衆議院

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第17号 平成26年5月27日(火曜日)

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平成二十六年五月二十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 森山  裕君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      青山 周平君    井野 俊郎君

      池田 道孝君    小里 泰弘君

      鬼木  誠君    加藤 寛治君

      勝沼 栄明君    金子万寿夫君

      川田  隆君    菅家 一郎君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      鈴木 憲和君    武井 俊輔君

      武部  新君    津島  淳君

      中川 郁子君    橋本 英教君

      福山  守君    堀井  学君

      前田 一男君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      後藤  斎君    玉木雄一郎君

      寺島 義幸君    鷲尾英一郎君

      岩永 裕貴君    鈴木 義弘君

      村上 政俊君    稲津  久君

      樋口 尚也君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   復興副大臣        浜田 昌良君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   文部科学副大臣      櫻田 義孝君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   法務大臣政務官      平口  洋君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   経済産業大臣政務官    磯崎 仁彦君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            遠藤 俊英君

   政府参考人

   (文化庁文化財部長)   山下 和茂君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       新村 和哉君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            山下 正行君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           雨宮 宏司君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沼田 正俊君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     寺澤 達也君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           河村 延樹君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 奥主 喜美君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     勝沼 栄明君

  中川 郁子君     鬼木  誠君

  堀井  学君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     堀井  学君

  鬼木  誠君     前田 一男君

  勝沼 栄明君     武部  新君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     中川 郁子君

    ―――――――――――――

五月二十六日

 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)(参議院送付)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省食料産業局長山下正行君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君、農林水産技術会議事務局長雨宮宏司君、林野庁長官沼田正俊君、金融庁総務企画局審議官遠藤俊英君、文化庁文化財部長山下和茂君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長新村和哉君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官寺澤達也君、大臣官房審議官河村延樹君及び環境省大臣官房審議官奥主喜美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福山守君。

福山委員 おはようございます。自由民主党の福山守でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、農業改革についてお伺いをいたしたいと思います。

 去る五月十四日に、規制改革会議農業ワーキング・グループが提言した農業改革に関する意見に盛り込まれた農業協同組合の見直しは、中央会制度の廃止や全農の株式会社化、信用、共済事業の代理業化など、地域農業を支えてきたJAグループの歴史と役割を無視した、協同理念や組合員の意思、経営・事業の実態とかけ離れた一方的なものであり、今後の地域農業の振興にとって極めて大きな問題となる内容であります。

 一体、誰のための改革なのか。農業者、地域のための農業改革は、地域農業の構造問題に対応した、組合員の意思による組合の自己改革を基本としたものであるべきであります。

 基本を忘れ、現場の実態を無視した改革は許されない。農業は、産業政策だけでなく、地域政策としても考えるべきであります。懸命に営農に励む担い手を中心とした農業者の混乱と先行き不安を募らせ、生産意欲を喪失させてはいけないと思います。

 五月二十二日には、規制改革会議で農協改革案が取りまとめられましたが、なぜこうした結論になるのか、理由がはっきりしない。地域の実態が十分踏まえられているのか、懸念であります。

 また、規制改革会議の案は、政府として決定されたものではないにもかかわらず、あたかも決定したことのように報道されたことから、現場の不安が先行し、前向きの改革議論がしにくくなっております。

 今後、政府においては、現場の声を十分に踏まえ、地に足のついた、真に農業者の役に立つ改革を進めていただきたいと考えておりますが、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

林国務大臣 農協は、農業者の協同組織であります。担い手農業者のニーズに的確に応えて、農産物の販売、資材の購入、こういったものを適切に行って、農業者の所得を向上させて、地域農業を発展させていく、これがやはり何よりも重要だと考えております。

 したがって、農産物販売等に最重点を置いて積極的に農協が取り組むためにどうしたらよいか、それから、それぞれの農協がみずからの創意工夫で経済事業を展開するにはどうしたらよいか、その際に、農協をサポートする連合会、中央会をどうしたらよいか、こういったことを真剣に検討していく必要があると考えております。

 今、福山委員がおっしゃった、規制改革会議が二十二日に農業改革に関する意見ということで取りまとめられたということは承知しておりますが、農林水産省としては、今後、与党と協議をしながら、農業者、特に担い手農業者から評価をされて、農業の成長産業化に資する改革案を早急に検討したい、こういうふうに考えております。

福山委員 時間の関係上、後でまとめて私の意見を述べさせていただきたいと思っております。

 続きまして、風評被害の件について入っていきたいと思います。

 風評被害の意味を大辞林で調べますと、事故や事件の後、根拠のないうわさや臆測などで発生する経済的被害とあります。

 かつて、一九九六年、堺市で学校給食による学童のO157集団感染により死者三名が発生した事件で、原因食材としてかいわれ大根が疑われるという厚生省の中間発表がありました。これにより、かいわれ業界が壊滅的な打撃を受けたことは皆様御存じのとおりでございます。中には、自殺する農家の方もおりました。

 さらに、二〇〇一年に発生したBSE問題は、牛肉、枝肉相場を下げ続け、九月に千百三十円であったものが、十月には四百七十二円にまで暴落してしまった。また、その後、牛肉の安全性は一〇〇%に近い形で確保され、マスコミも牛肉の安全宣言を出しました。しかし、牛肉の消費は回復せず、さまざまな方法で牛肉の安全性を強調すればするほど、消費は回復しないという皮肉な結果であったわけでございます。打つべき手は全て打ったにもかかわらず、牛肉に対する消費者の不安はおさまらず、日本国内の牛関係の畜産農家は壊滅的な打撃を受けた。BSE関連の被害総額は四千億を超えるとも言われております。

 一九九九年のテレビニュース番組で、埼玉県所沢の野菜に、ホウレンソウですけれども、付着するダイオキシン濃度が高いとの調査結果を放送したところ、埼玉県の野菜が大暴落してしまいました。また、消費者の不安感をあおるところとなり、所沢産だけでなく、埼玉産の野菜全体が入荷停止や販売停止となって、価格の大暴落が起こってしまいました。

 さて、私が何を言いたいかと申しますと、当然、福島の問題でございます。今、福島県の農林水産物に対する風評被害は、徐々にではありますけれども、払拭される状況には来ていたと私は思っております。

 かかる状況のもと、漫画「美味しんぼ」というのがございます。この漫画「美味しんぼ」で、東京電力、第一原発を訪れた主人公らが鼻血を出すなどの描写の部分がございました。福島取材で鼻血、もう福島には住めないと世間にショックと不安を与え、問題が大きな社会問題となると、議論のきっかけになればと逃げる無責任きわまりない著者、科学的根拠のないデマによる実害は、非常に大きなものがあると私は思っております。

 漫画「美味しんぼ」の描写の問題を受けて、復興途上にある福島県の農林水産物に対する風評被害が再燃することを強く懸念しております。この掲載内容についての政府の見解をまず伺いたい。それと、この風評被害に対する農林水産省の対応も伺いたいと思います。

林国務大臣 これは、この間のこの委員会でも議論になったところでございますが、「美味しんぼ」における描写の内容の個別具体的なことについては、私から論評することは差し控えたいと思っております。

 風評被害の払拭について、科学的な見地に基づいて、正確でわかりやすい情報提供、それから丁寧な説明を行うことが何よりも重要であると考えておりまして、食品中の放射性物質の検査結果、それから農林水産現場での取り組み等を関係省庁等と連携して幅広く発信しているところであります。

 それから、平成二十五年度の補正予算において、福島県が行う福島県産農産物等の消費拡大の取り組み、これに対して補助金十六億円を確保いたしまして、支援をするとともに、「食べて応援しよう!」、こういうキャンペーンを関係団体、関係府省庁と連携して推進をしておりますし、農水省の食堂でも何回かこのキャンペーンをやったところでございます。

 今後とも、こうした地道な取り組みの積み重ねによって消費者の信頼を確保するとともに、関係府省庁と連携して、政府一体となって風評被害の払拭に取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。

浜田副大臣 ただいま農水大臣からも御答弁がございましたように、御指摘の漫画「美味しんぼ」の描写そのものについては、政府としてはコメントは差し控えたいと思いますが、既に環境省から、被曝と鼻血等の症状との関係、瓦れきの広域処理、除染については、それぞれ見解を公表しております。

 復興庁といたしましても、復興大臣のもと、農水省を初め関係省庁から成ります風評被害タスクフォースを開催いたしまして、被災地産品の放射性物質検査体制の構築等の支援、環境中の放射線量の把握と公表、リスクコミュニケーションの強化、風評被害を受けた産業への支援などを行うとともに、これらの取り組みの進捗管理や課題の洗い出しを行い、風評被害対策の推進に取り組んでおります。

 福島の方々が復興に向けて懸命な努力を続けておられる中、引き続き、客観的事実、科学的知見に基づく正確な知識や情報をしっかり伝えていく、このことが何よりも重要と認識しております。

福山委員 今御答弁をいただきましたけれども、まだまだ言い足りない部分がありますので、先に私の質問が終わってから、先ほど言いましたように、これもコメントをさせていただきたいと思っております。

 続きまして、六次産業化の推進及び海外戦略についてお伺いをいたしたいと思います。

 アベノミクスの第一、第二の矢は放たれ、その効果もあり、株価、経済成長率、企業業績、雇用など、多くの経済指標は著しい改善を見せております。また、アベノミクスの三本目の矢が来月にも発表され、その効果も期待されるところでもあります。企業の業績改善は、雇用の拡大や所得の上昇につながり、さらなる消費の増加をもたらすことが期待をされております。こうした経済の好循環を実現し、景気回復の実感が全国に届きつつあります。

 安倍首相は、若者が希望を持って働きたいと思える強い農業をつくり上げると表明、生産から加工、流通までを担う六次産業化市場を現在の一兆円から十年間で十兆円に拡大したいとし、農業、農村全体の所得を十年間で倍増させる目標を掲げました。アベノミクスの成長戦略として、農業の六次産業化市場を現在の一兆円規模から十年間で十兆円に拡大したいとしていることは、農業の構造転換が新たな成長を生み出す可能性を持っていることをあらわしております。

 六次産業化は、農林水産業や畜産業の生産を担う第一次産業、食品加工の第二次産業、流通や販売という第三次産業、それらを統合することによって農業の生産性と競争力を高めようということであります。六次産業化に取り組む人材の確保と、付加価値の高い商品開発による農林水産業の成長産業化の実現が必要であります。

 六次産業化による新たな産業の創出を図るためには、農、工、商に通じた人材の確保が求められておりますが、人材育成のための一貫したキャリアシステムが不足している現在、六次産業化の取り組みを進めるために、マーケティングやブランディングなどのノウハウを有する人材を育成すべきではないでしょうか。

 また、六次産業化を進めるためには、新商品を開発するための加工施設などの整備が必要であり、そのために措置されている六次産業化ネットワーク交付金といった施設整備の予算を増額すべきではないかと思います。

 日本国内の産地が一丸となって輸出に取り組める環境や体制を整備し、国際競争力のある農林水産業を実現する必要があると思います。

 六次産業化した商品や生鮮食品を海外に向けて発信し、ジャパン・ブランドとして大きく育てるには戦略的数値目標が必要と考えますが、農林水産物、食品の輸出戦略はどのようになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。

山下(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず初めに、人材育成の関係でございますけれども、六次産業化の取り組みに当たりましては、農林漁業者等の知識や経験だけで取り組むことは限界があることから、先生御指摘のとおり、経営、加工、販売など多様な分野の専門家が農林漁業者等に対してアドバイスするような、継続的な取り組みが重要であると考えております。

 このため、都道府県段階に六次産業化サポート機関を設置しまして、約一千人の六次産業化プランナーが、案件の発掘から事業計画の策定、販売戦略などきめ細かな支援を行う体制を整備しているところでございます。

 さらにまた、これらのプランナーが十分に機能するものとなるよう、平成二十五年から、農林漁業成長産業化支援機構、いわゆるA―FIVEでございますけれども、そこに六次産業化中央サポートセンターを設置いたしまして、マーケティングですとかブランディングなどにつきまして、特に高度な専門性を有するプランナー、これは約五百人でございますけれども、こういった五百人の方を派遣できる体制を整備するとともに、また、研修を通じて、六次産業化プランナー全体のレベルの向上に努めているところでございます。

 このような取り組みを通じまして、農林漁業者のマーケティング等の能力の向上を支援してまいりたいと考えております。

 それから、六次産業化の取り組みを進めるための補助といいますか、施設整備の関係でございますが、御指摘のように、六次産業化の取り組みを進めるためには、農林漁業者自身が新商品の開発をするための加工施設等を保有し、安定的に加工や販売に取り組めるようにすることが必要だと考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、平成二十六年度予算においても、六次産業化ネットワーク活動交付金を措置し、農林漁業者が地域の多様な事業者と連携して行う、六次産業化の取り組みに必要な加工施設等の整備を支援しているところでございます。

 平成二十七年度予算に向けましては、本交付金の取り扱いにつきまして、夏の概算要求に向けて具体化していくことになるわけでございますけれども、地域のニーズを把握して、六次産業化の取り組みが円滑に進められるよう、検討してまいりたいと考えております。

 それから、最後に、先生の方から輸出戦略についてのお尋ねがございました。

 まさに、今後、拡大する世界の食市場に取り組んでいくことが必要だと考えておりまして、このために、品目ごとに数値目標を定めて取り組むことが重要であると考えておりますので、重点品目ごとに目標額、重点地域を定めた国別・品目別輸出戦略を昨年八月に策定、公表したところでございます。

 例えば、青果物で申し上げますと、台湾に加え、東南アジア等の新興市場の戦略的な開拓や、卸売市場の活用など周年供給体制の確立などによりまして、現在八十億円規模のものを二〇二〇年までに二百五十億円規模にする。さらに、加工食品につきましては、輸出できる加工食品の種類を拡大するために、輸出環境整備に加えまして、日本食文化の普及や、日本の食文化、食産業の海外展開の積極的な推進を通じまして、千三百億円規模のものを五千億円規模にする、要は、意欲的な目標を立てて取り組んでいるところでございます。

 今後は、オール・ジャパンの輸出戦略の司令塔を設置しまして、輸出実績や取り組みの検証を行いまして、輸出戦略を速やかに実行に移して、日本食文化の普及や輸出環境の整備などを進めることによりまして、農林水産物、食品の輸出の一兆円目標に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

福山委員 時間がもうなくなりましたので、簡単に言わせていただきます。

 農業改革についてでございますけれども、ワーキング・グループが十二回この会をやったと私は聞いております。その十二回の会をやった中で、たしか、農林水産省の方が行って説明したのは、一回だけだと私は聞いております。

 農業の本当に基本的なことから含めて、机上の空論で操作するのでなしに、やはり現場の皆様の声をしっかりと聞いた会議の中で改革は進めるべきだと私は思っております。この点は強く、この農林水産委員会の皆様は多分そういう気持ちの方がたくさんおいでになろうと思いますので、そのあたりはよろしくお願いいたしたいと思っております。

 そしてまた、風評被害につきましては、これは本当に大変な被害でございます。きょうちょっと配らせていただきましたけれども、福島県庁と双葉町のこの形だけ流させていただいておりますけれども、あと、たくさん意見があります。だから、こういうことについて、政府は非常に答弁しにくいと思いますけれども、この問題につきまして、今後、風評被害というのは慎重に取り扱い、そして、本当にその地域の人が安心、安全な形というものをしっかりPRできるように、これからも御指導、御教授、よろしくお願いいたしたいと思います。

 時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。

坂本委員長 次に、樋口尚也君。

樋口委員 おはようございます。公明党の樋口尚也でございます。

 先々週の五月十四日に、本委員会で商品先物市場の活性化と総合取引所についてやらせていただきました。きょうも、引き続きやらせていただきたいと思います。

 農水省と金融庁に質問をしたところでございますが、この商品先物市場については農水省と経産省の共管ということで、本日は経産省にもお伺いをしてまいりたいと思います。

 この十年間で、世界的な拡大の流れ、六倍とは対照的に、我が国の商品先物取引は五分の一に衰退をしております。国内の商品取引所は現在、東京商品取引所、TOCOMと大阪堂島商品取引所の二カ所となっております。

 前回の委員会では、昨年二月の東京穀物商品取引所の解散の経緯を伺いましたが、農産物の移管を受けた後のTOCOM自体の流動性の低下、市場減少に歯どめがかからず、経営的にも、TOCOMさんは六期連続の営業赤字だというふうに聞いております。

 経産省には、我が国の商品先物市場がここまで衰退してしまったことに対して、監督官庁としての責任があると思いますが、こういった事態に陥った原因、現状認識そして今後の対応についてお答えください。

磯崎大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 今、樋口委員の方からお話がありましたとおり、商品先物の取引高、これは平成十五年度がピークになっておりまして、そのときに比べて、今は、先ほど五分の一というお話がありましたが、五分の一から四分の一に取引高が減少しているというのが現状でございます。

 この要因としましては、いろいろ、お客様からの苦情といいますか、そういったものがたくさん発生をしたということで、平成十六年に商品先物取引法改正で再勧誘の禁止等が行われておりますけれども、その後も、平成十八年、平成二十一年と累次の規制強化が行われているということによりまして、取引参加者が減少したということかと思います。

 一旦、取引参加者が減少しますと、その取引市場の流動性というのが低下をして、さらに参加者が減少していく、そういう悪循環が発生をしたことによって、この取引高が非常に減少しているというのが現状かと思います。

 これにつきまして、まず商品先物市場でございますけれども、やはり効果としましては、事業者が、価格変動のリスク、これをヘッジする、その場であるという意味を持っておりますし、また、適正な価格形成の場であるということもございますので、やはり産業インフラとして非常に重要な役割を持つのがこの商品市場であるというふうな認識を持っております。

 こういう市場でございますので、信頼性を向上していくためには、検査をきちんと行っていく、あるいは監督をきちんと行っていく、そういったことを厳正に取り組んでいくことはもちろんでございますが、市場活性化をしていくということも必要でございますので、経産省としましても、さまざまな環境整備に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 具体的には、やはり、国内だけではなくて、海外からの投資をどう促進していくのかという観点、それから二点目には、事業者が円滑にリスクヘッジを行っていくためには、会計制度も整備をしていくということがございますので、これも今行っているところでございます。

 さらに言えば、個人投資家の投資を促進していくためには、例えば、証券の方でマイナスが出て商品の方でプラスが出る、これは、今は別々にしか税法上の取り扱いができないということでございますが、それを合算して、プラスマイナスを相殺していくといったような税制上の整備でありますとか、あるいは、冒頭、規制が行われておりました勧誘規制、これを合理化していくといったような検討を進めまして、今後、さらに取り組みを強化してまいりたいというふうに思っております。

樋口委員 磯崎政務官、ありがとうございます。ちょっとおつき合いをいただきたいと思います。

 次は、農水省さんに伺います。

 今、規制の合理化の話がございましたけれども、先々週も伺いました、産業インフラである商品先物市場の活性化のためには、市場の信頼性の確保が重要であることは指摘をさせていただいたとおりでございます。国会の審議、附帯決議を踏まえて導入された不招請勧誘の禁止を省令の改正によって事実上解禁をして、個人投資家による取引の活性化を目指すということは、市場の信頼性の確保という観点から、根本的な解決になっていないというふうに考えているところであります。

 前回の委員会で、消費者委員会の意見やパブリックコメントの意見を踏まえて、三省間、農水省、経産省、消費者庁で意見交換を行い、規制の見直しを実施していく、こういう旨の答弁がありましたけれども、前回の委員会の後、三省間の協議は行われたのでしょうか。行われたのであれば、どのような内容であったのか。また、行われていないのであれば、いつ行う見込みなのか。さらに、その協議を踏まえて、農水省さんはどのように対応していくのか。お答えをお願いします。

山下(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 この問題につきましては、前回も、パブリックコメントの募集が終了した後を受けて、引き続き内容を整理しているということで申し上げました。

 また、三省との間で今意見交換を行っているということで、今後のあり方につきましても、三省でしっかりと意見交換を行っているところでございます。

 具体的な点について申し上げますと、今後、勧誘する際に、顧客の十分な理解があることを確認する、そういう確認に用いる理解度の確認書面といいますか、そういったものの実効性を担保することが重要でございまして、それについて、具体的な内容について、今後検討していく予定でございます。

樋口委員 まだやられていないということだというふうに理解をいたしましたけれども、しっかりとまたお進めいただけるようにお願いをしたいと思います。

 そもそも、私は個人投資家を中心とした現在の商品先物市場の構造が問題であるというふうに思っているわけであります。むしろ、先ほど政務官からもお話がありました外国人の投資家や、そして機関投資家、この参入の拡大を目指し、個人投資家を中心とした市場構造から、現物を扱う事業者、いわゆる当業者、外国人投資家、機関投資家等のプロのリスクヘッジャーやリスクテーカーを中心とした市場構造に転換することが商品先物市場の活性化に向けた方策の王道である、このように考えるところであります。

 こうした外国人投資家や機関投資家といった大型のプレーヤーの参入を目指すためには、市場取引の清算や決済を行う清算機関の信用力の向上が不可欠であります。世界的な金融危機の教訓からも、市場取引のインフラとして、市場取引参加者同士のリスク遮断を行う清算機関の役割の重要性が強く認識されているところでございます。

 こうした中で、世界各国の証券監督当局や取引所等から構成されている国際的な機関である証券監督者国際機構、IOSCOと国際決済銀行は、平成二十四年の四月に、清算機関といった金融市場のインフラとなる組織の満たすべき国際基準として、金融市場インフラのための原則、いわゆるFMI原則を策定、公表いたしました。

 TOCOMの取引の清算を行う日本商品清算機構、JCCHは、受取利息で経常黒字にはなっているものの、設立以来、九期連続営業赤字であります。各国の取引所の清算機関の質は、このFMI原則に照らして評価されるようになっており、営業赤字となっているJCCHの評価は必ずしも高くはないというふうに聞きます。

 市場構造の転換の必要性、また清算機関の機能の強化の重要性については、産業構造審議会における平成十九年の中間報告においても指摘をされているところですが、農水省や経産省は、これまで、市場構造の転換、そして清算機関の機能強化に向けて、どのような取り組みを行い、どのような成果を上げたのか。農水省、経産省、それぞれお答えをお願いします。

山下(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、JCCHは、日本唯一の商品取引清算機関として、商品先物取引法に基づく主務大臣の許可を得て、清算業務を行っているところでございます。

 このJCCHにつきましては、これまで、財務基盤やリスク管理機能の強化、取引参加者の財務資格要件の見直し等の取り組みを進めてきておりまして、こうした取り組みの結果、取引参加者の破綻により、その損失が同社や他の取引参加者に影響した事例はなく、同社の清算業務は信頼性を有しているものと考えているところでございます。

 また、先ほど先生の方から言及がございましたIOSCOでございますけれども、国際的には、IOSCOにつきまして、平成二十四年四月に公表した金融市場インフラのための原則、こういったものにJCCHが適合するように、同社において清算預託金の見直しの検討など、財務基盤やリスク管理機能の一層の強化に向けた取り組みが進められているところでございます。

 農林水産省といたしましては、同社の清算業務が適切に遂行され、商品先物市場における取引の安定が確保されるよう、経済産業省としっかり連携しながら、今後も指導監督を行ってまいりたいと考えております。

磯崎大臣政務官 お答えさせていただきたいと思います。

 今、委員の方から、個人の方から機関投資家、外国人という、そういう構造上の変化というお話がございましたけれども、先ほど申し上げましたように、商品取引におきましては、適正な価格を形成する、そしてリスクヘッジを行うという非常に大きな役割を果たしておりますので、やはり多様な市場参加者が商品取引に参加をしていくということが必要だろうというふうに思っております。

 そういった意味では、今現在におきましても、個人投資家が全体の三割を占めるという状況でございますので、やはり、個人投資家も含めて、多様な参加者をどう推進していくかということが課題だというふうに思っております。

 個人投資家につきましては、やはり投資家保護ということに留意をしながら、個人の顧客の拡大も図っていく必要があるというふうに思っております。それとともに、外国取引所との連携をしながら、外国人の投資家のさらなる取り組みを図っていく。

 あるいは、金融商品取引業者の商品先物へのさらなる参入も促進をしていかなければいけないなというふうに思っておりますし、新たなプレーヤーとしましては、今後、私どもとしましては、電力先物でありますとかLNGの先物、こういったところに、電力会社、ガス会社あるいはエネルギー企業など、新たな事業者の参入ということもこれから図っていく必要があるかなというふうに思っております。

 それとともに、清算機関の機能強化につきましては、今後とも、いろいろな方面で機能強化を図っていく必要があるというふうに認識をしております。

樋口委員 今後の中国やほかのアジア諸国のさらなる経済成長が見込まれる中、アジアにおけるコモディティーの需要拡大は必至であります。

 香港の取引所が、百三十年の歴史を持ち、銅や亜鉛といった非鉄金属の取引の中心であるロンドン金属取引所を買収した話は、先回申し上げました。さらに、中国本土に目を向けると、上海、大連、鄭州の商品取引所の出来高は増加をしております。現在は、中国の国内市場、海外の企業や個人の自由な取引が制限されており、海外に開かれていない国内向けの市場でありますけれども、今後の大きな方向性として、中国の取引所は自由化、国際化が進んでいくことは間違いないと思います。

 中国は、国家戦略として、アジアのコモディティー取引の主導権をとろうとしているように見えます。このような中国の動きを踏まえれば、我が国の商品先物市場を復活させるために、残された時間は余りありません。それこそ、スピード感が最も重要でございます。

 平成十九年の産構審の中間報告でこのように決定をされ、閣議決定が平成十九年にされて、いまだ実現を見ていない総合取引所において、抜本的な構造改革を目指すべきではないかというふうに考えます。すなわち、より信頼性の高い清算機関や取引システム等の市場インフラを備えた総合取引所において商品先物を扱うこととし、証券や金融先物の顧客、投資家にまで商品先物取引を拡大していくことが、最も有効な商品先物市場の活性化策ではないかと考えております。

 我が国の商品先物活性化のためにも、一刻も早く総合取引所を実現すべきと考えますが、経産省のお考えをお伺いいたします。

磯崎大臣政務官 お答えさせていただきます。

 総合的な取引所の実現につきましては、経産省としましても、これを目指していくという考え方につきましては共有しているところでございます。

 ただ、他方、あの東日本大震災を受けまして、エネルギーの安定的な供給ということも私どもの非常に大きな課題とされているところでございます。

 ことしの四月十一日にエネルギー基本計画が策定をされまして、この中で、エネルギー先物市場の整備を進めていくということも述べられております。そういった意味では、先ほど申し上げましたように、LNGあるいは電力の先物市場を創設して、とにかく早く軌道に乗せていくということも日本にとって非常に大きな課題だというふうに思っておりますので、こういった上場をにらみながら、現実的、優先順位を踏まえたアプローチで総合取引所の実現を目指してまいりたいというふうに考えております。

樋口委員 今、総合エネルギー市場の話をいただきましたが、私は読んだり聞いたりしておりますと、まさに経産省さんの姿勢は、あたかも電力先物やLNG先物の上場という総合エネルギー市場の整備が総合取引所の実現の前提であるかのごとく議論を展開されているように聞こえますが、私はそうだと思いません。そもそも、総合取引所を早期に整備することと、電力先物、LNGの総合エネルギー市場を整備することは、どちらかがどちらかもう一方の前提となるような性格のものではなく、別々に並行して議論を進めるべきものだと考えております。

 今国会で審議をされている商先法改正では、新規商品の上場は早くても二年半後になるという規定があります。電力先物の上場は、今すぐ取り組んだとしても、二年半後ということになります。エネルギー市場の重要性を否定するものではありません。しかしながら、総合取引所の実現は、平成十九年の閣議決定以来、政府の方針として打ち出されているものであり、早期に実現する必要があります。システムの統合の話もあります。

 そして、自民党さんが提案をされると言われている日本再生ビジョンの中においても、即刻実現を政府決定し、指導、働きかけを行う、この夏までに総合取引所の実現について調整が決着しない場合は議員立法で進めていく、これは、まさに、JPXとTOCOM、及び所管をする経産省、農水省との間で合流の交渉の調整がつかなければ、両省の同意なしでJPXが単独で商品取引所を開設できるようにするような法改正を議員立法で進めるというふうに読めるものだと思います。私は、余りにも時間はないというふうに、あえて申し上げたいわけであります。

 重ねて政務官にお伺いをいたしますが、総合取引所を即刻実現することが政府として強く求められておると思いますが、お考えを再度お聞かせください。

磯崎大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今委員が御指摘のありましたように、総合取引所の重要性というものは、私どもとしても十分認識しているところでございます。

 ただ、先ほど答弁させていただきました繰り返しになろうかと思いますけれども、やはりエネルギー政策、国家の非常に重要な課題ということでございますので、これについても遺漏なく進めていかなければいけないという認識を持っておりますので、これをにらみながら、現実的に、優先順位を踏まえながら、対応してまいりたいというふうに思っております。

樋口委員 最後に一点だけ、済みません。

 角度を変えて伺いますけれども、経産省として、TOCOMは今後単独の取引所として存続は可能だというふうに考えていらっしゃるか、この一点だけ教えてください。

磯崎大臣政務官 お答えを申し上げます。

 これは冒頭申し上げましたように、私どもとしても、総合的な取引所の実現を目指していくことにつきましては認識を共有化しているところでございますので、証券取引におきましても環境を整備しているところでございますので、その方向性を目指していくということにつきましては、全く異論がないというところでございます。

樋口委員 ぜひ、いつまでにやる、結論をいつまでに出すということを明言していただくべく、引き続き御協議をお願いしたいと思いますし、また質問をさせていただきたいと思います。

 きょうは、予定した質問ができずに申しわけありません。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、寺島義幸君。

寺島委員 おはようございます。民主党の寺島義幸でございます。

 まず初めに、ことしの二月の大雪は、経験したこともない大雪で、農業被害が大きかったわけであります。私は、これまでも、豪雪被害の対策であるとか、あるいはまた鳥獣対策用の侵入防止柵の関連等、質問させていただいてまいりました。きょうは、その後の被害の把握、あるいはまた再建支援の進捗状況等について、フォローアップをさせていただきたいと思います。

 そこで、最初に確認をさせていただきたいわけでありますが、この二月の大雪による被害の全容、これはどのような状況であったのか、お聞かせをいただきたいと思います。

奥原政府参考人 ことしの冬の大雪の被害でございます。

 通常降雪量の少ない地域を中心といたしまして、農業用ハウスの倒壊、あるいは果樹、野菜の損傷等甚大な被害をもたらしておりまして、五月十九日時点での各都道府県から報告のありました被害は、農業用のハウス、それから畜舎等の損壊、合わせまして八万六百七十七件、被害金額は、約千二百八億円というふうになっております。これ以外を含めて農林水産業関係の被害総額は、千六百五十四億円というふうになっております。

寺島委員 千六百五十四億円、要するに、膨大な被害があったわけであります。

 そこで、今般の大雪による農業被害により被災した農業者に対して、農産物の生産に必要な施設の復旧及び施設の撤去等、これはもちろん、緊急的に支援するために被災農業者向け経営体育成支援事業というのがありまして、これについて、事業実施の要望調査を行ったと承知いたしております。

 一回目は四月の十八日、二回目が五月の十六日が実施期限とされていたようでございまして、被災農業者からの要望に十分応え、再建が迅速に進むよう対処する必要がもちろんあるわけであります。

 そこで、被災農業者からどのような要望がされ、現在の対策の内容と事業規模でこれに十分対応可能なのか、この点についてお伺いいたします。

奥原政府参考人 ことしの大雪によりまして被害を受けた農業用ハウス等の撤去、それから再建に要する経費につきましては、被災農業者向け経営体育成支援事業、これによりまして支援することにしております。

 各都道府県の方からは、この五月の十六日までに報告をしていただくということで、各県の事業の実施要望が農林省の方に届いておりますけれども、現在、これを精査しているところでございます。

 ことしの大雪の被害は、先ほど申し上げましたように、相当な大きさになっておりまして、この被害の大きさに対応する形で、要望の件数も相当膨大になっております。できる限り効率的に作業を進めまして、事業規模の全体像を速やかに取りまとめたいというふうに考えております。

 それから、この事業による国の支援の中身でございますけれども、農業用ハウス等の再建につきましては、通常は、この対策を発動するといたしましても、補助率十分の三ということでございますが、今回は、国の補助率を二分の一まで引き上げております。それから、残りの部分につきましても地方公共団体が補助をすることにしておりまして、地方の補助の七割につきまして特別交付税の措置を講じております。

 一方で、撤去の方でございますけれども、これにつきまして、従来対象にしておりませんでしたが、今回は定額助成の形で助成をしておりまして、国の補助率と地方負担を合わせまして十分の十相当の支援をするということになっております。特に、地方の負担につきましては、その八割について特別交付税の措置を講じているということでございます。

 被災農業者向け経営体育成支援事業に必要な予算につきましては、被災農家がこれからも意欲を持って農業に取り組んでいただく、継続していただけるようにするということが大事でございますので、予算の流用等も含めまして適切に対応していきたいと考えております。

寺島委員 ありがとうございます。

 今回は、本当に農林水産省も迅速な対応をしていただいたんだろう。特に、今まで支援のなかった除去についても大きな支援を決めていただいた。その意味においては、地元も大変喜んでおりまして、敬意を表するところでございます。

 例えば、除去について、国が二分の一、残り二分の一が県、市町村ということなんです。つまり、農業者は負担ゼロだろうというふうに理解をしておるんです。

 ただ、定額、十アール当たり二十九万円ということであります。それはよくわかるんですが、仮にオーバーしてしまった場合、これはもう自己負担せざるを得ないという理解でよろしいんでしょうか。

奥原政府参考人 撤去をする施設のタイプに応じまして、一応定額の単価を設定しておりますけれども、それは現場でいろいろな御事情がおありだと思います。特認という制度もございますので、合理的な説明がつけば、そこについてはそれ以外の単価を設定することも不可能ではございません。(寺島委員「市町村が認めればいいということ」と呼ぶ)それが認められれば、そういうことでございます。

寺島委員 市町村が認めればいい、こういうことですよね、簡単に言えば。

 それで、これは二十六年度、年度内の事業完了というふうにもちょっと聞いておるんですが、パイプの資材もなかなか入りにくい。組み立てる職人さんも不足している。御案内のように、農業は時期的なものが大事なので、時に、支柱を立てて、破損したハウスを使って、収穫が終わってから再建にかかる。当然、年度をまたいでしまう状況が発生するのではないかと地元でも心配があるわけでございます。

 これは二十六年度事業で完了ということを聞いておるんですが、年度をまたいではだめなんでしょうか。

奥原政府参考人 この事業につきましては、二十六年度末までに行うのが基本であるというふうには考えております。

 ですが、最大限努力をしていただいても、現下の資材の状況、あるいは建設工事の関係の人員の事情等によりまして、年度中に対応できないということも考えられるところでございます。

 このような場合には、地域の事情をよく伺った上で、災害対策の性格を踏まえまして適切な対応を検討したいというふうに考えております。

寺島委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 うちの長野県でも、六十九市町村で一万五千八百ぐらいのハウスが壊れていまして、約九十二億五千万ぐらいの被害があったわけでございまして、よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 次に、大雪で破損した鳥獣被害対策用の侵入防止柵の補修が迅速に行われるようお願いしてきたところであるわけでありますが、四月二日の農林水産省の答弁は、破損状況の把握も含めまして、地域の実情に応じてきめ細かく対応していく必要があると考えているという答弁だったというふうに思います。

 そしてまた、その際、あわせて幾つかの事業を紹介してもらいました。被害が比較的小さい場合は鳥獣被害防止特別措置法に基づく特交を利用する、あるいはまた、県において速やかに対応する場合は鳥獣被害防止緊急確保等の対策、これは二十四年度の補正予算でありますが、この基金を活用するであるとか、被害が大きな場合には鳥獣被害防止総合対策交付金で対応するというようなお話をいただいたやに記憶をいたしておるわけであります。

 そこで、伺います。

 破損状況の把握は、もちろん対策の前提となるわけでありまして、必須かつ重要なものであろうというふうに考えておりますが、調査の進捗状況はどのようになっているのか、また今後どのようにきめ細かい対応をしていく方針なのか。もしよろしければ、これらはまとめて大臣にお伺いいたしたいと存じます。

林国務大臣 侵入防止柵でございますが、先般の豪雪による破損状況、長野県からは、県内の十四市町村三十五地区におきまして、被害総距離が七千三百四十三メートル、被害額が八百十六万円の被害が発生した、こういう報告をいただいております。

 したがって、今委員からもお話がありましたように、それぞれの地域の実情に応じて復旧をしていかなければなりませんので、今お話のあった鳥獣被害防止緊急捕獲等対策、これは二十四年度の補正で百二十九億円措置して基金を造成しておりますので、これを活用していただく。それからもう一つは市町村の単独の事業、これが鳥獣被害防止特措法に基づいて特交の対象になりますが、こういうことで、きめ細かく実情に応じて対応していくということになります。

 引き続き、関係者と連携してしっかりとやってまいりたいと思います。

寺島委員 ありがとうございます。

 地域を走っておりますと、柵がずっとありまして、柵の中に住んでいるのかよくわからないような思いもするときもあるんですが、一カ所でも崩れちゃうと効果がないんですね。ですから、そういう意味においては、本当にこれから迅速な対応をお願いしておきたいというふうに思います。

 次に、野生鳥獣は、時としてさまざまな被害を引き起こすわけでございます。

 ニホンジカが自動車や列車に衝突して事故を起こしたり、熊や猿が住宅街に出没するといった生活環境被害、あるいはニホンジカの摂食によって貴重な植物群に悪影響を与える生態系への被害があります。

 農業では、野生鳥獣が農作物を食べたり、農地を荒らしたりするわけであります。森林・林業の関係では、ニホンジカや鹿によりまして、樹皮剥ぎや林地の踏み荒らしなどの被害があるわけであります。また、カワウ等による農業被害等もあるわけであります。

 そこで、まず、農業、森林・林業、水産業それぞれについて、野生鳥獣による被害の状況がどうなっているのか、お伺いします。

 そしてまた、これまで政府は野生鳥獣による農林業被害のさまざまな対策を講じていただいたわけでありますが、被害の終息には至ってもいないわけであります。現在の対策の課題、そしてあるべき対策の方向性等についてどのように認識をされておられるのか、お伺いいたします。

佐藤政府参考人 寺島先生の御質問にお答えいたします。

 まず、鳥獣によります農作物の被害でございますが、鹿、イノシシによりまして、近年、被害金額というのが大体二百億円を上回って推移しておりまして、平成二十四年度では二百三十億円というふうに相なっているところでございます。また、森林関係で申し上げますと、鹿などによる森林被害も平成二十四年度には約九千ヘクタールというふうになっておりまして、さらに、カワウあるいはトド等によりまして食害等の漁業被害も生じているところであります。

 このように、鳥獣被害につきましては、農林漁業者の方々にとりまして、こうした被害があるだけで経営意欲が減退するといったようなことで、被害金額として数字にあらわれる以上に深刻な状況になっているというふうに認識しているところでございます。

 こうしたことに鑑みまして、深刻化、広域化し、地域経済の存続を脅かす重要な問題となっている状況にありましては、やはり何よりも捕獲の推進が非常に重要な課題と認識しているところでございます。このため、農水省におきましては、平成十九年十二月に成立いたしました鳥獣被害防止特別措置法を踏まえまして、地域の鳥獣被害対策の取り組みを総合的かつ効果的に推進するための予算措置を講じているところでございます。

 具体例で申し上げますと、まず、市町村が策定した被害防止計画に沿いまして、先ほど出ております侵入防止柵の整備、あるいはわなやおりなどの捕獲資材の購入などの取り組みに対しまして、鳥獣被害防止総合対策交付金というもので、平成二十六年度予算では九十五億円、平成二十五年度の補正予算では三十億円を計上しまして、これによって支援しているといったことが一つございます。

 また、やはり捕獲が一番大事なものですから、平成二十四年度の補正予算で百二十九億円を措置いたしまして、鹿等の捕獲頭数に応じて、一頭八千円を支払うといった予算を措置したところでございます。

 また、捕獲の対策の担い手をつくっていくといったことが非常に大事ですので、鳥獣被害防止特別措置法に基づきまして市町村に設置されます鳥獣被害対策実施隊が、平成二十五年十月末でございますが、七百四十五市町村で実施隊が形成されておるわけでございますが、さらにこれをふやすように、予算上の重点支援、あるいは普及啓発等によりまして、設置促進と体制強化を図っているところでございます。

 今後とも、生産現場の声をよく聞きながら、安心して農林水産業に取り組めるよう被害軽減に向けて取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。

寺島委員 ありがとうございます。

 長野県は、御案内のように八割近くが森林でありまして、中山間地農業農村が多くて、当然のことながら被害が多くて、全国でたしか四番目ぐらいでありまして、北海道が一番で、二番目が福岡なのかな、そして宮崎とかとあるんです。その意味においては、営農する意欲がなくなっちゃうと困るので、実は大変心配もしております。

 そのほかに、ちょっと変わった話だと、千曲川の上流にミンクがいまして、ミンクがいるんですよ、これが魚を食べちゃうんですね。たくさんとって、毛皮をつくって誰かに上げればいいなとも思うんですけれども、結構いるんですね。カワウがよく言われるんですけれども、カラスもあります。そんな状況で、多様な対応をできるだけきめ細かくお願いできればというふうに思っております。

 続いて、鳥獣保護法改正の関係であります。

 今国会で、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律について、新たに鳥獣の管理を図るための措置を導入するなど、鳥獣の生息状況を適正化するための抜本的な対策を講じようとする同法の改正案が提出されて、五月二十三日に成立したと思います。

 鳥獣による農業被害については、鳥獣被害防止特別措置法に基づき、被害発生現場に最も近い行政機関である市町村の行う被害防止対策に国として支援を行ってきたところであります。

 こうした中、今回の鳥獣保護法改正は、野生鳥獣について積極的な管理を実現する方向に転換するものと認識をいたしております。今回の改正によりまして、国は、集中的かつ広域的に個体数を管理する必要がある鳥獣を指定して、その指定管理鳥獣について都道府県や国の機関が捕獲事業を実施することができるようになるというふうにされているわけであります。

 そこで、政府は、この指定管理鳥獣について、ミンクはだめかもしれないんですけれども、どういった鳥獣が指定されると想定されているか、まずそこの点をお伺いします。

奥主政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、指定管理鳥獣は、集中的かつ広域的に管理を図る必要があるものとして環境大臣が指定する鳥獣とあります。生息数の急激な増加等によりまして全国的に甚大な被害を及ぼしているニホンジカ及びイノシシを想定しているところでございます。

寺島委員 ニホンジカとイノシシという話ですが、カワウとか猿とかはだめなんですか。

奥主政府参考人 お答えいたします。

 猿及びカワウにつきましても、農林業被害の原因となっているということは認識しているところではございます。これにつきましては、鳥獣保護法の今回改正によりまして、都道府県が第二種特定鳥獣管理計画というものを定め、それに対応するというのがまず原則になります。その対象にはなり得るわけでございます。

 それで、指定管理鳥獣につきまして、その中で特に甚大な、集中的かつ広域的に管理を図る鳥獣として指定するというようなことでございますので、将来的には、今後、鳥獣保護法の施行を見て、その状況を見ながら、必要に応じまして、指定管理鳥獣として何か新たに追加することがあるのかどうかは検討してまいりたいと思っております。

寺島委員 わかりました。

 例えばカワウなんというのは、魚を食べちゃって、風光明媚な千曲川を抱える我が地域においては甚大な被害があるんですね。猿なんかも、軽井沢の辺に出てきて、人の弁当をとっちゃったり、結構あるので、金額でいくとどうなるかというのはちょっとあれなんですけれども、これは要するに、県や市町村が指定すれば、二重段階でやっていくという理解でよろしいんですか。わかりました。重要な管理のものとして、できるだけ早目にカワウとか猿も指定をしていただくように要望をいたしておきたいと思います。

 そこで、指定管理鳥獣保護等の事業について、実施する都道府県に対する、当然のことながら、新たな交付制度の創設であるとか、特交ですね、特別交付税の措置等、実行財源確保のための支援というのが必要と思うわけでありますが、御所見をお伺いいたします。

奥主政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正によりまして、指定管理鳥獣捕獲等事業を創設いたしまして、生息数が急増しております鹿やイノシシ等につきまして、都道府県がみずから主体となって捕獲等の事業を行えることといたしました。このため、環境省といたしましても、鹿やイノシシの捕獲を全国的に推進する観点から、都道府県に対する財政面の支援が重要と認識しているところでございます。

 今後、指定管理捕獲等事業に対します予算を確保するなど、支援措置を検討してまいりたいと考えておりますし、また、地方の事務といたしましても、地方交付税の対象とすることにつきまして、今後、関係省庁と協議してまいりたいというふうに考えております。

寺島委員 ぜひ新たな交付金等の制度を創設していただきたいということを強く要望させていただきたいと存じます。

 次に、改正法に基づいて、捕獲の技能や知識を十分備えている団体を都道府県知事が認定する認定鳥獣保護等事業者制度、これが創設されるというふうに聞いています。

 捕獲を専門に行う民間事業者を認定することになろうと思いますが、ハンターの高齢化が進んでおりまして担い手が減少する中、地方自治体によっては、職員に免許を取らせてやっているというようなこともあるわけですが、なかなか抜本的な対策にはなっていない。野生鳥獣保護の民間事業の必要性は本当に高いだろうというふうに思っています。

 認定鳥獣保護等の事業者制度の創設は、こうした状況に対応した措置と考えられるのでありますが、制度がきちんと機能しなければ余り意味がないわけであります。

 捕獲を専門に行う業者を認定する制度を創設することにより、鳥獣被害対策の基盤ともいうべきハンターの確保、育成がどう図られるのか、また認定鳥獣保護等事業者を国や都道府県としてどう活用していこうとされているのか、お伺いします。

 さらにまた、この認定鳥獣保護事業等の活用に当たりましては、これまでの地域での狩猟や捕獲に携わってきた狩猟団体とのすみ分け、あるいは鳥獣被害防止特別措置法の被害防止計画に基づき対策を講じてきた農業者との協力も不可欠であろうというふうに思うわけでありまして、この点について政府はどのように認識されておられるのか、お伺いいたします。

奥主政府参考人 お答えいたします。

 鳥獣の捕獲を推進するためには、認定事業者の参入促進や育成、あるいは事業者が行う鳥獣捕獲業務の円滑な実施に受けた取り組みへの支援が重要であると認識しているところでございます。

 このため、環境省におきましては、本改正を踏まえまして、認定事業者を希望する者への講習や新たな制度の周知でありますとか、認定事業者を含めた捕獲従事者の技能の向上や、鳥獣の管理に関する知見、技術に関する情報提供等について検討しているところでございます。こうした取り組みを通じまして、新たな鳥獣捕獲の担い手の確保育成に努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、御指摘のありました認定鳥獣捕獲等事業者の活用についてでございますが、都道府県等が指定管理鳥獣捕獲等事業を実施する場合、従来の捕獲が及びにくい地域、例えば奥山等でありますとかそういう地域におきましては、認定事業者に業務を委託することによりまして捕獲事業が進むことが期待されるというふうに考えておるところでございます。

 さらに、猟友会など既存の狩猟者の団体につきましては、これまで地域で鳥獣捕獲につきまして大きな役割を果たしてきておりまして、今後も重要な役割を担うことを期待しているところでございます。また、地域の農業者が捕獲に参加するなど、地域ぐるみでの対策が進むことが重要であるというふうに考えております。

 このため、新たな認定事業者が活動する際には、従来活動してきた猟友会など既存の捕獲従事者との間であつれきが生じないよう、また、地域の農業者との協力、連携が図れるよう、事業発注をする立場の都道府県等に対しても配慮を求めていきたいというふうに考えております。

寺島委員 これは環境省なのか、ちょっとよくわからないんですけれども、農業被害を防止するために農業者みずからも協力をしておりまして、農業者のわなの取得の支援というのもあるんです。それも継続されるという理解でよろしいのか。それは農林水産省なんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生のお問い合わせがございましたように、鳥獣交付金の中でそのような講習費用について補助対象としているところでございまして、今後ともしっかりやっていきたいと思っております。

寺島委員 ありがとうございます。

 ぜひ、農林水産省と環境省と連携を深められて、適時的確な御支援というのをよろしくお願いします。

 特に、市町村が被害防止計画に基づいて取り組む、積極的に取り組んでもらわないと困るわけであります。そのための鳥獣被害防止総合対策、これをしっかりと継続していただいて、さらに予算の十分な確保等についても御努力いただけますように、私からも要望をさせていただきたいというふうに思います。

 続きまして、捕獲鳥獣の活用についてであります。

 地元のことで恐縮なんですけれども、すばらしい取り組みなので、お話しします。

 捕獲した野生鳥獣をどう処理するか、これが一つ課題であるわけであります。捕獲した鳥獣を食肉として利用するであるとか、革製品ですとか、ペットフードとして加工する等、各地でいろいろな工夫がされておられるわけであります。

 小諸市なんですけれども、おとといかな、環境省の副大臣が行かれたようであります。

 小諸市は、もともとニホンジカやイノシシによる被害が多い地域でありまして、さらに、近年、ハクビシンによる農作物被害が急増をいたしております。大変悩んでおったわけですが、二〇一三年ごろに市内で駆除した鳥獣というのは三百三十七匹いたんだそうですが、そのうちの二百十五匹が、ハクビシン、タヌキ、アナグマなどのいわば中型獣であったそうであります。

 これで、小諸市の職員が数年前から、駆除、捕獲した動物を研究に活用することを研究者に呼びかけたところ、麻布大学の獣医学部だと思いますが、提供の依頼があったということで、今では、ハクビシンとかタヌキ、アナグマなど、小諸市で捕獲された中型獣というんですかね、これが麻布大学でアルツハイマー病の研究に使われているということであります。

 一昨日、北川環境副大臣が、小諸市の懐古園の中に動物園があるんですけれども、そこを御視察いただいたようでございまして、敬意を表するわけでありますが、鹿肉なんかをライオンに上げているんですね。ライオンは鹿肉が好きらしくて、北川副大臣もその意味では恐らく有益な御視察をしていただけたのかな、こんなふうに推測をいたしておるわけであります。

 そこで、捕獲した鳥獣の、研究用としてこれを広げることがよろしいのかなと思うわけでございまして、例えば農林水産省や政府の研究機関等でこういったものを積極的に研究用として利用を考えてみたらどうか、こう思うわけでございますが、大臣の御所見をお伺いできればありがたいと思います。

雨宮政府参考人 お答えいたします。

 捕獲した鳥獣は、一般的に、年齢や成長の履歴が明らかでないこと、また寄生虫などに感染しているおそれが高いことなどの問題があり、科学的に正確な実験結果を得る上では、ラットやマウスのような実験動物と同等に使用することはできないと考えております。

 しかしながら、鳥獣被害防止に係る技術の研究開発のように、捕獲した鳥獣を使用することが研究目的を達成する上で適当である場合もございます。農林水産省所管の試験研究独立行政法人は、これまでに、捕獲したイノシシやカラスなどを研究開発に使用してきたところでございます。

 このようなことから、捕獲した鳥獣を研究目的で使用する場合には、研究内容を十分に踏まえて検討してまいりたいと考えております。

寺島委員 聞いたら、いつもは大学とかの研究所は動物園に依頼するんです。ところが、動物園は必要なものがそんなに出ないので、なかなか時間がかかる、捕獲とか駆除した中型獣というのは結構たくさんいるので、すぐ手に入るので便利だ、こういうお話も聞きましたので、利用できる範囲が今の答弁のようにあろうと思いますけれども、積極的に活用いただくことも大事なことなのかな、こんなふうに思っております。

 ジビエについてであります。

 捕獲した鳥獣の肉のジビエとしての利用についてもさまざまな工夫がされているわけでございまして、昨年の秋、JR東日本の駅に出店しているファストフード、ベッカーズが、長野県産の鹿肉を使ったパテを利用した信州ジビエ鹿肉バーガーなるものを売り出したところ、大変好評だった、こういうことでございました。昨年十一月に期間限定で一万食販売したところ、販売予定期間より一週間早目に完売したということであります。

 例えば、設置した柵もことしの大雪で破損したところがありますし、メンテナンスも必要なのでありましょう。地域で鳥獣被害対策を続けるには、財政的な支援も必要ですが、都会の皆さんが野生鳥獣による被害のような農山村の課題に関心を持ってもらうことも重要なことではないのかというふうに思っております。鹿肉バーガーのようなジビエは、農山村が抱える課題に都会に住む人々の関心を向けるという機会となったと思っております。

 そこで、捕獲した野生鳥獣の食肉としての利用は、衛生管理面や捕獲鳥獣の運搬などの労力とコストの観点から多くの課題があると承知をいたしておりますが、国として課題をどう認識しているのか、また今後どのように取り組む方針なのか、お伺いをいたします。

江藤副大臣 信州鹿肉バーガーですか。大変うらやましいなと思います。私の地元でも、鹿肉のカレーをつくったり、ビーフジャーキーじゃなくて鹿肉ジャーキーをつくったりしておりますが、余りはかばかしく売れておりませんので、ぜひ東日本に頼んで売ってもらおうかなというふうに思いました。

 地元にとっては悩みでもあるけれども、先生のおっしゃるとおり、地方のことを知っていただく一つの機会であることは間違いないと思います。ですから、これから、鳥獣被害の防止総合対策交付金、こういうものがあることは御存じだと思いますが、こういったもので、やはり捕獲した鳥獣をきちっと食肉処理をせねばなりませんので、そういった施設の整備を進めてまいりたいと思います。

 それから、山でとって、山からおろしてくるときに、非常に重たいわけであります。ほかの委員会だったかもしれませんが、本当は、おなかを割いて、中を出して軽くして、その部分は山に戻して、食肉工場に持っていきたいけれども、それは、いわゆる食品衛生法上、だめだということで、今禁止になっておりますので、環境省さんになりますか、厚生労働省か、お話をして、ここら辺の運用の改善もぜひやっていきたいなというふうに思っております。

 いずれにしましても、六次化プランナーもつくっておるわけでありますから、そういった地域の悩みも、ある意味、今度は魅力に変えていく努力というものは、先生のおっしゃるとおり、これからやっていきたいなというふうに考えております。

寺島委員 ぜひお願いいたします。

 そして、厚生労働省関係になると思うんですが、野生鳥獣の食肉処理に関する衛生基準が未整備で、家畜と比較して衛生管理対策が十分なされていないという指摘があるわけであります。

 田村厚生労働大臣は、参議院の予算委員会、三月七日だと思いますが、野生動物の衛生管理に関するガイドライン策定に前向きな答弁をされたと承知をしておりますが、今後、どのような手順、スケジュール感でガイドラインの作成を進めるのでしょうか。

新村政府参考人 お答えいたします。

 食用に供される肉につきましては、屠殺から解体、流通、販売に至るまで、適切な衛生管理がなされることが必要でございますので、野生鳥獣につきましても、食品衛生法に基づく許可施設において処理を行う必要がございます。

 また、野生鳥獣の利活用が盛んな一部の自治体におきましては、野生鳥獣処理の衛生管理等に関するガイドラインを既に作成していると承知しております。

 厚生労働省におきましては、野生鳥獣肉の安全性確保のための研究を実施しておりまして、その中で、病原微生物による汚染実態調査、あるいは諸外国の調査も行ってきております。

 今後、これらの研究成果等を踏まえまして、疾病に罹患した野生鳥獣の排除ですとか、あるいは、衛生的な解体、処理の方法などを内容とする、国としてのガイドラインの作成を進めていくこととしております。その中で、先ほど副大臣から御答弁がございましたような、内臓の取り扱いについても検討してまいります。

 作成時期、スケジュール感につきましては、今後、関係する都道府県あるいは関係者の御意見もいただく必要がございますので、現時点で明確にいつまでとお示しすることは難しいんですが、できる限り早期に策定できるよう取り組んでまいりたいと考えております。

寺島委員 次に、配合飼料価格安定制度についてであります。

 これは、御案内のように、通常補填と異常補填、二段階の仕組みから成るわけですが、さまざまな問題点が指摘されているわけでありまして、農林水産委員会においても、毎年、畜産価格の集中審議の際に議論が行われており、委員会決議には、制度の見直しを検討すべしとの項目が盛り込まれているわけであります。

 この制度も、要するに、現状のような、飼料価格が高どまっておりますと補填金が交付されないという点について改善もされていないということで、制度自体、限界が来ているのではないかということで、小手先の制度改変ではなくて、抜本的な制度の見直しが必要であると考えております。

 私は、畜産農家が支払っている積立金が購入飼料の負担軽減につながるよう、配合飼料価格安定制度のような、飼料価格に対する部分的な補填ではなくて、産業として再生産が確保され、畜産業の維持発展が実現できる制度に見直すべきであると考えますが、大臣のお考えを承りたいと存じます。

林国務大臣 配合飼料価格安定制度でございますが、通常補填基金、これは農家とメーカーの方が積み立てていただいておるわけですが、ここのところの高騰によって、多額の借入金、九百四十億円になっておりまして、制度の安定運営に対する懸念が高まっていたということもありまして、昨年十二月に所要の見直しを行いました。

 二十五年度補正で異常補填基金を国が百億円積み増すということと、異常補填については、基準価格の算定を半年間さかのぼるということで、高どまりの局面でも発動しやすくなるようにする。それから、通常補填基金の借入金の返済の柔軟化、いわゆるリスケですが、返済計画の本格的なリスケをやったということでございます。

 それから、抜本的な見直しということでいうと、やはりどうしても飼料のほとんどを海外に依存する中で、餌米の利活用、それから国産粗飼料の増産、こういうことで足腰の強い畜産経営を充実させるということと、それから、生産コストが上がって収益性が悪化した場合に、その損失の一定部分を補填するという基本的な考え方のもとで、酪農、肉用牛など各畜種の特性に応じた畜産経営安定対策も実施しているところでございます。

 こういう制度を安定的に運用するとともに、今お話のあった配合飼料価格安定制度、これも必要に応じて所要の見直しを図って、畜産経営の安定を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。

寺島委員 現状に即して、できれば大胆な見直しをお願いしたいというふうに思います。

 最後であります。強い農業づくり交付金についてであります。

 例えばリンゴなんかでありますと、光センサー機を入れて、品質の安定、糖度等をはかることによって、エンドユーザーの御理解と付加価値がつく。そのためにも、光センサー選果機等のようなものの導入が不可欠であるわけであります。

 政府は、生産から流通まで共同利用施設の整備を支援するために、強い農業づくり交付金を措置して、平成二十六年度の予算は二百三十四億、そのうち、農畜産物輸出に向けた体制整備について三十億円、強みのある産地形成に必要な施設整備について三十億円の優先枠を設定していると承知をいたしております。

 同交付金は、都道府県からも要望の多い、人気のある交付金であり、要望があっても予算配分が見送られる事例も見受けられるわけであります。

 そのため、強い農業交付金について、必要予算額を十分確保して、競争力強化に向けて積極的に取り組む産地の意欲をかき立ててもらって、努力をしていただきたい。そして、それを基本として、予算配分を実施する必要があるというふうに思っておりまして、十分な予算配分ができているのかどうか、その点についても大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 大変ありがたい御質問をいただきました。

 産地の競争力強化のために、共同利用施設、選果場のようなものの整備に対して、二分の一以内での補助率で、都道府県向けの交付金である強い農業づくり交付金で支援をしてまいりました。

 平成二十六年度においては、当初予算額二百三十四億円に対して、事業要望が三百六十四億円と大変人気のある予算ということで、全ての要望を配分対象とすることができなかったわけでございます。

 したがって、今後も、産地の競争力を強化する観点から、所要の予算措置をしっかりと確保して、先生の応援もいただいたというふうに承知をしておりますので、しっかりと予算執行に努めてまいりたいと思っております。

寺島委員 漏れちゃった人の中にも意欲ある農業者というのは実はいっぱいいるわけでありまして、しっかりと支援をしていただくように、十分な予算確保に向けて御努力いただきますことを強く要望させていただきまして、終わります。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、岩永裕貴君。

岩永委員 皆さん、おはようございます。維新の岩永でございます。

 きょうも、二十分のお時間をいただいておりまして、朝から福山委員の方からも出ておりました人材育成というところについて、少し議論をさせていただきたいと思います。そして、以前にも取り上げさせていただきましたこの人材育成に関して、特に農業高校の現状とか、そのあたりについて議論をさせていただきたいと考えております。

 きょうは、農業高校の所管であります文部科学省の櫻田文部科学副大臣にも御出席をいただきましたこと、冒頭お礼を申し上げます。ありがとうございます。

 一番最初に、ぜひ副大臣の方に、これは通告していないんですが、感想だけで結構ですので、ちょっといただきたいなと思うんです。

 昨日、地元の農業高校を見学いたしてまいりました。

 私の地元でも、学生の皆さんは一学年百二十人ぐらいいらっしゃいまして、牛舎があり、鳥、豚を育てられていたりとか、造園技術を学ばれていたり、または、自分のところで牛乳を初めジャム、いろいろな商品をつくって、自分たちでお店を学校の中に設けて、地元の皆さん方に販売をしていたりとか、ピザをつくったりとか、他の普通科等々では学べない農業というものを現場で勉強しておられるという現状がありました。

 これは三年間勉強されて、学ばれて、ある意味、特殊な知識や技術にずっと触れられて三年間が経過していくんですが、先生に、では、その百二十人の卒業生のうち何人が就農されましたかという質問をさせていただいたときに、極めてゼロに近いんですということをおっしゃるんですね。極めてゼロに近い、多分多くて一人、少ないときはゼロというような就農の状況が続いております。

 一方で、農林水産省は年間二万人ぐらいの若者を中心とした新規就農者をふやしていこうというような大きな方向がある中で、三年間農業高校で技術や知識を学んでいるにもかかわらず、就農につながっていない、こうした状況について、簡単にでも結構ですので、率直にどのような感想をお持ちになるかということをお伺いいたします。

櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 私としては、農業高校に行ったならば、農業に従事していただきたいなという基本的な考えを持っております。私も農業をやっている身でございますので、そういったことは特に強く感じるところであります。

 ただ、今、職業でもいろいろな種類が、多様化になっておりますので、農業高校に行って、農業従事者だけじゃなくて、農業組合に勤めたり農水省に勤めたり、いろいろなことがあると思います。いろいろ職業の多様化ということで捉えたいと思っておりますが、自分自身としては、あくまでも、農業をやっていれば、農業に従事していただきたいなという気持ちがいっぱいでございます。

岩永委員 副大臣おっしゃるとおり、現在の社会でありますから、就職ということに関しても多様化されておりますし、就農だけではなくて、側面的にも農というものへのかかわりがある就職をされている学生さんもいらっしゃるかとは思います。

 ただ、百二十人卒業してゼロ、そして全国的には約一万五千人の卒業生がいらっしゃる中で約七百五十人、約五%の就農率しかないということは、やはり一つの論点としてしっかりと議論をしなければなりませんし、課題としても、文部科学省さん、そして農林水産省さんもしっかりと認識をしなければならない分野であるということを強く感じております。

 そこで、先生方からヒアリングを行っておりますと、大きく三点の課題を現場で抱えているというようなお話です。

 一つ目、これは質問になるんですけれども、非常に専門性の高い分野では、農業の分野で申し上げますと、やはり日進月歩、日々技術の革新というものが進められております。特に、IT化を含め、農業の分野では、いかに効率的に農を行っていくかというようなところは非常に大切なところでもありますし、技術もどんどん開発をされている。そうした技術開発の最先端を学校という教育現場で教えるのはなかなか難しいんですけれども、ある一定のそういった技術をしっかりと生徒の皆さん方に指導できる教員の育成ということの取り組み状況について教えていただければと思います。

櫻田副大臣 農業高校は、農業従事者や農業に関連した地元企業に就職する者など、専門的職業人の育成を行う機関としての役割を担っております。産業の高度化や社会の動向に対応して、農業高校の教員が、最新の知識、技術を身につけ、専門性の向上を図ることは極めて重要であると認識しているところでございます。

 教育公務員特例法第二十一条において、「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」とされており、教員みずからが資質向上に努めることが大切であります。

 また一方、各都道府県においても、教育委員会が県農林水産部や農業大学校と連携した研修や、各都道府県の農業高校長会などの研修を受けまして、農業に関する最新の知識、技術を習得する研修の機会を設けているところでございます。

 また、文部科学省においては、全国の校長や都道府県の指導主事が集まる全国会議などにおきまして、教員の資質向上を含む課題に関する情報公開や協議、あるいは、農林水産省からの農業政策情報等、最新情報の提供などを行っているところでございます。

 さらに、独立行政法人教員研修センターとの共催により、農業教育を行う中核的な役割が期待されている教員等に対しまして、社会情勢の変化に適切に対応した最新の知識、技術を習得させる指導者養成研修を実施しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも、教員が不断に資質、能力の向上に努めることができるよう、教育委員会や校長会を初めとした関係諸機関と連携した取り組みを進めてまいりたいと考えております。

岩永委員 ありがとうございます。

 私も今初めて知ったような、新たなというか、専門色の高い教員の皆さんへの指導というのはかなり多岐にわたってしていらっしゃるんだというようなことでございます。

 教員の皆さんがそうした知識を得られて、では、子供たちにいざ教えようということになるわけなんですけれども、もう一点の問題点というのが、やはり農業高校の設備の問題なんですね。

 もちろん、私も全国的に全ての農業高校に伺ったわけではないので、どういった設備が設置されているかということは全てを網羅しているわけではありませんが、少なくとも私が見学に行った農業高校の設備を見ていると、牛舎にしてみても、感覚的には十年から十五年ぐらい前の設備で、かなり基本的な農業のノウハウや技術について勉強していらっしゃるなという印象を受けました。

 知識として教員の皆さんが最先端の技術等を学んでも、設備が伴わないとなかなか教育の現場でそういった知識を生かすことはできないというふうに考えております。これも先生の問題点として一点挙がっていたのと、やはり同窓会長とか高校の後援会長とかいう皆さんも、この設備に対する投資というか予算づけというものをもう少ししていただきたいという声が非常に大きいんですが、そういったところへの設備の更新というものについての取り組み状況もあわせて教えていただければと思います。

櫻田副大臣 農業高校を初めとした専門高校におきまして、実践的な教育を実施するために実験実習に力を入れております。そのため、必要な施設設備の充実や更新が重要であると認識しているところであります。

 このため、文部科学省といたしましては、産業教育振興法及び同法施行令に基づき、一昨年、新しい学習指導要綱に対応した施設設備の基準を改訂するとともに、高等学校における産業教育のための実験実習施設設備に要する経費の一部を設置者に対して支援しているところでございます。

 実験実習施設に関しましては、公立学校に対して学校施設環境改善交付金の中で支援を行うとともに、私立学校に対し私立高等学校産業教育施設整備費補助を行っているところでございます。

 また、実験実習設備に関しては、私立学校に対して高等学校産業教育設備整備費補助を行っているところであり、一方、公立学校に関しましては、三位一体の改革により、平成十七年度より国の補助を廃止し、税源移譲、地方財政措置を行っているところでございます。

 農業高校を初めとした専門学校における教育が我が国の産業政策の発展及び国民生活の基礎であるとの認識のもとに、今後とも、都道府県等設置者に対して必要に応じた施設設備の整備を促すとともに、その支援に努めてまいりたいと思っております。

岩永委員 ありがとうございます。

 積極的に設備更新に対しても取り組んでいただくという御答弁をいただきました。非常に心強いものであります。

 ただ、この件について、文部科学省さんと農水省さんといろいろお話を以前からさせていただいておりますと、やはり文部科学省さんは、十分やっているということをおっしゃっていただくわけなんですね。それはあくまで文部科学省さんの視点であって、恐らく、農林水産業の市場をもっと知っている農林水産省が、その施設が十分であるかとか、教員の皆さん方が十分な知識を持って指導に当たっておられるかということを見たときには、やはり不十分なところというのは多々見えてくるかと思うんです。

 もちろん、農林水産業のプロフェッショナルなので、その辺のことはあるというふうに思うんですけれども、これが縦割り行政の弊害かというと、一概にそうは言えないかもしれないんですが、もっとプロフェッショナルな目線という意味で、農林水産省が教育の現場に対して、人材育成ということも含めて、農業大学校とかいろいろなところでコミットはしているんですけれども、やはりこの農業高校というところに対してもっとコミットしていただきたい。これは予算的にもそうなんですけれども、施設のアドバイスをしたりとか、できることというのはもっともっとたくさんありますし、これは、農林水産省にとっても、文部科学省にとっても何もデメリットがないことだと思います。

 特に、そういった新しい技術であったり、もっともっと先駆的な事例であったり設備であったりということを学べるというのは、子供たちにとって何よりも幸福なことだというふうに思いますので、こういった教育の現場にぜひ農林水産省ももっと積極的に入っていただいて、人材の育成に取り組んでいただきたいということを切にお願い申し上げるわけでございますけれども、大臣の方から、そのあたりについての前向きな御見解をいただければと思います。

江藤副大臣 私の方からお答えをさせていただきます。

 大変勉強になる御意見をいただいたと思います。私のところには高鍋農業高校というのがありまして、ここは口蹄疫が発生したエリアでありまして、畜産の後継者が育つ、非常に有名な高校なんですよ。ところが、全部殺処分になりまして、繁殖母牛から全て処分されてしまいました。その後、それを導入するということで大変な苦労をして、善意のある方が二百数十万の雌牛を寄附してくれたりして、今ではまた一生懸命繁殖の努力をしておりますけれども、やはり、あれを見たときに、農林水産省としてもうちょっと手助けできることがないのかなと思った気持ちを思い出しました。

 ですから、これから我々が本当の意味で農業に夢を持った若者を育てていこうということであれば、ぜひ、先生がおっしゃるように、農水省ももっとコミットして、文部科学省の皆様方と知見を合わせながら、教員の評価は私たちではできません。それは、教員のスキルが十分かどうかは、我々が幾ら農林水産業だからといって横串を刺すようなことはできませんけれども、ただ、連携を深めるということは、先生がおっしゃるとおり、必要なことだなというふうに考えております。

岩永委員 前向きに御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 文部科学省さん、今、いろいろな分野で人材の育成というものが非常に注目をされております。農業もそうですし、林業も水産業も、そしてアパレルとか、もっと言えば自動車であったりアカウンティングであったり、本当に幅広い分野で教育行政をつかさどっていただいているわけですけれども、そういった広い分野、全ての市場をしっかりと見据えて、逆算をして、いかに子供たちに教育をするべきかということを全て網羅していくというのは非常に大変ですし、難しいことかと思います。

 そこは、プロフェッショナルの意見を入れるところは入れるというところで、経済産業省の助けが必要ならばそういうところも入れて、農林水産省の助けが必要ならばそういうところも入れてということで、もう少しオープンに、いろいろな知識を取り入れていただいた教育行政というものをぜひ進めていただきたい。それこそが、子供たちをより大きく、これから日本を背負っていただける人材として育て上げる非常に重要な部分だというふうに私は思います。

 最後に、そのあたりについて、副大臣からも前向きな御答弁をいただきたいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

櫻田副大臣 質問者の岩永先生のおっしゃるとおりでございまして、私も考え方を共有するものでございますので、これからもしっかりと取り組んでいきたいと思います。

岩永委員 ありがとうございます。

 そういう学校の教育現場から、また一歩、二歩、この日本の将来をしっかりと築き上げていただける人材がどんどん出ていくことを期待申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は、まことにありがとうございました。

坂本委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 日本維新の会、鈴木義弘です。先週に引き続きまして、質問をしたいと思います。

 今まで、中間管理機構だとか日本型直接支払いとか、幾つかの土地に絡む法律があったんですけれども、そのときに質問を申し上げようと思ったんですが、なかなか時間がなくて、きょうは、土地改良区の事業についてお尋ねをしたいと思います。

 初めに、農業の生産コストを考える上で、農業基盤になっているのは、御承知のとおり、土地改良事業であります。

 地元の農家の方から、土地改良事業に支払っている負担金が重荷で事業を続けられないんだという話を聞きました。ある地域では、一反当たり、十アール当たり五千円、ある地域では一万円の賦課金を支払っていると聞きます。全国平均では一反当たり約五千五百円の賦課金を徴収しているデータも目にしたことがあります。

 私は、御案内のとおり、埼玉県の出身でありますので、埼玉県の県内にも、土地改良区は大小合わせて幾つもあります。

 大きいところ、私の地元では、組合員数が約一万六千名を有している、九市二町で、面積にして五千六百十一ヘクタールを管理している土地改良区があるんです。事業費も、年間の規模が約六億七千五百万の予算で運営されているんですけれども、この中で、収入の部に対して、水資源機構分として八千五百五十万円分が計上されていて、支出の部に、負担金として、同じような、水資源機構分として八千五百五十万ぐらい計上されています。支出に対して維持管理費を含む事業費の割合が約六一・九%で、この水資源機構に支払う金額を差し引くと、全体で約四八・九%になります。

 また、県内で比較的小さい土地改良区では、組合員数が九百三十三名で、三市で三百六十二ヘクタール、平成二十五年度の予算額が約二千八百万、うち事業費の割合が四一・二%、小さい方の土地改良区の事業だと思うんです。

 事業費よりも間接費が半分以上を占めていて、この事業を行っている団体が、全国的に五千の土地改良区があると聞いております。

 そこで、何点かお尋ねしたいんですけれども、今申し上げましたように、昨年成立した中間管理機構の制度や、ことしからスタートした経営安定化交付金等の水田農政の制度を大幅に見直しを図ろうというのが、この二十六年度の幾つかの法案だったと思います。

 制度の変更により、離農者がどんどんふえてしまえば、土地改良事業の維持がやはり困難になってくるんじゃないかと思います。土地改良事業のあり方をどう将来展望していくのか、まず大臣にお尋ねしたいと思います。

林国務大臣 農業の成長産業化、これは、需要サイドで六次産業化、輸出促進、付加価値を高めるということが必要になっておりますし、同時に、供給サイドの強化として、農地の集積、集約化、こういったものでコストの低減等を進める必要があると思っております。

 そういう意味では、条件のよい平場地域だけでなくて、中山間地域など後継者、担い手が不足している地域でも、他の地域の法人等の積極的誘致も含めて、受け手の拡大に努めることによって、中間管理機構をうまく活用していく必要があると思っております。

 集積、集約化に当たって、圃場の大区画化による作業効率の向上、農業用用排水の管理の省力化、こういうものは不可欠でありまして、そういった意味で、今お話のあった土地改良事業をしっかりと実施して、必要な基盤整備を推進していかなければならない、こういうふうに思っております。

 今、負担のお話もありましたけれども、やはり実施に当たっては、負担軽減対策、それから多面的機能支払制度の活用、こういったことによって、水路等の維持管理を行う地域の共同活動を支援することを通じて、土地改良区等の現場のニーズに細かく応えながら事業の的確な推進をやっていきたいと思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 戦後生まれの私たちは、食料増産のために多くの土地改良事業が造成されて、おなかいっぱい御飯が食べられる時代になりました。どれもこれも、施設は半永久に使えるものではないと思います。施設の老朽化が進み、更新時期を迎える施設も多く見受けられるのではないかと思います。

 五千もある土地改良区の施設の更新をすべてやるとどのぐらいかかるのか、まずお尋ねしたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 土地改良施設の老朽化、更新ということでございますけれども、国、県等が造成いたしましたダム、頭首工などの基幹的な施設だけで見ましても、今、その約二割が標準耐用年数を超過しているという状況にございます。

 これらの施設をこのまま全て全面的に更新するというふうに仮定した場合の費用は約三兆円に上ると見込まれております。ただ、厳しい財政状況のもと、維持管理、更新に係る費用をできる限り縮減していくことが課題であると考えております。

 このため、施設の劣化状況等に応じた補修、更新による長寿命化を図る、それから、維持管理を含めた対策費用を低減する取り組みを推進するということとしているところでございます。

 また、施設の補修、更新のための対策費用の負担もございますので、それにつきましては、国、地方公共団体、農家がそれぞれ応分の負担で、分担をして負担しているということとしているところでございます。

鈴木(義)委員 これは、今御答弁いただいたように、地方自治体、国、農家が負担するということなんですけれども、前段でお話ししたように、中間管理機構で土地を寄せていって、大臣から御答弁いただいたように、日本型直接支払いだとか幾つかのメニューを用意して、水田の維持管理をしていこうという形をとっていくんです。

 でも、今御答弁いただいたように、更新するだけで三兆円なんですけれども、土地改良区で、更新は別にして、全国、全体で使っているお金が約十七兆ぐらいあるんですよね。そのうちの更新の、耐用年数が過ぎているのが三兆円という御答弁だったんだと思うんです。ですから、この三兆円を誰が負担していくのかというのが今後の課題になってくるんだと思うんです、それで今御答弁いただいたんですけれども。

 実際、現場の声を聞かせていただいたら、次のように、幾つもの土地改良区の中で、問題を抱えている話を聞きます。

 まず一つ目、三・一一の東日本大震災以降、電気料金の値上げが続いて、かんがい用水や排水用のポンプ等を稼働させる電気料金が増加していて、中には、混住化、田んぼといろいろな住宅が近くに点々としてしまっていて、排水機場も含めて、水路なんかにごみの投棄が増加していて、維持管理の経費が増加しているという話があります。管理業務が増加していて、施設管理の専門知識を有する専任職員の確保が困難となってしまうと、お金の話ばかりじゃなくて、人の手だても、やはりそちらに、人件費の方にお金が回らなければ業務の運営に支障が生じるんじゃないかという問題点です。

 時間がないので、あと二つ申し上げます。

 それと、賦課金の徴収率が地域によって、場所によってばらつきがあるんですけれども、徴収率が年々低下してしまっているということですね。それの一番の問題は、お米を売ってももうけが出てこないから、なかなか賦課金を出せない。新しい法律をつくることによってまた制度が変わりますから、賦課金を出しやすくなるかもしれませんけれども、今は徴収率が年々下がってきているのが現状です。

 三つ目、混住化の進展に伴って、土地改良区が管理する排水施設は農業者だけの施設という考え方から、地域全体の安全を守る施設へその性格が変容しているにもかかわらず、排水施設の維持管理は土地改良区の責任に委ねられている。自治体によっては、生活雑排水が流れ込むから、悪水路の維持に町が負担金を払って維持管理を土地改良区に委託しているというケースも聞きます。

 大臣は常々、攻めの農業、海外にどんどん打って出るんだというお話の中で、水田のフル活用という言葉をよくお使いになるんですね。

 今申し上げた三点について、今のままでは負担をする農家もギブアップしてしまうし、地域によっては、生活雑排水も入ってしまって、それを土地改良区の負担金を払っている農家に、一部は国だとか県だとかがお金を払っているんですけれども、実際、では、これからどうしていくのか。最後はやはり国が責任を持っていかないと、水田のフル活用といっても、なかなか問題の解決策になっていかないんじゃないかと思うんですね。

 冒頭申し上げましたように、賦課金で徴収しているお金の半分ぐらいは水資源公団の方に水利権として払っているんだと思うんです、場所によってパーセンテージは違うんだと思うんですけれども。そうすると、固定費がどんどんかさんでしまう話になると、結局、維持管理にお金が回らなければ、どうしても、水田のフル活用といっても、施設が老朽化して更新もできない、維持管理もままならないという形になったときに、現状の改善策をどう考えていくのか、お尋ねしたいと思います。

小里大臣政務官 土地改良に係る農家側の負担としましては、まずその事業の建設段階に係る、事業費に係るところの負担ですね。そして、その後の維持管理に係る負担があるわけであります。

 まず、土地改良事業費に係るところにつきましては、先ほど委員もお触れになりましたように、中間管理機構が行う簡易な基盤整備については、とりあえず中間管理機構が農家の負担を肩がわりするという制度がスタートいたします。

 それからまた、通常の簡易な基盤整備、例えば畦畔の除去であったり暗渠排水であったり、こういったところは定額助成で行ってまいりましたけれども、さらにこの交付単価を約二割ふやすといったような充実強化措置をとっているところでありまして、そういった積極的な施策をもって、まずは建設段階に係るところの農家側の負担というものは軽減策に努めているところでございます。

 そして、一方で、委員が御指摘をいただきましたように、土地改良区に係る大きな課題として、電力料金の値上げ、混住化等による生活雑排水等の農業水路への流入などによる維持管理費の増加、その経費の確保が大きな課題になっているところでございます。

 御案内のとおり、農業水利施設の維持管理主体は、基幹的施設が土地改良区、末端は集落、農家がこれを維持管理するということが基本であります。また、公共性が高い大規模施設は地方公共団体が管理をしているところであります。

 農業水利施設全般として、農村の防災、減災といった公共的な役割も果たしていることから、農業者の維持管理費負担を軽減することが重要であります。

 そのために、従来から実施をしておりますところの、特に国営の基幹的施設に対する、基幹的施設というのはダムとか堰とか排水機場等でありますが、これに対する管理費の助成に加えまして、老朽化した施設を整備、更新する際に、省エネ施設や小水力発電施設を導入することによりまして、節電とか経費の補完に供しているところであります。また、土地改良区の合併等による組織体制の整備強化や、水利施設の機能保持のための整備、補修に対する支援、助成措置をとっているところでございます。

 末端の水路等の施設については、本年度創設をいただきました多面的機能支払いによりまして、水路等を適切に維持管理していくための地域の共同活動に対する支援を強化していくわけであります。

 今後とも、総合的な施策の実施を通じまして、土地改良施設の維持管理に係る課題に適切に対処してまいる方針であります。

鈴木(義)委員 中間管理機構のところでもお尋ねしたんですけれども、農振地域が対象の中間管理機構になっていますから、農振地域が外れたところの農地で土地改良区が管理している水路だとか排水路、堰もあるんだと思うんですけれども、では、そこの維持管理は誰がしていくのかということになってくるんだと思うんです。

 だから、中間管理機構で対象にしているのは農振農用地になっているわけですから、その農振地域から外れている農地というのはまだたくさんあるんだと思うんですね。政務官は、そのとき答弁の中で、そういった農振地域じゃない土地も対象に努力していくというような答弁だったと思うんですけれども、たしか、私の記憶が間違っていなければ、努力するというようなお答えをされていたような気がするんですけれども、違いましたですか。

三浦政府参考人 農振農用地以外のところにおける土地改良施設の維持管理ということについてでございますけれども、基本的なところをお答え申し上げます。

 今回創設することといたしました多面的機能支払いの中におけます農地維持支払いという支払いがございます。この支払いにつきましては、農振農用地区域の農地以外も対象とするということとしております。これは、土地改良施設、水路ですとかあるいは農道ですとか、そういったところの維持管理、水路の泥上げですとか農地のり面の草刈りといったことの共同活動を支援するという制度でございますので、農振農用地区域以外の農地については、こういった制度の活用が可能であるということでございます。

鈴木(義)委員 泥上げしたり草刈りするのは、それは維持管理なんですけれども、結局ハードの部分が壊れてしまったら誰が補修するんだという話ですよね、今の答弁の中にはそれは含まれていないような気がするんですけれども。

 時間がないので、最後にもう一問だけ質問させていただきたいんです。

 高度成長期のときに、食料増産をしていくために土地改良区をどんどん造成していった時代が来たんですけれども、それと同じように、道路や河川や下水道施設なども、高度成長期に都市基盤整備をどんどん進めていったものが老朽化してきて、それを維持修繕していかなければならない時代に今入ってきているんだと思います。そのために、アセットマネジメントを導入して経費の平準化という試みを既にスタートしています。

 土地改良区の合併の推進や、仮に運営が成り立たなくなった場合、どういう措置の仕方を考えておられるのか。

 最後は自治体に頼らざるを得ないというような話になったときに、国がきちっと、それも短期の支援だけじゃなくて、申し上げましたように、土地改良区で施設した水路だとか堰だとか水門だとか用水路だとか、そういうのを半永久的に使っていかなければ、水田のフル活用というのはかなわないわけですよね。

 実際に、農振地域じゃなければほとんど市町村に来るような、また県がサポートするような予算的措置というのは、私が勉強不足なのかもしれませんけれども、今まで聞いたことがないんですよね。

 それが現実なのに、これから老朽化していく施設がふえていって更新時期を迎えるに当たって、国が自治体に対して何らかの手だてをしなければ、その施設は使えなくなってしまうと思うんです。ぜひ御答弁いただければと思います。

三浦政府参考人 土地改良施設につきましては、土地改良区による管理、それから市町村が管理しているケースがございます。いずれの場合におきましても、負担軽減のための支援策を講じているというところでございます。

 具体的には、基幹的施設の管理ですとか体制整備に対する助成措置、あるいは小水力発電、省エネ型水利施設の導入、市町村が管理費を負担する場合の地方財政措置などの支援措置を講じておりまして、今後とも、これらの施策によって、土地改良施設の維持管理負担の軽減に努めてまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 ぜひ、農業の一番の基になるのが農地でありますので、継続して使えるように、維持管理に対して国の全面的なバックアップを期待して、質問を終わりにしたいと思います。

 以上です。

坂本委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党、林宙紀でございます。

 きょうも、二十分お時間をいただいておりますので、以前、後編をやりますと申し上げておりました漆について、またちょっといろいろと聞かせていただきたいなというふうに思います。

 前回、漆というのはいろいろなメリットが、いいところがあるんだよという紙をお配りしたと思います。調べていくと、もっともっといろいろな、神秘的なものがあったりなんかしています。

 高校のときの化学で習った記憶がありますが、金属の、いわゆる金ですね、ゴールド、これは非常に安定的な物質と言われていて、だからこそ世界で貨幣としてずっと使われてきたような歴史もあるわけなんですが、その金を溶かすことができる薬剤というのが一つだけありまして、これは王水と呼ばれるものなんです。濃塩酸と濃硝酸を三対一でまぜた混合物なんですが、金はこの王水というものにだけは溶けるという特質を持っています。そのぐらい強い酸化力を持っている王水をもってしても、実は、漆を塗った塗装面は溶けない、そういう安定的な性質もあるんですね。非常に酸、アルカリにも強い、こういう性質を持っています。

 ただ、漆には一つだけ弱点がありまして、紫外線に弱いというものがあります。だからこそ、建造物などに使われている漆というのは、十年なり二十年といったスパンで塗り直しが必要だったりする。あるいは一方で、漆器などに使われているもの、これは家の中などで使っておりますので、基本的には長くその効果が続くというようなことで使われてきた、こういうことがあるんですね。

 調べれば調べるほど、本当におもしろいなという漆なのでございますが、きょうは、そういった漆が実際にどこにどのぐらい使われていて、コストがどうなっているのか、そういったところをちょっと質問していきたいと思うんです。

 まず、通告していた質問の一番と二番、ちょっとまとめて聞きますが、今申し上げた、こういうものにこのぐらい使っていますよといったような漆の用途別の使用量、これがどうなっているのかということと、それから、漆の生産をする方々の収益、大体このぐらいの販売額で、収入がこのぐらいで、コストはこのぐらいですといったところ、おわかりになれば、ぜひ教えてください。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、私ども林野庁で毎年実施しております調査では、生産量とか栽培面積について把握しておりますが、用途別の使用量については把握しておりません。

 委員から御指摘ございましたので、今般、国内生産量の約七割を生産しております岩手県二戸市の浄法寺町でございますけれども、そこに聞きましたところ、生産量の約八割ないし九割は文化財修復用に、残りは漆器用として出荷されているということでございました。また、茨城県、栃木県などほかの産地では、主に漆器用として出荷されているということでございます。

 こういったことで、我が国の漆の生産量のうち、六割程度が文化財の修復用、残りが漆器用に用いられているというふうに考えているところでございます。

 また、漆の生産の収益構造でございます。

 私どもは定期的な調査を行っていないんですけれども、過去、平成四年でございますけれども、漆生産に必要な生産資材の量、それから労働投下量等について、業界団体が調査を実施しております。

 この調査結果をもとに、最近の単価を踏まえてあえて試算いたしますと、漆の販売収入が漆一キログラム当たり約四万六千円でございます。生産費は約三万四千円となっております。そのうちの半分が労賃になっているところでございます。

 ただいま申し上げましたような試算でございますけれども、林野庁としても、今後、早急に生産者に対する聞き取り調査を行うなど、実態の的確な把握に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 意外に、収益としては赤字になっているということではない。利益がたくさん出ているかと言われれば、そうでもないかもしれませんが、しっかりとこれは利益が出る構造になっているというところは一つ知っておくべきことなんじゃないのかなと思います。

 それで、今六割ほどが文化財等々に使われているというお話でしたので、またこれも三番と四番で通告していたものをちょっとあわせてお伺いします。

 まず、きょうは文化庁の部長さんにも来ていただいておりますので、文化財の修復にかかわる漆の需要量はどのぐらいなのかということと、それから、その際に使われる国産漆と輸入漆の大体の比率というんですか、こういったもの、それに加えまして、最近の文化財修復の事例で、幾つか例を示していただいて、大体どのぐらいの漆が使われていますよというところを教えていただきたいと思います。

山下(和)政府参考人 お答え申し上げます。

 文化財修復におきます漆の使用量でございますけれども、これは、国宝、重要文化財に指定されている建造物における使用量を社寺建造物美術協議会という団体が調査しております。

 直近の実績は、平成二十四年度の数値になりますけれども、全体で約二千キログラムが使用されている。このうち、国産の漆は約七百キログラム、また輸入漆は約千三百キログラムとなっております。

 また、最近の修復事例でどのぐらい使われているのかというおただしでございますけれども、最近の保存修理事業におきまして漆を使用している事例といたしましては、例えば、日光の二社一寺、埼玉県の国宝歓喜院聖天堂、あるいは大分県の国宝宇佐神宮本殿、こういった修理事業におきまして漆を使用しております。

 私ども文化庁で、申しわけございません、個々の使用量は逐一把握できておりませんけれども、把握できている範囲内で申しますと、例えば、使用量の多いケースとして、日光二社一寺、これは日光東照宮、二荒山神社、輪王寺を総称して二社一寺と申しておりますけれども、こちらがいわゆる平成の大修理ということがずっと続いております。この中で、近年の平均使用量といたしましては、年間で約四百五十キログラムを使用しているという状況でございます。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 国産の漆は、近年ですと大体年間千四百とか五百キログラムでございまして、そのうち、今、国宝ですとか重要文化財については七百キロほど使われているようだというお話でしたので、大体半分ぐらいはこういった重要文化財で使っているんですけれども、当然、年間二千キログラム使ってきているわけですから、やはりどうしても輸入をしないと賄えない、そういった事実はあるんだなということでございます。

 私の地元だと、伊達政宗公の霊廟である瑞鳳殿というものがありますが、そこもやはり同じく漆をしっかりと使っているということもありますので、恐らく全国的にそういった形でいろいろなところで需要はあるということでございます。

 それで、ちょっとお伺いしたいのは、こういった形で、文化財の修復を初めとして、まとまった量の漆の需要といったものがあって、かつ、やはり国産を求める声というのは非常に大きいという中で、そうはいっても、文化庁の方では漆の生産というところにはやはり踏み込めないんだと思うんですが、そうすると、国産漆を増産するかどうかというのはまた別なんですけれども、そのために、では、こういうふうにしていこうとか、各省庁、具体的には文化庁さんと林野庁さんになると思うんですが、どういった連携をしてきているのかということについて御答弁をいただきたいと思います。

小里大臣政務官 漆の自給率は二、三%程度でありますが、国産漆につきましては、御指摘のとおりに、文化財の修復や高級漆器の上塗り等の原料として使われていると承知をしております。こうした中で、国産漆の生産振興のためには、文化財を所管する文化庁、あるいはまた、漆器産業を所管する経済産業省と連携していく必要があると考えております。

 このため、関係省庁との間で、漆の需要量の動向に関する情報や関連施策の実施状況等の動向について情報の共有を図りながら、農水省としても、例えば造林費とか施設整備費とかいったことを含めて、施策の展開に取り組みながら、生産振興を図っていく所存であります。

林(宙)委員 ぜひ、そういった省庁の枠を超えて協力をしていただきたいなと思うんです。

 きのう、実は、この質問のための準備ということで各省庁の方に来ていただいたんですけれども、済みません、これは悪いと言っているんじゃないですよ、なんですけれども、担当の方が初めてそこで名刺交換をするような状況だったりするわけですよ。電話等々ではやりとりをされているということだったので、それでいいと思うんですけれども、そこをもっと綿密にコミュニケーションをとっていただくということで進むものもあるでしょうし、そういったところからしっかりやっていただけるように、これは漆に限ったお話ではないですから、やはり横串というのが必要だとずっと言われている中で、そういったことも視野に入れてやっていっていただきたいなと思うんです。

 それで、質問をちょっと一つ飛ばせていただいて、先に後ろの方の質問を聞かせていただきたいんです。

 そうはいっても、実は、漆に関しての取り組みというのは結構やっておられるようで、例えば、平成二十年度、二十一年度は、地方の元気再生事業という中で、先ほど御答弁でも出していただきました、浄法寺漆による地域再生プロジェクトということを岩手県でやられているということなんですね。

 これは、所管は経済産業省でありますので、この事業に対して大体どのぐらいの予算を投入して、その成果はどうだったのかという点について御答弁をお願いしたいと思います。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 岩手県二戸市におけます浄法寺漆によります地域再生プロジェクトについての予算と、それから成果についてのお尋ねでございます。

 こちらは、国の委託事業といたしまして、平成二十年度には二千七百万円、平成二十一年度には二千百万円の予算規模でございまして、内容といたしましては、植樹祭、展示会の開催や、漆器の販売店等を対象としたワークショップを開催し、これを市が主体となって実施しました。

 その成果でございますが、展示会には累計二千五百名を超えます参加者が来場し、漆に対する関心や認知度を向上することに成功したというふうに考えてございます。その結果といたしまして、それまでほぼゼロでございました二戸市におけます漆の新規植樹本数が、平成二十三年には約七千本へと飛躍的に増加しております。

 また、二戸市では、漆工芸品の製造販売を行っております協同組合等の販売額が、平成二十年度から平成二十五年度までの間に約一・七倍となるなど、本事業によりまして一定の成果が得られたものと評価しております。

林(宙)委員 ということで、なかなかの成果を出しているんじゃないかなと思うんですね。これを継続して、何らかの形で振興につなげていくという道をぜひ考えていただきたいと思いますし、私たちも考えたいと思っております。

 それに加えて、独法、森林総合研究所なんですけれども、こちらでも研究プロジェクトを行っているということなんですね。この間質問したときに、ぜひこれを教えていただきたかったなと思うんですが、後で調べたらこういうものがありましたということで、これもなかなかすばらしい成果を上げているというふうに聞いております。

 実際には、二〇一〇年から一二年度ということで、地域活性化を目指した国産ウルシの持続的管理・生産技術の開発というすばらしい研究だと思いますが、その成果を改めて教えていただきたいのと、あと、生産現場で今どういった形で生かされているんでしょうかという点について御答弁をお願いします。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 森林総合研究所でございますけれども、二〇一〇年から一二年度でございますけれども、先生御指摘のとおり、地域活性化を目指した国産ウルシの持続的管理・生産技術の開発という研究プロジェクトに取り組んでおります。三年間で、約六千八百万円でございます。

 この研究でございますけれども、植栽に適した土壌の解明、そしてDNA解析等による優良系統の選抜などの成果がございました。この研究成果を一般向けにわかりやすく解説したマニュアル、「ウルシの健全な森を育て、良質な漆を生産する」というものでございますけれども、このマニュアルを作成いたしまして、関係機関に配付するとともに、ホームページ上でも公開しているところでございます。

 このマニュアルでございますけれども、岩手県二戸市浄法寺町など主要な生産地にも配付しておりまして、生産現場で技術研修会というものがございますけれども、そういったものにも活用されているというところでございます。

 私どもとしても、この研究成果が漆の生産者や関係団体等によって大いに活用されるように努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 ということで、これは去年の、二〇一三年の九月に発行された、森林総研からのマニュアルというか冊子なんですけれども、すばらしい内容なんですよ。これは、ぜひ皆さんにも御一読いただきたいと思うんですね。よくまとまっております。忙しい先生方ですから、それを簡単にまとめたペーパーというのも林野庁さんの方で用意されているということで、研究の目的とかその成果とかを箇条書きでぱっとまとめたものもあります。

 これなんかを見ると、漆の植栽に適した場所は褐色森林土であるということとか、これはなかなか一般的には知られていないことだと思うんですよ。私も初めて知りました。

 そうすると、褐色森林土というものがもし適しているということであれば、やはりそういったところでどんどん候補地なんかを探していくということも今後考えられるでしょう。

 あるいは、よく、漆の関係の方々からは、耕作放棄になっていて、今後農業をやる見込みもなさそうだというような場所で適地があるんだったら、そういったところにぜひ植栽を進めていただきたいとか、そういうアイデアなんかもありますので、それもまた一つの案じゃないのかなと思うんです。

 今、耕作放棄地という話をしましたが、漆というと、やはりかぶれますので、人里に近いところには実は今余りない。皆さんも、漆が生えているところというと、大体、ちょっと山間部というか、山の方に近いところにひっそりという感じのイメージだと思うんですよ。

 ところが、これは調べると、今でもありますけれども、漆畑という地名があったりとか、漆畑さんとか漆原さんとか、そういうお名前の方もいらっしゃいますよね。それは、もともとは漆は平地の畑で育てていたから、そういう名前、地名が残っているんだと。江戸時代は、五木といって、畑に植えていい木ということで五つぐらい指定されていたそうなんです。お茶とか桑とか、こういうものなんですけれども、そのうちの一つに漆が入っているんです。

 山間部の傾斜のあるところとか、ちょっと狭い密集した場所で漆をとるというのは、かぶれる危険性がありますので、非常にコストがかかるんですけれども、平地で、ある程度間隔をあけて、広いところで植栽をしていくことで、作業効率も上がるし、コストダウンにもつながるんじゃないか。だからこそ、今、浄法寺漆なんかもそうですけれども、三メートル、四メートル、間隔をあけて植栽をしたりとか、そういうことをやっているんです。

 こういう知見を生かしながら今後漆を増産していくというのは、一つありなんじゃないのかなと思うんですが、ちょっと最後に、飛ばした質問で大臣にお伺いします。

 とはいえ、きょう御答弁にもありましたように、漆の生産量についてはわかっていますが、それをどの用途にどのくらい使っているかはなかなか把握できておりません。そういった形で、データ的なものはやはりこれからしっかりとっていくとよろしいのではないのかなと思うんです。

 増産するにしても、こういう目標に対してこのぐらい必要だ、だからこういった生産量目標を設定しましょうとか。ほかのものであるじゃないですか、小麦だったら平成三十二年度までにどのぐらいとか、やはりいろいろ目標を立ててやっていらっしゃるはずなので、こういった目標を設定するにも、調査等々を早急に行っていくということが必要なんじゃないのかなと思うんです。

 最後に大臣に、今後、漆の増産ということに関して、どのように取り組んでいくべきとお考えなのかというところをお伺いしたいなと思います。

林国務大臣 前回に続いて、私も大変勉強になったと思っております。

 安定供給は、やはり文化財の修復に欠くことのできない重要な課題だと思っておりまして、先ほどちょっと御議論があったと思いますが、輸入漆の少なくとも十倍以上の価格で国産の漆が取引されているということでありますので、まず修復用を初めとした今後の国産漆の需要について、関係省庁と連携して、名刺交換も済んだようですから、把握したいと思っております。

 それから、国内の漆林の面積は全国で三百六十七ヘクタールということですが、まずは、これらのうち、どの程度が実際に漆生産に利用可能か、関係の県の皆さんの協力も得ながら把握をする。そして、その上で、必要な量の安定供給に必要な漆林、どれぐらい必要なのかということ、造成、整備等についてどうしていくのか、こういう順番で検討していく必要があると考えておりまして、そういった意味で、今後、森林整備事業、国有林における分収林制度を活用した漆林の整備が図られるように努めてまいりたいと思っております。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 恐らく、漆に限らず、日本の国産のもので、本当はもっともっと使えるんじゃないかというものがたくさんあるはずだと思いますので、そういったところもぜひ皆さんに御協力をお願いして、国産のものをどんどん振興できるようにしていけたらなというふうに思っております。

 それでは、以上できょうの質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 まず、農協改革の関連でお伺いしたいと思います。

 日本型直接支払いのときの議論で、生産調整の件で、生産調整を実質的に廃止して、行政が割り振るやり方をやめて、生産者団体がきめ細かい情報をもらうことによって自主的に判断できるようなシステムをつくるということでありました。その場合に、農協改革との関係がどうなるのかなというのが、きょうお伺いしたいことであります。

 規制改革会議が、農協改革、農政改革の意見として、全国農業協同組合中央会の指導権を廃止するということで、全農を、これは株式会社にするのか、あるいはシンクタンクにするのか、いずれにしても、今の農協的な生産者団体の取りまとめ機能をなくしていくということなんだろうと思います。そうした場合に、自主的な生産調整というのは円滑にいくのか、そことの関係がちょっと疑問に思うところであります。

 自主的に単協がやっていくということは、それはそれでいいんですけれども、そこをハンドリングする、生産調整というのが実効性あるような形で、農政改革でおっしゃったような形でできるのかどうか。そことの関係というのはどのようにお考えなんでしょうか、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 規制改革会議の方で五月二十二日に農業改革に関する意見を取りまとめられまして、今お話しになったように、中央会制度の廃止を含む農協の見直しが内容になっております。これにつきましては、今後、与党とも協議しながら具体的な内容は詰めていきたい、こういうふうに思っております。

 一方で、米政策の見直しですが、御案内のように、五年後を目標にして、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、生産者や集荷業者、団体が中心となって、円滑に需要に応じた生産が行えるように環境整備を進めていこう、こういうことになっております。

 したがって、規制改革会議と米政策改革の関係でございますが、今後、農業協同組合、農協の見直しの内容を与党と協議しながら決定していくということでございまして、まだ最終的な決定をしておりませんので、今の段階でこの関係がどうなっていくのかということを言及するのは大変難しいことでございまして、コメントは差し控えたい、こういうふうに思っております。

 生産者の主体的な経営判断、あるいは集荷業者、団体の販売戦略が的確に行われるようになるということが本質的に大事だと考えておりますので、その意味で、きめ細かい情報をしっかり提供していくということが大変重要だ、こういうふうに考えております。

畑委員 これは個々の単協がしっかり判断できるというのが理想でありますが、上部団体のいろいろな調整、指導が必要なのかどうかという観点はやはりこれから議論しなければいけないと思いますので、その点はまた検討をお願いしたいと思います。

 次に、TPPについてお伺いしたいと思うんです。

 TPPについては、豚肉の関税を大幅に引き下げるということも最近話題になったり、そういう方向で進んでいるということも言われておりますが、これはこれで、お聞きになっても、恐らくはっきりお答えにならないでしょうから、これはいいんですが、やはりここで隔靴掻痒の感がするのが情報公開のあり方であります。

 この委員会も含めて何回も議論させていただいておりますが、これまでの答弁は、TPPの交渉状況については、守秘義務との関係も含めて、そこはあるんだけれども、工夫して、情報公開を適切にやっていくということだったろうと思います。

 適切にやっていくということの意味はどういうことなのか。必ずしも適切になされているように私は思えないんです。

 メディアの方では、政府としては、これは勝手に書いているということなんでしょうが、ぼんぼん出てくる。そういう中で、国会で、メディアに出ているようなことについて、決まっていないというか、そこについてのなぞったお答えすらもいただけないというのはどうかなと思っていますが、どのように適切に工夫していかれておられるのか、お伺いしたいと思います。

西村副大臣 もう御案内のとおりでありまして、交渉上の守秘義務がある中で、各国とも、非常に苦労しながら、悩みながら、工夫をしているというふうに承知をしています。

 当然、対外交渉、相手のある話ですので、手のうちを見せるわけにもいきませんし、お話しできること、できないことも当然あるわけでありますけれども、御指摘のとおり、我々も工夫をしてこれまでしてきている中で、国会における答弁、これも不十分と言われるかもしれませんけれども、お話しできることは誠意を持ってお答えをしてきておりますし、記者会見あるいは与野党の会合で、交渉の状況の御説明、それから、関係団体、地方公共団体にも随時説明会を開いてきております。今回のシンガポールでの閣僚会議の間でも、来られていました関係団体に対して説明会も実施をしております。

 言えることはできるだけ広く情報提供を行いながら、御意見もいただく機会も設けてきているところであります。

 引き続き、できる限り国民への情報提供ということで、しっかりと今後ともやってまいりたいというふうに思います。

畑委員 精神論はわかりますが、工夫の内容がやはり具体的にわからないわけであります。

 端的に言うと、今、野党案で内閣委員会に出している法案というのは、こういう交渉については定期的に国会に報告することとともに、一つ仕組みを加えていまして、守秘義務の関係をクリアするためには、受けた国会議員が守秘義務を持つ、あるいは秘密会で報告するということを条文上書いております。

 私は、工夫の内容はこういうことがあってしかるべきではないかなと思っております。守秘義務のひな形、契約のひな形でも、情報を出すことは、しっかり秘密が担保されれば否定されておるわけではないと書いてあるし、私もそう理解しておるわけでございます。

 具体的に、工夫の内容として、野党の議員立法にあるような、守秘義務を課すとか秘密会をやるとか、そういうことについてどうお考えでしょうか。

西村副大臣 御指摘の議員立法の件でございますけれども、まさに議員立法でありますので、国会でお決めになるお話でありますし、今、国会議員に守秘義務がないわけでありますけれども、この守秘義務のあり方についても国会で御議論いただくことが適当であると思いますので、政府としてはお答えを差し控えたいというふうに思います。

畑委員 法案についてのコメントは要らないわけでありますが、法案でこれをやるかどうかは別として、守秘義務をしっかりかけることで公開する方法はあるかないか、法案とは別に、そういうことについてのお考えを賜れればと思います。

西村副大臣 十二カ国が信頼関係の中で交渉を行ってきておりますので、お互いに信頼し合い、そしてルールを守りながらやってきておりますので、そうした信頼関係を維持していくという観点からは、交渉の具体的内容に関する情報公開には一定の制約があるというふうに理解をいたしております。

畑委員 なるほど、制約があるという中で、ちょっと否定的だというふうなトーンだと承りました。

 そこは、それでいいのかどうか。やはりある段階で、マスコミの報道が先行してこういう方向になっているというのは、非常に地域の農家に対しても不安を与えております。端的には、政府は、決まっていないということは、それはそのとおりなんでしょうが、そういう検討をされていることがあって、誰かがぼろっと言うからこそ、こういう報道にもなる。そうであれば、報道をしっかり、変なことを言わないということも必要だし、あるいは、ある一定の範囲の中では、国会ではそれなりのことをなぞって答えていただきたいという思いがあります。

 きょうは、時間もありませんので、この段階でとどめておきたいと思いますが、やはり情報公開のあり方をもうちょっと検討していかなければいけないという問題意識は持っております。

 次の話題に入らせていただきます。

 きょう、新聞で、ちょっと資料を配付させていただいております。

 農業というのは、人手不足もありますので、外国人実習生という形で繁忙期には労働力を導入しているということが実態であります。

 その場合に、この新聞の記事は、岩手県の県北のレタス、キャベツ農家で、当然、監理団体を通じて受け入れているわけです。個々の農家が受け入れるにはちょっとその体制とか要件に当てはまりませんので、監理団体というのを通じて受け入れる。その監理団体が、別のところで、申請内容と事業内容にそごを来したということで、監理団体が悪いわけですが、そういうことによって、岩手県の県北の農家が受け入れられなくなったということであります。

 監理団体が守らなければ受け入れないということもわかりますし、法制度はそうだし、そのことをとやかく言うつもりはありませんが、この制度で不思議なのは、線を引いておりますが、監理団体のトラブルで、関係ないような、その傘下で頼んでいるような農家や実習生までだめだというのはどうも釈然としないという声が地域からあります。

 いろいろ事務方と議論していると、さはさりながら、監理団体というところを通じている以上、しようがないし、逆に、個々の農家、あるいは農家が組んで実習生を入れればいいじゃないかということについては、別の監理団体を頼むなり、つくれば、それはできるよということなんですが、そこのところは、実態と建前が合わない部分も含めて、なかなか難しい事態になっているような気がしております。

 きょうは、これは法律で決まっていることですから、このことの個別のいい悪いは、悪いことなんですが、現在、外国人研修生に係る技能実習制度の見直しが全体的に検討されていくというふうに伺っておりますが、その方向性についてお伺いしたいと思います。

平口大臣政務官 お答えをいたします。

 技能実習制度のあり方につきましては、本年四月四日に経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議が開催されておりますが、その会議上、総理大臣の方から、法務大臣を中心に、技能実習制度の監理運用体制を抜本的に強化、改善するとともに、実習期間や対象業種などについて必要な見直しを行う、こういう指示がございました。

 法務省におきましては、その前の去年十一月から、法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会の分科会におきまして、農業分野を含めまして制度の見直しについて検討をいただいているところでございます。

 この見直しでございますが、まず、国際貢献という制度の意義を十分踏まえつつ、不適正な受け入れを防止する措置を講じた上で、あわせて、例えば、優良な受け入れ機関については、従来より一段高い技能等を習得するために、技能実習期間を延長するということや再技能実習というものを認める、こういったようなことの可否についても検討をいただいているところでございます。

 近々に一定の方向性が出る、こういう見込みでございます。

 以上でございます。

畑委員 この検討の方向を見守りたいと思いますが、これは簡単じゃないんですが、本来であれば、その受け入れについて、監理団体ではなくて、使いたいところがしっかりと受け入れる申請をして、審査を受けられる体制がいいと私は思っています。

 さはさりながら、それは、海外に支店とか出先がないということも含めて、そこの適正さをどう担保するのかという部分があるわけですが、そこの部分も含めてまた規制緩和をするなら、こういうところの規制のあり方というのを本当は議論していただきたいと思うんです。

 もう一つ、これは質問じゃありませんが、この審査の中で問題だったのは、だめならだめで、早くその見通しを示してもらえればいいんだろうと思うんです。

 昨年八月から、農家が受け入れる準備をしてきた、書類づくりとかいろいろな調整を。そして、二月ぐらいに多分申請したと思うんですが、その途中段階で照会したときに、今慎重に審査しているけれども、もうちょっと待ってくれということで、三月末の段階にあった。それが、どうなんだ、どうなんだという段階で、なかなか難しいようだということをはっきり言われないまま、五月の今の段階に来ているということのようです。

 であれば、これは許認可全体の途中の情報開示のあり方ともかかわるんですが、見通しをもうちょっと示してもらえればいいのかな。つまり、受け入れる場合、基準がありますので、その基準に照らして、今までの事業内容と申請内容のそごを来している監理団体である、これは、どの程度のそごかによって、許可、不許可というのはまた変わるんでしょうが、今までの基準からするとかなり厳しいよと、そういうことを早い段階で、二月、三月の段階ではっきり言ってもらえれば、それはそれで対応のしようもあったのだろうと思います。

 こういうことも含めて、情報開示のあり方も、きょうは指摘にとどめますが、わかっていることは適時適切に言ってもらえれば、だめならだめだと言ってもらえれば、農家も対応のしようがあるんだろうと思います。ぜひともそのことをお願いしたいと思います。

 こういう議論の構造的な問題というのは、やはり農業の労働力の不足ということであります。建設労働者なんというのは、外国人労働者を入れるかどうかで議論はあるわけですが、実は、建設労働者というのは、別に時間が来れば減っていくわけで、今入れた場合、後でどうなるかという問題が出ますが、農業というのは、今ふえて、急に減るものでもなくて、一定の、安定してずっと続いていくものですから、足りないとすれば、そこをどうやって手当てするかというのをやはり今から議論した方がいい分野だろうと思います。

 農業について、担い手育成とか、あるいは、規制改革会議で、農業生産法人の規制改革で、こういう経営の観点、誰が経営するかというところは議論が続いておりますけれども、こうやって規制緩和をしてきたり、いろいろな多様な主体に経営をさせることにすればするほど、その下で働く人の労働力をどうするか。家族労働じゃなくなってくるわけですから、そこをどうするかというのが、やはり人手不足の関係も含めて、これから多分議論になったり、考えなきゃいけない分野なんだろうと思います。

 そういう場合の働き手、実際の労働者をいかに確保するか。その点、どのような検討をされるのか、どうお考えなのか、大臣にお伺いしたいと思います。

林国務大臣 外国人の技能実習制度については、今委員がおっしゃったように、そもそもの目的は、開発途上国の経済発展に資するという国際協力を目的とする制度でございますので、これでもって労働不足を補うという制度ではない、こういうことであります。

 では、全体としてどうしていくのか、こういうことでございますが、今、高齢化が進んでいる、また平均年齢が上がっていくという中で、若い方が入ってもらえるような制度をいろいろやっております。

 今委員がおっしゃったように、そういう経営者が入ってくると、働く人はどうなのか、こういう観点でございましたけれども、ここが普通の大きな工場や会社のようにすっと分けられるかというと、そういうところが、農業の場合は労働者と経営者というのがこの二分法でなかなかいかないというところがございます。

 あわせて、今経済界との連携ということで、日本のお得意のロボット技術とかICT、こういうことを活用して、なるべく省力化技術の導入を図っていく、こういうこともやっていく必要がある、こういうふうに思っております。

 全体として、必要な人数というものも試算をして、それをもとにプランもつくっておるわけでございますので、こういう計画に基づいてしっかりとやってまいりたいと思っております。

畑委員 よろしくお願いしたいと思います。

 外国人労働者の導入というか受け入れというのは、大きな全体の分野の中で議論にはなると思いますが、そこは研修生という形でやっています。これは難しいんですが、一定の限定した範囲でどうするかという議論もしなければいけないのかもしれません。

 実は、こういうことを申し上げるのは、地元で足りなければ、国内の労働者を雇ったらいいじゃないかと。実際、今回の場合も、国内で、いろいろな地域で求人募集を出したんですが、集まらないというんですよね。

 これは、要は、今の日本人は、いい悪いは別として、汗をかく、こういう汚い、きついというのになかなか入りたがらなくなった。仮に入れても、文句を言ったり、なかなか使いにくいといろいろ言って、そういう中で、実際にこうやってしっかり働く人をどうやって確保するかというのは国内では難しいんだ、これも現実だというふうに言われております。普通の農業者、みずから考えていく人はそれはいいんですが、実際、こういう繁忙期に人をどうやって手当てするかというところの問題なんだろうと思います。

 そういうことも含めて、実習生でやるのであれば、実習生の受け入れを的確に審査しながら、しかし、受け入れやすくするような規制緩和はどうあるべきか。あるいは、実習生という形でやらなければ、それは、これからのいろいろな問題を含めて、副作用を考えながらも、どうやってもうちょっと広げていくか、この両面から考える時代も来ているのかという気もいたします。

 難しい問題でありますが、これからもよろしく御検討と議論をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

坂本委員長 次に、内閣提出、参議院送付、特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 本法は、農産加工品等の輸入に係る事情の著しい変化に対処して、金融及び税制上の支援措置を講ずることにより、特定農産加工業者の経営の改善を促進するため、平成元年に、その有効期間を限った臨時措置法として制定されたものであります。

 これまで、本法の活用により、特定農産加工業者の経営改善に一定の成果を上げてきたところでありますが、農産加工品の輸入量の増加や国内消費における輸入品のシェアの拡大が継続しているところであります。

 このような特定農産加工業をめぐる厳しい状況に加え、国産農産物の重要な販路である農産加工業の持続的な発展が地域農業の健全な発展のためにも必要であること等を踏まえると、引き続き特定農産加工業者の経営改善に取り組んでいく必要があります。

 このため、本法の有効期限を五年間延長し、平成三十一年六月三十日とすることとした次第であります。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十四分散会


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