第13号 平成26年4月23日(水曜日)
平成二十六年四月二十三日(水曜日)午前九時五十分開議
出席委員
委員長 坂本 哲志君
理事 北村 誠吾君 理事 齋藤 健君
理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君
理事 森山 裕君 理事 大串 博志君
理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君
井野 俊郎君 池田 道孝君
小里 泰弘君 加藤 寛治君
川田 隆君 菅家 一郎君
清水 誠一君 末吉 光徳君
鈴木 憲和君 瀬戸 隆一君
武井 俊輔君 武部 新君
津島 淳君 中川 郁子君
中山 展宏君 福山 守君
堀井 学君 簗 和生君
山本 拓君 渡辺 孝一君
後藤 斎君 玉木雄一郎君
寺島 義幸君 鷲尾英一郎君
岩永 裕貴君 鈴木 義弘君
中丸 啓君 伊佐 進一君
樋口 尚也君 林 宙紀君
畑 浩治君
…………………………………
議員 大串 博志君
議員 玉木雄一郎君
内閣総理大臣 安倍 晋三君
農林水産大臣 林 芳正君
農林水産副大臣 江藤 拓君
農林水産大臣政務官 小里 泰弘君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 澁谷 和久君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 小林 裕幸君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 佐藤 一雄君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 奥原 正明君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 三浦 進君
農林水産委員会専門員 栗田 郁美君
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委員の異動
四月二十三日
辞任 補欠選任
橋本 英教君 中山 展宏君
村上 政俊君 中丸 啓君
稲津 久君 伊佐 進一君
同日
辞任 補欠選任
中山 展宏君 瀬戸 隆一君
中丸 啓君 村上 政俊君
伊佐 進一君 稲津 久君
同日
辞任 補欠選任
瀬戸 隆一君 橋本 英教君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)
農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出第五〇号)
農業者戸別所得補償法案(大串博志君外六名提出、第百八十三回国会衆法第二六号)
農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第六号)
中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第七号)
環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第八号)
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○坂本委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及び大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長小林裕幸君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君及び内閣官房内閣審議官澁谷和久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。
○宮腰委員 自由民主党、宮腰光寛でございます。
自民党としては、法案審議の最後のバッターとなります。
三点について伺いたいと思います。
収入保険制度に関連してでありますけれども、そもそも米に関して恒常的なコスト割れという実態があるのかどうか、まず確認をしておきたいと思います。
○奥原政府参考人 米の政策につきましては、長い歴史がございますけれども、まず食糧管理法の時代、この時代は政府買い入れ価格の算定をやっておりましたので、このときはコストの要素だけを考慮して算定するということをやっておりました。
それ以降は、稲作経営安定対策に始まりまして、現在、ナラシ対策になっておりますけれども、収入変動による影響を緩和するための対策をやってきておりまして、この場合には、コストの要素は考慮をしないで、価格の要素のみを考慮して基準価格を算定するということをやっておりました。
潜在的な供給過剰でございます米に対しまして、コスト割れを補填するという政策は、二十二年度の戸別所得補償制度の導入の時点からでございます。
稲作につきましては、多数の小規模の農家が存在をする、こういう農業構造でございまして、こうした中で、経営の規模あるいはその経営の形態、これにつきまして、どういう階層を選ぶかによって、あるいはどの年産をとるかによって、コスト割れをしているかどうかということはかなり変わってくるというふうに考えております。
主業農家ですとか認定農業者をとりますと、通常はコスト割れになっておりませんし、それから、価格が好調であった年であれば、販売農家の平均で見ましても、コスト割れは生じていない年もあるというふうに認識をしております。
○宮腰委員 今の奥原経営局長の答弁で明らかになったとおり、実態として、主業農家や認定農業者はそもそもコスト割れになっていない、全販売農家平均でもコスト割れが生じていない年もあるということであります。つまり、米について恒常的なコスト割れはなかったというふうに見てもいいのではないかと思います。米だけを対象とした恒常的なコスト割れの補填という制度は実態と合っておりませんし、国民の理解も得られないというふうに思っております。
それよりも、経営全体に着目した収入保険制度の方が制度としてすぐれている、また、担い手の経営もより安定するというふうに考えます。しかも、農業共済制度は地域における収穫量の減少に着目した仕組みであるのに対しまして、収入保険制度は個々の経営の状況に着目した仕組みでもあります。収入保険制度の導入については、後藤斎先生を初め、先生方も同じ認識ではないかというふうに思っております。
この収入保険制度は、WTOのルールでも、デミニミスとして補助金の支出が認められております。しかし、実際の制度設計に当たっては、総合的な観点から、制度の目的、既存のナラシ制度や農業共済制度との関係の整理、収入の把握可能性、経営体の経営管理の状況など慎重に検討すべき課題は多いと思います。また、収入保険制度を定義する際、実際の制度設計をきちんと反映したものでなければ、誤解や過度の期待を招くおそれもあるというふうに思います。
今回、農水委員会における真摯な議論を踏まえ、担い手経営安定法改正案の附則に、収入変動に対する総合的な施策の検討という条文を議員修正で提案することといたしております。法律で担保することにより、何としても農業経営の安定を確保したいという多くの会派の思いがこもった修正であるというふうに思います。
農水省として、この収入保険制度をどのような観点から総合的に検討しようとしておいでになるのか、大臣から伺いたいと思います。
○林国務大臣 今まさに委員がおっしゃっていただきましたように、農業経営の安定を図るためには、生産量の減少、価格の変動、こういったものによる収入減少に対応できるセーフティーネットが必要でありまして、加入者の負担を前提とする保険の仕組みは大変有力な方法である、こういうふうに思っております。
今お話ししていただきましたように、今の共済制度は、自然災害による収穫量の減少を対象としておりまして、価格低下は対象となっていない、また、対象品目は収穫量の把握ができるものに限定されておりまして、加入単位も品目ごとになっているなど、農業経営全体をカバーしていない、こういう問題がございます。
このため、全ての農作物を対象として、農業経営全体の収入に着目した収入保険の導入について調査検討を進めていく必要がある、こういうふうに考えております。
二十六年度当初予算において調査費を計上させていただきまして、この調査結果を踏まえて制度設計を行って、そして二十七年産について、作付前の加入から納税申告までのワンサイクル、二十六年中に加入、そして平成二十八年に納税申告、このフィージビリティースタディーを実施した上で制度を固めていきたいと考えております。
こうした中で、農業者ごとの収入をどう把握するのか、収入減少影響緩和対策、いわゆるナラシ対策や今の農業共済制度等との関係をどう整理するのか、こういうさまざまな課題について、総合的に検討を進めていきたいと考えております。
今後の調査の結果によるところがございますので、現段階で確たることは申し上げられませんが、調査検討が順調に進んでいきますと、平成二十九年の通常国会に関連法案を提出することになるものと考えております。
○宮腰委員 この点は、恐らくこの後、修正案が提案をされて、全会一致ということになるのではないかというふうに思っておりまして、今回の法案の審議の議論の中で、真摯な議論が積み重ねられて出てきた一定の合意できる方向ではないかというふうに考えております。
三問目でありますけれども、政府提案の日本型直接支払い法案は、農地維持支払いと資源向上支払いから成る多面的機能支払い、中山間地域等直接支払い、環境保全型農業直接支払いを一本にまとめて対象としております。それは、これらの直接支払いに共通の基本理念が存在するからであります。
第二条の基本理念の条文で、「農業の有する多面的機能は、その発揮により国民に多くの恵沢をもたらすものであり、食料その他の農産物の供給の機能と一体のものとして生ずる極めて重要な機能であることを踏まえ、その適切かつ十分な発揮により、将来にわたって国民がその恵沢を享受することができるよう、」云々というふうに書かれております。
つまり、農業の有する多面的機能は、これまでも、現在も、国民に多くの恵沢をもたらし、かつ、将来にわたってその恵沢を享受できるようにしなければならないとして、全ての直接支払いに共通の基本理念を高らかにうたっております。日本農業の将来を考えたとき、この理念は、技術的な問題以上に重要な部分であるというふうに考えております。
我が国初のデカップリング政策として十五年前にスタートさせた中山間地域等直接支払い、その後の農地・水保全管理、環境直接支払いを含め、今回の日本型直接支払い法案により、恒久法として制度の安定を図ることになります。真剣に日本農業の発展に取り組んでこられた先輩方の御努力に報いることにもなるというふうに考えております。
改めて、日本型直接支払い法案提出の意義、共通の基本理念を定めたことの意味について、大臣からお伺いをいたしたいと思います。
○林国務大臣 本法案は、農業の有する多面的機能の発揮の促進を図るために、その基本理念等について定めるとともに、農地維持支払い、資源向上支払い、中山間地域等直接支払い、環境保全型農業直接支援という四つの支払いを、今委員がおっしゃっていただきましたように、法制化するものであります。
この制定は、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する基本的な考え方、法的な枠組み、こういうものが明確になる、そして、四つの支払いが法制化され、委員がまさに御指摘いただいたように、現場で安心して取り組んでいただける恒久的な制度になる、そして、地域の実情に応じて、四つの支払いを組み合わせて計画的に取り組みを推進するということが可能となる、こういった重要な意義を有するものであると考えております。
今御指摘いただいたように、第二条に基本理念が書いてございますが、国民に多くの恵沢をもたらす重要な機能である農業の多面的機能の適切かつ十分な発揮を将来にわたって確保するために、適切な支援を行う必要があること、その際に、良好な地域社会の維持形成、農用地の効率的な利用の促進に資する、地域の共同活動による取り組みの推進を図る必要があること、こういうことについて規定をすることによって、広く国民に御理解をいただきながら、四つの支払いを実施していくための基礎を確固たるものにする意義を有する、こういうふうに考えておるところでございます。
○宮腰委員 私は、農業、農村の現場で頑張っておいでになる方々が誇りを持って農業に取り組むことができる、そういう理念をこの法律で高らかにうたっているというふうに考えております。農政には、理念、哲学が必要ではないかというふうに考えているわけであります。
今回の法案審議で、農政の基本にかかわる問題について真剣な議論が闘わされました。実のある議論がなされ、農政改革の方向性に関する議論は収れんしつつあるとの印象を持ったわけであります。今後は、日本農業の発展に向けて、与野党が切磋琢磨すると同時に協力もしながら、農政を前に進めていきたいというふうに考えております。
このことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
○坂本委員長 次に、樋口尚也君。
○樋口委員 おはようございます。公明党の樋口尚也でございます。
きょうは、質問を二十分させていただきたいと思います。
農業を大切にしない社会は生命を粗末にする野蛮な社会である、その社会は早晩あらゆる面で行き詰まるという箴言がございます。農業を営む皆様に心から感謝をし、そして尊敬をし、敬意を表して、きょうも質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
まず初めに、衆法について二問伺いたいと思っております。
まず、衆法によります戸別所得補償政策については、米生産はコスト割れをしているので、このコストと米価の差を全ての米農家に支払うという哲学だというふうに思っておりますけれども、このことについて二つ。
一つは、国民の皆様が、なぜ米だけなのか、ほかの農産物や工業製品についても、コスト割れをしたら必ず財政支援を行うということになるのか、こういう疑問が寄せられているのが一つ。もう一つは、高い国境措置で守られている作物にコスト割れ補填を行うことは、国境措置を下げるための環境整備ではないかという声があること。この二つについてどうお考えなのか、お答えください。
○大串(博)議員 お答え申し上げます。
コスト割れをしていたら、ほかの農産物あるいは工業製品についても必ず財政支援を行うのかという問いがまず一つありました。
私たちは、農業者戸別所得補償制度は、るるこの委員会でも御答弁申し上げましたけれども、農業者の営農を継続させて、それを基本としながら、それによって、農地の持つ多面的機能あるいは食料安全保障といったものにも寄与していくという観点から行っているものでございます。
すなわち、米、水稲は、四百五十万ヘクタールの農地面積の中で、半分あるいはかなりの部分を占めております。その中で、営農を継続することが大変厳しいという声がある。私たちは、先ほど来政府答弁もありましたけれども、そこには恒常的なコスト割れがないという考え方とは見解を異にしております。私たちは、恒常的にコスト割れのある米に関して、そのコスト部分を補填することによって営農が継続できる全国的な広がりをつくっていくことによって、先ほど申しました、経済的価値に還元しづらい多面的機能あるいは食料安全保障というものもあわせて自然な形で担保できるようにしていくという考え方において行っているものでありまして、全ての農産物とか全ての工業製品とか、そういったものではないというふうに思っております。
さらには、高い国境措置で守られている作物にコスト割れ補填を行うことはおかしいのではないか、こういう御意見もございました。
先ほど申し上げましたように、私たちは、国境措置があるからといって、コスト割れがないという認識ではございません。コスト割れがあるがゆえに、今、日本の農業の苦境はあるのではないかということを改めて申し上げさせていただきたいと思いますし、その点を捉まえての戸別所得補償でございますので、国境措置を下げるための環境整備として行っているものでもございません。
○樋口委員 では、もう一点お伺いをいたします。
民主党は、極端な高齢化に陥っている現在の農業構造を、いつまでに、どうやって改善しようとお考えなのか、伺いたいと思います。
○大串(博)議員 私たちは、政権時に、食料自給率五〇%という目標をつくってまいりました。そういった中で、あわせて多面的機能を守っていくという目標もつくってまいりました。この委員会においても、それらは私たちが取り組みが始まってから十年ぐらいをかけてやっていきたいというふうな思いを持っていたところでございます。
先ほど来お話がありましたように、高齢者の方々が農業を続けていらっしゃるという構造が非常に強い我が国において、担い手にしっかり集約していくということも大切なことでございます。そういった中で、私たちの戸別所得補償政策においては、全国一律単価を用いることによって、大規模農家であればあるほど利益が上がるということによって、農家一人一人のインセンティブに働きかけることによって自然な形での集積を図っていく、それによって集落営農の数もふえました。大きな規模の農家の方々により多くのメリットが行っているという、自然な形での誘導措置を図っているものでございます。
そういった中で、もちろん、年限を確定的に限るということは難しい作業ではありますけれども、私たちの考え方としては、制度を始める、あるいは検討し始めたころから、十年ぐらいのうちにはそういった形をつくっていきたいなというふうに思っていたことも事実でございます。
○樋口委員 与党の皆様、野党の皆様、団結して農業を守っていくという点で、二問伺いました。
次に、閣法について伺いたいと思います。その関連についてもです。
昨年の七月に農水省が発表した平成二十四年の新規就農者調査によりますと、全体で新規就農者は五万六千四百八十名でございます。そのうち、六十歳以上が三万人と多いわけでありますが、これは、会社を定年退職して、その後、実家に戻って農業を継ぐという形での新規就農者が多いということを示すわけでございます。一方、三十九歳以下の若年層は一万五千三十人でございます。前年比はプラス五・七%ということでありますけれども、これをふやし続けていかなければいけないわけであります。当然、さまざまな、若年層が選ぶ産業として魅力ある農業を目指していかなければならないわけでございます。
全国農業会議所が昨年末に行った、新規就農に対する実態調査によれば、農外出身者の新規就農者が増加の兆しを見せています。特に、農業法人に就職し、その後、独立就農するというケースが増加傾向にあります。これはすばらしいことだというふうに思います。しかし、販売金額は就農二年目までが相変わらず低調でありまして、七〇%が三百万円未満で、就農直後の売り上げ確保が依然として課題となっているわけであります。
新規就農者がこの時期を乗り越えられるように、販路の拡大や品質の向上に一層の支援が必要だと思いますけれども、この点についていかがでしょうか。
○奥原政府参考人 新規就農者の関係でございます。
御指摘いただきましたように、現在の世代構成を見てみますと、四十代以下の方が一割という状況でございますので、農業を持続的にやっていくということを考えますと、新規就農の方にもっとふえていただかなければいけません。定着ベースで現在一万人でございますが、これを二万人にふやしていくということを目標に、現在進めているところでございます。
御指摘がございましたように、新規参入で農業に入りましても、生計が安定しないということで五年以内に諦めてしまう、そういう方々が三割ぐらい、これまでもいらっしゃいました。こういったことに鑑みまして、平成二十四年度から青年就農給付金というものを始めております。これは、みずから農業を始められた方に、五年間は、生計が安定するまでということですけれども、年間百五十万円を給付することによって、諦めないで生計が安定するまで続けていただく、これを目的にこの給付を始めたところでございます。
御指摘のように、なかなか所得が安定しないということがございますので、ここはきちんと生計が安定するように指導していかなきゃいけないところだと思います。
この青年就農給付金の経営開始型をもらうためには、その地域でつくっております人・農地プラン、地域の皆さんが話し合ってつくっていただきますが、このプランの中で、その新規就農者の方を中心的な経営体として位置づけていただくということが条件になっております。要するに、地域全体として新規就農者をみんなで支えていくということを合意していただいたところにこの百五十万円を給付する、こういう仕掛けになってございます。
このことをもとにいたしまして、その地域の指導農業士の方ですとかあるいは普及員の方ですとか、こういった方々がきちんといろいろな形で面倒を見て、その新規就農者の技術を上げていく、所得を上げるためのいろいろな指導をしていくということが必要だと思っておりますので、これからもそこには十分注意をしていきたいと思っております。
○樋口委員 続いて、農業経営継承事業についてお伺いをしたいと思います。
農業経営の後継者が減少し、農業の担い手不足は深刻であります。農産物販売農家約百六十三万のうち、後継者がいるのは六〇%、残りの四〇%は農家が将来リタイアする可能性があると言われておりますが、現場感覚では、もっとリタイアされる方が多いのではないかというふうに実感をするところであります。
その対策として、第三者に農業経営を継承する農業経営継承事業がありますが、その概要を御説明いただきたいと思います。
○奥原政府参考人 農業経営の継承事業でございます。
後継者がいらっしゃらないで、自分の農業経営を移譲することを希望されている農業者の方と、経営を引き継ぎたいと継承を希望される方、これをマッチングいたしまして、この移譲を希望する方のもとで実践的な技術、経営のノウハウを習得させて、円滑に経営を継承させる事業として、二十年度から農業経営継承事業を実施しております。
具体的な事業の流れでございますけれども、事業の実施主体が、経営を移譲したい移譲希望者と、継承したい、引き受けたいという継承希望者の両方の募集を行います。この両者のマッチングを行いまして、両者の合意が得られた後に、移譲希望者のもとで、継承希望者に対する技術あるいは経営ノウハウを習得させるための実践研修が行われます。
また、円滑な研修、経営移譲が行われるようにするために、コーディネートチームというのをつくっております。これは、市町村、農業委員会、農協、あるいは普及指導センター、こういったところで構成するコーディネートのチームを設置いたしまして、指導ですとか相談等の支援を行っているということでございます。
この上で、経営継承につきまして両者の最終的な合意が得られますと、経営継承合意書というものを締結していただきまして、経営が継承される、こういう仕組みでございます。
○樋口委員 平成二十年度から事業の対象となった八十七組でありますが、その内訳を見ると、合意書を締結したのは三十四組、研修中が十六組、三十七組は研修が中止され、目的を達成しなかったというふうに聞いております。
中止の理由はさまざまあるようですけれども、農家と就農希望者の人間関係が維持できなかったケースがほとんどだというふうに伺いますが、農水省さんはどのような認識でありましょうか。
○奥原政府参考人 御指摘のとおりでございまして、これまで、平成二十年度から始めて、二十六年二月一日現在で、この実践研修の実施数が八十七件でございます。この中で、経営継承の合意書の締結に至ったものが三十四件、研修中のものが、続いているものが十六件、それから研修の中止に至ったものが三十七件、こういう状況でございます。
この中止に至ったケースの事情でございますが、いろいろな事情がございますけれども、我々の調査しているところによりますと、一つは、移譲希望者と継承希望者の人間関係が悪くなった。例えば、相性が悪くて、研修の継続がなかなか難しい。あるいは、農法、農薬の使い方ですとか、こういった農業のやり方、農法の関係で見解の相違がある。あるいは、販売方針をめぐって見解がなかなか合わない、こういったケースが一つございます。
それから、本来継がないはずであった親族の方が後継者になった、こういうケースも中にはございます。それから、継承しようという方の健康上の理由で中止に至ったというのもございますし、継承を希望している方が継承に必要な資金を準備できなかった、こういうケースでうまくいかなかった、こういうケースもあるというふうに承知をしております。
○樋口委員 農業経営継承に当たっては、有形資産である農地、施設、機械などだけでなく、例えば販売権など経営に関する無形資産を含む評価額をめぐり、譲渡する側と継承する就農希望者の側でお金の問題もあると思うんですね。双方が納得をする調整方法の確立が必要、こういう指摘があるところでございます。
この指摘に対して、農水省はどう受けとめて、また、どう対策を講じる考えなのか、お聞かせください。
○奥原政府参考人 御指摘いただきましたように、継承資産の譲渡額につきまして、移譲する方と受ける方、この両方の折り合いがつかないで、うまくいかない、こういうケースがあるというふうに承知をしております。
こういった課題を解決して、円滑に経営継承が進むようにするために、先ほど申し上げましたが、コーディネートのチームというのができております。現場の市町村、農業会議、あるいは普及指導センター、それから農協等の関係者でチームを組織しておりまして、必要な指導とか相談に当たっておりますし、特に、継承資産の評価について、必要な場合には税理士等の専門家に入っていただいて相談に応ずるということもやっているところでございます。
こういった取り組みもできるだけ強化をいたしまして、せっかく研修を始めた以上、できるだけ円滑に継承が進むように、さらに指導してまいりたいと考えております。
○樋口委員 農業経営継承事業の推進は、今の担い手不足、また、新規就農者が、三十九歳以下が一万五千人、そういう少ない状況の中で、この重要度はますます増してくるというふうに思います。後継者のいない経営体への本事業の周知徹底、そして活用の奨励が望まれるところだと思います。
本事業の現状を見ると、円滑な経営継承のために関係者が知恵を出し合っていかなければならないと思いますけれども、農水省の見解を求めます。
○奥原政府参考人 先生からも御指摘ございましたように、後継者のいない農家の方が相当いらっしゃいます。こういった場合に、第三者への経営の継承を進めていくということは、やはり地域の優良な経営体をそのまま維持していくという観点で、非常に重要な手法だというふうに考えております。
農林省といたしましては、この事業の周知徹底をさらに進めたいと思っておりますし、経営継承のマニュアルのようなものもつくっておりますので、さらにこれの普及を進めていきたいというふうに考えております。
それからもう一つ、やはり経営を円滑に継承していくということを考えますと、個人から個人へというのはなかなか難しいのも現実でございます。であれば、農業経営を法人化していただく。それも、できるだけ早く法人化を進めていただいて、法人の従業員として、農業の内外から優秀な人材を雇用していただく。早い段階から、次の経営者を誰にするかという選別をやっていただく。こういうようなことも、経営を安定的に進めていく上では重要なことと思っておりますので、そういうこともあわせて進めていきたいというふうに考えております。
○樋口委員 今回の農政改革は、日本の農業を大きく変えていく出発点であります。新卒の若者、そして新規就農者が、就職先として、農業に魅力を感じて入っていただかなければなりません。農業の担い手を確保する、大変難しいことでありますが、魅力ある産業をつくって、そこに人が寄ってくる、こういう仕組みをつくっていかなければならないわけであります。
これまでにも取り組んできたことがさまざま国策としてありますけれども、担い手確保がなかなかうまくいかないという厳しい現実もあるわけであります。この担い手確保に対しまして、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 今委員がおっしゃっていただいたように、農業を安定的に発展させて、国民に対する食料の安定供給を確保していくこと、これは基本法の二十一条に規定するとおり、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立することが大変重要である、こういうふうに思っております。
こういう観点から、経営所得安定対策についても、全ての販売農家を一律に対象とする施策体系ではなくて、経営意欲と能力のある担い手を対象としていくことが必要である、こういうふうに考えております。
今回の制度改正でも、ゲタ、ナラシ対策の対象者を、担い手として認定農業者、認定新規就農者、集落営農、こういうふうにいたしました。また、規模要件は課さない、小さくても意欲と能力のある方は対象になってもらう、こういうふうにいたしたわけでございます。
こういう担い手を対象として、認定農業者にあっては、政策金融公庫のスーパーL資金、低利融資でございますが、こういうものや、農業経営基盤強化準備金制度による税制上の優遇措置、それから、法人の場合は、アグリビジネス投資育成株式会社による出資、こういうものが施策としてございます。また、認定新規就農者にあっては、日本政策金融公庫の青年等就農資金による無利子融資、青年就農給付金、これは経営開始型ですが、これを給付する。さらに、集落営農にあっては、法人化に必要となる経費に対する定額助成四十万円、こういう支援を総合的に行っているところであります。
今委員がおっしゃっていただきましたように、こういう施策で推していくということと、それからもう一つは、やはり農業が魅力のある産業である、このことは全般にかかわることでございますが、これをあわせて、しっかりと意欲と能力のある方が入っていただいて担い手になっていただく、その担い手になっていただいた方をしっかりと支援していく、これに努めていく考えでございます。
○樋口委員 ありがとうございました。
農業を大切にする、そして担い手の人をしっかり確保して魅力ある産業をつくっていくということで、日本の食料自給率、自給力の向上にも努めてまいりたいと思いますし、何せ額に汗して働く皆様の労苦に応えるように、しっかり頑張ってまいりたいと思います。
今回の農政改革が始まりでありますので、しっかりこの後フォローしていくということをお誓い申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
○坂本委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○坂本委員長 速記を起こしてください。
これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉木雄一郎君。
○玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。
早速、総理にお伺いしたいと思います。
今夜、オバマ大統領が来日をされます。TPPについては、農業者のみならず、国民が固唾をのんでその交渉の行方を見守っているところであります。
まず、総理に伺いたいのは、この間、報道でも一部出ておりましたけれども、日米の間の溝がなかなか埋まっていないというような報道に接しております。現状、総理の認識として、このTPPに関する日米の交渉は、溝が埋まってきているのか、あるいは溝があるままなのか。オバマ大統領が数時間後に来日をされますけれども、現在の総理の認識と、そして妥結に向けた見通し、総理の決意をお伺いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 このTPPというのは、大きな経済である米国と日本がアジア太平洋地域に新しいタイプの経済圏をつくっていく、市場主義、そして自由と民主主義という価値を共有する日米の両国がリーダーシップを発揮して新しいルール、新しい貿易圏をつくっていくことは、地域の発展にとって極めて有益であるという認識においては、まさにオバマ大統領と認識を一つにするところでございますが、当然、それぞれ国益をかけた交渉になるわけでございます。
先般、ハーグにおいて、日米韓の首脳会談の後に、オバマ大統領と二人での会談を持った際に、TPPについては、両国が柔軟性を発揮し、高い見地から交渉を妥結するべく努力をしていこう、その旨事務方に加速を指示しようということで一致をいたしまして、その上において、フロマン氏が来日をし、そしてその後、甘利大臣が訪米をし、交渉を続けているところでございます。
日本にとってはもちろん農業、そして米国にとっては自動車等の工業製品でありますが、こうしたものについて、お互いに今厳しい交渉を重ねているところでございまして、だんだん距離は縮まりつつあるという認識は持っておりますが、しかし、まだまだ、最後の段階とはいえ、大変厳しい交渉を続けておりますことは事実でございます。
○玉木委員 四月の十七日だったと思いますけれども、総理が講演をされたときに、こういうふうにおっしゃっております。細かい数字をめぐって今交渉していると思う、お互い数字にこだわることも重要だが、TPPには大きな意味があるという高い観点から最終的に結果を得て妥結を目指していきたい、このように述べております。
この前段、数字にこだわることも重要だけれども、高い観点から妥結を目指していきたいというふうに総理はおっしゃっておりますけれども、この数字にはこだわらないというメッセージが、当委員会でも決議をしましたし、自民党、御党の公約もあります、そういった細かい記述、細かい数字には最後は必ずしもこだわらないで、より大きな視点から妥結を決断する、こういう趣旨でありましょうか。
重要五項目については、当委員会でも決議をした中に明確に書かれておりますけれども、まさか、オバマ大統領が来日される、このことに合わせて、まるでお土産のような譲歩を差し出すといったことを先般の発言は意味しているものではないと思いますけれども、総理の御真意を改めて教えてください。
○安倍内閣総理大臣 私の真意は、まさに最後の段階でございますから、だんだんお互いの主張が接近はしてくるわけでございますが、しかし、そこでなかなかお互いに譲れない一線も見えてきているわけでございます。
そこで、私が申し上げたかったことは、決して日本が数字にこだわっていないということではなくて、むしろ大変大切である、その中において、日本は柔軟性を既に発揮してきている。同時に、先ほど申し上げましたように、アジア太平洋地域に大きな新しい経済圏をつくっていく、そして、それは市場アクセスだけではなくて、知的財産や国有企業、あるいは環境、そういうさまざまな分野におけるルールづくりをしていくんだ、このルールづくりにおいては、基本的に日本は大きな役割を果たしてきていますから、そうした日本の役割、日本の存在ということもよく勘案した上において、米側にも高い見地に立ってもらいたい、こういう私の考え方が込められているわけでございます。
もちろん、これはお互い、双方がということでありますが、我々は、交渉する立場において、米側にもぜひ高い見地に立ってもらいたい、こういう意味も含まれている、こういうことでございます。
○玉木委員 改めて確認したいと思います。
それでは、この農水委員会の決議も行いました重要五項目について、実は、正直、私も含めて当委員会の与野党の先生方も不安に思っている方もいらっしゃると思うのは、先般、日豪のEPAがありました。牛肉に関する関税については、あれも明確な日豪EPAの決議があったにもかかわらず、関税の引き下げということが事実上決まりました。ということは、TPPの決議はしたんだけれども、結局、いろいろな、総理がおっしゃったような大局的な判断あるいは総合的な判断の中で、この決議をした五項目については破られるのではないのか、守られないのではないのかというふうな不安が広がっております。
この農林水産委員会で決議をした重要五項目については守っていく、この点について改めて総理の決意をお聞かせください。
○安倍内閣総理大臣 昨年、日米首脳会談を行い、そしてTPP交渉に参加するという判断をしたのは、我が党が公約で掲げておりました、聖域なき関税撤廃ではないということを確認したからでございます。
同時に、私たちは、公約集とは別に、政策集であるJ―ファイルに載せている五品目、そして、これは衆参の農水委員会で決議がなされているわけでございますが、政府としては、この決議をしっかりと受けとめながら交渉に臨んでいきたい、このように考えておるところでございます。
○玉木委員 なかなか明確に五項目を守っていくということは、総理から明確な答えを今いただけなかったと思います。
総理がおっしゃった昨年二月の日米共同声明は、お手元の資料一にあります。先ほど、決議が守られるのかどうか不安だということを申し上げましたが、その根拠の一つは、TPP交渉に参加する一つの大きなきっかけとなったオバマ大統領と安倍総理の間の日米の会談、そしてそれを踏まえた共同声明であります。
これに基づいて、先ほど総理がまさにおっしゃいました、自民党の公約にもあった、聖域なき関税撤廃ではないということが確認できたのでTPP交渉に入ったということでありますけれども、この日米共同声明でありますけれども、総理が多分おっしゃったのは、青で囲んでいる第二パラグラフのところで、二国間の貿易上のセンシティビティーが互いにありますと。それはそうでしょう。ただ、最終的には交渉の中で決まっていきます、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められることではないということなので、多分ここを踏まえておっしゃっているんだと思います。
ただ、これは私は予算委員会でもたしか総理に申し上げたんですが、特に3のところは、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないというこのややこしい一文ですが、裏返して言えば、事後的に、全ての交渉参加国が合意した場合には全ての関税の撤廃もあり得ることを書いている文だと思います。
もっと大切なことはパラグラフの一でありまして、これは多分何度も交渉でも先方から言われていると思いますけれども、日米共同声明の肝は、第二パラグラフではなくて、第一パラグラフに書かれてある、両国政府は、二〇一一年十一月、いわゆるホノルル宣言です、あのTPPの輪郭、アウトラインにおいて示された、包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認する、これが原点なんだと思うんですね。
包括的な、あるいは高い水準の協定というのは、抽象的な表現で、何が何だかわからないんですが、実は、このホノルルの二〇一一年十一月の文書には定義がありまして、包括的なマーケットアクセスとは何かということが書かれてあります。これは、実は、右の方に英語で書いていますが、コンプリヘンシブ・マーケット・アクセスというのは次のとおりですよと書いてあって、エリミネート・タリフズと書いています。つまり、関税の撤廃ということがこの包括的なマーケットアクセスの一つの定義であり、そして、そのことについて日米両国政府は合意したということがTPPに入る前提になっているわけです。
ということは、アメリカから、もちろん彼らも柔軟性を示すべきだと思いますが、無理難題を言ってくるように聞こえるんですが、ただ、原点に立ち返れば、我が国政府もここで二〇一一年十一月のホノルル宣言には合意してTPP交渉が始まっているということをアメリカはしつこく言うのもある種当たり前だと思うんですね。この中で重要五項目を守っていくということは極めて難しいのではないか。実は、先ほど申し上げた不安の一因はここにあるわけであります。
加えて、第三パラグラフにある、黄色で囲っているところですけれども、一方でアメリカは、自動車や保険についてはいろいろやってくださいよということが書いてあって、それを踏まえて、資料の三を見ていただきたいんですけれども、これは、二月の日米共同声明を受けて、総理が正式に入るということを宣言した四月の日米の合意内容の文が書かれてありますけれども、ここには何とこういうことが書かれてあるわけです。両国政府で合意した内容ですけれども、自動車については、「米国の自動車関税がTPP交渉における最も長い段階的な引下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、」云々、このことについて両国政府は確認するとなっているわけです。
まだ交渉が始まっていないのに、アメリカの自動車の関税に関しては、こういうある種、我々は一番長く後ろ倒しして撤廃ですよみたいなことが日米両国で決められてあって、かつ、加えて申し上げますけれども、聖域が確保されている、聖域なき関税撤廃を求められるものではないということで入ったんですが、実は、先ほど申し上げたホノルル宣言、つまり原則関税撤廃なんだということを同意して入っている以上は、相当厳しい交渉を求められるのはある種当然なのではないかと思います。
その意味で、総理に改めて認識をお伺いしたいんですけれども、国内的には、聖域なき関税撤廃じゃない、だから入りましたと国民には説明をされておられます。しかし、アメリカの認識は、全くそんなことは考えていなくて、原則関税撤廃、このことをアメリカは求めてきていると思いますけれども、総理もそういう認識はありますか。
○安倍内閣総理大臣 まず、昨年の二月、我々はTPP交渉に参加をするという判断、決断をしたのでございますが、いわば現在のTPP参加国の中では最も遅い交渉参加になったわけでございまして、状況としては大変厳しい状況で交渉参加したのは事実でございます。
しかし、さまざまなことについて、特に、市場アクセスについては二国間の積み上げでだんだん決まっていくということにもなります。そこで、日本はその段階から新たな情報収集を行い、的確に対応し、そして交渉力をフルに発揮していくことによって、我々が公約をしている、聖域なき関税撤廃という、全て全く関税なしですよという状況ではない状況を我々は今つくりつつある、こういうふうに認識をしているわけでございます。しかし、大変厳しい交渉でありますから、さらに交渉を続けていく必要があるのでございます。
繰り返しになりますが、聖域なき関税撤廃が前提ではないということは間違いないと申し上げてもいいのだろう、こう思うわけでございます。また、米側は、自動車を初め工業製品はセンシティビティーがある、これは日本側と合意をしたわけでございますが、その中で、彼らも当然彼らの要求をしてくるわけでございますが、我々も当然私たちの要求を今しっかりと行っているということであります。我々も我々の主張をしっかりと行っているから、今の段階ではまだ合意に至っていないということでございます。
いずれにせよ、衆参の農水委員会における五品目に対する決議はしっかりと受けとめ、交渉にこれからも当たっていかなければならない、こう決意をしているところでございます。
○玉木委員 この農水委員会の決議を守るとは常におっしゃらないんですね。受けとめるというふうにおっしゃっていて、一定の配慮はしていただくのかもしれませんが、必ずしも守らないのではないのかということを、今、総理は少し示唆されたのかなというふうに私は感じ取りました。
なぜアメリカの認識と日本の認識が違うのかという問題点を指摘したかと申し上げますと、資料の四に、これは二日前です、四月二十一日にアメリカの超党派の議員六十三名がフロマン通商代表とビルサック農務長官に出したレターがあります。オバマ大統領が日本に行くに当たって、多分くぎを刺す意味で出したんでしょうけれども、第二パラグラフのところを見ていただきますと、重要農産物の特別扱いをすることは、日本がTPP交渉に参加を認められた際の約束と矛盾するということを書いているわけです。これがまさにアメリカ側の認識だと思いますよ。
だから、我々は、農産物については例外がとれると思って、信じておりますけれども、ただ、先ほど申し上げたように、ある種同床異夢で交渉を始めたことの矛盾がここ最後に至って噴出しているというのがこの本質ではないかと私は思っております。
具体的に一つ総理にお伺いしたいのは、この決議を守るという観点から、先ほども少し申し上げましたが、オーストラリアとのEPAの中で、牛肉については随分しっかりと守れるのかなと思ったら、年数をかけて関税率を半分にしていく、セーフガードはありますけれども、こういうことが決まりました。では、仮に、このオーストラリアとの間の協定がある種の最後に譲れない聖域だとしたら、自民党の中でもそういう議論があったと聞いておりますけれども、TPPにおいては日豪EPA以上の譲歩はない、総理、ここは明言をいただけますか。
○安倍内閣総理大臣 おかげさまで、先般、来日をしたアボット首相との間で、日豪のEPAについては基本合意に至ったところ、大筋合意に至ったところでございます。
しかし、日豪のEPAとTPPというのは、これは性格が別の交渉になるわけでございます。もちろん相手も違うし、いわばTPPはマルチの新たな経済圏をつくっていくということになるわけであります。その中におきまして、現在、日米で交渉を行っているところでございます。
当然、アメリカ側にも、この衆参の農水委員会における決議はこういう決議だった、こういう決議を受けて我々は交渉をしているんだという話もしておりますし、選挙において我々が行った公約はたがえることはできない、それは同じ民主主義国家としてわかるでしょうということも言いながら、まさに交渉をしているところでございます。
○玉木委員 明確な答弁がいただけなかったんですけれども、日豪EPAの水準よりもさらに譲歩して牛肉についてやることになれば、私は、これは明確な当委員会のTPP決議の違反になると思いますし、与党の先生方もそういう認識だと私は思います。
この牛肉の話、そしてまた豚肉も重要だと思いますけれども、申し上げたのは、この委員会でも長期にわたって長時間議論しましたけれども、飼料用米に対してこれから政策的な軸を移していくという際に、国内の畜産業がやられてしまうと、主食用米から飼料用米に移していく政策の前提自体が崩れてしまうと思います。
ですから、総理、ぜひ、今夜からオバマ大統領が来られますけれども、重要五項目、とりわけ牛肉、豚肉については、一歩も譲らないという決意の中で交渉していただくことを強く求めたいと思います。総理、最後に一言お願いします。
○安倍内閣総理大臣 TPP、日米の交渉については最終段階に入っておりますが、我々も、今、玉木委員からのお話もありますし、この農水委員会での決議もあります。しっかりとこの決議を受けとめて、今、玉木委員が言われましたように、農業というのは、それぞれの分野が、畜産や酪農や畑作や水田、それぞれが関連しながら地域を守っているという認識も持ちながら、しっかりと交渉していきたい、このように考えております。
○玉木委員 国益を守る交渉をお願いします。終わります。
○坂本委員長 次に、岩永裕貴君。
○岩永委員 日本維新の会の岩永裕貴でございます。
本日は、このような機会をいただきましたこと、心よりお礼を申し上げます。ありがとうございます。
先ほどの玉木委員の御質問に対しまして、総理は、このたびの首脳会談、最終局面を迎えるのはなかなか難しいだろうというような御発言がございました。
TPPの日米間の合意に関する決意をお伺いしたんですけれども、日本の総体的な国益のために、このTPPを何としても推進し、今後の国際社会の中で日本は勝ち残っていくんだというような中で、TPPを推進されるということに関しては、私どもも大いに賛成をいたしておりますし、賛同をいたしております。
そうした中で、農業を成長産業へとする今法案、そして多面的機能を一方で守っていこうとする今法案、二法案が内閣より提出をされておりますけれども、まず最初に、この両法案を通して、今後の日本の農業の将来ビジョンというか、そうしたものをどういうふうに総理御自身がイメージしておられるのかということについてお伺いをさせていただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 我が国は、古来より、瑞穂の国と呼ばれ、水田農業を中心に、田植えや稲刈りを地域集落で共同で行ってきた伝統があります。今でも、農地や水路の維持は地域集落の共同活動で行われており、農業は地域集落の存在を抜きにしては語れないと考えております。
他方で、今後、我が国は人口の減少が続くと見通される中、農村地域では、既に高齢化や人口減少が都市に先駆けて進行しているわけでありまして、集落機能が著しく低下するなど厳しい状況に直面をしています。
こうした中で、地域経済の中核をなす農林水産業の活性化は待ったなしの課題であります。農業における地域集落の意義や役割をしっかりと踏まえながら、強い農林水産業とともに、美しく活力ある農山村を実現していかなければならない、こう考えているわけであります。
このため、現在御審議をいただいている法案において、多面的機能支払いを創設することによりまして、地域の共同活動に支えられ、担い手が規模拡大に取り組みやすくなる、小規模農業者や高齢者等の地域住民が共同で六次産業化に取り組みやすくなるなど、集落内で役割を分担しながら、地域における農業の活性化が図られるようにしていく必要があると考えています。
また、農業を若者に魅力ある産業に成長させ、農業、農村全体の所得倍増の実現につなげていくことが地域の活性化にとって大変重要であるわけでありまして、輸出や六次産業化の推進による付加価値の向上、農地集積による生産性の向上などにもしっかりと取り組んでいかなければならない、そうしたことをしっかりと行っていくために、今般法案を提出させていただいた次第でございます。
委員のお父様も、若い人たちが進んで農業という道を選ぶような農業にしていきたい、こうおっしゃっておられたわけでございますから、そのお考えにも沿うのではないか、このように思うところでございます。
○岩永委員 私自身も、本当に小さな集落で生まれ育ちました。今も小学校全校生徒が十名に満たないような、小さな地域で生まれ育ってまいりましたが、やはりその集落の中で得た私の価値観というものは、その後の人生に及ぼしている大変大きな影響がございます。八年間海外でも暮らしましたが、そのときに、先人から学んだいろいろな伝統や文化というものを知っていたがゆえに、しっかりと海外の皆さんに、日本はどういうふうな国なんだということも伝えられたわけです。
これから日本が国際化を目指していくという中では、そういった集落から伝えられる伝統や文化、歴史を守っていくということは非常に大切なことだと思いますし、これから日本が直面する課題の中で、集落をいかに維持、守っていくのかということこそが最も大きな課題の一つだというふうに私は認識をしております。
もちろん、農業だけで解決できる問題ではございません。この人口減少の中で集落を守っていくということ、本当に、総理にリーダーシップを持っていただきまして、政府全体で集落の維持そして発展に今後もお力を発揮していただきますように、心からお願いを申し上げます。
続きまして、食の安全保障について一点お伺いをいたします。
現在のカロリーベースの自給率というものは三九%でございます。これを五〇%にというような大きな方針がある中で、その背景には、国民の八割以上の方が、世界的な人口増加を見据えた中で、今後の日本の食が確保できるのかどうかということ、非常にたくさんの国民の皆様が不安を抱いていらっしゃるという現状があります。
そして、まさに日本の食の安全保障を守るという考え方がそこにはあり、現在の国内の農地をフル活用しても、自給率は最大五〇%にしか行かないというような農林水産省の試算がある中で、やはり今後も海外からの輸入にはいずれにせよ大きく依存をしていかなければならない現状があると思います。
そこで、そうした中で、日本のODA、そして農林水産省の外郭団体も含め、これまでさまざまな形で技術、資金的な貢献を海外に対して積み重ねてきた歴史と経緯があります。その考え方の根本には、世界の食料事情というものを安定させることによって、ひいては日本の食の確保にもつながるという考え方があろうかと思いますけれども、この考え方だけでは、世界的な急速な人口増加というものに、本当に今後の日本の食の安全保障を考えるときに、対応していけるのかどうか、私には大きな疑問がございます。
そこで、今後は、技術支援、そして資金支援をさまざまな海外の国々にするに当たっては、交渉過程の中で、協議過程の中で、日本が何か危機的な状況に陥ったときには、優先的にしっかりと日本の食の安全確保に貢献をしてほしいというところまで突っ込んだ外交交渉の上に、海外に対する技術支援、資金支援をしていくべきだと私は強く考えるんですけれども、そのあたりに対して、総理の御見解をいただければと思います。
○安倍内閣総理大臣 食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは極めて重要であります。また、国民に対する国家の基本的な責務である、こう思っております。国内農業生産の増大を図り、食料自給率と食料自給力をともに向上させていくことが大変大切であります。
このため、安倍内閣では、輸出促進、六次産業化による付加価値の向上、多様な担い手の育成確保、そして農地集積バンクの取り組みによる生産性の向上、美しいふるさとを守る日本型直接支払いの創設など、精力的に取り組んだ上で、さらに、四十年以上続いてきた米の生産調整の見直しを行うなど、農政の大改革を進めることによって、農林水産業の活性化を図っていきたいと考えております。
一方で、食料の安定供給の確保については、食料・農業・農村基本法において、国内農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行うこととしておりまして、食料の安定的な輸入の確保も重要と認識をしております。
このため、途上国への技術支援を行うとともに、国際会議の場において、食料輸出国による輸出規制の抑制を主張することなどにより、安定的な輸入の確保に努めているところであります。
なお、今回大筋合意をいたしました日豪EPAにおいては、我が国がこれまで締結したEPAでは初めて食料供給の章が設けられまして、輸出国内の生産が不足した場合であっても、輸出規制を新設、維持しないよう努める旨が規定されておりまして、これはまさに委員がおっしゃった考え方、思想に基づくものである、こう思うわけでありまして、食料の安全保障上、義務のあるものになっていると考えております。
○岩永委員 ありがとうございます。
今後も海外とのそうした関係をしっかりと構築していくことこそが、食の安全保障を守るという観点でも、非常に大切だと思います。
最後に、総理、きょうの朝御飯、何をいただかれましたでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 きょうの朝ですね。きょうの朝、ちょっと、若干、ゆっくりと起きたものでございますから、十分な朝御飯を食べることができなかったのでございますが、通常は、おいしいお米とみそ汁を食べているところでございます。これを世界に広げていきたいと考えております。
○岩永委員 しっかりお米を食べていただいて、あすの首脳会談に挑んでいただきたいと思います。
もう与野党関係なく、本当に、国益を守るという観点から、心よりのエールを送らせていただきます。日本の国益を守ってください。ありがとうございました。
○坂本委員長 次に、鈴木義弘君。
○鈴木(義)委員 日本維新の会、鈴木義弘です。
貴重なお時間を頂戴して、厚く御礼を申し上げたいと思います。
今、岩永委員からも質問がありました農政の課題と将来展望について、何点かお尋ねをしたいと思います。
世界の人口は約七十億を数えるようになっております。二〇五〇年では約百二十億人になるという推計値もありますし、我が国では、人口減少になかなか歯どめがかからず、九千七百万人ぐらいになってしまうだろうというふうに言われています。
地球の陸地で農作物を耕作できる土地が、開墾や開拓をして圃場の整備などをしたとしても、あと残っているのが一〇%から一五%というふうにも言われています。中には、アジアの国でも、アメリカもそうでしょうけれども、砂漠化が進行していて食いとめられないという話もあります。そもそも作物をつくるのに一番大事な、必要な良質の水が枯渇しているというふうに言われていますし、深刻な水不足になるのではないかという予測をしている人もいます。国家百年の大計は教育というふうに言われますが、食、すなわち農業については、百年の大計どころじゃなくて、もっと長期の計画を持ってやらなければならないと思っています。
飽食の時代が、今私たちが住んでいるこの時代だと思うんですが、将来にわたって食べられないというふうに思っている人はほとんど今いないんじゃないかと思うんですね。そうはいいながらも、東アジアに位置する日本を取り巻く国際環境の変化が、二十年前、三十年前よりもやはり厳しい状況になっているというのは、国家の安全保障を見ても、それは誰でも思うことだと思うんです。隣の国では、エネルギーや食料を含んだ資源の確保に奔走している国もあるわけです。我が国は、経済バランスの中で、食料の海外依存度が少し高い国なんだと思うんです。
先ほどもお尋ねがありましたように、食料の安全保障とは何ですかということなんです。これは、私は過去の農林水産委員会でも何回もお尋ねをさせていただいたんですが、先ほども議論のありましたTPPの締結は、我が国にとって食料の安全保障の面で有益になり得るのかどうか、そこも含めてお尋ねをしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 食料の安全保障とTPPについてお尋ねがございました。
いわば食料の安全保障につきましては、先ほど申し上げましたように、食料の安定的な供給を将来にわたって確保していく、そして、それは国民に対する国家の基本的な責務であり、国内農業生産の拡大を図り、食料自給率と食料自給力をともに向上させていくことが大切であり、そして、それをしっかりと行っていくことによって、食料の安全保障を確保していきたい、こう考えているところでございます。
そのためには、それを支える農業人材を確保していく、そして、その基盤をしっかりと整備していく、維持していくことが大切でございますが、TPPいかんにかかわらず、農は国の基であり、今の段階では、確かに、食べ物が将来獲得できなくなる、食べ物を得ることができなくなるということはなかなか想像しにくいわけでございます。
しかし、多くを日本は輸入に頼っているわけでございますし、また、日本で生産する上においては、そのための燃油も必要であります。そうしたものは海外からやってくるわけでございまして、そうしたものを安定的に、安全に確保するためにも、安全保障の面においても、しっかりとアジア太平洋地域の安定を守っていく必要もあります。こうしたことも全て含めて、食料の安全保障を確保していく必要があるんだろう、こう思うわけであります。
TPPにおきましては、いわば食料の安全保障上も、我々は、守るべきものはしっかりと守らなければいけないわけでございますし、同時に、日本の農業の魅力にさらに磨きをかけていくという努力をみんなで行っていく必要があるんだろう。そうしたことを行っていくことによって、若い皆さんにとって、自分の情熱や能力や努力によって、新たな地平線を切り開いていくことができる分野である、こう思ってもらえるような農業にしていきたい、こう考えているところでございます。
○鈴木(義)委員 国家の責任を持って行わなくてはならないのは、エネルギー、食料の確保が最大限の責務だと私は考えています。
今回の二法案の提出に当たっては、農政を推進するためにアクセルとブレーキを踏んでしまっているんじゃないかというふうにも言われています。
政治の場でよく使われる言葉に、いつでもどこでも誰でも支援しますという、福祉、医療の場合はよく使われるんですけれども、でも、できないことを口にしないと、少しでもそのことに不満を持っている人たちが、それを言い出した人たちを仲間やマスコミを使って徹底的に糾弾するというのが今の社会の風潮なんだと思うんです。
政治の仕組みは、民意の反映、民意の集約、そして利害関係者の調整を図ることは承知しておりますが、今回の議論の中で、きのうもお尋ねしたんですけれども、今食料安全保障が大事だということであれば、先ほども宮腰先輩の方から保険の話が出て、三年先には、よく様子を見て調査して、保険を今回の議案の中の附則のところに追加しようということで御提案があったんです。ということであれば、もう生産調整、減反政策はやめるというふうにきちっと言った方が私はいいんじゃないかと思うんです。
総理の御決断をお願いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 これまで、米の生産調整を初め、さまざまな施策を展開してまいりましたが、農業生産額の減少と高齢化の進展、耕作放棄地の増加等の構造的な問題は顕在化したままであります。我が国の農林水産業の活性化は待ったなしの課題となっているのは、委員も御承知のとおりであります。
このため、昨年五月、官邸に農林水産業・地域の活力創造本部を設置いたしまして、私が先頭に立って検討を進め、昨年末、政府として急ぎ着手すべき農政改革のグランドデザインである農林水産業・地域の活力創造プランを取りまとめました。輸出促進や六次産業化の推進による付加価値の向上、多様な担い手の育成確保、農地集積による生産性の向上、美しいふるさとを守る日本型直接支払いの創設などに取り組んでいくこととしております。
その上で、米の生産調整を見直し、これまで行政が配分する米の生産数量目標に従って農業者が作物をつくっていたものを、五年後を目途に、農業者がマーケットを見ながらみずからの経営判断で作物をつくれるようにするとともに、需要のある麦、大豆、飼料用米等の生産振興を図ることによって、いわば農地のフル活用を図り、食料自給率、食料自給力の維持向上を図っていくこととしております。
こうした改革を着実に進めていくことによって、農業を若者に魅力ある産業に成長させ、農業、農村全体の所得倍増の実現につなげていきたいと考えております。
○鈴木(義)委員 私がお尋ねしたのは、今そういう御答弁をいただくのであれば、もう減反をやめるというのが前提になってくるんだと思うんですね。
もう一度お尋ねしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、まずは五年で、この目標に向かってしっかりと進んでいくことが重要ではないか、こう思うわけでございます。
その中におきまして、先ほど申し上げましたように、農業者がマーケットを見ながら自分たちの収益を上げていくべく、そして消費者のニーズにも合わせながら作物を選んでいくということが進んでいくことによって、我々は大きく変わっていく、このように考えているところでございます。
○鈴木(義)委員 お米も一年に二作つくっているところもあると思うんですけれども、一年に一作のところが大半なんですね。そうすると、状況を見ながら自分たちで経営判断しろといっても、一年先、二年先になってしまうんです。
だから、今、保険の制度も組み入れるように、法案の附則にも入れよう、それできちっと安定をさせて、農業を継続してやってもらおうというように私たちも発言をしたり提案をしたりしてやってきているわけですから、そこの意味で、悠長にやっている時間はないんじゃないかと私は思うんですね。
そこのところで、もう一度御決意をお願いしたいんですけれども、また同じ答弁しかされないと思うんです。
○坂本委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。
○鈴木(義)委員 はい。
最後に一点だけ、永続して、自然というリスクをとりながら、農業、林業、水産業に働いている人が私たちの食を保障してくれているわけです。その労働の対価として、ある一つの基準を設けてでも、もう所得補償の制度を設けないと、農業を充実して、また継続してやっていく人がどんどん減っていってしまうんじゃないか。他産業から来たらどうだというふうにいっても、平均年収四百五十万、四百七十万の人が……
○坂本委員長 既に時間が経過しておりますので、質問の終了をお願いいたします。
○鈴木(義)委員 はい。
最後に一言、所得補償の制度を設けるというのをどう考えるか、お願いしたいと思います。
○坂本委員長 安倍内閣総理大臣、答弁を簡潔にお願いいたします。
○安倍内閣総理大臣 効率的かつ安定的な農業経営によって、他産業並みの労働時間と所得を目指して経営改善に取り組む認定農業者を主な担い手として、経営所得安定対策や融資、税制等の政策を集中して実施しているところでございます。
他方、御提案のように、新規に就農した方々に対して一定額の所得を補償するようなことは、他の産業で働く方々や、既に農業で頑張っておられる方々の理解を得るのはなかなか難しいのではないかと考えております。
いずれにせよ、政府としては、これら施策により新規に就農する方々をしっかり支援するとともに、六次産業化などを着実に進めることによって、我が国農業、農村を活性化し、農業を若者に魅力ある成長産業にしていきたいと考えております。
○鈴木(義)委員 ありがとうございました。
○坂本委員長 次に、林宙紀君。
○林(宙)委員 結いの党の林宙紀でございます。
本日は、二回登場いたしますので、皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
ここまで、この法案に対しては、衆法もあわせて、愚直に、真っすぐに議論を交わさせていただいたというふうに思っております。本日は、総理にお越しいただいておりますので、この法案について、改めてその重要性等々を伺いたいと思います。
まず、この法案が重要広範議案になりました。私は、それを知ったときに、内容から考えて、実は意外だったんですね。なぜならば、重要であることは変わりないんでしょうけれども、その内容については、基本的に、押しなべて言ってしまえば、これまで制度としてやってきたことを、ある程度修正をして法案化するということだったので、内容的に大きな改革というところが、私としては余り感じられない法案であるというところが正直なところです。
そこで、総理に改めてお伺いいたしますが、政府提出の二法案、この法案を通じた農政改革全般、これを総理が強く推進するという、その理由を改めてお伺いします。
○安倍内閣総理大臣 農業については、先ほども答弁いたしましたように、まさに農は国の基であり、かつ、各地域を支えているのは農村であると言ってもいいんだろう、こう思うわけでございます。そして、その農業、農村において、若い人たちが未来に希望を持って仕事をしていくことができる、汗を流していくことができるようにしていく、そういう環境をつくっていくことは国の大きな責任であろうと思います。
そのためにはさまざまな課題があるわけでありまして、一つ一つ、課題に正面から向き合い、克服していくことが不可欠であります。
昨年末、農林水産業・地域の活力創造プランを取りまとめまして、新たな需要を取り込むための輸出の拡大、六次産業化の推進による付加価値の向上、多様な担い手の育成確保、農地集積バンクを通じた農地の集積による生産性の向上、担い手の負担を軽減し、構造改革を後押しする日本型直接支払いの創設などに精力的に取り組んだ上で、さらに、四十年以上続いてきた米の生産調整の見直しを行うこととしているわけでございます。
いわば、農業の改革につきましては、一見地味に見えるかもしれませんが、しかし、それ自体は、実は未来に向かって農業を魅力ある産業にしていく上において大変重要であることが多いわけでございまして、そういう意味におきましては、我々が今回のこの法案に込めた思いというのは、今こそ農業を若い皆さんにとって魅力あるものにしていきたい、担い手の皆さんがその能力をフルに活用できるような状況をつくっていくための法整備をしていきたい、こう考えているわけでございます。
今般御審議いただいている二法案は、このうち、多様な担い手の育成確保、日本型直接支払いの創設を実現するためのものでありまして、今後、これらの改革を着実に進めることによって、農業を若者に魅力ある産業に成長させ、農業、農村の所得倍増の目標の実現につなげていきたいと考えておりまして、二法案の早期の成立をよろしくお願いしたいと思います。
○林(宙)委員 私は、前にみんなの党、そして今は結いの党ということで、非常に改革ということを前面に押し出してきている政党で活動しているわけで、今回、審議の中で、本会議でも少しお伝えしたというか質疑に入れさせていただきましたけれども、EU型の直接支払いというのをベースに考えていくべきだ、それが私たちの党の姿勢であるということは申し述べさせていただきました。
その中で、私たちが大事にしていることは何かというと、農政というのは、歴史的に考えて、基本的には、ここまで生産者サイドに立った視点というのが強く反映されているんじゃないかなというふうに私は思っています。
一方で、今これだけ、戦後七十年近くたってきているわけですので、その間に農業に対する国民の見方というものもだんだん変わってまいりました。それが、いい意味でもそうですし、悪い意味でもあるかというふうに思います。
例えば、私たちの世代なんかは、前も委員会で申し上げましたけれども、やはり食料に困るという具体的な危機的状況になるということはほぼ経験しないで育ってきた時代ですので、そういう意味では、そういう危機感をお持ちの世代とそうでない世代というところでは、どうしても、食料を確保することにこれだけ国が支援する、その意義は何なんだというところにある程度差ができてしまうのかなということは考えております。
もう一つ総理にお伺いしたいのは、要は、今まで生産者サイドに立ってきたという農政に対しまして、私たちは、ある程度消費者という立場から考えていくこともこれからは必要なんだろうと。そうしますと、例えば、先ほど、生産調整は廃止すべきではないか、そんなお話もありましたが、それに伴って米価はある程度下落するでしょうということは容易に予想されます。その米価が下落した際に、消費者としては、店頭で買う価格については大分安くなるというところもありますので、消費者の立場から考えるとこれは利益であろうという考え方もできるかと思いますが、それも含めて、政府として、消費者視点に立った農政改革という点については、総理、どのようにお考えでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 戦後すぐの段階において、農業に携わる人口あるいは農業経済に携わる人口というのは大体人口の半分ぐらいと言ってもよかったわけでございまして、まさに第一次産業が国の一番大きな産業であったということも言えるのではないかと思うわけであります。
しかし、その後、農業人口が減少してきたわけでございます。かつては、農業政策というのは、ほとんどこれは国民全体にとっての政策であったと言ってもよかったんだろうと思いますが、今委員が御指摘のように、そうした中において、生産者に偏り過ぎているのではないかという御指摘だろう、こう思うわけでございます。
しかし、一方、先ほど来答弁をさせていただきますように、良質な食料を合理的な価格で安定的に供給していくということは、国の責務でもあるわけでありまして、食料をしっかりと確保していく安全保障の意味からも、農業は極めて重要であります。そして、農業を維持していくためには、その人材も確保しなければいけませんし、その環境も確保していく必要があるんだろうと思うわけであります。
今般の農政改革においては、担い手の減少と高齢化の進展、耕作放棄地の増大など厳しい状況にある我が国農業が、将来にわたって、消費者のニーズに応えながら、食料を安定的に供給していくことができるように、農地集積による生産性の向上を通じた生産コストの低減などの取り組みを進めるとともに、マーケットを見ながらみずからの経営判断で生産できるようにしていくことによって、市場ニーズに即した農業生産を促進するものであり、生産者の所得の増大、農業の成長産業化を図るとともに、消費者の視点をしっかりと踏まえたものであると考えているわけであります。
いずれにいたしましても、生産者の視点だけでは農業が成り立たないことは間違いないわけでありますし、生産者の視点だけでは農業の所得もふえていかないわけでありまして、いわば消費者のニーズを先取りする形において、生産者が何をつくっていこうかということも考える中において、農業、そして農村の所得も向上していく。つまり、生産者あるいは消費者にとってウイン・ウインの政策を進めていきたい、このように考えているところでございます。
○林(宙)委員 では、最後にもう一問お伺いしますけれども、今おっしゃっていただいたとおり、やはり消費者の視点をどう取り込んでいくかというのは結構重要なことでありまして、本会議の質疑でも触れましたが、私は、スイスの例を挙げて、スイスは、農業に多大な、巨額の支援を行うことに対して、国民投票並びに憲法改正を行ってまでコンセンサスを得たという事実があります。
そこまでやるかどうかは別として、総理も本会議の答弁で、今後、国民に丁寧に説明をしていく必要はあるだろうとお答えになっていますので、例えば、国民投票なのか、選挙のときにそれを前面に押し出して皆さんに問うていくのか、いろいろなやり方はあると思いますが、どのような形で、そういった、国民の皆さんにしっかり説明をし、理解をしていただくということをやろうとされているのかというのを最後にお聞かせ願います。
○安倍内閣総理大臣 今回の法案につきましても、農業のあり方を改革していく大きな方向性をつけていくものでございますから、農業者の皆さんはもちろんのこと、国民の皆様にしっかりと説明をしていく必要がある、このように考えるわけでありまして、法案や予算の審議を通じて、その意義を明らかにしていくことが大切だろうと思いますし、説明会の開催など広報活動を、これからこの法案を通していただきましたら、大臣、副大臣、政務官、そして与党が一体となって説明をしていきたい、こう考えているところでございます。
国民投票というお話でございますが、これは、国民投票法案について御議論をいただき、今般、十八歳の引き下げへの問題等について与野党で合意が成り立ったことは大変よかったと思うわけでございますが、この国民投票で、憲法改正にかかわること以外のものについて国民投票するかどうかについては、まだ議論が進行中であるというふうに承知をしております。
いずれにせよ、こうした農業政策については、しっかりと国民の皆様に丁寧にこれからも説明をしていきたい、このように思っております。
○林(宙)委員 我々野党の議員においても、その説明責任というのはやはりあると思っていますので、私たちも、今後はしっかりと説明をしていきたいなというふうに思っております。
時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○坂本委員長 次に、畑浩治君。
○畑委員 生活の党の畑浩治でございます。
まず、やはりTPPの関係をお伺いしたいわけですが、TPPの日米交渉と国会決議の関係、これは長らく、何回も本日も議論がありましたけれども、お伺いしたいと思います。
TPPで、この重要五項目を守るということがどういう意味を持つというか、何をやればこの重要五項目を守ったと言えるのかということは、かなり曖昧で、かなり疑問があって、不安があるところであります。なぜかというと、日豪EPAでは、牛肉について関税を引き下げていますし、豚肉でも低関税輸入枠を設定したということもありました。
こういうのを見たときに、除外あるいは再協議とありますが、これは、関税引き下げとか低関税輸入枠も入れて、これをやらないと言っていることではないというふうに浮かび上がってくるような気が私はしております。
お伺いしたいのは、除外というのは、端的に言うと、関税撤廃の除外だけなんでしょうか。関税引き下げとか輸入枠の設定は含まれていないという解釈なんでしょうか。そこの総理のお考えをお伺いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 この農水委員会において、米、麦、そして牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源等について、この重要五品目についての御決議があったわけでございまして、我々は、しっかりとこの決議を受けとめて交渉をしていきたい、こう思っているところでございます。
そして、今、ちょっと質問の通告がなかったものでありますから……(畑委員「通告しています」と呼ぶ)いや、その具体的な通告を受けていないものでありますから、TPPの交渉についての考え方という通告は受けたわけでございますが、具体的な通告を今受けていなかったものでございますから、その捉え方については、後ほど書面をもってお答えをさせていただきたいと思います。
○畑委員 私はこの部分をきちっと通告いたしましたが、いずれにしても、交渉する以上、そのトップの総理が除外とはどういう定義かわからなければ、私は国益を守れるはずがないと思います。今の答弁は、私はちょっと失望いたしました。
本日、私は資料をお配りしております。かねてよりの議論でやっておりますけれども、除外というのは、特定の物品を関税の撤廃、削減の対象としないということを内閣官房の資料で言っております。
この文字どおりいうと、やはり日豪EPAでさえも決議違反なわけですよ、文言どおりの解釈をすれば。
そこで、おかしいと思うのは、結局、関税を引き下げることは決議違反なんだけれども、国内対策とあわせて影響が出ないようにすればいいと言っているのか、あるいは、そもそも影響が出ないような関税引き下げはいいと言っているのか、そこをしっかり明らかにして、本当は国内で議論しなければ、国内の農家の不安は解消されないと私は思います。だが、そういうことがないままに、TPPの交渉とかEPAもしてきた。だから、そこに大きな問題があるのではないでしょうか。そのことを申し上げておきたいと思います。
これまで、この決議について議論したときには、国会で決議したんだから国会の解釈ですという話をされておりましたが、私はそれもおかしいと思います。なぜならば、国会で判断する前提として、政府がこの解釈をどういう解釈でやったか、それを説明して立証していただかないと、私たちは判断のしようがないと思います。
しかも、きょうの議論で、決議を踏まえから、微妙に受けとめになっております。つまり、これは、踏まえでも、守るという定義ではないんですよ、文言どおり言うと。それを受けとめと弱くなったということは、結局、国内の農業に害が生じなければ、悪影響が生じなければいいんだというふうになったと私は今解釈したんですが、そうであればそうで、決議を守ると言わないで、そういうことだと最初から説明してやっていけばいい話であって、これも国民をミスリードしていると私は思います。
このことは、ここまでで申し上げておきます。ここは、そういうことで、交渉の中でこの決議との関係の定義も通告しておりましたので、お答えいただかなかったのは残念でありますが、次の質問に入らせていただきます。
結局、TPPで米国を譲歩させるために、作戦上、日豪での譲歩はやむを得ないということだったのだろうと思いますが、やはり国際交渉はそんな甘いものではなくて、これが出発点になって、さらに押し込まれていると私は思います。
結局、ある程度柔軟な協定ならやるという意味で、日豪EPAぐらいの妥結は、これは評価は分かれますが、あり得るのだろうと思いますが、これを出発点にして、それを上回るような譲歩案をアメリカから求められて、そして、日本も何か提案しているというニュースもありますけれども、そういうことをやるというのは、私は、これはなし崩し的に見えて、農家に対する不安が高まるのだろうと思います。
結局、日豪EPAも、文言どおり言えば決議違反なんですが、これは百歩譲っておいて、これはこれで作戦上あり得るとした前提だとしても、先ほど玉木議員からも議論がありましたが、最大限の譲歩がやはり日豪EPAではないかということだと思います。
この最大限の譲歩が日豪EPAで、これでまとめなさいということは、もちろん交渉の途中ですから私も言うつもりはありませんが、総理、これは、日豪EPAを上回らない形で、つまり譲歩が上回らない形で、しっかり決着する覚悟でやっていただきたいと思いますが、その御決意を伺います。
○安倍内閣総理大臣 先ほどの除外についての御質問については、平成二十四年三月の内閣官房のTPP協定交渉の分野別状況を引いておられたのかなと思いますが、除外についての定義は一律に定まっているものではございません。
TPPは、高いレベルの自由化を目指すという目標のもとで、各国のセンシティブ品目の扱いは交渉の中で決めることとなっているということでございます。
そこで、ただいまの御質問でございますが、日本と豪州の間においては、経済連携協定について、去る四月七日、アボット首相との間で大筋合意を確認いたしました。
TPP交渉は、日豪EPA交渉とは基本的にはもちろん別の交渉でございまして、日豪EPA交渉の合意内容にかかわらず、TPP交渉においては、交渉参加国である他の十一カ国との間で、それぞれの合意に至る必要があるわけであります。
TPP交渉においては、日米間で厳しい交渉が続いているわけでございますが、農林水産品の重要品目につきましては、当委員会、そして参議院の農林水産委員会の決議をしっかりと受けとめて、国益にかなう最善の道を追求していく考えであります。
○畑委員 やはり、なかなかトーンダウンしているなと思いました。
日豪EPAの譲歩を上回らない覚悟でやると言っていただければ、別に結果的にそうなるかどうかというのは、交渉ですから、何もそこはフィックスしろとは言いませんが、やはり最初から交渉の覚悟がちょっと弱くなっているような気が私はしております。
先ほど、除外の定義は一義的に決まらないと言いますが、除外とは、国語の用語でいうと、除くという除外ですよね。何を除外するかというと、内閣官房の資料によると、TPPの特有の定義ではありません。交渉によって決まると言ったのであれば、交渉なんて、そんな曖昧なことはできませんよ。最初から、除外は何を除外するかというのを、資料に書いたとおりのこれを前提に交渉すべきであって、それも曖昧だなと思っております。
そのことは指摘にとどめますが、総理、しっかりと日米交渉をやっていただきたいと思います。そのことをお願い申し上げて、最後の質問に入らせていただきます。
先ほど来、生産調整の議論が行われておりました。生産調整については、行うべきではない、あるいは、やはり必要なんだという議論は、いろいろこの委員会の議論でも分かれたろうと思います。
ここで総理の認識を確認しておきたいのは、生産調整というものについて、実施主体は別として、つまり、総理のきょうの御答弁も、民間が自主的に生産調整というか判断ができるような仕組みをつくるということだったと思います。自主的に判断できるというのは、自主的に需給の見通しをつくって、生産が過剰にならぬようにということだと私は理解をしておりますが、そういう意味で、政府は、行政が生産調整に介入することはやめる、これはこれで明らかになりました。
一方、民間が自主的に生産調整をやるのはやはり続くのだろうなと思います。先ほど来の鈴木議員の質問でも聞いておりましたが、やはり生産調整を廃止するとはおっしゃられない。私はそれで合理的だと思っておりますが、つまり、実施主体は別として、生産調整というものをやって過剰作付面積の減少等の効果が発現されることが必要だと考えているのかどうか、それとも、民間に任せた結果、そういう生産調整的なものもなくて、それはもう自由につくりなさい、何でもかんでもつくって流通させればいいですよという認識なのか、そこの生産調整に対する認識をお伺いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 我が国においては、食生活の変化等によって、一人当たりの主食用米の消費量が最大のときに比べ約半分になりました。主食用米の消費量の大幅な減少傾向が現在も続いているわけでありまして、こうした中で、水田の有効活用を図る観点から、麦、大豆、飼料用米等、主食用米以外の生産振興を図っていくことが必要であると考えています。
このため、今回の米の生産調整の見直しでは、これまで行政が配分する米の生産数量目標に従って農業者が作物をつくっていたものを、五年後を目途に、農業者が、国が策定する需給見通しやマーケットを見ながらみずからの経営判断で作物をつくれるようにするわけでございまして、これは、まさに今委員がおっしゃったように、民間に委ねるわけでございまして、需要のある麦、大豆、飼料用米等の生産振興を図ることによって、いわば農地のフル活用を図り、食料自給率、そして食料自給力の維持向上を図っていくこととしております。
こうした取り組みを進めていくことによって、消費者が求める多様なニーズの米が需要に即して生産されるとともに、消費者、国民に対する食料の安定供給の確保が図られると考えております。
○畑委員 需要に即して生産されることが望ましいというお答えがありましたので、自主的といいながら、やはりそこはしっかり需給の見通しを持ってやっていくことが必要だというふうに私はきょうのところは受けとめました。
実は、これまでも農政改革の法律の議論の中で、いわゆる減反廃止という本会議の御答弁から始まって、生産調整というのはどうあるべきかというのは、そこは非常に曖昧で、本当に減反なり生産調整が続くのか、それとも、民間に委ねると言いながら、そこはどのような介入をするのかというのが曖昧な中で来たというので、そこも、この法律というか今回の議論の中で疑問がとれませんでしたし、農家の不安というか、そこは大きいところだろうと思っております。
きょうは、そのことの問題を指摘しまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
○坂本委員長 これにて内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。
内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。
質疑を続行いたします。林宙紀君。
○林(宙)委員 再び、結いの党、林でございます。
各方面からのプレッシャーを受けながら、本法案の締めくくりに向かって、最後に、愚直に、法案についてのみ伺っていきたいというふうに思います。皆さんの期待にお応えできる結果になるかどうかは最後までわかりません。しっかりと頑張りたいと思います。
今総理にお入りいただいて、いろいろとお伺いをさせていただきました。私もいろいろ申し上げていますけれども、私の場合は、この間の委員会で申し上げたとおりで、この委員会の今回の質疑を通じて、何で農業をこんなに守っていかなきゃいけないんだ、支援をしていかなきゃいけないんだというようなことについて活発な議論が交わされたというのが一番重要という意味で、重要という意味づけができるとしたらそこなんじゃないかなというふうに思っております。
それに続いてというわけじゃないんですけれども、先ほど宮腰先生が質問をされていたことに関連しまして、ちょっとお伺いしたいなと思います。申しわけございません。これは通告に入れておりませんので、お答えいただける範囲でということでお願いしたいんですが、できるだけ私も前提の説明を丁寧にさせていただきたいと思うんです。
宮腰先生からは、戸別所得補償法案に関連して、恒常的なコスト割れというのは存在しているのかという趣旨の御質問だったと思います。それに対しまして、経営局長から、それは、年産の価格とか、あるいはコストのとり方なんかでも変わるでしょう、少なくとも認定農業者等々に関しましてはコスト割れというのは発生していないんじゃないかというお答えでございました。これは認識としては間違っていないですね。
私は、以前、何回か前の質疑で本当は聞こうと思っていたんですけれども、あえてやめたところがあります。それは、この恒常的なコスト割れというのを計算するときに、私は何度も申し上げていますけれども、全算入生産費というところが一つ基準になっていて、米の場合は、実は、労働費を考えない場合には、販売価格から純粋な物財費等々を引いた額が、多少利益がというんですか、余りが出る、ただし、労働費を考えると、それはコスト割れしてしまうということでございました。
このコスト割れについて、米の場合はそれでも労働費の八割ということで、丸々一〇〇%ではないという計算の仕方をしているという前提がございます。その上で、一般的にこれが生産コストですよと言われているものを、農水省がちゃんとデータとして出しているものを前提に置いて計算したらコスト割れしている、恒常的なコスト割れがあるというふうに判断して、戸別所得補償法案の場合は制度を設計しているわけですね。
前の質疑でも、では、これを取り払ったら、そのコスト割れの部分はどうするんですか、それはカバーされないんですかというような質問もさせていただきました。そのとき大臣は、それについて、コスト割れがないという御発言はされなかったと思うんですね。コスト割れがあるという前提をある種暗黙のうちに認めた上で御答弁されていたと私は認識しています。
ということで、まず一つお伺いしたいのは、本当に恒常的コスト割れというのは存在しないという認識に立たれておられるんでしょうかということなんですが、大臣、局長からでも結構です、お願いします。
○奥原政府参考人 先ほど宮腰先生の御質問にお答えいたしましたが、私は、恒常的なコスト割れがあるとかないとかいう言い方はしておりません。コスト割れかどうかは、数字のとり方によっていろいろ違うということを申し上げております。
特に、稲作の場合には多数の小規模農家がいらっしゃる、これは間違いない事実でございます。戸別所得補償を見ましても、二ヘクタール未満の方、この方々が数でいいますと九割いらっしゃるわけでございます。こういう構造の中で、コスト割れというのをどういうデータをとって見るかというのは、これはいろいろな見方があるということでございます。特に、経営規模ですとか経営の形態、これについて、どういう階層を選ぶかによって数字がかなり変わってくるということもございますし、それから、価格の方も年によってかなり差がございます。好調な年もあれば、かなり下がる年もございますので、そういったことによって、数字のとり方によってそこはかなり変わってくるということを申し上げたつもりでございます。
○林国務大臣 今局長から答弁したとおりでございまして、私がこの間答弁したときは、コスト割れがあったとして、その場合に、それを補填するということについて合理的な理由がない、こういうふうに答弁を申し上げたというふうに思っております。
○林(宙)委員 なるほど、わかりました。
そうすると、もう一つ質問させていただきたいんですが、これは局長がお答えいただければ結構だと思うんです。
ほかの、ゲタ対策なんかも基準にはこの全算入生産費を置いているわけですよね。
計算の仕方としては、むしろ米の戸別所得補償の方が、労働費を割り引いて考えていますので、ある種、少しコンサバといったらいいんでしょうか、少な目に見積もっているという事実はあると思います。今、生産規模とかいろいろ条件はあるとおっしゃいましたけれども、米の所得補償の場合はある意味で平均的なところをとってやっているというような理解なんですけれども、ゲタの方もこれは同じなんじゃないですかと私は思うんです。そうすると、その二つに対して、説明が食い違ってきているんじゃないかなと思うんですが、それは局長、どのようにお考えでしょうか。
○奥原政府参考人 これは、作物によって、やはり農業の構造がかなり違っております。米につきましては、先ほど申し上げましたように、小規模の方が相当いらっしゃる、そういう農業構造でございますが、麦ですとか大豆ですとかにつきましては、集団的な営農形態が相当普及しております。
品目横断的な経営安定対策と言われた時代からゲタ対策をやっているわけですけれども、そのときも、要するに、認定農業者の方、それから一定規模以上の方ということで制限がかかっておりましたけれども、ほとんどの方は規模をクリアする形でこの対策に入っていたということもございます。そういう意味で、平均値をとるといいましても、畑作物のゲタについては、ほとんどが一定規模以上になっている方々の平均値をとるということになってくるわけです。
ですから、ここは、作物によって農業構造がかなり違う、こういうことだと思います。
○林(宙)委員 その背景はよくわかるんですよ。作物によってというか、とる条件によって本当に違うんですよね。だからこそ、私はあんなにしつこく、全算入生産費というのでコストを考えていいのかということをお伺いしてきたところもあるんです。
そうなると、やはり政府の説明というものには、基本的には、できる限り幅広いものに関して一貫性というか合理性が統一してあった方が私はいいと思っているんですけれども、米に関しては、そういう計算の方法をしたらコスト割れというのが出てきました、ゲタの方はどうなんでしょうか、多分それも同じように計算したらコスト割れというのは出てくるんでしょうねと。ただ、そこについては補填しているわけじゃないですよというような説明であれば、一定程度理解はできるのかなというふうには思っております。
要は、ゲタでもって、本来コスト割れと見られるようなところを別にカバーしているわけじゃなくて、国境措置でちょっと不利になっているところだけ、ほかにも本当はカバーしてあげたいんだけれども、申しわけないけれども、ここの部分だけということであれば、説明は通るのかなという気はしています。
衆法提出者の方にも同じ質問をお伺いしたいんです。
今、コスト割れというのが、場合によるんだけれども、認定農業者の場合はないんじゃないかというようなこともおっしゃっていましたが、どのようにお感じになっていますか。
○玉木議員 お答え申し上げます。
我々は、まず、やはり恒常的なコスト割れがあるという前提に立って、そこをしっかりと所得補償で埋めていかないと営農継続ができないという前提に立って、埋めていきます。
おっしゃるとおり、米という品目に着目して語りますと、例えば、何度も林委員にもお見せをしましたけれども、例の生産規模が大きくなっていけばいくほど生産コストが下がっていく表からすれば、コスト割れが生じていない米農家も確かに存在します。ただ、それは、逆に言うと、コスト割れが存在している米農家も多数存在しております。米という品目に着目していくと、政府からも説明があったように、それは対象の外なんだ、しかも、高い国境措置があるので、内外の条件不利性はそこにないから、特に税金を入れて埋める必要がないということなんですけれども、例えば、現に、米農家は今現在でも、計算してみると、五反未満の農家であれば、米が高いときでもコスト割れしているはずです。
我々は、しっかりとそこに着目をし、戸別所得補償の固定払いというのは、まさに地域政策的、多面的機能を支える、そういった目的も入っていますから、ここのコスト割れしている部分についてはしっかりと見ていく。米をつくっているからといってそれを外すのではなくて、現にコスト割れしているという現実に着目して、そこはしっかりと埋めていく。我々の考えはそうであります。
ただ、一言つけ加えると、今、計算する際に、コストについては七中五、販売価格については三年平均ということで、これはデータがとれなかったのでそういうことになっていますけれども、仮に継続すれば、やはりそこは、同じ期間を同じようにとった上で、データを整理して、前も答えましたけれども、真にギャップを埋めなければいけない米農家に支援を限定していくことは、これからの政策のあり方としてあり得るというふうに我々も考えております。
○林(宙)委員 どうもありがとうございました。
先ほどの宮腰先生の質問を聞いていて、そこはやはり確認させていただきたいなということで、お伺いいたしました。
続いて、政府にお伺いしたいんですけれども、これは簡単に答えていただければいいと思うんです。
要は、今ちょっと触れました畑作の方の今回のゲタ対策なんですけれども、私たちが何度も何度も申し上げている、欧米型というかEU型というか、その直接支払いという言い方をしますが、よく見ると、ゲタというのは、スキームとしてはそれに近いというか、ほぼそんなイメージなのかなというふうに思っているんですけれども、大臣、認識としてはそんな形で間違ってはいないんでしょうか。
○林国務大臣 基本的にはそういうことである、こういうふうに思います。
いわゆるゲタ対策、生産条件不利補正交付金、こういうことですが、十分な国境措置が講じられていなくて、諸外国との生産条件の格差でコスト割れが生じている例えば麦、大豆の農産物について、コスト割れを補填する、こういうものであります。
EUやアメリカにおいても、平成五年に妥結しましたガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉の結果等を受けて、逐次、価格支持政策、プライスサポートという政策の見直しを行って、これに対応して直接支払い制度の拡充を行ってきておりまして、農政における世界の流れ、潮流と言っていいと思います。
畑作物のゲタ対策というのは、基本的にはこうした欧米型の直接支払いと同様のものである、こういうふうに考えております。
○林(宙)委員 ということで、畑作に関しては、政府案が通ればこのスキームが導入というか、それが固定されるということになると思うんですよ。だったら、米に関しても、少しそういうことを今後考えていってもいい要素は出てくるんじゃないのかな。
要は、そういうことをやる素地というか事例というのは畑作の方ではあるので、今後、いろいろな要素を考えていったときに、米の方でも適用しようと思えばできるんじゃないかというふうに私は思っていたりしますが、それが導入されるには、恐らくまた別の大きな議論をもう一度しなきゃいけないんじゃないかと思っていますので、ここであえて導入してくださいとは言いません。
先ほど来、生産調整の見直しについて、総理に対していろいろと質問がありまして、私も少し触れさせていただきましたけれども、今回、五年後を目途にということで、行政が配分する生産目標というのをやめても、農家自身がマーケットを見ながら、このぐらいつくれば大丈夫かな、売り切れるだろうなとか、いろいろなことを考えて経営していく方向に移行していきたいということを常々おっしゃるわけなんです。
そうすると、当然、私らは、では、そこには行政はもう関与しないということでいいんだろうな、行政の手助けが必要ない状態にしていきましょうね、これは非常に歓迎すべきことだと思っているんですね。
であれば、先ほどから何人かの質問者の方がおっしゃっているとおり、生産調整というのを、今は見直しでもいいですけれども、例えば五年後なり、もうちょっと先なのかもしれませんが、そのときには廃止しますよということを言ったところで何ら問題はないんじゃないかな。
実は、生産調整というのは、主に食糧法の方にもそういう熟語が入っているんですね。特に、第二条なんというのは、主要食糧の需給及び価格の安定を図るための基本方針というのがあって、その中に、米穀の需給の均衡を図るための生産調整の円滑な推進ということに関していろいろ規定がなされているわけです。先ほど申し上げたとおり、第二条です。
こういうものを廃止していくとか、そういう方針がない限り、いつまでたっても生産調整をする根拠というのが残ってしまう。そうなると、せっかく改革だといって、総理がいわゆる減反の廃止とお話しになったり、生産調整は廃止とまでは言いませんが、見直しというところになってきているときに、何か整合性がとれないんじゃないのかな。そこに関して、改革に対する覚悟というのがなかなか見えてこないなと思うんですけれども、生産調整の規定というのを今後削除していく、そういう考えがあるのかどうか、これについてお聞かせください。
○小里大臣政務官 食糧法についてのお尋ねでございます。
御指摘のとおり、現在までは行政が生産数量目標の配分を行ってきたところでございますが、これを、今回の米政策の見直しにおきまして、五年後をめどに、行政による配分に頼らずとも、現場で需要に応じた生産が行われるように、環境整備を進めるということにしているわけであります。
行政による米の生産数量目標の配分は、かつては食糧法に基づいて実施をされておりましたが、既に根拠条文が改正をされまして、数量配分は、食糧法に基づくものではなくて、局長通知によってなされているわけであります。
したがって、現時点において食糧法の改正を含めた法的な手当てを行う必要はないと考えておるところでありまして、今回の米政策の見直しの内容をしっかりと実行していくことが肝要であると考えております。
○林(宙)委員 そういった根拠であるということであれば結構ではないかなと思いますけれども、結局のところ、お伺いしたいのは、生産調整に関しての数量目標はやめるんだけれども、いただいている説明資料とかパンフレットとかいろいろなものを見ると、今後も米の需給と価格の安定のために行政、生産者団体、現場が一体となって取り組むとか、そういう記述というのはやはりあるわけですよね。そうすると、数値目標は、皆さん、行政に頼らなくてもやれるようになってくださいねと言っている一方で、でも、行政が関与していくという状況が続くのかなという感じがするんですが、政務官、それはそういう理解でよろしいんですか。
○小里大臣政務官 減反について考えますときに、需要が減っていく米をつくり過ぎれば、コスト割れをしまして、安定的な米の生産あるいは安定的な米の供給というものが損なわれかねないわけであります。そのために、やむを得ず減反、減反で来たわけであります。
しからば、需要のある米をつくろうということで、今回、米政策の見直しが行われました。その結果、飼料米を中心として、非主食用米をフルに水田を生かしてつくっていこう。稲を稲として作付していくわけでありますから、減反の世界からは脱却をしていく。あるいは、不作付地までこれを広げていきますから、考えようによっては増反の世界に入っていくということも言えようかと思います。一方で、非主食用米をつくっていけばつくっていくほど、結果として主食米の生産が調整をされ、米の値が安定をしていく、そういうことも期待をされるわけであります。
したがって、これからは、減反と生産調整という概念は必ずしも同一ではないのかな、同義語ではないのかなということも考えられるわけであります。
いずれにしましても、非主食用米を中心とする有力なツールを準備して、かつ、国からきめ細やかな情報を提供することもあわせながら、現場を主体として需給のバランスのとれた生産が行われる、そういったことのために、国としては積極的に環境の整備を図っていくということであります。
○林(宙)委員 何となくやはり落ちつきが悪いというか、私の中で。私も、割と白黒はっきりさせたい性格なものですから。
民主党さんの戸別所得補償の場合は、これは結構はっきりしているなと思っているんですよ。生産調整に参加すること、これを条件にして交付金の対象にしますと。これがいいかどうかは別ですよ。だけれども、それに対するスタンスというのははっきりしているわけですよね。
でも、今回の政府側の姿勢というのは、では、これは結局、最終的になくしていく方向なんですか、それとも続けるんですかというところが全く見えない。そこがはっきりしないがゆえに、私は改革と言い切れないんじゃないかというふうに思っているわけです。
だって、何かずっとやっていったら、いやいや、やはりこれをやって失敗しましたというので、生産調整、がちがちで復活しますということもまだできるという状況が残っているということですよね。改革というのは、ほぼ退路を断ってやるぐらいの覚悟があってこそ改革なんですよ。そうなると、もうちょっとはっきりとした態度というのを示していただいても、私は、私はですよ、私らの遠くの立場からいったら、いいんじゃないのかなというところはあるんです。
ただ、もう審議も佳境になってきておりますので、余り細かいことはもう申し上げませんけれども、最後の最後にやはり聞いておきたいことというのが幾つかまだ残っていますので、ちょっとそっちで聞きたいなと思うんです。
今、小里政務官から飼料用米のお話がございました。
これは前々から申し上げておりますが、戸別所得補償は十アール当たり一・五万円という金額であります。これに対して、ばらまきだという批判が、私たちも含めてあったわけでございます。しかしながら、飼料用米に関しては、平均すればということになるのかもしれませんが、基本的に、真ん中とったら八万円、五・五万円から十・五万円ですけれども、十アール当たりで八万円でございますね。
そうすると、戸別所得補償をやるよりも、単位当たりで考えたら物すごいお金をつけるじゃないですか。つける理由は今までいろいろお伺いしました。だけれども、これは投資の一種みたいに考えると、十アール当たりにこれだけのお金を投入するんです。投入した結果、これだけの利益を、メリットを持ってくるんですというのが見えないと、理解はされないんじゃないかなと思いますよ。
しかも、主食用米、人の、人間のですよ、これはよくある議論ですけれども、人間の食べるものというのを生産するんだったら、まだ何となく、食料自給率にも直結するし、いいんじゃないかと皆さん思うかもしれませんけれども、飼料用米の場合はそうじゃないですからね。
食料自給率への貢献度を考えても、つくった分、一〇〇%そのまま自給率に反映されるわけじゃないですから、そう考えると、どのぐらいこの八万円に合理性があるんでしょうかということを、やはり各方面から引き続き問われることにはなると思うんです。
これについては、効果とか効用というのを明示的に示すというのは難しいと思いますが、大臣、改めて飼料用米の合理性について御答弁をお願いします。
○林国務大臣 まず、米の消費量が半分になっている。百十八キロから五十六キロとよく言うんですが、今、小里政務官からもお答えしましたように、では、米の消費量が半分になったので水田も半分にするか、そういうところではなくて、やはり貴重な生産装置である水田は有効活用していこう。
したがって、主食用の米にかわるものを水田でつくっていただく、これは非常に大事であるという観点から、餌米、飼料用米のような多様な米の生産振興を図る。小麦や大豆、固定的な国産需要はあるんですが、海外からの輸入に依存している。
そのときに、では、飼料用米ですが、何と代替するかといえば、輸入トウモロコシと代替しなければいけないわけです。それと置きかわっていく、こういうことでありますから、したがって、輸入トウモロコシと遜色ない価格で供給をできるようにする。これがないと、餌米をつくってくれと言っても、誰も買わない、こういうことになってしまうわけでございますので、まず、そういうことが大事である。
それから、今は主食用米に比べてむしろ単収が低いということで、八万円プラスマイナス二・五万円という数量払いということで、単収向上の取り組みのインセンティブを入れた、こういうことでございまして、飼料自給率が大変低い我が国において、飼料用の米の生産が増加して、飼料の安定供給につながる。よく、畜産の話をするときに、為替が動いたので餌代が高くなっていると。こういうことはなくなっていくわけでございます、餌米の部分については。それから、主食用米と同様の栽培方法や農業機械が使える。
こういうことでございまして、食料自給率や自給力の向上をあわせて図っていくという意味でも、大変にメリットが大きい、こういうふうに考えております。
○林(宙)委員 水田を水田として活用するというのは、非常に大きな要素だと思います。
一方で、多面的機能の維持ということを説明するのはなかなか、都市部の方々に対しては特に難しいなと思いながら私も説明をさせていただいている事実がございます。
水田を水田として活用するということに関して、十アール当たり八万円、あるいは、今大臣がおっしゃったように、やはり輸入トウモロコシと代替していくんだ、その結果、為替の影響なども解消していけるんだ。いろいろな理論武装をしておかないと、やはり各方面に行ったときに、何でだという話が毎回毎回起こってくると思うんです。これは、先ほども申し上げましたけれども、政府だけの責任ではなくて、やはり農政にかかわる議員は基本的にはちゃんと理論武装しておかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思う次第です。
もう一つ、これは簡潔に答えていただければいいと思うんですけれども、ちょっと懸念しているのが日本型直接支払いの方なんです。
これは、農業者に直接渡るものではなくて、間にワンクッション、団体を挟むというこのスキーム、これだけを見ていると、悪用される可能性があるんじゃないかなという懸念はやはり払拭できません。
ということで、多面的機能支払い等々の団体においての使途をチェックする仕組みというのをちゃんとつくるんでしょうかというところをお答えください。
○三浦政府参考人 お答え申し上げます。
多面的機能支払交付金でございますけれども、活動組織において、活動参加者に対する日当のほか、資材の購入費ですとか工事や事務の外注費等、幅広い用途に用いることが可能でございます。
活動組織におけるこうした交付金の使途につきましては、制度趣旨に即した適切なものであって、その執行や会計経理が適正に行われるということが重要でございます。
このため、この交付金につきましては、活動組織は、領収書等の支払いを証明する書類を受領、保管いたしまして、金銭出納簿に記録するということを行いますとともに、毎年度、この出納簿を市町村長に提出して、これを市町村長が確認するという仕組みとすることとしております。これによりまして、交付金の使途のチェックを行うということにしております。
また、さらに、地方農政局が、毎年度、活動組織の中から抽出して、証拠書類等の検査を行うということとしているところでございます。
○林(宙)委員 そのようにおっしゃるので、大丈夫なのかなというふうには思っていますけれども、それが結局のところ、私たちが、直接支払いというのは農業に従事する人に基本的には渡らないといけないんですよということを申し上げているのは、やはりそういう懸念があるからなんですよね。これは、領収書等々なんて、うまいことやれば幾らでも、にせのものをつくるなんということをやっている事件だって過去に数々あるわけです。これをやはり担保しないと、私は難しいんじゃないのかなというふうにちょっと思うところはあります。
それだったら、本当に担い手なんかにぽんと、この分で何とか維持をしてくれということで、その担い手から直接的にアルバイトを雇うなり、そういう形にした方がまだ透明性が確保できるんじゃないかなというふうに私は思っています。
済みません。結局のところ、時間をフルに使わせていただく結果になってしまいましたけれども、最後にちょっと申し上げておきたいなと思うのは、今回、皆さんの意見を聞いていて、やはり農地を農地として維持していくんだという、その重要性に対する姿勢は各党とも変わらないというのは、これはもう本当に強く思いました。これはすばらしい議論だったと思います。
それに対する手段をどうとるかというところで違いが出てきているのかなということで、私もスポーツをやっていたので、サッカーなんかに例えたらよくわかるのかなと思いました。要は、五、四、一で、ディフェンダーを多くしておく政策なのか。私たちは、フォワードを三人ぐらいにして、ディフェンスはちょっと薄くても、もっともっと攻めていきましょうよと。監督がどっちをとっても、それはもう監督の判断ですということになってくるのかな。
そういう中で議論をさせていただいて、この後、採決に入るんでしょうけれども、決まったことに関しては、やはりそれを、とにかくこれだけ多額のお金を税金から使うわけですから、国民の皆さんに胸を張って説明していける、そういう使い方をしていただきたいですし、先ほどの話じゃないですけれども、チェックをしっかりしていただきたいなというふうに思っている次第でございます。
この法案審議中、何度も何度も登場させていただきまして、本当に皆さんには、途中で、また林かというふうに思われたかもしれませんけれども、いろいろな議論を通して私自身も十分な議論ができたかなというふうに思っておりますので、最後に畑先生の質疑がありますけれども、皆さん、最後までぜひ審議に耳を傾けていただきたいなというふうに思います。
では、以上をもちまして私の質疑を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
○坂本委員長 次に、畑浩治君。
○畑委員 改めて、畑浩治でございます。
最後になりましたが、皆様、もうしばらく御辛抱を賜ればと思っております。
先ほど、総理に対して、生産調整の意義ということをお伺いしましたが、資料をお配りさせていただいております。これは平成二十三年度の食料・農業・農村白書からとったものであります。これは、十九年度に七・一万ヘクタールの過剰作付面積ができたので、ペナルティー型のものを導入して、五・四、四・九と減ってきた。平成二十二年度から米の所得補償が始まって四・一に減って、その後、二十三年度が二・二に一気に減って、そして、これは書いていませんが、二十四年度は二・四万ヘクタール、二十五年度は二・七万ヘクタールということで、二万ヘクタール台で推移しているということであります。
これを見ると、私は、過剰作付面積が戸別所得補償とリンクさせることによって減っているという事実があると思うんですが、この戸別所得補償とのリンクで生産調整を選択する、やっていくということの意義について、大臣はどのように認識をされておられますでしょうか。
○林国務大臣 これは、畑先生ではない方のときに既に一回議論になった、こういうふうに思っておりますが、主食用米の作付面積が生産数量目標の面積換算値を超える、いわゆる過剰作付、今お話しいただいたとおりでございまして、この資料にない、二十四年、二十五年もお話しになっていただいたとおりでございまして、二十五年産、二・七万ヘクタールになっております。
この水準が、近年、安定的に推移している要因ですが、二十二年産以降、米の直接支払交付金等のメリット措置が講じられた、これが一つですね。それから、平成二十年産から開始された餌米等への支援、これが定着してきている。それから、二十三年は、御案内のとおり、お地元でもありますが、東日本大震災による東北等の主産県における生産力の影響、こういうようなものが複合的に要因としては挙げられる、こういうふうに思っております。
したがって、今回、我々は、みずからの経営判断で需要に応じた生産を行えるように、いろいろな環境整備をしていこう、こういうことにしたところでございます。
○畑委員 そうすると、きめ細かい情報提供によって生産者の自主的な生産調整を行うことの方が、戸別所得補償制度と絡めた生産調整よりうまくいくというお考えでしょうか。そこの根拠をお伺いしたいわけです。
そこは、生産調整が、自主的じゃなくて、やや緩くなっても、構造改革をやって、むしろそういう方向に行くのがいいという考え方は一つあるだろうと思います。生産調整の考え方からいうと、どう見ても、情報を与えて自主的に判断させることがうまくいくとは思えないんですが、生産調整の観点からはうまくいくとお考えになっているとすれば、その根拠をお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 先ほども申し上げましたように、過剰作付は、例えば平成十六年は二・五万ヘクタールだったんですね。それからふえて、また減って、こういうことになっておりますので、必ずしも今までの生産数量目標の配分ということがうまくいっていたかということも一方である、こういうふうに考えております。
それからもう一つは、やはり需要のあるものをつくっていただくという意味の一つに、御家庭で食べていただくようなブランド米だけが米ということではなくて、中食、外食用のいわゆるボリュームゾーン、こういうものがかなりの割合で出てきておりますので、それぞれの需要に合ったものをそれぞれの方がつくっていただくということによって、全体として需給のバランスがとれていく。
今の制度ですと、どうしても行政が目標を配分いたしますので、来年、再来年のことがどういう目標になるのかというのをあらかじめ生産者の方が想定することは難しくなるわけでございまして、例えば需要家が五年間の長期供給契約を結ぼうというふうに、大変うれしいお申し出だと思うんですけれども、そういうことには実は応えられない、こういうこともございますので、今回、需要に応じて皆さんにつくっていただくという環境整備をしていこう、こういう考え方に立って改革をするということでございます。
○畑委員 まさに、しっかり需給の見通しをとって、そしてこれがうまくいくためには、やはり事前の契約とかそこの見通しがしっかりできることなんです。そこがちょっと見えないものですから、若干不安というか疑問を持っているんですが、これはこれで終わらせていただきまして、次の議論をさせていただきたいと思います。
農業の戸別所得補償政策の制度というのは、これは玉木議員が言っておられたと思いますが、静かな構造改革、その中に集約化、そして大規模化のインセンティブが組み込まれた制度だということをおっしゃっておられまして、そういう意味で構造改革的だという議論はあるし、私もそう思うわけですが、その後の財政支出の持続性というところを、そういう意味で構造改革的かどうかということをお伺いしたいと思うんです。
実は、戸別所得補償政策は、今見ると、差額を埋めるということでなかなか議論が分かれるところは確かにあるんです。ただ、これはあくまで収入とコストの差を埋めるという考え方でできているとすれば、構造改革が進んで集約化が進んでいくと、当然そうあらなければなりませんが、コストと収入の差が縮まっていくはずです。そういう政策をとっているはずですが、そうなってくると、そこを埋める額も、恐らく財政支出的に減ることが想定される制度であろう。だから、持続的な財政出動という意味で考えても構造改革的だなと私は思ったんです。
一方、政府案の方は、それそのものは集約化とリンクされておりませんので、要は、今のままでも、集約化されても、多面的機能払いなんというのはそのまま払われるという制度です、その主体が少なくなっても。結局、そこに、財政支出は恒常的に、今の制度で想定どおりの、当初から半永久的に続く制度であるというふうな気がするんです。
そういうことからすると、これからの財政構造改革的な意味からしても、戸別所得補償の方が合理的だと思うし、これは林議員も再三議論されていましたが、当面、暫定的にこういう形から始めて、EU型のダイレクトペイメント、直接所得補償に将来うまくすり合わせていけるような制度なのではないかという気がしますが、そこの認識をお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 基本的には、長期の財政に対する負担というのも考えていかなければいけないというところで認識は一致しておる、こういうふうに思います。
一方で、先ほど申し上げましたように、需要がどうなっていくか、残念ながら、毎年八万トンというトレンドが、今後も減少が続いていくということでございますので、主食用の米に限定して、先ほど玉木先生の御答弁は、そういう多面的機能もこれに含んでいる、こういう御答弁でございました。
したがって、主食用の米以外のところも多面的機能を発揮していただいているわけです、畑地も、主食用の米以外のところも。そういう観点というのがやはり必要であろうということでございまして、先ほど餌米の御説明もいたしましたけれども、こういう形に今回させていただいたということと、それから、やはり集積という意味では、これはいろいろこの委員会でも御議論いただきましたけれども、全ての販売農家を対象に交付金が対処されることによってリタイアする方々が思いとどまる、こういう側面もあるんだろうということでございます。
財政の話をいたしますと、二十四年度が千五百五十二億円、これは直接支払交付金が払われておりますが、この交付状況を見ますと、対象者の九割を占める二ヘクタール未満の農業者に対して六百億円が払われておるところでございまして、今回の多面的機能支払い、農地維持支払い、資源向上支払いですが、四百八十三億円、これを上回っている、こういうことでございます。
我々の考え方は、多面的機能というのは、まさに、農業の多面的機能の維持向上に係る担い手の負担を軽減する効果と、あわせて多面的機能を維持するためのものでありますので、構造改革が進むに従ってなくなるという位置づけではなくて、これはしっかりと多面的機能のために残していこう、構造改革も後押ししよう、こういうことで分けているわけでございます。
財政の比較からいっても、閣法より衆法の方が将来的な財政メリットがあるというふうには考えていないところでございます。
○畑委員 結局は、そこは構造改革が進んで、いかに集約されていくかという議論がかかわってくるので、この制度そのものがいいのか悪いかというところは若干違ってくるのだろうと思います。そこはそこで、認識がちょっと違いがあるところがあります。
それで、今、多面的機能払いという話がございましたので、ちょっと法律的な議論も含めて、直接支払制度の部分の議論をさせていただきたいと思います。
なぜ直接支払いと呼ぶのかという議論は、本委員会でもたびたびございました。これは、中山間地域等直接支払いは二分の一以上を個人配分とするということですけれども、結局は一義的には団体に行く。そして、それ以外の環境保全型農業直接支援の法律上のたてつけは、一義的には団体が対象であって、この団体が決めるというものであります。これが審議の中で明らかになったわけです。
とともに、多面的機能支払いというのは、個々の農業者に対する支払いは想定されていない、制度上、そういうことであります。だから、日本型直接支払いと呼ぶのは、ミスリードを呼ぶなというふうな気がしております。
現に、法律上の用語としては、タイトルで多面的機能支払いというのは出てまいりますけれども、直接支払いという用語は、法文の中にも、そしてタイトルにも出てこないわけです。
結局、なぜそこは、殊更に、やはり素直にいうと、間接的に行くことはあっても、直接払いではないと思うんですが、直接払いと呼んでいるのか、改めてお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 委員がおっしゃったように、何回かこの委員会で話題になったことでございます、あるいは繰り返しになるかもしれませんが。
農業者に対する支援策として、一般論として、関税の設定などで農業者を間接的に支援する価格支持に対して、補助金等を支払って農業者を直接的に支援するものを直接支払い、こういうふうに呼んでおりまして、諸外国においても、従来から、価格支持の代替措置としてだけではなくて、農業環境支払い、条件不利地域支払いなどの直接支払いというものが政策手法として用いられております。
中山間地域等直接支払い、これも平成十二年度からずっとやってきておりますし、平成十九年度からは、御案内のように、農地・水保全管理支払い、こういうふうなものが始まっておりますが、いずれも共同活動を行う地域の組織に補助金を支払って、最終的に農業者を直接的に支援する手法を導入しておる、こういう位置づけでございます。
我が国では、欧米と異なって、水田を中心に地域ぐるみで農業が行われている、土地、水のつながり、こういうことでございまして、地域のまとまりを単位として、活動組織や集落という地域の組織を対象とした支払いを行っているところでございます。
したがって、今回の法制度が固まりますと、本格的に導入することになりますが、この新たな制度も、こういう枠組みの制度というふうに考えておりまして、こうした特徴、日本の、水田の、集落で地域ぐるみでやる、こういうこともあわせて日本型直接支払い、こういうふうに称しているというふうに考えております。
○畑委員 制度の趣旨はわかりますが、その直接と呼んでいるのが、従来、中山間地域等の直接支払いがあるんだというお答えもあると思うんですが、これを大々的な根本の政策にしていく、柱にしていくときは、やはり厳密な用語を使わなきゃいけないと思うんです。そういう意味で、直接支払いというのは、私は違和感があるわけです。
では、法制局でも議論があったのかどうかということで、事務方からお伺いしたいと思いますが、法律の中で直接支払いという用語を用いなかった理由をお伺いします。
○三浦政府参考人 お答え申し上げます。
法律の規定の仕方という点に関しましては、この法案でいいますと第九条になりますけれども、市町村は、農業者団体等に対して、事業の実施に要する費用の一部を補助することができるというふうになっておりまして、それで、国は、都道府県が、この補助をする市町村に対して補助する場合には、当該都道府県に対して、補助することができるという旨の規定が置かれております。
これは、本法案に基づく支払いが、これまでの中山間地域等直接支払いと同様の枠組みによりまして、補助金を支払うものであることを示したものでございまして、法律上は、第九条のもとで、共同活動を行う農業者団体等に補助金を支払うということを規定しております。最終的には農業者を直接的に支援するということとなるものでございますけれども、これは制度の運用に委ねている部分であるということでございます。
したがいまして、条文上は、直接支払いという文言を用いる必要がないということで、そのような文言を用いた規定とはしていないということでございます。
○畑委員 今の御説明を聞いて、用いる必要がないというよりも、法制上用いることができなかったというのが正しいと思います。九条に、共同者に対して交付するということであれば、直接ではないですよね、法制局的にいうと。だからこそ、直接支払いとは言わなかった。
私は、この制度のたてつけとして、直接支払いをしっかり前面に出すのであれば、法律上書かなければおかしいのだろうと思います。そこがない中で、何も知らない人は、直接払いというから直接もらえると結構思っていますし、さらにわからない人は、戸別所得補償みたいに何か来るものだと思っていますが、やはりそこのミスリードをさせるというのは、私は、法律のつくり方として誠実ではないと思っております。
そういうことを申し上げて、次の論点に移らせていただきます。
飼料米の話でございまして、飼料米への転換についても先日来議論させていただきました。
一言で言えば、国内での牛の頭数自体はふえる要素はないものの、飼料のトウモロコシからの転換が見込まれるために、想定需要はあって、切りかわるという答えだったと思います。
当然、議論もありましたが、うまく転換するかどうかはトウモロコシとの価格競争にかかってくる。飼料米の交付金による支援を行った場合には、飼料米の再生産可能となるような額ということで設定されていると思うんですけれども、それ自体、飼料米の価格づけと関係あるのか、価格競争力を支援するという形とどうリンクするのか、そして、そういうことを聞いたときには、配合飼料メーカーの価格づけはどのような形で設定されているのかということともかかわってくるわけですが、そのあたりのところと、今回の飼料米の支援との関係ということをお伺いしたいと思います。
○佐藤政府参考人 畑先生の御質問にお答えいたします。
国内で生産されております飼料米でございますが、これについては二つのルートで流通しているところでございまして、一つは、同じ市内あるいは県内、いわゆる地域内の耕種農家と畜産農家との結びつきによりまして直接取引される場合、それともう一つ、全国生産者団体が配合飼料原料として取引する場合の二つがございます。
このうち、地域内での直接取引の場合でございますが、耕種農家や農協が畜産農家との話し合いによりまして、その年の飼料用米の価格について、どちらで保管あるいは流通を担うか、あるいは堆肥の引き取りの有無など、さまざまな取引形態を踏まえた上で価格決定されているというふうに聞いております。
事例的に申し上げますと、価格の水準につきましては、輸入トウモロコシの価格、これは大ざっぱに申し上げまして、キロ三十円ぐらいに大体なっておるわけでございますが、これを基本といたしまして、耕種農家の手取り水準や畜産農家の畜産物の付加価値の状況等の観点から決めているものがございまして、この事例の場合ですと、キログラム四十五円の引き取りとなっているところでございます。
他方、全国生産者団体が配合飼料原料として取引する場合につきましては、輸入トウモロコシを配合した配合飼料価格と遜色のない価格での供給が可能となることが前提となるために、三カ月ごとに輸入トウモロコシ並みの価格で買い取るといったようなルールを設定しまして価格決定しているというふうに聞いているところでございます。
○畑委員 ありがとうございました。そこは、やはりそういう形の配慮があって設定されているということは伺えました。
そこで、心配なのは、日本にトウモロコシを輸出してくる業者というのは大規模なんだろうと思います。結局、日本の飼料米のそういう支援を含めた価格づけを見ながら、さらに価格を操作して下げてくるんじゃないかという危惧を私は持っているんです。つまり、彼らは市場をとりたいがために、安くする操作をしてくるんじゃないか、そういう危惧はないんでしょうか。そこの見通しを伺いたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
トウモロコシの国際価格形成でございますが、これはアメリカのシカゴ相場が代表的な役割を果たしているところでございます。
最近の状況を見てみますと、米国における、去年のような干ばつによりまして、平成二十四年八月に一ブッシェル当たり八ドル台まで高騰しまして、その後、史上最高の生産見通しが発表されたことにより、低下するといったような動きを見せておるところでございます。
現在は、堅調な世界的需要のほか、アメリカのエタノール用途の消費見通しの増加、あるいは米国経済の復調等によりまして、再びわずかに上昇基調にございまして、一月のころは一ブッシェル当たり四百十二セントだったものが、四月二十一日になりますと、一ブッシェル当たり四百八十九セントということで、五ドル近いような価格形成になっておるところでございます。
このように、近年のシカゴの相場につきましては、天候や需給等のトウモロコシに係る直接的な要因といったことのみならず、投機資金の動きや経済政策、エタノール政策等の多様な要因の影響も受けまして、この価格が形成されているといったことになっておるところでございます。
こうしたことから、トウモロコシ一千万トンを海外に依存しております我が国の畜産におきましては、国際価格の変動といったものが畜産農家の経営に影響を与えている、こういうふうな実態になっているところでございまして、ぜひとも、至急、畜産につきましては、国産飼料基盤に立脚した畜産への転換といったことが大いに求められている、このように考えているところでございます。
○畑委員 そうすると、いろいろな複合要因があってシカゴの市場相場で決まってくるということはわかりましたが、かつての石油メジャーが市場の独占力を背景に価格設定、相場を変えていったというような、そういうおそれが穀物メジャーに関してはないんでしょうか。
○佐藤政府参考人 一概に申し上げることはできませんが、昨今のアメリカのシカゴ相場が非常に高騰したときには我が国でどういうことが起こったかと申しますと、アメリカからのトウモロコシの輸入を避けまして、違う国からトウモロコシを購入するといったようなことも行われておりました。
配合飼料の原料を調達する商社あるいは配合飼料メーカー等におきましても、やはりシカゴ相場だけじゃなくて、できるだけ余力のあるものに転換しておるということで、たしか最近の数字では半分近くがアメリカ以外のところというような状況に相なっているところでございます。
○畑委員 要は、一国とか一部の主体のみ負っているわけではなくて、多様な輸入ルートがあって、そこは心配ないということだと理解をいたしました。
それでは、法律の質問はこれぐらいにしまして、最後に別の質問をさせていただきます。豚流行性下痢についての質問でございます。
これは各地で広がっておりまして、東北もいよいよ広がり始めて、岩手でも四月の半ばから発生が見られるようになりました。
もちろん、岩手県は、必要な消毒のため、予算措置を知事の専決でとったわけですけれども、まず防疫体制をしっかりやっていただく、このことは重要で、このことの方針をお聞きしたいとともに、やはり岩手県とか業者、やっている人から聞くと、根本的な解決はワクチンだというんですよね。当然だと思います。必要なワクチンがなかなかないというか、まだ入る見通しもなくて不安だという声がたくさんございます。これも国に要望中ということであります。
この防疫体制の強化と、あわせて、必要なワクチンの確保の見通しについてお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 昨年十月に、七年ぶりですが、我が国でPED、豚流行性下痢の発生が確認されております。それ以降、お地元の岩手県も含めて、現在三十三道県で発生が確認をされている状況でございます。
このため、農林水産省においては、これまで都道府県等に対して、飼養衛生管理の徹底等を指導するなど、本病の周知及び発生拡大の防止を図ってきたところでございます。
また、最近の発生状況を踏まえまして、より一層の防疫対策の強化、そのために、四月八日でございますが、消費・安全対策交付金を活用して、畜産農家、屠畜場等の出入り口で消毒機器を設置する、また消毒を実施する、こういうことに必要となる経費を支援する、こういう対応を追加的に行うことにいたしました。
お尋ねのワクチンでございますが、メーカーにおいては、本年度は昨年度の倍の数量の生産予定、こういうふうになっておりますが、さらにそのワクチンの早期出荷を促すとともに、現場における需要見込みを把握して、メーカーの方にお伝えするということで、円滑な供給を図る、こういうことにしております。
このように、本病の対策に全力を挙げていく所存でございますので、現場の皆様におかれても、こういう支援を御活用いただいて、発生予防や蔓延防止に御協力いただきたい、こういうふうに思っております。
○畑委員 ありがとうございました。ぜひともしっかり、よろしくお願いしたいと思います。
時間は少々余らせておりますが、最後の質問でございますので、そろそろ終わらせていただきます。
本当に、予算委員会並みの連日の法案の審議でございました。私も連日質疑に立たせていただきまして、大変勉強になった次第でございます。
農政は理念が違うということで、野党案と閣法との議論があったわけですが、理念は違うといっても、恐らくは、議論をしていると、いろいろなお金の出し方、運用も含めて、そんなに変わらなくなっていくのかなという気もいたしましたが、逆に、そう変わっちゃ困るわけで、理念は理念として変わらないような形を組んでいって、やはり農家の方に不安を与えないようなことが必要だなとつくづくこの審議を通じて思った次第でございます。
この法案は、理念が違ってそれぞれありますが、本来の私の持論も、農政に与野党はございません。まさに、現場を踏まえてやっていく場合には、イデオロギーではなくて、本当に農家の現実の方々が困らないような仕組みをつくっていく、そういうことが必要だと思っております。
そのことを申し上げまして、最後の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○坂本委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○坂本委員長 この際、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案に対し、齋藤健君外二名から、自由民主党、日本維新の会、公明党の三派共同提案による修正案が、また、第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案に対し、大串博志外四名から、民主党・無所属クラブ及び生活の党の二派共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。
提出者から順次趣旨の説明を求めます。齋藤健君。
―――――――――――――
農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○齋藤(健)委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
修正案は、お手元に配付したとおりであります。
以下、その内容を申し上げます。
法律案の附則に、政府は、この法律の施行後三年を目途として、農産物に係る収入の著しい変動が農業者の農業経営に及ぼす影響を緩和するための総合的な施策のあり方について、農業災害補償法の規定による共済事業のあり方を含めて検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置を講ずるものとする規定を追加することとしております。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○坂本委員長 次に、大串博志君。
―――――――――――――
農業者戸別所得補償法案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○大串(博)委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
修正案は、お手元に配付したとおりであります。
以下、その内容を申し上げます。
本法律案は、第百八十三回国会に提出され、継続審査となっていたものであり、提出から相当の期間が経過しております。そのため、原案において平成二十六年四月一日となっている施行期日を平成二十七年四月一日に改めることとしております。
その他施行期日の修正に伴い、所要の規定の整理を行うこととしております。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
この際、第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及び大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。
○林国務大臣 衆議院議員大串博志君外六名提出の農業者戸別所得補償法案、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案につきましては、政府としては反対であります。
―――――――――――――
○坂本委員長 これより各案及び両修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。
○鷲尾委員 ただいま議題となりました、政府提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案に対し、民主党・無所属クラブを代表し、反対の立場から討論をいたします。
衆議院農林水産委員会においては、延べ約三十時間程度の活発な審議がなされました。活発な議論を通じて明らかになった以下の点に鑑み、政府提出法案について反対の立場から討論いたします。
一、農業経営の多様性への配慮が弱く、認定農業者、新規認定就農者、集落営農から排除された農業者への対策が示されていないこと。したがって、意欲のある小規模農家の離農促進や切り捨ての面が強いこと。
二、担い手に対する個の支援を否定し、農業経営の所得に将来への見通しが立てにくくなり、営農継続を阻害する面があること。
三、農地の流動化、集積を加速化するとしながら、戸別所得補償を廃止し、大規模農家の所得を下げてしまうこと。
四、飼料用米作付を政策誘導しながら、需要の見通しが明らかでなく、日豪EPA協議の合意によって、より一層不透明になっていること。
五、産業政策と地域政策が分けられたことで、多面的機能を維持すること自体が目的となり、営農を通じて農業、農村の維持、多面的機能の維持が図られることに対する配慮がないこと。
六、戸別所得補償制度による所得補償機能が農家の所得向上や農地の集積に貢献していることを認めず、基本理念において我々の提出した法案と全く異なること。
七、これまで無修正で四年間続けられているにもかかわらず、政策の変更を行うことで、現場に混乱がもたらされること。
以上の点であります。
TPPなど経済連携協定の交渉が進む中で、農業経営の将来が見通しにくくなっております。かかる状況に鑑みれば、多くの農家に生産費の恒常的なコスト割れ部分を補填し、農業経営の安定化を図り、営農が継続することを通じて多面的機能を図ることは時宜を得たものであると考えます。
戸別所得補償機能は、農地の流動化、集積に対しても従来の批判を覆す実績をもたらしており、集落営農の増加や農地の権利移動面積の増加など、政策的効果は著しいところであります。あわせて、生産調整への参加のインセンティブとして有効に機能していることは明白であり、農村内においては、政策に真っ当に協力することで真っ当に報われるシステムとして定着しております。
ここで、四年間無修正で継続し成果を得ている政策を変える必然性はなく、政府提出法案には先ほど述べた点の懸念があることから、今般の法案には反対せざるを得ません。
以上、私の反対討論といたします。(拍手)
○坂本委員長 次に、村岡敏英君。
○村岡委員 日本維新の会の村岡でございます。
本日の、政府提案の農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案、両案とも我々は賛成の立場で討論させていただきます。
我々日本維新の会は、農業が成長産業、そして環境保全型農業ということで、農業は二つの側面で農村社会そして国にとって大事なものだということの認識をいたしております。
その中で、戦後農政の中で、やはり輸出型農業というのが足りなかったという意味では、その部分はこれからも農水委員会でしっかりと審議をして、輸出型産業に変えたい、このように思っております。
さらには、環境保全という意味では、これから世界の人口が爆発する中、この前この委員会でもお見せしました、国会議事堂の前が芋畑になっているという状況、食糧難というのは、しっかりと将来に備えて、食料不足のないようにしなければならない。そういう意味の中で、ぜひ農水委員会でもその審議を深めていきたい、このように思っております。
さらには、この二法案は、農業者に対して、経営感覚を持つということで、直接支払い金が一万五千円、七千五百円となり、五年後には廃止する。その中で経営感覚をしっかり持っていくということの中で、ぜひともそこの部分は、農水省並びに農業者に、シミュレーションをして、経営感覚を持つ部分をしっかりやっていただきたい、このように思っております。
さらには、環境保全という意味では、やはり農地が荒廃するということは、国土の安全のためにもこれは大変な問題だと思っておりますので、その部分では、農村社会に対して、しっかりと環境保全の部分もやっていただきたい、このように思っております。
以上の点をもって、この二法案が将来の成長産業そして農地を保全するという意味に資するものとして、我々は賛成をいたします。
それでは、討論を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○坂本委員長 次に、林宙紀君。
○林(宙)委員 結いの党を代表しまして、政府提出の修正案には賛成、原案二法案には反対、議員提出四法案には修正、原案とも反対の立場から討論を行います。
農政の改革を論じるに当たりまして、我が党は一貫して、これまで続いてきた生産調整による高い米価の維持を廃止し、EU型の直接支払いを導入すべきであることを主張してきました。その目的は、食料の確保や多面的機能の発揮を担保するとともに、生産者側の意向に強く寄り添ってきたこれまでの農政から、消費者の目線も十分に配慮した農政への転換、さらには自由貿易が強化される世界の潮流の中で農政がどうあるべきかということも見詰めています。
その点から鑑み、まず、政府提出案については、改革という言葉からは遠いものであると言わざるを得ません。
生産調整は見直すというものの、転作のための莫大な補助金により、結局は高い米価を維持することは変わらず、消費者負担と納税者負担の二重負担の解消という抜本改革にはつながらないこと、米の直接支払交付金は廃止するものの、その財源を多面的機能支払いに充てるなど、農林水産省内で予算をつけかえているだけにすぎないこと、食料確保や多面的機能の維持の観点から、飼料用米に対して多額の補助金を充てることに合理性が十分に説明できるのか疑念があること、日本型直接支払いは農業者に直接渡るものではなく、団体に資金が流れる間接支払いの仕組みであることは拭えず、その透明性に強い懸念が残ることなどから鑑みるに、我が党が目指す農政改革とはその方向性を大きく異にするものと考えます。
なお、収入保険に関する修正案は、この必要性を認めることから、賛成をするものです。
次に、議員提出法案については、目指す先がEU型直接支払いと同様の仕組みである思想という点で、方向性を同じくするものであることは理解をいたしました。
その一方で、生産調整の継続があくまで本法案の前提であり、消費者負担の解消には至らないこと、戸別所得補償の対象が主業農家などに限定されず、構造改革の推進になお疑念が残ること、効果に疑念が持たれる水田の転作補助金も現状維持とされること、EU型直接支払いへの移行方法や時期などが明確には示されなかったことなどから、法案の内容には依然として大きな変更を求めるべき点が多く、今回は賛成するには至りませんでした。
しかしながら、より合理的かつ強固な制度をともに構築できるであろうことに大きな期待を寄せつつ、今後の議論に臨む所存です。
戦後の農地改革から七十年近くがたとうとし、農業に対する国民の意識に変遷が見られる中で、農業を支える合理的な意義について改めて国民の意思を問うことは、今後の農政が避けて通れないものであると考えます。それこそが農政改革の本丸であるということを最後に申し述べて、討論といたします。
以上です。(拍手)
○坂本委員長 次に、畑浩治君。
○畑委員 生活の党の畑浩治でございます。
政府案の修正部分に対して賛成、残余の部分について反対、野党案について賛成の立場から討論いたします。
政府案については、そもそも農業者支援の理念が我々の考えるところと全く異なります。農業者戸別所得補償制度は、再生産可能な農業所得を補償し、農業の経営が成り立つことを通じて、多面的機能の維持が図られることを目的とする合理的な制度です。一方、政府案は、農地を農地として維持することそのものを目的として支援するものでありますが、そもそも農業が生業として成り立たなければ、農地の維持は困難になるものであります。
また、戸別所得補償制度は、その中に規模拡大、集約化という構造改革のインセンティブが組み込まれた制度でありますが、今後の財政支出の展望という意味でも合理的です。集積や規模拡大が進んで、恒常的なコスト割れがなくなり、コストと収益の差が少なくなるにつれ、財政支出額を減少させることが可能な制度であります。一方、政府案は、集約された場合でも変わらずに同額程度の財政支出が将来にわたってなされる制度です。農業者戸別所得補償制度の方が、将来の財政支出面から見ても、構造改革的制度だと言えます。
次に、政府案は、日本型直接支払制度の創設と言っておきながら、交付先は団体が対象であり、この団体が配分を決定するものであるということが審議の中で明らかになりました。また、多面的機能支払いは、農業者に対する直接支払いはありません。現に、法案の中の用語として、直接支払いという用語は用いられていません。いわゆる減反の廃止と同様、国民をミスリードさせている点は問題です。
米の生産調整については、政府は、きめ細かな情報提供により民間が自主的に行う仕組みを構築する旨、審議で述べておられました。これは、理想ではありますが、現実的にかなり困難だと思います。参考人の質疑の過程でも、このことが指摘されました。自主的かつ実効性ある生産調整の仕組みとしては、戸別所得補償制度とリンクさせた実質的な選択制である現行のやり方が、実際に米の過剰作付面積が減少している実態を見ても、効果があることが明らかです。
なお、今回の審議の中で、一連の農政改革のもとで、米価を初めとした農産物の価格や農業所得がどのようになるのか、営農類型別、地域別のモデル的な試算が十分示されず、十分な情報提供がなされなかったことは遺憾であります。TPPの交渉についても、委員会決議にもかかわらず、情報公開が全く不十分です。農政の大きな転換点だからこそ、農業者に不安を与えないように、的確な情報提供こそが必要であると申し添えて、私の討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)
○坂本委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○坂本委員長 これより採決に入ります。
初めに、第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、大串博志君外四名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、原案について採決いたします。
原案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
次に、大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
次に、大串博志君外六名提出、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
次に、大串博志君外六名提出、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、齋藤健君外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
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○坂本委員長 ただいま議決いたしました内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案に対し、宮腰光寛君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、結いの党、生活の党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。大串博志君。
○大串(博)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文を朗読して趣旨の説明にかえさせていただきます。
農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案に対する附帯決議(案)
我が国の農業・農村の発展を図っていくためには、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立し、農業を足腰の強い産業としていくとともに、地域の共同活動等を通じて農業の有する多面的機能の維持・発揮を促進することが重要である。
よって政府は、両法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 今後の農業・農村政策については、農業の有する多面的機能の確保を図りつつ、農産物の再生産可能な農業所得の確保による農業生産の継続及び農業経営の安定を図ることを旨として、総合的かつ強力に推進するとともに、現在、進められている食料・農業・農村基本計画の見直しの検討に当たっては、その旨を十分斟酌すること。
二 農業・農村の維持・発展における重要性に鑑み、認定農業者及び認定就農者の認定に当たっては、意欲と能力のある多様な農業者が幅広く認定されるよう、弾力的に運用すること。
三 地域農業の維持・発展に集落営農が果たす重要な役割に鑑み、その組織化に向けた合意形成を促進するとともに、法人化等集落営農の経営発展に向けた取組を支援すること。
四 飼料用米の取組に当たっては、我が国の貴重な農業資源である水田がフルに活用され、食料自給率の向上及び水田経営と畜産経営の安定的な発展が図られるよう、耕種部門と畜産部門の円滑な連携体制の構築、流通体制の整備、関連施設の整備・導入、多収性専用品種の開発・栽培技術の確立・普及及び種子の確保、飼料用米の給与技術の確立・普及、飼料用米を給与した畜産物のブランド化を総合的・一体的に推進するとともに、その具体的な道筋を明らかにするよう努めること。
五 一連の農政改革による環境変化の下、営農類型別・地域別のモデルを示すとともに、米について、需給・価格に関する情報提供を行い、周知すること等により、農業者の主体的かつ積極的な経営判断を促すこと。
六 収入保険の検討に当たっては、対象品目に関し、幅広い観点から分析し、検討を行うこと。
七 農業の担い手の経営安定及び農業の有する多面的機能の発揮の促進を図るための施策の推進に当たっては、客観的かつ中立的な第三者機関の設置により、施策の取組と効果発現の状況の評価を行い、適時適切な見直しを行うこと。その際、中長期的な展望に立って評価・見直しを行い、現場の混乱を招くことのないよう制度的安定性に十分留意すること。
八 農村人口の減少・高齢化が進展する中、農村地域の維持・振興が着実に図られるよう、農林水産省はもとより関係府省との有機的連携により、地域資源を活用した産業の創造、都市と農村の交流、生活環境の保全・整備等農村振興施策を一体的かつ総合的に推進すること。
九 農業を成長産業とするためには、世界の経済成長を好機と捉え、日本食文化を広め、農林水産物・食品の輸出拡大に取り組んでいくことが喫緊の課題である。そのため、本委員会は平成二十五年六月、「我が国の農林水産物・食品の輸出拡大に関する件」を決議し、各般の施策実施を求めたところである。今後とも、農林水産物・食品を輸出戦略物資と位置付け、日本の食文化の普及に取り組みつつ、日本の食産業の海外展開と日本の農林水産物・食品の輸出促進が一体的に図られるよう、十全な支援措置を講ずること。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
○坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○坂本委員長 起立総員。よって、両法案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣林芳正君。
○林国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
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○坂本委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時五十一分散会