第10号 平成21年4月15日(水曜日)
平成二十一年四月十五日(水曜日)午前九時三十分開議
出席委員
委員長 遠藤 利明君
理事 今村 雅弘君 理事 木村 太郎君
理事 七条 明君 理事 宮腰 光寛君
理事 宮下 一郎君 理事 笹木 竜三君
理事 筒井 信隆君 理事 西 博義君
安次富 修君 赤澤 亮正君
飯島 夕雁君 岩永 峯一君
江藤 拓君 小野 次郎君
近江屋信広君 大塚 高司君
片山さつき君 木原 稔君
斉藤斗志二君 谷川 弥一君
徳田 毅君 冨岡 勉君
中川 泰宏君 永岡 桂子君
西本 勝子君 馬渡 龍治君
松浪 健太君 松本 洋平君
茂木 敏充君 森山 裕君
石川 知裕君 大串 博志君
小平 忠正君 小宮山泰子君
佐々木隆博君 神風 英男君
高井 美穂君 横山 北斗君
井上 義久君 菅野 哲雄君
…………………………………
農林水産大臣 石破 茂君
農林水産副大臣 石田 祝稔君
農林水産大臣政務官 江藤 拓君
政府参考人
(内閣法制局第四部長) 近藤 正春君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 古谷 一之君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 高橋 博君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 吉村 馨君
農林水産委員会専門員 板垣 芳男君
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委員の異動
四月十五日
辞任 補欠選任
井上 信治君 松浪 健太君
伊藤 忠彦君 松本 洋平君
小里 泰弘君 冨岡 勉君
河井 克行君 大塚 高司君
丹羽 秀樹君 西本 勝子君
西川 公也君 片山さつき君
仲野 博子君 小宮山泰子君
同日
辞任 補欠選任
大塚 高司君 河井 克行君
片山さつき君 西川 公也君
冨岡 勉君 小里 泰弘君
西本 勝子君 馬渡 龍治君
松浪 健太君 井上 信治君
松本 洋平君 伊藤 忠彦君
小宮山泰子君 仲野 博子君
同日
辞任 補欠選任
馬渡 龍治君 丹羽 秀樹君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
農地法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)
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○遠藤委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農地法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
引き続き、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省経営局長高橋博君、農村振興局長吉村馨君、内閣法制局第四部長近藤正春君及び財務省大臣官房審議官古谷一之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野次郎君。
○小野(次)委員 おはようございます。
大臣、政府参考人の方々そしてまた先輩、同僚の委員の方々、私は今までおおむね順番の中で質問の機会を与えていただいておりましたけれども、きょうは特にお願いいたしまして、質問を三十分させていただくことにいたしました。
質問に入る前に若干私の感想を申し上げさせていただきますと、私の祖母というのが田舎の山梨で一生の大半を終えました。この人は、戦前に未亡人になって、私の父たち、子供たちを学校に行かせて、一人寂しく暮らしたわけでございますが、いわゆる自作農創設の際の不在地主に当たるわけですね。子供たちは学校へ行かせた、兵隊にとられた、帰ってきて自分の田畑をすぐ耕せばよかったんだけれども、もやもやしている間に二十二年の農地改革にかかって、田畑が全部処分の対象になったということでございます。
その祖母が私に、もう大分前に死にましたから、学生時代に聞いたことは、思い出すといつも悔しそうに言うのは、ある日、小作という方が見えて、法の定めによって田畑の処分、引き渡しを受けますと言ってお金を置いて帰られたという話をするわけでございます。
それで、財産はなくなったんだけれども、私の家なんて大した家柄でもないですが、我がファミリーに伝えられたことは、人間の身につくのは畑じゃないよ、教育なんだということを言われて、できがいいか悪いかわかりませんが、そういうふうに言われて私も育ってまいりました。
しかし、考えてみると、そういう歴史というのはそのさらに八十年前にも同じことが起きているんだと思うんですね。
先週末に地元へ帰っていましたら、年配の方から、先生、別に政府の施策を批判するわけじゃありませんが、定額給付金いいよ、七十五兆円いいよ、十五兆円いいよ、だけれどもそれは米百俵じゃないのか、みんなで食べたら三日でなくなるということをやっているんじゃないんですか、もっと言うなら借金をしてやっているんじゃないのかと。多分それは別に各論にわたっての意見ではなくて、そういう考え方でなければいけないよということをその年配の方は私に言ってくれたんだと思うんですが、あれは実は戊辰戦争のときの話じゃないんですね。明治三年なんです。
つまり、版籍奉還によってそれぞれの武士が、自分の所領というのか、年貢を取ることを許されていた土地との関係が遮断されてお米が入ってこなくなったときに、同盟関係にあった、雄藩と言っていますけれども、三根山藩というところから百俵のお米が窮状を見かねて届けられたという話でございます。そのときに、学校をつくることが大事だと小林虎三郎が言ったという話は八年前の小泉さんの所信表明演説にも出てくるわけでございます。
長岡というところからは、私も暮らしたことはありませんが、立派な方がたくさんその後出ておられる。山本五十六さんなんかもそうだと思うんですが、教育によって社会的に存在を認めてもらう、あるいは子孫に残すものは教育なんだという日本の一つのよい伝統がそういうことで生じたという面があると思うんです。
私は今なぜそういうことを言うかというと、きのう参考人のお話をお三方から聞きました。原田先生という方は、与党が推薦したのか野党が推薦したのか知りませんが、大変示唆に富んだことをお考えになっているし、お話しになったと思います。やはり土地法の先生、土地に関する法律の先生ですから、歴史的なというか広い角度で考えておられるなと私は思いました。大臣ももう既にお読みになったかもしれませんが、そういう感じがいたしました。
やはり、今私たちが扱っている農地法の改正というのは、改革の全部ではないかもしれないけれども、何か大きな変化の始まりの部分を私たちは今議論しているんじゃないかという気がしているわけでございます。それは、百四十年前のことがあり、六十年前のことがあって、今というものをとらえてみるべきなんじゃないかなというふうに思っています。
そういう視点から、きょうはちょっと今までの同僚委員の質問とは違った向きからの質問になるかもしれませんが、時間の許す限り質問させていただきたいと思います。
まず、政府参考人にお伺いします。
今回の法改正、これはこれなりに政府として、農水省として、改正する以上はそれを積極的に活用してもらいたいという思いがあるからこういう改正をしようとしているんだと思いますが、この法改正によってどのような企業や法人が新たに参入することを想定しておられるのか、それをお伺いしたいと思います。
○高橋政府参考人 今回の法改正によりまして、貸借を通じまして従来の農業生産法人以外の法人、このような組織体が農業に参入することが可能となるわけでございます。
その際に想定している法人の形態ということでございますけれども、現行の特定法人貸し付け、いわゆるリース方式によりまして参入しているような、例えば、公共事業の減少に伴いまして、そこで抱えております余剰労働力あるいは建設機械を活用して、雇用と収入の確保を図るために地元の建設業者が参入する、こういうケースも今全国でございます。また、地域の特産物や自社が行っております加工業の原料となる農産物の安定的な調達を図るために、例えばワインの醸造会社、オリーブの加工会社あるいは酒造会社等々、食品加工業者が参入しているというようなケースもあります。
このような企業の参入ということがまず考えられるわけでございますけれども、このようなもののほかに、いわゆる外部からの企業参入というだけではなく、農業、農村の内部からも、例えば、農村の集落内の農家だけではなくて非農家も構成員となりましたような農業あるいは農業以外の事業も幅広く行う集落営農法人、こういったものをつくり上げたり、地域の特産品などを活用しながら観光と農業の融合を行うNPO法人、このような法人ということも考えられるわけでございます。地域のそれぞれの創意工夫によりまして、多様な形態の法人の参入というものが期待されているところでございます。
○小野(次)委員 多様な形態の企業や法人の参入が想定されていると言われましたけれども、冒頭挙げられたのが、公共事業との関係で建設業者がということでございました。実際、そういう例を私も知っておりますけれども、そんな、例えば景気が回復したからとか公共事業が少し前倒しで発注になったから、では農業の方からまた手を引こうかなというような程度のショートタームのシフトでは非常に不安定な話だと思いますので、もうちょっとやはり農水省としてもしっかりと農業に参入しようという人をイメージして、そのモデルに対してどういうアプローチがあるのかということをお考えいただく必要があるかなと思います。
同じ関係の質問ですけれども、そうした想定されるさまざまな形、個人の場合もあると思いますが、法人、企業が新たに参入するというケースの中で、農業生産が、新しい改正法で適用を受ける面積というんですか規模、同時にまた、参入するであろう人の数、法人の数はどれぐらいと見込んでおられるのか、お伺いしたいと思います。
○高橋政府参考人 委員御指摘のような短期的なというようなものではなく、例えば昨日の参考人で御陳述なされました小田島建設のような、本当に地域で取り組んでいるというものも非常に重要なものとして期待されるわけでございます。ただ、このような企業あるいは法人につきまして、どの程度のボリュームになるのかということでございます。
現状の特定法人貸し付けによる参入につきましては、平成二十年九月現在で三百二十法人、面積で申しますと九百五十ヘクタール程度ということになっているわけでございます。これについては、総理が本部長となっております食料・農業・農村政策推進本部におきまして、二十二年度末までに一応五百というのを一つの目標にしているわけでございますけれども、今回の改正により、さらに幅広い多様な形態が入ってまいります。
これについては、現在、新たな食料・農業・農村基本計画を明年三月に策定すべく検討を開始しているわけでございますけれども、この検討の中で、このような今回の改正も踏まえました、より多様な担い手、農業主体が共存していくということを念頭に置きながら、農業構造の姿について検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○小野(次)委員 大臣にお伺いしますけれども、今回の法改正というのは、現状において細々と家族単位で農地を維持してきた、そういった農業経営というものを中心にとらえてきた考え方から、資本と技術、人材を有する企業、法人による本格的な農業への参入の促進ということを目的としたものなのかどうか、お伺いしたいと思います。
○石破国務大臣 これを何か対立構造でとらえて議論するというのは、私は余り正しくないんだと思っております。
現状において家族経営が大宗を占めていることは事実なのでありますが、農地はどんどん減っている、耕作放棄地はどんどんふえている、後継者はいません、こういう状況になっておるわけでございまして、家族経営あるいは集落営農だけでは担い手として不十分な地域がふえてきているんだ、多様な農地の受け手が要るのだと考えております。そうすると、今の制度よりももっと貸しやすくそして借りやすく、それが必要なことなのだろう、多様な担い手あるいは多様な農地の受け手をつくらなければいかぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。
したがいまして、本格参入という言葉が何を指すかわかりませんが、資本、技術、人材を有する企業、それがもっと参画しやすくしたいというふうに考えておるわけでございます。
しかしながら、所有権の取得は引き続き農業生産法人に限定をします。あるいは、地域における農業の取り組みを阻害するような権利取得は排除する。あるいは、農地の適正な利用が行われない場合に対する担保措置はしっかり講ずることにいたしておりまして、これの両立を図っていかねばならない。
ただ、零細細々家族経営、それが大宗を占めていることは事実だし、それも大事にしていかねばなりませんが、ほかの受け手というものがもっともっと拡大して参入できるようにしたい、そういう思いはございます。
○小野(次)委員 さっき原田先生のことに触れていながら、私自身も昔のことをよく知っているわけではありませんが、言葉だけ見ても、田分けという言葉があったり、俗に言う田畑売ってという言葉があるぐらい、多分、農家あるいは日本社会全体にとって、田んぼや畑こそ財産だったと思うんですね。
ところが、いつのころからか、農地になっている田畑が売れないというか安くて、それ以外のところだったら値がついて売れるという状態になってしまっているというのは、私は日本の土地制度を何千年見たってごく数十年のことではないかと思うんですね。やはり、農地の利用価値というか生産性というのを高めていく努力をしないと、何か人為的なことを維持しようとしてきているんじゃないかという気がします。
つまり、農地改革のときだって、田畑が最も貴重な財産だったからこそ、そういう形で自作農を創設しようとしたんだけれども、今やそれが、農地でなくなれば値がつくんだけれどもという形になってしまっているというのは、ちょっと逆転した現象なのかなというふうに思っています。
次の問いに入りますけれども、これは大臣にお伺いしたいと思います。
企業等が積極的に農地に投資を始めた、それで付加価値をつけた。価値が高まったと言うこともできるし、いずれにしても、投資をしてつぎ込んだ。それが、契約期間中に解約になった、あるいは期間満了したというときに、それを補償してあげるような仕組みというのはないんでしょうか。
○石破国務大臣 有益費のお話だと承知をいたしております。
民法六百八条では、賃借人が投資を行い、その投資の回収前に賃貸借契約を終了しなければならない場合、農地所有者にその支出した金額または増価額を償還させることができる、このような規定がございます。土地改良法第五十九条では、土地改良事業に費やされた有益費を償還する場合には民法の規定にかかわらず増価額とする、こういう規定がございます。
この有益費問題の生産現場におきます処理の実態は、御指摘なさいました企業あるいは個人でもいいのでありますが千差万別でございますので、制度として画一的にかくかくしかじか、こういうことを取り決めて取り扱うことは困難だと思っております。
したがいまして、具体的に有益費をどのように償還するか、その償還方法につきましては、当事者間で事前に取り決めていただくということが肝要かと思っておるわけでございます。私どもといたしましても、この有益費の実態にかんがみまして、農用地利用集積計画について、試案という参考の形をお示ししておるところでございます。
なお、これとは別でございますが、当省といたしまして、企業などが農業へ参入する場合に、条件整備として行う簡易な土地基盤整備に対しまして、必要な費用の二分の一の支援をやっておるところでございます。
最後は御参考までに。
○小野(次)委員 続いて行う質問も同じですが、私のきょうの視点というのは、一つは投資リスクというんでしょうか、新たに人材もお金もかけて入ってこようという人に対して、投資リスクの問題で無用の不安を持たせてはまずいんじゃないかということと、もう一つは、そういった不安をなくすことによって参入してくれる方を促進しなきゃいかぬ。
つまり、招かれざる客なのではなくて、農業生産を高めてもらうために来てもらう、参入する能力と意欲のある方に来てもらうんだということを、やはりこの改正の過程を通じて政府はきちんと説明しないと、何か穴をあけましたというだけでは改革の効果が期待できないのではないかと思うから、こういう質問を続けさせていただいているわけでございます。
つまり、そういう方たちに農地を貸すという方が、そんな財力はあるのか、あるいは農業を自分でやるというならば、その価値が高まった分を使うということはできますけれども、もうそういう意欲もないから賃料にかえようとされている方が、価値が高まったから、ではさらにお金をくれと言われたときに払う余力なんかあるのか、意欲があるのかという問題もございますので、よくその辺は、きめ細かな、投資する側に対するある種の安心感なり補償なりというものを考えてあげるべきじゃないかなというふうに私は思っております。そうでないと、そのまま置いて出ていけということになってしまったのでは、そういうことを予想されるところに入ってくる方というのは余りいなくなってしまうんじゃないかと思うわけでございます。
同じような質問になりますが、今度は政府参考人にお伺いします。
法によれば、農地を適正に利用していない場合には、農業委員会または知事は許可を取り消すこととしている。これは当然かもしれませんが、投資を促進するためにも、あらかじめ具体的な基準というのを明確にしておかないと、怖くて手が出せないということになるんじゃないかと心配しておりますが、そういう具体的な基準を明確にしていくというお考えをお持ちなのかどうか、局長にお伺いしたいと思います。
○高橋政府参考人 御指摘の点につきましては、賃貸借契約の解約あるいは許可の取り消しにもかかわります法律運用上の重要なポイントでございます。したがいまして、当然のことながら、委員御指摘のとおり、制度運用がきちんと行われるよう、運用基準でここのところは的確に明確化してまいりたい思っております。
具体的には、例えば、農地において不適正な利用という状態について、一定期間以上、例えば一年以上作物が植えつけられていない状態である、また、内面意思といたしましても近日中にそれを再び耕作する見込みがない、いわゆる耕作放棄地というような状態になっている場合、あるいは、農地に廃棄物が投棄されたまま除去されないような外形的な基準、そして資材置き場、これも明らかにはっきりわかるわけでございます。そのような状態というものについては不適正利用という形できちんと明記してまいりたいと思っております。
○小野(次)委員 それと関連してお伺いしますけれども、実際に土地を借りて、そこを特に生活の糧というか土台、基盤として利用することになれば、さまざまな予期せぬ事態が生じ得ると思います。今局長がおっしゃられたケースは外形上も明確でございますけれども、それ以外でも、地元とのさまざまなトラブル、意思の疎通がとれないことによる問題が生じるということもあると思うんです。
その入ってこられた方が農業を続けるという意思を持ち続けている限り、やはり関係当局は利用者の方と綿密なコミュニケーションを図りながら、さっきその基準をつくるとおっしゃられましたけれども、紋切り型にすぱっと、じゃ返して出ていってくれという形にならないように、ぜひ、利用者との綿密なコミュニケーションを図るということについても一言御所見を伺いたいと思います。
○高橋政府参考人 このような新規参入の場合でございますけれども、企業に限らず、個人におけます新規参入、こういった場合においても、いきなり現地において契約関係に入るというよりも、その周囲におけます、例えば普及の組織あるいは農業委員会を初めといたします地域機関、こういったものが新規参入者に対しましてきちんとコミュニケーションをとりながら進めていくということがまず肝要であろうと思っております。
その際には、農業に参入しやすくするという今回の制度の改正とともに、その経営安定を図るという観点から、就農開始前の農地あっせん等の段階から就農後におけます経営者、技能者としての資質向上を図る段階、その後におけます営農指導等を含めて、トータルにやはり指導していく。これは私ども行政としても、このような新規就農に対してはきちんと対応してまいりたいというふうに思っております。
○小野(次)委員 農業生産の主体として利用者というのをとらえる限りは、今局長がおっしゃられたような姿勢が極めて大事だろうと思います。
特に個人の場合ですと、経営的には赤字であっても、それが自分の土地であり、そこからできた物の、ある物は売り、ある物は食べということが続けられる限りは、自分の土地であれば続けるということになると思いますけれども、法人形式の場合には、やはりどこまでいったって採算がとれているかどうかというのが一つの大きな境目になるわけで、そこに来ている責任者、主任さんは続けたいと思っても、赤字が出ている限りは早晩そこからの撤退を考えろというのが法人組織の場合のやはり鉄則、特に企業の場合には原則になるんだろうと思います。
その意味で、こうしたことが起こらないように、それが即また農業の担い手を探さなきゃいけなくなるわけだし、そこにおける農業生産が滞るということになるわけでございますから、こうしたことが起きないように、ぜひ行政関係機関が、こうした新しいスキームを利用して農業に参入してくる方たちを支援する一般的な意味の責任があるんだろうと私は思います。
その意味で、局長もちょっと最後に触れられましたけれども、もう一度、新たに参入する立場の方たちに対してどのような支援とか補助をお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
○高橋政府参考人 農業への新規参入、特に企業の場合の参入につきましては、やはりより経営的な観点からの支援ということに意を用いてまいらなければならないというふうに考えております。
私ども農林水産省といたしましては、企業の参入支援のために一番重要な、総合的な情報提供あるいは相談活動の実施というソフトの部分からまず入っていく。そして事実上、企業等が参入する場合におけます農地、これについてもやはり利用調整活動の中で、先ほどのコミュニケーションも図りながら、地域との調和を図っていくということが重要だと思っております。
さらには、ハードの部門につきましても、企業等の参入の条件整備として、簡易な土地基盤整備も当然必要になってまいります。そういったものに対します助成、企業等が規模拡大する際に必要となります栽培技術の習得、加工品開発、販路開拓に対する支援というようなことにも助成をしていくこととしておるところでございます。
さらに、先ほど申し上げましたように、普及センターによります営農計画あるいは生産技術に対します濃密な指導、資金面については農業用機械、施設等の取得について日本政策金融公庫におけます低利資金の融通、このような措置も総合的に実施をすることとしているところでございます。
○小野(次)委員 残りの時間が限られてきましたので、先へ進ませていただきます。
私は、極めて一般論で申し上げると、自分自身も借家に住んだこともあるし持ち家に住んでいることもありますけれども、やはり一般論で言えば、借家の庭よりも自宅の庭になるとなお一層、手を入れるのに熱が入るんじゃないか、これはやはり人情としてあるんだろうと思います。
私はあえて伺いますけれども、農業経営の実績を既にその場所で積んだ企業について、将来的には所有権の取得まで認める方向で検討すべきではないか。その方が本腰を入れて、その場所における農業経営により意欲も、またお金もかけて頑張ろうという気になるんではないかと思うんであります。
そうでないと、やはりどうしても、さっきから申し上げているように出ていくことを想定しながらの活動ということになると思いますので、実績がない企業にそれを認めるのはリスクが大変大きいということはわかりますけれども、委員の中には御異論があるかもしれませんが、私は、一定の期間の実績を積んだというのは、将来的には、そういった企業に対してはそこでの所有というのも認める方向で検討しないと、いつかは、数年後か十年後にはまたその問題が必ず議論に上ってくるんではないかなという気がいたします。大臣の今のお考えとして、将来的にはこれを検討してみようというお考えはおありなのか、お伺いしたいと思います。
○石破国務大臣 ここは私もずっと悩んでいるところで、委員が御指摘のようなこともどうなんだろうなと思って、随分考えたことがございます。一定の実績を積めばということなのですが、何をもって一定の実績とするか、だれがどのようにその判断をするかということがあるんだろうと思っております。あくまで一般論でございますが、株式会社など法人一般についての農地の所有権取得についてでございます。今回は現行どおり、農業生産法人に所有権取得は限定するということにしてございます。
今農地価格というものが農業の収益還元価格を大きく上回っているということが一つ事実としてある。法人一般は個人とは異なる大きな資本力を有している。とすれば、将来の転用期待のために、農業経営が赤字でもずっと長く保有をすることも可能であるということで、その弊害に対する危惧というのは結構大きいのではないかなというふうに思うわけでございます。また、法人の意思というものの形成は、個人とは異なる点もございます。
そしてまた、じゃ所有まで認めなきゃいかぬというメリットはどこにあるんだろうか。確かに、実際に持っていた方が一生懸命その手入れをするということはございますが、所有をしなければいかぬという決定的なメリットは何なんだろうかという思いもございます。
したがいまして、経営実績を積んだ法人であったとしても、制度といたしましては、そのまま所有権の取得を認めることは適当ではないというふうに思っておる次第でございます。所有しなければどうしてもいかぬというようなメリットがあるということでは、またそこはさらなる議論が必要かと思いますが、現状においてそのような認識に私自身は立っておらないところでございます。
○小野(次)委員 先ほど冒頭に、私は戦後の農地改革の話にちょっと触れました。恐らく、農地改革の意味も意義もよくわかっている世代というのは、そのころに成人を迎えた、自作農になられた方たちだと思います。その方たちはもう八十に達しておられるわけでございますし、いつぞや統計で聞きましたけれども、六十五歳以上の農業従事者というのが四割近くになっていると言っています。その人たちはもう既に二代目でございまして、今我々の議論の対象になっている方たちは二代目から三代目にかけて、二・五代目ぐらいになろうとしているところでございます。
なぜ私が今のような質問をしたかというと、何度も同じ参考人のことを挙げては参考人に大変失礼かもしれませんが、論文を見ても、農地改革とアナロジーで比較なんかされていますけれども、ある意味でこれは逆の方向でもあるんですね。なぜかと言えば、不在地主をまたつくることになるということだと思うんです。
今二・五代目、三代目と言いました。その方たちになれば、もう自作農創設のときの意気込みも意欲も全然、それはおじいちゃんの話ですから、その方たちが町へ出て、地代だけは今農地を借りてやっている方から入ってくるという形ですから、まさに不在地主を新たにつくるということであって、やはり、農地に近いところにいて、農地を実際に使っている方が所有する方がいいんじゃないかというのは、古来余り変わらないことなんだろうと思うんです。
その意味で、今回のものは、原田先生も、終わりの始まりというか、変化の始まりかもしれないということを最後に書いておられますけれども、私も、やはりこれは、今回の改革、今回法改正に入っていませんからこれ以上突っ込みませんけれども、恐らくこれでは終わらなくて、最後は、地代だけ入ってくるけれども何にも土地に愛着も持っていない地主さんがおられますよということがもう十年後ぐらいには出てくるんじゃないかと思いますので、そこは、実際に農地に入ってやっている方に、より権利の保護なり、やりやすい状況にしてあげるということ、意欲がわくような方向にしてあげるのが、本来行政として今後考えていくべき方向じゃないかということを指摘だけさせていただきます。
最後に、新たな参入を促進するためにも、今回の法改正の内容を幅広く周知させる必要があると思いますけれども、具体的にはどのような広報宣伝を考えているか、政府参考人にお伺いします。
○高橋政府参考人 おっしゃられるとおり、国内の農業生産の重要な基盤でございます農地については、現在及び将来における国民のための限られた資源であり、このような農地を優良な状態で確保して、それをきちんと最大限利用するということは、単に農家等に対するメリットであるだけではなくて、将来にわたる国民全体に対する食料の安定供給の確保に資するということでございます。
こうした制度のねらいあるいは具体的な内容につきまして、生産者などの農業関係者ばかりではなく、これから農業に参入しようとされる方々を初めとしまして、広く国民各界各層の方々に十分理解していただく必要があると思っております。
今回の法案の御審議をいただきまして御可決いただきましたら、当然このことについて幅広いチャンネル、さまざまな媒体も使って、あるいは私ども現場に出かけていくというようなことも行いながら、丁寧かつわかりやすい説明をしてまいりたいというふうに考えております。
○小野(次)委員 きょうはどうもありがとうございました。
やはり、私は、今局長のお話にもありましたけれども、生産者の側、土地の所有者の側だけじゃなくて、これから、プランによっては、内容によっては農業に参入しようかなと思う個人、法人、企業の方々にもよくこの改正の内容を御理解いただいて、日本国内にある、農業に従事しようかなと思うすべてのモチベーションというんですか、動機に対して刺激を与えることが今回の法改正の本来の目的だろうと思いますので、ぜひ、参入してくる可能性のある、利用者になり得る立場の方々に対する広報宣伝に特にきめ細かな御配慮をいただきますようお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。
きょうはどうもありがとうございました。
○遠藤委員長 次に、大串博志君。
○大串委員 おはようございます。民主党の大串博志でございます。
きょうは、この農地法の改正案に関しての質問時間をいただきました。私も、九州の米麦等を中心として農業を盛んに行う地元でもございます。現場の声も踏まえて、多面的なところからこの農地法の議論に関して行わせていただきたいというふうに思います。
この農地法等の改正、法律の中身を見ると、今回、一つには、第一条の目的規定を改正して、これまでの耕作者主義から利用を中心とする主義へと、大臣はこれを利用者主義的なものというふうにおっしゃいましたね、利用を中心としたものに変えていく。目的の大きな変更があって、それプラス二条、三条以下の具体的な規定の変更もかなり大胆に行われています。
これは、細かく内容を見ていくと、私は条文ごとに見ていくのが非常に好きなものですから、条文ごと条文ごとに見ていくと、内容に極めて深い意味のある、あるいは深い広がりのあるものであることがよくわかります。きょうは、条文も踏まえながら、かつ、それが大きな意味を持ってくるというふうに思われますので、きちっと議論させていただければというふうに思います。
この農地法等改正、論点は本当に多いんですけれども、きょうは、第一条「目的」、そしてその第一条の目的規定の変更に大きな影響を与えているというふうに通常言われています第三条などを中心に議論をさせていただき、総論的な話も質問させていただきますけれども、それはちょっと質問通告の順番を変えて後ろの方にさせていただいて、まずは、事実関係の確認も含めて、条文の持つ意味等々の確認をさせていただければというふうに思います。
まず、大臣に大枠でお尋ねさせていただきますけれども、今回、第一条で目的規定を改正して、今申し上げたように、これまでの耕作者主義と言われるものから利用を中心とする主義へと変更されているわけです。この変更を加えられた理由は何か、どういうふうな意図、目的で変更されたのか、これをお尋ねさせていただきたいと思います。
○石破国務大臣 昭和二十七年に、小作農を中心とした耕作者の地位の安定を図るということを目的に現行農地法は制定されました。このため、一条の目的規定で、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進」するということを定めたわけでございます。
そうしたところが、三十年代の半ば、高度経済成長期ですが、地価が上昇した、農地は資産としての価値を持つようになり、資産的な保有の傾向が強まったということであります。そのときに時期を同じゅうして起こったのが、兼業農家の増加というものであり、専業農家の経営規模の拡大ということでございました。ところが、その規模拡大というのは余り思ったようには進まなかったということもございます。それで、所有権移転によります流動化に加えまして、賃貸借による流動化を促進したいということで、四十五年に法改正を行いました。
しかしながら、現状におきましては、何度も何度も申し上げますが、従事者は減少した、後継ぎがいない、ということは、ひっくり返せば高齢化がとまらないということでございます。耕作放棄地は増大をしているということ、転用もとまらないということでございます。二十七年につくったときとは非常に変わった状況が起こったということであります。
したがいまして今回の改正ということになっておるわけでございますが、利用を基本とする、そのように改めるということ、それを何々主義と言っても言わなくてもいいのですが、やはり利用されていないということが一番の問題なので、利用しやすくしたいということでございます。利用を基本とする制度に再構築いたしました。
そして、自作農主義に基づいてつくっております法律でございましたので、例えば、自作農の維持、創設のための措置でございます小作地の所有制限及び国による強制買収、そういうようなものが現行農地法にはございますが、どうもそういうのは現状において非常に考えにくいということでございまして、これを廃止することにいたしました。
繰り返しになりますが、利用というものを中心として法律を再構築したということでございまして、それを何主義と言っても構わないのでございますが、そういうような改正だという御理解をいただければと思います。
○大串委員 今、背景、理由等を御説明いただきましたけれども、きのうの参考人質疑の中で、先ほど来言及されておりました原田先生、それから小田島参考人、松本参考人、いろいろな意見を聞かせていただきました。その中で、今回、目的規定を耕作者主義から利用を中心とする制度へと変更することで、いろいろな社会的な、あるいは農業全体に関する影響があるんだというふうな意見が多々述べられておりました。例えば、地域に与える影響等々もあるのではないか、あるいは、農業生産に本当にプラスになるのかというような論点もあったと思いますし、懸念としては、地域を崩壊させる可能性もあるんじゃないかみたいなお話もありましたし、原田参考人などは、自壊する農業というような衝撃的な名前をつけた論文も書かれていました。
お尋ねしますけれども、大臣自身、耕作者主義から利用を中心とする制度へと変更することで、農業生産、農地あるいは地域社会への影響も含めて、どのような影響が今後及んでいくのか、その影響の全体像をどう考えていらっしゃるのかということを問わせていただきたいと思います。
○石破国務大臣 耕作する者が所有することを最も適当と認めているわけでございます。別に私はそのことを否定はしませんが、所有しながら耕作していないというのが多いのではないだろうか、あるいは、所有しながら耕作できないというのが多いのではないだろうか。それによって農地の有効利用がなされず、あるいは、貸しやすくない、借りにくいということで分散錯圃というものが解消されず、後継ぎがいないということで耕作放棄地はとまらず、農地転用も後を絶たないということが現状だということは繰り返して申し上げておるとおりでございます。
この法改正の後、これをきちんと運用する、先ほど小野委員からも御質問がありましたが、これがどういう意味を持つものなのかということをきちんと御説明し、そして、企業が農地を使えるということには制限がございますので、そういうこともちゃんと徹底をしますと農地の有効利用というものが図られるようになるのではないだろうか。
そして、転用規制の厳格化というものも入れております。例えば、公の施設であれば、農地の真ん中にどんとそれができてしまって、農地の利用というものが非常に妨げられたということもございます。そういうことも今後は行わないようにいたしたいということでございます。転用規制というものも物すごく厳格化を図りました。
要は、農地が農業生産の手段である、資産保有ということではなくて、農地が農地として利用される、そしてそれがコミュニティーにおいて共有される、そういうような農村社会というものをつくっていきたい。これによって懸念される弊害みたいなものをすべて除去するということに配意していかねばならないことは言うまでもございませんが、農地が農地として利用される、そういうような国土であり地域社会をつくっていくということだと私は思います。
○大串委員 今いただきました答弁は受けとめさせていただいて、その考え方が本当に全体の条文に適切に過不足なく反映されているかということを後ほどまた議論の中で検証させていただきたいというふうに思います。
さて、条文の検証に入りますけれども、私先ほど申しましたように、第一条、第三条を中心にきょうは議論をさせていただきたいと思います。
第一条で、今回の目的規定は、「農地を効率的に利用する者による農地についての権利の取得を促進し、」ここが利用を中心とする制度になったゆえんでございますけれども、効率的な耕地利用とは何か、繰り返しになりますけれども、政府参考人に問いたいと思います。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
農地の効率的利用でございますけれども、改正後の農地法の第一条の目的規定におけます「農地を効率的に利用する」という概念でございます。
これについては、実は、現行法の第一条の目的規定におきましても、農業上の効率的な利用という文言がございます。同じく現行法におけます第三条第二項第八号に、土地を効率的に利用という概念もございます。
この場合におけます効率的な利用ということにつきましては、当該利用によりましてその土地の農業生産の低下を来すことがない、すなわち、通常求められます水準の生産性を備えた農業生産が行われるということで、相対概念ではなくて、通常求められる農業生産がその土地の上で行われるんだ、その利用によって従来行われていた農業生産が急激に低下することがないんだということで考えているものでございます。
この運用については、今申し上げましたように、現行法にある基準でございます。これについては改正後においても同じ概念でございまして、既に確立をした概念というふうに一般に周知されているものでございます。
○大串委員 では、現行法に示されている効率的利用の概念、示されておりますとおっしゃったけれども、そこをちょっと詳しく言ってもらっていいですか。
○高橋政府参考人 現行法でございますけれども、第一条の「目的」におきまして、これは四十五年の法律改正のときにつけ加えられた文言でございますが、この法律は、農地について、最初に自作農創設の趣旨がございまして、その後、「並びに土地の農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整し、」という文言がございます。
そして、その具体的ないわゆる実施規定としてのあらわれにつきましては、第三条の農地の権利移動の許可の基準の中で、許可ができない場合といたしまして、第二項の第八号において、「権利を取得しようとする者又はその世帯員の農業経営の状況、その住所地からその農地又は採草放牧地までの距離等からみて、これらの者がその土地を効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うことができると認められない場合」、この場合には許可ができないという形になっております。これはもう既にこれまでの三条の運用の中できちんと確立した概念でございます。
○大串委員 ですから、土地を効率的に利用しているというのは、特に目的規定の中に入っているのみならず、現行法でも第三条の第二項第八号に入っている、個別規定の中に入っている、つまり、農業委員会の個別判断基準の中に入っている「土地を効率的に利用して」という言葉なんです。目的規定よりさらに個別の規定の中に入っていて、一般規定ではなくて、農業委員会の判断基準になるところに入っている規定なんです。それが今回、新しい法律においても、第三条第二項第七号などでも繰り返し使われているわけですけれども、それは何ですか、効率的に利用しているというのは何を見て農業委員会は決めればいいんですかと。きのうも基準をはっきりしてほしいと言われましたけれども、そこはどうですか。
○高橋政府参考人 ここの判断の具体的な基準でございますけれども、この基準につきましては、権利を取得しようとする者の機械の所有状況などの農業経営の状況、農地等の面積あるいは作付作物、住所地から権利を取得しようとする農地までの距離、こういったものを総合的に勘案して、先ほど申し上げましたような、従来に比べて生産性が落ちることのないような、通常の生産手段で生産性を備えた農業生産が行えるかどうかという判断、これは、個々の一筆の土地ごとに即して、今申し上げましたような判断基準を用いて判断をするということでございます。
○大串委員 きのう農業会議所の方ができるだけ明確な基準が欲しいというふうにおっしゃっていたので、効率的な利用というものが、今おっしゃった機械、労働力、作付作物、距離等々を総合的に判断してということで本当に厳密なものになっているかどうかということに関してはまた後ほど検証させていただきたいというふうに思いますけれども、それは理解しました。
なぜこれを聞いているかというと、一条、三条というのが今回の改正の一番大きな影響をもたらすところだろうと私は思っているんです。先ほど来、議論もありました。貸借による法人の参入あるいは貸借による常時従事ではない個人の参入等々も認められるようになるというかなり新しい要素が可能になっているのが、一条による変更、そして三条による変更のところによって行われている。よって、この一条、三条のところは条文も含めてきちっと詰めておかなきゃならないという観点の背景を持つ質問でございますので、きちっと答えていただきたいというふうに思います。
そして、三条第二項第七号、今も言及ありましたけれども、農業委員会が許可をする基準として、これも新しく書かれております。これは、旧法の三条第二項第八号などもここの中に含まれているやに聞いてはおりますけれども、ここの中に許可基準としてかなりいろいろなことが書かれています。
「耕作又は養畜の事業の内容並びにその農地又は採草放牧地の位置及び規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合」、これはどういうふうな基準で、どういうふうな具体的な内容なんでしょうか。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
この三条二項七号の基準でございますけれども、これは、今回新たに、許可の際に判断する基準として設けられるものでございます。
これまでは、農地の権利取得の許可というものに当たりましては、権利を取得しようといたします当該一片の土地、その取得をしようとする当該土地について着目をし、先ほど申し上げましたようなさまざまな基準等をその土地に当てはめて許可の是非というものを判断していたわけでございますけれども、今回新たに、農地の集団化、農作業の効率化その他、周辺の地域、要は、取得しようとする土地そのものではなくて、取得しようとする土地の周辺の土地との関係で当該土地の取得が妥当か否かということを判断する、その基準として、この三条二項七号の、「農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合」にはだめですという基準を今回新たに設けることとしたわけでございます。
したがいまして、これにつきましては今回新たに設けますので、前回の委員会のときにも申し上げさせていただきましたけれども、当然のことながら、農業委員会がこの基準に基づきまして適正な判断ができるように、その具体的な内容についてこれから許可基準の運用としてきちんと示していこうというふうに思っております。
例えば、現時点で想定している例といたしますと、集落営農あるいは担い手、そういうような方々への、既存のそういった形態の農地の集積といったものが行われているような地域で、その既存の経営の利用というものを分断するような権利取得、きちんと農業経営が行われている真ん真ん中に入っていって、その農業経営が周辺の農業経営の状況を分断するような権利取得、こういったものについては認めていかない。
あるいは、水源が乏しいような地域では、走り水とか、さまざまな地域間の水利調整が行われております。このような水利に関します農業者の一体的な取り組みが行われている地域で、私のところは地下水を掘って全部とってしまうんだというような状況で、今申し上げましたように、地域の周辺の水利事情といったものをまた分断していくというような権利取得、こういったものもまた認められないというふうに思っております。
また、より典型的なわかりやすい事例で申し上げますと、例えば、無農薬、減農薬で付加価値の高い農業というものが広範囲に行われているようなところで、農薬を徹底的に、徹底的というのはちょっと表現がおかしいかもしれませんが、農薬をそういう基準とは別に通常の慣行栽培的に行っていくことには、当然のことながら、飛散、ドリフトということで周辺の今までの取り組みというものが困難になるということでございます。
このような権利取得については認めないというのが今申し上げました事例でございますけれども、これにつきましては、今後さらにきちんとした形で基準を定めて、当然のことながら、運用までの間に、判断する農業委員会にきちんとお示ししてまいりたいというふうに思っております。
○大串委員 今後さらにというふうにおっしゃいましたけれども、ここが非常に心配なんです。きのうも再三、地域の農業に対する影響はいかがかというような意見もかなりありました。
そこは非常に重要な規定だと私は思っていまして、先ほど三例述べられましたけれども、私に言わせると、先ほど述べられた三例の基準は当然、ある意味最低限に近いことでありまして、本当に先ほどの三点だけを満たしていれば地域農業、地域の集落等との関係から安心できる参入になるのかということに関しては、私はどうかなというふうに思います。
例えば、私も農地集落の中に住んでいますけれども、来週は佐賀弁で言うところの川ざらえ、溝ざらえです。みんなで川をさらいにいくんですよ、水路を。こういうことは、全く自主的に、皆さんで、集落でやりましょうといってやっているわけです。
こういういろいろなインフォーマルなことも含めて、集落の中では、農業に向けた伝統的な仕組みの中でいろいろな活動が行われているんです。そこをどう取り込むかということも含めて考えないと、集落営農は分断しない、水源はちゃんと一緒にやります、無農薬かどうかに関してもちゃんとやります、しかしそのほかのことはちょっとということだと、私の感覚からすると、地域の農業とマッチするかという点においてはやや不安が残ります。
だから、今後さらにというふうに言われたけれども、今後さらにでいいのかということに関してはかなり疑問が残るということだけを述べさせていただいて、この点は、法律の持つ問題としてさらに詰めさせていただきたいというふうに思います。
繰り返しになりますけれども、なぜこれを言っているかというと、この一条、三条が本当に重要だから、ここでどういうふうなセーフガードがかかるかということが非常に大切だから言っているわけで、さらにもう一つ詰めて聞きますと、三条の第三項そして三条の二、この二つをもってして、これまでとは違う貸借での新規参入のことが言われているわけであります。
三条の第三項あるいは三条の二で言われていることは、適正な利用というものを一つの基準として、適正な利用というものが行われない場合に解除できるという規定がある場合にはということと、あとは、その場合にはちゃんと農業委員会が取り消すということをもってして、適正な利用というものを基軸としてであれば、これまでの要件とは異なる形で貸借の場合には参入できるんですよということが言われています。
この場合の適正な耕地利用ということ、先ほどもちょっと質問がありましたけれども、適正な耕地利用、これが非常にかぎになってくると思いますので、これに関しても厳密に定義を教えていただきたいと思います。
○高橋政府参考人 今回の第三条三項及び第三条の二の関係でございます。
そこに用いられております効率的な利用あるいは適正な利用ということは、これは権利の取得あるいは剥奪に係ります非常に重要な基準でございます。
これについて申し上げさせていただきますと、先ほど申し上げました効率的な利用というのは、これは、要は権利を取得する段階での許可基準として設けられているものでございます。先ほど申し上げましたように、さまざまな要素がありますけれども、基本的な考え方として、土地の従来の農業生産の低下を来すことがない、すなわち、通常求められる水準の生産性を備えた農業生産を行うというのがまず基準としてあります。相対基準ではございません。だれが、どっちが効率的だとか、そういう基準ではございません。そういったものであります。
次に、今度は、その適正な利用が行われていない場合というのは、契約の解除あるいは許可の取り消しまで至るということで、既に持っております権利がある意味剥奪される、そういう権利がある程度、侵害という言葉が妥当かどうかは別でございますけれども、既得権について一定の公的な観点からこれを侵奪していくんだ、そういう際の基準になるものでございます。したがいまして、先ほど申し上げました効率的な利用とは若干水準が異なります。
先ほどお答えさせていただきましたが、例えば農地が不耕作となっている、あるいは農地としてきちんと利用されていない、いわゆる農地の本来の用法に応じた利用がされていない、はっきり言えば違反転用に近い、あるいは違反転用そのものだというような場合、これは、転用許可の違反にもなると同時に、このような許可の撤回、取り消し事由になるということでございます。
したがいまして、参入の際、いわゆる権利を新たに与える際の基準というものについては、通常レベルの農業生産をやっていただきたい。これを侵奪する、剥奪する場合には最低限の農地利用が行われていないということで、適正利用と効率的利用というものについて、この権利に対します関与の仕方ということで分けているものでございます。
○大串委員 今、基準として、不耕作、あるいは本来の利用をされていない、違反転用に近いような場合というような、先ほど廃棄物が置かれているような場合ということもおっしゃっていましたね。これも、先ほど来議論がありましたように、明確な基準をきちんとつくらなければならないということを申し添えておきたいと思います。
今の答弁であると、効率的な土地の利用を行っていれば適正な利用は行っているという状況にある、論理的にはそういう関係にあるわけですね。つまり、効率的な利用をやっていれば当然適正な利用はやっている。逆は真ではなくて、適正な利用をやっているからといって効率的な利用までやっているわけではないというような位置関係にある。うなずいていらっしゃるので、そういうことだろうと。この辺、非常に重要なことなので確認させていただきますけれども、そういうことだろうというふうに理解しました。
そして、私にとってさらに重要だと思われる条文は、三条の第二項一号ですね。これはもともとあった条文です、今回少し変更が加えられていますけれども。かつ、これは、所有の場合にも貸借の場合にも係ってくる条文ですね。すなわち、その肝のところは、権利の「取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地のすべてを」、効率的にという言葉が入っていますけれども、「効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合」はだめなんだ、許可を与えないんだ、こういうふうに言われています。
効率的というのは先ほどでわかりました。「すべてを」「事業を行う」ということが何なのかということ、これは実は今回非常に大切なんです。なぜかというと、貸借で法人が入ってきます。先般も議論がありました、ファンドはいいのか、外資系はいいのかと。あるいは、東京にある企業が佐賀にある農地を使って農耕を行う、その場合に、一体どういうふうなことを行っていれば「すべてを」事業を行っているというふうに言えるのか。ファンドが自分で土地を借りて、ファンドですから、印象的に言うと、だれかに又貸しする、あるいは委託するというようなイメージがあるので、多分、先般、ファンドが貸借するのはいいんですかというような質問もあったと思います。ここが分かれ目になってくる規定だと私は思っていまして、どういうふうな人が参入してくるのかというイメージを定義するのは実はここだと思うんです。ですから、貸借によって適正利用をするということが確保されていれば、個人の場合の常時従事じゃなく、かつ、法人の場合の農業生産法人じゃなくても参入できる。
では、一号を満たしているというのはイメージ的にどういうところなのか、これを厳密に教えていただきたいと思います。
○高橋政府参考人 お答えをいたします。
今御指摘の三条の二項の一号の規定でございます。「耕作又は養畜の事業を行う」、ここの部分だと思っております。これについては、実は、現行の二条の「定義」というところがございます。ここの二条の「定義」というのは、自作地、小作地、小作農、自作農。今回、小作農とか自作農とかいう用語をやめますので、ここの定義規定がなくなっておりますけれども、要は、自作であれ小作であれ、農業を営む者については、「耕作又は養畜の事業を行う」というのが農業なんですということをきちんと定義しているわけでございます。
したがいまして、今委員がおっしゃいました、例えばファンドがだれかにやらせるということは、農業経営の主宰権というものをだれかにやらせているということでありまして、みずからが農業経営をやっているということにはなりませんので、前回も申し上げているとおり、そのようなファンドによります取得ということはあり得ない。
要は、ファンドは権利を取得するのかもしれませんけれども、農業をみずからやるということとは認められませんので、実態的にやらせている。新たな、これはいろいろな、無名契約かもしれませんし典型契約かもしれませんけれども、そういったことをしている。その権利を行う際には、当然のことながら、その前段にそういう権利を、又貸し的なものをやっている。それは農業経営ではありませんということで、認められないということでございます。
○大串委員 今、政府参考人から話がありました。農業をみずからがやるのが事業を行うという定義であって、だれかにやらせるというのはだめなんだというふうなことをおっしゃいました。それは印象的には胸にすとんと落ちます。
では、そのだれかにやらせるという意味は何なんだというところは、これは実は、実際問題になってくると非常に大切になってくると私は思うんです。
例えば又貸しはどうなんでしょうか。恐らく又貸しはだめなんだと思います。まあいいです、幾つか言いますから。イメージが必要なんです。皆さん、本当にここは、一体どういう方が参入されるんだろうと、非常にイメージを持ちづらくしていらっしゃる。又貸しはどうなのか。あるいは、委託をするのはどうなのか。では、委託する場合でも、何を委託していて何を委託していないのならオーケーで、だめなのか。どこまでを委託すればいいのか。これは、そのほかの農業にかかわる制度でも、委託の要件が決まっているケースも非常にたくさんありますね。委託はどこまでいいのか。あるいは、委託はしない、東京にある本社の一事業部みたいなものをつくって、社員さんが一事業部としてそこで農業を行っている、これはいいのか。この人は派遣社員である、あるいはアルバイトである。あるいはボランティアである、ちょっと考えづらいかもしれないですけれども。いろいろな形態があると思います。
一体どういうものならよくてどういうものならだめなのかというところは、具体的に教えていただきたいというふうに思います。
○高橋政府参考人 農業を営む、耕作もしくは養畜の事業を行うということでございます。これにつきましては、これまでも、この三条の許可におけます許可対象というものは何であるか、長い間の実績の積み重ねの中でほぼこれは固まっているところでございます。基本的には、経営の主宰権がどこにあるか、要は、収益の帰属がどのような主体にあるかという観点になります。
先ほど来申し上げましたように、転貸ということ自体は、農地を借りて又貸しをするという、当然のことながら転貸先が経営の主宰権を持って経営のリスク負担をするということでございますので、これは、転貸する人は農業経営をするかもしれませんけれども、借りて貸す人は農業をする目的ではございませんので、当然のことながら、従来からもこれは認められておりませんし、今回も認められるものではございません。同じ意味で、ファンドも同じでございます。
それからもう一つは、実は法人経営の場合でございますけれども、基本的に、法人は自然人ではございません。ですから、個人とは違いまして、法人という組織体が、役員の統率のもとに、一定の従業員を雇って現実の事業遂行を行っていく。その形態についても、例えばこれまでの農業生産法人の制度でありますとか特定法人貸付の制度の中で、何をもって農業経営であるかというのは、これはもうさまざまな形態の中で既に積み重ねがございます。ちょっと私、細かい運用基準を今持っていなくて恐縮でございますけれども、そこのところは、この三条の許可基準については既にもう明確に判断できる。
それから、委託でございます。委託につきましては、従来、この三条許可の中では認められておりませんでしたが、今回、委託の事業についても現実の農業実態の中で認めることといたします。ただし、これも、部分的な作業を受託する、一部の作業を受託するということであれば、これは単に一部の作業を委託しているだけで、経営の実態が移転するわけじゃない。ですから、いわゆる基幹三作業の委託みたいなものが今回の権利移動の対象に入ってくるということでございます。
○大串委員 済みません、ちょっと今の委託のところでよくわからなかったんですけれども、基幹的な部分を委託する場合には、これは事業を行っているというふうに言えるんですか。逆じゃないですか。
○高橋政府参考人 ちょっと答弁が不十分でございましたけれども、例えばそのような委託をする前提で権利を取得するということは、先ほどの転貸と同じでございますので、これは認められないということでございます。
○大串委員 委託をする前提で土地を借りるというのはどうやって見分けるんですか。大事だから聞いているんです。極めて大事なんです。そういうことが起こり得る。
○高橋政府参考人 これは、転貸目的と基本的には同じ形でございます。先ほど申し上げました、当該権利を取得する者が、実際の装備の状況でございますとか、そういったものをもって、現実にそこのところで農業経営を行う実態があるのかどうか、転貸目的であれば機械装置というようなものがないということになるわけでございますので、そのような判断で従来からもこの基準はきちんと運用しているところでございます。
○大串委員 そうすると、企業が貸借を受けて参入しようとする。そのときに、一部の作業の委託、機械等をその企業が持っているかどうかという点とか、労働力をその企業自身がどれだけ出そうとしているか、法人がどれだけ出そうとしているかから見て、一部だけ委託しようとしているのであれば、それはセーフだと。しかし、その法人が、機械も何も持っていません、労働力もその法人の人が出すわけじゃありません、委託先に、あなたのところで機械も持ってやってください、労働力も委託を受けたあなたが全部出してやってくださいというような形が当初から想定されるようなものであれば、これは「すべてを」事業を行っているとは認められないという理解でよろしいですか。
○高橋政府参考人 基本的な考え方は委員御指摘のとおりでございます。
○大串委員 ありがとうございます。
今、幾つかの規定の内容を議論させていただきました。実はもっともっと細かく議論したいんです。かつ、要望も述べておきますと、農業会議所の皆さんからも議論がありましたけれども、これをきちんと文章の形で示すことが大切であって、これまでとは違った、常時従事者とかあるいは農業生産法人とか、外形基準ではない基準が今後入ってくるのが提案されている法文ですから、それをきちんとできるだけ客観的外形基準に置き直す、文章に置き直すという作業が今後極めて重要になってくると思うんです。
それは要望として述べておきながら、今議論した中でもやや心配な点があるので、またそれは引き続き議論させていただくとして。
なぜこういうふうなことを一条と三条の間でぎりぎり述べているかというと、先ほど申し上げたように、今回の一条の変更が極めて大きな意味を持つというふうに思うから。
ちょっときょう資料を、済みません、私の手書きの資料で大変恐縮でございますけれども、これもどのぐらい正確に書けているかというところはまだ御指導いただきながら考えなきゃならぬと思うんですけれども、私が、今回の一条の変更そして三条の変更を図式であらわすとこういうことかなということでまとめた資料です。
上段と下段で、上段が所有の世界、下段が貸借も含めた利用の世界ですね。波線が目的規定の境界線、つまりバウンダリーですね。実線で縦に仕切られているところが、いわゆる二条以下の実際の規定で定められている基準といいますか、そういうものです。そういうふうに私は考えて書きました。
現行法のもとでは、目的規定は、ここにありますように、所有の世界では「耕作者みずからが所有」というふうに書かれており、かつ、利用のところでは、一条にもありますように、「並びに土地の農業上の効率的な利用」ということがあわせ書かれておるがゆえに、利用に関しては、所有で定められているよりも、実体規定も含めてちょっと左側に行っていますね。すなわち、少し例外的に認められている部分があり得るというのが現状で、これに対して、今回、農地法改正が加えられているのはこの利用の部分だということですね。
利用の部分に関して農地法改正が加えられていて、適正に利用というのが出口基準としてあれば、これは、もっと正確に言うと、適正に利用だけじゃなくて、先ほどの三条の第二項第一号みたいな規定ももちろんあるんですけれども、それだけじゃなくて三条の第二項第七号みたいな規定もあるんですが、いずれにしても、適正な利用という出口基準をきちんと確保していれば、貸借において参入することができるという形の改正になっている。
では、目的規定はどうなっているかというと、一番左側の波線ですけれども、農地を効率的に利用する者の権利取得ということになっている。こういうふうな図式になろうかというふうに思います。
先ほどの答弁で、適正に利用というのは、実は農地を効率的に利用しているというよりも緩い概念であるということがわかったので、適正に利用という言葉だけだとより左側に来るんですが、先ほど申しましたように、適正に利用プラス三条の第二項第一号や第二項第七号などで、適正に利用というのは「効率的に利用する者」という中身に入っているんだというふうに私は理解しています。
こういうふうな仕組みになっていることをきのうも原田参考人は指摘されていたんだと思うんですね。それで、幾つか事例を挙げて、こういうふうな仕組みになっていると問題が生じるんじゃないかというのがきのうの指摘だったと思います。
一つは、ある農業生産法人A。土地を所有しています。二ヘクタール土地を所有している、そして八ヘクタール土地を借りている。そういうような農業生産法人があったとして、よっしゃ、これからもっともっと広げていこうというふうに思った。プラス三ヘクタール、貸借でこの三ヘクタールを広げようと思う場合には、農業生産法人たる資格は必要ございません。ですから、そういう中で、貸借で広がるということになる。
農業生産法人B。ここは、今までも貸借で土地の権利を得て、十ヘクタールの農業生産法人としての活動を行っていた。これから、よっしゃ、また全部貸借で三ヘクタール広げて十三ヘクタールでやっていこうというふうに思った。この三ヘクタール広げる場合には、実は農業生産法人たる資格は要しないということになるわけであります。それどころか、農業生産法人たる資格を欠いたとしても、この法のたてつけからすると、これまでの十ヘクタールも含めて、利用が認められなくなるということはないということになります。
そうすると、先ほどの二ヘクタールの所有権を持っている土地を持っている農業生産法人Aと農業生産法人Bとの間には、大きな競争上の条件の違いが生じてきますね。私ここに、はてなという斜線部のエリアを書きましたが、ここが空白になっているものですから、ここがつまり目的規定と実体規定とのずれがあるところになっているものですから、生じてくるんじゃないかと。
これは、現行法においては、目的規定と各個規定が大体沿った形になっている。ところが、今回新しく提案されている法律においては、目的規定といわゆる個別規定とのバウンダリー、境界線がずれている。特に所有のところにおいてずれている。この斜線部のところでぽっかり穴が生じている。
私が今申し上げた農業生産法人Aと農業生産法人Bの問題が起こるのはなぜかというと、所有している側から見ると、新しく借りる場合でも何でも、常時従事、農業生産法人というスタンダード、基準がかかるわけです。だから、これを超えられない。だから、不公平じゃないかという声が出てくる。これはどういうふうに考えられますでしょうか。
○高橋政府参考人 正確な理解をしているお答えになるかどうかについてはちょっとあれでございますけれども、まず、この関係でございますが、今委員御指摘の資料の下の部分、適正に利用、貸借、ここの拡大している部分でございます。
これについては、今回新たに、農業生産法人以外の法人が効率的利用のもとに貸借権を認められる、農地を借りることができる。その際、適正に利用していなければ、これは、解約されるあるいは解除されるという侵害行為が行われます。
一方、今委員御指摘の、所有権がある農業生産法人の方々が賃貸借の三ヘクタールを例えば新たに追加で取得する、その際は同じように効率的利用の要件がかかりますが、実は、この人たちについては、不適正利用ということがあったとしても、この解除ないし解約というような権利侵害行為というものは生じてまいりません。
このような形で、委員、利用側と所有側の間で利用側の方に法人の選択の幅があるので、どちらかというと有利ではないかという御議論がございましたけれども、逆に、これは本当はいい意味でのあれではないんですが、不適正な利用が生じた場合におけるペナルティーといいましょうか、権利侵害の面でいきますと、今度は生産側の方のところ、実はこれは個人の場合も出てくるわけです。単に法人だけではなくて、個人の場合も同じでございますけれども、このような場合であって、例えば解除される、解約されるということはないという意味で、逆に今度はプラスが生じてくるということでございますので、それぞれの場面場面でプラスマイナスが生じてくる。したがって、一律にどちらが有利、どちらが有利でないとかというのは、そういう性格の法人で経営を行うのは、やはり経営選択の一つであるというふうに考えているところでございます。
○大串委員 この議論をすると今の説明を農水省の方から聞くわけです。適正利用ということで、貸借の方に、左側に余地が広がったように見えるんだけれども、この適正利用という条件のもとで貸借が広がるというのは、実はそんなに大きなメリットではないんだ、なぜならば、適正利用していなければ解除という憂き目に遭うということになるんだから、それは所有の方とそんなに差はないんだという説明を聞きます。それが理由なんだろうと思いますけれども。
もう一つ、例えばということで、今度は貸借の側から見て所有の方に、下から上に見て、おかしいねという例。
例えば今回、貸借で適正に利用しながら参入した法人がいて、一生懸命農業を行います。頑張って頑張って農業を行って、すばらしい農業を行う。もちろん、効率的に利用するとか、そういうのも法の一条の趣旨ですから、これもやっておかなきゃならない。きちんと、効率的に利用も行い、適正に利用も行い、総合的な利用も行い、すべて行っているがゆえに、貸借関係が継続している。十年続いた、二十年続いた、これはすばらしいというふうに思う。にもかかわらず、この貸借で土地を得ている法人は、提案された法律のままだと、永遠に所有権が得られない。どんなに頑張っていても貸借権のままで終わって、所有権は得られないというような問題も生じるのではないか。
だから、これは、ちょっと先ほどの見方と逆ですね。先ほどは所有の側から見てこちら側に問題が生じるんじゃないかということでしたけれども、今度は、貸借の側から見て上の方に行く、やはりこの空間の問題が出てくるんじゃないかという問題も生じると思いますが、これに関してはどうですか。
○高橋政府参考人 今の委員の御指摘でございます。
先ほど大臣からもこの点につきましては御説明させていただきましたけれども、まず、今回の改正法案、委員御指摘のとおり、法人に対します所有権の取得については、現行どおり農業生産法人に限定するということでございます。賃借権に基づき農業を行おうとする企業について、適正に利用しない場合の解除、解約というようなものがあって、そういった場合には賃借による参入は可能ですが、その場合、農業生産法人である必要はない。裏表の関係になるわけでございます。
ポイントは、それではそのような法人が、きちんと農業経営をしていったけれども、いつまでたっても取得ができないのではないか、そういう議論に対して、ここのところが、この二つのことが分けられるきちんとした説明になっているのかということだろうと思っております。きのうの原田参考人の御意見もそうでございました。
これにつきましては、私ども、今、逆の立場のこともお話しさせていただきましたけれども、やはり今回の最大の観点というのは、所有権と賃借権との間では権利の中身が絶対的に違ってくる。所有権というのは、いわゆる使用収益、さらに処分といったものがあるわけでございます。処分した結果、これが農業的な処分であれば農業間での移動になるわけでございますけれども、例えば転用みたいな処分になった場合には、農地としてこれは不可逆になってしまう。それだけの権能を持っているということがまず一つ大きなものとしてあるわけでございます。
昨日の原田参考人の御意見はそこでの法理論にとどまっておりましたけれども、では、現実の農業の実態は何なのかというと、先ほど来大臣からも申し上げているとおり、実際の農地価格、これは、一部では収益還元価格で形成されているところもございますけれども、圧倒的に農業の収益還元価格を大きく上回っている。
一方、法人というのは、基本的に個人と異なりまして、資本力あるいは経営という観点から非常な資本の持続力を持ち得る。そういう意味で、将来、これはそういったものを邪推するのはけしからぬというような御議論はあるのかもしれませんが、内心、転用期待というようなものを持っていたとしても、当面赤字であってもそれは持ち得るんだ、将来のキャピタルゲインというものを考えれば、当面における一定の赤字というものについては、これは個人とは異なって持ち得るというようなこともあるわけでございます。
一方、逆に、借りて農業をやっている法人が、大臣も申し上げました、所有権を取得しなければ経営戦略上本当に困るのかといえば、現実のようなこういう高値の農地になっているときに、莫大な資金を固定化させるということになるわけでございます。
そういったような観点からいきますと、現実に、所有権に対します危惧の問題、一方において、現実の農業の法人が農地を取得しなければならないという必然性、必要性等の問題を考えますと、現下において、所有権の取得ということについてはやはり認められないということでございます。
したがって、法理論上は先ほど二つの権利の性質の違いを申してきておりますし、私どもとしては、さらに、それのよって来る政策的な必要性という概念から今回の法律を構築しているところでございます。
○大串委員 今答弁のあったところはどこのところを議論されているかというと、いわゆる個別法による境界線、つまり、二条以下の具体的規定における境界線自体は間違っていないんだという答弁なんですね。これはこれで適正なんだという答弁なんです。
私が問題にしているのは、個別の規制のライン、先ほど申し上げましたように、これもきちっと定義していかにゃいかぬ等々の問題点はありますし、また、いろいろな論点がありますから、これも議論しますけれども、その問題ではなくて、目的規定と個別規定のラインのところに、つまりバウンダリー、境界線にややずれがあるんじゃないですかというところなんです。
もっと言うと、先ほど申しましたように、これまでの法律においては、この目的規定と個別法の境界線、バウンダリーがフィットしていた、一致していた。ところが今回、先ほどまさに政府参考人がおっしゃったように、所有権と賃借権、貸借権においては権利の内容が異なるんだというふうにおっしゃった。にもかかわらず、今回提案されている第一条においては、では権利取得はだれが行うんだということを問えば、「農地を効率的に利用する者による農地についての権利の取得」としか書かれていないので、所有権だろうが貸借権だろうが、農地を効率的に利用していれば得られるというつくりになっているんです。ここがちょっと粗いのではないかと。これが利用者主義というものに変わっているゆえんなんだけれども。
私が見る限りにおいては、新しい二条以下の個別法のバウンダリーをつくりたいということが目的であれば、この目的規定は、こんなにも、つまり、農地を効率的に利用する者の権利を取得するというようなところまでも左にずばっと来なくてもいいんじゃないのか。つまり、目的規定はこれまでのような耕作者主義を前提として、利用に関しては例外がありますよという形でも、フィットし得る書きぶりは一条に関してはあるんじゃないかということを申し上げたかったということなんです。
それで、ちょっと時間がありませんので、これに関する所見を農水省にお伝えして、二条以下の今回の書きぶりを前提とすると、絶対に現在提案されている一条でなければだめなのか、つまり、耕作者主義を排した、利用中心主義の一条でなければだめなのかという判断を農水省に聞きたいのが一つ。
法制局に対して、二条以下の今回の改正を前提とすると、法理論上、第一条のような利用者主義のような書きぶりをしなきゃいけないのか、それとも、現行の第一条たる耕作者主義プラス例外という形ではだめなのか、これは純粋に法理上だめなのかということ。
そして、財務省の方に、今回、納税猶予の制度、これも、この農地法の改正の成立とともに、新しく貸借に関しても認められるということになっています。この納税猶予というものを貸借の場合に認めるに当たっては、この目的規定まで耕作者主義から利用者主義的なものに変わっていなければならないという税理論上の判断があるのか。
この三点に関して、それぞれにお尋ねしておきたいと思います。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
委員の御提出いただきました資料につきましては、現行第一条の「目的」のうちの後段の部分が基本的な理論構成の中心になっていると思っております。
実は、この一条の「目的」の前段の部分につきましては、三条にも若干関係いたしますけれども、その後におけます小作地所有制限あるいは国家買収という規定と密接に結びついております。したがいまして、このように歴史的使命を終えて現時点においては事実上働いていないような規定を今回整理することといたしておりますけれども、ここと密接に結びついている一条の前段の部分については、これはやはり大きな問題がある。後段の部分についてさまざまな御議論、意見が委員からあったことについては承るわけでございますけれども、これについては私どもまた整理しなきゃいけませんが、少なくとも一条の前段の部分、これは基本的に今の段階ではないということでございます。
○近藤政府参考人 お尋ねの件についてでございますが、法律の目的規定というのは、法律の立法目的というんですか、それを簡潔に表現するということで、その法律の達成しようという目的をきちっと理解していただくということで置かれているものでございまして、基本的には、個々の条文というよりは法律全体で規定しているもの、あるいは、なぜそういう法律をつくって適用していこうと考えているか、全体を総合的に判断して一番適切な表現になるようにという形で規定されるべきものだと思っております。
今回の農地法の改正につきましては、農林水産省の方からも多々御答弁がございましたように、農地の利用を基本とする制度に再構築するという大きな政策の転換、目的の変更、それを踏まえて、農地法全体につきまして各般の条文の改正を行っておりまして、全体の姿を見て、先生は三条の関係をお話しされましたけれども、ほかの規定も含めて全体を見て、一体、全体がどういうことを意味しようとしているのかというところを踏まえて、より適切なものになるように、目的規定については改正するのがやはり適切だろうというふうに私どもは判断いたしたところでございます。
○古谷政府参考人 お答えをいたします。
農地に係る相続税の納税猶予制度は、御承知のように、租税特別措置法に基づく政策的な特例措置でございます。そういうことで、農水省の方のこれまでの農地法の基本的な枠組みを踏まえまして、相続人みずからが農業を継続するということを要件として相続税の納付を猶予してまいりました。この制度は、昭和五十年にできて以来、納税猶予の対象の拡充ですとか、いろいろな議論があったわけですけれども、農地法の基本的な考え方がそうであるということで、基本的には所有と耕作の不可分を前提に納税猶予をしてきたということでございます。
これにつきまして、今回、農地法の目的を含めまして、農地政策の考え方が農地の保全とその有効活用ということに大きくかじを切るということで、抜本的な改正が行われる、それに合わせまして、相続税の納税猶予制度につきましても一定の政策的な貸し付けに対象を拡充するということでございますので、農地法の今回の一条の目的規定の改正というのは、政策税制の対応上も大変重要な改正であるというふうに認識をしてございます。
○大串委員 全体を見て、これは必要だと思われるとか、重要だとか、あるいは七条、小作の関係に関する改正を前提に必要だ、こういうふうな議論でございましたけれども、本当に、今回つくられている所有と利用の制度の違い、今回の改正法でつくられた、新たな世界としてできている所有と利用のあり方の段階論に応じた目的規定になっているのかというのは、改めて厳密に問われなければならない。なぜなら、この目的規定は極めて重要だから。何十年という今後の農政に影響を与える可能性があるから。
この点を最後に指摘して、また議論をかなり深めさせていただきたいということを申し上げさせていただいて、終わります。
○遠藤委員長 次に、横山北斗君。
○横山委員 民主党、横山北斗です。
まず最初に、この制度改定に至る経緯についてお尋ねいたします。
このたびの農地制度の見直し、この検討は、平成十八年に品目横断的経営安定対策の導入を定めた新法が成立した直後に、宮腰先生中心となって「農地政策の再構築に向けて」という取り決めが行われて始まったものとお聞きしております。
一方、経済諮問会議の方からは農地制度改革が提唱されて、平成十九年の一月に農地政策に関する有識者会議が設置される。それで、同年十一月に「農地政策の展開方向について」という取りまとめができるんですけれども、この中で、優良農地の確保、農地の面的集積の促進、それから農地の権利移動の規制の見直しなどについて、平成二十年度中、遅くとも二十一年度中には新しい仕組みがスタートできるよう法制度上の措置を講じるとしていて、実際、平成二十年の十二月に入って、経済財政諮問会議の議論をベースに策定された基本方針二〇〇八に従って農地改革プランなるものが取りまとめられました。
しかし、この間、農地制度の見直しについて農林水産省は、平成十九年度中は有識者会議で議論を行い、検討を進めてきた。したがって、その有識者会議の配付資料とか議事概要なんかも公表されているんですが、平成二十年に入るとそういう会議が開かれることもなく、したがって、どういう議論が行われたのか、農水省内部でどういう検討が行われてきたのかという点について、今回、この農地制度の基本理念である耕作者主義から決別するという大きな改革を提案してきた中で、政策形成過程における不透明さというイメージを感じるのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
今回の農地法等の改正案の提出に至る検討の経緯でございますけれども、ちょっと古くなって恐縮でございますけれども、現行の食料・農業・農村基本法におきましては、既に第二十三条において、国内の農業生産に必要な農地の確保及びその有効利用を図るため、農地として利用すべき土地の農業上の利用の確保、効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農地の利用集積、農地の効率的な利用の促進その他の必要な施策を国は講ずるというふうにされております。その基本法に基づきまして、御承知のとおり、第一次の基本計画、それから現行、今の第二次の基本計画、それから、第三次の基本計画の検討を今始めているわけでございますけれども、五年ごとの基本計画の策定を行っているところでございます。
現在の基本計画、これは平成十七年にできたわけでございますけれども、この現在の基本計画に至る検討の過程におきまして、実は、平成十五年八月に現行基本計画の検討を始めております。その開始をしたときにおけます当時の課題、問題意識の一つとして、望ましい農業構造、土地利用を実現するために、農地制度を改革するということを既にこの段階で農林水産省としては政策課題として取り上げたわけでございます。
その後、委員御指摘のとおり、当時の宮腰副大臣におけます勉強会等々含め、農林水産省内部におきまして、この農地制度についてのあらゆる分野にわたります検討を行ってまいりました。その後、外部の各界の有識者からも御意見を伺う、当然これは必要であるということで、平成十九年一月から十月にかけまして、農地政策に関します有識者会議を設置いたしまして、さまざまな御議論をいただいたところでございます。この結果を受けて、平成十九年十一月に、いわゆる農地政策の展開方向というものを取りまとめたわけでございます。
この農地政策の展開方向で基本的な方向を既に私どもといたしましては外部に発表いたしたわけでございまして、その間、その後の検討状況については、経済財政諮問会議等との間におけますさまざまなやりとりもございます。これについては、先般の委員会での御質疑のときにも申し上げましたけれども、経済財政諮問会議の意見をそのまま農林水産省として受け入れるということは一切ございません。基本的には、相当激しいやりとりがそのたびごとに経済財政諮問会議との間でございます。特に、二十年五月の段階では、当時の若林農林水産大臣が、農地改革については基本的に農林水産省が責任を持って検討するということで、経済財政諮問会議との意見の調整についても農林水産省が責任を持って案を提出するという形で整理をした上で、昨年十二月の農地改革プランの策定に至ったわけでございます。
なお、この間、当然のことながら、各生産現場におけます意見聴取等々も行っておりますし、改革プランの策定以降、本年年明け以降は全都道府県に私ども出向きまして、関係者に対する説明を行っているところでございます。
なお、法案の提出に関係いたしましては、与党サイドにおかれましても、平成十八年十二月から今回の法案提出に至るまで一貫した検討が行われたということでございます。
○横山委員 農水省がこの案を出してくるまでにさまざまな御意見を経済界などからも拝聴しながら、そこまで、一年前まではそうだったけれども、その間、また一年かけて検討して今回に至ったということなんだろうと思います。
それで、今、経済財政諮問会議ということが出てきました。決してそこの意見だけに左右されているものではないというお話でしたけれども、今、与党の側からも、この経済財政諮問会議が出してきた考え方というか、グローバリズムである、あるいは市場万能主義である、そういう方向に基づく政策が地域格差を拡大したんじゃないかとか、医療の面においても、毎年二千二百億の医療費削減、これも経済財政諮問会議の言うことを聞いたからこうなったんじゃないかみたいなことを与党の代議士の先生も公然と今言い始めております。
石破大臣におかれましては、農政におけるこの経済財政諮問会議に対してどういう御評価をなされているのか。また、この農地法なんかはそちらの方から出てきたというようなことも言われておりますが、どういうお考えを全体としてお持ちなのか。御意見をお伺いしたいと思います。
○石破国務大臣 経緯は今局長から説明を申し上げたとおりであります。
要は、所有権をどうしますかというところが最終的なポイントであって、利用を妨げない限り所有権の移動も自由だというのが経済財政諮問会議のお考えであったというふうに承知をいたしております。
しかしながら、先ほども申し上げましたように、それでは法人に所有権まで認めなければ農業というものは発展をしないのか、あるいは、法人が農業を営みます場合に所有権まで認めなければいけませんかねというところ、ここは、法理論とまた実態との話が分かれてくるんだろうと思いますが、そうではないでしょうと。また法人も、資本力もありますし、そしてまた意思形成というものも個人とは異なる経緯をたどりますし、そうすると、法人が長い間持っていて、やがて転用ということが全面的には否定できない。よい法人、悪い法人、普通の法人と言うつもりもございませんが、法人にもいろいろなものがあるでしょうということから、所有権というところまでは認めないということになったわけでございます。
そうしますと、私どもは、経済財政諮問会議のお考えとは違う結論になっているというふうに考えておりまして、経済財政諮問会議の言うままにやっているという御批判は当然当たらないと思っております。当時の若林大臣と経済財政諮問会議との間で本当に激しいやりとりがあったということは、私、今回着任をいたしましていろいろと学んだところでございます。
○横山委員 わかりました。
それでは、次の質問で、これまでの施策の評価、検証という点について。
大臣は七日の農林水産委員会で、耕作放棄地の増加に歯どめがかからない、効率的な利用に必要な集積が困難、こういう課題認識を示された上で、農地をめぐる課題を克服し、将来にわたって食料の安定供給を確保していくため、我が国農業制度を抜本的に見直すこととし、この法律案を提出した次第であるとの御説明がありました。
しかし、先ほどの農水省の御答弁でもおわかりのとおり、これは今初めて出てきた問題ではありません。平成十七年の農業経営基盤強化促進法の改正においても、さまざまな農地施策の見直しが盛り込まれていた。
第一に、農地保有合理化事業に農業生産法人への金銭出資及び農用地等の貸付信託の事業を追加し、農地の仲介機能の強化を図ること。
第二に、農用地利用改善事業を見直し、集落での話し合いを通じ集落営農の役割分担や担い手に対する農地の利用集積目標の明確化等を図る。
続けて読んでいきます。
遊休農地対策を充実し、都道府県、市町村に対し遊休農地の解消、防止に関する基本的な構想の作成を求めるとともに、都道府県知事の裁定による賃借権の設定、市町村長による遊休農地所有者等に対する措置命令等の措置を講じ、体系的な遊休農地対策の整備を図る。
第四に、リース特区を全国展開し、農業生産法人以外の法人に対する農地の貸付事業を創設する。
第五に、地域全体の合意に基づく計画的な土地利用を進めるため、農業振興地域整備計画の策定、変更に際し、市町村の住民による意見提出の機会を付与する。
これを今述べてみた限り、耕作放棄地対策も利用集積の促進も、今回の法律案提出における課題認識に対する制度改正は既に平成十七年度には行われていたと言えるわけです。この法改正が同年九月一日に施行されてから三年七カ月の農業経営基盤強化促進法改正による措置の取り組み状況をどう検証し評価してきたのかについて、もう一度御説明願えればと思います。
○石破国務大臣 十七年の農業経営基盤強化促進法のお話をいただきましたが、要は、そのときに討論がございました。御党から鮫島委員がお立ちになりまして、こういうふうにおっしゃっておられるわけであります。
政府が出しました法律案の中で、リース特区の全国展開と体系的な耕作放棄地対策の整備については、民主党の再生プランで提唱した考え方が盛り込まれているので一応の評価はすると言っていただきました後、しかしながら、農地制度の基本的なあり方に踏み込んだ検討結果が示されていない、いわば急所を外した案であるのでまことに残念だ、こういうおしかりをいただいておるわけでございます。
いろいろな御議論がありましたが、最終的には賛成をしていただけなかったということでありまして、私どもとして、このような御批判も踏まえた上で今回の法改正につながっているのだというふうに思っております。
農地制度の基本的なあり方に踏み込んでいないじゃないかというおしかりを当時の御党からいただいておるわけでございまして、やはり農地制度そのもの、先ほど来、一条の議論がございますけれども、この一条というものに手をつけないと農地制度というのは変わっていかないという問題意識、したがいまして今回の法改正につながっているものでございまして、当時の御党の考え方をある意味生かしたと言うとおしかりをいただくかもしれませんが、いずれにしても、農地制度の基本に踏み込んだ改正をしておるというのが今回の考え方であります。
○横山委員 大臣の御見解はわかりましたが、では、もう少し内容的に踏み込んでお答えいただきたいんです。
先ほど、鮫島委員、申しわけありません、私は存じないんですけれども、平成十七年のときに確かにはっきりこう言っています。今までの農業政策が失敗であった、これに対する反省のないまま法律改正を行っても、期待する効果は上がらず、同じ失敗を繰り返すことになる、そう述べて民主党は反対をして、我が党としては、ほら、言ったとおりになっているじゃないですかということなんですけれども、その間、政策的にどこをどう見直したのか、検証をしてきたのかということについて、農水省の方からもう少し具体的なことをお聞かせ願えればと思います。
○高橋政府参考人 お答えいたします。
十七年の基盤強化法等の改正につきましては、先ほど来、委員あるいは大臣からも御指摘がございましたように、かなりの数の分野にわたったものでありました。このうち、今回の改正の中で、例えば先ほど来御議論ございましたリース特区によります全国展開につきましては、三百を超える法人がこれに参入をいたしまして、九百ヘクタールを超えるような規模の面積についてきちんとした営農が行われている、こういうことで、この部分については着実な推進が行われたというふうに考えております。
一方、体系的な遊休地対策の整備につきましては、指導から最終的な利用権の設定に至ります、農業委員会、市町村、都道府県知事によります連携ということで、制度の体系そのものはできたわけでございますけれども、実際的な運用におきましては、農業委員会によります指導は行われておりましたけれども、それ以降の行政の処分というものが一切行われていないというところに、やはり大きな問題点があるというふうに考えているところでございます。
また、いわゆる農地保有合理化法人の機能の拡充につきましても、法律によりまして貸付信託あるいは金銭出資事業というような手法を設けておりますけれども、これについても、では実際に農地の流動化にどれだけの効力を発揮したかということになりますと、既存の従来の売買あるいは貸借によります事業というものがやはり圧倒的な中で、かつ、この売買、貸借の事業だけでもまだ現状では非常に行き詰まっている部分もある。そういう意味での流動化施策についても新たな施策が求められたというふうに私どもは理解をしております。
そのような基盤強化法におけます国会の御議論、あるいはその後におきます今申し上げましたような実績等々を踏まえて、今回の法案提出に至らせていただいたものでございます。
○横山委員 わかりました。
それでは、今度、農政改革全体の中で今回の農地制度改革をどう位置づけているのかという点についてお聞きしたいんです。
農政関係の計画、方針の中で今一番重要なのは、閣議決定の上国会に報告する食料・農業・農村基本計画であろうかと思います。この農地法改正案が新たな食料・農業・農村基本計画と無関係ということはないわけで、農政上重要な農地制度改革は、新たな食料・農業・農村基本計画上極めて重要なところに位置づけられるものと考えますが、この食料・農業・農村基本計画の見直し作業は始まったばかりで、閣議決定も見込みは来年三月である。
新たな基本計画の策定を待つことなく法案を提出した理由というのはどこにあるんでしょうか。この農地改革における農地制度の改革の位置づけ、その関係を明らかにしていただきたい。これは基本計画を先取りしてやっているものだという理解でよろしいのでしょうか。
○石破国務大臣 これは先生、基本計画の見直しが行われなければ、あるいはそれと軌を一にしなければすべての法改正もできないのだということではない。そんなこと聞いているんじゃないとおっしゃるのはよくわかるんですけれども。
例えばきのう、参議院におきまして米三法の議論をいたしました。衆議院で御可決いただきましたものを参議院に送付して議論いただいたわけですが、そこでも同じようなお話がございました。この米三法というものの改正は非常に重要ではないか、食糧法を相当に変える、あるいはトレーサビリティー法案、だからそれはもう基本計画と一緒にするべきじゃないかというお話もあったんですが、やはりできるものは基本計画の改定を待たずにやっていこうということなのでございます。
基本計画が、この流れ、農地に関するこの流れと全く違うものになるということであれば話は別でございますが、やはり利用というものに着目をして法体系を改めていくということは、基本計画においてもそれは全く変わるものではございません。できるものから先にやっていくということでおりますが、もちろん国会の御審議を経て、それをよりよいものにしていくということを申し上げるにやぶさかではございませんけれども、そこに時間的なずれがあるからといって、それが不整合ということになるものだとは私は思っておらないところでございます。
○横山委員 例えば過去十年間、平成十二年に農地法の改正があって、平成十七年に農業経営基盤強化促進法等の改正があった。平成十二年の農地法の改正のときには農業生産法人の一法人形態として株式の譲渡制限のついた株式会社を認める、平成十七年の改正については先ほど述べたとおりですけれども、この両方の機会のときは、食料・農業・農村基本計画の策定とあわせた法律案の提出であった。今回、農地法改正が重要であり、今国会に出すと考えるなら、やはり基本計画の見直しを前倒しすべきであったという考え方もあっていいんだと思うんですね。
そういう点について、この農地改革全体における農地制度の位置づけがあいまいになりはしないかという懸念がある、そういう点での御質問でしたけれども、大臣、先ほどの答弁と一緒でよろしいでしょうか。(石破国務大臣「一緒です」と呼ぶ)わかりました。
それでは、法律案の内容について移っていきたいと思います。
今までもほかの委員がかなり質問されていることかもしれませんが、まず、一般企業の参入規制の緩和についてから。
法律案では、周辺の農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生じるおそれがある場合は権利移動を許可しないという制限を設けつつ、一般企業等については、取得後の農地を適正に利用していない場合には貸借を解除するとの条件を契約に付した場合、農地の貸借を許可するという規制緩和を行っています。これは特定法人貸付事業の発展的解消、一般化ともいうべき改正になるかと思うんですが、そうであるからこそ透明性を確保した議論がこの間にいろいろな方面からなされておくべきであったのかなということを最初の質問でもしたんです。
以下、具体的に内容を見ていきますと、まず参入区域に関して、現行の特定法人貸付事業では、市町村が遊休農地や遊休農地になりそうな農地が相当程度存在する区域を参入区域とし、市町村基本構想において設定すること。
これに対して、財界は、使い勝手が悪い、耕作放棄地の多い地域が指定されるから市町村の地域指定を廃止しなさい、あるいは、耕作放棄地だけじゃなくて優良農地のリース等の条件整備が必要であろうという主張をしているんですけれども、今の制度のもとでも市町村全体を参入区域として指定している自治体もあります。
運用次第で既存の担い手と農外法人との共存が図られるのではないかと考えるんですけれども、この参入区域の設定を取りやめた理由についてお尋ねいたします。
○高橋政府参考人 現行のリース方式につきましては、委員御指摘のとおり、市町村がこの参入区域というのを設定するわけでございます。その参入区域の設定状況でございますけれども、これは市町村の基本構想の中で定めてまいりますが、千七百四の市町村がこの基本構想を定めておりますけれども、この事業、参入区域を設定するという事業の位置づけをしている市町村は実は四五%ということでございます。
それで、私どもの認識といたしまして、例えば水田農業集落の半数以上が実は主業農家が存在をしない状況にある、基幹的農業従事者が既に六十五歳以上が六割のような状況になっている。今は確かにこのような方々が一生懸命頑張っていただいているわけでございますけれども、これまでの耕作放棄地の動向、さらには現状のことを考えてまいりますと、どのような地域でどのような形で新たに耕作の不足というものが生じてくるかということについては、やはり画一的な地域限定ということではなかなか難しいのではないかというふうに思っております。
また逆に、市町村の不作為ということもあり得る可能性が十二分にある数字だと思っているわけでございまして、私どもといたしましては、今後の農業の発展という観点、きちんとして農地を使っていただくという観点から見ますと、このような設定区域というようなことよりも、実際に本当に必要な地域において、周辺の事情との均衡の中で、調和の中で必要なチェックを行いつつ、また必要な懸念払拭措置を行いつつ、それぞれの判断を行うことが重要であると判断をいたしまして、このような区域設定をやめたわけでございます。
○横山委員 それでは次に、業務執行の役員要件を撤廃した理由。
現行の特定法人貸付事業では、業務執行役員の一人以上が農業に常時従事することが要件とされている。この法律案ではこの要件も撤廃されます。日本経団連は、ことしの二月十三日に農地制度改革に関する見解の中で、対象農地の拡大は求めているんですが、法人の要件についてまでは言及していません。農業生産法人以外の法人の農地貸借について業務執行役員要件を課さなかった理由について、御答弁を願います。
○高橋政府参考人 先ほども若干お答えいたしましたが、今回の貸し付け方式によります生産法人以外の法人の参入につきましては、基本的に、今申し上げましたように、参入に当たっての周辺の農業との調和規定ということをまず設けた上で、適正に利用していない場合には貸借を解除する条件の義務づけ、さらに、いわゆる地主さんとの相対の間でこのような解除がされない場合にありましては、農業委員会の許可取り消しというようなこと、さらに、この後もいわゆる不適正な状況が続くような場合にありましては、遊休地対策の拡充によります違反に対する措置というようなこと、そういったような幾重にもわたります基本的なチェック、防止措置というものを講じることとしたわけでございます。
したがいまして、その利用の確保ということについて万全の措置を講じているということで、組織体制等については問わないこととしたところでございます。
○横山委員 では、続きまして市町村の関与について。
現行の特定法人貸付事業では、市町村が参入区域を設定し、市町村または農地保有合理化法人が農地所有者から農地を買い入れまたは借り入れをし、参入しようとする農外法人との間で事業の適正かつ円滑な実施を担保するための協定を締結し、リース契約を締結するという仕組みですが、この法律案は、純然たる民民の契約関係になっております。市町村の関与がない。
地域づくりに責任のある市町村の関与がなくなると、秩序ある地域農業の確立が困難になるんじゃないかという懸念が示されておりますけれども、農外法人との農地の貸し借りにおいて市町村の関与をなくした理由を改めてお聞かせください。
○高橋政府参考人 現行のリース方式によります市町村あるいは農地保有合理化法人を介した貸し付けということでございますけれども、これは、御承知のとおり十七年の段階、その前に十五年の特区制度がございましたけれども、初めて新たに生産法人以外の法人の農業参入という一般化が行われたわけでございます。
したがいまして、地域におけます農業者等も新たな事態に対処しなきゃいけない。こういったような新たな事態におけます不安感の除去という意味あるいは信頼感の醸成という意味で、わざわざ、いわゆる転貸、転貸というのは本来非常に複雑な権利関係になるわけでございますけれども、地主さんが市町村に一たん貸す、そして今度は市町村が企業に貸すというような仕組みをとったわけでございます。
その後の現実の運用、きのうの参考人の御意見の開陳等もございましたけれども、その後の実態等を見て、あるいはこのような特例的な制度の必要性という観点から見て、当初のこのような不安感の払拭あるいは信頼性ということをやらなくても、きちんとしたチェック体制ができれば、あるいはこの参入に当たりましてきちんとしたチェックが行い得れば、これは相対でやってもいいのではないかということで、今回外したわけでございます。
なお、市町村の計画制度という話でございますけれども、これはあくまでも、一筆あるいは数筆の土地ごとに、契約関係が醸成された場合に行われる契約でございます。いわゆる通常の計画制度、ゾーニング制度のもとで、いわゆる広域的な形で市町村の将来のあるべき姿というものを描くということよりも、たまたま突発的に出てくるものについて一定の地域内のところで認めていく、あるいは関与するという形でございますので、通常レベルの計画制度については、市町村の基本構想あるいは農振法におきます整備計画、そういうようなきちんとした計画制度の中で、市町村におけます将来構想というものを描くことが妥当であるというふうに考えております。
○横山委員 現行の特定法人貸付事業は、耕作者主義のもと、ぎりぎりの緩和であろうかなというふうに思います。それゆえ、参入する企業も受け入れる市町村も、緊張感を持って制度運用に当たっている。それが、特段大きな問題も起こすことなく今日に至っているゆえんであろうと思いますので、市町村とかいう部分の撤廃に関しては、民主党は納得しかねるということになろうかと思います。
では、次の質問に移っていきたいと思います。農業生産法人の要件緩和について。
この法律案は、農業生産法人の議決権要件の緩和も盛り込んでおります。農商工連携業者など農業のよきパートナーというべき企業については、大幅に、二分の一未満まで議決権制限を緩和する。一般企業も、これで現行の特定法人貸付事業と比べても農地を借りることが極めて容易になる。これもやはり財界の意向を踏まえてのことだろうと思うんですが、それだけでなく、経済同友会は農業生産法人の売上高や役員等の要件の撤廃を求めています。
これは、一般企業に農地の所有権取得を認めろという主張と解することができますが、昨日の参考人質疑でも、全国農業会議所専務理事の松本参考人から、一般企業の農業参入について、将来とも所有権取得については認めないという意見が寄せられました。また、中央大学の原田大学院教授は、所有権取得についての規制は、新しい農地法の中では存在根拠の乏しい、例外的に宙に浮いた規定となり、近い将来に消えていくべき宿命を背負っているように見えるという意見を述べられております。
今回のこの法律案は、農地の貸借だけじゃなくて、所有権取得の自由化をもたらすきっかけとなるのではないかと思いますが、そういう点での御認識についてはいかがでしょうか。
○高橋政府参考人 今回の農業生産法人要件の見直しにつきましては、これは、従来の生産法人要件の基本部分については一切踏み越えている部分はございません。
今回二つ、改正点がございます。
一つは、農地を法人に貸し付けている人と、農作業をその法人に委託している人との間で、法人の出資の制限ということで、実態的に差がございます。これは、貸し付けと農作業受託との間での実態的な差違、農村集落におけます受託者と貸付者との実態ということを考えれば、いずれも農業、農村の内部の者のことでございますので、そこに差があること自体に、やはりこれまでの間でおかしかったというふうに私どもは思っておりまして、これを是正するというのが第一点でございます。
それから第二点は、今、農商工連携業者等の関係をおっしゃられましたけれども、基本的に、関係事業者の議決権の範囲ということにつきましては、四分の一というのが上限でございます。
ただし、従来から、当該法人が認定農業者の場合には、いわゆる公的な観点で認定が行われているというようなこともございまして、二分の一未満まで関連事業者の議決権が認められるという特例措置がございます。これは、認定農業者制度という基本的な政策方向性の中で、農業生産法人の一般の例外として、そういう措置を講じているわけでございます。
今回は、関連事業者の範囲を拡大するわけではございません。従来からおります関連事業者の中で、いわゆる法律に基づき、さらに公的な認定を行うということで、連携の程度はより高く、しかも行政上のチェックが行われている、そういう関連事業者については、認定農業者における例外とは違った視点ではございますけれども、農業生産法人の経営の安定化あるいはノウハウ等の獲得というような観点から、同様の範囲において、同様の上限において、二分の一未満という上限において例外措置を講ずるということでございますので、従来の地域の農業者を主体とする農業生産法人という基本的理念は、一切変わっていないところでございます。
○横山委員 わかりました。今の点については、最後にもちらっと触れたいと思うんです。
では、次の質問で、大臣のこの法律に対する思いをちょっとお聞きしたいんです。
石破大臣が、平成十二年の農地法改正のとき、当時農林水産政務次官の職にあられたとき、法案審査のときに幾つか答弁をされております。
例えば、これは農業生産法人の一形態に株式の譲渡制限のある株式会社を認めるというものだったんですが、この中で、農村の安心ということを前提としつつ、今後、一たん農地を取得して農業を始めたら、転用や耕作放棄ができなくなるというような仕組みさえ整えてあれば、耕作者を狭く考えるんじゃなくて、これを広くとらえ、少なくとも企画や指示のみを行うような個人や株式会社にも農地の取得を認める、そして農村の活性化を図っていくべきだという質問に対して大臣は、委員御指摘の点は、省内においても長い間議論をいたしてまいりました、いわゆる企画管理のみを行う法人、株式会社、または個人にも農地の取得を認めていいのではないでしょうかという論を、実は私も展開したこともあるんです、ただ、その場合に、どうしても行き当たるのは、やはり耕作者主義からは反するんだろうねということになるわけだと。
それから、翌日の答弁で、農地の所有と経営を分離すべきという質疑に対しては、これは農地法の一条そのものを見直していかねばならぬということになるんであろう、ただ、そこへ至ることが仮にあるとしましても、今回の改正でどんな効果を生むのか、平成十二年度ですね、そして国民の御理解がどのように得られるのか、そこをまず踏むことが肝要なことなのではなかろうかと思っておる次第です、こう答弁されておるんです。
この間、国民の御理解を得られる状況ができて、今回の法律案で、農地法第一条を抜本的に改正し耕作者主義を廃止する形に、企画管理のみを行う法人の農地取得に向けて大きく一歩を踏み出したという、私なんかにはそういう感のあるこの法律案、石破大臣が政務次官時代から考えていた農地制度の改革を今実現しようと、まさにしているものと理解してよろしいのでしょうか。
○石破国務大臣 久しぶりにこういうものを見まして、ああ、こんなことも言ったなと、しみじみと思っておるところであります。総括政務次官当時にこういう答弁を確かに申し上げました。
これは九年前、当選五回のときなのですが、私は、当選三回、四回のころから、耕作者主義というのは一体何なんだろうかということはずっと考えてまいりました。耕作する者が所有することを最も適当と認めというのは、本当に今もそうなのだろうかという問題意識を十年ぐらい前から持っておりまして、そういう意識が底流にあってこういう答弁になったんだろうと思っております。
それは、最も適当かどうか。適当であることは間違いないでしょうね、耕作する者が所有するのを悪いことなんてだれも言いません。しかしながら、そうじゃない形態がたくさんあるというのは、このころからそうでした。今はもっとそうです。
ですから、耕作者主義というものを、そのことを全否定するのではないけれども、利用にシフトをしていくべきだということを何度も何度も答弁しておりますが、そういう意味では、その考え方が今日の法改正につながっていると結果的には言えるんだろうと思います。
ただ、この後、私は違う分野の仕事をしておりましたので、ずっとこの議論に参画をしておったわけではございません、農水省の中あるいは与党の中の議論にも主体的に参画をしたわけではございません。結果的にと申し上げたのはそういうことでございますけれども、そういう点でつながりはあるのだろう。私の思いが結実したなぞという、そういう思い上がったようなことを言うつもりは全くございません。
○横山委員 別に過去の発言をとらえて深く追及はいたしませんので。
それでは最後に、これは質問というわけではございませんけれども、やはり、これまで所有権絶対の我が国において、農地の所有権を取得できる主体を自由化した場合、現在の家族経営を中心とした我が国の農業構造と農村地域の振興を考えた場合に、農業の効率化に資するメリットも指摘される反面、農村地域社会の維持発展に支障を来すという懸念もあります。
そこで今回、先ほどより高橋経営局長のお話を聞くと、そんなものはとんでもない誤解だということになるんですが、やはり地元の農業者の方に聞いても、例えば、外国企業でも参入が可能な仕組みなら、悪意を持った外国企業が従業員をどっと引き連れてやってきて、日本の農地を買い占めて、その後撤退して、あくまでも悪意に解すればですよ、しかも農業ができない状態にして、その後輸入農産物の拡大を図ることだってできるじゃないかとか、つまり、民法に原状回復の義務があるといったって、そういう状態にしてしまったらどうされるんだというような話ですね。
それから、これは農業委員会の間でも言っていることですけれども、助成金を拡大するといっても総額が決まっているわけじゃないんだ、違反転用を摘発した活動実績に応じて交付するのであれば、これもある意味、同じ地域に暮らす農業者を裁いた分だけ助成金がふえるのかというようなことにもつながります。今でも農業者の間で、減反、生産調整をめぐって農業委員会の間でも対立がある中で、こういう考え方が出てくるのはいかがなものかなというような点もございます。
今回の農地法改正が、経営環境厳しい中でこれからどうやって農業者、農業を救っていくかというときに、国や自治体が責任を持ってやるというイメージがなくなって、民間に任せるんだというようなイメージが先行するとすれば、それはやはり日本の農業にとって、また私どもの考え方とは大きく違いが出てくるというふうに思っております。
どうまとめていいのかわからないですけれども、慎重な審議をお願いしますということで、私の質問を終わらせていただきます。
○遠藤委員長 次に、菅野哲雄君。
○菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。
最初に、増加の一途をたどる耕作放棄地の問題について質問します。
現行では、耕作放棄地対策として、農業委員会の指導を出発点に、所有者が農地の利用計画を届け出ない場合には市町村長の勧告、そして最終的には都道府県知事による半強制的な特定利用権の設定まで制度化されています。この市町村長による勧告並びに特定利用権の設定について、近年の実績を教えていただきたいと思います。
○高橋政府参考人 現行の農業経営基盤強化促進法に基づきます遊休農地に関連する措置でございますけれども、農業委員会による指導につきましては、十九年度実績で一万二千四百三十二件ございます。しかしながら、市町村長によります農地所有者等に対する利用の勧告以降の知事裁定による利用権の設定に至る行政措置については、過去、実績はございません。
○菅野委員 大臣も聞いていてほしいんですけれども、経営基盤強化促進法で定められた遊休農地に対する手続はほとんど機能していないということを今答弁でなされました。この実績に対してどのような評価をしているのか。法に定められた手続自体に問題があるのか、それとも、手続の実施主体である農業委員会や市町村に問題があるのか。この点について答弁していただきたいと思います。
○高橋政府参考人 今お答えいたしましたとおり、農業委員会の指導実績というものは、これはあるわけでございますけれども、いわゆる行政措置というところに至ったものがないわけでございます。
これにつきまして、私どもの判断といたしましては、まず、現行の遊休農地に関する措置については、遊休農地があったものはすべてこれを対象とするような仕組みにはなっておりません。遊休農地の中で、市町村がみずから定めます基本構想に、今後とも農業上の利用の増進を図るんだ、この土地は遊休地なんだけれども今後ともきちんと農業上利用しなければならないと判断をいたしまして、要活用農地として位置づけて初めて、その後の指導等の法的措置の対象になるわけでございます。
したがいまして、ここの段階で、遊休農地が存在していても、市町村長がさまざまな考え方のもとでここに要活用農地として位置づけなければ、この対象の発動にならないということがまず一回ございます。
それから次に、市町村が基本構想に位置づけていたといたしましても、次のステップは、農業委員会が法的措置を今度は市町村長に要請をいたします。これは主体が、市町村長が定めたものに対して今度は農業委員会がお願いをいたしますという形で、同じ行政でございますけれども主体間が異なってきます。そのような措置をしなければ、また次のステップに行かないということがございます。
それから三つ目といたしまして、最近一番大きな問題になっておりますのは、農地の所有者、これが、相続等の関係もあるかもしれませんけれども、現実に不在村になっている。したがって、結果としてその所在、行方がわからないというような場合もございます。現行の措置は、実は相手方、名あて人がいないとこの行政措置が動かない仕組みになっておりまして、所有者が不明のような場合には働く余地がないというようなことがございます。
したがいまして、農業委員会による指導は行われているものの、それ以降の行政措置に至らないというふうに認識しております。
○菅野委員 今の答弁でいえば、経営基盤強化促進法、この法律自体がもう機能しないという状況を露呈しているんじゃないでしょうか。
それで、骨太方針二〇〇七では五年をめどに耕作放棄地ゼロを打ち出しているんです。それから、先日発表された耕作放棄地全体調査で、放棄地二十八万ヘクタールのうち十万ヘクタールについて再生を目指すと言っているんですね。そして、現在の対策が、先ほど言ったようにほとんど機能していない。この総括をしっかりとしない限り、この目標というものは絵にかいたもちになるんじゃないですか。
そして、私は後日質問しますけれども、今回の農地法の改正でずっと議論されておりますけれども、農業委員会の任務、責任というものを大きくしていますが、現状の農業委員会のままでは、今もそうなんであって、無理があるんじゃないのかなというふうに思うんです。
この総括をどのようにしているんですか、局長。お答え願いたいと思います。
○高橋政府参考人 遊休農地の解消あるいは耕作放棄地の解消ということにつきましては、今申し上げましたような行政の制度でこれが解消するというふうなことではないと思っております。実態的にその耕作放棄地について、どのような形でそこで耕作をする人を見つけてくるのか、また、そのような方々がどのような作物を選択していくのか、あるいは復旧に要します必要な措置に対してどのように講じていくのか、そういうトータルの支援策にあわせて、制度というものが相まってこの遊休農地の解消の実が上がるというふうに認識しておるわけでございます。
これにつきましては、昨年来、まず耕作放棄地についてのきちんとした現況把握をした上で、必要な対策についての予算措置等を講ずるとともに、制度についても、より運用が確実にならしむるような制度改正を今回行いたいというふうに思っているところでございます。
あともう一点、農業委員会の役割でございます。確かに今回、農業委員会については従来以上に役割、権能というものが拡大をいたします。これについては、今後とも農業委員会がここの部分を負うというところ、非常に私どもとして大きく期待しているわけでございますけれども、当然のことながら、その役割、機能、作業というものがふえてまいるわけでございまして、それに必要な体制、こういうものについて、当然のことながら私どもとしても考えていく必要があるというふうに思っております。
○菅野委員 この点はまた後で議論しますけれども、農地を有効に使っていくんだ、そのためには農地法を変えていかなければならないんだ、そういう形で今日の議論が進んでいるわけですけれども、その以前に、本当にやはり耕作放棄地をどうするのかという議論を、毎回この農水委員会で、私は、毎年毎年大きな議論になってきているというふうに思うんですね。それが実態として進んでいかない。ここをしっかりと総括しておくこと、その上に立って自給率を高めていくという方向性を明確に示していかない限り、地域における農業振興に結びついていかない、農地法の改正以前の問題だということを私は今指摘しているわけです。これからも、もう一回この点についてぜひ議論していきたいというふうに思っています。
もう一つ、今も答弁にありましたけれども、不在村地主について、これもしっかり議論しておかなければならないんですね。農地の相続が主な理由だと思いますが、全国農業会議所の調査では、把握できただけで面積は二十万ヘクタールを超え、推計では五十万ヘクタールになるのではないかと言われています。
高齢化が進んでいる現状では、農地の相続はますますふえていくわけですが、農水省として把握している不在村地主の現状、並びに今後の対策の柱について簡潔にお答え願いたいと思います。
○高橋政府参考人 不在村の農地所有者の状況でございます。
今御指摘の、平成十八年度に全国農業会議所が実施いたしました調査、これは国の補助事業で行ったわけでございますけれども、不在村農地所有者の数、これを把握していると回答した農業委員会の平均で、一農業委員会当たり五百九十六人。それから、このような不在村農地所有者が保有する農地面積につきましては、一農業委員会の平均で二百七十五ヘクタールということでございます。推計によりましては、先ほど委員御指摘のような、全国で五十万ヘクタールというような推計も可能になるわけでございます。
なお、このような不在村の農地所有者がどのような契機で農地を所有するようになったかということでございますけれども、これも同じく私どもの補助事業で農業会議所に調査をしてもらいました調査結果、これは十七年三月でちょっと古うございますけれども、これによりますと、やはり相続が半数程度を占めてまいります。そのほかに入り作が四分の一程度、この辺はきちんと把握できる部分だろうと思っております。
問題なのはやはり相続等でございますが、今後、農地の相続を契機といたしまして、農家以外の農地保有者、不在地主はさらに増加する、これはもう想定されるわけでございます。
これの対策ということにつきましては、今回の改正法案の中で、農地を相続した者に対しましては、農業委員会への届け出をまず義務づけるということでございます。これは義務づけでございますので、義務づけたからといって、直ちにこれが抜本的にふえるということではないと思いますが、このような義務づけがあるということを国民各層に知らしめるということが重要だろうというふうに思っております。
それから、届け出のあった農地が利用されないおそれがあるときは利用を促す措置というようなことも、今回、法律上設けております。
それからもう一つ、遊休農地について、先ほど申し上げましたが、所在が不明な場合には今まで制度が動きませんでした。今回は、所在不明のような場合であっても、知事の裁定により希望者にその所在の不明の農地が利用できるような措置、これを設けることといたしております。
さらに、実は利用集積、利用権の設定の場合に一つ大きな問題がございまして、現在の農地利用集積計画について利用権の設定をしようとする場合には、共有農地、共有持ち分の農地の場合、全員同意が必要になっております。これは法律上そうなっておるのでございますけれども、基本的に、民法においては二分の一を超える同意でいいという原則がございますので、ここの部分に関しては、共有農地については共有持ち分の二分の一を超える同意で足りるという民法の原則にすることによって利用集積ができるようにする。
あともう一つ、最後に、相続税の納税猶予につきましても、これは今まで、自分で保有をしなければ貸せない。都市部におられる次三男の方について、これは自分で耕作しなきゃいけないということで、貸したらだめだと。これはいろいろな意味でさまざまな問題点があるんですが、自分で農業をやっているんだというような形で実態的には利用されないようなこと、これは非常にいけないわけでありますけれども、そういうようなことに対しましても、今回は一定の貸し付けはオーケーということになりますので、こういうことによりまして、農地の適正かつ効率利用へのインセンティブに大きく寄与するというふうに考えております。
○菅野委員 いずれにしても、ここは要望しておきますけれども、やはり農地の基本台帳を整備するということを法的に行うべきだということを申し上げておきたいというふうに私は思うんですね。農地の所有と利用というものを正確に把握しておくこと、このことからしっかりとした対策というのが出てくるんじゃないのかなと。私は、農業委員会の権限強化、あるいは農業委員会にしっかり地域で権限を発揮していただくためにも、このことは必要なんじゃないのかなということを申し上げておきたいというふうに思います。
それで次に、最後になりますが、平成十七年の法改正による特定法人貸付事業で、一般企業が特定の地域で農業参入できるようになりました。かつて、電子機器メーカーが二十億円を超える巨額な資金を投じて農業生産法人をつくり、北海道で事業を始めましたが、三年余りで撤退しました。去年だったと思いますが、ユニクロやワタミの子会社が農業から撤退した報道も目にしました。
そこでお伺いしますが、特定法人貸付事業で農業参入した一般企業のうち、これまで撤退した企業はどれくらいあるのでしょうか。
一般の株式会社は、利益が上がらなければ事業を縮小していくのは当然です。また、株主総会で経営陣がかわれば、経営方針も大きく変わるわけでありますから、一たん参入しても撤退する可能性は常に持っているわけです。農地を貸した農家は、撤退で土地が戻ってきたからといって、自力で営農を再開する可能性は極めて低いわけですから、企業の撤退を原因とした耕作放棄地の可能性は排除できません。
企業の撤退に対する担保や耕作放棄地化防止策はどのように講じられているのか、きのうの参考人質疑においてもこの点の懸念というものを訴えられておったと思いますけれども、答弁願いたいと思います。
○高橋政府参考人 特定法人貸付事業で参入した企業でございますけれども、平成二十年九月現在で三百二十法人ございます。このほかに、委員御指摘のとおり、一たん参入はしたものの撤退をしてしまったという法人、これは三十一ございます。
実は、この中身を見てまいりますと、農業以外のいわゆる本業の不振によるものが十一、農業自身の不振によるものが十、農業技術、従事者不足によるものが五。あと、これ以降は、実は個々の法人のせいというよりは別要因になろうかと思いますが、別法人へ経営移管した、生産法人等に移管したというものが三、貸付期間満了ということで、これ以上借り入れられなくなってしまったというようなものが二ございます。
ただ、このような三十一の撤退法人が経営しておりました農地につきましては、市町村、農業委員会等の御調整、御努力によりまして、周辺におけます特定法人等他の利用者への貸し付けが行われておりまして、そのほとんどが遊休農地化をしないというふうに承知しているところでございます。
あと、仮に、このような撤退ということでございます。これは、このような参入した企業だけではなくて、通常の農業経営の場合にもあるわけでございますけれども、やはり今回のこのようなケース、これはもともと、撤退等以前に耕作放棄地化するところも同じでございますが、まずは幅広い担い手というものを見つけるような制度改正をしていくということが大きな点だろうと思います。要は、そういう農地をきちんと使ってもらえるような人をなるべく広く確保したいということが第一点でございます。
それから、その担い手にそのような農地が円滑に行くような事業、これを促進するような事業を創設していく。今回、農地保有合理化事業にかわります新しい農地利用集積円滑化事業というようなことも創設することとしておりまして、こういったことを促進していきたいと思います。
もう一つ、重要なことは、農地保有合理化法人あるいは特定法人等、あるいは円滑化団体が、このような撤退をした農地について当面、保全管理をする、そういったことに対しまして公的な支援を行うことによりまして、その保全管理をしている間に次の貸付先を見つけていくというような、さまざまなルートで回転をさせていきたいというふうに思っております。
○菅野委員 わかりました。わかりましたというよりも、これからもしっかり議論していきたいというふうに思います。
最後になりますけれども、委員長にお願いしたいんですが、こんな重要な法案を審議しているときに、私は審議をやめようかと思ったんです。定足数に達していない状況というのは、これは異常なことだというふうに思っています。本当に農地法の、今後の農業のあり方を含めて、真剣なる議論を行っているときに、与党も野党も出席していないということは、これは許しがたいというふうに思いますから、委員長の特段の配慮をお願いして、ここで終わります。
○遠藤委員長 わかりました。対応させていただきます。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時二分散会