衆議院

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第15号 平成23年7月14日(木曜日)

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平成二十三年七月十四日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 山田 正彦君

   理事 梶原 康弘君 理事 佐々木隆博君

   理事 津島 恭一君 理事 仲野 博子君

   理事 柳田 和己君 理事 谷  公一君

   理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君

      網屋 信介君    石田 三示君

      石原洋三郎君    石山 敬貴君

      今井 雅人君    大串 博志君

      加藤  学君    金子 健一君

      近藤 和也君    篠原  孝君

      田名部匡代君    玉木雄一郎君

      筒井 信隆君    道休誠一郎君

      中野渡詔子君    野田 国義君

      松岡 広隆君    本村賢太郎君

      山岡 達丸君    吉田 公一君

      伊東 良孝君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      小野寺五典君    谷川 弥一君

      長島 忠美君    保利 耕輔君

      山本  拓君    西  博義君

      吉泉 秀男君    石川 知裕君

    …………………………………

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   農林水産大臣政務官    田名部匡代君

   農林水産大臣政務官    吉田 公一君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       梅田  勝君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   櫻田 道夫君

   農林水産委員会専門員   雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十四日

 辞任         補欠選任

  高橋 英行君     松岡 広隆君

  小里 泰弘君     長島 忠美君

  北村 誠吾君     小野寺五典君

同日

 辞任         補欠選任

  松岡 広隆君     本村賢太郎君

  小野寺五典君     北村 誠吾君

  長島 忠美君     小里 泰弘君

同日

 辞任         補欠選任

  本村賢太郎君     高橋 英行君

    ―――――――――――――

六月十五日

 食の安全・安心を守り、食料自給率の向上政策を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三九六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三九七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三九八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一三九九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四〇〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四〇一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四〇二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四〇三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四〇四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五一四号)

 TPPへ参加せず、雇用拡充と地域経済を活性化させ、食料自給率の向上政策を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五〇四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五〇五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五〇六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五〇七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五〇八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五〇九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五一〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五一一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五一二号)

同月十六日

 TPP参加反対、日本農業の再生に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一六三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)


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     ――――◇―――――

山田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医薬食品局食品安全部長梅田勝君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。網屋信介君。

網屋委員 おはようございます。民主党の網屋信介でございます。

 本日は、質問の機会をちょうだいし、まことにありがとうございます。

 今回は、農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律の一部を改正する法律案についての御質問をさせていただきます。

 今回の、三月十一日の、本当に千年に一度と言われる大きな震災、またその波及した被害として福島の原子力発電所の問題、それに関して非常に大きな被害が出ていること、その中で一生懸命頑張っている皆様に心から敬意を表したいと思います。

 私自身も、三月の二十八日に、最初に、釜石まで救援物資を持って、九時間半かけて行ってまいりました。皆さん、多くの方々が被災地に行かれたと思いますけれども、特に市街地の状況を見るにつれて、こんなことが本当に世の中にあるのかというぐらい、言ってみれば、私自身の人生観が大きく変わるような、そういうような光景を目にしてまいったところでございます。

 その中で、たまたま瓦れきの片づけをされている数人の方とお話をさせていただきました。最初に地震が起きて津波が来たときには、命からがら逃げることで精いっぱいだった、ところが、二週間、三週間たつと、これからどうやって生きていこうと。これは財務金融委員会でも議論がありましたけれども、中には、住宅ローンを抱えたまま新しい家が流された方、商店の方においては、たまたま電気屋さんにお話を聞きましたけれども、商品を仕入れたまま、売る前に流されてしまった、ちょうど三月でしたので、手形が落ちないんだけれどもどうしようか、そういった本当に深刻な状況にある方がたくさんいらっしゃいました。

 財務金融委員会では、その中で、特に地方の金融機関に対して、そういった方々のローンの見直し、それに伴う政府からの資本強化等々について議論が今なされているところでございます。

 と同時に、農家の皆さんにおかれましても、中には、放射能の関係でもう農地が使えなくなった方、もしくは塩害、つまり津波によって塩がまじってもう使えなくなった、いろいろな方がいらっしゃいます。また、最近は、自分たちが飼っていた牛がセシウムに汚染されてしまったという問題も出てまいりました。こういった方々、特に、再生をして、また新しく自分たちの生活の糧として農業をもう一回やっていきたい、そういう方々に対してどうやって今後私たち日本の政府としてサポートしていくか、非常に大きな課題が投げられているんだと思っております。

 たまたま、きょうの農業新聞には「農業向け債権買い取り 個人経営も対象」、こういう記事が出ております。そういった意味では、本当に再生をして頑張っていこうという方々に対して、今回の法律案というのは非常に重要な内容であるということを感じているところでございます。

 と同時に、この法律案の中でやはり一番気をつけなきゃいけないことというのは、本当に、そういうふうに善意を持って新しい事業をやっていこう、善意を持ってそういう人たちをサポートしていこうということと同時に、モラルハザードの問題をやはりウオッチしていかないと、これがなし崩し的に、いわゆる徳政令的になってしまうのはこれまた本末転倒の部分があるのではないかということを踏まえまして、私の方から御質問をさせていただきたい、そういうふうに思っております。

 今回、被災農漁協等の自己資本の強化というのが一つの目玉として出ております。

 自己資本の強化ということでございますが、これまでも、いわゆる支援機構といいますか、ジェイエイバンク支援協会とかジェイエフマリンバンク支援協会とか、こういうところを使って今回も支援をするということでございますが、当然、打ち出の小づちが落ちているわけでもなく、お金の調達ということが必要となってくるわけでございます。

 まず最初の質問は、被災した農協、漁協等の自己資本の強化のための資金の調達をどういうふうにお考えになっているのか。そしてまた、ジェイエイバンク支援協会とかジェイエフマリンバンク支援協会というのは、もともと、言ってみれば農家を中心に、農協を通じて、もしくは漁協を通じて基金を積み立ててきた支援協会だというふうに理解しておりますが、ここに残っている保険といいますか基金というので今回の法律の趣旨が本当に賄えるぐらいの資金量があるのかどうか。それについてお答えをお願いしたいと思います。

篠原副大臣 網屋委員御指摘のとおり、今回の震災による被害というのは膨大じゃないかと思います。

 被災を受けた農協、漁協というのも大変でございまして、漁協が三十一漁協、農協が二十八農協、約六十農漁協が被災をしておりまして、不便をかこっておるところでございます。こういった被災農漁協に対しまして強化をする、それは、農漁業者がきちんと経営を再開できるように、そのためにはやはり農漁協がちゃんとしてもらわなければいけないということでございます。

 我々がどういうことを考えているかといいますと、貯金保険機構と、二つの指定支援法人、ジェイエイバンク支援協会とジェイエフマリンバンク支援協会が、優先出資の引き受けや劣後ローンの貸し付けによりまして一体的に資本増強を行い、自己資本の強化を図る仕組みを考えております。

 その資本増強のための原資でございますけれども、貯金保険機構の場合は、民間金融機関からの借り入れで賄います。それから、指定支援法人は、農漁協系統から拠出されました負担金を積み立てております。今ありますのは、ジェイエイバンク支援協会に約一千二百億円、それからジェイエフマリンバンク支援協会に約二百億円、この活用を想定しております。

 また、将来ですけれども、資本増強を行った優先出資等について、さらに貯金保険機構による損失処理が必要となった場合には、農漁協等から徴収した保険料を積み立てております貯金保険機構の責任準備金というのがございます。これに約三千億円ありまして、これを活用してまいりたいと思っております。

網屋委員 ありがとうございます。

 もちろん、特に原子力の関係については、ここだけではなくて、東電さんとの関係、いろいろなものもあるんだろうとは思います。今の三千、全部合わせれば四千四、五百億のお金があるということでございますので、十分かどうかは別にして、まずそこから使っていくということで理解をさせていただきたいと思います。

 その中で、民間からの借り入れというのが保険機構にあるということでございます。後でまた御質問しますけれども、これの将来的な、民間からの借り入れですから、これは返さなきゃいけないお金ですから、どうするかという議論はまたあるのかなと思っております。

 ところで、今、お答えの中で、優先出資と劣後ローンという実はお答えがございました。

 特に、協同組合という形態上、銀行と違いまして、自己資本の考え方というのをやはり明確にしなければいけないのかな。金融機関の場合は、御存じのとおり、世界的なBISのルールですとか、それから日銀とのいろいろなルールの設定とか、またいろいろな規定がありまして、特に、株式会社ですから、自己資本の規定の中身というのは、非常に複雑であるけれどもきっちりしたものがある。今回のこの法律に基づいて行われる協同組合に対する資本というのを、もう一度定義をちゃんとしておいた方がいいのではないかというふうに思っております。

 一つは、優先出資というのは、基本的には純粋な自己資本であろうというふうに理解をしております。劣後ローンとの関係も含めて、自己資本をどういうふうに定義するのか。それからもう一つは、政府が考える適切な自己資本の割合、その水準をどういうふうにお考えになっているのか。それについてお答えをいただければと思います。

篠原副大臣 網屋委員は、山一証券、モルガン・スタンレー、UBS証券、メリルリンチ、証券会社をくまなく歩かれまして、金融問題についてはお詳しいということで細かい御質問だと思いますけれども、答えさせていただきます。

 まず、農漁協の自己資本ですけれども、御指摘のとおり、普通の民間の金融機関と違っております。農協法に規定されております。まず、出資金、利益準備金等から成る基本的項目というのがあります。それから二番目に、一般貸倒引当金あるいは劣後ローン等から成る補完的項目という、この二つに大きく分かれております。

 農漁協の経営全体の保有資産に対する自己資本比率ですけれども、農漁協が抱えるリスクの合計に対する最終的な返済財源となる資本力、自己資本の厚さを見るための指標となっているところでございます。

 国は、すべての農漁協系統協同組合について、経営の健全性を確保する観点から自己資本比率は四%以上確保するように、農協法等に基づきまして指導しております。四%を下回った場合には、農協法等に基づき業務改善命令、業務停止命令を発する仕組み、これは民間の銀行等と同じだと思います。

 ただ、農協系統におきましては、八%を基準とする等の自主的ルールを設けて経営強化、改善に取り組んでいるところもございます。

 今回の資本増強の手段としましては、優先出資に加えまして劣後ローンも使用可能でありますけれども、劣後ローンについては、自己資本に算入できる範囲には法令上限度が定められております。どういうことかといいますと、基本的項目の額よりも多くはならないということでございます。震災の影響によりまして多額な損失が発生し、資本が大きく毀損するおそれのある組合については、基本的項目に算入される優先出資による資本増強のケースが多くなるものと想定しております。

網屋委員 そうしますと、これは大事なところなんですが、今回の法律に基づいて資本を増強する、つまり、ということは、農家の皆さんもしくは農協に対して、経営の安定化を求めるという意味と、それから資金の提供をするという二つの意味があると思っております。

 資金を提供するということであれば、別に自己資本ではなくても、借り入れをしても貸し付けをしてもいいわけで、今回、優先出資もしくは劣後ローンという形でお金を投入することになるということは、逆に言えば、資本の増強が必要なところがたくさん出てくるという意味だと思います。

 資本の増強がたくさん出てくる理由は何かというと、恐らく、貸し倒れの引き当てを大きく積まなければいけない、その分、各単協の中でいわゆる不良債権になってしまう。これは農家の皆さんの経営不振からなってくるものではなくて、今回の震災によって起こってしまう、ある意味では他動的な原因に基づく不良債権ということが起こってくる。したがって、その部分については、経営者の責任ということでやるわけではなく、その人たちがまた今後地域において本当に再生したい農家のために資金提供ができる、そういう意味で協同組合の資本を増強していこうじゃないか、こういう趣旨だというふうに理解をしています。

 他方、今回の法律案の中に、たとえそれぞれの農協等々に対して、いわゆる被災農協、被災農水協といいますか、資本注入を行った場合においても、経営の責任は求めない、収益性の目標は求めないということが入っております。ある意味でやむを得ない内容だと思いますが、私が一番これについて危惧するのは、いわゆるモラルハザードといいますか、お金は入ってきました、経営責任は要りませんよ、それから収益の目標も要りませんよ、それは法律の趣旨からすれば当然のことではあるけれども、ある意味それをうまく使っちゃうような人が出てくるかもしれないという危惧も実は他方ございます。これについてどういうふうにお考えなのかという部分を私としては問いたいんです。

 ただ、農協法の八条に、「組合は、」いろいろ書いてありますが、「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」というふうに書いてございます。そういう意味では、その整合性といいますか、逆に言えば、今までは収益目標をつくってきたのかという議論になるわけで、今回つくりませんよとわざわざ言っているということは、今まで収益目標をつくれと言ってやりながら、法律では営利を目的としてはいけませんよと、何となく整合性がとれない部分があるのではないかという気がちょっとしているんです。

 政府として、この八条の「営利を目的として事業を行つてはならない。」ということをどういうふうに遵守を指導しているのか、もしくは、今申し上げたような、モラルハザードをどういうふうに担保するのかということについてお聞かせいただければと思います。

篠原副大臣 先ほどちょっとお答えの中で触れましたけれども、網屋委員はばりばりの民間企業におられまして、利益を最大にするということが至上命題の金融機関ではないかと思います。農協の場合は、組合員相互の利益追求を一番の、利益の最大化を図るということが目的でございます。ですから、利益の追求という意味では、組合自身の利益じゃなくて、組合員の利益を最大にするということでございます。

 ただ、一方で、矛盾を指摘されました。利益がなかったらそれは健全な金融活動もできないじゃないかというのがあります。そういう意味では、十分なサービスを提供して組合員の利益を最大化するためには、ある程度の収益を確保して健全な運営を行うことも必要じゃないかと私は思っております。

 今回の資本参加において収益性を求めないということは、ではふだんのときは収益性を求めているのじゃないかという、相反する矛盾をお聞きになっているんだろうと思いますけれども、これは、網屋委員が今質問の中で御指摘になったとおりでございまして、今回は、何も、融資のところで見誤ったとか、そういう内生的な、みずからの責任じゃないわけですね。震災による被害というのは挙げて外生的な、外の要因でございます。それからもう一つ、今被害総額がどのぐらいかというのは、だんだんふえたりしていますけれども、大体被害がどれだけかも算定できないような状態でございまして、被害の実態すらわからない。だから系統金融機関も困っているわけです。そういうところがありますので、今回の優先出資の場合は特別に、収益性の目標は求めないということにしております。

 しかし、モラルハザードの問題です。経営改善とかをちゃんとしてもらわないと、農協も漁協も維持できません。ですから、具体的にどういう細かいことをしているかといいますと、資本注入対象となる農漁協に対しましては、農漁協系統の中央の機関である農林中金との間で、信用事業強化のための指導を受け、それを実行するための信用事業指導契約を締結させております。これが一つでございます。それから二番目に、モラルハザードを起こさないように、自己規制を促すために、被災農漁協や農林中金が作成する信用事業強化計画等をきちんと公表せよ、この仕組みをつくっております。それから、その計画どおりにきちんとやっているかどうかということをフォローアップして、地域の復興に向けた取り組みについて適切に対応しているかどうかというのを見てまいりたいと思っております。

網屋委員 ありがとうございます。

 そこは非常に大事なところでございまして、今回の法案の趣旨にかかわらず、これは正直な話を申し上げまして、私たちが日ごろ週末に地元に帰ると、私のところは農業の方が非常に多いところでございまして、農家の方々といろいろなお話をする。これは正直にぶっちゃけた話をしますけれども、農協さんに対するいろいろな不満といいますか、要するに、今おっしゃるように組合員のためじゃなくて、職員のために一生懸命やっているようなお話をしょっちゅう農家の方からお聞きすることもあるので、そこはやはり、今回は資本注入ということでございますので、もちろん、特に保険機構の場合は、民間からの借り入れを原資とする場合、これは最後は返さなきゃいけないわけですから、その部分等も含めて適切な御指導をいただくことを切にお願いしたいと思っております。

 特に私が一番気になっているのは、将来の損失処理、つまり、ここから、資本を入れました、入れて五年、十年なりしたところで見直しをするわけですけれども、そのときに信用事業の再構築、特に合併とかを行ったときに、出てきた損失の処理については、金銭の贈与もしくは損失の補てんということになってしまうので、これは、法律でも書いてありますように、要するに上げますよということなんですね。ですから、ここはやはり、さっきのモラルハザードの問題は非常に重要な問題になってくると私は考えている。

 今はみんな大変なのでとにかく何とかしましょうよ、お金もちょっと出しましょうよというふうになるんですけれども、これが、五年たって十年たったときに、それこそどこが政権をやっているかわかりませんけれども、そのときの政府が、この前の住専の処理と同じで、十何年たってふたをあけたら一兆二千億またロスが出ましたみたいな話で、あたふたするようなことができるだけ起こらないような形の運営の指導というのが非常に重要な、国民の負担を下げるという意味でも重要なことかなというふうに感じる次第でございますので、そういった意味での政府の御指導を心から期待するところでございます。

 当然ですけれども、そうして、こういった形で新しいルールに基づいて、特に経営の責任とか収益の目標を求めないという段階で、今おっしゃったように農林中金との経営指導の契約というのはあるんですけれども、先日、一千億円以上の資金量を保有する農業協同組合については、これまでの検査のあり方に加えて、金融庁の検査の対象になるということが報道をされ、そういう形になったというふうに記憶をしております。今回、新しい形で、また特例的に、収益性そして経営責任を求めない資本の増強を行うということは、これは特例的なものでありますので、私としては、こういった形で入る農協さん等々についてもやはり同様の定期的な検査を今後も行っていただくことが大事なのではないかというふうに感じるんですが、政府の御見解はいかがでございましょう。

鹿野国務大臣 今御指摘の検査のことにつきましては、農林水産省は、本年の九月まで、被災県の団体に対する検査を見合わせまして、十月以降も、受検態勢状況を踏まえて検査の時期を判断する方針でございます。関係県におきましても同様の対応がなされるよう通知済みでございます。

 被災された県では農漁協等の検査に十分な要員というものを確保できないことも考えられますので、県からの要請というものがなされた場合には、これに対して積極的に対応していきたい、このように考えておるところでございます。

網屋委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、今回は本当に特例の形でお金が入っていくということでございますので、これまで以上に、農水省、場合によっては金融庁そして県と一緒になって、やはり、健全な農協の経営というものを注意深く御指導をいただくことが必要なのではないかということでこういった質問をさせていただいたわけでございます。

 おっしゃるとおり、まだ被災の状況というのがなかなかわからない、どれぐらいのお金が必要なのか。中にはやはり、今回の被災によって恐らく農業をやめてしまうという方もいらっしゃるかもしれない。

 実は、ちょっと余談ですけれども、たまたま先週の日曜日に、私も、地元で、鳥獣被害のことで、農家の方々と、六軒ぐらい行ってきましたけれども、うちはサツマイモが多いので特にイノシシとか猿とか、お話を聞くと、中には、猿がしょっちゅう出てくるのでもうやめたという方も、実は耕作放棄地になっちゃっているんですよというところもやはり出てくる。他方、やはり、そういう被害があっても、建設的にといいますか、何とか自分たちの畑を守って、ことしは鳥獣被害の予算もたくさん出てきたわけですけれども、頑張っていきたいという方も結構いらっしゃる。

 今回の大きな被害に遭われた方々も、ある意味では、自分の責任というよりも、どこかから降ってわいたような災害なわけですから、特に、その中で、若い方々も含め、意欲的に頑張ってもう一回やるんだという方々はたくさんいらっしゃると私は思うんですね。そういう方々が本当にこの国の農業を支えていくために、そういった志を持ってやっていくんだという方々を本当に私たち政府・与党それから国会議員全員で支えていくというのは非常に大事なことだと思いますし、それについて、やはり今回の法案というのはとても大きな意味を持つというふうに思っております。

 そういった意味で、今後の、もちろん農協の健全性も大事ですけれども、個々の農家を育てていく、農協の皆さんがこれまで以上にアドバイザーというかいわゆるコンサルタントというか、経営も含めて、一緒に成長していこうじゃないかという志を持って今後の活動に従事していただき、それに対して適切な御指導をいただくことを心からお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

山田委員長 次に、小里泰弘君。

小里委員 自由民主党の小里泰弘でございます。

 再編強化法について、まずお伺いをしてまいります。

 この法律は、要は、農協系統、漁協系統の金融機関に資本注入をして体力を強化していこう、そういう大きな柱になっていると理解をいたします。一方で、地域の信金、信組、地域に限定した基盤を置く金融機関に対して同様の措置を図っていく、これは十分わかるわけであります。そして一方で、農協系統、漁協系統の場合は農林中央金庫を大きな後ろ盾としたセーフネットというものがございます。これに加えて今回の措置を図るその意味について、まずお伺いをしたいと思います。

鹿野国務大臣 今回のことにつきましていろいろと御指摘をいただいたわけでありますけれども、基本的には、農業者や漁業者に対するいろいろな施策というものによって、農業者、漁業者が再び農業に、漁業にいそしむことができる、そういう状況、あるいは地域の復興のための環境整備を図るというふうなことの認識を私どもとしてはいたしているところでございます。

小里委員 質問の趣旨は、信金、信組の場合は限定的な基盤、地域基盤であります。一方で、農協系統、漁協系統の場合は農林中央金庫を中心としてセーフティーネットというものがある。その違いを超えて農協系統、漁協系統に支援をする、その意味をしっかり説明していく必要がまずあるんだろうと思うんです。私はもちろんこの法案には賛成ですが、そこをもう一回お聞かせいただきたいと思います。

鹿野国務大臣 基本的に、今議員から御指摘のとおりに、今回のこの大震災を踏まえて、当然、地域の復旧、復興というふうなものをなし遂げていく場合には、やはり農協なり漁協において新たなる役目を果たしていただくというふうなことが必要なわけでございますので、そういう意味で、資本を注入することによって、地域の復興のために、また漁業者なり農業者のために寄与できるというような体制づくり、環境整備ということでありますから、そのことにつきましては多くの国民の方々にきちっと説明をさせていただいて、そしてそのための御理解をいただくというふうなことは、これからも農林水産省としてはやっていかなきゃならないことだと思っております。

小里委員 原則的に、本来的に、先々、金は返す仕組みになっております。支援協会の方に返していくという仕組みになっております。となった場合に、十年後、経営が上向いているのか、返す当てがあるのかといったところがまず問われるわけであります。そういったところを中心にして、どういった考えでこの制度を設計されたか、お伺いをいたします。

鹿野国務大臣 今お話のございました、十年後どうなっているのかというようなことでございます。

 このことにつきましては、十年後あるいはその後どうなるかということはなかなかこの時点で想定しにくいところもございますが、基本的には、まず地域の復興、そして農業者、漁業者のさらなる意欲を持って取り組んでもらうというようなこと、これがまず前提になるわけでございますので、ここに力点を置きながら、そして、将来に向けて少しでも光を見出すことができるようにしていくというのが、当面私どもとしての考え方でございます。

    〔委員長退席、津島委員長代理着席〕

小里委員 あくまで賛成の立場での質問でありますが、他の金融機関との違いですね。基盤が違う、その上でこの措置を講ずる。そしてまた将来的にどういう心づもりで制度設計をされたのか、そこのところはきっちりと国民の皆さんに説明をしていく必要があると思いますので、改めて整理をしていただいて訴えていただきたいと思います。

鹿野国務大臣 地域におけるところの漁協なりあるいは農協と、漁業者なり農業者の関係というものは、御承知のとおりに、一体的な中での取り組みはなされてきておる。そういう非常に強いきずなの中での関係というものの中で、これからの地域の復興なり、漁業あるいは農業の新たなる展望というふうなものを見出していくということでありますから、そのことにつきましては、漁協なりあるいは農業の特殊性というふうなものも踏まえた中で、今回、この資本注入について強化法を考えさせていただいたということでございます。

小里委員 おっしゃるとおり、東北におきまして基幹産業として大変大きな役割をなしている農林水産業、大変な被災を受けまして、今危機的な状況にあります。ここを、しっかりと救援の、救済の手を差し伸べてその再生を図っていく、これがまず国に求められることだと思っております。

 ところが、今回の法案は、申し上げましたように、金融機関、ここの体力を強化するということでありまして、直接的には生産者の支援には向いていないところであります。具体的にどのように農業者、漁業者を支援していくのか、その点をお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 今回被災を受けられた農業者、漁業者のことにつきましては、農漁協等の金融機関に対しまして償還猶予等の要請、あるいは一次補正予算におきまして、実質無利子、無担保、無保証人での貸し付け等によりまして、漁業者なり農業者の、債務というものを抱えている中で負担をできるだけ軽減するというような措置を実施したわけでございます。

 また、今回のこの法律改正というものは、被災地域の農漁協の財務基盤を強化するということによって、被災した農業者なり漁業者に対する貸し付けの条件変更等、それぞれの実情に合った対応というふうなものを行うことができるようにするというようなことで、まさしく、冒頭に申し上げましたけれども、地域復興、農業者、漁業者の将来に向けての展望というものの環境整備というふうなものをつくっていくということでございます。

小里委員 今いみじくもおっしゃったように、これは生産者にとりましては環境整備にすぎないんですね。融資の話にしましても、従来の制度の延長線上にすぎない話であって、直接的に農業者、漁業者に対する抜本的な支援策にはなっていないわけであります。

 御案内のとおり、今回の震災によりまして大変な被災があった。借金をして機械や生産用設備を求めておった、それが流されてしまって、生産の再開をするには新たに借金をしてやらざるを得ない、しかし、それもなかなか難しいという、いわゆる二重ローン問題が発生をしているわけであります。この二重ローン問題対策という観点からはどういう考えをお持ちでしょうか。

鹿野国務大臣 今委員から御指摘の二重ローン対策というふうなものは、私どもも非常に重要な、将来の地域の復興なり、漁業、漁協の復興ということについて大変重要なポイントだと思っております。

 そういう意味で、被災農業者、漁業者のいわゆる既往債務の問題につきましては、通常におけるところの金融の対応だけというようなことでは、これは、当然のことながら、足らないということになるわけでありますから、農用地の土地改良事業やあるいは共同利用施設、漁協の冷凍施設等の整備に対する助成、さらに、雇用対策を初めとするところの生活支援など、こういうことに対して幅広く検討していく必要がある。こういうふうな考え方に立っておるわけでございまして、今後この二重ローンの問題につきましては、まさしく関係省庁ともよく連携をして、次の段階に向けて詰めていかなきゃならない、こういうふうな考え方を持っておるところでございます。

小里委員 抜本的に農業者、漁業者に救済の手を差し伸べていかなければならない、そういった観点から、早い時期から私どもは緊急提言の中で政府に対して提案をしてまいりました。しかしながら、なかなか抜本的な対策が及ばないところでありました。

 先般、先週でありましたが、宮城の塩竈市を中心とする被災地で意見交換会を行ってまいりました。そこでも首長の皆さんから、農業者あるいは商工業者に対しても従来の融資の延長線上であって、国からは何の抜本策も示されていない、これでは地域の産業の復旧、復興も生活の再建も成らないと、大変なおしかりをまた受けたわけであります。

 そういった中で、早い時期から自民党において作業を進めてまいりました。すなわち、二重問題対策救済法なるものを、略称ですが、これを準備いたしまして、政府・与党との協議を重ねてきたわけであります。

 自民党案におきましては、新たな法律をつくって、新たな機構をつくって、そして農業者、漁業者の分も含めて債権を買い取る、これを株式化なり資本化をいたします。その時点で、借金が資本に変換をされますので、それによってまた新たな融資も受けられる、大筋、そんな制度設計になっております。

 これに対して、政府・与党案におきましては、従来の中小企業機構法の中でファンドをつくると。ただ、最近は、機構をつくるというところまでは譲歩をしてこられました。しかし、あくまで現行制度の中であります。したがいまして、農業者、漁業者がその対象になるのか、いまだもって明確な担保はとれないところであります。

 このままではなかなか地域の農林水産業者の方々が頑張って再生をしていこうということにはならないわけでありまして、ぜひ、互いにこれは譲歩をしないといけない、歩み寄らなければならないと思いますが、基本は、やはりこれだけの災害、巨額の投資をすることになります。そして幅広く産業を救っていく。そのためにはやはり法律をつくって、そして機構をつくって、織り込むべき事項を織り込んでいく、ここに向けて与野党が真摯に、迅速に協議を重ねるべきであろうと思いますが、大臣の、所管大臣としての見解をお伺いいたします。

鹿野国務大臣 二重債務問題につきまして、自民党、公明党さんが、いわゆる新たな法案の必要性と今お話しのとおりの考え方から、参議院に提出されているということを承知させていただいております。また、政府・与党におきましても、債権買い取り等を行う新たな機構の設立が検討されているところでございますけれども、これは、農林漁業者も対象としている既存の中小企業再生ファンドの仕組みを活用するということでございます。

 そういう意味で、具体的には、農林漁業者に係る既往債務についても、機構が金融機関等から債権を買い取り、そして一定期間棚上げをして元本及び金利返済を凍結する。そして、別途、新規融資を行うということで事業の再建を支援するということになっているわけでございます。

 このような考え方でございますけれども、今お話しの、新たな法律をつくるというようなことについてのお考えも、当然いろいろと自由民主党、公明党さんで検討されて提出をされているということでございます。

 いずれにしても、この既往債務をどうするかという問題は非常に重要な問題であるという、このことについては共有しているわけでございますので、今後、農林漁業者を初めとするところの被災者の人たちが使いやすく、事業の再建やあるいは復興を支援するものというようなことに向けて今後取り組んでいかなければならないことではないかと思っております。

    〔津島委員長代理退席、委員長着席〕

小里委員 政府・与党案におきましては、申し上げましたとおり、経済産業省所管の法のもとで、本来、中小企業を対象とした制度をもとにして今回の制度設計をしておられるわけでありまして、そこに農業者、漁業者を救済していくというのは、やはり制度的にかなり無理があると思うんですね。

 実際、民主党の担当者の方と、農業新聞の紙上で、紙上対談のような形で記事が掲載をいただきました。その中で、やはり民主党の担当者の方は、「野党が求める全農業者の借金買い取りは現実的に難しい。」「個人事業の農業者は事業資金と生活資金の線引きが困難なためだ。」と。そういったことも以前から述べておられまして、そこがなかなか制度上は難しいということを物語っているんですね。かなり譲歩はしてこられております。農業者、漁業者も対象にしていこうということでございますが、なかなか現行法のもとではそこが厳しかろうと思います。

 もう一つ申し上げますと、新たな法律をつくるということは、しっかりと地域の産業の輪というものを救済していく上ではまず不可欠であると思います。加えて、大変な巨額の公的なお金を使っていくことになると思います。そこに罰則、刑事罰というものをつけるためには、これはやはり法律が必要になってくるんですね、罪刑法定主義でありますから。

 加えてまた、法律がないと、政府保証をつけて民間から借りた資金を財源とすることができないわけでありまして、今回の巨額の必要とされる資金のことを考えますと、無理やり一般会計から引き出してくるというようなことは、なかなかそこも難しかろうと思います。ぜひ、そこは担当大臣のお立場で、しっかり取りまとめをお願いしたいなと思います。

 やはり何といっても、東北は農林水産業が基幹であります。農業者、漁業者が生産をしたもの、これを加工して、あるいは冷蔵して、貯蔵して、流通させて、さらに小売店を通じて、あるいは一般のサービス業を通じて消費者に渡っていくわけであります。このいわゆる地域の産業の輪というものがある。民主党流に言えば、六次産業化というような話にも通ずるわけでありますが。

 地域の産業の輪の中の一部だけを支援して、それでは東北の再生はおぼつかないわけでありまして、ぜひ、この産業の輪を支援していくという観点から、しっかりと農業者、漁業者が制度の中で位置づけられますように、自民党案をそのままとは申し上げません、法律案、新規の法律、新規の機構を中心にして、しっかりと目的が達成されるものとなりますように、どうかその辺のバックアップをよろしくお願いしたいと思います。もう一回、見解をお伺いします。

鹿野国務大臣 今、被災に遭われた方々に対する思いというものの中で今後取り組んでいかなきゃならないという御指摘でございました。

 その趣旨というふうなものを私どもも踏まえさせていただきながら、そういう中で、使い勝手のいい形というものはどういうものであるかということも踏まえて今後詰めてまいりたいと思っておるところでございます。

小里委員 ぜひ、本来の目的を踏まえて、しっかりとその達成に向けてよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、次の質問に移ります。

 例の、福島県南相馬市、農家が出荷した十一頭の肉用牛から国の基準を超える放射性セシウムが検出をされました。しかも、出荷時には発見ができずに、食肉処理場のサンプル調査でこれが判明をしたわけであります。

 まず、畜産農家の段階で、屋外にあった飼料を家畜に与えてしまったということが大きな要因であるようであります。この原発の周辺地域というものは、御案内のとおり、流通が長期間にわたって途絶えたものですから、なかなかえさにも事欠く状況でありました。そこで、やむを得ず外にあったえさを給餌してしまった、そういう事情もあるようであります。そして、県のチェックをすり抜けてしまったというところにまた大きな問題がございます。

 全体を通じて、国としてどういう指導をなさってきたのか、どこに大きな問題があったのか、その点、お伺いをしたいと思います。

鹿野国務大臣 この三月、原子力発電事故の発生を受けまして、農林水産省は、三月の十九日でございますけれども、東北、関東の都県に対しまして、事故前に収穫され、屋内で保管されていた牧草等をえさとして給餌するなど、適正な家畜の飼養管理を行うよう、技術指導通知を出したところでございます。

 これを受けて、福島県は、三月二十二日に関係団体等にその旨を通知するとともに、三月二十五日には、農業技術情報として、ホームページ等によりまして周知をいたしておるというようなことでございます。

 さらに、農林水産省では、四月の十八日に、計画的避難区域及び緊急時避難準備区域の設定に伴いまして、これらの区域からの家畜の移動に当たっては、スクリーニングを行うとともに、適正な飼養管理が行われていたかをチェックリストで確認するよう、福島県に通知を出したところでございます。

 このような中で、今回、この南相馬市の事例が生じたことを踏まえまして、今後、計画的避難区域で飼養されている家畜につきましては、適正な飼養管理の徹底、あるいはまた家畜保健衛生所によるところの詳細な飼養管理状況の聞き取り点検を行うということを趣旨とした通知を、七月の九日、改めて福島県等にいたしたところでございます。

 今後とも県と協力し合いながら、引き続き、生産者の方々に適正な飼養管理の重要性というものを理解していただくように周知徹底に努めてまいりたいと思っているところでございます。

小里委員 指導をしっかりする、チェック体制を強化するということはもちろん大事なことであります。同時に、今回のことに至った根本原因というものをしっかり解明して、そこに手を差し伸べていただくこともまた大事であろうと思います。

 すなわち、えさがないからやむを得ず使ったというところをよく見ていただいて、飼料の調達が実際どうなのか、よく考えて政府としても対応いただきたいし、そしてまた、市況への影響が心配であります。風評被害にもまた通じていくことを懸念するわけでありまして、そのような観点からもしっかりと国として対応を図っていく必要があろうと思いますが、改めて見解をお伺いします。

鹿野国務大臣 重要な問題を指摘いただきました。

 今のお話のとおりに、私どもといたしましては、いろいろ飼養管理につきまして周知徹底するようにということで努めてきたところでございますけれども、結果といたしまして、こういう中で牛肉から暫定の規制値を上回る放射性セシウムが検出された、そして一部が流通したということにつきましては、指導や確認というものが徹底された面があったのかどうかということをもう一度振り返ってみる必要がある、こういう反省の上に立つ必要があるのではないか。甘かった面があるのではないか、こういうような認識に立つことが大事なことではないかと思っております。

 そういう意味で、この点を踏まえまして、今後、福島県とも連携をとりながら、まさしく食の安全と消費者の信頼というふうなものを確保されるように、これからもできるだけの努力をしてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

小里委員 もちろん、畜産農家におきましてルールを逸脱してしまった、このことは当然責められるべき話であります。同時に、畜産農家に限りませんが、現地の人たちが大変な極限状態の中に置かれている。その中で、こういった問題を初め、いろいろな問題がまた発生をし得るんだろうと思います。そういった被災地の状況、環境というものに思いをいたしていただいて、そこはまた、規制だけじゃなくて、指導だけじゃなくて、チェックだけじゃなくて、支援の観点からもしっかり、飼料の調達を初め、多岐にわたりまして対応をお願いしたいと思いますし、それとまた今後の風評被害につきましてもしっかり対応を図っていただきたいとお願いを申し上げるところでございます。

 次の質問に移ります。

 昨今の太陽光発電の推進に関連をいたしまして、突然として、耕作放棄地に太陽光パネルを張りめぐらせてその推進を図っていこうという構想が打ち出されております。ここに至った経緯とその内容についてお伺いをいたします。

鹿野国務大臣 原発事故以来、これからの我が国としてのエネルギー政策をどうするかというようなことにおきまして、今日までは、御承知のとおりに、いわば化石燃料、そして原子力というふうなものが二つの柱になっておったわけでありますけれども、これに加えて、節電というふうなこと、そして再生可能エネルギーというふうなものを、二つの柱も加えて四本の柱で今後取り組んでいかなきゃならない、こういう考え方で政府は新たなる一つの考え方を示しているところでございます。

 そういう中で、この再生可能エネルギーというふうなものを、どうやってそのシェアをふやしていくかというようなことを考えたときに、まさしく休耕田の、あるいは耕作放棄地の利用というふうなもの、活用というものができないだろうか、こういうようなことに至っておるところでございます。

 私どもといたしましては、まさしく今後の食料というふうなものの全体像を考えたときに、食料の自給率目標というもの、これは達成をしていく、こういうふうなことでございまして、そのためには、平成二十一年と同水準の農地面積四百六十一万ヘクタールの確保が必要だ、こういうような考え方に立っているわけでございます。

 一方、この耕作放棄地の中には農業に利用できない土地もあるわけでございまして、そういう土地を太陽光の発電あるいは風力の発電というものに活用できないだろうか、こういうようなことで、そのことがまさしく地域の新たなる活力を生み出すことにもつながってくる。

 こういうふうな考え方に立ちまして、今日、考え方を具体的な形に、どういうふうな形でつなげていったらいいかというようなことでいろいろと検討いたしているところでございますけれども、まさしく、耕作放棄地を太陽光発電等々に活用する際は、当然のことながら、発電の効率性、安定性といった技術面、あるいはまた経済面というふうな視点も重要であるということは当然考えておかなきゃならないことだと思っております。

小里委員 申し上げるまでもないことでありますが、食料安保の観点から耕作放棄地の解消、解消というのは、もちろんこれを食料供給の用に供していくという観点から、長年にわたりまして真摯な議論を重ね、また、その対応策を打ち出してきたわけでございます。ここに降ってわいたように太陽光発電への利用ということが唱えられているところでございます。まず、その食料安保の観点から、これをどうとらえていくのか、非常に、つじつまの合わない、難しいテーマであります。

 今おっしゃったように、食料安保に影響のないように、農地に適さないようなところをこれに使っていくんだとか、そういう考え方になっていくんであろうと思いますが、しかしながら、本来、耕作放棄地は山間部に存在をいたしまして、なかなか本来の農作業でも苦労をしている。その上に太陽光パネルとなりますと、谷合いに太陽光パネルを張りめぐらして、果たしてうまくいくんだろうかという話がある。

 耕作放棄地の中でもさらに農地として適さないところとなりますと、さらに条件が悪くなっていくわけでありまして、では、どれだけ太陽光パネルとしてその効果を発揮していくのか、なかなか説明は難しいんだろうと思います。できる範囲で説明をいただきたいと思います。具体的数字を挙げてお願いします。

鹿野国務大臣 基本的に農林水産省といたしましては、耕作放棄地と、それから、いわゆる地目としては農地でありながら、もうほとんど全く手のかけられないような状況にあるというふうな土地も相当数あるわけでございます。そういう中で、耕作放棄地の中でももう農地に復旧できないような状況にある、そして今申し上げたような、もうほとんど名前だけが農地になっておるということで放置されておるというようなこと、そういうところを活用してということで、約十七万ヘクタールくらいそういうところがいわゆる再生可能エネルギーに活用できるんではないか、こういうような考え方を今持っておるところでございます。そして、そのうち十一万くらいを太陽光に、そして六万ヘクタールのところをいわゆる風力にというようなことの考え方に今立っておるわけであります。

 あくまでも、今委員から御指摘のとおりに、食料の自給率体制というものに支障のない形で取り組ませていただくというふうなこと、そして同時に、経済性なり、あるいは効率性というものが現実的にどうであるかというふうなことは、これからの技術的な面も含めて、取り組みの中で当然のことながら検討していかなきゃならない、こういうふうに思っておるところでございます。

小里委員 おっしゃいましたように、効率性という観点から、すなわち太陽光発電としてどれだけこれが用をなすのか、その観点においてはまだ未解明であるという今の御答弁であります。そこをしっかりとわきまえていかないと、本来の食料安保に対する国民の理解、なかんずく農地の確保ということに対する国民の理解を大きく損ねていくわけでありまして、今後の食料安保政策を進める上で、これが大変な障害となっていくおそれがあります。ぜひそこはわきまえていただきたいと思います。

 本来、民主党のエネルギーに関する基本計画、去年の六月でしたか、打ち出されております。二〇三〇年には発電全体の電力量の七〇%を原発と再生エネルギーでやろう、原発で五〇、再生エネルギーで二〇ということであったろうと思います。その中の再生エネルギーの部分だけを取り上げて、二〇二〇年代の早い時期にこれを達成しようと大きく誇らしげに菅総理が打ち出されましたが、要するに、基本計画の中の一部だけを前倒しするということを宣言されたにすぎない。その中身は全く明らかになっていないところでございます。

 本来、民主党提案のCO2二五%削減目標の中で、大きな柱として、今回の再生エネルギー措置法、排出量取引、そして環境税というものがあったはずであります。御案内のとおり、環境税は宙ぶらりんであります。排出量取引の話も、話が進んでおりません。

 そこで、ただその一部だけを今回取り上げて出されたのが再生エネルギー措置法案でありまして、その全体構想をどうするのか。電源別に、火力発電、あるいは原発、水力、あるいは風力、バイオマス、それぞれに特性がありコストも違う、全般として原発よりかなり高くなるわけでありますが、そういった中でそのベストミックスをどうしていくのか、そういったことも全くもちろん明らかになっていない。全体をしっかりと議論しながら、全体構想として進めていく。

 もちろん、将来的に大きな意味での脱原発を目指すということでは、ほとんどこれは考え方としては共有をしているんだろうと思います。その中で、いかに原発の安心、安全を確保しながら、いかなる形で、いかなる期間でこれをとらえていくのか、そういった全体構想というものが全く明らかになっていないわけでありまして、その中のごく一部のツールだけを取り出しているのが再生可能エネルギー措置法案であり、そして耕作放棄地の利用の話であります。

 特に、この耕作放棄地の話にしましては、恐らくソフトバンクの孫さんが言い出して、総理が指示をして、それにやむを得ず農水省において一応の絵らしいものをかいておられる、それが正直なところであろうと思うところでございます。そういった菅総理の場当たり的な指示、考えに惑わされることのないように、しっかりと食料安保の本筋というものを持しながら対応していただきたいと思います。

 もう一回、大臣の見解をお伺いいたします。

鹿野国務大臣 私個人的な考え方でございますけれども、基本的に、この二十年間の間に、やはり地域の活力というふうなものの軸はまさしく第一次産業でございます。そういう中で、農産物を生産する、水産物を生産する、林産物を生産するというふうなことの中で、やはり、小水力発電なり、あるいはバイオマスを活用したところの発電なりというような、エネルギー等も一体的な形で、分散型エネルギーの仕組みをつくり上げていく中で取り組んでこなければならなかったということもあるのではないか。

 そういうような認識に立って、私どもとしては、この原発事故を受けまして今後総合的なエネルギーをどうするかということは、これはもう与野党ともに、民主党だけ、政権だけではなしに、国民全体として考えていかなきゃならない取り組みでございまして、そういう中で、まさしく先ほど申し上げた四本柱の一つである再生可能のエネルギーというものをどう組み立てていくか。

 そういう中で、可能性としてはこういうことですよ、そして実質的に効率性なり技術的な面をどうしていくかというふうなことは、当然のことながら、そういう中で取り組んでいく。そして一つの方向性というものを見出していく必要があるのではないか。

 そういう意味では、今、小里委員からのいろいろな御指摘というふうなものは、当然、私どもも意識をしながら取り組んでいかなきゃならないことだと思っております。

小里委員 おっしゃいましたように、現在の耕作放棄地における太陽光パネルの構想、これは、まず食料安保との関連、そして経済効率性、発電効率性という観点からまだ未解明であるという御答弁でございました。そこをしっかりわきまえながら今後対応を図っていきたいという大臣の答弁であったと理解をいたします。

 ぜひ、国の方向性というものを間違うことのないように、ここは、担当大臣としての本来の責務を踏まえて、対応方をよろしくお願いしたいと思います。

 時間もございませんが、最後に一問。

 地元で意見交換会をいたしましたときに、飼料米に関連しまして、また、しょうちゅう用のこうじ米も同様でありますが、いろいろな懸念をする声が出ておりました。

 まず、長年にわたりまして、ブロックローテーションによりまして集団的な転作を行ってまいりました。その結果、約三割、四割の水田におきまして水の必要がなくなっているんですね、用水の必要がなくなっている。そこに飼料米なりしょうちゅう用のこうじ米をつくっていこうとなりますと、用水をどうしようかという話になってまいります。

 その点と、ちょっと時間がないのでもう一つ重ねてですが、農薬の問題なんです。

 飼料米については、基本的には主食用米に準ずる扱いであります。ただ、その給与の方法によりまして、玄米化して給与する場合は、主食用米に準ずる扱いであります。しかしながら、もみで給与する場合は、これは出穂期以降の農薬散布を認めておりません。したがって、ウンカが大量発生などしますと、大変な被害をこうむることになります。また、農薬を散布しなくても、周囲の主食用の品種への散布によりまして、またこれが、例えばドリフトして残留して、影響を受けるわけであります。

 こういったことから、農薬の基準の見直し、そしてまた、さらに集団的な取り組みを進めていく必要があるんじゃないか、そんな感を持ったわけでありますが、大臣の答弁をお願いいたします。

篠原副大臣 済みません、お答えする前に、先ほど網屋委員に対する答弁のところで漁協と言っておりましたけれども、漁協の店舗でございまして、店舗が被害を受けているということで、訂正させていただきます。

 ただいまの御質問でございますけれども、農業者戸別所得補償の本格実施に当たりまして、新規需要米、飼料米等をやって、用水が不足しているんじゃないかと。これは当然予想されたところでございます。

 ですから、そういった用水不足等の生産基盤の支障を取り除くために、今年度限りということにしておりますけれども、来年はちょっとわからないわけですけれども、戦略作物生産拡大関連基盤緊急整備事業、二百二十億円をつけまして実施しているところでございます。

 今、小里委員御指摘のとおり、三、四割はもう水が不足してきているということであります。片一方は、今、不足の方だけをおっしゃいましたけれども、麦や大豆を本格的に生産していくというような場合は排水不良という問題もありますし、両方の面からやはり基盤整備をきちっと見直していく必要が私はあるんじゃないかと思います。

 水不足につきましては我々承知しておりましたので、用水のローテーション的な利用とか、あるいは反復利用とか作付期間の調整、ちょっとずらすとかいうようなこと、そういった情報提供を行ってきているところでございます。

 いずれにしましても、営農上支障を来すということは大問題でございますので、現場の声を聞いて適切に対応してまいりたいと思っております。

 それから、農薬の問題でございます。

 この問題も、我々承知しております。今、玄米化した場合は主食用だけれども、もみ米の場合は、出穂期以降、そのまま食べさせるので、一切散布をしてはいけないというルール、そこは承知しておりますけれども、そういった事態が生じておりますので、もみ米についても農薬がどんなものがあるかということを今調査しているところでございまして、その調査した結果、適当な農薬がありましたら、それを使用するというような形で解決をしてまいりたいと思っております。

小里委員 飼料米、しょうちゅうのこうじ米に限った話でありましたから、そこで出た問題として用水の問題をまず取り上げたわけでありますが、これが、おっしゃったような対策もほとんど現場には届いておりません。農薬の問題がございます。

 また、従来からある、どこで加工してどこが引き取ってくれるんだ、そういう根本的な問題が全く解決されておりません。飼料米をつくりたい、しょうちゅう用のこうじ米をつくりたいけれども、なかなか課題が多いね、障害が多いねというのが現場の実態でありますから、ぜひ飼料米制度を、これは自民党政権時代に一生懸命つくった制度でありますから、新規需要米の制度、加工米の制度を含めて、ぜひこれが軌道に乗るように、しっかり対応方、お願いを申し上げまして、質問を閉じます。

 ありがとうございました。

山田委員長 次に、今村雅弘君。

今村委員 大変暑くなりました。ことしは、冬寒い、そしてまた梅雨が来るのも早かったし、大変暑い夏になったわけでございます。被災地の方も、震災当時は雪が降って大変だった、そして今、大変な暑さの中で頑張っておられますが、ぜひ農水関係の方も、大臣、しっかり気合いを入れて、一日も早い復旧、復興ができるように、よろしくお願いいたします。

 それから気象の関係でございますが、今言いましたように、ことしは結構寒さが続いて、私のところも麦の生育等が大変遅くなりました。そして雨が降るのが早かったものですから、非常に、麦の刈り入れのタイミングを逸したところもありまして、せっかく米から麦、大豆へという政策を進めていく中で、今回はひどい目に遭ったなという話があるわけでございますが、これにはもうめげずに、しっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

 ぜひ、冒頭からのお願いで恐縮ですが、共済の特例について、ひとつ弾力的に対応できるように、これはお願いしたいと思います。

 では、早速でございますが、きょうはこの法案の関係の質問でございますが、この法案は、基本的には、今言った震災復興等々を含めた中での、ある意味ではリーズナブルな法案だというふうに私は思っております。若干技術的なこと等々、質問の点はございますが、後半の方に回していきたいと思います。

 その前に、一つは、今のこの菅内閣の政治姿勢の問題といいますか、そういった観点。それから、それに関連して、諫早干拓の開門の今後の進め方と、先般来、米の先物の試験上場という話がございましたが、こういったことについて、これは一連の、やはり今の政治に対するあるいは政府に対する信頼感の問題だということでございますので、これについて大臣の所見等々をお伺いしたいと思います。

 まず、今、菅内閣の支持率がもう大幅に下がっているわけですね。これについてはいろいろな原因があるわけでございまして、幾つか挙げますと、やはりリーダーシップの問題。特にこの復旧、復興について、本当に、声高に叫ぶだけじゃなくて、実際、現場がちゃんと大車輪でもって機能しているのか、どうもその辺がそごを来しているんじゃないかなという気がします。

 そしてまた、そのほかの原因としても、何か、菅総理がきのうも脱原発ということで言われているわけでございますが、既にやめるということを言った方が長期にわたるそういったことを出して、一体何の意味があるんだろうという素朴な疑問、これはだれもが思っているわけでございます。

 それに限らず、何かあると、非常に人気取りといいますか、パフォーマンスといいますか、ポピュリズムといいますか、そういったところにすぐ飛びついていくといいますか、そういったことで、今の政治不信といいますか、政権に対する支持率が低下しているんじゃないかなというふうに思っておりますが、大臣は一体今の菅内閣の状況についてどういうふうに思っているのか。ここはひとつ遠慮なく所見を述べていただいて、やはり農水大臣は違うなということをぜひアピールしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鹿野国務大臣 今、今村先生からの御指摘でございますけれども、私自身は菅内閣の一員として、今日のこの国民の世論調査等々も含めての数値というふうなものを見きわめたときに、私どもも責任を当然共有しなければならないと思っております。

 そして同時に、いろいろな御批判というふうなものは当然のことながら真っ正面から受けとめていかなければならない、決して避けるような姿勢ということであってはならないと思います。そして、そういう御批判というふうなものを私どもが一つの糧にして国民の人たちの信頼を少しでも得ることができるようにしていく、これが内閣の一員としての果たすべき基本的な姿勢ではないかと思っております。

 そういう中で、冒頭に申された、今回の大震災によって被災を受けた地域の方々、その復旧、復興に対しては、被災者の方々の気持ちというふうなものをできるだけ受けとめる、そういうことがまさしく一番先に求められることではないか。そういう考え方に立って、これからも現場の声というものを私どもは大事にさせていただきながら、農林水産業の復旧、復興に向けて取り組ませていただきたい、こういう考え方に立っているところでございます。

今村委員 批判を受けとめて、それを糧にしてというふうに言われましたけれども、どうも今の菅内閣というのは、全く、受けとめるどころか、ひらひらひらひら風のように、まさにどこ吹く風じゃありませんが、そんな感じがあるんですね。

 私たちの地元に玄海原発というのがありますが、これも、先般、海江田大臣がお見えになって、地元でもいろいろな意見がある中で、何とかしようじゃないかということを出した。そうしたら、もうその次の日には、ちょっと待て、ストレステストだというようなことですから、やはりこれでは、まじめに本当に国のことを考えて、いろいろな批判を押し切ってでもやることはやるんだ、こういった政治というものができなくなりますから、そこは大臣、やはり菅内閣の重鎮だと思いますから、しっかりそこは意見を言うところは言う、そして行動するところは行動するということで頑張っていただきたいというふうに思います。

 その関連で、諫早干拓の開門の問題でございます。

 これについては大臣も大変な苦渋をされて、また、ひどい目に遭ったと言ったら失礼でございますが、大変だと思います。

 現実問題としては、昨年の十二月に高裁判決が出て、それを受けて、農水省としては、やはりいろいろこれについてはまだ問題があるから上告をして、そしてその間にいろいろ和解の道も探ろうじゃないかという動きもあったと私は思っておりますが、間髪を入れずに、そこはもう上告断念だということで、ぽんとやられた。そうすると、その判決の既判力が及ぶわけですから、具体的ないい方向を当事者同士で話していこうという動きが逆になかなかできなくなってしまうということも起きたわけでございます。

 ですから、いろいろ環境アセスの問題等々やってこられたことはわかっておりますが、とにかく、今後これはどうされるんですか。もう二十五年の十二月には開門をしろという判決の内容ですね。これに向けていろいろ工事をやったりなんかすると、そう残された時間はないと思うんですよ。ちょっと今後のこの辺の進め方に、まず御意見をといいますか、方針を伺いたいと思います。

鹿野国務大臣 国といたしましては、この諫早の問題につきまして、昨年の十二月、お話のとおりに、福岡の高裁判決というふうなものが確定いたしました。そして、平成二十五年の十二月までに諫早湾の干拓潮受け堤防排水門を開門する義務を負っておる、こういうふうなことでございます。

 そういう意味で、開門の実現に向けて、今後とも、当然のことながら、話し合いを続けながら進めていかなきゃならない、こういうことでございますけれども、どうやって今後進めていくんだということでございますが、先月の十日、環境アセスの素案というふうなものを公表いたしまして、佐賀県からもいろいろと御意見もいただいているところでございます。

 そして、これからの開門の方法なり時期なり、あるいは期間というふうなものにつきましては、佐賀県の皆様方だけではなしに、各方面の方々、関係者の方々からも当然御意見を伺うということでございますけれども、長崎県側からも御意見を伺うというふうなことになっておるわけでございます。時期的には少しおくれているところでございますけれども、そういう中で、関係者の方々の話し合いというものを行って、これからどうするかというふうなことも当然のことながら考えていかなきゃならないところでございます。

 こういうことを考えたときに、私どもといたしましては、まさしく冒頭に申し上げますとおりに、二十五年の十二月までに開門をするというようないわゆる義務を負っておるということ、この実現に向けては、長崎関係者の方々を初めとするところの御理解をいただくべく、懸命に誠意を持って取り組んでいかなきゃならない、このように考えておるところでございます。

今村委員 大臣の気持ちはよくわかりますけれども、菅総理は、この諫早干拓の開門の話はもうお忘れになっているんじゃないですか、ひょっとして。もう全然話も聞きませんし、そして、大臣、菅総理に、この問題は今長崎県との間でこういうことになっているけれどもどうしましょうかというような相談なり、あるいは総理からの指示なりはあるんですか。何か、全く、いつの話だったかなみたいな感じで総理はいられるような感じがしますけれども、その辺はいかがですか。

鹿野国務大臣 当然、菅内閣でございますから、そういう中でこの諫早湾の問題をどう具体的な形で進めていくかということについては、私自身も総理の判断、考え方というふうなものをお聞きしながらということでございまして、それを受けて、六月の十九日にも長崎県に参りまして、いろいろ意見交換もさせていただいているところでございます。

 そういう意味では、まさしく菅内閣としての取り組みというふうなことを、当然これは大事なことでございますが、実質的に具体的な形でこれからの営農、あるいは漁業者の方々、あるいは防災上どうするかというふうなことは農林水産省という所管になっておるわけでありますので、私自身がまさしく地域の方々との連携というものをとらせていただいて、そしてこの推進に向けて取り組まなきゃならない、こういうふうな考え方に立っておるところでございます。

今村委員 総理はやめるという意思表示をされたかもしれませんけれども、しかし、総理の時代に総理の決断で決めたことですから、やはりこれはきちっとしてもらわなきゃいけません。

 そして、総理は、玄海原発もそうですけれども、地元の首長と会うとか、そういうことが全然ないんですよね。ですから、この諫干の問題でも、長崎県の首脳部と、行って、何とかこうしたいというようなことは全然されないわけですよね。この辺、ぜひ大臣からも、これは総理の責任なんですから、ひとつやってください、そういう場面をつくってくださいということも言っていただきたいと思います。よろしいですか。

鹿野国務大臣 まず、菅内閣におきまして、今回のこの問題については、農林水産省が所管ということでございますので、私自身がまずその責務を負って取り組ませていただきたい、そういうふうに考えておるところでございます。

今村委員 大臣の苦しい表情を見ましたから、もうこれでこの話はやめます。

 次に、米の先物取引の試験上場ということでございます。

 これについては、経緯は省略いたしますが、とにかく、私たち自民党も、それから与党・民主党内でも随分異論があり、我々もこれは見直すべきだ、やるべきじゃないということを強く申し入れをしたところでございますし、それからいろいろな関係の団体、全中等々含めて、これはもう絶対反対だ、もう協力しないということまで言っているわけですね。

 これを、今こうやっていろいろな意見があるのに、どうして強行実施するのか。そしてまた、もうちょっと丁寧な議論をしながら合意形成をして、やるのならみんなの協力を得て、理解を得てやった方がよかったと思いますが、どうしてこういうことになったのか、ちょっと教えてください。

鹿野国務大臣 今回のお米の試験上場ということにつきましては、今村先生からも直接私どもも御意見を伺わせていただきました。そして、農林水産省にお越しをいただきまして意見交換もさせていただいたということもあったわけでございます。そしてまた、自由民主党さんからは、二度にわたりまして、いろいろと御意見をお聞かせもいただき、意見を交わさせていただいたというふうなことでもございました。そして、食糧部会なりあるいはお米の有識者懇談会なりというふうなものを通じていろいろと御意見等も伺ったところでございます。

 そういう中で、私自身といたしましては、今回のこの認可をどうするかということにつきましては、この基準そのものが、十分な取引量が見込まれない、あるいはまた生産、流通に著しい支障を及ぼすというようなことをこの時点で立証することはなかなか困難だ、このようなことから、今回試験上場というふうなことの中で認可をさせていただいた、こういうことでございます。

今村委員 私たちがこの間申し入れに行ったときも、いろいろな議論もありましたが、最後は、今言われたように、これはあくまで試験上場だと。ですから、大したことないよというようにしか見えないんですよ。だけれども、現実問題、試験上場であれ何であれ、これは学校の理科室でフラスコの中で実験するような話と違います。現実に一兆八千億円近い米の大きな市場があって、そこに影響を与えると思うんですよね。

 だから、今、試験上場だから大したことないよと言われる中で、仮にやったとして、では試験上場のときには、例えば、この業界の人たちも、いろいろやるとうまくいかないから、できるだけおとなしくしていようぜ、いい子になって二年間じっとして過ごす、特に問題ないから、ではこれで本格上場だというようなことになっても困るわけであって、これが本当に米の価格形成とかそういったものに影響を与えないのかどうか、そこは本当にどう思っておられるんですか。

鹿野国務大臣 意見交換をさせていただきましたときも申させていただきましたが、この問題につきましては、平成十五年に、食糧法の改正によりまして、いわゆる流通規制というものが解かれたわけでございます。

 そういう中で、米に関しての先物の上場というものをどうするかというようなこと、これにつきましては、私どもとしては、先ほど申し上げたような考え方から、流通あるいは生産に著しい支障を及ぼす、あるいはまた十分な取引量が見込まれないというようなことをこの時点におきまして立証することはなかなか難しいというふうなことの判断に立たせていただいたわけでございます。

 今後、この二年間の間にこういうような状況が生まれるということでありますならば、当然それに対して対処していかなきゃならない、そういう意味で、しっかりとこの検証をしていかなきゃならない、こういうふうに思っておるところでございます。

今村委員 先ほども言われましたし、今もいろいろな意見を聞かれたと言いましたけれども、例えば、先ほど言われた有識者会議の中に、いわゆる全中なりなんなり全農なり主たる出荷団体、そういったものは入っているんですか。あるいは、そういった方の意見はちゃんと聞かれたんですか。それなしでの有識者会議ということであったら私は非常に問題があると思いますが、その中でどういうことになっているのか、ちょっと教えてください。

鹿野国務大臣 経緯だけ申し上げますと、四月の二十八日にお米の取引有識者懇談会で説明をさせていただきました。五月の十二日には全中から筒井、篠原両副大臣に対していわゆる反対の要請がありまして、ここでも意見交換がなされております。それから、五月の二十七日に食糧部会で議論がなされました。六月の三日に米取引有識者懇談会で議論がなされました。六月九日、私に対して全中が反対の要請をされまして、ここで意見交換がなされました。それから、六月十七日に北陸四県中央会が筒井副大臣に対して要請、そして宮城県の中央会が篠原副大臣に対して要請、こういうようなことでございます。さらに、六月の二十四日におきましては全中が筒井副大臣に対して要請をされた、こういうことでございます。そして、六月三十日に食糧部会でも議論がなされた。

 経緯だけはこういうことでございまして、いろいろな形で関係の方々と意見交換がなされたということだけは申させていただきたいと思います。

今村委員 ですから、今、そういうことをやられたことはわかっているんですが、一番肝心かなめの、最大の出荷団体なりなんなりが反対と言っている。その中でこういうことをやって、仮に出荷団体が協力しないということになると、この価格形成というのがある意味では完全に二重価格になってしまいますね。一物一価ではなくて、一物二価みたいな話になってくる。

 これでもって、果たしてこの上場、仮に試験云々であっても、ちゃんとした機能を果たせるということになるんですか。先ほど来も言っていますように、これは試験上場だから余り関係ないよということならそれでいいんですが、しかし、関係ないということだったら、そもそも論として、こういう試験上場することに意味がないんじゃないかというふうに思うんですけれども、そこはどうですか。

鹿野国務大臣 今日、価格形成の場、大阪、東京におけるところのこの場もなくなった中におきまして、いわゆるお米に対する上場というふうなものについて何とか実現をしてほしい、こういうようなことの要請もあることは御承知のとおりであります。

 そういう中で、私どもといたしましては、何遍も申し上げますけれども、一つの認可基準において判断をさせていただいたということでございまして、これから、この二年間の中におきまして、どういうような形になっていくか、どういう影響があるのかというふうなことをきちっと検証していく中におきまして、必要とありますならば当然そのことに対して措置を講じていかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。

今村委員 せっかく戸別所得補償の仕組みを米等についてつくられて、それは一定の評価を私もしてはおります。だからといって、先物でもって価格が下がって、それでもって農家が大損害を受けるということは、状況は以前出したときとは私は違ってきていると思うんです。以前出してこられて、認めなかったんですが。

 しかし、やはり今後、基本的に米というものは潜在的な供給過剰能力を有しているわけですから、この先物相場というもの、おおよそ相場と言ってもいいんでしょうが、需要と供給が非常にタイトな関係にあるときに、ある意味では成り立つものであって、これを供給能力が潜在的に大きいものがある中でこういうことをやられると、長い目で見るとやはり価格はどんどんどんどん下がっていくんじゃないかという気がするんですね。ですから、そうなってくると、特に所得補償の変動部分の金が大変膨らむ。

 ことしだってそうだったでしょう。赤松農林水産大臣がそんなことはないよと言ったって、現実問題、米はどんどん下がっちゃって、大きく膨らんだじゃないですか。幸か不幸か、この生産調整に参加しなかった人が百三十二万ヘクタールで読んでいたところを、百二万ヘクタール。三十万ヘクタール参加しなかったから固定部分の支払いが少なくて済んで、その分を変動部分に回してしのいだという状況でしょう。

 ですから、こういうことで、単に市場の、商品取引所のことばかり考えないで、やはり日本の農家、農業、そして米の生産体系にかかわることに大きな問題があるという認識をもうちょっと持ってもらわないと、これはあれですよ。私は、農水省の役人に、担当のあれに、先物が米の生産、流通云々あるいは作付の計画にどういうふうに影響を与えるんだ、君たちは、そういうことに重大な影響があるから、もっと物を言えばいいじゃないかと言うと、いや、これは担当が違いますと言って逃げちゃうんですよ。ですから、そういう重大な問題を含んでいるということにもうちょっと認識をしっかりしていただきたいと思います。

 ちょっと時間があれなので先に進みますが、これと、もう一つももうちょっとしておきますけれども、これに参加する人は、先ほど言ったように、米の供給能力が潜在的に過剰であると言いましたけれども、大規模農家もある意味では取引に参加できるわけですね。そうなってくると、相場を形成するときに、これはどういうことになっているんですか。非常に、インサイダー取引とまではいきませんが、若干そういう要素も出てくるんじゃないかなという感じもしております。

 試験上場ですから、そういう悪いことはしないでしょうが、そういった市場の問題といろいろな生産計画の問題、そして特に、もう一つこれは、例えば十月なら十月で約定していても、途中で決済もできるわけですね。そうなってくると、最初、四月の段階なり五月の段階では、これだけの、例えば一俵一万六千円なら六千円でやると言っていたのが、途中でもってやめた、下がりそうだから、それはもう売り買いはやめるよと差金を決済して済んでしまうと、がたんと下がる。そうすると、田植えをされるときには高そうだからつくるよということでやったのが、途中でもって吹っ飛んじゃうと、では、つくった方はどうしてくれるんだという話にもなってきます。

 こういう問題があるのは、大臣は認識しておられますか。これについて、ちょっと簡単でいいですが、お考えを伺いたいと思います。

鹿野国務大臣 今、今村先生から言われたようなことは、これは一つの想定としていろいろなことが出てくる可能性はあると思います。しかし、七十年ぶりに試験上場ということでございますから、ほとんど今健在の方々では、どうなるかわからない。ましてや、マーケットのことでございますから。そういう意味で、まさしくこの二年間においていろいろな問題が出たときには、私どもとしては、それに対してきちっと措置を講じていくということでございます。

今村委員 とにかく、七十二年前と言われましたよね。七十二年前も、大阪での米相場ができたときも、米が非常に足りない時代なんですよ。ぴちぴちでしょう。そういうときにはやはりこの相場が成り立ったということで、現在の米が潜在的な過剰である状況では、米については非常になじまない仕組みだということを最後に私は指摘しておきます。

 次に、本題に入りますが、今回のこの機能強化、それから再編強化の法案でございます。

 これについては、冒頭言いましたように、基本的には私もこれは賛成でございますが、ただ、やはりいろいろ見ていると、いろいろわからないところが多いなと。というのは、被害の規模が今一兆何がしですか、あったと思いますが、一兆七千億だったですかね。その辺が当初の見込みと今またいろいろ変わってきていると思います。そして、いろいろ貸し出しをしている農家とか漁家の皆さん方の状況が果たしてどういうことなのかということを含めて、これは一体どのくらい用意をしておけばいいのか、そういった観点がまだよくわからないんですね。

 これについては、とりあえずこの法案でそういった仕掛けだけといいますか、仕組みだけをつくって、そして、具体的な資本注入額なりなんなりはその辺を待ってやるということだと思いますが、そういうことでよろしいんですか。

田名部大臣政務官 現在、被災三県におけます農協、漁協の貸出金でありますけれども、農協で七千五百億円、そして漁協で二百億円であります。ただ、この中には、内陸部であるとか、直接的に津波や震災の被害を受けていないような例えば住宅ローン、こういったものも含まれておりますので、これから精査が進められていくことになります。精査が進められた上で、信用事業の強化計画の作成等を行うこととしているところでございます。

今村委員 建前としてはそういうことなんでしょうけれども、現実問題、本当に幾ら必要なのかということの精査も必要だし、それから、今、信用事業強化計画の作成と言われましたけれども、これをやるのは、実際は作業としては農協、漁協の職員ですね。この人たちに、今のこういう状況の中で果たしてそういうことができるんですか、実務的に。その辺はどうお考えですか。

田名部大臣政務官 先生から御指摘いただいた点でございますけれども、被災地の農協、漁協というのは今大変困難な状況にあると思っております。そのことを踏まえれば、やはり現場で支障が生じないようにしっかりとサポートをしていく必要があると思っておりますので、復旧を図るのと同時に、適切な金融機能を発揮するために、指導機関である農林中央金庫が積極的に指導する、そして農協また漁協系統が一体となって協力をしていく、その対応を今しているところでございまして、農林水産省といたしましても、先ほど申し上げましたように、現場に支障が出ないようにしっかりと対応してまいりたいと考えています。

今村委員 関連してお聞きしますけれども、農協、漁協は、農業者、漁業者だけじゃなくて、一般の商工業の人に融資しているケースもありますね。その場合に、今言ったいろいろな債務の認定なりなんなり融資計画等々をつくる中でも、農業、漁業だけでも大変なんだけれども、商工業に対してその辺の対応というのは非常に難しいんじゃないかと思うんですよ。農業、漁業だったら、田畑の修復にこれだけかかる、機械の購入にこれだけかかる、ある意味では非常にわかりやすいと思うんですが、商工業になってくると、いろいろな販売先からお店の復興あるいは機械の導入等々で、いわゆる農協、漁協の人たちではそれを算定するということは難しいと思うんですね。この辺の商工業者に対する対応というのは今後どうされるんですか。

田名部大臣政務官 先生の御指摘のとおり大変難しい点もあろうと思いますけれども、今、政府・与党が検討しております債権買い取りのための新しい機構の中で、金融機関が保有する農林漁業者また商工業者を含む事業者向けの債権の買い取りというものも対象にしておりますので、この金融機関というものには農協、漁協というものも含まれてくるということになります。

 ただ、今後、具体的な仕組みについてはこれから検討をされることとなっておりますので、被災事業者がどれだけ使いやすい形にできるかということが非常に大事だと思っておりますので、事業の再建また復興を支援できるような、そういう仕組みにする必要があるというふうに考えています。

今村委員 ちょっと提案になるかもしれませんけれども、金融機能強化法を改正しましたね。この際、農協、漁協のそういった商工業関係の皆さんの融資の関係なりは、むしろそっちに振りかえをして、そっちで一本化してやってもらう。というのは、商工業の人もいろいろな信用金庫とかなんとか、銀行からも金を借りているわけですから、両方に、農協なり漁協もまたがっている分をそちらに一本化してやってもらった方がいいんじゃないかと思いますけれども、そういう考えはありませんか。ちょっとこれは通告していなかったので申しわけないですけれども、わからなければわからないでいいです。

田名部大臣政務官 私の答弁でいいのかどうかわかりませんけれども、新しい機構を使って、農協であるとか漁協であるとか、そういったところに、先ほど申し上げましたように使い勝手のいいというか、そういう支援ができるようなことを今後検討させていただく必要があるのではないか、そんなふうに思っております。

今村委員 大臣、これはちょっと頭の中に入れていてほしいんですが、今言ったように、実務面でも非常に難しい作業になります。現場は大変ですよ。ましてやそれを、特に商工業の人まで面倒を見るというのは。

 それが一つと、最終的に、仮にそういう商工業の方の融資の問題もこっちの方で対応するとした場合に、損失が出たときに、結局、このスキームは、いわゆる農協とか漁協が出したお金が最終的な原資になっていくわけですね。ですから、本来は、この系統系の金融というのはやはりそういった方を対象にした金融機関ですから、その対象以外の、対象以外と言ったら失礼でございますが、そこからちょっと距離のあるところの分までいわゆる農家、漁家が最終的にこれをかぶる、あるいはその分は最後は保険機構でやるのかもしれませんけれども、どうもちょっとそこのところは違うんじゃないかなという感じがしております。

 ですから、答弁されるならされても結構ですが、もしそうでなかったら、ぜひそういった問題もあるということをちょっと認識していただきたいと思いますが、何かございますか。

鹿野国務大臣 勉強させていただきます。

今村委員 ありがとうございます。

 次に、いわゆる二重債務問題というのがあるんですね。この辺について、国の方でも、こういった農林漁業関係だけじゃなくて全般的にどうしようかという話で今進んでいるわけですね。そうなってきたときに、先ほど言った、非常にいろいろな救済策が絡んでくる。そういったものと、やったときに、非常に時間的に間に合わないんじゃないかというか、あるいは時間がかかり過ぎるんじゃないかという気がしているわけですよ。この辺について、当面、どの範囲まで救済するのかということですね。

 そしてもう一つは、時間がないのであわせて言いますが、損害、被害を受けたことについて、自己責任、自分でこれをかぶって対応するというのと、もう一つは、国でもっていろいろな予算をつけて、そしてその復旧に金を出しましょうということにもなってくる。そうなってくると、そこでも、いや、これについてはいずれ国から予算がつくからこの分は見なくてもいいよとか、そんなふうな話にもなってくるわけであって、とにかく、やたらめったらいろいろな要素を入れると現実の融資の実務なりなんなりがおくれてしまうんじゃないかと思うんですが。

 何とかその辺は、もう復旧の法案も通ったし、復興案も通ってきたし、何とかなるはずだからということで、ある程度大ざっぱな、大ざっぱと言ったら失礼ですけれども、融資ということを、つかみと言っても変ですが、そういった弾力的な融資の対応ということは当然やるべきだと思いますが、その辺はいかがですか。

鹿野国務大臣 被災農漁業者のいろいろな債務問題につきましては、いわゆる既往債務の負担をどう軽減するか、軽くするか、こういうふうなことで、補正予算におきましても盛り込ませていただきました。

 また、経営再開についても支援をしていくというようなことの施策を、措置を講じておるわけでありますけれども、いわゆる今御指摘の二重ローンの問題等々について、おくれをとらないようにするにはというようなことのお話もございましたけれども、まさしく通常の金融というようなことによる対応だけではなしに、具体的な形で、どう土地を、共同利用としての施設としてやっていくか等々、あるいは、漁協の製氷施設の整備をどうするかとかというようなことにおいての助成とか、あるいはまた、雇用対策を初めとするところの生活支援などというふうなものを幅広くやっていく必要があるんじゃないか。こういうようなことで、これから具体的な形で、二重ローン対策も含めて、しっかりとした取り組みがなされるように今後詰めていかなければならないことだと思っております。

今村委員 とにかく、拙速を旨とするという言葉もあります。しかし、そうはいっても、最終的に、全くいいかげんな融資をしても、最後はそれをだれが負担するかという問題がありますから、その辺の兼ね合いがあるとは思いますが、とにかく現場第一で、ぜひ必要なお金が早く回るように、少なくとも農協系、農林漁業系統の皆さん方には、ほか以上にしっかりその辺は面倒を見ていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、今回の改正のイメージで、いろいろな図でもってかいてもらっているのがありますが、何となくわかりにくい面もございます。そして、まだ決まっていない、いろいろな金額その他、出資の額も決まっていないようなこともあるとは思いますが、例えば出資、どのくらいの金額。あるいは、最終的には、指定支援法人が優先出資した部分等々を今度はまた貯金保険機構が一部買い取りというようなスキームにもなっているわけですけれども、金額は別にしても、少なくともこの辺の割合は大体どうするんだというようなことぐらいは決めておかなきゃいけないと思いますが、こういったことは、今後、工程的にはどういう感じで進めていかれるんでしょうか。

田名部大臣政務官 委員からの最初の質問にありましたように、現段階ではどのくらいの資金が必要になるのかということは今精査をしているわけです。

 ただ、これから資本注入を行った優先出資等について、例えば、将来仮に損失処理が必要となった場合を考えても、被災農漁協等の貸し出しの規模等を踏まえると、例えば貯金保険機構の責任準備金、これは三千億ありますし、また、JAバンク、JFバンク等の基金、合わせて一千四百億ございますので、こういったことから、政府保証は必要なく、しっかりと対応していけるものと考えております。

 さらに、今後のその仕組みでありますけれども、信用事業の強化であるとか、また経営改善にしっかりと取り組んでいただくこととなっているわけですけれども、被災農漁協等は、十年以内に、財務状況に応じて、主務大臣に対して、信用事業が改善した旨の認定であるとか、また信用事業再構築に伴い資本注入を受けた優先出資等の全部または一部を消滅させる認定のいずれかの申請をすることになっておりまして、これらの認定でありますけれども、信用事業の再構築に伴う認定を受けた際には、損失の処理に当たって、貯金保険機構の一般勘定の資金を充てることとしておりまして、こういった仕組みが、先ほど来申し上げておりますように、現場の皆さんにしっかりと理解をされて、そして使いやすいものとなるように、これからもしっかりと対応してまいりたい、そのように考えています。

今村委員 政務官、ちょっと一言言っておきますけれども、農水省のお役人もそうですけれども、三千億あるという話をされるんですよ。これは、早い話が、今回のこの法案の審議だって随分おくれたでしょう。まあ、このくらいあれば大丈夫だろうというようなことがあると思いますよ。

 しかし、そういうことでなくて、現場は大変なんだということですから、きちっと仕組みは早くつくって、そしていろいろな具体的な方針もどんどん決めてやっていく、そういうメッセージを早く強く送ることがやはり大事だと思いますので、そういった気持ちでこれからの作業をピッチを上げてぜひやっていただくようにお願いいたしまして、質問を終わります。

山田委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 久しぶりの委員会ということでございますので、また答弁の方もよろしくお願いいたしたいと思います。

 まず最初に、これは大臣にお伺いをいたしたいんですが、TPPのことであります。今回の法案と直接は関係ございませんが、昨年の九月に総理が唐突にTPPのことをおっしゃって、それ以後いろいろな議論がございましたが、そのときには、たしか、六月末に一定の検討の結論を出す、こういうことだったと思いますが、六月を過ぎまして、この間委員会が開かれるチャンスもありませんでしたので、改めてお伺いをいたしたいと思います。

 そして、私は、もう一点、総理からその話が全然出なくなったということと、それともう一点は、たしか、内閣府で平野内閣府副大臣がこの担当をなさっていたと思います。しかし、災害復興の担当になられて、今回は復興担当大臣にも任命された。ですから、実際、TPPについては、私たちは、慎重であるべきだ、どちらかといえば反対の立場でありますけれども、それはそれとして、そういう議論が聞かれなくなっているし、そのTPPの担当で熱心に取り組んでいた副大臣が別のところの大臣になった、その後のTPPのことを担当される副大臣というんでしょうか、そういう方がだれに決まったのかも寡聞にして聞いておりません。

 こういう点も含めて、鹿野大臣に、総理からこのことについて何か、六月を過ぎてしまったんですけれども、最近御指示があったかどうか、そのことをまずお聞きします。

鹿野国務大臣 今お話しのとおりに、TPPにつきましては、本年の一月の総理の施政方針演説におきまして、六月を目途に判断する、このようなことが示されたわけでございますけれども、こういう状況の中で、大震災が発生いたしました。それを受けまして、五月の十七日でございますけれども、政策推進指針というものを閣議決定いたしました。その中に、TPP協定交渉参加の判断時期については今後総合的に検討する、こういうふうなことにいたしたところでございます。

 そのような状況の中で、私どもといたしましては、TPPに関する取り扱いというものにつきましては、まず被災地の農業、漁業の復旧、復興というものの状況を踏まえて、一刻も早く復旧に向けて、復興に向けて取り組んでいかなきゃならない、そういう中で今後総合的に検討していかなければならないことだと思っております。

石田(祝)委員 さらにということでお伺いしたいんですが、ですから、延ばす、時期については六月末では必ずしもなくなった。五月にそういう決定があったと。しかし、では一体どうするのかというお話は、具体的に、鹿野大臣に、例えば、時期は六月からずれるけれども、ああしてください、こうしてください、そういう指示があったかどうかということをまずお聞きしております。

鹿野国務大臣 重ねて申し上げますけれども、五月の十七日のいわゆる政策推進指針というものに基づいて、TPPの取り扱いは総合的に今後判断していきましょう、こういうことでありますから、今後どうするか、いつの時点までにとかというようなことについては、具体的に総理から私に対する指示はございません。

石田(祝)委員 ここは、菅総理は去年就任されてからいろいろなことをおっしゃっていますけれども、一つ一つが全部、言ったら、これはパソコンでいえば上書きになっているんですね。上書きされていって、その前のものは全部消えちゃっているわけですよ。だから直近のものしかない。ですから、TPPもひょっとしたらもう、総理の頭の中、これは菅さんですから菅ピューターというんですかね、コンピューターじゃない、それの上書きされちゃって、もう消えちゃっているんじゃないでしょうか。

 これは大変大きな課題であることは間違いありません。それは賛否のいろいろな意見がありますけれども、いやしくも一国の総理がおっしゃったこと、国の将来を左右するような話だと私は思いますけれども、それについて特段の指示がおりてきていない、一体今総理の頭の中にあるのかないのか全くわからない。ですから、どんなことを総理がおっしゃっても、またいずれ何かがあったら上書きされて、それまでのものが消えちゃうんじゃないか、私、率直にそう思うんですが。

 大臣、手を挙げていらっしゃるようですから、どうぞ御答弁お願いします。

鹿野国務大臣 五月の十七日に、今後総合的に判断をしていくというふうに決めたわけでございますので、そういう中で、総理自身といたしましては、今後、復旧、復興、そういう状況の推移を見きわめておられる中でいろいろな形で考えておられるのではないかな、こういうふうに思っております。

石田(祝)委員 この問題、大臣として、内閣の一員としておっしゃっているんだろうと思いますけれども、総理が考えているかどうかなんてだれもわからないんですよ。突然言い出して、いや、突然じゃないんだ、昔から考えていたんだと。考えていたんだけれども、だれもあなたの頭の中なんかわかりませんよ、こういうことであります。これは、具体的に指示をする、言葉に出すという形でやっていただかないと、多分、鹿野大臣も大変お困りになるんじゃないだろうか、そういうふうなことをまず申し上げたいと思います。

 引き続いては、法案のことについて若干お聞きをしたいんですが、まず、今回、この再編強化法、被災農家、漁家、そういうところの再建支援に必ずこれはつながっていく、こういうことでよろしいのか、どういう形で再建支援につながっていくのか、このことをまずお聞きします。

篠原副大臣 今の法案の御質問にお答えする前に、先ほど石田委員が触れられた件です。私がTPPなり食と農林漁業再生推進本部も担当をしております。お答えさせていただきます。

 平野副大臣の後任は山口壯内閣府副大臣になっておりまして、完全に平野副大臣の仕事を引き継ぐことになっております。

 六月云々というのは、総理は、我々の、食と農林漁業再生推進本部の基本的な指針に合わせてということで、去年の十一月の指針には入っていなかったんですが、一月の施政方針演説でもって「六月を目途に、」とおっしゃったわけでございます。その後全く我々のところにも指示がおりてきておりませんけれども、少なくとも食と農林漁業再生推進本部の指針につきましては六月ということを書かれておりました、最初の指針に。それで、今、七月末を目途にそれをまとめることにしております。ですから、ここはわかりませんけれども、我々の基本的な指針とほぼ連動して判断ということが考えられるのではないかと思っております。

 それから、御質問に対するお答えでございますけれども、農業者、漁業者にきちんと融資をしていくためにはやはり農漁協がちゃんとしていないとなりませんので、そういった観点から、我々は資本増強が必要だと思っております。

石田(祝)委員 今副大臣が、私の質問にお答えになる前にTPPのことをお話しになりましたので、もう一つ確認をしますが、今山口さんとおっしゃったのは山口壯さんですか。山口壯さんも復興の担当副大臣になりましたよね。そうすると、復興担当副大臣をやりながら、TPP、これもやるんですか。それは事実上できないんじゃないですか。だから、私は、総理のやっていること、任命について、非常にその場その場でおやりになっている。

 これは、私も復興特別委員会の理事として参加をしておりますけれども、やはり、山口壯さんは中心的になって復興の基本法を、与党の代表として取りまとめに奔走されておりました。そういう人をぽんと、これから本格的に復興基本法も動かさなきゃならないというときに副大臣として引っ張っている。

 そして、さっきおっしゃったようにTPPの担当になったことを私は知りませんでしたけれども、そのことを副大臣がおっしゃったものですから申し上げたいんですが、結局、平野さんが大臣になっている、後をやると言われた山口さんも副大臣で復興だと。はっきり言って、復興担当副大臣も大臣も、二またかけてやれるような仕事じゃありませんよ。ですから、TPPについて総理の頭の中からもう完全になくなっている、私はこういうことを申し上げざるを得ないわけであります。

 これは賛成、反対があるというのを私は申し上げました。我々も慎重な姿勢、どちらかというと反対の姿勢でありますけれども、大事なことであることは間違いないんですね。ですから、池に大きな石をぶち込むのはいいんですけれども、大きな石をほうり込んでおいてその後さっさとどこかへ行っちゃうというのはよくない、こういうことを申し上げたいと思います。

 それで、二重ローン問題についてちょっとお聞きしたいんですけれども、今の内閣、農林水産省として、農家、漁家の方もたくさんいらっしゃると思いますけれども、この二重ローン問題についてどういうふうにお考えになっているのか、基本的な見解をお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 いわゆる二重ローン問題につきましては、基本的に、通常の金融というようなことによる対応だけではなしに、その他、実質的に、雇用の面も含めて、あるいはまた農業をやっていく、漁業をやっていく上におけるところの施設の整備というようなこと、そして生活支援というようなことも含めて幅広く検討する必要がある、こういうような考え方に立っておるわけでございます。

石田(祝)委員 けさの農業新聞に「復興対策で政府・与党 農業向け債権買い取り」、そこで「個人経営も対象」、こういうことで記事が載っております。今参議院に、私たち野党も、この二重ローン問題についてしっかり対策を講じるべきであるということで法案も提出をいたしておりますが、政府の方はまだこれからだということだろうと思いますけれども、農業、漁業者も対象にするという方針で進まれているのか確認をいたします。

鹿野国務大臣 そのとおりでございます。

石田(祝)委員 これはぜひお願いしたいと思います。特に、農業、漁業者の方は、いわば一人親方という形で、個人であるけれども経営者である、事業主である、こういう形になっておりますから、対象にするという言明をいただきましたので、これはよろしくお願いしたいと思います。

 それで、私は、この法案の中でちょっと気になるところがありまして、お伺いをいたします。

 まず確認をしますが、今回のこの法律で機構をつくるわけですけれども、こういうところに公的資金は入りますか。

篠原副大臣 今回の支援スキームにおきましては、資本注入の原資は、先ほど網屋議員の質問にお答えしましたけれども、民間金融機関からの借り入れにより調達することにしております。それから、損失処理を行わなくちゃならなくなるわけですけれども、その場合も、農漁協等が保険料という形で積み立てました貯金保険の一般勘定を活用することとしておりまして、公的資金は一切入らないことを想定しております。

石田(祝)委員 それで、私も法案をずっと見ておりまして、新旧対照も見ておりまして、新設のところで、附則の第二十四条でしょうか、これも関係していると思うんですが、これは私の誤解があったらいけませんけれども、申し上げたいと思いますが、ここで、震災特例勘定というふうに、一般の勘定と分けてやりますよと。これを廃止する場合、「震災特例勘定に残余があるときは、当該残余の額を国庫に納付しなければならない。」こういうふうになっているんですね。

 公的資金が全然入っておらない。貯金保険機構から、損失があったらそこで賄う。公的資金が入っていないのに、残った金があったら国に入れろというのはどういうことですか。ちょっと理解しがたいんですが。

篠原副大臣 石田委員の御指摘のとおりでございまして、基本的に民間からの借り入れである。そして、借りたお金ですから当然返さなければならない。全部返すということになりますので、残るお金はないはずなんです。

 しかし、法律をつくる場合、時限立法的な法律でこういった勘定ができた場合には同じような規定を置くこととされておりまして、我々、それに従ってこのような規定を置いた次第でございます。

 ですから、実質的には残余の金があり得ないわけでございますけれども、片方の、時限立法的なこういった勘定の場合は国庫に納付するという規定を設けるというのに従いまして、このような規定を置いた次第でございます。

石田(祝)委員 これはだれが聞いてもちょっと納得しづらい話ですよね。まあ、残らないだろう、借金が残った場合は貯金保険機構の一般勘定から損失の穴埋めをする、そして、万々が一、残らないだろうけれども、残ったら国に入れろ、公的資金は一円も入れていませんよと。これは、残ったら、それぞれ出資した人とかが、案分、比率に応じて受け取るというのが普通じゃないですかね。

 これはいかにも、そういうたてつけになっておりますよ、今までもそうでしたよ、こういうことですけれども、今までの例で、公的資金が全く入らずに、損が出た場合はその中でちゃんとやりなさいよ、しかしお金が余ったら国に入れてよ、こういうことが、今副大臣は今までもそういうことになっていると、例えば一つか二つ、例を言ってください。

篠原副大臣 まことに済みませんけれども、前例は私は承知しておりません。

石田(祝)委員 副大臣が承知していないということと、ないということとはイコールじゃないでしょうから、これはどうなんでしょうか、与党の皆さん、こういう、一般勘定で、損失は自分たちでやれよ、残ったら国に入れよ、公的資金は一円も出さないよ、これはなかなか理解されがたい法案のつくりになっているんじゃないでしょうか。

 大臣、いかがですか。ちょっと、御感想というか、農林水産委員会で大臣にしか最後聞くところがありませんから、これはどうなのかということ、率直なところをお聞かせください。

鹿野国務大臣 副大臣が言ったとおり、こういうことでございます。

石田(祝)委員 私も、きのう帰って勉強し直して、こういう、附則で入っている、新設という形で入っているわけですから、この条項というのは今までなかったわけですね。一体これはどういうことかなと。ですから朝の時点で御連絡になりましたけれども、これは一度お聞きをしておかないといけない、こういうことでお聞きをいたしました。

 どうもはっきりしないわけですね、このところが。私たちもこの法案に賛成する予定でありますけれども、ちょっと今の答弁は非常に不透明な、不透明というか不確かな答弁である、こう言わざるを得ないと私は思います。

 ですから、ここのところはもうちょっと、私が申し上げた点も含めて、再度どこかで御説明をなさる機会をぜひ設けた方がいいというふうに思いますが、いかがですか。

鹿野国務大臣 今後、機会を見まして、御説明をさせていただきたいと思います。

石田(祝)委員 では、これ以上は申し上げません。

 それで、私も、米の先物取引市場の試験上場問題について少々お伺いをいたしたいというふうに思います。

 今回の、これは最後は行政判断という形になって大臣が認可をされたと思いますが、大臣、この問題、先物の試験上場について、これは農家とかそういう方々にメリットがあるんでしょうか。

鹿野国務大臣 メリットがあるかどうかというふうなことは、やはり実質的に、試験的に上場されて、その推移、経緯を見てみなければなかなか判断しにくい面もあるんではないかと思っております。

石田(祝)委員 大臣、いろいろなことをやるときに、私、三つあると思うんですよ。一つはやった方がいいこと、一つはやってもやらなくてもいいこと、もう一つはやってはいけないこと。ですから、行政がそういうところに踏み込む場合は、これはどうしてもやらなきゃいけない、こういうところ以外、やってもやらなくてもいいよ、わからないよ、そういうところの判断は差し控えるべきじゃないかというふうに私は正直思います。

 ですから、二年間やってみなきゃわからないというのが今大臣のお答えのように思いましたけれども、それはいささか責任放棄のような感じもいたしますけれども、これを最終判断したのは大臣ですよね。やってみなきゃわからないようなことでは、私は、行政の責任者としていかがかと。これはどうしても必要である、必要だと私は信じる、こういうことであれば、農政の最高責任者としての御判断、これは尊重しなきゃならないと思いますけれども、どうもそんな感じも受けませんが、大臣、どうですか。

鹿野国務大臣 メリットというものはどうなのか、こういうようなことでございましたから、今の時点で明確に、どういうふうなことになっていくかは、まさしく、先ほども申し上げましたけれども、七十年以上ぶりのことでございますから、なかなか判断しにくい面があるわけでございますけれども、いわば、一つの考え方としては、米の価格形成というものの透明性というものが高まっていくというふうなことは一つあるんではないか。そういう意味で、生産者や、あるいは流通業者の方々に対して取引の目安となる客観的な価格を提供する、こういうふうなことも考えられるんではないかなと思っております。

 ただ、果たしてそれも、具体的な形で試験上場の推移というものを見る中で、どういう状況になっていくかというふうなことから判断されるところもあるんではないかなと思っておるところでございます。

石田(祝)委員 今回のこの試験上場の申請、時系列でいうと、たしか三月の八日に出されて、その後、東日本大震災が起きた。そして、縦覧期間を経て、大臣、たしか七月の二十五日までに判断をすればいい、こういうことだったと思いますが、それを七月の一日ですか、認可の御判断をなさった。ですから、その時点からいえば、あと二十数日間、もうちょっと議論をする時間があったのじゃないか。

 これは、報道等で拝見しますと、与党もなかなか議論が十二分に尽くされたとは言えない、こういうことだったろうと思います。私たちも、まことに申しわけないのでありますけれども、復興対応ということでそちらに全力投球をして、試験上場についてやはりその議論が十二分にできなかった、そういうそしりを私は甘んじて受けなきゃいけないと思います。

 大臣、なぜ、二十五日までに判断すればいいのに、突然七月一日、早い時期になさったのか。もうちょっと、議論が必要であれば、与党、野党ともにまだ三週間ほど議論できる時間があったわけですから、ちょっとその点は私は理解しがたいんですが、なぜそんなに早くなさったのか、お聞かせいただきたいと思います。

鹿野国務大臣 この点につきましては、今経緯につきまして石田先生からお話しのとおりに、三月八日に申請がありまして、三月の二十五日に官報に公示して、六月の二十五日までの三カ月間は周知期間であった、こういうふうなことであります。そして、六月二十五日の縦覧期間が終了する、その後に、一カ月の間で認可がどうであるかというようなことの決定がなされないというようなことでありますならば自動的に認可されるということもございます。また同時に、一方においては非常に関係者の関心も高い。こういうようなことも含めて、縦覧期間が終了後においてできるだけ早い段階で方針を決定した方がよろしいんではないかな、こんな思いの中で私自身判断したところでございます。

石田(祝)委員 早く決めた方がいいと思ったからやったとおっしゃいましたよね。

 今回、よく見ていただいたら、例えば東北の震災の状況、私も何度か行きまして、大臣も行かれたと思いますが、名取市の閖上とかああいう地域は、本当に、そこで農業がこれからできるのか、農地として使えるのか。潮をかぶっている、そして地面が下がっている、潮が満ちてきたらまた水浸しになっている、海水ですね。そういう地域を一体どうするのか、そして東北の米づくりはどうなるか。

 こういう中で、縦覧期間が終わりました、早速では判断しましょうって、それは、大臣、自分が必要だと思ったからやったというのは、それはそのとおりでしょう。しかし、必要だと思う根拠は一体何ですか。大臣だって東北の御出身じゃないですか。

 この中で、もうちょっと議論をしなきゃいけない、ことしの米づくりはどうなるんだろうかとか、例えば去年の戸別所得補償はどうだったか、ことし本格実施するときに対してどうなのか、もっともっと議論することがたくさんあるじゃないですか。これは、私たち、与党、野党を含めて議論が足りないと同時に、農林水産省でどれだけ議論をされたのか。前回のときに、これは中川大臣のときでありますけれども、やはり同じように申請があって、今回と比べるとさらにもうちょっと議論をなさって、その上での判断だというふうに私は正直思いますよ。

 ですから、その判断自身は行政処分として大臣がなさった、これはもう終わったことでありますけれども、やはり、その間議論する時間がなかった、このことについて、なぜそんなに早く判断をしなきゃならなかったのか、これはいまだに疑問であります。ですから、大臣が自分がそう思ったというだけでは、これは納得する人はいないでしょう。どうしてそんなに早くしなくちゃいけなかったのか、もう一度御答弁ください。

鹿野国務大臣 いろいろ御意見を伺う中で、今石田先生からのようなお話もございました。そういう中で、私自身も、どういう判断をするかということも含めて検討したところでございます。

 今回の大震災で被災を受けている方々の気持ちというふうなものにおきましては、当然、私どもは忘れてはならない、そして一刻も早く復旧、復興に向けて取り組んでいかなきゃならない。

 しかし、そういう中で、今回のこの申請に対してだめだと言うことが、本当に、そういう考え方に立つことがなかなか難しいというようなことの判断が私自身もあったものですから、そういうことでありますならば、関心の高いことも含めて、ある程度、この縦覧期間は、期限というものが六月の二十五日でございましたので、そういう中で私どもの判断を示した方がよろしいのではないか、こういうような考え方に立ったところでございます。

石田(祝)委員 これは、大臣、申請された方は当然手続の時間がわかっているわけですね、三月八日に申請をしたら、縦覧期間が三カ月間あって、その後の判断が、やると七月二十五日がおしりの、最後のところだと。これは三月八日に出した時点でわかっているわけです。それは、ことしの米の問題で参加をしたいとなったときには本来もうちょっと早目に出しておけばいい話であって、七月二十五日まで待たずに大臣が判断をなさったというのは、今の御説明では、これはなかなか私も納得できないし、農家の方も、なぜかなと。

 最後の判断はイエスかノーしかありませんので、それはそれで大臣が判断なさればいいことでありますけれども、それまでに、どうしてそんなに、時間があるのに早くしなくちゃいけなかったのかというのは、これは全く今の御答弁でもよくわからない、こういうことだろうと私は思います。この問題は大変大事な問題です。

 それで、もう一点お聞きしたいのは、何回か御説明を聞くと、先物というのはリスクヘッジになるんだ、こういう言葉が農林水産省の御説明ではあるんですね。これは、リスクヘッジということは、先物で、先物と現物が当然あるわけですから、決済するときに、現物で決済するのか差額を払うのか、いろいろやり方はあると思うんですけれども、お米、また農林水産物、作物は、将来下がりそうだから植えた米を引き抜いちゃいましょうかとか、今から植えましょうかとかいうことはできないわけですね。基本的に、生産量を調整できるものじゃないんですよ。

 例えば石油だとかいろいろなものは、将来幾らだというリスクヘッジのためにやっておいて、それを見て生産量を調整する、これは可能ですよ。しかし、お米を、一年一作、植えた後どうしようもないじゃないですか。そして、六月までには生産数量目標に入るかどうか、戸別所得に入るかどうかも決めなきゃならない。それからお米を新たに植えられますか。そういうことはできないでしょう。そして、主食用米としてやったものを、では飼料用に変えましょうか、飼料用のものを主食用に変えましょうか、これはできないじゃないですか。そういうふうに、将来の値段を見て、リスクヘッジという意味で調整できないんですよ。そういうものを大臣がこんなに早く御判断なさったというのは、やはり私は理解できません。

 ですから、これは本当の意味で、ただ先物市場だからリスクヘッジだということじゃ私はないと。先物市場の、その品物自体がどういうものであるかということで大きく違うわけです。ですから、ここのところ、リスクヘッジだ、リスクヘッジだという説明をあちこちで農林水産省はしていますけれども、本当にそれはそうなのかということを一度考えていただきたいと思うんですよ。

 農家はリスクヘッジできませんよ、はっきり言って。植えたら、私の高知県なんか、早く、もう三月に田植えをしていますよ。そんなところができますか。これがことしから新しくできた、三月八日から申請して、大臣が七月一日に認可した。もう対応は終わっていますよ、とっくに。これから実りを迎えるわけですけれども、ここのところがよくわからない。

 ですから、一つだけ最後にお聞きしますけれども、リスクヘッジという考え方でずっといかれるのかどうなのか、これがリスクヘッジになっているのかどうか。米という作物の、一年一作ということを考えていただいてどうなのか、この点をお答えいただきたいと思います。

篠原副大臣 石田委員の御指摘のとおり、一年一作しかできない米、ほかの農作物も、石油等と違うというのは御指摘のとおりでございます。

 ですから、米というのは主食でありますし、重要ですので、需給ギャップというのは違った形で埋めて、そして農業生産者の経営の安定に資していかなければならないんじゃないかと思っております。ですから、戸別所得補償制度に参加するかどうか、需給調整に参加して戸別所得補償に参加するかどうかというのも一つの手法だと思います。

 しかし、それに加えて、農業者戸別所得補償というのは国がセットしてそこに参加するから、どちらかというと受け身でございますけれども、先物取引については農家みずからが判断して、リスクヘッジという言葉が行き過ぎているという御指摘、私もその点はうなずけるところがございますけれども、リスクを軽減するということには少なくとも役立つのではないかと思っております。

 こういった、国が設定する、国がリードするような需給調整と、農家みずからがリスク軽減を図るということ、これが両立してうまくいってくれればいいなと私は少なくとも考えております。

    〔委員長退席、津島委員長代理着席〕

石田(祝)委員 副大臣に御答弁いただきましたけれども、そうすると、戸別所得補償というのは一体何なんですか。これはもともと、要するに生産費と販売の価格が逆転しているものを、農家の経営を安定させよう、そういうことで入れたんでしょう。そうしたら、戸別所得補償はもうやめちゃうんですか。戸別所得補償をやって、メリット措置だ、生産費が販売価格を上回っているようなところを、基礎的な部分の、一反当たり、十アール当たり一万五千円、そして、相対価格の平均を三月までとって変動交付金も出すんだ、そして農家の経営を安定させるんだ、こういう仕組みを入れたわけでしょう。

 何で、さらにそれに加えて、農家の判断で云々と。だって、戸別所得補償に入るかどうかは農家の判断じゃないですか。そこで農家は自律的に判断している。

 そういうものをやろうということで、何千億もかけてやっているわけでしょう。それをやっておいて、そこのところの、私は前から言っているように、戸別所得補償のモデル対策は一体どうだったのか、その検証もやってもらいたいと今まで言ってきましたけれども、検証がどうだったかという説明も私は聞いたことがありません。ことしから本格実施だ、本格実施をやるときに、またあわせて先物の試験上場だと。わけがわかりませんよ。

 一体、戸別所得補償をどうしていくのか、農家の経営をどうするのかということを、私は、もうちょっとこれは考えていただかないと、今回のことはちょっとこれはフライングじゃないのか、勇み足じゃないのか。少なくても、七月一日という、三週間以上も前に判断をなさったということは、私は、これはまずかった。

 判断の是非は言いませんよ、これは大臣の御判断です。しかし、もうちょっと意見を聞いて、国会のこういう場でも議論をした後でやらないと、三月に震災が起きて、それ以降、震災対策だ、東北の米はどうなるんだ、そういうことでみんな一生懸命やっていて、実際、委員会も六月の頭から開かれていなかったじゃないですか。そういう中でぽんとやられたというのは、いささか私は鹿野大臣としてはどうかな、大臣としてこれはちょっと拙速だったんじゃないか、このことだけは申し上げたいと思います。

 この試験上場については、さらにまた機会をいただいて議論をさせていただきたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、基準値を超えるセシウムが検出された牛肉、これは消費されていた、もう既に食べられていた、こういうことでありますけれども、この問題についてどういう状況になっているのかということと、それから全頭検査、これについてなさるということもお聞きをしておりますけれども、この二点、厚生労働省も来ていただいておりますから、まず厚生労働省からお聞きをして、その後農林水産省から御答弁をいただきたいと思います。

梅田政府参考人 暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された牛肉が流通、消費された件についてでございますが、現在、計画的避難区域等から出荷される牛につきましては、農林水産省の通知に基づきまして、福島県の職員が、河川水、牧草等を給与していないかなど飼養管理の状況を確認した上で出荷を認めているところでございます。

 厚生労働省としましては、本年四月より、農林水産省を通じて入手したこれらの出荷情報というのを出荷先の自治体に提供いたしまして、モニタリング検査の実施を要請してきております。

 七月八日以降、福島県南相馬市の緊急時避難準備区域の特定の農家から出荷された牛十一頭から、暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されました。さらに、七月八日以前に当該農家から出荷され食肉として流通された六頭の牛についても暫定規制値を超える放射性セシウムが検出されたことが確認されまして、昨日までに流通、消費状況の調査がおおむね終了したところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今回の事例を踏まえまして、福島県及び隣接県に対しまして、牛肉のモニタリング検査を強化するよう要請するとともに、流通した牛肉の検査の実施に協力してきたところでございます。

 また、福島県におきましては、南相馬市の牛の移動及び出荷を自粛し、緊急時避難準備区域の肉用牛農家の再点検を実施しておるところでございます。その検査につきましてですが、現在、牛肉につきましては百二十件、モニタリング検査を実施しておりますが、暫定規制値を超過した事案は当該農家から出荷された牛肉のみでございます。

 しかしながら、福島県より、緊急時避難準備区域及び計画的避難区域から出荷される牛の肉の全頭検査実施の強い要請もあるところでございます。厚生労働省といたしましては、農林水産省及び福島県と急遽検討を行っているところでございます。

    〔津島委員長代理退席、委員長着席〕

鹿野国務大臣 今厚生労働省の方からお話がございましたけれども、今回の、南相馬市から出荷された牛の肉から暫定値を超える放射性セシウムが検出された、こういう事例を踏まえて、福島県は、飼養管理状況の徹底的な再点検を行う、また、計画的避難区域及び緊急時避難準備区域についてはすべての肉用牛の出荷の際に全頭の検査を実施したい、こういうふうな意向を示したところでございます。

 これを受けまして、農林水産省は、このような考え方を支援していかなきゃならない、このようなことから、担当官を現地に派遣するなどいたしまして、とにかく、今後、福島県、厚生労働省と、検査体制の具体化を検討しておるところでございます。

 このようなことで、今後、食肉の安全と消費者の信頼確保にできるだけの努力をしていかなきゃならないと思っておるところでございます。

石田(祝)委員 大臣、ちょっとお聞きしますけれども、やはり、そういう検査体制をやりますよと。現実に、きょうの新聞を見たら、当該の県の牛肉の価格が半分になっちゃっている、こういう記事も載っておりました。これは一体だれが金を見るんですか。とりあえず国が出すんでしょうか、それとも、東電に最終的にはもらうのか。ここのところ、お金の問題はどうなるんですか。

鹿野国務大臣 今回の件につきましては、原子力発電所の事故と相当因果関係のある風評被害については賠償の対象となるほか、全国的な肉用牛の枝肉価格の低下につきましては、肉用牛の肥育経営安定特別対策事業等によりまして適切に対処してまいりたいと思っております。

石田(祝)委員 もう終わりますけれども、大臣が御答弁いただいたように、風評被害も対象になる、こういう御答弁でございましたので、実際の被害と風評被害も対象だ、こういうことで、これはしっかりとお願いをいたしたいと思います。

 もう一点、きょう、地域農業水利施設ストックマネジメント事業の面積要件の緩和ということをお聞きしたいと思っておりましたが、時間がなくなりましたので、中山間地はこの面積要件の緩和、こういうことも望んでいる、このことだけを申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

山田委員長 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。

 今、強化法案が提出をされてから一カ月以上、そして震災が発生をしてから四カ月たったわけでございます。この法案が早く成立しないと、信用不安等々含めて、信用事業、そのことに大きな影響がある、こういう説明も事務方から受けてきたところでもございます。

 そういう現状の中で、それぞれ、農協さらには漁協の方の信用事業が、今四カ月たってどういう変わり方になっているのか、まず冒頭お伺いいたします。

田名部大臣政務官 被災地の農協、漁協でありますけれども、今回の大震災によってみずからも大きな被害を受けている。また、組合員、利用者、こういった方々も被害を受けています。そういった中で、貸出債権の保全状況等の確認が非常に困難な状況にございます。

 農林水産省といたしましては、そういう状況、実態も踏まえて、平成二十二年度の決算については、被災地において、貸出先の実態把握が困難な場合には、被害前に把握している情報に基づいて査定を行う等の特例措置を講じているところでございます。

 被災三県における農協の貸し出しでございますけれども、約七千五百億、そして漁協等の貸し出しは約二百億円でございますけれども、また今後、財務状況の精査のため確認作業を進めていかなければいけませんので、この作業についても農林水産省としてもしっかりとフォローしてまいりたいと考えているところでございます。

吉泉委員 被災地の状況、なかなか難しいという状況で今お話あったわけですけれども、一番心配したのが、それぞれ預金の引き出し、このところを非常に私ども心配をしているわけでございます。その辺についての今の状況は、答弁でわからなかったわけでございます。

 自分自身、そういう一つの、金融機関の資本を増強して、そして信用不安が起きないようにする、これはやはり原則なんだろうというふうに思っておりますけれども、しかし、個々の金融機関の資本そのものを強化していく、そういう状況であっても、一番お客様である生産者、このところがやはり今再建をしていく、そういう決意がない限り、金融機関を増強する、そういう意味はなかなか適当でもないなというふうに思ってもおります。

 きのう、実は、青少年特別委員会の視察の中で、埼玉県の騎西高校で避難生活をしている双葉町の方々と、個別に、自分自身としては三名の方とお話をさせていただきました。二人の方は農家、もう一人は漁協、いわゆる漁師さんでございました。どうする、そういう意味の中で、いろいろな質問も受けたわけですけれども、なかなか答えられない、こういう自分の歯がゆさ、こういうふうなことについて大変申しわけなかったなというふうにも思っております。

 とりわけ、今、被災者、農家なりさらには漁師さんの方は、それぞれ多くの負債を抱えているわけでございます。その担保というものについて、農地であったり、さらには船であったり、いろいろなものが担保物件としてそれぞれ押さえられているわけでございます。しかし、その担保物件をすべて今天災、津波でなくした、そういう状況の中で、担保物件がない、ゼロに等しい、そういうふうになったときに、それぞれ農協さんはどうしていくのか、こういうものがあるというふうに思っています。

 これは二重債務の問題との関連なんかもあるわけですけれども、やはりそのときに、親子で農業をやっているときに、担保物件として、その部分がなくなって、そして二千万借金をしている、そしてそれからもう一つ二千万借金をしてもう一回再開をする、そういうふうな部分になったときに、おやじさんよ、どうするんだというふうに息子さんから言われる問題が多くあるというふうに私は思っています。

 そういう状況のときに、今回のこの強化法案と含めて、農協さん、金融機関の強化、それとあわせながら、それぞれ被災者の生産者、このところをどうしていくのか、このところがセットでないと、なかなか、もう一度漁師さん、さらには農家の方に戻るという気持ちが非常に薄くなっていく、そういうふうに思います。

 ですから、その辺についてはどういうふうに押さえているのか、そして、今現在の段階で、それぞれ被災者における漁師さんそれから農家の人たちの負債の状況、そしてまた、頑張れる、そういう一つの意識調査とか、そういうものを押さえているのかどうか含めて、もう一度答弁をお願いいたします。

鹿野国務大臣 農漁協等への資本の増強というものは、農業者なりあるいは漁業者に対する返済猶予、条件緩和あるいは新規融資等の金融支援ということでございまして、御指摘のいわゆる二重債務問題の解決にも必要である、このようなことでございます。地域の復興のための環境整備、こういうふうな考え方に立っておるわけでございます。

 今後、二重ローンの問題につきましても当然引き続いて取り組みをしていかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。

吉泉委員 私は、二重債務の問題、それは当然あるわけですけれども、それ以上に、今の段階でも、もう完全に担保物件で出している部分が資産価値がなくなっているというふうな部分になれば、何らかの対応を早急にやっていかないと、もう対応が、やはり続けていくというふうにはならぬだろうというふうに思っていますので、その辺のいち早い一つのメッセージというものをお願いしたい、こういうふうに思います。

 それと同時に、漁師さんの関係について、災害特区のところで、大臣の方から、いわゆる特区の構想について、漁業権の問題、このことについて答弁がなされたわけでございます。その答弁を聞いても、今漁連の方からも意見が出されてきているわけでございますけれども、浜を守っていく、そういう立場でずっとやってきた、そういう漁師からいえば、同じ浜に同じ漁師が、漁協と、そしてもう一つ、法人、そういう面で二つの管理団体ができてくるというふうなことから見れば、やはり争いのもとになっていく、こういうのが目に見える。

 そういう面からいえば、これからの災害の復旧、復興に向けて、漁村を守っていく、さらには水産業を大きく発展させていく、その手法というのはいろいろな部分はそれぞれあるんだろうというふうに思っておりますけれども、その辺について、今の特区問題について再度大臣の方にお伺いをさせていただきます。

鹿野国務大臣 六月の二十五日に、復興構想会議からの提言におきまして、いわゆる被災地の「漁業の再生には、漁業者が主体的に民間企業と連携し、民間の資金と知恵を活用することも有効」との観点から、特区手法の活用というものが提案をされました。

 こうした特区の考え方というふうなものをどう活用していくかということにつきましては、今吉泉先生から御指摘のとおり、地元の漁業者などから、漁場の利用に当たって混乱が生じてくるんではないか、そういう懸念の声も示されていることでございます。

 農林水産省といたしましては、今後、提言の内容の具体化というものを図っていくというようなことになったときには、地域ごとの漁業の特性などというものもやはり踏まえるとともに、地元のさまざまな意見等を伺い、県や漁業者とも話し合いをしながら、本当に被災地の復興に資するものになり得るように努めていかなければならない、このように考えておるところでございます。

吉泉委員 まず一つ、知事の方の権限の付与の問題ですけれども、ぜひ大臣としての御指導も含めて、よろしくお願いをしたいなというふうに思います。

 それと同時に、漁師さんが一番心配しているのが海の問題でございます。きょうのテレビの方にも出ましたけれども、汚水処理のところで水が漏れているというふうなことで、なかなか機能が予定どおりいかない、こういうふうな報道がなされると、その水というものが、もう完全に汚水が海にも流れ出ているんではないかな、そういう錯覚も全体的に受けとめるわけでございます。

 これまで、十一、十二以降の状況から約四カ月になってきて、そして海に放水をした汚染水もあるわけでございますし、さらには漏れ出した、そういうものもあります、それから空から降ってきて海が汚染されている、そういう状況もあるんだろうというふうに私は思っておりますけれども、現状の中において、今のこの汚水処理、こういった部分と海の関係について、今、漁師に対して、メッセージというものについてお願いを申し上げたいというふうに思います。現状です、汚水処理の状況についてどうなっているのか。

櫻田政府参考人 東京電力福島第一原子力発電所における汚染水の現状、そういうお尋ねだというふうに理解してございますが、この発電所におきましては、タービン建屋の地下に高濃度の汚染水が今滞留してございますが、これらにつきましては、集中廃棄物処理建屋というところに移送して適切に管理をしているという状況でございます。また、この滞留水の水位が地下水の水位よりも高くならないように管理をするということをやる。

 それから、建屋の周辺の中に、地下水をくみ上げる井戸、これはサブドレーンと申しますが、そういうものがございまして、その中の水の放射能濃度を測定してございますが、特に大きな変動がないということから、現段階におきましては、タービン建屋等から土壌や地下水への漏えい、こういったものはないものというふうに評価をしてございます。

 それから、六月十七日からでございますが、高濃度の汚染水を処理して、これを原子炉の冷却に使用するという循環注水冷却というのが稼働してございまして、新たな汚染水の発生を防止するという状況にございます。

 加えまして、これらの高濃度の汚染水が環境に流れ出すことがないように、トレンチの立て坑を閉鎖するでありますとか、シルトフェンスといいまして、海の中にカーテン状の遮へい壁を設置する、こういった措置も講じているところでございます。

 それから、海洋のモニタリングでございますけれども、これも文部科学省と東京電力によって約百地点で随時行われておりまして、最近の測定値を見ますと、ほぼ検出限界以下という状況でございます。

 今後も引き続き、汚染水の漏えいや流出が生じることがないように適切に対応してまいるという状況でございます。

 以上でございます。

吉泉委員 お話を聞きますと、ちょっと聞こえなかったわけですけれども、これから処理をしなければならないのが、約十二万トンこれがある、この処理に向かって、五百四十億をかけて、それぞれ今設備をしながらやっているんだけれども、なかなか七〇%台の処理の状況なんだ、やはりもっともっと日数がかかる、こういう状況であるわけです。今、地下水には漏れていない、さらには海にももう出さないようになっているというふうな状況であるわけですけれども、二十キロ圏内、二十キロ以上ということの中で、それぞれ文科省と東電とモニタリングをきちっとやっているというふうなお話でございます。

 やはり海を汚さない、そういう立場で、私方も、その辺について慎重に監視もしながら、漁師を守っていくという立場で頑張らせていただきたい、そういうふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 あと時間がなくなりました。先物の点について私も触れさせていただきます。

 なじまないというふうに思っています。毎日毎日食べる米です。主食です。これが、毎日毎日の空売り市場、先物というのは空売りですから、これに一喜一憂をしながら、それぞれ、生産者なりさらには投資家たちはこの先物市場の動向を見ていくわけでございます。そういう中において、日本の主食である米が、世界の投資家、こういう人たちの先物の対象として本当にいいのか、こういうふうに私は言いたいんです。

 これまで、主食である米を安全に、そして需給バランスをうまくやりながら、国として責任をそれぞれ持ってきた。こういうところを、これから先物、その部分にゆだねていくということから見れば、やはり私は大きな問題があるというふうに思っております。消費者に対する影響、生産者に対する影響、これはやってみなきゃわからない、こういう言い方に今聞こえるわけでございますけれども、私はそうではないだろうというふうに思っています。

 石田先生の方からも出されました。やはり国として米をどういうふうに位置づけて守りながら、そして生産者、消費者というものについてどういうふうに国として関与していくのか、この責任というものをやはりしっかり打ち出していかないと、ただ単に米の価格の部分について競争性があるかどうかとか、いろいろな部分で、これを試験的に今やっていくということについてはなじまないんだろうなというふうに私は思っています。

 この点について、これから二年間、試験というふうなことになるわけでございますけれども、やはり国としての米に対する責任、この問題も含めて、この許可をした理由、そのことについてお伺いして、質問を終わらせていただきます。

鹿野国務大臣 先ほど来から、米の先物市場に対する認可の件につきましていろいろ御指摘がございました。

 今回、この認可基準というふうなものを考えたときに、これはだめですと言うことはなかなか困難である、このようなことから私自身判断したところでございまして、今いろいろと委員から御指摘の点につきましては、この二年間しっかりと検証いたしまして、いろいろなことで問題があるとするならば、その時点で措置を講じてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

吉泉委員 はい、わかりました。

 ただ、生産者から見れば、有機農業とかいろいろな部分で、安心、安全、ここのところに非常に力を入れて頑張っている、そういったところの気持ち、そういうものも含めて、ぜひ、先物市場というふうなことについてこの二年間考えていただきながら、最終的に本上場をやるかやらないかということについては、この委員会の中でしっかり議論もさせていただきたい、こういうふうに思います。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山田委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

山田委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、仲野博子君外三名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。仲野博子君。

仲野委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 それでは、案文を朗読いたします。

    農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  東日本大震災により我が国の農林水産業は過去に例のない甚大な被害を受けた。一日も早い復興に向け全力を尽くすべきである。こうした中、今後の復興を図るには、農漁協系統の金融機能の維持・強化を図るとともに、農業者、漁業者の経営再開・再建への的確な支援を全力で行うことが喫緊の課題である。

  よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に努めるべきである。

      記

 一 改正法の運用に当たっては、指定支援法人及び農水産業協同組合貯金保険機構の緊密な連携と適切な役割分担の下、被災農業者・漁業者の経営・生活の円滑な再建に資することを旨として実施すること。

 二 東日本大震災で被災した農林漁業者等における二重債務の問題については、被災者の経営・生活の再建に資するよう、国として、必要な対応を実施すること。

 三 被災地域の復興の重要な担い手である農業協同組合、漁業協同組合等については、自ら被災している場合もあることから、地域の復興計画に則した共同利用施設等の復興支援に万全を期すること。

 四 本法の改正は、公的資金の注入によらず被災地域の農漁協系統の金融機能の維持・強化を図るものであるが、農漁協系統組織はその構成員のための組織であるという原点を踏まえ、貸出し等の金融業務の実施に当たってはあらゆる面で公平・公正かつ円滑な資金の融通に支障がないよう適正に行うこと。

   政府は、このことについて、実態把握に努め、必要に応じ具体的な措置をとること。

  右決議する。

 以上の附帯決議案の内容につきましては、質疑の過程等を通じて御承知のところと存じますので、説明は省略をさせていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

 以上でございます。

山田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山田委員長 起立総員。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣鹿野道彦君。

鹿野国務大臣 ただいまは法案を可決いただきましてまことにありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、関係省庁とも連携を図りつつ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

山田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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