衆議院

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第4号 平成25年4月4日(木曜日)

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平成二十五年四月四日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 森山  裕君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 小里 泰弘君

   理事 北村 誠吾君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮腰 光寛君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      加藤 寛治君    川田  隆君

      菅家 一郎君    清水 誠一君

      末吉 光徳君    鈴木 憲和君

      武井 俊輔君    武部  新君

      津島  淳君    中川 郁子君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      橋本 英教君    福山  守君

      堀井  学君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      後藤  斎君    玉木雄一郎君

      寺島 義幸君    鷲尾英一郎君

      鈴木 義弘君    高橋 みほ君

      百瀬 智之君    稲津  久君

      佐藤 英道君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   内閣府副大臣       寺田  稔君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   外務大臣政務官      城内  実君

   農林水産大臣政務官    稲津  久君

   農林水産大臣政務官    長島 忠美君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局次長)      上村  進君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 笹島 誉行君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       新村 和哉君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 熊谷  毅君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           藤本  潔君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            實重 重実君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           小林 裕幸君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  伊藤 哲夫君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

四月三日

 外国政府に対して有する米穀の売渡しに係る債権の免除に関する特別措置法案(内閣提出第一五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 外国政府に対して有する米穀の売渡しに係る債権の免除に関する特別措置法案(内閣提出第一五号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

森山委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官荒川隆君、消費・安全局長藤本潔君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長實重重実君、農林水産技術会議事務局長小林裕幸君、水産庁長官本川一善君、内閣官房行政改革推進本部事務局次長上村進君、総務省人事・恩給局長笹島誉行君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長新村和哉君、政策統括官熊谷毅君及び環境省自然環境局長伊藤哲夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 北海道十一区選出、中川郁子と申します。

 本日は、質問の機会を頂戴しましてありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速でございますが、質問に入らせていただきたいと存じます。

 まず、TPPについてお伺いをいたします。

 安倍総理大臣が交渉参加を表明されて、約三週間になろうとしております。この間、たびたび地元に戻り、地域の切実な声を聞いてまいりました。重要品目である五品目は守られるのか、国益は守られるのか、不安、苦悩など、さまざまな感情が寄せられているわけでありますが、去る三月三十一日のテレビの討論番組に御出演をされました林大臣の御発言をお聞きし、若干不安が解消されたという声が複数の生産者の皆様方から寄せられました。

 討論番組の御発言の内容を私なりにまとめさせていただきますと、このようなことになるかというふうに思います。

 国益が満たされない場合は、もう少し議論をしようと主張してもよいのではないか。日本は協定合意文書にサインするだけということであれば、その場で席を立って帰ってくることも視野に入れてやればよい。関税がだんだん減っていくのを延ばす手段も例外措置という見方もあるが、それ以外に再協議、除外がある。そういうことも含めて党の決議に入っている。そこを踏まえて国益を守る交渉をしていく。

 これらの御発言ですが、党内において議論を重ねて取りまとめた決議文にも即したものでありますので、今後のTPP交渉に当たっての基本的なスタンスであるというふうに思っています。

 そこで、林大臣にお伺いをいたします。

 TPPの交渉が本格化するに当たり、再協議、除外も含めて、国益を守る交渉をしていくという決意をいま一度、TPP交渉参加に不安を感じておられる皆様に向けてお聞かせいただければと思います。

林国務大臣 お答え申し上げます。

 中川委員におかれましては、きょうが初めての御質問ということで、昭一先生もさぞかしお喜びのことかなというふうに思っております。

 今、NHKでの私の発言につきまして、北海道の有権者の皆様の反応というものをお示しいただきまして、本当にありがたく思っております。

 委員におかれましても、北海道の皆様と何度も大臣室にもいらっしゃっていただいて、いろいろな地元の御意見等をお聞かせいただいておりますし、今お触れいただきましたように、党での決議、中心メンバーのお一人としてつくっていただいたというふうに承知をしておるところでございます。

 私も、その決議、本文にありましたが、そこの決議はよく出るんですが、それと、もう一つそこについております、農業については第四分科会、この決議もあるわけですね。これもついて一体となって決議となって、それを踏まえてと、こういうところがなかなか幅広く御理解されていないところがあるのではないかなという思いも持っておりましたので、いい機会でございましたので、NHKの番組の中で、第四分科会の中にどういうことが書かれているかということも敷衍をいたしまして、そういうことを申し上げた上で、この党の決議をしっかりと踏まえてやっていく、こういうことを申し上げたわけでございます。第四分科会の決議には、今先生おっしゃいましたように、除外それから再協議ということが明記をされておるわけでございますから、それを一体として決議ということでお話を申し上げたわけでございます。

 総理も常々おっしゃっていることですが、あらゆる努力を傾けて日本の農業、食を守る、こういうふうに約束をしていらっしゃるわけでございますから、安倍内閣の農水大臣として、しっかりとこの方針で国益を守り抜いて、聖域が確保されますように、農林水産大臣として全力を尽くしていきたい、そういうふうに考えておるところでございます。

中川(郁)委員 林大臣、心強いお言葉、ありがとうございました。

 林大臣、きょうで就任百日目であるかというふうに存じますけれども、大臣におかれましては、就任後直ちに攻めの農林水産業推進本部を設置されるなど、そのスピード感ある取り組みに、さすがは自民党政権、自民党農政と感じております。今後とも、厳しい時代に当たり、力強いリーダーシップを発揮していただいて、農林水産業を引っ張っていただきたいというふうに存じます。ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 その攻めの農政でありますが、そのほかに、農業の成長産業化といった言葉をよく耳にいたします。これらの言葉は、積極果敢にチャレンジすれば数字が上がる、どんどんよくなっていくといった明るい将来がイメージをされます。

 しかし、私の地元の現場の農家さんとお話をすると、残念ながら、攻めの農政、成長産業化という言葉に期待を感じている方ばかりでは必ずしもないような気がいたします。むしろ、しっくりこない、空虚な感じがするという感想を持たれる方もいらっしゃいます。成長産業化といっても、自然相手の農業は工業と本質的に違うということを感じておられる農家さんもいらっしゃるというふうに考えます。むしろ、農家の皆さんにとっては、農業所得を何とかして増大したい、耕畜連携、持続可能な農業の展開によって輪作体系を維持したいという期待があるようです。

 これらは、目先の課題でありますけれども、長期的にも極めて重要な課題、北海道は特に専業農家がほとんどでありますので、死活的な課題であるというふうに思います。そうした現場の期待を政策に変えていくことが、ともすると政治の使命であり、攻めとか成長産業という言葉で表現すれば、現場実態、現場の声からむしろ遊離するのではないかという懸念もあります。

 そこで、江藤副大臣にお尋ねします。

 これから政府が進める攻めの農林水産業推進本部が取り組む政策は、こうした現場の農家の期待を検討することも含めたものと考えてよろしいのでしょうか。

江藤副大臣 中川委員、御質問ありがとうございます。

 私が政治家として目標にしてきた政治家が中川昭一先生でございまして、お亡くなりになられて私も派閥をやめてしまったわけでありまして、その遺志を継がれて政界に来られることは勇気の要ることだったと思います。私も二世議員ですけれども、ちゅうちょいたしました。また、このTPPという重いタイミングでバッジをつけられて、御苦労されていると思います。

 今、空虚だというお言葉をいただきました。ストレートで、私はすばらしい御指摘だと思います。

 私は、農政はもっと地道なものだと思っているんですよ。これまでの農業政策は全て失敗だったという意見をよく聞きます。民主党政権でだって、いい政策はたくさんあったんですよ。あったんです。間違っている部分もありました。自民党も同じです。その時代時代で、それぞれの方々ができるだけの努力をして、そして自然も相手ですし、そしてウルグアイ・ラウンド交渉とかいろいろなこともあって、それで今現在があるわけでありますから、いきなり攻めの農政だ、輸出を二倍以上に拡大するんだと言われても、現場の方々が、何かぴんとこないな、我々に輸出せいと言われたって、そんなこと考えられないよと。

 例えばHACCPを今やっていますけれども、漁師の方々は、やはりとることが仕事だ、俺たちは海で勝負をしているのであって、流通とか売ることまでは正直余り考えられないという御意見を私自身もたくさん聞いております。

 ですから、大臣の御指導のもとで、攻めの農林水産業推進本部、これが立ち上がりました。一月二十九日だったんですけれども、そのときに大臣がおっしゃったのは、とにかく地方の声を集約するんだと。テレビ会議、九州農政局、北海道農政事務所、全部つないで、三月の二十六日には、各局から、それぞれの、我々が、これはいかがですかという案件を具体的に報告もしてもらって、やはり成功事例の後に続けというようなことでこれからはやっていかなきゃならぬだろうと思います。

 サプライとディマンドをいかにマッチングさせるか、これについても、強い水産業づくり交付金の中で、三十二億円だったと思いますけれども、対策を打っておりますし、これはやはり流通にもこれから我々はかかわっていかなきゃいけない。

 輸出も、一兆円になればいいということではなくて、いかに生産者のところの懐が潤うかというところに一番の焦点を当てて輸出拡大は進めていかないと、流通にかかわった人間、商社がもうけるというような輸出拡大ではいかぬのだろうと。ただ、北海道はロシアに近いという地理的に優位な要件もありますので、新たなマーケット拡大に向けて、また委員からもいろいろ御意見をいただければありがたいと思います。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 農政を考える上でもう一つ重要な視点は、自給率、自給力の向上があると思います。国民合意の農政を推進していくために、生産者からも消費者からも期待の強い自給率向上に真剣に向き合っていくことが必要ではないかというふうに存じます。

 今、現場では、自給率を向上させるためにさまざまな取り組みがなされています。私の地元では、家畜飼料の自給率を現在の二六%から三八%にという数値目標を達成するために、コントラクターやTMRセンターを導入するなどの努力を重ねています。また、気候の制約を受けながらも、直売所を通じた地産地消、あるいは北海道産原料を一〇〇%使ったスイーツ、チーズ、焼酎など、地元企業と連携した取り組みもあります。

 こうした取り組みは、生産力の維持に貢献しているものの、期待した所得になかなかつながらないなど、安定的に継続していくためには直面する課題も大きいですが、自給率を支える使命感ゆえに取り組んでいる、このように思っています。

 これからの農業の政策が、自給率の向上という目標をおざなりにし、輸出こそが成長産業となるための条件であるというふうに考えていたならば、国民に安定的に食料を供給することを使命として一生懸命取り組んできた生産者の皆さんには、ちょっと残念だなと思う方もいらっしゃるのかなというふうに存じます。

 そこで、自給率向上のために長年努力している方々に応えるためにも、自給率、自給力向上のための政策も攻めの農政の主軸の一つだという決意を副大臣から頂戴できればというふうに思います。

江藤副大臣 委員のおっしゃるとおりだと思います。

 TMRセンターも何度も見させていただきました。私のところは宮崎ですけれども、粗飼料なんかを輸入に頼っている農家も多くて、六十円台するんですよ。ですから、TMRセンターで皆さん方が努力をされて、食品残渣とか、しょうゆかすとか、いろいろなものをまぜて栄養価を高めて発酵させて、そして四十円弱ぐらいで出しているその努力はすばらしいと思います。

 御存じのとおり、食料自給率、カロリーベースで考えたときには、特に畜産の場合は、輸入飼料に頼っていると自給率に換算されない。これを三八%まで上げていただければ、確実に食料自給率、カロリーベースで貢献することになりますので、これは当然、攻めの農林水産行政を推進する上で、やはりデントコーンとかをどんどんつくっていただいて、私のところでもやはり飼料、耕畜連携も含めてなるべく、大連でこの間、口蹄疫が発生して、輸入がとまったんですよ。そうしたら、急にもう困ってしまう。

 粗飼料についても、配合飼料についても、濃厚飼料についても自給率を高めていく、このことがやはりこれから攻めの農林水産行政の基本政策であるというふうに考えております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきたいと存じます。

 私の住む北海道十勝は、人口三十五万人で、農業経営体が六千三百戸、就業人口一万八千二百四十人です。平均年齢が五十三・八歳で、毎年、百五十人の新規学卒、Uターンの二十代の若者が就農しています。小麦、豆類、バレイショ、てん菜の四品の輪作体系を基本とした畑作と酪農、畜産業を営んでいます。そして、関連産業の裾野も極めて広い地域となっています。日本の食を支えているという使命感を持つ方々が、農業者のみならず、それぞれの分野で日々汗を流しています。

 こういった若い農業者の皆さんの間に、今、平成の坂本竜馬と慕う人物がいます。この方は、NPO食の絆を育む会の代表近江正隆さんです。近江さんは東京・目黒区で生まれた四十二歳、都内の有数の進学校である都立高校を卒業した後、単身十勝に移り住み、漁師として十数年仕事をされました後、農業青年と出会い、NPO法人を始めました。

 このNPO法人は、修学旅行の高校生を中心とした農林漁家のホームステイをしています。ホームステイというと一見新しくないように見えますが、違いは、二十代、三十代の農業青年が中心となって進めていることとその規模の広がりです。二〇一一年、一二年度には二千人を受け入れています。高校生から大学生、一流企業の幹部候補生の研修プログラムへと広がっています。都市部に住む消費者の皆さんに農業に対する理解を深めていただきたい、食料の安全保障、食の大切さ、命をいただくことの本当の意味を知っていただきたいということです。

 彼らは言います、僕たちのやっていることは、遠くの将来へ、雨の滴のたった一滴にすぎないかもしれないけれども、続けていきたいと。

 ここで長島政務官にお伺いをしたいというふうに存じます。

 今、日本の農業の課題は担い手確保政策であるというふうに思います。自民党の政策の柱の一つは担い手総合支援です。新規就農や今お話をさせていただいたような経営継承をしている若い世代、これらの支援制度の充実や要件緩和策も含め、若い担い手にエールを送るような政策を進めていただきたいと存じますが、担い手総合支援について御所見をお聞かせいただければというふうに思います。

長島大臣政務官 ありがとうございます。私の方からお答えをさせていただきます。

 その前に、中川昭一先生と私も政策グループが一緒でございまして、随分学ばせていただいて、今思い起こすのは、水を守るんだ、国のために、農業のためにとおっしゃった言葉が私の胸には随分残っているところでありまして、そんな思いを抱きながらお答えをさせていただきたいと思います。

 今先生の方からるるお話がありましたように、先生の御地元では随分、交流事業あるいは若いリーダーが育っておられて、全国の農業の平均年齢に比べて随分お若い、そして若い世代も育っておられるということをお聞きしておりますし、私も農業者の一人として、農業は誇りを持てる産業というか、ことなんだということをやはり若い人たちにわかってほしいなというふうに実は思っています。国民が命を守るために命を分けてもらう最前線にいるのが農業者であり、酪農家であり、そういった方たちの御努力だと私は思っているんです。

 そのことをもっともっとわかっていただくために、農林水産省は、バランスよく若い世代が農業者として育っていくように、具体的には支援を、スーパーL資金ですとか、あるいは税制の特例措置ですとか、そして交流事業とかを考えているところでありますけれども、中川先生御指摘のように、やはり誇りということと地域に対する熱い思いを受けとめることを農水省が先頭に立ってやってまいりたいと思います。

中川(郁)委員 ありがとうございました。すばらしい御所見で大変感動いたしました。

 食は国家の基本であり、農は国の基、林大臣がおっしゃっておられました。どのような時代にあっても農林水産業は大切であると存じます。今頑張っている皆さんが心強く思うような農政の推進をお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

森山委員長 次に、福山守君。

福山委員 おはようございます。自由民主党、徳島第一選挙区の福山守でございます。

 きょうは、諸先輩方、同僚の皆さん方には貴重なお時間をいただきまして、発言の機会をいただいたことを心より感謝を申し上げます。

 私は、国を守る、ふるさとを守る、福山守というキャッチフレーズで戦ってまいりました。

 今回、私の質問は、まず鳥獣被害に対する環境省の認識です。きょうは、環境省さん、おいでになっておりますけれども、まず、これからお聞かせ願いたいと思います。

伊藤政府参考人 平成二十三年度の野生鳥獣による農業被害額は、全国で二百二十六億円、一方、森林被害面積は約九千ヘクタールに達しておりまして、いずれも被害が深刻な状況にあるというふうに認識しております。

 また、熊類による人身事故等の生活環境被害や、鹿による高山植物等の食害も発生しており、土砂崩壊も含めた生態系の被害も報告されている、これも非常に深刻であるというふうに考えております。

 一方、狩猟者の数は年々減少傾向にございまして、昭和五十年には約五十二万人おられたものが、平成二十二年には約十九万人となり、三十年間で六割も減少しているということでございます。また、狩猟者に占める六十歳以上の割合も六割を超えているということで、高齢化が進展しております。

 こういった深刻な状況にある中で、環境省といたしましては、各都道府県に対しまして、鳥獣保護法に基づく特定鳥獣保護管理計画、いわゆる特定計画を策定して、狩猟期間の延長などを図りながら、個体数調整、被害防除対策及び生息環境整備を総合的に実施するよう、いろいろな面で働きかけている、こういう状況でございます。

福山委員 それでは、環境省として、鳥獣被害防止に向けた対策、これは、今の答弁を聞いて、いろいろ考えられると思いますけれども、それをお教え願いたい。

伊藤政府参考人 環境省におきましては、鳥獣保護法に基づく鹿やイノシシの特定計画の効果的な実施を図るためのガイドラインの作成、配付を行っております。また、計画策定の指導等を行う専門家の登録、紹介、これは今全国で九十九名の専門家の登録、紹介等を行っております。こういったことを通して、都道府県への技術的な支援を実施するとともに、各地で保護管理に取り組む人材の育成を目的とした行政担当者向けの技術研修も実施しているところでございます。

 また、昨年度より、新たに狩猟免許取得促進に向けたフォーラム、あるいは地域ぐるみでの捕獲推進モデル事業を実施するなど、鳥獣保護管理の強化を図っているところでございます。

 引き続き、これらの取り組みを推進するとともに、農林水産省を初めとする関係省庁と連携を図りつつ、より効果的な対策の実施に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

福山委員 伊藤局長さんの方からお話を聞きましたけれども、私は、きょうは、局長さんのガイドラインの話を聞きに来たわけじゃないんですよ。今言われたことはどこにでも出ている部分ですよね。

 ここまでになった経過というのは、私も県議を長いことやっておりましたけれども、これは五年に一回、生体個数調査をやりますね。その調査が十分でなかったから、今の鳥獣被害というのがこれだけ拡大したんじゃないですか。そういうことでしょう。ちょっと待ってください。

 それで、今のこういう状況で来て、例えば狩猟ハンターが、三十年前に比べたら六割になった。さらに六割が六十歳以上になった。この対策を練る。あるいは、今言われた中で、狩猟期間の延長がありましたね。たしか、これは二年ぐらい前だと思うんです。私は、当時、県議会の環境局の方でこれをやったことがあります。

 でも、それは、例えば我が徳島県で、「「害獣捕獲費」町の財政圧迫 年々膨らみ補正で対応」、この十年間で被害が倍になっておるんですよ。二年、三年前に対応した、あるいは、今審議会を組んで、去年の十一月にやってこの秋に出す。こんなばかな話がどこにありますか。それで答えられるんだったら答えてください。

伊藤政府参考人 個体数の把握ということは、特定計画をつくって、実効ある対策を策定する上での大前提となるものでございます。その捕獲数や被害状況等とともに、その動向を検証しながら、状況に応じて随時計画を更新していくことが重要であるというふうに考えております。

 個体数推定の精度を上げなければいけない、これは非常に重要な課題ということでございまして、環境省では、特定計画が作成されているイノシシや鹿を対象に、鳥獣の個体数の推定方法や、それに必要な生息状況等に関する調査のあり方などについても検討を行っているところでございまして、その結果を踏まえまして、各都道府県に対し、情報提供、技術的助言を積極的に行ってまいりたいというふうに考えております。

 いろいろ、遅いという御指摘がございます。それを踏まえまして、農林水産省とも連携をしながら、より一層の対策の推進を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

福山委員 ちょっと時間が少ないのでこれ以上言いませんけれども、今からやるといったって、これだけ被害が増大してきておるんですよ。これだけ増大してきている中で、今からやるということ自体が間違っているんですよ。その予算がない、いろいろ、この五年に一回の調査そのものが間違っている。

 毎年、捕獲頭数を、例えば、あるA町が、二〇〇八年度七十二頭から一一年度二百六十一頭なんですよ、鹿、イノシシ、猿。同じく、三百三十五から五百七十、百七十三から六百五十八、こんな短期間でこれだけになっているわけですよ。個体数の調査が十分、正確でない、把握できていないんですよ。五年に一回でそれができるわけがない、これだけふえているんだから。それに対する対応をどう考えるかということでしょう。これは答えはいいです。

 農林水産委員会ですから、基本に返りますけれども、そこで、ぜひ農林水産省の方にお願いしたいのは、この個体数の調査というのは、確かに、今怒って申しわけなかったけれども、環境省は予算が少ないから、都道府県に対して、そこにやってもらうというシステムだから、これが難しいと思うんです。農林水産省は、実際に被害を受けて、いわゆる獣害の対策をとっているわけですから、そちらの方でもこういう対策を一緒にとっていただけないか。そして、町の財政を非常に圧迫している、こういう問題がございますので、このあたり、負担がないように、ぜひとも国の方でしっかりと地方を守っていただきたい。お願いいたします。

佐藤政府参考人 福山先生の今の御質問にお答えいたします。

 まさに、先生おっしゃっていただきましたように、地域の実情に応じた鳥獣被害対策を効果的に実施する上で、個体数を的確に把握するということは非常に重要と考えておりまして、当省におきましては、鳥獣被害防止総合対策交付金、二十四年度で九十五億円の予算を計上しておりまして、本年度も同様の予算を計上しておりますが、この中で、被害防止対策の一環として市町村が行う個体数調査について支援対象としておりますが、二十五年度からは都道府県が行う個体調査についても支援対象とするようなことにしておるところでございまして、今後とも、環境省とよく連携しながら、鳥獣被害対策を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

福山委員 そういうことで、環境を守らなければいかぬ、個体を守らなければいかぬというのはわかりますけれども、環境省と連携をとって、そのあたりのしっかりした把握をやっていただきたい。

 そして、何よりも、地方は本当に困っています。鳥獣の被害については、特に中山間地、最近では市街地まで入ってきていますから、そのあたりをお願いいたしたいと思っております。

 今、私は中山間地の話を中心にやりましたけれども、次に、遊休地についてお話をさせていただきたいと思います。

 時間の関係上、簡単に言わせていただきますけれども、今、遊休地は埼玉県の広さがあると言われておりますが、農林水産省としてはそれをどうするべきか。やはり中山間地が遊休地としては今一番多くなっている。これをやるためには、集積化を図るということを言われております。そのためには、まず地籍調査をしっかりやらないことには農地の集約は図れません。そういうことを私はお願いいたしたいと思うんです。

 これは、このたびの東日本大震災、あるいは和歌山、奈良の一昨年の大水害、そういうときにでも、地籍調査が十分できていなかったから、復興復旧はそういう中でおくれたということもございますので、これをしっかりとやっていただきたいと思います。

 今の予算制度が古い、米の調整のいろいろな生産の話から来て、旧の内務省、いわゆる国土庁から来た話の中で、この予算というのは国交省から出ているというのを私はわかっておりますけれども、今の方針というのが、山そして市街地、今、農地の方は大分できておる。でも、山、中山間地、農地、そして市街地とすれば、市街地と山がもちろんおくれている。中山間地もですね。この十年間の、二〇二〇年からの方向というのが、これは、いわゆる高齢化、過疎化で、地籍がなおわかりにくくなってくる、中山間地も一緒なんですけれども。そういう中で、山と市街地、中山間地というのは取り残されておりますので、これを何としても農林水産省の方で、このあたりはしっかりと、農地の集約も含めた形の中で、新しいシステムとして、あるいはそういう集積を図る中で、地籍を一緒にやるような形として考えてほしいなということを私は御提案いたしたいと思っております。

實重政府参考人 地籍調査の関係でお答えさせていただきます。

 地籍調査は、市町村などが主体となって実施しておりますが、委員御指摘のとおり、地域によってはおくれているところがございます。他方で、農地の区画整理等、農業基盤整備を行うに当たりましては、土地の権利関係等の詳細を確定しなければならない、こういう必要がございます。

 農業農村整備事業を行うに当たりまして、大きな国営事業、国営農地再編整備事業等でございますけれども、これにつきましては、事業を開始する前の計画策定段階におきまして、地籍とか土地権利関係を特定する、このための直轄調査を実施しているところでございます。

 また、県営事業、団体営事業といった規模の事業につきましては、農業競争力強化基盤整備事業あるいは農山漁村地域整備交付金等の事業の中で実施するわけでございますが、その中にソフト事業がございまして、助成を行っているところであります。

 このような形で、土地の権利関係の確定、地籍調査に準ずるような調査を進めてまいりたいと考えておりますが、このほかにも、小規模な範囲での権利確定などにつきましては、さまざまなソフト予算もそれぞれ目的別にございますので、地域の話し合いに応じて活用していきたいというように考えております。

福山委員 今言いましたように、これを進めるということが、一つ集約化も図れますし、基本的なものになっていると思います。それが災害等とかいろいろなことにも関連してまいりますので、ぜひとも。

 これの予算は、都道府県へ行くと、六割ぐらいが農林水産部が扱っているんですね。地方に行くと、扱っているところもいろいろ違うんですけれども、大体六割。もともとがそういう米の生産云々の話からスタートしていますので、これは、こういうことで当時の仕組みがそのままになっていると思うんですけれども、このあたりしっかりとお願いをいたしたいと思います。

 それと、ブランド化の促進について、先ほど中川先生の御質問の中で、江藤副大臣の方からよく似た形の中でお話がありましたけれども、我がふるさと徳島には阿波尾鶏という、踊る踊りではなしに、鶏の阿波尾鶏というのがおるんですね。これは、大臣、今、鳥が八百万羽出荷されている中で、約四分の一の二百万羽が実はこの阿波尾鶏なんです。これは、県の研究施設とタイアップして、今まさに、日本の地鶏と言われる四分の一が本県産出の阿波尾鶏が食べられているわけなんですね。

 それによって、先ほど出た、県南部の本当に田舎の田舎の地域なんですけれども、高知県と境を接するところに会社があるんです。そこでその地域をまさに守っているんですね。売上高も、二百億を超して三百億近くの企業に成長しておりまして、非常にすばらしい環境でやられております。

 だから、地域に根差した、地域を支えるこういうものを、今後、農林水産省として、全国的にどのように進めていくのか、これをお伺いいたしたいと思います。

江藤副大臣 成功事例を聞かせていただいて、大変びっくりいたしました。

 先ほど中川先生にも御答弁させていただきましたが、推進本部におきまして、テレビ会議を通じまして、各地域の成功例を報告いただいたんですが、それに入っておりませんでした。

 私のところも、実は地頭鶏というのがありまして、競合するのかなという気もしますけれども、宮崎も負けないように頑張っていきたいと思います。

 やはり、ブランド化して定着すると、もう本当に、最初、私のところの地頭鶏も、売り先がなくて苦戦をしたんですけれども、今非常に順調になりまして、ブランド化することによって、日本人はブランドに弱いという性質もありますので、ブランド化を進めていくことは大切なことだと思います。

 ですから、私どもとしましては、これから、いろいろやってきておりますけれども、専門家、弁理士ですけれども、そういう方々を、ソフト事業ですが、国の予算で地方に派遣をして、まず、ブランド化をする、商標を獲得する。商標を獲得したら、その商標で今度はマーケティングをして売り先を探す。そういうことに関しましても、国としてはこれからもっと積極的に関与して、ブランド化を進めて、商品が高く売れるように、先生御指摘のように支援していくことがとても大切だというふうに考えております。

福山委員 副大臣、競合しておりますが頑張りますので、今は徳島の方が勝っていると思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 それでは、最後に大臣の方にお聞きしたいと思います。

 農業の発展、特にアベノミクスの三本の矢の三本目、成長戦略の一環として、農業についても産業競争力会議で議論がいろいろなされております。農業を若い人が本気で取り組めるような仕事、産業として成り立たせていくことが必要であります。早急に具体策を打ち出してほしいと思っております。

 今や、農業を一次産業としてだけ捉えるのではなくて、一次、二次、三次と展開して、六次産業化、差別化することで付加価値を高め収益を上げていく、こういった視点は不可欠であります。

 そこで、最近の取り組みで、いわゆるアグリファンドを創設するなど、このような視点、方向にも積極的に大臣は取り組んでおられます。農業を取り巻く厳しい環境の中で、本気で農業を産業としてどのような形で育成、発展させていこうとしているのか、基本的な考え方、方向性をお伺いいたしたいと思います。

林国務大臣 お答えを申し上げます。

 今まさに福山先生おっしゃっていただいたように、今の鳥の話は私は寡聞にして初めてお聞かせいただきましたが、各地でそういう例がございます。

 私も、この本部をつくったときに、やはり現場重視だろうと。国で一律に制度をつくって、これでいこうというよりも、現場で、今お話しいただいたように、もう何百億もやっていらっしゃる例がある。

 実は、先ほど江藤副大臣から答弁したように、これを発掘してこいという指示を出しまして、かなり多くのいろいろな例、これはどうだろうかということに余りとらわれずにたくさん出してこいと。それを今磨きをかけて、これならいろいろな横展開、すなわち、同じような取り組みをほかの地区でもできるかというような視点から検討しております。

 今お話がありましたような、需要サイドと供給サイドをつなぐ、それから、そのつなぐ意味において、今まで政策展開としては、融資をするですとか補助金を出すとか税制で優遇するとかいうのが一般的だったわけですが、これに加えて、ファンドをつくって出資をする、こういう形も加えてやっていこうというふうに思っております。

 徳島県で、先生のお地元かどうかあれですが、「いろどり」という非常に有名な例がございますけれども、例えば規模は、先ほどの鳥に比べればちょっと桁が二つぐらい違うかもしれませんけれども、やはりこういうふうに一生懸命取り組んでおられる例がある。

 こういう現場の知恵を生かして、全国で同じような横展開をするということを念頭に置いて、現場重視、それから農産物の高付加価値化ということで、しっかりと攻めの農政に取り組んでいきたいと考えておるところでございます。

福山委員 大臣、「いろどり」のことをありがとうございました。実は、時間があったら、「いろどり」をしゃべりたかったんですけれども、時間がないものですから、はしょりました。

 これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。いろいろ御清聴ありがとうございました。

森山委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道でございます。

 昨日、衆議院予算委員会の地方公聴会が行われまして、私は仙台の会議に参加をしてまいりました。四人の陳述人の中でお二人が水産関係者の方でありまして、現状について率直な御意見をお聞かせいただきました。

 まず、宮城県漁業協同組合経営管理委員会の菊地伸悦会長は、いわゆる瓦れきの問題について、陸地の瓦れきはほぼ処理されたけれども、海の中にはいまだに多くの瓦れきが残っている、国に何とかしっかりと予算をつけて処理を進めてもらいたいという声をいただきました。

 また、風評被害の実情について意見をお伺いしたのに対し、石巻魚市場株式会社の須能邦雄代表取締役は、安全を正確に表示することによって消費者は安心を得る、国はこれまで以上に、放射能に対する正しい情報の周知徹底を図るべきだと主張をされていらっしゃいました。

 私自身、昨日のお話を伺いまして、今、林大臣を先頭に、農林水産省を挙げて、被災地の復興について、第一次産業の振興に向けて取り組まれていることもよく伺って承知をしております。

 ちょっと通告はしておりませんでしたけれども、林大臣もかなり強力に推し進められていることはよく承知しておりますけれども、被災地の水産業の早期復興、早期振興に対する大臣の率直な思い、御決意をお聞かせいただければなと思います。

林国務大臣 佐藤先生も現場に行かれたということでございましたが、私も、石巻の須能さんと、視察へ行ったときに随分お話をさせていただいたんです。

 そのときも感じましたけれども、やはり、なかなか、あそこはたしか地盤が沈下して、それを今かさ上げをやっている、隣で、こちらでまだやっているんだ、こういうようなことを、非常になえるような状況だろうと思うんですが、非常にお元気に頑張っておられると感銘を受けたことを思い出しております。

 ちょうど三月十一日、二周年ということで、安倍総理の記者会見でも、現場主義を徹底して実行を進めよう、百の議論よりも、できることを一つ一つやっていくんだということで、現場の方が実感してもらえることをやるんだというふうにおっしゃっておられました。

 私の方でも、当日、三月十一日ですが、農林水産省で地震災害対策本部と原子力災害対策本部、これは合同本部で開催いたしまして、災害対策の手引きの決定を行うとともに、各地の状況をもう一度聞かせていただきまして、まだまだ、これは水産業のみならず、農も林も課題が残っているな、こういうふうに思ったところでございます。

 海の瓦れきについても二十五年度の予算で対応をしているということでございますし、それから、先ほどの風評被害、私も、石巻、まさに、個体全部を検査するという器械でやっているところ、作業をしている皆さんにも直接会ってお話を聞いたんですが、大変な作業だろうなと。しかし、その中で、先ほど申し上げましたように、一つ一つの努力によって何とか風評被害を乗り越えていくべく頑張っておられる。

 したがって、現場の皆様のこういう実態、それからお気持ちに寄り添って、元気が続くようにしっかりと支えていく。総理のお言葉にもありますように、一つ一つできることから実行していく、こういう地道な努力を積み重ねていくということを中心に据えまして、しっかりと復旧復興対策をやっていきたい、こういうふうに考えております。

佐藤(英)委員 ありがとうございます。ぜひとも、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、TPPの水産業への影響についてお伺いをさせていただきます。

 漁業補助金についてでありますけれども、これは、経済連携交渉の中でも各国の立場の違いがあり、なかなか合意を見るのが難しい現実があります。WTOでも、二〇〇七年十一月に議長テキストが出され、これをもとに各国間で議論が交わされましたけれども、やはり、平行線をたどって結論を得ることができませんでした。

 我が国は、過剰な漁獲につながる補助金に限り禁止すべきだと主張をしているわけでありますけれども、米国、豪州、ニュージーランドは、安全、環境保全、減船など、ごく一部の例外以外は漁業補助金を認めないという立場、途上国は、途上国への配慮を十分に行うべきだと、互いに譲らなかったわけであります。

 TPPにおいても、米国、豪州のグループ、ペルー、チリなど途上国の主張もありまして、当然、日本の主張とは相入れないという、WTOと同じ構図になるのではないかと予想もされるのであります。

 我が国は、これから交渉に参加していくということでありますが、現在までの間にTPP各国間でどういった議論がされているのか、非常に心配なのであります。政府として、この漁業補助金の議論についてどのような情報をつかんでいるのか。

 また、我が国は、TPP交渉でも、WTOと同様、補助金が過剰漁獲につながる場合のみ禁止、そのほかの漁業補助金はあってしかるべしという強い態度で臨むべきと思いますけれども、御見解をいただければと思います。

林国務大臣 基本的に全く委員と同感でございまして、TPPにおける漁業補助金の議論の状況は、まさに、今委員がおっしゃっていただいたように、米国の方は、過剰漁獲を招く漁業補助金について規律を設けようということを提案しております。過剰漁獲を招く漁業補助金という定義が非常に広いということだろう、こういうふうに思います。しかし、各国の間で対立があって、いまだこの部分は合意に至っていない模様というふうに情報を承知しておるところでございます。

 WTOの漁業補助金交渉においても、我々は常に、政策上必要な補助金は認められるべきであるというふうに主張してきておりますので、当然のことながら、TPPに入っていくということになりますれば、このような我が国の立場を主張していくということでございますし、近い立場の国を探して一緒に戦っていく、こういうことになろうか、こういうふうに思います。

 今委員がおっしゃったように、WTOで我々は、一一年ですから数年前になりますが、禁止補助金は真に過剰漁獲能力、過剰獲につながるものに限定するとともに、必要な施策実施が阻害されないようにすべきという提案を正式に行っております。

 やはりこういう漁業補助金のようなものは、そもそもマルチのWTOのようなところでやるべきものであって、我々が入っていって十一が十二になる、こういうような限られた国でやっているTPPというところにおけるルールづくりが、そもそも漁業補助金というこのグローバルな問題に対応するために意味のあることなのだろうか、そういう疑問もあるわけでございまして、そういう基本的な姿勢をしっかりと保って対応していきたいというふうに思っておるところでございます。

佐藤(英)委員 ぜひ、大臣がおっしゃられるように、日本は日本の立場で、主張すべきは主張し、譲ってならないものは断じて譲らないという確固とした態度で臨んでいただければと思います。

 次に、雪の被害について伺います。

 ことしも非常に心配しておりましたが、農業への被害の状況はどうであったのか、今わかっている範囲で結構ですので、教えていただければと思います。

奥原政府参考人 お答えをいたします。

 この冬の大雪によります農業関係の被害は、四月三日現在の都道府県からの報告によりますと、ビニールハウスの損壊が二十二都道府県で約三千三百棟、それから農作物の損傷が十六道府県で約七十ヘクタールということになっております。

 このうち、北海道につきましては、ビニールハウスの損壊は約千七百棟、農作物の損傷は約三十ヘクタールというふうに承知をしております。

佐藤(英)委員 昨年、一昨年と比べれば、ことしは比較的被害額が少なかったということでありますけれども、現実的には、どうしても天災や天候、気象による農業被害というのはゼロになるということは難しいと思います。

 そこで共済があるというわけでありますけれども、共済の加入状況並びに現在までの支払いの状況と今後の見通しについてお伺いしたいと思います。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきます。

 一昨年の三月十一日、地震、津波、それ以来、豪雪、竜巻、突風、大雪と、本当に近年の日本は災害が多数発生をしておりまして、農業に大変大きな被害を及ぼしております。

 その中から、農家が再生産を可能にするための手段の一つがやはり共済だというふうに理解をしております。国としては、掛金の半額を国庫負担したり、広報活動時、加入推進をしているところでありますけれども、全国平均では加入率は四七%、先生御地元の北海道では八五%ということになっております。

 支払い状況についてでございますが、雪害のみの集計は実は行っておりません。雪害以外のものを含めると、平成二十四年十二月から二十五年二月まで発生した園芸施設の被害に対して、これまでに、全国で約五千棟、約四億円の共済支払い、北海道では約四百棟、四千万円の支払いを行っているところでございます。

 ただし、ことし三月二日、三日に発生をした雪害についてはまだ集計ができておりませんので、でき次第、早急に対応してまいりたいというふうに思っているところでございます。

佐藤(英)委員 次に、バレイショの品種開発について伺います。

 我が国のバレイショは、さまざまな理由はありますが、やはり収量がEU産と比べると追いついていない部分があります。農家の方々に伺いますと、輪作をしているけれども、やはりさらに単収を上げていきたい、そういう育種ができないか、自分たちでも一生懸命取り組んでいるけれども、国もしっかりと頑張って取り組んでほしい、そういう声も聞かれるのも事実であります。

 また、病害虫にも強い品種開発も欠かせません。

 現在の品種開発の状況についてお聞かせいただければと思います。

小林政府参考人 バレイショについてのお尋ねでございます。御説明させていただきます。

 まず、現状の平均の単収でございますけれども、我が国の主要産地である北海道では三・五トン程度、EU諸国の中で最も単収が高いオランダでは四・六トン程度というふうになっております。もちろん、気候条件だとか用途だとかさまざまな条件が異なりますので、単純な比較は難しいんですが、一トン近くの差があるというのは現実でございます。生産性の向上というのが大変重要な課題だというふうに考えております。

 バレイショの新品種の開発につきましては、今御指摘いただきました生産性の向上に加え、防除の困難な病虫害に対する抵抗性を持つ品種の開発が特に重要でございます。

 このため、独立行政法人であります農業・食品産業技術総合研究機構などで、生食用、加工用、でん粉用の各用途に応じて、直近五年間でも計六品種を開発してきているところでございます。

 今後とも、病害虫に抵抗性を持つという特性を持ち、また、生産性が高く、用途ごとの実需者のニーズに対応した、すぐれた品種の育成に努めてまいりたいというふうに考えております。

佐藤(英)委員 抵抗性品種の開発に先行的に取り組んでいるというお話でございました。この強い品種の開発に取り組みながら、同時に、用途に応じての品種改良にも取り組んでいるということでありますけれども、私は、消費者の皆さんに対する新しい品種の普及推進ももっともっと必要ではないかと思っているわけであります。

 苦労してつくった新しいバレイショを御家庭でもどんどん召し上がっていただけるようになると、生産農家の方々の御苦労も報われると思います。また、陰で努力をして農業を支えている方たちの励みにもなると思います。

 この新品種の普及促進についての取り組み状況をお伺いするとともに、あわせて今後に向けての御決意もお聞かせいただければと思います。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきます。

 バレイショは、主産地である北海道を初め、全国でつくられている日本の主要品目だというふうに理解をしております。先ほどお答えをさせていただいたとおり、バレイショの品種改良、収量ですとか品質、そしてもう一つは、病虫害に強い品種の改良を促進しております。

 ただ、全国的には病害虫抵抗性品種はなかなか消費が進まないという現況がありまして、平成十三年から二十三年で七%から一八%、約一〇%増加をしたにとどまっております。

 それには、やはり在来品種である男爵とかメークインというブランド名が消費者に広く受け入れられているために、なかなかそこが進まないという一面性があるんだろうというふうに思っております。

 そこで、農水省は、実証圃等を通じて支援をしながら、皆さんにそのことのよさを知っていただくということをやっていく、あるいは、消費者に向けて直接、食味、収量、病害虫に強いということを積極的に宣伝をしながら、新品種の消費拡大に努めてまいりたい。

 今後とも、そういった支援を繰り返しながら、農家にとってつくりやすくて、おいしくて、収量の上がる品種の開発に一方では努めてまいりたいと思いますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

佐藤(英)委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 終わります。

森山委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 きょうは、一般質問ということで、本当は安倍総理に質問したいようなことを林農水大臣にも質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、TPPの交渉参加ですけれども、これは私も随分と心配をしておりまして、本当に日本の国益が守れるんだろうかというところを、自民党政府は本当に大丈夫かということをまず一点申し上げておきたいと思います。

 というのは、安倍総理が、日米首脳会談後に記者会見もしましたし、それから、さきの所信表明でも話をされていましたけれども、日米同盟の信頼とか強いきずなが完全に復活した、緊密な日米関係が完全に復活したと言うわけですよ。同じ方向性とか、具体的政策が完全に一致すると言うわけですよ。普通、アメリカと日本でそんなに完全に一致するわけはない。わけはないのに、よくそういうことを言えるなと私は思ったわけであります。

 確かに、民主党政府において、普天間問題もありましたし、国民の皆さんも混乱させましたし、それはある意味、一面、アメリカの信用を傷つけたところはあったと思います。それは否定しませんけれども、その一事をもって、何か同盟関係が弱体化するとかどうとかというのは、私はちょっとおかしいなと思いますし、逆に、だからこそ、完全に復活したとかという言葉も、本当に内容の伴ったものなんですかということを申し上げたいわけであります。

 例えば、尖閣諸島の事案もありました。あの後、クリントン国務長官は、日本に、たしか外務大臣と会談したときに、尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲内だというコメントもしているわけですよね。このコメントがなかったときのチャイナの反応がどうかということを考えますと、やはり、ああ、日米同盟というのは機能しているんだろうなというふうにも思いました。

 東日本大震災のときも、発災後わずかな期間で、それこそ横田基地にアメリカの太平洋艦隊の総司令官が来られて、それでオペレーション・トモダチをやったわけですから、こういう意味でも、別に、そんな弱体化しているというか、そういうわけじゃないよなと。言葉で言うというのは一体何なんだろうなと私は思うわけでありまして、世界から見たら、だから、日米関係が弱体化しているというのはどういうことなのかと常々思っておったわけであります。

 逆に、これは林大臣に言うのはあれですけれども、今回、安倍さんが、日米首脳会談をやったときに、CSISでジャパン・イズ・バックという講演をしたんですよ。ジャパン・イズ・バックというのはおこがましいんじゃないか、LDP・イズ・バックと言ってほしいと私は思いますね。

 ですから、識者も、ジャパン・イズ・バックと言ったときに、国内向けのパフォーマンスじゃないかといぶかしがる向きもあるわけですよ。オバマ大統領は、若輩ですけれども、私の知る限りでは、クールというよりコールドだ、冷静というよりは冷淡だとアメリカの識者がそう評価しているわけです。

 ですから、これはちょっと邪推のように聞こえるかもしれませんけれども、下手したら、これは安倍さん、アメリカ政府に信頼をされるがために、このTPPについても交渉参加と言い、そして、この先の条件交渉でもかなり譲歩する可能性があるんじゃないかと私は見ているんです。

 我々の政府、野田政権では、大変でしたけれども、TPPのことは、もう党が割れんばかりの議論をしました。そのほかにも原発の再稼働の議論もありました。これも割れんばかりの議論をしました。税と社会保障も、割れてしまいましたよ、これは。でも、割れんばかりの議論をして、それで決めたわけですよね。だからこそ、オバマ大統領も信用したと思いますよ。

 これは逆説的ですけれども、もし安倍さんも本当にオバマ大統領に信頼されたかったら、自民党内で割れんばかりの議論をすべきだと思いますよ。しゃんしゃんで終わるような議論を経た意思決定では、私は本当の意味で信頼されないと思いますし、何よりも、内外での使い分け、日本国民はだませても、各国政府に足元を見られますから、そこは、どうかしっかりと日本国民の利益を守るべく交渉していただきたいとまず冒頭申し上げまして、ここからは林大臣に質問です。

 自民党さんは野党時代に、情報がわからない中で交渉参加するというのはどうなんだと。私の有権者にも、何でそんなわからないものに入るんだとよく言われましたけれども、これは長島先生と私も、お話ししていたときにそんな話もしていました。そもそもわからないのに何で入るんだよと、私は新潟ですから、野党時代、やりとりする中でそんなこともおっしゃっていました。

 どうですか、与党になりまして情報が入りましたか。その入った上での今回の決断ということなのかどうなのか、ぜひ大臣に一言コメントをいただきたいわけであります。

 あわせて、大臣、席を立つ覚悟を持つという趣旨の発言もされています、条件交渉に入っても。それは常識的に当然だと思います。当然だと思いますが、とおっしゃるならば、どういう事柄をもって席を立つというお考えなのかということもあわせてお話をいただきたいと思います。

林国務大臣 お答え申し上げます。

 前段のお話は、また予算委員会でぜひ総理と直接やっていただいたらというふうに思いますが、委員もアメリカは大変お詳しいということでございまして、オバマ大統領については、コールドだとか冷たいとかいう評もあるようですが、一番私が思いますのは、多分、ビジネスライクである、したがって、結果を出すか出せないか、こういうところが非常に大きいというふうに思っております。

 そういう意味では、今回、総理が行かれて、共同声明という形をつくった。これは、いろいろなことが書いてありますが、我が国にとっても、きょうは農林水産委員会ですから、一定の農産品についてのセンシティビティーということをはっきり文書で明記をして、これを共同声明として出した、これは一つの大きな成果であった、こういうふうに思っております。

 そういう意味で、今御指摘がありましたように、情報が不足しているというような指摘を我々は野党時代にやってまいりました。それは、ただ言っていたということではなくて、三月九日ですから、もう一年ぐらい前になりますが、自民党として正式な文書でまとめたTPPについての考え方というのがございますが、これは、当時私が座長をしておったところでまとめたものでございまして、そこにもそういう記述をしております。そういうことをいろいろ述べた上で、例の公約になっていきます。政府が「聖域なき関税撤廃」、これは聖域なき関税撤廃に括弧がついておりますが、これを前提にする限り交渉参加に反対する、この公約になっていくわけでございます。

 したがって、先ほど申し上げました共同声明において、この一番に関してどうであるかということを総理はそこでお話をされて、そういうことを共同声明に書いたということと、それから、総理がおっしゃっておられますように、その上で、自分は、この聖域なき関税撤廃を前提にするということではないという確証、確信、思いを得たということを外にきちっと言いますよということを大統領に申し上げて、そして、大統領の同意を得た上で申し上げている、たしかこういう会見だったというふうに記憶をしております。そういう経緯があるということでございます。

 それからもう一つ、先ほど中川委員からもお話がありましたけれども、NHKの討論番組での発言ということだと思いますけれども……(鷲尾委員「記者会見です」と呼ぶ)会見でも申し上げておりますが、これは今委員がおっしゃっていただいたように、当然、席を立って帰る、サインをしないということはあらゆる外交交渉であり得ることでありまして、参加したから、我々の意見が全く通らないのに唯々諾々とサインをすることはないということは、もう当然のことであるというふうに思っております。

 では、どういう場合にそういうことがあるのかということは、今から入っていって交渉があるという、かなり仮定を幾つも置かなければならないということと、それから、今の段階で、こういう場合はこうするということをあらかじめ出してしまいますと、それは相手にも通じてしまうということでございますから、やはり交渉のテクニックとしても余りよろしくないのではないかな、こういうふうに思っておりますので、一般論として、そういうことが当然あり得るということを申し上げているということでございます。

鷲尾委員 そういうお答えになるだろうなと思っておりました。

 自民党さん風に言えば、聖域なき関税撤廃が交渉の前提ではないというところが確認できたということなんでしょう、そうじゃなければ世論も納得しないでしょうから。世論が納得するようにそういったことをやったんでしょうが、一方で、高いレベルの経済連携を目指すという目標自体は何ら変わっていないわけでありますから、日本の国益を守るべくこれはしっかりやっていただくしかない。

 その日本の国益とは何かということで、具体的に一つは、先般、我が政権で策定をしましたけれども、食料・農業・農村基本計画において、食料自給率の目標というのがあるわけです。これはどうなりますか。

江藤副大臣 では、私の方から。私はこういう性格ですから、正直に、率直にお答えをさせていただきたいと思います。

 TPP交渉参加をすれば、当然これは、食料自給率、それはカロリーベース、いわゆる熱供給量ベースと生産額ベース、数字はもう言いません、御存じでしょうから。下がるということが農林水産省の試算ではっきり出ているわけでありますから、まずは、総理に、強い外交交渉力をもって、もうできるだけ多く、少なくとも、言った五品目についてはきちっと例外を確保していただく、このことがまず大前提としてあると思います。

 先ほどの試算も、全く国内対策を打たないとか、そういったGTAPモデル自体が非常に、これと農水の試算は違いますけれども、極端な前提を置いておりますので、若干数字がきついことになっておりますけれども、やはり下がる方向でのインパクトは確実にあると私は認めざるを得ないと思っています。

 そのことを前提として、総理が言っておられるのは、強い日本を取り戻すということをずっと言われているわけでありますから、強い日本国とは、自国の食料は自分で賄える、いわゆる食料安全保障も総理の念頭の中には当然あることでありますから、そのことを我々は、農林水産省に籍を置く者として、総理の思いを実現する努力をしていかなきゃいけない。

 総理が国民に対して、日本の食と安全を守ると約束をしたわけですから、公共の電波を通じて。このことは我々はきちっと胸にとめて、これから大臣を先頭に頑張っていかなきゃいかぬというふうに思っております。

鷲尾委員 冒頭申し上げましたけれども、その総理のリーダーシップ、交渉力というのに私は疑いを持っているわけでありまして、江藤先生も随分とTPPについては反対をされていたようでありますし、何よりも御地元の状況もあるわけですから、そこは、総理をとめてでも、農水省の政務一丸となって国益を守るべく頑張っていただきたい。皆さんが頼りだと思っておりますので、よろしくお願いします。

 それから、この議論ばかりしていると時間がなくなりますので、次の質問に移りたいと思います。

 先ほど質問を聞いていましたら、自民党の中川先生が担い手の話をされていました。この場をおかりしてですが、私も中川昭一先生にひそかに哀悼の意を表した次第でございまして、他党でしたのでひそかにでありましたけれども、改めて哀悼の意を表させていただきたいと思います。

 担い手、本当にどうしていくんだろうな、正直申し上げて、私の地元でもそうですけれども、これは、食料・農業・農村基本計画で十年後で五〇%という目標を立てていますけれども、十年後はどうなっているんだろうか、もういないんじゃないか、誰がつくるんだろうねというのが農家さんの率直な声です。自分がけがをしたらすぐにでもやめるとか、後継者がいない、それにもう本当に人がいないから、人手がないから外国人の方を使っているとか、そういう声もあるわけです。

 今、そういう声を受けて、人・農地プランに取り組まれておられますけれども、この人・農地プランについて、どれぐらい作成が進んでいるのかということをまずお聞きしたいと思います。

奥原政府参考人 人・農地プランでございます。

 各地域の人と農地の問題を解決していくために、地域の農家の方々に徹底して話し合いをしていただく、そういう観点でこの人・農地プラン作成を推進しているところでございます。

 このプランにつきましては、平成二十四年度、二十五年度の二年間で、作成意向のある全ての市町村で作成されることを目指して推進をしておりますが、二十五年二月末現在、どこまで行っているかといいますと、プラン作成に至った市町村は八百七十六でございます。作成意向のある市町村が千五百六十でございますので、そのうちの五六%では、これは一カ所かもしれませんが、プランの作成に至ったということでございます。

 プランを作成している地域の数で見てみますと、作成意向のある地域の数が一万九千四百一に対しまして、二月末現在でプランの作成に至っている地域は四千九百六十五地域ということになっております。大体二六%ぐらい、こういう状況でございます。

鷲尾委員 それでなんですけれども、今、局長がおっしゃったとおり、地域全体で話をするということなんですね。

 ところが、またちょっと聞きたいんですけれども、プランを、例えば一市、一行政単位について一プランしか作成していないところもあるでしょう、あるいは数プランしか作成していないところもあるでしょうと思うんです。これはどうですか。

奥原政府参考人 この人・農地プランの作成するエリアにつきましては、地域ごとに事情がいろいろございますので、市町村の判断でエリアが決められるという仕組みになっております。

 ことしの二月末現在でございますが、プラン作成の意向のある市町村は、先ほど申し上げましたように千五百六十でございますが、この中で、一市町村で一つのプランをつくるというふうに予定している、あるいは実際につくったというところが五百十九市町村でございます。それから、一つの市町村の中で二プランから十プラン、要するに一桁のプランということを予定する、あるいは実際につくったという市町村の数が六百二十二市町村ということでございます。

 これらの中には、集落等、小さいエリアでもって話し合いを行いまして、これを積み上げてきちんとしたプランをつくったというところもございますし、中には、やはり話し合いが必ずしも十分行われていなくて、青年就農給付金ですとかスーパーL資金のメリットを受けるために、そういう中心的な形態だけを、市町村が中心になってプランをとりあえずつくったという地域もあるというふうに思っております。

 ですが、大事なことは、このプランにつきまして、話し合いを継続していってよりよいものにしていく、この取り組みが非常に重要だというふうに思っておりますので、我々はそういうふうに指導しております。

鷲尾委員 ちょっと局長に先に言われてしまったんですけれども、政務の皆さん方も、一市一プランでつくろうとしているというのが六百二十二とか、これは普通考えられないですよね。

 どんな市だって、いろいろな従事者がいて、作物も違うわけですよ。そんな中で、人と農地、要するに規模拡大だけじゃなくて、そこにちゃんと中心となる経営体も育成していこうよという中で、せっかく人・農地プランを皆さんで考えていきましょうと言っているのに、行政が、こういう言い方をしたら失礼かもしれないけれども、いろいろな補助金があるから、政府が言ってきているから早くプランをつくりましょうということで主導して、ぱっと一行政単位で一プランつくっちゃう。これは、いわゆる人と農地の問題の解決に本当につながるんですかという問題意識なんです。

 今局長がおっしゃったように、確かに、だからこそ、また改善の指導はしていってもらわなきゃ困るというふうに思います。行政の側からしても、メリットがあるからそういう主導をするというのも、気持ちはわかるけれども、国民の税金なわけですから、ちゃんと経営体を育成すべく、農水省全体として体制をとっていただきたいというふうに思うんです。

 大臣から、一言どうですか。

林国務大臣 基本的に問題意識が全く同じだと思っております。

 そもそも、何のためにこの人・農地プランというのがあるのか。これは民主党の時代から始まった政策で、厳しい江藤副大臣もこれは評価できるというふうに申し上げているプランでございまして、やはりつくられたときに、今委員がおっしゃったように、みんなで話し合って、今からどうしていくか。何年後にはもういなくなっちゃうじゃないかみたいな話じゃなくて、では、こいつに今から託してみんなでやっていこうぜ、こういうことをやってもらおうということがもともとの目的だったわけでございますので、まさにおっしゃる方向性だと思います。

 したがって、インセンティブをつけて、とりあえずそういう癖をやはりそれぞれつけてもらうという意味で、全く何もしないということと比べて、一市で一つということも、スタートとしては、何も起こらないということよりもあるいはいいのかなと私も今聞いていて思いましたが、しかし、もともとの政策の目的がそういうことである以上は、今局長からも答弁しましたように、しっかりと指導して、もともとの人・農地プランの目的に沿った効果が出ていくようにしっかりと取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

鷲尾委員 何か時間がもうあと五分しかないそうでありまして、聞きたいことが山ほどあるので、ちょっとコメントだけさせていただきたいと思います。

 人・農地プランについて言えば、例えば、集落の土地を別の集落に貸している人がいる。でも、人・農地プランの話し合いの場には、借りている人というか、実際に耕作している人が呼ばれない、こういう現状もあります。

 これから中心となる経営体をさらにどう育てていくのか。育てるに当たっては、やはり政府の側からしっかりと、補助金が使われているその効果のほどをさらに計測していく、そういった仕組みづくりも必要だと思います。

 とにかく、人それから農地、両方を経営体としてもしっかりと伸ばしていこうという政策でありますから、その大もとを忘れずに取り組んでいただきたいと思います。

 それで、ちょっと時間がないんですけれども、では、一問だけ。

 新規需要米、米粉の利用ですね、米粉についてちょっとお聞かせいただきたいんです。

 これは随分作付面積が減っているんです。現状の認識はもう結構でありますので、新規需要米が、一方で、これは戦略的な作物として取り組んでほしいということで農水省も補助を出してやっている。しかし、需要が生まれない以上は作付が広がっていかないという性質のものですね。一方でアクセルを踏みながら、需要は民間に全部任せてやる。確かに、民間に任せる部分は当然必要なんでしょう。必要なんでしょうけれども、需要が上がってこないことを座して見ているというのも、これもちょっと一方的かなと思います。

 そこで、新規需要米の需要の掘り起こし、何かアイデアは、今その現状を見てどう考えているのかということを簡単に教えていただきたい。

長島大臣政務官 私の方からお答えさせていただきます。

 鷲尾先生、私のところは米粉では結構先進県でありまして、政務官をお務めいただいた鷲尾先生からも、新潟県は随分御指導いただいたんだと思うんです。

 御指摘のとおり、米粉の消費がなかなか拡大をいたしません。というか、昨年は若干微減をするような状況でございました。

 そんなことを受けて、農水省は、米粉倶楽部等を通じて米粉商品の認知拡大や消費の喚起、そして、少し安く米粉ができるような技術開発をやる一方、例えば、前政務官も御承知でしょうけれども、小麦粉と米粉をまぜて製品を開発することによって、食感を新たな国民の需要に応えられるような喜ばれるものに変えたり、あるいは、製品として安定できるものを開発したりという方法をとりながら、やはり米粉を消費していただくことに積極的に努めてまいりたいと思っていますし、いろいろな業界と米粉業界を結びつけるということもやってまいりたいと思っているところでございます。

鷲尾委員 ぜひ頑張っていただきたいと思いますし、それこそ、安倍総理が、たしか、ローソンの新浪さんに賃金を上げてくれと頼んだように、米粉を利用してくれと農林水産大臣から頼んでいただいて、コンビニで置けるような商品をぜひとも開発していただきたい、そして裾野を広げていただきたいと思います。

 最後に、日台、日本と台湾の漁業交渉について質問したいと思います。

 現状の話は知っておりますので結構でありますが、いろいろ聞きたいことがあったのでまた別の機会にしたいと思いますけれども、日台は非常に友好関係がありまして、これは自民党政府になっても変わらず、この間の東日本大震災の式典でも、台湾の政府の方に指名献花を、させたと言ったらちょっと語弊がありますけれども、指名献花をしていただいた。

 これは本当に私自身も評価をするところでありますし、私自身も日華友好議員懇談会のメンバーでありますので、日台関係、非常に友好を保つべきであるというふうに思っておりますが、この漁業交渉の問題は、過去十六回していますけれども、全く合意できていないし、非常に難しい問題、尖閣諸島の問題が絡んでおります。

 一方で、我が国としては、やはり沖縄の周辺海域の漁民の皆さんの利益を守る、これが水産庁の本分だと思います。

 きょうは、長官がお見えになっていますから、どういう話し合いがなされているかということを差し支えない範囲で話をしてください。

本川政府参考人 日台の漁業関係につきましては、御指摘のように、十六回これまでやってまいりましたけれども、妥結に至っておりません。昨年十一月三十日に第十七回目の会合に向けて予備的な会合を行い、この三月十三日にもそういう会合を行っている。正式な会合の開催に向けて調整が行われているという段階でございます。

 それから、御指摘の、沖縄の漁業者の方々への問題でございますけれども、これにつきましては、しっかりとその声を聞かせていただきながら対応していくということが基本であると思っております。

 昨年十一月、それから本年二月には、沖縄県の漁業関係者から農林水産大臣に対しまして、交渉に当たっては、沖縄県漁業者の意向に十分に配慮することといったような要請を受けておりますし、私自身も、昨年十一月に沖縄に参りまして、関係の漁業者の方と直接に意見交換をし、ことし一月にも御意見を伺うといったようなことをやってまいりました。

 その沖縄の関係の方々の意向に十分に配慮をしながら進めてまいりたいと考えているところでございます。

鷲尾委員 最後に、ちょっと時間を超過しているので申しわけないですが、四月中旬ぐらいから、ちょうどマグロ漁の時期に入りますね。そうしますと、あの海域は物すごく台湾の船がだあっと入り込んで、沖縄の方は大変な思いをされる。これを取り締まらなきゃいけない。

森山委員長 申し合わせの時間が経過をしておりますので、御協力をお願いします。

鷲尾委員 取り締まらなきゃいけない状況も含めて、今、難しいですよ。難しいですけれども、尖閣諸島の問題では譲れないし、しかし、日本と台湾で何のルールもないというのはおかしい、そういうことも含めて、これから漁の時期が近づいてくる、さあどうするかということで、大臣から所見をいただきたいと思います。

林国務大臣 今委員からお話がありましたように、沖縄の周辺の海域、これはしっかりと漁業をやっていらっしゃる皆さんが安心してやれるようにしていかなきゃいけないということで、平成二十四年度以降、漁業取り締まり船は二隻をふやしました。五隻の体制ということにいたしまして、やっておるところでございます。

 今お話のあったように、台湾漁船のマグロ漁、これが五月から六月、非常に活発化するということで、ほかの海域から少し、五隻ほどさらに追加をしまして、計十隻による集中取り締まりを実施するということで、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

鷲尾委員 済みません。きょうは城内政務官にも来ていただいていたんですけれども、質問できなくて申しわけなく思っております。

 超過して失礼しました。ありがとうございました。

森山委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志でございます。

 早速、質問に入りたいと思います。

 まず、国有林野事業から議論させていただきたいと思います。

 国有林野事業は、平成十年の抜本改正、公益的機能を発揮するということで抜本改革が行われた後、先年、いわゆる管理経営法、これが成りました。これをもって、民有林の管理にも国有林野事業が手当てをできるようにしていこう、こういった改正がなされたわけでございます。それと同時に、特別会計から一般会計化されました。

 そういった中で、きょう問題として取り上げたいのは、この管理経営法が先年、成ったときに、一般会計化する国有林野事業、この一般会計化したことをもってして、実は、この事業及び勤務、労働の実態が何も変わらないにもかかわらず、そのときの法律で、それまで国有林野事業に特別に認められていた協約締結権あるいは給与に関する特例的な取り扱い、これはそれぞれ一定の法的な枠組みを持った上で認められていたわけではありますけれども、これがなくなってしまった。

 この背景には、もちろん、国家公務員制度を基本的に改革していこうという平成二十年の基本法があって、これをもとに自律的な労使関係を措置していくという流れがその後見通されていたものですから、かつ法律もそれで出ていたものですから、管理経営法に基づくところとしては、国有林野事業に関しては協約締結権をなくし、給与の特例的な取り扱いをなくしたということがございました。

 しかし、その後、御案内のように、公務員四法、いわゆる公務員に関して自律的労使関係を措置するこの法律は、私たちの政権のときに提出しましたけれども、国会の場で成らなかったという経緯があります。そういった中で、国有林野事業の皆さんにおかれては、勤務の実態、労働の実態は変わらないにもかかわらず、協約締結権がない、あるいは給与の特例的な取り扱いがない、こういう状況になっています。

 まず、厚労省にお伺いします。

 労働行政を担当する省庁として、勤務の状況、労働の状況が変わらないにもかかわらず、ある意味、国会における審議の結果、議論の結果、国有林野事業において、協約締結権及び給与の特例的取り扱いがなくなった、こういった点に関してどう見るか、これをお聞かせいただきたいと思います。

熊谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 国有林野事業の職員につきましては、今ほど先生からお話がございましたように、従来は協約締結権が認められ、労使間の団体交渉によって労働条件を決定するという労使関係法制のもとに置かれてきたところでございます。

 今般、国有林野事業につきましては、昨年度末をもって企業的運営が廃止され、本年四月から一般会計に移行したことに伴いまして、その職員の労働関係に関する特例が廃止されたところでございます。その結果、現在、国有林野事業の職員の勤務条件につきましては、労働協約によるのではなく、一般職の職員の給与に関する法律等に基づいて決定されることになっているというふうに承知しているところでございます。

大串(博)委員 事実関係は私が言ったとおり、わかっているんです。そうじゃなくて、勤務の実態、労働の実態、これが三月三十一日と四月一日を挟んで何も変わっていないにもかかわらず、労働条件が変わるというのは問題ではないかということを言っているんです。それに対して、労働行政を所管する厚労省としてどう考えるかということを言っているんです。

 例えば、一般行政事務、こういうふうな話がありますけれども、前の国有林野事業は企業的会計ということでやっていました。しかし、この四月一日以降の世界においても、例えば許認可とか補助金とかあるいは金融措置、税制措置、こういったいわゆる一般行政事務はやっていません。基本的には国有林野、これをどういうふうに事業として管理運営していくのかということ。

 実際、現場の組織なんかもほとんど変わっていないんです。森林管理局が七、森林管理署九十八、全国に千カ所以上の森林事務所がある、こういったことは全く変わっていない中で、勤務の実態や労働の実態は変わらない中で労働条件が変わっているということ自体をどう評価するかということを聞いているんです。もう一回お願いします。

熊谷政府参考人 今般の法律改正に伴いまして、国有林野の事業につきましては、国の経営する企業としてではなく、一般行政として事務事業を行うことになったものと承知しておるところでございます。それに伴いまして、労働条件の決定のあり方が先ほど申し上げたように変わったというふうに承知しているところでございます。

大串(博)委員 いいですか、去年の四月、西村厚労副大臣はこう答えているんですよ。当時の管理経営法の審議のときです。「六十年間にわたって労使間の団体交渉によって職員の労働条件を決定するという労使関係法制の下に置かれてまいりました。」これは協約締結権の話ですね。「こうした経緯を十分に踏まえて国有林野事業職員の労働条件が定められていくことが望ましいと、このように考えております。」というふうにはっきりおっしゃっているんですよ。

 その後、国会での議論の結果、一般公務員全体に対するいわゆる労働協約権の拡大、これは成らなかった。すなわち、このとき視野に置かれていたものが成らなかったわけですよ。そういう中で、本当に勤務、労働の実態が変わらないにもかかわらず、労働条件が変わってしまっている、これがおかしくないかということを申し上げているんです。

 大臣、ここまで聞かれて、まず担当の農水大臣として、所管をされているその働く人たちの労働の実態が変わらないにもかかわらず、労働条件が変わっているということに関して、大臣はどう思われますか。

林国務大臣 今、厚労省の方からは事実関係の説明があったところでございますが、これは、もう委員も御承知のとおり、二つの法律というのがあったわけですね。管理経営の法律というので、これを非現業の一般公務員にするということですから、この法律だけであれば、非現業の一般公務員になるということで、非現業の一般公務員に対して規定されている労使関係になる、こういうことです。

 今、委員がみずから御紹介いただきましたように、それとは別に、今度は、非現業の一般公務員の全体的な労使関係を変えていこうということで、基本法には、自律的な労使関係を措置するという、たしか、これは与野党合意で我々も一緒にやったわけでございますが、その後の基本権の議論につきましては、当時民主党政権で進められた、こういうことでございまして、その二つの法律の状況が、当時の政権がお考えになっていたようにうまくいかなかった、こういうことではないかというふうに思います。

 したがって、そういう場合に、例えば管理経営の方の法律で、そうならない場合のいわゆる経過規定みたいなものがもしあればという思いは私もないわけではないんですが、そういう措置もなかったということでございますので、この法律だけ通れば、非現業の一般公務員になるということは、当時の政権も出されて、それが国会で決められた、こういうことでございますから、非現業の一般公務員の労使関係が現行のままということであれば、法律的にはこういう状況になるということは当然のことだ、こういうふうに思っております。

 それを申し上げた上で、私も、林野の関係の労働団体の方と何度もお話をして、正直言って、これはちょっとぽてんヒットが出ちゃったような状況ですよねということをお話ししたところでもございます。

 したがって、法律的にはそういうことなんでございますけれども、その与えられた状況の中でしっかりと、皆さんがやる気を持って働いていけるような環境、こういうものは整備をしていく必要がある、こういうふうに考えておるところでございます。

大串(博)委員 今、ぽてんヒットというふうな言葉を使われましたけれども、全く意味なくぽてんヒットになっているわけじゃないんです。

 いわゆる公務員の基本法、二十年に成りました。これは、今大臣御自身でおっしゃったように、当時の与野党、与党は当時、御党、公明党、私たちは野党、この与野党の合意の上で成った国家公務員制度改革基本法だったんです。

 その中に明らかに書かれていて、いろいろなことが書かれています。こうしよう、こうしようといろいろ書かれていて、その中に明定されている第十二条、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」と書かれておって、さらに四条においては、「政府は、次章に定める基本方針に基づき、」、今私が申し上げたことも含みます、「基本方針に基づき、国家公務員制度改革を行うものとし、このために必要な措置については、この法律の施行後五年以内」、五年以内というのはこの六月に参ります、「五年以内を目途として講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後三年以内」、これはもう二年前に徒過しています、「三年以内を目途として講ずるものとする。」と。

 法制上の措置、これは、公務員に自律的な労使関係を措置するとなると、当然、法律の措置が必要になりますので、これに関しては、今の時点よりも二年前に法制上の措置をしておかなければならなかった。だから、私たちは法律を出したんです。それが国会で通らなかった。これは、先ほど申しましたように、国家公務員制度改革基本法は与野党合意でつくった法案です。それが、政権がかわった中で、この国会の中で成らなかった。その結果が今こうやってあらわれているんです。ですから、この責任はどっちにあるかとかそういう問題ではなくて、両方が負って、何がしかのことを解決していかなければならないというふうに思います。

 この公務員制度改革基本法を担当していただいている寺田副大臣にも来ていただいております。

 法制上の措置については、三年以内を目途としてつくるというふうに政府としてはなっている。これは徒過している、国会で成らなかった。さらには、五年以内を目途として、いろいろな必要な措置はやっていくというふうになっている。かなり時間的には差し迫った、あるいはおくれた状況にあります。どういうふうに物事を運ぼうとお考えですか。

寺田副大臣 委員御指摘のとおり、この基本法の十二条に、自律的労使関係の措置については、「国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」という規定があるわけでありまして、これを踏まえ、今、我々のもとでさまざまな検討を行っているところであります。

 その法律そのものに書いてありますとおり、開かれた国民の議論、あるいはまた、平成二十三年の六月に提出をされましたいわゆる改革四法案、さまざまな論点を含んでおります。この労働基本権の問題のほかにも、公務員庁設置の問題、あるいはまた内閣人事局の問題等、総合的、総体的に検討する中で適切に今後検討してまいりたい、そのように考えております。

大串(博)委員 これはぜひちゃんとやっていただきたいと思います、与野党合意ででき上がった法律の帰結ですから。

 管理経営法を去年なしたときに、附帯決議をいただいております。この院でつけてもらっています。国有林野事業に関して労働条件を整備することということがついていますが、どういうことを農水省としてはやってきたのかということを尋ねたら、ペーパーにして出してくださいと申し上げたところ、極めて、私も、えっと驚くようなものしか返ってきませんでした。

 国有林野事業職員に関しては、本年四月から非現業の一般公務員に移行して、労働条件については、国家公務員法等に基づき対応しています、これは当たり前。関係府省等と連携を図るとともに、労働安全、例えば振動機械の操作時間等について必要な通知を発出しています、これが国有林野事業職員の労働条件の整備に関するこれまでの農水省としての取り組み。院から要請されているにもかかわらず、これっぽっちです。

 先ほど大臣がおっしゃいました。法律の状況はこういうこととして、そうではあるけれども、与えられた状況の中で職員の皆さんがやる気を持って働けるように頑張っていきたいというふうにおっしゃいました。

 いま一度、ぜひお願いします。今申し上げたように、与野党の合意の中でつくられた公務員法案が成っていないという現状、その責任は両方にあるということを踏まえて、大臣の所見をいただきたいと思います。

林国務大臣 委員もあるいは御案内かもしれませんが、当時、基本法の与野党の修正協議をやらせていただきまして、私は自民党側の責任者でございまして、たしか民主党は松本先生、松井先生だったと思います。

 基本法でああいう三党合意で進められたということは大変意味のあることだと思いますし、その後、その基本法に基づいて、管理職を中心とした公務員の制度をどうするか、また一般公務員をどうするかということについてやっていこうというプログラムをつくったわけですから、どちらの党がどうだということではなくて、これは国の大事なインフラということでございますから、しっかりと取り組んでいかなければならないということは委員が御指摘になったとおりだ、こういうふうに思っております。

 その上で、林野の事業の職員については、今お話があったように、こういう状況になっておりますので、国家公務員法や人事院規則等に基づいて対応するということで、今、これしかなかったという御指摘がありましたが、労働協約によって従来規律されていた労働安全、例えば振動機械の操作時間等について必要な通知を出すというようなことをやるということがまずございます。

 それから、もう一つ大事なことでございますが、給与等の待遇についても、関係の府省等と適切に連携をいたしまして、一定の配慮を行うようにやってきたところでございます。

 こうした取り組みもありまして、職員の職責に応じた級別の定数、それから勤務環境を踏まえた特殊勤務手当等の措置が行われるということになりましたのと、それから、一人当たりの給与関係予算、これは平均値ということでございますが、昨年度と同水準を維持して概算決定をした、こういうふうな状況になっておるところでございます。

大串(博)委員 今るる説明いただきましたけれども、協約締結権がない、これは根本問題なんです。先ほど、与野党どちらかの責任ではないというふうにおっしゃいましたので、両方の責任として、ぜひしかるべき措置をとっていただきたいというふうに思います。

 私たちは、この点を是正するために、議員立法を今提出しようと考えてございます。諸事万端整えば、きょうのうちにも議員立法を提出して、ぜひこの委員会においてもこの考え方をしっかり議論していただきたいというふうに思っておりますので、その節にはぜひ委員長にも御高配を賜りたく、よろしくお願い申し上げておきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 諫早湾干拓の問題でございますけれども、政府の義務として、十二月までに開門をしていく。もちろん、長崎県の皆様の意見をしっかりお承りしながら、理解を得ながらやっていかなければならないというのは、言うまでもないことでございます。

 そのような中で、ノリに取り組んでいらっしゃる漁家の皆様からは、十二月に開門ということであると、ノリの漁期、大変心配であると。ちょうど秋芽のノリから冷凍ノリに移る時期。しかも、どうしてもこの数年間、繰り返し赤潮が特に冷凍ノリの季節に発生して、漁家の皆さんは大変苦しんでいらっしゃいます。そういった中で、また十二月に、ノリの漁期に影響するような開門になってしまうと大変心配だという強い、むべなるかなの声がございます。

 これにどう対応していくのかということが非常に大きな問題だというふうに思いますので、まずは局長の方から、具体的に、ノリの漁期に影響を与えない開門、どういうふうにしようとしているのか、お答えいただきたいと思います。

實重政府参考人 開門が十二月までの国の義務となっておりますので、開門に当たっては、漁業に対しても悪影響が生じないようにすることが重要と思っております。

 そうした中、環境アセスメントにおきましては、制限開門、ケース三―二の方法を私ども提案させていただいているわけでございますが、これは調整池の水位を現状と変えないものでありますので、この方法であれば水の出入りが少ないわけでございますので、長崎県下である諫早湾を越えて影響が及ぶことは想定されないものと考えております。

 これに加えまして、諫早湾の中でも、漁業に対して影響がないようにする必要がございます。海底に堆積している泥の巻き上げなどによる悪影響が生じないように、これを確保する必要がございますので、一つは、開門は一カ月をかけて慎重に行いまして、当初の六日間程度で少量の海水を導入して、懸濁物を沈殿させます。

 また、その後も、八門ある排水門について、緩やかな操作を行います。また、適当な位置に汚濁防止膜を設置したいと考えております。さらに、現地に設置する国の事務所の責任で、二十四時間体制で監視を行いまして、海域に異常が認められれば直ちに開門を中断する、このようなことを提案させていただいているところでございます。

大串(博)委員 ノリの漁家の皆さんにとってみると死活問題なんです。

 先ほど言われました、最初の時期においてはまずは塩水を入れて沈殿させていくというような話、あるいは、その次の段階で八門を緩やかにあける、さらには、その段階においては二十四時間モニタリングをして、何かあったらすぐ動けるようにする、こういった話がありました。

 そういう話がまだまだ漁家の皆さんの胸にはぽとんと落ちていないんですね。それで本当に大丈夫だというふうに思える状態になり切っていないところに大きな問題があるわけです。

 大臣、これは本当に深刻な問題なんですよ。これまで数年間、毎回、年末から年初に起こる赤潮で冷凍ノリに大きな被害が出ています。そういった中でまた十二月かという話なんです。

 ぜひ大臣、この点に関して、強い意思を持って、ノリの漁期に影響を与えない形をつくっていくんだという決意を示していただきたいと思いますが、いかがですか。

林国務大臣 今委員からお話がありましたように、佐賀県の皆様、知事を初め、漁協の皆様も、一月だったと思いますが、大臣室にお見えになりました。そのときも、写真も見せていただきましたし、いろいろなお話を聞きました。その後、佐賀県にお邪魔したときも現場に行きまして、るるお話を聞いて、ノリの養殖に、収穫期と重ならないようにという御希望、これは非常に強いものがあるというふうに私も受けとめさせていただきましたので、今委員みずからもおっしゃっていただきましたように、長崎側の御納得、御同意というものもやりませんと、いろいろなことがなかなか難しい。

 したがって、前倒しというお話がそのときはあったんですが、これはなかなか難しいだろうということは、言いづらいことでありましたけれども、そのときに佐賀の皆様には申し上げさせていただいたところでございます。

 したがって、今後も、佐賀の皆様はもちろんですが、長崎の皆様ともいろいろなルートでお話をしていくことによって、何とかノリに心配のないような方向でやっていきたいということはかねてより申し上げてきたところでございます。

 それとは別に、福岡高裁判決の確定というのがございますので、十二月までに開門すべき義務はあるということも一方で申し上げておかなければならないと思いますが、一番いい道はどういうことがあるのかということを引き続ききちっと考えてまいりたいと思っております。

大串(博)委員 私たちは、引き続き、時期を前倒していただきたいということを申し上げたいと思います。やはり、十二月ということであれば、よほどのことがないとノリに対する心配は消えません。ですので、ぜひ大臣に、強い決意を持って、ノリに影響を与えないという方向性を見出していただきたいというふうに思います。

 最後に、TPPに関して一問、質問させていただきたいと思います。

 私、どうしても納得できないのが、私たちの政権下において先般の安倍総理が行われたような交渉参加意図表明を行う際においては、私たちのときには、農業支援策をどういうふうに打ち出すかということもあわせて、しかも、そのときには、やはり財源をみんな気にします、財源がちゃんとあるのかということを気にします、それもあわせて言っていかないと、やはり農家の方々が不安に陥られるんじゃないか、こういうふうに考えていました。

 そう考えていたというだけじゃなくて、実際に、私たちがつくった、平成二十三年十月二十五日、食と農林漁業の再生推進本部、こういったものをつくって議論して、この中で、一番最後のところにこう書いているんです。高いレベルの経済連携と農林漁業の再生や食料自給率の向上との両立を実現するためには、国民の理解と安定した財源が必要である。消費者負担から納税者負担への移行、直接支払い制度の改革、開国による恩恵の分配メカニズムの構築も含め、具体的に検討する。

 この開国による恩恵の分配メカニズムの構築、これはいろいろな議論がありました。すなわち、開国をして、例えば税収が上がる、こういったことがあるのであれば、その部分を農業に使っていく、こういったことも具体的に検討する。かなり政府の中で議論した中で、こういったことも具体的に出していたんです。これをさらにあわせて、参加意図表明のときにはやるんだと考えていたんです。

 今回、安倍総理の記者会見の際には、気合いの言葉はありましたけれども、具体論はありませんでした。農水大臣として、この点、どう考えていらっしゃるのか、今後どうされようとされているのか、お聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 今委員が御指摘のありました、これは、平成二十三年の十月二十五日に食と農林漁業の再生推進本部決定ということで、そういうことが書かれておるというのは見させていただきました。

 我々の今の考え方としては、まだ交渉への参加を表明した段階で、今から参加国の同意を得る。アメリカの場合は、御案内のように九十日ルールもございます。それから、交渉が始まるということになれば、まず聖域確保に向けて交渉に全力を挙げる、こういう段階でございます。この間の試算を出すときにも、口を酸っぱくしてというとあれですが、常に申し上げていたのは、これは全部撤廃をして対策をやらないという前提である、こういう、ある意味では極端な前提であるということで、こうならないように交渉の中で努力をしていかなければならないということがまず一つでございます。

 それからまた、対策という言葉は私は非常に神経質にならざるを得ないんですが、対策をいずれかの分野でやるということは、あらかじめその分野は交渉である程度は譲るのではないか、逆にそういうような懸念が生じてもならないな、こういうふうに思っておりまして、そういう意味では、こういう対策の議論、財源も含めまして、今の段階ではまだ時期尚早ではないか、こういうふうに考えておるところでございます。

大串(博)委員 これで終わりますが、農家の皆さんが不安に思っていらっしゃるという現状を踏まえて、そうならないように、ぜひ農水大臣として御努力をいただきたいと思います。

 ありがとうございます。

森山委員長 次に、百瀬智之君。

百瀬委員 前回に引き続きまして、攻めの農林水産業について御質問させていただきます。

 先週の三月二十六日の火曜日、第二回の攻めの農林水産業の推進本部会議が開かれたということでございます。まずは、この会議についてお伺いしたいと思います。

 資料には、生産現場の潜在力を引き出し、その活性化を図り、農林水産業の中期的展望を切り開く観点から、平成二十五年一月二十九日、省内に大臣を本部長とする農林水産業推進本部が設置されたとあります。具体的検討体制は、制度見直し検討委員会と戦略的対応推進委員会に分かれるようでありますけれども、まずは、この会議の構成メンバーを改めて教えていただきたく思います。よろしくお願いいたします。どなたでも結構でございます。

林国務大臣 攻めの農林水産業推進本部は、今委員からお話がありましたように、一月の末につくらせていただきまして、制度見直し検討委員会、戦略的対応推進委員会、二つの委員会を設けて、それぞれ検討を具体的にやっていこうということでございます。

 構成は、まず、本部長は私でございます。それから、副本部長に江藤副大臣、加治屋副大臣、本部長の補佐ということで長島、稲津両大臣政務官、そして本部の事務局長に皆川事務次官、以下本部員に、農林水産審議官、官房長、総括審議官、国際担当の総括審議官、技術総括審議官、それから全局庁等の長、これを本部員に充てて本部を構成しておる、こういうことでございます。

百瀬委員 お聞きしましたところ、農林水産省の関係者に限られているようでございますけれども、日本の農業を成長産業にして、これから海外への売り込みを強化していこうというときに、やはり、一つの省庁内にとどまらず、幅広く意見を聞く必要があると思っております。

 加えて、日本はとりわけマーケティングが弱いと言われる節があるわけでございますけれども、幾ら品質、技術等がすぐれておっても、顧客のニーズを的確に捉えなければ、やはり成長はないと思っております。

 具体的な戦略を総合的に考えていくに当たって、経済産業省や外務省その他関係各省庁の関係者も入れるべきかと思うんですけれども、本部の構成員を農林水産業、省庁の関係者に限定した理由というのはあるのでしょうか。もしくは、最初はある程度この省庁内で議論を固めて、それから各関係省庁と連絡を図っていくおつもりか、その辺の道筋がちょっとわからないので、教えていただきたいと思っております。

林国務大臣 これは、先ほど申し上げましたように、まず、農林水産省の中に本部をつくろうということで立ち上げさせていただきました。それは、縦割りということはよく言われるんですが、省庁間の縦割りということもよく言われますけれども、局の間の縦割りというのも、それほど私、感じているわけではありませんが、やはり局でそれぞれ仕事をしておるというのがありますので、農水省全体でこういう会議をつくって、局を超えた展開、政策づくりということをしなければならないという思いで、まずは、こうして局を超えたものをつくるための、農林水産省の中に本部をつくらせていただいたわけでございます。

 当然のことながら、総理から攻めの農林水産業についての指示をいただいておりまして、内閣全体としては、経済再生本部というのがございまして、これは全閣僚で構成されておりますので、例えば、そのもとにあります産業競争力会議、これは民間の方も入っておられますが、そこで私が農業について呼ばれてプレゼンをしたときは、ほかの大臣もおられますし民間の方もおられるということでありますから、そこでも農業がテーマになっていろいろ議論がされておられるということでございますので、そういうところの議論と行ったり来たりしながらやっていくということもございます。

 それから、この本部も、三月二十六日に二回目をこの間やったのでございますが、先ほどどなたかの質問で、まずは現場のいい取り組みを報告してくれ、こういうことを出してもらって、これを精査して、そしてこれからそれを横展開していくために施策の展開方向ということを今度議論していこうと思っております。そういう段階になってきますと、省内のメンバーで構成されておりますけれども、他省庁もあるいはあるかもしれませんし、外部のいろいろな有識者、今委員がおっしゃったように、例えばマーケティングであれば、何も農林水産物のマーケティングだけではなくて、ほかのもののマーケティングをやっているいろいろな方のお知恵というものを、来ていただいて、話を聞かせていただくとかいうこともあるいはあり得るんだろうな、こういうふうに思っております。

 今、構成はそういうことになっておりますが、いろいろな方のお知恵をかりるということについてはオープンに考えていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

百瀬委員 ただいまのお話ですと、ほかの関係省庁の方々とも連携をとりながら進めているということだったと思うんですけれども、もう一度、確認なんですけれども、これから推進本部として第三者を、今、第三者というお話もありましたけれども、民間人も取り入れながら何か具体的なメッセージを発していくという方向に動いているということでよろしいでしょうか。もう一度、お願いいたします。

林国務大臣 これは出口のイメージというものをはっきり決めているわけではございませんが、政府全体として六月を目途に成長戦略、アベノミクスと言われております経済政策の三本目の矢ということになりますが、これをまとめていこう、それから例年のスケジュールでいいますと、八月ぐらいに予算の概算要求のシーリングということが出てまいりますので、我々もそこへ向けてこの施策の取りまとめをしていきたい、こういうふうに思っております。

 今、我が省の中の現場からのいろいろな事例の発掘というものが一通りでき上がりつつございますので、その次の段階では、今委員がおっしゃったように、外部の方の御意見を聞くということを、当然いろいろな御意見を聞く、それからいろいろな方の要望を聞くというのもあると思いますので、そういうことも含めてしっかりと集約をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

百瀬委員 ありがとうございます。

 第二回の会議の成果物、私もこれは見させていただいたんですけれども、第二回会議では、現場の宝という形で日本全国各地の農業に関していいところが紹介されているわけでございます。これは何のための報告なのか、もう一度、改めてお聞きしたいと思っております。本日、たびたびお話にも出ているんですけれども、いろいろ現場には宝があったから、こういうものを全員で情報共有して今後の日本全体の農業の成長につなげていこうということで間違いないでしょうか。

林国務大臣 基本的には委員おっしゃるとおりでありまして、先ほど福山先生の御質問のときにも私申し上げたんですが、例えば「いろどり」というのを徳島でやっていらっしゃって、これは割と高齢の方が落ち葉を拾ってきて、きれいな……(発言する者あり)青いものも含めてですか、葉っぱを、たしか私の記憶によりますと、この辺の日本料理屋なんかでよくきれいなものがついていますね、あれを出荷している。

 私がすごいなと思ったのは、これはいろいろなコンピューターの機器を駆使されながら、高齢者の方が生き生きとその仕事をされるようになって、自分がそれをとるので非常にやりがいがあって、自分が役に立っているという意識も持っていただくことによってどんどんどんどん外へ出て、いろいろな葉っぱを集めてこられるようになった、結果として医療費が減った、こういうふうに言われているんですね。ですから、これは先ほどの福山先生の例のもう一つの鳥みたいに何百億ということではないんですけれども、やはりこういうものは非常にいい取り組みではないかな、こう思っております。

 このままこの「いろどり」を、同じことを例えばどこかほかのところでやっても、それは単に競合するだけでございますけれども、そもそも誰が最初にスタート地点で一生懸命この取り組みをやっていたかとか、その人に最初にもう少しこういう施策があったらもっと早くできていたんだろうに、こういうような問題意識も当然あるわけでございますので、委員がおっしゃっていただいたように、こういう成功した事例をいろいろ発掘してきて、そういう成功した事例と同じようなことをやっていくためには政策としてどういうことがあり得るかということを、この宝から、ある意味ではリバースエンジニアリングする、こういうことかもしれませんが、そういうことをきちっとやっていくということで、次回の本部会合では、テーマごとに施策の展開方向について考え方を整理していきたい、こういうふうに思っております。

百瀬委員 ただいま一つ例を挙げていただいたんですけれども、若干手続論からはそれるんですけれども、この現場の宝というものを見ていて、どういう人が始めたりとかいろいろ分析はなさったと思うんですけれども、これまでの日本の農政というものが大きく貢献していた、日本の農政のおかげでこういう成功例があったというような事例はございましたでしょうか。印象とか感想のレベルで結構ですので、できればお三方、御紹介いただければと思います。よろしくお願いいたします。

林国務大臣 まず、私からでよろしいでしょうか。(百瀬委員「はい、結構です」と呼ぶ)

 これは、たしか二十幾つか選んだものを公表させていただいたと思いますが、その宝をよりすぐっていくもとは何百もあるんです。その中で幾つか選んできて出させていただいたんですが、例えば、私がおもしろいなと思ったのは、地元が近いというのもあるんですけれども、ラー麦というもので、ラーメン用の小麦を育成しているということが、これはたしか福岡だったと思いますが、済みません、もっと詳しい資料を持ってくればよかったんですが、これなんかは非常におもしろいなと思って、それは、農水省のいろいろな事業を使って、新しい品種をつくって、これを育成、普及する。それから、大事なことは、これを知財にしてそれを活用していく。さらに、当然、ラー麦ですから、ラーメンのためにつくっていくわけでございまして、異業種との連携をやる。それで、協議会を立ち上げるときにソフトの事業を利用している。こういうものもありました。

 ほかにもいろいろ、これはおもしろいなというものが結構、よりすぐりで公表させていただいたものはあったというふうに思っております。

百瀬委員 では、続けてよろしくお願いいたします。

江藤副大臣 では、私の方から。

 この報告されたのは、ダイジェスト版をお持ちだと思うんですけれども、私どもに届いたものはこんな分厚いのがありまして、とてつもない量の、成功例はたくさんあるのでございますが、例えば畜産でいえば、HACCPなんかを利用して非常に衛生面も管理して、韓国なんかにも輸出ができるような先進的な事例もあります。これは、たしか高知県だったと思いますけれども。

 そういった畜産であるとか、それとか、和牛の歴史でいえば、これはもう本当に血統が勝負でありますから、血統を改良していく、そして優良な繁殖母牛を育成していく、そのための保留をさせるとか、さまざまな事業があります。

 言えば切りがないほどあるわけでありますけれども、国が手助けしなければできなかったことというのは、特に畜産の世界では多々あります。

 それから、特用林産物の世界とか水産の世界でも、強農(つよのう)じゃなくて強水(つよすい)と我々は呼んでおりますけれども、強い水産をつくる交付金、これなんかも、水産業は非常に厳しい状況ではありますが、その中でも加工、流通にも取り組んでいく仕組みをこれからつくってまいりますので、さまざまな成功事例はあるというふうに存じております。

長島大臣政務官 私の方からもお答えをさせていただきたいと思います。

 私は、たった今制度を利用してということではなくて、これから農水省がやろうとしている制度の模範的なことを農家みずからがやってこられたこともあるんだと思うんです。

 先生のお地元でも、多分おやきというのがあるんだと思うんです。あれはまさに農商工連携、六次産業化のモデルになり得る、これから広めていきたい分野の一つだと思っているんです。生産したものを加工して、販売して、既に、ある町内では数億円産業に育っているということ。これから先生が目指される、担い手の方からも、そういったアイデアを凝らして取り組んでいきたいし、農水省としても積極的に推進していきたいと思っております。

百瀬委員 ありがとうございます。

 私が見させていただいたのは確かにダイジェスト版でございまして、たくさんいろいろな事例があるなと思いながら見ておりました。

 今後どのような形で進んでいくか。もう一度お聞きしたいんですが、一回目から二カ月後に会議が開かれているんですけれども、やはり膨大な資料ということで、なかなか時間はかかるかとは思うんですが、攻めのというくらいですので、もう少しスピーディーに開催していくことはできないのか。先ほど、六月、八月めどにいろいろやっていかれるというお話もいただきましたけれども、もう一度決意を、計画を、御認識を改めてお伺いしたいと思います。

林国務大臣 先ほど申し上げました六月というのは、政府全体の、従来どおりの用語ですと、骨太の方針というようなことでまとめておったわけでございますが、そこの最終的な出口ということでございます。

 したがって、この本部自体は、それに向けて検討を今から、先ほども申し上げたように、宝を横に並べてみて、どういう施策が必要になってくるかということで、指示をこの間の会合で出しましたので、次回は六月とか言わずに連休前、したがって今月中には開きたいと思っておりまして、そこで一定のテーマごとの施策の展開方向について出してもらって、議論をしていきたいと思っております。

百瀬委員 わかりました。

 一方、民主党政権下で、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画というものが策定されて、成長産業化、国産農林水産物・食品の輸出戦略の立て直しなど、同じようなことが行動計画に組み込まれております。

 既に実施された内容というものもあるようでございまして、いいものもたくさんあると思うんですけれども、これについてはこの会議で生かされていくという考えはおありでしょうか。

林国務大臣 先ほど、人と農地プランのところでも申し上げましたが、特にこの農林水の分野というのは、与野党で何か一〇〇%違うということではなくて、それぞれいろいろな状況の中で施策を積み上げていくということが非常に多いと思っておりまして、今お話のありました、民主党政権時代にいろいろ御検討されたものの中で引き続きやっていくものというのはあるというふうに思っております。

百瀬委員 それと、TPP対策として新たに農村漁村再生推進本部というものが来月立ち上がるそうでございますけれども、今後、この攻めの本部会議とこの農村漁村再生推進本部、両者はどのような関係になっていくか、お聞きしたいと思っております。

 いずれ吸収してどちらに一本化するとか、または、二本別々のものとして進んでいくのか。会議やらそういう部局やらいろいろ立ち上がって、一般国民はなかなかわけがわからないという状態に陥ってしまうこともあるかと思うんですけれども、明確なすみ分けというものはあるのでしょうか。お願いいたします。

林国務大臣 多分百瀬先生は新聞をごらんになってあるいはおっしゃっておられるのかもしれませんが、そういうような政府全体の本部を立ち上げるということはまだ承知をしておりません。

 ですから、もしそういうものができたとすれば、最初に申し上げましたように、この本部は、まず省内で局横断的にやっていこう、こういうことで具体的な施策の検討をやっていくということでございますし、そこから産業競争力会議に私が出ていって、いろいろな議論をする。

 それから、経済再生本部は、全体の経済再生について、全閣僚がメンバーですので、私もそのメンバーでありますので、新しいそういう政府全体の本部がもしできたとすれば、そこと経済再生本部というのは政府全体で仕切りをされるということになりますでしょうし、そういうふうになった場合は、今度はうちの、農水省の中の本部と政府全体の本部というものもきちっと仕分けをして、幾つも会議があって、どこで何をやっているのかよくわからないわというふうにならないようにしっかりとやっていきたいと思っております。

百瀬委員 それでは、若干中身の問題に入ってまいります。

 政策内容として、需要フロンティアの拡大ということがうたわれまして、先ほどもお話に出てきておりますけれども、現在四千五百億円の輸出額を一兆円に拡大する目標を設定しているということであります。TPPやEPAで今後ますます物と人が国境を行き来することになるわけでございますけれども、まず、物の行き来に関して、検疫体制についてお伺いいたします。

 現在、日本国内で検疫に携わっている人数、植物防疫官と動物防疫官、合わせて千二百名から千三百名ということでございますが、これは十分今は足りているという認識でしょうか。そして、これから輸出をますます促進して貿易を拡大していこうということでございますから、今後は増員する必要が出てくるかと思います。そのような計画が現在おありか。また、その他現行の検疫体制について何か問題点や課題等を把握しておれば、この場でお考えをお示しいただきたいと思っております。

江藤副大臣 お答えをさせていただきます。

 大変大切な御指摘だと思います。当然、輸出入が盛んになれば検疫官の数が必要になるということは考えられますが、これだけの定員の増員要請をするというようなことは、今のところは検討はされておりません。

 畜産物等については、全国三十カ所、動物検疫所、三百七十三名、それから、農産物等については、全国七十二カ所、植物防疫所において八百七十五名が植物検疫官として水際対策、これを行っております。

 これは、確かに輸出輸入、活発化せないかぬのですけれども、先ほども言いましたけれども、口蹄疫が大連で起こりました。それで、今は鳥インフルエンザも起こっております。国民の安心、安全を守るためにも、この検疫というのはとても大切です。

 そして、さらには、これは相手国が求める部分もあるんですね。私たちの方が求める部分と輸出先が求める部分があります。例えば、今、ロシア、中国等については、どういう条件が必要なのか、その衛生条件について、申し入れを今させていただいているような状況であります。

百瀬委員 検疫に関しては、また機会があれば掘り下げてお聞きしたいと思っております。これからますます輸出入はふえると思いますので、一段の検疫体制の強化をお願いしたいと思っております。

 最後に、人の行き来に関して、農家の海外研修制度についてお伺いしたいと思っております。

 全国の優良農場の経営者には、若いときに欧米の農場で研修してきたという人が実に多いと聞いております。農業先進国で学んだ経験を日本で生かし、経営発展や顧客サービスにつなげる。農業だけではなくて、どの分野でも、あらゆる産業に共通して言えることかと思っております。

 現在、国が実施する海外農業研修制度、これはないということなんですけれども、年間百五十万円の青年就農給付金ということではなくて、青年を農業研修のためにどんどん海外に送り込むような大胆な方策はお考えでしょうか。

 例えばの話なんですが、平均六十七、八歳の高齢のリタイア農家に毎年、百万円を直接支払いするより、意欲のある多くの若手農家、そして学生を世界に派遣した方が日本の将来にとっては有益かと考えます。年に一人百万円をかけて一万人を海外に送り込んでも、予算は百億円で済みますけれども、この点、お考えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のとおり、海外における農業研修は意義のあるものだというふうに認識はしております。ただし、現在、国では直接支援は行っておりません。御指摘のとおり、県が必要と認めた場合には、百五十万円の青年就農給付金を使えることと実はしております。

 そこで、そういった方が民間団体の海外研修等を利用して、海外に行って研修を積まれて帰ってこられることは意義深いものですから、ぜひそういったものに県を通じて就農給付金を使いながら、見識を広めていただきたいなと思います。

 一方で、やはり、日本の今の現況を考えたときに、多くの農家が高齢化をしてしまっている。そこをやはりきちんと、今は維持をしていかないと農地が荒廃をしてしまう、必要以上に荒廃してしまうことがあると、そういう若い人たちが就農するときに間に合わないのではないかということもありますから、両面で考えてまいりたいというふうには考えております。

百瀬委員 以上で終わります。

森山委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 日本維新の会、鈴木義弘です。

 順次質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、農業振興の矛盾解消についてお尋ねをしたいと思います。

 土地持ち非農家が所有分で、二〇〇〇年がピークで農家が十五・五万ヘクタール、二〇一〇年で非農家が十八・一万ヘクタールに増加という統計を目にしました。

 平成二十一年、戦後五十年ぶりに農地の集約化、利用促進のために農地法が改正され、農業政策も新たな時代に入ったと期待を寄せた一人でありました。しかし、政権が交代して、農家の戸別補償制度がスタートし、その理念が大きくねじ曲げられたと思っております。

 まずお尋ねしたいのは、改正法で、農地を相続した場合、農業委員会に届け出を義務化されました。四年経過した現在でどのように推移しているのか、お尋ねしたいと思います。また、法改正によって不耕作地や耕作放棄地がどのぐらい改善されたのか、お尋ねしたいと思います。

江藤副大臣 委員、申しわけありませんが、相続のお話ですか。

鈴木(義)委員 はい。

 改正法で、農地を相続した場合に農業委員会に届け出が義務化されているというふうに伺っているんです。それが四年たった中でどう推移しているのかというのをお尋ねしたんですけれども。

 何ヘクタールふえたとか減ったとかというのがもしあれば、単純にお答えいただければと思います。

江藤副大臣 数字は承知をいたしておりません、大変申しわけありませんが。

 しかし、相続をした場合、平成二十一年の農地法の改正、ちょっとこの答弁の中に入っておりませんので、私の記憶で若干間違いがあったらお許しをいただきたいんですけれども、これから営農をする、農地を相続してこれからも農地を守っていくということであれば、基本的に、その相続税については払わなくてもいいですよというふうに対処をするということで、届け出の義務は、確かに今、負うという形になっております。

鈴木(義)委員 そうしますと、農地法が改正されて、不耕作地や耕作放棄地、それがどうやって集約化をされてきているのかという、そこのところ。だから、五十年ぶりに農地法を改正したということは、そういうことを主眼にして改正したんだと思うんですよね。所有権と使用権を分離したというのはそこだと思うんですけれども、四年たってどうなったか、お尋ねしたいと思います。

江藤副大臣 現状をまず説明させていただきますが、二十ヘクタール以上の農業経営体、これが大体全体の三割ということであります。中山間地域はもう集約は難しいことでありますので、この三割を高いと見るか低いと見るかは、見方だろうと思います。

 それから、農業法人の数はこの十年間で二倍。これは、二十一年から見て、時間の見方がちょっと間違っているということはお許しをいただきたいと思うんですけれども、大分、加速度的に進んできている。

 平成二十一年度のこの農地法の改正によって、委員御指摘のとおり、所有と利用を分離して、そして、リース方式によるものであれば、一般の企業の方であっても全面的に農地を利用できるという、これは本当に画期的な、思い切った規制緩和だと私は思っております。

 そして、農地の出し手を代理して受け手を探す。出し手と受け手を探さなければなりませんが、この中で円滑化団体、これは市町村に設置をするものでありますけれども、これはまだこれからの課題でありますけれども、県の公社は買い取りが基本なんですよね。買い取ってしまうとなかなか県にも体力がありませんので、これをもう一歩、リースにするとか、これはまだ検討課題の中に入っておりますけれども、平成二十一年度の農地法の改正を踏まえて、さらにそれを強化するような具体的な政策をつくっていきたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 少しずつではありますが、大分農地が集約されていったということは喜ばしいと思います。

 それと同じような、人の変化、先ほども質問があったように、農業就業者人口変化の推移表を見ると、平成二十二年、二百六十万人だったものが、五年間で七十五万人、農業従事者の方が減っているんですね。特に二十三年度で、年齢別でいけば六十五歳以上の従事者が百五十七万人と、全体の六〇%を占めていると農業構造動態調査で記されているというふうに言われています。五年ごとに調査をしているというふうにお聞きしておりますので、このままでいけば四年後に七十万ぐらいの方が勇退されていくんじゃないかというのは推測されるわけであります。

 さらに、専業、兼業の農家戸数の推移を見ると、第一、第二兼業農家を合わせると、平成二十二年まで五年間で三十四万戸の農家が減少しているという数字です。同じように専業農家も、平成二十三年で四十三万九千戸と、少しずつではありますけれども減少しているのが見てとれるわけですね。

 いろいろな手だてをしているんですけれどもなかなか減少に歯どめがかからない中で、農業というのはやはり労働集約型の産業だと思っています、機械化するのにも限界があるだろうし、そのところをこれからどう捉えていこうとするのか、お尋ねをしたいと思います。

江藤副大臣 細かく御指摘をいただきまして、大変ありがとうございます。

 専業農家については、若干減少傾向にあるけれども、若干歯どめがかかっている。それは、兼業農家の方々が例えば農協とか役場をやめて専業に移るというような形がありますので、そういう傾向が出ているんだろうと思います。

 確かに労働集約型の産業である農業ではありますけれども、規模拡大とか農地の集約化、人・農地プランでは、ゾーニングをして農地を集約してまとめていくということになれば、一人当たりの労働時間も当然減っていきますし、それにかかる人数もこれまた同時に減っていくんだろうと思います。

 だからといって、農業就業者の数が減っていいということは、私どもは考えておりません。いわゆる担い手総合支援対策の中で、年間二万人の新規農業就業者がつかないと今の農地を守っていけないということは、私たち農林水産省の中でも技術的に検討が進んでおりますので、これからやはり新たに農業に夢を持って就業していただけるような施策が必要だということは、私どもも痛感いたしております。

鈴木(義)委員 農家の就業者数や農家の戸数が減少しているわけですね。それはもう先ほど御答弁いただいた中でもあると思います。

 その中で、農林水産省の職員は二万五千人、地方公務員、農業関係のお仕事に従事されている公務員の方が三万七千人、大学の先生が三千六百人、農協系統組織というんですか、農協の従事者が二十五万五千人、農業委員会が三万八千人、農業共済団体が七千九百人、土地改良団体が一万一千人。この方々は直接農業に従事している方ではないんですけれども、はてなと思うんですね。農業関係者の人たちなんだと思うんですけれども、それが今までずっとふえてきたのか、減ってきたのか、そこのところだと思うんです。

 農家の戸数と従業者数は減っているんです。でも、間接的な業務に携わっている人たちがそのままというのは、ちょっとやはりどうかなと思うんですね。もし数字があれば教えていただきたいなと思うんですけれども。

荒川政府参考人 お答えいたします。

 今先生、七類型の数をおっしゃっておられましたけれども、私どもの所管で把握をしておる数字につきましてまず御説明させていただきたいと存じます。

 まず、農林水産省全体の定員でございますが、平成二十四年度末で二万三千三百三十七人でございます。当然、この中には、農業の主担当ではない林野あるいは水産の定員というのが含まれております。それから、地方公共団体の農政職員、大学の農学部の職員数につきましては、私ども承知をいたしておりません。それから、総合農協の職員につきましては、直近の事業年度で二十二万七百八十一名、農業委員会の委員につきましては、二十三年十月一日現在で三万六千三十四名、農業共済団体の職員につきましては、平成二十四年四月一日現在で七千六百六名、土地改良団体の職員については、これは悉皆のデータがございませんので、推計をいたしますと、先生がおっしゃった一万一千人ということになっております。

 いずれの数字も、先生が先ほどおっしゃった当時の数字よりは、数字としては減少しております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。若干減っているということなんです。

 センサスの方のデータを見させていただいても、主業農家というのが大体三十六万戸で、農業関係者の方が、今、多少水産だとか林業も入っているんだと思うんですけれども、合わせると約三十九万人の方が従事されているわけですね。

 ですから、もう少し効率のいいと言ったらいいんですかね。行政がまずやれることというのは、事業をある程度、もう少しスリム化していって、職員の定数、二重行政、三重行政を解消していくのを一番先にやった方がいいと思っていますし、強い農業や攻めの農業ということであれば、今までの政策を転換して効率のいい運営の仕方で、専業農家を本当に育てていくんだという農業に転換していった方が私はいいんじゃないかと思うんです。

 兼業農家はどんどん減っていっているんですから、専業の農家はちょっとでもふえているような形になっているんだったら、そこにやはり選択と集中をして、予算も人も重点化していって、強い攻めの農業をしていった方がいいんじゃないかと思うんですが、お答えいただきたいと思います。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のように、我が国農業を安定的に発展させていくためには、意欲と能力のある経営体に農地を集積し、力強い農業構造をつくっていくことが重要であるというふうに考えております。

 農業構造を見ると、集落営農を含めた担い手の利用面積が二百二十六万ヘクタール、農地全体の面積の約五割。また、土地利用型農業で見ると、農地面積全体、三百六十八万ヘクタールに占める二十ヘクタール以上の農業経営体が耕作する面積は、約三割に至っております。農業法人数はこの十年で二倍以上に拡大し、一万二千五百法人となっております。かなりの変化が見られるところでございます。これをさらに加速していく必要があるというふうに考えております。

 このため、農業で生活している農業者の経営の発展を、今御指摘のように、主業農家、法人経営、大規模家族経営への低利融資、スーパーL資金、就農援助、あるいは、農地集約のための受け手、出し手の、出しやすい、受けやすい信頼関係を構築するために農水省は役割を果たしてまいりたいというふうに考えております。総合的に力強い農業構造をつくってまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 営農類型別の農業所得の推移表というのをいただいたんです。どの経営体でも作付面積は少しずつふえているんですね。でも、実際に今、お米だけをつくっている農家さんで二町歩ぐらいしか作付ができない農家さんなんかは、どうそろばんをはじいても赤字だからやめてしまっているんです。もう、やめ始めているんですね。その農地はどうしても不耕作地になるか、もしくは休耕農地になってくるんだと思うんです。

 でも、平成二十二年をピークにして、主業経営体、専業農家の方を指しているんだと思うんですけれども、農業所得も総所得も少しずつ落ち始めてきている。そうはいいながらも、平成二十二年のセンサスでは、販売農家で二百万未満の戸数が全体の七二・四%、販売総額が全体の一〇・一%。しかし、一千万円を超える戸数は全体の七・九%にもかかわらず、販売総額の六七・四%を占めているという数字があるわけです。ということは、結局、もっともっと専業化をしていった方が、それだけ農業所得、総所得も上がっている、全体に占める割合はふえているわけですね。

 だから、そこに、先ほども申し上げたように、専業を育てていけば必ず後継者もふえるし、もうかる農業であれば必ず後継者も出てくると思うんです。

 ぜひ、そのところで、年収の多い農家が農産物の販売も多いということも踏まえていけば、主業経営体に重点化した政策を打ち出していくべきだと思うんですけれども、再度、お尋ねをしたいと思います。

長島大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 先ほどの件と少し絡むのでありますけれども、委員御指摘のとおり、主業農家の作付面積が増加をして、販売金額一千万円以上の経営体の販売シェアが三分の二を占めていることは承知をしております。

 ですから、委員御指摘のとおり、こういう人たちが例えば地域の主体となって、今まで人・農地プランの中はどうも農業の経営体だけで考えがちだったのを、こういった人たちに引っ張っていただいて、周りを巻き込むような形での農地形成、地域形成をやっていただくことは私は非常に重要なことだと思うし、そういった人たちが、地域の中で、異業種も含めながら、リーダーとなっていっていただくことが、農業を発展させることにもなるし、継続をしていくことにもなるというふうに考えております。

鈴木(義)委員 御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 ということは、就業者数が減っていっても、強い農業というのはつくり得るんだと思うんですね。やはり、一人当たりの作付面積をふやしていって、収量を上げて、所得をふやしていくというところに重点化をしていかなければ、まあ、作付をする種類によっても全然違うと思うんです。果樹をやっている人もいれば、野菜をやっている人もいる、米麦をやっている人もいると思うんです。それによって、やはりめり張りのついた目標数値をつけてやっていくべきだと思うんですけれども、まあ、それは持論として。

 国では、圃場整備を三十アールから一ヘクタールに大規模化していこうというふうに取り組んでいて、二十五年度の予算も、それを倍ぐらいにしていこうじゃないかと。今、全国では二十・九万ヘクタール、全体の八・四%を倍にしていこうという計画を聞いているんです。

 でも、将来を見越していくのであれば、もしお米で御飯を食べていこうとするのであれば、一ヘクタールで大規模化するよりは、やはり三十町歩、五十町歩やらなければ食べられないというのは誰でもわかっているわけですね。なぜ、その一ヘクタールをもっと、倍増していこうというふうに半端な考え方をやっているのか。やるのだったら、三十ヘクタール、五十ヘクタールの大規模圃場整備をしていった方がいいと思うんです。その辺をお尋ねしたいと思うんですけれども、お答え、いいですか。

江藤副大臣 私も全国を歩いてきましたので、随分広い。私のところなんというのは一町歩ぐらいがせいぜいなんですよ、田んぼの面積なんというのは。それが五町だとか十町だなんというのは日本にもあります。

 確かに委員のおっしゃるとおり、これから、いわゆる一千万円以上、三分の二以上の主業農家を中心として人・農地プランもつくられていくわけですから、やはりこの人たちに向かって農地の集約は進めなければなりませんが、ただ、現場に行きますと、農家の方々は農地に対する、先祖伝来、守ってきた、そういう思いもあって、なかなかそう簡単にまとめられないというのが現実にありまして、これはなかなか難しいところがあります。

 ですけれども、そうは言っておられませんので、私たちも、五年程度でこれを何とか四十万ヘクタールにふやしていこうと。一ヘクタールということはだめだという御批判ですから、これは十分な答弁になっていないことは重々承知をしておりますけれども、まずは目標として、これをまず五年間程度で四十万ヘクタールにするんだと。そして、その大区画化に対しましては、途中、農業の生産性向上対策で九百七十億円をつけて、日本というのは非常に中山間地域が多くて、恵まれた農地というもの、集約に向いた農地というのは正直少ないという現実がありますので、委員の御指摘はしっかり受けとめさせていただきますが、三十町歩、五十町歩が基本だというのは、少し私は無理があるのではないかなと率直に思います。

鈴木(義)委員 山合いのところを五十町歩にしようというのは、それは無理な話なんです。ただ、北海道と沖縄の農業というのはもう全然異質なものだと思うんですね。だから、そこの地域に合わせた農業政策を打っていけばいいだけの話だと思うので、そこのところは次の質問に入らせていただきたいと思うんです。

 平成十年度、地方分権推進計画がスタートして、二十一年、地方分権改革推進計画の第一次見直しがスタートして以来、平成二十二年度、第二次、そして、平成二十三年度、第三次が継続になり、今国会、三月十二日、第四次見直しが閣議決定されたとお聞きしています。第四次の見直しの推進と今後さらなる権限を移譲していく考えなのか、お尋ねをしたいと思います。

江藤副大臣 お答えさせていただきます。

 地方分権改革推進法において、国が本来果たすべき役割を重点的に担って、そして、委員が御指摘のとおり、住民になるべく近いところで行政は行われるべきだと、地方公共団体に委ねることを基本方針とする考えに基づいております。権限移譲とか義務づけ、枠づけ等の見直しは、地方分権改革に取り組んできたところであります。

 安倍内閣におきましても、地方がみずからの発想で特色を持った地域づくり、これは自民党農政の基本的考え方でもあります。地域の特性を生かした農政を展開していくということでありますから、これは全く私どもの考えと同じものであります。そして、内閣におきましては、林大臣おられますが、全閣僚を構成員とする地方分権改革推進本部、御存じのとおりこれが設置されまして、農林水産省におきましても、政府全体の取り組みの中で、権限移譲など、それから義務づけ、枠づけ等につきましても取り組んでまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 一つの事例でお尋ねしたいんですけれども、全国市長会や全国の知事会から、農地法の農地転用の許可権限を権限移譲して、国との協議の義務づけの廃止や二ヘクタールを超えるものから四ヘクタール以下の農地転用許可に係る農林水産大臣に協議の廃止を提案しています。

 さらにまた、平成二十一年の農地法改正の際、集団農地面積要件を二十ヘクタールから引き下げて十ヘクタールに要件を厳しくしました。

 なお、農業振興地域に指定されていない地域にもかかわらず、面積要件で農地転用、開発行為が進まない現状が都市近郊では見受けられると思っております。分権の推進と逆行しているんではないかなというふうに思うところもあります、これから審議をされていくといえばそれで終わりなんでしょうけれども。

 当たり前のこととは思いますけれども、農業振興地域でないと営農に対するサポートをする予算がほとんどつかない地域もあるわけですね。農振地域じゃなければ予算がつかないのは当たり前の話です。それにもかかわらず、土地利用をしたいといったときに、農林水産大臣の方の権限で協議をしないとだめだよというのは、ちょっといかがなものかなということです。

 各都道府県や市町村の現状によりさまざまな要件が違うにもかかわらず、全国一律で統制してしまう。先ほど副大臣から答弁をいただきました、一ヘクタールというのもそういうことだと思うんですね。国がやろうとしているのは、全国一律で一ヘクタールでやろうとしている。北海道は五ヘクタールだっていいと思うんです。小さいところは〇・五ヘクタールだっていいじゃないか。何でそれが、一ヘクタールの圃場整備を倍にしていくんだというのは矛盾があるじゃないかということなんです。

 そういうのは全部都道府県に任せた方がいい、将来的には道州制にしていこうというのが維新の考え方でありますので、その辺の権限を移譲していく考えがおありなのか、お尋ねいたします。

林国務大臣 お答えいたします。

 委員がおっしゃっていただいておりますように、農業は特に地域性がありますので、例えば私の山口県ですと、一ヘクタールとか二ヘクタールまでいくと結構大きいね、こういうところで、実は、美祢市というところがあるんですが、大田という地名があるぐらい、大きな田んぼだというのが大体それぐらいの規模なんでございます。一方、北海道では平均二十ヘクタール、こういうことでございますから、いろいろ地域の実情に応じてということは、地域分権からも大変大事なことだと思っております。

 今の転用許可なんですが、実は、御案内のとおり、二ヘクタール以下は都道府県知事でやれる。件数ベースで九九・八%、それから面積ベースでも九二・一%はこれなんですね。今お話のあった、農林水産大臣に協議が二から四ということになっておりますが、これがもう、〇・一%が件数で、面積が二・八ということで、農林水産大臣の方でやるのは四ヘクタール超ということで、件数が〇・〇六、面積が五・一ということですから、現状の数字を見ますと、二ヘクタール以下のところでかなり都道府県知事でやっていただいているということでございます。

 さらに、二十一年の農地法改正で、附則十九条四項で、改正法施行後五年を目途として検討する、こういうことになっておりますので、今言ったような状況は状況として、しかし、新しい攻めの農林水産業ということで大事なところでございます。

 一方で、国全体として、自給率、自給力ということを考えた場合に、やはり農地というものは大事でございますので、各地、都道府県で一〇〇%全部やっていったときに、トータルとしての農地の確保ができるか、こういう観点もございますので、いろいろな観点を持ちながら、しっかりとこの法律の附則に基づいて検討してまいりたい、こういうふうに思っております。

鈴木(義)委員 最後に一言だけ。

 農林水産業政策というのは、やはり産業政策だと思っているんです。社会政策だとか福祉政策とは違うというふうに思っておりますので、やはりそこを中心に据えた農林水産行政を推進していただきたいと思うんですが、最後にお尋ねして、終わりにします。

林国務大臣 ここは非常に深遠な問題でございまして、自民党の農林の部会でも時々議論になるところでございます。

 産業政策と社会政策、どこから先が社会政策でどこから先が産業政策かということは、それほどはっきりとしているところがない部分もございますけれども、やはり、強い農業をつくっていくという意味で産業政策というものが必要だということは、もう委員御指摘のとおりであります。

 一方で、食料・農業・農村基本法には多面的機能ということも書いてございます。多面的機能を維持していくためにどういうことが必要か。中山間地等の不利な条件のところでもやはり多面的機能というのは必要でございますので、そういった意味での、委員は社会政策というお言葉をお使いになっておられますが、そういう地域性に応じたバランスのいい政策ということはトータルとしてはあるんだろう、こういうふうに私は思っております。

 やはり、こういう今の状況を見ますと、攻めの農林水産業で、産業政策的な、先ほどから御議論のありますような、需要、供給、両サイドをつなぐもの、こういうものにしっかりと取り組んでいくという重要性は委員が御指摘のとおりだというふうに思っております。

江藤副大臣 済みません。答弁漏れがございましたので、補足させていただきます。

 相続についてのお尋ねがございました。

 相続等の届け出は、二十一年の農地法改正後、平成二十二年度は二万二千八十一件ございました。面積的には一万二千八百九十九ヘクタールでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

森山委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 みんなの党の林宙紀です。

 きょうは、早速質疑に入らせていただきます。

 皆様のお手元に、きょうは資料を三枚ほど御用意させていただきました。まず、一番上の資料からごらんいただきたいと思います。

 こちらは、三月二十七日付の日本農業新聞に掲載されました記事になります。独立行政法人、農林水産省所管のものですが、これについての人事異動の記事でございます。これをつらっと読んでいって、特に何が問題なんだということなく読み進めていっていただけると思うんです、ちょっと文字がはっきりしないところがあるのは大変恐縮ですが。

 一番最後のパラグラフ、「水産大学校と」と書いてございますが、その三行前からごらんいただきたいと思います。「種苗管理センターと農業生物資源研究所は公募によるもの。」と書いてあります。

 私は、ここを読んで、おやっと思ったわけです。公募によるものということは、公募によらないものもあるのだろうかと。私はちょっと勉強不足だったんですが、これはほとんど公募でやっていることだと思っていたので、あっ、なるほど、公募じゃないパターンもあるのかということでいろいろと調べさせていただきました。本当にこれは勉強不足だなと思いながらやらせていただいたんです。

 そうしますと、この公募をされた方々ということについては、大分情報もたくさん公開されているようでして、職歴ですとか、その方をどうして選任したのかという理由まで、この選任理由についてはA4の紙一枚びっしり書いてあるような、本当にしっかりしたもので公開されておりました。

 ところが、公募をされなかった方々ということに対しては、どういった方なのかというところ、もちろん、最低限の情報はあると思うんですけれども、例えば、どうしてその方を最終的に選任したのかという理由の公表は、これは省庁の方に問い合わせをしても、いや、公表はしていないんじゃないでしょうかねというようなお答えもいただいていたわけです。

 何となく、公募をされている方は公表するのは当然だとして、公募をしないにしても、その方をどうして選んだのか、これは何で公表しないんだろう、単純に率直にそう思ったわけです。

 ということで、この農業新聞の記事でいきますと、二番目のパラグラフで、お二方、農林水産消費安全技術センターの理事長にこの四月一日から就任した方、そして、もう一方、家畜改良センターの理事長に就任された方、この方々について、改めてというか、選任された理由というのを大臣にお伺いしたいなと思います。

林国務大臣 独立行政法人農林水産消費安全技術センター理事長は、今委員から新聞記事を引いていただきましたが、元名古屋大学大学院生命農学研究科教授の木村真人先生、それから、家畜改良センターについては、前東北大学大学院農学研究科教授の佐藤英明先生をそれぞれ四月一日付で任命をしております。

 お二人とも適材適所ということで、経歴等を拝見いたしましても、それぞれの独立行政法人が行う事務事業に関して高度な知識及び経験を有しているということ、そして、その事務事業を適正かつ効率的に運営することができるだろうということで任命をさせていただいた、こういうことでございます。

林(宙)委員 このお二方は、もともと民間というか、大学の教授の方だったりとかしますので、過去の、どういった専門分野なのかということは、当然調べやすい。その点については非常によくわかりますし、私も、このお二方の任命については、それは適材適所なんだろうなということで理解はしております。

 ただ、これを調べていって、そもそも公募とそうじゃないケースがあるというところに非常に違和感を感じたわけです。

 資料の二枚目ということになりますが、これは、もともと平成二十一年の閣議決定でございますから、前の政権での決定ということで、こういった内容が当時決められました。

 重要なのは、その下の方の(1)、(2)、(3)と書いてある(2)、真ん中のところなんですけれども、「公務員の天下りに対する国民の厳しい批判等を踏まえ、公正で透明な人事を確保する観点から、」と書いてあります。これはすばらしいですね。「1現在、公務員OBが役員に就任しているポストについて後任者を任命しようとする場合及び2新たに公務員OBを役員に任命しようとする場合には、公募により後任者の選考を行う。」これは至極そのとおりなんだろうなというふうに思うわけなんです。

 一読して、どういう意味なんだろうなとちょっと考えてみて、いろいろ省庁の方にも確認をしたら、結局のところは、今ポストについている方が退任をされる、あるいは、これから新しいポストにつくということを考えたときに、それが公務員のOBの方が絡んでいれば、それは必ず公募をしなきゃいけない、そういう条件で、反対のことを言うと、今、役員ポストについている方が民間の方だ、その方が引退する、それでまた新たに民間の方を選任してくるという場合には公募をしなくていいというようなことで理解をしています。

 となると、公募するケースとそうでないケースが併存するということ自体、それがちょっと違和感があるんですよというお話を先ほどしましたが、これはそういう取り決めなので、特に農林水産省だけということではなくて、全省庁、全大臣がこのルールのもとでやる。私は大臣に比べれば、もちろん素人も同じのような人間ですから、ただ、その私が考えて、これは一読して変だなと違和感を持ってしまうような状況なわけです。

 ということで、先ほどの農業新聞をごらんいただいてもわかりますが、今回は、公募したケースと公募しなかったケースがありまして、人事発表があったわけです。

 これに対して、大臣は、公募と公募でないケースがある、この併存をしていることに対して、何らかお考えがないのかなというところをちょっとお伺いしたい。つまりは、私が感じているような違和感を大臣はお感じになられなかったでしょうかというところをお伺いしたいと思います。

林国務大臣 ありがとうございます。

 独立行政法人というものはそもそも何なのか、こういうところがやはり基本にあって、それで、二十一年ですから民主党政権になってすぐのころだと思いますが、こういうことの閣議決定があった、こういうふうに考えておるところでございます。

 独立行政法人をつくったときに、私は自民党の行革本部でそういう事務局をやっておりましたので、イギリスにエージェンシーというのがありまして、ああいうものを持ってきて、いわゆる霞が関の中で定型業務をやるところ、そこだけを抜き出して別組織にすることによって、もう少し簡素で効率的な行政の推進ができるのではないでしょうかということで、実は、独立行政法人というものをつくろうということになったわけでございます。

 国の組織から切り出したような独立行政法人と、それから当時、特殊法人というのが結構いっぱいあったんですが、特殊法人から独立行政法人になったもの、大きく分けてこういう二つのものがあるわけでございます。

 したがって、今話題になっているようなところは、もともと国の組織だったものをそういう観点から独法で切り出したということがございまして、そういう経緯からして、独立行政法人通則法というのが平成十一年に法律として成立しておるわけでございますけれども、ここに、役員の任命については、主務大臣が任命する。多分、これは制度的にもエージェンシーに倣ったものだとも思いますし、それからそもそも、国の中の組織で、行政をやるということですから、一義的には大臣が役所の中の局長を任命するがごとくやるということが原則であるということが法律に書かれているわけです。

 その法律が原則であるわけですが、しかし、先ほど委員が御指摘になられたような公務員に対するいろいろな御批判というのがあって、そういうふうに御批判があることに鑑みて、二十一年の九月二十九日、独法通則法の原則の上に、特別に、こういう御指摘があることに対してこういう取り扱いをしようということで、今委員が挙げられたようなケースについては特別な措置としてそういうことをやろうということで、ある意味では、李下に冠を正さずという言葉がございますが、そういう意味でもってこういう措置をやられたのかなと、その当時私は野党でしたからあれですけれども、推測するに、そういう観点もあったのではないかということであります。

 したがって、そうでない場合というのは、原則に戻って、独法通則法上のとおりに大臣が任命をするということで、私はとりあえずそういう理解をしております。

林(宙)委員 これはもうルールで定まっていることですので、それに粛々と従って実行されているということで、私はそれはそれでいいのかなと思うんです。

 公募の場合、私が一つとてもいいなと思っているのは、第三者による選考委員会というのがあって、これで公募に応じてきた方を面接する過程があるんですね。これは非常にいいんじゃないかなと思っているんです。

 ちなみに、公募しない場合というのも、こういう第三者的な面接というのがあるのかどうかをちょっとお伺いしたいなと思いまして、きょうは内閣官房の方もいらしていただいているので、ぜひそのあたりを教えていただきたいと思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、独立行政法人役員の公募による選考の場合は、お手元の閣議決定に従いまして、外部有識者による選考委員会が書類選考や面接等を行っているわけでございますが、公募を行っていない役員ポストに係る選考の具体的な手続につきましては、各任命権者に委ねられているところでございまして、内閣官房としてはそこは承知をしていない、こういうことでございます。

林(宙)委員 ということは、それは各省庁の任命権者にお任せをしているよということで、やれればやった方がいいんでしょうけれども、やる必要もないと考えると、恐らくどの省庁でも、やれという状況ではないんだったらば、やらなくていいんだろうなと、まあ、やらなくていいと言ったら変ですけれども。やらないまま、そのままダイレクトに任命して、それでよしというふうにされているんだろうなというふうに思うんですね。

 私は、それがルールでしたら、それでいいと思いますよ。ただ、第三者の視点が入ったんですよ、それでこの方を選んだんですよというプロセスがあることで、非常に国民にとっては納得しやすい状況になるんじゃないかなというところは感じるので、だからこそ、あえて今そこの確認をさせていただいたわけなんです。

 時間がないので次の質問に行かせていただきたいんですけれども、そうすると、今度は資料の三枚目なんですけれども、これまでの公募に対する応募数というのを簡単にまとめてみました。

 申しわけございません。一つ訂正がありまして、平成二十一年十月の農業者年金基金の、ここは監事と理事となっているんですが、これは理事ではなくて、両方とも監事です、常勤か非常勤かという分け方で分けているところもあるんですけれども。済みません。理事ではなくて、監事が四十二という形になります。

 これをざっと見ると、何となく平成二十一年は物すごく応募が多かったような感じの印象なんですけれども、だんだんと少しずつ減っていって、二十三年と二十五年は、これは理事長のポストですから、少なくても仕方ないかなと思ったりします。

 それぞれの独立行政法人、それぞれ専門性が高いというところもありまして、そもそも公募に応じられる方というのも限られてくるのかな。あとはそれぞれ分野があって事情が違いますから、単純な比較はできないんですが、そう考えたときに、公募をするのであれば、広く有能な人材を募る、できる限りたくさんの人に応募していただくというのがやはりあってしかるべきなのかなと思うんです。

 その上でいうと、今公募についてどのような形で周知をされているのか、また、今後それを広く周知していく考えがあるかどうかという点について、これは農林水産省としてということになると思うんですけれども、ぜひお考えを伺いたいなというふうに思います。

長島大臣政務官 独立行政法人の役員の公募に当たっては、広く有能な人材に応募いただくことが何よりも重要であるというふうに考えております。

 こうした考え方に立って、公募に当たっては、当省及び独立行政法人のホームページのみならず、内閣官房のホームページや政府広報オンラインにも掲載をして周知をしていただいているところでございます。

 今後とも、できるだけ多くの皆さんから興味を持っていただいて、応募をいただく体制をとってまいりたいというふうに思っております。

林(宙)委員 まあ、そういうことになるんだろうなと思っておりました。

 具体的にといっても、いろいろあるんでしょうから、あえて聞きません。聞きませんが、例えば、我々が見ていて、こういう公募、こういう方法でもやっているのかと思えるようなことを今後ぜひやっていっていただきたいなということでございます。選ぶパイが大きくなればなるほど、それは本当に有能な方というのがたくさん集まって選択肢がふえるということもありますし、そこで選考の過程でブラッシュアップされていく部分もあると思うので、これはぜひやっていただきたいなと思うんです。

 今までこういう話を質問させていただきましたけれども、結局は、これは前の政権で決まったルールに従って今は遂行されているというのは事実であって、もう一回先ほどの閣議決定の資料をごらんいただくと、今度は上の方の序文のところになるんですが、一段落目をずっと読んでいっていただくと最後の方に「暫定的な措置として、」ということで書かれております。

 ということは、暫定的な措置として当初この閣議決定をされたんですが、そのまま来ているということもあって、今回政権がかわったわけですから、例えば、私が今申し上げたような違和感の解消があるのかどうかというところも含めて、この閣議決定の内容を今後見直す動きというのがあるのかどうか、もしあるのであればその旨を教えていただきたいなというふうに思っておりますが、これはきょうお越しいただいている内閣官房の方にぜひお答えいただきたいと思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、この閣議決定は、独立行政法人制度等の抜本的な改革を行うまでの間の暫定的な措置として定められているものでございます。

 その後、前政権になりますけれども、独立行政法人の制度改革につきましては、昨年の五月に独立行政法人通則法の改正案を出しまして、そこで役員の任命に当たっては原則公募とするということにしていたわけですが、この法案は前国会において廃案となったところでございます。

 その後、現政権におきましては、独法改革につきまして、これまでの取り組みを総括、点検して、改革の集大成を行うべく取り組んでいるところでございます。この中で、この法案の、先ほどの法案の内容も含め、総括、点検を行ってまいりたい、このように考えておるところでございます。

林(宙)委員 済みません。ちょっと通告していないのであれなんですが、今のお話に関連してということで。

 ということは、これは、今回の閣議決定の内容を見直すことも含めて、ある程度前向きな動きがあると何となく私は捉えさせていただきましたが、そうではないんでしょうか。先ほど、もともとそういう法律があったけれども、廃案になったというお話もあったので、そこも含めて前向きなのかどうなのかというのはちょっと確認させていただきたいなと思います。

上村政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになるかもしれませんけれども、その法案の中身も含めまして、もう一度総括、点検をすることとしておりますので、役員の任命のあり方は、その中で一つ点検をしていくということになろうと思います。

 以上でございます。

林(宙)委員 わかりました。

 いろいろ手続が余りふえ過ぎると大変だということもあるかもしれませんけれども、例えば理事長の方ぐらいは全て公募にしてみるとか、もうちょっとシンプルでいいんじゃないかなと思うんです。公募で選ぶんですよという前提があるんだったら、もう全員公募にして、こういうケースは公募じゃないとか、こういうケースは公募だとか、あえて分ける必要もなくて、みんな公募ですよ、広く人材を募った結果、この方になったんですよ、それでいいんじゃないかなと私は個人的には考えているわけです。

 ぜひ、これが前進するような形で進んでいっていただけますように、内閣官房の方でも、そして、農水省の方でもいろいろとお考えをいただきたいなというふうに申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

森山委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、飲用乳価の関係でございます。

 今、酪農経営は、アベノミクスによって円安になって進行していますので、飼料価格が上がっているということがございます。あと、ぬれ子価格が低迷したり、あるいは燃料、電気料金が値上がりして収益を圧迫しているという状況があって、大変なわけでございます。

 そこで、地元の酪農家からは、こうした状況の中で、実は飲用乳価が上がらないわけでして、スーパーでは牛乳よりミネラルウオーターの方が高い、つまり、牛乳がミネラルウオーターより安いわけですね。こういうこともあって、これに対する、おかしいというか怒りの声があるわけです。

 今後も輸入生産資材のさらなる値上げが予想されて、これが今のままだと酪農家の経営が立ち行かなくなる、そういう悲鳴が上がっておりまして、これはTPPの影響がどうこう言う前に、こういう飲用向けが中心の都府県の酪農が壊滅してしまうんじゃないかというおそれを持っております。私はそういう危惧をしておるわけでございます。

 今、飲用乳価交渉が行われているということは聞いておるんですが、この中で指定生乳生産者団体が乳価の大幅値上げを求めているわけですが、乳業メーカーは、やはり小売業者の値下げ圧力が強いということから、乳価引き上げに難色を示しているというところで、交渉は膠着状態だと聞いております。

 要は、飲用乳価を上げるためには、乳価の値上げ分を小売価格に転嫁できるようにしなければならないわけですが、結局、そこがなかなか厳しいというところだろうと思います。ただ、酪農家の皆さんが毎日朝早くから夜遅くまで働いて生産している。一生懸命やっておるんですが、これは消費者の理解も得ながら、ここはもっと正当な評価が欲しいなという声が大勢でありまして、そこはよく聞きます。

 こういうところを踏まえまして、酪農経営の現状についてどのように認識されているのか。そして、こういうことに対してどのような対策を講じていくか。そこのところをお伺いしたいと思います。

江藤副大臣 私も都府県、西日本ですけれども、都府県が大変厳しい状況にあるということは承知をしております。配合飼料の価格、それからぬれ子の価格ですね。今度、マルキンの金額が、きのうの夕方ですか、発表になったと思いますけれども、それでも厳しいということは重々承知をいたしております。

 ただ、長いスパンで見てみますと、平成十九年それから二十年に三円、十円と上げましたですね。その後、若干横ばいで、メーカーとの交渉で乳価は維持されておりますので、まあそこそこ、厳しいというのは同じ認識でありますが、そんなに、全体的に見ればちょっと安定しているという言い方は御不満かもしれませんが、一時言われた、水よりも安い、スーパーの特売の一ページ目に出てくるというような状況には今余りなっていないのではないか。

 かつて、我々自民党政権におきましても、乳業メーカーのところまで押しかけていったことがあります。本当は、民民でありますので、そういうことはしちゃいかぬのでありますけれども、あくまでも政治家として、やはりいかに民民とはいっても、それでは足りないんじゃないかと。

 今回の酪畜対策においては、やはり北海道の人たちが加工原料乳の方にどんどん回していただかないと、北海道の牛乳はこちら、都府県に入ってきますので、あらゆる対策を合わせると実質八十銭の引き上げをさせていただいて、それで間接的に都府県を守る。

 それからまた、都府県対策としては、酪農生産基盤の回復緊急支援事業、もう委員はよく御存じだと思いますが、これを新たに組んで、都府県でもやはりやっていかないかぬ。それから、TMRセンターとかコントラクター等のそういう外部化による支援組織に対する助成につきましては、畜産経営力向上緊急支援リース事業、これは予算額が二百五十億円。それから飼料自給力強化支援事業、これは予算額が百三十一億円。

 これでもなかなか酪農の経営状態は厳しいということは承知しておりますが、これからあらゆる方策を考えて、さらに、この酪畜の決定をしたときに、期中改定もあり得べしということで農水省としては引き取っておりますので、状況を敏感に把握をして、臨機応変に対応していきたいというふうに考えております。

畑委員 安定をしているというふうにおっしゃいますが、構造的にやはり厳しいという問題はあるんだろうと思います。結局、これは、頑張って頑張っても、大体安定しているといっても、少々のもうけというか、利益が、利幅が少ないという中で苦しんでいるわけです。

 そこで、ちょっとお伺いというか問題意識を持っていますのは、安倍総理が、経団連なり経済団体には給料を上げてくださいということをお願いにも行ったんですが、民民のことでありますが、私は、やはり正当な評価というか価格転嫁がされなければという部分は、この部分にも当てはまるんだろうと思います。

 この乳価についても、本当はしっかり転嫁されて、消費者から理解を得ながらそういうふうに持っていかないと、デフレ脱却はないし、こういう厳しい地方の酪農家にしわ寄せをされるのはおかしいなと思っていまして、これはいろいろな政策も総動員してやっていただくんですが、この乳価交渉のところも、ぜひとも消費者の理解を得るということと、そこは広報活動なんでしょうか、あるいは乳業メーカーでしょうか、その辺、民民ですが、どうやって指導できるかという議論はありますが、農水省からもしっかりと御指導を賜る、そういうことも含めてお願いしたいと思っているんですが、いかがでしょうか。

江藤副大臣 かつて、牛乳は体に悪いという本を出したけしからぬ人がおられまして、我々は、党として、これに対しては大変抗議をしたわけですけれども、私は毎日一リットルぐらい牛乳を飲んだ結果百八十一センチの身長になりましたので、私の子供たち三人とも、同じように、みんな百八十ぐらいあります。牛乳は体にいいです。これはみんなにわかっていただきたいと思います。

 そして、八十銭上げたということを申し上げましたけれども、これは、乳業メーカーがそれをとって、国がそれだけの支援をしたんだから、乳業メーカーは別に、その民民の交渉においては、その分上げなくてもいいだろうということは、これはけしからぬことでありまして、国がやる施策と乳業メーカーと生産者団体との交渉というものはリンクしてはならない。我々が上げた分、乳業メーカーが上げる分をちゅうちょするということは、決してあってはならないことだというふうに考えております。

畑委員 よろしくお願いいたします。

 この議論はここにしまして、次に、時間の関係があれなので、ちょっと飛ばさせていただきまして、これは地元で聞いた話でして、塩酸ラクトパミンという化学物質の件なんです。

 これは、米国、カナダ産の輸入牛、豚肉には塩酸ラクトパミンという化学物質が残留しているということだそうでして、ロシアは二月に輸入禁止にしたということを聞いております。この物質は、EU二十七カ国、そして中国でさえも使用禁止にしている、そういう話を私は聞いたんですが、この物質は、牛、豚の仕上げ期に使用されまして、肉類の赤身をふやして一頭当たりの飼料を節約したり、窒素排せつ物とかふん尿を減少させることができると言われております。

 日本は、こういうのはどうなのか。つまり、この扱いというのは、まず食品で、そういうのを使っているものに対する輸入という観点が一つあるでしょうし、あと、国内でそういうのを餌に使っているのがどうかという観点の二つがあると思うんですが、それぞれお答えをいただきたいと思います。

新村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の塩酸ラクトパミンにつきましては、食品安全委員会が科学的な評価を行いまして、一日当たりの摂取許容量を定めております。これを踏まえまして、食品衛生法に基づいて、牛肉及び豚肉に残留基準を設定しております。これに適合しない食品につきましては輸入販売等を禁止するという定めになってございます。

 輸入される牛肉及び豚肉につきましては、塩酸ラクトパミンが使用されている可能性がございますので、輸入時にモニタリング検査を実施しております。

 過去三年間に五百三十八件の検査を実施しておりますが、試験結果は全て不検出ということでございまして、違反は認められていないという状況でございます。

藤本政府参考人 農水省からは、餌での取り扱いについてお答えを申し上げます。

 御指摘ございましたとおり、アメリカなどで使われております。体重増加でございますとか、赤肉の割合向上を目的として使っている飼料添加物、化学物質でございます。

 日本では、飼料添加物は、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律によりまして、飼料の安全性等の確保のため、農林水産大臣が指定したものでなければ使用できないという仕組みになっております。

 この指定は、必要性が高く効果が明らかで、かつ安全性の確認されたもののうちから必要最小限の範囲において行うということにしているものでございます。

 お尋ねの塩酸ラクトパミンでございますけれども、生産者団体からその使用について否定的な意見もございますし、また高い必要性が確認できていないということから、我が国では指定は行っておりません。

 以上でございます。

畑委員 慎重に運用されているということだろうと思います。

 それで、TPPの議論になったときに、こういうことがどうなるか。塩酸ラクトパミンそのものということではないんですが、これも含めて、食の安全、安心を守るということが、これは自民党の政権公約にも盛り込まれていたわけです。

 例えば、米国では使用が認められている一方、日本では使用が禁止されているとか、日本で使用が許可されていないような物質があった場合に、こういうことについてはどのような方針で交渉されることになるのか。これは、日本の基準が合理的な場合はそれをしっかり通していくということが必要だと思いますけれども、そこのところをお伺いしたいわけです。

 というのは、日本のように、食料自給率が低い国でTPPに参加をすると、そういう食品添加物を使ったようなものがどんどん入ってきて、日本のこういう産業に対する悪影響も懸念されますので、産業政策ということではないんですが、やはりしっかりと安心、安全というところで日本の基準を押し通していくということが必要で、そこをちょっとお願いしたいと思うんです。そこの答えをいただきたいと思います。

林国務大臣 今委員からもお話がありましたように、食品の輸入については、やはり科学的な根拠に基づきまして食品安全に関する措置を実施する権利というのは、WTOの衛生植物検疫措置に関する協定で各国、当然我が国もそうですが、認められておるところでございます。

 今御指摘があったように、TPPの協定交渉では、これまで得られた情報というところですが、現在のところ、残留農薬基準等、個別の食品安全基準の緩和は議論されていないというふうなところが情報としてとれているということでございます。

 いずれにしても、今後、参加国の同意が得られて交渉に参加していくことになった場合は、食の安全というのは大事ですから、我々も、党としても公約をしたところでございますし、食の安全が損なわれることのないように、国際基準、それから科学的知見、これを踏まえながら対応してまいりたいと思っております。

畑委員 ありがとうございました。

 また、全体のTPPの話に戻らせていただきまして、TPPについては、農業について言えば重要五品目、これについて、これはコアになるから、しっかり、最低限守らなきゃいけないだろうということは皆さんの共通認識だろうと思います。

 そういうことで、これからの交渉方針をちょっとここでお伺いしたいわけです。

 この重要五品目については、最低限、関税撤廃の対象から除外するという方針で交渉すべきだと思いますし、あるいは、そもそも十年を超えた期間でだんだん下げていくということも認めるべきではないというふうに思いますが、そこの交渉方針をこの場でお話をいただければと思います。

林国務大臣 これはもう何度も申し上げてきたことでございますし、また、日曜日の討論番組でも申し上げたところでございまして、きょう、どなたかの御質問でも申し上げましたが、党の決議を踏まえてしっかりとやると。

 簡単に言ってしまいますと、党の決議、五品目、こういうふうになるんですが、先ほど申し上げましたように、党の決議には、全体の決議とそれから各分科会、農水の場合は第四分科会というのがございまして、そこに今先生がおっしゃったようなことも書いておりまして、一体として決議であるということで、今週の日曜討論は時間がありましたので、そこをもう少し含めて申し上げさせていただいたということでございます。

 総理がおっしゃっておられることも、申し上げたとおり、あらゆる努力によって農業、食を守る、こういうことでございますので、この決議を踏まえて、しっかりと国益を守り抜いて、聖域が確保できるようにやっていきたいと考えているところでございます。

畑委員 この五品目、御存じのとおり、実は細分化すると八百ぐらいあるんですか、今まで関税撤廃したことがない品目ということで細分化していくと。だから、五品目の中でも、実はどれを譲る譲らないとか、八百を全部守るんだとか、いろいろ議論があると思うんですが、もうそんな条件闘争を考えずに、五品目に入るものはしっかりと守るんだという方針で断固交渉していただきたい、そのことが農民を勇気づけることになると思いますので、そのことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

森山委員長 次に、内閣提出、外国政府に対して有する米穀の売渡しに係る債権の免除に関する特別措置法案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 外国政府に対して有する米穀の売渡しに係る債権の免除に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 外国政府に対して有する米穀の売渡しに係る債権の免除に関する特別措置法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国は、過去、外国政府に対して、政府所有米穀の売り渡しを行ってまいりました。この売り渡しを行った相手国のうち、マダガスカル、マリ、モザンビーク、シエラレオネ及びタンザニアの五カ国については、重債務貧困国と認定されております。

 重債務貧困国に対しては、国際的協調のもとで、対外債務の負担を軽減するための取り組みが進められており、平成十一年のケルン・サミットにおいて、主要先進国が重債務貧困国に対して有するODA債権を完全に免除することが首脳間で合意されているところであります。

 我が国といたしましては、これら五カ国の重債務貧困国に対して政府所有米穀を売り渡した債権について、ケルン・サミットにおける合意に基づき、免除を行う必要があることから、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、この法律案の趣旨についてであります。この法律は、重債務貧困国の対外債務の負担の軽減を図るため、これらの国に対して我が国が有する米穀の売り渡しに係る債権についての特別な措置を定めるものであるとしております。

 第二に、債権免除措置についてであります。政府は、マダガスカル、マリ、モザンビーク、シエラレオネまたはタンザニアの政府からの要請があったときは、当該政府に対して有する米穀の売り渡しに係る債権の全部を免除することができることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

森山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十六分散会


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