衆議院

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第5号 平成22年4月6日(火曜日)

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平成二十二年四月六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 筒井 信隆君

   理事 石津 政雄君 理事 梶原 康弘君

   理事 小平 忠正君 理事 森本 和義君

   理事 森本 哲生君 理事 北村 誠吾君

   理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君

      石原洋三郎君    石山 敬貴君

      金子 健一君    河上みつえ君

      京野 公子君    後藤 英友君

      佐々木隆博君    斉藤  進君

      阪口 直人君    白石 洋一君

      高橋 英行君    玉木 朝子君

      玉木雄一郎君    津川 祥吾君

      道休誠一郎君    中野渡詔子君

      仲野 博子君    野田 国義君

      初鹿 明博君    福島 伸享君

      柳田 和己君    山岡 達丸君

      山田 正彦君    和嶋 未希君

      赤澤 亮正君    伊東 良孝君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      加藤 紘一君    金田 勝年君

      武部  勤君    谷川 弥一君

      長島 忠美君    山本  拓君

      西  博義君    吉泉 秀男君

    …………………………………

   農林水産大臣       赤松 広隆君

   内閣府副大臣       大島  敦君

   財務副大臣        野田 佳彦君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   農林水産副大臣      山田 正彦君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   内閣府大臣政務官     津村 啓介君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   農林水産大臣政務官    佐々木隆博君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         針原 寿朗君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           山口 英彰君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  本川 一善君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            吉村  馨君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局次長)           齋藤 晴美君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  高橋 英行君     白石 洋一君

  玉木雄一郎君     阪口 直人君

  津川 祥吾君     初鹿 明博君

  伊東 良孝君     武部  勤君

  長島 忠美君     赤澤 亮正君

  保利 耕輔君     加藤 紘一君

同日

 辞任         補欠選任

  阪口 直人君     玉木雄一郎君

  白石 洋一君     高橋 英行君

  初鹿 明博君     斉藤  進君

  赤澤 亮正君     長島 忠美君

  加藤 紘一君     保利 耕輔君

  武部  勤君     伊東 良孝君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤  進君     津川 祥吾君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

筒井委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長佐藤正典君、大臣官房総括審議官針原寿朗君、大臣官房参事官山口英彰君、生産局長本川一善君、農村振興局長吉村馨君及び農村振興局次長齋藤晴美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

筒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

筒井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石山敬貴君。

石山委員 おはようございます。宮城の石山敬貴でございます。

 本日は、食料・農業・農村基本計画にかかわる質問をさせていただきます。

 今回の食料・農業・農村基本計画の策定に当たりましては、党内の、民主党内のでございますけれども、農林水産議員政策研究会、この基本計画に対します小委員会を立てさせていただきまして、私たち委員のメンバーの中で多くの議論をさせていただきました。その結果、私たち委員の実際に筆をとらせていただいた文言をこの基本計画の各所に盛り込ませていただきました。さらに、この基本計画の中におきましては、他省庁にまたがる事業や政策に関しましても積極的に推し進めていただき、そのため、非常に前向きな基本計画になっておると感じております。

 まずは冒頭に、私たち委員の多くの意見を取り入れてくださいましたことに、大臣を初めとしまして政務三役の御配慮に大変感謝させていただくとともに、今後も私たち小委員会をぜひ積極的に御活用いただければと思っております。

 しかしながら、申しわけありませんが、私たち、すべて満足しているというわけではありません。幾つか、ぜひこれはといったような、必要不可欠な重要な文言が最終的に抜け落ちてしまったといったこともございました。きょうの私の質問におきましては、その抜け落ちてしまった文言の部分、または他省庁にまたがっております事業、政策の実効性を確認させていただきたいと考えております。

 まず一つ目としまして、今回の新しい食料・農業・農村基本計画の「まえがき」の部分、ここにおきまして、全国民へのメッセージとして大変重要な言葉が含まれていると感じています。

 基本計画をお持ちでございましたら見ていただきたいんですけれども、例えば、「国民に対する国家の最も基本的な責務として、食料の安定供給を将来にわたって確保していかなければならない。」といった文言や、また二ページ目には、「食料・農業・農村政策を日本の国家戦略の一つとして位置付け、大幅な政策の転換を図らなければならない。」といった言葉もあります。ここでは国家戦略という非常に強い言葉も含まれているわけでございます。さらに「「国民全体で農業・農村を支える社会」の創造を目指す」とあります。

 これらの言葉を、これは私自身なりに解釈させていただければ、まさに農政というのは、将来にわたって全国民の生活と生命を守るためにも国策の重要課題であり、国家戦略として行うべきものであるということを明言されたことになると思っております。

 この部分に関しましての赤松大臣の御所見、農政は国家戦略であるという部分に関する御所見をいただきたいと思います。

赤松国務大臣 私の方から少し決意だけ申し上げて、あと具体的には副大臣の方から御答弁させていただきたいというふうに思います。

 実は今晩、きょうの夜、アメリカのビルサック農務長官がお見えになります。そして、あした、日米でシンポジウムをやりますが、その唯一最大の課題は食料安全保障ということでございます。

 途上国ばかりではなくて先進国においても、今や食料、農業というような問題はまさに国の中心的な政策でございますし、食料自給率の問題、そしてまた地球環境の問題、それぞれの国の農業を通じての文化を継承していく問題、いろいろな問題を考えるときに、そしてまた、日本の今の農業の現状、この疲弊し切ってしまった、あるいは自給率四一%というような状況、これを考えるときに、農業、農村が元気にならなければ、日本の再生あるいは地域の活力を通しての国の大きな飛躍ということはあり得ないわけで、その意味で、委員御指摘のとおり、国家戦略としてしっかりとその中心に据えて頑張っていく決意でございます。

山田副大臣 実は今回の食料・農業・農村基本計画については、石山委員が座長として党のいろいろな意見を私どもに御提言いただき、できる限り私どももそれを取り入れさせていただいた経緯がございますが、本当にいろいろと貴重な御意見をありがとうございました。私からも、まずはお礼申し上げたいと思っております。

 その上でもって、今大臣がしっかりと述べていただきましたが、まさに今、日本の農業を支えているのは六十五歳以上の高齢者で、しかもそれが六割以上、あと十年もしたら七十歳以上になってしまうという中で、自給率もどんどん下がってきている。そんな中で、国の責任として、まさに食料を安定供給させるということを今度明確に打ち出して、国の戦略としてやるんだということをきちんと基本計画にうたうことができたことは、私どもにとって大変大事なことであって、それが今回の基本計画の何より大切な点だ、そう認識しております。

 本当に御苦労さまでございました。

石山委員 大臣、副大臣より農政は国家戦略であるという力強い御答弁をいただいたことに、私たち委員も大変うれしく思っております。

 本日は、国家戦略室より津村内閣府大臣政務官にもこの委員会においでいただいております。

 今、大臣、副大臣が御答弁いただいたように、国家戦略室におきましても、農政は国家戦略として行わねばならない国策の最重要課題である、その認識でよろしいでしょうか。お答えをお願いします。

津村大臣政務官 お答えいたします。

 赤松大臣、山田副大臣と大要は同じ認識でございますが、私の言葉で申し上げれば、農業は我が国の地域経済を支える不可欠な産業でございまして、その持続的な発展を図ることが、国家戦略上、大変重要であると認識をいたしております。

 このため、六月ごろまでに策定をいたします新成長戦略の基本方針におきましては、二〇二〇年までの目標として食料自給率五〇%を掲げ、戸別所得補償制度の導入や農業の六次産業化の推進などにより農業の成長産業化を図ることとしているところでございます。

石山委員 ありがとうございます。

 今、ちょうど成長戦略のお話をいただきました。十二月の策定の折に、このように、ちょっと皆さんにお配りすればよかったのかもしれませんが、成長戦略の基本方針というものが出されております。三本柱としまして、強みの発揮、フロンティアの開拓、成長を支えるプラットホームといった三本柱が立てられているわけでございますけれども、農業の部分に関しまして、今政務官よりお話しいただきましたが、この「観光・地域活性化」の部分の項目のところに、今お話しいただいたような自給率の向上、農産物の輸出一兆円といったようなことが文言として盛り込まれているといったわけでございます。

 しかしながら、印象としましてまだまだ、成長戦略の中の農業にかかわること、または農林水産業にかかわること、どうも薄いような印象を受けます。農政は国家戦略でございますので、ぜひともここに大きな見出しで、第一次産業であったり農林水産業であったり、六次化を行っていくんだといったようなことを力強く打ち出していただきたいというふうに思っております。

 ぜひともその点をよろしくお願いして、今の考えに対する一言の御答弁、よろしくお願いいたします。

津村大臣政務官 お答えいたします。

 農業が地域経済に果たす大変重要な役割を踏まえまして、新成長戦略の基本方針におきましては、今委員からも御案内がありましたけれども、農林水産分野の成長産業化を地域活性化戦略の切り札の一つと位置づけまして、重要な項目としたところでございます。薄いという印象だとおっしゃいましたけれども、大変濃い中身だと自負をいたしております。

 今後、農林水産省の意見も聞きながら、政府一体となって施策の追加、具体化を行って、本年六月ごろまでに新成長戦略の全体像を完成させたいと考えております。

石山委員 ありがとうございます。

 今、御案内のとおり農村は疲弊しております。ですから、この基本計画の重要性もさることながら、鳩山内閣が六月に打ち出す成長戦略に関しましても、農村に夢と希望が与えられる成長戦略であることをぜひお願いさせていただきたいと思います。

 津村政務官、本日は御出席いただきまして、本当にありがとうございます。

 引き続きまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 私たち小委員会の意見集約を行った際に、戸別所得補償制度の本格実施、当初の農林水産省の事務方がまとめました素案には、この戸別所得補償制度の実施というものは、検討するといったような表現にとどめられておりました。しかしながら、小委員会の話し合いの中で、二十三年度本格実施ということを明記させていただき、一たんはそれが通ったかというふうに私たちも思ったわけなんですが、残念ながら、最終案としましてはこの二十三年度が欠落してしまったといった状況でございます。

 しかしながら、マスコミなどを通しまして、赤松大臣初め政務の皆様方のコメントとしましては、二十三年度本格実施というものを約束されております。ぜひ大臣からは、この委員会の場におきましても、戸別所得補償制度を二十三年度に本格実施していくんだといったような力強いお言葉をいただきたいと思っております。いかがでございましょうか。

赤松国務大臣 これは我が党が昨年の選挙に高々と掲げました主要な政策の一つ、二十二年度はモデル事業、二十三年度は本格実施、これは国民に対する約束でありますから、必ずこれは実施をいたします。

石山委員 ありがとうございます。

 この戸別所得補償制度、今、農村、農家の方々にとりましては、本当に民主党はするのかといったような疑いもちょっと出てきております。それを払拭していくためにも、本当に農政を国家戦略としてやっていくためにも、約束事としてのこの二十三年度実施というものをぜひ実現していただきたいというふうに私ども考えておるわけでございます。

 しかしながら、本日、実は財務省より野田副大臣に御出席いただいているわけなんですけれども、ちょっと気になる報道がなされておるわけでございます。例えば、日本農業新聞などにおきましては、財務省と折衝の際にそこら辺の経緯がうまくいかずに、来年度実施、本格実施が漏れたといったようなことも伝わってきているわけでございます。

 私たち、国家戦略としてやっていく農業政策、今農村の疲弊を何とかしていくことが国益にかなっていくことと考えますので、野田副大臣におきましても、ぜひとも二十三年度の本格実施に関しましてここで御答弁いただければと思います。よろしくお願いいたします。

野田副大臣 石山委員にお答えをいたします。

 委員におかれましては、農業政策については理論と実践の両方を兼ね備えた方であり、このたびの基本計画づくりでも党内で大変イニシアチブをとられたということを承知しております。

 委員のお尋ねは、財務省の本格実施に向けての考え方というふうに思いますけれども、基本的には、今回の二十二年度編成でもマニフェストの主要事項、いろいろありました。暫定税率のように事実上見送ったものもありますし、より効率的な実施という形で額を抑えたものもある中で、戸別所得補償については、農水省の要求どおり、満額決定をさせていただきました。その満額決定を受けてこれからモデル対策が進むわけでございますので、そのモデル対策の成功を祈りたいというふうに思っています。

 そのモデル対策の実施状況を見ながら、平成二十三年度の予算編成の段階でこれは検討をさせていただくという段取りでございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。

石山委員 確かに、このモデル対策、私たちは、本当に極端な話、農林水産委員、これは全員同じ気持ちでございますけれども、自分たちの政治生命をかけて、また議員生命をかけて成功に導くために日々努力させていただきたいというふうに思っております。

 その中におきましても、もう一度だけお話しさせていただきますが、本格実施ということを考えていったとき、今回のモデル対策におきましては、水田の米、また麦、大豆にかかわる部分で五千六百億の予算でモデル事業を実施するといった段取りをさせていただきました。確かに、この部分におきましては、財政難にかかわらず財務省の御努力もあったことは私たちも認めさせていただいております。

 しかしながら、これから世界の食料自給率と食料供給、需給というものが逼迫してくる、それは世界人口の急激な増加や地球温暖化による砂漠化の拡大といったように、もう自明のことでございます。先ほど赤松大臣が食料安全保障というお言葉を述べましたが、食料安全保障上も、今から国益として、将来の子供たちや孫たちのことを考えたときに、この国の中で国民が飢えないようにしていくことを念頭に置きながら食料政策を進めていくということは、これは必要不可欠で、今この現代社会に生きる私たちのこれこそ責務だと思っております。

 そのためにも、食料自給率を上げるためには、水田だけでは足りずに畑作または酪畜、さらには漁業といったような、本当に食にかかわる従事者の方が今かつかつの状況でやっているわけで、この戸別所得補償制度、これに期待をかけている。自分たちがもう一度将来に向かって夢や希望を持ちながら農林水産に従事していくということをまず示してあげることが、戸別所得補償制度の意味だと私は思っております。

 また、四日の日でございますか、鳩山総理が、鳩カフェでございましたか、におきまして農業者の方々と、やはり戸別所得補償制度を本格実施するんだといったことを皆さんに述べられたといったこともございます。

 モデル対策事業に関しましては私たちの責任でそれこそ成功に導きますので、この辺を考え、ぜひとも財務大臣、財務副大臣にも御協力のほどをお願いいたします。一言お願いいたします。

野田副大臣 石山委員の熱い思いは、痛いほどよくわかります。

 そう実現できるように、やはり何としても財源確保をしていきたいと思っていまして、御案内のとおり、今の財政状況は、戦争に負けた後のあの荒廃した日本と同じような状況でございます。そういう財政状況の中でどう財源を確保していくか、一生懸命努力をさせていただきたいというふうに思います。

筒井委員長 野田財務副大臣、今、鳩山総理の発言についても質問が一緒に出ましたので。

野田副大臣 総理もそういうお話でございますが、何よりも、あれもこれもできる状況ではない中で二十三年度の予算編成、石山委員の思いとか総理のお話なども踏まえて、しっかりと組み立てをしていかなければいけないと思っています。

石山委員 私も昭和四十四年で若輩ですから、本当の意味で戦後の復興のことは、自分では生きていなかった時期ですからわかりませんが、戦後の復興期、私のじいさんやばあさんの話を聞きますと、とにかくやはり食料増産ということでやっていったということ、まずそこから始まったんだという話を小さいころに聞いたこともあります。今まさに、確かにその戦後の復興期並みの財政難である、だからこそ、一番基礎的なこの食料政策、農業政策にぜひともてこ入れをお願いしたいということを最後に要望させていただきます。

 本日は野田副大臣、ありがとうございます。御退席の方、よろしくお願いいたします。

 それでは、引き続き、省庁間にまたがる事業または基本計画に関しまして、質問を続けさせていただきたいと思います。

 この基本計画におきましては三十一ページに記されている部分になるわけなんですけれども、鳩山政権下におきましては、二〇二〇年までに一九九〇年比で二酸化炭素二五%削減というものを目標としておるわけでございます。その目標を達成していくためにも、さらに農村の再生を行うためにも、農村での環境産業を起こしていくということが非常に大切なことでございます。

 農村には、例えば太陽光発電の施設設置スペースを考えても、または農業用水路を利用したような小水力発電、さらにはバイオマス、まさにこれは再生エネルギーの宝庫であるというふうに考えることができるわけでございます。

 これらの再生エネルギーの利用促進を図るためにも、この三十一ページに記載されています再生エネルギーで発電した電力の全量買い取り制度というものが不可欠になっていきます。ドイツなどでは既にこれは実施されているわけなんですけれども、再生エネルギーの固定価格買い取り制度、これを実施していくことによりまして、農村を、食料の生産地のみならず、エネルギーの供給基地にすることが可能であると私自身も考えており、非常に農村社会に一つの夢を開く政策ではないかというふうに考えております。

 本日は、経済産業省より松下副大臣においでいただいているわけなんですけれども、この固定価格買い取り制度へのお考え、または進捗状況についてお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

松下副大臣 お答えいたします。

 農村地域に存在する再生可能エネルギー、これをしっかり活用していくということは、成長戦略の中にもしっかり書き込まれておりますし、また、今回の基本計画の中にもしっかりと書き込まれておりますので、その線に沿って私たちもしっかり取り組んでいきたい、そう思っております。環境対策とかエネルギーの多様化だけではなくて、本当に農村地域、地域振興のかぎにもなっていくという意味で大事なものだということで、取り組んでまいりたいと思っています。

 特に、バイオマスエネルギーですけれども、これは経済産業省でも予算を確保して、農林水産省とも連携をとりながら、バイオマス発電とかバイオマスの熱利用設備、この導入のための補助をしっかりやっておりますし、サトウキビの葉っぱとか、いろいろなセルロース系のバイオマス、これでエタノールをつくって、そして燃料を製造していくということにも、導入、拡大していくということで補助をしております。

 それに加えまして、太陽光や風力、それから未利用のバイオマスなどの再生可能エネルギー、これに由来する電気を固定価格で全量買い取り制度にしていくということも、積極的に取り組んでいきたい、こう思っています。省内にこのための研究会をつくりまして、今鋭意、中を詰めております。四つのオプションを決めまして、再生可能エネルギー、これをしっかりと国内に導入、拡大していくための方策を検討しておりますので、これは農林水産省ともしっかりと連携をとりながら進めていきたい、こう思っております。

石山委員 ありがとうございます。

 今副大臣にお答えいただいたように、農村は、例えば今、稲わらにしましても、または、なかなか利用価値が難しいと思いますけれども、草刈りのときに出てきましたそれこそ雑草にしましても、または間伐材の、間伐をした後の枝にしましても、本当にそれが今ほとんど使われていないという状況にあります。これは本当に、セルロース系のバイオエタノールなどの発酵技術はなかなか今まだ難しいというふうに聞いておりますけれども、これが出てくれば、新しい農村振興の財源になる可能性も出てくると思いますので、ぜひとも振興していただきたいと思いますし、また、省内にそのような研究会があるのであるならば、私たち農林水産委員の者にもぜひともお声をかけていただき、議論に参加させていただければと思います。

 さらに次の質問に移らせていただきます。

 やはり三十一ページのところになるんですけれども、農村の振興にかかわる施策の部分ですけれども、「教育、医療・介護の場としての農山漁村の活用」といった部分がございます。その項目の下から四行目のところに、このような文言を加えさせていただきました。「子どもを農山漁村に宿泊・滞在させるとともに、農林水産業等の体験を行わせ、当該地域の人々との交流を深めるなどの取組も重要である。」といったような文言でございます。

 今、なかなか、地域社会におきましても、ましてや子供たちにおきましても、自宅にこもって、子供たちが集まっても個々にゲームをしているといったような時代になっております。そのために人と人とのきずなが薄れているといったような状況になっているわけですが、これは私見としましても、特に都会の子供たちに、農村に行かせ、そして、本当に生物も多様な農村社会、または稲を植えたりといったような農業体験を通すことによりまして、自分たちがどのようにして生きているんだといったような原点を見せてあげるということは、私は、教育にとりまして一番重要なことだと思っております。

 きょうは文科省の鈴木副大臣においでいただいておりますので、この取り組みに関します御意見をいただければと思います。お願いいたします。

鈴木副大臣 御質問、まことにありがとうございます。

 委員おっしゃいますように、子供たちや青少年が社会性でありますとか豊かな人間性をはぐくんでいくという観点から、おっしゃいました自然体験活動が非常に重要であるというふうに私どもも痛感をいたしております。新しい学習指導要領あるいは教育振興基本計画においても、自然体験、集団宿泊体験の重要性を一層明確にしているところでございます。

 文部科学省では、平成二十年度から、豊かな体験活動推進事業という事業におきまして、自然の中での長期宿泊体験事業を実施し、農山漁村におけるふるさと生活体験推進校というものを指定して、農山漁村での民泊を取り入れた長期宿泊体験、自然体験活動を推進しております。

 その結果をいろいろ分析してみますと、三泊四日以上が特に有意義、二泊三日と三泊四日以上で比べますと、それ以降が非常に有意義でございまして、例えば、その教育効果の結果を見ますと、優しさや思いやりの気持ちが深まったとか、連帯感や仲間意識が向上したとか、リーダーシップをとる児童がふえたとか、あいさつができる児童が増加したとか、食の大切さが理解されたとか、いじめ問題や不登校問題の改善に効果が見られたという、非常にいい成果が出ているところでございます。

 こうしたことを受けまして、平成二十二年度からは、学校・家庭・地域の連携協力推進事業の一部といたしまして、文部科学省、農林水産省、総務省の三省が連携をして実施いたします子ども農山漁村交流プロジェクトとして、三泊四日以上の宿泊体験を通じて自然体験活動等を行う小学校を三百三十校指定いたしまして、その取り組みを補助することといたしました。

 と同時に、六十六の地域に体験活動推進協議会を設けまして、こうした活動の推進、普及を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

 今後とも、きょうの御指摘を踏まえ、そして今回、計画にも位置づけていただきましたので、自然の中での集団宿泊活動のより一層の推進を図ってまいりたいと思っております。

 ありがとうございます。

石山委員 鈴木副大臣、ありがとうございます。

 質疑時間が来てしまいました。最後にまとめさせていただきたいと思います。

 今、各省の副大臣、政務官においでいただきまして、御答弁をいただきました。私、今回の基本計画の一つの特徴が、省庁間にまたがる事業または政策、これは冒頭にも言わせていただきましたが、書き込ませていただいたというところに大きな点があるかと思います。これまで縦割り行政の中で、その中でだけの事業または政策ということだったかと思いますが、これからはそうではなく、横のつながりを明確にしていく、そしてそのことによって、より、本当の意味での国民生活、またはこの基本計画だったら農村社会の振興を行っていかなければいけないというふうに思っております。

 また、今のように、農村社会は、食料供給、またはエネルギー供給、そして教育の場といったような多様な側面を持っているわけでございますので、その認識をもう一度、私たち自身も国民にメッセージとして届けていかなければいけないと思っております。

 今回、この基本計画、私たちは策定作業にかかわらせていただきましたが、これは策定で終わったわけではないと思っております。まだまだ指摘があるとおり、検討が多いんだ、文言の最後は何でも検討するというふうに終わっているじゃないかといったような御批判もいただいておるわけでございますが、このようなことを繰り返しながら、これを実行に移していき、そして、これが現場で本当に反映されている基本計画なのかということを随時チェックさせていただきながら、本当の意味での農業、食料政策を行っていきたいと考えております。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

筒井委員長 次に、金子健一君。

金子(健)委員 民主党の金子健一でございます。

 一期生の私にこの機会を与えていただきました筒井委員長初め各党理事の皆さんに感謝を申し上げ、時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 私の前に質問をした、食料・農業・農村基本計画小委員会石山座長から、冒頭あいさつもありましたけれども、今回の農業・農村基本計画は、政務三役、政策会議の先生方の御理解をいただき、民主党農林水産委員会理事の先輩方とともに、農林水産政策研究会、食料・農業・農村基本計画小委員会で何度も協議を重ね、その提言を十分に取り入れていただいたものと、この小委員会の事務局長として感謝を申し上げます。

 そこで、私は、今回の食料・農業・農村基本計画の中の六次産業化に絞りまして質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、この六次産業化は、基本計画の中の「第一 食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針」の中に、「多様な用途・需要に対応して生産拡大と付加価値を高める取組を後押しする政策への転換」として、「農業者が、消費者・実需者のニーズに対応して、生産・加工・販売の一体化等の経営の多角化・高度化に向けた取組を促進するとともに、地域の第一次産業とこれに関連する第二次・第三次産業に係る事業の融合等により地域ビジネスの展開と新たな業態の創出を促す農業・農村の六次産業化を推進する。」とあります。

 私は、千葉県の九十九里海岸の南の端、一宮町というところで、農業を基幹産業とした小さな町の議会議員、そして観光協会長や商工会の役員として、厳しい経済状況の中で、この地域をどのように元気にしたらよいのか大変苦労をしておりました。その経験から考えましても、この事業は、農業の発展だけに限らず、商工業を含めた地域の活性化をもたらし、本計画の「まえがき」にも明記されております、食料・農業・農村政策が日本の国家戦略になるものと大いに期待をしているものでございます。

 この六次産業化事業実施に当たっての大臣の基本的な考えと決意をお伺いしたいと思います。

赤松国務大臣 六次産業化につきましては、委員を初め与党の皆さん方の強い御意見もございまして、実は法律のタイトルも、本当はそういう文言が入っていなかったんですけれども、明確に六次産業化ということを打ち出してほしいという御意見もあり、私どもがそういう形の法律案にして今回提出をさせていただいておるという経過もございます。

 委員御指摘のとおり、特に委員の御出身は千葉県でございますので、千葉県、大消費地東京をすぐ間近に控えたこういう地域こそ、第一次産業である農産品、あるいは、近くに海もあるわけで、水産業も大変盛んなところですけれども、そういう第一次産業と流通、加工、販売、それをしっかり結びつけて、そしてまた観光業やその他の産業との連携の中で、付加価値を高め、しっかりと地域の発展につなげていくという基本的な考え方でございます。

 農業生産は大変重要でありますけれども、しかし、単に価値を上げる、そして量をふやすというだけでは、農家あるいは漁業者の収入というのは飛躍的にふえるということになりません。やはりそれに二次産業、三次産業が一体化することによって、全体的な付加価値を高めていく、そしてまた、そこに新たな雇用も生み出していくということでなければ、現状の高齢化、疲弊化している農村を活性化するということはできないわけで、その意味で、今までも農商工連携ということも言われてきましたけれども、もっと積極的な意味でこの六次産業化の施策を具体的に大胆に進めていきたい、こんな決意でございます。

金子(健)委員 ありがとうございます。

 今大臣からお話がありましたように、この六次産業化については、今経済産業省と一緒に共同で実施していると思いますけれども、農商工連携がどうしてもかかわってくるものだと思っております。

 そこで、きょうは松下副大臣にお見えになっていただいておりますので、この農商工連携の概要と現在の実施状況につきましてお伺いをしたいと思います。よろしくお願いします。

松下副大臣 今、赤松大臣からお話があったとおりでございまして、農林水産省と経済産業省、しっかり連携してこの問題に取り組んでおります。

 お手元にもあるかと思いますけれども、これまで、三年目になるんですけれども、約三百七十件取り組んでまいりまして、その中からいろいろ、優良事例とか、全体のいろいろな八十八選、パルパルで、いいごろ合わせで、そういうのを選んでしっかりこの問題に取り組んできております。

 いずれにしましても、一次産業としてやっていた、そこから大きく飛躍して、加工し、製造、販売して、販路をみずから広げていくということが基本でございますので、その問題にしっかり取り組んでいきたいと思っております。

 千葉県では、マックシステムという道路貨物運送業の人がおられまして、これは一貫したチルド、冷凍食品の輸送システムを持っておられる。その人が、長崎県の対馬のホンマグロの業者の人と、漁業者と連携して、それを一貫して冷凍のまま持ってきて全国販売展開していくというような仕組みをつくって、新しい取り組みとして、定着させていくということで全力で取り組んでいますので、どうぞよろしく御支援をお願いしたいと思います。

金子(健)委員 どうもありがとうございます。

 松下副大臣におかれましては、参議院の質疑もあるということでございますので、ここで。どうもありがとうございました、御退席をよろしくお願いいたします。

 この六次産業化は、今回、私としても、先ほど申し上げているように、目玉の一つだというふうに考えております。

 それで、同じような質問で申しわけございませんけれども、今度は農水省の政務の方にお伺いしますが、農商工連携とともに、この六次産業化の中では、平成二十二年の三月五日制定の農山漁村六次産業化に係る公募要領の中では、流通の効率化、高度化、そしてまた国際展開、資源、環境整備等、多岐にわたった事業計画も計画をされているようでございます。

 その実施に向けた農林水産省の、この計画推進をどのように図っていかれるのか、御答弁をよろしくお願い申し上げます。

佐々木大臣政務官 金子委員にお答えをさせていただきます。

 今、農商工連携については、経産省の副大臣の方から御答弁がございました。今度のこの農山漁村の六次産業化については、どちらかというと生産者のサイドからの、生産者主導といいますか、そういった立場で、加工、流通、販売、こうしたものの多角化をまず図っていかなければならないというふうに思っておりますし、同時に、一次、二次、三次の融合、先ほどもお話ありましたが、そういったものを図って雇用の確保にも寄与する、あるいはまた所得の向上にも寄与していく、そういう分野までしっかり広げていく必要があるというふうに思ってございまして、広い意味では、農商工連携も含む幅広い施策を展開していきたいというふうに考えているところであります。

 農林水産業と農山漁村という面でいうと、どちらかというと、これは農山漁村をどう活性化させていくかというところに取り組みの主体があるというふうに思ってございますので、そういった意味では他省庁との連携も極めて重要でありますので、連携を密にしてしっかりと推進してまいりたいと考えておるところでございます。

金子(健)委員 ありがとうございます。

 そして、これが一番重要になるかなというのは、私が考えているのは、私は先ほど申し上げているように商工会の役員をしておりました。この農商工連携にある程度かかわってきた者として、先ほど経済産業松下副大臣からお話がありましたけれども、まだまだ農商工連携に対しましても、地域の商工業者や農業者、いわゆるパートナーシップを結ぶ両事業者、現場の方々に、まだまだ情報の伝達が行き届いていないのではないのかなというふうに感じております。

 せっかく、先ほど申し上げているように、農業は国家戦略の一つとして、そしてまたその国家戦略が、今までの与えられる農業から自立自主をしてもうかる農業に戻していくための一つの大きな施策だと思いますので、ここでは広報活動がどうしても必要になっていくと思っております。

 今、商工会、そしてまた商工会議所、そして農協さんや、もしかすると自治体の方々にも先ほど経済産業松下副大臣からお話があったようなものが配られているのかもしれませんけれども、まだまだ情報の徹底がされていないというふうに私は感じております。

 その辺につきまして、情報の徹底を図るためにはどのような方策をお考えになっているのか、改めてもう一度お伺いをしたいと思います。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 大変重要な御指摘をいただいたというふうに思ってございまして、せっかく制度をつくってもそれが浸透していかなければ全く意味がありませんので、今の御指摘の点をしっかり踏まえていきたい。

 一つは法律というものがあり、もう一つはこれにかかわった予算も措置をされているわけでありますから、この両面、しっかり現場に浸透するようにしていかなければならないというふうに思っておりまして、一つには、予算が通りましたので、パンフレットの作成をこれからさせていただきますとともに、農水省のホームページなどにも掲載をさせていただいて、情報提供をさせていただきたい。

 それから、地方の自治体あるいは農協、漁協、商工会、こういったところへの説明会もこれから開催をさせていただきたいというふうに思ってございます。農林水産業、食品関連、いろいろなところにしっかりとPRをさせていただきたいというふうに思っておりますし、あわせて地方の農政局にも総合受け付けの窓口をつくって、推進体制をしっかりとつくっていきたいと考えているところでございます。

松下副大臣 経済産業省も、今おっしゃったことと同じ取り組みで連携してやっております。地域ごとにこのことのための農商工連携協議会をつくっておりまして、一層拡大して、しっかりと深掘りしていきたい、こう思っております。よろしくお願いします。

金子(健)委員 どうもありがとうございます。

 先ほど経済産業松下副大臣の方からの御答弁の中にありました、私がいる千葉県も実例はあるんですけれども、これは県によってその実例の数が相当違っている。これは、情報の伝達の仕組みに問題があるのか、受け手側、いわゆる県連側、さまざまな組織の県連側にその意欲の温度差があるのか。この辺は私としても承知できるところではありませんけれども、理解できるところではありませんけれども、今後、この六次産業化を起こしていく、先ほどから私が何度も申し上げていますけれども、これを通じて農山漁村、農業だけではなく商工業の発展にも寄与する大きな事業だと考えておりますので、情報の伝達をきちんとお願いしたいと思います。

 先ほど政務官の言われましたパンフレットをつくること、そしてまたポスターを張ること、それだけではなかなかこの情報の伝達が、現場で農業や商工業をやっている方には伝わりません。きめ細かな情報の伝達をお願いしたいと思います。

 例を挙げさせていただいてはなんなのですが、私も、地元に戻るとこの六次産業化のコマーシャルをさせていただいております。各市町村の首長さん方に、こういった事業が計画されていますので、ぜひおたくの市や町や村でこれを取り入れていただいて、農業、農村活性化のまちづくりのいいキャッチフレーズになるじゃないですか、市を挙げてどんどん宣伝をしてくださいというふうに言っております。

 私の経験からいえば、やはり市町村の役所、役場が農業者そしてまた商工業者に近い立場でもありますので、その辺で皆さんに周知徹底をして、これを使っての農商工連携を通じて、元気な日本づくりをしていく一つとなっていければというふうに考えております。

 改めて大臣に、これは事前にお願いしていなくて申しわけありません。今までの議論を含めまして、この農商工連携が日本の国家戦略の一つとして、景気回復のための成長戦略の一つとして御認識があると思いますけれども、改めて御答弁をいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

赤松国務大臣 この間の議論でございましたように、地域が、農村が、あるいは漁村が活性化しなければ日本の経済の再生はありません。そういう意味で、私どもがこの六次産業化を打ち立て、また法律もしっかり出して法的な裏づけもしていこうという動きの中で、今、全国各地で、有名なところは徳島の葉っぱ産業とか、あるいは、ことしになりましてからは、例の戸別所得補償とも絡みますけれども、秋田での米粉を使った、そうした工場を建てて、いわゆるそこに新たな雇用を生み出すとか、いろいろな動きが今、全国各地で起こりつつありますので、ぜひ、関係する経産省の皆さんを初め、あるいは総務省とか、地域のこともありますので、そういうところともまた連携をとりながら、実りある六次産業化施策が実現をしていけるように、委員のまた御指導もいただきながら頑張っていきたい、このように思っております。

金子(健)委員 どうもありがとうございました。私の質問を終わらせていただきます。

筒井委員長 次に、河上みつえ君。

河上委員 私は、京都府出身、民主党の河上みつえでございます。

 きょうは、新人の私に質問の貴重な時間をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。

 私の祖父は、京都の宇治で茶園を営んでおりました。祖父が他界いたしましてからは担い手がなく、自慢の茶畑は駐車場になってしまいました。私は、現在国政の仕事を授かっており、幸運にも農林水産委員会のメンバーにしていただいております。祖父の思いを受け継ぎつつ、地元の農業を守りたい、日本の農業を全力で守ってまいりたいというふうに思っております。

 先日の消費者特別委員会で福島みずほ大臣が、すべての人は生まれてから死ぬまで、二十四時間、三百六十五日、頭の先から足の先まで消費者であるとの御答弁に、まさにそのとおりだと実感いたしました。

 私は、農林漁業従事の経験はございませんが、三十八年間、消費者としての経験を積んでおります。そして、きょうは、消費者の代弁者として、食の安全、安心について御質問をさせていただきたいと思っております。

 先般閣議決定されました、食料・農業・農村基本計画の三本柱は、一つ目が戸別所得補償制度の実施、二つ目が食の安全と消費者の信頼の確保、三つ目が六次産業化による農山漁村の再生であります。特に、私が今回触れさせていただきます食の安全、消費者の信頼の確保に関しましては、お手持ちの皆さんは、こちらの食料・農業・農村基本計画の十三ページ、十四ページ、また十七ページ、十八ページに記載がございますので、ごらんいただければと思っております。

 政務三役の大臣、副大臣、政務官におかれましては、他省庁との横断的な折衝に大変御尽力をいただきまして、また、たび重なる私たち議員の意見に耳を傾けていただき、またその声を本文の中に反映していただきまして、本当にありがとうございました。

 基本計画でも、食の安全については、「安全・安心」というワンフレーズで表記されておりますが、安全、安心を一つの単語として表現することに、私は少し違和感を感じます。厳密に言えば、物理的な安全が確保されてこそ人々の心に安心の気持ちが芽生えるものだというふうに思います。安全とは絶対的なものであり、安心とは情緒的なものであります。別次元のものであるというふうに私は考えます。

 今までの食の安全に対する行政を振り返りますと、リスク管理機関が農林水産省と厚生労働省に分かれ、責任の所在が不明確であったため、思い出されるだけでも、中国産ギョーザ中毒問題、食品表示の偽装問題、BSEの問題、事故米の問題など、関係省庁の縦割り行政の弊害の谷間で、消費者目線、弱者の立場からの議論と施策が十分でなかったと言えるのではないでしょうか。

 そこで、このたび、一つ目の御質問をさせていただきたく思っております。

 農林水産大臣赤松大臣、また厚生労働省より足立政務官にお越しいただいていると思います。そして、消費者庁、食品安全委員会を代表いただきまして、大島副大臣から御答弁を賜りたいと思っております。省庁横断的に、ただいま関係しております食の安全、安心に対する取り組みの現状と今後の方向性を、また食の安全に対するそれぞれの御所見をお伺いいたします。

山田副大臣 食の安全は本当に大切なことだと思っておりまして、この前、BSEの問題で、いわゆる特定危険部位が混入されておったということがあったんです。そのときに、私ども農水省として、政権交代して間近で、すぐに米国の方の工場に査察に行って実際にその原因を究明したいという意向があったんですが、厚労省の方と一緒でなければいけないというような事情もありまして、どうしても、今、食品行政については、厚労省の方の食品衛生法と、私ども生産工程をやっている農水省と、両方であったり、それぞれ別々であったりして、食品のリスク管理というのが二つに分かれております。リスク評価については食品安全委員会というのができておるんですが、そういった意味で、何とかして食品行政の一元化、管理の一元化を図りたい。

 そういう意味で、今回、基本計画の中に、食品安全庁ということの検討、設置をぜひ私ども実現させていきたい、そう考えているところで、委員の指摘は大変核心をついたところだ、私どももそう思っているところです。

赤松国務大臣 委員の御指摘に大変感銘をいたしました。飛行機に乗っておられたから、やはり安全に対する考え方が私たちよりも本当に厳格なんだなと。安全は科学的評価により決定されるものであり物理的なものなんだという御指摘は、言われてみると、なるほど本当にそのとおりだなとつくづく思いました。加えて、安心については、これは私どもも含めて、信頼が確保されることがあって初めて消費者が実感をするものだということもまたおっしゃるとおりだと思っております。

 そういう意味で、今回の基本計画の三つの柱の主要な柱の一つとして、しっかりこの安心、安全の問題を中心に据えながら、今、山田副大臣も申しましたけれども、今までは、食品安全庁ということを掲げることに、正直言って他の省庁の皆さん方とのいろいろなことがございまして、なかなか難しかったんですけれども、今度は、厚労省や、福島みずほさんが今担当しておられる消費者庁も含めて、今後、ぜひそういう方向で、あり方について三省庁は研究、前向きに取り組んでいこうじゃないかというような御了解もいただきまして、今回、この食品安全庁についても基本計画の中にきちっと明記をさせていただいたということでございます。

 委員の御指摘をしっかり受けとめながら、期待にこたえられるように頑張っていきたい、このように思っておりますし、委員もまた別の意味でしっかり頑張っていただきますように期待を申し上げたいと思います。

大島副大臣 河上委員にお答えをさせていただきます。

 まず、先ほど赤松農水大臣からも御指摘がありましたとおり、このたび、消費者庁でも消費者基本計画をまとめさせていただいております。その中で、食の安全、安心を確保するための施策ということで、多くの施策を盛り込ませていただきました。赤松大臣が御答弁された食品安全庁についても、私どもの消費者基本計画の中でも、関係各省庁との連携のもと検討を行うということで項目立てをさせていただいておりますので、農水省の皆様と同じ歩調でやっていきたいと考えております。

 もう一つは、安全と安心がどう違うかという御指摘だったと思います。私も、安心、安全という言葉は何も考えずに使っていたのかなと反省しておりまして、改めて、安全、安心について検討をさせていただいて、この概念は、消費者庁発足に向けた検討を行った国民生活審議会の委員会において定義づけがされております。これは、平成二十年から平成二十一年に、大体一年間にわたって行われた委員会です。

 安心というのは、先ほど委員御指摘があったとおり主観的な概念でございまして、この委員会の定義は、人が知識経験を通じて予測している状況と大きく異なる状況にならないと信じていること、自分が予想していないことが起きないと信じ、何かあったとしても受容できると信じていることで、聞いてもよくわからないと思うんです。これは、考えてみると、主観的な問題ですから、自分自身が想定した事態よりもそれを超えた事態が起きたときに、それを受容、受けとめられるかどうかというのがこの安心の定義でございまして、それよりも超えてしまうと不安ということになるかと思います。

 もう一つが安全ということなんですけれども、安全につきましては、消費者の生命または身体に被害が生ずる危険性が、許容可能な水準まで抑えられていることを示しておりまして、これは客観的な事実ですから、科学的な知見に基づいて安全ということが客観的に決まっていると。

 しかしながら、この両者は密接に関連性を有していると整理されていることを承知しておりますので、私たちとしても、この安全と安心を守るべく、一生懸命取り組んでいきたいと考えております。

 以上でございます。

足立大臣政務官 ただいまの大島副大臣の答弁を踏まえてお答えさせていただきたいと思います。

 当然、食の安心、安全につきましては、これは国民の関心が非常に高いものだ。そのような中で、厚生労働省としては、食品衛生法を所管する立場から、今副大臣が申しましたように、まず安全ということにつきましては、科学的根拠に基づく食品や添加物等の規格基準の制度の推進、例えば食品中の農薬などの残留基準に対する制度というようなこと、それからもう一つは、輸入食品に関する監視、指導の計画的な実施ということが安全対策ということだと思います。

 そして、安心につきましては、それらの知見をもとに、情報をもとに、いわゆるリスコミ、国民との双方向の対話、これを行うリスクコミュニケーション。これは各省庁連携してやっておりますけれども、そのことが国民の安心に寄与する、そのように考えております。

 いずれにいたしましても、現状と今後ということでしたので、現状は今申し上げたとおりで、今後は、やはり今までより以上に各関連省庁との連携を保ちながらやっていく。特に、厚生労働省としては、科学的知見に基づいた食品の安全行政の展開ということが大事だ、そのように考えております。

河上委員 御答弁ありがとうございました。今伺いまして、各省庁ともに同じ認識のもと、責任感を持って、心一つに食の安心、安全の確立に対して取り組んでくださるというふうに私も実感いたしました。

 私が考える食の安全確保に必要なステージというものが三つございます。まず一つ目なんですが、食品事故など、即時対応の必要な安全の確保でございます。例えば、戦後二十世紀型ともいうべき砒素ミルク事件、カネミ油症事件などでございます。また、二つ目のステージといたしまして、継続的、長期的、日常的に摂取する食の将来の安全の確保。例えば、遺伝子の組み換えやクローン動物の由来の食品などでございます。そして、この一つ目のステージ、二つ目のステージが守られて初めて、三つ目のステージの国家安全保障としての食の安全の確保というものが守られるのではないかというふうに思っております。今後は、特に二番目の、継続的、長期的、日常的に摂取する食の安全の確保というところが本当に重要になってくると思います。

 そこで、消費者庁副大臣の大島副大臣にお伺いいたします。

 省庁横断的な食品安全に関する情報の共有の現状と今後の展望、また、農薬や食品添加物に関する安全評価基準の算定方法とその妥当性について、御説明いただければと思います。

大島副大臣 河上委員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず、農薬の算定基準なんですけれども、農薬については、動物を使った長期の慢性毒性試験を含む各種の毒性試験等の結果に基づいて、人が毎日一生涯にわたって食べ続けても現在の科学的知見から見て健康への悪影響がないと推定される摂取量を求めているということで、こういう基準に基づいて、動物実験を行って、摂取量を決めさせていただいております。

 食品の長期の摂取による健康影響をどのように評価しているかという観点からは、農薬のほかにも、例えば遺伝子組み換え食品というのもございまして、遺伝子組み換え食品については、国際的にも整合している評価基準に基づき、これまで長期間食べられてきた食品等と比較して安全性に差がないか、確保することを基本的な考え方として、挿入された遺伝子によってつくられるたんぱく質の有害性や想定外の影響がないか等について、一つ一つ個別に評価をしているということです。

 食品安全委員会としても、河上先生御指摘のとおり、食に対する日本国民の安全性に対する意識が非常に高いものですから、その点も踏まえながら、リスク評価の分野にしっかりと今後も取り組ませていただくことをお約束させていただきます。

 ありがとうございます。

河上委員 科学的知見から安全性が証明されているというふうな御答弁をいただきましたけれども、果たして国民の皆様は、今の私たちの食の安全性に本当に安心感を抱いていただいているんでしょうか。今、消費者は、食の安全に目覚め、作物が育つ段階での安全性についても高い関心があると思います。例えば、オーガニックや有機栽培、低農薬栽培などのニーズが高まっていると思います。有機農産物の生産推進や流通のさらなる拡大を期待するとともに、化学肥料、化学合成農薬の使用に頼り過ぎない環境保全効果の高い営農活動の導入を大きな視野でさらに推進していただきたいというふうに思っております。

 民主党政策集インデックス二〇〇九にも記載がございますが、今回の食料・農業・農村基本計画に盛り込んでいただきました食品安全行政におけるリスク管理機能の一元化を目指した食品安全庁設置に関して御質問させていただきます。

 現在、農林水産省と厚生労働省においてリスク管理が、また、食品安全委員会においてリスク評価がなされております。

 そこで、赤松農林水産大臣にお伺いをいたします。

 食品安全のリスク管理機能を一元化する食品安全庁設置に向けて、具体的な方策、今後の方向性、大臣の食品安全確保に対する意気込みをお伺いいたします。

赤松国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 委員御指摘のように、リスク評価については食品安全委員会が、リスク管理については厚生労働省と我が省が担っているということでございまして、その意味でいえば、評価も管理も一体的に対応していくということは非常に重要ですし、また、それが消費者に対する責任をきちっと果たしていくことになるというふうに考えておるところでございます。

 今後、これは省庁のあり方といいますか機構の改革にもつながっていくことでございますので、政府全体で十分議論した上で、委員御指摘のように前向きに対応していきたい、このように思っております。

河上委員 生きることは食べることであり、食の安全を守ることは命を守ることそのものであります。

 二〇〇七年の統計によりますと、国家予算に占める農業関連予算の比率は、EU全体で約四六%、一方、我が国では何と二・四%であります。EUは、予算総額のほぼ半分近くを、日本の約十九倍の予算を農業関連に計上しております。石山議員と赤松大臣も述べられましたが、食の安全は国家の安全保障であり、国家戦略であります。ぜひ、農林水産予算をさらに確保していただき、日本の食料安全保障を守っていただきたいと熱望いたしております。

 国民の皆様の命を守るため、汗を流し、激論を展開している我が農林水産委員会に私も所属させていただいていることを心より誇りに思います。これからも、あらゆる既得権益を打破し、日本の一次産業の尊厳を守るべく、農林水産の大応援団として全力で頑張ってまいりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

筒井委員長 次に、京野公子君。

京野委員 こんにちは。私は、秋田県選出の京野公子と申します。

 きょうは、基本計画の大変意義深い質疑の機会であるにもかかわらず、冒頭、赤松大臣にどうしても一つお願いしたいことがあります。

 それは、今さら経緯は申すまでもありません。赤松大臣の強いリーダーシップ、また調整のもとで、結果的に、大潟村が、九割以上の農家が生産調整に参加する。そして、大潟村の方々も、これで長らくの対立関係が解けたということで、大変に喜んでおります。そのことも十分承知しておりますし、その意義も理屈も十分理解しております。また、多くの農業者の方も理解をしていただいているとは思っています。

 ただ、農家の方々というのは、大変土に取り組んで黙々と頑張ってきたものですから、やはり非常に感情面の問題がある、だれでもそうだと思いますけれども。それで、理屈ではわかった、米のモデル事業は我々にとってもプラスになる制度だ、だけれども、気持ちのしこりが解けないという声が、本当に私は残念でならないんですが、いまだにあるんです。

 それで、ついこの前の週末の体験ですが、ある農村部の集会で、大変大きな規模の農家を営んでいる非常に実直な方でした。その方が最後に発言なさったのが、今回大潟村が参加するということで、生産調整の市町村に対する再配分があった、それで、正直に言って、わずか〇・二五%のマイナスにすぎない、数量的には大した問題ではない、だけれども、やはり気持ちがすっきりしないと言うんですね。

 特に私の出身地は、もう大臣も十分御存じのように、日本の国内でも有数な稲作地帯であります。そして、生産調整を本当に遵守してきて、大豆、スイカ、アスパラガスあるいは花卉栽培と、あらゆる努力を傾注して本当に国策に忠実に従ってきた地域なんです。

 ですから、大臣、一言でいいです、その方々にメッセージを送っていただきたいんです。ねぎらいのメッセージを送っていただきたいんです。そしてまた、こうした本当に地の塩のような生産者たちが、昨年の夏の政権交代、このままの農業政策ではだめだ、そのような強い思いで非常な勇気を持って政権交代のために力を果たしてくださった方々です。ですから、ぜひ一言、メッセージをお願いしたい。

 さらに、厚かましいようですがもう一つお願いがあります。

 大臣は、私は答弁を聞いていても、大変率直ないい方だなといつも思うんです。ですから、こんなに率直ないい方と、多分、今かなり感情面でしこりを残している方々も、一度お会いする機会があると、ああ、何だ、こういう方かと。秋田県人は、そういう意味では本当に人柄がいいですから、一度、稲作地帯に座談会のような形でも結構ですから来ていただいて、そして、より一層順調にこのモデル事業が進むために御協力をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

赤松国務大臣 まず最初に、当該県でありました秋田県の皆さんには、結果はともかく、その経過の中で大変御迷惑をかけましたことをおわび申し上げたいと思っております。

 そして、私どもは、これはもう別に秋田県ばかりじゃなくて全国どこへ行っても同じことを私は申し上げておりますけれども、前政権からの、またおしかりを受けるかもしれませんが、つくらせない農業からつくる農業へと私どもは転換をしていくんだ、農政の大転換の中で、改革の中で、その中心をなすのは戸別所得補償制度なんだ、ぜひこれを成功させなければいけないという思いの中で、象徴的に、例を出していけないかもしれませんけれども、今までこうした前政権時代に数字の上で生産調整に一番協力をしてこなかった県というのは、秋田県であり福島県であり千葉県であったわけでございます。

 とりわけ、国の政策が猫の目のように変わる中で翻弄されてきた秋田県、このところが、一体この戸別所得補償制度にどういう態度をとっていただけるのか。これが全体の成否にかかっているという私自身の思いもございまして、私ばかりじゃなくて政務三役がそろって大潟村に行かせていただき、もう長年、本当にこんな小さな村が真っ二つになって反目し合っている、口さえきかない、裁判までやって逮捕者まで出しているというところを、やはり解きほぐしていかないとこの制度は成功しないという思いの中で、うまく結論を出したいために、時には厳しいことを申し上げたと思いますが、その点については私の至らざるところということでお許しをいただきたいと思っています。

 ただ私は、一貫して申し上げてきたのは、単に今まで造反してきた人たちを何でもオーケーということを言ってきたわけじゃありません。むしろ、今までこの制度の中で一番被害に遭ってきたのは、減反政策に協力してきた人たちが一番実は苦労をされていると思っております。

 それはなぜか。それは、これだけしかつくっちゃいけませんよ、わかりました、では、言われるとおりこれしかつくりませんと。しかし一方では、それに反して、その倍ぐらい、つくり放題つくってどんどん米を市場に出すわけですから、価格そのものはどんどんどんどん下がっていく。少なくしかつくらないのに、その少ないお米でさえ安い価格でしか売れないと、ますます農業の収入は少なくなる。やっていけない。こういう一番矛盾を受けてきたのが、実は生産調整に忠実に従ってきた人たち、今、京野委員が御指摘をされたそういう方たちが実は一番被害をこうむっていたというわけでございます。

 そういう意味でいえば、その方たちにとっても、私どもはやはり、きちっと決められた量をつくればちゃんと再生産のための収入が確保される、やっていけるという仕組みに変えていきたい。あわせて、今まで、やりたい放題とは言いませんけれども、減反政策に従ってこなかった人たち、この人たちを野放しにしておいたのでは、幾らこちらで努力したって、どんどんどんどんそれは予定外のお米が市場に出ちゃうわけですから、これはうまくいかない。ここも何とか、無理やりにでも、とにかくその生産数量目標に従っていただけるようなことにしなければいけない。

 その意味で、ペナルティーを科さないということを条件にして、今御指摘のように、大潟村ではほぼ九割の皆さん方が、この生産調整、私どもの提案した戸別所得補償制度にみずからの意思で、進んで、喜んで、積極的に参加をしていただけるということになったわけです。

 秋田が本当に成功したおかげで、福島もほぼそういう方向で進んでおります。また、北関東の地域も一番造反が多かったところですが、ここもそういう流れが、一〇〇%とは言いませんが、徐々に今できつつあります。四月一日から、今、受け付けを始めています。一応六月三十日が締め切りなので、まだ最終的なことは言えませんけれども、方向としては、多くの皆さん方が、進んで、みずからの意思で、強制されてではなく、この戸別所得補償制度に参加をし、生産数量目標をきちっと守ろう、そのかわり、政府はそれなりのきちっとした手当てをしてくれよというのが、今の農家の皆さんの御意思だと思っております。

 まだ終わったわけじゃありませんので楽観はできませんけれども、しかし、こういういい方向で今進みつつあるというのは、まさに京野先生の地元の、こうした今までの農政にも、そしてこれからの農政にも、本当に忠実に、厳密に、しっかりと支えていただいてきた、守っていただいてきた、こういう農家の皆さん方のおかげでございまして、先生からもよろしく、ぜひ、大臣が心から、成功はあなたたちのおかげだということを言っていたということで、お伝えをいただきたいと思います。

 今、予算も通りましたし、法案もあとまだ三つ残っておりますけれども、できるだけ早い時期に、できればこの一、二カ月ぐらいのうちに、せっかくのお申し出でございますので、こんな私でよければ、喜んで、秋田の方にも行かせていただきたい、このように思っております。

京野委員 大臣、ありがとうございます。

 さて次に、備蓄についてお伺いしたいんです。

 二月九日、自由民主党の宮腰議員、また同二十三日、公明党の石田議員、それから三月五日の、こちらは参議院ですけれども、どちらも予算委員会ですが、日本共産党の紙議員に対しても、大臣は、棚上げ備蓄を基本とする、こう答弁をしていらっしゃいます。さらに総理は、棚上げ方式にいたしますと明言をしている。にもかかわらず、基本計画には、備蓄のあり方の検討とあるだけで、棚上げに関する記述がないのが私は大変気になったんです。

 記述漏れなどということはもちろんあり得ないと思いますが、なぜこの棚上げという言葉が消えたのかというふうなことについて、少し御説明願えればありがたいです。

    〔委員長退席、梶原委員長代理着席〕

佐々木大臣政務官 京野委員にお答えをさせていただきます。

 政府の備蓄米についてでございます。

 本来、備蓄というのは、主食の食糧の安定供給ということを目的として行われているわけでありますが、時には需給緩和などということも求められる場合もあったり、本来の原則どおりに、備蓄の運営が必ずしもそういう結果になっていないときもあったわけであります。

 このため、政府の備蓄米については、主食用市場への影響を排除するというような観点から、棚上げ備蓄方式というものについて農林水産省内で検討を今始めさせていただいたところでございます。今後、それぞれの関係方面の意見も聞いて進めていかなければなりません。あるいはまた、備蓄の手法あるいは水準などということについても、これからの検討課題でございます。

 そうした意味で、基本計画においては、「備蓄のあり方を検討するとともに、その適切かつ効率的な運営を行う。」という旨を記載させていただいたところでございます。

 以上です。

京野委員 それで、農水省で、普通の一般国民がアクセスできる資料の中に、回転備蓄と棚上げ備蓄に対する財政負担の比較表が載っているんです。それで、回転備蓄の場合は、百万トンの三分の一を主食用米として値引きをして販売する。それが三千円の値引きなので、約百五十億円の財政負担。それに対して棚上げの場合は、同じく百万トンの三分の一を飼料用、えさ米として出すというふうなことで、七百億円の財政負担。

 この比較表を見れば、心ある国民というか、どんな方でも、こんなに財政負担が違うのであれば、棚上げというのは難しいなというふうに思うといいますか、もうだれでもそういうふうに感じると思うんです。

 それで、私が感じましたのは、回転備蓄の財政負担の場合は、あくまでも三千円の値引き程度で計画どおり売れるという、いわば甘い見通し。回転備蓄には優しく甘い見通しで、棚上げ備蓄に対しては、もうえさ米でしか売れない、最低の価格で、それ以外の可能性は一切ないものというふうな前提でつくられている、非常に辛い見通しでつくられている。私などは、こういう資料を見ると、何か色がついているような感じがするんですね。

 それで、こういう資料を見れば、一般国民もまた我々も、これだけ財政負担が違うのであれば、これはあきらめた方がいいんじゃないかなというふうに誘導するための資料のように見えるんですが、こうした資料のあり方というものについて、少し御見解をお聞かせいただければありがたいです。

赤松国務大臣 私からお答えしたいと思います。

 確かに、回転備蓄を棚上げ備蓄にすれば費用はかかるんです。しかし、私どもは、それだけのお金がかかっても、旧来やってきた、三年ぐらいたったら、その都度市場にどんどんそれを出していく、それがまた、すべてではありませんけれども、市場のお米をだぶつかせる原因にもなっていたということもございますので、本来、これは緊急のための備蓄、あくまでも備蓄米でありますから、そういう趣旨にのっとって、それはもう抱え切るという基本的な考え方。そのために財源が要る、これももう割り切る、そういうことで私自身は考えております。

 ただ、明確に基本計画の中に書いていないじゃないかというようなお話がございました。これは二つ理由がありまして、一つは、それだけのやはり費用がかかりますから、ちゃんと財政当局の理解のもとに進めなきゃいけない。もう一つは、何でも大臣が言ったらなるのかということではありません。民主的な組織ですから、やはり、例えば審議会の食糧部会に一応かけて、各委員の皆さん方の意見を聞くだとか、そういうことも含めて、そういう手続、手順を踏んだ上で私の意図するところに何とか持っていきたいというのが私の発言の趣旨でございます。

 ぜひ、そんな方向で、政務三役はもうそれで決めておりますので、進めていきたいと思っておりますから、また御支援と御協力を賜りたい、このように思っております。

京野委員 ありがとうございます。

 そろばん勘定だけではない、政策的意義も踏まえて、ぜひ実現に向けて努力をお願いしたいと思います。

 時間がなくなってきましたので、ちょっと早口になって申しわけないですが、余り細かい話なのでどうしようかと思ったんですが、いわゆる改正農地法の施行に伴って、標準小作料制度から賃借料と、ある程度相対で契約をするという制度に移行する。それからまた、今回の基本計画の方には、それに対して、農用地利用改善事業、あるいは集積に対するさまざまな施策も打たれております。

 ところが、非常に細かい話で恐縮ですが、私のところに、かなり高齢の方だと思うんですが、本当に切々たる手紙が参りました。国民年金だけではもうやっていかれない、固定資産税すら分割して納めているような状況だ。今度相対で決まるというふうなことになっていくと、これまで守られてきた最低基準さえ下回るような、言うなれば借り手市場になって、自分たちのような高齢化した農家の者は非常にデメリット措置を受けていくんじゃないか。そういうふうな、大変心配をしたお手紙をいただいたんです。これ以上賃借料を下げられれば暮らしが成り立たないというふうな。

 一方、今度は借り手の方から全く真逆の声が届きました。それは、入り口規制が緩和されたので、資金力のある地域外企業が相場よりも高い価格を提示して優良農地を一気に集積してしまうのではないか。そうなると、集落営農や地域の担い手ははじき出されてしまうと。

 この相反する両者の声というのは、賃借料の歯どめなき自由市場化というものに対する懸念だというふうに感じております。もちろん、これに対してはさまざまな事業計画、それから農業委員会が適切な相場形成のために情報提供等を行っておりますし、きちっとした連携で大丈夫かなとも思いますが、一言、この借り手、貸し手、双方の懸念というものは全く杞憂に終わるとお思いでしょうか。

    〔梶原委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木大臣政務官 私からお答えをさせていただきます。この農地法の論議、私自身も担当者として論議をしてきた立場もありますので、私の方から論議をさせていただきます。

 今、京野議員が御心配をされているとおり、標準小作料という制度については廃止をすることになって、今のような御懸念が双方から出ているんだということについては私も承知をしております。

 しかし、だからといって何もなくていいのかということになってはいけませんので、農地法でも情報提供をしっかりするようにということも言ってございます。それから、運用通知という形で、一定の計算式も含めて、それぞれの農業委員会に通知もさせていただいているところでありまして、賃貸借の目安になるべきものを示すことにしてございます。

 今後も、そういう御心配があるということも承知をしておりますので、適切に指導するように努めてまいりたいと考えているところでございます。

京野委員 ありがとうございます。

 質疑時間終了ということですが、十秒ぐらい。

 生産数量目標が、新規需要米等、カロリーベースの作物に対しては大変充実した数量が配分されております、目標として掲げられておりますが、その他の、特に畜産あるいは野菜、そういう食卓全体のバラエティーに関する、食の楽しみに関するようなものについて生産数量が横ばいになっているということで、もう少し元気のある目標を掲げてもらいたいという声が多数届いております。それからまた、麦、大豆、その他作物の激変緩和措置等、今回さまざまの指摘された問題について、制度の本格実施に向けてはしっかりと、本当にこれはよい制度だ、戦後の農政の最大の転換だと、歴史に残るようなよい制度にしていただきたいということを要望しまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

筒井委員長 次に、加藤紘一君。

加藤(紘)委員 この委員会で同僚の与野党の諸氏が質疑した議事録を丹念に読ませていただきました。その中で、やはり一つ気になるのは輿石さんの話です。

 これは、小里委員の議事録を見ますと、輿石さんのその問題の宅地というか農地、そこには、農振農用地の入り口から石畳が敷き詰められて、あるいは、庭石や庭木などが植栽をされている、置かれている。そして、全体が輿石宅の庭園を構成しております。駐車場も置かれております。申しわけ程度に、二十平米前後の菜園がある程度だと。何かドキュメンタリー風に書いてありますけれども、これは、どこの農家もそうしたいんだと思いますよ、全国で。だから違反が多い。

 しかし、毎日新聞によれば、八三年ごろ、行政書士と相談して、これは違法ですと言われて、その認識があるのに、それから十数年、現状のままである。それは多分、国会議員の権威があるからでしょうね。こんなことがあっていいんでしょうか。

 私のところは米どころです。広大な土地があります。バイパスのそばに家を建てたい人もあれば、商売したい人もある。でも、できない、やっちゃいけない。そういうしっかりとした矜持を持って農家の人は生きているんです。それを、学校の先生をした人、そして参議院議員の会長の人、その人が十数年、悪いことだと思いながらやっている、農村地帯で。なおかつ、相模原農業委員会が農振法、農地法違反であることを確認して、昨年来、三回にわたり原状回復、行政指導したが、本人は応ぜず。今後どんなことをされても、この事実は消えない。税法で最大の脱税が所得税法の脱税だとすれば、農家地帯にとって最大の違法は農地法違反です。

 農業委員会から勧告されても、それを十数年放置して、抵抗して守らない、こういうケースが全国で今頻発しているんですか。それだったら、農業委員会というのはどういうものなんだろうということになる、無用の長物ということになる。全国で、行政指導されながらもなおかつ農地法違反を続けているケースが何件ぐらいあるんですか。役所から答えてください。

吉村政府参考人 加藤委員にお答えいたします。

 農用地区域内の農地を農地以外のものに転用することは、これは原則として認められないということでございますので、当該農地が無断転用された場合には、農用地区域の用途変更で対応できるような場合を除いて、農業委員会や都道府県により原状回復の指導がまずなされるということでございます。

 こうした指導がさらに必要な場合には、口頭指導だけではなくて、文書による勧告が行われる。それでも原状回復が図られない場合には、農地法の五十一条に基づく原状回復命令が発せられる、こういうことになります。通常の場合、やはり、原状回復命令の発出に至ることなく、指導を通じて是正が図られるということだというふうに認識しております。

 なお、平成二十年に新たに発見された違反転用事案のうち、原状回復命令に至ったもの、指導や勧告では原状回復がなされずに原状回復命令の発出に至ったものは二件でございます。

加藤(紘)委員 大臣、全国で二件、それも平成二十年で。そういう極めてまれなケースで、とんでもないケースなんですよ。それを我々同僚の国会議員がやっていた、指導的立場の人間がやっていた。これは看過できないことですよ。それも、学校の先生、山梨県の教組のリーダー、カリスマ。そういう人がやっていいなら、だれでもやろうじゃないかということになっちゃいますよ。

 今、吉村局長、二十年で何とかしたケースは二つの例と極めて少ない、勧告を受けたのはかなり多いと思うんだけれども。それで、原状回復に応じていないのは二件とかなんとかとあいまいだったけれども、その二件はどういうケースですか。

吉村政府参考人 まず、先ほど数字を申しませんでしたけれども、文書による勧告をしたケースは七十九件ございまして、その中で、勧告に応じないで原状回復がなされずに原状回復命令に至ったものが二件、こういうことを申しました。

 その二件につきましては、いわゆる残土置き場なり、作業場、資材置き場、露天駐車場というようなことで原状回復命令が出されたというケースでございます。これについて、現在、その後のフォローをしている、そういう状況でございます。

加藤(紘)委員 委員長、いいですか。これは、残土置き場、それから機材置き場、使わなくなった建設機材を置いた、ちょっと短期間駐車場として使わせてもらった、これはよくあるケースです。ほかは八十何件ですか、それは文書で言われてすぐ直した。そして、二件だけそういうのがまだ残っている。これに対して、輿石さんのところは、庭木が置かれ、石が敷かれ、もう完全な庭園となっているわけですね。小里さんが見てこられたわけですね。

 私は、この違反の件は、これは政治的な問題にみんなで取り上げなければ、我々の権威の問題になりますよ。与野党の問題ではない。私は、これは後でみんなで相談したいと思います。看過できない話です。民主党の皆さんも、党派の問題を超えて、これは考えてみてください。お願いします。

 次に、私は前にも何度も聞きました、戸別所得補償方式の戸別とは何か。全国一律の単価で計算して、戸別と言えるものではないだろう。

 自民党にこの戸別の説明に来るトップは、官房の山口参事官です。今自民党に局長は説明に来ませんからね。局長が来ると局長は怒られるから、我々のところには局次長、参事官、課長、この辺です。そのトップで来るのが官房の山口参事官。なかなか優秀な人材だそうです。

 戸別とは何か。自民党が、我々がやっていたナラシというのは、実際に発動したことがおととしあります。五町歩の人で、不作だったら五十万円ぐらいキャッシュが行った。行ったけれども、みんな、来たよねと言わない。奥さんにも言わないケースも多い。せがれに言わないケースも多い。だから、広まっていないけれども、なかなかいい制度だったね、ずっしり来たよと、酒飲むとにこっと笑って言ってくれる。

 それもそうでしょう。コストについては一軒一軒見ません。それは、やたらとコンバインを買う家もあれば、農機具は五年おくれで買うのが一番効率的だといって、人が使い飽きるのを待って使う人もいる。それは個人個人です。ところが、販売価格はみんな同じですね。ところが、全国一律の販売価格なんかとりませんよ。

 そのとき、どうしたか。山形県は四つの地域に割った。庄内、村山、置賜、あとどこだったかな、四つに割った。そして、その米の価格も、どれだけの市場で売れたか銘柄ごとに調査した。はえぬき、どまんなかなどなど、銘柄ごとに全部調べて、そして、ああこれだけ値段が落ちていますねとやった。

 これは戸別じゃありません。我々は戸別ナラシ対策なんて僣越なことを言いませんでした。でも、山形県を四つに割り、銘柄ごとにやった。全国みんなそうですよ。丁寧な施策ですよ。全国一律でコストを見て、一律の販売米価をとって、そして何が戸別政策ですか。

 山口参事官、どうしてこれを戸別と言えますか。説明してほしい。

山口政府参考人 お答えいたします。

 所得補償政策につきましては、EUなど外国の例を見ましても、一般的に、個々の農家の所得を把握して、それぞれ別個に補償するという考え方はとっておりません。一律の単価設定を行っているところでございます。我が国におきましても、かつての生産者米価の算定方式が生産費所得補償方式というふうに称しておりましたけれども、全国一律の価格として決定をされてきたところでございます。

 それではなぜ戸別の名称を用いたかということでございますけれども、これは、農家ごとに生産数量目標を設定いたしまして、これに従った生産が行われていることを事業要件としているということが一つございます。また、これまでの価格安定制度のように農業団体を通じて買い入れや交付金の支払いを行うのではなく、農家ごとに直接支払いを行うこととしておりまして、こういう農家ごとにということが、すなわち、戸別に事業に参加し、交付金を受けるための所得補償事業という意味で、戸別所得補償と名づけたものと認識をしております。

加藤(紘)委員 それは、二番目の理由は、大臣がここで答弁していることですね。

 農協に払わずに戸別農家に払っている。ということは、農協が途中でピンはねしているおそれがあるからということですね。ないし、農協にある借金を先取りする、そのおそれがあるからということですね。そうですか、山口参事官。

山口政府参考人 お答えいたします。

 今回はいわゆる直接支払いという方式をとらせていただいているわけでございまして、それにつきましては、従来の農業団体を通じた方式とは異なる方式ということでございます。

 農業団体のこれまで果たしてきた役割というものも当然あるわけでございまして、そういった政策の方式もあると思いますが、戸別の所得補償ということでございまして、直接支払いという新しい方式を導入する、これが今回の新しい政権での方針ということでございますので、従来方式と違った方式としての内容として仕組まれたというふうに考えてございます。

加藤(紘)委員 農林省にあなたがいるのを僕はよく知らないから、党本部に説明に来られたとき、あなたの同僚、先輩、後輩に、山口参事官というのはどういう人物だと聞きましたよ。そうしたら、なかなか優秀でエリートですと言っていましたよ。でも、今答弁したことは何を言っているかわからない。まず第一に、戸別所得補償方式、直接支払いの中で、ヨーロッパで戸別にやっているところはありません。では、日本でどうしてかというと、何だらかんだら。

 では、農協がどうやってこれまで支払いしていたか。何ぼつくって、何ぼ植えつけて、そして、そのデータを農業共済の実測と合わせて、市役所の農政課と協議して、そして、これでいいねと、みんなで確認し合いながら丁寧にやるんです。だから、現場では三枚のコピーをとる。そして、それぞれ、市役所それから農協、農業共済が持って、なおかつ、県を通じてかどうか、それを農政局に上げるんでしょう。結局、データはそれなんです。

 今度、農政局が直接支払いますといったって、農政局が調べられるわけがないから、だから、データは同じなんです。怒っていますよ、現場の職員たち。我々がやっているのを、今度、農政局に上げて、農政局から、何かコンピューターのボタンを押すだけじゃないか、支払いのボタンを。それで何で直接なんですかと。じゃ、我々、手を抜きましょうか、農林省できるのかね、やらせてみようじゃないかと。そこまで、担当している三十五ぐらいの若い女性職員が怒っていますよ。それを、直接払い込むから直接支払いなんですとあなたは答弁している。

 篠原さんというあなたたちの先輩がいますね、衆議院議員、民主党。彼がいろいろなところでというか言っていますよ。直接支払いが必要だと思って何年来勉強してきた。そして、民主党の政策にすべきだと我々は言ってきた。そのときに、小沢さんが、これは戸別ということをつけろと。それに対して篠原さんは、それはやっちゃだめです、農民を欺くことになる、ほかの国でもできないんです、だから、小沢さん、戸別というのはだめですと言ったら、それにしろと。だめですと抵抗して、それ以来、篠原さんは民主党の農政から外されました。それは事実じゃないですか。ちゃんと抵抗する人はしているんです、農業政策の良心にこたえるべく。

 篠原さんの考え方が正しいかどうか、私は、いろいろな議論があると思う。我が党とも見解を違えるところがある。しかし、農民に誠実でありたいという意味では、私は、相当なものだと思いますよ。本当に出世を考えたら、小沢さん、そうですね、選挙の対応、政治というのは世の中にありますからね、わかりましたということにしていくんだと思います、普通。そして農家の信頼をかち得ていくんだと思う。

 今、野菜にも戸別方式を、お茶に戸別方式を、全国にいろいろなことを言っていますよ。それを全部、うその伝播をさせるんですか。

 山口参事官、先輩に対して、そこまで出世をあきらめてもちゃんとやる先輩がいるのに、あなた、もう一回答弁してごらんなさい。山口参事官。

山口政府参考人 加藤先生からお話のございました経緯については、私としては承知しておりません。(赤松国務大臣「委員長」と呼ぶ)

加藤(紘)委員 委員長、大臣に要求しておりません。大臣に要求していません。

 針原審議官、実際上これは針原案ですよね、今の農政は。私は、今度の民主党の農政というのはどうも腑に落ちないところがあった。実際上は、ほとんどは自民党時代に針原氏が持って回って、一部我が党の政治家に埋め込もうとしたけれども、いい案だったら我々応ずるよと言ったけれどもその内容がはっきりしない。それで、四、五カ月たっているうちに政権交代した。よく見たら、民主党の政策になっている。

 そうでなければ、民主党のこれまでの政策、菅直人、平野参議院議員、筒井委員長、篠原、こういう人たちが構築していたものと違う。そういうプロの人たちは戸別なんて言わなかった。しっかりと良心に基づいて、ああ、これならば討議できるなというふうに大分近づいてきたなと思って、この農水委員会というのはある意味で、よく言えば共通の意識で、悪く言うとなあなあかもしれないけれども、そういうコンセンサスが生まれつつあった農政なんですよ。それを、いつのときか、こんな状況になってしまった。農村地帯もわけがわからなくなっていますよ。どうしてこんな不幸なことにしたか。あなたですね、その中心は。はい、どうぞ。

針原政府参考人 事実経過を御報告いたします。

 ここに、民主党政策集インデックス二〇〇九というのを持っているわけでございます。そこの「農林水産」の項の最初に、「農業者戸別所得補償制度」、「戸別」という言葉がついております。その中に何が書いてあるかと申しますと、「米、麦、大豆等販売価格が生産費を下回る農産物を対象に農業者戸別所得補償制度を導入します。」その後でございますが、「生産に要する費用(全国平均)と販売価格(全国平均)との差額を基本とする交付金を交付する」、こういうことになっておりまして、私が制度設計をするときに指導を受けた政務三役からは、これに基づいてやってくれ、自分たちはこの名前で、この内容で説明して政権をとったんだから、これに正確に基づいてやってくれという明確な指示をいただいて、それでやったわけでございます。

 今、加藤先生、○○案ということをおっしゃいましたが、私としては、非常にそれは違う、まさにこの政策インデックスに大臣の部下として誠実に従った、これを御理解いただきたいと思います。

 以上でございます。

山田副大臣 加藤先生、誤解されているんじゃないかと思いますが、もともとこの戸別所得補償の中身は、最初、菅さんのときに、私どもの方でまず今の原型みたいなものをつくって一回法案を出し、平野さんのときに出し、そして先ほど言った筒井さんのときに出して、そしてインデックスにまとめたものを、それをあるとき、例えば石破農水大臣が、私どもが考えていたようなことに似たようなことを、新聞で戸別所得補償みたいな話をされたのを私ども聞いたことはあります。

 その後、政権交代してからは、私どもが今まで十年にわたって積み重ねてきたこの戸別所得補償をそのまま、今の針原総括審議官初め山口さんのチームにひとつしっかりと制度設計してもらいながらやってきたといういきさつがございまして、あくまで赤松農水大臣初め我々政務三役主導のもとに、そしてこれまでの長い民主党の農政の基本的な考え方のもとに今回できたものであって、いわゆる針原案そのままじゃないかというわけでは決してございませんので、そこはしっかり御理解いただければと思っております。

加藤(紘)委員 それがしっかり御理解できないんですよね。

 ですから、大体あなたが持ち回ったものを、石破さんの当初の構想の中にあって、石破さんもよくわからないという感じだった。だから、石破大臣、自民党に説明に来てくださいと。そして、我々は農林族だからかたくなかもしれない、しかし、日本の農業の閉塞感というところがある部分にあるんだとすれば、それはしっかり聞きましょうと。

 なおかつ、党を離れたけれども例えば与謝野先生なんか、都市部の議員の人もみんな入って、平場で議論しようじゃないですかということを言っていた。ところが、何カ月たっても案が出てこない。改革というんだけれども、どこを改革しようとしているのかよくわからない。そうこうしているうちに民主党から案が出てきた。ほとんどその流れだと思いますよ。

 その過程の中で、それに反対していた岡島官房長が、次官候補でしたよ、突然農林省から消える不可解な事件まで起きた。消えるといったって別に殺されたわけじゃない、南アルプスの山荘の中でひげを生やしていますよ、今。しっかりと我々にも、加藤総合農政調査会長、それはだめですとか、意見をばりっと言う人でしたよ。それがある日忽然とやめちゃう。よくわからなかった。政策対立があったんだと思いますね、農林省の中で。それは後で検証しましょう。

 ですから、余りにも農政というのに政治が絡んでいる。そして、戸別なんぞというのは前から書いてあったというけれども、それは小沢さんが書かせたものです。それを政務三役が、はいと、後生大事にいただいてやってきて、そして、戸別の部分については何もわけがわからないまま、いや、戸別農家の口座に直接払い込むことですと。農家が聞いたら笑いそうな答弁を大臣にさせている、こういうことですね。

 よくこれからそこのことをやっていきましょう。ただ、時間がないから、重要なことを一つ申し上げておきます。

 戸別所得補償方式がスタートしてすぐ、平野氏からも篠原氏からも、産地づくり交付金、産地確立交付金について、今のままのを動かすのもいいけれども、よく我々に相談してくれなきゃ困りますと、悲鳴に似たような発言があった。オンレコでもあったし、廊下で会えばそう言っていたし、新聞にも発言していたし、農業新聞のインタビューにもそう言っていた。私たちも、これはまずいと思いました。なぜかというと、産地づくり交付金の実態というのは、かなり問題を含んでいたものなんです。

 生産局長、大体どれぐらい配って、平均単価どれぐらいで全国に配っていたんですか。

本川政府参考人 産地づくり交付金につきましては、千四百億程度の予算額を全国に配分いたしまして、総平均的な単価といたしましては、二万円を少し切る水準、一万八千円から一万九千円程度の水準ということでございます。

加藤(紘)委員 針原さん、あなた、これが北海道で何ぼ配られて、高知で幾ら配られて、山形県で平均幾ら配られているか御存じですか。これがわからなければ農政の総合的な司令塔になりませんよ、最大の問題点だったんだから。総括審議官。

針原政府参考人 産地づくり交付金は、創設のときに、それまでの実績、要は、努力したところがそれなりに報われる水準ということで、総額を地域別に算定して配っております。実績からいきますと、平均価格が、北海道は大体四万一千円、それに対して高知県でございますが三千七百円、三千八百円ぐらい、そういうような地域別の格差がございます。

 それまでの団地化の推進、担い手の状況などが勘案された総額設定でそういうことになっているということでございます。

加藤(紘)委員 大臣、全国平均二万円だけれども、高知県では数千円、北海道では十アール四万円、これが大問題だったんです。

 そういう現実に配られている中で、四万円をもらっているところは、それぞれの地域水田協議会で配り方を傾斜配分する。四万円ももらっているんだから、いろいろな泳ぎ方ができますね。片っ方、三千何ぼとかの高知県では、ほとんど野菜をつくっているわけですが、余り自由のきかない金額なんです。

 これをもとに全国が動いていたのに、今度、大豆も平均単価になった。直さなきゃいけないなと我々思っていた部分を、そのままがんとやっちゃった、全国一律で。大臣、この認識はありましたか。

山田副大臣 加藤先生の質問の趣旨がちょっと今わかりかねているんですが、いわゆる激変緩和措置のことをおっしゃっている……。

加藤(紘)委員 違います。前の産地づくり交付金が、それぞれの産地づくりにどういう効果があって、どういうアンバランスで行われていたか、それによって微妙なバランスが米と大豆の間にできていたという事実を御存じでしたかということです。

山田副大臣 それは存じておりました。

 それで、今回、戸別所得補償によって、まず水田の、今までつくらないことに対してもお金を出しておったものを、これからはつくることに対して、大豆や新規需要米、小麦、それを出すようにした、しかもそれをシンプルでわかりやすい形に今回変えたわけですから、思い切ってそういう方向に持っていったということだ、そう理解しておりますが。

加藤(紘)委員 激変緩和といっても、受けた水田協議会の中での微調整にすぎないんですよね。ところが、北海道で平均四万円ももらいますと、膨大な金額になるんです。

 今ちょっと説明ありましたように、現給保障ということは、平成十六年の産地づくり交付金スタートのときから考えて、それまで大豆と小麦を多くつくっていたところにはそれに見合うような金額を渡した。全国の都道府県で、市町村ごとの配分も、そういう現給保障をしながら進んできた。だから、最近になって、平成の大合併をさせたものだから、合併して農協も一緒になったけれども、産地確立交付金と名を変えたその交付金は、昔と同じように配られているから、そう、平均四万もらっていたんだよねという町と、二万しかもらっていなかった市が一緒になると、市の農産課長は七転八倒しているんですよ。

 つまり、私が言いたいのは、そういう現地の状況を余り知らないで、僕は針原さんも余りよく知っていない人だと思う。生産局長、私が申し上げたことはそんなにぶれてもいないでしょう、事実と違わないでしょう。

本川政府参考人 確かに、産地づくりの配分につきましては、それまで麦や大豆を一生懸命つくってこられたところに非常に手厚く配分されるという仕組みになっておりまして、例えば、野菜などの単価の高いそういう作物をつくっておられるところには、当時の、昔の水田利用再編対策の助成金でも、これは大体十アール当たり五千円の交付になっておりましたので、そういうような観点から差がついておるということでございます。

 ただ、そういう産地づくり、確立対策というのは、そのような交付金になっておるということでありますが、加藤先生からも何度も御指摘あったように、例えば、北海道とそれぞれの地域について非常に単価において格差があるというような問題がございます。それからもう一つは、市町村を一つ越えるだけで、麦と大豆とかそういうものの単価が変わってくるとか、あるいは団地内の加算の単価が変わってくるというような、非常に不透明な、複雑な仕組みになっておるというようなことがございます。

 そういうことも踏まえまして、今回は、非常にシンプルな仕組みで、戦略作物の生産拡大を図っていけるような対策に改めた。ただ、それによって、地域協議会ごとに見て減額するところが大幅に出てくる、そのようなところについては、今回、そういう地域協議会ごとの減額幅を積算上きちんと積み上げまして、必要な額というものを算定し、激変緩和措置として配分し、円滑に推進していただきたいと考えているところでございます。

加藤(紘)委員 私が質問しているのは、一つは、現場を、実態をよくわかってから施策を立ててほしいということであります。

 と同時に、それをちゃんとやらないと何が起きるか。非常に心配しておりますのは、自給率向上のためにこれから多くつくってもらわなきゃならぬ作物は何かということを考えると、米ではないですね、一〇〇%なんだから。

 それで、米は、もっともっとつくれと一般の経済新聞とか一般の財界の人は言うんです。自給率向上のためには米をつくればいいじゃないか、耕作放棄地があるんだからそこにつくらせろと。大臣、これは正しいですか。

赤松国務大臣 それは当然のこととして、私どもが言っているのは、生産数量目標に従って決められた数量をきちっとつくる。そして、必要のなくなったといいますか、今まで米をつくっていた、今回はつくらない、そういう水田については、それを利活用して麦、大豆あるいは戦略作物である米粉や飼料米をつくっていこうという基本的な考え方です。

加藤(紘)委員 米を一生懸命需要以上につくるだけの農地の余裕のない日本です。それを外国に援助に回せばいいじゃないかというのは、生活保護を受けている家庭が町の祭りに膨大な寄進をするようなもので、日本にはその余裕はありません。ですから、米の次に必要な穀物というのを戦略的に決めて、そしてそれを一生懸命つくってもらえるようにモデル事業をやる、これが本来であったと思います。今度そこを間違えたと思います。大きな間違いです。

 そして、大豆をつくってもらいたいという方向に誘導するべきところを、誘導の金額が、前の実態がどうだったかということをよくわからないで全国一律三万五千円とやっちゃった、激変緩和もあるけれども。私は、北海道全体に四万円を膨大に渡して調整させた、米どころに二万円を渡していろいろさせた、その実態から見れば、遊びの少ないものだ、こう思います。

 大臣、議事録を見ましたら、大臣の答弁は一回始まると半ページ近く使っちゃうんですよ。平均時間七分ぐらいしゃべっちゃうんです。だから、大臣に答弁いただくのに恐怖感があるんです。つまり、申しますので、一言で言ってください。自給率向上のためには、えさ米と大豆とどっちが貢献しますか。

赤松国務大臣 お答え申し上げます。

 これは二者択一みたいな話ではなくて、現在、大豆が自給率六%ぐらいでしょうか。加藤先生初め自民党の皆さん方が政権の中であれだけ力を入れてやってこられたのに、わずか六%。なぜ上がってこなかったんですか。

 ですから、私どもは、大豆が必要だということは先生と意識は共有しています。麦も大切だと思います。これも、十数%ですから、上げていかなければいけません。その麦、大豆をどうやって上げていくのか、どうやったら自給率が向上していくのか、そのための施策というものを今回のモデル事業の中で位置づけさせていただいた。三万五千円ですけれども、そのほかに品目横断とかそういうのがありますから、実質的にはもっと上がっていきます。

 それからまた、飼料米についても、今どれだけ国産の豚、国産の牛を食べても、飼料がアメリカからのトウモロコシだったら、幾ら食べたって自給率が上がらないんです。ですから、そういう意味で、特に飼料については、トウモロコシを年間四千億円も輸入しているわけですから、それが、すべてとは言いませんけれども、一定部分飼料米にかわっていけば大きいという意味で、両方力を入れていきたいというのが考え方です。

加藤(紘)委員 それは、農家がつくりやすいとかの観点などからいえば、飼料米もみんな歓迎されることだし。特に、自民党時代に一反歩八万円というのを選挙間際に出しました。我々、これはどうかな、また検討し直さなきゃならぬなと思っていた金額なんですが、今度そのまま針原氏は八万円と入れちゃったというところに一つ問題があるなと思っています。

 ただ、では大豆をなぜつくらなかったのかといえば、今大臣は小麦も大変重要だし、大豆も大変重要だし、飼料もそうだとおっしゃったけれども、私は、自給率向上の観点からいえばと言ったんですね。カロリー自給率です。

 そうすると、まあこれは釈迦に説法だけれども、牛肉のサシをつくって食べれば、十五倍のカロリーを牛に与えて初めて一の肉が来る。それを、そのまま人間が穀物を直に食べる、米とか米粉とか大豆でとれれば一は一だ。自給率論争のイロハのイみたいなところですから、三十秒で返答が来ると思ったら、延々と答弁が来ましたね。ですから、自給率の観点からいえば、日本人は、納豆、豆腐、みそ、しょうゆ、この食用の大豆、輸入している五百万トンのうち百万トン、これをつくるということが絶対重要なんですね。

 昭和四十八年ごろ、アメリカで大豆が不作しまして、ニクソンが禁輸を言いました。途端に全国の豆腐とみそ、しょうゆの値段が一週間か二週間で暴騰しました。そのとき以来、大豆はつくらなきゃならないなと思ってみんな心に入れたんだけれども、まだまだ、国内でもつくっていたと思ったか、余り熱心になれなかった。それは認めます。これまでの農政の中で大豆を十分に重視していなかった。

 日本の農政で重視したのは米と生糸ですね。蚕糸局というのが僕が代議士になったときありましたよ。生糸担当局があったんですからね。大豆局ってないんです。この間の質問でも言ったんだけれども、大豆なんかやっていたら省内でうだつが上がらないんです、出世しないんです。米を担当して、総合食料局、昔の食糧庁に行って、計画課長でもしないと出世しない。そこにいる人たちはみんなその経緯をたどっている人たちです。大豆課長、大豆に一心不乱でやりましたという人はここの中にいませんよ。あえて言えば、建設部が、田畑転換ができるようにかん排をちゃんと入れることを考えていたという程度です。

 大豆はあぜ道に勝手にまいておけばとれたんです。でも、それが圃場整備、機械化によって、あぜ道に大豆なんか植わっていたらコンバインが入っていかないし、トラクターも入っていかないし、困るんです。だから大豆をつくらなくなったんだけれども、昔の流れから、大豆を余りつくらない、重視しないというところになっちゃったんですね。

 ですから、私は赤松大臣に、いろいろあろうけれども、省内でもいろいろ意見があるけれども、政治家の直観でいえば、日本人にとって大豆が米に次ぐなと言ってほしかった。胸震わせて期待していた。でも、それを言ってもらえなかった。はい、山田さん。

山田副大臣 加藤先生、戸別所得補償をつくるときに大臣から私がチーム長を任じられましたので、針原総括審議官がそのまま八万と言ったんじゃなく、私の方から、この飼料米についてはこうしようじゃないかという話をしたのです。決して、決して、どうも加藤先生は非常に誤解されているようですが、私ども政務三役で今やっている政策で、殊に大豆、先生がおっしゃっている、前々から大豆のことには大変熱心におっしゃっておられましたし、私どもも、先ほどの篠原さんにしても私にしても、大豆のことは今まで強調してまいりました。

 今回も、大豆については三万五千円に、これまでの分の四万円等々もつきますので、かなり大豆についても、今回、二毛作手当等々もあって、ことしよりも来年ふえるんじゃないか、私はそう考えておりますが、さらに、私どもは土地利用型の戸別所得補償、もともと畑作で麦とか大豆は収量が水田よりも多く上がりますので、畑作においての大豆の活用というものを十分これから検討していきたい、そう考えております。

 加藤先生がおっしゃるように、ぜひ大豆についても私ども頑張りたいと思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

加藤(紘)委員 ちょっと時間を十分読み違えまして、いろいろなものが残ってしまいました。

 大臣、最後に一つ。どれだけ米の作付になるか、大豆の作付になるか、これがポイントなんですけれども、何月何日までにそれを見る、締め切るということは、これは政治的にかなり重要ですが、締め切りはいつですか。

赤松国務大臣 六月三十日を締め切りということで、四月一日から今、全国各地でできるだけ多くの皆さんに参加していただくように取り組んでおります。

加藤(紘)委員 ありがとうございました。六月三十日。どういう結果になるのか。私は本当に自給率の観点からしっかりとした大豆の作付面積と思っていますが、どうも必ずしもそうではないというデータも日本農業新聞に出て、きょうそれが何か訂正されたり、何だかいろいろあるようです。

 そのためにも、ぜひ排水がとれるような農業土地改良予算というのが重要なんですが、結局は米に上乗せして土地改良の四千億ほどが犠牲になったということで、齋藤次長、ちょっときょうは発言いただけませんが、しっかり、こんな異常な事態では困ると。結局、農林省内部の予算は同じだったんだからね。(発言する者あり)減ったんだから。その分だけ齋藤次長のところが割を食ったというだけの話で、一反歩一万円か一万五千円乗っけるというのは、我々の時代、三千円乗っけたことがあって、これを一万円にしようかねなどと言っていた話が、構造改善局の犠牲の上に一万五千円になったというだけじゃないかと私は思いますよ。

 もっと大きな声をちゃんとあなた出さなきゃいかぬと思いますよ、省内でも、政治に向かっても、社会に向かっても、農民組織に向かっても。頑張ってくれることを祈って、次の回にまたお聞きします。

 どうもありがとうございました。

筒井委員長 次に、武部勤君。

武部委員 この部屋に入るのは農林大臣をやめて以来でございまして、山田先生の顔を見ると心臓がどきどきしてまいりました。

 攻守ところを変えてという言葉がありますけれども、先般閣議決定いたしました新たな食料・農業・農村基本計画というものを見てみまして、基本的には我々の政権時代とそんなに変わるものではないのではないか、その延長線にあるのではないか、私はこのように理解をしているのでありますが、そのところを、いや、そうではないんだというのであれば、きちっと説明をこの場で求めたい、このように思います。

 目新しいのは、今議論がありました農家戸別所得補償政策ぐらいかな。しかし、この農家戸別所得補償政策そのものが、本格実施する際に、財源の手当てがきちっとできるのか、地域の実情、実態にこたえられるのか。さまざま、これからまた議論させていただきたいと思いますけれども、疑問点、問題点が数々ありまして、農業基本法に反するような、そういう農政がこれから展開されていくのではないかという危惧を私は感じているのであります。

 私は北海道でありますので、北海道の実情もお話しして、政務三役の見解もただしたいと思うんですけれども、民主党政権、民主党の目指すマニフェストに対する不安と少しの期待もこの間の総選挙のときにはあったと思います。しかし、一番驚いたのは、日米FTA交渉を締結する、そういう新聞記事が躍ったことですね。これは選挙前で随分民主党さんも慌てたらしくて、文言は多少変えましたけれども中身は全く同じ、これは推進するということでありますので、北海道は、これまで食料供給基地ということで食料の安定供給に貢献してきた立場から、農産物の自由化の問題には非常に神経質になっているわけでございます。そういう意味で、農家戸別所得補償に対しましても少しの希望があったことは事実です。

 しかし、実際に今の北海道の現状を考えますと、まずは米でモデル的に始めるけれども、野菜、果樹、畑作、さらには畜産、酪農、こういった主要品目について来年からきちっとやれるのかどうか、これが明確にならなければ北海道における農業経営の腰が据わらない。そういうことを、これは釈迦に説法でありますが、まず御理解をいただいた上で、しっかりした対応をお願いしなければならない、このように思います。

 特に昨年は、私の地元は大変な長雨で、あるいは降ひょう被害も出て、生産者の方々は大変な苦労をいたしました。その結果、共済制度についても、共済金の支払いについて年内にという強い要望があり、年内に概算払いができましたけれども、しかし、事業仕分けの中でこの共済制度についても縮減される、そういう結果に相なりました。この一つをとってみても、現地の生産者の方々の不安は増すばかりなのであります。これは御理解いただいていると思います。

 さらには土地改良の予算が七割カットですよね。

 私の地元で上湧別というところがあるんですが、ここで、兵村地区の国営畑地かんがい排水事業、これが二十二年度から着工することになっていたんです。民主党の皆さん方も現地に調査に入りましたよ、あの雨の後で。畑がもう水浸しになっている。ここは河原ですから、もともとは、水が欲しくとも排水の心配は余りなかったところですね。しかし、もう畑が湖のようになってしまった、池のようになってしまった。そこで、この畑かん事業に大変な期待をかけたんですけれども、いよいよ着工だなと思っていたやさき、これにストップがかかってしまったわけであります。

 さらには、同じ水畑でも、クローラー型トラクターというのを御存じですか、大臣。これは、キャタピラつきのトラクターですよ。これがリース事業などで既に入っている農家は、水浸しの畑でも防除にきちっと入れたわけですよ。その生産者は平年並みの収量を得ることができました。結果、災害が各地で発生いたしましたから、タマネギにしてもバレイショにしても値段が上がった。収穫は平年並みだったけれどもいつもの年よりも随分実入りがあった、小さな声でそう言ってくれます。入ったところと入っていないところ、大きな格差が出てしまっているんですね、そういうものが導入されているところとされていないところと。

 もう一つ事例を挙げて言いますと、民主党政権になったら恐らく予算が削られるんじゃないかと心配したのでしょう、きたほなみという小麦の新しい品種によって三割以上の増収になっているんです。結果、JA清里などは、三年前に新しい麦乾施設を完成させたばかりなんだけれども、増設が必要だということで昨年の予算で増設をしたんです。同じように増設したところは、小清水それから北見などなどですね。

 こういった生産力を増強するためには、土地改良あるいはリース事業などの支援があればこそ、土地利用型の農業というものは大きく伸びていくんです。それが、今もちょっと予算の話がありましたけれども、ことしの農林省の予算は、ピーク時三兆六千億円ぐらいありましたけれども、二兆五千億円を割っているんですね、割っている。果たしてそんなことで、基本計画が掲げる「「国民全体で農業・農村を支える社会」の創造」、胸張ってそんなことを言えるでしょうかね。これが、これまでとどこがどのように違うのか。また、随所に、大幅な政策の転換とか、新たな発想による農政の大転換、こういう文言が見られますけれども、具体的に、なぜ、どこを、どのように転換するのか、説明してもらいたいと思います。

 まず、このことから御答弁いただきたいと思います。

山田副大臣 武部先生とは本当に、武部先生が農水大臣のとき、何回も質問させていただきました。きょうは私の方が改めて答弁させていただきたいと思います。

 確かに、先生も前からおっしゃっていました日本の農政について、行く方向については同じような考え方だと思っておりますが、先生、この十年、十五年の間に農家の所得は六兆から三兆に半減したということなんです。既に、農家の方が、今、六割以上が六十五歳以上の担い手になってしまったということなんです。

 このままでいくとどうなるかと考えますと、ここで思い切って、何よりも先に農家の所得を向上させる。これが一番大事なので、私どもの今度の基本政策では、農家の戸別所得補償、そこに大胆に予算をつぎ込んでいく。農家がもうかっていける、食べていける農業を構築すること、これに大きく転換を図った。それに、食の安全と、付加価値を高めるために六次産業化に対する思い切った支援をしていこうと。

 そういう形で、必要なところの土地改良事業、機械のリース事業、確かにそれもございます。それらについてもそれなりに手当てさせてはいただきますが、重点を置くのはまず農家の所得の向上であるということ。そこで今回、基本政策は大きく転換が図られたと私どもは考えているところです。

武部委員 農家の所得の向上、これは言うまでもないことですね。

 北海道でもどこでもそうだろうと思いますけれども、今、現場での一番大きい問題は農家間の格差だと思いますね。同じ面積で、同じ土地柄で、そして年齢的にも同じような担い手であっても、中には五千万借金がある人もいれば、五千万貯金を持っている人もいる。だから、やはり農業構造を変えていくということが大事なんだろうと思いますよ。

 先般、我々は子ども手当の議論をいたしました。子ども手当も、最初はみんな飛びついたでしょう。しかし、その後、いろいろな議論があって、単なるばらまきになっていいのか、この子ども手当が本当に社会全体で子供を育てるということに資する、そういう政策として理想どおりにいくのかどうか。いろいろな議論がありましたけれども、その中で、やはり、子供を社会全体で育てるということについても、現物給付と現金給付とのバランスというものが必要じゃないかというのが結論だと思いますよ。

 また同時に、財源問題というものも当然あるんでしょう。今、副大臣、きれいごとをお話しされましたけれども、土地改良は七割カットですよ、リース事業もみんな。今、北海道では、専業地帯ですよ、主業農家が多いところですよ。佐々木政務官、よく知ってのとおりですよ。そして、今、北海道、確かに全体では、所得が減ったとか高齢化しているとか離農が多いとか、そういう問題はあるかもしれないけれども、今現場でどういうことが起こっているか。やめられる人がやめるんですよ、やめられる人が。やめられない人がやめるにやめられずに農村に残っているという現状もあるんですよ。

 だから、我々は、こういった人たちに頑張ってもらわなくちゃいけないんだから、意欲と能力のある、いわば認定農業者を初めとするそういった人たちに日本の農業を担う中心になってもらおう、農業を産業としての政策として推進していこうということでやってきている。これがまた成功している事例もたくさんあります。

 全国一律、平均の単価で、基準単価で決めるというのも、これも怪しいんですよ。佐々木さん御存じのように、品目横断経営安定対策で、小麦の例を言いますと、当初の七中五のときには、十勝は、我々の北見よりも、網走管内よりも交付金が十億多かったんですよ、同じ面積で同じ収量で。だけれども、先進型小麦生産経営安定対策、補正でやったこの対策は、直近のということで五中三なんですよ、私は直近三年と申し上げたんですけれども。この五中三で支払った交付金は、同じ収量、同じ面積で、北見の方が十億円多いんですよ。これは事実ですよ。だから、全国平均で一律の単価で支援するということについても、先ほど加藤先生の議論の中にも不公平感の話が出てまいりましたけれども、これはよっぽど実情、実態を検証しなければ問題が多い、私はこのように思うんです。

 さて、そこで大臣に、手前みそですけれども、私が二〇〇一年の四月二十六日に農林水産大臣に就任したときに、これは政治主導でなきゃだめだということで、お手元にあると思いますが、「食料の安定供給と美しい国づくりに向けて」、この私の私案です。四月二十六日に就任して、五月三十日にこれを明らかにしたんですよ。ここで、食料自給率の向上と循環型社会の構築ということで、都市と農山漁村は対立する関係ではない、お互いに支え合う関係だと。

 むしろ、皆さん方がつくり上げた今度の基本計画では、「国民全体で農業・農村を支える社会」というけれども、これは間違いです。国民全体が農業、農村に支えられてきたんですよ、そうでしょう。食料供給による恩恵、あるいは、おいしい水、きれいな空気、これはみんな農村から供給されているんですよ。美しい景観、自然の恵みに感謝する気持ち、自然を恐れる謙虚な気持ち、これは日本人の精神文化の源流だと私は思います。こういったものが荒廃し切っているから、いろいろな社会問題が起こっているんですよ。

 私は、大切にしたい日本の心とふるさと、家族愛というのがこの間の選挙のキャッチフレーズでしたけれども、まさに今一番大事なのはそういうことだと思っているんですよ、皆さん方はどう思うか知らないけれども。それを提供し得るのは、ふるさとなんですよ、農山漁村なんですよ。都市に生活している人たちは、それがわからない。我々は自然界の一員であり、自然と共生しているというものを言葉で言ってもわからない。

 我々は、ありがたいことに、特に私のふるさとは、真冬は零下二十度以上になるところですよ。そこで、地元の農家の皆さん方は、朝五時に起きて牛舎に行くんですよ。これは大変ですよ。中川一郎先生が、温室に大木なし、寒門に硬骨ありと、よく我々に教えてくれましたけれども。しかし、山田副大臣は五島列島だから、必ずしも暖かいところからしっかりした人が出ないとは言えないと思いますけれどもね。

 ちょっと余談になりましたけれども、やはり基本計画というのは農業、農村をどうしていくのかという目安ですから、私のつくったものについてあれこれ言いませんが、これを農林省の役所の皆さん方に示したんです。そして、八月三十日にでき上がってきたのが、食料の安定供給と美しい国づくりに向けた重点プランなんです。これは、工程表も全部でき上がっています。

 そしてさらに、私はBSE患畜の発生で有名にもなり、山田さんにも随分細かくねちねちと責められたことがあるのでありますが、そこででき上がってきたのが食と農の再生プランですよ。これは、「消費者に軸足を移した農林水産行政を進めます。」と。一つの柱は、農業の構造改革を加速化する、「意欲ある経営体が躍進する環境条件をつくります。」、それから真ん中に、食の安全と安心の確保、「消費者第一のフードシステムを確立します。」、そして、都市と農山漁村の共生・対流、「人と自然が共生する美の国づくりを進めます。」ということで、御存じないかもしれませんけれども、バイオマス・ニッポン総合戦略、この閣議決定したものは、当時農林省がつくったんですよ、我々が。

 そういう、わかりやすく、政治主導というのであるならば、針原君を初め役所の皆さん、あるいは、役所といえば、農林省だけじゃない、地方自治体も含めて、府県も含め、市町村も含め、それから、農業団体を初め国民各層にわかりやすく、これからの農政はこう進むんだということを、きちっとメッセージを送っていただいたらいいのではないか、私はこのように思います。

 そこで、私に与えられた時間は余りありませんから、戸別所得補償モデル対策の問題点。これは、まず、先ほど言いましたように、どうも所得補償制度の意義、目的というのがあいまいですよね。大体、皆さん方がお示しになった予算のPR版と基本計画では、目的、導入の必要性について説明にそごがありますよ。これはお尋ねはしませんが、何でこういうそごが生じてきているのか。やはりここのところは、そごがあるとすれば改めた方がいいですね。選挙前と政権をとってからとは、全然違うでしょう。責任ある立場と、選挙目的で票を目指す、たくさんいただこうとする、その間にはそごがある、出てくるのは当然のことだと思います。

 そこで、このことはきちっとわかりやすく説明してもらいたいと思いますが、実際、本格実施に関する疑義ということを列挙しますから、これを答えてください。時間がないから、一問一答じゃなくて、質問を先にしましょう。

 まず、農業農村基盤整備事業の削減が与える影響。先ほど来議論がありますように、土地改良予算七割カットの激減予算の中で、水利施設の更新をどのように実施していくのか。水利施設の維持管理コストを農家に求めるのか、農家は戸別所得補償制度の交付金からこれを捻出しなければならないのかが一点。

 二番目に、農業の生産力強化と農業基盤整備、施設整備、流通対策など、農業の持続的発展について、特に戸別所得補償政策とのバランスをどう考えるか。先ほどの子ども手当でいう現金給付と現物給付の問題ですよ、その見解。

 それからもう一点は、新たな基本計画では、食料自給率を十年後に五〇%にするという意欲的な目標を掲げていますけれども、この戸別所得補償制度の導入で何%食料自給率が上がるんですか。このことを答えてください。

 それからもう一つ、次は、本格実施の時期。平成二十三年度から本格実施をするのか。先ほどの答弁では大臣は、二十三年度は必ずやると言ったけれども、財務省の副大臣は検討するという答弁だったようですね、メモをもらいましたけれども。本当にできるんですか。大臣、今、僕は少し怪しいと思っている。

 なぜかというと、赤澤さんの質問に対しても、米価が下がるわけがない、あり得ない、こう言っているんですよ。これは、大臣として、そこは慎重にやった方がいいですよ、私の経験からしましても。そういうのは非常に不遜というか、それは下がったらどうするんですかと聞かれますよ。そんな、あり得ないなんというのは。だから、そこのところは慎重にやった方がいい。

 それから、品目横断経営安定対策についてはどのように取り扱うつもりなのか。このことについてちょっと私見を言いますと、私は、品目横断のときは、大臣のときから検討していた項目なんですよ。あのときは緑肥も入れようとしたんです。

 これは、要するに、WTO対応のこともあり、畑作地帯は輪作体系を整えなきゃならないんですよ。でん粉の値段がどうなるのか、砂糖の値段がどうなるのか、このことによって所得率の高い作物にみんなシフトしていくようになるんですよ。そうなると、輪作体系が崩れる。だから、緑肥作物もその中に入れて畑作で、品目横断というのは畑作の問題なんですよ。これに私の後の人たちが水田を一緒にしちゃったからおかしくなっちゃったんですよ、政策目的が。品目横断型の経営安定対策というのは、輪作をきちっと守るということなんです。

 そういう意味で、私は、恐らく佐々木政務官はこのことについて私に賛成してくれるんじゃないかと思いますので。あなたは、米どころか。

筒井委員長 武部先生、質問が大分いっぱいになりましたが、ここのあたりで答弁を求めますか。

武部委員 はい。では、委員長の御指導に従います。

山田副大臣 武部先生、いろいろな御質問があったようですが、本当に、土地改良事業というか、それについてのことを随分心配なさっているんじゃないか、そう思います。

 確かに、予算は思い切って減らされました。しかし、土地改良事業についての大事なところ、例えば、既に改修を必要とされるところ、水利部分が壊れかかっているようなところ、そういう非常に大切なところには、今回、すべて我々は手当てできた、いわゆる必要性に応じて十分なことはやれたんだ、そう考えております。

 あと、大臣の方から、二十三年度本格実施に向けてやりますと先ほども答弁がございました。武部先生がおっしゃっている畑地での輪作。我々、来年は畑地においての土地利用型の所得補償を考えておりまして、佐々木政務官もそれについていろいろ検討しておられますし、ぜひ、今、私どもも来年に向けてしっかりとしたそういう方向で進めさせていただきたい、そう思っております。

佐々木大臣政務官 何度も御指名をいただきましたので、少しだけ答えさせていただきたいというふうに思います。

 品目横断制度については、私も前四年間農水委におりましたので、何度か質問をさせていただいたんですが、あそこの越えなければいけない最大の課題というのは、やはり固定してしまったというところで、ことし頑張った分がなかなか出てこないというところに、あの政策の大きな課題があったというふうに思うんですね。そこのところは、私どもは、頑張った分がしっかり出るようにという仕組みに変えさせていただいた。

 ただ、先生が御指摘いただいたように、水田の場合には単品でありますし、全国の収量の差がそれほど大きいわけではありません。しかし、これから取り組む畑などにおいては、品目も多い、それから収量の差もあるというようなこともありますので、ちなみに私は畑作経営でございますので、自分のことのようにしっかりと頑張っていきたいと思っております。

武部委員 自給率の問題などたくさん答弁漏れはありますけれども、まあ、いいでしょう。私も大臣のときには、もうちょっとお手やわらかにやってくれればいいのになと思って憎んだこともありますから。自分の経験から、この辺で我慢しておきましょう。問題提起だけは議事録にきちっと載りますからね、私の言ったことは。それはきちっとやってくださいよ。

 脱官僚、政治主導というのは、内閣主導じゃないんですよ。これは、本来、国会主導なんですよ。だから、我々は、できるだけ議論をした上で、どうしたら合意できるかという姿勢で政策を議論していかないと。場合によっては、修正もどんどん積極果敢に我々はやってもいいと思っているし、また、政府側も、いい提案についてはそれを受けて立つようなそういう考えでなきゃ、困るのは、農村であったり、農家であったり、国民なんですね。時間がなくなるから、ちょっとあれしますけれども。だから、マニフェストなんか、間違っていると思ったら、率直に謝って、直すことです。

 それから、米価下落の懸念。これは、私はいろいろな論拠がありますけれども、これは下がりますよ。大体、消費者の可処分所得の低下、デフレ経済の進行。米価が下落することはあっても上昇するとは考えにくい。そうした状況のもとで戸別所得補償制度の導入であるということに十分留意しなきゃならぬと思いますよ。これは答弁要りません。

 それから次に、新たな基本計画では、多様な農業者による農業経営の推進を掲げておりますけれども、これはどういうことを想定しているんでしょうか。まず、これまでの農業経営の法人化の取り組み、法人経営の増加の状況をどのように評価しているのか。新たな基本計画における構造政策、法人経営の政策的位置づけが低下しているように私は懸念しております。どう答えるのか。

 もう一点、作業受託組織の育成、確保。これについては、現地でTMRとか、もうどんどん拡大しているんですよ。しかし、ヘルパーの予算もがっぽり削っちゃったでしょう。だから、言っていることとやることが全く違うんですよ。ばらばらじゃないですか。

 それからもう一つ、株式会社参入についてはどう思いますか。食品産業事業者の農業参入を推進する、こう書いていますね。ああ、赤松農政は株式会社をどんどん農村に入れようとしているのかなと。私は、あえて、それは悪いことだとばかりは言いませんが、現場では心配しております。

 それから、これはきちっと答えてください。兼業農家、小規模農家を温存しながらどのようにして経営拡大や効率化を図るのか。これはそう簡単なものじゃないですよ。

 まず、ここまで答えてください。

赤松国務大臣 基本的なところを私から、大先輩であります武部元農水大臣にお答えさせていただきたいと思っています。

 二十三年度、本当に本格実施はできるのかというお話でございました。これについては必ずやらせていただきます。ただし、どの品目を加えるのか等については、これはモデル事業の実施状況を見てということを言っているわけですから、そういう状況を見ながら、二十三年度本格実施はどういう品目で、どういう形でというようなことは改めて決めさせていただきますが、これは、マニフェストに私どもが掲げて、工程表までつけて、国民との約束でありますから。

 そしてまた、おととい、読売新聞だったと思いますが、民主党の主要政策のアンケートをやっていましたら、一番評判いいのは戸別所得補償制度ですから。五〇%以上超えて、批判票が一番あれで、とにかく、それだけ国民がこの政権に最も期待をしている政策は戸別所得補償制度ですから、しっかりこれはやってまいります。

 それからあと、米の問題、米価が下がるか下がらないか、もう何百回とは言いませんが何十回と質問されてまいりましたけれども、私が申し上げているのは、下がる下がるとおっしゃるなら、その根拠を示してくださいと。今までの、どんどんどんどん、これだけ市中に米があったって、ことし一月の数字は数%しか、そういう状況でも数%ですよ。ことし、二十二年度からしっかり生産調整をやるんですから、数値目標に従った数でやるんですから、これはしっかり保たれますし、それから、先ほど申し上げたように、回転備蓄から棚上げ備蓄へというようなことも加わっていきます。

 それからまた、一部の卸業者等が変な動きをしようなんということも聞いておりますので、もしそういうことがあれば、公正取引委員会等とも相談をして、きちっとその辺についてもやるべきことはやっていくということもお伝えをしておきますので、そういう変な動きが出ないように、本来のこの制度の趣旨をきちっと守っていただくように厳しく指導をしてまいりたい、このように思います。

佐々木大臣政務官 私の方から幾つかお答えをさせていただきたいと思います。

 多様な農業経営者ということで、兼業も含めてどういう人が担っていくのかということでありますが、我々は、できるだけ多様な皆さん方に参加をしていただきたいというふうに思っておりますが、決して集落や法人を否定しているわけではありません。幾ら多様といっても、効率的な農業経営をやっていただかなければならないのはそのとおりであります。

 さらにまた、作業の受委託についても、我々、特にコントラクター、ヘルパーについては、今回の畜産物関連予算でもしっかり措置をさせていただいておりますし、それから基本計画の中でも、そうしたものについては組織化の取り組みを進めていきたいというふうに思っているところでございます。

 あと、農業への参入でありますが、これは、私も農地法のいろいろな論議をさせていただいたときに、余り緩め過ぎることが危険だということで、むしろセーブをさせていただいた。我々民主党の提案を含めて御検討いただいたということでありますので、むしろそこのところはしっかりとやっていけるというふうに思ってございます。

 以上でございます。

武部委員 答弁漏れが結構ありますけれども、先も急がなくちゃいけないから、次の機会にしましょう。

 また、大臣の答弁などは、幾らでも我々は根拠を明らかにできますが、これは同僚議員の次の質問にゆだねたいと思います。

 それから、佐々木さん、北海道は政府から、食料供給基地として頑張ってもらいたいということで、これまでも、土地改良を初めかなりの政府の支援、あるいは国民的なバックアップもいただいてきているわけであります。だけれども、自給率と数量目標についての展望が基本計画では極めて小さいですよね。私は、米も、あるいは肉も他の農産物も、日本の農産物というものは安全でおいしい、生産過程もみんな目をみはるような環境のもとで努力しているということで、これからどんどんどんどん国際化、国際市場に打って出るべきじゃないか、このように思うんですね。

 水産の分野では、ホタテもサケも何で今助かっているか。ホタテなんか、この間の燃油が上がったときに、また世界経済が落ち込んで、中国への輸出がストップして大変だったんですよ、在庫がたまって。その在庫処理に相当な予算を入れました。ようやく在庫がなくなったぐらいです。かつて、ホタテを輸出する、あるいはサケを輸出する、そんなことは考えられなかったですよ。

 だけれども、これから、肉も米もどんどん輸出したらいいんじゃないか。残念ながら、我が国は、来年から毎年百万人ずつ人口が減っていくんですよ。それだけマーケットが小さくなっていくんですよ。高齢化していきますからなおさらのことです。私は、国際市場に打って出るチャンスだ、千載一遇のチャンスだ、こう思っておりまして、そういう意味では、主業農家の多い北海道あたりはチャンスなんですよ。

 だから、ここで、数量目標について、バレイショもてん菜もみんな落としているでしょう。特にバレイショなんかは、私はある方に聞いてびっくりしたんですけれども、ヨーロッパと比べると三十年、品種改良がおくれているというんですね。それはなぜかというと、日本の場合、北海道の場合には、みんな、でん原中心だからですよ。でん粉をとるためなんですよ、あれは。主食、生食用の芋を生産しているんじゃない、でん粉を生産するためにバレイショを栽培しているというのがこれまでだったと思うんですね。

 ですから、これから、バレイショにしたって、またはてん菜にしてもそうですけれども、他の作物もそうですけれども、もっと積極的な指標に、数量目標にすべきだと思います。

 それから、もう時間がないから、最後に食育の問題、共生・対流、デュアルライフのことを触れておきたいと思うんです。

 都市と農山漁村の共生・対流という言葉がどこにもなくなっちゃったんです、基本計画に。先ほど言いましたように、農村というのは、都市の人々においしい水、きれいな空気を提供する大きな役割を担っているんですよ。これは交流とは違うんですよ。交流というのは、都市の人と田舎の人がどこかで交わるのを交流というんです。我々が掲げた共生・対流の理念というのは、おふろを沸かすと、冷たいものが温かくなったら上へ行くでしょう。養老さんが参勤交代というようなことを言っていますよ。三カ月農村生活、九カ月自分の主たる居住地で生活をする。この基本計画にも書いておりますが、新しいライフスタイルということを言っているんだけれども、我々は、もう十年前からそういうことを指摘しているんですね。

 それから、食育については、この食育基本法をつくるときには難儀しましたよ。民主党さんはこれに反対したんですよ。健全な食生活のあり方を国が規定したり、しかも基本法の形で国民に協力や責務を押しつけることは慎重に考えるべきと反対したんですよ。だけれども、今度の計画では、食育の文言があるんですね。これは、誤りを改むるにはばかるなかれという言葉がありますけれども、別に私は謝れとは言いませんが、基本計画に引き続き食育を推進するとしていることも含めて、大臣の考え、決意を聞かせてください。

 それから団体。もう時間がないから、もう一つ。

 私は、農協が持ち株会社を持ったらいい、派遣事業だとかいろいろなことをやったらいい、こう言っていたんです。農村に株式会社が入ることを促したんじゃないんです。まず、農協は農協法に縛られている。だから会社をつくって、人材派遣でも何でもできるように、そういう、農家をサポートする事業をやったらいいじゃないか。それから、農協には人材がいますよ。農村、その地域の実態を知っている人が多いので、私は、そういった職員、農協の職員だけじゃないですよ、農業経営支配人制度というものをつくったらいいということも提唱してきたわけであります。

 そんなこともちょっとつけ加えて、またの機会にがっちりやらせていただきたい、こう思っておりますので、私もきょうはもう、この間は興奮して、何だ、こんな基本計画、魂まで売ったのかと農林省の某幹部を怒りつけたことが、一週間前はそういうこともあったんですけれども、私は根が優しいものですから、きょうはこのぐらいにして、答弁を聞いて質問を終わります。

赤松国務大臣 いろいろ御指摘、ありがとうございました。

 この基本計画につきましては、大いに与野党の議員の先生方、そして私どもの審議会でも御議論をいただきました。私どもが確かに御指摘のとおりだなと思うところについては、できる限りこの中に入れさせてもいただきましたし、修正もさせていただきました。

 今お話のあった、最後の、農業団体、茂木さんだとか松本農業会議所専務さんとか、そういう方にも入っていただいて、大いにその方たちとも議論しながら、最終的には委員の皆さん全員から、すばらしいものができた、問題は、このすばらしい計画をいかに実行していくか、できるかどうかなんだということで、大変な評価もいただいたところでございます。

 そういう意味で、絵にかいたもちになっては何も意味がございませんので、例えば自給率五〇%というのは決して楽な数字ではありません。意欲的なこの数字を掲げた以上は、あらゆる努力をして、その実現のために全力を挙げて頑張る、この計画どおり、十年後にきちっと数字が示せるということになりますように頑張りたいと思っておりますので、農水大臣経験者であります武部先生にはまた御指導をよろしくお願いして、答弁とさせていただきます。

武部委員 この基本計画は私は反対です。とても賛成できるものではありません。これだけ申し上げて、終わります。ありがとうございました。

筒井委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時四十四分開議

筒井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。江藤拓君。

江藤委員 自由民主党の江藤でございます。

 前々回も質問をさせていただきましたけれども、ちょっと時間が足りませんで御答弁いただけなかった部分もありますので、そこのところをちょっとやらせていただいて、基本計画に沿って質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

 最初にお聞きしたいのは、冒頭から嫌なことを言いますけれども、鳩山政権、えらいな勢いで支持率が落ちていますね。これを受けまして、今度の事業仕分け、これは気合いを入れてやらないかぬということで、随分力が入っているように聞いております。前回、六千八百億、これしか仕分けができなかった。今度しくじったらえらいこっちゃということで、もしも、内容の精査を抜きにして、とにかく金額だけ積み上げていけばいいんだというような仕分けが行われたら、これは大変なことになるというのは、三役とも多分認識は共有できるものだと思っております。

 そこでお聞きしたいのは、最後にお聞きした農畜産業振興機構、ALIC、これについてでございます。

 繰り返し申しますけれども、今回やられました畜産、酪農対策も、牛関税が原資でございますね。大体、多いときに二千億、少なくても一千四百億から七百億、農林省の別ポケットに入るわけですから、これを手放すのは絶対将来きついですよ。来年度予算を考えると、埋蔵金はない、それから子育て支援でもまた金がかかる、そして国民年金の積み立て分もまた国庫から一般会計で負担しなきゃいけない。そういうことをもろもろ考えると、予算編成はもっと来年は厳しくなります。そういうことを考えると、このALICについては、何が何でも頑張ってもらわなきゃいけない。

 実際に、事業仕分け対象候補の畜産関係団体として、農畜産業振興機構から長期の無利子の融資を受けております社団法人配合飼料供給安定機構、それから社団法人畜産技術協会の名前が具体的に挙がっております。

 前回の仕分けのときには、私は副大臣にお願いをしました。早速行っていただきまして、お礼を申し上げました。しかし、今回は前回以上にこれは大勝負ですよ。今回は、副大臣だけじゃ足らぬというんじゃないですよ。ですけれども、ぜひ政務三役が打ちそろって仕分けの場に乗り込んでいただいて、このとらの子の牛関税を農林水産省としてがっちり握っておく。

 御覚悟をまず大臣にお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。

赤松国務大臣 今日まで独立行政法人農畜産業振興機構が果たしてきた役割というのは、委員御指摘のとおり、大変大きいものがあるというふうに思っております。また、この機構からそれぞれのいろいろなところに、研究の依頼だとか事業の依頼とかをまたいろいろやっておりまして、そこの下についている部分についても、独法の見直しという中で、いろいろ対象に挙がっているというのは御指摘のとおりでございます。

 そういう中で、私どもも今、部内で、きちっとした理論武装をするためにも、本当にそれらの事業が、それらの組織が必要なのかどうなのか、これを実はやらせていただいております。そうした上で、確かにここは少し見直した方がいいなというところがあれば、それは見直す場合もあるかもしれませんけれども、今申し上げたように、トータルで、今日まで果たしてきた役割、これからまた果たさなければならない役割というのはきちっとあるわけですから、そういう意味で、その実施する事業の重要性についてしっかりと説明をしてまいりたいというふうに思っております。

 三役そろってという気持ちはわかりますが、そういうときには大抵、副大臣が来いとか政務官が対応してこいとか、だれでも行ってもいいということにならないので、だれが行く場合にしろ、それぞれの、みんなを代表してという形で、農水省の代表としての意見というものをきちっと申し上げていきたいと思っております。

江藤委員 お話はわかりました。

 私が三人と申し上げたのは、もし今回うまくいかなかった場合は、その方を私は徹底的に追及しますよ、だったら三人一緒に行った方がいいんじゃないんですかと。山田副大臣だけひとり行かせたら、私は山田副大臣ばかり責めなきゃならないことになりますので、そういうのはやはり不公平かなと思いまして。

 平成十三年、覚えていらっしゃると思いますけれども、BSE、午前中の質疑でも出ました。このときにかかった金が三千億ですよね。一気に三千億どかんとぶち込んだ。あのときは、BSEで、もう日本の畜産、特に和牛文化はこれで終わりだと言われたんですよ。山田副大臣はよく覚えていらっしゃると思います。しかし、思い切って集中的に金を投資したから、あの危機を突破することができました。ですから、畜産の世界というのは何が起こるかわかりません。もちろん、三千億全部がALICの金じゃありませんが、大きく貢献したことは間違いありません。その前の年、九十二年ぶりに起こった口蹄疫のとき、あのときにも農畜産業振興機構のお金が大きく貢献しました。

 基金は悪だという感覚がどうもおありになるように聞きますけれども、そうではない。不測の事態が起こりかねないこの畜産の世界、私は、確保すべきものは確保すべきだということを重ねてお願いしておきたいと思います。

 では、基本計画に沿った形で御質問させていただきますが、まずは畜産対策についてお聞きをさせていただきます。

 今回の畜産対策、肉用牛繁殖経営支援事業、肉用牛肥育経営安定特別対策事業、養豚経営安定対策事業となっておりますね。それぞれのPR版を見せていただきました。そうしますと、事業実施期間が平成二十二年度から二十四年度までの三カ年ということになっていますね。これは、二十三年度実施だとかいろいろのお話がありましたけれども、少なくとも三カ年は、繁殖も肥育も、それから養豚対策も、この事業で対応していくという理解でよろしいんですか。これはまとめて後で御答弁を求めますので、続けさせていただきます。

 基本計画の素案、これも読ませていただきました。これが最終案と大きく変わっているので、びっくりしました。二回同じものを読んだという感覚じゃなかったですね。「平成二十三年度からは、平成二十二年度に実施するモデル対策の実施状況を踏まえて、戸別所得補償制度を本格実施に向けて検討する。」と素案の段階では明記をされていました。

 それが、最終的にでき上がった基本計画では、二十三ページ、持っていらっしゃる方は見ていただきたいんですが、「戸別所得補償制度の本格実施に当たっては、平成二十二年度のモデル対策の実施状況を踏まえて、まずは恒常的に販売価格が生産費を下回っている米、麦、大豆等の土地利用型作物を対象に制度設計を行うこととするが、具体的な対象品目については、生産費等のデータの充実を図りつつ、更に検討を進める。」というふうに変わってしまっておりますね。

 基本計画の二十三ページの2、ここを見ていただきたいんですが、ここには、「戸別所得補償制度の本格実施」、大見出しでこう書いてありますね。この後に十三行文章が続くわけでありますが、検討、検討、検討、検討と、検討だらけですよ。検討するしか書いてありません。2の表題だけ見れば、ああ、戸別所得補償法を本格的に実施するんだと多くの方が勘違いされるでしょう。しかし、この十三行をちゃんと読んだ人は、ただ検討すると言っているにすぎないということは、これは明々白々であります。

 こんな表題は、ちょっとだましじゃありませんか。私はまやかしだと思いますよ。もっと正直じゃなきゃいけません。所得補償制度の実施検討、これぐらいの表題が打ち出しとしてはせいぜいなんじゃないですか、内容を読めば。

 そしてまた、平成二十三年度という具体的な時間を切った記述がなくなってしまいました。これは大きなトーンダウンですよ。政策というものは、タイムスケジュールをつくって、そしていつまでにやりますということを明確にするから、責任がそこには生じるのであって、この二十三年度をなくしたというのは、全くこれは骨抜きになったと言わざるを得ないと私は思います。

 畜産、酪農についても、「畜産・酪農所得補償制度のあり方や導入時期を検討する。」というふうになってしまっております。しかし、マニフェストの工程表、午前中、マニフェストを局長が出されていましたけれども、農家の戸別所得補償については二十三年度から完全実施、完全実施ですよ、となっており、畜産、酪農を対象とする所得補償制度も、導入する、そう明記をされております。皆さん方はこれをもって選挙を戦ったんですからね、責任がありますよ。

 どうにも私には、民主党政権がこれから畜産、酪農対策、その政策の方向性が見てとれません。やはり私は、現実路線に戻って、午前中もマニフェストの変更を恐れることなかれという指摘もありましたけれども、現行の制度の充実強化こそが現実的なものである、その前提としてやはりALICの金を確保するということが大切だというふうに思います。

 所得補償制度の本格実施は、畜産、酪農を含めて、マニフェストで国民に約束したとおり行うんですか。午前中の質疑にありましたね。赤松大臣は、国民との約束だ、平成二十三年度から必ず実施する、武部先生にそう言われました。しかし、相手は副大臣ですけれども財務副大臣は、平成二十三年度予算編成時に検討したいと。政治家が検討したいとか善処したいというのは当てにはならぬのですよ、大体の場合において。ですから、大臣にもう一回お答えいただきたい。ちゃんと自信がおありになるんですか、この二十三年度実施について。

 そしてもう一つ、二十三ページの「2戸別所得補償制度の本格実施」という記載は、内容と表題が合っていませんので修正すべきだと私は思いますが、お考えをお聞きしたいと思います。

赤松国務大臣 まず、午前中も申し上げましたけれども、この政策は、私どもが昨年の衆議院選挙に向けて、工程表もつけて、マニフェストの中できちっと国民に約束をした案件でございます。しかも、半年たって、残念ですけれども、財源等の問題でマニフェストの中でも一部、ほとんどはやりましたけれども、一部できなかった、例えば暫定税率なんかの、そういう政策もありました。

 しかし、おとといの読売新聞ではありませんけれども、国民の評価は、今鳩山政権の中でそれぞれ、この政策はいい、この政策はちょっとどうかなみたいなのがずっと表で出ていましたけれども、一番賛成が多くて、一番反対の少ないというか差が少ないのは、実はこの戸別所得補償制度でございまして、そういう意味からも、おととい、総理が農業者の人たちを一部官邸に呼んでお話ししたときも、ぜひ来年度の本格実施の中で、断固、ソバを入れるか入れないかはともかくとしても、そういうことをやりたい、総理自身もそういう御決意を申されたというふうに仄聞をいたしております。

 その意味で、御心配かもしれませんけれども、それは農林水産大臣を信じて、私がやると言っているんですから、ぜひそういう方向で。そのためにはしかし、まずモデル事業を成功させないと、モデル事業ががたがたになっていて、さあ本格実施だといっても、これは正直言って迫力がありません。そんな意味で、ぜひ江藤委員にも、野党という立場ではございますが、それはもう与野党関係ありません、一緒に農業者のために、あるいは畜産業者のために、御支援をいただきたいと思います。

江藤委員 最初に質問に立たせていただいたときに、大臣、それは申し上げました。私は、自由民主党であれ民主党であれ、どっちでも関係ないんですよ。この委員会は、みんなが英知を結集して、農林水産業に携わる人たちの生活の向上、そういったものにつながるものであれば、どんな協力でも惜しみませんと申し上げたじゃないですか。その気持ちは私は失っておりません。

 ただ、例えば宮崎県の場合を申し上げましょうか。宮崎県の場合は、総農業生産が約三千億です。そのうち、畜産が五九%、そして園芸が二九%なんですよ。米は六%しかないんです。こういうところで、今のお示しになった戸別所得補償が評価されていると思いますか。ぼろぼろですよ、ぼろぼろ。はっきり言いますけれども。ひどいものですよ。一度宮崎を飛び込みで、役所の案内じゃなくて一軒一軒歩いてみられるといい。そうしたら、本場の、本当の現場の空気というのはよくわかると思う。

 地域差はありますよ。高く評価しているところも確かにあるでしょう。だから、全国一律で農業を考えようという考え方のその根本が間違っているということを申し上げます。今度の参議院選挙のマニフェスト、見せていただきますよ。この間の衆議院選挙のマニフェスト、今度の基本計画、そしてまた国民をだますようなマニフェストを書いたら、そのときは恥ずかしいと思ってください。

 これ、一年生の議員の先生方、御存じですか。見たことないでしょう。三年前の参議院選挙に使ったビラですよ。野菜、果樹は対象としないと大臣は何度も御答弁されました。正直な方ですよ。しかし、ちっちゃいから見えませんけれども、これは白菜畑なんです。白菜畑なんですよ。これをばらまいたんですよ。それで三年前の参議院選挙は勝っているわけですから。こういう恥ずかしいことは、もう与党なんですから、絶対しないでくださいね。このことはくぎを刺させていただきます。

 基本計画の二十二ページ、戸別所得補償制度導入にあわせて、「作目別に講じられてきた生産関係施策を再整理し、政策目的と政策手段の対応関係を明確にするとともに、多様な用途・需要に対応した生産拡大の取組を後押しする政策への転換を図る。」何回も読みましたが、わかったような、わからないようななんですね。

 そうであれば、今まで行ってきましたいわゆるすべての補助事業がありますね、こういったものは、やはり戸別所得補償を基本として、補助事業は全廃するという理解でよろしいんでしょうか。御答弁をお願いします。

山田副大臣 補助事業を全廃するというわけじゃありませんで、いわゆる今まで果たしてきたリース事業とかいろいろな補助事業の役割は我々も高く評価しております。

 ただ、単なる補助じゃなく、できれば補助から融資へと。農業者にとってみれば、なかなか担保になるものもない、なかなか融資ができない。できれば無担保無保証、保証人なしの融資で自立できるような経営体に移行することが方向的に一番いいのではないか、そういう趣旨を込めた思いで我々としては書かせていただいていると。

江藤委員 話はわからぬではありませんよ、副大臣。しかし、無担保無保証といったって、いずれは返さにゃいかぬ金なんです。借金は借金なんですよ。農業経営を圧迫する要因であることは間違いないんです。

 例えば私の宮崎県は、先ほど申し上げましたように、施設園芸が盛んです。立派なハウスがあります。しかし、台風が来ますからね。風速四十メートルに耐えられるようなハウスじゃなきゃだめなんですよ。耐候性ハウスというものです。これは国が今二分の一を補助しています。その中で、例えば加温機、温度調整をする。それから、暖かくなったときには天井がぱかぱかとあく自動開閉装置、そういった機械も対象にして補助しているんですよ。これを、もし全額無担保無保証で融資してやるから自分の借金でつくれといったって、できませんよ。そんなことは無理です。

 もう御答弁はいいですよ、先は長いんですから。しかし、ここのところで私の意見を聞きおいてください。そういった現場がありますから。

 畜産の畜舎だってそうですよ。これも、畜舎の増設、新規就農なんかでも大変手厚い補助をやってきました、自公政権時代には。これがなくなったら、畜産の世界に新規就農なんて無理ですよ。そのことを、きょうは御答弁は求めません。済みませんけれども、私、実は四十枚ぐらいあるので、次に移らせていただきたいと思います。一般質疑で、済みません、また肉の話はしますから。

 次に、肉用牛繁殖経営支援事業について。

 私、前回も異議を唱えさせていただきました。どうして三十八万円で、全国平均との差額の四分の三しか出ないのか、これはおかしいじゃないかということを言わせていただきました。そして、宮崎でも六割近い牛が三十五万以下でしか売れていないんだよという御報告もさせていただきました。

 ちなみに、ことしの二月行われました全国主要家畜市場での平均価格、これはもう三十八万を超えています、三十八万五千四百五円です。これは、決して子牛の値段が全体的に上がったというんじゃないんですよ。F1とかホルスの値段が上がっています。なぜかというと、F1もホルスも国産牛ですから、安心、安全がありますから。だけれども、和牛ではないわけですよ。でも消費者は、やはり景気が悪いですから、国産牛ならいいやと、そういった和牛から国産牛へのシフトが起こって、足りなくなっている。それで、副大臣御存じでしょうけれども、いわゆる和牛のすそ物と言われる、本来なら十万円しかしないようなものが十三万円で売れたり、十五万円のものが十八万円で売れたり、それで全体の平均価格が上がったにすぎないのであります。

 決して子牛全体の景気がよくなったわけではありません。なぜかというと、枝肉の値段が上がっていないからです。これはもう釈迦に説法だったかもしれません。ですから、三十八万五千四百五円が今度もしもこの全国平均価格となった場合は、今までの制度だったら国から補てん金なりをいただいていた農家は一文きりももらえませんよ、三十八万を超えているわけですから。

 しかし実際、私の宮崎、児湯畜連でいうと、この間、競り市がありましたけれども、そこでは、三十五万円以下でしか売れなかった牛が、前回は六割でした。若干減りました、でもやはり五割の牛は三十五万円そこそこです、それを切っています。

 ですから、確かにいい牛ばかり出せる農家はいいんですよ。ただ、種雄牛が何であるか。母牛が、そして何の種をつけたか。宮崎なんかだったら、平茂が入っていて、忠富士の種をつければ、四十万を軽く超えますよ。だけれども、これは農家の自由にならない部分があります。母牛は自由になっても、種はなかなか自由にはなりません、御存じのとおり。

 そうなると、いい牛ばかり出すことはまず不可能であるということ。そして、いい牛を出荷できなかった、安い牛しか出荷できなかった、そして新規就農してまだ技術が伴っていない人、それに加えて、お年寄りになって楽しみ半分、でも頑張ろうという人たちは、私の地元では、この機会に離農しようと牛を手放す動きがもう既に始まっていますよ、今度の制度改正を受けて。民主党さんはこれまで、小さな農家を切り捨てるのが自民党農政だといって随分批判をされてきました。だけれども、これこそ小農切り捨てじゃないですか。私はそう思いますよ。

 基本計画の四ページ、これを読んでみますと、「兼業農家や小規模経営農家を含む意欲あるすべての農業者が将来にわたって農業を継続し、経営発展に取り組むことができる環境を整備する」というふうに記述されています。この趣旨にはのっとっていません、今度の制度改正は。絶対にのっとっていませんよ。ですから、この考え方は正しいので、この基本計画に基づいて、畜産、酪農対策はまだつくったばかりですけれども、制度改正をすることが、政策と基本計画がマッチングするという意味で私はいいと思うんですが、副大臣の御答弁を求めます。

山田副大臣 今、子牛価格が若干上がってきているのは、江藤さんの認識と私は違うんですけれども、優良雌牛の繁殖導入事業をそのまま残していますよね。これで結構今相場はもっているんじゃないか、そう思っております。

 そんな中で、これまでは、悪い牛と言っては申しわけないですけれども、いわゆる質の悪いというか粗放な飼い方をした、そういったものに対して手厚く子牛に対する安定基金がなされていたので、いわばそういう畜産農家ほど恩恵にあずかっていた。いい牛をいい価格で売った農家には何の恩恵もなかった。

 しかし、今度の制度は、まさに全国平均との差額について補てんしていきますから、いい牛をつくった農家、努力すれば努力するほどいわゆる補てん金も出てくるという、言ってみれば農家の自助的な努力を評価するというやり方。かつ、従来のようなやり方ですと、十二歳未満の雌牛に対して優良な種牛をつけなきゃいけないとか、自家保留牛じゃなく家畜市場で売ったものじゃないといけないとか、いろいろな仕組みがあったものを全部取り外してシンプルにして、しかも繁殖牛、いわば努力すれば、努力する農家に対して、きちんと手当てが受けられる。いいかげんな飼い方をした、そういう農家にはそれだけのことしかないというふうに、きちんとしたつもりですので、いい制度になったと私は思っております。

江藤委員 だから小農切り捨てだと言っているんです。

 和牛生産の世界は技術者の世界です。私の友達で興梠哲法親子なんという方がいます。これはすごい牛をつくります。百万の子牛をつくりますよ。その人たちに聞きました、一万円とか一万五千円欲しいかと。いや、そんな金をもらうんだったら、やはり苦しんでいる仲間のところに回してやってくれ、これが現場の声なんですよ。

 努力していないわけじゃないんですよ、一生懸命やっても、いい牛を出せない場合もあるんですよ。死産することもあるでしょう、生まれて死んじゃうこともあるじゃないですか。生まれて育ててみたけれども、えさのはみが悪くてほとんど体重がつかないこともあるじゃないですか。ある意味、和牛生産の世界というのは不確定要素が多過ぎるんですよ。努力していない者にばかり金をやっていたと言いますけれども、そういう人は努力をしても報われなかった人だという認識を持っていただくべきだと私は思いますよ。少し副大臣の御認識は違うと思います。

 そして、優良雌牛への更新事業というのは、私たちの政権時代もずっとやってきましたので、とても大事なことです。ですから、この効果が出てきたことも事実です。でも、先ほど申し上げましたように、前回、六割が三十五万以下だったものが、たった一割上がっただけですから。半分は三十五万以下ですから。この効果が出るのは、この政策は、いい政策、引き継いでいただいてありがとうございます、これはいいと思いますが、しかし、私と副大臣の認識はかなり違う。でも、本当はわかっていらっしゃる。わかっていらっしゃるけれども、やりかえると言えないので、そうおっしゃっているのかなというふうに思いますね。

 基本計画の随所に見られることですけれども、基本計画の記述と政策、それから予算のつけ方が全く矛盾していますね。整合性がありません。すべての農業者どころか、私は、体力のないところからどんどんどんどん離農していって、畜産経営の継続が逆に危うくなる農家が出てくることは容易に想像されるということを重ねて指摘させていただきます。

 次に、肉用牛肥育経営安定特別対策事業についてやらせていただきます。

 マル緊と補完マル緊を一つにしていただいた、これについてはいいことだと前回も申し上げました。しかし、本委員会でみんなで決議をいたしました。この一本化に当たっては農家負担が増加しないように配慮しなきゃならない、ちょっと文言は違うかもしれませんが、こういう内容のことを決議いたしました。しかし、それが発生していることは、本委員会の決議に反することでありますので、これはやめていただきたい。

 また、算定基準を全国一律にしました。これは、基本計画の五ページと二十五ページ、ここに何と書いてあるか。「適地適作を基本として、地域の実情を踏まえた政策体系を構築することが重要である。」と。先ほど申し上げましたように、宮崎は、畜産、酪農、施設園芸、適地適作なんですよ。技術も育っております。こういう考え方と全く矛盾していますよ。

 これまでのマル緊制度は、宮崎、鹿児島初め十五の県は地域算定というのが認められていました。これについては農林水産省のお役人の中にも随分文句を言う人もいましたけれども、私は、これこそがまさに地域の実情を踏まえたものだったと思います。これが全国一律ということになってしまいますと、鹿児島の実情、宮崎の実情、それを除いたあと十三県の実情、そういったものはちゃんと反映されないということになってしまうんだろう。これは問題だと思います。何かというと全国一律ですから、これがまずいんですよ。

 大臣、「適地適作を基本として、地域の実情を踏まえた政策体系を構築することが重要である。」と書いてあるわけですから、この基本計画理念を大切にされて、新マル緊制度に、地域算定を希望する県については柔軟に対応すべきであると私は思います。

 新たな負担、先ほど申し上げたマル緊と補完マル緊、この部分についての負担増は求めるべきではありません。そして、我々の政権時代は単年度事業でしたけれども、枝肉、A4、A5、特にA5の、4、5あたりは非常に安いですよね、副大臣。これは問題なんですよ。ということであれば、一頭当たり一万七千円出していたステップアップ事業は、私は今も必要だと思いますよ。このことについて御答弁をお願いします。

山田副大臣 適地適作というか、地域の特性に応じたということは基本計画にも書いてありますし、そのとおりだと思います。

 ただ、今回、補完マル緊とマル緊を一本にして、しかも、全国一律にシンプルな形にいたしました。それについて、宮崎は宮崎の事情があって地域の特別な交付がなされていたんだということですが、それはそれで、宮崎県も、県自体もそういった交付金を負担してくれておったようですから、全国一律の制度にはしておりますが、宮崎県が独自に繁殖農家なり肥育農家なりに特別のそういう助成をすることは、当然やっていただいて結構ですから……(江藤委員「県がですか」と呼ぶ)宮崎県がですね。それは大いにやっていただければと、それはそう思っております。

 一方、一万七千円のステップアップ事業、これはまさに、飼料が高騰してどうしようもないときがありましたね、二年ぐらい前。そのときの緊急対策としてやった事業ですよね。しかし、今回、まさに補完マル緊とこれまでのマル緊を一本にして、今度、資材が高騰した場合も八割まで補てんがなされるわけですから、ステップアップの必要はもうなくなったものだと。

 そういう意味で、今回は、シンプルにして、かつ、農家に手厚く。負担がその分ふえるのじゃないかと言いますが、実際に、一出したら四戻ってくるわけですから、農家にとっては大きくプラスになるし、かつ、出した金額が、そのまま高どまりすればそれは自分の預金として、精算されて戻ってくるわけですから、そういう意味でも、今回の制度は実によくできていると私どもは思っていまして、ぜひ御理解いただければと思います。

江藤委員 私が言っていることは私の個人的な意見じゃないんですよ。そうじゃないんです。私が自分のこの足で繁殖農家を一軒一軒歩いて、そして意見を聞いてきたことなんです。私は、それほど頭がよくないですよ。彼らの意見を、私は代議士ですから、この場で代弁させていただいているにすぎません。ですから、私に言わせていただくと、副大臣の御認識が、少なくとも宮崎、鹿児島でいわゆる繁殖なり肥育経営をしている農家の認識とは、ずれているということは、これは何と言われても、やはりこの一線だけは譲れないですね。

 それでは、余りここばかりやっていてもあれであります。もう半分過ぎて、まだ半分にも到達しておりませんので。

 大臣は、平成二十一年度の補正予算のうち、四千七百六十三億円を返納したこと、前回私は聞きました。コンクリートから人へ、宮崎では非常に評判の悪い言葉でございますけれども、人に対する直接的な補助に向けていくということは間違いじゃなかったと、それはわからないでもない。しかし、農地の出し手が新たに六年以上貸した場合に、十アール当たり最高一万五千円を最長五年間交付するというのが、我々がつくりました農地集積加速化事業でした。この予算、三千億です。これをばっさり切られたわけですけれども、これは人、担い手、そして農地に着目した事業そのものだと、私は今でも思っています。

 それで、基本計画の六ページ、これを見てみますと、「担い手に対する農地のまとまった利用集積が進まないなど、農地の有効利用は進んでいない状況にある。」そうした指摘をされておられますね。そして二十八ページに、「農地保有合理化事業、農用地利用改善事業や農業生産基盤整備の活用等による農地集積に加え、市町村、市町村公社、農業協同組合等が、農業委員会と連携し、農地の所有者の委任を受けて、その者を代理して農地の貸付けを行うこと等を内容とする農地利用集積円滑化事業の取組を推進する。」というふうに明記してございます。

 大臣は、不要不急なもの、返納したと前回おっしゃいましたけれども、農地集積加速化事業は、平成二十二年度の予算で農地利用集積事業として実質復活したというふうに思いますが、御見解をお願いします。

赤松国務大臣 御指摘のとおりで、農林水産省は、自民党、公明党の自公政権時代につくりました第一次補正予算の四千数百億、どの省よりも最も多く切り込みました。四七%ぐらいだったと思いますが、削減をいたしました。

 一つには、私どもは、農地集積というのは基本的に、別に必要じゃないとは思っておりません。農業にとって土地と水は欠かすことができない重要なファクターですし、そういう意味でいえば、それは重要ですけれども、ただ、今御指摘のあった三千億円というのは、いわゆる土地を出した人だけにお金を出す、それはおかしいのではないかと。むしろ、仲介役をやるような人たちに出すことが、促進できる。しかも、五年間とはいえ三千億円。では、今までの実績はどうなのかと見てみたら、一番集積できた年で一万ヘクタールしかないわけですね。

 ですから、そういう意味でいえば、集積したいという気持ちはわからないわけではありませんが、何十倍をも、過大に大きな予算を組むことが果たしてこの財政の厳しいときにいかがなものかということで、とりあえず三千億円は全部カットをして、そして今までの実績に応じた、最大で今までは一万ヘクタールですから、それに少しプラスをしたぐらいに、掛ける何万円というような形で、予算を、これも本当は八十億円ということで概算要求したんですけれども、残念ながら切られて、たしか四十億円になったんだというふうに思っておりますが、そういう事情です。

江藤委員 ですから、前回も言いましたけれども、多く切り込んだというのは小沢さんに対する忠誠心、それだけのことであって、これは農林水産に対する貢献ではありませんよ、言っておきますけれども。

 それから、一万ヘクタールちょぼちょぼだったと言いますけれども、だから私たちは三千億という金をばんと芽出しで出して、インセンティブを与えようとしたわけですよ。そして、一万ヘクタールちょぼちょぼだった、認めます、私たちは十分承知をしております。このことは反省もしなきゃいけないと思っている。だけれども、それにちょこっと乗っけただけというふうに大臣は正直に御答弁されましたけれども、それじゃ、自民党の今までやってきたことを、ちょっと何か上におみそを乗っけて続けますというような話じゃないですか。えらいスケールの小さい話になってしまっているというのが、地元で、私の友達でも大平君とかいっぱいいるんですよ、もっと農地を集積して頑張ろうというやつらが。彼らは、えっ、四十億円になっちゃったの、宮崎県には何ぼ回ってくるのとすごい心配していますよ。これは失望感につながっているということを指摘したいと思います。

 それで、これをやると届きませんので、これは飛ばします。

 それでは、戸別所得補償の対象作物について、前回に引き続き、もう一回お尋ねをいたします。

 基本計画二十三ページ、戸別所得補償の本格実施のところに、「野菜や果樹については、恒常的に販売価格が生産費を下回っている状況にはないと考えられるため、戸別所得補償制度の仕組みがそのまま適用されることにはならないが、」と、長いから全部読みませんが、記述されています。

 前回も指摘しましたけれども、鳩山総理は昨年十月三十日、代表質問に対する答弁で、その地域における基幹的な作物、野菜、果樹、酪農を当然のことながら戸別所得補償の中に組み込んでいくというふうにおっしゃいました。

 それで、リアル鳩カフェ、おしゃれですね、リアル鳩カフェでまた、地域の主要作物に対して米と同様に導入すべきと考えている、これは必ずやる、返す刀で、政治家をやめたら農業をやりたいと。これについては、この間、地元のJA青年部の連中と飲んだのですが、農業をなめているのか、そういう批判が出ていますよ。これはどうでもいいことかもしれませんけれども。

 農業をやるなとは言いません。鳩山さんが本気で土にまみれる覚悟があるならやってみたらいい。だけれども、本当に自分の人生を農業にかけようと思っている人たちにとっては、金持ちが何をぬかしておるかと、怒りの声を伝えてくれと私は言われましたので、伝えさせていただきます。

 しかし、赤松大臣は、昨年十一月の私の質問でも、あるいは前回、そのまた前の質問でも、この認識は変わらない、いわゆる構造的にそういうふうにはなっていないと理解しているので変わりませんと重ねて御答弁をされました。この発言に対しては、私の地元でまた青年の話ですけれども、すべての農家、すべての販売農家と言っていたじゃん、衆議院選挙の前はすべての販売農家と。だから拓ちゃんに入れぬで、ここにいるんですけれども、あの人に入れたとよという人もいたんですよ。ごめんねと謝られました。大きな失望と反発が農家の間に起こっているということを自覚してください。

 内閣の最高責任者は内閣総理大臣鳩山さん、農政の最高責任者は大臣です、大臣。信頼してくれと言われました。人間関係は信頼から始まりますから、信頼しますよ。でも、信頼を裏切ったときは私は怖いですよ。信頼しろと言ったからには、ちゃんとそれなりの結果を出してください。

 そして、農家の皆さん方も、鳩山さんはああ言う、大臣はこう言う、加えてきょうの野田さんのものも、そういう答弁をされる。こういうのを聞いて、ますます全く先がわからなくなった、わけがわからぬというふうに言う意見が多いんですよ。

 このような現場の声を聞かれて、御感想、そしてこれからどのように変えていかれるか、大臣、御答弁をお願いします。

赤松国務大臣 誤解のないように申し上げますが、私どもはマニフェストの中で、モデル事業はこういう形、あるいは二十三年度本格実施の中ではこういう分野まで含めて、例えば水産、畜産とか、考えていきたいというようなことを示しておりました。そして、別に果樹、野菜、それからお茶も入れてもいいかもしれませんが、これは大変ありがたいことだと思うんですが、この戸別所得補償制度が魅力的であるがゆえに、ぜひこれに入りたい、ぜひ果樹も野菜もお茶も入れてくれという声が実は多いのも事実でございます。

 ただ、私は、販売費と生産費を見たときに、構造的に、あるいは恒常的に果樹や野菜が必ずいつも逆転をしているということを思っていないというのは以前も発言しましたし、今もそう思っております。

 ただ、今のこの現状を見ると、例えばミカンについてもリンゴについても……(江藤委員「温州ミカンもですか」と呼ぶ)そうです。私は和歌山も行ってまいりましたし、愛媛の御意見も聞いていますし、青森のリンゴも見てきましたし、長崎もそうですね。いろいろ行きましたけれども、そういうミカンの産地あるいはリンゴの産地はどこも、果樹に対しては今大変経営が厳しいということも事実です。

 そして、だからといって戸別所得補償制度の対象にはならないかもしれないけれども、旧来やってきた支援策で十分なのかということについては、これはやはり考えてみる必要があるのではないかということで、今までの制度が悪いという意味ではなくて、それで十分かどうか、本当にそれで生産者、農業者の気持ちにこたえるものになっているのかどうか、そういう見直しはしっかりしていきたいと思いますし、また支援策もやってまいりたい、この気持ちは変わりません。

江藤委員 大臣、正直におっしゃいました。結局のところは今までの制度を見直すんですね、戸別所得補償という制度ではなくて。それは、全部補償してくれるといったら、入れてくれ、入れてくれと言いますよ。それは言いますよ。当たり前の話です、そんなことは。

 そして、それだけの財源があるかということですよ。さっきも言いました。来年は子育て支援もある、埋蔵金もない、それから社会保障費の一兆円の自然増もある、国民年金の負担分も一般会計からしなきゃならない。その他もろもろ考えると、非常に厳しい予算編成になると思いますよ、来年度予算は。その中で、ことしだけでも四・二%減っちゃいましたけれども、その分を取り返すだけの予算をがっぽり、とてもじゃないけれども三兆円じゃ足りませんよ、多分。それだけの覚悟を持って臨まれるということだと私は理解をいたしました。

 それでは、しつこいようですけれども、引き続き聞かせていただきます。

 逆転しているものを対象にするというのが基本的な考え方だ、変わらないと、またおっしゃいました。しかし、実際問題、そもそも野菜とか果樹の生産費統計は、平成六年以降、一切行っておりません。それからお茶も、平成十八年度以降行っておりません。そしてお茶の場合は、これは長期保存がきくんですよ。倉庫でちゃんと低温で保管すれば、例えば古米とか古々米とか、そういう分類にならないんです。だから、どれぐらいのお茶の在庫が市場に滞留しているか、これはわからないんですよ。これがお茶の世界のいわゆる暗部であり、大問題なんです。そういうことを御存じだったですか。別に答弁は求めませんけれども。

 大臣は、基本計画に、制度の円滑な実施に向け必要なデータを把握するための所要の統計を整備すると書いてあるじゃないかと言われるんじゃないかなと答弁を予想しているわけでありますけれども、それは今後データをとっていくわけでしょう。どうして今この時点でそう断言できるんですか、生産費と販売費が逆転していないと。

 私の地元では、それはミカン農家でもいっぱいいますよ。例えば、ハウスミカンなどというのは燃料をA重油をたきますから、そうすると非常に厳しいです。生産コスト割れなんてばりばりしていますよ、本当に。温州ミカンがもうかっているというのは、もうちょっとよく調べられた方がいいと思いますよ。それはちょっと違うと思います。

 それで、大臣、統計もない、それなのにここまではっきり何度も何度も断言をされるということは、これは勘ですか、それとも肌感覚か何かですか。

赤松国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 私が申し上げているのは、先ほども言いましたが、構造的に、恒常的に、常に生産費が販売価格を上回っているという品目ではないでしょうと。もともと戸別所得補償制度というのは、それが逆転している、そういうものに対してやっていこうというのが基本的な考え方ですから、ですから、そうだということを申し上げたということでございます。

江藤委員 ですから、先ほど申し上げたじゃないですか。野菜とかほかのところは、統計部が行っている農業経営統計調査の報告の中で、農業経営費には家族労働費は含まれていないんですよ。ただ働きというもとに、割れていないという話なんです。違いますか。ですから、この御認識は違うと思います。

 あと五分もないので、これはまた次にやらせていただきますが、次の質問に移らせていただきます。

 米なんかは、以前に比べると非常に、五分の一ぐらいの労力でやれるというふうになってきました。決して楽だと言っているんじゃないですよ。一方、露地野菜とか果樹、施設園芸、それから畜産、酪農、これは政務官もよく御存じですけれども、重労働ですね。朝早くて夜遅い。生き物相手だったら休む暇もない。過酷な労働条件だと思います。ここで家族労働費をきちっととったらどうなるのかということを私はぜひ政権には勉強していただきたい、検証していただきたい。

 施設園芸の話をしましたが、私の田舎だと、夏にはビニールハウスの中を殺菌しなきゃいけません。そうすると、ハウスは、夏ですよ、ビニールを張ったままです。そこでトラクターに乗って土を起こして、施肥して、pH調整してやるんですよ。物すごい温度ですよ。私は十分も耐えられませんもの。

 そういうところで頑張っている人たちのいわゆる家族労働費は、過去にさかのぼっても統計上とられていないんですよ。ですから、こういうものを、果樹、野菜ごとに家族労働費を計算したら、割れている品目、割れている分野は必ずありますよ。必ずあります。ですから、もっときめ細やかな調査を行ってください、頼みますから。

 要は、焦り過ぎだと私は思います。そんなに急がなくてもいいじゃないですか。今回のモデル事業、それはそれでいいですよ。でも、二十三年に無理やりやって失敗したら元も子もないですからね。

 次を申し上げます。

 お茶の話も十分じゃなかったのでもうちょっとしますけれども、お茶は、霜が降ると防霜ファンというのを回します、くるくる、みんな見たことがあると思いますけれども。これは設備投資にかなり金がかかりますよ。それから、お茶の摘み取り機、摘採機というんですけれども、これは乗用型です。一人でオペレーションできる。でも一台八百万ぐらいするんですよ。だけれども、中山間地域に行くとこの大型機械は使えません。そこでは可搬式というものを使います。これは三人でないとオペレーションできないんです、中山間地域のものはね。そうなると、平場と中山間地域のお茶農家でも全く事情が違うんです。それから霜を防ぐためのスプリンクラーも必要ですしね。

 どうして私が農家にこんなにこだわるか。それは、お茶農家というのはみんな専業農家なんですよ。しかし、全国的に言えることなんですけれども、見事に後継者も育っている。担い手も育っている。こういう人たちをやはり今こそ助けてやらなきゃいけない。さっき言ったでしょう、一キロ当たり八百八十八円、こういう状況は多分改善しないんじゃないかと言っていました。この間関係団体の方と会いましたけれども、少しよくなるかもしれない。ですから、こういうのを除外するのはやはり新政権の農業政策としては私は正しくないというふうに思います。

 私のこういうしつこい指摘を受けても、野菜、果樹、お茶、やはり考えない、適用されないという大臣のお考えは変わりませんか。もう一回御答弁をお願いします。

赤松国務大臣 いや、ですから、別に私は江藤委員と考えが違うとか相反しているという意味じゃなくて、私どもは、こうした今までの経験、統計等からいえば、販売価格と生産費が逆転していないという中で、戸別所得補償制度に入れてくれという意見は、確かに江藤委員のほかにもたくさんあります。ですから、そういう制度の中で包括してやっていくことの方がいいのか。それとも、例えば果樹なんかをやっている人たちは非常に経営規模も違う場合が多いんですね。ですから、それを一律にしてやるような戸別所得のやり方がいいのか、あるいは別個の果樹なら果樹に対する支援策がいいのか、そういうことをやはり総合的に判断していってやった方がいい。

 ただ、多分私の勝手な認識かもしれませんが、共通の認識は、果樹についてもあるいはお茶についても野菜についても、今それぞれの農家の経営は大変厳しい、何とかこれをやはり支援していくのが私どもの役割だ、責任だということは同じだと思っております。

江藤委員 時間が終わりましたから、半分しかいきませんでした、ちょっと熱が入り過ぎまして。

 共通の認識を持つことはいいことですよ。言われましたね、果樹が厳しい。メロンなんかぼろぼろですよ、宮崎あたり、正直言って。メロン農家がどんどんやめている。私の友達でランをつくっていた農家もこの間やめました。ほかのものに移るそうです、ピーマンをやるのかキュウリをやるのかまだ決めていないみたいですけれども。そういう状況下にあります。

 今回閣議決定された食料・農業・農村基本計画、私は、今回の質疑を通じても、ほかの委員の方々も熱心に聞いていただきましたけれども、かなりいいかげんな部分がある。予算と政策目的と計画が合っていないということは私は明白になったと思いますよ。そして、穀類ばかりに重きを置き過ぎています。それ以外はまるで農業ではないかのような扱いですね。

 食料自給率の数値目標にこだわり過ぎて、自給率向上に貢献しない作物、例えば花卉とか嗜好品、そういったものなどは全くないがしろにされています。そしてシイタケ、これは山に住む者にとっては農産物ですよ、タケノコとか。こういったいわゆる特用林産物については全く何の記述もありません。これではこれからの農政の全体像を網羅した基本計画とはとても言えないと私は思います。

 少なくとも、基本計画の一番の売りとも言える「すべての農業者が将来にわたって農業を継続し、経営発展に取り組むことができる環境を整備する」という文言とは余りにもかけ離れた内容であります。早急に見直しすることを強く求めまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

筒井委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 ありがとうございます。質問の機会をいただきまして、大変感謝をいたします。

 三月三十日に新しい食料・農業・農村基本計画が閣議決定をされたということであります。もう閣議決定されたということでありますから、私の方は、こういう問題点があるんじゃないかということを指摘し、今の江藤委員と同様に、できる限り早く見直しの機会に、現状なりあるいは予算に合ったものに改めていっていただきたい、そういうお願いが中心になるわけであります。

 そして、最初にお話をしておきたかったのは、どうも言葉の遊びが、民主党政権のいろいろなキャンペーンで、ついには、この大変大事な、基本的に十年を念頭に置いてつくる食料・農業・農村基本計画においてもちょっとその嫌いが出てきたんじゃないか。端的に言えば、これは「まえがき」で出てくる「国民全体で農業・農村を支える社会」という表現であります。同様の問題意識は我が党の委員みんなが持っていることなので、以前にも出たのかもしれませんが、私も改めてこの点は指摘をしておきたいと思います。

 つまり、どこかで聞いた表現なんですよ。社会全体で子供を育てるとか、国民全体で農業、農村を支えるとか。何か、さも自公連立政権時代には社会全体で子供を育てていなかったような、あるいは自公連立政権時代には国民全体で農業、農村を支えていなかったような、そういう表現を用いられます。

 しかしながら、これは本当に言葉の操作であって、私はとんでもない話だと思うんですよ。というのは、国民の税金を使ってやっている農水省の予算は、どれもすべて言うまでもなく国民全体で農業を支えているということですよ。だれかこの中に委員で異論のある人はいますか。一人一人の国民が払った税金ですよ。それの使い道を決めて、農水省の予算をやっているんです。

 何か、民主党の方たちが大いに勘違いして、国民から見てもわかりづらいと思うのは、家計に直接払う皆様のお得意の政治手法、予算の配分手法以外は、国民全体であるいは社会全体ではないと思い込んでいるということですよ。しかしながら、国民が払った税金を使ってやっている国費は、すべてこれは国民全体でやっているんですよ。そこのところを何か言いかえて、大したことをやっているかのように言われても、それは本当におかしいと言わざるを得ない。

 そういう意味でいえば、土地改良の予算、農済の予算、今回大いに削られております。国民全体で土地改良をやり、いろいろなかんがい施設、圃場整備をやり、つくってきた基盤が維持管理もままならなくなりかけている。そういうようなところは、まさに今まで国民全体で支えてきたものを支えを外すようなことをやっているわけです。

 全体として総括的に述べれば、二・五兆円をずっと超えていた予算について、三十数年ぶりに当初予算が二・五兆円を割り込んだ。前年と比べても四%以上の減だ。こういう予算を組んでおいて、端的に言えば税金の使い道という意味ですから、国民全体として支える支えは額的に見たら減ったんですよ、それは。それを称して、「国民全体で農業・農村を支える社会」を創造していくとよく言えたものだなと私は思うんです。

 本当にこの国民全体でということの意味について、私は大変おかしな使い方だと思いますけれども、この計画の「まえがき」でも出てまいります。ほかの部分でももう一カ所出てきていたと思います。大臣は一体どういう意味で使っておられるのか、その点を詳細に説明いただきたいと思います。極めてわかりづらい使い方であります。

赤松国務大臣 赤澤委員から御指摘をいただきましたけれども、そういうとらえ方もあるかもしれませんが、私どもはむしろ、「まえがき」の中で、「国民全体で農業・農村を支える社会」というのは、今、戸別所得補償制度一つにしても五千六百十八億円というような大変大きな金額を使わせていただく、これは国民からお預かりした税金でございますから。そういう意味でいえば、単に生産者である農業者ばかりでなくて、やはり都市の消費者、そして農村に住まわれない方たち、直接的には関係のないと思われる方たちも含めて、確かに農業というのは重要なんだ、あるいは多面的機能があるんだ。これは、水を守ること、環境を守ること、そして私たちの食料を安定的に供給してもらえる。

 そういう意味で、やはり農業というのは重要なんだ、大切なんだ、みんなでやはりしっかり農業を支えていこう、そういう御理解を得たいという意味でお書きをしたということでありまして、前政権がどうだとかこうだとか、そういう党利党略みたいな、そういうことでお書きをしていることではなくて、これは基本計画ですから、もう少し崇高な思いで書いているということで御理解をいただきたいと思います。

赤澤委員 今のあれは本当におかしいと思うんですよ。というのは、「「国民全体で農業・農村を支える社会」の創造を目指す」と、今できていないという前提で書いておられるんです。できていなかったのはいつかといえば、それはもう直前の自公連立政権の時代にできていなかったという以外にないんですよ、論理的に。それがなぜか、所得補償中心の家計にお金を入れると突然、予算総額が減っていても、「国民全体で農業・農村を支える社会」と。もうこれは本当に聞こえがいい言葉の遊びですよ。

 まさに今大臣がおっしゃったように、都市の方たち、余り農業について感覚はないかもしらぬけれどもと言うけれども、その方たちがまさに納めた消費税なんというのは、地方の農村地帯が納めたものよりはるかに、絶対額でいったら多分何十倍か多いでしょうよ。それをつぎ込んで農業全体を支えているわけですよ。そのときに、一体それが何で国民全体で支えてこなかったとかと言えるのか、私は今の説明を聞いてもさっぱりわかりません。

 要するに、今の大臣の説明を聞いても、私の問いに対する答えにはなっていないと思うんですが、いかがですか。

赤松国務大臣 大変失礼な言い方になるかもしれませんが、以前は、なぜ農業者にばかり、農家にばかりそんなにお金をつぎ込むんだなんということが間々聞かれたこともありました、理解のない方には。

 しかし、昨今、まずそういう意見は聞かれませんね。今シンポジウムをやっても、全国九カ所でやって、私もそのうちの二カ所に出ました。農村部でやるんですけれども、来ている人たちというのは、八割は女性であり、そして本当にサラリーマンの奥さんかなみたいな人たちが多い。そういう人たちが、今の農業や農村、水産業、あるいは森林・林業も関係あるかもしれませんが、そういう農林水に対する関心が非常に高い。そして、それをやはり国民の共有の財産としてしっかり守り育てていこうという意識が大変強くなっているということもまた事実だと思っております。

 私はそれは非常にいいことだと思って、自分でそういうシンポジウムなんかに出ながら大変喜んでおります。それが今までと大きく違った点じゃないでしょうか。

赤澤委員 大臣、やはり、どうも大臣の耳には都合の悪い情報が入らなくなりつつありますよ、それは。農水大臣に向かって、あなたのやっている農政はおかしいと言う方がなかなかいないんですよ。これは、国政報告会をやれば、何で農家だけが所得補償をもらえるんだという声は出てきますよ。そういう声は前はあったかもしれないけれども今はないなんて言ったら、それはとんでもない勘違いだと私は思いますよ。

 大臣、本当にそこは私の言った意味をもう一回ぜひ理解してほしいんです。今まで我々は血税でずっとやってきたんですよ。我々がポケットから金を出しているわけでもないです。国民の皆さんが、日本全国の方たちが払った所得税、法人税、消費税、その上がりの中からやってきているんです。国民全体で支えてきたんですよ。

 何かそこのところが変わるみたいな、今まで支えていなかったような話というのは大変ミスリーディングであって、ちょっと本当にこれは言っていいかあれですけれども、選挙前の、篠原委員が当時、いかがわしい民主党のビラと言ったあれと内容的に違わなくなってきているんじゃないかという感じが、私は率直に言ってしますよ。それ以後の部分についても、これから幾つかその指摘をしていきますけれども、若干、これは本当に言っていることとやっていることが違うという問題は大きいと言わざるを得ないです。

 次の点に移らせていただきますけれども、基本計画と戸別所得補償制度についてであります。

 これも、ページを一々指摘するのもあれですから、書いてあることは大臣も大体御案内のことだと思いますので。例えば、第一の「食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針」ですね、「一 食料、農業及び農村をめぐる状況を踏まえた政策的な対応方向」、「(一)再生産可能な経営を確保する政策への転換」の中で、繰り返されるフレーズなので、もう皆さんも耳についていると思いますけれども、「農業生産のコスト割れを防ぎ、兼業農家や小規模経営を含む意欲あるすべての農業者が将来にわたって農業を継続し、経営発展に取り組むことができる環境を整備することにより、再生産可能な農業経営の基盤を作ることとする。」ということです。これを計画でうたう以上は、やはり実行してもらわないといけないと思うんですね。

 その意味でいうと、特に私の地元について言わせていただけば、全国標準的な生産費と販売価格の差をもって十アール当たり一万五千円ということで手当てをされました。一言で言って、私の地元であると、平均的な米農家の赤字は埋まらないんですね。もっと言えば、中国、四国地方全般ですよ。小規模農家、中山間地域の農家が多い中国、四国地方の農家は総じて、この米の所得補償をやってもらっても、あくまで標準的な全国一律単価ですから、赤字が埋まりません、端的に言うと。埋まるのは、大体イメージ的に試算してみますと、富山県の農家あたりがちょうど、部会長の地元ですけれども、埋まるという感じ。それで、東日本で一町田んぼがいっぱいあるようなところは、これはもう既に黒字が出ているのに、さらにこの一万五千円が入ってくる、こういうことです。

 そうすると、今まで米の所得補償をやっていませんから、もらえるものはこれはもちろんありがたいわけです、米農家にすれば。そのことは認めた上で、しかしながら、計画において、「小規模経営を含む意欲あるすべての農業者が将来にわたって農業を継続し、経営発展に取り組むことができる環境を整備する」と書いてあるんです。端的に言えば、中国、四国地方の小規模農家、中山間地域の農家は、米の所得補償をもらっても、米を生産するたびに赤字は続くんです。私は、意欲のあるすべての農業者に含まれていると思うんですけれども、その方たちが、赤字がこれからも続くのに、どうやって農業を継続し、経営発展に取り組む展望が開けるのか、そこをぜひ御説明いただきたいと思います。

赤松国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 私は、実は、先々週でしたか、鳥取にお邪魔をいたしました。これは自分の勉強のために行ったんですけれども、水産関係の皆さん、あるいは林業の皆さん、農業の皆さん、農水大臣が来たというので、おい、このかんがい用水を見てくれ、もう横がぼろぼろで、ここから漏水してこの道路が陥没しそうだ、何とかしてくれみたいな、そういう話も聞いてまいりました。

 そして、今委員御指摘のとおりに、確かに鳥取を含む中国地方、四国地方というのは、地域の農業を支えているのは六五%以上が高齢農家と兼業農家なんです。全国で一番そういう小規模な農業者の多い地域でございます。そういう意味でいえば、集落営農と言われるような、あるいは農業法人のような人たちがどんどんと全体をリードしているという地域とは少し違う、大変な地域だということを思いました。

 しかし、だからこそ私どもは、前政権と違って、そういう人たち、小規模であっても意欲とやる気のある人たち、兼業であって、ほかから収入で補いながら何とか自分たちの農地を守っていこう、そういう頑張っている人たちをしっかり支えたい、支えていかなければいけないんだという気持ちの中で、今度の戸別所得補償制度、そして、それでも足りないところ、条件の悪いところについては、中山間地の直接支払いのような形で、その制度を上乗せしてやってきた。それでも赤字なんだと今言われますけれども、では、それがなかったらどうなるんですか。本当に農業をやっていけなくなっちゃいますよ。

 そういう意味では、これで十分かどうかは地域差がありますからあれですけれども、しかし、少なくとも、何とか農業として再生産がしていける、続けていけるというような仕組みをつくりたいということで、今回、このモデル事業をやらせていただいたということをぜひ御理解いただきたいと思います。

赤澤委員 残念ながら、理解ができません。

 というのは、今、大臣、わかりやすい制度にするということでつくられたこの戸別所得補償制度、相対取引ですから、販売価格は過去三年しかデータがないんですね。あと、生産費については統計がちゃんとあるので、七中五で平均で出されました。そのやり方でやっている限りは、端的に言えば、常に標準的な赤字を出している人が埋まって、それよりもうけている人はさらに余力が生じる、赤字の人たちは残念ながらもらっても埋まらないという事態は常に続くわけですよ。

 だからこそ、自公連立政権時代の農政について言えば、このままではいけないから、規模を大きくする、法人化を推進する、そういうことをやりながら担い手を育てるということで、担い手の姿とか、あるいは「農業経営の展望」といったようなものを出して、明らかに我々は誘導しようとしていたわけですよ。

 しかしながら、今、大臣のお言葉を聞いていると、要するに、今までの、何もしなかったらどうするんだ。我々は、だからそちらに誘導しようとしていたわけです、一言で言えば。では、大臣としてはどうされようとしているのか。一言で言って、赤字は埋まらないんですよ、残念ながら。すべての、小規模経営を含む意欲ある農業者がやれるようにするといいながら、埋まらないんですよ。多少なりとも赤字が続いていて、それが続けられるわけがないんですよ。そういうことだと私は理解をいたします。

 それとも、大臣のおっしゃるのは、兼業でほかで稼いだお金をつぎ込んで、この戸別所得補償では中国、四国地方の農家はずっと赤字のままだけれども、頑張って経営を続けてください、ほかで稼いだお金をつぎ込んでやってください、こういう意味なのか、そこのところについて、もうちょっと詳しくお話を聞かせてください。

赤松国務大臣 現実の姿として、今、農業所得から、小規模であると、例えば三十万とか五十万とか、収入は上がらない。当然、それで食っていけるかといったら、食っていけません。

 そういう中で、例えば、六十五歳を超える高齢農家では、それぞれ農業者たちがみずからの年金を一方でもらっている。あるいは、サラリーマン農家の中では、サラリーマンとしての収入が幾ばくかある。それを足して、二百五十万になった、三百万になった、あるいは中には四百万になる人もあるかもしれませんが、そういう形で何とか先祖伝来の土地をしっかり守りながらやってきたというのが、多分今までの姿じゃないでしょうか。

 そういう中で、特に米中心でやっている全国百八十万の農家を対象にして、今回、戸別所得補償制度というのをまずやるわけですし、そういう中で、少なくともそれが続けていくことのできる、そういう状況を加味したということでございます。

 今委員が御指摘のように、それでも十分じゃないんだ、それでもここは赤字になるんだということであれば、これは、このモデル事業の実態を見ながら、では一体どういうふうにしていったらいいのかということを、反対に、もうけ過ぎちゃうなんという、利益が上がり過ぎちゃうというところもあるかもしれませんね、全国いろいろな地域がありますから。だから、そういうことも一つのモデル事業として検証をきちっとしていくということではないかと思います。

 しかし、大変僣越ですけれども言わせていただくと、今回鳥取へ行きました中でも、全中、全農、それから農業共済の方も見えました、土地改良の人も見えました。本当にすばらしい制度をつくってありがとうございましたといって、みんな拍手で迎えてくれました。そのことだけはしっかり申し上げておきます。

赤澤委員 それは、拍手をしなければ予算を削られますから、しますよ。皆さんの手法はもうかなりとどろいていますから、私の地元でも、しっかりと農協については圧力がかかっていますので。その辺は、大臣、それで過信しない方が絶対いいですよ。改めて、私もそこは申し上げさせていただきたいと思います。

 今おっしゃったことの中に、本当に問題が幾つか含まれていると思うんです。

 まず一点目は、兼業農家が農外収入を上げている、それと合わせればやっていける程度までという意味は、もしかすると、大臣の頭の中で、農業は赤字のままでしようがないけれども、ほかのものをつぎ込んでやってくれという意味が含まれているのかなという感じもしました。あるいは、それで続けていけないのであれば、その後何か、法人化のインセンティブを改めて考えるとか。

 だけれども、これだけの大改革をするのであれば、拙速ではなくて、その制度を実施するまでに、その辺の見通しはきちっと立ててやってくださいよ。要するに、農外収入でやってもらうからこのままでいくということなのか。あるいは、マニフェストにあった品質とか規模加算とか環境加算、ああいったものもまだ全く出てきていませんし、残念ながら、今発しているメッセージはモデル事業で、頑張った人も頑張らない人も面積当たりで同じものをもらう、あるいは、逆に言えば、同じものしかもらわない。要するに、主要な担い手、やる気のある人ほど、どうもやる気を失うような制度に、少なくともモデル事業自体はなっているんですよ、残念ながら。そこについて、本当に早目に答えを出さないと。私は、やはり計画をつくる前に、あるいは本格実施の前に、きちっと出すべきものだと思います。

 同僚の委員からちょっと伺ったのは、二十三年から本格実施をするのかという話について、大臣は、絶対やる、こういうふうにおっしゃいましたけれども、野田副大臣が来年度検討するとおっしゃったようにも聞いております。そこについて、閣内で何か不一致のようなものはないんですか、改めて大臣から伺っておきたいと思います。

赤松国務大臣 全く不一致はありません。

 それはなぜかというと、これは、私は、菅副総理・財務大臣とも話していますけれども、菅さんの立場としては、予算を編成する立場で、例えば、これは二十三年度、各省が勝手に言うのはいいけれども、この基本計画の場合は閣議決定をするわけです。そうすると、財務大臣が、二十三年度完全実施、菅直人とサインしたら、これはもう概算をやる前に、そのまま一〇〇%それを約束してしまうということになるということですから、やるとかやらないとかじゃなくて、これはどの政策についても一切、そういうことを固定化してしまうといいますか、この時点で約束をしてしまうような形は勘弁してほしいということですから、それは当然のことで、これは子ども手当についても暫定税率についても、ほかのいろいろな政策があると思いますけれども、それは財務省としては、当然そういうお立場でしょう。

 ただ、私どもは、マニフェストにしっかりとこれは党として約束をしてきたことだし、農林水産省が、また大臣が二十三年度完全実施するということを宣言することは、いささかもそれはとやかく言うことではありませんというのは、当然の財務省としての立場じゃないでしょうか。

 ですから、私は、自分の責任で、必ず二十三年度から本格実施するということを何回もこの場で宣言をしておるわけで、なぜそんなに信用できないのか。自民党から何人も何人も同じことを聞かれるというのは非常に心外ですね、ある意味でいえば。

赤澤委員 それは、理由をあえて言いたくなかったですけれども、不思議だとおっしゃるから言うのは、民主党の内閣がマニフェストとかいろいろなことで食言するからですよ。何度も念を押しておかないと危ないと国民がみんな思っているということです。我々はそれを代弁していると思ってください……(赤松国務大臣「はい、わかりました」と呼ぶ)ということであります。

 今のお話でありますから、来年きちっと本格実施されると大臣の御決意も伺いました。私は敬意を払います。そして、確かに予算ですから、我々も、逆に言えば、国会で議決もしていない予算を箇所づけで先に出して何だと怒った立場からすれば、国会で議決するまでは、それは財務大臣、副大臣がそう簡単にやります、やりますと言えないということについては、ああ、そうなのかなというふうにも思います。

 とにかく大臣の決意を聞いたということですから、これについてはきちっと対応していただきたいし、前の質疑でありました、とにかく米の価格は絶対下がらぬと言ったことについても、大臣の判断を私は尊重して、何かおかしなことが起きたときにはきちっと責任をとっていただきたいということだけは申し上げておきたいと思います。

 次に、水田利活用自給力向上事業の関係をちょっと伺いますけれども、これも、計画に書いていることと大分やはり違った実態になっているんですよ。

 「(三)意欲ある多様な農業者を育成・確保する政策への転換」というのが計画の第一の中にあったと思いますけれども、現場の主体的判断を尊重した多様な努力、取り組みを支援する施策を展開していくんだということで、適地適作、転作についてもそういうことが書かれております。

 それから、同じ一の中ですか、「政策改革の視点」という項目があって、その中でも、「国として最小限の条件整備を行いながら、意欲ある者が主体性と創意工夫を発揮することを促す「個々の取組を大切にする施策」」ということが書いてあります。

 さらに、「農業生産力強化に向けた農業生産基盤整備の抜本見直し」「地域の裁量を活かした制度の推進」。とにかく、地域の裁量、地域の裁量ということがこれまたお題目のように出てくるわけであります。

 水田利活用自給力向上について言えば、私の地元で、日吉津村というところがあります。大豆農家、頑張って転作は大豆だということで、大豆をつくる方が主要な担い手ということで、そこに産地づくりの交付金を、裁量を認めていますから大豆の単価をぐっと上げて、大豆生産をやってきた。

 その方たちから聞こえてくることは、一言で言えば、新しく一律で水田利活用自給力向上事業を入れられたので、主要な担い手で頑張って大豆をつくっていた人たちが、取り分がぐっと減る。それについては、二百六十億円用意をされて激変緩和をされるけれども、今のところ聞いている限り、全然足らぬ、来年以降はどうなるのかもわからない。

 そうなると、さんざんいろいろなところで現場の主体的判断とか地域の裁量とか、いろいろお題目はいいわけでありますけれども、実際やっていることは、転作の取り組みについて言えば、自公連立政権の方がよほど地域の裁量を入れられるようなやり方をしていた。わかりづらいから全国一律でいくという、所得補償のモデル事業と似たような話ですけれども、そのことで、地域の工夫で頑張ってやっている主体的な転作農家をぐっと力を入れて応援してきたものの取り組みが崩れている、こういう状態ですよ。この計画を読んで、その人たちにとってみれば、何とむなしく響くことかということであります。

 この辺についても、計画でもうそこらじゅうに地域の裁量、現場の主体的判断と書いておきながら、転作についてそのようなことになってしまったということについて、大臣としては、どのようにお考えですか。

山田副大臣 大臣にかわって私から答弁させていただきます。

 産地づくり交付金というのを今回廃止いたしました。それによって、先生の地元においてのいわゆる団地化なんか、大豆をやっている農家が非常に収入が減るんじゃないか、そういう御心配をなさっているかと思いますが、実際に、私ども、今度の戸別所得補償においては、非常にわかりやすくシンプルで、しかも努力すればするほど規模拡大もでき、それなりの収入が上げられる、そういう制度として考えました。

 先ほど大臣も話しておりましたが、いわゆる中山間地域の直接支払いとか、水と緑、環境その他等々ありますが、いわゆる私ども民主党時代のマニフェストでやっておりました環境加算みたいなもの、そういったものをこれから検討させていただくことにしております。

 そんな中で、ことしは激変緩和措置として、いわゆる大豆の、そういう若い人たちの担い手の皆さん方がやっている部分については昨年並みに十分に手当てさせていただいておりますので、私どもとしては、先生の御地元においてもきちんと対応はできているもの、そう確信しているところです。

 またぜひいろいろ御意見を伺いながら、次の本格実施については、この基本計画にあるように、意欲ある農家のすべてが本当に農業を継続できるような形に持っていければ、そう考えているところです。

赤澤委員 今のお話を伺って、要は、品質、規模、環境といった加算はこれからつくるということでありますけれども、端的に言って、それまで待っていられない。来年度の生産について言えば、二百六十億というものでは、残念ながら、私の地元については、今のところ地元の農水省の関係から説明を聞いている範囲では、どうも足らぬぞという感じがしていますけれども、では、そこは確認をいたしましょう。

 少なくとも、来年については、今の副大臣のお話ですから、今までもらっていた分は、主要な転作の担い手はしっかり受け取れるようにぜひそれはしていただきたい。そして、その後、来年度以降についても、それは何か新しく団地加算みたいなもので差しかえるということかもしれませんけれども、今までもらっていたようなものをきちっともらい続けて、主要な、頑張ってきた担い手がこれからも生産を続けられるように、それはぜひ持っていっていただきたい。今の副大臣のお話はそういうお話をいただいたものと私は理解をいたします。

 言いたいことはそれ以外にもたくさんあって、端的に言えば、土地改良についても、計画の中で、地域のニーズに応じて欠かせない土地改良をやると。地元で土地改良組合の方たちとお話ししても、予算をもう、三分の二から七割削られた日には、これはニーズなんか満たせないぞという声は当然出てきます。そういった声は出ないというのが大臣や副大臣の認識かもしれませんけれども、これについては、当然のことながら、改めて要求が出てくるものと。補正予算を組んでもらわなきゃもうやっていられませんという話は出てくるんじゃないかと私は思っていますし、面的集積の必要性も指摘されていますが、予算は実際には削られたわけであります。

 雇用と所得もふやしていく、創出をするというふうに計画にありますけれども、農業経営の展望や担い手像というのは出てこない。農産物輸出の目標額達成年次も後ろに倒された。生産調整未実施のペナルティーは廃止するといいますけれども、これは、むしろ今まで守ってきた農家の方が数は多いわけですから、むしろ守ってきた農家の感じる不公平感の方がよっぽど問題ではないかと私は感じています。さらには、畜産、酪農の戸別所得補償制度も、どうやら聞いていると、やるかやらないかわからない、後退をしているように思います。

 あと、本当に言いたいことは多々あって、商品先物市場の監視、規制の具体的内容、これは何をするのとか。再生可能エネルギー全量固定価格買い取り制度、一体これは何をするの。さらには、もう一つ気になるのは、農業関係団体の再編整備等、適正に国は監視やそういった規制の権限を行使する、こう書いています。一体これも何をするのか。本当に心配なことばかりであります。

 いずれにしても、これは与野党問わず、日本の農業に明るい将来が来るということを信じて、その方向に向けて一緒に仕事をしていかなきゃいけない国会でありますから、この辺についてもきちっと検討されて、改めて地元の声も丁寧に聞いて答えを出していっていただきたい、そのことを申し上げて、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

筒井委員長 次に、小里泰弘君。

小里委員 自民党の小里泰弘でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 新たな基本計画では、農業が果たしている多面的機能の重要性にかんがみまして、農業、農村の活性化には国民の理解と行動が大切だと訴えております。当然であります。

 ただ、国民に理解を求めるべきは、農業、農村の重要性だけではありません。すなわち、農業、農村を守りはぐくんでいくための政策のあり方についても国民の理解が当然必要でありまして、そのための具体的説明がないといけないわけであります。

 ところが、新基本計画では、この点が特に欠如していると指摘を申し上げておきたいと思います。

 まず、具体的、個々の政策について、検討するとの記述が実に十八カ所に及んでおります。前回はほんの一、二カ所程度であったと思います。ていのいい先送りであるな、そういう印象をぬぐえません。

 戸別所得補償を大仰に繰り出しておりますが、米以外の対象がどうなるか、同僚議員からも御指摘のあったとおり、全く見えてこないわけであります。個々の政策を何年度までにどのような方法で進めていくかといったような工程表すらないのであります。食料自給率の目標につきましても、そこに至る政策、道筋というものが見えてまいりません。国民に理解を求めようにも、政策のあり方が見えてこないようでは、全く説明以前の問題であります。

 大臣の見解をお伺いいたします。

    〔委員長退席、梶原委員長代理着席〕

赤松国務大臣 この基本計画については、国民の皆さん方に理解をしっかり得なきゃいけないので、説明をきちっとやるべきだというお話でございました。それは全くそのとおりだと思います。

 でありますからこそ、この基本計画の計画段階から、論議の経過等をインターネット等で紹介したり、あるいは、全国九カ所で公開討論会もやり、私自身もまたその中で何回か出させていただき、そして、直接、市民、県民の皆さん方から、これは必ずしも農業者ばかりじゃない、いろいろな国民の立場の、各界各層の皆さん方からお話も聞くことができました。

 そういう意味で、私どもは、できるだけのことをということで広報活動等にも努めたつもりでございますし、今後とも、実際にこれで計画がスタートしたわけでございますから、都度、いろいろな御意見もまたいただく中で、企画部会に入っていただいた各団体の皆さん方からは、非常にいいものができたというふうに御評価をいただきましたけれども、しかし、それに甘えずに、今後この計画を進める上で、私どもが計画したとおりにいかないことも中には出てくるかもしれません。そういうことは謙虚にしっかりと受けとめて、そしてまた、見直すべきものは、それはもう柔軟に見直していけばいいと思っております。

 ただ、検討という言葉が多いというのは、一つだけ言いわけというか御説明しておきますが、例えば食品安全庁、先ほどもリスク管理の問題が出ましたけれども、ぜひこれは、将来に向かって、食品安全庁という一つの形で、厚生労働省と農林水産省とが別個にやるんじゃなくて、ちゃんと食品安全庁みたいなところをつくってリスク管理を一体的にやっていこうということは、これは今直ちにやれといったって無理ですから、それに向けて各省庁間の調整を始めていこう、そういう意味でこれは検討していこうということを打ち出したわけですから、検討という言葉も、それは事柄によってはあり得るということをぜひ御理解いただきたいと思います。

小里委員 検討は、何も食品安全庁に限ったことではなくて、よく見ていただければ、かなり多岐にわたって、十八カ所に及んで検討するという言葉を使っているわけであります。

 それと、説明は当然であって、説明以前の問題を私は申し上げているんです。説明すべき中身がないということを申し上げておりまして、具体的な記述に乏しいということを改めて指摘申し上げておきたいと思います。

 基本計画においては、食料自給率についての記述、前回は十五ページありました。今回は七ページであります。この点も具体的記述が乏しいのであります。

 例えば、食べ方、国内でどれだけ食べられるか、そういった点を検証したんでしょうか。あるいは、具体的記述がないと、将来、振り返ったときに検証ができない、そして新たな取り組みができないということにつながっていくわけであります。特に、麦、大豆の生産をかなり加速させることになりますが、例えば、製粉会社が買ってくれるのかどうか検証したのか、あるいは食品産業の反応や見通しを検証されたんでしょうか。極めて疑問であります。

 カロリーベースの食料自給率五〇%目標のもとに、米は飼料米とかを入れて一〇%増産をする、小麦や大豆は現状の倍以上に増産をするとなっております。これを、我が国の持てる資源をすべて投入したときに初めて可能になる高い目標である、そういうふうに記述がなされております。

 だとすれば、財政需要にして一体どのぐらいになるんでしょうか。

赤松国務大臣 私が答弁すると長いと言われるので、簡潔に一例だけ挙げさせていただきたいと思います。

 例えば、今度の計画の中では、戦略作物として米粉を挙げています。これは、一万トンにも満たないところを、今度は十年後には五十万トン、五十倍にしようと非常に意欲的な数字を出しています。それから飼料米は、これも約七十万トンにということで、麦、大豆についてはほぼ倍ですけれども、特に米粉と飼料米についてはこれだけ意欲的な数字を示している。

 では、ただ数字を並べただけかというふうに思われるかもしれませんが、そうではなくて、フードアクションというような形で、各製パン業界の皆さんあるいは食品産業の皆さん、そういう方にもしっかりとお願いをしまして、例えばハンバーガーのマクドナルド、これは、私どもの基本計画のスタートに合わせるように四月五日から、米粉を使ったバーガーを、バンズにこれを入れてやるというのを具体的に今、五日からスタートをしていただきました。

 こういうような形で、今までどこもやっていなかったような、参加していなかったそういう食品産業や外食産業の皆さん方が、直接そういうことに本当に興味を持っていただいて、この国の戦略に自分たちも大いに協力をしていこうということで、もともとモスバーガーなんかは前からやっていただいていますけれども、こういうところも含めて、今いろいろな、今まで米粉は関係ないと思っていたようなところもどんどんとやってもらっています。

 それから、それぞれの生産農家の人たちについても、米粉をやってもらえれば、受け取り先はこういうところがありますよ、ちゃんとそれに結びつけますよというようなことは、農政局を中心にして今一生懸命取り組みをしているということで、具体的な数量は、今後ろで調べていると思いますが、私の頭の中には今入っていないのでそれは直ちにお答えできませんが、そんな形でぜひ、数字を出した以上はそれに何としても近づけて、そして、十年後五〇%という食料自給率、それを達成できるために全力を挙げて頑張りたいと思っております。

小里委員 私がお伺いしたのは、この野心的な生産目標に対して、それにたえ得る販路をちゃんと検証してあるかどうか、そして財政需要が幾らになるかということであります。

 販路を考えずに、つくらせることだけはつくらせようとしても無謀でありまして、生産数量目標を課す以上は、その販路は国が責任を持ってしっかり準備をすべきもの、そんなふうに私は思っております。

 ちなみに、二年前でしたか、戸別所得補償制度がこの場で出されましたときに、民主党さんの試算をもとにして、例えば、五〇%の自給率目標を達成した段階でどのぐらい財政需要が必要になるか、計算をいたしました。米、麦、大豆だけで一兆五千億円でありました。そういった試算もありますので、そこは、後世、子や孫に負担を残さないように、しっかりと国民の理解が得られる形で、これは政府において説明の責任があるということを申し上げておきたいと思います。

 事ほどさように、基本計画は、農政を具体化して着実に実行していくためにあります。ところが、新計画は、その本来のあるべき姿から遠いと言わざるを得ないのであります。今のままでは国民や生産者の理解は得られないものであるということを申し上げておきたいと思います。

 続きまして、新たな食料・農業・農村基本計画におきましては、食料自給率向上に直接的な効果のある施策の優先度を高め、推進するとありますように、穀物偏重にかなり走っております。したがって、野菜、果樹、畜産を置いていきかねない、そういう内容になっております。

 実際、先日も申し上げましたように、生産額ベースの食料自給率目標、これは野菜、果樹等の影響が濃くあらわれる数字でありますが、これを従来の七六%から七〇%に、その目標を引き下げております。品目別の自給率目標においても、野菜、果樹、畜産の目標を従来より引き下げて、ほとんど現状維持の水準にとどまっているわけであります。

 新たな転作奨励交付金制度におきましても、従来の地域の自主性を認めない、野菜などのその他作目の交付金単価を従来の実績より大きく引き下げて、また、激変緩和措置も、これまた穀物偏重であります。野菜、果樹についての具体的施策は見えてきておりません。

 そもそも、戸別所得補償制度におきまして、野菜、果樹はこの対象にしないとされておるようでありますが、その理由をお伺いいたします。

山田副大臣 先ほど申し上げました、今度の基本計画において、いわゆる生産額での金額が、前、平成十七年に自公政権でつくったときがたしか七六%だったのが今回下がったじゃないかという御質問かと思います。

 実際に、七六%の目標を掲げながら、現実には六五%に陥っているということ。生産額でのいわゆる自給率です。これから先、人口が四%、十年後には減っていって、さらに高齢化が八%進む。今六十五歳以上の人が二割ですが、あと十年もすると三割近くになってしまう。そんな中で、消費が落ち込んでいくわけなんです。

 そこで、我々は、現実的な、本当の自給率の目標を考えたときに、生産額ベースでもやはり七六%じゃなく七〇%に落とさざるを得ない、そういうところで御理解いただければと思います。

小里委員 残念ながら、今の説明では、野菜、果樹、畜産等だけを、数量目標を下げるという説明にはなっておりません。

 例えば大根は、昨年は大変な値下がりでありました。畑に大根が山積みをされていた、御案内のとおりであります。ことしは一転して、値が三倍になっているんですね。これほど値の変動が大きいのが野菜であります。また、昔は三年に一度当たればやっていけると言われたものでありますが、今は三年に一度のいいときでもとんとんであるというぐらいでありまして、野菜経営は極めて不安定なんですね。

 こういう、変動が激しい、不安定な経営状況にある、そういう野菜だからこそしっかりした対策を打っていかないといけない、そのことをあえて申し上げておきたいと思います。

 整理をしますと、新たな基本計画におきましては、穀物に特化した食料自給率目標のもとに、穀物に特化した品目別自給率目標を設定して、穀物に特化した品目別生産数量目標を課して、これを穀物に特化した全国一律の交付金単価により達成を図る、まさに国家統制型の仕組みであるということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 そこで、大臣にお伺いします。

 日本とバングラデシュ、どちらが食料事情がよいと思われますか。

    〔梶原委員長代理退席、委員長着席〕

赤松国務大臣 食料事情がいいというのはどういう意味ですか。何を基準にして、言っておみえになるんですか。(小里委員「大臣の御判断で結構です」と呼ぶ)

 多分、今の論議の過程でいえば、自給率とか云々とか、そういうことでいえば、私は必ずしも日本が上だとは思いません。しかし、現在の食生活というような意味でいえば、日本は、世界に、どの国よりもとは言いませんが、かなり、衛生状態、安定的な食料供給状態、これがなくて例えば栄養失調で死ぬ人がばたばたと出るなんということはないわけですから、そういう意味では日本の方が上ではないかと思います。

小里委員 そのとおりです。バングラデシュは、栄養不足人口二七%、深刻な、局所的食料不安にある国とされております。

 そのバングラデシュの穀物自給率は九五%であります。日本の穀物自給率は二七%。穀物自給率や食料自給率が大臣のおっしゃった、国の食生活水準と一致するわけじゃないんですね。食料自給率あるいは食料自給力は似て非なるものがあるのであります。このことをまず認識しないといけないと思います。

 私が一貫して申し上げてまいりましたように、食料安保の基本は、農地と担い手を確保すること、そのためには、それぞれの農地に、地域に適した作物をしっかりとつくっていくことであります。

 そのことで、例えば野菜でも果樹でも、あるいはたばこでも花でもそうですが、食料自給率には余り寄与しません。しかし、それをしっかりと、地域に合ったものを育てていくことで、農地が生きてくる、担い手が生きてくる。それがやがて確かな食料供給基盤、食料生産基盤となって、いざというときに国民の食料を確保する、そういうことにつながっていくわけでありまして、これがまさに食料自給力の考え方、食料安保の考え方であるということは、異論はないと思います。

 そういった点から考えますと、この穀物偏重の農政では、野菜づくりを初め、地域で創意工夫して支え合ってきた、築き上げてきた仕組みというものが壊れていきかねないわけであります。農地や担い手が生かされません。そして、野菜、果樹あるいは畜産等に見られますように、付加価値の高い農畜産物をしっかりつくっていく、そのすぐれた技術が廃れていくのであります。

 気がついたら、日本の食料生産基盤が大きく崩れていった、食料安保が危ういものになっていったということになりかねないわけでありますから、私は、この穀物重視の自給率目標、生産目標というものが正しいものであるとは決して言えないということを、信念を持って申し上げておきたいのであります。

 続きまして、そもそも、民主党農政の戦略目標がどこに置かれているのか、さまざま御指摘があったとおり、極めてあいまいであります。選挙戦では、戸別に、農家ごとに補償するかのように一生懸命説明をされていました。まさに、当時の参議院選挙、去年の衆議院選挙でもそうでしょうけれども、パンフレットはそんなつくりになっておりました。小規模農家の経営の継続が強調をされながら、所得再分配的な色彩が濃かったのが、今までの選挙における民主党の農政であったと思います。

 ところが、今回、全国一律の単価設定。これは、御指摘がありましたように、大規模農家に有利に働きます。そして、従来の制度より競争刺激的であるのであります。従来は所得再分配的であった。しかし、今回は競争刺激的な内容になっていると、これは言わざるを得ません。

 さらに、従来、大臣と議論申し上げてまいりましたように、新たな制度によりますと、生産調整は必ず緩みます。米価は下がる懸念の方が大きいと私は思います。その結果、小規模農家から離農が進んでいく、農地の流動化が進んでいくわけであります。

 この看板と政策のギャップ、理念と政策のギャップというものをどう説明されるのか、改めてお伺いいたします。

赤松国務大臣 いろいろ御指摘をいただきました。

 ただ、これは、委員ばかりではなくて、きょう一日の議論を通じて思いましたのは、ちょうど同じ時期に戸別所得補償制度と基本計画をやっているものですから、ちょっとそれが一緒になっちゃっている傾向があるのではないかと。

 戸別所得補償制度については、水田中心じゃないか、稲中心じゃないかと。これは当たっていると思います。というのは、私どもは、野菜や畜産の方が、額にしたら当然どんと上なんですけれども、しかし、農家の携わっている率でいえば、稲作に携わる人たちが圧倒的に多い。日本の農業を何とかしたいと思うときに、まずそこに目をつけなくしてどこから始めるんだという中で、私どもは、水田に着目して、稲作を中心にした制度でまずスタートして、そして農政全体の大改革を進めていこうということで、戸別所得補償制度は進めます。

 しかし、そのことと、今後十年間を見据えた五年ごとの基本計画、この中身とは、基本計画の一部に戸別所得補償制度があるということであって、これがすべてイコールではないということだけは、まずぜひ御理解をいただきたいと思っております。

 ですから、基本計画の中で、別に、畜産だとか、あるいは野菜、果樹だとか、そういうものを軽視しているわけでもありませんし、いかにこれが重要かということもきちっと位置づけているつもりですし、そういうことも、全体を含めて、食料自給率五〇%ということは特に挙げていますけれども、あくまでもこの基本計画の柱というのは、私どもは、戸別所得補償制度を含むその実現によって五〇%の食料自給率を達成していく、これが一つ。

 それから二つ目は、六次産業化を実現して、第一次産業、第二次産業、第三次産業、いわゆる生産、加工、流通、販売、その一体化の中で、他産業も巻き込んだ、観光業界だとかあるいは食品産業だとか、いろいろなところを巻き込んだ形で、農家あるいは地域の総合的な所得が、あるいは付加価値がより上がっていくという意味での六次産業化。

 それから最後は、食の安心、安全。これが三本柱ですから、ぜひそれを理解の上でこの計画について論じていただきたいと思います。

小里委員 おっしゃったようなそれぞれの体系になっていることは大体理解しておるつもりであります。

 私が申し上げたいのは、戸別所得補償制度を含む基本計画、もっと言えば、日本の農政全体として理念と政策が一致していないといけないんです。そして、その政策が具体的に示されないといけない、工程表が示されていないといけない。そこが欠けているわけでありまして、今のままでは国民も生産者も理解ができないということをあえて重ねて申し上げておきたいと思います。

 生産調整について最後にお伺いします。

 生産調整に対するスタンスがあいまいなまま、事実上の選択的な生産調整に移行しようとしております。新たな生産調整の体制をスタートさせるに当たりましては、慎重に制度の全体像をまず設計しなくてはいけません。そして、これをしっかりと現場に伝えていく必要があります。

 そのとき、生産調整において留意すべきは、政府が米価を維持する姿勢を示した途端に、自由な生産を選択した人たちは増産をするということであります。増産を誘発いたします。したがって、価格支持のための市場介入を政府が行ってはいけない、行えないのがこの選択的な生産調整の宿命であると思います。あるいは、生産調整参加者への補償水準というものを明示することが必要であります。そして、過剰生産あるいは豊作に備えたセーフティーネットをしっかりと備えていく。少なくともこの三点が重要であると私は思っておりますが、いずれの観点からも、新制度は極めて危うい、心もとないものであるということを申し上げておきます。

 もう答弁の時間もあるいはないかもしれませんが、大臣は、まず最初に指摘申し上げた項目に関連しまして、米価は絶対下がらないと何度も繰り返してこられました。これは、別の意味において危ういんですよ。つくる側の生産を誘発していくことになりかねない、そういうシグナルにつながっていきかねないわけであります。

 例えば、金融関係で政府高官はそういった言動は厳に慎んで慎重に対応しております。この点は、大臣は、十分反省というか、まことに僣越でございますが、思い直していただいた方がいいと思います。

 あるいはまた、指摘をしてまいりましたように、転作奨励の激変緩和措置、この生産調整に絡んでくる話でありますが、いまだに現場に届いておりません。御案内のとおり、米はもうそろそろ作付の準備に入ってまいります。早いところは五月に種まきをいたします。ネギは四月に植えつける。カボチャは、夏とりのカボチャですと、もう植えつけに入っていないといけません。

 ところが、国の交付金が、国の制度がどうなるかわからないから、何をどうつくっていいかわからずに、現場はまだ混乱をしているのであります。今までは、前年の秋の時点で制度は示されていたんですよ。こんなことはかつてなかったわけでありまして、いかにも、制度設計も将来展望も全くあいまいなままに……

筒井委員長 小里委員、もう時間が終了しておりますので、まとめてください。

小里委員 無謀な農政に突入をしようとしているということでありまして、まさに危ない橋を渡ろうとしている、このことを指摘申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 大臣、よかったらどうぞ。

赤松国務大臣 できるだけ簡潔にお答えします。

 鹿児島県がそうなっているという理解ではありませんで、今、水田利活用自給力向上のいろいろな措置については、佐賀県と福島県を除いてはすべて終了している。福島ももうすぐ終わりそうだと。佐賀は、二毛作の形態がいろいろあるのでちょっと時間がかかっているけれども……(小里委員「現場に届いていない、現場に」と呼ぶ)はい。

 ですから、全国でこれも、今八千回説明してきたんです、八千回。末端の水田協議会のところまできちっと説明して、個々の農家に対するそれぞれの生産数量目標をどうやって割り当てるかまで徹底してやれと今農政局に言っておりますが、そういう御指摘があれば……(小里委員「転作奨励金ですよ」と呼ぶ)転作奨励金ですね。(小里委員「激変緩和」と呼ぶ)激変緩和についてもそうです。今言ったように、福島と佐賀以外はもう終わっているというふうに僕のところには報告が来ていますが、そういうことであれば、鹿児島県については、再度きちっとやらせたいというふうに思っています。

 それから、いろいろ御指摘をいただきました。ちょっともう時間が過ぎているので、いろいろ御意見をいただきましたけれども、参考にさせていただくところは参考にして、今後また議論を続けていきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

小里委員 ありがとうございました。

筒井委員長 次回は、明七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十七分散会


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