衆議院

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第10号 平成25年5月29日(水曜日)

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平成二十五年五月二十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 森山  裕君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 小里 泰弘君

   理事 北村 誠吾君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮腰 光寛君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      加藤 寛治君    川田  隆君

      菅家 一郎君    小林 鷹之君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      鈴木 憲和君    武井 俊輔君

      武部  新君    津島  淳君

      中川 郁子君    長島 忠美君

      西銘恒三郎君    橋本 英教君

      福山  守君    堀井  学君

      簗  和生君    山本  拓君

      渡辺 孝一君    後藤  斎君

      篠原  孝君    寺島 義幸君

      福田 昭夫君    鷲尾英一郎君

      浦野 靖人君    鈴木 義弘君

      高橋 みほ君    百瀬 智之君

      稲津  久君    佐藤 英道君

      中野 洋昌君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   農林水産大臣政務官    稲津  久君

   農林水産大臣政務官    長島 忠美君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  村井 正親君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 相星 孝一君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       新村 和哉君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            針原 寿朗君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            實重 重実君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     小林 鷹之君

  寺島 義幸君     篠原  孝君

  百瀬 智之君     浦野 靖人君

  佐藤 英道君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     武部  新君

  篠原  孝君     寺島 義幸君

  浦野 靖人君     百瀬 智之君

  中野 洋昌君     佐藤 英道君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


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     ――――◇―――――

森山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本審査のため、本日、政府参考人として農林水産省食料産業局長針原寿朗君、生産局長佐藤一雄君、農村振興局長實重重実君、内閣官房内閣参事官村井正親君、外務省大臣官房参事官相星孝一君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長新村和哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺孝一君。

渡辺(孝)委員 初めての質問でございまして、自分は絶対動じないという気持ちできのうまで来ましたけれども、さすがに少し寝不足でございます。ちょっととんちんかんな質問をしたら申しわけありませんけれども、今から謝っておきますので、よろしくお願いいたします。

 さて、政府は、六月にも成長戦略のメニューの取りまとめをスタートさせました。総理自身からも、我が国の成長力と産業競争力を高める観点から、検討課題を目いっぱい広げて議論をしてきたが、取りまとめに向けてプロセスに入っていきたいというふうに述べておりました。いよいよ三本目の矢が放たれるときが来たのかなと思います。

 週末、地元に帰りまして、そんな話で話題は盛り上がりますが、関係者の方々も、いわゆる農業・農村所得倍増目標十カ年戦略につきまして、あるいは成長戦略におきましての農地集積や輸出に関しましても、日ごと関心が高まっているような気がしております。それだけ、地元の農業従事者は、TPPの不安も相まって、今回の成長戦略に対しまして大いに期待しているというふうに私は受け取っております。

 これにより、国内の景気改善に弾みがつきまして、誰もが利益を享受できる社会になることを国民は期待しているのではないかというふうに思います。

 しかしながら、地方におきまして、一本目の矢の効果については実体感が薄く、二本目の矢も、予算が通りましたので、これから公共事業という形で動き出すのではないかと考えておりますが、正直言いまして、好景気の波が来るにはまだまだ時間がかかると思います。

 そういう意味では、国の明暗を分けるのは、まさに三本目の矢に、いかに地方が、国民が反応するか否かにかかっているのではないかというふうに思います。私の持論として、地方の再生が国の再生とも考えておりまして、ぜひそれを実現しなければならないと思っております。

 そのような中で、成長戦略に盛り込まれております施策に関しまして、特に一次産業では、農業、水産業振興の中で、農水産品の国別あるいは品目別の輸出戦略の推進が盛り込まれておりました。林大臣も常々申しております。何とか四千五百億円の現状を、一兆円を目標にと大変力強く述べておりましたし、ぜひ積極的に推進していただきたいというふうに思っております。

 そこで、今国会提出の食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、何点か質問させていただきたいと思います。以降、HACCPと呼称させていただきたいと思います。

 まず、一点目に関しましては、食品の安全性と品質の確保というのは大変重要なことでございまして、誰もが否定はしないと思います。また、TPPの交渉の場でも、食の安全と安心という話題はいろいろな議論になるかとも思います。

 大臣も申していたように、日本食の人気は高く、ジェトロの資料も見させていただきましたけれども、国際的に各種店舗、例えばおすしとかてんぷらなどは、外国の方でも非常に高い評価を得ているようでもございます。

 そういう意味では、ここで一気に、日本の農水産物あるいは加工品も、しっかりと世界の中で戦えるものにしなければいけないのかな、また、その可能性は大変大きなものがあるのではないかと思います。

 しかしながら、加工製品などの安全性や品質の確保というものは、パッケージに包まれていては、ましてや外国産ともなれば、消費者も確認しにくいものでございます。消費期限や賞味期限等々は理解できるものの、安全、安心というものは目に見えません。

 まさしく、このHACCP法が一役買っていただくのを私としては大いに期待するものですが、少しHACCPにつきまして、かみ砕いた視点で質問をさせていただきたいと思います。

 まず、行政側から見ると、HACCP導入国として、米国やEUは知るところでありますが、今後、成長著しいアジア諸国の取り組みはどうなっているのか、まず現状をお知らせいただきたいと思います。

針原政府参考人 アジア諸国におけるHACCPの状況でございますが、衛生基準としてHACCPを義務化する動きがアジアにもございます。

 例えば、台湾では、食肉や乳製品の加工品及び水産食品について、国内でHACCPを義務化しております。ただ、輸入食品につきましては、義務化はしておりません。韓国は、白菜キムチ、かまぼこ類等の一部の食品について、国内では義務化しておりますが、輸入食品については義務化していない、そういう状況にございます。

 他方で、自国・地域内では義務化しておりませんけれども、日本から輸出する際に、先方の輸入手続上実質的に条件としてHACCPを求めている国がございます。例えば、香港でございますが、牛肉を輸出する場合には、厚生労働省によるHACCP対応施設認定が必要になります。また、シンガポールに牛肉、豚肉を輸出する場合は、シンガポール政府のHACCP対応施設の認定が必要になるというような状況にございます。

 なお、輸出先として多い中国、タイにつきましては、現在は義務化されていない、そういう状況にございます。

渡辺(孝)委員 アジア諸国というのは数多くの国があるわけでございますし、我が国の方からも、協調路線の中で、PRできるような仕掛けをぜひつくっていただきたいというふうに思います。

 今度は、また、企業側の視点からお聞きしたいと思っていますが、そういう意味で、今後、EUのように、輸出国政府におけるいわゆるHACCPの認証を求める国が当然ふえていくことも想定されると思います。今、お答えいただいたように、アジアの国々で少しずつふえているのではないかというふうに思いますが、我が国の食品の輸出をより一層拡大していくという観点から、他国とのいろいろな交渉の段階でどんな動きが今あるのでしょうか、それもお知らせいただきたいのです。

新村政府参考人 お答え申し上げます。

 HACCPに基づく衛生管理が義務づけられております食品の輸出施設につきましては、輸出相手国の政府との協議に基づきまして、厚生労働省と地方自治体が連携して審査及び現地調査等を行った上で認定しております。

 厚生労働省におきましては、国内の施設ができるだけ速やかに認定されるよう、一つは、審査等を行う地方自治体職員に対する研修会を開催しておりますし、水産食品につきましては、水産庁や関係業界とともに設置しました輸出促進のための連絡協議会がございまして、こちらへ参加しております。また、認定のためのわかりやすいマニュアルをホームページに掲載する等の取り組みを行っているところでございます。

 また、HACCPにつきましては、国際的に衛生管理の手法として推奨されているため、御指摘のように、今後、認証を求める国がふえることが想定されております。

 このため、諸外国におけるHACCPの導入状況につきましては、常時情報収集に努めたいと考えております。先ほど針原局長からも御紹介がございましたように、少しずつ進んでおりますので、できるだけ早期に相手国政府と協議を行いまして、輸出相手国のニーズに応じた体制整備に迅速に対応してまいりたいと考えております。

渡辺(孝)委員 いずれにしても、食の安全、安心を確保するだけではなく、冒頭申し上げましたように、やはり成長戦略にしっかりと、サーフィンでいうならば波に乗るような形で、このHACCPを日本の国だけではなく相対する国々の方々にもしっかりと理解をいただき、国際的なルールづくりということが一番大事ではないかというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 二点目になりますけれども、今度は企業側から見たHACCPについて質問したいと思います。

 高額な設備投資や管理体制が伴うわけでございます。当然、コストが上がることは間違いありません。政府が人材育成に関しましても応援していただいているのは大変よいことと思います。

 まずは、国内の加工業者のHACCP導入の現状をお知らせください。

長島大臣政務官 渡辺先生の質問に私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 渡辺先生は市長さんをお務めでございましたから、多分、地元の農産品とか加工食品に非常に自信も、これから可能性のあるものもあるという観点をお持ちなんじゃないかなというふうに受けとめております。

 御指摘のとおり、食品製造業者のHACCP導入に当たっての問題点を調査したところ、施設整備に多額の資金が必要だということ、そして、導入後の人的コストを含めた運用コストが大きいということで、いずれにしろ、HACCP導入にコストがかかるという認識では御指摘のとおりでございます。

 こうした中、最近、例えば清浄区域と清浄区域でなく、分離をするときに、固定障壁ではなくて、ビニールカーテンのようなものでもHACCPに該当するという事例も幾つか、費用を抑えながら、あらわれてきております。

 そんなことを受けとめながら、低コストでの導入、あるいは人材育成研修、専門家を製造現場に派遣して、現場に即した助言、指導を行う取り組みの機会等を捉えながら、普及啓発に努めてまいりたいと思います。また、新たな支援対象となる前段階高度化基盤整備に対しても、中小事業者にわかりやすく、取り組みやすいものとして整理をして説明をしてまいりたいと思います。

 また一方で、施設整備に係る費用としては、長期低利融資措置の活用も図りたいと思っております。一方、六次産業化を図る事業者については、ハード、いわゆる施設整備に関して支援も行ってまいりたいと思います。

 いずれにせよ、中小事業者を含めた食品加工業者が誇りを持って安全、安心な食料を生産できるように、農水省としても支援をしてまいりたいと思っているところでございます。

渡辺(孝)委員 どうもありがとうございます。

 今回、この改正法案が通りますと十年延長ということになるわけですけれども、当然、その間、導入企業がふえると私も思っております。ただ、農林水産省として、十年という長きにわたっての期間、ただ延長するだけではなく、いわゆる計画的な、例えば数値目標等々は持っているんでしょうか。

 また、HACCPを導入する企業側が見て、やはり導入したい、あるいはしなければいけないという利点を何か打ち出せないのか、少しお聞かせいただけたらと思います。

針原政府参考人 十年の延長に当たっての目標ということでございますが、現在、HACCPを導入している企業は、売り上げが年間五十億以上の大手企業では七割程度の導入率でございます。ところが、一億円から五十億円という中小事業者では二七%でございます。

 この二七%をターゲットにして、中小の方に多くHACCPを導入していただきたいということが今回の改正延長の主眼でございまして、まず、二七%を除く方々の半分程度に、最初の五年間で高度化基盤整備、要はHACCPの前段階の基盤整備をやっていただく、続く五年間で、その前段階の整備をやっていただいた方の半分程度、二五%ぐらいですね、そういう方にHACCPを実際に導入していただくということで、十年後には二七%の数字を五割に高めていきたいというような形の目標を念頭に置いているわけでございます。

 そのためにも、今、長島政務官が答弁いたしましたとおり、さまざまな支援措置を重点的、集中的に講じていく必要があると存じております。

渡辺(孝)委員 数値目標なるものをしっかりと踏まえた中で取り組んでいかないと、どうも漫然とした制度になったりする嫌いがあるんじゃないかというふうに思いますので、その辺はしっかりと、監視の目というわけじゃないですけれども、指導体制も含めて、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 週末は、当然、地元に帰り、いろいろなことがありましたので、いろいろな農業関係者等々と話す機会が多くなったんですけれども、HACCP導入についても若干気にしている業者さんもふえておりまして、実はこんな話がございました。実際、経営コンサル業を営む知人に、決してこの話題で話をしたわけじゃないんですけれども、ついででこんなことを申しておりましたので、ちょっとお話ししたいと思います。

 これは彼のせりふですけれども、今一番心配しているのは、現場レベルの検証は非常によいことだということを申しておりましたが、保健所の方々など、余りにも建設のことを知らな過ぎる、半年前に図面を出して申請をした、であるならば、半年間なり時間があるわけですから、実際の現場検証の際に当然クレームはないというふうに、検証を受けているわけではございますけれども、当日になりまして、この辺に手洗い場がもう一台欲しいとか、あるいは、非常に設計上不可能なことを言われることがあるので非常に困る、手直し程度ならともかく、給排水の設計まで大きく変わるわけで、困惑してしまうと。

 実際、その方は、EUの企業等々にも視察に行ってHACCPの状況を見てきているわけでございますけれども、日本はここまでやるのかというぐらい、そんな思いで来たというお話を聞かせていただきました。

 これは一つの例でございまして、全ての例というふうには私も申し上げません。しかし、余りにも、現場においてこういう非常にスムーズにいかないことがあるということは、ひょっとしたら企業の過剰投資につながってしまうのではないかという心配がございます。その投資に見合う価格設定で勝負ができるというのであれば心配ではないんですけれども、実際の流通の体系を見たり末端価格を見ますと、なかなかそういうような話にはなっていないというふうに思います。

 ですから、HACCP導入に当たっての適切な指導体制基準など、きちっとしたものはあると思いますけれども、特に建築に詳しい職員の協力を得られる体制づくりとか、さらには実際の設備に詳しい情報を、例えば民間にも協力いただけるような体制づくりのお考えはあるんでしょうか。

針原政府参考人 今先生御指摘のとおり、HACCPを導入する際の問題点を私どもも企業様にアンケート調査なんかをしているんですけれども、やはり、設備投資に多額の資金が必要だ、あるいは、導入後に人的に張りつけなきゃいけないというので、人的なコストが非常にかかるというような、この二つが大きな問題点として指摘されております。

 長島政務官が先ほど答弁いたしましたとおり、最近、コストのかからない取り組みで認定を受けた例もいろいろございますので、人的支援を行う中でも、こういうことをやればコストがかからずに認定を受けられますよというような、いろいろな事例を紹介してあげるということが今後の展開にとっては必要じゃないかと考えております。そのような形で進めていきたいと思っております。

渡辺(孝)委員 答弁はわかりましたが、行政側としては迅速な対応、継続的指導はしっかり行っていただけるというふうに思っております。しかしながら、去年やったところとことしやったところではこんなに設備投資が違う、これで同じHACCPの認定を受けられるんだというような、そういう結果だけは招かないでいただきたいと思います。

 また、十年という長きにわたっての制度でございますので、ぜひお願いしたいんですが、十年後にここのメンバーがどれだけ残っているか私はわかりませんけれども、私もいないかもしれません。であるならば、十年後に検証するのではなくて、二年に一回ぐらいは報告なり、そんな検証をいただけると大変ありがたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 三点目は、ちょっと国民側の方から見たHACCPについて御質問したいと思います。

 大事なのは、いろいろなことがたくさんありますけれども、企業の努力をどのように実らせるかというのも国の最も大切な仕事だと私は思っております。当然、政府や商工関係など、実際にかかわっている方々はこのHACCP法については十分な認識、関心があると思っております。

 しかし、一番大事なのは、国民側から見る、いわゆる消費者、特に、日本国内はもちろんのこと、これから輸出するであろうという相手国の国民も含めた消費者の理解が必要だというふうに考えております。このことで、食中毒の問題とか偽装問題などがなくなることはもちろんいいことなんですが、安全、安心というのが本当の付加価値になることを私は期待しております。

 例えば、末端価格十円、二十円、ダンピング競争が今は世の常になっているようでございますけれども、そうではなく、十円、二十円プラスできるような、何かその認知をいただけるHACCP法になればいいのかなというふうに思っております。

 そこで、大臣に所見を伺いたいと思いますけれども、どうお考えでしょうか。

林国務大臣 お答えいたします。

 まず、導入した企業に対して農林水産省で調査をやっておりますが、導入の効果として、これは複数回答でございますが、品質、安全性が向上したというのが九五%、それから、やはり従業員、それぞれの生産過程におられますので、この従業員の意識が向上した、これが七七・七%、八割近く、そして、企業の信用度やイメージが向上した、これはまさに今、渡辺委員おっしゃったように、消費者からどう見られているかという視点で、企業の方がそういうふうに答えられているということが一つございます。

 それからもう一つ、これも農林水産省の補助事業で実施したものですが、消費者向けセミナー等の終了後の参加者アンケートをやっておりますが、HACCP導入企業の食品を積極的に購入するという回答が約七割に上っているということでございまして、やはり、HACCPということを知っていただいている消費者の皆様には企業の努力に対して適切な評価を行っていただける、こういう傾向があるということがこの調査からもわかるわけでございます。

 やはり、こういう企業の姿勢、HACCP等で食品安全の向上に取り組んでいますよという企業の姿勢を消費者に伝えていくということが非常に大事である、こういうふうに思っております。

 したがって、HACCPが消費者にとっても身近なものになるように、この二十五年度の予算で、食品事業者によるHACCP等の食品安全の取り組みを消費者に伝えるセミナー、こういうものを開催する、また、HACCP導入済みの工場でこれはつくりましたよというようなことを示すチラシを小売現場で消費者に配ったりする、こういうことによりましてHACCPに関する消費者の理解促進を図ろう、こういうことにしておるところでございます。

 御審議いただいておりますこの支援法、こういう取り組みを通じまして、認知されて、より効果的に活用されるものになるように、努力してまいりたいと思っております。

渡辺(孝)委員 ありがとうございます。大臣の言葉を聞いて安心しております。

 ただ、私も市長を十年経験して思うんですけれども、俗に縦割りと言うんですか、これは決して否定するものではございません。責任をしっかりと持たせるということでは、縦割りも時には便利なところがございます。

 いわゆる経済振興、あるいは農業振興のみならず、私は、このHACCP法というのは、日本の食の文化を守り、さらに世界に発展させていくというのが大きな目的ではないかというふうに思っております。そのことによって、経営の回復や企業の育成ということが結果的にできるのではないかというふうに思っておりますので、私は、ここでぜひ各省が一致団結していただいて、総合的なチームをつくっていただきたいなというのがお願いでございます。

 国民の意識啓蒙というのは、一省庁や一企業では大変難しいと思います。特に、私は、きょうは質問する相手ではございませんけれども、文科省あたりでは、いわゆる食育ということで、今、学校給食の中でも、子供たちに日本の食のすばらしさを訴えておりますけれども、何とかこの辺、このHACCPを導入してしっかりと日本の食というものを世界に通用するものにしていくということであれば、まず国内でしっかりと日本の食というものをPRしていかなければいけないのかなというふうに思っております。

 特に、灯台もと暗しで、なかなか日本のよさを日本人が知らないということを私は多くの場面で聞くことがあるものですから、ぜひ、日本のすばらしい食を通じて、国内外に発信できるように、大臣が先頭になって、しっかりと各省庁と連携して、成長戦略の横綱になるような、そんな形を御期待申し上げます。

 ぜひ、その辺の最後の決意なんかをお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 大変大事な御指摘だ、こう思っております。

 我々は、当たり前のように、おすしをすし屋に行って食べるわけですが、海から市場を経て、さまざまな流通過程を経て、おすし屋にあれが並ぶ、いわゆるコールドチェーンということですが、こういうところが安心して、しかも新鮮なものが食べられているということは、やはり日本食そのものに、もともとそういうものがあったということを我々はしっかりと誇りに思うべきだ、こういうふうに思います。

 したがって、そういうところにさらにHACCPのようなものがしっかりと入ってくることによって、先ほどお答えを申し上げたように、さらにそれにプラスのイメージが加わっていく。これは単に農林水産省にとどまらず、きょうは厚労省に来ていただいておりますし、今お話しのあった文科省等々、政府全体として取り組んでいくべき問題でございますから、今度は官邸に農業の関係の本部も立ち上がったところでございますので、そういうところの場も活用しながら、しっかりと取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

渡辺(孝)委員 どうもありがとうございました。

 これで私の質問を終わります。

森山委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 おはようございます。公明党の石田祝稔です。

 きょうは、HACCP法の法案審査ということでありますが、その法案審査の前に、一、二、大臣を含め、お伺いをいたしたいと思います。

 まず最初に、今国会で成立をいたしました米債権の免除法、これはアフリカ支援会議、TICAD5が始まるまでにということでございましたが、これについて、法案は成立したんだけれども、どうなっているのかな、こういうことでございますが、現状を教えてください。

佐藤政府参考人 石田先生の御質問にお答えいたします。

 今先生の方から御指摘いただきました、米債権免除法でございますが、御審議いただきまして、五月十日に公布、施行されておりましたが、これを受けまして、債権免除対象のアフリカ五カ国政府の全てから、五月十五日以降順次、債権の免除要請があったところでございます。

 農水省といたしましては、五カ国からの免除要請を受けまして、特別措置法に基づきまして、五月二十四日までに全ての免除手続を完了しまして、その旨を、外務省を通じまして、相手国政府に通知したところでございます。

 以上でございます。

石田(祝)委員 私がなぜこれをお聞きしたかといいますと、私たちは、野党の皆さんの御協力もいただいて、今国会、閣法は四本目で、きょう予定どおりいけば、衆議院で通過をする、こういうことでありますけれども、意外と我々は、通すまでは熱心にやりますけれども、通った後はどうなっているのかと、もうちょっと我々もよく見ていく必要があるのではないか、こういう観点も含めてお聞きをいたしました。

 それで、今回のこの米債権の免除法については、平成十一年からこういうことが起きているわけでして、我々も、うかつといえばうかつであった、こういうことですが、きょうは外務省にも来ていただいておりますけれども、外国に約束をして、国内の手続がおくれて、結果的に、ある意味では日本の信頼を失わせるようなことになりやしないか、そういうものがもうほかに残っていないのかどうか、これを外務省に確認したいと思います。

相星政府参考人 お答えいたします。

 米債権のように、日本側の事情で処理がまだ行われていない債権は、現時点でございません。

 一九九九年のケルン・サミットにおいて合意されました、国際的な債務救済の対象となった、いわゆる重債務貧困国のうち、日本が債権を有しておりますのは、ギニア、スーダン、ソマリアの三カ国でございます。

 そのうち、ギニアに関しましては、世銀、IMFによる調整プログラムの実施を経まして、包括的な債務救済措置を受けることが昨年の九月に正式に決まりまして、現在、ギニアと我が国との間で債務免除に向けた手続を取り進めておりまして、具体的には、我が方の交換公文案をギニア側に提示して、先方の回答を待っている状況でございます。

 残るスーダン及びソマリアにつきましては、いまだ債務救済措置の実施の決定がなされておりませんが、これは、債務救済措置を受ける前提となる世銀、IMFのプログラムが実施されていないという先方の事情によるものでございます。

 以上です。

石田(祝)委員 今御答弁いただきましたが、日本として約束をして履行されていないものはない、こういうことでございますので、今後またさらに出てくる案件があるかと思いますが、約束をしたら速やかに国内の対策をとる、こういうことで取り組みをしてまいりたいと思います。

 引き続きまして、大臣、それから内閣官房に来ていただいていますから、お聞きいたします。

 農林水産省で、攻めの農林水産業推進本部を立ち上げられて、大臣以下、熱心にお取り組みをなさっている。そういうところで、今度、総理が本部長の農林水産業・地域の活力創造本部というものが官邸にできた。安倍総理も、大変意欲的に農林水産業を成長分野として大きくしていこう、六次産業化分を一兆円から十兆円に、こういうことも過日お話しになっております。

 私が心配している点は、農林水産省で先に立ち上げてやっている、それと、官邸につくって、これは全く同じものだったら意味がないし、方向が違っていたら害になるし、この辺のところが一体どうなのかということで、大臣に、農林水産省の攻めの農林水産業推進本部が一体どういうものなのかということをまずお聞きしたいと思います。

林国務大臣 一月に我が省の中に設置しました攻めの農林水産業推進本部、今お触れいただきましたけれども、農業の競争力強化、それから農山漁村の活性化を図るための施策について、現場の声を踏まえながら、現場の宝ということでたくさん全国から集めてきていただいて、先行事例を横展開していけるための施策はないのかというような検討を進めてきたところでございます。

 実は、こういう省内の本部で検討を進める中で、例えば医食農連携、もう現場ではかなり事例が出てきておりますし、それから輸出促進のために環境をどうやって整備していくか、それから、これは林野の関係ですが、公共施設、例えば学校とかそういうところに国産材の利用を推進してもらう、そういう課題。これは、例えば学校になりますと文科省でございますし、医食農連携であれば厚労省、こういうところとやはり連携をして、具体的に取り組み方向というのを検討する必要があるという施策も強く認識されるようになってきた。

 こういうこともございまして、やはりこういう施策についての検討を政府一体となって行う必要があろうということで、五月二十一日に、今お話ししていただきました、総理を本部長、官房長官と私を副本部長として関係閣僚で構成される農林水産業・地域の活力創造本部、これを官邸に設置していただいたところでございます。

 したがって、今、石田先生おっしゃったように、そごがないように、我々の本部、省内でやっております検討状況は適宜官邸の本部に報告するということ、そして官邸の本部における各種指摘や提案は省内の検討に反映させていくということで、両々相まって効果的、効率的に進むように検討を進めていきたいと思っておるところでございます。

石田(祝)委員 大臣、ありがとうございました。

 内閣官房からも来ていただいていますので、この趣旨等を少々お話しいただければと思いますが、よろしくお願いします。

村井政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの林大臣の御答弁にもございましたけれども、今月二十一日に設置をいたしました官邸の農林水産業・地域の活力創造本部におきましては、農林水産省の攻めの農林水産業推進本部における検討、さらには産業競争力会議等の議論、こういったものを踏まえながら、政府一体となって、各省の所掌にまたがる課題も含めて、農林水産業、地域が将来にわたって国の活力の源となり、持続的に発展するための大胆な方策を幅広く検討していただくこととしておるところでございます。

石田(祝)委員 大臣も、私がこれからお聞きしようと思ったことも御答弁いただきましたので、そごがないように当然やっていける、こういうことだろうと思いますので、両本部が掛け算の形で効果を発揮するように、ぜひ御努力もいただきたいというふうに思います。

 外務省の方と内閣官房はもう結構ですから、どうぞ引き揚げてください。

 続いて、法案の方の審査でお伺いいたしたいんです。

 これは前回、五年前に改正をされて、それで今回は十年延ばす、十年間の施策にする、そして五年後には途中で見直すということであります。ですから、これは前回からこの五年間で一体どういうふうな効果が上がったのか、これもやはり見ておく必要があると思うんですね。我々は、ぜひこれはやっていただきたい施策だと思いますけれども、やはり、前回、五年前のときにどういう目標でやってきて、現実どうだったのか、これをちょっと振り返ってみる必要があると思うんです。

 前回の五年前、二十年のちょうど五月のときに、農林水産委員会で当時の政府参考人から、このHACCPの導入率、一億から五十億円規模の導入率は、現状の一六%から五〇%になるわけでございます、こういう答弁がなされているんですね。

 これは現状、今の時点でこの予定どおりになっておりますか、どうでしょうか。

長島大臣政務官 私の方から現在の状況について説明をさせていただきます。

 御指摘のとおり、導入率は、前回の法改正時には一六%であったものが現在二七%ということで、目標であった五〇%を達成するには至っていないのが現状でございます。

石田(祝)委員 これは、一六から五〇にするというのが一六から二七、目標とは大分乖離がありますね。ですから、これは我々も十年延ばすということはやぶさかではない、実はお願いしたいわけでありますけれども、どうしてこんなに差が出ているのか。一六から二七で、伸びているのは一一%ですよね。本当は三四%分伸ばすのが、そういう状況になってきている。

 そうすると、今回も一体どうなのかということをよく考えなきゃいけないので、これについて、当初の目標とどうしてこんなに乖離ができたのか、これはやはりお聞きをしておかなきゃいけないんじゃないか。いろいろな原因があると思いますよ。わかる範囲でお答えいただければと思いますが、どうでしょうか。

長島大臣政務官 御指摘の点について農水省で調査をした結果、やはり中小企業者にとっては費用負担の問題が一点はございます。もう一つ、人材という問題がございまして、チームの編成、恒常的な監視体制の構築等が困難であるということ。そして、導入に至る前段階の衛生・品質管理の基盤となる施設や体制の整備も十分対応できていない中小企業者が多かったということで、HACCPの導入が進んでいないものと考えております。

 今回の法改正で、その前段階である高度化基盤整備にまず取り組んでいただいて準備をしていただく、そして、その後五年間でHACCPを導入するという段階を踏んで目標を達成してまいりたいというふうに考えているところでございます。

石田(祝)委員 伸びなかった原因は、人材の面だとかいろいろあるけれども、やはりHACCPに至るまでのいわゆる基盤の整備、ここになかなかお金がかかって、だから今回そこのところに力を入れましょう、そしてその次の段階でHACCPの方に進んでもらいたい、こういう理屈だと思います。

 それで、これは改めてになるかもしれませんが、そうすると、今回は何%ぐらいの目標になるんですか。現時点が二七ですよね。わかれば答えてくれますか。

長島大臣政務官 十年後の目標として、まず前段階に参加していただくのを五〇%、その後導入していただくのを五〇%のうちの五〇%ということで、十年後に全体の五〇%、HACCPを導入していただきたいという目標設定をさせていただきます。

石田(祝)委員 ちょっとわかりにくいですね。五〇%の五〇%といったら二五%になるんだけれども。二七に二五を足すということですか。

 では、ちょっと答えてください。

長島大臣政務官 最終目標を五〇%に定めさせていただきます。その前段階として、現在の二七%に積み上げする分として、中小企業の五〇%から高度化基盤整備をやっていただく。その五〇%やっていただいたうちの五〇%からHACCPを導入していただくことによって、目標の五〇%を達成したいというふうに考えているところでございます。

石田(祝)委員 やっとわかりました。

 それで、私が最初に米の債権免除についてお伺いをしたのは、申し上げたように、この五年間、当初の目標からどうも遠いところの地点にしか到達していない、こういうことでしたけれども、我々は、ある意味ではこの法案が出るまで、五年前に法案を審査して改正したときの目標は一体どうなっているかというのを、ややもすると、法案審査の時点では熱心にいろいろやりますけれども、その後のことをやはり我々はウオッチをもうちょっとしなくちゃいけないんじゃないか、立場は与党、野党ありますけれども。そういう意味で、米の債権免除の法律を通した後、どうなったかということをお聞きしました。

 このHACCPの問題も、五年後に見直しですけれども、それまでじゃなくて、やはり我々もよく注視をしていく必要がある、こういうことを改めて私も感じているところでございます。

 それで、理由をお聞きしましたので、あともう一点お聞きしたいのが、国が定める基本方針に関して、輸出促進への配慮規定を設ける、こういうことであります。特に輸出については、今、四千五百億円ぐらい、これをとりあえず一兆円という目標を立てております。ですから、HACCPの今回の法律、当然これは国民の税金を使ってやるわけですから、目標に対して効果があるかどうかという点も含めて、諸外国へ輸出するときの検疫というんでしょうか、いろいろな食品衛生の、安全の問題もありますから、こういう点も踏まえて、きょうは厚生労働省からも来ていただいておりますから、まず、厚生労働省にその点をお聞きしたいと思います。

新村政府参考人 米国やEUなどでは、HACCPに基づく衛生管理を義務づけておりまして、輸出する食品についても求められております。したがいまして、輸出相手国の求める水準に合ったHACCPに基づく衛生管理を行うことが要件の一つとなってございます。

 このため、厚生労働省におきましては、輸出相手国と事前の協議を行いまして、このHACCPの件も含めまして、輸出要件に適合する施設の認定基準や必要な手続を定めております。

 個別の施設が輸出を行う場合には、まず、施設の所在地を所管する地方自治体が審査及び現地調査を行いまして、厚生労働省が最終確認の上、輸出相手国に登録する、こういった手続になってございます。

石田(祝)委員 今回のこの法律が成立をして、これは明確に間違いなく農林水産物の輸出にプラスになる、こういうことだろうと思いますが、この点について、農林水産省の方から御答弁がありましたらお答えいただきたいと思います。

江藤副大臣 効果は出さなければならないと思っています。委員がおっしゃいましたように、税金を使うわけでありますから。そして、内閣としても、四千五百億から一兆円を目指す。今は大体一千七百億ぐらいが水産加工品の輸出総額ですけれども、これも当然二倍以上に伸ばしていかなければなりません。

 ヨーロッパなんかでは、日本でだぶついているカンパチだとか白身の魚の需要もあります。しかし、平成七年にホタテのことがひっかかって以来、国内外限らずですけれども、HACCPの認証がないものについてはEU内では流通できないということにもなっておりますので、これから攻めの農林水産業、輸出の拡大ということであれば、今回、法の中にこういう規定を設けたことは非常に重要でありますし、効果を出さなければならないというふうに考えております。

石田(祝)委員 副大臣からも力強い御答弁がありましたので、今回の法律が成立して施行されることによって農林水産業、特に農産品と水産物の輸出にドライブがかかるようにぜひ御努力をいただきたいと思います。

 大臣、何か御決意がありましたら、最後に一言お聞きして、終わりたいと思います。

林国務大臣 今、江藤副大臣からも答弁させていただきましたが、しっかりと条文上位置づけることによりまして、基本方針を定める際に配慮をするということですから、基本方針を定めていく場合に、この法律をお決めいただいた方向でしっかりとやっていく。そのことが、今、水産物の例がありましたけれども、これから今後ますますこういうことが今御議論いただいたように進んでいく、ですから、それに先んじていろいろな手を打っていくということもあわせて、日本産食品の一層の輸出促進を図っていかなければならないと思っておるところでございます。

石田(祝)委員 ありがとうございました。

 終わります。

森山委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 おはようございます。

 私の母なる委員会、マザーコミッティーで久しぶりに質問をさせていただきます。わずか四十五分でございます。農政全般、一般についても質問をさせていただきたいんですけれども、忙しくて、なかなか時間がありません。ですから、きょうは半分ほどそちらの方に時間を費やさせていただくことを先にお願いしておきます。

 まず、きょうのメーンテーマのHACCPでございます。

 この法律、いろいろありまして、余り使われていないというのは皆さんすぐおわかりいただけるんじゃないかと思います。資金需要が平成十九年以来減っている。それから、これが減っているのとちょっと違うのかもしれませんけれども、二つあわせてお答えいただければいいかと思います。そういうことがあるので、平成二十年、五年前の改正時に政府はちゃんと数値目標を立てたんですね。一億円から五十億円の販売規模の食品製造業者の割合を、五年間で、HACCPに関係してこういうことをやる人たちを五〇%にするという目標を立てた。いいことだと思います。しかし、半分程度になっている。この原因は一体どこにあるのか。

 資金需要が減っている、目標も達成されていない、こういった理由はどこにあると考えておられますでしょうか。

長島大臣政務官 あわせて、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、本法制定以降、これまで百二十四件、総額五百二億円の公庫融資が実は講じられておりますが、御指摘のとおり、政策金融改革によって融資対象を中小事業者に限定した平成二十年十月以降の融資実績は、九件、総額約六十八億円にとどまっている状況でございます。

 この原因としては、中小の食品事業者においては、専門チームの編成等が求められるHACCPを推進できる人材が限られており、HACCPに取り組むことが困難な状況であるということ。そして、HACCP導入に至る前段階の取り組みである高度化基盤整備への十分な対応が行われておらず、その結果、HACCP導入が進まないことなどが融資実績を減らしているところにあるのかなというふうに考えております。

 同様に、食品販売額五十億円以上の大手企業の導入率は七割ですが、一億円から五十億円の中小企業者の導入率は二七%にとどまっておりまして、この背景としては、人材が限られる中小企業にとって、HACCPの導入が非常に困難であるということ、あるいは、前段階の衛生・品質管理の基盤となる施設や体制の整備も十分にできていない状況が多いということがあり、HACCPの導入が進まないのではないかと分析をしております。

 このため、まずは高度化基盤整備に取り組み、その後HACCPを導入するという、この法案の十年間の精神の中に盛り込んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

篠原委員 長島政務官の今の御答弁の中に一部入っていたような気がしますけれども、資金需要も伸びない、平成二十年の改正以降、九件、六十八億円だ、専ら人材、チームをつくってちゃんとHACCPを導入していくような人材がいない、チームは編成できないという原因がわかっているわけですね。

 ほかに、これはよかれということで皆さんやりたいと思っているんだけれども、金がかかり過ぎる。初動的経費がかかり過ぎるということ。それから、導入したはいいが、運用コストがかかり過ぎちゃって、とてもじゃないが、もうけが出そうにない。こういったことが原因で、わかり切っていることじゃないかと私は思います。

 それで、できてから二回延長している。農林水産省は、もっと使ってもらって、HACCPの導入を進めるための対策というか手は打ってきたんでしょうか。余り打ってきていないんじゃないか。法律をつくった、それから税制項目も、三つぐらいありましたが、ほとんど使われていないということで、これは我が政権になってから特にやったんですが、余り使われていない税制、租特のところで認められている優遇税制は廃止していこうという、そういうことをやりました。

 どうも、法律をつくって、あとは終わりと。農林水産行政は法律だけでやっているんじゃないんですね。大事な転作絡み、今でいえば農業者戸別所得補償、名前を変えられて、変えられた新しい名前をまだよく記憶しておりませんけれども、そちらの方の法律、もう法律にしないで、柔軟に政策、予算、そういったものでやってきたはずなんです。

 どうも生産対策には、一次産業のところについては非常に気を使うんですけれども、二次産業、三次産業、六次産業とか言っていますけれども、そちらの方になると急におろそかになる、冷たくなる、これがあったんじゃないかと思いますけれども、どういう手を今まで打ってこられたんでしょうか。

長島大臣政務官 御指摘のとおり、やはり中小企業にとってはコストがかかるということで、製品にはね返ってしまうというリスクを非常に負うことでございますので、そこのところをきちんと解消してやるということも一つの視点では大切なことなんだろうと思います。

 その上で、長期の金利だけではなくて、六次産業化等を含めて、対策に取り組むところにはやはりきちんと施設整備をこれからやらせていただきたい。今までの反省点は反省点として、伸びてこなかったところは農水省としてきちんと承りながら、新しい施策をつくっていきたいと思います。

 その上で、先ほどどなたかからすし、てんぷらとかという日本の食文化、グローバルスタンダードというお話がありましたけれども、この安全、安心するHACCP法を取り入れていただく中小企業がふえることによって、日本の食文化、加工食品がグローバルスタンダードとして世界に発信できるようなことの中で付加価値がついてきてくれることを私とすれば望んでいきたいなというふうに考えているところでございます。

篠原委員 きちんと手を打っていただきたいと思います。やはり一次産業の部分から二次、三次といって金額が大きくなっていくんですよね。そちらの方の分野もちゃんと農林水産省が思いをはせて見るということをきちんとやっていただかなきゃいけないんじゃないかと思います。消費者の段階まできちんと面倒を見るということですね。

 今度は政策、何か新しいことを導入しようとするときは二つあるわけですね。

 こうしないとだめだぞという、僕は、これは余り好きじゃないですけれども、おどしてやるやり方です。これは余り好ましくないと思います。しかし、これをやらないと買ってやらないとか、これをやらないと補助金をやらないとか、後者は農林水産省がさんざっぱら使ってきたやり方です。例えば、転作をちゃんとやらなかったらほかの補助金を全部やめるぞ、こんな汚いやり方はないと私は苦々しく思っていました、大した施策でもないのに、大した施策というか、やらなくちゃいけないんですけれども。

 もう一つは誘導政策です。誘導では、税制の優遇もあるし低利融資、これが法律の眼目になっているわけですよね。

 尻をたたくというか強制するものとして、我が日本国が言っているわけじゃなくて、外国が、ちゃんと安全なものじゃないとだめですよ、自分たちの基準に合うものじゃないと輸入しないですよと言って、アメリカの牛肉、何かこれは江藤副大臣の地元の方にあるはずです。アメリカがわざわざ来て、何年に一遍見に来るんですかね、自分たちがチェックした、その工場のところでやったのじゃないと輸入しないというわけですね。日本も、みんなアメリカでそうすればいいんですよ。やってくださいね、大臣。自分の国の基準に合わせなかったらだめだというんです。EUも同じです。EUも水産物をいっぱい輸入していますけれども、HACCPの基準に適合していなくちゃいけないという。

 だから、この二つの分野、アメリカ向けとEU向けはしようがない、導入が進んでいるわけですから。

 だったら、それに対抗して、クール・ジャパンというのを広めていくというのは、僕は、余り期待するのは、いや、水を差すわけじゃないんですけれども、黙っていても知られてきたんです。それでいい。そして、皆さんが日本食を愛していただく、そういうのにとどめる。そういう自制の精神が私は必要だと思いますけれども、まあ、いいです。

 ですから、日本は、それだったら、こうやった方がいいですよというのを、もっと何かできないので、しようがないんだ。私も、具体的に今すぐ知恵を出せと言われても、すぐ思いつかないんですけれども、懲らしめる方、尻をたたく方じゃなくて、おいでおいでという誘導政策で、もっとうまい方法は考えられないかと思うんですが、いかがでしょうか。

長島大臣政務官 済みません。私の方から、ちょっと、さっきのことも踏まえて。

 私は、HACCPを導入することによって、企業が、先ほど大臣からお答えもありましたけれども、アンケートの結果、製品に対する自信が持てるようになったとか、企業理念として誇りを持てるようになったという部分をやはり大切にして、そのことをきちんと、付加価値がつけられるようにしてあげるのも一つの方策だと思います。

 そして、先ほど、尻をたたくということではなくて、企業が選択をすることによって企業の価値が上がったり、そして求められる市場が広がったりするということが、この法案の目的の一つにあるという方向で御理解をいただければありがたいです。それが国際的にも認知をされていくということにつながってくれればありがたいと思っております。

篠原委員 悪いことをしていると言っているわけじゃないんです。いいことはいいんですが、法律だけじゃなくて、もっときめ細やかな政策を考えていただきたいということなんです。それだけです。

 次に、僕は、HACCPも余り広まらなかった理由は、HACCPなんて変な言葉を使っているからだと思います。日本語を使えばいいんです。農業者戸別所得補償と、皆さんは嫌かもしれませんけれども、漢字がだらだら続いて、実はこれも私は余り好きじゃないですけれども、こっちの方が定着するわけですよ。HACCPなんて何のことかわからない。ハサップならまだまだいいんですけれども、HACCPなんて書いてあったら、もう、みんな拒否反応を示す。こういうセンスが農林水産省の役人の皆さんに欠けているということなんです。

 それにかわるべき、かわるというか似たようなものでISO、これも聞かれるんです。私は食の安全とかなんかをずっとこだわってきていますので、私なんか、当然皆さんも、農林水産委員会の皆さんはわかる。一般人がわかるかですよ、これは。HACCPという言葉を聞いたことがありますか、知っていますかというアンケート調査もやっているはずですけれども、それはわからないと。

 ところが、ISO、これも、国際標準化機構というのはいいんですが、こっちの方が五百七十六件も認証されているとかいって、ちょっと多いんです。この違いがどこにあって、どういうふうに農林水産省はしていこうとしているのか。余りややこしいのを、あっちだ、こっちだ、こっちもやれ、あっちもやれというのは、やはりよくないと思うんです。ちゃんと目標を立てて、これでいきましょうというので誘導していくということが必要なんじゃないかと思います。

 この点について、私もわからないので、教えていただけたらと思います。

江藤副大臣 篠原先生のわからないことは、大体私もわからないという、与党、野党、立場はかわりましたけれども、私も、先生が副大臣のころに、副大臣室に行かせていただいて、与野党の垣根を越えて政策議論をさせていただいたので、私も極めて正直にお答えをさせていただきたいと思います。

 こんな答えは聞きたくないんでしょうけれども、HACCPは、いわゆる今まで抜き取り検査をしていたやつが、その物のつくり方を監視するシステム、それを一応HACCPだと、簡単に言えば、七つの原則とか十二の手順とか、いろいろありますけれども。そして、ISO22000の方は、そのつくり方はもちろん監視しますけれども、その企業体質、その組織そのものをやはり全体として評価していこうと。

 極端な言い方をすれば、ISO22000というのは、HACCPとISO9001を足した、より強化版のようなものが22000だというふうに私は理解をしておりますけれども、今先生の御質問を聞いておって、多分一般の方々は、では、HACCPにいった方がいいのか、その上、さらに強化版のISO22000にいった方がいいのか。片っ方は民間の組織ですし、片っ方は国際機関ですし、そこら辺が非常に整理されていなくて、雑多だなという印象を私も強く持っております。

 今回、HACCP法の法案の審議に入る前にいろいろ勉強させていただきましたけれども、ここら辺は、国民にまず認知される、そして企業がHACCPを取って、ISOを取って、そして企業としての信用度が上がり、輸出競争力もできて、企業として発展できるという基礎になるような、そういうようなインセンティブが働くような理解の仕方、企業に対しても、国民に対しても、アプローチの仕方は少し工夫をしなければならぬなということは痛感いたしております。

篠原委員 江藤副大臣はよくおわかりいただいておると思います。国民にわかりやすく説明して、わかりやすく誘導するという。農林水産省はそういう点では非常に優しい役所ですから、ぜひそうしていただきたいと思います。

 それから次に、これも、けちをつけるみたいな感じにとられるといけないんですが、輸出戦略です。

 これは小泉政権のときを思い出しますよ。これはやっているんですよ。長野県のリンゴ、「ふじ」が北京で二千五百円で売られている。政務官のコシヒカリが中国でつくっている普通の米の二十倍の価格でぼんぼん売れている。私はそれはすき間産業でしかないと思っています。だけれども、皆さんが評価して買ってくださっているんだったら、それはそれでいいんですけれども。

 一兆円という目標はいいです。しかし、実態はどうか。かけ声ばかりが先に出ていて、余りよくないんじゃないか。

 ここからは私の御高説になっちゃうんですけれども、私は、食べ物の基本は地産地消、そこでできたものをそこで食べる、旬産旬消、そのときできたものをそのとき食べる、これが一番自然で、環境にも優しい、これがいい食べ方なんです。我々はそうやって何万年もやってきたんです。加工して、こんなのをやって、冷凍をしたり、焼いたり煮たり、何か、保存したりしているのはこの数百年のことでしかないんですよ。

 輸出戦略は、日本にしかないものとかそんなのだったらいいんですけれども、両方の国でできるのに、あっちのものをこっちに輸入して、わざわざこっちでつくったものをあっちに輸出して、そう大して違わないものを何でそんなのをやってCO2を増すか、こういうことを考えたりしたら、私は、輸出とか輸入とかいうのは、もっと環境に優しい世紀というか、生き方を考えたら、そうしたら、エンバイロンメンタリー・フレンドリー・ウエー・オブ・ライフというようなことを考えたら、なるべく地場で生産し地場で消費していく、こういうふうにすべきだと思っているのです。

 工業界もそうなっているんですよ。自動車、相当部分がもう、関税とかそういうのも、為替変動とかがあったりして経営ががたがたするので、面倒くさいからというので、最終消費者である、最終バイヤーであるアメリカや東南アジア、ヨーロッパでもうつくっちゃっているわけですね、日本の自動車メーカーは。その方が安上がりになって、効率がいいに決まっているんです。

 そういうものの典型的な例は食べ物なんです。食べ物はやはり地産地消、旬産旬消を絶対旨としていくべきであって、民間企業が創意工夫を凝らして輸出しようとするのはいいんですけれども、国がそういうところに余りしゃしゃり出る必要はないと思う。今、長島政務官は、余り尻をたたくというようなことをしないで、選択の機会を与えているんだとおっしゃったんですけれども、輸出などというのはそれでいいんじゃないかと私は思っているんですよね。

 どうも、ちょっと、公約批判もしたような感じだから、景気のいいことを言わなくちゃという気持ちはわからないでもないんですけれども、こうして法律の中にも輸出促進と。もっとささやかにやった方がいいような気がするんです、入ってしまっているので、だからといって反対しませんけれども。もっと粛々とやった方がいいような気がしますけれども、これは大臣の見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 篠原委員の今のお話を聞いていると、もう引き込まれていって、そうですね、こういうふうにいきそうになるんでございますが。

 御著書もいただきましたし、地産地消それから旬産旬消、本当にごもっともだと思います。

 今お話を聞いていて、私は昔、まだ商社にいたころに、タイに出張に行きまして、タイのお酒があるんですね。それをそこで飲んで大変おいしいなと思って、日本に帰ってきて同じ酒を日本で飲んだら、どうもあのときと味が同じものであるのに違うな、余りおいしくないな、こういうことがございました。やはりその場その場の気候風土に合ったものを食べて、それに合ったお酒を一緒に飲むというのが非常にいいんだなということを体感的に思い出しておったわけでございます。

 しかしながら、我が国は今から残念ながら人口が減少していく、こういう状況の中で、日本の食文化、先ほど篠原委員もおっしゃったように、黙っていてもにじみ出ていくというようなことも含めて、大変な好評を博している。こういうものも含めて、それから、私が今注目しておりますのは、例えばフランス料理とかイタリア料理、中華料理、こういったものにも実は日本の食材も入っていっている、こういうところがございますので、しっかりとこういういいものを世界の人々に提供していくということはそれほど悪いことではないんだろう、こういうふうに思います。

 ですから、そういう方向性が違っているというよりも、今、篠原委員のお話を聞いておりますと、もう少しおしとやかにやった方がいいんじゃないか、こういう御指摘だというふうに思います。これはいいですよということを余り言い過ぎるとかえって物が売れないというようなことも実はあると思いますので、向こうが黙っていても欲しがるような戦略というのも頭に入れながら、輸出、海外展開というのはしっかりと総合的に考えていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

篠原委員 それでは、次の話題に移らせていただきます。

 私は、きょうは、ちょっとおめかしというか重装備してきております。私は服装を余り気にしないんですが、このバッジはおわかりですね。ちょっと見えないと思いますが、「NO!TPP」。アメリカへ行ったら、USTRの変なおじさんたちが、ナンバーワンTPPかいなんというばかな冗談を言いましたけれども。

 農協界は、「STOP!TPP」と。これは見えないと思いますけれども、林大臣は何だか、字は見えなくてもおわかりになるんじゃないですか。近くに、英語読めますね、何と書いてありますか。(発言する者あり)「STOP!TPPネクタイ」なんです。私がつくって広めているんじゃないですよ、私はそんな能力はありませんから。

 これは、四月、ゆえあって、二週末、山口県に出かけました、何で行ったかはおわかりだと思いますけれども。それで、農業関係者のところを回っていたら、話している相手方が一生懸命ネクタイをこうやってやるんですよ。何しているのかなと思ったら、ネクタイを見ろ見ろと言っていたんです。言われるには、あんたはバッジしかしていない、俺はちゃんとネクタイまでしてストップTPPをやっていると。私はいたく感動いたしました。

 これは、山口県農協中央会が独自につくっています。きょうはえんじのものですけれども、紺のネクタイもあるんです。皆さん、ぜひ志を同じくする人たちは使っていただきたいと思います。これで重装備しております。

 余計な話をしていると内輪でも冷やかす者がいて、篠原さん、残念ですね、クールビズになってもうやらなくて済むようになっちゃった。私は、ネクタイなんか、しなくちゃいけないときにふだんしていないんです。それで嫌みを言われましたので、ことしは無理してこれをずっとやり続けるつもりでおります。

 TPPですが、皆さんも聞いていますのでこれは短くしますけれども、私は絶対に譲ってもらいたくはない。これは農業のところだけでいいますけれども、そうじゃないんですよね。日本の地域社会全体をぐちゃぐちゃにしてしまう。

 日本の伝統文化その他、日本の制度をみんな変えていいんですよといって、予算委員会をごらんになっていた方は覚えておられるかもしれませんけれども、安倍総理も、安倍さんは、それはそれでそういう考え方があっていいんです。それはそれで一つの考え方で、悪いことじゃない。押しつけ憲法だから憲法改正しなくちゃならない、それはそういった面があるわけです。変えたっていいんだろうと思います、独自のものだと。

 その一方で、日米共同作業で国際的ルールをつくるんだと。それならば憲法も一緒に協議してつくったらどうですかという嫌みを言いたくなるわけです、おわかりいただけると思いますが。

 WTOだって、関税をゼロにしろなんて一言も言っていないんです。少ない方がいい、低い方がいいですよと言っているけれども、ゼロにして、国境なしでみんながやらなくちゃいけないなんて一言も言っていないのに、そういうところへのこのこ入っていくというのは、どう考えても僕には理解できないんです。

 大臣は、ぜひ、五品目の除外、例外を認められなかったら撤退すべきだと、閣内で体に見合った、でっかい声を出していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 この委員会でも随分TPPの御議論もいただいてきたところでございますし、その議論も踏まえた上でということだと思いますが、先月、この委員会、それから参議院の方の委員会でも、重要五品目などの聖域の確保を最優先するということが決議をされております。それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとするということ、それから、食の安全、安心を損なわないことなどが決議をされておりますので、交渉に当たっては、この委員会決議を踏まえて、国益を守り抜くよう全力を尽くしていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

篠原委員 頑張っていただくことを期待しております。

 それで、ちょっときのうの夜は、資料を用意したりいろいろなことをしたので忘れちゃって、夜遅くなってから通告したんですが、ネオニコチノイドの関係について質問をさせていただきたいと思います。

 これは、大臣、副大臣、政務官以下、余りよく御存じないことかもしれませんけれども、大事なことなんですね。これをずっと私は追いかけてきていました、心配しながら。

 この間、数日前の新聞記事で、EUがやっとネオニコチノイド系の農薬に対して規制をするということを始めたという記事があったんです。何でもEUが先なんですよ。遺伝子組み換えについても非常に敏感ですし、それから、成長ホルモンを乳牛にやったりする、まあ肉牛にもそうですけれども、それは絶対認めない。見識だと思います。日本は、そこが何か中途半端なんです。

 私は、OECD代表部というところにいたので、そのときいろいろ議論しましたが、適宜対処ありたいということしか訓令が来ないんですよ。それで、何かペーパーができると、理由は書いていなくて、絶対反対しろと。OECDは立派な議論をしているんです、五年先、十年先の。

 そのときに、皆さんおわかりだと思いますが、PSEというのをやっていたわけですが、農薬を計算すると、面積当たりの農薬投与量は、日本は断トツ、トップなんですね。アメリカの面積当たりの七倍。アメリカは相当使っているんですよ。スウェーデンは北の国ですし、虫もそんなに発生しないからですけれども、スウェーデンの三十倍ですよ、単位面積当たり。コストがかかっている。

 亜熱帯のところですから、虫がいっぱいいるのはしようがないんですけれども、やはり基本的に、虫に悪いのは人間にも悪いんです。明らかに、なるべく使わない方がいいんです。

 そして、危険性が前から言われているんです。それをほっておくとやはりよくないと、この委員会がこぞって、なまくらな農林水産省のこれこそ尻をたたいて、即刻やめさせる、これが我々の、次の世代に対する責任だと思います。EUがやったんです。アメリカはぐじゃぐじゃしています。

 やはりこういう点、食の安全、環境基準、EUと手を携えていくべきだと思いますけれども、今のところの農林水産省のお考えを聞かせていただきたいと思います。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきます。

 御指摘の農薬について、特に日本で知られているのがカメムシの防除、EU等ではトウモロコシとかヒマワリの種子の処理に使われているというふうに理解をしております。

 特に、ミツバチの好む作物ということでございまして、御指摘のように、種子や土壌への使用などを制限すること、あるいは、作物の開花後や、一般家庭等による使用は禁止され、農家等による使用のみ認めること、そして、二年以内に措置の見直しを行うことという規制措置を、欧州で決定、発表したというふうには承知をしております。

 しかし、作物や農薬の使用方法が異なれば、農薬のミツバチへの影響も異なることから、欧州における規制措置をそのまま我が国に当てはめることは適切でないというふうに農水省では考えております。

 農薬のミツバチに対する危害を防止するため、農薬登録の際にミツバチへの影響も審査し、一定以上の影響があると判断される場合には、使用上の注意事項をラベルに表示させる、あるいは、農家と養蜂家の間で、巣箱の位置や農薬散布時期等の情報を交換し、巣箱の退避などの対策が確実に行われるよう指導を行っているところでございます。

 また、農薬のミツバチへの影響について、我が国でも試験研究を行っておりまして、その結果に基づいて、追加的に実施すべき対策があるかどうか、検討してまいりたいというふうに農水省で考えております。

 私の手を見てもらうと、これはウンカです、農業で、土日と田植えをしたので。我が家は、個人的には農薬をできるだけ使わない農家を中山間地こそやるべきだと思ってやっているところでございますので、そんなことも踏まえながらやってまいりたいと思っております。

篠原委員 今のところ、そのぐらいの答弁しかできないと思います。

 これからは五分間、私の講義を聞いていただきたいと思います。

 コウギは二つの意味がありまして、まずはレクチャーと、そしてプロテストの両方の意味があります。どういうことかというと、これこそ国が乗り出さなくちゃいけないです。輸出も民間でいいです。それから、HACCPの導入も、こういうのがありますよというけれども、民間でいいです。だけれども、農薬の規制なんていうのは誰がやるんですか。これこそ国が強権を発動してやらなければいけないと思います。

 ミツバチも死んでいるというのは、世界じゅうで誰でも知っているんです。しかし、原因が特定できない。今度、TPPでも全く同じ問題、食の安全の基準のときに、科学的な根拠があるなしというのが大問題になります。それは、絶対予防原則で、だめだというのがわかっていて、本当にそれが原因かどうかわからなくたって、私は禁止すべきだと思います。

 これが、ミツバチの大量死ということで問題になり始めたのが、一九九〇年代のフランスなんです。今、長島政務官からお答えいただいたとおり、菜の花、ヒマワリ、これの花粉、葉っぱにもあるんですけれども、これでばたばた死ぬ。今、カメムシと、日本では因果関係が明らかになっているんです。カメムシ防除、駆除のために、水田でこのネオニコチノイド系の農薬を散布したとき、それがオーケーになって許可されて、やった後からミツバチが大量に死に出したんです。

 因果関係はパーフェクトじゃないですよ、何かストレス原因説とか言われて、人間と同じなんですよ。それで、いろいろな複合的な原因があると。当たり前です。花粉症だって、複合的な原因があるんです。杉の花粉だけじゃなくて、その前に、変な空気をあれだけいっぱい吸っているからなんです。私のように、長野県のきれいな空気で育ってきたのが、今に罰が当たって、来年からなるかもしれませんけれども、花粉症にならないです。減らず口をたたいているんですね。

 だけれども、何かやはり、いろいろな人工的なものをいっぱいとられた人の方が確実に花粉症にもなりやすくなっているんだと。あるんです。だけれども、これが絶対だなんて言えないんですよ。

 それで、農薬というのは、有機塩素系の農薬、有機燐になって、このネオニコチノイドになっているんです。

 長島さんは山古志村で農家の生まれ、私も農業だ。これは、ごく一部の人は二度聞いたことがあるとか言っていたが、二度は言っていないと思うんです。一度はこの委員会でも言ったことがあると思うんです。私は、有機農業とか農薬に対しては厳しい態度をずっととり続けてきたんです。日本有機農業研究会霞が関出張所員と呼ばれていました。有機農業なんて全く市民権を得ていないころからやっていたんです。

 なぜかというのを後で聞かれたんですよ。なぜそういうふうになっていったのか、思い当たるのが一つあるんです。ほかの農林水産省の役人なんか、全然そんなのはあっけらかんのかんで、関心を持ってくれていない。それで、篠原さんだけが、何でそういうことを考えて、いろいろやってくれたんだと言われたときに、僕は、すなわち原因と結果を、もとの総理と違いまして、自分のことを客観的になんか見れません。

 わからなかったんですが、ふっと思い出したところ、我が家は、長野はリンゴなので、リンゴ、桃、ラ・フランス、私の弟が跡をとって、専業農家です。私は真面目でした。今も真面目な国会議員です。朝から晩まで働いています。農業もちゃんと手伝いました。農薬の散布のときも、私がいないとちゃんと散布ができない。スピードスプレーヤーではないんです。ホースでやっているんです。大変です。

 横にこのぐらいの高さの土管があるんですね。団塊の世代の皆さんはおわかりになると思いますよ。そこに農薬をぶち込んで、そしてかきまぜて、ホースでもってぴいぴいやっているわけです。私はじいさんに怒られた、孝、また出てないぞ、何やっているんだと。消毒がばたばた滴り落ちる中、ホースがリンゴの木にひっかかったりしないようにしているのが私の役割です。

 それからもう一つ、何か詰まったぞと。今考えると恐ろしいんです。でかい土管の中の農薬の攪拌を私がこうやってするんです、詰まっているのを。どれだけ悪い空気を吸ったか。ちょっと口が悪くなったのは、そのせいかもしれません。

 それで、パラチオン、ホリドールです。長島政務官はおわかりだと思うんですが、ホリドール、自殺に使われて、一九七一年に禁止になりました。だけれども、それまで何年も使っておいて、大分後になってから、発がん性がある、催奇性がある、非常にひどい薬だったなんて言われたって、その前にさんざっぱら吸い込んだ私なんかはどうなるんですか。私はいいです。だけれども、私の子孫のところには確実に悪影響が出ているはずです。

 私の母親がじいさんと大げんかしました。うちの母親は農薬をぶつと、消毒をぶつと言うんですけれども、次の日、半日は寝込まないと農作業をできないんです。うちの母親は、無学な何にもわからない母親ですけれども、自分は子供を産んでいるからいい、だけれども、ちっちゃい子供には手伝わせたくないと言って抗議して、おかげで私は、摘果だとか袋かけだとか収穫とか、みんなその後も続けて作業をしましたけれども、農薬作業からだけは解放されたんです。こういう原体験があります。それが多分あったんだろうと私は思います。やはりこれはちゃんとやってもらわなくちゃならない。

 それで、立派な国は立派な国でちゃんとやっているんですよ。今、私からするとなまくらな答弁でしたけれども、フランスとドイツとイタリアとスロベニアでは、クロチアニジン、日本ではダントツと呼ばれていまして、断トツに危険な薬だと思いますけれども、これは禁止されているんですよ、とっくの昔に、二〇〇六年に。

 そして、それにかわるフィプロニルという薬がフランスでは使われ出した。フランスが早いんです。そうしたら、フランスは二〇〇四年にそれも禁止している。皮肉なことに、その二〇〇四年に日本でその新しい薬が認可されて使われ始めている。こういうイタチごっこを繰り返しているわけです。

 だから、薬害エイズ事件がありました。アメリカではとっくに禁止されている。日本では平気で使っている。今これだけインターネットで外国の状況もわかるんです。彼らがでたらめに禁止しているわけじゃないんですよね。同じことを言っている。人間には影響がないと言っているんです。そんなことはわからないです。BSEは新型クロイツフェルト・ヤコブ病と関係ないとイギリスは言っていたんです。だから、イギリス国民は政府の言うことをもう信じません。遺伝子組み換えにも物すごく厳しいんです。

 悪いことがあったら、すぐ禁止しようじゃありませんか。ほかの国もやっているんです。それなのに、日本は大量に使っちゃうんです、真面目ですから。これは政府が一大決心をして即刻やめていく。

 「サイレント・スプリング」というのがあります。もう書いています。「ア・スプリング・ウイズアウト・ビーズ」、二〇〇八年で日本語でも翻訳されています。アメリカの学者が本を書いているんです。ミツバチのいない春、ミツバチを食べているほかの鳥もいなくなっていってしまう、そして人間にも類が及ぶんです。

 これはひょっとしてHACCPよりも、ひょっとしてじゃなくたってHACCPよりも、TPPよりも、何よりも私は大事なことだと思う。我々日本人の生命を守るためです。それから、地球生命全体を守るためです。日本は率先してそういうことをやっていくべきだと私は思います。ぜひこのことを肝に銘じておいていただきたいと思います。

 それで、いっぱい現下の農政問題について聞きたいんですが、通告はしておいたんですが、時間がなくなりましたので、大事なことだけをちょっと聞かせていただきたいと思います。

 けちをつけるわけではないんですが、いろいろ景気のいいことをやっていただくのはいいんですが、与党自民党が農業・農村所得倍増目標十カ年戦略の公約というのを言っていますよね。

 私は支持者訪問を真面目にやっているんですよ。そうすると、今までは民主党の農政のことでいろいろ批判されていましたけれども、これについて、何をまたばかなことを言っているんだ、誰が信じるかと。生の声ですよ。公約であんな立派なことを言っておいて、さっさとTPPに入りやがってと。私が言っているんじゃないですよ、私はもっと美しい言葉を使いますから。また、うそにうそを塗り固めて、十年で所得倍増なんて誰ができる、それだったら、あんたらやれと言いたくなる、それはやってほしい、だけれども、これは本当にそういうことを言って、やっていっていいんでしょうかと。

 政府・与党で、政府はこれについて、今のところ、どういう対応をされる予定なんでしょうか。

林国務大臣 安倍総理が五月十七日の講演で、農業、農村全体の所得倍増を目指すということをそのスピーチで表明されたところでございます。自民党の方でも、農林部会で、農業・農村所得倍増目標十カ年戦略、こういうものを取りまとめられて、今後、党内で所定のプロセスを経て、公約の中に位置づけられていくというふうに理解をしております。

 これをどうやって具体的にやっていくかということは、先ほどもちょっとどなたかの御質問の中で触れていただきましたが、五月二十一日につくりました農林水産業・地域の活力創造本部、ここで検討をしていくということになろうかと思っております。

 所得倍増の考え方ですが、農業、農村全体の所得ということでございますので、総理も講演でおっしゃっておられますが、六次産業化を進める中で、農業、農村全体の所得を倍増させる戦略を策定するということで、農家個人ではなくて、農業、農村全体の所得を増大させるという観点で、多様な地域の状況を踏まえながら、今から検討を行っていく、こういう状況でございます。

篠原委員 所得倍増計画というのは、池田勇人さんのときに言ったのを古い人ならみんな思い出すわけですよね。農業者戸別所得補償と言っていた延長線上で、皆さんは、一般の人たちは、これは農家の所得が倍増だと思っていますよ。もしそうじゃないんだったら、早くきちんと説明していかれた方がいいんじゃないかと私は思います。

 目標を立てて、鼓舞してやっていくのはいいと思います。先に誘導の方で手当てするのは、それはそれでいいことだと思いますけれども、またがっかりさせるようなことをするのはよくないと私は思っております。

 それから、もう一つだけ。これは、ぜひお願いです。

 民主党政権になりまして、政策を変更いたしました。これは少々手前みそになりますけれども、二〇〇九年の選挙で、残念ながら議席を失われて、落選されていて、今度の二〇一二年の選挙で戻ってこられた。私は議員の誰とでも仲よくなるたちなので、自民党の議員の皆さんに、お帰りなさいというのをいっぱいやりました。

 そうしたら、二、三の方から言われました。ほかの分野のところは、何か民主党はでかい口をたたいていたけれども余りやっていない。これを言うと、また傷つく人がいて、また篠原が調子のいいことを言っていると同僚から怒られるんですけれども、年金とか医療とかなんとか、景気のいいことをいっぱい言っていましたけれども、なかなか手をつけられていないですよね。そうしたら、農政の分野はこんなに大胆な改革をやってもらっているとは思わなかったと言われました。これは二、三人の方に言われました。

 民主党の方針というか、我々がやっていたのをそうしたわけですけれども、直接給付型にしたわけですね。農業者戸別所得補償、高校の授業料無償化、子ども手当、それから高速道路無料化。高速道路無料化と子ども手当はがたがたになりましたけれども、高校の授業料無償化と戸別所得補償は、ちゃんと受け入れられて、きちんと残っているわけですね。

 私は、ぜひ、こういうのを続けていただきたいと思う。今まで、補助事業というのは、個人に行かずに中間の団体のところに行っていた。それはそれでゼロにする必要はないんですけれども、本当に必要な人のところに行って自由に使ってもらうというのがいいんだろうと思います。

 そして、その究極にあるのは青年就農給付金なんですよ。後継者は大事だといったって、部門経営開始資金で農業改良資金にあったぐらいで、あとは、何か後継者は大事だ大事だと言うけれども、後継者を標的にしてというかターゲットにしてきちんとやった政策は余りなかったんです。子ども手当もそうですね。農業後継者に焦点を絞ったものです、百五十万円を五年間、その間に経営の基本を築く。これは百五十億かそのくらいですけれども、よく考えていただきたいんです。

 自民党政権時代、麻生政権の末期、定額給付金というので二兆円も使ったんですよ。覚えておられると思います。最初は何か低所得者にと言っていたけれども、途中から目的が変わって、景気刺激のためだと。麻生さんは要らないと言われたそうですけれども、我々一般国民には一万二千円、子供とお年寄りには二万円。どこに消えたんでしょうか。そっちに二兆円使っているんです。

 直接給付型というのはある程度いいんですよ。これはもうぼやっとし過ぎてだめです。農業後継者にはきちんとやっていいので、この予算をどんどんふやしていただくことをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 これについての大臣の見解を最後にいただけたらと思います。

林国務大臣 これはもう委員よく御存じのように、今、基幹的農業従事者は六十五歳以上が六割ということで、五十歳未満は一割、こういう状況の中で、二万人程度の水準は定着してもらわなきゃいけないという中で始められた政策だ、こう理解をしております。

 二十五年度の予算も、二十四年度補正と二十五年度当初で二百五十二億円を計上させていただいて、着実に事業を推進しております。

 今後とも、必要な予算を確保してしっかりとこれを進めてまいりたいと思っております。

篠原委員 ありがとうございました。

森山委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 日本維新の会、鈴木義弘です。

 何点かまたお尋ねをさせていただきたいと思います。

 安倍内閣が掲げる日本再生に向けた緊急経済対策においても、林大臣が述べられた所信の中でも、何度も攻めの農林水産業という言葉をお使いになっています。十年間で農業所得を倍増する計画も報道され、輸出を一兆円に伸ばしていく目標も掲げました。

 でも、日本全体では人口減少社会に入っているのも事実だと思っております。今の、もしくはこれ以上の生産活動を維持向上していくには、一人当たりの生産量を上げるのか、付加価値の高い製品、平たく言えば高く買ってもらえる商品をつくれるかにかかっていると思っています。

 先日、地元のスーパーの店長と立ち話をいたしました。売れていますかというふうに問いかけました。店長は、余り伸びていないですね、高額商品はぼちぼちで、低価格商品はそこそこ売れています、全体の売り上げは横ばいで、商品の二極化があるとのことです。アベノミクスの波及はもう少し時間がかかりそうだと実感しました。農業でも他の産業でも、消費者の所得がふえないのに、付加価値の高い商品である高額商品を買ってもらえる状況にはまだ至っていないのではないかと感じています。

 農業所得を倍増する目標は、すなわち売り上げを伸ばすことです。売り上げは、誰に聞いても単価掛ける数量。今、国が掲げて取り組んでいる農業政策は、この単価を上げようとしているのか、それとも数量を上げようとしているのかわかりません。幾ら六次産業化を推進したとしても、一次産業にいる農家が買い上げてもらえる単価を上げない限り、農家としての売り上げが上がりません。当たり前の話です。単価を上げると、逆に少しでも単価の安いものを購入しようとする消費者は考え、それに応えるように海外から安い農産物を輸入して販売や材料として使用しているのがバブル崩壊後の現代社会ではないでしょうか。

 大臣にお尋ねいたします。

 攻めの農林水産業と言われておるその中で、農林水産物の単価を上げていこうとするのか、数量を上げていこうとするのか、まず初めにお尋ねいたします。

林国務大臣 今、攻めの農林水産業推進本部でいろいろな検討をしておりますが、需要サイド、供給サイド、それから需要と供給をつなぐバリューチェーン、それぞれ、その施策の展開をしていこうということでやっております。

 生産現場が前向きな取り組みを行えるよう、担い手への農地集積等の構造改革、それから、篠原委員からも、今聞いていただきましたけれども、青年就農給付金、こういうものをやって生産コストの低減を図るということと、六次産業化による付加価値の増大、消費、輸出の拡大等の取り組みを一体的に進めるということで、今の委員のお尋ねに即して言いますと、やはり付加価値向上による単価の増大、それから需要拡大による数量の増大、これを両方とも追求していかなければならないと思っております。

 したがって、需要拡大という意味では、人口が減っていく中で、やはり輸出の拡大というものは取り組んでいくということになろうか、こういうふうに思っておりますし、それから、単価を上げるということと同様に、コストも、先ほど申し上げました集積等、構造改革することによって下げていって、売り上げから原価を引いたものが利益、所得ということになりますから、そういう総合的な取り組みをしてまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 農林水産物については、やはり市場の原則で、買ってくださいといえば安くなるだろうし、売ってくださいといえば高くなるんですね。これは当たり前だと思うんです。ほかの業種でも同じような、需要と供給のバランスで世の中成り立っていると思うんですけれども、今までの農政で一番欠けていたことは、需要と供給のバランスにいつも引きずられて、そういう状況がずっと市場の中で行われているから、結局は、価格にきちっとコストが転嫁できていない。いつも、たくさんできれば安くなるし、少なければ高くなる、それの繰り返しでずっとやってきたと思うんですね。

 その中で、昨年から為替も円高から円安に少し戻って、きょうはちょっと幾らかわかりませんけれども、百二円ぐらいに戻っていると思うんです。国債の長期金利の上昇や中国経済の見通しなどに陰りが少し見えてきたという影響の中で乱高下しているのが今日だと思うんです。円高が進めば、海外から入ってくるものがどんどんふえていくわけですね。逆に、円安になれば、輸入量の減少で、相対的に国内の生産物が、生産農家に安心感が生まれてくると思うんです。

 TPP問題もさることながら、農業生産性の向上につながらない要因の一つに、やはり為替の問題が一番寄与しているんだと思うんです。為替の話になると、大体、工業製品だけがクローズアップされて、今まで、農業分野での為替の影響が語られることが少なかったと思うんです。一次産業を振興する立場から、行き過ぎた円高に対する対策を声を大にして主張してこなかったのか、それがなぜなのかなんですね。プラザ合意から二百四十円だった対ドルが、今、百二円です。ということは、円が倍になって強くなったのはわかるんですけれども、日本から外に出していく、農産物を売っていくというときは倍の値段になってしまうわけです。ちょっと前までは三分の一の値段になっていたわけですよね。ですから、逆に言えば、三倍の値段で外に出していかざるを得ない。

 そこのところを、自国の農林水産業の保護ばかりに目が行ってしまって、為替問題に対処してこなかったんじゃないかと私は思うんですけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 為替相場の水準について、どのあたりかということは、ここでも何度も申し上げておりますが、経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい、こういう定番の言い方がございますが、水準については、どの水準がいいということは言及をすることは差し控えたいと思います。

 一方で、長期的な、プラザ合意以降のお話を今委員からいただきました。おっしゃられたように、円高が進むと、安いものが外から入ってくるという側面と、それから今委員がおっしゃった、こちらから出していくときは有利になるということが、両方あるのでございます。特に、我が国の農林水産を考えた場合には、やはり、トウモロコシ、麦、それから燃油、こういうものを海外からの輸入に依存しているということで、非常にこの影響を受けやすい傾向にあるということは事実でございますので、そういう対策はそれぞれとってきたということでございますが、為替相場全体については、農業も含めた日本全体の経済のファンダメンタルズという中でこういう推移をたどってきているということであります。

 なお、輸出もそうなんですが、円安に行きますと外から入ってくるものが高くなるということですから、これは一部のスーパー、コンビニ等では既にそういう動きが出ているようですが、例えば国産の野菜等にだんだんシフトしていく、こういう動きも出ているということも聞いております。

 円安、円高、どちらをとっても、プラスだけ、マイナスだけということになかなかならないところがございますので、マイナスのところの影響をできるだけ、いろいろな対策で、激変緩和しながら、こういう為替相場に左右をされにくい構造、体質をつくっていくということも大事だと考えております。

鈴木(義)委員 今大臣からお話がありましたように、結局、アメリカあたりで農業関係者が、自国の通貨が強くなってくると、むしろ旗までは上げないんでしょうけれども、やはり政府に対してドル安に誘導しろというふうに圧力をかける話も聞くんですね。

 なぜ日本は、ほかの省庁は別としても、農林水産省を挙げて、自国の通貨が高くなったときに安くしろというふうな意思表示すら、今御答弁いただいたんですけれども、余りしてこなかったように私は感じるんです。

 為替というのは、景気がよくなれば円高になるだろうし、景気が悪くなれば円安になるべきものだと思うんですね。それで、景気の安全弁の役目が為替相場であったにもかかわらず、ここ二十年間ずっと円高が続いてきたおかげで、日本の農林水産業も外に打って出る機会をやはり逸してしまったんだと思うんですね。だから、攻めの農業というふうに今さら言って、少し円安に振れてきましたけれども、逆に原油高になったり、ほかの輸入品が高くなって、加工したり何なりするものは逆にコスト高になるというふうな話もあります。

 そこでお尋ねしたいんですけれども、円安になれば輸出に有利に働く。農業でも同じだと思うんですけれども、トラクターを動かすのだって燃料代がかかるわけですから、燃料が高騰して影響が出たりしますし、円高になれば燃料代等の経費は安く済むんですけれども、ただ、逆に海外から農産物が安く入ってきてしまうというのも事実であります。

 これから景気が上下するたびに為替が変動して、一次産業に従事している人に影響が出てくると思います。特に水産業については、もう連日のように、イカの漁に行かないとか船を出さないとか、デモまで、決起集会をされている報道もお聞きしています。補助金や助成金という仕組みじゃなくて、為替スライドするような仕組みをつくった方が、ちょっと円高に振れた、円安に振れたというふうにしなくてもいいような仕組みをつくってあげれば、一次産業に従事されている方ももう少し安心感が出るんじゃないかと思うんですけれども、その辺を大臣にお尋ねしたいと思います。

江藤副大臣 先生、この話は多分、議論をさせていただいたら三十分、四十分ぐらいすぐたつような幅広な話だと思います。

 まずは、漁師の方々には漁に出ていただかなければ収入がありません。出漁できない、魚がそこにいるのに漁に行くことができないという状況は非常にまずいと思います。

 しかし、逆に、今円安に振れたことによって、例えば、三十カ月月齢に牛肉は緩和されましたけれども、国産の牛肉の消費は伸びているんですよ、一月から非常に好調です。ただ、御指摘のあったように二極化が進んでいまして、中間のA3等級ぐらいまでは非常に調子がいいんですが、Aの4それからAの5等級になると余り消費が伸びていない。本当の意味での景気回復の実感というのはまだやはりないんだろうなというふうに思います。

 ですから、物価にスライドしてというのはなかなか難しいと思います。今の状況では、例えば燃油高騰対策、セーフティーネットはありますけれども、これも一対一で拠出をお願いしておりますし、配合飼料価格安定制度にしてみれば、国と生産者とそれから配合飼料メーカーまで、一階建て、二階建て、通常補填、異常補填、いろいろな、複雑ではありますけれども、知恵を絞って、少しでも営農活動が円滑に進むような仕組みづくりをしているわけであります。

 為替の影響というのは、委員の御指摘のとおり、プラスの面とマイナスの面と両方ありますので、このことを年金みたいに物価スライドでどうする、そういうような話、為替スライドという考え方というのはちょっとなかなか、さらに先生から御意見があれば、また個人的にもお聞かせいただければありがたいと思います。

鈴木(義)委員 先ほど、冒頭でお話をさせていただきましたように、結局、コストがきちっと価格に転嫁できていないことが問題なんだと思うんですね。

 そこで、日本の農林水産物が安全、安心なんだというのを付加価値として売っていくのであれば、お客様である消費者がそれを選択できるんだと思うんです。それが、市場のメカニズムの中で売る値段が決まっちゃっているから、逆算していって、漁に出ても、作物をつくっても、市場に出しても商売にならないからやめましょうという、そこの仕組みをつくりかえない限り、いつになってもこの問題は解決できないと思うんです。

 再度、もう一度だけ御答弁いただきたいんです。

林国務大臣 まさに本質的な問題を今おっしゃっておられると思います。

 短期的には、生産者、漁業にしても農林にしても、すぐに転嫁というのはなかなか難しいかもしれませんが、しかし、要するに、生産者の方がより価格決定権を、先ほど委員おっしゃったように、買いたいものなら売り手が持っているし、売りたいものなら買い手が持っているとまさにおっしゃったわけですが、そこが大変大事なところでございます。うちの山口県の地元でも、例えば水産物を、水揚げしたものを全部、全量そのまま市場へすぐ出すということをするかわりに、加工工場を漁協でつくりまして、そこで加工する原料にする場合もあるということで、たくさんとれた場合はそちらに回すというような取り組みをすることによって、やはり需要に合わせた、供給の方をコントロールすることによって、価格に対するコントロールをきかせよう、こういう取り組みもあるところでございます。

 また、先ほど、冒頭触れていただきましたように、やはり付加価値をつけることによって、どうしてもこれは買いたいんだというものにますます磨きをかけてしていく、こういう取り組みを支援することによって、よく川上、川下といいますが、なるべく川上の方にそういう価格の決定権を持っていくということが中長期的には大変大事なことだというふうに考えております。

鈴木(義)委員 続きまして、今回のHACCP法の改正についてお尋ねをしていきたいと思います。

 商品の安全、安心はもとより、グレードを上げて、製造工程の見える化という付加価値をつけて、商品を海外に売り込んでいこうとする体制整備を進めていくものと理解しています。

 その中で、先ほども質問があったと思いますが、HACCPを条件にしている国がどのぐらいあって、その国が今回の輸出ターゲットの国であるのかどうか。

 そもそもの話なんですけれども、海外に展開していくのに、先ほども議論になったように、国内のHACCPの導入率が低い、これを上げていこうという施策にもかかわらず、今日まで上がってこなかった理由は述べられたんだと思うんですけれども、そもそも、もう日本人の価値観が、そういうことをしなくてもちゃんと今まで商売をやってきたでしょう、それを消費者が認知しているにもかかわらず、海外から来た制度を取り入れてやらざるを得ない、ただそれだけのような気がするんですけれども、もう一度、ちょっと御答弁いただきたいんです。

針原政府参考人 先ほどお答えしましたとおり、輸入する際に、あるいは日本から輸出する際に海外でHACCPを要求している国でございますが、アメリカにつきましては、食肉、水産物、ジュースについてはHACCPを義務化しております。それから、EUは、動物性食品、これは畜産物、水産物ですね、義務化しております。それから、一部の食品については、香港、シンガポールが求めております。

 この四カ国は、私ども、攻めの農林水産業の一環として、品目別の輸出目標を決めて戦略的に輸出を伸ばそうとしているわけでございますが、いずれも、安定成長グループなり急成長グループがターゲットですので、これらの国がターゲットになっているという次第でございます。

 その上で、先生御指摘のとおり、今までの我が国の、日本産の食品というのは、非常に信用力がある、ですから、日本という名前、ジャパンという名前がつけば大丈夫ではないか、そういう公定力があったと思います。ただ、そういう信用力の上に、やはり、こういうHACCPをしっかり位置づけてますます評価を上げていく、それが輸出促進に拍車がかかるものと考えております。

 そういう意味で、輸出の上でも大事だということを今回の法案でも位置づけているところでございます。

鈴木(義)委員 HACCP自体は、アメリカでスタートしているとお聞きしております、宇宙飛行士の食料のために安全管理を徹底してきたのがスタートと。アメリカという国は、規格をつくって人の国に売りつけるのが得意な国だなというふうにいつも思うんです。

 平成七年のときに、日本でも食品衛生法の改正で総合衛生管理製造過程が導入され、この対象となる食品として、今お話があった六品目、五百三十一施設が承認を受けているとお聞きしております。

 では、なぜ、国内でHACCPが全品目、全業種に導入を義務づけられていないのか、それをお尋ねしたいと思います。

新村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の食品衛生法に基づく総合衛生管理製造過程承認制度につきましては、これまで、平成八年に乳・乳製品及び食肉製品、平成九年に容器包装詰め加圧加熱殺菌食品及び魚肉練り製品、平成十一年に清涼飲料水を対象とし、平成十五年には乳製品に脱脂粉乳を追加しております。

 これらの食品を対象とする理由でございますが、食品衛生法に基づきまして製造または加工の方法の基準が定められた食品のうちで、国内外で危害の発生防止が必要とされる食品、また、食中毒の発生の状況、さらには国際的なHACCP導入の動向などを勘案いたしまして、このHACCP手法の実効性も踏まえて対象としてきたところでございます。

鈴木(義)委員 お尋ねしているのは、なぜ、全品目、私たちが口にするものは全部HACCP対象とか、全業種、業態の人たちに導入を義務づけしてこなかったのかというところをお尋ねしているんですけれども、再度お願いしたい。

新村政府参考人 先ほど先生からもお話がありましたとおり、現行の食品衛生法に基づく規制によりまして基本的には食品の安全性は確保されていると考えておりますけれども、その水準の一層の向上を図るという観点から、国際的な動向ですとか、我が国の食品製造施設におけるHACCPの取り組み状況などを勘案して、義務化の必要性については検討をする必要があろうかと考えております。

 一方で、中小事業者も多うございますし、関係業界の御意見なども伺いながら、その実行可能性も含めてよく検討をしていく必要があろうかと考えております。

鈴木(義)委員 では、今回の改正法の目的として、先ほども御質問があったと思うんですけれども、輸出促進に寄与しているというような言葉を使っているんですね。

 現在、この六品目が輸出食品の何割ぐらいに当たっていて、どのぐらいの促進目標を持って一兆円の輸出を下支えしていこうというふうに考えているのか、お尋ねしたいと思います。

針原政府参考人 今、総合衛生管理製造過程承認制度、いわゆるマル総の対象で輸出の目標ということが言えるかどうかということでございますが、例えばいわゆるレトルト食品などをとっても、レトルト食品をどの程度伸ばすとかそういうことではなくて、加工品で今五千億円を目指すとか、水産物で千七百億円を三千五百億円に倍増するとか、そういうレベルの目標を定めておりますが、その中で、水産の中でマル総対象品目をどれだけ伸ばすかという戦略は、なかなか、戦略の柔軟性といいますか、重点化といいますか、実効性も含めて、そういう形の目標にはしていないということでございます。

鈴木(義)委員 そうすると、結局、一兆円だとか所得倍増だとかという話が、絵に描いた餅にならざるを得なくなってくると思うんですね。だから、具体的に一兆円というふうに数値目標を挙げるということは、その中身がどのぐらいで積み上がっていくのかというのは、あらあらでもいいから目標を設定して、何年でそれに向けていかれるように、先ほどHACCPの導入率を五〇%にしようという御答弁をいただいたんですけれども、それも、やはり目標があるから、それに向かって予算化をして、いついつまでこのぐらいをふやしていこうというふうになっていくと思うんですけれども、今の御答弁だと、あくまでも漠然としているんだと思うんですね。それをもう一度御答弁をお願いしたいと思います。

針原政府参考人 例えば水産物の例で御説明いたしますと、水産物千七百億円を三千五百億円に目標設定しておるわけでございます。重点品目につきましてはこのような考え方なんですが、資源に余裕があり、輸入国で一定の食習慣があるようなブリとかサバ、そういうものを重点にする。それから、国際競争力のある水産加工品、例えばカニかまというのは、もう国際的な、名前も定着しているわけですが、それに続くもの、ファストフィッシュ。それから、国際商材であるホタテ、サケですね。そういうものについて、もともと水産物の消費量が多い国、日本産が評価されているアジア、EU等でまず重点国にする。それから、所得が拡大しており、魚の需要増加が見込まれる東南アジアとかアフリカ、これも重点国にする。そういうレベルの重点化目標をつくるようにしております。

 こういうコンテクストの中で、マル総対象品目、例えば練り製品、ここをどう伸ばすかというよりも、その中で水産物の輸出に取り組んだ方が輸出の拡大には効果的だろう。

 ただし、一般的な日本製品の信用力を向上する上で、今も日本の食品は評価されているんですが、このようなマル総に限らず、さまざまなHACCPの取り組みを推進し、それを客観的な事実として国際的に広めていくことによってその輸出にさらに拍車をかけていきたい、そういう考え方に立っているわけでございます。

鈴木(義)委員 難しい質問だったかなと思うんですけれども。

 逆に、コスト高になるからHACCPを導入しないと考える事業者も回答の中ではあるわけですね。輸出中心の事業者と国内販売のみでよいという事業者が必ずいると思うんです。それをきちっとすみ分けしちゃった方が導入率の向上につながると思うんですけれども、その辺のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

針原政府参考人 まず、HACCPの効果として、いざというときにきちんとした自己対応ができるだけの体力が企業につくとか、従業員の意識改革につながる、それから国内の市場で一定の信用力がつく、いろいろな効果を挙げられる方がございます。

 輸出志向の企業の方は、やはりその輸出志向に応じた米国HACCP、EU・HACCPをしっかり取っていただくことが必要でございますが、HACCPのそのような効果に鑑みれば、中小の輸出志向がない方にも、現在まだ二七%でございますので、やはりそういうことにしっかり取り組んで、企業力の向上、それは消費者にとっては安全、安心の向上につながるわけでございますが、そういう体制をとっていく必要があるわけでございます。

 したがいまして、企業さんがどういう経営実態、あるいはどういうものを目指すのか、それに応じて取り組みを進めていただくことが重要ではないかと考えておる次第でございます。

鈴木(義)委員 それに関連してくるんですけれども、春先に、隣の中国では、鳥インフルエンザが変異して、人から人への感染で社会問題化して、対処に苦慮している報道がなされていました。

 アジアの国の中には、日本ほど衛生管理が行き届いているとは思えない国があると私は思っています。HACCPを導入していない国にどのようにその優位性を、また差別化を訴えていく考えなのか、お尋ねしたいと思います。

針原政府参考人 HACCPの優位性をどう国際的に訴えていくかという点でございますが、HACCPをやっていない企業においても、やはり日本産の信用力でもって輸出を実現して、安定的な取引をやっている方がいるわけでございます。ただ、HACCPをやっていないから安全な衛生管理をやっていないわけではございません。したがいまして、HACCPは、それにもう少し、一歩進んだ最高の水準のものを求められているわけでございます。

 そういう取り組みを日本でもしっかりやっているということを知っていただくというのは非常に重要だと思っております。二十四年度の補正予算でも、海外からバイヤーさんを呼んで、日本の生産の現場、製造の現場に入っていただいて、こういう管理をやっていますということを予算の中で展開したり、あるいは、商談会、見本市を開くことによって日本の生産における取り組みを紹介する、そういうような取り組みを積極的に進めているところでございます。これは、二十五年度の本予算においても、そのような取り組みを推進するための予算を盛り込んでいるわけでございます。

鈴木(義)委員 きのう、たまたまテレビを見ていましたら、フランスの方というのは御飯を食べる前に余り手を洗わないとか、一週間に一回とか二回しか髪の毛を洗わないとかという報道があったので、これはやはり日本人と風習や慣習というのは全然違うんだなと思ったんですね。だから、そういったところに、HACCPも同じなんですけれども、バイヤーが来て、そこで日本の衛生管理のよさを訴えても、これは日本の中での話だから、その価値観をきちっとその国に持ち帰ってもらって、それを広めてもらうというのが前提だと思うんですね。そこはなかなか、これはお尋ねしながら、自分も答弁する側になったときに難しいなと思うんですけれども、そこがやはりこれの肝のような気がするんです。

 時間も大分押してきていますが、もう少しお尋ねしたいんです。

 食品の安全性の向上と品質管理の徹底を図るためにHACCPを導入することはいいことだと思っています。しかし、事業者にとっては、設備や人員の教育等に対するコスト負担を強いるわけですから、HACCPを導入した事業者は逆にコスト高になっていく。それが先ほど申し上げたように価格にきちっと転嫁されていけば、商売になっていくんだと思うんです。商品の差別化、すなわち表示の方法、仕方を、導入していない事業者と区分する必要が出てくると思うんです。

 そこで、HACCPを導入した製造商品と表示したものの売れ行き、導入していない商品の売れ行きと、どう消費者に評価されて今日まで来たのか、もし実態がわかれば教えていただきたいと思います。

針原政府参考人 消費者の方によるHACCPの評価につきましては、平成十九年に旧農林漁業金融公庫が全国の二十代から六十代の男女を対象としまして、HACCP認証マークのついた食品の購入意欲という調査をしたことがございます。この結果は、HACCP認証マークのついた食品を購入したいという回答をされた方が二七%でございました。他方で、マークの有無にこだわらないという回答は三五%ということで、消費者の方に、訴求力といいますか、HACCPのものを買おうというところがなかなかこの時点では位置づけられていないということでございました。

 他方で、平成二十三年度に、農林水産省の補助事業によって消費者向けセミナーをやったわけでございます。その終了後の参加した方へのアンケート、これは三十代以上の男女の方でございますが、HACCP導入企業の食品を積極的に購入するという回答が七割ということでございまして、HACCPということを知っていただければ優位性が出てくるのじゃないかなという結果になっております。

 したがいまして、消費者の方にとってHACCPがより身近なものになるような取り組みが必要かと考えております。二十五年度予算におきましても、この法案を延長させていただくと同時に、消費者に対するセミナーを開催する、あるいは、HACCP導入済みの工場による製品であるということをチラシをつくりまして小売の現場で消費者に配布する、その上で普及啓発を図る取り組みも予算に盛り込んだ次第でございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 私も、ああ、そうかなと思ったんですけれども、現在、私たちの生活の中に、さまざまな製品の安全や衛生面での規格をクリアしたと評される表示があふれています。

 農林水産大臣が定める日本農林規格、すなわちJAS規格に適合した製品にJASマークをつけている制度を取り入れています。御案内のとおりだと思います。品質に関するJAS規格で一種類、一般のJASマーク、私たちもなじみがあるんだと思うんです。生産方法に関するJAS規格で三種類、特定JASマーク、有機JASマーク、生産情報公表JASマーク。流通方法に関するJAS規格で一種類、定温管理流通JASマークと、JASマークだけで五種類。

 このほかにも、国内にもさまざまなマークが、家電製品だとかいろいろあると思うんですね。外国製品にはそれとはまた別の規格、自国の規格のマークがありますから、私たちの生活の中にいろいろなマークが氾濫しているわけです。

 それで、幾つものJAS表示がありながら、今御答弁いただいた、HACCPの認知度を上げていけば消費者が理解しやすいんです、それだけ購買してくれる、逆に言えばHACCPを導入する企業がふえていくだろうというようなお話の流れだと思うんですけれども、商品として差別化を図っていきながら、安全、安心にコストをかけてくれるような理解をするのにマークが必要になってくると思うんです。

 では、マークがこれだけいっぱいある中で、消費者は逆に、道路標識と同じぐらいに、いっぱい道路標識があるとどれを見ていいかわからないというのも正直あると思うんですけれども、どうやって差別化を図っていこうとするのか、お尋ねしたいと思います。

林国務大臣 たくさんの規格がある、やはりいろいろな観点から、今委員がおっしゃったように、JASについても幾つかあるし、海外では海外のものがあるということで、大変に迷ってしまうのではないかというようなお気持ちもあるのではないか、こういうふうに思います。

 したがって、消費者の方も、自立して自分で自分の身を守ることを目指すという意味での消費者教育、それから食に関する知識、食を選択する力を身につけるというようなことでの食育、こういうものも進めていくことによって、一体どういう規格がどういう意味を持っているかということをやはり主体的に消費者の方にも知っていただく、こういうことが非常に大事ではないか、こういうふうに思っております。

 世の中がだんだん便利になっていきますと、とかく、もうそのマークがあるから安全だということになりやすいわけでございますが、我々、子供のころには、食べてみて、ちょっと酸っぱければ、これはちょっと危ないなというようなこともあったわけで、そういったような自分の感覚というものと、それから、今御指摘いただいたようなさまざまな基準や規格というものがきちっと整理をされていくという意味では、やはりこういう、知っていただいて、理解していただくということは大変大事だと思っております。

 そういう意味では、消費者等を対象として意見交換会をやったり、それから、リーフレットを配布したり、ホームページで情報を提供したりということで、これは農林水産省一省にとどまらず、内閣府や消費者庁、厚生労働省とも連携してこういうことを進めていく必要がある、こういうふうに考えております。

鈴木(義)委員 もう一点、お尋ねしたいんです。

 食品産業品質高度化促進資金について、ここの貸付対象者のところで、農林漁業者との間で、原材料の品種、生産方法などに関する取り決めを行って、一年以上の安定的な取引関係にあることというのが条件の一つになっているわけですね。

 先ほどから議論になっていた、大手さんはそれは可能だと思うんです。ロットを大きくしても、製品化して商品を売っていこうというのはできると思うんです。でも、中小零細企業にもしHACCPを導入してもらいたいといったときに、ロットがもともと大きくないにもかかわらず、一定の条件をつけてしか貸し付けができないというこの制度そのものが、もう少し裾野を広くしていきたいのであれば、やはりもう少し条件を緩くした方がいいんじゃないかという考え方です。

 それと、時間がないので続けて御質問したいんですけれども、そもそも日本政策公庫自体も、ある意味では、国がいろいろな関与をしていた金融機関の一つだと思うんです。

 いろいろな制度をつくって、啓蒙啓発も含めて、それを誘導策、強制力も含めて国がいろいろなことを施策として推し進めていこうとする中で、もうそろそろ、直貸しをするという考え方から、利子補給をして促進策を図っていく。債権のリスクに関しては民間の金融機関に持っていただいて、利子補給だけは農林水産省がきちっと出していって、今申し上げたように、貸し付け条件をもう少し緩和する中で、裾野を広げていくというのであれば、利子補給だけをしてあげれば、リスク管理は少なくて済むだろう、そういう考え方がとれないだろうかという、そこのところをお尋ねしたいと思います。

林国務大臣 まず、一年以上の安定的な取引関係という要件でございますが、原材料の農林畜水産物、これにも一定の品質が要求されるということでありまして、そういう意味では、食品事業者と農林漁業者の間の安定的な取引関係というものがあって、安定的に良質な原料が入ってくるだろうということ。

 それから、もう一つは、やはり食品産業が農林畜水産物のユーザーでありますから、食品産業がHACCPや今度入れる高度化基盤整備の導入ということで体質強化されることが、農林水産業の持続的な、健全な発展に資するということで、こういう規定があるわけでございますので、基本的には必要な条件だ、こういうふうに思っております。

 今委員がおっしゃったように、中小事業者に導入を円滑にしていくという意味では、こういう取引関係の確認の手間をなるべく省いて簡素化していくということ等々を図って、この中小事業者における導入が円滑に進むように運用してまいりたい、こういうふうに思っております。

 それから、もう一つ、利子補給をして、金融機能そのものはいろいろ民間金融機関でというお話がございました。

 民間の場合、政策金融の改革をやったとき、まさに委員がおっしゃるように、なるべくそういうふうに、民間にできることはやっていこうということでやってきたわけですから、基本的な一般論としては、まさに先生おっしゃるとおりなんでございますが、融資期間が十年から十五年という少し長目の資金ということにしてありまして、そういうことをすることによって、中小の食品製造事業者にとって、据置期間もございますので、返済に余裕が持てる。

 したがって、民間の金融機関で、こういう据置期間も含めて長目のお金が出せるかどうかということもよく考えながらこういうことは考えていかなければならないと思っておりますので、現状、やはり日本政策金融公庫で長期間、低利というものを措置するということで、この法律を出させていただいたところでございます。

鈴木(義)委員 民間の金融機関でも、使い道によっては、マックス二十年、二十五年、融資をしてくれる制度もありますから、そこのところはもっと活用していった方が、直貸しをするとか、国の関与があるところに融資の制度をさせるということをこれからは考え直していった方がいいんじゃないかなというふうに私は思っております。

 最後に、もう時間がないので、お尋ねしたいんです。これは概念的な話なのです、先ほども御答弁を少しいただいたのですけれども。

 私たちは、安全、安心を追い求めるがゆえに、本来の、人間としての個々人の危機管理能力を低下させてきてしまっているんじゃないかというふうに考えるところがあります。

 何か事件や事故が起きると、新たな制度をつくり、規制をかけます。規制の基準を守ることで安全、安心になるのですが、それは文明社会が現在のように続いていけば可能なんだと思うのですけれども、私たちは無意識のうちに、自分で考えることや感じることをしなくなってしまっている。規格社会というのは、そういうことだと思うんですね。規格に合っていれば、いいものだ。規格に合っていなければ、だめなものだ。

 コンビニで売っている弁当が、十時を過ぎてしまって、五分で食べないのか、食べるのか。どこのうちでもよく議論があるところだと思うんです。それが本当に私たちが目指している日本のあり方なのか。農林水産業にかかわる、食品のというより、食文化の国なのか。そこのところを問いかけられている時代にもう入ってくると思うんです。

 全体的には七十億人を超える人たちが世界でいる中で、近い将来、必ず食料危機が来るというふうに言う人もいるわけですね。そこのところを踏まえて、規格社会の中で内包されているリスクを、消費者というんですか、国民とどう考えていくのかということも、農林水産省として提案していってもらいたいなというふうに思うんですが、大臣の答弁をいただいて、終わりにします。

林国務大臣 先ほども少しお答えをいたしましたが、まさに自分の舌で試してみて、少し酸っぱければ出して、これはもうだめだから捨てるということを我々は子供のときに当たり前のようにやっておりましたが、いろいろ便利になる、いろいろなものが進歩をする、規格ができてくるという中で、そういうことがなかなか難しくなってくる状況というのも聞いたりするわけでございます。

 今委員が、コンビニの期限を十分過ぎたらということですが、多分、コンビニの棚に置いてあるものは、まだ賞味期限があるものもおろしているという別の問題もあるようでございます。

 やはり、大事なことは、まず国民の健康を守るというのが政府の責務であるということと、それから、先ほども申し上げましたように、消費者自身が、健全な食生活を送るために、みずから食品の安全性の確保に積極的な役割を果たしていく、こういうことが大事である、こういうふうに考えております。やはり両々相まって、便利な規格やいろいろな情報というのをどう生かしていくかということを消費者の方が主体的に考えていただく、そのための機会を我々は提供していくということで、先ほど申し上げたような取り組みをしているということをあわせて、結果として、我々の子供の時代よりもさらに便利になったけれども、人間の本来持っているものもしっかりと持ち続けていく、これをきっちり追求していく必要がある、こういうふうに考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 終わります。

森山委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 みんなの党の林宙紀でございます。

 時間が二十分しかございませんので、早速、質疑に入らせていただきます。

 これまでの各委員の皆さんの質問でもたびたび出てまいりました。私も、今回このHACCPを導入するに当たりましては、素朴に、そもそも日本の衛生管理というのはかなり高い水準にあるという認識でおりまして、実際にその導入状況を調査した結果で、導入するのに多額の資金が必要とか、その後の運用コストが非常にかかるからちょっと二の足を踏んでいますよという調査結果がある中で、これだけのコストをかけてHACCPを導入していくというそもそもの動機づけは何なんだろうなというところが最初の疑問でした。

 きょうも質問させていただこうと思いましたが、これまでの中で同じような質問に御答弁いただいているので、一つ、大きなファクターとしては、輸出をしていく上で他国と基準をそろえていくというような意味でも大事であるというようなことで理解をさせていただいております。

 質問の中にもありましたけれども、そうはいっても、輸出というのは食品産業の全体の中の一部なのであって、大まかには、輸出するものと国内で完結するものと二つあります。特に中小の規模の事業者というのは、ほぼ国内で事業が完結するといったところも多いと思うんですが、特に中小規模の事業者にとって、コストがかかるというところは、特に今の御時世、大変厳しい状況なんだと思うんですね。

 もう御答弁いただいたと思いますが、改めて、こういったHACCPを国内完結の中小規模事業者にも適用していこうと考えているその理由をまずお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 先ほど来議論があったところで、今少し整理をしていただきましたけれども、日本の食品の衛生・品質管理は既に高水準ですから、既に日本産食品については海外においても高い評価を得ているということでありますが、先ほど来あるように、HACCPを条件づけている国もあるということで、そういう国に輸出をしていく、また、今そういうものがなくても、将来こういうものが導入されていくということも想定をしますと、早目に取っておいて対応ができるようにしていくということは非常に大事ではないか、こういうふうに思っております。

 先ほどちょっと申し上げたように、品質、安全の向上が九五%、従業員の意識が向上するというのが七八%、企業の信用度、イメージの向上が六八%、これは導入した方、また、することを検討している方の調査です。

 したがって、さらなる安全性の向上にとどまらずに、食品事故の未然防止、これにもやはり貢献をするだろう。職員一人一人が、HACCPのクリティカルポイントに携わっていらっしゃる方がそれぞれそういう意識を持っていっている。働いていらっしゃる方がみんなそういう意識を持っているということが、回り回って、やはり企業価値、製品イメージの向上に寄与する。

 こういうことでありますので、今回は、輸出にも資するように基本方針をつくるということを法律で明記していただいたところでございますけれども、輸出するだけではなくて、やはり国内の市場にとっても、企業の体質強化を図るという意味で大変に大事なことであるというふうに考えておるところでございます。

林(宙)委員 今御答弁いただきましたように、その意義については非常に理解をしております。やれるものならやっていった方がいい、これは当然のことなんですね。

 では、そのスキームというか、やり方がどうなんだということで、私は非常に疑念を感じざるを得ません。

 今回、直接的な支援以外にも、日本政策金融公庫の融資によって支えていくといったところも大きなものではあるんですが、その融資実績というのを、どのぐらいあるんですかとお尋ねをして見せていただきました。これはびっくりします。直近五カ年度でいきますと、毎年五件未満の融資実績なんですね。かつては十数件というのがあったんですが、それでも足りないんじゃないかなと思ったぐらいで。

 今回、政策目標として中小規模層の導入率五〇%ということを掲げておられると思います。これまでで二七%ほど達成されているということですから、では、対象になる企業件数は一体何件なんですかとお伺いしました。大体五万一千件だそうです。その五〇%、半分ですので、二万五千件ぐらいになるでしょう。では、このうち残りの二三%分は大体何件かといいますと、大体一万件以上達成しなければいけない。これは企業の数でいったらそうなりますよということですね。

 考えると、毎年毎年五件未満、ここのところなんて、一件、一件、二件、三件という、こういうことを積み立てていったところで、これは政策目標としてあと一万件以上達成できるでしょうかというところから、そもそも私は疑問を持っています。

 政策目標の立て方というところもあるんですが、それにしても、ほかに立てる基準がないから、まずは件数として五〇%にしましょう、これは私はありだと思いますよ。しかしながら、では一方で、このHACCPを導入するに当たっては、事前に事業者の皆さんに専門家によって助言とか指導といったものもされているそうですが、それすらも毎年大体二十件ほどだということなんですね。

 私は、これはHACCP導入に当たっての営業活動のようなものに当たると思うんですけれども、そもそもHACCPを知らないというところにアプローチするのに毎年二十件程度でやっていって、どうやって五〇%を達成するのかという、その方法が一体このままでいいのかなというふうに思います。

 しかも、この公庫の融資枠は、大体毎年三十四億円でしたでしょうか、一応枠としては三十四億円とっている。しかしながら、それを使い切ったことは、ここの直近五年ぐらいでは、ないというふうに聞いていますので、済みません、ちょっと言い方は大変失礼なんですけれども、一体、本当にやる気があるのかどうかというところをお伺いしたいと思うんですが、ぜひ御答弁をお願いいたします。

針原政府参考人 今御指摘のとおり、五万一千件に上る全体の中小の事業者さんの中で五〇%やるというのは、非常にハードルが高いところがございます。この公庫融資を使う方、使われない方、いろいろいらっしゃると思いますが、まずは、このHACCPというものについて、一般的な認知度を高めてもらう必要があるかと思います。

 私どもは、この法律の改正を国会で認めていただいた場合に、国が指針をつくって、それから、今のお言葉ですと営業活動をやるわけですが、これは私どもの予算で計上しない一般的な事務費をもって、全国の地方事務所、あるいは都道府県を通じた、そういう活動をまずはやりたいと思います。

 その上で、今度の改正の趣旨、要は、中小の方で、HACCPをいきなりやるんじゃなくて、その前段階のことをまずやってくださいということを問いかけている中で、そういう中から、専門家の指導に、その次の段階になる。その予算も今回は充実させていただいたということでございまして、公庫融資、それから予算にならない我々の営業活動、それから都道府県を通じての指導、それから予算を通じての専門的な助言、これを全体を組み合わせて、最初の五年間、一生懸命導入率を上げるべく展開し、その次の五年につなげていきたいと考えている次第でございます。

林(宙)委員 お考えになっていることは大体理解はしているんですが、ただ、今回、高度化基盤整備でしたか、そのHACCPの前段階まで行くところにも支援をしていきましょうということ。この思想自体は大変いいことだと思います。その前段階のところまでまずは行きましょうと。しかしながら、これはHACCPを導入していないわけですから、五〇%の政策目標の中にはカウントできない。これは今後十年でどれだけできるんだというのがまずやはり目的意識の中にないといけないわけで、そんな曖昧な政策目標の決め方をしたんですかというところを私は問いたいわけです。

 もう一件、先ほどの融資実績の中を見ていて、これはどうなんだろうなと思っていたのが、実は、おととし、平成二十三年度は融資実績が大体二十二億円なんですね。それが二件分と聞いています。それで、去年、二十四年度については、大体二十六億円ほど融資実績がございまして、三件分というふうに出していただきました。

 ところが、これはどういう内訳なんですかとお伺いしましたら、二十二億のうち一件に二十億円の融資だと。もう一件に残りの二億円。去年もそうなんですね。二十六億円のうち一社に二十億円、残りは二件でというふうに聞きました。

 先ほどから、実施した件数というのですか、導入した件数で、中小企業の数で考えるというところ自体がどうかなと思っているところもありますが、五〇%という目標に沿っていくと、もっともっと導入していただける企業の数をふやさなきゃいけないと言っているときに、融資枠の半分以上に当たる二十億円というものを一件にどんと使う、このやり方が果たしていいのか。それが二年間続いているというのは、聞いたら、たまたまそうなりましたということだったんですけれども、偶然はあると思いますよ、私もそこはあえて追及しようと思いません。

 ただし、では、二十億円をどういうふうに使っているんですかと聞いたら、そのHACCPをやるための施設を導入するのに工場全体を、工場のラインとかそういったものも全部変えなきゃいけないんだというような御説明だったので、それはわかりますよ、わかりますが、何となく、これだけの金額を一件にどんとつぎ込んでしまったら、本当は、もともとHACCP云々ではなくて、最初から工場を建て直そうという計画があって、ついでにHACCPをやるかみたいな使われ方をし始めちゃうんじゃないのかなという懸念はあります。

 このあたりについては、行政としてはどのようにお考えなんでしょうか。

針原政府参考人 一件二十億ということでございますが、今御指摘のあったとおり、HACCPをやる際に、ラインの仕組み方、それから清浄室のとり方、全体を見直して、壁を直したり配置を変えたり、それから原料倉庫の場所を考えたり、そういうことで、工場全体をやり直すことが必要な場合には、一件当たりの単価といいますか工事費が多くなるということも否めないわけでございます。

 それが果たして五〇%という目標に有効に機能するかどうかというのは、やはり、今御指摘があったとおり、真摯に、一件一件の融資のあり方というのはよく見直して、目的は何かということをよく考えながら今後の運用に当たることが必要だと思っております。

林(宙)委員 本当に有効な方法というものが多分あるんじゃないかなと思うので、それをぜひお考えいただきたいと思うんです。

 今申し上げてきたように、HACCP自体のシステムとか考え方は、私は非常にいいと思うんです。ただし、何をやるにも、コストパフォーマンスというか費用対効果、よくBバイCとか言いますけれども、そういったものというのはやはり精査していくべきであって、それにしても、今回、HACCPの意義はいいんだけれども、そこに到達するまでのやり方というのがどうしても納得が、これは誰に説明してもどうなんだろうなというようなやり方になっているんじゃないかなというふうに思うんです。

 このHACCPを導入するということに関しては、もちろん、できるだけ早目にやった方がいい、それはわかりますが、日本の食品製品については、特に今、HACCPを緊急的にやらなければいけないというステージではないというふうに私は理解しています。

 だったとすると、せっかく、東京の霞が関の、頭脳集団と呼ばれる方々が大変そろっているところなんですから、これはもっと本気で導入するスピードをアップさせるスキームというか方法を確立してから実施していった方が、最終的には日本のためになるんじゃないかなというふうに考えるところもございます。

 先ほどからいろいろ御指摘がありますが、もっと安全水準が高くて、かつコストもそんなに高くなくて済むような、日本基準というか、日本のスタンダードというのを外に広げていってもいいんじゃないですかという、それは私も非常に賛同いたします。

 さはさりとて、このHACCPというのをやっていく上で、中小企業の導入率五〇%というところに沿っていかざるを得ないんだとすれば、例えば、輸出が大事だとおっしゃっていたので、まずは輸出に関連する企業のところから重点的に絞って支援をしていくとか。あるいは、いろいろお伺いしたら、先ほど一件で二十億円というお話をしましたが、実は、HACCPの導入そのものだったら、数百万円とか、そういった金額でもできる企業というのは結構あるんだよというお話もいただいていたので、では、中小企業で五〇%という目標をやるんだったら、数を稼ぐというわけじゃないですけれども、そういったところにもしっかりと支援をしていくというのを優先してやっていくという方法はありなんじゃないかなと私は思いますよ。

 ただ、もちろん、数で考えるというのがどうかなというところもありますが、それはもう政策目標をお立てになったので、それに沿って申し上げているんですけれども。

 あとは、先ほど営業活動というお話をしましたが、事業者に対する助言とか指導とか、やはりこれはみんなでやっていきましょうよというところをもう少し手厚くやっていった方がいいんじゃないのかなというふうに思います。先ほど、年間二十件ほどだとおっしゃっていましたので、やはり足りないんじゃないかなというふうに私は思っております。

 そんなわけで、意義は理解するが、その方法論についてはもう一度しっかり考えていただいた上で法律にした方がいいんじゃないかなというふうに私は考えております。このあたりは、ひとつ、参考意見という形でもいいかもしれませんけれども、ぜひお考えいただきたいなというふうに思っています。

 そして、このHACCPについて、私も宮城の人間ですので、少し気になったところが、やはり、東日本大震災で被災した水産加工施設とか、ああいった水産関連の食品工場というのもたくさんあるわけでして、最後にちょっとお伺いしたいんです。

 被災をする前にHACCPは導入していませんでしたという施設が間々あると思うんですね。今回の復旧復興に関しては、基本的には復旧するというのが大きな事業に関してはベースになっていますので、HACCPを導入していなかった施設が再建するに当たって、では、この機にHACCPを導入しようということになった場合には、このスキームは使えるのかどうかというのを最後に質問させていただきます。

針原政府参考人 今回の東日本大震災で被災された例えば水産加工場、HACCPを取っておられた方も被災されて、復興資金、補助事業で要件が合ったので、HACCP施設として復旧されたところもございます。残念ながら、工場を移転せざるを得なかったところもございますが。

 今の御質問は、仮にHACCPを取っていない方が今度再建のときにHACCPを取る場合に、どのような手だてがあるかと。当然、この公庫資金の対象になるわけでございます。そのほか、共同利用施設的な部分ですと、それなりの補助金、助成策もございますので、個別の相談に乗っていって円滑な再建を支援していきたいと考えております。

林(宙)委員 そういった要望がもし被災された企業からあったときには、その地元のために国としても相談に柔軟に対応していただきたいなというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 では、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

森山委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 HACCPについては、るる、きょうは議論がありましたが、やはり聞いてみると、かなり負担がかかるということなわけですね。聞くと、これは工場ごとでやるんじゃなくて、品目ごとでやらなきゃいかぬとか、何品目かやりたいところはそれぐらいコストがかかると。品目ごとで年間百万円ぐらいかかると聞いていますし、当然、書類の作成の手間もかかる。だから、おのずからコンサルなんかも雇ってやっているという話であります。

 こういう面倒くさい中で、実は、岩手県なんかだと、県版HACCPというのをつくって、これは正式なHACCPの簡易版なんでしょうね、こういうこともやっている。実際に、食品安全衛生基準の日本の現行制度とかみ合わせれば、これで衛生管理が十分できるんだというのが実態というか、そういう声が大勢なわけです。

 このような状況を考えますと、HACCPそのものは輸出のためという話で、きょういろいろ議論が整理されていると思うんですが、いずれにしましても、HACCP認定のためのコストを下げていくこと、これは金融の支援という意味で今回の法案には入っていますが、コストを下げるという施策をどうやってやっていくのか。品目で、年間百万かかったら大変ですから、そこのところを下げるという努力。

 あるいは、これは日本基準があってもいいと思うんです。つまり、アメリカ、ヨーロッパに輸出する場合にHACCPが必要だ、これはやむを得ない。やむを得ないというか、実は、日本が打って出て、国際標準の交渉をしていってもいいと思うんですよね。TPPなんかは現政権が今がんがんやろうとされておられますが、基準の部分は日本の基準の方でいいんじゃないかという交渉をしてもいいと思うし、あるいは、これから中国なんかが有望な市場ですが、あそこはHACCPを求めていないので、日本の基準でどうだと。これを国際標準化する努力も必要だと思います。

 いずれにしても、こういうHACCPのあり方を簡易化して、世界標準的にもっとフィージビリティーがあるようにしていくことも必要じゃないかと思います。

 この二点を踏まえましてお聞きしたいことは、HACCP認定のためのコストを下げていくことと、HACCPを簡易化していくこと等、取得者の負担軽減のためにどうやっていくか、その方策をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 コストの削減というのは大変大事だと思っております。食品製造事業者にいろいろ聞き取り調査をいたしますと、今まさに委員がおっしゃっていただいたように、やはり施設整備にお金がたくさんかかるという声が非常に多いんですね。それから、次にあるのは、導入した後に人的コストを含めた運用コストが大きいということでございますので、やはりそういう両面でコストをどうやって低減化していくかというのは大事だ、こういうふうに思っております。

 最近の例でいいますと、HACCP導入時に、工場内を清浄化、きれいにしたところとそうでないところに区分をするということをやるんですが、その際に、固定的な隔壁、壁ではなくて、ビニールカーテンのような簡易な仕切り、こういうものを利用するということで費用を抑える、こういう工夫によって、低コストでHACCP導入を可能とする事例があらわれてきておるわけでございます。

 こういうものでもHACCPが取れるということは、まさに委員がおっしゃったように、低コストということでありますし、逆に言えば、低コストのHACCPという事例を我が国の中で積み上げていくということは非常に大事だ、こういうふうに思いますので、先ほどちょっと議論がありましたけれども、人材の育成の研修とか専門家の製造現場に対する派遣による助言、指導、そういうことを通じて、こういう低コストでの導入ということに取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

畑委員 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 あとは、これから交渉するに当たって、やはりジャパン・スタンダードという意味で、欧米のHACCPのやり方じゃなくて、日本的なフィージビリティーがあるやり方も、中国等に広めるなり、そういうことも含めて、しっかり基準の交渉もしていただきたいな、現実的な形でやっていただきたいな、その辺のところをお願い申し上げておきます。

 HACCPについてはそのような形で、次の論点、きょうはHACCPとは違う議論をさせていただきたいと思います。

 前回、農林水産省の公共事業のあり方の透明化、適正化、これは、端的には予算の配分の過程ということでありまして、御存じのとおり、箇所づけというのは予算が通ってから所定の手続で公表されるわけですが、その中間段階において、透明性、適正さを確保するために、やはり何らかのこういう透明な手続が必要じゃないかなという問題意識があります。

 そこで、端的にまずお伺いしたいわけでありますが、予算が通るまでの途中の段階で、事業配分の額について、事業計画というのか、仮配分というのか、いろいろ言い方はありますが、この事業配分の額について、幅を持った形でも結構ですが、地方公共団体に通知をして、そして意見照会をして、さらに一般に、これはホームページも含めてでありますが、手法はいろいろあっていいんですが、農林水産省として、一般に公開しているということはありますでしょうか。確認をさせていただきます。

實重政府参考人 前回御質問いただきました。

 引き続きまして、農業農村整備事業について御説明させていただきます。

 農業農村整備事業につきましては、農業者の所有する土地の区画形質ですとかが変更になったりします。また、農業用水の来方ですとか、あるいは仕様の方法が変更したりされます。こういうことがありますので、農業者の申請と負担に基づくことを基本としておりまして、したがって、地元との十分な意思疎通が重要であります。このため、直轄事業につきましては、地元の要望につきまして、一つは、地区調査とか全体実施設計といったプロセスを数年間かけて手続を踏みながら行いまして、その過程で農業者や関係自治体とも十分意思疎通をさせていただきます。

 また、事業計画の中で総事業費それから予定工期を定めますので、年々のおおよその事業規模を予見することができるものでございます。

 これに加えまして、今先生御指摘の点でありますけれども、概算要求の段階で、地区名と地区ごとの予算要求額、それから、おおよそ、どういうところで工事をやるのかといったようなことを公表いたしまして、これらのプロセスを通じまして透明性や地元の予見可能性を確保するようにしているところでございます。

畑委員 概算要求のときの要求額というのはわかりましたが、私がお聞きしていますのは、例えば国交省なんかだと、直轄事業の事業計画通知というのを出しまして、その中で、本年は、例えば衆議院を予算が通過した段階で、幅を持って、これからこれの間ぐらいでこの地区、こういう留意点でやりますよというのを出しているわけです。そういうのを農水省は出していますか。その点を確認させていただきます。

實重政府参考人 今委員御指摘のとおり、国土交通省の直轄事業におかれましては、概算要求あるいは概算決定の際に、地区別の予算配分額の見込みについて、一定の幅を持たせた形、例えばこの地区は一億円から五億円といったような幅を持たせた形で都道府県に対して通知をされているということを承知しております。

 農業農村整備事業の直轄事業についてでございますけれども、先ほど申し上げましたように、地元農業者の申請と負担を基本として実施しておりますので、県、市町村、地元との年々の意思疎通を繰り返し行っているところでございますが、具体的には、概算要求の段階では、地区別の予算要求額を、これは幅を持ってではなくて、予算要求額そのものを公表いたします。それから、工事予定箇所につきましては、例えば水路のうち、どの路線であるかといったようなことについても県、市町村、地元に説明をしているところでございます。

 それから、概算決定の際には、地区名は公表いたしますけれども、地区別の予算額までは決定をいたしませんが、直轄事業全体の概算要求の時点の額と、それから概算決定の額の両方が公表されておりますので、この査定率が明らかになります。したがいまして、各地区においては、概算要求時の地区、それから額がわかっておりますので、おおむねの予見可能性を持つことができるようにしているところでございます。

 その上で、予算成立後の箇所づけにおきまして、地区別の予算配分額を決定いたしまして、都道府県に通知するとともに公表を行っているところであります。

 今後とも、こうした関係方面との意思疎通を円滑にしていくための工夫をしてまいりたいと思っております。

畑委員 関係方面との意思疎通は当たり前なんです。私が言っているのは、途中段階で透明な手続をしているかどうかということであります。

 国交省はなぜこのような途中段階の情報公開をしているかというと、これは、おっしゃるとおり、事業者負担がありますから、予算成立までに地方に対する情報提供とか調整を行うわけですが、そこが不透明な形にならないように、情報提供をしっかりと透明化のために行っているというのが国交省の説明でありました。

 農水省のこの公共事業は、国交省の陰に隠れてこういう手続が十分行われていないという形は、今思ったんですが、農水省としては、事業者間の円滑な調整というのはいいんですが、決定過程の透明性の確保についてはどのような認識をしておられますか。

實重政府参考人 予算の編成過程につきましては、先ほど申し上げましたが、概算要求の段階で、地区別の予算要求額を、これは国交省のように幅ではなくて、予算要求額そのものを公表いたします。それから、工事の予定の箇所、水路のうちのどの路線でやるかといったようなことを公表いたしますので、その時点でかなり明らかになります。それに加えまして、概算決定の際には、要求額と決定額の査定率を明らかにいたします。

 最終的には箇所づけの段階で具体的な配分額を決定するわけでございますが、委員御指摘の点につきましては、予算の具体的な執行につきましては、財政法三十四条の二第一項の規定によりまして、各省各庁の長は、支出負担行為の実施計画に関する書類を作製して、これを財務大臣に送付し、その承認を得なければならないということになっております。

 したがって、予算の成立後において、この実施計画の手続を迅速に行いまして、財政法の規律に従いまして、手続を踏んで箇所づけを行っているところでございます。

畑委員 確認いたしますが、そうすると、概算決定から箇所づけの間には、枠を持ったような形も含めて、出していることは一切ないということでよろしいですね。そこを確認させてください。

實重政府参考人 農業農村整備事業につきましては、農業者の方々の申請と負担がございますので、先ほど国交省で例示として申し上げさせていただきました一億円から五億円の幅といったような、大きな、数億円といったような、数倍といったような幅がありますと、逆に予見可能性がなかなか確保できないという点もあろうかと思います。

 そこで、農水省の場合には、直轄事業につきましては、先ほど申し上げておりますとおり、予算要求段階では、具体的な要求額と主な工事地区、こういったところまで具体的にわかるように公表しているということでございます。

 決定時点では、委員御指摘のとおり、地区名は公表いたしますけれども、額までは、具体的なところまでは決定いたしませんが、査定率が明らかになっておりますので、それによって予見可能性を持たせているということでございます。

畑委員 それでは、ちょっと確認をしたいんですが、手続の流れはそういうことでわかりました。

 私が聞きたいのは、途中段階で出していることは一切ありませんねということと、そういう枠を持った形も含めて、途中段階でまとめてそういった資料はつくっていませんねということを確認したいと思いますが、もう一度お答えください。

實重政府参考人 例示として御指摘になりました国交省のような形で、例えばこの地区が一億円から五億円の範囲内であるというような、一定の幅を持った形での通知を都道府県に行うということは行っておりません。

 そういう形ではなくて、要求時点において具体的な要求額を明らかにするとともに、決定時点においては査定率がわかるというプロセスを通じております。これは、事業計画自体が数年間のものでございますけれども、この数年間の事業計画自体が総事業費を定めております。それから、年々の事業費も、工期がございますから、おおむね予見できるところでございます。

 ただ、あとは、工事の進捗などによりましていろいろ調整をする必要がございますので、そういう意味で、概算決定の段階において具体的な金額までは明らかにしておらないところでございますし、また、財政法に基づきまして実施計画をつくり、その承認を受けて箇所づけを行うという段階でそれを決定するところでございますが、予見可能性という意味では、地元との関係、あるいは事業をごらんいただいている方々との関係において、一定の配慮ができているものと思っております。

畑委員 農水省がそのようなやり方をやっているのは、今の議論からすると、そういう手続によって予見可能性があるということだろうということですね。

 ちなみに、ちょっと論点を変えましょう。

 このような情報を仮に枠を持った形で出したとした場合に、これは国家公務員法百条一項において規定されている、漏らしてはならないとされている職務上知ることができた秘密に当たるとお考えですか。それとも、そこはもう現行の制度はできているんだから、情報の性質云々という問題ではないという理解ですか。もう一回、そこを踏まえてお答えください。

實重政府参考人 一定の幅のある枠について都道府県にあらかじめ通知をされるというやり方は、国土交通省さんの直轄事業で行われている手法だと承知しております。

 私ども、事業の実施の仕方自体、事業の性格自体が異なりますので、そういうやり方をとっていないところでございますが、直轄事業について申し上げれば、二、三年程度は、当初、地区調査と申しまして、地域の農業者の方々と徹底的に話し合いをし、計画をつくっていきます。それから、また一、二年かけまして、全体実施設計といいまして、具体的な設計の段階に入ってまいります。そういうプロセスの中で、地元の農業者の方の費用負担、それから県や市町村の負担割合、こういうものを徐々に形成していくわけでございます。その上で事業計画をつくって、同意徴集、農業者の方の三分の二以上の同意をとるというようなやり方を行います。

 そこから事業がスタートしていくわけでございますけれども、事業には工期がございますので、最初はそれほど大きな額が工事のスタートの段階では必要ないことも多いわけでございますけれども、大体、年々どれぐらいずつ進捗をさせていけばいいのかということが事業計画の段階でわかっております。それに基づきまして、地元と意見交換をし、また都道府県と意思疎通をしながら予算要求していくわけでございまして、予算要求段階で具体的な額を決定するというのは、その段階で非常に大きな幅を持って通知をするというのでは、農水省の事業の場合には、かえって予見可能性もなくしてしまうおそれがございます。

 こういうようなことで、それぞれの事業の性格に応じて、それぞれの省庁で工夫をしているということではないかなというぐあいに思っております。

畑委員 そうすると、事業者との関係はわかりました。では、そういうことをやっている調整の段階で、例えば自治体から、あるいは政治家なんかから聞かれた場合にはどんなお答え、そこはやはり出せないというか、まとめていないということになるんでしょうか、それとも、性質上答えられないという感じなんですかね。

實重政府参考人 要求は農林水産省として要求させていただくものでございますので、要求の段階で、私どもが予算上どういう積算をしているか、したがって、地区別にどういう予算額を予定しているか、またどういう、ある程度具体的な工事を予定しているか、こういうことは発表させていただきます。

 その上で、概算決定があって、その後、国会で御審議をいただくわけでございまして、これは財政法に定められたところによりまして、国会で、その予算成立後において、実施計画をつくりまして、それを財務大臣に協議をして承認を受ける、それによって箇所づけが可能になるというプロセスになっておるわけでございますので、概算決定の後に具体的な金額を外部から聞かれましても、私どもは具体的な金額としてお答えすることはありません。

 ただ、今先生おっしゃるように予見可能性というものも必要だと思いますので、要求段階では総額で幾らであった。地区別ではありません。全体です。直轄事業全体で幾らであった。それに対して、査定によってどの程度の概算決定額になった。そうしますと、そこに査定率が出てまいりますので、おおむねの予算額と申しますか、予見可能性は得られるというぐあいに思っております。

畑委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、本日は、透明性の確保の観点から、概算決定から箇所づけの間には、そういう枠も含めた数値は整理して出していることはない、聞かれても答えることはないという、透明な手続をやっておられるということが伺えまして、その点は確認させていただいて、本日の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

森山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

森山委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

森山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

森山委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 中山間地域における農業の取組等の実情調査のため、来る六月十日月曜日から十一日火曜日までの二日間、佐賀県に委員を派遣いたしたいと存じます。

 つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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