聞きますよと私担当の方に言いましたよ。それを、きのうも三千円から五千円と非常にあいまいな数字を言われる。
それで、これに余り長い時間をかけていられないんですけれども、局長、そう言われますけれども、二〇〇六年末から二〇〇七年の価格というのが、比較的、上がって少し踊り場的に安定をしている。この時期の価格設定で出てきた金額が二〇〇七年一月の決定の価格です。それから、上り調子であったころの価格を反映しているのが二〇〇八年の十月の価格です。
これと比較して高いのではないですか、高どまりしているのではないですかということを指摘しているわけで、それを、三千円から五千円の幅であればいいというふうにお考えになられた式をしっかり教えてもらわないと、農家の方としてはどうしてこうなったかわからないんです。だから、ちょっとこれはきちっとお答えいただきたい。きのう通告していますから。お願いします。
○本川政府参考人 冒頭も申し上げましたように、配合飼料価格につきましては、民間三十四社、それから全農と四専門農協系がそれぞれ価格設定をして、農家の方々に価格とサービスをいろいろ競うことによって配合飼料価格あるいは農家へのサービスが向上されるという考え方を私どもはとっております。
したがいまして、配合飼料価格につきましては、今申し上げたような、原料になる主要な材料はお出しをし、それから、トウモロコシのシカゴ相場、ブッシェル当たり十セントがトン当たり大体三百円影響するというようなことも指標としては出しておりますし、フレート十ドルがトン当たり約八百円になるといったようなこと、こういったような要素はお出しをしております。
ただ、私どもが持っておる計算式を今明らかにして、それを機械的に当てはめればこうなるということを行政が計算式として示すということになりますと、冒頭申し上げましたような民間企業の自由な競争を阻害することになるのではないかと私ども心配しておりまして、その件に関しては控えさせていただきたいと考えております。
○岡本(充)委員 それはおかしな話ですよ。先ほど、三千円から五千円下がるんじゃないかとみずから言うわけです。価格を言う、アウトプットは言っているわけですから、当然、その計算式を言わなきゃ。見通しも言わないならいいですよ。見通しは言っておいて、どういう見通しかわからない。
大臣、おかしいと思われますよね。これは出していただけませんか。大臣、大臣に。大臣に聞いています。局長は同じです。
○遠藤委員長 本川局長。出せるんですか。
○本川政府参考人 繰り返しになりますが、私どもとしては差し控えさせていただきたいと思います。
○岡本(充)委員 ちょっと、どうして出せないのか、もう一度理由を言ってください。
○本川政府参考人 冒頭から繰り返し申し上げておりますように、三十四社という商系の業者と全農系、それから四つの専門農協系がそれぞれ自分たちの利点を生かして調達してきたものを農家の方に価格設定をして提供する、そういうようなことをして競争していただくことが畜産農家の方に一番いいのではないかと私どもは考えております。それを、私どもとしては、最低限我々が持っている情報でこのようになるのではないかと、それが著しくそごを来すようなものについては、少しおかしいのではないかということで聞かせていただくということをやってきております。
ただ、それについて、私どもがそのもとになる式をお出しして、それを明らかにした場合に、機械的にそれに当てはめれば行政が持っている式ではこうなるんだということになりますれば、もう少しサービスをして下げられるところが、その式でもう十分ではないかというような、競争を阻害することになるのではないかと思いますので、私どもとしては、そういう式を明らかにすることは適切ではないと考えております。
○岡本(充)委員 いや、三千円から五千円という数字を最後に言っているんですよ。言わなきゃいいですよ。言っているんですよ。三千円から五千円下がるんじゃないですかとアウトプットは言っておいて、どうしてその数字になるのか言わない。それはおかしい話で、当然のこととして、アウトプットを言っている以上は、式を明らかにしたって同じことですよ。
○本川政府参考人 今、先生のところにお伺いした者に確認しますれば、この四月からの価格について、三月時点で三千円から五千円下がると見通したということを今になって申し上げているわけでありますから、今、これから、七月からどうなるということを私どもは言っているわけでは決してございませんので、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。
○岡本(充)委員 いや、だけれども、結論としてそれが妥当な数字になったのかどうかということは、後から農水省が三千六百円という数字を見て、三千円、四千円と言っているかもしれない。これは、きちっとどのくらい下がるかという根拠がないことには、本当にフェアかどうかわからないんです。これは理事会でぜひ資料を出していただくように検討していただきたいんですが。
○遠藤委員長 理事会で協議させていただきます。
○岡本(充)委員 続いて、これはぜひ大臣も御検討いただきたいと思いますが、価格が下がったときの補てんについてのことです。
二ページ目をごらんいただきますと、今、五万二千円の飼料価格に対して補てんはないわけでありますね。しかし、平成十九年の四月、七月、十月ごろの価格より若干安いとはいえ、このころは補てんを受けていたことで、実際の酪農家の負担は少なかったという仕組みになっています。
こういうふうに、急激に上がった後、急激に下がっていくということが今後ともあり得るとすれば、価格の下落局面でもある程度補てんをする仕組みをつくってもいいんじゃないかと思うわけでありますけれども、それについては農林水産省はいかがお考えでしょうか。
○本川政府参考人 畜産関係につきましては、この三月にもこの委員会で今年度の価格の決定なり関連対策を決定するに当たりまして御論議をいただきましたが、各種の経営安定対策を講じております。例えば肉用牛関係であれば、いわゆるマル緊対策というようなもので、家族労働費あるいは物財費を下回った場合に一定の経営的な支援をする。それぞれの畜種に応じまして、適切な経営安定対策を講じているところであります。
こういうものがまず基本にございまして、ただ、そういう経営安定対策を決めておりますけれども、これはある意味では一年に一回適切に決定をしておるわけでございますが、その間におきまして配合飼料価格が急激に上昇するような場合に、そういう経営安定対策だけではカバーし切れない部分が出てくる、そのような考え方でこの配合飼料の価格安定制度が設定をされているわけでございます。
したがいまして、現在少し高どまりをして発動されないという御論議がございますけれども、先ほど申し上げたような各種の経営安定対策、こういうようなもので支援をする。それからもう一つは、家畜飼料特別支援資金といったもので低利の資金を提供申し上げる。このような形で経営安定を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
○岡本(充)委員 いわゆる経営資金に対する融資制度等は価格の上昇局面でもやはりあるわけでありまして、下落局面の今だけにある制度ではないですよね。そういう意味でいうと、やはり下落局面では酪農家の負担が大きいということになりますから、そこはぜひ、大臣、いかがですか、御検討いただくだけでも御検討いただけませんか。
○石破国務大臣 これは、制度の仕組み上、なかなか補てんということが難しいんだろうと思っています。下落局面において補てんするのは難しい。そうすると、ほかの政策をもって経営というものを支援することはできないかということで私ども今やっておるわけでございます。局長が答弁したとおりであります。
ですので、補てんという考え方をとる場合に、今委員が御指摘のような制度を仕組むというのは、これは制度設計上かなり難しいというか、ちょっと今の私の考えでは、こういう仕組みではどうかなというのが申し上げられないところでございます。(岡本(充)委員「検討はしていただけますか」と呼ぶ)
何かいい仕組みがないか、それはまた委員から御示唆をいただいて検討はいたしますが、現状において、こういうようなことでできるというようなことが申し上げられるだけの見識、知識を私は持っておりません。
○岡本(充)委員 ぜひお願いをしたいと思います。
同様に、ほかの穀物はどうか。四ページ目ですけれども、いろいろ載せさせていただきました。ここで小麦についてちょっと触れたいと思いますが、輸入麦のいわゆる政府売り渡し価格の設定についてです。
質問通告は、ちょっと資料の説明が遅くなった関係もあって、申しわけありませんけれども、きょうの午前中にさせていただいたこととなっております。
皆様に資料をお渡しできませんでしたが、例えば平成二十年四月期の売り渡し価格は、実は、小麦の価格のピークが平成二十年の三月ごろにあったにもかかわらず、ピークが下がってきてからも売り渡し価格が上がり、また、平成二十年十月期の売り渡し価格は、さらに小麦の価格が下がってきても、過去八カ月の平均をとるという考え方に従って、価格が下がっても麦の価格が上がる、こういう方式をとられているということであります。
こういう計算方式についても少し検討が必要ではないかというふうに考えるわけですが、それについて御答弁いただけますか。
○町田政府参考人 お答え申し上げます。
現行の輸入麦の政府売り渡し価格の改定ルールでございますが、国際相場の急激な上げ下げが消費者に大きな影響を与えないようにするという観点から、年二回、四月と十月でございますが、改定するとともに、その水準につきましては、過去八カ月間の政府の買い付け価格の平均値をもとにして算定しているところでございます。
この改定ルールに基づきまして二十一年四月期の政府売り渡し価格をルールどおり決めたわけでございますが、国際相場の状況等を反映して、主要五銘柄平均で一四・八%の引き下げになったところでございます。
ただ、国際相場が上がるときもあれば下がるときもあるということで今のようなシステムをとっているわけでございますが、直近の価格状況がそこに速やかに反映されているかといえば、そういった点はないわけでございます。
この点につきましては、国際相場の動向をより迅速に売り渡し価格に反映できるようにということで、現在、学識経験者、消費者等を委員といたします輸入麦の政府売渡ルール検討会におきまして、売り渡し価格の改定ルール等につきまして精力的に検討を進めているところでございまして、本年夏を目途に成案が得られるようにしたいというふうに考えているところでございます。
○岡本(充)委員 物価上昇局面が一段落する中で、その価格がどのようになっているかということを農林水産省としてもぜひ注意深く配慮していただきたいと思います。
それで、けさ方役所の方からいただきました資料を見ますと、平成二十一年二月二十四日、農林水産大臣名で、関係事業者団体代表者殿、大手流通企業代表者殿ということで、「今後、小麦粉・麦関連製品の価格についての見直し交渉が流通の各段階で行われることになると考えられますが、今回の輸入麦の政府売渡価格の引下げを踏まえ、また、独占禁止法・下請代金法等を遵守して、適切に行われますよう、特段のご配慮をお願い申し上げます。」ということになっています。
麦を使ってつくられる、パンはもちろん、うどんや中華めんなど、いろいろあると思います。そういう製品の価格が適正なものになっているかどうか、大臣、きちっとこの文書に従って見ていただきたいと思いますし、また、政府部内で検討していただきたいわけです。その価格について、現状では配慮をお願いすると言うよりほかないわけでありますけれども、そのあり方について今のままでいいというふうにお考えなのかどうかも含めて、つまり、配慮をお願いするまでしかできないという農林水産省の今の手持ちのカード、それについてどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。
○石破国務大臣 私の名前で出しておりますのは、配慮をお願いするということになっております。
これは、この貿易の体系、あるいはおっしゃいますように、いろいろな業者さんがおられるわけでございます。適正なルールは、今局長がお答え申し上げましたように、夏をめどに成案を得たいというふうに思っておりますが、現状において、私どもとしては、配慮をお願いしたいと言うのが精いっぱいなのかなと考えております。
これに加えて政府として何か物が言い得るかというと、繰り返しになりますが、この貿易の仕組み、そして業者さんのいろいろな形態というものを考えてみましたときに、これ以上のことはなかなか申し上げにくいというのが私の実感でございます。
○岡本(充)委員 現行の法体系はそうだろうと思いますね。ただ、輸入麦の価格が下がり、政府の売り渡し価格が下がっているにもかかわらず、例えば、最終的な小売の段階で製品の価格にそれが反映していないという実態があっても手をこまねいて見ているだけということについて、じくじたる思いはないんですかという思いを私は御質問したわけですね。大臣として、やはりそれはじくじたる思いがおありだろうと思います、もしそういう状況になれば。だから、そこをぜひ、どういうふうにしたらいいのか、これはまた検討なんですけれども、少しお考えいただくというわけにはいかないんですかと聞いています。
○石破国務大臣 それは、小麦の値段が下がっているのに、実際に消費者の実感として、何だ何だ、ちっとも下がっていないじゃないかというようなこともあろうかと思っております。
ただ、その小麦の値段というものと最終的な製品とがどういうふうな牽連関係にあるかということも考えていかねばなりません。そこで、実際にしばしば値段を改定するということが経営上どうなんだろうかということも考えていかねばならぬことでございます。
それは、じくじたるものはございますが、それぞれの経営のあり方も含めまして、私どもとして、特段の配慮をお願いしますと言うと、哀願調みたいなところがありまして、何かじくじたるところがないわけではございませんが、利益が正当にしかるべき人に還元されるということについては、私どもはよく配慮していかねばならないと思っております。
ですから、そこのところは、私どもとして、きちんと、監視という言葉は余り好きではございませんが、何かそういうことができるシステムがないかということは、私自身留意をしていきたいと思っております。
○岡本(充)委員 ぜひお願いします。
それで、五ページ、これはやはり農業とも密接な関係のある軽油の値段の推移を見ています。
今は少しガソリンと差が開いたようでありますけれども、私なんかは、地元を回っていて、いっとき、ほとんどレギュラーガソリンと軽油の値段は変わらないな、こういうふうに見ておりました。
きょうは、経済産業省資源エネルギー庁にもお越しいただいておりますので、この軽油の価格がどうしてこういう状態になるのか、加えて、こういった軽油の価格が下げどまる、原油価格はガソリンと同じように下がっているわけですから、軽油だけ価格が下がらない、もっと言えば、本来、税率の差を考えれば、この一月五日の四・一円どころではなくて、少なくとも二十円程度の差があってもよかりしところが、そうならない。
このことについてどのようにお考えで、そしてどのような対策をとられたのか、お答えをいただきたいと思います。
○北川政府参考人 軽油価格に関する御質問でございます。
軽油、ガソリンといった石油製品の価格、これは、大変競争の激しいマーケットの中で競争で決まっているというのが実態でございます。これは、元売、小売、いずれも大変厳しい状況にございます。
今御指摘の価格でございます。
原油のコストにつきましては、昨年夏、大変上がったわけでございますけれども、一リットル当たりで申しますれば、原油が、七月ですと平均九十円ぐらいだったわけでございますけれども、これが三月は二十八円と六十二円下がってございます。
これに対しまして軽油でございますけれども、同じく現在店頭で九十九円でございますので、最高に比べまして大体六十八円ぐらい下がってございます。原油コストより少し下がっているというところでございます。
ガソリンはもっと下がっているという御指摘でございます。ガソリンにつきましては、最高が百八十五円ぐらいだったのでございますけれども、これが百十三円ぐらいで、七十二円下がってございます。これは、昨年の秋、ガソリンが非常に売れないというときがございまして、そのときに非常に先行的に下がったということでございます。ガソリン事業に携わっている方によりますれば、陥没的な価格になってしまった、こういうことでございます。
それで、軽油はどうなんだというところでございますけれども、店頭はそのような状況でございますが、一方で、軽油の取引実態として非常に多くなっております事業者の持ち届け、インタンクと称しておりますが、それにつきましては、最近の景気の状況をかんがみまして非常に下がってきてございます。インタンクの実勢は、先ほど申し上げました軽油の店頭価格に比べまして十円から三十円ぐらい安くなってございます。具体的には、最近聞いたところでは七十五円程度となってございまして、ピーク時に比べると七十七円ぐらい下がってきております。
したがいまして、事業者向けの価格がこのように下がってございます。一方で、御指摘のように店頭の問題もございます。私どもといたしましては、原油価格の下落が適切に反映されるように注意深く監視をしてまいりたいと思いますし、万一競争制限的行為がありますれば、公正取引委員会と連携して厳正に対処してまいりたい、かように考えてございます。
○岡本(充)委員 ぜひよろしくお願いします。
五ページを見ると、なぜか軽油の価格とガソリンの価格が、ことしの初め、去年の末ごろ異様に狭くなっているような状況になっているのは一目瞭然でありまして、農家にせよ漁家にせよ、営む上で必要不可欠な燃料でありますから、きちっと価格を適正なものにしていただく必要があると思います。
ちょっと話はかわって、減反政策についてお話を伺いたいと思います。
きょうの朝日新聞でしたか、「農林水産省内では、農家への減反押しつけをやめ、自主性に任せる案が浮上している。」農水省内で浮上している案は、「「減反選択制」という考え方を反映したものだ。」こういう記事が出ているわけでありますが、かつての言い方をすれば、今、およそ百九万ヘクタール減反をして生産調整をしている。
六ページを見ると、やっている都道府県とやっていない都道府県、この網かけのところでありますけれども、生産調整の実施状況がどうか。三角がついているところが、そういう意味では、生産目標数量そして実数量等を勘案してみると生産調整が行われているところ。その一方で、残念ながら、数量で比較をした場合に必ずしも十分行われていない、さらに一万二千五ヘクタール減反を求められる千葉県のようなところもある、こういうような状況になっています。
まじめな農家が損をするのではないか。一生懸命減反をした結果、価格が安定をし、もしくは高くなった。しかし、その一方で、減反を守らない農家の方が、場合によっては、その価格で米が売れて利益を得ることができるというのはどうなのかななどという声もちらほら私の地元でも聞こえてまいります。
大臣としては、このきょうの新聞にもありました農水省内で浮上している減反選択制という考え方についてはどういうふうにお考えなんですか。
○石破国務大臣 浮上しておるかどうかは別にいたしまして、食管制度から今の食糧法に移行いたしますときに、この選択制というものが俎上に上り、かんかんがくがくいろいろな議論がされたという経緯はございます。
委員御指摘のように、要するに、まじめに一生懸命、みんなが迷惑しないようにということで減反した人がいる。しかしながら、三割ぐらい減反には全然参加しない人がいる。七割の人たちが一生懸命頑張って維持した価格の上に乗って、それがベースになるわけですから、好きなだけつくって高く売るということは、どう見たって不公平だ、まじめにやるだけばかみたいだということになるわけで、これはやはり、不公平がある以上、制度というのは永続しないんだろうと私は思っております。
そうすると、どうすれば不公平感が解消されるかということは、いろいろなやり方を考えてみなきゃいかぬだろう。一、二の三でみんなもうやめ、好きなだけつくってくださいなということになりますと、価格は一時期物すごく暴落いたしますので、そういうわけにはいかぬでしょう。では、減反をもっと強化するということになれば、本当にこれ以上、例えば減反に参加しなければ懲役五年とかそんな話にして、実際そんなことができるのかということでありまして、それもなかなか実効性が難しいだろう。
そうすると、何が間にあるのだろうかという議論はやはりしてみる必要があるのではないかと思います。結果として何が出るかということは別にして、政策というのは常にその実効性というものが検証されなければいけませんので、いろいろな選択肢をお示しして、その中でどれがいいか、どうすれば農業というものは守っていけるか、どうすれば米生産というものはきちんと続くかということを国民的な議論の上で決めなければそれは政策たり得ない、それが私の思いでございます。
○岡本(充)委員 今後の価格安定の施策というのは減反政策だけでなし得るのか、それとも所得補償を米にも導入していくという考えでいくのかということは、やはり大きな論点になってくるだろうと私は思いますし、それはやはり政府部内でも施策をまとめていただきたい。民主党は民主党でもう既に考え方は明らかにしておりますから、そういう意味では、今度は政府の案の出てくる番だろうというふうに思っています。
続いて、農地関係税制についてお伺いします。
相続税の納税猶予の問題でありますけれども、今回の農地法等の改正で、猶予を受けられる税の対象農地が、これまで自作をしている場合に限られていたものが、他人に、他の法人も含めてですが、貸した場合でも猶予が受けられるという仕組みになりました。
しかしながら、二十年要件が外れるという点も指摘をされておりますが、これについて、農林水産省としては、二十年猶予が外れるということについてどう理解をされているのか。農家の方としては、自作をしていても、また出し手になったとしても、農地として永続をしていれば二十年猶予を残してほしいという声もあるようでありますが、それについてお答えいただきたいと思います。
○高橋政府参考人 農地の相続税納税猶予制度の見直しでございますけれども、委員御指摘のとおり、今回、相続税の納税猶予につきましては、従来は相続人みずからが二十年間営農するということを要件にしていたものにつきまして、被相続人がもう既に貸していた農地、それから、相続した農地をある一定の手法によりまして貸し付けた場合であっても、この猶予は継続するということになったわけでございます。
ただし、従前と違いますのは、従前は、相続人みずからが二十年間営農した場合、相続をした後二十年間営農した後は納税猶予が免除されるという形になるわけでございます。免除でございますので、その後におけます処分、これはさまざまな、転用でありますとか、ほかの人に売ったということもあります、貸すのもあるわけでございますけれども、そういうようなことがあっても、もう免除されているわけでございますので、さかのぼって納税するということは必要ないということになるわけでございます。
これにつきましては、今回、基本的に、相続税納税猶予制度の前提といたしまして農地制度の改正ということがあるわけでございますけれども、農地の将来にわたる確保とその有効利用の徹底を図る観点から、利用を基本とする制度に再構築するということでございます。
したがいまして、相続税の納税猶予が適用となっている農地につきましては、これはやはり農地として使うという前提のもとに納税が猶予されているということになるわけでございますので、今回の措置については妥当なものであるというふうに考えておるところでございます。
○岡本(充)委員 ただ、それだと、ここまで十八年、十九年、もしくは十七年、もうそろそろ二十年で免税となるという目前まで来ている人にとってみれば、あと数年農地を出すのをやめよう、こういうふうな話が出てくる可能性もありますし、私は、そういう意味では、納税猶予自体を改めて考え直していただきたいというふうにも思うわけであります。
あわせて、生産緑地についてでありますけれども、市街化区域における生産緑地については貸した場合についての猶予が認められないということになっておるわけでありますけれども、納税猶予が認められない理由はどうなっているのか、財務省からお答えいただきたいと思います。
○古谷政府参考人 お答えを申し上げます。
先ほどから御議論ございますように、今回は、農地法の大きな改正を踏まえまして、農地の転用規制の厳格化や農地の面的集積の促進等が行われるということでございまして、この見直しを踏まえまして、農地に係る相続税の納税猶予制度につきましても、農地法の転用規制の及ぶ市街化区域外の農地につきまして、一定の政策的な貸し付けがなされた場合に納税猶予の対象を拡大するということにさせていただいております。
御指摘の生産緑地を含みます市街化区域内の農地につきましては、従来から農地法の転用規制は及んでございませんで、今回の農地法等の改正においてもこの取り扱いは変わっていないわけでございますけれども、この点につきましては、今後、都市計画制度とあわせて見直しが行われ、当該農地に係る制度上の位置づけですとか保全や利用のあり方の検討が行われるというふうに承知をしてございます。したがいまして、私どもとしては、相続税の納税猶予の対象の拡大につきましても、こうした検討とあわせて検討させていただければと考えております。
○岡本(充)委員 その点については議論の場を私もいただいて、ぜひまた話題に出したいと思います。
最後に、先ほど農地転用の話が出ました。今回の法律で、農地転用を公共利用も厳しく制限していくという中で、その一方で、農業振興地域の整備に関する法律の第十四条などを見ますと、きのう役所の方と議論しましたけれども、農用地区域内にある土地が農地転用されて、例えば何らかの、農業用倉庫という名目で農業用倉庫を最初つくった、しかし、そこからさらに用途を変えて、場合によっては工場や木工所などをつくった、こういうように用途がさらに変わっていったというようなときに、この法律を見ると、実は、市町村長は勧告をするにとどまって、原状回復を求めるまではできないように受けとれます。また、農用地区域内以外の農振地域では、さらに用途の変更についても追いかけることができないという話を伺いました。これは事実でありますでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○吉村政府参考人 まず、農用地区域内の扱いでございますけれども、農業用施設に転用する場合でございます。これについては、農用地区域から除外をしないで、農業用施設用地として用途区分をすることによりまして、設置することができるということになっております。この場合に、今委員御指摘のありましたように、住宅等の他の施設にさらに転用するということについては、農用地区域から除外しない限りできないということになっております。
次に、農用地区域外の農地を転用して農業用施設を設置する場合でありますけれども、農業用施設は、その性格上、用地選定において農地と隣接して設置することが適当な場合が多いということで、転用許可基準上原則不許可としている農地でも、許可可能にしているものでございます。農業振興を図っていく上で、こういった取り扱いはやはり必要なものだというふうに考えております。
ただ、それがさらに、一たん農業用施設に転用されたもの、これについては、農業用施設にきちっと転用されたかどうかのところまではきちっと農業委員会で、あるいは場合によっては県も確認をするわけでございますけれども、その後で、一たん事業計画どおりに農業用施設用地に転用が完了した、そうなりますと、これは農地という扱いではなくなりますので、その土地には農地法による転用規制は及ばないということになります。
そういう意味で、転用行為終了後に農地でなくなった土地に対する規制というのは、農地法のそもそもの性格、また、農地を農地以外のものとすることを規制するという農地法の目的を超えるものではないかというふうに考えるところでございます。
○岡本(充)委員 時間になりましたから終わりますけれども、局長、端的に答えてください。私が指摘したように、農用地区域内にあっても、要するに、勧告までで、原状回復は求めることができないんでしょう。そこを答えてください。
○吉村政府参考人 その点につきましては、これは先ほども申しましたように、一たん農業用施設を建てまして、それを建て直すということになりますと、これは開発行為ということになりますので、当然、農用地区域内の規制がかかる。したがって、農用地区域から除外をしない限りそれができないということになるというふうに考えております。(岡本(充)委員「勧告しかできないんでしょうと聞いているんです。原状回復を求められるんですか」と呼ぶ)
今の点でございますけれども、農用地区域から除外しないままにそういうことを行った場合には、これは開発行為の許可を得ていないということになるというふうに理解をしております。
○岡本(充)委員 委員長、答えてもらってください。答えていないですよ。委員長、もう一回だけ聞かせて……
○遠藤委員長 勧告だけなのかどうか、今の答えをしっかりしてください。
○吉村政府参考人 済みません、お答え申し上げます。
再度お答え申し上げますけれども、今申しましたように、一たん農業用施設にしたものを、さらに開発行為をして別の用途に転用するという場合には、これは開発行為の許可が必要でございますので、そういう意味では、許可を得ないでした行為ということで規制される。
それから、今委員が御指摘になりましたのは開発行為を伴わないような転用の場合だというふうに考えておりますが、その場合には勧告しかできない、こういう規制になっております。
○岡本(充)委員 これで終わります。
本当に、こういった片一方で勧告しかできないような状況がまだあるという実態を、大臣、ぜひ御理解いただいて、今後に反映させてください。
ありがとうございました。
○遠藤委員長 次に、菅野哲雄君。
○菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。
今回の農地法などの改正は、戦後の農地制度を大きく転換させる内容だけに、時間をかけた丁寧な審議が行われることを、冒頭、委員長にお願いしておきたいというふうに思います。
最初に、法案の内容とは直接関係ありませんが、耕地利用の将来展望についてお伺いします。
農水省は、昨年十二月に、食料自給率五〇%のイメージと題した工程表を発表しております。おおむね十年後に食料自給率五〇%を達成させるため、主要品目の生産目標などを掲げているわけですが、そこでは、十年後の耕地面積を四百六十二万ヘクタールとしています。平成十九年度の耕地面積が四百六十五万ヘクタールですから、十年後もほぼ同じ水準を確保するということになります。
ところが、現状は、この五年間だけでも八万六千ヘクタールが減少しているわけで、この数値目標は極めて高いところにあります。このような見通しを示した根拠はどこにあるのか、まずお答え願いたいと思います。
○針原政府参考人 御説明申し上げます。
御指摘の食料自給力・自給率工程表は、昨年九月の麻生総理大臣の所信表明演説を受けまして、農林水産省において、新たな基本計画の策定に向けた議論に供するため、昨年十二月に、おおむね十年後の食料自給率五〇%を達成するとした場合のイメージとして公表したものでございます。
食料自給率五〇%をまず前提といたしまして、その場合の我が国農業の姿を想定すれば、減少トレンドにある我が国の農地を最大限確保する、そういうことが必要でございます。現行基本計画におきまして、平成二十七年、四百五十万ヘクタールを見込んでおりますが、それに加えまして、耕作放棄地からの営農の再開、これを十万ヘクタール、それから転用規制の強化等による面積減少の一層の抑制、それらの取り組みを考慮いたしまして、おおむね十年後の農地面積は四百六十二万ヘクタールが必要、そのような結果になったものでございます。
○菅野委員 私がなぜこのことを質問するのかというと、後でも触れますけれども、現状を本当に認識しているのかなという強い疑念を持っているものですからこの質問をしているわけです。イメージということで、ただイメージしたというだけで政府からこういうものが出てくること自体に、私は、本当にこれでいいのだろうかという大きな疑問を持っているわけです。
それからもう一つ、この工程表で、十年後の耕地利用率が一一〇%とされています。ところが、この数字も平成十九年度では九六・二%、二〇%近い利用率アップになるんですね。調べてみますと、耕地利用率一一〇%に最も近かったのは昭和四十五年の一〇八・九%で、これ以降はずっと低下の一途をたどっているんです。ちなみに、昭和四十五年の食料自給率は六〇%でした。
今後十年間でこの約四十年前の水準に戻すというのは、正直申し上げていささか無理があるというふうに思うんですけれども、この点についても根拠を示していただきたいと思うんです。
○針原政府参考人 今の御指摘の点につきましても、食料自給率五〇%をまず前提といたしまして、その場合の我が国農業の姿を想定すれば、先ほどの四百六十二万ヘクタールをどのように利用しなければならないのかということをお示ししたものでございまして、そのためには、例えば調整水田等への新規需要米等の作付を拡大する、あるいは水田裏作における麦類の作付を大幅に拡大するということで、耕地利用率を一一〇%ということにしたものでございます。
○菅野委員 副大臣、今のやりとりを聞いたと思うんですけれども、ぜひ副大臣にもこの感想を聞かせてもらいたいんですが、耕作放棄地での営農再開、ここに、イメージ図に書いてあるんです。新規需要米や水田の裏作を拡大させると今答弁していましたけれども、これは、自給率五〇%に合わせて電卓をたたいたとしか言いようがないんじゃないのかな、そういうものがひとり歩きしているんじゃないかなということなんです。
問題なのは、耕地利用を高めようとする農家の意欲をどう引き出していくのか、このことなしにはこの食料自給率五〇%の達成はないんだと。そして、高齢化あるいは後継者難、さらには耕作放棄地の拡大などは、農産物価格の低下によって将来を見通せないからこういう現状が起こってきているんだ、農業だけでは食べていけないような所得水準の低さこそ問題があるんじゃないでしょうかということを私はずっと言い続けてきているわけなんですね。極端な話をすれば、サラリーマンの収入よりも農業所得が高ければ、若い世代も農業に参入してくるわけなんです。
耕作面積の維持や利用拡大に向けて、副大臣としてどんな政策が今最も有効だと考えておられるのか、その点について所見をお聞きしたいと思います。
○石田(祝)副大臣 所見というところまでいくかどうか、御期待におこたえできる答弁になるかわかりませんけれども、十年後のイメージ、五〇%にしたらこういう姿になるのではないか、お米は幾ら、小麦は幾ら、こういうことで、それは必ずしもかちっとその数字が固まったものだというふうに私は受けとめておりませんが、五〇%の姿はこういうものではないかと。
そういう中で逆算をすると、先ほど申し上げましたように、農地の面積については四百六十二万ヘクタール、そして利用率も一一〇%と。これは委員から見たら、ちょっと数字としてひとり歩きしているんじゃないか、こういうお考えだろうと思いますけれども、ではそれについて具体的にどうするのか。こういうことで、今回も、四百六十二万ヘクタールにするには、営農再開をしていただくところ、今局長からも答弁がありましたけれども、十万ヘクタール。これは今回、市町村の農業委員会、皆さんの手を煩わせて、一筆ごとに緑と黄色と赤と分けていただいた中で、十万ヘクタールは何とか耕作放棄地を再開してもらおう、こういうことも実はやっている、これからやっていかなきゃいけない。そして、今回の農地法での転用規制。
こういう具体的な姿を通して、これはぜひ、ある意味でいえば達成していかなきゃいけないのじゃないか。それに対する毎年の予算についてはそれぞれ査定があると思いますけれども、大きな、五〇%にしていくというこれは、私はどうしても取り組んでいかなきゃいけないのではないか、こういうふうに考えておりますので、また忌憚のない御意見もいただいて、ぜひこの目標に向かっての御協力をいただければと思っております。
○菅野委員 大臣も聞いておって。ここにこの数字があるんです、食料自給力・自給率工程表のイメージ、五〇%。だから、私は、こういうイメージでしかこの五〇%を達成できないとすれば、これは本当に、また十年たっても食料自給率が四〇%のままだったというふうになってしまいやしないかという危機感を持っているんです。
それで、世界的に食料不足という状況の中で、こんな数字をもとにしてどう政策を展開していくのかなということを考えたときに、私は、これから議論しますけれども、抜本的な政策というのが必要なんだというふうに申し上げておきたいと思います。
一例ですが、一一〇%ですから、水田裏作を行って麦類の作付、平成十九年度は五万ヘクタールしかやっていないのに、七倍の三十六万ヘクタールにしますという数字がひとり歩きしているんですよね。これをどう達成するのかというところがなくて数字だけ歩いているということ自体に、非常に疑問を持つものであります。このことを申し上げておきたいと思います。
それでは、次に法案の中身に入っていきたいわけですが、農業を取り巻く非常に困難な状況は、先ほど指摘した農業所得の低下が最大の要因であって、少なくとも農地制度にあるとはどうしても思えません。ましてや、農地法の改正案には農地の効率的な利用という言葉が強調されているわけで、先ほども佐々木委員もこのことをずっと議論していましたけれども、一般企業の参入による大規模経営化は逆に小規模農家や中山間地域農業を衰退させるのではないかと強く私は危惧していることをまず冒頭指摘しておきたいと思います。
さて、今回の改正で、農地の所有と利用の分離、耕作者主義から利用者中心へと変更されるわけですが、現行農地法の目的規定にある「耕作者の地位の安定」という文字がすっぽり削除されたことは大変に問題だと思います。規模の大小を問わず、農地を使って農業に従事する方の生活所得の安定こそが問われている今、「耕作者の地位の安定」を削除した理由について、まずお聞かせ願いたいと思います。
○高橋政府参考人 今回、農地法の第一条の目的規定を改正しておるわけでございますけれども、この目的規定をどのように書くかということにつきましては、改正後におけます農地法の内容全体がどのようになっているのか、そして、今日的に見て何が法律の究極の目的なのか、そして、その目的を実現するためにどのような措置が法律に書かれているのかを的確にあらわす、そういう観点から整理をいたしまして条文化したものでございます。
先ほども大臣からお答えさせていただきましたけれども、まず、国内の農業生産の増大を図り、もって国民に対する食料の安定供給の確保に資すること、これを今回の農地法の究極の目的としております。
その上で、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源との認識のもとに、農地を農地以外のものにすることについてのいわゆる転用規制、農地を効率的に利用する者による農地についての権利取得の促進、これは所有に対する規制と賃貸借に対する規制について一定の要件のもとに分けるということでございます。農地の利用関係の調整、遊休土地に対する措置もここに入っているわけでございます。農地の農業上の利用を確保する措置、これも同様でございます。そういう農地法の主要な措置、内容を規定したわけでございます。
一方、では現行がどうなっているかということでございますけれども、現行の農地法の第一条では、その法の目的の一つとして耕作者の地位の安定ということを掲げております。もう一つは、農業生産力の増進でございます。
この目的規定に則しまして、農地はその耕作者みずからが所有することが最も適当であるとの考え方のもとに、所有権に基づいて耕作の事業を行ういわゆる自作農を維持創設するために、具体的な規制措置といたしまして、小作地の所有制限、これに違反する土地についての国による強制買収、要は、耕作者の地位の安定は自作農の維持創設という内容を大きく含んでおりますので、このような小作地の所有制限、強制買収等の措置をあらわしているものでございます。
また、委員御承知のとおり、農地改革によりまして自作農となれなかった小作農の方々もおられます。このような方々について、安定的に農業経営を営めるよう、耕作者の権利を保護するための権利移動に対する保護というようなことについても措置を講じたわけでございます。
このような、小作地所有制限または強制買収、それから耕作者の権利保護のための賃借権の保護等の二つの具体的な措置、これを通じて耕作者の地位の安定という目的規定の内容を具現化したわけでございます。
これに対して、今回、農地の利用を基本といたします制度に再構築するために、耕作者の地位の安定のための主たる装置でございました自作農維持のための小作地の所有制限、国によります強制買収措置は廃止するということにいたしました。そういたしますと、耕作者の地位の安定の主たる手段でありますこの二つの措置、小作地所有制限、国の買収ということがなくなりますので、目的規定との関係においても、主要な手段がなくなったということで「耕作者の地位の安定」については今回削除したところでございます。
しかしながら、今回の改正におきましても、先ほどの二つの手法のうちの一つでございます、農地を貸借により耕作あるいは利用する者の権利を保護するために、引き続き、農地の引き渡しがなされたことをもって登記がなくとも対抗要件とみなします現行十八条のいわゆる農地の賃貸借の対抗力、賃貸人から契約の更新をしない旨の通知をしない場合は従前と同様の農地の賃貸借契約をしたものとみなしますいわゆる法定更新、十九条でございます。農地の賃貸借の解除等に当たり都道府県知事の許可に係りしめる制度、二十条。いわゆる賃貸借の契約の十八、十九、二十、この主要な部分については引き続き存置をしているところでございます。
この意味で、当然のことながら、耕作者、利用者の地位の安定は引き続き図られるということでございます。
○菅野委員 今、るる説明、答弁が行われました。佐々木委員との答弁でもこの点が大きな問題点になっているというふうに私はとらえているんですけれども、要は、利用権というものを全面開放していこうという流れに行っているんだ、農地を利用しやすくしていくんだという一点は変わりないというふうに思うんです。
それで、一つ質問通告から飛ばすんですけれども、この目的規定を変えたことによって、農業生産法人以外の一般企業も農地が利用できるとしているわけですね。ここが大きな問題点だというふうに私は思います。
というのは、この目的規定を変えて、地域においてはどういう形態が存在してくるのかなということを考えたときに、一つは、先ほどから議論になっているように、家族経営的な農家というものが地域に存在します。それからもう一つ、農業生産法人も存在します。それから、集落営農も存在します。これまでは、この三つでもって農業経営というものを、地域農業を発展させていこうという視点だったんです。それがもう一つ、一般法人も地域に参入することができるんだと。今、目的規定を変えて、こういう四つの仕組みをつくろうとしているわけですね。
それでは、もう一つの大資本力を持った一般法人が入ることによって、今までの家族経営的な農業、集落営農や農業生産法人、これとどういうかかわりを持つようになるのかなという懸念が排除できないというふうに私は思うんです。この点は、逆に、農業生産法人とか集落営農を行っていく人たちが衰退の一途をたどらされてしまうんじゃないのかなという危惧を持っているんですけれども、この点についてはどう考えておられますか。
○高橋政府参考人 現行の基本計画で、委員御指摘のとおり、家族農業経営、農業法人あるいは集落営農という主要なタイプを将来における担い手として位置づけております。
今回、農地制度の改革に伴いまして、委員御指摘のとおり、農業生産法人以外の法人につきまして、所有権の取得による農業経営は認めておりません、基本的には貸借でございます。これは貸借に限られるわけでございますけれども、そのような形で入ってくることについては、これは、実は私どもは一つであるというふうには思っておりません。確かに外部から既存の企業が入ってくることがあるかと思いますけれども、既にリース方式による参入制度に伴いまして、地域におけます建設業者等が農業に参入している場合もございます。
さらには、先ほども申し上げさせていただいておりますけれども、集落営農組織、これは全国各地で今一生懸命つくろうとして頑張っておられます。ただ、その方向性は、現時点においては農業生産法人という限られた枠内でしかこの集落営農組織の法人化ができない、こういうような非常に厳しい議論が行われております。
今回は、この集落営農組織についても、当然のことながら、農業生産法人という形をとらなくても、集落の農家の方々が構成員となって、また、非農家の方々、地元に住まわれておられますさまざまな親子、兄弟の方々、そういった人たちも全部含めて集落営農組織をつくり上げる。そして、事業内容についても、もちろん農業が中心になるわけでございますけれども、さまざまな事業にも取り組む、こういうような集落営農組織、これも農業生産法人以外の法人として当然想定されるというふうに考えておりますので、地域でどのような形の法人がここに参入していくかということについては、多様な姿としてあらわれてくるというふうに考えております。
○菅野委員 もう一つ危惧される点ですけれども、先ほどから議論されていますけれども、農地を適正に利用していない場合に貸借を解除することができるという条件でもって一般法人が参入することができるという、三条の改正案だと思うんですけれども、農地を適正に利用していない場合、貸借を解除するというこの条件です。この基準はどのように考えているんですか。
というのは、大資本がその地域に参入した場合に、経営が行き詰まってそこから撤退していく、そのときの、撤退した後の農地はどうなっていくんだろうかということが懸念されるわけですね。このことに、この基準で本当に適正に行われていくんだろうかという疑念を持つわけです。
土地は、一たん別の用途に使われてしまうと、再び違うところに使うためには大変な費用がかかるわけですから、この適正に利用していないという基準というのが重要な意味を持つと思うんですけれども、その点について答弁願いたいと思います。
○高橋政府参考人 委員御指摘の、農地を適正に利用していない場合というのは、これはどちらかといいますと出口要件のところでございます。実際に参入をされた農業者が事実上農業を継続していけなくなったような状態について、農地を適正に利用していない場合には賃貸借契約を解除、あるいは許可取り消しということになるわけでございます。
これにつきましては、許可取り消しというような重要な行政行為の運用のポイントになるわけでございますので、私どもといたしましても、農業委員会が適切な運用ができるよう、基準を明確化してまいります。
具体的には、この運用については、例えば、農地において一定期間以上、例えば一年以上、作物が植えつけられていない状態である、かつ、近日中に再び耕作される見込みがない、意思がないと見込まれるもの、いわゆる耕作放棄地というようなもの。それからもう一つは違反転用、これはもう当然のことながら、適正に利用されていないというような形になるわけでございます。
そういったような場合にはこれを解除するということになるわけでございますが、それ以前に、まず、新たに参入する際につきまして、新しく、周辺の農業の進展に支障を及ぼさないようにしていくというところでまずチェックをするということがございます。先ほど来御懸念されておられますような、きちんと農業経営を展開している地域に外から急にやってきて、そういうような農業経営の状況に支障を及ぼすというようなものについては、当然のことながら、これは認められないということでございます。
なお、いわゆる撤退をした場合にそこが荒れてしまうのではないか、そういうような場合に対する御懸念につきましては、確かに、このような農業経営の破綻というようなもの、これは現状でも実はございます。残念ながらそのような状態になった場合に、当該農地について新たに次の者を探し出すという道については、今回、大きな太いパイプにしたいということでございます。
農地利用の新しい借り手の拡大ということで、新しく借りる人を何とか見つけていくというのは、これはまた、そういうような事業をきちんと進めていきたいと思っておりますし、なかなか見つからない場合には、先ほど来申し上げておりますように、新しい集積組織なり農地保有合理化法人が当該土地について保全管理をする。そういう保全管理、きちんと管理をして、草刈りをして農地の状態をきちんと守っていく、そういったものについてはきちんと予算上の支援措置を講ずるということで、そういうような御懸念を払拭して、そしてその間に新しい借り手というものを見つけていくようにしたいということでございます。
○菅野委員 その懸念があるから、今までの農業経営の形態というのを家族経営、集落営農、それから農業法人というこの三つに限定してきた。これは、四つ目を入れることによって、大きな外部資本が入ってきて、農村地域が非常に厳しい状況に追い込まれるという危惧があるから、今日まで、食料・農業・農村基本法というものに基づいて、多くの議論をしながら今日の形態を築いてきたんじゃないですか。
そして、そこには、やはり農業の持つ多面的機能というのは非常に重要なんだ、この農業の持つ多面的機能というものが、下手をすれば今回の農地法の改正によって壊されてしまう可能性だって存在するんじゃないかという、私は非常に危惧をいたすんです。目的規定にこの農業の持つ多面的機能を入れてもらいたいというくらいの意見を持っているんですけれども、この点についてはもう答弁は求めません。
それで、もう一つは、今回は利用権にとどまっているわけですけれども、経済財政諮問会議のグローバル化改革専門調査会のワーキンググループが平成十九年の五月に取りまとめた第一次報告では、農地制度の基本理念について、利用についての経営形態は原則自由、利用を妨げない限り所有権の移動は自由という考えを打ち出しているわけですね。先ほど、佐々木委員への答弁には、これは当時、大臣として明確に否定したという答弁をしていますけれども、この流れはずっと続いているわけです。だから、先ほどから言うように、この農地法の改正というものはこの経済財政諮問会議の流れをくんでの今回の改正ではないのかなと言われるゆえんは、ここに存在するわけですよね。
大臣でもいいし局長でもいいですけれども、農水省として、政府として、一般企業による農地使用についてどのようなスタンスに立っているんですか、ここで明確に示していただきたいと思うんです。
○高橋政府参考人 先ほども、今回の農地法の改正に至る経緯について佐々木委員にお答えさせていただきましたけれども、基本的に、これまでの間、長い間の農地制度に係る議論の経緯があることは委員も今御指摘のとおりだと思っております。
結果といたしまして、今回、農地法の改正法案という形で御提出させていただいたわけでございますけれども、これにつきましては、私どもが従来から申し上げているとおり、農業生産法人以外の法人についての農地の所有権の取得というものについては、これは厳格に規制をする、従来どおりである、農業生産法人以外は認めないというところを結論として出しておりまして、そういう形で今回お出ししているところでございます。農林水産省としての結論としての今回の法案でございます。
○菅野委員 今局長が明確に答弁しました。石破大臣、大臣も、政府としてもその見解というのは、農業生産法人以外へは所有は認めない、これを明確にしていただけますか。
○石破国務大臣 これは午前中から、るる、何度も答弁をしておりますが、所有権の取得は現行どおり農業生産法人に限るということは変わりません。それは今後絶対に変わらないかどうかと言われれば、それはわかりません。百年後、二百年後どうなるか、それはわかりませんが、私として、今回の改正に当たって、現行どおり農業生産法人に所有権の取得は限るということは変わるものではございません。
繰り返しになりますが、所有権だろうが利用権だろうが、とにかく、ちゃんと利用されていないところに問題があるのだということでございます。だから今のを追認すればいいじゃないかというお話なのですが、今の制度でそれが動いていないところが問題なのでありまして、これは、制度というものを変えていかなければ利用というものはきちんと起こらないということだと思っております。
所有はしているが利用はしない、これをどう考えるかというお話なのでございまして、その観点から、利用を何とかしたいということで、今回の法改正になっておるものでございます。
○菅野委員 今後も議論していきますけれども、今日の農業のこういう現状を招いたのは、私は、農地法のせいじゃないということだけはもう基本に思っているんですね。農地法を変えたから今日の現状が変わっていくなどということは私は想定できないということを最後に申し上げて、これからもしっかり議論していきたいと思っております。
終わります。
○遠藤委員長 次回は、来る十四日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時二十九分散会