衆議院

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第5号 平成26年4月1日(火曜日)

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平成二十六年四月一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 森山  裕君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      青山 周平君    井野 俊郎君

      池田 道孝君    小里 泰弘君

      大岡 敏孝君    鬼木  誠君

      加藤 寛治君    川田  隆君

      菅家 一郎君    清水 誠一君

      末吉 光徳君    鈴木 憲和君

      武井 俊輔君    武部  新君

      津島  淳君    中川 郁子君

      橋本 英教君    比嘉奈津美君

      福山  守君    堀井  学君

      宮内 秀樹君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      後藤  斎君    玉木雄一郎君

      寺島 義幸君    鷲尾英一郎君

      岩永 裕貴君    鈴木 義弘君

      村上 政俊君    稲津  久君

      樋口 尚也君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   議員           大串 博志君

   議員           鷲尾英一郎君

   議員           玉木雄一郎君

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   厚生労働大臣政務官    赤石 清美君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括審議官)         都築 政則君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    片上 慶一君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 上羅  豪君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           成田 昌稔君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         松島 浩道君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            山下 正行君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           雨宮 宏司君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沼田 正俊君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 平岡 英治君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     青山 周平君

  武井 俊輔君     鬼木  誠君

  中川 郁子君     大岡 敏孝君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     菅家 一郎君

  大岡 敏孝君     中川 郁子君

  鬼木  誠君     宮内 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  宮内 秀樹君     比嘉奈津美君

同日

 辞任         補欠選任

  比嘉奈津美君     武井 俊輔君

    ―――――――――――――

三月二十七日

 農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第六号)

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第七号)

 環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第八号)

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出第五〇号)

同日

 農業予算を抜本的に増額し、食料自給率向上を目指すことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四六五号)

 同(笠井亮君紹介)(第四六六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四六七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四六八号)

 同(志位和夫君紹介)(第四六九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四七〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四七一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四七二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出第五〇号)

 農業者戸別所得補償法案(大串博志君外六名提出、第百八十三回国会衆法第二六号)

 農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第六号)

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第七号)

 環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第八号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官松島浩道君、食料産業局長山下正行君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農林水産技術会議事務局長雨宮宏司君、林野庁長官沼田正俊君、水産庁長官本川一善君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、法務省大臣官房訟務総括審議官都築政則君、外務省大臣官房参事官正木靖君、国税庁長官官房審議官上羅豪君、厚生労働省大臣官房審議官成田昌稔君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君及び環境省大臣官房審議官平岡英治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井野俊郎君。

井野委員 おはようございます。自由民主党、群馬二区選出の井野でございます。

 今回は、先々月発生いたしました、私の地元にも被害がありました雪害に関して質問をさせていただきたいと思います。

 今回の雪害については、私の地元であります群馬県の平地でも観測史上最大の積雪があったため、ビニールハウスが倒壊し、園芸農家に多大な損害を与えました。

 私の地元では、これから出荷最盛期を迎える小玉スイカやニラ、ホウレンソウ、トマト、キュウリなどがビニールハウスで栽培されており、今回の雪の重みで、そのビニールハウス約九割が倒壊し、生産者はこれからというところで収入手段を断たれたという状況でございます。

 私も、大雪の翌日の朝から、早速、地元農家の方から連絡を受け、被害状況を確認させていただいた上で、地元JAの皆さんと林大臣に陳情に上がらせていただきました。大臣には、本当にお忙しい中、お時間をとっていただきまして、大変感謝を申し上げます。

 その上で、今回、農水省から撤去費用の定額補助、またビニールハウス再建の五割助成と早々に農家支援策を出され、また多くの農家は、この支援策を歓迎され、失いかけた営農への意欲を取り戻しつつあるというところでございます。

 大臣及び農水省の皆様には、本当に絶大なる御支援をいただき、この場をかりまして感謝を申し上げる次第であります。

 もっとも、今回の雪害及び手厚い支援策については、現場では幾つかの混乱と課題が見られるというところがございます。

 そこで、今回は、こういった支援事業の課題について質問をさせていただきたいと思っております。

 まず一点目が、パイプハウスの再建についてであります。

 先日、農家の方向けの補助事業説明会が地元JAでございましたが、その席に出席させていただいて、特に問題となっていたのが営農再開の時期、見通しでございました。これだけ多くのビニールハウスが倒壊しましたので、資材取得の見通しが全く立たず、いつまでにどのような措置を講じればよいのか、そういったことがわからないという声が多く聞かれました。営農再開が来年に間に合わないと、違約金を支払わなければならないと訴える、契約栽培をされている農家の方もいらっしゃいました。また、資材調達が間に合わなければ、代替作物も検討しなければならないという声もございました。

 そこで、パイプ等の資材の供給状況について、現時点においてどの程度農水省として把握されているのか、わかっている範囲で結構でございますので、御教示ください。

 また、今回、資材が不足することが予想され、資材調達の状況によっては、二十六年度のみではビニールハウスの再建が困難であるということも予想されます。

 そこで、今回の補助事業について、ぜひとも来年度以降も継続していただきたいと考えておりますが、財務当局との折衝もございますが、その点について、農水省の考え方についてもあわせてお伺いさせていただきます。

佐藤政府参考人 井野先生の御質問にお答えいたします。

 今回の大雪によりまして、ビニールハウスの損壊につきましては、三月二十八日現在で約二万七千件の報告が上がってきております。ハウスにつきまして再建することになりますと、通常年の年間需要量は大体五万から六万トンでございますが、その二倍のパイプ需要が見込まれているというような状況になっております。

 このため、私どもでは、主要なパイプメーカーに対しまして、骨材の円滑な供給について協力を要請してきたところでございまして、今、パイプメーカーにおきましては、四月から六月にかけましての需要に応えるべく、三、四月は、通常年は月五千トンの生産をしておるわけでございますが、これを六割増の月八千トン、増産に取り組んでいるというふうに聞いております。

 先生、今御質問いただきました群馬県の場合によりますと、農協組織にこちらの方から聞き取りをしました結果、今はパイプが、なかなか供給が滞っているわけでございますが、四月の第二週より順次群馬県の方に、現場の方に納入される見込みというふうに聞いているところでございます。

 今後とも、パイプメーカーや被災県等と情報を共有することで、資材の円滑な供給に努めていきたい、こんなふうに考えているところでございます。

小里大臣政務官 来年度以降の事業の継続についてもあわせて御質問でございました。

 要するに、早急に産地の復興を図っていかなければなりません。そのために、今回の経営体育成支援事業におきましても、二十五年度そして二十六年度予算を活用して対応していこうということでございます。

 このため、平成二十六年度末までに行うというのが基本であって、そこを目指してまいります。今説明がありましたように、そのために資材の増産等も鋭意努力を促しているところでございます。

 まず、早急に復興を目指してまいりますが、ただ、資材不足等のために、御指摘のような事態があるとすれば、そのときには、現場の実態に応じて対応してまいりたいと思います。

井野委員 本当に早期に取り組んでいただきたいという点と、私から一つ要望させていただきますと、ぜひとも農家の不安、いつまで、どうしていいかわからない、不安がまだ残っておりますので、パイプ等について、いつまでに何とかなりそうだという、その都度、わかる範囲で、ぜひとも、地元といいましょうか農家の方には、情報提供をお願いしたいと思っております。

 続きまして、一つ質問を飛ばさせていただきまして、支援事業の活用についてお伺いさせていただきます。

 多くの農家は、今回の雪害によって現金収入の道が断たれ、生活していくのが困難になっている状況にございます。特に施設園芸は、労働集約型と言われているため、手広くやっている園芸農家は多くのビニールハウスを所有し、また、雇用者、多数の人を雇用して生産していた農業生産法人などもございました。ところが、今回の雪害によって生産活動がとまってしまったため、こういった労働者の雇用維持が困難となっている状況にあり、私の地元でも、既に解雇したという法人も多く見られるところであります。

 この点、農水省としては、雪害に関して、次世代経営者育成派遣研修事業を活用して雇用維持に努めるというような事業をしている点は大変評価できる点でございますけれども、少なくとも、私の地元でこれだけ壊滅した状況にありますと、他の生産法人も、同じように、結局は壊滅している状況でございますので、雇用してもらうというのは困難な状況でございます。

 また、農業に従事する方というのは、比較的その地域、つまり地元の方が多いわけでございます。いきなり、例えば、この生産法人でだめだったから、では、どこか遠く、他の生産地へ行って農業に従事しようというようなことはちょっと、なかなかそういうことはできない難しい状況でございます。そういった意味では、現状としては、なかなか農水省のせっかくの事業が活用されていないというような状況にあります。

 そういった意味では、せっかくの事業でございますので、少しでも雇用される農業者、営農意欲を維持してもらえる環境整備をしていくべきだと考えておりますが、こういった農水省の課題、そして事業の活用方法についてどのように考えているかをお聞かせください。

奥原政府参考人 法人の従業員の雇用の維持の観点の御質問でございます。

 今回の大雪で被災をされました農業法人等の従業員の雇用の維持の対策といたしましては、従業員をほかの農業法人等に研修目的で派遣をいたします農の雇用事業の中の次世代経営者育成派遣研修というものを使うということにいたしまして、この件で助成を行うことにしております。

 これにつきましては、被災された農業法人の方にこの情報がきちんと行き渡るようにということで、ホームページでの情報提供もやっておりますが、それに加えまして、日本農業法人協会あるいは全国農業会議所、こういったところを通じた情報提供の徹底に努めているところでございます。

 今後、各都道府県の農業会議を通じまして、被災された法人側の事業活用のニーズを具体的に把握いたしますとともに、既に全国農業会議所の方では、これは必ずしも被災者だけではございませんけれども、研修生として受け入れ可能な農業法人の数を数えてリストも公表しております。全国で百三十八の法人が受け入れ可能ということで、固有名詞を含めて既に公表されております。これも活用いたしまして、出し手、受け手のマッチングを進めまして、スムーズな研修の開始につなげていきたいというふうに考えております。

井野委員 やはり、どちらかというと、雇用されている方、農業者の声、受け手だけではなくて、出ていく方の声というものもぜひお酌み取りをいただきたいと思っておりますので、そこら辺はぜひ御配慮をお願いいたします。

 続きまして、農業共済についてお伺いいたします。

 本来であれば、こういった雪害等、自然災害は、農業についてはつきものでございますので、こういった災害においては、保険によって保険金が支払われ、そのお金によって生活支援また経営再建というものが図られるべき姿であります。しかしながら、私の地元もそうでございますけれども、農家の大半は、特に施設園芸等については、農業共済に加入していらっしゃらない農家の方が実態として多くあります。そういったこともありまして、今回の農水省の補助事業という形になったのかと思います。

 そこで、まず、今回、特に被害の大きかった群馬、山梨、埼玉の各県における被害農家のうち、農業共済、特に園芸施設共済事業及び果樹共済事業に加入されていた割合はどの程度であったのか、お伺いいたします。

 あわせて、園芸施設共済事業についてでございますけれども、附帯施設、施設内農作物等の附帯保険についての加入状況についてもお聞かせください。

奥原政府参考人 共済の加入状況でございます。

 まず、園芸施設共済全体の加入率、これは面積ベースでございますが、平成二十四年度で、全国平均では約四七%でございます。県別に見ますと、群馬県が約三四%、埼玉県が約三五%、山梨県は約三六%というふうになっております。

 また、園芸施設共済の加入者のうち、附帯施設、これは温湿度の調整施設ですとかかん水の施設等でございますが、附帯施設も契約をされている方の割合、これは全国平均で約十四分の一でございますけれども、群馬県では約六分の一、それから、埼玉県では約五分の一、山梨県では約十七分の一というふうになっております。

 それから、園芸施設共済で、施設の中の農作物について加入をされている方は、全国平均で見ますと約五分の一ですが、群馬県では約三分の一、埼玉県では約四分の一、山梨県では約五十分の一というふうになっております。

 一方で、果樹共済の方でございますけれども、これの面積ベースの加入率でございますが、全国平均では約二五%、群馬県では約一一%、埼玉県は約二二%、山梨県は約一九%というふうになっております。

井野委員 お話を聞くと、それこそ余り高くないということがわかるかと思うんです。

 今回、補助事業としては、再建については二分の一、そして撤去について定額補助という意味では、手厚い保護をしていただいたという点は本当にありがたいわけでございますけれども、共済の加入者と非加入者を今回の補助については区別なく補助対象にされているかと思いますけれども、そうすると、結局、共済に加入していた農家と加入していない農家とのバランスといいましょうか、そういった意味では、共済に加入していた方のメリットというものは薄れてきているように思われるところも否めません。

 そこで、加入者と非加入者とのバランスについてはどのように考えていらっしゃるのか、農水省の考え方をお聞かせください。

奥原政府参考人 今回の豪雪により被害を受けた農業者に対しましては、経営体育成支援事業によりまして、これは国費でございますけれども、再建、撤去費用の二分の一相当、これを国費から補助するということにしております。

 この際に、園芸施設共済の加入者に対しましては、共済金は全額お支払いをするということを前提にいたしまして、共済金の二分の一相当は国庫負担によるものでございますので、経営体育成支援事業の国庫補助につきましては、対象となる事業費の二分の一からこの共済金の二分の一相当額を控除したものを補助するということになっております。

 園芸施設共済の加入者につきましては、こういった経営体育成支援事業の国費補助額、これは調整をされることになりますが、共済金は全額支給をされるということになります。共済金の中には、本人の掛金に相当する分、これは要するに半分でございますけれども、これは当然支給されることになりますので、この分は、園芸施設共済に入っていない方に比べて当然プラスアルファということで、手取りが多くなるということになってまいります。したがいまして、共済に入っている方のメリットはあるということでございます。

井野委員 共済金は全額支払われるというところでございますけれども、私の地元群馬県では、国の今回の補助率二分の一に加えて県が上乗せ補助という形で、大体九割補助に実はなるわけでございます。そうすると、変な話ですけれども、共済金が入ると、かえって、焼け太りとは言いませんけれども、手取りが手元に残るのが逆に多くなるような実態も考えられるわけでございます。こういうふうなことも、正直私としては、いいのかなとは言いませんけれども、そういう実態もあるということをちょっと指摘させていただきたいと思っております。

 私の問題意識としては、結局こういうものは、やはり原則論に立ち返って、本来であれば共済で、加入する人をふやして、そしてカバーしていくべきものだと思っております。

 結局、私が農家の方から話を聞いた主な加入率の低い原因というのは、やはりビニールハウスが償却が早くて、最終的に五年で二〇%まで償却が進んでしまって、それ以降は二〇%がふえることもないということであります。そのあげくに、今回の雪害に実際に遭って、ある農家の方が言っていましたけれども、毎年、ことしも同じでいいですねとかいう形で、特に説明もなく毎年毎年四万円ぐらい共済金を払っていらっしゃったんですね。そして、実際にこういう雪害が起きたら、そのハウスが十年以上経過していたものですから、ほとんど出ませんなんという説明に来た。それに対して、こんなのは詐欺じゃないかとその農家の方はすごく怒っていらっしゃったということがございました。

 そういった意味では、こういった、余り共済のメリットというものが少ない中において、では、具体的に、農水省としては加入率が低い理由及びその対策についてどのように考えているのかをお聞かせください。

小里大臣政務官 加入率につきましては、非常に地域差が大きいんですね。新潟県とか秋田県のようにほとんどの農家が加入している地域もあれば、加入率が二〇%程度にとどまっている地域もあります。その要因の大きなところとしては、豪雪被害等に遭いやすいかどうかといったようなところが大きく影響しておるように思います。

 そこで、園芸施設共済の加入促進につきましては、例えば、農家が支払う掛金の二分の一を国が負担するといったことがあります。そしてまた、これまでも、掛金補助の対象となる共済金額の上限を引き上げてまいりました。また、全国をグループ分けしまして、災害発生率の低い地域では掛金が安くなる、いわゆる危険段階別共済掛金率の設定といったようなことも行ってきたところでございます。

 こういった措置を活用して、特に今回被害が大きかった地域、しかし日ごろは被害が余りない地域等においても、しっかり加入が促進されるように図ってまいりたいと思います。

井野委員 共済でも補助金でも、国費を投入する意味では、結局根っこは一緒になってくるわけであります。それだったら、私は、まだ共済の方にお金を使った方が、その都度、補助をお願いしますというのではなくて、しっかりと農家にも自己責任を持たせた上での共済加入を積極的にぜひ農水省としても支援していただきたいと思います。

 私の質問を終わります。本日はありがとうございました。

坂本委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 きょうは、大要二点をお伺いしたいと思っております。一つは、日豪EPA交渉について、それからもう一つは、酪農における支援事業についてということで伺ってまいりたいと思っております。

 最初に、日豪のEPA交渉についてなんですけれども、これは、先月二十六日に、オーストラリアのロブ貿易相が来日なさって、林大臣、また経済産業大臣と相次いで会談をされたという報道がありました。

 日豪のEPA交渉は、御案内のとおり、平成十九年から十五回ですかにわたって交渉を重ねてきていますけれども、これはオーストラリアの方から見ると、やはり大詰めのところに来ている、何とかと、向こうのそういう意向も示されておりますが、これは会談の前から、オーストラリア側の方からは、牛肉それから乳製品等について、特に牛肉は関税をぜひ半減してくれ、こういう強硬姿勢、こんなことが報道されておりました。

 日豪のEPA交渉は、もうこれは当然ですけれども、国会決議に基づいて粘り強い交渉を行っていくことが最も大事だというふうには認識していますけれども、林大臣も、会談の前から、期間を区切って交渉することはないんだ、こういう合意期限を設定する考えはないことを示しておられました。その意味で、私も安心しているんですけれども、ただ、この交渉の状況は、報道で知る由しかないんですが、余り伝わってこない。詳細は難しいとしても、示すことができるところについては示していただければ、こう思っておるんです。

 そこで、まず伺いますが、今回のこのロブ貿易相との会談でどのようなことが話し合われたのか、概要で結構でございますので、お答えいただきたいと思います。

林国務大臣 三月二十六日でございますが、オーストラリアのロブ貿易・投資大臣と会談を行ってきたわけでございます。

 会談では、日豪EPAを含む二国間の経済関係につきまして議論を行わせていただきました。日豪EPA交渉の中の農産品の市場アクセスについても意見交換を行ったところでありますが、引き続き、協議を継続していく、こういうことになったところでございます。

 どの品目についてどういう数字がというような具体的な内容は、これは委員もよく御承知のとおり、交渉が継続中でございますので、なかなか申し上げることはできないわけですが、やはり我々として、農林水産省としては、日豪EPAについては衆議院の農林水産委員会の決議がございますので、この決議を踏まえて、真摯に交渉に取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

稲津委員 具体的な内容を示すことができないのは当然承知をしておりますが、その意味でも、今大臣から概要についてのお話をいただきました。

 そこで、一つだけ具体的に伺っておきたいと思うんですけれども、報道では、オーストラリアの関心事の一つは、まあ、これが最もなんでしょうけれども、牛肉ということで、ロブ貿易相は半減となることを強く求めた、このように報道されていましたけれども、この点についてはどうでしょうか。

林国務大臣 いろいろな報道があるのは私も拝見をいたしましたけれども、一つ一つの報道についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、先ほど申し上げたように、農産品の市場アクセスについても意見交換を行って、引き続き、協議を継続していこう、こういうことになったわけでございます。

 先ほど申し上げたように、しっかりと決議を踏まえてやっていきたい、こういうふうに思っております。

稲津委員 例えば、牛肉の関税が半減された場合、どういう影響が起きるか。これは幅広い影響があると思うんですけれども、とりわけ気になるのは、ホルスタインの雄を飼育している産地については相当打撃が出るだろう、まあ、仮置きの話ですけれども。これは品質的にも非常にオーストラリア産の牛肉と近いものがある、このように承知をしております。一方で、オーストラリアの方から見ると、当然これは、例のBSEのことでアメリカ産からオーストラリア産に大きく置きかわってくる中で、今度は、輸入禁止が解けた状況の中で、逆にアメリカ産が貿易でふえてくる、こういうこともありますので、とりわけ、何としてもここのところはきちんとこちら側の主張も重ねて言っていただきたい、このように思っております。

 それで、もう一つだけ、この日豪EPAに関して伺っておきたいと思うんです。

 それは大臣の日豪EPAに対する基本姿勢でございまして、これは今の二回の答弁の中で既に示していただいておりますけれども、大臣の基本的な姿勢というのは、今回の会談の中にもありましたように、期限を切らない、それから、国会決議に基づいて慎重に丁寧に交渉していくんだ、このようなことで今回も臨まれたというふうに承知をしております。

 今後も、期限を切らない、国会決議に基づいて交渉する、これはそうだと思うんですけれども、改めて、この委員会において、大臣の方から御決意をいただきたいと思っております。

林国務大臣 これに関連して、アボット豪首相、オーストラリアの首相が、四月五日から八日にかけて訪日をされて、七日に日豪首脳会談、こういう予定というふうに承知しておりますが、先ほど委員からもお話があったように、日豪EPAについては、双方にとり利益となる協定を実現するべく、早期妥結を目指して交渉にずっと七年間取り組んできたわけでございますが、具体的な交渉妥結の期限について決めているわけではないということであります。一方的に、いついつまでにこちらはやるつもりだ、こういうことを申し上げれば、当然相手はそこの足元を見てくる、こういうことでございますから、期限について決めているわけではないということを申し上げた上で、繰り返しになりますけれども、衆参の農林水産委員会の決議を踏まえて、真摯に交渉に取り組んでまいりたい、これが基本姿勢であります。

稲津委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思っています。

 先般、韓国がオーストラリアとFTA、この中で、関税を十五年後には撤廃ということで合意をした、そういう報道もありました。

 いよいよ今月に入って、大臣から今お話があったように、アボット首相も来日される。

 日豪EPAのことは、当然TPPのことにも連動していくわけでございまして、期限ありきでなくて、しっかり国会決議に基づいた交渉をよろしくお願いしたいと思います。

 二点目です。二点目は、酪農における支援事業ということで数点伺ってまいります。

 まず一つ、TMRセンターについて、ひとつ紹介をさせていただきたいと思います。

 御案内のとおり、このセンターについては、混合飼料の製造、供給の事業を展開する中で、最近、地域のニーズも大変ふえてきておりまして、特に酪農の現場では、牛の飼育管理に集中できるということで、その役割が重要視されてきている、このように承知をしております。

 そこで、まず伺いますけれども、TMRセンターの全国での設置状況についてお示しをいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 稲津先生の御質問にお答えいたします。

 今先生の方からございました、牛の完全混合飼料でございますTMRを畜産経営に供給するTMRセンターにつきましては、労働力不足への対応、あるいは良質飼料の供給を推進する中で、非常にふえてきております。

 具体的には、全国で平成十五年度には三十二カ所でございましたが、平成二十五年度には約三倍の百十カ所に増加しております。北海道につきましては、平成十五年には七カ所でございましたが、平成二十五年度には約七倍の五十一カ所というふうに相なっているところでございます。

稲津委員 設置と稼働がふえてきているということでございまして、TMRセンターについては、現場でも非常に有益なものとして認識をされてきている。

 それともう一つは、いわゆる混合飼料の製造、供給ということのみにかかわらず、TMRセンターについて、最近、新しい事業に取り組む傾向が見受けられている、このように承知しています。

 例えば、これは北海道の幌延町のTMRセンターですけれども、乳牛の飼育の支援も始めたということで、全国的に見てもまだまだ、そこのところはこれから、ようやく始まったということですけれども、しかし、もう一方で、乳牛の飼育のほかに、TMRセンターで勤務する方のことを考えたとき、将来、酪農経営者になっていく、そういう新規参入の受け入れにもなっているということで、ここは非常に注目していきたいと思うんですね。

 酪農の経営者側から見ると、今申し上げましたように、労力の大半を搾乳ですとかあるいは飼育管理の方に向けることができる。それから、新規参入者からは、TMRセンターで勤務したことによって学んだ、蓄積したそういう技術、それが将来、結果として酪農経営者になることができたとか、こういう展開が期待されておるわけでございます。

 TMRセンターの新しい事業展開をどのように農水省として認識されているか、この点についてお伺いしたいと思います。

江藤副大臣 先生のおっしゃるとおり、私も何度も北海道のTMRセンターの現地も視察をさせていただきました。

 キロ当たり三十五円ぐらいで餌も供給されていて、しかも、いろいろな食品残渣を、例えば油かすであるとか、しょうゆかすであるとか、みそかすであるとか、いろいろまぜて、栄養価も高くて、しかも、一トン単位でパッキングをして、そして農家に真空パックをしたものを発酵させて運んで、そして農家の庭先まで持っていって、そうすると、いわゆる効率も極めて高い、労力もかからない、経営効率もいい、いわゆる搾乳、肥育に集中できる。経営を支援する上では極めて有効な施策だと思っています。

 我が宮崎県でも、実は、これは乳牛じゃありませんけれども、肉用牛でもTMRセンターをつくっていこうということで、二カ所、実はもう稼働が始まっておりまして、これから新規参入を進める上でも、これから酪農経営を、経営に着目した経営支援を行う上でも、TMRセンターをこれからさらに広げていくことは極めて有効な施策であるというふうに認識いたしております。

稲津委員 ありがとうございました。

 それで、今TMRセンターについて伺ってまいりましたけれども、このほかに酪農を支援する事業として、コントラクター、それから酪農ヘルパーがございます。これらが今後どういう展開になっていくのかということも非常に気になるんですけれども、その前に、まず、この酪農ヘルパー、それからコントラクター、TMRセンターへの支援事業についてお示しいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、先生の方からお話がございましたコントラクターでございますが、これにつきましては、二十五年度の補正予算あるいは二十六年度の当初予算におきまして、例えば飼料の収穫作業を受託した場合には一ヘクタール当たり二万八千円を交付いたしまして、二、三年目は半額になりますが、そうしたことによる支援といったものを講じているところでございます。

 また、このコントラクター組織あるいはTMRセンターにつきましては、どうしてもハードの整備が必要でございますので、飼料の生産、調製、保管を行うために必要な機械のリース導入や施設整備の支援といったことで、強い農業づくり交付金等によりまして対応しているところでございます。

 また、酪農ヘルパーでございますが、これにつきましては、資質の向上のための各種研修といったことに対する助成のほかに、傷病時あるいは育児の際に酪農ヘルパーを利用する際の負担軽減ということで、組合により異なりますが、多くは二分の一に軽減するなどといったような支援が行われているところでございまして、今後とも、こうした支援策の充実強化を図っていきたい、こんなふうに考えておるところでございます。

稲津委員 今幾つか支援体制の施策についてお話をいただきましたけれども、一定程度進んできているんだと思います。

 皆さんのお手元に、「銀の匙 Silver Spoon」のチラシをお配りさせていただいていますけれども、実は、これは北海道の帯広を舞台にして、農業高校の学園ストーリーというか青春ドラマというか、いろいろなテーマがあるんですけれども、私もこの間、ロードショーを見てまいりました。非常に、もちろんおもしろいのもあるんですけれども、これが漫画でブームになったということもうなずけました、大臣も見られたというふうに認識していますけれども。

 私は、この映画を見たときに、そういう基本的におもしろい部分もそうなんですけれども、考えさせられました。何を考えさせられたかというと、酪農の現状を非常にわかりやすく、抱えている課題も明確に伝わってきた。

 このストーリーの中で、主人公の八軒君の友人の酪農家のところが、お母さんとその高校生の同級生、二人で仕事しているんですね。ところが、残念ながら、借入金が返せない。それから、牛も、やはり新しい牛を飼うこともできなければ、餌づくりをやったり、牛舎を掃除したり、乳搾りをしたり、この二人でありとあらゆることをやっているわけですね。結果として、立ち行かなくなって離農する。

 もう一人の同級生の女の子の方は、おじいちゃん、おばあさん、お父さん、お母さん、その女の子も含めて五人で、一家五人で仕事をしている。ここはやはりそれなりに、重輓馬を飼ったりとか、そういうことができるぐらいの余裕ができている。

 こういう現実を見たときに、やはり酪農における労力を、いかに家族労働の中で搾乳とか飼育の方に集中できる体制をつくるか。これはこれからの酪農業における大きなポイントだというふうに私は思っております。そんなことを考えさせられた映画でしたけれども、機会があればぜひ皆さんもごらんいただきたいと思います。

 最後になりますけれども、TMRセンター、酪農ヘルパー、コントラクター、酪農の支援事業は非常に大事だと思っていますが、これが個々に動いているんじゃなくて、コンソーシアム、連動して動いていく、あるいは、地域の中で、地域ぐるみでこれに取り組んでいく。私は、そういう意味で、今後はそういう考え方やスキームをつくっていくことが農水省としては大事な仕事だと思っていますが、この点についてお伺いしたいと思います。

林国務大臣 「銀の匙」につきましては、原作が実はコンテンツの大賞か何かをとったということもありまして、農水省でも試写会をこの間、封切りの一日前に、監督にも来ていただいてやったわけでございます。

 まず私が感じたのは、非常に豚の子供はかわいくて、主人公が名前をつけようとすると、そんなことをやると、後で殺して食わなきゃいけないんだからやめた方がいい、こういうようなことを周りや先生が言うんですが、そういうことを主人公が学びながら、命と向き合って酪農をやっていくことを学んでいくという非常にすばらしいお話だったなと思いますが、先生のような専門家がごらんになると家族労働というところに着眼点があるんだな、こういうふうに思わせていただきました。

 まさに配合飼料の価格の高騰や労働力不足というところで、酪農の生産基盤の弱体化というものが懸念される中で、生産基盤の維持拡大を図るために、やはり経営安定対策、自給飼料の生産振興、今お聞きいただいたTMRセンター、ヘルパー、コントラクター等々で支援をやってきたところであります。

 北海道の浜中町なんかでは、地域の関係者が一丸となって品質管理を取り組んで、大きく収益力を高めている、こういう事例もあるわけでございまして、平成二十六年度においては、地域ぐるみで収益力を向上させる取り組みを支援するために、高収益型畜産体制構築事業ということを初めて講じることにしております。

 市町村やJAの区域を超えた広域な取り組みも支援の対象になっておりますので、やはりこうやって収益力向上のための地域ぐるみの取り組みも含めてしっかりと支援をしていきたい、こういうふうに思っております。

稲津委員 終わります。

坂本委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 後藤でございます。

 大臣、連日大変お疲れさまでございます。

 きょうは、ブドウの話を中心にしながら、その前に、再生エネルギーの部分もちょっとあわせて御確認をしたいと思います。

 きょう四月一日から消費税八%へ増になるということで、この一週間、二週間、いろいろな資材、また生活用品を含めて、たくさんの皆さんがたくさん物を買ってしまったというふうなことであります。大臣、これから農業資材も上がっていくわけですから、それにどういうふうに農水省としても対応していくのかということが求められていくというふうに思います。

 きょうはエネ庁の方にも来ていただいていますので、冒頭ちょっとお伺いをしたいんです。

 再生エネルギーの固定買い取り制度がスタートして二年弱が経過をし、やはり太陽光の方にほとんどのウエートが割かれてしまって、ほかの再生エネルギーの部分の利活用というのがまだ具体化をなかなかできないという中で、実は、地熱、地中熱というのは日本じゅうどこでもあります。地熱発電というところまで行くと、日本の中でも限定的な部分もありますが、地中熱利用ということを考えると、農業の、特に暖房をたくような施設園芸の農家の方にも多分非常にプラスになっていくというふうに私は思います。

 これは言うまでもなく、再生エネルギーの部分は、地産地消というよりも、バランスをどう分散型へとるかということが私は大切だと思うんですが、地中熱、地熱の発電というのは、再生エネルギーの中に占める割合も本当にまだ微々たるものであります。今後、これをエネルギー庁としてどういうふうに支援しながら、どの程度まで目標として対応していくのか、支援制度の概要も含めてお示しをいただきたいというふうに思います。

木村政府参考人 お尋ねの地熱発電、地中熱のことでございますが、地熱、地中熱ともに、重要な再生可能エネルギー資源、また分散エネルギー資源として、その導入を図っていくことは重要だと考えてございます。

 地熱発電につきましては、我が国の地熱資源量は世界第三位ということでございます。日本に豊富な国産資源の一つでございますけれども、現時点では、まだ全国で十七カ所、合計出力で五十二万キロワットの発電所が稼働しているという状況でございます。

 支援策といたしましては、まずは、御指摘のとおり、固定価格買い取り制度の対象にするということで、投資回収の見通しをしっかりつけていくということに加えまして、地熱開発のリスクの高さに鑑みまして、支援制度を措置しております。

 例えば、その一つでございます地熱資源開発調査事業というのがございまして、平成二十六年度には、当初予算六十五億円を措置させていただいておりますけれども、これに基づいて、平成二十五年度までに、全国で二十の地点の案件が採択をされ、開発に向けた調査が進められておるということで、全国的に開発が進んできているということを期待しておるわけでございます。

 それから、御指摘の地中熱でございますけれども、近年、ヒートポンプの技術と組み合わせることによりまして、年間を通じまして冷暖房を初めとするさまざまな用途に活用できるようになりまして、導入が進んでいる状況にございます。

 経済産業省といたしましては、導入の促進に向けまして、平成二十三年度から、地中熱もカバーいたします再生可能エネルギー熱設備の導入について、民間であれば三分の一、自治体等公的団体の関与があれば二分の一の補助率の支援、予算措置を実施してきておりまして、地中熱につきましては、これまで二百十件の設備の導入を支援してきているということでございます。

 今年度から新たに技術開発の予算を五億円手当ていたしまして、効率的な熱交換技術の開発といったようなものを通じて、地中熱の利用、それから先ほどの地熱発電の利用拡大につきまして、今後ともしっかりと推進をしてまいりたいと考えてございます。

後藤(斎)委員 今部長がお答えいただいたように、いろいろな施策はあるんですが、なかなか地域の方々に十分理解ができていない部分で進んでいないというのも、多分、一方であると思うんです。

 今部長がお答えをいただいたように、世界有数の地熱資源を有しているということは誰も異論がないところだと思いますけれども、初期のイニシャルコストが高いものの、発電コストから見れば低いということや、設備利用率が高いということで、これは地熱資源を持つそれぞれの地域にもっと周知をしながら、今のような制度を使ってもらうということが必要だと思うので、その点については、その初期の、いろいろな説明会のコストも負担をしてくれるような仕組みがありますけれども、そういうものをやはり県や市町村にもきちっと理解をしてもらうような努力は、ぜひこれからもしていただきたいと思います。

 あわせて、きょうは環境省にも来ていただいています。

 環境省でも同じように、二酸化炭素の排出削減の観点ということが強調されているようでありますけれども、やはり地熱、地中熱利用というものの取り組みに、非常にこの数年で加速をしていただいております。

 そういう意味で、技術開発の点も環境省の方は特に力を入れているということで、従来は、いわゆる地中熱利用だと、間接方式という手法から、最近では、それよりも少し効率が高いと言われている直膨方式の仕組みもあわせて導入を促進させようとしているということをお聞きしました。

 この間接方式と直膨方式、なかなか一般の方には理解できませんが、多分、私のイメージでは、この二つの手法というものが仮に地中熱利用の仕組みとしてあるのであれば、これはやはり両輪として育てていくのが大切ではないかなというふうに思います。

 多分、間接方式で対応が進む産業分野や地域、直膨方式を使って対応を進めたい地域、上手にバランスをとることが必要だというふうに思いますけれども、環境省として、地熱、地中熱をどのように利用促進していくのか、その取り組みについてお聞きをしたいというふうに思います。

平岡政府参考人 環境省におきましても、地中熱利用につきましては、二酸化炭素の排出抑制につながるということでございまして、平成二十五年度から、特に、環境に配慮した地中熱利用ということで、補助事業を実施してございます。今年度、四月に入りまして、二十六年度におきましては、この予算額も拡大をいたしまして、補助事業の充実を図っているという状況でございます。

 御指摘のように、現在普及が進んでおりますのは間接式と呼ばれるものでございます。ヒートポンプを用いた方式の中に間接式、直膨式というものがあるわけでございますが、この間接式に比べまして、直膨式というものは、熱交換の効率がよく、また省エネ性とかコストパフォーマンスにすぐれるという面があると承知しております。一方で、地中部の配管の材質について、直接冷媒を地中に持っていくということで、若干技術的な配慮も要るというようなことはございます。

 こういった耐久性等の配慮もしていただくという必要はございますが、直膨式、間接式ともに、地中熱の促進ということで、しっかり支援をしてまいりたいと考えております。

後藤(斎)委員 大臣、後でブドウの話に移りますけれども、今お聞きをいただいたように、エネ庁でも環境省でも、実は地熱、地中熱利用の普及促進という、そんな制度を持って、やっています。

 最後に、聞いていて、大臣、後でお答えをいただきたいんですけれども、やはりこういう各省連携してやっているものを、その成果として上手に農水省のこれからの、特に果樹や野菜の施設園芸の部分で取り組むという姿勢が私は必要だと思っているんです。

 特に、ちょっと話を飛ばしてもらって恐縮ですが、きのうから第五回目の日・EUのEPA交渉が行われております。その中で、大きなテーマで、特にEU側の最大の関心事の一つでもあるワイン関税の引き下げの問題があります。

 きのうからのスタートで、五回目ということでありますが、このワイン関税の取り扱いについて、交渉の中で今どの程度進んでいるのか。報道では、もう幾つかの提案、打診というものが報道されていますけれども、今の現状と、今後どういう形でワイン関税の部分がまとまっていくのか、もしその辺の見通し、方向感をお話しいただければ、お示しをいただきたいと思います。外務省、よろしくお願いします。

正木政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問の日・EU・EPA交渉におけるワインの関税の取り扱いということでございますが、現在、御指摘のとおり、ワインを含む日・EUのそれぞれの関心品目及びそれに対する双方の対応につきましては、これまでのEU側とのやりとりの中でも緊密に議論を行ってきておりますし、今週行っている交渉の中でも議論されております。

 ただ、特定品目、分野の関税削減に関する具体的な交渉の現状につきましては、まさに現在交渉中でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、センシティブな品目について配慮を行いつつ、包括的かつ高いレベルの協定を目指すということにつきましては、EU側ともおおむね理解を共有しております。

後藤(斎)委員 この問題は、確かに、この委員会でも決議をされたTPP、国際二国間交渉も含めた部分の重要五品目には、ワインは実は入っておりません。

 そういう意味で、これは二月の雪害のときにも、大臣初め農水省の皆さん方にもいろいろな仕組みをつくっていただいて、それがこれから生きるかどうかという、このワイン関税の問題がどう決着をするのかというのも、実は農家の方から見れば重要な一つの視点になっています。

 特に、日本のワイン市場というのは、皆さん、ワインをたくさん、大臣もお好きですから、言うまでもありませんけれども、輸入が七割で国産が三割。その三割のうちも、輸入原料を使ったものでという形で、本当に原料として国産のブドウを使ったものは、全体の五、六%だというふうに言われています。

 実は、この原料用ブドウがなかなか、日本のブドウの食べ方というのは生食がやはりメーンであって、原料用ブドウは、むしろ生食で食べられない時期や品質のものを出していくというのがかなり長い間行われてきました。

 ワインは健康にいいのかどうかは別としても、飲み過ぎたらどんな酒でもだめですけれども、健康にいい面もあるということで、やはり消費は上がったり下がったりもありますけれども、ここに来て、少しずつまた上がり調子であります。特に、大臣も雪害のときにごらんいただいたように、地域にワインをつくるブドウ農家もあり、その景観もあり、そしてそれが観光資源になっている。いろいろな要素が実はあります。そういう意味で、全体の農業を守るためにという視点も当然あるんですが、やはりワインはワインとして、それをつくるブドウ農家の方々も含めて、どういうふうに対応していくのかというのが実は問われると思うんです。

 実は、ワイン自体は農水省ではなくて国税庁さんですから、そういう意味で、ちょっと国税庁の方に、簡潔で結構ですから、ワイン生産振興についてどのような取り組みを今なさっているのか、お示しをいただければというふうに思います。

    〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁におきましては、我が国ワイン産業の健全な発達を図る観点から、例えば、国際ブドウ・ワイン機構に対しまして、我が国のワイン用ブドウであります甲州及びマスカット・べーリーAを登録いたしまして、これらの品種名の表示によるEUへのワインの輸出を可能としたほか、昨年七月には、ワインに関します国内最初の地理的表示として山梨を指定したところでございます。

 引き続き、こういう努力を積み重ねていきたいと考えております。

    〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕

後藤(斎)委員 あと五分しかないので、まとめをします。

 今国税庁がお答えいただいたように、地理的表示の部分で山梨というブランドを登録していただいて、それを中心に海外に打って出る。海外に打って出る前に、国産のブドウ、原料用も含めたブドウの作付というのは、この近年、実はだんだん減っています。この雪害の部分もあわせてどこまで減るかというのが実は問われておって、前回の農水委員会でも、特に野菜については、この際、大きな痛手を負った農家の方々に、やはり次世代型の復興支援をお願いしたいということをお話ししました。

 先ほどの地中熱ではありませんけれども、農水省も、少しずつですが、今果樹についてもヒートポンプを使って冷房、除湿を活用するという形で、これは特にミカンなんかがメーンなんですが、このヒートポンプ方式の対応をすると、設備投資が若干、普通のものよりも百万、百五十万かかるようでありますけれども、トータルとして長い目で見ると、重油からヒートポンプに切りかえた効果というのは、コストの削減が、重油代が四〇%くらい減るというふうな効果も実は出ているようです。あわせて、除湿、冷房をすることで着果率が高まるということで、要するに、生産量が、とれる量がふえる。この二つの効果で所得増が図れるというふうないろいろなデータを実は以前お示しいただきました。

 以前からお話をしているように、特にワイン原料用ブドウというのはオリジナルな部分が、山梨か十勝かは別としても、その地域、日本の中で原料用ブドウをつくっている、それをワインにしていくという一連の生産過程というのが、先ほどの国税庁さんの地理的表示とあわせて、今最終盤に差しかかっているというふうに聞いていますけれども、いわゆる農産物全体の地理的表示の法律をつくっていこうという大臣の強いお気持ちの部分も合わせわざで、やはり国内だけではなくて海外にもというふうに持っていかないと、ワインの部分は五、六%しか国産の原料を使っていないというのが実際の現状ですから、そこにどう下支えをしてということを考えながら、あわせて、果樹については、どうしてもミカンとリンゴという伝統的な、生産量が一番多いところに技術研究や研究開発というものがやはりウエートが高くなり過ぎているというのが現状だと思うんです。

 ですから、ぜひ大臣、先ほどの経産省の支援の仕組み、環境省の技術開発も含めた支援の仕組みも含めて、これをやはり農業の現場、特に施設園芸の現場でも、こういう今の流れでいけば、先ほど外務省さんはお話しできないということですが、いろいろな報道を見れば、一月の第四回の交渉では、十年間という猶予期間はだめで、きのうの提案は七年間だとかいう報道も実はあるので、その真偽はともかく、いずれそういうふうな状況になるということをやはり事前に見据えながら施策をつくっていく、制度をつくっていくということが一番必要だと思うんです。

 ぜひ、そういう意味では、経産省や環境省も連携をしながら、もちろん目的はちょっとずつ違いますけれども、それは施設果樹、施設野菜の現場に導入していただく。特に、きょうはワインの原料用ブドウという部分にも着目して、やはり関係省庁が連携をしながら、ぜひ私は対策というか制度をつくっていただきたいと思いますけれども、その点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 大変大事な御指摘をいただいた、こういうふうに思っております。

 やはり国内産のワインが海外産に対抗していくために、差別化できるブランド原料というものを活用して、いいワインをつくっていくことが重要であります。最近、私も日本のワインもよく飲むんですけれども、フランスやアメリカ、それから新世界ワインに全く負けないような大変いいワインがもうできている、こういうことでございますので、やはりそのための研究開発が非常に大事だ、こういうふうに思っております。

 もう山梨県でやっておられる、農林水産省からの競争的資金等を活用した研究ですので、委員の方がお詳しいかと思いますが、例えば白ワイン用の山梨五十四号、非常に赤ワインのいい色が出るビジュノワール、それから、やり方として、今環境省、経産省からもお話がありましたけれども、この技術として、白色シートを敷設して垣根仕立てでやっていく、こういうところに今お話のあったところをいろいろ組み合わせていく、連携していく、このことが大変大事ではないかな、こういうふうに思います。

 それから、農業・食品産業技術総合研究機構ですが、病害の抵抗性の簡易検定法、評価法、こういうものを開発して、都道府県による研究開発の促進を図ってきたところでありまして、委員が御指摘のように、醸造用ブドウに関する品種育成、それから他省庁とも連携しながら栽培技術等の研究開発、これは着実に進んで、いい原料ブドウができて、なるほど、日本のワインは競争力があるな、こういうことにつなげていきたい、こういうふうに考えております。

後藤(斎)委員 大臣、終わりますけれども、今大臣にお答えをいただいたように、やはり単位当たり量をどうふやしていくのかという視点と、そして資材費も含めたコストをどう下げて全体の農業所得の向上につなげるという視点は、ぜひその研究開発とあわせてきちっとした制度づくりをお願いしたいということを御要請して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 あしたからの法案の審議の前に、きょうは、タイムリーというか、ちょっと変わったネタを皆さんに御紹介申し上げたいというふうに思っておりますが、麻の話でございます。

 麻というと、いろいろ服とかにも使われている麻でございますけれども、繊維が多くとれるということです。

 これは、日本での呼び方ですと大麻ですね。大麻というと、それこそ麻薬の一種だと思っておられる方の方が多いわけでございます。大麻といえば、マリファナという形でいろいろ各国も規制をしてきたところではございます。

 この麻ですけれども、各国の規制の状況を調べますと、大変おもしろい現実に直面するわけでございます。きょうは、ちょっとそのところから話に入りたいというふうに思います。

 お配りをしています資料をごらんになっていただくと、大麻といえば麻薬、そう単純に連想する方が多いんですけれども、さまざまな品種がございます。その品種がどういう形で分けられているかというところですけれども、一ページ目、薬用型と中間型と繊維型というのがあります。

 成分によって分けられておりまして、THCというのはテトラヒドロカンナビノールといいまして、これがマリファナのいわゆる酩酊性が非常に強く出る成分でございます。それから、CBDとありますけれども、これはカンナビジオールといいまして、THCのいわゆるハイになる向精神作用を打ち消す働きがあるわけであります。

 その打ち消す働きがあるCBDの方がTHCよりも多い、THCの含有量が〇・二五%以下のものを繊維型と呼んで、ヨーロッパでは広く使われていまして、一番主な使われ方をしているのは、たばこの巻紙です。ですから、ヨーロッパに行ってたばこを吸ったことがあるという方は、実はそれは、いわゆる繊維型の大麻から繊維を抽出したものが加工されたものでたばこを吸っているわけですね。ですから、これを吸ってハイにならないというのは、皆さん、吸った方がいらっしゃれば、これはマリファナと違いますから、全く問題がないということがわかっていただけるんじゃないかというふうに思います。

 その中で、繊維型は産業用大麻と言われているんです。これは、いろいろな使われ方をしています。

 その前に、麻というのも、資料をせっかくつくったのでごらんになっていただくと、図二で「大麻と麻薬の語源」と書いてあります。常用漢字でいきますと、大麻、麻薬というのは同じ麻という漢字になっているんですけれども、昭和二十四年以前は、麻というところにやまいだれがついているのが麻薬の方でございます。そもそもの由来は、麻薬の方は痲ですけれども、痲酔藥というところから痲藥という言葉になって、それが、当用漢字で痲が使われていないので、結局、大麻の麻と同じ麻が使われるようになった、そういう由来なんですね。

 ちなみに、大麻はどういう由来かというと、大きく育つ麻だということだそうです。胡麻と区別するために大麻というんだそうです。もともと麻も、油を搾るために中国から持ってきた。この胡というのも、中国のもうちょっと奥地にある国から、油をとるために輸入してきたということで、従来ある、大きく育つ麻と区別するために、大麻、胡麻という形で変わってきたということが由来だそうでございます。

 この由来から見ても、実は、大麻と、それから酩酊性がある、あるいは非常に中毒性がある麻薬は由来からして違うということもわかっていただけるんじゃないかというふうに思います。

 産業用大麻の話に戻りますが、この図一の繊維型、これを産業用大麻と呼んでおりますけれども、産業用大麻は今大変いろいろな使われ方をしていまして、麻を熱圧縮して家の建材に使う。これは、強度もよくて、湿度も吸収、放出するので、内装材に非常にいいそうでございます。あるいは、住宅の断熱材。これは、つくって、解体した後は土に返るので、大変よろしいということでございます。産業廃棄物にならないということですね。

 麻のオイルはミネラルのバランスもいいし、カナダでは、実自体をプロテインの摂取として、食用として使用しているわけでございます。ちなみに、日本では、ここに書いてあるとおり、図三でございますけれども、実とかの利用を全部禁止していますから、全部違法なんです。

 それから、メルセデス・ベンツ社では、自動車の吸音断熱材として使用しております。また、プラスチックにかわるものとして、ポルシェやルノーのドアのパネルやダッシュボードへ組み込まれてもいたりするわけですね。

 ですから、産業用大麻というのは、今非常にいろいろな部分で活用が進んでいるということでございます。

 もちろん日本では、伝統的に、神社のしめ縄がもともと麻だということでございます。もともとしめ縄に使う麻を、各家庭で使うための麻の需要量が膨大だったものですから、農家の軒先に麻を乾かすために干していたんだそうです。これが金色に輝いたというところもあって、黄金の国のジパングというのは、麻を軒先で乾かして、これが金色に輝くことを表現しているという説もあるそうでございます。

 ですから、麻というのは、日本の伝統文化も含めて、大変重要な産物であるけれどもという話をしたいわけでございます。

 もうちょっとだけ話を続けさせてもらいますと、まだまだあるんです。

 最近、バイオマス燃料ということで、トウモロコシとかそういったものが大変、アメリカでも、それからブラジルでも、バイオエタノールの燃料だということでやっています。日本でそれこそ研究した方がいらっしゃって、いわゆるバイオマス燃料として有効かどうかというのは乾物生産量というものが非常に重要になってくるということでございますけれども、トウモロコシであったりあるいはてん菜だったりよりも、麻の産業用大麻にした方が乾物生産量でよほど量がとれるということで、バイオマス燃料としても大変有用ではないかと言われているわけでございます。

 あともう一つ、これも農水省さんに話をしたいのは、硝酸態窒素の問題です。

 子供に余り硝酸態窒素が含まれたものを食べさせてしまうと発がんしてしまう、そういう問題も言われているわけですけれども、この硝酸態窒素、余り堆肥を土にやり過ぎて、それがある意味栄養があり過ぎて変な問題になっちゃうという話でございます。窒素が悪さをするわけでありますが、窒素を土の中から吸収していく、この吸収力という意味でも、産業用大麻というのは大変な吸収量を持っているということで、これはソバ、トウモロコシも調べて、さらに有用だということで、そういういろいろな研究結果が出ているわけでございます。

 そういった物すごい研究結果があって、しかも、農家の皆さんは、今何を栽培したらいいのか、本当にわからなくなっている。ことしから農水省は、薬用作物生産地基盤整備支援というものをやっているわけですよ。これは私は大変いい試みだなというふうに思って、応援したいんですが、今農家さんが、いろいろTPPの問題もあって、現場で不安になっているというところの中で、農水省としては、有望な商品作物が何かということをやはり明確に打ち出していかなきゃいけない、いろいろ調査研究をしていかなきゃいけないというふうに思うんです。

 世界各国の大麻の規制が変わってきて、産業用大麻ということでいろいろな用途に使われているということなんですけれども、実際、日本では大変お寒い栽培の状況でして、それは当然、大麻規制法があるからなんです。

 そこで、きょうは厚労省さんにも来ていただいていますけれども、これが一九四八年につくられてから全く変わっていないんですね。ですから、農水省さんに、今申し上げたいろいろな世界の現状があります、それをどのようにお感じになっているかということと、日本の麻の栽培の現状について、まずお聞きしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、我が国の現状でございます。

 先ほど先生の方からお話ありましたように、麻は、古くからしめ縄あるいはげたの鼻緒等に使われておりますが、大麻取締法によりまして、その所持、栽培等は都道府県知事による免許が必要となっているところでございまして、平成二十四年でございますが、栽培面積は全国で五・九ヘクタール、生産量は、これは繊維で換算したものでございますが、二千二百キロというふうに相なっているところでございます。

 さて、世界における麻の生産の現状でございますが、これにつきましては、国連の食糧農業機関の取りまとめによりますと、麻繊維で約五万三千トン、麻の実で約九万八千トンということになっておりますが、このうち産業用大麻がどれだけかについては統計上明らかではないといったような現状でございます。あと、規制等の詳細については当方では承知していない、こういうのが現状でございます。

鷲尾委員 確かに大麻というのも、今私は産業用大麻という形を中心に話をしておりますけれども、世界では、医療用の大麻という形で、それこそ、ここにも書いてありますけれども、一ページ目の図三の医療利用というところをごらんになっていただくと、鎮痛剤とかそういったものに使われている部分も、これは各国、規制を緩和しているところもございます。

 ただ、これは、いわゆる嗜好品、本当にマリファナとして使うかどうかというところの線引きが難しくて、各国、そこは独自でいろいろ規制のあり方が違っているそうでございますが、今局長が話をしたのは、まさしく医療利用での大麻の栽培の面積と産業用の大麻の栽培面積との区分がなかなかできていないということでの話でございます。ただ、全体としては大変大きな栽培面積になってきております。

 日本は、先ほど来申し上げているとおり、伝統的にも使ってきた。そして、今はまさに産業用でもいろいろな用途に使われているというところの中で、実は、今これは佐藤局長は言わなかったけれども、栃木県がほとんど九割で、五町ぐらいでやっているという話なんですね。ですから、本当に伝統工芸という形で細々とやっているというのが今の現状じゃないかな。

 私は、これをもう少し、農水省も研究して、広げていく必要があるんじゃないかというふうに思うんです。そうはいっても、厚生労働省が今規制していますから、そういった規制の状況等々もやはり考えていかなきゃいけないだろうということで、厚生労働省さんに来ていただいていますので、大麻取締法の規制の経緯をお聞かせください。

成田政府参考人 御説明させていただきます。

 大麻につきましては、大正十四年に署名されました第二阿片会議条約に基づきまして、昭和五年に麻薬取締規則が制定され、麻薬として規制されることとなりました。

 戦後、連合軍の総司令部が麻薬について厳格な方針をとったこともあり、大麻草の栽培につきましては全面的に禁止され、大麻草を含む麻薬の輸入輸出も原則として禁止されました。

 当時、我が国では、大麻草は衣類の原料等に用いられておりまして、この需要に応じるため、昭和二十二年に、繊維及び種子の採取もしくは研究目的の場合に限り大麻草の栽培を認める大麻取締規則が制定されたところでございます。

 昭和二十三年には、麻薬取締規則が廃止されまして、旧麻薬取締法が制定されました。大麻につきましては、従来は麻薬として取り締まっていたことから、旧麻薬取締法が規制する対象が医師であるのに対し、大麻草を栽培する方は農業従事者であることから、旧麻薬取締法とは別個の法律として大麻取締法が制定されることとなったところでございます。

 大麻取締法では、大麻の用途は学術研究と繊維、種子の採取だけに限定し、大麻の取り扱いを免許制とするとともに、輸入、輸出、栽培、所持、譲渡、譲受等について罰則が設けられております。

 その後、昭和二十八年の改正で、麻薬取締法で麻薬卸売業者等の免許を国から都道府県知事への機関委任事務としたこととあわせまして、大麻取扱者の免許につきましても、国から都道府県知事の機関委任事務とされております。さらに、平成十一年の地方分権一括法によりまして、都道府県の自治事務となったところでございます。

 以上でございます。

鷲尾委員 今一九四八年の大麻取締法の話をしていただきましたけれども、これは、いわゆる占領下において、特に米軍から、GHQから要請があって、一括の規制に変わったわけであります。この当初は、今の農水省も、これを一括で禁止してしまうと栽培している農家に多大なる影響があるということで、大変頑張ったわけでございます。

 このときは、全国で作付面積が約一万ヘクタールあって、北海道の方では亜麻というのもあります、亜麻の方でも約四万ヘクタールぐらいありましたから、相当な影響があるということで随分と抵抗して、今厚生労働省さんが話したとおり、知事の方で認可するという形になったわけでございます。

 これは、なぜ当時農水省も抵抗したというか一括の禁止をしなかったかというと、やはり一つは、マリファナとかそういう麻薬として乱用の実態が日本においてはなかったということなんですね。これはどういうことかというと、もちろんさらに詳しく今の技術で研究をし直さなければいけませんけれども、日本でもともと主に自生をしているものがいわゆる繊維型ということもあったわけでございます。

 しかし、それを今は一括して禁止してしまっているということでありますから、やはりみずからその可能性を封じてしまっているのではないかというのが私の観点でございます。

 そこで、世界の規制のあり方、大分変わってきていると思いますが、この点もお聞かせください、厚生労働省さん。

成田政府参考人 御説明させていただきます。

 諸外国の規制状況でございます。

 欧州では、繊維や種子を採取する目的で、各国政府の許可を受けた栽培地において、大麻の成分であるテトラヒドロカンナビノール、THCと言っておりますが、その含量が〇・二%以下の品種の栽培が認められております。

 また、米国でも、連邦法によりまして、繊維や種子を採取する目的での大麻栽培が認められており、採取を行う者は米国麻薬取締局に登録が必要であるとされております。

 韓国でも、繊維や種子を採取する目的での大麻栽培は認められており、政府の認可を受けた者のみが大麻を栽培できることとなっております。

鷲尾委員 そこで、配付資料の三ページ目をごらんになっていただきますと、大麻栽培の各国の状況、図四ということで、大分簡略化していますけれども、お示ししました。

 THCというのは、先ほど申し上げたように、テトラヒドロカンナビノールという形で、いわゆるマリファナの酩酊する成分であります。

 このTHCの成分が、EUであれば、〇・二%未満の品種は栽培を認められていますね。これは、麻栽培のライセンスは不要だということであります。カナダは〇・三%以下の品種に限定をしておるということです。これは州からの免許が必要ということ。全部は紹介しませんけれども、何を申し上げたいかというと、これは品種がやはり違うんですね。

 冒頭説明したとおり、カンナビジオールがTHCの向精神作用を打ち消すというところもありまして、THCが多く含まれているものと低く含まれているものとやはり別建てで規制を考えていくと、日本でも、麻の産業としては非常に成長する余地が随分あるんじゃないかというふうに私は思うんです。

 ですから、きょうは厚労省さんに来ていただいているので、大麻取り締まりの趣旨として、テトラヒドロカンナビノール含有率が低い品種について一律に規制することの意味を問いたいなというふうに思うんですが、お願いします。

成田政府参考人 御説明させていただきます。

 大麻には幻覚等の作用があり、依存性もあることから、大麻取締法では、大麻の乱用による保健衛生上の危害を防止するために、大麻の栽培を原則禁止しております。

 大麻の成分であるテトラヒドロカンナビノール、THCでございますけれども、微量の摂取であっても精神作用が発現すると言われております。このため、THCの含有量が低い大麻であっても、抽出、濃縮等の方法により、容易に乱用につながる危険性が十分に認められます。

 こうしたことから、大麻取締法では、THCの含有量にかかわらず、全ての大麻を規制対象としているところでございます。

鷲尾委員 今、THCが幻覚をもたらすとか依存性があるというのは、これはいろいろな研究等々ではあるんでしょうけれども、それはまた別で議論したらいいと思います。私が申し上げたいのは、含有率が低いものについては各国も産業用として非常に認める方向で、それは規制の仕方というのはうまくやらなきゃいけないということでありますけれども、それまで含めて全て今閉ざしているという状況が果たして適切なのかどうかという話です。

 では、厚生労働省さんが言ったとおりのやり方でずっと規制し続けることが日本においてふさわしいかどうかというところの検討すら今行われていないんじゃないかというふうに私は思っているんです。内外の状況だとか、産業用大麻の有効性の観点も踏まえて、今の日本の農業の現状も踏まえて、やはりそういった知見を規制に生かしていくべきじゃないのかと思います。

 と思いますけれども、これは、地方自治体でもいろいろ調査研究の取り組みをしているところがあると聞いています。農水省さんに、今地方でどんな取り組みがあるか、紹介してもらえますか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、麻を使った地域振興というようなものの例といたしましては、鳥取県の智頭町でございますが、平成二十三年四月に、農家一戸でございますが、この方が大麻取締法に基づく栽培免許を取得いたしまして、麻の種や繊維を販売する目的で麻の栽培を開始しているといったような事例がございます。

 また、北海道でございますが、ここでは、産業用大麻の作物としての可能性を検討するという観点から、検討会を設置いたしまして、この検討会の議論を踏まえまして、ことしからですが、平成二十六年度から、栃木県で生育された無毒性品種でございます「とちぎしろ」という品種がございますが、この試験栽培を行う予定であるというような動きがあることを承知しているところでございます。

鷲尾委員 今は県知事の権限ですから、地方自治体は地方自治体でいろいろ考えておられるんだと思います。その中で有効性がさらに実証されてくれば、それが広がる形になってくるんだろうというふうに思います。ぜひそういうふうに広がっていってもらいたいなというふうに思うんです。

 というのは、余りにも規制のあり方がしゃくし定規過ぎるんじゃないかな、最近の状況を踏まえていないんじゃないかな、あるいは、農水省と厚労省でちゃんとそこら辺はやりとりしているのかな、していないんじゃないかな、そんな思いも私はこの問題の勉強を通じて思ったところでございます。

 今地方自治体がいろいろとやっている取り組み、やはりこれは国自体が研究するということも考えられる、あるいは地方自治体がやっている取り組みにこっちが支援するということも考えられると思いますが、農水省としてどうお感じになりますか、大臣。

林国務大臣 きょうは大変勉強になったな、語源から始まって、麻について深く掘り下げていただいたということだと思います。

 委員もお話しいただいたように、しめ縄とかげたの鼻緒等に使われております麻ですが、大麻取締法によって、都道府県知事による免許で所持、栽培等を行う、こういうことでございまして、この免許制のもとで、伝統文化継承の観点から、しめ縄や神事用の栽培が今行われているということであります。

 最近の科学的根拠、今THCのお話もありました。それから、諸外国の動向、規制が変わっている動きもあるやに今お示しいただきました。それから、国内のいろいろな動き、こういうものがありましたので、新たな規制のあり方、それから生産振興等についての検討をやるべきではないか、こういうお話でありましたが、一方で、社会的な問題が当然ございます。したがって、慎重な対応が必要であると考えておりまして、まずは、厚生労働省としっかり連携をして、国内外の動きを含めて情報の収集に努めていきたい、こういうふうに考えております。

鷲尾委員 まずは情報の収集ということで、情報の収集もぜひしていただきたいなというふうに思います。

 厚労省さんに、まだちょっと時間があるのでお聞きしますが、先ほど審議官から御説明いただきましたけれども、濃縮とかそういった形で乱用の危険性がある。それは何だってそうですからね。何だって、乱用したらそれは全て悪いわけですよ。それを、入り口から一律全て規制するということが果たしてふさわしいかどうかなんですね。

 何かにつながるおそれがある、薬物乱用につながるおそれがあると言いながら、では、実際に濃縮するということが現場として本当にどこまで簡単にできるのかという話であって、これはもう世界の規制の状況をちゃんと見なきゃいけないし、その見ているかどうかというところが私は甚だ疑問なわけであります。

 そして、今の厚労省さんの答弁それ自体が、地方においての取り組みについて、もちろん陰に陽に、地方がその取り組みに許可する権限を与えるわけですから、影響を与えているわけですよ。そこで、やはり地方自治体とのコミュニケーションもしっかりとってもらいたいと思うし、最近の状況をよく踏まえた上で、厚生労働省さんとしても、本当にそれがどういう形で薬物乱用につながるのか、具体的に私は研究していくべきだと思うんですけれども、どうですか、厚生労働省さん。

赤石大臣政務官 鷲尾委員にお答えいたします。

 今大臣から答弁ありましたように、古く、私も一九四八年生まれでございまして、確かに、小さいころ、随分その辺に麻があったなという感じはありますけれども、厚生労働省としましては、やはり薬物の乱用というのは今非常に社会的な問題として起こっておりますので、非常に慎重に取り扱わなきゃならないというふうな観点から、今は、伝統とか、それ以外に代替手段がない場合に限って認めるという方向になっておるわけでありますけれども、今後、農林水産省とも連携しながら、大臣の答弁と同じになりますけれども、情報収集に努めて、検討してまいりたい、このように思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 今ほど来、両省庁の政治家の皆さんから御答弁をいただきましたけれども、私は、農水省は、これは産業振興という観点でもう一度見直してもらいたい。それが厚労省の法律で規制されているからといって、そういう作物の実態について、調査あるいは研究が後ろ向きであってはならないというふうに思うわけです。

 私も、これは厚労省さんの法律だから、農水省さんが後ろ向きになるという気持ちはよくわかります。よくわかりますけれども、もとはといえば、戦前から戦後に至る過程において法律ができた際に、麻の栽培、その農家を守ろうとして戦ったのはまさしく農水省だったわけですよ。それを、もう厚労省さんになったから俺らは知らねえやという話には、やはりそれはならない。ぜひそこは強く求めたいというふうに思います。

 大臣は、連携して情報収集とおっしゃいましたけれども、私は、これは連携して情報収集だけじゃなくて、やはり検討をしてもらいたいんです、これだけきょう紹介しましたから。大臣も、勉強になったとおっしゃっていただきました。やはりこれは検討していただかなきゃいけない。農水省と厚生労働省が一緒になって検討するということが大事だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

林国務大臣 先ほど、ワインは国税庁がやっておりますけれども、我々はちゃんと品種のいろいろな研究をしておる、こういうお話をいたしました。これについても、歴史的な経緯を委員から御披露いただいて、なるほど、そういうことだったのかな、こういうふうに思ったわけでございます。

 余り言葉がひとり歩きすると、かえってできなくなることもあるのではないか、こういうふうに思っておりまして、きょうの段階では、厚生労働省と連携しながら情報を収集するということにとどめておいた方がいいのではないかなというふうに思っております。

鷲尾委員 日本の農民を救うためには、これは本当に大事な取り組みだと思っています。ですから、私は、またこれは粘り強くこれからもやりますので、ぜひ将来的な、情報収集していただけるということですから、情報収集した上で、やはりこれは産業として非常に有望なんじゃないかな、そういう結論を見る日を待望いたしております。

 そのことを申し上げまして、時間となりましたので質問を終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。民主党の大串博志でございます。

 きょうは、一般質疑ということで時間をいただきましたので、最近の農林水産行政の中の重要事項に関して、幾つか議論をさせていただけたらというふうに思います。

 まず、畜産の関係で、豚流行性下痢、PEDの問題でございます。

 これは、私も、ずっとこの冬の間、状況を見守ってまいりましたけれども、全体がよくわからないところがあるんです。

 報道もたびたびなされていますけれども、報道等を見ると、沖縄県で昨年十月に七年ぶりに発生が確認された。一方、十二月には九州南部に広がりが見られた。その後も発生が確認されている。新聞なんかにもいろいろ報道は出ているんですけれども、必ずしも全部正確かなという感じがします。例えば、きのうの読売新聞なんかに出ている報道も、発生例等々ありますが、私の佐賀県の方の発生例なんかも正確にはまだあらわしていないんですね。うちの県でも、恐らく五件を超えるものがもう発生していると思いますが、そこまで出ていない。

 まずは事実関係として、この豚流行性下痢の発生状況に関して確認させていただきたいと思います。

江藤副大臣 今委員がおっしゃったとおり、昨年の十月以来発生をいたしまして、最初が沖縄県、現在、通算で十七県になってしまいました、先週から一県ふえまして。それが今の現状でございます。

大串(博)委員 十七県ということですけれども、影響を受けた豚の頭数あるいは農場数等々はいかがでしょうか。

江藤副大臣 これは全部言った方がいいですかね。(大串(博)委員「ぜひ、総頭数で結構ですから」と呼ぶ)

 沖縄は発生件数四、七十五頭、茨城県二、二百三十四頭、鹿児島県百三十五、二万五千、宮崎県六十、九千三百二十六、熊本七、五百八十五、愛知県六、九百八十、青森県一、四百十九、高知県三、八、岡山県二、二十一頭、佐賀県七、四百九十二頭、大分県三、千四百十頭、鳥取県一、四十一頭、福岡県一、五十一頭、長崎県一、二十八頭、埼玉県一、二十五頭、千葉県一、二十一頭、三重県二、三百八十六頭、合計で、発生件数が二百三十七でありまして、三万九千百二頭、これが三月三十一日の数字であります。

大串(博)委員 件数が二百三十七、三万九千頭が被害を受けている、こういうことでございました。

 これは私も当初から注意しながら見ているんですけれども、なかなかおさまりません。冬の間スプレッドする、こういうふうに言われていて、確かに広がってまいりました。これに対して、政府としてこれまでどういうふうな対応をとっておられるか、確認させていただきたいと思います。

江藤副大臣 まずは、昨年の十月と十二月の二度にわたりまして、いろいろ侵入防止対策であるとか伝播防止の対策、そういったものを、それから本年の三月にも文書で要請をいたしました。

 そして、ことしに入りまして、あす行いますが、四月の二日、これは届け出の伝染病でありますので、法定伝染病じゃありませんので、本来は全国から人を集めて会議をやることは普通はやらないんですけれども、とまらないという現状を受けて、あす、全都道府県の家畜衛生担当者を招集いたしまして、PED防疫担当者全国会議を開催して、全国の防疫対策に万全を期することといたしております。

大串(博)委員 私も現場の農家の方々等々の話を聞くと、とにかく、発生した場合には、防疫対策をしっかりやる、消毒をしっかりやり、かつ、人の移動も含めて非常に抑制して広がらないようにする、これに尽きるんだというようなことでございます。これも相当な費用がもちろんかかっているわけでございます。防疫を行うにも、それに対するいろいろな資材が必要になってきますし、人の移動を制限するということで、事業活動も低下いたします。もちろん、出荷も低下する。

 こういったことになっておりますけれども、これに対して、国から、県なり市町村なり、あるいは影響を受けている各農家の方々等々への支援等々にはどのような対策をとられてきているのかを確認したいと思います。

江藤副大臣 直接的な対策としましては、都道府県、農業協同組合等が行う自主的な防疫対策を図る取り組みに対しましては、消費・安全対策交付金、これは補助率二分の一でございますが、これを活用した支援を行っているところであります。正直申しまして、現在のところはこれを利用するというような状況にはまだ至っておりませんけれども、こういうシステムがあるということであります。

 そして、鹿児島あたりでは、一農場で四千頭とかいう、非常に経営に大きな影響が出るような死亡頭数も出ておりますので、そういう経営に悪影響が出るということであれば、農林漁業セーフティーネット資金、これを活用していただくということで考えております。

大串(博)委員 この流れを見ていますと、どうも、話を聞くと、今申し上げているように、冬の間、拡散の傾向がどうしてもあるものだということらしいんです。それで、気温が上がっていくに従って次第に終息といいますか安定的になっていく可能性がある、こう言われているようにも聞いております。そういうこともあってか、私は見ていて、どうもいろいろな対応が少し後手に回っているんじゃないかという気がしてならないんです。

 すなわち、先ほどお話がありました、これは法定伝染病ではございませんので、全国的に大々的な会議を行うという類いのものではなかなかないのだけれども、あす全国緊急会議を行うという話がございました。本当にこのタイミングというのが十分迅速だったのかというところは、検証の必要性があるんじゃないかというふうに私は思っています。

 すなわち、先ほど申しましたように、私の地元でもそうなんですけれども、気温が上がればということで、皆さん一生懸命、防疫対策をし、移動制限を行いながら、広がらないようにやってこられていました。しかし、それでもとまっていないという現状があって、むしろ広がっている、十七県まで広がった、三万頭まで広がったという現状がある中で、本当に国として、先ほど、昨年の十月来に発生して以降、三月には文書を発出した、四月二日、あしたには会議を行うと言われましたけれども、十分な対策を迅速に行ってきているのかというところはいかがでしょうか。

江藤副大臣 これは、私のところは口蹄疫を経験していますので、宮崎県の県南の方でも発生をしまして、非常に緊張感を持って、国もそれから都道府県も緊密に連絡をとっていたというところを私は現場で見ております。一生懸命やっているんですが、これは非常に不気味で、飛ぶんですよね。いわゆる面的な広がりが出ていくような体質のものではなくて、どういう経路でこれが伝播しているのか、正直言ってわかりません。

 ですから、非常に不気味なものでありますけれども、確かに温度上昇につれて発生の頻度それから規模も小さくはなってきておりますが、四月の二日、あすでありますけれども、全国、態勢ももう一回しいて、さらに各都道府県の方々は、我が宮崎県では、相当県主導で、各市町村それから農協、共済組合も含めて、何度も何度も会議を開いてやっていたにもかかわらず、私の選挙区の方にも入ってきましたので、ですから、後手に回ったというお叱りは真摯に受けとめますけれども、甘く見ていて、気が緩んでいたということはないというふうに考えております。

大串(博)委員 今話がありましたように、この豚流行性下痢、なかなか対応というか予防というか心構えが非常に難しいというような感じが私もしております。

 すなわち、地域的な発生の状況を見ていると、沖縄から始まって九州の南部に、地理的に広がっていくのかなと思うと、佐賀県なんか、ぽおんと飛んで発生いたしました。先ほどお話がありましたように、茨城、ぽこんと飛んで発生している。愛知あるいは青森、どこからどういうふうに伝播、伝染しているのか。その他の動物を介しても伝播しているんじゃないかというふうな声もあります。

 それらの感染経路の特定も含めて、しかも七年ぶりですから、であるがゆえに、相当緊張感を持って、全国的に、確かに、江藤副大臣がおっしゃった、口蹄疫の経験をお持ちの各県は、非常に緊張されて、身をかたくして対応されてこられたと思います。しかし、やはり全国的にこうやって結果として広がっていることを考えると、全国的な目線で対応を考えるべき、とるべき、あるいは促すべき農水省として、本当に全国的な対応を考えられていたのかという点は、私はしっかり検証していただかなければいけないような状況なのではないかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 それと、先ほどもちらっと申されました、今回、これが一農場で発生すると、いわゆる赤ちゃん豚が一気にこれにかかって死んでしまうわけですね。御案内のように、大変回転の速い、豚農場ですから、これが出荷できないということになると、数カ月、二、三カ月にわたって全く出荷できない。その面においては、経営に極めて大きな打撃が、一時的に穴があくことになるわけですね。その後も、いろいろな防疫対策もとっていかなければならないということで、これは農家に与える、経営という面に与える影響も極めて甚大でございます。

 これにつきまして、これは法定伝染病ではないのでそのカテゴリーではありませんが、しかしこれだけ広がってきて、三万九千頭、二百三十七件ということであれば、ただでさえ配合飼料等の価格の増嵩等々で非常に厳しい経営環境の中にある豚畜産農家ですから、何がしかの経営支援みたいなものもやはり考えるべきときに来ているんじゃないかというふうに思います。この辺に関してはいかがでしょうか。

江藤副大臣 委員の気持ちはよく私も、同感だと申し上げたい気持ちが喉まで出てきますけれども、やはり、口蹄疫の場合はワクチン接種であるとか殺処分であるとか、例えば、母豚であれば、一度下痢にかかっても治ってしまえばいいわけで、それから肉用に供されるような豚についても、一度感染しても治ってしまえば出荷制限もかからないわけでありますから、確かに、四千頭が亡くなったところについては極めて大きな経営に対する影響があったと思います。しかし、そういったところとも農水としては聞き取り調査をしておりますけれども、セーフティーネット資金を利用したいというようなお話も今のところは受けておりませんし、極めて痛いということは、市場が開催できないとか、市場に対する影響もありましたけれども、今のところは今御紹介させていただいた対策等で対応させていただければというふうに考えております。

大串(博)委員 先ほど、経営支援に対するセーフティーネットのこともおっしゃいました。そういうのがあるのも承知しております。今のところは申請がまだないということでございますけれども、現場の声等々を聞くと、やはり経営支援があればありがたいという生の声も出てきております。いずれそのような声が実体化していくのではないかと思われますので、その際には、ぜひ迅速に、かつ万端な対応をとっていただけるようにお願い申し上げたいというふうに思います。

 大臣に、この点に関して最後に、今、話全体を聞いていただきまして、この豚流行性下痢、全国的な広がりがあり、かつ経営にも大きな影響があり得る、これにつきまして、農水大臣として対応をしっかりとるという決意のところをお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 江藤副大臣からお答えさせていただきましたとおり、いろいろな対応を今後もしっかりとやっていく。そして、出荷自粛ということが現に行われるということもあるわけでございますので、先ほど御紹介した農林漁業セーフティーネット資金等の活用を含めてしっかりと対応してまいりたい、こういうふうに思っております。

大串(博)委員 これは、今後どうなっていくのかというのはまだ非常に不安な状況にありますので、ぜひ、手綱を締めて、あす会議が行われるということでございますので、万全の態勢をとっていただきたいというふうに重ねて申し上げておきたいと思います。

 次の質問に参らせていただきます。諫早湾干拓の問題につきましてであります。

 この問題については、福岡高裁の確定判決と、長崎地裁における開門差しとめの仮処分、二つの法的義務があって、これが両方あるのでなかなか難しいんだ、よって非常に苦しい立場にある、こういうふうに繰り返しおっしゃってこられました。

 ただ、私は、きょうは法務省の方も来られているので、ちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、あたかも二つの同じ重さの法的義務があって、なかなかその間の対策、対応がとりづらいんだというふうに大臣はおっしゃっているように聞こえますが、そうではないと思うんですね。片や、三年強前に福岡高裁で出た開門判決、それを政府は上告、最高裁に持っていくことをせず、確定判決とした確定判決です。一方は、長崎地裁における開門を差しとめる仮処分の決定、こうなっています。

 もちろん、裁判の結果ですから、どちらも義務を負うというのは私はあると思います。しかし、片方は確定判決、片方は一審における決定、まだ上級審に物を持っていく機会がある、こういう状況にございます。この二つは、やはり法的な力において異なるのではないかというふうに思っていますし、事実そうだと思っています。

 この点について法務省にお尋ねしますけれども、確定判決と、もう一つ、地裁における現在の決定、これは法的な枠組み上の力の違いがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

都築政府参考人 御指摘の福岡高裁判決は、確定判決でございますので、主文に含まれる事項につきまして当事者を拘束する効力としての既判力が認められるのに対しまして、長崎地裁仮処分決定は、本案の判決が確定するまでの暫定的なものでありまして、保全異議によって取り消され得るものでありますので、既判力は認められないというふうに考えております。

大串(博)委員 そういうことなんですね。

 一つの福岡高裁の確定判決は、いわゆる既判力を有する。これはどこがどうなってももう変わらない、動かないという意味で既判力がある。一方は地裁の決定です。ですから、これを上級審に持ち上げるという意味において、異議を申し立てることができるということの、そういう意味を持った義務なんですね。

 この二つのこと、すなわち、確定判決というのはもう既判力があって、これは変わらないんだということを前提として考えると、今農林水産省あるいは政府がとるべき論理的帰結は、両方の義務があってなかなか動けないんだということではなくて、確定判決を実行する、すなわち、長崎の皆様の理解を得られるような対策をしっかりとった上で開門を行うという方向に向けての最大限の努力を行っていくということ、これに尽きる、論理的に言うとそこに尽きるんじゃないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 法務省から今答弁がありましたように、既判力という意味では、高裁のは確定判決でございますが、一方で、執行力という、判決に掲げられた給付義務を強制執行により現実化する効力、こういう観点からいたしますと、請求が認められた場合、請求異議の訴え等ですね、確定判決の執行力が排除される、こういうことがございます。

 一方で、既判力というのは、確定判決の判断内容が正当であるか否かを争うことを禁じる効力、こういうことでございまして、そういう関係からいたしますと、実際に執行していくということになりますと、やはり相反する二つの法的義務、こういうことになるわけでございます。

 一月九日でございますが、福岡高裁確定判決に対する請求異議の訴えを提起して、同判決に基づく強制執行を認めないように求める、これをやっておりますのと同時に、長崎地裁仮処分決定に対する保全異議を認めるべき旨の意見を述べて、今それぞれ国の立場や考え方を裁判の場で主張しているというのが現状でございます。

大串(博)委員 私は執行力のことを議論しているんじゃないんです。すなわち、執行力というのはどちらをどう執行するかというときの話であって、今、どの方向を政府として、方針として向くかという、政策、方針のことを言っています。そこを規定するのは、先ほどの既判力、すなわち、どういう決定がなされているかということであって、それに関しては、福岡高裁の確定判決はもう確定している、これはもうどこをどうしても動かない事実である。一方は仮処分、これは上級審に持っていけるという既判力のない状況である。

 これらを踏まえると、論理必然的には、執行をどうするかというところは次の問題にあるとして、政府の方向性、方針としては、開門に向けて長崎の皆さんの理解を得ていくために全力の投球を行っていくということにならざるを得ないと私は思います。

 この点は、また繰り返し、有明海の再生に関する水産庁の取り組みなんかも含めて、やや心配な面もありますので、今後また議論させていただきたいと思いますが、ぜひその方向でまたやっていただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

坂本委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 本日は、一般質疑において三十分の時間を頂戴いたしました。ありがとうございます。

 本日は、TPP、そしてTPPに係る日米協議、そして日豪EPAについてお伺いしてまいりたいと思います。

 まず初めに、三月二十七日、二十八日に、米国のワシントンにおいて、両国の実務者の間で協議が行われたと承知いたしております。我が国からは大江首席交渉官代理、そして、先方からは米国の通商代表部のカトラー次席代表代行が協議に当たって、農産物の取り扱いについて協議したというふうに承知いたしております。

 まず初めに、この日米の間での協議の内容、日本から、そして先方からはどのような主張がなされたのかについてお伺いしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 二月のシンガポールの閣僚会合におきまして、甘利大臣の問題提起もございまして、日米の協議も含めて、実務担当者に対して政治的な指示と十分な権限を与えて事務的な調整を進めさせようという方向で合意がされたものでございます。

 これを受けまして、まず、三月の十一日、十二日の二日間、それから、先ほど先生から御指摘いただきました先週の二十七日と二十八日の二日間、大江首席交渉官代理が訪米いたしまして、カトラーUSTRの次席代表代行と、日米の市場アクセスについての協議を行ったところでございます。

 交渉の具体的な内容は、まさに交渉中でございまして、お話をすることは差し控えたいと思いますが、双方の立場には依然としてかなりの隔たりがあるのは事実でございます。間合いが少しずつ縮まってきているということを、大江首席交渉官代理はその後のぶら下がりでもお話をされていますが、引き続き、この間合いを詰める作業を日米双方で継続するということになったということでございます。

村上(政)委員 その協議をして、日米の閣僚の間で政治的な決断をするというような状況にはまだ至っていないというような認識でよろしいんでしょうか。

澁谷政府参考人 大江代理とカトラー氏との間で、三月に二回ほど協議をいたしました。この実務者の間で引き続き協議を続けていくという、まだ今後のスケジュールは確定はしておりませんが、近いうちにこの二人を含めた実務担当者で協議を続けていこうということになっております。

村上(政)委員 この日米の協議あるいはTPPの運びについてはまた後ほどお伺いしたいと思いますが、四月には、今月、四月になりましたけれども、オバマ大統領の訪日もありますし、そういった政治日程をにらみながら、しっかりと交渉を続けていただきたいと思います。

 さて、この日米の間で、あるいはTPPの場で、我が国はもっと攻めの姿勢で主張すべきことがあるんじゃないかなということをお伺いしたいと思います。

 というのも、この農水委員会でも、TPPあるいは日米協議において重要五品目をどのように守るのか、これは国会の決議もありましたし、そうした観点から、我が国の農業をいかに守って、また成長させていくかという観点も大事だと思います。他方で、我が国としてアメリカに対してもっと主張すべき点がある、あるいは、国際貿易のルールメーキングの主導権を握って、我が国がやはり世界経済の中でのイニシアチブをとっていくためには、アメリカに対して攻め込んでいく分野もあるんじゃないかなと思います。

 その最初の点として、輸出補助金の問題を取り上げたいと思います。

 アメリカは農業輸出大国であって、非常に農業の分野で競争力がある。しかし、その競争力を持ったアメリカが、輸出補助金の迂回に当たるような輸出信用保証制度、商品金融公社、CCCというようなものを設けて、自国の農産品に対して輸出補助を行っているというような現状があります。こういった点は、自由貿易の公平性を考えたときに非常に問題があるんじゃないか。我が国としては、こうした点をやはり日米のバイの協議でも主張していくべきではないかと私は思います。

 まず、このアメリカの輸出補助金の、こういった制度をとっているということは政府として問題があるというふうに認識されていますでしょうか。

林国務大臣 我が国は、従来から、WTO農業交渉におきまして、加盟国間の競争条件の公平性を確保するために、全ての形態の輸出補助金は撤廃すべきである、輸出信用についても規律の強化が必要である、こういう立場で臨んできております。

 TPP交渉においてどうかということになりますと、これは交渉の具体的中身になりますので、日米協議における我が国の主張も含めてお答えは控えさせていただきますが、我が国の立場は冒頭申し上げたとおりでございます。

 いずれにしても、我が国の国益をTPP交渉においても最大限実現するように全力を尽くす考え、これは変わっておりません。

村上(政)委員 大臣の御答弁で規律強化というような言葉が出てまいりました。

 やはり自由貿易のルールをしっかりしていくということが我が国の国益にもなると思います。規律強化というものを図っていくために、アメリカに求めていかなければならない。

 一般論として、大臣は今、交渉中だから、なかなかその交渉の中身についてはおっしゃれないというふうに御答弁がありました。これは私自身も理解いたします。他方で、やはり我が国として主張すべきこと、あるいはしっかりと求めていくことについては、交渉中であっても、大臣の方から、あるいは政府から発信をしていただく必要があるんじゃないかなというふうに思います。

 この委員会においても何度か質疑の中で問題意識として取り上げられてきたのは、例えばアメリカは連邦議会があって、連邦議会からTPPなり国際交渉に対して極めて強い要請なり要求がある。交渉の場でも、アメリカの担当官あるいは代表者が、アメリカは自分の国内の連邦議会において、こういったふうに、例えば農業団体がバックについている人たちであったり、自動車であれば労働組合の人たちもいるでしょう、民主党系の人たちであれば。そういった人たちが連邦議会で非常に強い要求をしているから我々も困っているんだ、だから交渉の場でぜひ日本もそれをわかってくれというようなことをアメリカの側は言ってくる。

 我が国政府としても、あるいは我が国議会としても、求めていくべきことについては、主張すべきことについては、ぜひ大臣からも強くこの場でおっしゃっていただいて、アメリカに対する交渉材料としてこの委員会の場を使っていただいた方がいいんじゃないかなと思います。

 繰り返し申し上げると、一般論として交渉の中身がおっしゃれないということは私も理解いたします。他方で、アメリカに対して、輸出補助金、これはまかりならぬじゃないかということは、交渉の中身であるというのは理解しますが、やはりこの場でも強くおっしゃっていただいて、アメリカに圧力をかけていく必要があるんじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

林国務大臣 実際の交渉は甘利大臣のもとで、内閣官房も来ておられますが、やっておられますが、先ほど一般論としてWTOでの我が国の立場を申し上げたわけでございまして、我が国の立場というのは一般論としてはこういうことであるということ、それに加えて、これはTPP交渉に限らず、日豪のEPAもそうですが、国会で決議をいただいております。アメリカが、議会がこうだからということと同様に、我々も議会でこういう決議をいただいている、これが大変重要である。

 したがって、それはなぜ重要かといえば、妥結した場合に、今度は批准をしていただかなければいけないわけでありまして、批准をするのは国会でありますから、その国会の御意思としてこの決議があるんだということを常に相手に示しながら交渉する、これはやっているところでございます。

村上(政)委員 こういった我々の議会での決議というものを使って交渉していくということでありますので、次の質問に移っていきたいと思います。

 私が先ほど申し上げたようなTPPの交渉というものは国際貿易のルールメーキングをめぐる主導権争いであるというような、こういった認識というものは政府としてお持ちでしょうか。私が今申し上げた認識と同じような立場に立たれるものでしょうか。

小泉大臣政務官 御指摘のとおり、TPPというのは、新たな二十一世紀の野心的な経済圏をアジア太平洋でつくり上げるという、大変戦略的な意義の深いものだと認識をしております。

 その上で、新たな貿易、投資、そしてサービス、こういった新しいルールづくりに日本が主導的な役割をしていく。確かに日本の参加はおくれましたけれども、参加後は、日本はアメリカと連携もしながら、また各国とも連携をしながら、日本が攻めるべきところは攻め、主張すべきは主張して、しっかりと交渉に当たっていますので、これからも、御指摘のように、ルールメーキング、新しいルールをつくるんだ、そういった認識を持って、日本の国益をかけて、交渉に引き続き当たってまいりたいと思っています。

村上(政)委員 政務官からの御答弁で、同じような認識であるということで、私は、そういうふうに思っていただくことは非常に結構なことだと思います。

 こうした観点からすると、私が取り上げたこの輸出補助金の問題以外にも、アメリカに対して、あるいはTPPの場において求めていく分野があるんじゃないかなと思います。

 というのも、先ほど来申し上げているように、自由貿易の公平性というものを担保することは非常に重要なことであります。我が国が守りだけをするのではない、重要五品目を守るという、攻め込まれている場だけではないはずです、TPPというのは。我が国としても、やはり交渉の主導権を握りながら、あるいは、自由貿易というものがきちんと担保されるように主張していくべき点が輸出補助金以外にもあると私は考えますが、政府として、これは同じような認識でしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPPの交渉は、大変幅広い分野を扱っておりまして、市場アクセス一つとりましても、物品の関税の交渉以外に、越境サービスですとか金融サービス、政府調達などなどの、市場を開放する規制緩和の交渉も行っているところでございます。

 実は、そうした規制緩和、サービスなどの投資を受け入れる、あるいは政府調達で門戸を開放するということに関しましては、我が国は、この十二カ国の中でかなり高い水準にいるわけでございまして、そういう点は、アメリカも含めて他の国に対して、厳しいリクエストを出して、主張しているところでございます。

村上(政)委員 今、規制緩和等の幾つかの分野についての御紹介が審議官の方からありましたが、農業に係る分野についても、同じように、幾つかの点があるんじゃないかなと思います。

 例えば、輸出独占の問題があると思います。これは、一国の会社に対して、その国の政府が輸出の権利を独占的に与えるといった問題。あるいは、輸出規制の問題もあると思います。これは、二〇〇七年に世界的に食料価格が高騰した後に、自国の農産物の輸出を禁止したり、輸出枠を設定したりした国もありました。

 こういった輸出独占あるいは輸出規制についても、きっちりと、してはならないんじゃないかと。輸出規制という問題がもし起これば、これは我が国の食料安全保障にも直結する問題でもありますし、また、輸出独占というのは、先ほど御紹介した輸出信用保証の問題とも同様に、自由貿易の公平性をゆがめる問題であるというふうに思います。

 こういった輸出独占とかあるいは輸出規制については、どのようにお考えでしょうか。

澁谷政府参考人 個々の具体的な問題についてどういう議論がというのは申し上げにくいところでございますが、二〇一一年の十一月に、これは日本が正式に参加する前でございますが、TPPの輪郭というものが、当時のTPP参加国の、アメリカも含めてですけれども、首脳同士で確認、合意をされた文書がございます。

 その中で、物品市場アクセスのルールについてどういう議論がされているかということが公表されておりますが、「農産品の輸出競争や食料安全保障に関する規定も議論されている。」という紹介がございます。

 現在、農産品の輸出競争ないし食料安全保障にかかわる条文について、ルールについても交渉が行われているところでございまして、我が国は、これは我が国だけではなくどの国もそうなんですけれども、物品市場アクセスの二国間の協議を続ける傍らで、ルールの分野についても、市場アクセスの交渉を有利に進めるように、お互いにここはセットで考えている、そういう交渉をどの国も行っておりまして、我が国も、しっかりと主張するべきところは主張するということで交渉を行っているところでございます。

村上(政)委員 こういった問題についてはこれぐらいにしたいと思うんですけれども、輸出補助金の問題であったり、輸出規制の問題であったり、あるいは輸出独占の問題であったりというのは、我が国として、このTPP交渉において、あるいは日米協議において攻めていける分野だと思いますので、きっちりと主張していただく、あるいは、その主張をしているんだということをやはりこの委員会でも御紹介いただくということが必要なんじゃないかなというふうに私は思います。

 次に、日豪の、日本とオーストラリアの間でのEPAについてお伺いしていきたいと思います。

 先般、豪州のロブ貿易・投資大臣が訪日いたしまして、林大臣も会談をなさったというふうに承知いたしております。ロブ大臣と林大臣の間で、牛肉を含めた農産物関税についてはどのように話し合われたのでしょうか。お伺いします。

林国務大臣 三月二十六日でございましたが、豪州のロブ貿易・投資大臣と会談を行いまして、日豪EPAを含む二国間経済関係について議論を行いました。

 会談の中では、この日豪EPA交渉の中の農産品市場アクセスについても意見交換を行ったわけですが、結果として、引き続き、協議を継続しようということになったところでございます。

 具体的な協議内容は、交渉が今継続中でございますので、申し上げることはできないわけでございますが、しっかりと、日豪EPAについても、国会で、委員会での決議が決められておりますので、この決議を踏まえて、真摯に交渉に取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

村上(政)委員 次に、先ほど大臣からも御発言があった、アボット首相の来日に合わせて、日経新聞がインタビューを行いまして、アボット首相は、日本車の輸入関税について、撤廃することもやぶさかでないというふうに発言したというふうに新聞紙上では報じられております。実際に、豪州はどのような態度で、この問題について、日本車の輸入関税について臨んできているのでしょうか。お伺いいたします。

正木政府参考人 御質問に言及のありましたインタビューの内容は、報道として承知しております。

 日豪のEPA交渉におきましては、日本側の主な関心品目としましては、当然のことながら自動車を含みます先方の鉱工業品の関税撤廃でございます。また逆に、オーストラリア側の主な関心品目は、農産品の市場アクセスの改善でございます。

 現在、これらの品目の扱いを含め、オーストラリア側と鋭意交渉しているところでございます。

 いずれにしましても、この日豪EPAにつきましては、双方にとりまして利益となるような協定を実現すべく、早期妥結を目指して交渉に取り組んでいるところでございます。

 相手国との関係もございますし、現在交渉中でございますので、具体的な交渉の内容について、これ以上の言及は差し控えさせていただきたいと思います。

村上(政)委員 オーストラリアの首相はこういうふうに発言して、政府として、交渉中であるので中身については言及できないということでありましたが、やはりオーストラリアの自動車市場を獲得するために、先方が妥協する、交渉する用意があるというふうに言及しているというのは、非常に重要な指摘、発言であるというふうに私は思います。

 私はそう思うんですけれども、他方で、しかしながら、新聞あるいはメディアの論調を見ていると、必ずしもそういうふうに捉えていないというような論調も見受けられます。

 例えば、北海道新聞の三月二十八日付の記事を見ますと、オーストラリアでは、トヨタ自動車が一七年末に撤退すると、大手メーカーの生産拠点はなくなり、自動車関税の意義が薄れるとの事情もあるというふうに紹介されています。

 私は、こういった考え方はちょっと違うんじゃないかなと思います。というのも、やはり、先方の、オーストラリアという非常に成長が有望視される、そういった国での自動車市場を獲得できるというのは、我が国にとっては非常に大きな利益があるのではないかと思います。

 例えば、トヨタが撤退するから、向こうが自動車関税で譲ってもそれは意味がないというふうな認識というのは、ちょっと行き過ぎた認識であるんじゃないかなと思うんですけれども、これは政府としてはいかがお考えでしょうか。

正木政府参考人 委員御指摘のような報道も承知しておりますが、繰り返しで大変恐縮でございますが、この日豪のEPA交渉におきましては、先ほど申し上げましたように、日本としては、自動車を含む鉱工業品の関税撤廃ということを主要な関心品目として踏まえて交渉しておりますし、引き続き、オーストラリア側と、双方にとって利益となる協定を実現すべく、早期妥結を目指して交渉しておる次第でございます。

村上(政)委員 農水委員会ですので、自動車の話はこれぐらいにして、どういうふうに交渉を進めていくかということを引き続き議論させていただければと考えるんですけれども、やはり論点となってくるのは、自動車と農産物ということなんだと思います。

 過去に我が国が結んだEPAというものを見てみますと、例えば、我が国とメキシコ、日墨のEPA、あるいは我が国とチリの日・チリEPAといったところでは、牛肉や豚肉等について定率の関税割り当てを設定して、交渉を妥結したというような事例があると思います。

 こういった形での、我が国と豪州との間で折り合う、落としどころを探るといったお考えは政府としておありでしょうか。

林国務大臣 今委員がお話しになったように、平成十七年に発効した日墨EPA、それから平成十九年に発効した日・チリEPAでは、牛肉、豚肉等で枠内税率を定率にした、いわゆる関税割り当てを設定しております。

 一方で、日豪EPAにおいて個別の品目をどういうふうに扱うかということは、まさに今交渉している中身そのものでございますので、お答えは差し控えたい、こういうふうに思います。

村上(政)委員 なかなかおっしゃれないということはあるんだと思うんですけれども、やはり、せっかくアボット首相ももうすぐ来日するということです。

 これは日豪EPAとは少し離れますが、やはり豪州というのは、我が国にとっては戦略的なパートナーでありますし、アジア太平洋地域における我が国にとっての重要な存在だと思います。豪州も政権交代が起こって、今まで比較的中国との関係を重視していた豪州も、我が国との関係を重視する。これは、安全保障の面からしても非常に重要ですし、また、日豪の協力の歴史を振り返ってみますと、八〇年代、九〇年代にAPECを日豪が協力してつくっていったというような協力もあったと思います。非常に今、豪州との間のこういった協力の機運、あるいは関係深化の動きというのがまさに起こっているわけですから、ぜひ政府としても大胆な御決断を日豪EPAの間でしていただくということが必要なんじゃないかなと思います。

 こういった日豪のEPAを成果として成就させるというのは、私が今申し上げたような、経済、安全保障の日豪関係のみならず、我が国にとってのアジア太平洋地域における戦略、あるいはTPP交渉というものとも非常に密接に関連する問題だと思います。ですので、政府としても、ぜひこの日豪EPAについて大胆な御決断というものを、先ほど御紹介したような日墨EPA、日・チリEPA、そういった先例の枠組み、形を参考にしながら、していただくことが必要なんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

小泉大臣政務官 オーストラリアは、まず、日本にとっても大変重要なパートナーだと思います。

 ただし、交渉において、大胆な決断をしますと言っては交渉になりませんので、しっかりとこちらが主張すべきは主張して、TPPはTPPで早期妥結に向けて取り組む、そして日豪のEPAに関しても、早期妥結に向けて、双方にとって前向きな結果になるように努力をし合って、TPP、日豪、刺激をして加速化していくことをこちらとしては期待しております。

村上(政)委員 大胆な決断ということを言ってしまうと交渉にならないというふうな御答弁でしたけれども、それはちょっと違うんじゃないかなと思います。

 大胆な決断というのは、私は、政治がリーダーシップをとっていただいて、ぜひ政権でリーダーシップをとっていただいてまとめ上げてほしいということで、大胆に譲ればいいんじゃないかなということを必ずしも意味していることではありませんので、そういった意味でも、ぜひ御決断をいただきたいなと思います。

 最後に、この日豪とのEPAというものが、派生的に我が国にどういうふうな利益なり、いいところをもたらすのかということなんですけれども、この日豪EPAをうまくまとめ上げれば、日米の協議に対してもいい効果を及ぼすんじゃないかな。

 というのも、やはり、アメリカは中間選挙を控えて非常に内向きになっている、あるいは国内の事情というものが優先される傾向が強まってきているんだと思います。選挙を控えていますので、アメリカ政府、オバマ政権というのは、なかなか農産物について大胆な譲歩なり決断というものができなくなってきている。我が国に対する要求を撤回してまでも日米の協議あるいはTPPをまとめ上げようという力がなかなかなくなってきているんじゃないかなと思います。

 そういった事情を勘案すれば、我が国と豪州が先行してEPAを大胆な決断でまとめ上げていただければ、日米協議あるいはTPPに対して非常によい効果、我が国がイニシアチブをとる、アメリカに対して攻め込んでいけるカード、材料になるんじゃないかなというふうに考えるんですけれども、政府としてはどのようにお考えでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 本日、先生にいろいろ御指摘いただいた点は、今後も交渉に、現場にぜひ生かさせていただきたいと思っておりますが、交渉の担当をしている者が、この場で、どこそことの交渉がこの別な国との交渉にどう影響ということを申し上げるのは必ずしも適当ではないと思います。

 いずれにいたしましても、日豪のEPAも、TPPも、相互に刺激し合いまして、交渉が加速化するということを期待しているところでございます。

村上(政)委員 私がきょう質問させていただいた問題意識というのは、一つは、我が国としてアメリカに対して攻め込んでいく分野があるはずである。輸出補助金の問題であったり、アメリカが不当に競争力を高めている問題については、アメリカとのバイの協議でもきちんと主張すべきであるし、マルチの場でもきちんと我が国として主張して指導権をとっていくべきではないかなという点です。そして、そういった観点から、この委員会、我が国の国会というものを政府としてぜひ活用いただいて、委員会でこういう質問をしているやつもいるから、うるさいやつもいるから、ぜひ日米のバイの協議なりTPPの場で、まあ、皆さんわかってよというような、アメリカがやっているようなことも我が国としてやってほしいということであります。

 これは私の問題意識で、御答弁としてもそういったところに、完全にではないですけれども、そういった点に非常に沿った御答弁もいただけたと思います。こういった問題意識を改めて御紹介しながら終わりたいと思いますけれども、大臣、最後に一言いただければと思います。

林国務大臣 村上先生におかれましては、外務省に御勤務の御経験もあったということで、きょうは大変味わい深い御議論を賜った、こういうふうに思っておりますので、しっかりと活用させていただきたいと思います。

村上(政)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、岩永裕貴君。

岩永委員 維新の岩永でございます。

 私も、味わい深い質問をきょうは目指して、頑張らせていただきたいなというふうに思います。

 きょうは、質問させていただく前に、以前から私が取り上げさせていただいております「銀の匙」について、大臣の方からちょっとその御感想なんかも伺いながら、質問を始めさせていただこうかなと思っていたんです。

 先ほど稲津委員の方からそのあたりについてはお触れをいただきましたので、私の方から改めてお伺いをするということはないんですけれども、この「銀の匙」、私も単行本を本当にたくさん買って、いろいろな人に読んでくださいよと広めさせていただいたり、この委員会の中でも質問をさせていただいたりしている中で、試写会にお招きいただけなかったのが非常に寂しいなというか残念だなということだけ申し上げさせていただいて、またの機会に期待をさせていただきます。ぜひまたこの「銀の匙」、何か農林水産省としてかかわりのあるときには御案内をいただければ本当にありがたいなと考えております。

 それと、きょうは消費税が八%になりました。昨日、一昨日と、私の地元の方でも、ガソリンスタンドにも長蛇の列ができたり、スーパーの中でも大きな混雑が見られていたわけなんです。

 一方で、農業に携わっていただいている皆様方にお話を伺っていると、これは以前からですけれども、消費税の転嫁というものがやはりなかなか難しいんだというお話をされております。やはり農業の分野は、まだまだ人と人とのつながりででき上がっている部分もたくさんございますし、まだまだ売買というのがシステマチックにできていない部分も大変多うございます。

 そうした中で、転嫁ができないんだという現場の声、これは通告はしていないんですけれども、農林水産省さん、どなたでも結構です、もし、このあたりについて何か今対策というものを講じていらっしゃるようであれば、お伺いをさせていただきたいんですが、ございますでしょうか。

林国務大臣 四月一日、きょう新年度に入りまして、消費税が三党合意に基づいて決定したとおりに引き上がるということでございます。

 これは、農林水産省にとどまらず、関連する全ての省庁と連携して、テレビなんかを見ますと、転嫁Gメンですか、こういうのがよく出てきますが、全省庁的にきちっと、税率引き上げに伴う移行がスムーズに行われるように、しっかりとやっていきたいと思っております。

 既に法律でたしか決まっておると思いますが、暫定的に、いわゆる内税といいますか、別枠表示を認めるということも決められておるようでございますので、こういうこともいろいろ活用しながらしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

岩永委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 農政が大きな転換期を迎えている中で、こうしたことをしっかりと現場の皆様方のためにまずは取り組んでいくということは非常に大切だと考えておりますので、改めてお願いを申し上げます。

 きょうは、一般質疑ということでもございますので、広く農政についてお伺いをしたいなと考えております。テーマは、食の安全保障ということについてお伺いをさせていただきたいと思っておるんです。

 この食の安全保障という分野、私も、いろいろな本を読んだり、人、先輩に聞いたりするんですけれども、やはりなかなか答えが出ません。この日本国内において、いかにして食の安全保障というのをこれからしっかりと確立していくのかという答えを持ち合わせないままに、きょうは質問をさせていただくんですけれども、非常に重要な分野でもありながら、難しい分野でもあるなという印象を受けているテーマでもございます。

 そこで、これは二月なんですけれども、農業新聞の方に、内閣府が公表された特別世論調査が掲載をされました。将来の日本の食料供給に不安があると答えた国民が実に八三%、そして食料自給力の向上が必要と考える割合が九六%という数字を拝見いたしました。これは、一九九〇年から二〇〇六年の調査では七八%ぐらいだったということなんですけれども、近年それを大きく上回っているという現状でもございます。

 そこで、出てくる一つの論点が食料の自給率なんですね。この自給率、政府としては、平成三十二年度の食料自給率目標ということを掲げられておりまして、カロリーベースで五〇%まで引き上げるんだという大きな方向性の中で今いろいろな施策を実施されているというふうに思います。

 まず、カロリーベースで五〇%の自給率目標という、この五〇%にはどのような根拠を持たれているのかということを教えてください。

小里大臣政務官 お尋ねの目標五〇%は、平成二十二年当時におきまして策定をされました食料・農業・農村基本計画において定められたものであります。

 世界の人口の増加、あるいは中国やインド等の新興国が経済発展をすることによりまして、特に穀物等の需要が中長期的に逼迫をする、そういった背景があって、この数字が策定をされたものと認識するところでございます。

 このため、我が国の持てる資源を全て投入した場合に、例えば農地を表も裏もフルに使って、全て投入した場合に可能となる高い目標としてこれがあるものと認識をいたします。

 カロリーベースの食料自給率というものは、御案内のとおり、食料消費に対して国産がどれだけあるかということを示すものであります。分母の総供給熱量につきましては、平成三十二年度の各品目の消費見込み量を熱量換算して二千四百六十一キロカロリーとしております。分子の国産熱量につきましては、平成三十二年度の各品目の生産数量目標等を熱量換算して千二百三十一キロカロリーと試算をしたものでありまして、結果、五〇%と定められたものであります。

岩永委員 今の御説明で、ということは、日本国内にある農地をフル活用して五〇%ということで、どれだけ頑張っても、カロリーベースでいうと五〇%以上にはもうならないというような認識でよろしいんでしょうか。

小里大臣政務官 当時、民主党政権下でありますが、そこを将来的な可能性としてどの程度に捉えているか、私は存じておりません。ただ、まず五〇%という食料自給率目標があったということは認識します。そこから計算をして、それぞれの品目の生産目標が定められたものと認識をするところであります。

岩永委員 ありがとうございます。

 恐らく、このカロリーベース、一人当たりの摂取カロリーを昨年ですと二千四百五十カロリーぐらいに設定をされているということなんですが、この中には廃棄されるカロリーも含まれておりまして、実際に一人が摂取するカロリーは二千カロリーぐらいではないかというふうなことも言われているようでございます。

 この間、人口構造も大分変わってきておりますし、いっときは、一九六〇年ぐらいには八〇%ぐらいあったものが、今は四〇%まで低下しているというような中で、放棄地なんかもふえていることも一方では事実なんですけれども、人口構造が変わったり、食生活が大分、米や芋、そういったカロリーの高いものをなかなか食べなくなったというような状況もあるので、この分母というものをいかに設定するのかというのは非常に難しいんだろうというふうには思いますが、私は、この新聞を見て、九六%の方が不安を抱いているというようなこの現状について、ちょっと異常ではないかなというふうに考えているんです。

 このあたりについて、大臣、本当にこれだけ多くの国民が不安に駆られるような、今現在、日本では食の安全保障というものが危機的な状況にあるのかどうか、そして、自給率というものが何%ぐらいになっていけば本当に国民の皆さんは安心をされるのかというところについて、御見解をいただければと思います。

小里大臣政務官 確かに、御指摘のとおり、最近、とみに国民の皆さんが食料安全保障ということに関して不安を覚えていらっしゃるということは認識をしております。

 現在消費されている食料全てを国産で賄うということは不可能であります。それだけに、では、これを何%まで引き上げていけばいいのか、いけるのか、これをにわかに表現を申し上げることは困難であると言わざるを得ないわけでありますが、このことにつきましては、ことし改定作業を行う食料・農業・農村基本計画において、食料供給力の概念もあわせながら議論がなされ、また策定をされると認識をするところであります。

 国民の皆さんがいかに不安を覚えていらっしゃるか、この答弁要旨にありますけれども、先生の方が御承知であります。

 食料の安定供給を確保することは、国家の最大の責務であると考えます。まずは、国内の農業生産の増大を図る、そして、輸入と備蓄を適切に効率的に組み合わせをして食料安全保障を図っていく必要があることは言うまでもないわけであります。また、申し上げましたように、国民の皆さんの不安に応えていくという意味では、後ほど御質問もあるんでしょうけれども、食料自給力の概念もあわせて理念として用いながら、しっかり対応してまいりたいと存じます。

岩永委員 恐らく、国民の皆さんの率直な感じを申し上げますと、知識としては、日本の食料自給率は四〇%であって、これは主要国では世界の最低水準にある、それで、中国は人口がふえていっていて、食の取り合いに、今後、世界は二〇五〇年には九十億人に人口がふえていくということもあるんでしょうけれども、そういったことを危惧していらっしゃる。今は大丈夫だけれども、将来もしかしたら食料が足りなくなるかもしれないという、本当に漠然とした不安が多分国民の皆さん方の中にはあるんだろうなと思うんです。

 それがこの九〇%という数字にあらわれているんだと思うんですが、やはり食の安全保障という、なかなか答えの出ない分野ではあるんでしょうけれども、もう少し国民の皆さん方にしっかりと食の安全保障とは何かということを御認識いただくことも非常に大切です。

 何か起こったときに、近年、災害時であってもそうなんですけれども、一気にスーパーから食料がなくなったり、コンビニから食料がなくなったりという、二次災害、三次災害につながるような国民の動きというものも非常に大きな懸念もされておるところなので、国民の皆様方にもう少しバランスのとれた食の安全保障というものを考えていただくことも非常に大切ではないかなという観点から、以下、質問をさせていただきます。

 食料の安全保障というものについては定義づけがされていると思うんですが、その定義について、そして、その定義を達成するために、平時にどのような取り組みを農林水産省として行っているのかということについて、まず御説明をいただきたいと思います。

小里大臣政務官 御指摘のとおり、定義につきましては、食料・農業・農村基本法第十九条におきまして、不測時における食料安全保障に関する条文が規定をされております。すなわち、食料安全保障とは、危機管理対応として、国民への食料の安定供給を図る上で、不測の事態が生じ、国内需給が著しく逼迫する場合においても、国民が最低限度必要とする食料が適切に供給され、国民生活の安定が保障されることを意味するものであります。

 また、では、平時にどういう対応を行っているんだということであります。

 まず、基本的に、食料生産基盤というものをしっかりと確保していく必要がございます。したがって、農地、担い手、技術といった食料生産基盤をしっかり確保していくことを図っております。

 あわせてまた、適切な備蓄が必要でありまして、輸入面におきましても、例えば、分散型で、多くの国からなるべく安定的に入るようにするということも必要であろうと思います。

 また、通常の食料需給に関する情報の収集、分析、提供等も行っております。

 また、これに加えまして、食料供給に影響を及ぼす局地的、短期的な緊急事態に備えるための平素からの取り組みとしまして、食品産業事業者による事業継続計画の策定、また家庭における食料備蓄等を推進しているところであります。

岩永委員 先ほど食の自給率と安全保障という部分について触れさせていただいて、恐らく四〇%という食の自給率の低さに国民は大きな不安を覚えているというようなこともお話をさせていただきましたが、これは本当に、自給率というところと安全保障というのがどのような関係性があるのかということも、ちょっと客観的に考えなければならないのかなというふうにも考えております。

 例えば、ある本を読ませていただくと、イギリスの政府なんかは、自給率と食の安全保障の関係性というものは全くないという結論を、結果をつけているというような話もあります。自給率を高めるために特定作物の価格を人工的に上昇、維持させる施策は農家の質を低下させるんだというようなこと、これはイギリス政府ですけれども、結論づけているということです。

 この食料の自給率と安全保障というものを考えたときには、各国の食料事情、そして外交事情、いろいろな環境を鑑みたときに、その英国政府の考え方というものが正解なのか間違いなのかというようなことは、一概にこの日本に当てはまらないというふうにも考えておりますが、やはり先ほど政務官からもおっしゃっていただきましたように、海外との輸出輸入の関係というものが、この食の安全保障ということを考えるときには非常に大切であるというふうにも思います。

 そうした中で、安定的な輸入対策というものについて今政府がどのように取り組んでいるのかということについて、御説明をいただければと思います。

松島政府参考人 食料の安定供給というような観点から、どういう形で国際的な取り組みをしているかというお尋ねがございました。

 先生御指摘のとおり、食料の安定供給のためには、国内農業生産の増大を基本としながら、必要な食料の輸入の安定化と多角化を図ることが重要であると考えてございます。

 農水省としましては、食料輸入の多角化、安定化を図る観点から、外務省などとも連携しながら、国内で十分に生産することができない家畜の飼料、それから油糧原料、油脂原料として不可欠なトウモロコシや大豆などにつきまして、企業に対する農業投資関連情報の提供なども行っているところでございます。

岩永委員 続いての質問は、外務委員会で我が党の小熊慎司委員からも聞かれた質問ではあるんですけれども、最近、ランドラッシュという言葉をよく耳にいたします。これは、世界農業争奪戦とか農地争奪戦とか言われるものなんですけれども、要は、海外で農作物をつくって、そして自国のためにそこから輸入をしっかりしていって、安定的に農作物を供給していくというような考え方でございます。国によっては、その海外での農地取得に対して、政府がかなりの関与をして、そして補助をしているというような国もあるようです。

 日本は、今、国交省でも経産省でもそうですけれども、製造業を中心にした企業の海外の展開に対しては、かなり政府を挙げて予算を投じている、そして支援をしているというような現状でもあるんですけれども、農林水産省として、海外に進出する農業系の企業のサポート、土地取得に関しても、まず、補助をしているのかどうかということを教えていただければと思います。

松島政府参考人 まず、先生から、海外への我が国の食料関係企業の進出または農地の取得について支援があるのかということでございますが、我が国企業が海外で農地の取得やリースを行う際の直接の支援というのは行ってございません。

 ただ、途上国では、食料生産に係る諸問題、例えば生産基盤の整備でございますとか栽培技術の改善といった問題に加えまして、効率的な加工流通施設の整備がおくれておりまして、その結果として、フードロスが発生したり、また食料の安定供給上大きな課題となっているという問題がございます。

 それを、フードバリューチェーンと私ども申し上げておりますけれども、そういった問題を解決するために、農作物の生産から加工、流通、消費という各段階のつながりを強化いたしまして、それぞれの段階で付加価値を高めていく供給体制を確立するということを支援してございまして、民間企業と経済協力の連携といったことにつきまして意を用いて、特に途上国におけるフードバリューチェーンの構築を推進しているということでございます。

岩永委員 ランドラッシュ、農地争奪戦ですね、これは賛否両論あります。そして、私も、そういった争奪戦に日本が負けないように、積極的に参画をしていくべきだという見解は全く持っておりません。

 これは、先日、農林水産省の外郭団体であるJIRCASというところに視察に行って、お伺いをさせていただいてまいりました。

 今、世界の多くの先進国は、植民地政策というものを過去に経験しているがゆえに、やはり途上国に対して半ば強引な外交を行っている現状があるということも現地の研究員の皆様方がおっしゃっておりました。

 そこで、やはり日本型の技術支援であったりとか各国との関係づくりというものにこのJIRCASというところは非常に積極的に真摯に取り組んでいらっしゃるという現状をお伺いしている中で、農地を取得して、それを日本国の国益につなげるという考え方は私は賛同はできないんですけれども、技術をしっかりと提供していって、その国が潤ってくださることが世界全体の食不足に対応することにもなるんだと思うんですけれども、やはり日本に何か危機的な状況が起こったときには、技術を支援したんだという事実を先方の政府に受けとめていただいて、そのときには、申しわけないけれども、しっかりと輸入ができるような体制を構築したいというようなところまでの交渉を技術支援をしている先の各国としているのかどうかという部分についてはいかがでしょうか。

雨宮政府参考人 お答えいたします。

 国際農林水産業研究センター、JIRCASでございます。開発途上地域における農林水産業に関する技術の向上に向けた研究を実施している研究機関でございまして、国際的にも広く認知をされているところでございます。

 先生御発言のとおり、開発途上地域においては、依然として栄養不足あるいは飢餓が重要な問題でございまして、これらを解決し、栄養不足人口や飢餓人口の削減に貢献するため、稲作などの我が国が比較優位を持つ研究分野を中心に、現地の研究機関、国際研究機関と共同で研究を行うことによりまして、開発途上地域の食料生産の安定などを図るための技術開発を行っているところでございます。

 このように、世界的な食料問題の解決に取り組むことを通じまして、我が国の食料の安定供給に寄与してまいりたいと考えているところでございます。

岩永委員 そういった価値観に基づいていろいろな活動をしていただいているということは非常に大切なことでもありますが、やはり日本が危機的な状況に陥ったときに、そういった技術支援をした国々がいかにこの日本を次は助けてくれるのかということも見据えた中での技術支援というものを私はしていかなければならないなというふうに考えているところでございます。

 技術を支援する、そして喜んでいただける、そして世界の貧困が徐々にではありますけれども改善をしていくという中で、日本の国民の安心、安全というものをかち取るための交渉というものも、これは恐らく農林水産省さんだけではなく外務省も絡んでくることだとは思うんですけれども、ぜひもう一歩踏み込んだ関係性をつくっていただきたいなということを改めてお願いさせていただきます。

 続いて、こちらは、農林水産省が不測時の食料安全保障マニュアルというものを以前に作成しておられる中で、一点質問をさせていただきたいんです。

 その中で、供給の確保対策ということで、緊急増産という項目がございます。緊急増産を内容とする緊急食料確保計画というものがありまして、簡単に申し上げれば、何かあったときには表裏含めて増産に取り組むんだというような内容がここには書いてあるんですけれども、この内容を果たして現地の農業従事者の皆様方がどれだけ把握していらっしゃるかということについてお伺いをしたいと思うんです。日ごろ、ここの項目について、どういうふうな対応をしていらっしゃるんでしょうか。

小里大臣政務官 お尋ねの事項につきましては、平成二十四年九月に策定をしました緊急事態食料安全保障指針におきまして定めたものであります。

 輸入の減少とか異常気象等によりまして、米を初め特定の品目の供給が二割以上落ち込むといったような事態を想定しております。そのような場合には、政府対策本部は、当該品目について、緊急食料確保計画を策定して緊急増産を図ることとしておるものであります。

 具体的には、国民生活安定緊急措置法に基づきまして、農林水産大臣が、生産を促進すべき物資を特定します。そして、緊急食料確保計画において提示する都道府県別ガイドラインに基づきまして、生産者が生産計画を作成し、農林水産大臣に届け出をします。そして、必要な場合には、農林水産大臣は生産計画の変更指示を行うこととしております。

 緊急時における対応として、レベルゼロから一、二とあることは御承知おきであると思います。御質問は、そのレベル一についてであろうと思います。ちなみに、レベル二、すなわち、国民一人が生活をするに必要な一日当たりの二千キロカロリー、これが確保されないような事態におきましては、例えば、芋類を中心として、カロリーの高いものに作付転換をするということも想定をしておるものであります。

岩永委員 今、小里政務官がおっしゃっていただいたような内容であろうかと思うんですけれども、やはり最終的にこの作業を行っていただくのは現場の皆様方でございますし、こういった事態に陥ったときに、自分たちが食の安全保障というのを守るためにどういった動きをとらなければならないのかということも少し頭の片隅に置いておいていただくことも非常に重要なことであろうと思いますけれども、いろいろな方にこれもお伺いすると、ほとんどの方が認識をいただいていないというような現状でもございます。

 緊急時というのは、その名のとおり、緊急に起こるものでございまして、緊急に対応しなければならない状態のことをいうわけなので、そういったことも含めて、現場の皆さん方と足並みをそろえるというか、情報共有をしっかりと今後もしていただくこともまた、国民の安心につながっていく大きな要因かなというふうに考えておりますので、ぜひお取り組みもいただきたいなと思います。

 そして、先ほど政務官からございました自給力ということについて少しお伺いをさせていただきたいんです。

 自給率ではなくて自給力というのは、恐らく、もっと多様な要素があって、それは農地も含めて多角的に考えられて、この国の自給力というものはどういった力があるのかということを考えられるというようなことなんですけれども、この自給力というものについて、今政府がどのように考えておられて、今後どのようなタイミングで国民の皆さん方に認識していただいていこうと考えているのか、少し教えていただきたいと思います。

小里大臣政務官 食料自給力についてのお尋ねでございます。

 本来、私どもは、主には食料自給率に基づいて説明を申し上げてまいりました。ただ、特にカロリーベースの食料自給率だけでいきますと、なかなか説明がつかない部分があります。すなわち、では、野菜とか果樹とか、カロリーの低い生産はどうするんだということになります。畜産も、飼料の二六%しか自給できておりませんから、したがって、畜産で幾ら生産をふやしても、二六%しか食料自給率には換算されないということでございます。

 例えば、バングラデシュ、ここは局所的な食料不安の国であるとされているところでありますが、実は穀物自給率は九七%なんですね。日本のそれは二七%であります。あるいは、ラオスも穀物自給率は一二〇%を超えておると思います。一方で、四〇%が食料不足の状態にあると言われております。

 そういったところが、なかなか食料自給率の概念だけでは説明できないのかなと思うところでございます。

 したがって、野菜であれ、果樹であれ、あるいはたばこであれ、それぞれの地域がふさわしいもの、それぞれの創意工夫、自主性を持ってつくれる作目を作付していくことで、農地が生かされます、そして担い手が育成をされる、そして技術が育まれるわけでありまして、こういって確保されたそのような農地、担い手、技術等が、いざというときの食料生産基盤となって機能するわけであります。

 すなわち、先ほど申し上げたレベル二のような状態になりましても、そうやって確保された農地に例えば芋類を中心とする熱効率の高いものを作付するところで、最小限度必要な一人一日当たりの二千キロカロリーを確保していく、そういうことにつながっていくわけであります。そこに食料の安全保障の中における食料自給力の考え方がございます。

岩永委員 物すごくわかりやすいんです。

 やはりカロリーベースで考えることには限界があるということはもちろん御認識をいただいておるわけですし、今のように、多角的に国の自給力というものを考えていくことを国民の皆さんに正確に発信していかなければならないんだというふうに考えております。

 国民の八割、九割の皆さんが食に対して関心をこれほどまでに持っていただいているということも非常に大切なことではあるんですが、何か緊急時には過度、過敏な行動に結びついてしまうということも本当に大きな危惧として残っておりますので、ぜひその自給力という部分について、これから国民の皆さん方に深く御理解をいただいて、また農林水産省がこれまで取り組んでこられた国外との関係、そして輸出輸入の関係など、本当にバランスのいい食についての知識というものをしっかりと持っていただくように、今後もぜひ努めていただきたいということをお願い申し上げます。

 このテーマについては最後になるんですけれども、大臣の方から、今の自給率と食の安全保障という観点であったり、また先ほど私が申し上げました、新しい外交の形というか日本型の外交の形のようなものも含めて、今後の食の安全保障というものをどのように考えていらっしゃるのかということをお伺いできますでしょうか。

林国務大臣 ランドラッシュの話から、自給率のお話をしていただいておるわけでございます。

 まさに日本の援助の基本的な考え方というのは、魚を上げるのではなくて、魚のとり方を教えてあげる、こういうような基本の考え方がある、こういうふうに言われておりますが、さらに、最近、国際的な会議においては、我々は、責任ある農業投資ということを訴えております。地元で働いていらっしゃる方、それから現地の政府、そして投資をする、この三方が一両損ではなくてみんなが納得できるような形、やはりこれを目指していくべきだろうということを国際的にも主張しているわけでございます。

 そういう意味で、情けは人のためならずといいますが、そういうことをきちっとやっていくことが、まさかのときに、この間、三・一一のときもそうでしたけれども、各国からいろいろな御支援をいただいた、こういうことにつながっていくということをしっかりとやっていく必要があるのではないか、こういうふうに思っております。

 一方、この世論調査についても、かなり高い数字が出ておりまして、要因について、なぜそう思うかというところまで聞いていないものですから、なかなか難しいところはあるかもしれませんけれども、やはり数十年間、それから最近のトレンドで、我々は、農政改革の議論をするときに、耕作放棄地がここまでふえたとか、それから農業従事者の平均年齢が上がっている、こういうことを結構言っておるものですから、そういうところも相まって、将来、大丈夫かなというようなところがあるのかなということも考えられますので、これは農政改革、昨年決めていただきましたものをしっかりとやっていくということ自体によって、なるほど、日本の農業は力強く頑張っているなということを見てもらうということが一つ大事なことではないか、こういうふうに思っております。

 それから、カロリーの自給率ということだけではなくて、生産額の自給率、そして自給力、今御議論いただいたようなものを複合的に、複眼的に出していくということによって、そういう御理解をしっかりと賜るということが大事である、こういう観点で、食料・農業・農村政策審議会において基本計画の見直しを今まさにやっていただいておるところでございます。自給力の取り扱いについても、この基本計画の見直しの議論の中でさまざまな観点から検討してまいって、それをしっかりと国民の皆様に御説明してまいりたい、こういうふうに思っております。

岩永委員 ありがとうございました。

 食の安全保障の問題については、今後もまた議論を深めなければなりませんし、それこそ我々がしっかりとつくり上げていかなければならない分野であろうかと思いますので、また次の機会につなぐということで、質問を終わらせていただきます。

 本日は、ありがとうございました。

坂本委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十八分開議

坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。林宙紀君。

    ―――――――――――――

坂本委員長 この際、お諮りいたします。

 本日、政府参考人として外務省経済局長片上慶一君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 それでは、林君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀でございます。

 本会議の後の、皆さんお疲れのところで恐縮ですが、私は質問をさせていただきたいと思います。

 冒頭、私は花粉症歴が二十七年目に突入しまして、人生の四分の三、花粉症患者であるという状態で、きょうはちょっと鼻声で、お聞き苦しいところが多々あるかと思うんですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。花粉症のことを言っておいて、全く森林のことにはきょうは触れませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、きょう、何名かの質疑者の方が少し触れられておりましたが、日豪EPAのことについてお伺いしたいと思います。

 私も、衆議院議員とならせていただいて一年数カ月、いろいろと農政のことを中心にやらせていただきましたが、特に、TPPのところでも、決議ということで衆参の農林水産委員会では出させていただきました。

 そのときに、いろいろと考えるところがあるんですが、よく大臣や政府の方々は、この決議を踏まえて交渉に当たりますということをおっしゃるんですけれども、この踏まえてというのがどういうことなのかなということを最近とみに考えることがよくございます。

 役所の方に、どういうことなんだろうなということを先日ちょこっとだけお伺いしたところ、決議というのは立法府たる衆参農林水産委員会の意思であるということで、それは翻って言うと、私たちは国民の皆さんを代表してこの場にいるということなので、国民の意思でもあろうかということになるんでしょうなというふうに理解をしております。

 一方で、政府というのは行政府であられるということですので、その立法府の意思を酌んでというか、そこが踏まえてという表現になるんだそうですけれども、判断をしていくんだよということで、では、この決議というのは必ずしも行政府の方々の判断を縛るものではないということですねと言って、いやいや、そういうことではなくてということでしたので、なかなか難しいものなんだなと思っております。ただ、約束をするという類いではないんだなというふうに理解しているんです。

 最近、いろいろなところでお話を聞いていると、私も農林水産の者ですというふうに言うと、これはTPPに関してなんですけれども、決議というものを農林水産委員会ではやったはずだ、しかしながら、政府の方は本当にその内容を守ってくれるのか、もし政府がその決議に反するような内容が一部でも含まれたら、今やっている決議というのは単なるパフォーマンスなんじゃないのかということを言われてしまうぐらいのことがありまして、だからこそお伺いをしておきたいなというふうに思うんです。

 今回は日豪EPAでございます。先日、大臣も会議をなさってきたところでございます。

 まず、日豪EPAは、当然、従前の国会の決議というものを踏まえて交渉されるということだと思いますが、一部で報道されているように、何かしらの分野で、何かしらというのは牛肉というところが報道では出ておりますが、こういうことになってきた場合、決議に反したということになってしまうんじゃないかなと私は思っているわけです。

 通告どおりの質問をすれば、これは決議に反するんじゃないですかというお伺いの仕方になるわけですが、申しわけございません、もし可能であれば、ちょっとそこにプラスをして、その決議と少し違う内容で交渉を妥結しなければいけなかった場合というのは、そういった旨を大臣なり政府の方からしっかりとまず私たちに、この農林水産委員会で決議をしているわけですから、どういう理由でこうなりましたという御説明があるのかどうかというのをあわせてお伺いしたいと思います。お願いします。

林国務大臣 日豪EPA交渉については、TPP交渉でもそうですが、衆参両院の農林水産委員会で御決議いただいておりますので、まさにこの決議を踏まえて交渉に取り組んでおるところであります。

 この決議の意味するところ、今委員は、報道をごらんになって、この決議に反する可能性があるのではないかというような趣旨のことをちょっとおっしゃっておられましたが、あくまで、ここの委員会でも何回も私も申し上げておるように、決議は衆参両委員会の意思表示でございます。したがって、この決議の意味するところがどこまで入るとか、どういう意味だということについては、まさにその決議をされた両委員会、衆参の農林水産委員会で御判断をいただくものだ、こういう整理ではないかというふうに思いますので、こちら側から、これはこういう意味であるとか、解釈を示すことは適切でないというふうに考えております。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 私も、実はこの日豪EPAの決議のときにはこういった場にいたわけではないので、それに関しては、でも、先輩方がそのようにしっかりと意思表示をされたことですので、それを踏まえてちゃんと国会の委員会でいろいろ物事を考えていくというような答え方をさせていただいています。

 いずれにしても、しっかりと、真面目に、前向きに向かっていくに当たって、これは決まっていることではないので、報道では牛肉の関税がどうなるんだというようなお話もあるんですけれども、では、EPAでやるかやらないかというのは別として、単純に客観論として、ちょっとここから質問していきたいと思います。

 今言われているのは、オーストラリア産の牛肉の関税が半分ぐらいに引き下がるのか、それともそこを守っていくのかというお話なんですが、そもそも、このオーストラリア産、豪州産の牛肉というのは、日本でいうとどういった牛肉と競合していくのか。報道では、例えば乳用牛の雄とかそういったところが競合するというような書かれ方をしていますが、政府としてもそのような認識でよろしいのかというところをまずお伺いしたいと思います。お願いします。

佐藤政府参考人 林先生の御質問にお答えします。

 豪州産の牛肉でございますが、これにつきましては、主として、米国産牛肉と非常に強い競合関係にあるといったことが言えるかと思っておりまして、また、国産のホルスタイン種の牛肉とも若干競合するというふうに考えられるところでございます。

 具体的なことを申し上げますと、先ほど申し上げました米国産と豪州産との関係でございますが、平成十三年の我が国のBSEの発生直後、平成十四年でございますが、このときに、豪州産の牛肉の輸入量は二十六万トンであります。それと、米国産の輸入量は二十四万トンということで、米国産と豪州産というのがほぼ同じような輸入量になっておったわけでございます。

 その後、平成十五年にアメリカでBSEが発生しまして、平成十六年にはアメリカ産の牛肉の輸入実績はありませんでした。その間、豪州産の牛肉がシェアを奪いまして、十四年に二十六万トンであったものが平成十六年には四十一万トンということで、アメリカ産のシェアを奪い取りました。

 その後、アメリカ産の牛肉が、輸入の規制緩和の関係がございまして、ふえてまいりました。平成二十四年でまいりますと、豪州産は三十一万トンと相なっておりまして、アメリカ産は、今度は十三万トンということで、シェアをまた回復しておりまして、まずそこに一つの競合関係がございます。

 それと、先ほど申し上げました国産のホルスタイン種との関係でございますが、具体的な金額で申し上げますと、平成二十四年度の牛肉の全国の小売価格について見ますと、豪州産牛肉の価格は百グラム当たり二百三円となっておりますが、国産のホルスタイン種の牛肉の価格については三百十三円ということで、百円程度低いといったような状況に相なっているところでございます。

林(宙)委員 詳細をありがとうございます。

 ちょっと話がそれますけれども、私は地元が仙台なものですから、仙台というと、皆さん、仙台牛というのが大変有名なんですけれども、仙台牛ともう一つ、牛タンというのがあるわけです。仙台といえば牛タンですね。この牛タンも、いろいろな牛からとってくるんですけれども、一般的に広く流通しているものは、オーストラリア産だったりアメリカ産の牛タンだったりするわけです。

 今局長におっしゃっていただいた、例のBSEの問題なんかのときは、アメリカ産が激減して、牛タンというのは、普通、塩で焼いたものを出しているところがほとんどなんですが、みそ漬けというのが出て、要は、牛タンの在庫が少なくなってくるので、できるだけ保存させようということで、みそ漬けみたいなものが出た時期もありました。そこからオーストラリア産というのがふえたわけです。

 まさに、今おっしゃっていただいたのとほぼ同じぐらいのシェアで賄っています。輸入牛タンの大体四〇%ぐらいは今オーストラリア産だと言われていますが、アメリカ産がここに来て若干盛り返してきているようで、そろそろオーストラリア産が三〇%台になるんじゃないかというようなことを言われています。

 何で今牛タンの話をしたかというと、もちろん、日本全国のことを考えれば、やはり肉、畜産の方々をどうやって守っていくかは非常に重要なところなんですが、私は、消費者として、では、牛タンを食べようかなと思ったときに、もしオーストラリア産なりアメリカ産なりの牛タンの価格がちょっと安くなったなというと、これは消費者的には単純にうれしいだろうというようなところになってくるわけです。

 そうすると、これはまた三月二十六日の新聞に書いてあったことなので、報道ですから、どこまでがそうなのかわかりませんが、オーストラリアのFTA委員会のハート会長が、牛肉といっても、日本産とオーストラリア産では競合しないんだ、だから、仮に関税を引き下げるというようなことになっても、それは日本の消費者のためになるんじゃないかというようなことをおっしゃっているわけです。

 値段については、先ほどおっしゃっていただいたとおり、大体百円前後ぐらいの差がついている。そこの記事には、ちょっとおもしろいなと思ったんですが、真実かどうかわかりませんけれども、輸入業者さんの中には、結局、そういった価格差ができていて、ある程度すみ分けができているがゆえに、実際、関税なるものが日本の生産者を守っているのかどうかがよくわからないというようなこともおっしゃっております。

 これは通告をしていないので、もしよろしければなんですけれども、こういう論調もあるというところを政府の方でどのように受けとめられているのかというのをちょっとお伺いしたいなと思ったんですが、もし可能でしたら、御答弁をいただけないかと思います。

佐藤政府参考人 先ほど先生にお答えいたしましたように、我が国の肉用牛の構造でございますが、一番品質のいいものでありますと、これは二十四年度の平均的な価格でございますが、卸値でございますが、キログラム当たり、去勢牛で千七百四十一円という価格になっておりまして、その次に、F1という、ホルスタインと黒毛をかけ合わせました交雑種でございますが、これが千円程度となっております。

 その下に、先ほど申し上げましたホルスタインの雄がございまして、これが六百八十五円といったことに相なっていまして、それとオーストラリア産というものが大体競合しておりますものですから、この乳雄との競合といったことについて、今後非常に注意深く見ていく必要があるというふうに今考えているところでございます。

林(宙)委員 もちろん、日本全体のことを考えれば、消費者のことも大事ですし、生産者のことも大事ですし、そのバランスで政治というのは進んでいくんでしょうというふうに思います。

 そうすると、ちょっとかわりますが、今、いわゆるホルスタインという肉、雄になりますが、肉牛というのは切り分けることはなかなか難しいかもしれませんが、その種類の肉牛に関しての生産額というのは実際にどのぐらいあると見積もられているんでしょう。

佐藤政府参考人 肉用牛につきまして、和牛、乳用種等の品種ごとに区分した生産額の統計データはございませんが、品種別の牛肉生産量、枝肉重量でございますが、この統計がございます。これに食肉中央卸売市場の枝肉価格の年度平均を乗じることによりまして生産額を算出いたしますと、乳用種の牛肉につきましては、七百二十四億円といったような生産額に相なるところでございます。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 一方で、肉用牛を扱っている畜産家は二千三百戸ぐらいあるんだというふうに事前にお伺いしました。今七百二十四億円ほどの生産額であるということです。

 何が言いたいかというと、今後、国際競争にある程度さらされていく、今回の日豪EPAの結果いかんではなくて、今後もこういったプレッシャーがかかってくるような場面というのは訪れるのかもしれないなというふうに考えていきますと、いずれにしても、コスト削減というか、競争力をつけていくという努力は当然考えていかなければいけないということだと思うんです。

 ということで、農業は、大規模化をしていくとか農地集約をしていくとか、いろいろなことで今進められつつありますが、肉用牛に関してはどういったコスト削減の努力を行っているのかというのを改めてお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 ホルスタインも含めまして、肉用牛全体でございますが、まずは規模拡大といったようなことかと思いますが、一番の問題となりますのは、やはり経営費に占める割合が相当量を占めます餌代でございまして、これにつきましては、未利用資源の飼料を使っていくといったようなことを今各農家で努力しているところでございます。それとあわせまして、ホルスタイン等につきましては、早期出荷によりまして肥育期間を短縮するといったような努力、あるいはブランド化等による牛肉の有利販売の推進といったようなことを現在推進しているところでございます。

林(宙)委員 いずれにしても、コスト削減がしっかりと達成されますと、競争力をつけつつ、かつ消費者にとってもいいというようなことが実現されていくわけですので、もちろん、引き続きお願いをしたいなというふうに思っております。

 ちょっと話はかわりますが、これは先ほど岩永委員からもありました、最近、御答弁とかいろいろなところで食料自給力というものを耳にすることが多くなったなというふうにあるんですね。

 先ほど岩永委員は、食料自給率というところのお話と、それから自給力ということでお話しされていたんですけれども、この食料自給力というのが、恐らく、私がいろいろと報道等々を拝見している中で理解をするのは、実際に日本がどういった作物をどのぐらいつくる力があるのかというようなことなんだろうなというふうには思っております。

 しかしながら、やはりまだまだ漠然としていて、一体これで何を目指したいのかというのもまだまだ把握できかねるところがありますので、ちょっとそのあたり、定義というのが決まっているのかとか、今どういった要素が考えられるのかとか、そういったところをお伺いしたいなと思います。

小里大臣政務官 食料自給力とは、例えば、農地、農業用水といった農業資源、そして担い手、あるいは農業技術といったものによって構成をされます。すなわち、食料の潜在的な供給能力ということが言えようと思います。

 ちなみに、食料供給力といえば、この食料自給力に、備蓄、そしてまた輸入力を加えたものであります。

 特に、紛争とか異常気象等によりまして輸入が途絶えたような場合においては、この食料自給力が物を言っていくわけであります。そのために、こういった農業資源、担い手、あるいはまた農業技術、これを確保するという政策目的を持って各種施策を展開しているということであります。

林(宙)委員 丁寧に御説明いただきました。ありがとうございます。

 もう一つ、それに関してちょっと追加で聞かせていただきたいなということで、お伺いしたいんです。

 今の御説明はそのとおりで、私はいいことなんだと思います。

 これも報道ベースのお話で、例えば、自給力の議論の中で、食料・農業・農村政策審議会というところで議論されている中で、JA全中の会長さんが、この自給力というのをこれから具体化していくに向けては、政務官おっしゃるとおりで、どれだけの農地が必要で、担い手もどう確保すべきか、そういう視点で今後の目標を打ち出していきましょうというようなことを御指摘されているわけです。

 そこから考えると、私は、たしか去年の臨時国会のときだったと思うんですが、将来にわたって、それが十年後でも二十年後でもいいんですが、農地がこの日本という国にどのぐらいあるべきなんだというビジョンはありますかといった趣旨の質問をさせていただいたことがあると思います。

 そのときは、たしか、明確にはこうだということは答えられないけれどもというような感じのお話だったものですから、なかなか難しいことだと思います。

 ただ一方で、あのとき私が質問した趣旨は、これから大規模化というのを進めていく、当然、大規模化には平たんな土地が大変有利である、一方で、私が見てきた広い水田の平たんな地というのはどんどん宅地化されていくというところが多いですよ、それはやはり将来的なビジョンを持っていないと、何か気がついたら、思っていた以上に宅地化が進んじゃって後戻りできなくなったとか、そんなことになったらどうするんでしょうかというような趣旨でお話を聞いたんです。

 ちょっと話は長くなりましたが、要は、私がそのとき、ビジョンを教えてくださいと言った。そのとき、ちょっと難しいけれどもと言いつつも、こういった形で、食料自給力というのは、もしかして、将来、やはりこのぐらい農地が必要で、担い手はこのぐらい必要でというようなことを具体的に想定していく作業だ、そういう一部だと思ってもよろしいのかなというふうに思っているんですが、政務官、これはどうでしょうか。

小里大臣政務官 食料自給力というものはいざというときに備えてのものだと申し上げたわけでありますが、仮に、今確保されている農地を前提に考えた場合に、もし何らかの理由で輸入が途絶えた場合に使える農地、これを表作も裏作も全部使って、熱効率のいい芋を主体にして作付をした場合に初めて国民一人一日当たりに必要な二千キロカロリーを何とか賄うことができるかなということでありまして、言いかえれば、これ以上農地はなかなか減らせないね、そういう状況にあることはまず念頭に置いていきたいと思います。

 同時にまた、担い手も同様でありまして、これから担い手も、高齢化とともに相当減っていくと思われますけれども、これに対して、特に新規就農を今の倍のペースで持っていきたいということでありまして、これによって、将来的には基幹的農業従事者を何とか九十万人ぐらいは確保していきたいという試算は存在するところであります。

林(宙)委員 今御答弁の中で、逆に言うと、これ以上は農地を減らせないよねというようなステージなんだという趣旨のお話だったと思うんですが、農地をどういうふうにどのぐらい保全していくべきなのかということは、結構クリティカルというか、本当に重要なことだと思うんです。

 そんな話をしている間に、実は、私の地元で、これがいいとか悪いとかという話じゃないんですよ、今度物すごく大きいショッピングセンターがまたできるということになりました。それはどこに建つかというと、田んぼを潰すんです。水田を潰します。結構な大きさのものができるそうなので、ああ、ここから今度は米がとれなくなるんだなと思うだけで、やはりちょっと悲しいものがありますよね。

 そういうことを考えていると、確かに、そこの農地を売って、売り主はそれで得をするんでしょうし、地域の人たちの暮らしの向上にもなるんでしょうけれども、一方で、農地をショッピングセンターにしても、将来的な食料の生産という意味では影響がないという前提に立ってやっているのかどうか。これは市町村、自治体の考えでやっているんでしょうから、それはもう任せるしかないと思うんですけれども、ただ、国としてなのか自治体としてなのか、そういう農地に関する大きなビジョンというのはやはりどこかで一回しっかりつくっておくべきだと私は思うんですよ。

 結いの党は、かつてと言ったら失礼ですね、前はみんなの党でしたけれども、とかく、どこに行っても、自由主義、ラジカル、こういうことを言われるわけです。そういう側面もあるかもしれません。ただ、合理的に、いや、これはこういう理由で大事なんだよ、だから、ここには例えば支援もしなきゃいけないし、これはこういう理由があるんだよと言えば、これはやはり私たちの思想に全くもって反することではないということで、だからこそ私は、ビジョンというものをまずつくりたいというか、しっかりと見据えたいですねというようなお話をさせていただいているところです。

 今食料自給力についてお話をお伺いしたところで、ちょっと時間もなくなりましたので、最後に一問か二問、聞かせていただきたいと思います。

 今のは自給力の話の中ですね。これが供給力という話になると、今度、輸入がどのぐらいできるのかとか、そういう要素も入ってきますよということでした。まさにその輸入なんです。輸入をするときに、当然、外国産と日本産というのは、全く品質が似ているものもありますし、そうじゃないものもある。そうじゃないものの筆頭は何だといったら、私は米だと思っています。

 きょうお配りした資料が、済みません、最後の五分を切ってからようやく資料を登場させていただくという形になりますが、米ですね。

 きょうは、これがいいとか悪いとか言うつもりはないんです。ただ、データとしてどう見たらいいのかなということなんですけれども、一応、国産の主食米というのは相当品質がいいと思っていますから、これを外国産、よくありますね、例えば、関税を維持すべきだ、いや、もうちょっと下げてもいいんじゃないかとかという話のときに、では、下げたときにどういうものが競合品として入ってくるんですかといったときに、農林水産省の方にお伺いすると、基本的に外国産の米というのは日本の米の四分の一ぐらいの価格で流通していますからみたいにおっしゃることがあるので、それは、このグラフを見ると、多分、一番下の数字群、カリフォルニア州短粒種とか、こういったところのことをおっしゃっているんだと思うんです。

 ただ、一方で、そういった種類の米というのが、いわゆる日本で主食米として食べられる米と同じ品質と扱ってよろしいんでしょうかということに対しての政府の見解をいただきたいというふうに思います。

佐藤政府参考人 今の御質問にお答えします。

 我が国で主食用米に供しておりますお米につきましては、いわゆる短粒種というものでございまして、これにつきまして、品質等からほぼ同等と見込まれるもので、先ほどのお話にございましたカリフォルニア産米の短粒種といったものが国産米と競合しているんじゃないかということで、この価格を用いて比較しているところでございます。

 ちなみに申し上げますと、平成五年の不作のときに、タイ産米を大量に輸入いたしました。そのときに、長粒種といったことを市場に出したわけでございますが、なかなか消化といったものが、国民の口に合わなかったというような実際の体験もございまして、やはり短粒種といったものになるんじゃないかというふうに考えているところでございます。

林(宙)委員 そういう前提でいきますと、これはちょっと最後の質問になるかと思うんですが、六十七円とか六十一円とかという価格群の米の上に、百六十とか百五十五と書いてあるものがあるんです。中国産とか米国産のウルチ精米短粒種というものの価格なんですが、これは何だというと、いわゆるSBSと言われているものです。毎年およそ十万トン輸入しているものですね。

 これは、ウルグアイ・ラウンドのときに輸入を義務づけられたミニマムアクセス米のうちの一部ということになると思うんですが、これが実は用途としてどういうものに使われているかというと、日本国内だと外食産業の主食用米に使われているということなんです。主食用米といっても、どういった使われ方かというのはここでは言いませんが、ただ、外食産業で日本の米と遜色ないような形で使われているという意味では、済みません、通告を一つ飛ばしましたが、識者によっては、そういった価格差を外と中で比較するときは、品質のことを考慮すると、むしろSBSのものの方が的確なんじゃないかと。

 要は、これを輸入する商社なんかも、この品質だったら日本の米と同じように扱ってよいんじゃないか、値段等いろいろ比べなきゃいけないんですけれどもと。そういう意味で輸入しているので、いろいろな輸入に際する輸送コストとかがここの価格には全部入っていますから、日本国内で米がどういうふうに競合するのかという前提に立ったときは、むしろこっちの方の値段を考えた方がいいんじゃないですかというような考え方があります。

 最後になりますが、政府としては、こういう見解がありますよということに関してはどのようにお考えなのかというのをお聞かせいただきたいと思います。

江藤副大臣 お答えをさせていただきます。

 御存じのとおり、七十七万トンのうち十万トン、御指摘をいただいたとおりです。

 十万トンについては主食ですけれども、いわゆる外食で、吉野家さんとかそういうところで使われているわけでありますけれども、現実には、分母と言われる、日本の米の需要は大体約八百万トン、その中で十万トンでありますので、これをやりますと、御存じかもしれませんが、このSBSの部分については、輸入業者と国内実需者がペアで国の入札に参加をして、国と輸入業者、実需者が三者間で特別売買契約を結ぶということになっています。そういうことになると、現実問題何が起こるかというと、輸出側から見ると、日本の米価をにらんで価格が設定されるということになりますので、こういうことになっているわけであります。

 結果として、例えば関税を撤廃した場合の輸入価格としてSBS方式をこれに用いると、十万トンしかないわけですから、これは比較対象としては適切ではないのではないかというのが我々の考え方であります。

林(宙)委員 ありがとうございました。

 そのあたりについても、またちょっと詳細については改めてお伺いをさせていただきたいということにいたしまして、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 まず、日豪EPA交渉についてお伺いしたいと思います。

 日豪EPA交渉、これは最近、新聞にもかなり載っておりまして、今週が山だということもかなり言われているようですが、要は、どういう交渉の方針と状況によってやっているのかということなんです。

 新聞報道を見ると、当然といえば当然なんですが、日本側は一定の、影響の少ないような、恐らく牛肉なんでしょうが、この関税を下げるという方針じゃないかと。報道によると、今三九・八%でしたでしょうか、それを約半分の二〇%という議論もあるという声もありまして、折り合うといえば、この関税の率を下げるということは確かに想定されるわけです。

 そこも含めて、答えられる部分と答えられない部分はあるとは思いますが、定性的でも結構ですが、交渉の方針と交渉の状況について、まずお伺いしたいと思います。

林国務大臣 日豪EPAでございますが、平成十九年に開始して以来、衆参農林水産委員会の国会決議を踏まえまして、双方に利益となる協定を実現すべく、公式会合を含むさまざまなレベル、事務レベルも含めて協議を重ねてきたところであります。

 三月二十六日には、この委員会の御配慮もいただいて、豪州のロブ貿易・投資大臣と会談を行いました。去年の五月にも、実は当時のエマーソン大臣ともパリで、あれはOECDの閣僚理事会だったと思いますが、その参加の機会を捉えて協議を行ったわけでございます。

 先週の三月二十六日には、今のロブ大臣とも会談を行って、日豪EPA交渉における農産品市場アクセスについても意見交換を行いましたが、引き続き、協議を継続するということになりました。

 具体的な協議内容は、交渉が継続中でございますので、なかなか申し上げることはできないわけですが、引き続き、この決議を踏まえて、真剣に交渉に取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

畑委員 決議を踏まえて、引き続きということでありました。

 この日豪EPAの交渉に関する決議、確かにこれはTPPと似たようなことを書いて、表現が微妙に違うんですが、「米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農林水産物の重要品目が、除外又は再協議の対象となるよう、」と書いてあります。

 仮に幾分でも関税が引き下げられた場合には、ここの「除外又は再協議の対象となるよう、」という部分との文言で、やはり同様に疑義が生じるような気もするんですが、ここの国会決議との関係というのはどうなるんでしょうか。仮に関税が下げられた場合ということであります。

林国務大臣 これは何度かTPPの方でもお話をしているわけで、決議とも関係しているわけでございますが、基本的に、決議というのは、この農林水産委員会で御決議をいただいておりますので、この決議の中身、文章の意味するところ等々について、我々が解釈を申し上げるのは適当ではない、こういうふうに考えております。

畑委員 そこは、実は内閣官房の資料にも、以前どこかの委員会で、予算委員会ですか、議論したことがあるんですが、内閣官房の資料だと、除外または再協議というのは手を触れないというような趣旨のことが書いてありまして、であれば、そこはかなり国会決議も厳しい書き方をしたなと今になって思うんですが、関税引き下げでここに抵触しないかどうかというのは、非常に微妙な問題というか、解釈をはらむのだと私は思います。

 ちなみに、日豪EPAで、まさに痛みのない程度というか、差し支えのない程度で関税を下げるという交渉を仮にしたとすれば、それはアメリカとのTPPの交渉に対するいろいろな作戦の一環もあるんだろうと確かに思います。

 米国は、御存じのとおり、まさに関税の撤廃を求めている、すさまじいタフネゴシエーターの態度で交渉に臨んでいますので、他の国を味方につけるという意味では、日豪EPAでそういうふうな方針でやるということは、これは決議との関係は別とすれば、それはそれであるのかもしれません。

 これで、日豪EPA交渉でどういう内容になるかというのは予断を許さなくて、関税引き下げで決着するかどうかというのは、そこを前提にするわけにはいきませんが、いずれにしても、農産物の向こうの要求も踏まえて、クリアした形で、仮に、決着するとすればするわけです。

 その場合、日豪EPAの交渉で決着したとすれば、関税撤廃をぎりぎり求めている米国とのTPPの協議にどのような影響があるのか、お伺いします。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、日豪EPA交渉は二〇〇七年から交渉が開始されております。一方、TPP交渉は二〇一〇年から交渉が開始されて、二〇一三年から我が国が参加をしたということでございまして、基本的に別の交渉である、こういうことでございます。

 仮にということでございましたので、仮に日豪EPA交渉でどのような合意がなされようとも、TPP交渉においては、交渉参加国である日本以外の十一カ国、豪州も含めて十一カ国でございますが、それぞれ合意に至る必要がある、こういうことでございますので、日豪EPAで何らかの合意がなされた場合に、それがTPP交渉にどういう影響を及ぼすかということは、あらかじめ申し上げることはなかなか難しいのではないか、こういうふうに思っております。

畑委員 大臣、先週の記者会見だと思いますが、EPA交渉の妥結がTPPにも何かいい影響があるとおっしゃったような、ちょっとそういう記憶がありまして、そこは一概には言えないということですが、いい影響なのか悪い影響なのか、率直にどうお考えになっているか、ちょっと感触をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 会見のときには、質問が、安倍政権全体の通商戦略の中でこの日豪EPAというのはどういうふうに位置づけられるとお感じになっているでしょうか、こういうことでございました。

 したがって、私がそういう趣旨のことを申し上げた意味は、いろいろなFTA交渉を同時並行的に今やっております、日本とEU、それからRCEP、TPP、日豪と。

 したがって、先に一つが進むということは、全体が、ある意味では、そういう交渉に弾みがつくというような意味でいい影響が出るのではないか、こういうふうに申し上げたわけで、全体の勢いみたいなものについてちょっと私の感触を申し上げたわけですが、具体的にどういう影響が出るかという御質問でございましたので、先ほど申し上げたように、どういう影響が出るかというのはなかなか一概に申し上げるのは困難であろう、こういうふうに申し上げたわけでございます。

畑委員 なかなかはっきりお答えいただけないと、なかなか残念でありますが。

 以前、TPP交渉で、私は、組める国、仲間になる国があるのか、仲間を見つけないと、アメリカとバイでやっていって、なかなか厳しいのではないかということを申し上げたことがあります。さはさりながら、関税を引き下げることがいいとは私も言えないんですが、交渉の中で、そこは折り合える中でやって、アメリカに対して対抗できるような仕組みができればそれはそれでいいと思いますが、そこの交渉というのをどのようにしっかりやっていただくかということだと思います。

 ちなみに、今議論をしていて、交渉方針があるのでなかなかこれは言えないというのは恐らく日本の論理だと思いますが、いつもこういう国際交渉の議論をしていて隔靴掻痒だと思うのは、なかなか交渉の方針は明かせません、あるいは状況を話せませんということなわけであります。これは、TPPなら守秘義務があるということで、国際的な関係だなということはわかります。EPA、FTAは、恐らく守秘義務や秘密保持条項はかかっていないと思うので、まさに我が国のデリケートな交渉方針だから言えないということだと思うんですが、守秘義務がかかっていようがかかっていまいが、要は言えないということで、結局、TPPでもFTAでもEPAでも話さないというのは、ちょっと私もいかがかなと思っています。

 そういう観点から、これは本筋じゃないんですが、事務方に来ていただいていますのでお伺いしたいんですが、EPA、FTAについては秘密保持条項や秘密保持契約というのはTPPのようにあるのかどうか、そこを確認させていただきたいと思います。

片上政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一般論でございますが、経済連携交渉を含め、いわゆる外交交渉においては、交渉過程あるいは内容、こういったものについては、相手国との信頼関係、あるいは交渉上不利になる場合があり得るということで、当然に公開するとの前提になっているわけではございません。

 その上で、我が国がこれまでに結んだ、あるいは交渉中の経済連携協定交渉において、確かに、交渉中にやりとりされる文書等を対外的に公表しないことについて、双方で一致している例があることも事実でございます。

 ただ、いずれにしましても、この場合におきましても、その内容とか、あるいはどこと結んでどこと結んでいないのかとかいう点については、先ほどの信頼関係という観点から、なかなか明言することが難しいというのが現状でございます。

 その上で、もとより、こういった制約のある中ではありますけれども、政府としても、公開できること、あるいはきちっと説明できることはしっかりと情報提供していかなければならないという基本的な姿勢でございます。

畑委員 この議論はちょっと切りがないのでやめますが、ただ、結局は秘密保持協定、そういう契約がなくても、外交交渉だからということなわけですね。経済的な連携協定というのは、国家の安全保障の条約と違って、おのずからそこの出し方というのは違うのだろうと思います。

 一生懸命情報公開をしていると言いますが、私に言わせれば、していないと思います。

 そういうことで、今までいろいろな不満もあるし、きょうの午前中、村上議員の話にもありましたが、むしろ、公開した上で、それをバックに交渉するというのはありだし、アメリカなんというのは割と公開していますね。

 私も以前、前職のときに、WTOでちょっとやったことがありますが、そこはもうちょっと公開したし、公開したがゆえに、これは批判ですが、直前ぎりぎりでだめになったという批判もあって、だから今TPPのようなことになっているという反論もあるんです。

 そこは、TPPみたいなマルチとEPAの場合もまた違いますし、一律で秘密にするということはいかがかと私は思っていますので、そこの交渉のあり方は引き続き議論したいと思います。

 また、玉木委員も言っていましたが、公開のための議員立法ということも議論がありましたが、国会としても、そこはしっかりとアクションして考えていかなきゃいけない部分だと思います。そういうことを申し上げて、この議論は終わらせていただきます。

 次に、水産資源のあり方検討会についてお伺いしたいと思います。

 きょう、水産庁長官も含めて来ていただいておりますが、厳密にはきょうの質問の通告はしていないんですが、ちょっとトレンドな話題であります。朝、大臣も多分取材を受けられたと思いますが、調査捕鯨です。

 きのう国際司法裁判所で、南極海での調査捕鯨が国際法に反するとして、オーストラリアから中止を求めて起こされた訴訟の判決が出されて、中止命令の判決が出たということになります。これは、調査捕鯨が範囲を超えてとかいろいろな理屈づけもあるんだろうと思うんですが、この判決の評価と、これを踏まえた今後の対応について、通告していないので恐縮ですが、まず伺いたいと思います。

林国務大臣 きょうは、どなたもこれを聞いていただけないので、少し寂しい思いをしておりましたが、ありがとうございます。

 昨日ですが、ICJ、国際司法裁判所で、日本と豪州の間の南極における捕鯨訴訟、これはニュージーランドが後ほど参加をしておりますが、この判決が言い渡されました。

 ICJが、第二期南極海鯨類捕獲調査は、国際捕鯨取締条約第八条一項の規定の範囲ではおさまらないと判示をしております。このことは大変残念であって、深く失望している、こういうことでございます。

 しかしながら、日本は、国際社会の基礎である国際法秩序及び法の支配を重視する国家として、この判決には従うということでございます。

 今後の具体的な対応については、これは随分大部の判決でございまして、まだ現地に行っているチームが帰っておりませんので、帰ってきて内容を慎重に精査した上で今後の対応を検討していきたい、こういうふうに思っております。

畑委員 ありがとうございました。

 調査捕鯨の範囲におさまるにはどういうことを改善してやれば認められるのかという検討も恐らく必要になると思いますし、あるいは調査捕鯨から仮に撤退するとした場合でも、もちろん、鯨は食べられない、全くとれないことはなくて、調査捕鯨ではなくて、ノルウェーとかあの辺の、沿岸でやっている国もあります。

 それが条約に合っているかどうかは別として、そういうやり方を含めて、日本人が食べる分を沿岸でとれるような枠組みを、調査捕鯨ということではなく、やっていくのか、いろいろ考え方があるのだろうと思うので、引き続き、十分な検討をよろしくお願いしたいと思います。

 それで、本論の水産資源のあり方検討会についてお伺いします。

 水産庁で水産資源のあり方検討会が始まったということを報道で読みました。これについて、今このような検討会をなぜ開催することになったのか、これはどういうふうな検討の取りまとめの方向性を考えておられるのか、お伺いします。

林国務大臣 水産日本の復活を果たすために、世界三大漁場の一つと言われる我が国の周辺水域の恵まれた漁場環境を生かしながら、水産資源の適切な管理を通じて、資源の回復、よってもって生産量の維持増大を実現することが緊要な課題だと思っております。

 我が国の周辺水域においては、四割の水産資源が低位水準ということになっておりまして、中でも、最近話題になっておりますが、クロマグロ、スケトウダラ、それからトラフグも著しく悪化している資源ということになっております。

 このために、水産庁内に有識者から成る資源管理のあり方検討会を設置しまして、現行の資源管理施策の現状と課題についてまずレビューを行って、クロマグロなど資源が悪化している魚種については、具体的に魚種ごとに取り上げまして議論を進めたい、こういうふうに思っております。

 今後、精力的に検討を行っていただいて、六月をめどに取りまとめを行いたい、こういうふうに考えておりまして、この取りまとめを踏まえて、将来に向けた水産資源の持続的な利用の実現に向けて努力をしたい、こういうふうに思っております。

畑委員 まさに漁業も、目先の漁獲高の推移に一喜一憂するのではなくて、中長期の観点が必要だと私も思っておりました。

 農業とか林業というのは、割とそういう視点、特に林業は長期のものですから、そういうことになっておるんですが、漁業というのは、その日暮らしで、切った張ったでとっていく、そういう形になり過ぎているなと思いました。

 そういうことで、水産資源の持続性に関する長期的なビジョンが必要だろうと思います。そういうことの検討がそういうところにも反映されることをぜひとも期待したいと思います。

 その際に思いますのは、漁業の資源管理の方法です。よく言われるのは、日本は個別TACをとっていないということでありまして、海外の科学的な漁業管理とは違うということが言われております。

 漁業の資源の持続的維持の観点からは、日本の制度は制度でいろいろやっているのは知っておりますが、これはこれで、きちっとやるのはかなり合理的だなと私は思っております。なぜ個別TAC制をとられてこなかったのか、その点を伺いたいと思います。

本川政府参考人 TACという、魚をとる量を割り振るというようなことで設定をして取り組んでおります。漁業許可制度に加えて、七魚種についてはTACを設定して取り組んでおるところでございます。

 ただ、いかんせん、我が国の場合、漁業者の数も船も非常に多い、それから、温帯地域でございますので、魚の種類も非常に多いということで、個別の漁業者ごとに、あるいは船ごとにTACを割り当てるということがなかなか一般的には行いにくい環境にございます。それから、水揚げをする港も非常に数が多いということで、水揚げの量を個人別に割り振ったものをどのように管理するか、このような課題もあるところでございます。

 一部には、TACを個別に割り当てている事例もございます。

 我が国で、どのような形でIQ、いわゆる個別の割り当てを実施するか、こういうことも含めて資源管理の検討会で議論をしてまいりたいと考えているところでございます。

畑委員 いろいろ実務的に難しいことがある、そういうお話だろうと思うんです。

 日本の今の漁業管理の方法というのは、海区調整をして、海区を決めて、そこですみ分けるとか、あるいは船のトン数制限で漁獲量を決めるとか、あと、漁業団体の自主規制ですか、そういうのを組み合わせながらやっていくということだと思いますが、そこで合理的かどうかというのはかなり問題も出ているんだろうと思います。

 例えば、海区違反の操業というのはよく聞くところなんですね。岩手は、真面目な南部人、岩手人だと言われますが、真面目に守っているけれども、周辺の海から来て根こそぎとられてしまう、まあ違反ですけれども。そういうこともあって、不満の声を聞いたり、あるいは我々が稚魚を放流して、十分大きくなる前にとられるとか、これも別に、とり方の規制もちょっと不十分な部分もあるんですが、そういうことも言われます。あるいは、漁業団体による、漁協なんかの自主規制についても、漁協の有力者のとっている漁法に配慮して偏ったことになってしまうというか、違う立場の人からはそういう不満があるわけです。

 結局、何となく透明ではないし、見直しも適切に行われないし、大きいところにはいいけれども、沿岸漁業者には冷たいという不満も聞かれる、そこをできるだけ透明化していくということが必要な中で、私は、個別TACというのは必要だと思うんです。

 ちなみに、従来の規制方法の限界が私はあると思うんですが、現行のやり方に対する評価と、現行のやり方で十分と思っているのか、そこをお伺いしたいと思います。

本川政府参考人 先ほども申し上げましたが、我が国の漁業管理につきましては、基本的に、まずは漁業許可制度というのを設けております。その上で、漁業許可制度に基づいて船の数であるとかトン数、基本的な規制を設けた上で、漁獲可能量、TAC、こういうものを魚種によっては割り振るような形で公的管理を行っております。

 それに加えまして、資源管理・収入安定対策という経営の下支え対策を裏打ちといたしまして、幅広い漁業者の参画を得て、計画的な資源管理を実施しているということでございます。

 この計画的な資源管理につきましては、それを守っていただいた方には一定の収入安定対策の適用を差し上げるといったようなことで一定の効果が上がっていると思っておりまして、例えば太平洋のマサバ資源でございますと、二〇〇三年にこういう自主的な管理計画を定めて資源回復に取り組んだところ、最近は劇的に改善をしてきている、このような例も見られるようになってきているところでございます。

畑委員 そこが日本はうまくいっているというのは、いろいろデータで見ると、私は必ずしもそうじゃないんじゃないかというふうに見ておりますが、ちなみに、ここは事実をお答えいただきたいんですが、日本の漁獲高、これは養殖と天然物がありますが、そこの推移と、似たような状況にある諸外国の推移はどうなっているか、お伺いしたいと思います。

本川政府参考人 どの国を比べるかということがございますが、日本と米国とノルウェー、アイスランド、カナダ、こういったところの漁獲量について、ここ最近五年ぐらい、二〇〇八年から二〇一二年で比べてみますと、日本、ノルウェー、カナダでは減少傾向にございます。逆に、米国、アイスランドでは増加をしている、そのような傾向でございます。

畑委員 この四、五年は別として、さらに前から、一九八〇年代半ばからとると、実はデータ的には、日本だけひとり負けなんですね。養殖は日本もほぼ横ばいでありますが、天然が激減していて、諸外国はトータルすると、今減少している米国等も含めて、実はトータルではそんなに減っていないというか、まあ日本だけが事実としては、データ的には減っているような形です。

 私は、これを見ると、日本の漁業の政策が必ずしもよくなかったというか失敗だった部分もあると思います。日本は、海で囲まれている海洋資源の国だと言われながら、なぜ魚を食べなくなったのか、そもそも魚がとれなくなったのか、ここに問題意識を大きく持っているところであります。

 天然物を、要は持続的な形で育てながらとるということは必要なんですが、そうは言っても、結局個別の管理をしていないと、種苗を放流しても小さいところでとられてしまったりして育たない。大きくしてからとるならば、とり放題というか、先取りのメリットを防がなきゃいかぬ。そこで、個別の割り当てというのが必要で、つくり育てる漁業というところと結びつけていかなきゃいけないのだろうと思っております。

 そういう意味で、今のそのやり方がいいのかどうかということは問題だと思っていますし、また、結局、種苗放流で対応しているといっても、その種苗放流が成功しているとは言いがたいのではないか。サケの回帰率もそうですけれども、放流しても回帰率が低くなっているとか、どこかでとられているのかわかりませんが、そういうこともある。その原因は、以前委員会で質疑しましたが、研究所で研究中でなかなかわからないということでありました。そういうことをいうと、水産資源の持続性に対してより慎重な姿勢が求められると思うわけであります。そういうところも含めて、中長期のビジョンはしっかりとつくっていただきたいと思います。

 改めてお伺いしますが、内容について予断を持ってはいけないと思うんですが、漁業管理、TACとは言いませんが、今より厳格な方向での漁業資源管理の方法というのは議論される俎上に上がっているのかどうか、お伺いします。

    〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕

本川政府参考人 先ほども申し上げましたが、大臣からもおっしゃっていただきました、例えばスケトウダラの資源でありますとかトラフグの資源あるいはクロマグロの資源、こういうものについて、どのような形をとればこれを回復傾向に持っていけるか、それをさらにふやしていけるかといったような議論を基本的にはしてまいりたいと思っております。

 その中で、例えば、管理方法としてどのような形が適切なのか。それは、議員御指摘のIQ制度を個別にそういう魚種ごとに試験的に導入することも含めて、私どもとしては、検討対象に加えて、議論していきたいと考えておるところでございます。

畑委員 よろしく御検討をお願いいたします。

 それでは、残った時間で、あしたから法案審議が始まりますが、ちょっとその関係のものを、法案そのものじゃないですが、一問お伺いしておきたいと思います。

 日本型直接払いなんですが、私は、直接支払いという用語の政府の使い方は違和感を持っておりまして、なぜならば、直接支払いというのは、いわゆるEU型も含めて、農産物の価格支持政策はやめなくて、ある程度あってもいいんですが、競争させていくと、要は価格下落が起こるわけです。その価格下落の部分の所得減少分の一定部分を補填するというものだなと理解しておりました。ただ一方、日本型直接支払いというのは、農地を農地として維持するということで、原則、集落に対して支払うという仕組みになっております。集落からは、もちろん手間賃で行くことはあるんですが、受け手は集落である。全くその性質が、従来の欧米も含めて、想定されているものとは違う。直接払いというのは、まさに個々の経営者なり農家に行くものだろうと思います。

 なぜ、ここで直接支払いという用語を用いたのか。減反の廃止も、ちょっと不正確な表現で、いろいろ、両方の立場の人から議論と批判はあったところですが、これも不正確な表現で、国民をミスリードさせるものではないかと私は問題意識を持っているんですが、そこのところをいかがお考えでしょうか。

江藤副大臣 畑先生の御意見は、私個人としても一部受けとめる部分はあります。地元に帰れば、質問を受けないことはありません。

 概論的なことを申し上げて申しわけないんですけれども、もう先生よく御存じのことですから、農業者に対する支援策として、関税の設定などで農業者を間接的に支援するのが価格支持、これに対しまして、補助金を支払って農業者を直接的に支援するものが直払い、こういうふうに呼んで、もちろん、農水省にいらっしゃいましたからよく御存じのことだと思います。諸外国においても、従来から、価格支持の代替措置としてだけではなくて、農業環境支払い、条件不利地域など、直接支払いの政策的手法として用いられている。

 さらに申し上げれば、我々の時代から、平成の時代から、中山間地直接支払いというものもやってきて、政権交代後もこの中山間地直接支払いというものは集落に支払って、この直払いという言葉は定着しているわけでございますが、今回も確かに、個人に支払われるわけじゃなくて、基本的には集団に支払われるものであります。ある程度の面積要件が整っていれば、集団でなくても支払う場合もありますけれども、基本的には集落に対して支払うんです。

 そして、我々は農家の所得に着目して政策を組んでおりますので、先生もちょっと今触れていただいたように、日当として支払う場合もあるでしょうし、本来であれば農家が自己負担しなければならない部分を、いわゆる支払うことによって農家の手出し分が減るというようなことに着目をして、EU型とは違うんだということを国民の方々にわかっていただくという意味合いも含めまして、日本型直接支払いという用語を、宮腰部会長、その後、私が部会長で、その後、小里部会長で、長い時間をかけて党内で議論をした結果、選挙の公約としても掲げて、このようにしたところでございます。

    〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕

畑委員 今、中山間地払いをとってお話がありまして、中山間地直接払い、二分の一以上でしたか、個人に行くような形に基準がなっている。その議論をすると、恐らく手間賃としてたまたま行くという形じゃなくて、そのほかの環境払いとか水・環境資源ですか、その辺のところも含めて、どういう基準で個人に行くようになっているか。多分そこの詰めの議論が必要で、それが個人に行くような仕組みにしっかり組まれているかどうかということも含めて、直接払いと言えるかどうかということが出てくるんだろうと思います。

 そこがどういう基準でどうなっていくかというのはあした以降の議論になると思うので、また、引き続き議論させていただきたいと思います。

 本日は終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

坂本委員長 次に、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及び大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案

 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国の農業、農村の発展を図っていくためには、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立し、農業を足腰の強い産業としていくための産業政策と、地域の共同活動等を通じて農業の有する多面的機能の維持発揮を促進する地域政策を車の両輪として推進していくことが重要となっております。

 こうした政策の着実な実施に向け、経営所得安定対策を確立するとともに、日本型直接支払制度を法制化する必要があることから、本二法案を提出した次第であります。

 次に、これらの法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 まず、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案についてであります。

 第一に、交付金の対象農業者の要件の変更であります。

 本法は、農業の担い手の経営安定を図ることを目的としており、対象農業者として、認定農業者及び集落営農組織に加え、農業経営基盤強化促進法に規定する認定就農者を追加するとともに、面積規模要件を廃止することとしております。

 第二に、生産条件不利補正交付金の交付基準の変更であります。

 対象農産物の生産拡大を図るため、対象農産物の品質及び生産量に応じて交付することを基本としつつ、収穫前に作付面積に応じて内金を支払うこととしております。

 次に、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案についてであります。

 第一に、基本理念についてであります。

 農村における過疎化、高齢化の進行による集落機能の低下など、我が国の農業、農村の現場を取り巻く状況が厳しさを増している中、国民に多くの恵沢をもたらす重要な機能である農業の多面的機能の適切かつ十分な発揮を将来にわたって確保するため、国及び地方公共団体が相互に連携を図りつつ適切な支援を行う必要があり、その際、良好な地域社会の維持及び形成や、農用地の効率的な利用の促進に資する地域の共同活動を活用していくという本法の基本的な考え方を定めております。

 第二に、農業の有する多面的機能の発揮の促進を図るための具体的な仕組みとして、農業者の組織する団体等による農用地の保全等に必要な施設の機能を保持する取り組み等の内容を、多面的機能発揮促進事業として規定しております。

 第三に、これらの取り組みに係る計画制度の創設であります。

 農林水産大臣による基本指針の策定、都道府県による基本方針の策定、市町村による促進計画の作成及び農業者の組織する団体等に対する多面的機能発揮促進事業の事業計画の認定について規定しております。

 第四に、多面的機能発揮促進事業を推進するための措置についてであります。

 市町村の認定を受けた事業計画の実施に必要な費用について、国、都道府県及び市町村が補助を行うことができることを規定するとともに、地域の実情に即して効果的に事業を推進するための農業振興地域の整備に関する法律等の特例措置を講ずることとしております。

 以上が、これらの法律案の提案の理由及びその主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

坂本委員長 次に、提出者玉木雄一郎君。

    ―――――――――――――

 農業者戸別所得補償法案

 農地・水等共同活動の促進に関する法律案

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案

 環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

玉木議員 農業者戸別所得補償法案及びいわゆるふるさと維持支払い三法案につき、その提案理由及び内容を説明いたします。

 まず、農業者戸別所得補償法案についてであります。

 我が国の農業の現状を憂い、民主党を中心とした政権のもとで導入したのが農業者戸別所得補償制度であります。その結果、農業所得が回復傾向に転じ、農家の皆さんからも高い評価を得てきました。

 自民党に政権交代した後の一年間も含む四年間、何の変更もなく安定的に続けられてきた農政はほかになかったと思います。猫の目農政からの脱却を図り、農家の予測可能性を高めてきた制度を、政権がかわったからという政局的な理由で変更することは、生産現場に混乱を与えるものであります。この戸別所得補償制度を安定的な制度とするため、昨年六月、今般の法案を提出した次第であります。

 この法律の最大の目的は、恒常的にコスト割れしている米、麦などの生産を行う農業者に対し、そのコスト割れ部分を補填することで、価格のいかんにかかわらず、再生産可能な農家所得を直接補償し、農業経営の安定を図り、あわせて多面的機能の維持を図ることであります。いわゆる欧米型のダイレクトペイメント制度を参考にして導入した制度であります。

 ただし、政府・与党案との大きな違いは、私たちは、麦や大豆などだけではなく、米の生産についても恒常的なコスト割れが生じていると認識し、必要な支援策を講じることとしていることであります。米については、国境措置以外の対策は不要だとする政府・与党案とは、根本的な考えが異なります。しかも、その国境措置さえ守られるのかどうか、農家は不安な気持ちで、今、TPP交渉を見守っています。

 もちろん、私たちも、農業の構造改革を否定するものではありません。そもそも、全国一律の交付単価を導入することで、例えば、二ヘクタール以下の農家については、交付金を受けてもなお、生産費と販売価格の差を埋め切れません。そのため、面的集積を通じて生産コストの低減を図るという誘導策が制度の中に組み込まれています。つまり、戸別所得補償制度は、いわば静かな構造改革を促す制度となっております。

 なお、米の固定支払いについては生産調整を前提としておりますが、逆に言えば、交付金を放棄すれば、生産調整にかかわらず、今でも、幾らでも作付できますし、安くつくった米を幾らでも輸出できます。つまり、民主党を中心とした政権で戸別所得補償制度が導入されたことを機に、自民党が進めてきたいわゆるペナルティー型の減反制度については既に廃止をされており、いわば事実上の選択的な減反制度に移行しています。よって、安倍政権で四十年ぶりに減反制度を廃止したとの発言は、全く事実に反します。

 次に、農地・水等共同活動の促進に関する法律案についてであります。

 農村集落における共同活動は、農業生産活動を維持し、あわせて多面的機能を維持する上で不可欠であり、共同で行う水路や農道の保持に必要な費用について支援することとしております。

 ただし、本法案が政府・与党の日本型直接支払いと大きく異なるのは、私たちの案は、あくまで非農家も含めた共同活動を支援対象とし、農村コミュニティーの維持、ふるさとの維持を明確な法目的としていることであります。

 これに対し、政府・与党案は、従来の農地・水の制度の中から、農家のみの団体でも交付を受けられる新たな区分を切り出し、日本型直接支払いを創設したとしておりますが、私たちの案では、個々の農家の活動によって発揮される多面的機能の支援については、あくまで戸別所得補償制度などによって行うものと明確な整理をしております。必ずしも個々の農家への直接支払い、つまりダイレクトペイメントになっていない制度を無理に日本型直接支払いと呼ぶことで、政府・与党案は、生産現場に混乱を与えるとともに、制度や事務を複雑にする可能性が高く、問題があると考えております。

 次に、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案についてであります。

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動は、国土の保全等といった、金銭的には評価しにくい恩恵を国民にもたらしています。しかし、こうした地域での営農継続は他の地域より困難であるため、その生産条件の不利性に着目し、それを補正しようとするのが本法律案の目的であります。

 なお、私たちの案では、政府・与党案とは異なり、支援の要件となる条件不利性について、単に傾斜の度合いだけではなく、分散錯圃の状況など連担化の困難性などにも着目し、平地における条件不利地についても交付可能な仕組みとしております。

 最後に、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案でありますが、これについては、有機農業など自然環境の保全に資する農業を推進するため、その農法の導入に要する費用を補填することとしております。

 以上が、これらの法律案の提案の理由及びその内容であります。

 私たちは、私たちの理念に基づき、また、三年三カ月の与党時代の実績も踏まえ、農家にとって、そして日本の農業にとってベストだと思える案を取りまとめました。農家所得の向上や農村集落の維持の観点からは、政府・与党案よりもすぐれているとの自負があります。

 正々堂々、議論を行ってまいりますので、何とぞ、十分な審議時間を確保していただき、徹底した審議の上、可決していただきますようお願い申し上げ、提案理由の説明といたします。

坂本委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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