第5号 平成25年11月13日(水曜日)
平成二十五年十一月十三日(水曜日)午後一時開議
出席委員
委員長 坂本 哲志君
理事 北村 誠吾君 理事 齋藤 健君
理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君
理事 森山 裕君 理事 大串 博志君
理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君
井野 俊郎君 池田 道孝君
小里 泰弘君 加藤 寛治君
勝沼 栄明君 川田 隆君
菅家 一郎君 清水 誠一君
末吉 光徳君 鈴木 憲和君
武井 俊輔君 武部 新君
津島 淳君 中川 郁子君
橋本 英教君 福山 守君
堀井 学君 簗 和生君
山本 拓君 渡辺 孝一君
後藤 斎君 玉木雄一郎君
寺島 義幸君 鷲尾英一郎君
岩永 裕貴君 鈴木 義弘君
村上 政俊君 稲津 久君
樋口 尚也君 林 宙紀君
畑 浩治君
…………………………………
農林水産大臣 林 芳正君
農林水産副大臣 江藤 拓君
内閣府大臣政務官 小泉進次郎君
農林水産大臣政務官 小里 泰弘君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 澁谷 和久君
政府参考人
(農林水産省食料産業局長) 山下 正行君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 佐藤 一雄君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 奥原 正明君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 實重 重実君
政府参考人
(林野庁長官) 沼田 正俊君
政府参考人
(水産庁長官) 本川 一善君
農林水産委員会専門員 栗田 郁美君
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委員の異動
十一月十三日
辞任 補欠選任
堀井 学君 勝沼 栄明君
同日
辞任 補欠選任
勝沼 栄明君 堀井 学君
―――――――――――――
十一月十三日
農地中間管理事業の推進に関する法律案(内閣提出第一四号)
農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第一五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
農地中間管理事業の推進に関する法律案(内閣提出第一四号)
農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第一五号)
農林水産関係の基本施策に関する件
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○坂本委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省食料産業局長山下正行君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長實重重実君、林野庁長官沼田正俊君、水産庁長官本川一善君及び内閣官房内閣審議官澁谷和久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲津久君。
○稲津委員 公明党の稲津でございます。
林大臣、江藤副大臣、そして小里政務官に、きょうは質問をさせていただきます。
その前に、特に大臣と副大臣には、政務官時代に大変お世話になりまして、ありがとうございました。思えば昨年の十二月に、新政権発足と同時に、私も一員に加えさせていただきまして、以来、攻めの農林水産業の本部の設置ですとか、いろいろと法案の審議の中でも勉強させていただきまして、大臣、副大臣には大変感謝している次第でございます。
それで、政務官の任も終わりまして、今度は、所変わってこちらの席で、まだ一月足らずですけれども、質問するということで、別な意味で緊張感を持って臨んでおりますけれども、改めてよろしくお願いをさせていただきたいと思います。
きょうは、まず最初に、平成二十六年の予算の概算要求に関連して何点かお伺いしていきたいと思っています。
この概算要求の中にも新しい予算、施策が盛り込まれておりまして、非常に関心の高いものもございますので、改めて二点ばかりお伺いしたいと思っています。
まず一つは、医食農連携推進環境整備事業、これは八億の要求をされています。当初は医療と食と農ということだったんですが、今の段階では、医療と福祉、それから食と農、このように展開されているのかなと思っております。特に、健康食としての日本食のよさ、これを科学的な根拠に立って証明をしていく。従来は農産物の機能性の成分を証明するものはありましたけれども、今回はそういうことで、日本食のよさ、こんなことも出ております。
非常に注目すべき施策でございまして、どのように取り組むのかということをまずお伺いしていきたいと思っていますけれども、特にこの中で、今、高齢化の社会の進展で、お年寄りの食、健康が大変大きな問題になっています。
けさのNHKのニュースの中でも取り上げていましたけれども、ひとり暮らしのお年寄りの栄養失調が起きている現実もあるという報道がありました。それから、そうした要介護の高齢者の方々の中では、嚥下困難ということで、飲み込みが悪い。したがって、それが原因で栄養失調になっていくという話も伺っております。
施設等を利用されている高齢者の方々については、いろいろな、流動食ですとか、それから最近はムース食といって、口の中に入れた途端に溶けてしまうような、そういう、嚥下困難な方にもスムーズに食していただけるようなものも出てまいりました。いわゆる介護食、このように言われているところでございます。
医療、福祉、そして食と農の連携の事業をどう予算化を検討しているのか、この点についてお伺いをさせていただきたいと思います。
○山下政府参考人 お答え申し上げます。
高齢化、単身世帯の増加等の社会構造の変化に対応しつつ、健康に着目した国内外の食の市場拡大を実現し、農林水産業、食品産業の振興を図ることが必要となっているところでございます。こうしたことを受けまして、日本再興戦略においても、医療分野や福祉分野等の異業種連携等の推進が位置づけられております。そういうことで、医福食農連携の取り組みの推進が重視されているところでございます。
こうした医福食農連携の取り組みの一環といたしまして、平成二十六年度予算要求におきまして、農林水産物、食品の機能性成分や食習慣が健康に及ぼす影響について科学的知見を蓄積し、食品産業事業者や農林漁業者による新商品開発等に活用していただく、そういった取り組みを支援する事業を盛り込んでいるところでございます。
また、委員お話ございました介護食品につきましては、独自に介護食品の製品開発を進める企業も出てきており、今後の市場拡大が期待できるものであると考えているところでございます。一方で、各企業によって介護食品の名称等がばらばらでわかりづらいとか、どこで購入できるのかといった情報が不足しているなど、介護食品に対する潜在的なニーズに対応できていない状況にあると考えられ、これらに対応していく必要があると考えているところでございます。
このため、農林水産省といたしましても、本年七月に介護食品をめぐる課題につきましての論点整理を行ったところでございまして、また、十月には介護食品に関係する事業者、学識経験者等による介護食品のあり方に関する検討会議、こういったものを設置し、これらの課題解決に向けた議論を進めているところでございます。
さらに、この関係で、平成二十六年度予算要求におきましては、介護食品の普及や介護食品市場の健全な発展のためのシンポジウムの開催等の認知度向上の取り組みですとか、地域の食品製造業者等による介護食品の商品開発、それから、弁当製造配食業者等による介護食メニューの開発、ヘルパーセンター等による介護食品提供サービスの試行といった介護食を提供する主体ごとの連携モデル構築を支援するための事業を盛り込んでいるところでございます。
これらの取り組みを通じまして、医福食農連携の推進、とりわけ介護食品市場の健全な発展と拡大に努めてまいりたいと考えております。
○稲津委員 ありがとうございました。
私も、介護食、ムース食、これをつくっているメーカーの方にも行って見てまいりましたけれども、見た目も、それから香り、そして食感も、口に入れた瞬間はとても介護食と思えないようなものですけれども、こういったものが、高齢者の生活改善ですとか、それから、要介護者のケアに資するということも大事だと思っておりますけれども、同時に、農業の生産現場にまた新しい動きも出てくるかと思っていますので、期待をしたいと思っています。
もう一つ、この概算要求の中からお伺いしたいんですけれども、薬用作物等地域特産作物支援事業、こういうのがありまして、これは漢方製剤、それから生薬の原料になる薬用の作物に関しての支援事業なんですけれども、生薬等については、今はほぼ八割が中国から輸入されている。これが、昨今の中国の状況もあって、次第に価格が上がってきているという状況もあり、できるだけ早いうちに国産のものに切りかえていきたい、こういう生産現場等の声もあります。
これを国内で生産する利点が幾つかあると思うんですけれども、特に、いわゆる耕作放棄地とか中山間地にこれらの薬用作物が適しているのであれば、これはまたいろいろな意味で新たな産地形成なんかも期待できるだろう、こういうことも考えられます。
そこで、これまでも農水省内で、厚労省あるいは研究機関との連携で、この生産体制の整備を検討していた、このように承知をしておりますし、どのような事業を予算化するのか、その方向性についてお伺いしたいと思います。
○佐藤政府参考人 稲津先生の御質問にお答えいたします。
今先生の方から、薬用作物の意義、あるいは産地側における意義について御指摘いただいたわけでございますが、全くそのとおりでございます。
ただ、薬用作物の生産振興を図るためには、一つは、生産者と実需者との契約栽培締結の円滑化といったものが今必要になっているところでございまして、また、一定の品質をクリアするための栽培技術の確立といった生産上の課題への対応といったことが重要かと思っております。
まず、そのため、一つの、生産者と実需者の栽培契約の締結でございますが、これにつきましては、私ども農林水産省におきましては、厚生労働省とともに、昨年十一月からでございますが、薬用作物に関する情報交換会というものを開催しまして、これまで計三回ほど開催しているわけでございます。これを開催しまして情報交換に努めるほかに、本年八月からでございますが、両省の共催で、全国各地ということで、八カ所でございますが、説明会を開催しまして、産地化を志向する地域と実需者との情報の共有、交換を進めているところでございまして、この説明会の開催を受けまして、現在、栽培希望をどうするかといったようなことが当方に送られてきているというふうな状況になっておるところでございます。
さらに、生産上の諸課題を解決しつつ、産地化を促進するということから、実需者と連携しまして、地域ごとの気象、土地条件等に適した品種の策定でありますとか、あるいは、安定した生産に資する栽培技術の確立が重要でございますので、そのための実証圃の設置というようなことで、複数品種の試験栽培でありますとか、機械の改良でありますとか、マニュアルの作成、こういったことを支援するための予算要求を現在しておりまして、約四・七億円でございますが、これを二十六年度予算要求で要求したところでございます。
今後とも、厚生労働省あるいは関係団体とも連携しながら、薬用作物の生産振興に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
○稲津委員 私の地元に、漢方製剤、薬の、いわゆる製造、また資料の管理、保管の工場がありまして、現場を見てまいりました。そこでひとつ問題になっているのは、作付する農家の方々にどういうふうにこの技術を確立していただけるかということが一つ。それからもう一つは、やはり何といっても機械化されていないのが現状なので、一日も早い機械化によって労力を低下させていってコストを下げていく、こういう課題がありますので、ぜひその点も御留意いただきたいなと思っています。
さて、ここからは、米の生産調整と経営所得安定対策の見直しについて、大臣等にお伺いをさせていただきたいと思っています。
まず、経営所得安定対策の見直しなどの米政策の見直しに関する中間取りまとめを農水省が出されました。私どももこれを見せていただいて、党としても協議をして、大筋は、これは了とはしております。しかしながら、多々心配な点がある、こういうことがございまして、この心配な点の解決がやはり前提になるだろう、このように思っております。
特に、まず一番最初に挙げられるのは、現場が混乱をしないかどうかという大きな懸念。それから、もう二つぐらい最初に申し上げたいと思いますけれども、実際に、米の十アール当たり一万五千円のところの直接支払いの減額がどうなるのか、報道等ではいろいろと出ていますけれども、これに対してやはり慎重な対応を求めるという声もたくさんございます。それからもう一点、主食用米から飼料用米の方に移していくということですけれども、では、本当に飼料用米を増産するのは大丈夫なのかということ。また、多収性の品種の場合、実際に種もみをきちんと確保できるのか、こういうことも課題として言われております。
まず、生産調整の見直しから質問させていただきたいと思います。
米の生産調整は、一九七〇年代に導入されて、四十年余り続けられてきたわけですけれども、いわば農水省にとっては、歴史的な重要政策であった、このように思っております。
それで、私が言うまでもありませんけれども、昭和四十年代、ここでまず一回大きな米余り現象が起きて、この対応が必要になった。それから昭和五十年代にも、これも随分な米余り現象が起きまして、このことによって、過剰米を何とかしようという対策。ここで、まず昭和四十年代は休耕という減反政策をとった。そして、昭和五十年代のいわゆる米余り現象と、平成に入ってからはやはり主食としての米の消費量が落ちてきたということ、こういったことをあわせて、五十年代以降はいわゆる転作ということが主流になってきた、このように思っております。
この間、生産者の方々は、さまざまな意見は持っていましたけれども、ある意味国の政策を信頼して、その時々の施策に対しては協力をして、制度の安定化を図ることができた、私はこのように思っております。
そこで、まず生産調整の果たしてきた役割、このことについてのお考えを、これはぜひ大臣にお伺いさせていただきたいと思います。
○林国務大臣 まず、稲津委員におかれましては、この九月まで政務官として私を支えていただきまして、特にサイバーテロの委員会では委員長もお務めになっていただきまして、多大な貢献をしていただきましたことを改めて御礼を申し上げたい、こういうふうに思います。
今お尋ねのあった米の生産調整でございますが、今委員が歴史的に振り返っていただいたように、実施の当初、これは主食用米の生産の抑制、こういう色彩が強かったということですが、今日的には、水田という我が国の貴重な生産装置と言っていいと思いますが、これを通じて、需要に即した主食用米の生産を進めるとともに、非主食用米である加工用米、米粉用米及び飼料用米、それから、今大半を輸入に頼っております大豆、自給率七%、それから小麦、自給率一一%、こういうことでございまして、こういうもの等をバランスよく、この生産装置である水田を使って生産していくということが今日的な意義であろう、こういうふうに考えております。
生産調整の評価としては、プラス面として、米の需要に応じた生産が行われ、主食用米が消費者に安定的に供給される、また、水田の有効活用により、大豆や野菜などの作物の産地が形成されまして、国産需要への一定の供給が可能になった、こういうことが挙げられると思います。一方で、米の生産調整は既に実質的には選択制になっておりますけれども、さらに、農家のみずからの経営判断によって需要に応じた生産を行える環境、これを整えていく必要があろうか、こういう課題もあるというふうに認識をしておるわけでございます。
農水省においては、主食用米偏重ではなくて、やはり飼料用米等の生産を促進するということで水田フル活用を進めてきておりまして、冒頭申し上げましたように、昔の生産抑制、面積をちょっと休耕させる、休ませるというときと、水田フル活用という意味は違っておりますので、私はなるべく、減反という言葉ではなくて生産調整、それから見直しという言葉を使うようにしておりますが、こういう方向で、農家みずからの経営判断による需要に応じた生産を促進していきたい、こういうふうに考えております。
○稲津委員 ありがとうございました。農家みずからの経営判断というお話もありました。
そこで、経営ということに目を転じて考えますと、これは、大臣も昨今いろいろと発言されている中にこの言葉もありますが、やはり米は基本的に一年に一回しか収穫できないという地域が大宗を占めております。一作一作に経営がかかっているんだ、これは大臣もよくお話しされています。
そういう中で、生産現場は本当に大変な努力を重ねてきた。例えば、売れる米づくりということであれば、それに積極的にかかわってきた。食味のいい米を生産する努力とか、あるいは減農薬、無農薬、こういったものにも取り組んできた。そうしたことが今後はどういう方向になるのか、そういう不安の声もあります。
それと、やはり何といっても、よく私も現場で言われるんですけれども、猫の目の農政だ、本当に我々は大変なんだ、また今度もどう変わるのか、こういう声もありまして、農業、農村の現場への今回の見直しの影響をどのように分析というか考えていらっしゃるのか。ある意味厳しい意見としては、本当に大丈夫なのか、準備不足じゃないのか、こういう声もございます。
したがって、これらのことに対して、これもぜひ大臣にお答えいただきたいと思いますけれども、どのような影響を分析されているのか、お伺いしたいと思います。
○林国務大臣 遠慮という言葉の本来の意味は、遠きにおもんぱかりなければ近きに憂いあり、こういう言葉だそうでございまして、遠きを、要するに中長期的な展望をきちっと持っておかないと足元でいろいろな不安が生じる、こういうことでありますので、今委員がおっしゃっていただきましたように、猫の目の農政と言われないように、しっかりと中長期的な展望をまた差し示すべきといいますか、たどり着くべき姿を示しながら、しかし、まさに委員が御指摘のように、一年一作という、そういうテンポがございますので、余り急にかじを切るということをせずに、じっくりと進めていくということが、まず基本姿勢として大事であろうか、こういうふうに考えております。
その上で、先ほど申し上げましたように、水田のフル活用、食料自給率の向上、こういうことを考えまして、非主食用米への生産誘導のインセンティブとして、現在飼料米については面積払いということになっておりますが、さらにこれに加えて数量払いを導入するということなどなど、水田活用の直接支払い交付金の充実を図るということや、それから、国民の食生活の変化に伴って、中食、外食、こういうところのニーズというのもかなり出てきておりまして、こういう方々のニーズに応じた生産や安定取引の推進をする。国による、よりきめ細かい需給、価格情報、それから販売進捗、在庫情報等の提供、こういうことをやはりきちっとやっていくということが重要ではないかと考えております。
いずれにいたしましても、そういう生産調整を含めた米政策のあり方は、引き続き、今議論の途中であります、今委員がおっしゃったように。したがって、十一月末を目途に取りまとめた上で、都道府県等の関係者へ説明会をきちっと開催する、また、わかりやすいパンフレットをつくる、加えて、各種資料のホームページへ掲載、どなたでもアクセスできるようにしていただく、こういうことによって、まさに今委員がおっしゃった、現場が混乱しない、こういうことを十分配慮しながら、丁寧に説明を行って、地道に改革を進めていくことが大事である、こういうふうに考えております。
○稲津委員 済みません。ちょっと時間の関係で一つ飛ばさせていただきます。
通告では、次のところに、生産調整の機能はどこに置くのか、こういう質問をさせていただこうと思ったんですが、これは別の機会に譲らせていただきたいと思います。
もう一つ大臣に、続けざまで恐縮ですが、お伺いしたいと思います。
私は、今回のこうした見直しを進めていくに当たっては、やはり農業者、農業団体からの意見をしっかり得るべきだ、こう思っております。
これも現場からの声ですけれども、現段階での情報では来年の営農計画をどう立てていいかわからないという声もいただきました。もちろん、これは、単価、数量等々、まだそういうものは出ておりませんので当然だと思うんです。この段階でも、実際に営農計画をすぐ立てるとなると、もう二カ月先に来ている。したがって、中長期のこともありますけれども、来年どうするんだということもあるんだ。
そういうことで、いずれにしても、これは中長期的なことも含めて、生産者やあるいは団体の理解を得なければ、このような見直しの政策というものはなかなか前に進んでいかないだろう、そう思っております。
制度設計の段階、それから法制化等の見直しもあると思いますので、その段階も含めて、ぜひ生産者あるいは団体の意見を反映させるような、そういうシステムとか、あるいは、場合によっては組織づくりをやるべきじゃないか、私はこのように思っておりますけれども、この点はいかがでしょうか。
○林国務大臣 まさに、現場の御意見、農業者の皆さんや団体の皆さんの御意見をきちっと反映させていくということが大事であることは、もう当然のことである、こういうふうに認識をしております。
今回の米政策の見直しについても、今後、五年後を目途という時期的なイメージを共有した上で、行政、それから今おっしゃっていただいた生産者団体、現場が一体となって取り組んでいく、そういう中で、需要に応じた生産、特に、先ほど委員の御指摘にあった米による転作の定着状況、これを見ながら、行政による生産数量目標の配分に頼らない状況にしていくことを目指して、地道に毎年毎年取り組みを重ねていく、こういうことが大事だというふうに考えております。
具体的には、やはり県や地域段階において、作物振興の設計図である水田フル活用ビジョン、こういうものを策定いただいて、産地交付金というものもございますので、この活用方法の決定を含めた産地づくりを進めていただく、こういう中で、行政、生産者団体、現場、まさに今委員から御指摘のあったような現場の関係者がお互いに意見を出し合いながら一つ一つ課題を解決して、これが円滑な移行につながっていく、こういうやり方が非常に重要だと考えておりますので、そういう現場の意見を反映される仕組みづくりということを今の形で進めていきたいと考えておるところでございます。
○稲津委員 ぜひここは、今、大臣に答弁いただきましたけれども、より具体的に、できればシステム化を図っていっていただきたい。説明をするというのは当然のことだと思うんですよ。問題は、十分な説明とあわせて、意見をいただいて、それをどういうふうに政策の中に反映していくか、これがまさに今一番求められているところだと思いますので、よろしくお願いをさせていただきたいと思います。
それから、大分時間も過ぎましたので、あと二点ばかり。
次は、飼料用米についてお伺いしたいと思います。
水田活用直接支払い交付金を充実し、飼料用米の単価を見直し数量払いを導入する、こうありますけれども、どうするのか、方向性を伺っていきたいと思うんです。要するに、飼料用米の作付に係る交付金の予算の確保は大丈夫なんですかということが一つ。
それから、これは今、八万円とか幾ら幾らとか八万円以上とか、いろいろと報道で出ていますけれども、果たして本当にそうなのか。それから、仮に、例えば、短期的には、来年、再来年でそれで八万円以上のものが出たとしても、これを持続的に継続してくれるのか、そういう疑問もあります。
この点についてお答えをいただきたいと思います。
○江藤副大臣 私の方からお答えをさせていただきます。
まず、予算についての御懸念は与党内でも当然あることでありまして、今現在で十八万トンぐらいしかできておりません。これを、潜在的な見込みとしては四百五十万トンという膨大な数字を、ごらんになったと思いますけれども、出しておりますので、これについて、面払いプラス数量払いということで組み合わせていけば、お金は大きくなっていきます。これは当然、新たな農政への大転換にかかわることでありますので、我々も財務の方とは堂々と、これは構造改革に必要なお金ですから、決してばらまきではありません。構造改革に向けて必要なお金でありますので、これは確保する責務があるというふうに私は考えております。いや、私というよりも、農水省としては考えております。
将来についての継続性についても、一千万トン輸入されているトウモロコシの約半分を飼料用米で代替するということになれば、継続性が担保されなければ転作してみようという意欲も当然湧きませんから、ここもきちっと担保していく必要があると思います。
制度設計の詳細についてはまだ与党内でも協議中で、今公明党さんとも協議をさせていただいておりますけれども、飼料用米については、ちゃんとつくっていない人がいるという批判がずっとありまして、ソバなんかでも今問題になっていますが、きちっとつくっている当たり前のところの水準のいわゆる面払いの部分は残しつつ、さらに努力をして収量をふやしていったら、それについては数量払いもプラスしていく。さらには、産地資金というのがありますけれども、これについても、多収性品種、そういうものを植えつけていただければ、さらにその上に乗せるというようなことでインセンティブを乗せていきたいというふうに考えております。
○稲津委員 ありがとうございました。
最後に、これは畑作物の直接交付金、ゲタのところ、それから水田活用の直接支払い交付金のところ、ここも両方出ています。ソバと菜種の問題です。
特に、ソバでいえば、戸別所得補償の導入後、作付が目に見えてふえている。中には、ほとんど、もうつくるだけとか、価格も相当落ち込んできていて、検査品と未検査品も一緒に市場に出回ったり、長い間努力をして産地づくりをしてきたのに、そこも非常に厳しい状況になっている。
今回、特に水田活用のところは、新たに今度は産地交付金に移行するというふうにありますけれども、大事なことは、この産地交付金をどういう仕組みにするのか。それから、ソバ、菜種にこれを移行するのであれば……
○坂本委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。
○稲津委員 はい。
ここも予算の拡充検討も必要だと思うんですけれども、この点を伺いまして、質問を終わります。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
産地資金につきましては、地域において作物振興の設計図となる水田フル活用ビジョンに基づく取り組みを推進するとともに、飼料米等につきましては、多収性品種に取り組む場合に追加配分をする仕組みを導入するといったようなことをいたしまして、産地交付金として名称変更したいというふうに考えております。
それと、ソバ、菜種でございますが、先生御指摘のように、地域や農家ごとの取り組みに差が非常に大きいところがございますので、全国一律の戦略作物として助成することを改めまして、産地における創意工夫を生かしながら、その需要に応じた生産を推進する観点から、産地交付金に移行する方向で検討しているところでございます。
具体的な金額、充実の内容については、引き続き検討を進めてまいる所存でございます。
○稲津委員 終わります。
○坂本委員長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。
先週に引き続きまして質問に立たせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
きょうは、米政策に特化して質問させていただきたいと思います。大きな農政の方向性について質問したいと思います。政治家同士の議論をしたいというふうに思いますので、政務三役の皆さん、そして小泉政務官、またお越しいただきましてありがとうございます。ぜひ、そういった大きな、骨太の議論をさせていただきたいと思います。
週末、地元でいろいろな農家の皆さんのお話を聞きました。私は、この農林水産委員会でこれからの農業、農政のあり方が今決まろうとしているということで、大変緊張感をいつも感じています。そして、一つ違和感をいつも感じるのは、どうも、地元に帰って農家の皆さんの話を聞くと、皆さん、真面目なんですよ。一生懸命この間も面的集積を進めてきている。そういう人ほど悩んでいるんです。何か、努力が足りないから、税金に頼っていっぱい補助をもらって、できの悪い農家がいっぱいいて、それを駆逐しなきゃいけないような雰囲気で東京では語られることが私は許せないんですよ。
そんな思いで質問をさせていただきたいと思います。本当に真剣に、これは重箱の隅をつつくようなことは言いませんので、大きい方向性、目指すべき姿、そういったところを正面からお答えいただきたいと思います。
まず最初に、生産調整についてお伺いしたいと思います。
産業競争力会議の提言の中には、生産調整は農家の経営の自由度を奪うので、基本的にはこれを廃止していく、二十八年産でやめるということが出されております。こういったことを受けて、先ほどの大臣の答弁にも、余りそういった公的な生産調整に頼らない方向性にしていくというような答弁があったと思います。産業競争力会議としては、あるいは経済再生の担当部局ということかもしれませんけれども、生産調整をやめていく、あるいは、やめていくことが競争力の強化につながるんだということは方針として明確かどうか、これが一点。
あわせてお答えいただきたいのは、であれば、来年からの生産調整は、少なくとも生産調整を緩める方向でやることが整合性がとれると思うんですけれども、その二点について、まず小泉政務官にお答えいただきたいと思います。
○小泉大臣政務官 後段の御質問についてですけれども、米の生産数量目標については、農水省が管轄をしておりますし、決定されるものと承知をしていますので、私からコメントすることは差し控えたいと思います。
第一点に関して申し上げますと、玉木先生がおっしゃったとおり、産業競争力会議での、生産調整の廃止、また経営所得安定対策、それに対しての議論が御指摘のような観点で、要は、経営意欲をどれだけ農家の方により持っていただけるか、農業の産業力の向上という観点から議論されていることは御指摘のとおりだと思っております。
○玉木委員 改めて確認したいんですが、生産調整は農家の自由な経営判断とか戦略を妨げているという認識ですか。この点、確認させてください。
○小泉大臣政務官 この民間議員のペーパーというのは、あくまでも、主査をやっています民間議員の方が今回提出をされ、その中でのさまざまな論点にありまして、それに関する議論を今農水省の方で検討、また議論していただいていると思っております。
今、こちらの産業競争力会議として、どういった観点から議論をしているかと問われれば、まさに、産業力をどうやったら高めていけるのか、そして、今の農業の現状を見たときに、農業人口は減っていく、高齢化は進んでいく、また、放棄地はふえていく、こういった現状を何とか打破しなければいけない、そのためには、やはりリスクも含めて考えて、変わらざるを得ないだろう。そういった観点でのさまざまな意見が出ているということは事実のとおりです。
○玉木委員 もう一度お聞きしますけれども、生産調整という仕組みは、期間は問いません、激変緩和とかいろいろあるんでしょうけれども、最終的に行き着く姿としては、今、政府の、特に産業競争力を強めるという観点からすれば、生産調整はやめていくべき方向だということは間違いありませんね。
○小泉大臣政務官 そのような観点からの、民間議員の主査からのペーパーに基づいて、さまざまな議論がなされていることは事実です。
○玉木委員 ちょっとよくわからないんです。
大臣にお聞きしたいと思うんですが、産業競争力会議からいろいろな提言が出ました。そのことを踏まえて、この中間取りまとめ、私はすごくよく反映されていると思うんですね。
小泉政務官もごらんになったらわかると思うように、言葉は悪いですけれども、よく言うことを聞いているという感じがするんですね。すごく忠実にやる。例えば、来年からいわゆる米の変動部分を廃止ということは明確に書いているし、固定払いの部分については減額をするということが明示されています。幾らかはわかりませんけれども、減額という方向は明確に書いています。
ただ、一つだけわからないのが、生産調整に関しては、産業競争力会議のペーパーは明確に廃止と書いています。しかし、生産調整に関しては、林大臣の答弁もまた、何か長いことがいっぱい書いてあって、結局、五年後をめどに、いろいろ書いているんですね、廃止という言葉とか削減という言葉が生産調整に関しては出てこない。だから、少し改めて産業競争力会議サイドの意見をお伺いしたんです。
その上で、同じような質問になりますけれども、改めて大臣にお伺いしたいと思うんです。
将来的には生産調整をなくしていくことが農業者の自由な経営と戦略に役立つということであれば、来年の生産調整は少なくとも緩める方向であって、引き締める方向ではないことは、その方向が整合性がとれると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○林国務大臣 必ずしも、委員が生産調整というお言葉をお使いになっているときに、今やっているいろいろな種類、我々が受け継いでやっている部分もございますが、どの部分を具体的に指しておっしゃっているかというところが判然としない部分もありますが、与党にお示しした我々の中間取りまとめにおいては、先ほど、少し長くてわかりにくいということでありましたけれども、まさにそのとおりのことをお示しして、今実質的には、前々回か、玉木委員がお示しいただいたように、選択制になっている、いわゆるペナルティー措置なるものはない、こういうことでありますが、さらに、農家みずからの経営判断によって、需要に応じた生産を行える環境を整えていく必要がある。
実際に、今行政が生産数量を決めて配分するということをやっておりますが、これは、米の生産、販売を直接やっていない行政がやっているということですから、ここからスタートをして、先ほど申し上げたように、みずからの経営判断で需要に応じた生産を行える環境を整えていく。
ただ、これも、先ほど稲津委員からも御質問がありましたけれども、大きな船ですから、急激にかじを切れば現場が混乱するだろうということで、生産者、集荷業者、団体、我々一体となって、五年後という時期的なイメージを共有しながら地道に取り組みを重ねていこうというのが今お示しした中間取りまとめということでございます。
○玉木委員 ちょっとよくわからなかったんです。
お手元にお配りしている資料の中に、米の生産二十万トン超削減、十四年度、いわば過去最大の生産調整を来年行うんじゃないのかということが書かれております。
これはまだ決まっていない話だと思いますので、聞いても、決まっていないというお答えになると思うんですが、いずれにせよ、今月決まってくると思いますので、改めてここは、具体的な数字が出た時点で、先ほど言った産業競争力会議が提言していることとの整合性についてはもう一回聞きたいと思います。
なぜ生産調整をするのか。いろいろな目的があると思いますけれども、一つは、米価のコントロールをやはりしたいということですよ。過剰米がいっぱい出て、在庫もあって、さらに増産したら、それは市場原理に基づいて下がっていきますよね。それでは困るというので、あるいは財政負担を抑えるという観点から、財政当局から見ても安上がりな政策として生産調整はあるわけですね。ただ、この生産調整がなくなっていくと、だんだん価格の決定は市場のルールに従って行われるようになりますね。
そこで、お聞きをしたいのは、米政策について、大きく二つの政策の方針があると思います。一つは、旧食管制度みたいに、価格そのものをコントロールして、ある種消費者の御負担によって農家を助けていくという価格政策の一つの柱。もう一つは、価格については公的にはいじらない。そのかわり、下がりますね、そうすると、コストについてはなかなかコントロールできないので、そこにギャップが生じるので、このギャップを埋めるような、いわゆる所得政策を行っていく。この大きく二つがあると思います。
これまでの産業競争力会議、あるいはそれを受けてつくった農林水産省のペーパーを見ますと、これは前回の委員会でも申し上げましたが、米については基本的に、高い国境措置、ある種の価格政策ですよ、この国境措置という価格政策を除けば、その他の価格政策も所得政策も不要なんだという理解でよろしいですか。
○林国務大臣 そういうことをどこかに書いてあったかという記憶が余りないんですが、生産調整を先ほど申し上げた方向でより主体的な判断に基づいて見直していって、そういう環境を整えようということは申し上げております。
逆に言えば、生産調整を見直したら米が余るようになっちゃった、それでも構わないんだ、だから値段が下がればいいんだ、こういうことは政策としてはあり得ない、こういうふうに思っております。政策的にも、需要に応じた生産を促していくということが当然必要である、こういうふうに思っております。
先ほどの稲津委員のときにも少し申し上げましたけれども、したがって、需要ということを考えれば、非主食用米への生産を誘導する、これのインセンティブが必要であろうということで、例えば、飼料米については今の面積払いから数量払いも導入するということで、その方向で充実をしていくということもやりますし、中食、外食、消費者の皆さんの消費性向が変わってそういうところのニーズも出てきておりますので、そこにどう対応するかということをやっていく。さらに、より細かい需給や価格情報、それから販売進捗、在庫情報等の提供を国によってやっていこう、こういう方向はもう既に出しておるところでございます。
○玉木委員 大臣、よくわかりません。端的にお答えください。
米価というプライスに対する国家的な関与、これをコントロールしよう、それは、需給の量をコントロールすることによってプライスを間接的にコントロールすることもありますけれども、米価ということに対して何らかの関与をすることをこれからもするのかしないのか、このことを明確に示してほしいんですよ。
いっぱいつくって、それで暴落することは政策的にはあり得ないとおっしゃいましたけれども、私は、あり得ないことが起こるんじゃないのか、また、産業競争力会議のある種市場のメカニズムを優先するということを重視すれば、今大臣がおっしゃったようなことが起こるんじゃないのかと心配するわけです。中食はどうするとか情報を出すとか、私は、これではとても需給にきちんとマッチしたような生産とか過剰米の抑制なんかできないような気がするんです。
もう一度お伺いします。
米価というものについて、全く市場に任せるのか、それとも何か政策的にそこに関与を残すのか、このことについては明確にお答えいただけますか。
○林国務大臣 繰り返しになりますが、これはあくまで中間取りまとめです。今からこれにいろいろな詳細が入っていって成案を得るわけでございますので、その部分まで詳細には今お示しをすることができないんですが、方向性として先ほどのようなことを申し上げました。
委員がおっしゃっている御質問の趣旨が必ずしも明確に捉えられているかどうかわかりませんが、どの部分をもって、価格にある程度関与するのかしないのか。私が先ほど申し上げたところも、全くほっておいて、もう市場に委ねるというところから見れば、政府としてこういうことをやるということでは、委員がおっしゃっている範疇に入るのではないか。そこは、もう少し詳細に見ていただければ御理解が深まるかもしれませんし、あるいはそれをどう見るかというのは最終的には御判断の問題ということかもしれませんけれども、我々としては、そういうことを今中間取りまとめとしてお示しして、議論をさらに詰めていこうということを考えておるところでございます。
○玉木委員 冒頭申し上げたように、固定払いをやめていきます、減額します、変動払いはやめますと極めて明確な方針が出ているのに対して、生産調整について質問をさせていただくと、今のようなお答え、やめるのかやめないのか、維持するのかしないのか、その方向性さえもよくわからないんですね。
一方で、来年は一気に引き締める、削減するというような報道も出ておりまして、我々もよくわからないことは、農家はもっとわからないんですね。先ほども話が稲津先生からありましたけれども、営農計画を来年どうしようか、うちなんか、二毛作をやっているところは十一月は麦の播種時期ですから、それはセットで考えていて、どうなるんだということはいっぱい聞かれるわけです。皆さんも、地元に帰られたら聞かれると思いますね。答えられないんですよ、今は。こういうことに国会議員として、それは与党、野党関係なく、やはり方向性は答えてあげないと、責任を果たしたことにはならないと私は思うんです。
ただ、明確に、市場の原理をできるだけ入れていこう、数量についても価格についても公的な関与を低めていこうという方向は、産業競争力会議からはある意味むんむんと伝わってくるわけです。それがいい悪いは言いません。その方向性は一つの考えだと思います。
では、そういうことがあったときに、実際の現場を抱えている農林水産省として、どういうふうにそれを受けていくのか。例えば、価格が下がるということを認めるなら、それに対する所得政策を厚くします、あるいは、所得政策をやるのでなければ、価格を維持するという政策については、手法は変えるけれども、皆さん、安心してください、米価はそんなに暴落しませんよ、そういうことを見せていく。やはりどちらかを語らない限り、所得政策もよくわからない、価格政策もどうなるかわからない。これでは農業を続けられないと思うんです。
その意味で、大臣にお答えいただきたいのは、米について、国境措置、高い関税が課せられていますけれども、このこと以外に何か対策をとる用意はあるのかないのか、この点をお答えいただきたいと思います。
○林国務大臣 先ほどからの繰り返しになりますが、いろいろな、非主食用米への導入、中食、外食、よりきめ細かい状況と申し上げてきましたが、そういう政策展開をする中で、米価が実際の需給状況等に応じて形成されることが基本、これはそのとおりでありまして、こうした取り組みを通じて、需要に見合った米生産の実現を図るということが価格の安定になる、これがまず第一点であります。
さらに、これはもう米にとどまらず、畑作物もそうなのでございますが、いわゆるナラシ、収入減少影響緩和対策について、農産物価格下落の影響が担い手の経営に及ぼす影響を緩和して、安定的な農業経営ができるように、農業者拠出に基づくセーフティーネットとして引き続き実施をしていこう、このこともあわせて、トータルとしてやっていこうというふうに考えておるところでございます。
○玉木委員 冒頭、生産調整について質問させていただいたんですが、米価をどうするのかということは、農政というか政治の根幹みたいなところが長い時期続いたわけですね。もちろん、旧食管制度みたいなものはなくなりましたけれども、米価が一定程度維持する、つまりプライスが維持されるからということで、例えば農済、農業共済は、あれは収量保険になっているわけです。プライスとクオンティティーの中でクオンティティーだけを、その変動を見る保険として見たら、Pが一定なので、結果として収入保険的に機能してきたということがあるんです。だから、米価についてどう考えていくのかということは、農政、特に米政策の転換の中で、方向性をやはり明確に見せる、変えるなら変える、変えないなら変えない、ここはしっかりとお示しをしていくことが私は必要だと思います。これは引き続きやりたいと思います。
今、大臣から少しナラシの話が出ましたけれども、所得政策の方についてちょっと話をしたいと思うんですが、裏返していただいて、資料の四を見てください。
これは、この前、大臣と議論させていただいた際に、国境措置があるので、いわゆる麦とか大豆にあるような国内外の生産条件の格差はないのだという話で、利潤が出ていることがその一例ですという話だったんですが、まさに利潤が出ているんですよ。これは平成二十二年産米について表をつくったんですが、一番右を見ていただくと、販売価格、米価がこのとき下がったんですね。これに対して、定額払いと変動払いを乗せて、赤い点線で利潤が出ているんです。では、この二つの政策がなかりせばどうだったかというと、この黄色の点線でありまして、これを見ると、この二十二年産米でいうと、あくまで平均値です、そうすると、全ての規模の農家でコストの方が販売価格を上回っているんですね。
もちろん、個々の農家では、努力したところ、この状況でも利益を出しているところはいっぱいあったと思いますけれども、平均的な話をしますとこういう状況になっていて、質問したいのは、米において、いわゆる恒常的な赤字の部分、ここを埋める政策を本当にやらなくていいのかどうか。
ナラシというのは、大臣、例えば新マルキンでやっていたり、あるいは漁業であるような収入保険とナラシが圧倒的に違うのは、収入だけに着目して、過去の収入の平均から下がったら補填することになっています。ただ、新マルキンにしても漁業にしても、生産費というコストの概念と販売価格の概念の二つの差の中から補填すべきところを探してくるので、実は大きな違いがあるんですね。ですから、ナラシは、所得政策的に見えるんですけれども、これはある種の保険です。
本当に恒常的な赤字を、コスト割れを埋める政策を米についてとらなくていいのかどうか。この点について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 非主食用米への生産誘導のインセンティブとして数量払いを導入する等々、先ほど申し上げたとおりでございますが、それに、豊作、需要減等に対応するための民間主導による需給安定対策の取り組みが可能となるように環境整備をしていくということも加えて、やはり需要に見合った米生産の実現を図っていくということが大変大事である、こういうふうに思っております。
したがって、影響を緩和するためのナラシの対策を実施するということと、先ほど申し上げたことをあわせて、今委員がおっしゃったように、固定的にかかっている、ここもやはりコストをもう少し見直す方向性がないのか。
また、需要に見合った生産、こういうふうに申し上げましたので、需要に見合ったところにどうやって、先ほど申し上げましたが、地域地域で水田フル活用ビジョンというものをつくっていくときに、固定的に赤字が出るところにずっととどまっているということをそのまま維持するのか、こういう問題があるわけでございまして、永遠にこういうことを補填し続けるのかといえば、やはりそれは、地域で水田フル活用ビジョンをつくっていただいて、需要に応じた生産ということをやることによって、この線も上がっていくし、コストも下がっていく。この両面で見ていかなければならないのではないか、こういうふうに考えております。
○玉木委員 私は、コストの概念を入れて、そのギャップを埋めるという発想は実は極めて大事だと思います。いつまでもそのギャップを埋め続けるようなことはやるべきじゃないんですが、時間の概念を入れて、だんだん抜けていっていただくのは構いません。しかし、全てばさっと一気になくしてしまって大丈夫なのかということは、るるこの委員会でも申し上げているところでございます。
ですから、徐々に大規模化を進めていって生産費を下げていけば、補償する水準も下がっていくので、財政負担もそんなにかからなくなっていくし、だんだん自立的な、ここで言うと右に寄っていくということをどうやって促していくのかを考えるべきだと思っています。
固定払いをやめます、変動払いもナラシになります。もう一回言いますけれども、ナラシは恒常的な赤字を補填する政策ではないんです、少なくとも今の制度は。これを新マルキン的な、あるいは漁業補償的なものに変えていくのであれば違いますけれども、今現在は、少なくとも、恒常的な赤字を埋めるという政策にはナラシはなっていません。
ですから、固定払いと変動払いをともにやめたときに、何か代替的な手段を打たなくていいのかどうか。私は、これをやると一気に離農と耕作放棄地化が進んでしまう気がするんです。これを農地バンクで受けるということなんですけれども、ある意味、多分、どんどん集まってきますよ。
ただ、農地バンクについては今後また法案審議で議論したいと思いますけれども、私は本当に心配していまして、何か代替的な対策を打たないと、民主党の政策だからばらまきと批判していただいて結構なんですが、ただ、現場のことを考えると、一気にこの固定払い、変動払いをともに短期間でなくしてしまって大丈夫なのかという心配があるんです。
それに関して、次の質問に移りたいと思いますが、日本型直接払いです。
多分これが、ある意味、産業政策と地域政策を分けたときの地域政策的なところ、つまり、農地を農地として維持していく、水田だけではなくて、畑地、樹園地、こういったところにも広げていこうということだったと思うんです。
資料の二を見ていただけますか。これは農林水産省からいただいた資料でありますけれども、結局、日本型直接支払い制度といって、マニフェストにも書かれていますね。二〇一二年の衆議院の公約、二〇一三年の参議院の公約、直接支払い制度ですというふうに書いております。
今回、中間取りまとめから出てきたのは、これまでやっていました農地・水を拡充していくような政策ということだと思います。
この模式図を見ると、少しうちの事務所で加工したんですが、左側の下に書いている、いわゆる米の直接支払い交付金、これはなくしていきますね、減額していきますね。それがなくなると、農家所得はへこみます。それに対応して、新たにこの直接支払い制度が乗るので、所得は大丈夫だというような模式図だと思いますが、この日本型直接支払いは直接支払いになっていますか。
つまり、資料を読んでも、農道とか水路、そういったことの整備、あるいは共同事業に対してお金を出していくということなのでありますけれども、やはり多面的機能というのは、そこで営農が継続できて、みんなで田んぼをしたり、あぜの草刈りをしたりして、きちんと保った上、結果として出てくるものであって、水路を直したり、畦畔をのけたり、土木的なことをして何か実現できるものじゃないと私は思うんです。あくまで、そこに営農が継続していないといけないし、農業をやっておいてもらわないと、幾らそこに何か整備事業を入れても、それは多面的機能の発揮にはならないんじゃないのかというふうに思います。
端的にお聞きをします。この農水省のペーパーを見ると、「多面的機能支払」といって、役所のペーパーでは直接という言葉が消えているんですね。この中間取りまとめにも、枠外のところで、政策の整理のところは、「日本型直接支払制度(多面的機能支払)」といってここには出てくるんですが、役所の、行政のつくった文章には直接という言葉がどこにも出てこなくなっているんです。
改めて聞きます。このいわゆる日本型直接払い制度というのは直接払いですか。
○林国務大臣 まず、先ほど土木工事みたいなものでは多面的機能にならないというお話がありましたが、そもそも、なぜそういう畦畔をやったり水回りをやったりするかというと、それは、その地区の方が水田なり農地をやられているからという前提があるわけです。誰も農業をやっていないところでそういうことをやることはまずないということでございますので、営農の継続が前提となっているということは御理解いただいていると思います。
欧米等諸外国の直接支払いについては、農業者の平均の経営規模が我が国の数十倍またはそれ以上ということで、大変大きくなっておりますので、個々の農業者を対象として支払われているのが一般的である、こういうふうに承知をしております。
我が国では、今申し上げましたように、水田を中心に、農業が土地、水のつながりで地域ぐるみで営まれているということ、それから、資料の四でございましたが、先ほど示していただいたように、平均経営規模がまだまだ全国平均で二ヘクタールで、欧米等に比べて小規模であるということで、地域のまとまりを単位として地域の組織を対象とした直接支払いを講じてきておるところでございまして、今回もこういう制度を検討しようということでございます。
特に、我が国の農業は、多雨の気候風土を反映して、国土保全、洪水防止、地下水涵養等の多面的機能が大きいものでありまして、この点に着目して、地域政策として検討しているものですから、日本型直接支払いと称しておるところでございます。
○玉木委員 大臣、農家の所得が安定し、経営が安定するからこそ、そこで農業を続けるんです。農業を続けるから、農道の整備も水路の整備も必要になるんです。その根っこの営農継続ができなくなると、この日本型支払いをする対象がいなくなりますよ。そうなってはいけないので、しっかりとした一定の所得政策が必要なのではないのか、あるいは、だんだんそれをやめていくにしても、いきなりやめるのではなくて、農家にきちんとした計画とビジョンといった方向性を示しながら丁寧にやっていくことが大事なのではないかというふうに申し上げているんです。
最後に、資料の三を見ていただきたいんですが、前回の委員会でも申し上げました、いわゆる石破シミュレーションであります。
石破当時農水大臣が平成二十一年九月十五日に出された、二次シミュレーションと言われていますけれども、この中の全文は、私が極めて共感できることがたくさん書いてあって、例えば、きょうは時間がないので細々申し上げませんけれども、3―4という左側の選択肢、ペナルティー型の減反をやめます。転作作物については、生産調整の条件を課さずにやります。ナラシもそうです。経営所得安定対策に加えて、コストと販売価格の差に着目した新たな下落補填対策を入れて、こういうものをやっていくことが、右に書いていますが、3―4では、麦とか大豆、米粉用米、飼料用米等の生産も増加し、水田面積の減少も抑制される、私はこのような政策こそが米政策のあるべき政策であると考えているというふうにおっしゃっておられます。
最後にちょっとお願いしたいのは、きょうお聞きをしても、一体どういうふうになっていくのか、特に農家の側から見たときにどうなるのかがわからないので、ぜひこの石破シミュレーションと同じようなシミュレーションを出していただきたいんです。そのときに、米価、生産量、消費者余剰、水田面積、あるいは農家の所得、こういったキーとなるファクターについては必ず出していただきたいと思います。
今、予算編成がこれから山場を迎えますけれども、固定払いの単価をどこまで下げるのかということの判断のためにも、やはり財政的な負担がどうなるのかといったようなシミュレーションも大事だと思いますので、本格的に予算編成の政府案が決定する前に、ぜひお示しいただきたい。
もう一つは、これによって、米価が下がったり、あるいは水田面積が減少したりするかもしれない。そうすると、これから審議が行われます農地バンク、農地中間管理機構の審議にもこのデータというのは極めて大事だと思います。どういう姿が出口で生まれるのかということがわからないと、あの法案は審議できませんから。ですから、その意味では、中間管理機構の法案審議の前に、ぜひこのシミュレーションを出していただきたいということを最後にお願い申し上げたいと思います。
大臣、いかがですか。
○林国務大臣 二十一年の九月に公表いたしました、今委員がお示しされたシミュレーションは、多くの選択肢の中からあるべき姿を検討するという点で、大変意義深いものであったと考えております。行政による生産数量目標の配分を継続する場合の七つの選択肢、それから、数量目標の配分も転作助成も廃止する場合の二つで、九つでやっています。
我々が今回中間取りまとめで示した方向性は、生産数量目標の配分に頼らない、それから、水田活用直接支払い交付金は充実を図るということで、いずれもこの九つの中に入らないものであります。
したがって、今回、多く選択肢を定めて何かをその中から決めていこう、こういうことではなくて、既に一定の方向性を出させていただいておりますので、前回のようなことをやろうとは考えておりませんが、米政策の見直し後の米の需給や水田の利用状況の見通しについてのシミュレーションは、経営所得安定対策に係る法案を出そうと思っておりますので、それまでにはお示ししたい、こういうふうに思っております。
なお、農地中間管理機構についてのお話が今ございましたけれども、これは担い手に農地を集積、集約化していくスキーム、先ほど静かな構造改革とも言っていただきましたが、米政策見直し、我々はそこは共通していると思いますが、方向性においてはこの必要性は変わらないと考えておりますので、この法案については速やかに御審議をいただいたらというふうに考えております。
○玉木委員 終わりますけれども、これは中間管理機構法の審議にも極めて重要な情報だと思いますので、その審議に合わせてぜひ出していただくことを、委員長、お取り計らいをよろしくお願いいたしたいと思います。
○坂本委員長 理事会で協議します。
○玉木委員 終わります。
○坂本委員長 次に、鷲尾英一郎君。
○鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。
四十分、時間をいただいておりますが、質問を大分準備してしまいましたので、早速移らせていただきたいと思います。
まず、先ほど玉木委員の質問にもありましたけれども、現行施策の現状と課題、論点整理を踏まえた中間取りまとめ案、農水省の資料を読ませていただきましたが、これを読んだら、現場の農家さんはやはりわからないだろうな。これを読んで、将来自分たちが農業を続けていったら、一体どうなのかというところが全く見えてこないなというところを率直に感じました。その話を質問の後半にさせていただきたいと思います。
まずは、この間、大臣に質問したんですけれども、話が尻切れトンボになってしまったので、そこをちょっと深掘りしたいと思っております。
それは、六次産業化の話です。六次産業化をしていくというところにおいて、六次産業化のファンド法成立後、今、A―FIVEが出資を開始しているところであります。
この間、大臣にも質問したんですが、六次産業化よりもさらに比較的自由度の高い資金使途を認めるということで、ファンドを利用していただきたいということを大臣はおっしゃっていたわけであります。そもそも六次産業化ファンドというのは、自由にお金が使えるということもそうなんですけれども、私自身は、この間、大臣にも御答弁いただきましたが、事業リスクをかなり低めることができるんだ、そういうことを効果として持っている政策だと思っております。
そこで、この六次産業化のファンド、それからアグリビジネス投資育成法人、こういう制度もあります。つまり、生産法人の自己資本を出資によって増強することによって、より事業を強く継続していってもらうというアグリビジネスの投資育成法人という制度もあり、また一方で、六次産業化のファンドという制度もある。この違いを大臣にちょっとお聞かせいただけたらなというふうに思います。
○小里大臣政務官 まず、アグリ社についてでございますが、ここは基本的に、生産部門を中心にして、そして、加工、流通分野にも支援をしていこうという本来の趣旨があります。
一方で、A―FIVEの方ですけれども、これは、パートナー企業も参加をしながら、加工、流通の方に中心を置いている、むしろ、そっちに特化をしている、そういった違いがあると思います。
○鷲尾委員 自己資本を増強する。加工、流通に特化ということも、六次産業化ということでそうなんでしょうけれども、アグリビジネスさんの方は、別に生産法人で加工したって、流通させたって、それはそれでいいわけですから、別にアグリビジネスさんが何か新しい事業をやる、生産に特化するということではなく、やはり、自己資本を増強した上でアグリビジネスは利用してもらって、生産設備なり流通設備なり加工設備なり、何でも生産法人ベースでやってもらったらいいということだと思います。
とするならば、六次産業化ファンドというのは、新たに生産法人とは別の事業体を設立して、そこにパートナー企業やA―FIVEから出資を受け入れて、そこで新たな事業を行っていく。やはり、ここがア社との大きな大きな違いだと思うわけです。
事業者としては、育成法人でそのままやっていったら、当然、育成法人の資本として新規事業についてのリスクをこうむるということになりますけれども、A―FIVEであれば、新たな事業会社をつくった上で、その会社で新たな事業を行っていくわけですから、当然にして、事業リスクとしては、A―FIVEを利用した方が低いだろう、これは道理なわけでございます。
〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
では、その上で私が申し上げたいのは、新たな事業体をつくるわけですよね。そこにみずからも出資をし、パートナー企業からも出資を受けられるわけです。自分たちのリスクとしては、生産法人で何かやるというよりは、その事業会社に出資した限りにおいてのリスクになるわけですから、リスクは革命的に違うわけです。リスクは遮断されるわけであります。これは、六次産業化ファンドの制度としては大変有意な効果があると私は思っています。新たな事業をもともとの生産法人でやるよりは、当然、リスクが低い。
では、新たな事業を、六次産業化ファンドという制度をつくって新たな事業体でやっていこうとする事業者が今もいます。そして、制度が運用されています。その事業体が、当然にして、今、小里政務官からお話があったように、加工、販売を主にして、出資を受け入れて今やっているわけであります。
この間の農林水産委員会で一般例ということで申し上げましたけれども、例えば、レストランを経営する、もともとの生産法人でレストラン経営というわけにはいかない、事業リスクを遮断して、六次産業化ファンドをつくって、A―FIVEから出資を受け入れて、新たな事業会社でレストラン経営をしていこうとする企業体があったとしましょう。
その事業者がそのレストランで、レストランだけじゃなくて、ちょっと何か生産物も売ってみたいなと思ったとします。よくありがちですよね。バリューチェーンとしては、レストランがある、そこに人が来る、これはうまくいった、そこで、では、新たに品物を売っていこう、生産物を売っていこうとしたときに、今は施設園芸が結構売れ筋だとしましょう。そうしたら、生産法人から畑なり農地を借りて、そこで、新しく設立した事業体が、レストランを経営している事業体が生産設備を持とうとすることも、農業者の立場からいったら、制度の利用者からいったら、当然にして考え得ることであろうと思うんです。
そこで、では、その生産設備はというと、A―FIVEさんに提出する計画に対して、生産設備についてはこれだけ必要だから、出資額をこれだけお願いしますと申請すると、その生産設備についてだけだめだと言われるわけですよ。それは、使い勝手という部分であったり、アグリ社との違い、六次産業化ファンドというのは、事業リスクを遮断するという意味において大きな違いがある。
そういう部分からいっても、私はおかしいと思うんです。だって、もしそこで生産設備については、事業会社がだめだということになったら、では、その生産者はどうするか。また生産法人に戻って、ア社か何かで出資を受けられたらいいじゃないかということを農水省さんは今までも言ってこられました。でも、もしそうしたら、事業リスクを遮断するという効果がないじゃないですか。
事業リスクを遮断した上で、新たな事業会社でいろいろなバリューチェーンに基づいて、いろいろ生産なり流通なり加工なりを拡大していくという方向性が、やはり六次産業化のファンドあるいは農業の所得を増進する、農業として高付加価値化していくというためには、政策目標にかなうと思うんです。
何で六次産業化のファンドで生産設備だけだめよと言うんですかということが私の質問の趣旨なんです。大臣、いかがでしょう。
〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
○林国務大臣 聞いておりまして、なるほどなという感じもしないわけでもないんですが、まさに今おっしゃったように、事業のリスクが遮断されるというときに、なぜリスクが遮断される必要があるかといえば、それは本来、農業、林業、水産業をやっておられる方が、二次産業、三次産業という今まで余り手がけたところのないところに、ある意味ベンチャー的に出ていっていただく。そこにリスクが全部かぶってくるとなかなか行きにくいだろうということもあって、六次産業化の場合はリスクを遮断しよう。
本業の農業で、例えば、六次産業化でやったところでお花もつくろう。お花をつくるんじゃないかといえば、多分、出資された農業者のもともとの方は、こっちをたたむということではないでしょうから、こちらでつくっていただいて、当然自分が出資していらっしゃる方ですから、ここに届けるということも当然事業の展開としてはあり得るだろう、こういうふうに思いますので、一応、今のたてつけは、ア社の方で、そういう農業法人については出資というのはありますから、こちらは、さらに新しい二次産業、三次産業も含めたところへ行くところになるべく集中できるように、こういうスタートだったというふうに思っております。
しかし、これがどんどん広がっていっていろいろなケースが出てくれば、また、今委員がお話しになったようなケースも踏まえて、いろいろな検討をしていく余地はあるのではないか、こういうふうに考えております。
○鷲尾委員 大臣から検討の余地ありとコメントをいただいたので、若干満足しているところでございます。
やはり、流通、加工に限定してビジネスの展開というのは考えられるものではないです。事業者が新たな事業意欲を、それこそリスクを自分で負担しながらやっていこうという気持ちになっているわけですから、やはりそういう気持ちを応援する制度であってほしいな、比較的自由度の高い資金使途を認めるということであれば、そこまで認めて初めてなんじゃないのか。
計画の審査は、六次産業化のファンドは、それこそA―FIVEなりサブファンドが徹底的にやっていますから、ある意味、政府が補助事業を審査するというレベルの話じゃない。実際に事業のスキームとしてどうなんだというところを、金融機関並みの審査をしっかりやっているわけですから、そこでその審査があれば、農業者の意欲に免じて、それこそ、この先、ある程度資金使途が拡大していっても、政策の効果を含めて、私は何の問題もないということを最後に申し上げておきたいというふうに思います。
では、六次産業化の話は以上とさせていただきたいと思います。
ちょっと別の話題にかえたいと思いますけれども、中間取りまとめの方に話を進めたいと思います。
まずお話をしたいのは、米の直接支払い交付金をある程度振りかえていくよということでございました。その振りかえるというところの中で、振りかえ、拡充していくんだということでございます。二十九年産までの時限措置で、三十年産から米の直接支払い交付金は廃止をするということでございますが、その中に、今後の施策のイメージとして、水田の有効活用対策の拡充ということで、飼料用米の単価を見直して、数量払いを導入していこう。
先ほど玉木委員の資料にもありましたけれども、多面的機能のみならず、要するに、今の主食用米から随分餌米に転作を誘導することによって所得を確保していくのではないかということがうかがえるわけでございます。
飼料用米なんですけれども、これは新規需要米を、それこそ水田の活用で我々が八万円のお金をつけたときに、餌米というのは非常に有望だと、実は私は地元に説明していたんですよ。
というのは、米の食料自給率の計算の仕方からいっても、今、ほぼ外国産の餌が供給されて、それでもって畜産業者が成り立っているというところの、その外国産の餌をもし国内産にかえられるならば、それはカロリーベースの食料自給率というのは間違いなく上がります。特に、後でこれは質問しますのでしっかりお答えいただきたいですけれども、ある資料を見ましたら、餌の構成割合では、諸外国に比べると、日本はトウモロコシの割合が異常に高いわけですね。そのトウモロコシの割合が異常に高い、その割合こそ、餌米にちょっとでも移ってもらったら、これはすごいことになるんじゃないか、これは有望だと言っていたんです。ですから、目のつけどころは評価したいなと思っておるところでございます。
ただ、本当にうまくいくのかどうかというところまで、あるいは、今皆さんが想定しておるのはどういう事態なのかというところをもっとこの場で明らかにしていただかなきゃいけない。そのような思いでこれから質問させていただきますが、飼料用米の作付面積、これはどういうふうに変わっていますでしょうか。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
飼料米の作付面積でございますが、平成十九年産以前は三百ヘクタール未満でございましたが、平成二十年産におきましては約千四百ヘクタール、二十一年産につきましては約四千ヘクタールとなっていまして、二十四年産におきましては約三万五千ヘクタールとなっておるところでございます。
このように作付面積が増加している背景といたしましては、平成二十年度以降、飼料米の作付に対して助成金が交付されるようになったということと、やはり飼料米については、水田で主食用米と同様の栽培方法あるいは農業機械で生産が可能であるといったことから、取り組みやすいというようなことが要因となったものと考えているところでございます。
○鷲尾委員 時宜を得た政策によってどんどん需要が伸びている、そういう見方もできるわけでございますが、先ほどちょっと御紹介しましたけれども、現在の家畜飼料の動向について、諸外国の状況も踏まえてお聞かせいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
まず、我が国の配合飼料でございますが、平成二十四年度の生産量、全部で二千四百万トンでございます。これにつきましては、その原料の大宗をトウモロコシということで、二十四年度の輸入量は約一千万トンとなっておりまして、トウモロコシを中心とする輸入穀物に依存しているわけでございます。各原料の使用割合については、価格、調達の安定性、栄養素などを考慮しつつ、各飼料メーカーが設計しておりますが、いずれにしましても、その大宗をトウモロコシが占めているというような状況になっております。
それで、そうした場合、二十四年度の主な飼料原料の使用割合は、トウモロコシが四三%、大豆油かす一二%、コウリャン七%、小麦四%、米二%というふうになっております。
他方、例えば欧州でありますとか韓国におきましては、我が国に比べまして小麦が多用されるなど、原料の使用割合が我が国と異なる場合もあると承知しておりますが、これは各国における穀物の生産状況、原料間の価格関係、あるいは畜産農家のニーズに応じたものというふうに認識しております。
例えば、具体的なもので申しますと、養豚の場合でございますが、韓国でありますと、トウモロコシが三四%、小麦が二六%ということになっております。他方、ドイツは、小麦が三五%、その次は大麦ということになっておりまして、各国でいろいろな事情がありまして、構成割合が異なっているというところでございます。
○鷲尾委員 ヨーロッパなんかは、もちろん小麦が自分のところでとれますからというところはあるでしょうし、最近、中国も世界のトウモロコシ市場に参入していると聞いていますが、それまで、例えばアメリカのトウモロコシを輸入しているのは、ほとんどが日本です。
日本は、もともと麦もとれないというところもあったんでしょうし、その中で、安価にトウモロコシを供給できたというところの構造で、おっしゃるように、餌の配分割合も決まっているところはあるでしょう。ただ、先ほどおっしゃったように、米が二%しかないですから、そこに餌米が入ってくる余地は多分にあると思います。
あると思いますけれども、畜産農家の実需として、例えば、その餌となるものの値段であるとか、これはトウモロコシの値段にも左右されるわけでしょうけれども、もちろん餌米の値段にも左右されるわけであります。この実需について、農水省としてどう認識しているのか、今後の動向も含めてお聞かせいただきたいと思います。
○江藤副大臣 実需についてお答えをさせていただきます。
これは、トウモロコシの値段が今三十四円ぐらいですから、飼料用米の方が若干安い、三十二円ぐらい。二円ぐらい安いですね。というのは、トウモロコシの値段によっていわゆる買い取り値段が決まるという相関関係が実はありまして、そういう紳士協定に近いものがあるんです。だから、トウモロコシの輸入価格を横目で見ながら、飼料用米の値段が決まるという形になっております。
では、その実需がどれぐらいあるのかということになりますと、トウモロコシを一千万トン輸入しているというのは御指摘のとおりでありまして、そのうち、まず半分ぐらいはいけるんじゃないか。
しかし、豚、鳥、それから牛についても、どれぐらいの量を食べさせても肉質に極端な影響が出ないか。そういう合理的な数字は、もう実験を平成十九年ぐらいからやっておりまして、数字がありますので、御参考までに。採卵鶏であれば二〇%、ブロイラーで五〇パー、豚で一五パー、乳牛で一〇パー、肉牛では三%ぐらいしかまぜない方がいい。これが安全な配合比率ということになっておりまして、それを足すと四百五十三万トンというのが、安全に代替できる水準というふうになっております。
○鷲尾委員 今のデータは非常に貴重なデータだと思います。やはり需要家というか業者さんによっては、自分たちのブランドを保つために、餌というものの配分割合に極度にこだわっている業者さんもいるわけですから、安易に、餌が、どんどん実需がふえるんだよと想定をすること自体は、私はちょっと危険かなと思っておりました。
そういった科学的な知見があるということであれば、それはそれでぜひ参考にしていただきたいと思うし、ただ、それが実際に受け入れられるかどうかというのは、やはり市場という生ものがどう反応するかというところもありますから、ぜひそこは慎重に御対応いただきたいと思っているわけであります。
他の新規需要米、この状況についてちょっとお聞きして、その危険性について指摘をしたいと思います。
○佐藤政府参考人 先生の御質問は、いわゆる米粉用米かと思いますが、米粉用米につきましては、生産量は、平成二十年産から本格的な生産が開始されまして、需要の伸びとともに、平成二十三年産まで順調に生産が増加してきていまして、数字的に申しますと、二十年産が〇・一万トン、二十五年産が二万トンということになっておりますが、生産量は伸び悩んでいるような状況となっております。
また、米粉用米の取引価格は小麦よりも安い水準でございますものの、製粉コストというのが高いことから、米粉は小麦粉価格よりも高い水準となっておりまして、小麦粉六十キログラム当たり六千円に対しまして、米粉は七千二百円から一万八千円というような状況に相なっているところでございます。
○鷲尾委員 ちょっと今のお話を聞きますと、コストの面もかなり需要に影響してくるのかなと。ただ、そもそも需要も、私は、仄聞するところによると、やはり米粉という特質上、需要にどうしても制限がかかってしまうというか、なかなかいい商品なり製品なりが開発されないというところから、どうしても伸び悩んでいるという状況も聞いているわけでございます。
ですから、需要というのはそう簡単に、データは大事ですけれども、データに基づいて需要がどんどん上がっていくんだというのは、私はちょっと危険かなと思います。ですので、ぜひそこは気をつけていただきながら、次の質問に移りたいと思います。
飼料用米は、今、現状もある問題ですけれども、飼料用米を主食用米に横流しするという行為も当然ないわけじゃない。同じく水田に作付する。そして、食べられる餌米だってある。そういう中で、多収量の専用品種を導入するということもうたってはおられるけれども、果たしてそれを本当に農家さんが選ぶかどうかも含めて、大多数は善良な農民の皆さんだと思いますよ。でも、中には不心得な方もいらっしゃるわけでありまして、余りにも実需が伸びないと、やはり米の市場自体に変な影響を及ぼすのではないかと思うわけであります。
そういったことも含めて、さまざまなリスクがある。餌米、先ほど江藤副大臣もおっしゃったように、トウモロコシの値段で紳士協定。今は紳士協定かもしれない。この先はどうかわかりません。その値動きによって餌米の値段も変わってくる。場合によっては、餌米がどおんと伸びて、トウモロコシの需要を食うとなったときに、トウモロコシがどんどん値を下げてくるかもしれない。値を下げるに当たって、飼料用米の価格も下がってくるとするならば、結局、農家さんの所得は、つくったって値段にならないという話になります。
そうすると、一番困るのは農家さんだと思うので、その点も含めて、ぜひ慎重に御判断、また制度設計をしていただきたいと思いますが、大臣の所感を。
○江藤副大臣 国内で、五百万トン、例えば飼料用米をつくったからといって、国際価格であるトウモロコシの値段が大暴落するとは余り考えません。
今の流通のスキームを見ますと、十八万トンつくっていて、九万トンはマッチングで畜産農家と直接やっているわけですが、九万トンについては、農協が集荷をして、くみあい飼料にそのまま持っていく。非常にシンプルな流通のスキームができ上がっていますから、トウモロコシが持ち込まれている部分が米に置きかわるということであって、新たな設備投資が特に必要ということでもありませんし、これは先ほど紳士協定と言った言葉がちょっと不適切だったかもしれませんけれども、私は、このルールは、農協さんであるとか、くみあい飼料さんというのは、お互いがあって、自分たちがあって相手さんがいるという共存共栄の関係ですから、こういうシステムというものは当然守られていってしかるべきものだというふうに思っています。
○鷲尾委員 それでは、続いての質問に移りたいと思います。
多面的機能の維持増進について、中間取りまとめに関連して質問をしたいと思います。
というのは、多面的機能支払いの創設というところの中で、これは説明を読んでいても、この農地維持支払い、それから資源向上支払い、仮称ですけれども、これを見ていますと、よくわからないですね、何をやりたいのか。
そこで、農地・水保全管理支払交付金というのが現行の制度でありますから、ここから敷衍して考えてみたいと思います。
この農地・水保全管理支払いで幾つか、それこそ共同活動支援交付金であるとか、向上活動支援交付金であるとか、これもさまざまな態様を認めているわけでありますけれども、これと農地維持支払いの内容はどう関連してくるのでありましょうか。
○林国務大臣 これは、あくまで中間取りまとめですので、お読みになってなかなかわかりにくいと。確かに、今からこれを詳細に詰めて、単価なども入れていかなければなりませんので、これでもう全部決まりましたということでないということをまず申し上げておきたいと思います。
その上で、新たに導入する日本型直接支払い、これは地域内の農業者が共同で取り組む地域活動のコストに着目して支援を行っていこう、こういうことでありますので、具体的には、農業者等で構成される集落等の活動組織が地域活動を行う場合、例えば基礎的活動としては、農地の保全活動、水路の泥上げ、農道の草刈り、こういうことを含む、その他の地域活動としては、集落機能の強化、こういうことを方向性として出しているわけでございます。
今おっしゃったように、農地・水保全管理支払い、今やっているものですが、ここで、水路、農道の清掃などの活動、こういうことが入っておりますので、ここはある意味で重複するということになってくる可能性があるわけであります。したがって、農地・水保全管理支払いの方を組みかえ、名称変更しまして、重複する部分の活動については支援水準から除くとともに、多面的機能の増進に寄与する活動を含める、こういうことをやろうという方向で検討しているというところでございます。
○鷲尾委員 ちょっと違う答えを想像していたんですけれども。
いろいろお話を聞きますと、農地・水保全管理支払いの中の共同支援交付金がある。この共同支援交付金の中でも、基礎活動と農村環境保全活動というのがある。その中でも、この基礎活動というのがどうやら農地維持交付金に入るというふうに私は聞いておったものですから、そういうことなのかなと。もちろん農地維持支払いというのは、今大臣がおっしゃったとおり、それ以上に、集落機能をどう維持していくかということもプラスして入るということでありますから、もちろんこれだけではないということなんでしょうけれども、そこはそういう認識でいいんでしょうか。どうでしょうか。
○實重政府参考人 お答え申し上げます。
現在の農地維持保全管理交付金の中で、委員御指摘のように、水路や農道について社会資本の維持管理という意味で清掃活動などを行う部分がございます。
この部分については、農地・水保全管理対策を行っている地域だけではなくて、広く一般的に行われている部分がございますので、これについては、新たに農地維持支払いに含めるということでございますが、農地維持支払いにつきましてはそれだけではございませんで、農地、水路、農道等の地域資源の基礎的な保全活動、このほかに、それ以外にも多面的機能の発揮を支える地域活動、これらを対象にしたいと考えておりまして、これらのコストを調べまして、それに着目して検討を行っているところでございます。
○鷲尾委員 では、少なくとも基礎活動の部分も入るということが明らかになったわけでございます。
その上でなんですけれども、中間取りまとめの中にもあったと思うんですが、農地維持支払いは、対象面積を畑地、草地も含めて四百万ヘクタール以上を想定しているということであります。
あえて聞きますが、それでは、現在の農地・水保全管理支払いの対象というのはどういう形になっているのでしょうか。
○實重政府参考人 農地・水保全管理支払いの対象となっている面積は、約百四十六万ヘクタールでございます。それから、大きな地域政策として直接支払いを行っているものに、ほかに中山間地域等直接支払いがございますが、この対象面積が六十八万ヘクタールでございます。両方を行っているところも十五万ヘクタール程度ございますので、合わせて二百万ヘクタールとなっております。
これらが行われている具体的な地域につきましては、中山間地域等直接支払いは、これは主に傾斜地を中心とする条件不利地域でございます。それから、農地・水保全管理支払いについては、水田が百二万ヘクタールで約七割を占めておりまして、ほかは畑や草地といった形で取り組まれておりますが、水田地帯を中心に取り組まれているということでございます。
○鷲尾委員 これを、四百万ヘクタール以上を想定というのは、今は約二百万ヘクタールということであります直接支払い、中山間地も含めて、制度としては、今二百万ヘクタールくらいが、もっと言うと、活動をしているというところなんでしょうけれども、これが四百万以上になるというのは、どういうことを想定されているんですか。
○小里大臣政務官 農地・水保全管理支払い、これと中山間地域を合わせて二百万ヘクタール、これをどうやって四百万ヘクタールへ持っていくんだ、そういう御質問であろうと思います。
農地・水保全管理支払いは、要件として、一般住民の参加する活動組織というのが一つの要件にあります。あるいは、花の植栽等の環境保全活動を行うといったような要件があるんですね。そういったこともあってでしょうが、頭打ちになっているというのはあると思います。
そこで、新たに導入する多面的機能支払いは、先ほどお話にあったように、水田に限らず、畑、樹園地、草地も広く含めていくというのがまず一つあります。それから、今の申し上げた要件、一般住民の参加要件、あるいは花の植栽等のいわゆる環境保全活動要件、こういったものは求めないということにしております。要するに、先ほど御指摘のあったような草取りとか水路の泥上げとか、そういう基礎的保全活動そして地域活動、広くこれを対象にしていくということであります。
また、組織面でも、現在の農地・水保全管理支払いの活動組織あるいは中山間地域等直接支払いの協定集落等を広く活用を図って、しっかりこれを促進していきたいということにしております。
○鷲尾委員 二百万を四百万にする、これは、ただただ二百万から四百万になる、このことがいいのかどうかも含めて、ちょっと考えてみたいんです。
さっき二百万だという話をしたのは、そもそも、今活動をされている方が二百万だという話なんですね。何か全体の戦略性の中で、それこそ土地改良計画もあるし、国家として集落機能をどう維持していくかというところの中で、大きな予算はつけられないけれども、農地・水保全管理支払いでもって自立的な取り組みも応援をしていこう、私はそんなイメージを持っていたんです。
ですから、自立的な、それこそ補助金を利用する人たちがふえればふえるほど、それはより好ましいだろうなという、そんな漠然とした、漠としたイメージを思い描いたわけですけれども、そもそも、今、二百万ヘクタール、中山間地も含めてというのはどういうものなんですかと聞いたら、いや、今取り組んでいる人たちが二百万ヘクタールなんですという話だったんですよ。
そうしますと、では、四百万になりますというのは、では、四百万取り組む人がいますというだけなのか、もっと戦略的な意味が必要なんじゃありませんか。もし、多面的機能を維持するということ、多面的機能維持支払いをこれから創設するということであれば、そういう取り組みがふえればふえるほど、それこそ日本の集落機能、あるいは多面的機能、これが維持される範囲が広がるということなんですから、何らかの戦略性を持った目標値というのが必要になってくるんじゃないかと私は思ったわけです。
ですから、この四百万というのは目標値ということなのか、ただそういう形で、今は二百万だから畑地と草地を含めて四百万になりますよ的な、何か意味のある数字の積み上げじゃなくて、単なる、ただ事実としてそうなりましたということなのかどうなのかというところをお聞きしたいんです。
○小里大臣政務官 公約にもうたってきましたように、この制度は多面的機能を維持することに対して支払っていくという本来の趣旨があるわけです。
では、いかなる農地が多面的機能を担っているのかとなりますと、これは水田に限らず、畑地、樹園地、あるいは草地も含めていくということであります。では、農振農用地に限るのかとなると、農振農用地だけではない。したがって、四百万ヘクタール以上を対象としている、本来の戦略に沿った想定になっているということです。
○鷲尾委員 その本来の戦略性というものが、話を聞くところ、うかがえなかったというところなんですね。だから、そこを改めるのかどうかというところが実は質問だったわけであります。政務官、そうなんですよ。
土地改良計画というのは、さっき農振農用地域だけじゃない、確かにそうです。
では、土地改良計画との関係でいうとどうなんでしょうか、ちょっと時間がなくなってきましたけれども。
○實重政府参考人 平成二十四年三月に土地改良長期計画を閣議決定しておりますが、その中で、目標としての事業量が定められておりまして、農地、農業用水等の保全管理に係る協定に基づく地域共同活動、これは現行の農地・水保全管理対策と中山間地域等直接支払いを念頭に置いたものでございますが、これは約二百万ヘクタールの農地において適切な保全管理を実施するということとされているところであります。
これは、現状で、先ほど申し上げましたように、農地・水保全管理対策が百四十六万ヘクタール、中山間地域等直接支払いが六十八万ヘクタールで、双方行っているところもございますので、合計して二百万ヘクタールになっているということを踏まえまして、現状の実績値を維持しながら、しかし、向上活動などもございますので、質的な向上を図ろうということにしていたものでございます。
今回の多面的機能支払いは、農地・水保全管理対策や中山間地域等直接支払いの対象となっていない農地につきましても、広く我が国全体として多面的機能を確保していく上で農地を維持することが必要であるという考え方に立ちまして、新しい要件のもとに広範に対象になるようにしたいというぐあいに考えているところでございます。
○鷲尾委員 大臣、これは対象になるかどうかという話なんです、結局。
ですから、本当に国家として多面的機能を維持する、多面的機能を維持というのは、それはもう政策判断ですから、我々野党がどうこうという話じゃないですけれども、であれば、やはり戦略性を持って取り組んでいただきたいということです、それぞれの目標をいろいろ立てておられるけれども。
まあ、現行をもうちょっと対象を広げましょうよという、そういうちっちゃい話であれば、それも実績としては大事なんでしょう。でも、やはり国家全体として戦略性を持って、では、多面的機能を維持する農地はどこまで広げていくんだというところの中で、それが五百万なのか六百万なのかわからないけれども、その中でこの取り組みをどうしていこう。でも、現行を積み上げていくと四百万くらいになるな。では、この百万をどういうふうに埋めていこうというのが私は政策のあるべき姿だと思います。
ですから、そういった部分を、今これは中間取りまとめですから、ぜひ考えていただきたいなと思うわけであります。
最後に一点だけいいですか、ちょっと時間が過ぎて申しわけないんですけれども。
先ほど玉木委員も、直接払いの直接というのがないんじゃないの、多面的機能維持支払いはという話がありましたけれども、中山間地の直接支払いですと、集落ごとにお金が入って、そこで個人のものと共同作業のものとを分けて配分していくわけです。この多面的機能を維持する、この多面的機能維持支払いというのはどういうものを想定しているのか。その部分でも、お金の配分方法もですね。
○坂本委員長 小里政務官、簡潔にお願いします。
○小里大臣政務官 はい。
従来、中山間地あるいは農地・水保全管理支払いについては、協定集落あるいは活動組織が対象となっておりますが、実際の支払いにおいては、個別の農家において活動量が違いますから、日当制等を導入したりして、実際には半分近くが個人に行っているという現状にあります。
今回の新たな支払いにおいても、地域への支払いをまず原則にしますが、その先においては、同様な展開もある程度は予想されるということであります。
○鷲尾委員 そこも、また委員会でも質問させていただきますけれども、中間取りまとめですから、余り適当なものを出していただきたくないんですけれども、詰まっていないところを徐々に明らかにしていただきたいと思うし、何せ、とにかく現場で、特に大規模農家さんは、戸別所得補償、経営所得安定対策、米の直払いがなくなったら大変だという認識も持っていますから、多面的機能維持支払いも極めて重要な要素でありますので、しっかりした制度のつくり込みと、激変はなしよということで、そこはぜひ、そういう思いで対応方よろしくお願いします。
質問を終わります。ありがとうございました。
○坂本委員長 次に、岩永裕貴君。
○岩永委員 こんにちは。維新の会の岩永裕貴でございます。よろしくお願いいたします。
ここからは、二十五分間お時間をいただいております。少し農業とは離れさせていただきまして、漁業と林業について少し議論をさせていただきたいと思います。
今国会で、我が党の共同代表でございます石原代表が、尖閣周辺での漁業をめぐる状況について総理に御質問をいたしました。その質問に対しまして、総理は、尖閣諸島について言えば、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土である、現に我が国はこれを有効に支配しており、我が国のもとにあるとされながらも、尖閣諸島及び海域を安定的に維持管理するための具体的な方策については、さまざまな選択肢がある、実際にどのような方策をとるかについては、まさに戦略的観点から考えていくべきものと考えておりますというふうに述べられております。
実際、ことしの四月には、台湾との間で日台漁業取り決めが締結をされました。その内容は、ほとんどが、我が国の排他的経済水域の中に広大な法令適用除外水域が設定をされまして、台湾漁船の操業が認められることとなりました。
外交的な、戦略的な判断があったんだと思います。この御判断については私も評価をさせていただいておるところではございますが、やはり、地元の漁業を営んでいらっしゃる皆様方にとっては青天のへきれきであったでしょうし、その中の操業ルールというものが決まらない中で、一定のエリアが決まってしまったというところには、いまだなお大きな不安を抱えていらっしゃることと思います。
まず最初の質問ですけれども、日台漁業取り決めについてのルールづくりの進捗状況について、少し御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○小里大臣政務官 御指摘の日台民間漁業取り決めにつきましては、今後の操業において不安の声があるということは十分に承知をしているところであります。
このような状況の中で、関係者の皆様が、漁業者協議会を設立して、日台間の漁業問題の対応について意見集約を図るべく、御尽力をされております。
その中で、先日、十月十日でありますが、同協議会におきまして、操業ルール等に関する意見が大筋でまとまりました。これを受けて、関係する、特に宮崎県等と今調整を進めております。
今後、沖縄を初めとする漁業者の皆様の御意見をしっかりと踏まえて、できるだけ早期に台湾側との間で操業ルールが確立されるなど、漁業者の方々が安心して操業できる環境をつくっていきたいと考えております。
○岩永委員 昨日も少し農水省の方に伺ったんですが、その取りまとめがいつ行われるのか、そして、どうした形でその交渉が行われるのかというところについては、秘密という言葉も使っていらっしゃいましたけれども、もちろん秘密の部分と、まだ少し先行きが見えない部分というのがあるということですが、現状、そういった中で、非常に困っていらっしゃる漁民の皆さん方がいらっしゃるということ。
そして、特に日台漁業取り決めの水域では、台湾のはえ縄漁船によって日本の漁連が操業しがたいという状況とも言われております。具体的に、こうしたものへの補償というのは、現時点では行われているのかどうかということについても御説明ください。
○小里大臣政務官 御指摘のとおり、この取り決めの締結後に、この適用水域において、多数の台湾のマグロ漁船が展開をしているということは承知をしております。
こうした水域におきましては、宮崎県、長崎県などの漁船が一部操業を行ったものの、沖縄の漁業関係者は、トラブル等を懸念してか、主として先島諸島南側の水域で操業を行わざるを得ないという厳しい状況にあることをまた重く受けとめているところであります。
このため、沖縄県漁業者を初めとする国内漁業関係者の声をしっかりと受けとめながら、早期に台湾側との間で操業ルールが確立されるように全力で努力しますとともに、総合的な対策についても早急に検討してまいりたいと思います。
○岩永委員 ぜひ、そういった交渉の結果、漁民の皆さん方、漁業を営んでいらっしゃる皆様方にしわ寄せが来ないような形で、しっかりと外交交渉の方を行っていただきたいということを、まずはお願いをさせていただきます。
続きまして、日中の漁業協定について少し質問をさせていただきたいんですが、日中漁業協定の概要、特に漁獲高、また、その上限などについて、二国間の報告義務というものがあると思うんですけれども、そうしたものも中心に、この協定の概要について御説明をください。
○本川政府参考人 日中漁業協定でございますけれども、国連海洋法条約の趣旨に沿った新しい漁業秩序をつくるということで、ともに関心を有する海洋生物資源の保存、合理的な利用、海上における正常な操業の秩序を維持するという観点から、平成九年に署名をされまして、平成十二年に発効した協定でございます。
この協定におきましては、まず、日中双方が、自国の排他的経済水域における資源状況を考慮して、相手漁船に対する漁獲割り当て、その他の操業条件を決定いたしまして、自分の国の排他的経済水域で漁獲を行う相手漁船に対して許可と取り締まりを行う、相互に入会をするという海域を決めて措置をとっております。
それからまた、東シナ海などにおきましては、相互入会の措置をとらない水域として、暫定措置水域及び北緯二十七度以南の水域が設定されております。
この協定の目的を達成するために、日中漁業共同委員会が設置をされ、ここにおきましていろいろな協議を行って、両国政府に勧告をしたり、あるいは暫定水域における資源の保存管理措置などについても協議、決定をするということで、少なくとも一年に一回、こういう会合を開いて協議を行っておるという状況でございます。それから、操業の隻数なり、そういうものについてもそれぞれ決められまして、そこでの操業実績をそれぞれ報告し合うということで運用されている、そんな実態にございます。
○岩永委員 年に一度、それぞれ二国間でその実績について報告をし合うというところなんですけれども、漁獲量の話をしているんですが、その数字を、きょうの朝、二〇〇七年から二〇一一年の五年間というところでいただきました。
この実績の数字というのは、どういうプロセスで各国でつくられて、それぞれに報告し合うのかというところを、少し御説明ください。
○本川政府参考人 それぞれ暫定水域に、今のお話は恐らく暫定水域の数字だと思いますが、暫定措置水域に出漁するときには、出漁漁船をあらかじめ登録して相手に通報するというようなことをやっておりまして、その登録した船から漁獲実績の報告を受けて、政府が取りまとめをして、それぞれ相手国政府に通報するといったような仕組みがとられているわけでございます。
○岩永委員 この水域で行われている中国漁船のさまざまな操業、報道等を通してもそうですし、自分なりに調べさせていただいてもそうなんですけれども、例えば、二年前には虎網漁船というものが八隻程度しか確認をされていなかったものが、ここ二年を見てみると、約三百隻までふえているとか、無免許運転、無免許操業というのもあると思うんですけれども、中国側が出してきている実績の数値について、私自身は少し疑いを持っているんです。
こういったことについて、客観的に見てみると、数字が明らかにおかしいのではないかという疑念を私は持っているんですけれども、中国側が実績として挙げている数字に対しての印象というか、どう思っていらっしゃるのかなというのを率直にお伺いさせていただきたいと思います。
○本川政府参考人 虎網漁船につきましては、私ども把握している限りにおいて、国レベルで把握している漁船は、今、二百九十隻程度あるというふうに伺っております。
ただ、問題なのは、これ以外にも、無許可で、中国政府自体がコントロールできていない虎網漁船が相当あるのではないかといったようなことが言われております。
恐らく、私どもが報告を受けております数字というのは、正規に、この海域に出ることを合法的に認められておる登録漁船の数値としては、中国政府が責任を持ってきちっと報告をしていただいていると思いますが、恐らく、先生がお持ちのような印象は、この二百九十隻の外にいる無許可の虎網漁船が相当影響しているのではないかということが印象として出てきているのではないかと思います。
虎網漁船につきまして、私どもとして、ことしの日中漁業共同委員会でも取り上げて、それぞれ無許可の漁船を見かけたときには、我々として相手に通報し、相手国もそういうものに対して厳然たる措置をとるといったようなことについて、これからきちんとやっていこうという申し合わせをしている、そんなような状況でございます。
○岩永委員 そのような御答弁になると思うんでしょうが、ストレートに言わせていただくと、結構この水域で中国側はむちゃをしている、ルールを恐らく守っていないというふうな問題意識を私は強く持たせていただいております。
報告される数字の内容というものをいかに客観的に証明できるのかというような仕組みづくりも二国間で今後つくっていくべきだと思いますし、日本の先人が、生態系を含め、本当に長い間守り育ててきたこの漁場というものを、私たちの世代がまたしっかりと守っていく、生態系もしっかりと守っていくということが、国益という観点からも大変重要なことだと思います。正直者はばかを見ないという言葉がありますけれども、日本側がしっかりとルールを守った中での秩序ある操業を行っている反面、私の印象ではありますけれども、中国側がどうなのかなというようなところもございます。
報告義務等についても、先ほど申し上げました、数値の内容が客観的に互いにしっかりと証明でき合うような、そんな仕組みづくりに取り組んでいただきたいと考えておりますが、大臣、もしくは副大臣、もしくは政務官の方で、そのあたりに対する所見がございましたら一言お伺いしたいと思います。
○林国務大臣 今、長官からお話がありましたように、そういう仕組みでやってきているということでございますので、これはあらゆる外交、それから決め事、協定に共通することでございますが、決めたとおりにお互いきちっとやるということが最低限の前提になっているわけでございますので、そこに疑義が生じますと、なかなかいろいろなものがその上に成り立っていかないということは、委員の御指摘のとおりでございます。
具体的に、では、どうやって担保ができるのかということになってまいりますと、なかなか難しいところもあろうかと思いますが、しっかりと主張すべきを主張しながら、協定があるわけですから、いろいろな場において指摘するべきは指摘していく、こういうことが大事ではないかというふうに考えております。
○岩永委員 ぜひよろしくお願いいたします。
続きまして、林業について、残った時間で質問させていただきます。
ざっと簡単に申し上げますと、日本は、昔から国産木材というものを自給率一〇〇%という中でずっと利用してきました。でも、外材の安定供給の強みというところとか、恐らく一歩、二歩進んだビジネスの形というものが日本のマーケットに受け入れられて、木材自給率の低迷というものが長年続いてまいりました。
でも、ここに来て、諸外国の輸出規制があったりとか、環境の問題、そして中国等における需要の急増、また為替などの要因によって、外材の安定供給にも少し陰りが見え始めたこともあり、国産木材の利用率というものが近年急激に伸びているということだと思います。
そして、今、国産木材の利用率を伸ばしていく絶好の機会でもあろうというふうに思いますし、林業という世界は、本当に川上から川下という言葉も使われますように、改革すべき点、そして改善していくべき点が多々ある分野でもございます。
そこで、まずお伺いをさせていただきますのが、前政権下で作成をされました森林・林業基本計画について、今回政権がかわったわけなんですが、その目標とか理念、そして、その方向性というものをどのように位置づけておられるのかということについて、御答弁いただければと思います。
○林国務大臣 岩永委員が今おっしゃられたように、いろいろな状況が今変わってきている。それは、もう少し長い目で見ますと、国土の七割を森林が占めるこの森林国で、戦後ずっと我々の先輩方が植林をしていただいて、まさに今、これを利用可能な段階まで持ってきていただいた、ここに感謝をしなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。
したがって、充実しつつある森林資源を活用して、今お話をしていただきましたように、自給率を向上させていくということは、森林の多面的機能の持続的発揮や、林業、山村地域の振興を図る上でも重要だと思っております。
今お話しいただきました、二十三年に閣議決定した森林・林業基本計画のもとで、我々もこのバトンを受け継いでしっかりとやっていきたい、こういうふうに思っておりまして、川上から川下に至る総合的な施策の展開をしていきたいと考えております。
具体的に幾つか申し上げますと、CLT、クロス・ラミネーテッド・ティンバーというのがございますが、こういう新製品や新技術で、新たな木材需要の創出、例えば、CLTを使って、構造材に使えますので、少し高い建物もつくっていく。それから、法律も通していただいておりますが、公共建築物の木造化、木質バイオマスのエネルギー利用、木材利用ポイント、こういうことによって利用の拡大を図るということと、それから、現場においても、施業の集約化、路網の整備、国産材の安定的な供給体制をそういうことによって整備をしていきたい、こういうふうに考えております。
それぞれ地域によっていろいろな事情がございますので、地域の実情を踏まえてこういうものを進めていくことによって、林業の成長産業化を実現してまいりたいと考えております。
○岩永委員 今の御答弁でいきますと、少なくとも、この基本計画の見直しの五年間、平成二十八年までは、この基本計画のもとに林業についての国の方向性というものを定めていくということでよろしいでしょうか、改めまして。
○林国務大臣 今お話がありましたように、これをしっかりと受け継いでやっていくということでございますので、よほど何か事情の変更があればまた別だと思いますが、この基本計画に基づいてやってまいりたいと思っております。
○岩永委員 そして、具体的に、川上から川下というような言葉がございますけれども、恐らく、集約化と路網の整備、そして、安定供給と木材需要の促進というところが今後の林業の方向性を決めていく上で非常に大切な部分であると私自身は考えております。
特に、どこの森林組合さん、そして、かかわっていらっしゃる民間の企業さんに聞いても、集約化というのが本当に難しいという声が多々ございます。
国交省の地籍調査によりましても、林地の進捗率というものが四三%。特に近畿圏、そして関東、中部、北陸といった部分においては、本当に一桁台しか進んでいないところもあるというぐらい、この地籍調査というものが進んでいなかったりとか、これは少し古いデータではありますけれども、森林の所有者の皆さん方にアンケートをとったところ、その村に住んでいらっしゃる方でも、あなた自身が所有している森林の境界を知っていますかというものに対して、四三%の方がわかっている、大体わかっていますよという方が三八%ぐらいいらっしゃる。そして、そこに住んでいらっしゃらない方に至っては、わかっていると答えていらっしゃるのが一三%、大体わかっているというのが三八%。
この大体というところを明確化していかないと集約化というものは進まないんですが、集約化というもの、そして、あわせて、森林・林業基本計画におけます搬出間伐の進捗状況というものと、そこに対する問題意識についてお答えをいただければと思います。
○沼田政府参考人 お答え申し上げます。
まず、集約化の問題でございますけれども、先生御指摘のように、森林資源をこれから有効に活用していく上で、施業の集約化は極めて重要な課題だと思っております。
私ども、二十三年の森林法改正で森林経営計画制度を設けたところでございまして、そういった計画の作成に着実に努めていきたいと思っております。
ただ、一方で、こういった森林経営計画の作成でありますとか施業の集約化、こういったことをさらに進めていくためには、森林所有者の同意取りつけなどに手間や時間を要する、あるいは森林所有者の情報がまだきちんと把握されていないということがございますので、そういった意味で、例えば、間伐等の施業集約化の促進の取り組みに現場で中核的に担っていただくような森林施業プランナーでありますとか、そういったいろいろな方々の養成、育成に努めているところでもございます。
また、森林情報、地籍調査の点も御指摘いただきましたけれども、二十三年の森林法改正で、新たに森林の土地所有者になった場合に市町村への届け出が義務づけられる、あるいは、市町村や都道府県の林務担当部局が、法務局など他の行政機関が有する情報を利用することが可能となってきている。こういった制度を活用して、森林所有者情報のより的確な把握にこれからも努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
それから、間伐の実績でございますけれども、間伐につきましては、御承知のように、京都議定書の第一約束期間、平成二十年から二十四年まででございますけれども、その森林吸収量の目標値でございますが、一九九〇年の総排出量比で三・八%という目標を掲げさせていただいておりました。そのために、平成十九年度から二十四年度までの六年間で三百三十万ヘクタール、年平均五十五万ヘクタールでございますが、間伐を行うこととしておりました。
所要の予算を確保させていただきまして、これまで、平成十九年度から二十三年度実績でございますけれども、二百七十六万ヘクタールでございます。こういったことで、平成二十四年度までの六年間で三百三十万ヘクタール、この目標というのは達成できる見込みになっております。
また、搬出間伐の御指摘でございますけれども、間伐材の合板でありますとか木質バイオマスの利用、これが大いに進んできておりまして、そういった意味で間伐材の利用量というのは大幅に増加しているものというふうに考えているところでございます。
○岩永委員 国産木材にとりまして、先ほど冒頭申し上げましたように、今、非常に大きなチャンスが日本には訪れている。ここで、いかに計画的に、現実的に、そして総合的に、スピード感を持って施策が打てるのかということが本当にキーになってくると思います。森林は、もう言うまでもございませんが、刈る、使う、育てるという基本的なサイクルが数十年と非常に長い業界でもございます。このチャンスを本当に無駄にしないためにも、市場がまた再び外材へと転換しないように、多角的な施策の実行というものを願っていくんです。
先ほど長官からもおっしゃっていただきましたように、前政権下で定められた基本計画の中の森林経営計画というところが、私はすばらしい発想だと思っております。これも、現場の皆様方に聞くと、少しハードルが高過ぎるとか、やはり集約がなかなか難しいとか、いろいろなお声はあるんですけれども、林業に携わる皆様方の自立ということを長い目で考えたときには、森林経営計画というものを何とか業界を挙げてやり切るというところが非常に大切な部分だと思っております。
そういったことも含めまして、大臣の方から、副大臣の方から、政務官でも結構なんですけれども、林業を積極的に進めていく上での覚悟を一言、最後にお聞かせいただければと思います。
○林国務大臣 今長官からもいろいろな話をしていただいたところですが、冒頭申し上げましたように、また今委員も改めておっしゃっていただいたように、今はチャンスである、この認識を強く持って、そのチャンスはどうして訪れているかといえば、先輩方が営々と戦後植林をやっていただいた、その上に我々はいる。
ここを肝に銘じて、現場サイド、供給サイド、それから需要サイド、両面にわたって、しっかりと取り組んでいきまして、林業を成長産業にするために頑張ってまいりたい、こういうふうに思っております。
○岩永委員 ありがとうございました。
○坂本委員長 次に、村上政俊君。
○村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。
本日は、都市農業について、大阪の農業を例にとりながら伺ってまいりたいと思います。
この農林水産委員会において、都市農業あるいは大阪の農業ということは、取り上げられることは非常に少ないと思うんですけれども、重要性について、いろいろと質疑の中で明らかにできればと思っております。
さて、私は大阪四区というところの選出でございまして、私の地元で農林水産業に携わっている方は全くいらっしゃいません。選挙区の中は、大阪市役所とか大阪駅があるところでございます。そういった土地柄なんですけれども、大阪の選出ということで国会に送り出していただいているわけでございますので、簡単に大阪の状況についてお話しさせていただくと、まず、委員部に聞いたところ、大阪の小選挙区を持っている委員がこの農林水産委員会において質疑したのは、平成十七年以降は二回だけ。その内容は、議事録を見てみたんですけれども、やはり農政一般についてであって、大阪の農業であったり、都市農業について取り上げられることはなかなか少ないということでございます。
しかしながら、ちょっと大阪の自慢を少しさせていただくと、シュンギクは全国で二位、それからフキ、イチジクは全国で三位ということで、都市のイメージはあるかと思いますけれども、農業も盛んにやっておる。あるいは、直売所というものが最近非常に盛んになっておりまして、百四十カ所で、売り上げは七十億円ということです。やはり、大きな消費地を抱えるところでの農業という特性を生かしながら、多くの方が頑張っておられるというところであります。
そういった中で、都市農業の概論についてお伺いしていきたいと思うんです。
やはり都市における農業や農地というのは、新鮮で安全な農産物の供給ということもございますし、身近な場において農業の体験ができる場を提供している、あるいは防災空間それから心の安らぎを提供しているといった多面的な機能を備えているというふうに考えます。こうした役割や機能に対しては、都市住民の間でも期待がどんどん高まっている。
これは民主党政権下において取りまとめられたものですけれども、都市農業の振興に関する検討会というものを設置されて、都市にふさわしい農業とか農地とはどういうものかということを、有識者の意見を聞きながらも農林水産省において取りまとめられたというふうに私は承知いたしております。
しかしながら、近年の農業者の高齢化というのは、農村においても、また都市においても同じような現象でございますし、あるいは、都市における生産緑地にあっても、後継者の不足によって営農をやめてしまう。このままでは、都市の農地の有する多面的な機能というのはどんどん低下していってしまうというようなことで、都市農業を持続的に振興するための施策というものが早急に必要ではないかというふうに考えます。法律でも、食料・農業・農村基本法第三十六条において、都市農業の振興を図るために必要な施策を講ずるというふうに規定されています。
これまでの都市農業に対する振興の施策というものに対して、どのような評価というものを持っておられますでしょうか。
○小里大臣政務官 まさに、御指摘をいただきましたような大事な役割を都市農業は担っております。また、食料・農業・農村基本法の御指摘もございました。そういったことを踏まえて、都市住民の需要に即した農業生産の振興を図るための必要な施策をしっかり講じてまいらなければいけないわけであります。
農水省としましては、まず、都市と農村の交流に関する予算につきまして、都市農業者も助成の対象としますとともに、また、平成二十年には農水省に都市農業室を設置して、都市農業の実態の把握、また都市農業者への支援に努めてきたところであります。
さらに、平成二十三年には都市農業者や有識者から成る都市農業の振興に関する検討会を立ち上げまして、翌二十四年八月に中間取りまとめを行ったところであります。この中間取りまとめの趣旨を踏まえて、平成二十五年度には「農」のある暮らしづくり交付金を創設して、都市農業をソフト、ハードの両面から支援しているところであります。
先般も、神奈川県で新たな農政の説明会を行いました。実にたくさんの方々が参加をされて、私自身びっくりしたところでございましたが、都市農業施策に対する強いニーズというものを感じましたし、具体的な要望もいただきました。
今後とも、各政党の議論の動向を踏まえて、また関係省庁と連携をして、しっかり進めてまいりたいと思います。
○村上(政)委員 これは通告しておりませんけれども、そういった説明会を大阪でも開かれるというようなおつもりはおありでしょうか。
○小里大臣政務官 ちょっと余計なことを申し上げたかもしれませんが、これは自民党の行っておる新たな十カ年戦略の説明会でありまして、私は、従来の農林部会長としての行きがかり上、そこに講師としてお伺いをしたわけであります。与党においては、積極的にそういった勉強会を開催されていくものと聞いております。
○村上(政)委員 政務官におかれましては、ぜひ大阪の農業についてもいろいろと御指導いただければと思います。
さて、今の御答弁の中で、新しい部署、都市農業室というものを設けられて、その施策に取り組まれているというお話がございました。新しい部署を設けるということもそうなんですけれども、ほかの役所との連携というのも一つの鍵になってくるんじゃないかなと思います。特に、都市農業をやっているところというのは、まさにその名前のとおり都市でございますので、都市政策を所管する国土交通省との連携というものが一つの鍵になると思います。
国土交通省の社会資本整備審議会においては、都市計画の立場からも、コンパクトシティー化と、それから都市と緑、農の共生の双方が実現された都市を目指すべきであるというふうに、都市の農地を都市政策の面からも積極的に推進する考え方が示されておりますけれども、この都市政策との連携という面ではどのようにお考えでしょうか。
○實重政府参考人 国土交通省との連携についてお答えします。
平成二十四年八月に取りまとめられました都市農業の振興に関する検討会中間取りまとめにおいて、政策課題と今後の進め方として、三つのことが指摘されております。
一つは、都市農業の振興を図るため、国民的理解の醸成に努めること、第二に、国、地方公共団体において、市民農園、防災兼用施設の整備あるいは水路保全活動への支援、これらを充実すること、それから第三に、委員御指摘のありました、土地利用、税制といった制度面での論点について、国土交通省の社会資本整備審議会での議論と並行してさらに議論を深めることとされております。
この中で、特に三点目の土地利用や税制に関しては、都市についての土地利用制度であります都市計画法を所管しております国土交通省とともに検討を深めていくことが重要であると思っておりまして、国土交通省においても、実態を調査しながら、制度面での検討を行っているものと承知しております。
都市の中における農地の土地利用をどのように位置づけていくかということにつきまして、農林水産省といたしましても、国土交通省における都市政策の検討と十分に連携していきたいと思っております。
なお、これ以外の、一点目の国民理解の醸成ですとか、あるいは施設整備などにつきましても、農林水産省、国土交通省が協力して対応していく必要があるというぐあいに思っておりまして、両省間で「農」を楽しめるまちづくりプロジェクトなどを立ち上げて進めていくこととしているところでございます。
○村上(政)委員 概論的な話については最後のお尋ねにしたいと思うんですけれども、ことしの六月に日本再興戦略を閣議決定されたわけですが、その中においては、農業の成長産業化ということに非常に力点を置いておられるというふうには承知しておりますけれども、都市農業ということはなかなか見当たらない。
ただ、今までるる御答弁の中にあったように、都市農業の重要性ということもありますし、また、農業を成長産業にしていくという観点からも、都市農業をどのように農業の中で位置づけていくか。農業の成長産業化における都市農業の位置づけというものはどのようにお考えでしょうか。
○林国務大臣 ことしの六月に、今委員会からお話のありました日本再興戦略を閣議決定いたしました。
確かに、都市農業という言葉が直接見えてこないわけでございますが、福祉、教育、観光等と連携した都市と農村の交流の拡充を図るというようなことは書いております。
これを含めて、農業、農村全体の所得倍増を目指して、総理を本部長とする農林水産業・地域の活力創造本部において、農林水産業・地域の活力創造プラン、これは十一月末を目途にまとめようということにしております。
こうした検討の中の一環に都市農業も位置づけられる、こういうふうに考えております。
その際に、やはり都市農業は、近傍に大きな消費地を抱えているということでありまして、近いということもあって、多彩で新鮮な食料を生産、供給することが可能になる、こういうことがあります。また、観光農園、交流農園、先ほど言いました都市と農村の交流という意味でも、住民の交流活動を通じて付加価値を生み出すことが非常に期待される、こういうところがございまして、そういう立地上の有利性というものを踏まえていろいろな支援を行っていきたい、こういうことでございます。
したがって、先ほど局長からもありましたけれども、関係省庁と連携をする中で、都市住民と農業者が円卓会議により話し合って交流農園を整備する「農」を楽しめるまちづくりプロジェクト、また、高齢者や障害者の皆さんが福祉農園において園芸活動を行う「農」と福祉の連携プロジェクト、こういうものを立ち上げて、関係施策の充実を図って、都市農業の振興をやっていきたい、こういうふうに思っております。
○村上(政)委員 大臣の御答弁によって、都市農業というものが今内閣でお考えの成長戦略の中でどのように位置づけられるかということがクリアになったんじゃないかなと思います。
総理も、世界一ビジネスがしやすい環境ということをおっしゃっておられるわけですので、ぜひ、都市の近いところで、大都市での農業ということについても、成長戦略の中での位置づけということについていろいろと考えていただければというふうに思います。
さて、具体的な施策に移っていきたいというふうに思うんです。
まず、農業振興地域というものがあるんですけれども、実際は、都市の農地というのはこういったところに当てはまらないところが多いというふうに思います。
国におかれては、国内の農業生産に必要な農地の確保を図るために、農業振興地域の整備に関する法律に基づいて、集団的に存在する農地あるいは基盤整備事業の対象となる優良な農地約四百十万ヘクタールを農業振興地域内の農地というふうに定めておられて、国の施策を集中的に展開している。
他方、先ほどから例に挙げさせていただいております大阪では、都市的な地域でございますので、大阪市内を中心に市街地が広がっていることから、国の施策の重点的な地域となる農業振興地域内の農用地というのは大阪府の中でも外縁部に位置しておりまして、府内の全農地の約四割、一万三千九百ヘクタールにすぎません。
それ以外の農地については、農業振興地域内の農用地と同様に、農業が積極的に営まれているところでございますけれども、市街地の周辺に立地することから、府民に対して潤いや憩いを与える貴重な空間になっていますけれども、国の補助対象とはなっておりません。基盤整備などのハードの事業はほぼ手つかずの状態でありますし、また、農業振興地域の農用地とは整備水準が大きく異なっていますので、営農条件というのは不利であります。
これは、先ほども申し上げたように、一般的に見られることですけれども、農業者の高齢化ということも進んでいますので、耕作放棄地になるのではないかというふうな懸念も持っておられる方は多いと思います。このような懸念に対しては、どのようにお考えでしょうか。
○實重政府参考人 農業振興地域内の農用地区域でございますが、これは土地利用上、将来にわたって食料の供給基盤として位置づけられておりまして、農地転用につきましても禁止というように厳格に規制されているものでありまして、集中的な農業投資の対象としているところでございます。
一方で、市街化区域内の農地につきましては、これは転用は自由ということでございまして、位置づけは異なりますが、こういった都市農業に係る農地につきましても、委員御指摘のように、近年その役割は高まってきております。住民に対して多彩で新鮮な食料を供給する、あるいは都市の緑地、憩いの場といった多面的な機能を発揮している、こういった面がございますので、都市農地を保全すべきだという考え方が高まっていると思っております。
こうした中で、昨年八月の都市農業の振興に関する検討会では、都市農業に関する施設整備や保全活動に対して支援すべきといったことが取りまとめられました。これを踏まえまして、二十五年度におきましては、「農」のある暮らしづくり交付金を創設いたしまして、都市農業に対して、ソフトだけではなくて、ハードの面も含めて支援を行っていくこととしているところでございます。
○村上(政)委員 競争という話に関連するんですけれども、都市の農業も同様に、安心、安全で顔の見える農業というのを武器に、外国産であったり、その他の国内産の農産品と競争していくべきである。しかし、競争の土台となる、先ほど申し上げたような農地の整備水準が異なるようであれば、そもそも土俵に上がる前に勝負が決してしまうというような状態になっているんだと思います。区画が整理されていなかったり、整然とした農業振興地域内の農地と都市部の農地を比べたときに、進入路のない不整形な農地であったり、そういうふうな条件の差というのが歴然としているというふうに思います。
このため、大阪では、独自の条例というものを定めております。平成二十年に、大阪府都市農業の推進及び農空間の保全と活用に関する条例というものを制定いたしまして、農業振興地域の農用地以外の農地、具体的には市街化調整区域内の農地であったり市街化区域内の生産緑地を含めた農空間保全地域というものを、府内の農地の約八割を指定いたしまして、独自の施策を展開しているところでございます。国の補助の対象とならない営農環境の整備というものをやっているところであります。
しかしながら、大阪府も非常に厳しい財政状況ですので、国の補助地域を展開している地域には、なかなか水準として追いつけないというところであります。維新の会は、補助金をどんどん国から地方にというような考え方でもありませんし、基本的には、地方分権というものを進めていって、制度であったり補助金というものを地方に移管していただいて独自の施策を展開していこうという考え方でありますけれども、現状において、短期的には、やはり先ほどから申し上げているような、例えば大阪が展開しているような施策に対して何らかの国のサポートであったり支援というものがないと、都市農業に対して十分な競争力をなかなかつけられないではないかなというふうに考えるんです。
大阪のように、農業振興地域の農用地でなくても、地方が独自に定めた地域に対して国庫補助事業が実施できるような制度というものは検討しておられますでしょうか。
○實重政府参考人 委員御指摘の、農地の区画整理といったような農業農村整備事業でございますけれども、こうしたまとまった大きな国家的な投資を行う場合には、その農地については、将来にわたって、国民に対する食料供給あるいは多面的機能の発揮、こういったものが確保されることが必要であると思っております。このため、農業振興地域農用地区域については、農地転用について禁止するといった厳しい規制のもとに置かれているところでございます。
一方で、市街化区域内農地については、転用が自由でありますけれども、こうした大きな政策的投資の対象とするためには、現在のような転用が自由といった位置づけではなくて、都市計画法など、先ほど御議論いただきましたような土地利用制度の中で、将来にわたってこれは農地として確保されるということが位置づけられる必要があるものと考えております。
土地利用制度のあり方については、国土交通省との間で引き続き検討していくべき課題であると思っておりますけれども、現下の措置といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、平成二十五年度から、「農」のある暮らしづくり交付金の中で、簡易なハード事業であれば対象とすることができるようにしたところでございますので、この制度の活用をお願いしたいというぐあいに思っております。
○村上(政)委員 次は、税制上の支援あるいはサポートということについてお伺いしていきたいと思います。
現状においては、相続税納税猶予制度というものが既に制度として存在するというふうに承知しております。都市部では、農地の評価額が極めて高くて、相続税も非常に高くなってしまう。後継者が農業を継続しようとする場合に、農地に係る極めて高い相続税というものを納税しなければならないけれども、これを猶予するというような制度であります。
相続税の納税猶予制度では、一定期間の営農を継続すれば、猶予された高額な相続税が免除されるというような仕組みになっていますけれども、特に三大都市圏の特定市においては、死ぬまで農業を続けなければならない、終身営農ということになっています。終身営農というのは、後継者にとっては極めて過度な重圧、プレッシャーになっているのではないかなというふうに懸念するんですけれども、こういった点についてはいかがでしょうか。
○實重政府参考人 市街化区域内の農地につきましては、都市計画法上は、現在は、市街化を図るべき区域、十年以内に市街化すべきというような位置づけになっておりまして、農地転用も、届け出をすれば自由にできるというような位置づけでございます。このため、三大都市圏特定市の市街化区域内農地につきましては、相続が発生した場合にも、原則として納税猶予制度は利用できないということとなっております。
これに対して、市街化区域内農地でありましても、生産緑地として指定を受けたというような場合につきましては、将来にわたって営農を継続することが担保されます。このため、市街化区域内にあっても、相続税の納税猶予制度が利用可能となっております。ただ、これは、委員御指摘のとおり、終身営農を続けることが必要とされております。営農を途中でやめた場合には、その時点で相続税と利子税を納付しなければならないということでございます。
このような原則ではありますけれども、平成二十一年度からは若干要件緩和が図られておりまして、障害などによりまして営農継続が困難になった場合に、その農業者が市街化区域内農地の貸し付けを行われた場合、そういう場合には相続税納税猶予の継続が認められるというような特例が設けられたところでございます。
また、今年度、二十五年度におきまして、さらに障害等の認定要件について緩和をいたしました。農業に従事することを不可能にさせる故障などということで市町村長の認定が受けられた場合には、農地を貸し付けされても納税猶予の継続が認められたところでございます。
こういった特例措置や要件緩和につきまして、現場の都市農業者に浸透するよう周知に努めてまいりたいと思っております。
○村上(政)委員 今、局長から特例二つの御紹介がありました。
平成二十一年の身体障害等によって営農が難しくなった場合ということと、それから今年度、賃貸借についての特例が認められたというお話がございましたけれども、相続税の納税猶予制度の適用を受けながら農地の賃貸借を可能にしていくといった、こういう制度をさらに拡大していくといったお考えというのはありますでしょうか。
○奥原政府参考人 相続税それから贈与税の納税猶予制度でございますが、みずから農業経営を継続する相続人あるいは受贈者、この方々を税制面から支援するという観点で設けられた特例措置でございます。したがいまして、原則として、対象農地を貸し付けた場合、この場合には納税猶予を打ち切られるということになっております。
ただ、これは例外がございまして、賃貸借により担い手への農地の集積を進めるという観点から、農業経営基盤強化促進法の規定に基づきまして農地の貸し付けを行った場合には、納税猶予が継続をされるという特例措置がございます。
ただ、この制度は市街化区域は対象になっておりません。市街化区域は、近い将来、宅地化が見込まれるという地域でございますので、農業経営基盤強化促進法の事業では、市街化区域は対象に入っておりません。したがいまして、市街化区域におきましては、貸し付けた場合には納税猶予を打ち切られる、こういうことになってまいります。
○村上(政)委員 本日は、都市農業について取り上げさせていただいたわけですけれども、先ほど冒頭でも、大臣の御答弁にもありましたとおり、これから成長戦略の中でどのように位置づけられるかということについても、しっかりと農水省においても御検討いただければと思います。
質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○坂本委員長 次に、畑浩治君。
○畑委員 生活の党の畑浩治でございます。
端的に、まず、TPPの関係をお伺いいたします。
実はこの農水委員会でも、TPPの交渉状況について、余り正面から聞いたような質問が意外になかったと思うんですが、まず、大臣にお伺いしたいんです。
米国は、年内妥結に向けて、大詰めの交渉の加速を図るというのが新聞で書かれております。そして、十月八日のバリの首脳声明では、これも何かすごいものを書かれていまして、TPP交渉参加国の首脳は、TPP交渉が完了に向かっていることを公表できて、喜ばしく思っておられ、かなり進んでいるなというのはうかがえるところであります。
結局、農林水産分野においてどのような議論が進んでいるのか。特に、農林水産委員会で決議があったわけですが、この決議がされたような分野を中心に、どんな感じで進んでいるのか、お伺いしたいと思います。
○林国務大臣 先月のTPP首脳会合におきましては、包括的でバランスのとれた協定の年内妥結に向けて、交渉官は残された困難な課題の解決に取り組むことが合意された、こういうことでございますが、この首脳会合においては、市場アクセス分野については、最もセンシティブな物品の取り扱いはこれからの課題として残っている、これは貿易閣僚の方の会合の報告ですが、そういうことも一方で書かれているということでございます。
今後でございますけれども、今月十九日から二十四日まで、米国のソルトレークシティーで首席交渉官会合などの中間会合が開催される。それから、十二月には、シンガポールで閣僚会合が開催される予定になっております。
具体的状況については、お答えにくいわけですが、これは繰り返し申し上げているところでございますけれども、この衆議院そして参議院の農林水産委員会において決議された、重要五品目などの聖域の確保、これを踏まえて、国益を守り抜くように全力を尽くしていきたいと思っております。
○畑委員 そのような答弁だろうと思っておりましたが、国会ですから、もっと踏み込んでお伺いしたいわけであります。
一つは、センシティブなことをこれから詰めるというのは、これは当然のことで、そのセンシティブなものがどのようなものかというのは、再三議論がありましたからおいておくとして、そのセンシティブなものについて、定性的な形でもいいんですが、どういうような協議が進もうとしているのかというところを本当はお答えいただきたかった部分であります。
とともに、この決議を踏まえてやるというのも、これは既定の方針であって、これも当たり前のことでありまして、この決議を踏まえて交渉という状況がどんな感じなのか。人がいることですから、このとおりいくかどうかはわからない、どういうふうな状況になっているのかというのを実は話していただければいいので、本当は、国会というのは私はそういうところだと思うんですが、そういう議論がされないまま、ここまで来ているというのは、非常に遺憾だと思っております。
地元紙なんかを見ましても、これはすごいことを書いていまして、政府・与党は月内に農業の活性化策をまとめる、この後ですが、並行して、米、麦など重要五品目に分類されている五百八十六品目の一部も含め、関税をなくす品目を固める方針だ、こういうことも書かれております。
ちなみに、ちょっと確認いたしましょう、これは本当ですか、それとも、そんな状況はいかがでしょうか。
○林国務大臣 ちょっと、どの新聞かよくわかりませんが、そういうことを既に固めたということはないというふうに申し上げておきたいと思います。
○畑委員 マスコミにこういうのが載って、固めた事実はないとおっしゃいましたが、本来であれば、国会の場でこういうことはもっと先にしゃべっていただきたいと思います。国会の議論が深まらない中で、メディアにぽんぽんぽんぽんと断片的な情報が出ている。私は、こういう進め方がいかがかなというふうにかねてから思っております。
ちょっと論点を変えまして、小泉政務官にも来ていただいていますので、TPP交渉の情報提供というものをまた引き続き議論させていただきたいと思います。
前回、議論が尻切れトンボになったわけでありますけれども、TPP協定の分野別状況ということです。
実は、首脳会談のポイントとか一般的なものは結構出ているんですが、そういうのじゃなくて、まさに論点ごとの分野別状況について、以前、資料で作成しているというのは何回も私も申し上げて、こんなのが結構出ておりました。これを見ていると、協定に入っていないので、秘密保持契約がかからないから、割と書けているなと思っております。
このときの段階でも、センシティブ品目とはこういうものだと書いて、最終的には関税をゼロにするという原則である、そして、九〇から九五%の即時関税撤廃を目指して交渉が進んでいる模様とか、あるいは、それに対して反対する国ももちろんある、そういう中で議論がされているということが書いてあります。私が期待するのは、これぐらいのルールは最低限本当は今の段階でも開示していただかなければおかしいんだと思うんです。
結局、かえって情報提供の内容、精度が落ちているなと思っておりますが、今後、こういう情報を一回整理して、これは農政だけじゃありません、いろいろなところがあります、知的財産権とか濫訴を防ぐISDとか政府調達とかいろいろありますが、こういうふうに論点をまとめて、分野別で、定性的でいいんですが、個別の国がどう主張しているかというのはもちろん要りませんが、一回まとめていただいた方がいいと思うんですが、いかがでしょうか。
○小泉大臣政務官 畑委員には毎回御指名をいただきまして、大変恐縮です。
恐らく、今委員が御指摘されたことというのは、内閣官房のホームページのことだと思うんですが、二十四年の、日本がまだ正式に交渉参加する前の分野別の状況についてのお尋ねだと思います。
衆参の農水委員会で決議をされた特に七番、情報提供に対する決議の項目ですが、その決議の思いに沿って、交渉の具体的な内容に関しては、交渉上、秘密保持というのがありつつも、できる限り情報提供は努めていこう、そういった方針のもと、例えば、きょうは参考人としても内閣官房の方からは澁谷審議官に同席をしてもらっていますけれども、各会合の後にも記者会見を行って、その記者会見の議事録の方もホームページで今閲覧できることになっております。
そして、例えば、きのうはアメリカの財務長官のルー長官が日本に来られまして、甘利担当大臣ともお会いをしましたが、その後、甘利大臣の方から記者の皆さんに対して、アメリカからこういうことがあった、また日本から、甘利大臣からは、日本のセンシティビティーがいかに政治的に重要な課題となっているか、そこの認識をしっかりと持ってもらうように、そういった内容のブリーフもさせていただいたところでありますので、これからもできる限りの情報提供に丁寧に努めていきたいと思っております。
○畑委員 まさに、こういう定性的な話なわけです。定性的な話の中でも、もうちょっと踏み込んだ情報をいただきたいなというふうな問題意識で質問させていただいております。
では、結局、情報提供できる情報というのはどういうものなのかというのはここで一回整理しなきゃいかぬのだろうなと思っております。
今まで委員会の議論では、秘密保持契約がかかっている情報は提供できない、これは具体的には、交渉中のドラフトとかTPPの会合に出された参考資料、あるいはどの国がどういうことを言っているか、こういうのは当然出せないということだと思います。
もう一つ出せないのは、秘密保持契約とは別の観点でありまして、我が国の国益、交渉の手のうちを見せてはいけないという観点から出せないもの。これは、重要五品目の内訳はそういうことだということが今までの議論だったと思います。
では、以上を踏まえまして、どういうことが出せるんでしょうか、そこを改めてお答えいただければと思います。
○小泉大臣政務官 大変難しいお尋ねでありますけれども、やはり交渉事ですので、特にまた、今、年内妥結に向けて、各参加国が交渉をスピード感を持って進めている中で、その方向性は努力をしつつ、しかし、交渉の中で、その情報提供がゆえに日本の国益が阻害されてはマイナスになってしまいますので、参加国同士の具体的なやりとりはお控えをするという中で、可能な限りの情報提供をそれぞれの参加国が考え、また、国民の利益に沿う形でできる限りの情報提供を努めている、そういった状況でありますので、御理解をいただきたいと思います。
○畑委員 理解がなかなか難しくて。
農政に関して言うと、ここで大臣と何回も議論をしたように、センシティブなものはしっかりとこの決議を踏まえて守るような交渉をしております、委員会決議も踏まえて頑張りますということですが、これは情報開示にならないんじゃないでしょうか、精神論を言っているだけで、そこにちょっと歯がゆさが残るんですけれども。
例えば、細かいことを言えと言っているのじゃなくて、決議で、これはもう四月の段階で入ることを見越したのか、国民への情報提供を十分に行って国会に速やかに報告すると書いているので、恐らく国会の意思というのは、そういう定性的な方針じゃないんだろうと思います。少なくとも、私もそういう理解で、そうじゃないという理解で賛成したわけです。
結局、明かせないものを限定的に捉えて、やはり国会の決議を重視するとすれば、特に秘密保持に係る部分でも、どの国が主張しているというのは削除した形で、かつて内閣官房がやったような形で、こういう議論だよと定性的にやるような工夫は私はあると思うし、それが国会の決議を尊重することだと思うんですが、その辺の工夫というのは、何かできないものでしょうか。改めてお伺いします。
○澁谷政府参考人 ちょっと私の方からお答えさせていただきます。
きょうの午前中でございますが、衆議院の法務委員会でTPPの質問をいただきまして、越境サービスという分野がございますが、その中で、いわゆる資格の相互承認ということについて非常に心配している人が多いけれども、今どういう議論になっているのか、こういう御質問をいただきました。私の方から答弁させていただいたんです。
私の答弁は、TPPというのは、投資やサービスについて、特に途上国が内外差別的な取り扱いをしているものについて、それを改めていただく、そういうことを求めるのがTPPの交渉であって、日本の制度は基本的に内外無差別なので、日本の制度について、投資やサービスの分野でここをこういうふうに直すべきだ、そういうような形で責められているわけではありませんと。
かつ、かつてのホームページで、まさに、この資格の相互承認のような議論は行われておりませんということをそのままホームページに載っけておって、削除もしていないということをもって、御懸念のような事態にはなっていないということを御理解いただきたい、こういうような説明をさせていただきました。
若干、回りくどいんですけれども、TPPの本来の趣旨からして、御心配のような状況になっていないというようなことは、なるべく多くの機会を捉えて説明させていただくようにさせていただいております。
○畑委員 農政でもそういう説明をいただければ非常にすっきりするんですが、微妙な交渉の状況なんでしょう。厳しい顔をして大臣も見ておられますが、これはこれで。
では、具体論でまた別の論点を伺わせていただきます。あと、大臣にちょっとお伺いしたいと思うんです。
この重要五品目は何回も議論されたところなんですけれども、大臣は、十一月七日の本委員会で、維新の村岡議員からの重要五品目に対する質問に対して、その中の五百八十六品目、これについては、結局、米を例にしてどの範囲なんだという議論だったと思うんですが、その中で米というものについてどれを指すのかということは我々の方で整理をしておりますので、逆に言うと、どれとどれを米に整理しているかということはまさに交渉そのものにかかわってくる大事な部分である、米五十八、麦百九という、このどこで線を引いたかというところが今非常に大事なところ、我々がやった定義というのは整理の定義ですから、どのラインをどうするかというのは最終的には交渉になるというお答えを議事録を見るとしておられます。
一方、私は、十月三十日の本委員会で加工品、調製品の扱いについての質問をさせていただいたわけでありますけれども、この中で、五品目の加工品、調製品の関税について、そこがこじあけられると非常に大変なことになるという問題意識でお聞きしたわけです。この際に、加工品、調製品の関税というのが、
五品目の加工品、調製品ということで撤廃されたということになりますと、国内市場において国産品が安価な輸入品に代替される、こういうことが起きる可能性が出てまいります。したがって、加工品、調製品以外の品目の関税が維持されたとしても、原料としてのこれらの品目は需要が減るわけでございます、すなわち加工品、調製品が入ってきてしまう、こういうことですから。
したがって、原料としての生産が減少して、結果として国内の農畜産業に影響が及ぶおそれがある。こういうふうに考えておりますので、そういうことも念頭に置いて、しっかりと交渉に当たっていきたい
と答弁をいただきました。
両方の答弁を勘案して、若干矛盾しているなというか、判断に迷う部分がありました。
というのは、加工品、調整品ということで廃止すると問題だ、そういうことで廃止することはないように努力するということだと思います。ただ、これを見ると、現に米の五十八の中でどれが入るか入らないかというのは仕分けて検討しているということであれば、結果的に、米の本体はあけるわけはないので、やはり加工品、調整品という議論になるのじゃないかと私はこの議論を聞きながら思ったんです。結局、加工品、調製品に一定の基準を付加した上で、ある程度どこかで関税は撤廃、今関税をかけていないのを結局関税をあれにするんじゃないか、外国に対してあけるんじゃないかというふうな気が、この二つの答弁を聞くと思ったわけです。
結局、そこはいかがなんでしょうか。
○林国務大臣 いろいろ御不安を惹起したようで反省をしておりますが、まず村岡先生とのやりとりの中で、定義というのは整理の定義ですからというくだりですが、要するに、関税定率法をごらんになったことがあると思いますけれども、一つずつラインがいっぱいあって、そこには、例えば、穀物という大分類がありますが、米という大分類はないわけでございます、関税定率法上は。したがって、一つ一つのラインを米に位置づけているということが我々の整理ということで、そこはお示しがしにくい。
こういうことを言ったのと同時に、交渉をするということは、関税定率法にあるラインを一つずつ、一つずつというか、やるのが交渉ということを申し上げただけであって、何かどこかに入っているものだからどうするということを申し上げたわけではなくて、一般論として申し上げたということでございます。
畑先生との十月三十日のやりとりもまさにそういう御質問でありましたので、原料だけ守ればいいという御指摘があるけれどもどうか、たしかそういう御質問だったので、いや、調整品ならいいということではないですよという意味で、これも一般論でこういうふうに申し上げたわけでございます。
なるべく定性的な哲学ではないところを言え、こういうことを私は常に言われておりますので、なるべくこの交渉の中身でないところの部分で一般論として申し上げようということでございますので、交渉をそういうふうにやろうとしているとか、ましてや今そういうふうに交渉が進んでいるということではないというふうに御理解をいただけたらというふうに思います。
○畑委員 大臣、結局、米の五十八、整理して定義づけていろいろ検討されていくわけでしょうが、そこは、米でいえば聖域の五十八、これはどういう基準、どういう仕分けで五十八というところは整理していくんでしょうか。そこはお答えできますでしょうか。
○林国務大臣 そこがまさに我々が米というところに五十八ラインをやっている、これを米に位置づけているというところ自体が我々の主体的な判断、こういうことでございますので、大変申しわけございませんが、どういう理由でどういうところに着目してこれをということをお示しすると、これは相手方にもそれが伝わるということになりますので。
したがって、数字は五十八というところまではお示しをしておりますけれども、その内訳については控えさせていただく、こういう整理をしているところでございます。
○畑委員 私も五十八を示せと言っているわけじゃなくて、検討して、いろいろ仕分けてラインを引いてやっていくわけですが、どういう考え方で仕分けを今検討されているんですかという定性的なところを、別に五十八の内訳を明かせと言っているわけじゃなくて、そこはお答えいただけないんでしょうか。
○林国務大臣 これはもちろん、例えば、関税定率法をごらんになればわかると思いますが、穀物それから動物とか機械とか、こういうことになっておりますので、自動車とかそういうものが米に入ってくるというのはないわけでございます。
したがって、穀物の中でいろいろなラインがございまして、この中で米というグループにしようという判断を我々の中でして、その結果、数として五十八ということになっている。
そういうことでございますので、どういう基準でもって整理をしているということを申し上げると、どのラインがこちらになるかということについて示唆を与える、こういうことになるので、内訳を示すことに近づくという意味で、先ほど申し上げているように、そこは控えさせていただきたい、こういうことでございます。
関税のラインのナンバーというのは、上二桁、一番最初の二桁が、例えば穀物なら何番、こういうふうになっておりますので、少なくとも、ほかの、工業製品の中から引っ張ってくる、こういうものではないので、大きく言えば、この穀物という分類の中で我々が米というものの定義づけをしている、こういうふうには申し上げることはできると思います。
○畑委員 現段階ではそういうお答えが精いっぱいなのでしょうね。
ちなみに、前回、村岡議員との間でも議論があって、最後、確認ができていないと私は思ったので、ちょっとお聞きします。
当初、交渉に臨む、米なら五十八、全体であれば聖域の五百八十六、これはこれで定義づけて、当然、検討されて交渉されておられると思うんですが、結局、最終的に決まった。協定締結した。それで、国会でそれを議論する場合に、大臣は、国会で議員に対して、議論の中でこれは御判断いただきたいというお話でした。
ちょっとここで確認したいんですが、事前の五百八十六というのは、当然、協定を結んで、国会審議の段階ではこれが五百八十六だったと言わなきゃいかぬわけですが、当初これが五百八十六と考えていたよ、交渉によってこの五百八十六がでこぼこがあって最終的にこうなったよというふうになるんじゃないかという気はするんですが、そこは、国会審議の適正さ、判断の適切さ、つまり、これが当初想定していたこっちの原案で、最終的にはこうなったというのは、それがいいのか悪いのかというのは、やはり議論して検討しなきゃいけないと思うんです。
対比させた上で、五百八十六はこうなりましたよ。最初はこう思っていた。しかし、いろいろ検討で、やはり、はっと気づいて、外国との関係、あるいは、検討が進むにつれてこっちの方が合理的ということで五百八十六がこうなった、そして守りましたとそこは対比をさせた上で、最終的には出していただけるんでしょうか。
○林国務大臣 多分、最終的に妥結をした場合は、国会で批准ということになってまいりますので、批准をしていただくための審議というのが当然出てまいります。そうすると、協定書と、それに付随する関税の譲許表みたいなものが出てくる。
そうすると、この間も村岡委員にお答えしたように、全てのラインについて決まったことは全部出てくるということでございますので、それを見ていただければ、九千幾つございますが、そのラインについて、TPPでもし取り決めがなされれば、それはどういうふうになされたかというのは全部そこに出てきて、それで御審議をいただく、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。
今、我々はこういう整理をしていて、それが途中で交渉によって変わるということは、我々の整理学ですからそれはないと思いますが、それも含めて、全品目、ラインについて、こういうふうになったということが条約案と一緒になって出てきて、それを批准のために御審議いただく、こういうことになろうかと思います。
〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕
○畑委員 最後の出口はそうやってわかるんですが、やはり今の議論で、交渉の過程も曖昧な中で来ると、若干、交渉の過程でどうなったかという部分との検証で、比較でなかなか議論しにくいなと今の話を聞いて思ったんです。
端的に、確認ですが、最終的に五百八十六というのはこうなりましたよ、我々はこうとりましたということなんですよね、出すのは。もう一回、そこだけを。
○林国務大臣 ですから、ちょっと奥歯に物の挟まったような言い方で恐縮なんですが、全ての、例えば穀物というのが上二桁でずっと並んでおりますけれども、これについて、もしTPPで今までと違った取り決めがなされれば、全部入ってくる、こういうことでございますので、それを見ていただければ、そこに入っていないものは現行どおり、こういうことでしょうから、あわせて見ていただければ全体像が全部見える、こういうことを申し上げているわけでございます。
○畑委員 時間も来ましたが、最後に一つ。
米の問題をお伺いしなきゃいかぬと思っておりました。ちょっと骨太の議論というか、ひとつお伺いさせていただきたいと思います。
今、自給率目標というのがあります、御存じのとおり、二〇二〇年に五〇%なんですが。これを、戸別所得補償から日本型直接払い、農地を農地として維持するという多面的機能の直接払いにした場合には、何となく、生産者としての農家支援というよりも、地域政策としての、農地を農地として維持するという側面に農政の重点が変わってくるなという気がしています。
そういう意味で、今まで自給率というのが目標だったわけですが、自給率は、戸別所得補償で、恒常的に割れている部分を補償していくことによって生産者が立ち行くような補償ですが、地域政策としての、多面的機能の農地を農地として維持するというところが強くなっていった場合には、自給率の考え方というよりも、自給力を重視する考え方に何となく変わっていくような気がするんですが、そことの関係を最後にお答えいただければと思います。
〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕
○坂本委員長 林大臣、簡潔に答弁をお願いします。
○林国務大臣 はい。
従来の経営所得安定対策、特に米の直接支払い交付金は、米の販売農家全てを対象にしていたということもあって、零細農家も含めて米を生産することのインセンティブになりまして、麦、大豆、飼料作物などで食料自給率を向上していく、ここに対するインセンティブになっていなかったということ。それから、担い手への農地集積や規模拡大につながらなかったということで、食料自給率の向上につながりにくい。こういう問題があったというふうに認識をしております。
現在、検討中の多面的機能においては、米や水田に限定せずに、水田、畑、草地を含む農地一般を対象とすることによって、食料自給率や食料自給力の基盤となる農地を将来にわたって確保していく上で有効な施策になっている、こういうふうに考えております。
○畑委員 終わります。ありがとうございました。
○坂本委員長 次に、林宙紀君。
○林(宙)委員 みんなの党の林宙紀でございます。
本日も、一般質疑ということで、ここまでの議論を大変興味深く聞かせていただいておりました。特に、玉木委員の方からは、大きな議論をします、重箱の隅をつつくようなことは問いませんという宣言があった中で、本当にすばらしいなと感服しながら聞かせていただいたんですけれども、私は、本日もミクロな話題でちょっとお伺いしたいなというふうに思っております。よろしくお願いします。
前回、農協についての質問をさせていただきました。今回も、いろいろと農協の機能等々について、現政府としてどのように捉えられているかというような御見解をお伺いしたいなということで、質問をつくらせていただいております。
前回の質疑の後、ありがたいことに、とある農業系の新聞さんに、農協の話題を取り上げたということで、載せていただきました。はっきりは書かれておりませんけれども、ちょっと、林は要注意だみたいなイメージなのかなと思いながら見せていただきまして、私は……(発言する者あり)林というのは私です、大臣じゃないです。大臣はそれはもう、もちろん日々頑張っておられるわけですから、私、林宙紀めでございます。
それで、私としては、いろいろと質問させていただいていますけれども、農協というのがここまでの農業の発展というところに大きな貢献をされてきたというのは、これは疑いないことだと思っています。特に、戦後の食料をどうしていくのかというところから始まって、安定供給等々について、本当に死活問題であった中、大きな役割を果たしたというところはもう本当にすばらしいと思っています。
特に、六次産業化というのを進めていこうとする中で少し懸念をしているのは、それで農家が所得を上げていければいいんですけれども、そこに入ってくるいわゆる流通とか販売といったところだけで利益が持っていかれるような構図になってはまずいなというふうに思っているところもあるので、それを避けるためにはというか、農家が所得を上げていくという意味では、やはり一番農家の皆さんのことをよく知っている農協さんに頑張っていただくというのは、これは大事なことなんです。
これを大きな資産として、農家の皆さんが安心して営農できるように、あるいは日本の農業がもっともっと発展していくための実務的なサポートというのをもっともっと力強くやっていただきたいな、それが大切だと思っているという前提でいろいろとお伺いをしております。
ということで、きょうは、では、農協の最も大きなというか中心的な役割とは何なんだろうというところを考えていったときに、それはもちろん、農業をどうしていきますか、農家の皆さんにどう頑張っていただきますかというところだと思うんですが、本日お配りした資料がございます。
これは裏表になっていますが、まず、表は、JAみどりと書いてある方ですね、これは名古屋市の緑区にございますJAみどりさんのホームページのトップページなんです。ごらんいただくと、一見しておわかりだと思うんですが、貯金、ローン、不動産、共済と、一押しでございます。
それで、試しに、名古屋市、JA、みどりと検索してみますと、何が一番最初に出てくるかというと、「名古屋市緑区の賃貸・土地不動産売買ならJAみどり不動産部」というのがずらっと三項目ぐらい出てきます、上からですよ。ということは、こういうところに力を入れられているんだなというのが一見してわかります。
それをもちろん裏づけるかのように、JAみどりさんのプロフィールというところのページに書いてあるのは、「当JAの中心事業は金融・共済と不動産。」とはっきり書かれてございます。そしてその後に、「この他にも農薬・肥料・生活品・お米を扱う購買事業や女性部をはじめとする指導事業など総合的な事業展開で、農家はもとより地域の方々の生活のお役に立てる地域協同組合を目指しています。」と書いてあるわけですね。なるほどと思いました。そんなわけで、私の持っていたJAさんのイメージとは全く正反対の方向のことを公言されていらっしゃるなと思うわけです。
私は宮城県ですが、宮城県のJAの皆さんのホームページ、どれを見ても、最初に出てくる写真は何かといったら、やはりよく実った稲穂の写真だったりするわけですよ。私はそういうところで育っているわけですね。
すごくニュータイプだなと思いながら拝見していたんですが、実は、二〇一一年ですから二年前になりますが、二〇一一年一月に読売新聞でもこの話が取り上げられておりました。そのときも、今私が引用したような部分に触れられていて、その中で、また潔いなと思ったのが、当時の組合長さんが、「「土地を活用する意味では、大根やニンジンを作るのとアパート建設は同じ。組合員の要望に応えている」と意に介さない。」というふうに書かれております。これは、組織のトップとしてはきっぱりと言ったんだなということで、ある種感服しているところもあるんです。
名古屋市の緑区というのはどういうところかというと、私もそんなに頻繁に訪れるわけではないのであれなんですが、恐らく市街化区域になっている場所だと思うんです、その大半が。市街化区域になっているところで、先ほどもちょっとありましたが、農業をやっているところは都市農業ということになっている。
市街化区域ですから、だんだん住宅になっていくというところで、農業というものに割く力のシェアというのが、それは低下してくるだろうなというのは理解はしています。ただ、ここまでばあんと、ある種農業というのがその他事項になっているような印象すら受けるので、これをJA、農協と言うにはどうなんだろうなというところが正直ひっかかっているんですが、政府側としてはこれをどのように受けとめられているかというのをまずお聞かせいただきたいと思います。
○林国務大臣 御指摘のJAみどりでございますが、今委員も少しお話しいただいたように、その地区の急速な都市化で、事業内容が組合員の生活、農外事業中心になっている、おっしゃっていただいたとおりだと思っておりまして、本来の農協のイメージとはかなり異なるものになっている、こういうふうに考えております。
農協法が目指す農協らしい農協とは言えないわけでございますが、正組合員である農業者が一応九百三十人おられるということで、農産物販売も行われている、位置づけは今おっしゃられたとおりかもしれませんが。したがって、農協法に違反ということではないということでございます。
農協は、会社と同様の民間組織でございますので、経済社会情勢の変化を踏まえて、やはり農業者の協同組合であるという原点に立ち返って、組合員の意見を踏まえて自己改革を進めていただく、これが基本であるというふうに考えております。
○林(宙)委員 まさしく今御答弁いただいたとおりで、組合員の皆さんが、そのような方向性でということでおっしゃっているのであれば、これは当然、民間組織ですから、こちらというか政府側としては口を出すような問題でもないだろう、これは私も理解しております。
ただ、今大臣の御答弁の中にもありました、農協法で定めている、いわゆる描いている農協という姿とはだんだん離れてきてしまっていて、恐らく農協法を制定したときの社会情勢などもやはり大分変わってきているので、こういう乖離が起こってくるんだろうなというふうには思います。
もちろん、組合ですから、独占禁止法の適用外だったりとか、金融機関というのは普通は他業禁止と言われていますが、JAに関してはそういうことも認められている。ある種、特権とは言いませんけれども、そういう特別な存在であるということを農協法で規定していることに鑑みますと、そういうのは、この間の御答弁の中でどなたかおっしゃったような気がするんですが、農業を振興していくんだという上で必要だからやっているんですよという建前がやはりあると思うんですが、そうなると、逆に言うと、何のための農協としての存在なのかというところにだんだん来てしまうんだろうなという気がしてなりません。
ということで、改めてお伺いしますが、そもそも農協というのは何を目的にした組織なのかというのを御答弁ください。
○奥原政府参考人 お答えをいたします。
農協は、農業者が自主的に設立をした相互扶助組織でございます。法律の中では、農業者の経済的社会的地位の向上を図ること、これがその目的になっております。
したがいまして、この事業につきましても、この目的を達成するという観点から、法律の中に列挙してございまして、この範囲で選ぶということになりますが、例えば、農業の経営ですとか技術の向上に関する指導、事業あるいは生活に必要な資金の貸し付け、組合員の預金の受け入れ、事業、生活に必要な物資の供給、あるいは共済、医療、それから老人の福祉、こういったものが目的を達成するための事業として法律の中にも列挙してございます。
○林(宙)委員 ありがとうございます。
今、御答弁の中で、恐らく、信用、共済という事業に入るものは後半に出てきたような気がするんですよね、私は。それはそうですよね。いいとか悪いとかじゃないんです。やはり社会的なことを考えて、だんだん変わってきているんだろうなということがあるので、もしかしたら、こういうことも含めて、今後どうあるべきなのかというのは見直していってもいいんじゃないかなというふうに私は思うわけです。
今おっしゃっていただいたとおり、やはり農協がもともとは農業をされる方々のための助け合いの協同組合であるということなのであれば、今後、農業以外の事業が、JAみどりさんも含めてなんですが、そういう農業以外、農外事業というのが主になってきている農協さんたちに、政府としては何かしら指導とかするのか、あるいは、それはもうしようがないということで、そのままにしておくのかという意味でいうと、政府としてはどのようにお考えなのか、お願いします。
○奥原政府参考人 農業者の自主的な協同組織であります農協につきましては、農協法に規定された事業の枠内で、農家組合員の選択によって事業の範囲を決めているわけでございます。
組合員の経済的社会的地位の向上の観点から、信用事業を中心に行うという農協もあり得るわけでございますけれども、農協の最大の使命は、やはり農産物の販売等を適切に行う、それによって農業所得を向上させていく、これが最大の使命だというふうに考えております。
このために、農林水産省といたしましては、農協に関する監督指針、こういうものを決めておりまして、この中で、各農協が、農産物の販売力の強化、そういったことを中心に、農業経営の支援機能を強化するということに向けた事業方針を明確にしろということを明記してございまして、都道府県と連携をして、農協に対して指導を行っているところでございます。
○林(宙)委員 前回の質疑では、信用、共済事業を分けるのはどうでしょうかという話をしましたが、きょうはその話をするつもりはありません。
ただ、その部分で、ある種本業を補完するような形でやっているという実態があるのであれば、今おっしゃったように、営農指導等々を通じて、本業と言っていいのかわからないですけれども、本来の役割たるところを強化していくというところは、ぜひ政府側としても今後強くしていっていただけたらなというふうに思っています。
実は、今、JAみどりさんのお話をさせていただいたんですけれども、この委員会の開くつい一時間ぐらい前の話だったと思うんですけれども、大変おもしろい事象がございました。簡単に言うと、皆さんにお配りしているこの資料のホームページが一部変わっているんですよ、今の段階で。変わっているんです。
それで、済みません、先ほど理事会で私はお示ししなかったので、本当に一部なので、もしよろしかったら、ちょっと今手元にあるものを皆さんにお見せするだけでも、委員長、御許可いただけたらなと思っているんです。本当に一部です。箱が一個加わったというだけなんですけれども、よろしいですか。
○坂本委員長 はい。では、どうぞ。
○林(宙)委員 ありがとうございます。
これが皆さんにお配りしているものですね。これが今の段階のホームページです。ちょっと皆さんにお見せしますと、こんな感じですね。こういう感じになっているわけです。
どうなっているかというと、皆さんにお配りしている四つの箱しか載っていないパターンは、左から、貯金、ローン、不動産、共済と書かれていますね。実は、これが一個ふえたことで、その貯金、ローン、不動産、共済というのが全部右に一個ずつずれるんです。共済が下に来ています。では、最初の箱に何と書いてあるんでしょうかというお話なんですが、農業支援と書いてあるんですよ。(発言する者あり)いや、すばらしいことですよ、ええ。農業支援、ははあ、あれほど自信を持って、当JAは金融関係を中心にとうたっているにもかかわらず、一番最初のところに農業支援を持ってきた。これは、この一晩でいろいろな意識改革があったんだろうなと私は思っています。(発言する者あり)そういうことかもしれません。
なので、どうこう言うつもりもないんですが、ただ、一つだけ言わせてください。
普通、こういうのは、それぞれの箱の上にカーソルを持っていくと、貯金のところに行ったら、クリックすると貯金についての事業とかが出てきますよね。残念ながら、農業支援にカーソルを持っていっても矢印のままなんですよ。これをどう理解するかは皆さん次第なので、深くは申しませんが、余計な話ですけれども、私はきょう誕生日でして、何かバースデーサプライズなのかなと思っているところがございます。皆さん、お帰りになってからちょっとごらんいただきたいなと思っているんですけれども……(発言する者あり)今入っていますか。そうですか。
では、いろいろな捉えられ方があると思うんですけれども、私はきのう、申しわけないことに質疑通告が大分遅かったので、その後、どなたにもお話ししていませんし、当然、フェイスブック、ツイッター等々で発信もしていません。うまいこと、このタイミングで変更を計画されていたのかなと自分を納得させようとしましたが、普通、デザイン的に、前々から計画していて、このような不自然なデザインになることはあり得ません、私もホームページをいじったことがたくさんあるので。かつ、前々から用意していたとすれば、農業支援の項は大変充実しているはずです。そんなわけで、すごくいいタイミングで修正がされたなと私の中では何とか消化をしようと思っていますが、あと御存じなのは一部の方しかいらっしゃらない。
一つ懸念だけ申し上げさせていただくとすれば、こういうところに取り上げられるかもしれないということを、事前に何となく情報がリークした。当然、今審議されています特定秘密保護法案の対象にはなりません、この情報は。流していただいて結構なんですが、ただ、そういうことをやって、そんな事実はありませんというふうになってしまうと困る。これは、農水省だけじゃなくて、ほかの省庁でも一緒です。何か問題を発見した、それを国会で質問したい、そうなったときに、いや、そんな事実はなかったですよとされてしまう可能性があるということを申し上げているんです。
それを懸念しておりますので、もしよかったら、詳しく事情を調査していただけるとありがたいなと思います。ありがたいと思います。それはもう、ぜひお願いしたいなというふうに思うんです。
もしよかったら、三役のどなたかから感想を、今の件についてどのように感じられたかだけちょっとお話を伺いたいんですけれども、どなたでも結構です、ぜひお願いします。
○林国務大臣 まずは、きょうはお誕生日ということで、お誕生日おめでとうございます。
そのお誕生日に合わせてということではないと思いますが、JAみどり、先ほど申し上げましたように民間の法人ということですから、どういうふうにこういう広報をやられるか、また広報の内容をどういうふうにされるかというのは、一義的にはそこに委ねられている、こういうことでございますので、そこについて、何か我々の方で情報等々の管理がうまくいかなくてそういう結果になったということがもしあるとしたら、それは余り望ましいことではない、こう思っておりますので、そういうことがないかどうかの確認はいたしたい、こういうふうに思います。
○林(宙)委員 大臣から貴重な御答弁をいただいたと思いますので、ぜひこういったことに関してはしっかりと調査をしていただいて、もし何かそういうことがあったとすれば、しっかりとこれは御報告をいただきたいなというふうに思っています。
ということで、JAみどりについてのお話は以上にさせていただきますが、ここからは、農協の構成とか機能について、もうちょっと詳しく政府の御見解をいただきたいなというふうに思います。
まず、先ほど答弁の中にも出ました農協の正組合員という方々なんですが、一方で、農業者ではない方々がということになると思うんですが、准組合員という方々ももちろんいらっしゃいますね。
いろいろ資料を当たるんですけれども、割と正組合員と准組合員のカウントの仕方が何か微妙に違うのか、近い数字なんだけれども多少まちまちに出てくる場合があるので、一応、今の段階で政府側として認識されている正組合員、准組合員の構成、あと、准組合員という方が、よく非農家の方々と言われますが、どのくらいの割合なのかというイメージをちょっと教えていただきたいなと思います。
○奥原政府参考人 平成二十三事業年度の農協の組合員数、これは全体で約九百八十三万人でございます。この中で、農業者であります正組合員は約四百六十七万人で、シェアとしては四七・五%でございます。一方で、農業者でない准組合員の方は約五百十七万人でございまして、シェアでいいますと五二・五%ということになります。
この准組合員という方は、農協の地区内に住所を有する個人等の方で、農協の事業を利用することを目的に加入をしているものということになっております。
この准組合員は、農協の事業については正組合員と同じように利用することができますけれども、正組合員とは違っておりまして、組合の運営についての議決権はございません。そういった意味で、農協の意思決定には参加できない、そういう方々でございます。
○林(宙)委員 ありがとうございます。
そうしますと、准組合員の方々が大分多いというか、人数的には逆転しているというような構造になっていて、これも先ほど少し触れましたが、農協が設立された当初とは若干違う環境になってきているという要素の一つだとは思っています。
ちょっと今のお話とはずれますが、農協がやっている事業の中で、いわゆる共済事業、保険関係の事業というのもあるんですけれども、改めて、農協の共済事業の根拠というか意義、これを政府としてどのように考えているか、教えていただけますでしょうか。
○奥原政府参考人 農協は、農業者がその経済的社会的地位の向上を図るために、自主的に設立をした協同組合でございます。
農協ができたのは昭和二十二年でございますけれども、当時、一般の保険会社のサービスが必ずしも農村地域では十分ではなかったという経緯もございます。そういう中でも、組合員の死亡ですとか火災などの万一の事態に備えた一種の助け合い、こういうことを目的にしたものが必要でございまして、農協制度創設当時から、農協の事業の一つとして共済事業というものが位置づけられている、こういうことでございます。
○林(宙)委員 よくわかりました。
そうすると、農協ができた当時のことを考えれば、やはり農業者あるいは農業の関係者の皆さんが、農業をやっていく上で、継続していく上で、ともに助け合う。やはり、農業をやっていく上ではいろいろなことがあると思うんですね。今おっしゃった、火災が発生したとか、よくある、よくあってはいけないんですが、そういうことも当然想定されるわけで、そういうものを農業の関係者の皆さんでともに助け合いましょうというのが本来の趣旨だと私は理解しています。
そうしますと、先ほど人数の構成のお話をお伺いしたんですが、准組合員の方が半分以上になっている。そして、その准組合員は、農家の方々ではない人でほとんど占められている、非農家という方々ですね。
そうしますと、もともと農業者同士で支え合いましょうというか、農業関係者で支えましょう、助け合いましょうというようなお話のところに、今これだけ農家ではない人たちがふえた。その方々を含めた共済というのを農協があえて続けていくということの意義は何でしょうか。
○江藤副大臣 私の方からお答えをさせていただきます。
私のところは、まさに中山間地域の巣窟のようなところでございまして、隣の集落に行くまで四十分、五十分かかるのはざらです。ある意味、時計がとまっているような地域なんですよ。
確かに、時代の趨勢とともに、頭の方で御議論いただいたような農協の変質、ホームページの件は、私も見ていて大変けしからぬと思います。しかし、この共済事業というものは、逆に言うと、では、今やめてしまったらどうなるのかということから私は議論した方がいいんだろうと思います。
自分たちでこれは必要だということで、お互いに助け合っていこう、これからは特に、新規就農者もどんどん受け入れていかなきゃいけない、そして技術も身につけていかなきゃいけない、きずながもっと大事になってくるんですよ。相互に助け合う、そういう精神というものは、これからさらに育てていかなきゃならないものだと私は思います。その中で、これまで共済事業が果たしてきた事業は大きいと思いますし、これがなくなってしまうということは非常に痛手だと私は思いますよ。
農家をやっている方々にとっては、これがやはり使い勝手が一番いいから農協共済に入っているわけであります。東日本大震災においても、金額ベースでいうと九千五百億、これだけのお金を共済事業によって支払っているという実績もあります。
マイナスの面、時代の趨勢に従って、農協は変わっていかなきゃなりません。今いらっしゃいませんけれども、森山先生は自民党内では改革の先頭に立って、PTの座長をしていただいています。農協さん本体も、自分たちで変わらなきゃいけないという意識を持って、今、自己改革努力の途中にあるというふうに伺っておりますので、共済事業もその中の大事な事業として受けとめております。
○林(宙)委員 そういった意味づけをしていただけると、こちらとしても、なるほどと思うところはやはりたくさんあるわけでございます。
なので、これが必要なら必要ということで、先ほど改革というお話もありましたが、外部の人たちがある程度、これは何でこうなっているんだといったときに、すぐにわかるような仕組みというのもあったらいいんじゃないのかなというふうに私は思います。ホームページ等々を見ても、いまいちクリアにわからない、そんな説明が多かったりするものですから、そういったところも意識改革の中に一つ入れていっていただけたらありがたいんじゃないかなというふうに思います。
今、共済の話が出たので、ちょっとこれは小さい話かもしれませんが、共済については、いわゆる農業災害補償法という法律に基づいた農業災害補償制度というのがあります。これを運営しているのは農業共済組合、いわゆる農済というところなんですが、JA共済と一部重複しているところもあるように見受けられますが、ちょっと改めてここのすみ分けを教えていただいてよろしいですか。
〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕
○奥原政府参考人 農業共済の方は、今御指摘ございましたように、農業災害補償法という法律がございます。これに基づきましてできておりまして、水稲を初めとする農作物の収穫量が減少した場合に、これを補填するという制度でございます。これは、農家の方にも事前に拠出金を出していただきまして、掛金を出していただいて、国もそれに対して補助をしております。これによりまして、農業経営の安定を図るための一つのセーフティーネットの政策でございます。
これに対しまして、農協のやっております共済事業、これは、経済活動としてやっておりますけれども、組合員の自主的な助け合いによって、組合員の病気ですとか死亡、あるいは災害による建物損壊、こういった損害を保障することを目的としてやっておりますので、この内容は基本的に重複をしておりません。
○林(宙)委員 わかりました。
そうしますと、やはり信用、共済事業というのは、それぞれが必要性があって、しっかりと根拠があってやっておられるということは理解をしています。
そうしますと、お配りした資料の実は裏側になるんですけれども、ちょっとしたデータだけつけさせていただきました。これは、農協の収益の構造がどうなっているのかということで、農水省さんの方からいただいた資料の中から事業利益というところだけ抜粋させていただきました。
ここ五年間、平成二十三年度からさかのぼって十九年度まで五年間いただいております。これを見ていただくと明らかで、信用、共済事業というのは大変な黒字というか収益が上がっている。一方で、農業関連事業、あるいは営農指導事業等々については恒常的に赤字であるということは、このようなデータをお示ししなくても、皆さんは既に御存じのことだとは思います。
一つ驚きだったのは、信用、共済事業の収益というか利益というのがやはり圧倒的に大きいんですね。一桁ずつ違いますよね、赤字の方の額とは。ですので、かなりこれは大きいですね。(発言する者あり)ええ、わかります。見た目の数字としてですよ。非常に大きな利益にはなっているだろうということを感じています。
こうやって考えてくると、要は、経済事業と信用、共済事業というのがあって、赤字を黒字である程度補って組織として存続していくということになっているのはそのとおりなのかもしれないなと思うんですが、これについて、こういう構造になっていること自体については政府としてはどのようにお考えなのか、大臣にお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 農協経営の平均的な姿としては、今委員からも御指摘があったように、経済事業部門が赤字、これを信用、共済事業黒字で補填する構造となっております。
農業者の協同組織である農協は、農産物の販売等を適切に行って組合員の農業所得を向上させていく、これが最大の使命でありますから、信用、共済事業が黒字であることに安住して、経済事業の改善に向けた努力を怠る、こういうことがあってはならない、こういうふうに考えております。
したがって、我々としても、農協に対する監督指針において、各農協が、販売力の強化、例えば委託販売から販路を確保した上で買い取り販売への転換をしていくなど、農業経営の支援の機能の強化に向けた事業方針を明確化すること、それから、経済事業の赤字を信用、共済事業の利益で補填している場合には、赤字事業の原因を明らかにした上で、これに対して対策を講じる、こういうことで赤字額を段階的に縮減すること、こういうことを監督指針に明記いたしまして、都道府県と連携して、指導しているところでございます。
○林(宙)委員 ありがとうございます。
経済事業、農家を支援するための事業という意味でいくと、実は、私は東北の幾つかの県しかよく知っていると言えるところはないのですが、農協も民間なんですけれども、民間企業でも、割と農業関係者の皆さんにこういった資材ですとか、もっと言うと、資材を販売すると同時に営農指導をするようなところもふえてきているんですよね。大体がホームセンターのようなところなので、農業だけに限った事業ではないかもしれませんけれども、実際に民間企業としてそういうことをやっていらっしゃるような企業もあるわけです。そうすると、今後は、もしかすると農協もそういったところとその部分では戦っていかなければいけないんだろうな、もっと激しくなるんだろうなという気はしています。
そうなると、もちろん、今までの農家の皆さんとの信用とか、あるいは農家の皆さんの状況を知っているという、そういった先行した資産はあるものの、それがだんだん通用しなくなってくる可能性ももちろんあるわけで、だからこそ、今のうちに、そういった経済事業、ここを強くしていただきたいなというふうに思っています。
なので、もちろんそれはそれぞれの個々のJAさんたちが努力をすることなのかもしれませんが、やはり農協ですから、国としても、先ほどおっしゃったように、経済事業についていろいろと、赤字の構造が何なのか、それをしっかり分析してアドバイスをしていくとか、そういったことをもしやる必要があるとお考えなんだったら、私は、ぜひやっていただきたいというふうに思っているんです。
最後にちょっとお伺いしますけれども、今の質疑の中で、ずっと何回か申し上げてきましたが、要は、やはり設立した当初から大きく時代が変わってきたというのが非常に大きな要素だと思います。政府として、農協のあり方、あるいは、もし必要ならば、農協法といったところも含めて見直していく考えというのがあるのかどうか、このあたりをぜひ聞きたいなと思っています。
農協というのは、要は、立場的には弱い方たちが大きな組織と渡り合っていくためにやっていること、これは農協に限らず協同組合という考え方だと思うんですけれども、それが、例えば先ほどのように、今度は金融事業をメーンにして物すごく利益を上げていますというと、また本来の農協のあり方とも違ってくると思うので、ここで政府として、農協のあり方、農協法を見直すかどうかはまた別かもしれませんが、そういったことを含めてお考えをぜひお聞かせいただきたいなと思います。大臣、お願いします。
○林国務大臣 今、林委員からも、小規模の方が集まって大きなものに立ち向かっていく、バーゲニングパワーをつける、こういうことがございまして、やはりこれは協同組合の原点だろうと思います。
農協法が制定されたのは昭和二十二年ですが、その前をさかのぼりますと、我が長州の先達の品川弥二郎というのが、これは伊藤博文の子分みたいな人でしたけれども、ドイツに渡ったときに、当時そこにいた青木周蔵から、ドイツにはこういうものがあるんだと聞いてきて、自分の一生の仕事として、協同組合というものを日本につくろうということで、後に、たしか内務卿になったときに最終的に立法したというのがその起源だ、こういうふうに思っておりますので、まさにこの歴史的な淵源から見ると、そういう使命というのはある、あり続ける、こういうふうに思っております。
一方で、農協法が制定された当時を見ますと、農地改革の直後で、組合員が均質な農業者であった、こういうことでありますが、その後、やはり経済社会情勢が変化して、組合員の中に、担い手の農業者、例えば大規模な家族経営や法人経営と小規模な兼業農家が混在し、また、先ほど来御議論がありますように、准組合員、こういう方々は議決権がないわけですが、こういう方々が正組合員を上回るということになってきておりますので、やはり取り巻く環境が変わってきている、こういうことであります。
繰り返し申し上げておりますように、会社と同様の民間組織ということでありますから、冒頭申し上げました、協同組合としての原点に立ち返って、自己改革を進めていただくということが基本である、こういうふうに考えておりますが、この法制度についても、先ほど副大臣からも答弁いたしましたように、自民党の方でも既に検討チームが立ち上がっております。農協関係者の考え方も踏まえながら、これは検討していきたいというふうに思っております。
○林(宙)委員 与党の皆さんのその検討に大変期待をしたいなということと、あとは、ちょっと重ねてということになりますが、冒頭に申し上げたJAみどりさんの件については、くれぐれも調査をお願いしますということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
○齋藤(健)委員長代理 次に、村岡敏英君。
○村岡委員 先週に引き続いて質問させていただきます。日本維新の会の村岡でございます。
最後の質問になりましたけれども、きょうの議論もいろいろ聞いてきまして、やはり農業が大転換のときを迎えているので、農業の成長、そしてまた農村社会を守るということで、それぞれ、農林省も農協も農業者も、大きく変わることを、不安も思っていますが、真剣にそれに取り組んでいかなければならない、こう思っております。
その中で、残念ながら、今までの農政の中で非常に不幸なことがあります。それは何かといいますと、農林省も、農林省のそれぞれ、農業にしても、林業にしても、水産業にしても、いろいろな補助金を出し、そして、細かいところまでしっかりと手厚く、日本の自然環境、食を守ろうということで、これまでいろいろな対策をとってきました。それから、農協も、それぞれ全国各地で、合併をしたり、いろいろな技術を取り入れたり、努力してきました。そして、農業者も、国の政策をいろいろ取り入れて、作物をつくったり、いろいろなことをしてきました。
しかし、なぜか、農林省に対して、農協も農業者も信頼がない。そして、政治の立てる農政に対して信頼がないというのが、地域を回っていると、よく聞きます。
その中に、実は、大きな原因の一つに、国と一緒に取り組んできた人たちじゃない人が利益を得て、そういう人たちに対する反発が非常に強いです。ですから、大転換のときに、この国の食を、この国の自然を、そういう農家の人たちと一緒に取り組んでいくということをしていかないと、何か、新しい転換のときに、今までそういう気持ちじゃない人たち、利益だけ追求するという人たちが利するようなことになれば、農業はやはりどんどん衰退していく、こう思っています。
やはり大臣、その点のメッセージがこれから大切なんじゃないか。食とか、また多面的機能、そして自然を守るということは、やはり国全体の大事な点であり、安倍総理も予算委員会で農業は基と言いました。ですから、国を思って取り組んでいる人たちが信頼して一緒に歩める、そのメッセージがあるかどうかがこの大転換の成功の鍵だと思っているんですけれども、大臣はどう思われますでしょうか。
○林国務大臣 基本的に全く同じ考えでございまして、これは、農政にとどまらず、全ての政策を遂行するときには、信なくば立たず、信頼をいただいて、国のために、短期、中期、長期にわたってしっかりとしたことをやっていくんだという御理解を、信頼を得ながら進めていく、これは大事である、こういうふうに思っております。
その上で、私は、常に車の両輪と申し上げておりますが、いわゆる経営所得安定対策的な、産業政策的な部分と、そして、多面的機能に着目した直接支払いというような地域政策的な部分、これはやはり車の両輪として、きちっとバランスのとれた形でやっていく、これが大事であるというふうに考えております。
○村岡委員 ぜひ、大臣の決意のように、私は、ほかの分野は、例えば自動車産業であれ、そういうのは、世界に羽ばたいて、ビジネスで利益を上げて、従業員に給料をたくさんやり、そして成長していくのはいいと思うんです。農業というのは、大臣の言うように、成長分野と、やはり農村社会を守っていく、それをきちんと思っている人たちに応えなきゃいけないということをしっかりやっていただきたい、こう思っております。
そこで、もう一回農業の基本的なことを考えたいわけですけれども、今、農業の就業人口というのが二百三十九万人、販売農家が百四十五万戸、平均年齢が六十五・八歳、耕地面積が四百五十六万ヘクタール、これが基本的な数字であります。そして、農業の現実は、なかなか所得が上げられない、担い手になる人も少ない、そういう状況であります。
その中で、自民党の方で所得倍増戦略というのに取り組んでいると思うんですけれども、この中で、これは小里政務官にお聞きしたいんですが、まず、農地面積に占める担い手の利用面積を十年間で五割から八割にする、こういう目標を立てております。それは、やはり農業者の人口が減るという予測のもとの集積もありますけれども、どう思っていらっしゃるでしょうか。
○小里大臣政務官 後ほどの御質問にもあるのかもしれませんが、基幹的農業従事者で見た場合に、六十五歳以上が六割、逆に、五十歳以下は二割であります。したがって、このまま放っておけば、遠からず、日本の農業の担い手は今の三分の一、四分の一になってしまう。これでは、食料安保も多面的機能の維持もできないわけであります。したがって、まず、新規就農者をしっかりふやしていこうということがあります。
今、若くして、三十九歳以下で就農して定着する人、これが年間一万人ですから、これを何とか二万人に持っていきたいということであります。それでも、高齢化とともに退役が多いですから、減っていくんでしょうけれども、何とか減り方を最低限度に抑えて、しっかり確保した担い手の人たちが従来以上に頑張ってもらいたい。生産拡大をして、そして効率化を図り、所得の上がる形を目指していきたい。もって地域と担い手の所得が倍増する姿を目指していく、そういうことになっておるわけです。
その中で、御指摘にあったように、確保された担い手の方々がしっかり頑張ってもらいたい。結果として、今、日本の農地の五割を耕作しておるのを八割に持っていきたい、そういうことであります。
○村岡委員 ありがとうございます。
そういうふうになると、今回の生産調整の見直し、そして生産調整廃止というのが、やはりみんなつながっていくと思います。農地の集積、青年新規就農者の定着、二万人にする、それから中間管理機構、みんなパッケージで示されると非常にわかりやすかったんですが、ちょっと委員会に法案が上がってくるのが、一つ一つつながっていないような形でできてきたので、我々もわかりにくかったということがありました。
そこで、大臣にお聞きしたいんです。よくここで議論させていただいている中でもう既に答えているんですけれども、もう一度お答えをいただきたいんです。
減反廃止と新聞には書かれています。大臣は、減反という言葉は使いたくない、生産調整と言っておりますけれども、その違いは何でしょうか。
○林国務大臣 これは言葉遣いでございますので、何か法律的な定義ということではないかもしれませんが、減反という言葉には、反を減らしていく、こう書きますから、農地が減っていく、こういうものがどうしても想起されるわけでございます。確かに、そういうふうに休耕田にして抑制をしたという時代もありましたけれども、その後、水田のフル活用ということでずっとやってきた、こういうことがございますので、やはり減反という言葉ではなくて、生産調整、需要に見合った生産、こういうことで、生産調整という言葉を使わせていただいております。
○村岡委員 そうなると、それほど定義的には、休耕田であったのを作物を植えるということになった中での、やはり使い方の部分だとは思うんですけれども、一つだけ、この間も御質問させていただきましたけれども、経営安定化対策の見直しと生産調整の見直しは同じ言葉なんでしょうか。
〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕
○林国務大臣 経営所得安定対策の見直しというのは、いわば生産調整、これは米でございますけれども、それを含むということだと思います。
○村岡委員 そこがやはり選挙前に説明不足だったと私は思います。そこが、今、現場の農業者、農協、農業関連団体で、自民党の公約がちょっと違うんじゃないかと。ですが、ここはしっかりと説明しなきゃいけない部分だ、こう思っております。
そして、まだ自民党でも全部取りまとめていらっしゃらないと思いますけれども、農業の大転換というのは、江藤副大臣が、オリンピックまでには大体その方向性だということで、その三日後の自民党でも、五年というのが一つの区切りのように新聞紙上ではなっていましたが、大転換をオリンピックまでにはしなければならない、また、する目標であるというのは、それでよろしいんでしょうか、江藤副大臣。
○江藤副大臣 いや、せんだって申し上げたのは、先ほど委員がおっしゃったように、もう六十五歳ですから、七年たったら七十二歳ですから、まあ、七十代は元気といえば元気なんですけれども、そのときに農政の構造が変わっていなければ、さらに転換するのは難しくなりますよ。体力のあるうちに、痛みを伴うものであっても、やはり挑戦していかなきゃいけない、農業の構造改革に対して。
ですから、七年というのは、わかりやすく、オリンピックが七年後にありますねということを言ったわけであって、七年後を目標に必ずやり遂げるという決意を申し上げたわけではありません。しかし、私としては、そのときには当然姿が変わっていなきゃいけないという気持ちは変わりありません。
○村岡委員 私の方では、七年後、七年以内にはやらなきゃいけないという大きな決意があるようには思っております。
ただ、やはり農業の大転換というときに、自民党も、もう決まっているのか、それともこれから発表するのか、ちょっと新聞紙上だけではわかりませんが、生産調整の廃止というのはその中の一番大きな大転換であることに間違いないんでしょうか。
○林国務大臣 ここも言葉の問題かもしれませんが、私は、減反の廃止ではなくて、生産調整の見直しという言い方をさせていただきたいということを常々申し上げております。
生産調整というのは、今行政が生産数量目標の配分をやっている、これに頼らずとも、皆さんが自分の経営判断で自主的にやれる、そのときに、国はもう全く関与しないということではなくて、先ほど来ずっと御議論がありますように、例えば、非主食用米の生産誘導のインセンティブをするですとか、中食、外食等のニーズに応じた生産、安定取引の推進をするとか、いろいろなところでかかわっていくということでありますから、そこは広い意味で生産調整の範疇にも入ってくるといえばそうなわけでございまして、何か、政府は全く何もしないというイメージが出てしまうと非常によろしくないなということで、あえて見直しという言葉を使わせていただいているわけでございます。
中間取りまとめ案にも書かせていただいたように、大事なことは、五年後を目途に、自分でつくっていない行政が生産数量目標の配分、こういうことをする、それに頼らずに、需給見通しは国が策定するけれども、それを踏まえながら、生産者、集荷業者、団体、皆さんが中心になって、円滑に需要に応じた生産が行われる状況になるように、その取り組みについては行政も一緒になって取り組んでいく、そういう意味で、生産調整の見直しという言い方をさせていただいているところでございます。
○村岡委員 大臣の御答弁でいくと、五年後をめどに、国が全然かかわらないというわけじゃないわけですけれども、米の直接支払いを五年後にはゼロにするということの認識でよろしいんでしょうか。
○林国務大臣 十一月六日に与党にお示しした中間取りまとめで、その方向性を明示させていただきました。
○村岡委員 そこで、きょうは資料を皆さんに、これは平均的な数値なので少し誤差はあるかもしれませんが、一ヘクタール、五ヘクタール、十ヘクタールの場合、今の制度の中でどのぐらいの収入があるかということで示しました。
転作作物なんかも大変細かく分かれているわけですけれども、一ヘクタールの場合であれば、主食米の販売額六十六万九十六円、米の直接支払い九万円、そして、加工用米や、備蓄用米や、飼料米や、大豆や、小麦、ソバ、菜種などによって、もちろん水田活用の直接支払いが違う。十アール当たりは、加工用米が二万円、飼料用米が八万円、大豆、小麦が三万五千円、ソバ、菜種が二万円。こういう中で、農家は今、水田をフル活用といいますか、そういうふうにしております。
その中で、新聞紙上と中間報告なので、まだ決まっていらっしゃるかどうかわかりませんが、飼料用米を、十アール当たり八万円というのを拡充しようということが出ていますけれども、これはそのように認識してよろしいですか。
○林国務大臣 これも、中間取りまとめにおいて、拡充すると。例えば、飼料用米等については、今やっておる面積払いに加えて、生産数量に応じて支払う仕組みを導入するということで充実を図っていく、こういうことを示させていただいているところでございます。
○村岡委員 そういうふうになりますと、飼料用米というのは、これは新聞紙上なんですが、面積ではなくて収量、そういうふうになっていますけれども、それもそのとおりでよろしいんでしょうか。
○江藤副大臣 両建てということでございます。
先ほどの質疑で申し上げましたけれども、きちっと普通につくればこれぐらいというところは、岩盤的に、まずは面払いで差し上げて、そしてさらに、多収穫米であるとか、収量を上げれば、数量払いの分はふえていく。
それで、今は産地資金、今度は産地交付金という名前に変わりますけれども、そこのところで、さらに加算することも可能になる。さらに言えば、耕畜連携の一万三千円もありますから、それを乗っけていけば、主食用米と全く遜色がない水準に持っていけるんじゃないかというふうに考えています。
○村岡委員 確かに、日本の飼料米といいますか飼料作物というのは全く自給率が低いので、飼料米を生かしていくことが非常に大切なことだと思っています。でも、飼料米をつくる農家の方をふやすためには、やはりこれは加算しなければ、そしてまた、収量というのは確かにいいことだと思います。当然、真剣に、今は真剣じゃないというわけじゃないですが、真剣につくっていくと思います。
ただ、今は主食用の米を飼料米にかえているのが多いので、その点でいけば、やはり飼料用米として多収量をとれるような形を、しっかりとこれは農林省の方で研究したお米をやっていかなきゃいけない。よく農家の人に聞くのは、主食用と飼料用米とを近くで植えた場合、いろいろな問題が起きてくるということですけれども、それも含めて、いろいろな対策をとって飼料用米をふやしていかなきゃいけない、こう思います。
先ほどの質問の中には、なかなか需要がないと言っていますが、しっかり需要はあると思っています。あると思っていますので、そこには、飼料用米に行って、今まで転作していたところをかえていくのは大切なことだと思っています。
というのは、残念ながら、これはどこの地域もそうだとは言いませんが、比較的、東北なんかですと、転作した作物は、売り物としては余りいいものじゃないんです、大豆にしても何にしても。そういう意味では、もともと水田に合っているのは稲に決まっているわけですから、飼料用米というのをしっかりとふやしていきながら、そして、畜産の飼料用の穀物の自給を上げる。そこには、最終的には、今の食料自給率三八%というのを押し上げる効果もある、そういうふうに思っております。
そういう意味では、江藤副大臣は畜産の方ですけれども、畜産の方は需要があると思っているんですけれども、十分需要はあるという認識でしょうか。
○江藤副大臣 私のところは、採卵鶏もおりますし、養豚農家もおりますし、和牛生産、それから酪農家も、全部おります。
それぞれ、麻生政権時代に、私はまだ当選回数が若かったんですけれども、どれぐらい米をまぜたら肉質がどう変化するか、うまみ成分はふえるんですけれども、安心して与えられる量というのはそれぞれ違います。例えば、和牛だったら三%ぐらいしかまぜてはならない。反すうする生き物ですから、米もかなり細かく砕いてあげなきゃだめです。いろいろ、鶏だったら粒のまま食わせられるとか、砕いてあげれば豚にはいけるとかですね。
そういうことを丁寧にやらなければなりませんが、集荷がきちっとできて、先ほどちょっと委員もお触れになりましたけれども、花粉が飛んだりすることも周りの米農家は嫌うわけですよ。ですから、やはり中間管理機構等も生かしながら、ブロックで、この地域一帯は飼料用米をつくるんだという団地化のようなことも、すぐにはできませんが、やっていけば、マッチングももっとやりやすくなりますし、集荷も楽になりますので、需要は十分にあるというふうに認識をしております。
○村岡委員 副大臣が答えられたように、ここが多分、転換していくときの大きな対策、または、農家がしっかりとやる気を持って、新しい政策に取り組んでいくと思います。それは、今、自民党の、政府の全部の政策が出ていないのでわかりませんが、先ほど言った中間管理機構、そして飼料用米の推進といいますか、それにかえていく、そういう形は非常にいいと思います。
しかしながら、所得が倍増という意味は、先ほどの議員の質問もありましたけれども、水と緑の支払いですか、そちらの方にお金が行くみたいですけれども、農家の所得ではなく、農村社会の所得倍増ということで先ほど小里政務官にもお聞きいたしましたけれども、倍増というイメージも、これもまたメッセージは、農家の個々の人たちが倍増するようなメッセージで伝わっちゃっているんです。その部分はどう思われますか。
○小里大臣政務官 村岡先生、本当にありがたいことで、自民党の策定した所得倍増十カ年戦略、かなり研究をしておられると思います。それに基づいて、今、核心に触れる部分を御質問いただいておると思います。
十カ年戦略では、地域と担い手の所得を倍増するとしておるんですね。そのために、先ほど申し上げたような構造的な要因があって、まず担い手をしっかりと育てていく、そこに、六次産業化とか農地集積とか新規就農倍増計画、輸出促進、あるいは鳥獣被害対策とか、全部で十五の柱を立てて、ビジョンを立てて、百の具体策をそこに策定しておるわけなんですね。まさに、おっしゃるようにパッケージで、政策を総動員して地域と担い手の所得を倍増させていこうということであります。
一人一人の担い手をまずは倍増させていくということでいけば、結果として地域全体も、兼業農家あるいは非農家も含めた地域の所得が上がっていく、そういうことを目指しておるわけであります。
○村岡委員 所得倍増というのはいい政策のように見えるんですけれども、このパッケージが、農家が本当にそれに取り組んでやる気があるかどうかということが一番の問題なので、そこのところが何となく、対策は一つ一つはよさそうなんですが、パッケージとなったときに農家の人たちがついてこられるか、また農業関連団体がついてこられるかというのは、非常に不安はあるんです。
その不安というのは何かというと、先ほど言ったように、やはり農業政策は方針を出してころころ変わるという不安が農家の人たちにあるわけです。今回の場合は大転換になりますから、その辺のことの説明がないと、農家の人たちがやる気がなかったら、幾らいい政策でも、これは絵に描いた餅になると思います。
○小里大臣政務官 御指摘のとおりであります。
一つ一つの政策はいい、担い手育成もいいだろう、農地集積もいい、六次産業化もいい、輸出倍増戦略もいい、しかし、それを実際に実行していく上では、まさに農業団体のことを御指摘いただきましたが、地域のプランナー、デザイナー、コーディネーター、そういった方々がどうしても必要になるんですね。
したがって、この戦略を策定する過程で、農業団体ともよくすり合わせをしながら、農業団体においては、先ほどの農協改革の話にもなるわけですけれども、そういった販売戦略あるいは営農指導といった面でぜひ力を発揮していただきたい、こうしたことでお願いをしておるわけであります。農業団体に限りませんけれども、地域自治体とか普及指導員とか、しっかり連携を図りながら、この政策がしっかり現場に届いていくようにしていくことが、まさに御指摘のことに応えることであろうなと思います。
○村岡委員 そこの点が抜け落ちると、この対策というのが全てまた農家の信頼、農業団体の信頼をなくすということになりますので、ぜひお願いしたい、こう思っています。
最後に言います。きょうはもう時間がないので、最後に自分で話をして、やめます。
農協に関しては進化をしていただかなきゃいけない、やはり時代が変わったので進化をしていただく、その部分でしっかりと説明をしてください。そして、柱はやはり、生産調整を廃止していくという中で、それが農業全体がきちんと所得を……(発言する者あり)見直しをしていくという計画を立てているみたいですけれども、見直しをしていくとすれば、それの説明もしっかりしなきゃいけない。その部分だけは、決して農林省が考えただけで農業全体が動くわけではないということで、ぜひ、そこの点は頑張っていただきたいと思います。
十一月いっぱいでしっかりしたものができるとお聞きしておりますので、その後にまた質問をさせていただきたいと思います。
きょうはありがとうございました。
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○坂本委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、農地中間管理事業の推進に関する法律案及び農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案の両案を一括して議題といたします。
これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。
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農地中間管理事業の推進に関する法律案
農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○林国務大臣 農地中間管理事業の推進に関する法律案及び農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明いたします。
現在の我が国の農業構造を見ると、これまでの農地流動化の結果として担い手の農地利用面積は農地面積全体の約五割となっているなど、かなりの変化が見られるところでありますが、農業の生産性を高めていくためには、法人経営や大規模家族経営などの担い手への農地集積と農地の集約化をさらに加速していく必要があります。
また、農業者の高齢化の進展に伴い、六十五歳以上の農業者が約六割を占めるのに対し、四十歳代以下の農業者の数は約一割と、世代間バランスが崩れており、将来にわたって安定的な農業生産を行っていくには、青年就農者などの農業への新規参入を促進していく必要があります。
さらに、法人経営の数はこの十年間で約二倍となり、地域農業において大きな存在感を持つに至っておりますが、農業の継続的発展を図っていくには、農業法人の数をふやすとともに経営内容の充実を図っていくことが必要です。
こうしたことを踏まえて、本年六月に取りまとめられた日本再興戦略においては、今後十年間で担い手が利用する農地を全農地の八割に引き上げること、定着する若年就農者を現在の二倍とすること、法人経営の数を現在の四倍とすることが目標に掲げられたところであり、こうした目標の達成に資するため、本二法案を提出した次第であります。
次に、これらの法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
まず、農地中間管理事業の推進に関する法律案についてであります。
第一に、目的についてであります。この法律は、農地中間管理事業の的確な推進により、農業経営の規模の拡大、農用地の集団化、農業への参入の促進等による農用地の利用の効率化及び高度化の促進を図り、もって農業の生産性の向上に資することを目的としております。
第二に、農地中間管理機構の指定等についてであります。都道府県知事は、農地中間管理事業を適正かつ確実に行うことができる一般社団法人または一般財団法人を、都道府県に一を限り、農地中間管理機構として指定できることとしております。
また、農地中間管理機構の役員の選任及び解任は都道府県知事の認可を要することとするとともに、事業の実施状況が著しく不十分な場合等には都道府県知事は役員の解任を命ずることができることとしております。
さらに、農地中間管理機構は、借り受ける農用地の基準、農用地利用配分計画の決定の方法などを定めた事業規程を作成し、都道府県知事の認可を受けるとともに、これを公表しなければならないこととしております。
第三に、農地中間管理機構の業務についてであります。農地中間管理機構は、農用地の出し手から農用地を借り受け、必要な場合には農用地の利用条件の整備を行った上で、担い手に対し、その規模拡大や利用する農用地の集団化に配慮して、転貸することとしています。
貸し付けについては、公平、適正に行われるよう、定期的に区域ごとに借り受け希望者の募集を行い、応募した者等の情報を整理し公表するとともに、実際の貸し付けに当たっては、農用地利用配分計画を定めて都道府県知事の認可を受け、その計画の公告により、農用地の利用権が設定されることとしております。
また、農地中間管理機構は、その業務の一部を第三者に委託する場合には、都道府県知事の承認を要することとしております。
第四に、国による評価であります。農林水産大臣は、農地中間管理機構の業務の実施状況について評価を行い、その結果及び優良事例に関する情報を公表すること等により、事業の効率的かつ効果的な実施を図ることとしております。
次に、農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案についてであります。
第一に、青年等の就農支援についてであります。新たに農業経営を営もうとする青年等は、青年等就農計画を作成し、市町村の認定を受けることができることとし、認定を受けた者に対して日本政策金融公庫等が無利子資金の貸し付けを行うことができることとしております。
第二に、遊休農地に関する措置の強化についてであります。遊休農地に関する措置の対象を、耕作者が不在となること等により遊休農地化することが見込まれる農地にまで拡大することとしております。
また、遊休農地の所有者に対して農地の利用意向調査を行い、農地中間管理機構に貸し出す意向があるかどうかを確認することから手続を開始するとともに、都道府県知事の裁定による農地中間管理機構への利用権設定に至る手続を簡素化することとしております。
さらに、所有者が確知できない場合の公告の制度を改善することとしております。
第三に、農地台帳等の法定化についてであります。農地の集積、集約化を効果的に進めるため、農業委員会は、農地の所在、所有者、賃借権等の種類、存続期間等を記録した農地台帳及び地図を磁気ディスクをもって作成し、これを公表することとしております。
第四に、農業法人に対する投資の円滑化についてであります。農林水産大臣の計画承認を受けて農業法人投資育成事業を行う投資主体として、現行の株式会社のほか、投資事業有限責任組合を追加するとともに、日本政策金融公庫は、大臣承認を受けた投資事業有限責任組合に対しても出資の業務を行うことができることとしております。
第五に、青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法を廃止することとしております。
以上が、これらの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○坂本委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○坂本委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
両案審査のため、来る二十日水曜日午前十時に、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
次回は、来る十九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時十六分散会