衆議院

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第7号 平成26年4月8日(火曜日)

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平成二十六年四月八日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 森山  裕君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      石崎  徹君    今枝宗一郎君

      小里 泰弘君    加藤 寛治君

      川田  隆君    小林 茂樹君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      鈴木 憲和君    武井 俊輔君

      武部  新君    津島  淳君

      中川 郁子君    根本 幸典君

      橋本 英教君    福山  守君

      堀井  学君    牧島かれん君

      簗  和生君    渡辺 孝一君

      後藤  斎君    玉木雄一郎君

      寺島 義幸君    鷲尾英一郎君

      岩永 裕貴君    鈴木 義弘君

      高橋 みほ君    稲津  久君

      樋口 尚也君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   参考人

   (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)     中嶋 康博君

   参考人

   (東京農業大学農学部教授)            谷口 信和君

   参考人

   (有限会社横田農場代表取締役)

   (全国稲作経営者会議青年部会長)         横田 修一君

   参考人

   (日本大学生物資源科学部教授)          下渡 敏治君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  村上 政俊君     高橋 みほ君

同月八日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     小林 茂樹君

  菅家 一郎君     根本 幸典君

  末吉 光徳君     今枝宗一郎君

  武部  新君     牧島かれん君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     末吉 光徳君

  小林 茂樹君     石崎  徹君

  根本 幸典君     菅家 一郎君

  牧島かれん君     武部  新君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     井野 俊郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出第五〇号)

 農業者戸別所得補償法案(大串博志君外六名提出、第百八十三回国会衆法第二六号)

 農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第六号)

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第七号)

 環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第八号)


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及び大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、東京大学大学院農学生命科学研究科教授中嶋康博君、東京農業大学農学部教授谷口信和君、有限会社横田農場代表取締役・全国稲作経営者会議青年部会長横田修一君及び日本大学生物資源科学部教授下渡敏治君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様方に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、どうかよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、中嶋参考人、谷口参考人、横田参考人、下渡参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに、中嶋参考人、お願いいたします。

中嶋参考人 中嶋でございます。

 このような発言の機会をいただきましたことを感謝申し上げます。意見のアウトラインを配付しておりますので、そちらもごらんいただきたいと思います。

 まず、今回の提出された法案は、我が国の農業、農村が、現在直面する課題を解決して、基盤を強化する提案となっていると評価しておりますことを申し述べます。

 今般の農政改革に当たって、踏まえておかなければならないポイントは四つだと考えております。

 第一に、持続的な改革です。

 我が国に起こっている社会の変化は今後も続くという認識を持ち、そのことを前提に、持続して改革を繰り返していかなければならないと思っております。したがって、全ての農業関係者の改善を続ける工夫を引き出す制度設計にしておく必要があります。

 第二に、改革を農業という産業のイノベーションに結びつけなければならないということです。

 そこには新しい科学や技術が必要です。実際にさまざまな研究開発が取り組まれて、多くの可能性が生まれております。しかし、それだけではイノベーションは実現いたしません。これらの科学技術を有効に利用していくため、担う人材の確保、受け皿となる組織、必要な制度改革を組み合わせた総合的な取り組みがあって、初めてイノベーションが起こるのだと指摘したいと思います。

 第三に、中長期的視点に基づいた、先手を打つような取り組みを心がけることです。

 ついに本格的な人口減少社会が到来いたしました。人口減少ということについて、農業、農村は課題先進分野であることはよく知られております。既に待ったなしの地域も多いと思います。まだ問題が顕在化していないところでも、今から備え始めるとして、人口減少が深刻になったときに間に合うかどうかという意識を持つべきだと思っております。

 第四に、合意形成に配慮しながら進めるべきだということであります。

 農村における活動の多くは、いわゆる集合行為の積み重ねから成っています。関係者全員の協力、そして協働がなくして実現しないことだらけであります。

 法案の評価に関して、まず、参考人が農業をどのように理解しているか、考え方を説明したいと思います。それは、農業は維持管理ステージと農業生産ステージの二層構造から構成されるということです。

 農業とは、農業、農村の持つストックを適切に利用し、国民にとって欠かせない食料と環境便益とを生産する産業であると認識しております。

 ここで、農業、農村のストックとは、農地と水を意味します。

 農業の生産行為とは、農地や水などのストックから有用なサービスフローを引き出して、栽培や収穫に利用し、価値の高い農産物を生産していくことと解釈できます。その過程で、社会の期待する多面的機能が生み出されてくることも忘れてはなりません。例えば、農地のサービスフローとは、栽培のための生産環境であり、優良な土壌成分などとなります。また、水のサービスフローとは、良質で適時適量な農業用水ということになります。農業生産者の期待にかなうサービスフローを獲得するには、ストックの維持管理が決定的に重要であります。

 農地も水も、常日ごろからのストックの質の維持向上を心がけなければ、たちどころに悪化してしまい、サービスフローの有効量は減少します。また一方、自然劣化、耐用年数の到来、災害などへの適切な対処も必要で、ストック量の維持管理を心がけなければ、やはりサービスフローは減少してしまいます。ストックからサービスフローを引き出すための作業が重要であり、このことがまさに維持管理という行為なのであります。

 特に、農業用水については、かんがい、つまり給水、さらに排水、余分な水の排除を適時適量に行うことが必須となります。例えば、降雨があるときには、かんがいは無用でありますが、一方で排水へのケアが必要になります。状況に応じた判断が、成果、アウトカムを左右することになります。

 このようなストックの維持管理においては、個人の判断だけではなく、地域共同体の判断が大きく影響いたします。農地は、立地面での相互関連性、いわゆるネットワーク性を持つために、全く個人の判断による好き勝手な利用というのは認められるべきではありません。農業用水はもちろん共有資源であり、集団の意思と行為が決定的に重要です。

 以上で述べたここまでが、農業、農村ストックの維持管理ステージとなっております。

 農業が持続的な産業であり続けるためには、このストック維持管理が永続的かつ効果的に運営されていることが必要です。

 このように、農業、農村ストックから生み出した農地、水のサービスフローに、種苗、労働、機械、農薬、肥料を投入物として適切に利用し、農業生産を実行することとなります。これが農業生産ステージの活動であります。

 以上の議論のフレームワークを踏まえて、我が国農業がどのような困難に直面しているかを整理したいと思っております。

 これまでの話の順番を逆にして、まず、農業生産ステージにおける課題に触れることにします。指摘事項は四つです。

 第一に、担い手の確保問題です。

 要は、投入すべき労働の確保が難しいということです。本格的な人口減少社会が到来し、労働力不足は大きな課題となっています。産業間で担い手確保競争が激しくなるとの予想がある中、農業に関心を持ってもらい、担い手になってもらうインセンティブをどのように与えられるかが重要になってくるのではないでしょうか。また、担い手になった後、質の高い働きをいかに続けてもらうか、そのインセンティブをどのように与えるのかも課題であります。

 第二に、技術革新の実現です。

 そのように担い手の確保のための努力を積み重ねても、これまでのように労働力を集めることは期待できません。そこで、少ない労働投入で最大の産出効果を生み出す、生産活動ステージの技術革新が必須となります。さまざまな技術が生まれつつあります。ただし、それをイノベーションにつなげるには、克服すべき多くの障壁があることを認識しておくべきであります。

 そのうち最も大きな障害は、新しいものに対して人々が本来的に有する後ろ向きの心理だというふうに思っております。それはある種、身を守る本能的な行動であります。リテラシーが低いから新技術を活用できないというのは、本質をついておりません。イノベーションのためには、関係者の心を解きほぐす対応を心がけねばならないと思っております。

 第三に、不断の構造改革の実行です。

 土地利用型農業において経営改革を実現するには、やはり規模の拡大、そして農地の集約が必須です。そこに立ちはだかる構造問題、それは農地と労働との効果的な組み合わせが達成できていないことを意味しますが、それに対して、農地中間管理機構が大きな役割を果たすと期待しております。

 第四に、生産、収穫後の課題解決への取り組みです。

 よいものをつくっても、どのように売るかを考えなければ、収益に結びつきません。つまり、バリューチェーンの構築が決定的に重要となります。そのために、フードチェーンの川下の加工業、流通業、外食産業との連携を模索しなければならないのですが、そこでどのように経営を組み立てるかが課題となります。経営者がそのことに取り組み、時間を確保できるかがポイントなのではないでしょうか。経営者は、先ほど述べた農業、農村ストックの維持管理にかかわる余裕はないのかもしれないという現実を直視すべきです。

 次に、維持管理ステージにおける課題に触れることにします。指摘事項は六つです。

 第一に、構造改革がもたらす維持管理体制への影響です。

 構造改革の結果、土地持ち非農家は確実に増加するでしょう。土地持ち非農家が維持管理活動に参加し続けるかどうかが懸念されております。特に、相続時に土地を貸し付ける事例がふえると思われますが、そのときに不在地主となって、維持管理に関与できないことも予想されています。

 第二に、今後の村の変容の影響です。

 農村共同体の内部構造が変わりつつあり、その結果、関係者の意識が変わる可能性が大いにあります。これまでの慣例で定められていた関係者間の役割分担が当然だとは思われなくなっている事例をいろいろな地域で観察できます。兼業農家の中には、農業への関心が薄れて、その結果、農業、農村ストックの維持管理についても認識が低下してしまうという問題もあります。

 第三に、村の記憶の喪失です。

 農業、農村ストックの維持管理のルールには、長い歴史や経験の積み重ねがあります。水を確保するために、先人の苦労を語り継いできた村が数多くあります。戦後の土地改良事業によって、水問題をようやく解決した地域も多いのですが、その事業を行うために苦労した記憶が高齢世代にあります。それが村の結束力を生んでいました。

 しかし、その高齢者が近いうちに確実に引退します。それとともに、維持管理がいかに重要であるかの意識や、関係者間でいかに丁寧にコミュニケーションをとって合意形成を進めるかの知恵が消滅してしまう危険性があることに注意すべきであります。

 第四に、維持管理作業の効率性を高める取り組みの必要性です。

 戦後、かんがい排水事業が国内に広く展開することによって、維持管理の効率性は飛躍的に向上しました。しかし、事業が一巡して、その後、画期的な技術進歩はなかったのではないかと考えております。

 水利システムの川上部門では、更新事業によって、その後も施設化や自動化は進展しましたが、末端では、村の人々の労働で維持されており、何十年もの間、そのスタイルは基本的に変わっておりません。農業生産ステージの技術進歩と比べると、大いに見劣りするように感じております。このことが農業生産効率を総合的に下げてしまう可能性があります。

 第五に、地域共同活動のてこ入れ、システム再強化の必要性です。

 地域の人々の協力で維持管理のシステムが成り立っています。それを強化しなければなりません。ただ、さらに十年、二十年先になると、現代のシステムにかわる維持管理体制のガバナンスを再構築しなければならないかもしれません。そのような地域も出てくる確率が高いことに留意すべきであります。

 第六に、多面的機能を生み出す積極的な取り組みは社会的ミッションであるとかなり強く意識されるようになってきたことです。

 社会が成熟した結果、農村部はもちろん、都市部の住民も、生活環境の向上に農業、農村が深く影響していることに気づき始めています。農業が生態系サービスや環境便益を積極的に生み出せるはずだという期待を人々が持つようになりました。このような期待に応えてこそ、国民の税金を利用して農業を支援する価値があります。これを、農業環境支払いと解釈したいと思います。そのために、農業界は、農業コンプライアンスといった意識をきちんと持つべきではないでしょうか。

 今般の農政改革において、私は、日本型農業モデルは維持すべきだと考えております。

 日本型モデルとは、過去に高い人口圧力下において歴史的に展開してきたものです。限られた農地を前提に、食料の安定供給を実現するため、水田を中心に、農業、農村ストックの共同の維持管理システムが構築されたのです。農業の前提条件として、生産を持続させるために、決して資源の枯渇を起こさないこと、人口稠密な農村において生産と生活が密接に連関しているため、環境破壊を起こさない生産スタイルを心がけてきたことが特徴であります。これが美しい農村を生み出す社会機構だと認識すべきです。

 我が国農業に求める基本条件、それは、まず持続的であることです。加えて、一億人を超える人口を支えるために、農業は安定的でなければなりません。そして、持続的で安定的であるために、農業は常に進化し続ける、発展的でなければなりません。我が国農業は、持続性、安定性、発展性を持つべきです。

 以上の認識のもと、法案では、我が国農業が直面する課題を解決するため、産業政策、地域政策を適切に割りつけていると考えます。法制度として整備することで、担い手支援と資源、環境保全を安定的に継続して行っていくことを関係者に認識してもらえることが重要であり、それが関係者の将来の希望につながると評価しております。そして、その希望が、生産者を初めとした関係者の継続的な改善の誘因を与えることになります。

 活力創造プランで示された成長産業化を実現するためには、その継続的な改善が必要です。国民に期待される農業が永続的に存在するため、五年後、十年後ではなく、例えば三十年後の社会経済環境も視野に入れた計画が必要となります。

 そのためにも、前提となるのは、食料・農業・農村基本法で定められた政策の枠組みとの整合性を図ることではないでしょうか。すなわち、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興は、どのような政策においても達成しなければなりません。農業を成長産業として発展させるために、多面的機能を損なうことがあってはならないのです。

 これらの目標は常に緊張関係にあるという認識を持ち続けねばならないと考えていることを最後に指摘いたしまして、私の陳述を終えたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 次に、谷口参考人、お願いいたします。

谷口参考人 お配りしましたレジュメに基づいてお話ししたいと思いますが、最初に、私の基本的なスタンスについてちょっとお話ししたいと思います。

 それは、二つの法案体系というふうに書きましたけれども、見るところ、七割ぐらいははっきり言って共通しているというふうに思います。ですから、ここの部分をしっかりと維持しながら、実は、残りの三割の部分でかなり重要な考え方の相違というものがあると思います。ですから、それをどうとるかというのは大変難しいんですけれども、その点について議論を深めることが大事かなというふうに私は考えております。

 まず第一に、総論について述べます。

 内閣提出の法案は、先ほども出ましたけれども、活力創造プランの一部をなす四つの改革ということでありまして、下の方に図がありますけれども、1から4のうち、2と4に関して、今回、法案が提出されているということだろうと思います。

 今度、六名の共同提案の方は、二法案の系列と書いてありますけれども、四つの改革全体にかかわるものになります。したがって、両方の法案が、カバーしているようで、若干ずれていることになります。したがいまして、両者の検討をするためには同じ土俵で論ずる必要があるということになりますので、四つの改革がカバーする領域全体について、二つの法案体系のことの検討をしてみたいと思います。

 その上で、まず第一に、四つの改革、つまり政府提出の方の問題について申し上げますと、今般の施策改革、あるいは四つの改革というふうに称されておりまして、実は政策体系の全体像が一つの単語で呼ばれていないんですね。

 ほかの表現をすれば、政策は四つの住宅の建設素材を示している、部品を示しているわけですけれども、その部品が集まった家がどうできるのかという設計図が示されていない。言葉としてはさまざま出されているんですけれども、図面として出されていないというふうに私は考えております。求められるのは、建築素材ではなくて、住宅そのものではないかというふうに思います。

 下の方の真ん中のところに問い合わせ先と書いた図がありますけれども、農林水産省の四つの改革に関するパンフレットの最終ページのところの一部をとったわけですが、それぞれ、問い合わせ先は各論の政策にかかわる課の名前が書いてあって、全体の政策をどうやってつくっているんですか、どういうふうに考えているんですかということを聞く場所がないんですね。だから、建設資材の会社にそれぞれ行ってくださいということで、建築会社そのものは登場していない、これは非常に寂しいことかなというふうに思います。

 農協グループは、実は、そういう農林水産省が出している方針そのものを受け入れながら全体を地域営農ビジョンに集約して、担い手づくり、産地づくり、地域づくりという形でもって総括しながら運動しております。このことは、四つの政策体系をまとめたものが、農業団体としては地域営農ビジョンという形でもって評価して、今回の政策改革の方向を捉えているということだと思います。

 これに対して、六名共同提案は、農業者戸別所得補償の体系というふうに総括できる非常に単純、言ってみればシンプルなものであります。そして、中心に農業者戸別所得補償法案があって、これに、関連する施策がふるさと維持支払い三法案という形でもってくっついているという形で理解できる。そういう点では非常にわかりやすい、中身が濃いかどうかは別にして、わかりやすいというメリットがあるというふうに私は考えております。

 では、次の政策分野について入っていきます。二ページになります。

 まず、農地中間管理機構をめぐる、農地流動化をめぐる問題であります。

 実は、一番大きい問題は、今回の施策体系の中で、農業構造問題に対する実態認識が、若干、農林水産省がずれたのではないかなというふうに考えております。

 ここで1の2のところを見ていただきたいんですが、農地流動化の行政手法として、従来出されていた農地の出し手と担い手の両方に対して交付金を出して促進していくというやり方、つまり経営転換協力金と規模拡大交付金、これが出し手に対する交付金に一元化されてしまったわけです。特に二番目の、ゴシックで黒く書きましたように、地域集積協力金というのが新設された結果として、耕作者自身に対する、規模拡大に対するインセンティブを与えるようなものは組み込まれていないことになります。受け手に対する支援が廃止されているということは、実は、機構そのもので流動化を強力に進めているんだから、もう要らない、もう十分だという判断が背景にあるというふうに聞いております。

 しかし、現在の農地市場のあり方を見ますと、どうも、この考え方は出し手市場という認識であります。しかし、実態は全く受け手市場に変わっております。農地が幾らでも出てきてしまう。しかし、受け手の方が要るけれども、もうかるかどうかわからないから、それを受けてやるだけの条件が出てきていない。そのために耕作放棄に回ってしまう。つまり、土地は幾らでもある状態なんですね。土地が足りなくて、受け手が困っているという状態ではありません。全国各地、大規模経営者が、何ヘクタールの土地が出てきて困りますという意見を聞くぐらいのことがあります。

 こういう観点からすれば、受け手自体の経営的条件の改善ということと、そして長期的には、政策が安定化して、それが担保される、このことが決定的に重要だというふうに思います。

 それから、分散錯圃の問題が中間管理機構の重要な問題ですけれども、大規模に土地が集まってきますと、おのずと分散錯圃は解消されてしまいます。これは大数の法則ということで、一遍に三十ヘクタール、四十ヘクタールの土地が出てきたら、ばらばらの土地を三十ヘクタール集める方がむしろ難しくなってきます。ですから、そういう意味では、このことは大事な課題ではありますけれども、それが正面の課題という段階は過ぎているのではないかというのが私の認識になります。

 それから、人・農地プランについてでありますけれども、表の下にありますように、中心的経営体への農地流動化ばかりがやや重視された結果として、現場では、あるべき地域農業像がない、あるいは青年就農交付金の獲得のためのプランというふうになっていて、地域の方々が結集してプランをつくるというふうになっていないために、余り進んでいないという実態があるかと思います。

 農林水産省の発表では、やや古いんですが、一月末現在で、市町村数で八八・四%、地域数で六六・四%がプランをつくっているというふうになっていますけれども、実際にプランをつくろうとした一番多かった地域の数をとりますと、最新の数よりずっと多かったです。しかし、断念してしまって、つくろうとしているところだけをとると、六六・四になりますけれども、一旦つくろうとしたというところをとりますと、四五%しかありません。いまだ半分も、まだ地域でプランがつくられていないという現実は、地域のさめた実態が反映されていると見ざるを得ないというふうに思います。

 次に、経営所得安定対策に入りたいと思います。

 経営所得安定対策、三ページのところですけれども、実は戸別所得補償政策が出てきたときの重大な背景は何かというと、個々の価格政策という問題ではなくて、価格が長期的に下げどまらない。一体どこまで行っちゃうんだ、底なし沼じゃないか、どこかに歯どめをかけなきゃいかぬ、これを何とかしてくれという声が非常に強かったことにあると思います。

 そういう意味で、米価の長期的、不断の低下傾向からの脱却ということで、生産性の向上、コストダウンのスピードを超えるような米価低落傾向は歯どめをかけないかぬ。それが岩盤対策という形で表現されたというふうにつかんでおります。その観点からしますと、岩盤の上で適切な生産性に見合ったコストダウンを図っていくという政策体系が一番望ましいというふうに考えております。

 そういう観点からしますと、米の直接支払交付金は限りなく大きな意味を持ったというふうに言えようかと思います。販売農家が全員参加というもとで、水田農業構造改革に対しては、極めて構造改革促進的だったという事実を我々は見なきゃいけないと思います。

 特に、二、三ヘクタールの水稲作付規模のところを再生産の基準に実質的にしましたから、大規模経営ほど有利な実態が生まれております。下の方に表がありますけれども、見てわかりますように、一番右の欄に、大変な金額の補助金が大規模経営には流れました。

 このことは何を意味するかというと、大規模経営においては、場合によっては数人の雇用者を安定的に雇用できる条件がこの補助金体系の中で生まれた、これならばやれるという条件がはっきりと見えてきた、このことの持った意味は極めて大きかったというふうに考えております。これを変えるということは実にもったいないというふうに私は考えております。

 農民作家、山下さんの言葉をかりれば、米をつくって飯が食えない。つまり、経営をやってみたいけれども、やってみて本当にできるような状況をつくれば、おのずと農業は有力な産業になる状況があるんだというふうに私は考えております。

 その上では、担い手の幅としては六名共同提案の方が低いハードルであって、そして結果として規模拡大すればもうかるという状況ですので、幅広く門戸を開き、頑張ってもらうという体系としては望ましいのではないかなというふうに考えました。

 それから三番目の、水田フル活用と米政策の見直しであります。これは飼料用米の問題がありますけれども、余り時間がありませんので、簡単に四ページのところで二点だけ述べます。

 一つは、飼料用米の専用種が本格的に位置づけられていないという重要な問題点です。

 食用米でもよいという形にしてしまっていますから、本来、食用米は、高単収を求めない体系として、うまい米づくりが追求されております。飼料用米は、これと逆に、栄養価が高くて、高単収であって初めて効果を発揮できる。つまり、作物体系としては全く違うものを同じ体系の中で組み合わせようということは、そもそも無理があります。ですから、飼料用米専用種として飼料用米の体系は組まなきゃいけないというふうに思っております。

 それから、これは民主党の方の政策の中でまだ不十分だと思いますが、当面の段階として、一番最初に、面積払いでもって飼料用米の政策がとられたことはよいと思いますけれども、やはりモラルハザードの問題が発生しますから、当然、つくられた量に応じて、つまり数量払いの方向に早く傾斜しなきゃいけないという点で、今回の政策改革の方向で、国の方で変わってきているということは正しいというふうに思っております。

 しかし、実態としては、面積払いから数量払いに向かっていますけれども、どうも、これだけの高単収でもって実際に得られる所得水準が上がるかというと、上がる状態になっていないというのが私の実態認識です。その点では、現実の現場に対するインセンティブとしては弱い面があるのではないかなというふうに思っております。

 そして、長期的には、2の5に書きましたように、長期的な定着、普及対策ということで、品種開発、種子の確保、需要の確保、飼料工場の配置、利用方法の確立といった、非常に広い長期的な視点からの政策が不可欠であって、ころころ変えるようなことは慎んでもらいたいというふうに思っております。

 それから、米政策の見直しということについて言えば、やはり最大の問題は、先ほどの直接支払いに当たる部分がなくなっていく、七千五百円が三十年にはゼロ円になるということでありまして、結局、生産調整の崩壊につながるおそれが極めてあるだろうというふうに思っております。

 小規模経営は、もともと転作作物には関心がありませんので、ひたすら米をつくるという方向に向かうと思います。他方、大規模経営は、現在の体系の中では確かに転作作物で有利性をある程度発揮でき、現実に転作を担っているという実態からすれば、これに傾斜する方向で政策体系が組まれるということは望ましいと言えますし、私も賛成です。

 しかし、この直接支払いの交付金がなくなるということになりますと、やはり安定しているのは米だ、主食用米だということになって、これへの傾斜が進んでしまうのではないか。そうなると、生産調整は全く実効性のないものになってしまうということで、事実上、団体が国にかわって生産調整の主体になるということにならざるを得ないというふうに思っております。

 最後に、日本型直接支払いの創設をめぐっての見方です。これは非常に重要な点で、論点のすれ違いがあります。

 六名の共同提案の方を私なりに整理し、私の考えからすれば、これは、産業政策と地域政策、農業をどうやって発展させるかということと多面的機能はメダルの裏表の関係に立っているというふうにつかんでいるのではないかなと思います。

 これに対して政府の方は、車の両輪論になっていて、産業政策と地域政策は別物であって、これを組み合わせる、こういう考え方だと思います。実はそうではなくて、これは一緒にしなきゃいけない、これが現実の課題だというふうに思っております。

 ただし、以下の三、四点の問題があります。

 一つは、性格の異なる四つの取り組みが無理やり日本型直接支払いにくくられているという問題があるのではないかというふうに思います。

 中山間地域直接支払いは、一部に中山間地域が固有に多面的機能を発揮しているという問題を含んではおりますけれども、やはりしょせんは条件不利地域対策なんですね。この問題を多面的機能という枠の中に押し込めることは、本来的には正しくない。産業政策の観点から見ても正しくない。

 つまり、条件不利地域対策というのは、本来、産業政策の観点なんです。同じ条件をイコールフッティングにして整えるということですから、同じように条件を整えればできるはずじゃないかという形でもって、一つの価格体系でいくような考え方なんですね。それと多面的機能を一緒にするというのはやや無理があるかなというふうに思っております。

 それから、多面的機能支払いでもって構造改革が進展する、後押しできるという説明をしておりますけれども、この点については若干の疑問があると思います。

 私つくる人、担い手、私食べる人、担い手以外という分裂を持ち込んで、地域において構造改革を首尾よく進めることはできないと思います。まして、地域農業のあるべき姿を、あらゆる地域資源を動員しながらつくるということは極めて困難だろうと思います。

 今は人口が減少社会に入っています。とりわけ農村は、農業に就業する人口だけではなく、定住人口そのものが減っております。こういう中では、少しでも多くの人が、農業に就業するとは限らなくても、従事する、ちょっとでも農業にさわるという人をふやしていくこと、このことが求められる時代に入ってきているんだろうというふうに思っております。

 そういう観点からしますと、市民農園の従事者からプロの農業法人経営者まで、多様な人材を確保していくような考え方、これが政策の一番基本に置かれるべきではないかなというふうに思います。

 そして、米直接支払いは廃止したかわりに、農地維持支払いでもって担い手支援を実施するという説明が農林水産省からされております。私も聞いております。

 しかし、これは、実は農業団体がもともと要求していたのは、農地維持支払いを個々の農業者に払ってほしい、所得にさせてほしいという言い方だったと思います。これは、共同活動抜きに、農業経営をすれば、農地を使えば支払われるという意味で、農地支払いの最も基本的な視点だろうというふうに私は考えておりますが、現実には共同活動というところだけに払われる。唯一、賃金を通じて、場合によっては、個別に所得になる可能性があるという程度に抑えられております。

 そういう点で、農地維持支払いならば、共同活動を前提にすることは必要でないというふうにすべきだろうと思います。そうしない限り、畑地において、農地維持支払いという理念を追求することは事実上不可能ということになると思います。畑地で共同活動しているというのは極めてまれな例であって、一般的では余りないというふうに言えるかと思います。

 最後になりますが、重層的な、多面的機能支払いの可能性という観点からしますと、共同活動を要しない農地維持支払い、先ほど言いましたように、農業経営をやっていればそれだけでオーケー、農地を使えばオーケーというものに加えて共同活動。それが今回の政策のように、農業者のみのものを、さらに都市住民も巻き込む。こういうように重層的で付加的な形でもって、積み上げ型の政策体系にした方がわかりやすいんではないかなと思います。

 同時に、共同活動を要しないものが、例えば畑だとか水田であった場合に、その上に環境保全型農業が加わるという形で、このセットだと、なかなか積み上げでやりやすいという体系に移るのではないかなと思います。

 そういう観点からしますと、六名共同提案の方は、幾分、三つの環境にかかわるものは独立した形になっておりまして、積み上げという考え方がとられております。実は、これは前からの民主党の政策の考え方の土台にあったと思いますけれども、積み上げの方が、自分はどこまでできたのかなということが手にとるようにわかるという点では、庶民にはわかりやすい体系なのかなというふうに思います。

 以上、やや政府案に厳しい意見を申しましたけれども、繰り返し申しますけれども、私自身は全中の方で地域営農ビジョン大賞の選考委員長をやっておりまして、国の政策体系をどっと受けとめながら、現場ではどうやってやっていくかということを構築すべきだという提案をしています。

 そういう観点からは、オール・オア・ナッシングではなくて、できるだけ現場で動けるような、ワークするような政策をぜひ実現していただきたいという観点から、きょうは申し述べました。

 ありがとうございました。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 次に、横田参考人、お願いいたします。

横田参考人 おはようございます。御紹介をいただきました、有限会社横田農場代表取締役の横田修一と申します。また、全国稲作経営者会議では青年部会長を務めさせていただいております。

 本日は、このような大変重要な会議にお招きをいただきまして、本当にありがとうございます。私は、生産者として、現場の立場のお話をさせていただければと思います。

 横田農場について御説明させていただきます。

 横田農場は、平成八年に法人化をしました。その前から私の父や母がずっと営農をやってきたわけですが、平成八年に法人化をいたしまして、その当時は、私はまだ大学生だったんですけれども、その当時の作付の規模が大体二十ヘクタール弱、十八ヘクタールほどでございました。お米の単作を、今でもやっておりますけれども、その当時もお米、水稲を単作でやっております。

 平成十年に私が茨城大学の農学部を卒業して横田農場に入社をいたしまして、その当時、父と母と私と三人でやっておりましたけれども、それから、私の地域が担い手が非常に少ない地域で、後継者が少ない地域ということもありまして、農業を高齢化でリタイアされる方がどんどんふえていく中で、そういった方々の農地をお預かりする形でどんどん規模拡大を進めておりまして、ことし、平成二十六年の作付は百十二ヘクタールと、地域の中では比較的大きな規模の生産を行うようになっております。

 ごめんなさい。ちょっと説明が前後いたしますけれども、私は茨城県の龍ケ崎市というところから参りまして、茨城県の中でも県南部、比較的千葉県に近い、東京からでも五十キロぐらいのところにあります。非常に東京にも近いところであります。平場で、お米をつくるには非常に向いているところではあるんですけれども、一方で、東京に近いところもあってか、父の世代、六十代、それから五十代ぐらいの世代でも、農業をやっている人が非常に少なくて、本当に後継者が少ない。私たち三十代ぐらい、四十代の世代で、農業をやっている人も非常に少ないという地域でございます。そういう中で、毎年五ヘクタールから十ヘクタール、多い年には十五ヘクタールぐらいの規模拡大をずっとしてきているというところが横田農場の今の現状でございます。

 経営の中身はといいますと、平成八年当時は父と母、私が入って三人でやっておりましたが、当然、規模の拡大に合わせまして少しずつ社員もふえてまいりまして、今は、役員が私と父の二名、正社員が八名、それからパートが五名ということでやっております。

 お米の生産の方でいいますと、特徴といたしましては、その百十二ヘクタールという面積をこなしていくためにも、規模拡大に対応していくために、七品種のお米をつくり分けて栽培を行っております。有機栽培や特別栽培といった付加価値をつけて販売するような品種から、業務用米であるとか加工用米とか、そういった用途向けの低価格帯の品種、そういったものをつくり分けて作期の分散を図りまして、今は、田植えと稲刈り、それぞれ二カ月ぐらいの期間をかけて、時期をずらしながら作業をやっているというところにあります。

 それから、その二カ月間の作業をしていく田植え、稲刈りがお米の場合には特に基幹作業となりますが、そういった作業については田植え機、コンバインといった機械が使えますが、それぞれ一台の機械を使って百ヘクタールの規模を行う。これは当然、コスト削減というところにもつながります。少ない機械、少ない人数でこなす。ただ、当然、少ない機械でたくさんの面積をこなすことはできませんので、一日当たりは二・五ヘクタールから三ヘクタールぐらいの作業を行うんですが、二カ月の期間をかけることで、百ヘクタールの面積ができる。

 これは、平場で比較的条件がいいということもありますが、それに加えて、規模拡大が、私たちが積極的に規模拡大を進めてきたわけではなくて、先ほども説明しましたように、地域の皆さんが高齢化でやめていかれる中で、そういった田んぼをお預かりして規模拡大をしてきましたので、比較的狭い範囲の中に圃場がおさまっています。大体半径二キロぐらいの範囲の中に圃場がおさまっていますので、移動距離が少なくて済みますので、田植え機にしても、コンバイン、トラクターも、機械が自走して移動できる範囲の中にあるというところも特徴だと思います。

 百ヘクタールの圃場が、全部で三百五十枚ほどになりますけれども、一ヘクタール区画の圃場整備がされた圃場も三十ヘクタールほど、三分の一ほどはございますが、三十アール区画ぐらいの圃場が大体三十ヘクタール、それから十アール区画の、こちらは素掘りの水路のようになっている、まだ条件の、圃場整備の整っていないような圃場も三十ヘクタールほどありますので、必ずしも全て条件のいい圃場がそろっているわけではないんですが、比較的分散が少ないので、少ない機械でも何とか効率よく作業はできているというところが大きいかと思います。

 横田農場の特徴としましては、生産しているお米のほとんどを自分で直売を行っております。インターネット、それから地元のスーパーなどを通じて、一般の消費者の方への販売、それから、レストランとかお弁当用などの外食とか中食とか、そういったところに使っていただいているような業務用への販売もございます。それから、加工用米として、お酒であるとかお煎餅、お餅など、そういった加工品で使っていただくような加工用米といった部分も含めまして、生産しているお米のほとんどを自分で直売するという状況になっております。

 これも、経営を安定させていくという意味で、市場の価格、特に二十四年産から二十五年産米にかけて市場の価格が大きく変動いたしましたが、そういった変動に、我々は、大きい規模の経営になればなるほどその影響を大きく受けますので、自分でしっかりと販路を確保して価格を安定させて、場合によっては、大きな需要先、外食であったり加工業者さんであったり、そういったところと長期の契約を結んで、信頼関係を結んで、安定した価格で販売をしていくということが経営の安定化につながっていくのかなというふうに考えて取り組んでおります。

 それからまた、ちょっと変わったところでは、今六次産業化ということが言われていますが、私のところでも、私の妻が中心になりまして、私のところで生産したお米を米粉にして、米粉を使ったケーキ、シフォンケーキであるとかロールケーキとか焼き菓子類、そういったものを製造して販売を行っております。これも、行く行くは横田農場の経営の柱になっていくような、そういったところを目指していきたいとは思っていますが、まだ売り上げとしては経営全体の中の一割ほどと、それほど大きくありません。

 これも、私たちとしては、新しい経営の柱という位置づけももちろんなんですが、どちらかというと、今説明しましたように、お米のほとんどを自分で直売、特に消費者の方への直売が多いものですから、そういった方々に、私たちのお米のよさであるとか私たちの思いであるとか、そういったものを伝えていくときに、当然、ホームページであるとかお米のパッケージとか説明とか、そういったところでも説明をするんですが、やはり、特に今の若いお母さんたちにとっては、なかなかそういうものを受け取りにくい、難しくなってしまったりするところもあります。

 この米粉スイーツのようなもの、特に若い女性の方なんかは手にとりやすいので、そういったものを入り口にして、また私たちのお米のよさを知っていただいたり、お米のことであるとか、お米がつくられる過程であるとか、そういったところまで関心を持っていただけるような、そんな入り口というかツールの一つとして私たちは活用していきたいと思っております。

 そもそも、私がお米を誰のためにつくっているんだろうというふうに考えたときに、やはり農業そのものがそうだと思うんですが、次の世代にしっかりとつないでいくということが大切なのではないのかな。私が今ここでこうしてお米をつくっているのも、先人たちがずっと築いてきた農地をお預かりする形で、その基盤の上で経営をやらせていただいておりますので、それをしっかりと次の世代につないでいくということこそが大切だろう。

 そのためには、やはり次の世代を担っていく、次の時代を担っていく子供たちにこそ私のお米を食べてもらいたいと思いますし、その子供たちに食べてもらうためには、若いお母さんたちに、お米のことについて関心を寄せてもらったり、そういうことに興味を持ってもらって、横田農場のお米が食べたい、もっと広く言えば、日本のお米が食べたいと思っていただけるような、そういったものにつながっていけばいいなということで、この六次産業の米粉のスイーツの取り組みを行っております。

 また、それに関連もするわけですけれども、横田農場では、もう十年以上になりますけれども、田んぼの学校という取り組みを行っておりまして、子供たちやお母さんたちを集めて、田んぼで田植えの体験や稲刈りの体験などを行っております。

 これも、先ほどお話ししたのと全く同じ意味合いで、田んぼが単にお米がとれる場所ということだけではなくて、日本の文化そのものが農業、稲作から始まっていると考えれば、そういった日本の文化そのものを伝えていくであるとか、そもそも農業の楽しさとかお米の楽しさとか日本の文化とか、そういったものを少しでも伝えられるような、そんなことをできればということで活動を続けております。

 これからの経営の話で言いますと、先ほども申しましたように、毎年十ヘクタール程度の規模拡大が進んでおりまして、では、これからはというと、今後もこの勢いは加速していくだろうというふうに考えております。

 私の地域全体で、大体四百ヘクタールから五百ヘクタールほどの水田がありますが、今の状況からすると、それをいずれは私たちが引き受けていかなければいけないのかなというふうに考えておりますので、そのためには、社員も当然ふえてきて、人材育成というところも非常に大きな課題でありますし、生産の施設であるとかそういった設備をどうしていくか、設備投資の問題も大きくなってきますし、一番は圃場の整備ですね。一ヘクタール区画の圃場整備されたところもありますが、やはりまだまだ区画が小さくて、なかなか作業性が悪いというところもありますので、そういった圃場整備をどう進めていくのか。これから中間管理機構がもしかしたらそういう機能を担っていただけるのかもしれませんが、そういった圃場の整備。

 それから、販売を安定化させて経営を安定化させていくという部分。それから、当然、コストをどうやって下げていくのかというところ。私たちは、もう既にかなりコストを、限界まで下げているようなところもありますけれども、でも、より一層の削減について、どうしていけばよりコストを削減してお米をつくっていけるのか、より品質の高いお米をコストを削減してつくっていけるかというところを考えながら経営を行っております。

 全体といたしましても、私が政策にお願いできることがあるんだとすれば、やはり私たち農業者が、担い手と呼ばれるのもそうだと思いますが、その担い手である農業者がしっかりと自分で自立して経営を行っていけるような、その基盤といいますか、そういうステージといいますか、そういったものをぜひ用意していただきたい。

 そういうステージ、それは、例えば圃場の整備でいえば、圃場整備をして、区画がしっかりとされた圃場があれば、私たちは、自分たちでリスクを負って、自分たちが自立した経営を行うことができるのではないかというふうに思いますので、そういったしっかりとした基盤をつくっていただきたい。

 それから、私たち農業者は、どうしても天候のリスクというものが大きくつきまといます。二月にあった大雪などもありますし、台風であるとか洪水であるとか冷害とか、いろいろな天候のリスクを抱えて日々経営を行っておりますが、政策が変動していく、変わっていくということのリスクも、大規模経営になればなるほど、すごく大きな経営のリスクになってきますので、私たちはそういうリスクを少しでも緩和できるような経営選択をしていかないといけないとは思っていますけれども、ぜひ、安定化した、継続できるような政策をお願いできればというふうに考えております。

 大変稚拙な説明でございますけれども、私の発表はこれで終わりにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 次に、下渡参考人、お願いいたします。

下渡参考人 日本大学の下渡でございます。

 私は、農業政策を研究している者ではございません。私は、主に東アジアとか、最近はASEANとか南アジアとか、それから農産物の輸出促進、これは、まだほとんど農産物輸出が話題にも上らなかった時代から、ずっと輸出促進のことにかかわってきたということがございまして、きょうの参考人として適任かどうか、ちょっと私もその辺は申し上げたんですけれども、結果的にここに足を運ぶということになってしまい、こういう機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 そういうことで、私は農政の専門家でもございません。ただ、私自身も農村の出身ということもあって、それから、輸出関連その他の調査で各地の農村に足を運ぶという機会がございます。そういうことで、その際に見聞したこととか日ごろ感じていることを申し上げて、参考人の意見ということにさせていただきたいと思います。

 それぞれの法案について、簡単に申し上げさせていただきたいと存じます。

 まず、農業の担い手に対する経営安定のための交付金に関する法律の一部改正ということについてでございますけれども、この法律は、平成五年に現在の制度が導入されてから、その後、現在まで、この制度に対するメンテナンスというのはなかったのではないかというふうに認識をしております。

 今回、認定農業者に加えて集落営農、それから認定新規就農者にまで交付対象を広げる、規模要件を課さない、こういった改正が行われるということでございます。

 認定農業者そのものは、農村に定着して、一定の役割をもう果たしているというふうに認識をしておりますけれども、ただ、現在、制度がスタートしてからかなり時間もたっておりますので、認定農業者そのものがかなり変化しているのではないかということも想定されます。

 そういうことで、現在の認定農家というのは、個々の農家が自分で申請をして、これは都道府県知事が認定をするという制度だと思いますけれども、必ずしも客観的な判断基準というのが十分ではなかったようにも感じられます。そういう点で、今回の改定案で交付対象と認定手続がダブルスタンダードになってしまうんじゃないかという懸念もなくはないんですけれども、現行の制度よりも一歩前進した改定ではないか、このように思っております。

 それから、農業の多面的機能に関しましては、地域内に一定の小規模農家がやはり残存するということは非常に重要ではないかというふうに思っております。これは、地域コミュニティーを維持するという上でもそういった農家が必要である、私自身はそういうふうに思っております。

 大規模経営とか法人経営、これは非常にふえているわけですけれども、大規模経営とか法人経営だけになってしまうと、どうしても経営効率とか経済効率、これが最優先になってしまうわけですね。現実に、やはり現場でもそういう声を聞く機会が多いわけですけれども、そういう面で、農業、農村資源の維持管理というのが非常になおざりにされてしまうことにもなりかねないということで、やはり地域内で一定のそういった小規模農家を残存させるような方向の改定が望ましいと思っております。

 それから、農業者の戸別所得補償法案につきましては、農家の経営維持に有用な改定であるというふうに思っております。

 これは谷口参考人から先ほどお話もあったんですけれども、米を例えば例にとりますと、ある県の例でいいますと、国の補助金が三万二千円、県の補助金が二万五千円とか、それから地元の自治体から一万三千円とか、それにプラス販売価格、売価がプラスされるわけですから、十分経営として維持できる、そういったことになるだろうというふうに思っています。

 ただ、商品作物ベースの価格補償、そこから得られる所得の安定化を図る手法だけでいいのかどうかということについては、若干疑問に思っております。

 それだけでは本来の地域農業の発展に結びつきにくいのではないか、もっと農家の所得全体を向上させるような何らかの支援策、それは、高付加価値化、さまざまな手法があると思いますけれども、そういったことも必要なのではないか。つまり、食料のサプライチェーン全体とのバランスといいますか、そういったことを視野に入れながら考えていくことも必要なのではないかというふうに思っています。

 それから、次の農地・水等共同活動の促進に関する法律です。

 これは、古くから、農村地域の水とか里山の維持管理あるいは集落の道普請、こういったことは地域の自治体なりあるいは集落で担ってきたという経緯がございますけれども、現在は、農地の集約化が進んで、要するに、農地の所有と経営というものがだんだん分離してきて、土地持ち非農家、こういった農家が非常にふえてきているという現実がございます。そういった中で、水とか農地を含めて、そういったものを共同作業で維持管理するということがだんだん難しくなってきているという現実があるということです。昨年訪問した岐阜県の農村でも、そういうことが非常に大きな課題になっているということをお聞きしました。

 個人とか法人でこれを管理するということは、なかなか現実的には難しい問題だろうと思います。こういう点からも、この法律の果たす役割は非常に大きいのではないか、このように思っております。

 それから、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律、この法律に関しましては、農業の多面的機能の発揮とか、あるいは農村景観の維持、国土保全といった観点からも、市場開放とあわせて、やはり農業保護に必要な方策を講じる必要があるのではないか、このように思っております。そういうことも重要な政策課題になってくるのではないかというふうに思っています。

 ただ、農業生産活動の維持継続だけでは不十分だろうと思います。

 今進展をしております経済連携協定、既に発効しているもの、あるいはこれから、昨日もオーストラリアとの協定が決まったわけですけれども、そういったルールも一方で遵守しなければいけないわけですけれども、やはり全国には規模拡大が困難な地域というのはたくさんございます。こういった条件不利地域における農業の多様化であるとか、あるいは付加価値の高い農業生産への転換であるとか、そういった構造変化を促すもう一段踏み込んだ施策が必要なのではないかというふうに思っております。次の法律改定の機会には、ぜひそういったことも御検討いただければと存じております。

 それから、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関しましては、消費者の食品とか農産物の選択に関して、従来は、価格であるとか品質、これが一つの大きな判断基準だったわけですけれども、やはり食品の安全性であるとか環境に配慮してつくられたものであるかどうかとか、そういったことがだんだん重要な判断基準になってきつつあるというふうに感じられます。

 そういった点を考慮いたしますと、今後ますます、そういった社会的な価値とかあるいは環境的な価値を持った農産物、有機農産物のような非常に環境に配慮した持続可能な農法で生産された農産物に対する需要というものがだんだん高まってくるだろう。消費者も、そういった社会的価値あるいは環境的な価値を持った商品に対してプレミアムも支払っていくということに、そういう傾向が今後ますます強まっていく可能性があるのではないかということです。

 そういうことで、この交付金の支給は極めて重要であるというふうに考えております。

 最後に、全体的なことについて若干意見を述べさせていただきたいと思います。これは、こういった法案が可決されて、各種の施策、各種の事業として実施されるわけですけれども、そういった施策なり各種事業の運用に関する意見ということでございます。

 これは行政にかかわる問題かもしれませんけれども、せっかく立派な法案が成立しても、それが現場でうまく運用されないと、その効果というのは半減してしまうし、あるいはマイナスに作用してしまうということも、現実に過去にも起きているわけですね。

 したがって、法律の運用に当たっては、補助事業の事業スキームを含めて、観念論ではなくて、現場の視点あるいは現場の実情に即した政策の実施、運用が重要であるというふうに感じておりますので、ぜひこの点についても御配慮をいただきたいということで、私の参考人としての意見陳述をこれで終了させていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島淳君。

津島委員 自由民主党の津島淳でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、坂本委員長を初め理事、委員の皆さんに深く感謝を申し上げます。

 また、参考人の皆様には、ただいまの意見陳述におきまして、大変貴重な御意見を賜りました。まことにありがとうございました。限られた時間ではございますけれども、幾つか御質問をさせていただきますので、どうか皆様には忌憚のない御意見をいただければ、このように思っております。

 では、まず中嶋参考人、そして横田参考人、お二人にお伺いをさせていただきます。

 今回の農政の改革について、その特集を地元紙、東奥日報が組みまして、そこにこのような農業者の方の御意見があったんです。

 まず、米の直接支払交付金が半分の七千五百円に減るとの報道を聞いて、初めは、国は農家を潰す気かといぶかったが、やる気のある農家に支援を集中する政策なんだと考え直した、これが一つの御意見です。それから、二〇一〇年に始まった農業者戸別所得補償制度では、どんな農家も一律十アール当たり一万五千円もらえた、その恩恵は自分も受けました、だけれども、販売目的で米をつくる農家も、販売せず自家消費する農家も同じく交付金をもらえることに違和感があったという御意見です。

 私自身が地元で意見交換をさせていただいた農業者さんも、交付金をいただけるということは、それ自体ありがたいと思うけれども、農家の意欲を失わせ、努力しなくなったように感じられる、ない方が収益を上げるための努力をし、農家の意識が上がると思う、このようにおっしゃっておられます。

 そこで、私は、生産効率を上げてコストを削減したりとか、経営多角化に取り組んだりとか、消費者の皆さんに喜んで食べていただける、そういう農産物を提供するための取り組みを行っている農業者の御努力が自給率、自給力の向上につながる、そのように考えております。全ての農業者に対する支払いを維持すべきという御意見は当然ございますけれども、私は、効率化を図りながら品質向上に取り組む担い手こそ支援すべきだ、そのように考えております。

 そこで、中嶋参考人、横田参考人、お二人に、この点についての御意見を、先ほど陳述がありました部分の補足も含めて、お願いできたらと思います。

中嶋参考人 ただいま御質問のありました件についてお答えをしたいと思います。

 私も、担い手に集中した、特にそこに焦点を絞った支援をするということは賛成をしております。と申しますのは、今、日本にはイノベーションが必要だ、先ほど申したとおりでございます。イノベーションの担い手であり、その人々が、現在、それから今後の日本の食料の生産を担っていくのではないかと思っております。

 確かに、現在、食料自給率は低く、全ての人々に食料生産に携わっていただきたいわけでございますが、将来を見据えたときに、やはり担い手の方々に頑張っていただきたい、そのための支援策を強化すべきだと思っております。

 以上でございます。

横田参考人 私も、当然、経営所得安定対策、今までいただいてきましたけれども、率直に言って、一万五千円が七千五百円に下がるということは私の経営にとってはもちろん大きなことでございます。ただ一方で、一万五千円もらえるから続けられるとか、これが七千五百円になったから続けられないとか、そういう議論をするのは、私たち経営という感覚で農業をやっている者にとっては、本来おかしなことではないのかなと。

 私は、極端に言えば、そういうものがなくても、自分で自立して経営をやっていくんだという気概を持ってやっていくということが一番重要なんじゃないのかな、そういう気概そのものが、担い手と言われるような、今後の日本の農業を背負っていくような生産者をしっかりと育てていくということにつながっていくのではないのかなというふうにも思います。

 また、私もお米を自分で販売しながら消費者の方と向き合うことが当然多いわけですけれども、そういった中で、皆さん、生活にそんなにゆとりのある人ばかりではありませんけれども、農家は、なぜか、もちろんいろいろな機能があって、そういう補助金なりなんなりが出るのがわかっても、やはり困っているのは自分、農家だけじゃないというふうにも思っていますので、むしろ、自分が自分の経営として努力をしながら、そんな補助金、そういう支援がなくても自立してやっていけるというふうに考えることそのものが僕は大事なんじゃないのかなというふうに考えております。

津島委員 ありがとうございます。

 自立ということ、そのために経営能力をつけていくということが大事である。

 また、消費者の方というのは、一方で納税者であって、今の制度に対して納税者の方がどのように考えるか、そういった視点も我々は持つべきなんだということがよくわかりました。ありがとうございます。

 続いて、中嶋参考人にお伺いをしたいと思います。

 先ほどの意見陳述の中で、地域ガバナンスの再構築ということをおっしゃられておりました。私は地域ガバナンスという言葉を聞いて、地域の農地は地域コミュニティーで守るということなんだというのが私の理解です、間違っていたら後ほど指摘をいただきたいんですが。

 今、そのコミュニティーが、実は地域でも崩壊しているというか、変容しているといいますか、そういう状況にございまして、では、そういう中で農地を誰が守っていくのか、その担い手というのは非常に大事なんですよね。地域の共同活動によってその農地を守っていくということがまず大事であるし、国としてもそういった取り組みを支援していく、そういう方向性はあるべきだと私は思うんです。

 私は、実は青森市内で、郊外の里山地域に住んでおりまして、私の住んでいる隣の地区に細越という地区があるんですが、この細越という地区は水田と畑作両方をやっている農業地帯なんですね。ここでは平成五年から、地域の農家の方、地域住民の方、そして小学校が連携して、北限と言われているゲンジボタル、これをちゃんと繁殖させて放流して、そのことによって多様な生態系を有する地域の里山を保全するとともに、子供たちに対する食育であるとか、農業、自然環境に対する理解を深めるため、細越ホタルの里の会というものを結成して活動を続けています。

 今や、その活動、取り組みの結果、ゲンジボタルとヘイケボタル、二種類の蛍が見られるようになった。そして、毎年七月にホタルまつりをやって、青森市民誰もが知っている祭りとなった。つまり、蛍の里として細越地区は知られるようになった。実際に環境が改善したからこそ蛍が飛ぶようになったわけであります。

 こういった、地域における、いわば農地を守る、あるいは周辺の環境も含めて、そういう守るための活動というものは、地域のコミュニティーの重要性を再認識してもらうよい機会だと私は思うんです。そういった点からも、地域政策についてしっかりと取り組んでいくということが何よりも重要である。

 その点について、中嶋参考人にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

中嶋参考人 今おっしゃられましたように、地域のコミュニティーがある種中心的役割を果たすべきだと私も思っております。

 農地だけではなく、水もそうでありますけれども、これは地域の宝でございます。その資源をいかに有効に利用していくかということを、みんな知恵を使って考えていかなければいけない。ただ、現実には、今御指摘もありましたように、その力がだんだん弱まっていますので、いかに人々の心を結集させるか、その方策が必要になっております。それが地域政策の役割ではないかというふうに思います。

 私が今一番心配しておりますのは、宝だと思うその資源を、皆さん無関心になってしまって、その維持管理に関して無責任な状態になってしまうのではないか。先ほど地域ガバナンスと申し上げましたけれども、関係する人々が、皆さん全員が参加するというのがまず一つ。その中で、誰が責任を持ってそれを維持管理していくのかということを考える仕組みをつくる、これが地域ガバナンスの再編成で重要だと思っております。

 今御指摘のありました里山の取り組みというのは、そういう意味では非常にしっかりした地域ガバナンスをつくって成功したのではないかと思いますけれども、これを農業生産にも、それから農業の環境の管理においてもうまくつくり上げていければよろしいんじゃないかなと思っております。

 以上です。

津島委員 ありがとうございます。

 地元の人にも非常に励みになるような、そういう御意見もいただきました。

 全員参加である。それから、無関心な人をいかになくしていくのか。その地域において、農業にかかわっているかいないかにかかわらず、自分たちが住んでいる環境を守っていく中で、農地がいかに大事なのかということを広く知っていただくということが大事であるし、そういった意図も含めての地域政策がやはり重要であるということがよくわかりました。

 続いて、横田修一参考人にお伺いしたいと思っております。

 横田参考人は、本当に、百ヘクタールを超える水田を単作でやられて、それを機械一台、機械というのは大変高いそうで、私もいろいろ聞いてびっくりしたんですが、その機械をなるべく台数を保有しないことで、もちろん維持修繕にかかる費用とか、そういうものも莫大な費用がかかる、それを縮減することでコスト削減につなげられている。そして、主食用米だけでなく加工用米の生産にも取り組まれている。

 私は、ホームページも拝見させていただいて、非常にかわいいホームページで、若いお母さんが喜ぶだろうなと。そういった中に、米粉を使ったスイーツが、商品も結構きれいに画面に出ている。これは、米の魅力の発信につなげたい、そういう思いであろうかと思うんです。

 今後、効率的な経営を行うという観点から、主食用と加工用と今つくり分けをなさっていますけれども、どのように組み合わせていくのか。そして、今後も規模拡大を加速させていく、そうした場合に、どのような組み合わせがよいとお考えになっているか、お聞かせ願えますでしょうか。

横田参考人 お褒めの言葉をいただいて、ありがとうございます。

 今後、さらに効率的に経営を行っていく中で、どのように主食用米であるとか加工用米であるとかを組み合わせていくかということですけれども、私の考えでいきますと、今、実際、日本の国内でのお米の消費の現状を見ましても、例えば家庭で、炊飯器でお米を炊くという割合が残念ながら減ってきていて、外食、中食などで消費されるお米の量がふえているであるとか、一方で、先ほどから出ている加工用みたいな、今まででいうと、どちらかというと低価格で、例えば輸入米に置きかわっているとか、そういったところが実際あると思うんです。

 私は、できれば、自分の経営の中では、お米を日本の消費の形、主食用であるとか、外食であるとか、加工用であるとか、そういったものの縮図が自分の経営の中にそのまま入ってくるような、そういったイメージが、バランスがとれて、もしかしたら、大規模になってなかなか小回りがきかないという経営の状況もありますので、そういった形でバランスよくやっていくのがすごく大事なのかなと。

 それは、例えば震災のような、私も、茨城で、インターネットの販売などがそれまで中心だったんですが、やはり残念ながら風評被害などで減少してしまったこともあったんですが、そういったときに、例えば私の経営がインターネットの販売しかしていなかったとしたら大きな影響を受けたと思うんですが、地元のスーパーでも販売をしていて、地元の方は放射能のことを、地元に住んでいて、それほど大きく影響を及ぼさない。そういった経営のバランスというのはやはり非常に重要なのかなというふうに考えています。

 そういった意味では、いろいろな米の消費の形に合わせた、そのバランスに合わせた作付、品種の構成を自分の経営の中にも行っていくのが大切なのかなというふうに考えております。

津島委員 ありがとうございました。

 今お伺いしていて、消費者の方の意見をいかに酌み取って、そして消費者の方の信頼をいかに得ていくのか、また、消費者の消費動向というものを的確に把握して生産計画に反映させていくという、そういうことが大事なのかなというふうにも感じさせていただきました。

 今度は、中嶋参考人にお伺いしたいんですが、先日、消費者である主婦の皆様との意見交換をさせていただいたんですね、米の消費拡大、どうしたらいいんだろうかと。このような御意見をいただいたんです。米は確かに値段も気になるんだけれども、手間がかかるという、この御意見、私はある意味衝撃を受けたんです。

 よくよく考えてみたら、今もう米のとぎ方を知らない若い人がいる、洗剤で洗っちゃうとか、そういう人がいるということを聞いたことがあります。あるいは、パック米が売れているとか、何でコンビニでこれだけおにぎりが売れているのかといったら、要は米を炊くということが手間だと感じている、そういう方がいらっしゃるので、それが中食の需要の増大ということにつながっている。これが一つの米の消費を取り巻く現実であろうか、私はそのように捉えております。

 そうすると、主食における米とパンの地位が逆転している、そういう状況の背景であると考えた場合に、やはり農家さんがつくり続けるということだけでなくて、消費者の声を受けとめて生産に反映させつつ、一方でコスト削減に努める、そういう経営感覚を持った農業者さんを国の施策として育てていかなければいけないんだと思うんです。

 中嶋参考人にその点についての御見解をお伺いしたいと思うんですが、お願いいたします。

中嶋参考人 米の消費の低下というのは本当に大問題だというふうに思っております。ここの部分を何とか改善しなければ、日本の農業自身がどんどん弱体化していくと思っております。

 そのときに、消費者の声をよく聞くべきであるというふうなのは賛成でございますけれども、やはりもう少しお米に対する認識もきちんと持ってもらいたい。とぐことを知らない、とぐという考え方がわからないというのは、やはりもう少し食育を充実させて、お米に対する支持を高めていく必要があるんじゃないかと思います。

 ただ、現実には、お米を炊いて、さらに料理をつくって、食事を用意するというのが、かなり手間がかかるというのは皆さん意識として持っていますので、それをサポートするような、食品産業と農業とが連携したような商品開発も必要ではないかなというふうに思います。法人の方でもさまざまな新製品を開発していらっしゃる方が多いので、それを支援していく必要があるというふうに思っております。

津島委員 ありがとうございました。

 横田参考人もおっしゃられていましたか、加工、流通というところにも着目していく。生産と加工と流通という六次産業化がやはり重要であるということにもつながってくるのではないか、私はそのように思いました。

 質疑の時間がそろそろなくなってまいりましたけれども、最後に、横田参考人にお伺いしたいと思います。

 いろいろな経営方針が個々の農家の方にあると思います。今、国で検討されている制度、実施されている制度の中で、飼料用米を作付して耕畜連携や、あるいは専用品種の加算も受けよう、そういう中で、経営方針の重要性ということ、経営戦略を立てるということについて、最後に一言、改めてお考えをお伺いして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。お願いします。

横田参考人 経営方針というのは、私は、経営者として、常に自分の経営を今後どうしていくかということについて考えているわけですが、そのときに一番重要なのは、自分の地域がどういう地域で、例えば平場なのか中山間なのかとか、そういった圃場の条件、気候の条件、もしくは、自分たちにどういう能力があるのか、自分がどうしたいかという意識だったり意図だったり、そういったものを総合的に判断して、今のこの環境であればこうするべきである、自分はこうした方がより自分の経営を伸ばせるだろうということを考えて選択をしていくということが、私も常日ごろやっていますし、大事なのかなと。決して私のところで行っている経営が正解なわけでも何でもありませんので、私はたまたまこういう選択をしましたけれども、それぞれの地域で、それぞれの経営者の考え方によって、いろいろな経営があっていいのかなというふうに考えます。

 今言及されました飼料米についても、私のところではほんの一ヘクタールほどしか取り組んでおりませんけれども、やはりこれからの米の一つの需要先として飼料米ももしかしたら考えられるかもしれませんし、もっと言えば、違う作物で飼料に取り組むということも、水田で別の作物をつくって飼料に取り組むということも考えられるかもしれません。いろいろな経営の方針があっていいのかなというふうに思います。

津島委員 ありがとうございました。

 以上で私の質疑を終わらせていただきます。

坂本委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 まず、きょうは、それぞれ四名の参考人の皆様にお越しをいただきまして、大変お忙しい中、意見交換をさせていただけるということで、心から感謝、御礼を申し上げる次第でございます。ありがとうございました。

 時間も限られていますので、早速質問に入っていきたいと思っています。

 まず、これは四人の参考人の皆さんにそれぞれお答えいただければありがたいなと思っておりますが、できるだけ簡潔にお答えいただければと思います。

 今回、法案は二つございまして、そのうちの多面的機能促進法について伺っていきたいと思うんですけれども、多面的機能促進法が担い手に与える影響はどういうものがあるかということをお伺いしたいと思います。

 今回、本法では、多面的機能支払いの導入で、もう御案内のとおり、例えば水路ですとか農地ですとか、こうした維持、補修、管理が、地域の共同活動を支援することで、結果として、これが担い手の方々の労力の負担を軽減したりとか、それから、それがまた担い手の方々の農地等のあるいは経営の規模拡大につながっていく、このようなことがこの法案の一つの目的であるというふうに承知をしておりますけれども、そういうことが実際にこの法案に基づいて行われていけるのかどうか。ある意味、農業の構造改革ができるのかということにもつながると思うんですけれども、このことについて、それぞれお答えいただきたいと思います。できるだけ簡潔にお願いします。

中嶋参考人 先ほど私が説明いたしましたが、農業の維持管理ステージと農業生産ステージに分かれるということでございます。

 地域政策に当たる部分、共同活動を支援する部分は維持管理ステージを効率的にするものであり、その結果、農業生産ステージの効率性も向上するのではないかというふうに期待しております。

谷口参考人 私も基本的にはそう思っておりますけれども、一つ問題があります。それは、大規模な経営体が耕作することができない土地がたくさんあるということなんですね。つまり、住宅と住宅の間に入っている土地を土地改良して大きくするということは、必ずしもできないわけですね。逆に言えば、そういうところをちゃんと保全しないと水路が維持できないという問題があります。

 この場合に、そこのところの担い手は誰がやるかということになると、担い手は全て大規模な方だけとなると、実際うまく回らない。そういう点で、多様な担い手の努力が必要だというふうに考えております。

横田参考人 私の地域でいいますと、私の地域の中の面積のかなりの部分を私たち横田農場がやるようになってくると、水路の保全であるとか、そういったところの恩恵を受けるのがかなりの部分で私の経営になってきます。では、自分の経営で全部やりなさいと言われると、やはりこれはなかなか難しいところもありますので、地域の活動として、現状、もう既にそういう組織が地元にありまして、水路の保全とか草刈りとか、そういう活動をやっていますけれども、そういった機能はすごく大切なのかなというふうに思っています。

 ただ一方で、先ほどもお話ししましたように、どんどん高齢化が進んでいて、後継者がいなくて、やめる方が多くなっていて、保全する組織もどんどん高齢化が進んでいて、私が当然一番年下ですけれども、もう次の人でも五十五歳とか、その次の人で六十五歳とか、そういう状況になってきていますので、それをどう次の世代に引き渡していくのかというのも非常に大きな課題なのかなというふうに思っております。

下渡参考人 多面的機能と担い手の関連ということですけれども、多面的機能によって多様な担い手が農業に参入できる、そういった機会がふえるのではないかというふうに認識しております。ただ、それはこの法律をどういうふうに運用するかにかかってくると思います。

 多面的機能が地域農業の発展につながるかどうかということについては、これは若干、必ずしもそれがストレートに、そうとは言えないというふうに私は認識をしております。

 以上でございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 それぞれ、四名の方に御意見をいただきましたが、多少意見の違いはあるとはいっても、ある意味、この多面的機能支払いの導入というのがそれなりの効果はあるということを今お話しいただいたのかなと思っております。

 もう一方で、今回はもう一つの法案、いわゆる経営安定交付金の改正法がありまして、これについて次は伺っていきたいと思うんですが、これは中嶋参考人にお伺いしたいと思います。

 それは何かというと、ゲタとナラシの関係で、今回要件が変更になります。この要件変更によって、では、先ほどとまた関連するんですけれども、農業構造の改革というのが起きるのかということなんです。

 今回の法律案の中に、条件不利補正交付金、ゲタ対策、それから収入減少影響緩和交付金、ナラシ対策、ここの要件の変更というのは、面積要件を設けない、それから、認定農業者、集落営農に加えて、認定新規就農者を対象にする、このようにあります。このことによって、要するに、特に認定新規就農者を対象にすることによって、現場では農業構造にどのような変化があるというふうに考えられるか、この点について中嶋参考人からお伺いしたいと思います。

中嶋参考人 私の先ほどの意見でも申し上げましたとおり、若い担い手をいかに農村の中に呼び込むかということが非常に重要だと思っております。この認定新規就農者の制度をつくるということは、そのためのきっかけになるのではないかというふうに思いますし、その方に支援を施す制度というのは、非常に政策の目的にかなっているのではないかなというふうに判断しております。

稲津委員 ありがとうございました。

 もう一つ、これは、もし御意見があれば詳しくお話しいただいても結構なんですけれども、これも中嶋参考人にお伺いしたいと思います。

 中嶋参考人は、ストック管理は地域の共同事業、それからフローの管理はプロの担い手、こういう趣旨の、いわゆる産業政策と地域政策、これをある一定程度分けてというお考えがあるというふうに承知をしております。

 それで、今回は、まさにこの法律ではそういうことをある意味でうたっているとは思うんですけれども、車の両輪というか、そういう産業政策と地域政策を、その趣旨、目的、こういったものも明確にして進めていかなければ、なかなかこういう取り組みというのは難しいんだろうなと思うんですけれども、このことについて御意見をいただければと思います。

中嶋参考人 いずれも、いかにシステムの改善、もしくはイノベーションの導入ができるかということを、私は非常に注目しております。

 担い手は、農業生産の活動を活発にするための切り札になるのではないかと思っておりますが、その人たちを支える基盤というものがどうしても必要でございます。それが、先ほど言いました維持管理のステージの役割だと思うんですけれども、そこにもイノベーションが重要なわけです。そのために皆さんが知恵を尽くし、そして、新しい技術を導入することで、より一層レベルの高いサービスが生み出せる、その新しいサービスが生み出されることによって、担い手はより一層よい経営ができるのではないか、それが政策として、車の両輪として機能していく、そういう姿ではないかというふうに私は考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 いずれにしても、それぞれ政策目的を持って、法律というのはそれに沿ってのさまざまな施行をされているわけですけれども、ここのところは非常に大事なポイントだと思っていますので、今、より具体的にお答えいただいて、その辺の趣旨がはっきりしてきたんじゃないだろうかというふうに思います。

 それから次に、現場のということで、これは横田参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、先ほど御説明いただきましたが、百ヘクタールを超える農地で営農するというのは大変な御苦労もあるというふうに思っております。特に、最小限の機械の利用でコストダウンを図るだとか、それでなおかつ、おいしくて、安全で、ある一定程度やはり価格もという、ある意味、消費者から見ると非常に理想的な、求めるものそのものだと思うんですけれども、恐らく、参考人の方は相当大変な経営努力等もされているんだろうなということで、お話を伺っている中で、改めての敬意というか、そういう気持ちになりました。

 私は北海道にいるんですけれども、北海道は百ヘクタール以上の水田の経営農家というのもかなりありますけれども、なかなか大変な状況は否めないと思うんですね。

 先ほどのお話ですと、生産されたお米の大宗はいわゆる直接販売されているということなんですけれども、この販路開拓に当たって御苦労されていること。それから、やはり参考人のような経営を目指そうという、これからの方々も大勢いらっしゃると思います。ある意味で、そういった方々に対して助言を行うとしたらどういうことがあるのか、お話しいただければと思います。

横田参考人 まず、販路開拓についてですけれども、先ほどもちょっとお話ししましたように、そもそも私が農業を始めた当時は、平成十年当時、全く直売というのは取り組んでおりませんで、JAの出荷であるとかお米卸への販売を行っていたんですが、一番最初のきっかけは、インターネットの販売を始めたことです。ホームページをつくってお客さんからの注文を待つというのは、生産を行いながらでも非常に取り組みやすかったというところはあります。それが少しずつふえていって、最初は年に一件ぐらいしか注文が来なかったものが、毎日五件、十件注文が来るように、少しずつふえていったということがあります。

 そういうのをやりながら、自分自身も自信を持ってお米がつくれるようになってきたというところもありますので、そういった農産物としてのお米から、商品としてお客様にお出しできるような、そういう商品になってきたお米、そういう自信を持ってきたお米を、今度、例えばスーパーであるとか、もしくはレストランであるとか、そういったところにお声がけさせていただくと、中には興味を持っていただく方もいらっしゃって、それで、決してそんなに大々的に営業したということでもないんですが、少しずつふえていった。それは、品質の信頼もそうですし、人と人との信頼という部分も時間をかけながらやってきたというところが大きいのかなというふうに思います。

 本当に、私もまだまだなんですけれども、私が、もしこれから続いてくる人たちに助言をすることがあるとすれば、今の横田農場を見ればいろいろなことをやっているように見えますけれども、私が始めた平成十年当時はそんなことは何もやっていなかった、百ヘクタールの規模も二十ヘクタール程度でしたし、それが少しずつ時間をかけながらここまで来たということもありますので、急に大きな転換があるということではありません。

 では、何かをやればいいかというと、そういうことでもなくて、自分で何をやりたいのか、自分の地域だったら何が特に、どれに取り組むことが一番有利なのかとか、自分の強みは何なのかとか、そういったところをよく自分で悩んで、考えて、考え抜いて経営を行っていくのが一番いいのかなというふうに思います。

稲津委員 ありがとうございました。

 それではもう一点、同じく横田参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、百ヘクタール、そして先ほどのお話ですと米粉を使ったスイーツとかに取り組んでいらっしゃるという、直売もやりながら、なおかつ六次化にも積極的に挑戦されているということで、私の農家仲間の方々の中でも、百ヘクタール、先ほどもお話し申し上げましたように、されている方もいらっしゃいます。でも、なかなか六次化というところは現実には難しくて、せいぜい、やはり作付をして収穫をして、あとはある一定程度直販をする、これが大体限界で、そこから先になかなか行けないんです。

 それをされているというのは、やはり相当な努力と工夫があると思うんですけれども、その点をお示しいただきながら、あわせて、そういったことをまずは目指そうとしている方に対しても意見をいただければなと思います。お願いします。

横田参考人 六次産業化に取り組むきっかけになったというのは、私のところでいえば、私の妻がやりたいと言ったというのが一番大きいんだと思います。

 今まで、しょせんは農家でお米をつくることだけやってきたものが、違う分野に取り組むというのは非常にリスクもありますし、難しい面もあるわけですけれども、やはりそれを乗り越えてでもやろうというのには、それなりの覚悟も勉強も必要ですし、そういったことをやることは相当大変だと思いますが、私の妻は、それでもそれをやりたいと。

 それは、私は平成十年に就農したときにすぐに結婚したんですけれども、妻が、最初は現場で生産の作業をずっと行っていたんですが、やはり、今、特に大規模になってきて、大型機械を使うようになって、そういった中で、妻は、むしろ現場での生産よりも、そういう六次産業化みたいな、製造とか、スイーツの方をつくる方がより向いていたというところもあります。適材適所と言えるかどうかわかりませんけれども、そういったこともあって、妻はそちらをやりたいと希望して、いろいろな環境も整ったので、それは国のいろいろな支援なんかもありましたし、そういうこともあって六次産業化に取り組めたという、妻という、一生懸命その課題に取り組んでいこうという人材がいたというところが一番私たちが取り組むきっかけになったのかなというふうに思います。

 ですから、何かむやみに、六次産業化と言われているから取り組もうというものではなくて、では、それに何で取り組むのか、どう取り組めば自分の経営をより伸ばすことができるのかとか、そういった考えに基づいて六次産業化に取り組まないと、やはり、いわゆる本業でそういったものに取り組んでいる、うちでいえば、町のお菓子屋さんだってなかなか苦労しているのに、では、そこに私たち素人が入っていって本当に勝ち目があるのかといったら、そんな簡単なものではありません。

 では、私たちは、自分たちの特徴を生かして、何のためにそれをやるのか。私たちでいえば、お米のことについて、お母さんたちにより興味を持ってもらおうということが一番の目的だったわけですけれども、そういったことを考えながら取り組んでいくことが大切ですし、そういうことをすれば、今度、消費者の方たちもその思いに共感をしてくださって、手にとってもらえることがふえるのかなというふうに考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので、これで終わらせていただきますが、きょうは、かかる法案に対して、参考人の皆さんから大変貴重な御意見を賜りましたことをお礼を申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀と申します。

 本日は、お忙しい中、参考人の皆様におかれましては、こちらまで足をお運びいただき、また、貴重な御意見をたくさん賜りまして、本当にありがとうございます。私も、この後、幾つか皆さんに質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 また、当方の都合で質問の順番を考慮いただきました皆さんには、まず御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 では、早速質問に入らせていただきますが、初めに、谷口参考人にお伺いをいたします。

 きょういただいた資料の中で、三ページということになるんですが、ここについて、直接触れられてはいなかったんですけれども、私は宮城県の人間ですので、ああ、なるほど、おもしろいなと思って拝見をしました。三番、水田フル活用と米政策の見直しをめぐってというところで、そこに表が載っているわけです。これは宮城県の数値ということになるんですけれども、これを拝見すると、その後に参考人が御指摘なさっていたような飼料用米についてのさまざまな問題というか実態というのが見てとれるんじゃないかなというふうに思います。

 おもしろいのは、飼料用米、これは補助金が十アール当たり八万円ということで計算されているものですので、これをベースに考えると、基本的に、私たちの政党というのは、余り多くの財政支出というか補助というのを、必要なところはもちろん必要なんですが、できるだけ、削れるというか、しなくていいところはしないようにしましょうねという立場でいるものですから、例えば、米の戸別所得補償でいうと十アール当たり一万五千円であるというところに対して、飼料用米は八万円、これをつけないと所得として再生産が可能なところになってこないということで、この数字に設定されているという理由があるわけなんですが、その八万円という、通常の主食用米に比較して大変多い金額のものを充てても、なお、これだけの差が生じているということになるんだと思います。

 そうしますと、まずお伺いしたいのは、今の法案の中では、これが、生産数量によっては十万五千円というところを上限にしましょうということなんですが、これになって何とかその差が埋まるようになるのかというのが一つ。もう一つ、そうすると、今提出されている法案のようなシステムで、本当に飼料用の米というのが増産されるものなのかどうか。あと、もし可能であれば、私たちの党の立場からいうと、そこまでしてでも、もし増産というところにたどり着かないのであれば、むしろ、その戦略、ここまでお金を使って支援していくという必要性があるかどうか。

 今、三つお伺いした形になりますが、それぞれお答えをいただければというふうに思います。お願いいたします。

谷口参考人 大変厳しい質問だと思いますけれども、農業政策を考える場合に、どのくらいのタイムスパンで考えるかということが非常に大事で、五年、十年で全く新しい農法の体系や新しい作物を定着させるのは困難だと思います。やはり、十年、二十年、三十年、ひょっとしたら五十年ぐらいのスパンで考えないかぬというふうに思います。

 一つ例を挙げます。一九六〇年のときの日本の小麦の単収は三百キロでした。当時のドイツの小麦の単収も三百キロです。その当時のアメリカの小麦の単収は二百キロを割って、百五十キロです。オーストラリアに至っては百キロ程度です。今はどこまで来ているかというと、日本は四百キロまで来ています。しかし、ドイツは七百五十キロ。イギリスに至っては八百キロを超えています。これは、小麦の増収をはっきりとうたったからです。日本は、お米の増収も含めて、単収を上げるという方向の政策戦略をとらなかったわけですね。同じように、トウモロコシはどうかというと、四百キロから一トンまで、アメリカの場合は上がっています。

 ですから、ある時期にあるものがどれだけできるかということと、それがある期間かけたときにどこまで変わるかということを、そのときの科学技術水準だけで考えると、大きな間違いに行くだろうと思います。

 そういう観点からしますと、実は、江戸時代からずっとさかのぼりますと、水田農業というのは、穀物の中で最も高い、世界で最も高い単収の作物で来たわけです。それが米だったわけです。ですから、非常に狭い水田面積の中で、一町歩程度の枠組みの中で、たくさんの家族、たくさんの人口を日本は養ってきたという歴史があります。

 そういう点で、飼料用米も、そういうふうな技術革新をしていって、つくり方を変えて、従来の食用米とは違う方向に持っていくことになれば、コストも恐らく激減するだろうし、逆に言えば、国際的な飼料穀物価格が上がっているという状況の中で、ペイする方向に向かうことは十分可能だと思います。いきなり、トウモロコシの一トンと、現在四百キロ程度しかとれていない飼料用米の単収で同じ水準にいけるかというと、いけないと思います。ですから、それは今の段階でそうであって、これから後いつまでもそのままいくかどうかということは別の問題だ。そういう意味でのかじをどこに切るかということが政治に求められているというふうに思っております。

 そういう観点からしますと、システムとして可能かどうかという問題を含めて、私は、次のページの最後のところに書いたと思いますけれども、品種の開発の問題、種子の確保、需要の確保、飼料工場の配置、利用方法の確立、あらゆる面で、はっきり言って全く手探りなんですね。その状態で成果が出るか出ないかというのは余りに焦り過ぎではないか。そういう考え方自体をやはり改めて、長期的に農民が受け入れられるような技術を開発し、価格水準に乗せて体系に持っていくということが大事だというふうに考えております。

 一応、全部には答えていませんけれども、そのくらいでよろしいでしょうか。

林(宙)委員 ありがとうございました。せいて物を見るなということだと思います。

 そうしますと、いろいろな事情があって上限値も十万五千円というふうに設定されているんでしょうけれども、むしろ、もしかすると、もっと受け入れやすいぐらい、その辺については支援を考えてもいいんじゃないのかなというところの議論も当然起こってしかるべきなんじゃないかなと思うんですね。

 谷口参考人にもう一つお伺いをしたいのは、ちょっとこれはまた違った話ですけれども、いわゆる多面的機能への支払いということで、中山間地域等への直接支払いというのは、生産性の格差による、要は条件不利地域の対策であるということで、多面的機能というところで推していくというのとはまたちょっと違ってくるのではないかという御説明でした。

 それは、私たちの党の考え方にも近いなというところがある一方で、では、なぜ中山間地域の水田などを維持していくべきなのかという話になったときに、そもそも根底は、洪水防止とか水源涵養とか、そういった機能が非常に強く求められている、そういうものだというところにもなってくるんじゃないかなと思うんです。

 その意味では、もちろん、生産をするという意味では条件不利という位置づけになるんでしょうけれども、ただし、むしろ多面的機能を維持するというもともとの目的から、やはりそれは大事なんじゃないかという議論になってくるんじゃないかなと私は思うんですけれども、その辺についてはどのようにお考えになりますか。

谷口参考人 それも非常に重要な点で、ヨーロッパで、実は条件不利地域対策がイギリスからとられてEUに行ったときに、重要な問題がありました。

 それは、丘の方では、乳牛あるいは肥育牛を飼う場合に、いわゆる穀物を使って飼うことができない。つまり、そういうところは温度が低くて、小麦、大麦等の栽培に向かないわけです。そうすると、どうしてもグラス、つまり草で飼わなきゃいけない。そうすると、非常に生産性が低い。

 しかし、高原には、牛が放牧されて、放れていることは、景観から見てもどうしても必要だという判断があるわけです。そのときに、景観の判断だけでしたのではなくて、条件を、ここでは、小麦を買ってきて、あるいは飼料穀物を買ってきて濃厚飼料で飼うという方向をとらずに、放牧型の、粗飼料型の酪農や肉用牛の肥育をとるということによって起きる生産性格差を補うということと結びついていたわけですね。

 ですから、その点で、いわゆる多面的機能だけではなくて、そのベースの問題というのをやはりはっきりさせた上で、その上で多面的機能の維持というのがくっついてくるというふうに考えた方がいいのではないか。

 多面的機能を先に立ててしまいますと、実は大きい問題があります。それは、農業をしないで林業にしたり林地に変えたり、あるいは、そういうものをきちんとする業者をつくって維持してもらえばいいじゃないか、農業は要らないじゃないか、洪水だけだったらダムをつくればいいじゃないか、それとはちょっと違うと思います。

 同じように、実は、水田の洪水防止機能ということで、一番最初にお金を払ったのは、例えば千葉県の市川市のように、住宅のそばにある田んぼのところが、一番すぐに住宅に水が浸出して被害を及ぼす可能性があって、そういうところが十アール当たり二万七千円とかという金額を一番早く出したんですよね。

 意外なことに、実は都市の住民に近いところの生活環境のところが多面的機能の恩恵を直接的に受けているという面があります。その言葉が、一つは里山という表現をされていて、決して奥山ではなくて、里山というところは意外と住宅に近い、都市的なところでも多面的機能というのは維持される。

 ですから、中山間というところに絞って考える必要はないし、それは否定はしませんけれども、ベースの問題としては、やはり条件不利の問題というのを前面に立てて考えるべきだというふうに考えております。

林(宙)委員 ありがとうございました。

 おっしゃるとおり、多面的機能というところを最初に推していくと、では、ほかの方法でそれは維持できないのかというところとの比較になるというのは確かに私もあると思っています。

 そういったことも含めて、今後、日本型直接支払いということでいろいろなことが考えられていますけれども、私自身もそれをじっくり考えていきたいなというふうに思っております。

 続いて、中嶋参考人にお伺いをしたいんです。

 きょうは直接お触れにはならなかったんですけれども、中嶋参考人は、かねてから、お米というのはいろいろな価値のつけ方というか見方があって、一つは、例えば米というのは、本当に生活必需品ですよ、なくては困りますよというものである場合と、非常にぜいたくをするという意味での高級米というものもあるわけですから、そういったものもある中で、例えば中食ですとか外食産業で使われる、比較的、もちろん品質はそれなりに担保された上で、それなりに価格もリーズナブルというか、そういう価格帯の米というのも実は非常に重要なところであるということをおっしゃっていたと思います。

 そうしますと、では、お米の価格がどのぐらいなのかという議論とはまた別なんですけれども、例えば価格帯がもう少し今よりも多少下がった上でお米を生産した場合に、今生産調整とかをやるというのは、もちろん需要に合った生産をするということで、これは非常に合理的な考え方でもあるんですけれども、一方で、例えば供給を少しふやしたときに、少しお米の値段が下がりますとなった場合です。それによって創出される新たな需要というのもあるんじゃないのかと私はかねてから思っているんですが、残念ながら、農林水産省の方ではそういった計算はしていないということでしたので、これについて中嶋参考人はどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

中嶋参考人 今のお話は、経済学では、価格弾力性の問題というふうに整理されます。

 家庭で食べるお米の場合の価格弾力性と外食などで使っているお米の価格弾力性は私は違うんじゃないかと思っております。家庭では、値段が下がったから消費量を大きくふやすというか、それから逆に高くなったから大幅にその消費を減らすということは余り起こらないのではないかと思っています。一方で、中食や外食の場合は、価格が下がると大いに使用量をふやすというような価格弾力性が大きいような傾向があるんじゃないか。

 なので、お米の性質、それからお米の使い方に合わせた対策というのを考えていく、それが需要創出というものにつながるのではないかというふうに思っております。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 確かに、家庭で、お米の値段がかなり下がったからといって、では、今よりもたくさん食べられるようになるかいうと、当然、おなかの限界というのがありますので、やはりその辺はしっかり考えなきゃいけないんだろうなと思う一方で、中食、外食で、品質を保ちながら、よりリーズナブルなものを提供していくかというのは非常に重要な視点なのかなというふうに思っております。ありがとうございます。

 続いて、これは横田参考人にお伺いしたいんです。

 ここまで非常に大きい規模での米の生産というものを手がけられてこられまして、率直にお伺いしたいんですけれども、お米の値段といったときに、相対の価格というのが取り沙汰されるわけですが、それが一万四千円とか五千円とか、大体そんなぐらいでいつも言われるんです。

 横田さんの感覚で、どこまでだったらコストを下げられる、今というのではなくて、今後の見通しとしてここまでだったら多分現実的にコスト削減できるんだろうなという、もし感覚がおありでしたら、ぜひ教えていただきたいと思います。

横田参考人 これは非常に難しい問題だというふうに思っております。

 私のところの生産費の構造を見ますと、三分の一が人件費、三分の一が地代や土地改良、水利費などの固定費、それから残りの三分の一が肥料、農薬、機械の減価償却費という構造になっております。

 今私たちは、なるべく安い肥料を買い求めたり、なるべく農薬を使わないように、それは減農薬という考え方もありますが、当然、コストも下げられるわけですし、先ほどから出ているように、うちは機械をなるべく少なくしてという面もありますが、それでも、最も努力してできるところでもやはり全体の三分の一でしかないわけです。

 一方で、では、大きく下げられる可能性があるとすれば、あと、地代とか土地改良、水利費の部分も、これは自分の努力ではなかなか変えられませんので、もちろん、時代の変化で少しずつ下がっていく部分もあれば、むしろかかり増しになってくる土地改良費などが、例えば圃場整備などをやれば、またかかり増しになってくる部分もあると思いますけれども、あと、努力できるとしたら、もう人件費だけですね。

 でも、当然、給料を安くするわけにはいきませんので、うちも、そんなにたくさん給料を払えているわけではありませんが、なるべく少しでも多く給料を払ってあげたいと思っています。

 そういう意味では、できることがあるとすれば、一人当たりに耕作できる面積をどれだけふやしていくかというところになってくるのかなと。今の人数で、今大体一人当たりでいうと十三ヘクタールぐらい作付をしている計算になるんですが、では、これを倍の二十六ヘクタール、三十ヘクタールとできるようになったとしても、それでも、全体でいえば六分の一を減らせるというぐらいのレベルですので、今後、それほど大きな、例えば、では、今の生産費を半分に減らせるかといったら、それは相当難しいことなのかなというふうには考えています。

林(宙)委員 大変リアルな感覚でお答えをいただいたと思います。ありがとうございます。

 これからコスト削減をどのくらいしていけるかというのは、非常に農政にとっても重要なファクターであることは間違いがないかなというふうに思っています。政府の方も、野心的に、コストを四割下げるんだという目標を立てられているようなので、非常に現場が、やはり経営者の方によってどのぐらいかというのは、それぞれ感覚はさまざまだと思うんですが、その目標ということ自体には、私もそれを目指せるのならやはり目指すべきだというふうに思っていますので、ぜひ現場の皆さんにも御協力をいただきたいなというふうに思っております。

 では、時間がそろそろなくなってきましたので、最後に、もう一問、これは下渡参考人にお伺いをしたいと思っています。

 下渡さんは、日ごろから、世界市場とか輸出的な側面からいろいろと論じられているところも多いということで、これもお伺いしたい、物すごくふだんから興味のあるところなんですが、米を、では、日本の外で売っていきましょうというふうになったときに、今は、日本の米は、海外に行くと、例えば香港だの、そういったところでは非常に高く売れますよというのは確かにそうなんですが、実際、どのぐらい全部で輸出しているんですかというと、三千トンとか、そのレベルなんですね。そうすると、そんなに大きいロットで今出せているわけではないですよと。

 ただ、今後、どのぐらい世界に日本米に対する市場があるのかということによっては、十分有効な戦略になり得ると思うんですが、そのあたり、下渡参考人のお考えで、今後、どのくらい日本米に対する需要というのが拡大していきそうか、今後十年ぐらいのスパンでまずは結構だと思うんですが、それを教えていただきたいというふうに思います。

下渡参考人 非常に難しい御質問かと思いますけれども、私はそれほどふえないと思います。輸出はなかなか厳しいだろうと思います。

 特に低価格米については、この間もミャンマーに行ってきたんですけれども、ミャンマーも今百五十万トンぐらい輸出をしておりますし、それからカンボジアも百万トンの輸出計画を立てているわけですが、米の値段が仮に引き下げられて安くなったからといっても、輸出はそう伸びない。

 むしろ、今、日本酒の輸出が伸びているわけですね。これは大体一〇%、二〇%ぐらいの水準で毎年伸びているわけですが、こういった、要するに加工品、清酒は原料が米なんですね。かつては四十万トンとか、国内でもそういった清酒の原料としてお米が使われていた時代があるわけですけれども、今はもう非常に清酒の需要が減ってしまって、原料米の使用も減ってしまったということになっているわけです。むしろ、そういったお酒としての方が付加価値も高いし、需要もある。しかも世界的に日本食ブームですね。そちらの方向で輸出を促進する方がよろしいのではないか。

 だから、米そのものは、どこも、アジアもみんな米をつくって、最近は、ベトナムだとかミャンマーなんかもそうなんですけれども、メード・バイ・ジャパンという、日本の技術とか種子を持ち込んでつくる、これは米もそうですし、それから野菜なんかもそうなんですけれども、そういうものがふえてきているというのが実態です。それが実際に市場に出回ってきていますということでよろしいでしょうか。

林(宙)委員 どうもありがとうございました。

 きょうは、いろいろと参考人の皆様に貴重な御意見をいただきましたので、また、これをベースにして、今後の農政について考えていきたいなというふうに思います。

 本日は、本当にありがとうございました。質問を終わります。

坂本委員長 次に、寺島義幸君。

寺島委員 民主党の寺島義幸でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆様方に、お忙しい中お出ましをいただきまして、貴重な御意見を賜ったわけでございまして、感謝申し上げる次第でございます。

 時間の許す範囲の中で質問をさせていただきたいと思うわけでございます。

 まず初めに、中嶋参考人、そして谷口参考人にお伺いをいたしたいわけであります。

 素朴な疑問があるわけであります。

 政府は、五年後を見通して、生産調整をやめよう、こういうふうにしているわけです。私は、本当にやめちゃうのかな、そんなに簡単にはいわゆる減反政策をやめられないのではないかなと思っている一人なんです。特に、私は長野県でございます。中山間地に住んでおります。長野県は、農家の数が日本一多いというような、そういう地域でありますがゆえに、そんな思いもするわけであります。

 政府に、本当に減反をやめちゃうんですかと言っても、なかなか明確な答弁はないんです。行政による生産調整を農家の皆様にお願いしていることはやめて、見直していくんだ、そして、戦略的作物の方に移行していくよう御努力していくんだ、そして、さまざまな市場メカニズムの情報を提供してやっていくんだということで、明確な答弁はまだいただけない状態でございます。

 そうした中、生産調整がなくなれば、ある意味では、兼業農家あるいは小規模の農家、大規模の皆様もそうなのかもしれないんですけれども、いわゆる自由にお米がつくれるようになる。とすれば、過剰米がふえるのであろうというふうに思うわけであります。そうなりますと、米の価格が下がるわけであります。となると、農業者の収益が減る。そうなりますと、やはり小規模の農家の皆様、あるいはまた高齢化も進んでおるわけでありまして、では、農業をやめちゃうかと離農も進み、結果において、中山間地の耕作放棄地がふえちゃうんじゃないかな、いわばこんな素朴な疑問があるわけであります。

 今日までさまざまな議論を重ねてまいったわけでありまするけれども、先生のお立場で、中嶋参考人、谷口参考人に、どのようなお考えをお持ちなのか、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

中嶋参考人 五年後に生産調整をやめるというふうには私は余り理解していなくて、それは行政が生産調整をコントロールするのをやめるというふうに理解しております。

 それで、私自身は、ある意味、国民がお米を買い支える構造というのはかなり必要ではないかというふうに思っております。そして、農業関係者の方々が調整をして、ある程度生産調整を進めていくという構図が今後も求められるのではないかなというふうに思っております。

 ただ、そのあるべきレベルに落ちつくまで、若干混乱があるのではないか。それを、いかに混乱を少なくそこに収束させていくかというための努力が求められているというふうに考えております。

谷口参考人 私も、先ほど述べましたように、生産調整は、政府としてはやめるという方向で方針を出しているわけですけれども、現場の受けとめ方は、五年後にもう一回考え直す、そういう受けとめ方だというふうに思います。

 実際問題として、五年後に、生産調整に当たるようなものをどの主体もしない、全く完全に自由な作付状態というのは多分できないだろうと思います。

 仮にそれができたとして、価格の乱高下が起きてくる可能性があるわけですけれども、それが、野菜のようなレベルでお米がそういう状況に陥ることを認められるかどうか。これは国民の選択だと思いますけれども、私は、研究者としては、それは余り認めたくないな、そういう方向は正しくないなというふうに思っております。

 例えば、お米でなぜ生産調整が困難かといえば、やはり数が多いということですよね。つくる方が百万戸単位でもっているわけですけれども、酪農の場合には二万戸しかないわけです。その酪農が、二万戸の中でやはり生産調整しながら一生懸命国内生産を維持していくという努力をしているわけですけれども、逆に言えば、百万単位で生産者がいる中で、日本の場合には、農水省の非常に大きな影響力のもとに、団体の協力を得て、よくやられているなというのが私の率直な感想です。

 というのは、グラフを描きますと、かつての需要量との幅はこんなに動いたんですね。最近は、ほんのわずかですよ。もう見事です、ここまでできればもう十分だというぐらいの。そのぐらいのことは、いわばリスクとして国民が受容するようなふうにいかないと実はいけなくて、その議論がちょっと足らないんじゃないかなというふうに思います。長期的な食料安全保障を考えたときには、もう全く許容の範囲だというふうに私は考えております。

寺島委員 ありがとうございます。

 そして、仮に政府の行うような生産調整がなくなるとすると、先ほど申し上げたように、離農が進む。こうなると、農地中間管理機構で受けてやりますよ、こういう部分もあるんだろうというふうに思っています。この農地中間管理機構、私どもも、昨年、法制化に当たりまして賛成をいたしました。つまり、うまくいってもらわなければ困るわけです。

 そういう立場から谷口参考人にお聞きしたいんですけれども、この農地中間管理機構、かつてはそれに似たものが、農業公社であるとかJAとかでやられていたわけなんですけれども、今度法制化をして、全国的に国、行政が前面に出る、あるいはまた地域、市町村等が、委託とかいろいろあるわけでありまするけれども、という流れの中で、農地中間管理機構をしっかりとやっていっていただかなければならない、こういう思いがあるわけであります。

 これについて、今度の農地中間管理機構について、いい点、悪い点、あろうと思うんですね。その辺を含めて、少し掘り下げたお話を承れればありがたいと思います。

谷口参考人 農地中間管理機構自体は必要だというふうに私は考えております。問題は、運用の仕方をもうちょっと緻密にやる必要があるだろうと思います。

 一方で、今、規制改革会議と産業競争力会議の議論の中で、農業委員会は要らないんじゃないかみたいな議論が出ていますね。こうなっていくと、恐らく、市町村が現場の農地情報を農業委員会を介して得て、そして、こういう土地がありますけれども、受け手の方はいますかと公募してやっていくような仕組みをとるわけですけれども、そういう土台になる部分を根こそぎ剥がしちゃった状態で市町村がやれといっても、なかなかできないんじゃないか、それはワークしないんじゃないかという気がします。

 それと、都道府県単位、非常に大きな単位でありますけれども、それでもほとんどないでしょうかね。つまり、例えば、県庁所在地にいて、県内の農地の状態が全部一緒に、一遍にわかるような県というのは、そうないんじゃないかと思うんですよ。つまり、非常な中山間のところから全く平らなところまで、全く条件が違うものを同時に、農地の情報についてある判断をして、ここにあるものがあるから、この人をこっちにくっつけてということを県庁所在地にいて全部指図できるかというと、できないだろう。

 そうなると、かなり市町村のレベルにおりていかなきゃいけない。しかも、その市町村が行政合併して大きくなっていますから、かつての市町村ではなくて、非常に広域的な、例えば神奈川県の相模原だったら、政令指定都市までなってしまって、それこそ中央道から小田急線のずっとこっちの方まで、広い範囲を抱えています。そこの範囲で、同じような基準でもって農地流動化の方針を考えるということ自体も困難になっているわけですから、そういう点では、恐らく、地域に管理機構の支部的な組織というものをどうつくっていくかということが問題になるんじゃないかと思います。

 初期の農林省の案ではそういう構想があったはずなんですけれども、残念ながら消えてしまって、県一本という形になっていますけれども、実は、恐らくこのあたりを、一つの県の中できちんと幾つかの地域ごとに分けて設置していって、それと市町村との関係をつくるということを間に入れないと、なかなか難しいなという気がしております。

寺島委員 ありがとうございます。

 そのとおりだと思うわけであります。一国一制度というのが日本はありまして、それぞれの、例えば北海道には北海道の農政があるんだろうと私は思いますし、私どもみたいな田舎というか中山間地の多い長野県なりの農政があっていいんだろう。中間管理機構もまさに、そういった地域のありようによって対応が違ってくるんだろうというふうに私も思っております。ありがとうございます。

 続いて、もう一度谷口参考人にお聞きしたいんですけれども、ここで、戦略的作物というか飼料用米に大分力を入れていく、国はしようとしています。しかし、その生産拡大が本当にうまくいくのかなという思いが実はあります。

 先日、部会でもいろいろお話を承っておりましたら、北海道では、水田の地帯と畜産の地帯が大分離れていて、流通をするにも三、四時間もかかっちゃうんだ、果たしてうまくいくのかな、加工施設もまだだし、どうなっちゃうんだろうなと。いろいろな例を挙げると、心配事もあるわけです。そうした中、二〇一三年には飼料用の作付が前年に比べて一・二万トンぐらい減っちゃったというような状況も承ったわけであります。

 これらを勘案して、飼料用米の拡大ということが大きな課題でもあろうと思うわけでありますが、これをうまくやっていかないかぬわけなんでしょうけれども、これらに対して、どのような課題になるのか、果たしてうまくいくのかという心配も実は私はあるわけであります。その辺のところを、先ほども少しお話をいただいたわけでありますが、もう少し詳しくお聞かせをいただけますか。

谷口参考人 一九七二年に食用米のレベルの単収を私は計算したことがあるんですけれども、今から四十年以上前ですが、その当時、一番高い単収の食用米地帯というのは、長野県とそれから青森県、津軽と長野県の伊那の地方にありました。

 その当時の単収は、大体十三俵から十四俵、七百八十キロから八百四十キロの幅でありました。今から四十年前ですね。そのころの平均的な単収は、五百キロをはるかに割って、四百キロ台半ばですね。倍とはいかないけれども、かなりの水準です。その後どうかというと、もうほとんどふえていない、むしろ減っているという状態になっています。

 逆に言うと、飼料用米については、そういうふうな可能性から見ると、今、東京農大の私の研究室で、私はやっていませんけれども、隣の先生がやっているのを見ると、ポットの段階やいろいろな段階がありますけれども、単収は大体、十アール当たり最大で一・二トンまでは行きそうです。モミロマンというのをやっています。

 それぞれの地域ごとに、飼料用米、八カ所ほど、それぞれの奨励品種がありますけれども、その品種の体系でもってその地域にどれだけできるかということ自体がまだよくわからない段階なんですよね。そのままこれから将来の見通しというものを議論するのはまだ早いんじゃないかなというふうに思っています。

 そういう観点からしますと、一番大事な点は、恐らく、この飼料用米の政策については十年間全く変えないぐらいのことをはっきり宣言してやるようなことがないと、いつでも飼料用米、食用米とふらふらしながらやるということになれば、ほとんどの農業生産者は飼料米を真面目にやろうという気にはならないと思います。その点が一つです。

 それから、もう一つ大事な点は、きのうもEPAが締結される方向で動いているという報道がありましたけれども、恐らく、国内の畜産を考えていく場合に一番大事な問題はやはり餌の問題で、粗飼料、濃厚飼料を含めて国産の飼料に依存した形でもって畜産物ができてくる、そういうものを、安全プラス国土保全にも関与するということで消費者に買ってもらえるような体系に移ることが非常に大事だと思います。

 その場合に、飼料用米とWCS、ホールクロップサイレージ、両方とも大事ですけれども、飼料用米は広い範囲を運ぶことができますので、個々の間の需給のミスマッチを解消するという点では、ホールクロップとは違う意味があります。ですから、この二つを適切に組み合わせながらやっていくことによって国産の畜産物の需要を喚起し、それを広げていくという形でもって全体として自給率を上げるという戦略が可能だと思います。

 実際、例えば私自身の塾をやっていたときの教え子の方が、大分県の鈴木養鶏もそうですけれども、一軒の養鶏家で二百ヘクタール分の飼料用米を、大分県の分を二〇%以上、彼のところで確保しているというようなことになりますと、やはりやる気になってやれば、まだまだ転換する余地がありますし、平田牧場にしてもどこにしても、国産の飼料を使った豚肉あるいは卵等々、最後は牛乳だと思いますけれども、需要を拡大する余地は残っているのではないかなというふうに思っております。

 その可能性を広げない限り、自給率目標をある程度高いものに設定して、それを達成するということはほぼ絶望的ではないかなというふうに思っております。

寺島委員 ありがとうございます。

 そして、今度の米改革で、水田の農業構造が変わっていくか。構造改革をしていかにゃいかぬわけですけれども、農業の構造改革が進むかという点について、もう一度谷口参考人にお伺いしたいんです。

 農地中間管理機構を利用して、規模拡大を図って、低コストにしていく。いい取り組みだと思うわけですけれども、果たしてそれがうまくいくのか、先ほどのお話。そして、岩盤対策をやめて、将来的には収入保険で補っていくんだろうというような説明を政府はしておるわけでありますけれども、果たしてこういう改革で農業の構造改革がうまく進んでいくのか。この点についての所見をお伺いいたします。

谷口参考人 それは、進むかどうかじゃなくて、進めなきゃいけないというふうに私は考えております。そして、実態は、上手にやればそういうことが可能だということを示していると思います。しかも、従来型の規模拡大というような思想をちょっと捨てないといけない事態になっているというふうに思います。

 具体的な例を申し上げます。

 富山県の富山市に、グリーンパワーなのはなという、農協が出資している農業生産法人があります。現在の面積が既に三百ヘクタール近くになっておりますけれども、ここでは、五十六ヘクタールのときに、彼らの経営が五十ヘクタールになったときに、実はその年に、あと十六ヘクタール分、普通の形でもって農地が出てきました。それ以上に、実は、集落営農が二つ潰れまして、二十五ヘクタールの集落営農と、十五ヘクタールの集落営農が同時に潰れて、一年間に、彼らが経営していた五十六ヘクタールと同量の面積が出てきたんです。

 これは、五十六ヘクタールの経営だから耐えられて、一年で一挙に百十二ヘクタールに二倍化したんですね。一ヘクタールが二倍化することは不可能ではないと思います。十から二十も不可能ではないと思いますが、五十六が百十二になるということは、一年でやるのは大変なことです。

 何が起きたかというと、集落営農のうちの一つの、二十五ヘクタールのところにいた七人のオペレーターの方々も含めて、同時に、地域農業を支えるという観点から、それが一つの大きな経営体に飛躍したということです。こういう形のふえ方が進むのが現代だというふうに考えております。

 私のお配りしました資料の二ページの真ん中のところに、農水省の構造動態統計を使って、五年ごとの期首、期末の、規模ごとの経営体が非農家になった、農業をやめた農家がどのぐらいあるかというのを見たときに、二〇〇五年から一〇年のところを見ますと、都府県においても、十五ヘクタールという最大規模階層においても、一二・三%が農業をやめる、継続的経営体じゃなくなっているわけですね。こういう形で農地が出てきますから、規模拡大は、従来考えられていたような、一ヘクタール、二ヘクタールを毎年毎年積み重ねていくというようなやり方ではなくて、ひょっとすると倍々ゲームになるような形で出てくることが予想されます。

 そうなると、農地中間管理機構を通じて、ぼんと出てきたときに、さあ、それを次の担い手に渡すときに、ふさわしい担い手がすぐ出てくるかどうかわかりません。となると、恐らく、農協の直営や農協の出資法人というようなもの、あるいは市町村の農業公社というようなものが間に介在しながら、そして、場合によっては彼らがその引き受けた農地でやりながら、その農地の一部を次の担い手に渡してしまう、あるいは新規就農の方に渡してしまうというようなやり方、つまり、新規就農者育成事業と担い手の育成という問題が同時に結合するような形での地域農業構造再編が重要になってくるのではないか。そういうことに、中間管理機構は、上手に対応すれば十分対応できるものを持っているのではないかというふうに思っています。そういう点では、私自身は期待しております。

 ですから、問題は、これがきちんと市町村レベルでワークするように、どのようにやるかという、そのきめの細かさをぜひ実現していただきたい。

 従来の都道府県の農業公社が必ずしもうまくいかなかったのは何かというと、それは、やはり現場との距離が遠かったことが一つ。

 今回はもっと難しいです。なぜならば、前の場合には売買ですから、売買というのは、出す方の農家は、もう出してさようならなんですね。しかし、今回は貸し借りですから、誰に貸すかということが、二十年、三十年、四十年続くかもしれないわけです。それは、売るような感覚で、一旦預けますというふうにいっても、簡単にいかないわけですね。地域とのつながりを持ちます。

 そういう観点では、人・農地プランと連動するような形で、地域とのつながりを上手に生かしながら、しかも、面的なまとまりをうまくつくりながらやるということで、いろいろな難問が控えているとは思いますけれども、中間管理機構自体を少しブラッシュアップしていけば、そういうことは不可能ではないというふうに考えております。

寺島委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、最後に一点だけ。

 きょうは横田農場さんにもおいでいただきまして、大変すばらしい取り組みをいただきまして、また、きょうは地元の永井農場さんにもおいでいただいているようでございまして、循環型農業を追い求めながら六次産業化もされている、横田農場さんと同じく、すばらしい取り組みをされているわけでございます。

 先ほど、直接支払いで戸別所得がなくなっちゃう、自立が大事だ、なくなっちゃっても仕方がないのかなというようなお話でありまして、頼もしくも思い、ちょっとびっくりもしたんです。それでは、果たして、私どもの立場というか行政の立場からすれば、横田農場さんのようなところにどういう支援をしたらいいのかなというのをずっと考えていたんですけれども、今一番支援をしてほしいということがありましたら、率直にお伺いできますか。

坂本委員長 横田参考人、時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

横田参考人 はい。

 大分言い過ぎたかもしれませんけれども、やはり希望としては、もちろんそういった支援がなくてもしっかりと自分で自立して、自分の考えで、自分がリスクを負って経営していくというのが大事だと思いますが、支援がもしいただけるということであれば、僕が一番大事なのは、やはり環境の整備、つまりは圃場の整備だというふうに考えます。

 そういう圃場の整備さえあれば、その中で、私たちは自分で、自分の意思で、自分の地域に合った経営を行っていきますし、仮に、私が潰れるようなことはあってはいけませんけれども、もしそういうことがあったときにも、今度は新しい担い手がそこで出てくる可能性も出てくるんだと思いますので、僕は、圃場の整備、基盤の整備をしっかりとしていただくことがやはり一番大切なのかなというふうに考えます。

寺島委員 ありがとうございました。頑張ってください。

坂本委員長 次に、岩永裕貴君。

岩永委員 日本維新の会の岩永裕貴でございます。

 本日は、四名の参考人の皆様方に、非常に参考になる、そして興味深いお話をお伺いさせていただきましたこと、まずは冒頭、深くお礼を申し上げます。

 もうこの順番になってくると、ほぼ論点が、私がお伺いさせていただきたいなと思っていたことが皆様方から質問をされているわけですけれども、ちょっと何点か、一歩、二歩踏み込んだ質問をさせていただきたいなというふうに思います。

 まずは、一番最初に、いわゆる中山間地の農業をいかにして守っていくんだということなんですね。

 これについても、多面的機能を守るとか、さまざまな形で条件不利について支援をしていくというようなことを農政の世界では語られるんですが、そこに住んでいらっしゃる方々は、私もそうした地域の出身でありますのでよくわかるんですけれども、農政だけを語っても、やはりそこに住み続けることはできないんです。学校が閉校していってしまうとか、買い物が遠くなって、高齢者になってくるとなかなか移動が難しくなってくるとか、本当に、農政以外の部分で切実な、人生の大きな判断をしなければならないという場面がたくさんある中で、幾らこの中山間地を農政が、守ることも大事なんですけれども、それだけではやはり解決しない部分というのが非常にたくさんあります。

 そうしたことを鑑みて、他の省庁では、コンパクトシティーをどんどん進めていくんだというような話もあります。駅周辺とか都市部に集中して、歩いて暮らせるまちづくりをというような方向性も一方で政府は出しているような現状の中で、中山間地域の農業を守っていくために本当にこれから考えていかなければならないのは、そういった全体的な生活環境も含めた改善策が必要なんだろうなということは常日ごろから感じているところではございます。

 ただ、かといって、中山間地に放棄地がどんどんふえていくということも、これは日本の農政にとって大きな問題ですので、そういった状況を鑑みた中で、本当に中山間地の農業を守っていく次の形というんですか、これはイメージみたいなことでも結構ですので、本当に私たちが考えていかなければならない次世代型の中山間地の農業の守り方というものを、何かイメージがあれば、四名の参考人の皆様方からそれぞれお伺いできればと思います。

下渡参考人 それでは、中山間地の問題ですね。

 これは、農業だけでは無理だと私個人は思っております。もう少し、それはそれぞれの状況にもよりますけれども、観光であるとか、あるいは農業以外の産業、例えば工芸品であるとか、いろいろなそういったものを地域に呼び込む。具体的にそういうことで成功している事例もあると私も多少存じておりますけれども、やはり農業だけで中山間地を維持することは非常に困難だろうというふうに思っております。

横田参考人 私のところは、どちらかというと中山間とは全く逆の平場ですので、現実の話としてはなかなか私も中山間のことはイメージできないんですが、私が所属しています全国稲作経営者会議の中には、中山間の中で本当に頑張っていらっしゃる先輩方も多くいらっしゃいますし、圃場一枚一枚にイノシシよけの電気柵を張ってとても大変だというような話をされている方もたくさんいます。

 そういう方たちの苦労、あと、草刈りののり面がすごく大きくて、それを刈るのがすごく大変だというような話もよく聞く中で、では、この問題をどうしていくのがいいのかなというのは、僕も、正直なかなか明確な答えは、申し上げられるようなものは持っていないんですけれども、間違いなく言えることは、これまでの、例えばお米にこだわらないといけないとか、そういういろいろなこだわりではなくて、本当に、適地適作といいますか、新しい経営のやり方、先ほども、きょう随行者として来ていただきました永井農場さんなんかもそうですけれども、やはり中山間の中で耕畜連携であるとかもしくは六次産業とか、そういったところで取り組んで経営を発展させておられる方もいらっしゃいますので、違う形で発展させていくということも必要なのかなというふうに考えます。

谷口参考人 中山間地域の維持といいますか開発といいますか、これについては二つの視点が大事だと思っております。

 一つは、先ほど出ていましたように、農業だけでなく産業全体で考えるということです。

 ヨーロッパと日本の場合の中山間の位置づけで根本的に違っているのは何かというと、ヨーロッパの場合には、中山間に当たる山間部というのはほとんどが国境です。ですから、ここに農業があって住民が維持されることは国境を維持することにつながりますので、非常に重視しています。それを、単に多面的機能と呼ばないで、条件不利地域対策という枠組みの中でやっているところがヨーロッパの非常に重要なところだというふうに考えております。

 こういう観点と、もう一つ、農業だけでなく多様な産業を起こすという観点からしますと、例えば、酒田市に展開している平田牧場がトウモロコシを餌として中国から導入している。こういうことによって、アムール川を下って、日本海の東方シルクロードという形でもって描いて、自分のところにトウモロコシを持ってくる。そして、それと飼料米をくっつけて、高付加価値で販売するという戦略をとっています。

 こういう形で、日本海側の物流あるいは産業を起こしていくような視点を持って、そして、それが日本列島の脊梁山脈を通って太平洋側と日本海を往復する、その真ん中に中山間があるわけですから、この構造ができてくれば、中山間の問題というのは産業構造的には解決する、非常に重要な起点になる可能性があると思います。

 そういう観点で、中山間地域問題を考えるには、日本海側の問題を考えるということが非常に重要だ。もちろん、これで九州の問題はそのままいきませんけれども、かなりの部分はカバーできる要素があるんだと思います。

 それからもう一つは、中山間地域問題を考える上では、水田農業だけでなくて、やはり今では最大の問題は公共育成牧場だと思います。

 市町村あるいは県が有している大量の公共育成牧場が、今ほぼ風前のともしびの状態になってきています。そして、次々にそれを使う人がいなくなって、民間に払い下げたり管理委託したり、さまざまな形で維持しようとしていますけれども、ここについて相当のてこ入れをしてやれば、かなり大規模な経営体ができてくる可能性があります。

 そのためには、先ほどから言っていますように、当然、生乳での販売ということになりますと、酪農等については非常に困難があります。気象条件も悪いです。冬も雪が多いです。そういう点での条件不利性を特別に補っていくような、つまり、超高冷地あるいは超高地になりますので、そういうところを踏まえていけば、かなりの芽があるのではないかと思っております。

 日本の酪農について言えば、生乳に依存し過ぎなんですね。もっともっとチーズでいかなきゃいけない。つまり、乳製品のところの需要に十分国内生産が応え切れていない。となると、これは、開発、研究、食のマイスターをつくっていくとか、そういうさまざまな取り組みによって、可能性はかなり広がるのではないかなというふうに思っております。

中嶋参考人 私は、中山間地域というのは、一つの日本の原風景をつくっている非常に重要な地域だと思っております。それから、文化の面で見ても、かなり重視しなければいけないと思いますので、ぜひとも振興を図らなければいけないと思います。

 農村の振興は、その地域の農村資源に何があるかということをきちんと把握して、それを有効に活用するというのが基本的な方針だと思っていますので、中山間地域は何が強みなのかというようなこと、何が使えるのかということをきちんと分析する必要があると思います。

 現在、高齢化が非常に進んでいて、それへの対策というのが非常に問題となっているというのも現実でございます。ただ、その高齢者の方々をいかに活用するのかという視点でのある種の産業政策、これも中山間では行えるのではないか。その場合に、つくられているものの量は少ないですから、どうしてもスモールビジネスにならざるを得ない。スモールビジネスを振興するような方策というのをきちんと確認しておかなければいけないというふうに思っております。

 それから、中山間というのは、実は非常に広い範囲を指定していて、私は中間と山間はきちんと分けて議論すべきではないかなとも思っております。

 中間に関しては、都市と農村の両方の性格を持つものもあります。都市の人たちの交流という意味で、もっともっと活発にできる部分もあると思いますので、そこの面をいろいろ考えていきたいと思います。

 それから、山間に関しては、やはり森林と農業の関係をどうするのかという問題があります。山に戻してしまえばいいじゃないかという乱暴な議論もございますが、先ほど農村資源の維持管理のお話をしましたけれども、森林に関しても維持管理というのは非常に重要です。そこで手を抜くと、また災害の原因にもなるということも気をつけて、振興策を考えなければいけないと思っております。

岩永委員 ありがとうございます。

 まさに、今最後に中嶋参考人がおっしゃっていただいた、やはり中と山間を分けなければならないというところは、本当にもうおっしゃるとおりだと思います。

 私の生まれ育った地域も、小学校が一つ残っているんですけれども、今や、全校生徒が十名ぐらいしかいないというような中で、そして、その地域に住んでいらっしゃるおじいちゃん、おばあちゃんも、事あるごとに寄って、その地域がこれからどうしていったらいいかということも本当に精いっぱい考えていらっしゃる状況にはあるんですけれども、打開策が見えない。

 これは、中間管理機構もそうだと思いますけれども、これから日本の農政が、本当に、ある方向性を示していかなければならない大きな大きなテーマだと思いますし、残念ながら、まだその答えが見出せていないというような状況ではなかろうかなというふうに考えております。

 適地適作とか、今までの固定観念というものを一度白紙に戻して、またしっかりと考えていかなければならないと考えておりますので、また今後もさまざまなアドバイスを多角的にいただければなというふうに思います。

 そして、引き続きまして、下渡参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 我が党の勉強会にも講師として来ていただきました。そのときからなんですけれども、これもある意味、農政の世界ではプロパガンダというか神話というか、海外にはアジア中心に富裕層がめちゃくちゃたくさんいらっしゃるんだ、そして、日本は安全で安心でおいしいものをつくるから、これからどんどん海外に対してマーケットが広がっていくし、売れていくんだというような話の中で輸出が語られることが非常にこの委員会の中でも多いんですが、決してビジネスの世界はそういう甘い世界ではありません。

 下渡参考人がおっしゃっているように、やはりかなりの戦略性がないと海外での市場の展開は難しいという中で、日本の国内の農政を見てみても、今ようやく産業化という言葉が定着し始めて、いかにしてビジネスとしての農業というものを展開していくかということが語られ始めているところで、より難しい市場というか、大企業でさえかなりの苦戦が強いられるような市場に対して、日本の農業がいかにして進出をしていくのかというところも、我々は現実を見ながら戦略を立てていかなければならないと考えておりますが、こうしたところで、その戦略というものを本当に個々の農家が立てられるかというと、決してそうではないというふうに考えます。

 誰がこういった戦略を立てて、どういうふうな体制で日本として海外の市場に打って出るのがベストというか求められているかという点について、御意見をお伺いできればと思います。

下渡参考人 それでは、お答えします。

 今の御質問、輸出は、私は、第一ステージが終わって、これからいわゆる第二ステージに入るのかなというふうな認識でおります。

 特に、御質問の中でも、農産物といいましても、ほとんど加工品ですよね。大きなウエートを占めているのは、加工品であったり、あるいは水産物であったりということで、さっき御質問があったお米もそうなんですけれども、実際に、青果物だとか、そういったものの輸出というのは極めて少ないですよね、割合的にも。

 しかも、先ほどちょっと触れましたけれども、要するに、メード・バイ・ジャパンといいますか、最近は、海外で、日本の種子と技術を持ち込んで、日本人が、米、それからいろいろな青果物、果物、あるいは果実的野菜も、そういうものを現実につくって、かなり品質的にもレベルの高いものが市場にもう出回るようになった。しかも、値段もリーズナブルだということで、現地の高級スーパーなんかでも売られるようになってきた。だから、そういう中で農産物の輸出を伸ばすというのは、特に生鮮食品については極めて難しい状況にあるというのが現実だろうと思います、これはお米も含めてですね。

 確かに、富裕層、世界の食のマーケットというのは、二〇二〇年までに三百六十兆円に拡大するとか、そういう予測がございますけれども、果たして輸出を二〇二〇年までに一兆円規模にまで持っていけるのかということについては非常に厳しい。これは相当戦略的にやっていかないといけないし、末端の産地の輸出体制といいますか、そういうものも十分整っていないというのが実情ですよね。だから、非常に単発的な、イベント的な輸出が多い。特に、政府の補助事業を利用して、二分の一だとか、そういったいろいろなものを活用して、現地の見本市、展示会、あるいは物産展、そういったところで非常に短期間にやっているというのが現実ですね。

 だから、いかにしてコマーシャルベースできちんとペイできるような、そういった輸出事業をやっていくかということをもう少し戦略的に考えていかなきゃいけない。そういう意味での第二ステージに来たのではないか。

 しかも、メード・バイ・ジャパンの農産物というのが非常にふえてきている中で、では、それにどう対応していくのかということ。一方では、日本食ブームで、今は世界には五万五千店の日本食レストラン、これはもっとふえ続けているわけですけれども、そういう現実もあるわけですね。こういったものにどう対応していくかということを今後考えていかなければいけないと思います。余りお答えになっていないと思いますが。

岩永委員 ありがとうございます。

 もうそろそろ時間もやってまいりましたので、二問だけお伺いをさせていただきます。

 まず一点は、谷口参考人にお伺いをいたします。

 先ほどから、食の安全保障という言葉がアドバイスの中で出てきているんです。

 端的にで結構ですので、自給率と産業化というものを考えるときに、私は、やはりある程度のトレードオフというか、オランダ農業がよく語られるんですけれども、あれだけ小さな国土なのに、七兆円の輸出規模があって世界第二位にいるというようなところ、このオランダ農業というものを、食の自給率と食の安全保障ということを考える上でどのように評価していらっしゃるのかということについて、簡単にお答えいただければと思います。

谷口参考人 オランダを見る場合に、忘れている視点が一つあります。それは、オランダの輸出の重要なものにチーズがあります。飼っている牛、チーズの牛乳を出している牛は何で飼われているか。濃厚飼料じゃなくて草なんですね、あれだけ低湿地が多いですから。つまり、風土に根づいた畜産が行われているということが条件なんですね。

 そういう観点をやはり入れておかないと、穀物の自給率そのものは日本と余り変わらない、二〇%とかそれ以下なわけですね。しかし、それぞれの国が持っている自然条件というものを最大限生かした形でもって農業が行われている、そういう観点が一つ大事かなと思います。

岩永委員 もう一点だけ、簡単に横田参考人にお伺いをしたいんです。

 今、中食、外食、加工品というところへの納品というものをしていらっしゃるということなんですけれども、私は、その外食、中食は、産業界全体を見ても、非常に厳しい世界というか、価格競争であったりスピード感であったりという部分を思うんです。

 流通過程で、何かこういった皆さんとビジネスをしていらっしゃる中でお困りの点があれば、流通過程に限って、何かお困りの点があれば、一言お答えをいただきたいと思います。

横田参考人 私のところでお取引をさせていただいている外食、中食、それから加工業者さんは、全て地元にある、それほど規模の大きくない業者さんと取引をしていますので、流通の段階とかで困るということも特になくて、むしろ、すごくよく顔の見える関係で、すごくよく相談をしながらできますので、例えば買いたたきに遭うとか、そういったことがないような、対等とは言いませんけれども、本当に近い関係でできるようなところとやれているのがうちの強みであるのかなというふうにも思います。

岩永委員 終わります。

坂本委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、谷口先生にお伺いしたいと思います。

 谷口先生におかれましては、本日、六名共同提案の法案のメリットとか意義を、わかりやすく、体系的に、論理的に御説明いただいて、本当にありがとうございました。実は、私も六名共同提案の一人でございまして、我が意を得たりという思いで聞いている部分もございました。

 それで、質問なんですが、この飼料米のところなんです。四ページ目ですね。

 飼料米というのは主食用米と体系が全く異なる、だから、そう簡単に転換は難しいんじゃないかという趣旨でおっしゃっておられたと思います。

 それで、私も実はそこはかなり危惧を持っておりまして、政府が今回の経営改革法、農政改革の法律で飼料米に転換すると言っているのが、たしか主食用米の一割が転換するというのと不作付地の四分の三に飼料米が作付されるという、この試算が私は楽観的だなと思っております。

 それで、これまで委員会で議論したんですが、そこの根拠は政府から十分示していただいていないわけです。恐らく一つの決めなんだろうと思うんですが、有識者の先生から見て、この試算というのは合理的なのかどうか、そこの感触をお教え願いたいと思います。

谷口参考人 不作付地というのは、日本全国満遍なくあるのではなくて、はっきり言えば、東北地方に偏って存在していると思います。ですから、秋田県の中で、今それを利用しながら、豚に飼料を使うという形でもってやっているものもあります。

 この間見てきたところでも、逆にこういう考え方があります。SPFの豚を飼って、そこに飼料用米を使ってやっているんですけれども、実は、これは畜産のためではなくて、そういうふうに資源循環型の農業を構築することによって、我がJAでつくっている、我が地域でつくっているあきたこまちは最高のものですよ、そういう売り方なんですね。

 それはそれでいいと思います。つまり、それぞれの地域ごとの個性に合わせて飼料用米を使い、単に飼料用米を売るだけではなくて、循環型農業と結びつけていく、この考え方がかつて東北には弱かったと思います。それが飼料用米を通じて芽生えてきていることは非常に大事だと思います。

 そこに、さらにわらをもう少し活用していただければ、幅が広がるのではないかな。わらの場合には、当然、豚ではなくて肉用牛等になりますけれども、そうすると、堆肥そのものの幅が広がる、そのことによって循環型農業の幅が広がってくるという可能性があると思います。

 そういう点で、まだ余地はあるし、農水省の推算はそんなに間違っていないというふうに思っています。

畑委員 ありがとうございました。

 それから、農政改革のあり方、進め方というところで、総論ですが、これは中嶋先生と谷口先生と下渡先生にお伺いしたいと思います。

 安倍総理とか林農水大臣が、戸別所得補償政策が農地集積や構造改革をおくらせたという答弁をこの国会の審議でしております。

 私は、この認識は正しくないと思っている立場の人間なんですが、単純に、米の直接交付金が出るから、やめるべき人がやめなかったということで、ただ、これが出ているからやってきたというものでもなくて、小規模な人とか地方の御老人は自分のお金を出したり年金を出してやっているわけで、赤字なわけですね。だから、そこへ幾分補填されたからといって、引き続きやるというインセンティブになったとは私は思わないわけです。

 そういう前提の中で、後で、このおくらせたという認識がどうなのかということをお三方の先生にお伺いしたい。

 あと、農業というのは自然が相手で、限られた土地が相手で、つまり、工場みたいに生産物をどんどんふやすわけにはいかないという素材を前提にしている。ですので、やはり現実を踏まえた改革が必要なんだろうと思います。ペースを上げてやっていくような雰囲気が今の政府に感じられますが、早ければ早いほどいいというものでもない、やはり現実を踏まえた漸進的な改革が私は必要だと思っております。その改革の進め方、ペースというもの、改革のあり方はどうあるべきなのか。

 この二点についてお伺いしたいと思います。

中嶋参考人 改革がおくれたかどうかというのは簡単には判断はできないところがございますけれども、例えば、岩盤対策をやることによって、大規模な経営体にとっては安定した収入になるということは先ほども指摘があったとおりで、それはある意味、この構造改革を進める上では効果があったかもしれません。ただ一方で、農地の貸し手の方に関してはどういう考えを持ったかということも含めて考えると、どうも全体的にプラスとマイナスがあったのではないかなというふうに考えております。

 もう少し早く改革を進める必要があるんじゃないのかというのが私の現在の認識です。それは、高齢化が非常に進んでいて、それから担い手が不足しているという状況のもとで、もう少し改革を早く進めないと間に合わなくなってしまう。人口が減少する中で、もっと担い手が少なくなるということがわかっているわけですので、今から準備をしておかないと、なかなかそこに完全な対策がとれないのではないのかということが懸念するところです。

 そういう意味で、私も漸進的な改革は農業の性質からすると理想論だと思うんですが、もう少しスピードを上げる必要があるという認識を持っております。

谷口参考人 改革をおくらせたという根拠は、例えば、小規模な方がこれでお金をもらって、安心して稲作を継続したということだと思いますけれども、農水省のデータを割り算してみると出るんですけれども、例えば、〇・五ヘクタール未満の方は、一経営当たり二万七千円しかもらえないんですよね。同じように、〇・五から一ヘクタールで九万円程度です。九万円でもって農業を存続するかどうか、判断する金額じゃないと思います。

 もう一つ、この数字を見るとき、間違えちゃいけないのは、これは稲作の作付規模なんですね。〇・五ヘクタール未満の方が、果樹農家の方も野菜農家の方もいるんですよね。ですから、これが無意味だというふうに考えること自体がまたおかしいんですね。ですから、私は、全体として底上げされているというふうに考えれば、構造改革に対しては促進的だというふうに見た方が現実的だと思います。

 これを外したときに一番ダメージを受けるのはどこかというと、集落営農です。ほとんどの集落営農の方は困っています。これでもう集落営農は潰れちゃうな、それぐらいの危機感を持っております。そういう点で、直接支払いの問題は非常に大きい意味を持ったと思います。

 それから、改革のスピードですけれども、これは、はっきり言って遅い。遅いということは誰でも考えています。問題は、遅いから耕作放棄地が出ているので、早ければ耕作放棄地が出なくて済んだわけですね。

 ですから、耕作放棄地にならずに済むような形でどうするかということを考えなきゃいけないということで、私自身は、個人的な努力としては、農協が出資する農業生産法人が、一般の経営が引き受けないような農地も引き受ける形でもって展開することを進めてきた一人であって、今やっと四百を超える経営体までなりましたけれども、これを一九九〇年代半ばからほぼ一貫して研究している数少ない研究者だということで、申し上げておきたいと思います。

 以上です。

下渡参考人 私は、冒頭で申し上げましたように、農業政策の専門家ではございませんけれども、今、農政の大きな流れというのは、やはり構造改革というか、農地の集約化、大規模化ということだろうと思いますけれども、それだけで問題が解決できるのか。

 これは、担い手の問題、担い手が減ってきているということで、そうせざるを得ない、大規模経営あるいは法人化を進めざるを得ないという背景があるということは十分承知しておりますけれども、もう一方で、グローバル化の流れ、グローバル市場への対応、あるいは気候変動、こういったものも、だんだんボディーブローみたいに、じわじわとこういった影響が恐らく出てくるんだろう。

 だから、今、前にも申し上げたように、世界の消費の潮流というのは、だんだん社会的価値だとか環境的な価値だとか、そういうものに向いているという一つの流れもあるわけですから、そういったものにどう対応していくか。

 日本は、構造改革をやっても、それはおのずと限界があると思いますので、やはり農政といいますかフレームワークそのものを大きく見直すということもいずれ求められるのではないか、このように思っております。

畑委員 ありがとうございました。

 次は、生産調整のあり方についてお考えを伺いたいと思います。これは、中嶋先生、谷口先生、そして横田代表取締役にお伺いしたいと思うわけでございます。

 政府がきめ細かい情報提供をしっかりやっていくことで、要は、行政による生産調整をやめて、農業関係者が自主的に調整できるようにするということが政府の方針であります。私は、理想的にはそうだろうと思いますが、どうしてもやはり釈然としないわけです。そこが自主的に本当にできるのかどうか。

 つまり、情報を与えて、例えば横田さんのように経営的なことをやっておられる方は、恐らくそういう経営判断でできるし、そうやっていくのが理想だと思いますが、大部分の米農家が、五年たったから、情報をきめ細かくもらって、そこは需給を見ながら臨機応変にやれるような能力があるのかというのが私はちょっと疑問に思っておりまして、結局、いろいろなソフトな行政指導をいただかなきゃいかぬというか、国もしなきゃいかぬのだろうと思います。

 それは、公式的に生産数量を割り当てるのではなくて、ただ、生産者団体、自営なんかの間で非公式的にすり合わせをすることがやはり出てくるのかな、これぐらいじゃないですかとか、情報の提供をもとに。あるいは、生産者団体とか生産者だって、私はこう思うけれども、これで大丈夫なのかな、ちょっと見通しを教えてください、これぐらいつくっていいですかというのを多分キャッチボールするんだと思うんですよ、実務的には。そういうことがないと、単なるきめ細かい情報提供でということは成り立たないと思っております。

 そういうことを踏まえて、実際に、ただ、そこはあくまで自主性を損なっちゃいけませんが、自主的でかつ実効ある生産調整が行われる仕組みというのはどういうものが想定されるのかというのをお伺いしたいと思いますし、横田さんには、そういう生産調整のあり方そのものに対する意見も含めてお伺いしたいと思います。

中嶋参考人 やはり生産者の方々を中心に関係者が自主的に生産調整するのは、今までにそういう経験をほとんどしていないわけですから、難しいんじゃないかということは容易に想像ができます。

 ですので、よりきめ細やかな情報提供というのはまず必須なんですけれども、それプラス、販売先との契約をどれだけ事前にできるかということも作付には大きく影響しますので、そういった商慣行の、よりレベルアップするということもあわせて組み込んでいく必要があるんじゃないかと思います。そのときに、生産者団体がどのような役割を果たすのか、それから流通業者の方たちとどのように対応するのかということがポイントになると思います。

 それからもう一点、今、お米をどのぐらいつくるかという問題でございますが、その代替の転作作物がどういう状況にあるかということがとても重要だと思います。転作作物の選択肢に関する情報、それからそれに対する支援策のあり方というのが非常に重要で、その中の一つとして、やはり飼料米がどういうふうな支援が行えるのか、それから、飼料米のマーケットがどんなふうに展開していくのかということも、今後の生産調整といいましょうか、生産のあり方を決める上で重要になってくるんじゃないかと思っております。

谷口参考人 この問題は本当に困難な、難しい問題でありますけれども、やはり日本の農村のあり方と農民の物の考え方からしますと、公的なところからの何かがない限り、強制的なものを受け入れるということはできないと思います。農協が頑張っても、なかなかこれを甘受するということができないとすれば、恐らく農林水産省あるいは都道府県の関与というものがどこかで必要で、単なる情報提供だけでは、僕は実効性がないんじゃないかなというふうに思っています。とはいえ、そういう方向に向かなきゃいけないことは事実だと思います。

 他方で、非常に厄介なのは、私なんかが現場に行ってみますと、想像以上に多いのが、縁故米と、いわゆる贈答米と言われる分ですね。つまり、親戚の人だけじゃなくて、親戚の友達の友達というふうにつながっていって、とりあえずあの人の米はおいしいから食べてみなよという形でもって、Aさんが、実家の人に頼んで、Bさんに送るために買っているんですね。そういう部分というのは、かなりシェアを占めているのではないかな。恐らく一〇%を超えて、一五%、二〇%行っているんじゃないか。こういう部分というのは、価格で動いているのではなくて、誰々さんに送るからつくっているんだというつくり方なんですね。そういう部分というのは少なくないとすると、単純な需給という話だけで議論が進むかというと、そうはいかないだろう。

 そういう点で、市場に一般的に回る部分については、さっき言いましたように、ある程度の公的な機関が関与していくことが不可欠だと思います。なぜかというと、公的な機関は、結局背後に補助金があるからなんですね。農協は補助金がないわけですよね。補助金があるところとないところの差はもう歴然としていて、現場では、何かのときにやはり有利になるんじゃないかという判断が働いて、受け入れているという実態があると思います。それがいいかどうかは別にして、この現実を前提にすれば、恐らく公的な機関の関与というものを外して生産調整がうまくいくということはかなり難しいというふうに私は考えております。

横田参考人 これも大変難しい問題だとは思います。

 例えば、ことし、二十六年の作付であっても、私たち生産者の間でも、それこそ経営所得安定対策が一万五千円から七千五百円になるという話が来た時点で、では、もう生産調整の方はやめて、全部主食用米をつくろうという人がいるんだという話も聞けば、一方で、飼料米の方が条件がよくなったらそちらをたくさんつくるという話が出たり、生産者によっていろいろな判断もありますし、またこれがどういうふうに全体として動いてくるかというのは、本当に見えない状況でもあります。

 これが、数年の期間、五年という期間をかけて、ある程度のところで落ちついてくるのかどうかというのは、私も状況を見ないといけないなというふうに思っているところでもありますが、先ほどもありましたように、やはり一番は、経営者が自分で判断するのがいいと思います。

 もちろん、全ての人がそうできるかといえば、そうでもないかもしれないですが、JAさんのような団体に所属して、そういう中で調整をしていくということも当然考えられると思いますし、また、私も、今は米単作で百十二ヘクタールの作付をしていますが、今後さらに規模拡大をしていくときには、ほかの作物を入れて、全体として効率を図っていくということも当然考えてはいますので、そういうときに、こういった価格の情報であるとか需要の情報みたいなものが出てくると、選択する上で、そういった検討の幅もより広がっていくのかなというふうには思っております。

畑委員 ありがとうございました。

 次に、中嶋先生にお伺いしたいのです。

 農家支援の直接払いの方法というのは、これまでの戸別所得補償、経営安定対策のように、不足払い、収益と費用の間の幾分を払うというEU型の直接払いの考えだと、非常に政策検証もわかりやすいし、その基準もわかりやすいわけですが、これを、今の政府案のように、多面的機能払いをメーンに、大きな柱にしていくと、基準はつくれるんですが、税金を入れた場合、その効果をどうやって検証するかというのが何となくわかりにくいんです、素人的にも。

 例えば、農地の集積とかあるいは農業所得の向上というのは、これは多面的機能にはないわけですよね。それは、従来の農業の補助制度からは出てくる指標ですが、多面的機能という場合、さまざまな公益的機能がありますが、それを適切に評価するというのは割と簡単ではないような気がするんですが、そこはどのようにやっていくのが適切か、きちんとできるものなのか、その辺の見通しをお教えいただきたいと思います。

中嶋参考人 多面的機能支払いの前段にあった農地・水の交付金制度では検証作業をしているというのはよく御存じだと思うんですが、そこで行われている成果の把握というのが一つのプロトタイプになるのではないかと思っております。

 そのときに、例えば、ソーシャルキャピタルというような観点からも評価をしておりますし、それから、もちろん資源管理、環境保全のさまざまな実績というものを積み上げて、それを複合的に指標として効果測定をしていくのではないかというふうに考えております。

畑委員 時間が参りましたので、終わります。

 本当に、参考人の先生方、大変貴重な御意見をありがとうございました。

坂本委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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