衆議院

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第2号 平成21年11月17日(火曜日)

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平成二十一年十一月十七日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 筒井 信隆君

   理事 石川 知裕君 理事 梶原 康弘君

   理事 小平 忠正君 理事 森本 和義君

   理事 森本 哲生君 理事 北村 誠吾君

   理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君

      石津 政雄君    石原洋三郎君

      石山 敬貴君    磯谷香代子君

      金子 健一君    河上みつえ君

      京野 公子君    小林 正枝君

      後藤 英友君    佐々木隆博君

      高橋 英行君    玉木 朝子君

      玉木雄一郎君    津川 祥吾君

      道休誠一郎君    中野渡詔子君

      仲野 博子君    野田 国義君

      福島 伸享君    柳田 和己君

      山岡 達丸君    山田 正彦君

      和嶋 未希君    赤澤 亮正君

      伊東 良孝君    江藤  拓君

      小里 泰弘君    金田 勝年君

      谷川 弥一君    鳩山 邦夫君

      保利 耕輔君    山本  拓君

      西  博義君    吉泉 秀男君

    …………………………………

   農林水産大臣       赤松 広隆君

   農林水産副大臣      山田 正彦君

   農林水産大臣政務官    佐々木隆博君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         針原 寿朗君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十七日

 辞任         補欠選任

  河上みつえ君     小林 正枝君

  津川 祥吾君     磯谷香代子君

  小里 泰弘君     赤澤 亮正君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     津川 祥吾君

  小林 正枝君     河上みつえ君

  赤澤 亮正君     小里 泰弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

筒井委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官針原寿朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

筒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

筒井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。

宮腰委員 おはようございます。

 赤松大臣が就任をされて、大きな農政転換をしようという中での委員会のトップバッターで質問を行わせていただきたいと思います。

 まず、民主党農政の基本的な考え方について、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 平成十四年十二月、民主党は、「農林漁業の再生こそ日本と地球を救う!」という文書を公表いたしました。農林業の多面的機能の対価として、一定規模以上の経営体に所得補償、つまりは直接支払いを行うことを基本として、財源は農水省予算の補助金を整理することで確保するというのがその基本であります。

 続く平成十五年の食糧法改正案、十六年の民主党農林漁業再生プラン、十七年の農政等の改革に関する基本法案、十九年の農業者戸別所得補償法案という一連の流れの中でも、直接支払いという基本的な考え方は一貫をしてまいりました。

 一方、この間の農政転換に際し、例えば担い手への直接支払いを目指した品目横断的経営安定対策に対しましては、小農切り捨てと批判し、民主党としては、米、小麦、大豆、菜種等を計画的に生産するすべての販売農家に対して一兆円規模の直接支払いを導入すると主張してまいりました。民主党の筒井議員も、平成十八年四月五日の農水委員会におきまして、多面的機能は、学術会議の貨幣価値によれば、農業だけで年間七、八兆円ある。その多面的機能の対価のほんの一部として、こういう直接支払い制度を導入する、そのことを国民にきちんと説得し、納得してもらうと発言をしておいでになります。そうですよね。

 参議院選挙直前のこの時点では、民主党農政において、戸別所得補償という概念が明確に存在していなかったということをまずしっかりと指摘しておきたいと思います。

 二十二年度概算要求に盛り込まれている二つの事業、米戸別所得補償モデル事業と水田利活用自給力向上事業は、これまでの民主党農政の基本である多面的機能の対価としての直接支払いの具体案そのものであると理解していいのかどうか。大臣からお伺いをいたしたいと思います。

赤松国務大臣 先生御指摘のように、また我が党がかねてから主張をしてまいりました、たまたま今委員長もやられておられるんですが、筒井議員を初めこの委員会の中でも、こうした課題について、それぞれ党の主張、それぞれの議員の主張もしてきたところだと思います。もちろん、それを否定するものではありません。私どもは、多面的機能、一般的に言われる水、緑、環境、そういうようなことも、農業の持つ、あるいは農村が持つ非常に大きな機能、役割だと思っております。

 しかし、今回私どもが提案をしております戸別所得補償制度というのは、それよりももう少し原点のところといいますか、農村そのものが、あるいは農業そのものが、もう本当に待ったなしの状況に来ている。例えば、農業者の人口もそうですし、所得も十五年前と比べて半分だとか、あるいは耕作放棄地についても、三十九万ヘクタール、埼玉県と同じだ、東京の一・八倍だとよく言います。そしてまた、担い手といいますか農業に従事する人たちも、高齢化がどんどん進み、後継者がいないという中で、農業の再生こそが日本の地域の再生、食と環境の再生につながっていく。

 この面で私どもは、とにかくこの戸別所得補償制度を導入することによって、旧来の政権の批判ではありませんけれども、一部一定程度の規模以上に比較的厚く支援をしてきた制度から、まさに多面的機能、水、緑、環境というようなことでいえば、採算上非常に不利な条件の皆さん、小規模の農家の皆さん方も含めて、そういう地域でも、こうした、しっかりと農業に従事をしていただける、希望があれば、あるいは取り組む意欲さえあれば、すべての農業従事者が頑張れる、そういう仕組みをぜひ考えていきたいという中で、今回、この戸別所得補償制度を提案させていただいておる。

 もちろん、本格実施は二十三年ですので、あくまでも二十二年度はモデル事業ということで、その一部の、まずモデル事業としてやらせていただく。そして、あわせて二十三年の本格実施に向けて、まだデータ等も不足をしているところもありますから、そういうデータや調査ということも含めて、今御提起をさせていただいているというところでございます。

宮腰委員 多面的機能の対価としての直接支払いという従来の主張とは若干違ってきている、具体的には、より幅広い概念であるという御答弁だったと思います。

 私は、この戸別所得補償制度というのは、これは農業所得が低下した場合のセーフティーネットであって、多面的機能の対価としての性格は本来持っていないというふうに思います。

 一方、条件不利補正のための中山間地域直接支払い、さらには多面的機能の維持のための農地、水、環境保全向上対策、この二つの仕組みは、まさに農業、農村の果たしている多面的機能の対価としての直接支払いでありまして、規模を問わない、あるいは条件不利地域に重点を置いているという意味で、社会政策として国民から広くあるいは十分な理解が得られているというふうに考えております。

 しかし、今回の戸別所得補償は、直接支払いとしての政策の根拠が全く明らかではありません。

 まず、産業政策としては、多面的機能に基づく所得補償という考え方自体に問題があります。それに加えて、全国で展開されている多様な農業を阻害するような全国一律の支援単価などは、どう考えてみても政策根拠を無視した乱暴な政策であるというふうに言わざるを得ません。

 産業政策と社会政策の組み合わせで多様な農業を支援するという基本的な考え方に立った場合、所得補償制度には産業政策としての明確な根拠と目標が欠かせないはずであります。そんなものは必要ないとおっしゃるのか。あるいは、所得補償は多面的機能の対価であるという理由だけで国民を説得し、あるいは納得してもらうということが本当に可能なのかどうか。大臣にもう一度お伺いをしたいと思います。

赤松国務大臣 多少繰り返しになるかもしれませんが、私は多面的機能がすべてだとは申し上げておりません。水、緑、そして環境ということは非常に重要です。しかし、それよりももう一つ、本来の食料の生産あるいは農家の成り立ち、そういうところがもう今崩壊しつつあるということでありますから、そこを、規模が大きかろうが小さかろうが、あるいは先生御指摘の、今、中山間地の問題がありましたけれども、中山間地についての直接支払いも、制度としてはもちろん続けてまいります。

 そういう中で、農業、農村を再生していこう、再生させることが、ひいては結果的には、多面的機能、今言われるような、お金とか物とかそういうものではかれない、そういう機能についても、十分それを得ることができるという意味で私どもは申し上げているということで、御理解をいただきたいというふうに思います。

宮腰委員 政策目的がはっきりしない、産業政策であるのか社会政策であるのか。直接支払いというのは、やはり国民の皆さんの理解があって初めて打てる政策であります。でありますので、私は、今回の問題について、政策目的はどうなのかと。

 今大臣からおっしゃった話は、農業、農村の再生に資するということであれば必ず国民の理解が得られるはずだ、そんな簡単な問題ではありません。社会政策なのか産業政策なのか明確にしないと、結果として農村現場で大きな混乱が起きるということになるわけであります。

 今回の概算要求に盛り込まれた二つの事業、発表以来、農村現場で大きな議論とかつてない混乱を引き起こしているという状況にあります。この政策を打てば担い手農家が元気になって規模拡大が進むという見方がある一方で、担い手農家に貸していた農地を返せという貸しはがしが既に起きているという現実。さらに、農家の貸し手側からの地代引き上げ要求にどう対応するのか。八万円、地代要求があったら本当にどうするのか。さらに、需要が減っている米に生産が集中し、麦、大豆など自給率向上のための増産は雲散霧消するのではないか。借り手の集落営農、これは全国で一万三千経営体、五十万ヘクタールの農地集積がありますけれども、その集落営農や借地農家の側からは経営崩壊の懸念も伝えられているわけであります。

 農村現場ではこのような相反する事態が起きるということが想定されているわけでありますけれども、制度設計の責任者として、この相反する事態が起きる可能性についてどう見るか、大きな混乱を招いたときにだれがどう責任をとるのかということについて、大臣からお聞かせいただきたいと思います。

赤松国務大臣 今御指摘がございましたけれども、まだ、モデル事業、本格実施ではなくて二十二年度のモデル事業について、できるだけ地域の皆さん方にこの制度の本当のところをちゃんと理解してもらおうということで、各地方の農政局を通じまして、それぞれの団体や地域の皆さん方にちょうど今御説明をしておるところでございます。

 そういう中で、先生御指摘、御心配のような、今まで担い手に農地を貸していた人で、では、それだったらおれたちがやってみようかということでの、多分そういう意味での貸しはがしということを言われているんだろうと思いますが、それがどんどん起きているということを、この時点ではですよ、この時点では私ども聞いておりませんし、この制度そのものが、しっかりと理解をしていただけば、むしろ、旧来は農地集積を皆さん、前政権も含めて努力をされてきたんですが、実際には農地の集積よりも農地がなくなっていく方が多い。毎年約二万ヘクタールが消滅している。二万ヘクタールというと、僕はよく例に例えて言うんですけれども、東京ドーム四千二百八十個分が毎年毎年消えていっている。これに何とか歯どめもかけていかないと、単に採算が合うとか合わないとかを初め、それ以前の問題として、もう農村あるいは地方がますます荒廃をしていくということになるわけでございます。

 そういう意味で、御批判も今一部、先生からは御指摘いただきましたけれども、今回は特に全国一律の単価ということで、全国一律の単価ということは、土地を集積して農地を集積して、そして生産性を上げてコストを下げていけばいくほど、それは全部自分の収入に、手取りが多くなっていくことにつながっていくわけですから、その意味でいえば、むしろ反対に、農地の集積、大規模化を進める、あるいは営農農家にとっては、協業化を進めることによってより多くの収益を得るように努力をしていこうと、規模拡大にもつながっていく、このようにも考えておるところでございます。

 一方、担い手が存在しない地域については、小規模農家や高齢農家が反対に、そういう小さな規模でも少なくとも最低限の岩盤部分は補償するわけですから、その意味でいえば、やっていくことができるという意味で、引き続いて、あるいは改めて農業に取り組める環境ができていくのではないか。そして、そういう方たちがやっていく中で、やはり個人でこういう小規模でやっているよりも、みんなで力を出し合って集落の形でやっていこう、あるいはもう少し大規模化を進めていこうというようなことにつながっていくように、これは私どもの努力もいろいろありますけれども、そういうことを期待しながらこの制度が考えられているということをぜひ御理解いただきたいというように思っております。

宮腰委員 一つの政策で二つの相反する政策目的を達成できるというお話でありました。それは不可能であります。

 今回の現場の混乱というのは、今回の政策転換の方向がどっちの方向を向いているのか明確でないということに起因をしている、私はそう思っております。

 さきの通常国会におきまして、集落営農を含む担い手農家に農地を集積していくという方向で、民主党さんの賛成も得て、五十七年ぶりに農地法の抜本改正が実現をいたしました。議院修正の場面でともに汗を流していただいた筒井委員長に改めて敬意を表したいというふうに存じます。

 農地法改正の趣旨からいたしまして、今後の農政は、集落営農を含む担い手に農地を集積していくという方向を基本として進むべきであるというふうに思います。今回の農政転換は本当にどっちの方向を向いているのか。すべての販売農家を支える方向なのか、それとも担い手農家を支えるのか。政策の目的が明らかでないからこそ現場の混乱が起きるということでありまして、もう一度大臣から、どっちを向いていこうとしているのか、お答えをいただきたいと思います。

赤松国務大臣 これは宮腰委員も多分おわかりの上で御質問されていると思いますが、私どもは、改正農地法で土地の集約化を進めていくということは、我が党も修正には賛成したわけですから、決して否定しているものではありません。しかし一方、では小規模の農家はもう切り捨てていっていいのか、もうなくていいのかということは、先生自身も多分そう思っておられない、このように思います。

 農業全体を考えるときに、土地の集約、大規模化、あるいは営農する上での協業化、これが重要であることは当然でありますけれども、一方、先ほど言いましたように、水、緑、環境、そういう多面的な機能を考えるときに、今までのように一定規模以上のところに集中して応援をしていくというやり方から、そこもやるけれども、しかし、本当に地域の緑、環境を支えてくれている、そういう小規模の農家、高齢者の農家、あるいは兼業というところもあるかもしれません。そういうところについても、何とか農業がやっていけるような、そういう方策もとらなければ、これは単に、利益の上がる大規模のところだけ残しておけばいいんだ、小さいところはみんな切り捨てだ、あるいは土地、みんな出させてなんということにならないわけです。

 先生も御存じのとおり、先ほど私も言いましたが、今、耕作放棄地が三十九万ヘクタールある。しかし、三十九万ヘクタールすべてが農業に最適の地域ばかりではありません。約十万ヘクタールはそれに大変適していると言われていますけれども、それ以外はそれほど適していないところも正直言ってあるわけで、では、ほかのところはどうでもいいんだということにはならないのではないかというふうに私は思っております。

 今、特に日本の場合は食料自給率四一%なんという、他の国々と比べて極めて低い数字になっている。かつて、私がちょうど大学生のころ、一九六〇年終わりから七〇年代のころは、たしか日本の食料自給率も六〇ぐらい、あるいは七〇近いぐらいの数字が、今ちょっと手元に数字がありませんけれども、あったのではないかと思いますが、そこからあっという間に今の四一まで、あるいは四〇まで落ちてしまったわけでございます。

 そういう意味で、食料自給率を向上していく。中心となる、基幹となるようなそういう作物については、少なくとも自給率五〇%、半分以上はちゃんと国で賄うことができる。食料安保という意味ばかりではなくて、ぜひその目標に向かって私どもは、十年後に五〇%、二十年後に六〇%という一応の目標を今考えながら、正式には食料・農村のあの基本計画の中にそれをきちっと位置づけたいとは思っておりますけれども、そんな方向で農業振興に向けて頑張っていきたいというふうに思っております。

宮腰委員 当然のこととして、小規模農家の方々がそれにふさわしい地域を守っていただけるような仕組みをしっかり打っていくということは、これは当然であります。でありますから、中山間地域の直接支払い、農地、水、環境保全向上対策、それに加えて、これまで集落営農の推進にも全力で取り組んできたわけであります。

 しかし、今回のは、トータルパッケージで見たときに、例えば地域特産をどうするのか。単価ががたっと下がりました。後でこれは山田副大臣に御質問させていただきたいと思いますが、トータルパッケージで見ると、決して今大臣がおっしゃったような形にはなっていないということであります。

 そこで、問題は、この戸別所得補償の戸別というのは何ぞやということであります。

 これまで私どもが行ってまいりました、いわゆる品目横断的経営安定対策、これは個々の経営体に着目をし、経営所得が過去の平均を下回った場合に、個々の経営体の過去平均の所得の大部分を補てんするという基本的な考え方でやってまいりました。言うなれば個別方式であります。

 今回の米戸別所得補償モデル事業及び水田利活用自給力向上事業は、これは全国平均の生産費と販売価格の差額を全国一律の単価で支払う、米以外の転作作物についても基本的には全国一律単価で支援をするというものであります。北は北海道から南は九州、沖縄まで、全国で多様な農業が展開されているという実態、また、それぞれの地域においても多様な経営実態があることを全く考慮に入れておらず、果たしてこれが戸別と言えるのかという強い疑念があります。

 例えば、政治の世界で戸別訪問といったときに、一軒一軒とか家ごとに訪問するという意味であることは政治家ならだれでもおわかりだと思います。まさに今回の戸別ということについては、看板に偽りありであります。戸別補償ではなくて一律補償と言いかえるべきではないか。そもそも一律補償というのは、先ほど申し上げたとおり、産業政策ではなくて社会政策であります。戸別とは産業政策なのか社会政策なのか、果たして何ぞやということをお聞きしたいと思います。

赤松国務大臣 これは非常にわかりやすく申し上げると、戸別所得補償ですから、戸別に直接お金を支払いますよ、交付金を払いますよと。もっと極端に言えば、国の機関であります農政局から、農業者の、これは農協に口座があるかもしれません、郵便局かもしれません、そこに直接支払いますよ、振り込みをしますよということなんです。

 今まではいろいろな団体を通じて払っていましたが、私どもの言っている戸別というのはそういう意味なんです。直接支払いますよ、そういうことなんです。ぜひそういうことで御理解いただきたい。

宮腰委員 それは手続上の問題であって、農家の受けとめ方は全く違うんです。一軒一軒の農家の赤字を一円に至るまでそれぞれ補てんをしてくれるというのが戸別所得補償だと思っているんです。今の大臣の言い方は、単純な手続上の問題ですよ。農家の口座に直接支払うというのが直接支払いでありますよと。今までは中に地域水田農業協議会があるとかいうことであって、今回は直接だと、単純に手続上の問題だけで直接支払いとおっしゃっているということであります。

 戸別とはどういうことか。一軒一軒あるいは一個一個の経営体に対して、それぞれの経営状態を見ながら補てんをしていくというのが戸別所得補償のあり方であります。今のは、単純に手続の問題だけをおっしゃっておいでになるにすぎない。

 でありますので、仮に来年の通常国会で法案が出てきた場合、戸別という文字が法案の名称に入っておれば、名称の変更を求めるか、あるいは制度の中身の抜本的な変更を求めていかざるを得ないということを申し上げておきたいと思います。

 次に、副大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 生産調整はなぜ必要か。それは、米の需要が減少する一方で、基盤整備が進み、それにより機械化で生産力が向上し、単収が大幅にアップしたことで需給のバランスをとらざるを得なくなった、これが原因であります。もちろん、農家に我慢を強いるわけでありますから、一部に強い不満があることも事実であります。

 一方で、稲作農家の大部分は、米価を維持し、そして継続的な生産を確保するために、やむを得ずではあっても、みずからもしくは集落単位で生産調整のルールを守ることで農業、農村を維持し、さらに、麦、大豆などの生産によって日本の自給率向上にも貢献をしてきたという誇りを持っております。

 今回の政策転換で、主食用米については生産調整を維持し、水田利活用自給力向上対策では生産調整とのリンクを外すことになっております。つまり、所得補償と水田利活用とはリンクしていないという仕組みになります。これでは米の生産調整は成り立ちません。その上に、生産調整は廃止しますという民主党の参議院選挙公約によりまして、小規模な農家の中には生産調整に参加しなくてもよいというイメージが先行しているというのが実態であります。

 そこで、まず第一に、米の需要が減少する中で、生産調整のルールが守られなかった地域で、主食用米の生産調整に参加を希望する農家が急増した場合、都道府県や市町村への生産数量目標の配分をどう調整するのか。現場を預かる県や市町村は困惑をするのではないか。その際、これまでルールを守ってきた地域や農家について、配分で不利とならないような手品が可能なのかどうか、山田副大臣からお伺いをいたしたいと思います。

山田副大臣 宮腰委員がおっしゃっているように、年々主食米の需要は減ってきております。そんな中で、私ども、この米のいわゆる所得補償をするに当たって、やはり一番大事なことは、過剰な生産を避けなければいけないということを考えました。そんな中で、いわゆる米の生産数量目標、それに参加してくれる農家に対してのみ定額の所得補償をやろうと。

 もともと、この所得補償制度は、米はかつて六十キロ二万三千円もしたわけですが、実際に今は一万三千円ぐらいにしかならないし、生産費が販売価格を大きく上回っている、そういう中において、その生産費といわゆる販売価格との差額、これを、過去数年間の平均を出して、その定額部分を補てんします、所得補償しますと。

 それに参加する農家だけ補てんしますから、かなり需給は、需給はというか、生産数量目標を私どもが設定して、例えば全国で去年の消費、ことしの消費等々の傾向はわかりますから、それをもとにして、できるだけ早くと言いますが、十一月の末か十二月の初めには全国の生産数量目標を決めて、各都道府県におろして、ことしは水田協議会とかそういうところをもとにして生産数量目標参加の農家を決めていただく。そういう形できちんとおろしていけば、私は、過剰米が生じたり云々ということはあり得ないと思っております。

 もう一つおっしゃいました、リンクを外すと。今まで、いわゆる生産調整に参加した農家にだけ麦とか大豆についてはいろいろ助成がなされたわけですが、これから先、自給率の向上を考えますと、この食料自給率を達成するためには、リンクを外して、本当に水田を有効に、麦とか大豆、飼料米、そういった作物を大いにつくってもらわなきゃいけない、これが私どもの政策でありまして、食料の安定的な供給、たったわずか四一%しか食料自給率がない今の日本の農政は余りにもみすぼらしい。やはりそういう意味では、自給率向上事業は大変大きなものだと思っております。

 そのとき三つ目の、今、宮腰さんのお話ですが、いわゆる今まで生産調整に協力したところとそうでないところの不公平感はリンクを外すことによってどうかということですが、今まできちんと守ってきたところに対してもそれなりの定額分の所得補償があるわけですから、今回リンクを外すことによっていささか、確かに不公平感というのが出ないことはないかもしれませんが、それより、より農業の持つ自給率の向上、いわゆる麦、大豆、飼料作物、飼料米の生産はもっと大事だと思っていますし、より有効に耕作放棄田をなくす、そういう意味でもこの政策は大変大事だと我々は考えております。

宮腰委員 配分で不利にならないかということをお聞きしたのであって、実は、今の不公平云々ということについては、次の質問で聞こうと思っておったんです。

 これは答弁は要りませんが、水田利活用自給力向上対策、これは今おっしゃったように、米の生産調整を守る人も守らない人も同一単価になります。これが、これまで以上に不公平感を拡大することにならないかというのが実は二つ目の質問であったわけであります。なります。御答弁は要りません。

 自給力向上対策、これは、十アール当たり麦、大豆の三万五千円はもちろん、地域振興作物も、基本的には全国一律単価の一万円ということになっております。現在の産地確立交付金の実態と大きくかけ離れた単価であります。我が県の県花でありますチューリップ、この球根は十アール当たり四万八千円。一万円ではありません。ハト麦五万八千円。タマネギ三万円。一万円の単価では、これらの地域特産は生産不可能に追い込まれます。

 全国の地域特産の産地形成は、長年にわたってこの交付金によって支えられてきたし、地域の話し合いによって単価を決めるという農水省のこれまでの方針も、高く評価をされてまいりました。また、これまでの仕組みを前提に、秋まき麦やチューリップなど、来年度の営農計画が既に進んでいるという実態もあります。地域特産の産地形成を大きく損なう全国一律単価方式ではなく、地域の話し合いによって決めるというこれまでの方式に基本的に戻す考えがあるのかどうか、お聞きしたいと思います。

 山田副大臣、お願いいたします。

山田副大臣 私ども、戸別所得補償を考える際に、できるだけシンプルに、簡便に、複雑な申請手続をせずに、そして即受けられるようなという、簡便な方式を考えました。したがって、単価も、地域によって生産コストは違います。しかし、それながら全国一律という形でとらえさせていただきましたが、同時に、そうなったときに、それ以外の自給力向上対策と申しますか、いわゆる地域によってはタマネギとかチューリップとか、麦、大豆等々について、これまでの産地づくり交付金でそこに厚くやっていた部分が薄くなってしまう、そういう事態が生じるということも私ども承知はいたしております。

 しかしながら、麦、大豆、そういったものについては三万五千円、米については、飼料米については八万円、その他の作物について一万円と、そういった単価設定を私どもさせていただきましたが、いわゆる水田を利用して、米にそれだけの定額の所得補償はあるわけですから、麦が三万五千円あって、今までの産地づくり交付金でもっと、五万とか六万あったとしたって、麦と米の分の所得補償を合わせればある程度の補てんが十分できていくんじゃないか。大豆もしかり。(発言する者あり)下がる部分が一部あることは私どもも承知しております。

 しかし、それ以上に、米含め、麦、大豆、飼料米、これについては八万円出すわけですから、水田を活用した農業政策においては、大きく農家全体から考えればメリットがある。地域によって、今まで産地づくりで厚くしたところについては少し下がる部分があることは、私どももそこは認識しておりますが、ぜひそういう意味での御理解をいただきたい、そう思っております。

宮腰委員 多面的な機能に対する直接支払いという考え方が、今の御答弁には全く生かされていないと思います。

 簡便な方式でと、これはイコール知恵がないということなんですよ。今の山田副大臣のお話は、これまでの単価との差額は地方単独で埋め合わせをしてほしいと言わんばかりの話であります。今回の農政転換は地方にとって改善と言えるのか。改悪な部分が、その懸念が極めて強いと思います。多様な農業の展開は国の仕事ではないとの仕分けとしか映りません。このことを申し上げておきたいと思います。

 次に、また大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 富山県の砺波平野あるいは黒部平野に代表される見事な農村景観の代名詞が散居村であります。その散居村が江戸時代の初期になぜできたかという政治的な意味を大臣は御存じでしょうか。

赤松国務大臣 先生から御通告をいただきまして、私もちょっと調べてみました。

 私の理解で言えば、当時、砺波平野は非常に川のはんらん等が多くて、そのはんらんから逃れるために農家の人が高台に家をつくった。そして、その高台の周りにずっと畑をつくるようになってきた。しかし、その後、江戸時代にかんがい等が進んで、その心配が、平地であっても用水路網が整備をされて、平野部の開拓も進んで、まさにその高台を中心とした一つの集落になって、見事な散居形態の集落が形成された。

 ちなみに、今、富山県の場合は、そういうものが、いわば今で言う集落営農の原型になるようなものだと言ってもいいと思いますけれども、そういう集落営農の数が七百四十一と、滋賀県に次いで全国二位、そういう形で非常にうまく集落営農が行われている、そういう地域だという理解をしております。

宮腰委員 今おっしゃったのは、確かに間違いありません。しかし、政治的な意味ということで申し上げれば、加賀藩が、真宗王国越中の国を支配するための集落分断政策として、江戸時代の初期にこの散居村というのが実は考えられたわけであります。集落分断政策の結果が散居村になっているということを富山県の人は今でも知っている方が多いわけであります。

 しかし、その富山県が、今、集落全体で協力をして地域農業あるいは農地を守っていこうという、今おっしゃったとおり滋賀県と並んで集落営農のメッカになっているということであります。集落こそが、例えば、お祭り、盆踊りを初めとする地域の伝統行事、あるいは地域の伝統的食文化、さらには日本社会の最も大切な助け合いの精神、相互扶助の精神をはぐくんでいる、そういう日本の原点であるということを決して私は忘れてはいけないのではないかというふうに思います。

 集落機能の崩壊、話し合いや助け合いによるきずなの崩壊、これは日本社会全体の崩壊につながると思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

赤松国務大臣 委員御指摘のように、確かに、集落が持つ機能、役割、そして、単に農業にとどまらず、まさに地域の文化的な、伝統文化といいますか、そういうのを継承していく意味合いでも非常に大きな役割を果たしていると思いますし、また、地域のつながり、連帯、そういう意味でも極めて重要な形態だと理解をしております。

宮腰委員 なぜこのことを申し上げたかといえば、今度の仕組みは、結果として地域の話し合いが必要なくなる、不要になってくるという仕組みにつながっていく危険性があるからであります。集落の機能というのは、話し合い、助け合いの精神が支えているということでありまして、私は、今回の、例えば生産調整のルールを守っても守らなくても同じ単価であるとか、そういうことが結果として集落機能の崩壊につながっていく端緒になるということを最も実は懸念をしているわけでありまして、そういう意味で申し上げた次第であります。

 最後の問題として、制度設計の拙速さの問題についてお伺いをいたしたいと思います。

 大臣は、所信で、大胆かつ有効な政策づくりに取り組むとお述べになりました。確かに大胆ではあります。今回の所得補償は、モデル事業といいつつ全国の米農家を対象にすることから、当然のこととしてしっかりとした制度設計がなければなりません。制度上の問題につきましては我が党の質問者が具体的に政務三役にただすこととしておりますけれども、これほど大胆な政策、農政転換が数多くの問題をはらみながら拙速に実施に移されることは、過去例がないと言わざるを得ません。あの朝日新聞でさえ、きのう、「拙速を避け、本格案に」という社説を掲げ、農水省案では日本農業の再生はおぼつかないとまで言い切っております。官僚としての矜持は一体どこに行ったのか。農村現場の大きな混乱を招いている農水省の政策担当者に、私から猛省を促したいというふうに思います。

 戸別所得補償制度推進本部で総括の副チーム長を務めている針原総括審議官から、拙速という批判にどう答えるのか、国家国民のための官僚として誇りある答弁を求めたいと思います。

針原政府参考人 宮腰先生の御激励に感謝いたします。私は、いつも、大臣の意に従い、国家のため、農業、農村のために働きたいと思っております。

 今回の制度設計でございますが、農業従事者の減少や高齢化、担い手不足、農村の崩壊、所得の激減、このような危機的な状況にある中で、待ったなしの農業の手当てが必要だという観点に立って制度を設計しております。この点につきましては、前政権下の農政改革特別チームでも同じ認識を持っております。私ども、この状況につきましては、例えて言えば、深刻な病気にかかっている農業や農村をどうやって治癒させるか、そういう意味でいえば選択肢は余り広くないのではないかと私は個人的に思っております。

 そういう意味で、待ったなしの状況にあるこの農業、農村につきまして、まず、モデル事業を実施するように指示を受け、それを検討いたしました。その上で、二十三年度に本格的な制度に移行する、このような指示に基づいて制度設計を行ったわけでございます。

宮腰委員 待ったなしであるから拙速でいいということにはなりません。制度全体像がいまだに明らかになっていない、単価も明らかではない、こういう中でとにかくやるんだという姿勢は、私はもってのほかではないか。過去、農水省でこんなことをやったことはありません。

 拙速さの最大の原因、これは、冒頭申し上げましたように、民主党農政の基本である多面的機能の対価としての直接支払いという考え方から、二年前の参議院選挙を境に戸別所得補償へと転換したこと、つまり、選挙向けのばらまきを強く意識した政策へと変質したことにあります。

 現場の大きな混乱、今後の貿易交渉に与える大きな影響、食料自給率低下への懸念、そして将来ともに国民の理解が得られるかなど、極めて大きな問題を抱えながら拙速にこの仕組みをスタートさせていいものかどうか。私であれば、神仏の前で敬けんな気持ちでもう一度熟考することといたしますけれども、大臣にそのようなお考えはありませんか。

赤松国務大臣 御指摘は御指摘として真摯に受けとめたいと思いますけれども、私どもは、農業、農村再生の中心の柱はまさにこの戸別所得補償制度だと確信をいたしておりまして、二十三年の本格実施に向けて、二十二年はぜひ本格実施に向けての下準備をきちっとやりたい。そのために、自給力の方も含めて約五千六百億円の巨額な予算を組みまして、この制度がスムーズに二十三年度本格実施できますように、モデル事業の取り組みを来年度やっていきたい。

 そして、このモデル事業の中で、もちろんいろいろな声が聞かれると思います、いろいろな結果が出ると思います。それをしっかり受けとめながら、そしてまた、よりよい方向で、二十三年度はそれがよりよい、さらにいい方向で進めるように、このモデル実施、そしてまた各種の調査等を来年度進めてまいりたいと思いますので、先生のよろしく御理解を賜りたい、このように思います。

宮腰委員 これで終わりますけれども、日本人は、神仏の前に座れば、本当に敬けんな気持ちで、今自分が置かれている立場で、国のことを思い、国民のことを思い、将来のことを思いつつ断を下すというのが日本人ではないか、そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

筒井委員長 次に、江藤拓君。

江藤委員 自民党宮崎県選出の江藤拓でございます。

 宮腰筆頭の格調高い質問の後に私ということで、非常に緊張もしておりますけれども、先週、所信を大臣から伺いました。大臣は、農林水産政策に責任を持つ者だと高らかにおっしゃいまして、農林水産大臣としてその強い覚悟と決意を伺いました。非常に高く私は評価をいたしております。ぜひとも強いリーダーシップを発揮していただいて頑張っていただきたい。それは副大臣も政務官も同じでございます。

 決して私たちは足を引っ張ることを旨とするつもりはありません。いい政策には十分に協力をしてまいりますし。しかし、問題があれば厳しく追及もさせていただきたい、そして議員立法等でこの委員会に提出もさせていただきたい、そう考えておりますので、どうぞこれからよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、通告いたしましたとおり、まず初めに、今後の委員会の存在意義、委員会の運営等についても大きな影響をもたらすと考えておりますので、いわゆる今回行われております行政刷新会議について、質問の登録をした順番に沿って質問をしてまいりますので、大臣の率直な御意見、御感想をお聞かせいただきたいと思います。

 私も、この九月まで、農林水産政務官として農林水産省職員とともに日本の農政に真剣に取り組んできたつもりでございます。そして、たびたび官僚の皆さん方と対立もいたしました。中には私のことをすごく嫌っている人もいると思います。そして、たびたび、それであっても、日本の農政を憂う気持ちは全職員とともに共有しながら、職責を全うさせていただいたと思っております。

 また、事故米の発生、それからやみ専従、そういった問題が起こったときには、官僚の若手の諸君がみずから手を挙げて、ボランティアで、全くの無給で、ゴールデンウイークもすべて休みを返上して、みずからの手で農林水産省の改革を行うんだということでこのことに取り組んだことについては、非常に私は感銘を覚えました。

 そして、大臣に提出する前に私のところに報告書を持ってまいったわけでありますけれども、余りにも農水省に対して厳しい内容で、君、こんなものを出して出世の道が閉ざされるんじゃないか、大丈夫かと言いましたら、構いません、国家国民のため、農民のため、農水省がよくなるのであれば、私は、このままの形で、一文も添削をしていただくことなく提出していただいて結構ですと言われましたので、そのまま提出をさせていただきました。私はすばらしいことだと思います。

 私も、無駄な事業や重複している事業、そしてまた使い勝手の悪いものがあればどしどしと改善していただきたい。政権交代でそれが行われれば、私は国民のためにとてもいいことだと思います。

 私も、石破大臣の御指示で、近藤副大臣と、煩雑だというふうに批判が多かったいわゆる申請業務、これを六百五十七枚から半数以下に削減いたしました。ですから、現政権下の無駄をなくすという姿勢、その意気込みについては何ら異論を挟むものではございません。しかし、行政刷新会議のこのやり方については、余りにも乱暴で性急ではないかと思っておりますし、農林水産行政にとどまらず、国土交通関係など多くの省庁にわたって、納得いかない点が余りにも多過ぎます。

 農林水産関係では、行政刷新会議で昨日まで三十五の事業が仕分けの対象となっております。できれば本当はその一つ一つについて御感想を伺いたいんですが、戸別所得補償についても聞きたいことが山ほどありますので、今回は、農道整備事業の廃止の決定、これについての大臣の率直な思いをお聞かせいただくことを中心に議論を進めていきたいと思っております。

 およそ、あらゆる政策というものにつきましては常に見直しをしなければなりません。前政権下でも、その時々の時代の要請に応じて、重点化、縮小化は、実は行ってまいりました。農道整備についてもこれは例外ではございません。しかしながら、いまだ地方からは農道整備への要請が数多く寄せられているのは、委員の先生方も皆さん方、肌で感じていらっしゃると思います。

 大臣は所信の中で、農地集積を進めるということも触れられました。そういうことであれば、農道整備、それから基盤整備、こういったものは欠かせません。農地集積が進めば、当然、トラクターや農業機械のサイズはでかくなってきます。四十馬力でよかったものが八十馬力、北海道のように百馬力を超えるようなトラクターも必要になってくるでしょう。そうなれば、農道を整備しないと、結局農業機械が農地に入っていけないということになりますので、農道整備の重要性は言うまでもありません。しかし、マスコミや都会の経済学者、そういう人たちの中には、こういうものは要らないという御意見が多数あることも承知しております。それが今回の結果に反映されているのではないかということを危惧しております。

 平成二十二年度の概算要求を見せていただきました。これを見ますと、二十一年度二百三十四億円であったものが、約三割削減をされまして百六十九億円の要求額となっております。私としては、このような予算額では、大臣の思い、これを達成すること、それから地方の要請に十分にこたえることは非常に難しいのではないかということを実は危惧をいたしております。

 先週の水曜日から行政刷新会議の仕分けが行われました。第一ワーキンググループで農道整備の要否が議論され、これは必要ないという話でありますけれども、ここで大臣にお尋ねをしたいことがございます。

 民間有識者として十六名の方が仕分け人として参加をされました。どのような方々で構成されるのか、大臣は事前に報告を受けておられたんでしょうか。それとも、その人選にかかわっていらっしゃったんでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

赤松国務大臣 江藤委員には、農政に対する大変理解ある御発言を冒頭にいただきまして、心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 今、行政刷新会議の十六名のメンバーについての御指摘がありましたけれども、ここにメンバーがございますが、事前に、こういう人でやりますよという、決まってからの報告はありましたが、私が人選にかかわったとか、あるいは事前の相談を受けたとかいうことは、一切ございません。

江藤委員 この農林水産行政の最高責任者は大臣であられます。これは、私も全国民も認めるものであります。これだけの大なたを振るうようなことが行われるのであれば、私は、事後報告というのは極めて問題だと思います。

 それでは御感想をお聞きしますが、この中に、農業の経験者、それから農業政策の専門家、そういうふうに自他ともに世間も認めるような方がどの程度いらっしゃったか、御感想をお聞かせください。

赤松国務大臣 この詳細は行政刷新会議のマターですけれども、基本的に私が聞いておりますのは、第一ワーキンググループ、それから第二、第三と分けて、第一ワーキンググループというのは、いわゆる公共、そして第三の方が非公共という形で、省庁ごとではなくて、大くくりで、公共に関するもの、非公共に関するものということでその人選が行われたというふうに聞いております。

 委員御指摘のように、この第一ワーキンググループのメンバーの方を見てみると、大変立派な先生方ばかりだと思いますが、比較的、都市工学だとか、本当に道路とか町のあり方とか、そういう方の専門家が多いなと、感想として、結果的に選ばれた方の顔ぶれを見ると、そういう気がいたしております。

 ですから、私どもが、このメンバーの人たちがいいとか悪いとか言う立場にはございません。コメントする立場にもありませんので、そのことについては言えませんが、ただ、担当大臣である仙谷大臣には、農水を預かる担当大臣として、こういうことだけは申し上げました。

 概算の予算を出したのは、少なくとも政治家たる私を初め政務三役が責任を持って、その中身について出したわけです。しかし、その出した人が今度は査定側に入って、これがいいとか悪いとか、削れとかふやせとか言うのは理論的におかしいんではないですか、もうこれが絶対いいんだと思って出した側で、反対に、いろいろ御批判を受けながら、これはおかしい、これはどうなっているんだ、説明しろということで説明をしたり、あるいはこれはこういうふうだから必要なんですというふうな説明側でこれはやるべきだ。それが、向こう側へ行って、自分たちが出したものに対して、これは云々と言うのは理論的にまずおかしいんじゃないですかということで、当省は、私どもが聞いておりましたのは、査定側に入って、三役のうちから一人出て、その人たちがマルとかバツとかやるというふうに聞いていたんですけれども、これは仙谷大臣の方の御理解のもとに、やはり赤松さんの言うのも正しいなということで、これはそういう査定側に入るのではなくて、マルとかバツとかをつける役ではなくて、むしろ、事業についての説明が必要な場合は、あるいはなぜこの予算が必要なのかということについてきちっと説明ができるという立場で位置づけていただきました。

 その結果、私どもとしては、舟山政務官に三役を代表してすべての会議に出てもらいまして、なぜこういう予算が必要なのか、今先生御指摘の農道についても、私どもは減らしはしましたけれども、しかし、なおかつ農道整備がこれだけ必要なんだということで来年度予算に向けて概算要求したわけですから、なぜこの額が必要なのかというようなことについては論理の展開をいたしましたけれども、残念ながら、これらの先生方の御理解を得ることができずに、あのような結果が出た、査定が出た。

 ただ、これは最終決定じゃございませんので、あくまでもこれを参考にしながら、第一ラウンドは終わったわけですから、次の第二ラウンド、最終的には大臣交渉ということで、多分三段階で、最終的に十二月の半ば過ぎぐらいに決まるのではないかと思いますが、そのように理解をしておりますので、私どもとしては、自信と確信を持って出した来年度に向けての概算要求でございますので、ぜひこれが本来の形で御理解いただけるように、さらに努力をしてまいりたい、このように思っております。

江藤委員 非常に力強い御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 しかしながら、私がやはり危惧するのは、テレビによりますと、この仕分けの内容を七〇%以上の国民が非常に支持をしている。よくやってくれたと。そしてやはり、今まで国民の目の届かないところで行われてきた作業がネットでも見られるようになった、非常に開かれたということに対する評価も高いです。つまり、今の選挙もそうですけれども、世論をバックアップにした人間は強いんですよ、大臣。今、間違いなく世論は刷新会議の方にありますよ。ですから、今大臣から非常に力強い御答弁をいただきましたので、私どもも応援する立場で、それはやっていただきたいと思いますし、やっていこうと思いますし、頑張っていただきたいと思います。

 とにかく、このメンバー、私も見ましたけれども、亀井さんがけちをつけたロバート・アラン・フェルドマンさん、モルガン・スタンレーとかですね。この中でいるのは、青木さんが、神奈川大学の教授ですけれども、この人が唯一著作を書いています。「苦悩する農山村の財政学」「農山村の衰退と国の政策」。これぐらいしかなくて、あとの方々は少なくとも、私の選挙区のように中山間地域のような条件不利地域を多く抱えた農村地帯、畜産地帯の事情を知っている方々であるとは、私の目には到底見えません、正直なところ。

 ですからやはり、こういうことをやるのであれば、農地の現場それから農家の苦労、中山間地域の苦悩、こういったものを肌で感じることのできる人が半分ぐらいは入っていてほしかったというのが私の率直な気持ちでございます。

 いろいろな分野の方々の意見を聞いちゃいけないと言っているんじゃないんですよ。例えば、このメンバーは、農林水産省にとって極めて厳しい意見を持った人ばかりで構成したっていいんです。今までの農林水産行政に対して太鼓持ちみたいに応援する人間ばかりを選ぶのであれば、これはまたとても論外で、受け入れられるような話じゃありません。そこには経営感覚を取り入れることもとても大切でしょう。しかし、いろいろな分野の御意見を伺うことも大切ということを認めながらも、やはり大臣が最終的にはリーダーシップをとって、そして、いわゆる最終結論に至るまでには、農林水産行政に精通した方々とか、肌感覚の入ったものになるように、ぜひともよろしくお願いをいたします。

赤松国務大臣 残念ながら、この農道整備事業につきましては、結論は廃止という結論でございました。しかし、議論の経過を聞いてみますと、今委員御指摘のように、中山間地域等本当に必要な農道に限定して予算を縮減すべきだとか、あるいは、必要があれば国ではなくて自治体がみずから整備すべきだとか、いろいろな意味で、必ずしも一〇〇%農道そのものが要らないんだというような議論ではなかったというふうに聞いておりますので、私どもとしては、先ほども申し上げましたように、本当に必要な農道整備はまだまだあるんだという立場で、しっかりとそれぞれの立場で説明もしてまいりたい。

 今回のこの事業仕分けを基本にして、今度は財務省と交渉していくということになるわけですから、それぞれ、これは私ども政治家も、あるいは役人の方も、担当部局長も、そういう粘り強い交渉をして、できるだけきちっと理解を正しくしていただけるように努力していきたいと思っています。

 ただ、一つ先ほど先生も御指摘をいただきましたが、ああいう予算の中身、仕組みについてオープンでやるということについて、国民は、ああ、こういう中身なのか、こういう予算というのはこんなことに使われているんだみたいなことで、非常に開かれた形で議論されたということについては確かに評価がございますので、いろいろなやり方、すべてがそういうやり方でできるとは限りませんけれども、そうした開かれた手法、方式ということも今後考えてまいりたいと思っております。

江藤委員 大臣の、私が予想以上の強い御覚悟をお聞きしましたので、そのことについては大変高く評価をさせていただきたいと思います。

 ですから、大臣としましては、農道整備はその使命を終えていない、そして、これからも、農地集積それから生産費の削減であるとか生産コストの縮小であるとかそういったものを行うためには、基盤整備も含めてこれは強力に進めていくという理解をいたしましたが、それでよろしいですね、御答弁はもう結構です。(赤松国務大臣「はい、結構です」と呼ぶ)

 これは多分通告をしてあると思うんですが、私はきのう夜遅くまで秋田の方に行っておりましたので、通告がなかったらお答えがなくても仕方がありませんけれども、大臣は、今回の仕分け作業にALICの資金をもとに設立された四事業が含まれているということは御存じでいらっしゃると思います。まだその仕分け作業には入ってはおりませんけれども、仕分けの対象になったことそのものについて、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。御感想を伺いたいと思います。

赤松国務大臣 今確認をいたしましたら、事業仕分け対象には入っておりますけれども、来週でございまして、まだ直接行政刷新会議では議論をいたしておりません。

江藤委員 私の宮崎県は畜産が六割を占めるところなんですよ。米はもう三%か四%しか全農業生産の中で占めておりません。畜産がいわゆる宮崎県農政の柱に今なっているわけであります。このALIC、もしこれがやられてしまう、召し上げということになりますと大変なことが起こることは、副大臣、御答弁求めてよろしいでしょうか、畜産の御経験の非常におありになる方でいらっしゃいますので。もし農畜産業振興機構、ALIC、このものがなくなったら大変なことが起こるというふうに私は危惧しておりますが、副大臣に御経験者として御感想をお願いします。

山田副大臣 確かに宮崎も、九州は畜産の盛んなところでして、私も畜産をやっておりましたから、ALICがなくなってマル緊制度とか子牛の価格安定制度等々がなくなったら、大変なことになります。

 我々、ことしは米のモデル事業をやっておりますが、来年度、今まである肉牛とか子牛業とか養豚とかそういったものに対するALICがやっている一つの、言ってみれば共済的な所得補償制度、そういったものをもう一回改めて検証し直して、本当に畜産でも食べていける、十分畜産で農業をやっていける、そういう制度のモデル事業を畜産でもぜひやらせていただきたい、そう思っておるところです。

江藤委員 さすがに副大臣からは十分な御答弁がいただけて、大変私としても満足をいたしております。ありがとうございました。

 過去を振り返れば、もともとこれができましたのは、よく御存じのとおり、オレンジ・牛肉自由化、あのときにいわゆる牛関税を、あのときは牛肉の税金は七〇%台でした、それが入ってくるときに、この牛関税についてはほかには使わない、畜産関係に限って使うんだということで、これは仕分けをしたわけですよね。そのことによって、今まで畜産はいろいろ厳しい時代がありました、口蹄疫であるとかBSEであるとかさまざまな苦難の時代がありましたけれども、例えばBSEのときには、このALICから三千億、一気に金を投入して、一般会計には一切迷惑をかけずに、そして、早く国民の信頼を取り戻し、日本の和牛生産農家中心に崩壊の危機から脱したわけであります。

 ですから、ここで副大臣にお願いなんですけれども、また来週、これが議題になった会議におきましては、副大臣がぜひこの行政刷新会議ですか、御出席をいただいて、この事業についてはこうこうこうだから必要なんだと、役人に任せるんじゃなくて。副大臣、私は期待しているんですよ、私は野党になっちゃいましたから。皆さん方に頑張ってもらうしかないので、副大臣にその大役をぜひお引き受けいただきたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。

山田副大臣 今、舟山さんが担当しておりますが、舟山さんと相談して、場合によっては私が行きましょう、大臣の了解を得て。

江藤委員 ありがとうございます。

 政治主導というのが民主党さんの政治の金看板でありますから、これを示す意味でも、私は、非常に宣伝にもなると思いますし、やはり民主党政権であれ自民党政権であれ、畜産農家が守られるのであれば、政治は結果がすべてですから、それでいいと思っております。ぜひ前向きな方向で御検討をいただきたいと思います。

 大分時間が過ぎてしまいましたので、思い切りはしょらせていただきます。

 今回、やはり行政刷新会議で一番問題だったのは、政治主導と言われながら、何か財務省主導のような印象を強く受けました。当日、事務局が作成したこれがいきなり配られて、見てみたら、おしりの方に論点説明シートなるものが載っておりまして、それを見れば、当然、民間の仕分け人の方々も、この論点整理に従って議論をすることになります。

 これがやはり一番問題になると私は思うんですよ。まるで主計官が検事さんのような立場で、農林水産省が、被告とは言いませんけれども、裁かれる立場のような感じで。主計官の発言を聞いておりますと、片っ端から、不要である、削減すべきである、そういった意見ばかりで、何か財務省官僚にこの議論は誘導されているという印象が私には強くあります。

 準備をしていった農水省のお役人も、これは突然の質問ですから、十分答えられなかったことはあったでしょう、それは。かわいそうですよ。そうしたら、仕分け人の方からは、こんなことにも答えられないのかとかどなられて、お気の毒としか言いようがないなというふうに私は思いました。

 そしてまた、この仕分け人の皆さん方がネットとかテレビの報道を通じまして、この方々はすべての国民の代弁者であって、そして一方、役人サイド、政務官もおられたということですけれども、政務官も含めて、無駄な事業に固執する無能な官僚というような印象が殊さら強調されたように見えたのは、今後の国会運営、委員会運営にとって非常に支障を来すのではないかというふうに私は思います。

 ですから、先ほど申し上げました、本当は副大臣だけじゃなくて大臣も政務官もそろって御出席をいただいて、政治主導で議論していただきたい。

 ただ、先ほど、最終結論ではないともおっしゃいました。よくわかっております。最終的には投票で決まると。投票で決められて、黒板にぴぴっと書かれてしまう。これはちょっと、私は見ていて、余りにむちゃだと思います。この決定のプロセスについては、大臣としては余り感心しないとお感じになっていらっしゃると理解してよろしいでしょうか。

赤松国務大臣 内閣の一員でございますので、批判めいたことは差し控えたいと思います。

 ただ、申し上げれば、今委員も御指摘のように、全部で一時間。五分ぐらい省庁から説明をしなさいと。五分でやって、あと財務省の主計局の査定担当からまた五分ぐらいで当該事業の論点をばあっと説明する。こことここはこうですね、ああですね、ここは問題点ですねみたいなことでやって、そして、二分程度で査定役の国会議員からなぜこういう事業を選んだのかということを説明して、あと四十分程度質疑応答があって、評価シートが配られて、そこに廃止とかなんとか書いて、票を集めて結果が出るということです。

 今申し上げたように、内閣の一員ですから、このやり方についてコメントする立場にはありませんけれども、限られた時間の中で、事業の目的、必要性、予算執行の状況等について、適切にちゃんと説明するようにそれぞれの局長には指示したところでございますが、残念ながらああいう結果になったということで、第二ラウンドに向けてまた態勢を整えて頑張りたいと思います。

江藤委員 ありがとうございます。

 お気持ちは非常によくわかりました。お気持ちはよく伝わりましたので、もうこれ以上申し上げません。

 大臣の背中には、農林水産省の全職員だけではありません、地方においても数多くの方々が農林水産業行政のために一生懸命汗をかいていらっしゃいます。そして、その後ろには、当然、農民の方、林業家、漁業者、畜産家、いろいろな方々がおられる。そういった方々の思いがこういった場面で踏みにじられることのないように、ぜひ、きょういただいた御答弁に沿って強い態度で臨んでいただきたいと思います。

 最後につけ加えさせていただきますと、ちょっと意地悪な言い方かもしれませんけれども、党本部の意向よりも、農林水産行政の最高責任者は大臣でいらっしゃるわけですから、日本の農林水産行政の発展のためには、党とも毅然とした態度で時には闘っていただきたい、そのことをお願いしまして、このことについての質問を終わらせていただきます。

 通告させていただいたものの四分の一ぐらいしか終わっていないので、また次回の機会に回させていただきますけれども、あと十分弱ありますから、戸別所得補償について次に質問をさせていただきたいと思います。

 まず、簡単な質問をいたします。

 前回の国会でも前々回の国会でも、法案という形で、戸別所得補償法案が提出をされました。今回提出されなかった理由は一体何なのでしょうか。

赤松国務大臣 方向といたしましては、これはマニフェストにも明記をいたしておりますけれども、二十三年度からの本格実施ということでございまして、その前に、きちっとした形で、万全の体制でスタートをさせるための一年間の準備期間というのを設けました。それが今回提起をさせていただいておるモデル事業でございます。

 ですから、モデル事業をまずきちっとやり遂げて、そしてその上で、皆さん方の意見も十分聞いて、そして足らざるところ、あるいは追加しなければならないところ、そういうものをきちっと精査しながら、それを織り込んだ法案を正式な形で国会に提出させていただきたい、このように考えております。

江藤委員 二十三年度から本格実施という事情は重々承知をしております。

 しかし、今国会に提出をして、そして事業実施年度は何年からとか、そういう法律は幾らでもあるじゃないですか。私は、四年間皆さん方が解散をする意思がないのであれば、四年という時間の猶予はあってしかるべきだと思いますよ。しかし、やはり農業政策は特に多岐にわたっておりますので、パッケージであります。このパッケージという理念が大きく忘れられてしまっている。

 私は、今回、来年から戸別所得補償制度をモデル事業という形で始めるんだということを報道で聞いたときに、ああ、始められるのか、モデル事業、いいなと正直言って思いました。モデル事業でやるべきなんですよ。

 先ほど筆頭からもお話ありましたけれども、百八十万農家でやるとなると、これはモデル事業じゃありません。これは米政策の大転換と呼べるものでありまして、先ほど筆頭からも御指摘あったように、これには慎重な手続を踏まなければ、将来大きな禍根を残すのではないかと思います。モデル事業ということであれば、当然、畜産や漁業、林業、そういったものも、いろいろな地域をちょっとずつ選んでモデル事業をやっていただけるものだというふうに思っておりました。しかし、そうではなかったということに私は大変落胆をしておりますし、これは地元の人たちも、何でそうなるのというお言葉はたくさん聞かれます。

 前国会に提出された法案には野菜、果樹は入っておりませんでした、別途対策を設けると。十九条だったと思いますけれども、そう入っておりました。しかし、鳩山総理は、参議院本会議の代表質問で、平成二十三年度には野菜、果樹も組み込んでいく、こう御答弁されておられます。

 ということであれば、来年、モデル事業として野菜、果樹もやるべきだと私は思います。米をやれば、二十三年度から畜産も林業も漁業も、野菜、果樹も、いわゆる蓄積されたベースのデータとして、それを横滑りさせるような形で事業がスタートできるとは私は到底思いませんよ。山田副大臣は畜産が御専門ですからわかりますけれども、米と畜産を同じレベルで考えるのは、全く別の話ですよね。うなずいていらっしゃいます。

 水産ももちろんそうですし、林業も全く違う。米だけモデル事業でやれば二十三年度からは本格的に戸別所得補償法案が実施できるんだというのは、私には到底理解ができないということを申し上げますが、大臣、私の御指摘についてどうお考えになりますか。

赤松国務大臣 御指摘の点は理解はできますけれども、では、私どもがなぜモデル事業として、米といいますか水田作に絞って始めたのかということでございますけれども、言うまでもなく、作付農家が圧倒的に多く、やはり米が円滑な本格実施に向けてのかぎとなることは間違いございません。

 そういう意味で、米を中心としたこうした制度、そして、米だけですと、生産数量目標を立てて、いわば一定の数の生産だけでとまってしまうわけですから、また私どもがこの制度の大きな目的の一つとしております、自給率を上げていく、その意味では、そうした米をつくらない水田における利活用ということも並行して、あわせてやっていかなければ意味がないということで、その制度とあわせてやっている。

 先ほど山田副大臣が申し上げましたけれども、麦、大豆、あわせて米粉、飼料米というようなものも含めて、そうしたものをつくることによって自給率を上げていく、いわばこれをセットでやらせていただいておるわけでございます。

 そして、そこまでやるんだったら、では、野菜、果樹、畜産、水産、全部含めてやればいいじゃないかということですけれども、水産等でいえば、そういう基礎的なデータが残念ながら今の段階ではまだそろっていない。ですから、そういうもののデータも集めながら、とりあえず、まず一番中心たる米の部分、水田作の部分についてきちっとこの制度をやらせていただく。そして、二十三年度からは、では規模加算をどうするのかとか環境加算をどうするのか、あるいは、どの品目、どの作物を入れていくのかということも含めて、このモデル事業の中で得られたいろいろな結果を見ながら、二十三年本格実施にどういう形でスタートさせていくのかをきちっと決めさせていただきたい、このように思っております。

 今、大変ありがたいことに、こんないい制度があるんだったらぜひ果樹、野菜も入れてくれ、お茶も入れてくれ、あれも入れてくれ、これも入れてくれと、本当にどんどん来ています。しかし、この制度の基本が、常に販売価格が生産費を下回っているというもの、まずそこを基本にして考えておりますので、果樹あるいは野菜、またお茶なんというと、必ずしも常に販売価格が生産費を下回っている状況ということには当たらないというふうに思っているものですから、経営安定のための何らかの対策ということについては必要だと思っていますけれども、この制度の中に入れてやっていくということについては、現在のところは慎重に考えているということでございます。

 とりあえず、とにかくこの制度をうまくスタートさせることによって、ぜひ二十三年度からの本格実施をよりよいものとして正式にスタートさせたいということで、御理解をいただきたいと思います。

江藤委員 総理の御答弁とも余り合わない部分もあったような気もしますが、あえて突っ込みはいたしません。時間があと三分ぐらいしかありませんので。

 しかし、非常に期待が大きいと今大臣おっしゃいましたけれども、私の地元では失望感の方がはるかに大きいですよ。そして、戸惑いの声が非常に多く寄せられています。

 農家は大体複合経営です。米だけつくっている農家なんというのは宮崎にはほとんどいません。例えば、米をつくりながら畜産もやっている、ゴーヤーもつくっておる、露地野菜もやっておる、そういう農家もたくさんあります。

 そういう農家の方々は……(発言する者あり)マンゴーもありますよ。マンゴーもありますけれども、そういう農家は、民主党政権の今回の選挙の宣伝を見て、すべての所得に着目して、赤字になったら埋めてもらえるんだと。どの作物がどうたらこうたらではなくて、いろいろな作物をつくって、でこぼこはありますよ、例えば、キャベツではもうかったけれどもピーマンでは損をした、これをならしてくれて、それで一軒一軒、戸別の所得を補償してくれるということで大きな票を集めたというのは、これは紛れもない事実だと思います。でも、何かやはり、それはそうではなかったということですね。

 先ほど言いましたけれども、宮崎県の場合は、畜産が五九%、園芸が二九%、米に至っては、二ヘクタール以上の農家は六百八十六軒しかありません。こういうところの人たち、宮崎でも米は大事ですよ。米農家を雑に扱っていいということを私は言いませんけれども、米の多いところにとっては非常に受けがいい部分ももちろんあるでしょう。しかし、来年は参議院選挙を迎えます。そういうことになると、やはり、先ほど大臣も御答弁されましたけれども、対象戸数が多い、ここにまずは先行的に手を打てば非常に参議院選挙で有利に戦える。(発言する者あり)それはちょっと私の言い過ぎですか。言い過ぎだったらおわびを申し上げますけれども、私はそういうふうに率直に感じております。

 先ほど筆頭からも御指摘ありましたけれども、戸別所得補償制度というには余りにもやはりネーミングに無理があります。私、新しい名前を考えてきました。一律所得補てん制度というのではいかがでございましょうか。これだと農家に誤解を与えません。

 政治家は夢を語ることはとても大切です。今苦しんでいる農家の方々に、ちゃんと助けますよ、頑張りますよと言うことはとても大切ですけれども、ああ、こういうことをしてくれるんだと思っていて、それがそうでなかった場合の失望、落胆、そういったものがその後に待っているとすれば、これは政治家の責任は物すごく大きいものがあるのではないかと思います。

 あとちょっとありますからしゃべらせていただきますが、補正のときに、農地集積加速化事業、これも凍結をされました。これは事業規模が余りにも大き過ぎるということであります。

 質疑時間が終了ということでありますけれども、次の質問者がまだ来ておりませんので……(発言する者あり)来ている。もうやめないかぬか。

 集積事業の凍結ということをやられましたね。これは現場では、全国で大変な混乱を今、もたらしています。

 例えば南九州なんかでも随分団地化が進んでいるんですよ。集落営農が進んでおります。そして、南九州のある団地では、先ほど宮腰筆頭からも話がありましたけれども、産地づくり交付金で六万五千円出していました。今度の制度になると、これは一万円でしょう。みんな、やめると言っていますよ。

 しかも、飼料米で八万円もらえるんだったら、土地を返してくれと。せっかく集約された土地が、飼料米だったら楽ですもの。よくおわかりだと思いますけれども、直まきして、一回除草剤をまいて、刈り取りは畜産家でも酪農家でも頼めばいい。では刈り取り代一万円でも二万円でも差し上げましょうというようなことも可能なわけですよ。

 せっかく、これからの担い手となるべきいわゆる専業農家、こういった人たちに農地も集積されつつあった、そして、産地づくり交付金によって地域の特色のある作物が次々とブランド化されて、消費者にも大変喜ばれて、今生産が進んでいます。こういったものが今壊れようとしているんですよ。こういったことは十分御認識をされた上でこの制度設計をされたんですか。

赤松国務大臣 先ほど宮腰委員の御質問でも答えましたけれども、この制度は、全国平均の標準的な生産に要する費用と販売価格との差額に相当する額を全国一律単価として交付金の算定を行うというものでございまして、個々の農家の生産費、販売価格を算定して、農家のそれぞれの赤字そのものを補てんする制度ではございません。

 ですから、先生御提案の一律補てん制度、こういう名前に変えたらどうかということですけれども、一律にそれぞれの個々の農家の赤字を埋めるという制度ではなくて、むしろ、全国平均をつくって、最低限のところはきちっと約束しますよ、それ以上頑張って生産性を上げて、協業化を進め、また農地の集約化を進める中で、ぜひ生産性を上げてより多くの利益を生み出してください、そういう制度だということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 それからまた、モデル事業にしても、説明がやっとつい最近から地域において始まったところなものですから、まだまだ本当の意味でのこのモデル事業の中身について、すべての農家の皆さん方が御理解をいただいているということには残念ながらなっていません。その意味で、私ども、もっと努力をして、出先の農政局等を使いながら、しっかりとまた市町村、農協の皆さんにも御協力をいただいて、この制度の仕組みについて詳しく御説明をしてまいりたいと思っております。

 だんだん制度の中身がわかってきますと、先日の、全農の皆さん方、あるいは貴党の政調会長からも思わぬ御評価をいただいたりしておりまして、ぜひ、これは党派を超えて、いいものはみんなで推進をしていくという立場で御協力が賜れればというふうに思っております。

江藤委員 いいものを推進する、それはもう先ほど申し上げたように約束いたします。いいものであれば、ともに力を合わせてやっていきたいと思います。

 私が地元を歩いておりますと、政権交代によって農業政策はこれからどう変わるの、法案も出されていないけれどもという質問が多いんです、実際問題。ですから、大臣、来年の通常国会では、農林水産政策全体をパッケージとして、きちっと網羅してある法案を必ず提出していただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

筒井委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 自由民主党の赤澤亮正でございます。

 きょうは、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、さきの衆議院選挙の結果、我が党は下野を国民の皆様に命じられたということでありますから、我が党もしっかりと反省をして、すべてのイメージ、体制、政策再点検、見直し、出直しといったものが必要だろうというふうに思っております。

 しかしながら、一方で、我が自由民主党に立ち直りを期待するという声も報道機関によっては七割を超える、こういうわけでありますから、私は、今国民の皆様の声というのは、現時点で自由民主党に政権を任すわけにはいかないけれども、しかしながら、民主党を勝たせ過ぎたので、しっかりと野党として検証をしなさいというのが、国民の皆様から課せられた、厳しい戦いを勝ち抜いた現職の議員の責務だろうと思っております。

 そういう観点から、きょう出てくる政策については、先ほど質問があった宮腰代議士そしてまた江藤代議士、全く心を同じくするものでありまして、日本の農業の将来にとって、あるいは農家、農村にとっていいものであれば一生懸命力を合わせていきたい、懸念点があればしっかりと検証させていただく、そういうことでまいりたいと思います。

 筒井委員長、そしてまた赤松大臣、山田副大臣、そしてまた佐々木政務官、御就任まことにおめでとうございます。

 今から始めさせていただきます。

 まず、私は、さきのマニフェストで日米FTAということの締結と書かれたときに、本当に日本じゅうの農家が心配をし、農業関係者が大変な懸念を持ったということから始めさせていただきたいと思います。

 その受けとめとの関連でいきますと、戸別所得補償制度は農産物貿易自由化への準備ではないのかという懸念が関係者の間に非常に強いということは、私は紛れもない事実だろうというふうに思っております。

 過去、小沢今の幹事長、代表当時もそういう御発言があったと思いますが、農産物貿易の完全自由化を目指すという御発言が過去にあったやに私は記憶をしておりますし、日米FTAの締結というマニフェストの記載については、農業関係団体の猛反発を受けて、割と短期間のうちに、ぶれたという言葉は使わない方がいいかもしれませんが、交渉の促進化、推進という言葉にかえられたと承知をしております。

 しかしながら、その際も、報道によれば、小沢代表はどんな発言をされたか。いや、所得補償をしっかりやるんだから、日米FTAを締結したって問題はないはずだ、このような御発言も報道されているわけであります。

 私は、民主党内の特に権力構造についてさして深く物を言う気はございませんけれども、大変なお力をお持ちであると推察します小沢幹事長が、そのような発言を代表当時から繰り返されている、こういう中であります。総理や赤松大臣が、戸別所得補償制度、これは農産物の貿易自由化への準備ではないかという声について、いろいろな機会にお話をしているのは承知をしておりますが、内閣としての考えを改めてここでお尋ねしたいと思います。

    〔委員長退席、梶原委員長代理着席〕

赤松国務大臣 今お話ありましたように、小沢幹事長発言ということで御指摘を受けた点は、そのとおりだと思います。

 我が党も開かれた党ですので、いろいろな考え方があってもいいと私は思っておりますが、ただ、では、党の政策、党の基本というのは何なのか。だれだれの発言なのかということではなくて、私は、あくまでも、やはりマニフェスト、これは国民の皆さん方とのお約束の中で出している正式な文書でございますので、これが党の基本的な考え方だ。そして、政府・与党という立場でいえば、当然、国民新党や社民党の皆さん方との三党の連立協議ということも、これはもう一段階踏まえなければいけませんけれども、その上での考え方が、まず、この政府としての基本的な考え方だということで、ぜひ御理解をいただいてまいりたいと思います。

 それでいえば、結論だけ申し上げれば、WTOやFTAの締結を前提として戸別所得補償制度を考えているものではありません。今度十二月にジュネーブでWTOの会議等もございますけれども、それはそれでまた、私どもの主張すべき点は主張しながら、守るべきものはきちっと守っていくという立場で、私自身も議会の御理解がいただければ参加をさせていただきたいと思っておりますけれども、そのことと今回の戸別所得補償制度、日本の農業、農村、地域を再生させる、食と地域を守っていく、それとは直接的には関係ないということを明言しておきたいと思います。

赤澤委員 今のお話でありますけれども、もう一度、ちょっと確認をさせていただきたい。

 それは、総理もそういう御発言だったと思います。直接の関係はない、こういう言い方であります。関係自体があることを否定していないようにも聞こえます。率直に聞かせていただきたい。この戸別所得補償制度を導入して、その流れとして農産物の貿易自由化に踏み切る考えは農林水産大臣は持っておられない、そういうことで断言をいただけますでしょうか。

赤松国務大臣 結構でございます。そのとおりです。

赤澤委員 それでは、あわせて、私どもは、自公連立政権当時も、多様な農業の保障という考え方、農業の多様性、そういったものをきちっと生かした交渉ということで、WTOの農業交渉に臨んでまいりました。上限関税あるいは重要品目、関税割り当てといったことについて、きちっと戦略を立てて臨んでいたところでありますが、月末から始まるWTOの閣僚会議に臨むに当たっての大臣のお考え、特に、自公連立政権時代と比べて何かしら我が国の主張が変わるのかどうか、変わる点をはっきりとお答えいただきたいと思います。同じ姿勢で臨むというのであれば、そのように言っていただければ結構でございます。

赤松国務大臣 委員御指摘のように、私どもは先日、アメリカにも一泊三日で、国会の始まる直前でございましたけれども行ってまいりまして、カーク通商代表、そしてビルサック農業大臣ともこの点について話してまいりました。

 ともに今、三点具体的に言われましたけれども、重要品目の数と柔軟な取り扱い、上限関税の不適用、関税割り当ての新設、この三つについては、アメリカに対しても、こういう私どもは基本的な考え方だ、ぜひ、WTOのジュネーブにおける会議でも、そういうことを理解していただき、協力を願いたいということでお話をしてまいりまして、基本的な姿勢は、この点については前政権と変わらないというふうに思います。

赤澤委員 ということであれば、農業関係者の一定の御理解は得られるのかな、安心してもらえるのかなという気がいたしますが。

 最後にもう一点触れさせていただきたいのは、きょうも御臨席でありますけれども、山田副大臣が、十一月の六日に農水省の七階で開かれて百二十名ぐらい出席していた農政ジャーナリストの会というところで、最後に、これは朝日新聞の方だと思いますが、「重要な議論を皆さん忘れているから聞くが、戸別補償はどういう理念なのか。農家の社会保障制度なのか、それとも、WTOやFTAにらんで一層の市場開放を要求される中で、そういう中での取り組みとしての第一歩という位置づけか。」と。

 これに対する山田副大臣のお答えは、私が手元に持っております簡易議事録によれば、「社会保障政策ではない。後者に近い形でやっていく。」こういうことであります。後者というのは、WTOやFTAをにらんで一層の市場開放を要求される、その中での取り組みの第一歩かと聞かれて、これについて、後者に近い形、その形でやっていくんだ、こういうお答えがあったわけです。

 私は、どうもやはり、小沢幹事長の御発言、そして、直近ですよね、十一月六日の副大臣の御発言、この辺を聞くと、何か衣の下によろいが見える。

 今お話をしても、赤松大臣は大変紳士的でいらっしゃいますし、非常に温和な感じでありますけれども、山田副大臣は、これまでも御指導をいただいて、ちょっと待ってください、お久しぶりでございます、農林水産委員会でも過去非常に御指導をいただいて、先生の迫力に私は心から敬意を払っておりまして、野党時代に、よく、質問について納得できない点があるとこんなことでは質問は続けられないと言われて、我が党の与党の当時理事は大変きりきり舞いをさせられて、これは大変迫力のあるこわもてな先生だと、今大変すてきな笑顔で笑っておられますけれども。

 私から見ると、こわもてな小沢幹事長、そしてまた大変こわもてな山田副大臣が、何か自由化への道といったようなことをごく直近でも発言をされているわけです。そうすると、温和なハトといいますか鳩山総理、そしてまた赤松大臣が、一生懸命農業を守ろうとして自由化への道ではないといっても、どうもこわもての方たち、幹事長あるいは副大臣が挟み打ちで何か大臣をこれからリードしていっちゃうんじゃないかというような心配を私は率直に言ってするものです。

 この点について、問題点として指摘というか、どうしても大臣が御発言になりたいことがあれば伺います。山田先生が何かお話しされますか、済みません。

山田副大臣 確かに、私は講演したときに、これは社会保障政策ではないんだ、いわゆる産業政策であるというお話をしたと思うんです。農業とか漁業とか畜産がいわゆる自立してこの日本の中で産業として確立するためには、欧米諸国並みに所得補償が必要である、そういう話をしたので、私自身がWTOやFTAを前提で社会保障政策ではないと言ったという記憶はないんですが。

赤澤委員 しかしながら、記者さんから入手した議事録にある意味残っておるわけです。そういう意味では、山田副大臣も野党時代よりさらにまた発言力、発信力をお持ちになっているわけですから、正直な話、あの御発言で農家は大変不安になっているということです。そういった発言が続くことは、それが真意でないというのであればぜひ控えていただきたいというふうに思います。この点はもう指摘にとどめます、お答えは結構です。

 私は、やはり、小沢幹事長そして山田副大臣の発言、農業関係者の不安はもう尽きることがない。どう考えても所得補償制度というのは農産物貿易自由化への一里塚じゃないか、こういう強い懸念を関係者が持っている。きょう大臣がはっきりとそういう考えはないと明言をされたわけでありますから、そのことは守っていただきたいですし、この点については、万が一たがえるようなことがあれば本当にこれは責任問題だと、はっきりとここで申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、次に、マニフェストの中で目玉政策でうたわれている戸別所得補償制度というのがございます。これについて、非常に基本的なことで恐縮でありますが、改めて制度の目的は何なのか、簡潔にお伺いをしたいと思います。

赤松国務大臣 これはもう何回も申し上げていますけれども、疲弊した地域、特に農業、農村の再生、このためには、ぜひ新たなこうした戸別所得補償制度を導入して立て直すよりほかに道はないというふうに思いまして、提出をさせていただいております。

赤澤委員 二つお尋ねをいたします。

 農産物貿易自由化への準備ではない、加えて、もう一つは食料自給率の向上ということがかなり大きな目的として入っていたように、過去民主党が提出された法案では入っていたように思いますが、その点、二点いかがでしょうか。

    〔梶原委員長代理退席、委員長着席〕

赤松国務大臣 先ほども少し申し上げましたけれども、戸別所得補償制度の米の部分については、これは生産数量目標を設定してやるわけですから、このことをきちっと守っていただけるようにするという意味では、これはもう自給率が上がるということはないわけです。

 問題は、もう一つの、あいた水田を利活用して、そこでもって麦や大豆や、あるいは飼料米や米粉をつくっていただく、それとセットで考えなければ、これは自給率の向上につながらない。

 だから、そちらへ何とか、主食米と同じような形でこれら麦、大豆あるいは米粉、飼料米をつくっていただいても遜色ありませんよ、むしろこの方がもっと利益は上がるかもしれませんねということで、そちらへ誘導することによって日本の食料自給率をどんどん上げていくということが大きな目的の一つでございます。

赤澤委員 目的の中に農産物貿易自由化は入っていないということについて御発言はなかったですが、先ほどそれはやらないということだったので、そういう趣旨だというふうに私の方で理解をさせていただきます。

 食料自給率の向上も当然目的に入っているということですが、それとの関係でちょっと以下の御質問をさせていただきたいと思います。

 私は、まず、今このモデル事業を概算要求で来年実施しようとされておられますけれども、過去ずっと続けて法案を提出してこられたのに、いざやる段になったらぱったりそれが出てこなくなった。予算措置としてモデル事業をやるといいながら、百八十万の米農家、これは共済に入っている人は全部ということで、十アール以上全部という理解をしていますけれども、当初考えていた、いわゆる三反以上、五十万以上という販売農家ではなくて、さらに広げて百八十万。これはもうモデル事業でも何でもないのでありまして、米だけ全部まず始めちゃう、こういうことであります。これはもう私は、明らかに準備不足の拙速な大改革ということで、後に憂いを残すのではないか、非常に心配をしております。

 その心配の中には、長い目で見て日本の農業の衰退につながっていくんじゃないか、今非常に厳しい状況にありますけれども、さらなる悪い方向にということが一点と、それから、現時点で短期的に見ても非常に現場は混乱をしているように思います。その二点について、時間の許す範囲で幾つか伺っていきたいと思います。

 まず、今国会に法案を出さず拙速に大改革を進める理由。これは先ほど江藤委員からも御質問が出ていたと思いますけれども、大改革なのに時間をかけず、全体のバランスをとろうともせずできるところから始めるのは、もう来年の参院選対策と言われても仕方ないんじゃないか、こういう御指摘がありましたけれども、この点について、拙速に大改革を進められる理由、法案を今国会に出されない理由、制度の全体像を示されない理由、この辺についてお考えがあればお話しいただきたいと思います。

赤松国務大臣 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、一つは、今の農業、農村がまさに待ったなしの状況である。農業者人口は減り、高齢化が進み、そして三十九万ヘクタールもの耕作放棄地がそのままになっているということでございまして、いろいろな集積事業に今までも取り組んでまいりましたけれども、むしろ、土地の集積よりも土地が、農地がなくなっていく方が毎年多い。毎年二万ヘクタールずつ耕作放棄地がふえているという実態を見るときに、直ちにこれは何らかの取り組みを進めていかないといけないということで、早期に取り組みたいということでございます。

 それからもう一つは、ではなぜ本格実施に向けての法案を、野党時代は毎年出していたじゃないか、なぜ出さないんだという御指摘でございます。

 まさにこれは、私どもが政権を担うことによって、マニフェストで二十三年から本格実施をいたしますというふうにきちっと書いてあります。その前段で、二十二年度からは、表を見るとこういう形になっていると思いますけれども、まさにモデル事業の部分は二十二年度から始めますということも、これも選挙の前にきちっとお約束をしたことでございます。そして、あくまでもモデル事業ですから、推進上の課題等を検証し、洗い出していくことが目的の一年限りのモデル事業ということでありますから、これは法案という形にならないだろう。これを検証の上で、必要なものをまた加えながら、二十三年の本格実施ということに向けては、当然それに間に合うような形で戸別所得補償制度の法案を提出させていただくということになろうかと思います。

 モデル事業もまだやっていないのに今のこの段階で出すというのは、やはりこれは何のためのモデル事業かということになりますので、モデル事業の実施推移を見ながらということになるのではないかと私自身は考えております。

 それからもう一つは何でしたか。戸別所得補償制度で日本の農業はすべてうまくいくと考えているけれども、農業の衰退につながるのではないかということでしたか……(赤澤委員「そこは後でいいです」と呼ぶ)いいですか。

赤澤委員 今のお話を聞いても、聞こえてくる声は、待ったなしと言うんだけれども、やるのは米だけ。米だけについて、モデル事業といいながら、百八十万の農家全部やると。モデル事業で相手のすべてを対象にするなんというのはモデル事業でないので、先ほど名称についても江藤委員からも御指摘あったけれども、本当に言っていることとやっていることがどうも合っていないなという感じを強く持ちますし、そのことが、今から申し上げるような心配を本当に招きます。その点について幾つかお話をさせていただきたいと思います。

 先ほど、大きな二つの心配があると。一つは、中長期的に見て日本の農業を悪い方向に持っていくんじゃないか。もう一つは、短期的に見て日本の農業の現場を今非常に混乱させているぞというお話をいたしました。

 最初に、中長期的な懸念の方から参ります。

 これは、まず、農政についての考え方がかなり違うと思うんですね。自公連立政権のときには、とにかくいろいろな面で農政というのは総合的にやっていかなきゃいけない。一つは、例えば国民への食料の安定供給をやる食料政策。さらには、産業として農業を成り立たせるための農業政策。あるいは、地域振興策としての農村政策。そしてまた、非常に重要な生産基盤であります農地を扱う農地政策。さらには、国境措置といったようなものを十全に組み合わせて、その総合的な結果として農家も農村も明るくなっていく、こういうことがどうしても必要だろうと私どもは思っています。

 ただ、そんな中で、成長戦略がない。民主党全体のマニフェストについて言われるのと共通の点だと思いますけれども、やはり所得補償、直接払いだけやれば何か農家が元気になってというのは私は非常に心配があります。

 具体的に申し上げても、農地の集積に関する予算については、面的集積に関する予算についてはいろいろな事業仕分けとかでも大変冷たい扱いがなされているようですし、とにかく子ども手当、あるいはこの所得補償といった直払いに集中して、これをやっておけば後は展望は開けてくるんではないか、私はその点は大変甘い考えだろうなというふうに思っております。

 具体的に一つ申し上げると、今現場でもう起き始めていると思うんですけれども、農地の貸しはがし、あるいは地代の値上げ要求といったものが出てくると思うんです。

 それはどういうことかといえば、米については、これは私ども、所得補償自体を頭から否定する気はありません。すべての農家が、例の全国一律で固定払いの部分とその年ごとの払いの部分をもらえるということで、農家は喜ばれるでしょう。しかしながら、米についての収益性が上がるわけですね。その結果、では、自分は今まで自分の農地を委託して耕してもらっていたけれども、あるいは集落営農に出していたけれども、これからもう自分でやりたいということが出てくる。あるいは、貸している土地について地代を上げてほしい、もっと米がもうかるようになったから、こういう話があり得るんだと思うんです。その結果起きることというのは、今まで自公連立政権のもとで頑張ってきた、集落営農を含む担い手の育成あるいは農地の面的集積に明らかに逆行する地代の値上げ要求、農地の貸しはがしといった方向が出てきていますし、指摘され始めています。

 その辺について、非常に好ましくない方向ではないかという点の検証をさせていただきたいと思います。

赤松国務大臣 委員御指摘のようなことにならないように、私どもといたしましては、農地の集積によって大規模化がより進むように、あるいは集落営農については、その協業化がさらに進むようにという手だてについてもやっていきたい。むしろ、先ほども言いましたけれども、全国一律の単価にすることによって、効率を上げれば上げるほど、あるいはコストを下げれば下げるほどそれは大きな利益としてはね返ってくるわけですから、ある意味でいえば、さらに農地集積や協業化が進むのではないかというふうに思っております。

 それからもう一つは、この制度というか日本の農業の大きな役割の一つとして、冒頭議論にもなりました多面的機能ということを考えると、では採算性の悪い小規模の農家は切り捨てていいのかということにこれはならないわけで、そういう地域についても、しっかりとそれぞれの規模の中でそういう農業に励んでいただく。それがまた水、緑、環境に対して大きな多面的機能を発揮することになるし、また、そうして高齢農家あるいは小規模農家についても、そういう農業をやっていただく中で、よりそれは協業化、集約する形での農業形態に変わっていくことに徐々になっていくんじゃないかということも期待をしながら、今の御心配の点は御心配の点としてあると思いますけれども、ぜひ私どもはそんな形で取り組んでいきたいと思っています。

赤澤委員 今、当然出てくるだろうと思った答えが出てこなかったので、ちょっと私の方で話しますが、マニフェストには規模加算とかをこれからやられるということを書いてあるんですね。にもかかわらず、その制度について、どういうことを具体的にやるのかが今回全く出てこないモデル事業をやってしまうということは、極めて誤ったメッセージを農家、農村に送る。

 全国一律で、小規模の農家についてはコストが高い、もらえるものでもなかなか赤の分を補てんをできない、そしてまた、効率がいいところはますます潤うといったような形。ではどうしたらいいんだ。規模加算は全く制度の中には入っていない。マニフェストの細かいところまで農家は読んでおられないでしょうから、大変誤ったメッセージを与えて、これは集落営農や農地の面的集積に明らかに逆行するものの第一歩を大きく踏み出されると私は感じております。

 それ以外にも、昭和三十年代から熱心に複合経営を目指してやってきた。米だけだとこれは余るので、果樹、野菜、あるいは畜産、酪農、我が地元の鳥取県などは非常にそれをうまくやってきたと思っています。そういう中で、複合経営を頑張ってやってこられた方たち、転作や畜産、酪農をうまく組み合わせて、野菜、果樹もやって、それが、新規需要米を含む米依存に明らかに回帰するまたこれは第一歩になり得ると私は思っています。そういう意味で大変心配の多いモデル事業であります。

 加えて、先ほど何のために質問したかといえば、食料自給率の向上が目的だとおっしゃったんですけれども、モデル事業で農家に与えるメッセージ、これは、少なくとも一年目は米の収益性だけが高まる。我々の理解では、転作作物については、用意された単価も含めて支援は自公連立政権当時と全く同じであります。生産調整の要件が外れているだけということじゃないかと私は理解します。

 そうなると、支援は、米以外のものをつくったときは前と同じ、米だけは収益性が高まる。これは、全体の傾向として、生産数量目標をどう管理されようが圧倒的に米をつくる、米粉米も含めてとにかく人の口に入る米をつくるという方向の圧力が増すことは間違いないのでありまして、私は、本当にこれで食料自給率、転作作物あるいは畜産、酪農が上がるという政策の第一歩としてのモデル事業としてふさわしいのか、全く不適だというふうに感じることを指摘させていただきたいと思います。

 それから、時間の関係で中長期の話はこれぐらいにさせていただいて、今、農業の現場が混乱をしているという話をさせていただきたいと思います。

 農家の大きな期待外れという話は、先ほど江藤委員からも、そして宮腰筆頭からもあったと思います。名前については、江藤先生の一律所得補てんというのはこれは党内ではまだ承認がない話で、私はもっと違うと思うんですよ。私に言わせれば、全国一律生産費補てん制度がいいところだろうと思っています。全国一律という言葉をつけておかないといかぬので、全国一律生産費補てんで、所得の補てんには私は残念ながらこれはなっていないのかなというふうに思っております。そこは党内の話ですから、余り議論していてもしようがないので、先に行きますけれども。

 とにかく、戸別所得補償とついた以上、農家はこれは本気になったんですね、これこそ求めていたものだと。そういう農家は私の地元にもたくさんいます。国道沿いはともかく、水田地帯に入ると、相手の候補のポスターがもう十メートル間隔で張ってあるようなところが多々あります。おお、ここは戸別所得補償をとても買っているんだなとわかるようなところが多々見受けられる。

 そういうところはやはり、農家ごとに戸別に赤字がどれだけ出たかを見て、最後の一円まで補てんしてもらえると信じている。これはもう看板に大きな偽りありでありまして、やっていることは、生産調整を守ったときの生産調整協力金といったような性格もありますし、やはり生産費補償だという感じがする。とにかく、全国一律でありますから、個々の農家から見れば、赤字を全部補てんしてもらえるというものでは全くない。

 この辺は、民主党の過去の選挙のときの活動、あるいは党員の皆様の言動、さらには、篠原委員が自分で言っておられたと思いますけれども、少々いかがわしい選挙ビラ、こういったものも含めて、大変大きな誤解を招いているということだろうと思います。(発言する者あり)委員会で、少々いかがわしい選挙ビラ、こうおっしゃったと思いますので。みずから党員が認めておられるいかがわしいビラも含めて、そういう誤解を招いた。そのことで選挙には勝ったが、実際出てきたものは注文したものと違う。こういった点はやはり大いに反省をしていただきたいし、これからその責任は徐々にとられることになるというふうに感じます。

 制度の全体像が不明という話も私は大きな問題だと思っていまして、これについては、一つ、地元の方からいただいたメールを読みたいんです。

  日々の奮闘お疲れ様です。

  政権交代により、毎日のように事業の見直しの報道がなされていますが、農政部門は果たして要領・要綱が決まり来年の春からスムーズにスタート出来るのか心配です。どうも次年度対策のメニューの中には「集荷円滑化対策事業」が見当たりませんが、やはり廃止ということで決定したのでしょうか?終了した場合、本県はこれまでに一度も発動されておりませんが、生産者が積み立てた拠出金はどうなるのでしょうか?そろそろ現場では、来年度に向けて国の事業内容に沿って、極力事務を合理化並びに簡素化するため、システムのプログラムを更改していく必要に迫られております。

  もう既に何かの文献並びに報道でアナウンスされていて、私の知識が薄いだけかもしれませんが、農業問題にお詳しい赤沢先生にお聞きしたくてメールしました。お答え頂ければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。

 このように、架空の話じゃないんです、農業現場は今大混乱しております。それは、非常に拙速に大改革を打ち出されて、制度の全体像を示されていない。二十二年度以降、例えば、品目横断とどういうふうにすり合わせるんだ、共済との支払いはどうやってすり合わせるんだ、あるいは、この集荷円滑化について、今まで積んだ拠出金はどうなっちゃうんだろう。ありとあらゆる問題について、不安はあおられる一方で、全体像が示されていないんです。その辺については、本当に今のままではまずいぞということをぜひ御理解いただきたいんです。

 今月末には、食糧部会で生産調整のまとめ、決めが始まります。春にとる麦であればもう植えている時期なんです。その時期までに、米や転作、全体を複合的に営農計画を立てる農家の皆さんに、法案も制度の全体像も説明されない状態で、大改革をえいやでやってしまおう、こういうことでありますから、本当に現場の混乱というのは、もう心ある人たちは物すごく心を痛めているということで、やり方についても、少しというか大分工夫をしていただきたいというふうに私は思っています。

 さらに、今度は不公平性の話をさせていただきたいんですけれども、不公平だという点についてはいろいろな指摘があります。一つは米の先行実施。畜産、酪農家の方たちは、今一番苦しいのは我々だ、わかっているのかと。先ほどの話で、待ったなしだからと大臣おっしゃいました。待ったなしでやるモデル事業の中には畜産、酪農は入っていないのか、やると言っていたじゃないか、こういう声が出てきています。極めて不公平だ、何で米農家だけなんだ、こういう声であります。

 それから、全国一律単価についても問題が指摘をされております。これは、もう当然のことながら標準的なので、標準的な農家の赤字はほぼ補てんされる。今、米について効率よく生産されている北海道や、米どころ、東北あるいは北陸、信越などは、既にもう一俵当たりもうかっているのに、試算してみると、十九年産であればさらに二千円とかのお金がきっと来る。十アール当たり一万五千円に定額払いをふやすと言えばもっと来るでしょう。非常にいい状態です。

 一方で、中国、四国地方なんかは、これはもう小規模農家、中山間地域農家があふれています。家族経営も多い。まさにここを救わなきゃいけないんだと言っておられた、民主党の方でそういうふうに言っておられた地域については、これは規模の点で全国一律のものをやられると、なかなかおっしゃっている目的の所得の補てんというのができないだろうと思うんですね。試算してみると明らかにそうなります。その辺で、これはやはり、米の生産について規模が大きくて、しかも米がブランド米として売れるような農家のための制度かなという不公平感というものが指摘をされております。

 もちろん、私どもも、米農家がすべて今よりも手厚く支援を受けられるということは理解をしていますから、その上での話でありますけれども、そういう声がある。

 最後に、もう一つ御質問をしたいのは、これは質問にします。

 子ども手当についても金持ち優遇批判というのがあります。外車を乗り回しているような家でも、中学生以下の子供がいればもらえるけれども、年収三百万の家でも、子供を一生懸命育てて高校生になった、親の介護が始まった、そういう家は、皆様が財源手当てをする所得税の配偶者控除、扶養控除の廃止で大増税であります。その辺は公平なのかという議論はあったけれども、農業についても当然出てきます。

 農外所得が一千万円以上あるような家庭、こういう兼業農家が結構あります。そういう農家にもこの所得補償を本当にされるんですか。その辺をお伺いしたいと思います。一番聞きたいのは金持ち優遇批判でありますけれども、不公平性全般について、大臣のお考えがあればどうぞ言っていただきたいと思います。

赤松国務大臣 基本的には、多分、一千万を超えるようなというのは、兼業、サラリーマン農家であったり、一部北海道等で非常に規模の大きな農家経営をされておられるとか、そういうところに対しての戸別所得補償も、そういうところも一緒にやるのかということではないのかなというふうに思っております。

 私どもは、今度の制度を実施するに当たりまして、とにかく、生産数量目標に従って、きちっとこの制度の中に入っていただき、また、その数量を守っていただける方、過去にそれを守らなかったとかなんとか、そういうことを一切問いませんと。そのことをきちっとやっていただける方には、すべて参加をしていただけるような仕組みにしたい。それが百八十万プラスアルファと言っているところでございます。

 いろいろな意見もあると思いますけれども、とにかくきちっとした枠の中にまず入っていただいて、そういうもとで、やはり持続可能な形で日本の農業をしっかり支えていきたいというのが思いでございますので、ぜひ御理解をお願いします。

赤澤委員 全く理解ができないところでありまして、というのは、これは条件としては所得制限なんてものはありませんで、米の共済に入っているという方たちであれば全部、基本的には十アール以上、こういうことであります。さすがに十アール以下は、これは自分の家で食べる分だという理解かもしれませんけれども。そういう中には、当然、農外所得一千万円の兼業農家も生産調整に参加をして、十アール以上つくっていればこの補てんを受けるわけでありますから、今の大臣のお答えは全くお答えになっていないということであります。

 その辺について、金持ち優遇批判というのは子ども手当だけでなくあるということを御指摘させていただきたいと思います。

 それから、最後にもう一つ、時間が大分なくなってきましたので。私は、これは米価下落、そしてとめどない財政支出の引き金を引くんじゃないかという懸念を持っています。一番起こりそうなのはこういうことです。

 先ほど申し上げた北海道、東北、北陸、信越、このあたりはこの制度で余力が出ます。一俵当たり既にもうかっているところに、一俵当たり二千円以上のお金を出すんです。そうすると、何が起きるかといえば、彼らに対して大手買い取り業者が庭先で相対取引、あなたたち、もうかっている上に戸別所得補償でさらにお金来ますよね、値下げしてくれませんか、くれなければ向こうの農家から買いますよと。こういう話をやられたときには、私は、間違いなく値下げのかなり強力な圧力が、しかも、コストが少なくていい経営をやっている、ブランド米をつくっているようなブランド力のあるところから起きてくると思います。

 それが起きれば、当然、例えば我が鳥取県の米などは、新潟魚沼産のコシヒカリなんかの値段がぼんと落ちてくれば、つられて落ちます。落ちた結果、所得補償の仕組みからいって、来年はさらにお金を多く用意をする。用意をすれば、またもらえるお金がことしふえたんですよねと買い取り業者との取引が始まるわけです。

 私の理解するところ、このような値下げ、そして財政支出の増、また値下げというスパイラルが起きて、なおかつこれをとめられるような仕組みは全くないように見えますけれども、その点について大臣はどう考えておられますか。

赤松国務大臣 私どもは、今回のモデル事業につきましては、生産数量目標に即した生産を行う者に対する強力なメリットとなる。したがって、需給の引き締め効果は十分に発揮をされる。需給が緩んで米の値段が下がるということはあり得ないというふうに思っております。

赤澤委員 全く答えにはなっておりませんが、一国の大臣が絶対にあり得ないとまで言った。これは、米価が下がった場合にはやめていただけますね。

赤松国務大臣 こういう例を申し上げた方がわかりやすいと思います。

 八郎潟の大潟村、御存じのとおり、ここは国策でもって入植、食料増産ということをにしきの御旗にしてやってきた。ばあっと入植者が入った。そうしたらそのときに、もう時代は変わったんだといって、今度は減反をやれと言った。それ以降、入植者の多くの人たちが四十年間にわたって日本の食管制度に反対して、場合によっては逮捕までされて、そして、今までの農政に四十年間反対し続けて、一切減反に応じずやってきた有名な地域でございます。

 そのリーダーの方と先日お会いをして、今度私も休みの時間を使って現地をお邪魔したいと思いますけれども、この戸別所得補償制度はすばらしい、ぜひ今度は大潟村のすべての農家がこれに参加をして、生産数量目標をきちっと守って、今までつくり過ぎていたのをつくらない、やめます、余ったところの水田を利用して、米粉をそこでつくっていきたいと。そして、そこには今度は米粉パンあるいは米粉めんをつくって、付加価値を高めて、場合によっては外国に輸出するぐらいのことをやってみたいということで、今までこれだけ減反政策に反対していた人たちも含めて、つくり過ぎていた人たちも含めて、この制度に参加をしてくれることによって需給のバランスはきちっととれていくということを、私はこの一例をもっても確信をいたしたところでございます。

赤澤委員 お答えをいただけなかったので残念でありますが、大潟村の方を信じて、米の価格が落ちることはないということで、私は、もうこれは一国の大臣がそこまでおっしゃったんですから、これに反する事態がもし生じた場合には、本当にこれはもう責任の問題だということです、潔く責任をとっていただきたい、そういうふうに強く感じます。

 きょうの議論で明らかになった点は、私は、やはり拙速な大改革、これは選挙用かどうかは知りませんけれども、このことで大変な疑問が生じている、危機を感じます。特に、問題点としては、今までやってきた担い手の育成や農地の面的集積に逆行する、食料自給率が上がる余地がない、さらには米価が下落して際限なく財政支出がふえるおそれがある、さらには不公平性の問題もあります。そしてまた、農家の現場は今、大きな期待外れあるいは不公平感といったものに悩んでおります。

 そしてまた一番恐れるのは、やはり小沢幹事長の、農産物貿易自由化、所得補償本格実施までには、これは入れても大丈夫だろう、本格実施した後であればいいだろうといって合意ができてしまうおそれ、こういったことに本当に危機感を感じます。

 マニフェストについてとにかく機械的にということではなくて、しっかりと全体像を見ながら進めていただきたい、そのことをあわせて申し上げまして、私の質問を終わりとさせていただきます。

 ありがとうございました。

筒井委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 大臣、副大臣、政務官には、御就任まことにおめでとうございます。公明党の石田祝稔です。

 また委員長にも、御就任まことにおめでとうございます。不本意かもしれませんが、ぜひ頑張っていただきたいと思っております。

 まず、所信は大臣からお伺いをいたしましたが、このことについては後でお聞きをいたします。ちょっと、大臣に冒頭ではなくて恐縮ですが、副大臣と政務官、それぞれ大臣を支えてというお言葉はありましたが、それぞれ政務三役として一生懸命、今、農林水産省を指導される立場になっておられますから、大臣への質問が最初じゃなくて申しわけないんですが、副大臣、政務官と、それぞれ今後の農政に対する御決意をお伺いいたしたいと思います。

山田副大臣 農業は今、六十五歳以上のお年寄りで六一%を占めている、非常に危機的状況にあると私どもは考えておりまして、本当にこの日本の食料自給率、食料供給、これは、どうしても必要最小限度六〇%は国際的なこれからの食料危機を考えると必要だと私は考えておりますが、そこに至るまでの農業政策を早く急がなきゃいけない。

 そのために、一つは、欧米各国がやっているような、アメリカの農家でも一戸平均三〇%の助成金、ヨーロッパの農家でも六〇%等の助成金、一戸の農家平均の所得に。それでいて、ようやく農業が自立というか、自立とは言えないかもしれませんが、農業がやっていけて、食料自給率を八〇%から一〇〇%に保っておる。日本もそこまでの政策をやるには、やはり欧米並みの所得補償を急がなければならない。

 そのために、まず、ことし米のモデル事業からという形で、ぜひ、それにさらに畜産とか漁業とか、そういったものも含めて、できるだけ早く取り組んでいけたらと思っております。

 以上です。

佐々木大臣政務官 発言の機会を与えていただきまして、感謝を申し上げます。

 私は、みずからも農業者でありますから、そして農村に住んでいます。そうした中で、なりわい、生業として農業をやりながら、それを続けながらやらなければならないことは、自給率の向上が一つだと思います。二つ目には、農業というものを通じて、消費者に対して安心、安全な食料を提供するということが二つ目の課題だと思います。そして三つ目は、我々では六次化という表現もさせていただいておりますが、私は、農村という地域をしっかりと活性化させていくという、この三つを農業というものを通じてどうやって発展させていくかということだというふうに思うんです。

 その中で、我々は幾つかの政策を出させていただいているわけでありますが、もう一つは、今までの農業の政策が、どちらかというと業というところにだけ視点が当たっていて、そしてそれが、結果、農業の人たちの生産物が、消費者が負担しなければいけないという仕組みになっていた。それを幾らかでも財政が支えるという、いわゆる消費者負担型から財政負担型へとよく言われますが、すべてを財政が負担はできませんけれども、幾らかでも財政が負担をすることによって、それは消費者にとっても安全で安いものが提供されるんだという仕組みもやはり同時に今考え、そういう転換もしていかなければならない時期を迎えているのではないか、そのように思っております。

石田(祝)委員 大臣、済みません。

 大臣の所信についてお伺いをいたしたいんですが、先日、所信的発言、こういうことでございましたけれども、これはもう発言というよりは政策も中にたくさん入っておりますので、ちょっと確認をさせていただきたいんです。

 この大臣の今回の御発言の中身は、これはいつまでに実現をする、こういうことの中身が書かれているんでしょうか。

赤松国務大臣 いろいろな施策について、特に私の思いのようなものを述べさせていただきました。

 例えば、今荒れ放題になっている農村、農業、その立て直しは、取り組みは直ちにやりますけれども、しかし、それが本当に再生された、すばらしい地域に生まれ変わったというのは、では二年、三年で本当にそれが実現できるのかといえば、これはもう先生御承知のとおり、それはもっと時間がかかることだと思います。

 ただ、取り組みそのものは今直ちに始めますし、それから、事柄によっては一年、二年で実現できることもこれは中にはあるでしょう。ですから、いろいろな事業を網羅しておりますので、取り組みそのものは直ちに始めるけれども、いつ完成するのか、いつまでにできるのかということになればそれぞれ違うということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

石田(祝)委員 なぜこういうことをお聞きしたかといいますと、大体この所信というのは毎年出されるわけですね。そして、そうすると、我々の与党のときも、余り褒めたことじゃないかもしれませんが、全部をやったことは多分ないだろうと思います。

 これで、実は鳩山総理が、マニフェストの中身を聞かれて、これは四年間でやるんだ、そういうことをおっしゃって、できなかったらどうするんですかというお話で、責任をとると話をされて、その責任は何か、衆議院を解散すると。四年たったら任期が来るんですよね。ですから、総理は責任をとって四年後に民意を問うなんと言う必要は全然ないのであって、ちょっと私は違和感を実は覚えたので、そういうことをお聞きいたしました。

 ということは、少なくても完成まではこれは時間がかかるものもあるだろう。しかし、述べられたことについては少なくても端緒をつける、スタートをする。その方向に向かって、ゴールのテープは切れるかどうかは別として、その方向には、国民や私たちが見ても、ああ進んでいるな、こういうことが目に見えるということでよろしいですか。

赤松国務大臣 そういう理解で結構だと思います。

石田(祝)委員 それで、それを目に見える形でそっちに進んでいるんだよと。これは一つは予算の姿だと思いますが、この中で、私たちが前政権でやろうとしたこと、こういうことも実は入っているんですね。そしてまた、補正でつけたこともこの中に入っております。そうすると、大臣は、今第二次補正についてはいろいろな議論もあるようですけれども、二十二年度の予算で少なくてもこれはやるよ、こういうものも入っているということですね。

赤松国務大臣 そういうことだと思います。

石田(祝)委員 思いますというのは、どういうふうに理解したらよろしいのでしょうか……(赤松国務大臣「具体的に、どの項目のことか」と呼ぶ)では、具体的にお聞きをいたしたいと思います。

 きょう私は、この大臣の所信を読ませていただいて、そのことと二十一年度の補正の執行停止、二十二年度の概算、行政刷新会議、いろいろなことを絡めてちょっとお聞きをしますので、行ったり来たりすると思いますが御容赦をお願いしたいと思います。

 この中で、私、まずお聞きしたいのは、大臣から発表のあった発言の冊子の八ページ、ここで「農地の面的集積を進めるとともに、」こういうところが書かれておりますが、これは具体的にどういう事業を大臣はなさろうとしておりますか。

赤松国務大臣 石田委員は副大臣も農水でやっておられるので御専門ですから、私が推察申し上げるところ、三千億円の農地集積を切っておいて何だ、面的集積を進めるなんておかしいじゃないか、多分そういうことを言わんとしておられるのだろうと思いますが、私どもは、あの三千億円を全額カットしました。しかし、それは額が余りにも大き過ぎる、多過ぎる、しかもその支払いは土地の出し手に対して払っていくという点について、私どもは、額と出し方に問題があるということで、一応全額カットを決めました。しかし一方で、農地の集積が必要だということは認めておるわけで、別個に八十億円の部分がございまして、そこを当面は使いながらやっていこうと。

 三千億円というとぴんとこないかもしれませんが、それこそ公明党がこの間御主張されていた例えば子宮頸がんなんというのは、年間三百億から三百五十億あれば全部日本から子宮頸がんがなくなっちゃうんですから。あるいは、障害者自立支援法なんというのも、四百億円あればこれも負担が全部消えちゃう。いかに三千億円というのが大きい額かというのはおわかりになると思いますけれども。

 そういう意味で、私どもは、本当に三千億円使って農地の集積が進んでいるならいいけれども、何回もきょう申し上げましたけれども、全体では三十九万ヘクタール、毎年二万ヘクタールずつどんどんどんどんと農地は減ってきている。全く歯どめがかかっていない。もっと有効な使い方をして、耕作放棄地をふやさない、あるいは耕作放棄地に再び緑を戻すということにしっかりと全力を挙げたいという意味で、ここに書かせていただきました。

石田(祝)委員 私がこれから聞こうと思ったことをお答えになりましたけれども。

 大臣がおっしゃったのは、額が大き過ぎるということを一つおっしゃいましたね。額が大き過ぎるということで全額停止にするという理由になるんですか。ちょっとそこは私は、額が大きいから精査をして、例えば三分の一にしましたというんだったらわかりますよ。額が大きいからゼロにするといったら、ゼロということは政策そのものもないということですから、これは今、大臣、御答弁がちょっとおかしいんじゃないですか、いかがですか。

赤松国務大臣 先ほど三千億円と言いましたけれども、これを対象農地面積にしてみますと、三年間で五十万ヘクタール集積することになるわけであります。今言ったように、毎年二万ヘクタールずつ減っているのに、今まで集積の面積よりもなくなる面積の方が多いのに、一気にこのお金をかけたら五十万ヘクタール農地ができるということの方がむしろおかしい、不自然だということで、そういう意味で額が多過ぎるというふうに申し上げました。

石田(祝)委員 いや、それは大臣、違うんですよ。額が大きければ額を査定して変えればいいのであって、要するに、出し手にお金を出すということは効果がないということをおっしゃっていたんじゃないんですか、違うんですか。

赤松国務大臣 六月でしたか、改正農地法、これは与野党合意のもとで修正をして通ったわけですけれども、こういう中で、面的集積組織の活動への補助ということで八十億円がもう既に決められております。ですから、この八十億円というのは、土地の出し手にも、あるいは借り手にも、あるいはそれを途中であっせんする人にも、それは非常に使い勝手よく使っていただけるお金として、予算として計上されておるわけでございまして、五十万ヘクタールを直ちに集積する、できればいいですけれども、それは事実上難しい。

 それよりも、現実論として、過去五年間の実績でいいますと、一万ヘクタールですから、過去五年間に、一万ヘクタールしか集積できていないのに三年間で五十万ヘクタール集積できるわけがないということで、私どもは、この八十億円のお金で当面はいけるのではないか、もしこれで足らなければまた次年度もっとふやせばいいわけですから、そういうふうにいたしました。

石田(祝)委員 どうもちょっとそこはかみ合わないのですが。

 では、大臣、八十億円、これは確かに二十二年度の概算に入っておりますよね。では、この八十億円でどのくらいこれは集積できるのでしょうか。

赤松国務大臣 今申し上げましたように、過去五年間で、一万ヘクタールですから、少なくとも、私どもは、この八十億円を投入することによって、この何倍かの集積が進むというふうに考えております。

 今、大体、集落農家に、土地の集約は進んでおりますが、四五%ぐらいですから、ぜひそれを、五〇%を超えるような形で農地の集積を進めていきたいというふうに考えております。

石田(祝)委員 約三千億円、この農地集積の予算を全額停止して、そして、農水省全体としては二十一年度の補正は四割削減したんだ、こういうことが所信の最後の方に述べられております。

 大臣、お隣と話し合っているようですが、よろしいでしょうか。ちょっとこれは行政刷新会議とも関係するんですが、行政刷新会議では、廃止または予算要求の半額縮減、こういうことになったようですが、ここの刷新会議については、もともとの、そこの人たちにどういう権限があるのかとか、いろいろな議論があります。

 それはさておいて、とにかく大臣が、前政権でやった補正での三千億円、これは大き過ぎると。これでは今までやってきたことの何十倍もの話で、全額停止をした。全額停止をして八十億円を今度計上した。その八十億円については廃止か半減をしろ、こういうお話ですが、大臣はこれはどういうふうになさるおつもりですか。

赤松国務大臣 行政刷新会議の、廃止または削減ということになっていますけれども、これはこの後、それを参考にしながら財務省との予算折衝が始まるわけでございまして、第二ラウンド、第三ラウンドは多分私ども政治家が出て大臣折衝をやることになると思いますが、この八十億円についてはぜひ必要だという立場から、断固それを主張していきたい。

 ちなみに、その八十億円で何万ヘクタールぐらいの造成に換算すればなるんだということでしたけれども、二万ヘクタールということで、過去五年間で毎年毎年の最高が一万ヘクタールですから、その意味でいえば、二万ヘクタール、とりあえずそれをクリアできれば、次の年、もっと予算をふやせばいいわけですから、それを目標に今やらせていただいているというところでございます。

石田(祝)委員 そうすると、大臣、今回の刷新会議で農林水産省関係の事業が俎上に大変数多く上っていますよね。ですから、今のお答えを聞くと、行政刷新会議の結論に縛られるものではない、こういうことでよろしいんでしょうか。

赤松国務大臣 縛られるというのは、農水省がですか。(石田(祝)委員「はい」と呼ぶ)

 私どもは、刷新会議としてそういう結論が出されたということは、これは事実でございますから、それはそれで受けとめますが、これは仙谷大臣自身が言っていますように、これが別に最終結論ではない、決定ではない、あくまでもこれを参考にしてもらいながら正式な予算編成に向けてやってもらうんだと。例の外国人の方が入られていることに関連して、国家意思を外国人が決定するのかということの質問の中で、そういう答え方をしておられます。

 ですから、私どもとしては、別にそれを軽視するとか無視するという意味ではなくて、それはそれで、出た結論は結論としてしっかり受けとめますけれども、これはあくまでも、これで決まっちゃったからもうしようがないね、残念だねという話ではないという理解でございます。

石田(祝)委員 これから第二ラウンドがある、こういうことですね。

 引き続きまして、耕作放棄地、続いて書かれておりますね、耕作放棄地の再生を図る、こういうまことに結構な御決意だろうと私は思いますが、これは具体的にどういう事業ですか。

赤松国務大臣 耕作放棄をされているところは、先ほども申し上げましたが、三十九万ヘクタール、特にそのうちの十万ヘクタールぐらいは、非常に農業に適した、面的な整備も済んでいる、そういう農地だというふうに聞いております。

 ですから、そういうところについてはどんどんとそういう形を進めますし、ちょっとスタンスが違いますけれども、今、農林水産省としては、環境対策ということで、環境閣僚会議の中に私も関係大臣として入りまして、そして、比較的、ちょっと農業をやるにはどうかなというところに、例えば太陽光パネルを設置するだとか、あるいはかんがい等を利用した発電だとか、あるいはバイオマスの関係だとかいうようなことで有効活用できないかというようなことを、それぞれ担当部局に具体策を検討させておるところでございます。

 そんな意味で、耕作放棄、特にそういうこととあわせて、本来的に言えば、もともとこれをやったってどうせ採算は合わないからやらないという人たちに、いやいや、今度は戸別所得補償制度というのができて、どうもちゃんと、最低その生産費のところは見てくれるらしいよと。だから、それだったらそれをやってみようかというような方もぜひふえてきていただけるのではないか。

 特に、今まで中山間地等でなかなか農業生産収益ということではハンディを負っていたそういう地域についても、この制度ができることによって、耕作放棄地にされていたところが、農業が始まる、再生が動き出すということになるのではないかと期待もいたしております。

石田(祝)委員 そうしますと、大臣、耕作放棄地の再生を図る、これは所信にも書かれているわけですから、大臣としては、大変期待を持ってこれをやろう、こういうことだろうと思います。

 しかし、ちょっと私、お聞きしたいのは、補正の執行停止、見直しについてということと、ちょっといろいろダブりながらお話をお聞きすると申し上げましたが、実は、平成二十一年度の当初予算では二百六億五千万つけておりました。補正で百五十億。しかし、執行停止、返納が百四十七億九千四百万なんですね。そして、平成二十二年度で七十億二千万お金をつけているわけです。

 大臣、そうしたら、この耕作放棄地の再生の予算、大臣もここで所信で述べられているように、また、今の御答弁を聞くと、大事だ、こういう期待を込めつつやろうと思っていらっしゃる。ここを、百五十億の補正予算を組んでいるのに、何で百四十七億九千四百万も執行停止にするんですか。ちょっと私は理解できませんね。御答弁を。

赤松国務大臣 耕作放棄地再生利用緊急対策ということで七十億二千万、平成二十一年度の当初で二百六億五千万円ということだったと思います。これについては、再生利用にどれだけ使われたのか、利用されたのか、そういう見合いの中で、これだけ予算を計上していても使っていないじゃないかというようなこともあり、残念ながらそういうことになった。

 それから、仕分けについては、仕分け結果は、残念ながら来年度の予算計上は見送りというふうに一応そちらでは出されておりますけれども、今、先ほど申し上げたようなことでもって、この耕作放棄地を何とか再生していくための必要性というのは私ども十分わかっておりますので、先生の御趣旨に従って取り組んでいきたいと思っております。

石田(祝)委員 私、大臣が所信に書かれて、大事だと。我々も大事だと思っているんですね。しかし、この執行停止を決めたのはどなたですか。役人の方がお決めになったんですか。大臣、副大臣、政務官、このいわゆる政務三役という方がお決めになったんでしょう。そして、百五十億のうちの百四十七億九千四百万、これはほとんどと言っていいほど執行停止にしているわけです。そうしておいて翌年には七十億二千万の予算を組んでいる。それでもって大臣の所信では耕作放棄地の再生を図る、これはだれが考えたって矛盾ですよ。それだったら、予算の返納額をやめてどんどんと進めていく、さらにそれを翌年度でもやっていく、これが普通じゃないんですか。

 片一方で、前政権が組んだものだけれども、お金は色はついていませんよ。事業だって、それは受益者は農業をやっている方ですよ。私たちが受益を受けるわけじゃないわけです。議員が受益を受けるわけじゃない。前政権が受益を受けるわけじゃない。そういう中で組んだものをほとんど返納させておいて、翌年、同じ事業でまた額を減らしてやって、それで大事ですというのは、これはどう論理的に考えても私は無理があると。

 ですから、これを、例えば自分が知らないうちに決められたのか、そうじゃないでしょう。政務三役が責任を持って決めたんでしょう。どういうふうにこれは論理的に説明できるんですか。

赤松国務大臣 これにつきましては、まず御理解いただきたいのは、補正予算の見直しにつきましては、必ずしも、これは必要がないという事業も中にはあるかもしれませんが、そういうことだけではないんです。これは必要かもしれないけれども、二年目、三年目の分まで入っている。それは二年目、三年目にきちっと処理をすればいいではないか、あるいは、これは直ちにこの補正じゃなくても、不要不急で、そんなに急がなくてもいいはずだというものについて、一たん戻しなさいというのもあるわけです。

 ですから、よく総理が、予算委員会なんかで質問に出たときは、では、本当に必要じゃない、無駄なものは何なんだと。それは、例えば漫画・アニメ館、これは無駄かもしれませんね、しかし、あとのものについては、少なくとも必要かもしれないけれども、今この補正で対応しなければならないというものじゃないものは、とにかくこういう財政状況のもとですから、一たんこちらに戻しなさい、来年、再来年、きちっと対応しなければならないものは、基金でずうっと積んでおくんじゃなくて、それはその都度また要求したらいいじゃないかということだという、まず基本のところを御理解いただいておきたい。

 それから、私どもについての百四十八億の返納についてですが、必要だというんだったら、それはちゃんと置いておいて、それでやればいいじゃないかというのが先生の御趣旨だと思うんですけれども、残念ながら、現時点で、本年度内の、それぞれの地域、地元の要望をとってみました。そうしましたら、その額は、当初予算の枠内で十分対応できる額だったものですから、後で、第一次補正で積んだ分は要らないということで、今言った趣旨の中で、耕作放棄地の対策が必要とか不必要の論理ではなくて、予算上も、本予算だけで、当初予算だけで賄える、この積んだものは要らないということなので、百四十八億はお戻しをしたということでございます。

 その趣旨でいえば、反対に、二十二年度の当初については、一定に必要なもの、再生作業の前倒しとして百五十億を積み増ししたというのが姿でございます。

石田(祝)委員 これ以上、これはお聞きをいたしませんが。

 ちょっと申し上げたいのは、次年度以降のものについての分は、その一年度の予算で手当てをしよう、これは私はそのとおりだろう、そういう考え方もあるだろうと思います。しかし、これが、ある一定のしっかりした皆さんにお声をかけて、こういう事業ができますよと、ある一定のリードタイムをとってこれをやったら、全然ゼロだ。これを見たら、約二億六百万分しか執行されていないわけですね。そんなにこの耕作放棄地の対策の事業が要望がないのと。私は、ちょっとそれはなかなか信じがたいところでありますけれども、ある一定の期限を切って募集をしたら、余り応募がなかった、そして、次年度以降のものについては二十二年度の予算でしっかりやろう、こういうことの大臣のお答えと受けとめました。

 それで、そうすると、この行政刷新会議では、来年度の予算計上は見送り、こういう結論のようですね。これはどなたがメンバーか私は承知しておりませんけれども、見送りということは、これはやらなくていい、こういうことですよね。大臣、この御見解についてはいかがですか。

赤松国務大臣 事業仕分けの中で、行政刷新会議は、来年度については今の基金の残高があるだろう、執行残が約七十億あるので、この七十億の範囲内で事業に支障がないんじゃないか、だから基金の積み増しは不要なんだということを、行政刷新会議としてはそういう見解を出されておるわけでございます。

 ちょっと先ほどの額だけ訂正をいたしますが、私どもは、そうではなくて、当初に概算要求として七十億さらに積み増しをして、やはりこの耕作放棄地の再生対策にはそれぐらい必要なんだということで、今要求をしていますが、今の段階では、行政刷新会議の事業仕分けの評価とは異なる、私どもの考え方と向こうの評価は異なっているということでございます。

石田(祝)委員 では、この件で最後にお聞きしますが、これは私はデータがあって言っているのではないのでぜひ教えていただきたいので、数字等はまた事務方からいただいてお答えいただきたいんですが、では、基金には今幾らあるんですか。

赤松国務大臣 この制度の基金だけですか。(石田(祝)委員「そうです」と呼ぶ)全体じゃなくて、農水省分。(石田(祝)委員「だから、この耕作放棄地の質問をしているんですから」と呼ぶ)

 では、これは七十億です。七十億円見込み。

石田(祝)委員 刷新会議は、基金があるからそれでやればいいじゃないか、こういうお話でしたね。ということは、基金が幾らあるかわかっていて、そういう発言なんでしょう。だから、当然、刷新会議の人が知っているわけはないので、農水省から報告しているわけでしょう。

 だから、今幾ら基金が残っているんですか。

赤松国務大臣 今、ちょっと細かい数字なものですから、事務方に聞きまして、時間がかかりました。済みません。

 もともと二百億の基金があって、そして、今までずっと使ってきましたから、約百三十億使ってきて、今の見通しでいえば執行残が七十億円残る見込みということで、もともとの、初めは二百億ありましたということです。

 だから、この刷新会議は、七十億余るんだからそれで来年度やればいいじゃないかというのが刷新会議の意見でございます。私どもは、それでは足りないと言っています。

石田(祝)委員 ということは、二百億とおっしゃったのは、多分、二十一年度の当初予算が二百六億五千万ですから、そのことをおっしゃっているんだろうと思いますが、それで七十億残るだろう、今のままでいくと。そして、それにさらに大臣としては七十億を積み増しして、ということは百四十億ということですね。これだけの事業になるだろう、こういうことですよね。

 そうすると、これは、大臣のおっしゃることは私はよくわかるんですよ。では、なぜ、それだけの理屈が、刷新会議の方に聞かれたときに、だれですか、行かれたのは。行って、七十億必要なので、七十億残っているから、同じ額だからそっちを使えばいいじゃないか、そうじゃない、七十億残る見込みで、さらに七十億を積み増しして百四十億で事業をやるんです、こういう説明なんでしょう、大臣のおっしゃりたいのは。それで、刷新会議の方は、では、七十億残っているんだから七十億要らないじゃないかと。その理屈に負けちゃったということですか。

赤松国務大臣 先ほども、どういう形でこの事業仕分けが行われているか御説明申し上げましたけれども、冒頭五分間程度で事業の説明をしなさいということで、こういうところに問題点ありというのも、現場でぽんと、その場で見せられて、財務省の方の指摘がそれぞれあって、やるということで、一生懸命に、それぞれの担当部局の者も、それから私ども政務官もそこに出席をして、できるだけ丁寧に、きちっと説明しなさいということは私の立場からも事前にはよく言ってあるんですけれども、また彼らもしっかり説明もしたと思いますけれども、残念ながら、それが御理解をいただけるまでに至らなかった。

 これが力不足と言われれば力不足かもしれませんが、大変残念な結果になっているということでございます。

石田(祝)委員 大臣、それはちょっと私は納得できないんですよ。

 要するに、七十億余っていて、さらにそれに七十億をプラスして百四十億が必要だということなんでしょう。大臣のこの所信で書かれている、私はやりますよ、耕作放棄地の再生をと。それを刷新会議は、七十億の予算計上を今度概算で出してきている、では七十億あるからいいじゃないかと。何でそんな理屈に負けちゃうんですか。だれが考えたって、百四十億要るから、七十億残っているのに七十億を概算でお願いして、それで百四十億で事業をやるんですよと。

 さらに、そういう前提で、例えば半減をしろだとか、もっと効率化をしなさいだとか、そういう理屈だったら私もわかりますよ。あるから要らないだろうという、では、刷新会議の方はもともと七十億でやれるという、それについて、説明に行かれた、どなたが行かれたかはわかりませんけれども、百四十億要るんだということはプレゼンができなかったということですか。それとも、大臣の思いがそこまでいかなかった。どっちですか。

筒井委員長 今のを確認しますが、七十億ではなくて百四十億必要なんだという説明を行政刷新会議できちんとしたのかという質問ですか。そういう趣旨でよろしいですか。

石田(祝)委員 だから、そういう足し算の七十足す七十が必要だということも理解していただけないだけの人を刷新会議に行かせちゃったんですか。これはどうなんですか。

赤松国務大臣 これは、一言で言えば、論理の正しさが必ずしもその評価の結果になっていません。

 例えば、こういう話があるんですね。耕作放棄地、今三十九万ヘクタールもあるじゃないか、なぜこれまで三十九万ヘクタールにもなるまで放置しておいたんだ、もっと前にやらないからだめだみたいなことを我が政権は今、行政刷新会議の方から指摘をされるわけでございます。

 しかし、今三十九万ヘクタール、現に耕作放棄地があって、そしてそれを我々が政権として受け継いで、だからこれを少しでも少なくしよう、そのために努力しようということで、額が多いか少ないかは人の評価によりますけれども、私どもは、少なくとも前期からの残の七十億、そして新規の七十億、両方足して、百四十億をかけて少しでも耕作放棄地を少なくしようということで説明は十分にしたつもりでございますけれども、なぜ今日まで放棄しておいた、今ごろ何をやっているなんと言われたんじゃ、これはちょっと、今のあれは取り消しますが、別にこれは刷新会議の批判ということではなくて、残念ながら、私どもの説明が通らなかったというのは事実ですから、事実関係でいえばそういうことでございます。

石田(祝)委員 これは三十九万ヘクタール、埼玉県と同じ面積だということをたびたびお触れになって、これは前政権、当然三十九万ヘクタールまでになったということの結果責任は私はあると思いますよ。しかし、これを、何もしなかったからこうなったわけじゃないんですよ。一生懸命やったのでここでとまっているということなんですよ。

 政策は、いや、皆さん、笑っていますけれども、これから政策を皆さん実行されますよね。政策を実行したことと、実行しなかったときというのは比べることはできないんですよ。時間を戻すことはできないでしょう。(発言する者あり)だから、頑張るのはみんな頑張っているわけですよ。三十九万を、何もしない結果だと見るのか、一生懸命やってそこで三十九万で何とかとどまっているか。政策というのは、やってみたのとやってみないの同時並行で、歴史を繰り返すことはできないんですよ。ですから、私はそのことを申し上げたいんです。

 ですから、そういうことはこれから、例えば大臣、副大臣、政務官、行政の責任者になられて、一年たったら、一体自分たちのやった政策がそこまでできていたのか、自分たちが頑張ったからここまででとまっているというふうに言われるのか、これは私はいろいろな評価が出てくると思いますけれども、それは、ただ手をこまねいて私たちも耕作放棄地をそのままにしていたわけではありません。ここのところはぜひ御理解をいただきたいと思います。

 それで、さっきの話ですけれども、二十一年度の当初予算が二百六億ですよ。それで七十億余るということは、大体百三十六億使っているということですね。ですから、七十億残って、七十億を足して百四十億にして事業をやろうというのは、二十一年度の当初予算と同じ規模のお金になるということですよね。ですから、同じ御努力をされる、我々がやった以上の予算をつけているわけじゃないわけですね。そういうことをちょっと申し上げておきたいと思います。

 それから、大臣の所信だけでちょっと終わりそうですが、ここの八ページにも農地のことも書かれておりますけれども、ここで、農地の有効利用生産向上対策事業、こういう事業を今回お考えになっていると思いますけれども、これはどういう事業ですか。

赤松国務大臣 済みません。八ページでございますか。(石田(祝)委員「八ページに、農地については、「適切に運用し、」と書いてあるから」と呼ぶ)農地については、本年六月に成立した改正農地法云々のところですか。ちょっと質問のあれがわからなかったので、済みません。

石田(祝)委員 済みません。

 そこのところで考えられるのが、農地有効利用生産向上対策事業ではないかと。これは私の判断ですから大臣と違っているかもしれませんが、農地有効利用生産向上対策事業とはどういう事業ですか、こういうことをお聞きいたしております。

赤松国務大臣 この八ページのところで私がお書きをいたしましたのは、もともと改正農地法を、六月に通りまして、そしてこの十二月にも政令を出そうと思っておりますけれども、それを適正に運用しながら、先ほども申し上げましたけれども、農地の面的集積をできるだけスムーズに進めていきたいということでお諮りをしております。

 そのことをここに特に書いてあるわけでございまして、それと先ほど御指摘のあった農地有効利用生産向上対策事業、これとの関連ということでございますか。(石田(祝)委員「いや、そういうことじゃなくて」と呼ぶ)ちょっと意味がよくわからない。

筒井委員長 石田君、どうしてそういう言葉で集約できるのか、この所信表明のどの文章をそういう言葉で集約できるのか、それを指摘してください。

石田(祝)委員 では、もう一度説明します。

 「農地については、本年六月に成立した改正農地法を適切に運用し、」こういうことを書かれていますね。ですから、農地を有効利用しよう、そういう観点ではないかということと、それは私のとらえ方です。それで、なお、先ほど申し上げた農地の有効利用生産向上対策事業、こういうことを今回四十億で概算要求なさっていますよね。ですから、この事業はどういう事業ですかと。別に、ここに書いていることで、「適切に運用し、」ということにこだわらなくても結構です。

赤松国務大臣 ここに書いてあるのは、あくまでも農地の関係で、例の八十億円の集積のためのお金を使って、これはむしろ土地を出す側、貸し手にも、あるいは途中であっせんをする側、この人たちにも自由に使っていただけるような形で、より農地の集積を進めていこうということ、ここにはそういうことを書いてあるわけでございます。

 ですから、先生が御指摘の、農産振興のような別の政策を言われておりましたけれども、それと直接結びつけて言っているわけではございませんということです。

石田(祝)委員 ちょっと趣旨がうまく伝わらなかったようですので、時間ももう五分前ですから、別のことをお聞きいたしたいと思います。

 大臣の所信は、大変、所信的発言ということでありましたけれども、もう所信そのものだと私は受けとめられるぐらい内容がたくさんありますので、私は八ページの部分だけでいろいろとお聞きをいたしましたが、まだまだ林業や水産業、いろいろな大事なことをお書きになっていると思いますので、ぜひ、大臣の所信に対する質疑はさらに私はやっていただきたいな。これはぜひ、森本筆頭にも委員長にもお願いをいたしたいと思っております。

 それでは、戸別補償制度について、何人かの方がもう既にお聞きになっておりますので、ダブっては恐縮ですが、ダブるところがあればお許しをいただきたいんですけれども、これは大臣の御発言、ちょっと確認をしたいんですが、この戸別所得補償というものは、いわゆる払うお金は、全国平均の生産費と販売費の差額、これは固定の部分もあるようですけれども、その一律のところを払うと。ですから、北海道も九州、沖縄も、例えば二千円なら二千円ということでよろしいですね。

赤松国務大臣 過去数年間の販売価格、そして生産費、それを計算いたしまして、その差額分をいわゆる定額部分として全国一律に計算をする。実態としては、生産性の高い地域も、先ほども他の委員から御質問ありましたように、多少生産性の悪いところもそれはあるのは承知の上で、全国一律、そういうところをつくりまして、要は、それをしっかりと、あとは土地の集積、協業化等を進める中で、コストの削減、生産性を上げるということの努力をしていただく中で、さらに一方では、大規模化、協業化を進めていっていただく。

 そして、今までは、どちらかというと置き去りにされてきた小規模の農家、中山間地のなかなか採算の合わなかったそういう農家に対しても、もちろん、今までの中山間地への直接支払いは制度としては残りますけれども、残しますけれども、それに加えて、そういう人たちにもしっかりと応援をしていく。そのことによって、農業が持つ多面的な機能ということについてもきちっと果たしていけるような、そういう考え方でこの制度を考えております。

石田(祝)委員 大臣、端的にお答えいただきたいんですけれども、北海道の方も、九州、沖縄の方も、全国一律だから同じ金額を受け取る、こういうことでいいですね。

赤松国務大臣 そのとおりでございます。

石田(祝)委員 そうすると、先ほども指摘がありましたけれども、この戸別所得補償制度というのは、全国一律の金額をそれぞれの戸別の農家に交付をする。その交付をする仕組みが、各戸にお渡しをする、こういうことですね。ですから、農家の事情だとかそういうことは関係ないわけですね。

 ですから、私も戸別所得補償という印象から受けると、戸というのは、もちろん、一戸、二戸という、経営体という家族をあらわしているわけですから、そこが所得補償を受けられるというんじゃなくて、それぞれのお家に渡すという配り方を言っているんですよ、こういうことですか。

赤松国務大臣 私は、先ほど、わかりやすいという意味でそういう言い方を申し上げたんですけれども、あと、作付の内容とか面積とかいうことを戸別に見るという意味では、また戸別的というふうに言っていただいてもいいと思うんですが。戸別ですね、戸別の意味は、どこが戸別なんだということで言われれば、そういう支払いの仕組み、あるいは作付内容、面積ということについて着眼をして、着目をして、そういうふうに名づけたということでございます。

石田(祝)委員 これは、老婆心ながらお聞きをしますけれども、そうすると、百八十万ですか、農家にお渡ししなきゃいけない、それはだれがやるんですか。例えば振替だったら、だれが口座の管理を責任を持ってやるんですか。

赤松国務大臣 先ほど申し上げましたように、それは、それぞれの地域に農林水産省の出先機関であります農政局がございます。農政局から、それはもちろん、面積をとったりいろいろすることには協議会の御協力をいただきます。市町村とか農協を初めそういうところの御協力はいただくんですけれども、単に、だれがだれに払うんですかという先生の御質問であれば、それは、国が各戸別農家にお支払いをいたしますということでございます。

石田(祝)委員 農政局がやるということですけれども、地方は廃止するんじゃないんですか。どうなんですか。地方を残すんですか、地方の農政局、出先というのは。なくしていくんじゃないんですか。仕事をやらせるんですか、そういう仕事は。では、残すということですね。済みません、最後にそのことだけ。

筒井委員長 石田君、時間が来ておりますので、それを最後にしてください。

石田(祝)委員 はい、これで終わります。

赤松国務大臣 農政局は残します。

石田(祝)委員 終わります。

筒井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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