衆議院

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第10号 平成26年4月16日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十六年四月十六日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 大串 博志君 理事 村岡 敏英君

   理事 石田 祝稔君

      秋本 真利君    井野 俊郎君

      井上 貴博君    池田 道孝君

      小里 泰弘君    加藤 寛治君

      川田  隆君    菅家 一郎君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      鈴木 憲和君    武井 俊輔君

      武部  新君    津島  淳君

      中川 郁子君    橋本 英教君

      福山  守君    堀井  学君

      簗  和生君    山本  拓君

      渡辺 孝一君    後藤  斎君

      篠原  孝君    玉木雄一郎君

      寺島 義幸君    鷲尾英一郎君

      岩永 裕貴君    河野 正美君

      鈴木 義弘君    村上 政俊君

      稲津  久君    樋口 尚也君

      林  宙紀君    畑  浩治君

    …………………………………

   議員           大串 博志君

   議員           玉木雄一郎君

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   環境副大臣        北川 知克君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    岡田 則之君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         松島 浩道君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          小風  茂君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沼田 正俊君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  星野 一昭君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     井上 貴博君

  寺島 義幸君     篠原  孝君

  村上 政俊君     河野 正美君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     秋本 真利君

  篠原  孝君     寺島 義幸君

  河野 正美君     村上 政俊君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     武井 俊輔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出第五〇号)

 農業者戸別所得補償法案(大串博志君外六名提出、第百八十三回国会衆法第二六号)

 農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第六号)

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第七号)

 環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第八号)

 調査捕鯨継続実施等に関する件


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、北村誠吾君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、結いの党、生活の党の六派共同提案による調査捕鯨継続実施等に関する件について決議すべしとの動議が提出をされております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。北村誠吾君。

北村(誠)委員 おはようございます。

 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきたいと存じます。

    調査捕鯨継続実施等に関する件(案)

  本年三月三十一日、国際司法裁判所が、「南極における捕鯨」訴訟の判決において、我が国が実施している南極海鯨類捕獲調査事業を国際捕鯨取締条約(以下、「条約」という。)第八条一の範囲に収まらず、許可証を取り消し今後の発給を差し控えるよう命じたことは、誠に遺憾である。一方で、本判決は、右事業を科学的調査と認めた上で、科学的調査における致死的手法の使用自体は禁じておらず、我が国固有の伝統と文化である捕鯨が否定されたわけではない。

  本判決の内容は、我が国の捕鯨政策はもとより、鯨類調査研究、鯨肉流通関係並びに全国各地域に伝わる我が国の伝統である鯨食文化等に極めて甚大な影響を及ぼすものである。また、シー・シェパードなどの過激な反捕鯨団体による、極めて危険な海賊行為が、あたかも正当化されるかのような印象を全世界に与えかねず、政府の責任は極めて重い。

  よって政府は、引き続き、世界が求める海洋水産資源の持続的利用等に貢献するため、左記事項の実現を期すべきである。

      記

 一 鯨類捕獲調査が有する各般にわたる重要な意義に鑑み、世界で唯一、その科学的手法及び体制を有する我が国の責務を果たすため、今後とも継続実施すること。

 二 本判決に至った原因について真摯に反省するとともに、今後、調査捕鯨に関し新たな国際裁判を提訴されることのないよう、外交手段を駆使すること。

 三 第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPA2)に代わる次期捕獲調査計画の早期策定に向け、万全の準備態勢を整えること。

 四 本判決で判示された基準を踏まえ、来季以降の南極海鯨類捕獲調査がその目的を達成する上で合理的であると認められるものとするため、非致死的調査の利用可能性に関する分析、目標サンプル数の算出プロセスの明確化及び科学的成果の充実等について、必要な予算を確保し、早急に対応すること。その成果を元に調査計画を変更した上で、調査を継続実施すること。

 五 調査捕鯨の副産物である鯨肉については、条約の趣旨に従い、従来通り適切に流通させること。また、学校給食を始めとする鯨肉販売の公益枠については、割引販売を継続実施するとともに、鯨肉流通関係者に不安が生ずることのないよう万全を期すること。

 六 シー・シェパードなどの過激な反捕鯨団体による危険な妨害行為は、昨年二月に米国高裁が認定したとおり、国際法の禁じる「海賊行為」であり、我が国国民の身体及び財産を侵害する行為として断じて容認できない。政府が妨害行為への対策を怠ってきたことが、計画に対する実際の捕獲頭数が減少することにつながり、ひいては本判決において目標サンプル数と捕獲頭数との乖離を指摘され、目的達成上の合理性を欠くことの論拠となっている。政府は、そのことを十分に自覚した上で、調査捕鯨の船団や乗組員の安全確保に責任を持つこと。

 七 副産物収入で調査研究費をまかなう枠組みによる調査継続には限界があることから、国の責務として調査捕鯨を位置付け、国による安定的な財政支援を行うこと。

 八 捕鯨が我が国固有の伝統と文化であることに鑑み、今後における我が国捕鯨政策については、条約からの脱退を含むあらゆるオプションを実行する決意をもって策定し、強力に推進すること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

坂本委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣林芳正君。

林国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を尊重し、関係府省とも連携を図りつつ、最善の努力をしてまいる所存でございます。

坂本委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

坂本委員長 次に、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及び大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官荒川隆君、大臣官房総括審議官松島浩道君、大臣官房統計部長小風茂君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君、林野庁長官沼田正俊君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、外務省国際法局長石井正文君、国税庁課税部長岡田則之君及び環境省自然環境局長星野一昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀井学君。

堀井委員 おはようございます。自由民主党の堀井学でございます。

 本日は、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案並びに農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案及び野党提出法案の審議に際しまして、質問の機会を与えていただきました委員長を初め理事の皆様方に感謝を申し上げたいと思います。

 質問に先立ちまして、まず申し上げたいことは、ただいま審議されている政府提出の両法案は、我が国の農政改革の初めの一歩であるということであります。

 今日まで、我が国の農業、農村は、国民に安心で安全な食料を安定的に供給するという食料安全保障の役割を果たすとともに、我が国の美しく豊かな自然や国土を守り、日本固有の歴史、伝統、文化を育んでまいりました。

 しかしながら、今、全国各地の農村に目を向けますと、高齢化や担い手不足の中で耕作放棄地が広がり、実に農業所得は二十年間で半減するに至っております。実際に今農業を営んでおられる方々の中にも、将来農業を続けていくことに少なからぬ不安を感じながら日々農作業に向き合っておられるのが現状ではないかと思われます。

 そのような中、我が党は、昨年、農業・農村所得倍増目標十カ年戦略を策定いたしました。十五のビジョン、十五の数値目標、百項目の具体策から成るこの十カ年戦略は、産業として成り立つ強い農業、農村の創造を目指しております。この十カ年戦略は、そのまま昨年の参議院議員選挙において我が党の公約になり、選挙の結果、私たち自由民主党は国民の皆様より多くの議席を与えていただき、ねじれ国会を解消いたしました。

 そして、十カ年戦略は、安倍政権の成長戦略に組み入れられ、政府・与党一体となって取り組むべき戦略と位置づけられ、我が国の農政の向こう十年の指針となりました。

 今、我が国の農業は一大転換期を迎えております。今この農政改革をなし遂げなければ、日本の農業に未来はありません。これに関する一つ一つの法律を成立させるという強い決意を持って質問に立たせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私の地元北海道は、我が国の食料基地の務めを果たしてまいりました。しかしながら、農業が未来に向けて魅力ある産業でなければ、農家の後継者たる子弟にとっても、また外部から新たに参入する方にとっても、将来にわたって真剣に農業に取り組んでいこうという意欲につながらないのではないかと考えます。

 先般、地元のある酪農家の方に伺ったお話でありますが、この方は五十代のお父さんで、おじい様、そしてそのお父さん、息子さんと三世代で営農されています。若い二十代の息子さんの収入は五万円だということであります。朝から晩まで牛の世話をして、年ごろなのに彼女もできない、彼女ができても月収五万円では結婚もままならないと嘆いておられました。これは地元の話であります。

 そこで、大臣にお伺いしたいと思います。

 このたびの一連の農政改革では、いかにして農業が担い手を引きつけるものとなるように取り組んでいくのでしょうか。また、どのように構造改革や競争力強化を図ろうとしているのでしょうか。御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 今回の農政改革の趣旨でございますが、やはり農業、農村の実情、今少し委員もお触れいただきましたけれども、経営所得安定対策、米政策の見直し等々によって、やはり経営マインドを持ってやる気のある担い手、これが創意と工夫をもって、国内の新たな需要、それから世界の食市場、これは十年で倍になると言われておりますが、こういうところに果敢に挑戦して、その努力が報われるような農業をつくり上げていくということに主眼を置いたわけでございます。

 やってもやらなくても一緒である、将来尻すぼみであるということであれば、先ほど五万円の方のお話がありましたけれども、ずっと五万円だという状況なのか、自分で頑張れば、これが十万、二十万と上がっていく、そういうことにするのか、今岐路に立っている、こういうふうに思っておりまして、もちろん後者を目指していこう、こういうことにしたわけでございます。

 そういう魅力を持った農業をつくっていくことによって、今携わっている方は当然でありますが、新しい若者や女性、こういう方々を引きつけて、多くの方々が農業に従事してもらうことになる、こういうふうに考えております。

 この改革を、そういった意味でも着実に実行をしていかなければなりませんし、チャレンジする人を後押しするということを通じて、大きな潜在力を持っている国内農業、この潜在力を最大限に引き出して、強い農林水産業、それと同時に、美しく活力ある農山漁村を実現してまいりたいと思っております。

堀井委員 ありがとうございました。

 続きまして、先般の日豪EPA交渉の大筋合意について、おかげさまで粘り強い交渉を重ねてくださった結果、品目ごとに詳細にその内容を精査いたしますと、国内市場に対する影響を最小限に抑える、実に内容を伴った結果を導き出してくださったと理解をしております。

 農業以外の分野も含めたぎりぎりの交渉の中で、農業分野では、セーフガードの導入を初め、他国とのEPA交渉では見られない合意内容をお取りまとめいただいたことは、まさに我が国の農業を守る内容であったと感謝をいたします。

 しかしながら、その一方で、先ほどの酪農家とお目にかかった折には、この合意によって、将来に不安を感じ、離農する人が出るのではないかとのお話もあります。私たちは、正しい情報を得て、評価できる内容と理解しているのですが、どうも地方の農家の皆さんにはそのように伝わっていないケースがあるようであります。テレビや新聞の取り上げ方によって、地方の農家の方に正しい情報が伝わらず、誤った認識のもとに離農につながったりしないかと懸念されます。

 政府におかれましては、より積極的に合意内容の細かい部分についてもPRされてはいかがかと考えますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 まずはこの内容でございますけれども、この農林水産委員会でも決議をいただいておりますので、その決議を踏まえて、豪州、これはまさにケアンズ・グループの中心で農産物の大輸出国でありますから、なおさら、政府一体となって、交渉期限を定めず、粘り強く全力で交渉を行ってきたわけでございます。

 米については関税撤廃等の対象から除外をする、麦、それから砂糖、バター、脱脂粉乳については将来の見直し、再協議ということですが、一定の柔軟性を得たため、今回の大筋合意に至ったところでございます。

 また、牛肉についても、冷蔵、冷凍を分けた、それからセーフガードをつけた、そして長期、十五年、十八年といった削減期間を設けたということで、一定の柔軟性が得られ、国内畜産業の健全な発展と両立し得る内容になっておる、こういうふうに申し上げているところでございます。

 今申し上げたように、いろいろなものが総体としてこのEPAの中身になっておりますが、どうしても報道は途中経過も含めて見出しが躍る、これはなかなか避けられないことかもしれませんが、その見出しのイメージだけを生産者の方が持っておられると、今、まさに堀井先生がおっしゃったようなことになります。

 したがって、我々としても、キャラバンを組んでしっかりとこの説明を、全体的なパッケージとして今から説明をしなければならないというふうに思っておりまして、皆様にこの中身をよく御理解いただいた上で、影響に留意しながらしっかりとした万全の体制をとっていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

堀井委員 ありがとうございました。

 毎年、我が党の畜産・酪農小委員会では膝詰めの交渉を行っておりますが、抜本的に見直しを行って、新しい制度をつくるべきという意見も出ております。酪農家の離農に歯どめをかけ、担い手に対しても強いメッセージになると考えますので、この件については、また引き続き、私も新しい制度の実現に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

 また、来週には、アメリカ大統領の来日も予定されております。TPP交渉についても注目が集まるところですが、日豪EPAとTPP交渉は同じではない。衆参両農林水産委員会の決議を守り抜き、国内外に日本の現政権は外交においても強い交渉力を持っているということを示すと同時に、国内での農政改革に一層の弾みのつく交渉結果をぜひ皆さんでかち取っていこうではありませんか。

 次に、担い手経営安定法案についてお伺いをしたいと思います。

 担い手の対象を集中することが重要である一方で、北海道でも、新規就農の方や六次産業化によって高度化に取り組む方など、面積規模が小さくてもこれから頑張ろうという農業者もたくさんいらっしゃいます。

 こうした方々が面積規模をすぐに大きくすることは難しい面もあると思われますが、今回の改正案における対象者要件の見直しの意義や期待される効果などをどのように考えていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。

奥原政府参考人 担い手経営安定法の対象者の問題でございます。

 我が国の農業を安定的に発展させ、国民に対する食料の安定供給を図っていくためには、これは食料・農業・農村基本法の第二十一条に規定をしておりますが、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う、そういう農業構造を確立することが重要であるというふうに考えております。

 こういった観点から、経営所得安定対策につきましても、全ての販売農家を一律に対象とするような体系ではなくて、経営意欲と能力のある担い手を対象としていくということが必要であるというふうに考えております。

 今回の制度改正におきましては、このゲタ対策、ナラシ対策の対象者の要件につきまして、現行は認定農業者と集落営農でございますが、これに加えまして、認定を受けた新規就農者も対象に加えております。

 それから、もう一つ御指摘いただきましたように、規模要件については課さないということにしてございます。この規模要件を課さないことにいたしましたのは、面積規模が小さくても、例えば、収益性の高い作物を組み合わせて複合経営にする、あるいは販売、加工を含めた六次産業化に取り組むということであれば、所得は相当上がってまいりますので、そのことも考慮して規模要件は課さないということにしたものでございます。

 これによりまして、効率的かつ安定的な経営体になることを目指して経営改善に取り組む農業者の方は、市町村の認定を受けて認定農業者になれば、当然対象になります。それから、新たに農業に取り組もうという青年等につきましては、これも市町村の認定を受けて認定新規就農者になれば、これも対象になります。それから、さらに、複数の農業者の方が参加をして集落営農を組織し、規約を明らかにして、共同で販売経理をやっていただけば、これも対象になることになります。

 したがいまして、将来に向けて農業で生計を立ててやっていく、こういう意欲と能力のある農業者の方であれば、経営規模あるいは年齢等にかかわらず、幅広くこの対策に加入できるようになりますので、こういった担い手の方が自分たちの創意工夫で経営を発展させていただいて、我が国農業、農村の活性化につながるものというふうに考えております。

堀井委員 ありがとうございました。

 次に、飼料用米についてお伺いをいたします。

 私の地元にも、厚真町というところでありますが、米づくりが盛んなところがあります。飼料用米に取り組むことについて、近くでつくる食用米への影響や、飼料用米を食べさせた豚の肉や鶏の卵への影響を心配される農業者の方もいらっしゃいます。

 この点について、研究や指導の現状について教えていただきたいと思いますし、また、例えばスペインのイベリコ豚などはドングリだけを食べさせて大変高付加価値の肉を生産していると聞きますが、飼料用米について、何かデータの裏づけがあるのでしょうか。あわせてお伺いをしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生から御指摘いただきました餌米でございますが、これは、家畜にとりましてはトウモロコシと同等の栄養価を持つ優良な飼料穀物でございますが、餌米を大量に給与する場合には、やはり給与方法に注意をしたり、あるいは畜産物の品質に変化が生じるといったことに留意する必要があるというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、牛の場合でございますが、加工した餌米は消化速度が速いということから、餌米の多給で消化器の障害を起こすといったようなおそれがございますので、餌米への切りかえをゆっくりと行って、粗飼料を十分給与するということで防止することが可能であるといったような報告がなされているところでございます。

 また、豚にとりましては、餌米は、トウモロコシと比べてオレイン酸が多くて、リノール酸が少ないという特性を有しておりまして、このため、豚肉の脂肪組成や脂肪融点というものが変化いたしまして、枝肉の性状が向上、あるいは枝肉評価が高くなるといったような報告がなされているところでございます。

 また、鶏では、黄身が薄くなりまして、レモンイエロー、淡くなるといったようなことが挙げられますが、これにつきましては、パプリカといったものを補填することによりまして、色素の補正が可能だといったような知見が得られているところでございます。

 こうしたもろもろの知見につきまして、餌米の利用に当たって留意すべき点をQアンドAにまとめまして、関係団体に通知しまして、また農水省のホームページに掲載することなどによりまして、周知を図っているところでございます。

 また、こうした餌米を食べさせた畜産物につきましては、その特徴を売りにしたブランド化といったものが今広がっているところでございまして、先ほど申しました豚でいきますと、脂肪中のオレイン酸の増加をアピールするといったようなこと、あるいは卵につきましては、むしろ、黄身の色がレモンイエローに、淡いことになったことで差別化して売り出しているものが出ておりまして、農水省といたしましては、こうした取り組みをしっかり支援していきたいと考えているところでございます。

堀井委員 ありがとうございました。

 次に、多面的機能発揮法案についてお伺いしたいと思います。

 多面的機能支払いは、地域政策として行うこととされていますが、構造改革を後押しする効果もあると認識をしております。多面的機能支払いは農業の構造改革にどのように役に立つのか、お伺いいたします。

 あわせて、私の地元の胆振、日高という地方では、稲作や畑作だけでなく、果樹栽培や園芸農業に取り組んでいる農業者も多くいらっしゃいます。果樹栽培や園芸農業についても、多面的機能支払いによってしっかりと支援すべきと考えますが、いかがでしょうか。御見解をお伺いいたします。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、農業者の高齢化等によりまして、地域の共同活動で支えられてきた水路や農道等の維持管理に困難を来すようになりつつあります。

 他方、担い手にとりましては、こうした施設を単独で維持管理する負担の増大がネックとなって、規模拡大を進めることが阻害されるということも懸念されるところでございます。

 多面的機能支払いは、農業者のみならず、地域住民等も含めて、地域全体で水路、農道等の地域資源の管理を支える共同活動に対して支援を行って、広く国民がその利益を享受している多面的機能の適切な発揮を促進するものでございます。

 本制度の支援を通じまして、担い手は、こうした施設の維持管理に係る負担が軽減されて、規模拡大を推進しやすくなるということから、構造改革を後押しする効果を有するものであると考えております。

 また、果樹栽培や園芸農業についてでございますけれども、多面的機能支払いのうち、農地維持支払いは、農業者のみの活動組織でも取り組めるようにするとともに、農業生産の維持に必要な水路の泥上げですとか農道の草刈りですとか、そういった基礎的な保全活動を支援するなど、これまでの農地・水保全管理支払いと比較して、取り組みやすい仕組みとしているところでございます。

 このことによりまして、果樹栽培ですとか園芸農業に取り組む地域におきましても、例えば、園内の農道ですとか排水路の管理、鳥獣害防護柵の設置、管理等、農業者が行う共同活動が支援の対象となり得ると考えております。

 今後、こうした果樹栽培、園芸農業の地域も含めまして、多面的機能支払いの取り組みが幅広く取り組まれることとなるように、制度の周知徹底に努めてまいりたいと考えております。

堀井委員 ありがとうございました。

 次からは質問ではございませんので、御答弁は結構であります。提案であります。

 雪が多い北海道では、農業を営む上で、農道などの除雪を共同で行うことが欠かせません。このような、地域によって対応すべき課題は異なることから、多面的機能支払いは地域の実態に応じて柔軟に活用できるようなものにすべきと考えておりますので、これは提案とさせていただきたいと思います。

 また、農村において過疎化、高齢化が進んでいる現状を鑑みますと、多面的機能支払いが広く活用されるようにするためには、申請書類の作成等の事務負担を軽減することも一つの方法と考えます。実際の制度の運用に際しまして、このように、ケースに応じて細かな御配慮をいただきますようにお願いを申し上げます。

 農政改革は待ったなしの状況であります。私たちは、日本の農業を成長産業へ育て、所得を倍増させ、担い手に魅力とやりがい、希望を与えていかなければなりません。

 また、時期を同じくして、農業に携わる全ての関係団体が、同じように組織の改革方針を打ち出し、政府の成長戦略の柱と位置づけられた農政改革に一丸となって取り組む決意と覚悟をお示しいただいております。

 農業・農村所得倍増目標十カ年戦略は歴史の必然であります。この戦略を力強く推し進めていくことと、このたびの政府提出両法案を一日も早く成立させ、実行に移していくことが、日本の農業を守り、成長させることと確信をいたすものであります。

 引き続き、農林水産関連施策の推進に私も全力で取り組んでまいることをお誓い申し上げ、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 時間も限られておりますので、早速質問に入りたいと思います。

 まず、先週末からの鳥インフルエンザにつきまして、ただいまの現状はどうなっているのか、このことについて、また対応についても簡単にお示しをいただきたいと思います。

小里大臣政務官 十三日に、高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜の発生が確認をされました。以降、農水省としましては、熊本県、関係府省庁と連携をして、スピード感を持って初動対応を行ってきたところでございます。また、それ以上に、県初め現場がさらにスピード感、ボリューム感を持って対応していただいているな、そんな印象を持っております。

 一千人態勢で臨んだ鳥の殺処分、その死体の埋却、畜舎の消毒等、全ての防疫措置が本日の七時半をもって完了したと報告を受けております。また、現在までのところ、新たな発生は確認をされておりません。

 昨日、公明党の鳥インフルエンザ対策本部から、感染拡大防止対策の徹底、早期発見、通報体制の整備等の実施について申し入れをいただきました。農水省としても、これらの事項は大変重要な課題であることから、しっかりと踏まえて対応してまいりたいと認識をしているところでございます。

 まだこれからです。油断はなりませんから、早期に本病を封じ込め、第二、第三の発生事例を出さないために、油断なく、さらに関係省庁と連携しながら、そして、何より県や現場と連携をしながら、全力で対応してまいりたいと存じます。

石田(祝)委員 この件につきまして、我が党も申し入れをさせていただいたことは、今政務官から御紹介があったとおりでございます。

 実は、四年前の口蹄疫、ちょうどあれも四月だったと思います。四月から五月にかけて、大変な被害になった。そのときに、我々は政権にはついておりませんでしたけれども、初動のおくれと言われてもやむを得ないような対応で、結果として、牛と豚約三十万頭を殺処分して埋却した。こういう苦い思い出がありまして、その後、やはり初動が大切だということ、大変大きな教訓になった。

 また、それと同時に、通報していただくときに、農家の方がすぐやるためには、自分のところの経済ということも当然考えてきますから、そこの支援ということで、やはり家伝法の改正、こういうもので、今回もほぼ全額、患畜、疑似患畜についてもお金が出る、こういうものが早期の通報につながり、初動態勢につながった、こういうふうに私は思っております。

 その意味で、まだ油断することは当然できませんけれども、しっかりとこれはやっていかなきゃならない、こういうふうに思っております。

 続きまして、調査捕鯨について、ただいまも委員会決議をいたしましたが、この点につきまして、きょうは外務省に来ていただいております。

 まず第一点、確認は、三月三十一日のICJの判決の及ぶ範囲について、どういうふうな範囲にまで及ぶのか、このことを、きょうは外務省の国際法局長に来ていただいておりますから、お示しをいただきたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 本件の訴訟における紛争の主題は、第二期南極海鯨類捕獲調査、いわゆるJARPA2でございます。

 一方、判決文には、国際捕鯨取締条約第八条一のもとでのいかなる将来的な許可を与える可能性を検討する際にも、日本は本判決に含まれる理由づけ及び結論を考慮することが期待されるというふうに述べられております。

 あくまで一般論で申し上げますと、八条一のもとでのいかなる将来の許可と書いてございます以上、この中に、南極海におけるもののみならず、北西太平洋その他におけるものも含むと解釈される可能性は否定できないと思っております。

 一方、これをどのように解釈するかも、我が国の今後の対応に影響を与えることでございますので、政府として立場を確定しているわけではございません。

 現在、政府といたしましては、この点も含めまして、判決の内容及び今後の対応に与える影響につきまして、引き続き、慎重に精査をしているところでございます。(発言する者あり)

石田(祝)委員 ちょっと静かにしてください。

 これについて、裁判というのは、当然、起こしたことに対して、その提起内容について判決を下すというのは、これは普通ですよね。主文でもそうなっている。その主文の前段階のところにそういう意見が述べられている。これは私も見せていただいたんです。

 これが現実に、考慮すべきというところがほかの地域にも影響を及ぼすのかどうか、こういうところが、今精査しているということだろうと思いますけれども、ただいまの外務省の国際法局長の答弁もございますけれども、実は、四月の二十二日に、北西太平洋に向けて、鮎川ですか、そこから出港の準備をしている、こういう状況であります。

 ですから、こういうものを踏まえて、二十二日というと、あと六日しかないわけですけれども、そこに許可書を日本政府が出すのかどうか、このことが問われているわけであります。この点について、林大臣はどのようになさるのか、お聞きをしたいと思います。

林国務大臣 これは、先日、玉木議員にもお答えをしたところでございますが、今外務省から答弁がありましたように、本件訴訟の紛争の主題は第二期南極海鯨類捕獲調査、JARPA2であると認識しているものの、判決は大変分厚いものでございます。引き続き、早急に精査をしなければならないと思っております。

 この精査をする場合には、今先生からもお話がありましたように、四月二十二日鮎川出港に向けて準備を進められておられる、そういうことも念頭に置いて、しっかりと対応していきたい、こういうふうに思っております。

石田(祝)委員 今、いつまで検討するんだというお声もありましたけれども、私もそうだと思うんですね。この四月二十二日というのは、大体この時期に出ていくということはわかっておるわけでございます。

 そういう中で、精査をするのはわかりますけれども、結局、英文で書かれている、エニー・フューチャー・パーミッツ、ここのところをどう読むか、こういうところだろうと思います。

 これは、どこかで決断をしないと、そうではないかというふうに日本が思って、これをやめてしまったら、では、この判決を受けて、もう一切できないと日本が判断をして出さなかった、そう受けとめたということになりますよね。そうすると、事態が変わらない限り、何か新たな計画をつくって了解を得ない限り、JARPA2そのもの以外にも出せない、こういうことを日本の判断で決めた、こうなってしまいますよね。

 ですから、そこのところを、私たちは、きょうの決議とは別に、昨日も官邸に参りまして、官房長官に、今回のこの委員会決議の趣旨プラス北西太平洋への出港を早く認めるべきだ、許可書を出すべきだ、こういう趣旨の申し入れもいたしました。

 ですから、大臣、しっかり取り組むのはいいんですけれども、それはしっかりやっていただくのは当然なんですが、準備をして、今か今かと、東北が被災を受けて、三年ぶりですか、六日後に出そうというわけでありますから、そこのところをお考えいただかないと、これは大きな、もうこれから明確に許可が得られるまで全く調査捕鯨が出せない、こういうことになると思うんですが、いま一度御答弁をお願いします。

林国務大臣 今お話がありましたように、公明党の皆さんが官邸に行かれてというお話も承知をしておるところでございます。

 また、昨日は、関係者の皆様が大臣室にお見えになりまして、この間の調査捕鯨から帰ってこられた船長さん方も一緒になって、帰ってこられております。ちょうど下関に帰港されたときにこの判決のニュースも聞かれたということで、既に離職者が出始めている、こういうお話も聞かせていただいたところでございます。

 また、今度の鮎川は今お話があったような地域である、こういうこともございます。

 もう少しさかのぼりますと、私も、この職になる前から、自民党の捕鯨議員連盟の幹事長として、IWCに何度も行かせていただいております。いろいろな事実関係も承知しておるつもりでございますので、なるべく早く検討結果を出して、しっかりと送り出していけるような体制をつくっていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

石田(祝)委員 今大臣が最後に、送り出す体制をつくりたいということをおっしゃいましたので、そういうことかな、こういうことで、きょうはこの程度にとどめたいと思います。

 石井局長は、もう結構でございます。

 続いて、法案審査の件で御質問いたしたいと思います。

 四月九日に、私も参加をさせていただきましたが、新潟で地方公聴会を行いました。四名の公述人の方から極めて示唆に富んださまざまな発言もございまして、我々もいろいろな角度から質問もさせていただいたところでございます。

 会議録もできるでしょうから、今回、正直、戸別所得政策について、評価する声もあったことは事実であります。これは言っておかなきゃいけないと思います。しかし、これはいつまで続くのかなと思いながらやっていたとか、まあ、もらえるものはもらっておこうという感じの受けとめ方の方もいらっしゃいました。

 そういう中で、今回民主党さんも法律を出されたんですが、私たちが野党の時代に、私はこの委員会で民主党の三人の大臣に、赤松大臣、山田大臣、鹿野大臣それぞれに、法律にするのかということをずっと聞き続けてまいりました。それぞれの大臣は、法定化する、こういう御答弁でありましたけれども、結局、政権のときにはそれが法律として出てこなかった、こういう事実がございます。

 その後、今回ということになりましたので、これは、遅まきながらとはいえ、出されてきたということには敬意を表しますけれども、それが今の時代のこれからの農業政策でいいのかどうか、こういうことはまさしく議論になるだろうというふうに思います。

 そういう中で、今までは公聴会というと、どちらかというと、聞いて終わり、こういうことは間々あったと思いますけれども、今回は非常に有益な意見が多かったと思います。ですから、私は、あえて公聴会の中から何点か御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 一つは、こういう御意見がありました。中山間直接支払い、これは非常にいい、そういう中で、個人への支払いが百万円というのが限度になっている、こういうお話がありました。今までは、三人、四人でやっていて、それで、例えば三十万円ずつ、四人で百二十万。これが、人が減ってきて一人でやらなきゃいけない、そうなったときに百万円の壁がある、こういうお話がありまして、今後、今回の法定化をする予定の中で、どういうふうにこういうところを変えていこうとしているのか、御答弁をお願いします。

小里大臣政務官 御指摘のとおり、制度の創設当時から、農業者一人当たりの受給額の上限を百万円と設定しているところであります。

 これは、この制度を導入するに当たりまして、一人の農業者が余りたくさんの交付金を受領するということについては国民の理解が得られにくいであろうということがまずあったことがございます。加えて、全国の市町村へのアンケート調査でも、百万円以下の上限を設けるべきであるという回答が多かったということがございます。

 その後、制度創設後十年を経て、制度が定着をする中で、平成二十二年度からの第三期対策に移行するに当たりまして、受給限度額に役員報酬あるいは共同活動による日当を含まないこととするなどの要件緩和は行ってきたところであります。

 本年度は、第三期対策の最終年を迎えます。平成二十七年度からの次期対策に向けまして、今、今期対策の評価等を行っているところであります。今後の次期対策に向けた検討の中で、御指摘のような趣旨等も踏まえて、論点の一つとして取り上げてまいりたいと存じます。

石田(祝)委員 それはよろしくお願いしたいと思います。

 続いて、戸別所得補償給付金の課税問題についてお伺いしたいと思います。

 これは、政権交代を二十一年にいたしまして、二十二年から民主党政権下でモデル事業としてやる。そのときに、私は当時の赤松大臣に、この給付金というものは課税はどうなるのか、こういうことを質問いたしました。そのときには、大臣は、当然課税される、こういうお答えでしたが、私は、そうじゃないだろうといいますか、もうちょっと丁寧に言ったんですけれども、やはりこれは別の制度でちゃんとできるのではないか、こういうお話をしまして、当時の山田副大臣が答弁訂正のような形をなさいました。

 それで、私は、いわゆる準備金として、非課税ということで整理されていると思ったんです。ところが、この前の公聴会で、たくさんもらったんだけれども税金で持っていかれちゃった、こういうお話が農業者の方から出てまいりまして、これはどうなっているんだと。これは、一つはPR不足なのか、それとも、制度がいつの間にか変わってしまったのか。

 これについて、きょうは国税庁から課税部長に来ていただいておりますので、この給付金が、いわゆる準備金という形での扱いであれば、課税されるのか、されないのか、そこを明確にお答えいただきたいと思います。

岡田政府参考人 お答えをいたします。

 経営所得安定対策交付金の課税問題ということでお答えをいたします。

 青色申告書を提出する個人で、農業経営基盤強化促進法の農業経営改善計画の認定を受けた者、こうした者が、平成十九年四月一日から平成二十七年三月三十一日までの間に経営所得安定対策交付金の交付を受け、その金額を農業経営基盤強化準備金として積み立てたときには、一定の要件のもとで、その積み立てた金額を、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができるということで、その限度においては課税されないということになります。

石田(祝)委員 これは、農業者の方が確定申告をする、そのときに確定申告の書類を持っていきますよね。そうしたら、税務署で受け付ける人は、いや、こういう制度があるんですよ、もう一回ちゃんとつくり直したらどうですかと、そこまで親切にしていただいているとはなかなか私は思えないんです。来たものが間違っていなければ、そのまま受け取る。そこにこういう制度があるんですよ、こういうことは、税務署の窓口ではそこまではなかなかやっていただけないだろうと。

 ですから、これは、こちら側が農業者の立場に立って、こういう制度があるということをしっかりPRしていただかないと、せっかくお金が来たんだけれども税金で持っていかれちゃった、こういう認識になってしまっているんですね。

 ですから、これは副大臣にお答えいただけるんだろうと思いますけれども、この給付金については、額は減るといえども、まだこの何年間かは続くわけでありますから、そこのところの徹底をぜひお願いしたいんですが、これはどうでしょうか。

江藤副大臣 まさに先生のおっしゃるとおりだと思っております。

 平成二十四年度運用件数は一万二千六百三十八件ということでございまして、平成十九年と比べて、平成十九年が三千三百九十一件ですから、非常に人気があって、実績ベースでは伸びておりますけれども、公聴会でそのような御意見が出たということは、我々はやはり真摯に反省材料として受けとめなければならない、周知徹底に努めてまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 もう時間がございませんので、あと何点か質問が残りましたが、また後日に譲ることとします。

 一点だけ最後に申し上げたいと思います。

 昨日、大臣も自由民主党のTPPの会合に行かれた、こういうことが、けさの農業新聞を私は見てきたんですが、大臣に最後に御決意を、これは質問通告しておりませんが、大臣の発言をけさの新聞で拝見いたしまして、やはり大臣としては、委員会決議は守る、こういうスタンス、少なくとも日豪EPA以下にはならない、以下というか以上というか、それが最後の線だ、こういう御認識でよろしいかどうか、最後に御答弁をお願いします。

林国務大臣 昨日の五時から自民党の対策本部の委員会が開かれまして、この委員会終了後、即出席をしてまいりました。

 そこで申し上げたことは、やはり衆参の委員会の決議、また党の決議、これを踏まえてしっかりとやる、このことはもうずっと言い続けてきたことであって、変えずにやっていきたい、こういうことを申し上げましたので、ここでもそういうふうに申し上げたいと思います。

石田(祝)委員 どうもありがとうございました。

 予定した質問ができませんでしたので、御了承いただきたいと思います。

坂本委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 冒頭、二つのことを申し上げたいと思います。

 一つは、石田委員も触れられましたけれども、鳥インフルエンザの対応でございます。初動が大事だというのは、そのとおりでございます。初動も大事ですけれども、その後のフォローアップも大事でして、私は、副大臣として口蹄疫の対応をいたしました。そこそこわかっておったので、ちゃんとできたんじゃないかと思います。この後の対応もきちんとやっていただきたいと思います。現場の皆さん方も不安でおののいていると思いますので、しっかり対応していただきたいと思います。

 それからもう一つ、おわびでございます。質問通告をいっぱいしたんですが、私は、時間がなくて、今までのこの法案の審議を全部見たりしておりませんでした。質問通告してから読ませていただきまして、ダブっているようなものは、よくないので省かせていただきます。抜ける質問がありますので、それは御了承いただきたいと思います。

 まず、法案、担い手経営安定新法だか何法かわかりませんが、担い手経営安定法と略称されるそうです。

 これを見て、平凡な名前ですね。内容を的確に表現しているのかどうか、よくわかりませんけれども、農家は、今、石田委員も、戸別所得補償の評価があったと。農業者戸別所得補償が定着しているんですよね。どうして名前にこだわって、変えたりするのか。

 かつて、六次産業化法案というときも、六次産業という名前を使うのは絶対嫌だという党がありまして、私はそういうのはよくないと思うんです。環境行政とか農政とか、国民一般大衆に必要な政策というのは、わかりやすい名前で、そして浸透している名前を使うということが大事なんじゃないかと思います。

 資料をいっぱい用意してありますので、一ページ目のところを見ていただきたいんです。

 民主党の七年半ほど前の、それほど大したことないですが、機密資料でございます。私がつくりました。名称をどうするかというのを徹底的に議論していたんです。名称論争は、赤澤委員とそれから玉木委員で委員会でやっていましたね。これはちゃんと考えていただきたいと思って、参考にということでお持ちしたんです。

 私は、これだけしつこく、いつものとおりですけれども、調べたんです。これは何かというと、何回と書いてあるのは、農林水産委員会でどれだけこの用語が使われたかということなんです。過去の事例を調べなけりゃいけません。でたらめに使ってもらっちゃ困るんです。直接支払い五十回というのはそういうことです。それで、直接所得補償とずっと書いてあるその右側は、ヤフーでもグーグルでも、どっちを使ったか忘れましたけれども、ともかく、どれだけ言葉があるかというのが出てきましたね、検索すると。その回数です。そして、アメリカのUSAヤフー、こっちはヤフーを使いました、ダイレクト・インカム・コンペンセーション、直接所得補償と。

 では、世界的にもどの用語が使われているかということで、そしてさんざん考えて、農家にもわかりやすいということで、小沢代表ですが、かなりしつこい方でして、僕の言うことをなかなか聞いてくれないんです。だから、何回も資料を持っていっては、やりました。これが最終ペーパーで、ここで農業者戸別所得補償と決まったんです。そこでせっかく定着してきているのに、何か平凡な名前に変えたりするというのはやはりよくないと思うんです、姿勢として。

 大臣、この点をどのようにお考えになっておられますでしょうか。

林国務大臣 今、篠原委員が御苦労されてこの資料をつくられて、小沢当時の代表とのやりとりも御披露いただきましたが、さすがに篠原先生がおつくりになった中にも戸別という字が出てこないというところがありますので、やはり御苦労されたんだろうな、こういうふうに思いながら聞いておったところでございます。

 これは、制度の中身というよりは名前の問題でございます。

 政権交代前後でいろいろな議論が行われてきたことは御案内のとおりでありますが、名称については、そういう議論の中でも、交付単価が全国一律であるので、戸別の販売価格やコストを踏まえて算定しているわけではないということ、それから、所得補償という言葉は、対象になる農業者をほかの農業者や商工関係者に比べて特別有利に扱っているという誤解を生むおそれがあること等々、制度の実態を適切に反映したものではない、こういう御議論があったところでございまして、政権交代後の平成二十五年度に、誤解を生むおそれのない経営所得安定対策という名称に変更をしたところでございます。

 玉木議員が与党時代の委員会でのやりとりや、そのことに御言及された四月二日の本委員会においてもそういう御議論があったところでございます。

 経営所得安定対策は、今回、農政改革をするに当たって、やはり米については、国境措置が十分にあって、いわゆるゲタを履かせる必要がないということでございますので、この交付金は、単価を削減した上で、経過期間を設けて廃止する。それから、全ての販売農家を対象というところから、意欲と能力のある担い手に対象を限定するということでございまして、中身も変わっている、こういうことでございます。

篠原委員 大臣、そこに農林水産省の立派なお役人、局長さんたちも来られています。私がお仕えした立派な局長もおられまして、上司なんですけれども、仕えているような雰囲気で仕事を一緒にした局長もおられます。この人たち、立派なんですけれども、センスがちょっとないんですよね。だめなんですよ、農民の気持ちなんかわからない。これは、常に農家と接しておられる大臣や副大臣や政務官の方がずっとすぐれているんです。ぱっとわかるような名前をこういうときは使われた方がいいです。

 悪例で申し上げますと、六次産業化法案がありました。僕だって思い出せないので、今メモを入れてもらったんですが、地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律。誰がこんなことを言いますか。このときから六次産業法案と言っておけばいいんですよ。そういうセンスを、これは政治家しかできません。

 ですから、ぜひこの次の法律は単純明快、この前、私の同僚議員の寺島義幸さんが、なれない英語を使って、シンプル・イズ・ベストとか言っておられます。ですから、これを考えてやっていただきたいと思います。

 それで、今までの農業者戸別所得補償をやはり検証しなけりゃいけない。名前は少々文句があるかもしれませんけれども、制度として定着していたんです。

 皆さんがおっしゃった、構造改革の足手まといになる。

 追加で資料を提出させていただきます。ちょっと見ていただきたいんですけれども、表裏になっております追加の資料で、一枚紙になっているものです。米の販売農家の経営耕地面積の規模別割合の推移、北海道が入っちゃうので、全国のと都府県だけのを並べましたが、一番右側をちょっと見てください。五ヘクタール以上がどれだけふえたか。

 よく見ていただきたいのは、二〇〇五年から二〇一〇年、戸別所得補償が始まったときです。地方公聴会はなかなか実のある議論をされているというのがわかりました。佐賀の光吉さんですか、二回規模拡大が進んだときがあると。集落営農制度が導入されたとき、二回目が戸別所得補償制度が導入されたときだと正直に言っておられます。これが事実だと思いますよ。

 見ていただけばわかると思います。一ヘクタール未満や三ヘクタール未満は減っているんです。三ヘクタール以上がふえず、かつ、五ヘクタール以上が、都府県のところ、一七%ですね。この単位はパーセントで、一七%から二三%に面積割合はなっているんです。六%も一挙にふえている、五年ごとのセンサスで。数字はちゃんと事実を物語っているんです。僕は、質問ということですけれども、聞いていないので、もうこれは私のレクチャーを聞いていただくだけでいいです。規模も拡大しているんですよ。

 どうもこれはだめだった、我々の政策、私はそんなことばかり言いませんよ。いいところはいい、悪いところは悪いと言いますよ。前の日豪EPAも、米とか麦とか砂糖はちゃんと守っている、これは立派だ、だけれども、牛肉と乳製品はちょっと決議違反じゃないですかと言ったら、後者は忘れて、上の方は評価したとか言っておられますけれども、だめなものはだめ、いいのはいいと言いますから。

 大臣にお伺いしたいんです。

 表もまた見ていただきたいんです、そこのいっぱいある表の、二ページの上から二段目の過剰作付面積の推移というのを。

 農林水産省がずっと頭を悩ませてきました過剰作付、五万四千ヘクタールあったのが、二〇一一年、一二年、一三年と、二万二千とか二万四千に半減しているんですね。

 自民党時代はどうしたかというと、専らむち政策だったんです。それをあめで誘導して、参加しないのなら参加しないでいいですよ、参加するとこういうメリットがありますよ、参加のメリットとデメリットをよく考えて生産調整に参加してくださいと言ってきて、そうしたら、メリットがあるから参加して、過剰作付がなくなっているんです。だから米価も維持できたんです。その点では私は有効に作用したと思っているんですが、いかがでしょうか。

 それから、もう一つついでに、一緒にお伺いします。

 もう一つは、農業所得です。次のページです。三ページ、農業所得の表を見ていただきたいんです。

 一般的な農業所得、二〇〇九年から導入する準備となっているわけですけれども、九年にはぴったり出ていないんですが、ずっと結構減ってきていたんですね。もっと、継続的には、さっき堀井さんが言っておられましたけれども、相当減ってきている。だけれども、農業者戸別所得補償。当然かと思います。それは農家にダイレクト、直接支払いで行くわけですから、五千億、六千億行くわけですから、二〇〇九年、百四万円からばあっとふえて、二〇一二年は全体で百三十五万円になっている。

 水田作経営になると、もっと結果は明らかでして、二〇〇九年から二〇一〇年に三十五万円から四十八万円と、十三万円もふえているんですね。そしてまた三万円ふえている。ばあっとふえているんです。

 だから、規模拡大は進んだし、農家は自分で選ぶようになってきているし、農業所得の減少に歯どめがかかってセーフティーネットの役割も果たしていますし、何もへんちくりんな政策なんかで直さなくちゃいけないというような雰囲気がないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

林国務大臣 レクチャーをしっかりと今聞かせていただきましたが、まず、過剰の作付についてお話がありました。

 これは、平成十六年産以降ずっとふえてきておりました。そして、十九年産に七・一万ヘクタールのピークでございます。二十年産から減少に転じて、特に二十三年産は二・二万ヘクタールです。三・一一がこの年に起きております。その後、また微増傾向で推移して、二十三年が二・二、二十四年が二・四、二十五年が二・七、こういうふうにまたふえてきているというのが傾向でございます。

 まず、生産数量目標に即して主食用米の生産を行った農業者に対して、平成二十二年以降、米の直接支払交付金等のメリット措置が講じられた、これが一つあることでありますが、もう一つは、平成二十年産から餌米への支援が定着してきたというところがある。それから、今申し上げましたように、平成二十三年は東日本大震災があったということで、東北の主産県の生産力への影響、こういう複合的な要因があった、こういうことでございます。

 したがって、我々としても、米政策を見直して、やはりみずからの経営判断で需要に応じた生産を行えるように環境整備をしていこう、こういうことにしたわけでございます。それから、やはり現在も経営規模の大きい層ほど需要に応じた米生産を行っている、こういう状況ですから、今後、農地中間管理機構等も活用しながら農地集積を進めていく中で、一層これを加速化していかなければいけない、こういうふうに思っております。

 それから、所得の方ですが、これは、先生がみずからおっしゃったように、配ったわけですから、その分上がるということはこの統計にも数字があらわれているということでございますが、農業経営を発展させて所得を向上させていくためには、やはり有利販売、それからコストダウン、これが原則であって、これが最も重要であって、補助金によって所得が向上するということは、これのみであるとすると、本来のあり方ではないのではないか、こういうふうに考えております。

篠原委員 私の質問にきちんと答えていただいているかどうか、よくわからないんですが、ともかく、そんなに悪口ばかり言うような政策じゃなかったというのはお認めいただいてもいいんじゃないかと思います。

 もう一つ言われた、貸し剥がしが行われるというのは、新潟の公聴会で誰一人としてそんなことを言わなかったですね、皆さんに聞いても。貸し剥がしなんて、それは多少は起こるでしょうけれども、それが規模拡大、構造改革の阻害要因になるなどというのは、私はないと思います。これは数字でお示ししてあるとおりでございます。

 また大臣に大事なことをお伺いしなければいけないんですけれども、目的ですね、生産調整、総理は減反とかと言っておられましたけれども、これは廃止というのは僕は当然だと思います。そういう方向性はいいんだろうと思います。我々の政策は、まさにそれを目指したんですよ。だから、生産調整廃止だとか減反廃止だとかとどぎついことを言わずに、農家に、安心して、なだらかにそういう方向に持っていくといいんです。皆さんも言っておられるわけです。佐賀の秋吉さんは、米並みの所得補償をされればいいんだ、大豆をいっぱいつくっている、大豆が条件がいいからと。

 だから、これは我々の政権時代の失敗ですけれども、麦とか大豆とか、私が非常にこよなく愛しております菜種とかソバとかを、もっと高い価格設定をして、つくってもらうようにすればいいんです。それを見てつくる、そのぐらいにしてもいいんです。緑とか黄色とか、そんなことばかりにこだわっていなくて、正々堂々とやってもいいんです。

 それで、なだらかに生産をふやしていったらどうなるかというのを、この二ページと追加の資料のさっきの裏側両方を見ていただきたいんです。

 二ページの方は、小麦や大豆や菜種やソバ、対象作物がどれだけふえていったか。残念ながら、さっき言いましたように、単価が高くないので、それほどふえておりません。しかし、ちょっとずつふえている。特に、ソバは作付面積が相当ふえていますね。一番下、二〇〇八年は四万七千ヘクタールぐらいしかなかったのが、六万一千ヘクタールになっている。これは、菜種や大豆や何かでもずっと起きてほしいことなんです。

 それからもう一つ、追加の資料の裏側のところで、水田の作付面積のところを見ていただきたいんです。これは、米以外の、麦、大豆、ソバ、菜種、飼料作物で、二〇一三年で四十四万ヘクタール、四十三万五千八百九十ヘクタール。それから、米絡みの飼料米、米粉米等で九万ヘクタール。合計五十二万ヘクタール、ほかの作物が作付されている。

 これはどういうことかというと、佐賀なんというのは暖かいですし、二毛作が完全にできる。麦をつくって米をつくるか、あるいは麦で大豆でというのができるわけです。それでもって経営が成り立つような援助をすれば、そういうふうに定着していく。

 それで、米しかつくれない、雪で覆われている、鈴木憲和委員が言っていましたけれども、山形はまだ雪があった、佐賀に行ったら全然ない。一回しかつくれない。東北の日本海側、北陸、こういうところは米しかないんです。それで定着していく。

 ほかのができるところにほかのをつくってもらうように誘導して、そしてなだらかに生産調整は廃止ということを我々は考えて、そうやって説明していたんです。それを、何か格好よく、静かな構造改革とか言っていますけれども、ちょっとでき過ぎた言葉で、余り使いたくありませんけれども、そういうふうに進んでいるんですよ。ぜひそういうことを認識してやっていただきたかったんですが、それでうまくいきつつあるのを違うふうにする。

 それで、さっき、農家の経営感覚と言われた。そのとおりなんです。農民主権で、農家に選択権を与えたんですよ、どっちをつくるか判断してくださいと。そして、奨励したい方にたくさん出す。非常に単純明快な政策なんです。ところが、単純明快過ぎて、変なふうに使っているわけですね。一万五千円を、何か根拠もなしに七千五百円に下げる。これは皆びっくりしますよ。重大な政策変更です。

 鈴木憲和さんの質問の中にありましたけれども、そんなのは前から言っているわけですけれども、農業は経営リスクが非常に高い、天候のリスクがある、だけれども、一番大きな経営リスクは農政の変換だと。もう典型的な例だと思います。一万五千円もらえるから、設備投資をしてやっていこうとしているのを、急に何の前ぶれもなくこれを減らす。普通では許されないことだと思います。

 みんな、どうせまた変わるんじゃないか、どうせまた変わるんじゃないかと心配しながらやって、だけれども、四年間続いたんです。それでそこそこうまくいっているのに、何でこんなどぎついことをされるんでしょうか。私は、これは重大な政策ミスだと思いますけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 今まさに委員がおっしゃったように、四年間続いたということでありますが、それは、裏を返せば、四年以上前はやっていなかったということであります。

 したがって、一万五千円という大きなものを、対象も販売農家全員ということで、それ以前になかったようなところに急に一万五千円を配り出したという意味では、今委員がおっしゃっていたことは、我々にしてみれば、これは政権交代で掲げられておやりになったことですから、政治的にはそういうプロセスを踏んだということですが、やはりそれは大きな、それまでとは断絶があったのではないか、こういうことでございます。

 委員が今おっしゃったように、何となくうまくいっているじゃないかと。それは、複合的な要因というふうに申し上げましたけれども、いろいろなことがあって、これが本当に政策の目標と整合性をとれているのか。

 それから、静かな構造改革というのは、衆法の答弁者の先生方もお使いになっているわけでございますので、私も、なるほど、そうなのかな、こういうふうに聞いておりましたけれども、少なくとも、我々が野党時代に、例えば大体十年間かけてこれはやめていくんだというようなことがあったのかなというのは、私の記憶では余りよみがえってこないところでございます。

 いずれにしても、例えば、耕作放棄地、それから就業者の年齢等々を見ても、やはり加速度的に構造改革を進めていかなければならないということは共通認識であろうかな、こういうふうに思うところでございます。

 もう一つは、やはり主食用の米の需要動向というものを、一年、二年ではなくて、少し中長期的に見たときに、本当に今のままで大丈夫なのかな、こういう議論は真摯にやらせていただいて、しっかりと水田のフル活用をしながら、米の需要というものに合った需給のバランスも両立させるということをしっかりと考えた結果が今度の農政改革に至っている、こういうふうに考えております。

篠原委員 それは我々も考えているんですよ。だから、どの程度のタイムスパンで、どういう手法がです。

 例えば、またしつこくこれは言わせていただきますけれども、菜種ですよ。

 菜種なんというのは、私のふるさとでは、「菜の花畠に 入り日薄れ」という高野辰之の歌、高野辰之が生まれ、中山晋平も生まれたところなんです。日本のふるさとの情景の作詞家、それからそれをメロディーにしている、両方、偶然我が市なんです。

 私が小さいころ、そこらじゅう真っ黄色ですよ、山麓。田んぼにも菜種がありました。世界じゅう同じなんですよ。総理もまたいっぱい外遊されるようですけれども、今ヨーロッパへ行ったら、下は真っ黄色ですよ、菜種の黄色。夏に行ったら、ヒマワリの黄色ですよ。菜種を完璧なまでになくしているばかな国は日本だけですよ。

 どうしてかというと、二毛作に完全にできるんですよ。耕地の利用率、佐賀のところでは一八〇%だ、ほとんど二回使っている。そういうことができるのに、安いのを外国から輸入すればいいということで、やめてしまっているわけですよ。こんな愚かな農政を絶対しちゃいけないんです。

 だから、水田の有効活用はいいんです。いいんですけれども、さっき言いました、麦、大豆、ソバ、菜種をつくれるんですよ、飼料作物も。

 そして、飼料米。この件については、皆さんいっぱい聞かれているので、やめます。我田引水的な、変な、つついたら幾らでもつつき通すことができる、去年十二月のシミュレーションですね、集落でやると一三%収入がふえるとかいう。これは、もう皆さんが指摘するので、やめますけれどもね。

 一番単純なのは、餌をいっぱい輸入しているんです。だったら、米にこんなにこだわらなくて、トウモロコシとかをつくったらいいじゃないですか。

 新潟では、そんなのは、六百八十キロとか七百キロの収穫で、コンバインがすり切れて、消耗しちゃって、あんなのは使えない、新潟次郎というのは。新潟三郎になればいいのかもしれませんけれどもということを言っていると。だから、どうしてそういう米にこだわるのか。

 米粉米はそんなにふえていないですね。さっきの追加の資料のところを見てください。何か鳴り物入りでやりましたけれども、もう面積は減っていますよ。二〇一一年に七千三百二十四ヘクタールが、今三千九百六十五ヘクタール。

 だから、米にこだわらずに、ほかの作物にかえていくべきだと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

江藤副大臣 もちろん、気持ち的には先生と同じ気持ちはあるんですよ。トウモロコシを買わずに済むんだったら、栄養価も高いし、使いやすいし、それはトウモロコシが自国でつくれれば、それが一番いいと思います。

 専門家ですから、もう多くは申しませんけれども、水田にそのままトウモロコシを植えなさいといったって、これは湿度に弱いですから、なかなか無理ですし、高温で多雨であり、湿度が高いと、管理もなかなか難しいという問題もあります。また、北海道の例も引かれましたけれども、大型の機械を購入するコストもあります。

 他方、米の場合は、現在使っている、もちろん、保管するところとかコンバイン等を分けなきゃいけないという問題はあるにしても、今定着している技術、それから施設、そういったものを使うことができる。

 やはり米をつくるのが日本人は得意であって、水田が多い、フル活用していくんだという基本理念のもとにおいては、別に米にこだわっているというわけではなくて、御党も米にこだわって一万五千円をお支払いされたわけでありますけれども、そういう意味ではなくて、飼料自給率を上げるという意味で一番近道なのが米ではないか。

 トウモロコシをつくることを、デントコーンも含めて、否定するものでは決してありません。

篠原委員 新潟平野は無理だと思いますよ、湿田でね。高低差が六メートルから七メートルしかないといって、新潟の鈴木さんかな、何か言っていられました。私のところなんかは、一つの畑で高低差が六メートルから七メートル。そういうところと一緒にならない。だから、適地適作なんです。それを、単価をいじくることで誘導していけばいいんです。

 だから、飼料米をやってもいいんですよ。だけれども、飼料用トウモロコシをもっと優遇すればいいんです。簡単なんですよ。やってみてください、いろいろな作物を導入したりして。これでもうかるんだったらというのはやりますよ。それが経営者を育てることにもなると私は思います。

 問題は、構造改革、構造改革と言っていながら、このペーパーにもありますけれども、どういう人たちが、どういう農家が一番農業者戸別所得補償に参加していたかというと、でっかい農家なんです。でっかい農家を助けているんです、明らかに。それは当たり前ですよ、面積換算で、面積に応じて支払うわけですから。

 もちろん数量支払いもあります。これはいいことなんです。数量支払いを導入するというのはマルですよ。それから、大臣が言われた変動支払い。僕は、こんなことを言ったって始まりませんが、あんなものは大嫌いだったですよ。米だけ何でそんなに優遇するんだ。米はだめだと思って諦めて、麦や大豆や菜種をつくってもらえばいいんですよ。その経営判断は農家に任せればいいんですよ。それはそれでマルだと思いますよ。いい政策変更もいっぱいあるんです。

 ですけれども、やはり七千五百円というのはミスですね。でっかい農家が一番打撃をこうむるんです。構造改革で大きな農家を育成しようとしているのと矛盾するんです。どこの公聴会でも、それをみんな言っていられるはずですよ。

 だから、佐賀の秋吉さんもそう言っていますね、光吉さんとか。年金号とかいうおもしろい話も出てきましたけれども、お年寄りが年金でもってトラクターを買ってやるとか、そうやって稲作をやっている、続けようとしている、そういう人をバックアップしなくちゃいけない。それを何でわざわざ痛めつけるようなことをするのか。僕は信じられないんですね。

 世界じゅうの農業政策で、これは繰り返し言っていることなんですけれども、でっかい農家だけに集中して政策をやるなんというところはないんです。今回、さすが、今までの失敗に懲りて、面積要件とかをなくしておられます。いいことだと思います。小さくたって、俺はやってやるぞと言っているのと、でっかくて、もうそろそろやめるかと言っている高齢専業農家と、どっちをバックアップするかというのは、それは人さまざまなので、入り口はちゃんとオープンにしておいて、結果でもって出すというふうにしていかなけりゃいけないんです。

 だから、所得政策というのは、さっきの表のところにありましたけれども、零細な農家がやっていけないから、所得を補填してやっていけるようにしましょう。どなたも言っておられると思う、中山間地域に対するバックアップはいいんだと。そうなんですよ。そういうふうにしていけばいいんですよ。

 そして、米だけでも、米を一生懸命やっているけれども、やっていけなくなっている。自給率を高めるためには、米は絶対確保しなくちゃいけないということなんですね。だから、根幹の大規模稲作の専業農家を痛めつけるような政策というのは、僕は大問題だと思うんですよ。このことについて、本当に検討されてこういう結論になったんでしょうか。

江藤副大臣 これは、自民党の中で、諸先輩方とかなり激しい議論をいたしました。

 自民党の公約にのっとってやれば、即時一万五千円をゼロにすべきだという御意見も片方あり、今の先生の御意見のように、これを突然やめてしまったら、余りにも経営への影響が大き過ぎるという議論をかなりの回数、朝昼晩と重ねて、いろいろなことを考えた結果、経過的な措置として、七千五百円をしばらくの間は残すこととしたものであります。

 大臣も先ほどから何度か申されていらっしゃいますけれども、振り返れば、もともとこの一万五千円はなかったわけであります。その後、数年間、起こって、その期間、いろいろな意見を、私も農協青年の方々の意見を聞きました。中には、要らないと言ってくる人もおられましたよ。この一万五千円をやるのであれば、ほかにもっと有効な使い方があるんじゃありませんかという御意見もいただきました。私のような宮崎県においては、ほかの県と比べると、十分の一も直払いでいただけるお金がないという、県間のいわゆる不公平感もかなりあったことも事実であります。

 ですから、私も、前の答弁で、先生はいらっしゃいませんでしたけれども、これを七千五百円にしたら影響があるんじゃないかと、たしか畑先生だったと思いますけれども、私は率直に、あると思います。単年度の予算措置とはいえ、多分、来年も再来年も続くだろうと思って営農計画を立てた人には影響が出ないとは思っておりませんけれども、しかし、法案という形ではなくて、あくまでも予算措置でされていた以上は、ある程度、大規模な方々は、経営の上でのリスクとして、これがなくなることは想定されていた方も少なくはないのではないかというふうに私は考えています。

篠原委員 そんな、ないなんて言う人はいるでしょう。どこにも変わり者はいるはずですから、それはしようがないです。

 主要国の農業保護比較、これは林大臣は予算委員会のときにごらんになっておると思いますが、我が委員会の委員の皆さんはごらんになっていただいていないかもしれませんので見ていただきたいんですが、主要国の農業保護比較というものです。本当に日本の農業は過保護だ、PSEというOECDが考案したインチキなんですけれども、価格差を全部、関税をそのまま組んだりしてやるから日本は高くなるんですけれども、補助金をどれだけ出しているかというだけで農業の保護を比較したのがこの表なんです。

 時間がないので省きますけれども、一番下の、一農家当たりの直接支払い額、これは単位はドルです。日本だけ三十一万円にしてありますけれども、一ドル百円ということで、三千百ドルです。フランスを見てください。二万一千五百五十六ドル、七倍の直接支払いを出しているんです。これと比べてみてください。一万五千円を七千五百円にけちってどうするんですか。アメリカだって、五千九百九ドル出しているんです。ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツは、みんな日本の五倍か六倍、七倍なんです。これで農業を維持しているんです、中山間地の農業も。だから、ヨーロッパへ行ったら、中山間地が疲弊して草ぼうぼうなんてなっていないですよ。みんなのどかに生活していますよ。

 それは、ここで導入されておりませんけれども、ぜひやってほしいと思いますけれども、中山間地の直接支払いというのがあります。後でちょっと聞きますけれども、条件不利地域には余計に出しているわけですよ。例えば、ここは明確じゃないですけれども、青年給付金は、完全にフラットな、平らなところと、ちょっと傾斜になってきたところ、山間地と、倍、倍、倍と。中山間地域の方は大変だから、そこで就農する人たちに平たん地の倍以上出している。それが常識なんです。我が方はそれをやっていなくて、平たん地のことばかり考えているんです。

 そして、どうしてこんなふうになるかというと、しつこく言っているわけですけれども、この資料は余りいい資料じゃなかったんですけれども、その次の資料、裏側を見てください、国際森林年のときのもの。これはちょっとミスで、いっぱいホームページにあるんですけれども、本当は日本のイベントだけのを出せばよかったですけれども、国際農業年の、早くやってくださいよというので、時間がもったいなかったですけれども、予算委員会のさなかに林大臣に、ちゃんとやってくださいよといって念を押したはずです。相変わらず何にもやっていない。心がけが悪いなと思いますよ。いいんです、でっかい農家は大事です。けれども、家族農業で一生懸命やっている農家をないがしろにしちゃいけないと僕は思います。

 農林水産省挙げての行事というか取り組みは何かあったんでしょうか。

林国務大臣 この間、予算委員会でも国際家族農業年について御答弁したところでございまして、FAOがいろいろな式典、会議、国際的な取り組みを行う、こういうふうに申し上げたところでございます。

 我が国の食料・農業・農村基本法においても、農業の法人化とともに、家族農業の活性化を図るということが明記をされております。

 国際的な取り組みに積極的に参加するという中で、三月にモンゴルでFAO地域総会が開かれておりますが、小里政務官が出席をいたしまして、国際家族農業年に言及して、その重要性を強調させていただいているところでございます。

 また、農林中金総合研究所ですが、一月二十九日に、都内ですが、家族農業の価値に関する報告会を開催しておられたというふうに承知をしておりまして、こういう関係団体の取り組みもしっかりと支援をしてまいりたいと思っております。

 それから、ホームページには、ことしが国連が定めた国際家族農業年であるということを周知しているところでございます。

篠原委員 大臣、外国の会合のお話をされましたけれども、三月二十六日、ブエノスアイレスで世界農業者機構の総会も開かれています。そこで家族農業年のことを議論されているんです。そこのある参加者、会長だったと思いますけれども、人類の歴史において最後に生き残っている農業は家族農業だと。

 そうなんですよ。旧ソ連に、もう今は教科書にも出ていないと思いますけれども、私が中学や高校のときは出ていました、コルホーズ、ソホーズ。わかる人は相当お年をお召しになっている。国営農場、共同農場、中国の人民公社、これは企業農業ですよ。アメリカの企業農業は何かというと、カリフォルニア、フロリダの野菜や果物の収穫、季節労働で、安いバスに乗せてトレーラーの中でやって、不法移民の人たちを使っているわけですよ。こういう非常にいかがわしい農業ですよ。私は長続きするはずがないと思います。

 だから、こういうことを考えて、私はいつも言っているんですが、大規模はいいんだけれども、小さな農家は切り捨てるというようなことをするなと。畜産の農家で、農業は保護せずに農家を保護したという。逆なんです。農家は見捨てて、農業だけ。規模拡大もそうなんです。農家がどうやって生きていくかということを考えてもらわなくちゃならないんです。

 それで、多面的機能の関係でもう一つ、六ページの表を見てください。

 これも予算委員会で言って、いや、いいんです、多面的機能を法案にして、中山間地域の直接支払い、我々が二〇〇六年に提出した法案の中に入っているんですよ、中山間地域の直接支払いを法案化するというのは。これをやっていただいているので、深く感謝いたします。これはマルの政策です。

 そうしたら、もう一方で、小さな農家はだめにする、高齢専業農家はやめてもらいたいというようなことばかり言うんです。それは違うよという、六ページの表を見てください。

 これは、山口、福岡というのは、安倍さんと、もう一つは林大臣にも見てもらいたいからやっているんですけれども、福岡というのは麻生副総理です。

 長野県は、男女とも一番長生きなんです。それで、二番目の医療費。福岡県がなぜかしら一番医療費が高いんです。岩手とか長野とかは低いんです。四十万円の差があるんです。大事なのは、一番下です。いいですか、全員が長野県人、全員が福岡県人と想定してみてください。四十万円の差がある。七十五歳以上の後期高齢者でやると、五兆六千億円の医療費の節約になるんです。六十五歳以上の約三千万人でやると、十二兆円。ちっとばかし米を効率的につくったからといって、こんな金額になりますか。

 長野県の真面目な生活態度を見てください。高齢者就業率が一番高いのが長野県なんです。福岡県とはちょっと違うんだろうと思います。年をとっても働いているんです。働いていることが長生きに直結するんですよ。この人たちに外でちゃんと働いてもらう。野菜や果物をつくって手間がかかる、これがどれだけ国全体の福利厚生になっているか。これこそ、農業、農村の最も重要な多面的機能なんです。

 今回は間に合わなかったですけれども、この次に我々が政権をとったときはこれを追加したいと思っておりますから、よく考えておいていただきたいと思います。皆さん、これに気がついて……(発言する者あり)富山県の人は、生活保護の割合も一番少なくて、自立自助で、一番真面目なんです。

 それで、多面的機能の方にちょっと移らせていただきます。

 これも、ちょっと時間がなくなっちゃったので、みんな省いて、まことに済みません。

 多面的機能について、いろいろバックアップするというのも非常にいいことだと思います。しかし、もっとちゃんと考えていただきたいというのがありまして、いろいろあるんですけれども、よく聞いていてください。そっちの後ろに座っている人、聞いていてくださいよ。

 環境保全型農業直接支払いは個別が中心なんです。だから、これは経営所得安定対策の方に行った方がいいんじゃないですか。

 どうしても聞きたいのは、そうなっているのか、なっていないかよくわからないんですけれども、中山間地域の直接支払いは集落の共同活動なんかに使われているわけですよ。だけれども、我々の政権時代の二〇一一年に、半分近くは個別に出せよというふうに言ったんです。今度、この法律にするときには一体どういう整理をされたんでしょうか。ちょっと教えていただきたい、よくわからなかったので。

小里大臣政務官 中山間地直払い制度の新たな交付の対象についてお尋ねでございます。

 農業生産活動の継続を図っていくために、この交付金の使途については、市町村が集落に対して、交付額のおおむね二分の一以上を個人配分に充てることを原則としております。しつつも、最終的には地域の話し合いで決められる、そういう位置づけになっております。

 今般の法制化に当たりましては、この基本的な枠組みを維持するということにしております。従来の取り扱いを基本とする方向であります。

 ただ、ここの議論でも、個人に向けるべきじゃないか、いや、やはり地域だと両論がございますが、であるからこそ、最終的には地域の話し合いに委ねるわけでありまして、地域で地域の実態に応じた支払いの仕方をしていただく、これが肝要ではないかなと思うところであります。

篠原委員 地域の自主性を重んじるというのはいいんですけれども、今までのように、中山間地域の直接支払いが先にスタートしているんです、日本型直接支払いとして。直接行っていなかったんですよ。集落活動もやって、これはまさに日本型だと思いますよ。

 そして、我々が政権のときに、本当の農家に行く直接支払いをやったので、それにびっくり仰天して、そんなことを言っていないんですけれども、そんたく政策変更をしたんです。僕はそんなことを言っていないのに、個人に行くのが筋だからといって、慌ててこういう通達を出しているんです、後から。真面目過ぎるんです。頭がかたいんです。

 そんなことまでしなくたっていいんです。今度こうやって整理したら、やはり多面的機能支払いは、販売農家じゃなくたって、農業をやっていること自体を評価するわけですし、生産するのに格差があったりするのは、さっき申し上げましたとおり、経営所得安定法の中で、中山間地域がもっと条件不利だから、そっちは倍の、あるいは一・五倍の所得補償をする。経営所得安定対策、私は戸別所得補償という言葉を使わせていただきますよ、これをやったらいいんです。そんなややこしいことをしなくたっていいんですよ。

 それはなぜかというと、いっぱいやっていますけれども、みんな共同活動に使ってきたんですよ。それを、何か変な通達が出るから、俺のところによこせという人が出てくるわけです。俺のところによこせの部分は、担い手経営安定、ここの分野でやっていただいて、こちらは純粋に地域社会活動にと。

 三浦局長、ちゃんと聞いていてください、奥原局長も。どうしてそういう整理を、頭がいい、賢いと言っていたけれども、ちょっと賢くないところがあるんです。真面目に考えたらこれですっきりするのに、どうしてそういうこと、せっかくこういういいことをやっていただいているのに、どうも中途半端になる。

 そして、多面的機能の支払いはいいことなんです。ヨーロッパが何であんなにきれいかというと、国民がみんな、農業、農村の持つ多面的機能を評価しているからなんです。一年に二回ぐらいしか行かない、こんなきれいなところに、こんなへんぴなところに住んで、この光景をここで酪農して守っていてくれている、大変だろうなと。そこにお金を出したっていいんだといって、国民がみんな納得しているんです。環境に対する姿勢が違うんです。そういう点では、そこにお金を出す。ちびた、ちょっとですよ、だけれども、国が本格的にこれをやらなくちゃいけない。

 そして、ミスしてきたものがあるんです。土地改良、いいことだと思います。だけれども、ちょっと行き過ぎたんですよ。全部、三面コンクリートにしたり、パイプの水路にしたり、そして、水田に全然メダカも入れなくなって、メダカがいなくなってしまう。農薬や除草剤を少なくして生物多様性を高めようとしているんですけれども、小さな水路がないから、スポーニンググラウンドというか、産卵して子供を育てる、小魚を育てていく、その場所がないんです。

 これは、国が反省してやるべきだと思うんです。多面的機能支払いなんかで、農家に適当にやってくださいじゃ済まないですよ。具体的なことを言えば、三面コンクリートの下を引っ剥がして、そして土との接点をつくればいいんですよ。泥上げは、多面的機能の、農家に任せるんじゃなくて、国が大々的に、五年に一回泥上げをしてやるというような方向に持っていかなくちゃいけないと思うんですけれども、農林水産省はそういう考えを持っておられるでしょうか。

小里大臣政務官 私も田舎育ちでありますから、昔なじんだメダカ、あるいはドジョウにしても、いなくなってしまった、大変寂しい思いをしておりまして、気持ちの上では、もちろん委員と同じくするところでございます。

 では、農水省がどのように環境との調和を図ってきたかという御指摘でございます。

 平成十三年に土地改良法を改正しまして、環境との調和に配慮することを原則として位置づけております。また、この法改正を契機として、環境との調和への配慮の基本的な考え方あるいは工法を示した調査計画、設計の手引、生物の生息環境や移動経路にも配慮した工法等を示した生態系配慮の技術指針などを整備して、取り組みを進めているところでございます。

 各地域のそれぞれの生物の生息状況に応じて、排水路における落差解消のための水路、魚道の整備、水田と水路間の移動経路を確保するための水田魚道の整備、あるいは魚巣ブロックを整備することで生息環境を保全するといったような取り組みを行ってきたところでございます。

 私も、実感としては、これが功を奏しておるとはなかなか言いがたいと思っております。御指摘のことを踏まえて、今後また改善に努めてまいりたいと思いますし、特に、生態系配慮の技術指針、申し上げたところでありますが、今年度改定予定でありますので、そういった中でも特に取り組んでまいりたいと思っております。

篠原委員 済みません。ちょっと質問時間が来てしまったので、もう一つだけ。

 北川環境副大臣においでいただいております。

 農林水産省は、真面目ですから、やろうとしているんですけれども、やはり急に変えられないんですね。そういうときは、外から刺激を与えなくちゃいけないと思います。

 国民の皆さんにも水田がちゃんと環境を守っていることを知っていただくためにも、環境省が本腰を入れて、全部じゃなくてもいいですけれども、やはりこれは問題だと。それは、農薬や除草剤の多投もよくないんです。だけれども、一番よくないのは、卵を産むところがない、これだと思いますよ。だから、思い切って、この地域はそういうふうにするということで、環境省は、自然環境回復のミティゲーションと言われています、このための公共事業をぶっ立てて、そしてやっていっていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。ずっと環境行政をやっておられる北川さんならできると思うんですよ。

坂本委員長 北川環境副大臣、簡潔にお願いいたします。

北川副大臣 ただいま篠原委員の方から、環境保全、農地での果たす役割、多岐にわたる御質問でありました。

 その中で、環境省として、先ほど委員も御指摘でありました、自然体系の破壊の中で、過去、トキが絶滅をしたり、また、豊岡におけるコウノトリの再生事業等を行いながら、また一度の環境保全、復活に取り組んでいるところであります。

 公共事業としても、平成十四年度に自然再生事業を創設いたしまして、農業、農地周辺の湿地環境、また過去に損なわれた自然環境の再生にも取り組んでいるところであります。

 今後、環境省といたしましても、引き続き、農水省とも連携をし、農地を含む里地里山での自然環境の保全、再生に積極的に取り組んでいきたいと考えておりますので、また今後とも御支援よろしくお願い申し上げます。

篠原委員 ありがとうございました。以上で質問を終わらせていただきます。

坂本委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。民主党の大串博志でございます。

 法案審議が続いておりますけれども、これまで掘り下げられてきた論点に加えて、私なりに幾つか、さらに確認しなければならない論点があるなというふうに思いますので、議論させていただきたいと思います。

 まず私たち、私も提出者の一人ですけれども、衆法の提出者として、政府が出された二法案に対して、戸別所得補償法案と、中山間あるいは農地・水等を法制化する三法、計四法を衆法として提出しているわけでございます。これを相対する形で議論させていただいているわけでありますけれども、先般来、私たちが戸別所得補償政策の法制化を今般提案している中で、なぜ今なのか、なぜ与党時代ではなかったのかという御意見も数回にわたっていただきました。

 これに対して、私は答弁の中でも、その思いはあって、努力もし、党内でも検討をし続けてきた、一方で、ねじれ国会の中で、特例公債法案を通すという御議論の中で、当時の与党、私ども、それと、自民党も含めて、野党の皆さんも含めた三党合意の中で、マニフェスト政策であった戸別所得補償政策は、その効果を検証し、見直す、こういった合意事項になったものだから、この見直し、検証作業を続けてきて、その中で、相調わず、法律としては提案できなかったということを申し上げてまいりました。るる、それに対する議論があったわけでありますけれども、今のところ、私たちの真の思いでございます、私たちとしては、与党時代、法律として提出したかった。

 しかし、なかなか三党協議は相調わないところがありました。当時の経緯を大臣も覚えていらっしゃるのではないかというふうに思います。大臣は、当時、二〇一〇年の九月からは自民党の政務調査会の会長代理として、政策の統括をされていました。私も、今政調の代理ですけれども、そういう中で、議論の経緯もフォローされていたのではないかというふうに思います。

 お尋ねしたいんですけれども、当時、三党協議を議論させていただいていて、当時の野党、自民党の皆さんは戸別所得補償制度を法制化するという私たちの提案を是とし、法制化していいじゃないかという立場から協議に臨んでいただいていたのだろうかということを、今の段階でも確認させていただきたいというふうに思います。

 なぜなら、その後の選挙公約でも、戸別所得補償制度を日本型直接支払いあるいは多面的機能支払いへと変えていくんだということを累次おっしゃっていらっしゃいます。私たちの目からすると、戸別所得補償政策を法制化するという考え方には否定的であった、それもあって協議は相調わなかったというふうに思います。

 大臣、当時の経緯はいかがでしょうか。自民党として、戸別所得補償制度を法制化するという考え、これには同意するところがあられたということでしょうか。

    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕

林国務大臣 経緯ということでございました。

 私は、野党時代は、最後はたしか総務になりましたが、その前まで、石破政調会長時代、それから茂木政調会長時代は、政調会長代理をやらせていただいておりました。

 当時の経緯としては、まず平成二十三年の八月九日に、特例公債法をめぐって、これは大串委員も非常に汗をかかれていたと私もよく存じておりますが、自民党、公明党、民主党の三党幹事長合意というのがございます。その際に、農業者戸別所得補償の平成二十四年度以降、これは二十三年の八月九日ですから、二十四年度以降の制度のあり方については、政策効果の検証をもとに、必要な見直しを検討する、こういう合意になっております。

 この合意から約三カ月経過した十一月十一日の、今度は三党政調会長会議において、民主党から自民党、公明党に対して初めて農業者戸別所得補償をめぐる実務者協議の申し入れがあって、十一月二十九日から協議が開始されております。三カ月間が経過をしたということでございます。

 八月九日の三党合意に、先ほど申し上げたように、まず検証しよう、農業者戸別所得補償の政策効果を検証するということになっておりましたが、当時、自民党から、検証結果はどうなっているのかという催促を申し上げて、それで、民主党から検証結果が提示されたのは十二月七日であったということでございますので、この検証結果が満足なものであるかどうかの以前の話として、この時点で、協議結果というのを二十四年度予算、すなわちその年の、ほぼ確定しつつある状況になっているわけでございます、十二月ですから。したがいまして、この協議をした結果を予算に反映させることは難しくなってきているということであります。

 したがって、十二月十二日の第四回会合でございますが、三党合意に基づく協議は一旦打ち切るということになったというふうに承知をしております。

 明けて、翌年の二月十七日に、三党政調会長会談において、民主党から三党実務者協議を再開しようじゃないか、こういう提案がありましたので、その提案後、何度かペーパー等のやりとりがあったわけですが、結果としては協議の再開に至らなかった、これが事実関係であるというふうに承知しております。

大串(博)委員 今言われたように、先般来もいろいろ議論はありましたけれども、二十三年の八月に三党合意が成って、これから効果の検証をしようという話になった。その検証に関して時間がかかったじゃないか、そもそも実務者協議の場をつくっていく中でも、それなりに時間はかかっていたわけですけれども。

 それをもって、やる気があったのか、かつ、二十四年の予算に間に合わなかったから、やる気があったのか、こういうふうに言われていますけれども、二十四年の予算と法制化は別ですから、二十四年の予算に間に合わなかったからといっても、二十四年の予算以降の話として、今申し上げたように、三党協議を続けましょうという話を私たちはずっとしていました。

 その中で、私たちは、もちろん戸別所得補償制度のみならず、当時の子ども手当や高校無償化も含めて、いろいろな議論をしていきたいという思いは常に投げかけておったところでございます。

 ですので、議論が二十四年度予算に間に合わなかったというその一事をもってして、法制化に関して私たちがやっていなかったということにはなりません。予算と法制化は別物です。

 ですので、大臣、私が申し上げたいのは、もし当時、本当に自民党として戸別所得補償制度を法制化していいというふうに思ってくださっていたのであれば、私たちは、なぜ出さなかったのかという御批判は甘んじてお受けします。しかし、そうでないのであれば、やはりその御批判は受けることができません。

 そして、さらに言えば、もし当時、戸別所得補償制度を法制化していいというお考えだったのであれば、私たちは今戸別所得補償制度の法案を提案しています。修正協議等々に応じていただいて、戸別所得補償制度の法案をぜひ与野党で合意させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げた経緯でありますので、法案を提出するというのは、私の一般的な理解ですと、政府・与党の中で、自民党、公明党の場合は、いろいろな手続があって、そして法案を事前にチェックして、党内手続を経た上で国会に提出する、こういうことでございますので、今まさに委員がおっしゃったように、それと、当時野党であった公明党、自民党との三党合意というのは別に、おやりになる意思があればできたはずのことである、こういうふうに考えております。

 我々が、当時、野党としていいとか悪いとかということとは別に、政府・与党、すなわち民主党として出す意思があったのかないのか、出したのか出さないのか、こういうことが議論になっているのではないか、こういうふうに思いますので、今の特例公債法をめぐっての三党合意、これはどうなるか、やっていくというのは、当然、当時努力をされたということでありますが、それとその法案を、政府・与党としてやるかどうかというのは、私の感覚ではちょっと別の話ではないかなと。

 したがって、これがずっと結論が出なかったので法案が出せなかったというようなことであれば、この間、赤澤委員は、当時、実務者の折衝をやっておられたんじゃないかと思いますが、そういう言い方になったのかな、こういうふうに理解をしております。

大串(博)委員 特例公債を通したときの三党協議の俎上に上ったのは、全ての政策じゃないですからね。幾つかのマニフェスト事項に関して、それは自民党さんからも累次にわたって批判されていたマニフェスト事項に限って、これらをこうしようという枠組みをつくって、三党合意をし、特例公債を通したという経緯にありますから、まさにそれが一つのたがになっていたのは、その当時、そのとおりだと思いますよ。そういうことで私は、当時も政調をやっていましたけれども、議論に臨んでいましたからね。

 だから、私たちは、三党協議の合意なく法律を出しても、当時はねじれ国会ですから、特例公債の結果と同じく、法律として通らないのは目に見えていましたから、やはり三党協議の場で通らないと、そこで合意が得られないと、法律は出せない状況にあったわけなんですよ。ですので、申し上げているんです。

 繰り返し申し上げますけれども、もし、先ほど来ありましたように、なぜ出さなかったのかということを言われるのであれば、その言葉を返して、そういうふうなことをおっしゃるのであれば、ぜひ今回、戸別所得補償制度の法案に関しては、修正合意なりなんなりして通させていただきたい。繰り返し、これは申し上げさせておいていただきたいというふうに思います。(発言する者あり)なかなか理屈のわからない方々もいらっしゃるようでありますけれども、ぜひお願いします。

 次に、減反の廃止に関して質問させていただきたいと思います。

 今回、減反に関して、何十年ぶりの政策変更だ、こういうふうなことで言われています。

 資料の一枚目を見ていただきたいというふうに思いますけれども、今回、減反の廃止と言われて、これはどういうものなのかと、農家の方々はかなり心配もされながら、不安な思いも持ちながら見られています。

 これは、お配りしたのは読売新聞からですけれども、二〇一四年の三月十八日、高木勇樹さんという元農水省幹部の方が書かれていました。

  安倍政権が昨年、二〇一八年度までの生産調整廃止を打ち出し、注目されました。でも本当は、同じ内容の改革は〇八年度に実現する予定だったことを、ご存じでしょうか。

  〇二年十二月、政府は「米政策改革大綱」を決定。〇八年度までに国による減反を廃止し、農業者や団体による自主的調整システムに移行することを明記した

というふうに書かれています。

 この二段目、三段目を読みますと、しかし、それが、〇七年夏の参議院選での自民党の大敗、さらには当時の米価の低迷、これを受けて、やはり守らなければならないという声の合唱が続き、結果として減反を強化する、備蓄米をふやす、あるいはペナルティーを入れる、こういったことになっていったという経緯が書かれています。

 私も当時の資料をよく見てみました。平成十四年の十二月には、農水大臣談話を含めて、当時の米政策改革大綱が書かれています。そこには確かに、需給調整システムについて、平成二十年度に農業者、農業者団体が主役となるシステムを国と連携して構築する、この間、農業者、農業者団体の自主的、主体的な取り組みの強化を目指すものとするというふうに書かれておって、これはまさに、今回、米政策の変更に関して言われている文言と極めてよく似ている。こういうことが行われておりました。しかし、当時、これはうまくいかなかった。今回、同じようなことをまたされている。

 当時、これはなぜうまくいかなかったのか、そういう総括をどうされているのか、なぜ想定どおりいかなかったのか、これに関して大臣の御所見を伺いたいと思います。

    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕

林国務大臣 平成十四年の米政策改革大綱でございますが、米の需給調整システムの改革、それから流通制度の改革、経営政策、構造政策の構築、水田の有効利用、こういうものの改革に取り組んでいくということがここに記されております。

 このような中で、米の需給調整システムの改革については、米をつくってはいけない面積、つくれない面積を配分する方式から、販売実績を基礎として主食用米をつくる数量、生産数量目標を配分する方式、こういうふうにいたしまして、需要を見ながら生産するというシステムに転換をした一方で、農業者、農業者団体が主体となって、必要に応じ農業者団体が生産数量目標を配分するというような仕組みを目指したわけでございますが、行政による配分が現在まで継続をされることになっておりまして、改革を完遂できなかったというところがあるわけでございます。

 流通制度改革については、多様化する消費者ニーズに対応しまして、生産者サイドに需要動向が適切に伝わるように、出荷販売業者の登録制の廃止などを行って流通規制の大幅な緩和を行って、改革が実現をされた、こういうことでございます。

 今申し上げたように、できたところとできないところがあるわけでございますが、当時、餌米の生産、流通の仕組み、これがまだ整っておらなかったということで、麦、大豆による転作がなかなか難しい地域を中心に、経営判断によって主食用の米以外の作物を生産しようと言われても、なかなかそういうところが根づかなかったということ。それから、米の需給情報についても、みずからの県の米がどの程度実際に売れているのか、こういう売れ行きの情報がなかなか行き渡らなかった。したがって、販売を起点とした生産を行うという意識が根づかなかったということでありまして、こういうところをしっかりと踏まえて今回はやっていかなければならないと思っておるところでございます。

大串(博)委員 今の答弁を私はなるほどなと思いながら聞かせていただきました。

 餌米の流通システムの構築がうまくいっていなかった、麦、大豆だけではなかなか代替できなかった、さらには需給情報システムが完全には働かなかった、極めて現代的な、今回もまた議論されているような課題だなと思いながら議論させていただいていますけれども、では、なぜ今回はうまくいくというふうに考えられるんでしょうか。どこが違うのか。どこがこう違うのかというのはいかがでしょうか。

林国務大臣 今、なぜうまくいかなかったところがあったかということについてお話をさせていただきましたが、こういった経験も踏まえて、まず五年後を目途ということで、しっかりと目標をみんなで共有するということをさせていただいて、この五年後をめどにして、生産数量目標の配分に頼らずともやっていける各般の環境整備を進めることといたしたわけでございます。

 まさに、今申し上げたような反省点も経験として踏まえて、水田活用の直接支払交付金を充実して、数量払いの導入などによって餌米等のインセンティブを高めたということでございます。

 それから、既に、実は主食用米の需要の中で、中食、外食が三割を占めるようになってきております。そういうことも踏まえて、こういう中食、外食用のニーズに応じた米の生産、それから複数年、数年にわたって供給契約を結ぶとか、播種前の事前契約をするとか、こういうことによって安定取引をふやしていく、こういうことをやる。

 それから、情報について、きめ細かく、県レベルでの販売進捗、それから在庫情報、価格情報を毎月提供するということで、産地に対して米が今どういうものでどれぐらいの売れ行きになっているのかということをしっかりと伝わるようにする。そういうことによって、生産者の主体的経営判断、それから集荷業者、団体の販売戦略、これが的確に行われるようにする、こういった環境整備をしっかりと進めていきたいと思っております。

大串(博)委員 今おっしゃったようなことは、実は米政策改革大綱に、当時も、自主的な仕組みをつくるといったくだりの後に、助成措置について、いわゆる産地づくり推進交付金を創設して、新たな多様な取り組みを支えていくんだというようなことも書かれています。餌米に対する、飼料米に対する助成措置を強化したということに、パラレルですね。さらには、流通制度改革という章を設けられていらっしゃいます。経営政策・構造政策の構築、今おっしゃったようなことと同じようなことを当時も実は書かれているんですね。

 なぜ今回うまくいくのかというところは、まだ私たちの得心するところじゃないわけです。特に、農家の方々が一番心配されているのは、これが農家の所得にどういう影響を与えるか、これは予算委員会でも大臣と議論させていただきました。今回の改革を経た上で米の価格は下がる方向になるんですか、それとも維持される方向になるんですかという問いを予算委員会でさせていただいたところ、大臣の方からは、つまり維持される方向、どちらかというと後者ですというような答弁がありました。

 先ほど申しましたように、当時と一体何が変わっているのかというのがよくわからない中で、なぜ今回は米の価格が下がらない方向、どちらかというと後者と大臣が予算委員会でおっしゃれるような仕組みになっているとなぜ言えるのか、そこはどうなんでしょうか。

林国務大臣 そうなるでしょうというような予測というよりは、そういうふうにしていく政策を目指している、こういうふうに申し上げたいと思います。

 やはり需給のバランスで価格は決まる、こういうことでございますので、まさに需要に応じた生産をしていただく環境を整備しようということであるとすれば、この政策の行くところというのは、そういうところに移行を目指していくというのは当然の前提である、こういうふうに思っております。

 そもそも、先ほど篠原委員ともやりとりさせていただきましたが、米にこだわり過ぎではないかと篠原委員もおっしゃっておられましたけれども、一方で、一万五千円というのは主食用の米に払われていた、こういうことでありますので、あえて言えば、主食用の米にこだわるということではなくて、水田にやはりこだわりたい。水田という貴重な生産装置を有効活用して、これをフル活用していく。これがまずあって、その中で需要に見合った米生産を行おう、これが基本的な考え方でございます。

 どういうことをやっていくかというのは、この委員会で何度もお話をしておりますので、委員も御案内のことと思いますから、それぞれ一つずつ申し上げることはいたしませんけれども、こういう環境整備を着実に実施することの目的というのは、需給と価格の安定を図るということでございます。

 したがって、五年という時期的なイメージをみんなで共有して、毎年、需要に応じた生産の定着状況を見ながら、五年後を目途に目指すべき方向になるようにしっかりと努力をしていきたい、こういうふうに思っております。

大串(博)委員 そういう目標に向けてやるということだというふうな説明でありましたけれども、一度うまくいかなかった経緯もある。そして、今回また新たな政策変更に直面している農家の方々に、そういう方向に頑張りますと言うだけじゃなくて、こういう制度、こういう仕組み、こういう取り組みを通じてこうなりますというふうなことは、より精度を上げていく必要が僕はあると思うんですね。

 その取り組みの一つとして、資料の三枚目、シミュレーションを出していらっしゃいます。これは、各委員からも、県別のモデル的な試算を出してほしいという声、それに対して大臣等は、それは出さないとおっしゃっていましたけれども、一応やられています、こういうモデル的なものを。

 この中で、所得が減らない、一一三%というふうに所得はふえるんだと結論づけていらっしゃるその大前提のところは、黒囲みしていますけれども、主食用米、ここは金額は下がっています。金額が下がっているのは、もちろん一万五千円が七千五百円に下がっているところを大前提としている。しかし、もう一つ大きな大前提があって、米の価格は変わらないという前提でここは計算されているんですね。主食用米の価格が下がれば、このシミュレーションは大きく変わります。

 そしてもう一つは、もう一つの右の黒囲み、飼料用米の増産が行われるということ、これによって所得増になるので、主食用米のところで一万五千円が七千五百円になった分を補って余りある増がありますというようなたてつけになっているんです。

 極めて重要な前提は、主食用米の価格が下がらないという前提、そして、飼料用米に想定されたような増加が起こる。しかも、この飼料用米は、どういうふうな増加と見込まれているかというと、主食用米の作付面積の一割が飼料用米に移り変わるという前提です。

 これはなぜそうなっているのかと問うたら、いろいろな政策努力を通じて、今、全国でトップレベルの飼料用米の作付面積を誇っているところの割合が一〇%ぐらいだから一割かな、そういうぐらいの理由づけなんですね。

 さらにもう一つは、不作付地が四分の三作付されて飼料用米にかわる、これはなぜですかというふうに聞きましたら、これは、現在の不作付地の現状を見ながら、こんな感じかなという置きの数字ですということなんですね。

 そういう数字のみをもとに、これぐらいはふえますよということが言われているだけです。しかも、先ほど来言われたような、理由がはっきりしないということなものですから、私たちは非常に心配なんです。

 主食用米の価格が下がるのか上がるのかということに関しては、今大臣の方から話がありました。はっきりとした答えがないんですね。はっきりとした答えがない。

 もう一つ、では、翻って、ここに提示されているように、主食用米の作付面積の一割が今回の政策努力をもってして飼料用米に転換する、あるいは、不作付地の四分の三が飼料用米作付にかわる、こう見込まれる根拠はどこにあるんですか。

林国務大臣 先ほど篠原委員がコルホーズ、ソホーズという言葉を出されておられましたけれども、まさに我々の世代はそれを覚えておりますが、それはうまくいかなかったということで、やはり主体的な経営判断を農家にやっていただくような経営環境整備をしていくということでございますので、我々が政府として、こういうふうにするということを決めるというところが、若干大串委員と私の間では意見の相違があるのかなと思いながら聞かせていただいておりました。

 したがって、このシミュレーションというのは、あくまで、こういう前提を置けばこういうふうになるということを、数字をもとに、主に政府・与党内で案をつくるための資料としてつくらせていただいた、こういうことでございますので、こういうふうにしていこうという、何か我々としての方針や目標というのを定めたという性格ではないということで御理解をいただけたら、こういうふうに思っておるところでございます。

大串(博)委員 大臣、私も、この政策を打ったらこうなるということを機械的に説明してくださいというところまでは求めません。やはり難しいと思います。自由主義経済ですから、皆さんそれぞれ経済主体として判断をされている、それはそれでいいんです。ただ、本当にそうなるかということは極めて怪しいので聞いているんです。

 すなわち、例えば、主食用米の作付地の一割が飼料用米にかわるとすると、どのくらいの飼料用米の増産になるかというと、仮に反当たり六百キロと考えると、九十万トンの増産になります。仮に不作付地の四分の三が飼料用米に転換するとすると、これも六百キロを前提とすると、これは七十万トンぐらいになるんですね。合わせて百六十万トンぐらいですよ。

 今の飼料用米の作付実績はどのくらいですか。多いときで、せいぜい十八万トン。二十五年度は備蓄米へのすりかわりの関係がありましたから十一万トン、このレベルですよ。このレベルに対して、今申し上げましたように、百七十万トン、実際にこれが実現されればというところに行けば所得が上がるみたいな計算になっているんです。ぱっと見て、とても実現可能とはなかなか思えない。そうすると、逆に、今度は農家の方にしてみると、実現が不可能なのであれば所得は減るのかという心配になってきてしまう。

 これは、一万五千円が七千五百円に下がるという前提での計算です。七千五百円がゼロになったら、さらに所得は落ちることになるという問題も抱える中で、やはり私は、これだけ実現性が乏しいなと思われるから、余計に、冒頭にお尋ねしました、主食用米の価格が下がらないというようなことに関して、もう少し明らかなことを言っていただかなければ、できない。

 あるいは、飼料用米に関して、これまでも繰り返し出ました、各委員の方々からも何度も飼料用米の増産は本当にできるんですかという問いがなされ、それに対してあやふやな答えしか出てきていない。しかも、数字でいうと、とてもこのシミュレーションどおりにはいかないということが明らかになる。それに対して、もう少し、こうするから飼料用米はこの方向に行くんだということを言ってもらわなきゃならない。その二つの点。

 玉木議員からも、例えば米価に関してはどうなるかということをシミュレーションとして示してもらわなければならないという四点の中の一つとして、理事会預かりになっています。

 私からは、飼料用米について、もう少し厳密に、こういう道筋でこのくらい、何年にこのくらい、こういうふうな方向でふえていくんだという現実的な見通しを示していただかないと、農家の方々としては、とてもこの議論は終了しないんじゃないかということを思いますので、ぜひ委員長、この点は理事会の方でもお取り計らいいただきたいと思います。

坂本委員長 理事会で協議をいたします。

大串(博)委員 この点を申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございます。

坂本委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 質問の時間が食い込んでいるようでございますが、しっかりと時間内に質問をおさめたいと思います。鋭意質問をさせていただきたいと思います。

 まず、あえて通告するまでもないので通告してはおりませんけれども、ちょっと迂遠なところから入らせていただきたいと思います。

 TPPお化けという言葉があります。大臣、御存じですか。TPPお化けという言葉なんですよ。

林国務大臣 先ほど野党時代のお話を少し思い出させていただきましたが、多分、前原先生が何かおっしゃって、その例えとして、実態よりももっと大変なことになってしまうのではないかというようなことになっている状況を、そういう例えをされたんじゃないのかなという記憶がございます。

鷲尾委員 さすが林大臣だなと思いました。すばらしい定義づけだなと思わせていただきました。

 そのとおりでございまして、よく言われておったのは、公的医療保険制度がTPPに入るとなくなってしまうよとか、こういう話がございましたけれども、そもそもWTOサービス協定の対象外でございますから、議論すらされないということでございました。あるいはこんな話もありました、関税自主権がなくなると。でも、これも、そもそもWTO協定でお互いが制限し合うということですから、自主的に制限するということですから、これもやはり当たらないんじゃないかな。アメリカの陰謀だとかいう話もございました。しかし、実際には業界団体にいろいろな意見がございますし、アメリカ、アメリカという形で一人称で語れる代物ではないんじゃないか。

 つまり、TPPの条件交渉前にはこういった話があって、過度に国民が不安に陥るような情報もそこらじゅうに蔓延したわけでございます。実態よりも過大な、そういう人を怖がらせるような情報、そういったものが氾濫することでTPPお化けという言葉が生まれたわけでございます。大臣がおっしゃったとおりでございます。

 最初にお話ししたいのは、今までもずっと質問してきたんですけれども、戸別所得補償お化けというのもあるんじゃないかなということなんです。

 それは何かというと、戸別所得補償はばらまきだと。このばらまきの議論も一度させてもらいました。貸し剥がしに遭うとか、小規模農家がふえるじゃないかとか、非常に批判をされました、かなり明確に記憶をいたしておりますけれども。

 私は、これは実態から少しかけ離れた、戸別所得補償お化けじゃないかと思うんです。どうですか、大臣。

林国務大臣 当時、私は政調会長代理でございましたので、確かに予算委員会等、また野党として、当時の自民党の先生方が質問に立たれるときに、たしか四Kという言葉を使って、子ども手当と戸別所得補償と高校無償化と高速道路無料化ですね、そういう言葉を使っていたのかなという言葉は思い出しておりますが、いずれも、違う政党でございますので、それぞれの政策について見解を異にする、こういうことは当然あって、それを政策論争する。例えば、高校無償化だったと思いますが、収入の基準を設けるのか設けないか、こういうようなところが政策の議論としてはあったという記憶もございます。

 そういう意味で、そういう政策論争をしていたということでございますので、必ずしもお化けと、例えば国内で実際にそういうことがあったかどうかというのは、それぞれの方が聞かれてこられますので、全部検証ができるかといえばそうではないかもしれませんけれども、アメリカがこういうことを考えているらしいといったようなところよりは、より現実に立脚した議論であったのではないかな、こういう印象は持っております。

鷲尾委員 大臣もお立場がありますからそのようにお話しされると思うんですけれども、実際、政策を打つ前と打った後とで、これは現実というのがちゃんと伴っていますから、その現実から考えれば、やはり過大な、ためにする議論であったのかなと思わざるを得ない。実態よりも過大な、ある意味、それこそ農家の皆さんを不安にさせるような、国政の政策がゆがめられているかのような情報という部分では、戸別所得補償お化けといっても過言ではないのかなというふうに思っております。

 まず、何よりもやはり数字が物語っております。実際は集落営農がふえてございますし、小規模農家がふえているという実態はございません。それは数字で確認できるかと思います。

 また、先日の地方公聴会でも、私は新潟の方に参りましたけれども、法人協会の会長さんからは、そういう貸し剥がしがあると思うと、語尾が思うという話でございました。これは議事録を確認していただければ明確です。

 その他のお三方の意見陳述人の方から御答弁いただきましたけれども、一人は専農の方、お一方は中山間地の方、そしてお一方は行政の副市長さん、農林部長もされた、いわゆる農政のプロフェッショナルの方です。このお三方ともに、貸し剥がしがあったかという問いについては、なかったというお答えでございました。そういった現場感もあるだろうし、数字上もそうだったであろう。すなわち、お化けではないかというところだと思っております。

 本当に政策的に議論すべきは、これから私は問いたいわけですけれども、実際、集落営農がふえたわけですから、この集落営農を、まず一つは、減らしてはいけないだろうということでございます。減ってしまっては、これは今までせっかくふえてきて、その集落営農というのはさまざまな意味もありますけれども、いわゆる、それこそ今政府がお取り組みになっている、安定的、効率的な経営体、それのもととなるものだと認識をしております。そういう意味でも、集落営農というのは減らしてはならないし、これからさらに、経営体として効率的、安定的なものに変えていくという視点こそが大事だと私は思っております。

 そういった視点で、どうやって変えていくのかということについて、今般の法に絡めながら、事例に即してお答えをいただけたらありがたいと思います。

江藤副大臣 私のところも中山間地域がたくさんあるところですから、この集落営農が、しかるべき方が核となって、きちっと法人化されて、どんなメリットがあるかはもう言いません、もうよく御存じのことだと思いますから。法人化されたことによって得られるメリット、もちろん、ソフトで、定款上、四十万円の助成とか、こういうものをちゃんと利用していただいて、やはり法人化をしていただきたい。

 ですから、成功事例を若干説明させていただきます。

 島根県の安来市にある農事組合法人宇賀荘、二百四十戸、百七十八ヘクタール。これは、経営構造対策等の補助事業を活用して大型機械を導入するとともに、水稲、大豆を中心とした土地利用型の作付体系を確立いたしております。労働時間及び生産費を二分の一まで圧縮することに成功しております。経営の効率化を進めることに成功した、これはいい例だと思います。

 もう一つは、私の地元なんですが、農事組合法人きらり農場、三百十七戸、百三十八ヘクタールでございます。高齢化が進む中でありましたが、法人化をいたしまして、社会、労災保険にきちっと加入をいたしまして、私もここには行ってきたんですけれども、農事従事者が安心して働ける労働環境を整備しました。また、農作物を作物別に団地化することで、作業効率を飛躍的に向上させて、労働時間の短縮にも成功している。

 こういった成功事例を参考にして、先生が今言われましたように、効率的、安定的に集落営農が法人化されて、地域の核となっていくように支援をこれからも進めていきたいと考えております。

鷲尾委員 あえてつけ加えさせていただきますと、今般、ナラシ対策の方では、面積の要件がなくなりまして、集落営農についても要件を緩和されております。

 私は、こういったところも、ちゃんと経営体として、減らないように、むしろそれがふえていくようにという配慮があるのかな、副大臣にそこまでつけ加えて御答弁いただけたらなおいいなというふうに思ってございました。恐らくそういうことだと思うんですが、いかがでしょうか。

江藤副大臣 今先生がおっしゃったことは、そのまま私が言った言葉として受けとめていただいて結構だと思います。

 これから、やはり中山間地域ではさらに高齢化が進み、日本全体が人口減少に向かうわけでありますから、その中でいかにふるさとを守っていくかというのはここにいる人間全ての大きな課題でありますので、御指摘の点は十分胸にとめて、これから仕事に励んでまいりたいと思います。

鷲尾委員 一方で、集落営農で、今ほど、成功事例ということで、生産費が半分になったという事例もございましたが、いろいろな形状の土地もこれあり、あるいは、集落営農で農機具を共用化するといっても、今言ったような土地の形状等でなかなかそれも効率化することができないといったような事案もあると聞いてございます。

 肥料や農機具等の話をしたいんですけれども、その前に、私はきょうは資料を準備してこなかったんですけれども、篠原先生の資料が非常にすばらしいものがございまして、篠原先輩はいらっしゃいませんけれども、ちょっと篠原先生の資料を、同じ政党ということで借用させていただきまして、少し説明をさせていただきたいと思うんです。

 この三ページ目、一戸当たりの農業所得の推移、あるいは、水田作経営の農業所得の推移という形で、大変低い金額が載ってございます。いろいろな統計のとり方があると思いますが、水田作をやっておられる方、あるいは、農業としての所得として考えた場合は、これぐらい低い金額になっているという現実だと思いますが、農家総所得という数値がございます。この農家総所得というのは、食料・農業・農村白書の統計にも書いてございますが、この農家総所得で見ますと、大分古いデータになるのですが、二〇〇〇年では八百万円を超える金額になってございます。これが農家総所得です。農業所得となった場合はこれだけ低い金額なんですが、農家総所得となった場合は、金額としてはちょっとまた違った数字が出てくるわけでございます。

 これを総務省の家計調査とあわせて、対勤労者世帯実収入という形で見ますと、調べてみたところ、統計上の話でどうしても古くなってしまうんですが、二〇〇〇年の時点で一二〇%を超えているという数字もございます。

 これは私が調べた限りでございますので、政府として、農家総所得と農業所得との関係及び農家総所得と対勤労者世帯の実収入の関係を御説明いただいて、一方で、こうした現実があるので農家は裕福じゃないかという指摘までされております。そこのところの真偽というか、農水省としての見解というのをお示しいただきたいと思います。

奥原政府参考人 所得の関係でございます。

 これは経済環境によって相当数字が変わっておりますので、最新の平成二十四年の数字で申し上げたいと思います。

 まず、販売農家の平均農業所得でございますが、平成二十四年におきまして、これは篠原先生の資料と同じですが、百三十五万円でございます。これで農外所得を含めた農家の総所得は四百七十六万円、これが二十四年の数字でございます。

 ただ、これは販売農家全体でございますので、主業農家だけをとってみたらどうかを次に申し上げます。主業農家といいますのは、農業所得が主で、一年間に六十日以上自営農業に従事している六十五歳未満の世帯員がいる農家でございます。

 この主業農家について見ますと、農業所得で五百二万円、それから農家の総所得は六百三十一万円というふうになっております。このときの労働時間でございますけれども、これは農業部門だけでございますが、年間で、これは二・五人が働くということになっておりますけれども、二・五人で労働時間が年間四千百九時間でございます。

 これと勤労者世帯を比べてみたいと思いますけれども、勤労者世帯、これは二十四年の数字が、勤め先の収入で五百七十六万円、それからその他の収入を含めた実収入でいきますと六百二十二万円、それから、労働時間は年間で千七百四十七時間、こういうことになります。

 こうしますと、主業農家の農家の総所得、これが六百三十一万、それから勤労者世帯の実収入が六百二十二万でございますので、数字だけ比べれば、主業農家の農家の総所得の方がちょっと高いということになります。

 ですが、労働時間のところが相当違っております。主業農家の方は年間で四千百九時間、それから勤労者世帯の方は年間で千七百四十七時間、こういうことでございますので、これを比較するために、労働時間当たりの単価を計算してみました。これでいきますと、主業農家の方は一時間当たり千二百二十二円、それから勤労者の世帯の方は三千二百九十四円というのが計算の結果でございます。

 これは数字でございますので、いろいろな見方はあるかもしれませんが、単位時間当たりの賃金、所得ということで見ますと、必ずしも農業者世帯の方が勤労者世帯よりも裕福であるというようなことは言えないというふうに思います。

鷲尾委員 大変詳しい御説明をいただきました。

 というのは、こういう主張をされる方は、どちらかというと、当然農家総所得が都合がいいわけで、その都合のいい数字を引っ張り出して、いや、農業はそこまで保護しなくてもいいじゃないかとか、農家総所得が大きいから、今は何ら問題はないんだ、むしろ勤労世帯よりも裕福ですよということを喧伝する嫌いが私はあると思っています。

 そこで、きょう質問させていただいたわけですが、大変詳しい説明で、今局長から答弁があったように、やはり単位時間当たりのお金というところで見ますと、農業に携わっている方々が厳しい現状にある。そうでもしない限り、勤労者世帯と同程度の所得を維持することができないということでもあろうかと思いますので、そこに我々は着目した政策体系というのを考えていかなければならないというふうに思っているわけでございます。

 ですので、単純に農業所得ばかりを喧伝しても仕方がないし、農家総所得を引き合いに出した形で、いや、それとは違うんだという反論も、これもいかがなものかというところで、ぜひそういった数字に着目をした施策の実施を改めて望みたいというふうに思っております。

 続きまして、営農類型別の年間所得というものもございます。特に、酪農、ブロイラー、肉牛、野菜、果樹、水田作といった形で、その内訳について明示をしていただきたいというふうに思います。この営農類型別年間所得の比較を改めて見ますと、またちょっと別の違った側面も浮き彫りになるかと存じますので、政府から御答弁いただきたいと思います。

小風政府参考人 お答えいたします。

 営農類型別の所得でございますけれども、平成二十四年の農業経営統計調査の結果がございます。

 水田作においては、総所得が四百五十八万円、このうち農業所得は六十二万円余ということになっています。

 一方、酪農経営では、総所得が七百九十四万円、うち農業所得が六百六十四万円。ブロイラーでは、六百十五万円の総所得に対して、農業所得が五百万円余。あるいは、野菜作では、五百五十一万円の総所得に対して、農業所得は二百六十二万円。果樹作は、四百四十七万円の総所得のうち、農業所得は百九十八万円。

 これを見ますと、水田作の農業所得、これは割合低い、農業以外の収入が多い。これは経営耕地面積が狭いとか戸数とかいうことがございますけれども、そういう結果になっております。

鷲尾委員 今答弁があったように、水田作は極めて農業生産関連所得が少ないんですね。酪農ですと、営農類型別年間所得の総額が七百九十四万円に対して、農業関連ということで六百六十四万円ですから、その差たるや歴然としているわけでございます。

 これを称して、農業というのは、水田は収入がなかなかないから、逆に言うと、片手間でやっている人が多いんだよという話をされる方がいるわけですけれども、実際、ちょっと突っ込んで質問したいのは、どうして水田作はほかの営農の類型に比べますとこれだけ農業及び農業生産関連所得が少ないのか。どうしてなのか。御質問したいと思います。

小風政府参考人 お答えします。

 先ほどお答えしましたけれども、水田作の経営、これは全国の平均作付面積が一・六ヘクタール程度、こういう小規模でございます。したがいまして、総所得四百五十八万円、このうち農業所得は六十二万四千円、一四%となっております。

 一方、同じ経営所得の経営統計の分析を見ますと、階層別のところを見てみますと、作付面積が五ヘクタール以上の階層の所得は八百八十万円、このうち農業所得が六百六十六万円、七五%を占めているという結果が出ております。また一方、農業関連の所得を見ましても、全国平均で二千円ということなんですけれども、五ヘクタール以上の階層では農業関連事業で二万三千円の所得を上げている。このように、比較的規模の大きい階層では、農業所得の増大、拡大というものに加えて、農業生産関連事業への取り組み、こういうものが見られております。

 したがいまして、規模の拡大というものが農業の本来の所得の拡大あるいは農業関連産業の所得ということにつながっているのではないかというふうに考えられると思います。

鷲尾委員 規模の拡大も当然そうだと思います。やはり規模の拡大というのは大事だなと改めて思うわけですが、一方で、生産費の方ですね。肥料や農機具などの高コスト構造、これもあるのではないかと私は思うわけでございます。

 経営感覚あふれる農業経営体を育成するというのが今の政府の目標でございます。効率的かつ安定的な経営体を育成する、これまでの議論でもそうおっしゃっていました。そういう経営に対して、肥料だとか農機具とか、今の農家さんが直面している、経営体が直面している高コスト構造、これをどうしていこうとお考えなのか、どうお考えなのかということについて御答弁を願いたいと思います。

江藤副大臣 コストを下げることはとても大切なことだというふうに認識をいたしております。

 まずは機械でありますけれども、私の地元でもそうなんですが、ちょっとツーマッチな装備をしている。冷暖房完備でオーディオシステムをばっちり完備していて、それが悪いというわけではないんですが、ただ、海外に輸出している農機具に比べると、コストが三割ぐらい高いわけですよね。ですから、農作業に特化した、いわゆる絞り込んだ、ブラッシュアップされた、もっとコストの安い、いわゆる大型農業機械の開発、販売をメーカーに働きかけることもいたしております。

 それから、施肥のやり方も、過剰に肥料を与えても意味がありませんので、適正な量というのはどの水準なのかというような指導もきちっとやっていかなければならないということでやっております。

 本年の三月末には、いわゆる、こういう高収益に資する技術を試験研究機関や民間企業等から募集いたしまして、担い手農家の経営革新に資する稲作技術カタログというものをまとめて公表もいたしました。

 今後、結果として機械や資材の効率的利用が図られてコストの低減が推進されるように、さらに検討を進めてまいりたいと考えております。

鷲尾委員 これは、補助金のあり方も含めて、日本全体の構造的な問題もあると思うんです。どういう形で誘導していくのかというのは、政府はかなり重い責任を負っていると思います。

 今、農協改革等、いろいろな論点がございますけれども、やはり農家の高コスト構造をどう是正するかという観点を念頭に置きながらやっていただきたいと思うわけでございます。

 続いての質問に移りたいと思いますけれども、戸別所得補償政策で、私どもからいえば、生産調整が初めてかなり有効に機能したのではないかというふうに思っております。大規模農家は直接支払いによって所得が向上いたしました。これはさまざまなデータでも明らかでございますけれども、一方では、直接支払いという形で大規模農家が所得を増大させ、一方で、高齢化した、もうリタイアされた、されそうな農家さんから、そちらの農地を集約する、逆に、集約する側は地代を払うという形で、農地を集約する流れというのはかなり自然にできつつあったというふうに思います。農水省、この点はいかがでしょうか。

林国務大臣 先生がおっしゃるように、この所得補償によりまして、農地の受け手となり得る大規模農家の経営に余裕が生じたということはあるかもしれないということですが、一方で、規模の小さい方を含めて、全販売農家が対象となっております。したがって、リタイアしようとか貸し出そうという方々を思いとどまらせて、農地を人に貸さずに自分で耕作しようという方も出てくるということです。

 権利移動面積の推移を見ますと、担い手経営安定法に基づく経営安定対策を導入したのが十九年でございますが、この年の権利移動面積は十三万ヘクタールです。それに対して、戸別所得補償制度が導入された平成二十二年は約九万ヘクタールということで、流動化のペースがここを見ますと鈍化をした、こういうことになっておるところであります。

 これはもう委員も当然御案内のことだと思いますが、民主党政権下においても、平成二十三年度から、規模拡大加算を、これは受け手に対する交付金ですが、交付をしたということもつけ加えておきたい、こういうふうに思います。

鷲尾委員 事実は事実ですから、数字としてそういったところがあったんでしょうけれども、私が申し上げたかったのは、やはり大規模農家が所得を向上させるというのは、その分土地代を払うことができますから、リースで借り受けるその賃料を払うことができますから、それは農地集約に役立たないわけはないと思っています。その点をちょっと指摘したかったわけでございます。

 というのは、農地の流動化の問題ですけれども、今、中間管理機構、我々も賛成して、それこそ今、この四月から稼働するということでございますけれども、この中間管理機構で農地を集約していこうという中にあっても、もっと言えば、それとあわせて、戸別所得補償があって、それこそ大規模農家が所得に余裕が出れば、なお一層私は集約が進むんじゃないかなと思っています。

 これは、農地集積協力金その他、農地中間管理機構の設立当初三年間でいろいろメリット措置を講じて、どんどん出してくださいねということをアナウンスしているわけです。アナウンスしている当初三年間というのは、まさしく戸別所得補償が経過措置として残っている期間なんですよね。さすが農水省だなと思ったのは、恐らくそれを見越しているんじゃないかな、やはりそういった所得補償のいわゆる農地集約に対する機能というのは捨てがたいなと私は思ったと考えていますけれども、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 農地の中間管理機構でございますが、昨年、臨時国会で法律を通していただきまして、現在、三十九の県で機構の指定が行われているところでございます。

 この中間管理機構は、担い手への農地の集積それから集約化を進める上で極めて重要な方法でございますので、これを使いまして、十年間で担い手に農地利用の八割を集積するという目標に向けまして、速やかにこの機構を軌道に乗せていきたいというふうに考えております。

 このために、機構への農地の出し手、あるいは出していただく地域に対する助成措置でございます機構集積協力金につきましては、特にこの立ち上げの時期ということで、平成二十五年から二十七年の三年間、基本単価については二倍ということに引き上げております。

 これは、あくまでも中間管理機構を軌道に乗せるということでございまして、この一万五千円を七千五百円にして、四年間経過措置でやることとは直接の関係はございません。

鷲尾委員 直接関係ないとは言いますけれども、私は関係してくると思います、農水省さんがどう思おうが。やはりこの点は、本当は認めてもいいんじゃないですか、だって四年間、経過措置をやっているわけですから。そこは認めて、なお一層推進しますと、我々は農地中間管理機構を賛成しているんですから。大臣、どうですか。

林国務大臣 結果として何が起こるかというのは、それぞれの地域で、それぞれの農家でいろいろあると思いますが、やはり基本的な考え方としては、借りて、新しくやるわけですね、その人は。だから、借りたリース料と、そこをやることによる収入が見合うかどうか、こういう判断をしてやっていくというのが、やはり基本的な経営者としてのあり方であろう、こういうふうに思うので、今たくさん金が入ってきたので、それで借りようというのは、若干鷲尾先生らしくない考え方ではないかなというふうには思っております。

鷲尾委員 これは、賃料というのは当事者で決めるわけですよ、幾らにしますというのを。地域ごとに、いろいろ寄って決めているわけじゃないですか。そこで、所得補償で若干余力があったら、新潟弁で言うとまかると言うんですか、では、もうちょっと俺が受け持つよということは、現場では容易にあり得ることなんですよ。

 ですから、それを、直接関係ありませんというのは余り素直じゃないな、もうちょっと素直にお認めになったらどうですかと。私は多分に皮肉を込めて申し上げますので、皮肉っぽいというところで見れば、私らしいんじゃないかなと思ってございます。

 それでは、続いての質問でございます。

 収入減少影響緩和対策、これは、参加可能者はいろいろ議論がございますけれども、時間がなくなってきますので、ちょっと早口で参りたいと思います。

 これは、いろいろ範囲を広げられた、面積要件をなくしたということでございますけれども、排除される人たちがいますね。要するに、要件に当たらない人たち、そういう人たちは、セーフティーネットなしでいいということでしょうか。どう考えていますか。

奥原政府参考人 今回の制度改正におきましては、ナラシ対策も含めまして、対象者の要件については、現行の認定農業者、集落営農に加えまして、認定新規就農者も加えておりまして、さらに、いずれについても規模要件は課さない、こういうことにしているところでございます。

 この結果、現在の米のナラシ対策の加入件数は、これは、二十五年産でいいまして五万七千件でございますけれども、今回の対象者要件の変更によりまして、かなり広がってくるものというふうに考えております。

鷲尾委員 局長、御自身でわかっておられると思いますが、ちゃんと答弁していただきたいんです。

 それは、入る人はふえているんですよ。でも、排除される人がいますよね。排除される人たちはどうなんですかという話なんです。

奥原政府参考人 ここは、認定農業者、それから認定新規就農者につきましては、皆さん計画をつくっていただいて、市町村の認定をまず受けていただく努力をこの一年の間にやっていただくということでございます。

 それから、なかなかそこまで到達しない小さい農家の方々は、集落営農をつくっていただいて、今度は集落営農についても、この交付金の対象にするために、五要件ではなくて二要件ということにしておりますので、規約をつくっていただいて、共同販売経理をやるということにすれば、この施策の対象になりますので、この法律が施行されるまでに、その準備をできるだけ進めていただきたいというふうに考えております。

鷲尾委員 やはり答えていただけないということでございますね。

 準備をしたって、どうしても排除される人がいますよね。だって、それはある意味全部対象にしないという決定をしているわけですから、そこも全てを対象にしていませんという話を、これも言っていただきたいわけでございます。

 ですから、我々は、全ての販売農家という形で対象としている。それは、委員会での答弁でも、趣旨説明でも何度も申し上げているとおり、営農の継続こそが、いろいろな意味で、集落機能でありますとか、農村の、農業の多面的機能の維持につながっていくんだということですね。だからこそ、全ての販売農家という形で要件をつくっているわけでございます。

 逆に言うと、それを絞りながらやっているということは、今の多面的機能の維持というのは、特定の農家に任せて、いや、そこに住んでいない人が逆にまかってもいい、任されてもそれでも構わないんだ、そういうことなんだろうなということを、今の答弁でなお一層新たに認識をした次第でございます。果たして、それで本当に農業、農村の活性化と言えるのかと、いま一度考えていただきたいと思います。

 それから、時間がなくて恐縮なんですけれども、生産調整に関連して質問をさせていただきたいと思います。飼料用米の話ですね。

 これも地方公聴会で話を聞いたんですが、飼料作物が高騰しています、だから今、飼料用米の高い補助金で誘導すれば、これを国産化することができるんじゃないか、今の国際的な情勢からいくと、飼料価格というのはこの先も下がらないだろうという認識を畜産農家さんはおっしゃっておられました。

 そういった部分が一面あるとするならば、飼料用米だけではなくて、飼料用トウモロコシの作付をふやす方向性も考えたらいかがかと思いますけれども、いかがですか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 平成二十五年産の関係で見てまいりますと、青刈り利用の飼料用トウモロコシというものが作付されておりまして、全国で九万三千ヘクタール、うち水田での作付は約九千ヘクタールというふうに相なっておるところでございます。

 それともう一つは、今先生からお話ありました、実を使う飼料用のトウモロコシを水田で生産する場合には、子実用であれ青刈り用であれ、水田活用の直接支払交付金の助成により、十アール当たり三・五万円の交付金が農業者に直接支払われるというような状況になっております。

 さらに、これに加えまして、産地交付金によりまして、地域の実情に即して、交付金を上乗せして支援することも可能としているところでありまして、これによりまして畜産物の付加価値を高める取り組みも支援を受けることも可能となっているところでございます。

 こうした支援策を通じまして、水田を有効的に活用しまして、飼料作物の作付を推進したい、このように考えているところでございます。

鷲尾委員 ぜひ多様な取り組みをお願いしたいと思います。

 続きまして、生産調整に関連してですが、地方公聴会でも議論がありました、需給バランスをしっかりと保った上で廃止をした方がいいだろうと。需給バランスを達成するには、我々としては、生産調整を選択的に行いながら需給バランスを達成していこうというスタンスでございますけれども、今般、自主的に、きめ細かな情報を行って、生産者がみずから経営判断して数量を決めていくんだという話を政府としては打ち出しているわけでございます。

 そうすると、生産調整は廃止した方がむしろ需給バランスをとりやすいということを考えているというふうに思うんですけれども、一言だけ答弁をお願いします。

江藤副大臣 生産調整を廃止した方が需給バランスをとりやすいという考え方ではありません、決して。そういうことではありません。これがいかに難しいかということは、重々承知をしているつもりであります。

 しかし、我々の政策としては、生産者の方々の自主的な判断、きめ細やかな情報に基づいて、自分たちで何をつくるのが営農を続けていく上で有利であるか、飼料用米をつくるのが有利であるか、主食用米に行くのが有利であるか、その情報に基づいて、銘柄に基づいて、産地に基づいて、東北は配合飼料工場もない、しかし、私の宮崎は志布志と細島に配合飼料の工場がある、こういったところのいろいろな条件を勘案しながら、皆様方が、全農組織もぜひ機能していただいて、生産調整が機能していくということがベストの姿ではないかなというふうに考えております。

鷲尾委員 時間がなくなりましたので、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 数量払いをやっているわけですよね、飼料用米だって。私はこれはすばらしいと思うんです、数量払いをやっていただいて。だったら、これに戸別所得補償を合わせたら、もっときくんじゃないのかと思うんです、ここは。戸別所得補償をこの数量払いにあわせてやったら、なお一層いい形で生産調整がきいてくるんじゃないかというふうに私は思っております。

 きめ細かな情報提供といっても、これは農家さんが判断するのは本当に難しいですよ、委員の先生方から数々の質問がありますけれども。そこはよくよく、需給バランスがこうなって、その結果米価がこうなる、振れ幅が大きくなるということがないように、まあ、きっとなるんでしょうけれども、ないようにお願いしたいというふうに思います。

 最後の最後、済みません、ちょっと違う話です。

 農振農用地は農地として重要ですけれども、地方経済というのは大分疲弊しています。経営資源を効率化して産業を育成していくということでは、農業もほかの産業も変わらないというふうに思います。

 この点、実は、農振の除外が今極めて問題になっていると思うんです。というのは、平成二十一年の農地法改正で除外のガイドラインが大変厳しくなったという声をすごく聞いているんです。その現状と、これから地方経済の現状を考えた農地の活用をバランスよくやっていくということが政府が行うべき本分だと思いますけれども、見解を最後にお聞きして、質問を終わります。

坂本委員長 小里政務官、答弁は簡潔にお願いいたします。

小里大臣政務官 食料安保の観点、多面的機能維持の観点から、しっかりと農地を確保していくことが重要な課題であります。

 転用需要に適切に対応していくことが肝要でありますが、そういった中で、例えば農振農用地でありましても、農用地の集団化等に支障を及ぼすおそれがないこと、あるいは基盤整備事業完了後八年を経過していること等の一定の要件を満たす場合、あるいは市町村による地域の農業の振興に関する計画に基づく施設の用に供する場合は除外を認めてきたところであります。

 しかしながら、市町村による具体的対応の実態を調べたところ、農業の振興と関係が希薄な施設、例えば大型店舗とか、そういったところが散見されました。そういったことを考えながら、平成二十一年、その前の二年に及ぶ農地法改革の議論を通じて制度改正を行ったところでありまして、すなわち、除外の対象となる施設を、地域の特性に応じた農業の振興を図るために必要な施設に限定するなど、運用の厳格化を図ってきたところであります。

 先般来議論がありますように、不測の事態に、今ある日本の農地を全部活用して表も裏もカロリーのある作物をつくった場合にやっと国民が生きていけるカロリーを確保できる、ぎりぎりの農地の状況にあるということも勘案しながら、今後とも、優良農地の確保を図ることを基本としながら、適切な土地利用調整を行ってまいりたいと存じます。

鷲尾委員 ぜひ産業とのバランスも考えていただきたいと思います。ありがとうございました。

坂本委員長 午後零時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時四十二分開議

坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 日本維新の会、鈴木義弘です。

 食事が終わった後、お疲れだと思いますが、先週に引き続きまして、しばし、またおつき合いをいただきたいと思います。

 今まで、きょうも、先週もそうなんですけれども、必ず食料自給率というお話がたびたび出てきます。それで、もう一度おさらいをしたいと思います。

 カロリーベースで算出した自給率のことなんです。

 金額ベースでは七〇%を超えているとも言われますし、カロリー計算でいけば三九とか四〇%とかという話があるんです。国民一人当たりの供給カロリーというのは、御案内のとおりだと思います。

 そこで、国産に輸入を加えた国内消費仕向量というんですか、品目別に熱量換算して人口数で割って、そのうち国産で賄われる供給カロリーの比率が自給率というのは、もう耳にたこができるぐらい聞いてきたと思っています。その中に、過去にも議論になったかもしれませんけれども、輸入や、実際に、食品加工会社とか、それとか中食、外食でも、食品の残渣が出ます。それが、ロスで出ているのも、全供給カロリーをベースにして、それで計算をしているということらしいです。

 先週の議論をさせていただいた中でも、食料自給率というのは、農業サイドに立った人が声高に今まで言ってきたんですけれども、本当にそれが国民の望む自給ということにつながっていくんでしょうかと疑問を投げかける方もいらっしゃいます。

 私もちょっとメタボなんですけれども、最近は、カロリーが過剰な上、ダイエットブームやメタボ対策がはやり続けているのが今の日本ではないかと思っています。ここから、大量の食品廃棄物も発生しているし、七九%も自給率があったとよく引き合いに出される一九六〇年と二〇〇五年、ちょっと古いんですけれども、実に、一人当たりの平均カロリーが、二千二百九十一キロカロリーから二千五百七十三キロカロリーと、三百キロカロリーぐらいふえているんですね。重量換算すれば、国民一人、一年当たりの輸入量は、三百五十六キロも増加した計算になるという数字もあります。

 自給率といっても、このように、輸入購買力の向上によって自給カロリーの分母がこれだけ大きくなってしまえば、国産の比率、三九とか四〇とか、民主党さんが掲げている五〇というのは、自給率が過小評価されてしまうんじゃないかというふうに思っています。

 まず初めに、現在使用しているキロカロリーベースの自給率の計算式のうちで、輸出に回された分と廃棄に回された分、なかなかこれは数字を出すのは難しいかもしれないんですけれども、これを差し引いた計算で本来は自給率を計算しなければ、本当の意味での自給率にはならないんだと思うんです。二十四年度の数字で結構でございますので、おわかりになりましたら、何%なのか、お尋ねしたいと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今お話がございました食料自給率でございますが、もともとは、国内の生産量で、国内の消費仕向量のうち、どの程度を賄っているのかというのが自給率の指標だと考えておるわけでございますけれども、統計データなりあるいは国際的な考え方というものもございます。

 今、私ども農林水産省では、FAOの計算方法に準拠いたしまして、分母につきましては、国内生産量に輸入量を足して、そこから輸出量を引いて求めております。それから、分子の国内生産量については輸出も含めた形で計算をしておりまして、これで計算をしますと、二十四年度につきましては三九%ということになっておるわけでございます。

 お話がございましたように、分子の国内生産から輸出分を引いてどうなるのかということにつきましては、実は、輸出分のもののうち、食用向けに回るものと非食用向けのデータというものが存在しないものですから、厳密な意味で計算はかなり困難でございますけれども、一定の前提を置いて計算をすれば、二十四年度の値としては三八%という形のものが出てまいるわけでございます。

 それから、もう一つ御指摘がございました、摂取量ベースでの廃棄ですとか食べ残しといったようなものを除けないかということなのでございますけれども、これは今の輸出以上にそういったものを示すデータがございませんので、今回、試算という形でも、なかなかお示しするのは困難な状況でございます。

 ただ、食べ残しや廃棄の中に占める国産品と外国産品の比率が入ってくる比率と同じだとすれば、それは分母、分子両方に入っておりますので、そこを抜いても数値としては変わらないのではないかというふうに考えております。

鈴木(義)委員 外国から大豆をたくさん輸入して、それであるメーカーさんがしょうゆをつくって、世界のブランドの亀の子印のしょうゆが世界どこへ行ってもあると思うんですね。そうすると、輸入してきたものと輸出していったものが、きちっとやはり差し引きしないと、実際は、大豆を発酵させて絞るわけですから、ボリューム的、重量的には少なくなるんだと思うんですけれども、やはりなるべくわかりやすい数字に、また正確なデータをとっていった方がいいんじゃないかなというふうに思っています。

 平成二十四年度の厚生労働省の国民健康・栄養調査の栄養素等の摂取量は、男性で二千八十九キロカロリー、それで、女性で千六百八十三キロカロリーなんです。全体で千八百七十四キロカロリーのデータが示されているんです。これをもとにして食料自給率を計算すると幾らになるか、もう一度お尋ねしたいと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の摂取カロリーベースのものでございます。

 今先生が御指摘になりました数字は、厚生労働省の方で調査をしております国民健康・栄養調査というものの数字だと承知をしておりますけれども、この調査は、一定の前提を置いて、ある一日の食事の量を調査対象者の方からお聞きしまして、それをベースに、引き伸ばして一年間を推計するというものでございまして、食べた中身のヒアリングなどをやっておられるようです。

 トータルのデータは、これでカロリーベースのデータが出てまいるんですけれども、うち、国内由来のものがどのぐらいあるかというデータは、残念ながら、この統計では出ておらないところでございます。

 私どもの農林省が使っておりますデータは、FAOの基準に基づきまして、供給ベースのデータから、マクロの統計の方からとっておりますので、今申し上げましたような厚生省さんの方の分母のデータに突合するようなものがございませんで、申しわけございませんが、これは幾らという数字を申し上げるわけにはまいりません。

 ただし、先ほども申し上げましたように、およそ廃棄されるものの中に占める国産と外国産の比率というものが分母の比率と変わらないようであれば、そこの差はそれほど大きくなることはないのではないかと承知をしております。

鈴木(義)委員 すぱっと答えられるかなと思ったんですけれども、分母が千八百七十四キロカロリーで、分子を九百九十六キロカロリーで計算すると、五三%ぐらいになるんです。

 だって、これはアンケートでとったデータだといいながらも、食べ残したり食料加工をした残渣があろうがなかろうが、私たちがきょう、私はセブンイレブンでお昼に焼きそばを買ってきてもらったんですけれども、あと、豚しゃぶが少し残っていたんですね。あと、スープが好きなものですから、卵入りのスープにお湯を差してもらって飲んできたんですけれども、それを摂取している量というのは、大体遠からず近からずで合っているんだと思うんですよね。

 だから、今までずっと議論してきた食料安全保障に基づく食料自給率というのは何なんだという話で、私は別に、農家をいじめるとかそういうつもりは全然ないんです。でも、本当の実態のところはどういうデータがあるのかというのを尋ねても、後段でも少しお聞きしたいんですけれども、それは時代とともに変わりますよ、一九六〇年代からいったら、米を一日二膳も三膳も食べてきたのが、今は一膳食べるかどうか。それで、結局、穀類の食料自給率が下がっているというのは、どのデータを見ても、農水省さんが出しているデータを見てもそうですね。そのかわり、たんぱく質だとか炭水化物、ほかのもので摂取しているし、脂肪分を、油脂分をとっているのは、約四十年たっていますから、そのころから思えば多くなっているのはわかるんですけれども、でも、実際に農業政策を進めていくに当たって、やはりきちっと実態に合ったデータに基づいた施策を方向づけしていかなくちゃいけないんじゃないかと思うんです。

 そこで、お尋ねしたいんですけれども、民主党が政権を担ったときの五〇%の食料自給率を掲げて農業政策を進めてきたんだと思うんです。今から三年前、四年前のことをお尋ねするのも失礼かもしれないんですが、実際に、どういった観点に基づいて食料自給率の五〇%を掲げたのか、もう一度確認したいんです。

大串(博)議員 私たちが政権におったときも、自給率をどういうふうに考えるか、それをどう目標づけるかというのを、大変議論をたくさんしました。おっしゃったように、輸出の分を除くと、それで自給率は上がるんですね。あと、残渣の問題もございました。

 ですが、いろいろ考えた結果、いろいろなそれまでの政策の一貫性、検証の一貫性というものを考えた上で、従来採用されていたカロリーベースの総合食料自給率、先ほど御説明のあったもの、これを政策の指標とし、高い目標とは思いつつも、やはり五割に近づけていこう、こういうふうな考え方をとったということでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 結局、行政が数値目標だとか単位を出すときには、やはりそれ相当の根拠を示さなくちゃいけないんだと思うんですね。

 やはりマスコミは、それを声高々にというよりセンセーショナルに掲げますし、それを見ている国民、有権者は、そうだなというふうに思いますから、大変なんだと思うんだと思うんです。ぜひ、今後、いろいろな数値目標を掲げるときには、パーセンテージで示されるときは、分母と分子の根拠をきちっと示していただけたらなというふうに思っております。

 また、先週の私の質問で、小里政務官の方で御答弁いただいた、午前中もトウモロコシのことで鷲尾委員の方から質問があったと思うんですけれども、そのときも、御答弁いただいた際に、食料自給率を計算する際、直接人間の口に入らないものなんだから、トウモロコシは対象にしないという答弁をされたんです。でも、そのトウモロコシを食べた鶏とか豚を私たちが食べているということになったときに、なぜ食料自給率に換算しないのかと逆に素朴に思うんですね。

 先ほどの午前中の答弁もそうなんですけれども、いや、飼料用トウモロコシをつくっていますよというような答弁が政府参考人の方からあったと思うんです。実際、もうつくっているわけですよね。国内で作付しているわけじゃないですか。なぜ今回のゲタ政策の中にトウモロコシが入らないのか。だって、九万ヘクタール以上で、そのうちの飼料用トウモロコシが、たしか、私の記憶が間違っていなければ、九千ヘクタールぐらい作付しているんだというのを御答弁されていたと思うんですよね。

 もう一度お聞きしたいんです。

小里大臣政務官 まず、トウモロコシが自給率に計算されないというお話でございますが、正確ではございませんで、トウモロコシを含めた飼料作物の自給率が現在二六%ですから、畜産を生産振興した場合は、二六%に換算して食料自給率に計算されるといった面はございます。

 なおまた、トウモロコシの場合、なかなか難しい、悩ましいなと思うところでありますけれども、午前中も副大臣から答弁がございました、なかなか日本の風土に合いにくい部分があります。そしてまた、特に、水田の場合は排水の問題等があります。あるいは、機械の問題等があります。したがって、なかなか生産しにくい。やはり、水田は水田として生かして、飼料米を含めて稲作を主体にしてしっかりとやっていくことが大事な課題であろうと思うところでございます。

 御指摘のとおり、本来、食料自給率向上の観点からは、カロリーを重視した取り組みになっております。また、中間生産物、いわゆる餌に使われる飼料用作物等についてはこれを含まないとしているところでございまして、この点はどうか御理解をいただきたいと思います。

 ただ、飼料作物の生産振興を図ることは、食料自給率の向上を図っていく観点から大事な課題でありまして、特に水田活用直接支払制度においては、戦略作物助成として、反三万五千円で支援をいたします。また、産地交付金からの支援も可能としているところでありまして、引き続き、各般の支援策を講じてまいりたいとしているところでございます。

鈴木(義)委員 もう一度、食料自給率のところで政府参考人の方にお尋ねしたいんですけれども、先ほど示していただいた三八%の分母の中には、外国から入ってきている大豆だとかトウモロコシは入っているのか、入っていないのかということなんです。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 外国から入ってまいります飼料穀物であるトウモロコシ等につきましては、当然ながら、カロリーベースの計算をいたしますときに、国内の畜産物に対価をする形で計算をしておりますので、国内で見ますと、畜産物の生産物、例えば豚ですと、見た目の肉という意味では五〇%ぐらいの自給率があるわけでございますけれども、その五〇%に対して、輸入で入ってきますトウモロコシの比率をざっくり言いますと掛けまして、餌に占める飼料自給率の値を掛けて計算をするという意味でございまして、カロリーベースでは、入ってくるものは含まれているということでございます。

鈴木(義)委員 食料自給率を上げていきましょう、三九でも八でもいいんですけれども、四〇とか五〇に上げていきましょうといって、今政府参考人の方から御答弁いただいて、輸入のものは、飼料でも大豆でも、今議論になっている飼料用の米も、では、カロリー計算しないのかといったら、するんだと思うんですよね。しないんですか。

小里大臣政務官 先ほど答弁申し上げましたように、飼料作物の自給率は、今二六%として計算をされております。

 ただ、今政府参考人から、また先ほど私が申し上げましたように、畜産物の自給率を計算する場合は、中身が二六%しか国内で生産されておりませんので、二六%に換算して計算されておる。例えば、畜産が生産がふえていっても、そのふえていった分の二六%しか自給率は向上しない、そういう計算になるわけであります。

鈴木(義)委員 余り押し問答していてもしようがないので、今回の法律の中では、衆法も閣法もそうなんですけれども、具体的に、ここに今いただいた「新たな農業・農村政策が始まります!!」、ここにいろいろな施策が書いてあるんですけれども、これは法律に事細かく書いてあるわけじゃなくて、あくまでも法律の条文とは違うところの議論を今しているわけですね。

 ぜひトウモロコシもやはり水田のフル活用で、確かに、私がお世話になっている地元は、どうしても稲刈りをした後には乾田化しないんですね。ですから、二毛作をやりたくても、麦だとか大豆がつくりづらい地域なんです。ですから、一年に一作しかできない地域もある。きちっと圃場整備が整っていて、水も入ってくるけれども、水を出したらきちっと乾田化するような地域では、つくってもらってもいいんじゃないかと思うんですね。

 だから、日本全国どこでも何でもつくれるかといったら難しいと思うんですけれども、ぜひトウモロコシも、食料自給率を上げようということであれば、計算の仕方と品目の追加のことは、二十六年度、よく協議をしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 おっしゃるように、飼料作物の振興ということで、トウモロコシも大事な作物であるわけでございますので、そういう政策をやっていこうと。

 一方で、カロリー自給率を計算するときのお話を今いただきましたように、これをやっていった場合に、仮に、餌米が普及をいたしました、これが輸入のトウモロコシと置きかわった、こういうふうにしますと、その分は自給率が上がる、こういうことになるわけですね。

 今まで輸入トウモロコシを食べていた家畜、豚や牛や鳥の餌が、ある部分が餌米に置きかわると、これは国産でございますので、輸入から国産に置きかわることによって、先ほどお話があったように、率が変わってくるという意味では、餌米を国内で生産して輸入のトウモロコシに代替していくということは、今委員がおっしゃるような一つの方向に沿っているもの、こういうふうに考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 もう一点、先日、江藤副大臣の答弁をいただきました。飼料米や加工用米の需要が、引き合いが七万トン来ているというようなお話をいただきました。

 この経営安定化交付金の制度では、近所に養鶏や養豚業者がいれば、自分で直接販売してもいいんですよと。

 しかし、私の地域は、鶏をやっている人は一軒だけ、隣の地域でも二軒だけ、豚は一軒だけなんです。牛さんをやっている人が、乳牛をやっている方は、二十頭ぐらいで一軒あるかないかなんです。でも、米は一生懸命つくっています。

 そういった農家の方が、飼料米、加工米をつくってみたいというふうに思ったときに、答弁の中では、いろいろな相談窓口がありますから、どうぞ聞いてくださいというお話なんですけれども、私がお聞きしたら、誰に相談すればいいんでしょうかという話をしたら、全農飼料センターなんだというような話を聞いたんです。

 そこで、やはり疑問が湧くのが、相談した先が、ことしはもういっぱいだからいいよというふうに言われたときに、自分はつくりたいと。

 午前中の答弁でも、先週の答弁でもそうなんですけれども、経営体の人が自分で情報をとって、農林水産省は情報をきちっと出すから、需給バランスの中で自分は何をどのぐらい作付したらいいかというのを決めてもらいたいんだ、そういう答弁をいつも政務三役はおっしゃられるんです。

 先週の答弁の中で、水田のフル活用をしたときに、この十万五千円、上限の金額をいただくのに、あくまでも売り先がきちっとしていないといただけないんだ。

 今冒頭で申し上げたように、江藤副大臣は、七万トンのオファーが来ているんですと言うんです。先週の議論の中でも、二十四年度産で飼料米は十六・七万トンいっていると思うんですね。そうすると、七万トン出してもらったとしても、またプラスマイナスしたって二十四万、二十五万トンぐらいしか、二十六年度というんですか、それは見込めないという計算になるわけですね。そうすると、おのずと、二十五万トンぐらいしか需要がないのに、私は飼料米をつくって補助金をもらいたいんだと言っても、売り先がないから、あんたはだめよと言われちゃったときに、どこかで調整しなくちゃならないんだと思うんですよね。

 この議論の最初の話で、小里政務官の方から御答弁いただいた中で、飼料米に転換できる鳥、豚、牛に食べさせる、パーセンテージもたしかお述べになったと思うんですね。それでいくと、マックス四百五十万トンの飼料米が需要として見込めるというような説明があったと思います、私の記憶が間違っていなければ。マックスそのぐらい、飼料米として、今七百八十万トンぐらい米をつくっているうちの四百五十万トンぐらいは飼料米としてたしかシフトできるんですよというふうに過去に答弁されていると思うんです。

 繰り返しになるんですけれども、今、二十四年度で計算して、十六・七万トンの需要を、毎年八万トンずつ主食用米が減少すると見込まれている中で、別の用途の米を作付したらという話がこの飼料米になっていくんだと思うんです。加工米や飼料米の売り先を誰が橋渡しするのでしょうか、お尋ねしたいと思います。

 特に、やはり最後は、出口のところを国が責任を持つかどうかで、この制度が生きるか生きないかは決まります。私はそう思っているんです。だって、需要先がないのに、つくってもしようがない。余ったらお金は出しませんといったら、みんな主食用しかつくらないでしょう。

 副大臣の御地元の宮崎県は、それは酪農とか畜産が盛んなところですから、米を飼料米に転換すれば、どんどん食べてやるよと言ってくれるんでしょうけれども、うちの方は、酪農だとか養豚をやっている人はほとんど皆無なんですよね。それで、飼料米をつくれ、加工米をつくれと。水田は、わあっといっぱいあるんです。ある一軒の農家では、百町歩やっている水田農家もありますよ。先日の話で、五十町歩やっている人もいるんですけれども、それだけ大規模化をやっているんですけれども、さあ、どうしましょうといったときの売り先をどうするかというのは責任を持ってもらえるかどうか、お尋ねしたいと思います。

林国務大臣 ちょっと、御質問の趣旨を正確に把握しておるかどうかわかりませんが、鈴木先生がおっしゃっているのは、昔のように、食糧特別会計を復活して政府が全部買い上げろ、そういうことをおっしゃっているのではないというふうに思っております。

 今でも、百町歩やっていらっしゃる方は、どなたかに売っていらっしゃるわけですね。それだけの需要があって、売っている。それが、今から、平均すると、トレンドとして八万トンずつ減っていく、こういう中長期的な予想がありますので、それをどうしていくかということを考えなければならないということであります。

 したがって、今でも需要に応じてお米をつくっていただいている、しかし、それは生産数量目標の配分という形で、政府が数量目標を配分する形でやっている、これを、なるべくその地域地域の特性に応じて、今お話がありました、水田ということをフル活用しながら、残念ながら減っていく主食用米の需要にどう対応していくか。

 マクロでいえば、毎年八万トンずつ主食用米が減っていく。水田を今と同じだけフル活用しようと思えば、八万トン分の主食用米以外の需要、こういうものを開拓していかなければならない。こういうことで、飼料用米ですとか米粉用米、あるいは麦、大豆、それから、難しいと今いろいろ議論されておられましたけれども、ほかのもの、こういうものを組み合わせることによって、こういう新たな状況に対応していこうということであります。

 先ほど七万三千トンのお話がありましたが、これは新規に出てきた積み上がる需要ということでございます。八万トン減っていく主食用米に対して、餌米の新規需要が七万三千トン出てきた。それに加えて、麦、大豆、米粉用米等で水田のフル活用ビジョンを図っていく、こういう考え方になっていくわけでございます。

 したがって、この七万三千トンの話は、新たに畜産農家から直接要望がある数字でございまして、今委員がちょっとお触れになったのは、もう一つ、配合飼料工場を通じて供給する、こういうルートもあるわけでございます。

 ことし、今すぐにでも欲しいという方が、配合飼料以外に、畜産農家で七万三千トン要るという数字と、全部理論上の数字を、現在の技術水準でやった場合に、潜在的なものが四百五十万トンである。これは、技術をもっとやっていけばふえる可能性もあるわけですが、潜在的に四百五十万トンある中で、実際に買いたいという方が、ことしは去年に比べて、上積みとして七万三千トンある、こういう位置づけであるということを申し上げておきたいと思います。

鈴木(義)委員 食管法を戻せとは言わないんですけれども、ただ、定着をしていくのに、国がその方向のかじを切り直したんですよね。減反政策、生産調整はやめます、方向は五年先、それを目途にということで、いろいろな施策を組みかえたんだと思うんです。

 であるならば、やはり飼料米にシフトさせるとか加工米にシフトさせるんだったら、農家の不安がないような道筋をつけてあげたらどうでしょうか。未来永劫、ずっと国が関与するということは考えていないんです。ある程度それで食べていかれるような状況、もうかる農業が最終目標であれば、それをできる時点で国がぱっと手を引けばいいんだと私は思うんですね。

 何の政策だって同じだと思います。やはり産業として育ち始めたところに国の手を入れてあげて、きちっと育っていただければ、国が関与から手を外せばいいわけでありまして、そこのところの道筋をつけてもらえないかというお尋ねなんです。

林国務大臣 まさにその道筋をつけるために、これは何度かこの場でもお答えをしておりますが、先ほどのマッチングの情報、これを一生懸命やる。県、市町村段階の関係機関に提供してやっていく、こういうこと。それから、配合飼料工場の場合は、各地の配合飼料メーカーと調整をしながら受け入れ体制を整備していくこと。

 これに加えて、耕種側に乾燥調製貯蔵施設、こういうものが必要になってまいります。こういうものの整備をする。それから、畜産側では、加工、保管施設の整備、それから粉砕機、混合機等の機械導入への支援、こういうものを行っていこう。

 こういうことをきめ細かく、まさに今委員がおっしゃっていただいた、道筋をつけていくということはしっかりとやって、生産者、それから実需者、そして行政、これが一体となって進めていく必要がある、こういうふうに考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 ここに載っている、先週もお尋ねした、佐賀県に地方公聴会へ伺った話をさせてもらったんですけれども、ここでも二毛作の助成金があったり耕畜連携助成金があったりするんですけれども、ふと思ったんです。村岡先生がいらっしゃるので、秋田県を例示にしちゃうと、一年に一作しかできないところは、これをもらえないんだよなと思うんですね。

 だから、この制度の中で一番どうかなというふうに思うのは、地理的要件だとか気候的要件が、これで全部一律でやろうとして、地域差が出てくるなというふうに思うんです。

 特に、麦だとか大豆、今はトウモロコシだとか米だとかというふうにいろいろ議論しているんですけれども、水田のフル活用というふうにおっしゃられるんですけれども、佐賀に行ったときに農家の方がいみじくもおっしゃっていましたけれども、水田で麦だとか大豆をつくったら、やはり味が落ちるんだそうです。

 そうすると、結局、餌に使うんだったらいいんですけれども、今までの議論のやりとりの中で、外国から入ってくる小麦よりも日本の小麦の方がうまいし、今それがトレンドになりつつあるよという答弁をいただいたと思うんですね、うどんでもそうだし、パンもそうだろうし。そうなっていくときに、おいしい麦をつくったり大豆をつくろうというふうになったときに、これも全部じゃないんです。うちの方でつくりたいといっても、先ほど申し上げたように、冬場、水田が乾田化すればいいんですけれども、ぐちゃぐちゃの状態では、やはりいいものがつくれない。そこはおのずと二毛作はつくれないという話なんです。味がよくなったから、外国から入ってくるものがある意味ではとめられて、国内産のシェアを拡大することができるんだと思うんです。それを経営者だけの判断にしていいのか。

 今、出口のところで道筋をつけていきますというふうに大臣から答弁をいただいたんですけれども、この辺についても、ちょっと矛盾するんじゃないかなと思うんです。お答えいただければありがたいんです。

林国務大臣 地域によってさまざまな状況がある、こういうふうに思いますので、先生のお地元の状況を逐一全部承知しているわけではございませんが、例えば、暗渠排水等の整備を進めていくことによって対応していく。これは、要するに、一般の製造業でいえば、工場の設備を少し変えて、新たな需要に対応したものをつくる、こういったことなのかもしれませんが、その辺も含めて、どうしていくのか。麦、大豆で今言ったようなお話がもしあるとすれば、そちらの方をやっていくという道ももちろんある、こういうふうに思います。

 また、水田における麦、大豆の生産という意味でいえば、湿害等によって収量が不安定なこと、ロットごとの品質のばらつきというのがあります。したがって、そういう課題に対して、単収向上技術とか機械化体系の導入、それからロットごとの均質化等に資する乾燥調製施設の整備、こういうものや、それから、今ちょっと触れていただきましたように、生産性や加工性にすぐれた新品種等の導入、こういうものを一体的に進めていかなければならない、こういうふうに思っておるところでございます。

 やはり地域地域の特性に応じて、生産者、それから実需者、行政、先ほど申し上げたように、これが一体となって取り組むことが大変大事だ、こういうふうに思っております。

鈴木(義)委員 新しい制度を来年からスタートするから、いたし方ないと思うんですけれども、ぜひこれは一年か二年で検証していただいて、いいものをつくったんだったら、量が少なくてもいいと思うんです。これは、あくまでも量を一つの基準にしています。それだけで終わらせないで、やはり少なくてもいいものをつくりたいとか珍しいものをつくりたいといったときに、そこで競争力、オンリーワンという話が私は出てくるんじゃないかと思うんです。みんながつくるものを同じようにつくったら、やはりオンリーワンという競争力が働かない。

 これは、進め始めたときに、一年、二年はこれである程度様子を見ていかなくちゃいけないと思うんですけれども、やはりいいものを丹精込めてつくったら、それだけの評価をしてもらうというような形も今後取り入れてもらえればなというふうに思います。

 また振り出しに戻らせてもらいたいんですけれども、衆法の方で出されている反当たり一万五千円、これはもらえる方からすれば一番ありがたい話なんでしょうけれども、一万五千円だとか七千五百円だとか、ただ半分にしただけなのかなと思うんです。結局、今取引している価格をベースにして、単純にこの一万五千円をどこかではじいてきた数字なのかなというふうに思うんです。

 この金額の、またそのほかの、衆法でも閣法でもそうですけれども、ここで出してきている単価に関して、もう一度、おさらいの意味で御説明をいただきたいと思います。細かく説明いただかなくて結構です。

奥原政府参考人 まず、米の直接支払交付金、これのこれまでやってまいりました十アール当たり一万五千円の積算根拠でございます。これは、平成二十二年度に戸別所得補償制度モデル対策を導入いたしましたけれども、この時点で、標準的な生産に要する費用をはじきまして、さらに、標準的な販売価格もデータに基づいて算定いたしまして、この二つの差額をもとに算定をしたものでございます。

 それから、米の直接支払交付金につきましては、政策的な課題がありましたので、今回の見直しにより廃止することになっておりますが、この交付金を前提に機械、施設の投資を行った農家の方もいらっしゃいますので、直ちに廃止するわけではなくて、三十年産から廃止をする。それまで、二十六年産から二十九年産までの間は、これまでの単価の二分の一に減額をして交付するということにしております。したがいまして、この七千五百円については、従来の一万五千円の二分の一ということでございまして、積み上げでの積算根拠はございません。

 それから、いわゆるゲタ対策、生産条件不利補正交付金の交付単価でございますけれども、これは、対象農産物ごとに、標準的な生産費と標準的な販売価格をはじきまして、この差額をもとに算定しております。

 それから、水田活用の直接支払交付金の交付単価でございますが、これは、水田をフル活用して食料自給率の向上を図るという観点から、水田で麦なり大豆なり、こういったものを生産した場合に、主食用の米との所得の格差が生じないようにするということを基本として、面積当たりの単価を算定しております。

大串(博)議員 お答え申し上げます。

 私たちも、政権時代の米の定額支払い金一万五千円については、先ほどの政府の説明と同じでございます。そして、今回私たちが提案している衆法におきましても、同じく反当たり一万五千円を基礎として考えておりまして、その考え方は、今説明のあったとおりでございます。

鈴木(義)委員 何か根拠が、政府の方は二分の一と言ったし、一万五千円は、まあ、もう過ぎたことですから、いいかなと思うんですけれども。

 それで、今までの議論、私が御質問させてもらった、過去に何回かあるんですけれども、この制度を組み合わせて補助金をいただければ、私たち消費者はおいしくて安い米を手に入れることができるのでしょうかというお尋ねです。

 これからも農業は、やはりきちっと保護するべきところは保護していかざるを得ない、していった方がいいと思うんです。納税者に何らかのメリットがなければ、農業、農家を守るだけでは納得してくれないと思うんですね。

 将来、これから、仮にの話ですけれども、四百五十万トンのお米を飼料米として作付するんだよと五年後になったときに、予算の手だてがきちっとできるのかというところに行き着くと思うんです。将来の、先だから、そんなの今から言われたって、鬼が笑っちゃってせき払いするよと言われちゃうのが大体落ちの答弁だと思うんですけれども、でも、そうじゃなくて、これからも安定的に農家の人が不安なく事業を進めるに当たっては、税金をきちっと、どこまでどのぐらい入れるかは別としても、やはり納税者に何らかのメリットがあるような税金の投入の仕方をしなければいけないと思うんですね。

 ですから、先ほど、何回も繰り返し申し上げていますように、食料自給率の向上といったときの根拠が希薄じゃだめなんです。だから、何回も申し上げているのはそこなんですね。今の実体経済はこうなっていて、こうだから、このぐらい税金を入れれば、私たちの食料はここまで確保できるんだというふうに理論づけてやらないと、これからはなかなか、税収がそんなに急に何倍も上がってくる時代じゃないと思うので、そこのところを、もしメリットがあれば、これを進めていって、二十七年にはバラ色の花が咲くんだというのであれば、短くて結構ですから、お示しいただきたいと思います。

小里大臣政務官 大事な御指摘であります。

 まず、今回の米政策の見直しでは、需要に見合った米が現場主体でつくられていく、これを目指しているところであります。そのために、水田活用の直接支払交付金の充実、中食、外食ニーズに応じた生産、そして国によるきめ細かい情報の提供等の環境整備を進めていこうというところでございます。

 特に、中食、外食用のニーズが主食用米の需要の三割を占めておりますから、こういった消費者ニーズの多様化に応えて、みずからの経営判断によって生産を行っていけるように、そういった環境を整えていくとしたところであります。

 具体的には、中食、外食業者や卸業者と産地のマッチング、米の生産コストの削減に向けまして、規模拡大、省力栽培技術の導入、生産資材費削減に向けた取り組みの支援を行っていくところであります。

 引き続き、こういった取り組みを推進することによりまして、生産コストの削減に向けた取り組みを進める中で、コスト削減の効果が米の価格に反映をされて、そしてまた、生産者が安定的に生産をすることで、国民への安心、安定的な食料の提供が行われていくように取り組んでまいろうというところでございます。

 また、飼料米について、四百五十万トンの需要ということで御確認がございましたが、これは、試算に基づけば、むしろ控え目な数量でありますが、それもあくまで潜在需要ということであります。当面、そんなに生産していける状況ではございません。主食用米の生産も大事なことでございます。

 したがって、そういったことを踏まえて、自民党の十カ年戦略では、加工用米、米粉用米等を含めて、当面百五十万トンを目指そうというところ、現実的な目標を定めているところであります。

大串(博)議員 私たちは、戸別所得補償制度と、これまでの農地・水、中山間等々を法制化するという提案をしているわけでございますけれども、戸別所得補償制度は、価格によって消費者が負担を余儀なくされるコスト割れ部分、これを財政支出で広く薄く国民の皆様に、直接支払いという制度ですから、御負担をいただくという制度でございます。

 こういう制度によって、財政支出を過大にすることなく、繰り返しこの委員会でも申しておりますように、静かな構造改革といいますか、営農者のインセンティブに働きかけて大規模化を促し、大規模化に伴って生産コストが下がっていく。それによって、よりよい、より安い米も手に入れられるようになる。さらには、いろいろな加算措置もこれまでやってまいりました。例えば、環境加算等々、品質等も含めた工夫を行ったときには加算を行うといったことも行っておりまして、これによって、質、そして価格の両面で進んだ農業になるようにという願いを込めてつくってきた制度でございます。

鈴木(義)委員 最後に、もう一問だけ御質問したいと思います。

 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律、今まで何回も質問させていただいたんですけれども、この法案について一点だけお尋ねしたいと思います。

 閣法では、多面的機能の促進を図るのを一つの法案としてまとめられています。衆法をあえて三本に分けている意味合いを教えていただきたいと思います。

 また、衆法では、農地・水等共同活動の促進を図るため、環境保全型農業と、農業があって環境が守られるとの理念でこの法案が作成されているように読み取れるのでありますが、ちょっと言葉が過ぎているかもしれませんが、環境破壊しているのはもともと農業じゃないかという考え方があるんです。森林や雑木林を開墾して、そこに農地をつくるということは、もともと自然を破壊してきたのは農業じゃないかという考え方です。

 これは、人間にとってメリットがあるから、それを推し進めてきたんだと思うんですけれども、そもそも、このいろいろな多面的機能の補助制度を駆使したとしても、どの環境をどこまで保全するのかというのが、今までの議論の中で規定されたり議論されたことがほとんどないと思うんです。

 何となく情緒的な話です。美しい日本を守りましょうとか、ここのあぜ道は、水路は底ざらいしましょうというだけの話で、それが本当に環境のためになるのかといったときに、これとこれとこれはこの基準でやってください、だからここまで補助を出しますよというぐらいの基準を設けた方がやはりいいんじゃないかと私は思います。そうしなければ、先ほど御提案申し上げたように、麦でも大豆でも適当にと言ったらおかしいんですけれども、いいものをつくらなくても、数だけつくれば補助金をもらえるんだったら、なるべく手を抜いた方がいいんだと思うんです。でも、環境保全もそうだと思うんですけれども、本当に一生懸命やっているところと、とりあえず草刈りだけすればいいやというところで、同じお金を出そうとしているんですね。だから、やはり基準はきちっと設けて、どこまでの環境を保全した方がいいのか。

 これは前々回のときにも御質問申し上げたかもしれませんけれども、ヨーロッパの方は環境支払制度にどんどん移行していますし、アメリカの方は、日本以上に農家に保護政策をとっていて、何かもうかり過ぎちゃっているから、今度は、来年あたりから保険制度に切りかえて、その保険の原資として税金を投入しようとかという話も出てきています。

 ですから、日本でも、農業政策がうまくいってもうかったときに、さあ、納税者はどう思うかというところを少し考えて方向を出していった方がいいんじゃないかと思うんですが、今の時点で、どの環境をどのぐらいまで保全しようとするのか、もしわかったら教えていただきたいと思います。

小里大臣政務官 まず、法案一本化の理由であります。

 政府提出の多面的機能発揮促進法案は、四つの支払いを法制化するものであります。

 本法案が一つの法案の中に盛り込んでいるのは、これらの支払いがいずれも多面的機能の発揮を促進する取り組みを行う農業者等に対する支払いであること、多面的機能の維持の基礎となる農地に着目をしまして、その面積に応じた支払いを行うといった等の理由によるものであります。

 今まで三つが独立した予算事業として行われておりましたけれども、加えて、四つを一本の法律に集約して位置づけることによりまして、国、県、市、現場が一体となって、どうやって四つを組み合わせて、計画的に、効率的な運用を図っていくかが取り組みやすくなる、そのように認識をするところでございます。

 また、この多面的機能の適切な発揮を促進するための評価の仕方についてお尋ねでございました。

 具体的に申し上げますと、農地維持支払いについては、水路の泥上げ、農道の草刈り等の保全活動による施設の機能の維持、資源向上支払いについては、施設の補修、景観植物の植栽等による施設の機能の増進といった活動に対して支援を行うものであります。

 かつ、これらの活動については、国が、要綱、要領で、取り組む活動項目ごとに具体的内容を定めて、それをもとに、都道府県が、地域の実態を踏まえて、取り組むべき活動を定めることにしておるわけであります。これらの活動が実施されることをもって、多面的機能の発揮が促進される取り組みとしての判断基準としているところであります。

坂本委員長 時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

小里大臣政務官 はい。

 それを定量的に評価するということは、地域によって多様な多面的機能が存在するわけでありまして、なかなか難しいことから、多面的機能発揮のための共同活動に着目をしている、そういう次第でございます。

坂本委員長 大串君、簡潔にお願いします。

大串(博)議員 私たちは、政府のように、これは産業政策、地域政策と分けるのではなくて、戸別所得補償制度において営農を継続できる形をつくっていくことによって、ひいては多面的機能の発揮にもつながるというような連関性の中で考えておるところでございますので、地域政策と産業政策をきっぱり切り分けられるという考え方はとっておりません。

 さらには、三法出しておる法律につきまして、農地・水、これはいわゆる共同活動を支援するもの、そして中山間直接支払制度、これは、農業の生産活動そのものを支えるという面と共同活動を支える面という二つの面がここには共存しております。ですから、この二つは違います。さらには、環境保全型は、国策として環境保全型の農業を支える、支援するという、それぞれ違った目的、効果があると考えておりますものですから、三つを分けて考えました。

 守るべき自然のあり方、多面的機能のあり方、これは非常に深遠な問いだと思います。一つ大切なことは、私たちは、現在の農業のあり方なり地域のあり方を一定程度受け入れて、この世の中ができているということじゃないかと思います。

 担い手のあり方はいろいろな形で進化するにしても、営農が今後続いていくということがどう安定的に担保されるか、これがあるべき自然環境との調和がとれているのかというときの判断として大切なことではないかと考え、営農を続けていけるという観点からの政策づくりを主眼に考えているところでございます。

鈴木(義)委員 二〇五〇年に、日本の人口が九千六百万とか八千万になっちゃう、日本の国土のうちの三分の一が無人化しちゃう。あと三十六年しかないんです。だから、この制度をもっと活用して、きちっと方向づけを出して、ここだけは最低やってもらいたいというものだけを残さない限りは、人がいないんです。そこのところを、今は入り口であれば、やはり方向づけを出していってもらいたいなというふうに思って、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 今回、初めて農林水産委員会で質問させていただきます。初めに、関係の先生方に厚く御礼を申し上げたいと思います。

 現在、当委員会におきましては、農業を成長産業として、あるいは環境保全ということで、しっかりと議論が進んでいるところと思っております。

 私は、平素、環境委員会の方で理事をさせていただいております。そういった意味から、農業、しっかり頑張っていただかなきゃいけないわけですが、環境保全という観点から、きょうは質問させていただきたいと思います。

 まず、環境政策と農業政策の位置づけについてお尋ねをいたしたいと思います。

 言うまでもなく、両者は対立するものではありません。それぞれの考えを調和させ、施策を進めることが非常に重要なことと考えております。互いに整合性をとって進める必要があるわけであります。

 今回の法案を見ますと、生物多様性の保全、あるいは地球温暖化対策、土壌改良など、数多く環境政策のキーワードも盛り込まれていると思っております。

 こうした施策の具体化を進める際、環境省と農林水産省はどのように連携をとっていかれるのか、あるいは、環境省と人事交流をどのようにされているのか、環境省、農林水産省両省が日常的に施策を立案、実行する上でどのように連携を図っているのか、総論的にお尋ねいたしたいと思います。

小里大臣政務官 農水省の営みは、身近な自然環境を形成して、多様な生物種が生息、生育する上で大変重要な役割を果たすなど、環境省と大変かかわりが深いところであります。従来から、さまざまな場面において連携して取り組んでいるところでございます。

 具体的には、御指摘の生物多様性については、農林水産分野を含むさまざまな取り組みを盛り込んだ生物多様性国家戦略を環境省と連携して作成しております。

 地球温暖化対策については、森林等が二酸化炭素の吸収源として大きな役割を果たしていることから、吸収源に係る国際的ルールづくり等を連携して推進しております。

 また、鳥獣被害対策につきましても、農水省と環境省とが共同議長となって関係省庁連絡会議を開催するなど、一丸となって取り組む体制を整えているところでございます。

 また、本年四月現在で見ますと、農林水産省から環境省へ百六名、環境省から農水省へは二名が出向するなど、人事交流も行っているところであります。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 しっかり連携をしていっていただきたいと思います。

 次に、中山間地の農業についてお尋ねをいたしたいと思います。

 高齢化社会を迎えまして、今後は、里山対策や集落の農業あるいは農地を守るということが極めて重要な課題になってくると思います。また、あるいは森林保全という立場でも大切なものだと思います。

 中山間地の農業を守るということは、水源を守っていくことであり、非常に豊富な水を含んでいる山を守るということは大切なことではないかと思っています。

 我が日本維新の会では、国家安全保障の観点から、外国資本による土地購入などに関する議員立法を提出しているところでありますが、これとは若干視点を変えまして、水資源を守るという観点から、外国資本による水源の買い上げ、森林の買い上げ、買収について、現段階での政府の認識及び方向性についてお尋ねいたしたいと思います。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 外国資本によります森林の買収の状況につきましては、平成二十二年以降毎年、都道府県を通じて調査を行っておりまして、平成十八年から二十四年の七年間でございますが、この間の森林取得などの事例は、累計で六十八件、八百一ヘクタールとなっているところでございます。

 森林法におきましては、森林の適切な管理保全を図るために、林地開発許可制度等の規制措置を講じてきたところでございます。さらに、平成二十三年の森林法改正でございますけれども、新たに森林の土地所有者となった方の市町村への事後届け出の規定、そして、他の行政機関等が有する森林所有者情報の利用に関する規定、こういったものを新たに措置いたしまして、森林所有者の異動を的確に把握するということが可能となるなど、森林を適切に管理保全するための制度が強化されたところでございます。

 私どもといたしましては、こうした制度の活用によりまして、外国資本によります森林買収の動向を的確に把握するということと、あと、規制措置等を適切に運用いたしまして、水源の涵養など、森林の有する多面的機能の適切な発揮を確保していきたいというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 やはりそういう土地売買ということがたくさん現実に起こっているわけですし、我が国の貴重な水資源でありますので、それもしっかり守っていかなければならないものだと思っております。

 また、法的にも、外国の方の土地購入を制限するということは非常に難しい問題があると思いますので、この点も多面的に検討を進めていかなければならない問題だと考えております。

 次に、先ほどちょっとお話もありましたが、鳥獣被害対策について伺いたいと思います。

 鳥獣被害防止緊急捕獲等対策事業について、捕獲経費の補助単価、本会議でもちょっとお話しさせていただいたんですが、大型獣類は一頭当たり八千円、鳥類は一羽当たり二百円と定められております。捕獲に用いる弾が一つ二百円以上するとも聞いております。

 ことし四月より、特定の鳥類の補助単価が見直されることになりました。その狙いはどこにあるのかを教えていただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 深刻化、広域化する野生鳥獣による農作物被害の主な原因になっております鹿そしてイノシシを中心に、緊急的に捕獲を進めるために、今先生の方からお話がございました事業により、捕獲経費の二分の一相当を支援するということにしております。

 しかしながら、地域によりましては特定の鳥類による被害がけものによる被害よりも多くて、その捕獲を強化することが地域の農作物被害の軽減を促進する上で極めて不可欠な場合がありますものですから、本年四月に、鳥類に対する支援単価については、これまで一羽当たり二百円であったわけでございますが、捕獲経費の二分の一に相当する額または一羽当たり千円のいずれか低い額を上限として単価を設定できるようにしたところでございます。

河野(正)委員 私の地元であります福岡県では、カラスによる農作物被害、園芸農業への被害がたくさん出ておるというふうになっています。補助単価の見直しを要望しているところでありますけれども、今回の見直しでは、イノシシ、鹿、猿などのけものによる被害より大きいことが条件とされております。この条件をなぜ設定されたのか、教えていただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 先ほど申し上げましたように、全国的に見ますと、今先生の方からお話もございましたように、一般的には鹿あるいはイノシシの被害といったものがかなり甚大になっておりますものですから、やはりこれを緊急に捕獲しようということで、二分の一相当といったようなことで、そういった考え方のもとに措置したところでございます。

 その中で、鳥類についても被害が出ているということで、一羽当たり二百円だったということなわけでございますが、先ほど先生おっしゃったように、やはり地域によってはそれよりもカラスの被害の方が甚大だといったようなことを踏まえまして、ただいま申し上げました千円以内の上限単価をつくるようにできるようにしたところでございます。

河野(正)委員 次に行きます。

 事業実施に当たりまして、捕獲、回収した鳥獣の確認は補助対象になるということでしたけれども、補助金の申請、支払いなど、市町村の事務作業が非常に煩雑化しております。これに対する補助はあるのでしょうかということです。

 市町村の事務負担は無視できず、配慮する必要があると考えております。先日、林大臣の方から本会議で答弁をいただきましたけれども、そのお答えを踏まえて、いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 鳥獣被害防止緊急捕獲等対策におきまして、事業実施主体でございます市町村あるいは地域協議会が支払いに伴う捕獲現場での確認等に要した経費、日当とか旅費等でございますが、これについても補助対象としているところでございます。

 今先生おっしゃっていただきましたように、イノシシあるいは鹿を捕獲した場合に、捕獲現場での確認といったことが非常に重要でございますが、なかなか市町村の担当者が一々出ていって確認することができないといったような状況がございますので、そのような場合は、写真などを用いて捕獲の実施を確実に確認できる方法を地域の実情に応じて定めることができるようにしまして、できるだけ負担軽減を図っているところでございます。

河野(正)委員 次に、鳥獣被害防止総合交付金についてお尋ねいたします。

 予算の配分が、事業ポイントに応じてされていると思います。農林地面積が基準とされていないために、面積の広い市町村に不利になるという声がございます。政府として、これについて見解はいかがでしょうか。

佐藤政府参考人 まず、鳥獣被害防止総合対策交付金でございますが、やはりこれは、深刻化する野生鳥獣による農林水産業の被害の軽減を目的とするといったものでございます。

 これにつきましては、各都道府県からの要望を踏まえまして、まず、農作物の被害額あるいは被害の軽減率などの客観的な指標、そして事業計画の実施体制や実効性などの評価ポイントの二つの基準に基づきまして、各都道府県に配分しているところでございます。

 これまで、鳥獣被害対策のための予算につきましては、各都道府県、頼りないといったようなことで、非常に増額要望が高かったところでございまして、平成二十二年度まで実は二十億から三十億円程度の予算であったわけでございますが、平成二十四年度におきまして、当初予算が九十五億円であったわけですが、補正予算で百二十九億円を手当ていたしました。また、二十五年度におきましては、当初予算九十五億円でありますが、これに加えまして補正予算で三十億円を手当てしております。また、本年度についても、当初予算九十五億円を手当てするといったようなことをいたしまして、できるだけ予算の確保を図っているところでございます。

河野(正)委員 ありがとうございます。

 やはりしっかり農業を守っていくという意味でも、そういった対策は大切なことだと思います。

 農業を営んでいきますと、どうしても鳥獣被害と向き合っていかなければならないということになります。被害、捕獲という対策を続けるだけでは、被害と捕獲との繰り返しで、イタチごっこに陥りかねないと思っております。いわゆるすみ分けや防護を農業者自身が進めていくなど、人間の暮らしと鳥獣の活動とを調和する取り組みが必要と考えますが、農水省としての認識や施策についてお尋ねいたしたいと思います。

 また、農業者への啓発、知識の普及、あるいは広報活動、加えて伝承の取り組みなどは、どのようにされているのでしょうか。

小里大臣政務官 国民の理解、地域住民の理解を得ながらやっていくために、広報活動は大変大事な課題でございます。

 近年の野生鳥獣による被害の深刻化、広域化は大変重要な課題となっていると認識をしておるところでございます。これは、農山村に居住する地域住民の理解と協力のもとに、連携してこの対策が取り組まれることが大変重要な課題でございます。そのために、鳥獣被害防止計画に基づき行われる地域リーダーの育成、地域ぐるみでの捕獲等の活動に対して支援をしているところであります。

 こうした取り組みによりまして、例えば、自治会が設置したさる被害防止見回り隊による猿の追い払い、あるいは地域住民が協力した牛の放牧による緩衝帯の設置など、地域ぐるみの効果的な被害防止活動が行われているところであります。

 こうした優良な取り組みについて、毎年、表彰も行っているところでございまして、そういったところを通じて、優良な取り組みを全国に普及啓発を図っていくことがまた肝要であろうと思います。

 さらに、地域ぐるみの取り組みにつきましては、全国鳥獣被害対策サミット等で紹介するなどしておりまして、引き続き、地域住民また国民の理解を得るように努めてまいりたいと存じます。

河野(正)委員 私は、環境委員会の方でこの法案が提出されるということで、いろいろ調べていく中で、問題かなと思ったのが、狩猟業者、狩猟事業者に民間事業者が参入できる、営利目的の方たちが入ってくることができるということがありました。

 そういった意味で、民間事業者が入ってきまして、ふなれな狩猟者がやってくる、山の中に入ってくるということで、農業者の安全性というのが脅かされるようなことがあってはならないと思っておりますが、これについてどのような対策をとっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 今先生御指摘いただきましたように、衆議院の環境委員会の方におきまして、鳥獣保護法の改正法案が御議論されているやに聞いておりまして、その中で、鳥獣の捕獲等をする事業を実施する者を都道府県知事が認定する認定鳥獣捕獲等事業者制度の導入が盛り込まれていることにつきましては承知しているところでございます。

 同法案につきましては、事業者の認定に当たりまして、鳥獣の捕獲等につきまして、安全管理体制や、あるいは従事する者の技能及び知識が一定の基準に適合していること等を要件とし、適合しなくなった場合の取り消し規定も整備されているというふうに聞いておりますが、いずれにしましても、詳細を規定するのは、今後、環境省令で検討されていくというふうに聞いておるところでございます。

 また、鳥獣保護法改正後に環境大臣が定める基本方針におきまして、都道府県が実施する鳥獣保護管理事業の実施に関する基本的事項が定められると理解しておりまして、私ども農林省といたしましては、環境省との間で、基本方針の協議等を通じまして、先生が御懸念されるようなことがないように、しっかり対応していきたいと考えているところでございます。

河野(正)委員 もう一点、民間事業者の参入によりまして、農用地が踏み荒らされたり、田畑に被害が及ぶ可能性も否定できないのではないかなと思っております。

 今審議中ですので、まだ営利目的の事業者はいないというふうに思っておりますけれども、現時点で、狩猟者に農用地が荒らされるというような状況があるのかどうか、あるいはどれぐらいの被害があるのか、把握しておられたら教えていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 現実に、荒れるようなことがあるかという御質問につきましては、今のところ、私どもはそういうものについては承知していないところでございます。

 いずれにしましても、先ほど先生の御指摘がありましたように、今後、環境省の方と、基本方針あるいは省令の関係のところで、しっかりとこのことについては対応していきたいというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 さらに、この鳥獣保護法一部改正案が成立しますと、銃猟などで殺した鹿、イノシシなど、これは山間地にそのまま放置してくることができるようになっていくわけであります。

 一定の基準はありますけれども、放置できるということで、動物保護団体の方などによりますと、鹿などの死体をそのまま、百キロぐらいあるものですから、わざわざ持ってこない。しかも、民間、営利業者ですので、そのまま放置していってしまうということになれば、死体の放置により、それが餌になる。大量に餌が発生することになりますので、熊などがそこへ食べに来る、餌場にして食べに来るということで、熊が冬眠しなくなってしまうのではないか。そうすると、年じゅうそこに熊がやってくることによって、やはり山間部で農業をしている方が熊の被害に遭う、人身への被害に遭うということも懸念されております。

 こういった意味で、農用地、山林等の保全の観点から、こういった懸念はどのようにお考えになっているでしょうか。

小里大臣政務官 御指摘のとおりに、改正案におきまして、集中的かつ広域的に管理を図る必要性があるということから、捕獲した鳥獣をその場で放置することも可能とする等の規制緩和が盛り込まれているということは承知をしております。

 同法案では、当該事業における捕獲した個体の放置については、生態系に重大な影響を及ぼすおそれがないこと、事業の実施において特に必要があると認められる場合に限ると規定をされているところでございますが、詳細を規定する環境省令は今後検討されると聞いております。

 また、鳥獣保護法改正後に環境大臣が定める基本指針につきましては、農水省と協議してこれを定めるということがまた盛り込まれているところでございまして、こういった中で、議員が懸念されるような問題が生じないように、しっかり取り組んでまいりたいと存じます。

河野(正)委員 時間が来ましたので、最後に一つだけ。

 こういった意味で、環境省が所管している法律ではございますけれども、夜間の銃猟も許可になりますので、やはり農業に携わっている方が被害に遭わないように、環境省と連携を深めていかなければいけない問題だと思っております。林大臣、一言だけいただければと思います。

林国務大臣 大変専門的な観点からきょうは御質問いただいて、新たな知見をいただいたな、こういうふうに思っております。放置しておくと熊が来て、冬眠しなくなるといったような、なるほどなというふうに思いました。

 我々は、農業、里山がしっかりと守られていくように、環境省と連携しながらしっかりと対応してまいりたいと思っております。

河野(正)委員 どうもありがとうございました。以上で質問を終わります。

坂本委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 日本維新の会、村岡敏英でございます。

 今週は、初めて林大臣に質問させていただきます。

 きょうは資料をお渡ししたんですけれども、「あのころ 国会議事堂前も芋畑 戦後の食糧難」ということで、一九四六年、昭和二十一年六月十八日、終戦直後ですから、空き地という空き地は全部農地として活用しようということで、全国で農地をつくっていきました。御多分に漏れず、この国会議事堂の前でも、農地で、芋畑をつくっていた。さしずめ、そのころ林大臣が農林大臣なら、率先して芋畑を耕していなければいけなかった、こう思っております。

 しかし、この写真を見てどう感じるかが一番大切なんです。

 実は、日本は、たかが六十年か七十年前、食糧難だったわけです。それはほかのことにも言えます。

 例えば日本国憲法、これは平和で六十年か七十年か、皆さんの先輩の知恵と知識と世界的な外交で守られてきました。例えば、今の他国からの取り巻く状況というのも、やはり非常な危機があるのに、何も危機を感じなくてよかったんです。それで、今いろいろな状況の中、憲法改正、集団的自衛権の解釈の変更といろいろなことがあります。

 それと同じように、今、消費者と農業者と離れているのは、私は大臣、副大臣と同い年ですけれども、それよりもずっと前の人は食糧難をしっかり知っているんです。ですから、全国で農業が大事だということをはっきりとわかっているんです。

 ところが、高度成長期で育った人たちは、他国からどんどん輸入して入ってくる。食糧難に遭ったことがないんです。日本の歴史上、飢饉に遭ったことがないなんという歴史はないんです。たった六十年か七十年なんです。そこを、まずしっかりと国会議員が一緒になってその意識を持ち、そして、消費者、農業者は決して分かれてはいけないということを把握してほしい、こう思っております。

 特に、食料は国民の安全と命を守るものです。あの憲法の前文の、他国の信義と公正を信じて、食料が、セーフガードをやろう、その後に条件をつけて、必ず量は一定確保しようといっても、自国が本当に食糧難になったら、日本には食料は来ません。そのことをもって農業が大事だということを、ぜひ林農林大臣初め全国会議員で、国民にも消費者にもしっかり理解してもらうという認識を一緒にしていただきたい、こう思います。

 そこで、小泉政務官にわざわざ来ていただきました。二時から会議だと聞いていますので、一言お聞きいたします。

 TPPの交渉に、甘利大臣がアメリカに十六日から行かれるようですけれども、それを聞いても、国会決議を踏まえてしっかりと交渉してくる、こういうことだけでしょうから、そこは聞きません。

 自民党、そして安倍総理がTPP交渉に臨むときに、これは聖域なき関税撤廃ではないということを確認してTPP交渉に参加いたしました。それと、自民党は選挙で公約をつけました。この公約は、例えばTPPで聖域五品目の関税が落ちたときには、これは公約違反ですか、それとも公約内ですか。どう思うか、いつもの切れのいいところでお答えください。

小泉大臣政務官 村岡先生からいただいたお言葉をかりれば、私は食糧難を知らない時代を生きたわけですけれども、先ほどの国会前の芋畑の写真を見せていただいて、こういうのは初めて見たので、大変新鮮な思いがしました。

 今もう一度、食糧難とは関係なく、国会の敷地内に畑があってもいいんじゃないかなとも思いますけれども、まさにこのTPPの交渉は国民の財産を、食料も含めて守らなければいけない。そのために、アメリカと日本と関係各国が、どうやって参加国全てが、まさに畑を耕して、果樹を、また作物をそれぞれが享受できるかという大変厳しい交渉だと思います。

 決議のお話もありましたが、甘利大臣は、安倍総理の指示も受けて、どうやってこのTPPの高い目標を達成していくのか、そういった観点と、どうやったら党の決議、そしてこの委員会の決議も踏まえた、整合性を保った結果を導いていくことができるのか、そういったことに苦心をされて、先ほど国会の許可も得て、きょうは、あと一時間ちょっとしたら飛行機でアメリカに立ちます。

 決して来週の日米首脳会談が、一つの節目ではあるけれども、デッドラインではない。皆さんが納得いただける、そういった結果を出せるように、これからも努力をして、交渉に当たっていきたいと思っております。

村岡委員 やはり、きょうはすっきりできないと思います。

 それでは、政務官、会議があるということですから、よろしいです。

 同じ質問なんですけれども、林農林大臣、先ほどの写真はもう既に何回も見られているかとは思いますけれども、私は、前に、質問のときに林大臣に言いました、林大臣がテレビ番組や、もしかしたらドラマやワイドショーへ出て、国民に対してどんどん食料の大事さを説いてくれと。その根本はこういうことだと思うんですよ。

 たった六十年か七十年なんですよ、日本が食料が余っているといいますか、輸入も含めて。本当は、日本は、始まって以来、ほとんど危機の方が多いんです。だからこそ農業というのは大事だ、農業を制さない者はやはり政治全体のリーダーにはなれないというほどのものだと思うんです。これからもそうだと思うんです。その意識が政治家全体にないということに実は問題があります。

 やはり、国民にとって一番大事なところ、さきの戦争も、飢餓で亡くなった方や、国内でも栄養失調があったり、それがたった六十年か七十年前なんです。そのことを忘れているということが本当は一番の危機なんです。

 農業は、消費者にとっても、それから農業者にとっても、どちらにとっても大事だという意識をもう少し農林省で取り組んでいただきながら、また国会議員にも啓蒙していただきたいと思いますけれども、その点はどうでしょうか。

林国務大臣 私の父は八十六歳で、おかげさまでまだ元気でやっておりますが、戦争にもう少しで行きかかった、村岡先生のお父上も同じ世代だ、こういうふうに思っております。したがって、この世代の人たちは、まさにあの戦争を体験し、そして、戦後の苦しい、まさに食糧難と言われた時代を何とか乗り越えてこられた世代である、こういうふうに思っております。

 私はどこかでお話をしたことがあるかもしれませんが、幼稚園ぐらいのときに、そのころは若干好き嫌いもありまして、そのまま好き嫌いが続いていたらこんな体型になっていなかったかもしれませんが、好き嫌いがあって、いろいろなものを残したときに、母親が欠食児童という言葉を使っていて、意味がよくわからなかったんです。後々、その欠食児童というのは実は好き嫌いで食べないということではなくて、必要な食事がとれない、こういう言葉であるということがわかるわけですが、我々の世代はこういう時代のことを体験した世代から直接話を聞くことができる多分最後の世代である、こういうふうに思っておりますので、我々の世代の使命としては、しっかりとこの体験といいますか記憶を受け継いでいく。

 水や空気、食料というのは、あるときには本当に当たり前のように皆さん思っておりますが、なくなったときの苦しみというのは、洗面器に水を張って何分そこで我慢できるかというのをやってみればすぐわかることでありまして、それと同じような感覚をしっかりとこの食料についても持っておくということが非常に大事な意味であります。

 この写真自体、私も初めて拝見いたしましたけれども、こういう時代があったんだということをしっかりといろいろな意味を込めて語り継いでいくということは、委員がおっしゃるように大変大事なことだというふうに認識をしております。

村岡委員 ぜひ、大臣の今言った言葉どおりにいろいろな方にもお伝え願いたい、こう思っています。

 いずれ、地球の人口は爆発し始めているわけですから、準備をしておかなければ必ず食料不足は日本にもやってくる、その認識は持ちながら、それが十年先よりももっと先だから考えておかなくていいということじゃなくて、その意味でも、農地というのはある程度しっかりと守っていきながら成長させていかなければならない、こういうふうに思っております。

 小泉政務官は会議があるということで先に帰りましたけれども、TPPなんですけれども、林大臣も自民党のTPP対策委員会でいろいろ述べられていると思います。小泉政務官と同じ質問ですけれども、いつも、TPPの交渉で結果が出たときにもし国益にそぐわなければ脱退するか、交渉中なのでそれは言えないと。ですから、言い方はかえて聞きますけれども、先ほどの小泉政務官も答えませんでしたが、もしTPPで関税が五品目にかかわったときには、それは公約違反なんですか、それとも対策をするから公約内なんですか、どう思われますでしょうか。

林国務大臣 これは、ちょっと手元に正確な文書がございませんが、総理が、これは村岡先生の御質問にも入っておってそこでお答えしたとおり、国民に対する約束はたがえない、こういうふうにおっしゃっている。公約についてもそこで述べられておられたとおりであります。

 私は、この立場としては、衆参農林委員会の決議を踏まえてやる、こう常に言い続けております。きのうの委員会でも、言い方をころころかえますとそれがひとり歩きをする、そのことが不必要な混乱や不安といった印象を与えることは慎みたいというようなことをきのうは申し上げたんです。

 決議を踏まえて交渉するというのは、せっかくの御質問でございますので、この決議を念頭に置きながら、交渉相手国に対して、この決議があります、こういう内容でございますということを常に示し、そして、この交渉が妥結する場合には、日本は国会の承認が必要なんです、批准という手続があります、したがって、この決議というのが大変に大事であるということを相手にも言いながら、妥結する場合に国会の承認が得られるような合意内容にする。こういう意味を込めて、実は、決議を踏まえ交渉する、こういうふうに申し上げているところでございます。

村岡委員 言い方をかえて聞いてもなかなか答えられないということで同じ答えになってしまうんですけれども、江藤副大臣にお聞きします。

 パッションあふれる人で、最初に質問したときに、交渉参加に関して、もうやめようかと思ったということも言われました。

 例えば、この聖域五品目になったときに、これは同じ言葉を聞きます、同じ質問で答えるかもしれませんが、公約を守っているか守っていないか。私は、守っていないとかということを責めているわけじゃない。それは、自民党の中を気にしてもしようがないんですけれども、自民党の方々は全員、選挙区にいろいろなことで公約したんです。そういう仲間がいると思います。その人たちは、農業の方では専門分野の方ですから、もし聖域五品目の中に食い込まれたときにはどのような思いでしょうか。結果がまだ示されていないから、そのとき考えると言われるかもしませんが、答えていただければ。

江藤副大臣 日豪で、ここにいらっしゃる皆様方には、北海道の先生も含めて一定の評価をいただいておりますが、それでもやはり、畜産県の宮崎からはそれなりの激しい反発はあります。それに対して、私も、まだ地元に帰れずにいるんですけれども、説明責任は果たしていこうと思って、自分なりに資料を整理したりして頑張っております。

 私は、大臣がこの日豪の交渉をされている姿を見て、これがまさに国益をかけた大臣としての職責を果たす姿だなと感動すら覚えたということを申しました。ですから、今回の結果でも、それでは全く、いわゆる国会決議、委員会決議、それから自民党の公約、それに全くノータッチかと言われれば、触れている部分はあると思いますよ、正直なところ。

 しかし、TPPについてはまだまだ開きがはるかに大きくて、私は守秘義務もありますので内容については触れられませんけれども、この日豪以上のものであって、皆様方から激しい御批判を受けるような結論に至らないように、まず大臣をお支えするのが私の職務だと思っておりますので、大臣が申し上げた以上のことを踏み込んで言うことは副大臣ののりを越えることになりますから、私はパッションあふれているかもしれませんけれども、大臣の立場を追い込むようなことは私としては不本意なことでありますので、この場での発言は控えさせていただきたいと思います。

村岡委員 大変苦しいお立場なのに、お聞きしました。

 我々日本維新の会は、もともと、TPP交渉は参加して、しっかりと外交交渉して、そして農業の分野は、TPPにかかわらず、しっかりした対策をとっていこう、こういうことですから、その結果は、もちろん外交交渉は政府がやらなきゃいけないですから、政府の結果というのを踏まえてから、またいろいろな意見も我々にはありますけれども、でも、基本的に農業の対策は一緒に協力してまいります、その結果がどうなろうとも、それがルール的になろうとも。

 ただ、一番問題なのは、実は我々の党というより御党さんにあるというか、やはりみんな厳しいと思うんです、選挙で。私は選挙のとき、前に言いましたけれども、TPP、断固として鉢巻きを巻かないで農協に行きましたから、そのことは理解してもらっていますけれども、それ以外の人たちは大変なんです。それは、別に自民党のことを私が心配しなくてもいいんですけれども、そういう部分の中でいけば、やはり選挙の公約というのは、前にこの委員会で自民党の議員の方が民主党のことをさんざん責めました。ブーメランで返っちゃっているんです。

 だから、農業の分野において、そういう、うそをついたとか何だとかというのをやめて、この農業の分野はそういう政争の具にしないでやっていきたいということも前回申し上げました。農業の成長と環境保全ということは頑張りますので、そのことはぜひよろしくお願いしたい、こう思っております。

 さて、TPPがまだ妥結していないのに関税のことを聞くのもおかしな話ですけれども、資料をお渡しいたしております。TPP交渉参加十一カ国からの輸入に係る関税収入ということで、米が四億、小麦、大麦が三十二億、牛肉は八百四十五億となって、全体で千三百四十九億。その中で、直接対策に使われるのは牛肉の八百四十五億であります。それ以外は、関税は一般収入として一応入ると思います。

 そう考えたときに、各国と牛肉の交渉をして妥結した場合に、当然、牛肉の対策費は減るわけです。その想定もしながら、しっかりとした予算措置も考えながら、これから取り組んでいくのかどうか、お聞かせ願えればと思います。

江藤副大臣 まずは、きちっとした交渉をするということだと考えております。

 若干話はそれますが、日豪でも、御評価いただいているとはいえ、冷蔵、冷凍について関税を引き下げること、十八年後の先ですけれども、想定をしているわけでありますから、これは、国家の判断として関税率を引き下げて、収入が減るのでありますから、財務当局に対しては、胸を張ってその分は要求をしてまいる、必ずとってまいるという覚悟でございます。

村岡委員 やはり、成長産業にするためにもある程度の激変緩和というのはしなきゃいけないので、私は対策でしっかりとした措置も考えていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

 裏側には、輸入差益、調整金等、こっちの方も大変大きいわけです。今、江藤副大臣が言われたように、これは食い込まれるかどうかはわからない話ですけれども、先ほど言った、農業を成長させるためには、しっかりとした担い手の人が、将来、農業に対して期待が持てる、そして仕事としてやっていける、それと、国民の理解がしっかりあるという前提をつくっていかなきゃいけないので、こういう予算措置のところもしっかりと考えながら取り組んでいただきたい、こう思っております。

 そこで、関税の方は、これ以上聞いても、結果がどうなるかまだわかっていないので、次のところに行きます。

 きょうの午前中でも、経営安定対策の中でのシミュレーションというのをいろいろやっております。きょう渡した資料は、農林省からいただいた資料ですけれども、日本の一農業集落の平均的な耕地面積三十四ヘクタール、田んぼが十九ヘクタール、畑が十五ヘクタールと仮定の集落として試算しました、こうなっています。これは何戸ぐらいの農家でやったというのが出てこないんですけれども、きょう質問したら、集落というのは何戸ぐらいの農家のモデルケースなのか。それはどなたか答えられるでしょうか。答えられないとすれば、これがある程度意味のない数字になってしまうんです。

 それはなぜかというと、それぞれ生産調整して、ゲタ、ナラシを受けて、そして日本型直接支払いを受けて、一体幾らになるのかという試算の一つですけれども、今までの制度でいけば八百八十万、見直しになると一千万、約一一三%アップ、こういうふうにモデルケースでなっているんですけれども、裏側の現行と見直し後を見てください。

 その中を見ると、農地・水支払いのところがふえているような感じですけれども、これは当然経費がかかっちゃいますね。経費が半分ぐらいかかっていますから、こんなに、二百万はふえないわけです、当然、農地支払いのところは。そんなに変わらない。

 そうなると、農村所得倍増というのは、どれをもって農村所得倍増にしていくのかというところを、この平均的な集落のところでも、これはもちろん、六次産業化だとか加工品だとか、そういうのをやれということなんでしょうけれども、農村所得倍増というのは、このシミュレーションでは全く倍増になっていない。それから、これですと別に変わっていない、こう思うんですが、政務官。

小里大臣政務官 このシミュレーションは、委員も疑問に思われるように、私も十分なシミュレーションではないと思っております。

 例えば、飼料米の計算をどうやっていくかなんですが、このシミュレーションの場合は、専用品種で最大限つくった場合に、まず十万五千円、それから耕畜連携は一万三千円、含まれているようであります。

 ただ一方では、専用品種でつくったことに対する交付金一万二千円が入っておりません。あるいは、産地交付金を利用して県や市町村が設定する分があるんですね。そういったものが、県や市町村によっては五千円とか一万円とか設定をされております。あるいは、二毛作助成も、例えば、表で飼料米をつくって、裏でイタリアンをつくるとかいった場合は、一万五千円ついてくるわけであります。

 こういった交付金を駆使していきますと、私の地元で計算しました、シミュレーションを。飼料米をつくれば、主食用米を普通につくった場合に比べて、手取りは倍以上になる、そういう計算結果も出ております。

 これは、何も私の地元特有のことではありませんで、例えば、地域設定というのは、全国で二十二の道府県で見込まれております。そして六県で検討されております。その中身も鹿児島県より充実をしているというところがほとんどであります。

 二毛作助成は、使えるところ、使えないところ、あるんですけれども、そういった制度を、まずはしっかり理解して、地域に周知を図っていくということが大事だと思っております。努力をすれば、頑張れば、交付金を最大限使っていけば、相当所得が上がる仕組みになっているのが飼料米であるということは間違いのない事実であります。

 加えて、御指摘の規模拡大とか六次産業化をしっかり進めていくことで、水田作においても所得倍増をしっかり目指していきたいと思います。

 また、ちょっと長くなってしまいますが、農政全般で見た場合は、例えば土地改良を進めていくために、農家負担をなるべくゼロにしていく、そういった工夫がいろいろ施されておりますし、その要件も緩和をされているところであります。新規就農の青年給付金についても大きく要件の緩和を行ったところでありますし、また、先ほどから議論がありますように、鳥獣被害対策、これも所得をしっかり確保していくという意味では、大事な大きな柱であります。

 そういったことを中心として、自民党で定めた所得倍増十カ年戦略では、午前中でもありましたように、十五本の柱、十五本のビジョン、百項目の方向性、またそれに対応した具体的な施策、要件の緩和、そして予算措置というものを農水省において行っているところでございます。

 仮にそういったメニューを全部導入していくとなれば、かなりの所得がふえていくことになるのは間違いないわけでありまして、そういったメニューの中から、それぞれの地域に使えるものをフルに使っていただいて、地域ごとの所得倍増の道筋というものを描いていただきたいし、また、農水省としても、これをしっかり支援しながら、一緒に描いていく、そういったことでやっていきたいと思っているところであります。

村岡委員 政務官に答えていただきましたけれども、これは別に私が計算したわけじゃなくて、農林省が計算したのです。

 そうなると、政務官のところにはいい数字を持っていって、野党には悪い数字を持っていくということになるのです。よくシミュレーションを出してくれというと、自分でやるべきだというんですけれども、別にそれに責任を持たなくてもいい。

 これぐらいのメニューを使えるんだと、私が聞いても、これが農林省の出してきた計算ですから、例えば、それは九州だとかそっちの方はいい数字に上がるのか、東北ではなかなかそれが難しいのか、よくわかりません。それとも、与党だといい数字を上げるのかどうかわかりませんけれども、これはしっかりシミュレーションを、モデルケースを与えてください。そうすれば、農業者もちゃんと考えますよ。俺が使えなかったから農林省の責任だなんということはないと思います。

 大臣、こういうシミュレーションを、私が農林省につくってもらった数字なのに、小里政務官に聞くと違うというのでは、これはもう農業者が聞いたって違うことになってしまいますので、ぜひこういうシミュレーションを、正しいものを出してほしいと思います。

林国務大臣 今聞いておりまして、若干議論がかみ合わないところがあるなと思いましたのは、これは十年で所得倍増を目指していこう、今答弁させていただいたように、六次産業化なども含めてということで、今回お出ししているシミュレーションは、単価を決めさせていただきましたので、これをやったビフォー、アフターでどうなりますかと。

 ですから、ある意味では、ことし、来年、これを使って、この前提を置けばこうなるということでありますので、前提の置き方についていろいろ議論があることは先ほど議論があるとおりですが、倍というのはそもそもここでないということがまずあって、その上で、シミュレーションについては、午前中も議論をいたしましたように、単価を全部お示しして、前提もここに書いておりますので、まさにこれをどう組み合わせるのかということをやっていただければ数字は出るわけでございますので、どうしても、その前提の置き方について、これを出して以来いろいろな議論が起きておるようなことは、どういう置き方をしても起きる、こういうことであります。

 我々も、これをこういうふうにしましょうというよりは、この単価並びに政策体系を変えるときに、一体トータルとしてどういうふうになるのかということをわからずにそれぞれの単価を議論しているということではなくて、やはりトータルとしてこういうことになるということをわかりながら、では、ここをこうしたらどうなるか、ここをこうしたらどうなるかという議論をさせていただいて、まとめさせていただいた、こういう経緯も実はあるわけでございます。

 その後、では、これを大々的に、こうですよと先ほどのパンフレットで配っているような形でやるかといえば、それは、逆に言えば、このシミュレーションの趣旨からして、我々が一定のあるべき姿という意味でのモデルを示すということではないということにおいて、余りパンフレットをつくって配るという類いのものではないのではないかな、こういうふうに思っています。

 それは、午前中も御議論があったように、あくまで水田フル活用ビジョンをつくっていただく、五年間で、経営判断をして、いろいろな組み合わせをして、水田というような生産装置をフル活用することによってどうアウトプットを最大化するか、こういうことを考えていただくような環境を整備していこうということでございますので、そういう意味からしても、一定の目指すべき姿的なものということを出す、そもそものシミュレーションという性格ではなかったということを申し上げておきたいと思います。

村岡委員 もちろん十年後の所得倍増を、来年に所得倍増になるんだったら、こんな簡単なことはないので、それはそう思っておりませんけれども、でも、やはりある程度のシミュレーションはぜひ出していただきたい、こういうふうに思っております。

 この段階でも、それぞれが、小里政務官と大分違うということですから、それは後でまたお聞きしたい、こう思っております。

 先ほど林大臣は、パンフレットみたいにして、こうこうこういうシミュレーションではなかなか出せないと言いますけれども、これは自民党でないかもしれないですけれども、ほかの政党では、こういうふうになるとかというのは、選挙前になるとすごく出すんですね、それは違う党かもしれませんけれども。これは、選挙のときは丁寧になるけれども、ふだんのときはそれほど丁寧じゃないというんじゃなくて、もう少し、参考になる程度で、ぜひ我々もわかるように出していただきたい、こういうふうに思っております。それはよろしくお願いいたします。

 次に、この前、大臣とお話ししたときの、経営改善のためのチェックリストということで、いろいろなものを出しているということで、きょうも、表裏の資料で持ってきました。

 目標設定、計画立案、評価・改善とかというので、マルとかバツとか三角とか、そして裏側を見ますと、何人が従事しているとか、技術指標だとか、何キロつくるだとか、そういうので、結構しっかり、詳しくやっていると思います。そして、マニュアルを見ると、この指標にどうやって書いていくのかというマニュアルもまたしっかりしているんです。これは比較的、相当現場に聞いてつくり上げたものだな、こう思っています。

 ところが、農業者に言うと、これを余り知らないんですね。ここが問題で、せっかく農林省がいいものをつくっていると思うんです、経営感覚の第一歩となるものをしっかりつくっているはずなのに、地元に帰って農業者に聞くと、こういうのがあるんだけれども、見たことあるかというと、余りわからないんです。

 ということは、やはり、しっかりとした指導が下までおりていないということがありますので、そこはぜひ努力していただければ、今までその感覚がなかった人が、わかりやすい感じで、マニュアルを見て、指標による経営評価結果シートですか、そういうものとか、いろいろな、マル、バツしたりして、見ていくのに、最初の段階としては非常にいいと思うんです。ところが、それがうまくおりていないということなので、その辺は、大臣、この一歩が大事だと思いますので、ぜひ農業者に勧めるように農林省にも御指導していただきたいんですけれども、よろしいでしょうか。

林国務大臣 おっしゃるように、経営マインドを持っていただくというのは大変に大事でありまして、それはまさに、何かを勉強するということではなくて、マインドを持つことによって、有利販売、付加価値を高める、資材を低コストで調達する、こういうことにつながっていって、所得を上げていく、これにつながるんだということが非常に大事なところでありまして、そういう意味でこの経営指標をやっておるところでございます。

 まさにこれは、いいものであるという御評価もいただいたところでございますので、しっかりとこれを皆さんに使っていただくように、意義も含めてしっかりと説明をしてまいりたいというふうに思います。

村岡委員 大臣が言ったように、これはぜひ皆さんに使っていただくように、その三つだけ見ると、何だ、素人の、ただのチェックシートかなと思う人がいるかもしれないですけれども、農林省の宣伝をするのもおかしいんですが、農業経営指標による自己チェックガイドというので、これを詳しく見ると、やはり第一歩としては非常にいいものだと思うんです。これまで余りなかったものをしっかりつくって、農業者が最初の経営感覚を持つものに関しては、その後、これが十年間で所得を倍増するためには、まだまだいろいろなことをしなきゃいけないですけれども、これはぜひ生かしてほしいと思っていますので、その辺、大臣からの御指導もよろしくお願いいたします。

 次に移りますけれども、この前、テレビで、「クローズアップ現代」で、米の輸出というテーマでやっておりました。今までは、富裕層に対して日本の高品質なものを売ろうということで、それが、大体量は決まっている、やはりある程度価格が競争できるもので、大量に米を輸出の方に振り向けて、米という日本の文化、そして日本の高品質な米を世界に売ろうという番組がありました。その番組の中で、鉄粉をつけて直まきのものが浮いてこないようにしてとか、いろいろな技術があります。

 それはそれとして、そういうふうに、輸出に対して力を入れていくという取り組みが、なかなか米には、農林省の方針に出てこないような気がしているんです。何か輸出に対して、米こそが日本で一番大量生産でき、そして高品質なものですけれども、それで勝負するということの、輸出対策金はだめなことはわかっていますけれども、いろいろな意味でその取り組みはしているのかどうか、お聞かせ願えればと思います。

林国務大臣 これも宣伝が少し不足しているのかもしれませんけれども、FBI戦略ということで、グローバル食市場は、この十年足らずで倍になる、その倍の中でアジアは、インド、中国を含めて三倍になる、これをどうにかして取り込んでいこうということで、昨年の八月に、国別、品目別の輸出戦略というのを決めさせていただきました。

 米については、実は精米にとどまらず、包装米飯、日本酒、米菓も含めた米加工品を合わせて、現在の百三十億円、これは二十四年度ベースですので二十五年度はもう少しふえていると思いますが、これを二〇二〇年に六百億円まで持っていこう、こういうことをつくっております。

 内訳を見ますと、米そのものの輸出というのは、香港向け等が多いわけでございますが、大体六億から七億。米菓、米の加工品が約三十億、それから日本酒が九十億、現状そういうことでございますので、このことも、足元を踏まえながら、やはり、例えば日本酒の生産増に伴う酒米等は生産数量の目標から枠の外に出すというようなこともやっておりますが、米そのものについても、FBI、まさにメード・バイ・ジャパンの日本食の普及とあわせて、メード・イン・ジャパンの日本産米の輸出ということをやっていかなければいけない、こういうふうに思っておりまして、そういった意味での取り組みを応援していきたい、こういうふうに思っております。

 例えば、香港だったかどうかちょっと記憶が曖昧でございますが、炊飯器や精米機と一緒に出していくというような取り組みをして、したがって、そこでいろいろなことができるようにするとか、いろいろな応援の仕方があると思いますし、日本食がこれだけいろいろなところで、ユネスコの無形文化財の登録も含めて人気があるわけでございますので、そういったものも戦略的に連携しながら取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

村岡委員 大臣が言ったように、香港で、精米と炊飯とやって売り込んでいるという農機具メーカーも、この「クローズアップ現代」の中で出ておりました。やはり大切なんですね。

 前にも何回も言っていますけれども、一九四〇年代、五〇年代というのは、アメリカや日本、ドイツ、オランダも、みんな同じ輸出量だったのに、日本が減反政策をやって国内市場に特化してしまった。やはり世界市場を見て米を売り込んでいかなきゃいけない、そういう部分の大切さというのは、やはりこれから農業が成長していくためには、日本の人口はある程度少なくなっていく、しかしながら世界の人口はどんどんふえていく、その中で日本の食文化を売っていくという戦略を大切にしながら進めていっていただきたい。

 そこで、やはり米で疑問があるのが、一方で、生産調整は見直しということで、五年後に七千五百円がゼロになった後、ある程度の自主判断に任せる、しかしながら高価格を維持していくということですから、前は、なるべく米はそんなにつくらないで、ほかの飼料米とかそういうのをつくってほしいということで、主食用米の生産に関しては実はブレーキをかけているんですね。当然ブレーキがかかる。だけれども、輸出はふやしていこうと言っていて、アクセルは空ぶかしなんですよ。そこが、日本の強みである米を堂々と世界に売っていくために、ブレーキをかけながらアクセルは空ぶかしで、燃えてしまうかもしれない。そこの部分がしっかりと方向性の中で示されていかないと、米を本当に売っていこう、輸出していこうなんという農家がどんどん出るとは思えないんです。

 そこはどういうふうに考えられているのか。

林国務大臣 先ほどちょっと酒米のことを申し上げましたけれども、これは日本酒の人気復活に伴って酒米の需要がふえてくるという状況で枠から外すということですが、輸出用についてはそもそも生産調整の対象になっておりません。

 したがって、実は、輸出向けということであれば、今は生産数量目標を、まだ配分はやっていますが、この枠組みの中でおいてすら、どんどんアクセルを踏んでいただいて、輸出はできるということでございますので、そこはまさに、米の政策の制約というよりは、あとはそれぞれの国に検疫等のものがあったりとか、それから三・一一の後はいろいろな問題があったりとかということを、まずはGツーGできちっと取り払っていくということ。

 そして、その先に、先ほど言った相手先とビジネスの関係をきちっと持って、どうやって売っていくか、こういうことがあるわけでございますので、この輸出戦略の中でそこをしっかりと取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

村岡委員 その意味は、輸出用米は、もちろん輸出ということですから、関係ないことはわかっています。これはできないことはわかっているんですよ。輸出用米は七千五百円はもらえないわけです、基本。もちろん、もらえないわけです。

 その中で考えていくと、それは、もらえば輸出補助金になるから、だめなこともわかっています。そうすれば、アクセルを本当にふかせるというのは、前にもお話ししましたけれども、他国との関税でも障壁でもいろいろな交渉をしたり、それから施設として、きちんと輸出できるような施設を補助で出すとか、そういう具体的なことはやっていないから、アクセルは踏んでいない。

 国内の市場では、いろいろなところのインフラ整備でも何でもお金は出しているんだけれども、輸出を本当に進めようとするならば、アクセルを踏むとするならば、輸出しやすい施設とかそういう対象のものも含め、また外国との交渉ももう少し農林省が真剣にやっていただきたい、こういうことでありますので、真剣に、本当に売ろうという対策をとっていただきたい、こういうことでありますので、大臣から、もう一言。

林国務大臣 そういった意味でも、輸出戦略をつくって、まず需要先を絞り込んで、しっかりと対応する必要がある、こういうふうに思っておりまして、先ほどちょっとお話しいただいた香港とかシンガポール、台湾、豪州、EU、ロシア等、こういうところを重点国というふうにしまして、現地で精米した新鮮な米と一緒に炊飯ロボットを貸し出す、こういうようなビジネスモデルも推進しながら、まさにプレゼンスを高める取り組み、こういうのをやっていきたいと思います。

 個々の商売になりますと、どこそこの米を我々が担いで売りに行くということではないとは思っておりますけれども、まずは日本米のプレゼンスを高める、そのときに、日本食ということなどの連携ということが大事になると思っております。

 やはり、価格は少し高いけれどもおいしいね、私も、出張に行ったときに、積んであって、非常に人気があるという話も聞きましたけれども、これは数字がどの程度かということにもよるわけでございまして、おいしいから百倍でも千倍でも買う、こういうことではないわけでございますので、まさに委員が今おっしゃっていただいたようないろいろなことをやりながら、しっかりと輸出戦略に取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

村岡委員 そこが大事だと思います。もちろん、五千億を一兆にしようという目標にしても何にしても、やはり輸出に真剣なんだと。

 これまで日本は農業の輸出に余り取り組んでこなかったんです。これから取り組むとなれば、日本だって、戦後、経済界が世界に輸出しようとして乗り込んでいったときには、日本政府の投資が物すごくあったんです。そういう意味では、もう一回成長戦略できちんとしていくためには、農業の輸出の促進に関しては、もちろんプレゼンスも必要でしょうけれども、いろいろな意味で投資も必要になってくる、こう思っております。

 それと、この前、大臣がオランダへ行ったときの施設園芸のことをお聞きしました。

 きょうは、ちょっと質問通告じゃなく、質問にはならないかもしれませんが、私も、この前、土曜日、宮城県の山元町というところで、農林省が取り組んでいる最先端のトマト、イチゴの工場ですか、これを見たら、やはり日本もこういうふうにしていかなきゃいけないなということをはっきりと認識いたしました。

 これまでも、秋田でも、イチゴとかトマトで、プランターである程度の高さにして、腰をかがめて露地のイチゴをとるみたいな形じゃなくてというのは何回も見たことがありました。

 しかしながら、一括して、例えば資材置き場も事務所も、それから情報処理室もIT化されて、全部温度は管理し、そしてミストで、時間が来ると水が流れる、養分は下から流れる。その上、収穫というのは、ここが工場だとすれば、収穫する人たちは、大串先生から私ぐらいのところに二十人ぐらいが並んでいて、ジグソーパズルみたいに、そっち側まであるイチゴの箱がどんどん移動しながら、ここで摘んでいく。消毒の機関は、そちらの齋藤健先生のあたりで消毒をする人たちがいる。まさに工場でやっているという感じなんですね。ただ、ここには資金がかかるんです。

 オランダも、最初は相当国費もかけながら、日本は五千億しか輸出していないわけですけれども、オランダは十一兆輸出しているわけですね、農地は日本の三分の一かそのぐらいなのに。そういう意味では、そこには結構お金がかかる、そこの部分をどうしていくか。

 施設園芸をして成長産業にしようといったときに、あれだけの規模の野菜工場をつくる。イメージとすれば、植物園というイメージですか。中に入っていくと、普通のハウスですと、何棟も並んでいて、一つ一つ外に出て入らなきゃいけないわけですけれども、道路みたいに四メートル幅の道路があって、全部の棟に、トマトのところもイチゴのところも全部入っていける。そうなると、衛生管理もできるし、温度管理もしっかりできる、そして事務所で販売も、また、どこの市場でイチゴを求めているのか、トマトを求めているのか、こういうことがわかって、本当にこういう形が、やはりこれから日本が臨むべきだなと。

 今、農林省がお金をかけて実験して、働いている女性も、六十代以上の女性だったでしょうか、二十人、三十人、もう本当に生き生きとして働いているんです。そういう姿を将来の農村に見えてきたわけですけれども、そういう取り組みのときに、どういう対策で資金をかけながらやっていくという計画、あれはモデルでしょうけれども、どうなのか、大臣から教えていただければ。

林国務大臣 多分、委員がごらんになったのは、私も見せていただいたものと同じものかなと思いながら聞いておりましたが、たしか、GRAの岩佐さんという、林先生とも御友人だということで、この委員会でも取り上げていただいたことがあったと思います。私も、彼を前から知っていたものですから、非常にいろいろ率直に意見をお聞かせいただいたんです。

 おっしゃったように、最先端の実証実験で、かなり予算も使ってフルスペックのものをやっている。

 帰り際にお話しして、非常に印象的だったのは、商業化を考えますと、多分、全部これを自前で設備投資をしてやるということになるとなかなか難しいところもあると思うので、実はその隣に、もう少し省いたもので既に始めておられる。さすがは経営感覚のある方だな、こういうふうに思いました。

 実証実験というのは、まさにフルスペックでやってみて、その中でコストもどれぐらいかかるかわかっていきます。したがって、その中でどれとどれをやればかなり似たような効果ができる、こういうことも一緒になってやっていただいて、まさに今から実証実験の次の段階として、商用化に向けて普及を進めていくときには、そういう知見を生かしながら、そして、我々が持っているいろいろなメニューをフル活用してサポートしていくことによってやっていきたい。

 これは次世代施設園芸についても全く同じような考え方で、最初はモデル事業でやってみるということですが、その次の段階というのをしっかりと視野に入れてやっていきたい、こういうふうに思っております。

村岡委員 モデル事業でフルスペックでやっているということですけれども、私も、隣の施設、近くにあった施設も見てきました。もちろん、そこはそこまではなっていないんです。

 ただ、施設園芸というもので国際的に勝負していくとなれば、フルスペックといっても、あれはオランダよりはフルスペックじゃないんですね。だから、そういう意味では、そういうことも試みていきながら、将来の農業に対して明るさを見せていくという中では、あの実験場なんかをやはり農業者に見てもらいながら、特に若い担い手の人たちにそれをどんどん見ていただくことが大切だと思いました。

 時間が来たということで、その中で一つだけ疑問を持ったのが、みんな、ビニールハウスだからビニールをかけているということになっていますけれども、実は、そのとき、ガラスをやりたかったそうなんです。ガラスの方が、光のぐあいから、温度から、強靱性から、非常にいいそうなんです。ところが、何でできないかといったら、建築基準法だそうです。農地にガラスを入れてつくるのはだめだと。これは各県によって違うそうです。宮城ではだめだそうです。

 だから、そういう調整はぜひ農林省が、農家レストランというのも中でやっていましたけれども、いろいろな規制が邪魔して、六次産業化とかいろいろなものにも邪魔しているという部分があるので、そういう部分はぜひチェックしていただいて、お願いしたい、こういうふうに思っております。

 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀でございます。

 もう最近は自己紹介を飛ばして質問に入らせていただこうかというぐらいやらせていただいているんですが、きょうは何と四十分も時間をいただいておりますので、何とか最後までしっかりと聞かせていただきたいなと思っております。よろしくお願いします。

 質問に先立ちまして、たまたま今、村岡委員から、宮城県山元町の、私の高校のクラスメートでした岩佐という男が代表になってやっている、イチゴ、トマトの施設園芸の話題を取り上げていただきまして、本当にありがとうございます。

 最近、彼はインドの方なんかにも同じくイチゴを、今度は現地でも生産して日本の底力を見せようなんということにも取り組んでいまして、インドに進出しただけかなと思っていたら、今度はテレビ番組なんかにも進出しちゃったりとか、今非常にその技術が注目されているところでございます。

 もちろん、これは農林水産省の連携プロジェクトということで、本当に彼自身も感謝しながら、何か国に恩返しできるようにということで頑張っていますので、もし宮城県に皆さんがいらっしゃるような機会があれば、GRAの施設園芸もぜひごらんいただきたいなというふうに思っております。

 すごいなと思うのは、イチゴが一粒千円というコンセプトで、最初にぼんと出して売っている。要するに、そういった高付加価値、付加価値をつけて売っていこうということを最初からやっているということで、初めは私も、聞いたときに、うまくいくのかと率直に言いましたが、うまくいっているようで、本当に地元でも大変有名になっています。今、東京でも時々、そのイチゴはミガキイチゴというブランド名になっていますが、そういったもので売っていますので、見かけたら、ああ、あれだなと思っていただければありがたいなと思います。

 ということで、質問に入らせていただきたいと思いますが、きょうは、一問目は提出者の方にお伺いしたいと思います。というのも、きのう予告をさせていただきましたので、その質問から入らせていただきたいなというふうに思います。

 まず、ここまで民主党さんがずっとやってこられた戸別所得補償制度、いろいろとそのメリットについて御説明をいただいていたことに対し、私たちも、本当にそうなんですかと結構意地悪な質問をさせていただいたと思いますが、ここで問題意識として挙げさせていただいてきたとおり、結局、戸別所得補償制度というものが、要は、農地の集約とかあるいは大規模化というところに戸別所得補償そのものがどのぐらいインパクトを与えているんでしょうかということを今まで質問させていただいていたわけなんです。

 きのうも予告したとおり、結局のところ、一番肝になるのは、小さい規模の農家の皆さんが集約化にどれだけ協力してくれるインセンティブをつけられるかというところも実はすごく大事な要素だと思っていて、静かな構造改革ということを掲げられているように、戸別所得補償制度の中にはそういった要素ももちろんあることは私も認めていますが、しかし、そんなに強力ではないだろうというふうに思っているのが正直なところです。

 よって、そういった小規模の農家さんが、それだったら預けてやっていただいた方がいいなというふうに思うようなメリットあるいはインセンティブというのは組み込まれていないように私は思いますが、それについて、提出者の方から、どんな考えなのかお聞かせ願います。

玉木議員 連日、質問ありがとうございます。

 お答え申し上げます。

 手放すメリット、あるいは離農を促すというインセンティブという意味では、入っていません。

 ただ、何度も説明をしたように、集積を促していく、静かな構造改革を進めていくという意味では、妨げにはならないような制度にはなっているのかなというふうに思っております。全国統一単価ということで、規模が大きくなればなるほどメリットが受けられる、そういうことは事実であります。ただ、今、林先生の質問は、出す側に戸別所得補償が何かメリットとしてきくのかということであれば、直接それはないんだと思います。

 ただ、大事なことは、全く耕作放棄地になったものを出しても、これまた一から耕さなければいけません。

 戸別所得補償の岩盤の意味は、もちろん構造改革を妨げないということもあるんですけれども、やはり水田を水田として維持していただく、このことをまず政策目的にしております。

 我々のときに導入をいたしました人・農地プラン、こういったものに明確に位置づけられれば、農地の出し手に対しては農地集積協力金といったものを出して、一生懸命頑張って、高齢だけれども、戸別所得補償をもらいながら何年かやった、ただ、高齢で、さすがにもうこれ以上できなくなったときには、地域の担い手あるいは中心的経営体が誰か、何をどこでつくるのかということがきちんとしたプランでできれば、そうした大切に維持してきた農地を出す方については、別途、農地集積協力金等の制度を使いながら集積を促し、また、出し手に対しては、そういう意味でも、ある意味踏ん切りをつけていただく。

 そういった他の制度と組み合わせながら、構造改革も進めていく、面的集積も進めていく、こういう考えで、パッケージとして用意している次第でございます。

林(宙)委員 今御説明いただいたとおりだと思うんですね。

 私らは、むしろ、インセンティブをつけるのか何なのか、やり方はいろいろあると思うんですけれども、農地の集積をしていくということについては、もう少し大きくドライブをかけていった方がいいんじゃないのかなと思っている立場でもあるので、この戸別所得補償制度は、それはそれでいいとは思うんですけれども、何かそういう面の仕組みというのも同時に考えられるといいのかなと思っているところはあります。

 そのときに、去年の秋に成立しました農地中間管理機構というのは、それを後押しする一つの制度なのかなと私は思っています。諸般の事情で、私は反対する立場になってしまいましたけれども、形としては、成立したものでいいんじゃないのかな。やっていただくしかないんですよね、もう。道具がそこにあるんだったら、それは有効に使いましょうよということでうまく使っていくのもまた政治の力というか責任だと思いますので、ぜひやっていただきたいなというふうに思っております。

 それで、もう一つ提出者にお伺いします。

 本会議の質疑でも同じようなことを聞きましたが、もうちょっと違う形でお聞きします。

 あのときは、例えば戸別所得補償をやるにしても、少し交付する対象を限った方がいいんじゃないのかと、一応、例として規模要件といったものを挙げました。

 今回は、その規模要件というところにも似てはいるかもしれないんですけれども、農家の皆さんの農業所得等々を見ていると、さすがに農業だけでは生活が厳しいだろうなというような所得水準になっている方もやはりおられる。これは事実だと思うんです。そういった方々に、農業所得を兼業などで補ってやっていくというよりも、むしろ、もうそういう農地は何らかの、そこが例えば一つのインセンティブ、地代なのかもしれませんし、ほかのシステムなのかもしれませんが、そういった形で、では、農業はもう担い手に集積しましょう、プロにやってもらいましょうというような流れをつくることで解決するという道も一つあるんじゃないかと思っています。

 つまりは、この間、規模ということでお伺いしましたが、例えば農業を主業にしている農家さん、あるいはプロと言ってもいいのかもしれませんが、そういった要件で絞っていくことも一つなんじゃないかと思うんですが、それについてはどのようにお考えになっていますか。

玉木議員 お答え申し上げます。

 ちょっと時間をいただいて、戸別所得補償は、固定払いと変動払いと二つから成り立っているわけですね。わかりやすく言うと、固定払いの方は基礎年金だと考えてください。上乗せの変動部分は報酬比例の部分だというイメージを持ってください。必ずしもそうじゃないんですが、そういうことで考えると、もちろん一定の規模なり一定のカテゴリーの人に絞っていくということは一つの考え方だとは私も思います。

 ただ、例えば政府・与党案であれば、日本型直接支払い、あるいは中山間の直払い、これは、では、販売農家に限定するかというと、そういう案になっていませんね。それは、農地を農地として維持するというそのことに着目をし、農地が農地として維持されるから、そこに多面的機能があり、それを下支えする。これは、面積のいかんにかかわらず発揮される機能でありまして、それはそれとしてしっかりと支えていこうという発想で、これは同じだと思います。

 我々は、戸別所得補償の岩盤部分、固定払いは、そういった面も踏まえて、政策的な目的として入れています。もちろん、構造改革を阻害してはいかぬし、一部促していきたいとも思いますけれども、やはり面積のいかんにかかわらず多面的機能を発揮する、そこで営農を継続していただいていることによって、そのことから生じる機能があれば、そこは面積のいかんにかかわらず支援していこうという発想であります。その上で、農地が小さくても大きくても維持されて、それをさらに大きくしていくには別の制度があるし、また、戸別所得補償そのものの中にも、それを阻害しないような工夫は、全国一律単価ということで、なされてあるということであります。

 上の、報酬比例部分の年金について言えば、つまり変動部分について言えば、我々もこれは制度を見直しました。午前中、篠原委員からも少し批判めいたこともありましたけれども、私もこれはずっと申し上げていたんですが、ナラシの制度と極めて似ております。つまり、保険的な制度であるので、これは、一定程度の農家の拠出金を求める形にして、ナラシと統合する形で、収入保険的な制度として改めていこう。そうすれば、みずから拠出をしてまでこの制度に入り、ある種の米価下落のリスクに備えようとするのはプロの農家です。ですから、ここの部分に関しては自動的にプロの農家に集約されていくということになると思うのです。

 強制的に切らなくても、自己負担をしてもなおこの制度に加入する者に限定されていくということで、固定払いについては広くやりますけれども、変動部分も含めて考えれば、プロ農家、あるいは本当に自分でリスクをコントロールしようという農家に収れんされていく、そういうふうに考えております。

林(宙)委員 お考えは物すごくよくわかりました。

 そういった形で、私たちは、むしろ主業農家と言われる人たちにできるだけ集めていくような、もっと強い力をかけていきましょうという立場でおりますけれども、今の御説明で、もしそれが、少し速度としてはゆっくりになるかもしれませんが、でも、求めているところは同じなんだということであれば、私は、それはそれで一つの立場だと思いますので、それで結構かなと思います。

 ここで、一度政府の方に御質問をさせていただこうかなと思います。済みません。何か突然言った感じですが、ここから政府にお伺いをします。

 今回の閣法二法案は重要な法案だということで、これだけ審議の時間をとっていただいているわけです。私もそのように思います。思いますが、その中身を見て私も地元なんかで説明をするわけですね、こういうふうに、こうなって、こうなる法案ですよという話をするんですけれども、やはり数多くいただく意見なんですが、結局、今までやってきていることを法律にするということでしょう、それだけなんでしょうという言い方をされることがよくあります。

 確かに、細かく見れば、そういうことになっていくんだろうなと思うんです。私は私なりに、これが重要だと思っている根拠があるわけなんですが、政府は、これが単なるこれまでやってきた制度を法制化するというだけの話ではないんだ、本当に重要だというのはこういうところにあるんですよという、その根拠というか理由を、ぜひ政府の見解としてお答えいただきたいと思います。

林国務大臣 農業、農村の発展のために、意欲と能力のある農業者が需要の動向を敏感に把握して高付加価値化等を進める、経営発展をさせる、これは、農業を成長産業化するという意味で、産業政策ということであります。もう一つは、地域政策として、まさに多面的機能、これは共同活動等を通じて発揮されていくわけでございますが、やはりこれをきちっと区分して、それぞれの目的に応じた政策体系を整えた上で、これを車の両輪として進める、まず、この頭の整理をしなければいけない、こういうふうに思っております。

 今少しやりとりをしていただいたように、戸別所得補償制度の方は、ここは分けないということでありまして、全ての販売農家に一律に交付金を交付しております。我々から見れば、構造改革にそぐわないという政策的な課題があった、こういうことでございますので、産業政策としての経営所得安定対策ということ、これによって意欲と能力のある担い手を確立していこうということと、それから、多面的機能の発揮を促進する。

 これは一方で、きのうだったと思いますが、それにとどまらずに、担い手の負担を軽減する。皆さんで一緒にやっていく共同作業については、戸別所得補償で今までどおりやると、やめた瞬間に行かなくなりますが、ここは我々は切り分けておりますので、多面的機能支払いは、耕作をしなくなった方でも、共同作業を引き続きやっていただければ支払われる。こういうことで、結果として、担い手に集積をした場合の担い手の負担、大きくなったところをやられる場合には、みんながしなくなれば、全部自分でやらなきゃいけなくなるというこの負担を、今までやってきた方々と一緒になってやっていく。みんなで担い手を応援するという意味では、構造改革を後押しするという性格も同時に持っている、こういうことであります。

 したがって、今回の農政改革は、理念、体系にかかわる問題と言っていい、こういうふうに思います。そういった意味から、農水委員会の歴史としては余り例のないことだと思いますけれども、政府案と野党提出法案というものが出されているところでございまして、今回の二法案は重要な位置づけにある、こういうふうに考えておるところでございます。

林(宙)委員 私も、今の御答弁を参考にしながら、また地元の説明に使わせていただきたいなと思います。

 私自身は、そういった制度、枠組み、そういうものももちろんそうなのかもしれないんですけれども、今回この法案審議を通じて、物すごくいいなと思っていることが一つあって、それこそが今回の法案の意味なんじゃないかなと思っています。

 それは、私も一年数カ月、農林水産委員会でやらせていただいておりますけれども、これほどまでに、農地を農地としてどうやって将来にわたって担保していくんだという議論が真っ正面から行われている、これは物すごく大事なことなんじゃないかなと思うんです。

 私のいる仙台も、都市部と郊外というのが非常に入りまじったようなところであるんですが、やはり都市部の方とか、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、特に私たちの世代なんというのは、都市部にいると、要は、食料をつくっているということが、間近で体験というか経験というか、感じられない瞬間というのがやはり多いわけですね。一方で、私たちのような世代は、それこそ食料に困ったことがないわけなんですよ、生まれてきてからこの方。そうなると、農地で食料を生産する、それを国内でやることにどれぐらいの意義があるんだということを、やはりそろそろもう一回、国民の皆さん全体に向けてしっかりと発信をしていくべきときなんじゃないかなと思っています。これは、与党も野党も関係ないことだと思う。

 法案が、今回、閣法と衆法と二つ出ていますけれども、やはりそこの根本になっている考え方は一緒なんだなと思うんです。そのやり方が違う。だからこそ、そういう思想を具現化するのにどっちがいいんだということで、私は非常に重要な法案審議だと思っています。そういったことで、あと何回この質疑があるかわかりませんが、しっかりと残りも論じさせていただきたいと思っているところです。

 今大臣のお話の中に、構造改革を後押しする、共同作業を支援していくということで出てきましたので、ちょっと順番が前後するんですけれども、そういう意味でいくと、今度、農地維持支払い並びに資源向上支払いということでやっていくわけなんですが、基本的に、これは現行の農地・水保全管理支払いというものでやってきたことをちょっと組みかえてこうしましたよということだと思うんです。

 カバーしている範囲というのはほとんど変わらないというか、ほぼ同じなんじゃないかなと私は認識しているんですが、今回、こういうふうに組みかえたというのは、何か明確な違いを出せているのか、その理由というか根拠をお伺いしたいんです。今までの農地・水管理支払いが不十分だったのでこうしたとか、これで賄えなかったところをこれでやっているんですということがあるのであれば、ぜひ御説明をいただきたいなと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘のように、今回の多面的機能支払いは、これまでの農地・水保全管理支払交付金をベースとしまして、それを組みかえた部分と、新たに創出をした部分がございます。

 新たに創出をした部分は、農地維持支払交付金の部分でございまして、これは、一つは、これまでの農地・水保全管理支払いが、農業者と農業者以外の地域住民とで構成される活動組織の取り組みに対して支払いを行う、そういう仕組みでございました。ここを、地域によりましては、農家以外の地域住民も含めるということが取り組みにくい面があるところがあることを捉えまして、農業者のみによる活動組織ということでも対象となるというふうにしたというところが一つございます。

 それから、その活動の内容につきましても、農地のり面の草刈りですとか水路の泥上げですとか、そういった農業生産活動に伴って必要となる基礎的な活動でも対象とするという形にいたしまして、これも取り組みのしやすいような形にするという考え方で、新たに農地維持支払交付金として創設をするというものでございます。

 資源向上支払いの方は、基本的にこれまでの農地・水保全管理支払いで行われていた取り組みをベースに組みかえを行った、そういう形で仕組みを設けるということとしたものでございます。

林(宙)委員 そうすると、違いというのは、農地維持支払いの場合は、簡単に言ってしまえば、農家の方々だけのグループでもやれますよ、資源向上払いの方は、農家以外、非農家の方も含めての組織に対してですよということになると思うんですが、反対に考えると、資源向上支払いの方も、別に農家の方々だけの組織でも、人数がそれなりにそろっていればいいんじゃないですかと私は思うんです。

 それは、なぜそこは区別されているんでしょうか。何か理由があるなら教えてください。

三浦政府参考人 考え方といたしまして、これまでの農地・水保全管理支払いが農家以外の方も対象としていたというのは、こういった農地の維持に伴って必要な水路ですとか農道の管理といった活動について、農家以外の方々にも参画していただくことによって、農地の維持の重要性、先ほど先生の御指摘のあったように、将来にわたって農地という農業生産の重要な資源といいますか基盤といいますか、そういったものを維持、存続していくんだというようなことの御理解をいただいて、地域全体でそういったものを支えていくというところが施策の性格として強くあったものでございます。

 基本的に、我々も、そういう形で取り組まれるのであれば、それが望ましいと考えているわけでございますけれども、繰り返しになりますが、畑作地帯、園芸地帯を中心とする一部の地域においては、水田地帯と違って、地域の住民も含めてみんなで取り組むというような形になかなか取り組みにくいというようなところがございますので、そこを、取り組みやすい、言葉はちょっと適切でないかもしれませんが、オプションといいますか、そういうバリエーションも設けて取り組みやすい形にして、もっと裾野を広げていくような、そういう発想に立って今回の制度を考えたということでございます。

林(宙)委員 趣旨は大変わかりやすいんですけれども、政府というか行政の方が、もちろん、共同作業については、農家だけではなくて非農家、その地域の皆さんもやはり一緒になってやっていきましょうよ、そういう思想は私は非常に大事だと思います。ただし、これを別に行政側で、ある意味強制的にやってもらうような仕組みにしなくてもいいんじゃないのかなと私は思っているんですね。

 それで、後押しをするという言い方をすれば、それで非常に合理的ではあるんですけれども、そうはいっても、地域の共同作業というのは、その地域の人たちが、やはりこれが大事なんだ、だからみんなでやろうよというところが先に来ないといけないんじゃないかなと私は思うんです。

 今は大丈夫だと思いますよ。だけれども、そのうち、余りやりたくないけれども、お金をある程度援助というか補填されるからやりましょうかという思想になると、それはそれでまた話が違ってくるんじゃないかな。

 私が申し上げたいのは、必ず非農家の方が入らなきゃいけないということじゃなくて、資源向上支払いの方も、別に農家の方、そこの構成は何でもいいんですけれども、地域の皆さん、どういう方でもいいから、とりあえず入ってやっていれば、それでいいですよという要件にした方がいいんじゃないのかなというふうに思っているわけでございます。その辺は、ぜひ今後も検討していただきたいと思っているんです。

 一方で、これは提出者の方にお伺いしますけれども、今回の衆法の方では、むしろそこは今までと同じ枠組み、要は、非農家の方も入れた共同組織でということでお出しになっているわけで、ここは政府の閣法とは違うわけですよね。

 これについては、この形でいいということでお出しになっていると思うんですけれども、どういった根拠でそうされているのか、教えてください。

玉木議員 農地・水はいい制度でありまして、今おっしゃったような地域の共同活動を支えていくという制度ではすばらしい制度だと思うので、我々は、予算措置でやっていたものをそのまま法律化したわけであります。

 今局長から話がありましたけれども、今回新しい制度を閣法の中では創設した。その一番大きな理由は、農家のためだけにも出せるようにするということが、多分大きな制度の創設趣旨ですよね。

 我々は、農家にだけ出すのだったら、戸別所得補償で出して、水田を水田として維持する制度をやればシンプルなので、共同作業を前提に法律のうったてとしてつくっているものから、無理やり農家だけのカテゴリーを剥がしてきて、その中に農家のためのものをつくりますという無理をしなくてもいいかなと思って、そのまま法案化をしたわけであります。

 つまり、経営局の仕事に振興局の予算とか制度を無理やり引っ張ってこなくても、経営局の仕事は経営局でやればいいし、今まで振興局が振興局の目的でつくった制度はそのまま後押しをすればいいという、極めてシンプルな理由でこうした法律の構成にしております。

林(宙)委員 それはそれで非常に合理的な御説明だったなと思いますが、私は、どちらかというと、そこをそんなに条件を厳しくというか、分けなくてもいいんじゃないのかなという思想なので、先ほど来申し上げているようなことを主張しているということになります。

 やってくれるんだったら、それが、たとえ集まったのが農家の方々ばかりだったよというときでも、それでやれるんだったら、やればいいじゃないかというような感覚です。なので、そこも、ぜひ衆法の方でも、もし御考慮いただけるようであれば、考えていただきたいなというふうに思っているところです。いろいろあったとは思うんですけれども、ぜひお願いします。

 次の質問をさせていただきます。

 これまた政府、閣法の方についてお伺いします。

 民主党さんの政権のときにやられた戸別所得補償制度というのは、つまりは、米を生産するに当たって恒常的なコスト割れ、これをカバーするという大前提というか、大きな根拠があってやっていたわけですね。

 今回、戸別所得補償制度を閣法の方では想定していない、やめていくということになっていると思うんですが、そうなると、一つ物すごく大きな疑問が湧いてきて、基本的に、恒常的にコスト割れしているという現実はあるんですよね。では、これをなくしたら、その部分についてはどういうふうにカバーしていくんですか。もしくは、コスト割れしているものについては、それはカバーしない。例えば、兼業して、ほかの仕事をやることでその分は補填してくださいとか、そういう思想になっていくのかどうかということをお伺いしたいと思います。

林国務大臣 工業製品や各種農産物を含めて、一般的に、経済環境等によってコスト割れということは当然あり得るわけでございますが、政策論として、そういう場合に、では、税金を皆様からお預かりして、政策として補填するという場合には、やはり合理的な理由が必要である、こういうふうに考えております。十分な国境措置がない、そして諸外国との生産条件の格差に起因してコスト割れが発生している、こういったようなことが挙げられるわけでございます。

 米について申し上げれば、十分な国境措置があるわけでございまして、いわゆる生産条件格差から生ずる不利がない。したがって、この間、後藤先生は余りゲタと言うなと言っていましたけれども、とりあえずゲタを履かせる必要がないということですね。また、潜在的生産力が需要を上回っているということでございます。長い間、いろいろなことでそれに対応してきた、こういうことでございますので、政策としてコスト割れを補填する合理的な理由がなかなか見出せないのではないか、こういうことでございます。

 米についてのコスト割れは、経営規模の小さい階層ほど大きいわけでありますが、こうした階層は、経営規模の小さいところは兼業農家である場合がほとんどでございますので、コスト割れ補填を行わないことによって兼業農家が増加する、こういうことではないというふうに考えております。

林(宙)委員 それが、結局のところ、多分、コスト割れをしない経営をできるところに農地が集約されていくとか、そういう方につながっていくのかな、ポジティブに捉えるとそうなのかなというふうに私も思っています。

 ただし、一方で、先ほどちょっと申し上げましたけれども、農業所得というところを純粋に見ると、それは平均値なのかもしれませんが、それだけではやはり生計が成り立つほどの所得になっていないんじゃないかというレベルだったりするわけですよ。農業所得だけで見たら、八十万円から百万円とか、何かそういうレベルで所得を得ている農家の方がほとんどだということで、これは農林水産省のデータを見てもそうなっているわけですよね。

 いろいろな要素があって、それでもやっていけるんだよというのかもしれないんですけれども、ただ一方で、それではやっていけないからこそ、やはり兼業の方も多いんでしょうし、今までこういう形で来たんじゃないのかなというふうに私は思っている次第です。

 そうすると、そこのコスト割れのところをカバーしないならカバーしないでいいと私は思いますよ。だけれども、では、そのコスト割れしている農家というのを、所得を上げていく努力とか、コストが割れてしまってもうどうしようもないというんだったらそれは担い手に任せるとか、やはりそれをもっともっと力強くやっていかないと、本当の意味では構造改革にならないんじゃないでしょうか。

 戸別所得補償の場合は、そこに焦点を当てて、もちろん、国民の皆さんに納得をいただかなきゃいけないんでしょうけれども、それは税金で直接支払いという形でカバーしていこうということなので、どちらかというと、思想という意味では、私はそちらの方が合理性があるように今は感じています。

 なので、こういったところもぜひよくしっかりと私たちに説明していただけるような枠組みで考えていただきたいなと思っています。

 時間の方も差し迫ってまいりましたので、あと一つか二つの質問になるかと思いますが、これまた、今度は衆法提出者の方に質問させていただきます。

 もともと、民主党さんが政権をとられる前だと思います、平成十八年に農政改革基本法案というものを出しているんです。これは、押しなべて言うと、欧米型直接支払いを想定していて、それを実施する際に、明確に、米の生産調整を廃止すると書いているんです。

 ところが、その翌年、平成十九年に、農業者戸別所得補償法案という形で、今議論されている戸別所得補償法案のベースになるものが出てきたと思うんですが、このときには、このわずか一年のタイムスパンで、生産調整の廃止という文言が消えています。

 これは、この間にどんな理由で変更となったのか、そこを教えてください。

玉木議員 お答え申し上げます。

 当時、私はまだ議員ではありませんでしたので、実体験としてこのときの経緯を見聞きしているわけではありません。

 文献等々をひっくり返してみても、余り明確に書いていないんですが、ただ、十八年、十九年といいますと、より政権交代に近づいてきたということだと思っておりまして、その意味では、やはり理念上、理論上を考えれば、生産調整を廃止して、米価が下がって、それで構造改革が進むので、いいねという、教科書に書いてある感じでいうとそうなるので、多分、オリジナルの案は、そういう理念的、教科書的な案をつくったんでしょう。

 ただ、それが、現実に政権をとって、それを農政に適用していこうとなると、やはり過去との継続性を一定程度考えなきゃいけないということと、もう一つ、やはり多額の財政支出を伴うという、財政制約の現実といったようなことを考えたときに、何度も申し上げていますけれども、静かな構造改革、つまり生産コストの低下と米価の下落の一定の調和を図りながら目指すべきところに近づけていくといったことが現実的ではないかという中で、生産調整を全く条件としないということをオリジナルの案では掲げておりましたけれども、それを少し現実的に、合うように、一定の修正を加えたというふうに理解をしております。

林(宙)委員 まだこの国会にいらっしゃらなかったときのことを、でも、まるで見ていたかのように答弁をいただいたなと思いますが、本当にその意味でもありがとうございます。

 また予告するわけじゃないんですけれども、そうすると、生産調整を廃止すると言っていたものを撤回してやめたという際には、今、玉木さんがおっしゃったように、やはりそういう判断をするときには、多分、何らかの計算をしているんじゃないかなと私は思うんです。例えば、このぐらい追加の税金、財政出動が必要だとか、ないかもしれませんが、もし、そういう何か根拠になるような数字、計算したもの等々があったら、ぜひこれは私たちも共有したいなと思っています。

 なぜなら、私たちも、欧米型直接支払いをやることで、生産調整というのは事実上なくてもいいでしょうということを言い続けているわけですので、ここで、このときに民主党さんがこれをやめたというところの根拠は非常に私たちにとっても重いものになるんじゃないかなと思っているんです。できるだけ多く、その根拠があれば、次回質問させていただいたときに教えていただきたいなというふうに思います。

 ということで、あと時間が少ないので、最後に一問だけ聞かせていただきます。

 この間、地方公聴会で新潟にお伺いしたときに、私はあえて聞きました。四年前に民主党政権になったときに、戸別所得補償制度を始めなかったとしたら、日本の農業というのはどういう状況になっていたんでしょうね、どう思われますかと四人の参考人の皆さんにお伺いしました。

 それぞれ御意見は違ったようですけれども、大体、押しなべて言うと、それはやはり大変苦しい状況だったとは思うけれども、工夫とかそういったもので乗り切れる人はしっかりとやれたかもしれない、なぜなら、そういうものがなかったから、ないんだからやるしかない、そういうことなんですよね。

 それはそのとおりだなと。ただ、一度こういったものをつくってしまった以上、では、今度、仮に閣法が成立したとして、これをやめていくとなったときに、やはり当然そこに対する懸念というのは非常に意見として多く出たわけです。

 ということで、最後にお伺いしたいのは、同じことなんですけれども、民主党さんがこの戸別所得補償制度というのをやらなかったら、今農業というのはどうなっていたというふうに判断されるか、お答え願えますでしょうか。

玉木議員 お答え申し上げます。

 なかなか答えにくい質問だとは思いますけれども、私は、実は、所得補償がなくても、日本の農業が壊滅するようなことはないと思います。

 というのは、我々も自民党農政でやってきたことを多く引き継ぎながら農業をやってきたことがある。それは、やはり政権がかわっても農政をそんなに変えてはいけないという思いでありましたし、我々の導入した戸別所得補償制度は、選択的減反制度といった面もありますけれども、これはある種、石破農政で提案されたものを多く取り入れた実績もあります。

 ですから、この所得補償がなかったから壊滅的になるかというと、そうではないと思います。ただ、戸別所得補償があったことによって、いわゆる岩盤ということで、営農継続可能な所得が一定程度補償されたことによって、やはり安心して農業を継続する、あるいは、場合によっては耕作放棄になっていたかもしれないところが営農が継続された面は私は多かったと思います。

 特に、初めて導入した二十二年産米は米価が下がりました。これは、所得補償を入れたことによって下がったというような批判もいただきましたけれども、実は、米価が下がった年に農家の所得は上がっています。つまり、価格の下落に対して極めて強い制度であることが証明された面はあると思っています。

 ですから、これからもいろいろと、米価がどうなるか、あるいは関税がどうなるかといったことについては不透明なところがありますけれども、価格が変化してもコストというのは余り変わりませんから、営農継続ができる岩盤的な制度が入ったことは、農家に一定程度、あるいは大きな安心を与えたことは私はあったというふうに自信を持って感じております。

林(宙)委員 そうしますと、最終的には、安心というものをとったらいいのか、それとも、環境的には厳しいけれども、その中で頑張っていただくという方向に行くのかというような感じがしてきましたが、また次の質問の機会でいろいろとお伺いをしたいなというふうに思います。

 本日は、これで終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 先般の参考人質疑のときに、東京農大の谷口教授が、この新たな助成金体系について、必ずしも魅力的だとは言えないとおっしゃっておられました。その趣旨は、ハードルが高いということのようですけれども、要は、面積払いから数量払いの方向は正しい、当然だと思います、インセンティブが湧くような形で。ただ、実際に、飼料米でも実質的な単価切り下げなんだと言っていましたが、それはそれとして、単価は別として、今回の委員会の議論でもありましたけれども、頑張ってつくればつくるほど平均が上がってしまって、十万五千円もらえるのはなかなか厳しくなるんじゃないかという議論があって、私もそこはちょっと危惧するところであります。

 それから、それ以外の加算の規定は確かにあります。例えば、耕畜連携は一万三千円加算だ。これも、何か実績は二〇一二年産で二五・四%にすぎないんだとおっしゃっておられました。

 先ほど、二毛作の助成も、鈴木議員がおっしゃっておられましたが、二毛作できるところにしか加算がなくて、私も岩手ですが、岩手なんて二毛作は考えられませんので、結局、加算は空文化しているわけです。

 あと、一万二千円の多収性専用品種の取り組みというのも、これは簡単ではないと言っていて、結局、いろいろメニューはできたんですけれども、現実には十三万円が最大だとか何か言っていましたが、そういう経営はほとんどないのではないかとおっしゃっておられました。

 ですので、実際にハードルは高いんじゃないかというふうな意見があったんですが、そこに対する認識をお伺いします。

林国務大臣 まず、この間も少し議論になったんですが、八万円プラスマイナス二・五万円で、この平均をどこに置くか、こういう議論でございますが、これは、飼料用米の中の平均をとって、みんなが頑張っていくと上がっていくということではなくて、全体の主食用米の平均ということでございます。主食用米に比べて飼料用米は単収が低いという課題があるので、そういう中でこれを入れていくということでございますので、餌米の世界の中でみんなが頑張ると平均が上がっていくということではないということは申し上げておきたい、こういうふうに思います。

 参考人の先生方は、いろいろな立場でいろいろなことを御発言されておられるということだと思いますけれども、この水田活用の直接支払交付金は、全国一律単価で交付されるものと、それから、これに加えてというか二階建てになっておりまして、あらかじめ各都道府県に示した配分額の中で地域が取り組み内容、作物それから単価を設定する産地交付金ということで、これで大分産地交付金をふやしていきますので、地域の特性を踏まえた二階建て構造になっているということを申し上げておきたい、こういうふうに思います。

 餌米については、先ほど申し上げましたように、数量払いを入れたということに加えて、十アール当たり、多収性専用品種の導入に対する産地交付金の追加配分が一万二千円、さらに地域の実情に応じて独自の支援を行える産地交付金、これは平成二十五年の五百三十九億から平成二十六年に八百四億までふやしております。

 餌米に取り組む場合、主食用品種で餌米に取り組む場合であっても、十アール当たり一万円以上の支援を行おうとしている県が九県ぐらいはある、こういうふうに聞いております。

 さらに、餌米のわら利用に対する耕畜連携助成、これは十アール当たり一万三千円でございますが、継続をするということにいたしましたので、理論値でありますが、こういうものが全部足し上がるという可能性もある、こういうことでございます。

 したがって、餌米については、圃場を団地化する、それから多収性専用品種の導入をする等々によって、現場の取り組み方法、これを、いろいろなことをやっていただくことによって主食用米と遜色のない所得が得られる仕組みということになっておりまして、この増産に向けての十分なインセンティブになる、こういうふうに考えておるところでございます。

畑委員 いろいろなメニューを使いながらインセンティブをつけているということで、努力していただくということだと思います。

 それで、これは難しいのかもしれませんが、最大限もらえる人、飼料米でいえば十万五千円ということになるんでしょうが、そこの割合というのはどの程度と試算していますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 多収性品種を用いた一番の収量、十万円の対象になります六百八十キログラム以上の単収をとった方なんですが、二十四年産でいきますと、全体で五千八百六十九件のうち百七十件の方が単収が六百八十キログラム以上でございまして、これは全体的には約三%ということになっています。これは二十四年産で抽出してみたところでございます。

 今、生産現場では、今回の制度見直しを受けまして、多収性品種による取り組みの意向が示されている面積が、二十五年産は九千四百ヘクタールだったんですが、現在では、取り組みの意向を示している面積が一万五千ヘクタールと見込まれるといったようなことで、単収向上に向けた動きが着実に広がっているというふうに考えているところでございます。

 こうしたことから、現時点において、平成二十六年産で十万五千円の交付を受けることができる農業者の割合を具体的に示すことはなかなか難しゅうございますが、今言ったようなことで、二十四年のときの三%といった数字は上回っていくようになっていくんじゃないかというふうに考えているところでございます。

畑委員 ありがとうございました。

 三%ですが、これがどの程度までいくかというのは結局かなりハードルの高いあれかなと思ったんですが、これはこれで頑張っていただくとして、これは始まった後、当然検証が必要になりますよね。つまり、これは、地方公聴会で佐賀の市長さんがおっしゃっていて、ハードルが高いかもしれないけれども、始めてみた上で、その判断については導入後の検証をすべきだと。これは多面的機能払いも含めて議論が従来ありましたが、当然、政策というのは、特にこういう一義的に明確じゃないような形の税金を投入する政策ですから、何年かにわたって検証して、しっかりとやっていくべきものであると思います。

 今回は、この飼料米の動向、結局、制度の当初、主食用米の平均値を超えて、努力して努力してやっていく、そういう中で、たくさんもらえる人が多くなっていくかどうかというのは、どの程度ふえるかというのはまだ見えないわけですが、この導入後の検証というのはどのように行っていくようなお考えでしょうか。

江藤副大臣 飼料米は、私の地元なんかでも、余り胸を張れる話ではないんですが、八万円ということで定額払いでしたので、きっちりつくらなくてもいいやと、一部には捨てづくりもあるのではないかというような話もありました。

 でも、今回の制度変更を受けて、量をとればこれだけのお金がもらえるのか、それでは、がっちりつくろうというふうに随分気持ちも変わってきております。今まで作付けていた場所を、いわゆる生産性の低い中山間の日当たりの悪い田でしかつくってなかった人が、ある程度面的な集積のできている畑でも飼料米をつくろうというふうに、みんなの気持ちが変わってきております。

 今先生がおっしゃったように、これがどのように三%弱から伸びていくのかというのは、二十六年度以降におきましては、導入に伴って飼料用米の単収が全体としてどれだけ向上したか。それから、地域の標準単収に比べて飼料用米の単収が高い生産者がどれだけふえたのか。それから、実数をきちっとデータとしてとっていきたいというふうに考えております。

畑委員 データに基づいてしっかり検証していく、そういうことでよろしくお願いしたいと思います。

 次の議論をさせていただきたいと思います。

 飼料米がしっかり需要が高まって転換していくかどうかという議論をするときに、やはりどうしてもこの前の日豪EPAの合意がございまして、これとの関係でちょっと危惧するところであります。

 要は牛肉の関税を、一定のものを下げることにしたわけで、これによって、とりあえず日豪EPAだけを考えた場合には、米国産に切りかわるだけなので、そんなに影響はないという説明ですが、本当にそうかということもありますとともに、EPAの合意がTPPの前例になってきて、要は、これをベースに、これ以上下がらないような交渉をするということになれば、実質は日豪EPAぐらいのレベルで関税引き下げは認めることになってしまったとした場合に、結局、再協議がうまくいった場合、アメリカも同じ条件で妥結するとしたら、そうなった場合には、米国産に切りかわるという話ができなくなって、恐らくダブルできいてくるので、やはり日本の国内の牛肉に対する影響は大きくなってくるんじゃないかなと思っているわけです。

 仮定の議論の部分もありますけれども、こういういろいろな自由化、関税引き下げといった場合に、どの程度の酪農家、畜産家の減少があると見込んでいるのか、お伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方から御指摘ございました、今回の日豪EPAの合意内容につきましては、豪州側から一定の柔軟性を得ることができたというふうに考えておりまして、我が国酪農、畜産業の存立及び健全な発展を図っていけるような内容であると考えているところでございます。

 牛肉につきましては、効果的なセーフガードの確保、あるいは長期間をかけた関税削減といったような措置が盛り込まれておりまして、国内畜産業の健全な発展と両立し得る、我が国としてぎりぎりの線は確保できたんじゃないかと考えているところでございます。

 また、乳製品につきましては、バター、脱脂粉乳については将来の見直しということでいわゆる再協議、ナチュラルチーズについては、プロセスチーズ原料などについて一定量の国産品を使用することを条件にした関税割り当ての設置ということになっておりまして、国内の生乳生産に影響を及ぼさない範囲の合意内容となっているものと考えているところでございます。

 一方、TPPにつきましては、現在交渉中でございますので、その結果を予断するようなコメントは差し控える、このように考えているところでございます。

畑委員 TPPの件は、やはりそういうお答えかなと思ったんです。

 今の議論を聞いていて、そんなに影響はないとしても、結局、酪農、畜産農家がふえるようにはならない。少なくても、横ばいなり微減していくということは確かなんだろうと思います。

 いろいろ心配した中で、きょう、農協からも話を聞いたんですが、岩手でも、短角牛を従来から私も話題に出していますが、やはり、牛肉自由化のときに、平成三年と平成十二年を比べると、関税が七〇パーから三八・五パーに下がったときには、岩手全体の短角牛も二万八百五十九頭から四千六百三十七頭と激減していまして、当然いい影響があるわけはないことは確かなわけです。であるからこそ、与党の中でも、対策ということを検討しなきゃいかぬという議論が出ているのだろうと思います。

 ですから、飼料米をどんどんやろうという議論をする中で牛肉の関税を下げるというのは、やはりこれも、アクセルとブレーキがちょっとちぐはぐな政策ではないかなと思います。

 これはこれとして、ちょっと事実をお伺いしたいんですが、酪農、畜産家の数と飼育頭数の数、これは近年どのような推移になっていますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、酪農経営でございますが、平成二十年から平成二十五年までの間でございますが、戸数は、平成二十年二万四千戸だったわけでございますが、二十五年には約一万九千戸に減少しております。飼養頭数につきましては、平成二十年が百五十三万頭だったものが、二十五年には約百四十二万頭というふうに相なっているところでございます。

 また、肉用牛経営でございますが、肉用牛経営のうち、いわゆる繁殖経営、子牛をとる経営でございますが、これにつきましては、平成二十年が七万戸だったものが、平成二十五年には五万三千戸、飼養頭数は、六十七万頭だったものが六十二万頭というふうになっております。

 肥育経営につきましては、平成二十年一万七千戸だったものが、二十五年が一万四千戸、飼養頭数は、平成二十年百八十四万頭だったものが百六十六万頭に減少しておりまして、これらの戸数あるいは飼養頭数の減少は、高齢化や後継者不足等によるものと考えているところでございます。

畑委員 ありがとうございました。

 これを見ると、経営規模の拡大というか、構造改革はある程度なだらかに進んでいるという反面、絶対母数ですね、特に、百五十三万頭から百四十何万頭でしたかと飼育頭数が減っているということで、結局、自由化が日本の飼育頭数がふえる要因にはならないということが一つと、そしてなおかつ、自然体でも、近年、実例として飼育頭数が減っている。だから、飼料米をふやすということはいいとは思いますが、そこの見通しからすると、飼料米の需要が思ったほどふえるのかというのは、飼育頭数から見て、絶対疑問に思うわけです。

 このような中で、主食用米から飼料用米への転換が順調に進むという根拠、見通しを、大臣、お答え願いたいと思います。

林国務大臣 これはあくまでマクロの数字、全体の数字ということですが、今、畜産の現況についてのお話がありましたけれども、輸入されているトウモロコシが大体約一千万トンでございます。

 したがって、これと同等の栄養価というふうに飼料米が評価をされておりますので、価格で遜色のない供給ができるということになると、従来から申し上げているような四百五十万トンの潜在的な需要があるということでございます。これは、現在の技術的な水準を加味して、牛、豚、鳥、それぞれ割合を計算しているというところでございます。

 したがって、四百五十万トンのうち足元で十八万トン、こういうことでございまして、そしてそれに加えて、新たな畜産農家からの要望が七万三千トン、こういう数字が前提としてございますので、この潜在的な四百五十万トンがどういうふうに推移していくかというのは、先ほどの全体の数字を見ながらということになるかと思いますが、いずれにしても、このうちの十八万なり七万数千トンの議論を今はしているということでございます。

畑委員 ということは、絶対数の母数は、そういう前提の中で、トウモロコシからどうやって切りかわっていくか、そこのところなのだろうと思います。

 そういうことで、飼料米の充実加算というかお金は出しているということで、価格競争力は遜色ないようにしていくということなわけですが、これもこの委員会で何回も議論があったんですが、トウモロコシの国際価格がどうなっていくか、非常に危うい綱渡りの中で、いろいろまた今後推移しなきゃいかぬ。そこは、これからの価格動向によって価格競争力がついて、本当にうまく回るのか、転換するのかとちょっと心配なところもあります。

 もちろん、これは始めてから、そういうのをしっかり見ながら、推移しながら、検証して、また、政策をどうやって変えていくかという議論にもつながると思うんです。そこは、そういうことでうまく切りかわればいいなということしか今は申し上げられないのですが、若干、危うい部分の試算もあるかなという気がします。

 次に、ちょっと質問したいんですが、そういうことで、飼料米を使うということはいいことだと思います。酪農、畜産家に対して売るという意味での飼料米の需要発掘ということはもちろん大前提なんですが、私は、飼料米の活用で、いいと思うのは、地域おこしになるということだと思います。

 要は、田舎で、耕畜連携というのがありますから、どんどん酪農、畜産を盛んにしていっていただいて、そして飼料米を植えて、地域の中で回るシステムをつくれるわけですね。飼料米をたくさん不作付地にも植えて、飼料米をとって、地元の酪農、畜産で使って、わらとか堆肥にするということもありますし、牛から出た排せつ物はバイオマス発電とかあるいは肥料にできる。そういうことで、これからはこういう酪農を生かした地産地消、地域活性化ということが必要なんだろうと思います。

 こういうことをするに当たっては、そういうことで耕畜連携の一万三千というのも入っているのでしょうけれども、先ほど申し上げたように、今はその活用実績がなかなか少ないということもあるようです。

 いずれにしましても、これ及びこれ以外の政策も含めて、使いでをよくすることも含めて、まさにこういうパッケージとしての政策支援をしていく必要が地域活性化からも有益ではないかと思っておりますが、いかがお考えでしょうか。

江藤副大臣 先生のおっしゃるとおりだと思います。

 我が宮崎県は、稲わらが大量に必要なわけなんですね。しかし、なかなか稲わらが十分地域で自給ができなくて、今は中国の大連から輸入をしているわけでありますが、中国で一たび病気が起こると、あっという間にとまってしまいまして、国内の敷きわらから肥料に至る粗飼料がもう足りなくなってしまうというのが、今の日本の畜産の屋台骨の弱さだというふうに思います。ただ、買ってきたイタリアンの方がはみがいいとか、もう切ってあるとか、ほどいてぽっと上げれば作業が楽だとか、いろいろなことがあります。

 地域おこしという観点であれば、例えば、今のだったら、米を刈り取って、全部ばあっと細かく切って、ばらまいてしまいますよね、すき込んでしまうために。それを、昔ながらの、いわゆるわらとしてとれるようなコンバインにかえていかなきゃならない、そういった機械の支援も必要だというふうに思います。

 今御指摘があったように、地域循環型の経済、それからエネルギーということも考えていかなければなりませんので、農林水産省といたしましては、地域バイオマス産業化推進事業、二十六年度の予算で十億円余りでありますけれども、こういったものの中で、堆肥、食品残渣、それから、水産資源なんかの、いわゆる加工した後の残渣なんかも含めた、地域循環型のコミュニティーづくりということも支援してまいりたいというふうに考えております。

畑委員 そういうものを使いながら、しかも、なおかつ充実させながら、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 そして、その関係でお聞きするんですが、これは確認です。

 今、稲わらを飼料として使用するというホールクロップサイレージのやり方もありますが、これはもちろん、飼料米が幾ら単収でとれればいいかという話とはまた別な、わらを使いますので別の概念ですが、この交付金の決定方法というのはどうなっているのか、従来と変わらないのか、その辺の実務的なところをお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方から御質問ございました、水田活用の直接支払交付金におきまして、ホールクロップサイレージ、WCSでございますが、稲や何かを使うわけでございますが、それに対する助成につきましては、これまでと同様、十アール当たり八万円を措置しております。

 この考え方、WCSにつきましては、穀粒を収穫するものではなくて、全体をロールということで仕立て上げますので、密度、水分等によって重量が変わってきてしまいますものですから、なかなかこれは数量払いには適さないという判断のもとに、面積払いを継続することとしたところでございます。

畑委員 ありがとうございました。

 確かに、地元でそこのところの疑問がありました。確かに、おっしゃるとおり、従来のやり方、数量ではなくて、面積でやっていくということが合理的だと思います。引き続き、そういう形で、活用をしっかり、よろしくお願いします。

 別の論点を質問させていただきます。

 今回のゲタ対策、ナラシ対策なんですけれども、これは従来議論が出ていますが、対象農業者は面積要件を設けないという中で、認定農業者、集落営農、認定新規就農者ということにするということですが、特にこの認定農業者の認定基準というのが、これは市町村が決めるということで、ここの決め方によって、かなり限定するのかどうかというさじかげんが出てくるわけだと思います。

 端的には、意欲と能力のある農家にしっかり配慮して、規模にかかわらず、こういう農家がしっかり拾われるようにしなければいけないと思うんですが、そこのところの認識はいかがでしょうか。

林国務大臣 認定農業者制度は、効率的かつ安定的な農業経営を目指しまして、年間の農業所得及び年間労働時間の目標、こういうものを含む経営改善の方向等を内容とした五年間の経営改善計画を作成した農業者を市町村が認定する、こういう仕組みになっております。

 農業経営改善計画の内容が市町村の基本構想に照らして適切なものであるかという審査等を行うことになるわけでございますが、委員がまさにおっしゃっていただいたように、規模は小さくても、収益性の高い作物を取り入れた複合経営や、販売、加工など六次産業化に取り組むことで所得を上げていこう、こういうような意欲のある農業者は認定されることになるわけであります。

 したがって、意欲と能力のある農業者であれば、幅広く認定農業者になり得るものとも考えておりまして、各市町村におかれても、経営規模、年齢の要件を設けたりすることなく、意欲と能力のある者を幅広く認定するように徹底をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

畑委員 ありがとうございました。

 これは予算の総額の関係も含めて決まってくるんでしょうが、まさに意欲と能力のある農家をしっかりやっていただくという形での運用をよろしくお願いしたいと思います。

 次に、ちょっと輸出の話を私もさせていただきたいんですが、輸出という場合、例えば米を例にとっていうと、おいしい米を輸出する、品質が日本米はいいんだから、それで売っていこうという話がよく出ます。私は、こういう素材を売るということは、どんなに価格を下げたとしても、日常食ですから、そんなにふえるというものではないかなという気がしていまして、輸出振興としては、ちょっと理想論かなと思っております。

 その場合に、これも前回の参考人質疑である先生が言ったんですが、やはり付加価値をつけて輸出することを考える。付加価値プラスブランド化ですね。米であれば、まさに米を使った日本酒をふやしていく、そういう輸出戦略が必要じゃないかという話をしておられました。

 ワインなんかを見ても、外国は、何もブドウをそのまま外国に輸出しているわけではなくて、我々もブドウを買って食っているわけでもない。ワインがすごいから、高いかなと思っても、飲む人もいるわけです。願わくは、日本酒も和食の振興とともに育ってほしい、そういう努力をされているのは存じておりますが。

 そういうことで、やはり付加価値をつけた、製品化した中で日本の一次産品を輸出する方向で考える、それを重点化していく方向で考えるというのが私は合理的だと思うんですが、輸出戦略もそういうふうな形をしっかりやっていくというか、むしろそういうのを重視していくという形で考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

小里大臣政務官 例示をいただきました日本酒につきましては、輸出額が現状九十億円、米菓は三十億、そして精米は七億となっておりまして、米関連でいえば、日本酒が有力な輸出品目となっているところであります。

 昨年八月に、農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略を策定して、現状百三十億円の米、米加工品の輸出額を、二〇二〇年に六百億円とする目標を立てているところであります。

 特にまた、今後、輸出の大幅な拡大が期待できる日本酒につきましては、平成二十六年産米から、日本酒の生産増に伴う酒米については生産数量目標の枠外として、すなわち生産数量目標とは関係なく生産をふやせるとしたところでございます。例えば、主力の山田錦などは一俵二万円で売れていると伺っているところでありまして、生産者の所得拡大のためにもしっかり推進をしてまいりたいと思います。

 日本産米の輸出拡大に向けまして、日本食文化の普及などを通じたメード・バイ・ジャパンの取り組み等を通じ、日本食の食材としての日本産米の需要拡大につなげていきますとともに、メード・イン・ジャパンとして、今後増加が期待される日本酒、包装米飯等の米加工品の輸出拡大を促進してまいります。

畑委員 できるだけ輸出もしながら、需給を引き締める、価格を支えるということも必要だと思います。

 例えば、EUとかヨーロッパ、アメリカもそうですが、国内価格が下がってくると、安くなるわけですから、外国に売れるわけで、そうした中で国内の需給も引き締まるという効果があって、結局、デカップリング、価格支持政策をやる場合には、輸出とセットになれば財政支援も減るということで本当は合理的なんですが、日本はそこまで至らないものですから。

 ただ、将来ソフトランディングしていくためには、やはりいろいろな輸出の方法を考えて、輸出をふやすということは必要なことなんだろうと思います。そういう問題意識からお伺いしました。ぜひとも輸出振興を、あらゆることを、製品化も含めて考えていただければと思います。

 次に、また今回の農政改革に戻ります。

 私は、地域政策と産業政策を分けることにどうしても違和感を持っておりまして、理屈はそうなんですけれども、かなり技巧的に過ぎるんじゃないかなという気もしております。野党案は、結局、そこはシンプルだ。農業の経営と生業を支えることが地域も支えることになる。そこはそういうことで、あえて分けていないからわかりやすいのですね。政府の方は、地域政策と産業政策を分けている。すぱっと分け切れるものかどうかという疑問があります。

 そして、もう一つは、産業政策、構造改革として、そこの部分のお金は減らす、交付金を減らすということをしながら、実質は、逆に地域政策で農地を支えるということで、結局お金はふやしている。今回、トータルだとそんなに変わらないという形になるのだろうと思います。逆にトータルで変わると、とんでもないことで、また追及されるわけです。改革によって農家がもらえる額が減っていくのはけしからぬということになるわけです。

 結局は、お金の出し方の考え方にすぎないというか、それは大きな理念の違いなんです。結論でもらえる額にそんなに違いがあってはいけないわけですが、であれば、どっちの考え方がいいかということの議論が、先ほどの議論もあって、その議論に行くわけです。

 そういう中で、政府案について、地域政策と産業政策を本当にすぱっと分けて、そういう技巧的な組み方をするのが自然なのか、いいのかということ、そこの疑問を持っております。そこに対するお考え、コメントをいただきたいと思います。

林国務大臣 地域政策と産業政策は車の両輪でございますので、一つは、政策上分けていくということと実際の現場で分かれてしまうということは違うということでございます。

 地域に密着した農業の場合は、では、おたくは地域政策をとりますか、産業政策をとりますか、選んでください、こういうふうにはならないわけでございまして、地域の実情に即してこれを組み合わせていくということが当然あるわけで、あらゆる政策を総動員するということが大事である、こういうふうに思います。

 一方で、現場の農業者の皆様にとっては非常にわかりやすいやり方ということはあるいはあるのかもしれませんが、やはり我々は、政策論としては、税金を使って行うことですから、納税者の皆様にも理解を得ながらやっていく、このことが大変大事であります。

 そういう意味では、政策として、地域政策は、こうこうこういう目的でこういう仕組みをつくりました、産業政策については、こういう政策を通じて農業の構造改革、コスト削減を図って、成長産業化をやっていきます、こういうきちっとした説明をするということも一方で大事だろう、こういうふうに思っております。

 そういう意味で、今回、車の両輪として地域政策と産業政策を進める、こういうことにしたところでございます。

畑委員 それは一つの考えだろうと思います。

 もちろん、その場合、納税者の理解ということですが、戸別所得補償でも納税者の理解は私は理屈上得られると思うんです。

 あと、検証のやり方ですね、検証の容易性。戸別所得補償政策だと検証が容易なわけですね。結局は、出し方も容易ですけれども、明確に決まっているわけです。コストと収益の差額の中の一定額を補償する所得補償なわけです。そこの考え方がすっきりしているのと、結局、それを出すことによって農家の経営がどうなってきたのか、農地の集積がどうなってきたのか、さまざまな検証がしやすい、もう一義的にわかりやすいわけです。

 多面的機能払いといった場合には、きのうも議論しましたが、第三者委員会もつくって、BバイCみたいな議論もしながら、かなり技術的に組み立てなければいけない。それはそれでもちろん必要な議論ですが、そこにわかりにくさを感じるわけです。やはり政策というのはわかりやすくなければいけないと私は思います。

 そして、戸別所得補償も、農家の経営を支える。支えるのは、のべつ幕なしではなくて、岩盤も含めて、やはり経営を立ち行かせるというところにあって、そして、経営を立ち行かせることが結局は公益機能にもなる。結局、わかりやすい形でできているなと思います。

 やはり、そこはそういう形でやるのが合理的だと思うんですが、結局、農家にとっては、地域政策だろうが産業政策だろうが、出す方の理屈は別として、どっちでもいいんですね、合理的な考え方としてお金が来るかどうかということですから。それが、どっちが合理的かという考え方、そこに行き着く議論だろうなと思っております。

 もちろん、政府案を否定するわけじゃなくて、理屈は理屈で、その理屈はあるわけですよ、そういう理屈は。野党案の理屈もある。あとは、追跡の仕方も含めて、政策検証のわかりやすさというところに議論の帰着が来るのかなと思います。

 農地を農地として維持するといった場合には、結局、農家は助かるんですが、うがった見方をすると、農地を農地として維持する、別の方の、例えば農業土木に入るんじゃないかとか、農家に直接回るわけではないんじゃないか、直接的に農家への還元はどうなんだ、多分批判をする人は、そういう批判をすることもあるのだろうと思います。そこはそれで、したがって、ちょっとここの、分けてこういうことをやっていくのはなかなかすっきりしないという思いを持っております。

 だから、私は野党案の方がわかりやすいなという思いを持っております、これは言うにとどめておきますけれども。これがまさに今回の両法案の議論のポイントなのだろうと思います。

 もう一つこの関係でお聞きしたいんですが、直接支払いは、農地を農地として維持する、多面的機能を発揮するという議論なわけでありますが、その裏返しとして、そこのところの支援を充実させるとすれば、交付金をふやすとすれば、セットと考えるとすれば、交付を受ける主体というのは農地を農地として維持する義務がさらに強くなるんじゃないか、そういう議論はあるのだろうと思います。

 そこは、ペナルティーも含めて、そこの義務の強化というところは今回の施策で手をつけられていますでしょうか。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 今回の多面的機能支払いにつきましては、取り組む地域では、水路や農道等の保全活動の実施を通じまして、対象農用地の適切な保全が図られるということが必要でございます。

 このため、多面的機能支払いでは、対象農用地が例えば耕作放棄地となるなど適切に保全管理されていないというような場合には、対象組織に交付した交付金のうち、当該農用地部分に相当する交付金を協定の締結年度にさかのぼって返還することを要するということとしております。

 この措置は、これまでの農地・水保全管理支払いと同様の措置でございます。

畑委員 農地を農地として維持するところに対する支援を充実させながら、結局そこのところのペナルティーは従来と変わらないというわけです。そこは政策のバランスとして、私はいかがかなと思います。

 端的には、耕作放棄地をつくっちゃいけないというところもあって、だから農地をしっかりと維持管理するということもあると思うんです。

 これは通告していませんが、きょうは局長に来ていただいているので、ちょっとお伺いしたいんです。

 確認ですが、耕作放棄地対策というのは、これも従来と比べて強化しているわけでもないわけですね。

奥原政府参考人 耕作放棄地対策でございますけれども、昨年の臨時国会で通していただきました中間管理機構に関連しまして、ここはかなり強化をしているということでございます。

 平成二十一年の段階で、農地法の改正でかなり強化をしておりましたが、今回、中間管理機構ができましたので、遊休農地につきましては、できるだけ中間管理機構に貸していただく形に誘導するということになっております。

 各農業委員会がその地域の中の遊休農地をきちんと調査しまして、この土地につきましては、農業委員会の方からその土地の所有者に対して意向調査をいたします。農地中間管理機構に対して貸す意思があるかどうかといったところから始めて、できるだけ機構に貸していただくという形に誘導する、こういうことになっておりますし、それから、遊休農地の所有者がわからない、こういった場合には、最後は都道府県知事の裁定で中間管理機構に対して利用権を設定するといった措置も入っております。

 そういう意味では、遊休農地対策はかなり強化をされているということだと思っております。

畑委員 まさに、そこの遊休農地対策、利用権の設定とか、その遊休農地対策がどうやって進んでいくかというところは見なきゃいかぬと思います。

 遊休農地対策の法律改正がされても、結局、利用権設定の勧告なり利用実例がほとんどなかったというか、たしかほとんどなかったと思いますが、そういう問題も含めて秋に改正された。まさに、利用の要件の緩和とか、手続の緩和でしょうが、そこによって進んでいくのかどうか、そこが非常に重要なポイントだと思います。

 結局、これから人口が減っていきますので、これを質問しようと思ったんですけれども、時間がなくなったので大所高所の議論はやめておきますが、人が減っていった場合に、それでも農地を維持しなければいけないという中で、耕作放棄地がやはり心配になってくる。ここをどうやってやっていくかというのは本当にポイントになると思いますので、これからもしっかりここは議論させていただきたいと思います。

 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次回は、明十七日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十分散会


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