衆議院

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第6号 平成22年12月8日(水曜日)

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平成二十二年十二月八日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 山田 正彦君

   理事 石津 政雄君 理事 梶原 康弘君

   理事 佐々木隆博君 理事 仲野 博子君

   理事 森本 哲生君 理事 谷  公一君

   理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君

      網屋 信介君    石田 三示君

      石原洋三郎君    石山 敬貴君

      磯谷香代子君    今井 雅人君

      金子 健一君    川村秀三郎君

      京野 公子君    近藤 和也君

      篠原  孝君    高橋 英行君

      玉木雄一郎君    道休誠一郎君

      中野渡詔子君    野田 国義君

      藤田 大助君   松木けんこう君

      柳田 和己君    山岡 達丸君

      伊東 良孝君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      北村 誠吾君    谷川 弥一君

      保利 耕輔君    山本  拓君

      西  博義君    吉泉 秀男君

      石川 知裕君

    …………………………………

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   内閣府副大臣       平野 達男君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   農林水産大臣政務官   松木けんこう君

   参考人

   (日本獣医師会会長)

   (口蹄疫対策検証委員会座長)           山根 義久君

   参考人

   (弁護士)

   (口蹄疫対策検証委員会委員)           郷原 信郎君

   参考人

   (独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所企画管理部長)

   (口蹄疫疫学調査チーム長)            津田 知幸君

   農林水産委員会専門員   雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月八日

 辞任         補欠選任

  篠原  孝君     川村秀三郎君

  中野渡詔子君     山岡 達丸君

  福島 伸享君     磯谷香代子君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     福島 伸享君

  川村秀三郎君     篠原  孝君

  山岡 達丸君     中野渡詔子君

    ―――――――――――――

十二月三日

 一、農業等の有する多面的機能の発揮を図るための交付金の交付に関する法律案(加藤紘一君外四名提出、第百七十四回国会衆法第三五号)

 二、森林法の一部を改正する法律案(高市早苗君外十六名提出、衆法第一六号)

 三、農林水産関係の基本施策に関する件

 四、食料の安定供給に関する件

 五、農林水産業の発展に関する件

 六、農林漁業者の福祉に関する件

 七、農山漁村の振興に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 農林水産関係の基本施策に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件(口蹄疫問題等)


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     ――――◇―――――

山田委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。網屋信介君。

網屋委員 民主党の網屋信介でございます。

 御質問の機会を与えていただいて、本当に光栄でございます。

 きょうは、食料の自給率のことについてちょっと御質問をさせていただきたいんですが、その前に、政府の皆さんに少しだけお話を申し上げたいのは、先日、十二月の六日に、諫早湾の干拓地における訴訟の控訴審で、五年間のうちの堤防の排水門の開放を命じるという一審判決の追認的なものがあったわけでございますが、これにつきまして今後政府としてどういう方針でお臨みになられるのか、時の話題でございますので、一言お考えを聞かせていただければというふうに思っております。

松木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 国の主張が認められなかったところがあることは十分承知しているわけでございますけれども、一審よりかなり厳しい判決も出たんじゃないかなというふうに思っております。

 これからは、内容をやはり詳細に検討しなきゃいけないものですから、ほかの関係府省とも連携をとりながらこれからしっかり適切に対応していきたいというふうに思っておりますし、今の段階で細かいことまでちょっとお話しできないんですけれども、いずれにしても、開門のことも含めてしっかりと対応していきたいというふうに思っています。

網屋委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、両方の意見がまだまだいろいろあると思いますので、これは適切に、余り長い長い時間をかけないで、ちゃんとした形の解決を政府として図っていただきたい、判決を重く受けとめて考えていただきたいというふうに思います。

松木大臣政務官 判決を重く受けとめてしっかり対応していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

網屋委員 本日は、食料の自給率について、農水省の考え方を一度整理させていただきたいというのが一つの目的でございます。

 お手元に二枚紙の資料をお配りしていると思いますが、きょうの目的は、いわゆる自給率、今四〇%と言われておりますが、これは実はカロリーベースでの自給率ということで、議論がいろいろなところでひとり歩きをしているわけでございます。

 この最初のところにございますように、カロリーベースと、実は生産額ベースというのがございます。次のページをちょっとごらんいただきますと、二十一年の食料自給率を生産額ベースで計算すると、実は七〇%という数字が出てまいります。この辺の誤解がかなりいろいろなところにあるのではないかなと。つまり、何を申し上げたいかというと、例えば一番最後のページをごらんいただきますと、「食料自給率の推移」というのがございます。これは、いろいろな数字がある中で肉類を特に取り上げたわけでございますが、例えば真ん中の豚肉、一番右の方をごらんいただきまして、二十一年度の概算というのでごらんいただくと、「五五(六)」というふうに書いてあります。

 これは、この前農水省の方にお話をお聞きしまして、これはどういう意味かと申し上げますと、先ほど言いました、生産ベースというよりも数量ベースだと思うんですが、生産額的に見ると豚肉は五五%が自給率になっている、ところが、カロリーベースに直すと六%しかありませんということを実はここでは言っているわけでございます。

 これはなぜかというと、下にありますように、飼料自給率を考慮した値、つまり、豚が食べる飼料はほとんど輸入であることによってカロリーが相殺されるということで、六%しかないということは、今四〇%がいわゆる自給率の平均だとすると、幾ら食べても自給率は下がるということになるんですね、もう六ですから。この辺の誤解を非常に生むのではないか。

 それともう一つは、カロリーのない、例えば野菜、お茶とかいろいろあると思いますけれども、そういったものも含めた自給率の考え方というのを入れることが必要なのではないかということで、生産額とカロリーベースを両方示したわけでございますが、この辺につきまして、お考えをちょっと聞かせていただければなということで質問をさせていただきたいと思います。

篠原副大臣 お答えいたします。

 我が国では、いろいろな自給率の考え方があるわけですけれども、生命の維持に不可欠な基礎的な栄養価であるカロリーをベースにした自給率が適当ではないかということで、これをずっと使ってきております。

 ほかに、このように使っている国としては、韓国、スイス、台湾、ノルウェーがございます。そのほかの国では、FAOとかになりますと、穀物の自給率とか油糧種子の自給率とか、そういう別個のものでやっております。それから、金額の自給率というのもありまして、イギリスでは、金額の自給率が五九%というのは計算をしております。

 我が国でも、かつて、金額の自給率、農家の所得を高めるというのは政策目標の大事なものの一つでしたから、それを表示していたことがありましたけれども、一時中断いたしました。最近はまた復活いたしまして、七〇%近くのものを自給しているということで、金額自給率も使っております。

網屋委員 ありがとうございます。

 ただ、現実的には、我々も陳情を受けたりいろいろしますけれども、ほとんどカロリーベースの四〇%だけの議論しかずっと行われていない。これはやはり認識を、例えばさっきたまたま豚肉を取り上げたのは一つの例なんですけれども、実は物すごく誤解が生じている。カロリーベースでやってしまうと、何か国産品をどんどん食べているからどんどん上がるんだと思っても実は六%しかないんだということ、この辺のところの理解というのが一般に広まっていないんじゃないか。その辺をぜひとも広めていただくことが大事なことじゃないのかな、これが一つ。

 それと、この数字には実際には入っていないんですが、もう一つ気になりましたのは、先ほどちょっと申し上げましたが、野菜ですとかお茶ですとか、いわゆるカロリーそのものがないといいますか、ほとんどないもの、これについても、先ほど穀物ベースの話もありましたけれども、やはりそうなると、余りにその議論が、カロリーベースの自給率を上げよう上げようとすると、実はカロリーのないものをつくっている農家の方々は、我々は取り残されているんじゃないかという気持ちになっていくんじゃないか。

 茶業振興法とかいろいろな議論はあると思いますが、その辺について、やはり農水省としても、どういうふうにしてそういう人たちの勤労意欲を高めるか。その辺について、一言、どういうふうにやっていくかというのがあればお聞かせいただければなと思います。

鹿野国務大臣 今先生が申されたとおりに、国内の農業生産におきましては、お触れになった野菜なり果樹なりお茶なり畜産なりというものは、非常にお米、麦と並ぶ基幹部門でありまして、その振興は言うまでもなく極めて重要でございます。

 そういう意味で、野菜なり果樹なり畜産等は、食料自給率の算定においてはカロリーベースでは必ずしも生産実態が十分でないというようなことも含めて、御承知のとおり、本年の三月に食料・農業・農村基本計画というものが設定されたわけでありますけれども、その際、食料自給率の目標というものに関しましては、カロリーベースに加えまして、生産額ベースでも設定をいたしております。すなわち、平成三十二年の食料自給率目標といたしまして、カロリーベースは今申されたとおりに五〇%でございますけれども、生産額ベースでは七〇%、こういうようなことで、カロリーベースだけでなしに生産額ベースにおいても目標を持ってやっていきたい。

 そういうことによって、これからも野菜なり果樹なり畜産なりお茶なり、それぞれの品目の特性というものを踏まえて、地域の実態に合わせた生産の振興を図ってまいりたい、そういうふうに考えておるところでございます。

網屋委員 生産額では大体もう七〇%に来ているはずでございますので、一番私が危惧しているのは、余りにカロリーベースだけがひとり歩きをして、それだけの議論ですべてが行われると非常に誤解を招く部分があるので、そこも並列的に広めていただく努力をぜひともやっていただきたいなというのと同時に、生産額ベースの目標を入れることによって、いわゆるカロリーのない、いろいろな分野も振興していくということを政府の方針としてぜひとも固めていただきたいということが質問の趣旨でございます。

 時間が余りございませんので、十五分ということなので、ちょっと飛び飛びで申しわけないんですが、きょうまた口蹄疫の関係の参考人質問ということもございますが、私の方から一つだけ。

 私は鹿児島の出身でございまして、今回の口蹄疫の問題では、宮崎が中心にいろいろな問題が起こったわけでございますが、幸いにもと言ったら失礼ですけれども、鹿児島には口蹄疫は発生しなかった、結果的にはそういうことであります。しかしながら、現実問題は、防疫体制を物すごくしいて、物すごいお金も実はかかっている。

 今回、総務省さんといろいろお話をして、特別交付税等々で何とかという話もしておりますが、これから、今は時限立法がありますけれども、家畜伝染病予防法の改正等々、もしくはつくりかえ、いろいろ細かな作業が始まるんだと思いますが、これは質問というよりもぜひともお願いなんですが、やはり発生した県、都道府県だけではなくて、周辺地域の防災についても、その辺のカバーをちゃんとやっていただきたい。

 最初から、例えば対策本部はそこだけじゃなくて周りも一緒にやるとか、そういうことをぜひとも御考慮いただけないだろうかということで、政府の御見解といいますか、覚悟といいますか、一言聞かせていただければというのが趣旨でございます。

篠原副大臣 南九州地域の畜産業全体の振興については、農林水産省は、何々県というふうに区別することなく積極的に対応してきたところでございます。

 それから、今網屋委員御指摘の基金ですけれども、農畜産振興機構に五十億円できておりますが、この対象も、事業対象として七つほどあるんですが、宮崎県に限るものもございますけれども、七つの経費のうち四つほどはほかの県でも自由に使えるようになっております。例えば、例で挙げますと、資源循環型畜産としての再建に向けたTMRセンター及び堆肥センターの設置、口蹄疫の発生により影響を受けた畜産農家に対する出荷遅延対策、それから食肉等地場畜産物の需要拡大のためのPR活動の支援というようなものは、今既に対象となっております。

 それから、別途、やはり大変だということで、鹿児島県なり熊本県でもこういった対応をしてほしいという要望がありましたら、我々はそれに応じて措置していく所存でございます。

網屋委員 いろいろなところで御尽力いただいたことに、本当に感謝申し上げます。

 ただ、法律的な部分、それは出てからの話ですけれども、出る前に、実際に周りで何か起こったときに機動的にできるような、一回一回の話ではなくて、法体系をぜひとも御構築いただけるようにお願いを申し上げて、私の本日の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

山田委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 民主党の今井雅人でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私の住んでおります岐阜県下呂市は、森林率九一%というところでございまして、かつて材木で財をなした方がたくさんいらっしゃいましたけれども、今やもうその見る影もない状態でございます。さらに、最近、間伐が進まずに山が非常に荒れていまして、特に、ナラ枯れの影響が本当に深刻で、地元も大変困っているわけでございますが、そうした地域にとって、林業の再生とそれから森林の整備、これはもう最重要の課題と考えておりまして、本日は、その観点から幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣にお伺いしたいんですが、環境税導入に伴う森林整備への財源措置ということでございます。

 来年の秋に環境税が導入される方向で検討されているというふうに伺っておりますけれども、税の使い道についてなんですが、報道等を見ますと、どうも私には経済産業省所管の対策ばかりが目立つように感じます。私は、森林整備も温暖化の重要な対策だと考えておりまして、ぜひこれに対しても環境税を活用していただきたいと思います。

 農水省としても、二十三年度の税制要望で、地球温暖化対策を推進するための税制度の創設に伴う措置を要望しておられるというふうに承知をしておりますけれども、この件についての政府としての姿勢あるいはお考えを鹿野大臣にぜひお伺いをしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

鹿野国務大臣 今、いわゆる環境税等々につきましては、政府税調におきましてもいろいろと御検討されておる、こういうふうに承知をしておるわけでありますけれども、そういう中で、導入の際、どこに使うかというようなところは非常に重要なポイントだと。

 そういう意味で、言うまでもなく、京都議定書におけるところの基本的な温室効果ガスの六%削減というもののうち三・八%を森林吸収量によって確保する、こういうようなことから含めて、森林吸収のそういう対応策に、当然、温室効果ガスを削減するには必要になってくるわけでありまして、農林水産省といたしましては、地球温暖化対策税といういわゆる新しい税を創設するということになりますならば、当然のことながら、その税収の使途には森林吸収源対策等を明確に位置づけするというようなことが私どもの考え方でありまして、この点について要望をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

今井委員 大変力強いお言葉をいただきまして、本当にありがとうございました。

 これから、十二月、一月、大変これの佳境を迎えると思いますので、ぜひ政務三役の皆様には、経済産業省に押し切られないように強い姿勢で臨んでいただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、間伐の政策についてお伺いをしたいと思います。

 来年度予定されております森林管理・環境保全直接支払い制度の創設に際しまして、間伐等への支援はゼロベースで見直し、搬出間伐への支援に限定するという方向性が示されておろうかと思います。

 しかしながら、私、地元の森林関係の業者さん等にお伺いしますと、これでは搬出間伐のできないような山が荒れてしまうのではないかという不安の声が本当に今たくさん上がってきております。

 将来的には、林業専用道ですとか森林作業道を張りめぐらせて、どこからでも搬出できるような体制にするのは、それは理想だと私も思いますけれども、それにはかなり長い年月を要すると考えられますし、その間に森林整備に支障が生じるんじゃないか、そういうおそれがあるんじゃないかということを私自身も非常に危惧しているところでございます。

 ですから、政策を大きく転換するときには、こうした観点もぜひ配慮していただきたいというのが私の願いですが、この点について政府としては現在どういう御認識を持っておられるかについての御見解をお伺いしたいと思います。

篠原副大臣 政策の大転換が伴うときは必ず激変緩和措置的なことが必要だというのは、我々は承知しているつもりでございます。

 ですけれども、この我々の政策転換の意味は、間伐してそのまま捨てておくというのはやはりよくないんじゃないか、必ず利用していただきたいという、強い我々の政策目的を皆様方に知っていただくためにそのようにいたしました。

 ですけれども、どうやってやるかというと、対象地をある程度限定するわけです。それで、どのぐらいの限定にするかというのはまだ決めておりませんけれども、数百ヘクタール単位でこの地域を対象とする。その数ヘクタールの中で、これもまた地域の実情を勘案する予定でございますけれども、例えば五ヘクタール、このぐらいのところを重点的に搬出間伐をするということに対して直接支払いをするということでございまして、地域の実情はどのぐらいの範囲のところの計画でもって認めるか、それから、どのくらいの面積をちゃんと搬出間伐したら直接支払いの対象になるかということで対応できるのではないかと思っております。

 我々の意思は、ぜひ利用していただきたいと。そして、今までのように一ヘクタール、二ヘクタールでぽつぽつとやるんじゃなくて、全体でくくって、今井委員御指摘のとおり、いきなりはできない、ですけれども、一年目はとりあえずできる五ヘクタールのところだけ搬出間伐をする。しかし、路網を整備して、いずれほかのところも搬出間伐できるようにということ、それに対しては直接支払いをする。直接支払いをきっかけとして、路網も整備していただいて、搬出間伐していただくようにということを考えております。

今井委員 済みません、もう一度ちょっと確認したいんですけれども、搬出間伐をどんどん推進していくということの方向性は私も正しいと思います。ですから、その間に切り捨て間伐のような状況はないような配慮をしながら段階的に進めていく、そういう御答弁でよろしかったでしょうか。

篠原副大臣 ですから、搬出間伐をできるところは直接支払いの対象にしてやっていただく。そうでないところは、数百ヘクタールの範囲の中で搬出までできないといって間伐をしておられるところは、残念ながらいきなりこの直接支払いの対象にはなりません。ですから、そこは、二年後、三年後、路網を整備して搬出できるような形にしてから間伐するとかいうことで対応していただくのが、一番現実的ではないかと思います。そういった政策誘導を考えております。

今井委員 ありがとうございました。

 ほかにも質問したいことがありますので、これで終わりますけれども、ぜひ現場の声を聞いていただきながら、森林が荒れないようなことを十分配慮した上で政策を進めていただきたいということを改めてお願いを申し上げておきたいと思います。

 次に、木質バイオマスの利活用の推進についてお伺いをしたいと思います。

 民主党の二〇〇九年のマニフェストにも木質バイオマスの利活用の推進ということが挙げられておるわけでございますけれども、さまざまな、いろいろな施策があると思いますが、こうした対策の一つとして、固定価格の買い取り制度による木質バイオマス発電というものなども挙げられるというふうに承知をしております。

 私の選挙区の白川町でも、これは私、以前もほかの委員会で質問させていただいたんですが、こちらでもかなり以前から木質バイオマスでの発電の取り組みを町を挙げてやっておるわけでございますが、現状の売電価格ではなかなか採算が合いませんでして、町の財政に大変今負担となっておりまして、町としましては、民主党が挙げました固定価格買い取り制度に今大変な期待を寄せているところでございます。

 経済産業省の方で、現在、年内までにこの概要を決めて来年の通常国会に提出するというような段取りになっているというふうにお伺いをしておりますけれども、農水省として、この木質バイオマスの利活用という観点から、木質バイオマス発電の方の取り組みというのを、経済産業省の方に向けてどのような取り組みをされているか、あるいはどういう姿勢でおられるか、このあたりについてお伺いをしたいと思います。

松木大臣政務官 今言ったとおり、どんどんどんどん使っていきたいなと思っているんですけれども、今、間伐材というのは収集運搬コストが高いんですよね。ですから、何か年間二千万立方メートルがそのまま捨てられているということなんですね。これの利用促進というのが非常に大切なことだというふうに思っています。

 そのために、今話題になっている路網整備だとか、そういうことをぜひ早くやっていってコストダウンを図っていくことが非常にやはり重要だというふうに思っていますけれども、一方、再生可能エネルギーの全量買い取り制度、これを経済産業省で今検討中でございますので、委員もおっしゃったように、ぜひ早く決まるといいなというふうに思っています。

 そして、我々としては、経産省と連携しつつ、路網整備や森林施業の集約化、木質バイオマスの安定供給を推進して、石炭火力発電所における間伐材等の混合利用を積極的に推進していきたいというふうに考えております。

今井委員 どうもありがとうございました。

 実は今、こうした発電所では、本当は間伐材を使ってやろうとしているんですが、なかなか採算が合わないので産業廃棄物を燃やしてやっているんですけれども、この買い取り制度を導入していただければ、間伐材が利用できるようになって、さらには森林の整備ということにつながっていきますから、非常にいろいろな波及効果が出てくると思いますので、ぜひこの推進をしていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 最後にもう一点、公共建築物木材利用促進法、ことしの五月二十六日に公布をされましたけれども、これについてお伺いしたいんです。

 この法律に関しましては、さまざまな関係者から非常に高い評価を私もいただいております。しかしながら、重要なのは、公共建築物への木材利用を促進するためには、これからの具体的な対策がなければ絵にかいたもちになりかねないと思います。財源の手当てもあると思いますし、それから、建築基準法の見直しなどさまざまな点があろうかと思いますが、政府として、今後具体的にはどのような対策を講じていくおつもりであるか、御見解をお伺いしたいと思います。

松木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 いろいろとあるんですけれども、一応、二十二年度の補正予算で、学校、老人ホームなどに九十四億円、これがつきました。そして、二十三年度は十六億円ということで、さらにこれを進めていきたいというふうに思っているわけでございます。

 これを周知徹底するために、地方公共団体の方に、これは義務があるわけじゃないんですけれども、ぜひ協力をしていただきたいということも言っていかなきゃいけないでしょうし、さらに、国土交通省との連携で、住宅、建築物の木材利用促進のための情報発信、こういう取り組み等を通じて、住宅なんかの方にも木材利用を拡大していきたいというふうに思っておりますので、とにかく、これから、自給率五〇%を目指しているわけですから、いろいろなところにしっかり使っていくように頑張っていきたいと思っています。

今井委員 ありがとうございました。

 今お話ございましたように、自給率五〇%ということでございますので、ぜひ積極的に推進をしていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。

山田委員長 次に、今村雅弘君。

今村委員 早速でございますが、質問に入らせていただきます。

 まず、大臣も御案内かと思いますが、先般、福岡高裁で諫早湾の干拓、開門についての判決が出たわけでございます。これにつきましては、私も前回の農水委員会で大臣に、この置かれた状況等を御説明して、一日も早く開門をということで述べたわけでございます。その後、大変、国にとっては厳しいかもしれませんが、こういう明快な判決が出たわけでございます。

 ここに農水省としてのコメントもいただいております。これは承知しておりますから、大臣、ひとつ政治家の立場として、今日までいろいろな長い長い経緯を経てやってきた、そしてまた民主党の方でも、あるいは政府の方でも、そういった、あけろ、開門すべしということをやってきたことを踏まえて、ぜひ大臣の御見解そして開門に向けての決意をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

鹿野国務大臣 先般の国会におきましても、先生の方からこの諫早の問題につきましての御質疑がございました。

 ここに改めて、今週の月曜日に高裁の判決が下されたということでございまして、そういう中で、まだ詳細にわたって判決の内容を検討していかなきゃならないということで今検討中でございますけれども、基本的にはやはり厳しい判断が下されたのかな、こんな思いをいたしておるわけでございます。

 そういう中で、この判決を重く受けとめながら、今後どういう判断を下していくか。この司法の判断に対する対応、そしてそういう中で政治判断をどうしていくかというようなこと等々は検討を今しているところでございますけれども、関係省庁とも連携をとりながら、適切な判断というようなことの一言に尽きるわけでありますけれども、そういう対応をしていかなきゃならないな、こんな思いをいたしておるところでございます。

今村委員 そういう対応をしていくということの意味がいま一つよくわかりませんが、どういうことなんでしょうか。

鹿野国務大臣 そういう対応というのは、この高裁の判決、こういうものを受けての、重く受けとめるというようなことの考え方に一方においては立たなきゃならないし、また一方においては、そういう中で政治判断というものが含まれる、こういうようなことの意味があるということを申し上げているわけであります。

今村委員 ちょっとよくわかりませんが、とにかく、ぜひこの判決には従ってほしいと思います。

 それで、一応もうちょっと申しておきますが、今回の判決は、先ほど言いましたように、非常に明快に国の主張をことごとく退けています。まず、こういった国の主張が非常に抽象的で具体性を欠く、あけたらこういう影響があるとか、農業と両立しないとか、そういったことがすべて否定されているということをまず十分に御認識ください。

 それからもう一つ、ここにも一部ほど持ってきましたが、菅総理も実はもう四、五回、佐賀とか長崎にお見えになっているんですよ。これは十八年の八月の記事でございますが、こう書いてあります。「菅氏は諫早湾干拓事業を「全く失敗だった」とあらためて批判。「(干拓が)できても、元に戻す勇気が必要」」こういうふうに言ってあるんですね。そういうこともあります。

 そしてまた、ことしの四月の、郡司副大臣が中心になってやられた諫早湾干拓事業検討委員会等につきましても、これについて長年の争いにもう終止符を打とうじゃないか、そして有明海をきちっと再生していこうということをしっかりうたってあるわけですね。

 そういったことをしっかり踏まえて、これはぜひ開門ということで判断をお願いしたいと思います。先ほど政治の判断と言われましたが、まさにそれは司法と相反するものでないと思います。そこを重く受けとめてください。

 先般も言いましたが、私の地元でございます。タイラギという大変おいしい貝がとれるんですが、去年は、いろいろな、貝殻をまいたりして、三十年ぶりに大変な豊漁に沸いたんですよ。しかし、ことしは全然だめです。それはどういうことかというと、いろいろな理由はあるようでございますが、まいた貝殻の上にまた泥がかぶってしまう。そうするとそこには、タイラギというのはなかなかつかまるところがなくて立たないということになってくる。

 そういうことが現実にもう起きておりますから、ここはいろいろな、長崎県との問題、調整あるいは理解を得るということもあるかと思いますが、ぜひそういった取り組みをしていただきたいと思います。

 申しわけございませんが、もう一回、大臣の決意をお願いします。

鹿野国務大臣 今お話しなされたこと等々は大変重要な指摘をされているところでございますけれども、特にこの開門調査につきましては非常に難しい問題でありまして、どの時点で判断すべきかということも含めて、今後、今回の高裁判決というものを重く受けとめながら検討していくことが非常に重要な課題、こういうふうな認識でおりますということを申し上げさせていただきたいと思います。

今村委員 ありがとうございます。

 重ねてでございますが、このコメントにも、最後の方に「また、開門調査については、本判決への対応と併せて検討していく所存である。」ということが書いてありますので、ただいまの大臣のお話とあわせて、しっかりと受けとめていきたいというふうに思います。

 次に、ちょっと場面をかえまして、米の問題に移りたいと思います。

 今まさに秋の取り入れが終わりまして、ことしも、本当に農家の方々が苦労されていた大変暑い夏を経て、まさに実りの秋になったわけでございます。そういう中で、今、非常にこの価格が下落している。この問題はよく御存じかと思います。十月の例でいいますと、昨年よりも二千円以上下がっている、所によってはもっと下がっているところもあるわけでございます。

 こういったものについて、後ほど、どうするのか、今後の、来年に向けての対応もあるかと思いますが、その前に、私がぜひ質問したいのは、先般、米の生産数量目標について、これを役所の方から案を出されてきたわけでございます。これはあくまで役所の案でありますから、これをもって決まるよということにはならないわけでございますが、これについて、非常に問題があるわけでございます。

 お手元に、皆様方のところに資料をお配りいたしております。これをごらんください。これは、先ほど言いましたように、二十三年産の米の都道府県別の生産数量目標ということで、二十二年産米との比較ということでございます。

 総括して言いますと、二十二年産米の生産数量目標が八百十三万トン、百五十四万ヘクタール、一番下ですね。それを、二十三年につきましては、七百九十五万トン、そして百五十万ヘクタールでございます。こういう数字になって、そしてそれを、各県ごとに前年との差ということで挙げてあるわけでございます。

 それで、ここで非常におかしいんじゃないかと私が思っておりますのは、この右の方に書いておりますが、ここでもって、二十二年度に過剰作付をやった箇所をこうやって拾い出して、ずっと手書きで書いております。この合計が五万二千四百六十ヘクタール、二十二の府県でございます。そして、本来、こういったところについてはやはりもっと生産調整に協力をしてもらって、そして需給を締めて価格を上げるということが絶対に必要なわけでございます。

 しかし、これを見ますと、例えば茨城県、あるいはその下の栃木県、ここは、実は茨城県は七千六十ヘクタール、オーバーしてつくっております。にもかかわらず、二百十ヘクタールことしもふやす。あるいは栃木県においても、二千二百ヘクタール、オーバーしてつくっているのに、三百ヘクタール。あるいはその上の福島県、これは一万一千三百七十五ヘクタール、オーバーしてつくっているのに、今回はわずかに二百五十ヘクタールの減ということになっているわけでございます。

 その反面、正直に、本当に一生懸命生産調整に協力をしてやってきた県、これがのべつに減らされているわけでございます。生産数量目標の増減率全体の平均が二・二%ですから、これは需要の減ということで、この二・二という数字はいたし方ないと思います。しかし、この中でこれだけでこぼこがあって、しかも、今まで守ってきたところまで大幅にこれを減らされているというところがあるわけでございます。

 ちなみに、五%以上減らされているというのは、富山県、山口県、そして私の佐賀県でございます。意図的にやったわけじゃないでしょうけれども、ちなみに言いますと、富山県は我が党の宮腰農林部会長の地元でございます。山口は河村選対局長の地元でございます。佐賀は、私は水田農業振興の会長でございますが、その三者でございまして、まさかこの三者をねらい撃ちしたわけじゃないと思いますが。

 実は、こういうことは、いろいろ理由があるようでございますが、例えば私のところは、ここの下に書いてありますが、「都道府県間調整前の数値。」とありますが、これはいわゆる県間調整ということをやって、そして、どうしてもやはり米しかつくれない、何とか米をつくらせてくれというところに、例えば私の提案は、それをでは佐賀で請け負おうかということでやってきた経緯があるんです。その分、大豆だ何だは、まくときには梅雨の時期で、まいた後大雨が降れば、それをすぐまき直ししなきゃいけない。あるいは、秋に、せっかく実りを前にして台風が来れば、もう一発でやられてしまう。やはり大変なリスクをしょってやる。だから、その分のリスクの方はちゃんと積み上げをしてやってくださいよということで、そして、それは二十、二十一、二十二とやってきたわけでございます。

 しかし、それによって、現実に、よそをそうやって助けて、助けてと言うとなんでございますが、わかりやすく言うとそういうことでございますが、そして米の生産を抑えた。そうしたら、その米の生産を抑えたところをベースにしてさらにまた減らしてあるわけだから、これはちょっとひどいじゃないかということもあるわけでございます。

 私の県のことばかり言ってもしようがございませんので、一般論としてもっと言いますが、やはり、こうやって生産調整に一生懸命努力してきたところと、そうやって守らなかったところをもうちょっと、ここはいろいろ理由があるにしても、きちっと皆さんが、守ってきた人が納得できるようにすべきじゃないか。ペナルティーを科すことはやらないということは言われております。私もそれは、一歩引いて、どうしても厳しいならそこはよしとしても、しかし、守らなかった人にこうやってふやす、褒美まで、ボーナスまでつけてやるということはおかしいじゃないかと。

 これは、やはり米政策が農政の一番基本でございますが、そこをどうするんだという中で、全国の農家が、やはりみんなで一緒に力を合わせてやろうよということになっていかなきゃうまくいかないわけでありまして、そういったことに真っ向から水をぶっかけるようなことになっているわけでございます。

 この案、大臣はごらんになったのかわかりませんが、私が今言ったようなことで大体おわかりかと思いますが、これについてどうお考えでしょうか。

篠原副大臣 今村委員はずっと農政に携わってこられておりまして、今の御指摘は、ほとんどそのとおり、正しいのではないかと思います。

 ただ、農林水産省というのはちょっと融通がきかない役所でございますので、そこはまじめに、客観的に計算して、これを出しております。

 なぜこのようなことが生じたかというのは、やはり米政策も大転換をしたんです。それに伴うそごでございます。

 ちょっと理由を説明させていただきますと、この生産数量目標の配分というのは、需要に見合った生産へというふうに誘導するのが一番大事じゃないかと思っております。それで、米は優遇されてきたので過剰になっているので、麦、大豆というふうに誘導しようというのは一つあるわけですけれども、米については、平成十六年の米政策改革以降、過去の需要実績に基づいて都道府県別配分を行ってまいりました。ですから、従来は、その県別配分に当たりましては、今、今村委員御指摘のとおり、生産数量目標の達成県への配慮から、未達成県に対しては、目標の削減を加重するペナルティー措置を講じてまいりました。そのようにやってきたんです。

 ところが、この結果どうなったかというと、生産目標を達成できなかったところにさらに加重に来るわけですから、ますます生産数量目標と実際の作付面積が乖離してしまって、生産調整を最初からあきらめて協力しないような、何かそういった閉塞感ができてきてしまったんじゃないかと思うんです。そして、それが解消できないまま来て、その間に県間調整ということで、新潟県や私の地元の長野県からも、佐賀県で請け負っていただいて、大豆をつくっていただいてきたわけです。

 しかし、昨年の、我々の農業者戸別所得補償対策、モデル事業でございましたけれども、変わりました、導入いたしました。それで、従来のペナルティー措置というのは廃止いたしました。そして、いろいろなところで申し上げておりますけれども、メリット措置ですね、需給調整に参加した者に交付金を交付するというメリット措置により需給調整を誘導する方針に転換いたしました。そして、しかしそごがあるということで、二十二年産に限り、ペナルティー措置の廃止を受けて激変緩和措置を講じております。それなりに、急に変わらないようにという配慮はしたつもりでございます。

 このような経過を踏まえまして、二十三年について、今お配りいただいている表ですけれども、このペナルティーということからメリット措置ということで、未達成県へのペナルティー措置や激変緩和措置を行わずに、需要に応じた生産を推進するという観点から、原則どおり、各都道府県の過去の需要実績を基礎に配分しております。この点、このように明々白々な不公平のような形になっていることは重々承知しておりますけれども、この点を御理解いただきたいと思います。

 それで、今挙げられました、未達成県であるにもかかわらず生産数量目標がふえているという県は、茨城、栃木、静岡、奈良、岡山、高知というので、一番ひどいのは、ひどいというか逆のものは、佐賀、山口、それから富山ですか、そういったところだというのは御指摘のとおりでございますけれども、詳しく数字を見ますと、先ほど、ペナルティー措置ということで未達成県には多くやったというのですね、ところが、そういうことで抜けているんですね。

 県は、例えば茨城県になりますと、実際の作付面積がずっと減って、九・一%減になっているんです、実際のものは。これは形式の数字でして。ですから、必ずしも未達成県を優遇するような形にはなっておりません。こうやって政策を変えるときのちょっとそごということで、御理解いただけたらと思います。

今村委員 篠原副大臣の話はよくわかりませんね。あなたも今まで余りにもいろいろなことをやってきた、そういったものが、残滓が残っているかもしれませんけれども、少なくとも、私が言っているのは、さっきも言ったでしょう、いろいろな事情はあるでしょう、しかし、こうやって出た結果としては、非常におかしな結果が出ているじゃないですかと言っているんですよ。まずこれが一つ。

 そして、今、平成十六年から云々と言われますけれども、実は、民主党の農政でやはり大きく変わったのは、生産調整に参加した人は一反当たり一万五千円もらえますよ、そういうことでしょう。そうすると、やはり、米をつくるかあるいは米以外のものをつくってやるかということがあって、米以外のものをつくってもお金をもらえますよ。そうでしょう。だけれども、少なくとも、やはりこうやって、米をつくる枠をこれだけ減らされてしまうということは、非常に農家にとって選択の幅を失わせてしまう、そういう問題もあります。ですから、一万五千円云々をやる前の生産調整の考え方と、やはりこうやって、一万五千円やるという話の中での生産調整への取り組みの考え方は、ある意味では変えていただきたいと思うんですよ。

 そして、今言ったように、実態とは違うと言われますが、では、今、茨城県なら茨城県、九%も減らしていると言っているんですけれども、それでも実際はオーバーしてつくっているでしょう。そこはどうなんですか。

篠原副大臣 オーバーして作付したりしているところには、生産調整に参加されない、農業者戸別所得補償の制度に参加されない方のところには一万五千円の固定支払いが行きませんので、それは、来年、再来年と回を重ねるごとに、こういったギャップはなくなっていくんじゃないかと思います。

今村委員 私が言っているのは、あなたが九・一%も減らしている、実態はと言われたから、本当にそうですかと言っているわけですよ。今言われたように、参加しない人に金をやらないなんて、そんなことは私だってわかっていますよ。

 九%も減らしていると言われたけれども、それは何のことですか。

篠原副大臣 実際の作付面積と生産数量目標を換算した面積とは違うわけです。ですから、前の二十二年産主食用水稲の作付面積と比べた場合、削減率は高くなっているわけです。

今村委員 よくわかりませんね。御本人もよくわかっていないんじゃないかと思います。

 いずれにしろ、これは押し合いへし合いみたいなことになっちゃうんですよ、茨城県なら茨城県でも。急にこうやって、今までたくさんつくっていた人が、おれも生産調整に参加すると言ってきたって、その分、では、ほかの人の分までまた結局減らさなきゃいけないようなことになってきますから。だから、そこの調整の問題があることは私もわかっているんですよ。しかし、そこは、逆に言えば、あなたも言われたように、生産調整に参加しなければ、米をつくっても一万五千円はもらえない。しかし、生産調整に参加しなくても、ほかの作物をつくったって金をもらえるわけでしょう。そうでしょう。

 それとか、例えば、食用米以外のいろいろな、米粉米とかなんとかも、そういったものには思い切って金をつけているじゃないですか。だから、思い切ってそっちに行ってください、そして、この不公平を直すためにはこうやってやることがやはり大事なんですよ、そうすることによって、そういう人たちが一緒に入ってきても、お米の価格が上がっていけば結果的には懐も豊かになるじゃないですか、そういうメカニズムにぜひしてくださいよ。

 これは、もうここで細かい話をしてもしようがないので、とにかく、この映りが全国の農家から見たときにどう思われますかということですよ。何をやっているんだ、民主党農政というのはこんなにひどいのかということになりますよ。それを指摘しておきます。

 そしてもう一つ、もう時間があれなので少し先に進みますが、これに関連して、今回からいわゆる棚上げ備蓄にすると言われておりますね。それに対して、五年間分として年間二十万トンになるわけでございますが、この扱いをどうするのか。ここのところは、これをうまく、知恵の出しどころで、こういったところをできるだけ平準化して、そしてその二十万トンなりなんなりをこの調整に使う、政策誘導することに使うということをぜひ検討してもらいたいと思いますが、それはいかがですか。

篠原副大臣 ちょっと細かいことになりまして御理解いただけないところもあったようですので、ちょっと説明……(今村委員「いや、もう時間がないから先の話にしてください、今の話」と呼ぶ)いいですか。

 それから、備蓄米があるじゃないかと。備蓄米について、こういった不公平措置の是正に使ったらどうかという御提案だと思いますけれども、今、備蓄については概算要求中でございます。百万トンの棚上げ備蓄方式ということで、二十万トンずつ毎年入札でもって買い入れることを検討しております。出来秋前の契約でございます。これは、産地におけるJA等が販売戦略を考えながら対応していただくものではないかと思います。そういうようなところで対応可能かといえば、可能ではないかと思います。

今村委員 今あなた、入札と言われましたけれども、では、この入札に、またこうやって守らない人が安く入札を入れたらどうなるんですか。またさらに褒美を上げるような話になっちゃうじゃないですか。だから、これはやはり貴重な枠ですから、そこを知恵を出してくださいと言っているわけですよ。どうですか、もう一回。

篠原副大臣 今まだ予算要求中でございますし、その結果を受けて、各県に周知徹底を図った上でやってまいりたいと思います。

今村委員 では、予算が認められればこれを調整に使うということで理解しますが、いいですね。

篠原副大臣 そこまで今の段階で断言できかねます。

今村委員 ぜひそういう方向に持っていかれるように私から強く要望しておきます。

 とにかくこの問題は、くどいようですが、本当に皆さん一生懸命やっている人がなるほどねと思うようにしないといけないと私は思っているから言っているんです。余り役人の論理は使わないでください。お願いします。

 次に、先ほど言いました、米が随分下がってきたと言っております。いろいろな勘定をしてあると思いますけれども、今の時点では、例えば十月の段階で二千円下がったということでいくと、変動部分に要するお金は、本来、千二百円ぐらいで組んでいた、しかし、それが二千円下がると八百円足が出るわけですね。そうすると、これをざっと勘定すると七百億ぐらいショートすることになるんですよ。しかし、実際は、生産調整に参加していない人が予想より多いから、全体の、当初のもくろみよりも、固定部分にしても変動部分にしても、払うお金が少なくなったからこの七百億なりなんなりもしのげるということのようでございます。これ以上下がると本当に足が出ますよね。

 こういった認識はどうですか、今私が言ったことについては。

篠原副大臣 まだ数字等はきちんと明らかになっておりませんけれども、基本的におっしゃるとおりだと思います。

今村委員 数字が明らかになっていないというより、もうちょっとそこはぴりっとしておいてくださいよ。これだけお米が下がって、全国の農家が本当に心配しているじゃないですか。だから、私が今言ったように、たまたまこうやって生産調整に参加する人が少なくなったからその分余ったお金でこれをしのげるんだけれども、そうじゃなかったら、七百億も金が足りなくなったということは大変なことですよ。そうでしょう。しかも、これは固定部分の金をこっちに運用するような話になってくるでしょう。そうすると、初めから組んでいるところの、米で三千三百七十一億やって、定額部分で千九百八十億、変動部分で千三百九十億といったこの前提だって崩れていくじゃないですか。

 何を言いたいかというと、そういう予算上の問題もあるし、米が千二百円ぐらい下がるだろうと見ていたら、これが何で二千円も下がったのか、やはりここのところが今の農政の一番の問題だ、これはもういろいろな方から指摘されてきていると思うんですね。

 これは、ことしはたまたまできが悪いから、不作だからこれで下げどまっているのかもしれないけれども、例えば来年普通どおりにできたら、もっとこれは下がる可能性がありますよ。この仕組みについてどう考えられますか。もうちょっと、やはりこれはやめた方がいいんじゃないかと思いますけれども、その評価を言ってください。

篠原副大臣 ことしはモデル事業ということで、いろいろ制度においても不備があると思います。そうしたことを踏まえまして、来年度にもっとしっかりした制度設計をしたいと思っております。

今村委員 よく、そういうごまかしを言っちゃだめですよ。だって、来年度の概算要求だ何だで似たような考え方を出しているじゃないですか。それを何でもう一回チェックしてと言うんですか。それだったら、今言ったことを踏まえて概算要求を全部やり直してくださいよ。

 現実に、こうやって千三百九十一億、変動部分で組んでいる、これじゃ足りないじゃないですか。来年度に似たような話で組んでいるわけでしょう。それを全然認めないで、ことしのままというのは、これは極めてのうてんきだと思いますよ。今、幾らぐらいになるか計算していないなんと言われたけれども、緊張感というか、使命感が全然ないとしか私は思いません。

 そして、きょうは財務省、来ていますか。政務官、今お話を聞いてわかられたと思いますけれども、この仕組みは、もう基本的には下がれば下がったほど補てんするということですね。極端な言い方をすると、米がただになっても補てんするということになるんですよ、そういうことでしょう。こういうことを財政当局としてはどう考えてあるのか、ちょっと御意見をください。

吉田大臣政務官 まず一つ申し上げたいのは、ことしの予算がこれで足りるのかということにつきましては、今村議員おっしゃるように、変動部分と固定部分、全体で現在のところ予算の枠内でおさまるという認識を今も持っているということでございます。

 それから、今後については、農林副大臣おっしゃったように、今概算要求を出していただいております。ことしの米の販売価格の低下を受けて、来年度、標準価格を一体どういうふうに設定するか、そこも含めて、全体の制度を農水省、財務省、力を合わせて今再検討しようということになっていますので、この予算編成の過程の中でそれを決定してまいりたい、こういうふうに考えております。

今村委員 特にこれは制度設計の話になってくると思いますが、今この変動部分の価格を補てんする、実際の価格とのですね、その水準が十八、十九、二十、三年間の価格で決めていますね。これは、過去三年ということですからこうなっています。そうすると、来年は、これをどうするのかということになってきますね、あるいは再来年はどうするのか。

 米がどんどん下がっていったら、過去三年ということになったときには、今のこの水準が下がっていくわけですよ。そうすると、もらっていく額は減りますね。例えば、極端なことを言うと、わかりやすく言いますが、一万五千円していた、それが一万円にどんと落ちた、それが三年間続いた。そうしたら、もう三年後にはゼロになりますね、計算上は。そういうことでしょう。

 これを、前回の委員会でもちょっとそういう議論をしたら、それは定額部分でカバーするんだとかなんとか筒井副大臣は言っておられましたけれども、いずれにしろ、そういった非常に、それを丸々見ようとすれば財政が拡大する、しかし、それをスライドして補償の水準を下げていけば、やはり農家は手取りが減ってだまされたということになるわけですよ。そういう問題があるわけですから、この辺の制度設計、ぜひもう一回抜本的に見直すということが必要だと思いますが、これは、大臣あるいは副大臣、どうですか。

篠原副大臣 今村委員は、多分、前の米の政策で、ナラシの政策でもって、常に、前の年の価格、どこの価格と比べるかというのは変動するということを前提に今御質問なさっているんだろうと思います。そこも、同一のところもおわかりいただいていると思いますけれども、変動支払いについてはそういう部分がありますけれども、固定支払いについては、一万五千円固定で変わることがありませんので、これをもって皆さんに参加していただくということで、米の過剰が抑えられ、そして価格が下がるということがなくなるんじゃないかと我々は思っております。

今村委員 副大臣、あなた、申しわけないですけれども、もうちょっとシャープになってください。

 さっきも言ったでしょう。下がった分のこれを、じゃ、固定部分に振りかえていけということも、案はあるんですよ。筒井副大臣も何か似たようなことを言われました。それをやったって、結局、財政が膨らむのは一緒じゃないですか。そういうことでしょう。私はそれを言っているんですよ。

 この辺についてはもうこれでやめます。もう一回よく、とにかく制度見直しをしてください、抜本的に。

 次に、きょう外務省がお見えになっていますので、TPPに関してちょっとお伺いしたいと思います。

 きょう菊田先生がこちらにお見えになっていますが、TPPは、オバマ大統領が昨年の秋にサントリーホールで、これは十一月十四日だったと思いますが、そこで初めて出てきました。そして、ことしの所信表明演説で菅総理が具体的にかなり言われたわけですね。

 そうしますと、何か非常に、十一月に出てきて、もう所信表明でぽんと出てくる。余りにもこれはでき過ぎたストーリーになっていると思いますが、この辺の経緯なり、なぜ急に出てきたのか、その辺をちょっとお答えください。

菊田大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 これまでの御指摘のような各国の動き、経緯についてお話をさせていただきたいんですけれども、お時間よろしいですか。(今村委員「ええ、どうぞ。簡単に言ってください」と呼ぶ)はい。

 昨年の十一月に開催されましたAPECのシンガポール首脳会談におきまして、地域統合のあり方についての議論の中で、TPPへの関心が表明をされたわけであります。その後、APECの枠組みの中で、米国を初めとする各国との間でTPPについての議論が行われてまいりました。そして、先般の横浜APECの首脳宣言におきまして、TPPは、ASEANプラス3やASEANプラス6とともに、アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPへの実現に向けた道筋の一つとされたわけであります。

 御案内のとおり、我が国は、先般、包括的経済連携に関する基本方針におきまして、FTAAPに向けた道筋の中で唯一の交渉が開始をしているTPP協定については、まずその情報収集を進めながら対応していく必要があるということでございまして、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始することを決定したところであります。

 唐突にという感想をお持ちの国民の皆さんも大勢おられるということは承知をいたしておりますので……(発言する者あり)ええ、国会議員の皆さんからも御指摘をいただいておりますので、それは、十分に情報収集を進めながら、皆さんと御議論いただきながら進めてまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

今村委員 民主党政権ができてから外交関係で何が起きたかというと、まず第一に、インド洋の給油派遣をやめましたね。そしてその次には、アメリカは沖縄から出ていってくれじゃないけれども、県外に基地は持っていきますということを言ってきた。

 アメリカは、イラクで五千人以上、アフガニスタンで千人以上、若い兵士が命をささげているんですよ、この極東の平和のために。なのに、日本は何だ、そういう思いがアメリカに絶対あったと私は思いますね。(発言する者あり)それは、私は思いますと言っているんですよ。だから、その穴埋めに、このTPPでもって何とか御勘弁をということはないんですか。これが一つ。これはもうあなたの考えで結構です。私はそんな感じをしております。

 もう一つ、このTPPはいろいろな、例えばお隣の韓国だってFTAを中心にやっていますね。ほかの国もいろいろな動きをしている。日本も、なぜこのTPPというまさにアメリカ組の中に入ってやっていくのか。そうでなくて、例えば、EUのグループだとかBRICsのグループとか、あるいはインドだとかありますね。そういうところといろいろな多角的な取り組みをすべきだと思いますが、今後、こういう、まさに連携のとり方、アライアンスの組み方ということについて、外務省は、このTPPに入ることで、アメリカ組でもうさようならということでいいんですか。そこをどう考えられますか。

菊田大臣政務官 先ほども申し上げましたけれども、我が国としては、この交渉に参加をするということを決めたわけではございません。ですから、国会でも御議論をいただきながら、そして各国から情報を集めまして、慎重に対応していくべきだ、基本的にそういうふうに考えているところでございます。

 また、外交というのは内政と深く結びついている。内政が外交にはね返ることもありますし、外交から直接、内政にいろいろな影響を与えるということはこれは当然でございますので、委員の御指摘の御意見は十分に承りますが、私としては見解は別にあるということでありまして、このTPPということは、日本の国の形、そしてこれから先の日本を本当にどうしていくのかといって考えていく中で、TPPがアジア太平洋の新たな地域経済統合の枠組みとして大きく発展していく可能性がある。こういう意味において、我々も情報の収集にまずは努めていきたいというふうに考えております。

 以上です。

今村委員 これからこの問題についてはいろいろなことが出てくると思います。

 きょうは松木政務官がいらっしゃいますから、せっかくですから、ちょっと質問をさせてください。

 今、政府が方針を決めて云々と言われましたが、党の提言と政府の方針、これはかなり違うんですね。(松木大臣政務官「TPP」と呼ぶ)そうです、TPPの取り組みについて。

 例えば、TPPへの対応で、政府の基本方針は、「(TPP)協定については、その情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。」となっているんですよ、政府は。

 ところが、党で提言されたでしょう。党で提言されたのは、「情報収集のための協議を行い、」云々となっているんですよ。つまり、政府はもう関係国との協議を開始する、しかし党の方は、情報収集のための協議だということになっていますが、ここはどうなんですか。

 党の方で活躍されていると思いますので、御意見をください。

松木大臣政務官 一応、政務官ですので、こっちなんですけれども。

 情報収集でしょう。私はそう思っています。

平野副大臣 党の提言は、情報収集をして、最終的にTPP交渉に参加するかしないかの判断をする、そういう趣旨になっています。

 先ほど外務省の方からも御答弁がありましたけれども、今、日本はまだその交渉に参加するともしないとも決めているわけではありません。

 先般定められた包括的経済連携に関する基本方針においては、TPPについては、「情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を開始する。」ということでありまして、ここの点は、国会でも何回も答弁しておりますけれども、関係国との協議というのは、情報収集をするといったことも含めまして、TPP交渉に参加するかどうかということの判断をするための協議を進める、こういう位置づけになっているということで、両者にそごは全くございません。

今村委員 私は、この基本方針を見る限りは、しかしそうはいっても、もうかなり具体的に踏み込んでありますよね。方向が非常に出ていると思います。

 それで、最後に大臣、ちょっと通告の中身にはございませんが、これは一般論でございます。

 ことしも秋ですね。いろいろな秋祭りがありますね。大臣も行かれたと思いますが。

 TPPはこうやって、関税とか貿易とかだけの問題じゃなくて、いろいろな制度から何から大きく変わってくるという中で、今後、私たちの集落とかふるさととか、そういったものがどうなっていくのか。そういう中でも、お祭りなんかはもうやっていくことができなくなるような感じがしますが、こういったお金だけの問題に限らないTPPの与える影響というものについて、どのようにお考えですか。

鹿野国務大臣 基本的に、TPPに参加するかしないかという判断は、やはり国民全体の議論の中で判断をしていくべきじゃないか。それは、どういう日本の国、二十一世紀の形をつくるかというようなことにかかわる問題だと私は思いますので、そういう意味で、国民の人たちに情報をしっかりと提供して、そして国民の人たちの判断も仰ぎながら、参加するかしないかというものを判断していかなきゃならない大きな重要な課題である、こういう認識を持っているところであります。

今村委員 ぜひ、日本の祭りがちゃんと続くように、大臣、しっかり頑張ってくださいよ。申しわけないですけれども、経済産業大臣の方が、TPPについては、どうもやはりおかしいじゃないか、そう簡単にいかないぞという感じで我々は受けとめています。大臣もしっかり、そうはいかないぞということで頑張っていただくようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。

山田委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 きょうは閉会中審査ということで、御苦労いただきました委員長並びに両筆頭に感謝申し上げたいと思います。またやるべきときがあれば、ぜひ閉会中でもやっていただけるようにお願いをしたいと思います。

 冒頭、鳥インフルエンザの問題と韓国における口蹄疫の問題、二つあわせてお聞きをいたしたいと思います。

 これから、これもまた季節的に容易ならざる時期にも入ってまいります。現状と、それからとられた対策、そして、特に口蹄疫については、今回、宮崎の問題がどのように生かされているのか、この点もあわせてお答えをお願いいたします。

松木大臣政務官 では、ちょっと細かくお答えさせていただきます。

 島根県における高病原性鳥インフルエンザの発生においては、今回初めて、確定診断を待たずに、症状等を考慮して疑似患畜と判定をしました。そして、十一月二十九日の夜、農林水産省の対策本部を開催して、防疫方針を決定させていただきました。防疫方針を踏まえて、十一月三十日に、農水省の防疫専門家及び動物検疫所の緊急支援チームが派遣されました。そして、同日、私も現地に赴いて、国と県の緊密な連携を確認させていただきました。

 十二月二日、移動制限区域内における周辺農場、これは四農場ですけれども、その清浄性確認検査の結果、すべての農場で陰性を確認し、これらの農場の卵の出荷再開を決定させていただきました。そして十二月五日には、焼却、消毒を含めて、発生農場におけるすべての防疫措置を完了ということになっております。移動制限区域内での新たな発生が認められない限りにおいて、十二月二十七日の午前零時に移動制限が解除される予定でございます。

 また、今回のウイルスについて、H5N1亜型の強毒タイプであることを確認したところでありますし、全都道府県において警戒を強化することが必要であるというふうに考えております。

 農林水産省としましては、引き続き、気を緩めることなく発生予防に全力を挙げる考えでございます。口蹄疫のことも踏まえて、なるべく早く、しっかりと対応をとっていくということを考えました。

 以上です。

    〔委員長退席、梶原委員長代理着席〕

篠原副大臣 韓国の口蹄疫については私の方からお答えいたします。

 韓国の口蹄疫は、六月に一たん終息したんですけれども、十一月二十九日に、慶尚北道の安東市におきまして養豚農家で口蹄疫の発生が確認されたことを公表しております。

 これを踏まえまして、我が国では、口蹄疫に対する警戒をさらに強化する必要がありますので、全都道府県に対して、畜産農家への指導を徹底するよう要請いたしました。これが一つでございます。二つ目は、動物検疫所に対しまして、水際措置の徹底を指示しております。

 十二月六日現在でございますけれども、三十一件発生しておりまして、殺処分頭数も約十万頭を超えていると聞いております。

 したがいまして、我が国では、韓国における口蹄疫の感染が、また我が国に参りまして拡大してはよくないので、十二月六日付で、畜産農家向けのパンフレットを作成いたしまして、全都道府県、畜産関係団体に送付して、農家にこれを配付するように要請したところでございます。

 引き続き、全国の都道府県とも連携し、口蹄疫の発生予防に全力を挙げてまいりたいと思っております。

石田(祝)委員 口蹄疫の問題は、これからまた午後、参考人の御意見も聞きますけれども、その中でやはり、いろいろな指針とかそういうものが、県までは行っているけれども、生産農家のところに十二分に伝わっていなかった、こういうことが書かれてございました。

 ですから、今回も、生産農家のところに配った、そこまで行くようにしている、これはこれで結構ですけれども、ぜひ、こういうものは、情報伝達すると、一番最前線のところに伝わっているかどうかというのは確認しなきゃいけないんですね。

 ただ流せば、どんどんと水が高きから低きに行くようにいくだろう、それを思ったら間違いなので、パンフレットをつくった、チラシをつくった、では最前線の農家に副大臣が一本電話して、ちゃんと来ていますか、こういうことになっていますよと、これは確認すれば一発でわかります。ぜひ、そういう点もお願いをいたしたいと思います。口蹄疫のとうとい犠牲が無駄にならないように、二度と起きない、防疫体制をしっかりする、こういう点でぜひ御奮闘をお願いしたいと思います。

 ちょっときょうは時間が余りありませんので、ぜひ端的にお答えいただきたいんですが、元気な日本復活特別枠で畑作物の所得補償が、どうしてですかね、B判定になりました。A、B、C、Dに、具体的に最終決定がなされているかどうかということはわかりませんが、このうちの畑作の所得補償交付金約一千八十億、これがB判定だと。そういう中で、条件がついていました。対象作物、単価、加算措置、こういうものについて見直しを行え、これが条件だ、こういうことになっています。

 現実問題として、もう対象作物を発表していますよね。単価も発表していますよね。これは見直しを現実にできるんですか。もう数字まで発表して、計算式まで出してやっているものを見直しと言われて、これはどういうふうになさるんでしょうか。

    〔梶原委員長代理退席、委員長着席〕

篠原副大臣 十二月一日に開催されました元気な日本復活特別枠に関する評価会議におきましては、石田委員御指摘のとおり、我が省は四事業を提出しておりましたけれども、そのうち三つがBで、一つがCという評価が決定されたところでございます。

 それで、農業者戸別所得補償の中の根幹をなします畑作物の所得補償交付金については、予算編成過程におきまして、ほかのものもそうなんですが、事業仕分けにもございます、こちらからいろいろ、この事業じゃないですけれども注文がついておりますけれども、そういったものを、具体的な配分額は予算編成過程で決定されることになっております。我々はそういった交渉を、交渉というか、財務省とやっているところでございます。農林水産省といたしましては、施策の実現に必要な予算確保ができるよう取り組んでまいる所存でございます。

 この点につきましては、大臣が就任当初から、規模加算を加えるべきだということをおっしゃっておられますし、その検討もしておりまして、先ほど今村委員から、単価についてもうちょっと考えたりした方がいいんじゃないかという御指摘もあります。そういったことをすべて含めまして、予算編成過程できちんと対応してまいる所存でございます。

石田(祝)委員 私が申し上げているのは、ソバとか菜種とか、そういうものについては、ちょっとおくれてきましたけれども数字が全部入ってきましたよね。生産費が幾らで、全算入生産費がこれだけ、コストがこれだけと、全部数字を出しているじゃないですか。それと、作物についても、明確に、畑作でやるのはこれとこれとこれだとはっきりさせているわけですね。そういうものに注文をつけられて、これからの過程の中で交渉するとは、どうやってやるんですか。

 要するに、見直せということは、作物の数を減らせということ、単価を下げろということ以外ないわけですよね。加算措置は、極端に言えばもうやるなと。これはもともと、八月の概算要求段階では入っていませんよね。八月の段階では、たしかやらないというお考えだったと思いますが、大臣がかわられたのでお考えが新たになったかもしれませんけれども、そういう条件をつけられて、現実問題として、これはできるんでしょうか。作物を減らせますか。単価を数字まで出してやっているのに下げられますか、どうですか。

篠原副大臣 我々が政権をとってから初めての本格的予算でございます。例年ですと、八月三十一日に概算要求を財務省に提出いたしまして、それから年末にかけてずっと交渉というかをしていくわけでございますけれども、ただ、そういった過程でいろいろなところを、骨格においてはそれほど変わりませんけれども、微調整は例年も行われておりますので、その限りにおいて、調整されてしかるべきだと思っております。ですから、これはまだ定かではありませんけれども、対象作物とか単価の水準とかいうのは大幅に変わることはないと思っております。

 それから、加算措置につきましては、規模加算というのは入っておりませんでしたけれども、そのほかの加算措置というのは、こういうことをやったらということで入っておりますので、加算の方法というのは予算編成過程で変わってもしかるべきものと思っております。

石田(祝)委員 余り時間がないのでこればかりいきませんけれども、そうじゃなくて、ソバ、菜種は十一月二十四日ですよ、出したのは。八月じゃないですよ。八月の概算要求に出して、それから変わるなんということじゃないんですよ。十一月二十四日ですよ、出したのは。それを篠原さんがごまかしちゃいけませんよ。八月の概算要求のときの話じゃないですよ、これは。そこでは決められないからデータがそろったら出しますと、それで出てきたのは十一月二十四日じゃないですか。もう一度答えてください。

篠原副大臣 先ほどもお答えしたと思いますけれども、これは販売価格と生産費の差を当面のところ補てんするということにしておりますので、生産費の調査が明らかでなかったもので、それでソバ、菜種については後から決めました。

 しかし、ことしはそういうふうにするかどうかはまだ決めておりませんけれども、例えば、先ほど網屋委員から品目別の自給率がありましたけれども、油糧種子についての自給率が少ないじゃないかということでしたら油糧種子を特に重点的に生産してもらわなきゃならないという政策判断があった場合は、最低限、販売額と生産費の差は補償しますけれども、それよりも上乗せして単価を決定するということもあっていいのではないかと思っております。とりあえずのメルクマールとして発表しただけでございまして、今後の過程で変わることもあっても私はいいのではないかと思っております。しかし、大幅に変えるということは現在のところ考えられません。

石田(祝)委員 もうこれ以上申し上げませんけれども、せっかくなさろうとしているわけですから、これは目玉の政策なんですよね、しっかりやってほしいという意味で言っているんですよ。大幅に変わることはないというのは、これはだれが考えたって、お金がない中で注文をつけているんですから、ふやす方向に変わるなんということはだれも思っていませんよ。

 だから、私は、明示された作物、単価が、下げることができるんですかと。ここまで米とリンクをしてやろうとしている中で、現実問題として、自分たち農家の立場からすると、次どうしようかというときに、では一体、作物、これは落ちるかもしれないとか、単価が下がるかもしれない、これでできますか。大幅に下がるかどうかわからないというのは、これはそのとおりだと思いますけれども、そういう心配を持ちながら農家の方は見ているということを、ぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 続きまして、これは大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、最近の総理の御発言で、どうなんでしょうか、農地法を改正しなくちゃならない、こういうことをたびたびおっしゃっている。これは、どうも篠原副大臣がしっかり総理にレクチャーされたかどうか知りませんが、若干変わってはきましたが、農地法を改正しなきゃいけないというのは、どこのどの部分を、まあ総理のことをぜひそんたくして御発言をお願いしたいんですけれども、一体、どこをどう直さなきゃいけないと思って総理が発言しているのか。これは総理もこのまま余り言うと引っ込みがつかなくなりますよ、本当に。これは大臣、総理にぜひ御注意もいただきたいと思うんですが、昨年、民主党の要求も入れて改正をしたばかりでありますが、ほとんどのことが今できる形になっていると思います。これについては、大臣、いかがお考えですか。

鹿野国務大臣 今、先生申されたとおりに、この農地法の改正は、昨年の段階で抜本改正が行われました。特に、民主党も一緒になって、当時は野党でございましたけれども、参加をして、そして改正をいたしまして、いわゆる大幅な見直し等も行われたわけであります。

 そういう中で、菅総理も、この農地法の問題も必要あらば改正をというふうな表現で言及しておられたわけでありますけれども、私からも、総理に対しまして、昨年の段階でこの抜本改正が行われたというようなことについてお話をいたし、また、実質的な内容等々につきましても説明をさせていただいたところでありますけれども、そういう意味で、総理自身そのことはインプットされたと思っておるわけであります。

 どういうような点について認識を新たにしているのかどうかというようなことにつきましては、まだ総理と私の間においてはそういう話はなされておりませんが、私どもの方からは、総理に対しまして、昨年来のこの改正について説明はさせていただいたところでございます。

石田(祝)委員 総理がこれ以上いろいろおっしゃると、一般法人の農地所有というところを考えているんだなと、これは皆そう思いますよ。ですから、これは総理が意図せざるところかもしれませんので、誤解を招くので、余りおっしゃらない方が私はいいんじゃないのか、このことだけを申し上げておきたいと思います。

 続きまして、戸別所得補償についてお伺いいたします。

 今、今村議員からも、県間配分についてのお話がありました。来年、二十三年産米については、私たちが危惧していたように八百万トンを割る、こういう数字が出されたわけであります。

 ここで私がお伺いをしたいのは、平成二十二年につきましては、これは米のモデル事業だということで予算措置でやる、当然そういうことになったわけでありますが、これは本来、数千億円もかける事業でありますから法律の根拠が要るのではないか。

 要するに、前の政権のときと百八十度変えたわけですね。いわゆる、つくっちゃいけないよというものから、これだけつくっていいですよと。これは裏返せば同じことなんですけれども、そこにメリット措置を加えた、そしてペナルティーを科さない。一年目については予算措置でやらせてください、モデル対策だから、こういうお話でしたが、今回、この都道府県配分も行われて、それで七百九十五万トンとなりました。

 この数字というのは、法律のどういう根拠でやられているんですか。

篠原副大臣 毎年同じようにしておりますけれども、平成二十三年産米の都道府県別生産量の算定はいろいろ配慮いたしました。

 まず一つは、作柄による生産量の増減分が算定上影響しないように、各県違った品種をつくっております、それから作況指数が違います、それが平均化するように。それから、先ほど今村委員から御指摘がありましたけれども、過剰作付によって生産量が増加している、これが算定上有利にならないようにという補正を……(石田(祝)委員「いや、どういう法律に基づいているんですかという質問です」と呼ぶ)食糧法の根拠で毎年やっておるものでございます。

石田(祝)委員 毎年ということは、自民党政権、自公政権時代からの枠組みだと。だけれども、まるっきり変えたわけでしょう。要するに、つくっちゃいけないよというものから、これだけつくっていいですよ、そしてそれにお金も出しますよと。百八十度変えているじゃないですか。それを、一年目はモデル事業だからということで予算措置でぜひやりたい、こういうことだったんですよね。

 そういうことは、では法律はもう要らないということですか。今の法律でできる、そういう篠原副大臣の御答弁に聞こえますけれども、それでよろしいんですか。

篠原副大臣 石田委員の御指摘のとおり、五千六百十八億円の予算措置でございます。それからこれをふやしていくというのでございますから、こういったことを安定的に実施していくためには、私は法律があってしかるべきだと思っております。

石田(祝)委員 そうすると、一年目は私たちも、総選挙を、戸別所得補償をやる、こういうことで国民の審判を受けて政権をとられましたから、予算措置でこれはやむを得ないなと。しかし、山田大臣、また前の赤松大臣も、これについては通常国会に法律を提出する、こういう御答弁だったように私は記憶をいたしております。鹿野大臣に交代をされましたけれども、これは、さらに今回畑作にも広げる、漁業にも広げる、林業にも広げる、そういうお考えのようですから、国民の血税を数千億円にわたって使う話が予算措置だけでいいのか、法律の裏づけがなくて、そういうお金の使い方がいいのか。これは、本来でしたら、民主党の皆さんがその立場でおっしゃるべきような話だと私は思います。

 これは大臣にお伺いしたいんですが、この戸別所得補償、法律の裏づけのあるように、通常国会に法律をお出しになるんでしょうか。

鹿野国務大臣 山田前大臣の答弁の中におきましても、法案を提出する、こういうふうなことを明言されておられたわけでありますけれども、私自身も、この戸別所得補償制度というものを安定的に実施していくためには法律が必要だ、法律がやはり不可欠だ、こういう認識を持っておりまして、この制度のさらに安定した状況をつくり上げていくためには法案提出をしてまいりたい、こう思っております。

石田(祝)委員 これは三代の大臣が同じお考えだ、法律が要る、こういうことで御確認をさせていただきました。

 続いて、お米の値段の問題でお伺いをしたいと思います。

 これは、きょうの新聞を読みますと、「米価格下げ止まり」、こういうことでございます。下げどまりですから、上がるということにはなっておりませんで、下がったまま、こういうことでございます。

 それで、予算の話も先ほど同僚議員からも出ましたが、まず、この変動部分のお金を出すときに、一体いつからいつまでの相対価格でお金をとるのか。また、現在は、予算として千三百九十一億円が出されておりますけれども、一体幾らまで米の価格が下がると千三百九十一億円を超えるか、いわゆる差額を支払うということで当初予定している千三百九十一億を超えるか。お米の値段について、この二点をちょっと教えてください。

篠原副大臣 まず、期間の問題ですけれども、本来ですと、年間を通じてということになります。ところが、ことしはモデル事業ということで実施いたしましたので、今のところですけれども、一月時点におきまして三月までの価格を想定いたしまして支払うことにしたいと思っております。

 それから、千三百九十一億円で足りるのかどうかと。先ほど今村委員からも御指摘がございました。我々、予算措置としては、固定支払いに百三十二万ヘクタールということを想定しておりましたけれども、それよりも少ないということが見込まれておりますので、余り金というかがございますので、それの方を変動支払いに充てまして、それを考慮いたしまして、今のところでいえば、十分賄えるのではないかと思っております。

石田(祝)委員 ちょっと私の質問にお答えいただいていないんですが。

 お米は、九月から一月までの相対取引の平均でしょう。それともう一つは、変動部分を出すときに、大体予定されているのは六十キロで千二百円分ということでしたが、千三百九十一億をもうこれで超えるというお米の相対取引の九月から一月までの平均価格、これは一体幾らですか、こういうことです。

山田委員長 篠原副大臣、正確に答えてください。

篠原副大臣 幾らまでかということまでは、きちんと計算は今はできかねております。

石田(祝)委員 どういうことですか、それは。ちゃんと質問通告もして、私は大体の数字をお聞きして質問しているんですよ。何も、知らないことを聞いているわけじゃないんですよ。ただ時間がたつだけじゃないですか。ちゃんと答えていただきたいと思います。

篠原副大臣 どのくらいのところまで耐えられるのかというのは前にも質問にあったかと思いますけれども、今の価格の点でも対応可能というふうに我々は考えております。幾らかということは、今ここではっきり申し上げられません。

石田(祝)委員 それはおかしいでしょう。予算があって、そして、大体みんな、それを六十キロ当たりの米価に転換したら千二百円だ、そういうことはもうわかっているわけです。

 それで、今、残念ながらお米の値段が下がって、下げどまりだけれども、あきたこまち、ひとめぼれとかは、銘柄を出して申しわけありませんが、大変下がってきている。だから、そのときに、相対取引の九月から、正確に言えば九月から一月までの平均でしょう、三月まで見越してこうですなんということじゃないんですよ。

 ですから、そのときに、一体幾らまでになったら、当初予定している千三百九十一億をオーバーする。オーバーしたものをどういうふうにカバーするかというのはありますよ、いろいろな考え方があると思いますから。そこまでは申し上げておりません。数字として、六十キロ、一体平均で幾らになったら千三百九十一億円の枠を超える、そこが分水嶺だ、その金額は幾らですかということを聞いているんです。

篠原副大臣 今委員御指摘の点、私は三月と申し上げましたが、間違いでございまして、出回りから一月まででございます。

 しかしながら、今幾らまでというのは、なるべく全部補償したいと思っておりまして、それでやりくりするように今図っているところでございまして、幾らまでという明確な数字というのは今ここでは申し上げられません。

山田委員長 篠原副大臣、九月から一月までの平均価格であることは間違いないわけだね。その価格が、今下がっている価格までは補てんできるということも間違いない。そして、それ以上は答えられないという。

篠原副大臣 はい。

石田(祝)委員 これは、払えるか払えないかということを聞いているんじゃないんですよ。それは、予算の中で工夫する、岩盤部分のところが思ったほどいかなかったから若干その分もある、全体的には農家の方に迷惑をかけない、そういうことだと思いますけれども。

 数字として、一体米の相対の平均価格が幾らになったら、当然予算を組むときに積算をして、ここまでになったらこうなるぞということはわかっているじゃないですか。だから、千三百九十一億というのは平均して六十キロ千二百円という換算をみんなしている、読みかえている。だから、一体幾らになったら千三百九十一億円の分水嶺を越えるんですかということを聞いているんですよ。払えるのか払えないのか、払えなかったら責任はどうだ、そんなことは一言も言っていませんよ。

篠原副大臣 大体のものはできるわけでございますけれども、今、固定支払いの一万五千円も、支払い手続を年内にやるということで交渉していることでして……(石田(祝)委員「そういうことを聞いているんじゃないんですよ」と呼ぶ)ですから、その残余の額というのもわかりかねておりますので……(石田(祝)委員「全然違うことを言われて、時間がないじゃないですか。そんなこと一言も言っていませんよ。私の質問を聞いているんですか」と呼ぶ)

山田委員長 篠原副大臣、今聞いている質問の趣旨はわかっていると思うんだけれども、数字として答えられるなら答えられる、それは答えられぬなら答えられないで、なぜ答えられないかという理由を述べればいいだけじゃないですか。

松木大臣政務官 ちょっと、ちゃんとした答えじゃないと言われればそうかもしれません。

 要するに、その値段を言っちゃうと、またそこで動きが出てくるじゃないですか。これ以上はちょっと言いづらいんですけれども。ぜひそういうことを御理解いただきたいと思います。お願いします。(石田(祝)委員「そういう問題じゃないんですよ」と呼ぶ)ぜひこれで御理解いただけたらと。

石田(祝)委員 ちょっとおかしいですよ。ここまで来て、予算を組んでいるわけじゃないですか。変動部分千三百九十一億と書いているじゃないですか。変動部分というのは、差額を払うわけでしょう、賄えなかった分を。それが一体、相対で幾らになるんですか。幾らを割ったら千三百九十一億円というもともと予定している金額を超えるんですか。これ、きのうはちゃんと数字を言っていましたよ、私のところへ来た人は。篠原さんにだけ言っていないんじゃないですか、そうしたら。どうなっているんですか、一体。

篠原副大臣 それは多分、積算上、千二百円程度の米価下落に対しても対応可能だということをお答えしたのではないかと思います。

石田(祝)委員 もう残念ながら時間が来まして、閉会中審査をやっていただいたことは、大変これはすばらしい、いいことだと思いましたけれども、せっかくお米の値段の問題で、変動でカバーしてくれるか、それを超えても、協力した我々にちゃんとやってくれるのかどうか、こういうことを農家の方は御心配なさっている。ですからこれは、私は、それで足りるか足りないかとか、よそから持ってくるのか持ってこないのかだとか、三月までに払えるのか、そういうことは一言も聞いておりません。数字としてどうなんですかということを私はお聞きしたかったんですが、どうも、岩盤のお話を出してきたり、ちょっと違うお話になって、残念ながら時間が来てしまいました。

 最後に一言だけ、これは時間はそういうことでちょっとお目こぼしいただきたいんですが、平成二十二年のこのモデル対策の検証がなされたのかどうか、一言だけお答えください。

鹿野国務大臣 加入申請件数が約百三十三万件で、前年の生産調整実施農家数百二十万件を上回る申請、こういうことであります。

 また、アンケート調査では、本格実施に向けた要望として、制度の骨格を変えずに安定した制度として継続すること、従来対策やモデル対策に比べ交付水準が下がらないようにという意見が最も多く寄せられたというところでございます。

 これらの教訓を踏まえて概算要求を行っているところでありますが、その後の状況の変化も踏まえつつ今後の制度設計を行っていきたい、こう思っておるところでございます。

石田(祝)委員 この最大の問題は、歴代の大臣が需給が締まると言いながら締まらなかった、そこのところの検証がどうなっているかということが最大のポイントだ、私はこのように思っております。

 以上、ありがとうございました。

山田委員長 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。

 まずもって、今の米の所得補償、このことについて私の方からも質問させていただきたいというふうに思います。

 それぞれ、固定の部分の一万五千円、さらには水田の利活用の部分、そのことが今農家の手元に支払われている、そういったことについては、本当に大臣を初め関係者の皆様に感謝を申し上げたい、こういうふうにも思っているところでございます。

 今、農家のところで、一時ほっとしているという状況にはあるわけでございますけれども、今質問にありましたように、これから、三月というふうにお聞きをしているわけでございますけれども、変動の部分がどういうふうになっていくのか、このことが今、農家のところについては大変期待があるわけでございます。

 一つ確認をさせていただきたいというふうに思うのは、十八年度、十九年度、二十年度の平均価格が一万四千八百円、これが基準であるという理解を私はしているわけでございます。そして、今現在の、十月の相対の価格平均が一万二千七百八十一円。この数字は間違いないのかどうか、ちょっと確認をお願いします。

篠原副大臣 間違いございません。

吉泉委員 間違いないというふうに今、副大臣の方からお聞きをしたわけでございますけれども、例えば、この十月の相対価格が一万二千七百八十一円。このまま一月のところまで行って、その平均金額がこの数字的なところになるとするならば、二千円ほどの変動の部分の差が出てくるわけでございますけれども、そういったことについては、今の変動の部分についての根拠、六十キロ当たりのいわゆる変動価格部分の額の出し方、それはいつごろ明らかになるんですか。今の現状段階で、このことの中で予算措置等を含めて準備がなされているのか、そのことも含めてお聞きをしたいというふうに思います。

篠原副大臣 一月末の出回り価格が判明するのは二月に入ってからでございますので、二月中旬ごろになろうかと思います。

吉泉委員 今、米価が少し下げどまったという状況でございますけれども、しかし、この金額からそんなに変わるものではないんではないかなというふうに思っています。

 だとすると、先ほど今村委員の方からお話ありましたように、大変数字的に、千二百円、さらには二千円、その差の八百円、そういったところの予算措置が本当に大丈夫なのか、こういったところが私どもも心配になるわけでございますけれども、そういったところを含めて、もう一度副大臣の方から考え方をお聞きしたいと思います。

篠原副大臣 先ほど、松木政務官の方が私にかわりまして微妙な点をお答えいただきましたけれども、数字が幾らまで下がったら、幾らの価格まで大丈夫かというようなことは今ここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、我々の今のところでは、このまま下げどまったならばきちんと対応できると思っております。

吉泉委員 農家の方の中では相当の下落をしているわけですね。前々もお話ししましたように、概算払いがやはり三千三百円落ちている。大変な数字の落ち方なんですよね。

 そういう状況の中で、相当の価格の部分の落ち方に対して、価格変動の部分が、やはり期待があるんですよね。そして、今の現状の中から、少し今お話ありましたように、なるべく早い段階でその積算、この部分について額がわからないというふうな部分は、それはあるんだろうというふうに思っていますけれども、しかし、例えばこういう数字の部分であっても、二千円の差が出てきてもその部分はきちっと払うんだという一つの強いメッセージをやはりお聞かせ願いたい、こういうふうに思うんですけれども、どうなんでしょうか。

篠原副大臣 その点は、前々からもお約束で、生産調整に参加した上で我々の農業者戸別所得補償制度に参画してやっていただく方には、変動部分もきちんと補償するということを申し上げてきておりますので、そのようにぜひともしたいと思っております。大丈夫だと私は思っております。

吉泉委員 わかりました。

 それでは、これから、私方、正月を含めて農家の方とお話もあるわけでございますから、そういった旨も含めて報告もさせていただきたい、こういうふうに思います。

 それと同時に、今の、各県の来年度の生産数量目標、この部分が発表になったわけでございますけれども、作付面積が百五十万ヘクタール。そして、作付して悪い米以外の部分を作付しなきゃならないという部分が百万ヘクタール、約四割。私は、もう限界を超えている、こういうふうにも理解をしているところでございます。

 この数字が、やはり少子社会の中でどんどんどんどん胃袋が少なくなっていくわけでございますから、もう限界だ、こういうふうに思うわけでございますけれども、副大臣としてはこの数字というものについてどういうふうに認識をしているのか、ちょっとお伺いさせていただきたいと思います。

篠原副大臣 ほかの農作物もそうですけれども、需要に合った生産というのが一番理想でございます。米の場合については、既に供給の方が需要より上回ってしまった。こういったのを是正すべく、農業者戸別所得補償というものを考えてきたわけでございます。

 ですから、我々といたしましては、米以外の作物でやっていけるところは、麦、大豆、菜種、飼料作物等をつくっていただきたいということを願っております。

吉泉委員 でも、生産者から見ると、あめとむち、こういう言葉もあるわけでございますけれども、やはり、一つの戸別所得補償というものがあめであって、そして生産調整、転作しなければもらえない、こういうものがむちであるような、そういうとらえ方をする農家が多いわけでございます。

 そういうところから含めると、今回の生産数量目標というものが、自分自身、東北の比例で選出された者でもございます。そんな面からいうと、二・二%という今回の昨年度に比較をして減らされた率、この部分が、東北は米どころでもございます、そういう東北のところについては、まさにこの二・二%よりも非常に多い、倍以上の県もあるわけでございます。

 これまで、今も質問もあったわけでございますけれども、それぞれ目標を達成しないところについてはペナルティー、さらには達成しているところについては優遇、こういった部分もこれまではあったわけでございますけれども、それは、それぞれ生産者または農協さんなり、そういう人方のいわゆる不公平感を感じないような形で、そういう一つが、生産者からも御理解をいただきながらやられてきたんだろうというふうに思っています。しかし、今回はすべて外したわけでございます。

 そして、こういう一律的な面の中で見えるわけでございますけれども、ここの割り当てをしたいわゆる根拠、さらには基準、そういったところについてもう少し詳しくお答え願えればというふうに思いますので、よろしくお願いします。

篠原副大臣 先ほど、今村委員の御質問も同趣旨だったのでお答えしたと思いますけれども、そこのところでちょっとわかりにくかったので、今簡単に御説明いたしますと、過剰作付をしたようなところ、それが得しているじゃないかというようなことを御指摘いただきましたけれども、そのようなことのないように算定したつもりでございます。

 先ほどちょっと申し上げましたのは、例えば、百ヘクタールが生産数量目標に見合う面積だと仮定します。それで、過剰作付をしていて、百十ヘクタールを作付していた、しかし、算定は百十。百からやりますから、それを九十に減らすという場合、もともとのところからすると十ヘクタールしか減りませんけれども、過剰作付の百十からすると二十ヘクタールも減らさなくちゃならないということで、決して過剰作付したところを優遇しているということではないということをちょっと申し上げたいと思います。

 大きなそごというのは、重ねての答弁になりますけれども、平成十六年に米政策を転換いたしました。そのときはペナルティーというのを翌年の面積に科していたわけですけれども、吉泉委員のお言葉をかりれば、あめとむちというふうにおっしゃっておりますけれども、あめの方を我々は重視いたしまして誘導するという形にいたしました。それで、ペナルティーというのを廃止いたしまして、各都道府県の需要量に見合った生産数量ということで、原点に戻って計算した結果でございます。

 これは、非常に客観的に計算いたしまして、各都道府県にも根拠を示しまして説明して、十二月一日に通知しております。

吉泉委員 でも、きょうも山形の方ではそれぞれ会議があるようでございますけれども、東北が大変高いんですよね、二・二%より。やはり東北は米主産県でございます。そんな面で、加味なりそういったところはなかったのか。いわゆる適地適産、こういう一つの判断というものはなかったのかどうか、そこのところをひとつお願いします。

篠原副大臣 吉泉先生の今の数字は、先ほど今村先生が配られたペーパーが私の前にあるわけです。青森が一・六%減、福島は〇・四%減、それ以外はみんな二・二より上回っている。東北は米作県にもかかわらず、なぜ配慮してくれなかったかという御指摘だと思いますけれども、我々は、そのような配慮も必要な場合もあるかと思いますけれども、あくまで客観的な各県の力量に見合って計算させていただきました。その辺のところを御理解いただきたいと思います。

吉泉委員 時間がほとんどなくなりました。本当に、要望だけさせていただきます。

 東北、そういったところについて、今年度の場合、ほかのところよりも価格も下がりました。そういうことに頭に来ている中で、そしてまた、ほかのところよりも面積がふやされる。大きいところについてはもう五割以上、各町村段階では六割近い、そういったところまでやらなければならない。こういったところが出てくるわけでございます。

 そういう状況の中で、こういう生産調整というものについてはもっと見直さなきゃならない、そういう時期には来ているんだろうというふうに私は思っております。そんな面で、これからもこの点については質問もさせていただきながら、よりよい政策をお互いに追求していくということをお願い申し上げながら、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

山田委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件、特に口蹄疫問題等について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、日本獣医師会会長・口蹄疫対策検証委員会座長山根義久君、弁護士・口蹄疫対策検証委員会委員郷原信郎君及び独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所企画管理部長、口蹄疫疫学調査チーム長津田知幸君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、山根参考人、郷原参考人、津田参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに山根参考人、お願いいたします。

山根参考人 口蹄疫対策検証委員会の座長の立場から、これまで取りまとめを行いました内容につきまして御説明申し上げたいと思います。

 皆様御存じのように、平成二十二年の四月二十日に宮崎県で一例目の発生が確認されました口蹄疫は、同県の川南町を中心とする地域におきまして、爆発的に感染が拡大されました。最終的な殺処分頭数は、我が国の畜産史上最大規模であります約二十九万頭、正式には二十八万八千六百四十三頭でございます。防疫対応には相当の財政負担が必要になるとともに、地域社会、経済社会にも甚大な被害をもたらしたわけであります。

 そうした背景をもとに、平成二十二年七月、農林水産大臣の要請によりまして、九名の第三者から成ります口蹄疫対策検証委員会が設置されまして、八月五日に第一回目の委員会を開催したところでございます。また、本委員会は、今回の口蹄疫の発生前後からの国、宮崎県などの防疫対応を十分に検証しまして、問題点を把握した上で、我が国でこのような大惨事が二度と起こらないように、今後の防疫体制の改善方向を提案したわけでございます。

 本委員会の開催の経緯でございますけれども、本委員会では、口蹄疫疫学調査チームの調査状況を詳細に聴取するとともに、宮崎県、県内市町村、生産者、生産者団体、これは全国段階でございます。それから他県、獣医師会、獣医師、防疫作業従事者等の多数の関係者からのヒアリングを行いました。これらのヒアリング結果などを踏まえまして、意見交換を行い、九月十五日の第七回の委員会におきまして、これまでの議論の中間整理を行ったわけでございます。そして、公表を行いました。

 その後、ヒアリングの対象をさらにふやしまして、地元マスコミ関係、さらに家畜衛生の専門家などを加えまして、これまでの議論の整理につきまして意見聴取も行いました。

 ヒアリングの実施対象者数は、合計で四十一名に上ったわけでございます。

 加えて、十月十九日の第十二回の委員会におきまして、宮崎県口蹄疫対策検証委員会との意見交換も行いました。そして、議論の客観性のさらなる向上にも努めまして、合計十七回の委員会を開催したわけでございます。十一月の二十四日に第十七回を開きまして、最終取りまとめを提案させていただいたわけでございます。この文書の中身は、九名の検証委員会の方々に分担して執筆をしていただいたのが現実でございます。

 まず、検証委員会の報告書の内容でございます。

 今言いました経緯で開催したわけでございますけれども、口蹄疫というのは、皆様御存じのように、国際連合の食糧農業機関などでは、国境を越えて蔓延し、発生国の経済、貿易及び食料の安全保障にかかわる重要性を持ち、その防疫には多国間の協力が必要となる疾病と定義されました越境性動物疾病の代表例でございます。伝染力が他に類を見ないほど強く、一たん感染しますと、長期にわたり畜産業の生産性を著しく低下させまして、また、外見上治癒したように見えますけれども、継続的にウイルスを長期間保有し、感染源となる可能性を有した厄介な疾病でもございます。

 口蹄疫が蔓延いたしますと、畜産物の安定供給を脅かしまして、地域社会、経済社会に深刻な打撃を与えるものでございます。国際的にも、口蹄疫の非清浄国として信用を失うおそれがございまして、そうなりますと、現在の科学的知見のもとでは、口蹄疫の清浄国では、早期発見及び迅速な殺処分、埋却処理を基本とした防疫対応を講じているところでございます。御存じかと思いますけれども、二〇〇一年、英国では六百四十五万トン殺処分をいたしまして、一兆四千億の被害が出たわけでございます。

 口蹄疫ウイルスは国内に侵入する可能性は今でもどこでもあるということを前提にいたしまして、実効ある防疫体制を早急に整備する必要があるということでございます。最もその中で重要なのが、発生の予防、それから続きまして早期の発見、通報、さらに初動対応でございます。そうすることが国民負担を小さくすることにつながるのではないかなということにまとめたわけでございます。

 今回の防疫対応の問題点を幾つかお挙げして御説明申し上げます。

 まず、防疫体制が十分に機能しなかったということでございます。といいますのは、国と県、市町村、これらの役割分担が明確ではなくて、意思の疎通が図られていなかったということに落ちついたわけでございます。

 それから、豚への感染が起こったことにより急激に発生件数が増加いたしまして、五月の初めには防疫対応の改定が必要となってまいりました。五月十九日に殺処分を前提とする緊急ワクチン接種が決定されましたけれども、結果的には、この決定がタイミングとしては遅かったのではないかなということでございます。

 さらに、宮崎県が所有いたします種雄牛の特例措置は現場に多くの混乱をもたらしたということでございます。

 さらに、国際空港、海港においては靴底消毒などの検疫措置を実施しておりましたけれども、オーストラリアやニュージーランドのような徹底した入国管理は実施されていなかったということも判明いたしました。

 それから、畜産農家段階におきまして飼養衛生基準が十分守られていたとは言いがたいという結論になったわけでございます。特に、バイオセキュリティーが高いはずの宮崎県の畜産試験場、さらに宮崎県家畜改良事業団、JA宮崎経済連の施設でウイルスが侵入したことを許したことは、関係者は深刻に受けとめるべきだということでございます。

 そしてさらに、宮崎県の家畜防疫員一人当たりの管理頭数、農家戸数は、他県に比べまして格段に負担が大きいということがわかりました。といいますのは、端的に言いますと、一家畜防疫員、一獣医師当たりの管理戸数が、全国平均五十二戸でございますけれども、宮崎県ではそれが二百四十六戸に及んでおるわけでございます。また、家畜単位というのがございますけれども、家畜単位から見ますと、一獣医師当たり、全国平均は四千二百四十四単位、それが宮崎県の場合には一万五千三百四十二単位と非常に多いということがわかったわけでございます。そして、その結果、家畜を飼育している場所の所在地とか、それから畜種、種類とか、頭数などにつきまして、宮崎県は十分把握ができていなかったということがわかったわけでございます。

 今回の事例では、異常畜の発見の見逃しや通報のおくれがあり、感染を広げる大きな原因となったということでございます。

 診断確定後二十四時間以内の殺処分、七十二時間以内の埋却ができなかったことが感染を拡大させた大きな要因であるということ、さらに、殺処分、埋却などの具体的な作業のイメージがないために作業が円滑に進まなかったということも言えます。

 今回、我が国で初めて、健康な家畜にも殺処分を前提としたワクチンの接種が実施されたのでありますけれども、経済的な補償を含めた法的裏づけがなく、その決定及び実行に時間がかかり過ぎたということも言えます。

 我が国では、国際競争力強化や生産効率向上のため、規模拡大政策が進められてきましたけれども、大規模化に伴って、規模に見合う防疫体制がとられるべきでありますけれども、必ずしもそうした体制がとられていなかったということも言えます。

 今後の改善方向、これが一番重要かと思いますけれども、国と都道府県、市町村などの役割分担、連携のあり方をもう少し明確にすべきだということが言えるのではないかなということでございます。また、国は、防疫方針の策定、改正に責任を持つとともに、その方針に即した都道府県段階の具体的措置が確実に行われるよう、必要な改善指導を行ったり、さらに防疫演習を実施したり、そして緊急支援部隊などを派遣するなどの支援を考慮すべきだということも書いてございます。

 それから、防疫方針のあり方でございます。

 国が定める防疫方針につきましては、海外におけます発生の状況や科学的知見、技術の進展などを常に把握し、常に最新、最善のものとして準備しておくべきだということも設けております。それから、初動対応で感染拡大が防止できない場合には、速やかに防疫方針を改定することが必要でありますし、国は、第一例の発生後直ちに防疫の専門家を現地に常駐させ、感染の実態を正確に把握した上で、感染拡大を最小限とするための防疫方針の改定を判断できるようにすべきだということでございます。

 それから、種雄牛を含む、畜産関係者の有する家畜については特例的な扱いは一切すべきではないと結論づけました。といいますのは、これはヒアリングでもかなり厳しい批判が出ておりました。

 それから、我が国への口蹄疫ウイルスの侵入防止の措置のあり方でございますけれども、オーストラリアを初め諸外国では非常に厳しい対応をしているわけでございますけれども、我が国への口蹄疫ウイルスの侵入を防止するための措置をもう少し強化すべきではないかということに至ったわけでございます。

 さらに、口蹄疫ウイルスの畜産農家への侵入の防止措置のあり方でございます。

 これは、畜産農家にも飼養衛生管理基準を確実に遵守すべきための家畜防疫員による定期的な立入検査を行うべきではないかということでございます。ほとんどこれが行われていなかったということでございます。それから、飼養衛生管理基準を遵守していない畜産農家には、何らかのペナルティーも科すべきではないかということでございます。さらに、飼養衛生管理基準を実効あるものにするためには、もう少し具体的なものにすべきではないかということもございます。

 さらに、農場間を移動する車両につきましては、日ごろから消毒を徹底し、そこに立ち入る獣医師とか人工授精師とか削蹄師、家畜運搬業者、死亡獣畜処理業者、飼料運搬業者などにつきましても消毒をさらに徹底すべき必要があるということでございます。

 それから、発生時に備えた準備のあり方でございますけれども、都道府県は、問題点から言いましてもわかりますように、家畜を飼っている農場の所在地とか、それから畜種とか飼養頭数とか、飼養管理の状況などを日常的に詳しく把握しておくべきだということでございます。そのためには、全国平均に比べまして家畜防疫員の数が少ない都道府県は、家畜防疫員の増員に努めるべきであるということでございます。

 さらに、患畜の早期の発見、通報のあり方でございますけれども、ここも非常に大事なことでございます。

 口蹄疫が発生した際には、防疫措置が一日おくれても被害が飛躍的に増大することがOIEの提言でわかっております。このため、早期の発見、通報を徹底するための手段として、具体的な通報ルールをつくるべきだということを提案いたしました。例えば、国があらかじめ示した一定の症状に照らして口蹄疫を否定できない家畜につきましては、症状がわかる写真を添付した検体を直ちに国、動物衛生研究所のようなところに送るといったルールを定めるべきであるということでございます。それから、そのようなルールに従わない、いわゆる情報をおくらせたような畜産農家とか都道府県などに対しましても、何らかのペナルティーを科すべきではないかということでございます。

 それから、早期の殺処分、埋却などのあり方でございます。

 日ごろから、都道府県は、埋却地の事前の確保とか、作業のやり方、手順の明確化を、民間獣医師、自衛隊などの協力体制のもとに準備を進めておくべきではないかということでございます。さらに、国は、今回の経験を踏まえ、作業現場で実践的に活用できる作業マニュアルを定めて、防疫演習により現場に定着させるべきであるということでございます。

 それから、その他の初動対応のあり方でございますけれども、日ごろから、都道府県は、消毒ポイントの具体的な設置場所や消毒方法についても準備しておくべきであるということでございます。

 それから、初動対応では感染拡大が防止できない場合の防疫対応のあり方でございます。

 初動対応では感染拡大が防止できない場合の防疫方針につきましては、国が責任を持って機動的に対応する必要があり、第一例の発生後直ちに防疫の専門家を現地に常駐させ、的確に判断すべきであるということでございます。それから、ワクチンに安易に依存すべきではなく、現在のワクチンの限界などについても十分に周知を図るべきであるということ。それから、初動防疫では感染拡大が防止できないときの対策として、経済的補償も含めて、予防的殺処分を家畜伝染病予防法に明確に位置づけるべきであるということを提案しております。

 それから、防疫の観点からの畜産のあり方でございます。

 規模拡大や生産性の向上といった観点だけではなく、これが今大きな問題になっているわけでございますけれども、防疫対応が的確に行えるかという観点からも十分見直すべきであるということでございます。いわゆる飼養規模とか飼養密度などを含めた畜産経営のあり方につきまして、一定のルールを定めたり、コントロールできるように法令整備も検討すべきであるということでございます。

 それから、あともろもろの、その他でございます。

 産業動物に関する獣医療体制を実効あるものにするように強化推進すべきである。それから、口蹄疫の検査方法とか、ワクチン接種、それから抗ウイルス薬とか、消毒の方法、効果など、口蹄疫全般について実効性の高い研究を進めるべきであるということでございます。さらに、動物衛生研究所につきましては国立の機関として位置づけることについても検討すべきである。これはイギリスでもやっていることでございます。

 それから、終わりになりますけれども、本報告書を踏まえまして、国におきましては、家畜伝染病予防法の改正、的確な防疫指針の提示を初めとしたさまざまな具体的な改善措置を早期かつ着実に実施するべきである。それから、都道府県におきましては、具体的防疫措置の実行責任者であることを深く自覚し、国の防疫指針に基づき、市町村、獣医師会、生産者団体などとの連携協力をしつつ、予防、発生時に備えた準備、発生時の早期通報や的確な初動対応に万全を期すべきであるということでございます。さらに、畜産農家には、人、車、物の出入りに際しまして消毒に万全を期し、みずからの農場にウイルス侵入をさせないようにするなど、衛生管理を適切に実施することを期待するというものでございます。

 最後になりますけれども、最も重要なのは、発生の予防であり、さらに早期の発見、通報であり、さらに早い初動対応であるということを、力を入れまして、まとめさせていただいた次第でございます。

 以上でございます。(拍手)

山田委員長 ありがとうございました。

 次に、郷原参考人、お願いいたします。

郷原参考人 郷原でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、今回の口蹄疫の対策の検証全般については、専門でもございませんし、今座長の方から詳しく説明もありましたので、私の本来の専門の立場の話をちょっと前置き的にさせていただいて、今回のこの問題にかかわった感想といいましょうか、印象について少しお話をさせていただこうと思います。

 私はもともと法律を専門にしておりますが、とりわけ企業、官庁などのコンプライアンス、クライシスマネジメントなどを特に専門にしておりまして、いろいろな不祥事が発生したときに、それにどう対応し、どうやって組織が信頼を回復するのかというようなところ、いろいろな事例にかかわってまいりました。

 そういう一般的な、問題が発生したときにその問題にどう対応するのかという観点から考えますと、何といっても重要なことは、その発生した問題の本質は何なのかということを正確に認識し、そこで実際に起きている現象について、その本質との関係で、何が、どういう利益が害され、どういう利益を回復しようとしなければいけないのかという根本的な視点から対策を考えることが必要なんじゃないかと思います。

 そういう観点から、今回の口蹄疫の問題の対策の検証にかかわって私が全般的に思いましたのは、非常に重大な、畜産という分野にとって大きな問題であることは間違いないと思いますし、口蹄疫の発生による社会的、経済的影響というのは非常に甚大なものなんですけれども、この問題がどういう性格の問題なのかということについて、必ずしも関係者の中でみんな同じような認識を持っているとは限らないとも言えるのではないか。ましてや、報道だけでこういう問題を知っている国民の間には、この口蹄疫という問題がどういう不利益を生じ、どういう影響を生じる問題だから徹底した殺処分まで行わないといけないのかということについての理解が本当に十分に得られているだろうかというような感じがいたします。

 非常に伝染性の強い家畜の伝染病であるということはわかるんですが、そのかかった家畜がばたばたと死んでいくというようなものではなくて、比較的症状が緩やかであるということもあって、徹底した殺処分まで行って封じ込める必要があるというのが、家畜の健康そのものを守るためなのか、あるいは、場合によっては人にまで影響が生じる可能性がないとは言えないということなのか、そうではなくて、清浄国という一つの評価を維持することの経済的なメリットが重要なのかといったところについて、人によって少し受けとめ方が違う点があるのかもしれない。

 今回の口蹄疫の発生に関しても、最初、初動の段階での県の対応のおくれとか、いろいろな問題が発生したわけです。それから、種雄牛を保存するかどうかということについてもいろいろな議論がありました。そういったことの背景に、この問題をどうとらえるのかというところについての認識の若干のずれなども影響している面がないとは言えないのではないかなというふうに考えております。

 ヒアリングとしていろいろな方からお話を聞いたわけです。宮崎県の課長のヒアリングの中で、これは非常に率直な発言だと思いますけれども、まだ口蹄疫だと確証が持てない間に検体を国の方に送るのは相当ちゅうちょされるということを率直に述べておられましたけれども、まさにそれが、この問題をめぐる非常に複雑な要因というのを示しているんじゃないかという気がいたします。

 こういった点を踏まえて、やはり、まず、この問題をどうとらえ、基本的に何を重視して、どういう目的でこの対策を行っていくのかということを明確にし、農水省の方でも、そういったことについての理解を深めていく努力をしていくことが重要なんじゃないかと思います。

 そして、私の本来の専門分野でありますコンプライアンスという観点から考えると、個々の畜産農家のこの問題に対してとるべき対応というのが、やはり規模によってそこに違いが出てくるんじゃないかなという感じがいたしました。

 本当に零細な、それほどたくさんの家畜を飼っていない農家であれば、十分な補償が得られるという見込みがあれば殺処分なども特にちゅうちょすることはないでしょうし、通報をちゅうちょする理由も余りないわけですが、今回のこの問題に関して若干問題が指摘されたのは、大規模な企業で畜産を営んでいた農家といいましょうか、業者の対応が相当おくれたということがこの報告書の中でも指摘されています。

 やはり、企業の対応というのは個々の畜産農家の対応とは違った動機、誘因が働く面があります。そして、企業の中での意思決定のプロセスは、個人事業主としての農家とは違ってくる。ですから、そういう大規模な農家で望ましい対応、早期に通報し対策をとるという対応をさせるためには、やはり、その企業のコンプライアンス対応の骨格になる、こういう問題に対する方針の明確化が企業として行われないといけないし、その点について従業員一人一人に十分な周知徹底措置が行われ、対応がとられるということが必要なんじゃないかと思います。

 とりあえず、私の方からは以上です。(拍手)

山田委員長 ありがとうございました。

 次に、津田参考人、お願いいたします。

    〔委員長退席、梶原委員長代理着席〕

津田参考人 津田でございます。

 今回は、口蹄疫疫学調査チーム長として、今回の口蹄疫の発生の原因究明、それから再発を防止するための対策を提示するために疫学調査というものを行いました。その調査の概要につきましては、お手元に、資料として、口蹄疫の疫学調査に係る中間取りまとめとしてまとめたわけでございます。これにつきまして手短に概要を説明いたします。

 まず、目的は、先ほど申しましたとおりでございます。

 疫学調査の方法でございます。

 我々は疫学調査チームでございますが、すべてここでやったわけではございませんで、発生直後から、農林水産省に疫学調査班、それから宮崎県にも疫学調査班というのを立ち上げまして、そこが連携して、すべての発生農場それから関連するところについて調査を行っております。その結果をもとに我々の調査チームの中で分析、検討して、どこがリスクが高かったのか、どこが考えられるかということをしたわけでございます。

 調査項目でございますけれども、すべての農場につきまして、感染源、要するにウイルスの感染のもととなる家畜あるいは人、車両、物等の、可能な限りそういった動きを調べたということがございます。

 それからもう一つでございます。口蹄疫ウイルスです。

 今回の発生で見つかりましたウイルスにつきましては、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所、私のところでございますが、ここの海外病研究施設で、これは日本で唯一口蹄疫を取り扱うことのできる、封じ込め施設を持っているところでございます。ここでウイルスの遺伝子を解析いたしまして、その解析データを、国際的に、ワールドレファレンスラボラトリーと言っているんですけれども、世界じゅうのデータを集めて解析しているところがございます。イギリスのパーブライト研究所、ここと連携しまして、解析してもらいました。

 その結果、O型まではうちで分析が終わっているんですけれども、このウイルスが、同じO型で、データベースにある中では、香港、韓国、ロシアでことし分離されたウイルスと極めて近い。九八%、九九%の相同性があるということで、こういったウイルスと非常に近いんじゃないかという結論を得ております。

 こうしたことから、今回のウイルスは、こういったアジアの地域で流行している、これは三カ所、香港、韓国、ロシアということで、ではここから来たかということになるんですけれども、データがあるのがこれだけでございまして、実際には発生はもっと広く起こっております。ですから、こういったことから、こういった地域から日本にウイルスが入ったのではないかということを推測したわけでございます。

 それから、今度は侵入経路でございます。

 侵入経路を特定するためにまず何が大事かといいますと、順番を決めなければいけません。今回の発生が、いつ入ったのか、同時多発なのかそうじゃないのかということを決める必要があるものですから、今回は、各発生事例につきまして、立ち入り時にいろいろな検査を行っております。その際の臨床症状、症状はやはり日にちがたつごとに少しずつ変わっていきます。そのときの写真をもとに、どのくらい日にちがたっているのか。それから、検査結果によって、もっとたてば抗体が上がってきます、感染した証拠が出てきます、その抗体があるかないかということを含めて検討しまして、疫学の専門家、病理の専門家を入れて、そのルールで、一応、感染日、発症日を推定いたしました。

 そうしましたら、今回の例では、二百九十二例ございますけれども、一番早かったのは六例目、これが三月の二十六日ぐらいに発症したんじゃないかということでございます。その次が一例目。要するに、最初に見つかったのが必ずしも最初に発生したところじゃないということでございます。それから七例目の順になるんじゃないかということです。

 この中でわかったのが、四月の二十日、発生が確認された時点で、もう既に十数戸にウイルスが入っていた可能性がある。その中では、幾つかの農場ではもう既に発症して症状を出していた可能性もあるということがわかったわけでございます。こうしたものの感染の確認がおくれたことが、その後の防疫対策が追いつかなかった一つの原因になるんじゃないかということが思われます。

 こういった事例につきまして、では、最初どこから入ってきたかということで、調査の中から、発生農家とそれから海外渡航者、そういったものの接点をいろいろ調べていったわけでございますが、まず、畜産関係の資材等につきましては、明確な、これが入ったということは得られておりません。とすると、やはり人あるいは物の出入りに伴って国内にウイルスが侵入したのではないかという可能性がどうも否定し切れないということでございます。

 ただ、個々の人の動き、あるいは物の出入り、要するに畜産関係以外のものですけれども、そういったものについては正確な記録がやはりとられておりませんので、これが限界かなというところでございます。ですから、報告書の中では、ここで完全に特定には至っていないということです。

 それから、最初の三例、先ほど言いました、六例、一例、七例というふうに言ったんですけれども、その関連でございますけれども、これにも、特定にこれはという、特定できるような要因は確認されておりませんでした。可能性は幾つかありますけれども。

 その後、近隣の伝播と、その後の周辺の伝播がございます。

 この中間取りまとめでは、初期の発生事例につきまして、伝播が、どのようにウイルスが広がっていったのかということをまとめております。それから、途中で、えびのあるいは都城といった離れたところに感染が起きました。これの原因につきましても、どういったもので動いたかということを調べました。その結果、一番可能性が高いのは、やはり人あるいは車両がウイルスを運んだのではないかということでございます。

 それからもう一つは、近隣農場。中心部の川南地区、一番感染が多かったところですけれども、やはり非常に密集地帯でございます。さらに、その中で非常にウイルスを拡散すると言われます豚への感染が起きたということで、この豚の処分も間に合わなかった、おくれたということから、環境中でのウイルスの濃度が非常に高まって、これが、そこに生活されている皆さん方の生活上の移動、一般生活上の移動、あるいはそういったものに伴って広がったのではないかということでございます。中には、野鳥とか、それから物理的なものもあったかもしれませんけれども、ちょっと特定できない。近隣伝播と言われる、数キロ内へのウイルスの広がりはあったのかと思われます。

 遠くの、範囲外への移動というのは、やはり人あるいは車両という可能性が一番高いということでございます。

 それから、野生動物につきましては、今回は野生動物では感染したという証拠は得られておりません。最後の抗体検査につきましても、野生動物からはそういった感染の証拠は得られておりませんし、発生の形態からいっても、野生動物の関与はなかったろうというふうに思われます。

 結論ですけれども、こうした感染経路で広がったんですけれども、最終的には、今回の防疫対策、かなりの犠牲は出しましたが、これで日本としては口蹄疫は一応清浄化できたのかなということで、こういったこともまとめて、現在、農水省の方からOIEに対して清浄国認定の申請を出しているというところでございます。

 今後、この疫学調査に関しましては、最後まで発症しなかった農家と発症した農家の違いがどこにあるのかということを調べていくということ、それから、今回の口蹄疫のウイルスについてさらに時間をかけて詳細な調査を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔梶原委員長代理退席、委員長着席〕

山田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。道休誠一郎君。

道休委員 民主党の道休誠一郎でございます。

 私は、今回、先生方、口蹄疫対策検証委員会報告書並びに口蹄疫の疫学調査に係る中間取りまとめ等に御尽力をいただきましたことに対しまして、宮崎県選出の国会議員の一人として、また宮崎県民の一人として、厚く御礼を申し上げたいと思っております。本当にありがとうございます。

 私自身、参考人の先生方への質問というのは初めてやらせていただくものですから、非常になれないところもございまして、国会の質問はやったことがあるんですけれども、失礼のないようにさせていただきたいと思いますが、ひょっとして失礼な発言をしてしまうかもしれませんけれども、そのときはお許しをいただきたいと思っております。

 口蹄疫、我がふるさと宮崎県にとりましては、非常に苦しい、そしてつらい、また多くの犠牲を伴った疫病として、四月の二十日に発生が確認されました。十年前に、宮崎、一度発生した過去がございます。私も、今回の四月二十日の発生確認という話を聞きまして、当然、農家に一軒一軒入ることはしませんでしたけれども、発生以降、毎週末、関係の役場やJAさんのところへお邪魔をしながら状況を聞いていたんですが、五月の第二週の日曜日でしょうか、現場の役場に参りまして、お話を聞いた。しかしながら、発生から三週間以上たっている状態の中で、先ほど先生方の御指摘もございましたけれども、非常に現場が混乱してしまっている。

 国と県は、四月の二十日当日に口蹄疫防疫対策本部というのを設置いたしました。加えて、五月の十七日に、国は政府口蹄疫対策本部及び現地対策本部を設置いたした。そして、続く十八日、宮崎県は非常事態を宣言して、翌十九日にはワクチン接種の決定を行わざるを得ない状況にまで拡大しておったということでございます。

 先ほどから御指摘がございましたけれども、やはり、口蹄疫の拡散防止あるいは発生防止というのは、まずウイルスの侵入を防ぐ、そして初動をしっかりやっていくということが不可欠であると私は確信しております。どこから侵入したかについては、先ほど先生方のお話がございましたけれども、一例目、六例目、七例目という非常に大きな事例がございます。その中でも恐らくは六例目であろうというような御推測をいただいておるわけですけれども、ひょっとしたらほかの農場でも既に発生があったのではないかというような御指摘もこのレポートの中でもございます。

 特に、七例目につきましては、ここに書いてございますけれども、四月の八日ごろには既に食欲不振の牛が出ていた、そして、四月の十七日においては全農場でかなりせきとか鼻水の、風邪の症状を示す牛が多発しており、また、十八日以降、全頭に対して抗生物質の投与をされておるということがございます。

 六例目の水牛農家に対するレポートも出していただいておるんですが、ここについては、外からの人の出入りについて確認はできない、資料がないということ以外は、基本的には感染のルートを確認するようなことはなかったということでございます。

 今、韓国でも清浄国宣言をした後に再び口蹄疫が蔓延し始めているという状況の中で、やはり現場の皆さん、これは日本全国の皆さんが心配していらっしゃると思うんですが、今回の口蹄疫の経験、非常につらい経験でございますが、これを経験した後の、現在のいわゆる水際対策の状況、先生方の御報告書にある徹底した防疫体制がとられているのかどうかについていかがお考えかをまずお聞かせいただきたいと思います。

 これは宮崎の口蹄疫とはちょっと離れてしまうんですが、今、恐らく畜産農家の皆さん、あるいはほかの方にとっても、韓国の口蹄疫が来ちゃ困る。そして、たくさんの方々が韓国に毎日行ったり来たりされておるわけですけれども、こういう事象についてどうお考えか、先生方の御意見を伺いたいと思いますが、お願いします。

山根参考人 検証委員会でも相当その方に時間をかけまして議論した内容でございます。

 確かに、現場のヒアリングを聞きましても、ほとんどそれがなされていなかったに等しいということなんですね。事実、私は、十月の二十三日から韓国に行きまして、そして二十七日からは北京に行ってきたんですね。きのうは台湾から帰ってきたところなんです。ところが、三回とも注意をして、空から入る、この国はみんな三カ国とも発生しているわけですから、そこから帰ってきているにしては、全く空からの水際作戦ができていないに等しいということが言えるのではないかなと思うわけでございます。やはり、マットが敷いてあって靴がぬれて困るというようなクレームがつくぐらいの対応をしておかないと、私は無理じゃないかなという気はいたします。

 ですけれども、そうやって入るのも大事でございますけれども、もう一つは、先生の御指摘のように、農家に聴取しても、どういう見学者が来たかとか、韓国からどういう畜産農家が見学に来たとか、全く記録がないどころか、県は聴取さえできないというんですね。こういう体制では、私は、今後また同じことを繰り返す可能性は十分あるのではないかなと思いまして、この取りまとめの中にはかなり厳しく記入させていただきました。

道休委員 津田先生にも同じ質問についてコメントをお願いしたいんですが、よろしくお願いいたします。

津田参考人 今現在どういう対策がとられているかということにつきましては、やはり日本の行政なりに聞いていただいた方がよろしいかと思います。

 今、日本の周辺でも、モンゴルでも口蹄疫が出ております。これは野生動物なんですね。そういった意味からしますと、やはり、日本のように周りを海で囲まれているということからすると、防疫、侵入防止という意味ではやりやすいかもしれません。だけれども、今山根先生がおっしゃったように、やはり人の動き、これに伴った侵入という可能性が非常に高いと思います。

 そうした中で重要なのは、動物に接した後に、やはりその同じもので国内の動物に接しないということですね。ですから、一つは、国としてのそういった守り、バイオセキュリティー、それからもう一つは、農家段階でのバイオセキュリティーというのが必要だと思います。

 ただ、もう一つ足りないのは、畜産をやっている方だけがそれを注意しても、ほかにもいっぱいいるわけですね、直接畜産じゃない人も。そうした方々の意識を高める意味では、やはり地域として、あるいはそういったぐるみの、県なり市町村なりの、畜種あるいは職種を超えた取り組みを私は期待したいと思います。

 現在についてはちょっとわかりかねます。

道休委員 ありがとうございます。

 今回の宮崎の口蹄疫の拡散の中で私自身も気になりますのは、まず四月の二十八日に豚へ広がったわけです。やはりこれが非常に大きなターニングポイントになったわけですね。しかしながら、この第一例が県の畜産試験場支場で出たということと、さらに加えて、その後、家畜改良事業団でも種雄牛に感染してしまったということについて、これはもう、現場で口蹄疫は怖いからしっかり消毒をやっていこうとやっていらっしゃったそれぞれの農家の皆さんに大きな衝撃を与えてしまったと思います。

 この報告書の中でもその体制についての御指摘がございますけれども、再度、こういう本丸と思える組織の防疫のあり方についていかがお考えか、まず山根先生にお願いします。

山根参考人 やはり、先生御指摘のように、公的機関というのは、この検証委員会でも議論したのでありますけれども、ある意味では民間の避難場所なんですね。お手本にならなきゃいけぬところなんですね。それが、実はシャワーもあって完備はできているのに、発症してからでもそれを使っていなかったというのもわかったわけなんですね。

 ですから、やはり根本は、危機管理意識が育っていなかった。十年前の経験が、全くどころか、むしろ悪い方に作用して、余りにも見事に抑えたものですから安心感を与えてしまった。ましてや人にはうつらないというのが一般的なものですから、そういう面ではちょっと油断があったのではないかなという気はいたします。

道休委員 先生、どうもありがとうございます。

 今まさにおっしゃいました十年前の経験というのが、今回、私自身は現場でお話を聞きながら、どこへ行っても、おれも十年前やっていたよ、口蹄疫を抑え込んだんだからということをおっしゃる方も結構いらっしゃったので、その経験が逆に成功体験としてマイナスになったのかなという側面も否定できないなという感じがします。

 それから、先ほど郷原先生の方からコンプライアンスについてのお話がございました。

 私自身、金融の世界におりまして、いわゆる四大証券が巻き込まれたような金融の事件もあったんですが、その業界の常識が世の中の、業界で利益を求めることや、あるいは個々の企業が利益を最大化する中で、やはり社会的な責任が問われる。

 まさに今回は、この口蹄疫の拡散によって、畜産業、特に大規模農場におけるコンプライアンスの徹底、これが逆に社会的にはマイナスになったのではないかというような御指摘もございます。社内の連絡等に追われて当局への連絡がおくれてしまった、こういうことについては、やはり意識の改革、あるいはコンプライアンスの徹底というのは非常に必要になると思うんです。

 具体的に、先ほどペナルティーなんというお話もされていましたけれども、先生、どういうような方法が考えられるでしょうか。よろしくお願いします。

郷原参考人 今回の企業の対応、企業農場の対応に関しては、社内の連絡、報告を優先したために早期の通報ができなかったということが指摘されています。やはり、それは、本来のコンプライアンスという考え方からすると、基本方針が恐らく間違っていたんだろうと思うんですね。

 社内での報告、連絡は何のためにするのかといえば、その企業として適切な対応を行うためにするわけですね。そこで求められていることが、とにかく早期に口蹄疫を把握、発見して通報することが企業として最も重要なことなのであれば、社内での報告、連絡というのも、とにかく速やかに意思決定者のところに行われて、速やかに対応することが最優先されないといけないと思うんですね。

 そういう方針自体が社内で徹底されていなかったから、結局それがこういう対応の誤りにつながったんじゃないか。それを、形式的にコンプライアンスを考えると、いつも大体社内で何かあったときにはこういうルートで伝達をして、こういうしかるべきところでそれぞれ判断を経た上で最終決定するとかいうような、形式にのっとってやるのがコンプライアンスのような勘違いをしていた可能性もあると思いますね。

 そういう意味で、目的を明確にして、方針を明確にして、そのために最も実効的な方法をとるような企業としての対応をやらせなきゃいけない。それがどれだけできているかによって、結果的におくれたかどうかということだけじゃなくて、企業のコンプライアンスのレベルに応じて、場合によっては、十分じゃなかった場合には補助金の削減とかというペナルティーも考えなければいけないんじゃないかと思います。

山田委員長 ちょっと郷原参考人に私から一つ聞きたいんですが、今回、現地に行って本当につくづく思ったんですが、個人情報保護法のもとにという形で、一例目とか二例目とか、例えば近くにいても、同じ農家同士が、どこが発症したかわからない、非常に疑心暗鬼になっていて、防疫措置も十分でなかったという気が非常にしたんですが、個人情報保護の見地から、先ほどの企業型のコンプライアンスがなかったということもそうなんですが、私は、疫学調査の内容においてもどんどん名前を出すべきだ、そう思ったんですが、そこは法律家の立場からどうお考えですか。

郷原参考人 全くおっしゃるとおりだと思います。そういう重要な情報、人の生命身体にかかわる問題とか、この場合は家畜の伝染病に関する重要な情報を、個人情報保護法を振りかざしてその情報の提供をしないというのは、法律の趣旨を完全に履き違えた考え方だと思います。

 本来、個人情報保護法というのは、情報を最大限に活用するために、その目的に反するような情報の悪用、転用を防ぐということを事業者に義務づけているわけでありまして、常識で考えても、その情報が提供されることによって社会的な利益が図れるという場合に、そこでマイナスの方向に働くような個人情報保護法の使い方をする、持ち出し方をするというのは全く本末転倒ですので、やはり社会全体の法律に対する誤解がこういった事態を招いているんじゃないかという気がします。

 宮崎県の個人情報保護条例でもちゃんとそのあたりは例外規定が設けられているはずですし、法的に見てもそこは問題ないと思います。全くの無理解がそういった事態を招いたんじゃないかと思います。

山田委員長 その意味では、今回の疫学調査でも、検証チームでも、相変わらず一例目、二例目とかと、情報を開示していないというのはおかしいという気が私は非常にしているんですが、そのことだけ言わせていただいて、あとは引き続き……。

 道休委員。

道休委員 委員長に、私次にお尋ねしようと思いました質問を先取りされてしまいまして。

 まさに、現場に入りましても、個人情報ということの保護から、どの地区で口蹄疫が出たと言われても、実際、自分の住んでいる地区なのに、どこで出たかわからない、どういう対応をすればいいかわからない。風評被害を非常に恐れた、あるいはプライバシーの侵害を恐れたという発言はあるんですが、やはりその辺の、何が本当に大切なのかということに対しての認識は本当に必要だと思います。

 それから、私自身、現場に入っていろいろな方と今お話をするんですが、先生方に対してのリクエストも一つ来ておりまして、ヒアリングなんかも非常に行っていただいていると思うんですが、もうちょっとたくさんの人間にお話しさせていただくような機会もいただきたいという話もございますので、その辺、ちょっとつけ加えさせていただきます。

 一つ、私が気になっておりますのは、県の家畜改良事業団、ここでの発症というのが非常に、いつの時点でというような問題もございますけれども、先生方のつくられたレポートの中に、実はウイルスの侵入はもう既に五月四日に推定されている、そして、推定の発症は五月十一日であったと。あの地区の方々のお話を聞いていますと、五月の十二日に、夜、いろいろな工作機械が動いているような音が聞こえたとか、そういうような話も伝え聞くわけです。

 私も確認のしようがないんですが、県の家畜改良事業団からの病気の発生というのはその後なんですけれども、この辺について、情報収集されたと思うんですけれども、もしつけ加えていただけることがございましたら、津田先生、いかがでございましょうか。

津田参考人 家畜改良事業団の調査結果につきましては、すべてこの中間取りまとめで書いてあることだけでございまして、これ以上のものは今のところございません。

 ただ、移動させました牛につきましては、ずっとその移動後も毎日PCR検査をしておって、その後に一頭だけ発症した後も、残った牛についてもさらに二週間の追加検査をしているということで、それについてはほかの牛とは全然違ったモニターをしておって、そこだけは間違いないんです。

 ところが、残された牛については、そういったプログラムがなかったものですから、それ以上ちょっと言及できないというのが現状でございます。

道休委員 今回の口蹄疫、我々としては、宮崎県民の一人として、もう三度目はない、そういうような対応を県民一体となってやっていく所存でございますし、現在やられていると思います。

 私、今回の口蹄疫の一連の流れを見たときに、先生方のレポートで出していただいております早期発見、この早期発見というのが非常に、やはり、現場でお仕事をされている獣医さんなんかのお話を伺っていると、非常に若い獣医さんたちもいらっしゃいまして、今まで自分が経験したことのない病気でございます。人間でも、日本でマラリアなんかにかかっていても風邪ですよと診断されてしまうくらいの状況でございますから、逆に、この早期発見について、口蹄疫がかなり広がった後半の段階では、もう写真を撮られてそれで判断していく。

 委員長も非常に、現場の対策本部で、いろいろなところへ出ていっていただきまして、畜産農家の方と意見を交換していただいたりしておるんですが、この早期発見、もう三度目をなしにするためにはやはり日ごろからの防疫体制の強化とか、そういうことを先生方もレポートで書いていただいておるんですが、特に、畜産農家の気にすべきこと、あるいは行政が注意しておかなければいけないこと、そして一般の住民が気にしておかなければいけないこと、これがあると思うんです。

 これについて、御意見を三先生方から伺えればありがたいと思います。

津田参考人 早期発見につきましては、私が一番やはり今回強調したいところでございます。

 二〇〇〇年のときもそうでした。今回も、一例目を診察された獣医師の方は、いつもと違うということで届けられているわけでございます。やはり、そういった獣医師の炯眼といいますか、これが一番早期発見につながるわけでございまして、その次がやはり家畜保健所の方々でございます。

 家畜保健所は、材料を送るのをためらったというような報道もされておりますけれども、現実には、口蹄疫ということで動き始めますと、当然出荷もとめなければいけない、市場も閉鎖しなければいけないという、やはり周りに対する影響が非常に大きくなってくるんです。

 だけれども、獣医師のやはり見た目、要するに、いつもの異常と違うぞという目というのは、これは結構重要でございまして、そのときの判断というのが、どこまでの対策をとっておけばいいのか。だから、その農場だけをちょっと立ち入り規制、移動禁止をかけておいてやるのか、それとも、全体の、周辺地域までとめてしまうのかということは、やはりそのときの感覚でしかないと思うんです。

 そうした意味では、もう少し診断の場所にちゃんと持っていけるような体制に持っていければいいと思いますし、それから、そういったパンフレット等を通じて農家以外の方にもいろいろ教育していくというようなシステムも必要かというふうに思います。

山根参考人 ちょっと追加発言になると思いますけれども、一例目と六例目の農家の方は、早く発見なさって獣医師さんの診断を受けておられるわけなんですね。特に、都農町に出ました一例目の発症の場所なんかでは、四月の七日におかしいと。そして九日には、青木獣医師が診まして、そして、これはふだんと違う、口蹄疫が疑われるということで家保に通報しているわけなんですね。ですけれども、何ゆえそれが二十日まで延びたか、十九日まで検体を送るのが延びたかということなんですけれども、それを聞いていましたら、今、津田参考人の言われますように、やはり被害がかなり広がるのではないかなということが非常に懸念されたということなんですね、市場を閉鎖したり移動禁止をやったりしないといけないということで。それでちゅうちょしたということはやはりヒアリングの中で述べておられました。

 ですから、だれでも通報できやすいようなシステムをつくらないと、恐らくまた同じ繰り返しをやるのではないかな。その点は、イギリスが、長い大きな経験を参考にしまして、DEFRAという国家機関をつくっておられるわけなんですね。これは、だれでも通報できるような、それから地方にも支社をつくりまして通報できるような体制をつくって、国が責任を一元化する。だから、おかしかったら、ある基準をクリアしたなら報告しなさいというようなシステムをつくっているということは、日本も大きく参考にすべきだなという気はいたします。

郷原参考人 行政の対応ですけれども、一般的に言って、こういう重大な問題に関して事前に基本方針がしっかり定められていることが重要だと思うんですね。それが担当者レベルの判断にゆだねられると、結局、いろいろな悩み、迷いが生じてしまって対応がおくれるということになるので、口蹄疫の問題に対して、どういう状況が認められたときにどういう対応をするのかということを、まず県として方針を事前に明確にしておく、ルールを定めておくということが重要なんじゃないかと思います。

道休委員 本当にありがとうございます。

 時間が来てしまいましたが、私どもは、これから家伝法の改正等を含めまして、二度とこのような口蹄疫、本当に国を滅ぼす怖い病気でございますから、このような疫病が再発しないように、また、法制度面での整備も含めましてこれから頑張っていきたいと思いますので、先生方の今後一層の御支援等もお願いして、質問とさせていただきました。

 どうもありがとうございます。

山田委員長 次に、江藤拓君。

江藤委員 大変有意義なお話をいただきまして、ありがとうございました。示唆に富んだお話であって、大変参考になりました。私も自民党の畜産・酪農対策の委員長をしておりますので、今後、年末に向けて、宮腰部会長の御指導のもとにこれを年内にまとめることになっております。きちっと参考にさせていただきたいと思います。大変感謝をまずは申し上げたいと思います。

 たくさん質問がありますので、続けざまにやらせていただきます。よろしく御協力お願いします。

 三つまとめて質問させていただきます。

 今回の初発がどこだったか、このことは、口蹄疫疫学調査チーム、大変よくやっていただいたなというふうに私は思っています。届け出順が発生順位ではないんだ、非常に重要な点だったと思いますね。このことは非常に高く評価しますし、感謝をいたします。

 そして、初発について科学的により明確に解明できる疫学的な調査のルール、これはやはりこの機会にぜひとも私はつくっていただきたい。これは、我々政治家でなくて、専門家でないとできない話でありますので、このことを御提案したいと思います。その点につきましては、農場ごとに、採材の、いわゆるとる数、一農家一つというのではなくて、規模によって、あんたのところは十個だよ、あんたのところは一つだよ、ルール化も必要なのではないかということがまず一つ目の質問でございます。これは津田先生、よろしくお願いいたします。

 それから、六例目の三月二十六日の水牛農家の話になりますけれども、これは、いろいろ言われますけれども、よだれと水疱といった症状がなかったんですね、現実問題には。そして、アジアの水牛はほとんど学術的にも研究されておりません。大きいということもありますし、近づいて口の中を見ることもできないということであれば、獣医を責めるのはやはり酷ではないかなということを感じております。また、初期段階では、ウイルスが少ない場合、症状が明確に出ないということも間々あるわけでありますから、このこともやはり考えなければならないだろう。

 私が何を言いたいかというと、郷原先生からも御指摘がありましたし、先ほど津田先生の方からもイギリスの新しい機関についても御提言がありました。しかし、現実には、宮崎の一獣医が動物衛生研究所に検体を送るというのはやはり非常にハードルが高いです。実際に、小林は市場がとまって、結局白だったというようなこともありましたからね。

 こういうことについて、私が思うに、口蹄疫というのはこういうものなんだということがどうも何か固定観念化している気がするんですね、水疱ができるとかよだれが垂れるだとか、体重が落ちるとか食欲がないとか。そういうことではなくて、専門家の先生方に、もっと幅広に、こういったものも口蹄疫を疑うべきだよというような、いわゆるフレキシビリティーのある指針のようなものをつくっていただいて、現場の獣医の方々にぜひ御徹底をいただいたらいいのではないかというのが二つ目の私の意見というか御指摘でございます。

 三つ目は、中間報告では、「アジア地域の口蹄疫発生国から人、あるいは物を介して我が国に侵入したと推定される。」こういうふうに書いてありますが、どのように日本に入ったのか、どのようにして宮崎県に入ったのかということについては、残念ながら、中間報告ですけれども、今のところはっきりしていないということであります。引き続き御努力をよろしくお願いしたいと思います。

 それに当たりまして、ぜひ今度は、やはり調査について、先ほどコンプライアンスと個人情報保護法の話もありましたけれども、行政に立入検査権それから強制調査権、これを地方に与えるのか、県に与えるのか、なかなか難しい問題ではありますけれども、こういったものをきちっと付与した上で調査を徹底しないと、時間がたつにつれて追跡は難しくなるわけですから、こういうものを付与することが私は必要だと。これは家伝法に書くべきかどうか、私たち悩んでいるんですけれども、御意見をぜひお願いしたいと思います。

津田参考人 それでは、今の質問ですけれども、お答えします。

 まず、口蹄疫の疫学調査のルール化ということでございます。

 毎回、口蹄疫は、今回のインフルエンザもそうですけれども、発生しますと必ず疫学調査を行います。この疫学調査は二つ目的がございます。まず、発生したところに、発生農場に入りまして、そこから出ていった動物なり畜産物あるいは人がいないか、要するにどこまで拡散したかということ、それから、どこから入ってきたかという入り口の調査をして、それを広く押さえて防疫につなげる、そこまで全部摘発してしまうというふうな防疫目的の疫学ですね。それと、今回のように、どこからどういうふうに広がっていったのか、それから、どういう要因がウイルスの侵入を許したのかという本当の意味での疫学ですね。そういった二つのやり方があります。

 従来はやはり防疫上の疫学ということで、最初の疫学は一生懸命やられておったんですけれども、なかなか後の方が、要するに、今防疫で人が忙しいのに何をそんなことをやっているんだという事情もありまして、なかなか後者の方が充実していなかったというのが現実です。ですから、今回は、それにあわせてやはり後者の方も充実していなければいけないということもあって、やっていこうと思います。

 それから、もう一つ、日本ではやはり獣医の疫学というのが若干弱かったというところがありまして、でも、これはもう十年前からでございますけれども、やはり疫学の研究者の育成あるいはそういった学問の発展というのをやるために、我々の独法でございますけれども、そこにも疫学研究チームというのをつくって人材育成等を行っているところでございます。

 ですから、今後、先生のおっしゃったようなことにつきまして充実させていこうと思いますし、発生の都度、そういった、本当の意味でのリスク要因を見つけ出すような疫学が進んでいくというふうに思っております。今回の鳥インフルエンザに関しましてもそういったことでスタートしているところがございます。

 それから、二番目です。口蹄疫の診断指針という話でございます。

 これは、先生方は御存じと思いますけれども、宮崎の方では、最初の連休前は口蹄疫に関する意識というのはそんなに強くなかったと思います。それは二〇〇〇年もそうなんですね。非常に症状が軽いものですから、見ていればおさまるだろうというところなんですけれども、これが口蹄疫の怖さでございまして、ある程度ウイルス量が高まってくると症状もどんどんどんどん激しくなっていくんですね。郷原先生に言わすと、一般論としては余り死ぬような病気じゃないとおっしゃるんですけれども、豚はもう一日で立てなくなってしまいます。ほとんど死んだも同然なんですね。それくらい悲惨な病気なんです。最後の方には、農家の方から、早く殺してくれというような要望が出るぐらいの強い病気でございます。

 これを、どの時点で口蹄疫ととるかというのはかなり難しいことでございまして、先ほど言いましたように、やはりある程度想像力も必要になってくるということです。

 そうした中では、今宮崎県の方でも計画されていると思うんですけれども、今回いろいろな症状を、これだけ数がありましたから、病変の進みぐあいであるとか症状を写真化したものをつくるというような話も聞いております。そうしたものを活用していただければというふうに私は思っております。

 それから、次の立入調査権についての話でございますか。調査権ですね。

 我々、疫学調査を行いましたけれども、やはり最初は聞き取り調査でございます。ここで強制的にできればということもあると思うんですけれども、現実は、やはりそれぞれの方々から聞いてスタートするということがありますから、今回の疫学調査の中ではそういった必要性を感じなかったというわけではございませんけれども、では、あったから画期的に進んだかというと、ちょっと疑問符がつくところでございます。

山田委員長 ちょっといいですか。

 郷原委員に、立入調査権について、今の家伝法の範囲でどこまでなのか、それも含めて答えていただけますか。

郷原参考人 現行法でも立入検査の権限はあるんですね。ただ、ほとんどそれが使われていなかったというのが実情だと思います。

 ただ、考えなくちゃいけないことは、今回のケースは、本当にこれだけ大規模な感染が起きちゃった、それを後講釈的に振り返るから、このときにもっとこうすべきだった、こうすべきだったということが言えるんですけれども、今後起きる事態というのはいろいろな事態があり得るわけですね。最初は疑ってみたけれども実は白だったというケースもある、症状もそれほど大したことがないというケースも中にはあるかもしれないです。そのリスクの程度に応じた対応がとられ、それについてのしかるべき周知措置がとられるということじゃないといけないと思うんですね。

 ですから、そこに、非常に複雑で微妙な判断が求められる面が出てくると思うんですね。立入検査というものを実際に行ったときに、それがその対象者に対して、そして世の中に対してどういう影響を及ぼすのかということもあらかじめ想定しておかないといけないと思うんです。独占禁止法の立入検査は、このごろ例外なく報道されて、もうそれだけで企業は悪いことをやったというふうに決めつけられるのが実情です。それと同じように、立入検査というものが何か黒の判定のように受けとられるとすると、それ自体が風評被害につながる可能性がある。

 そういったことで、先ほどの個人情報の問題にも関連してきますけれども、本当に、白のおそれがあるような段階で個人情報の問題を余り拡散させてしまうことも当然問題ですし、そういったことに関して、さまざまな要因を考慮した適切な対応が求められるんだろうと思います。

江藤委員 大変示唆に富んだ御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 次の質問に入らせていただきます。郷原先生にちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。

 患畜や疑似患畜は、家伝法に基づきまして五分の四がまず補てんをされるんですね。これは委員会で私はたびたびやったんですけれども、経営再建支援補助金という形で、その五分の一足りない部分を宮崎県が払ったんですよ。今度は、共済がさらに払うと。だから、現実問題は、概数で言うと大体五分の六ぐらいになったんですね。

 ところが、ワクチン接種農家は、特措法に基づいて五分の五支給されましたので、共済の対象にならないんですよ。となると、無事戻ししかないわけですね。七百七十農家、ワクチン農家があったんですけれども、無事戻ししかされないで、非常に不公平感が今蔓延しております。

 今回は、国を信じて、補償内容は明示されませんでしたけれども、ワクチンの接種を受け入れました、宮崎県は。受け入れました。その後はちゃんとフォローしてくれたのでよかったのでありますけれども、これがちゃんとクリアされないと、次に発生したときに、ワクチン接種だと損をする、患畜もしくは疑似患畜になった方がもらいが多いというようなことになると非常に問題だということを私はずっと委員会で主張しているんです。

 そして、宮崎ではさらにもう一つ問題が起こっておりまして、豚の預託というのがあるんですよ。豚も、えさも、それから薬も、全部豚の持ち主さんから来ているわけですね。自分は畜舎を持っていて、畜舎は自分のものなんですよ、豚を飼って出荷をしている。ところが、今の法律に基づいてやると、全然、所有者にしか金が払われないということです。

 ただ、我々が、民主党さん、それから公明党さんと一緒に協力して特措法をつくったときには、口蹄疫にかかったすべての畜産農家を救済するのだ、プラスアルファ、二次的、三次的被害に遭った経済損失も補てんするのだという趣旨でつくったんですけれども、完全にその預託の豚の農家さんが漏れちゃった。これは政治のミスで、先生方の責任では全くないのではありますが、ここも、私は何とかこれは修正しておかないと、法律の専門家でいらっしゃいますので、今後、ワクチン接種の段階でそごを来すおそれがあるのではないかと思いますが、ちょっと御意見をいただければと思います。

郷原参考人 私も、今おっしゃったことは存じませんで、そういう不公平感が生じているということを初めて今お聞きしたんですが、そういうことだとすると、やはりそれは問題だと思いますね。

 感染畜というのは、その農家の責任かどうかは別として、それでも、かかってしまったということについての何がしかの責任もあるかもしれないですよね。ところが、ワクチン接種で殺処分というのは、言ってみれば、そのままほっておいても別に家畜としては特に困らなかったものを、まさに国に協力したということになるわけですから、むしろそちらの方が手厚い保護を受けるべきだというふうに思いますし、そこのところの納得感がしっかりないと、やはりできるだけ広く農家全体に協力を求めるということにならないと思います。

 ちょうど、法律違反に対するペナルティーを何かつまみ食いみたいにへんぱな形で行使していくといろいろな不満が出て法律が徹底できないのと同じで、そういう不公平感はできるだけなくすようにしていかないといけないと思いますし、後者の問題である、実質的な補償を受けるべき立場の業者とか人がだれなのかということも、これは制度の設計、構築に当たって十分に考慮しないといけない問題だと思います。

江藤委員 大変ありがとうございます。

 これは、いわゆる基金でやるのか、家伝法なり、それからそれこそ政令、省令でフォローするのか、これから与野党を超えた議論をしなきゃならない問題だと思います。法律の専門家の先生からそういうお言葉をいただいたので、意を強くして、何とかこういう不公平はなくすような制度設計に努力をしてみたいというふうに思います。

 それでは、ちょっと突拍子のないことを言わせていただきます。ちょっと時間がありますので。

 今回、殺処分と埋却の具体的な方法が確立していませんでした。こんなに大規模に死ぬとは思っていませんでしたし、これは仕方がないことといえばそうなんですけれども、口蹄疫対策検証委員会の最終報告書、国と宮崎県、市町村などの役割分担が明確じゃない、先ほどおっしゃっていただきました。これは大問題でしたね。頭がいっぱいあるような状況。国は第一例の発生直後に直ちに防疫の専門家を現地に駐留させ、的確に判断できるようにするべきだというふうに山根先生は御指摘をいただきました。

 私は、報告書を読ませていただいて考えましたが、省内に家畜防疫対策室というのを常設するということがやはり必要なんじゃないかと思います。鳥フルも今起こっておりますし。そうなった場合に、まず指揮権のようなものをこの対策室のしかるべきメンバーに政府は委譲して、発生したら、その日のうちにすぐに行けと、すぐ。そして、家伝法なりそれなりの中に、最高責任者は農林水産大臣である、農林水産大臣はできる限り早く、出張していることもあるでしょう、いろいろな事情もあるでしょうから、できる限り早く現場に入って指揮をとるべきだということを明記することが非常に有効なのではないかというふうに私は実は思っております。

 時間がないので続けて質問させていただきますけれども、今後は獣医の問題。

 殺処分の問題で随分問題がありました。人が足りないとか、なれていないとか、注射をまともに打てないとか、いろいろありました。ですから、今度は、農業共済の獣医師それから民間の獣医師の活用、これはやはり考えていかなきゃなりません、今のうちから。

 これまた突拍子もないことを言うようで笑われるかもしれませんが、例えばこういう人たちを、自衛隊でいうところの即応予備自衛官ですか、こういうような形でふだんから押さえておく。年に一回は、演習なり教育なり、訓練を義務づける。そして、大規模にこういう越境性の家畜伝染病が発生した場合については、国の命令で、家畜伝染予防法という根拠法をもって、法律に基づいて招集をかけて、そして、家保の人間と同じ権限を持たせて、みなし公務員として現場で働かせるというのはいかがかなというふうに実は思っておりますが、山根先生、御意見をいただければと思います。

山根参考人 基本的には全く先生の御指摘のとおりでございまして、今の家畜防疫員、ほとんど、九九%県の職員なんですね。昔の県の職員さんというのは幅広い活動展開をやっていましたから十分経験も積んでおられたんですけれども、今の若い家畜防疫員は、ほとんど牛にさわったことさえないという方が多いんですね。これはヒアリングでもはっきり出てまいりまして、早くから、ぜひとも経験者をよこしてくれと県に要請したのだけれども、県は県だけで対応できると言って何にも対応してくれなかったという強い批判が出ておりましたけれども、全くそのとおりだと思います。

 これは家畜改良センターの場長さんもヒアリングの中で言っておられました。獣医師が、保定から始まって、注射器の整理から始まって、消毒から全部やらないけない、こんな無駄なことはない。だから、経験者をリーダーに置きまして、チーム医療の体制みたいなものをきちっと、それこそ今、動物看護師も、獣医師会は全国組織を進めておりますけれども、そういう消毒とか後片づけとか準備は全部看護師に任せて、それから保定等は飼い主さんも協力すると言ってくれておりますので、こんな一日に一頭しか処分できないようなことでは、我々はもう見るに見かねておるということが出ておりました。

 ですから、そういう体制をつくって今から訓練しておくというのは私はすばらしいことだと思いますし、先生の御指摘のように、自衛官にもそういう緊急時には出るような体制ができておりますね。これは獣医師会の中でも相当前から議論しておりまして、ですから、家畜防疫員と任命しなくても、それに準ずる体制づくりをやっておいて、その方々は絶えずある種の訓練をやったり、まあ訓練をしなくても、経験者ですからこの方々は、家畜共済の先生とか開業の先生というのは。ですから、そういう体制づくりはぜひともやっていただきたいな、家伝法の改正の中ではぜひともやっていただきたい。我々の希望でございます。

江藤委員 御賛同いただいて大変ありがたいんですが、ただ、この即応予備自衛官も、何らかのお手当を日ごろから払わなければなりませんので、このことについてはちょっとまた国会内で議論が必要だと思います。

 ただ、今回、先ほど先生から指摘がありましたように、宮崎県は余りにも急激にやはり飼っている頭数がふえ過ぎました。増頭運動というのを徹底的にやったんですよ。そのために足りないのと、それから、宮崎県は非常に財政が厳しい。また、プラス言わせていただくと、今回補正予算を一千億円以上組みましたから、もう基金が完全に枯渇しちゃって、では県の責任で家保の人間をふやせといったって無理なんですね、現実問題。

 ということであって、どうしたらいいのかなと考えたときに、これぐらいしか解決策がないのではないかというので、これを、だから県の責任でやるのか、それとも国の責任でやるのか、また山田委員長あたりとぜひ意見交換させていただく機会があればありがたいなと思っております。

 ちょっと時間がありますので、次に移らせていただきますが……

山田委員長 少し、関連で。申しわけないんですが。

 防疫員に民間の獣医師を任命することはできませんよね、山根先生。

山根参考人 今のままではだめなんですね。もう家伝法の中でうたってありますから、ですから何らかの……

山田委員長 やっているところがあったんじゃなかったかな、県が。

 どうぞ、引き続き。

江藤委員 それでは三番目の質問ですけれども、埋却について少しお尋ねをさせていただきたいと思います。

 二十四時間以内の殺処分と七十二時間以内の埋却ということは、これは基本、これは守るべきだと私も思っています。世界の潮流では、殺処分しないで経過観察するなんということを言っていますけれども、清浄国に復帰する近道として、私は、やはり基本殺処分という方針を貫くべきだという意見を持っている人間でございます。

 今回、恥ずかしい話でありますが、宮崎県は殺処分まで、殺処分ですよ、埋却じゃないですよ、かかったのは九・六日です、九・六日。二十四時間の九倍ですからね。ただ、それはなぜかというと、埋却地がなかったからですよ。埋めるところがないから殺せなかった。三週間も、殺処分することが決まって、それで殺すことができなかった。そのときの農家の気持ちたるや、悲しいものがありますよ。

 ですから、埋却地について、いろいろ赤松大臣のころに私もちょっと激しくバトルがあったんですけれども、これはやはり国できちっと議論をしておく必要があるのではないかと思います。

 最終報告では、「都道府県は、埋却地の確保状況を把握し、埋却地を十分に確保できていない畜産農家に対して必要な指導を行うとともに、畜産農家による事前確保が十分でない場合の対応を準備すべき」というふうに先生御指摘いただいていますね。おっしゃりたいことは十分わかるんです、おっしゃりたいことは。

 ただ、私の選挙区は中山間地域が物すごく多いんですよ。私の田舎は、例えば椎葉村という村がありますが、そこは人口は三千人ちょっとしかおりません。そこには九百二十一頭の牛がおります。そして、椎葉村の総農業生産が五億五千万弱なんですけれども、そのうちの約半分、これは牛なんですね。椎葉の村長と話をしましたが、村長、埋却地あるね。ないと。せいぜい十頭も埋めりゃ、もう場所はないと。急峻な山ですから。そんなところにもう既に家を建てちゃっているわけですよ。

 そういう状況になりますと、家畜伝染予防法に余り厳しい埋却地の要件を書き込んでしまうと、土地の条件の恵まれているところ以外は牛や豚を養ってはいけませんということになるわけですね。ただ、これをやられちゃうと中山間地域は滅びますよ、本当に。シイタケとか、それとか畜産とか、花とか高原野菜とか、そういったもので何とかかんとかやっているんですから。棚田の収入なんていうのは知れているんですよ。ですから、ここら辺の書き込み方をどうやってしたらいいのか、私も非常に実は悩んでおります。

 そして、もうちょっと御指摘させていただきますと、三年間の時限立法でありますけれども、私たちは口蹄疫対策特別措置法をつくりました。この第五条三項には、国は、埋却の用に供する土地の確保その他の必要な措置を講ずる、国の責任だというふうに書いたわけですね。第四項には、地方公共団体は、埋却地の確保その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすると、若干緩いトーンで書いたわけでございます。

 ということになりますと、これは最後の質問になりますけれども、これらの状況を踏まえて、田舎の状況とか、こういう特措法と家伝法との若干そごがあると思うんです、法律上の。そういうものを踏まえた上で山根先生は、現地のことは国は、農林水産省の役人は知らないんですよ。そういう国が埋却地に対して責任を負うよりも、やはり都道府県の方が適切であるという御判断のもとにこういうような最終結論を出されたんですか。これは質問ですけれども、よろしくお願いします。

山根参考人 全くそのとおりでございまして、というのは、検証委員会の中でもいろいろな意見が出ました。その中で、このような厳しいことを、埋却地まで持たなければ飼育できないというようなことになりますと、日本の零細畜産農家は壊滅状況になるんではないかなという意見が出まして、我々の意図するところはそこにはないのでございます。

 そのような小さい農家には余り発生してないんですね、今回も。やはり問題は、大型の、企業経営の畜産農家なんですね。ですから、これからは、新規の畜産農家は、やはりそれなりの適正規模というのが地域によっては私はあると思うんです。そういう審査体制を、許可体制をとらなければならないのではないかなと私は思っております。

 そういう意味でこの項目をつくらせていただいたわけでありまして、従来、もうやっている方は、なかなかこれを当てはめてやるのは難しい。やるとするならば、やはり国じゃなくて県、市町村が一番現場をよく知っておりますので、そういう公有地とかをちゃんと見繕って、もう鹿児島県は進めているようでございますけれども、そういう体制づくりを各県ごとに私はやるべきではないかなと思っております。

江藤委員 大変ありがとうございました。

 家伝法の改正、それから防疫マニュアル、指針、政令、省令の精査、これは急がなきゃいけないけれども、拙速にやってはいけないことだなということがよくわかりました。

 ぜひ、諸先生方におかれましては、今後も私どもにいろいろな御示唆をいただいてお力添え賜りますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

山田委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 きょうは、お三方の参考人の皆さん、本当に御苦労さんでございます。

 また、私も検証委員会の報告を読ませていただきまして、大変精力的に会議を開いていただいておまとめいただいたこと、心から敬意を表したいと思います。

 それで、いろいろと、行ったり来たりになるかもしれませんが、御質問させていただきたいと思います。

 今回も、やっと清浄国の申請をした、その途端にお隣の韓国で発生をして、今また大変な勢いで広がりつつあるということで、私は、やはりまた九州の方、日本の畜産農家の方も大変な御心配を今されているんではないかと思います。

 一つは、今回の宮崎の口蹄疫についても、今のところ、最終的に感染経路がわからない。結局、どういう形で発生をしたのか、そこがどうも結論が出ないので、一体どういうことだったのか、不安な点がまだ残っているんじゃないかと思うんです。

 これは津田参考人にお聞きをしたいんですけれども、今、いろいろと疫学調査もやっていただいていると思いますが、これは、ある意味でいえば、可能性のあるところを全部つぶしていく以外にはないと思いますけれども、参考人の御意見として、幾つか、複数、こういうことが考えられると、現時点でお話しいただけることで結構でありますけれども、まずお聞かせをいただきたいと思います。

津田参考人 この中間取りまとめにまとめているとおりでございまして、今回の発生は、一番最初に発生したのが六例目と言われるところでございまして、ここは水牛を飼っているところでございます。幾つかその前後に、前後というか後の方ですけれども、大規模農場であるとかという話も出ているんですけれども、そこの間には、いろいろ、症状等の進みぐあいを見ても約十三日ぐらいの開きがあります。ですから、その順番は恐らく変わらないだろうと思います。

 そうすると、その六例目が初発だとすれば、そこに持ち込まれた可能性のあるものをいろいろ調べてみました。飼料運搬車なり外国産の飼料なり、それからほかの、いろいろな畜産関係の機材等、持ち込まれたものを調べたんですけれども、その中では、ちょっとこれはというものはほとんどなかったということでございます。否定する材料ばかりでした。

 もう一つは、やはり人です。人が出入りしたかということを調べたんですけれども、実際には記録がございません。非常に地理的には山の中でございますので、そんなに人は行かないというふうなこともあったんですけれども、観光じゃないですけれども、ちょっと有名な、特徴的なチーズをつくっているところでございまして、そういうこともあって知っている人は知っているということがあって、人が来たということもあったようです。ただ、記録がないものですから、そういった辺のことはわからなかった。

 口蹄疫の伝播を考えますと、やはり、ほんのちょっとでも感染量のあるものが動物に接触すれば感染は成立します。ですから、必ずしも、量が必要だ、例えば一トン必要、二トン必要というものではありません。ほんのわずかの接触でも十分感染が成立します。そうすれば、やはりそういうことを考えると、人の可能性というのも必ずしも否定できないかなということでございます。そうすると、そういったところに何らかの形で国外からそういった汚染したものが持ち込まれて牛に接触したのではないか。今回、そこから順次広がっていったというふうに推察されます。

 ですから、それを踏まえて、対策としましては、今、鶏あるいは豚等の農場ではかなり徹底されてきているんですけれども、ここは伝染病予防のために無断立ち入りを禁じますということで、まず出入り口でほとんど関係者以外は入れないようになっています。そういったふうなことを多くの畜産施設についてはやはりやる必要があるのかな。あるいは逆に、そういうところを訪れる人は、何も畜産関係者じゃなくても、そういうところに立ち入るのは控えていただきたいということがありまして、そういった畜産以外の者で外部との接触もなるべく予防するということをしていただきたいというふうに考えているところでございます。

 ですから、原因が特定できなくても、やはりそういった対策を日常的にやるということが今後必要になっていくのかなというふうに思っております。

石田(祝)委員 どうもありがとうございます。

 私も、物とかいろいろあるんでしょうけれども、やはり人の移動が一番の大きな原因だったのではないのかなと。ですから、これは一切だれも入れなきゃ一番いいわけですけれども、そうはいかない。そうすると、やはり入り口を一カ所に絞るとか、そこで徹底的な消毒をして入ってもらうだとか、入った人の記録をつけるとか、その人が近々そういう心配なところに行ったことがあるのかどうかとか、その辺もやはりしっかりやらざるを得ない、こういうことだろうというふうに思います。

 それで、この報告書の内容で、最も重要なのはということで、一つが発生の予防、それから早期の発見、通報、さらに初動対応、ここに財政資金の投入も含めて関係者が力を注ぐことが結果的に国民負担も小さくすることにつながると。私はまさしくそのとおりだと思います。

 ですから、発生の予防ということになると、日本では今起きていない、清浄国の申請をしているということですから、侵入を防止する以外にないわけですね。そうすると、侵入防止ということになると、これは少々不自由、不便をかけるかもしれないけれども、ある意味でいえば、御理解をいただいて、徹底的にやる以外にはない。

 ですから、私は今回、心配しているのは、韓国で出ている、韓国と九州というのは地理的にも非常に近い、人の往来もある、そこで、やり過ぎてもやり過ぎることのないぐらいこれをやらないとまた大変な事態を招きかねない、こういうふうに心配を実はしているんですが。

 ここで、侵入防止、ある新聞を見ますとニュージーランドの水際の例が出ておりますけれども、例えばこれは、山根先生もそれから津田参考人もそういう専門家ですから、この侵入防止、水際でとめるということで、具体的にどういうことをお考えになっているか、こういうことをぜひ行政にやってほしいということがありましたら、それぞれ簡潔にお願いします。

山根参考人 先ほどの中でもちょっと触れたのでございますけれども、やはり水際作戦が日本国としてはかなり、充実していないといいますか、他国に比べまして、特に畜産立国に比べたら非常にルーズなんですね。

 といいますのは、韓国、中国、北京ですけれども、台湾、この一、二カ月で回ってみたんですけれども、帰ってくるチェックの中に、どこの国に行ったというのはわかりますね、当然これは。税関申告などでも。ただ、どの農場に寄ったとか、農産物はどうだとか、触れたとか、そういうのはニュージーランド、オーストラリアは全部チェックさせるんですね。ところが、それさえないんです、日本は。ましてや、おりた空港でも、本当に消毒どこでしてはったんかなと思うぐらい何にもわからないんですね。わからぬようにしているという説もありますけれども、ちょっとそれは余りにもひどいじゃないかなという気はいたします。

 オーストラリアなどは相当厳しい規格をつくっておりますから、何だったらもう国外に出てもらうような厳しいこともやっていますし、靴も全部捨てるようなこともやっているようでございまして、そうやって見ると、やはりちょっと弱いなという気はいたします。

 ですから、せめて、どこの国に行ってどういう行動をとったかという調査ぐらいは、性善説でございますけれども、やはり申告させるような体制をとらないと、今度、先生の言われましたような、発生経路を探すときにも、何にも申告さえもしていなければ、農家の方も記述もしていないとなってくると、私は皆目わからなくなってしまうんじゃないかなという気はいたします。

津田参考人 靴底消毒というのを今発生国から来る場合にやっているということはあるんですけれども、あれも、イギリスを見てみますと目立たないようにやっているんですよね。カナダとか、アメリカもそうですけれども、空港の、おりたところにでっかい看板があるんですね。口蹄疫の侵入防止ということでちゃんと靴底を消毒しましょうとか、もう明確に、ここから先はきれいにして入ってくださいということを意識づけしているんですね。

 先ほど山根先生もおっしゃいましたように、入国審査カードの中にも、そういった、農場に行ったことがあるかとか、それから国内に入ったら何日間は、例えば五日間は農場に近づかないとかいうことをちゃんと宣誓させるようにチェックがありますので、そういった意識づけというのが私は一番重要かなと思います。

 一々頭から消毒薬をかけるわけにいきませんので、やはりそういった意識づけをさせて、それからもう一つは、農場の手前では必ずそういうことを意識させて、これ以上は入っちゃだめですよということを二重三重にやっていくということが必要じゃないかなというふうに思います。

石田(祝)委員 私も航空機で移動するときに、関税の問題で、持ち込みの問題があって申告させますけれども、確かにそうですね、やはり、入ってくる、帰ってくるときに、また、いろいろな国へ行く、入るときに、そう言われれば、農場に行ったとかいうのをチェックする項目はないですよね。

 これは、今後そういうのを、航空会社の協力も得て、少なくとも日本に帰ってくる、入ってくる便については、どこから来たのか、どういうところへ寄ったのか、明確にしていただかないとなかなか水際で防ぐことは難しい。これは私は大変大事な点ではないかというふうに思います。

 それで、郷原参考人にちょっとお伺いをしたいんですけれども、国と県とそれから当該の農家、これを一つの組織と考えた場合、こういう、今回のような口蹄疫が起きたわけですから、これはどこかに何かミスがあったとか、漏れがあった、穴があいていたということだろうと思いますけれども、これは参考人の専門のコンプライアンスの観点からいきますと、どこをどういうふうにこれから、国、県、農家の関係というのが縦の、上下の関係ではもちろんないとは思いますけれども、一つの組織体として考えたときに、これはどういう改善点を考えられるか、ちょっと御見解をお願いします。

郷原参考人 今委員がおっしゃったように、国、県、農家というのを全体として一つの組織として見る、そういう考え方は非常に重要だと思います。

 ただ、実際に、一つの組織として動いてほしいんだけれども、それぞれの利害とか目指すものが違うところがあって、一つの組織としてなかなか動けない面があるわけですね。国は恐らく国レベルでの防疫ということ、そして経済的な利害ということ、それから畜産全体のことを考える、県は地域の畜産農家の振興ということをやはりかなり強く考えるというところにどうしてもずれが出てくる可能性があるし、農家になると、やはり農家の個人的な利益の問題になります。

 だから、それが、そのそれぞれの立場で重要視している利益が何であって、そこにどういうような違い、そごがあるのかということを本当に実質的によく考えた上で、そのギャップのところを埋めるような法律の手当てだとか財政支援だとかということを考えていかないといけないと思うんですね。

 そういう意味でも、全体として一つの組織体として動けるようになるために、どこにどういう考え方のギャップ、違いがあるのかということを改めて見直していくということが重要だと思います。

石田(祝)委員 発生が確認されたときに私たちが一つ考えたのは、日本はワクチンを使っていない清浄国だ、そういうことで、ある意味では牛肉の輸入をお断りする理由にもまたしていたことも、これは確かにあるんですね。ですから、結果的にワクチンの使用がおくれた。これは、相当な議論があって、政府の中でも随分議論して、悩んで結論を出されたとは思いますけれども、そういう問題もこれはありました。

 それからもう一つは、農家の側からしたら、牛というのは、ある意味でいえば、これから売れたらお金になるわけですから、それを処分するに際して、豚もそうですけれども、ある一定の、政府がしっかり最後まで面倒を見るんだと。だから、これは私たちも当初から、明確なメッセージを発しないと、要するに、どこまでも政府が責任をとるんだという明確なメッセージをわかりやすくするために、私たちの党は当時の官房長官に、一千億というお金を構えろ、こういうことを申し上げたわけですね。やはり農家の方にしたら、ある意味でいえばこれから収入の糧になるものをみすみす処分しなくちゃならない、そこで十二分な補償というものを考えていただかないとなかなか踏み切れない、こういうことも私はあったんじゃないかというふうに思います。

 ですから、そういうものを含めて、やはり戦力の逐次投入はだめだ、最初にどんといかないとこれは抑えられない、こういうことも、今回、私たちも改めて学びました。

 それで、きょうは山根参考人が獣医師会の会長ということで、今回おまとめいただきました。それで、御指摘にもありますように、宮崎県の獣医師の態勢が、非常にお一人お一人が過重なものになっていると。これは宮崎県の経済の問題も、財政の問題もあると思うんですけれども、獣医師会の会長もなさっておりますから、現在の獣医師の育成、養成の体制、また産業動物からペットの方にどうしても行きがちである、そういう点も踏まえまして、これからの獣医師教育、獣医師を育成することに対して何か御提言があれば、せっかくの機会ですからお聞かせいただきたいと思います。

山根参考人 まことに、大学の教育が、文部科学省の調査研究協力者会議で今審議を進めているところでございまして、今の獣医学の教育内容が、こういう公衆衛生関係と産業動物の動物医療が諸外国に比べまして非常に遅くなっているんですね。ですから、教育体制も充実させなければならないというのが一点だと思います。

 ただ、誘引といいますか、誘導作戦もほとんどとられていないんですね。産業動物のモチベーションを持って入ってきたいという若者がたくさんいるわけなんですけれども、余りにも悪い面ばかりが出てきますから、皆ヘジテートしてしまうというのが現実なんですね。

 今回も、宮崎県も獣医師は結構いるんですよ。獣医師会員が産業動物だけで二百二十四名おりますから、そのうち、産業動物の診療をやっている先生も百名近くいるんですね。移動禁止区域だけで三十名、それから搬出区域だけで十五名、四十五名おられたわけですから。今聞いてみましても、幾らでも私たちはボランティアで協力できると言ってくれているわけなんですね。

 ですから、それらを利用しない手はないと私は思いますので、県が、各県に言えることなんですけれども、各県が獣医師会と絶えず親密な太いパイプを構築すべきだと私は思いますね。そして、獣医師会はすべての人材のマップをつくっておりますから、こういう先生はどこに所在していてどういう技能を持っているかとか、全部網羅しておられますので、各県自体がそういう個々の緊密な体制づくりを構築する必要があるのではないかなと私は思っております。

石田(祝)委員 津田参考人にお聞きをしたいんですが、中間報告の中でだと思いましたけれども、発生農家と最後まで発症せずワクチン接種となった農家の違い、ここのところはこれから研究するということをおっしゃっておりました。比較的近いところにありながら最後まで発症しなかった、そういうところもあったようでありますが、これは現時点でわかることで結構ですけれども、この違いというのは一体どういうものが考えられるか、参考のためにぜひお聞かせいただきたいと思います。

津田参考人 実際に今回処分された戸数が千三百七戸でしたか、千三百ちょっとあります。そのうちの発生戸数が二百九十二ということからすると、大体千戸ちょっとが感染しなかったというふうに考えていいかと思います。あの地域、特に一番発生が続いた地域の中でも、最後まで発生しなかった、最後はワクチン接種で処分されたというところがございます。

 ここの要因ですけれども、いろいろなことが考えられますが、全部調査したわけではございません。ただ、やはり外との接触を絶って籠城したとか、それがよかったんだと言う方もいらっしゃいますし、それから子供さんがいるところは実家に帰してそこから学校に通わせたとか、かなりの不自由をかけたと思います。ただ、それが全部が全部感染と関係したかどうかというのをやはりこれから検証しなければいけないと思うんですね。

 移動禁止というのは、目的はやはり拡散を防止するためだったんですけれども、動物の移動、畜産物の移動、車両の移動だけをとめてもなかなか今回は口蹄疫の蔓延がとまらなかったということがありますから、そうしたときに、生活活動の中でどういった要因がウイルスを広げたかというのを調べようと思っているところでございます。

 ですから、今述べたのはちょっと極端な例でございますけれども、そうした中から、本当に広がらなかったのは何でだろうかということを調べたいと思っています。今のは極端な例で、とにかく全く外界と隔絶したら病気が入らなかったというような話もあるということでございます。

石田(祝)委員 三人の参考人の先生方、どうもありがとうございました。

 きょうの御意見をまた参考にさせていただいて、家畜伝染病予防法も改正しなくてはなりませんので、しっかりとまた取り組んでいきたいと思っております。きょうはまことにありがとうございました。

山田委員長 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。

 本当に、先生方の方からこれだけ大変すばらしい報告をまとめていただきまして、そしてまた御指導いただいている、このことにまず心から敬意と感謝を申し上げさせていただきます。

 当委員会において、一番踏ん張っていただいたのが委員長だろうというふうに思っております。現地にずっと張りつけをしながら、対応を一生懸命やった。

 これだけ被害が拡大する、だれもが予想はしていなかったというふうに思っています。当初、議論をずっと思い起こすと、いろいろなことが思い出されるわけでございます。しかし、先ほどもありましたように、一番、被害がどんどん広がったということについて、埋却処分の土地、それぞれ畜主の責任のもとで、こういう一つの法のもとで、それがなかなか対応でき得なかったという部分がありまして、そして、それぞれ、ワクチンが接種されてもそのまま、殺処分でき得なかった、こういう状況からどんどん広がってきたという一つの反省点も私方あるんだろうというふうに思っています。

 今座長の先生の方からお話がありましたように、埋却処分、土地、このことについては、県なり自治体がやはり責任を持つ部分も必要なんだろうというふうなお話がございましたけれども、今現在の段階でも、それぞれ、個人の土地、さらには公共的な部分の土地、そういったところもあるわけでございます。

 これだけ広がってきた、そういう中において、例えば、埋却それから焼却という部分はあるわけでございますけれども、ほかの外国の例、そういう面から見ると、この埋却という、これだけ広がっているところについての土地の確保、こういったところについては、ほかの、外国の例は、どういう対応をしているのか、ちょっと御指導いただきたいというふうに思います。

津田参考人 津田でございます。

 全部を調査したわけではございませんけれども、聞くところによると、例えばイギリスでございますけれども、埋却もやっておりますが、あそこは土地の関係で、泥炭地があったりするということで、必ずしも埋めても腐らないということもあって、埋め立てという、ちょっと違うんですけれども、かなり大規模に上から土をかぶせるような方法も使っているというふうに聞いております。

 それから、オランダですけれども、あそこは地下水位が高いものですから、基本的には全部レンダリングということで、国内でのそういった動物は、大体それだけのレンダリング施設は確保しているというふうな話は聞いております。

 それから、ドイツも、やはり基本は埋却というんですけれども、日本と同じ状況で、いざ起こったらどれだけできるのかというようなこともちょっと疑問が残っているということも伺っております。

 ですから、緯度が高いところではなかなか埋めてもさっさと腐っていかないということもありますし、それから岩盤がかたいとかいうところもあって、それぞれお国によって、お国柄で大分違うというふうなことは伺っております。

 ただ、基本は埋却あるいは焼却です。オランダの化製処理は除いて。(吉泉委員「それは個人の土地、個人の責任ですか」と呼ぶ)

 土地については、ちょっとそこまでは把握しておりません、個人かどうかはわかりません。

山根参考人 追加をちょっとさせていただきますけれども、家伝法の中には、飼い主が埋却地を確保しなさいというのがうたってありますね。ですけれども、現実はそうはなっていないというのがあります。

 特に日本は特殊なんですね。面積が小さいところに物すごくたくさん飼育された。特に宮崎県は爆発的にふえていますので、ですから相当よその状況とは違う。諸外国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドというのは広い土地を持っておりますから、参考にするならば、イギリスなどが日本にはかなり参考になるのではないかなという気はいたします。

 検証委員会の中でも、レンダリングがいいか、それとも埋却がいいか、いろいろな議論、意見が出ましたけれども、まだまだこれは検討の余地があるということに落ちついたと私は理解しております。

吉泉委員 それから、宮崎牛というブランド、そんなに簡単に、十年、二十年でできるものではない、これが全滅をする。そういう中において、国と県のそれぞれの食い違い、こういうことがあったわけでございますけれども、そのことについて、それぞれ考え方、意見、そういうものがあるというふうに思っていますけれども、最終的な結論は結論でいいんですけれども、このことについて、弁護士の立場で、あの当時の状況というものについて、何かそのときの感想みたいなものがありましたらば、ちょっとお伺いしたいな。

 それと、先生の方から、疫学上の問題で。

郷原参考人 法的な面で考えたら、やはりこの報告書に書かれているとおりになると思います。やはり県の対応に問題があったということにならざるを得ないと思うんですが、やはりそれだけでは割り切れないものが世の中には必ず残るわけでして、県の立場とか、県の背後にあった、そういった動きを支えるような声とか、そういったものがまた同じような問題が起きたときに国と県との間の考え方の違いとか対応のばらつきみたいなことにつながらないように、よくコンセンサスをとっておく必要があると思いますし、法律だけで割り切れる問題ではない部分もあるような気はいたします。これは感想的な面にとどまります。

津田参考人 今、国と県あるいは市町村との役割分担という話だと思うんですけれども、今回の疫学の取りまとめの結果からいきますと、そういったことはともかくとして、とにかく、発生が非常に拡大した後に防疫がスタートせざるを得なかったということでございます。ですから、これが一戸、二戸であれば、県でも、二〇〇〇年のときのように十分対応できたかもしれません。だけれども、こうした発生が大きくなった時点で、連携といいますか、それが本当に県だけで対応できたのかなというところはやはり問題があるのかもしれません。

 ただ、どの時点で国が関与するのか、どこまで、市町村までやるのかということは問題があると思うんですけれども、この発生規模に対して、やはり、対処する人的、物的なものが最初のうちは不十分だったということがあるとは思います。

吉泉委員 それで、今のチームの中で、侵入経路、このことについても議論、さらには先生方、御指導いただいたわけでございますけれども、ここのところについても、発生してからのそれぞれの人の出入りなり、そういうところについてきちっと台帳をつくってという指導もなされ、それも徹底をされたというふうに大変感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 ただ、今の状況の中で、やはり最初の段階での対応というふうな部分からいったときに、発生の予防、早期発見、それから初期対応という、その三つが大変大事だ、こういうことで報告なされてあるわけでございますけれども、それを常にやるということについては非常に無理な部分もあるんだろうし、さらには実際には見学者なんかもどんどんやはりいるわけでございます。

 その辺なんかは、ほかの国々のそういう対応というものについて、こちら日本のところがやはり足りない、常に予防対策として足りない、こういったところについて、少し報告の中にはあるんですけれども、もう少し丁寧に御指導いただければありがたいというふうに思います。先生の方からお願いします。

津田参考人 外国の例とか、いろいろ挙げられると思うんですけれども、今回、日本の発生はかなり外国でも注目されております。我々のところの職員も海外でいろいろ学会発表とかするんですけれども、やはりこの日本の発生例というのは非常に興味深く皆さん見ておられます。中でも一番注目されているのは疫学、今回の話ですね、どのように入ってきたのかということでございます。やはりこういった報告をある程度外国の方も見ておりまして、その上で、それぞれの国が各農家向けにメッセージを発信しております。

 一番言っているポイントは、とにかく通常のバイオセキュリティー、これをきちんと維持しなさいということでございます。バイオセキュリティーとは何かといったら、侵入防止と蔓延防止なんですね。要するに、農場の中と外とを明確に区別しなさい、それから入れるものはちゃんといつも、常に把握しておきなさい、それから出所が明らかなものを持ってきなさい、それから自分のところで異常な動物、異常があれば必ずそれは検査をしなさいというようなことをやっております。そういった注意なんですね。

 ですから、やはり基本は同じかなと思うんですね、日本も。特にこれをやりなさいとか、今回口蹄疫が出たからこういうことをさらにやりなさいではなくて、やはりそういうことが日常的にできるようなシステムをつくっていくということが一番重要かなというふうに私は思っております。

 外国もそういうことです。

吉泉委員 ありがとうございました。

 今のあり方の問題で、飼養の衛生管理基準に十の項目を挙げてそれぞれ畜産農家の方にも渡しているわけでございますけれども、その中で、今回の報告の三章の「今後の改善方向」ということの中で、この基準を遵守していない畜産農家に対しては何らかのペナルティーを科すべきである、こういうふうにうたっているわけでございます。この点について、自分自身も、見落としという部分もあるんだろうというふうに思っていますけれども、この項の意味という部分について山根先生の方の考え方をお伺いしたいというふうに思います。

山根参考人 口蹄疫は、これまでは日本では家畜農家、発生農家が被害者というような位置づけがあったと思うのでございますけれども、今は全く違いまして、もう農家どころか、市町村どころか、県どころか、国どころか、世界に迷惑をかけることになるんですね、一農家の発生が。ですから、そういう面からしますと、これからは生産者もそれなりの責任が伴うものだということをもう少し自覚していただこう。ですから、今先生が言われましたように、飼養衛生管理基準を、念仏をつくっても魂が入らないと意味がございませんので、実効あるものにするためにはどうやったらいいかということなんですね。

 今、農家にはみんなこれが文書で配られているとは思うんですけれども、ほとんど守られていないというのが事実なんですね。目を通して、ああ、また来たかというようなもので。

 今本当に真剣に考えておるのは、豚、大きな養豚農家ですね、そういうのとか、それから肥育牛を飼っておられる方、酪農がやはり一番そういう面では、人の出入りも多いですし、危機管理意識も低いというのがヒアリングの中でわかってきたことなんですね。ですから、やはり一農家がしっかりと危機管理を持っていただかないことにはだめじゃないかな。ですから、飼養管理基準をしっかりとした実効あるものにするためにはどうしたらいいかということに力を注いだつもりでございます。

吉泉委員 どうもありがとうございます。

 それぞれ被害者という部分でなくて、まさしく生産者も加害者であるという立場でやはりこれからの畜産行政の施策なんかも私たちしっかり考えていかなきゃならない、こういうふうに今肝に銘じたところでもございます。

 そんな中で、全体的に、郷原先生の方から弁護士の立場ということで最初に感想を述べられたわけでございますけれども、今のいわゆる個人情報の問題なんかも含めて今意見があったわけでございますけれども、まとめられた中で、さらには、今現在の今後の方向性というふうな部分を見たときに弁護士の立場で先生どういうふうに、もう少し感想を述べていただければありがたいなというふうに思います。

    〔委員長退席、森本(哲)委員長代理着席〕

郷原参考人 私、弁護士でもあるんですけれども、単に法律だけでこういった問題が割り切れるのか、適切な対応ができるかといったら、そうではないと思います。むしろ、最初に申しましたように、組織として全体として適切な対応を行うためには、どういう認識を持って、何を目的にしてどういう問題意識を持って行動していったらいいのかという、コンプライアンスの観点から考えることが重要だと私は思いますし、特にこういう、目的自体が非常に微妙な複雑な様相を帯びているような問題について、それを全部きれいにカバーしてきれいに解決できる法律というものをつくっていこうと思っても、これはなかなか容易なことではないと思うんです。

 法律によって基本的な枠組みを定め、そして必要な権限を与えていかないといけないと思いますけれども、最終的には、国、県、農家の協力関係、連携関係をどうやって高めていくのかという、やはり人と人との問題になっていくんじゃないかというのがむしろ私の率直な印象です。

吉泉委員 私も現地に入らせていただきました。後半のところで入らせていただいたんですけれども、畜産農家から聞くと、畜主が一番最初になるのは嫌だ、自分のところからほかのところに飛び火をするというふうに見られるのは嫌だ、だから黙っている、そしてだれかが出てきたらうちのもというふうな、畜産農家の方の人方からそんな話なんかも含めてお聞きをしたわけでございますけれども、そんな面からいうと、やはり、今はもう少し、地域さらには集落段階における畜産農家の全体的な固まり、さらにはその意識改革、こういったところが重要なところになっているのかなというふうにも今先生方からお聞きをして思ったところでございます。

 そうした中で、最後、時間になりますけれども、山根先生の方から、今回のこれだけ大きな勉強を私たちはさせていただいたわけでございますけれども、やはり常に緊張感を持ってやっていかなきゃならない、危機管理、こういう部分だというふうに思っているところでございますけれども、自分自身、この報告書を読んで、やはり大変、国、県それから市町村、さらには生産者の連携、その危機感、こういったところのまずさというものが相当随所に指摘をされてきているわけでございますけれども、そんな面の中で、今後の方向性も含めて、座長の山根先生から、何かありましたらば最後に教えていただければというふうに思いますので、よろしくお願いします。

    〔森本(哲)委員長代理退席、委員長着席〕

山根参考人 検証委員会を通しまして幾度となく出てきた問題は、やはり企業経営の畜産体制、これが非常に問題になっておりました。

 といいますのは、今先生の御指摘のように、口蹄疫というのは人には原則行かない、うつらない。ただ口をつぐんでおけば、治ってしまう。御存じのように豚の場合には激しい症状が出ますけれども、牛の場合には結構そういうことが言われているわけなんですね。いわゆる、隠ぺい工作と言ってはなんですけれども、黙っている方が得だというようなムードもなきにしもあらずということがヒアリングの中でも随所に出てきたわけでございまして、やはりオープンにするようなシステムをつくらなきゃならないんじゃないかな。

 といいますのは、調べてみましたら、企業経営の農家は何百頭牛を飼っておられるわけなんですね。ひどいところは一千頭以上。そうなりますと、塀をしてしまって、そして、そこには管理獣医師がいますけれども、全国を飛び歩いている管理獣医師でございまして、地元獣医師会とは全く疎遠になってしまう。ですから、国の講習会の案内も出せない、研究会の案内も出せない。それで全く孤立しちゃっているわけなんですね、情報が入っていかないわけなんですね。会社の中では動いていますけれども。そういうことと、それから、隣の、近隣の畜産農家との交流も余りないということがわかってまいりましたので、今後は、そういう体制をどのように明るみに出していくかということも我々は考えていかなければならないのではないかなと思っております。

 ですから、獣医師のライセンスのある方は、二年ごとに二十二条の届けを出すだけで済むんですね。そうじゃなくて、具体的にどういう仕事についているかということもこれからはある程度デューティーを負わせないけぬではないかな、そうでないと責任が全うできないのではないかなという意見も出ておりました。

吉泉委員 どうもありがとうございます。

 やはりこれから、経営が厳しいという状況の中で、どうしても多頭飼育、そして最終的には法人化、こういう流れというものがつくられてきている。それには、それぞれ集落段階で二頭、三頭飼いということについては環境問題といったところもあって、ほかの、いわゆる郊外の方に大きくしていくという状況もある。そんな中で、今先生からお話しになりましたように、企業経営感覚、その中における一つの危機管理、こんなところなんかをしっかり私ども勉強させていただきながら、これからの対応をさせていただきたい、こういうふうに思っております。

 本当にありがとうございました。

山田委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。

 ありがとうございます。(拍手)

     ――――◇―――――

山田委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 質疑を続行いたします。伊東良孝君。

伊東委員 それでは、私は、二点についてお伺いをいたします。簡潔なる答弁をお願いします。

 まず、捕鯨問題についてでありますが、この問題につきまして、私は、当選後、この一年間に二度ほど質問させていただきました。当時、赤松農水大臣から御答弁をいろいろいただいたところでありますが、今回は、鹿野大臣就任後初めて、この鯨についての質問をさせていただきたいと思います。

 御案内のとおり、反捕鯨団体でありますいわゆるシーシェパードでありますけれども、昨年も、テロ行為と言える妨害活動を繰り返してまいりました。IWC総会での正常化交渉は実質的に破綻し、その直前には、オーストラリア政府が国際裁判所に、南極海における日本の調査捕鯨の中止を求めて提訴をされているわけでありまして、調査捕鯨をめぐる情勢は一向に好転の兆しが見られない、いや、ますます厳しくなっている、このように思うわけであります。

 私は、調査捕鯨につきまして、捕鯨の再開を求め、また、鯨を食べる日本人の文化や伝統を守るため、さらには、野生生物を食料として利用しなければ生きていけない途上国の期待を一身に受け、また、科学的根拠に基づき野生生物を人類のために持続的に利用するという原則を貫くものでありまして、日本はその先頭に立っているという基本認識を既に述べているところであります。

 そこで、久々の再登板となられました鹿野農水大臣にお伺いをいたしますが、大臣は、就任直後の記者会見におきまして、商業捕鯨について、我が国の考え方というものを少しでも多くの国々に理解してもらうことの努力をしていかなくてはならない、これまで取り組んでこられた一つの考え方を私も引き続きやっていきたいな、こう思っておりますと発言をされたところであります。

 大臣が踏襲されると言われる我が国の考え方、また、これまで取り組んでこられた一つの考え方というのは、具体的にはどのような内容であると認識されておるのか、まず、大臣の基本的な捕鯨に対する認識をお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 我が国の捕鯨、捕獲の調査というものは、国際捕鯨取締条約第八条に基づき行うものでありまして、鯨を中心とした生態系の解明等に不可欠でありまして、商業捕鯨の再開に必要な科学的知見を収集するもの、こういうふうな認識でおるところであります。今後とも本調査を安定的に実施していくということが重要である、こう考えております。

 そして、平成二十年四月の衆議院及び参議院の農林水産委員会における南極海鯨類捕獲調査事業への妨害活動に対する非難及び調査事業の継続実施等に関する決議におきましては、我が国の南極海鯨類の捕獲調査はIWC科学委員会でも各国から高く評価されているということを踏まえまして、本調査事業については継続実施すべきである、こういうようなことになっているわけでございます。

 そういう意味を踏まえて、この決議を踏まえて、関係省庁と連携しながら、船舶のいわゆる乗務員の人たちの安全というものを第一に考えながら、今後とも調査を実施してまいりたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。

伊東委員 ただいま、平成二十年四月に当農水委員会で、南極海鯨類捕獲調査事業への妨害活動に対する非難及び調査事業の継続実施等に関する件という決議が全会一致でなされたということでもありました。参議院の農林水産委員会でも同じ内容の決議がされているところであります。

 その内容は、今お話があったとおりでありますけれども、農水委員会として、シーシェパードなどの妨害活動を「悪質で許し難い海賊行為ともいうべきテロ行為・犯罪行為」であると断じて、これを強く非難し、政府に対して厳正な処置を講ずるよう求めるとともに、具体的に、妨害対策の強化、関係国への働きかけ、必要な財政措置などによる不退転の決意での調査の継続実施を求めているところであります。

 今大臣から、科学的知見に基づく調査実施を今後ともしていくという見解が述べられたところでありまして、大変心強いものであります。しかしながら、調査捕鯨をめぐる現在の情勢は、決議がなされたその当時と何ら変わっていないどころか、先ほど申し上げましたように、一段と妨害活動は激しさを加えているわけであります。

 当委員会で全会一致でなされたこの決議につきまして、これは現在でもまだなお有効であり、政府において、引き続き決議の内容の実現に向けて着実に各種対策を実施されるべきもの、このように思うところでもあります。

 いま一度お伺いしますが、大臣はこの農林水産委員会の決議を御承知であった、こう思うわけでありますが、この決議に対する今後の取り組み、あるいは大臣の決意というものをお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 この御決議を踏まえて、調査捕鯨というふうなものを実施していかなきゃならないということになりますけれども、その基本はやはり、安定的な実施体制の整備が必要だ、こういうふうに考えております。

 そういう意味で、今お話しになりました今後の調査捕鯨というふうなものが、本来の目的が達成できるというようなことをやはり十分踏まえて、いろいろ事に当たっていかなきゃならないんじゃないかな、こう思っております。

伊東委員 この南極海鯨類捕獲調査事業につきまして、私は前にも何回もお話ししておりますけれども、捕鯨文化の継承とか将来の食料問題への対応といった事業の公益性、そして、毎年繰り返される妨害による被害、経済情勢などを総合的に考えてまいりますと、政府からの補助があるとは申せ、これは民間団体が行う事業として位置づけることが基本的に適切なことであるのか、また、今後引き続きそのようなことが可能であるのか、非常に疑問を持っているところでもあります。

 この調査の副産物の鯨肉の販売収入によって翌年のまた調査経費が賄われる。それを上回る利益が生じていた時代には民間に任せておいてよかった、そういう選択があったのかもしれません。しかし、現状を見ますと、シーシェパードによる妨害活動のためにこの調査捕獲頭数は大幅に減りまして、また次の調査経費に充てる副産物販売による収入は、鯨肉価格の割高感もあって大きく減少しているわけであります。また、十一月二十三日に、ナガスクジラの輸出再開を決定したアイスランドからの割安な鯨肉も日本の副産物販売による収入に影響している、このように言われているわけであります。

 昨年度、三十一日間、このシーシェパードの妨害による、調査活動ができなかった、これだけで大幅な捕獲頭数の減少が避けられなかったわけであります。今回もシーシェパードは、この冬から始まる調査に対して妨害船をふやして妨害を強めると豪語しておりまして、ニュースによりますと、新型船ゴジラというのを導入し、さらに追跡用のヘリコプターあるいは妨害用のモーターボートを新規に購入した、こう言われているわけであります。

 こうした状況であれば、この捕獲頭数がさらに減少をしかねない、また、そうなれば、今の共同船舶を初めとする民間を主体とした鯨類調査の体制というのは私は維持できないのではないかというふうに考えます。また、これが維持できないとすれば、日本の鯨類調査というのは、シーシェパードの目的どおり中止という事態に追い込まれるのではないかという危惧が出てくるわけであります。日本は、この暴力的な行為に屈した、圧力をかければ何でも引き下がる国であると国際的に私は評価されるのではないかという心配をしているわけであります。

 こうした現状認識につきまして、大臣も私とそう違わない御認識であろうと思いますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

松木大臣政務官 答弁申し上げます。

 もちろん、先生と一緒の気持ちでございます。そして、前も赤松大臣と三日月政務官がお答えをさせていただいているんですけれども、検討していきたいという話だったと思います。なかなか、引き続き前向きに検討していきますので、今どうのこうのというところまではちょっと言えないものですから、申しわけございませんけれども、そんなことでよろしくお願いします。

伊東委員 事は結構せっぱ詰まっておりまして、もう出港している話でありますし、敵方シーシェパードもオーストラリアの母港を出港しているというニュースが入ってきておりまして、これで本当に妨害をされて調査ができなければ、これはもう完全にアウトになるわけでありますので、もうそろそろ政府として、この調査事業というものを国として行うべき事業であるという認識を持っていただいて、それなりの対応策というのをお考えいただくべきではないか、このように思うわけであります。

 大体、捕獲した鯨のいわゆる副産物、肉の収入によって賄うということが原則であれば、それができなくなれば、日本として調査捕鯨ができなくなるわけでありますので、日本としてこれを続けるという大臣のお答えでありますから、国としてこの調査捕鯨は続ける。そして、科学的根拠に基づき、これは食料として、あるいはまた将来の有用な資源として活用するんだという国としてのしっかりした考え方を持って、鯨肉の販売代金、副産物収入は、これは別途、時の相場やあるいは経済情勢に応じて販売をし、それは国庫収入として受けるという形が私はごく当然ではないかと。

 この先そう考えていかなければ、これ自体が成り立たない話になるし、日本は完全にこの調査捕鯨から手を引くというふうになってしまうわけでありますので、ぜひ、この点について、御検討いただいたというお話でありますけれども、これをできれば近々、予算編成前に、年度内に方針を固めていただきたい、こう思うわけでありますけれども、この点についてもう一度お伺いします。

松木大臣政務官 前向きにしっかり検討していきたい。シーシェパードだかゴジラだかよくわからないですけれども、そんなやつらに負けるわけにはいきませんので、しっかり頑張ります。

伊東委員 それでは、鯨につきましてはこれで最後にさせていただきたいと思います。

 これは、海上保安庁が今回乗り込んでいるということでありますが、副大臣の記者会見では、人数も、あるいはその装備もその他も秘密ということであろうかと思います。

 ただ、海上保安官に、これは大臣の方で、乗ってくださいと言っただけじゃないと思うんですね。乗っていればいいかといったらそうではなくて、乗られたら、とにかくシーシェパードが来たら逃げろ逃げろという話が三年前に実はあったと聞いているわけでありますので、それはまた情けない話だな、こう思うわけでありますが、レーザー銃を照射し、そしてロープを何本も垂らしてスクリューに絡ませようとする、あるいは酪酸の強烈なにおいがする瓶を船上にどんどん投げ込む、これはやっていることはもう完全なテロ組織です。そして、前回はアディ・ギル号という船が、クモの足みたいなものがついた高速船が体当たりしてきた話であります。

 これは、海上保安庁が乗り込んでいただいていると思いますけれども、この間の尖閣ではありませんが、ビデオを撮って日本の正当性というものをきちっとやはり訴えていただくような、そんなことになってほしいと思うわけでありますが、海上保安官乗り込みに対する農水省のいわゆる要請内容というか、どういう注意あるいは要請であったのか、お聞かせいただきたいと思います。

松木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 シーシェパードのやつが聞いているとよくないので、なかなか内容までは、申しわけないんですけれどもちょっとしゃべるわけにはいかないんですけれども、今までのようなことがないようにしっかりと海上保安官の方もやっていただけるでしょうし、本当に、委員が言うとおり、こんなものはテロ行為そのものですからね。バットマンみたいなあんな変な船をつくってくるというのは本当に許しがたいというふうに思いますので、しっかり頑張って対処していきますので、よろしくお願いします。

伊東委員 それでは、日本とEUのEPAについて、お伺いをしたいと思います。

 この間、十一月十二日でしたでしょうか、G20に出席するため韓国を訪問された菅総理が、ファン・ロンパイ欧州理事会議長、またバローゾ欧州委員会委員長と、日本・EUの首脳会談におきまして、経済連携協定、EPA交渉を開始する旨の発言をされました。

 これは、韓国がEUとのEPA、FTAを発効させるということで、日本のハンディ、これは自動車、テレビを初めとして高関税がハンディになるということは我々も十分わかっているわけでありますけれども、EUと日本がEPAを結ぶということになりますと、やはり影響を受けるものも当然想定をされてくるわけであります。TPPに隠れてどさくさ紛れ的な形のEUとのEPAというのはまずいのではないか、こういうふうに私は思います。

 農業部門におけるもの、あるいはまた非関税障壁が主体と言われておりますけれども、農水省として、この影響を受ける部分について、今の想定される問題点をお聞かせいただきたいと思います。

篠原副大臣 まず、事実関係からお答えしたいと思います。

 四月二十八日に行われました日・EU首脳会議におきまして、共同検討作業を立ち上げるという合意ができました。それを受けまして、現在まで、次官級の日・EU合同ハイレベルグループ会合というのを七月十六日と九月十三日の二回行っております。

 それで、十一月九日に、例のTPPの関係で、包括的経済連携協定に関する基本方針が出されました。その中で、「EUとの間では、現在、共同検討作業を実施中であるが、早期にEUとの交渉に入るための調整を加速する。」という記述があります。それを受けて、菅総理は、十一月十二日に韓国におきまして、またこれを裏づける会談をされたわけです。

 本日、まだ始まっていないと思いますが、十二月八日、ブリュッセルにおきまして、第三回目の会合を、当省から原口大臣官房参事官が参りまして開催する予定でございます。

 それで、伊東委員御指摘のとおり、EUとの場合はちょっと特殊でございまして、関税というのじゃなくて、関税撤廃項目とかいうのではなくて、非関税障壁、四つほど指摘されておりまして、これをまず検討項目にされております。したがいまして、品目別の影響額とかいうような試算は、これについては必要ないのではないかと今のところ思っております。

 ただ、EUからは農産物でどのようなものが輸入されているかといいますと、豚肉、これはデンマークから九百二億円、カツオ・マグロ類が二百二十八億円、それからチーズが百八十一億円というので輸入をしておりますので、こういったものが、もし関税の引き下げとかいうことが取りざたされてきた場合には問題になろうかと思います。ただ、ただいまのところは非関税障壁が問題になって、それをもとに交渉しております。

伊東委員 余り時間がありませんので。

 この点、ただ私は、諸外国とのFTA、EPAを進めていく、これは二カ国間協議ですから、もちろんこちらの重要品目をガードしながら、除外させながら今まで十二カ国と進めてきたわけであります。ただ、EUの場合、テレビあるいは自動車等々が主たるものになる、そしてまた韓国との勝負の中でこれに差がついてしまう、ここに心配があるというのが一つあります。ですから、非関税障壁も取り払いながら何とかEUとEPAをやりたいというのが総理のお考えでありましょう。

 しかし、やはり、今言うように、デンマークもオランダも含めて、農畜産物あるいは乳製品等々のこれは大きな生産国、輸出国になるわけでありますから、お話あるように、相当な額が予想をされるわけです、影響額として。これはしかし、日本の農業者の皆さんやあるいは関係者に一定程度私は説明すべきであるというふうに思うんですね。

 これを全く説明なしにして、これはもう絶対ガードしますよ、除外させますよ、そういったお話の中で進むのであればわかるかと思いますけれども、今TPP運動が、大反対の声が高まっている中で、その陰でと言ったらおかしいんですが、いきなりこれも唐突に出てきた感がしてならないわけでありまして、農水省にお伺いしますと、総理の後の、農水省は、まだ被害額の試算は積算しておりません、こういうお話でありました。

 もっと内部でも、これは、総理が発言するときに、やはり少なくても農水省は自分の所管分の影響額ぐらいは把握する、あるいは即座に計算する、そうしたことでなければこれは生産者に説明がつかないんじゃないでしょうか、私はそのように思うところでもあります。

 我々はいたずらに自由貿易を否定するものではもちろんありません。しかしながら、やはり常に影響を受ける者たちを念頭に置いて、そこに丁寧な説明があって、対策が講じられて初めて、こうした交渉というのは成立していくものだというふうに思うものでありますから、この点について大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

鹿野国務大臣 今伊東先生から御指摘いただいたことにつきましては、やはり今後、EPAをEUあるいはそれぞれの各国と進めていく場合は、少なくとも、こういう分野が農産物の分野で、そして影響がありますよということも含めて、情報を提供するというふうなことは非常に大事なことだ、このように受けとめさせていただいたところでございます。

伊東委員 これで質問を終わりますけれども、私は、来年度の予算の策定がいよいよ大詰めだというふうに思いますが、強い農業をつくる、あるいはまた、こうした自由貿易の拡大によって被害を受けるであろう生産者のための予算というのがしっかり確保されなければならない、こう思うわけでありますが、現実には、農水省の予算が減り、あるいは農業の基盤整備予算が大幅に減り、これはどうしても、自給率を向上させる予算にはなっていないような、そんな感じがしてならないわけであります。

 農水省挙げて、こうした対策を、この際、財務省に、本当にEPA、TPP対策だということで、しっかりした農業予算あるいは一次産業予算を確保していただきたい、このように思うところであります。

 以上であります。

山田委員長 次に、小里泰弘君。

小里委員 自由民主党の小里泰弘でございます。

 まず、口蹄疫に関連しましてお伺いをいたします。

 競り市が再開をされましてから、七月から九月に競り市に出された子牛に対して補てん金が出ることになりました。また、余分に支払うことになったえさ代等についても補てんが出る。その支払いは、十月に計算をして十一月に出るという話でありました。私どもは、資金繰りに困っている畜産農家のためにもっと支払いを早くできないかということを要請してまいったところであります。

 ところが、まだ支払われていないんです。少なくとも鹿児島県においてはこの支払いがございません。どういう状況になっているのか、どういう支払いの予定であるのか、確認をさせてください。

篠原副大臣 二つの点のお尋ねかと思います。

 十一月中にということで現場では努力しておったようでございますけれども、事務手続が煩雑で全部まとめ切れないということで、我々が聞いているところによりますと、肉用牛繁殖経営支援交付金の支払い手続につきましては、十二月三日に、事業実施主体である県団体から独立行政法人の農畜産振興機構に概算払い請求がありました。十二月三日です。そして、十二月十日に農畜産振興機構から事業実施主体への概算払いが行われ、その日のうちに農家に支払われる予定と聞いております。

 ですから、十一月中には間に合いませんでしたけれども、十二月三日に支払い請求があり、十二月十日に支払いが行われる予定でございます。(小里委員「全部支払えるんですか」と呼ぶ)はい。それで、農家にその日のうちに行くことになっております。

 それから、もう一つの子牛出荷遅延に伴う飼養費等の一日当たり四百円の助成でございますけれども、こちらも、牛ごとの補助対象期間の確認に意外と時間がかかってしまったことから、今のところ、十二月十七日に、事業実施主体である県団体から農畜産業機構に概算払い請求が行われる予定でございます。十二月十七日に。そして、一週間後の二十四日に機構から事業実施主体への概算払いが行われ、その日のうちに農家に支払われる予定になっております。

小里委員 あれほど早期の支払いを要請してまいったわけでありますが、非常に残念な状況でございます。少なくとも年を越すことのないように、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、TPPについてお伺いをしてまいります。

 先週末も地元に帰りまして、あちこちの農村に呼ばれて意見交換をしてまいりました。今、農業者の皆さん、本当に不安の極致であります。むしろプライドがずたずたになったという状況でございます。いかにも、平成の開国であるとかバスに乗りおくれるなといったような刺激的な表現をもって国民世論がかなり扇動されてしまった、間違った方向に世論が形成されているんじゃないか、そのことを極めて不幸に思うわけであります。

 そういった観点から、きょうは、なるべくわかりやすい形で御答弁をいただきたいし、基本的なことからお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、世界の食料不足人口、約十億人と言われております。世界の人口動態あるいは新興国の経済発展さらにはエタノール需要等によりまして、世界の食料不足がどんどん加速をしていく予想であります。そういった中で、どの国であれ、持てる生産基盤の増強を図っていかなければならない、これは自明であると思いますが、大臣、相違ありませんでしょうか。

鹿野国務大臣 APECが行われる以前に、新潟におきまして、APECにおけるところの食料担当大臣会議が行われました。

 その際、二〇五〇年におきましては、現在の世界の人口が六十八億、それが九十一億人になるんではないか、こういう予測から、現在の全世界におけるところの食料というふうなものは一・四倍必要である、こういうような確認がされたということでございまして、そういう意味で、このAPECの食料担当大臣会議におきまして、食料の輸出国も食料の輸入国も、両方において、双方において食料の増産が必要でありますというようなことがこの会議におきまして取り決められた、こういうことでございます。

小里委員 ありがとうございます。

 そもそも食料安保の概念というのは、自由貿易あるいは市場経済の原則にはなじまないものであります。食料安保の基本というのは、担い手と農地をしっかりと確保する、そして、いざ不測の事態が生じたら、使える農地をしっかりと使って、カロリー含有量の多い芋などを植えつけて、国民一人一日当たり二千キロカロリーの最低限度の食料を確保する、そのための潜在的な食料供給力あるいは食料自給力というものをしっかりと確保していく、これが食料安保の基本にあったと思います。

 そもそも、日本が、日本に限らず国家が国民の生命を守る、これはもう当然のことであって、食料のいわゆる緊急事態、不測の事態ですね、緊急時が起きた場合にはしっかりと食料を確保していく、これは、どんな時代であれ、どんな国家であれ、それを超えて国家が最優先で取り組むべき課題であると思います。

 言いかえれば、この二千キロカロリーの最低限度の食料を供給できるだけの食料生産基盤、これを保護することは国際交渉上当然認められるべきであって、これを交渉のしっかりした理念として日本は置いていかないといけないと思うわけでありますが、その点、大臣いかがでありましょうか。

松木大臣政務官 お答えします。

 おっしゃるとおりだと思いますし、食料安保の話ですけれども、穀物等の国際需給が中長期的に逼迫基調にある中で、食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、やはり国民に対する国家の基本的な責務だというふうに我々は思っています。

 その中で、自給率も五〇%に上げていこうという話も我々はしているわけでございまして、政府としてはこれからも、農地、農業用水の確保とか、人的資源の確保、育成等を図りながら、戸別所得補償制度の本格的な実施や、農業、農村の六次産業化など、意欲のある農業者が安定して事業を継続できる環境を整備して、こういうことをしっかりやってまいりたいというふうに思っております。

鹿野国務大臣 訂正を一つさせていただきますが、先ほど、APECの食料担当大臣会議で二〇五〇年には一・四倍ということですが、一・七倍でございますので、訂正させていただきます。

小里委員 ありがとうございます。

 私は、食料自給率もさることながら、不測の事態下における食料自給力、潜在的な食料供給力、そこが大事であって、これは少なくとも保護されるべきものである、これを国際交渉上しっかり日本として持していかないといけないんじゃないか、そのことを申し上げたわけでありまして、それはまたしっかりお含みおきをいただきたいと思います。

 従来、WTO、EPA、FTA交渉におきまして、例えば米、麦、砂糖あるいは牛肉、乳製品といった重要品目をいかに守っていくか、大変腐心をしてまいりました。大変な苦労をしながら一応乗り切ってきたわけでありますが、ところが、TPPにおいては、当然のことながらこの重要品目という概念がない。例外なく人、物、金の流れを自由化するのがTPPであります。そのTPPにこれから乗り出していくとすれば、では、今までのそういった努力は何だったのかということになります。

 TPPと、今までのEPA等におけるそういった交渉、しっかり重要品目を守ってきた、その今までの努力との整合性がどうなるのか、お伺いしたいと思います。

篠原副大臣 我が国はこれまで、WTOの農業交渉におきましては、多様な農業の共存ということを基本理念といたしまして、食料輸入国としての立場を堅持するという方針で臨んでまいりました。その延長線上で、今小里委員から御指摘のとおり、重要品目は例外扱いするということ、これを主張してまいりましたし、WTOの場で案として示されているルールもそれを認めております。それを堅持していくという方針には変わりありません。

 それで、その次の段階のEPA、FTAにおきましても、既に十三カ国と結んでおるわけですけれども、そうした方針を堅持いたしまして、米等については例外扱いをかち取ってきております。

 TPPは、その点問題でして、全品目を、すぐじゃないということを言われておりますけれども、十年以内にすべて関税をゼロにするというような、非常に自由化度の高い協定でございますので、我々は慎重の上にも慎重に対処していかなければならないんだと思っております。

 したがいまして、今やっていることも交渉というよりも情報収集という、前段階の交渉でございまして、入るか入らないかというのについてはこれから国民の理解等を見ながら慎重に対処していくべきじゃないかと思っております。

 そういう点では、我が国の基本方針は変わっておりません。

小里委員 基本的な考えは一緒のようでありますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 よく言われる、農業者一人当たりの作付面積、アメリカは日本の約百倍、豪州は二千倍であります。これに象徴されるように、コストが格段に違う。その上に、アメリカなどは、例えばマーケティングローンと言われるような、隠れた、実質的な輸出補助金でもって強烈に自国の農産品を保護して、競争力をつけて、輸出攻勢をかけてきているわけであります。いわば食料でもって世界をコントロールするという国家戦略がアメリカにはあると言われるゆえんであります。

 こういった国を相手にして、同じ土俵にのって日本の農業が太刀打ちできるわけがない、これはかたく私どもは思うわけでありますが、しかし、TPPをてこにして農業の構造改革を進めるんだ、強い農業をつくっていくんだという話がまた政府側からも伝わってくるわけであります。

 では、そう言うのであれば、十年後あるいは二十年後の日本の農業の姿というものをどういうふうに描いておられるのか、そこに至る道筋、財源あるいは予算額をどういうふうに見ておられるのか、お伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 基本的に、TPPに参加をするかしないかはこれからの問題でありまして、そういう中で、二〇二〇年までにFTAAP、すなわちアジア太平洋自由貿易圏を構築していきたい、こういうふうな中で今後EPA等々を進めていく。

 そういうふうなことになりますと、当然、それに対する国内対策が必要ですね。そしてまた、これから、今先生が触れられた強い農業というふうなものをつくり上げていく上におきましてどうしていったらいいか、こういうようなことも含めて、御承知のとおりに食と農林水産業再生推進本部というものを設置いたしまして、そこでまた実現会議というものを設けまして、いろいろな方々から御意見も伺いながら、来年の六月までに基本方針を打ち出したい、こういうふうな考え方でおるところでございます。

 今、小里先生からお話しされたとおりに、例えばアメリカと、農業が太刀打ちできるかどうかというようなことは、もう今までも議論がなされているところでございますけれども、やはり日本は日本の与えられた条件下で生産性の向上は常に図っていかなきゃならない。そういうもので、どういうことが可能なのかどうかというふうなことは、当然、今後の議論の大きなテーマになってくるのではないかな、こう思っております。

小里委員 交渉に入るかどうかをこれから検討するんだということでありましょう。それであっても、やはりその前に基本的な条件、情報、材料というものはしっかりそろえておかないといけない。今、いかにも扇動的な言葉でもって、国民世論がもう走ってしまっているんです。そうなる前に、どういう心づもりでいくのか、将来にわたってどういう農業をつくっていくのか、どういう可能性があるのかないのか、そういったところはやはりしっかりと議論をしておくべきだったということは申し上げておきたいと思います。

 例えば、所得補償をするから大丈夫なんだということが聞こえてくるわけでありますが、米が国際価格並みに値が下がった、それを所得補償するだけで一兆六千億円から七千億円の所得補償が必要になると試算をされております。あるいは、関税支持額、OECDの計算によりますと、日本の関税支持額は直近で三兆六千億円ですね。となりますと、TPPがWTOとその影響がほとんど変わらないという前提を置きますと、所得補償だけで毎年三兆六千億円は必要になっていくという計算になろうかと思います。

 それに、補てんすればいいというものじゃなくて、今回の米価下落を見たときに、どんなに補てんをしてもらっても農家のプライドは返ってこない、あるいは、我々は国家の小作人じゃないんだ、こんな補てんを受けて、補てんまみれになって、肩身が狭い、そういった形で、農家から、プライドを失った、そういった声が聞かれてくるわけであります。やはり限られた土地条件の中で一生懸命努力をして品質のいいものをつくる、それが正当に評価されてこそ農家の生産意欲というものは持続ができるわけでありまして、国民性の違いもあるんだろうと思いますが、そういった農家のプライド、農家の心のありようというものをしっかり我々はとらえていかないといけないんじゃないかなと思います。

 そもそも、民主党農政は、従来、どうしても農産物の貿易自由化と所得補償がセットになってきたように思います。それと、今の一般的な農政においてもその傾向が相当顕著であると私は思うんです。要するに、所得補償さえすればすべてうまくいくというような妄想がどこかにやはり潜在的にあるんじゃないかなと私は思います。

 農業予算を大きく削りました。三十四年ぶりに二兆五千億円を割り込みました。その中で所得補償に大きく財源を割かれまして、例えば強い農業づくり交付金、あるいは農地集積のための事業、あるいはまた集落営農の事業、土地改良の事業、本来、強い農業をつくっていくための予算が相当削られているわけなんですね。結果として弱い農業をつくっていく方向へ今民主党農政がどうしてもなってしまっているわけであります。

 その上で、TPPにもし乗り出していくとすれば、さらに所得補償に大きく財源をとられていく。一体、日本の農業というのはどうなっていくんだろう、構造改革をどう進めていくんだろうと大きく心配をするわけでありまして、そのことはぜひ今後ともしっかりした議論をお願いしたいと思うわけであります。

 農業だけの問題ではない、看護師、介護士、医師等、海外で資格を持った人が日本に来て仕事をする。そのため、日本の雇用環境がどうなるのか、医療の水準がどうなるのか、多くの心配がなされているところであります。

 時間がありませんので、まとめて質問を申し上げますが、平成の開国、バスに乗りおくれるな、あるいは、TPPに入らないとアジア太平洋の自由貿易圏から日本が締め出されるという非常に扇動的な言葉であおってきたわけであります。果たしてそうなんでしょうか。

 平野副大臣、このTPPには中国、韓国は今のところ入ろうとしない。あるいは、韓国にあってはアメリカあるいはEUとの二国間交渉でもってやっていこうと。それすら、それが発効すれば、韓国の農業者は二割が残れるだろうかという試算が当の韓国の教授から出されているわけであります。

 また、現在、TPPに参加しようという九カ国、その中で、五カ国は既に二国間で日本とEPAが発効済みであります、ペルーとは既に合意をしております、あるいは豪州とは今交渉が進んでおります。残るはアメリカとニュージーランドぐらいのものでありまして、そういったことを考えた場合に、本当に、アジア太平洋の貿易圏から日本が締め出されるというような表現が適切なのかどうか、見解をお伺いしたいと思います。

 また、従来日本がやってきたように、二国間交渉で当然やっていけると思うんですよ。二国間であれば、全体の品目の一割を何とか守っていける。そこに重要品目を入れ込んで、日本の農業を最低限度守っていける。この二国間交渉の手を捨てることはない、捨てる必要はないと思うし、あるいは個別分野の協定という手もある。例えば、カザフスタンと原子力エネルギー協定を、ことし三月でしたか、署名をいたしました。そしてウランの輸入を確保しようというようなことにもなっていくわけでありますが、その他、航空協定、信用協定、いろいろな各分野ごとの協定もあり得る。そういった今まで日本がやってきた手段をもって貿易の自由化というのはしっかりやっていけると私は思います。

 貿易自由化、そして日本の農業、農村の保護、これをしっかり両立していくための知恵を絞って、ここからみんなで頑張っていかぬといけないと思うわけでありますが、平野副大臣、見解をお伺いします。

平野副大臣 日本は、今まで十一カ国とEPA、FTAの協定を結びまして、その多くは今発効しています。先般、ペルーとインドとも一応大筋合意をしたということでございまして、それも含めると十三カ国、そういう数になると思います。

 この委員会でも何回も答弁申し上げてまいりましたけれども、日本のEPA、FTAに関しては、まさに小里委員御承知のように、米あるいは牛肉、そういったものについては大体例外なく例外扱いしてきているという特徴があります。

 しかし、結果として、その他の国のバイのEPA、FTAとの比較で見ますと、大体全体で九千のタリフラインがありますけれども、日本はEPA、FTAにおいては大体八五%程度をタリフラインでは自由化をしています。一方で、ほかの国のFTA、EPAなどを見ますと九五%、あるいはアメリカなどにおいては一〇〇%に近いEPA、FTAを、かなりレベルの高い自由化をしたFTA、EPAを結んでいるということでございます。

 結果として、今の状況を見ますと、日本は全貿易額に占めるFTAの割合というのが一六%、韓国が三六%、アメリカが三八%、EUは七六%ということで、貿易額に占めるEPA、FTAの割合というのが諸外国に比べると随分やはりおくれているなという感じがあります。こういったことで、日本も、貿易立国でありますから、これから、今まで以上にやはり国を開いていかなくちゃならないんじゃないかということで、先般、包括的経済連携に関する基本方針を閣議決定したということです。

 この中で、今小里委員、TPPの話が中心に御質問あったと思いますが、TPPの話だけではなくて、今まで日本はバイの交渉もずっと進めておりまして、その中で中断しているものもあります。あるいはASEANプラス3、ASEANプラス6といったものもありまして、そういったものも同時並行的に進めていくという方針を打ち出しておりまして、TPPはそういう中での一つの選択肢という位置づけだと言っても過言ではないと思います。

 ただ、TPPの場合は、現に今、相当速いスピードで動いているということでございまして、この動きについては特に強い関心を持ってこれを注視していかなければなりません。ですから、情報収集をしながら、そういった各国のいろいろな考え方も聞きながら、日本もこのTPPの交渉に参加するのかどうかということについての、決めるための今情報収集をしているということでございます。

 これに参加しなければ貿易から締め出されるとかそういうことではなくて、締め出されることは、そういったことはありません。ただし、参加している国と参加していない国との間には、関税等あるいは非関税障壁等の問題について、優位あるいは比較劣位といった関係は必然的に生まれてこざるを得ないということだと思います。

小里委員 ありがとうございました。

 ぜひとも、間違ったメッセージをこれ以上国民に与えないように、その辺の言葉遣いには気をつけていただきたいと思います。

 そして、日本ほど開かれた国はないということ、そしてまた、それぞれの国ごとによって食料生産環境というものは違ってくる、土地条件は違ってくる、それぞれの国における食料安保のあり方というものが当然認められるべきであるということをぜひ念頭に置いて、今後しっかりとまた議論をお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

山田委員長 次に、宮腰光寛君。

宮腰委員 二日前に国営諫早湾干拓事業について福岡高裁の判決が出されました。判決では、工事差しとめ請求については国の控訴を棄却し、公費返還請求については長崎県が勝訴という判断が示されました。これまでの政府の主張と大きく違う判断が示されたことで、農水省も戸惑っておいでになるのではないかと推察をいたしております。

 今回の判決の疑問点、数多くあります。

 まず第一、締め切りと漁業被害の因果関係を認めたということでありますが、平成十七年、五年前の最高裁では因果関係は認められないという判決があったわけであります。

 第二点、潮受け堤防の防災機能を限定的にしか見ていないという点があります。この理由として、三億円程度の湛水被害が三回起きているということでございますが、そもそも一時的な湛水はこの事業では最初から想定されているということでありまして、それ以外については十分な防災機能が発揮されていると我々は考えております。

 それから三点目、営農についてでありますが、農業用水の確保は現実的に不可能になります。河川水を使えばいいではないか、水利権がありません。下水処理水を使えばいいではないか、日量六千二百トンしかない。一万二千トンが必要であります。しかも、この処理水の基準一ppm以下にはなりませんので、特にエコ農業が行われているあの干拓地では農業用水として使うことは私はよくないというふうに思います。

 四点目、塩害、潮風害について全く考慮されておりません。

 五点目、必要なときに締めればいいではないか、これは小潮時の豪雨についての対応ができなくなります。

 そういうことを踏まえると、今回、最高裁への上告期間は判決が出された後二週間でありますから、私は、堂々と上告をした上で、今回の高裁の判断の可否について争うべきであると考えますが、鹿野大臣の御見解を伺いたいと思います。

鹿野国務大臣 今先生から御指摘をいただいた今回の判決の主なる点について、受けとめ方といたしましては、非常に厳しい判決だな、こんな思いをいたしております。

 さらに、一昨日のことでございますので、詳細に内容を検討いたしまして、この判決に対してどう対応するかというようなことについては今後、限られた時間でございますけれども、関係省庁とも当然連携をとりながら判断をしていかなきゃならないんじゃないかな、こう思っておるところでございます。

宮腰委員 この問題は、初めて判決が出たというわけではありません。既に五年前に、因果関係は認められないという判決が最高裁で下されているということでありまして、それなのに、司法判断とは別に、政治判断で上告せずということになれば、地元の理解、納得は到底得られないのではないか、上告するのが筋だと私は思いますが、もう一度、大臣からお願いいたします。

鹿野国務大臣 今後の上告するかしないかというふうな問題等につきましては、重ねて申し上げますけれども、判決の内容というものを検討する中で、関係省庁とも相談をしながら、最高裁判所への上告を含めた判断をしていかなければならない、このように考えておるところでございます。

宮腰委員 先ほど鹿野大臣は、調査捕鯨に関して、科学的知見に基づいて、こういう御答弁をしておいでになりました。

 現在、環境アセスの手続が裁判と並行して進行中であります。来年五月に素案が出されまして、その後、パブリックコメントや、関係知事、市町村長からの意見聴取を行い、報告書の取りまとめは再来年の三月、そこでアセスの結果が確定することになります。

 私は、開門調査に関する政策的判断は、環境アセスの実施による科学的知見に基づくことが何よりも前提だというふうに思います。科学的知見なくして政治判断で物事を決めた場合には、先ほども申し上げたように、地元の合意というのは到底得られるものでありません。地元の合意なくして開門はできません。これははっきりしております。

 開門調査について、現在進行中の環境アセスの手続を踏まえて、科学的知見に基づいた、ちゃんとした判断がなされるべきと考えますが、大臣はどうお考えでしょうか。

鹿野国務大臣 いろいろとお考えはあると思います。

 基本的には、環境アセスメントはこれからも実施していかなきゃならない、こういうふうなことでございます。

 そういう中で、開門調査ということ等々につきましては、今回の判決への対応、そういう中でまた政治判断というものも必要になってくるというようなことも含めて検討しておるところでございます。

宮腰委員 科学的知見なしの政治判断では、普天間の問題と一緒になる、同じようになるということを申し上げておきたいと思います。

 私は、既に短期の開門調査を実施し、できる限りの定量的な調査も実施してきていること、農水省が実施してきている覆砂、耕うんの効果が出てきつつあり、有明海沿岸の県からも評価をいただいていることなどから、五年にもわたる常時開門は極めて問題が大きいというふうに考えております。

 仮に、仮にですよ、五年間の常時開門をする場合、洗掘の問題がまず出てまいります。あの七キロの潮受け堤防のうち、ゲートの長さは二百五十メートル、南北で合わせて二百五十メートルにしかすぎません。洗掘の問題、それからこれによって起きる副次的ないろいろな問題、これが一番大きいと思いますけれども、そのほかの環境に対する影響は決して無視できないものがあります。

 開門が営農に与える影響についても、地元は大きな不安を持っております。水の問題のほかにいろいろあります。

 入植している四十一の経営体はすべて担い手または農業法人でありまして、エコ農業をやって、土地利用率が一五〇%という優等生であります。決して、期待された効果が出ていないなどということはありません。判決が出されたちょうどその日、諫早では、干拓地で生産された大根やニンジンなどを大きなロットで台湾に初めて輸出する、そのための出荷の式典が行われていた。ちょうどその日であります、そのやさきの判決のニュースで、大きな衝撃が走ったと聞いております。

 仮に五年間の常時開門をする場合の影響について、背後地を含めてどのような影響があるのか、対策としては何が必要か、そのための費用はどれほど必要になるのか、お答えをいただきたいと思います。

松木大臣政務官 お答えします。

 仮に五年間常時開門を行った場合、調整池が塩水化することから、農業用水確保のための代替水源の確保や老朽化した既存堤防の改修等が必要になります。そして、大雨や洪水時の湛水排除のための排水機場の設備、それから、濁りの発生を抑制するための海底を保護する護床工の実施等の対策が必要と考えられます。

 現在実施中の環境アセスメントの中で、開門方法に応じた対策及びそれに対する費用を示すこととしていますけれども、今のところ、現時点で、幾らかかるかというところまではちょっとなかなかお答えすることが難しいというふうに思っております。

宮腰委員 この問題は、私も経験がありますけれども、地元の合意がなければ開門はできないんですよ。政治判断だけで開門ができるという問題ではない。最高裁が因果関係が認められないとおっしゃっておいでになる。そして、役所として環境アセスを進行中である、いろいろな対策も講じてきた。海域の環境も相当安定をしてきたというふうに思います。

 きちっと手順を踏んで、地元の理解、納得が得られる努力をされれば別かもしれませんが、私は、最終的には理解は得られないというふうに思っているということを申し上げて、質問を終わります。

山田委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十七分散会


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