衆議院

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第11号 平成26年4月17日(木曜日)

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平成二十六年四月十七日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 大串 博志君 理事 村岡 敏英君

   理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      小里 泰弘君    加藤 寛治君

      門  博文君    川田  隆君

      菅家 一郎君    小林 鷹之君

      清水 誠一君    白須賀貴樹君

      末吉 光徳君    鈴木 憲和君

      田中 英之君    武部  新君

      津島  淳君    中川 郁子君

      中谷 真一君    橋本 英教君

      福山  守君    堀井  学君

      務台 俊介君    簗  和生君

      渡辺 孝一君    後藤  斎君

      玉木雄一郎君    寺島 義幸君

      鷲尾英一郎君    岩永 裕貴君

      鈴木 義弘君    松田  学君

      丸山 穂高君    稲津  久君

      樋口 尚也君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   議員           玉木雄一郎君

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   政府参考人

   (内閣府日本学術会議事務局長)          田口 和也君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     白須賀貴樹君

  武井 俊輔君     小林 鷹之君

  武部  新君     門  博文君

  簗  和生君     務台 俊介君

  村上 政俊君     松田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     武部  新君

  小林 鷹之君     中谷 真一君

  白須賀貴樹君     菅家 一郎君

  務台 俊介君     簗  和生君

  松田  学君     丸山 穂高君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     田中 英之君

  丸山 穂高君     村上 政俊君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英之君     武井 俊輔君

    ―――――――――――――

四月十七日

 農業予算を抜本的に増額し、食料自給率向上を目指すことに関する請願(畑浩治君紹介)(第六九六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出第五〇号)

 農業者戸別所得補償法案(大串博志君外六名提出、第百八十三回国会衆法第二六号)

 農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第六号)

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第七号)

 環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第八号)


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及び大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官荒川隆君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君及び内閣府日本学術会議事務局長田口和也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤寛治君。

加藤(寛)委員 皆さん、おはようございます。自民党の加藤寛治でございます。

 質問に入ります前に、先般の鳥インフルエンザ発生については、その後の第二例目の発生を防げたということは、初動対策において、政府並びに当該地域の県、市町村、関係者の適切な連携、防疫措置の成果であろうと思い、敬意を表しております。

 それでは、質問の機会を得ましたので、感謝をしながら、質問に入ります。

 まず、経営所得安定対策関係についてであります。

 平成十九年のゲタ対策、ナラシ対策の導入においては、対象者について規模要件を設けたところでありますが、その後、民主党政権となり、平成二十二年から、全ての販売農家を対象に戸別所得補償制度を導入したことは御承知のとおりであります。今般の見直しは、意欲と能力のある担い手を対象としつつ、規模要件は設けないこととしており、これは、他産業従事者から見た立場と農業の現場から見た立場を踏まえたものと評価をいたしております。

 そこで、ゲタ対策、ナラシ対策については、面積要件の廃止や認定新規就農者の取り組みによって、意欲と能力のある農業者であればこれらの対策の対象になれると考えてよいのか、お伺いをいたします。

江藤副大臣 先生の御指摘のとおりでございます。

 面積要件は課さないことといたしました。これから認定農業者にますますなっていただきたい。それから認定新規就農者もどんどん募っていきたい。この場合は、就農支援交付金があったり、資金があったり、それから給付金があったり、いろいろなシステムがあります。

 それに加えて、集落営農も、今まで五つの要件が非常に厳しくかかっておりましたけれども、委員会で何度も質疑されていますように、二つの要件、規約をつくる、共同販売経理をやってくれればいいということでありますので、今までに比べて格段に集落営農もつくりやすくなっていくということでございます。

 それに加えて、面積要件を外せば、もうかなりの方々がカバーできるということでありまして、先生がおっしゃるように、この規模要件を課さないことによって、新しい農政、そして意欲のある、経営感覚を持った農家の方々が、全国一律に販売農家を対象とすることではなくて、そういった意欲を持った人たちが、安定的に地域の農業、それからコミュニティーを守ってくれる、そういう体制が確立されていくものと考えております。

加藤(寛)委員 お伺いをしますと、対象者については、意欲があれば間口は開かれておるということだろうと思いますが、対象者になるために、農業者が認定農業者や認定新規就農者の認定を新たに受けたり、集落営農を組織化するに当たっては一定のハードルがある。何もしなくてもよいというわけではないと思うわけであります。

 そこで、平成二十七年の法施行に向けては、認定農業者並びに認定新規就農者の加入や集落営農の組織化が進むように配慮してほしいと思いますが、大臣の見解をお伺いをしたいと思います。

林国務大臣 今回の法改正ですが、二十七年の四月一日から施行予定でありますので、この施行までの一年間の間に、必要な方が認定農業者、それから認定新規就農者の認定を受けたり、集落営農の組織化が図れるように、都道府県、市町村等と連携を密にしてしっかりと対応してまいりたい、こういうふうに思っております。

加藤(寛)委員 農産物の価格や収量が下がった場合には、担い手の経営を政府が支援をするということはもっともなことであろう、私はこのように考えております。

 政府案も民主党案も、対象者は異なるものの、これはセーフティーネット措置として、農業者の拠出を伴うナラシ対策を措置しております。また、このナラシ対策は米、麦、大豆等が対象となっておるわけであります。

 政府案と民主党案の違いの大きな一つは、交付金の補填に当たって、政府案では、各品目の収入の増減を合算、相殺して補填するということでありますが、民主党案では、合算、相殺しないで、減収分のみを合算して補填をするということになっておるようです。

 ところが、民主党の法案では、将来、収入保険を導入することを想定している一方、ナラシ対策で合算、相殺しないとしておることは、何か矛盾をしておるのではないかという思いがしておりますが、この点についての見解をお伺いしたいと思います。

玉木議員 加藤先生にお答え申し上げます。

 大変重要なポイントの御指摘をいただいたと思っております。

 たしか、赤澤先生にもお答えをしたんですけれども、この制度をつくる際に、確かに悩んだ点の一つであります。ただ、農家にとってもわかりやすいシンプルな制度にしようということで、合算ではなく、それぞれの所得の変化に着目するということで当面制度を設定してはどうかということにしたわけであります。

 ただ、法施行後三年をめどに検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるということを附則に書いておりますけれども、その際の総合的な所得保険、収入保険のイメージは、例えば野菜を含むかもしれないし、耕畜連携で畜産も一緒にやっている方は、例えば今の新マルキン制度、あれもある意味では収入保険的な制度になっておりますので、そういったことも全て合算した総合的な収入保険制度を考えていく際には、先生今御指摘になったような、やはり相殺し合算していくようなことも検討していく必要はあるというふうに思っておりますけれども、当面は、まずそれぞれの品目で行い、また、そのことに伴うデータをしっかりと取得して、実際に保険制度をつくる際には、相殺していくこと、合算していくことももちろん検討に入れて対応していきたいというふうに考えております。

加藤(寛)委員 政府も、今年度から収入保険の調査費を計上するなど、将来の収入保険の導入を予定しておるようであります。

 将来、ナラシ対策を収入保険につなげていくという可能性があるのであれば、ナラシ対策は合算、相殺した補填を行うことが適切であろう、このように私は考えておるところでございます。

 次に、多面的機能支払い関係についてお伺いをしたいと思います。

 これまで水保全管理支払いに取り組んでいた集落は、基本的に農地維持支払いと資源向上支払いの両方に取り組んでいくことになるわけでありますが、今後、多くの集落が両方の支払いに積極的に取り組んでいくべきであるとも考えております。

 また、両支払いに取り組む場合に、例えば水路の草刈りと水路の目地補修などは同じ日にあわせて行われるということが多々あるのではないかということが予測をされます。これらの取り組みを区分して経理をするということは大変難しいように思われるわけでありますが、これを強引に何らかの形で区分して経理をしなければならないとするならば、事務手続が活動組織にとって大きな負担となるように思われます。

 そこで、農地維持支払いと資源向上支払いは、一体的に活動が行われることが多いわけですから、支出の区分が難しいようでありますから、区分をして経理を行わなければならないのかどうか、この点についてお尋ねをしたいと思います。

小里大臣政務官 農地維持支払いと資源向上支払いの経理区分につきましては、お話をいただいたような理由によりまして、これをあわせて経理できるようにしてもらいたい、そういうニーズが上がってきているところであります。

 そういったことを踏まえまして、両支払いの経理を一つのものとして行うことができるようにしたということであります。

 なお、施設の長寿命化のための活動、例えば老朽化した水路の補修、農道の補修等につきましては、土地改良区などの他者の財産の形状変更等を伴うというものがほとんどであります。要するに、財産管理の観点から、こういった活動については、すなわち施設の長寿命化のための活動については、他の活動と区分して経理を行うとしているところでございます。

加藤(寛)委員 多面的機能支払いの取り組みというのは、地域がみずからの考えに基づいて、現場の力で活動をしていくことが最も重要なことであろうと思います。そのためにも、経理を初め、事務手続はできるだけ簡素化することが必要であろう、このように思います。

 また、農村は高齢化、人口減少が非常に急激に進行をしておるわけでありますから、多面的機能支払いに取り組むためには、事務手続を含む地元の実施体制をしっかりと整備することが必要だと考えております。

 そこで、現場の力を引き出すためには、農家だけではなく、地域のJAや土地改良区の協力を得ながら取り組んでいく方がより効果が上がるのではないかと考えておりますと同時に、多くの地域において取り組んでもらうためにも、この多面的機能支払制度について、積極的に幅広く周知徹底を図るべきだと思いますけれども、この点について御見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 加藤先生は、県議会議長もされましたが、農協の組合長も御経験をなさっておられるということで、なるほどという御質問でございました。

 この多面的機能支払い、これは水路や農道等の地域資源を、地域ぐるみの共同活動によって保全する取り組みを支援していこう、こういうことでございますので、地域におけるさまざまな主体の参画のもとでこの取り組みを進めることが望ましい、こういうふうに考えております。

 土地改良区は、水路等の施設の所有者もしくは管理者ということで、この取り組みと密接な関係を有しておりまして、活動組織への積極的な参画が期待をされているものでございます。

 JAについても、地域の農業振興を担う団体として、積極的な参画が期待されているところであります。

 多面的機能支払いに関しましては、活動組織が行う事務について、JA、土地改良区などに委託することができる、こういうことにもしてありまして、そういった面でも貢献が期待をされておるところでございます。

 活動組織の事務処理作業については、地域住民の高齢化、人口減少等々でなかなか難しい状況もある中で、こういった団体からの事務処理面での協力も大変ありがたいことでありまして、こういうことによって活動組織の取り組みをしっかりと地域で支えていただきたい、こういうふうに思っております。

加藤(寛)委員 それぞれに、経営所得安定対策並びに多面的機能支払い等についてお伺いをしたわけでありますが、それぞれの案件についても、要は農業・農村所得倍増目標十カ年戦略の一環としての対策であるわけです。大場より急場であるわけですから、当面の対策としては、このような政策というのは必要不可欠な対策であるということで、高く評価をしながら期待をいたしております。

 しかしながら、それはそれとして、中長期的な日本の農業発展を図るためには、いかに多くの優良農地と、いかにすばらしい担い手を確保することが、私は将来に向けての最重要課題であるという思いがいたしております。

 そこで、今大きな、基本的な考え、政策の中で、現在の担い手が耕作をしておる全耕地面積の五〇%を十年後に向けて八〇%に持っていこうとするこの計画はすばらしい計画だ、このように私は受けとめております。

 そこで、機会あるたびに私は申し上げておるわけでありますが、まだ現在、大まかに申し上げて、全農地面積四百五十万ヘクタール、そのうちの水田が二百五十万ヘクタール、残りの二百万ヘクタールが畑地、そういう中で、水田については六十数%でありますから百五十万ヘクタール余、圃場整備は済んでおります。

 しかし、畑地については二十数%ですから、二五%に見ても五十万ヘクタールということで、二百万ヘクタール余の圃場整備、基盤整備というのは完成をしておるようでありますけれども、まだ残された農地の圃場整備というのが、これから農業・農村所得倍増目標十カ年戦略、これを成長産業として成長させるためには、やはりこの圃場整備の問題というのはなくてはならない、これからの大きな目標に持っていかなければならないと思うわけであります。

 そういう中で、土地基盤整備事業、圃場整備事業の年次計画というのを早く設定すべきではないかという思いがいたしておりますけれども、林農水大臣に御見解をお伺いできればという思いがいたしております。

林国務大臣 今、委員からは、具体的な国全体の数字もお出しなされまして、圃場整備の重要性について御指摘があったところでございます。

 どういう公共事業でもそうですけれども、計画的に進めていくということが非常に大事であるということは、この圃場整備に限らないところでございますので、どういうふうに進めていくかについて、計画をつくってやっていくやり方もあるし、それぞれ、この場合は、通常の国道等をつくるものと違いまして、農家の自己負担、すなわち自分の圃場という性格もございますので、どういう御希望があるか、こういうことも一方であるわけでございます。

 その辺を踏まえながら、倍増目標というものに合ったものをしっかりと目指していく、これが必要であるというふうに思っておりますので、農業にとって基盤となる圃場の整備というのはしっかりと進めていく、これが基本になければならない、こういうふうに考えております。

加藤(寛)委員 どうして圃場整備等々についてばかの一丁覚えみたいに話をするかと申しますというと、私が三十数年前に県会議員になりました折に、地域の農業者の方々から相談を受けたことの第一に、うちの息子に嫁の来手がないんですよ、これをどうにかして解決してもらいたいというような要望を受けたわけです。

 そこで、私が申し上げたことは、御案内のように、農業は三K産業、ひょっとすれば四K産業になるかもしれません。きつい、汚い、危険、加えて収入が少ないから金欠、そういうことで四Kとも言えるような産業であります。

 だから、とにかく花嫁が息子に来るためには、花嫁さんを楽にしてやる、そして収入を上げる、これを解決すれば花嫁さんは喜んで来てもらえるんですよという話をする中で、花嫁さんを楽にさせるためには、やはり機械化をして、そして花嫁さんは、十時休み、三時休みにお茶を持ってきて、食事の準備をするぐらいにすれば、それは喜んで来てもらえるんですよ。

 しかし、そのためには機械化をしなければならない。機械化をするためには、圃場整備をして規模拡大を図らなければならない。そうすることによって花嫁さんは楽になるわけだから、そして規模拡大によって収入も上がるわけだから、そうすれば間違いなく来ますよということで、圃場整備の必要性をその地域に私は訴えて今日まで来ておるわけです。

 その結果、皆さん方も、いっときはなかなかその件についても理解はしてもらえなかったけれども、何回となく、繰り返し繰り返し話をするうちに理解をしてもらって、圃場整備に取り組んでいただきました。

 その結果、今現在、若い世代に花嫁さんが来ていただいて、そして農協の出荷協議会、出荷反省会等々を開催するたびに、ほとんど私たちの子供みたいな夫婦が数多く出席をして、非常に若い担い手の世代が育っておるというのが現状であるわけです。

 そうした私なりの経験を踏まえて、やはり日本の農業を発展させるためには担い手がいなければならないし、担い手が育つためには、その人に花嫁さんが来て、そしてまたその後継者が育つ、そうすることによって、営々として日本の農業を引き継いで、発展をしていくという思いが強くあるものですから、この圃場整備についての必要性というのを私は機会あるたびに申し上げておるような次第でございます。

 どうかこの圃場整備の必要性というのを御理解いただいて、いっときも早く計画を立てて取り組んでいただけるようにお願いを申し上げておきたいわけであります。一言、最後に御見解をいただいて、質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。

林国務大臣 元組合長さんならではの、大変現場に根差したお話をいただきました。圃場整備の重要性というのは、大変に、委員が今おっしゃったように、なくてはならないものでありますので、しっかりと進めていくということは先ほど申し上げたとおりでございます。

 お嫁さんという話がありましたけれども、昨今は、みずから農業女子ということで、いろいろな取り組みを女性が中心になってやっていただく、そういう取り組みも出てきておりまして、こういうものも一生懸命応援していこうと。

 六次産業化の取り組み等は、女性が中心的なところに参画をしてもらう取り組みの方がうまくいく例が多い、こういう数字も出てきておりますので、そういうことも相まって、今回の農政改革によって、若い方、女性、こういう方が希望を持って、現場に、農業に入ってきていただけるような改革をしっかりと進めていきたい、こういうふうに思っております。

加藤(寛)委員 ありがとうございました。以上で終わります。

坂本委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 おはようございます。

 法案の中身に入る前に、幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 一点は、あの二月の豪雪から二カ月強が経過をしました。四月になってから、農水省が一次、二次と対策を打っていただいたものが、地方自治体も含めて、制度の形が明確になって、四月から説明会等で一生懸命やっているんです。ただし、これは二月から御指摘をさせていただいたように、実は、今の状況を見ても、ビニールまでの撤去は何となく進んでいるんですが、曲がったパイプまでの撤去というのはなかなか進んでおりません。この間、小里政務官も山梨の方に総理と一緒に入っていただいて、多分、そのような思いを持たれたのではないかなと思っています。

 パイプも、年間生産が日本では通常五、六万トンと言われていますし、それを倍するものが年度内に必要だということで、既に二月の時点で、経営局長からも各資材メーカーにできるだけ供給力を増してくれという御要請をしているのも知っていますけれども、やはり倍、三倍の量に対応できないし、また、量が仮に足りても、それを施工する者がいない。この二つのハードルが新たに加わってしまいました。

 そういう意味では、国の補助や自治体のサポートも含めて、支援策が、やはり年度中にやるというのが予算の一つの原則なんですが、これを少し、前回経営局長も、柔軟にやりますというお話は、三次対策はしませんけれどもという前提条件でお話をされましたけれども、ぜひ、この現状を見据えた中で、来年度もきちっと、物理的に間に合わない点があるという前提の中で、早目にメッセージを出していただきたいというふうに思っているんですが、その点について、農水省のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

奥原政府参考人 豪雪対策の関係でございます。

 今回の対策は、豪雪によりまして産地が壊滅的な被害を受けているということに鑑みまして、早急に産地の復旧を図る、それから、食料の安定供給を図るという観点で、特例的な措置を集中的に講じていこうというものでございます。

 このため、農業ハウス等の被災施設の再建を支援する被災農業者向けの経営体育成支援事業、これにつきましても、二十五年度と二十六年度の予算を活用して、復旧が速やかに行えるように支援していくことが必要だというふうに考えております。

 したがいまして、二十六年度末までに行うのが基本だとは考えておりますが、災害対策でございますので、いろいろな事情がおありかと思います。年度中に対応できないということがありますれば、事情をよく伺った上で、適切に検討していきたいと考えております。

後藤(斎)委員 現場の責任者であります経営局長は、豪雪対策よりも、今、何とかこの法案の早期成立をということが頭の中にくるくる回っていて、現場の責任者が違ったところに行っちゃっているというふうに思っていますので、大臣、現地説明会を各自治体ができるだけ個別に丁寧にやっているという現状を踏まえて、ぜひ今のようなことが現場の方に伝わるような施策を講じていただきたいというふうに思います。

 きょうは、学術会議に来ていただいています。

 せんだっての委員会で、平成十三年に学術会議が農林水産大臣の諮問に対してまとめた、農業の多面的機能の貨幣価値の評価と試算というものをベースに、今回の多面的な機能のいろいろな予算や制度ができたというふうに私は思っていたんですが、なかなかそうではないという話も漏れ聞いているので、ちょっと残念な部分があるんですが、そもそも、やはり十三年前の数字に基づいてやったものでなく、直近の多面的機能の評価に基づいたものがベースにあるべきだというふうに私は実は今でも思っています。

 そういう意味で、ぜひ学術会議にお尋ねをしたいんですが、いろいろな前提はあるものの、きのうからきょうにかけて、八兆円という数字がどういうふうな形で現在の評価になるのかということについて、学術会議から、この試算の現在版、改訂版の内容について、ちょっと御報告をお願いしたいというふうに思います。

田口政府参考人 ただいま先生から御質問がありました件でございますが、平成十二年十二月、農林水産大臣からの諮問を受けまして、日本学術会議におきまして特別委員会を設置して審議をし、平成十三年十一月に提出した答申「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」に関するものでございます。

 御指摘の試算でございますが、諮問にありました多面的機能の定量的評価に関して、答申の作成に向けて検討を行う中で、当時の専門的知見に基づき、特定の機能についての試算と妥当な代替財を通じてのその時点での貨幣評価を行ったものでございまして、答申作成のための試算と位置づけられるべきものであろうかと存じます。

 本答申は、御指摘のように、平成十三年十一月に提出されたわけでございますので、日本学術会議としての役割はその時点で終了していると考えております。したがいまして、その後、新たな試算は行っていないものでございます。

後藤(斎)委員 何か冷たくて、もう少し温かみを持って御答弁をお願いしたかったんですが。

 農水省の方でも、いろいろな前提条件を置きながら、例えば、価格や面積みたいなものがこの十数年で変動していますけれども、新たに、この八兆円という試算について、現時点での貨幣価値に換算するとどうなのかということについては御検討いただいたでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生からお話がありました、日本学術会議の答申に示されました貨幣評価額の算定についてでございますけれども、平成十三年の算定で用いられたデータの中に、その後における調査が行われていないというようなこと等から更新ができないさまざまなものがございまして、なかなか同様の再評価を行うというのは困難な状況にございます。

 ただ、あえて推計をするということといたしますと、この評価額の約七割ぐらいが農地面積に関係するデータを用いているというところがございます。その農地面積がどうなったかということを用いて推計するということをいたしますと、データによって幅がございますけれども、平成十三年度からおおむね一割程度減少しているというようなことを踏まえますと、全評価額の約七割にそれが影響するということからしますと、評価額全体として、現在では一割弱減少しているのではないかと推定されるところでございます。

後藤(斎)委員 大臣、若干質問を前後させていただいて恐縮なんですけれども、今局長が御答弁をいただいたように、農業の一つの大きなベースになる農地面積がこの十年間で一割程度減少したということで、実は、経営体に着目をした経営安定対策、我が党では、戸別所得補償という仕組みを今回法的担保をするということと、いわゆる多面的機能の部分、特に、多面的機能は農地というものに着目をして対応していますから、この農地というものをこれからどう見ていくのか。

 例えば、今、四百五十万ヘクタールくらいの耕地があり、五年後、十年後にこれがふえていくのか、減っていくのか、そして、農地利用という部分で、一〇〇を切っている利用率をどの程度まで高めていくかということで、やはり施策というものは、今回も幾つか、二毛作で幾らみたいなものがありますけれども、本質的な部分が変わってくると思うんです。

 これは後ほどもちょっと指摘をさせていただきますけれども、これから、日豪のEPAが大筋合意をし、牛肉関税も下がってくる、そして、甘利大臣がきょうフロマンさんと交渉をするという形で、日米間のTPPの合意というものも、何となく来週の二十四日の首脳会談までに詰まってくるものもあるのかなということを考えるときに、経営体という部分と農地という部分と、そして生産資材を入れ込んで物をつくっていくという行為についてはこれからも全く変わっていかないわけですから、そういう意味で、農地をどういうふうに、これからふやしていくのか、減らしていくのか。そして、仮に農地面積が減っても、利用率をどういうふうに高めていくのか。この幾つかの農地にかかわる部分が、多面的機能の評価とか法的担保をする際に、やはり非常に大切ではないかなというふうに思うんです。

 ですから、先ほど、十三年前の八兆円が農地面積の減少で一割程度下がっている可能性があるかもしれないということで三浦局長がお答えをいただきましたけれども、それはまさに本質の手前に多分差しかかっている。ですから、農地面積が減っていけば減っていくほど、違う試算をしない限りは、多面的機能の評価、貨幣価値の試算というのはこれからもどんどん減るということになりますから、農地に対する問題意識というのは、今回の法律が、いろいろな議論を進める中で、一定程度の収れんに向けてのいろいろな議論というものを今与野党間でもやっていただいているというふうに承知をしていますけれども、その点について、大臣はどのように御見解をお持ちでしょうか。

林国務大臣 これはもう釈迦に説法ですが、多面的機能というものを学術会議で出していただいたときに、貨幣に換算できるものとできないもの、貨幣に換算できるものについて、今やりとりをしていただいたようなことでございまして、その部分について農地由来のものがあるということで、一割程度、こういうことでございました。

 したがって、多面的機能支払いについても、全てが貨幣になかなか換算しにくいという学術会議の答申もあって、共同活動のコストということに注目して、そういうたてつけにしているわけでございます。

 一方で、今まさに本質的なお話をいただきました。農地を中長期的にどうしていくか、これは非常に大事な問題でございまして、まさに食料・農業・農村基本法の根幹にかかわることでございます。

 まず、現行の食料・農業・農村基本計画は、二十二年の三月に閣議決定いただきましたが、ここでは、平成三十二年の食料自給率を五〇%に設定して、これを達成するための基礎として、実は平成二十一年度と同水準の四百六十一万ヘクタールを見込んでおるわけでございます。

 したがって、どういうところを目指していくかということと、そのためにどういう規模の農地というものを基礎として見込むか、これは密接につながってくるわけでございますので、まさに審議会に諮問をいたしまして、一月から今の基本計画の見直しに着手をしていただいております。

 農地面積の見通しについては、今申し上げました自給率に加えて、食料自給力、こういう取り扱い等について、食料安全保障ということで議論をしていただくことになっております。さらに、今申し上げた多面的機能の維持発揮のあり方、こういう論点がございますので、こういう論点を踏まえて、審議会でそういう論点のもとで議論を深めて、諮問をした結果を、答申をいただきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

後藤(斎)委員 大臣の御指摘というかお答えは、よくわかる部分もあります。

 確かに、実は、予想以上に耕作地という部分で農地が減っているという部分も一方であって、これから利用率をどう高めるかというのは、繰り返し私も指摘をさせてもらっているように、なぜ今回多面的機能を法的に担保して、経営体また個別の農家に対してサポートをするかというものをつくっていく過程というのは、どうしても不安定な農業経営、農業所得のあり方に対して、それを国として支えていくというのが、当然、発想の大きな一つだと思うんです。

 実は、本当にコストを下げ、需要をきちっとつかまえた農家の方は、所得が上がっている方もたくさんいらっしゃいます。

 これは、前回も、農業粗収益の伸びと農業経営費の伸びというのが、経営費の伸びの方が高いので、所得率がこの十年でも一〇ポイントほど減ってきたと。ただ一方で、三割というものを掛けても、例えば稲作だけでも三千万以上の、これは所得という考えではありませんが、粗収益、販売金額という形で三千万を超す農家というのがここに来て千軒を超えているというふうなことも当然あって、たくさんもうけていける農家の比率というものも、当然、法人化という組織のあり方も含めて、出てきたと思うんです。

 そのときに、二つあると思うんです。

 どうやって具体的に需要というものを拡大していくのか。これは、大臣、去年はうなずいていただいたんですけれども、自給率が一〇〇%を切っているものについては、価格を下げていくことができれば輸入品に代替できる、要するに、内需の拡大余地はあるということで、今回、飼料米をその対象にしていただいたということだと思うんです。ただ、十万五千円もマックスでずっと支払えるかどうかというのは、これは全然違うお話です。

 二つあって、やはり経営コストをどう下げていくかということと、需要をどう拡大するかという、この二つが常に、今回、来週、一定の結論が出るにしても、法的担保をすることについて、私は本当に正しいと思うんです。

 それを、やはり需要とコスト削減の施策というものが合わせわざでないといけない。

 例えば、米の消費が減っている。学校給食をやっています、輸出しますということよりも、今一人一人ができることは何かということを考えれば、実は、きょう私はお米を食べてこなかったんですけれども、大臣、朝飯は御飯でしたか。

林国務大臣 私は、朝飯というのは、朝早く起きるのが余り得意じゃないということもあって、大体いつも青汁なんです。そのままでは苦いので、青汁にいろいろなフルーツジュースをまぜて、それをぐっと一杯飲んで、それでスタートするというのがほぼ通例でございますので、朝飯というかどうか、定義の中に入るかわかりませんが、きょうもそうでございました。

後藤(斎)委員 大臣、胃袋の数が減少していくのは、これは人口動態調査を見ても、昨年でも二十一万人以上の人口が我が国から減ったということで、この胃袋の減少と、高齢化で胃袋が小さくなる。でも、農水省も、若い皆さんがまだ三万人、四万人いますから、まず、大臣や副大臣、政務官、局長も含めて、米飯を一食プラスするくらいのことが具体的な需要拡大の施策というものに多分必要だと僕は思っているんです。

 実は、いろいろな国でも、需要拡大というのはどういうふうにしているのかなと国会図書館に資料要求しましたら、やはり地域限定の地産地消とか学校給食で米飯をふやすとか、そういうことしか出てこないんです。

 例えば、青汁じゃなくて牛乳が、国内の農家の方がこれから大変になるというふうにいったときに、では、牛乳をみんなで一杯飲もうよということにすると、やはりおなかがいっぱいですから、次に、青汁かオレンジジュースか別としても、ジュースの消費が減るというふうなことで、根本的には、もう一度、やはり内需というものをどういうふうに本当にふやしていける具体的な施策があるのかということと、旺盛な、爆食とも言われているアジアの国々にどういうふうに輸出も含めてしていくのか。

 幾つかの施策じゃないのはわかっているんですが、やはり需要を具体的にどう拡大していくのかというのはベースとしてどうしても僕はあると思うので、そこについては、農水省、もう一度、今の食料・農業・農村基本計画を議論している際に、大きい一つの目玉として、学校給食を三回から四回にするということだけではなく、もっと具体的に一人一人ができること、どんなことがあるのかということを整理して、ぜひ僕はその中の、政府全体の施策としてやはり入れ込んでいただきたい。

 そうでないと、やはりどんな工夫をしても、農家の方の数が緩やかに減少し、これから認定農家ということに限定をしていけば、もっと加速度的に減るということは多分必須だと思うんです。それを、どうバランスをとっていくかということは、これは一方で、集落営農とかに着目をした多面的機能というものがどうバックアップするかということにもつながるので、その辺の需要拡大の具体的施策について、どのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 需要を拡大していくということは大変大事でございます。

 昨年の十二月に官邸の本部でもプランをつくらせていただきましたが、そこへ向けての省内の本部の検討でも、需要フロンティアの拡大とそれから生産現場の強化、まさにディマンドサイドとサプライサイドでございますが、さらに、これをつなぐバリューチェーンということで、産業政策としてはこの三本柱にしよう、それに多面的機能の維持発揮を加えて四本柱ということでこの創造プランをつくらせていただいたところでございます。

 今委員が概括的におっしゃっていただいたように、やはり国内でも、まず胃袋の数が減る、それから高齢化をするということで、確かにボリュームという意味ではマーケットがどんどん伸びていく状況ではないわけでございますが、一方で、給食に加えて介護食、これは、たしか私の記憶ですと、実は一日に千二百円だかそれぐらいは介護保険で食費が支給される。通常はこれに上乗せされていると思いますが、これだけで計算しても、三百六十五日を掛けて、保険の支給対象を掛ければ、年間に数兆円は支払われているわけでございますので、こういうところがある。

 さらには、漢方薬の原料として、御案内のように、中国からの輸入がほとんどですが、中国内での需要も出てきているということや、為替の動向等も含めて、国産をふやしていこう。もしくは、ゆめちからで、品種改良して食パンを国産だけでつくるとか、ラー麦でラーメンを打っていく、いろいろなやり方がまだ国内でもあるのではないか、こういうふうに思っております。

 もう一つは、まさに委員がおっしゃっていただいたように、外の需要を取り込むということであります。

 食市場が今大体三百四十兆円ぐらいと言われておりますが、世界の食市場が今から二〇二〇年に向けて大体倍増する、六百八十兆円。その中で、我々が一番近くにいるというか、我々がその一部であるアジアは三倍になる。

 ここをしっかりと取り組んでいくということで、単にメード・イン・ジャパンを輸出するということにとどまらずに、メード・バイ・ジャパン、すなわち日本食の普及を図る、さらには、日本の食材をほかの料理へ使っていただくメード・フロム・ジャパン、こういうものをあわせてしっかりと、ユネスコ無形文化遺産登録、そして、ミラノ食博覧会、東京オリンピック・パラリンピック、こういう大きな流れの中で発信をしながら、アジアの需要を取り込んでいく。

 この内需、外需あわせて、ディマンドサイド、需要をしっかりとつくることによって、供給サイドの強化とともにこの改革に取り組んでいかなければいけない、こういうふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣がお話しいただいたように、要するに、量的なものの増加というのはなかなか見込めないので、それを少し細分化して、付加価値の高いところに供給と需要をくっつけていこうということだと思うんです。それで全体の売り上げをふやしていこうということ、これは正しい施策だと思います。

 ただし、僕はもうこれは何度も言っているんですけれども、要するに、生産コストをどう削減していくかということも実は一方の大きい柱なんですが、平成二十六年度の予算を見せていただくと、低コスト化という部分の予算というのが結構削られているんです。

 ですから、例えば、平成二十年ですから六年前の、食料コスト圧縮アクションプランというのをつくったときの、具体的な品目ごとにアクションプランをつくられたじゃないですか。それが、今回、平成二十五年とか二十六年になると、革新的低コスト実現プロジェクトというのは、影も形もというよりも、違うものに全部予算が移行してしまって、どうもコスト削減とかそういうものに非常に不熱心になったような感じがするんです。

 これは、先ほどもお話ししたように、所得率が低下をしているというのは、やはり売り上げを幾ら伸ばしても経費のコストが上がっていくということを、少なくとも同じで、パラレルで動くような形まで持っていかない限りは、所得というのは、手取りはふえないわけです。

 ですから、そこは何でこんなに減ったのか、僕もよくわからないんですけれども、新たないろいろな、多収穫米の提言もさせてもらいましたし、今大臣がおっしゃったように、もう少し付加価値の高い薬草にシフトしていくとかいろいろなことがあるんですけれども、やはりコストをどう下げていくかということが、これも大前提にしておかないと、所得率が低下をしていけば、農家の方にとってみれば、売り上げが幾らあっても自分の使える金がないということは、それは本末転倒なので、ここはぜひもう一度省内で検討して、平成二十年の食料コスト削減アクションプランというものをもう一度、少なくとも見直していく作業をぜひ早急に指示していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

林国務大臣 平成十八年に、食料供給コスト縮減アクションプラン、こういうものをつくって、平成二十年には、品目別の生産コスト縮減戦略、これを作成したところでございます。

 委員御指摘のように、これによって、例えば、大豆作の耕うん同時畝立て播種技術とか、キャベツの機械化一貫体系、こういう取り組み事例が出てきておるのはあるわけでございます。

 また、生産資材費についても、品目共通の取り組みとして、低価格資材の提供、高性能農業機械の開発、実用化、土壌診断に基づく適正施肥の推進、こういうものも記載をされておられまして、例えば農研機構の、いろいろなセンターで、官民共同で実用化に取り組んでいる。

 また、これは我々だけというよりは、やはり大規模農家や団体、メーカーの関係者と一緒になって取り組んでいかなければなりませんので、こういう意見交換を行って、例えば、農業機械について、基本性能に絞り込んで低価格化を実現した輸出用の農業機械を国内展開することによって、二割、三割の農業機械価格の低下、こういうことの提案も受けておるところでございます。

 どういう予算の入り繰りで、本当に実態として減っているのかも含めて、せっかく後藤委員から今提案がございましたので、しっかりと、これは二本柱の大きな一つでございますので、必要な検討をさらに加えていきたい、こういうふうに思っております。

後藤(斎)委員 先ほどちょっと触れさせてもらったTPPの、日米間の大きな一つの、今週、来週が山になるというふうに思っています。

 ウルグアイ・ラウンドが大筋合意をして、いろいろな施策がつくられて、ことしでちょうど二十年という形になります。

 これは本当に簡単で結構なんですが、二十年前のUR交渉と今回のTPP交渉の共通点と相違点というものがあると思うんですけれども、その点について農水省はどのように評価、理解をされているか、簡潔で結構ですから、お答えいただけますでしょうか。

林国務大臣 九三年、確かに、おっしゃるように二十年たったわけです。

 ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉とTPP交渉を比べますと、共通点としては、どちらも、農産品、非農産品、サービス等、広範囲な分野で市場アクセスの改善を目指す。それから、シングルアンダーテーキングといいますが、全ての分野を一括して合意する、こういう原則であるというのが共通点だろうと思います。

 それから、相違点としては、ウルグアイ・ラウンドでは、関税、数量制限等の削減、撤廃による市場アクセスの改善、こういう目的であったわけですが、TPPでは、関税等の撤廃による包括的な市場アクセス、こういうことがホノルル合意でも述べられておるということ。

 それから、ウルグアイ・ラウンドは、まさに全体、百十カ国を超える世界各国の加盟国が参加して、共通の関税削減ルールというのを議論していたわけですが、TPPでは、十一カ国とそれぞれ二国間で関税交渉を議論している、こういうことが特徴としてはあるというふうに思っております。

後藤(斎)委員 大臣がお答えをいただきましたように、私も当時、本当に若いときに、その末端を担当させてもらいましたけれども、やはり一番言えることは、包括合意ということで、いわゆる国際競争力が強い分野と弱い分野が、大きい差が出てくる。特に、農業分野は、二十年たった今でも、国際競争力という部分では、なかなかその状況になっていないということだと思うんです。

 きょう、お手元に資料を配らせていただきました。ちょうどUR合意ができたときに、どのような国内対策を講じたのかということです。

 基本的な対策の考え方は、今まさに議論をしているように、国内生産の維持拡大であるとか、多面的機能であれば、住みやすく活力に満ちた農村地域の建設というふうなことで、大きく三つの目標を掲げ、これもほとんど、担い手への農地の過半の集積とか、そういうものを対策の目標として挙げながら、講ずべき施策ということで対応が進められました。

 当時、農業予算は今よりも多くありましたけれども、全体として六年間で何をするかということで、六兆円のUR対策というものができ、下の方の欄にありますように、対策事業というものが、農村整備、土地改良を過半としながら、それぞれの対策事業が講じられたということになっています。

 この評価というのは、後ほどお聞きをしますけれども、いろいろとプラスマイナスあると思っています。ただ、一つだけ言えるのは、このとき担い手への農地の集積を過半にするというのが、二十年たった今、何とか過半にまで来たというのはプラスだったというふうに思うんです。ただし、これはやはり既存の対策を何となく切り張りしたというような感じがやはり強いんです。

 ですから、私は、前回もお話をさせてもらったように、今回の経営体に着目した経営安定対策は、戸別所得補償の法的担保という部分と多面的な機能の部分を法定化するということは非常に正しいと繰り返し言っています。若干の違いがまだあるというのは、販売農家全域にするのか、それとも認定農家というものに絞り込んでいくのか、そして、再生産可能な水準というのを一万五千円と見るのか七千五百円と見るのかという幾つかの相違点は確かにある。

 生産コストの話や需要の部分もお話をさせてもらいましたけれども、次にTPPが、大臣に今聞いても、はい、あれは来週まとまりますよとは当然言いませんから、あえて愚問は言いませんけれども、やはり今回の議論を通じて、私は、経営体に着目、対象農家に着目したときに、何らかの影響は、日豪EPAについても、TPPがどの程度までまとまるかどうかという結論が具体的になっていませんけれども、当然のことながら、日本農業に対して何らかの、大きいか、中くらいか、小さいかは別としても、マイナスになっていくというのは、悪影響が価格面、品質面にあるということは、多分紛れもない事実だと思います。

 ですから、今回の議論やこの二法案というものを、どこかの段階で柔軟に法的担保を持つ仕組みをつくっていく必要が絶対にあると私は思っているんです。ですから、認定農家というのを、大臣が昨日誰かの質問の答えの中で、少しでも、融通無碍とは言いませんけれども、認定については市町村と、特例も含めて面倒見るよというふうなことを通じて、やはり交渉している段階で、当然、大臣の頭には、一方で、まとまったときにどうしようかというふうなことがあるはずなんです。

 ですから、私は、この二法案というのは、これからの日本の農業、農家、農地という部分について非常に大きな影響を持つと思うので、ぜひ大臣、こういうふうな対策というのも一つの立て方だと思うんですけれども、そうではなく、本質的に、コストを下げて、競争力を本当に持たせるのかどうか、需要をどう拡大するのかどうか、農家という観点について、どういうふうに農家の方たちにその悪影響を個別に与えないようにするのかというのは、例えば、財政措置を講ずれば、経営安定にしても戸別所得補償にしても、単価を上げていけば、当然受け取りの金額は財政出動の中で多くなるわけですから、そういうことも含めて頭の整理を一方でしておいていただかないと、腰だめや延長線の対策では絶対だめだと僕は思うんです。もうこれは千載一遇なんです。

 ですから、法律も確かに認定農家というように書き込んでありますけれども、それをやはり柔軟に現場で判断できるような仕組みというのを本当は政省令か何かでやるようなことも含めて、僕は本当は考えてもらいたいと思うんです。

 大臣、もう二十年たって、UR対策のこの大綱をごらんになって、事業をどうするかということと、今大臣がお考えになっているような今回の二法案、さらには、来週以降のTPPの問題も含めて外交問題がどういうふうに決着をしていくのか、一定の結論を得るのかということも含めて、大臣の御見解をお伺いしたいというふうに思います。

林国務大臣 基本的な頭の整理の仕方といいますか、考え方の筋道は全く一緒である、こういうふうに思っております。

 まだ、日豪EPAが大筋合意をして、これから詰めて、実施に入っていく段階、またTPPは、今委員からもお話があったように、交渉途中ということでございますから、その影響云々については具体的に申し上げることはいたしませんけれども、ウルグアイ・ラウンド対策の議論は、去年ぐらいは結構いろいろあって、中間評価をして、今まさに委員がおっしゃっていただいたようなところで、できたところとなかなかできないところがあった、こういう評価になっておるわけでございます。これと比べて、ざっくり言うと、やることのメニューは随分ふえているのではないかな、こういうふうに思っているんですね。

 したがって、まさに今委員がおっしゃっていただいたように、いろいろなものの組み合わせ、需要サイドを強くする、それから、きょうは、供給サイドも大事だ、こういうお話をいただきました。そういうことと、こういうようなウルグアイ・ラウンドのものがやはりあわせていけるような時代になってきている、こういう認識のもとで、もしいろいろなことが起これば、そういうものにしっかりと対応していかなければいけない、こういうふうに思っております。

後藤(斎)委員 なぜこれを言うかというと、去年の臨時国会で中間管理機構が通過をしました。全般的な国の施策というのは、担い手に現行の五割から八割の農地面積をまとめていくというのが一つの大きな目標でした。

 全部の資料は持っていないんですけれども、先々週もらった中では、栃木県は八割で政府の方針どおり、茨城県は六六%、埼玉県は出ていません、千葉県は四六%、山梨はもっと低かったんですけれどもというふうな、やはり八割に行っていないところが実はあるんです。

 ですから、実際、担い手の目標面積をどうするかということも、実は現行の中間管理機構の部分でも下回っているような目標を、これから農水省がどういうふうに指導していくのか知りませんけれども。

 やはり収入保険という、これは実は二十九年度まで、七千五百円になるのかどうか別としても、クロスをする時期でいうと、大臣は二十九年度に法案を出すというお話をされたんですが、一年間くらいの周知期間は私は欲しいんです。私は欲しいというか、みんながそう思っているはずなんです、急に移行しても困りますから。

 ですから、大臣、一年早めていただきたいんです。二十六、二十七で設計をして二十八年度にすると、ちょうど一年間。これから、来週か再来週か、連休明けにはめどがつくと思いますけれども、仕組みが法的にできますから、それをベースにして、やはり一年は、急に違う方向に行っちゃっても困るので、そういう意味では、二十九年度じゃなくて二十八年度に法案を出すようなスピード感でやっていただかないと。

 これから、今週、来週にかけてのTPPの行方も含めて、きちっとしたメッセージを発してもらうということと、現場では、中間管理機構の数字を今言いましたけれども、ちゃんと政府が目標に掲げたものになっていない現状もあるということも含めて、やはりそれを支える仕組みが必要だと私は思うので、最後に大臣の御見解をお伺いします。

坂本委員長 林大臣、簡潔にお願いいたします。

林国務大臣 これは、最初に予算委員会で宮腰委員にお答えしたところでございまして、やはり調査をして、そしてフィージビリティースタディー、加入、申告までワンサイクル、これはやりませんと、なかなか制度そのものは固まっていかないのではないか、こういうふうに思っておりますので、全て順調に進めば二十九年度、こういうふうに申し上げておりました。

 したがって、これより前倒しというのは、絶対やらないというつもりはありません、検討はしますけれども、大変難しいのではないかなというふうには申し上げておきたい、こういうふうに思います。

後藤(斎)委員 終わりますけれども、来週、その辺についてはまたきちっと対応させてもらいます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、松田学君。

松田委員 日本維新の会の松田学でございます。

 農水委員会での質疑は、本日が初めてでございますが、よろしくお願いいたします。

 今般の法案も含めて、最近の改革は、四つの改革と言われているというふうに認識しております。一つは、産業政策の視点で農業を強い産業にする、もう一つは、地域政策ということで日本型直接支払いということだと思います。一連のこういった流れを見ていますと、かつて、日本の農業保護の手段というのが国境措置というものでなされていた、それをこれから、直接支払いといいますか、財政方式に徐々に移行していくのかな、しかも、デカップリング方式といいますか、そういった流れにあるように私は理解していますけれども、それに関して幾つかの御質問をさせていただきたいと思います。

 私たち日本維新の会は、挑戦する個人を応援するといいますか、個人であれ企業であれ、頑張ろうとする人が頑張れるような社会をつくる。その点からいうと、農業というのは、どうも職業選択の自由が余り許されていないような、参入がなかなか難しいという点をどうするかという論点、それからもう一つは、日本維新の会は一般消費者の立場に立つということで、近年の農政が、どちらかというと生産者側、集票を意識した政策が中心だった、これを消費者がステークホルダーの政策にしていくというのが私どもの立場ではないかと思います。

 そういった点も含めての御質問で、まず最初に、私は昨年の通常国会の予算委員会で林大臣にちょっとお聞きしたんですが、そのときに、TPPのことについて、これは一般的に考えると、競争力というのは、農家の規模ということでいえば、日本、EU、米国、オーストラリア、それぞれ桁が違う一戸当たりの面積なんですが、規模だけではなくて、競争力を規定するいろいろな要因があるのではないかというお話を申し上げたんですが、そこは時間切れで、それで終わってしまったんです。

 それに関して言えば、例えば国土の狭いオランダなんかは、アメリカに次いで農林水産品と食品の輸出額が多い。あるいはイタリアも、日本より国土は狭いけれども、日本よりはるかにそういったものの輸出が多いというように、必ずしも面積ということだけで、もし面積だけであれば、EUなんかオーストラリアと競争して壊滅しているはずなんですけれども、それ以外でいろいろな要因があると思うんですね。

 ですから、日本が零細であるから、こういった高関税で守るという必然性があるかどうかというのは、いろいろ疑問があるかと思っています。

 その中で、今般のTPPで、いわゆる関税撤廃の聖域を守るということに専ら関心が当たっているわけですけれども、これは何も、もし関税の話をするにしても、急に撤廃するという選択肢は多分ないと思うんですね、国際交渉というのは。むしろ、長期的に考えて、早く財政方式への転換を進めながら、競争させないんじゃなくて、財政方式でげたを履かせて、競争をさせて生産性を上げていく。その生産性が上がるに応じて、段階的に長い年月をかけて関税を引き下げていくということであれば、農業を保護すると同時に、壊滅的な打撃を受けることもなく生産性が上がってくる。これは、経済的に考えたら、一番合理的な方式ではないかと思うわけなんです。

 こういった政策の長期的な展望をなぜ農業関係者になかなかお示しにならないのだろうかというのはかねてから私の疑問でございまして、一昨年、「TPP興国論」という本を上梓させていただいたんですが、そこでもそういうような主張をさせていただいたんです。

 逆に、こういった長期的な、段階的な措置によっても日本の農業が再生しないのであれば、本当に日本の農業はもうだめになると言わざるを得ないんですが、この点についての大臣の基本的な御認識をお聞かせいただければと思います。

林国務大臣 一般的に言って、農産物の国際競争力というのは一体何によって規定されているか、こういうことを考えますと、今委員がおっしゃったように、やはり価格と品質と両方ある、こういうふうに思っておりまして、今、まさに消費者というお話がありましたけれども、買う人がどちらを重視するか、こういうことではないかというふうに思っております。

 例えば、トウモロコシとか小麦、これは加工原料ですので、いわゆるコモディティーでありまして、見た目とか実際直接食べてどうこうというのではございませんので、こういうものは価格が非常に重視される。結果としては、こういう農産物に関しては、単位面積当たりの収量とか生産コスト、これが競争力の大宗を占めると言っていいと思います。

 一方、例えば果物とか、農産物ではありませんが、加工食品等々でありますと、見た目ですとか味、鮮度、こういう差別化が容易でありまして、手間暇をかけて生産をしたもの、さらに言えば、ここにブランドというものが加わるのではないか、こういう付加価値の向上というものが競争力に大きな影響を与えておるわけでございます。

 オランダの例は、どちらかというと、加工用原料のようなものやコモディティーに近いものを、私も見に行きましたけれども、大きなグラスハウスをつくるようなことによって国際競争力をつける。一方、今委員がおっしゃったようなイタリアやフランスというのは、小麦やブドウを輸出するわけではなくて、パスタ、ワインにして輸出をして、輸出を非常に大きなボリュームでやっておられる、こういうことでございますので、これは後者の例かな、こういうふうに思います。

 したがって、まさに委員がおっしゃるように、作物ごとにいろいろ異なるものでございますので、単に面積とか規模とかそういうものだけに特化するのではなくて、それぞれに応じて、サプライサイドとディマンドサイド、両方をしっかりと見ていく、これが大事であるというふうに考えております。

松田委員 考えてみると、二十分というのは余り時間がないので、次の話題に移らせていただきます。

 私は、農業というのが、いろいろな方に聞いてみますと、このままでは日本の農業が崩壊してしまうということを農業従事者自身が、ほとんどの方がそう思っていらっしゃるという実態があるように伺っています。これは、農業が産業としての魅力を高めて、やる気のある担い手が入っていくようにしていかないといけない。

 その試みとして、これは産業としての農業とはちょっと違う観点になると思いますが、お手元に「農業を始めてみませんか」という裏表の紙が配ってあります。最近、農業が若い人にも大変注目されているという話を聞いておりまして、いわゆる農業というものが、単に経済的な動機というのではなくて、農に親しむ、農ある暮らしという言葉もありますけれども、人間的価値を追求しながら、経済的価値も同時に実現していくといいますか、いわゆる国民幸福度というものも考えていくと、これは非常に重要な分野になっていくという指摘もなされているところかと思います。

 神奈川県の南足柄市で、ある大変おもしろいことをやっている方で、もう御存じかもしれませんが、いわゆる普通の一般市民、東京に近いということもありますが、そういうサラリーマンをやっている方をどんどん農業に呼び込んで、ステップアップさせながら、やる気のある人にはいずれ就農していただく。最初は市民農園みたいなところで農業になじんでもらって、そして市民型農業、例えば、リタイアした人がそれで一応自立した形で農業をやっていく、さらには新規就農へとステップアップするということで、これをやっている方が古屋富雄さんという方です。南足柄市の農業委員会の事務局長をされていた方なんですが、兼業農家ではなくて、兼農サラリーマンという言葉とか、あるいはイ農ベーションという言葉をつくったりして、そういった本も出されて、割と全国的にも注目されて、テレビでも取り上げられたりしています。

 これは、二〇〇九年の農地法改正で、農地を取得する際の下限面積の五十アールを緩和して、地域の実情に応じて定めていいということを活用した一つの仕組みなんですけれども、これが注目されて、いろいろな自治体の方が次から次へと訪れるらしいんです。実際にこれと同じことをやった自治体は二つしかないということで、なかなかこれが普及していかないんですが、こういったチャレンジというのはモデルケースとして国の農政としてもバックアップすべきではないかと思いますけれども、大臣はどんなふうな御印象をお持ちでしょうか。

林国務大臣 若い方が、農ある暮らし、そういうものに関心を持っていただいている。これは、最近、三月に「銀の匙」という映画が公開をされましたし、五月の連休明けには、今度は林の方ですけれども、「WOOD JOB!」という映画も公開される、こういうことにもあらわれていると思いますし、私が最近聞いたのは、農あるタカは爪を隠すという話でございまして、農業の農という字を使って、爪を使わなくてもよくなるんだ、落ちついた、安定した生活になるんだと。おもしろいなと思いました。

 今の南足柄市においても、まさに今委員が御紹介いただいたように、最初からがっつり本業でやるという手前のところをつくっているというところが三本柱として非常におもしろい、こういうふうに思っております。

 自治体の就農支援施策の調査を国で行っていますが、これによりますと、二十五年度ですが、この南足柄市の取り組みを含めて、全国で百二十六市区町村、区もありますが、こういういろいろな農地利用支援の取り組みを行っております。

 農地中間管理機構、もう既にスタートしておりますので、こういうものも一緒に活用していただくことによって、よりこの取り組みが円滑にいく部分が出てくるというふうに思っておりまして、我々としても、こういう優良事例について公表する、情報の交流をしてもらう、横串を刺す、横展開をする、こういうことをしていきたいと思っておるところでございます。

松田委員 大臣におかれましては、ぜひ今の御答弁のとおり、お願いしたいと思います。

 それから、これを進めている古屋さんという方がずっと唱えているのが、日本にもドイツのような農業マイスター制度を導入してはどうかということなんですね。

 ドイツという国は、そもそもいろいろな産業、三百ぐらいあるといいますが、マイスター制度がありまして、法律で定められた産業については、マイスターの資格がないとその業務ができない、開業できないと言われるぐらいの仕組みなんですけれども、それがドイツの産業発展を支えてきたと言われています。

 そのマイスターの職種の一つに農家というのがあって、その資格を取るためには、職業訓練というものをしながら、農業学校を卒業して試験に合格する。もちろん、農家の資格がない人でも農業をできますけれども、そのマイスター農家という資格を取りますと、後継者を見習いとして雇って育成するということができるようになるということで、後継者の確保にもつながっていくということのようであります。

 一般的に、マイスターという資格を取りますと、社会的にもステータスが高くて、非常に誇りを持ってやっていけるということもあるわけであります。

 日本でも、これから直接支払いへどんどんと移行していくとすれば、例えばこういったマイスター制度のようなものを充実させて、今般の交付金、ゲタ対策とかナラシ対策と言われていますが、そういった対象者、今般、面積要件を外して、認定農業者とか、あるいは集落営農に加えて認定就農者というのがあって、これもマイスター制度につながる第一歩のようにも見えるんですけれども、そういった形で、農業を誇りある専門職業のような形で再定義して、各地域地域が描いている農業の姿を実現する担い手として、市町村がチェックをしたり育成したりしていくというような仕組みをつくっていく。

 今後、どうせ国の直接支払いというのがふえていくのであれば、担い手を確保する上でも、多面的機能の発揮などの政策目的を達する上でも、農業を再生する道として、こういうことを考えてはいかがかという提案がございますが、大臣はどんなお考えでしょうか。

林国務大臣 まさにこの法案の審議の中でも、担い手に対策をするということと全ての販売農家にするかということが今までも議論になってきたわけでございますが、まさに我々の御提案しているものは、今委員がおっしゃったように、担い手に集約していこうと。

 マイスターは、委員の方が多分お詳しいと思いますが、ドイツでも、制度になる前から歴史の中で存在していた、これをしっかりと制度で後づけしていった、こういうことでありまして、農業においては、まさに今委員がちょっとお触れになっていただいたように、認定農業者制度というものが既に担い手を育成する制度としてもあるわけでございまして、これは、効率的かつ安定的な農業経営を目指して、農業者みずからが五年以内の経営改善計画を作成して、市町村が認定するという制度になっております。

 そういう認定をした方に諸施策を集中していく、これはマイスター制度と類似点があると思いますが、例えば、日本政策金融公庫のスーパーL資金による低利融資、それから農業経営基盤強化準備金制度による税制上の優遇措置、法人の場合、アグリビジネス投資育成会社による出資、こういうものを重点的に実施しておるところでございまして、ゲタ、ナラシに対しても、申し上げたように、認定農業者を対象としていこうと思っております。

 今後も、この認定農業者制度で、ちょっと触れていただいたように認定新規就農者制度、この前段階もつくって、こういう形でしっかりとやっていこうということを考えておるところでございます。

松田委員 戦後、保守政治の基盤としてあったのが零細農家だったと思います。零細農家を基本とする農業システムというのが既に行き詰まりをしているのが、一種の戦後システムの行き詰まりの一つがこれではなかろうか。戦後、農地解放というのは農地の所有者を地主から解放したということですが、今回は、零細農家から農地をやる気のある人に解放するというのがこれからの第二の農地解放ではないかというふうに私は思っているんです。

 そういった意味では、マイスターという名前をつけるかどうかは別にして、やる気のある人を中核にしながら後継者も確保されていくような姿に、今、親が農地を持っているから、それを受け継いだ自分が農業をやっている、それは本当に農業をやる気のある人がやっているかどうかわからないわけですが、その辺の施策を本当にやる気のある人が担う分野にしていくということについてのいろいろな対策を考えていくべきだろうということで、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 それから、もう一つ、戦後システムについて言われているのは、農協システムと言われているものです。これは零細農家の保護と一体だったと思うんです。

 私が先ほど申し上げた南足柄市の農協の幹部ともいろいろ意見交換をしたんですけれども、TPPなんて、そんなものは当然乗り越えなきゃだめだよ、そんなものを怖がってはだめだという、意外な、私も余り農協の人と接触したことがなかったので偏見を持っていたのかもしれませんが、意外な反応が返ってきました、やはり頑張っている方は非常に頑張っているというか。

 ただ、農協が古いからといって、農協を解体だとかいうのは、私はちょっと違うと思っています。それぞれ一人一人が自分のかけがえのない人生を背負っているわけですから、いきなり壊すと言われると、目前の小さな幸せといいますか、それにしがみついてしまう。これは既得権益になってしまう。やはり納得して進めるような大きな幸せをしっかりと描かないと、本当の改革にならないんじゃないかというふうに思っています。そういった意味で、農協が新たな道というか、存在、レーゾンデートルを見出せるような、そういう組み立てる改革が私は必要だと思っています。

 そういった意味で、林大臣はどんなような農協の将来像を描いているか。例えば、私が今申し上げたような、担い手をどんどん呼び込んで、サポートして、そして地域の農村の活性化のマネジメントの中にそれを組み込んでいくような、それを自治体と一緒に地域マネジメントしていくような農協というのも一つのあり方じゃないかと思いますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 おっしゃるように、そもそも協同組合が最初にスタートしたときの原点というのは、農家が集まって、共同購入をすることによって、そして共同販売をすることによって、農業所得を向上させる、こういうことでありましたので、やはり原点に立ち戻って考えるということが大事であります。まさに今委員がおっしゃったように、担い手と一緒になってやっていこう、JAさんが出されている、あの改革案というのもそういう方向性が出ているところであります。

 よく言われているのは、准組合員が正組合員を上回っているとか、成長産業化に十分な役割を果たしていないじゃないですか、こういう指摘があるのも事実でございますので、原点に立ち返った、個々のすばらしい取り組みが横展開して、そういった批判がなくなる、何よりも担い手から評価をされる農協、こういうものを目指していくのが基本であるというふうに考えております。

松田委員 もう、あっという間に時間が迫ってまいりまして、いろいろなたくさんの質問を通告させていただきましたが、また別の機会にと思います。

 私は、農村や農業が十年後、二十年後どうなっていくのかというのを、もう少し、一般消費者もそうですけれども、やはり農業当事者の方々に示すような政治でなければいけないと思うんですが、そこが、どうも、いろいろ見ていると、いろいろな交付金の改革とかがあるんですけれども、これがどういう効果を持っているのか、例えば、消費者にとってはどういうメリットをもたらすのか、あるいは担い手の確保でどんなメリットをもたらすのか、まだちょっとわかりにくいところが非常にあるというふうに私は思っています。

 そういった観点から、やはり政治というのは未来を提示して、それを競い合うのが政治だと思いますので、農業の分野についても、ぜひ大臣の将来ビジョンというものを語っていただきたいと思っています。最後に、大臣の農業の将来ビジョン、農村のビジョンのようなものをお聞かせいただければと思います。通告外ですが、済みません。

林国務大臣 今申し上げましたように、やはり需要というキーワードにこだわりたい、こういうふうに思っております。

 幾らつくっても需要はもっと先にあったというのを、きのう村岡委員からお示しいただいた写真で、国会議事堂の前の畑に芋をつくっていた、こういう時代があったわけでございますので、食料安保という意味でこういうのを忘れてはならないわけですが、やはり今の需要と供給がこういうバランスにある中で、需要に応じて、経営判断を持って、しっかりとしたものをやっていく、これが担い手が目指していただくべき姿であります。

 そういうものをつくっていくことによって、次の世代、若い方や女性も含めて、希望を持って入っていけるような産業、それに加えて、多面的機能の地域政策ということをきちっと組み合わせて、将来の農業像というのを描いていきたい、こういうふうに考えております。

松田委員 どうもありがとうございました。以上です。

坂本委員長 次に、岩永裕貴君。

岩永委員 皆さん、おはようございます。日本維新の会の岩永裕貴でございます。

 先ほどの後藤委員の質問ではないですけれども、朝からおにぎりを二つしっかりいただいてまいりましたので、きょうも元気に質問に移らせていただきたいと思います。

 私も、一度炭水化物ダイエットというのに取り組んだことがありまして、一週間ぐらいは大丈夫なんですけれども、やはり米を食べないと、医学的にどういう根拠があるのか全然わからないんですけれども、かなり頭がくらくらしてくるんですね。そして、これはあかんということで、また米を食べ始めると正常に戻ったということで、やはりお米って大事なんだなということを改めて感じた経験もございます。

 そして、先ほど質問者の中の加藤委員が、花嫁さんをいただくというようなお話をされておりました。私は、それを伺っていて、本当にそのとおりだなということを感じました。

 この委員会の中でも、出口の政策論について、いろいろな統計やデータを用いてさまざま議論が重ねられているわけなんですけれども、やはりその出発地点、問題というか課題の根幹はどこにあるのかということを常日ごろから共有しておくこと。そして、その問題点というのが、食の安保であるとか、さまざまな問題点はあるんでしょうけれども、やはり現場に立ち返ったときには、花嫁さんをいただくというようなお話であったりとか、私の地元でもさまざまな課題というのがあるんですけれども、そういったところをしっかり共有しておかないと、政策を語る上で、やはりちぐはぐなことが起きてきたり、足並みがそろわないことが起きてくるんだろうなというふうなことを改めて感じさせていただきました。

 これは最後の方に質問をさせていただこうかと思っていたんですけれども、そうした話の流れの中での話でもありますので、一点お伺いをさせていただきたいんですが、農林水産省の職員の皆さんは現場の実習というのをされているのかどうかということについて、何か仕組みとか制度とかいうものがあれば、ちょっと教えていただきたいんです。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省の職員に対する研修に当たりましては、特に、我が国の農業が地域的にも直面する課題が非常に異なっているということもございまして、先生御指摘のとおり、現場の実態をきちんと把握するための研修というものを常日ごろから行っておるところでございます。

 それぞれのフェーズにおきましてやっておりますが、まずは、新人職員を対象にいたしまして、我が省が持っております実習の圃場でのトラクター運転ですとか田植え等の農作業の実習、こういったものを入省時にきちんとやるということ。それから、入省二年目の職員を対象にいたしまして、一カ月間農林漁業者の御自宅に泊まり込みをさせていただきまして滞在研修する、農村研修という制度がございます。それからさらに、係長ですとか課長補佐に昇任をしていく段階で、その都度、農業者の方々ですとか食品産業の方々からいろいろな課題なり現場の苦労話といったようなものを学ばせていただくという研修を実施しております。

 特に、先生御指摘の現場という意味では、入省二年目の農村研修というものがございまして、ここでは、一カ月間農林漁業者のお宅に泊めていただきまして、そこでしっかり農作業体験をやらせていただくとともに、地域の農林漁業者の方ですとか農協の方々、あるいは市町村行政の方々としっかり意見交換や交流をさせていただくというようなことで、現場感覚を身につける研修を行っているところでございます。

岩永委員 ありがとうございます。

 きのう、少し農水省の方とお話をさせていただいていると、職種によってはそういう研修もありますということをおっしゃっていたんですが、これは全ての職員さんにされているということでよろしいんでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今の農村研修でございます。

 これは、まず、本省で採用されました方々で、二年目に本省にいる職員のうち、総合職という、昔の1種職員でございますけれども、その方々については全員、それから、昔の2種、3種、今一般職というふうに言っておりますけれども、その方々につきましては、希望がある方々を対象としてやらせていただいておるところでございます。職種等にかかわらずやらせていただいているところでございます。

岩永委員 農政の大転換期と言われている時期でもございますし、ぜひ、これは大臣、やはり全ての職員の方々が一度、少なくとも数週間は現場に入っていただいて、先ほどから申し上げております現場感覚というか、問題意識の出発点はどこにあるのかということを共有していただくということも非常に大切なことだと思うんです。

 全ての職員さん、非常に忙しくされているのはわかるんですけれども、そうした期間を設けて、必ず全職員さんがそういう現場に一度入って、農家の皆さんと泥だらけになりながら問題意識の出発点を共有するというような制度、仕組みも大切だと考えるんですが、大臣の御見解はいかがでしょうか。

林国務大臣 今総括審議官からお答えしたように、入省段階二年目ということでこういう研修をやっておりますので、大変大事なことだ、こういうふうに思います。二年目は、一カ月ぐらい農林漁家のお宅へとお泊めいただいて、やる、こういうことでございます。

 書類で読んだりということも、知識も大事ですけれども、やはりその場の雰囲気、そういう方がどうやって日々努力をしておられるかということに直接接するという意味で、大変大事なことだと思いますので、こういう研修にしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

岩永委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをいたします。

 続いての質問に移らせていただきますが、前回、コンパクトシティーと農政の多面的機能、特に、集落を維持していくという部分について、少しその足並みというか方向性、ベクトルがずれているんじゃないかなということについて問題提起をさせていただきました。そのときには、大臣から、集落から人が出ていくということは、そもそもコンパクトシティーでは考えていないんだよというような御見解を賜ったんですけれども、コンパクトシティーというものを勉強するというか法律を見ていくと、やはりどうしても腑に落ちない部分が私にはあるんですね。

 というのは、ちょっと具体的に申し上げますと、例えば私の地元地域、甲賀市というところがあるんですけれども、この甲賀市は人口が十万人ぐらいの町でございます。旧町五つが合併をいたしまして、甲賀市というものになりました。コンパクトシティーの考え方は、甲賀市の中に大きな拠点を一つつくっていこう、そして、旧町単位の拠点を、甲賀市の場合でいうと、一つの拠点以外に四つぐらいをつくって、そこに中心市街地をつくっていって、住居の移動なんかもしていこうということなんですね。

 でも、皆さんも御承知のとおりだと思いますが、旧町の中にも小学校区というのが五つから八つぐらいあります。私は、それのことを集落というふうに呼ばせていただいていまして、その小学校区単位の集落から人が中心市街地に出ていくようなことを誘導している法律ではありませんかということをお伺いさせていただいたんです。

 これについて、大臣の御見解というか、コンパクトシティーに対する考え方、それでも集落から人は出ていかないんだよということをおっしゃった、ちょっとそのあたりのイメージというか背景を教えていただきたいんです。

林国務大臣 これは、前もお話を申し上げましたように、一義的には国土交通省の施策でございますので、国土交通省に直接お聞きいただくのが一番いいことだとは思いますけれども、私の理解の範囲では、都市の市街地における都市機能の集約化を図るものである、したがって、周辺の農村集落から都市へ人口の流出を意図したものではないと理解しております、こう申し上げました。

 コンパクトシティーがあるなしにかかわらず、一般論として、農村から都市へ人口が移動する、逆も最近は若い人を中心に出てきているということですが、このことを申し上げているわけではなくて、このコンパクトシティーという施策は、都市の中での集約化を図るということを国交省でやられておられる、こういうふうに申し上げたところであります。

岩永委員 ありがとうございます。

 国交省の方ともさまざまな協議をしていく中で、どの都市がとか、どの地域がということは一概には言えないということをおっしゃっていまして、国交省も、集落を守っていくんだということはおっしゃっております。

 大臣と同じような御見解は示されているんですけれども、では、どのぐらいの規模からコンパクトシティーというものを推進していくんだというと、やはり対象は全自治体になるわけで、イメージとしては、やはり十万人規模の地域からコンパクトシティーというものも取り入れていっていただくとありがたいし、地元の首長さんなんかもそういったニーズは六割ぐらい持っていらっしゃる、コンパクトシティーに対する期待は持っていらっしゃるということでありました。

 集落の維持ということを考えるときに、コンパクトシティーとどういうふうな関係があるのかということを私も自分の地域に当てはめたときには、どうなるのかな、どの辺の人を中心市街地に居住を誘導していくのかなというようなことなんかを考えながら、ちょっとまだ答えというか結果というか、地元の皆さんにどういうふうに説明をしたらいいのかなというようなことも悩んでおりましたので、こういったことを聞かせていただきました。

 これも少し関連する問題ではあるんですが、多面的機能の法案につきまして、自民党さんが野党時代に提出した、農業等の有する多面的機能の発揮を図るための交付金の交付に関する法律案というところでは、調べさせていただくと、集落等の地域社会の維持というものが明記をされていたということでございますけれども、本法律案にはその集落等の地域社会の維持が明記されていないということでございます。このあたりについての理由、背景を御説明いただければと思います。

小里大臣政務官 農業の有する多面的機能につきましては、平成十三年の日本学術会議の答申におきまして、地域社会、文化の形成、維持に果たす機能も位置づけられているところであります。

 そしてまた、御指摘のとおり、自民党法案でも、集落等の地域社会の維持を多面的機能の定義規定において例示として掲げているところであります。

 一方、政府提出法案にはこれが例示されていないわけでありますけれども、これは、いわば上位法であるところの食料・農業・農村基本法における多面的機能の定義、これに即して規定したということによるものでありまして、当然、学術会議で示されたような集落の維持に果たす機能、これも頭に入れて運用を図っていくべきものであります。

岩永委員 集落等の維持は必要であるというような御見解だと考えます。

 私も、集落というものを今後維持していくことは非常に大切であるというふうに考える者の一人なんです。

 それで、今地元の地域でも、私の同世代、三十代、四十代の若者が積極的に農業に参画をして、新しい農の改革というものを進めている若者がたくさんいるんです。彼らとお話をさせていただくと、自分たちの生活のために農業をしているというのはもちろんなんですけれども、やはり地元地域の集落というものを維持するためにというような正義感をかなり強く持ってやっている若者がたくさんいます。集落をいかに維持していくのかということについて頑張っているまちづくり団体、NPO団体もたくさんございます。

 なぜかというと、集落を守るということ、そして、最近出てきている、人と人とのつながりとか地域住民の関係性が希薄化しているとかというような問題が、観光面であったり、子育てであったり、介護であったり、消防であったり、災害であったり、文化、お祭りであったりというところにかなり大きな影響を出してきている、だから、農業を通じて地域の集落を守っていくんだというようなことなんです。これは、逆に言うと、集落を維持するために農業というものを自分たちはやっているんだよというような、かなり強い正義感を持って農業に取り組んでいる方が非常にふえてきたなというような印象もございます。

 再度大臣にお伺いをいたしますが、集落の維持ということについて、農林水産省としてそこの重要性というものをどのように御認識いただいているのかということを改めてお伺いいたします。

林国務大臣 我が国の人口が、これは委員からも、前回ですか、少しお話をいただいたところでございますが、残念ながらと言っていいと思いますが、減少が続く、こういう見通しでございます。

 農村地域では、私の地元もそうですが、既に高齢化、人口減少、これが都市に先駆けて起こっているわけですね。したがって、農業の振興と集落機能の維持、こういうのは切っても切れない関係にある、こういうふうに思っております。

 農業というのは、御案内のように、共同で、集落の皆さん総出でいろいろなことをやって地域資源の保全管理というのをやって、その上にやはり農業が成り立っている、こういうことであります。集落は、農業生産活動をやっているだけではなくて、今お話があったように、お祭りをやったり、暮らしの現場でもあるわけでありますので、集落あっての農業であり、農業あっての集落である、こういうことでございます。

 したがって、地域の実情に合わせて、それぞれの地域の事情はいろいろあると思いますので、産業政策のところと地域政策のところ、いろいろ政策のメニューはありますので、これを一番いい形で組み合わせて、現場に即した形で、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村、こういう実現をしていくこと、これが大事だと思っております。

岩永委員 ありがとうございます。

 集落というものを人口減少を迎える中でいかに維持していくのかということは、非常に難しい課題だと思います。これは、農林水産省だけではもちろん解決のできない、大変大きな課題でもあります。先日も、参考人の皆様方に、そのあたりについて、実際、現場からどういうふうな感覚を得ていらっしゃいますかという質問をさせていただいたところ、やはりどなたも明確な答えは持っていらっしゃらない。非常に難しい、大きなテーマだなということであります。

 もちろん、我々政治家としても、集落というもの、そして過疎地域というものをどういうふうに国の施策の中で考えていくのかということを真剣に考えなければならない時期でもあろうかと思います。そんな簡単に結果が出るものではないですけれども、農という観点から、集落、戦後日本はいろいろなことを産業化の中でなくしてきたというような議論もさまざまな分野でされています。だから、農業ももちろん産業化を目指すわけなんですけれども、やはり大切な地域のつながり、根幹、文化というものを守るための努力というのも私たちは戦後の教訓から学んだ大切なことであろうかと思いますので、そういった部分についても、ともに我々の世代もしっかりと問題意識を持って、今後も多面的機能、課題に取り組んでいきたいと思います。

 もう一問させていただきたかったんですが、時間が参りましたので、これにて終了をさせていただきます。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀でございます。

 まず、流れ的に私もお話ししようかなと思っておりますが、私は、きょうは朝御飯を食べられませんでした。いつもより起きる時間が、ちょっとだけ予定より遅くなってしまったがゆえに、そんな状況だったんですけれども、理事会におくれないようにと思いまして、その上に走ってきたこともあって、今、右の腓腹筋、ヒラメ筋、ふくらはぎの筋肉なんですけれども、このあたりがちょっと疲れているということなので、この後、お昼並びに夕食で、お米でもってエネルギーチャージをしっかりしようかなというふうに思っております。

 それで、きょうは時間も短いので、聞きたいことはたくさんあるんですけれども、まず最初に、きのうの御答弁で、ちょっとわかりにくかったなということがあったので、再度質問させていただきたいんですが、これは大臣にお伺いします。

 民主党さんの戸別所得補償の根拠というのは、恒常的なコスト割れをカバーしていくという思想ですということに対して、政府案というのは、このコスト割れについてはどのようにカバーするんですか、カバーしないんでしょうかというようなことをきのうお伺いしたと思います。

 そのときに、私は農業所得についていろいろお話ししましたが、若干数字が正確ではなかったと思うので、改めて申し上げます。

 農水省の出している資料というか、これは平成二十二年度の食料・農業・農村白書の方にありますが、大体三ヘクタールを耕作している農家について、戸別所得補償に入っていない農家の場合は、農業所得が三十六万円という数字が出ております。一方で、所得補償モデルに入っているという加入農家についての農業所得が、これは主食用米と大豆を組み合わせて三ヘクタールにしているパターンですが、これが八十九万円ということになっております。

 いずれにしても、こういった形で、農業所得だけでは十分にやっていけるのかどうかということが私の中で物すごく懸念があるんです。

 そうすると、少なくとも、戸別所得補償では、その辺の農業所得という意味でいえば、かなり農家の皆さんにとっては安心材料になっているんでしょうけれども、それがなくなるということで、では、このコスト割れの部分をカバーしないということは、今後、やはり農家の皆さんには兼業でやっていただかなきゃいけない、そういう状況をある意味黙認せざるを得ないのか。それとも、だからこそ、そういったところはどんどん農地を担い手に集積していってということにしていきたいのかという点について、大臣、改めて御意見をお伺いしたいんですけれども、お願いします。

林国務大臣 前回申し上げましたように、やはり税金を使ってやる政策ですから、やることに対する合理的な理由、これが必要であるということがまず第一点であります。

 米については、いわゆるゲタを履かせる必要がないということ、それから、そもそも需要を上回って潜在生産力がある、こういうことから、コスト割れ補填をする合理的な理由はないということでありまして、そもそも、四年前以前はやっていなかったということであります。

 したがって、米農家については、規模の小さな階層ほどコスト割れが大きくなっているのは御指摘のとおりで、数字であらわれているところでございます。逆に言うと、規模の小さい農家まで含めて全部コスト割れ補填を行うということは、担い手への農地集積の妨げになる、こういうことでございまして、コスト割れ補填を行わない方が農地集積が進む、こういう効果はある、こういうふうに考えております。

林(宙)委員 そういったことで、集積を進めていく一つの根拠でもあるのかなというふうに思っています。ただ一方で、では、そういった状況を、きのう、農地中間管理機構が一つの手段になり得るんじゃないかという話はしましたが、私としては、それだけで本当にうまくいくんだろうかというところはやはりあると思っているんです。

 ですので、できれば、今後の検討材料になるのかもしれませんが、やはり農地集積というのは、もっともっとうまく、力強くドライブしていくスキームというのがあってもいいんじゃないかなと思います。

 質問ではないつもりでしたが、もし御答弁いただけるようであれば、お願いします。

林国務大臣 多面的機能支払いということについて、構造改革を後押しするような面もある、こういうことを申し上げております。

 まさに、担い手、人・農地プランでお話しして、こういう人に任せていこうということがあった場合、中間管理機構によってその人に集めていく。ただ、この人の悩みといいますか、農地の規模が大きくなりますと、水路の補修であったり、そういうものもふえていくわけですね、面積が大きくなりますと。したがって、それを全部やれるかな、こういうことがあるわけでございます。

 したがって、多面的機能支払いというのは、集落で、皆さんでやっていただければ、農業以外の方、自分が耕作をしていない人でも当然いいわけでございますから、今までは同じ規模でやっていて、一緒にやっていた作業を、そのままの人たちでやるということに対して支払いができる。一方、耕作そのものは担い手に集中するということが可能になる。

 そういった意味では、中間管理機構はもちろんでございますが、多面的機能支払いの導入もそれを後押しする効果があるということも申し上げておきたいと思います。

林(宙)委員 全くそのとおりだと思うんですが、それは集積をした後のことなんじゃないのかなと思っているんですよ。

 要は、そこに至るまでに、では、農地を出したいですか、出していただけますかというところのインセンティブということを私は考えているわけです。いろいろな方法があるとは思うんですけれども、それに対して、恐らく今は中間管理機構だということでお考えだと思いますので、その効果というのも今後見ていきながら、それは検討していただきたいなというふうに思っている次第です。

 きょうは時間が余りないので、今のお話も本当はもっと突っ込んでお伺いしたいところもあるんですが、次の質問というか、衆法提出者の方にお伺いしたいと思います。

 戸別所得補償の直接支払いという側面においては、私たちも納得しているところはあるんです、そのやり方自体というか。ただ、私たちも、済みません、言葉は悪いですけれども、さんざんばらまきと言って批判してきたところがあります。

 では、その根拠は一体、中心的にはどこにあるのかというと、私たちの場合は、戸別所得補償を導入する前、それは、まだ自民党さんが民主党政権になる前の政権までやってきたことということで、そのときの米価水準だったり、補助というか交付金の水準だったりということを前提にして、そこからある程度、生産調整を廃止することで米価が下がることを前提に、そこに対しての支払いをしていく、直接支払いをしていくという意味で、直接支払いをやるべきだということを言っていたわけなんです。

 民主党さんがやられた戸別所得補償制度というのは、済みません、いろいろな深い理由はあると思いますけれども、形上、その前提で、米価が変わらない、そのほかの転作等々に使う補助金なども変わらないという前提で、そこにぽんと戸別所得補償だけ乗っけてきたという形になっているんです、追加的に。この部分だけがそっくりふえている状態だということで、私たちはばらまきだというふうに言ってきたわけなんですが、これについてはどのようにお考えになりますか。

玉木議員 いろいろ御批判をいただくんですけれども、まず、私も予算をずっと見てきた立場からすると、民主党政権下で、農林水産省の予算ほどペイ・アズ・ユー・ゴーを徹底したところはないと思いますね。その財源をどこから持ってきたかというと、多くはいわゆる土地改良を初めとしたNN予算を削ったということを言われましたけれども、農業予算全体の中では、決して、そのことが加わったことによって、その分だけふえているものではありません。

 考え方なんですけれども、我々は、販売価格と生産コストの恒常的な赤字を埋めようというのが一つの発想でありました。では、この制度を入れる前はどうだったかというと、もちろん、その中でも大規模をしたり、制度を入れる前から恒常的な赤字がない経営体ももちろんあったと思います。実際、ありました。しかし、多くの農家が、特に、規模の小さい農家が恒常的な赤字に苦しみ、農外収入を入れ、中には、年金もそこに投入しながら農地維持を何とかやってきた、そういった現状に鑑みて、そういったところについてはしっかりと支援をしていこうということで導入したわけであります。

 ですから、今後、もし引き続き政権を担えていれば、もちろん、制度上改めたらいいなと思ったところはいろいろありました。ただ、まず、そういった恒常的な赤字の部分をしっかりと補うことによって、構造改革を進めていく上でも、その前提となる農地がどんどん耕作放棄になったり、営農継続をできない人がふえて、すぐ農地がなくなってしまったのでは構造改革も進みませんので、その意味では、そういった日本の農業の現状を捉えて緊急に対応したというのが我々の制度導入の趣旨でございます。

林(宙)委員 そうですね。農地を維持するという点も含めて、やはりコスト割れというのを何とかカバーしよう、そういう思想も私はあり得べき思想かなと思います。これは、とる立場によってやはり違ってくるんじゃないかなというのはありますので、そこ自体を全くなしだということを私は言うつもりもありません。

 もう一つお伺いしたいのは、やはり選択的生産調整という概念のところなんですね。

 今回、政府案の方では、生産調整というのをやめる、何年後かにやめて、農家の皆さんが自主的にどのぐらいつくったらいいのかというのを考えられるようにしましょうと言っているところ、これが一つ改革としては非常に大きい要素だというふうにも言われているわけで、私も、確かにそのとおりだろうと思うところはあります。

 一方で、そうすると、戸別所得補償法案の方の選択調整というのは、その観点からいくと、政府案よりも、改革の度合いというか、それが少し弱いんじゃないかなととられると思うんですけれども、改めてこれの意義について伺いたいんですが、お願いいたします。

玉木議員 お答え申し上げます。

 林先生も、生産調整というのは、やはり何かやる気のある農家のやる気をそいでしまう、例えば、いっぱいつくりたいのに、そのことがあってつくれない、もっと輸出をしたいんだけれども、生産調整があるばかりに自由にできない、ある種、市場を曲げるというか、やる気をひん曲げる制度だというようなイメージで質問されているんだと思いますが、私は、実は、民主党政権が戸別所得補償制度の導入と同時にある意味制度として確立させた事実上の選択的減反制度は、むしろやる気のある人あるいは真面目に頑張る人を応援する制度になっていると思うんですね。

 それ以前の減反制度をちょっと対比して申し上げますと、以前の減反制度の最大の問題は、破った人が得したんですよ。

 どういうことかというと、一生懸命減反を努力してやるのに、参加しないで自由につくってやる人は、生産調整に参加していただいた方の努力で高く保たれている米価で商売ができます。加えて、そのプライスたるPを維持した、みんなの努力で維持したPを利用して、幾らでもクオンティティー、Qを拡大できて、フリーライダーの典型になれるわけですね。

 でも、減反に参加しないから補助がもらえない、損だと思うんですけれども、では、米価が下落したときにセーフティーネット的な補助が受けられないかというと、必ずそのときには政府が緊急買い上げに出てきて、七百億も八百億も突っ込んで買ってくれるんですよ。

 だから、参加しないことが、あるいは守らないことが経済合理的に有利なんです。つまり、真面目な方が報われなくなるんですね。

 これに対して、ペナルティー型の減反からメリット型の減反、生産調整に変えたことによって、参加している人は確実にそのことによってメリットを受けられます。破った人は、そもそも、もともと何もないわけですから、つくる人は自由につくってくださいということです。

 参加した人にメリットがある制度なのか、違反者にメリットがある制度なのかということで、この選択的な事実上の減反制度、選択制になったことによって、生産者の自由度や、あるいは経営判断の自由度というものをより高める効果がむしろあったと我々としては考えております。

林(宙)委員 今のお話は、もしかすると、今自民党の石破幹事長が農林水産大臣になったときに、ちょっと似ていることをおっしゃっていたような気がします。言葉がいいかどうかわかりませんが、正直者がばかを見るというようなところはちょっと考えなければいけないのじゃないかとたしか御発言されていたのを私も覚えていますので、そのことと同じなのかなというふうには思います。

 そうすると、確かにそのやり方というのは非常に合理性を持っているというところは私も理解はできます。ただし、先ほど御説明いただきましたけれども、それでもやはり既存のシステムにぽんと補助金を乗っけてきたのじゃないかというところは、私は、やはりまだ何となくそこの懸念は払拭されていないなと。

 これが、例えば恒常的なコスト割れというところをちょっと無視した場合には、それをなくした水準で考えたときの所得をベースに考えて、そこから、例えば若干米価を下げるような政策があって、そこを直接支払いしますよということだったら、私は理解はできるんです。つまり、その分米価が下がって消費者負担が減るわけですから、それでもって財政負担に置きかわるということであれば、私は、これは非常に合理的な直接支払いになるんじゃないのかなと思っているところはあります。

 もう大分時間も限られてきましたので、済みません、最後に、またこれも玉木先生にお伺いします。

 先ほどの答弁で、戸別所得補償については、いろいろな考えをもう一度見直す必要もあるんじゃないかという趣旨のことをおっしゃっていましたので、もし民主党政権というのが続いていたとして、この戸別所得補償制度はどういった点を見直さなければいけなかったか、見直していく必要があったかということについて、何かあればお願いします。

玉木議員 お答え申し上げます。

 私は、政権が続いていれば、三つやりたかったんです。

 一つは、固定払いのところの上に乗っかっている変動払いについては、これは明らかに保険の制度と類似しますので、生産者負担を求める保険制度として、現行のナラシと整理統合していきたい、これがまず一つでした。

 これは、今政府案の中にも入っておりますし、我々の法案の中にも入っておりますが、ある意味、政府においても実現するということなので、いいかなと思います。

 残りの二つなんですけれども、これは、地域別の交付単価にしていきたいなと思っていました。

 というのは、恒常的な赤字というのは、生産コストについては当然地域性が出てくると思います。ですから、販売価格と生産コストのギャップを埋めるというこの理念を追求するのであれば、恒常的なものですよ、サボってコストが高いのはもちろんやりませんけれども、長年にわたって一定期間データをとれば、その地域特性ごとの恒常的な赤字というのは算出されます。ですから、余り補填しなくていい地域と、一万五千円では結構足りないような地域が出てきて、ここについては、ある程度、市町村ごとにするのか、都道府県別にするのか、あるいは農政局ごとにするのか、いろいろな切り方はありますけれども、一定程度、地域ごとの的確な単価を設定していくように持っていきたかったなと思っています。

 三つ目は、関係しますけれども、真に補填しなければいけない農家と真に補填しなければいけない農地にこの制度をやはり長期的には限定していきたいというふうにも考えておりました。

 これにはやはりデータが必要で、本当に恒常的な赤字が生じている農家、作物は一体何なのか、それはどこにどういう形で存在するのかということをしっかりとデータをとった上で、本当に必要な人には厚く、既に、米であっても、補助の必要のない人、岩盤が必要なくやれる方も今現在いらっしゃると私は思います。そういうふうに、これは社会保障制度に多少似た面もあるのかもしれませんが、真に支援を必要とするところに限定していくようなことを、単価のデータの分析をしっかりと集積した上で、支援を重点化していきたいというふうに思っておりました。

林(宙)委員 どうもありがとうございました。

 そんな形で、いろいろと見直すべき点というのはあるんじゃないのかなと思っているんですが、ここまでいろいろと議論をさせていただいてきて、私自身も、ああ、なるほど、そういうことだったのかと思うところもあります。これは、政府案の方ももちろんそうです。ですので、あとどのぐらい質疑の時間があるかはわかりませんけれども、残った質疑回数でしっかりとそのあたりのところも明らかにさせていただいて、考えていきたいなというふうに思っております。

 では、きょうは以上で終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 本日は、まず、大所高所の議論をやらせていただきたいと思います。

 例えば、国土政策の観点も含めて、人口減少時代における農地のあり方ということでございまして、今、国土形成計画法ですか、これは国交省の所管だと思いますが、新たな国土のグランドデザインという議論も研究会で始まっているようです。このテーマというのが、人口減少時代における国土のあり方、人口減少していくから、結局、そこをしっかり結ぶような基盤整備が必要だという話もちらっとあったんですが、その本質はそういうところではなくて、いかに人口減少時代の国土の利用、あり方を考えていくかという根本哲学の問題が出てくるんだろうと思います。

 結局、今までは、人口がふえるから、都市の方から農村地域、農地に侵食してくる、そこをいかに守るかに追われていたという歴史だったんだろうと思います。これからはそういうことはなくなる。だから、人口減少時代では、いかに農地を耕作放棄地にならないようにしていくかというのは、これまでこの委員会で議論がされたところであります。

 こういうときに、農地を維持するというのは当たり前ですが、人口が減っていくから、そこに対する需要が国内は少なくなるだろうから、農地は減らしていっていいというふうにいうのか、それとも、農地は今のまま維持していくというのか、あるいは、人口が減るから、開発的な用途は少なくなってくるから、むしろ農地をふやした方がいいというのか、いろいろこれは根本的な今後の方向性というのがあるんだろうと思いますが、人口減少時代における農地のあり方というのは、大体どのようにお考えになっていますでしょうか。

林国務大臣 先ほど、人口が減少する話をどなたかのときにもやらせていただきましたが、やはり先に進んでいるわけですね、農村の方が。おっつけ都市も追いついてくるだろう、こういうことでございます。

 今委員がおっしゃっていただいたように、一方で人口が減るということは、食料の需要もその分減っていく、こういうこともございます。

 したがって、産業政策の部分としての農地と、それから多面的機能的な農地、結局、最後は農地は一つですから、切り分けるというのはなかなか難しいと思いますが、やはり両面からいろいろなことを考えていく、食料安保等を考えるときも、そういうことが非常に大事だ、こういうふうに思っております。

 こういうことも踏まえて、また、農政の大きな方向性を十二月に打ち出していただきましたので、こういうことをベースにして、現行の計画は食料自給率五〇%を目指すための農地ということで四百六十万ヘクタール強ということになっております。このことについても、食料自給率、自給力、こういうものとあわせて、しっかりと審議会でそういう論点を整理していただいて答申をいただきたい、こういうふうに考えております。

畑委員 これは、まさに農業の論理というか、農政の方からしっかりとリードしていただきたいなと思っています。

 実は、危惧するのは、国土政策なり日本全体のことを考えた場合には、今までもそうなんですが、コンパクトシティーの議論もさっき岩永委員からありましたが、国交省というか、開発の論理の方からいかに守るかというところでやってきたというのは、私はちょっと引っ張られてきたなと思っていまして、そこはむしろ農政の方からしっかりやっていただければなと思っています。

 結局、今回もコンパクトシティー等の国交省の政策があるわけですが、これは、そういうことが起こった場合に、農地政策とか農村政策、集落政策においてどういう影響があるかという受け身ではなくて、やはり、もっとこっちの論理で攻めていって、そこから動かすような発想があってもいいのだろうなと思っています。

 大臣、都市機能が集約されれば効率的な農業を行いやすくなるというお答えで、それはそうだと思いますが、今の問題意識からいうと、もっと連動しまして、都市計画と農村計画的なものが一体化していって、そこの連動を強めていってもいいなという気が私はしております。

 というのは、これは大きな話になりますが、日本には農振法があるんですけれども、集落整備法もありましたけれども、いわゆる農村地域を整序するような計画、法制というのは、実は余りないわけですね。

 一方、ドイツとかフランス、イギリスというのは、国土を全体として見たような法体系があって、都市・農村整備計画法みたいなものがあって、国土全体を俯瞰しながら、別に開発ではなくて、農地の論理も含めて、むしろ総合的に考えていくということがあります。開発不自由の原則から出発しているので、そういうのがあるという議論もあるんですが、今、実は人口が減っていくわけで、そういう法体系のあり方も抜本的に検討してもいいんじゃないのかなという気がしております。

 そういう議論をしてきたときに、個々の省の計画体系があるから、革命でも起きない限り一元化できないよという議論が、二、三十年前の田中内閣のころにあって、それでできたのが国土利用計画法の土地利用基本計画です。これは別に、それぞれの個別の計画の上の調整弁にすぎないわけで、かなり白地地域も残ったり、農業の論理が発揮される計画になっているかといえば、私も疑問に思っておったんです。

 結局は、そういうことも含めた法制の検討が必要だと思うんですが、これはこれで大きな課題なので、たちまち答えが出る問題ではないのでお聞きしないのですが、現状の認識だけ、きょうは事務方から聞いておきたいと思います。

 こういう人口減少をしてきた場合に、農村整序の法制として、現行の農振法とか農地法等がありますが、これに対する評価というのはいかがでしょうか。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 人口減少社会におきましても、国民に対する食料の安定供給の機能ですとか、農業の多面的機能の発揮の基盤であります農地の確保を図るということが重要であるということがまずございます。

 それから、他方、人口減少に対応するために、農村部におきましても、先ほどの御議論にもありましたけれども、日常生活に不可欠な施設、機能の基幹集落への集約ですとか、あるいは周辺集落とのネットワークの形成といったようなことが進みまして、それに伴いまして、土地利用の、大きく言えば再編とでもいいましょうか、そういった動きが出てくるということも想定されるところでございます。

 このような課題に適切に対応していくためには、農業上の土地利用と、それから非農業的な土地利用との調整を、一定のルールのもとに的確に実施するということが重要であると考えております。

 そういった面からいたしますと、優良農地の確保を基本として、非農業的土地利用との調整を行うための枠組みとして定められております農業振興地域制度、農振法、それから農地法に基づく農地転用許可制度というのは、人口減少社会におきましても、引き続き重要な役割を果たすというふうに考えております。

畑委員 日本の場合には、農振農用地区域の規制でまずやって、そして農転のところで抑えているという規制で、実は欧米と、特にヨーロッパと違うのは、ゾーニング制をとっていないわけですよね。

 これは、同じ効果が出ているからいいのかもしれないという気もするんですが、ただ、人口が沈滞してくる、つまり、ふえないようになってくると、土地利用もおのずからそんなに変わってこないようになる。そうすると、むしろ農業ゾーニングが必要じゃないかとか、それでいいんじゃないかという議論も出てくるんだろうと思います。

 結局、集約とともに守るということを打ち出す場合には、どういう農地体系がいいのかというのはこれからの議論になるんじゃないかなと私は思っておりまして、こういう大きな食料・農業・農村基本計画の中でもいろいろあり方を検討していただきたいと思うんです。

 こういうことを申し上げるのは、農村集落の整備についても、実は縦割りで、結構ダブっているんですよね。財政が厳しい時代においてこそ、そこをどうやって総合的にやっていくかという観点も必要だと思っています。

 例えば、道路一つとっても、農道、林道と道路法上の道路は、実はBバイCの基準も違うわけですよ。そこでダブル投資があることもある。これは、別に省庁を超えて調整すればいいということもあるのかもしれないけれども、なかなか、それでうまくいかない部分も実務上あるのは私も存じておりますし、集落排水、下水道をとってもそうですよね。

 だから、そういうことも含めて、財政資金をより有効に活用するという観点も含めて、私は都市、農村計画的な総合的なものが必要になってくるのではないかなと思います。

 きょうは、ちょっとそういう問題意識を申し上げさせていただいて、次の議論に入らせていただきたいと思うんです。

 もう一つ大きな話で、安倍政権の女性活用ということであります。

 安倍内閣は女性の活用を大きく打ち出されておりまして、大変すばらしいことだと思いますが、農業においてもこういう視点が重要だということは言うまでもないと思っております。

 これは、今の農業の構造改革、集積の議論をしていると、女性の活用がどうなってくるんだろうなというのが、ちょっと見えないというか、疑問に思うところがありまして、地域の兼業農家でもやっているようなおばさんたちと話すと、我々は、女性とかお年寄りも農業をやっていて、参加している、そういう意義は非常に感じていると。そういう参加形態が引き続き続くことも必要であるし、余りにも集積という考えを出し過ぎると、そこのところはどうなるんだろう、我々はどうなるんだろうということをちょっと心配して、聞かれるところがございます。

 この話は従来から出ましたけれども、ことしは国際家族農業年ですね。これは、効率化とともに、農地を農地として維持するということであれば、まさに、地域の人がみんなで支え合う、意義を持って、やりがいを持って参加することが必要で、そこにおいて女性の活用という視点もあるのだろうと思います。

 あるいはまた、女性の視点という形の農業の産業化ということも重要だと思いますが、大臣、そこはいかがお考えになっていますでしょうか。

林国務大臣 加藤委員のときにも少し触れさせていただきましたけれども、基幹的農業従事者のうち、既に四四%は女性であります。地域農業の振興、六次産業化の担い手ということでも力を発揮していただいておるところでございます。

 先ほど申し上げたように、女性が参画している農業経営体ほど販売金額が大きくなる、それから経営を多角化するということ、それから女性役員、管理職がいる農業経営体は、いない経営体と比べて、売り上げ、収益力が向上する傾向にある。政策金融公庫のデータだったと思いますが、それが出ております。

 ちょっと考えると、どういうお献立にするかとか、そのために何を買うかということは、これは女性がやはり中心となって、まだやっておられるわけでございまして、逆に言えば、そういう消費者に対してどういうことをやっていったらいいかという観点で考えると、こういうデータは当然こういう数字になるんだろうな、こういうふうに思っております。

 そういう意味で、発想を豊かにしてチャレンジをする、こういう女性の能力を最大限に発揮するということが成長産業化にとっても重要だ、こういうふうに思っております。

 従来から、家族経営協定、経営の方針、役割分担について取り決めるものを締結しようということを推進したり、農業委員や農協役員への女性の登用の推進、それから次世代リーダーとなる女性農業経営者の育成、こういうことをやってまいったところでございます。

 最近は、これに加えて女性農業経営者間のネットワーク、横のつながりを促進する、それから人・農地プランの検討会など、企画立案段階からの女性農業経営者の参画の促進、まさに男女共同参画ということでございます。

 それから、六次産業化などにチャレンジする女性農業経営者に対する補助事業の優先活用、そして農業女子プロジェクトというのを新たに始めまして、女性農業経営者の知恵やニーズと民間企業が組んでいただいて、ニーズとシーズを結びつけて新たな商品やサービス開発等を行う、例えば、農業機械や着るものも女性に合ったようなものにしていくということが、既に成果として出てきておるようでございます。

 こういうものを新たに加えまして、政府全体で輝く女性を応援するという安倍政権の方針のもとに、女性農業経営者にもますます輝いていただきたい、こういうふうに思っております。

畑委員 女性の視点をぜひとも生かしていただくよう、お願いしたいと思います。

 農業の議論をしているときに、これから日本の農業の生きる道は、六次産業も含めて、付加価値を高めてブランド化するというところだと思います。そういう場合の商品感覚というのは、いろいろな商品化を含めて、女性がかなりすぐれていると思います。

 日本の農業の行き着く先は、やはりそういうことをしっかりやっていくとすれば、女性の活用は非常に重要だと思います。また、そういう大きな話以外に、地域を支えているおばちゃんたちを心配させないように、しっかりと彼らの意義を認めながら、構造改革というのは必要ですが、漸進的なというのは、やはりそういう思いがありまして、地域に根差して、地域の人たちがやりがいを持ち続けるような改革であってほしいなと思います。そのことを申し上げておきたいと思います。

 それから、細かい話というか法律の話に入らせていただきますが、生産調整の関係であります。

 従来、お話を伺っておりますと、政府案のやり方も一つのやり方で、確かに、論理的にはそういう道もあるのだろうと思います。ただ、やはり複雑で、現実に動かせるには、実務に落とした場合には、一工夫要るのかなという気はしています。やはり補助金等の連動があって、なおかつ強制ではない、あめという形で、自主性を生かす形で生産調整と結びついているのが実効性があるというふうな思いがあります。

 そういう意味で、今の戸別所得補償の生産調整との絡みは非常によく考えられているなと私は思うんですが、その点、やはり生産調整との関係で見た観点で、戸別補償制度の意義というか思いを大臣にお伺いしたいと思います。

林国務大臣 先ほど林委員の御質問に答えられていた玉木委員が、ペナルティー型のいわゆる生産調整と、それから今の民主党さんの法案についての比較はお答えいただいたんですが、今の我々のものと、それから今の出されている法案の比較というのが聞けなかったのがちょっと残念でございますので、またいつか聞かせていただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

 まず、やはり需要ということを考えますと、よく言う昭和三十七年の百十八キロから平成二十四年の五十六キロというように、米の消費量が残念ながら半分になっておる。食生活の大きなライフスタイルの変化は、今後それほどないとは思いますが、高齢化と人口減によって、中長期的なトレンドは毎年八万トンずつ減っていく、こういうことでございます。

 先ほど御議論があったように、戸別所得補償制度のもとで生産調整は選択制になっていた、こういうことでございますが、やはり実際に米の生産、販売に、行政は、若いときに研修に行ったりして、現場の感覚はあるわけでございますが、実際にやっているのは業者の皆さん、生産者の皆さんでありますから、行政によって生産数量目標の配分が行われているということで、例えば、私が就任してからも、中食、外食のような方が来られて、取引先から、なかなか生産拡大の要請に応えられない、こういうような、ある意味ではもったいない話も実際起こっていたことでございまして、そういった意味で、今回いろいろな議論を経て、この見直しをすることにいたしました。

 毎年毎年一作ずつつくるという性格に鑑みて、五年を目途にして、この目標をみんなで共有して、そこに向けてやっていこうということで、これはるる申し上げてきたような環境整備を行うことにいたしたわけでございます。

 一つの例として申し上げれば、先ほど申し上げました中食、外食のメーカーと米の生産者が、例えば五年間、もう取引を決めないか、何万トン、こういうせっかくのオファーがあっても、生産数量目標が毎年毎年決まってきますので、なかなか五年先の数量をコミットして中長期契約に応じられない、こういうことがあったわけでございますが、今回のこの見直しによって、そういうところにきちっと道を開いていくことができるようになる、こういうことを例として申し上げたいと思います。

 そういう意味で、やはり需要というのを一つのキーワードにしてこういう仕組みにさせていただいた、こういうことでございます。

畑委員 需要をもとにというのはそのとおりなんですが、現行の戸別所得補償に基づく生産調整でも、別に需要を行政が判断して割り当てればいいので、そこはあながち需要を無視しているわけでもないと思いますし、中食、外食で売りたければ、これは実質的な選択制ですから、その範囲から外れて、どんどん安く、大量に売りたい人はやれるわけです。そこを排除しているわけでもないので、そこの理屈はちょっと違うのじゃないかなと私は思います。

 とともに、やはり生産調整が実効的にできるかどうかという観点で考えると、そこに絞って考えた場合には、どちらが実効性があるのかなという考え方をした場合に、私は、やはり一定のそういう措置とリンクしている方が、生産調整ということでは合理的だなという思いがあります。

 そういうことを申し上げた上でお伺いしたいんですが、これは何か、私が聞いていないときに、きのうも議論はあったようですが、戸別所得補償による生産調整はうまく機能したかどうかということなんです。要は、端的な数字で、過剰作付が戸別所得補償を導入してから減ったのかどうか、過去とのトレンドと比べてどうなのかという、そこの評価をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 最近の実績で申し上げますが、主食用米の作付面積が生産数量目標の面積換算値を超える、いわゆる過剰作付といったものにつきましては、平成十六年産以降、徐々に増加しまして、平成十九年産につきましては七・一万ヘクタールということで最大になりました。その後、平成二十年産からは減少に転じまして、平成二十三年産には二・二万ヘクタールとなりましたが、それ以降は微増傾向で推移しておりまして、直近の平成二十五年産では二・七万ヘクタールとなっております。

 この過剰作付の水準が近年安定的に推移している要因といたしましては、二十二年産以降、米の直接支払交付金等のメリット措置が講じられたといったことのほか、二十年産から開始された餌米等への支援の定着、また、東日本大震災によりまして、東北における主産県における生産力への影響といったような複合的な要因があったものと考えているところでございます。

畑委員 ありがとうございました。

 さはさりながら、事実としては、二十二年が四・一万ヘクタールから二十三年が二・二で、大体二・幾らで推移していることを見ると、やはり大きな効果が数字としてあらわれているなと思っております。

 本日は、そのことを申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十六分散会


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