衆議院

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第11号 平成21年4月21日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十一年四月二十一日(火曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 遠藤 利明君

   理事 今村 雅弘君 理事 木村 太郎君

   理事 七条  明君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 笹木 竜三君

   理事 筒井 信隆君 理事 西  博義君

      安次富 修君    赤澤 亮正君

      井上 信治君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    岩永 峯一君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    近江屋信広君

      河井 克行君    木原 誠二君

      木原  稔君    斉藤斗志二君

      徳田  毅君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    西川 公也君

      西本 勝子君    茂木 敏充君

      石川 知裕君    大串 博志君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      篠原  孝君    神風 英男君

      高井 美穂君    仲野 博子君

      横山 北斗君    井上 義久君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣政務官    江藤  拓君

   参考人

   (日本大学生物資源科学部教授)          盛田 清秀君

   参考人

   (有限会社神林カントリー農園代表取締役)     忠   聡君

   参考人

   (株式会社一ノ蔵代表取締役会長)

   (農業参入法人連絡協議会会長)          櫻井 武寛君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     木原 誠二君

  丹羽 秀樹君     西本 勝子君

  小平 忠正君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     安次富 修君

  西本 勝子君     丹羽 秀樹君

  篠原  孝君     小平 忠正君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 農地法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農地法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、日本大学生物資源科学部教授盛田清秀君、有限会社神林カントリー農園代表取締役忠聡君及び株式会社一ノ蔵代表取締役会長・農業参入法人連絡協議会会長櫻井武寛君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、盛田参考人、忠参考人、櫻井参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに、盛田参考人、お願いいたします。

盛田参考人 ただいま御紹介いただきました盛田でございます。

 本日は、今回提案されている農地法等改正案に関する私なりの考えを申し述べさせていただきます。

 私のきょうの発言は、お手元に既にお配りされているかと思いますが、裏表の一枚の紙に要点を記してございます。内容は主に四点から成ってございます。それでは早速、本題に入らせていただきます。

 まず第一番目に、我が国の農地制度の変遷に関しては、おおむね次のような論点、課題に応じて変遷が行われてきたものと考えております。これは年次別に整理したものではなくて、論点別に私なりに整理したものでございます。

 農地法は一九五二年に制定されておりますけれども、それ以降、数次の改定、改正、あるいは新規立法等によって制度は変遷してきてございます。私の見るところ、論点としては主に七点に整理できるのではないかと思っております。釈迦に説法ではございますが、少し簡単に整理しておきたいと思っております。

 第一点目は、規模規制の緩和、撤廃という問題でございます。これは、技術開発によって生産力が高まったこと、それを受けて主に自作地所有制限の緩和、撤廃が行われてきたという問題でございます。これは御案内のとおり、既に一九七〇年農地法改正によって上限が撤廃されておりますので、この問題は決着がついたというふうに理解できるわけでございます。

 二番目は、農地の権利主体として法人をどう位置づけるかという問題でございます。これは、一九六二年の農業生産法人制度の導入、あるいは二〇〇〇年農地法改正による農業生産法人として株式会社を認めるという規定の導入、あるいは、二〇〇二年の構造改革特別区域法の公布によるリース特区の創設、これによって農業生産法人以外の法人が初めて農地を借りるということができるようになったわけでございます。これが、御案内のとおり、二〇〇五年の基盤法改正によって全国展開されているわけでございます。この論点にかかわって、今回の農地法等改正案が新たに提案されてきているのではないかと私は理解してございます。

 三番目は、ゾーニングの問題でございます。これは、農振法にかかわるものでございます。一定程度、転用の規制にかかわる問題かと理解してございます。

 それから四番目が、農地権利の設定、移動、これにかかわる規制緩和ということでございます。これについては、七〇年農地法改正におきまして、借地の流動化というものを容認するという形になってございまして、ここのところが今回の提案にもかかわる問題であろうかというふうに理解してございます。

 それから五番目、これは余り取り上げられておりませんけれども、農地流動化の我が国固有の枠組みの整備の問題でございます。御案内のとおり、一九七五年農振法改正によりまして、農用地利用増進事業というものが導入されました。これは、当時農地法を改正することがいろいろな面からいって問題であったということを踏まえて、新たな農地流動化の枠組みをつくったものでございます。今から考えますと、これは、我が国固有の農地流動化の仕組みを新たに創設したということが言えるのかなと思います。一定程度、積極的な評価も可能な仕組みであったかなとは理解してございます。これが五番目でございます。

 それから六番目、転用規制のあり方。三番目のゾーニングの問題とも絡むわけでございますが、この問題が大きな論点としてあったわけでございます。しかし、残念ながら、このところは、必ずしも法的な仕組み自体のところで十分な議論がされてこなかったというふうに私は理解してございます。どちらかというと、運用の面に任されていたところが強いかなというふうに理解してございます。この転用規制の問題というのは、かなり大きな論点ではないかと理解してございます。

 それから七番目、面的集積に関する仕組みでございます。これは、農用地利用増進事業、農地保有合理化事業、それから基盤法において仕組まれている農用地利用改善事業というものにおいて一定程度枠組みはございますけれども、これも、実態を促進させるような力を持った制度の整備というのは、これまで必ずしも十分ではなかったというふうに理解してございます。

 私なりに整理いたしますと、以上七点があるわけでございます。

 二番目に、それでは今回の農地法等改正案の主要内容としてはどういうものがあるかということですが、これは既に、前回の参考人質疑等を含めまして重々議論は重ねられているところでございますので、これに関してはごく簡単に触れたいと思いますけれども、第一点、一番大きな問題としては、目的規定の改正があるわけでございます。

 耕作者が所有権を持つことを最優先といいますか、かなり重視するというこれまでの考え方から、転用規制、利用者への権利集積、それから農地利用の確保というふうに、明確に、国民に食料を安定供給する、あるいは農業生産の増大を図る、こういう目的でもって目的規定を抜本的に改めるということでございます。そういう意味において、今回の改正は大幅というふうにとらえられるのかなと理解するところでございます。

 それから、イとして農地利用の義務規定を新設したこと、あるいは、ウとして転用の規制を図っていること、エとして生産法人の議決権制限緩和を図っていること、オとして農地の権利移動、面的集積促進ということを新たに制度を創設しようとしていること等に整理できるかと思っております。

 ここのところは、これまでの皆様の御審議においては繰り返しになるので、私としてはあえて繰り返すことは避けますけれども、全体としていえば、理念の明確化、これは利用重視という理念の明確化、そういうことに加えて、一番の論点整理で申し上げました、二、五、六にかかわる改正が中心ではないかというふうに私なりに理解しているところでございます。

 以下、浅学非才ではあるんですけれども私なりの見方を少し御紹介申し上げ、そして、今回の農地法等改正案についての私なりの見方を披瀝させていただきたいと思っております。

 三番目のところで、農地制度のあり方と我が国農業構造の特徴ということで、ここを少し理解しないと、現在の農地制度の問題点、それからこれからの農地制度のあり方について十分な議論ができないのではないかと思っております。あえてこういうことを申し上げる次第であります。

 私の立場は、将来にわたって我が国農業、農村が国民の支持を得て存続、発展することが、これはどうしても必要であるという考え方でございます。場合によっては市場原理主義に近いようなお考えの方もいらっしゃるようですけれども、私は、それは必ずしも適正ではないのではないかというふうに考えてございます。

 しかし一方で、そのためにも、国民の支持を得て存続するためにも、土地利用型農業においては規模拡大は必要というのが私の立場でございます。これは背景には、土地利用型農業においては規模の経済が存在しているということがございます。

 具体的に言えば、稲作においても、コストは右肩下がりでございます。規模を拡大すれば明確にコストは下がります。それから、酪農部門についてもこれは統計的に確認されているところでございます。時間の関係であえて数字は紹介申し上げませんが、こういう規模の経済が存在している以上、一定の規模拡大は国民経済上、必要ではないか、あるいは、国民の理解を農業、農村分野において得るためには必要ではないかなというふうに考えてございます。

 私の資料の裏側を御参照いただければと思います。我が国農業の位置づけでございますけれども、私なりに、世界農業を三つのタイプに分けて最近は理解してございます。

 これも詳しくは議論すると時間がございませんので、あえて三類型、特徴だけ申し上げますと、一番右側の新大陸型農業、これはアメリカを筆頭とするタイプでございますが、実際、平均規模は百六十九ヘクタールになるわけでございます。

 その次、左側真ん中に旧大陸型農業のヨーロッパ型というのがございます。これはイギリスを一応ここでは典型としておりますが、規模的には四十六ヘクタール程度。なお、EU二十五カ国では十五・八ヘクタール程度になります。それから、一番最後に東アジア型。日本が典型でございますが、ここに実は中国も韓国も含まれるというのが私の理解でございます。規模的にほぼ同じということでございます。日本は現在、一・七ヘクタールということでございます。

 これは、もちろん新大陸というのは、先住民を追い払いまして、好きなだけ農業経営の規模を確保できる、そのときそのときの技術水準に合った形で農場を、全く白いキャンバスに絵をかくように農業の仕組みをつくり上げることが可能であった国々においては、こういう大規模農業が成立しているわけでございます。そのほかの、東アジア、ヨーロッパはそういうわけにはいきませんが、ヨーロッパについて規模が大きいのは、もともと歴史的に生産力が低かったからでございます。日本の江戸時代を振り返ってみますと、ヨーロッパでは、まいた種の五倍しか穀物を例えば収穫できない、日本は、それに対しては四十倍収穫してございます。つまり、生きるためには面積が少なくて済んだというのが、江戸時代の、あるいは二世紀ぐらい前の状況でございます。それが出発点になっているわけでございます。

 規模拡大といいましても、実は、アメリカまで持っていくのはこれは甚だ難しいわけでございます。百倍にしなければいけないので、農家数が恐らく百分の一、これは日本の現状からして不可能だろうというふうに考えております。したがって、できればヨーロッパに近づくような形、土地利用型農業においてでございますが、それが望ましいというふうに考えてございます。農地制度もそれを促進するようなことが必要と考えております。

 そういう視点からいいますと、私のペーパーの第四番目のところに入りますが、今回の基本的な方向というものは、従来の改正の経緯を踏まえるという点でいうと穏当ではないかというふうに理解してございます。あるいは、利用重視の理念転換それから転用規制の一定の強化、農地の権利移動促進については、一定の妥当性があるのではないか。あるいは、企業の農業参入は多様な担い手の一形態として位置づけが可能ではないかというふうに考えてございます。特に、食品産業からの参入は、安全、安心な原料食材確保という目的であれば、私は、これは排除する必要がないのではないかというふうに考えてございます。

 現在、食品産業、食料産業というものは川下から川上への進出が進んでございますけれども、これはやはり、消費者への訴求性を持つような商品を提供するという、ある意味まじめな意図を持っているのではないかというふうに理解してございますので、そういった人たちまで排除する必要はないのではないかというふうに考えております。

 一方で、農地転用の規制は、実効性に甚だ懸念を私は持ってございます。農地利用あるいは転用に関する監視、規制、不法行為摘発等のそういう組織的な体制も、あるいは人的な陣容、能力においても、甚だ不足ではないかというふうに考えてございます。このまま、一方で参入規制を緩和するということは、まじめな方がやる分にはよろしいのでございますけれども、必ずしもそうではない場合もあるわけでございます。そこのところが甚だ不安を感じる面でございます。

 もう一つの論点として、農地の権利移動は、これから急増することは間違いないわけでございます、高齢化が進んでおりますので。そうしますと、面的集積が非常に必要になるわけでございますが、これは今回の法案においてどれだけ十分に実現されるかどうかというのが疑問を感じているところでございます。加速されるという特段の条件を今回の案では残念ながら十分確認できません。そういうことであります。

 それからもう一つ、今回は企業の参入を大幅にといいますか、認めておりますけれども、恐らく農業においては、世界各国の状況を見ますと、これからも家族経営が大宗を担っていくというふうに考えられます。そういう意味では、家族経営の発展ということも重視しなければいけないということでございます。

 少し時間が迫ってまいりましたので、最後、数行程度、私のコメントも書いてございますが、私の意見としましては以上で終えたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 次に、忠参考人、お願いいたします。

忠参考人 おはようございます。

 ただいま御紹介いただきました忠と申します。

 本日は、このような機会をいただきましてまことにありがとうございます。

 私は、三年前の平成十八年四月、いわゆる品目横断的経営安定対策を定めた法律案の審議の際にもお招きをいただきました。さらに今回は、農地法という、私たちが農業経営を行う上でなくてはならない経営資源に関する審議に再びお招きいただきまして、また意見を申し上げることにつきまして、改めて感謝を申し上げたいというふうに思います。

 私自身は、今回の改正に当たりまして、平成十八年から十九年にかけて、農林水産省の農地問題の有識者懇談会の委員を務めさせていただきました。本日は、担い手の立場から、日ごろ考えていることを申し上げたいというふうに思います。

 まず、私の経営でございますけれども、新潟県の北部岩船地域の村上市、旧神林村でございますけれども、そこで約七十ヘクタールの水稲を中心として、さらには米加工品の製造、販売、また、近くの農業者の皆様方と一緒になりながら野菜の直売所の運営というふうな形で、従業員十二名、そして、年間にしますと千二百人日ほどのパートの方々のお手伝いをいただきながら、農業生産法人を経営しているという状況でございます。

 先々週から、もう田起こしが始まりまして、私も連日トラクターに乗っております。来週からはいよいよ田植えが始まり、約一カ月間この作業が続きます。きのうの午前中はトラクターに乗っておりまして、私もノルマがあるものですから、朝早くからとか夕方遅くまで作業を進めながら、きょうこの場に立たせていただいております。

 まず一つ感じておりますことは、今回の改正メリットというのが現場にうまく伝わっていないのではないかなというふうに感じてございます。

 昨年来、法案審議前から、時折マスコミ等で企業の農業参入自由化などという情報が流れておりますけれども、今回の改正が大規模な稲作農業経営にどのようなメリットや影響があるのか、よくわからないというのが現場での受けとめ方ではなかろうかというふうに思います。審議途中にあっても、政府が責任を持って正確な広報活動をする必要があるというように思います。間違った認識、あるいは誤解を招かないためにも、そして、よい形でいち早く成立させていただくためにも、その点についてはよろしくお願いしたいというふうに思います。

 先ほど申し上げましたように、有識者メンバーとして御意見を申し上げてきたわけでありますけれども、そこの部分について、幾つか、さらに本日は課題について申し上げたいというふうに思います。

 まず一点目でございますが、国内の農産物の生産を将来だれに託すのかという点についてであります。

 既存の農業者に加えて、企業一般をリース方式で対象にしたということ。農業従事者の高齢化や後継者不足は、中山間地に限らず平たんな農村部においても顕著になっているというように思います。担い手対策は、農地法の改正を含めて、さらなる経営安定のための強力な施策が急務だというふうに思います。しかし、そういった問題については、今御審議中の基本計画の見直しという点でさらに御議論をいただければというふうに思います。

 本題の観点からいたしますと、企業一般の参入というのは一つの方法として考えられるのではないかというように受けとめてございます。貸借に限定して農業生産法人や特定法人の要件を課さずに、農地を有効利用する見通しが立てば、いわばだれでもよいということになりますけれども、転貸を目的とした権利取得は認めないし、所有も認めないと政府は明言しているのでございます。この点につきましては、御配慮をいただいたのかなというように感じてございます。

 二つ目、標準小作料の廃止についてでございますが、減額勧告の実績がない、あるいは決め方が形骸化している、小作料が地主側の圧力で高どまりしているなどというような理由で、私たちの仲間には廃止賛成という声があることも事実であります。

 一方、先回、四月十四日の参考人質疑の中に松本参考人から御発言があったようでありますけれども、私も所属しております全国稲作経営者会議の七割の会員は存続を希望しております。また、これも所属しておりますけれども社団法人日本農業法人協会の会員の中で、五十ヘクタールを超え、あるいは百ヘクタールを超える大規模稲作経営者の研究会のメンバーも、同様の意見をお持ちでございます。

 私も、八十人ほどの地権者の方と賃貸契約を結んでおりますけれども、小作料の欄には、標準小作料とすると記してございます。廃止された場合、改めてそれぞれの所有者の方と契約を結び直すということになりますと、相当な負担が予想されます。

 なお、私の地域では、本年、二十一年作付におきましては、昨年より十アールあたり六千円引き下げられました。仮にこれを個別で行うことになりますと、これも難しい作業だなというように思ってございます。地域の機関、ここでは農業委員会ということになりますけれども、一致して設定するということが、所有者あるいは利用者にとっても望ましいことなのかなというふうに思っております。

 また、企業が参入する場合、生産、販売活動だけでなく、加工原料の調達など多元的な目的で経営をトータルなものとして考えたとき、標準小作料がない事態の影響がどのようになるかは少し不安の残るところでございます。

 廃止するかわりに農業委員会が実勢価格の公表を行うこととなっておりますけれども、その提示においては、農業委員会が示す参考賃貸料などとして、契約書に書けるようなものにできないかということを御検討いただければというふうに思います。

 次に、企業参入の担保措置についてでございます。

 基本的に、農地利用は、所有者の考え方あるいは農業委員会の判断にゆだねられるということになるわけであります。私たちは、これまでの取り組みから地域での信頼関係を構築してきておりまして、地域の農業を担うべき者はだれが一番ふさわしいかということにつきましては、その地域で決めるというのが農村社会のルールなのではないかなというふうに思います。具体的な措置は政令や省令等の運用ということになるようでありますけれども、地域の判断が公正に行われるように希望したいと思います。

 一つ気になる点がございます。特定法人にあった常時従事者要件が取り払われたというところでございます。

 有識者会議でも申し上げてきました。特定法人は、市町村が介在して一つの保証人的役割があったということで、私はとてもいい制度だなというふうに思っておりました。生産と生活の場が一体である農村に、町で生活し農作業のために農村に通勤するといった場合や、経営者がそこに居住していないということを考えますと、集落機能がますます低下してしまわないかということについて気になるところでございます。

 また、集落営農を含めた私どものような大規模経営体が仮に立ち行かなくなったとき、既にその地域には担い手がいない、そして農地だけはまとまっている、そういったところを企業にゆだねるということが想定されるのかなというように思うわけです。農地が有効利用されてさえいればそれでいいのかとは言い切れないような気がいたします。地域の信頼のない企業などがその地域で農業をやろうとしてもうまくいくはずはありませんけれども、村社会の論理や資本の力の差など、不安がないわけではないということを申し上げておきたいと思います。

 いずれにしても、参入及び許可の取り消しに関しては、それを行う農業委員会だけではなくて、私たち農業者や参入しようとする企業など、だれにでもわかりやすい基準を提示していただきたいというように思います。

 次に、面的集積についてでございます。面的集積の促進についてということでございますが、面的集積は、作業の効率化において私たちの悲願でもあります。

 私の経営でも、七十ヘクタールの耕地は半径十キロほどに広がっておりまして、最大でも一ヘクタールの連担、ほかはばらばらというような形にあります。その場合、担い手がある地域においては担い手が中心になって利用調整ができるシステム構築というものを望みます。既に今申し上げた飛び地である農地や、新たに発生する農地について、隣接する担い手がその参画する組織の中で調整するということが現場としてはスムーズに進むのではないかなというように考えるからであります。

 次に、二条に新設される責務について申し上げます。責務規定というのは当然のことではないかなというふうに思います。しかも、それを法律にうたうことの意義というのは大変大きいものがあります。

 ただ、所有者としての責務と利用者としての責務とは、どういうことになるのでしょうか。所有者は、私たちに農地を貸したことで責務を果たしたということだけでなく、納税や土地改良の費用負担、あるいは適正に利用されているかという監督責任があるのではないかなと思います。また、利用者は農地を農地として有効活用するという管理責任があります。しかし、借地による土地利用型農業は、資本力が少なく、資産も少ない脆弱な経営体質というのが実態でございます。利用者としての責務遂行には、経営所得安定対策にさらなる充実を強く要望しておきたいというふうに思います。

 二〇〇五年の農林業センサスでは、二十ヘクタール以上の経営体は、北海道を除きますと三千七百三十七の経営体が約十五万ヘクタールの農地を管理しています。これは、経営耕地面積の六%弱ということになりますけれども、一〇%以上の都府県が十県近くある。このような状況は今後さらに進むのではないかなというふうに私は思います。

 百ヘクタールを超える経営体のカバー率も、都府県では平均一・二%ございます。土地利用型経営は、大規模層の中にあってもさらに二極化傾向になるのではないかなと予想することができると思います。ついでに申し上げれば、そうしたメガファームへの対策というのは、現在の政策の延長線ではなかなか追いつかないという状況にあることも申し上げておきたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、農業委員会の機能の充実についてお願いを申し上げたいと思います。

 改正法においては、頼るべきは地域の農業委員会しかないのではないかなというふうに私は思っております。市町村の広域合併によりまして、農業委員の数も減少しておりますし、事務局の人員も大変手薄になっているというようにお聞きをしております。

 ここは、しっかりと業務のできる体制の整備をお願いするとともに、農業委員会が、本当にその地域で農業をやっている者が中心となって運営できるような構成になるべきだというように考えてございます。例を挙げますと、私の住んでおります旧神林村におきまして、合併前は農業委員すべてが認定農業者であったという実態がございました。このような運営は参考になるというふうに思います。

 以上、私の意見を申し上げさせていただきまして、終わりにいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 次に、櫻井参考人、お願いいたします。

櫻井参考人 櫻井でございます。

 日本酒製造の株式会社一ノ蔵会長及び農業参入法人連絡協議会会長の立場で意見陳述に参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

 弊社は、生産品のほとんどが特定名称酒という吟醸酒、純米酒あるいは本醸造の日本酒で、等級が確認できない原料米は一切使用いたしておりません。ただし、少量ですが加工米の一部に産地、品種の確認ができないものがあり、最近の食品原料をトレースしなければならない立場からしますと、若干不安に感じております。

 リース方式で農業に参入したのは国際米年の平成十六年、宮城県大崎市に合併する前、弊社の所在する松山町が特区を認証された十二月でございます。一般法人としてなぜ農業に参入したか、その動機や経過に関しての説明から話をさせていただきたいと思います。

 弊社は、宮城県の穀倉地帯の中心、大崎市にあり、東北新幹線の古川駅から十キロほどの山合いに位置しております。伝統的な手づくりの製法による本物の日本酒づくりを目指して、一九七三年、県内四社の酒蔵の企業合同で設立をいたしました。きっかけは、一九六七年、自主流通米制度が始まり、日本酒の生産数量が自由化されたことによると申し上げてよいと思います。会社創設以来、ひたすら、人と自然と伝統を大切にして、醸造発酵の技術を活用し、安全で豊かな生活を提案することを経営理念といたしまして、日本酒の生産、販売に取り組んでまいりました。

 最近、食の問題は、数々の社会不安と、関係する企業や人に対する不信感を増幅させる結果となりました。大きな視点から食料、原料の問題を深く考えなかった反省の上に立ってこれからの時代を考え、人間としての人生観、自然観、価値観に基づいた新たな日本酒の基準づくりを求めて農業に参入いたしたわけでございます。

 リース方式による耕作面積は約七ヘクタールですが、減反をしていますので、稲作面積は五ヘクタール強、転作にはナス、ソバ、大豆を栽培しております。ほかに三十数軒の農家と契約栽培をしておりまして、環境保全米を七十ヘクタールほど栽培してもらっています。すべて米酒に使用しております。

 一次産業から見た一次、二次、三次産業を掛け合わせて六次産業との考えは、農商工連携の普及もあり大分浸透してまいりましたが、弊社は、二次産業から見た六次産業を現在提唱しております。製造業から見た六次産業に関して、実情と意見を述べたいと思います。

 日本酒は米の加工品です。現在、我が社では六十キログラム入りで三万二千俵ほどの米を使っております。これは、四ヘクタールの認定農家百軒が生産する米の量に相当します。農地の問題を考える場合に、この単位をぜひお考えいただきたいのでございます。たかだか日本酒三千キロリットル程度を製造する中小企業が、認定農家百軒分の米を使っているのです。そして、一軒四ヘクタールの米をつくる農家の収穫量が三百二十俵、売上金額にして四百二十万円、所得はほぼゼロに等しいという事実でございます。

 御承知のとおり、農業を職業として選択し得る魅力あるものとするため、労働時間は他産業並みの水準とし、生涯所得も地域の他産業従事者と遜色ない水準とすることを実現するために認定農家制度があるのですが、米作四ヘクタールの認定農家では、所得はほとんどないに等しいのです。現在の農業政策は、すべてこの四ヘクタールを基準に担い手の育成という形で進められていますが、生活を維持するにはほど遠い面積基準と言えます。弊社も現在、農業部門は大幅な赤字を抱えております。

 しかし、食料、原料問題を大きな視点から考えなければならないという使命感から、農業部門の一次産業だけでなく、製造、加工の二次、販売や関連サービスの三次産業を掛け合わせた六次産業を目指し、商品に正しい付加価値を加えることにより、トータル的な経営の健全化を図っておるところでございます。また、米の栽培方法を試験しながら、その結果に基づき、三十数軒七十ヘクタールの契約栽培農家に栽培方法の提案もしております。地域の自治体、農業委員会、農協との関係は極めて良好で、何かにつけ情報交換を密にしております。

 しかし、こういった弊社のような例はまれで、米の栽培に多くの企業が参入するとは考えにくいのではないでしょうか。法改正により制度はできたが利用者がいないのでは、改正の意味はなしません。

 今回の農地法の改正に関しましては、農地問題の有識者会議並びに専門委員会に出席し、議論を重ねた当事者といたしまして、現在の現場の農業環境を見据えた的確な改正であり、原則賛成の立場で意見を申し上げます。

 まず最初に、農地転用規制の厳格化は当然で、緩い運営による農地減少の現状は目に余るものがあります。

 私の町では、ショッピングセンターが進出するとして十二ヘクタールの土地が農地転用されましたが、出店中止となり、地代収入もなく耕作放棄地のような状態になっております。農地所有者は、自己の経済的効果があれば農地を減らすことに一切頓着しないのが現実です。このままでは、幾ら農地に関する法律を改正しても、農業で生活できる、農業は楽しい、やりがいがあるという施策が伴わない限り、農業従事者は高齢化し、後継者は育たず、耕作放棄地がますますふえるのは間違いありません。農地転用規制の厳格化を正しく運用するためにも、魅力ある農業の実現にぜひ御尽力いただきたいと思います。これは法律の問題でなく政治の問題であります。

 そのためには、農作物の価格の安定の点からも、生産性に応じた農家や法人への所得補償制度の実施がどうしても必要であります。持論を申し上げますと、農業振興、農地の確保のために、国内の食品関連製造会社に、一定の比率で国内農林水産資源を使用する義務を負わせる規制を望みます。国際競争力以前の問題として、自社が使用する農産物に関する自国の問題解決に協力できない、社会的責任を果たさないといった企業は、存在意義がないということではないでしょうか。

 次に、一番の問題点として議論が続けられている所有と利用に関してですが、参入法人の立場から申し上げますと、利用に関してはさまざまな規制の緩和を望みますが、所有には、未来永劫とまでは言わなくとも、農家への補償制度が確立しないここしばらくの間は、強い規制が必要との考えをいたしております。

 参入法人としては、相対での交渉により、小作料にかかわりなく、さまざまな条件をクリアすることで農地の賃借をすることは当然の仕事と考えております。それほど農地を所有する個々の農家の状況は千差万別で、その交渉過程の困難をいとわない企業が農業に参入しているわけです。何か他の目的で農地を賃借する企業があるのではとの危惧を持たれていますが、現実は不可能と言えます。したがいまして、利用に関する規制を極力緩和することは、農業経営を行おうとする現場としては大変な力になります。

 一方、利用の緩和が所有の緩和につながるという論的根拠は、専門家ではありませんのでわかりかねますが、法律が国民生活の実態や時代背景をもとに制定、改定されなければならない原則から考えれば、杞憂との感もいたしております。しかしながら、現在の状態で農地の所有規制緩和を行うことは、農家に壊滅的打撃を与えることは明らかです。面的集積がままならない現場からしますと、資本力に任せて一カ所に集約された農地を所有することは大変な優位を保つことになり、農作物の価格にも反映されることになります。参入企業は非効率な農地には見向きもしないでしょう。減反政策と相まって耕作放棄地の一層の増加が憂慮されます。現時点では、所有に関する規制についての継続を強くお願い申し上げます。

 一般法人に関しては、農業そのものが目的であるならば、所有を一切認めなくても十分参入は果たせると考えております。また、所有でなく利用ということで、契約に基づいて的確な農地運営を図ることが可能ではないかと考えます。

 次に、今回の法改正全般に関しての問題点ですが、最も懸念されるのが、正しい運用を実際に行えるのかという点であります。施策や認可を正しく行う機関が一体どこなのか非常に心もとない限りで、法律自体の趣旨には賛同いたしますが、その施行に関しては、何歩も踏み込んだ、きめ細かで的確な運用、運営が求められます。

 当然、農業委員会の役割、機能が強化されなければなりませんが、農業委員は農家経営者がほとんどで、委員会は片手間の仕事となっています。当地域の委員会は非常に協力的ですが、農業参入法人連絡協議会の会員の話では、少数の農業委員の反対により、認定農家に認定されず不利をこうむっているとの問題も指摘されています。このような状況にある中、地域の農業委員会の判断で農地の利用が正しく運用されるか、非常に心配しております。少なくとも、農業会議所の機能強化をし、情報の共有を図りながら指導助言を行っていかなければ、各地の農業委員会では判断や処理が難しい事例が多く発生したり、縁故による判断がされたり、公平な行政がなされないおそれが考えられます。

 農地の面的集積に関しては、相対協議ではなかなか問題解決になりません。非常に苦労しているのが現実です。情報の提供をしたり仲介する機関が、現実的には機能しておりません。どこに話を持っていったらいいのかわからないのが現状です。特区が合併前だったため、問題によっては合併以前の市町村の単位が生きており、集積できない事例もあります。農協の営農指導、ここに大きくかかわってくることでもあり、農業委員会と連絡を密にして、農協中心に理想的な面的集積の構想を推進し、それをもとに農家同士が協議を重ねるといった具体的な行動を起こすことも一案と思われます。所有から利用という政策は、こういった点で非常に有効に働くと考えられます。

 利用が促進され、企業が農業に参入して農地を集積し、遊休農地を活用して合理化することは、農業者の離職を伴うことでもあります。これらの人々の生活保障をどのようにするかが大きな問題です。弊社の契約栽培農家は三十数軒と申し上げましたが、これらを集約すれば多くの離農者が生まれ、その生活保障を考えねばなりません。また、農家を続ける立場となっても、認定農業者でありながら後継者がいない現実もあります。

 農地を守り、有効に活用していくためには、農地のみならず、関係するさまざまな問題の解決が不可欠で、総合的な農業政策の確立を切に望みまして、参考人の意見にさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤忠彦君。

伊藤(忠)委員 皆さんおはようございます。自由民主党を代表して、きょう御出席をいただきました三人の参考人の方に順次御質問をさせていただきます。衆議院議員の伊藤忠彦でございます。

 私の地元は愛知県の知多半島でございまして、大体私が質問に立つときは自分のところの自慢をしてから御質問をさせていただくんですが、先週土日に地元を歩いておりますと、今タマネギの収穫の時期でございます。いろいろなところで一生懸命タマネギを収穫しておるんですが、年齢層をつらつら考えますと、六十代中盤から以上、それ以下の人たちを見たことがないなという気がいたしております。みんなだんだんだんだん作業がつらくなってまいりまして、その上、ことしから二十キロ入りということで袋が大きくなりまして、値段はというとそんなに高くないものですから、いつまでやるかななんという言葉が大体共通言語として聞こえてまいりました。

 それからあとは、私の選挙区の中で東海市というところが千両ナスというのを今温室でやっておりまして、これは実にみずみずしい、やわらかい、おいしいナスビなんですけれども、これもやっている人たちの年齢層というのはそんなに低くなくて、しかも値段を聞いてみますとさほど、こんなにぎゅうぎゅう詰めに詰めてこんなお値段ですかという値段でございまして、非常にみんな、出すには出すんですけれども、これが生活にどんなふうに直結していくかという点では心配な状況が続いているところでございます。

 きょうは、特に農地法の関係でございますけれども、私たちの国の農地というのは、戦後の混乱の中で、私たちの国の経済の立て直しに当たってぜひ自作農の創設をして生産力を増強していこう、これが一つの大きな目的で農地改革というものが断行されて、そして、その成果を維持することを目的として昭和二十七年に制定されたのが農地法であるということだろうと思います。

 そして、その後、六十四年間が経過をする中で、農地をめぐって私たちの国の経済社会の変化、日本だけではありません、取り巻く環境全部が変化をしてまいりまして、それに応じて見直しを随時してきたのがこの農地法の歴史なんだろうというふうに私は理解をいたしております。

 何よりも、食料の多くを海外に依存している私たちの国においては、食料の安定供給を確保するために国内の自給率を高めていこう、食料供給能力を強化して食料自給率の向上を目指していくことが喫緊の課題ですが、これの一番大事なところというのは、やはりやる気の起こる農業をどうやって興していくのかということが一番の問題でありまして、具体的な作物ごとの生産振興をいかに図るかも大事かもしれませんけれども、本当にやる気の起こる農業というものをつくり上げていくために、今いろいろな意味で、猫の目とは言いませんけれども、戦略構築を次々手がけているというのが現状なんだろうというふうに認識をいたしております。

 私たちの国の農地の現状を見ますと、農業従事者の減少、高齢化、先ほど私の地元のことを申し上げたとおりでございます。そしてまた、その後を継ぐ息子さんたちの世代がまた、もうやめてしまいたい、農業なんて収入が上がらない。私どもの地域、知多半島は都市近郊でございますので、すぐ行けばいろいろな仕事があるわけでございまして、知多地域で申しますと、専業農家というのはほとんどいない地域でございます。

 しかも、一言申し上げておけば、さほど大きな農地をそれぞれがやっているわけではありません。しかも、大きくしよう大きくしようということが政策の上ではどんどん進められるにもかかわらず、なぜか、そうしたことに向けて、それほど集約を一生懸命しようという風情にならないところが私どもの現場でございまして、全国、地域によっては次第次第に農業自体を維持することが非常に難しいという状況の中で、やる気を起こしていく、生産の土台である農地法について、こうして大きく変化をさせていこうという時代に入ったことについては私も評価をしていかなければならないなというふうに思っておる一人でございます。

 これからお三人の方に伺ってまいりますけれども、私どものような都市近郊農業をやっている知多半島の皆さんの中でも、こうした動きに乗っかっていこうと思えるような状況づくりをしていくためにどうしたらいいかということを、私は、きょう三人の皆さんに伺ってまいりたいなという気持ちでこれから御質問をさせていただきます。

 まず、盛田参考人に伺いたいと思います。

 農業の担い手というのは家族経営農業に限定すべきで、株式会社による農業参入には懸念があるということを、私ども、例えば生産実行組合へ行きますと、企業なんか来たってやめちゃうと言ってしまえばそれまでじゃないかと。それぞれ三人の参考人の皆さんの中にもこうした意見があるなということについてお話がございましたけれども、農地の権利取得者あるいは我が国農業の担い手としてはどのような主体が適当であるのかということについて、もう一度明確にお示しをいただけないでしょうか。

盛田参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。

 基本的には、私は、望ましいかどうかは別にしまして、これからの見通し、当分の見通しは、家族経営が恐らく中心になっていくと考えております。それは、さまざまな理由がありますが、ここでは長くなるので省かせていただきますが、経営的な面、農業独特の季節的な作業の面、それから収益性をめぐる競争力の面、あらゆる観点からいいますと、家族経営がこれからも大宗になっていくというふうに理解してございます。

 ただ、多様な担い手の一つの形態として、株式会社形態も私は何ら否定する必要はないと思っております。それは、先ほど簡単に申し上げましたが、要は、川下で頑張っておられる食品産業においても、まじめに農業に取り組んで、いい食材を確保して、それを使って消費者に喜んでもらえるような商品をつくりたい。やはりこういう方々の要望があるわけですから、これを閉ざすのはむしろ不公平ではないかと考えております。ただし、それが農業の大宗を担うようになるとは考えてございません。

 以上でございます。

伊藤(忠)委員 今、基本的には家族経営農家が大事なんだよということをおっしゃっていただきましたが、この家族経営農家を中心にした、続いていく農業の主体というものを考えたときに、実は、今度の改正の中で私がこここそ大事だなと思っているところは、農地の相続税納税猶予制度だろうというふうに思っております。

 今、例えば中小企業なんかでも事業継承についてさまざまな制度改革が行われています。中小零細企業も、経営の資本というか経営の大切な基盤というものを納税によってはつられてしまう、削られてしまう、力をそいでしまう。こういうところを何とかしようと一方でやっておりますが、農業もようやく、こうして考えてみますと、相続税納税猶予制度について、現行ではみずから農業を行わない限り適用されないものを、一定の貸し付けの場合にも適用する見直しがされることとなるわけであります。

 このことについての評価と、それからもう一つは、この改革においてさらに進めておくべき点があるとすれば、私は、市街化区域の農地と一般農地は仕分けをして考えております。残る問題として、私どもの知多半島のように都市近郊農業の多いところになりますと、市街化区域内の農地の相続税納税猶予制度についても実はしっかり取り組んでいただかなければならない課題の一つなのであります。これは、実は自民党の中の見直し検討の議論では、これからの都市計画制度の見直しと一緒にもう一歩進んでやっていかなければならない課題として積み残したわけでありますが、この点を含めて、先生の御所見を伺いたいと存じます。

盛田参考人 今の問題は必ずしも私の専門ではございませんが、なかなか難しい問題だと理解してございます。

 市街化区域に関しましては、今回の農地法等改正案においては、生産緑地を別にして、仕組みを変えるわけではございません。先生の今の御発言の趣旨は、もう少しそこを広げたらよろしいのではないかということだと理解しました。これに関しては、我が国の土地利用体系、土地法制全体との均衡といいますかバランスということを考えなければいけないのかなというふうに考えております。

 私も市街地に農地が要らないとは思ってございません。ただ、歴史的な経過を見ますと、かつて、市街地における農家優遇あるいは農地に対する課税軽減というものについて国民的な強い批判があった時期がございます。そういう中で宅地並み課税というのが図られてきたというふうに理解してございます。先生のおっしゃることは、私も趣旨としてはよくわかるのでございますけれども、恐らく、私は何も行政の立場に立つわけではございませんが、なかなかこれは難しい問題ではないかなと。ぜひ、それは、ここの立法府の方でむしろ御判断をいただきたい問題ではないかと思っております。

 繰り返しになりますが、市街地にも農地はやはり必要だ、災害面、いろいろな面から考えて必要だと考えております。ただ、もう一言言わせていただくと、仮に都市のそういう農地を余りに優遇することによって国民が日本の農業、農村全体に対して否定的な態度を持つようになってしまいますと、これは角を矯めて牛を殺すというようなことにもなりかねませんので、やはりバランスということがこの問題を考える上では重要ではないかなと個人的には理解してございます。

 お答えになったかどうかわかりませんが、以上でございます。

伊藤(忠)委員 今、特に市街化の方のお話だけお答えいただきました。

 私は、こういう見識なんです。どっちが先にやってきたかということが一つ問題であろうかと私は思いまして、もともと農業をやってきた方が古いんでしょうから、それを農業として成立せしめることも選択肢としてあるとすれば、これはやはり、見てあげるべきところは見てあげるべきだということがあってしかるべきかなというふうに思うわけです。

 そのときに、農業をするのかしないのかということの選択肢もまた本人の中にあって、しかし、農業をそれでもなお選択する方に持っていってほしいなというのは、農政を見回してみると、私の考えではそうあってほしいなというときに、そこのところはよく考えておくべきだということを申し上げておきたいと思います。

 ただ、一つだけ、今度の農地の相続税納税猶予制度の変更についての評価というのは、先生はどのようにお考えになっておられるか、もう一度お示しをいただけますでしょうか。

盛田参考人 これにつきましては賛成でございます。

 以上でございます。

伊藤(忠)委員 それでは次に、櫻井参考人さんに少しお話を伺いたいと存じます。

 一般的に農業は雇用の調整ですとか収支の管理というのは難しい、どこでもそういう評価があるわけですけれども、リース事業で農業参入をした結果、今の経営状況というのはどんなふうになっておられますでしょうか。なかなか黒字企業が少ないと言われておりますので、どんなふうになっておられるのか、ぜひお聞かせをいただければというふうに思います。

 また、今後も農業経営を継続することとされているのか。経営の展望について、そしてまた、借り手に対しての支援策をもっと何かしていただきたいということがあれば、加えてお話をいただければと思います。

 実は、私どもの地元にも酒蔵がいっぱいありまして、同様のようなことをして、何と何と、地元の梅も使い、地元のお米も使って梅酒をつくってくれているところがあります。ですから、ぜひ参考にひとつ伺いたいなというふうに思っております。

櫻井参考人 農業部門、これは会社の中で農社という部門でもってやっておりますが、大卒三名、ほかに実際に働く者二名、このような構成でございますので、当然大赤字でございます。七ヘクタールほどの農地でもって賄うことは到底できません。

 私どもの考えは、先ほど申し上げましたとおり、農業部門だけを取り上げるのではなくて、六次産業という形で考えておりますので、トータルな付加価値の中からそういったものを生み出していくということなものですから、会社経営としては成り立っておりますけれども、今おっしゃるような農業部門だけということであれば、今お話ししたとおりでございます。

 それと、今後の展望ということでございますけれども、やはり私どもがお願いしている地域の契約栽培農家とのタイアップ、これが七十ヘクタールほどありますので、ここを何とかしなくちゃならないというのが現在の私の考えでございます。

 ただ、やはり集積ということは効率化でございますので、どうしても人も、あるいは設備も皆余ってくる、そうしたときにその人たちの保障をどうしようかということが、これも先ほど申し上げましたが非常に大切なことになってくると思います。自社でもって雇用をすべて引き受けるということはなかなか困難でございますので、この辺をどうクリアするか、これが今の課題でございます。

伊藤(忠)委員 今お話を聞いておりますと、昨今、農商工連携という言葉が随分聞かれます。これは、私どもの地元でも随分申し上げておりまして、農商工連携の制度の中でどうしたことをしていくべきかという課題をお示しいただいたような気がいたします。これはぜひ、しっかりとその課題を解消して、さらに定着して、赤字ということが当たり前ではなくて、黒字にしていけるようにさせていただきたいものだというふうに思っております。

 さて、現行のリース事業では、農業生産法人以外の法人が参入できる区域は市町村が定めた区域に限られているわけでありますけれども、そもそもリース方式の本来の目的というのは、法律の側から見れば耕作放棄地の解消を目的にしているわけであります。耕作放棄地というのは、予定されてどこかにあるわけではなくて、もうあちこちに点在をしておるわけですから、これをリース方式にするには、区域の限定というのは余り意味がないような気が私はしているわけであります。

 さらにまた、実際に農地を貸したい所有者と、まじめに農業をやりたい法人のそれぞれの意思がうまくマッチングするかどうかという点においても、区域を限定するとそれは非常に難しいんじゃないか、私はそう考えておるんですけれども、この区域の限定についてどのように御見識をお持ちになっておられるか、お話しいただけますでしょうか。櫻井参考人にお願いします。

櫻井参考人 今お話のありました耕作放棄地の問題でございますけれども、これは市町村が、全体にそういった地域が多いということの判断のもとにリース方式を認めておるわけでございまして、私どもの借りている農地は必ずしもそういった農地だけではないわけでございます。基盤整備の終わった農地も借りております。ただ、一部にそういった農地があることは確かでございます。

 現実には、やはり、そういった耕作放棄地だけをリースして、それで耕作するということは不可能でございますので、トータルに農地全般を考えながら私どもはこれからリースを続けていかなければならないというふうに考えております。

 そうした中で、非常に効率の悪い土地をどう活用していくかということも今現実の問題となっておりまして、リースをしてほしいという何軒かの農家の方々の持っている土地が、トラクターも入らない、車も入らないということでお断りしているケースもございますので、その辺をどうこれから解決していくかは、会社として大きな問題になっております。

伊藤(忠)委員 最後に、忠聡参考人にちょっとお伺いをしたいんですけれども、これまで規模拡大で直面してきた課題にはどんなことがあったのかということをお聞かせいただきたいのと、面的集積のために新しく仕組みを政府として考えるとすればどんなことを御提案申し上げていくといいんだろうかということ。

 それから、私が忠さんにもお伺いしたいのは、農地の相続税納税猶予制度について今どんなふうにお考えになっておられるか、ここら辺のところを、これは集積をしていく上でも非常に重要なところだろうと思いますので、お伺いをさせていただければ幸いでございます。

忠参考人 お答えを申し上げます。

 当初、面積の拡大にはかなり苦労いたしました。というのは、その当時はまだまだ米価も高く、農業者の営農意欲も高かったものですから。だからといって無理やり拡大するということではなくて、どうしても維持できなくなった農家の要望を受けて規模が拡大されてきたというように思っておりまして、十五ヘクタールから経営が始まっておりますけれども、既に二十五年たって、先ほど申し上げた七十ヘクタールということでございます。

 最近は、私ども利用者の意図、いわゆる拡大意欲を超える耕作依頼が正直あるというような現実もございまして、そういったものをきちっと引き受けていくというのがその地域にある担い手あるいは農業法人の役割なのかなというようにも感じてございます。そしてまた、面的集積でありますけれども、これはやはり、利用する者が主体となってどこをどうまとめるかという、いわゆる我々担い手が主体を持つ組織のありようというのが一番大事なのではないか。

 私は有識者会議でも申し上げてきましたけれども、あてがわれた土地、あなたはここだから、ここでお願いしますねということでは決してないのではないか。もちろん、いろいろな立場の方がそこにいるということが大事ですけれども、その一員として担い手が加わるというような、そういう調整システム機能というのが大事なのではないかなというふうに思っています。

 最後に、生前一括贈与の、相続税の問題ですけれども、私の経営で過去に、私もそうだったんですけれども、法人を立ち上げた段階のときは、私の父親がおじいちゃんから生前一括贈与を受けてございまして、私が代表を務める農業法人に正式に農地を貸すということが、それが邪魔でできなかった。

 これは何を意味するかといいますと、耕作規模の中には入るんですけれども、正式に農業委員会を通っておりませんので、結局は、法人としての経営面積を正式な見方をするときには除かれてしまうということがありますので、その後の政策がいろいろ施されたにしても、なかなか経営面積の中に入らないという弊害があったように思います。この点につきましては、大変いいことだなというふうに考えてございます。

 以上です。

伊藤(忠)委員 最後に、三人の方にそれぞれ、就農者をふやしていくということについて、今度のこの農地法改正を……(発言する者あり)それでは、残念ですけれども、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原です。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、忠さんにお伺いしたいと思います。

 今まで発言されていること、それから書かれていることをいろいろなところで読ませていただいておりまして、卓見があちこちにありますので、常々感心いたしております。

 今、相続問題に伊藤委員が触れておられましたけれども、リレー質問ということで、相続についてちょっとお伺いしたいと思います。

 あっというような指摘でございますけれども、どこかのところに忠さんが、面的集積を図ろうとしているときに農地の相続を均分相続で分散していくというのはおかしいじゃないか、農地は一人だけがちゃんと相続できるようにすべきではないかという大正論を述べておられましたけれども、私は全くそのとおりだと思います。

 相続税のことについてごちゃごちゃ言っていますけれども、均分相続であちこち子供たちのところへみんな分けてしまうというのがあるわけです。何人もの地権者がおられると、八十人ですか、それで、相続問題で、均分相続で今までトラブったりしたことはございますでしょうか、地権者のところで。分けられちゃって困って、一人がごねて、返してくれとかいう、そういった事例はありましたでしょうか。

忠参考人 お答えをいたします。

 現実的に返すあるいは借りる段階においてトラブルというのは発生しておりませんけれども、現実には、今お借りしている八十人の所有者のうちのお一方は地元の地域に居住しておりません。都会に住んでおりまして、いろいろな意味で、やりとりをする際にはちょっと厄介かな、そういう実感はございます。

 以上です。

篠原委員 それから、今、農地の流動化ということで、お金もつけてやるというのは今までもいっぱいあったんですが、今度もまた、十アール当たり一万五千円ですか、お金をつけるという。こういうのは実際に現場では働くと思われますか。

忠参考人 私は一つの有効な手だてだというふうに思っております。

 と申しますのも、平成十八年、私の旧神林村では、所有者あるいは利用者に対しても、当時の産地づくり交付金の中から一定の金額を踏み切り料という形で支払いしたことがございます。その年は一年間で約百ヘクタールほどの権利移動があったということでございますので、そういったものについてはやはり効果はあるのではないかなというふうに思います。

篠原委員 お二人ともおっしゃっていまして、済みません、きょうは現地のお二人を中心に聞かせていただきたいと思います。細かいことばかりで恐縮ですけれども。

 市町村の対応ですけれども、農業委員は三年の任期でくるくるかわっていく、農業委員会の事務局なり市町村の担当者が大事だと思いますけれども、この人たちが率直に言って頼りになるかどうかというのを、忠さんと櫻井さん、両方に順番にお答えいただきたいと思います。

 つまり、市町村の担当は二年置きにかわったりするんです。役所もそうです。専門家がいないんです。これは日本の官僚制度のよくないところだと思いますが、余り長く変なところにい過ぎるとよくないというので、時たまかえる必要はあるんですけれども、私はプロがいないとだめだと思うんです。特に農地制度なんかについては、くるくるくるくる思いつきで今までも制度を変えていますから、しっちゃかめっちゃかになっていて、わけがわからないんです。農林水産省の担当者ですら、ちゃんと理解していない面がいっぱいあるんです。

 しかし、そういう点を直してくれるのは現場のちゃんとした人たちなんです。農業者は知っているんです。忠さんなり櫻井さんは現場で苦労されていますから一番わかるんです。その次にちゃんとわかっていてもらわなくちゃいけないのは市町村の農業委員会の事務局、その担当者なんですが、この皆さんは、いろいろトラブったりしたときとか規模拡大していくときに頼りになりましたでしょうかどうかということです。

忠参考人 お答えを申し上げます。

 規模の拡大等々につきましては、農業委員会を通じてということよりも、むしろ相対で直接相談に来られる場合が割合的には多いのかなという感じがしておりまして、そういった意味では、正直、農業委員会のあっせんを頼りにしているかということは、余り頼りにしていないというのが現実でございます。

 もう一つは事務局機能が果たして十分なのかという御質問ですけれども、これにつきましては、おっしゃるとおりで、やや心もとないなという感じはしてございます。私自身も法律にそれほど詳しいわけでもないんですけれども、やはり確認の意味で問い合わせ等をしてもしばらく時間がかかる。特に市町村の広域合併をしておりますので、そういった意味からも人材の育成を、それは予算も絡むことになるかもしれませんけれども、しっかりとした専門家を配置するということについてはぜひお願いしたいところでございます。

 ありがとうございます。

櫻井参考人 私どもの場合には、合併前の松山町に農業委員が恐らく十名以上いたと思うんですが、彼らとは非常に情報交換も密ですし、また職員も非常に熱心に対応してくれました。ただ、合併によりましてその十数人が二名になってしまいましたし、現在の市としての体制がどのようなものかというのは、ちょっと私も現場を見ておりませんので、事務局の方とも密接な関係はとれておりません。

 ただ、今後のことを考えますと、非常に心もとないというのはおっしゃるとおりだと思いますので、自治体としましても、農業委員の担当部門だけでよいのか。もし一般企業が参入するとなりますと、これはまた別の視野から、商工関係の部門とかそういったところとの共同作業ということも考えられるとは思っておりますけれども、実態としては非常に心もとないと思っております。

篠原委員 具体的なことだけをちょっとお伺いしましたけれども、これからはちょっと基本的なことをお伺いしたいと思います。

 農地法の改正ですけれども、どういうふうにして起こってきたかというと、余り明確なものはないんですね。つまり、どういうことかというと、生産調整とかそういうのは現場で問題になっているわけです。農業が立ち行かないから所得補償が必要だとかいうのはわかるんですが、私は、端的に言って、現場で農地法制がいろいろ問題だから耕作放棄地が生じているというふうには思わないんです。

 しかし、それは私の感覚だけでして、お二人にですけれども、現場におられまして、今までそれなりに規模を拡大したり新規参入をされているわけですけれども、櫻井さんは新規参入ですね。今現在の農地法制というか、もとのでもいいですけれども、もとの農地法制が非常にがんじがらめで困ってしまったというような感じだったんでしょうか。

 つまり、何を申し上げたいかといいますと、どうもおせっかいでやっている政策が、農業委員会はそうじゃないんですけれども、ほかの委員会、例が悪いかもしれませんけれども、裁判員制度とか私が反対しましたサマータイム導入とかいうように、国民が何も言っていないのに役人や政治家が勝手に趣味でやっているのが多いんじゃないかと思います。

 農地法の改正は一体どうなのか、現場で絶対必要不可欠で、今すぐやってもらわなくちゃならないというようなものなのかどうかということについて、お二人から端的な御意見を承りたいと思います。

忠参考人 大変難しい質問だなと思って、何のためにここに私が呼ばれたのかなとも思うんですが。現実として、恐らく自作農主義か耕作者主義かというところにも関連するのかなというふうに思うんですが、少なくとも新潟においては、先ほど申し上げましたようにメガファームももう既にどんどんできておりまして、借地経営というのが一般化してきているという現実があるのではないかなというふうに思っております。

 それをやはり今後進めて、そして効率的な安定した生産を期待するということの流れからしますと、私は、今回のこの法改正がそれを後押しするんだという意味で、大変意味のあることなんじゃないかなというふうに受けとめております。

 以上です。

櫻井参考人 先生は御専門でいらっしゃるので、農業の立場というよりも一般論として申し上げたいと思いますけれども、私は選択肢の幅を広げておくことは必要ではないかと思うんです。今回はその選択肢の幅を広げるための法改正と理解しておりますので、それをどう活用するかは、地域あるいはおのおのの状況によって全く違ってくると思うんですね。ですから、そういった意味では、選択肢の幅を広げていただいたということであれば、私はやはり認めたいというふうに考えております。

篠原委員 何か誘導尋問みたいになって済みません。特に忠さんは、二年間検討されてこられたので、今さらこんなものはどうでもいいなんて絶対言えない立場だと思いますけれども、私は、実際問題として、ここは苦労で、ここは難点で、ここはどうしても直してもらわなくちゃならないという問題は、現場ではそれほどないんじゃないかなと思います。

 今、端的にお答えになりましたけれども、今現に行われている、それを追認してやっていくんだよというふうにやってもらう点で効果がある。要するに追認ですね、認めてこういう方法で行くんだということの限りにおいては有効だというふうに承ったんですが、一番苦労されて、問題で、ここをこう直したらいいというふうに思っておられるところがいっぱいあったと思いますけれども、そういうところは今回の改正で直っておりますでしょうか。今まで障害になっていた部分がおありになったと思いますけれども。

 余りなかったような気もするんですけれども、見つけてというか、今までここがだめだった、ここが障害だったということが今回直っている、忠さんの方からありましたけれども、標準小作料、これは目安として非常に有効だったのに、前回の参考人の松本さんも言っておられましたけれども、七〇%の人が必要だと言っているのに削られちゃっているという逆のはありました。ここの点が変わってよかった、ここが障害になっていたというような明確な点はどんなところでしょうか。お二人に。

忠参考人 規模が拡大していきますと、それだけで効率的な、さらに生産コストを引き下げた形で、経営的に効果がどの程度あるのか。

 それは、ただ単に経営面積が拡大したというだけではやはりだめでありまして、さらに効率性を追求するならば、まとまった農地、いわゆる集積ということがどうしても必要になりますけれども、今の制度、政策の中では、なかなか利用者が主体的に、では、こっちをだれに、こっちをだれでというふうなことができない。

 それは、必ず所有者の了解を得て、それで、では、ここを利用者同士で交換しましょうということをしなければならないわけであります。いわば大変厄介、面倒くさい作業になってしまいまして、現実的にはそれがほとんどなされていないという状況だと思います。隣の田んぼも、所有者じゃなくて別な担い手が借りていて、私はあっちにあるんだけれども、では、ここをこうしないかということはなかなかしにくいというのが現実としてあるのではないかな。

 それを、今回の改正においては、面的集積ということを先ほど御意見を申し上げさせていただきましたけれども、そういう形で進められるということからすれば、よし、ではこの機会にみんなで話し合おうじゃないか、そういう機運が出てくるのではないかな。そうすると、さらに効率性が高まるというように受けとめていいんじゃないかなというふうに思っております。

櫻井参考人 今お話しの、現在までそういうことがあったかという点で申し上げれば、今回の改正が特別私どもの今までの経営にとって有利になったということはないと思います。

 と申しますのは、すべて相対でもって、私どもの農地というのは紹介をされながら広げてきたわけでございますので、そこでの話し合いというのは相対で行いましたので、今度の改正云々の問題とはちょっと違うと思っております。

 ただ、将来展望といたしまして期待するところでございますけれども、それは、企業が参入するということが今度行われるという農家の方々の意識改革、そういった点には非常に有効に働くのではないか。

 やはり私ども企業が参入したときはいろいろな意味で警戒されました。何をやるんだということを言われました。最近そういったことはなくなりまして、信頼関係はすっかり構築しましたけれども、やはり非常に苦労しております。そういった意味では、新たに参入する方々の道を開きやすいということは考えられます。

 もう一つは、今、忠さんがお話しになったような面的集積ですね。これも、やはり企業に対する信頼度が増すことによって面的集積もやりやすくなるということは考えられると思います。ただ、私どもが直接経験してきたこととは別な、期待値ということでお話ししたいと思います。

篠原委員 私も、標準小作料がなくなったという点ではちょっとよくないなと思います。私のところの地元の新聞、ちょうど週に一回出る新聞が、農業委員会で、何々町、何々市の標準小作料はこう決まったと。先ほどは六千円下げたと。我が方も同じで、田んぼが、普通の中田、真ん中のは一万円ですね、十アール当たり。多分、これは新潟の立派なところよりも安いんだろうと思いますけれども、一気に五千円も下がったというのですね。あれでもって大体やっているんですね、日本社会は。

 私は、不思議だなと、これはこれから農林水産省の方に問いただすべきことなんですけれども、品目横断的経営安定対策のときも引っ張り出されて意見を言っておられたということですけれども、あちらは非常に限定的で、四ヘクタールの認定農業者でなければならない、それから二十ヘクタールの集落営農だ、五年以内に法人化とか、やたら厳しい条件をつけていたんですね。それに対して我が党の案は、販売農家でまじめにやっていればいいと。

 私は、予算でつける、給付金のようなものですね、直接支払いというのは農家限定の定額給付金ですよ、今の言葉で言えば。これをそんなに限定しておきながら、大事な農地の借り手に余り限定しないというのはおかしい、論理的に矛盾しているんじゃないかと思うんです。

 そういう点では、例えば櫻井さんがちらっと言われました、それから盛田教授がおっしゃった、これに限定すべきだとはおっしゃっていませんけれども、食品産業とか、地元にちゃんと所在地がある地元の企業とか、こういう限定があってしかるべきだと思うんです。

 この点については、まず盛田教授はどのように思われていますか。遠慮されて、食品産業ならいいとポジティブな部分だけ言っておられましたけれども、限定していくという考え方についてはいかがでしょう。

盛田参考人 今の先生の御質問、なかなかお答えするのが実は難しいところでございます。といいますのは、現在のような農業の状態が続きますと、企業参入ということで、地元だけというふうに将来的に済むのかどうかというところに個人的には疑問を感じてございます。

 もちろん地元の企業の方がきちんとしたことをやるだろうということは間違いないわけでございます。ただし、例えば一部の、それこそ上場企業が関連会社を使って今農業に参入しているという動きも現実にあるわけでございます。この場合は、食品業界である限りは、私が実際に調査をしても、余りむちゃなことはやっていないのが現状でございます。

 したがいまして、そこを余りきつくやっても、実態にかえって合わない部分も出てくるのかなというふうに考えてございます。

 ただし、この点は当然私の意見と違う考え方があり得るわけでございまして、企業を農業に導き入れる場合、それでは一体、企業というのは何か、農家との関係をどう調整するか。現在はかなり農家に限定した施策、補助政策なり税制なりということをやっておるわけでございますけれども、本当に企業を日本農業の担い手として位置づけるのであれば、そのあたりも含めて見直すのかどうか。恐らくここは行政府、立法府なりがきちんとした御見識を持って判断されることであろう。両方あるんではないかな。

 学者としては甚だいいかげんな言い方でございますが、そういうふうに考えてございます。お答えになりましたかどうかわかりませんが、以上でございます。

篠原委員 櫻井さんにお伺いしたいんです。

 櫻井さんは、企業といってもそんなに入ってくるはずがないという見解を述べておられます。私は実際そうだと思います。

 盛田教授には、ワタミとカゴメについて調べられたペーパーがあります。それを読ませていただきました。両方とも食品産業ですね。それから大体考えられるのは、地元に根を張っている一ノ蔵のような企業あるいは建設会社とか限定されるわけです。しかし、赤字にはなっているけれども成功事例で、ここに参考人ということで来ておられるわけですけれども。ほかにも全国各地に似たような考えの人がいて、やってみようかなと思っている人がいるんだろうと思います。

 農業界は非常にまじめでして、成功事例があると必ず先進地視察というので参りますけれども、そういった人たちがいっぱい来ているのかどうか。来ておられる方たちに対して、ポジティブに、こうやったら、こうやったらということで言っておられるのか、こんなに面倒、こんなに難しい、こんなに難しいというふうに言っておられるのか。どっちの方で言っておられるのかなというのがちょっと気になったんですけれども。

 成功事例、優良事例となっておるはずですけれども、全国の皆さんの反応、来た人たちの。そして視察に来た人たちで、成功したりしている、続いているところがあるんでしょうかどうでしょうか。その点についてちょっとお伺いしたいと思います。

櫻井参考人 私どもの方には、お酒を飲みに来る方はいらっしゃいましても、余り農業での視察はいらっしゃらないものですから、なかなかお答えしにくいんですけれども。

 企業が必ずしも地元でなくてもいいと思いますが、先ほど何で私が、参入がないというふうに、いわば断定的に申し上げたのかと申しますと、米だからでございまして、野菜あるいは果実になりますと、先ほど先生のお話にあったような産業がどんどん参入いたしております。

 私どもの一番関係する米ということでは、なかなか参入というのは現実的には難しい。と申しますのは、米を利用するということが非常にコストのアップにつながるわけですね。それで、そういった高いコストの原料をどうやって使うかという、今後はいろいろな開発もあるでしょうけれども、その問題がありますので、なかなか企業が参入されないということがあると思います。

 また、その企業がどう参入するかという、入り口でもってのチェックは必要だと思います。農業委員会がすべてではなく、例えば、以前ありました大店法のような、一つの審議会といいますか、そういったものの設置によって、入り口でもって審査をきちんとすることによって、地元の企業でなくても、ある程度の判断がそこでは可能ではないか。

 そういった意味では、協議会のようなものの設置をされるのも一つの考え方かなと思っております。

篠原委員 米ではなかなか難しいというお話でしたけれども、忠さんも米が中心ですよね。多分お二人とも同じことをおっしゃっているんだろうと思いますけれども、一番最近の全国農業新聞で、全国農業経営者協会新会長の平野栄治さんも、どう述べておられるかというと、出し手があってこそ、頼まれてやっているんだということをおっしゃっているんです。そうすると、企業に頼む人はいないし、なかなか進まないような気がするんですけれども。

 忠さんは地元にいて、地元でずっとやっておられる。これまた同じ質問ですけれども、忠さんこそ前から銘柄法人でございますし、視察は引きも切らないと思いますけれども、優良事例として、企業や何かも参考にしたいというので来ておりますでしょうか。そうじゃなくて、一般の農業者、農業関係者だけでしょうか。

 注目度合いというか、今農地法の改正だ、企業の参入だ、法人化だというのも盛んに言われていますね。忠さんのところは優良事例の一つ。昔は富山県のサカタニ農産さんという、ちょっと名前を最近聞かなくなって、最近は忠さんばかり。名前も神林で、神がかった感じになっておられて、もう象徴的な存在になっておると思うんですけれども。どんな感じで注目されておって、その来た人たちに対して、またどういう態度で説明しておられるんでしょうか。やったらいいということを中心にやっておられるのですか、難しいところを中心に教えてあげておられるのですか、どちらでしょうか。

忠参考人 大変こそばゆいお言葉、ありがとうございます。

 現実に視察に来られる方々は、そういった新規参入の企業の方々はほとんどありません。

 ただ、地元の地方銀行が、こういった制度をどう考えるか、そして農業に少し関心がありますかというような意味でのセミナーを結構開いております。そういった席に私が呼ばれて、経営の紹介を申し上げる機会は幾つかございました。

 現実的に、地域の中でも、地元土建業者が参入した例がもう既に出始めてきております。それから最近耳にしたのは、新潟県の場合は、農業生産法人育成指導センターというのが県の外郭団体にあるんですけれども、ここへの問い合わせに、企業一般からの相談がふえてきているということを耳にしてございます。

 ただ、そういった方々がすべて参入するのかどうなのかは、その後の成り行きなんでしょうけれども、私は、いずれの場合にも、特に地銀で開催されたセミナーの際には、経営はなかなか厳しい、ですから皆様方が思い描くような経営が本当にすぐ実現できるのかは、慎重に御検討された方がよろしいのではないかなという意味でのアドバイスはさせていただいております。

 何せ稲作なものですから。御想像のとおりでございます。

篠原委員 農地法というのは大問題で、これからも続いていくと思います。三年後、五年後、また見直しというのはあると思いますが、そのときにもまた参考人で来ていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

遠藤委員長 次に、井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 きょうは、盛田参考人、忠参考人、櫻井参考人におかれましては、大変御多忙の中、当委員会にお出ましをいただきまして貴重な意見を賜りまして、まず心から感謝を申し上げる次第でございます。

 今回の農地法の改正は、大きく二つの目的がございまして、一つは、農地の確保という観点で、いわゆる転用規制を厳格化するとか、あるいは農用地区域内農地の確保を図る。それから二つ目が、制度の基本を所有から利用に再構築するという観点で、いわゆる農地の権利者が農地を利用する責務を明確にするとか、あるいは、ただそれだけでは不公平になりますから、担い手の確保、拡大ということで、貸借の規制を緩和して新たな農業参入者を確保する。あわせて、農地の面的集積とか遊休農地対策等を目的にしているわけでございます。

 それを踏まえて、まず盛田参考人にお伺いいたしますけれども、盛田参考人は、今回の農地法の改正に関連して、やはり土地利用型農業において規模拡大というのは必要なんだ、国民の理解を得て農業、農村を支えるためにもそういう努力を農業側がすべきだ、そういう面で、今回の農地制度の改革がそれを促進する、そういう役割が期待されるんじゃないか、こういうことをおっしゃっているわけでございます。まさにそのとおりでございます。

 ただ一方で、日本の農業経営というのは、先生御存じのように、中山間地を大きく抱えていてなかなか規模拡大が難しいということもございますし、また、農業者の皆さんの土地に対する愛着といいますか執着といいますか、そういうことがあって、なかなか一方で規模拡大が進まないというようなこともあるわけでございまして、そういう日本農業全体の抱える課題について、規模拡大という観点から今回の農地制度はそれを促進するということなんですけれども、なかなかそれも期待できないんじゃないかという声も一方ではあるわけでございます。

 この点について先生はどのようにお考えか、まずお伺いしたいと思います。

盛田参考人 今の御質問でございますけれども、やはりこれは、今回の農地法は一応全国を対象にしておりますけれども、先生がおっしゃいますように、中山間地域というのはなかなか面的な広がりを持っておりません。私も仕事柄広島県に六年ほどおりましたけれども、やはりああいう中国あるいは四国の中山間地、さらに傾斜がきついわけでございます。そのほか全国の中山間地は多いわけでございますけれども、こういうところで規模拡大といっても、やはりおのずと限度があるというのは事実であろうと思います。

 ただし、そこのところは、この間、政策で中山間直接支払いみたいなことがあります。あるいは、ヨーロッパにおいては条件不利地域対策等がなされております。やはりこういった地域対策というものは、今後とも二本立て、イコールフッティングということがやはり大事でありまして、経営者が同じように努力しても克服しがたい、いかんともしがたい不利な条件は、やはりそこは国の施策で補うということがぜひとも必要である。それを前提にした上で、今回の農地法等改正案は一定の方向性を目指すものというふうに私は理解してございます。

 以上でございます。

井上(義)委員 産業政策と社会政策のベストミックスといいますか、私も、基本的にはそういう考え方でいくべきであろう、このように思っているわけでございますし、そういう意味での中山間地の直接支払いなんかはさらに充実をする必要があるということを私どもとしても考えておるわけでございます。

 今回の農地法の改正について、先生、二点御指摘ございました。

 一つは、農地の転用規制、その実効性に非常に疑問があると。いわゆる監視機能とか規制とか、不法行為をどう摘発するかとか、そういう組織体制、陣容、能力が十分じゃないんじゃないかという御指摘があるわけでございますし、これは、現場の農業者の皆さんにもそういう非常に強い懸念があるわけでございます。

 この大宗は農業委員会が担うということになっておるわけでございますけれども、御案内のように町村合併等によって農業委員会の委員も非常に少なくなっていますし、それから、事務局体制も、この間の公務員制度改革等によって定員の削減があってなかなか思うに任せないということで、今回の法律改正を機にこの農業委員会の体制をしっかり強化すべきということを先般の委員会でも申し上げたわけでございます。

 農業委員会が主としてこの役を担うということなんですけれども、この体制強化ということについてといいますか、実効性ということについて具体的な御提案がございましたら、盛田先生にお伺いしたいんですけれども。

盛田参考人 今の先生の御指摘は、非常に重要な論点かと私は思ってございます。

 転用規制は、法的な仕組みというのは、私は一定のものがあると思います。ただ、例えば今回の案でも、基盤法でも六段階ぐらいありまして、農業委員会の指導から始まりまして、市町村長がそれを通知して、さらに勧告をして、それから協議をして、それから知事の調停、それから裁定というふうに、なかなか複雑な仕組みになっております。ここは財産権にかかわることなのでどうしてもそうなってしまうんでしょうが、やはりそこのところが、なかなか専門的な知識もない、あるいはマンパワーが不足するという状況では、これまでも取り組みがたかったんだろうと思っております。したがいまして、どういう形であれ、農業委員会系統組織を活用する形であれ、何らかのほかの方法があるにせよ、そこのところの強化が必要だというふうには考えております。

 基本的に、これは現在の国の方針からいうと少し難しいのかもしれませんが、やはりこれは、政府と市場の役割というものをもう少し根本的に考え直して、現在のように事前規制を緩和するのであれば、事後チェック、事後規制をきちんとするという形、そして、これは実は、非常に人手もコストも手間もかかる仕組みに本当はなるわけでございますけれども、どうも我が国の場合は、必ずしもそこの手当てが進まないまま来ているということがあろうかと思います。現場の人員が恐らくかなり必要になるということを含めまして、これからの問題をいろいろ御審議、御検討いただければと思っております。

 ただ、そうはいっても、予算をかける、人員をかけるというのはなかなか難しいわけでございまして、そうであれば、現在高齢化社会と言われていますが、逆に言うと、定年をお迎えになって、農家でなくてもかなり時間をおとりいただける方がいらっしゃるわけですから、場合によっては専門的知識もお持ちなわけですから、そういった人たちを活用して、ボランティア、恐らく、社会のために役立つということであれば何かをやりたいとお思いになっていらっしゃる方は大勢いらっしゃると思いますから、そういう方に活躍の機会を与える等の工夫が本来いろいろあるのではないかというふうに考えております。

 以上、私見を交えてお答えいたしました。

井上(義)委員 この農業委員会を軸にしてやるということについては、先生、それでよろしいんでしょうか。

盛田参考人 現在一番ノウハウを持っているという意味では農業委員会系統でございますので、ぜひとも農業委員会系統組織には頑張っていただきたいということは一点ございます。

 以上でございます。

井上(義)委員 この農業委員会の問題につきましては、忠参考人、櫻井参考人からも御指摘がございました。お二方からこの件について御意見があれば、ぜひお伺いしたいと思います。

忠参考人 先ほども申し上げましたように、ぜひ頑張っていただきたいと思いますし、いろいろな意味で現場での判断が大変重要だということでありますので、私たちにもその基準なり等々がわかるように、そんなものをお示しいただきながら、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 以上です。

櫻井参考人 今後の問題を考えますと、地域地域で相当な差が出てくると思います。それは、案件がどう上がってくるかということが全く予測がつかないということでございますので、やはり、案件が出てきたときの体制というものは別に考えるべきではないかというのが私の考えでございます。

 先ほどちょっと触れましたけれども、以前ありました大店法は、商調協という制度がございまして、案件が上がってきたときにいろいろ審議をするという形をとりました。自治体あるいは国も加えながら、農業委員会が中心になってそういった体制づくりをしていけば、入り口でのいろいろな審議が可能ではないかというふうに考えております。

井上(義)委員 忠参考人に再度お伺いいたします。

 地元で農業委員会の皆さんとよく懇談、意見交換したりするんです。農業委員は選挙で選ばれるという建前になっているんですけれども、なかなかなり手がないと。今後ますます農業委員会の役割というのは大きくなるし、権限も大きくなるということになると、かえってこんな大変な仕事なんかなかなかできない、そういう声を非常に私も聞いているんです。

 例えば、忠参考人は、農業委員に立候補して、地元の農業委員会の機能強化ということについて一番よく御存じなわけですから、そういう一定の役割を果たそうとか、地域の農業者がやはり率先して手を挙げるような状況をつくるにはどうしたらいいかということについて、もし御意見があればお伺いしたいと思います。

忠参考人 ありがとうございます。

 恐らく、今の農業委員会がどういう役割を担い、何をその役目としているのかということが地域の中でなかなか評価されていないのではないかなというふうな気がいたします。したがって、なり手が少ない。

 ちなみに、私の会社の役員の一人は農業委員の現職でございます。彼は農業生産法人の役員でありますので、その資格で農業委員に公選でならせていただいているということなんです。ただ、有限会社神林カントリー農園の役員ということではありますけれども、その選出母体はやはり地域でございます。

 したがって、今申し上げたような、役割が何であるのかということをやはりきちっと地域に知らしめる、そして、きちっとした自覚を持って、意欲を持って参加できるような、そういう環境づくりを今回を機にさらに強めていただければ、そしてまた、現実的に農業に従事する者が、名誉職というようなことではなくて、実際に機能する委員として、ぜひそういった環境を整えていただくということがまず大事なのではないかなというふうに私は思います。

 よろしくお願いします。

井上(義)委員 かなりの事務量もあって、もう少し待遇をよくしたらいいんじゃないかという声もあるんですけれども、これについてはどうですか。

忠参考人 そのとおりだと思います。私の会社の役員の農業委員は、なかなか大変だと。何を意味して大変だと言うのかよくわからないんですけれども、そういうふうに申しておりましたので、全くそのとおりだと思います。

井上(義)委員 それから、盛田参考人、また忠参考人、櫻井参考人、それぞれのお話がございました。

 今回の法律改正でも面的集積を促進するという観点の法改正をしているんですけれども、やはり現場に行って、面積は広がったけれどもなかなか連担していない、非効率。ところが、集積しようと思っても、うまく連担して借りられるような貸し手がなかなか出てこないという悩みが非常にあって、盛田参考人、今回の面的集積が十分に実現されるかどうか、今回の法改正でも非常に疑問だ、こういうお話をされているわけでございます。

 先ほどからこの点についてはいろいろな議論が出ているんですけれども、特に今回の新経済対策の中で、この面的集積を進めるという意味で、従来我々も主張してきたんですけれども、いわゆる集積奨励金みたいな形で、集積に協力する方に、今回、反当たり一万五千円を三年間交付する、そういうことを新経済対策の中で我々は盛り込んだわけでございます。それに対する評価をあわせて、この面的集積についてさらに御意見があれば盛田参考人にお伺いしたいと思います。

盛田参考人 面的集積ということは、今までほとんど世界的にもうまく成功していないような事柄でございます。

 私の知る限りでは、例えば、一九八一年に長野県の宮田村というところで、全村の土地利用計画を立てて面的な集積を図った事例がございます。このときにはかなり抜本的な取り組みをやりまして、農地流動化をした場合、全部地代を村レベルで一たんプールして、それを地主さんに配分する。あるいは、面的集積をやるにはどうしてもつながっていなければいけない。しかしながら、その土地を面的集積の土地として使いたいんだけれども、そこの地主さんが絶対了解しないという場合がございます。そういう場合は、あえて代替地を用意して面的集積を図ったということがございます。

 何を言いたいかといいますと、面的集積というのはそれぐらい手間、コストがかかるということでございます。したがいまして、今回のこの仕組みは一歩前進ではあろうと思っております。ただし、それを実現するためには、各村段階で、いわゆる土地利用調整をやるための体制、人員、あるいはそういうことをやるための信頼に厚い人というのがいないと、やはり今のところはなかなか難しかろうというふうに考えております。

 したがいまして、先生がおっしゃいますように、間違いなく今回の農地法等改正案はそれを一歩進めるものであろうとは思っておりますし、あるいは奨励金を出すことによってさらにそれを促進することであろうとは思っております。ただ、私の考えを申し上げれば、これでこの問題が解決するというレベルには恐らくまだ行かないのではないかなと個人的には見通してございます。

 以上でございます。

井上(義)委員 次に、忠参考人にお伺いしたいと思います。

 田起こしが始まって農作業が大変な中をお越しいただいて、大変感謝しています。本当に今が一番大変なときだと思いますので。

 それで、標準小作料廃止については先ほどから議論がございます。忠参考人が、そうすると少しでも条件のいいところはいわゆる地代の競争になって、強いところが結局勝って、それが例えば一般企業だったりすると地域に混乱をもたらすんじゃないか、こういう懸念を指摘されているわけですね。

 実際にそういうことが起こり得るのかどうか、本当にそういう懸念があるのかどうかということと、先ほどから、例えば農業委員会が一種の基準といいますか参考地代みたいなものを決めて、それをもとにしてやるのがいいのではないかというようなこともお話しされているんですけれども、この点についてもう一度確認しておきたいと思います。

忠参考人 現実的に起こり得るかどうかは、正直言ってそうなってみないとわからないというのが本当のところだというふうに思いますけれども、私は、やはり最近の所有者の考え方に基づくんじゃないかなというふうに思っております。

 私たちの親世代は農地解放の時代を経験して所有地を得たわけでありますけれども、その二世代、三世代目というのは、農地に対する執着心はそれほどなくなっているのではないかなというふうに思っています。そうしたところへ、例えば、地域の水準を超えて、あるところから、ではうちはこれだけ出そうというふうに言われたときに、いや、うちはやはり地元の人へと言い切れるのかどうか。私は、そこが少し不安があるという意味で、変な土地利用に競争原理が働いてしまうことになりはしないかという心配をしているわけであります。

 以上です。

井上(義)委員 櫻井参考人にお伺いします。

 地元で大変お世話になっておりまして、実は、国会に米消費拡大・純米酒推進議連というのがございまして、櫻井会長御案内のとおりだと思いますけれども、私もそこの副会長をしておりまして、何とか純米酒を一生懸命推進しようと。地元の宮城県も純米酒宣言なんかをしたりして、徐々にそういう機運が盛り上がってきた。日本酒というのは日本の誇るべき文化、特に、日常的に日本食を食べている人は世界で約三千万人いらっしゃるということですから、私は、日本酒にとっては大きなビジネスチャンスがあるんだというふうに思っているわけです。

 ところが、日本酒の消費量というのはピーク時から四割ぐらいになっちゃっているわけで、そういう中で会長の一ノ蔵酒造が大きく伸ばしていらっしゃるというのは大変なことだなと、私は、応援団の一人として非常に敬服している次第でございます。

 今会長の一ノ蔵酒造が取り組まれている農業に参入していくということが、実は日本のフードビジネスというのは非常に高度で、国民のニーズということを考えますと、いわゆる食に関連する産業間の連携というのはこれからますます必要になってくるんだろうと。ですから、川上から川下に進出する、川下から川上に進出するということによって国民の食への信頼というものを確保していくことはこれから大いに進んでいくだろうと私は思いますし、進めなければいけないというふうに思っているわけです。

 今の農業に進出される取り組みが、日本酒が衰退する中で大きく伸ばしていったことに大きくプラスになっているというふうにお考えなのかどうか。それは、これからそういうことに進出しようとするところに大きな参考になると思いますし、ぜひお聞かせいただきたい。

 時間がございませんので、まとめてもう一点。

 今回、所有と利用を分離するということで、大きな法改正になっているわけですけれども、先ほど櫻井会長が、やはり所有については強く規制すべきだと。要するに、利用についての規制緩和は大いにやるべきだけれども、所有についてはきちっと規制すべきだということをおっしゃいました。

 私どももそのとおりだし、法の体系もそうなっているんですけれども、通常、企業経営ということを考えますと、リースでやるか所有でやるか、設備を自分で持つかリースにするかというのは、ある意味で経営判断。ですから、経営者の立場からいいますと、そういうことはもっとフリーにできるようにした方が経営者としてはいいんじゃないかというふうに普通は思うんですけれども、先ほど所有については強い規制をすべきというふうにおっしゃっていただいたので、経営者の立場からそういうふうに言っていただくと非常にありがたいなと私も思ったんです。

 この点について、経営という観点で櫻井参考人はどうお考えなのか、改めてお伺いしたいと思います。

櫻井参考人 まず第一点、これからの食品産業も含めた展望というふうなお話でございました。

 日本酒は非常に今消費が下がっておりまして、お話しのとおり一時四〇%を切ったような状況でございますが、やはり、国内の生産物を使うということの大切さ、これをもっともっと広げるべきではないか。輸入でいろいろな食品問題が起こっておりますけれども、その問題は別といたしまして、やはり国内の農産物の使用に関してはある程度の計画性を持って規制をするべきというのが実は私の考えでございます。これは企業にとって不可能なことではないと思いますので、そうした点で、今の遊休農地の活用なども十分対応できるのではないかというふうに思っております。

 それと、所有に関しての問題でありますけれども、私どもの会社というのは、確かに企業でございますが、基本的に農業そのものを考えながらやっていこうという立場でございまして、必ずしも企業の原理だけで動くという意識はございません。

 そういった点からいいますと、やはり農地の所有ということは、地上げではありませんけれども、派生した問題がいろいろ起こってくる、そういった心配が非常に大きいわけでございますね。企業というのは、必ずしも社会的責任を果たそうという企業だけでもありません。所有を許すことによって、そのすき間をねらって何をするかわからないやからというのは非常に多いわけでございまして、やはりそういった危険をあえて負担するような所有を現在認めるということは、まだ農業というものを含めて体制が整っていない、それだけに耐える力がない。私は、これは企業云々よりも、農業の問題を考える立場からすればぜひ許さないでいただきたいという考えでございます。

井上(義)委員 大変ありがとうございました。以上で終わります。

遠藤委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 盛田参考人、あるいは忠参考人、櫻井参考人、貴重な御意見を聞かせていただきまして本当にありがとうございます。

 最初に盛田参考人の方からお聞きしたいんですけれども、先ほどの御意見の中で、家族経営が農業の大宗を担うことは当分の間不変である、こう主張されております。政府としてもこの点は認めていることで、日本農業というのは家族経営的農業が主流なんだ。そして、今後もこういう形で進んでいくということは食料・農業・農村基本計画の中にも明示されているわけですけれども、今回の農地法の改正によって耕作放棄地の解消につなげていくんだという一つの目的が披瀝されております。

 私は、ずっとこの委員会でも質疑をやってきたんですけれども、耕作放棄地というのは、本当にこれを解消するということは並大抵のことではないんだというふうに考えております。いろいろな原因で生じているわけでありますから、その原因を一つ一つ取っていくということが大切なのであって、私は、この農地法の改正、改悪も、一方策でしかないんだろうというふうには思うんです。

 盛田参考人の方としてこの耕作放棄地についてどのように考えておられるのか、お聞きしたいというふうに思います。

盛田参考人 耕作放棄地にかかわっての御質問でございますが、二点お答えしたいと思います。

 一つは、耕作放棄地の解消に今回の農地法等改正案がどれだけ役に立つのかという御質問かと理解いたしました。これに関しましては、個人的には、恐らく耕作放棄地の解消そのものには直接的にはそれほど効果はないだろうというふうに理解してございます。

 当然のことでありますが、企業の農業参入は利益を目的にしてございますので、耕作放棄地においてそれほど大きな利益を上げることは可能ではないわけでございます。普通の農地でありましても、現状では、企業的経営より家族経営の方が粘り強い、いわば競争としてもどちらかというと勝っているわけでございます。もちろん、今、大規模経営がふえていることは事実でございますけれども、基本的には、農業内部から育ってきているものは家族経営の延長としてとらえられるものが多いというふうに理解してございます。

 その意味で、先ほど来申し上げておりますように、これは何も日本だけではございませんで、日本の百倍あるいは数百倍の規模を持つアメリカ、オーストラリア等の農業においてもそうでございます。それから、お隣の中国も、もともと規模は小さいのですが、例の人民公社が失敗して以来、家族経営が中心になってございます。これはもう世界的な現象でございますので、そういう意味において、耕作放棄地に限定しないでも、恐らく家族経営の方がかなり強固な存在ではないか。そうであるからこそ、耕作放棄の解消への貢献ということは、企業参入ということでは余り期待しない方がむしろよろしいのではないかと思ってございます。

 では一方、耕作放棄地対策としてどうなんだということでございますけれども、これはやはり、企業、家族経営関係なしに、耕作放棄地対策というものは、先ほど来中山間地域の直接補償の問題も出てまいりましたけれども、いずれにしろ、条件が不利で耕作放棄が起きる場面もかなり多いわけでございます。これはやはり、その条件不利な部分を補ってやらないと、イコールフッティングの観点からいって無理だろうというふうに考えてございます。

 ただし、まだまだ十分使えるものが高齢化等で耕作放棄になっているものがございますので、こちらは通常の農業施策をより充実させていただければ解消の見通しが立っていくのではないかと個人的には見てございます。

 以上でございます。

菅野委員 先ほど井上委員の質疑でもありましたけれども、今回の農地法の改正で入り口規制が緩和されていく。そうしたときに、どうしても農地転用の問題が本当に大きな議論になっていかざるを得ないんだろうというふうに思っています。

 そして、この農地転用の監視役として農業委員会というものがずっと位置づけられてきた。先ほども、この農業委員会の実情については、私も宮城県の気仙沼出身で、櫻井参考人御承知のとおりと思うんですが、十カ町村の合併とか九町の合併とか、大崎市も大きな合併が行われて、本当に農業委員会機能がまさに壊滅状態にさせられている中で、この転用規制の強化という観点が今回の改正で盛り込まれていった。こういう流れがあって、実質そういう状況をかんがみたときに、入り口の規制緩和のみがひとり歩きしていくんじゃないのかなという危惧を私は抱かざるを得ないわけなんですね。

 それで、この入り口の規制緩和そして転用の規制強化という観点を、現状は認識しているというふうに思うのです。今回の法改正、規制強化というふうにうたわれておりますけれども、現実の問題としてこれをどう担保していくのかというのが大事だというふうに思うのですが、三人の方々から規制強化の担保方針というものをお聞かせ願えればというふうに思っています。

盛田参考人 今先生のおっしゃる、転用にかかわる規制の強化を実効あらしめるようにする、そういう担保の問題、これは私も非常に重要だと思っています。

 どうやるんだということになりますけれども、恐らくこれは、かなりの決意を持って、組織、人員、能力を高めるための措置を意識して取り組まなければいけない。おっしゃいますように、これまでも必ずしもそういう発動事例というのは多くないわけでございまして、違反事例を原状回復を含めてきちんとやったという事例は多くないわけであります。まして、今どんどん要員として減ってございますので、これはかなり決意を持って行政府、立法府の方で御努力いただきたいというのが個人的な見解でございます。

忠参考人 私は、あれはだめなんだというふうに、だれが見ても、だれが聞いてもわかりやすい基準を国が示すべきなんじゃないかなと思います。それがやはり一番現場でも取り組みやすい形なのではないかなというふうに思っています。

櫻井参考人 入り口の話がございましたけれども、入り口の部分で非常に大事なのが情報の収集だと思うんですね。その情報収集機能が今農業委員会にあるかと申せば、恐らくないであろう。

 そうであれば、その情報収集も含めて、最終結論を出すまでの一つの期間というものをきちんと組み立てる仕組みというのが必ず必要だと思います。それは、私も忠さんと同じ意見で、国が関与すべきだというふうに考えております。

菅野委員 農業委員会そのものが公選制をとっているということ等も含めて、私は、出発時点はかなり権限というものがそこに集中していたんだというふうに思っていますけれども、ずっとこの間の流れの中で農業委員会というものを振り返ってみたときに、本当に国の責任として明確にしてきたのか。あるいは、地域としてこの農業委員会が本当に認知されて、あの人たちの言うことだけはしっかり聞いておかないといけないよという雰囲気が存在するのか。あるいは、地方自治体においては、農業委員会の事務局を担う人たちに本当に知識経験も豊かな人たちを配置してきたのか。こういうことを考えたときに、今、参考人の意見は承知しましたけれども、地域の実態として本当に機能していくのかなというふうな疑問を持っているんですね。

 そして、櫻井参考人に再度お聞きしたいのが、例えば、全国で合併が吹き荒れていて、先ほど松山町の時代には、町と農業委員会、農協と一体となって農業参入を果たしてきた。市町村合併が行われたときに、その状況は今、形が崩れてしまっている。参入した後ですからいいんだろうというふうに思っていますけれども、これから入っていこうとする人たちがどこに行って相談して、一緒になって連携をとってやっていけばいいのかということを考えたときに、難しいんじゃないのかなというふうに思っています。

 情報収集して入り口でしっかりとしたことをやっていくことは、確かに規制緩和したとしても必要なことだというふうに私は思うのですけれども、現状を見て、これから企業参入していこうとしている人の現状との乖離について、御意見をお聞きしておきたいと思います。

櫻井参考人 私も専門家ではございませんので、お答えになるかどうかわかりませんけれども、私どもの企業といたしましても、今後、いろいろ今おっしゃったような問題が起こってくる可能性はあると思います。そうしたときに、今の体制がどうかとおっしゃられれば、非常に心もとないというのが私の率直な考えでございます。

 やはりこの手当てに関しては、国としていろいろな形で考えていただくということが不可欠というふうに思っております。

菅野委員 次に忠参考人にお聞きしますけれども、企業参入の担保措置について先ほど意見陳述がなされました。今もそうなんですけれども、運用面で国としてしっかりとしたものをつくっていかなければならないというふうにおっしゃられております。

 そして、先日も、新潟の農業生産法人の方の参考人の意見陳述でも、生産と居住が一体ということで地域の農業者との信頼関係が生まれて、そして参入を果たすことができたんだ、ここが大前提なんだと。私もそう思います。

 しかし、今回の常時従事者の撤廃ということからこの問題というのが私は大きな議論になってきているんだというふうに思うんですが、先ほどの意見陳述では、経営が立ち行かなくなったときに新たな生産法人を呼び込むときに備えるものというふうな意見もちょっと述べられておりますけれども、そのために常時従事者の撤廃というものを図ったとすれば、私は本末転倒じゃないのかなというふうに思うんですけれども、改めてこの点についての見解をお聞きしておきたいと思います。

忠参考人 農業あるいは農作業というのは、会社勤務のように八時から五時までそこにいればいいというものではなくて、例えば、天候が悪化してこれは今どうしても措置しなければならないというような農作物管理というのは、二十四時間注意を払う必要もあります。それから、共同で河川の清掃をする、あるいは共同で共有する農業施設の管理をするというようなことも、附帯的な事業として地域にはあるわけであります。そういったことを確実に今後ともやっていくためには、やはりそこに住んでいる人がいなければ維持、確保できないというのが農業にはあるのではないかなというふうに思っております。

 したがって、先生おっしゃいましたように、あるいは私が先ほどの意見でも申し上げましたように、町から通うという、しかも、そこに田んぼや畑はあるけれども、だれも人が住んでいないという状況はよろしくないんじゃないかなというふうに思います。

 やはり、そうあってはならないような状況というのをつくっていくことが、これは農地法だけで議論すべきところではないのかもしれませんけれども、そこは強く望むところであります。

菅野委員 確かに、農地法の中で議論することじゃなくて、そこが原点でなければならないというところだと私は思うんですね。

 そうしたときに、この今回の農地法の改正で、入り口の規制緩和がされました。その入り口の規制緩和の中で、今までは、参入しようとしてもこの条件があったから参入できなかったということで、入れなかった。それをまた門戸を広げていくというのが常時従事者の撤廃というところにつながっていったんだというふうに思うんですけれども、これはまさに、今、忠参考人がおっしゃったものとは逆行するというふうに私は思うんです。

 この常時従事者の撤廃が行われたということに対して、再度見解をお聞きしたいと思うんです。

忠参考人 そのことにつきましては、先ほど申し上げた理由により、撤廃されたのは残念な部分かなというふうに思います。

 以上です。

菅野委員 次に、櫻井参考人にお聞きいたします。

 私もそうだと思うんですが、今、四ヘクタールの認定農業者でも所得がほとんどないんだよと。そういう状況の中で農業に従事しろと言っても、地域における農業従事者というのは後継者もできていかない、そういう厳しい状況にあるんだと。そういう中で、一方としては、魅力ある農業というものを何としてもつくり上げていかなければならないというのは、私たちに課せられた大きな任務だというふうに私は思っております。同じ意見であります。

 そういう中で、価格の安定、あるいは、安定というよりも維持向上、米の値段を上げていかないと、ずっと低落傾向が続いているからこれに歯どめをかけて上げていかないといけないというのは大きな命題だと私は思うんですけれども、こういう実情の中で、私は、所得補償というものをしっかり入れていかないと、産業政策だけじゃなくて地域政策として必要なんじゃないのかなというふうに思っております。

 このことは、国民あるいは消費者の理解を得ていく中で、食料・農業・農村基本計画の中で議論されていく課題だというふうに私は思っているんですけれども、地域に住んでいて、今の農業を取り巻く実情、将来の展望を見やったときに、今とらなければならない大きな課題をどこに考えておられるのか、意見をお聞きしておきたいと思います。

櫻井参考人 今先生からお話が出ましたとおり、私は、価格補償が最も今必要な措置というふうに考えております。

 今の農家は赤子のようなもので、これから本当に手をかけていかなければ、こういった改革にはなかなかついていけないと思うんですね。そうした現状をぜひ御理解いただいて、まず、所得補償でもって、これも内容はいろいろあると思います、難しい点もたくさんあると思いますが、ただ、基本はそこに置いて、まず農家の生活を安定させていただいてからいろいろな施策を広げていくということが大変必要なことではないかというふうに私は考えております。

 よろしくお願いいたします。

菅野委員 この議論は今後もしっかり行っていかなければならないし、待ったなしだという、これは共通認識だというふうに私は思っております。

 ただ、盛田参考人から最後にお聞きしたいと思うんですが、日本の農業というのは、私は、大規模化をずっと進めてきた北海道農業というのが一つあるというふうに思うんですね。それから、本州の平場農業。宮城でいえば大崎、登米、栗原というのが平場地域で、農地の有効利用が図りやすい地域ですから、そういうところが日本には存在している。あるいは新潟もある意味では平場農業で、今議論しているのは、ある意味では平場農業をどうしていくのかという議論でもあるというふうに思うんです。

 もう一つ、日本の七割を占める中山間地域農業をどう維持していくのか。私は、今、維持していくという表現しか使えないというふうに思うんですけれども、直接支払い制度は導入したものの、まだまだこの中山間地域の農業というのは振興していないというふうに思っています。

 だから、この三つの形態がある中で、日本のとるべき政策というのは一本じゃないはずだと思うんですね。この三つの形態にどう有効な、効力ある政策をとっていくのかの議論がなされるべきだというふうに思うんです。

 農地法の改正も含めて、ややもすれば、この日本国内の議論というのが一本の議論で行われているんじゃないのかなと私は思うんですけれども、盛田参考人、この件について御見解があればお聞かせ願いたいというふうに思います。

盛田参考人 今の先生のお説は、非常に私も同感するところが多いわけでございます。

 確かに、北海道それから本州においても、平場と中山間、これはかなり明確に異なる農業の姿を示してございます。あえて言えば、私、北海道にも七年住んでおりましたが、しかし、北海道は北海道で日本の歴史の中ではやや新大陸型の農業の出発点を持っておりまして、植民区画が五ヘクタールないし三・三ヘクタールから出発しておりますので、ああいうような形の一つの規模拡大が可能であった。いわば、ある意味特別の歴史を持っている背景があるわけでございます。

 そういうところは、今、現実に日本の食料基地として非常に重要な役割を果たしているわけですから、日本農業において、これからも食料供給基地としての役割は大きくなりこそすれ低下することはない、ここをぜひ支えていかなければいけないと考えております。

 一方で、本州における平場と中山間ですけれども、中山間に関しましては、先ほど来、私も中山間地域に住んで調査をさせていただきましたけれども、やはりここは、イコールフッティングの観点から、公平公正な、努力が報われる仕組みをつくっていかなければいけない。では平場はどうかというと、平場はやや条件がいいわけですから、ここはもう少し、私は、農業自体はもっと収益的な形に持っていかなければいけないと思います。と同時に、五十年、百年というスパンで考えると、国民に理解していただくためには、今の我々は理解しますけれども、世代がかわった段階で、果たして日本には農業、農村が本当に要るのかという疑問がこれから強まる可能性があると思っております。

 したがって、やはり今の機会にできる限り構造を変えていただいて、規模拡大も図っていくべきではないか。両面追わなければいけないと考えております。

 以上です。

菅野委員 どうも貴重な御意見ありがとうございました。

 以上で終わります。

遠藤委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明二十二日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十九分散会


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