衆議院

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第17号 平成23年7月27日(水曜日)

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平成二十三年七月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山田 正彦君

   理事 梶原 康弘君 理事 佐々木隆博君

   理事 津島 恭一君 理事 仲野 博子君

   理事 柳田 和己君 理事 谷  公一君

   理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君

      網屋 信介君    石田 三示君

      石原洋三郎君    石山 敬貴君

      今井 雅人君    大串 博志君

      加藤  学君    木内 孝胤君

      黒田  雄君    近藤 和也君

      篠原  孝君    田名部匡代君

      高橋 英行君    玉木雄一郎君

      筒井 信隆君    道休誠一郎君

      中野渡詔子君    野田 国義君

      水野 智彦君    山岡 達丸君

      伊東 良孝君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      金子 恭之君    北村 誠吾君

      菅原 一秀君    谷川 弥一君

      保利 耕輔君    山本  拓君

      江田 康幸君    吉泉 秀男君

      石川 知裕君   松木けんこう君

    …………………………………

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   文部科学大臣政務官    林 久美子君

   農林水産大臣政務官    田名部匡代君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   政府参考人

   (内閣官房原子力発電所事故による経済被害対応室審議官)          加藤 善一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 長谷川彰一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房政策評価審議官)       田中  敏君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       梅田  勝君

   政府参考人

   (水産庁長官)      佐藤 正典君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      横尾 英博君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 関 荘一郎君

   農林水産委員会専門員   雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十七日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     水野 智彦君

  吉田 公一君     木内 孝胤君

  江藤  拓君     菅原 一秀君

  山本  拓君     金子 恭之君

  西  博義君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  木内 孝胤君     吉田 公一君

  水野 智彦君     黒田  雄君

  金子 恭之君     山本  拓君

  菅原 一秀君     江藤  拓君

  江田 康幸君     西  博義君

同日

 辞任         補欠選任

  黒田  雄君     金子 健一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件

 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

山田委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として水産庁長官佐藤正典君、内閣官房原子力発電所事故による経済被害対応室審議官加藤善一君、内閣府大臣官房審議官長谷川彰一君、文部科学省大臣官房政策評価審議官田中敏君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長梅田勝君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長横尾英博君及び環境省大臣官房審議官関荘一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江藤拓君。

江藤委員 自由民主党の江藤拓でございます。

 大臣におかれましては、先日行われました予算委員会、総理は聞いているのか聞いていないのかわかりませんでしたが、大臣は、極めてまじめに、率直に、私の目を見て答弁をしてくださいまして、非常にその姿勢に感謝をいたしております。まず、感謝を申し上げたいと思います。

 きょうは一般質疑ということでありましたので、聞きたいことが実は山ほどありまして、楽しみにしておったんですけれども、例えば戸別所得補償の問題です。ナラシが残っていますね、それで戸別所得補償ですね。現場は混乱しているんですよ、両方もらったという人もいれば、どっちを選んでいいかわからぬ人。これも聞きたいなと思っていました。

 それから、強い農業づくり交付金。これも、二百四十四億円だったのが三十一億円に減った。地方の裁量権、自主権を発揮させるのがこの政策の目的だったですね。これがここまで減ったというのはおかしいじゃないか。これもまたいずれ聞きます。

 そしてまた、鳥獣保護改正法案。我が党が出しておりますが、この政府の見解を求めたかった。

 それから四番目には、この震災を受けて、取りやすいところから、またたばこ増税というような、お酒の話も含めて出てきていますね。そのことについての御見解。

 それから、TPPへの御見解。

 そして、先物。二回にわたりまして我々は反対の要請を部会長といたしましたけれども、結局は、民主党内でも随分異論があったと聞いておりますが、試験上場を認めてしまった。それと、その経緯。

 そしてまた、備蓄米が百万トン割れをするという、その見込みの甘さ、そのことについてもお聞きをしたい。

 それから、畜産関係でいうと、配合飼料価格安定制度。皆さん方御存じのとおり、ことしの十二月になったら、もう完全にこれは枯渇ですよ、枯渇。高値で安定したら、全く補給金が出ない。これじゃ全く畜産農家は成り立っていかない。これはやり直さなければいけません。このことについても議論をしたいと思っておりました。

 それから、新マル緊の新たな算定ですね。これについては後でまたちょっと触れます。

 水産関係では、最初の、就任当時の大臣所信、そこでは、漁業所得補償制度、戸別の所得補償制度を設けるということを高らかにおっしゃいました。しかし、二回目の大臣所信では、まあ、良心が働いたんでしょう、それが漁業所得制度から漁業所得対策と。対策と名称を改めましたですね。これは私は大変正直な対応だったと思います。このことについては評価をさせていただきたいと思います。やはり漁民に誤解を与えるような言葉の使い方をしちゃまずいですよ。

 九番目には、森林・林業再生プラン。これは、集約化とか搬出間伐とか、面的な要件というのがいろいろついていますね。先週も宮崎の方で、二時間半ほど、林業家の方々、若手と意見交換会をしましたけれども、聞きたいことは山ほどあります。これで一時間半ぐらいかかっちゃいますので、また改めてやらせていただきたいと思います。

 しかし、それに入る前に、きょうはセシウムの問題をやらせていただくわけでありますけれども、二点だけ先に答弁を求めておきたいことがありますので、よろしくお願いします。

 七月の十四日の鹿児島の新聞、南日本新聞に、家畜伝染病予防法の改正に基づく口蹄疫防疫指針の見直しの中で、ワクチン接種後に未感染が確認されれば食用に供することも検討するという記事が載りました、新聞にです。プレス発表であって、パブリックコメントではありません。そのことは承知をしております。

 昨年、補償内容を示さずに、宮崎じゃワクチン接種を受け入れたわけですよ。そして、今は、一切の無菌状態の地域をつくろうということで、再建に向けて必死の努力をしている。今行っていただくとわかりますけれども、西都、児湯あたりの畜産農家はまだ真っ白ですよ、消石灰をまいて、真っ白の町ですよ。そういう人たちに、ワクチンを打っても食用に回すこともあり得るんだということになれば、それは意欲は衰えますよ。新しい防疫指針をつくって、県は、徹底してやりなさいと言っている反面で、こういうことが出ると、何じゃい、ワクチンを打っても結局売れるんかいと。まあ、買うかどうかはまた別の問題ですけれども。このことについてまずお聞きをしたいと思います。

 担当課長が何度もこのことについては来ました。最初は、韓国では食用に回しましたから、日本でも食用に回すことを考えているんですよみたいな説明だったんですよ。それで、二、三日後にまた来まして、今度は、あれは新聞の先走りでありまして、実質、韓国の事例を踏まえてさらに研究、検討は進めるけれども、ワクチン接種後の家畜を食用に回すことはないと。二日たったら課長の言い分がころっと変わりました。

 これはどっちが正しいんですか。火のないところに煙は立たないとよく言うじゃないですか。大臣の念頭の中にワクチンを接種した牛を食用に回すということは全くないと、今この場で断言していただけますか。御答弁をお願いします。

鹿野国務大臣 今江藤先生からの御指摘の件につきましては、家畜伝染予防法が改正されたわけでありますけれども、これを踏まえて、口蹄疫の防疫指針について見直しを行っている、こういうふうなことでございます。

 この中で、ワクチンの使用等につきましては、その考え方というものについて申し上げますと、現在の口蹄疫ワクチンは発症は抑制できても感染を完全に防御できない、あるいは安易にワクチンを使用すれば、ワクチンを接種したものと感染したものとの区別ができない、口蹄疫の発生というものを見逃すおそれがある、このような考え方から、ワクチンの使用につきましては慎重に判断する必要がある、こういうふうなことが言われておるところでございます。

 そういう中で、今の御指摘のことにつきましては、屠殺及び移動制限だけで感染拡大の防止が困難な場合に実施する予防的殺処分を前提としてワクチンは接種することとしておるわけでございまして、ワクチンを接種した家畜を食用利用するということは考えておりません。

 そういうふうなことで、考え方は今申し上げさせていただきましたけれども、引き続き、ワクチンに関する研究というものだけは今後とも検討していかなきゃならないと思っております。

江藤委員 大臣からはっきり念頭にないと言っていただいたので、それはぜひ、特に南日本、そういう人たちには周知をしてください。そうじゃないとモチベーションが下がるんですよ、防疫をしようというモチベーションが。こういう話というのは、田舎はうわさが広まるのが非常に速いですから、伝播力が。ぜひそのことをよろしくお願いしたいと思います。

 ワクチンにつきましても、今回は非常に当たりのワクチンでした、おっしゃるように、日本の場合は。ワクチンも、当たりのワクチンと外れのワクチンがありますので、その研究開発も引き続ききちんとやっていただきたい。お願いします。

 二点目は、新マル緊です。

 御存じのとおり、去年の上四半期は二期連続で出ませんでしたね。このことで肥育農家の経営状況は極めて厳しい。特に南九州は、算定基準が下がりましたから、非常に厳しい状況になっております。

 農水省は、平成二十三年から、二十八の食肉卸売市場の枝肉データに加えて、十三道県の相対取引データを合わせて、全国約八割のデータを用いて算出する、そういうことにしましたですね。そのおかげで、ことしの第一・四半期は多分出るだろう、金額については大体の数字は聞いておりますけれども、多分出るだろうという話であります。

 ここで大臣に確認したいのでありますが、今度出るであろうと思われる数字が、各地域の、それぞれの地域の実態を十分に反映した数字であるかどうか、これが私は問題だというふうに思うわけであります。これは、万一実態とかけ離れていた場合には、希望する道府県には独自の算定基準を認めるべきだと私は考えますが、大臣のお考えはいかがですか。

筒井副大臣 今の問題は、全国的な水準と同時に、地域の実情に配慮した、そういう算定方式を考えるべきであるという意見というふうにお聞きをいたしましたが、農水省としてもそう考えておりまして、その双方を考慮した算定で行っていきたいというふうに考えております。

江藤委員 セシウムに関連したものについては特別なマル緊制度を用意するということは農水省からの説明で聞いております。

 しかし、これは全国的な問題なんですよ、副大臣がおっしゃったように。宮崎でもA5が千六百円ですからね、宮崎でも。東北ほどはひどくないけれども、それはきついですよ。ですから、今副大臣おっしゃったように、その今おっしゃった答弁を実行に移していただくように重ねて御要望、お願いします。

 それでは、補償の責任の所在について質問をさせていただきます。

 これから、さまざまな補償問題や対策をお聞きしてまいります。その肝となるものは、一体だれが、その補償や賠償金をいつまでに、お支払いするのかということであります。

 枝野官房長官は、七月二十日の衆議院の特別委員会で、責任の所在に関する質問を受けました。このときに、官房長官は「原発事故とそれから政府としての周知が結果的に十分でなかったということに起因をしている」と。原因は、政府としての周知が徹底していなかったことに起因している、そうはっきりおっしゃっている。これはどう読んでも政府が責任を認めたということですよね、国の責任であると。

 しかし、七月二十一日、早速、私は委員長ですから、畜酪委員会を招集しました。そして、お役人にこの発言の内容を確認しますと、それはまずは東電側、まずは東電側と。一義的な責任は東電側と。何カ月も、この数カ月間聞かされてきた話の繰り返しなんですよ。全然進歩がない。

 しかし、牛肉のセシウム問題は、野菜や果樹それからお茶のように、直接放射能の雨が当たったとか、そういうものではないでしょう。十分御承知をしていらっしゃると思いますけれども。これは、汚染された稲わらを食べた牛の肉が間接的に感染したわけですから、二次感染じゃないですか、二次感染。ですから、野菜や果樹、お茶と同じようなくくりをするのは、これは間違いなんですよ。

 ここで大臣に確認をいたしますが、セシウムに汚染された牛の賠償は、その賠償の主体となるべきものは国である、一義的な責任は国にあるとお認めいただけますか。御答弁を求めます。

鹿野国務大臣 今回の問題によりまして被害を受けた方々の損害につきましては、基本的な考え方といたしましては、東京電力に賠償責任があるもの、こういうふうに考えておるところでございます。

江藤委員 やはり東電なんですか。やはり東電ですか。

 きのう、いろいろペーパーを見せていただきました。わかりづらい、例によって。お役人がつくった図も一生懸命読ませていただきましたけれども。

 直接の被害ではないんですよ、これは間接的な被害なんですね。官房長官もこれを認めているわけですね。もし、東電が強気に出て、これは国の責任であるということを主張して、裁判に持ち込んで、そして支払いを拒否したらどうするんですか。あり得ますよ。十年かかりますよ、最高裁まで行ったら。その間、関係団体が仮払いをする、ALICが利子補給だけするんだと。そんな方法じゃ、これは絶対におかしいですよ。

 そして、東電が仮に勝訴した場合。ちゃんと法律、根拠法があるんですよ、原子力損害の賠償に関する法律の第三条一項のただし書き、そこには「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。」、はっきり法律にそう書いてあるんですよ。調子に乗って、これを盾に裁判をやったら、私は裁判官でも何でもない、資格がないのでわかりませんが、下手をすると東電にも勝ち目があるんじゃないですか。これは裁判所が決めることですから私がどうこう言うことではありませんが、非常にリスクを伴う。

 確認しますけれども、図を見せてもらいました、こうなってこうなってこうなるよという四角の図ですね。東電がちゃんとこれは見ますという確約なり約束なりを取りつけた上でああいうペーパーを配付したんですか。御答弁を求めます。

鹿野国務大臣 今回、国産牛肉の信頼回復や、あるいは肥育経営の支援対策というふうなものにつきましては、最終的に東電が賠償することを前提としている、こういうことでございまして、出荷制限や、あるいはそれにかかわるところの風評被害、そういう損害については、原子力損害賠償紛争審査会の第一次指針あるいは第二次指針に、基本的に賠償の対象とされているところでございます。

 今回の放射性セシウムを含んだ牛肉が流通している問題の損害につきましては、今月の二十九日でございますけれども、第十二回の原子力損害賠償紛争審査会におきまして農林水産省からも報告をする予定でございまして、このことがきちっと対処されるように、これからも、私どもとしてはできるだけの努力をしていかなきゃならないと思っております。

江藤委員 官房長官は、総理の一番の側近ですよね。その方がここまで正々堂々と国の責任をお認めになっているのに、所管の大臣である鹿野大臣も、ここはやはり国が前に出るんだと。

 口蹄疫のときもそうでした。法定受託事務なのか、国に責任があるのか自治体なのか、やたらにもめて話が前に転がらなかったことがあったんですよ。これはやはり早く認めてもらった方がいいと思う。

 あくまでも東電とおっしゃるなら、しようがないですから、東電が支払うという前提で質問を続けさせていただきます。

 我が党を初め野党五党で提出した、予算五千億円、損害額の五〇%以上をまずは支払う仮払い法案は、ほぼ丸のみの形で、昨日、特別委員会で可決をされました。これはいいことだったと思います。

 それなのに、昨日農水省が持ってきた、汚染牛を買い取る国産牛肉信頼回復対策や、出荷制限をされている肥育農家に一頭当たり五万円を立てかえ払いする肉用牛肥育農家の支援対策は、ALICから利子補給をするだけ、利子補給をするだけ。そして、金自体は民間団体が銀行から借り入れなさいと。

 これは政策の整合性がないじゃないですか。おかしくないですか。何で牛だけ切り分けるんですか。団体も、先ほども言いましたように、十年も裁判が長引いたりなんかしたらもたないですよ、これはもたないですよ。こんな、先の見えないような、整合性のない政策は私は認めるのはおかしいと思います。

 さっき言った原賠法の第三条第一項、これはこれから非常にきいてくる。だって、周りの環境を見れば、東電は絶対つぶしちゃならないというような世論が経済界の中にあるんでしょう、何が何でも守ろうという。私は、それが何か透けて見えるような気がしてならぬわけであります。

 どうして仮払い法案を活用しようとされないんですか。御答弁を求めます。

筒井副大臣 まず、原賠法三条ただし書きの天災地変それから社会的動乱、これには今度の原発事故は該当しないですよ。政府もそのことは初めから主張しているというふうに判断しております。もしその三条ただし書きに該当するならば、東電の責任は免責されますから。免責されるということを政府の方針として今まで一度も出したことがないわけでございます。それがまず第一点。だから、そこの問題ではないと思います。

 今度のセシウムの問題は、稲わらにセシウムが降り注いで、その稲わらを食べた牛がセシウム牛として出荷制限の対象になったということでございまして、これは、ああいう原発事故があれば、放射能が空気中に飛んで、そしてそれが稲わらについて、その稲わらを牛が食べるというのは通常予測できる範囲内でございますから、相当因果関係の中に入っていて、これは原則損害賠償の対象になることもはっきりしております。

 ただ、先生がおっしゃるのは、そのセシウムがついた稲わらを食べさせた、この点で過失の点があるかどうかというのが法的には一部問題になるかもしれませんが、全面的に損害賠償責任がないという主張は東電もしないと思います。

 そして、その過失の点に関して、あるいは官房長官が言われたのかもしれませんが、農水省としては、屋外に出していた稲わら等のえさに関してはこれは給与するな、こういう通知を出していたわけでございますが、それが農家にまで届いていなかった点において、その点において農水省の責任があるということを官房長官は言われたのではないかというふうに思っております。それがまず第一点。

 それと、今度の、きのう発表した対策でございますが、これは当面の緊急の対策でございまして、今後もそのことを検討していかなければいけないわけでございますが、仮払い法案が、今法案でございますが、それが成立した段階で、新たにまたその法律を前提として検討しなければならないことはおっしゃるとおりだというふうに思います。

江藤委員 突っ込みどころ満載の御答弁をいただきまして、これは困ってしまうわけでありますけれども、順次論破していきますので。

 次をやらせていただきます。

 原子力損害賠償紛争審査会の中間指針、セシウムに汚染された牛の問題も盛り込まれる。今おっしゃいましたね。これが八月の五日に先送りされる、この問題が起こったので。二十九日だったものが約一週間ぐらい先送りをされるというふうに聞いております。

 文科省にお尋ねをしたいのでありますが、現在の検討状況、どんなふうになっているのか、それをまずお聞かせください。私は文科には疎いものですから。

 さらに、審査会のメンバーに、セシウム、そして畜産の現状、そういったものに対してきちっとした現場の意見を反映した意見をこの中間指針に盛り込めるような専門家がいるのかどうか、それも教えていただきたいと思います。林政務官、よろしくお願いします。

林大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 現在につきましては、四月に第一次指針、そして五月に第二次指針をお示しさせていただいたところでございます。

 御指摘の件につきましては、今週の金曜日、二十九日に次の原子力損害賠償紛争審査会が開かれることになっているんですが、この件の状況について、今ほど先生が現場の声もしっかりと聞くようにというお話ございましたけれども、お話を聞かせていただくことになっております。

 これまでの指針、第一次、第二次で対象となってこなかった部分については、当然、その全体像を示すのがこの中間指針でございますので、その中にしっかりと損害の範囲の全体像を示しながら、できるだけ早く、きちっとこの中間指針を取りまとめさせていただきたいというふうに思っております。

 もう一つ、専門家がいるのかという御質問があったかと思います。この点につきましては、それぞれいろいろなテーマに応じた専門委員というのを置いておりまして、その中にも畜産の専門家の方がいらっしゃるということを申し添えたいと思います。

江藤委員 誠実な御答弁ありがとうございました。私は女性には優しいの。

 ところが、私、このメンバーを見せていただきましたが、法務関係の専門家が六名ですね。それからもう一人は看護大学の学長さん、もう一人、よくわかりませんが、高度情報科学技術研究所の会長さん、もう一人は放射線医学の専門家。一回会議をやって、そこで現場の意見を聞いて、それで十分に中間指針に盛り込まれると私は到底思えませんよ。

 政務官、この人たちじゃだめだと言っているんじゃないんですよ。まだ間に合いますから、別に定員が決まっているわけじゃないんだから、この新しい事態に対応できるようなメンバーを早急に選出するなりして、特に、現場のことがわかる人間、畜産というのは特に現場のことがわからないとだめなんですよ、机の上の学問だけじゃだめなの。だから、そういう人をぜひ増員していただいて、立派な中間指針をつくっていただくことを政務官にお願いしておきます。(発言する者あり)それもいいアイデアですね。それも提案しておきます。

 次は、稲わらについてお尋ねをいたします。

 先ほど、稲わらの話、副大臣、随分触れられましたけれども。鹿野大臣は、官房長官の発言とはちょっと違うような御答弁をされていらっしゃいますけれども、翌日の本委員会でどうおっしゃったか。「原発事故後、まず、東北、関東の都県に対して、飼料、水、飼養場所等の飼養管理上に関する注意事項を通知いたしました。」通知をした、とてもお役所的ですね。「その際、個々の畜産農家に向けた資料もあわせて通知し、」と説明をされました。読むと長いのでここでやめます。

 これは何を指しているのか私調べたんですが、多分、三月十九日に、農水省の二人の課長の名前で、個別名は避けますけれども、関東及び東北農政局のそれぞれの担当部長あてに出したペーパー、それがこれです、必要であれば後ほど差し上げますけれども、この三番のペーパーです。そして、「個々の畜産農家に向けた資料もあわせて通知し、」というのがこの四番のペーパーです。これがそれに当たるものですね。

 ここには、家畜に放射性物質がかかった飼料を与えることがないように注意喚起は確かにしてあります。詳細に読みました。しかし、どこにも稲わらという言葉は入っていないんですよ、言葉が。入っていないんですよ、抜け落ちちゃっているんですよ。あくまでも、ここに書いてあるのは「牧草、乾草」、干し草ですね。それから「サイレージ」しか書いていないんですよ。まあ「など」とは書いてありますけれども、「など」で読んでくれなんていうのは、これは政治家の間では通用しますけれども、「など」なんていうのは一般の方じゃ通りませんよ。

 今回は、このペーパーを見ても、完全にこれは政治的なミスですよ。人災ですよ、人災。これはやはり大臣、もうここまで至ったら、国に責任が一義的にあるのだということを認められた方が私は最終的にはいいと思いますよ。いかがですか。

鹿野国務大臣 今回の原発事故において、高濃度のセシウムの稲わらが肉牛に給与されておった。今先生、通知そのものにも問題があったのではないか、こういうような御指摘でございます。

 私自身、日々、毎日、農林水産省の対策本部におきましても、いろいろこのことにつきましても議論をしてまいりましたが、基本的に、十九日の通知というふうなものによって、正直なところ、これで周知がなされるものと思っておったということも、これは間違いないことでございます。しかし、結果として通知が徹底していなかった、周知されていなかった、これも間違いない事実であります。

 そこで、今先生から、稲わらという文言が入っていなかったと。確かにそのとおりでございます。

 しかし、私は、今回のこの通知がなされていなかったということに対して、実質的に、通知はされたけれども周知されていなかったということはやはり真摯に受けとめていかなきゃならない、反省をしなきゃならない。それはすなわち、今まではこのような状況でも通用するんだということが通用しなかった、そういうことに対して、やはり真正面からとらえていかなきゃならない。

 すなわち、今先生が言われたとおりに、「など」というようなことでそれは通る話じゃないということでございますけれども、正直なところ、こういう文言の出し方で、これで御理解をしていただけるんじゃないかな、こんな思いがあったということも、これは今までの流れの中でございますから、私どもとしては、今回のこの通知が周知されていなかったということを真摯に受けとめて、そして、徹底して農家の方々にその通知そのものが、飼養管理そのほかについてきちっと引き継がれる、受け継がれる、そして聞きおきされる、理解されるというような状況をつくっていかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。

江藤委員 大変現地は大混乱で、口蹄疫を経験していますから、現地がどれほど大変な状況で、ペーパーが一枚東京から来たからといって、そういうふうになかなかやれないという事務的な困難さはよく理解しているつもりですよ。

 でも、大臣、政治は結果責任ですから、結果責任ですから。結果こうなっちゃったんだから。大臣も素直に認められました、このペーパーは確かに出したけれども、余り実効性はなかったんだということを認められた。非常に誠実な答弁だと思いますよ。だけれども、そこまで、結果責任だということを含めてお認めになるのであれば、やはり国の責任である、そして被害者は農家なんだ、畜産農家であるという位置づけは、ここでもうそろそろはっきりさせた方がいいと思います。

 この通達について、しつこいようですけれども、もうちょっと突っ込ませていただきますよ。

 例えば、この通達をよく見ると、福島県産の原乳から食品衛生法上の暫定規制値を超える放射性物質が検出されたことを受けて出されたものであるということはだれが読んでもすぐわかります。つまり、これは乳牛を基本にして出されたペーパーなんですよ。

 だけれども、皆さんおわかりだと思いますが、肉用牛、これには稲わらを食わせますけれども、乳牛にはもともと与えないんですね、稲わらは。与えないんですよ。与えもしない牛を参考にしてこんなペーパーをつくるなんというのは、何というボーンヘッドですか。イロハのイの字から間違っていると思いますよ。大変失礼な言い方だったらおわびを申し上げますけれども。

 また、稲わらは秋に刈って倉庫で保管していると、まだ思い込んでいらっしゃるみたいですね。そうじゃないんですよ。ああいうところは、冬は雪の下に置いておいて、雪が解けたら、そして乾燥を待って、それからロールして、そして春わらとして出す。畜産を多少勉強している人間だったらこれは常識です、常識。常識ですよ。これも全く頭に入っていない上でつくったペーパー。

 やはり、政治主導と言うんだったら、こういうペーパーを出す前にきちっと政務三役が目を通して、こんなものを出しちゃだめじゃないかとやらなきゃだめじゃないですか。それぐらいのことは、政治主導を標榜する民主党であれば、やはり、課長名で出すペーパーであっても目を通すぐらいのことはやってほしいと思う。

 大臣が誠実に、夜も寝ないで頑張っているのはよくわかっていますよ。尊敬する大臣ですよ。私は立派な方だと思っている。だけれども、責任をとるのも立派な政治家の態度ですからね。そのことは忘れないでほしいと思います。

 それから、これで通知、喚起をしましたと言うけれども、余りにも苦しいですよ。

 しつこいようですけれども、もう一度お願いしますが、もう、やはり一義的責任は国である、お認めになりませんか、だめですか。どうぞ。

鹿野国務大臣 まさしく今回のセシウム問題というものは原発事故に起因しているわけでございます。

 原子力発電というのは安全だというようなことで、一般的にはそういうふうなことを前提として取り組まれてきたということも、これは否めない事実であると思うんです。しかし、それが全く安全でないという形で具体的な原発事故が起きた。

 これに対してどう対処するかというようなことで、我が農林水産省といたしましても、今、通知の問題も出ました。あるいは、一般論として言えば、この稲わらというものは秋に生産されて、春まで持ち越すというのは一般論的にはないんじゃないかというようなこと、そういうような認識をも持っておった。江藤先生からは、それは春に生産されることもあり得るんだ、これは常識だ、こういうふうにおっしゃられましたけれども、農林水産省のとらえ方としては、一般論とすれば、これは秋に生産される、そういう認識がこの体制であったというふうなこと等々、そういうことを考えてみますと、やはり、今までの既定概念というものは取り除いて今後の行政を進めていかなきゃならない。

 飼養管理等々においても、いろいろな団体にも加入していない人たちにもどうやって通知が行き届くかというようなことも含めて、きちっとした新たな形での通知のあり方、そして行政の推進のあり方というものを考えていかなきゃならない、こういうふうに考えておるところでございます。

江藤委員 予算委員会でも申し上げましたけれども、やはり過去の事例に学ぶということはとても大事なことですよ。そして、まるで九州農政局で起こったことのような話をしていますけれども、東北には東北の農政局があるわけでしょう。それで知らないというのは、それは余りにも苦しいですわ。

 それじゃ、ちょっとしつこいようですけれども、今度は「畜産農家の皆様へ」というペーパーについて少しお尋ねをいたします。

 このペーパーを見た福島県の家畜商組合の方々がたくさん私のところに上京されました。意見を聞きましたけれども、これはどう読んでも牧草の問題であって、稲わらは全く我々の念頭にはなかった、そうおっしゃっているんですよ、現場の人間の方々が、福島県家畜商組合の方々が。そう私に言われたことですから、この耳で聞いたんですから。

 この畜産農家へのペーパーは、いつ、どのようにして、どんな方法で各農家に配ったんですか。ぼんと、何か束にして渡して、配っておいてとやったのか、それとも、一軒一軒、こうですよ、こうですよと説明して歩いたのか。どういうふうにしたんですか。

 私、聞いてみました、たくさんの農家に。そんな通知は知らないというお返事をする方が余りにも率が高過ぎる。そんな通知もらっちょったっけ、おれは知らぬなと。これは東北弁かどうかちょっとわかりませんけれども。そういうお答えでしたよ。このことについてどうお考えになりますか、大臣。

鹿野国務大臣 三月十九日の通知というのは、農林水産省から関東、東北の各県に通知をいたしまして、そして各県からお知らせをいただく、こういうふうなことにしたわけでございます。それから、三月二十一日は、農林水産省のホームページで今御指摘のようなところを周知させていただいた、こういうふうなことでございます。そして、二十二日には福島県が県内に通知をされた、こういうふうなことでございます。

 そういうようなことで、いわゆる通知というふうなものの手法を、今申し上げたようなことでやらせていただいたということでございます。(発言する者あり)

江藤委員 今もう谷先生がみんな言っちゃいましたけれども、我々は農水委員会に所属している以上、なるべく一日一回は農林水産省のホームページ、今は特に見るようにしていますよ。ところが、高齢化が進んでいる農家が多いわけでしょう、しかも停電もあったわけでしょう。そんな中で、パソコンの、農水省のホームページ上に掲載したからそれで我々の責任は果たせたんだと、それはちょっと無理ですよ。それは言いわけにもなりません。

 今度は松下副大臣に。せっかくお越しをいただきました。幾つかあるんですけれども、まず全頭買い入れについてです。

 ことしは予備費で対応すると最初報道がありました。その後、海江田経済産業大臣は、東京電力にどういう形で賠償ができるかしっかり聞きたいというふうに話されました。東電にも費用負担を要請する考えを明らかにした。それで、きのう、四角のこんなペーパーが出てきたわけであります。

 副大臣にお尋ねをしたいのは、経済産業省として、農林水産省と連携して、東電ときちっと、最終的には裁判に持ち込むようなことはせずに、先ほど副大臣はそういうことは想定されていないと希望的観測を申されましたけれども、そういう法律を盾にして賠償請求を逃れるようなことはないというような確約をとられたんですか、その上でこのペーパーを出されたんですか。副大臣、御答弁をお願いします。

松下副大臣 原子力政策を預かってきた経済産業省、福島の原子力発電所も当然我々の所管の中に入っているわけでございまして、今回の深刻な事故、そしてこういう事態が起こったことを心からおわび申し上げて、まず原子力プラントの収束、我々の完全なコントロールに置かれるようになるまでとにかく一刻も早く、努力していきたい、こう努力しておるところでございます。

 その上で、原因がはっきりしておりますので、我々は、東京電力との間では、今度の賠償機構法もできましたし、現在の原賠法もございますので、はっきりと、責任はしっかり明確にしていますので、しっかりとそこのところは確認をとりながら進めていっております。

 以上でございます。

江藤委員 結局、確認の途中で、まだ最終的な合意をなされない上でこのペーパーを出したということですね。そういう理解でよろしいですね。答弁はもう求めません。そういう過程にあるということがよくわかりました。

 大臣は、七月二十一日の本委員会で、金融機関に対して資金の円滑な融資及び貸付金の償還猶予が行われるよう要請を行いましたというふうにおっしゃいましたですね。これは大事なことです。いいことですよ。

 今回は、加害者が政府と東電で、そして被害者が畜産農家、この因果関係は完全にはっきりしているわけですね。ですから、まずはおわびをして補償金を払うのが一義的には筋だと私は思います。それが、なぜ融資とか償還猶予という話になるんですか。私は、何かとても冷たいなという感じがします。まるで、交通事故に遭った被害者が治療費とか休業補償費とか、困った。とりあえず利子補給だけしてやるから、借金でその間つないでおいてくれ、いつその部分が払えるかわからないけれども。例えて言うとそんな話ですよ。そんなのはまずいと思います。

 そして、福島の方々からさらに聞いたのは、農協系の金融機関は政府の要請に対して非常に協力的、しかし民間の金融機関は厳しい条件を提示してきて、結局は門前払い、門前払い。そういう報告が福島から多々上がってきております。このような状況を大臣は把握されていらっしゃいますか。

鹿野国務大臣 今江藤先生から、我々がこういう措置を講ずるということについて、農家の人たちの心情というふうなものを全然考えていないんじゃないかという厳しい御指摘もあったと思います。

 正直、緊急というようなことを考えたときに、まず何をやるべきかといえば、それは、償還というものはちょっと待ってよ、あるいは支払いを待ってよ、飼料メーカーに対しても飼料の支払いを待ってくださいよというふうなことを要請する。そしてまた、融資のことについても、とにかく政府保証もつけてのことだから、ひとまずこの仕組みを活用してくださいよというようなことにおいて、今御指摘のような融資のあり方等々というふうなものを考えさせていただいて実施することにさせていただいたわけであります。

 ただ、具体的な形で、現場は違う、全く門前払いだ、そういう状況を私どもも踏まえさせていただいて、七月十九日付でございますけれども、改めて、金融機関に対して、資金の円滑な融通あるいはまた償還の猶予、そういうことに対して文書で依頼をさせていただいたということでございます。

江藤委員 これは権限がないんですよね、要請するだけで。権限がないんですよ。

 金融庁にきょうお越しをいただいていますので、金融庁にお尋ねをいたしますけれども、具体的にどのような要請をされたのか、農林水産省と連携をして、これは金融庁は把握していらっしゃいますか。

 そして、門前払いをした場合、金融庁として、行政指導なり、何らかの、もうちょっと厳しい、農林省にはできないようなことを金融庁はできるんですか。和田政務官、よろしくお願いします。

和田大臣政務官 江藤委員にお答えいたします。

 今さっきから御質疑をお聞きしておりますと、少し明確に御説明した方がよろしいかと思うんですが、金融円滑化法という法律がありまして、その趣旨にのっとって、既存の債務関係について、できるだけ債務の支払い猶予をしたり条件を変更したりすることは、金融機関に対して、金融担当大臣としても要請いたしておりますし、農水省の方からも御要請が行っているところです。

 しかし、新規の融資に対しましては別途考慮が必要でございますし、また、原発被害ということを考えますと、その地域でそのまま事業が営めるかどうかの判断というのが大もとになければ、やはり新しく次に事業資金を供給するということはなかなか難しゅうございますので、基本的には別途の考慮が必要であろうと思います。

 そして、あくまで、新規融資につきましては、各金融機関の個別の事業者との間での話し合いに基づいて行われるべきだというふうに考えておりますので、その要請にはおのずと限界もございまして、そこから先、本当に事業者が生活するのに必要であれば、先ほど委員もおっしゃっておられたように思いますが、やはり公的に考えていかざるを得ない部分も生ずるものと考えています。

江藤委員 まあ、公的に今後考えることも必要だというところ、その部分だけ評価させていただきます、そのところだけ。

 ただ、モラトリアム法案、皆さん方も覚えていらっしゃると思いますけれども、このときでさえも罰則規定はなかったんですよね、罰則規定はなかったわけですよ。ですから、今回は、金融庁はそのときの経験も生かして、ちょっと気合いを入れてこのことにはぜひ当たっていただきたいというふうに思います。

 前後して、話がずれてしまって、ちょっと時間が足らなくなっちゃったので、もう一度副大臣にお尋ねをいたします。

 今回の被害において、関連産業も大きなダメージを受けていますね。これらの関連産業に対しても、BSEのときのように、BSEのとき、自民党で農林幹部でいらっしゃいました。そのときに、厚生省や農林省とも連携して、セーフティーネット保証をやりましたよね。私は一年生議員でしたけれども、無担保、無保証の融資制度をつくった。こういったものを設けるのが私は当然だと思うんですよ、今回も。ですから、十年前のBSEのときに自民党の農林幹部の一員であられた副大臣に、ぜひこれを、先頭を切ってつくっていただきたいと思いますが、いかがですか。

松下副大臣 十年前のBSEのときも、その前の口蹄疫の対策についても、江藤拓議員のお父上の隆美先生に御指導をいただいて、一緒に対応に当たってまいりました。拓議員がその当時頑張っておられたこともよく承知しておりまして、今、改めて感謝を申し上げます。

 そのときの対策に倍するほどの徹底した対応策をとっております。当時の政策を精査いたしまして、それに負けないように、より一層綿密な、緻密な対応をとっておりますので、そのことはまた、時間がありませんからここで説明しませんけれども、またしっかり御説明したいと思います。

江藤委員 大変心強い御答弁をいただきました。結果は、しかし、見せていただきますからね。期待を裏切らないように、よろしくお願いします。

 もう終わりになりましたので、この農林水産委員会は、別に私は揚げ足取りをしようという場とは考えていないんですよ。議論を闘わせて、そして問題点が見つかれば、胸襟を開いて、修正をして、被災された方々にとって少しでもいい方向に向かうように政策が練られていく場にしたいというふうに思っておりますので、今後とも、委員の皆様方、委員長、それから政務三役の方々、ぜひ、御協力、お力添え、みんなで頑張ってまいりましょう。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

山田委員長 次に、石山敬貴君。

石山委員 おはようございます。

 私も、江藤委員に引き続きまして、きょうは、牛肉のセシウム問題について、質問をさまざまさせていただきたいと思います。

 私は、やはり一年生議員ですから、いろいろと想定問答を自分なりにつくるわけですけれども、今、大臣と江藤委員のやりとりを聞いておりまして、非常にショックを受けております。

 私は、もちろん民主党所属、ですから、政府を支える立場ではありますけれども、私自身も、復興特での枝野官房長官の発言を生で聞かせていただいており、今回の牛肉セシウム問題というのは国がしっかりとした責任を持つ、そういうふうなことを受けとめておりまして、今回、宮城でも稲わらから、そして牛肉からといって、今畜産農家が大パニックに陥っています。しかしながら、官房長官がこのようなことをきちんと発言しています、だから、しっかりやりますということを、私も地元に伝えてきております。

 それで少し、ああ、では頼むよ、自分たちの生活は本当に危機的状況だから頼むよ、そういうふうに言われて、自分も今この質問の場に立っているわけですけれども、その前提がすべて崩れるような御答弁をいただいたかというふうに、私も今お聞きして、正直おります。

 そもそもを言いますと、こういうことが、我が政権がずっと続いているからこそ、今のような状況、今のような国民の支持というものになっているんじゃないかというふうに思いますので、もう一度その部分をしっかりと考えて、やはり責任の所在というものを明確化していくことこそが、今不安がっている畜産農家の方々、さらにはこの震災の被害に遭われている多くの方々の心を、将来に対する不安というものを解消していくことに一番つながっていくと思うんです。細かな政策ではないと思うんです。

 こういうことに関しては国がしっかりやるんだということをやはり私はきょうも宣言していただけるものと思って、冒頭の言葉を用意していたんですけれども、全部それはチャラになっております。

 まず、皆さん、資料一をごらんいただきたいと思います。これも重複になるかもしれませんけれども、今の東京市場の牛肉、枝肉の平均価格でございます。

 セシウム問題、七月八日ですけれども、南相馬市、稲わらから検出されて以降、私も七月十三日に東京市場に行ってまいりました。このとき、福島県におきまして、A5の肉で一キロ千円という状況です。しかしながら、この日は、静岡産、栃木産と言われるほかの肉は千八百円から二千円をまだキープしておりました。しかし、七月十九日、これは福島は出荷規制がかかっておりますし、宮城も自主規制をかけています。そのときで、A5が九百五十七円、A4に限っては三百八十円、A3で二百五十七円。表現は悪いかもしれませんが、豚肉以下です。

 当然、こんなような状況におきまして、全国的な規模でこの問題は拡大している。ですから、BSE、口蹄疫とありましたけれども、まさに今、日本の新たな畜産の危機が来ているといったような、本当にこれはせっぱ詰まったような状況であるということをぜひとも御認識いただきたいと思っています。

 稲わらに関しましては、私は自分自身、非常に自戒の念を持っております。私も一応、農業の現場を知っている人間ですといったようなアピールを自分自身でもしてきました。しかしながら、今回、正直、私は、その稲わら、宮城県は原発から少し遠いから大丈夫だろうといったような考えもありましたが、自分自身もノーマークだった。これは地元の方々にも、地元選出の国会議員として、ひたすら自分の不明のいたすところを謝って回っています。

 先ほどもあったように、政治家は結果責任ですから、わからなかった、気づかなかったではやはり済まないんだと思うんです。だから、私は自分自身として謝って歩いています、ごめんなさい、気づきませんでしたと。

 それは自分自身のことですからいいですけれども、とにかくこのような状況ですから、まず何とかしていかなきゃいけない。その中におきまして、今回、週末から、私も農家の方々、またはJA等の農業団体の方々にいろいろとお話を聞かせていただいて、今回は二つです。とにかく、生産者、消費者の方々に安心感を与えるための方策は二つです。

 一つは、特に消費者の方々ですが、全頭検査をやるしかありません。二つ目は、やはり農家に、生産者の方々にしっかりとした資金繰りを行っていくということでございます。

 それで、厚労省の方に質問させていただきたいと思います。

 まず、全頭検査は非常に大変なことなんですというふうなことを非常に言われます。しかしながら、皆さん、ちょっと一枚飛ばしていただいて、資料三の下の段を見ていただきたいんですけれども、実は今、牛肉もそうですけれども、食品にかかわるセシウムの含量等をはかるのは、ここの下の部分に記しておりますゲルマニウム半導体検出器というものを用いるべきだということが、厚労省の方から平成十四年に出してあります「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」というものに記載されています。

 しかしながら、この検出器というのは、二千五百万から三千万ぐらいすると。あと、操作の上で液体窒素なんかを使いますので、かなり操作に専門性を必要とするというようなことが言えます。確かに、こちらのグラフにありますとおり、セシウムだ、カリウム40だというのをきれいにスペクトルとして分離することはできます。しかしながら、まず、これを今注文しても入荷するのは三カ月後ですね。国内産の生産というのはありません。

 そこで、資料二の方を見ていただきたいんですけれども、ここに、パーキン・エルマーというのと、あとアロカというメーカーさんの機種を載せました。別にここの二つの会社の宣伝をしたいわけじゃないんですけれども、NaIシンチレーションカウンターというものがあります。これはもともとほとんどサーベイメーターとしてしか使われないので、厚労省も九年前は認識していなかったんだと思いますが、今、大体四百万から、高いものだと八百五十万ぐらいしますけれども、既に資料三にも書いてあるとおり、分離能なんかも非常にいいんですね。

 私は、副大臣にもお話しさせていただきましたけれども、これはまだ在庫がありますから、これをゲルマのかわりに、全国に、一括国が買い取って、必要とされるところに配付するということを行っていけば、全頭検査も可能なんじゃないかというふうに考えています。また、専門家の意見もそういただいています。

 実際、私のところ、宮城県で、今回の牛肉のセシウムをはかっています宮城県公衆衛生協会さんがあります。これが二台入れば、宮城県、山形の牛肉全頭検査は楽勝ですと力強い言葉をいただいていますけれども、厚労省のお考えを聞かせてください。

梅田政府参考人 食品安全基本法第四条におきまして、食品の安全性の確保というのは、食品供給行程の各段階で必要な措置が適切に講じられることを求めておりまして、この牛肉の対策に関しましては、生産段階における飼料や水の管理等、飼養管理を適正に行うことが重要であると……(石山委員「いえいえ、だから、NaIシンチレーションカウンターがどうかということだけ聞きたいんです」と呼ぶ)

 私ども厚生労働省といたしましては、自主的に全頭検査を実施する自治体については、具体的な自治体側の要望を踏まえながら、御指摘の、食品中の放射性物質濃度の測定のための簡易検査機器の技術的な要件の検討を含め、必要な検査を行えるよう関係省庁と協力して対応してまいりたい、検討していきたいと考えております。

石山委員 今、何ですか、検討しているというのは、やらせていいんですか。

山田委員長 梅田審議官、このシンチレーションサーベイメーターが有効かどうかということについて回答してくれればいいんだ。

梅田政府参考人 この簡易検査機器についての技術的な要件、例えば、福島、宮城のバックグラウンドの中で使えるかとか、そのようなことを含めて今後検討したいということでございます。

山田委員長 今後検討じゃ遅いんだよ、どうなの。

梅田政府参考人 現在検討しております。

石山委員 では、これは皆さんに周知徹底させていただきたいんですけれども、どう考えても今回の場合はスピードですよね、スピードです。今、マニュアルに関しましては、ステップ一とステップ二と書いてありまして、正確な、精密な検査を要する場合はゲルマニウム測定器を使ってくださいということなんです。スピードの場合は簡易検査をやってくださいといったようなことがあります。

 しかも、これは九年前ですよ、十年前。十年一昔前といいますけれども、今はスピードがどんどんどんどんと、自分も科学の分野にいましたけれども、科学技術が進んでいるんです。ですから、十年前はこのような波形に分けられなかった機械も、それだけ安価なあれで分けられると。そして、今、五百ベクレル・パー・キログラムじゃないですか、牛肉。これは間違いなく、十分間で三十ベクレル、ここまでは確実に見られるといったような代物ですし、さらには、ちっちゃなバイアルに入れて、二百七十サンプルを一遍に測定器にかけられるといったようなものなんですよ。

 ですから、検査マニュアルが大切なのか、今やるべきことが大切なのか、そんなのはわかりますよね。今やらなければ終わります。さっきの、国の、所在じゃないですけれども、そんなことは農家の方々はどっちでもいいんですよ。まず全頭検査をやる、その方法に従って、何がベストかを考える。それしかないと思うんです。

 しかも、私も、専門家の人間、専門家崩れとして、あと、専門家の人間、何人かに聞いていますが、これは本当に有効ですということで、必要とあれば、東大の、日本アイソトープ協会にも、これは一台入ってがんがん回していますし、皆さんが知っているお茶のメーカー、名前は言いませんけれども、そこも早速、二台あって、国の指導は待っていられないから自分たちはこれでやるんだということでやっていますので、ぜひ前向きにというか早急にマニュアルをつくってあげて、この基準でやってくださいというふうに出してください。それがまず全頭検査への一番の近道でございます。

 それはぜひお願いしておいて、あともう一つ、やはり資金繰りのことでございます。

 先ほど来、江藤委員の質問等をいろいろお聞きしておりましたけれども、国が全面的にやるというふうなことではないような雰囲気にもなっておりますから、いろいろと、聞き方も変わってくるんです。

 まず、昨日、復興特におきましても仮払い法案が通りました。通っていきました。この仮払い法案が通っていくことによりまして、今、東電におきましても仮払いというのを、例えば二十六日現在で、三百七十八億円請求があった中において、農林漁業者に対しては六十四億円しか支払われていません。先ほどの緊急時のスキームということで一たん理解したとして、その後、これがきちんと通ってきた場合の仮払いの見通しというものはスムーズにいくのかどうか、その辺の見通しを教えてください。時期的なものも言えるんだったら、これは国会の問題、政治の問題ありますから言えないかもしれませんが、そういうことも含めてお願いいたします。

筒井副大臣 まず、今先生が冒頭言われました点ですが、先ほどの稲わらについての使用を控えるようにという通知。内容的にも、それから周知徹底という点でも不十分であった、これは反省しているわけでございまして、先ほど農水大臣がそういうふうに答弁したとおりでございます。

 ただ、私が言ったのは、それは反省をしなければならない問題である、しかし、そのことが東電の賠償責任を免除することにはならないという点を言ったわけでございまして、それはきちんと東電に対する一義的な責任はやはり果たしてもらわなければいけないという点でございます。

 そして、その上で、きのう大臣の方から発表いたしました緊急対策、あれは緊急に第一段階として出したものでございますが、今の、先生が言われました全頭検査の問題とか、それから国による牛肉の買い上げの問題とか、これを今、さらに新たに詰めていかなければいけない。そういう点で、東電に第一義的な責任があるということを強調したといっても、国において行うべき責任を、これも免除を主張しているわけでは全くないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 そして、今の質問は仮払い法案が通った段階においてということでございますが、今現在、きのう発表したのは、まさに仮払い法案がまだ成立していない段階の緊急対策でございまして、この仮払い法案が法律として制定された段階においては、それに従って緊急に、早急に詰めていくべきだ、いかなければならないというふうに考えております。

石山委員 ありがとうございます。

 話が戻ってしまうとあれなんですけれども、とにかく言いたいことは、例えば、枝野官房長官、この国のナンバーツーですよね、実質的な。そういう方が、まず国が全面的にやるんだというふうに言った場合、やはり国民の皆さんは、ああ、そうかというふうに感じるわけですから、それを受けて、そういうスタンス、メッセージというのを、こういう震災も含めて、今回の牛肉セシウムも含めまして、混乱期にはメッセージだけ、ワンワードのメッセージだけが重要なんだと思っています。

 それも含めて、首尾一貫した流れというのを、私は、政府の皆さんには、つくっていかなきゃいけないのかなというふうに思いまして、冒頭の言葉にもなっておるわけですけれども、まず、ありがとうございます。しっかりとそういうスキームも含めましてやっていただく、それも一つのメッセージだと思っております。

 あと、マル緊のお話、これをもう少ししたいなと思っていたんですが、マル緊に関しましては、先ほどのお話を聞いていても、月払いを行うといったことや、また各市場においての平均単価、地域別も考えるといったようなお話をいただきましたので、それに対する質問はちょっとオミットさせていただきます。

 ただ、一つ懸念していることが今あります。

 まず、肉牛がとにかく動かないといった事態になっておりますので、そうなってきますと、当然、肉牛農家が子牛を買うことができない。金銭的にも、牛舎があきませんから物理的にも。そうなれば、次は、子牛の価格が暴落する可能性がここに来て出てきています。

 ですから、肉用牛の繁殖経営の安定対策、これに関しても、なってからでは遅いので、もう予想されているわけですから、発表はしないまでも、ぜひともシミュレーション的な対策というものを考えていただきたいと思いますが、その辺のことをお願いいたします。

筒井副大臣 この原発事故によって、価格の下落、これが今の範囲にとどまらない可能性が高いというふうにはこちらの方も覚悟しておりますから、それに対する対処方法は、肉牛、乳牛に限らず検討をしていかなければならないのは、おっしゃるとおりだというふうに思っています。

 同時にそれは、国としての対策と同時に、原子力紛争委員会での指針の中にそれらのことが反映できるような、要するに、損害賠償の点でもきちんと対策をとっていかなければいけないというふうに思っております。

石山委員 ぜひ、先手先手で、本当によろしくお願いいたします。

 わらのことも、イマジネーションを働かせればきっと自分もわかったんじゃないかなというふうに思って、じくじたる思いをいまだに抱えていることを繰り返させていただきますけれども、とにかくあらゆることを、水産物のことも、実は、私の地元の塩竈あたりの要するに漁業者の方々は既に心配しています。ですから、そのようなこともすべて包括的に予想して動いていただければというふうに思います。

 最後に、きのう、本当に業界団体が買い上げるのがいいかどうかは別として、とにかく、汚染された、基準値を超えた枝肉、牛は全頭買い取るといったようなこと、これが方向性でございますけれども、では、基準値以下だけれどもセシウムが検出されている枝肉、これは保管ということになっておりますよね。では、保管された後はどのような形になっていくのか、それをちょっとお知らせください。

筒井副大臣 保管の限界が来たときは販売せざるを得ないわけでございますが、その時点で、大幅にまたさらに価格が低下する、あるいはゼロに近づくという可能性があるわけでございますから、それらに関する補てんあるいは損害賠償、こういう対象のものとして考えていくことになろうかと思います。

石山委員 基準値以下だから、法的に流通させても構わないということになるのかもしれませんけれども、これはちょっとやはり考えていただきたいんですね。

 やはり、消費者の方々が、例えば、二百七十ベクレルの牛肉です、それが一年後か二年後かわからぬけれども出ていったとする、どういうふうにとられるか、何だ今ごろになってと。そのころ、もし仮にもう放射能のことが話題に少しのらなくなったときに、突然、放射能の肉でしたというのが出ていく。これはやはり、私たち与党の中でも少し検討していかなきゃいけない課題になるんじゃないかなというふうにも思います。

 大切なことは、先ほども言いましたが、安心感を今、生産者、消費者の方々に与えるわけです。今のことも、保管する、これはいいです。基準値以下だというのも、確かにこれは論理的にかなっています。でも、それが本当に消費者の安心感につながるのかということを考えていくのがやはり政治じゃないかというふうに自分は思っていますので、ちょっとここは御考慮の余地があるのかなというふうに思っています。

 セシウムに汚染されたわらを食べた牛、きのうまでで二千九百六頭です。仮にこれを百万円で買い取っても三十億円です。この三十億円で本当に今の大混乱がおさまる、消費者の方々の国産の牛肉離れがおさまるというんだったら、私はこれは絶対安いものだと思っております。

 スピード感と、出し惜しみしないでこの対策をしっかりやっていただくことをお願いして、私の質問とさせていただきます。ありがとうございます。

山田委員長 石山敬貴君の質問は終わりました。

 私から、委員長から、筒井副大臣にお願いがございます。

 先ほどの厚生労働省梅田部長のいわゆる答弁、シンチレーションサーベイメーター等々について、これは政務主導で、ぜひ政治判断で、いつまでも官僚に任せておっては先に進みませんので、ひとつ御検討をお願いいたします。

 次に、網屋信介君。

網屋委員 おはようございます。本日また質問の機会を与えていただいて、ありがとうございます。

 衆議院議員の網屋信介でございます。

 けさからずっとセシウムの稲わらの問題が議論をされておりますが、大臣は今はいらっしゃいませんけれども、昨日、農林水産大臣の方から緊急対応が発表されました。それにつきまして幾つか質問をさせていただきたいと思います。十五分しかないので、簡単にお答えをいただければと思います。

 まず、汚染された稲わらを食べて基準値を上回るセシウムの残高が確認された食肉の流通の状況について、これは厚労省の方ですか、御説明をいただければと思います。

梅田政府参考人 厚生労働省におきましては、高濃度の放射性物質に汚染された稲わらが給与されていた牛の肉について、流通先の自治体において流通調査及び放射性物質検査を実施するとともに、検査の結果、暫定規制値を超える牛肉については、回収等の措置をとっておるところでございます。

 二十六日までに厚生労働省に報告されている放射性セシウムに汚染した稲わらを給与した牛の肉の検査実施状況については、十四県から出荷された三百十頭について検査を終了し、このうち暫定規制値を超えるものは、福島県を含めて六県から出荷された二十六頭となっております。

 なお、厚生労働省におきましては、引き続き、食肉として出荷された牛の個体識別番号について公表し、関係事業者に対し、該当する牛肉があった場合、速やかに保健所に通報するよう協力を呼びかけておるところでございます。

網屋委員 今の御説明なんですが、ちょっと確認をしたいんですけれども、セシウムに汚染された稲わらを食べた牛の識別番号について、それを公表していると。セシウムに汚染された稲わらを食べた牛というのは、すべてその牛肉は、要するに商品として、牛肉そのものが基準値を上回るものになっているのかどうかについてお答えいただきたいと思います。

梅田政府参考人 放射性セシウムに汚染した稲わらを給与されたということがすなわち、その肉が暫定規制値を超えるものではありません。今回も、三百十頭のうち暫定規制値を超えるものは二十六頭でございますので、その牛をとにかく検査して、暫定規制値を超えているか超えていないかということをきちんと確かめておるところでございます。

網屋委員 大変大事なところでございますので、確認をさせていただきました。

 要するに、公表された牛が、牛の識別が出たとしても、必ずしもその肉がすべて汚染されているわけではないというところを実はちゃんとしたメッセージとして出さないと、その牛から出たものは全部汚染されたんだというふうにとらまえられると消費者は非常に混乱するので、そこについては非常にセンシティブといいますか、慎重な取り扱いをお願いしたいと思います。

 そして、きのうの大臣の会見のときの対応策というのは、資料がここにございます。このときに、実際に汚染、汚染という言葉は余り好きじゃないんだけれども、牛肉の買い上げをするのは食肉流通団体。そこに、金融的な、買い上げの費用ですとか保管の経費等は、実は金融機関から借り入れをしてとりあえず支払う。それに対して利子補給を、ALICという独立行政法人、農畜産振興機構が行うということですが、このALICのどの勘定からどれぐらい支払うのか、実はそこにどれぐらいのお金があって、本来のこの機構の目的に合致しているのかどうかについて、農水省からお答えをいただきたいと思います。

筒井副大臣 ALICの畜産勘定からそれを支出する予定でございます。その畜産勘定には、今、九百億円以上、一千億円近くがあるわけでございます。それを使って行う。それは畜産振興事業として行うものでございますから、ALICの目的にも、その畜産勘定の目的にも適合するというふうに判断をしております。

網屋委員 ありがとうございます。

 そうしますと、とりあえずALICが利子補給等々を行うについての資金的な問題はないということは確認されたと思いますが、実は、先ほど江藤先生のお話にもちょっとあったんですが、その後に出てくる牛肉の信頼回復対策のスキームというところで、先ほど東電の問題が出ました。東電に責任がある、ないという議論をここでしても、もう大体されたのでいいんですが、実は、金融機関から出てくる融資及びALICが利子補給を行うこのお金、これについては、食肉の流通団体が最終的には東電に対して損害賠償請求を行い、損害賠償としてお金をもらって返すというスキームになっています。

 これは、原賠法のもともとの考え方からすると、もう損害賠償請求をやって、第三者委員会なりなんなりで損害賠償の範疇に入るのか否かという一つの議論があると思います。その場合に、きのうの発表されたスキームだと全部東京電力から出てくる形に実は書いてあるんですけれども、たとえ東京電力の責任の所在が明らかになったとしても、損害賠償請求に基づいて全額東京電力のお金が出されるかどうかについては、これは第三者的な審査が必要であって、きのうの時点では、全部出ますよというのは非常に誤解を招くんじゃないかなと私はちょっと感じているところでございます。

 そもそも、今回の東京電力からの損害賠償があると、幾らかは別にして仮定したときに、これはいわゆる原賠法の趣旨に基づくものなのか、であるとすれば、もう一つの、二つの質問をしておきます、であるとすれば、東京電力が一義的にその責任を負うということは、最終的にはこれが交付国債を通じて国の負担になるのか、もしくは、いろいろな形で電気料金の値上げに実はつながるのか、この辺についての御意見をお伺いしたいと思います。

筒井副大臣 一〇〇%東電の賠償の対象であるというふうに考えております。ただ、それはしかし、今そういうふうに考えているし、それが正しいというふうに判断しておりますが、最終的に東電が争ってきた場合には裁判になるわけでございまして、裁判所の判断が別な判断だった場合には、その分は東電からは取れないということも、抽象的な可能性としては絶対否定はできないというふうに思っております。

 それと、東電の今度の賠償が電気料金に反映するのか、あるいは税金でもって補てんするのか。これは全体の問題でございまして、農業関係の損害だけに限らない全体の関係でございます。もちろん、こちらとしては、電気料金に反映するのも正しくないし、東電が負うべき損害を税金で補てんしてやるのも正しくないというふうには考えております。

網屋委員 副大臣、今の御答弁の中で非常に大事なところで、ちょっと確認といいますか、私の考えとちょっと違うところがあると思います。

 恐らく、東電は、これは想定ですけれども、この件も含めて裁判に訴えて、おれたちは悪くないんだみたいなことは、これはないんじゃないかと思うんですよ。というのは、明らかに、二次汚染であろうが何であろうが、もともと原子力発電所から出たセシウムであるということだと思うんです。

 ですから、裁判というよりは、むしろ、私が一番気にするのは、その賠償額を決める第三者委員会、ここが二次汚染のものについても全額東電の責任であると認めるのか、いやいや、そうではなくて、この通知のいろいろな義務とかやり方とか、もしくは徹底ができなかったことに対して国の責任も実は、要するに、交通事故でいえば、右と左がぶつかって、八、二なのか七、三なのか知りませんけれども、そういうような、全部あなたが悪いじゃなくて、やはり国だってこういうところでやり方が悪かったんじゃないのというような議論が物すごく、これは想像なので何とも言えませんが、あると思うんです。

 ただ、問題は、一〇〇%で東電だと言ってしまえば、これが一番簡単な話なんですが、その先は別にしまして、これが例えば、責任の割合が、いや、七、三ですよ、八、二ですよといったときに、その残りの部分についてどうするのかが実はきのうの中には入っていない。ここが私は問題だと思っていて、その辺についてどういう議論がなされていたのかということをお聞きしたいということでございます。

筒井副大臣 これも先生がおっしゃるとおりで、一〇〇%賠償の対象であると考えておりますが、今先生が言われた二割、三割の過失相殺という議論が出てくる可能性はあるかと思います。

 そういう結論になった段階のことを今からなかなか予測はできないわけでございますが、それは国の責任として、農水省の責任としてそういうふうな判断になった場合には、やはり、その二割、三割部分は東電の方に請求できなくなるわけでございまして、それを農水省としてどう対処していくのか、これをきちんと考えていかなければいけないというふうに思っております。

網屋委員 私は、そこが結構実は今回のキーポイントだと思っていて、要するに、どんな形であれ、東電が一義的であろうとなかろうと、足りない分については国がちゃんとこれについてはやるんだということを、やはり農水省として農家の方々にちゃんと言っていただくことが非常に大事なんじゃないかと思っておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 全く違う話を一つだけ。

 きょう、この後には、有明海及び八代海の法案の話がちょっと出てくるというふうに書いてございます。今回の法案のおまとめに対して、宮腰先生初め自民党の先生方、本当に御尽力をちょうだいしたことを心から感謝申し上げたいと思いますが、実は、毎年夏になると赤潮の被害がいろいろなところで出ておりまして、特に私の田舎の方でも、特に小里先生のところでは毎年、ここ二年ぐらいですか、かなり大きな赤潮の被害が出ております。

 これまでは予算措置でいろいろやってきたというふうに理解しております。今年度以降について、この赤潮、いつまでも予算措置でつなぎ、つなぎというのは限界があると思うんですが、今後の赤潮被害に対する対策について農水省としてどういうお考えかということを、簡単に最後にお聞かせいただければと思います。

田名部大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 この赤潮被害については、与野党のそれぞれの委員の皆様が大変御尽力をいただいておりますことに敬意を表したいと思いますし、また、網屋委員におかれましては、民主党内での座長をお務めいただいているということ、本当に御苦労さまでございます。

 ここ過去三年、大変大きな赤潮被害がありまして、特に昨年は約五十四億の被害があった、過去三年で八十九億の被害があるということでございますけれども、平成二十二年度の補正予算、これは赤潮被害養殖業に対する再建支援緊急対策事業十四億円、そして平成二十三年度当初予算、赤潮、いそ焼けの緊急対策五十一億円、こういったものを使いながら対策をとってきたところでありますけれども、これだけ大きな被害が出ておりますので、今後とも、農林水産省といたしましても、漁業被害を回避するために全力でこの対策を進めていく必要がある、そのように考えています。

網屋委員 ありがとうございます。せっかく田名部政務官が座っていらっしゃったので、ぜひお答えいただきたいと思っていたので、ありがとうございます。

 質問はこれで終わります。ありがとうございました。

山田委員長 次に、谷川弥一君。

谷川委員 自由民主党の谷川弥一です。

 私は、三月九日の農林水産委員会で、諫早湾干拓事業について、なぜ上告しなかったのかということを質問しました。開門することのプラス効果とマイナスの影響を具体的に分析、比較し、そして影響への対策を具体的に検討した結果、上告しないと決めたのか、防災、農業、漁業の面で具体的にケースを挙げて質問しました。

 鹿野大臣、筒井副大臣の答弁は、高裁判決を重く受けとめられた総理の判断で上告を行わないことが決定された、さらには、環境アセスメントの結果を踏まえ、地元の方々に不利益を生じることがないよう、関係者と相談しながら万全の事前対策を講じていくという答弁の繰り返しでした。

 その後、アセス結果が六月十日に公表され、六月二十七日には長崎地裁の開門請求訴訟判決が出、当事業の公共性を認め、開門請求が棄却されるという状況変化がありました。

 あなた方の開門を受け入れる理由は、有明海の再生を目指すということでした。そして、地元に不利益を与えないよう万全の事前対策を行うということでした。私は、判決内容やアセス結果などを見れば、なぜそのような主張をするのか全く理解できません。開門のための開門、菅総理に言われるがままの開門のための詭弁としか思われない。

 また、今回の質問は、私個人の主張と同時に、長崎県を代表する県、地元諫早市を挙げての質問という部分があることを御理解ください。

 それでは、具体的にお尋ねします。

 諫干事業と有明海の環境異変という関係についてお尋ねします。

 さきに確定した福岡高裁判決は、漁業被害との因果関係に関して、有明海のうち、諫早湾及びその近傍部を除く海域については、本件事業と環境変化の関係を認めることはできない、上記海域における予備的請求をしていない一審原告らの請求はいずれも認められないという判決でありました。

 間違いないか、大臣にお尋ねします。

    〔委員長退席、津島委員長代理着席〕

鹿野国務大臣 間違いございません。

谷川委員 六月十日のアセス結果についてお尋ねします。

 アセス結果では、開門に伴う海域環境の変化は、潮流は、ケース一で、排水門付近で最大四ないし五メートルの流速。下げ潮では島原半島に沿う流れは速くなるが、その他の有明海に影響なし。ケース二、三でも、変化は諫早湾内にとどまる。水質も、諫早湾央部から有明海にかけて大きな変化はないという結果素案になっていました。

 つまり、開門に伴う海域環境への影響はほとんど諫早湾にとどまるという結果であったのです。地元への説明もそのような説明だったと聞いています。鹿野大臣、そのような結果だったということでいいですか。

鹿野国務大臣 結構でございます。

谷川委員 六月二十七日の長崎地裁の判決についてです。

 判決内容は、潮受け堤防締め切りの諫早湾内への影響は限定されており、漁業権行使への侵害の程度も小さく、現在の防災効果や営農効果という公共性を考えれば、代替措置に費用や期間をかけてまで開門する必要はないという判決だった。

 さきの七月七日の参議院予算委員会で、金子議員の、国の主張は認められたということかという質問に、江田法務大臣は、国の主張が認められたということだと答弁されている。

 長崎地裁の判決の開門請求という部分に関しては、大臣、同様の見解でいいですか。

鹿野国務大臣 有明海の、あるいはまた諫早湾の潮流や水質の変化というものはおおむね諫早湾内に限られるという結果が得られるというふうなところが環境アセスメントの素案で出ておるわけでありますけれども、判決におきまして、そういうようなことを受けて、私どもとしては対処していかなきゃならない、こう思っております。

谷川委員 なぜ開門の方針を見直さないのですか。

 諫干事業と海域環境変化との関係は、諫早湾以外の有明海海域では認められないという判決結果となっています。逆に言えば、開門することによる海域環境への改善効果は、諫早湾以外の有明海には及ばないということになります。今回のアセス結果でも、開門による影響は諫早湾以外の有明海には及ばないという結果になっています。

 司法と科学的検証の両面から有明海への影響が否定されたことは、有明海の再生を目指すという開門目的が、両方から否定された結果となっているのです。しかも、その限定された影響よりも、諫干事業の防災、営農効果という公共性がまさるという国の主張を認めた判決が下されているんです。それなのに、国は、開門の義務を負っているとして、方針を見直そうとする姿勢が少しも見えない。

 そこで、問題をわかりやすくするために、開門の目的と義務の二つについて質問します。

 まず、有明海の再生を目指すという開門目的だが、アセス結果を踏まえた地元への国の説明では、諫早湾では調整池が海水に変わるとともに、諫早湾で潮流速が変化するなど、有明海及び諫早湾の漁場環境に変化を生じさせる可能性があるとして、開門して調査するという説明だった。しかしながら、そのようなことはアセス結果には一言も記載されていません。いつもの思い込みなんですか。

 改善する確証はあるのか、大臣にお尋ねします。

鹿野国務大臣 開門によって調整池に海水が入って塩水化するとともに、諫早湾におきましては潮流速が変化するなど、有明海及び諫早湾の漁場環境に変化を生じさせる可能性がある、こういうふうに私どもは考えておるところでございます。

谷川委員 有明海の改善を調査するためと言いますが、アセスでは、開門すれば諫早湾に泥土、濁りという影響を与えることは明確に出されています。産卵場や稚魚の生息域なら、潮流の変化により、有明海全体への悪い影響も考えられるでしょう。そうなったら、国としてどう対応するのですか。お伺いいたします。

筒井副大臣 今現在の現状は、高裁判決が確定しているという状況でございまして、そこでは明確に、三年以内の開門、五年間の開門、これが国としては義務づけられているわけでございまして、それはまさに法的な拘束力のある義務づけでございますから、それに従うしかないというのが現状でございます。

 そして、開門をする際に、ケース一からケース三―二まで四つの今度の環境アセスの素案が出ているわけでございますが、そこで、いろいろな被害が漁業上も農業上も防災上も起こらないように、対策をそれぞれにおいてとることにしているところでございます。

 しかし、その上でもさらに、開門したことによって被害が生じた場合には、これは国の行為による被害でございますから、損害賠償責任が国に生ずることも確かだろうというふうに考えております。

谷川委員 国は、方針を変えない理由として、開門の義務を負っていると言っていますね。福岡高裁判決、長崎地裁の判決と、国にとっては異なる対応を迫られる判決が出ているではありませんか。今後も異なる対応を迫られる判決が相次ぐことが予測されます。異なる二つの判決が出、異なる義務を負えば、結果としてはどちらかを選ぶしかないではありませんか。選ばなかった片方に対して、義務を果たせない代償をすることになります。であれば、今負っている方針が変えられないということではあり得ないはずです。

 公共性の発揮が確実に見込まれる方をあらかじめ選択し、他方には代償措置をとればよいではありませんか。

 有明海の再生というけれども、多額の費用をかけて、成果が出るかわからない開門を選び、そこで新たな被害を発生させるよりは、開門をせずに、潮受け堤防締め切りによる防災、営農効果という公共性を確実に発揮させ、漁業面で影響補償が不足しているのなら追加して、有明海再生に向けて漁業振興策を講じていくことを選ぶ方がより公共性の発揮が確実ではないか。

 大臣の所見を求めます。

    〔津島委員長代理退席、委員長着席〕

筒井副大臣 長崎地裁の判決はまだ確定しておりません。確定判決に従う義務が国にあるわけでございます。

 長崎地裁の判決が、これから控訴、上告を経てどういう結果になっていくのか、それはまさに今予測がつかない状況でございますから、その長崎地裁の判決が確定した段階で、どういう形で確定するのかによって対応を考えていかなければいけないというふうに思っております。

 しかし、現在のところは、確定した判決は高裁判決一つでございます。

谷川委員 皆さんは、開門に当たり、地元に不利益や影響が生じないよう万全の事前対策を講じていくと答弁してきました。何回も何回もです。また、総理の地元への回答書や大臣の地元への説明でも同じ説明でありました。

 しかしながら、長崎地裁の判決文では、国は次のように主張してきているのです。防災機能や優良農地造成という事業目的を失わないために必要な各種対策工事には、数百億円規模の巨額の費用が必要となる上、その費用をかけたとしても新たな被害を防止できるという保証はない。つまり、地元に被害が生じなくなるような万全の対策は困難だと主張しているのです。明らかにこれまで地元や答弁で言っていることと違います。

 いかがですか。

筒井副大臣 数百億円という金額の根拠はどうなのかわかりませんが、ケース一あるいはケース二等の開門の仕方によっては多額の対策工事費が必要になってくるだろうというふうには考えております。

谷川委員 次に、アセスで示された影響への対策について、本当に被害や影響が出ないのか、各分野ごとに質問いたします。

 まず、漁業への影響対策です。

 アセスでは、開門に伴い、濁りや堆積、速い流れの発生により、開門ケースごとに違いはあれ、漁業に影響が出るという結果であります。しかしながら、対策は、ケース一での洗掘防止のための護床工だけである。泥土の堆積も解消されないし、濁りや速い流れの発生、流況の変化に伴う漁業への影響対策は何も示されていません。最も影響の小さいケース三―二でもアサリやカキ養殖での影響の可能性を認めているにもかかわらず、何ら対策が示されていません。

 諫早湾内の漁業に影響が出ると予測しながら、なぜ対策を講じようとしないのか。万全の対策をとるどころか、漁業者に被害を認めよということにほかならない。いかがですか。

鹿野国務大臣 環境アセスメントの準備書素案におきましては、今御指摘をいただきましたけれども、排水門の開門に伴う濁りの発生あるいは泥土の堆積による、回遊魚やアサリ等の資源量、ノリ、カキ養殖等への影響を生ずる、このように予測されておるわけであります。

 このために、排水門周辺で顕著な洗掘や巻き上げが生じないように、今回出させていただきましたケース一、二では、護床工を設置する、あるいはケース三では、流速の制限を行うことによりまして、諫早湾内の漁業への影響を抑える、こういう考え方でございます。

谷川委員 開門による泥土や濁りについては、アセスでは、おおむね諫早湾内への影響という結果になっているが、長崎地裁判決では、国は次のように主張しています。巻き上げられた泥土が、本件調整池内や諫早湾内はもとより、佐賀沖や島原沖に広がり、熊本沖にまで接近することが予測され、海域の漁業環境、ノリ養殖などに新たな影響を及ぼすおそれがあると主張しています。つまり、アセスでは、諫早湾にとどまらず、佐賀、島原、熊本沖までの影響が出ると主張しています。明らかにアセスとは違います。諫干問題の発端となったノリ不作を国がみずから行うのに等しい判決となっているのです。

 アセス結果と判決主張の違いについて、大臣の見解を求めます。

筒井副大臣 一が全面開門で、ケース二が段階的な開門ですから、二つとも最終的には同じ影響になるかと思います。

 その場合に、何の対策も講じなければ今言われたようないろいろな大きな問題が出てくるわけでございますが、環境アセスの方で、そのケース一、ケース二の場合には、護床工により洗掘の被害を防止する、潟土の堆積を防止する、それらの対策を講じることにしてあるわけでございます。だからまた、先ほど申し上げたように、工事費も多額のものがかかるわけでございまして、それらをやった場合にはまた別の結果が出てくるし、それらをやった場合には漁業等への被害を最小限に抑えることができるというふうに考えております。

谷川委員 次に、農業への被害対策です。

 代替水源を地下水利用としているが、地元では、地盤沈下が深刻な問題となり、協定を結び、取水制限をしている実態があります。国は、新たに三百メートルの深井戸を掘れば地盤沈下は回避できる可能性があると言うが、佐賀大学の調査では、地下水層は既に工業用水、農業用水に使われ、水の収支バランスが崩れたため地盤沈下が起こっており、地下水取水に歯どめをかけないと地盤沈下がさらに進むと報告されています。このため、地元では、地下水からの農業用水取水を取りやめ、地区内水路からの循環利用に切りかえた結果、地盤沈下がとまったという事実があります。

 さらに、農業用水は、工業用水と違い、必要なときに一気に大量の用水を必要とします。

 地盤沈下が起きないという確証があるのか。工業用水や生活用水など他の取水に影響が出ないという確証があるのか。大臣の答弁を求めます。

筒井副大臣 今まで地下水利用が地盤沈下の原因になっていたということは、先生のおっしゃるとおりでございます。

 しかし、それらよりも深い、三百メートルで、長崎火山岩類というふうにいうそうでございますが、その地層からとることが可能であり、そこからとった場合には地盤沈下という結果は起こらないというふうに判断をしているところでございます。

谷川委員 という説もありますが、とまらぬという説の方が強いんです。もしそうなったら責任をとりますね。すべての被害を、責任をとるとここで言ってください。

筒井副大臣 先ほども申し上げましたが、今度の対策工事、国において行う工事でございますから、それが被害を与えた場合には国が責任をとらなければならないこと、これは当然だというふうに考えております。

谷川委員 次に、塩害対策です。

 塩害対策について、既設堤防や内部堤防基礎部や基礎地盤からの海水浸透防止について検討していないのではないか。潮遊池にポンプを設置し、潮遊池の水位を下げれば塩害を防止できるとアセスは言っているが、塩害が必ず起きないと言い切れるのですか。御答弁願います。

筒井副大臣 あそこは旧干拓地も新干拓地も粘土層でございます。

 そして、今度のいろいろな開門の方法にもよるわけですが、調整池が塩水化する、それで、調整池の水高が非常に高いと水の圧力が高まって、それが浸透にもつながるという可能性が高いわけでございます。

 ですから、いろいろな対策をその中でとらなければいけないことは確かでございまして、何もしなくても塩害は生じないというふうには考えておりません。調整池の水の高さ、干拓地の土質、さらには旧堤防等々の関係で工事もしなければならない部分、それらを検討して、それらに対する対処をきちんとやる、こういうふうに考えているところでございます。

谷川委員 次に、潮風害対策です。

 対策としては、ローテーション散水による洗い流しを方策として示しているが、一たん田畑にかかれば、短時間で一気に洗い流さなければ被害は防止できません。そのためには、五時間ぐらいで約四十万トンの水を確保できなければ被害は防げません。この水量が確保できるのですか。ローテーション散水では間に合いません。水の確保と一気の洗浄をどうしてするのですか。

 また、アセスでは、北東の風による影響について検討しているが、現地では南風でも調整池の北岸に影響が出ます。つまり、被害の想定範囲はアセスで示している範囲より広がるのです。

 さらに、新干拓地では大規模な野菜生産が行われているのに、すべて稲のデータにより検討が行われています。野菜は稲より塩害に弱く、野菜での検討が示されていません。

 今の対策では潮風害が起こり得ないと言い切れるのか。そもそも、だれが労力を負担するのですか。地元に強いるのですか。御見解をお願いします。

筒井副大臣 飛んでくる飛来塩分量をモニタリングしたりして今のアセス素案がつくられているわけでございまして、それらの調査の結果でございますから一定の合理性はあるというふうに思っておりますが、それで全部完全に一〇〇%大丈夫だと言えるかというと、先生おっしゃるように、自然の問題でございますから、必ずしもそうは言えない。

 だから、この問題に関しましては、さらに地元の皆さんの、そして先生の今言われたような意見、それらをお聞きしながら、工事着手前にそれらの点を詰めていきたいというふうに考えております。

谷川委員 次に、防災機能への影響対策です。

 諫早湾干拓事業計画では、諫早大水害という百年に一度の降雨を前提に、現在の潮受け堤防や内部堤防など構造物の設計がなされています。長崎地裁の判決でも、国は、昭和三十二年の諫早大水害相当の降雨があっても、高潮の影響を受けずに貯水できる洪水調整容量約七千九百万立方メートルを確保していると主張しています。

 なぜ、今回のアセスでは、それを下回る、三十年に一度の降雨を前提に調整池の水位上昇予測と対策を示しているのか。三十年に一度の雨として、六時間雨量で二百四十一ミリを想定しているが、既に先日の六月十二日の大雨では六時間で二百ミリを超えており、この程度の雨はすぐに発生します。

 これは防災機能を低下させる対応ではありませんか。現計画想定の諫早大水害に匹敵する大雨が起こったらどうするのですか。御見解をお願いします。

筒井副大臣 今まで土地改良で、その想定範囲は十年を基本として考えているわけでございまして、今回の開門は、あの高裁判決によりますと五年間でございまして、一部三十年で検討する川もあるわけでございますが、やはり基本としては十年で検討せざるを得ないというふうに考えております。

 それと、特にケース三―二ですと、現在の調整池の水位と全く同じ、マイナス一・〇からマイナス一・二の範囲での水の管理を、調整池の水高の管理をするわけでございますから、防災上も、それらを総合して考えれば大丈夫だというふうに判断をしているところでございます。

谷川委員 要するに、諫早大水害並みのことは起こらぬと言っているんですね。それを前提に計画しているんですよ、最初は。しかし、途中で三十年に一回に変えたということは、もう前のようなことは起こらないんだ、もし起こったら、前と同じように死んでくれという意味ですか。

筒井副大臣 排水ポンプ等も増設をして防災のための対処をするわけでございまして、基本はそういうふうに、五年間の開門でございますが、十年、そして一部について三十年という想定をしているわけでございます。

 全くそれらの、その範囲を超えるものについては改めてまた詰めていかなければいけない問題だろうというふうに思っております。

谷川委員 そうすると、百年に一度の水害を想定してやったということは過剰な設計だったというふうに理解していいんですか。

筒井副大臣 防災対策において過剰なということはないだろうと思います。

 ただ、最低限この範囲のものは設計をしなければいけないという、その基本を現在環境アセスで示したというふうに御理解をいただきたいと思うんです。

 以上です。

谷川委員 僕は、副大臣は非常に誠意のある人と思っておったんですが、今の答弁は無理がありますよ。もうこれ以上言いませんから、後で、今答弁したことを自分で読んでみてください。相当な無理があります。

 次に移ります。

 開門した場合、大雨、洪水対策としての、気象予報をもとにした調整池の水位管理は、突発的な集中豪雨が発生するこの地域では難しいという実態があります。そのため、総理への地元質問状にその点が入っているわけでありますが、その際の回答は、関係者と話し合い、必要な対策を講じていくという回答でありました。今回のアセスでは、この点の具体的対応が見えません。防災対策の重要な問題であります。

 長崎地裁の判決では、国は次のように主張していますね。

 台風や集中豪雨の自然災害時に限りあらかじめ潮位の低い干潮時に開門することにより水位調整をしようとしても、諫早地域は山に囲まれ、上昇気流が発生しやすく、集中豪雨が起きやすい地域特性を持つことから、現在の気象予報技術によっても的確な予測は困難な地域であり、あらかじめ台風等を適切に予測して閉門することは困難である。さらに、仮に開門を認めた場合、大雨を予測することにより排水門を適切に開閉すること自体が困難である上、調整池の水位調整は不可能となるため、洪水時における調整池の水位調整が困難となり、住民の生命身体や生活の基盤を脅かす洪水を防止できない可能性があると主張しています。つまり、国はみずから困難であるということを認めているのです。

 大臣、どうですか。見解があったら。

筒井副大臣 それが最大の問題でございまして、今度の潮受け堤防自体がそのためにつくられたものでございます。そして、確定した高裁判決も、開門義務が解除される唯一の例外として、防災上やむを得ない場合を除いてと。防災上やむを得ない場合は閉門していい、もちろん、そういう判決主文になっているわけでございます。

 だから、なかなか厳密な予測、想定はできないわけでございますが、その可能性があったら、非常に広い範囲で防災上やむを得ないものとして閉門する、そのことによって洪水被害から守るという対処が今後の管理として必要だろうというふうに考えております。

谷川委員 開門調査に、ケース三―二、つまり調整池の水位をマイナス一メートルからマイナス一・二メートルに管理する制限的開門方法を採用されています。この方法は平成十四年の短期開門調査でとられた方法であり、既に、諫早湾外の有明海全体にはほとんど影響はないという結果が得られており、有明海全体の環境改善につながる効果はないことが証明されています。

 開門目的が有明海の再生であるならば、なぜ今回開門方法として採用したのか。目的と矛盾しています。対策費用を少なく済ませるための便法としか思えません。

 また、開門原告らは、開門制限方法を用いた段階的開門であっても、最終的には全面開門を求める姿勢に変化がありません。その場合には、行きたくなくてもケース一まで行き着いてしまいます。対策費用を少なく済ませることで国民の理解を得やすくしたいという菅総理のこそくな考えが水泡に帰し、一千億の国民負担となってしまう。そもそも、開門原告の同意が得られる開門方法と考えているのか、お尋ねします。

筒井副大臣 ケース三―二ですと、以前に行った短期調査開門と同じことになります。

 ただ、その場合にも一カ月で調整池の水は海水化したわけでございまして、これを五年間続けた結果どういう影響が出てくるのか、それが今後見なければいけない問題だろうというふうに思っております。ですから、ケース三―二ですと、一番の現状からの変化は、調整池が海水化する、この点が最大の変化だろうというふうに思っております。

 そして、今先生がおっしゃったように、原告側は、長崎県側じゃなくて佐賀県側の方の原告は、ケース三―二では今の高裁判決の履行にならない、ケース一か二、特にケース二、段階的全面開門が判決の趣旨だというふうに強調されておりますから、それらの点での理解が得られるのは非常に難しいことだろうというふうには考えております。

谷川委員 次に、確保すべき農業用水量です。

 本来、諫早湾干拓事業では、十年に一度の渇水期に対応できるよう、三百三十万トンの農業用水が確保されていますが、環境アセスでは一割の四十万トンしか見ておらず、対策としては全く不十分であります。さらに、海水導入で使えなくなる背後地の循環かんがい用水の代替水源を二百八十万トンとしていますが、実際にはもっと使っているという声もあります。

 アセスで言っている塩害、潮風害の洗い流しのための必要量は入っているのですか。今の対策で必要量が十分賄える確証があるのですか。お伺いいたします。

筒井副大臣 代替水源として、余剰河川水の利用、あるいは下水処理水の利用、さらには海水の淡水化等々をいろいろ検討したわけでございますが、また検討しているわけでございますが、そのうちの有力な手段として地下水利用ということを出しているわけでございます。そして、この地下水利用が最も工事費等々費用がかからないやり方でございます。これも、環境アセス素案の中で、代替水源として可能であるという判断をしておりますから、農業用水の確保はこれで可能だというふうに考えております。

谷川委員 小潮の対応についてお伺いします。

 小潮時には、一週間程度前から降雨の状況を見ながら調整池の水位管理を行わなければ、背後地の湛水被害を防止することは困難である。

 具体的な操作方法は示されているのですか。

筒井副大臣 開門の操作管理の問題ですか。済みません。今の質問、趣旨がよくわからなかったんですが、ちょっともう一回。(谷川委員「小潮時。大潮とか小潮とかあるじゃないですか」と呼ぶ)はい。

 大潮、小潮の潮位の差によって、まさに開門の操作をしなければならない。それに応じてやらなければ、そもそも、調整池の水が海の方に出る場合には、大潮の場合には水が出ないわけでございますから。逆の、海水の方が調整池の方に来るためには、やはりある程度の海水の方の潮位が必要なわけでございますから、それらと連動した開門操作が必要であることは明確でございます。

 それは現在においてもある程度やっているわけですが、今度、調整池が塩水になることを前提にした、そういう開門操作をきちんとやっていかなければならない問題だというふうに思っております。

谷川委員 開門時の排水樋門前や河川等に堆積する潟土の排除や排水樋門の管理は、だれが責任を持ってやるのですか。

筒井副大臣 今、国が長崎県にその開門操作を委託しているわけでございまして、その意味では、直接は長崎県にその操作をお願いするという形になります。しかし、それを委託しているのは国ですから、国もきちんとした責任を持ってこれからも行動しなければいけないというふうに思っております。

谷川委員 背後地の既設堤防は、軟弱地盤である有明粘土層上にそだを敷き、その上に透水性の高い捨て石、盛り土により築堤されており、工事中に異常沈下等が発生していました。既設堤防は、老朽化による沈下や亀裂が顕著であり、平成九年の潮受け堤防締め切り前には漏水が発生し、現在も沈下は進行中であります。調整池の水位上昇が頻繁に発生すると転倒の危険もあります。

 こうした状況について国は詳細に調査されたのか。また、調整池の水位変動に対する既設堤防の安定計算は行ったのか。空洞部分の間詰め等による小手先の対策のみで、抜本的対策は示されていないのではありませんか。お伺いいたします。

筒井副大臣 旧堤防の状況は先生おっしゃるとおりでございまして、これらはもちろん農水省としても調査しておりまして、それに対するきちんとした対策を打った上で開門する、これが前提となっております。

谷川委員 あと五分になったので、基本的なことをお尋ねします。答えにくい部分は答えなくて結構です。

 私は、基本的に、この件に関しては菅総理に対する物すごい憤りがあるんです。ですから、前回、ちょっと感情的に走って言わずもがなのことを言ったり、総理大臣という高い地位の人に失礼なことを言う可能性があるので、冷静に冷静に、沈着にやろうと思って、きょうは主に原稿を読んだんです。しかし、やはり言わなきゃなりません。

 鳩山前総理が、自分が総理のときに、局面を展開するときにはばあんと花火を打ち上げろと言いに来たと新聞に書いていました。これもそれじゃないかと僕は思っているんです。局面を展開するために、合理的、客観的、論理的には本当は上げるべきだと思うけれども、しかし、上げない方が人気が出るよと思って上げなかったと僕は思っているんです。ですから、それを受けて、専門家である大臣も副大臣も、本当に、これは立場が逆だったら大変な答弁をせんばいかぬなと思いながらやった部分が僕は感じられますよ。

 何回も言いますけれども、答弁をもう一遍読んでくださいね。何回も言いますけれども。質問と答弁の間に無理がないのか、論理的な答弁をしているのか、客観的事実に基づいているのか、言いわけなのか、言い逃れなのか、点検してくださいよ。

 もう一遍言いますが、裁判の根底にあるのを実行するとしたら、堤防を取っ払わぬとできませんよ。思いませんか。だって、何万年とかかってできた潟というのは、それはそれなりの環境の浄化機能はあるんです、あるんですよ。当然だと思いますよ。だから物すごい反対もあったんです。何十年もかかったんです。しかし、環境アセスをし、補償を払い、苦労して苦労して説得して、ようやく着工したんでしょう。

 そして、副大臣は、もう一方の長崎地裁の方は判決の途中だと言いましたが、それなら、結果が確定するまでいっときやめましょうよ。確定するまでやめましょうよ、開門の竣工、工事を。確定してからやった方が合理的じゃないですか。僕は、どうもそこが納得できないんです。

 二点答えてください。裁判を起こしている原告側の言うことを完璧に聞くならば、あれは取っ払わんばまずできませんよ。そんなことができますか、二千何百億もかけておって。

 もう一つについては、今言ったことですよ。おたくの総理が無理なことをしているんだから。だって、こんなことをするんだったら最高裁は要りませんよ。やるべきじゃないですか、上までとことん。いかがですか。

筒井副大臣 潮受け堤防全面撤去はもちろん考えられないことでございます。

 それから、上告断念については、もう御存じだと思いますが、大臣以下政務三役は、上告をして最高裁で双方和解の場所をつくりたいという意向を示したところでございますが、総理の判断で上告断念という結果になったものでございます。

 それから三点目、もう一点の、現在、長崎地裁の判決が出ているから、それが確定するまで待ったらどうかという御意見でございますが、しかし、もう既に確定判決で三年以内の開門が明確に義務づけられている、この点はぜひ御理解をいただきたいと思うんです。それが国としては義務づけられているんです。その三年以内の開門のための事前対策工事等々を考えれば、やはりもうそのための準備行動に入らなければいけないのではないか、これもぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。

谷川委員 最後に質問しますが、今おっしゃることを前提に、開門をします、そうすると、仮の話をしちゃいかぬのですが、長崎地裁の判決が進んで、また今と同じような判決が出るとしますね。そうすると、そのときにおる総理が、高裁の判決を最高裁にまた上げないとします。全く逆になるんですよ。右に行け、左に行けって、どっちに行ったらいいんですか。右に行け、左に行けという判決が出るんです。どっちかを選ばなきゃならないんです。どうするんですか。例がないんですよ、恐らく日本にはこんなのは。僕は、例がないと思いますよ、国の事業で右と左の判決が二つ出るなんというのはないと思いますよ。そういう妙なことをしているんですよ、今、おたくの総理が。だから、可能な限り延ばすべきですよ。どうですか。

筒井副大臣 可能な限り延ばすその限界が三年以内なんです。これももう議論の余地なくはっきりしているわけでございます。

 そして、最終的に、長崎地裁の判決が高裁段階で終わるのか最高裁段階まで進むのかわかりませんが、今まで多くの裁判例を見ますと、最高裁段階まで行って、下級審において違った意見が出ていたのが統一されているという場合の方がほとんどでございまして、今回も、最終的にはそうなることが予測されますが、それは単なる予測ですから、その時点になってみないとわからないところがあります。

 ただ、何回も申し上げますが、高裁判決は確定していて、それに従う義務が国に今あるんだということだけは御理解をいただきたいと思います。

谷川委員 ありがとうございました。

山田委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 きょう、私は、まず、過日の台風六号の被害についてお伺いいたしたいと思います。

 この台風は、幸いと申しますか、人命の被害が予想されていたよりも少なかった、こういうことで、余りその後話題になっておりませんけれども、大きくて強い台風、そしてスピードが遅かった、こういうことで、全国的にも被害が人命以外のところで起きているのではないか、このように思っておりますが、農林水産被害についてどのように今把握されていますか。

田名部大臣政務官 七月十七日以降でありますけれども、先生の御地元もそうですが、九州南部や西日本から東日本の太平洋側にかけて、広範囲で台風の被害がございました。特に、高知県の馬路村では、十七日からの総雨量が千ミリ以上を観測しているということであります。

 この台風の被害でございますけれども、詳細については、現在、地方農政局であるとかまた都道府県を通じて調査中でありますが、農業関係では、特に、農地、農業用施設の損壊であるとか水稲の倒伏、そして、果樹の落果であるとかビニールハウス等の損壊が確認されています。また、林野関係では、高知県を中心に、山崩れ、また林道施設等の被害が発生をしています。そして、水産関係でありますけれども、漁港であるとか、漁港海岸、漁船に被害が生じたところです。

 現在積み上げた金額では七十億円となっておりますけれども、調査が進むに従ってこの額はさらにふえることが予測をされるわけです。

 今後も、現地の意見をしっかりと聞きながら、適切に対処をしていきたいと考えています。

石田(祝)委員 この全国的な被害の状況についてはぜひ精査をしていただいて、対策もお願いしたいと思いますが、私は、先週、地元の高知県で被害の状況を見てまいりました。安芸市の穴内地区の漁港海岸、また室戸岬の漁港、そして、直接は行けませんでしたが、東洋町の野根、また土佐市、中土佐町、春野、こういうところに大きな被害があったようであります。

 特に、先ほど申し上げましたように、台風のスピードが自転車ぐらいのスピードで、それで非常に強い大きな台風でしたので、海岸地域が非常に、停滞をしている台風の風とか波をそのまま受けてしまった、こういうことになっております。

 特に、私が参りました安芸市の穴内海岸、ここは漁港海岸でありますけれども、三百数十メートルにわたって、堤防、またそこのブロック、いろいろなものが大きな被害を受けておりまして、これは市の管理の海岸でありますが、とても市単独では対応ができない、こういうことでございます。それで、被害の状況を見ますと、そして当該の安芸市の財政状況を見ますと、これは局地激甚になるのではないか、こういうふうに私は思っております。

 きょうは内閣府も来てもらっておりますので、特にこの漁港海岸の部分について、今後の対応としてどういうことが考えられるのか、御答弁をお願いしたいと思います。

長谷川政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお話がございました安芸市の漁港関係でございますけれども、大きな被害が出ておるというふうにお聞きしております。

 それで、激甚災害の指定でございますけれども、これは、御案内のとおり、まずいろいろな施設の被害状況を把握するということが大事でございまして、現在、私どもの方から各省にもお願いをしまして、関係省庁が連携をして、全体としての被害状況の把握に努めているというところでございます。

 したがいまして、現時点では全体としての被害状況を把握し切っておりませんので、いずれにしても今後の判断となりますけれども、指定基準を満たすようであれば早期に指定していきたいというふうに考えております。

石田(祝)委員 これは今後の精査ということでありますけれども、私が市を通して県からお聞きしている状況、また水産庁にお願いをして調べていただいた状況、そういうものを考えますと、被害額はこの安芸市だけで約十六億とか十七億とか、こういう金額でありますから、これが若干査定をされて七割か八割、そういう金額になっても十分これは局地激甚の対象になるだろう、私はこのように思っております。ともかく精査をしていただいて、早く対応をお願いいたしたいと思います。

 それでは、先ほどちょっと言い抜かりましたが、そのほか山の方にも参りまして、北川村というところにも行ってまいりました。その地域は大変雨の多いところで、今回の台風でも、その地域の隣の馬路村というところですけれども、降り始めからやはり一千ミリを超えると。今、谷川先生もいろいろ雨の量のことをお話しになっていましたけれども、高知県では今回、一日に八百ミリを超えて日本記録をつくった。ですから、雨というものは、我々はとめるわけにいかないわけですから、相当なものが最近は降り出している、こういうことも私は十分に留意をする必要がある、このように思っております。

 それでは、内閣府はこれで結構でございます。

 セシウムに汚染された稲わらを給与された牛の問題についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 現状、この肉の問題、また牛そのものの問題についてお伺いをしますけれども、厚生労働省にお伺いしますが、牛肉になった段階での食肉の安全という件で、今どのような対策をとっておりますか。

梅田政府参考人 厚生労働省におきましては、高濃度の放射性物質に汚染された稲わらが給与された牛の肉につきまして、流通先の自治体におきまして、流通調査及び放射性物質検査を実施するとともに、検査の結果、暫定規制値を超える牛肉については回収等の措置をとっているところでございます。

石田(祝)委員 これで、私は厚生労働省にお聞きしたいんですが、全頭検査をしてくれ、こういう声があちらこちらから出てきております。また、県独自でやろうとしているところもございます。

 この稲わらが給与された県、いろいろなところに広がっているわけですね。そうすると、これは検査したところと検査していないところが出てくると、当然消費者としては、検査済みですよ、こういうところに買い求めるに決まっております。ですから、これはもう全頭検査はやるということで御決断をなさったらどうですか。いかがですか。

梅田政府参考人 現在のところ、山形県、秋田県、新潟県及び宮城県において独自に全頭検査を行う方針を示したことは私どもも承知しております。

 この牛肉の放射性物質による汚染防止対策については、生産段階における飼料や水の管理等、飼養管理を適正に行うことが重要であると考えております。本件については、農林水産省において、原因である汚染稲わらを給与しない体制の確保が進められているところであり、まずこの対応の実行を図ることが必要であると考えております。

 厚生労働省といたしましては、自主的に全頭検査を実施する自治体については、具体的な自治体の要望を踏まえながら、必要な検査が行えるよう、関係省庁と協力して対応してまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 国として全頭検査をしたらどうかと言っているわけですよ。さっき言ったように、やったところとやらないところは県に任せていますよというのではだめですよということを言っているんだから、やると言ったらいいんじゃないですか。

山田委員長 それについて、やるのかやらないのか、どういう気持ちなのかということをはっきりお答えください。

梅田政府参考人 厚生労働省は食品衛生法を所管しておりまして、この食品衛生法に基づく検査の事務については都道府県等が処理するべきものでございまして、都道府県におきまして自主的に全頭検査をするということでありましたら、その要望を踏まえながら、必要な検査を行えるよう、厚生労働省としては支援をしてまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 それは、直接やるのはそうでしょうけれども、やはり国として方針を示してやらないと、それぞれの自治体がばらばらでやっておったら解決しませんよ。

 ですから、これは県がやるのを待っているんですか。やるということを言ってきたら応援しましょう、こういう態度ではいけないということを言っているわけですよ。

 これから稲わらの、今後はちゃんとしたものを食べさせてくださいよというのはよくわかるんだけれども、もう出ちゃっているわけですから、消費者としては一体どれがどうなのかわからないんですよね、肉になってきたら。だから、全頭検査をして、これは絶対大丈夫だよということを言わないと疑心暗鬼になって食べるものも食べられなくなっちゃう、手が伸びないわけですね。そうすると、当然今の牛肉の値段も下がってきている、こういうことが出ているわけですから、全頭検査するように指導してはどうですか。

梅田政府参考人 先ほどもお答えいたしましたように、食品衛生法に基づく検査の事務については都道府県が処理するべきものでございまして、都道府県が全頭検査を自主的に実施する場合には、厚生労働省としてもそれを支援してまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 これは、らちが明かないんですね。

 こういう事態になっているわけですから、自主的に検査するのを待って応援をしますじゃだめだと言っているわけです。これは、部長ではもうお答えがこれ以上できないということかもしれませんが、それでは厚生労働省としてはだめだ。だから、ここに出てきていただいている以上は、ちゃんと厚生労働省をしょっての答弁をしてくださいよ、自分の所管の中だけじゃなくて。それだったら、もうこれは今度から、こういう参考人ではなくて政務三役ないしそういう人が来てくれない限り委員会では質問ができない、こういうことになりますよ。何回も聞いても同じだから、もうこれ以上聞きません。

 そうしたら、大臣、この全頭検査についてどうお考えですか。

鹿野国務大臣 今、厚生労働省の方から話がありましたけれども、各県におきまして全頭検査をやりたいというふうなことにつきましては、どういう形でそれが実行されていくことができるかということも含めて、私自身も厚生労働大臣と話をしたいと思っております。

 そういう中で、全頭検査をやりたいというこの各県の意向に沿って、どういうことができるかというようなことについては、農林省としては、いわゆる機器の整備なり、あるいは施設を増加するというような必要性があるならば、それに対する取り組みをしていくというふうなことも含めて、これからも早急に厚生労働省とも話をしていかなきゃならないと思っております。

石田(祝)委員 これは、厚生労働大臣とよく話をしていただいて、県の業務だから県の自主検査に任せます、やるんだったら応援しますじゃだめだ、こういうことはぜひ私は言っていただきたいというふうに思います。

 それで、今回のこの汚染された稲わらを牛に給与した、これについてはもう今までの質問の中でもございましたけれども、三月十九日の通知については、まさしく稲わらという言葉がどこにも入っておらない、こういうことでした。

 それで、私もいろいろ聞きますと、そういう春上げというんですか、こういうことを農林水産省は知らなかったんじゃないのか。秋に刈ったらそのまま取り込んで田んぼに置かれていると思っていなかったんじゃないのか、こういうどうもおそれというか、そういうことが私は強いと思いますね。

 これは、今まで御答弁いただいていると思いますけれども、なお、そういうことはひょっとしたら知らなかったんじゃないのか、知らないで通知を発出したんじゃないか、このことについてはどうですか。

鹿野国務大臣 いわゆる今回の通知を出していただいたその内容につきまして、「サイレージなど」、あるいは等というような、等々の中で、そういう稲わらも入るというふうな認識の中で通知を出したということ、それによっておわかりいただけることができるんじゃないかというようなこと、そういう認識によって、いわゆる通知を出していただいた。

 しかし、今回のような大震災、そして原発事故というものがいかに大きなものであるかというようなことの中で、そのことを踏まえたときに、やはりもっときちっと、わかりやすく、丁寧に、そしてあらゆる方面を通して農家へ直接伝わるようなことを通知していく必要があるもの、そういうふうな認識に立って、直ちに飼養管理について、新たな形で、あらゆるルートを通じての周知徹底を図らせていただいているところでございます。

石田(祝)委員 ですからこれは、通知を出してそれが周知徹底されるかどうかという問題と同時に、その周知徹底されるべき中身がどうだったのか、この両方問題があるわけですよ。

 大臣がサイレージ等で読めるんじゃないかと。それはもう大臣が今おっしゃっている話であって、発出した当時は、今ごろ稲わらがあるはずがない、もう秋には取り込んでいるんだ、そういう思いがあったんじゃないんですか。正直なところ、これ以上大臣は言えないと思いますのでお聞きをしませんけれども、そういう点も含めて、これは私は、国にそういう意味での責任があると。

 東電の水素爆発によってそういうものが飛び散ったというのが大前提でしょうけれども、その後の対策として、三月十一日に起きて、十九日に発出をして、これでも、早かったか遅かったかというのはあると思いますよ。しかし、そういう点に二重の抜かりがあった、徹底できなかった、内容に不備があった。このことは率直にお認めになった方がよろしい、私はこういうふうに思います。

 それで、全頭買い取りをしてくれ、こういうことで、筒井副大臣は、先週、買い取りするようなことを記者会見でおっしゃいませんでしたか。その後、何か変わったんでしょうか。変わったようなことも聞きますけれども、一体方針はどうなっていますか。

筒井副大臣 私が前に記者会見で申し上げたのは、市場で出荷される直前に検査をして黒となったものについては、国による買い上げで隔離をする必要性があるのではないかと、今検討しているということを申し上げました。

 そして、きのう発表しました農水省の方針としては、第一段階といいますか緊急的な対策でございまして、市場で黒になったものについてはそこで隔離されるから、今緊急なのは、市場に既に流通している牛肉について、これを買い上げることが必要である。そして、その市場に流通しているものについては、既に検査が可能となったものと黒になったものがありますが、しかしまだ検査がなされていないものもある、グレーのものもある。そのものを含めて買い上げるということを、きのうの時点で、緊急対策として発表を農水大臣がしたわけでございます。

 その買い上げの主体が、流通関係団体が行うというふうにしたところでございまして、それも、損害賠償請求等々との関係も含めて、こういうやり方の方がより合理的であるという判断から、緊急時のものとして出したものでございます。

 今後、それをどのような形でさらに広げていくのかいかないのか、広げていくとすればどういう形でやるのか、これは今、さらに検討中だということでございます。

石田(祝)委員 同じ畜産農家から出荷される牛、これは一時期に全部出すということはないだろうと思いますから、例えばそこから出てきた牛、これは個体管理でわかると思いますよ。そうすると、そこで飼養されていた牛というのはそういう可能性がある。だから、そういう食肉から放射線が出た牛を飼っていたところの農家のものは全頭、一体一体、お金を計算して買い上げるべきではないか。

 時間になりましたから、このことはもう答弁は要りませんけれども、そういう出荷停止になったところ、牛を市場まで、屠畜場まで運ぶ業者もいるわけですね。そういうところは運ぶものがなくなっちゃっているわけですから、そういうところに対する対応も抜かりなく考えていただきたいことを要望して、終わりたいと思います。

山田委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 今まで議論があっておりますように、被災地の復旧、復興は我が国の最大の政治課題であります。農林水産業の再生というのは喫緊の課題であり、最重要問題でございます。今般の農産物の放射線汚染問題またセシウム汚染牛の問題は、すべて国の責任で、国が前面に出て補償すべきものであると私は確信をしております。被災者、農家に寄り添っていくという姿勢が政府に全く見えないし、またこの対応が遅い、このことがどれだけ被災地の復旧、復興をおくらせていくか、このことを指摘させていただきまして、質問に入らせていただきます。

 本日は、震災関連とは別になりますけれども、私の方からは、本委員会でこの後起草される有明、八代海の再生特別措置法案、その改正について、大臣を中心に質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 この有明海、八代海、先ほどからもございましたけれども、豊穣の海、また宝の海と呼ばれていたほどの生産性の高い海域でございました。私の地元の熊本県でございますけれども、北を有明海、そして南を八代海と両海域に面しております。有明海というのは、広大な干潟が広がっておりますし、また冬季を中心にノリの養殖が盛んであり、ほかの季節にはアサリ、ハマグリ、採貝漁業が営まれております。八代海では、その地形を生かして魚類の養殖が盛んに営まれてきております。

 ところが、このような豊かな海が、環境変化によってアサリの生産は低迷して、さらには平成十二年でございました、ノリの大不作が起こったわけでございます。これを機に、公明党を初め当時の与党三党の提案によりまして、この有明海、八代海再生特別措置法を成立させたわけでございます。

 この特別措置法でございますけれども、これらについては海域の環境の保全また改善に一定の役割を果たしてきたものと考えますけれども、近年は、大規模な赤潮がこれらの海域で発生するなど、まだまだ憂慮すべき問題がございます。

 そこで、農林水産省にお尋ねをさせていただきます。

 平成二十一年、二十二年には大変な赤潮被害が起こりました。その有明海、八代海における赤潮被害の状況、そしてまた、これが隣接する海域に及ぼす影響についてお伺いをさせていただきます。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のように、有明海及び八代海におきましては二年連続してシャトネラ赤潮が発生いたしまして、熊本県、鹿児島県、長崎県でブリ等の魚類養殖に甚大な被害があったわけでございます。

 熊本県では、昨年は約百八万尾、約十六億円、一昨年では約六十二万尾、約九億円の漁業被害が発生したところでございます。

 鹿児島県におきましても、昨年は約百七十万尾、約三十九億円、一昨年は約百二十一万尾、約二十億円の被害が発生しております。

 また、長崎県では、有明海や有明海に近接する橘湾においても二年連続してシャトネラ赤潮が発生し、昨年は約八万尾、約一億円、一昨年は約二十六万尾、約四億円の被害があったところでございます。

 橘湾や牛深周辺など、有明海及び八代海の周辺の海域におきましても赤潮被害が発生しております。これは、有明海あるいは八代海で発生したシャトネラ赤潮が、潮流によりまして分布を拡大したものと承知をしているところでございます。

江田(康)委員 今ありましたように、最近の赤潮被害は、有明海や八代海にとどまらずに、また長崎県の橘湾、そして周辺の海域にも広がってきているわけでございます。

 また、有明海等が閉鎖的な海域でありますから、周辺海域を通じて海水の交換が行われているものと考えられまして、これら近隣の海域の環境も有明海、八代海の環境の保全、改善に大きく関与をしているわけでございます。

 このことから、私は、有明海、八代海を再生するためには、隣接する海域も対象として、法に基づく施策の効果を隣接海域にも均てんさせるべきだ、そのように思いますが、大臣、いかがでしょうか。

鹿野国務大臣 今、江田先生おっしゃるとおりに、有明海及び八代海に隣接する海域は、海水の交換等を通じて相互に一定の影響を受けている、こういうふうに考えているところでございます。

 このために、特に赤潮等の影響を回避するための措置などは、これら隣接する海域におきましても同様の措置を講ずる、こういうようなことでその被害の防止に資するのではないか、こういうふうな考え方に立っております。

江田(康)委員 今大臣からもありましたように、隣接する海域にもこの対象を広げ、また同様の措置を講じるということで、御答弁がございました。

 さらに、最近の赤潮被害に対してどのような措置を講じたのか、水産庁にお伺いいたします。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 先ほど申しましたように、有明海、八代海周辺の海域におきまして、昨年、一昨年と大変大きな赤潮が発生しております。

 このため、平成二十二年度補正予算の赤潮被害養殖業に対する再建支援緊急対策事業ということで、底質環境の調査あるいは大型生けすの導入等の実証を行ったところでございます。

 また、平成二十三年度の当初予算によりまして、赤潮・いそ焼け緊急対策によりまして、赤潮を回避するための浮沈式の生けす等の実証をする事業を行ったところでございます。

江田(康)委員 今ございましたように、予算措置で、昨年、一昨年の被害については対応をされたわけでございます。我々は、その当時において、赤潮被害に対する特別措置法をつくってそして対応すべきだということも申し上げてきましたけれども、そのような対応でございました。

 これまでの特別措置法では、やはり、漁業被害にかかわる支援とか救済に関しては、規定を設けております。しかし、その規定は具体的ではない。より明示していくべき状況がこのように発生しているわけでございますので、大臣にお聞きしますが、より具体的に、代替となる養殖漁場の施設整備とか、赤潮の除去にかかわる措置、また被害水産業の、漁業者にとどまらず、その関係業者までの救済等をしっかり明示して、法律でもってその対応を図るようにしていくべきだ、そのように思いますが、いかがでしょうか。

鹿野国務大臣 有明海、八代海の再生というふうなものは、特別措置に関する法律におきまして、漁業被害を受けた漁業者に対する支援、救済について必要な措置を講ずることが規定されておるわけであります。

 これまでは、今話がありますとおりに、代替となるところの養殖漁場の施設の整備や赤潮の除去のための覆砂等の実証事業というものを実施したところでございますけれども、このような漁業被害者に対する支援や救済に関する規定をより具体的にすることになりますならば、赤潮被害対策を進めることになるものと考えておるところでございます。

江田(康)委員 大臣、しっかり対応をよろしくお願い申し上げます。

 次に、有明海、八代海を再生するための特別措置法では、海底のヘドロを耕うんして除去する海底耕うん、また作澪、そして砂をまく覆砂、こういうような特定の漁港漁場整備事業に対して、国庫補助率の引き上げ措置を講じているものでございます。これらの事業は、法の施行以来、対象海域で実施されてきたわけでございますけれども、この点についてお伺いをいたします。

 まず、覆砂や作澪など、有明海、八代海で実施されているかさ上げ対象事業のこれまでの実績、そして効果について、どのように評価されているのか、お伺いをいたします。

筒井副大臣 覆砂、作澪、海底耕うん、これらを今まで二万二千ヘクタール、二百億円超の事業費で実施をしてきたところでございます。

 そして、それらの効果につきましては、アサリを中心に、あるいはタイラギ、それらの漁獲量にいい影響を与えて、効果があった、非常にあったと言ってもいいぐらいに評価をされているというふうに考えております。

江田(康)委員 今申されましたように、覆砂とか耕うん、作澪、これらは海域環境を直接改善してきた事業でございまして、アサリ等の貝類の増殖に効果をもたらしている、そのような農水省の答弁でもあったかと思います。

 私も、地元を回っておりますと、熊本県の方でも宇土半島、住吉漁協や網田漁協の皆様、さらには福岡県、そして長崎県等々、アサリの増殖、この水揚げにやはり非常に効果が上がっているということで、一たん安心されるところもございました。この事業に対する評価もあります。しかし、有明海、八代海、全体的に見れば、まだまだ改善にはほど遠いことがございます。

 このような状況から大臣にお伺いをさせていただきますが、覆砂や作澪などのかさ上げ事業、この事業は大変に重要で効果のあるものでございますけれども、今後もこれを継続していくべきだと考えますが、大臣の所感をお伺いいたします。

鹿野国務大臣 今先生のお話のとおりに、海域全体では漁業生産量は依然低い水準で推移しておりますし、また赤潮も発生をするというふうなこともございますし、有明、八代海の再生というのはいわばまだ道半ばだ、こういうふうな認識に立っております。

 そういう意味で、漁業者の方々が有明、八代海の再生を実感できるように、かさ上げによる漁港漁場整備事業を初めとするところの水産振興施策というものは引き続いて推進をする必要があるものと考えております。

江田(康)委員 今大臣の方からも、この漁港漁場整備事業、特定事業においては引き続き継続していくべきだという答弁がございました。しっかりとこれを引き続き継続していけるように、起草される法案等において担保してまいりたいと思います。

 有明海、八代海においては、総合調査評価委員会というのがございます。この総合調査評価委員会なのでございますけれども、この法律の規定では、当時の与野党の合意の結果として、五年後の見直しの際に評価を行うとしているものでございまして、実態は、五年後以降においては、これは改正をして、総合調査評価委員会を存続させることをしなくてはならなかったわけでございます。しかし、当時の野党である民主党の皆さん方がこれを了とはせず、そしてその間、宙ぶらりん、すなわち、機能はあるけれども存続していない、こういうような異常な事態が続いております。

 私は、今回、民主党の皆様方は、評価委員会を恒久化していく、常設化していくということにおいては賛同が得られて、今回の法案ではこの評価委員会を再開させる、こういうことが実現するわけですけれども、しかしこの間、四年間とまった影響が大変に心配でございます。この評価委員会は、詳細な国や県の事業の調査を踏まえて、有明海の環境の状況そしてその変化について評価を行うわけです。また、その事業についても評価を行うわけです。そういう委員会が四年間空白であった、このことは大変憂慮すべきことでございます。

 今般、見直しをすることにいたしましたけれども、四年間、どのように評価委員会としては、有明海再生に向けての調査を、また評価をできてきたのかどうか、そして、有明海、八代海の再生のためには、この評価委員会が恒久化していかなければならないと私は強く思うわけでありますけれども、それに関する所感を政府にお伺いいたします。

関政府参考人 御説明申し上げます。

 有明海・八代海総合調査評価委員会は、平成十五年から十八年の四年間、二十六回開催いたしまして、さまざまな調査結果をもとに、両海域が抱える諸問題の原因や要因を可能な限り把握した上で、再生に向けた方策を提示しているところでございます。

 これは、例えば、アサリについての減少要因あるいはその再生方法、タイラギなどの有用な二枚貝、魚類等、ノリの養殖不作等、有明海及び八代海で生じております問題ごとにそれぞれの評価を行ってきたところでございます。

樋高大臣政務官 お答えさせていただきます。

 先生の方から、継続して実施されているのかという点と、あと、恒久化して活用すべきではないかということでございました。

 環境省では、平成十八年十二月の評価委員会報告において、解明すべき課題として指摘をされました貧酸素水塊の発生機構の解明及びモデル開発や、あるいは底質の泥化機構の解明などの調査研究課題について、順次調査を実施しているところでございます。また、これらの調査を実施するに当たりまして、評価委員会の委員の先生方にも御参画をいただいた検討委員会を設置させていただいて、それぞれの専門のお立場から、助言、評価をいただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、有明海・八代海総合調査評価委員会が恒久化されるということになりますれば、これまでの調査結果の評価も含めまして、有明海、八代海の環境の保全及び改善に向けて議論が深まるものと心から御期待を申し上げるところでございます。

江田(康)委員 時間が参りましたので最後にいたしますけれども、きょう起草される有明海、八代海等再生特別措置法の改正につきましては、今申し上げたようなことをしっかりと踏まえての起草案であるかと思っております。単純な延長ではなくて、有明海、八代海を再生するための拡充強化策が盛り込まれたものでございます。委員各位の皆様方、私が言うことではございませんが、この委員会でぜひとも成立をさせていただきますように心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山田委員長 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社民党の吉泉秀男です。

 週末に地元を回るわけでございますけれども、今、若い農家の人、後継者がやはりふえてきている。そして、この猛暑の中で田んぼで働く、そういう人たちがふえてきています。雇用問題なんかもそれはあるというふうに思っておりますけれども、後継者がそれぞれ農業を継ぐということの決意をしながら戻ってきた、大変喜ばしいことだなというふうに思っております。

 しかし、ただ単に雇用問題だけでなく、このことについては、やはり昨年からなってきた大きく農政の転換、いわゆる戸別所得補償制度、そしてまた六次産業の問題、こういったところの中で、意欲を持ちながら、お父さんの、先祖代々の田んぼを継いで頑張っていこう、こういう人たちがふえてきている一つの要因にもなっているんだろう、こういうふうに思っております。

 しかし、新聞報道によりますと、七月二十二日の自民党、公明党、民主党の幹事長会談で、来年度から戸別所得補償制度の見直しも含めて考えたいというのが民主党の方から出た、民主党というよりも岡田幹事長の発言があった、こういう報道がなされたわけでございます。

 私自身、この委員会の中でも、当初、去年のモデル事業から、やはり本格的な戸別所得補償制度の導入ということで、制度化をお願いしたい、そういう一つの要望も言ってきたわけでございますけれども、今年度は予算措置、それで推移をしてきたというふうになってきているわけでございます。ぜひ、いち早く制度化をしてほしいなというふうに思う一人でもございます。

 そんな面で、大臣の方に、今の岡田幹事長の見直し発言、このことについて相談なり、何かこの会談に向けての相談、そういうものがあったのかどうか、ひとつお伺いいたします。

鹿野国務大臣 今、吉泉先生からのお話の件、岡田幹事長のいわゆる発言等々は報道で承知をしておりますけれども、詳細は承知をいたしておりません。

 基本的に、この戸別所得補償制度というのは、アンケート調査等々におきましても理解がされておりますし、そして同時に、昨年を上回るところの加入者もふえておるところでございますので、この制度をより安定的に実施していくというような考え方に立って本制度をこれからも着実に進めていきたい、これが基本的な考え方でございます。

吉泉委員 ありがとうございます。

 そうすると、大臣としては、来年度のところについて、予算措置ではなくて制度化をしていくという考え方はありますかどうか。

鹿野国務大臣 これは民主党だけで法律、法制度というふうなわけにはいかない今日の国会の状況でございますので、それぞれの他党の皆様方からも御理解をいただいて、法制度というふうな形でしっかりとしたこの形を軌道に乗せていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

吉泉委員 これからもこの制度の問題について、やはり議論もきちっとこの委員会の中でもやっていかなきゃならないというふうに思っておりますし、これからの土地利用、農家の一つの経営安定、さらにはやる気、この部分を含めてきちっと、私は、一日も早く制度化をしていく、そういう方向で前向きに検討をお願いしたい、このことを要望させていただきたい、こう思います。

 それと同時に、六月六日、保安院が発表いたしました福島第一原発から放出された放射性物質の量でございますけれども、七十七万テラベクレル、この数字が発表になったわけでございます。この七十七万テラベクレルという数字というものは、チェルノブイリのときに放出をされた量の十分の一の量でございます。

 そして、チェルノブイリ原発事故では、この量は広島型原爆二百発分の放射性物質が放出をされた、こういうふうに言われているわけでございます。だとするならば、広島に投下をされた原爆二十発分の放射性物質が今回の第一原発事故で出された、この量だ、こういうふうに置きかえられる、そういうふうにも見えると私は思っています。大変な量そのものだというふうに私は思っております。

 このところの中で、今、農家のところについては、米の問題、さらには、飼料米の作付も今しているわけでございますけれども、いろいろな面で農家のいわゆる不安、そういうものが出てきているわけでございます。

 今、はっきり言って、牛肉の問題が出ているわけでございますけれども、今までの答弁の中でも、原発の放射性、この部分がやはり第一義的な、こういう一つの答弁がなされているわけでございますけれども、これだけの、保安院から出された数字の多さ、そしてまた、それが与える影響、このときの構え方、農林水産省としての危機感、これがどうであったのかということについて、まずお伺いさせていただきます。

筒井副大臣 今先生が言われました、本当に大変な量の放射性物質が出た。特に、農水関係では三月の段階で原乳に基準値を超えるものが出たということでございまして、その後、いろいろなモニタリング調査やあるいは出荷制限措置等、それらについて一生懸命農水省としては危機感を持って取り組んできたところでございます。

 しかし、その危機感を持って取り組んできた事実の中において、先ほどから問題になっております粗飼料についての通知が、内容的にも周知という点でも不徹底であった、不十分であったということを反省せざるを得ない状況でございます。

 ですから、不十分さがありながら、しかし危機感を持って取り組んできた、このことを御理解いただきたいという答弁になるかと思います。

吉泉委員 先般、福島のところに行ったわけでございますけれども、福島県は、御案内のように、日本一おいしい桃の産地でございます。その産地の方に行って、そして農家とお話をしたわけでございますけれども、その農家とお話をしている前の果樹園、これが、すべて桃の木を伐採する、すべてなくなっている、こういう一つの現状。このことを見たときに、本当にどういう言葉で言いあらわせばいいかわからない、こういう状況になった。

 私たちが考えていかなきゃならないというのは、消費者の問題と同時に生産者の問題、これをやはりどういうふうに考えていくのか、このことだと思うんです。

 山形も今、一生懸命頑張っています。山形牛もブランドです。しかし、山形の牛一頭、十万円以下なんですよ。東京の食肉市場で七月十九日に販売された。十万円以下、これは考えられますか。

 このことを考えていったときに、ただ単に法がどうだこうだ、こういう部分ではなくて、やはり生産者も消費者も安心をさせていく、さらには回復をしていく。そういうものからいえば、各県ばらばら、こういうふうな形での検査をやっても、それは消費者に対して理解は得られない。市場にも得られない。法が優先をする、こういう部分ではなくて、私は、消費者、生産者、そういう立場からいくならば、それぞれの状況については、各県ばらばらではなくて、やはり国がきちっと基準を示して、そして号令をかけていく、こういう態度が消費者、生産者を安心させていくそのものだと思っております。

 再度、このことについて、全頭検査についての考え方をお伺いいたします。

鹿野国務大臣 先ほども答弁させていただきましたが、この全頭検査というふうなことにつきましては、農林水産省といたしましても、厚生労働省、すなわち私は厚生労働大臣と話をいたしまして、県のそれぞれ全頭検査をやりたいという要望にどういう形でこたえることができるか等々も含めて、農林水産省としては、できることの体制をきちっとやっていきたいと思っております。

吉泉委員 よろしくお願いします。

 それから、もう一カ月ちょっと過ぎれば収穫時期を迎える、そういうものになるというふうに思っています。今まで、田んぼの中に、米作付、さらには飼料米作付、いろいろなところの中で、それぞれ、土壌検査を含めて、作付していいよ、悪いよ、こういう判断がなされたんだというふうに思っています。しかし、グレーゾーンのところについても、農家の判断を含めてそれぞれ作付をしてきた、こういう経過もあります。

 しかし今、わらの問題を含めてこれだけの汚染をされる、こういう現実を見たときに、収穫前、さらには今の現状段階において、もう一度この辺のグレーゾーンの検査的な部分、土壌検査を含めながらの何らかの対応をしていかないと、出てからでは遅いのではないか、こういうふうに思っておりますけれども、そのグレーゾーンの段階で作付をされた農地についてのこれからの状況について、何か対応を考えているのかどうか、お伺いいたします。

筒井副大臣 最終的には出来秋の段階で米について検査をする、こういう予定でございます。しかし、先生おっしゃるように、その前に、事前の、ある意味予備的な検査も必要ではないか、こういう御意見でございますが、それを実が実った段階で、まだ刈り取りの前の段階でやること、これらも含めて、今その方向でやっていきたいというふうに考えているところでございます。

吉泉委員 戸別所得補償制度で飼料米の作付は相当面積がふえたというふうに思っております。今、それぞれの状況について副大臣から答弁がございました。しかし、まさに私たち東北の場合、食料基地、そしてまた安全、安心、こういう中で一生懸命苦労をしてきた地域でもございます。それが、今の事故の中で、信頼も、そしてまた生産者のやる気、こういった部分も一瞬にして消える、こういう事態になっている。このことをやはりしっかり受けとめていただきながら、私どもも頑張っていかなきゃならないわけでございますけれども、今回の原発事故に対する農林省としての進め方、よろしくお願いを申し上げながら、時間になりましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

山田委員長 次に、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、理事会等において協議いたしました結果、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ました。

 本起草案の趣旨及び主な内容につきまして御説明申し上げます。

 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律は、国民にとって貴重な自然環境及び水産資源の宝庫である有明海及び八代海を豊かな海として再生することを目的として、平成十四年十一月、議員立法により制定されたものであります。

 同法に基づき、国及び関係県の協力のもと、有明海及び八代海の海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興のための施策が講じられてきたところであり、有明海における近年のノリ養殖の生産状況は、平成十一年度以前と同等以上にまで回復しております。

 しかしながら、依然として、赤潮や貧酸素水塊の発生が見られるなど、海域の環境の悪化が危惧されており、特に、近年は大規模な赤潮が発生し、有明海及び八代海のほか、これらに隣接する海面の海域においても大きな被害が発生し、地域経済に大きな打撃を与えております。

 本案は、こうした状況を踏まえ、有明海及び八代海等の再生対策の一層の充実強化を図ろうとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 まず第一に、近年の赤潮被害の発生状況を踏まえ、この法律の対象となる海域に、橘湾及び熊本県天草市牛深町周辺の海域を加えることとしております。

 第二に、特定の漁港漁場整備事業に対する国庫補助の補助率のかさ上げ措置について、平成二十三年度までとあるのを十年間延長し、平成三十三年度までとすることとしております。

 第三に、赤潮被害等を受けた漁業者等に対する支援、救済について、昨年の赤潮発生時にとられた措置を踏まえて施策の内容を明示する等、規定を充実させることとしております。

 第四に、国及び関係県による調査事項について、有明海及び八代海等の海域に流入する河川の流域における森林と当該海域の環境との関係に関する調査を加えることとしております。

 第五に、法律の施行後五年以内に行うものとされた見直しに際して評価を行うこととされた有明海・八代海総合調査評価委員会の所掌事務について見直しを行い、国及び関係県が行う総合的な調査の結果に基づいて有明海及び八代海等の再生に係る評価を行うことができることとするとともに、委員会は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の表明等必要な協力を求めることができることとしております。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとするとともに、有明海及び八代海等の海域に隣接する海域において、新たに有明海または八代海の海域の環境に起因する赤潮等による漁業被害が発生した場合には、新法に規定する施策に係る海域の範囲について速やかに見直しを行い、この見直しが行われるまでの間、当該赤潮等による漁業被害に関し、新法の規定により講ぜられる措置と同様の措置を講ずるよう努めるものとする規定を設けております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山田委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣鹿野道彦君。

鹿野国務大臣 本法案の提出に際して、議員各位の御努力と御熱意に対して深く敬意を表するものでございます。

 政府といたしましては、有明海及び八代海並びにその周辺海域の状況にかんがみ、本法案に異議はございません。御可決をいただきました暁には、その御趣旨を踏まえて適切な運用に努め、有明海及び八代海並びにその周辺海域を再生するための対策を一層推進してまいる所存でございます。

山田委員長 お諮りいたします。

 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております起草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山田委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とするに決定いたしました。

 なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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