第2号 平成27年3月18日(水曜日)
平成二十七年三月十八日(水曜日)午前十時開議
出席委員
委員長 江藤 拓君
理事 加藤 寛治君 理事 齋藤 健君
理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君
理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君
理事 松木けんこう君 理事 石田 祝稔君
青山 周平君 井野 俊郎君
伊東 良孝君 伊藤信太郎君
池田 道孝君 勝沼 栄明君
瀬戸 隆一君 武井 俊輔君
武部 新君 中川 郁子君
中谷 真一君 橋本 英教君
古川 康君 細田 健一君
前川 恵君 宮路 拓馬君
森山 裕君 簗 和生君
山本 拓君 泉 健太君
金子 恵美君 岸本 周平君
小山 展弘君 福島 伸享君
井出 庸生君 篠原 豪君
稲津 久君 佐藤 英道君
斉藤 和子君 畠山 和也君
仲里 利信君
…………………………………
農林水産大臣 林 芳正君
農林水産副大臣 あべ 俊子君
農林水産大臣政務官 佐藤 英道君
農林水産大臣政務官 中川 郁子君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 松島 浩道君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 奥原 正明君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 三浦 進君
政府参考人
(林野庁長官) 今井 敏君
農林水産委員会専門員 奥井 啓史君
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委員の異動
三月十八日
辞任 補欠選任
今枝宗一郎君 青山 周平君
佐々木隆博君 泉 健太君
村岡 敏英君 篠原 豪君
同日
辞任 補欠選任
青山 周平君 今枝宗一郎君
泉 健太君 佐々木隆博君
篠原 豪君 村岡 敏英君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農林水産関係の基本施策に関する件
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○江藤委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長松島浩道君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君及び林野庁長官今井敏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○江藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古川康君。
○古川(康)委員 自由民主党佐賀二区選出の古川康でございます。
私は、十二年近く佐賀県知事を務めておりまして、答弁をするということは累次ございましたけれども、質問をいたすのは初めてでございまして、昨日も、質問をつくりながら、つい答弁まで書こうとしておりました。
本日は、林農林水産大臣の所信に対してお尋ねをするトップバッターという大変名誉ある機会を与えられて、本当にありがたく思っているところでございます。
それでは、早速質問に移らせていただきます。
林農林水産大臣は、今回の所信の表明の中で、強い農林水産業、それと美しく活力ある農山漁村、この二本柱に沿った形で所信について述べられました。私もこれに沿った形でお尋ねをさせていただきたいと思います。
そういう中で、まずお尋ねをしたいのは、今回の農地法、そして農振法の見直しでございます。
内容的には、地方自治体側が長年にわたって求めておりました農地転用に関する事務、権限を地方自治体に移譲することというのが主な内容になっておろうかと思います。これについては、大臣もよく御存じのように、地方自治関係者が長年にわたって求めていた改正でございました。
自分たちの土地をどうするかについて自分たちが責任を持ちたい、そういう気持ちで再三にわたってお願いをしてまいりましたが、今回、ようやくこうした改正案が出される運びになったことは、私も長年にわたってこうした運動をしてきたものとしてうれしく思っているところでございます。
しかしながら、一方で、これについては、ただ単に事務、権限を移譲すればそれで済むということではないとも思っております。新しい仕組みを導入していくことによって必要な農地はしっかりと確保するということも実現しなければならない、私もそう考えるところでございます。
今回の農地法の改正の中では、これまで大臣の事務あるいは大臣との協議が必要とされていた部分について、都道府県知事が判断をする、あるいは都道府県知事が判断をするに際して大臣に協議をするといった形で地方分権が進められようとしています。
また一方で、農振法の改正の中で、基本指針の策定に関する意見聴取手続が新しく出てこようとしております。
そこでお伺いをしたいと思うのでありますけれども、まず、今回、農振法の改正によりまして、国として、あるいは都道府県として、必要とする確保すべき農用地の面積目標の基本的な方向、あるいは都道府県の面積目標設定基準について、これまでになかった仕組みが導入されようとしていると伺っていますけれども、具体的にどのような仕組みなのかをお尋ねいたします。
○三浦政府参考人 お答え申し上げます。
今回の地方分権への対応におきまして、農振法の改正によって措置をしようとするところについてのお尋ねでございます。
農業振興地域の整備に関する法律、略称農振法と申しておりますが、その農振法の中で、国の基本指針の中で目標面積を定めるということとなっております。
これについて、今回、都道府県の意見を聞くということをいたしますとともに、都道府県が市町村の意見を聞くということも新たに盛り込むということとしております。
また、現在、都道府県が目標面積の設定ということをしておりますけれども、その設定の基準を国がつくることとしておりますが、それについて、現行制度で都道府県の意見を聞くこととなっておりますけれども、その都道府県の基準案につきましても都道府県から市町村の意見を聞くということとしておりまして、このように、市町村をこのプロセスに位置づけるということが眼目の改正を行うことを考えておるところでございます。
○古川(康)委員 今御答弁いただきましたように、これまでは、必要な農地面積について、それぞれ個別の市町村においては、自分たちの市町村の中で何ヘクタール農地が必要なのか、あるいは確保すべきなのかということについて、具体的な数値目標を持っていなかったというところになっていました。これを、今回はそれぞれの市町村が、自分たちのところでは何ヘクタール面積を持つということを都道府県と協議をし、そして、都道府県も国と協議をするという仕組みがビルトインされようとしているということは私は大変すばらしいことだと思っております。すなわち、市町村が、自分たちの区域の中の確保すべき農用地の面積について、いわば責任を持つ、公的な形で外に出していくことになったということは非常に大きな意味があると思っております。
その前提に立って、今度は農地法が改正されることになっているわけでございますけれども、そこで、農地法の改正についてお尋ねをいたします。
農地法の改正の内容は、農地転用の事務、権限の移譲についてということになるわけでありますけれども、その判断する主体が、これまで農林水産大臣だったものが都道府県知事に移っていく、一部は指定市町村に移っていくということになるわけであります。事務は移りますけれども、農地転用の基準の考え方そのものについても今回何か変更があるのかどうか、これについてお尋ねをいたします。
○三浦政府参考人 お答えいたします。
今般の地方分権改革におけます都道府県知事等への農地転用許可権限の移譲に当たりましては、これに伴って農地転用許可基準の見直しを行うことはしないということを考えております。
今後とも、優良農地の確保を図ることを基本といたしまして、農地転用許可制度の適切な運用を図ってまいりたいと考えております。
○古川(康)委員 ただいま御答弁いただきましたが、基準を緩めるということではないということで、これらがきちんと適切に運用されていく。あわせて、市町村も自分たちの農地の面積について責任を持つという体制ができていくことによって、必要な農地の面積は確保されていくものと考えているところでございますが、今までに全くなかった仕組みとして、指定市町村というのが新しく出てこようとしています。
これは、都道府県知事にかわって、一定の市町村については都道府県知事の権限を市町村長が実行できるという新しい仕組みのようでございます。
そこで、お尋ねをしたいと思います。
指定市町村というのは、一定の基準を満たせば合格できるような、そういうものなのか、それとも、なかんずく、特にすぐれたものだけが指定市町村になっていくという意味なのか、現時点における考え方をお示しいただければと思います。
○三浦政府参考人 今般の地方分権改革におけます農林水産大臣が指定する市町村への農地転用許可権限の移譲についてでございますが、これにつきましては、市町村の申し出を受けまして、一つは、農地転用許可制度等を基準に従って適正に運用できると認められること、二つ目には、農地転用許可制度等に係る事務処理体制が整っていると認められること、三つ目には、優良農地の確保に係る適切な目標を定めているといった基準を満たす、農地の確保に責任を持って取り組んでいただける、そういう市町村を指定するということを基本的に考えております。
具体的な指定基準につきましては、今後、学識経験者や地方公共団体関係者等から成る検討会を立ち上げまして、検討することとしているところでございます。
○古川(康)委員 わかりました。
指定市町村についても、安心してその事務をお任せすることができるところを指定するというお考えだというふうに理解をいたしたところでございます。
次に、農工法の適用見直しの問題に移ってまいります。
新農政プランを初めとするさまざまなプラン、あるいは日本再興戦略の中でも、最近は農業に関する所得を二倍にしていくということがあちこちで述べられております。これは、農業所得だけでなく、その関連も含めて二倍にしていくことであると理解をしておりまして、これを、私自身も選挙のときにも、随分いろいろなところでお話をさせていただきまして、本当にそういったことができるのであればということで、私は期待感を感じたところでございます。
そういう中、農業所得だけでなくてその関連、あるいは農家に入ってくるような所得ということを含めて二倍を目指すということになっていると理解をしているところでございますが、さらに加えて言えば、最近いろいろなところで議論をされている移住の話でありますとか、そういったことを考えますと、また人口減少にどう対応するかということを考えますと、農業あるいは農業と関連と言えるかどうかは別としても、農業地域に新しい工場が進出してくる、そういうことによって農村地域の雇用を生み出していくということは非常に重要なのではないかと考えております。その意味で、農業地域における工業の導入に係る法律、農工法の存在は極めて大きな意義があると考えております。
ところが、この農工法には適用の制限というものがございます。それが人口二十万人という要件でございます。もちろん、農村地域において工業を導入するという法律でございますから、大都市においてはそれは必要ないのかもしれませんが、昨今進められた市町村合併によって、もともとは農村地域であった、そして実態としては、市町村合併をした後も農村地域であるという実態は変わらないながらも、自治体の人口規模だけは二十万人を超えているというような例が幾つもございます。佐賀県内にもございます。
そういう人口要件を考えたときに、結果的に今二十万人以上になっているところが現在の農工法において対象になっているのかどうか、このことについて、まずは事実関係をお尋ね申し上げます。
○三浦政府参考人 お答えいたします。
農村地域工業等導入促進法、略称農工法の適用を受ける農村地域につきましては、法令で要件が定められておりますが、要約いたしますと、農業振興地域、振興山村、または過疎地域をその区域に含んでいる三大都市圏以外の市町村であって、人口十万人未満の市町村、あるいは、人口増加率や製造業等就業者率が全国平均よりも低い人口十万人以上二十万人未満の市町村となっております。すなわち、先生のお話にございました、合併で人口二十万人以上となった市町村というのは対象とはならないということでございます。
○古川(康)委員 今御答弁ありましたように、残念なことに、結果的に今二十万人以上の市の一部となっている地域は農工法の対象になっていないということがわかりました。しかしながら、実態としては、市町村合併によって市町村の区域が変わっただけで、実態は何も変わるところがありません。
これについて、私は、佐賀県知事の時代から、政府に対して、こうしたことの見直しについてぜひ検討をお願いしたいということを申していたところでございまして、それは地方六団体としてもお取り上げをいただき、政府としてもお取り上げをいただいたものと理解をしているところでございますが、これについての対応の状況はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。
○三浦政府参考人 農工法の農村地域の人口の要件につきましては、平成二十六年の地方からの提案等に関する対応方針、平成二十七年一月三十日の閣議決定でございますけれども、この方針におきまして、制度の活用が一層促進されるよう、その緩和を含めて見直しを検討し、平成二十七年中に一定の結論を得るとされております。
農林水産省といたしましては、この閣議決定に従って検討してまいりますけれども、農工法の制度も含めて、農村地域において雇用を確保し、所得を向上させるための方策等について検討するための有識者検討会を立ち上げることとしたところでございまして、この検討会の中で、御指摘の点につきましても検討してまいりたいと考えております。
○古川(康)委員 その会議の中で、地方の意見も踏まえた、いい結論が出ることを期待申し上げたいと思います。
次に、大きな二番目の美しく活力ある農山漁村の質問の中で、まず、水田フル活用についてお尋ねをしたいと思います。
昨日示された米穀の新用途への利用の促進に関する基本方針案の中にも書いてありましたが、水田面積は、現在、水田面積の約六割で主食用米の需要を賄える状況にあるということで、まことに残念なことに、現在は、水田で主食用米を作付されたら、つくり過ぎてしまうという状況にございます。
そういう中で、新しい用途のものをどんどんやっていこうという方針が農水省から示されているところでございますけれども、その話を地元にしますと、本当に大丈夫なのか、そんなことを言っているけれども、また変わるんじゃないのか、予算は確保できるのかということを聞かれます。
こうしたことについて、政治家である政務三役の皆様方は、地元ではどんなふうに支持者の方に御説明されているのか、その辺をお示しいただければと思います。
○あべ副大臣 委員にお答えいたします。
特に、我が国におきましての飼料用米の需要が毎年八万トンずつ減少している中にありまして、需要に応じた生産を進めるとともに、委員がおっしゃるように、水田のフル活用を図るため、需要のある飼料用米など主食用米以外への転換を進めていく必要があるんだと考えております。
飼料用米の需要に関しましては、二十七年産につきましては、畜産農家から新たに四・四万トン、飼料会社から約百万トンの需要が示されているところでございまして、中長期的には、日本飼料工業会から、価格などの条件が合えば、約二百万トンの使用が可能との発表があるなど、さらなる需要が見込まれているところでございます。
このため、農林水産省といたしましては、飼料用米などの生産拡大に向けまして、水田活用の直接支払交付金を充実し、いわゆる数量払いの導入などの、飼料用米、また米粉用米のインセンティブを高める、利用拡大が見込まれる多収性専用品種の種子について、必要量を確保する、耕種側におけるカントリーエレベーターの整備、畜産側における加工、保管施設などの整備に対しまして支援するなどの措置を講じているところでございます。
引き続き、農業者の方々が安心して飼料用米などの生産に取り組むことができるように、新たな食料・農業・農村基本計画におきましても、飼料用米などの戦略的作物の生産拡大を位置づけ、その達成に向けて必要な支援を行うこととしているところでございます。
ぜひともよろしくお願いいたします。
○古川(康)委員 こういう方向についてはみんな何となくわかっているとは思うのでありますけれども、そうなっていけば、どうしても財源が必要になってまいります。私ども自由民主党は、その必要な財源を確保しつつ政策を進めていくというのが党是みたいなものだと思っております。
こうしたことをやっていこうとすればするほど、今の農林水産省予算では足りなくなるというようなこともあるのではないかということも危惧します。そのためにも、こうした水田を守って育てていくことの大事さ、いわば国家安全保障上の観点からも、そういう飼料米の作付について、何らかの形で国民の方々に御理解をお願いするような事柄もこれからやっていかなければならないのではないかということを私自身感じているところでございます。
最後に、農協改革についてお尋ねしようと思っておりましたが、時間が来ましたのと、次の宮路委員も同様の趣旨で農協改革についてお尋ねをいただくということになっております。
最後になりますが、林農林水産大臣、農協改革についても一言だけお願いしたいと思います。
農協改革、私も地元に帰りますと、何をやろうとするのか、本当に大丈夫なのかという声を伺います。私どもは、農協が今のままでいい、農業が今のままでいいとは、そのようには考えておりません。今回、自由民主党、公明党が一緒になって、そして政府と一緒になって進めようとしている農協改革が農協に何をもたらすのか、ぜひ大臣のお言葉をいただければと思います。
以上であります。
○林国務大臣 農林水産業・地域の活力創造プランというのを決めさせていただきまして、食料が大変に足りない時代にどうやって供給をしっかりやっていくかということから、食料が、需給が緩んできて、どうやって売っていくかということが大事な時代になってきた。それに対応して、六次産業化、それから、国内外、海外マーケットも視野に入れた需要の開拓、そして、生産の方も、集積バンクによる担い手農業者への農地集積、こういうことをやってまいりました。
したがって、これをやっていくためには、政策もそういうふうに変わっていきますし、その政策のもとでそれをやっていく主体、これは農業者であり、農協でありということになりますが、これも、さらにこういう政策を活用していただいて、自由に経営を展開していっていただかなければならない。こういうことでありますので、やはり、農業者が自主的に設立した協同組織であるという農協の原点にもう一度立ち返っていただいて、新しい環境でやっていこうと。
私も地元でよく申し上げているのは、今までやってきたことが間違っていたというわけではなくて、環境が変わってきたので、それに合わせてよりよいものに変わっていこうということをみんなでやっていこう、こういう改革でありますという説明を、意を用いてやっているところでございます。
○古川(康)委員 ありがとうございました。
以上で私の質問を終わります。
○江藤委員長 次に、宮路拓馬君。
○宮路委員 鹿児島から参りました自由民主党の宮路拓馬でございます。
ただいま役所の先輩である古川委員からバトンを引き継ぎまして、質問をさせていただきます。
まず、父宮路和明が、政務三役の皆様、あるいは政府参考人の皆様、そして委員の皆様に大変お世話になりまして、ありがとうございました。
今回、約四十歳若返って、我が党自由民主党において最年少の当選とさせていただきました。私は、若い世代の代表といたしまして、農業立県である鹿児島県を代表して、若い次世代の担い手である農業者の皆様と議論をしっかりといたしまして、その声を届けていくのがまず私の使命である、このように思っております。
その観点から、本日、初質問をさせていただきます。
まず一点目、先ほど古川委員からもございました農協改革についてでございます。
先般の総理の施政方針演説におきまして、総理は、強い農業をつくるための改革、農家の所得をふやすための改革を進める、そのため六十年ぶりの農協改革を断行するというふうに力強くおっしゃいました。
また、林農水大臣は、先般の所信表明におかれまして、地域の農協が地域の農業者と力を合わせて自由な経済活動を行い、農産物の有利販売など、農家の所得向上に全力投球できるよう、農業者視点に立った農協改革を行う、このように述べられました。
私も、今回、自由民主党・公明党連立政権、与党の一員として、そうした農協改革につきまして、地元の農業者、特に若手の皆様と話をする中で、その意義についてお知らせしているところではございますが、やはり、若手の農業者の方からも、今回の農協改革が最大の目的である農家の所得向上にどのようにつながっていくのか、少しわからない部分があるといったような声がございます。
今回、委員の皆様方にお配りしている「農協改革の法制度の骨格」という資料がございます。この中で、農協組織における主役である地域農協、これについて改革を行っていく。
例えば、左下にございますが、理事の過半数を認定農業者や農産物販売等のプロとする、要は責任ある経営体制に変えていく、あるいは、農協は、農業者の所得の増大を目的とするということで、経営目的の明確化を図る、さらには、事業利用を強制してはならないというふうに、農業者に選ばれる農協となるようにする。
こうしたところは、すとんと腑に落ちるところはございますけれども、例えば、その下の、地域住民へのサービスを提供しやすくするために、地域農協の選択により、組織の一部を株式会社や生協等に組織変更できる規定を置く、こうしたことについてまだ少し理解が及ばない部分もあろうかと思いますので、この部分について、改めて政府の説明を求めたいと思います。
○中川大臣政務官 宮路委員の質問にお答えしたいと思います。
そして、まず冒頭に、当選おめでとうございます。そして、初質問おめでとうございます。お父様には本当にお世話になりましたし、いろいろなことを教えていただきました。指導員の歌も先生に教えていただいて、私もいつも励ましていただいているところでございます。
今の質問にお答えさせていただきたいと思います。
今回の農協改革でございますけれども、地域農協が自立して、自由に経済活動を行い、農産物の有利販売など、農業者の所得向上に全力投球できるようにすることを中心に据えまして、農協システム全体の見直しを行うことといたしております。
地域農協が農業者と力を合わせて、農産物の有利販売など、創意工夫を生かして積極的に取り組めば、農業を成長産業にしていく可能性は十分あると考えております。
一方で、農協は、過疎化、高齢化などが進行する農村社会におきまして、実際上、地域のインフラとしての側面を持っていることも事実でございます。
このため、今回の改革におきまして、組合員でない地域住民の皆様に対しても円滑にサービスを提供していく上で、必要な場合、例えば員外利用規制がネックになる場合などにおきましては、農協の選択により、農協の組織を分離したり、組織の一部を株式会社や生協に転換したりできるようにすることといたしております。
こうしたことによりまして、農協が、農業所得の向上など農業者にメリットを出しながら、地域のインフラとしての役割を適切に発揮していけるようにしていくという考えでございます。
○宮路委員 ありがとうございます。
今回の農協改革は、先ほど申し上げたとおり、やはり農家の所得向上がその最大の目的である。そのために、いかに地域農協の経営自由度を高めていくかというところが肝要になってくると考えておりますが、地元の、特に若手の農業者の方からは、今般農家の所得が向上しないのは農業生産物の価格が向上しないことにあると。
その理由として、いろいろ、デフレが続いていることがあるとは思いますが、一つ、流通大手がいわゆる川下の方からその価格支配力を発揮して、交渉において価格が低く抑えられてしまう。例えば、この野菜をキロ三百円でつくってくれ、売ってくれといったときに、いや、それではもうけが出ないといったところで、では、ほかの生産地から仕入れますといったような形で、その価格支配力によって農産物の価格が抑えられてしまうといったところがございますけれども、今回の農協改革によって、流通大手の価格支配力がどのように打破されるのか。
こうしたことをしっかりと具体的にイメージとして示すことで、今回の農協改革の趣旨が非常に理解が深まっていくのかなと考えておりますので、その観点から政府の説明を求めたいと思います。
○奥原政府参考人 農協の販売事業の関係でございます。
農協は、農業者が自主的に設立する協同組織でございますので、農産物の販売等で農業者がメリットを受けるために設立をされております。
農協法が制定されました昭和二十二年当時は、食料の需給状況も不足基調でございまして、農協は農業者から集荷をして農産物を市場等に出荷することによってその役割を果たすことができたわけでございます。
しかしながら、現在は、食料は過剰基調になっておりまして、川下の消費者ですとか、あるいは実需者のニーズに対応した販売努力が不可欠でございます。それから、国内の食料マーケットは人口減少によりまして縮小に向かう中で、六次産業化による川下の付加価値を取り込むですとか、それから、海外への輸出を視野に入れることが不可欠になっております。
現在の農協の農産物の販売は卸売市場を通じた委託販売等が中心でございますけれども、農産物を有利に売っていくためには、農協の積極的な販売努力が必要でございます。(発言する者あり)
○江藤委員長 奥原局長、もう少し大きな声で。
委員から、聞こえないという指摘があります。
○奥原政府参考人 はい、済みません。
それには販路を拡大したり、組合員からの買い取り販売を拡大していくことが求められているということでございます。
このため、今回の農協改革におきましては、地域農協は、買い取り販売を数値目標を定めて段階的に拡大するといった形で、適切なリスクをとりながらリターンを大きくしていくということに取り組んでいただきます。
それから、全農、経済連、こちらの方は、地域農協の農産物の有利販売に資するために、大口の実需者との安定取引関係を構築する、それとともに、農業、食品産業の発展に資するような経済活動、こういったことを経済界と連携して積極的に取り組んでいただく、こういうことを求めております。
今回の農協改革を契機といたしまして、それぞれの農協、あるいは全農、経済連が、農産物の販売力の強化に向けまして全力を挙げていただけば、農業を成長産業にしていく可能性は十分にあるものというふうに考えております。
○宮路委員 ありがとうございます。
今回、一連の農協改革を通じまして、JA、農協の方からも自主改革案が出てまいりました。その中でも、販売力を強化するための自主改革案がまさに出てまいりましたので、そうしたところに今回の農協改革の大きな意義があるのではないかというふうに考えておりますし、今御答弁いただいたことを、私も若手世代代表として鹿児島の地元の若手の農業者にしっかりと伝えていく、この役目を果たしてまいりたい、このように考えております。
続きまして、農政の継続性についてお伺いしたいと思います。
今般、米価が下落する中で、先ほど古川委員の方からも御質問がございましたけれども、高齢化、人口減少等による米の消費の減少が今後とも見込まれる中で、飼料用米等の戦略作物の生産拡大を推進するということとされております。
そして、そのためのツールとして、水田活用の直接支払交付金による支援を行っていくということとしておりますが、これにつきましても、地元の農業者の声として、これまでの日本の農政というのは、猫の目農政というふうに頻繁に変わってきたのではないか、今回の国の政策、方針にのっとって転換を図っていって、本当に大丈夫なのかといったような懸念、不安の声も聞くところでございます。
私は、やはり何といっても、担い手対策の中心としても、農政がしっかりと方針を定めて、それにのっとる形で、安心して担い手農業者が全力で農業に取り組む環境を整えることがまさに政治の役割であると思っております。
この点について、政府としての決意を述べていただきたいと思います。
○林国務大臣 先ほど古川委員からもお尋ねのあったところでございますが、主食用米の需要、これが大体八百万トンの分母に対して毎年八万トン、したがって一%ずつ減っていく。これは、高齢化に伴って、お年を召されると胃袋が少しずつ小さくなるということと、それから、残念ながら人口が減少基調にある、こういうことがあろうかというふうに思いますが、そういう中で、水田をフル活用しながらどうやって需要に応じたものをつくっていただくかという観点で、主食用米から需要のあるものに転換をしていただく、これを進めていく必要があると思っております。
餌米、飼料用米はそれの一つの大きな要素である、こういうふうに思っておりまして、先ほどあべ副大臣から答弁いたしましたような施策を講じておるところでございますが、さらに、今、宮路委員からお話がありましたように、将来的に、安心して餌米に取り組んでいこう、いろいろな設備投資もしていこう、こういうふうに思っていただけるように、食料・農業・農村基本計画、これは三月中に閣議決定までいたしたいと思っておりますが、これは、御案内のように、十年間の見通しを持ってもらうための基本計画で、五年ごとに見直す、こういうことでございます。
ここに餌米などの戦略作物の生産拡大、これを具体的に数値を記入するなどして位置づけまして、そして、この目標を達成することに向けて必要な支援を行うということを閣議決定という形で基本計画にしていこう。当然、閣議決定でございますから、財務省も含めて閣議決定をする、こういう形でお示しをすることによって、農業者の方々が安心して取り組めるようにしていこう、こういう考えでおるところでございます。
○宮路委員 ありがとうございました。
ただいま林大臣より非常に心強い決意を表明していただきました。
私も、先ほどの農協改革と同じでございますが、これを我々国会議員の責務の一つとして、それをしっかりと有権者の方々あるいは国民の皆様に伝えていく、これが必要だと思っておりますので、私も新人議員ながら、その職責をしっかりと果たしてまいりたい、このように考えております。
最後に、いわゆる薬用作物、薬草への取り組みについてお伺いしたいと思います。
私の地元の南さつま市におきましても、今般、薬用作物、薬草の栽培に取り組むといったような動きが出ているところでございます。薬用作物につきましては、中山間地域などの条件不利地域においても付加価値の高い作物を栽培することができるということで、非常に我が国の農業にとって可能性の大きい分野であると考えております。
来年度の予算案におきましても、薬用作物の栽培の促進に向けた事業が掲げられているというふうに認識しておりますが、まずはその内容についてお伺いしたいと思います。
○松島政府参考人 お答え申し上げます。
委員から御指摘ございました薬用作物は、近年需要が伸びています漢方薬の原料ということで、現在、その八割を中国からの輸入に依存している状況でございます。漢方薬メーカーからは、原料が安定的に供給されますように、国内生産の拡大に対する期待が非常に大きいというふうに理解してございます。
薬用作物の生産拡大を今後図っていくためには、やはり一定の品質を確保するというために、栽培技術の確立が必要、その上で漢方薬メーカーと生産者が契約栽培をするという手順が必要でございます。
農林水産省としましては、そういった一定の品質を確保する、それから契約栽培を促進するという観点から、まず、生産者と漢方薬メーカーが連携して、地域ごとの気象や土地条件に合った品種を選定していただき、その安定した生産が可能となるような栽培技術を確立するための実証圃の設置などについて支援を行っているところでございます。
二十六年度は、二十三道県二十九産地で実証圃の設置の取り組みが行われていますので、二十七年度予算におきましても、これらの取り組みを支援できるよう必要な予算を確保してまいりたいと思っています。
○宮路委員 私の地元においても、薬用作物というのは、ほかの農産物と違いまして、まずは実需者である製薬メーカー、漢方薬メーカーからの要望に応じて生産者がつくっていく、ある種独特な作物であるというふうに聞いております。そのために、まずは、何といっても生産者と実需者とのマッチングが重要である。そしてまた、これまでなかなか国内で栽培が盛んでなかったものですから、技術の確立が大事であるというふうに聞いているところでございますので、来年度予算につきましても、そうした観点からの手当てが講じられるものと考えております。
先ほど申し上げたように、薬用作物というのは、我が国の農業におきまして非常に可能性のある分野だと考えておりますので、さらなる事業の促進、栽培の促進、生産拡大を進めていくべきと考えております。その点について、改めて政府としての考え方を簡単にお答えいただければと思います。
○あべ副大臣 漢方薬の原料となる薬用作物の生産振興を図るに当たりまして、栽培技術の確立に加えまして、委員がおっしゃるように、生産者と実需者とのマッチングが進みまして、栽培契約を円滑に締結されることが重要であると思っております。
農林水産省といたしましては、厚生労働省とのいわゆる共催で、平成二十五年、二十六年、それぞれ全国八カ所で説明会を開催いたしまして、薬用作物の産地化を志向する地域と漢方薬メーカーなどの実需者との間で、情報の共有、交換を進めたところでございます。
この結果、平成二十五年におきましては、三十七道県から百三十七件の栽培希望が寄せられ、いわゆる日本漢方生薬製剤協会の会員企業が、栽培面積、買い取り価格について個別に交渉を行った結果、契約が成立した産地は十四道県の十八産地となっております。
二十六年度も三十五都道府県から百三十四件の栽培希望が寄せられたところでございまして、これから個別に交渉が行われる予定になっております。
今後とも、厚生労働省、漢方薬メーカーとも連携しながら、薬用作物の生産振興にしっかりと取り組んでまいります。
○宮路委員 委員の皆様方、温かい雰囲気の中、初質問をさせていただきまして、ありがとうございました。
私は、父に似ず、母に似ていると言われております。品種改良が進んだと言われておりますので、私も日本の農業の品種改良がしっかりと進んでいくよう頑張ってまいりますので、これからも御指導のほどよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 それでは、大臣所信に対する質疑ということで、順次お伺いしていきたいと思いますけれども、最初に、これは所信のときに一応は大臣の方からお話があったんですけれども、改めて大臣に御決意をお伺いしたいと思っています。
というのは、今回いわば再登板ということになると思うんですが、大臣が最初に御就任のときには私も政務官として末席を汚して大変御迷惑をおかけしましたけれども、その中でも、あのときは政権交代になって、そして、例えば農業農村整備事業予算の回復ですとか、そういった具体的なことが図られるようになった。それから、いわゆる活力創造プランに基づいてさまざまな施策を展開していく中で、輸出の拡大なんというのはまさにあのとき大臣のもとで具体的に手がけられて進んでいった、こう認識していますし、そういう意味で、攻めの農林水産業ということを大臣のもとで進められたというふうに、私はそのことを強く認識しております。
一方で、今回再登板になられた中で、環境としては非常に難しい問題がいっぱいある。TPPについても、先般のハワイで行われた首席交渉官会合はなかなか難しいものがあり、そして今度は、ゴールデンウイークの中で日米のいわゆる首脳の中でどういったことが話し合われていくのか、まさにTPPについても重要局面を迎えてきているということ。
それから、先ほど来質疑がありますけれども、いわゆる農協改革をどのようにしていくのか。それと、もう一つの問題というか、新たな農業・農村基本計画、これをどのように策定していくかということで、今回の再登板においては、本当により難しい問題が局面を迎えているというふうに思っております。
こうしたことを踏まえて、大臣に御決意のほどをお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 稲津先生におかれましては、私の最初の大臣のときの政務官として、一緒に非常にすばらしいお仕事をしていただいたと感謝を申し上げるところでございます。
いろいろやっていただきました。特にサイバーアタックの調査においては、調査委員長として陣頭指揮をとっていただいて、本当にいいレポートをまとめていただいた、こういうふうにも思っておるところでございます。
今先生からお話がありましたように、あのとき御一緒させていただいて、いろいろな攻めの農政について具体化をしていくということで、今いわゆる四本柱と言っておりますが、三本の産業政策とそれから多面的機能、これを車の両輪としてやっていくということを官邸プランとして最終的にまとめさせていただいたわけでございます。
したがって、今回再登板ということになりましたけれども、これまで、そういうプランをつくって、絵を描いて、そして実施を始めたというところでございますが、農業、林業、水産業もそうですが、一年に一回という自然を相手にしていくということでございますので、例えば、車やコンピューターといった、毎週毎週つくって、PDCAサイクルが一週間ぐらいで回っていく、こういうものと違いまして、やはり、新しい施策をつくって、それを実際に農家の方々や生産者の方々に現場でやっていただいて、それを検証して、フィードバックをいただいて、さらにどうしていくか、このPDCAサイクルが一年、二年、こういうふうになるわけでございますから、まさに実行元年といいますか、先生おっしゃっていただいたように、大事なところに差しかかっているという認識を持っておるところでございます。
したがって、一度決めたから、もうこれは絶対に変えないんだという頑固な姿勢ではなくて、あくまで現場とキャッチボールをしながら施策を常にブラッシュアップしていく、いろいろな方の御意見を聞きながらよりよいものにしていくという姿勢を常に持ち続けながら、当初決めました活力創造プランに従って、しっかりと、農家の所得が上がる、そして多面的機能が保持される、そういうことを通じて、若者にとっても魅力のある産業に農林水産業をしていく、よってもって、これが地方創生という大きな国の目標にも資することになる、こういう考えでやってまいりたい、こういうふうに思っております。
いずれも、農協改革にしても、今お触れいただいたTPPに対応する問題にしても、前回大臣におりましたときからの、かねてからの懸案事項でございまして、局面がどういうふうに展開していくか予断を許さないところもTPPなどはございます、相手がある交渉でございますから。したがって、臨機応変、そして常に、備えあれば憂いなしという姿勢で万事臨んでまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
○稲津委員 ありがとうございました。
大臣の思い、御決意を伺いまして、厳しい課題、難しい課題はありますけれども、果敢にそこにも挑戦していっていただいて、やはり次の時代の農林水産業のあり方というのをしっかりまた構築していただくことを期待申し上げたいと思います。
それで、次は、畜産クラスターの中でも、畜産収益力強化対策についてということをお伺いしたいと思います。
まず、関係者の要望にどうお応えするかということ、特に平成二十六年度の補正予算についてお伺いしたいと思います。
もうこれは言わずもがなですけれども、酪農、畜産業界では、配合飼料の高騰、資材も高い、それから高齢化、離農も相次ぐということで、農家戸数、それから飼育頭数が減少して、生産基盤がやはり弱体化しているということが言えていると思うんです。
そこで、これらの課題に対する解決策として、酪農、畜産の競争力強化、それから、酪農、畜産農家や、地域のコントラクターあるいはTMRセンター等の支援組織、また行政、地域ぐるみ、これで収益をしっかり向上させていこうということで畜産クラスター事業を開始した。
これは、私もこれまでもこの委員会で何回か質問させていただいてきた経緯がございますので、申し上げておきたいと思うんですけれども、特に、畜産収益力強化対策については、これは畜産クラスター計画に位置づけられて地域の中心的経営体となる酪農、畜産農家、コントラクターの収益性の向上、それから環境問題対策に必要な機械のリース、それから施設整備、これらを支援するものとして、関係者から大変要望、期待が大きいもの、このように承知をしておりますが、二十六年度の補正予算で二百億、二十七年度本予算では七十五億予算措置されています。
具体的に、関係者からはどういう要請があるのか、特に、予算成立した平成二十六年度の補正予算に対しての要請はどうか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
○松島政府参考人 畜産クラスターにつきましては、委員から御指摘がございましたように、地域の畜産関係者が連携、結集して畜産の収益向上を図っていこうという取り組みでございまして、現在、四百八十を超える地域で畜産クラスター協議会の設立やその準備が進んでいるという状況にございます。
農水省としましては、このような取り組みを支援するために、二十六年度補正予算におきまして、畜産クラスター計画に位置づけられた中心的経営体に対しまして、まず一つは、畜舎などの施設整備を支援する畜産競争力強化緊急整備事業、それからもう一つは、搾乳ロボットなどの機械のリース方式による導入を支援する畜産収益力強化緊急支援事業を措置しているところでございます。
これにつきましては、委員御指摘のとおり、畜産農家、畜産地域から大変強い期待が寄せられておりまして、要望額も大変多うございます。
具体的には、施設整備事業につきましては、補正予算額五十一億円でございますけれども、七十五億円の要望がございまして、これを精査いたしまして、全国展開するために地域間のバランスをとっていく必要がある。それからまた、都道府県にそれぞれ要望の内容について評価をしていただきまして、その評価結果も勘案しながら、三月三日に都道府県に対しまして割り当て額を内報したところでございます。
また、機械リース事業につきましては、農畜産業振興機構が事業者になってございますけれども、ここが公募によりまして決定しましたリースの貸付主体、これは十一団体が応募してございますけれども、現在、そこで畜産農家からの要望を把握しているところでございます。
このリース事業は補正予算額百五十億円でございますけれども、合計で四百三十三億円の要望があるということでございまして、今後、十一団体が配分額の範囲内で機械リースの対象者を決定するという手続に進むという状況になっているところでございます。
○稲津委員 今、大変ニーズが高いということが答弁で明らかにされたと思うんですけれども、リース事業がそれほどニーズが高いということは改めて確認しましたが、もう一つ、私がきょうここでテーマにしたいのは施設整備の方なんですね。
施設整備は、今御答弁いただいたら、予算が五十億程度のところを七十億、一・五倍ぐらいあるということですから、これもやはり相当要望、ニーズが高い。
例えば、畜舎等の整備に当たっては、平成十四年度から生産振興総合対策事業実施要綱というものがありまして、要件化されていて、平成十六年以降は現行のいわゆる単価が設定されている。ちょっと申し上げますと、一例を挙げると、乳用牛舎の成牛用で一平米当たり三万六千円です。これは、強い農業づくり交付金と同じような単価構成になっていると思うんです。
一方で、近年の物価の上昇、それから機材の単価の高どまりで、これは北海道の農政部で補正予算による本事業費の積算をしたところ、乳用牛舎の成牛用では七割以上の施設が現行の基準事業費におさまらない。その結果、これは補助率二分の一なんですけれども、結果的に三分の一程度になる、こういう事例が多数発生しています。
私は、平成十六年からもう十年以上続いているこの単価について、現行の物価上昇等々を考えたら、やはり見直すべきだろう、場合によっては補助率の見直しも含めて実施すべきか、このように思っておりますけれども、この点についての見解を伺いたいと思います。
○あべ副大臣 稲津委員にお答えいたします。
その前に、古川議員のときに、私が飼料用米に関しまして主食用米と読み違いをいたしましたので、ここで訂正をさせていただきます。
そうした中で、稲津委員にお答えいたしますが、平成二十六年度補正予算及び平成二十七年度予算に計上いたしました畜産クラスター事業のうち、地域の畜産の収益性向上に必要な施設整備を支援する畜産競争力強化整備事業におきまして、著しく高額な施設の整備を抑制するとともに、また、国費を効率的に執行し、予算の範囲内で可能な限り多くの地域で本事業を活用いただく観点から、既存の事業の例を参考に、畜舎などの施設の種類ごとに基準事業費を設定したところでございます。具体的には、強い農業づくり交付金の補助対象の上限事業費を基準事業費としているところでございます。
しかしながら、委員の御指摘のように、近年の資材価格の高騰などから、基準事業費の範囲内で事業費を抑えることが難しいとの現場の声があることも承知しているところでございまして、本事業の運用に当たりましては、最近の鋼材やコンクリートなどの資材価格、また労賃の上昇を踏まえまして、基準事業費より一割程度高い、知事特認事業費を用いることもできるように措置しているところでございます。
例えば、酪農の成牛用の牛舎におきましては、基準事業費では平米当たり三万六千円であるところを、地域の実情に応じて、一割程度高い四万円の知事特認事業費を用いることが可能となっております。
今後とも、資材の価格の動向を注視してまいるとともに、現場の意見をよく聞かせていただきながら、必要な検討を行ってまいります。
○稲津委員 今副大臣の方から知事特認のお話がありましたけれども、それでは全然おさまり切らないので私は申し上げているんですね。ですから、そこのところは、今御答弁でよく地域の声を聞いてまいるというお話がありましたので、ぜひともこれはやっていただきたい。
これは北海道庁の調べですけれども、例えば、この十年間で建築資材等の単価は、コンクリートで一三三%、鉄骨一〇五%、労務費で一三〇%上昇しているんです。ですから、これを考えていくと、とても知事特認で、プラス四千円で賄えるかといったら、そうはならない。
私は、夏の概算要求時でも、この基準事業費の単価の見直しとか全体予算の拡充、これをぜひ図っていただきたい。クラスター事業あるいは酪農、畜産事業を、農水省として、要するに成長産業としてきっちり位置づけたということがもう明確になっていますので、ここはぜひお願いをさせていただきたいというふうに思います。
最後の質問です。
最後は、皆伐、再造林による森林の再生についてということをお伺いします。
我が国の森林の約四割は人工林。森林資源は人工林を中心に毎年約一億立方メートル増加している。高齢級の森林がふえ、資源として本格的な利用が可能な段階のものが多い。これは、十齢級、四十六年から五十年以上のものが人工林の五一%を占めているということ。また、二酸化炭素の吸収の点から考えると、高齢級の森林は当然吸収率が落ちるということ。そこで、伐採して再び植栽を行って、森林資源の再生と木材の利用を促進する、これが重要な施策になっている。
これらの支援事業として森林環境保全直接支援事業がありまして、森林経営計画を作成し、再造林や間伐を行う森林所有者等に補助金が出せる仕組み。
しかし、実際には、面的なまとまりを持って再造林を行うのは間伐だけじゃない。むしろ、皆伐した方が適している場合も多い。ただしかし、伐採代金で森林整備費用が賄えて、なおかつ利益が生まれるかというと、これまた非常に厳しいんですね。そこで、皆伐、再造林の一体の取り組みをすることでコストを低減させることが必要と言っているんですけれども、それでもなおかつ利益が出せないわけです。
したがって、この際、皆伐、再造林事業も森林環境保全直接支援事業の対象にすべきだ、このように思っておりますけれども、この点の所見を伺いたいと思います。
○今井政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、我が国の森林資源は本格的な利用段階を迎えておりまして、切って、利用して、植えて育てるという資源の循環利用のサイクルを確立することが非常に重要となっていると考えております。
こうした観点から、農林水産省では、森林整備事業によりまして、間伐や皆伐後の再造林に対しまして、森林の有する多面的機能の発揮を目的として、国と都道府県を合わせて約七割の補助を措置するとともに、再造林のコストダウンを図るために、皆伐と再造林を一体的に行うことによる低コスト化技術の実証ですとか、あるいは高性能林業機械の導入、こういった支援などに取り組んでいるところでございます。
森林整備事業におきましては、御指摘のように、皆伐そのものについては支援の対象とはしておりませんけれども、森林の有する多面的機能の発揮を目的として行う複層林の造成のための小面積の伐採ですとか、それは支援するとともに、平成二十七年度からは、花粉の発生源対策として行います立木の面的な伐倒、除去、これも、国と都道府県を合わせまして約七割の補助を措置することとしております。
今後とも、こうした措置を通じまして、森林所有者の負担の軽減や森林資源の循環利用のサイクルの確立に努力してまいりたいと考えております。
○稲津委員 終わります。
○江藤委員長 次回は、明十九日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時散会