衆議院

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第12号 平成21年4月22日(水曜日)

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平成二十一年四月二十二日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 遠藤 利明君

   理事 今村 雅弘君 理事 木村 太郎君

   理事 七条  明君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 笹木 竜三君

   理事 筒井 信隆君 理事 西  博義君

      安次富 修君    赤澤 亮正君

      井上 信治君    飯島 夕雁君

      上野賢一郎君    江藤  拓君

      越智 隆雄君    近江屋信広君

      木原 誠二君    木原  稔君

      近藤三津枝君    関  芳弘君

      谷川 弥一君  とかしきなおみ君

      丹羽 秀樹君    西川 公也君

      平口  洋君    馬渡 龍治君

      松本 洋平君    茂木 敏充君

      森山  裕君    安井潤一郎君

      石川 知裕君    大串 博志君

      川内 博史君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    神風 英男君

      高井 美穂君    仲野 博子君

      横山 北斗君    菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       石破  茂君

   農林水産副大臣      石田 祝稔君

   農林水産大臣政務官    江藤  拓君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         針原 寿朗君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         實重 重実君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  本川 一善君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            吉村  馨君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     馬渡 龍治君

  岩永 峯一君     上野賢一郎君

  小里 泰弘君     平口  洋君

  小野 次郎君     近藤三津枝君

  河井 克行君     とかしきなおみ君

  徳田  毅君     木原 誠二君

  中川 泰宏君     安井潤一郎君

  永岡 桂子君     越智 隆雄君

  高井 美穂君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     岩永 峯一君

  越智 隆雄君     関  芳弘君

  木原 誠二君     徳田  毅君

  近藤三津枝君     小野 次郎君

  とかしきなおみ君   河井 克行君

  平口  洋君     松本 洋平君

  馬渡 龍治君     伊藤 忠彦君

  安井潤一郎君     中川 泰宏君

  川内 博史君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  関  芳弘君     永岡 桂子君

  松本 洋平君     小里 泰弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農地法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農地法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官針原寿朗君、大臣官房総括審議官實重重実君、総合食料局長町田勝弘君、生産局長本川一善君、経営局長高橋博君及び農村振興局長吉村馨君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 私は、農地法の質疑に入る前に、まず大臣に一問だけ質問させていただきたいと思います。

 報道によりますと、十八日からG8農業大臣会合が開催され、大臣も御多忙の中、出席されたというふうにお伺いしました。この農業大臣会合は、世界の食料安全保障体制について話し合う本格的な第一回目の会合という大変重要な位置づけである、昨年来の穀物価格の高騰、それから世界的に見れば飢餓の問題、大きな食料問題の課題を抱えての会合だというふうにお伺いをしております。

 大変な成果を得られたというふうにお伺いしておりますが、まず冒頭、G8農業大臣会合の状況について、大臣から簡略にお伺いをしたいと思います。

石破国務大臣 委員御指摘のとおり、G8で農業大臣が一堂に会して議論をするということは初めてでございました。そこにおいて、農業及び食料安全保障は国際的な課題の中で核心に位置づけられるべきだという認識が共有され、世界の農業生産を増加することが必要であるとされました。

 私から申し上げたのは、各国の農業生産の強化を基本とする食料安全保障。つまり、食料安全保障、フードセキュリティーという言葉を、何となく、自分の国の食料がちゃんと確保されなきゃだめなのよというふうに日本人はとらえがちなんですけれども、フードセキュリティーというのは、本当に世界の人々すべてがきちんと食料確保にアクセスできるという意味なのだよということから考えたときに、それは貿易も必要でしょう。ただ、自動車というのは全生産量の五割が貿易に回っていますが、穀物は一五%しか回っていないわけですね。やはり、基本的には自国の農業生産をきちんとやるんだということを申し上げました。そして、そのために農業投資の増加というのは必要である。

 さらには、持続可能な農業というのは何ですかと。みんなが持続可能な農業と言うんですけれども、水とか土とか、そういうある意味国際公共財のようなものをきちんと持続可能に維持する農法をやっていますかということ、それを申し上げました。

 そしてもう一つは、FAOをどう改革するかということです。お金をもっと出せという話はそうなんですが、FAOがやってきたことの検証はきちんと行われねばならない。そしてまた、いろいろな国際機関がありますが、その中でFAOがどういう位置づけにあるのかということを明確にせねばならない。そういうことを申し上げました。

 それで、宣言を取りまとめてG8の宣言として、これを七月のG8サミットへ報告するということになっておるわけでございます。

 また、バイの会談も相当に行いました。私は、やはり日本として主張すべきは主張しなければならないということ、持続可能な農業とは何だ、農産物貿易のあり方とは何だ、そして世界の協調体制とは何なのだということについて申し上げてきたつもりであります。

 今後ともこの会合は継続されると思いますので、また委員会の御教導をいただきながら発言をしてまいりたいと思います。

西委員 大変重要な会合の第一歩というふうな位置づけがありありとわかる内容でございます。国内だけではなくて国際的な食料安全保障という観点からも、さらに充実した会合を今後とも続けていただきたいと思いますし、また、御活躍をお祈りしたいと思います。

 それでは、本来の農地法のことについてお伺いをしたいと思います。

 まず、農地に関する許可事務、例えば取得の問題、転用の問題などでございますが、このことに関しては、都道府県から市町村への権限移譲が相当行われております。お伺いしたところ、千七百七十七市町村のうちで三百十七市町村。そのうち、さらに農業委員会に再委任しているのが九二%の二百九十二件というふうになっております。このように、許可事務は、都道府県知事や市町村ではなくて農業委員会が行っているという例も大変多くなっているのが実情でございます。

 ところで、農地の権利にかかわる事務では、法的に結構重要な問題が多いものですから、もめることも多くて、訴訟となるケースも予想されるというふうに現場の方からの報告が上がりました。一般市町村に訴訟の対応まで求めることは大変難しいというふうに思うわけですが、市町村の農業委員会が弁護士に法的なサポートを受けられる体制が今後必要になってくるのではないか、こう思います。大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

石破国務大臣 地方自治法の趣旨は委員が御指摘になったとおりですから、繰り返すことはいたしません。

 このような地方自治法の趣旨に照らした場合に、許可権限を移譲されました市町村そして農業委員会は、訴訟となった場合の弁護士の選任も含めて責任を持って対応していただかねばならないということに相なります。

 なお、市町村または農業委員会が行いました許可処分についての行政訴訟は、市町村が訴訟当事者となります。市町村が訴訟当事者なのでございます。市町村の請求に基づき、法務大臣の指定する職員に訴訟を行わせることができるということになっております。

 委員御指摘のように、いろいろな法律のややこしいお話、そのことについてのサポートは必要でございまして、私ども農林水産省といたしましては、農地転用許可事務の実施にかかわる法的な紛争を含むさまざまな問題につきまして、地方農政局の担当者が農業委員会等からの御相談に応じてきております。農政局に訟務官とか、農地法に通暁した者がいろいろおりますので、それがきちんと農業委員会をサポートできる、そういう体制をつくっていかねばなりません。

 また、農地転用許可事務につきましては、それをめぐりまして法的な紛争にならないようにするためにも、農地関係法令に従って適切に実施することが必要でございます。

 当省といたしましては、権限移譲がなされました市町村、農業委員会における農地転用許可事務の実態、これがどうなんだろうかという実態を定期的に調査をし、指導、助言を適切に行っていかねばなりませんし、市町村または農業委員会が適正な処理を怠っており、これを放置すれば農地の壊廃が進行するような場合には、都道府県から市町村、農業委員会に対して是正の要求を行うよう指示するということになっていますが、委員御指摘のサポート体制というのは極めて重要だというふうに思っております。

 農政局等々の体制をもう一度点検いたしまして、農業委員会がきちんと法令に従った対応ができますように今後とも努力をしなければならないと思っております。

西委員 ありがとうございます。

 次に、地元のことをちょっと例に挙げて御質問したいと思うんです。

 私は和歌山県なんですが、和歌山県田辺市という市がございます。一つの市と二町二村が合併して、総面積千二十七平方キロメートル、近畿で一番大きな面積を有する市になりました。東京都多摩地区が千百六十平方キロということですので、大体同じぐらいの規模ということになります。

 市町村合併に伴って、田辺市の農業委員は八十八人から三十九人に激減いたしました。五つの市町村が一つになったということでこういうふうになったわけですが、事務局は三人という体制でございます。

 ちなみに、多摩地区の農業委員の数を調べましたら、三十九人に対して多摩地区は四百四十人、こういうことでございます。比較すると十分の一の人数で実務を担当しているということで、田辺市の農業委員会の置かれている厳しい状況が大体想像がつくと思います。

 農業委員一人当たりの担当面積は実は全国より若干少ないというふうにお聞きしたんですが、農地だけではなくて広大な山林がありまして、地形的に農地を把握するということそのものが大変困難な土地でもございます。そういう意味では、関東平野、平地などの農地とは比べ物にならないという状況がございます。

 ところで、現行の農業委員会のあり方については、平成十五年四月の農業委員会に関する懇談会の考え方をベースにスリム化をしてきているわけですが、先日の参考人質疑でも御指摘がありましたように、今回の農地法改正で、農業委員会の業務が大変重要度を増してきております。また、仕事の量も増えております。

 懇談会で示された農業委員会のあり方については今後も変えないのかということをお伺いしたいと思います。農業委員会の体制、状況について、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

石破国務大臣 御指摘のように、平成十五年四月、農業委員会に関する懇談会が報告を取りまとめました。内容は御高承のとおりでございます。

 この報告書を踏まえまして、平成十六年に、農業委員会等に関する法律及び関係する政省令を改正いたしました。また、平成十七年からは、農業委員会が行う活動をサポートしていただく協力員を設置する場合についても支援を行うということにした次第でございます。

 今回、制度を見直すことによりまして、農業委員会につきましては、従来からの農地の権利取得の許可等の業務に加えて、遊休農地対策の業務が大幅に拡充されるということになりました。これまで以上に重要な役割を農業委員会には担っていただかねばなりません。その際にも、懇談会報告書で示されました、役割の明確化と活動の重点化、市町村の立地条件に応じた活動、運営という方向は、引き続いて重要であると考えております。こうした方向に沿いまして農業委員会の事務が実施されることになりますよう、何度か答弁でも申し上げましたが、議事録の公表などにより業務執行の透明性を高めるなど、制度改正を待たず、できることは先行してやっていきたいというふうに思っておるところでございます。

 今、田辺市の例をお話しになりましたが、農業委員会の体制というものがその役割を担うに十分整えられているかということにつきましては、私も相当に問題意識を持っております。したがいまして、農業委員会がその機能を十分に発揮し、適切に執行できるような措置をこれから講じていかねばならないと思っております。それから、委員のように現場に通暁された方々の御意見もよく承りながら、例えて言えば、実質的に協力員が増員されるような措置も講じていかねばならないと思っております。

 今回の農地法を仮に御可決いただきましたとしても、農業委員会がその役割を十分に発揮していただかなければその実を上げることは困難でございますので、御指摘を踏まえまして必要な措置を講じてまいりますが、またその内容等々につきましても御教導いただければありがたいと思っております。

西委員 よろしくお願いいたします。

 農業委員会が農地の許可権限をこれから付与する、これに関与するということは、地域の方々がそれぞれの利害関係にも関与していく、巻き込まれるということになるわけでございます。

 地元では、農業委員会の方は、その地域地域で大変信頼されている皆さん方がついてくださっております。こうした方の努力と献身的な活動に依存している、こんな形が現状でございます。

 現場では、利害関係に関与することにより厳しい立場に置かれるので、地域の信頼を損ねるようになるというふうに危惧されている方もおられます。この現場の皆さん方の危惧について今後どのようにとらえられようとしているのか、お伺いをしたいと思います。

吉村政府参考人 農業委員会につきましては、農地転用許可のうち都道府県知事が許可権者となっております四ヘクタール以下の案件について、申請書が農業委員会に提出されて、農業委員会はこれに意見を付して都道府県知事に送付するという手続になっております。また、先ほど委員御指摘がありましたように、権限が委任されて、実際に農業委員会が許可をするということも行われているところでございます。

 農地を転用することができれば高く売れるという、いわゆる農家の転用期待がある中で、農業委員会という農村現場に最も近い関係機関であればこそ、農地を守るという意識をさらに高めていただいて、制度の運用をさらに厳格化していく必要があるというふうに考えております。

 このため、ことしの一月に農業委員会に対して局長通知を発出いたしまして、判断の透明性、全国的な公平性を確保するために、客観的な資料に基づく申請内容等の事実確認を行うこと、それからこれは先ほど大臣からも御答弁申し上げましたが、委員会における審議過程のすべてを記した議事録を作成、公表すること、こういったことを指導したところでございます。

 農地転用許可の判断基準は、法律、政令、省令で明らかにされております。農業委員会がきちんと法令の根拠に従って許可の判断を行っていることが対外的に明らかになれば、個々の農業委員が地域で厳しい立場に立つということもなくなるのではないかというふうに考えております。

 農林水産省といたしましては、先ほど申しました議事録の作成、公表、これを指導しておりますので、その状況を把握しながら、農地転用許可事務が透明性、公平性を持って適切に処理されるように、必要に応じて農業委員会を指導していきたいというふうに考えております。

西委員 今後、この農地法の改正によって、さらに業務もふえますし、また重要性が増してくるわけですから、さらなる充実をお願いしておきたいと思います。

 次に、遊休農地の解消の件ですが、先ほど大臣からお話がありましたように、農業委員会の協力員の力、この皆さんの努力も欠かせません。

 先ほど申し上げました田辺市の農業委員会は、元農業委員らに協力員を委嘱して農地パトロールの補佐などをやっていただいて、成果を上げているというふうにお伺いをしております。市からは年額三万円の報奨金だけで、ほぼボランティアという形で活躍をいただいているということです。こういう取り組みに対して十分な支援を今後やはりお願いしていきたいと思います。

 さて、遊休農地解消には、もう一つ問題になりますのが不在村地主対策の推進でございます。私も実は不在村でございまして、行方はわかっておりますが、村内には住んでいなくて、田んぼだけを残しているという状況です。

 農水省は、担い手アクションサポート事業の農地利用調整活動として、不在村地主対策の費用を農林水産省の予算に盛り込んでいただいております。現在の厳しい雇用情勢を受けて、地域の雇用機会を創出すべく、「田舎で働き隊!」などさまざまな取り組みが行われているというふうに聞いております。

 この際、人手不足である農業委員会に短期で人を雇い、不在村地主対策を初め、農地基本台帳の電子化、それから地図情報化を強力に進めるべきではないかと思います。利用が活発化するにつれて、持ち主である所有者の権限またその確定というのがやはり大変重要な意味を帯びてくると思いますので、できるだけ早くこの問題も完成に近づけていく必要がある、こう思っておりますが、いかがでございましょうか。

石田(祝)副大臣 お答え申し上げます。

 今後、農地の相続を契機といたしまして、農家以外の農地所有者、また不在地主がさらに増加することが見込まれておりまして、これにより、耕作放棄を招きやすくなり、また、農地利用の調整も困難となるなど、現状のまま事態が推移すれば農地の有効利用の大きな阻害要因になる、このように認識をいたしております。

 このような課題に対応するため、今回の改正法案では、一つは、農地を相続した者に対し農業委員会への届け出を義務づける。そして二つ目には、届け出のあった農地が利用されないおそれがあるときは、農業委員会は、届け出をした者に対しその利用を促す。そして三つ目には、遊休農地について、知事の裁定により希望者に利用させることができる措置を、所有者が不明な場合においても可能とする。こういう見直しを行おうといたしております。

 あわせまして、二十一年度予算におきましても、農業委員会が農地所有者の相続の発生の状況等を把握し、耕作放棄の要因となりやすい不在地主を特定するための新たな支援措置、また、農地情報の基盤となる地図を整備し、これに各農業団体等が保有している農地に関する情報を付加するための支援、そういうものを講じようとしているところでございます。この中で、農業委員会が行うさまざまな活動をサポートしていただく協力員の設置についても支援を行うことといたしております。

 そのように制度面、予算面ともに充実をさせまして、農業委員会の活動を通じて、不在地主対策、農地基本台帳などの地図の情報化、そういうものに強力に取り組んでまいりたいと考えております。

西委員 農地の権利を取得する者の許可要件というのが今回の改正の法律の中にございます。第三条第二項第一号でございますが、その中に機械の所有の状況というのがございます。リースを利用する場合にはどうなるのかということをお伺いしたいと思います。

 また、農業に従事する者の数といいますけれども、農地の広さ、場所、つくる作物、それから農作業に従事する者の技術、熟練度等によって大きく変わってくるのではないかというふうに思っております。この許可要件については、具体的な判断基準をガイドラインもしくは要綱のようなもので示すというふうに既に答弁されておりますが、これらは政省令ということではありません。ガイドライン等を作成しても、法的に根拠が薄弱であり、実際の運用にはかなり困難が生じてくるのではないか。その土地その土地で状況が違うということで、これをどういうふうに解消されていこうとされているのかということについてお答えをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 農地の権利取得の際の許可基準でございます。

 御指摘の改正案の第三条第二項第一号に関連してでございますけれども、実は、現在も現行の農地法に権利取得の許可基準がございまして、現行法第三条第二項第二号には、農地について権利を取得しようとする者がその取得後にその農地のすべてについて耕作を行うものと認められること、また、同じく第三条第二項第八号には、農地について権利を取得しようとする者の農業経営の状況などから見てその土地を効率的に利用して耕作を行うことができると認められること、この二つの許可基準がございます。

 この基準につきましては、二十七年の農地法制定以来、法律上の表現は法改正の際に若干変化はございましたけれども、内容、運用については、地域の実情に応じまして、過去、膨大な実績がございます。地域ごとにこの条項で判断をしてまいりました。そういった意味で、確立しているものでございます。

 今回、三条二項一号という形で改めて整理させていただいておりますけれども、これは、現行の号が二つある許可基準を一つの号に取りまとめたということでございまして、内容、運用については、既に確立しております現行の運用と変わるものではございません。

 具体的には、委員御指摘のとおり、作付予定作目あるいは収穫高の見込み、経営規模と機械の所有、これは例示として所有と書いておりますが、リースも当然含まれるわけでございます。あるいは、労働力確保の見込み。これらを地域ごとに判断いたすこととしておりますけれども、先ほど来申し上げておりますように、地域ごとの過去のきちんとした実績がございますので、これは的確に判断ができるというふうに考えているところでございます。

西委員 土地の相対取引ではなくて、第三者が入って利用の側面で再配分といいますかお貸しをするということで、やはり今までよりも責任が重くなってくると思うんです。そういう意味で、農業委員会等が、お借りした人がきちっと農作業できる限界といいますか、範囲、面積というものを決められるような、そういう有効なガイドラインをお願いできればというふうに思います。

 次に、違反転用に対する原状回復等の命令それから代執行制度の創設について、違反転用者を確知できないときは、違反転用者が見つかるまでの間、自治体が負担をするということになるわけですが、これは自治体にとってかなりの負担となるということからすると、国は財政的な支援を行うべきではないかというふうに思いますが、その見解を示していただきたい。

 また、違反転用者や所有者が確定できない農地は、権利関係が大変不安定になります。そのような農地を代執行して原状回復した場合について、農地保有合理化法人等が都道府県知事に権利設定の裁定を申請し、補償金を供託して利用できるようになっています。最低で貸出期間をどれくらい設定できるのかということをお伺いしたいと思います。

 また、裁定が不服審査等で覆された場合、農地保有合理化法人と利用者との間で交わされた契約が持っている法的な効力、この点について説明をいただきたいと思います。

吉村政府参考人 まず、委員御質問の前段部分についてお答え申し上げます。

 御指摘のように、今回の農地法改正において、原状回復義務者たる原因者を確知できない等の場合において、都道府県知事または農林水産大臣はみずから現状回復等の措置を講ずることができるよう措置したところでございます。いわゆる代執行でございます。

 そういった場合に、委員御指摘ありましたように、原因者が引き続き確知できないということで、その責任を追及できずに費用の徴収ができないという場合も現実に起こり得るというふうに思います。そういった場合には、代執行を行った行政庁が最終的に費用を負担することも想定されるところでございまして、違反転用に対する行政代執行制度の円滑な運用につきまして、現場のニーズも踏まえて今後検討してまいりたいというふうに考えております。

高橋政府参考人 遊休農地に対します利用権の設定のお尋ねでございますけれども、知事の裁定によります所有者不明の遊休農地を利用する権利の存続期間につきましては、法律で五年を限度とするということになっております。これは、知事の裁定という行政処分によります強権的な権利設定ということでございますので、私有財産に大幅な制限を加えるということから、その期間が長期にわたるということについては財産権の保障の観点から適当ではないということで、五年としたところでございます。

 これにつきましては、不明であった者がその後あらわれまして、知事の裁定について不服がある場合には、国に対しまして審査請求はできるということになっておるわけでございますが、実は、この審査請求につきましては、設定をしたときに利用者は補償金を積むことになっておりますけれども、この補償金の額が不服だ、安いということで審査請求をするということは、これは法律上認められておりません。

 したがいまして、この審査請求は、農地の所有者には適正かつ効率的な利用を確保するようにしなければならないという責務があるにもかかわらず、遊休農地化し、あるいは行方不明で農業委員会が指導しようにも指導できなかった事情ということで設定したものでございますので、このような権利設定自体がおかしいということを立証しなければならないということになりますので、この裁定が覆るというのは相当困難ではないかというふうに考えています。

 さらに、農地法では、実は賃貸借につきましては、引き渡しをもって第三者に対抗することができるという耕作者保護の規定がございます。また、このような審査請求を行ったような者が、その後出てきた地主さんでありますけれども、では耕作の事業に供するかということもなかなか想定されないといたしますと、トータルとして、この裁定そのものがきちんと手続を踏んで行われた上に、かつ、お金の問題では請求できない、自分も多分使わないということであれば、ほとんどの場合、この裁定が覆ることはないというふうに考えております。

西委員 時間が迫ってまいりました。最後の質問になると思いますが、農用地区域の農地というのは担保価値が低いということで、農家は融資を受けるのに大変困難である、中にはサラ金に借金せざるを得ないという農家もあるやに聞いております。こうした状況も仮登記問題の背景の一つと考えられるのではないかというふうに思っております。

 農地の規制を強化することによって、農地の価値はさらに低下をする、そして担保価値も当然ながら下がってくるということで、規制強化はよいが、農業への融資環境の改善を図らなければ農家の理解が必ずしも得られないというふうに考えられるわけでございますが、融資環境のさらなる改善に向けてどう取り組んでいこうとされているのか、副大臣に具体的にお伺いしたいと思います。

石田(祝)副大臣 委員も御承知のとおり、今回の改正案は、転用規制ということも大変大事な柱になっております。農地の転用が規制されるということになると、当然、転用期待でのそういう部分というのはなくなるわけですので、価値が下がる可能性が出てくる。それに対してどのように融資環境の改善をしていくか。大変大事な件だと思います。

 現在は、農業経営に対する融資については、三分の二が系統の金融機関が窓口、三分の一が日本政策金融公庫を窓口として行われております。そして、農協の系統金融機関の取り扱い分のうちの半分以上は、農業近代化資金など低利あるいは無利子の政策融資に係る資金でございます。

 そして、系統金融における債権保全については、農業信用保証保険制度による機関保証を講じ、少額の保証料による信用補完を行っておりますし、さらに、二十年度第二次補正予算におきまして、青色申告を行っており経営診断を受けた者に対しては保証料の負担額を二分の一に軽減する、こういう措置も講じております。

 また、公庫融資における債権保全については、農地、農業用施設といった融資対象物件を中心とする物的担保を基本としますけれども、農業者の経営能力を最大限に評価するなど、担保、保証人に過度に依存することのないよう配慮しているところでございます。

 さらに、二十年度の第二次補正におきましては、認定農業者に対して無担保、無保証人でスーパーL資金を融通する限度額を倍増させる、こういう措置も拡充をいたしております。

 今後とも、このような機関保証の充実、公庫における経営に着目した融資の円滑化等の措置を講じて、農業経営に対する融資環境の改善に努めてまいります。

 以上です。

西委員 以上で終わらせていただきたいと思いますが、この農地法の改正、今後の日本の農業に大きな影響を及ぼす新しい農業の出発だというふうにも私どもはとらえておりますので、また具体的なことは詳細にわたって省の方で御検討いただき、遺漏のないようにお願いをしたいと思います。

 以上で終わります。

遠藤委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木隆博です。

 農地法の改正について、二回目の質問になりますが、本会議を入れると三回目の質問になりますので、よろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 ずっとこの間の論議の中で、参考人の皆さん方の意見ですとか、あるいは委員の皆さん方の意見ですとかを含めて、やはり幾つか問題点がある程度浮き彫りになってきたのではないかというふうに私は思っております。そういう視点で改めて何点かについて、できれば大臣のお答えをいただきたいというふうに思ってございます。

 まず、耕作者ということについてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 今度の改正案では、目的が「農地を効率的に利用する者による農地についての権利の取得を促進し、」というふうになっています。現行法は、「耕作者みずからが所有することを最も適当」と、こうなっているわけです。

 現在の状況の中で、貸借が四割近くに及んでいるということや、あるいは特定法人、いわゆる特区の農場リースの全国展開ですが、これらを考えたときに、農地法の外側にある特定法人がある程度ふえてきてしまっているというようなことも含めて考えると、農地法というものを一緒に考えなければいけない時期に来ている、私もそう思っているところであります。

 ただ、そのあるべき姿としての耕作者という言葉が一言もない、今回の目的から消えてしまったということについて、これはまさに理念の大転換と言わなければならないというふうに思うのです。

 そこで、自作農とまでは言いませんけれども、耕作者ということを目的にうたう必要があるのではないかというふうに私は思います。大臣の見解をお伺いいたします。

石破国務大臣 恐らく問題意識は委員と相当に重複しているのではないかなというふうに思っております。

 一条に耕作者主義、もともとは自作農主義と言っておったわけで、それが耕作者主義に変遷し、今回、別に何々主義というものを麗々しく掲げるつもりも私はございませんが、そこのところ、目的規定をどうするのかということでございます。

 今回の法改正では、「国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資する」ということが農地法の究極の目的ではないかと思っております。もう一度申し上げますが、「国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資する」、そのことが究極の目的だと私は思っておりまして、そのように掲げておるところでございます。

 その上で、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源である、こういう認識を持ちまして、農地を農地以外のものにすることへの規制、農地を効率的に利用する者による農地についての権利の取得の促進、農地の利用関係の調整、農地の農業上の利用を確保する措置という、農地法の主要な措置、内容を規定いたしました。改正後の内容を的確に表現した規定というふうに考えておるわけでございます。

 その上で、耕作者主義をどう考えるかということなのでございますが、改正後の農地法におきましても、今は改正案のことを言っておるわけでございますが、不耕作目的の農地の権利の取得を排除する、そして、農地が農業を営む者により、効率的に耕作の用に供されるようにしていく、その考え方は根本でございますから、これは維持をいたしておるところでございます。

 私は何々主義ということにそんなに意味があるとは思っておりませんで、農地が農地として本当に活用されるためにはどうあるべきかということでこの法律を組み立てております。

 耕作する者が所有する、それが最も適当であるということが現行の条文には書いてあるわけでございます。私はそのことを否定するつもりは全くございません。しかし、農地がどのように利用されることが最もよろしいかということで条文を組み立てておりますので、第一条から耕作者というものが落ちているじゃないかという御指摘もありますが、そのほかの部分で、いかにして耕作者の権利は維持されるか、そしてまた農地の適正な利用に資するかということには十分に配意をしておるつもりでございます。

佐々木(隆)委員 大臣はかなりの部分重複していると言ったんですが、余り重複していないように私には聞こえたのであります。というのは、目的規定に何を書くかというのは、それは理念ですから、ほかのところに書いてあるからいいぞというのは、ちょっとそこは私と違うなという印象であります。

 では農地はだれのものだということになるわけですが、私は耕作者主義とは言っていません、耕作者と書けと言ったのであって、主義と書けと言ったわけではありません。では農地はだれのものかということになるわけです。

 農地は本来、地域の人々によって保有、維持、管理、活用される地域資源であるというふうに言われています。したがって、農地というのはある意味国土だというふうに言えるわけであります。ですから、国の責任というのは当然あるから、農地法が国によって定められているわけであります。

 農地というのは、一つには農業の生産手段であると同時に地域資源でもあるわけでありますから、そういった意味での両面から有効に活用されなければならない。そうすると、今の大臣の説明でいくと、保有はだれでもいいんだというふうに聞こえてしまうわけですね、利用さえされれば。

 だから、保有の望ましい形は何なんだということに一切触れないというのはやはりおかしいのではないか。今度の法律の中ではそこは全く触れられていないわけで、効率的に利用されるというふうにしか触れられていないわけです。では農地はだれに帰属すべきものだということになるわけですから、このことについてもやはり大臣のお考えを伺っておかなければならないというふうに思います。

 それと、もう一つ、農地の利用者、利用権者でも同じでありますが、所有者であれ利用者であれ、農地の利用者というのは地域にあって常時従事することが望ましいという理念についても今回は抜けているわけであります。

 特定法人の要件の中に、現行法の十五条、新法でいえば六条になるのかもしれませんが、特定法人には常時従事要件というのを課しているわけですね。しかし、今度、利用という、貸借をしようとする人たちにはそれがうたわれていないということもやはりおかしいのではないか。これがいわゆるダブルスタンダードと言われているものの幾つかのうちの一つなわけでありまして、そういった意味でも、この二つをあわせて大臣の見解をお伺いいたします。

石破国務大臣 非常に形式論理で申しますと、農地はだれのものかといえば、所有権者のものに決まっておるわけでございます。ただ問題は、その農地が、先ほど目的規定のところで申し上げましたが、本当に国民が生きていく上に公共性というものを非常に持っているんだということの認識は強く持たねばならないと思っております。農地は本当に国民みんなのものですよということ、非常に抽象的な物の言い方をして恐縮ですが、やはり農地において農産物がきちんと生産をされる、そして国民の生きる糧としてそれが提供される、そういう意味で農地が公共性を持つということは私は極めて重要なことだと思っております。

 加えまして、委員が御指摘のように、生産資源としてだけとらえるのではない、地域資源としてきちんととらえるべきだ、それもそのとおりでございます。ですから、今回の農地法の改正案におきましても今日的にそこを整理しておるわけでございまして、農地については、国内の農業生産の増大を図り、国民に対する食料の安定供給の確保に資する上での農業生産の基盤というふうに位置づけておるわけでございます。地域資源として果たしている役割の重要性というのは強調し過ぎてし過ぎることはないと思っております。

 むしろ、今回の改正案第三条第二項第七号をごらんいただきたいのでありますが、そこにおきましては、農地の権利移動について、地域の農業上の調和を保つことを確保するという新たな基準を設けております。こういう基準を設けることによりまして、地域資源としての農地の重要性ということは改めて強調しているというふうに私は考えております。

 また、常時従事要件が必要ではないかというお尋ねでございます。

 現行制度では、農地を適正に利用して農業経営に取り組むかどうかを事前にチェックする、そういう措置として、特定農業法人貸付事業では、リース方式により農地を借り受けようとする法人に対し、業務執行役員のうち一人以上の者が農業に常時従事するということを求めておるわけでございます。

 今回の農地法改正では、所有権と賃借権それぞれの権利の性質の違いに応じまして、所有権につきましては農業生産法人要件等の現行の規制を維持いたしております。その一方で、賃借権につきましては、不適正な利用があった場合に契約解除や許可の取り消しなどの措置を行うことによって原状回復が可能でありますので、これらの事後チェックの措置を制度上担保した上で、農業生産法人以外の法人であっても賃借権の取得ができるというふうにしておるわけでございます。

 今回の改正におきまして、このような事後的な措置により農地の適正な利用が確保されるというふうに考えておりまして、事前チェックの措置でございます業務執行役員の常時従事要件、これは設けていないものでございます。農業を営む者により農地の適正な利用を確保するという考え方に全く変わりがあるものではございません。

佐々木(隆)委員 今の大臣の答弁でも気になるのは、私も農地については三条の規定のところを中心に今お伺いしているつもりですが、食料の安定供給というお話をしました。確かにそれは国民のものではあります。しかし、地域資源となると僕は少し意味が違うのではないかというふうに思います。

 それは、地域の資源として活用するということと、今大臣がおっしゃったのは国民という意味では食料の安定供給とおっしゃったんだというふうに思いますが、資源というのはそれだけではなくて多面的ないろいろなことが含まれるわけですから、そこは私は少し違うのではないかと。それから、公共性ということについて言えば、むしろ多面的機能とかそういったことももっと重要視されなければいけないんだというふうに思います。

 事後規制のことについて触れられましたので、そのことについては後ほどちょっとお伺いをしたいというふうに思います。

 そこでもう一つは、地域資源ということを大臣もおっしゃっていただきましたので、地域資源として有効に活用するという責務は利用者がもちろん負います、農地として負いますが、同時に、地域資源ですから、地域づくりという意味で言うと市町村も同じように責務を負うのではないかというふうに私は思います。

 ところが、改正案からその市町村という文言もこれまた消えてしまったわけですね。経営基盤強化法には、市町村が基本構想を策定する、こうなっているわけですね。これと表裏一体だというのであれば、これは同じように、やはり生産資源としては一義的に農業委員会でありますけれども、地域づくりというものとダブることも想定されるわけですから、都市計画と農振地域とがそのうちダブってくるということも考えられる。

 そんなようなことも考えると、市町村の意見を聞くという条項がやはり必要なのではないかというふうに私は思いますが、この中には市町村とのかかわりというのは一切ないわけですけれども、そのことについての見解をお伺いいたします。

石破国務大臣 済みません、お答えが不十分であったかもしれませんが、私は多面的機能というものは十分認識をしておるつもりでございます。多面的機能があることは当然でありますが、同時に、農地が農地として活用されるということがこの法律のメーンの趣旨ではないかなというふうに思っております。それは、多面的機能というものが十分に発現される、そのために調和ということも書いておるわけでございますので、そのことの重要性を忘却しているわけではございません。

 今委員御指摘の市町村の役割というものでございます。

 これまでは、農地法等に基づきます農地の農業上の利用の調整につきましては、地域の農地の実情に精通している農業委員会が行うのだ、そして都市計画法等に基づきます地域における土地利用全体の調整については主として市町村が行う、そういう役割の分担のもとに制度を運用してきたわけでございます。

 今回の改正におきましては、農地の権利取得の許可に際し、新たに周辺の農地の利用に影響を与えないかどうかについて判断する要件を設ける、そのようにいたしておるわけですが、この判断は専ら農業上の土地利用への悪影響がないかどうかという観点で行うものでございます。したがいまして、その観点に基づきますと、農業委員会が従来どおり担うことがふさわしい、このようにつくっておるわけでございます。

 仮に、地域における土地利用全体との整合性の判断が必要になるということになりますれば、それは市町村内部における連携や調整が当然行われます、行われなければなりません。そして、そういうようなことが当然行われるわけでございますから、市町村の役割というもの、市町村の関与というものについて、あえて明文の規定を設けていないというものでございます。

 ですから、市町村の役割というものに変更を加えるというものではございませんで、市町村は従来どおりその調整についてそういうような連携を図る、市町村内部において連携や調整が行われるということになりますので、市町村の役割というものは当然そこにおいて果たされることになると考えております。

佐々木(隆)委員 今度の改正案の特徴は、今大臣がおっしゃったように、利用するところに極めて、言葉は悪いですけれども矮小化してというか、そこの部分だけを法律に書いているものですから、農地全体をどうするあるいは地域資源としてどうするという部分がないので、今大臣のおっしゃったように、ほかのところで読めるんだとかセーブするんだという話になるんですが、私は、農地法という以上、やはり農地というものが生産資源として、そして地域資源として本当に有効に活用される全体視点というものが、今回の法律は利用者の方へかなりシフトしているものですから、そういった意味でところどころ不足している部分があるんではないかと思います。

 そういった意味で、少しここは局長にお伺いします。

 それは、今回の新法は、所有から利用へということで、要するに利用者の参入の規制を緩和するというところに大きな目的があるわけです。参入許可を原則自由にしているわけですから、参入を自由にするということは、先ほどもお話にありました事後規制をある程度強化しなければバランスとしてはとれないはずなんです。ところが、その事後規制についてかなり抽象的過ぎるのではないかというふうに思っております。

 かつて、八年前にこの国は改革を言い出しまして、改革をずっとやってきたんですが、その改革の最大の失敗というのは、この国は許認可事業といって入り口を強化していたわけですよね。その入り口を緩和した、許認可を外して緩和した、それはそれで必ずしもだめだとは私は思わないんですが、そのときに事後規制を強化しなければいけなかったのにしないで来た、そのことと同じようなことになってしまうのではないかという懸念がこの法律にもあります。

 例えば二条の二で、権利を有する者は、農業上の適正かつ効率的な利用を確保しなければならない、三条二項の七で、先ほど大臣もおっしゃっていましたが、周辺地域における農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれのある場合、いわゆる悪影響のある場合、この二つの規定で、市町村もほとんど出てきませんので、農業委員会がほぼすべてのチェックをするということになるわけです。本当に農業委員会がこの二つの条件でちゃんと規制をかぶせられるのか、チェックできるのかということについては、私は大いに疑問が残るわけであります。

 そこで、まずは農業委員会の権限の確保というか拡大が必要だ。今回、農業委員会については、仕事量はふえているんですけれども、別に権限が新たに付与されたものは何もありません。そういった意味で言うと、農業委員会の権限というものを一体どうするんだということについてまずお伺いします。

 それから、制限条項がずっと三条にあるわけですが、二項に出てくるのは政令です。二項の五は省令です。つまり、このことを審議するに当たって、政令と省令にゆだねられているものですから、ここで具体的な論議ができないわけですね。ですから、この法律の規制条項である三条が政令と省令というふうになっていること自体も大変問題だというふうに思うんですが、審議が十分にできるのかという意味でも、一定程度、この場所に示していただく必要があるのではないかというふうに私は思います。そういった意味で、三条の制限条項の政令、省令、ここについて示していただきたいということについて、二つあわせて伺います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回の農業生産法人以外の法人の農業参入についての規制の関係でございますけれども、御承知のとおり、二つございます。

 一つは、農業に参入する際に許可の基準として判断する場合に入り口を少しきつくしたという部分がございます。それが先ほど来委員御指摘の三条二項の七号というところでございます。ここについては、従来は権利を取得する当該地片、農地、その部分だけを見て、そこできちんと農業が行われるかどうかということを農業委員会が判断したわけでございますけれども、今回は、周辺の土地との関係において、周辺の土地に農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合には、支障がある場合にはこれは認めないということ。まず入り口段階で、これは今回の貸借に限らず、すべての権利取得でございますけれども、ここはきちんと農業に使うという意味で、入り口を一回きつくしております。

 委員御指摘の要件を緩和したという部分は、入っていく主体につきまして、賃借権の場合には、従来のように法人の場合には農業生産法人でなければならないということから、農業生産法人以外の法人一般であっても形態を問わず入っていくことができるという意味で、入り口の部分について緩和をしたということでございます。

 では、事後の規制、これはどうしたかということでございますけれども、基本的に事後はどういうことかというと、農業に適正に利用されている限りにおいては入り口で入ってきたことの目的は達成されているわけでございますけれども、結果として農業に適正に利用されていない、農地が適正に利用されていないという場合には、解除あるいは農業委員会によります許可の取り消しという形での事後チェックを行うということでございます。

 ですから、ある意味、入り口の段階が入学だとしますと、中途退学みたいな場合には、そこはきちんと強制退学みたいな形で事後チェックが行われているということでございます。そういった意味で、事後チェックを行ったということが今回の状況でございます。

 あと、途中の関係につきましては、農業委員会が、適正に行われているかどうかについては、毎年その農地の状況について調査をするということがございます。

 それからもう一つ、政省令の関係でございますけれども、二項で書いております政令で定める相当の事由というような場合がございますけれども、これにつきましては、既に現行法の二項の中におきましても同様の政令で定める事由がございますので、ちょっと今手元に用意ができておりませんけれども、これについては、委員長の御許可をいただければ、後ほどまた御説明をさせていただきたいというふうに思います。

佐々木(隆)委員 委員長、今のはよろしくお願いをいたします。

遠藤委員長 はい。では、そのようにさせていただきます。

佐々木(隆)委員 今、入り口はきつ目だと言ったんですが、今回、ある意味、だれでもどこでも入れるようにはなったわけですよ。だから、そういう意味では、入学レベルはかなり低くなったことは間違いないんです。その入学レベルが低くなったら、日本の法律というのは全部そうですけれども、今まで基本的に入り口はきつくて後はゆるゆるなんですよ。この農地法だってそうだった。入り口がきついから、今まではその後の心配というのは余りなかった。ところが、今度は入り口を緩めちゃったんですから、そうすると事後のチェックというのは相当厳しくしないとならないと思うんですね。

 今局長は途中退学と言いましたけれども、途中退学ではなくて、中間テストをちゃんとやらなきゃだめなんですよ。そういう仕組みにつくり直さなきゃ、入り口を緩めた以上、だれでも入学できるようにしようとしているんですから。そういう意味で言うと、中間のちゃんとした手続というもの、事後チェックというものが必要だというふうに私は思うんですね。

 例えば契約書のひな形みたいなものの提示をちゃんとして、農業委員会が安心できるようなもの、かなり細かくそこでチェックをする、それから毎年必ずそれに基づいて報告義務をつける。これは生産法人にはそういう規定があるわけですから、同じように報告義務をつける。

 それから取り消し規定も、こういう場合はだめですというようなものを、最初の契約書違反がされているかどうかというようなものがきちっとチェックできる、通信簿とは言いませんが、入り口を緩めた以上、そうした不断のチェックというものを、農業委員会が出向いていってやるんではなくて、入ってきた人に条件として義務づけるということが私はむしろ必要なのではないかと。

 そうでなくても農業委員会はやり切れないぐらい今度は仕事がふえるわけですから、これにさらに仕事をふやすなんといっても、実質的に無理だと私は思います。そういった考えがあるかどうか、これについてお伺いします。

 もう一つ、今度、小作の条項が削除されるわけですけれども、今までずっとあった標準小作料、これについては地域で、この間参考人の皆さん方からも心配している声が聞かれたわけですけれども、これを何か示すつもりがあるのかどうか、これもあわせてお伺いをいたします。

高橋政府参考人 新たに参入してきた方がきちんと適正に農業を行っているかどうかについて、不断のチェックシステムをどのようにしていくかというお尋ねだと思っております。

 これにつきましては、先ほど来、農業委員会サイドについてはそんなになかなか全部を見切れる状況じゃないというお話がございました。そのほかにも、私どもといたしましては、農業委員会が最初に三条一項で農業参入についての許可を行うわけでございますけれども、その許可を行うに際しましては、実は三条の四項の規定によりまして条件をつけて行うことができるということになっております。

 したがいまして、個別の参入の許可案件におきまして、特に農地の利用状況の報告が必要であると判断したような場合には、委員御指摘の報告義務ということについても条件として付すことが可能というような状況になっております。この辺について、どのような場合に必要なのかどうか、既存の、今までの権利関係との均衡、比較考量というようなことも考えながら、この点については検討してまいりたいというふうに考えております。

 それから、もう一点の標準小作料の廃止でございますけれども、私ども、今回標準小作料を廃止する趣旨につきましては前回にお答えさせていただきましたけれども、賃貸借料の設定に当たって目安となるものがなければこれは困るというのは、参考人の質疑にもございましたし、私どもも当然のことだと思っております。

 したがいまして、現在標準小作料として各農業委員会がお示ししている、これ以上に使い勝手がいい、わかりやすいものを私どもとしては情報として提供していく必要があると思っております。これについては、今現在、関係のところともどのようなものがいいのかということについて調整を行っているところでございますけれども、当然のことながら、これはお示しをしてまいるということでございます。

佐々木(隆)委員 大臣にお伺いをいたします。

 かつて大店法という法律がありまして、二〇〇〇年に大店立地法という法律にかえて、大幅に規制緩和したわけです。その結果として、中心市街地が空洞化をして、二〇〇五年にまちづくり三法という形で規制を強化したわけです。ある程度また戻したわけですね。

 私は、今、農地法が同じ道を歩もうとしているのではないかという気がしてならないんです。規制緩和というのは、ただ緩和をすればいいということではなくて、事後チェックをどうするとか、同じ規制緩和をするにしても一定程度の規制というものはやはり残しておかなければならないということについて、今度の場合でいうと利用参入の方々についてはだれでもどこでもという形にほぼ近いわけです。

 入ってからチェックをしますというんですが、チェックについても、周りに悪影響を及ぼさないということと効率的な利用を確保しなければならないという二つの規定だけで農業委員会が本当に権利を行使できるのかというと、この条項だけをもって農業委員会がチェックを十分に果たせるかというのは私は極めて心配をしています。

 大店立地法と同じ道を歩んではならないという思いでお伺いをさせていただきたいんですが、農地というのは、先ほど申し上げましたように生産資材と地域資源、つまり農業と農村というファクターを持っているわけです。農地というものを生産資源としてだけとらえるのであれば、株式会社が全部やったって、農業はこの国からなくならないと私は思うんです。だれがやったってなくならないんです。やめればだれかがやるようになる、規制緩和してでも。

 ところが、このままいったら農村は間違いなくなくなるんです。現に少しずつなくなっている。いわゆる限界集落というところになって、その先には農村というものがなくなってしまうという状況が片っ方で現実に起きているんですね。だから、農業という側面を強調し過ぎちゃうと、結局、農村というところが崩壊していくということにつながっていくので、二つのファクターというものを農地法でしっかりと縛っていかなきゃいけないんだと私は思うんですね。

 そういう意味から言うと、今度の法律というのは、農業の利用というところに余りにも重点が置かれているために、本来の、農地は国民のもの、あるいは地域資源という部分が相当に小さくなってしまったのではないかというふうに私は思います。そういった意味で、先ほど申し上げた耕作者という要件あるいは耕作者の地位の安定あるいは地域社会との調和というようなことについては、目的規定にしっかりと理念として盛り込むということが、私はこの農地法をしっかりとこれから生かしていくためにぜひとも必要だというふうに思うんですが、大臣の決意を伺います。

石破国務大臣 限界集落があって、農村が崩壊しつつあるというのは、それは、北海道と本州の違いはあってもどこも一緒です。私どもの中国山地の山合いの村なぞというのは、本当にどんどん限界集落、そして集落が崩壊し、なくなるというものを私は目の当たりにしてまいっております。

 そこにおいて、農地がきちんと利用されるためにはどうすればいいのか、だれが担えばいいのかということ、そして耕作放棄地に対してどのような対策を講じていくか。そして、特に本州の場合に農村というものが維持をされておったのは、それは兼業収入機会がきちんとあったということでございます。それが喪失されたことによって農村というものは崩壊をしてきた。だとすれば、それはどうするのだということは、農地法がオールマイティーなのではありません。農地はどのようにして利用されるべきか、農地が国民みんなの資源としてどうやって適正に利用されるべきか。

 今、この状況をかんがみて、農地がきちんとその目的に沿って利用されているかといえば、残念ながらそうではないものが非常に多いということが問題意識でございます。この農地というものが本当に国民の資源として、もちろん地域の資源でもありますが、どうすれば最も有効に効率的に利用されるかということ。委員がおっしゃいますように、お言葉を返すようで恐縮ですが、私は矮小化したという意識は持っておりません。適切に利用されるにはどうすればよいかということでございます。

 加えて、本当に農村が農村としてやっていけるためには、いろいろな政策を法的に講じていかなければなりません。これはある意味、兼業機会の確保でもありましょう。あるいは、農業者の所得というものを確保するためのいろいろな政策でございましょう。いろいろなものを重層的に組み合わせていきながら、農村というものを守っていきたいと思っております。

 農村が危機的な状況にあるのは、北海道も本州も全く一緒です。四国も九州も一緒です。そこに対してどのような政策を図るかですが、農業というものに特化して考えた場合に、農地というものがきちんと利用されないまま耕作放棄が起こる、そういうような状況、あるいは転用が、無許可転用もそうですね、そういうものがどんどん行われるということに歯どめをかける。

 いろいろな政策を総合的に活用する中において、農地が農地として利用されるために今回の法案を考えたものでございまして、全体的な整合性の点から議論をすべきものだというふうに思っております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、適切に利用されるだけではだめなんです。

 要するに、地域にあって常時従事するという歯どめが今まではあったんです。地域にあって常時従事するから農村は壊れなかったんです。それが、だれが来ても、効率的に利用さえされれば農業はいいんだというふうになっちゃうから、地域は壊れていくということを私は心配しているのであって、そこの理念というのはやはりちゃんと盛り込むべきだということを申し上げて、終わらせていただきます。

遠藤委員長 次に、神風英男君。

神風委員 民主党の神風英男でございます。

 本日は、農地法の改正案ということでございますが、これまで法案自体についての議論が多かったものですから、私は、少し実態面からの質問をさせていただきたいなと思っております。

 本題に入る前に、前回、食料安全保障のことを少し伺いました。今回、二問ほどちょっとそれに関連したことをまず最初に伺いたいと思います。

 前回、食料安全保障について質問した際に、日本にとって必要な農地面積というのはどれぐらいを想定しているのか、そういった目標がありますかと目標値を伺ったわけでございますが、それに関して、平成十七年の基本計画では、四百五十万ヘクタールの農地面積を確保する、それによって二千キロカロリーの食生活が営めるという回答でございました。確かに、農水省が出しております「不測時の食料安全保障について」という冊子を拝見しますと、農地面積四百五十万ヘクタールで一人一日当たり二千二十キロカロリーの供給が可能であるということが書かれております。

 その一方で、昭和五十七年に出ております「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」というものを拝見しますと、その中では、「我が国の食料供給の実力」ということでやはり約二千キロカロリーということが書かれておるんです。

 これは、昭和五十七年の時点では農地面積が五百五十万ヘクタールという形が前提になっている。今回のこちらの新しい方では四百五十万ヘクタール。これは、農地面積が百万ヘクタールも違っていながらも、この供給カロリーというのは二千キロカロリーを維持できるということになるんでしょうか。まずその点から教えていただきたいと思います。

針原政府参考人 委員御指摘のとおり、三月十八日の本委員会で、私が、四百五十万ヘクタールをもって二千キロカロリーの確保ができるという試算を出しているということを御説明いたしました。また、ただいま御指摘のとおり、五十七年に、五百五十万ヘクタールで二千キロカロリーが可能だという試算も出しております。

 五十七年の「八〇年代農政の基本方向」というのは、食料安保、日本型食生活、それから飼料の自給率の向上等をうたい込んだ上で、そのときの実力ベースで、二千キロカロリーというのは通常生活で一日最低限必要なカロリーだと言われておりますが、それをやった場合にどういう食生活かということを試算したわけです。

 今回も、得られるであろう農地面積、それと二千キロカロリー、その二つを前提に置いたのは同じでございます。ただ、その計算と食生活の中身は大幅に違っております。

 一つは、米の平年単収が一五%ぐらい伸びているということでございまして、昭和五十七年当時、五十四年のデータで試算しますが、四百八十二キロ、今回、四年前の試算では五百三十九キロ。四百八十二キロが五百三十九キロの単収、そういうような違いがございます。

 また、食生活の中身が大幅に違いまして、五十七年時点の試算によりますと、当時のお米の消費量は八十一キロ前後でございましたが、これを百三キロに上げる、二十キロ上げるという試算をしております。自給率の高いものをたくさん食べる。四年前の試算は、現在の六十一キロベースに対して、十キロ減らして五十一キロ。

 そのかわり、前回の試算では芋類を百三十七キロ食べるということで、芋類は多少多くなるんですけれども、むしろ米を多くしています。今回は、やはり百万ヘクタールも減らすとお米よりも芋類に傾斜せざるを得ないところで、二百八十二キロということで、今二十キロぐらいですから、十四倍ぐらいの違いがある。

 あくまでも、前提が、現在得られるであろう農地面積をベースとした試算をお出ししているということでございます。

神風委員 食料安全保障という観点でもう一点伺いたいわけでありますが、日本とブラジルでかつて共同で実施をしたセラード農業開発協力事業というのがあるかと思います。この事業というのは、一九七〇年代初頭のアメリカ政府の大豆輸出禁止が発端となって、当時の田中首相が、大豆の輸入国の多角化を目的に、大豆の新産地をブラジルにつくろうということで開始された。その結果、一九八〇年には総輸入量の一%未満であったブラジルからの大豆輸入が九九年には一二%まで増加をしたということでありますが、これは今どのぐらいまで増加をしているのか。

 また、昨今の食料需給の逼迫によって、このブラジルからの大豆というのが輸出規制をするような、そういった動きがあるのかどうか。

 さらに加えて、この日本とブラジルとの共同開発において、大豆取引で日本への輸入の優先権みたいなものが担保されているのかどうか。

 ちょっとその点について教えていただきたいと思います。

實重政府参考人 お答え申し上げます。

 ブラジルのセラード地帯の農業開発につきましては、一九七九年から日伯セラード農業開発協力事業により実施されております。世界の大豆生産に占めるブラジル産大豆の割合は、セラード開発前の一九七七年には一七%でございましたが、二〇〇七年には二七%に増大しております。

 御指摘のとおり、セラード事業の開始直後、一九八〇年には、我が国のブラジルからの大豆の輸入量は一%でございました。二〇〇八年には一五%になりまして、ブラジルからの大豆輸入が大きく増加しているところでございます。

 現時点では、ブラジルにおいて大豆の輸出規制の動きがあるとは承知しておりません。

 このセラード地帯で生産されました大豆は、必ずしも我が国が優先的に輸入するといったものではございませんけれども、現在、日本の商社も現地に進出して生産や流通の事業を行っておりまして、我が国の輸入先の多角化に貢献しているところでございます。

 また、近年、中国などの大豆需要が増大いたしまして、大輸入国として登場してきておるわけでございますが、ブラジルからの供給によりまして世界の大豆の需給が安定している面がありまして、このことは、間接的にではありますが、我が国の食料安全保障にも寄与していると考えております。

 さらに、今回の食料価格の高騰に際しまして、農林水産省といたしまして、新たな食料情勢に応じた国際的枠組み検討会を行いまして、農業投資の促進などの必要性を検討いたしました。また、これを具体化するために、外務省と一緒に、食料安全保障のための海外投資促進に関する会議を立ち上げたところでございます。こういった枠組みにおきまして、民間の農業投資とODAなどの公的支援を連携させまして、我が国の食料安全保障に資するような農業開発のモデルを検討していきたいと考えております。

神風委員 今の二つの質問に絡めて、本題に入りたいと思います。

 考えてみますと、わずか二十七年前と比較をして日本の農地面積というのは実に百万ヘクタールも減少してしまったということでございまして、さらに今、歯どめがかかっているかといえば、逆に、なおその減少に加速が加わっているという状況ではないかなと。相当深刻な状況であろうという気がいたしております。

 そうした危機感を背景にしての今回の改正案であろうかと思うわけでありますし、ある意味では、私自身は、日本の農政を社会政策から経済政策、産業政策へと転換していくという意味を込めた今回の改正案であるのかなという認識でおりますが、これは前回、大臣にも、日本の農政についての見解を伺いました。そのときに大臣は、社会政策として相当程度成功したけれども、産業政策としてはいかがなものかというような御認識を示されていたわけであります。

 今回の農地法の改正というのは、そういう意味で、日本の農政を社会政策から産業政策へと軸足を移すという意味合いが込められている、そういう御認識であるのかどうか、まずその点、大臣に御見解を伺いたいと思います。

石破国務大臣 そういう意味合いも私としては含んでおるつもりでございます。

 G8に出てみてつくづく思うのですけれども、アメリカとかオーストラリアと比べてみても、もともと余りに環境が違うので意味がないんですね。では、ドイツあるいはフランス、イギリスと比べてみた場合に、日本の農業はどうなんだろうかと。

 自給率なんというのは、フランスもドイツも一〇〇を超えている、イギリスも八〇、九〇というレベルになっている。それは何なんだろうかということを考えてみたときに、先進国だから農業がだめになるということは成り立たないんですね。G8の中で、農業がこういう状況になっているというのは、ある意味日本だけなんです。

 ただ、社会政策として、農村地帯と都市との所得がこんなに均衡しているというのは、やはりそれは大変なことだと思います。農村地帯と都市との所得が物すごく離れているということがあってはならないので、いろいろな政策を打つことによって農家所得と勤労者世帯の所得も近寄ってまいりました。農村と都市との所得の均衡というのも図られてきました。ですから、社会政策としては世界に類を見ない成功をおさめた、私はそのように思っております。

 しかしながら、委員御指摘のように、農地はどんどん減ります。高齢化は全然とまらない。高齢化が悪いとは言いませんが、後継ぎがいないという状況。そして、総産出額で見れば非常に停滞状況にございます。所得で見れば平成二年から十七年の間に半分になっている。これは産業としてはどうなんだといえば、それはほかの先進国と随分違うと思います。

 何が違うのかということを考えたときに、やはり、農地の集積、コストの下げ方というものにおいて相当の差があると私自身認識をしておりまして、やはり、やる気のある人に農地が集まっていく、そして、これであれば農業で食べていけるということで後継者がどんどんと生まれていく、そこにおいて農地というのは大きなかぎを持っていると私は思っております。

 したがいまして、社会政策としては大成功をおさめたが、農業がこれから先、産業としての持続可能性を維持するために、農地が本当に適正に利用されるということに着目をすることはどうしても必要なことだと私は思います。

神風委員 私自身も、そうした視点に立ったときに、今回のこの改正案、必ずしも否定するものではありませんし、一定程度時代的な要請にこたえているという認識を持っております。

 ただ、一点少し気になりますのは、今回の改正案の可能性として、先ほどちょっとセラード開発のことを申し上げましたが、性格は違いますけれども、例えば海外の資本が日本でそうした農業の事業を展開することというのは可能になるのかどうか。これは、農地の価格あるいは人件費を考えても当然想定はしづらいわけでありますが、法律として今回の改正案が成立をすれば、実態としては海外の資本であっても日本国内でそうした農業事業というのを展開できるということでよろしいんでしょうか。

石破国務大臣 そういう御懸念はごもっともでございます。

 海外の資本、すなわち外国法人によります農地の権利の取得につきましては、ほかの土地と同様に、現行の農地法におきましても、内国法人の場合と取り扱いを異にしているわけではございません。例えば、現行のリース方式によります特定法人貸付については、外国法人でも可能なわけでございます。

 したがいまして、今回の改正後におきましても、外国法人であっても、農地法で定める、農地のすべてを効率的に利用することなどの要件を満たすことがありますれば、農地の賃借権の取得は認められるということになります。しかしながら、当該外国法人が農業生産法人の過半の議決権を取得して経営支配を行うというようなことが認められることはございません。ですから、海外の資本が耕作できるようになることについての懸念というものはございましょうけれども、それが農地の取得あるいは経営支配を行うことはございません。

神風委員 次に、遊休農地対策について伺いたいと思います。

 これは、平成十七年の農業経営基盤強化促進法の改正によって体系的な整備がなされて、遊休農地に対する措置というのが実施をされているところでありますが、現状で、全国の耕作放棄地三十八万六千ヘクタールのうちのどれぐらいの面積がこれによって今対応されているのか、まずその数字から教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

高橋政府参考人 委員御指摘のとおり、平成十七年の農業経営基盤強化促進法の改正におきまして、いわゆる遊休農地対策につきましては、農業委員会の指導から始まりまして、都道府県知事の裁定によります賃借権の設定、あるいは市町村長によります遊休農地所有者等に対する措置命令等の体系的な遊休農地対策の整備ということが法的にはなされたわけでございます。

 しかしながら、基盤強化促進法に基づきます遊休農地に対するこのような措置につきましては、農業委員会の指導については各地でございますけれども、実は、それ以降の行政の段階におきます措置、遊休農地についての通知等以下の、今申し上げましたような利用権の設定、あるいは市町村長によります措置命令ということについては、制度上行われていないというのが実情でございます。

 したがいまして、今回は、このような実情を踏まえまして、遊休農地対策がよりきちんと発動し得るような改正案を御提出させていただいているところでございます。

神風委員 いや、十七年の改正によって特定法人貸付事業が行われているわけですね。それで、現状でどれぐらいの耕作放棄地がそういう形で設定をされて対応されているのか、その面積を教えていただけますか。

高橋政府参考人 失礼いたしました。

 十七年の特定法人貸付事業、いわゆるリース方式によります農業生産法人以外の法人の参入の状況でございますけれども、これにつきましては、平成二十年九月現在で三百二十の法人が農業に参入しているところでございます。その法人の経営しております面積につきましては、全体で九百五十ヘクタールということでございます。この九百五十ヘクタールのうち、遊休農地につきましては、約三〇%、三割の二百八十七ヘクタール余、それから遊休化するおそれのある農地につきましては、二百三十七ヘクタール、二五%程度というふうになっております。

神風委員 相当低い数字であろうかとは思いますが、この数字をどう分析、評価されているのか、あるいは、その後、この現地の調査というものは農水省として行っているんでしょうか。

高橋政府参考人 今申し上げましたように、リース方式によります農業参入の法人の概況につきましては、毎年、法人の組織形態、あるいは業種、栽培品目、借り入れ面積等について調査をしているところでございます。

 このほかに、平成十七年から始まりまして徐々にこの参加企業数はふえてきているわけでございますけれども、平成十八年の三月時点で、当時の百五十六法人を対象にアンケート調査を行っております。その際には当該法人の経営概況というようなものも調査をしているところでございまして、スタート当初ということもございますので赤字法人が半数を占めておりますが、既に黒字を達成した法人も一割程度ございました。また、現状赤字であっても経営次第で当初の目標を達成できるというふうに見込んでいる法人も三割強あったところでございます。

 特に私どもが意を用いましたのは、参入に当たってどのような苦労、障害があったかということでございます。これについては、まず、そもそも農地を改良していかなきゃ生産性が上がらないというような話、あるいは希望していた農地を確保できなかった、あるいは初期の必要資金の確保がなかなか難しかったということで、農地そのものの問題あるいは資金手当ての問題ということを挙げていた企業が多かったところでございます。

神風委員 私も、平成十七年の農業経営基盤強化促進法の改正案の審議のときに参考人としてお越しをいただいた大建工業の遠藤社長さんのところにその後伺いまして、現地を拝見させていただきました。

 現地というのは、福島県喜多方市の雄国地区で実施をされた国営総合農地開発事業の農地であるわけでありますが、既にこの雄国地区全体で五十八ヘクタールが遊休農地化、耕作放棄地化している。中には開発された後一回も耕作されることのない農地も相当あるということでありまして、きょうこちらに資料をお配りはしておりませんが、これまで二回ほどお配りをしましたけれども、現地を見ていただければもう一目瞭然、農地と呼べるような状況ではないのが現状であります。

 これぐらいの石れき、石の塊が畑の中に相当散在をしている。あるいは、それを除石した山が畑のわきの方に高さ二メートル、三メートルぐらいになって積もっている。あるいは、もう既に松の木が直径十センチぐらいまで育っている。こういうような状況でありまして、実際に農作物をつくれるようになるまで四年ぐらいかかったというお話を遠藤社長はされていて、実際に何をつくっているのかといえば、タラの芽を栽培しているということでございました。

 それと同じように、そのときにはワタミファームの武内社長さんが参考人としてお見えでありまして、これも後で会社の方に伺っていろいろお話を伺いましたが、やはり武内社長がおっしゃっていたのは、特に国営の土地改良事業、農地造成事業というのは全く土づくりを考えていない、現実に行われているのは土木事業そのものだ、実際に入ってみると、除石、抜根、伐採から始めなければとても植物を育てられるような状況ではないというお話をされていて、結局、お二人とも、当初は本業にプラスになるであろうということで参入をされたわけでありますけれども、大変な目に遭ってもう懲り懲りだという印象をお持ちでございました。多分、この事業の場合は実際にそういう面が相当あって、そういう低い数字にとどまっているのではないかなという気がしております。

 それはそれとして、今回の改正案についてちょっと伺います。

 今回の改正案の場合には、そうした一定の条件のもとで耕作放棄地になっている農地を、そうした制限を外してすべての農地を対象にしていくということであるわけですから、ある意味では、耕作放棄地の対策というか耕作放棄地の解消という点でいうと後退するようなことも考えられるのではないかなと思いますが、その点いかがですか。

高橋政府参考人 十七年の農業経営基盤強化促進法の改正につきましては、委員御指摘のとおり、いわゆる参入対象区域等について遊休地あるいは遊休地となるおそれのある土地というような形になっていたわけでございますけれども、今回の法律改正の趣旨につきましては、先ほど大臣が申し上げましたとおり、今後の日本の農業あるいは農地という現状を踏まえた上でいかに多様な担い手にそこの農地を使ってもらうのか、そういったような観点から今回の改正を行ったところでございます。

 したがいまして、今回、法人につきましては、農業生産法人以外の法人ということで、賃借権につきましてはその外形基準を問わないということにしておるわけでございますけれども、その場合には、今委員御指摘のような既存の外部の企業、建設業者あるいは食品企業というようなものばかりではなく、あるいは地域におけます集落営農組織、現時点では、この集落営農組織を法人化する場合には農業生産法人という要件の中でしか法人化ということはできないわけでございますけれども、今後は、この法人ということについては、賃借による場合におきましては、農業生産法人以外の場合であっても、地域の住民、地域の農業者、これは非農業者も含めてでありますけれども、集落全員が構成員となっているような集落営農組織や、地域の土地をどのように守っていくかという観点から、営農を進めながらきちんと農地を管理していくといったようなものについても今回の対象となるということでございます。

 したがいまして、要は、対象地域についても確かに広がるわけでございますけれども、受け皿となる経営体についても非常に多様な形で今回は対象にしていくということで、耕作放棄地について対応がおくれるということはないというふうに考えております。

神風委員 ただ、当然ながら条件のいい農地から参入が始まるわけですから、そういう意味では、耕作放棄地にわざわざ好きこのんで入っていく方はいないと思いますが、いかがですか。

高橋政府参考人 御指摘のとおり、先ほども申し上げましたように、今回、いわゆる対象地域という概念については、今までのリース方式とは異なりまして、この制限というものはなくなるわけでございますけれども、一方、もう一つ、申し上げましたように、従来のような形での法人形態だけを今回想定しているわけではない。逆に言えば、地域で内在的な集落を基礎といたします法人、そのような法人についても非常に多種多様なものが今後想定され得る。

 そういうような多様な法人形態というものが今後想定されるということで、その際には、当然のことながら、地域全体の資源、これは農地だけではなくて水等の問題もございますけれども、そういったものをきちんと維持していく。これは、この農地制度だけではございませんで、他の中山間地域に対します諸制度とあわせて、このような地域の農地の確保あるいは維持管理ということができるというふうに考えております。

神風委員 いずれにしても、恐らく耕作放棄地の対策というのは別途検討する必要があるのであろうと思っておりますので、これはまた次の機会に質疑をしたいと思います。

 ちょっと今のに関連して、細かい話で恐縮でありますが、今申し上げたとおり、今回から制限なくすべての農地が対象になっていくということであって、私は個人的に大建工業さんであるとかワタミファームさんとお会いした関係で強く思うのかもしれませんが、そういったこれまで特定法人貸付事業で相当御苦労されてきた参入者の皆さんというのも相当これまでいらっしゃるんだと思うんですが、それに対して今回何らかの配慮をされるような御予定はないのでしょうか。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

高橋政府参考人 新たに農業に参入されてこられました方々についての支援措置については、従来から、参入に当たりまして、必要な情報提供の段階から、実際に参入した際に、簡易な土地基盤整備などに対します助成、販路開拓に対します支援、あるいは金融措置、農業用機械、施設等の取得についての日本政策金融公庫によります低利な資金の融通ということを順次拡大してきているところでございます。したがいまして、このような政策措置を活用いたしまして、新たに参入される方々の経営の安定に資してまいりたいというふうに考えております。

神風委員 あるいは、このお二人のような農地の借り手が、これは土地改良投資とまで呼べるかどうかは別にしても、耕作放棄地の土づくりをされて農作物が収穫できるようになったわけでありまして、そうした場合の有益費の償還のルールというのはどういうふうになっているのか、その点、教えていただきたいと思います。

高橋政府参考人 有益費の償還でございますけれども、これは基本的に、民法では、賃借人が投資を行いまして、投資回収前に貸借関係が終了しなければならない場合には、農地所有者に対しまして支出した金額または増価額の償還を求めることができるということになっております。また、土地改良事業の場合には、土地改良で費やされました有益費を償還する場合は民法の規定にかかわらず増価額ということになっているのがまず法律上の整理でございます。

 ただ、この有益費問題につきましては、土地改良事業にもございますけれども、生産現場におけます処理の実態というのは非常に千差万別というふうになっております。なかなかこれを法令等で制度上画一的に取り扱うことは難しいというふうに私どもは理解しております。

 したがいまして、具体的な有益費の償還方法につきましては、当事者でございます賃借人、賃貸人との間で事前に取り決めておくということが重要であるというふうに考えております。私どもといたしましては、このような実態にかんがみまして、例えば農地の利用集積計画、利用権設定等におけます集積計画の際にも、これは試案という形でございますけれども、この有益費については参考の形で示しております。

 なお、そのような有益費、当事者間、賃貸人、賃借人の間の問題のほかに、耕作放棄地の再生利用に必要な土づくりにつきましては、国としても、必要な深耕、整地等の農地整備、あるいは土壌改良に対しまして国としての一定の支援、交付金というものを行って支援してまいりたいというふうに考えているところでございます。

神風委員 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、大臣に一問伺いたいと思います。

 今回のこの改正案によって、恐らく食品関連産業のようなところというのは相当メリットが出てくるのかなという気がいたしますが、それ以外の、ほかの産業の一般法人の場合に、一体どれくらいこれによって本当に参入がされるんだろうかと。ある意味では、私の感じでは、これはあくまでも個人的な感想として、ここまでハードルを下げても、冷静な経営判断をすると農業に参入するというのはなかなか困難なのであろうというのが正直な思いであるわけであります。

 ただ同時に、今、相当いろいろな面で農業に対して過剰な期待が世間的にも出ているのが通例でありまして、場合によっては、派遣切りに遭った人が農業に参入して、実態を知って半日でやめてしまうというようなこともいろいろと報道されているわけであります。場合によっては、農業の実態を正確に認識していないような、そういった善意の一般法人が、今回の改正案によって農業に一気にかなりの数が参入をした、しかしながら、入ってみたら、こんなはずじゃなかった、とてももうからないわということで、数年たったらば一気に撤退をしてしまうというようなことも十分に予想し得るのではないかなという気がしているんです。

 そこら辺に対しての対応を大臣としてどのように考えられているのか、教えていただきたいと思います。

石破国務大臣 いろいろな事例は今委員から御紹介があったとおりです。また、局長からも答弁を申し上げました。

 例えば、某衣料メーカーというんですかね、ユニクロという会社がありますが、あれも農業をやろうとしました。すぐ失敗して撤退をしました。あるいはオムロンもそうですね。これに共通しているのは、両社とも農業とはほとんど縁のない会社であった、そして創業者、オーナーの強い意思というものがあったということだと思います。よし、やってみようかということですし、どうもうまくいかない、さっと引くというような、農業と余り今まで縁がないということ、そして創業者の強い意思によって、参入も容易であったかもしれないが、撤退も早かったということです。

 しかしながら、食料に関する企業の場合に、例えばトマトをつくるのでもどんなに大変かということをよく知った上で入ってくる。そして、最初の二年や三年は絶対もうかるわけがないということでやってきた。やはり成功事例の後ろには物すごい苦労があって、そして成功事例の裏には何倍かの失敗事例があって、こういうことにはよく気をつけてくださいねということを私どもは申し上げていかねばならぬと思います。

 そしてまた、個人の場合にも、委員御指摘のように、やってみたけれども半年でやめちゃったというようなこともございますので、ほかのがだめだから安易に農業にということがないように、私どもとしてもいろいろ配慮をしていかなければならないと思っております。さればこそ、例えば農の雇用事業などというのは一年では短いという御指摘もいただきますが、とにかく一年ちゃんと研修してスキルを身につけて就農してくださいということなのであります。

 今回、多様な担い手というものを考えますときに、よほどの覚悟をしていただかねばならないということ、そしてまた、それを超えるだけのサポートというものは国として用意をいたしますけれども、何でもかんでも参入すればそれでいいというようなことにはならないのだということは、この場の議論を通じても明らかなことだと思っております。

 私どもとして、貸しやすく、借りやすく、そしてまた農地の面積の集積というものも容易にしたいと思っておりますが、それだけでできるわけではございませんので、いろいろなノウハウを持たれたところがきちんとした修練を積まれた上で就農されるということに努力をしてまいりたいと思っております。

神風委員 確かに、農業には大きな夢もありますが、その前には大きな困難もありますので、そこら辺のところも、農水省としても、よく関係者の皆さん方に広報活動も含めてお示しをいただいて、この改正案に取り組んでいただきたいなと思っております。

 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

遠藤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。よろしくお願いをいたします。

 まず、農地、農地法の改正ですから農地について伺うわけですが、大変大きな改正に踏み出されたという意味においては、大変敬意を持ってこの法律案を眺めさせていただいております。

 一九六一年、昭和三十六年の農業基本法の制定以来、一九九九年、平成十一年の食料・農業・農村基本法を経て現在に至るまで、食料の安定供給を確保するため、あるいは食料自給率を向上させるために、政府として、その都度その都度、このくらいの農地が必要なのだ、あるいは最低ラインなのだということを表明していらっしゃったわけでございますけれども、その歴史的な経緯について若干の御説明を、具体的な数字を挙げて御説明をいただきたいと存じます。

吉村政府参考人 まず、現在の食料・農業・農村基本計画でございますけれども、この中では、平成二十七年の農地面積として四百五十万ヘクタールを見込んでいるわけでございます。これまでの政策努力により、この見込みは達成可能というふうに考えております。

 なお、平成十二年に策定した基本計画におきましては、平成二十二年時点で確保される農地面積を四百七十万ヘクタールというふうに見込んでいたところでございますが、平成二十年の農地面積は四百六十三万ヘクタールということになっておりますので、既にこれを下回っているという状況でございます。

川内委員 いやいや、最初からの説明をしてくださいと、きのう言っていたじゃないですか、一九六一年からと。

吉村政府参考人 基本計画以前は長期見通しというような形で示していたわけでございますけれども、第一回の長期見通しが、旧基本法に基づくものということになるわけでございますが、昭和三十七年から昭和四十六年の見通しということで、四十六年の見通しとして六百二十七万ヘクタールを見込んでおりました。それから、第二回が昭和四十三年から昭和五十二年を期間としておりまして、五百七十五万ヘクタールを見込んでいます。第三回は、昭和五十年から昭和六十年を期間といたしまして、五百八十五万ヘクタールを見込んでおります。それから第四回、これが昭和五十五年から平成二年を期間としておりまして、五百五十万ヘクタールを見込んでおります。第五回、これが平成二年から平成十二年を期間としておりまして、五百二十万ヘクタールを見通している。それから第六回が、平成七年から平成十七年でございまして、これでは四百九十万ヘクタールを見込んでいた、こういうことでございます。

 それ以降が新基本法に基づく基本計画でございまして、それは先ほど御説明したとおりでございます。

川内委員 現在は四百五十万ヘクタールという目標である。当初は六百二十七万ヘクタール。一九六一年時点では六百二十七万ヘクタールが、これは何のために必要だというふうに言っていたんですかね、政府としては。何のためにこれだけの農地が必要だというふうに説明していたんですか。ちょっとそこをまず。

吉村政府参考人 これは農業生産の長期見通しにあわせて出された農地面積の見通しということでございまして、それぞれの時点で、農業生産について、主要な品目ごとでございますけれども、この程度の生産をしていくという見通しを示し、そのもとで、当然これは作物構成それから耕地利用率がかかわってまいりますけれども、それとあわせて、ただいま申し上げましたような農地の面積を長期の見通しとして示していたというものでございます。

川内委員 私が読んだ本では、今いろいろお示しいただいた数字を維持することが食料安全保障の最低ラインであるというふうに政府は言っていたのだというふうに書いてあったんですが、そうではないわけですか。

吉村政府参考人 旧の基本法時代の長期見通しは、先ほど御説明したような性格であるというふうに理解しておりまして、現在の基本法に基づきます基本計画につきましては、まず農地面積につきましては、これまでのいわば趨勢、当然、現状の農地面積というのがございますので、それを趨勢を勘案するとこれぐらいの面積に十年後はなる、それについて政策努力で、これは耕作放棄地の発生を抑制するというようなことが主になりますけれども、こういったことでどの程度を確保するか、こういった観点から、農地面積については出させていただいております。

 一方、基本計画の中では、それぞれの品目ごとの生産の見通し、それから自給率というものもございまして、これについては、それぞれの品目の生産の見通し、これは品目構成、それから耕地利用率、それから今申し上げましたような形で出てまいります農地面積、こういったものを当然整合性がとれたものとしてお示しをしている、こういうことでございます。

川内委員 もうちょっと端的に、わかりやすく説明をしていただきたいんですけれども。

 そうすると、今までの日本政府というのは、このくらいの農地が必要なのだ、このくらい農地を確保するのだという目標を持っていなかったということなんですか。

吉村政府参考人 これまでの基本計画におきましても、それから農業振興地域の整備に関する法律、農振法におきます農用地区域の中の農地面積の確保につきましても、それぞれ、これは見込むというような形を言葉としては使わせていただいておりまして、明確に目標という形はとっておりません。

 ただ、今回の農振法の改正案の中で、農用地区域内の農地の確保について、目標ということを明確に記載させていただいているところでございます。

川内委員 では、この間、食料自給率が下がり続け、そしてまた農地が減り続けているというのは、そもそも政府が農地確保に関するきちっとした目標を持っていなかったからだ、だからこの法律を提案するのだということでよろしいですか。

吉村政府参考人 先ほど御説明させていただきましたように、現在の基本計画で定めている二十七年の農地面積、四百五十万ヘクタールですが、これは見込んでいるという言葉を使わせていただいておりますが、ただ、その見込みの計算の方法といたしましては、先ほど御説明いたしましたように、十六年現在の農地面積四百七十一万ヘクタールがございますが、それが趨勢でいわば減少していった場合には平成二十七年時点で四百三十一万ヘクタールになる、こういうふうに予想されていたものを、耕作放棄の発生抑制等のいわば政策効果、政策努力を見込んで、これが十九万ヘクタールというふうに見込んでおりますが、そういったことで算出したものでございますので、何ら政策努力がなく見込んだということではなくて、一定の政策努力を加味して見込んでいるものでございます。

川内委員 いや、私が聞いているのは、一九六一年に六百二十七万ヘクタールであったものが四百五十万ヘクタールの見込みに落ちています、さらに実際の農地面積も見込みと同じように落ち続けています、だから食料自給率が下がり、農地が減っているのだから、この法律を出して農地の減少に歯どめをかけましょうね、農地を確保することがまず農業を再生させる第一歩なんですよという趣旨で、この法律を提案しているんですかということを聞いているんですけれども。

吉村政府参考人 現在の基本計画における見込みの算出方法については先ほど御説明をさせていただきましたが、ただ、委員御指摘のとおり、農地面積の減少が続いているということは事実でございます。

 そういったことで、今般、御提案申し上げている農地制度の改正案におきましては、初めて明確に農地転用規制について強化をする政策を打ち出しておりますし、また、国として、農地の確保に積極的な役割を果たしていくということも明確にしているところでございます。

 さらに、先ほども御説明いたしましたが、農振法の中でも、国として確保すべき農用地区域内の農地面積の目標、繰り返しになりますが、これまでは見込んでいると言っていたものを目標ということで、その点も明確にさせていただいたところでございます。

川内委員 今までは見込みを算出していただけで、結局、現状を後追いしていた、政府としてこれだけの農地を確保するのだという明確な目標はなかった。今回、見込みではなく、農振法の中で目標を定めるようにいたしますと。それはもう法律を読めばわかりますから、そうなっていますねと。

 私は、なぜそうなっているんですかということを繰り返し聞いているんですよ。今までの反省の上に立っておるんですねということを聞いているんですよ。今までも、何にも間違っていないんだ、だけれどもこうしたとおっしゃるのか。今までが、ずっと食料自給率も落ちているし、農地の面積も少なくなってきているから、やはりその反省の上に立ってこの法律を提案したんです、そういうことですねということを聞いているわけで、施策の内容を聞いているわけでは全然ないですよ、私は。何回も何回も繰り返し同じことばかり言っているけれども。

石破国務大臣 そういう御理解で結構だと思います。

 農地が、どんどん耕作放棄地がふえて三十九万ヘクタールなんというのは、もう何度も言っているお話です。そしてまた、農地転用というものが、違反転用だけでも年に一万件近くあるわけです。それはやはり、農地が農地として利用されないということが確かであったからこんなことになっておるのであって、農地の集積というのは図られねばならない。農地は農地として、本当に国民に対して食料がきちんと供給されるように使われなければならない。そして、農村コミュニティーの中において、農地というのは適正な役割を果たさなければならないし、佐々木委員からつとに御指摘があるように、多面的機能というのも維持されなければならない。

 農地というものは国民全体の財産であるというようなことについて、私ども今までの現状を反省し、どうすればいいのかということについて具体的な施策をいろいろ講じているということがこの法律のバックグラウンドだと私は理解をしております。

川内委員 であるとするならば、農村振興局長、私は、この第一条の目的は書き込み方が甘いと思います。目的規定の中で「農地を農地以外のものにすることを規制する」というふうに言っているんですが、大臣、農地を農地以外のものにすることを規制するということは、農地以外のものになることが前提なんですね。だから規制すると言っているんです。

 私は、農地はもう一ヘクタールたりとも減らせないんだ、もうこれ以上減らしたら食料安全保障上大変なことになるという意識をみんなで共有できるとすれば、書かなくてもいいんじゃないか。農地以外のものにすることを規制するなんということをわざわざ目的規定の中に入れるというのは、今の大臣の御答弁、御決意の中からは、この目的規定はちょっとそぐわない。農地を農地として利用する、もうそれだけでいいと思うんですね。

 ここは水かけ論になりますから、答弁はいいです。いやいや、ここは演説合戦じゃないので、私は演説していいけれども参考人は答えていただければいいので。

 それでは、現在の農地面積と、そのうちの減反農地面積、それと耕作放棄地面積をそれぞれお答えいただきたいと思います。

吉村政府参考人 まず、農地面積は先ほど申しましたとおりでございますが、そのうちで生産調整の対象になっている面積は七十五万ヘクタールということでございます。

 また、耕作放棄地につきましては、センサスにおきまして三十八万六千ヘクタールということになっております。

 他方、今回、耕作放棄地について全国調査を行いました。これについては、センサスの考え方とは少し違いまして、一定の手を加えれば農地に復元することが可能な耕作放棄地を把握しようということで調査したものでございまして、そういったものにつきましては、全国で十四万九千ヘクタール、また、農用地区域の中に限りますと八万三千ヘクタールというふうに推計をしているところでございます。

川内委員 一九六一年以来、減った農地のうち、転用されてしまってもう農地には戻らないという面積はどのくらいになるんでしょうか。

吉村政府参考人 三十六年の農地面積が六百九万ヘクタール、また平成二十年の農地面積が四百六十三万ヘクタールで、百四十六万ヘクタールがこの間に広い意味での壊廃が行われた、こういうことになるわけでございますけれども、そのうちで、ただいまの壊廃のうちで転用で壊廃になったものというのはちょっと把握しておりませんので、今計算をして、後ほど御説明したいと思います。

川内委員 いや、きのう、質問取りの中で、要するに、六一年以来転用された農地の中で、大臣が許可した面積、都道府県知事が許可した面積、市町村長が許可した面積についてそれぞれお調べをいただいて、あした答えてくださいねということを申し上げてあるので、そのトータルを答えていただければ、転用されてしまって農地には戻らないという面積になるし、その内訳は、国、県、市町村とそれぞれ分割されると思うんですけれども。

吉村政府参考人 ただいまの転用権者別の転用面積については、申しわけございません、ちょっと手元に今数字がございませんので、計算をしてお答えをしたいと思います。

 先ほどちょっと御説明をしました中で、壊廃面積の累計、これは、昭和三十七年から平成二十年までで、全体では二百五十一万ヘクタールということでございます。また、拡張面積の累計が百五万ヘクタールで、差し引きが百四十六万ヘクタール、こういうことになっているということでございます。

川内委員 石破大臣は、今のいろいろなやりとりを聞いていていただいて、大臣として、日本に食料安全保障を確立し、そしてまた日本政府が展開する攻めの農政というものをしっかりと果たしていく上で、どのくらいの農地が必要というふうにお考えになられるかということをお聞かせいただきたい。要するに、もう農地を減らすことはできないというふうにお思いになっていらっしゃるかということを教えていただきたいんですけれども。

石破国務大臣 先ほど来お答えをいたしておりますように、平成二十二年三月を目途に食料・農業・農村基本計画を改定いたします。ここにおいて目標を設定するということにしておりますので、今幾らということを私が明示的に申し上げることはなかなか難しゅうございますが、現在の基本計画で、平成二十七年、農地面積四百五十万というふうに見込んでおります。

 大体これと近似した数字になるかもしれませんが、いろいろな計算を行わねばなりません。人口がどうなるか、高齢化がどうなるか、あるいは今回の農地法がどうなるのかということも含めまして、可変的な要素がございます。

 しかしながら、私として、食料安全保障といいましたときに、自国でどれだけつくるか、適切な輸入アクセスをどれだけ確保するか、そして備蓄をどれだけ行うかということについてもあわせて議論を行っていかねばならぬことでございます。

 その中において、やはり食料自給率が将来的には五〇%ということを申し上げておるわけでございまして、これだけは確保しなければならないという国としてのかなり明確な意思というものがなければ、後から反省ばっかり幾ら述べてみても何の役にも立たないわけでございまして、何のためにこれだけの農地が必要なのか。先ほど、規制ということについて、そんなことは書く必要ないじゃないかというお話もありましたが、やはり所有権というものがございまして、所有権絶対ということを考えましたときに、その処分は絶対にいかぬよということにはならないわけですね。

 しかしながら、何のために農地を確保しなければならないのかということをクリアにしていかなければ、やはり安易な転用というものは行われる。農地法は、農地が農地として利用されるということを目的につくっておるものでございますので、やはり規制というものも必要なのではないか。しかし、それがなぜ必要であり、その前提として、なぜ農地を確保しなければならないのかということについて、国家として明確な意思を持ち、責任を持たねばならない数字になると思っております。

川内委員 そこで、大臣、私は減反というものに、生産調整という言い方をするわけですが、非常に疑問を持っておりまして、まず、お役所の方から、我々は減反、減反と言うわけですけれども、減反のために今まで使った税金の総額を教えていただきたいと思います。

本川政府参考人 これまで米の生産調整につきましては、昭和四十六年度から本格実施をしてきております。現在までの間に、主食用米から麦や大豆等への転換を促進するためのいわゆる転作の助成金、これを四十六年度から二十年度まで、決算額の見込みなり決算額のベースで合計いたしますと、約七兆円になっているところでございます。

川内委員 約七兆円の国民の皆さんのお金を使いながら、日本の農業をある意味ちょっと衰退させてきたというところがあるのではないか。

 そこで、石破大臣に端的に伺いますが、私は、この生産調整あるいは減反、いわゆる減反と呼ばれるものは廃止すべきであるというふうに思いますが、大臣の御持論を聞かせていただきたいと思います。

石破国務大臣 これは、では、生産調整は一切やめ、一、二の三でみんな好きなだけつくりましょうというと何が起こるかというと、どこかで収益均衡点に達します、間違いなく、それは。ただ、その過程において何が起こるかということを考えたときに、今の米生産の現状にかんがみたときに、大規模でお米だけで生きていこうという人から真っ先に倒れるということが想定をされます。では、それでいいのかといえば、それでいいという人はだれもいないと思います。

 しかし、今のまま、現行のまま続けたとすれば、これまでのトレンドが引き延ばされることになりますので、それもまたいかがかと。生産調整を守っていない人が三割ないし四割いるわけで、生産調整しなければ懲役五年とか、そんなことにでもすれば話は別ですが、この国の運営の仕方としてそういうのが正しいとも思われないわけでございます。

 そうすると、何が一番いいのかということについて、これは議論すること相ならぬということではなくて、この場合にどうなる、この場合にどうなるという、いろいろな前提を明らかにした上でいろいろなシミュレーションというものは行ってみなければなりません。

 以前、七年、八年ぐらい前ですが、自民党で、生産調整を全部やめたらどうなりますか、シミュレーションをやってくださいということを私は一議員として発言をして、農林水産省で行ったことがあります。その結果は、やはりこれはちょっとひどいねというものでございました。では前提をどのように置けばどうなるかということを皆が共通認識として持った上で、どうするのが一番よいのかという議論がこれから行われるべきだと私は思っております。

 持論を述べよというお話ですが、私自身、ある意味でそのシミュレーションは未知との遭遇みたいなところがありまして、こうなるとこういうことが起こるのかというようなことが、相当の精緻な前提と計算の上に委員あるいは生産者、あるいは消費者の前に明らかになって、何をすれば一番いいのか、そして国民の税金の投入の仕方として何がいいのかということを、真摯な議論を行うことが必要だと思っております。

 いろいろな前提というものが頭にきちんと入っていない上で持論を申し述べることは、それはかえってよろしくないと思いますので、ここであえて持論を述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。

川内委員 まさしく、石破大臣がかつて農水省に御指示をされたことが本日の日本経済新聞に、農水省が減反を見直した場合、作付面積と米価がどのように変化するか、五つのシナリオが出たということで発表されております。

 このシナリオの五ですけれども、減反を廃止すると、作付面積が六十万ヘクタールふえて、米価は短期的には六十キログラム当たり六千円ぐらいまで下がるが、その後、持ち直して九千七百円になるというようなシナリオが発表されておりました。

 今、六十キロ当たり一万四千円とか一万五千円というふうに聞いておりますが、中国の一番高い部類のお米が六十キロ九千円、価格差が六千円ぐらいということでございます。国内だけで見たときに、値段が急激に下がりました、需要はふえます、しかし、総トータルの売り上げはなかなかのしていかないということも考えられる。しかし、たくさんつくって、日本のお米は品質が高いですから、どんどん輸出できるようになる。要するに、中国の六十キロ九千円のお米と日本の九千円のお米は日本の方が国際競争力があるのだということになれば、どんどん輸出ができる。それによって、たくさんつくっても供給をすべてカバーすることができるのではないかというふうに私は考えます。

 大臣、米価が六十キログラム当たり九千円程度まで下がれば、安全で品質のよい日本のお米というのは世界じゅうに輸出できるようになるというふうに私は思いますが、大臣はいかがお思いになられますか。

石破国務大臣 そういう説は私も幾つも読みました。そうあるといいなと思います。

 ただ、そうなった場合に、まず、あれだけ広い中国で、どこでどのような米がどれだけ生産されるのかということについて、そしてそれがどういう値段になるのかということ、それは中国の人口がどうなるのかということもあわせて、そして、中国農業の一番のウイークポイントは水が十分にないというところにございます。ここをどのように考えるかは、相当に精密な計算が必要だと私自身思っております。

 そして、日本農業が仮に委員がおっしゃるようなところに着地をするにしても、それまでにどのようなことが起こるのか。その間に、本当に農業を担うべき担い手というものをあえて使うとするならば、それから先に倒れていくみたいなことが起こったらば、その委員がおっしゃるようなことは実現をしないわけですね。中国でどういうふうになっていくか、そして日本の米生産の構造がどう変わっていくかということについて、幾つもの前提と仮定計算が必要なのだと思っております。

 委員がおっしゃいますような説を唱えられる方、委員がおっしゃいますほかにも幾人かの方がそういう計算をなさっておられます。私自身として、いろいろな計算というもの、いろいろな御所論というものがどういうような前提に基づいてなされたものなのかということについて、すべて精密に分析をした上で、この場の御議論、国民的な御議論に供したいと思っております。

川内委員 担い手が先に倒れたら困るのだという大臣の御答弁ですが、そもそも、農地の集約は進んでいませんね。六十五歳以下の青年の男子のいる主業農家の割合も減り続けていますね。農水省が農政の根幹として進めてきた農協のシステム、そして農地のシステム、そして食糧管理というか生産調整というか減反というか価格の維持というか、それらの農政の三本柱と言ってもいいものがうまくワークしてこなかった。その反省はみんなにある。その上で、農地法の改正なりというものが出てきているわけでしょう。

 そうすると、では、国内だけで、閉じた世界だけで農政を考えるのではなく、もっと大きな世界で農政を考えていくということも、そろそろオール・ジャパンで検討を当然にしなければならない事柄であろう。その辺については認識を一致できるというふうに私は思っておりますので、また今後、議論を続けさせていただきたいと思います。

 終わります。

遠藤委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 るる質問してまいりましたが、きょうは、転用規制について、現状における実態を明らかにしながら、どう規制強化をしていくのかということを議論していきたいというふうに思っています。

 農水省が七日発表した二〇〇八年の違反転用件数は、先ほど大臣も一万件と言っていますけれども、八千百九十七件でした。そのうち、原状回復などの勧告を受けた件数は七十九件、残りの九割近くが追認で転用許可を受けた形になっています。違反していたはずの転用がこれほどの割合で事後的に許可されるのは余りにも不自然と思うんですが、追認されている理由についてお聞かせ願いたいと思います。

吉村政府参考人 まず、違反転用、それからその中で追認が行われている件数については、委員が御指摘になったとおりでございまして、七千二百二十七件、約八八%が追認をされている、こういう状況でございます。

 ただ、違反転用事案の中には、農地の所有者などが農地転用許可制度を正確に理解をしていない、あるいは農地を非農地として認識していたというような、これも問題なんですけれども、一方でそういった事情があるのかなということは考えられるものがあるわけでございます。

 こういった事案のうち、農地転用許可基準上、申請があれば許可が見込まれる、それから、始末書なんかを出していただくわけですけれども、そういった内容から見て今後違反を行わないことが確実と認められるものなどにつきまして、都道府県の判断におきまして事後の許可申請を受け付けて許可を行っているというふうに考えております。

 しかしながら、違反転用の追認許可は決して望ましいわけではないというふうに考えております。

 特に、現在の食料状況の中で、食料供給の最も基礎的な生産基盤である農地の確保についての重要性が増しているということは、本日の御審議の中でも一貫して御指摘されているところでございます。そういったことを踏まえて、昨年十一月二十八日に、各都道府県、それから都道府県を通じて農業委員会に対して、違反転用の是正などに関する取り組みの強化について通知を発出したところでございます。その中で、仮に追認許可ができるような事案であっても、まずは原状回復を求めるかどうか十分検討してもらうように助言、指導を行ったところでございます。

 また、今回の改正案におきましては、行政代執行制度の導入、罰則の引き上げといった制度の充実を盛り込んでいるところでございますので、こういった措置と相まって、違反転用の防止、早期是正等の取り組みを一層促進していきたいというふうに考えております。

菅野委員 今言ったように、本当に農家が無理解で転用しているなどというのは違うというふうに私は思うんですね。意図してそういうふうにやっているという状況が存在するんだというふうに思っています。

 それで、次に、農業振興法で定められた農用地区域は原則的に転用禁止になっているはずですが、農用地区域内の優良農地が転用されている事由もあるわけですね。

 これはことしに入ってから中日新聞が連載して取り上げた事例ですが、愛知県の豊田市では、小作料の百倍以上の賃料で優良農地が物流会社の倉庫として貸し出されていました。名前を出して恐縮ですが、トヨタの子会社が昨年に開業した物流センターは四・五ヘクタールです。四ヘクタールを上回っていますから、農用地区域からの除外と転用許可に当たり、国がかかわっていることになります。一帯は、転用許可要件の一つである土地改良事業から八年という期間は過ぎているようですが、土地改良事業で国、県からの多額の税金が投入された農地です。

 このような優良農地がなぜ転用されるのか、このようなことで耕地の維持ができるのか、この点についてお答え願いたいと思うんです。

吉村政府参考人 農地転用許可制度は、もちろん優良農地を確保するという目的で、転用案件があれば、それを農業上の利用に支障が少ない農地に誘導するということを目的としているわけでございまして、実際に数字で見ますと、例えば平成十九年で見ますと、転用面積の四分の一は市街化区域の中の農地で行われております。また、転用許可が行われたもののうちでも、市街化が進んでいる、あるいは集団性がなくて原則許可可能な二種、三種農地、こういうふうに区分をしておりますが、この農地が四分の三を占めているという実態にはございます。

 ただ、委員御指摘の事例にもございますように、これまで時々の経済社会情勢のもとで、規制緩和の方向で制度改正を積み重ねてきたということも事実でございます。そういったことで、御指摘のような優良農地の転用事例も見られるところでございます。

 しかし、先ほど来の議論でもございましたように、食料をめぐる情勢も大きく変化をしておりまして、農業の最も基礎的な生産基盤である農地を確保する必要性は高まっているというふうに認識をしております。

 このため、農林水産省といたしましては、まず、十九年の三月に通知を発出しておりまして、特に、農用地区域からの除外に当たりまして、これまで使われてきた地域の農業振興に関する計画を市町村が立てて、それで農用地区域からの除外、転用と農業振興の内容を明確化するというような運用の厳格化を図ったところでございます。

 また、御審議いただいている改正案の中でも、現在では転用許可が不要になっております病院、学校等の公共施設、これも許可対象に移行する、それから違反転用に対する罰則の強化、さらに、都道府県が農地転用許可制度について適正な運用を行っていない場合に国が都道府県に対して是正の要求を行う、さらに、農用地区域からの除外の要件の厳格化ということで、担い手の経営に大きな支障が出るような場合には除外を認めないというようなことを盛り込ませていただいているところでございます。

 こういった制度改正、もちろんこれを実施していくということが重要でございますので、私どもといたしましても、その執行状況というものをしっかりと検証して、問題があれば改善を図るというプロセスを確立して農地の確保を図っていきたいというふうに考えております。

菅野委員 都道府県に通知を出した、そして監視を強めていく、そして、この業務はすべて地方の農業委員会にゆだねていくというのが今の方向性なわけですね。

 もう一つ取り上げて、これは答弁はいいんですが、企業や不動産会社が仮登記という手法を使って農家から農地を買収して開発していくなどということも新聞報道されているわけですね。これらを今回農地法の改正でもって規制していく、この方向性は私は正しいと思うんですね。

 ただし、現状の農業委員会というのはどうなっているのかというと、この間、参考人質疑で明らかになってきているように、まず予算からいくと、平成十七年度、百億だったんですね、百億五千九百万という数字が出ているんですけれども、十八年度に行くと、四十七億七千六百万という状況になってしまっています。これは三位一体改革の流れの中でこういう状況になっているんですね。それから、参考人の中でも強く言っていますけれども、平成の大合併がどんどん進んでいったという中で、農業委員会の数が、三千二百三十五から千八百十八、四四%減ったという参考人の意見もあるわけです。

 こういう状況の中で、農業委員会というものをどう強化して、そして不法転用というものをどう取り締まっていくのかというのが課せられた大きな任務であって、この委員会でもこのことに対する議論というものが行われてきたというふうに私は思うんですが、一体、今の現状を踏まえて、規制強化という方向であるとすれば人も金もつぎ込んでいかなければならないというふうに私は思うんですが、現状認識とこれからの方向性について答弁願いたいと思います。

高橋政府参考人 農業委員会に対します現状でございますけれども、これにつきましては、御指摘のとおり、二つの要素があろうかと思っております。

 一つは、いわゆる市町村の合併によりまして、当然のことながら、農業委員会あるいは農業委員会におけます委員数等が減ってきているわけでございます。

 一方、このような農業委員会に対します活動の経費でございますけれども、これは、法律に基づきまして委員の手当あるいは職員の人件費等に充てるために、従来、農業委員会に対します交付金というのがございました。これは御指摘のとおり、平成十八年にいわゆる三位一体改革の中で四十六億円を地方へ税源移譲するという形になったわけでございます。ただし、残りの基礎的な部分あるいは特別な活動経費に要する部分については引き続き国庫でも措置をするということで、それ以降の国庫の交付金は毎年度四十八億円という形になっております。

 この実態を見てまいりますと、いわゆる三位一体改革前の十七年度では、経費としては、総額ベースで一農業委員会当たり三千二百万円でございました。これが、三位一体改革後は一農業委員会当たり三千四百五十万円となっております。

 これについて、この間におけます委員数及び職員数というものが、ほぼ、おおむね横ばいないし微増でございますので、要は、職員あるいは委員に対する経費に充てるという意味での交付金の税源移譲についてはきちんと手当てをされたものと考えておりますが、先ほど申し上げておりますように、いわゆる市町村合併の中で、一農業委員会当たりの処理件数等々がふえてきているのもまた事実でございます。

菅野委員 最後に、大臣に決意をお聞きしておきたいというふうに思うんです。

 今、実態は、本当に優良農地を確保していかなきゃならないという状況にあって、それを今回法律でもって規制強化していくというところは評価するんですけれども、その実を上げていくための組織というものが今どんどん逆行していると言わざるを得ないというふうに私は思うんです。

 農業委員会の機能をどう強化していくのか。先日の松本参考人の考えですけれども、こういう状況の中でもしっかりとやっていかなければならないという決意は表明されておりますけれども、この決意を本当に実効あらしめるものとして、国の責任と役割をどう発揮していくのか、そして農業委員会制度そのものも実情に合った形でどう強化していくのかという視点を、あわせてここに提示してくるべきだというふうに思うんです。先ほどの答弁では、今後重要な課題として位置づけていくということなんですけれども、この決意をお聞きしておきたいというふうに思います。

石破国務大臣 御高承のとおりでございますが、二十一年度予算で、農業委員会が農地所有者の相続の発生の状況等を把握し、耕作放棄地の要因となりやすい不在地主を特定するための新たな支援措置、あるいは、農地情報の基盤となる地図を整備し、これに各農業団体等が保有している農地に関する情報を付加するための支援措置等々を講じたところでございます。

 私も農業委員会の方々とはもう二十数年来いろいろなおつき合いをしておりますが、実際に町村合併によって事務処理体制というものがかなり傷んでいるという感じは、私自身、地元の実感として持っております。それを何とかカバーする体制をつくっていかないと、法律を通したはいいが実際の運用が難しいということが容易に予想されるところでございます。先ほど西委員の御質問に対しまして、協力員の方の増員等々、可能な限りのバックアップ体制は整えていかなければなりません。それは私どもの責任だと思っております。

 あわせて、先ほどトヨタ関係の事例の御指摘がございました。それはたまたまトヨタのお話でございますが、ほかにもいっぱい、本来転用しちゃいけないんじゃないのというところに転用したいみたいなところが出てくるわけです。そうすると、そこに、農業委員会自身もそういうことを仕組みをきちんと熟知しておらねばなりませんが、あわせて、転用したいと思う側も、ここにはどんな農地があるのだ、こんなものを本当に転用していいのかという意識も持っていただかねばなりません。ビジネスのためには農地を幾ら転用してもいいんだというようなことは、国民全体の福祉に反するものだと私は思っております。やはり農地の仕組み、そしてまたその地域がどういうような農地で構成をされているかということを、転用しようという側もある程度知っておらなければならないのだということも私はあるんだと思っています。

 いろいろな体制を整備して、農地が農地として本当に利用されるように、そして農業者の権利が確保されるように、私どもとして、また御指摘を踏まえて最善の努力はしてまいりたいと思っております。

菅野委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

遠藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十四分散会


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