第5号 平成23年12月15日(木曜日)
平成二十三年十二月十五日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 吉田 公一君
理事 石津 政雄君 理事 梶原 康弘君
理事 菊池長右ェ門君 理事 京野 公子君
理事 佐々木隆博君 理事 小里 泰弘君
理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君
石田 三示君 石山 敬貴君
磯谷香代子君 今井 雅人君
打越あかし君 大西 孝典君
笠原多見子君 金子 健一君
小林 正枝君 阪口 直人君
田名部匡代君 高橋 英行君
玉木雄一郎君 玉城デニー君
中後 淳君 筒井 信隆君
道休誠一郎君 富岡 芳忠君
中野渡詔子君 仲野 博子君
野田 国義君 福島 伸享君
柳田 和己君 山田 正彦君
渡辺 義彦君 伊東 良孝君
今村 雅弘君 江藤 拓君
木村 太郎君 北村 誠吾君
武部 勤君 保利 耕輔君
山本 拓君 西 博義君
吉泉 秀男君 石川 知裕君
松木けんこう君
…………………………………
農林水産大臣 鹿野 道彦君
内閣府副大臣 石田 勝之君
農林水産副大臣 筒井 信隆君
外務大臣政務官 加藤 敏幸君
文部科学大臣政務官 神本美恵子君
農林水産大臣政務官 仲野 博子君
国土交通大臣政務官 津川 祥吾君
環境大臣政務官 高山 智司君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 田中 法昌君
政府参考人
(厚生労働省医薬食品局食品安全部長) 三浦 公嗣君
政府参考人
(水産庁長官) 佐藤 正典君
政府参考人
(環境省大臣官房審議官) 関 荘一郎君
政府参考人
(環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長) 伊藤 哲夫君
農林水産委員会専門員 栗田 郁美君
―――――――――――――
委員の異動
十二月十五日
辞任 補欠選任
今井 雅人君 磯谷香代子君
大谷 啓君 渡辺 義彦君
金子 健一君 中後 淳君
福島 伸享君 柳田 和己君
森本 哲生君 玉城デニー君
伊東 良孝君 木村 太郎君
同日
辞任 補欠選任
磯谷香代子君 今井 雅人君
玉城デニー君 大西 孝典君
中後 淳君 金子 健一君
柳田 和己君 福島 伸享君
渡辺 義彦君 小林 正枝君
木村 太郎君 伊東 良孝君
同日
辞任 補欠選任
大西 孝典君 阪口 直人君
小林 正枝君 大谷 啓君
同日
辞任 補欠選任
阪口 直人君 森本 哲生君
―――――――――――――
十二月九日
一、農業等の有する多面的機能の発揮を図るための交付金の交付に関する法律案(加藤紘一君外四名提出、第百七十四回国会衆法第三五号)
二、農業の担い手の育成及び確保の促進に関する法律案(宮腰光寛君外六名提出、第百七十七回国会衆法第一〇号)
三、農林水産関係の基本施策に関する件
四、食料の安定供給に関する件
五、農林水産業の発展に関する件
六、農林漁業者の福祉に関する件
七、農山漁村の振興に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農林水産関係の基本施策に関する件
――――◇―――――
○吉田委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として水産庁長官佐藤正典君、警察庁長官官房審議官田中法昌君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長三浦公嗣君、環境省大臣官房審議官関荘一郎君及び大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長伊藤哲夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。打越あかし君。
○打越委員 おはようございます。
この臨時国会から農水委員を命じられまして、初めての質問でございます。機会をお与えいただいた皆さんに感謝を申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。
まず、離島の農林水産業の実情、課題について少し議論させていただきたいと思いますが、現在の離島における農林水産業の状況、現状について執行部の方はどのように認識しているか、まずそれをお伺いさせていただきます。
○筒井副大臣 離島においては、もう先生十分御存じのとおり、いろいろな不利な条件を抱えている中で農林水産業を営んでいただいているわけでございまして、特に輸送料、それは出す場合にも、また入れる場合にも輸送料がたくさんかかっている等々、不利な条件があるわけでございます。
したがって、この二十年間ほどで離島の生産額が四割ほど減少している。全国的には三割ほどなのに、全国平均よりもずっと高い比率で減少しているという結果になっているわけでございまして、非常に厳しい状況であることはもう御存じのとおりだというふうに思っております。
○打越委員 そのとおりです。
今お話をいただきましたが、離島の実情から申し上げますと、昭和三十年の人口を一〇〇としたときに、本土の人口は一四二、離島の人口は四五ということで、この半世紀余りの間に大体人口が半分以下になり、本土の方は一四二%になっているという実情。それを踏まえた上で、今生産額の話も出ましたが、この四半世紀の間に大体半分ぐらい、農業だけで見ますと二千八百二十七億から千四百億円余りということで、ちょうど半減をしてきたという実情であります。
その最大のネックは、いわゆる生産コストが、入ってくる肥料、農薬、畜産の飼料、あるいはビニールハウス等の資材すべてが、離島で製造されているものはありません。本土から移入をして、その運送コストを初めとした割高のコストで事業をスタートするということになります。平均しますと、本土の所得の一〇〇に対して、離島の所得というのは大体七〇から七五、であれば、仮に二割アップの資材を使った場合には、本土に比べると五割ぐらい高い負担感で事業をしているということになります。
そして、それで生産されたものを、さらに農家や漁業の皆さんは自己負担をして、送料を払って、そして本土で売っていく。かなり大きなハンディの中で闘わなければいけないという競争条件になってまいります。
今、離島の人口や高齢化あるいは産業の衰退という実情を見るときに、島をどうしていくかということになりますと、一番中心で飯を食っていかなければならない産業というのは、離島においては何が一番の中心の産業になるかは、これはどうなりますか。わかりますよね。
○筒井副大臣 いろいろなものがあるわけでございますが、サトウキビがやはり中心的な産業として不可欠なものになっているし、ほかのものはなかなか、芋等々がつくられているわけでございますし、ブランド化も一部されているわけでございますが、やはりサトウキビが中心の経営になるというふうに考えております。
○打越委員 私の選挙区を意識しての答弁、ありがとうございます。
離島の中心的な産業というのは農林水産業であるということであります。どの島においても、基本的にはこの産業でなければ定住あるいは雇用という条件を満たすことはできないというふうに思います。その中で、今のような厳しい条件が積み重なって、衰退がどんどん加速化されているというのが実情だと思います。
そこで、農水省の方として、こういった離島の現状、特に昨今は、離島については新たな役割ということで、領土的な役割、あるいはEEZなんかの拠点になる島がたくさんある。そういった国民的な役割、国家的役割も踏まえた上で、離島に人が住み続けていくための条件、産業力をつける、飯を食う種をつくってあげる、そういう意味では、農林水産省としての役割というのは非常に大きいと思いますが、この離島の産業をしっかりとサポートしていくために一番肝になる、即効力のある政策というのは、農林水産省としては何が一番中心になると思われますか。
○筒井副大臣 先ほど委員も言われました、不利な条件を少しでも緩和する、こういう対策が必要なわけでございまして、ですから、いろいろな形でその不利な条件を緩和するための措置を今とられているものと思っております。
中山間地の直接支払い制度を離島にも適用するということもその一つでございますし、基盤整備等についての補助率を他の場合よりも高めるということも一つでございますし、漁村の集落に対する支援金制度をつくった、これもその一つでございます。さらには、サトウキビ等々に関しては、センシティブ品目としてきちんと関税等々で守ってきたのもその対策の一つだというふうに考えております。
○打越委員 今までいろいろな施設整備についてかさ上げ措置をしていただいたり、特段の離島配慮をしていただいてきた歴史ももちろんあります。
しかし、現実には、今お話をしたように、一番肝になっているのは、生産をする際にコストが非常に高くつく、あるいは販売をしていくときにほかの地域の方々よりもたくさんの負担を強いられる、このことに対しての直接の支援や、今までそういったソフトの事業というのは全くありません。
本年度から離島のガソリンを値下げする、そういった事業をスタートさせていただきましたが、現実には、例えば農業、林業、漁業ということになりますと、油種の違う、重油であるとか軽油であるとか、農林水産業の場合にはそういったものの活用が多いわけですけれども、しかし、こちらの方については特段の割引があるわけではありません。現実的には、大きなハンディは背負い続けながらまだ経営をされているというのが僕は実情だと思います。
そういう中で、もう一歩踏み込んだ形で、物をつくっていくということではなくて、本当に勝負ができる土俵をつくっていくという意味では、まだまだやらなければいけないことは山ほどあるというふうに考えております。
その中で、どの離島でも、今、六次化ということを言っておりますが、柱になるとすれば農林水産物になるわけであります。それぞれの島ごとにやはり戦略作物を一つきちんと決めて、この戦略作物を中心にして六次化をしていく、産業化していく、雇用を生み出していくといったような重点的な取り組みが必要だというふうに思います。
これを特産品化する、あるいは全国のブランド化していくということになってきますと、小さな島であればあるほど、やはり特に人材が足りないというふうに感じています。地域、島を興すためにはやはり人材が非常に大事である。その人材を育てる仕掛けがなかなかない。あるいは、小さな島の場合には、島の中から人を見つけ出すことがなかなかかなわない。
そうなってきますと、特産品化、ブランド化、あるいはマーケティングであるとか、さまざまな商品開発をする際に、必要な人を派遣する、あるいはお貸しする、あるいは全国の離島の産業を支援するための人のバンクといいますか、そういったものを準備する、そういった形の中で、農林水産業を軸とした島の六次化というものを支援していくということが極めて大事だと僕は思っていますが、どうでしょうか、こうしたものについて、農林水産省は前向きに取り組んでみようと思いませんか。
○筒井副大臣 おっしゃるとおりだというふうに思います。
特に、今言われたブランド化支援事業というものもありますから、それに基づいた専門家を派遣して、いろいろな支援を行っている。そしてまた、それらに関して、種子島の安納芋のような、一定の成果、実績を上げている例もあるわけでございます。そして、六次産業化に関しても、プランナー等々専門家の支援、こういう仕組みもあるわけでございますから、それらもきちんとやっていかなければいけない。
特に離島は、先ほどから先生強調されておりますが、不利な条件をいっぱい抱えている中で、国境監視とか、あるいは物すごい広いEEZ、これをきちんと確保、維持しているという極めて重要な役割を果たしているわけでございますから、今おっしゃったような、また今言ったような、そういう支援の仕組みをさらに強化していかなければいけないというふうに考えております。
○打越委員 本来であれば、僕は、農水省が、さまざまな農林水産物の生産のコストをどうやったら下げられるか、あるいは輸送費を含めて、どうやって離島の農林水産業の競争力をつけてあげられるかというプランを予算要求するべきだというふうに思っておりましたが、ことし国交省の方で、今、離島の出荷するものについてコストを支援しようという予算要求をして、なかなか難航している状態であります。
ぜひひとつ、いろいろな角度でこのことについては僕は応援ができると思いますし、人材については、いわゆる、キャンパスを持たない、島の人材を育てる大学構想というのをぜひ進めていきたいと私自身は思っておりまして、別に建物や箱物は必要ではありません、問題は人でありますから、人を育てるためのさまざまな専門家のチーム、離島の支援チームをつくって、全国のどの島もキャンパスになり得るということで、人を送り込む。人を育てるという仕組みをちゃんとバックアップしてあげられる、こういう仕組みをぜひこれからつくり上げられるように私も努力をしたいというふうに思います。
離島関係として最後に。
大きな島になれば、耕地もあり、さまざまな特色のある農業をやることができる。しかし、小さくなればなるほど零細化して、特に、農林水産業であれば水産業にかかるウエートがどんどん高くなっていきます。耕地のない小さな島で、やはり主力になっている飯の種はもう水産業しかないという島がたくさんあります。
私も離島をずっと回ってきて、たくさん受けた要望の一つに、漁業区の設定に関して、いわゆる大中まき網船団。これは、離島にはそういう船団は全くありません。すべての離島が、ほとんどが零細で、個人で、もちろん漁業組合はありますけれども、小さな船でとっているわけですが、こういう方々が食べていくための漁業区をきちんと設定されているんだろうかという疑問があります。
きょうは水産庁の長官も来ていただいておりますが、国内の漁業者同士の調整ということになりますけれども、これについてはどんなふうに考えておられますか。
○佐藤政府参考人 御説明を申し上げます。
漁場や資源の利用をめぐりまして、適法に操業する漁業者同士の間に生じます調整問題につきましては、沖合漁業と沿岸漁業の関係に限らず、その内容につきまして、利害が相反する当事者が十分な話し合いを行うことによりまして操業ルールを定めまして解決を図ることが重要だというふうに考えているところでございます。
水産庁といたしましては、こうした当事者間の話し合いのあっせんあるいは立ち会い等を通じまして、大中型まき網漁船が沿岸漁船に配慮する取り組みへの支援とか、あるいはトラブル防止のための連絡体制の構築に努めてきておりまして、今後とも積極的に対応してまいる所存でございます。
また、大中型まき網漁船が操業禁止ラインの中でも操業しているのではないかというような疑念を払拭するために、現在、すべてのこうした船団に船舶位置監視システム、VMSと申しますが、これを設置すべく準備を進めているところでございます。しっかり対応してまいりたいと思っております。
○打越委員 各離島にそれぞれ歴史的な事情もあって、漁業区の、沿岸から何メートルというものはそれぞれの地域によって随分違うようですが、今長官からお話があったように、沿岸、沖合に、本当にきちんとした、納得した線が引かれているのかどうかということが私は一つ疑問に感じます。
それにちゃんと納得していれば、いろいろな離島からそんな声は出てこないというふうに思いますし、例えば沖合五百メートルまでは離島の漁業区である、地元の方のものであるというふうに決めてあっても、実際には、沖合に来た船団が、夜に沿岸部からずっと魚を明かりで引っ張っていって、五百メートル外まで魚を全部連れ出してからごっそりとる、こういったことはもうふだん当たり前のように行われているというのが現実であります。
船団から見れば一日とった量は、離島の人からいうと、自分たちの半年分ぐらいの漁獲になるというぐらい大きな差があります。決してぜいたくをしたいとか大もうけをしたいということではなくて、細々と漁業を成り立たせていくための、本当に自分たちの、離島に住んでいる方々がとれる漁獲だけはちゃんと守ってあげる必要がある、厳しく守ってあげる必要があるというふうに思います。
今、それぞれ、船団にはGPSを全部つける、そういった事業を展開されていると聞いておりまして、これが効果を発揮することも期待したいと思いますが、いま一つ、離島の零細漁業にとって一番大事な漁業区というのを改めてきちっとやってほしいということを要請しておきたいと思いますし、国境離島にとっては、今度は国内の船団だけではなくて国外の船団、あるいは場合によっては、沿岸のサザエやアワビのような貴重なものを密漁されているといったような報告も随分聞きます。一度テレビで報道もありました。そういった事情もよく踏まえながら、離島の小さな漁業の皆さんをしっかりとサポートしていく体制を進めてほしいと思います。
時間がありませんので、ちょっとお茶のことについて聞こうと思っておりましたが、要望だけをしておきたいと思います。
ことし、お茶の振興法を成立させて、生産、流通、消費、輸出、文化、さまざまな面でこれをしっかりとサポートしていこうという法律ができたわけですが、その一カ月後に、残念ながら、いわゆるセシウム被害がお茶にも出てまいりました。神奈川県の足柄郡でスタートをして、生葉から、あるいは荒茶から、あるいは最後は商品になっているせん茶、製品からもこれが出ました。
問題になるのは、いわゆる暫定の規制値というのを恒久的な、本格的な規制値に変えるということで今議論を進めていただいているというふうに聞いております。現実には、お茶は、ほとんどの、九九・何%の方々は、人体に取り込むときにはお茶という形で摂取するわけであります。お茶という形で摂取するのにもかかわらず、生葉であったり荒茶であったり、中には、お茶のてんぷらを食べる人もいるよね、お茶のアイスクリームを食べる人もいるよね、そういうことを前提にして、食べ物として五百ベクレルで全部統一して規制をしました。明らかにこれは僕はおかしな規制値であるというふうに思います。一日に何百グラムも生葉や荒茶を食べる方がいるというふうに聞いたことは一度もありません。現実にはお茶にして摂取をしている。
生産をする方にとっても、お茶を売る方にとっても、お茶を飲んでいる方々にとっても、胸にすとんと落ちるような規制値の考え方というのもひとつ、今厚生労働省の方で中心に進めておるようでありますが、こういう流通の現状や生産の現状については農水省の方々も十分によくわかっておられると思いますので、農水省なりにしっかりとした情報提供あるいは主張をしていただきますように強く要請申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わります。
ありがとうございました。
○吉田委員長 次に、木村太郎君。
○木村(太)委員 おはようございます。
早速ですが、質問に入ります。まず、果樹農業について質問させていただきたいと思います。
農林水産省は、TPPに参加した場合、参加しない場合の影響というものを試算として出しているわけですが、試算を出したということは、畜産はどうだ、米はどうだ、それぞれを積み重ねて試算を出したと思いますので、TPPに参加した場合に果樹農業にどういう影響を与えるのか、具体的に御提示ください。
○鹿野国務大臣 TPPに関しては、御承知のとおりに、今、交渉参加に向けての情報というもので、協議を進めていくということでございまして、今日の段階におきましては、参加した場合ということを想定した国境措置の内容や国内生産への影響というふうなものについては勉強中でございます。
ただ、御承知のとおりに、各国、すべての世界の国々が直ちに国境措置を撤廃した、こういうようなことを考えた場合は、その影響につきましては、かんきつ類は、生産減少額が百億程度、これは生産減少率からいたしますと九%であります。リンゴは、生産減少額が百億程度で、同じく減少率は九%程度、パイナップルは、生産減少額が約十億程度、減少率は八〇%、こんなふうな試算をいたしておるところでございます。
○木村(太)委員 農業者団体が独自にいろいろ試算を出しておりまして、農業者団体の方はもっと深刻な試算を出しているんですね。こういった点も農水省はしっかりととらえていただきたいと思います。
大臣に前もお聞きしましたが、総選挙のときに、当時の鳩山代表が私の地元に来まして、リンゴ農家もすべて、果樹農家全部、戸別所得の対象にする、こう大衆の前で演説をしました。去年の参議院選挙も、民主党の幹部が参議院の選挙に応援に来まして、リンゴ農家も、果樹も全部やる、こう言っているんですね。前、大臣に聞いたとき、考えはない、こう言っておりましたけれども、概算要求、そして年末に向けて予算編成、この動きの中で、もう一度聞きます、果樹農家も戸別所得補償制度の対象にするんですか。公党として選挙の公約にしているわけですから。
○鹿野国務大臣 戸別所得補償というようなことにつきましては、今、お米を、そして御承知のとおりに、対象範囲を麦とか大豆、こういうふうなところに広げたところでございます。
そういうふうな意味で、本年の二月二十五日でございますけれども、いわゆるリンゴの戸別補償の導入について質問がございました。このことにつきましては、私も申し上げたわけでございますけれども、恒常的に販売価格が生産費を下回っている状況にないということから、戸別所得補償制度の仕組みがそのまま適用されるというふうなことは大変難しいことであるという考え方を申し上げたところでございます。
このため、かわりにというような意味ではございませんけれども、しかし、果樹農家の安定というふうなものを図っていくということが非常に重要なことでございまして、このような意味から、さらに優良品目なり品種への転換等が非常に大切だ、こういうことで、果樹の改植を支援する果樹経営支援対策というものを推進することに加えまして、二十三年度からは、改植後数年間の未収益期間に対する支援措置を新たに実施した、こういうようなことでございます。
○木村(太)委員 だから、戸別所得には入れないんですよ。だから、うそついたんです。うそついたんですよ。総選挙のときにも言って、去年の参議院選挙でも言って、民主党公認の候補者も、公約に、公報にも載せて、それで大臣の答弁を聞くと、うそでした、こういうことなんですよ。だから、民主党の議員の皆さんに、一度、大臣からレクチャーした方がいいと思いますよ。
今大臣が、そのかわりにという話をしました。それでは、果樹全体の予算は、我々が政権を担っていた、編成した二十一年度と比べた場合に、二十二年、二十三年、そして来年度の概算要求、増減はどうなっていますか。
○筒井副大臣 果樹関係の予算項目は、今大臣が言われたように、経営安定対策……(木村(太)委員「増減を聞いているんです」と呼ぶ)では、数字をそのまま挙げればいいですか、果樹関係の関連予算を合計したもの。
それ全体を挙げますと、二十一年度は五十二億円、それから二十二年度は八十八億円、二十三年度は七十五億円、それから二十四年度の概算要求は六十七億円でございます。二十四年度概算要求は前年度の九〇%でございますが、これは果樹の裏年に当たるという事情もあって、九〇%、一割減になっておりますが、悪影響はないものというふうに考えているところでございます。
○木村(太)委員 先般、私どもの農林部会、また果樹の議員連盟があるんですが、そこで聞いた数字と違うんですね、今の副大臣の答弁が。
私は、党の部会で聞いた数字、金額を聞いて、では、我々のときから見ると、対前年比約一〇%ずつ減少してきているんじゃないかと指摘したら、農林水産省の担当は、そうです、こう言ったんですよ。金額の、何かマジックでも考えて今答弁したんですか。何か違いますね。
○筒井副大臣 だから、今挙げた数字の中身を当初言おうと思ったんです。今挙げた数字は、果樹経営支援対策と未収益期間対策と需給調整、加工対策との合計額を言ったわけです。
そのときの説明は、どうも経営支援対策だけを言ったようでございまして、これらを合計したものが今挙げた数字です。
さらに、今合計した三つの事業以外に、施設整備関係の予算もあります。そっちの数字も挙げますと、二十一年度が二百四十四億円、二十二年度が百四十四億円、二十三年度が三十一億円、今概算要求をしているのが二百六十三億円、こういう経緯でございます。
○木村(太)委員 だから、戸別所得の対象にしない、そのかわりに違うところで充実させるような答弁をしているんですが、金額を見ると、決して、それにかわって、ではどんどんどんどん拡充しようという動きではないんですよ。だから、そういうところが詐欺フェストにつながるんですよ。
そこで、今答弁があったことですが、支援対策、経営安定緊急対策、需給安定対策と三つの柱でやっておりますが、かつてありました経営安定対策、これを復活させる考えはありますか。
○鹿野国務大臣 重ねて申し上げますけれども、戸別所得補償制度の対象とすることはなかなか困難であるから、そのかわりにというようなことという意味もいささかなりともあるかもしれませんが、基本的には、果樹に対する施策というふうなものがどういう形で行っていくべきであるか、そういう重要性をかんがみて、今私どもからも申し上げたような施策を行っているというふうなことでございます。
そういう中で、果樹経営安定対策の復活というようなことについてお話がございますが、このことにつきましては、御承知のとおりに、平成十三年度から平成十八年度まで実施したわけでございます。こういう中におきまして、高品質果実の生産、販売に努力している産地がメリットを受けられないんじゃないか、このようなこと等々から、平成十九年度から高品質果実への改植等への支援を実施するというようなことになったわけでございまして、そして、さらに平成二十三年度からは未収益期間対策を実施するというようなこと等々においてさらに意欲を持って取り組んでいただく、こういう対策というふうなものに転換をいたしたわけでございます。
このような形で、今後とも、生産現場の要請あるいはまた生産県の独自の取り組みというふうなものも参考にしながら、果樹経営の安定につながる施策をやっていくことが大事なことではないかと思っております。
○木村(太)委員 経営安定対策を復活させる考えがあるかを聞いているんです。
○鹿野国務大臣 経緯を申し上げたわけでございまして、今のところは、直ちに具体的に復活させるというような考え方には立っておりません。
○木村(太)委員 ないんですよ。果樹のいろいろな団体の要望の一番に経営安定対策の復活があるんですね。だが、今、ないということなんです。大変残念であります。
では、次に入ります。
事業仕分けでターゲットの一つにされました、子ども農山漁村プロジェクト事業というのがあるんですね。これは私ども自公政権のときにつくりまして、平成二十年からスタートさせました。
通常国会で、当時の菅総理に私質問したんですが、その際、政府参考人が補足の答弁として、例えば私どもが予算編成しました平成二十一年のとき、文部科学省分では、三百六校で実施して四億二千万円だったのが、二十二年、二十三年は、五十九校、二千三百万円に激減させたんですね。それから、普及啓発を担当する総務省分でも、私どものときは一千六百万円だったのが、二十二年三百八十万、二十三年が三百六十万円と激減している。また農林水産省分では、二十一年度が六億四千万円だったのが、二十二年は三億八千八百万と、約六一%まで激減させたんですね。いわゆる事業仕分けで無駄な事業のターゲットにされたんです。
ボランティア的に受け入れをしていた農家なんかも私の地元にたくさんいますが、大変憤慨しております。
きょう、許可をいただいて、資料としてお手紙のコピーをお配りしました。これは、中学校の子供たちを受け入れたときに、学校に帰ってから、その中学校の子供さん、御父母、あるいは先生方が農家の皆さんにお礼の手紙を送ったんですね。それを、許可をいただいた上で今コピーとしてお配りしました。
ただ、ちょっと字が中学生らしくないと思うかもわかりませんが、実は自閉症の子供たちが体験したんですね。一枚目の上は、生徒さんの大変心のこもった手紙。下の方には、お父さん、お母さんからの手紙で、「とても貴重な体験をさせていただき、ひとまわり大きくなったような感じで、頼しく見えます。 二日間とても楽しかったと、毎日黒石での事を話してくれます。」と書いています。二枚目には、担任の先生が、これまた感謝の気持ち、そして子供たちの成長した姿を実感した手紙を送っているんですね。
こういう手紙を、子供たちや、お父さん、お母さん、先生方が農家に感謝の気持ちを送る、こういった事業が無駄な事業なんですか。我々がつくったから意地悪しているんですか。どうなんですか。
○鹿野国務大臣 いわば、事業仕分けにおきましては、こういう事業というふうなものは地方で、自治体でやってもらったらどうだろうか、あるいはまた、いろいろ工夫をしながらコスト縮減をしていくというようなことをやったらどうか、こういうようなことを受けて、予算におきましては削減をしたというふうなことでございます。
そういう中で、今木村委員から提示された、大変楽しかった等々、本当にこういう事業に対する評価というふうなもの、そしてまた同時に、コミュニティーの活性化等というふうなものにおいても評価されているということでございまして、予算というふうなことを考えたときには大変苦しい状況でありますけれども、いろいろ、取り組み内容のメニュー化というようなこと等々も含めて、子供の教育なり、あるいは農山漁村の活性化にとっても大変意義のあるというような事業でございますから、今後とも、工夫をしながら、文科省あるいは総務省とも連携をとってやっていかなきゃならないことだな、こう思っております。
○木村(太)委員 対前年比で一〇%以内減らしたのだったらわかりますが、文科省分では二十分の一になって、農林水産省分では六一%まで激減している。今の大臣の答弁と私は違うと思いますね。
次に入ります。
中国の漁船による韓国領海内における不法操業の事件がありました。一人の方が亡くなりまして、哀悼の意を表したいと思います。
こういったことが、我が国周辺、我が国の領海、あるいはその周辺でも起こり得るということを改めて感じた人は多いと思います。
そこで、大臣、尖閣諸島周辺、我が国の周辺でもこういうことが起こり得るんじゃないかという認識を持ちますか、持ちませんか。
そして、関連して、石垣の漁協の皆さんが御要望しております、しっかりとした、きちっとした灯台をつくってほしい、あるいは無線の中継点をつくってほしい、あるいは避難場所をつくってほしいということを、農林水産大臣として、水産業ということを考えた場合に、その必要性を考えていますか。
○鹿野国務大臣 中国漁船の違法操業というふうなことにおきまして、今般の韓国水域での中国漁船取り締まりというふうなものにおいて、韓国海洋警察官が殺傷された事件というものが報道されました。
私も、直ちに水産庁長官に対しまして、頭の中に、尖閣地域におけるところの船の操業等々も当然のことながら意識をいたしたわけでありまして、緊張感を持って取り組んでいくように、こういうようなことを指示いたしました。
我が国の排他的経済水域におけるところの中国漁船の違法操業に対して、水産庁のいわゆる取り締まり船が海上保安庁の巡視船等と連携をしながら今取り締まりをやっておるところでございますけれども、引き続き海上保安庁との連携というものを密にして、いろいろ具体的な対応をしていく必要がある、こういうふうなことで、国交大臣に対しましても、私どもの考え方も含めて話し合いをさせていただきながらいるところでございますけれども、今後ともしっかりと取り組んでいきたい、こう思っております。
○木村(太)委員 だから、しっかりと取り組むために、漁業者が要望しておりますしっかりとした灯台、しっかりとした無線の中継点、またしっかりとした避難場所、これを尖閣諸島につくる必要性があるかどうかを聞いているんです。
○鹿野国務大臣 避難するための漁港を整備するというようなこと等と、あるいは漁港の建設場所としての安全性を、総合的に検討するというようなことは、これは必要であります。
加えて、灯台の設置や、あるいは外国漁船の入港も想定した入国管理などの課題もあることから、尖閣諸島におけるところの漁業の整備というものは、農林水産省だけということよりは、むしろ政府全体として考えていかなきゃならぬことでございまして、慎重に対応していく必要があるものと思っております。
○木村(太)委員 今、大変重要な答弁をしていただきました。必要であると言い切りました。これは大変私は意義が大きいと思いますので、この必要であるというこの場での大臣の言葉を信じて、我々も一層努力をしていきたいというふうに思います。
では、次に入ります。
国内で生産されている農林水産物のうち、卸売市場を通じて取引されている金額、量、あるいはまたそうでないものとの割合がどうなっているのか、お聞かせいただきたい。
時間がありませんのであわせて聞きますが、市場関係者の声として、大型量販店の店頭価格に市場取引価格が引っ張られているのが実態である、こう指摘する声が高まっているんですよ。ですので、生産者、流通、販売そして消費者、それぞれお互いが利益が得られるような生産、流通、販売のシステムというものをいま一度見直しというか検討すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
○筒井副大臣 卸売市場を経由している率でございますが、これが平成元年度は八二・七%であったようですが、平成二十年度は六三%に減少をしております。これは、輸入品の増加とかがありまして、最近はほぼ横ばい状況で、六〇%前後という形を続けているようでございます。これが一つ目の点でした。
もう一つが、価格決定に関して量販店の影響力が強いのではないか、これをやはり見直すといいますか、それを是正するような検討が必要ではないかというふうな今御意見だったと思いますが、それはまさにそのとおりだというふうに私たちも思っております。その方向を何とか検討していきたいというふうに考えております。
○木村(太)委員 ありがとうございました。終わります。
○吉田委員長 次に、武部勤君。
○武部委員 自民党の武部勤です。きょうは、有害鳥獣対策とTPPについて質問させていただきます。
まず先に有害鳥獣対策についてお尋ねしますが、もう御案内のとおり、農山村、中山間地域は人口の減少と高齢化で、イノシシ、シカ、海岸にはアザラシ等の激増、そして農林水産業の被害が拡大する一方です。農業者の営農意欲が減退しますし、耕作放棄地が拡大しますし、農林水産業の荒廃を招いている、こうした悪循環に陥っているわけであります。
また、人間の居住地域にクマやイノシシ等の侵入も頻発しております。私の出身地斜里町の私の家の前、市街地ですよ、新聞にも出ましたけれども、クマがうろうろするというような実態もありまして、人への危険も現実のものとなりまして、地域によっては、私の地元でも、家の周りを網で囲って、網をくぐって外に出ていくという、まさに逆転現象と言っても過言でない、そういう地域もあるわけであります。鳥獣の増加と農漁村の荒廃、この悪循環を断ち切って、これら地域の農林漁業の衰退を防止する、鳥獣から人命を守るということは、私は国政の喫緊の課題と言って過言でないと思います。
エゾシカを含むシカやイノシシの生息数を把握し、どれくらいいるのか、そしてまた適正な生息数はどのくらいなのかを検討して、その検討の結果、毎年捕獲すべきシカ、イノシシ等の数量を明確化して、その数をしっかり捕獲、管理するということが大事なんですけれども、まず、その体制はどうなっているのか、このことをお尋ねしたいと思います。
○鹿野国務大臣 今、武部先生から指摘された鳥獣被害等々につきましては、私も、今大変に喫緊の課題だ、このようなことから、過般も伊豆の方に行ってまいりまして、現場を見てまいりました。いわゆる被害金額というものは、近年、二百億程度というふうにも言われておるわけでありますけれども、そういう数字にあらわれている以上に大変深刻な状況ではないか、こういうふうなことも実感いたしてまいりました。
そういう意味で、農林水産省といたしましては、いわゆる鳥獣被害防止特別措置法に基づきまして、市町村におけるところの被害防止計画の作成を推進して、その計画に基づきまして、鳥獣被害というふうなものの中で、有害鳥獣を捕獲する、あるいは侵入防止のさくを整備する、あるいはまた大規模なるところの緩衝帯の設置をする、こういうようなこと等々、取り組みに対して総合的に支援をいたしておるところでございます。(発言する者あり)
○武部委員 大事なのは個体数管理ですよ、今出ましたけれども。これは農林大臣の仕事なのか、環境省の仕事なのか、あるいは警察庁の仕事なのか、その辺がはっきりしていないでしょう。
それではちょっと尋ねますけれども、北海道で、国道でエゾシカがぶつかった件数は何件ありますか。もう一つ聞きましょう。JRに衝突する事故があったというのは、どの程度あると認識しておりますか。
○津川大臣政務官 お答えをいたします。
北海道の直轄国道約六千六百キロメートルで死亡した動物の処理件数でありますが、平成二十一年で約六千五百件でございます。そのうち、大型動物でありますエゾシカの処理件数は約二千件でございます。
また、鉄道についてでございますが、鉄道は列車の運休または一定以上のおくれが生じたときに国へ報告するということになっておりまして、シカを初めといたします鳥獣類によります運休あるいは遅延というものにつきましては、平成二十二年度、JR七社において三百十件発生をしております。うち、JR北海道では三十五件発生をしているところでございます。
このほかに、その報告には至らなかったような衝突についても件数を各社からそれぞれ伺っておりますが、全体で約数千件あったというふうに伺っているところであります。
○武部委員 JRは、去年は二千件以上あるんですよ。JRの例を挙げますと、一番気の毒なのは機関士ですね。仲野先生なんかよくわかるでしょう。汽車の下にシカが巻き込まれるわけですよ。それを除去しなかったら発車できないでしょう。JR貨物などは、それを除去するのにやはり二、三十分かかる。二、三十分で済むかというと、荷物は七時間平均おくれている。そういう大変な問題で、JR離れがそういったところから出てきているということも聞いています。
つまり、私が申し上げたいのは、シカの個体数管理ができていないんですね。それから、ハンターの高齢化、減少によって個体数が増加しているという問題もあることははっきりしているじゃないですか。
交通機関とエゾシカの事故防止対策について、今、六千件と言ったでしょう。それは国道も道道も市町村道も。(津川大臣政務官「いえ、直轄」と呼ぶ)直轄でしょう。皆さん方、わかりますか、直轄。国道だけで六千件、一年間で。これはもっと、国道なんかは大きいから、そんなの少ないですよ。道道、町村道なんというのはどういう状況になっているかという実態、これもしっかり具体的な対策を考えなきゃならぬ。
具体的な対策といえば、どんなことがあるんですか。では、国交省はどうしたらいいと思いますか。あなたらが一番苦労しているんだから。
○津川大臣政務官 道路についてでありますが、特に自動車、車両と大型動物の衝突ということでありますと、ドライバーの人身事故につながるという危険性も当然あるわけでありますから、衝突の防止対策が必要である、大変重要であると認識をしているところであります。
現在とられております対策でありますが、これは小動物の場合もありますが、動物が道路に侵入することを防止するさくの設置、あるいは道路の下に小さなトンネル等の通路を設置して、道路を動物が直接横断しない、トンネルの中を横断する通り道を確保するというような施策、あるいは、ドライバーに対しまして道路標識を設置して、動物が横断する可能性があることを運転者に注意を喚起するという対策をとっております。
こういった対策によりまして、全体的にその件数がどのくらい減っているか、マクロにおいて効果が上がっているかどうかという数値が出ているところではありませんが、個々設置をした、対策をとったところにおきましては一定程度の効果が出ているものと認識をしているところでございます。
○武部委員 効果は出ていません。対策は、個体調整、個体を減らす以外にないんじゃないですか。減らすためにはどうしたらいいかというのはわかるでしょう。有害鳥獣の狩猟、駆除と個体数調整の担い手、これは狩猟者の果たす役割が大きいと思いますよ。
しかしながら、狩猟人口はどうかという実態は、過去三十年間で、五十三万人から十六万人へと、三十七万人減っているんですよ。狩猟免許所持者の六十歳以上の比率が平成二十年現在で六〇%、このように高齢化しているんです。これが有害鳥獣のふえる一因というふうに、皆さん方は率直にそう思っていないんですか。狩猟人口の増大と担い手確保が急務の課題だ、私はこのように思いますよ。
それから、狩猟免許期間の延長、ライフル銃所持要件の緩和など複雑な手続を緩和する一方、射撃場の計画的な整備によって質の向上を図る等々の対策をきちっとやることが大事じゃないですか。夜ですよ、みんな大体。そんな、夜は撃っちゃだめだとか。
僕も本当に二度ぶつかっていますよ。私の息子なんかは三回も四回もぶつかっていますよ。北海道にいる人は大体、仲野さんだってぶつかっているんじゃないかな。一回ぶつかったでしょう。そのぶつかった車の修理に五十万も七十万もかかるんですよ。
農林大臣は農林水産業の被害について先ほどお話ありましたけれども、そのことが私は、まず減らす。ふえている、ふえ過ぎている。適正の数はどれだけか。そして、それ以上のものは捕獲、管理しなきゃならぬでしょう。ライフル銃というと何か、これは事件や事故と錯覚してもらったら困るんです。
例えば、こういう事例があるんですよ。沖縄のライフル銃所持者は、沖縄に射撃場がない、九州まで行くことになる。時間的、経済的な負担が多い上に、九州の射撃場で受講できる人の数は制限されている。許容量というものがありますから。だから、九州へ行けないから本州に出かける、そうでないと受講できない、こんな体制になっているんですよ。警察庁の責任じゃないのかな、こういうのは。このことが事実であるとすれば、同じ条件で受講することからは大きくかけ離れているわけですね。
どのようにしてこの不公平感を解消するのか。警察庁、答弁。
○田中政府参考人 射撃場につきましては、今、沖縄のお話がございましたけれども、沖縄ですと、ライフル銃の射撃場はございます。それと、全国的な問題ですけれども、多くの県には射撃場が、ライフル銃も散弾銃もあるわけでございます。
これの整備という点でございますけれども、我が警察庁の所管かどうか若干疑問がございますけれども、警察庁といたしましても、各種講習、射撃講習あるいは射撃教習の実施等を通じて、射撃場が整備されていくことをぜひ進めてまいりたいとは考えております。
○武部委員 全然答弁になっていないよ。持っているだけじゃどうにもならぬじゃないですか。そんな答弁で、ライフル銃の管理についてああだこうだ言っているんですよ。我々は議員立法を出しているんですよ。
それでは聞きますけれども、現行法ではライフル銃の所持許可要件は散弾銃所持経験十年が必要となっておりますけれども、散弾銃所持経験十年の根拠は何ですか、根拠は。答えられないでしょう。答えられない。答えられますか。それでは聞きましょう。
答えられなければ答えなくていいよ。時間がないんだ。明確に答えられないなら、さっきのようないいかげんな答弁じゃ、とめるぞ。
○田中政府参考人 ライフル銃の所持許可要件十年につきましては、ライフル銃が散弾銃と比較いたしますと飛翔距離の面等で極めて危険な点が多いということにかんがみて、今、十年という要件が定められている、このように考えております。
○武部委員 警察は、猟期終了後、警察において銃の検査、使用実績及び実包の購入、発砲等管理を厳格に調査しているんじゃないですか。それをきちっとやっていないんですか。つまり、猟銃関連の実包の管理は行き届いているはずなんですよ。今のような紋切り型の答弁じゃ、だれも納得しませんよ。
先ほど来、個体管理、個体調整をやりますでしょう、大幅に、イノシシ、シカ、アライグマ等々の。有害鳥獣というのは、自然生態系を超える以上のものは有害なんですよ。人間もみんな被害を受けているんだ、命を危険にさらされているんだ。それを有害鳥獣と言うことが間違っているとだれかが、そんなことを言っている政治家がいるというけれども。その辺のことも、次の機会にきちっとやらせてもらいます。
私の地元では、狩猟者の団体の皆さん方が、もし有害捕獲あるいは個体数調整に協力しないことになった場合、農林水産被害や人的被害等を含めた被害について、だれが責任をとるのか、そういう声が頻繁ですよ。狩猟に携わる担い手というのは、危険を冒してその任に当たっているんですよ。ところが、それを制限するようなことを、警察庁であるとかいろいろなところからクレームがついて、議員立法も前へ進まない。
環境省は一度も答弁していないけれども、どうするんだよ、知床だってどこだって。トドの被害だとかアザラシの被害だとか。アザラシはめんこいよ。めんこいけれども、抜海なんかは千四百頭、冬期間になれば、トドなんかも四千頭ぐらいいるというんですよ。仲野さん、わかっているでしょう、そういう被害があるというのは、それだけふえているというのは。それは、めんこいでは済まされないんですよ。
だれが責任をとるのか答えてください。農林水産被害、人的被害等を含めた被害について、だれが責任をとるのか。警察庁長官か、国家公安委員長か、農林水産大臣か、環境大臣か。責任の所在を明確にお答えいただきたいと思います。
○高山大臣政務官 武部議員から御質問いただきました。環境省の政務官です。
今の御質問ですけれども、実際、鳥獣による農業被害や人身被害が全国で非常に深刻になっているということは委員御指摘のとおりでございます。
これに対しまして、環境省としては、有害鳥獣の捕獲の強化を通じた鳥獣の適切な保護管理が重要と考えておりまして、捕獲に関する規制の合理化や、取り組みの充実に向けた予算の要求を今実施しているところでございます。
具体的には、鳥獣保護法に基づく基本的な指針を改正し、本年九月から、地域ぐるみでの捕獲を推進するということで、もちろん狩猟免許を持っている方が中心なんですけれども、狩猟免許を持たない者であっても、補助者として捕獲に参加できるようにというように、協力していただく方を非常に今ふやしていただいているというところでございます。
○武部委員 穴を掘って、落とし穴でやるんですな。網でやるんですね。そんなことでは実態は解決しません。
これは我々は議員立法を出して与野党の協議をお願いしてきたところなんですけれども、先般、余りにもひどいということで、我が党の石原幹事長と民主党の輿石幹事長の会談の際にこの問題を提起されたそうです。輿石幹事長も山梨県ですから、一番鳥獣被害の多いところでしょうから、すぐ実態を正確に感じ取って、これは急がなければならないということをおっしゃっていたようであります。
警察がかなり抵抗しているようですけれども、先ほどのような答弁じゃ、国民が聞いたら、あるいは狩猟免許を持っている人たちが聞いたら、もう今後は協力しないということになりますよ。環境省だって、きれいごとを言っているけれども、結局はハンターを確保しなくちゃならぬじゃないですか。その人たちをどうやって確保するか。技術、技能を向上させるか。
それから、シカでも、夜に出るんですよ。夜、日没後。日没後はだめだということになっているけれども、それは何らかの形でそれができるような、管理下で、自治体の管理下とか協議会の管理のもとにやるとか、そういう方法はあるはずであります。
それから、十年を私は直ちに、我々の法案では五年となっているけれども、そのことについても知恵があるはずじゃないですか。議員立法なのに、ただ警察はだめだだめだと、あちこちふれ歩いているなんというのは本当は許されない話ですよ。国会は国権の最高機関なんですから、もう少し謙虚に対応してもらいたい。
そして、この問題については農林大臣が一番わかっているはずですよ、有害鳥獣の被害で生産者が苦しんでいるということは。そして、中山間地域などは荒廃して、これはみんな離農の原因の一つになっているんです。
それから、自然生態系が狂っているというのは環境省はわかっているでしょう。知床も大変じゃないですか。シカはえさがないから、木の皮を食うんですよ。子ジカのバンビ、かわいい。アザラシだってかわいいですよ、我々もかわいいですよ。だけれども、もう個体数がはるかにその限度を超えているという実態、これを正確に調査してくださいよ。その上で、捕獲、管理する頭数はどれだけかということを明確にしてくださいよ。そのための対策、担い手も含めて、どうするかというのを早くやってください。このことを強く要請して、次の質問に入ります。
次はTPPの問題でありますが、十三日にTPP交渉チームの枠組みをつくったと聞いておりますけれども、チームの目的と役割はどんなことですか。大臣にお伺いしたいと思います。
○鹿野国務大臣 基本的には、交渉参加に向けて関係各国と協議に入るというふうなことで、次の大事なことは、こういうことでありますけれども、関係各国が我が国に対してどういうことを求めるのかというふうなことをしっかりと把握する、そのことを国民の皆様方に情報をできるだけ開示して、そして、いろいろと議論をしていただく中で判断をしていくというふうなことだと思います。
○武部委員 そもそも論で伺いますけれども、大臣は、TPP交渉に賛成ですか、反対ですか。
○鹿野国務大臣 私は、基本的には、賛成とか反対とかというようなことではなしに、TPPというふうなものは我が国にとってどういうメリットがあるのか、あるいはデメリットがあるのかというようなこと等々をしっかりと判断する、そういう意味において、各国が何を我が国に求めるかというふうなことをとらえていくことが大事なことだと思っております。
○武部委員 それでは伺いますが、TPPに参加すること、しないことについてのメリット・デメリットについて、どういう御見解をお持ちですか。
○鹿野国務大臣 そのために、いわゆる市場アクセスだけではなしに、御承知のとおりに、二十一分野にわたっての交渉がなされておるというふうなことも聞いておるわけでありますから、多岐にわたった分野でございますので、それだけに、それぞれの関係国が我が国に対してどういうことを求めるのか、こういうふうなことをとらえていくことが大事なことだと思っております。
○武部委員 TPPの交渉が締結された場合に、最終的には関税撤廃ということになると思うんですね。となりますれば、食料・農業・農村基本計画でお示しになっております、食料自給率を十年間で一〇%アップするということとどういう関係になるのか。これは両立できるのでしょうか。
○筒井副大臣 食料自給率を五〇%にするというのは大きな目標でございまして、すべての関税を農林水産物についてゼロにした場合に、自給率が一三%に減少してしまうという試算を農水省は出しております。ですから、極めて慎重にこれらの問題を考えていかなければならないし、万が一ということになった場合にはいろいろな抜本的な対策をとらなければいけない。
先ほど申し上げた一三%というのは、何らの対策をとらなかった場合の試算、数字でございます。
○武部委員 我が国は、多様な農業の共存という考え方に基づきまして、いわゆる重要品目、センシティブ品目、米、麦、砂糖、牛肉、乳製品などについては関税撤廃の対象から除外するという基本方針を掲げているわけであります。WTO交渉のときにもそうでありました。この考え方はしっかり堅持するということですか。
○筒井副大臣 まだ交渉参加自体が決まったわけではありませんし、それを前提とした協議でもありませんから、今後の動向を注視しながらやっていかなければいけないと思いますが、いずれの場合においても、今先生が言われましたセンシティブ品目に関する関税はきちんとしていかなければならないというふうに考えております。
○武部委員 まだ交渉に入ると決めたわけでもないということなんですけれども、農業などは息の長い事業ですよね。ですから、このTPP交渉について関係国と協議に入るということ自体、現場では、自分の仕事、生活にとっての死活問題ですから、もう来年に向けていろいろ考えているんですよね。
ですから、私は、農林大臣は明確にこのことをしっかり守るという、あるいは守れない場合、TPP交渉、これは締結したら、最終的には関税撤廃でしょう。そうなると、農業を守る、例えば麦なんかはどうなりますか。これは今、国家貿易品目でしょう。もし関税撤廃したときには、製粉工場も何もかもが成り立たなくなるんじゃないですか。砂糖でもそうですよ、製糖工場も。しかし、そういった心配をさせないというんであれば、どれだけの予算が要るのか。北海道の農業がどうなるのか、あるいは地域がどうなるのかということについて、まずはそのことについて明確な方針を打ち出して、心配するな、一緒にやろうということが先決だと思うんです。
決まってからやりますじゃ話になりませんよ。しかも、基本計画があるわけでしょう。基本方針もあるわけじゃないですか。そのことはしっかり守り抜くということじゃないんですか。そのことをもう一度お伺いします。
○鹿野国務大臣 基本的に、我が国は貿易立国として、二〇二〇年までにFTAAPというふうなものを構築していきたい、こういうふうな考え方において、一つの考え方としてTPPというふうなものが現実的にもう動いておるわけだから、そこに向けてどうあるべきかというふうなことは当然検討していかなきゃならないということから、交渉参加に向けて関係各国と協議に入る、こういうようなことに相なったわけでございますが、そういう中で、どういうようなことが現実的に我が国に対して求められるかというふうなこと等々は、市場アクセスの中で、農林水産物については大変センシティブな問題としてとらえていかなきゃならない。そういう中で、現実、どういうようなことが求められるかというふうなことをやはり把握するということでありまして、そういう意味では、今後、具体的な取り組みというふうなことがなされる前におきまして関係各国の考え方をとらえていく必要がある。
同じような答弁でありますけれども、そのことが大事なことであり、そして、そのことを国民の皆様方にできるだけ提示していくというふうなこと、そういう中で判断をしていくことが大切なことだと思っております。
○武部委員 政府が、菅総理のときの答弁も、農業者は平均年齢が六十八歳だから、六十六歳と言いましたか、黙っていてもだめになるんだと言ったけれども、北海道は違うんですよ、五十六歳ですから。五十六歳というと、イギリスは五十七歳、アメリカも五十七、八歳ですよ、北海道の農業就業者の年齢はアメリカやイギリスよりも若いんです。今、毎年六百から七百の新規就農者が出ていますけれども、みんな二十代、三十代ですから、その点、専業地帯、主業地帯である北海道と全国各地とは違うところもあるんですね。だから、正確に、全国一律で議論してもらうようなことでは困るということを申し上げておきたいと思います。
それから、農業の役割というのは他の製造業などの産業と違う。経済原理、経済的な価値、そういう論議が横行して、この間テレビを見ていたら、日本の企業がなくなっても、アメリカの企業が入ってきたら働く場所はちゃんと残る、そういう議論を堂々としているんですよ、経済学者が。
だけれども、私、大臣のときに、農林水産省がほかの役所と一緒になるなら環境省じゃないかと言ったことがあるんですよ。例えば湿原、釧路湿原、サロベツ湿原、あの湿原の再生事業はだれがやっていますか。環境省の職員じゃないですよ。農林省の職員ですよ。湿原の開発、湿原を草地にするためには水を取らなくちゃいけない、また湿原をもとに戻すには水をたたえなくちゃいけない、そういう技術は農林省にあるんですよ。
それから、自然の価値ですね。農林省の役割というのは、命の源である食料の安定供給や環境、国土保全、地域社会の維持など、いわゆる多面的機能を果たしている。これは日本の国の成り立ち、日本の民族性にかかわる重要な問題だという認識を我々は持たなきゃならないと思いますね。余りにも経済的な価値の話ばかりが横行している。そういうことは農林省や環境省がしっかり発信してもらいたいと私は思うんです。
こういう例があります。例えば、国土に占める森林面積の比率、日本は世界で何番目だと思いますか。フィンランドに次ぐ二番目ですよ。六八%が森林面積ですよ。イギリスは、産業革命によって森林破壊してしまって、森林面積は今は一三%になってしまっているんです。
また、先日、月尾先生のお話を聞いて、日本文化の源というお話で、神社を境にその上を奥山という、神社を境にその下を里山という。奥山には人が立ち入らない、そういう不文律がかつてあったということですね。そして、里山に限って自然を利用させてもらう、使わせていただくという概念、これが工業大国、人口密度大国で、森林面積七〇%近い、六八%を守ることができた日本の成り立ちなんですね、仕組みなんですね。
大臣、ことし六月に世界農業遺産に我が国では二カ所登録されましたが、それはどこですか。
○鹿野国務大臣 能登、佐渡だと思っております。
○武部委員 さすが農林大臣です。
世界でこれまで八カ国、世界農業遺産というのが登録されていたんですが、それはみんな発展途上国です。そして、先進国で日本が初めて世界農業遺産の登録を受けたんですね。
もう一つ、自然という言葉が使われるようになったのは、いつからだか御存じですか。
○鹿野国務大臣 わかりません。
○武部委員 そうですか。いや、私もこの間までわからなかったんだから、わからなくて当然と思うんですが、京都女子大学名誉教授の徳永道雄さんは次のように指摘しているんです。
自然という言葉は、現在ではシゼンと読みますが、明治以前にはそんな読み方も意味もなかった。自然は必ずジネンと読まれておりまして、世界とか宇宙の働きそのものを意味していたということですね。例えば、親鸞上人は、阿弥陀様やお浄土、さらにその働きがジネンそのものだととらえていたということです。つまり、人間と自然界の間に線を引かない。人間も自然界もそれを超えたジネンのうねりの中にあるというような精神風土が培われてきたこの日本、このように指摘しているんですね。
私は、自由貿易に必ずしも反対じゃありません。しかし、日本の国の成り立ち、二千六百年。日本が今日、森林面積もしっかり守り、それぞれの地域に行ったら鎮守の森があるじゃないですか。そこからスタートですよ。やはり、自然の恵みに感謝する気持ち、自然の脅威を恐れる謙虚な気持ち、これが日本人の心のふるさと、魂の源流だと私は思います。おいしい水、きれいな空気、豊かな海、肥沃な大地、元気なふるさと、これがあって初めて、美しい日本、明るい日本ということが可能になると私は思うんですね。
そういう意味で、TPP、関税撤廃で、安い農産物が外国から入ってきてもいいじゃないか、そんなことを安易に我々は許せない。日本の国の成り立ちにかかわる大問題だということを、大臣はよくわかっていると思いますけれども、このことを強く発信してくださいよ。
それから、自然のありがたさというものをお金に換算したらどのぐらいになるかということは、世界各国でやっているんですよ。そのことを、例えば田んぼの価値はどれだけですか。田んぼが自然を維持している価値を金額に換算すると、どれだけですか。
○鹿野国務大臣 水の涵養等々ということも含めて、いわゆる全体的には四兆五千億程度、こういうふうな試算も出ておるということであります。
○武部委員 私が調べたのは八兆四千億ということですが、世界の自然の価値は三千三百兆円だそうですよ。だから、そういうことを、いわば欧米の皆さん方の考え方と違うと。我々日本は、二千六百年の歴史の中から培われてきた文化があるんですよ、魂があるじゃないですか。私は、日本らしく、日本人らしくということを大事にしたいと思うんです。そういう意味で、農林水産省や環境省の役割、使命というのは大きいですよ。国の形にかかわる大問題である。
もう一つ言いますと、これも私、調べてびっくりしたんですけれども、今、日本の人口が一億三千万を割りましたね。五十年前は八千九百万人ぐらいだった。これから五十年後には、また八千九百万人から九千万人になるんですよ。しかし、かつて日本列島に住んでいたのは四千万人ぐらいだった。その後、人口は急増しましたが、今、九千万人は海の上に住んでいるんですよ。それだけ日本の土木技術がすぐれているということも言えましょうけれども、ここはもとは海でなかったですか。環境省、わかる、ここ。霞が関は海でなかったですか。永田町は海でなかったですか。
○高山大臣政務官 武部先生から御指摘のことは、環境省ができるはるか以前の太古のことだと思われますけれども、そこは正確には存じてはおりません。
○武部委員 要するに、我が国は、かつては当然、狩猟民族と言われたんだろうと思います、太古の時代は。しかし、いろいろな農耕技術が入ってきて農耕文化になり、これを取り入れ、そしてもっと大事なのは共同社会ですよ、集落とか。この集落の連携、結び合いが、一つの町になったり、都市になったりしていたはずなんです。それが戦後変わってしまったということは我々も深く反省しなきゃならないけれども、ここでしっかり歯どめをかけて、このTPPの議論も、経済的な原則だけじゃなくて、もっと国の成り立ち、そういう意味で、農林水産省、農業だけよけりゃいいというものではない、もっと大事な問題があるんだということをぜひ大臣は肝に銘じていただいて、そして発信してくださいよ。農林水産大臣が一番発信すべきですよ。農林水産大臣がこのことを契機に総理大臣になるべきじゃないですか。私はそう思います。
以上申し上げて、質問を終わります。
○吉田委員長 次に、江藤拓君。
○江藤委員 自由民主党の江藤拓でございます。
大臣、実は、きのう口の中を大工事いたしまして、ちょっと滑舌が悪くて、口が余りあきませんので、聞こえづらい点があったらお許しをいただきたいと思います。
TPPについて主に質問させていただきますけれども、まずは東日本大震災についてお尋ねをいたします。
六月の十七日に、私、畜酪の委員長で行ってまいりました。飯舘村、よく御存じだと思います。大変厳しい対応でありまして、大変しかられたわけでありますけれども、ずっと黙っていらっしゃった村長さん、この村長さんが、菅野さんとおっしゃいますけれども、この方が最後に、江藤君、我々六十を超えた人間がこの村に残る、除染作業をおれたちの手でやらせてくれ、そして、予算とその執行権を我々の村に渡してくれ、被曝をしても我々はこの村のために命をささげたいというふうにおっしゃいました。
これこそが今、政治家に求められている本当の資質だと私は思いますよ。すばらしい覚悟、私も、何か忘れていたものを、忘れてはいなかったんでしょうけれども、改めて思い知らされたような思いがいたしました。
今回非常に残念なのは、予算委員会でも申し上げましたけれども、口蹄疫での教訓、これが今回の震災でも生かされたとは到底言いがたいですね。口蹄疫のときは、国、県、市町村、それぞれ対策本部をつくって、国からはがんがん言ってくる、そして現場では口蹄疫がどんどん広がっていって、人手は足りない。パニック状態でした。県は板挟みになって、もう何やかんや、わけのわからぬようになってしまう。そういうことで、対策おくれ、国も埋却地を最後まで示してくれることはありませんでした。
そういったことを今回の震災の対応にぜひ生かすべきだったと私は思いますが、それができなかった。しかし、それが復興庁の設置ということにつながったということでありますけれども。これは与党だけを責めるのではなくて、我々政治家全体としてやはり反省をしなければならないと思います。来年の作付の問題もありますから、大臣として、特に農林水産行政についてはスピード感を持って対応していただきたい、このことをまずお願いさせていただきたいと思います。
次に、除染についてお尋ねをさせていただきます。
ここは農林水産委員会ですから、除染は別に農業に関してだけやるべきことではありませんけれども、農地、それから森林、これに関して必要な除染の面積。それから、今どれぐらい進んでいるのか、タイムスケジュール。これをやるとなれば、どんな方法があって、どれぐらいの予算が必要なのか。そういうことについて検討が進んでいれば、この場で御答弁をお願いします。
○関政府参考人 農用地と森林の除染が必要な面積等につきましては、今後の調査や除染実施計画の策定により明らかになるものでありまして、残念ながら、現時点では環境省としては個別には把握しておりませんけれども、放射性物質の対処の特別措置法に基づきまして、農用地や森林も含めて、除染を実施していくこととしております。
この特措法に基づく基本方針におきましては、「農用地における土壌等の除染等の措置については、農業生産を再開できる条件を回復させるという点を配慮するものとする。森林については、住居等近隣における措置を最優先に行うものとする。」とされているところであります。
今後は、この基本方針に基づきまして国または自治体が策定いたします除染実施計画に基づきまして、除染が実施されていくこととなります。
○江藤委員 私も今度はシャドーキャビネットの環境副大臣をやることになりましたので、皆さん方とはこれからしょっちゅう顔を合わせることになると思います。
ガイドラインをつくっているんでしょう。ガイドラインをつくって、週明けには対象地域を指定する。しかし、このガイドブックが百六十ページもあるというのは一体何ですか。やはりこういうものはもっとわかりやすくしなきゃ、もっとわかりやすく、簡略に、要点をまとめて。
実際には、同法が全面施行するのは来年の一月からですから、まだ時間があります。だけれども、きょうの段階で、環境省として全く把握しておりませんという答弁は余りにも残念じゃありませんか。環境省は今までの環境省じゃないんですよ。予算の規模を見てくださいよ。今度は何倍になるんですか。もっときっちりと自覚と覚悟を持って、責めているわけじゃありませんよ、これから残された年末の期間、全力を挙げてください。このことを申し上げておきたいと思います。
それから、花粉の問題もありますからね。私の同僚の三区の古川議員、彼は大変な花粉症なんですよ。花粉に乗って放射性物質が飛んでくるんじゃないかという不安も一般の国民の中にあるわけですから、私としては、森林に、林野庁にがんと金をつけて、列状間伐をどんどん行って、そして、住宅地に密接した森林の除染だけじゃなくて、徹底した除染活動をする必要があると思います。なかなか御答弁は難しいと思いますから、御答弁は求めません。
次に、福島原発の周辺で野生化した牛について、予算委員会でも鹿野大臣には御答弁をいただきました。
七月二十八日、やはり畜酪委員会で行ってきたんですけれども、よくぞ畜産農家の方々も牧場を見せてくださったと思いますよ。見せたくなかったと思います。行ってみて、足がすくむ思いというのはああいうのを言うんですね。ぞっとしました。えさが食べられない、つながれたままの牛は、さくから首だけを突き出して、首から下は白骨化、不思議に首から上だけは毛が残って、ミイラになっていました。それがずらっとつながっているんですよ。そして、つながれて生まれた子牛でしょう、ちっちゃい子牛が干からびてミイラになっていました。
何と人間というものは罪深い生き物なのか、私たちは何ということをしてしまったんだというふうに思いました。そして、きちっと尊厳を持って、畜産農家の気持ち、家畜に対する感謝の気持ちを持ってきちっと対応してくださいということを、五月の予算委員会で大臣に私は申し上げたじゃないですか。しかし、これは新聞報道によるものですけれども、いわゆる野生化した牛、対応できたのはまだ全体の一割だというふうに言われております。
鹿野大臣は、予算委員会のときに何と御答弁されたか。もう全部は言いませんが、原子力安全委員会に対して要請をしますと。そういった話じゃないんですよ。原子力安全委員会に要請して済む話じゃないんですよ。これこそ政治主導でやらなければ、農林水産省が前面に立って、基礎的自治体や県と協力してやらなければ進まないことなんですよ。
あれから半年以上の時間がたちましたが、新たな対策、方策は立てられましたでしょうか。御答弁をお願いします。
○鹿野国務大臣 今、先生から言われたとおりに、警戒区域におけるところの家畜のことにつきましては、何遍かにわたりまして具体的な御要請もいただき、また御指摘もいただいてまいりました。そういう中で、この取り組みというものは特殊な取り組みにもなるわけでございますので、農林水産省がみずから取り組んでいかなきゃならないというふうなことは、言われるとおりに、私自身も指示を出してきたところでございます。
そういう意味で、現在も専門職三名を県庁の方にも常駐させ、そしていろいろな意味で、これまでの処分につきましても、延べでございますけれども、九十六名の職員等々がかかわりをいたしてきたところでございます。
そういう中で、これまで、警戒区域内の空間線量の低い地域におきまして、豚約三千二百頭、牛約七百五十頭の捕獲、安楽死の処分を実施いたしております。
さらに、今やっておることは、今後、緊急時避難準備区域の解除や、あるいは警戒区域内へのマイカーでの一時帰宅の機会が広がるだろう、こういうことを踏まえて、危険防止ということもあるものですから、放れ畜の捕獲を優先して対処いたしておるところでございます。
このために、当省職員あるいはセンターの職員というものを、家畜衛生所に四名、そして、いわき家畜衛生所に六名、こういうふうなことで派遣いたしまして、この捕獲等々を急いでというふうなことの対処をさせていただいているところでございます。
○江藤委員 今大臣がおっしゃったように、車にぶつかったり、人に被害を与えたりしているんですよ。私が行ったときも、遠くの木陰から、牛が集団になって、こっちをじいっと見ていました。
現状の把握が甘いですよ、大臣。十カ月以上たちました。そして、おなかに子供の入っている牛も一部放たれました。それが今さまよっているわけでしょう。当然もう出産を終えて、いわゆる繁殖能力を身につけつつあるんですよ。交尾ができるようになりつつあるんですよ。どうするんですか。
そして、雪でしょう。私が行ったときは青々としている地域でしたけれども、食べ物がなくなれば南下していきますよ、食べ物を求めてどんどん。さらに事態は困難になる。周辺市町村、県境を越えて、いろいろな問題がこれから起こってきますよ。大臣が御努力されていることは今の御報告で一定程度理解をいたしましたが、もうちょっと本腰を入れてやらないともう手おくれかもしれない、こんなに雪が降り始めてしまったら。ぜひこのことについてはもう一度、省に帰られて、対策の強化をお願いしたいというふうに思います。
それから、稲わらについても当委員会でも何度もやりました。どうしていまだに畜産農家に、汚染された稲わらが積みっ放しになっているんですか。新たな風評被害であるとか、人に対する健康被害が及んだら、どう責任を、だれがとるんですか。何でできないんですか。これは国の責任でやるのが当たり前な話なんですよ。密閉コンテナでも何でもあるじゃありませんか、知恵を出せば。どうしてやらないんですか。
何か御答弁することがあれば、お願いします。
○鹿野国務大臣 今御指摘をいただいた点は本当に重要なことでございます。私自身もそういう認識のもとに、特に十万ベクレルを超えている稲わらの扱いについては何としても急いで対処しなきゃならない、こういうふうなことで、農林水産省から出向いて、いわゆる隔離一時保管の実証作業というものを先行実施いたしております。
そういう中で、福島県は十一戸あるわけでございますけれども、作業終了が十戸でございます。今打ち合わせをしておるところが一戸でございます。それから、栃木県は三十二戸ございます。作業終了が九戸、今作業中が十四戸、打ち合わせをいたしておるのが六戸、こういうふうなことでございます。
本当に、健康を守るというふうなことも含めて非常に重要なことでございますので、私どもとしては、重ねて申し上げますけれども、今日までも農林水産省がみずから職員が出向いて対処しておるということでございまして、今後、県とも連携をとって、一刻も早い対処をやってまいりたいと思っております。
○江藤委員 現実の戸数、進行状況まで御丁寧に御答弁いただきまして、ありがとうございました。
責めれば、とにかく遅いですよ。この段階でこれですからね。本当はもう、こんなことは数カ月前に終わっていなければならなかったことです。でも、今責めてもせん方なきことですから、スピードアップをよろしくお願いします。
それから、株式会社の農業参入についてちょっとお尋ねをします。
復興特区法が成立をいたしましたね。これによって農地転用等の規制は緩和されることになったわけでありまして、報道等でも、塩害を受けた農家が大規模に農業生産法人でやろうと。まだ二、三年はかかるようなことで、私もまだ現地へ行っていないのでよくは知りませんけれども、ぜひ行ってみたいと思っております。
そうすると、どうも民主党さんの中でよく言われるのは、農業は成長産業なのであると。私もそうあってほしいと思いますよ、成長産業であってもらいたいと。そして、テレビを見ると、評論家の皆さん方が何をおっしゃるか。日本の農業は成長産業であるのにもかかわらず、企業の参入を認めていないのが一番の問題だということを何か最近、毎日耳にするような気がしますが、こういったいわゆるテレビに出演しているコメンテーターだか学者だか知りませんが、そういう人たちの農業に対する企業参入について、大臣はどのようにお考えになっているのか。御答弁をお願いします。
○鹿野国務大臣 この件につきましては、江藤先生も直接かかわられて、平成二十一年でございますけれども、まさしく画期的な農地法の改正が行われて、賃貸によりましてやる農業に参加したい人は参加できるというような仕組みをつくられたわけであります。こういうものを受けて、現実的にも、この改正がなされた施行後一年十カ月たつわけでありますけれども、新たに六百十八の一般法人が農業に参入しておるわけでありまして、この改正というものが大きな意味を持っておるというふうなことでございます。
そういう意味で、私どもも、この農業というふうなものを今後どういう形で食料の安定供給に結びつけていくかというようなことを踏まえて、国民の人たちにこの改正がなされた意味というふうなものをできるだけ発信いたしておるわけでございまして、正確なるさらなる情報というものを提示し、国民の人に理解をしてもらうというようなこと等々に努力をしていかなきゃならないと思っております。
○江藤委員 農地法の改正の話を長くすると時間が足りませんのでやりませんが、これについてはかなり厳しい要件を設けてありますよね。ぱっと来て、ぱっとやって、ぱっと帰っちゃだめよとか、平たく言えば。しかし、そういう議論ではないんですよ。もっと門戸を自由に、だれでも農地を取得して農業をやれるようにすべきだという議論が世間で蔓延していることに対して、私は危機感を持っているわけであります。
さらに言えば、この復興特区法については、漁業についても株式会社の参入を認めるようになるんですか。これは私の質問なんですけれども。
水産特区で随分話題になりました。知事さんを中心に、大規模の参入を認めて、やろうじゃないかと。気仙沼あたりとか、それをやろうじゃないかと。だけれども、これまで漁場を守り、そして伝統的にその地域を守ってきた漁師の方々は、やはりこれについては極めて否定的な御意見を持っていらっしゃる。
本当の復興というのは、水揚げが揚がれば復興ということではありませんよ。被災された方々がもう一度船に乗って、大海原に乗り出して、そして再び漁を行い、水揚げをする、これが復興じゃありませんか。魚さえ海からとってくればイコール復興だというのは、私は間違いだというふうに思います。
この復興特区法で漁業に対して株式会社の参入を認めることになるのかどうか、大臣としての御所見を求めます。
○鹿野国務大臣 株式会社もオーケーというふうな形にはなるわけでございますが、基本的には、地元の方々、それから漁業の関係の組合の人たちともきちっと話をなされていくというふうなことが非常に大事なことだという認識でおることは間違いございません。
○江藤委員 船は、大型化して高性能レーダーを積むと飛躍的に漁獲高が上がるんですよ。これは私の地元でも実証済みです。大体、まき網でも三億、四億かけて船をつくれば、今までとは全く違う漁業になります。とにかく、金を持っている人間が、関係ない人間が、地域の漁民の意思も踏みにじって、そこで漁業経営をやるということだけは決してないように、今大臣が言われた趣旨にのっとった形になるように、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。
それでは、大分時間がたってしまいました。まだ三十ページ中六ページしか終わっておりませんけれども、TPPについてお尋ねをさせていただきます。
野田総理は、何が何でも国益を損ねてまで参加することはないと。いい言葉です。参議院の予算委員会で明言をされましたね。私は、この国益というのは何かなというふうに考えるんですよ。国益というのは、名目GDPが二%成長するとか三%成長するとか、私はそんな話ではないと。先ほど武部委員からもお話がありましたけれども、やはり日本の国のありよう、形、この間ブータンの国王も訪日されましたけれども、決して経済的豊かさだけが国の豊かさではないんだということだと思います。
私は大臣に個人的見解で結構ですからぜひお答えをいただきたいんですけれども、TPPに参加しても、例えば私の田舎でいえば、椎葉村、西米良村、諸塚村という一番最小の基礎的自治体があります。村です。この村というものが存続していけると思われますか。お答えください。
○鹿野国務大臣 日本が長きにわたりまして安定した国づくりがなされてきたというふうなことは、集落がそこにつくられ、そこに地域が生まれてきた、こういうふうなことでありまして、それがまさしく村なり町なりというふうなことで発展を遂げてきたということでありますから、このことは私どもは忘れてはならないことだと思っております。
○江藤委員 一番打撃を受けるのは村ですよ。自民党の農業政策も転換をして、二十ヘクタール、三十ヘクタールの農地集約ということを言いました。椎葉村で農地集約はできっこありません。全部棚田です。そして、椎葉村でいえば、総農業生産の五〇%以上が実は和牛生産なんですよ。前原さんが先走って、去年から随分勝手なことをしていますけれども、この産業がだめになったら、もう椎葉には後継者は生まれません。
村ではありませんが、私の選挙区の日之影町、この間、商工会議所の会頭に言われました。拓君、ことし生まれた子供の数を知っちょるけ、十四人よって。十四人、一年間で。そういうところも同じ日本ですから、そういうところを守るのが政治の責任だろう、政治の責務だろうというふうに私は思っているんです。そのために私は政治家になったわけでありますから、よろしくお願いをしたい。そのことは大臣とも意識を共有できると信じております。
野田総理の決意、先ほど申し上げましたけれども、十二月三日の中小企業者との会合で、消費税、TPPへの参加交渉、安全保障、この三点について、不退転の覚悟でやる、そういうふうにおっしゃいましたね。安全保障については、また鳩山さんがわけのわからぬことを言っていますけれども。そして、捨て石になるんだと。このことをやる意味では、自分は捨て石になるとまでおっしゃいましたね。これを聞けば、何が何でもTPPをやるんだとしか聞こえないじゃありませんか。捨て石になってでもやると言ったんですよ。捨て石になってでもと。
これを聞くと、野田さんは非常に雄弁な方ですから、非常に言葉を選んで、上手に言葉をしゃべられますけれども、野田さんの腹は、どんな条件を突きつけられても、何が何でもTPPに参加するんだという強い意思を固めているに違いないと私は憶測をします。大臣は、閣内にあって、どう感じられますか。
○鹿野国務大臣 捨て石になるというような発言等々につきましては、その背景なり文脈というものについては定かでございませんけれども、一方におきましては、総理自身が、我が国の伝統文化を守り、美しい農山村を守っていきたい、こういうふうな発言も明確にされておるわけでございまして、そういうふうな意味も含めた中での考え方というものもあるのではないかなと思っております。
○江藤委員 これ以上は申し上げません。このことで口論しても始まりませんので。
しかし、私は、野田さんの腹は固まっていると。揺りかごだか何だか知りませんけれども、私は、詭弁を弄していると断言させていただきます。
TPP交渉参加の協議に入るというものを、当然、アメリカは英文に直しますよね。その中で、エンター・インツー・コンサルテーションズという言葉を使っています。コンサルテーションズとかコンサルテーションというのを辞書で引けば、確かに協議というふうに辞書には出てくるわけでありますが、その後には、会議というふうにも訳すことができるわけですよ。エンター・インツー会議ですからね。これはもう、会議に参加するイコールTPP交渉参加じゃありませんか。そのことについて訂正を求める動きが民主党内でも随分あったと聞いておりますが、官房長官はそれを拒否した。必要ないということですかね。
では、外交って何なんだということを私は根本的に考えるわけですが、外交の勝利というのは、少しだけ譲って、なるべく国益を損しないように少し譲って、多くの果実をかち取るというのが外交の要諦じゃありませんか。私は、今回のTPP交渉への参加によってそれが実現されるとはとても思えませんよ。失うものはたくさんあるけれども、得るものはほんのちょびっとと違いますか。例えば、車の関税が五%なくなったって、為替を円高に五%誘導されたらパアじゃありませんか、そんなものは。ですから、私は、外交上、これは決していいものではないというふうに思っております。日本の国益につながらない。
大臣にここでお尋ねをします。よくテレビを見ていますと、このTPP参加は、逆に、いいチャンスなんだ、農業の構造改革の一つの大きな転換点、きっかけになるんだというふうに言っているコメンテーター、学者さんがいますけれども、大臣も同意見ですか。御答弁願います。
○鹿野国務大臣 テレビでもいろいろな、あるいはまた新聞でも、また予算委員会等々、この農林水産委員会等々におきましても、TPPのことにつきましては、いろいろな視点から、また観点から議論がなされてきたところでございます。
そういう中で、今、江藤先生が、TPPに参加することは一つのチャンスなんだ、こういうふうな問題意識を持っているということについてどう思うか、こういうことでありますけれども、私は、交渉に参加するかどうかというようなこと等々は別にいたしまして、こういう議論の中で、農業者の人たちも意識を変えて、やはりしっかりと取り組んでいこうというような、一つのきっかけにでもなればいいなという思いは正直ございます。このことを申させていただきたいと思います。
○江藤委員 私もいろいろな方と意見交換をしましたが、ある人は私にこう言いましたよ。補助金漬けで、農家は過去数十年にわたって全く努力をしていない、漫然と同じものを作付けて、だらだらとやってきた結果がこれだと。とんでもない意見ですよ。胸ぐらをつかんでやろうかなというぐらい腹が立ちました。
みんな努力していますよ、一生懸命。新しい作物に挑戦したり、土壌の改良をしたり、急峻な地域であっても作業効率を高める努力をしたり、集落営農に取り組んだり、一生懸命やってきました。別に、TPP参加交渉をしたからといって、新しい意識づけになるというのは、大臣、それはちょっと違うんじゃないですかね。私は、そこら辺はちょっと大臣とは意見を異にします。
早速、アメリカ産の輸入牛肉の条件緩和、三十カ月なんですか。もう決まりなんですか。食品安全委員会、二十カ月月齢のときに私は一年生議員でしたけれども、最後は、科学的知見に基づいているものだから、政治が介入すべき問題ではないと言われて押し切られたんですよ。二十カ月でも私は不満だった、正直なところ。ところが、食品安全委員会も飛び越えて、何だか知らないけれども、政治決断ですか、これが。それから郵政、自動車、やってきましたね。
そもそも、昨年の九月に前原外務大臣は、クリントン国務長官と会ったときに自分の方から、頼まれてもいないのに、月齢制限緩和を一つの可能性として検討し、できるだけ早く方向性を示したいと、一年以上前にもう言っちゃっていますものね。そう言えば、アメリカが、ああ、やってくれるんだなといって要求するのは当たり前の話ですよ。墓穴を掘ったということだろうと私は思います。
本当はこの後、大臣、副大臣、政務官にそれぞれ、TPP参加についてどのような御見識をお持ちかお聞きしようと思いましたけれども、もうやめます。先ほど武部委員も下げましたので。何となく顔で伝わってきますから、もうやめます。やめますが、このことだけは委員の方々にも知っておいていただきたい。
野田総理は、千葉県議会時代の一九八七年、牛肉・オレンジ輸入自由化反対決議というのが県議会であったわけですね。このときに、私たった一人が反対しましたと。つまり、賛成ということですね。そのことを、経済界との懇談会の場で胸を張って言うような人ですよ。農業に関することに関して、輸入自由化原理主義者なんじゃないかと私は思う。民主党の委員の先生方も、野田さんの本音のところ、本当のところ、どうしたいのかということをぜひ見きわめていただきたい。これは与野党の垣根を越えて闘わなければいけない問題ですから、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。
それから、国会の批准についていろいろ言いますね。別に、合意したって、最後は国会の批准があるんだから、そこで最後の勝負をかければいいんだと。甘いですよ、甘い。そんなことを言っているようじゃ大変なことになりますよ。
この間、十二月六日に全会一致で決議をしました。先ほどありました。すばらしいことだと思いますよ。そして、日豪のEPAについても、全会一致でかつて決議をなされております。決議は守らなければなりません。国会決議、委員会決議、大切なことですよ。だけれども、細川内閣は、三つの決議があったにもかかわらず、それを全部無視して、米の輸入、部分自由化をやっちゃったんですからね。国会決議が無力だ、委員会決議が無力だと言っているんじゃありませんよ。
そして、案の定、政権は早々と倒れ、自民党に政権が戻ってまいりました。自民、さきがけ、社民ですか、非常に変わった形の内閣になったわけでありますけれども。その中で、前政権がやったことなんだから、こんなものは無視すればいいんだと、私はその当時秘書でしたけれども、大変な大激論が自民党の中で巻き起こりましたよ。
だけれども、現実問題、政治はリアリズムですからね。ナポリ・サミットで、平成七年一月には発効を目指すというところまで決まっちゃっていた、前政権のもとで。じゃ、どうするんだ、国内対策をやるしかないじゃないかということで、大蔵省の抵抗が物すごくありましたけれども、平成七年から六年間で六兆百億円のラウンド対策費を講じたわけであります。
しかし、そのうちの二〇%、一兆二千五十億円が農業構造改善事業等の事業の中で、よく批判されます温泉施設とか、農業の体質強化につながらないことに使われたということについては、自民党政権は深く反省せねばならないというふうに思います。しかし、全体の五二・八%の三兆一千七百五十億円はきちっと目的に沿った形で使われたことも御理解をいただきたい。
私は何を言いたいかというと、さきの政権が受け入れたこととはいえ、民主党でいえば、野田さんが決めたことだから、新しい総理のもとじゃ関係ない、そう簡単な話じゃないんですよ。
過去に三回の国会決議があるとさっき言いました。衆議院法制局との当時のやりとり。国会決議は、ある時点での国会の意思表明であり、政府が状況の変化に応じて行う政策判断に枠をはめることはできないという衆議院法制局の見解、非常に苦しいですよね、言いわけとして。この苦しい言いわけをもって、三党連立政権で受け入れてしまったんです。非常に残念なことだと思います。
私は、批准しろなんて絶対言っているんじゃありませんよ、批准しろなんて。合意に至ってしまったら、その時点で、かなり日本国は厳しいところにもう既に追い込まれる。国会批准のときに勝負をかければそれで済むんだという認識を、もし議員の先生方、委員の先生方がお持ちだとすれば、それは私は大きな間違いだということです。TPPは、URとは全然スケールが違いますよ、すべてかかるわけですから、二十一分野、農産物だけじゃなくて。そのことを私は申し上げたい。
ですから、大臣、ちょっと長い話になってしまいましたけれども、合意をしてしまって、そして国会で批准にかかわるというところで勝負をかければいいんだというような考え方について、大臣はどのような御認識をお持ちですか。私的見解で結構ですから、御答弁願います。
○鹿野国務大臣 今触れられました牛肉・オレンジの自由化、そしてウルグアイ・ラウンドによるところのミニマムアクセス等々、その一つ一つの状況の中で、私もきちっとそのときをかいま見てまいりました。
そのことを踏まえさせていただく中におきまして、やはり大事なことは、交渉参加に向けての判断というふうなもののプロセスというものが非常に大事だと。そういう意味で、与野党問わずに情報を共有して、そして国民にきちっと提示をしながら、できるだけ情報を提示して、議論をしていくというふうなことが大変大切なことではないか、こう考えておるところでございます。
○江藤委員 この次に、林業、畜産業、酪農、水産、個別に質問を用意しておりましたが、あと数分しかありませんのでできませんが、例えば林業だって、全部関税はゼロだという認識をしている人がいるみたいですけれども、例えば製材だとか合板には関税がかかっていますから、これがなくなったら六次産業化は足どめを食いますよ、林業部門については。
漁業についても、例えばホタテガイとかスケソウダラは一〇%関税がかかっています。
それから、IQ制度、これが守れますか、TPPに参加して。IQがだめになったら大変なことになりますよ。北海道はどうしますか、どうするんですか。
それから、急がなきゃなりませんので急ぎますが、畜産についても、いろいろなALICを通じた事業をやっていますが、これは牛関税が原資でしょう、全部じゃありませんけれども。牛関税は、平成二十二年度の残高が六百四十九億円。関税収入は七百二十億円ありますが、この部分、すっぽり穴があくんですよ、すっぽり。これはどうするんですか。やれませんよ。
酪農なんて、チーズとかバターとかの製品が入ってきたら、北海道の生乳が本州になだれ込んでくるんでしょう、九州の酪農なんかは全滅ですよ。どうするんですか。
卵だって、一七%関税がかかっていますからね。粉卵とかが入ってきたら、日本の採卵鶏にも大ダメージですよ。
あと、砂糖の話もあるし、小麦の話もあるし、たくさんありますけれども、残念ですけれども、時間が来ましたので終わらせていただきますが、最後に申し上げさせていただきたいと思います。委員長、お許しをいただいて。
私が大臣に最後に申し上げたいことは、かつて平成十七年、小泉内閣で郵政解散がありました。あのときに、島村宜伸先生が農林水産大臣だったんですよ。そして、小泉さんが解散をすると言ったときに、島村大臣は、それはおかしいと言って辞表を提出されました。まさに身を捨てて、小泉さんと対決をしたわけです。しかし、小泉さんは辞表を受け取らずに罷免をして、そして解散・総選挙にして、私は自民党から追い出されたわけであります。
大臣には、これから情報収集、過程の中で、これは日本の国体を危うくする、日本の伝統文化、日本の国のありようそのものを破壊するものであるという判断が下った場合は、身を捨ててください。大臣、副大臣、政務官、命がけでそのときには闘っていただきますことを心から懇願いたしまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○吉田委員長 次に、石田祝稔君。
○石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。
まず、TPPの問題についてお伺いをいたしたいと思います。
けさ、朝日新聞社のアサヒ・コムというのを見ておりますと、「コメ開放求める声 TPP日本参加巡り、初の米公聴会」こういうタイトルで記事がございまして、「日本のTPP問題が米議会で議論されるのは初めてで、米議員らは日米の二国間協議で、コメなどの重要品目も含め日本の市場開放を求めていく姿勢を鮮明にした。」こういうニュースも流れております。
順次お伺いをしてまいりたいと思いますけれども、まず、内閣府副大臣にお伺いいたしたいと思います。
TPPの協定交渉参加に向けた我が国の体制について決定をされたようであります。きょうおいでをいただいております内閣府副大臣、石田副大臣が幹事会の議長ということでありますけれども、どういう体制になったのか、どういう姿勢で臨まれるのか。また、政府代表がまだ決まっていないようでありますけれども、一時期、新聞で、前の外務省の事務次官が決まった、こういうニュースも流れておりますけれども、どういう体制で政府としてはお考えになっているか、御説明をお願いします。
○石田副大臣 石田委員にお答えをいたします。
ただいまのTPP協定交渉参加に向けた関係国との協議に関する体制についてでありますが、去る十二月の十三日に、TPP協定参加へ向けた閣僚会合を開かせていただきました。その中で、協議に対応するため、体制と、情報提供のあり方について議論を行ったところでございます。関係府省が一体となって検討を進めまして、我が国の国益を考えて判断するための強力な体制を内閣官房につくることになったわけであります。
具体的には、国家戦略室のホームページにも出させていただいておりますが、国家戦略担当大臣を議長といたしまして、官房長官及び関係大臣で構成をするTPP交渉参加に向けた関係国との協議に関する関係閣僚会合を設置いたしまして、その下に、今石田委員からお話がありましたように、不肖私が幹事会の議長になりまして、私が議長として、構成員は官房副長官及び関係副大臣で構成をさせていただきました。その下に、事務局として事務の官房副長官を置きまして、そのまた下に、関係省庁の次官級、局長級の会合を設置いたしました。
さらに、その下に三つのチームを編成いたしまして、一つは国内広報・情報提供チーム、主に、TPP及びそれに関連する事項に関する国民や各種団体への情報提供及び広報、そして二つ目のチームとして、国内連絡・調整チームといたしまして、主に、国会、各党担当、国内の関係者に対する連絡調整、そして三つ目のチームといたしまして、国別協議チームといたしまして、現在九カ国が参加表明をいたしておりますので、九カ国との交渉参加に向けた協議を行い、関係の情報の収集に当たる。
こういう体制、布陣でやることを決定いたしたところであります。
さらに、政府代表につきましては、現在のところ、協議の進捗を踏まえつつ慎重に検討を進めているところでございまして、いずれかの機会に政府代表を決定したいというふうに考えております。それは、関係国との協議においては、当面、ハイレベルの代表を置いてまで協議に当たる必要はないというふうに考えておりますので、それは慎重に、協議の進捗を踏まえつつ対応していきたいというふうに考えております。
以上でございます。
○石田(祝)委員 内閣府副大臣が、幹事会の議長ということで実質的にやられるんでしょう。政府代表もまだ決まっておりませんが、私がお願いしたいのはやはり情報提供ということ、これは十二分にやっていただかないと、結局、政府の責任で外交はやっているわけですよね、そういう中で、外交交渉は秘密だから、こういうことで、全く私たちにも知らされないまま、国会にも知らされないまま、どんどんどんどん物事が進んでいく、こういうことはあってはならないというふうに思いますので、その点だけはお願いをしておきたいと思います。
石田副大臣が何か御用があるようですから、もうこれ以上お聞きすることはありませんので、どうぞ御退席いただきたいと思います。
続きまして、お隣の韓国でありますけれども、米韓FTA、これについて、来年一月一日からスタートする、こういうことでやっておったようでありますけれども、大変な国内の反対があって非常にもめており、そして一月一日は無理だ、こういう話も聞いておりますけれども、米韓FTAについて、具体的に一体どういうことになっているのか。また、その中で、韓国では、ISD条項、これについて非常に厳しい受けとめ方をしている、こういうこともお聞きしておりますけれども、外務省からこの二点についてお伺いしたいと思います。
○加藤大臣政務官 石田委員の御質問にお答えをいたします。
米韓FTAについての御質問でございますけれども、基本的に、米韓FTAは日本からいえば第三国協定ということでございますので、当事国でない我が国として、その内容に対する評価とか、そのことについて申し上げる立場にはないということを一つ前提として申し上げたいというふうに思います。
その上で、ISD条項について御質問がございましたけれども、米韓FTAの条文につきまして、国家と投資家の間の紛争解決、ISDSあるいはISDと申しておりますけれども、規定がございます。これによれば、投資受け入れ国の投資章の義務違反によって損害または損失をこうむった投資家は、当然に、投資受け入れ国の国内裁判を提起する権利を有するとともに、さらに国際仲裁を提起する権利も与えられているというふうに私どもは承知しております。
そういうふうな話の中で、韓国政府は、ISDSにつきましては、投資の安全性とその予測可能性を確保するための最小限の保証装置であり、韓国企業の海外投資保護のためにも必要な制度であるとの旨説明をしていると承知しております。
なお、韓国におきましては、シンガポールやチリ等とのFTA投資章において既にISDSを採用しておりまして、すなわち七本中六本のFTAにおいてこのISDSの条項を採用しているということでございまして、韓国にとって、米韓FTAの内容のみならず、ISDSは必ずしも新しい制度ではない、既に経験している制度であるというふうに承知をしております。
また、二国間の投資保証協定ということにつきましても、韓国におきましては、一九七〇年代から投資保証協定を締結しつつ、その中に既にISDSを導入しておりまして、現在、締結、発効中の、七本のFTA、これは先ほど申し上げましたけれども、それ以外、八十五本の二国間投資協定のうち八十一にISDSが含まれている、このように承知をしておるところであります。
以上です。
○石田(祝)委員 ISDまたはISDSということですからISDSと申し上げたいと思いますが、これは、逆に、今まではやっていて特に大きな問題になっていなかったんだけれども今回の米韓で出てきているということは、やはりアメリカに対しての、アメリカの投資家が今NAFTAとかで、またメキシコとかカナダは現実に訴えられて、大変な賠償金というんですか、そういうものも支払っている。そのあたりが現実の問題として、今まで同じ条項が入っていても問題にならなかったんだけれども米韓ということで問題になってきているというのは、やはりそういう点を心配しているんじゃないでしょうか。
それで、今御答弁があったように、政府の義務違反ということをおっしゃいましたけれども、例えば日本が国会等で法律を決めていく、そうしたら、法律が自分たちの利益に反したら、これは義務違反になるのか。それは、投資家からしたらこうなるだろうと思って投資をしたけれども国内の法律が変わって不利益をこうむったんだ、こういうことで訴えられたら、これは実質的に法律制定の制限じゃないんですか。そういう心配がこれはあるということじゃないんでしょうか。
この点をお答えいただけますか。できますか。
○加藤大臣政務官 御質問の内容につきましては、韓国において本件についてどういう議論があるかというふうなことよりも、我が政府としてISDS条項についてどう認識しているのかという内容も含んでいるし、そのウエートも高い、このように思います。
国家と投資家の間の紛争解決手続は、投資に関する協定がより確実に守られるようにし、海外で活躍する日本企業を保護するためにも有効でございます。
この観点から、我が国も、既に締結した多くの投資関連協定においてこうした手続を既に確保してきており、何らそういう意味では、経験をしている制度でございます。各国の投資関連協定において最も広く採用されているというふうなことでございまして、必要かつ合理的な規制を行うことを妨げるものではなく、我が国としては、投資受け入れ国としての我が国の規制軽減に十分配慮しつつ、その一方で、海外で活躍する日本企業を保護するという両面を勘案しながら適切に対処してまいりたいということでございます。
そういうような意味では、投資関連協定の締結に当たりましては国内法との整合性を図るということにしておりまして、国家と投資家の間の紛争解決手続により我が国の国内法令が協定違反とされることは通常想定されておりません。したがって、ISDS条項が国内法令を実質的に変更するものであるといった御指摘については当たらない、このように考えております。
○石田(祝)委員 これだけやっているわけにいきませんから、最後に申し上げておきますけれども、変更しろと言っているんじゃないんですよ。要するに、日本が法律制定というものを制限されるんじゃないのか。自分たちが投資をするときにこういういわゆる予測をして投資をした、しかし国内法が変わって不利益を受けた、実質的にそれが訴えられるということになったら、法律制定が制限されるんじゃないかと言っているわけです。現実に、私申し上げたように、カナダでもメキシコでも、政府が訴えられて大変巨額の賠償金を取られているじゃないですか、環境の問題を含めて。
ですから、こういうことは、余り通り一遍の御答弁をしないで、国益にかかわる問題ですから、日本の対外投資にも有利なんだ、そんなとんでもないことを言わないで、しっかりとこれは外務省はやっていただかなきゃいけないと私は思いますよ。今御答弁されたことは全部もう会議録に残っておりますから。その点も踏まえてこれは取り組んでいただかなきゃいけないというふうに思います。
それでは、こればかりやっているわけにいきませんので、若干別の角度からお聞きをいたしますけれども、USTRが、水産分野における、漁業の前提条件、こういうことをグリーンペーパーで出しているわけですね。漁業の補助金だとか、またはサメのひれを切っちゃいかぬだとか、そんなことを公にしているんですけれども、これについてはどういうふうに農林水産省としては認識をして、評価をしておりますか。
○筒井副大臣 先生がおっしゃるようなことを求めているというふうに承知をしております。漁業補助金、漁港とか漁船に関する補助金とか、あるいはサメのひれ切りの規制とか、これらの内容というふうに承知をしております。
ただ、これが、交渉参加のための前提条件として出しているのか、あるいは交渉の中での条件として出しているのか、これらがまだわからないところでございまして、いずれにしろ、内容は極めて問題のある中身でございますが、その内容自体もまだ具体的に明らかになっておりませんので、情報収集にきちんと努めていかなければならないというふうに考えております。
○石田(祝)委員 これは、私も原文それからまた訳を今ちょっと申し上げましたけれども、例えば過剰漁獲能力とか過剰漁獲とか、ある意味でいえば余りはっきりしない話ではなくて、サメのひれ切り活動、こう明確に書かれているわけですね。これは、ある意味でいえば、例えば三陸沖の、いわゆる、我々がフカひれと言って食べているもの、それはひれだけ切って、そのほかのものを海に捨てちゃう、残酷だ、多分そういうことがあるんでしょう。
こう明確に書かれて、あえて書いているわけですから、これはこれ以外に解釈のしようがない話ですよね。ですから、筒井副大臣、今御答弁いただきましたけれども、ここまで明確に書かれているということは、向こうも、正式に出した以上、いや、あれはただ言っただけですなんということはあり得ないと思うんですよ。もう一度御答弁をお願いします。
○筒井副大臣 先生のおっしゃるとおりなんですが、ただ、例えばサメのひれ切りが全面的に禁止という提案をしているのか、どういう規制をしようとしているのか、それらの点がまだ明確ではないということを申し上げているわけでございます。
ただ、いずれにしろ、全面的な禁止でないとしても、漁業補助金のものを含めて極めて問題があるものでございまして、漁業に深刻な影響を与えるものですから、慎重にやはり、情報収集を初めとして努力をしていかなければならないというふうに考えております。
○石田(祝)委員 これは一つの例として申し上げましたが、そういういろいろなこと、我々が考えられないようなことがどんどん起きてきて、そしてそれが本当の交渉の条件なのかどうか、具体的な中身はどうか、そういうことがわからないまま、ある意味ではアメリカで世論がつくられていってしまう、こういう点は非常に危惧をいたしますので、ぜひ情報収集を、そしてそれを、情報は公開をしていただきたい、このように思います。
TPPについては最後にしたいと思いますけれども、大臣、前にも見解をお聞きいたしましたが、先ほども御質問で、お答えがありましたけれども、現時点におけるTPPに対する見解をもう一度お述べいただきたいと思います。
○鹿野国務大臣 基本的には、交渉参加に向けて、関係各国がそれぞれ我が国に対して何を求めるかというふうなことを把握する、そして、その情報をできるだけ開示して、そして判断していくというふうなことになるわけでありますので、そういう中で、国会決議、過般もこの農林水産委員会でも決議がなされたわけでありまして、そのことも私どもは真摯に受けとめて今後対処していかなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。
○石田(祝)委員 過日の当委員会での決議も重く受けとめる、こういうことでございます。
それでは、TPPについては、外務省の政務官、どうぞ退席していただいて結構でございます。
続きまして、戸別所得補償制度についてお伺いをいたしたいと思います。
新聞記事等報道もされておりますので申し上げたいと思いますが、いわゆる、八月九日の民主、自民、公明三党の幹事長の確認書で、戸別所得補償制度の見直し、これは、確認書の中で、歳出の見直しという項目に書かれておりますので、当然二十四年度に反映をされる、見直しの結果、二十四年度の予算を、概算要求の段階のものでありますけれども、それを直す、そして戸別所得補償にかかわる二十四年度予算を最終決める、私たちはこういう理解でおりましたけれども、八月の九日から、まるで話がございませんでした。
これは私は時系列で申し上げたいんですが、十一月の二十九日に顔合わせしましょう、こういうことでございました。
それ以前に、自由民主党は、お考えを述べて、それに対する回答をもらいたい、こういうことで九月ぐらいにお出しになっていたと思いますけれども、その御回答も余り早くはなかったと思います。
私は、戸別所得補償については、当委員会でももう数度にわたり、定額部分については評価をするが変動部分についてはやはり見直しが必要であると、その具体的な姿も申し上げてきたつもりでございます。
そういう中で、待てど暮らせど与党から何の話もないということで、最初に会ったのが十一月の二十九日、そして二回目に会ったのが十二月の八日、三回目が十二月の九日、そして四回目が十二月の十二日。その時点で、予算編成には反映ができない、こういうことで、では、これは三党の幹事長の確認書に反するのではないか、まず協議はこれ以上は続けられない、こういうことになったわけであります。
大臣のいろいろな記者会見等のお話も伺っておりますと、三党で協議をしてもらって合意点が得られればいいな、そして法制化にもつなげたい、こういうお考えも私は受けとめましたけれども、大臣、このままいきまして、まあ、概算要求は二十三年度の予算と同じ形でとりあえず概算要求している、そして、それは三党で合意をすればそこから直していこう、こういうお考えのようだというふうにお聞きをしましたけれども、そうすると、三党協議は事実上、私の口から言わせると、与党はこの合意を、確認を守ろうという熱意はなかったと思います。
要するに、予算という、おしりが決まって、十二月の二十三日か二十四日に政府原案が決定する、その前に、十二月の十二日がもうこのおしりなんだと。この概算要求を踏まえて。それで実質始まったのが十二月八日ですよ。これはもう、できるという前提でやっているとはとても思えない。八月九日の三党の幹事長の確認は、特例公債を発行するためにこういうことをお互いに約束しよう、こういうことで始まったわけですから、これは合意が守られなかった、こういうふうに言わざるを得ないと私は思います。
大臣、概算要求はこのまま進めるんですか、今のままで。どうでしょうか。
○鹿野国務大臣 八月九日の三党合意というものを受けて、三党間におきまして農業者戸別所得補償制度につきましていろいろと御議論をしていただいて、何とか合意に向けてというふうなことに対して、私自身もその思いは非常に強いものがございました。それだけに、今石田先生からおっしゃられたことはずっしりと、本当に響くものでございます。
そういう中で、現実的に、二十四年度の予算編成というふうなことからいたしますと、今お話しのとおりに、ここで一たん打ち切られるということになったわけでありますけれども、何とか新たな枠組みの中で引き続いて三党において協議を続けていただくことができましたらば、こんな思いは非常に強いものがございますということを申させていただきたいと思います。
○石田(祝)委員 あともうちょっと言いますけれども、大臣、概算要求は今されていますよね。二十三年と同じ金額で二十四年も概算要求していると思いますけれども、これはそのまま続ける、そのお考えでいくんですかということをお聞きしているんです。
○鹿野国務大臣 今日の状況では、そういう中でいかざるを得ないものと思っております。
○石田(祝)委員 大臣のお考えはわかりました。
大臣に三党協議のことをお伺いするのは筋が違うかもしれませんが、戸別所得補償制度は全体推し進めていくのか。私は、見直しをすべきだと思います。また、自由民主党の立場については私が申し上げる立場ではありませんけれども、戸別所得補償制度は、ある意味でいえば、政策として大きな政策であるし大事な政策だ、こういう認識で私たちは、三党では一致をしておったんです。だから、これはできるだけ見直しの協議を進めていきたい。
しかし、二十四年度の予算に反映ができるリミットを過ぎてしまった、これはひとえに始まりが遅かった、こう言わざるを得ないわけであります。大臣、どう考えても、十二月八日に実質始まって、八、九、十二日でもう終わりですよと言われたら、これはとてもできないですね。そういう経緯があったことはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。
それで、大臣、大臣は、私が以前にこの委員会でお聞きをしたときに、この戸別所得補償制度の法律は必要だ、法律を出す、こうおっしゃったというふうに私は記憶をしておりますけれども、こういう状況の中で、これは当然予算関連の法案ですよね、八千億というお金を使っているわけですから。これの法律については大臣としてどうお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○鹿野国務大臣 基本的に、この制度は継続をすることによって安定した農業生産というふうなものに結びつけていかなきゃならない、こういう考え方であります。それだけに、三党におきまして何とか御協議をいただいて、そして合意というふうな形をとっていただければ何よりありがたいな、こんな思いをいたしておるわけでございます。
そういう意味では、多くの方々も、何とかして法制化というふうなことを望んでおられる農業者の方々もおられるということも承知をいたしておりますので、何とか法制化に向けて具体的な形になればいいな、こんな思いは今持っておるところでございます。
○石田(祝)委員 もうちょっとはっきりおっしゃっていただきたいんですが、法律を出すんですか、出さないんですか。
○鹿野国務大臣 三党におきまして御協議いただいて、このような形で打ち切られたという中におきましては、今この段階で、法制化について、法案を出すというふうな考え方には至っておりません。
○石田(祝)委員 現時点における考えは、法律は出さないということで確認をいたします。
それで、私も、なぜ法律が要るかということを、民主党政権になってからの三人の大臣にそれぞれお伺いしてきました。それぞれの大臣が、法制化は必要である、こういうお答えでございました。
しかし、現実には、もう何年目になるんですか、二十一年に政権交代をして、二十二年、二十三年、今度二十四年の予算を組まれるわけですよね。モデル事業から本格実施になって、そして畑作も入れて八千億の予算。要するに、農林水産省予算全体が非常に小さくなっていく中で、ほかのところに大きな影響を与えつつ、戸別所得補償制度というものは畑作まで拡充をされた。
そういう中で、私もたびたび、実際モデル対策をやって、そしてそれを検証して本格実施に進むのが普通ではないのか、こういうことを申し上げてきたんですけれども、検証結果は一度もこの委員会に、国会に報告されたことはございません。国税、いわゆる国民の、納税者の負担で八千億の事業をやりながら、やろうとしながら、一度も国会にその検証の報告はなされておらない。
そういう中で、また、大臣の今のお言葉でいくと、法律という形で審議をすることはできない。ですからこれは予算措置でやる、こういうことですね。ですから、予算措置で、もう三年目、これだけのお金を一体出していいんだろうかと私は率直に思います。
このことは、今大臣も法律を出さないというふうにおっしゃいましたので、それはそれとして受けとめざるを得ませんけれども、少なくとも、これだけのお金を使って、例えば自給率の向上に効果があったのか、農業者は本当に喜んでいるのか。
また、第一次産業で、例えば米とか畑作をやっている以外の人、果樹もそうだと思いますよ、また水産もそうだと思います、林業もそうだと思いますけれども、そういう方々が、ああ、また法律もないのに直接お金を八千億も出すのか、おれたちと比べて何なんだ、こういう思いも同じ第一次産業の方は出てくるんじゃないでしょうか。
ですから、私は、三代の大臣に、法律について、必要ではないのか、出すべきではないのか、こういうことをずっと申し上げてまいりました。
三党協議についてもお伺いしようと思いましたけれども、これは政府に聞くのはちょっと筋が違うと思いますので、通告としては出しておりましたけれども、それはお聞きをしないことにいたします。
それで、大臣、二十三年産米の変動部分については二十四年の予算でやる、こういうことになっておりますけれども、今までは、例えば括弧書きで千三百九十一億。当然これは、三月までの相対の結果を見て変動部分の金額が決まるわけでありますけれども、これからことしのお米の販売状況、値段の状況を見て、千三百九十一億要るのかね、こういう査定が当然財務省から入ると思いますが、これは大臣として、今、現時点において、一番新しい段階でのお考えとして、この変動部分については一体どのくらいお金が要るとお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。
○筒井副大臣 来年の三月までの状況を見なければ何とも言えないわけでございまして、それを注視しながらその中で決めていくということで、現在は、去年とほぼ同じ金額の概算要求をしているところでございます。
ただ、一応参考までに、現在の米の価格が続くとすれば変動部分はゼロになるということは言えると思います。
○石田(祝)委員 そうすると、この二十四年度予算に計上すべき、予定であった二十三年産米の変動部分は、今の副大臣のお答えだと、現時点ではゼロである、こういう査定をされるということですね。
○筒井副大臣 誤解を、ぜひしないでいただきたい。
先ほど申し上げたように、まさに来年の三月までの状況を見ての話ですから、まだ全くわからない状況です。
ただ、物すごい仮定をしたわけです。現在の平均米価がずっと続くならば変動部分はゼロになるということを言ったまでのことでございます。
○石田(祝)委員 それは当然、今の時点以外だれもわからないわけですけれども、現実には、二十四年度の予算の政府原案決定は二十三か二十四でしょう、そのときに数字を入れなきゃいけないんでしょう。そのときに、では筒井副大臣は、いや、決まっていないんだからそこは白紙だよ、そう言うわけにいかないわけでしょう。ですから、それをどういうふうにお考えなんですか、現時点のお考えはどうですかと聞いたら、ゼロだと言うから、ああそうですかと言ったんですよ。それで、間違いですか、どうですか。
○筒井副大臣 だから、現在の概算要求は前年並みにしているわけでございまして、それ以上のことは、断定的なことは全く言えない状況でございまして、前年並みのところでいろいろな予定をしていくということでございます。
○石田(祝)委員 これ以上申し上げませんが、財務省は査定をするでしょうから、当然、今の状況を見たときにその概算要求どおりにいくとは私は到底考えられないので、その点、どういうふうに心構えをしておくのかな、こう思いましてお聞きをしましたが、余り明確なお答えではなかったように思います。結局、今の時点ではゼロだけれども将来はわからないよ、これはだれでも言えることでありまして、要するに、役所として、数字を預かってやる政務三役としては、私は、いささかそのお答えはどうかなと思いましたので聞かせていただきましたが、時間の関係もありますから、これはこれ以上申し上げません。
大臣、戸別所得補償制度は、私は、非常に大事な制度である、よしあしは別にして非常に大きな制度であるし、これは議論もしっかりしていくべき制度だと思って、三党幹事長の確認書に基づいての協議には私たちは真摯に応じてきたつもりでありますけれども、残念ながら始まりが余りにも遅かった、このことだけは申し上げなければいけないと思います。
それでは、環境省、文科省から来ていただいておりますので、汚染の稲わらと堆肥の処分についてお伺いをいたしたいと思いますけれども、現在の状況等について。そして、今後どうなるかということ、この部分は環境省にお伺いをいたしたいと思いますが、よろしくお願いします。(筒井副大臣「どちらに聞いているんですか」と呼ぶ)
通告をペーパーでお渡ししておりますが、二つ一緒にお聞きをしたので、現在の状況について農水省から、今後の汚染の稲わら、堆肥の処分はどうするのか、この二つを農水省と環境省にお伺いします、こういうふうに言いました。
○筒井副大臣 汚染稲わらと堆肥、ふん尿についての、両方ともについての御質問ですね。その二つとも。
いずれも、八千ベクレル以下と、八千から十万ベクレルまでの部分と、十万ベクレル以上というふうに分けて処理をするということを方針として出しているわけでございます。それらについて、八千ベクレル以下は一般廃棄物と同様に焼却処分してもいいというふうにしているわけでございますが、なかなかそれも、そういう焼却ができるところがないので進んでいないところがございます。
ふん尿に関しても、焼却処分をしていい部分があるわけでございますが、それを現在開始した県は一県だけでございまして、それ以外は来年早々から開始する等々の予定を今組んでいるところでございます。
○高山大臣政務官 環境省でございます。
放射性物質に汚染された稲わらや堆肥につきましてですけれども、まず、農水省からも環境省内に二名職員を派遣していただきまして、連携しながら今やっているところでございます。
今後でございますけれども、八千ベクレルを超えるものにつきましては、放射性物質対処特措法に基づき、来年一月からは指定廃棄物ということになります。それは国の責任において進めていくということになっております。
他方、八千ベクレル以下のものにつきましては、従来と同様、市町村により処理を進めていただくこととなっております。
しかし、なかなかこれも進まないということで、環境省では、災害廃棄物安全評価検討会での検討を受けて、十二月五日に、放射性物質を含む廃稲わら等の可燃性廃棄物の焼却に係る当面の指針について都道府県に通知をさせていただいたところでございます。今後、この指針を参考にしていただきながら、稲わら等の焼却実験の早期実施に向けて、地元県、市町村の協力を得ながら、政府一体となって取り組んでいるところでございます。
○石田(祝)委員 最後に二つ、またまとめてお聞きをしたいんですけれども、この汚染稲わらと堆肥に関する損害、これは原子力損害賠償の対象になるのかどうか。それから、八千ベクレル・パー・キログラム超の稲わら、堆肥を自分のところの農地の片隅ででも保管しておいてもらいたい、こういうお考えのようでありますけれども、そういう精神的な苦痛等に対する賠償、これはそういうものが対象になるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
そして、汚染稲わらについては前にもお話もしましたけれども、結局、一番最初に農林水産省が出した通知、それに稲わらが入っていなかった、記憶を皆さん、喚起していただきたいんですけれども、牧草というのしか入っていなかったんですね。稲わらについては、去年の秋にとったものはもう倉庫に入っているだろうと。いわゆる春上げということを知らなかった、農水省の担当者が。それで、そのまま農地にあるものに放射能が降りかかって、それを結局あちこちに出荷してしまった。そのときに、稲わらということが一言入っておったらもうちょっと違ったんじゃないですかという議論はここでも何度も私はした記憶がございます。
そういう点も含めて、先ほど申し上げた二点、これは農水省、また文科省ですか、御答弁をお願いしたいと思います。
○筒井副大臣 汚染稲わらについても、ふん尿に関しても、損害賠償の対象になる。ただし、もちろん相当因果関係の存在が前提条件になります。
それと、精神的損害についても言われました。これは、審査会の方では避難した場合しか精神的損害を指摘していないわけでございますが、しかし、汚染稲わら、高度なものについて、そばに置いておくことの精神的苦痛、これは明らかでございますから、個別の場合ごとの判断になると思いますが、精神的損害賠償の請求もできるというふうに考えております。
○石田(祝)委員 文科省もちょっと答えさせてください。
○神本大臣政務官 文部科学省でございますが、ただいま筒井副大臣の方から御答弁がございましたとおり、原子力損害賠償紛争審査会におきましては、八月五日に中間指針をお示ししたところでございます。
その中におきまして、汚染稲わら、堆肥に関しましては、政府等による出荷制限指示等に係る損害、また福島県で産出された稲わら、堆肥に関する風評被害、これにつきまして賠償の対象と明示されているところでございます。
一時保管に関する精神的損害についてでございますが、中間指針におきましては、指針に明記されている損害のほか、事故以降に現実に生じた被害について、その具体的な発生状況等を検証し、事故との相当因果関係が認められる場合は賠償の対象となるとされておりますが、先ほど申しましたように、今の中間指針追補におきましては、この精神的損害については明記されていないところでございます。
○石田(祝)委員 終わりますけれども、私が質問の通告をするときに、いろいろお話ししたときに、農家の片隅に、要するに処分できないものを置いておいてくださいね、それで、何もありませんよ。自分のところの農地が広いでしょうから片隅にブルーシートをかけて置いておいてくれればいいんですよ、それに対して、精神的な苦痛に対して何もないというのは、これは余りにも、まさしくおかしいので、これは農林水産省から逆に紛争審査会に、こういうものも対象にすべきではないのか、明確にすべきだ、こういうことを私はぜひ言っていただきたいと思います。
最後に、お答えがありましたらお願いします。
○鹿野国務大臣 今の件につきましては、農林水産省としてもできるだけの努力をしたいと思います。
○石田(祝)委員 ありがとうございました。
〔委員長退席、佐々木(隆)委員長代理着席〕
○佐々木(隆)委員長代理 次に、吉泉秀男君。
○吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男でございます。
先日、来年度の米の作付、生産数量目標が発表をされて、そして今、各県段階でそれぞれの配分作業がなされているわけでございますけれども、来年度も、二年連続をして八百万トンを割った、このことに対して、大変、生産者自体からいろいろな考え方が出されているのも事実でございます。
少子高齢化社会、そしてまた人口の減少、こういう状況の中で、それぞれ、供給量さらには需要量、とりわけ需要量、これに合わせた形で米を作付していくならば、米の作付についてはどんどん減っていく、どこまで減っていくんだろうか、こういうのが一つの生産者の気持ち、不安があるわけでございます。ましてやTPP問題も絡んでおります。
自給率の維持をしていく、上げていく、こういう状況の中で、米以外の作付品目についてもいろいろな努力が、さらには国挙げてそれぞれ政策的にやっているわけでございますけれども、これまでやってきたいわゆる減反、転作、そして今は生産数量目標、こういうふうな形で推移をしているわけでございますけれども、基本的な今後の米の作付ということに対して、これまでどおり、需要に見合う米を日本の中では生産する、そのために、これまでの減反、転作、こういう部分をずっと、これまでと同じように米農家の生産者に対してはお願いをしていく、こういう考え方なのか。その点について、まず大臣から基本的な考え方をお伺いさせていただきます。
○鹿野国務大臣 今日までの経緯等々も含めまして、国民一人当たり米の消費量というものは、百二十キロであったのが今は六十キロを切るという状況でございます。
そういう中で、基本的に、お米の生産数量の目標というものをどこに置くかということを考えた場合、やはり需要見通しというふうなものを踏まえて設定をしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
そのことを思いますと、今先生からお触れいただきますとおりに、米の需要拡大というふうなものについて引き続いて努力をしていかなければならない、そういう意味で今後とも対処していきたいと思っております。
○吉泉委員 確かに、戸別所得補償制度、ことしで二年になって、来年から三年目に入るわけでございますけれども、そのときに議論になったのが、農家の、いわゆる生産数量目標を割り当てされた部分について守るのか守らないのか、これは選択制ですよ、こういう一つの議論が二年前なされたわけでもございます。また、自分自身もそのことに対して議論をさせていただいたところでございます。
そういう状況の中で、いわゆる過剰作付、このことを、数字を見たときに、戸別所得補償制度の入る前の段階では、数字的に四・九万ヘクタールあったものが、ことしの場合については二・一万ヘクタール、約半分まで過剰作付が抑えられてきている。こういうことについては戸別所得補償制度、この部分についての所得補償という意味では一定の、大きな、農家の生産に対する一つの期待、さらには現実のものとしてなっている、そういうふうに私は思っております。
しかし、反面、これから五年間で一経営体二十ヘクタールから三十ヘクタール、これを目標にしてやっていく、こういう状況に今かじを切っているわけでございます。
現在、私どもの友人の段階について、もう二十ヘクタールを超えている、こういう方もございます。そういう方々とお話をしますと、いわゆる転作の、生産目標の割合がもう四割近い。こういうところの中で二十ヘクタールやっていく、そうすると、まさに半分、この部分は米が作付できない。こういう状況の中において、機械が、全部米を作付するならば機械そのものが一〇〇%稼働できるわけでございますけれども、それができない。そしてまた、八ヘクタールのほかの、野菜、そういうものについてもなかなか手がつけられない、やはりこういう現状もあるわけでございます。
そういう中において、農家自体が、加工の問題なりいろいろなところに、米粉の問題さらには飼料米、いろいろな努力はなされておるわけでございますけれども、一つの経営体の二十から三十ヘクタール、こういうふうな一つの制度設計をしていくときに、やはり米の作付数量目標、そのことも含めながら、もう少し今までと角度を変えた設定というものも考えていいのではないか。
確かに、今大臣の方から、一人一人の消費量に合わせた形で目標を設定して、そしてある程度均一的に各県に割り当てる、こういう一つの考え方がずっと定着をしてきたわけでございますけれども、これから後継者の問題さらには規模拡大の問題を考えていったときに、やはりもう少し作付面積の基準、考え方を見直していく、このことが私は必要だろうというふうに思うんですけれども、この点の考え方はどうでしょうか。見直す気があるのかどうか。
○鹿野国務大臣 基本的に、御承知のとおりに、主食用のお米、そしてまた米粉なり飼料米というふうなものも作付していただこう、こういうふうなことから施策をなしてきたわけでありますが、同時に、自給率を高めていくというふうなことから、さらに畑作物に、麦なりあるいは大豆というふうなものも対象品目にするということ等々、具体的な形で盛り込んできたところでございます。
そういう中で、二十から三十という経営体を大宗にしていきたいというふうなことの中におきましては、当然、今、販売農家の人を一つの区切りとして対象にしているわけでありますけれども、いわゆる全国一律というふうな形にしておるということは、ここで生産性の向上、すなわち集約化していくことによって一人当たりの収入がふえていくんだというインセンティブもそこに与えられているわけでありますから、そういうことを御理解していただく中で、それぞれが集落営農なりあるいは法人化なりというふうな方向に進んでいっていただければ、こんなようなことを考えながら、私どもとしては取り組ませていただいているところでございます。
○吉泉委員 今、そういう大きい、規模拡大をしている農家については、やはり、来年度から実施をされるファンド事業、このことに対して大変な興味を持っているのも事実でございます。そしてまた、スーパーL資金の限度額が個人の農家で一・五億、さらには法人の場合は五億までの限度額、こういうものを設定して、ファンド事業をこれから展開していく、こういう一つの方向が出されたわけでございますけれども、先般の委員会の中でも、このファンド事業について質問もさせていただいたところでございます。
来年からこの事業を具体的に推し進めていくというふうになれば、先般の質問以降、もう少し具体的な考え方、さらにはファンド、こういうものなんかの協力体制、さらには県段階でのファンド事業を進めていく一つの体制、こういったところがどこまで具体的に進められているのか、このことについてお伺いさせていただきます。
〔佐々木(隆)委員長代理退席、委員長着席〕
○筒井副大臣 今、概算要求、ファンドとして二百億のものを出しているわけでございまして、それは六次産業化事業を支援するということでございます。
その支援の仕方として、ファンドから出資をする。例えば一つのイメージとしては、そのファンドから一億を出資した場合に、一次産業者からも一億、二次、三次産業からも一億、それから民間の金融機関からも一億、合計四億のその事業を全国で二百ほど立ち上げていきたいという方向性を考えているわけでございます。
そして、それらによって出資された事業が十年、十五年の間に何とか利益を上げていただいて、地域再生に資していただいて、そして、それらの十年、十五年の時点で国からの出資金を買い取ってもらうというふうな方向で処理をしていくというふうなイメージで今考えているところでございます。
○吉泉委員 先般と大体同じような考え方なんですけれども、今、六次産業化、とりわけ加工分野なり、さらには販売なり、さらには道の駅とか、いろいろなところをこれまでやられてきた、そういう部分があるというふうに思っております。
しかし、今、遊休地の問題なり、そういうことを考えていくと、やはり再生エネルギーの問題、これがやはりファンドの中において相当多くを占める、さらにはチャレンジをする、こういうところも私は考えられるんだろうというふうに思っております。とりわけ、農家が限度一億五千万ですから、さらには法人が五億ですから、法人の場合だと二十億までの事業が成り立つわけでございます。だとするならば、やはり今の現状の中において、とりわけ東北の場合、再生エネルギーの重要な基地なんだろうというふうに私は思っておりますけれども、そんな面で、買い取りの問題にはいろいろな部分がございます。
そうした中における、今、農林サイドの段階では小水力という一つの分野を持っているわけでございますけれども、メガソーラーなり、さらには風力、これはやはり経産省との関係も出てくるわけでございますけれども、これらの事業と、そしてまた農林が来年からやろうとするファンド事業、こういう一つの総合的な関連の部分がどういうふうに今なっているのか、お伺いさせていただきます。
○筒井副大臣 六次産業化の中には大きな柱として三つあるというふうに思っておりますが、一つが、先生が今おっしゃった農林水産物の加工事業、さらには農林水産物の販売、流通事業、これが一つの柱だと思います。二本目として、今の再生可能エネルギー、地域資源を活用した再生可能エネルギーの事業だというふうに思います。三つ目として、農林水産物の輸出事業、これを進めていきたい。
それ以外にもあるわけですが、重要な柱として三本柱のうち、再生可能エネルギー、固定価格買い取り法案が成立、来年の七月に施行されるという状況の中で、極めて重視をしていかなければいけない。
特に、農水省の方の試算によりますと、農山漁村における再生可能エネルギーのポテンシャルが、あくまでポテンシャルでございますが、現在の総発電量の四三%を占めるという状況の中では、なおさら再生可能エネルギー事業を重視していくということが必要だというふうに考えておりますので、先ほどの基金等の対象、L資金の対象、これらの重要な対象として位置づけていかなければいけないというふうに考えております。
○吉泉委員 もう質問時間がなくなったということで来ていますけれども、最後、もう一つだけお願いいたします。
今、農林省サイドの段階で、山林の除染、この部分を環境省と一体となりながら進めているというふうになっているわけでございますけれども、このことに対して、やはり山林の場合は、ある程度リードしていくのが私は農林水産省なんだろうなというふうに思っております。
自分自身山形出身ではございますから、今回の福島のこの事故における、いわゆる山で遮られて被害が少なかった、こういう状況があるわけでございますけれども、今、生産者段階の中においては、山林、山の中に、大変な、セシウム等を含めた放射性物質がたまっているんじゃないか、それが一年過ぎたらどうなるんだろうな、こういう心配が相当出てきております。
そんな中において、人も、さらには予算もつけて、これから本格的に農林省サイドの段階で環境省を引っ張っていく、こういう部分が必要なんだろうというふうに思うんですけれども、その辺についての考え方、現状、どうなっているのかお伺いいたします。
○仲野大臣政務官 ただいま吉泉委員からの御質問にお答えいたします。
まず、農林水産省といたしましては、山林の除染に当たっては、環境省を中心に関係省庁ががっちりと連携して、政府全体で取り組んでいくこととなっておりますし、また、森林の除染に関する知見の提供や福島除染推進チームへの職員の派遣など、その取り組みに当省といたしましても協力してきているところであります。
十一月十一日に閣議決定された放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針をしっかりと踏まえて、当省が有している知見、情報が生かされるよう、これからも、人材面を含め、積極的に協力していく所存でありますので、御理解をいただきたいと思います。
○吉田委員長 時間が来ていますので。
○吉泉委員 はい。
ありがとうございました。
やはり、私方現場主義でございます。現場がわかるのは、環境省ではございません、農林省の、山の部分を管理する、ここの所管でもございます。そんな面ではやはりこちらの方として積極的にリードしていく、そういう立場の中で、ぜひ、安心を、地域をつくっていただきたい、このことをお願いし、時間をオーバーしましたことをお許し願いながら、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○吉田委員長 本日は、これにて散会いたします。
午後零時八分散会