衆議院

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第16号 平成26年5月22日(木曜日)

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平成二十六年五月二十二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 森山  裕君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    伊東 良孝君

      池田 道孝君    小倉 將信君

      小里 泰弘君    加藤 寛治君

      金子万寿夫君    川田  隆君

      菅家 一郎君    佐々木 紀君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      鈴木 憲和君    田中 英之君

      武井 俊輔君    武部  新君

      津島  淳君    中川 郁子君

      福山  守君    細田 健一君

      堀井  学君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      後藤  斎君    篠原  孝君

      玉木雄一郎君    寺島 義幸君

      鷲尾英一郎君    岩永 裕貴君

      鈴木 義弘君    村上 政俊君

      稲津  久君    樋口 尚也君

      林  宙紀君    畑  浩治君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 後藤 真一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            山下 正行君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沼田 正俊君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  鈴木 憲和君     小倉 將信君

  武部  新君     伊東 良孝君

  橋本 英教君     細田 健一君

  寺島 義幸君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  伊東 良孝君     武部  新君

  小倉 將信君     鈴木 憲和君

  細田 健一君     佐々木 紀君

  篠原  孝君     寺島 義幸君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     田中 英之君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英之君     橋本 英教君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官荒川隆君、食料産業局長山下正行君、生産局長佐藤一雄君、林野庁長官沼田正俊君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、外務省大臣官房参事官下川眞樹太君、大臣官房参事官正木靖君及び財務省大臣官房審議官後藤真一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊東良孝君。

伊東(良)委員 おはようございます。

 十九日、二十日と、シンガポールでTPPの閣僚会合等々が開かれました。甘利大臣初め政府交渉団の皆さんには、その御努力を感謝したい、こう思います。

 さて、これまでの議論の中で、EPAとTPPは別物との議論がありました。

 例えば、三月末に合意いたしました日豪EPAの牛肉の関税率、いわゆる冷凍牛肉の関税率を十八年かけて三八・五%から一九・五%に削減するとの合意が成立した。一方で、その後の新聞報道等によりますと、日米が九%で合意した、これも十年かけて九%にするというお話もありました。この数字の真偽はともかくといたしまして、日豪EPAの合意とTPP加盟国との合意内容が異なる場合、当然、相手国は条件の有利な方の合意内容を採用するのが常識であろう、こう思います。

 我が国は、これまでも、日豪のEPAの前に十三カ国の国々とEPAを結んできているところでありますが、今後、TPP十二カ国の合意により、この関税に変動がある、下がったりした場合、関税が高く、不利になるこれまでの二国間EPAを見直すか、破棄するかの選択を迫られることになるわけであります。この点についてどのように御認識されているか、実際、TPP合意の後はこのEPAはどうなるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、TPPの交渉、それから二国間のEPAというのは、これは全く別物でございます。

 例えば、これまで我が国が同じ国と複数のEPAを締結した例としては、ASEANの国と日・ASEAN包括的経済連携協定、それから、ASEANに属する国と二国間のEPAを締結する、これはダブっているものという例がございます。

 この場合は、法的な優先関係が存在しない全く別個の協定、マルチの協定とバイの協定ということでございまして、両協定の締結国となっている国と我が国との貿易において、ある産品がそれぞれの協定に基づいて原産品として認められる場合に、それぞれの協定に定める異なる特恵税率が適用可能ということでございます。この場合に、例えば、輸入業者がどちらの協定の規定に基づいて輸入申告するか選べるという形になると思います。

 TPPの交渉はこれからでございますので、各国のEPAとTPPの結果がどうなるかというのはまだわからないわけでございますけれども、仮にそこは違うものとなったとしても、制度としてはそういうことでございます。

伊東(良)委員 これは関税率を選べるということでありますけれども、高い方を選ぶなどという話は常識的にはない話でありまして、当然、関税率の安い方にシフトし、全てが横並びしてしまう、こう思います。

 これまでEPAを結んだ十三カ国は、それぞれの自由化率を見てみますと、八四%台から八八%台、この間であります。今般、TPPは一〇〇%を目指す、しかし、最低でも恐らく九五%程度を目指しているのだろうというふうに思いますけれども、このTPP合意の関税あるいは附帯条件が今後優先され、EPAのこれまでの合意が見直されることは、これは当然のことであろうというふうに思います。

 TPPでも二国間協議が現実に今でも続いているわけでありますが、EPAとTPPの関係と、合意後の全体的な貿易ルール、これはどちらか選べるといったって、低い方を選ぶのは当たり前な話でありますから、これまでの二国間協議で決まったことがTPP全体にどのような影響を及ぼして、どのような合意に最終的にはなっていくのか、予想される範囲でお答えいただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPPの物品市場アクセスに関する協議は、まだ十二カ国の中のそれぞれの二国間で協議が行われている最中でございます。

 日本以外の国も、日本以外の国同士で個別にEPAというものを既に過去に結んでおって、それとは別にTPPの協定上の交渉をしているという、全く同じような条件の国が多数あるわけでございまして、そうした国々が、いずれTPPとして物品市場アクセスについて最終的にどういう形でまとめるかというのは、これは終盤において議論されることだと思います。

 予断を持って申し上げることは大変難しいわけでございますけれども、これまでの過去のEPAよりも高い水準を目指すというのがTPPの趣旨でございますので、各国ともそうした思いで交渉しているのではないかというふうに思います。

伊東(良)委員 これは、例えばアメリカとの牛肉の問題が発端でこういう話をしているわけでありますけれども、三月末にオーストラリアと最終的に一九・五%で合意しておきながら、それより低い数字でやはりアメリカと合意したということであれば、オーストラリアと当然再協議、あるいは関税率の改定、及びTPPで決まった方をオーストラリアが採用することは、こんなことは当たり前の話でありますから、そういうつもりでいいのか。それが全物品に、九千十八の物品のうち、自由化されるもの全てにこれが適用されるのかどうかということをお聞かせ願いたい、こういう話でありますので、再度御答弁をお願いします。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 日米のTPP上の協議も、まだ現在進行中でございます。

 TPPの協定は、物品の市場アクセスだけではなくて、それ以外のサービスや投資についての自由化、さらにルールの分野での交渉を一括して行っているものでございます。それぞれの国との間でそれぞれの国の物品の交渉をするだけではなくて、サービス、投資、またルールについても包括的に、パッケージとしての交渉をしているわけでございますので、一概にそこは過去のEPAと比べてどうだということは、これはなかなか予断を持って申し上げにくいというふうに思います。

伊東(良)委員 それでは、質問をかえます。

 政府や我が党の幹部の認識では、日豪EPAの牛肉に関する合意内容が、我が国が譲ることのできないレッドライン、こう言っているわけであります。これがいわゆる平成十八年末の日豪の国会決議に反しないライン、このように認識している、こう思うわけでありますけれども、農業新聞その他もろもろ、農家の皆さんの声を聞くと、そうは思っていないように聞こえるわけであります。

 それでは、お聞きしますけれども、これは林大臣にお聞きしましょう。

 日豪EPAの合意内容が、平成十八年の国会決議に反していないと言える、その根拠を御説明いただきたい。そのラインはTPPとはどのような関係にあると見ているのかもあわせてお聞きいたします。

林国務大臣 日豪EPAでございますが、二〇〇七年の四月に交渉を開始して以来、ケアンズ・グループの中心でありまして、農産物の大輸出国である豪州から、全品目の関税撤廃要求を向こうはしてきておったわけでございまして、こちらは、今お話のあった衆参両院の農林水産委員会の決議を踏まえて、政府一体となって、交渉期限を定めずに、粘り強く全力で交渉を行ってきたということでございます。これは決議一号、三号に沿った対応ということでございます。

 その結果、決議に明記されております米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖について豪州側から一定の柔軟性を得たために、交渉を中断せずに継続しまして、今回大筋合意に至った。これが決議三号に沿ったところでございます。

 特に、牛肉については、先ほど少し触れていただきましたが、豪州は、関税撤廃だ、こういうふうに強く要求しておったわけですが、粘り強く交渉いたしまして、まず冷凍、冷蔵の間に四%の税率差、現状以上の輸入量になったときに関税を現行水準に戻すという大変効果的なセーフガード、それから長期の関税率削減期間、こういう一定の柔軟性が得られまして、国内畜産業の健全な発展と両立し得る関税削減の約束となったというところでございます。これも一号、三号に沿ったところでございます。

 今後、本協定締結の効果、影響に留意しながら、生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるように、肉用牛経営を初めとする農畜産業について、構造改革、生産性の向上、こういったもので競争力の強化を推進してまいりたいと思っております。決議でいいますと、四号に沿ってそういうことをやっていくということになろうかと思います。

 以上、申し上げましたように、それぞれの号でいえば、各号を踏まえて真摯に交渉を行って合意に達することができたというふうに我々としては考えておりますが、これも繰り返しここでも申し上げておりますように、最終的には、この決議は委員会でおつくりになったということでございますから、決議との整合性については委員会で御判断をいただく、こういうふうに考えておるところでございます。

 TPPについても同様の決議をいただいておりますので、その決議を踏まえて全力で交渉に当たりたい、こういうふうに思っております。

伊東(良)委員 国会が最後は判断することだ、こういうお話であります。

 しかし、TPPにつきましては、甘利大臣がかつて、一センチも譲らない、こういう御発言もあったわけであります。この一センチは何をどこまで指すのかわからないわけでありますけれども、農家の皆さんも、次から次から出てくる数字、あるいは牛肉、豚肉の関税率等々に非常に不信感を募らせているわけであります。

 今、林大臣が、国会決議を守る、両立できるというお話でありましたけれども、私は、日豪EPAの影響だけでも大きいものがあるというふうに思っております。セーフガードを適用し、あるいは関税の引き下げ期間、年数、引き下げ率、これらを組み合わせて、国内農家が存続できるような一定のラインと思っておられるようでありますけれども、TPPもこれと同様で、日豪EPAと同レベルであれば、まだ説得できる、何とか理解を求めることができる、こう思うわけでありますけれども、これを下回る厳しい内容ということになると、なかなか難しいというふうに思うわけであります。

 TPPで米国との交渉が続いておりますけれども、この日豪EPAの合意内容はどのように考慮されて反映されているのか、お聞きいたします。

小泉大臣政務官 お答えさせていただきます。

 伊東先生の御地元の釧路を初め北海道の皆様方が大変不安に思っている点というのは重々受けとめて、交渉にも当たっております。甘利大臣の、一センチも譲らない、そういった発言も、そういったさまざまな関係の皆さんの御不安を受けとめながら、高い目標を達成するというTPPの目標と、そして国会の決議をしっかりと守っていくという両方の目的を達成しなければいけないと、大変厳しい認識を踏まえたものだと承知しております。

 その上で、日豪EPAとTPPの関係性について言えば、日豪EPAは日豪EPAであり、TPPはTPPであり、別のものだと思っておりますが、いずれにしても、TPPにおいて、今、この前のシンガポール会合も踏まえて、七月の首席交渉官会合を一つの大きな山場と認識をして、ここから事務方の協議を大きく加速していって、最後に閣僚同士で詰め切るところをしっかりと整理しよう、そういったところで取り組んでいますので、TPPの交渉の合意に向けて、これからも、皆さんの不安を受けとめながら、しっかりと精力的な交渉に努めてまいりたいと思っております。

伊東(良)委員 豪州、オーストラリア、アメリカとTPPで一定の合意ができたとします。そうなりますと、必然的に、カナダ、メキシコあるいはニュージーランドなどの酪農、畜産大国から当然のごとく輸入品が、どんどん農産物が入ってくることになるわけでありまして、日豪あるいは日米だけではない、それ以外の酪農、畜産大国から輸入量が相当ふえることが当然ながら予想されるわけであります。

 この点につきまして、我が国農業への影響は大きいというふうに私は思うわけでありますけれども、どのように見ておられるのか、どのように予測されておられるのか、お聞きいたします。

林国務大臣 TPPについては、先ほど来御議論がありますように、交渉中ということで、その影響を今云々することはなかなか難しいわけです。

 一方で、日豪EPAは既に大筋合意をしたわけでございます。先ほど申し上げましたように、豪州から一定の柔軟性を得ることができた、その結果、我が国の酪農、畜産業の存立と健全な発展を図っていける内容である、こういうふうに思っております。

 現場の不安というお話が今あったわけでございまして、丁寧に説明をするということと、それから、新マルキンなど現行のセーフティーネット対策でしっかりと対応してまいらなければならないと思っております。

 また、影響については、実際にこれが施行になって、そのときの経済の状況、それから為替の動向等々によって貿易の状況が変動いたしますので、定量的にその影響というのはなかなか難しいわけですが、この影響に留意しつつ、必要に応じて新たな対応も検討してまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

伊東(良)委員 それでは、もう一つお聞きします。住民の皆さん方が不安に思っておられるところの食品の安全の問題であります。

 農薬の基準、あるいはまた食品添加物、さらには遺伝子組み換え作物の表示等々のことでありますけれども、コーデックスという国連の専門機関があります。FAOあるいはWHOが組織する専門委員会であります。ここでは、農薬の基準、残留濃度あるいは食品添加物の使用基準などが定められているところでありますけれども、遺伝子組み換え作物の表示について、アメリカ、カナダの二カ国は表示義務がない、そして、このコーデックスも表示義務を課しておりません。その他の国々は、オーストラリアもニュージーランドも日本も、これらの表示義務、あるいは食品添加物、農薬等々についての基準をきちっと定めているわけであります。

 TPPが合意に達した場合、日本国内に流通しているこれらの食品について、遺伝子組み換えの表示、あるいは国産品と輸入品の表示についてどのようになるのか、お聞かせいただきたいと思います。

小泉大臣政務官 食品の表示の観点に関しては、私も以前、ほかの党の方から委員会で質問を受けましたが、今TPPの交渉の中で、食品の安全に関する表示について、御懸念のような議論が行われているということはありません。

 そして、食の安心、安全を守るというのは、自民党のJ―ファイルの中の項目においても明確に位置づけられているところでありますので、これをしっかりと実現していくための交渉に努めております。

 特に、日本は、ほかの国と比べても、食品の安全に対する国民の関心、そして意識というのは非常に高いと思っておりますので、TPPの交渉の中で、低いレベルに合わせるというのではなくて、高いものに合わせていくということですから、日本が今持っているものより下げていく、そういった思いを持って交渉に当たっているということは決してありません。

伊東(良)委員 交渉がなかなか合意に達しないというのは、国会決議を守ろうということで、交渉団がぎりぎりの交渉をしている証左であるというふうに見ておりまして、交渉団に改めて敬意を表したいわけであります。

 しかし、畜産、酪農に携わる農家の皆さんにしてみますと、近年の飼料の高騰、あるいは燃油の高騰、さらにはまた産業機械の燃料、人手不足、あるいは長時間労働等々を含めて、低収入になり、あるいは多額の設備投資、負債増への極めて厳しい経営環境にあるわけであります。加えて、このTPPの問題が発生して以来、不安もあり、将来への希望を失いかけているというのが今の現状であります。

 北海道では、年間約二百戸の農家、これはパーセンテージにして三%近いところでありますけれども、離農をしているという現状にあります。したがって、生乳生産量も低下をしてきているわけであります。

 どうか、TPP交渉には、根負けしない、妥協しないで最後まで頑張ってほしいというふうに念願する次第であります。

 林大臣には、全国の酪農、畜産農家に希望を持ってもらえる交渉結果としっかりとした国内対策、さらには若い農業者のための大胆な農政改革を進めていただきたいと思いますが、決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 北海道の酪農家の戸数が、今お話しになったように二%ずつ減少する傾向でございまして、さらなる市場アクセスの改善に対する不安というのは当然ある、こういうふうに承知しております。

 他方で、これはきょうの日農に出ておりましたが、農業大学校の入学者に農家子弟以外の入学者がふえるということなど、担い手の多様化が見られてきております。

 畜酪の生産基盤強化を図るために、輸入飼料への依存体質からの脱却、自給飼料の有効活用、こういうものや、環境負荷の低減を図られた生産構造、それからヘルパー、TMRセンター、こういうような取り組みを進めていくことが大変大事でありまして、現在、新たな酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本指針において、目指すべき方向を明確にして、特に、若い経営者が将来に向かって夢と自信を持って経営に取り組んでいけるようにしっかりと取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

伊東(良)委員 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 おはようございます。公明党の石田祝稔です。

 きょうは、TPPについて少々質問をいたしたいと思います。

 今回も、このシンガポールの会合は一体どうだったのか、はっきり言って、なかなかわかりにくいように私は思います。特に、各紙報道を見ますと、一つは「TPP 大筋合意へ前進」、もう一つの新聞は「合意目指し集中作業」、そして、別の新聞では「大筋合意見送り」、「進展も後退もせず」と。日本の報道機関がこれだけばらばらというのはちょっと珍しいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、こういうことで大見出しがつけられておりました。

 ですから、今回は正直どういう結果だったのか、まずこのことをお聞きしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 十九、二十日とシンガポールで行われた閣僚会合でございますが、四月の日米の協議が一定の進展を見せたということを踏まえまして、各国それぞれがバイの交渉、どういう状況にあるのか、また難航している分野も含めて、ルールの分野の交渉がどういう状況にあるのかということについて、アメリカはチェックインという英語を使っておりましたけれども、進捗状況をまずは確認する。その上で、日米も一定の進展を見せているので、日米が動いていないだろうという前提でこれまでとまっていたさまざまなバイの協議をぜひ動かしてほしいという呼びかけをいたしまして、どの国も精力的にバイの大臣同士の会談を行ったものでございます。

 それを受けまして、二日目のお昼前から全体会議を再度開きまして、では、今後どのようにしていくのかということについての議論が行われました。その結果として、次の閣僚会議をどうするということを決めるのではなくて、まずは事務方で間合いをどんどん詰めていくという作業を精力的に行おう、その上で、七月のどこかの時点で首席交渉官会合を開いて、その時点で、閣僚に上げるべき論点が相当絞り込まれているという状況であれば、閣僚会議を開くということを考えようと。

 そういう意味では、とにかく事務方の作業を精力的に行うという今後数週間の道筋について共通認識を得たということでございます。

石田(祝)委員 順次またお聞きしたいんですけれども、今回、甘利担当大臣は、合意に向けて、今までより霧が晴れてきた、こういうことを言っているんですね。これは、ある報道でありますけれども、霧が晴れているどころか、私たちの立場からすると、私は与党でありますけれども、霧がますます深くなっているんじゃないか。先ほど申し上げたように、各報道機関の、新聞の論調を見ても、全く正反対のことを書いてある。

 これについて、なかなか情報を出せないということでありますから、出されている情報をもとにきょうはお聞きしたいというふうに思います。

 特に、シンガポールのTPP閣僚会合で言われたことで、交渉を妥結させるために何が必要かについて共通の見解を確立した、こういうことですね。共通の見解というのは何ですか。

澁谷政府参考人 今回の二日間の閣僚会合におきましては、いわゆる中身の話というよりは、今後の進め方の議論が中心でありました。

 昨年十月のバリの首脳会議、それから閣僚会議でも、甘利大臣は同じことをずっとそのころから言い続けておりますが、閣僚会議を何度もやって、閣僚で細かい技術的な話も含めて議論をするということではなくて、このTPPの交渉は三層構造になっておりまして、まず、交渉官レベルが各テーマごとに分科会というものを設けて、そこで議論をしております。その上に首席交渉官の会議というものがございます。その上に閣僚会議というものがございます。まずは交渉官レベルで間合いをどんどん詰めて、今残っている論点をどんどん縮めていく。その上で、首席交渉官会合でさらにそれを整理して、最後に閣僚に判断していただく政治的な案件というものを極力絞り込む、こういうことをしていかないと妥結にはなかなか至らないんじゃないかということについて、実は、これは甘利大臣はもう十月ぐらいからずっと事あるごとに主張してきたわけでございますが、こうしたことについて共通の見解が得られたということでございます。

 日米が一定の進展を見せているということで、ほかの国のバイの交渉、それからルールの分野も動き始めたということと、事務方の作業を積み上げて閣僚に至るという、そういうものが見えてきたということで、甘利大臣は十二カ国の共同記者会見の場で、霧が晴れたという言い方をされたというふうに承知しております。

石田(祝)委員 二十一日の新聞で、会合後の共同会見で、霧が晴れてきた、こう言っているんですよね。それで、共通の見解を確立したと。今お答えを聞くと、三段階でやっている方法論について共通の見解を得た。これは今までもやっている話じゃないんですか。

 中身じゃなくて、いわゆる手続が三段階でいきますよ、こういうことの共通の見解が得られたというのは、これは誰が聞いてもおかしいですよね。今回改めてそんなことが決まったといったら、今までのやり方は一体何だったんですか。どういうやり方で進めようとしてきたんですか。こういうことが、今になって三段階でやることを確立した、これは、誰が考えたってそんな答弁ではいきませんよ。もう一回答えてください。

澁谷政府参考人 状況を御説明いたしますと、例えば、昨年の十一月にソルトレークシティーで首席交渉官会合が行われました。その前に、九月、十月、バリの首脳会議を受けて、十月から十一月にかけて各分科会が開催をされて、十一月のソルトレークシティーの首席交渉官会合では、実はかなり論点が整理されたものでございます。

 ところが、十二月の閣僚会議の場でかなり細かい論点についての議論がなされて、結果として、こういう言い方がいいのかどうかわかりませんが、ソルトレークシティーの会議よりは、むしろ残された課題がふえていってしまうというような状況になって、それでは困るということで、一旦間を置いて、二月に閣僚会議をやったんですけれども、間合いがなかなか縮まらない。いろいろな分野においては一定の方向性が出た分野もございますけれども、ところが、五月、先週、ベトナムのホーチミンシティーで首席交渉官会合があったんですけれども、そこで残された課題というものを整理していくと、閣僚で議論してほしいというような課題がかなりあった。

 要するに、これまで閣僚会議を数カ月に一度開催するということなので、事務方が、結局閣僚に決めてもらうしかないということで、なかなか事務方の作業で間合いを詰めていくということが行われなかったんじゃないか、こういう認識を、十二名の閣僚の中で共通認識が得られて、ある意味真っ当な話なのかもしれませんが、まずは事務方から詰めていく。その作業を、六月、カミングウイークスと言っておりますけれども、六月中になるべく事務方の作業を加速して、七月に開催される首席交渉官会合までに論点を整理する、そういうことについて合意をしたということでございます。

石田(祝)委員 今の答弁は、誰が聞いてもよくわからないんじゃないかと思いますけれども、ほかの質問もありますので。

 その次に、市場アクセスとルールについて、今後数週間にわたり、集中的な取り組みの道筋を決定した、これはどういう意味ですか。

澁谷政府参考人 道筋と申しますと、作業のプランのようなものでございまして、ルールの分野で、分野によっては、例えば六月の何日までにこういうペーパーを各国が出すようにといったようなことが分野ごとに決められているものもございます。また、バイの交渉をなるべく精力的に行って、いずれにしても、六月中にできるだけ課題を整理して、首席交渉官会合において解決すべき論点というものを極力絞り込むということ、これは分野ごとに個別のいろいろな工程のようなものをつくって、それについて共通認識が得られたということでございます。

石田(祝)委員 続いてお聞きをします。

 甘利担当大臣が記者会見で一問一答でお答えになっているところがありまして、ここでちょっとお聞きをいたしますけれども、閣僚折衝ですることをもっと減らしていかないといけないと。その項目というのは、今何項目残っているんですか。

澁谷政府参考人 特に難航している分野というのが、知的財産、国有企業、環境でございます。この三つの分野については、全体会合の場でステータスレポートという現況の説明が出てまいりましたけれども、そこでは個々の論点が明示されておりませんでした。非常に大きな問題がまだたくさん残っているということでございます。

 今申し上げました難航分野以外について、ベトナムのホーチミンシティーの首席交渉官会合で、どのぐらい論点が残っているのかということをカウントしたところ、百以上あった。これは、今申し上げました難航分野以外、難航していない分野であるにもかかわらず、百以上も論点が残っている。

 そのうち、過去のこれまでの経験からすると、ソルトレークシティーで詰めても、閣僚会議でまた議論が蒸し返されるということでは、結局全て閣僚で議論しなきゃいけないんじゃないか、そういうことですと、なかなかこれは間合いが縮まらないよね、こういう形で共通の認識が得られたということでございます。

石田(祝)委員 私がお聞きしているのは、何項目残っていますかと。分野の話をしているんじゃなくて、分野ごとにたくさん項目はあると思うんですね。それが幾つ残っているんですか。

 それを減らさなきゃいけないと大臣が記者会見で答えているわけです。ですから、何項目というのがあって、それを減らさなきゃいけない、それをちゃんと整理して閣僚会合をやりましょうということでしょうから、国営企業の部分も含めて、一体何項目残っているんですか、そういう質問ですから、的確にお答えいただきたいと思うんです。答えられないというなら、答えられないということで結構です。

澁谷政府参考人 難航三分野については、論点が幾つという形での明確な整理すらなされていない状況でございます。この三分野以外の分野については、トータルで百を超える論点が残されているというのがベトナムの首席交渉官会議での整理でございます。

石田(祝)委員 数字が出てこないということでありますから、全く我々としてはわからない、こういうことですね。

 それで、同じくその記者会見で、例外項目をゼロにすることに終始すると漂流するんじゃないか、それではいけないということで、まとめる方向にかじを切っていかなきゃならぬ、こういうことは共有されたと思うと。これはどういう意味ですか。

澁谷政府参考人 甘利大臣御自身が、これは邦人プレス向けの会見でお話をされておることでございます。

 これは、閣僚会議をやりますと、日本が参加する前にホノルルで首脳会議を行った際に、包括的で高い水準の協定を目指すんだ、例えば関税に関して言うと一〇〇%の関税撤廃を目指すんだということが、閣僚会議の場で毎回そういう議論がなされるわけでございます。

 甘利大臣は、ブルネイの会合のときから、お互いにセンシティビティーというものがあるんだということを繰り返し強調しているわけです。

 今回の会合で、もうまとめモードに入っているのであれば、そういう原理原則だけではなくて、お互いにセンシティブな分野、どうしても譲れない分野というものがあるんだということについて、それを尊重しながらまとめるということをしないと、まとめになかなか入らないんじゃないか、これは関税だけではなくて、ルールの分野についても、それぞれの国の国情、文化というものがあって、どうしてもやはりそれは受け入れられないというものがあるので、それを前提にまとめるという議論をしないといけないのではないかという発言を大臣がされて、それに対して、先ほどの甘利発言について全く同感であるという発言が相次いだ、そういうことを大臣御自身が記者会見で紹介されております。それをもって、共通認識が得られたというふうに大臣はおっしゃったということでございます。

石田(祝)委員 これは、私は聞くのをどうしようかと思っていたんですけれども、今おっしゃったので、ちょっと確認だけします。

 シンガポールの閣僚会議の共同プレス表明で、いわゆるホノルル会合を受けてということが消えたということは、そういうことですか。そういう文章がなくなっていますよね。

澁谷政府参考人 前回までホノルルという言葉がありましたが、今回は落ちております。声明の議論をする前に甘利大臣がそういう話をされたということ、それから、バリの首脳会議、閣僚会議の場で、バランスのとれたという言葉をつけ加えるということを甘利大臣はいたしました。

 今回は、ホノルルという言葉ではなくて、過去の首脳からの指示という言い方になっておりまして、これはバリの首脳会談も当然踏まえておりますので、その際に安倍総理、甘利大臣がお話をした、バランスのとれた交渉、協定を目指すべきだという趣旨も今回の声明に盛り込まれているというふうに理解しております。

石田(祝)委員 これは、これ以上申し上げません。

 時間もなくなってきましたので、ちょっと質問を省くところがありますが、これは御了解いただきたいというふうに思います。

 それで、パッケージで決定という発言がたびたび聞かれますけれども、これは、例えば、関税の率とセーフガードだとか、それから期間を長くとるだとか、そういうことをあわせてやるということでおっしゃっているのではないかと私は仄聞をいたします。

 それで、これは私の個人的な考えでお聞きをいたしますけれども、もう実は関税率については、ある一定の幅でもって合意しているんじゃないのか。これだというところは決まっていないかもしれませんけれども、何%から何%の間でまとめようや、こういう幅はもう既に決まっておるのではないのか。それと、どれだけリードタイムをとるのか、またセーフガードをどうするのか、この三つか四つがパッケージというふうにおっしゃっているのではないのかな、こう思うんですけれども、これについてはどうでしょうか。答えられなかったら、答えられないでも結構ですよ。

澁谷政府参考人 日米の協議は、普通の国と言うとあれですけれども、ほかの国との交渉のように、お互いにだんだん幅を狭めていってというようなことになかなかなりません。向こうはゼロと言い、こちらは守ると言い、その幅というものが、幅という意味ではずっとそういうところが続いております。

 その中で、作業仮説として、関税率がこうなった場合にどうなるのかということを、まさにパッケージでございますので、その場合のセーフガードのイメージはどうなのか、年数のイメージはどうなのかということを、あくまで作業の仮説としていろいろな議論をしておりますけれども、ただ、そこは、何か幅が特定されたということよりは、全てをパッケージとして議論しているということでございます。

石田(祝)委員 それと、「「方程式合意」崩れる」という書き方の新聞もありまして、方程式という意味がちょっとよくわかりませんけれども、通常、我々が中学、高校で学んできた方程式というのが数学でもあったわけですけれども、方程式の数と未知数の数が同じなら、必ず解けます。しかし、未知数の数が方程式より多ければ、これは解けない。方程式が三つあって、未知数の数が四つあったら、これは解けません。

 これは算数、数学の議論になりますから、これ以上申し上げませんけれども、余り方程式合意ということが流布すると、私は、未知数の方が多いのではないのか、そうすると方程式が解けないよ、こういう議論に必然的になりますから。

 きょうは、もう時間もありませんので、最後に、たびたびお聞きをいたして恐縮でありますけれども、このTPPの協議、やはり農林水産について非常に焦点が当たっておりますので、これについて、国会決議を守る、こういうことになろうかと思いますが、大臣の御決意をお聞きいたしまして、質問を終わりたいと思います。

林国務大臣 今回のシンガポール閣僚会合では、閣僚間で交渉全体の進捗を評価し、さらに、市場アクセス、ルール分野での残された論点について交渉が前進するよう議論が行われたと承知をしております。

 今後の進め方についても、今御議論があったところでございますが、共同プレス声明にもありますように、閣僚は、最も困難な課題を解決するため、二国間交渉に関与することとされまして、首席交渉官が七月に会合を開催する、こういうことになっております。

 残された課題の解決に向けて、各国と精力的に交渉を進めていくということになるわけでございますが、いずれにしましても、交渉に当たっては、重要五品目などの聖域の確保を最優先するという衆参両院の農林水産委員会決議を踏まえ、国益を守り抜くように全力で当たっていきたい、こういうふうに思っております。

石田(祝)委員 終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 おはようございます。TPPについて質問させていただきたいと思います。

 今回も、この「NO!TPP」バッジと「STOP!TPP」のネクタイを締めまして、完全武装いたしまして、日本の農業、地方を守るために、個別的自衛権をフルに活用いたしまして質問させていただきたいと思います。

 三つに分けて質問させていただきます。まず、交渉状況がどうなのか。二つ目は、日本の立場は一体どうなっているのか。今後の行方がどうなるのか。三十分だけですので、なるべく短く質問させていただきたいと思います。

 先ほど石田委員が言われましたが、何か甘利大臣は、交渉の行方というか、霧が晴れてきたと。しかし、我々、周りからすると、交渉内容はますます真っ暗闇で、何をやっているんだかわからない。超前のめりの新聞もあれば、違う新聞もあって、新聞報道を見てもわからない。澁谷審議官がいろいろ答えておられますけれども、澁谷審議官は一生懸命記者会見されておられるんだと思いますけれども、さっぱりわからない。困るんですね。

 小泉政務官においでいただいています。

 そこらじゅうの新聞に書いてあります。そこらじゅうでもないんですが、後追いで、日本の新聞はすぐ同じようなことを書いたりするわけですね。畜産が大問題になっています。豚肉、牛肉、よく牛肉のことだけ話題になりますけれども、豚肉の方がずっと輸入金額が多いんですね。牛肉が二千億円ぐらい、豚肉が四千億円ぐらいになっています。トン数も多い。アメリカは完全に実利を求める国ですから、豚肉に相当こだわります。それが、差額関税制度という、巧妙な制度といえば巧妙な制度ですけれども、つくってやってきて、辛うじて日本の養豚業は守られてきている。

 これは、予算委員会で皆さんに表まで提示してやりましたけれども、土地が狭いという制約を受けない畜産業は、日本の場合は極限まで規模拡大が進んでいるわけですね。数字を覚えておる方がおられると思いますけれども、一農家当たり、一経営体当たり、アメリカは九百頭ちょっとなんですね。日本は千四百五十頭です。ここまで切り詰めてきている。それを、関税を五十円に下げるんだとかいう新聞報道がされています。

 牛肉についても、日豪EPAとTPPは違うと言われつつ、日豪EPAだって相当なものなのに、それをしのいでというか、もっとひどくなって、あちらは二〇%前後なのに、こちらは一〇%前後になっていってしまうというような報道が行われていますけれども、これは事実なんでしょうか。一体どうなんでしょうか。日本の新聞も、それほどでたらめじゃないと思います。ある程度信用していいと思うんですが、政府はそんなことはないと言っている。よくわからないんです。

 政務官、事実は一体どうなんでしょうか。

小泉大臣政務官 さまざまな報道があることは承知をしておりますが、いずれも事実ということはありません。

篠原委員 ますますわからなくなるんですね。

 そういう中で、我々は、どういう判断をして、どういうことを準備していったらいいのかわからないんです。今回もまた、変な報道がある、政府からは何も語られない。

 先ほど石田委員が言われました、日豪と同じように、方程式はいろいろなのがあると。方程式合意とかいって、こんな造語だけに意を注いでおられる方がおられるんじゃないかと思う。関税率の引き下げ幅、期間、関税割り当て、セーフガードと、四次方程式になる。私なんかは算数が苦手だから、一次方程式までは解けますけれども、三つとか四つになったら、さっぱりわけがわからなくなる。解けないんですよ。

 こう言われていますけれども、こんなことをちゃんと議論したりしていて、ちゃぶ台返しだか何だか知りませんけれども、アメリカとも、オーストラリアとああいうふうに合意したんだから、似たような合意ということで、四月にはそこそこ道筋が見えていたのに、今回、シンガポールでそれをひっくり返されてしまったというような報道がまたあるんですけれども、この変な揺り戻し、事実はどうなんでしょうか。

小泉大臣政務官 TPPについてさまざまな報道というのが日々ある状況でありますが、今回、シンガポールの会合で前進を閣僚間でも確認し合ったということは事実で、甘利大臣もそれを評価し、また、この七月の首席交渉官会合の設置を指示したということも決まりましたので、この首席交渉官会合までしっかりと事務レベルの協議を精力的に進めて、しっかりと事務方同士で決着をさせて、詰めていくところ、そして閣僚同士でやるというところを整理していこうじゃないか、そんな前向きなことを確認し合ったという、評価をしていただけるような会合になったと承知をしております。

篠原委員 抽象的なことばかりで進んでいて、そういう言葉しか出てこないんですね、甘利さんからもフロマンさんからも。だから、みんないらいらするんです。これは当然だと思います。立場が逆になったら、皆さんおわかりいただけると思います。見えそうで見えないというのが一番いらいらするんですよ。

 それで、アメリカのことばかり取り沙汰されますけれども、当然、日豪EPAは二国間でやれば何とかなるんですけれども、日米でTPPのもとで二国間交渉をやっていたって、ほかの国、ニュージーランドとか、畜産についてもっと競争力のある国があるわけです。そういった国がだめだと言ったら、だめになっていっちゃうはずなんですよ。ほかの二国間との交渉は、ほかの国、農産物輸出国ですよ、ニュージーランドとかカナダとかメキシコとか。そちらの方の交渉は一体どうなっているんでしょうか。

 そして、僕が聞きたいのは、日米の二国間の交渉の経緯をみんなが見守っている。それを見て交渉しようと言っている。どこでしているのか知りません。我々と同じように、具体的な数字やなんかも全然やらずにやっているのか。そんなのだったら、ほかの国は納得するはずがないですね。ある程度言っているんだろうと思いますけれども、その辺について、どういう感触があるのか。

 それで、いいよという方向に行っているのかどうか。日米のぼやっとした、霧が晴れたというふうに言っておられるわけですけれども、ほかの国も、日米の二国間の線でやっていっていいんだというようなことを言っているんでしょうか。僕は言っていないんだと思うんですけれども、この点、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 先生おっしゃるように、TPP交渉は十二カ国でやっております。したがって、日米間の交渉が重要であることは申し上げるまでもないことですが、TPP交渉全体が妥結するというためには、ほかの十カ国、日米を除いた十カ国全てと交渉を終結させることが必要であるということでございます。

 先月の首脳会談で日米間で前進する道筋が特定された、したがって、これを受けて、残された課題を解決するために日米でやっておりますが、ほかの交渉参加国とも、交渉の早期妥結に向けて、精力的に二国間交渉は進めているところでございます。

篠原委員 これもわからないんですね。

 大事なことですから、これは正確に答えてください。この次の質問は大事なんです。

 いろいろなことが何も決まっていなくて、ふわっとした形で動いていると思うんです。入り口は、全ての関税ゼロからスタートするということになっていたんです。それを、それでいいですなと言っておいて、日本は、いや、それはできないと言ってそこに入っているんですから、これはわけがわからないわけです。

 ですけれども、大事なことでして、ほかの分野のルールは、ベトナムだ、マレーシアだ、国有企業のことについて、多少例外を認めるというのはあるのかもしれません。しかし、ほとんどは、全部、十二カ国共通のルールになるわけです。

 では、関税についてどうなのか。関税について、まさかこの件は、豚肉についてのこの取り決めはアメリカとだけですよ、カナダやメキシコとは違うんだ。それぞれの国と、そうしたら関税表を別につくるのか。十二カ国全部共通なのか。この大問題というか、ぼやっとしたところがあるんですけれども、これについてはどういうふうに進んでいるんでしょうか。これは絶対答えていただきたいんです。

 相手の国がどうこうというのは、そんなにきちんとしなくたっていいですよ。しかし、我が国がどういう立場で交渉に臨んでいるか。例えば、五項目については守るんだというのが我が国の方針ですよ、それは国民に知らしめて交渉している。それと同じです。それに含まれるんです。

 関税については、各国ばらばらに取り決めて、それでやるということになっているのかどうか。日本はどういう立場で臨んでいるのか、日本の立場はどっちなのか、ここで明らかにしていただきたいと思います。大臣あるいは小泉政務官、どちらでも結構です。

    〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕

林国務大臣 いわゆる共通譲許かどうか、こういうことだというふうに思います。

 御案内のように、二十一分野で、ほかのところは全部ルールの交渉をしておりますので、そこはルール交渉、各国に共通に適用されるということですから、この区別はないわけですが、市場アクセスの中で、ルールの部分とアクセスそのものということがございまして、物品の市場アクセス交渉は各国で、二国間で交渉を進めている、こういうふうに承知をしております。我が国も、TPP交渉参加各国と二国間の交渉が継続中である、こういうことでございます。

篠原委員 要するに、アメリカとの関税が、アメリカとやって、例えば豚肉が一キログラム当たり五十円になったら、メキシコもカナダもオーストラリアも、みんな五十円になるんですか。どっちなんですか。小泉政務官、お答えください。

小泉大臣政務官 今大臣から御答弁もありましたとおり、今回のシンガポールにおいても精力的なバイの会談をやりました。全部で、アメリカを含めて八カ国とバイの協議もやりまして、これから七月の首席交渉官会合へ向けて引き続き協議を行うわけでありますが、最終的に、交渉の結果として、篠原先生が御指摘された形になるかどうかというのは、今まさに交渉中でありますので、明確にお答えさせていただくわけにはまいりませんが、引き続き、できる限りの情報提供に努めてまいりたいと思っております。

篠原委員 だめですね。そんな大事なことまで明らかにできないで、多分、皆さん、それをわかっておられるんですが、僕は少なくともずっとフォローしていますけれども、そこのところがぼやっとしていて、各国ばらばらに関税を決めるんだったら、こんな十二カ国でやる必要はないんですね。二国間ずつ、EPA、FTAをちゃんと結んでいけばいいんですよ。関税なんてそういうものなんですよ。それを全部、共通でゼロにするというので始まって、いやいや、各国ばらばらなんといったら、意味はないんですね。

 それで、農林水産大臣にお伺いしたいんです。

 そもそもP4、今度シンガポールに行ってきましたけれども、シンガポールは、言っちゃ悪いですけれども、五百万ぐらいそこそこの商業都市国家ですね。国家といえば国家かもしれませんけれども、農業なんてほとんどない。製造業だってほとんどない。だから、物やお金を横から横へ流して生きていっている国、そういうところは、何でも自由がいいに決まっているんですよ。だから、そういうことでやっていた特殊な協定に、大国、巨大な面積を抱える国、まあアメリカですけれども、それから一億人を超える人口の国等が参加してやっていったら、ちょっとルールが違ってくるはずなんですよ。

 そもそも交渉の条件として、関税ゼロにするんですよと言っていたのに、やっていないんですね。だったら、ここをもう一回考えたらいいんじゃないか。出だしから間違っているんですよ。そんなものに入るべきじゃないんですよ。条件のところをゼロにするからと言って、だから、シンガポールやニュージーランドが怒るのも無理ないんです。自分たちがこれだけ身ぎれいにしてやっているところを、彼らは相互に補完し合う国だからそれでいいんです。それを、そうじゃなくて、何でもやっている国が入っていったら違ってくるわけですよ。

 やはり日本は、TPPのルールのところが、特に関税分野については無理なんです。無理だとわかったら、私は潔く脱退すべき、撤退すべきじゃないかと思いますけれども、そういう時期に来ているんだと思いますよ。こんなふにゃふにゃしたので続けたら、どういう方向に行くかわからないんですよ。

 少なくとも、農林水産大臣はそれを進言されてしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 先ほどもホノルル合意、宣言ですか、それについて、甘利大臣がかねてより御主張されて、今度の共同宣言について明示的には入らなかったというところが、今やりとりがあって、篠原委員も聞いておられたと思いますが、もともと、我々は昨年の二月の日米共同声明で、TPP交渉参加に際して、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することは求められるものでないと確認をしております。

 これは日米の共同声明ということですが、ほかの国の立場や主張、これは申し上げられませんが、我が国としては、アメリカ以外のほかの国に対しても、この委員会でも決議をいただいておりまして、重要五品目などの聖域の確保を強く主張しているということでございまして、その一つのあらわれというのが、先ほど甘利大臣の御発言等々、澁谷審議官から御紹介していただいた、こういうことになっているんじゃないかというふうに思っております。

    〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕

篠原委員 もともと無理なことをしているんですよね。アメリカとはいいんです。アメリカは、最初から全部ゼロにしなくちゃいけないなんて言いませんよと言って入っていますけれども、ほかの国とは違うんですよ。そんなことも言わないで入っているわけです。アメリカがやったことが全てに適用されるわけじゃないんですよ。今はそういう状況ではなくなっているんですね。幾ら日本とアメリカ、二大国でやっているからといったって、それをみんな押しつけるのは私は不謹慎だと思います。

 次に、小泉政務官にお伺いしたいと思います。

 今回、石田委員もお伝えしましたが……(発言する者あり)ちょっと、そこ、うるさいから静かにしてください。

 石田委員も言われましたけれども、報道が交渉を妨げているんですよ。私は、特定秘密保護法、まだ施行されていませんが、これが適用される典型的な例だと思いますよ。外交交渉は政府がやっていますから、政府からしか情報は漏れません。そして、超前のめりの、決まったんだ、数字がぼんぼん出る。それを見たアメリカ側の、例えば畜産業関係者が怒る、関税ゼロが筋なのに何を言っているんだ、こんな妥協をしてと。著しく国益を損ねているわけですよ。早く適用してしかるべきだと思います、そういうことを書いた記者も。一番は、こういうことを漏らしている人は厳罰に処すべきだと思います。こういうのは、事前着工はできませんけれども、当然そういう措置をとるべきだと思うんです。

 これは新聞報道しかわかりませんけれども、甘利大臣にも伺って、その社に対してはしばらく出入り禁止、そんなものじゃないですよ。しばらくじゃなくて、TPP交渉をやっている間じゅうずっと出入り禁止にすべきだと思いますよ。一年後には刑罰もついてくるわけですよ。そして、現に国益を損ねているんですよ。いい事例があるわけです。今、これはどう対応されているんですか。

小泉大臣政務官 今回のTPPに関しては、特に日本の報道陣の関心は高く、各外国でやる会合におきましても、各国と比べても相当数の記者も行っていますので、かなり過熱をして、存在をしていない合意を前提とした報道というのがかなり多く見られますが、存在をしないものに対しての処罰というのはできません。

 澁谷審議官が記者のブリーフィングもやっていますが、これからも適正な報道を心がけていただけるように、秘密を守るという、各国、参加国同士の合意を守りつつ、できる限りの情報提供をしながら、ステークホルダー同士で疑心暗鬼が生まれないように、これからもぜひこの交渉を阻害しないようにしてもらいたいな、そう思いながら、関係する者同士、政務も、また交渉チームも含めて、情報管理の方はしっかりと注意して扱っていきたいと思っています。

篠原委員 存在しない情報だったら、それは特定秘密保護法を直してもらわなくちゃいけないんですね。あたかも存在しているがごとく情報を流して、国家に大損害を与える、これも重大な犯罪ですよ。こっちの方が、ひょっとして、ありもしないことを書き上げる記者たちの方がひどいと思います。これはやるべきだと思います。ここはそういうことを議論する場じゃないですが、よく考えておいていただきたいと思います。

 次に、小泉政務官が一番最初の質問の答弁で、TPPと日豪EPAは違うということですけれども、よく、日豪EPA、西川TPP対策委員長が頑張ってやった、だから、これを道筋にして日米の合意も得ようということです。私は、見ていると、かえって逆なでして、日本が違う国にちょっと浮気をしてしまった、これはアメリカの気持ちからすれば、かんかんだと思いますよ。二〇%に下げるんだったら、俺のところは一〇%にしろと言ってくるのは決まっていますよ。僕は阻害材料になっているような気がするんですけれども、本当にうまく働いているんでしょうか、今のところ。どうでしょうか。

江藤副大臣 非常にお答えしづらい御質問だと思いますけれども、受け取る側の問題だというふうに思っております。

 林大臣が御就任されてもう五百日以上がたちまして、当初のころから、この日豪については、もう七年たっているんだから、いいかげんまとめなきゃいけないということはずっと議論されていたことでありまして、TPPと日豪は別だという議論をしてまいりましたけれども、まさに別の話としてやってまいりました。

 だからといって、全くTPP交渉に影響を与えないとは思っておりません。

 しかし、私たちは大きな決断をしたわけでありまして、日本の、いわゆる開かれた国家である、そして国際社会の中で連携を強めていくというその強い姿勢を安倍内閣として示す効果はあったと思っております。

 そのことで、逆に逆なでをして、アメリカがさらに強い態度に出たとは思っておりません。彼らは、原理主義的にゼロだ、牛肉にしても豚肉にしても、みんなゼロだということを言い続けているわけでありますから、そういうふうに日豪が悪い影響を与えてTPPがさらに硬直化したというふうには、私自身はですよ、政府としてはわかりませんが、そういうふうに感じております。

篠原委員 あちらを立てればこちらが立たずで、いろいろな影響はあると思います。今、江藤副大臣の答弁のとおりのところもあると思います。アメリカは完璧に実利を追い求める国ですから、それはオーストラリアに油揚げをさらわれてはたまらぬからというのは、絶対そういう態度で来ると思いますけれども、逆だったら、アメリカと先に決めて、オーストラリア、ニュージーランド、こういうふうに従ってくださいよというんだったら私はうまくいったと思います。

 アメリカは特殊な国ですよ。わがままな国ですよ。だから、違うんだろうと思います。アメリカの特殊な国というのは、この後、玉木委員がしつこく、ではなくて丁寧に質問をされると思います。だから、そっちに譲ります。

 TPAの問題です。

 交渉権限が与えられていない行政府と交渉しているんですよね。これはどうなるかというのは私はわかりません。ですけれども、オバマ政権も相当がたついてきている。余り、ほかの国の政権ががたついているとかなんとか言うとよくないですけれども、議会が猛反対しているんですね。それを、そのまま交渉していって、政府間ベースではサインして、まとまりましたよと言ったって、これからTPAを通して、それで議会で承認されていく。日本でも、私のような議員がいますから、そう簡単には国会を通すつもりはありませんけれども、自民党の皆さんも、同じ気持ちの人はいっぱいおられるはずです。アメリカだってそうなんです。こんなあやふやな状態で交渉したって、私はしようがないんじゃないかと思いますよ。

 それで、大事なのは、貿易交渉の権限ぐらいは行政府に任せてもいいということで、ファストトラックというのをアメリカは認めてきたんです。しかし、今、アメリカの議会人のところにも、TPPの内容がどういうことだったかというのが相当知れ渡ってきたわけです。どういうことかというと、何だ、これはとんでもないな、関税を上げたり下げたりする、非関税障壁を取っ払ったりする、そんなものだけじゃなくて、ルールをこんなに決めているのか、我々国会議員がやるべきことを政府が交渉で先に決めて、これに従え、そんな権限まで与えるなんてとんでもない、貿易交渉の関税にかかわるような権限だけを与えているだけであって、こんなことまで決めていない。

 三月の中旬にスティグリッツが、去年の秋に来て、安倍総理とも会っておられますけれども、ノーベル経済学賞をもらった方ですよ。スティグリッツがニューヨーク・タイムズに寄稿して、このことを書いています、とんでもないことなんだと。

 つまり、ルールを国際交渉でみんな決めてしまう。今、澁谷審議官が、問題になっているのは知財と環境と国有企業だと。それは国の形を根底から覆すような内容になっているわけなんです。だから、そんなものを簡単に決めていいのか、そんな権限まで政府に与えているつもりはないんだと言い出している。そのとおりだと思います。

 私は、農業、農産物の関税に関心があります。ものすごく大事だと思います。しかし、ほかのところでも日本の国の形まで変えてしまうと、これは、立法府の権限をも剥奪しますし、行政府の真面目な日本のお役人も、アメリカのことを気にして、この法律はだめだ、このルールをつくったらアメリカから文句を言われる、ISDSで持っていかれる、だから萎縮して法案をつくるのを遠慮する、こういうことになっていってしまうんです。だから、これは本当に考えなくちゃいけないと私は思っているんです。

 外務省はこういう実態を、交渉担当者や国内のことを一生懸命考えている人たちも、アメリカではこうですよ、アメリカの法案はこうですよという情報を収集して伝えるべきだと思うんですけれども、木原政務官、外務省はそういう努力を怠り過ぎているんじゃないでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 お答え申し上げます。

 今まさに御指摘いただいたTPA法、これは議会と、そして行政府との間、政府との間の通商交渉に関する権限の調整を図るということでありますから、その調整をどういうふうに図っていくかということの中身について、我々が今ここでとやかく言うことはなかなか難しいかな、差し控える必要があるかなというふうに思っております。

 その上で、情報収集についていろいろ御指摘もいただいたわけでありますが、私ども、他の大使館と違いまして、米大には、いわゆる財務班、経済班のほかに、議会班というものも設けて情報収集に当たっているところでございます。したがいまして、十分に情報を収集し、それを国内の関係者間に情報を伝達する、あるいはシェアをするということを行っているわけでありますが、まだまだ不十分なところがあれば、さらに一層努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

篠原委員 アメリカの情報として非常に大事なのは、新しいことも言い出している、日本いじめだと思いますけれども。前から、中国との貿易赤字が物すごくひどいので、中国に対して言っていたことなんですが、為替操作、あるいは通貨操作、マニピュレーションと言われていますけれども、これがけしからぬ、これを直せと。途中で安倍政権が誕生してからは、日本にとってはいいことだったんだろうと思いますけれども、口先だけで、何も政策をやっていないのに、株価は上がり、円安になった、これを、日本が為替操作をしていると言い出しているわけですね。これも、新しく入れるか、別建てか知りませんけれども、このことをちゃんとしなかったらTPPに入れないんだとかいって、言ってみれば、また難癖をつけ始めているわけですよ。こんな国と交渉していたって、私はまとまるはずがないと思いますよ。攻撃だけすればいいというわけじゃなくて、だめなときはさっさと撤退するべきだと思いますよ。

 外務省は、この為替操作のことについてはどの程度情報を収集し、どの程度閣僚の皆さんたちにも知らせたりということをしているんでしょうか、私はほとんど見たことがないんですけれども。インサイドUSトレードとか、新聞しか見ていないんですが、いかがでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 いわゆる為替条項と言われるものとTPPとの関係について、これはまさにTPP交渉の具体的内容にかかわることだというふうに思いますので、私からはコメントを差し控えたいというふうに思います。

 いわゆる為替の問題につきましては、米国財務省が年二回、為替報告書を公表しております。そうしたものを、我々は、随時情報収集をしながら関係省庁と協議をさせていただいておるところでございます。

 なお、為替レートを目標としないというG7の合意に沿って日本の財政金融政策が行われている、このことにつきましては、昨年四月のG20の声明においても確認をされているということを念のため申し添えたいというふうに思います。

篠原委員 そういうふうに抽象的なことを言ったって、だめなんです。アメリカはぐいぐいやってきますよ。何カ月も貿易黒字が続く、よく知りませんけれども、半年、経常収支がずっと続くというのはおかしいと。そんなことを言い出すのがおかしいと思うんですけれどもね。何年もといったらなおさらだということを言ってきているわけです。もうめちゃめちゃです。

 だから、自由貿易協定じゃなくて、アメリカ管理貿易協定、アメリカのルールを押しつけ協定になりつつあるんですよ。私はこんなものはさっさと脱退するべきだということを強く訴えまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 篠原大先輩に引き続き、TPPの問題をやらせていただきたいと思います。しつこくなく、爽やかにいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 私も、TPAの問題から入りたいと思います。

 連休にワシントンに行ってまいりました。十名を超える民主党、共和党の議員と直接私は話をしてきまして、情報収集をしてまいりました。先ほど木原政務官が、米大には議会班もあって、議会の情報もとっているというふうに言いましたけれども、私が聞いたところによると、ワシントンのアメリカ大使館の議会班は五名です。衆議院の事務局からも出向されていますし、いろいろな方が行かれています。ちなみに、中国、在ワシントンの中国大使館における議会班は十五名いると言われています。その議会との接触の濃度、そして情報収集の力、これは、中国を例に出して申しわけないんですけれども、私は十分ではないというふうに思います。

 今回、たった二日間でありますけれども、アメリカにおける通商交渉の最終的な決定権限のある議会、そして、そこに所属をしている議員と話をしてみると、アメリカの真意といいますか、ある種の肌感覚の、真実の思いというのがよくわかりました。これは一言で言うと、中間選挙まではTPAを通す気は全くありません。特に、与党民主党にその傾向が強い。共和党の所属の議員の皆さんは、比較的自由貿易を推進しますけれども、オバマが推進する自由貿易には反対だという立場でありますから、ある意味、この点においては極めて一致をしている。

 ただ、自動車の分野に極めて強い影響力のある、ある下院議員の話を聞きましたけれども、彼はこう言っていました。TPAがなくてもいい、なぜなら、自動車に関しては日本側がかなり譲歩をする姿勢を見せているので、我々自動車関連の議員としては、今のままでも、TPAがなくても、TPPには賛成だ、こういう情報もありました。

 こういったことを総合しますと、選挙が近いので、どの国の国会議員もそうでありますけれども、自国が何か攻められるような話については、やはり徹底的に反対するというのが、どの国の議員も偽らざる心情だと思います。その意味では、この十一月に中間選挙を控える中で、TPAなく交渉を行っているオバマ政権の、ある意味での交渉資格といいますか交渉能力といいますか交渉権限、これについては、その背後にいる連邦議会の議員と話してみると、それは非常に強く感じることができました。

 そこで質問したいんですけれども、当委員会でも何度かこの件は取り上げましたけれども、TPA、あるいは、かつてファストトラックと呼ばれていたものなくアメリカが通商交渉をした例は、ヨルダンとの例の一件だけですという話をよく聞きます。しかし、TPAなく交渉妥結に至ったケースはヨルダンだけかもしれませんけれども、TPAなく議会が承認、批准をしたケースは実はほかにもございまして、それは米韓FTAであります。

 この点をまず外務省に確認したいんですけれども、資料一をごらんいただけますか。これは、いろいろ資料をいただいて、当事務所、玉木事務所で整理したものでありますけれども、二〇〇六年に米韓FTAの交渉を始めます。そして、二〇〇七年の四月に交渉が妥結をし、ここには省きましたけれども、六月に署名が行われます。そして、署名が行われたその六月の末をもってこのファストトラックが切れるわけですね。

 つまり、確かに、米韓FTAは、交渉の妥結時点、署名時点では一括交渉権限が政権側にありました。しかし、その直後に切れ、その後、これを見ていただくと、二〇一一年にアメリカ側の議会で承認されますけれども、その間、四年ぐらいあるわけですね。その間に何があったかというと、ここに書いていますように、追加交渉を行っているんですね。二〇一〇年、まさに追加交渉が始まった年でありますけれども、この年は何があったかというと、中間選挙の年であります。中間選挙は十一月に行われますけれども、その中間選挙の前の六月ぐらいに、米韓両政府と書いていますけれども、アメリカ側は追加交渉妥結に意欲を示す。そして、十二月に追加交渉が妥結をしております。

 西村副大臣にもお答えいただきましたけれども、妥結をした後、TPAがないからといって議会から何か言われて、再交渉を求められて、ひっくり返すことはあるのかという質問をしたら、いや、そんなことはないですというお答えを何度もいただきましたけれども、この米韓FTAを見ていただくと、一旦交渉を妥結した後に追加交渉を行っています。

 その中身は何かというと、この下に主なものを書いていますが、例えば自動車の関税については、アメリカ側、韓国側両方とも撤廃期限を延長しておりますけれども、中身をよく見ますと、アメリカは、二・五%を即時ないし三年以内に撤廃ということを、四年間は維持して、五年目に撤廃するということになっています。韓国も、即時撤廃だったのが五年目にというふうになっていますが、八%の即時撤廃を、まず四%は即時撤廃しろということをいずれにせよ求められていて、撤廃期限だけはそれぞれ四年ぐらい猶予を持っているということであります。

 次の、日本も求められていますけれども、いわゆるアメリカの安全基準を満たした車がそのまま韓国にアクセスできる、基準を満たすと認定する台数が二万五千台に拡大しています。ちなみに、二〇〇七年の合意の約四倍だとも言われております。そして、セーフガードも、これはアメリカ側ですけれども、自動車分野のセーフガードの導入を韓国としては押し込まれているということであります。

 何を申し上げたいかといいますと、まさに一括交渉権限が切れた中で交渉してしまうと、この米韓FTAの例を見てもわかるように、せっかく妥結をしても、議会との関係で、その後選挙があったりいろいろなことがありますね、そうすると、最終的な権限を持っている、合衆国憲法上権限のある議会、あるいはそこに所属する議員が反対すると、もう一回やり直しを食らう可能性が極めて高いということです。

 こういう不安定な中で、どこまで我々が、交渉を加速化しましょうという中で急ぐ必要があるのかという問題点については、改めて問題を指摘したいというふうに思います。

 まず、この点について外務省に一点確認したいんですが、私が今説明したのは、いろいろ資料を集めて我が方で整理した話ですけれども、交渉妥結の後、議会での承認までに、米韓FTAは内容が変わった、このことが事実かどうかだけ、まずお答えください。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、米韓FTAは、二〇〇二年TPA法に基づく署名期限前の二〇〇七年六月に署名されたところでございます。

 その後、その中身について再交渉が行われまして、自動車分野については、米韓双方の関税撤廃スケジュールが変更され、さらに、御指摘のありましたような安全基準、透明性、セーフガードに関する新たな規定の導入について、合意がなされたものと承知しております。

 そのような修正内容を含めまして、TPA法に基づく手続により、二〇一一年十月に米国議会において承認されたというふうに承知しております。

玉木委員 皆さん、お聞きになりましたか。つまり、二〇〇七年の妥結内容とは違うものが二〇一一年に議会で最終的に承認されたんです、これは。事実です。

 外務省も、あるいは政府も誠実に言っていただきたいのは、これまで、そんなケースはヨルダンしかないですよ、こういう説明をしてきましたけれども、しっかりとした交渉権限がなく、一括で議会の承認を得る権限もなく行政府側が交渉を行った際には、米韓FTAと同じようなことが起こり得るんだということを、きっちりと国民に対して、国会に対して説明をするということは、私は、政府として誠実にやっていただきたいなというふうに思います。

 その上で、繰り返しになりますけれども、十一月に中間選挙がございます。その中で、TPAの法案の成立の見込み、あるいはその成立の状況をしっかりと見定めた上で、我が国としては、腰を落ちつけて、しっかりとした交渉態度でTPP交渉に向き合うんだ。急ぐ必要は我が国としては全くないと思います。

 アメリカ側の国内手続、国内法の成立状況を見定めながら、落ちついてTPP交渉を進めていくべきだと思いますけれども、この点についていかがでしょうか。

小泉大臣政務官 急ぐという表現が正確なのかどうかは私もちょっとわかりませんが、日本政府は、急ぐことも焦ることもなく、だけれども、責任ある交渉参加国の一員として、日本の国益を守るための交渉に積極的、そして貢献できるように、精力的な、真摯な交渉を続けていると承知しています。

 そして、今のTPAの関係でいえば、今、米韓の話がありましたが、政府でまとめ上げたものをそれぞれが自分の国に持ち帰っていって、その議会、議員に対して了承を得て、そして国民に対する説明もしっかりと尽くしていくのは、その政府間でまとめた責任がやはりあると思います。

 ですので、他国の法案についてコメントをすることはありませんが、今、TPPにおいては、米韓とは違い、十二カ国がそれぞれ政府同士で交渉しているわけですから、これから交渉妥結に向けて各国が努力をしますが、その努力をしてまとめたものは、それぞれ十二カ国の誠実な努力の結晶だと思いますので、それぞれ国内で努力をされるものだと思っております。

玉木委員 公式見解はそうだと思いますが、やはり最終権限のある議会側の、あるいはそれぞれの議員の思い、あるいは選挙区事情、こういったものを、日本政府としてはもっと正確に情報収集をすべきだというふうに私は思います。

 法案の成立状況というのは、もちろん国内法ですから、文句をつける話ではないですけれども、やはりしっかりとした情報収集、議会側の、キャピトルヒルの情報もしっかりとりながら、我々の戦略を練っていくということを政府としてはしっかりやっていただきたい。もちろん我々は、議員外交としても、そういうものをきちんとフィードバックしていくということも、我々立法府の、我が国立法府の人間の責任だとも思いますけれども、政府としても、アメリカ議会の情報収集についてはもう少し積極的にやっていただきたいなということを、ぜひこれは強く求めたいというふうに思います。

 ちょっと時間がないので、豚肉の話だけ、少し確認しておきたいと思います。

 これも読売新聞の記事だったと思いますが、こういうことが書かれていました。差額関税制度を撤廃して関税収入がふえるので、そのふえる税収を、関税収入をもって国内の養豚業者対策に回せばうまくいくので、差額関税制度を撤廃する、こういう趣旨でありました。

 これは素人が読むと、何が何だかわからない。関税をやめるのに税収がふえる、一体何のことかなと思うんですけれども、これは、私は比較的センスのいい記事だと思っています。

 というのは、資料の四を見ていただきたいと思います。これは何回かここで説明しましたけれども、差額関税制度というのは、分岐点価格より低いところでは、差額関税という極めて高い税がかかって、一定基準以降は従価税になって四・三%かかる、こういう仕組みでありますね。

 私が申し上げたいのは、この分岐点価格より左側、低いところ、ここが空振りになっているということをずっと指摘してきたわけであります。いい悪いは別です。この一番左のところに従量税がちょこっと残っていますけれども、ここの四百八十二円を五十円ぐらいまで引き下げる、大幅な引き下げだ、大変だという話があるんですけれども、これだけ聞いていると、豚肉の関税についての真実の姿を余り正しく把握することはできないんですね。

 そこで、財務省にきょうは来ていただいていますので、端的にお答えいただきたいんですが、この分岐点価格より左側、低い豚肉の価格にかけて得ている税収ですね。絵を見ると、このオレンジ色のところで物すごい税収がありそうな感じがしますけれども、もし、差額関税のこの左側の部分が国境措置としてしっかり機能していれば、多分税収は多いはずです。

 今、年間税収は百七十から百八十億円ぐらいだと思いますけれども、この分岐点価格以下の輸入価格の豚肉から生じている関税収入、総額を教えていただけますか。

後藤政府参考人 お答えいたします。

 平成二十四年度におきます差額関税制度の分岐点価格以下の豚肉に係る関税収入の総額は、約三十八億円でございます。

玉木委員 もしわかれば、もっと正確に答えていただきたいんです。

 以下と言いましたが、以の部分、つまり、どんぴしゃ分岐点価格でかかっているものと未満のもの、これはわかりますか。

後藤政府参考人 その区別は、今、集計上とってございませんので、残念ながらお答えできません。

玉木委員 何か集計上とっていないということがよくわからないんですが、これは多分ほとんどが、以下といいますけれども、どんぴしゃのところが、多分三十八億円のほとんどだと私は思いますよ。

 つまり、これは何が言いたいかというと、絵を描くとこういう感じなんですが、ほとんどが分岐点価格の上でかかっているんですよ。ここが空振りになっていて、交渉の戦略上、これをなくしますというのは、ある意味空振りのところなので、なくしていくというのは一つの戦略かもしれません。ただ、ポイントは、その上で一体いかなる新たな国境措置をきちんと提案し、それを相手国にのんでもらうかということだと思います。

 四百八十円を五十円まで下げると、すごく下がったふうに見えますけれども、五十円が仮に従量でずっと乗っていくと、私の計算だと、分岐点価格は千百六十二円ぐらい、ここから下だと四・三%よりも多分高い税率になると思います。今よりも少し強目の国境措置になる。しかも、低価格帯は今は事実上ゼロになっていますから、そこにも薄くかかっていくことになると、低価格帯はしっかり守れるようになる。ただ、千百円以上ぐらいの超高価格帯、ここは逆に、五十円だと四・三よりは率としては低くなってしまうということが計算上は言えるかなと思っています。これは私の計算なので、正確じゃないかもしれません。

 ただ、いずれにせよ、こういうことは、今報道で行われていて、養豚農家も非常に不安になっているので、きちんとした国境措置が残るのかどうか、このことについてはちゃんと情報を出していただきたい。ぽろぽろぽろぽろ、正しいのか正しくないのかという情報が出て、非常に現場は混乱しております。

 いずれにせよ、どんな形にせよ、交渉ですから、それは最終的には政府の側がお決めになることだと私は思いますが、再生産可能な国境措置はきちんと残していただくということが当委員会の決議の趣旨です。形式にこだわる必要はありません。ですから、差額関税制度をなくします、そのことをもって私は反対をしません。ただ、この委員会の趣旨は、再生産可能な国境措置が残るか否か、この点についてはしっかりと考えていただきたいし、そのことを、生産者も含めて、きちんと説明いただきたいというふうに思うんですね。

 それじゃないと、今回、農政の大きな転換の中で飼料用米に寄せていくという政策も成り立たなくなると思いますよ。特に、四百五十万トンぐらい飼料用米をふやすという中でも、鳥と豚は多いわけですよね。ですから、豚に関して今よりも国境措置が落ちるようなことがあれば、農政全体の今のガラス細工のようなスキームが崩れてしまう、そういうおそれがあると思います。

 林大臣、豚も含めた、やはり効果的な、本当にエフェクティブな国境措置については死守をするんだ、これが決議の趣旨でありますから、この点を守り抜くという点について、改めて、林大臣の決意を聞かせてください。

林国務大臣 国際交渉の結果、畜産の再生産の前提条件が変わりますと、飼料用米の増産が困難になる可能性もあるものの、TPPについては、畜産物を初めとする重要品目の聖域を確保する、今、委員の御意見として、この趣旨はこうなんだというふうにおっしゃっていただきましたけれども、まさにいろいろな方のそういう思いが農林水産委員会の決議という形になっております。

 したがって、この決議を踏まえて、国益を守り抜くように、全力を尽くしていきたい、こういうふうに思っております。

玉木委員 ぜひ腰を落ちつけて、どっしりとした態度で交渉に臨んでいただきますことを改めてお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 日本維新の会、鈴木義弘です。

 昨日に引き続きまして、質問をさせていただきたいと思います。

 もう過去にTPPの問題については質問がなされたと思うんですけれども、再度、確認する意味も含めまして、何点かお尋ねをしていきたいと思います。

 まず初めに、平成二十四年度のGDPの速報値を見ますと、五百十七・五兆円、そのうち、農林水産業関係で全体の一・二%、単純計算して約五兆円ぐらいがGDPの占める割合です。

 昨年、TPPに参加するといったときに政府が出してきた試算だとか学者さんとか団体等の幾つもの資料をもう一度読み返したんです。

 そのときに、政府で試算をしている、農林水産省の方で出してきている、農林生産額が三兆円減るという数字が出ていました。平成二十四年度で計算いたしますと、国内農林水産生産額というのが約八・五兆円、そこから二・七兆円を引けば、実質五・八兆円しか残らない。TPPに参加したときに、アメリカを初め、農林水産物が国内に入ってきたときに、国内の農業関係にこれだけ影響があるだろう。

 これは生産額で出しているんですね。ですから、GDPとは若干数字がずれてしまうんです。でも、GDPは、そのときの政府試算では、三・二兆円ふえるとしていたんです。

 今申し上げましたように、関税を撤廃するわけですから、海外から農産物が安く入ってきて、物価が下がるわけですね。消費者は喜ぶんだと思うんです。逆に、そうすると、企業の事業所得が減少して、収入が減るということで、家計の所得が下がるとも言われるわけです。消費も冷え込んで、家計消費支出が約三兆円から四兆円減るという試算もあります。

 そうすると、今一生懸命政府が取り組んでいる、デフレを脱却しようということで、物価目標数値を二%に据え置いていながら、仮にTPPに、すぐに関税を撤廃するというのは、何年か先になるんだと思うんですけれども、デフレの再発のおそれはないのか、一度確認をしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 本来、経済政策の話は内閣府なのかもしれませんが、たまたま私は前職が内閣府でございましたので、お答え申し上げます。

 先生の御指摘は、輸入デフレ論と言われている議論だと思いますけれども、これは先生御存じのとおり、専門家の間でも意見の分かれるところでございます。

 事実を申し上げれば、我が国は、FTA、EPAをいろいろな国と結んでおりますが、ほかの国と比べて、現時点における自由化率はそんなに高い数字ではない。それにもかかわらず、より高い水準でEPA、FTAを結んでいる国と比べて、我が国だけが長い間デフレに苦しんできたという事実がございます。

 また、専門家の議論として、貿易の自由化によって輸入財の価格が下がるというのは事実でございます。これは相対価格の問題であって、デフレの定義である一般価格の継続的、長期的な下落ということとは必ずしも直結しない。これはいろいろな議論があろうかと思います。

 いずれにいたしましても、デフレ対策につきましては、それとして、金融政策などの本来のデフレ対策できちんと対応するのが基本ではないかというふうに思っております。

鈴木(義)委員 TPPで関税の話がよく出るんですけれども、過去に私も質問した中で、為替が一〇%、二〇%円安に振れれば、関税を撤廃しようが撤廃しなくても、価格的には一緒になってしまうこともあるわけですね。

 先ほどの議論の中でも、為替を意図的に政府がやるのはけしからぬというような話をアメリカ側が言っているというんですけれども、振り返ってみれば、約三十年ぐらい前になるんですけれども、プラザ合意で、G7で、円高にしていった方がいいじゃないかというふうになってから、どんどん円高が今日まで来ていて、きょうは幾らになったか、ちょっとわかりませんけれども、百一円なんですね。

 おかしなことを言うんじゃないかなと思うんですね。七カ国が協力して、いや、日本は何か外に売り過ぎちゃっているから、ちょっとけしからぬから、円安じゃなくて円高にしていった方がいいじゃないかと、プラザ合意をしてから、どんどん円高が進んできて、振り返ってみたら、二百四十円、二百五十円だったのが、今は百一円ぐらいなわけですね。

 海外から入ってくるものは、約二分の一や三分の一の値段で入ってきていて、国内から外に出すときには、二倍、三倍の価格になっちゃう、それが今の日本の置かれている立ち位置なのかなと思っています。

 それと、もう一度確認をしたいんですけれども、よく、国益、国益と。国益に沿うから参加するんだとか、国益にそぐわなければ撤退をするという言葉が、私たちもよく使うんですけれども。

 政府の試算の中で、これも一人の学者が唱えているので、正しいか、正しくないかというのはまた御判断いただきたいと思うんですけれども、今御答弁いただいたことにも若干重なるところも出てくると思うんですけれども、仮に価格が一〇%下落したときに、生産性が一〇%向上するということを言っている学者もいるんです。その仮定に基づいて計算していくと、約二兆円ほど積み増しされる数字が出るんだと言われています。それを、国が試算をしている三・二兆円の中の二兆円にしているんじゃないかというふうにこの学者は指摘しているんです。

 では、その一〇%の価格の根拠だとか、生産性の一〇%の向上というのはリンクするものなのかどうか、そこのところをちょっとお尋ねしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年行いました政府の試算は、GTAPといいます、マクロ経済の最も基本的なモデルでございまして、これはマクロ経済の基本ですが、貿易の自由化によって資源配分の効率性が高まり、それによっていわゆる全要素生産性が高まるということが効果の基本でございます。

 昨年の六月に、ある先生のコメントが公表されまして、その中で、今先生御指摘のように、政府の試算の中で、価格が一〇%下落すると生産性が一〇%向上するという仮定を置いているとありますが、これは、六月の時点で私どももいろいろもう一回精査しましたが、そういう仮定を置いているという事実はないということでございます。

鈴木(義)委員 そうしますと、昨年を振り返ってみて、今冒頭で私が申し上げましたように、農林水産省が出してきたのはGDPに基づいた影響額じゃないんですね。生産額に基づいて、三兆円という数字を出してきているんだと思うんです。でも、国の方で統一見解で出してきているのはGDPに対しての影響額で、三・二兆円プラスになって、プラス、マイナスで計算すると、たしか、記憶が間違っていなければ、二千四百億とか二千七百億ぐらいプラスになるんだというふうに言われているから、TPPに参加しようということで、今協議をされているんだと思うんです。

 その昨年出された統一見解を、もう一度、その影響試算の計算の仕方を政府として行っているのかどうか。行うのか、行わないのか、そこのところをもう一度。

 今交渉中なんですけれども、いずれ交渉が、ことしなのか、来年なのか、再来年なのかわかりませんけれども、やはりもう少し影響調査にかかわるきちっとしたデータの根拠というのが私たちも必要になってくるんだと思うんです。それが本当に国益にかなうものなのか、かなわないものなのかというのを、私たち一人一人の政治家の判断を自分たちでしなければならないという時期がいつか来るわけですから、政府として再試算なり再定義をきちっとするのか、お尋ねしたいと思います。

小泉大臣政務官 先生御指摘のとおり、このGTAPモデルというのは、最も基本的で、関税も全ての品目即時ゼロ、そういった仮定を置いてやっているものですが、今、TPP交渉が真っ最中のときに、仮に条件を変えて新たな影響試算を出すということは、交渉に対しての予断を与えかねないということもありますので、最終的に、この交渉の結果を踏まえて、必要な検討は行ってまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 ぜひいろいろな角度から、私たちは、施策を考えたり、法律をつくったり、予算を審議したりする立場が政治家なんだと思うんですけれども、やはり正しいデータがなければ、正しい判断はつかないんだと思うんですね。ですから、農林水産省は農林水産省の考え方があるんでしょうけれども、政府全体として何をもって国益とするのかというのは、やはりきちっとした数字を、プラスの部分とマイナスの部分とを出していただいて、妥結した後に、私たち議員を含めて国民にぜひ提示をしていただきたいなというふうに思います。

 また、もう一点、先ほどもお尋ねした学者の人が使っている指標なんだと思うんですけれども、TPPによる日本の経済的利益を経済的幸福度というような言い方をしています。これは政府の見解じゃないんだと思うんですけれども、これを置きかえて考えるというのも一つ大事なことなんじゃないかなというふうに思います。

 特に、先ほどから自動車の関係の話が出ているんですけれども、昨年の政府が試算した中で、自動車の関税撤廃が入っているんですよね。私は新聞でしかわからないんですけれども、三十年先までアメリカが関税撤廃するのを先延ばしされてしまうという話になってしまうと、昨年試算をした、日本にとってのGDPの三・二兆円を達することができるのか。もうその時点で意味がなくなっちゃうんですよ。(発言する者あり)今、篠原先輩からアドバイスをもらっちゃったんですけれども、だから、仮定の仮定の仮定の話をしていってしまうと、意味がなくなってしまう交渉を続けていてもしようがないんじゃないかと思うんですね。

 だから、今、小泉政務官の方から御答弁いただいたように、交渉の過程の中で、一度政府が出した試算に対してもう一度再計算なり再定義をし直すということは交渉に悪影響を与えるといいながら、なぜ新聞でそういう記事が出るのか。先ほども、質問の中で、それは政府としてのきちっとした見解じゃないんだという御答弁があったんですけれども、では、政府がその新聞社に対して、名誉毀損でも何でもいいですから、訴えた方がいいと思いますよ。どうでしょうか。

小泉大臣政務官 さまざまな新聞報道に対してどういうふうに対応するかというのは、大変難しいと思います。

 事実に反していて、また根拠がないものをあたかも事実だということを前提に書かれている場合は、事実ではないことに対してどういう処罰ができるのかという、先ほどの篠原先生の議論にも戻ってしまうんですが、ただ、いずれにしましても、日本政府として、このTPP交渉で、関係各国との共通の秘密保持のルールがある中で、可能な限りの情報提供をやっているというのは事実であります。

 そして、日本の報道陣、マスコミの関心も、関係各国の中で突出して高いと言ってもいいと思います。そういった中、さまざまな取材活動の中で、それぞれの判断に基づいて出しているものがあると思いますが、いずれにしても、この委員会でも、関係政務、また澁谷審議官初め政府関係者が答弁しているとおり、決まった事実はない。

 今、引き続き、鋭意交渉をやっているわけですから、この影響試算に関することも、全ての物品において即時関税撤廃、こういった前提を置いているわけですが、この影響試算に関しては、今交渉中でありますので、予断を与えかねないことです。交渉が妥結されて、結果を踏まえて、さまざま必要な検討を行ってまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 では、次に移らせていただきたいんです。

 今まで、FTAを初め、いろいろな国と、条約を締結してきた国が日本も幾つもあるんだと思うんです。では、実際に、その締結をした後に、日本の国に利益があったのか、国益にかなったのかどうか。分野ごとに、どの金額で、輸出入でプラスになったのか、マイナスになったのか、お尋ねしたいと思います。

正木政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、日本政府は、今、日本経済再生のために、自由貿易の推進ということで、FTAに積極的に取り組んできております。

 今まで、十三の国、地域との間でEPAを締結してきております。また、現在は、御案内のTPPに加えまして、日中韓のFTA、RCEPなどを含む九つのEPA交渉を、同時並行的に、スピード感を持って推進しております。

 先生の御質問の具体的な分野別の数字によるメリットというのは、分野別に数字で示すというのは大変困難でございますが、例えば、EPAが締結されますと、相手国の関税撤廃、削減によりまして輸出品の価格競争力が強化されることに加えまして、サービスあるいは投資の自由化により、サービス貿易、直接投資案件の増加を期待することができると思われます。また、多くのEPAにおきましては、知的財産の保護、あるいは商用関係者の移動の円滑化についても規定されておりまして、ビジネスの促進ということにもつながると考えております。

 具体的な効果という点で、先ほど申し上げましたように、分野別に数字で示すのは大変困難でございますが、例えば、日本とメキシコのEPAの発効、これは二〇〇五年四月でございますが、その後、日本のメキシコとの間の貿易額は双方向とも順調に増加してきておりまして、日本からの自動車、鋼板等の輸出量が増加してきているという点などは指摘できると思います。

鈴木(義)委員 今まで十三カ国とFTAを締結していながら、数字がよくわからない。では、私たちは、先ほどもお尋ねした、国益とは何ですかと尋ねたときに、何をもって国益とするのか。ということは、自由貿易が大事なんだといいながらも、別にそれで、ルールは正しいし、自由貿易を推進するのは大事なんですけれども、日本の産業がずたずたになってしまって、商売が成り立たなくなってしまって、何が国益なんだと私は思うんですけれども、その辺はどうですか、もう一度。審議官がお答えすることじゃないと思うんですけれども。

小泉大臣政務官 何が国益かというのは、大変難しい、大きな議論かもしれませんが、私は、今の先生の御質問、問題意識を聞いていて、今復興政務官としても被災地の復興に当たっている中で、何が真の復興かというテーマとも共通する部分があるのかな、そんな思いもいたしました。幾らぴかぴかなものが、建物とか道路とかそういったものができ上がっても、本当にこれから持続可能性のある地域をつくっていかなければ真の復興ではない、そういった思いで今復興に当たっております。

 内閣府政務官として、今TPPを担当している中で、TPPを達成して、多くの方々が、TPPで結果的に生まれてくる新たな地域のルール、そしてさまざまな参加国との貿易自由化を通して繁栄を享受できるような新たな地域づくりをやっていかなければいけない、そんな思いで交渉に当たっておりますし、この交渉が妥結された後に、この決議を踏まえて、多くの議員の方々、そして国会で承認を得られるような形をつくり上げていくことがTPPを担当している政府の使命だと思っております。

鈴木(義)委員 例えば、これは農林水産省のホームページで出してきている経済活動別国内総生産と書いてあるところが、平成二十四年度で四百七十三兆七千七百七十一億円と書いてあるんです。これはホームページをコピーしたものなんです。

 内閣府の経済社会総合研究所というところで出している、二十四年度の国民経済計算確報というのが書いてあるんです。ここで出ているGDPの数字が五百十七兆なんです。

 そもそも、国内で使っている数字が、農林水産省で出してきている数字と、これは内閣府の外郭団体なんでしょうけれども、内閣府の経済社会総合研究所で出しているGDPの計算が五百十七兆、これだけ違っちゃっているんです。

 私はしつこい性格で申しわけないんですけれども、いつも維新の会でもしつこいと言われるんですけれども、TPPの影響試算の中で、農林水産省は生産額で試算しているんですね。

 実際、肥料をつくっている人を救おうとしているわけじゃないし、農機具をつくっている人を救おうというんじゃなくて、農業に従事している人を何とかしなくちゃということなんだと思うんですよね。

 だから、もしそれで計算するのであれば、労働の価値が多くを占める付加価値をGDPとしているんですから、そこで試算をした方が、国益ということであれば、どういう影響が出てくるか、プラスになるのかマイナスになるのかというのは一目瞭然になるんだと思うんですけれども、やはりその辺の統一した見解を出していかないといけない時代にもう来ていると思いますよ。いかがでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生るる御質問ございましたTPPの経済効果をどう見るかということにつきましては、いろいろ御議論があったところでございます。

 二十二年の十一月には、その当時、各省がいろいろな形で影響試算的なものを出しまして、非常に混乱があったということがございました。これへの反省に立ちまして、昨年三月の時点では、この国民経済に与える影響というものについては、内閣官房が中心になって、GDPベースでの経済全体に与える影響というものをGTAPモデルを用いて試算するということで統一をされたところでございます。

 そのモデルを使って、例えば農林水産業ですとか何々業ということで個別産業ごとの影響を出すということにつきましては、これは内閣官房によりますと、モデルの性格上、数字の振れ幅が大きいなど誤解を与えかねないということで、GTAPモデルでの産業別の影響額を試算して公表するということはやっておらないというふうに聞いておるところでございます。

 一方で、我が農林水産省といたしましては、二十二年当時に出した生産額ベースの数字などもございましたものですから、また、農林水産物というものが、ほかの産品と比べまして、国家貿易など、ほかと違う複雑な国境措置があるものでございますので、そういったことをベースに、個別の品目ごとの流通実態ですとか輸出余力などを踏まえて生産減少ベースでの金額を出すということをやったところでございます。

鈴木(義)委員 数字はひとり歩きをするときもありますし、数字で安堵感を与えられるときもあるし、絶望感を与えられるときもあるので、政府としていろいろな統計資料を出すときに、やはり一つの基準をつくってやった方が私はいいんだと思うんですね。その都度その都度御自分たちの省庁に都合のいいような数字のとり方をするのでは、やはり国全体としての国益をどう考えるかといったときに、判断を見誤ってしまうのではないかなというふうに思っております。

 その次に移りたいと思います。

 安倍政権は、米や麦、サトウキビなどとともに食肉を聖域に掲げて、関税維持は譲れないと主張してきた。日豪EPAでは、食肉の関税を現行の三八・五%から引き下げて、先ほども議論になりました、冷凍で一九・五%にすることになったのは御承知のとおりです。

 でも、自民党は、日米交渉で豪州とのEPAを上回る譲歩をしないよう求める決議をしたんですけれども、この農林水産委員会の決議した関税維持の主張はどこに行ったのかなと思うんです。これは素朴な疑問で、いかがでしょうか。

小泉大臣政務官 TPP交渉において、自民党の今までの公約、そして決議、また、この国会の委員会における決議を踏まえて交渉に当たり、最終的に、TPPの目指す、水準の高い協定、そして国会の御承認を得られるようなものという、そういった整合性を持った結果に導いていくということに全く変わりはございません。

鈴木(義)委員 煮え切らない質問で終わってしまったんですけれども、以上で終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 日本維新の会の村岡でございます。

 先日に引き続いて、小泉政務官にTPPに関してお聞きしたいと思います。

 議論を聞いていまして、先ほど我々の鈴木議員からもありましたが、国益、これに対して小泉政務官の答え方が、いつもの切れ味鋭い言葉じゃなくて、何か悩み始めた、質問されるたびに小泉政務官の言葉が重くなっていくような感じがします。甘利大臣は気が晴れたみたいですけれども、小泉政務官は非常に気が重くなってきたような気がいたしております。

 そして、この前、私に答えていただいたときに、民主党政権がTPPに参加しようと言っていたときに、自民党はほとんどが反対だったと。その反対だったときに、遅きに失した、遅過ぎるぐらいだというような言葉を政務官が言っていましたけれども、交渉をずっとやってきて、ちょっと参加したのが遅かったのかな、そんな思いは今はどうなんでしょうか。

小泉大臣政務官 今がどうこうではなくて、当時から、遅過ぎたなと私は思っておりました。

村岡委員 そういうふうな考えであれば、国益のときももっと自信を持って答えていただきたいと思うんです。

 というのは、その当時、菅総理大臣が平成の開国と言って、それには非難の声もありました。しかし、明治維新で開国したとき、別に全部日本にとっていいことばかりではありません。あのときは、開国をして、明治維新ということで、もちろん幕藩体制がかわって、封建的な社会が変わる。世界に対して日本が市場を広げて、いろいろな国とつき合うことによって、イノベーションが起きて、日本が成長していった。しかし、その裏にはいろいろな問題点があったわけです。それをフォローしていくというのが国益であります。

 そして、今現在、TPPで、例えば自動車分野、いろいろな日本の得意な分野、世界に関税がなくなって、自由貿易体制を守っていく、日本の技術をどんどん売り込んでいくということは大切です。しかし、農業者の人たちは、関税が下がれば大変なんです。そこを、自民党の言葉を考えれば、どういうパッケージで農業をちゃんと成長させていくか、そう私は思っているんです。

 もっと自信を持って答えてもらわないと、何のためにTPPに参加しているのか、全くわからなくなる。その点はどうだと思いますか。

小泉大臣政務官 TPP交渉を担当している政務官として、切れ味鋭い答弁をするというのはなかなか難しいものがありまして、可能な限りの範囲の中でどこまで情報提供をすることができるかということも必要な観点であります。

 甘利大臣は、気が晴れたのではなく、霧が晴れてきたという認識で、今回のシンガポール会合において、七月に向けて事務方同士がさらに詰めて、やはり、例えば事務方がやるような作業を閣僚級がやるようなことではなかなか物事というのは動かないので、閣僚級が最後に詰め切るところをできる限り絞って、これからの数カ月、精力的に頑張っていこうと。

 そして、今回交渉の中で甘利大臣が申し上げたのは、TPPの交渉の閣僚会合とかになると、ホノルル宣言などの原則論が必ず出てくる。つまり、ゼロを目指すんだと。それはそうなんだけれども、しかし、幾らそうだからといって、そればかり言っていては物事は動かないこともあるだろうから、お互い、もうこれ以上努力はなかなか難しい部分もあるなということは認め合いながら、前向きな努力をしていった方がいいのではないかという提議もあり、その問題意識はほかの国からも共有されたと思っております。

村岡委員 霧が晴れてきた、でも、それは気分がちょっと晴れてきたと同じような意味合いだとは思うんです。小泉政務官にも、大変な交渉なんですけれども、目指すところは日本の発展なわけです。そして、世界とも一緒に発展していくことなので、余り気が重くなっていくような形で答弁しないで、積極的に行く、こういうことをぜひ期待したい、こういうふうに思っております。

 そこで、先ほど石田先生からも質問がありましたけれども、共通の見解というのは、プロセスを決めた、そんなことはないと思います。数字上のことが必ず交渉の中であると思います。

 その数字上の交渉の中身は言えないことは確かですけれども、聖域五項目というのを前回の質問でお聞きしました。聖域は触れてもいけないこと、だけれども、これは触れざるを得ないということですから、それぞれ交渉していると思います。そういう意味では、共通の見解の中で、日米の中で、この聖域五品目の関税を下げるということだけは、数字はいいです、日豪EPAのレベルなのかどうかわかりませんけれども、それだけは共通認識になったということでよろしいんでしょうか。

小泉大臣政務官 市場アクセスに関しても、例えば関税だけで最終的な形が決まるということではなくて、パッケージ、今このことに対しては、フォーミュラと言う方がいたり、方程式と言う方がいたり、さまざまな言葉が出ていますが、さまざまな要素の中で最終的に決めていかなければいけないことなので、一つのことが決まったからといって全部が決まる、そういった状況ではないと思いますし、現時点で決まったという事実ではありません。

村岡委員 今まで何回もこれは協議をしているわけです。甘利大臣も何回も行って御苦労されているし、また事務方もやっていると思います。

 それは、全部が決まるまでは、当然発表はできないと思います。一つ一つの項目は詰めていかなければ霧は晴れてこないわけで、そういう意味では、言えないことはわかっていますが、よくこの委員会でも、日豪EPAというのは最低ラインだ、こういうようなお話がありますけれども、それは関税だけじゃなくてSGもあるでしょう、いろいろな意味で、そういうパッケージの中で、そこを基本にして交渉しているのかどうか。全く関係ないというなら関係ないでもいいんですけれども、お答え願えればと思います。

小泉大臣政務官 日豪EPAとTPPというのは、基本的にやはり別のものだと捉えた上での交渉が必要だと思います。

 ただ、先ほど江藤副大臣からも御答弁がありましたとおり、結果的にそれが与える影響というのはいろいろあるんだろうとは思いますが、このTPPの中において、国会の中でしっかりと思いを受けとめて交渉に当たれ、そういった思いの結晶がやはり決議だと思いますので、その決議は、甘利大臣、また西村副大臣、そして現場で当たっている事務レベルの協議においても、日本の国内の状況は、これだけさまざまなセンシティビティーを抱えていて、そこに対する関心は非常に高い、そういったことは伝えております。また、現地に行っている報道陣の数、関心、これを見ても、各国は、いかに今日本がこのTPPにおいて、他国と比べても、相当な関心事であり、大きな課題であると認識していると思っております。

村岡委員 確かに、各国にとって、日米で八割を占めるわけですから、日本がどういうふうな対応をとるかというのは、このTPPの参加国全部の関心事であると思います。

 しかし、先ほど、議員のそれぞれの先生方からもう質問がありましたけれども、アメリカが、TPAもありますし、いろいろありますけれども、報道とかいろいろなもので聞いてみますと、アメリカは実はそんなに関心がないという報道もあるんですね。そういう意味では、中間選挙のぎりぎりになれば、農業団体であったり自動車業界であったり、いろいろなところの関心が高まってくるのかもしれませんけれども、何か日本が苦しんでいるんですけれども、アメリカの交渉の中にやはり引っ張られているような気がいたしているんです。

 やはり日本は、先ほど言った、開国といっても、あの当時は不平等条約がたくさんありました。そういう意味では、今の日本は違います。強力な政権をつくるんだ、そのために自民党は、衆議院選挙、参議院選挙で国民にお願いした。しっかりとした体制の中で、アメリカとしっかり交渉していただきたい。

 アメリカが逆に一枚岩ではないような、国民全体がTPPを絶対成功させろというような意識で関心が高まっているかというと、それほどでもないような報道がなされますが、アメリカ国内の、TPPに対してアメリカ国民がどのような意識でいるのか。小泉政務官、外務省等からつかんで、どう考えているんでしょうか。

澁谷政府参考人 アメリカ国内の報道もチェックをしておりますが、例えばウォールストリート・ジャーナルとかワシントン・ポストのような新聞には、TPPという固有名詞はほとんど載っておりません。さすがに閣僚会議とか首脳会議などの報道はありますが、TPPという固有名詞だと恐らく読者がわからないので、アジア太平洋の十二カ国との経済連携協定の交渉という普通名詞に置きかえて報道がされているということでございます。

 ただ、オバマ大統領は議会で、フロマン代表もそうですけれども、そこは何度も説明をしておりまして、ヨーロッパとやっているTTIP、それからTPP、これはアメリカの通商政策上、大変重要なものであるという説明は、議会ではかなり頻繁にされていると承知しております。

村岡委員 そういう状況もしっかりとつかみながら、アメリカが逆に私は一枚岩じゃないと思っているんです。

 日本は一致して、国会の決議の中で、しっかりと五品目を再生産可能なような形で交渉を進めているという意味では、日本全体がしっかりとまとまっていくことの交渉が大切だ、それが承認されるような形でのものにしなければならない。

 そして、再生産可能というのもちょっとよく定義づけがわからないんですけれども、いろいろな数字はシミュレーションしていると思います。そういう意味では、しっかりと日本が一致して、自由貿易は守るけれども、そこの犠牲に農業がなっちゃいけない、農業もしっかりと日本の食料安保のために必要なんだ、そういう決意を、政務官。

小泉大臣政務官 再生産可能な農業のあり方をつくるというのは、これはTPPに入る入らないは関係ないと思います。

 TPPに入ろうが入るまいが、農業のこれからの見通しというのは決して楽観できない状況があるわけですから、必要な農政改革はやる。そういった状況で、林大臣がリーダーシップをとって、産業競争力会議など、さまざまな連携を通じて、今取り組んでおられると思います。

 TPPにおいて、再生産可能な農業のあり方につないでいけるような形をつくり上げていって、その結果が国会の決議とも整合性を持って、国会で承認を得られるような形に持っていく、これがTPPに当たる者の使命だと思いますので、七月の交渉官会合に向けて、事務方のレベルで可能な限り整理をして、その後閣僚同士で詰め切る部分を可能な限り限定できるような、そんな形に持っていけるように、精力的な努力を続けていきたいと思っております。

村岡委員 国の食料に関して、大変大切なTPPです。ぜひそこはしっかりと交渉事を頑張っていただきたい、こう思います。

 小泉政務官、どうぞ。

 林農林大臣に、TPPで一つだけお聞きしたいんです。

 方程式という中で、四つの項目を置いて、四次方程式。一つ一つを考えれば、別に方程式でも何でもなく、結局、交渉の中で数字をどう決めていくのか、セーフガードをどう決めていくのかということが、四次方程式と難しく言って、交渉事が大変難しいというか、結論がマルかバツかしかないような形の部分では大変な交渉をやっている、こう思っております。

 その中で、林農林大臣は農業分野の責任者でありますから、今の交渉を見ていて、交渉をお聞きして、今のTPP、甘利大臣は全体をやっていますから、農林大臣としては、霧が晴れてきた、こういうふうにお感じになっておりますか。

林国務大臣 日豪は、担当大臣というふうになっておりませんので、農業分野は私のところで、また工業品等は茂木経産大臣のところでやっておりました。

 このときもそうでございましたし、たしか先ほど副大臣からも答弁いたしましたように、就任以来、豪州とは前政権のときからずっとやってきたわけでございまして、霧が晴れるとか晴れないとかというようなことを余り考えたことは実はなくて、こういうものは、一歩一歩積み上げていって、お互い、守るべきところ、攻めるべきところはあるわけでございますから、そういう状況の中で、一歩一歩精力的にやっていくことの積み重ねでしかゴールはない、常にそういうふうに思っております。

 TPPについてもそういうふうに見ておりますので、特にどこかのところで霧が晴れたとか曇ったとか、そういうふうに思って見ているところはございません。

村岡委員 林大臣の御性格のように、慎重にお答えになっていますけれども、でも、農林大臣として関心があるのが、このTPPの中ではやはり一番大きい分野が農業分野だ、こう思っております。

 その意味では、しっかりと頑張られていると思いますけれども、やはり再生産可能かどうかというのは、数字のシミュレーションもありますけれども、農業者や農業関連の人たちの気持ちの部分が再生産を意欲的にやれるかどうかなんです。数字上で全ての経済活動や農業の従事者の人たちがそれを可能だと思うかというと、そこは違うんですね。

 やはり農林大臣が、しっかりと農業を改革していく中で、これからもしっかりと農業が成長分野にいて、この国の大事な産業として成長させていくんだ、その意気込みがなければいけない、私はこう思っているんです。

 ですから、再生産というのは、先ほど聞きましたけれども、シミュレーションにしても何にしても、数字はもちろん必要です。しかし、数字でやるわけではないと思っているんです。農林大臣の大きな、そして力強いメッセージがあることによって、この交渉が国益全体の中で妥結されたときに農業者が本当にやる気になるのかどうかというのは、やはり農業のトップである農林大臣の言葉だと思います。その思いはどうなんでしょうか。

林国務大臣 大変いいお話をいただいた、こういうふうに思っております。

 先ほど、日豪について大筋合意をいたしましたけれども、では、数字としてどういう影響が出るのか出ないのか、これは貿易動向、需給等々でいろいろなことがありますのでなかなか難しい、こういうふうにお答えしておりますが、まさに今委員がおっしゃったように、数字がいろいろ動く中で、やはり生産者の意欲、特に、中長期的に将来に向けての経営をやっていこうという意欲、これが非常に大事なポイントでございますので、そういう意欲が持続できるような総合的な対応、こういうものをやってまいりたいと思っております。

村岡委員 ぜひ、そこが大事だと思いますので、TPP交渉は七月が山場なのか、アメリカの中間選挙が終わってからなのか、それはわかりませんけれども、そこが一番大事だと思っていますので、よろしくお願いしたいと思っております。

 TPPに直接はつながらないですけれども、きょう、前回質問できなかった資料を持ってまいりました。政府の経済財政会議の有識者会議「選択する未来」委員会で、人口減がこの国にとって本当に大変だと。五十年後は一億人を切ってしまう。

 この大きな問題が、では、農業と直接何かというと、今の現実の数字でいくと、農業県ほど非常に人口の減少率が高いわけです。この減少率の高さというのは、農業が衰退していっている、農業では雇用が確保できない、そういう中で、地方で本当に、農業の衰退とともに、農業県人口の減少がある。

 そして、将来的に見た場合に、日本は首都圏に異常に人口が一極集中している、それを分散して国土の均衡ある発展を目指す中でも、農業というのはその中で大きな雇用を生む産業の一つだと思っております。しかしながら、一方、農業を成長産業、農村の所得を倍増しようと考えていくと、大規模化、効率化で、結果的に農業から離れていく人がいて、人口が減っていくという今の現象がさらに加速されるんじゃないかという心配をしている方もたくさん、私も心配はいたしております。

 その中で、新聞記事で、めくって二枚目を見ていただければ、私の秋田県知事が「人口減の原因はコメ」と。

 これは、本当はそういう意味じゃないんですけれども、米の責任にしているわけじゃなくて、米というのが大規模化していく中で非常に効率化していけば、施設園芸だったり六次産業化だったり、いろいろなことをやっていかないと、やはり地方は人口がどんどん減っていくという意味合いで言っているので、ちょっと新聞の書きぶりは違うと思います。

 ただ、現実には、農業を効率化、そして大規模化していくと、日本にとって一番大きな問題の人口減、そして地方が非常に衰退していく、この現状に対して、農業分野だけでないことはわかっていますけれども、林大臣はどうお考えになっているでしょうか。

林国務大臣 日本創成会議が人口減少に関する試算を公表した、多分このことを受けられて、十二日でしょうか、佐竹知事が、秋田県の人口減少問題について意見を述べられたということだと思います。

 今委員もおっしゃっていただいたように、稲作が悪くてという趣旨ではないんじゃないか、こういうふうに私も理解しておりますが、人口減少の要因はさまざまな要素が複合的に絡んでくるので、その中で、農業や米のウエートというものと人口減少の因果関係というのは、なかなか難しいところがあるわけで、これは知事自身も御説明をされておられると思いますけれども、特に、農業産出額の中で、秋田の場合は米の割合が高いということで、危機感を御表現なさったんじゃないかな、こういうふうに思っております。

 農山漁村地域、私の地元もそうですが、高齢化、それから人口減少が都市に先駆けて進行をしておりまして、やはり農業、農村を維持するためにも、地域の共同活動を支援して、地域全体で担い手を支える、そういう意味での多面的機能支払いということをやっていこう、こういうことにしているわけでございます。

 一方で、この間、私の地元で聞いた話で恐縮ですが、一番高齢化が進んでいる大島という、橋がつながったので、島といっても陸続きになったわけですが、ずっと高齢化が進んでおりましたところが、最近、人口が社会増、すなわち転入の方が転出を上回る、こういう現象が起こってきております。

 若い方が、これは農水省も支援しておりますが、六次産業化ということで、ジャムを地元の果樹を使ってつくる、それを、ただ加工にとどまらずに、レストランで使って応援する。こういうことを始めて、そこで雇用が生まれ、それを見て、自分も、全く同じことではないですけれども、そこに住んでやっていきたいという方がネットワーク的に広がっていきまして、結果として、転出を上回る転入、こういうことになっている。

 こういうことも例として出てきておりますので、いろいろな施策を考えていくときにも、こういった新しい動きをどうやって大きくしていくか、こういうことも考えながらやっていくということが大変大事ではないかというふうに考えております。

村岡委員 大臣、ありがとうございます。

 一つ提言なんです。

 例えば、今、自然再生エネルギーというのがありますけれども、北海道から新潟までなどの日本海側の風力発電というのは、今まだぽつぽつとあります。これは、洋上風力を初め風力発電をしっかりと整備することによって、原発五基、六基分だとも試算されています、自然再生エネルギーです。

 ただ、そのときに、電気をつくっても、全くそれが東京や消費地に行かないというのは何かというと、送電線が満杯なんです。

 そういう意味の中であって、農業県というのは、自然再生エネルギーであったり、自然環境を守ることであったり、また農業分野であったり、そういう意味では、農林大臣が提唱して、日本にとって一番大きな問題は人口減、その中で、農林大臣、経済産業大臣、環境大臣、いろいろな形でこの人口減に取り組むというような形で、大臣が先頭に立って、農業という地方の大きな産業の一つでありますから、そういうことをぜひやっていただきたい。

 この人口減は、今から取り組んでも、先ほどの小泉政務官じゃないですけれども、もう遅過ぎるぐらいなんです。今からやらなきゃいけない。そういう意味では、ぜひ農林大臣にそういう提言をして、私は質問を終わりたいと思いますけれども、一言だけお答え願えれば。

林国務大臣 いわゆる少子化対策というのは、女性がキャリアの追求と子育てを両立できるようにしていこう、先ほどの創成会議も、たしか希望出生率だったと思いますが、そういう概念も新しく用いて、やっておられる。

 私の立場で、今まさに委員がおっしゃっていただいたように、地域における活性化には、やはり第一次産業が元気になる。第一次産業が元気になって地域が活性化いたしますと、やはりゆっくりと、地域での生活の中で子育てをするということで、希望出生率というものに近づいていくのではないか、こういうふうに思いますので、そういう観点からも、しっかり取り組んでいきたいというふうに思います。

村岡委員 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、林宙紀君。(発言する者あり)

 質疑中ですので、私語は慎んでください。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀でございます。

 本日は、TPPに関連してということで、ここまでの質疑も聞かせていただきました。

 大体私がお伺いしたいことは、きょうだけじゃなくて、これまでの委員会の中でほぼ網羅されてきておりますし、私は、単純な感想として、関税というところに関して、その他国境措置、こういったところはある程度譲歩していくような方向になってきているのかな、これは完全に個人的な感想でございます。

 私たちはTPPを推進していくということを初めから言って戦ってきている政党ですので、それは全くもって問題がない。それに対してどういうよろいを着せていくのかということを考えてやっておりますが、TPPに関しては、出していただける情報が余りにも少ないということは、非常に難しいなというふうに思いながら審議に臨ませていただいております。

 まず最初に、きょうお伺いしたいのは、TPPに直接というわけではないんですけれども、TPPに関連して、関税率とかそういったところをいろいろ見ていくと、これはどうなんだろうと思うことが細かいところで結構ありましたので、それについてお伺いをしたいなというふうに思っております。

 また漆かと言われるかなと思うんですけれども、これはたまたま漆のところで目についただけなので、許してくださいということでお伺いします。

 先日、漆についてお話をさせていただいたところなんですけれども、漆は輸入物が非常に多い。九七%、年によっては九九%輸入ですよというお話もしました。では、関税はかかっているんですかねというふうに見たら、漆の関税はゼロなんですね。本当にノーガードで入ってきている状態だ。これは、私も、漆を今後振興した方がいいんじゃないでしょうかと言ってみたものの、なかなか厳しい状況に既に置かれているということがわかりました。

 それで、お伺いしたいのは、漆の関税なんですけれども、そもそも初めから関税が設定されていなかったのか、もしくはどこかのタイミングで引き下げられて今ゼロになっているのかということについて、あわせて、関税がゼロになっているというところについての理由、これもお伺いをしたいと思います。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 文献によりますと、十七世紀半ばには中国等から漆が輸入されておりまして、明治末期には既に国内需要量の八割以上、全輸入量の九割以上が中国産の漆によって賄われていたとされております。

 漆の関税率でございますけれども、明治三十年の関税定率法制定当初、施行は明治三十二年の一月でございます、その当時は一〇%でございます。その後、明治三十九年には従量税方式となっております。第二次世界大戦後は昭和二十三年から輸入が再開されておりまして、関税定率法改正によりまして昭和二十六年五月から無税となっております。

 関税率がゼロとなった理由について記述されている資料、文献等、大変恐縮でございますが、見当たらなかったということでございますけれども、当時、既に漆の自給率は三ないし四%でございました。そういったことで、国内における漆器製造業の振興等の観点から、こうした措置がとられたのではないかというふうに考えているところでございます。

林(宙)委員 どうもありがとうございました。

 非常に長きにわたって輸入物で賄っているという部分が大きいんだということを教えていただきました。

 そうしますと、今長官の方から、ゼロにしたときの理由というのは残っていないのでわかりませんということだったので、これは想像するしかないなと思っているんですけれども、要は、初めから輸入物が多くて、それで国内のものを長らく賄ってきたんだというところの背景とあわせて、では、国産の漆というのが、恐らく随分前から輸入物に比べてコストも高いんだろうということはやはり想像ができます。この間お出しした資料でも、既に一九七〇年ぐらいのときから国産漆の価格は非常に高いということも示させていただきました。

 そういう状況を鑑みるに、そうすると、国内で、漆の産業については、ひとまず保護をしていくとか、生産を振興していくとか、そういう意図は少なくともなかったんじゃないのかなというふうに判断ができるんじゃないかなと思っています。

 そうしますと、関税がゼロのものをこれから上げていくなんというのは原則的に無理なことですから、この状況の中で、私も今後どういうふうに振興していったらいいのかなというのを考えていきたいなというふうに思っているんです。

 翻って、今、関税ゼロの漆、これは食用品ではありませんので、そういう意味でも、食料自給率を向上させるとか、そういう大義名分がないですから、なかなか振興が難しいと言われればそうなるかもしれませんが、一方で、農産品に関しては、非常に高い関税をかけられているものもたくさんあるわけですね。

 コンニャクイモ、これなんかもそうだと思います。コンニャクイモは、よく一七〇〇%とか言われますけれども、これは従量税でやっているので、多分計算するとそうなりますよということで、最近は、海外の輸入物のコンニャクイモの価格も高くなっているようですから、その一七〇〇という数字よりは大分下がってきているんだというふうに思っています。

 ただ、コンニャクイモというのは、これも形としては漆の生産とほぼ似ているところがあって、要は、群馬県で九割以上生産しているという、漆の場合は岩手県でほぼ九割以上生産している、何かこんなようなところも似ていて、そうすると、このコンニャクイモに対して高い関税をかけて守っていくというところにどういう理由があるのかなというのを私は聞いておきたいなというふうに思うんです。

 というのは、例えば、今TPPだけの話をすれば、TPP参加国の中で、コンニャクイモというのを生産し、輸出しようという国は今のところありませんというふうに事前のレクチャーで情報をいただきました。プラスして、日常的にコンニャクイモを食べているのは日本だけですというようなことも教えていただきました。

 そうして考えていくと、もちろん国産のコンニャクイモというのを今後も続けていく、これは大変重要なことだと思うんですけれども、一方で、さっき、漆は食用品じゃないので、ちょっと大義名分は立ちにくいですねという話をしましたが、コンニャクイモ、カロリーゼロですよね。コンニャクというのはカロリーが余りないという食品で、ダイエット食品なんかでは非常に人気があります。そうなると、食料自給率というところに余り寄与しないな、そういう意味で類似点があるなと思っただけなんです。

 そういう意味では、やはりコンニャク、群馬県の先生方には非常に関心が高いんじゃないかなと思うんですけれども、ここにどういう理由をつけて今後守っていくのかというのは、私自身、非常に興味があります。

 加えまして、随分前に質問させていただいたんですが、サトウキビの場合は、沖縄ですとか、あちらの方では、やはり台風が来る、そのたびに作物がなぎ倒されてしまうようなところがあるので、サトウキビであればそういったものも乗り切りやすい、そういう理由もあって生産をさせていただいていますというお答えをいただいたんです。

 では、コンニャクイモというのは群馬県じゃなきゃつくれないんですかと聞いたら、いや、決してそんなことはない、ただ、火山灰の農地が、火山灰がたくさん積もっている農地が多かったりして水はけがよいとか、冷涼な気候で非常に向いているというお話でございました。

 私がそのとき思ったのは、仮に、コンニャクイモというのが、これも、農家の方々がどんどん減ってきていて、今後どのようにやっていくのかという問題がある中で、サトウキビと違って、その場所でほかの作物をつくれないというような条件ではないんだろうなというふうに思っているので、場合によっては、これは、国でも、自治体でも、あるいは農協さんに協力していただいて、ほかの作物、付加価値の高いものをつくっていくという手段もあり得るんじゃないのかなと。

 ここまでだあっといろいろなことを申し上げてきましたが、コンニャクイモについて、この関税率が高くなっている理由と、TPP交渉に関しては、仮に、重要五項目にも入っていませんので、この税率を下げるというようなことがあっても対応ができ得るのかどうか、そして、この産地でほかの作物をつくるということも現実的にはあり得るんじゃないのかということについて、国側の御答弁をお願いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、コンニャクでございますが、カロリーがノンカロリーということでありますが、やはり、コンニャクにつきましては、我が国の和食の重要な食材の一つだというふうに考えております。

 コンニャクイモにつきましては、群馬県を初めといたしまして、栃木県といった北関東の畑作地帯で主要な農作物として生産されておりまして、その際、コンニャク製造業と相まって、地域経済における重要な役割を果たしているところでございまして、コンニャクイモの農業生産額は約百十億円というふうに相なっているところでございます。

 先ほど先生の方からお話ありましたけれども、コンニャクイモの輸入品、輸入も若干ふえてきておりまして、コンニャクイモの輸入品と国産品との間には二倍程度の価格差があるわけでございます。特に、平成十九年四月から後発開発途上国に対する枠内税率が無税といったものが適用されて以降、これら諸国からの輸入が増加しておりまして、平成二十年でありますと三百二十九トンの輸入であったものが、二十五年度は六百四十二トンということで、倍増近くふえておるといったようなことになっておるところでございます。その際、輸入数量が一定の割合を超えると税率が高く設定される、数量ベースの特別セーフガードといったものが何回かにわたって発動されるような状況に相なっているところでございます。

 我々といたしましては、やはり、コンニャクイモにつきましては、地域の重要作物といったことに鑑みまして、引き続き関税等の国境措置が必要だというふうに考えているところでございます。

 また、先ほど申し上げましたように、なぜこのように高い税率になっているかということですが、端的に申しますと、先ほど言ったような内外価格差といったことをベースとして決められているところでございます。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 コンニャクイモ、確かに、日本の和食の文化の中では、コンニャクイモというかコンニャクそのものですね、コンニャクというのが非常に大きな位置を占めているというのは、私もそれは理解しているつもりです。

 宮城県の方へ行くと、お隣の山形がメーンなんですけれども、玉コンニャクという、割り箸というか串に刺さったコンニャク、だんごみたいなコンニャクがありまして、これはお子さんのおやつのような位置づけでも非常に人気があるということで、ぜひ今後も、いいコンニャクをつくっていただきたいという気持ちがあった上で質問をさせていただいたということだけは理解をしていただきたいと思います。

 ただ、このような形で、冒頭に言いましたけれども、TPPに関する議論は、情報提供が全くなされない中で、その印象だけで聞いていると、やはりある程度のところはこれは踏み込まれるんだろうなという感覚を抱かざるを得ないなと思いながら聞いております。

 ですので、こういったこともある程度政府の中でも想定しながら、どこまで踏み込まれたら、どのぐらいの措置が、どういう措置が必要なんだ、そういうことを考えていらっしゃると思いますので、それも、ただ関税がなくなって丸裸になるというようなことだけは避けていただきたい、しっかりとしたよろいを着せていただくことを考えていただきたいなというふうに思っています。

 次は、先ほど玉木委員から既に豚肉の関税等々については御質問があったので、一個だけお伺いしたいところを聞かせていただきます。

 玉木委員も触れた記事には、豚肉の関税収入を、将来、生産者に対しての補助金等々に充てましょうというような仕組みの検討を政府が始めたというような書き方だったわけですね。これが本当かどうかというのは、今のところは特にそんな具体的に決まっていないですよというお答えになると思っているのでよいとして、牛肉の場合はこういう仕組みが既にあるということなので、ここを単純に興味で聞かせていただきたいんです。

 牛肉はそういう仕組みがある、一方で、豚肉はそういう仕組みをこれまでとっていなかったという、その辺の理由についてお聞かせください。

佐藤政府参考人 関税収入の関係で申し上げますと、まず牛肉でございますが、これにつきましては、平成三年度の関税率が七〇%だったわけでございますが、これを平成十二年度以降は三八・五%にするということで、かなり税率を低くするといったようなことをウルグアイ・ラウンドのときに決定したわけでございます。

 他方、牛肉ではなく豚肉でございますが、差額関税制度の基礎となります輸入基準価格、要するに、二百円で輸入しても、もっとそこに差額関税を取って、一定の価格以上で入ってくるようにするということで、この場合、平成六年、五百九十七円の輸入基準価格であったわけでございますが、これをウルグアイ・ラウンドにおきましては、平成十二年にはキログラム当たり五百四十六円にするということで、豚肉と牛肉との交渉結果というものが非常に差異がございます。

 牛肉につきましては相当程度畜産経営に与える影響が大きいといったようなことを総合的に勘案しまして、その関税収入につきましては、一部畜産振興に充てるといったような経緯があるところでございます。

林(宙)委員 どうもありがとうございました。

 時間がなくなってきましたので、最後に、TPPに関してというところで、一つだけ質問させていただきたいと思います。

 我が党は、この間というか先月の話ですけれども、野党五党で、いわゆるTPP情報公開促進法案といったものを提出させていただきました。正しくは、国民経済及び国民生活に重大な影響を及ぼすおそれのある通商に係る交渉に関する情報の提供の促進に関する法律案ということで、これはTPPに限った話ではありません。通商において、情報の提供をもっとできるような仕組みを整えてくださいということを野党で出させていただきました。

 最後に、これに関してお伺いしたいなというふうに思うんです。

 TPPの交渉が、少しずつでしょうけれども進んでいく中で、私たちも、言ってみれば、レストランに入っていろいろなメニューの中から食べるものを選ぶという状況ではなくて、そこのレストランはコースが一個しかないんですよ、これを食べますか、食べませんかみたいな状況を、今のままだと、妥結した後に国会で判断するときに、これはマルですか、バツですか、そういう状況を強いられてしまう。

 でも、こういうものなんだと言われればそうなのかもしれませんが、ここまで、賛成派の方も反対派の方も、どちらにしても、国益に対して非常に重大な影響があるというものについて、全くもって少しも情報を提供していただけないというものを、最後の最後でぽんと出されて判断してくださいと言われてもなかなか難しいものがあるでしょうというのは、これは野党だけじゃなくて、与党の先生方もみんな同じ気持ちでいらっしゃると思うんです。

 ということで、改めてこういった法律案を出させていただいたんですが、今後、通商交渉において、国民や国会に情報提供をどうしていくのか。一切、妥結するまで何も言えないんですか、それとも、こういう法律案も出てきたことだし、少しは、出せるものは出していくということになるんでしょうかということを最後にお聞かせいただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 私も、今この場でいろいろなことをお話しできたらどんなに幸せかなということを思いながらお話をさせていただいておるわけでございますが、やはり透明性と保秘性というもの、このはざまでどの国も非常に悩んでいるという状況でございます。

 基本は、正式な署名がなされた後、テキストその他の情報を全て公開するということですけれども、その前に、何らかの形で一定の情報を国民に提供して、そこでコミュニケーションを充実させる、そういう問題意識はどの国も実は持っております。これまでの累次の首席交渉官会合でありますとか閣僚会合でも、そういう話題は何度となくなされました。今回の閣僚会議でも、実はそういう話題が出たということでございまして、まだ結論は出ておりません。皆悩んでいるという状況でございます。

 各国さまざまな取り組みをしております。昨年九月、ワシントンDCで首席交渉官会合があったとき、首席交渉官会合をやるという事実すら公表しないとほかの国が言っていたのを、我が国がかなり強力に主張して、やるという事実は公表する、かつ、細かい中身は言わないけれども、どんな話題で議論されているかということは記者会見をするということで日本は始めまして、ほかの国もそれに倣うようになってきておるわけでございます。

 そうしたことで、いろいろな取り組みを各国でやっておりまして、各国のさまざまな取り組みについて、情報交換をしながらいい知恵を出していこうというのがこの間の閣僚会議でも議論されたというふうに承知しております。

 引き続き、努力をしていきたいというふうに思っております。

林(宙)委員 ありがとうございました。以上で終わります。

坂本委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 TPPについて、最近報道されていることを含めて、きょうは、総論的に確認するという趣旨の質問をしたいと思います。新聞に載っておりますので、大体そのベースレベルはお答えいただくことを期待しての質問でございます。

 まず、交渉方針について、あるいは交渉における共通認識ということでお伺いしたいわけであります。

 交渉方針等についてはどのようにしていくか。つまり、関税撤廃は行わない、これはもう共通認識なんだろうと思います。ただ、関税撤廃は行わないけれども、関税の引き下げについては、セーフガードを発動、あるいは輸入枠の設定、あるいは関税引き下げの期間、そういうことを含めて、四次連立方程式、方程式方式、方程式合意、こういうことでやっていくというふうな報道がされているし、この委員会でもそういう議論がなされてまいりました。ということは、要は、再生産可能と考えられるレベルであれば関税引き下げはあり得る、そういう交渉方針だ、一歩も譲らないというわけではないということですので、そういうことであり得ると理解してよろしいのかどうかというのを確認したいということです。

 あと、その場合には除外等の定義がどうなるか。除外というのは、文字どおり考えれば、私はもともと関税撤廃と関税引き下げを除外するということだと思っておったんですが、最近微妙に議論が変わってきている。つまり、再生産可能なレベルの引き下げであればいいだろう、再生産を維持しながらやるんだ、きょうも議論がたびたびありましたが、そういうふうになっているような気がいたします。これはこれで一つの考え方ではあると思うんですが、そうであれば、除外とか再協議と言わなきゃよかっただけであって、ちょっと微妙に定義が変わってきていると思います。そこの定義との関係をどうお考えになるのか。

 その二点をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 TPPにつきましては、昨年四月に衆参両院の農林水産委員会で、今お話のあった決議、ここに「農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。」こういう決議がございます。

 交渉については、この決議も踏まえて交渉を行っているところでございますが、個別品目でどういうふうに議論しているか、これは中身でございますので、お答えを控えさせていただきたいと思います。

 私は何度も申し上げているところですが、まさに、我が国の仕組みとして、政府間で妥結をしたものは国会で批准をしていただかなければいけない、したがって、批准をしなければ発効しないわけでございますので、逆に言えば、その決議を相手に示しながら、これが最終的に判断する立法府の意思であるということを相手に示しながら交渉することになろうか、こういうふうに思っております。

畑委員 であれば、方程式合意ということがもうマスコミで言われておりますので、これは、関税の引き下げのいろいろなやり方はあるけれども、そこは、再生産可能な形での関税引き下げという方針の交渉はあるし、そういう流れで動いているんですねというのを端的に確認したいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 日米の協議でも、農水委員会の決議は何度となく説明をしております。国会でどんな御議論がされているかということも、繰り返し、大臣からも事務方からも説明をしております。その上で、できること、できないことがあるという前提での協議を行っているということでございます。

畑委員 今のもすれ違いで、お答えいただいていないんです。

 方程式合意の中で、再生産可能なレベルであれば関税引き下げがあり得る、そういう理解でいいんでしょうか。もう一回その点をお答えいただきたいと思います。

澁谷政府参考人 私どもとして、可能な範囲で、市場アクセスの改善、どういうことができるかということについて協議を行っているということでございます。

畑委員 曖昧ですが、要は、こういうことも新聞に載っているわけですよね、方程式合意だと。新聞に載っているレベルのことを、国会で曖昧にして、かわして答えられるというのは、だから情報公開が不十分だと言われると私は思いますよ。

 では、その関係で、ちょっと飛ばしてお伺いしたいと思います。

 この前のシンガポールの閣僚会合で、交渉を妥結させるために何が必要かについて共通の見解を確立したと甘利大臣がおっしゃっておりましたが、それは、どういうところを詰めればいいかということを整理したということとともに、方程式合意も含めた交渉方式についても意味するものだと私は思っておったんですが、そこはいかがでしょうか。

澁谷政府参考人 方程式合意と言われている、パラメーター合意なのか、方程式合意なのか、これは日米の話でございまして、日米の場合はそういうところから詰めていかないとなかなか間合いが狭まらないということだったんですが、ほかの国の市場アクセスの交渉については、必ずしも方程式という形でやらなくても、事務方から詰めていってだんだん閣僚レベルに上げていくという交渉が行われ得るものでございますので、必ずしも、方程式ということについて、十二カ国で共通の認識を得たということではございません。

 先ほど御説明しましたが、交渉を妥結させるために何が必要かについての共通の見解というものは、まず、特に、残る数週間、市場アクセス、それからルールについて事務レベルで徹底的に詰めていく、そういうことをしないと早期妥結がなかなか難しいのではないかということについて共通認識を得たということでございます。

畑委員 方程式合意について、日米ということでありましたので、ちょっとさかのぼってお伺いしたいと思います。

 日米合意の中では、方程式合意、やり方のパッケージについては共通の認識を持ったということだと理解しておりますが、最近、報道ベースで見ると、米国はこれについて蒸し返し始めたというか、そういうふうな報道を見たこともあります。

 要は、方程式合意でも、米国の求めるハイレベルの、関税の撤廃に近い形にはなり得ないというか、こんなもので妥結しちゃとんでもないということで、アメリカで地元のいろいろな業界団体から言われて、ちょっとアメリカの態度が微妙に変わっている部分もあるというふうな報道もあったんですが、そこの事実はいかがでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 四月の首脳会談の後、日米の事務レベルの協議というものは行われておりませんでした。シンガポールに参りまして、甘利大臣、フロマン代表が一時間ほど会談を行いまして、その後、私どもの大江代理とカトラー次席との間で数時間ほど事務レベルの協議が行われました。この時点で、きのうの報道ですか、例えばセーフガードは認めない、したがって方程式合意が崩れたと一部報道でなされていましたが、そういったようなことが相手方から出てきたという事実はございません。

 来週の木曜日からワシントンで事務レベルの協議が本格的に再開することになると思いますが、そこはしっかりと交渉していきたいというふうに思っております。

畑委員 しっかり交渉していただきたいと思います。

 きょう何回も議論がありましたが、米国との交渉というのが、米国がTPA法案の交渉権限をとらずに大統領というか行政が交渉していますので、米国として後で修正されないように、大幅な妥協を日本からかち取る形でしか決定できないのが今の実情だと思います。

 しかし、もちろん日本はそれに乗せられる必要はなくて、それに乗せられると、日本としては国益上よくないということで、禍根を残すということになります。

 私自身は、TPPを妥結しようとして、日豪EPAを出発点としてという形でやっているようですが、そこからかなりずるずる譲歩させられると、これは大変愚かなことだと思っています。

 米国が、日豪EPAの内容さえのめないのであれば、多分そこが出発点だから、そこから上を求めているというのが報道ベースですけれども、これを最大限の譲歩として、TPPは国益に合わないということで、頓挫、漂流をさせてもいいんだろうと思っています。きょうも議論がありましたが、そろそろそういう時期が来ているのではないかと思います。

 そういうことを述べた上で、結局は、TPPの妥結の時期の目標、どのようなところに妥結の目標を置いているのか、そのことをお伺いしたいとともに、この前のシンガポールの閣僚会合で、これも報道ベースですが、妥結時期の目標を示したかったけれども示せなかった、そこまで至らなかったという議論もあったやに聞いておりますが、会合で妥結目標の時期が示されなかったのはなぜなのか、この二点をお伺いしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 二月の閣僚会議の時点でも、甘利大臣は、事務方での議論の間合いが詰まっていなければ閣僚会議を開くべきではないということをかなり強くお話をされまして、何人かの大臣がそれに賛同をされた。したがって、二月の時点では次の閣僚会議の時期は設定されなかったわけです。

 その後、日米の協議にかなり時間を割いていたということもあったのかもしれませんが、その間、ほかのルールの分野でありますとか、日米以外の国同士の協議というものは、すごく進展したという形ではないのが実態でございます。

 そうした中で、日米も一定の進展を見たということで、この時期に一度集まって進捗状況の確認をしようというのが今回の閣僚会議だったと承知しております。

 その中で、二月から、もっと言うと、十月から甘利大臣が主張していたように、事務方の間合いが詰まるまでは閣僚会議というものを設定するべきではないということについてかなりの共通の認識が得られたということで、分科会ごとにいろいろな目標を設定しておりますけれども、六月中はいろいろ事務ベースで議論をして、七月に首席交渉官会合で、どれだけ間合いが詰まったかということの詰めを行う。したがって、その七月の時点で間合いが詰まっていれば閣僚会議を開くという可能性はありますし、間合いが詰まっていないとそこからまた時間がかかる、そういう意味で、七月が山場だということでございます。

 甘利大臣、霧が晴れて道筋が見えたということですが、道筋は、まだ七月の首席交渉官会合の道筋までしか見えていないという状況でございます。

畑委員 仕事の仕方として、私はそのようなのはどうかと思いますね。つまり、普通、仕事というのは尻を切ってやるものであって、事務的に詰めていって、その結果を見てということだと、これは、TPPを推進したい方にとっても漂流するおそれが出てくるんじゃないでしょうか。

 結局、きょうの議論を聞いても、今までの議論を聞いていても明らかなわけです、どこが山かというのは。夏ぐらいに決められれば、そこで決めればいいしとか、国益を踏まえた上で決めればいいということなんでしょう。ただ、そこで決まらなければ、米国の中間選挙の関係がありますから、その選挙の後、米国にTPA、しっかり交渉権限をとってもらって、その後にしっかり腰を据えて交渉しましょうということになると、大体見えるわけですよね。結局、目標というのはこの二つの時点のどっちかということになってくるのだろうと思います。

 一つお伺いしたいのは、米国の交渉権限をもらう法律、TPA法をしっかりと米国国内でとってもらった後に交渉した方がいいんじゃないかというふうな議論もあるのですが、そこはどのような認識でお考えでしょうか。

澁谷政府参考人 最終妥結に向けた、ここで妥結しようという目標を設定しているのは事実でございますが、ただ、早期妥結に向けて努力するということについての共通認識は得られているわけでございまして、何度もお話をさせていただいておりますが、六月中に徹底的な詰めを行う、その上で、七月、これはやってみなければわからないということではなくて、できるだけ間合いを詰めるべく、首席交渉官会合までに間合いを詰めるということの共通の認識が得られたということでございます。

 その上で、先ほどからお話ししておりますように、甘利大臣は、早期に妥結をするのであれば、お互いのセンシティビティーというものを相当程度認め合わなきゃいけないではないか、そういうことで、これはかなりの国の賛同を得たわけでございます。

 そこは長期間になってもいいんだということになると、またその辺の認識が変わってくるということもございますので、そこは私どもとしては、期限は決めないまでも、早期に妥結するというモメンタムを維持しながら、センシティビティーをきちんと主張して、国益を守りつつ、最善の道を歩んでいくというのがこれまでの交渉方針で、これは変わらないということでございます。

畑委員 そうであれば、夏のこの七月が大きな山だ、その山でうまくいけばいいし、うまくいかなくても、引き続き、中間選挙後ということにとらわれずに、交渉を鋭意進めていくという答弁の理解だと思いました。あくまで国益がしっかり確保されるという形でどうやっていくかというところだろうと思いますが、その状況を見守りたいと思います。

 先ほど、情報公開についての議論が林議員からもございまして、隔靴掻痒の感がしておるのは、やはり情報公開なわけです。

 これまで、国会決議で情報公開が出されていて、しかし、答弁とかこの議論の中でなかなか出していただけないのは、守秘義務があるとか、そこが大きなことなんだろうと思います。

 守秘義務があるのであれば、これは、情報公開の法律に、秘密会とか、あるいは、漏らした場合の懲罰、守秘義務、そういうのを設けた上で、情報を秘密会で開示した上で議論するということがあってもいいのではないかと私は思っております。

 そういう形で、先ほど野党で出したということを申し上げましたが、通商交渉に関する情報提供の促進に関する法律というのを出しております。これは、民主党、生活の党、結い、みんな、社民という形で、TPPの推進についてはいろいろ考えが分かれる党派であります。ただ、TPP推進、反対はともかく、これはおいておいても、情報公開が足りないということは、全党派、認識が一致していると私は思っております。

 これは内閣委員会に出されておりますけれども、そういうことを工夫しながら、情報を出せるようなことを考えるべきじゃないか、そろそろそういう時期ではないかなと思っております。

 実は、情報公開のひな形、契約の条項のひな形、去年のいろいろな委員会等でお示ししたことがあるんですが、ニュージーランドの担当省のホームページに載っているものを見ると、情報は出しちゃいかぬと言っているわけじゃないんです。情報を出していいけれども、守秘義務なり、そこは秘密保持をしっかりしなさいということであって、そして、政府以外の人間で政府が行う国内協議プロセスに参加する者とか、交渉情報を検討する必要がある者はもらっていいよと言っているわけです。

 だから、この秘密保持契約においても、全面的に禁止されているわけじゃなくて、そこは、その必要性及び必要性がある方に対してどうやって秘密が担保されるか、ここの二点がクリアされれば出せる余地があるわけですよ。そういうことを踏まえて、今回の野党統一案は立案された法律であります。

 単に出せというのじゃなくて、いろいろな秘密保持のことを鑑みながら、しっかりと絡めながら、その法律でそういうことをしっかり規定して、出せるような、議論できるようなことを国会でやるべきだと思うんですが、これは議員立法の法律ではありますけれども、そこの認識というのを大臣から伺ってもいいでしょうか。

林国務大臣 先ほど澁谷審議官から、いろいろ工夫をしながら、また、我が国が主張して、どういう会議をやっているかということを会見する、いろいろな努力を行ってきたところでございまして、まさに、対策本部のもとで、政府一体となって、なるべく工夫をしながら、可能な限り情報提供をしていこう、こういうことでやってまいっておりますし、これからもそういうふうにしていかなければならないと思っております。

 法案については、今まさに委員がおっしゃっていただきました、これは議員立法でございますので、国会でその取り扱いについて御議論されるもの、こういうふうに考えております。

畑委員 そういうお答えになろうと思いましたが、であれば、ぜひとも、心ある与党の皆様、内閣委員会に出されておりますので、つるさずにしっかり議論していただく、このことが、自民党内の議論及び国会の決議を忠実に踏まえたことになると私は思っております。

 そのことだけを申し上げて、本日は、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

坂本委員長 次回は、来る二十七日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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