第12号 平成27年5月27日(水曜日)
平成二十七年五月二十七日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 江藤 拓君
理事 加藤 寛治君 理事 齋藤 健君
理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君
理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君
理事 松木けんこう君 理事 村岡 敏英君
理事 石田 祝稔君
井野 俊郎君 伊東 良孝君
伊藤信太郎君 池田 道孝君
石崎 徹君 今枝宗一郎君
岩田 和親君 金子めぐみ君
神谷 昇君 鈴木 隼人君
瀬戸 隆一君 田野瀬太道君
高木 宏壽君 武部 新君
津島 淳君 中川 郁子君
中村 裕之君 中山 展宏君
西川 公也君 橋本 英教君
藤丸 敏君 古川 康君
前川 恵君 宮崎 謙介君
宮路 拓馬君 森山 裕君
簗 和生君 山本 拓君
若狭 勝君 金子 恵美君
小山 展弘君 佐々木隆博君
篠原 孝君 福島 伸享君
井出 庸生君 稲津 久君
佐藤 英道君 斉藤 和子君
畠山 和也君 仲里 利信君
…………………………………
農林水産大臣政務官 佐藤 英道君
農林水産大臣政務官 中川 郁子君
参考人
(株式会社小川牧場代表取締役) 小川 惠弘君
参考人
(東京農業大学農学部教授) 谷口 信和君
参考人
(鈴盛農園代表) 鈴木 啓之君
参考人
(龍谷大学農学部教授) 石田 正昭君
参考人
(有限会社横浜ファーム代表取締役社長) 笠原 節夫君
参考人
(鳥取県農業会議会長) 川上 一郎君
参考人
(農業生産法人有限会社新福青果代表取締役社長) 新福 秀秋君
参考人
(北海道大学名誉教授) 太田原高昭君
農林水産委員会専門員 奥井 啓史君
―――――――――――――
委員の異動
五月二十七日
辞任 補欠選任
今枝宗一郎君 石崎 徹君
勝沼 栄明君 宮崎 謙介君
武井 俊輔君 岩田 和親君
中谷 真一君 鈴木 隼人君
橋本 英教君 藤丸 敏君
山本 拓君 高木 宏壽君
小山 展弘君 篠原 孝君
同日
辞任 補欠選任
石崎 徹君 今枝宗一郎君
岩田 和親君 中山 展宏君
鈴木 隼人君 津島 淳君
高木 宏壽君 山本 拓君
藤丸 敏君 田野瀬太道君
宮崎 謙介君 金子めぐみ君
篠原 孝君 小山 展弘君
同日
辞任 補欠選任
金子めぐみ君 勝沼 栄明君
田野瀬太道君 若狭 勝君
津島 淳君 中谷 真一君
中山 展宏君 神谷 昇君
同日
辞任 補欠選任
神谷 昇君 武井 俊輔君
若狭 勝君 中村 裕之君
同日
辞任 補欠選任
中村 裕之君 橋本 英教君
同日
理事松木けんこう君同日理事辞任につき、その補欠として村岡敏英君が理事に当選した。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七一号)
農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出、衆法第二一号)
――――◇―――――
○江藤委員長 これより会議を開きます。
理事辞任の件についてお諮りいたします。
理事松木けんこう君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
それでは、理事に村岡敏英君を指名いたします。
――――◇―――――
○江藤委員長 内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案及び岸本周平君外三名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案審査のため、午前の参考人として、株式会社小川牧場代表取締役小川惠弘君、東京農業大学農学部教授谷口信和君、鈴盛農園代表鈴木啓之君及び龍谷大学農学部教授石田正昭君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位の皆様方に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、小川参考人、谷口参考人、鈴木参考人、石田参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、初めに、小川参考人、お願いいたします。
○小川参考人 おはようございます。群馬から参りました小川です。よろしくお願いいたします。
初めての機会でありますので、なかなかうまくしゃべれないかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。
まず最初に、私の経営概況を説明していきたいというふうに思います。
私は、今六十一歳でございまして、昭和四十八年に就農いたしました。当時は父親がやっておりまして、酪農、それから野菜、米麦というふうな複合経営でやっておりました。その後、私が入ったということで、昭和五十年に牛舎を新築いたしまして、酪農専業を目指してやってきました。
その後、酪農の場合ですと、生産調整といいまして、急に、前年の乳量に対して、それ以上出荷してはだめだというふうな、今まで三度ほどそういった経験がありましたけれども、昭和五十五年にそういったことで生産調整がありまして、なかなか収益がふえないというふうなことで、一応、乳肉複合経営というふうなことで、乳牛に生まれた雄牛の肥育を始めました。
その後、いろいろあったんですけれども、TMRという、要するに群管理の牛の飼養管理が始まりまして、つないで飼っていた牛舎でありましたけれども、フリーストールという、今はもうフリーストール、パーラー搾乳というのは一般的になりましたけれども、それを昭和六十一年に、群馬県下でも五番目か六番目ぐらいの早さで始めたわけです。
その後、今TPPもいろいろ議論になっておりますけれども、牛肉の輸入自由化というふうなことが始まりまして、乳雄だけではちょっと厳しいのかなというふうなことで、F1、交雑種の肥育を始めたんですけれども、それもやはりなかなか厳しいかなと私自身は思いまして、和牛の受精卵で、乳牛に借り腹をして和牛を生産しようということで、平成九年に、ドナー牛というようなことで、卵取りの和牛を導入したのが和牛繁殖経営のきっかけでございます。
平成十九年に、いよいよ後継者、長男、次男が入りまして、酪農ですと、やはり二人入ると二百頭ぐらいは最低搾らないとだめだというふうなことがありまして、新たに牛舎をつくって、施設、牛を二百頭導入すると二億円ぐらい、やはり一頭百万ぐらいかかるんですね、今でもそうですけれども。そうすると、二億も借り入れを起こして果たして大丈夫かなというふうなことがありましたので、繁殖和牛の専業経営というふうなことで、平成十九年に酪農をやめて現在に至っている次第でございます。
二十五年に、個人の経営だったんですけれども、一応株式会社というようなことで、会社を起こしまして今はやっております。
それから、昨年度、コントラクター、これは、新規需要米の関係のWCSを近くの集落営農の法人につくっていただきまして、その前までは酪農の機械を使いながらやっていたんですけれども、作業期間を長くとったり、面積がふえますとなかなかトラクターでやるのも困難なものですから、昨年、WCSの専用機を購入いたしまして、去年は二十ヘク契約して、私の方でいただいたような状態でございます。
現在、繁殖和牛は、親牛で百五十頭、年間の子牛販売頭数でおおむね百二十頭ぐらいです。私が始めて以来かなりたっているんですけれども、非常に子牛も相場が高くて、一息ついているんですけれども、今まで子牛の相場が低迷した関係で生産農家が減ったのと、親牛の頭数が減ってなかなか市場に出てくる子牛の頭数が少ない関係でこういった高値が続いているのではないかというふうに思っております。販売金額にして、およそ六千二百万ぐらいの販売代金になっております。
飼料作物につきましては、イタリアンライグラスとソルゴーという体系で、延べ面積でおよそ十二ヘクぐらいつくっております。ことしのWCSは、やはり米麦農家が、米の値段が低迷したものですから、特に、つくりたいんだけれども、畜産農家の契約がなかなかできないなんという関係がありますけれども、私のところでは、去年の二十ヘクからことしは二十九ヘクに拡大しております。ただ、一台の専用機でありますので、これ以上ふえるとなかなかできない、これ以上ふやすにはもう一台買わなければできないというふうなことなんですけれども、なかなかそういった情勢にもなっておりません。
簡単に概要を説明させていただきました。
そして、特に現在の農協の問題点として、今、私が所属しているのはJA佐波伊勢崎といいます。一応、正組合員が七千二百六十九名、准組合員が一万二千八百十五名、合わせて二万八十四名の組合員がおります。
農畜産物の販売額なんですけれども、昨年、大雪の被害によりまして野菜の関係の販売高が非常に落ちました。例年ですと大体百億円ぐらいの販売だったんですけれども、昨年の実績でいいますと、総額で八十六億です。その中の園芸部門、野菜、これが非常に落ちたわけですけれども、これが五十四億。通常ですと七十億から八十億弱ぐらいまでだったんですけれども、再建がなかなか進まなかった関係等もありまして、五十四億四千万でした。畜産については三十四億。酪農が一番多くて、次に肉牛、養豚というようなことになっております。そのほかに、米等が七億五千万というようなことになっています。
そうした中で、高齢化なものですから、担い手の育成が進まなくて、なかなか後継者が育たないわけですね。その原因というのは、経営がなかなか安定していないのと、将来の不安があるので、なかなか後継者が育たないというふうなことであります。もっと積極的にJA等も担い手の育成をやっていただければありがたいというふうに思っています。
それともう一点、やはり職員の関係なんですけれども、金融機関等の指導の関係もあるんでしょうけれども、異動は五年を目安にというふうな指導がありますので、いわゆる営農担当の経験が豊富な職員が頻繁にかわってしまうということで、地域との密着も進まないし、組合員にすると、昔に比べて何か親しみが少ないねなんて言われて、そういった弊害が出ているかというふうに思います。
それと、農協自体も事業本部制をしいておりますので、営農部門、金融部門、それから生活とか分かれていますけれども、そういった連携をなかなかしていないという弊害が起きております。現場のニーズが、営農で融資等の要望があっても、内部の連携ができていない関係で、補助事業等も末端にまでなかなかつながってこないというふうな問題があろうかと思います。
それと、これからどんなような農協になってほしいかという私の希望なんですけれども、農業経営というのは、やはり多様な、いろいろな農業があると思うんですね。そうした中で、やはり小規模、高齢化が進んでおりますので、そうした農業者には、今、直売所等が当JAも六カ所あります。そうした中で、そういった高齢者を中心とした、多品目を栽培している農家が非常に励みを持ってやっておりますので、そういったものをより一層進めてほしいというふうに思っております。また、六次産業化なり、加工等も含めてやって、なるべく高付加価値の販売を目指してもらいたいというふうに思っております。
それと、課題として、大規模農家といいますか、大型の、やはり後継者のいるような農家に対しては、そういった規模の大きい農業経営を農協の方としても目指してもらいたいというふうに思っております。
ただ、農業法人なり、大きくなりますと、農協離れが進んでおりまして、実際は、大きくなると農協から離れていっちゃうという実態もあります。これは、やはり農協がそういったニーズをなかなかつかみ切れていない。ですから、やはりそういった大きな農家、担い手のいる農家の要望を受けとめて、そういった人たちにも応えられるような農協になってほしいというふうに思っております。
それと、やはり当然、生産原価等を下げるためには、生産資材をもっと安くするというふうなこともしてもらいたいと思います。
それと、今、中間管理機構によって、農地の集積などもこれからの課題としてあると思いますけれども、そういった農地の集積によって効率的な農業経営を行えるようサポートしていただければありがたいというふうに思っております。
それから、販売の部分でいいますと、野菜等で価格変動が激しいものですから、経営の安定がなかなかできないわけですね。やはり、加工等も含めた中で、契約栽培等、そういったものを推進することによって、販売価格を安定することが大きな農家を育てるというふうなことになっていくとは思います。
それと、地元の商工業者等、商工会なり商工会議所と農協との連携がなかなか進んでいないのが現状であります。六次産業化なり、そういった面からすると、商工会議所との連携を図り、地域の活性化に進んでいくような方向でやってもらいたいというふうに思っております。やはり地元の、餅は餅屋ではありませんけれども、得意な分野はそういった人たちにやってもらいたいというふうに思っております。
それから、連合会、特に全農等に対する要望なんですけれども、加工施設それから流通面をこれから連携していく必要があるわけですけれども、単位農協ですと、なかなか投資額が大きくて、それと、通年でそういったものを供給するということを考えると、温度差を利用したリレー栽培等をすることによって施設の稼働率を上げるというふうな面で、全農等に対してはそういった面で期待をしているわけです。
中央会は、監査等では実績があるんですけれども、身内の監査みたいなことに意外となりがちで、監査報告は出ているんですけれども、強制性がないものですから、なかなかその辺の徹底ができていないような気が私はしております。
これからの農協改革に対して特に期待することは、役員の経営者としての意識改革、やはり農協であっても、時代に対応した、いろいろな流れがありますけれども、そういった情報を集めながら、経営者として、一般の会社の経営者と同じように経営感覚を持ってやってもらいたい。
職員は、やはり基本的には組合員のための職員ということでありますので、そういった組合員を中心とした運営を手がけるように、何かといいますと組合組織の、農協組織のための、そういった職員もまだ若干おりますので、そういった面で改善をしていただきたい。
それと、組合員については、やはり個々の農業経営者でありますので、確立するということは当然でありますけれども、やはり今、地域連携なり地域活性化のためには、個々の経営だけじゃなくて、いろいろな経営を含めた中で連携をとって、地域として農業を振興し、また、いろいろな他産業とも連携しながらやっていくという気持ちになっていかないと、これからの農協は変わっていかないというふうに思っております。
以上が私の意見でございます。(拍手)
○江藤委員長 ありがとうございました。
次に、谷口参考人、お願いいたします。
○谷口参考人 ただいま御紹介いただきました谷口です。
きょうは、日本の農業の今後のあり方を大きく左右する農協関連の法案についての参考人ということで呼ばれましたことを大変光栄に思っております。
この後の参考人の中に、二名ほど私と同じように大学の教師をしている方が入っていますけれども、二人とも農協問題の専門家、農協そのものの研究者であります。私も同じようなことで、農協について深い関心を持って研究はしておりますけれども、三人が似たような話をしても余り役に立たないなというふうに思いましたので、私としては、今の日本農業のそもそもの問題は何なのか、その中で農協はどういう役割を果たすのかという視点から話してみたいというふうに思います。
お配りしてありますレジュメに即しまして、かいつまんで話したいと思います。量が多いわけで、全部話していると多分時間が足りませんので、要約いたします。
まず、大きな枠組みは、現在の農政改革をめぐる全体像、これと農協改革の位置というものを少しはっきりしてみたいと思います。どういう意味で農協改革が必要なのか、あるいはしなきゃいけないのかということだと思います。その上で、二番目に、農協改革の個々の論点について私なりの考え方を、一番で述べた大きな枠組みの視点から述べてみたいというふうに思います。
現在の日本農政が直面する課題の構図というのを図に示しました。これは、多様な担い手との関係であります。
私が強調したいことは、この四つの枠組み、四方にある四つの枠組みの問題が、それぞれ個別に扱われて、農水省の事業で既に取り組まれております。大事な点は、個々の課題を個々に取り扱うのではなくて、これをまとめて、束ねて取り扱うことが今求められている、そのことを抜きにしては現場の問題が片づかないということが私は重要だというふうに思います。
具体的には、耕作放棄地があり、この耕作放棄地の再生、復旧、活用ということを通じて新規就農者というものを結びつけていくことが大事だと思います。
同時に、新規就農者は、系統出荷という枠組みの中だけでは、必ずしもみずからの成果を実現できる場というのは得られない可能性があります。そういう中では、直売所といったものも活用する。つまり、販路として、従来の市場出荷、系統出荷という枠組みだけではなくて、地産地消ということをベースにした直売所をも重視した体系に持っていかなきゃいけないだろうというふうに思います。
大事な点は、直売所というと、従来、高齢者、女性、小規模、つまりプロフェッショナルでない生産者のための組織というふうに認識されておりますけれども、これはもう実態を踏まえない古い議論だというふうに私は考えております。全国全てというわけではありませんけれども、非常に出荷額の多いような直売所、販売額の多いような直売所においては、例えば北海道においてもそうだと思いますけれども、一番大事な点は、専業的な生産者が積極的にこれを位置づけて、市場出荷と同等の、あるいはそれ以上の位置づけを与えてこれに参画しているという事実であります。
例えば、A県の施設園芸をやっている方は、七千万から一億円の売り上げがありますけれども、そのうちの過半を直売所に出しています。農協営の直売所に出していて、市場出荷よりも安定しているということで喜んでいる。どこが彼を引きつけているかというと、非常に単純です。それは、価格が自分で決められる。
価格が自分で決められるということの意味は、生産費と価格との関係が自分の中で明確になっていて、市場価格が高くてもある一定価格で売る、市場価格が安くてもある一定の高い価格で売る、つまり、自分の経営の再生産ということを前提にして、一カ月、二カ月単位ではなくて、一年、二年単位でもって生産が可能になるような仕組みに組織していく、そのために規模拡大していく、そういう形の中で直売所が位置づけられている。
この最大の問題は、やはり価格が非常に安定しているということで、経営の再生産が非常に円滑に進みやすい土台が与えられている、そういう位置づけをしております。ですから、大規模な経営は直売所と関係ないんだという議論はもう古いだろうというふうに思います。
と同時に、その直売所は、みずからの直売で、自分の経営体のところで売るという形だけではなくて、今言ったように、直売所という形でもって多様な生産者が集まることによって、都市の、あるいは農村の需要者との関係を結びながら展開するような、比較的大規模な直売所というところが位置づけになると思います。
そういう三つの枠組みのもとで、恐らく、左側の下にありますように、水田農業、畑作農業、あるいは酪農、果樹といった日本の広範な農業が再生されていくという仕組みがあるんだろうと思います。
そういう真ん中のところに、担い手として家族経営がいて、これがなかなか困難を抱えているというのが実態だろうと思います。そういうものの一つの代替、補完、支援という政策の一つとして、農協が出資する農業生産法人や、あるいは農協が直営といったような経営があるというふうに思っております。
大事な点は、今、そこでは農協との関係でその大体の姿を描きましたけれども、そこに多様な担い手が存在しているという事実なんです。
下の方に描きました日本農業における担い手というのは、この図の真ん中にありますように、家族農業経営が基本であることは間違いありません。しかし、家族農業経営だけで成り立っている姿は既に過去形であります。
現在形では、右の方に、企業化を進めて会社法人になる経営、あるいは地域の協同組合的な性格を色濃く残した農事組合法人型の生産農協型のもの、そして、さらに、実は今度の都市農業基本法においてもそういう方向が目指されると思いますけれども、市民農園や自給的市民、自給的農家あるいは副業農家といった方々が、積極的に直売所なんかとの関係を結びながら農業生産を発展させていく、場合によっては、規模拡大して新規参入して登場してくることは十分に起きております。
同時に、もう一つ大きな流れとして、家族農業経営の補完として、先ほど言いましたようなJA出資法人等々の流れ、あるいは集落営農、市町村農業公社。
大事な点は、こういう多様な担い手があって、どれか一本だけで日本農業の将来を語るということはできない時代なんだということであります。こういう多様なものを束ねて、初めて地域農業の問題は解決できる、そういう段階にあるんだということを我々がどこまで正確に認識するかということが鍵だということであります。
そういう観点に立ったときに、二ページに行きますけれども、一方で、規模の経済を重視し、労働力を排除してコストダウン、薄利多売という方向は、地域経済の活性化とある意味では対立的な側面があります。つまり、一部の経営だけが伸びるという側面があります。他方で、六次産業化からいく流れは、労働力を吸収し、高付加価値化、相対的な高価格化ということでありますから、地域経済の活性化と親和的であります。大事な点は、AかBかどちらかということではなくて、この両者を適切に組み合わせて地域農業を組織化するということになります。
全体としては企業的性格の深化に向かっておりますけれども、組織原理においては、多様な差異を含む多様性を重視しながら地域農業の組織化を図ることが大事だというふうに思います。その限りでは、ボトムアップ型の地域農業再編成の方針が非常に大事だということになります。
その上で、アベノミクス農政の枠組みと農協改革の位置ということでありますけれども、一年目が農政改革、四つの改革、そして今年次は農協改革、農業改革ということで三つの改革。大事な点は、全体を総括する名称がないんですね。恐らく、基本計画がそれだということになりますけれども、基本計画という言葉では余りに味気ないだろうというふうに思います。
他方で、農林水産業・地域の活力創造プランということになりますと、これは中身があるようでないような一般的な名称です。そういう意味で、農政全体をこういう方向で将来やりますよということを農業者のハートに訴えかけていくようなネーミングがないんですね。この点が非常に残念だと思います。
全体の構図は、私が年報の方に描きましたように、その図にあります。基本的な枠組みはこのとおりだと私はつかんでおりますけれども、大事な点は、TPPの参加と、そのもとで、これを前提にして、これでも耐えられる農業者をどうつくるかということに収れんし過ぎているんですね。ですから、企業的な経営を参入させて、そこでもやれるような経営体をつくるということになっておりますけれども、一方で、右側の方の地方創生との関係が甚だ希薄になっています。つまり、地方創生と農業のかかわりは非常に希薄で、創生は訴える形になっております。この点は非常に重要な問題だと思います。
そして、二つあります。重大な弱点として、四つの改革を阻害する全中、農協という説明がされてはいるんですけれども、極めて不十分ではないかなと思います。TPP締結のためのややスケープゴートにされているのではないかなというふうに私は思っております。
同時に、TPPを締結した場合に、どういう日本農業の未来が描かれるのかという点については、残念ながら、影響についてはほとんど触れられていない。
しかし、現実的には、ことしも五月になって、またバターが足りなくなりました。去年、一年前も同じように足りなくなりました。北海道の酪農経営を含む日本農業の最優等生が、TPPを含む将来を憂えて次の後継者にバトンタッチしにくい、諦めている、本当に展望がない、これが象徴的だと思います。そういう点で、TPPのもとでも生き残れる農業についてはどんな姿があるのか、もっともっときちんと描くことが大事だと思います。
それから、地域協同組合論、これを排除して地方創生が語れるかどうか、これも大事な論点だというふうに思っております。
三ページに入ります。
アベノミクス農政の第一弾の目玉として、中間機構が一年度過ぎました。そして、中間評価が最近農水省から発表されました。何か失敗したかのような議論が多いんですけれども、私はそう単純に見ておりません。一進一退だと思います。現実問題として、六万三千ヘクタール、流動化がふえました。しかし、目標と比べると、残念ながら低調だということが一つです。
そして、もう一つ大きい点は、中間機構ではなくて、むしろ集積円滑化団体ということで、地域の農協を中心とした組織の方が流動化に大きな貢献をしているという現実があるということなんですね。これだけ金と、政策的に人も動員して、農水省を挙げてやったにもかかわらず進まなくて、さほど進めていない方が進んでいるというのは一体何なのかということを我々はもうちょっと考えることが大事だと思います。
と同時に、二十七年度はある程度進むというふうに見ておりますけれども、これは借り入れが先行しております。そして、やがてそれは貸し付けと結びつくということになると思いますけれども、実は、一番大きいのは、例えば例を一つ挙げますと、某県では、こういう状況に合わせて集落営農をやっとつくりました。つくった途端に、さあ、みんなで土地を出して担い手を一緒にドッキングさせようと思ったらば、出したけれども、自分のところに戻ってくる保証が全くないということで、円滑化でやっているんですね。
つまり、せっかくつくって構造改革を進めようという政策が、円滑化団体の昔の仕組みの方に乗っていて、中間機構に移動していない、こういう問題が現実にあります。これはやはり大きな問題だろうというふうに思います。
制度設計上の問題としては、売買と所有権移動の問題の差を理解し切れていないのではないかなというふうに思っております。
売買は永久的に離れますから、どこに行こうと勝手だという面があります。しかし、賃貸借の場合には、やがて自分のその土地が相続にひっかかるかもしれない、転用にひっかかるかもしれない、とにかく何か戻さなきゃいけないことが生じる可能性は十分にあり得るわけです。しかし、現実的には、一旦貸したものを引き戻すという例は非常に少ないんです。少ないけれども、その可能性は留保しておきたい、担保しておきたいということになります。
となると、自分が参画している農協の人ならば、自分も組合員なわけですから、返してくれと言えば返してくれるという点で安心感があります。ですから、お上に預けるよりは農協に預けた方がよいというこの感覚は、現場の農民のごく普通の感覚としてあります。だとすると、そういうところの力を十分に使わずに、上から、全部土地を召し上げるような雰囲気でやられると、どうも現場の人はついていきにくいという感じがあるのが実態だろうと思います。
決して、中間機構の政策が間違っているというふうに声を上げて言う人は多くはないと思います。しかし、何かフィットしないなというこの感覚を十分に酌み上げないと、二年目以降、十分な成果を上げられないのではないかなというふうに思います。恐らく二年目は一年目の刈り残しを刈るだけであって、二年目に新規にどっとふえるという流れにつながっていかないんじゃないかなというふうに心配しております。
そういう意味で、賃貸借が市町村レベルで行われてきたという過去のことを踏まえるならば、もっと中間機構の機能を市町村、農協レベルにおろして、つまり地域の現場におろすような形に組織的な変更も含めて修正を加えていかないと、大目標を達成することができないのではないかというふうに思います。
同時に、人・農地プランとの連動を切ったということが非常に大きいと思います。建前上は一緒になっています。しかし、これは、繰り返し、人・農地プランと一緒にやるかどうかが論点になりました。なぜ論点になったかというと、結局、全国企業が公募でもってどこでも入りたいという要求に応えるために公募制度というのを導入してしまったわけです。しかし、現場に担い手がいるのに、なぜ公募しなきゃいけないのかというのは余りはっきりしません。
そういう意味では、ここに書きましたけれども、順番が、序列が必要だと思います。つまり、地域内の人から順番に、遠ざかるに従って優位性が下がっていく。地域にいるなら、そこに任せればいいじゃないかというふうに思います。そのあたりの序列がないまま、全て一緒にして、力の強い人、計画のすばらしい人となると、全ての計画を電通がつくって、それを全国に配ればオーケーという農政改革になってしまうのではちょっと寂しいのではないかな、もうちょっと地域の声を酌み上げていくことが大事だというふうに思います。
さて、その次に、四ページのところですけれども、くどくど言うつもりはありませんので、一番大きい問題は、農地市場に対するミスリーディングがあったのではないかなということです、中間機構に関しては。
それは、現在は農地の担い手市場なんですね。出す方は、出しても借りてくれる人がいないという状況です。ですから、借りる方はどこでも借りられる。極端に言えば、借りたくないというより、借りないということもできます。ですから、耕作放棄地は、この数年間、再度ふえ出してしまっていて、かつてずっと減ってきたんですね。それが逆になってきている。これは大きな問題だと思います。
そういう点で、ここに書いたように、担い手の序列も含めて、地域内から遠ざかっていくような形での組織化に変えていくことが大事だと思います。
全体の対策の評価については、aからfまで書きました。やや上から目線、強権的、補助金での政策誘導が過ぎるのではないかな。そして、下からの組織化にもっともっと切りかえていくことが必要ではないかなということであります。
そして、現在、農協陣営が取り組んでいる地域農業振興プランや地域営農ビジョン運動、こういうものと連動しながら、具体的に、人に農地を張りつけるだけではなくて、地域農業をどのように組織化するかという大局的な観点からの政策構築、再構築が必要ではないかなと思います。
農協の方については、以下、細かく述べております。もう時間が来ておりますので、ごく簡単にポイントだけを述べて、まとめたいと思います。
一つは、農協、農業委員会、農業生産法人制度改革が一本になっておりますけれども、これを束ねる論理が必ずしも明確ではありません。
前半と後半の議論もはっきりしないんですけれども、この後半の議論、後半というのは、アベノミクス第二弾のこの三法案でありますけれども、これについても明瞭じゃない。そういう点では、もう少し丁寧な議論をしてほしい。通すか通さないかではなくて、現場の方々が、これでやりましょうという気持ちになるような政策体系にすることが今一番求められていて、そういう意味での丁寧さが必要な段階にあるのではないかと思います。
それから二番目に、協同組合としての農業協同組合が本当に不要なのかどうか、これが非常に論点だと思います。
というのは、協同組合の株式会社化という全体を貫くトーンがはっきりとした太い線であります。だとすると、協同組合法の議論をしてもしようがないのであって、農協を会社法に変えればいいという話になってしまいます。
そうではなくて、その下にいろいろ書いてあります。事業運営原則の明確化等々も賛成ですけれども、これについても、利用高配当、つまり配当に重点を置くような組合組織ではなくて、利用、結集そのもので利益が発生する、そういうふうにすることの方が基本であって、何か出したものが戻る、金利生活者のような生活を農民に求めるのは余り妥当ではないんじゃないかなというふうに思います。
そして、利用高配当の重視という方向自体は、既に大口割引制度等々を通じて、現場の農協では取り組まれております。問題は、これが十分に隅々の農協まで行き渡っていない、つまり公平原則と平等原則が十分に区分されていない。それをしっかりさせながら、現場に浸透させることが大事だというふうに思っております。
そして、農協の組織変更についてですけれども、これも、なぜ一般社団法人や生協、あるいは医療法人、こういうものに変えなきゃいけないのか。余りはっきりしていないというふうに思います。特に、全農の株式会社化ということと、その全農の下にぶら下がる単協、株式会社の下に農業協同組合がなぜぶら下がって一つの組織になるかということは、余りわかりやすい説明はされていないんじゃないかなというふうに思っております。
それから、農協改革がなぜ全中改革、解体として構想されねばならないのか。中央会不要論で農協運動が実際に束ねられるんだろうかという不安があります。
実際、私が今やっている農協出資法人についても、当初は単協のレベルでの運動から始まりましたけれども、これを全中がきちんと位置づけることによって、一挙に全国的な運動に広がりました。一九九〇年代にはたかだか数十件の事例しかなかったわけですけれども、現在では五百件、恐らく、日本の農業生産法人の三%弱までが、農協出資法人という一つの経営体が占めるようになってきております。その最先端には、三百ヘクタール、四百ヘクタールの規模の経営体すら、水田農業において成立しております。売上高も、五億円、十億円といったものも出現しております。そういう意味で、全中がそういうことの旗振りをしてきた役割をもっともっと積極的に評価することが大事ではないかと思います。
それから、担い手を中心とした職能組合論というのは非常に重要なロジックでありますけれども、これはそういうふうになった場合、それらの方々は協同組合でやらないんじゃないか。つまり、力の強いものは伸びましょうという論理でいった場合に、やはり株式会社のように、票がいっぱいある、つまり、株をたくさん持っているものの発言権が強い組織の方がいいというふうに行くわけですね。それは、そもそも協同組合の枠とは違う話でありまして、株式会社でやればよいという方向で行ってしまいます。
ですから、協同組合の枠の中での職能組合の強化という議論が、今の、一般企業の参加しているような法人の方々の利益に本当に合っているかというと、どうもそうではないんじゃないかな、ちょっとずれがあるのではないかなというふうに思います。
さらに、六ページのところで申し上げたいのは、職能組合としての農協にとって准組合員は不要な存在なのかということであります。
今回は結論を出しませんでしたけれども、准組合員については、どちらかといえば、やや冷たい仕打ちで、農協から排除する方向に向かっているかと思います。
しかし、農協の准組合員制度というのは、そこに細かく書きましたけれども、実は農協にとって不可欠の存在だというのは、単純に農協運営にとって不可欠ではなくて、専業的農業者にとっても、彼らがいることによって自分たちの事業や何かが支えられているという側面があるわけですね。つまり、地域においては、両者が相互に役割を果たしているという事実があります。こういう点をどう評価するかということです。
同時に、実は、准組合員制度を地域農協論という枠組みでのみ論じられておりますけれども、私は、担い手問題の観点からしますと、多くの土地所有者、農家の方々を包含するところに准組合員というのはいるんだと思います。かつては大規模な農家だったけれども、分家、相続等々の関係でもう農家の資格もほとんどないが、実質的な土地所有者である、そういう方々の農地を抜きにして地域農業は語れないわけです。また、農地流動化も語れないわけです。
だとすると、それらの方々が入っている農協という枠組みを活用する形でもって、実は農業構造改革は進みやすいという事実があるとすれば、これを専業的な農家も含むような形でもって内包することの方が、現実の農政改革、農業構造改革を進める上では役に立つのではないかなというふうに思います。
そして、職能組合と地域組合の二つの性格をあわせ持つ総合農協だからこそ、高齢化、少子化が進む日本社会の今後について、さまざまな事業を通して、都会の方々にこういう道もあるんだよということを指し示しているという点では、実は一周おくれだったんですけれども、今や農協が先頭に立ってしまっている、そういう現実があります。このことをどう生かすかということであります。
最後のところにちょっと書きましたけれども、例えば佐久総合病院は、長野県においては、篠原さんは詳しいわけでありますけれども、信州大学の医学部の附属病院よりも病床数が多いんですよね。最大の病院なんです。これは農協、JAがつくってきた病院なんですね。これは要らないという議論でいいのかどうか。そうじゃないんだろうと思います。そういう点で、これが総合農協の枠組みの中で、その支援のもとにでき上がってきているということですね。例えば、神奈川県においても、伊勢原に農協病院が最近できました。こういうものを我々はもっともっと評価することが大事だと思います。
その上で、最後に三点つけ加えて、終わります。
一つは、農協と農政運動の関係です。
これは、野党の提案の方で、政治的中立性の問題が出されています。私はそうすべきだと思います。農政運動と協同組合運動そのものをごちゃごちゃにするというのはやはり正しくない。時代の要請からすれば、これは別にして考えるべきだ。その中で、自民党を支持し、公明党を支持し、あるいは、場合によっては共産党を支持するということもあってもいいかもしれません。それはそれらの運動の方々が決めればいい話であって、農協そのもの、本体がそれをどう支持するかということは別の話だろうというふうに私は考えております。そういう点で、この点について野党提案が触れているのは非常にいいと思います。
それから、今大きな問題として飼料用米の政策があります。この問題は、瞬く間に百十万トンというレベルに、一年目、二年目で到達しかかっています。そのときに全農、全中が果たしている役割は極めて大きいです。これから本格的にやろうという声が出たところで初めて進んでおります。
私は飼料用米について詳しいので、中身について言いたいことはいっぱいありますけれども、とりあえず前に向かって動き出したことは事実です。ですから、これをさらに中身、内実を充実させていくことが、日本農業の再生にとって極めて重要な切り札になると思っております。そういう観点から、全中、全農のイニシアチブをそぐような方向というのはどうなのかなというふうに疑問があります。
そして最後に、地区重複農協の設置可能規定が野党提案で出ておりますけれども、これも非常に重要な点で、なぜかというと、現実には、多くの先進的な法人農業経営は一地区だけで存在しているわけではありません。複数地区に存在しております。A市にある法人がB市にも支店を持っていたりするわけですね。そのときに農協が違うと、いろいろやりにくいことがいっぱいあります。
そういう点で、アラカルト方式で選択できるような状態になっていくということ自体は、農協の中に競争原理をある程度持ち込んで、刺激し合うという関係から見ても大事ですし、それを生かしていく方向で構造改革を進めることができるのではないかと私は思っております。そういう観点で、これは、実は法人化等々を含む日本農業の構造改革にとって極めて重要な問題提起だというふうに受けとめております。
ちょっと尻切れトンボでありますけれども、大事な点は、こういう議論をぜひ国民全体に広げてほしいなと。農林水産委員会だけの議論ではなくて、マスコミを含めて積極的に開示して、日本農業の方向について、TPPを含めて議論することが大事だというふうに思っております。
以上です。どうもありがとうございました。(拍手)
○江藤委員長 ありがとうございました。
次に、鈴木参考人、お願いいたします。
○鈴木参考人 おはようございます。愛知県碧南市から来ました鈴木啓之と申します。きょうはよろしくお願いします。
私は、碧南市で鈴盛農園という屋号で農業経営をしております。現在三十一歳です。
実は、今から六年前まで、自動車関係のケミカルメーカーにおいて、直営店舗で統括店長の仕事をしておりました。結婚を機に退社をして、改めて農業の世界に参入してまいりました。それまで農業には全く接点がなかったので、もちろん知識もない、人脈も何一つありませんでした。そこから一年弱、愛知県の農業大学校で基礎的な研修をした後、地元農業法人で二年間研修を重ねて独立をいたしました。二〇一二年に新規参入で経営を開始してから四年目の、まだまだ小さな経営体であります。
それと同時に、現在、北海道から沖縄までの日本全国三十九歳以下の農業青年一万三千名が所属する全国農業青年クラブ連絡協議会、通称四Hクラブの第六十一代目の会長をさせていただいております。
話を鈴盛農園の方に戻させていただきまして、鈴盛農園は私が代表を務めておりますが、先ほどの四Hクラブの業務などでの出張も多いため、今、妻を女性農場長として、野菜の作付スケジュール、品種の選定だったり、スタッフへの作業指示、また六次産業化として農産物の加工などを担当してもらっています。
私は、もともと両親が農業をしていたわけではないので、新規参入で農家世帯となりました。それゆえ、家族労働力は妻のみです。それではやはり規模拡大ができませんので、現在、ほかに研修生を一名、それからパートスタッフ二名を常時雇用し、繁忙期には地域のシルバー人材を利用して農業に取り組んでおります。
また、私自身が改めて外部から農業の世界に新規参入してきたということもあって、これから農業を始めたいんですとか、農家で働いてみたいんです、そういう若者が訪ねてきてくれることも多くなりました。現在、鈴盛農園のスタッフの平均年齢は三十歳で、非常に若い農業者集団になっております。
現在は、面積は約二ヘクタールの農地を利用して、年間で三十種類、約百品種の野菜を、ハウスや温室を使わない露地栽培で育てています。
私のいる碧南市というのは、冬ニンジンやタマネギの指定産地となっていることから、作業体系の機械化が進んでいたり、販売価格も安定しているということで、農業後継者が豊富で、優良農地は全くと言っていいほど余っていない状態です。今は本当に、いい農地があくと、陣地の奪い合いをしているような地域です。
その中で、僕のような新参者にはどうしても農地が集まらないため、非常に非効率なのは重々承知の上なんですが、三つの市をまたいで農地を借りて農業をしております。遠い畑では、農園の本拠地から三十キロ以上離れたところもありまして、往復の移動時間だけでも一時間半ほどかかります。そこに、トラックにトラクターを載せて走っていって、作業をして帰ってくる、そういった形の農業をしております。
また、現在お借りしている農地は、野菜栽培に必要な水源、水がなかったり、もともとちょっと耕作放棄地のようになっていて、最初に見に行ったときは雑草が何メートルかに伸びていたようなところであったりという、いわゆる条件不利地がメーンです。
その中でも、僕のような新規参入者が借りられる農地は、やはりほかの農家さんが手をつけないような、やり手のない農地になりがちです。よく中山間地の耕作放棄地の増加が問題として叫ばれている一方で、農地不足によって、そこまでしないと規模拡大ができない地域もあるということであります。
そういった限られた農地で野菜を栽培するため、畑一枚当たりの収入をいかに大きくできるか、そこがすごく重要になってきます。そういう観点でも、販売という部分も安易に人任せにはできないというふうに思っています。
私どもの生産量は、ニンジンでおよそ五十トン、サツマイモ十トン、タマネギ七トン、ジャガイモ四トン、そのほか細かい野菜をつくっておりますが、鈴盛農園では、栽培する野菜は全て直売事業での販売をしております。ですので、今回の改革の一つの主題でもある農協への系統出荷というのは実は一切行っておりません。
今では、自社農園での直売ですとか、自分のところのホームページのウエブショップ、それから道の駅、地域直売所での販売、これで野菜、農産物の六〇%を直売しておりまして、そのほか、大手農産物宅配サービスだったりスーパーとの契約で農産物を販売しております。
私の知り得る限りでは、こういう販売も自分のところで行っているという農業者、農業法人はふえています。担い手ですとか我々のような青年農業者のいわゆる農協離れというのは加速傾向にあるのではないのかなというのも現場にいながら感じております。
これまで、農産物の販売というと農協への系統出荷というのが基本であって、その他、身内ですとか周辺の人に少し直売をする、ごくわずかな直売であったり、一部だけ市場に持っていくんだという販売が多かったと思うのですが、かつてより販売先も多岐にわたって広がる今の状況では、農協への出荷というのも一つの販売チャネルにすぎなくなってきているのではないかなというふうに感じております。
そんな中で、私たちが農協への系統出荷をしていないということだったんですけれども、それには二つの理由があります。
一つは、自分たちで営業努力をして直売をした方が、ずばり、野菜を高く販売できるからです。
また、少しこれはきれいごとになるんですけれども、全ての野菜を僕たちスタッフの顔とそれから名前が見える状態で販売していますので、お客様の喜びの声は直接いただけます。それがみんなのやりがいにつながっています。
また、それより重要なのが、この前のあの野菜、ちょっと苦かったよとか、去年よりちょっと甘みが少なくなっていないかというお客様からのクレームを直接聞けることこそが我々の強みであると思っております。
市場からのクレームはどうしてもサイズや規格に関するものが多いと思うんですが、一般消費者からのクレームは味に関するものが多いです。そのため、私どもは、規格が出しやすい、簡単につくれる、栽培が容易だよという品種ではなくて、つくるのは少し難しいけれども味はおいしいよという、味を重視した品種選定を行っております。そのため、規格外品の発生というのがやはりふえます。収量も減少します。ですので、そんな中でも再生産できる価格を自分で決めて直売するということが非常に重要となって、全て人任せ、農協系統任せの出荷をしていては経営が成り立たないという側面もあります。
そして、系統出荷をしないもう一つの理由として、部会に所属する必要があるからです。
部会に所属をすれば、もちろんのことですが、その中でのルールを守らなければいけません。例えば、部会員は勝手な直売をしてはいけません、独自で加工品の開発をしてはいけません、ホームページを自分で開設してはいけません、メディアへの許可なき出演を禁止しますなど、さまざまな縛りがあるということも聞きます。
足並みをそろえてやっていくということ、それは地域の農産物のブランドを守るという観点においては非常に重要だと思います。ですが、それは同時に、出るくいは打たれるというか、出させない、誰かがぬきんでることを抑止するということでもあります。
そのような中、私は、農業界に参入してきて、六年前からずっと掲げているテーマがありまして、きょうお配りさせてもらったレジュメ資料にも書いてあるんですけれども、それは、「日本の農業をカッコよく。」というテーマです。
農業は、やはりどうしても後継者不足という問題もありますが、未来の子供たちにとっても当たり前のように職業の選択肢にあるような状況にしていきたいし、ひいては、憧れられるような農業にしないといけないというふうに考えていますし、それをやるのはやはり外部から入ってきた自分のような人間ではないかというような勝手な使命感すら抱いております。
そのため、積極的なメディアへの出演による農業の魅力のアピールも大事にしていますし、先ほどのホームページやSNSなどを利用した情報発信も、一年三百六十五日、ほぼ毎日行っております。きょう、こういった機会をいただいて、こういった場に立たせていただいていることも非常に光栄なことだと思っております。ありがとうございます。
農業は地域商売であるので、一人だけ出ていく、目立っていくというのはやはりどうしても悪とされてきたところがあると思いますが、あえて矢面に立ってでもその魅力を伝えていくということ、これは、これからの新規就農者、新規参入者はこういった部分も取り組んでいくべきだと思っています。
そういったことをしていくには部会の縛りというのがこれは大なり小なりあるので、もちろん、そういったことをしても大丈夫だよというところもあると思うんですが、やはりどうしても僕のいるところの中ではそういった部会の縛りというものがあっては不可能だったので、部会に所属するということをしませんでした。
端的にまとめますと、自分で営業努力をして直売した方が収益性が大きいということ、もう一つは、部会の縛りがあっては思い描く農業ができなくなるということ、この二つの理由から、私ども鈴盛農園では農産物の系統出荷を行っておりません。
では、逆に、農協がどのようになれば僕は出荷をしたくなるのかなということも考えたことがあるんです。
まず、私どものような個人農家と比べて圧倒的な物量があります。農家数の多さと集まってくる物量の多さがありますので、それを生かして有利販売をしていただきたいなと思います。
僕自身、営業活動をしていく中でネックになるのが物量です。耕作面積がまだ少ないこともあって、契約出荷においては物が足りなくなってしまうというリスクがあるので、契約出荷の出荷量を減らさせてもらうとか、または必要量が用意できないので契約に至らないということも多々あります。
農協にはそれを集める力があるので、ただ集めて流すということではなくて、産地ブランドと安定大量出荷ということを武器にして積極的な営業活動をしていただき、本当に、私どもが営業努力をして出すような販売価格を軽々と上回るような金額で販売をしていただけるようになると、販売チャネルとしての魅力も上がってくるんだろうなというふうに思います。
もう一つは、部会に所属する農家と、私のように所属をしない、個人で販売する農家の間を埋めるような役割も農協に担っていただけるとありがたいなと思っております。
これまでの農業界においては、部会に属さず、一匹オオカミのような農業をしている、変わり者と言われるような人が地域には少なかったと思うんですけれども、それゆえ、例えば相手にしないですとか、あそこはちょっと違うという形で過ぎてきたことかもしれないんですけれども、時代が今変わっておりますので、栽培方法ですとか出荷方法などにオリジナリティーを追求する個人の農家というのはふえています。間違いなく、そういった農家は今に無視できない存在になっていきます。
もちろん、これまでのやり方を忠実に守ってくれる農家を守るのも非常に大事な農協の役割だと思いますし、そういった農家とこれからの新しく入っていく形の農業者との距離をうまくつないでいくことも今後の農協に期待しております。
そのためには、農協の理事に、農協とちょっと距離があるような農家も積極的に採用していただくとか、法案の中で認定農業者とか販売に強い者を理事に入れるというところの中に、やはり地域でこれからを担っていくような、私どものような青年農業者を採用していただく枠などをよりふやしていただけるとありがたいなというふうに思います。
もう一点が、農協の事業利用についてなんですけれども、私どもは、肥料や種苗、それから資材や機械の購入における農協の利用率は、金額ベースでいうと全体の約五%で少ないんですけれども、残りは、地域の種苗店や機械メーカーから直接購入したり、ホームセンターや農業用品専門店など、そういったところとの取引をさせていただいております。
組合員皆平等という言葉もありますけれども、何か農協にはちょっと商売っ気がないような感じがするんですよね。もちろん、ほかの企業と同様に、早期予約割引ですとか大口利用者への割引ということはあるんですけれども、例えば、農業用品専門店は、すごく積極的に足を運んで土壌診断や施肥設計の提案をしてくれます。ホームセンターでは、割と柔軟性のある値引きですとかサービスを行ってくれます。
そう言うと、土壌診断や施肥設計はうちでもやっているよという地域農協もあるかと思うんですけれども、私が言いたいのは、積極的に農家のもとを訪ねてその提案をしているかというところであります。
まあ、私がそういう農協系統出荷をしていない農家なので、もしかするとそのサービスを享受できていないだけだよと言われればそれまでなんですけれども、出荷先が農協であるかないかということは関係なしに、資材販売をふやすための営業活動はやはりすべきだと思いますし、その結果、肥料、農薬の販売数量がふえることで仕入れ価格を抑えて、農業者へ還元できるということもあると思います。
ただし、農協の肥料は高いというふうに言われるんですけれども、実は品質はいいんだよというふうに言われる、そういう声もよく聞きます。では、そういったいいものを販売しているということがあるのであれば、資材価格の努力による引き下げはもちろん、待つだけではない農家への提案型のサービスを強めるなどして農業者の方に歩み寄ってきていただけると、強制的に利用するのではなくて、みずから農協を利用したいなと考える農家はふえるのではないかと思います。
ここまで私なりに農協に求めるものというのをお話しさせていただいたんですけれども、地域農協によっては、実は、これらのことを全てクリアしていて、農家にも求められる農協になっているところもあると聞きますし、最近では、そういった農協がよくテレビに取り上げられたりしていることもあります。最終的には、やはり農協職員の人間力というところが非常に重要になっているようなことも感じます。
実は、私たちも、農協への出荷がなかったり事業利用率も五%と、ほとんど縁がないような状態なんですが、現在、少しずつですが耕作面積が広がっているのは、実は、一人の農協職員さんの力添えがあるからなんです。
地域の中では、どれだけ悪条件な農地でも耕作放棄地にしたくないというその考えと、どんな農地でもいいから規模拡大したい、貸してほしいという我々は利害が一致しておりますので、その間に入って農地のあっせんをしてくれているのがその農協職員さんです。
職員の間での仕事への熱量というのか温度差というのはどの世界にもあることだと思うんですけれども、一人でも多くの職員さんが広い視野で地域農業というのを見ていただいて、熱量を持って取り組んでいただけることを強く望んでおります。
農業者に直接的に関係があるのは、やはり全農、全中というよりも地域農協だと思うのですが、地域農協から盛り上がっていくことは非常に大事だと思います。その点、全農さん、全中さんには、その組織力を生かして、やはり基本的な職員の人材育成、教育であったり、優良事例として先ほどのうまくいっている農協の情報というのをきちんと地域まで落とし込んでいただくような、そういう教育をしていただけるとありがたいと思います。
私自身も、いろいろ農業をやっていくに当たって、経営の計画を立てて、未来のビジョンを描いていくと、あっ、今思い浮かんだモデルというのは小さな農協だなと思うときがやはりすごくあるんですよね。そのときに、やはり農協というのはビジネスモデルとしてはすごくすばらしいものなんだなというのを感じたりもします。
ただ、現状でたくさんの課題を抱えているということも事実だと思いますので、これからも創意工夫をして、本当に、時代に合った農協の形をつくり出していただいて、我々農業者にとってなくてはならない組織となっていただける、そんな改革になることを期待しております。
以上が、私、鈴盛農園代表鈴木啓之の意見です。
ありがとうございました。(拍手)
○江藤委員長 ありがとうございました。
次に、石田参考人、お願いいたします。
○石田参考人 私は、龍谷大学の石田でございます。
参考人として、本日は、内閣提出の改正法案について意見を述べさせてもらいたいと思います。
お手元のA4しか用意していませんので、これに沿ってお話ししたいと思います。
ちょっと書いていないことがございまして、第一は、戦後農協のアイデンティティー、ここでは自己認識と書きましたが、おのれは何者ぞというものを今回の改正案は否定していると思います。
今回の改正案の根本は、私は、協同組合という普遍的な存在、これに対する配慮もない、それから、戦後農協という歴史的個体、これに対する配慮もない。本来的には、普遍的存在と歴史的個体の配慮のもとに改正案がつくられるべきだと思っておりますが、その両方ともないということは、根拠のない未来志向の改正案だ、一言で言っちゃえばそういうことになるのかなと思っております。
これは前置きでございまして、一に入らせていただきます。
おのれは何者ぞ、これは農協自身も理解しなきゃいけませんし、皆さん方もしっかり理解していただいて議論していただきたいと思っておりますが、戦後、農協法は昭和二十二年に制定されましたけれども、その制定の過程の中で、今から申し上げる四つのようなことが歴史的個体としては継承されてきたということが重要だと思います。
まず第一は、三元交配だということです。
戦前の産業組合と農会、それからアメリカの販売農協。協同組合として、形としてはどれが一番純粋なものかといえば、アメリカの販売農協だと思いますが、いずれにしても、この三つが交配されて出てきている。その結果はどういうことだったのかというと、生まれながらにして職能組合であり、かつ地域組合である、ここがあります。
今回の法律案は、先ほど歴史的個体に対する配慮がないと申し上げましたけれども、職能組合純化路線を強く打ち出しておりますが、先ほどからいろいろな参考人、谷口参考人が述べたと思いますが、職能組合としての協同組合というのはほぼ持続可能性がないというのが私の考えでございまして、あるとすれば株式会社に転換せざるを得なくなる、そういう法律のたてつけになっているというふうに思います。
それから、二点目でございますが、戦後農協はやはり小農、家族農業の組織だということでございます。
この家族農業というのは、太閤検地以来の四百年以上の歴史を持っている、代々続いてきている定住者の組織でございます。この人たちは、地域の資源だとか、環境だとか、文化とか、社会、経済、これの守り人というか担い手というか、四百年以上続けてきたわけでございます。サラリーマンがあちこち行ってビジネスを展開するような、移住者じゃないんですね。
この人たちを本当は盛り上げていく。この人たちは、本来はシチズン、市民、地域を守るぞ、こういう意思を持っている人なのでございまして、この人たちを否定して何で地方創生ができるんだということでございます。地方創生と今回の農協法改正は全然相入れない、そういうたてつけだと思っております。
それから、三つ目ですけれども、農協というのは、大きな海に例えれば、表層は経済原理で動いてございますが、海の深層は社会原理というか、地域の人的関係の中で動いてございます。
オーナー企業のように生き馬の目を抜くようなこととはおよそ正反対の組織だということでございまして、変わるとすれば世代交代が進む中において徐々に変わっていく。これを今回は、とにかく五年以内にこうしろというような形で言っておりますが、余りにも拙速であるというふうに思います。
四つ目でございますけれども、地域インフラであるということでございます。
これは、歴史からいうと、品川弥二郎内務大臣が信用組合、そしてその後、産業組合をつくりましたが、一九〇〇年に制定されましたあの法律はなぜつくられたのかというと、明治二十二年の町村制を確たるものにしたいということで産業組合ないし信用組合を構想したということ。
どういう意味か。地域には、役場、最低でも小学校をつくるために町村制がしかれたわけですから、それをしっかりしようという過程の中に郵便局、さらに産業組合というものが位置づけられた。つまり、これはそのレベルでいう地域インフラでありまして、地域の人にとってはなくては困るという基本的な性格を持っていると思います。
以上、四つ申し上げましたけれども、このことは当の農協の人たちもしっかり理解しなきゃいけないし、皆さん方が議論する上でも、このことをしっかり頭に入れた上で今度の改正法案はどういう性格のものかということを御議論いただきたいと思っています。
それから、もう少し細かく入りまして、農協法改正の問題点を申し上げます。
第一は、根本的に、協同組合原則、自由、自主、民主の原則に違反しております。協同組合原則の第四原則、自治、自立、それから第二原則、民主制の原則がございますが、これに違反している。
例えば、理事の割り当て制、クオータ制を今度導入いたしております。認定農業者であれ、実務精通者であれ、理事に入っていただくということは決して悪いことではないと思っております。それを、法律で半分以上入れろという、この割り当てが問題なのでございまして、認定農業者であっても、自分の経営が忙しいから入りたくないという人だっているわけですから、入って俺は協同という取り組みを頑張るぞ、そして、地域の組合員の皆さんから信任を得るという形で理事に上がってくるのが一番望ましいのであって、半分以上入れなさい、どんな人でも入れろなんて、こういう法律のたてつけは協同組合を全然理解していないというふうに思っております。
それから、今度の法律の中で、第七条、事業運営原則というのが私は最大の問題だと思っておりますけれども、これは、現行法の第八条、最大奉仕、非営利原則、これを修正したものですが、これ自体に法律上の不備があると思います。これは後に申し上げます。
それから第三に、これも皆さん方に議論していただきたいと思いますが、今回のは、食料・農業・農村基本法の精神に違反していると思います。
食料・農業・農村基本法の第五条、農村の振興には、農村は生産の場であると同時に生活の場である、こう述べられています。そして、生産条件、生活基盤、これをよくする、そしてさらには、その地域の福祉の向上を目指すというのが食料・農業・農村基本法です。さらに、その後に、第九条は、こういう基本的な理念を実現する上で、農業団体も鋭意努力しなきゃいけないと書いてあるわけですよ。農業団体が地域の生活基盤をよくする、地域の人たちの福祉を高めるという役割が法律でうたわれている。
しかし、今回、そんなことをやるな、農業者だけの役に立つ農協になれと。それであれば、この第九条、これは、皆さん方、あるいは提案した農林水産省ですか、内閣ですか、どういうことを考えているんですかという御議論をぜひしていただきたいと思っております。
もちろん、これは、協同組合第七原則、地域への関与というところでも抵触すると思っています。
それから第四に、規制改革に値しない規制強化が進んでいる。
私に言わせれば、地域農協の自由を縛っているのは中央会じゃありません、法律です。まさに行政庁なんですよ。この行政庁の権限、監督権、認可権、これを減らすことが地域農協の活発な活動を促進するわけです。それを抑えていくということは、もろに行政庁の力だけが強くなる。これは逆ですよね、規制強化。
一つ例を申し上げます。現在、既に正組合員資格は定款自治に委ねられているということになっております。では、現実に各農協が正組合員資格を緩めようと提案しようと思って県に行きますね、そうしたら、もう受け付けてくれないわけですよ。模範定款例はかなり自由に書きなさいというふうになっているんだけれども、行政庁が受け付けないわけです。それを受け付けてくれたのが東京であり、兵庫六甲、神戸市です。今回、岐阜が、二つの農協が変えてもらった、こういうふうに僕に情報が入ってきましたけれども、これは要するに、県がそういうふうに対応がばらばらなんですね。
いずれにしても、行政庁の認可権や監督権、これを縮小するということが、本当の地域農協の活性化に役に立つという御議論をぜひここではしていただきたい。
それから、第五番目でありますが、附則が多用されているということです。
附則というのは、私の理解では、本則と同じ効力を持つ、しかし、経過措置だ、こういうふうに理解しております。農協法上に措置された中央会は認めないというような御発言が安倍さんからあったと思いますが、この中央会の改革は今度全部附則に入っていますけれども、本則と同じ効力を持つということであれば、何だ、農協法に措置された中央会制度じゃないか、こう言えるわけですよね。
しかし、これは経過措置だと言ったら、五年後どうなるんですか、五年後になったら消えちゃうかもわからないですよ。そういうことを言ったら、都道府県中央会は連合会として措置しますよと書いてあるけれども、五年後どうなるんですか、これが消えちゃったら一体何になるんですか、もう自動的に一般社団法人になるしかないじゃないですか、こういうたてつけになっております。全中も消えちゃう、全部なくなってしまう、中央会制度が農協法から消える可能性があるというふうなことを御議論をぜひお願いしたいと思います。
次に、いろいろ文句はあるんですけれども、もうここが本当の重要な点だということだけ申し上げたいと思います。
三、修正を求める事項で、第一は、いわゆる戦後体制からの脱却ということで農協をこういう形で取り上げるのであれば、まず、本来的には目的から変えなきゃいけないんじゃないですか、事業運営原則からじゃなくて、目的、第一条から変えるべきだ。
第一条の何が問題かというと、私は、第一条の中で、最後でございますが、「もつて国民経済の発展に寄与する」、つまり、国があるよ、それから全国連があるよ、県があるよ、そして地域農協があるよというたてつけになっております。そうではないでしょう。皆さんたちがもしこういう戦後体制からの脱却と言うのであれば、お国のための農協から地域のための農協になるべきだ、こういうたてつけにしないといけないわけで、第一条のここに、「もつて国民経済の発展に寄与する」を、もって地域の発展に寄与する、ここから書き直さないと本当ではないと思います。
それから、第七条の修正を求めたいと思います。
第七条は、先ほど申し上げましたように、現行法八条、非営利、最大奉仕原則でございます。
行政庁の説明をいろいろ聞いて、皆さんは丸め込まれているんじゃないかなというふうに理解しておりますが、第一項は、これは現行八条を移したもので、組合員への最大奉仕をするとなっています。
六次産業化だ、輸出だとかといって、農業所得増大への最大配慮ということを言っております。それが実現できたかどうかを五年間あれすると言うんだったら、これこそ附則に持っていけばいい話で、それを第二項の中にどんと書き入れるわけです。
第三項は、従来の非営利原則をやや細かく書いただけで、我々専門家から見れば、何でこんなことを書く必要があるのかという内容でございます。最大に利益を上げて、それは組合員に還元する、あるいは将来のために内部留保する、当たり前のことでございます。これは非営利原則そのものでございます。
なので、私に言わせれば、最大奉仕、非営利原則、第一項、第三項だけでいいので、なぜ第二項を書き加えなきゃいけないのか。こんなのは削除した方がいいと思っております。
その削除の理由を申し上げます。
今回の農協法改正の一番の大きな問題点は、小泉郵政改革と同じ、要するに、安倍農協改革で信用、共済事業を分離しよう、これなんですよ。その前に中央会をたたきましょう、こういう構図でやっているわけで、それの手段が准組合員事業利用規制でございます。この規制が、今回は調査ということで附則に盛り込まれましたが、そもそもそういうものがどういう理由で入ってくるのかというと、この第七条第二項、農業所得増大への最大配慮をしていますか、県の人たちが検査に行って、あなた方はそういうことをやっていますか、きちんと書類を出しなさい、ついては准組合員の事業利用を出しなさい、こう言われるわけでございます。
ところが、考えてください、次の理由ですが、第一項と第二項は矛盾するということですが、准組合員といえども組合員でございます。現在の農協法では、第十二条で組合員資格が列挙されています。だから、その中に准組合員たるような人も入っているわけです。だから、そこは、組合員に最大奉仕しなきゃいけない、そういう人たちが、准組合員も入っているんです。第二項では、まさにそのうちの農業者だけの役に立つ、さらに認定農業者的な人たちの役に立っている、こういう発想になってございます。
現行法十二条の組合員資格と、十六条で初めて正と准の区分が、権限が違うよということが書かれ、十二条は、組合員は正、准ともに組合員。そうしますと、第一項では組合員へ最大奉仕、第二項では正組合員のみに奉仕しよう、こういうことで矛盾しているんじゃないかというふうに私は思っています。
それから、最後でございますが、要するに、表面上を捉えれば、農業所得の最大化、これは当然農協がやらなきゃならない仕事でございますから、組合員への最大奉仕の中に入ります。ですから、あえてここに二項で書き出す必要はないと思っています。
こういう三つの理由でございまして、この第七条第二項の削除、それから第一条の修正をぜひ御議論いただき、なぜそういうことを御議論いただかなきゃならないのかというのを今申し上げました。
いずれにしても、この法律そのものが根拠のない未来志向のものだということで、ここにお集まりの方々の立法府としての御議論を賜りたいなと思います。
以上でございます。(拍手)
○江藤委員長 ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○江藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井野俊郎君。
○井野委員 参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。
まず冒頭、小川さんにお伺いさせていただきたいと思います。
小川さんは、私の地元、JA佐波伊勢崎の理事でございまして、今度新たに常勤理事にこの五月に就任されて、まさに農業改革、農協改革において、これから大きな役割を期待されての御就任であると私は感じております。
先ほど、小川さんの方から、今後JAは、六次産業化としては地元商工会議所等の連携は当然必要であるし、また、全農については地域間の調整とかそういった役割もぜひ担ってほしい、あわせて、何よりも役員は、経営者としての意識改革であったり、職員としての意識改革が重要だというふうなお話をされていました。
私も本当にそのとおりであると思っております。幾ら組織をいじったところで、やはり現場で働いていただく方の意識等が変わらない限りは何も変わらない、農家のためには全くならないんだという思いはまさにそのとおりであると思っております。
そこで、まず、今回の農協改革では、理事等の過半数は、農業の専門家といいましょうか、認定農業者であるとか、そういったたてつけにしておりますけれども、こういう議論により、単位農協等が変わっていくと考えていらっしゃるのか。どうすれば単位農協が変わっていくと考えていらっしゃるのか、お聞かせいただければと思います。
○小川参考人 お答えします。
理事の過半数を認定農業者または経営能力のある者というふうにありますけれども、過去にも、理事で出てくる人の中には、余り農業をやっていない人が比較的多かったわけですね。また、農協職員から上がってくる農協の理事も比較的多いわけでございます。
特に農協職員ですと、やはり組織を守るというふうな部分が往々にしてあります。確かに精通はしておりますけれども、そういった面で、果たして現場の農業者の意見をどこまで拾えるかという面で、私は、今回の理事を認定農業者もしくは経営のプロということは非常に賛成しております。
やはり、現場の意見が理事会等で反映され、農協がそういった面で経営改善ができれば、組合員のための農協に一歩近づける、そういうふうに思っております。
以上でございます。
○井野委員 ありがとうございました。
続きまして、今度は谷口参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
先ほど谷口さんのお話にありましたとおり、農業というものは多様な担い手がいるというのはまさにそのとおりだと思います。小規模な農家から、ある程度大規模な農家の方もいらっしゃいます。
ただ、その中で、冒頭の小川参考人のお話にもありましたとおり、大規模な方は農協から離れて独自で販売をされるという方もいらっしゃいますし、鈴木参考人のように、ある程度、規模が大きくなくても、そういった意味では、自分で、独自のブランドといいましょうか、そういう形で売ろうという方もいらっしゃるわけです。こういう多様な担い手に対して、ある意味農協という組織が十分全て対応し切れなかったという面はやはり否めないのかなと思っております。
では、この多様な担い手の存在を認めた上で、農協というものが、まさに多様な担い手の意向に沿うといいましょうか、要望に沿う形になるかという点、その点はどう考えていらっしゃるのか、お聞かせください。
○谷口参考人 その点は大変難しくて、答えはないと思います。
というのは、農協によって相当違いがあります。そのときに、非常に大きな違いの一つが、地元ではない人を農協職員にどれまで入れられるかという度量の大きさがあります。それから、地元の関係者じゃない、しばしば四年制大学を卒業したような方々を高い賃金を払っても入れようという意思を持って引っ張ってくるような気概があるかどうか、そういうことがかなり大きく作用しております。
ですから、農協によって、そういうことができているところについては、大変広い視野から多様な担い手を育てていくようなことができている地域は十分にあると思います。
ちょっと話はかわりますけれども、先ほど鈴木さんがやったところ、あいち中央農協は、私は長い間面倒を見ていて、何がすごいかというと、あそこは担い手が多過ぎるんですよ。いかに担い手を減らすかが主要課題なんですね。私がいつも講演に行くと、いかに減らしたらいいかという話をしろというふうに言うんですけれども、これは大変困るんですよね、い過ぎて困るというのも。それぐらいのことを実は農協が育ててきたという事実があります。
ですから五千ヘクタールに、例えば土地利用型農業で百五十戸、一人三十ヘクタールにしかならないじゃないか。全部とっちゃって、あと誰が残りをやるんだ。なくなっちゃうんですよね。ですから、やめさせろという話になるぐらいのところもあるんです。これは、やはり農協が長い間育ててきたという歴史があって可能なんですね。
ですから、農協イコールだめとか、そう単純じゃなくて、地域ごとに大きい差があるというふうに思います。
その際のポイントの一つは、今言ったように、やはり職員のところにどれだけ優秀な方を引っ張ってこられるかということだと思います。それができているところはほとんど、ほとんどというのは言い過ぎですけれども、地域外から、いわゆる縁故だけではない採用の方をどれだけ入れられるかということがあって、このことが大きな力になっている面は現実にあるというふうに思っています。
ですから、その点は組織論そのもので全部片づくかというと、組織の運用の仕方という点で、まさに人材育成という問題に尽きてくる課題なのかなというふうに考えております。
以上です。
○井野委員 ありがとうございました。
続きまして、鈴木参考人にお伺いさせていただきます。
先ほど鈴木さんの方から、今は農協系統出荷等は一切していないけれども、幾つか、例えば営業努力をして販路拡大をしてもらったり、客の反応がわかるような形であればとか、さまざまな、こういうことをやってくれる農協であれば自分も利用したいというお話をいただきました。
これは当たり前のことかと思いますけれども、例えば、いわゆる組織論になると、よく、協同組合は利益を目的とするのではなく、小さい農家さんがいろいろ集まって自分たちの中での組織をつくって、自分たちの立場といいましょうか、利益を最大化していくというところであって、株式会社とはその点が大きな違いなんだ、そういう組織論の議論があるわけであります。
鈴木さんにとっては、むしろ協同組合、すなわち、株式会社と違って協同組合は、ある意味悪く言えば、農家から利益を取らないから協同組合を利用しようとかいうよりも、株式会社であっても、自分にとって、鈴木さんにとってメリットが大きければ、当然、メリットがあればそっちの方を利用して、会社が利益を得られてもそれは構わないということなんだと思うんです。要は販路とかそういった意味で、先ほど系統以外の、資材を購入するのは地元の、カインズホームみたいな農業資材を売っているところだというふうに思うんですけれども、それは多分株式会社だと思うんですね。
だから、協同組合か株式会社かという、どちらかを選ぶ基準としては、そこは大した意味がないといいましょうか、自分にとってどっちがメリットがあるかどうかのみの判断になるということでよろしいんでしょうか。
○鈴木参考人 本当にドライに言えば、いわゆる販売先の一つとして農協への出荷が高くなるということであれば本当に考えていきたいなとは思うんですけれども、では、そのときに、逆に株式会社相手の方がドライにいけますよね、それまでのことがないというのか、いろいろなことがないので。そういう意味でいったら、判断の基準として、株式会社の方が商売の相手としてはドライにいけるかなと思います。
ただ、農協自体の持っている、協同というのか、本当に地域インフラだなというのは、より地域の人口の少ないところに行けば行くほど感じるんですね。農協がなきゃ、ここにこのスーパー、Aコープなりとかがないとこの地域の人は困ってしまうよなとか、そういうことも思って、その必要性というものは十分感じているんですけれども、商売としては、株式会社だとドライに商売できるのかなと思っております。
以上です。
○井野委員 ありがとうございます。
続きまして、石田参考人にお伺いさせていただきます。
私は、お話を聞いていて、一つ大いに疑問を持ったところが実はございまして、この二の4番、地域農協の自由を縛っているのは行政庁であるというお話をされておりましたけれども、正直、私が地元のJAさんから、行政、市だとか県があるから俺らは自由に活動できないんだという話は特に聞いたことはなかったわけであります。
先ほどのお話によると、何か、県が認可しなかった点があった、それがイコール、農協の自由な販売であったり自由な資材調達だとか、そういう自由な経営をどうして縛ることになるのか、その点をもう少し教えてください。
○石田参考人 農業協同組合には定款があるというのは御存じですか。では、あの定款を変えるときには、総代会で承認も得なきゃいけませんが、同時に行政庁の認可もいただかなきゃならぬということも御存じですか。それを知っていなければちょっと議論にならないんですけれども。
今、全然そこで問題をJAが感じていないというのは、自分たちが変えようとしていないからですよ。簡単に言えば、今度、例えば暴力団のような人たちも組合に入ろうといったら、その排除規定をこう変えなさいと行政庁からおりて、中央会からおりて、各々、当然それは県が受け取る、認可される、この繰り返しだったわけですよ。
ところが、例えば正組合員、うちの地域では農地面積十アール以上といったって、もうそういう人もいなくなってきているよという農協の現状があるわけですよ、現実に。では、そこのところを、耕作面積要件を外そうと思って持っていったって、受け取ってくれないんですよ、県は。
だから、そういうことを私は申し上げているので、通常は定款変更をするときに行政庁の認可が必要です。それが気に食わなかったら受け取らない。認可する以前の問題。しないとかじゃない、受け取らないという仕組みになっているんですよ。だから、当然受け取るものしかない。簡単に言えば、お国から言われ、中央会から通して流れたものを持っていく、これは通りますよ。そういう現実を御理解の上、御了解願いたいと思います。
○井野委員 では、地元のJAの小川さんにお伺いしたいと思いますけれども、先ほどお話があったように、私の地元のJA佐波伊勢崎についてでいいですけれども、行政により、その自由な経営が全くできないというか、それによってそういう法改正をしてほしいといいましょうか、その点が今回のJA改革においては残った課題だというふうな認識があるのかどうか、お聞かせください。
○小川参考人 私も二期目の理事ということで、五月の二十二日に再選されたわけですけれども、特に地元の市町村とそういったことで自由な農協活動ができないというふうなことはございません。
先ほど面積要件とか十アール以上とかというふうなことがありましたけれども、そういったものの中には准組合員という制度もありますので、正組合員でなくても農協利用は当然できるわけですし、また、資材等も買えるし、販売もできます。
ですから、地元の行政からそのようなことでなかなか自由な農協活動ができていないということは、私自身は感じておりません。
以上でございます。
○井野委員 続きまして、今回のもう一つのポイントが、私が思うには、連合会、全中というところの改革になってくるんだと思っております。この点については、鈴木さんはちょっとあれなのかなと思うんですけれども、全中という、中央会という組織の話になりますので、これは小川さんと谷口さんに少しお伺いします。
全中の今回の改革、いわゆる一般社団には移行するけれども、それなりの調整だったり、そういった役割は引き続き担ってもらおうというのが今回の改革案でございますけれども、全中の組織のあり方として、例えば監査の問題等もあります。先ほどちょっと小川参考人はお触れになられておりましたけれども、監査の有無で全中の役割が変わるのかとか、はたまた、この全中という組織、今回の制度改革によって、今後、全中という組織にどういう役割を果たしてもらいたいと考えているのか、ちょっとお二人にお伺いしたいと思います。
○小川参考人 全中の役割というふうなことでありますけれども、社団法人になっても、地域の事例等を今でも広めておったりしておりますので、そういった面では大丈夫かなと。
ただ、監査法人につきましては、独立監査法人でなくて内部で今やっておりまして、それを独立監査法人にするというふうなのが今出ておりますけれども、先ほどもちょっと述べましたけれども、なかなか、受けている農協の方で、ちょっと強制力もないので、受けとめが若干甘い面が今まであったのかなというふうに私は感じております。
そういった面で、やはり農協自身も、これから健全経営のためには、そういった独立監査法人というふうな面で受けるのもいいのかな。全中の機能が、監査法人についても外部に出すというふうな話もありますので、その点の心配もないのではないかというふうに私は感じております。
以上です。
○谷口参考人 この点は、私は非常に単純だと思います。
というのは、一般株式会社、とりわけ上場している企業の、株式会社の会計監査が行われているロジックと、そもそも農協の業務監査と会計監査が同時に行われているということの意味が全く異なっているのではないかなと思います。
具体的に申しますと、私はJA出資法人の研究をしておりますから、農協の会計のやり方を、業務監査のやり方をそのまま出資法人も持っていきます。ですから、その法人については、私は今まで二百ぐらい全国で見てきました、各地の。ばらばらなんですね。それくらい地域の事情によって、どういう業務内容を持っていくか、それを会計に反映させるかというのは一律にいかないんです。それくらい日本の農業というのは多様性を持っています。
そのときに、全国一律で、株式会社で統一する対象として、一本のルールでぱっとわかるようにしてほしいというロジックとはそもそも違うんですよね。ミカンの経営と酪農の経営が同じロジックでもって会計監査して、業務監査して、さあオーケーですよというふうにはならないわけです。それは違っていいわけですね。なぜならば、例えば、物を売ったり買ったりするときのタイムスパンが全然違うわけです。片一方は、野菜だったら、一週間、二週間、一カ月、三カ月、短い単位で考えられます。酪農だったら、最低でも十六カ月以上、二十四カ月、三十カ月になります。場合によっては三年になります。ミカンだったら、場合によっては七年とか八年とか十年とか、お茶だったら三十年とかになります。この期間でもって物を考える、スケールで、業務監査や会計監査が行われるものとそうじゃないものが一緒になるかというとならないわけですね。
ですから、そういう個性を前提とするとすれば、公認会計士が全国一律のルールでぱっと切ってわかるかといえばわからないと思います。それでわかったものでいった場合には、業務がうまくいかないんだと思います。会計上うまくいって業務が失敗する、こんなばかなことは僕はないんだと思います。くしくもそうなってしまう可能性が高いということを私は心配しているということです。
○井野委員 終わります。ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。
これから参考人の皆様に順次質問させていただきます。
まず、大変お忙しい中、こうして足を運んでいただき、先ほど来大変貴重な御意見をいただいておりますことに対して、心から厚く感謝と敬意を申し上げる次第でございます。
それで、時間にも限りがありますので、早速質問に入ってまいりますが、最初は小川参考人に、農家の経営規模の大規模化と農協とのかかわりということについてお伺いしたいと思っています。
小川参考人は、乳牛の複合経営から今度は肉牛に変わっていかれて、そして大変規模も大きい中でされていると認識していまして、きょうは、本当はバターの不足の問題とかコントラクターとか飼料米の話も聞ければ大変ありがたいんですけれども、そういう機会ではありませんので、農協法に関連しての質問になります。
小川参考人は、これまでいろいろな機会にお話しされていることの中で、やはり、意欲のある農家は経営の規模拡大を真剣に考えている、そういうことがまずあって、これから、今回の農協法の改正に伴う、いわゆる改革の中で大規模化が図られていくようなことを期待したい、こういう御発言もなさっていらっしゃると思うんですけれども、私もある意味土地利用型農業のことを考えていくと、それは当然あると思いますし、酪農、畜産においても同じようなことが言えるのかなと思っています。
そこでお伺いするんですけれども、今回の法改正が農家経営の大規模化にどのようにつながっていくというふうにお考えか、あるいは期待されることでも結構ですけれども、その辺についてのお考えをお伺いしたいと思います。
○小川参考人 今回の農協改革等につきましての、改革がどのようなというふうな質問でありましたけれども、これは農協自身がいかに変われるかだというふうに私は思っております。
意欲のある農家は、農協を使うか使わないかも含めて選択はできます。そういった意欲のある農家をいかに農協がバックアップできるか、それが肝心だと思います。その前提として、やはり農協自身がどういうふうに変わっていけるか。前例主義ではなくて、昔から続いている農業ですけれども、やはりこれだけ農業者が減ったというのは、環境の変化があり、経済の変化があって現状があるわけです。これからどういうふうに変われるかというのは、そういった農協自身も変わっていかないと、農業者も残れない場面も出てくるかと思います。
ですから、最終的には、私は、この農協改革は農協の意識改革につながって、担い手を育てて、そして地域の活性化に進めばよいのではないか、ぜひそのような方向で今回の改革を進めてもらいたいというふうに思います。
以上でございます。
○稲津委員 ありがとうございました。
今、農協の意識改革に伴って、また、そうした農家への支援をしっかり図っていくことを今回の改正の中で期待していきたいというお話をいただきました。
そこで、農協の果たすべき役割ということについて、これは谷口参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、谷口参考人は、東京農大あるいは東京大学で大変な御活躍をなさっていることも承知をしておりますし、また、これまでのさまざまな場面でのお話、講演等についても、やはり農協の果たすべき役割は大変重要であるし、また、必要な見直しも図っていくべきだ、そういうお話をされているというふうに承知をしておりまして、私もある意味同感するところを非常に多く持っておりました。
ただ、参考人のお話の中で、いわゆる全中を変えれば何か変わるという趣旨のものではないんだと。やはり農家経営をこれからよくしていくために、あるいは所得を上げていくために必要なものとして、参考人は、農協は販売力強化、それからコスト削減にしっかり取り組むべきだ、今回の改正ではそこをしっかり支援をしていかなきゃいけないだろう、こういう趣旨の御発言をなさっておられまして、いわゆる農協の販売力強化、コスト削減、この辺のことについての参考人の御所見をいただければと思います。
○谷口参考人 その問題を含めて、大規模経営との関連も含めて議論したいと思います。
一つは、大規模な経営になって所得が上がるようになるとJAから離れる。つまり、所得を上げることとJAに参加することは相反するというふうに見る見方が多いんですけれども、実はそれは大きな間違いで、例えば、先ほどから出ているあいち中央農協をとりますと、私は、一九八九年から三年間、二〇〇二年から二〇〇六年までの四年間、一年のうち一カ月はあそこで常駐するくらいのつもりで地域支援をしました。
そのプロセスの中で感じている非常に重要なロジックがありますけれども、それは、農協が大規模経営を後になって支援したのではなくて、生まれるときから支援したんですね。だから、離れないんです。大きくなった後にこっちに来いと言ったって、誰も行きません。自分らを育ててくれたことは恩義を何にも感じていないのに、自分に都合がいいときに来いと言ったって来ません。
ですから、大事な点は、最初から育てるという意味で、そのプロセスのところに、とりわけ法人化というところについて、農協が今まで十分にやれてこなかったという側面があると思います。つまり、家族経営を極端に重視し過ぎて、家族経営はベースなんだけれども、家族経営から法人化して大規模化する経営も含めて、地域の多様な担い手を尊重して育てていく、地域農業のために育てていくという観点からすると、不十分な点が多々あったというふうに思います。
そういう観点からすると、一つだけ例を挙げますけれども、JA浜中町ということで、北海道の酪農経営の場合には、JAが出資法人を立ち上げて、その出資法人に一般企業九社に出資してもらって、そこに出資企業の一般企業の出向社員を入れて、その方がやがて自立して、農協出資の法人から、いきなり一般の法人経営が百八十ヘクタール、三百頭の規模で成立するということに、農協が先頭に立ってやっているんですね。つまり、農協の方針いかんによって、いかにもいろいろな形のものができてくるという実例が別にあるんです。現行の枠の中でもあります。
しかし、そういう点で、結局、販売戦略も含めて、地域農業の維持という観点から農協はいかなる役割を果たすのか。そのときに、販売戦略と同時に担い手ということを、相即不離の関係として、表裏一体のものとして取り組むかということに尽きていると思います。
そういう点でいえば、やはりJAの意識改革が大事ですし、協同の組織だからもうからなくてもいいのではなくて、もうかったお金をいかに地域のために、あるいは組合員のために還元するかということを前面に考えるようなもうけ方をどうするかという観点で運営していくことが大事だと思います。
そういう点では、農協の意識改革が大事であって、そういうことを、全中、県中を初め、系統組織が一丸となってやっていくことが大事だというふうに思っております。
以上です。
○稲津委員 ありがとうございました。
私も北海道でございまして、浜中町のJAの取り組みは、以前も直接訪問して伺っていますけれども、まさに今参考人がおっしゃるように、JAの浜中、そして町もそうですね、それから地域住民、農業者も一体になって、この町の、いわゆる生きていくための総合的な戦略をそこで求めて築いてきた、その中心的役割が酪農であり、JAだったという。こうした参考例がさらに展開されていくと、非常にこれからまた期待がされるのかなと。大変大事な視点での御意見をいただいたというふうに思っています。ありがとうございました。
続いて、鈴木参考人にお伺いしたいと思うんです。
鈴木参考人は、四Hクラブの六十一代目の会長ということで、いわゆる若手農業経営者として大変な御活躍をされているというふうに承知もしていますし、これからの日本の地域の農業者としての、まさに先駆的なお仕事をさらにしていただけるんじゃないかなというふうに期待をしているところでございます。
それで、いただいた資料の中で、大変私も関心を持ったことが一つありまして、それは農地中間管理機構との関係のお話なんです。
これは間違っていたらお許しいただきたいですけれども、なかなか農地の取得というところでは御苦労なさったような認識でいるんですけれども、今後、農業参入していきたい、あるいはこれまでと違う農家経営をしていきたいという中で、やはり一定程度の農地を取得したい、ここに新しい仕組みとしてこの農地中間管理機構が出てきたんですけれども、まだ緒について一年ぐらいですから、いろいろなことをまだ成果は問えないと思うんですが、そうした中で、参考人は、私がすごく期待しているのが農地中間管理機構です、こういう御発言をなさっていまして、そして耕作断念地というお言葉を使っていらっしゃいますけれども、そうしたものも集めて、将来的に中間管理機構のもとで農地を取得あるいは農地を貸与できるような、そういう仕組みをぜひとも今後もしていただきたい。
これは、関連するものとしては、実は今回の法改正の中で農業委員会制度の改正の取り組みもありますので、ここに少なからずリンクしてくると思うんですけれども、この中間管理機構について期待されていること、あるいは、ぜひこうすべきだという御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。
○鈴木参考人 農地中間管理機構に関しては本当に期待をしておりまして、ただ、今、やはりまだまだ農地の預け手の方が少ないという現状だということは聞いておりますし、僕も今三つの市に、農地中間管理機構に、公募に応募をしまして、農地が出てくるのを待っている状態なんですけれども、それに関しては、これからもっと農地中間管理機構の方に農地が集まるように、そういった取り組みをしていただきたいなというふうに強い期待は持っております。
また、農地中間管理機構がもし本当に動き出せば、こういう農地をどんどん探して規模拡大をしていきたいという農家はこれからふえてくると思いますし、また全然別で、新規参入で入ってくるときに、農地を探す一つの方法として中間管理機構が一番最初に使われるものという存在になってくると、新しく農業に取り組む人にとってすごく助かると思いますし、農業が活性していくと思いますので、中間管理機構にはそういった点を期待しております。
○稲津委員 ありがとうございました。
それでは次に、石田参考人にお伺いしたいと思っております。
参考人もたくさんの論文、また提言をなさっていらっしゃいまして、日本農業新聞にも折々記事も書かれていることも承知をしております。
そうした中で、実は、先ほどの御説明のほかに、私はどうしても、ぜひこれは石田参考人にお伺いしたいというふうに思っておったんですけれども、それは、いわゆる農協の理事も含めて構造的なことをお触れになっておられるところがあって、いわゆる女性とか青年、多様な方が農協の経営というか、そこに入っていくべきであると。それから、地域にとらわれないで、人という視点で考えていってはどうか、そういう御提言もされているのを見ました。
そういう意味で、農協の、特に理事になるんでしょうか、その辺の体制について改めて御意見をいただければと思います。
○石田参考人 地区にとらわれないで選ぶべきだというのは、どこでどう書いたのか、ちょっと自分でも思い浮かびませんが、基本的には、女性や青年農業者の声を聞くというのは大切だと思っていますし、今回の農協法の中でもきちんと措置された。
ただ、配慮するということで、どういうくらいまでの配慮をするのが望ましいか、これはまた別だと思いますが、明らかに、少なくとも女性に関しては、女性の担い手なり、女性会で活動している人たち、あるいは、女性正組合員の数と比例したような女性総代あるいは女性理事を選ぶべきだろうと思っています。
二〇〇〇年ですか、女性正組合員二五%以上、女性総代一〇%以上、女性役員二人以上ということを自分たちで決めて、現在十七年たっておりますが、達成しているところもございますし、達成していないところもある。つまり、ここで言う、直ちに変化するとはなかなか言えない組織なんだけれども、少しずつきちんと組織されているということがあるんだけれども、今回こういう形で入ってくると、これは私は評価している。
評価しないところは、要するに、認定農業者だから理事がいいんだ、そういう認識は間違っていると申し上げて、協同活動の意思のない人まで理事にする必要はないでしょう、簡単に言うと、こういうことなんですよ。そのあたりのところが欠けちゃっていて、認定農業者だけというのは、何か非常に、協同組合の運営原則に反していると思います。
地域を超えてというのは、ちょっと私の記憶では思い出せないんですが、私の本意は今申し上げたようなところにございます。
以上です。
○稲津委員 ありがとうございました。
今、参考人からもお話がありましたように、女性それから若い方々の理事等への就任というのは非常に大事なことだなと私は思っています。
実際に生産現場へ行きますと、家族経営でやっていると、どちらかというと、おじいちゃんが先に鬼籍に入られて、元気なおばあちゃんと、それから御夫婦で経営しているとか、六次化の現場に行ってもやはり女性が主力になっていたり、それともう一点は、これから若い方々に大きな期待をしていかなきゃいけないという意味では、私は、参考人から非常に大事なお話をいただいたんじゃないだろうかな、このように思っています。ありがとうございました。
それで、時間も大分参ったんですけれども、これは小川参考人と谷口参考人に、それぞれ同じ質問になりますけれども、ぜひお伺いしたいと思っています。
というのは、いわゆる准組合員のことについて今後どう考えていくかということなんですけれども、やはり全国的な大きな流れとしては、少子高齢化で人口減少社会に入っていく。そうなりますと、今後一層、正組合員の減少というのは、これはいたし方なく、そういう場面がどんどん来る可能性が非常に高い。そのときに、実際に准組合員も大変大事な役割を担っている。
そこで、利用規制の話なんかが出てくるんですけれども、今後、准組合員をどのように対応していったらいいかという、大きく言えば、組合員という理念に対する話になると思うんですけれども、この点について、ぜひお二方から御意見をいただきたいと思います。
○小川参考人 准組合員についてお伺いがありましたけれども、これも地域によって随分違う面があろうかというふうに思います。
聞くところによると、北海道の農協では、ある農協で七割近くは准組合員で、正組合員が少ない。私の認識からすると、北海道は農業地帯なので、正組合員がかなり多くて准組合員の割合が少ないかなと思ったら、やはり地域のインフラとしての離農した人の受け皿等で准組合員の割合がふえているというふうな話も聞いておりますし、また、都市近郊の農協でも、今、特に消費者等で安心、安全な食品を求める面が多いというふうに思っております。そういった点で、地元の安全、安心なものを欲しいという消費者も随分おります。そういった関連で、准組合員として加入してくれる方も多いかというふうに感じております。
やはり、ただ単に何%以上とかそういった数字でなくて、地域に合ったような仕組みにぜひ変えてもらいたいというふうに思います。
以上でございます。
○谷口参考人 どうもありがとうございました。
私は、准組合員については先ほど詳しく述べたつもりでおりますけれども、少し重なるかもしれませんが、三点ほど申し上げたいと思います。
一つは、准組合員は地域差が非常に大きいということを我々は理解しなきゃいけないだろう。正組合員以上の地域差が大きい。
北海道の場合には、一九八〇年代半ばまでは離村と離農がイコールだったんですね。ですから、農業地域から離農された方は、ほとんど札幌、せいぜい旭川ぐらいに移動していたわけですけれども、それ以後、結局、農地を手放しても旭川や札幌近郊に新しい住宅を求めるだけのお金が得られない、つまり、地価格差が非常に大きくて、在村で離農するという形に転向しましたよね。そういうプロセスの中で准組合員がふえているということなんですよね。
ですから、そういう点で、非農家の都市住民が准組合員になっているという形で、都府県で、都市近郊地帯で考えられるものとはちょっと質が違う要素を濃厚に持っているということですね。
他方で、都市近郊においても、実は准組合員の、もともとの数の大半というのは、もともと農家であった方が、徐々に相続や分家、いろいろな形で、農業中心ではなくなってきていて、しかし、わずかに土地を持っている、あるいはそういう関係で農業につながっているという方が多かったところに新規住民がたくさん入ってきて、そういう方がなっているということです。
ですから、准組合員については、よほど地域ごとの差をきちんと理解した上で対応策を考えないかぬというふうになると思います。それを制度で一本で絞って、こうすべきだと全国一律に言うのは、どこまで妥当なのかについてはどうも疑問があって、地域ごとの農協の個性を尊重できるような規定にすれば済むのではないかなというのが私の率直な意見です。
それからもう一つは、正組合員の減少について言うと、先ほど申しましたJA出資法人が最近やっている最大の仕事の一つが新規就農者研修なんですね。つまり、農協陣営は、本格的に正組合員そのものを直接ふやそうということで取り組み出している。このことの意味は非常に大きくて、そういうことの音頭を、全中を初め私どもが頑張って一緒にやっているわけです。
そういうことを考えると、やはり、全国組織を持っている役割は非常に大きいということを、准組合員制度のところについても、多様な地域の評価をしながらそれを提案できるということが非常に大事かなと思います。
もう一つ、准組合員制度との関係で申しますと、神奈川県のJAさがみというのがあります。藤沢を中心にしながら広域で合併した農協でありますけれども、ここは、先ほどの、いい農業的な要素を都市近郊で持っているという点でいうと、実は驚いたことに幼稚園を持っているんですよね。インフラというと、何か中山間地域とか都市的じゃないところでJAが頑張ってそういうのをやっているかと思ったら、そうではないんですよ。まさに神奈川県の大都市のど真ん中のところで、つい最近やめましたけれども、つい最近まで幼稚園を経営しているというようなことが起きているんですね。
ですから、そういう地域ごとの細かな実情を踏まえないで、一律に、農協の事業について、ただほかに移せばいいという議論には簡単にはならない。もうちょっと緻密な取り組み、議論をする必要があるんじゃないかというふうに思っております。
以上です。
○稲津委員 終わります。
○江藤委員長 次に、篠原孝君。
○篠原(孝)委員 民主党の篠原でございます。
きょうは、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
私は国会議員になって十一年ぐらいたつんですけれども、委員会の中で、こんなことを言っては、同僚議員に失礼になるかもしれませんけれども、一番勉強になるのが参考人質疑でございます。そんな中でも、特にきょうは、非常にユニークないろいろな意見を聞かせていただきまして、本当に勉強になりました。
それで、率直に私も質問させていただきたいと思いますが、普通は、参考人の皆さんに来ていただいているので、御丁寧に、失礼のないような質問ばかりしている傾向があるかと思いますが、私は、ちょっとそういう遠慮はやめさせていただきまして、率直に聞かせていただきたいと思います。それなりの敬意は払ってやりますので、お許しください。
まず、小川参考人ですけれども、非常に地域のリーダーということで、事前にいただいた経歴というのを見ますと、認定農業者協会の会長を平成九年から十六年、それからヘルパー組合長、それから繁殖牛の連絡協議会の会長、農協の青年青色申告会の会長、経営士協会の会長といろいろおありになるんですけれども、今問題になっている農協と農業委員会とのかかわりをどう持ってこられたか、特に、これだけ立派な人だったら、農業委員をやらされてというか、やってもいいような気がするんですけれども、そこにないんです。農協と農業委員会とのかかわりがどうであったか、これが一つです。
それから次に、今問題になっています、皆さんも言いました、農業委員も半分以上、農協の理事も半分以上を認定農業者にするという、石田参考人からすると、規制強化だ、とんでもない、規制改革といって規制強化していると皮肉っている。そのとおりだと思うんですね。これは、私は現実離れしていると思うんですね。現場感覚としてどのように思われるかというのが一つ。
それから次に、営農指導事業は大事だ。僕はそのとおりだと思います。五年ごとにかわるのもよくない。
私の記憶では、私のじいさんは、営農指導員と仲よくなっちゃって、毎晩飲んでいて、この営農指導員は何かうちのじいさんの飲み友達かと思っていたら、農協の職員だったのを後で知りましてびっくりいたしましたけれども、彼にしてみれば、仕事の一環でうるさいじいさんのところへ来てはやっていたんだと思う、いろいろな役員をやっていたりして。そういうコミュニケーションがなくなってきているんです。
それともう一つ、農業改良普及員というのもあるんですよね。その農業改良普及員と営農指導員というのは、両方必要といえば必要なんですけれども、これは僕の意見ですけれども、農協に負わせるのはかわいそうです。だから、営農指導事業でもうけていないなんというばかなことを言い出す人がいるが、それならどうやってもうけるんだと。これは、国が相当やっていい、あるいは国がお金を出して農協に任すとか、そういうふうにした方がいいような気がするんですけれども、農業改良普及事業を含めた営農指導事業についての御意見。
この三点、お答えをいただけたらと思います。
○小川参考人 率直に私の方も答えていきたいというふうに思います。
まず最初に、なぜ農業委員の経歴がないかといいますと、農業委員は、全国、多分そうだと思うんですけれども、地域に何人、集落ごとに何人というふうなものがありまして、集落の中で、幾つかの地域の中で農業委員を回すような形になっていくんですね。ですから、若い者は黙っていろと。
今までの農業委員ですと、大体七十を過ぎた名誉職のような人が農業委員として登用されて、私ごときの三十代、四十代はとてもそういうふうなことは、手を挙げれば、あいつは変わり者だというふうなことで、なかなかそういう話も来なかったのも事実ですし、一時ちょっと出てみないかという話も来ましたけれども、たまたま機会が合わなくて、つい何年か前ですけれども、それはなりませんでした。
やはり農業委員も、御承知のように、地域のリーダーみたいな、年をとった人がなる機会が比較的多いものですから、リタイアしたような者がなる名誉職みたいなものですから、なかなか現場の生産者がなる機会は非常に少ないわけでございます。
二番目の、認定農業者、もしくは五割以上というふうな質問でありましたけれども、私の方から考えますと、五割というふうなことを入れなかったらどうなるかと。
現状からすると、余り農業生産をしていないような人が理事として上がってくる場合も非常に多いです。逆に、これを入れなかったら、ほとんど現場を知らないような、実際、認定農業者で自立して農業経営をやっている人は、そんな暇はないから嫌だよと断る人の方が現実として多いです。
ですから、これを入れられないデメリットと入れるメリットを考えますと、私としては入れた方がはるかにメリットがある。そうでないと、さっきの農業委員と同じように、リタイアした人だとか、一部は、ほかの事業をしながら、理事に名誉職として来るような人もありますから、絶対にこういったことを入れていった方が、農協自身また農業者としては歓迎しております。
それと、三番目の営農指導に関しては、やはり、地域に帰ってみますと、営農指導員、県の普及員自体が非常に人数が少なくなっております。これはいろいろな諸事情があってそういうふうになったかと思いますけれども、現場としては、農業改良普及員が、私どもの仲間も、なかなか人数が少なくなって、地域とのかかわり合いが少なくなって、もっとふやしてほしいよというふうな意見もありますけれども、国なり県なりの事情で現状となっているように私自身は理解しておりますので、ぜひとも、皆さん、この委員会を通して、そちらの方にもより一層力を入れていただければありがたいというふうに思います。
以上でございます。
○篠原(孝)委員 次に、谷口参考人ですけれども、ペーパーを見せていただきまして、非常によく整理されているんですが、遠慮されているようでして、我が方のというか民主党の提案に対して、いいことについてだけ賛成というもので、だめな方に余り明確にだめとなっていなかったような気がするんですが、だめな点が政府提案は多いような気がするんですが、余り時間がないので、ここがおかしい、ここは削除なり、余計な改革だ、改正だというのを二点挙げるとしたら、どこになりますでしょうか。
○谷口参考人 質問の趣旨が十分のみ込めないんですけれども、野党の提案について、悪いところを言えということですか。
○篠原(孝)委員 いや、野党の提案はいいです。褒めていただいてありがとうございます。
政府提案について、悪い点を二つお願いします。
○谷口参考人 悪い点を二つというと、これは難しいな。二つだけに絞れ、二つだけに絞って言えということですか。
それは、一番大きいのは、協同組合を基本的に認めないような方向で議論になっているということですね。農業協同組合を含めて、協同組合そのものを重視しない。
ですから、生協はどうなんだ、例えばそういうことですよね。同じように、例えば生協で見た場合に、准組合員に似たような問題があると思うんです。
例えば、もともとは店舗があって、班が組織されて、そこでもって注文を集めて、店舗に行って買ってくるという仕組みだったものが、いつの間にか、パルシステムのように、全く店舗販売なしで、通販だけのような形に近いようなものになっていますよね。
そうすると、そういうところの組織の事業のために人々が集まって議論してどうこうする、そういうのが面倒くさいという実態があって、つまり、忙しくて、特に女性の方々が勤められるようになってきて、そういう方々の境遇というのは何か准組合員と非常にダブるんですね。だからといって、そういう女性を排除するとはいかなくて、そういう方を入れた形でしか組織できないと思うんですね。
ですから、そういう意味で、協同組合の幅を純化して特定の人だけ集めるというのは余り実態に合わないんじゃないかなと。人々の就業実態、生活実態、行動様式、こういうものを束ねる上では、その多様性をうまくつかんでいくようなことが大事かなというふうに思います。
そういう点で、株式会社だけが世の中にあればいいという社会というのは、ちょっと寂しいのではないかな、少なくとも私はそういう社会には生きたくないなと。株式会社が主力であっても、協同組合もそれなりにきちんと位置づけられているということが望ましいのであって、つまり、そういう点でいうと、生物一種類のみという社会とか自然界を求めるというのは、どうも歴史、自然界の流れに反しているのではないかと思うのです。多様性こそが先進国の一番のメルクマールだなというふうに私は思っております。その点が大きいところです。
もう一つは、これはなかなか難しいんですけれども、農協改革自体がどうこうということよりも、切り離されて議論しているということですね。
前半の四つの改革との関係がやはり全然見えてこない、とにかく組織いじりになっちゃっているということが、余りに唐突に出てきたということが私にとっては一番おかしくて、それが条文のどこだと言われれば、全部貫いていると言わざるを得ない感じです。
以上です。
○篠原(孝)委員 では、鈴木参考人にお願いします。
鈴木参考人のような方に農業界に入っていただいて、本当にありがとうございます。今までの経歴とかを読ませていただきましたけれども、本当に活力を与えていただいて、ありがたく感謝いたします。
それで、興味がある点なんですけれども、プライバシーにかかわることなんですが、プライバシーといったって、そんな大したことじゃないんですが、谷口参考人の中に、担い手の序列として、地域内、隣接地域内、同一市町村内、同一県内というふうに順番になっていましたけれども、そういう点では、農業に縁のない世界から、おばあちゃんの話がありましたけれども、今のところとどういうかかわりがあったのかというのが一つです。それから、エコファーマーになっておられますけれども、有機農業とのかかわりというか、その点はどの程度かということと、それから、二年間研修して就農して、青年就農給付金は使っておられるかどうかということ。それから、農協についていろいろ御意見をおっしゃっていまして、農協の組合員になっておられるのかどうかということ。このプライベートなことが一つです。
それから次に、私は鈴木さんの経歴を見て、農業界に入って、まだ何年ですかね。(鈴木参考人「六年です」と呼ぶ)六年でこういうところへ来て、本当に弁も立つし、滑舌もいいし、顔もいいですし、農業界の小泉進次郎のような感じだと思いますね。だけれども、ほかの業界で、その業界に入って六年目でこういうところに参考人に呼ばれて、それから、これはよくないんですけれども、規制改革会議のワーキング、そこにも意見を言っておられるわけですね。それは、ちょっとは戸惑っておられるんじゃないかと思うんですが、その点に戸惑いはありますでしょうかどうかということ。
それから、三つ目です。話を聞いていますと、本当に、今、小川参考人の話の中にありました、農業委員になっていただきたいですし、農協の理事になっていただきたいと思います。二ヘクタールぽっちで量が確保できないというのは、仲間をつくって農協を乗っ取る、乗っ取ると言うと、ちょっと言葉はよくないですが、ある意味そういう言葉の方が正確かもしれないですが、やっていただきたいと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
農業委員に立候補し、農協の理事になって改革していただきたいと思いますけれども、その点についてお答えいただきたいと思います。
○鈴木参考人 では、一番最初の祖母のことからなんですけれども、祖母がもともと農業をやっていたんですけれども、もう面積も非常に少なくなっておりまして、最後、僕が農業をやりたいと思って祖母のところを訪ねたときには、耕作していた面積が二反、二十アールで、碧南市の下限面積が三反なので、もともと登録してあることでいえば、農家世帯ではあったんですけれども、本当に下限面積を下回っているような状態でした。そういったこともあって、改めて別世帯として農家になるという形をとっております。
祖母との関係性というのだとそのあたりで、ただ、農業自体はやっておりましたので、僕自身も農作業に関してとかそういったところで指示を仰いだんですけれども、そのときがもう八十三歳でしたので、僕が農業をやりたいと思っているんだという話をしたら、やはり安心感もあったのか、すぐにアルツハイマーが発症してしまって、そういったこともあって、農業大学校に研修に行かせていただきました。
エコファーマーになってということで、今は、もう県の基準値よりもさらに低い基準になるとエコファーマーという形ですけれども、それよりも低い状態でやっているんですけれども、出てくる畑が毎年毎年ふえている状態で、しかもちょっと耕作放棄地だったような状態の場所が多いということもあって、最初に出てくるときに、地主さんの方でしっかりと草だけは枯らしておいたからねという形で貸していただくこともあって、例えば有機をうたうということになると、有機JAS法にのっとった形でというふうになると思うんですけれども、ちょっとそこまでのことは、経営という意味で考えても、今とるよりも、まだエコファーマーの基準で、さらにそれよりも極力低い農薬の使用率だったりとかそういったところでやっていきたいなというふうに思っております。ですので、いわゆる有機農家とかではないということですね。
続いて、農協の組合員なんですけれども、組合員にはなっております。最初に農業を始めようと思ったときに、やはり農業を始めるといえば農協だというふうに思って、そこで話をしに行って、組合員には今もなっている状態です。
研修して、就農してということで、青年就農給付金を利用していたかということで、このあたりは利用させてもらっております。
続いて、参考人に戸惑いがあるかということだったんですけれども、確かに、内閣府のワーキンググループにも参集いただいて、きょうもこういったところに呼んでいただいて、戸惑いがあるかないかといえば、やはり少しはあります。僕は、独立就農してからでいえば今四年目ですし、農業界に入ってからでも七年目ですので、では、これまでの、昔の農村はどうだったのかという話になったときには、文章で読んだものぐらいのことしかやはりわからないので、今答えられることと答えられないことというのはどうしてもあると思っています。
それでも、いろいろとこういうところに呼んでいただけるということは、何か自分にできることがあるんじゃないかということだけを糧にして、堂々とここに出てきております。
あと、理事についてということなんですけれども、やはり認定農業者がなるとか、僕の意見の中では青年農業者もということだったんですけれども、農協が嫌いというわけではないので、そういう理事になれる枠、席があることは非常に助かるなと思います。
では、農協を、言葉があれでしたけれども、乗っ取ってというような形だったんですけれども、僕もどちらかというと、先ほど、研修生が今一名いるということだったんですけれども、やはり自分のところで研修生を入れて、その研修生を一人の農家として独立させて、そういった本当に自分の手の届く範囲のグループ化というのはすごく考えています。
なので、それは、結局、それでいて農業をどうのこうのということではないんですけれども、そういうグループ化をしていく中で、まさに協同組合の大先輩である農協の中のことというのも知っていきたいし、こちらからの意見も言っていきたいので、やはり理事の席に入れる状態になっていっていただけるとありがたいなと思います。
以上です。
○篠原(孝)委員 最後に、石田参考人にお伺いしたいと思います。
農協法の関係については、厳しい御意見をいただきまして、私は同感することだらけでした。
今回の改正は、農業委員会法も結構いじくっているんですね。だから、認定農業者の件で半分にするというのはいかがなものかというのがありましたけれども、農業委員会法と農業生産法人についてどういうふうにお考えかということと、それからもう一つ、農協をやたらでっかく合併、合併が進んでいますけれども、多分これについては、こんなにでっかくなるばかりじゃおかしいんじゃないかという御意見だと思いますが、それについての御意見もお聞かせいただけたらと思います。
以上でございます。
○石田参考人 私は、教授になったのが一九九五年ぐらいだったと思うんですけれども、そのときから三重県農業会議の第六号会議員で、現在も第六号会議員でございます。
ですから、今回の農業委員会法あるいは農業会議の組織改革、これはいじくってよくなるものかな、ほとんどよくならない、むしろ悪くなるというふうに思っています。
なぜならなかったんですかというと、本当に農業をやっている方は、あれは大変な仕事ですから、現場に行って確認したりなんなりしなきゃいけない、そういうような農業委員さん、誰もがやりたいということじゃないから、結局は選挙制じゃなくて選任制になっているわけですよね。だから、地域の信頼される方が選任制の中で農業委員になっている、これが現実ですよ。
それから、その中で、では、半分にして、何人かを外部の知識人みたいなのを入れたらいいじゃないか、こういうような御提案だったと思うんですけれども、首長次第でどんな人が入るかわからないような制度になっているじゃないですか、議会の承認を求めなきゃいけないということになっていると思いますが。
いずれにしても、農業会議でも、改革したよといいながら、何か、ネットワーク機構みたいなので、現状と変わらないような制度改正になっています。
なので、農業委員会法の改正のあたりはすごく詳しいわけじゃないですけれども、本当に現場を見てつくったかという、さっき根拠のない未来志向の改革だと申し上げました。農業委員会についても同じようなことが言えるんじゃないかな、こんなふうに思っていますので、大体において、これを一緒に議論するということ自体が大変失礼なセッティングじゃないかなと思います。こうやって、きょうの午前の部なんか、ほとんど農業委員会のことは議論されないで終わってしまうわけですよね。こういうこと自体が大問題じゃないかな、こういうふうに思っております。
もう一つ、ごめんなさい、質問は何でしたか。(篠原(孝)委員「農協の合併」と呼ぶ)合併ですね。これは先ほど申し上げようと思ったんだけれども、ぜひ皆さんに申し上げたい。
第一の3に、経済と社会の二重性、変化は遅いが必ず変化すると書きまして、本当はそこでしゃべろうと思ったら、時間がないからやめたんです。
今度、島根県が県単一JAをつくりました。それから、あちこちで県単一JAを検討しているということが情報として入っております。玉木委員のところも既にされていると思いますが。香川県でも、前の宮脇さんの時代からあったから、二〇〇〇年ぐらいに合併になっているわけです。検討を開始して実現するまで二十年かそこらぐらいかかるわけですね。恐らく、協同組合というのはそういうタイムスパンで動いていくものであろうと私は理解しています。
それで、県単一JAというのは、恐らく、今度の代理業化、これが大体九年ぐらい前に、法律上、農協法の中に定められていると思います。一向に今まで、それを採用して、信用事業をみずから農協が軽減しようなんということはなかったわけで、結局何をやってきたのかというと、金融事業の健全性確保というか、JA経営の健全性確保で、合併、合併、そして、行き着くところ県単一JA、こういうことでございます。
だから、今、県単一JAがこれからたくさん出てくると思いますけれども、どうしてそうなってきたのかといったら、要するに、その前からずっと、農協は信用事業を営んでいるから健全に経営しなきゃだめだ、こういうことでずっと指導や監督がされてきた結果、どうしたって大きくしなきゃ効率もよくならぬ、人もきちんと確保できぬという中で進んできているということでございます。
そういう中で、きょう、本日ただいま、おまえら、今度からはそうじゃなくて、信用事業、共済事業、分離しろ、こういうふうに言ったら、方向性は逆ですよ。私は、決してそういう方法は、代理業化を問題だと言っているわけじゃなくて、そういうことをやるのであれば、もっとアナウンスして、合併よりはこういうやり方もあるんですよという議論をすべきであった。
私は、県単一はだめではないけれども、金融を守るというか農協を守るという過程の中ではこの方向しかなかったのかなと思いますが、いずれにしても、代理業化ということで、経営もオーケーだ、職員の育成もオーケーだというような仕組みができる、決して悪いことじゃないと思っています。
ただ、それを、行政が強制するような手段として准組合員の事業利用規制を入れてくるということには大反対です。農協がみずからの判断で代理業化を選ぶ、これは大賛成だと申し上げておきたいと思います。
以上です。
○篠原(孝)委員 ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 維新の党の井出庸生と申します。篠原先生と同じ信州長野県の出身でございます。
きょうは、参考人の皆様、お忙しいところをお越しいただき、また、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
以下、質問をさせていただきたいと思います。
最初に、鈴木参考人にお伺いしたいんですが、先ほど篠原先生から最後に質問があった、農協を変えてみないか、農協に入って変えてみないかというところなんです。
組合員でいらっしゃって、いずれそういう立場、環境があればというようなお話があったんですが、ただ、その一方で、冒頭の御説明であったように、ホームページを持っちゃいかぬとか、部会に入るといろいろな制約があるということもあってなかなか難しいのかなと思っていたんですけれども、農協に対するプラスの面の思いと、一方でデメリットだと感じていた部分が、独立されて四年ですか、農業を始められて六年と伺っていますけれども、どういうような心境の変化があるのか、もし、これから、うちの農協をしょって立っていってくれという話になったら、よしやろうと、今そういうお気持ちなのかどうかを伺いたいと思います。
○鈴木参考人 農協に関してなんですけれども、やはり実際やっていく中で、今、少しずつ農協の方も、新しく入ってきて違うやり方をしている農家がいるんだというのは知ってくれている状態になってきたかなとは思うんです。
では、その中で、将来的に農協の方でということで、今、正直なところを言うと、変えてやろうというようなおこがましいことはなくて、ただ、加工とかで、ニンジンを使った加工品をつくりたいと思っているという話を持ちかけられたりすることがあって、そのときに、やはり加工品に使うニンジンを、物の量をうちが用意できなくて、これはもしかしたら農協の方であればすごく簡単に用意できる量なんじゃないかなというふうな商談があったりします。そのときには、もし僕が農協に入り込んでいて、きちんといろいろな話ができる状態であれば、実はこれこれこういう話をいただいたので、ちょっと検討してみませんかという話ができるかなと思うようなタイミングはちょくちょくありました。
なので、経営を開始して三年間の中でもらった規模感の大きな話に関しては、これをここで用意できないから立ち消えにしちゃうんじゃなくて、農協と一緒に話を進めていけたら地域のためになるんじゃないかなというようなことはありました。
なので、やはりそういうことに関しては、するチャンスはいただきたいというか、そういうふうなところに進んでいきたいなと思っています。
以上です。
○井出委員 鈴木さんの方からも農協がいろいろ知恵やノウハウをかりることもできますし、また、鈴木さんのような存在が農協にとってまたいい存在になり得るのかなとも思うんです。
もう一つ伺いたいのは、農地の確保の関係で、先ほどは農地中間管理機構への期待をお話しされていたんですけれども、実際、農地を集めるときに農業委員会の方との接点が多々あったと思うんですけれども、そのときの農業委員会とのやりとりの実体験、特に御苦労された部分があれば教えていただきたいと思います。
○鈴木参考人 苦労になるかはあれなんですけれども、特に最初に農家世帯になるために農地をお借りする際には、やはりきちんと面接という形で、君はどういう形でどういう農業をやっていきたいと思っているのか、どういう計画があるのかという話し合いをする機会はありました。
あとは、やはりまだまだいわゆる農地の管理がうまくできていない時期がありまして、農業を始めて独立した一年目、もう全て一人でやっていた時期に、やはりちょっと畑に草が生えてしまうとかそういったことがありました。これは本当に自分自身の管理不足でしかないんですけれども、そういうときにはやはり指導という形で、きちんとできているのかという指導はいただいております。
今は、そういったことがないように、従業員の力をかりて畑の管理には努めているんですけれども、一度そういう形で墨をつけてしまったところがあるので、新しく農地を借りたりとか農地を購入しようということがあると、やはり常に農業委員さんの方からは、本当に大丈夫なのかというふうに心配をかけてしまう状態にはなっています。
以上です。
○井出委員 わかりました。どうもありがとうございます。
次に、谷口参考人にお伺いをしたいんですが、事前に谷口さんがいろいろ取材等を受けられているものを少しだけ読ませていただきまして、私からも伺いたいのは監査の話なんですが、ことしの一月の日本農業新聞で、全中の監査をいじって、端的に、公認会計士の監査が農協、農業になじむのかというところをストレートに問題提起されている記事をちょっと拝見したんです。
まだ、法案審議、またその前の、法案をつくられている状況が報道されている過程では、監査の権限がなくなるか残るかとか、その話だけで、では、実際移行したときにどうなるのか、そういう問題点の議論もこれから当然やっていかなければいけないと思っているんですが、そこのあたりのお考えを伺いたいと思います。
○谷口参考人 監査問題は幾つかの局面で議論しなきゃいけないと思いますけれども、一つは費用論の話がありますよね。全中の監査の場合、監査で直接お金をもらっているというわけじゃなくて、全中そのものの存在を前提とした形でもって拠出金が出ている、その枠の中でやっているという形になっていますから、サービスと対価という関係でもって業務監査、会計監査ができているというわけではないということです。
その場合、一般的に言われているのは、全中の方の見解になるわけですけれども、私は全中の代表じゃありませんけれども、高くなるだろう。つまり、会計監査そのものの仕事をしている法人に任せていった場合には、例えばどこにやる人がいるのかという問題ですね。
全国的に農協の数が六百五十ぐらい、七百弱ありますけれども、その地域に適当な数の監査人に当たるような公認会計士の方がいるのかどうか、農業のことに詳しい人がいるのかどうかを考えたときに、恐らく、旅費だとかいろいろなことを考えていくと、積み上げるコストが高くなって安くならないんだという、お金ですね、いわゆる経済性の問題の議論があると思います。
しかし、私は、それも大事なんですけれども、先ほど言いましたように、一番大きいのは、やはり農業の詳しい事情をどこまで知った公認会計士さんが、非農業の方がいるかという現実ですよね。
ですから、私自身が農業のことを理解するのはすごく大変です。酪農のことを一方で知り、果樹のことも私は一生懸命わかろうとはしているんですけれども、酪農のことを知るだけでもこのぐらい本を読まなきゃならないんですよね。それで、圃場の話から、肥料のやり方から、濃厚飼料から、搾り方から、販路から、そういうことと果樹のことが、場合によっては同じ農協の中にあり得るんですね、二つのことが。単一の事業だけやっている農協というのはありませんから、恐らく農協を単位にとれば、日本の農業産出額の構成に当たるようなものが農協の中には必ず含まれてきます。
そういうものを含みながら個性を持っているということですから、それを、東京にいる人は多分理解しないだろうとなると、地域にそもそもいるのかいないのか。しかも、仮に制度を変えて、その方が業務監査もできるとしたとしても、それはよほどの時間をかけないと、それがすぐわかるような状況までいかないだろう。そのときにまた、知識を得たときと、現場は動いていますから、もう三年たったら次は使えないかもしれないんですよね。
そういう事情を考えると、そんな簡単に非農業の分野で活躍されている会計士の方々が参戦できる状態にあるかどうかという点については、私はそう容易ではないかなというふうに感じております。
そして、実は大きいのは、全中の監査の何が問題だったのかということを簡単に言うと、縛っているということなんですね。その金を使って監査しているから、内情をよく知っているから、ぎゅっと首根っこを握っているんだ、多分こういう議論だと思うんですけれども、そうすると、やはりこの間にいろいろ言われた中で、NHKにしても読売新聞にしても日経新聞にしても、全中のやり方に反対して反逆している人というのは数人しか名前が挙がってこない。農協の方の農業新聞なんかのデータでも、せいぜい挙がったとしても十件ぐらいだというのをO局長がお話ししているということを間接的に聞きました。
六百五十のうち十あった場合に、これは意見として取り上げるのは大事ですけれども、民主主義というのは多数を通して、なおかつ、大事なことは少数の意見を十分に酌み上げることなんですね。この場合、少数ではなくて、統計的には誤差の範囲に属しちゃうんですよね。それをもって変えるというのはちょっと行き過ぎじゃないかな。
十分にその意見を尊重して農協の運営に反映させるということは、民主主義の上で極めて大事だ。ですけれども、それに基づいて変えるというのはちょっとおかしいんじゃないかなというのが私の率直な意見です。
○井出委員 ありがとうございます。
監査の関係で、ちょっと谷口参考人の後で伺いづらいんですけれども、小川参考人に伺いたいんです。
冒頭のお話の中で、どうしても身内の感覚というようなものが少し監査に出てしまうというところ、身内のような監査というところをお触れになったと思うんですけれども、もし、そこの問題意識をもう少し何か具体的に言っていただけるのであれば教えていただきたいと思います。
○小川参考人 非常に微妙な話なんですけれども、私も理事をしておりまして、平理事のときに監査についてそういった質問をいたしました。その実体験をもとにきょうお話ししたわけで、それ以上のことはちょっと。
というのは、農協を運営している執行部が、そういった指摘に対して、そういう面があるんじゃなかったのかな、うちの農協だけじゃなくて、ほかの農協もそういうことが若干あるんじゃないかなというふうに感じて、指摘する方じゃなくて、受ける方の話としてそういったことを申し上げた次第でございます。
以上でございます。
○井出委員 済みません、ちょっと聞きづらい聞き方で大変申しわけなかったんですけれども。
では、もう少し一般化して伺いたいんですが、これから公認会計士の監査というものが入ってきたときに、今、谷口参考人からもいろいろ御懸念がありましたけれども、実際、農協で大変御活躍されてきて、それをさらによくしていこうというときに、公認会計士が来ても、時間がかかってもやっていけるよというような、そういう何か前向きな部分の思いがあれば言っていただきたいんですが。
○小川参考人 これからあることなので、どういうふうになるかという私の想像といいますか考えの中で答えさせていただきますけれども、一番の懸念が、谷口参考人もおっしゃっておりましたけれども、業務監査のことがあると思うんですね。
いわゆる農協の業務についても今監査しておりますけれども、そういったものが、公認会計士は実態がなかなかわからないのではないかというふうな面で懸念があるのではないか。確かにそう言われれば、農業もいろいろな農業がありますから、そういった懸念もありますけれども、それと同時に、金融とか共済とか、ほかの部門も持っておりますし、営農、生活もありますけれども、そうしたもののトータルの中で経営の透明度が高まって前向きに経営が改善されていけば、私はそれも一つの方法かなというふうに考えております。
ですから、やはり、業務監査等も含めた中で、一体とは言いませんけれども、配慮した中で、農協が特に金融、共済等の透明度を増して、これも全中が分離してまた別会社をつくるというふうな話も新聞等で出ておりますけれども、それも含めて、そういったものに対応していければよいのではないかというふうに私は考えております。
以上でございます。
○井出委員 ありがとうございます。
次に、石田参考人にお伺いしたいんですが、いただいたレジュメで、附則の多用、二の5だと思うんですけれども、ここは大変問題である、本則と効力が同じであったとしてもなかったとしても問題であるというようなお話があって、私も、附則が多いな、附則のついているものとついていないもので一度整理する必要があるんじゃないかなと思うんです。
附則がこれだけついていることについて、私は、いろいろな改革議論の中の、要は難産の末に何かそういう形になってしまったのかなと思うんですけれども、これをもう少しどうすべきかというところを、石田参考人のお考えをいただきたいなと思います。
○石田参考人 どうすべきかということはなかなか難しい、私としてはなかなか言いづらいですが、さっきの中央会の監査の問題ですよね。皆さんがどういう議論の立て方をして、あれを外出しして一般監査法人と同じ競争をすればよくなるとか悪くなるとかというレベルのお話じゃないと私は思うんですね。
ただ単純に、監査士監査と会計士監査で、社会で認められているのは会計士監査なんだから、イコールフッティングを目指す以上、それをやれというだけの話で、本当に考えるべきことは、あれは一連の出口の話なんですよね。入り口が実は業務監査というかコンサルなんだろう。つまり、会計帳簿の正しさがどうのこうのというのは、これはどちらであってもきちんとやっていると私は理解しています。
業務監査ですが、これは、例えば某監査法人でもコンサルティングをやれています。なので、監査法人なら業務監査ができないんじゃなくて、できるんですよ。同一の会社に同一の会計士が業務監査しちゃいけないけれども、別の会計士がやれば問題ないんですからね。だから、やっているわけですし、多分、こういう法律のたてつけになってもできると思うんです。なので、基本的によくなるとか悪くなるとかという問題じゃなくて、きょうは、私はそこは触れませんでした。全てそれが附則に入っています。
問題は、附則であるがゆえに、それはいずれとられる、なくなるはずです。これを永久に持っている附則というのは附則になるのかなということでございます。
そうなりますと、全中は一般社団法人になるからいいんですが、よくもないですね、きちんとやらなきゃいけない。総合調整機能とか代表機能、あれも消えちゃったらどこがやるの。それから、我々は全国農協中央会と名乗れるよ、名乗れないよというあのくだりも全部外出しされていますから、あれが経過措置だとしたら、あれをなくしちゃったら五年後どうなるんですかというのが私のきょうの意見でございました。
そういうことで、私から言わせれば異常で、あれを附則なんかで入れるんだったら本則に入れた方が妥当だというふうに思います。
以上です。
○井出委員 時間が来ましたので、終わります。
私、実はお話があった佐久病院から徒歩二、三分のところのアパートに住んでおりまして、そういった地元の事情もよく見ながら、きょういただいた御意見を参考にして今後の議論をしていきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○江藤委員長 次に、畠山和也君。
○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
参考人の四人の皆さんには、朝から足をお運びいただきまして、本当にありがとうございます。きょう、私が最後の質問者になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、小川参考人と鈴木参考人のお二人に、生産者の立場としてのお考えをお聞きしたいと思います。
農家の戸数がだんだん減ってきて、地域社会も成り立たなくなるのではないかと言われています。私は北海道選出の議員なんですけれども、北海道では、酪農家が年間二百戸、離農や離脱が相次いで、ことしもまたバター不足という状況が生まれてきておりまして、新規参入ということはもちろん大事なんですけれども、食料の安定供給を進めるという点から見れば、あわせて、高齢化というふうに地域は言われているんですけれども、今頑張っているけれども、余力はあるんだけれども、このように離農や離脱する方々に対しての支援も必要だろうというふうに思うんです。
いろいろな努力を各地でされていることを、北海道のみならず、この間、各地で聞いてきました。
加工や販売で六次産業化なども進めて、地域の雇用も一緒につくるんだ、そうやって若者の定着を図りたいんだと努力されているお話も、先日、私も聞いたんです。同時に、ただ、生産者とすれば、販売や加工の事業も考えるんだけれども、安心、安全な農産物をつくるのが私の本業なんだ、そういう点では、農産物の価格が安定すれば農家は頑張れるんだよなというお話を聞いたことがすごく印象的だったんですね。ですから、いろいろな多様な生産者の存在が地域においては必要不可欠だというふうに思うんです。
そこで、長い経験をされてこられた小川参考人の目からと、それから、若い感覚で今現場に向かわれている鈴木参考人の目から、農家や地域社会の維持に今何が必要かということをお聞かせいただきたいと思います。
○小川参考人 お答えします。
農家も非常に多様化しておりますけれども、その地域によって事情が違います。
例えば、中山間地の限界集落に近いような部分の地域もあります。そういった場所では、やはり人自身が減って、地域を守っていくのが容易じゃないという場所の中で農業をどうやって確立するか。特に鳥獣被害等を含めて非常に厳しい場所もあります。
また、北海道に仲間もいますけれども、北海道で六次産業化といっても、物はつくれるんだけれども、売れる場所がなかなかない。地域に人がいないから、つくってはみてもなかなか売れない。ですから、都市近郊の農業とそういった場所は条件が違うんだよという話は北海道の方からよく伺っております。
根釧なんかへ行きますと、ほとんど酪農で、または肉牛ですけれども、牧草しかつくれないような地域ではございますよね。そういったところで六次産業化するといえば、やはりチーズをつくったりバターをつくるしかないんだけれども、売る先がなかなかないという話は北海道の仲間からよく聞いております。
また、都市近郊では、そういった安心、安全も含めて、やはり農業の面積等を含めた生産基盤は小さいですけれども、逆に、消費者が近くにいるというメリットもあるんですね。そういった点で、直売所なんかも、地域の皆様に利用してもらっているというのは、やはりそれだけ人口が多くて、そういったものが得られる。
それと、六次産業化を含めてそういったものに対応するのには、やはり地域の産業、先ほども申し上げましたけれども、うちの市ですと、商工会議所、それから旧町村の商工会という三つの団体があるんですけれども、そういった団体と連携していく上で、やはり地域にある程度の、群馬県でも伊勢崎市は人口増加率からいいますと、市では一番です。交通の利便性もあるし、また住宅もふえて、人口もふえている場所でありますので、そういったところでは、地域の皆様といろいろコラボしたり、また、農業だけじゃなくて地域おこしの面でも、農業者と商工業者が一つのイベントを開くとか、そういった連携も進めております。
ですから、地域の事情によって、なかなかこれも農家だけではなくて、一概に言えないというふうに思いますので、そういった面で御理解をお願いできればありがたいというふうに思います。
以上でございます。
○鈴木参考人 新しく農業を始めた新規参入者の目から見てということで、やはり、周りを見ていると、離農されていく方はいるなとは思うんですけれども、ずっと農業に携わってきて、農業をされてきた方の技術だったりとか栽培のノウハウだったりとか、そういうものというのは、もう本当に僕みたいな新規参入者からするとすごい宝のように感じます。
でも、その方たちも体力の限界が来て離農を考えているという状態になったときに、例えばこんなことができたらいいなと思っているのは、では、その農地をそのままの状態でお貸しいただけませんかという形で、長年その方が育ててきた農地をお借りする。そのときに、農地をお借りするだけではなくて、やはり何らかの形で、協力なのか雇用なのか、その方と一緒に協力体制がとれるような状態になると、我々みたいな新規参入者に早期に技術がつけられる先生が身近についてもらえるという状態にもなりますし、その方たちの体力が、この辺の問題で離農をしようとしていたんだというところが、我々の持っている機械でそのあたりは対応できるということであれば、それ以外の細かい技術的な部分で一緒にやってもらうとか、そういった形ができると、地域の成長が早くなるというのか、農村自体の成長が早くなるような気がしますし、また、それをきっかけに、ふだん余り触れ合うことのなかったような地域の方だったり年代の方たちとも接点ができるのではないかなと思っていまして、そういう形の農地の譲渡というのか、利用権の譲渡も一つの形としてあったらいいなというふうには思っております。
以上です。
○畠山委員 ありがとうございます。
それぞれ地域ごとにさまざまな、歴史も違いますし、農地のあり方、品目、あるいは技術で伝わってきたこともあるかと思うんですよね。
そこで、次に、谷口参考人と石田参考人に、お二人にこれもあわせてお伺いしたいと思います。
今回お出しいただきましたお二人の資料では、今回の改正案についての問題点が幾つか指摘をされております。その中でも、私も先日の委員会で質問を行いましたが、とりわけ現行の第八条の、農協が営利を目的としない組織から、高い収益性を実現する組織というふうに法案上には書かれて、削除から変更されるというふうになる点について少しお伺いしたいと思います。
そもそも、きょうも議論になっていますが、協同組合は、市場経済のもとで、組合員を守るために協同の力で事業を進めるということが本旨だったというふうに思います。
それで、改正案のように、高い収益性を求めるとなって、きょうも議論にずっとなっていましたけれども、株式会社の方向などに進むということになれば、その協同の組織という目的や性格が変わることになるのではないかということが大きな今回の改正案の論点だろうというふうに思います。
それで、きょう、朝からずっとお話を、あるいは質問もお伺いしまして、農協に対する意識改革だとか職員教育だとか、あるいはさまざまな青年部、女性部の取り組みだとか、お話も伺ってきましたけれども、これは農協みずからの改革でだめなんだろうか。つまり、このように性格や目的にかかわるところまでの改正案が必要なのかなということを先日の委員会でも私は疑問を述べたわけなんですが、この中心点になるであろう第八条の部分について、さらにお二人から、私が最後の質問者ですので、言い残したことがありましたら、あわせてお答えいただければというふうに思います。
○谷口参考人 この点は非常に重要な改正にかかわる論点だと思います。
私は、営利という言葉が実際現場で使われるときに、法律の条文で書いてあることと同じなのかなという疑問があります。実は、JA出資法人というものを立ち上げてやってきた中で、一番問題になったのはそこなんですね。つまり、JA出資法人は農協が出資している法人だから、農協と同じように営利を求めないよなという、どこかで縛りがかかっているんですね、意識として。
しかし、私は、その問題を外しました。つまり、初めは収支均衡という路線から、適切な利益を上げて還元するようにすべきであると言いました。なぜかというと、営利というのは、営利そのものを組合の目的にするかどうかという話であって、持続性を担保する上で、営利が全くない状態でいけるかといったら、いけないですよね。
そもそも、最初から収支均衡を目指して収支均衡するなんということは曲芸です。恐らく、相当もうけられるようにやっていって、結構もうけが出たので、ちょっと悪い言い方ですけれども、税金の方に行かないで、少し費用で落とすような方向で努力してみようかということで会計士さんの知恵をかりる、節税対策をするということはあると思うんですけれども、最初からゼロにするようにやるなんというのはほとんど不可能だと思うんですね。
そういう意味では、経済的な利益を求めることが、そのこと自体が究極目的にはならないという意味では正しいんですけれども、今一番大事なことは、組織にしても、個別経営にしても、持続性なんですよね。持続的な経営体として、持続的な組織として、地域農業の担い手になり得るかどうかと考えたときに、高い収益ということとそれは必ずしも一致しないだろう。
適切なということがあればいいわけであって、しかし、それは現実には困難があります。なぜならば、これだけ価格か何か乱高下があって、となると、もしかすると、高い収益という言葉で実現できるようなことが求められる局面があるということを私は否定できないと思います。しかし、問題は、それが最終目的かというと、そうではないだろう。
そういう意味で、協同組合としての特性を踏まえながら、営利規定ということで十分なので、前のままでいいというのが基本的な私の考えです。
○石田参考人 協同組合の非営利原則というのは、高い利益を上げるかどうかということに関心があるわけじゃないんですよ。得た利益をどう分配するかに関心があるわけです。なぜなら、協同組合が上げる利益というのは、組合員さんからの取引の中で利益を上げるわけです。上がるとすれば、利益が上がるわけでしょう。
一般の営利企業というのは、第三者との取引の中で営利を上げるから、より安く仕入れて、より高く売ってもうける、そして投資家に還元するというモデルですよね。協同組合は、自分の組合、自分たちがつくっている、その人たちにサービスを提供して稼ぐわけですから、そこで営利が発生するという概念はないわけです。もしここで大きな差額が出たら、それは利益を還元するというのがそもそもの協同組合の考え方ですから。
だから、できる限り利益を上げるというのは、私はあの表現に全然違和感を感じていません。でも、それは、最終的には利用者、組合員に還元すればいいんでしょう。わかりますね。
問題は、出資配当は地域農協には七%までですよというあれが入っているわけですから、あとは利用配当。だけれども、それだけやっていれば農協経営がよくなるのかというと、決してそうじゃなくて、将来的なことを考えながら内部留保を高めていかなければよくなりませんよね。わかりますか。
非営利原則というのは、金を稼いじゃいけないんじゃないんですよ。わかりますか。わかったのなら、もうこれで終わります。
○畠山委員 ありがとうございました。
時間もありませんので、最後にお聞きしたいんですけれども、監査の問題についてお聞きします。
ちょっと北海道に引き寄せた話で恐縮なんですけれども、組勘制度というのが北海道はありまして、言ってみれば、対人信用保証に属するものだというふうに思うんですけれども、結局、公認会計士などが導入され、監査の制度が変わるという点で心配されることの論点の一つに、不採算なところは次々と指摘をされて、いわば切り捨てられる方向に誘導されるのではないかというおそれが出されています。
そういったときに、先日も北海道へ行って聞いてきたんですけれども、このような組勘制度のように、対人信用ですからどうなるかよくわからないというようなものだとか、あるいは、農家の倉庫なども、言ってみれば、年に二カ月か一定の期間しか使われないようなものなんかもうリースでいいんじゃないかと、次々その地域の共有財産にもなっているようなことや、これまで業務として必要と考えられてきたことなどについてメスが入るのではないかという心配があります。
この点は、実際、監査が変わることによって、現場の組合員、生産者にどのように影響が及ぶと思われるか、これは谷口参考人の方にお聞きしたいと思います。
○谷口参考人 これは難しくて、多分答えることはできないと思いますけれども、あえて申し上げると、組勘制度に当たる内容のことを公認会計士がやった場合には、恐らく、やはり血も涙もない方向に行っちゃうでしょうね。
私はなぜそういうことを申し上げるかというと、会計士の方は、農民の方を見てやるよりも、ほかの監査する方々を見て、どうやっているかということを評価されるんだと思うんですよね。そうすると、やはり、全国基準のものでいかにやれるかということに走りますよね。地域の事情を十分にそんたくして、彼らのためになるようにとやるのは、相当勇気が要ることになっちゃうんじゃないんでしょうか。そこのところのずれが現実には生ずるだろう。
組勘というのは、個人の財産の侵害に至るぐらいまで極めて細かいことをやるわけですよね。例えば、ほぼ毎月のように、残高がどれだけ残っているか、予定された出費に対してぼんと出た、何をやったんだ、車を買った、聞いていないぞ、そんな車を買う予定はなかったじゃないかくらいまで介入しているわけですよ。
しかし、それは、組合員の関係の中で農協がやるから認められているので、そうじゃない人が来て、おまえ使い過ぎだ何だと言われたら、これは耐えられないんじゃないかと思うんですね。そういうことをやりかねないような現実がやはり公認会計士にはあり得るのであって、むしろ公認会計士としてはそっちの方がすばらしいというふうに評価されてしまうんじゃないかなというふうに思います。
このことをなぜ言うかというと、私自身、息子がそういう大手の法人の公認会計士をやっているわけですね。それで、中小企業から始まっていろいろ見ているのを聞くと、いろいろな業種があって、とても理解できないと。そこで、やることは何かといったら、やはり教科書に書いてあることをできるだけ正確に、ちょっと心持ちを入れる程度しかできないと言うんですよね、たくさんのものを扱っていて。
そういう現実から見ると、恐らく、組勘でやるものは厳しいことになるだろうけれども、まだ血も涙もある、地域の実情を踏まえた形でもって組合員との関係が処理できるだろう。
しかし、そこに公認会計士が来れば、物を見て、とにかく切りなさいと、単純に土地を取り上げるだけみたいに使われてしまうことになるだろう。となると、地域にまさに亀裂を持ち込むようなことになってしまって、地域農業の姿が、准組合員と組合の関係とかが全部崩れてきてしまうことになりかねないんじゃないか。
そういう点で、業務監査がそういうふうに変わると、地域農業において相当ゆがみが生じる可能性が私は高いんじゃないかな。実は、そのことは地域農業を発展させるために、よりよい経営ができるために、そして、組勘というのは、だめな経営を捨てて、いい経営の土地を回していくんだ、資源を回していくんだという建前で一応動いているんですけれども、どうもその建前がうまく実現できない方向に向かって機能してしまうことの方を私は恐れているというのが、今のところの感覚です。
以上です。
○畠山委員 ありがとうございました。
終わります。
○江藤委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。今後の委員会質疑に必ず生かされるものと信じております。委員会を代表いたしまして厚く御礼を重ねて申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時八分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前に引き続き、内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案及び岸本周平君外三名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案審査のため、午後の参考人として、有限会社横浜ファーム代表取締役社長笠原節夫君、鳥取県農業会議会長川上一郎君、農業生産法人有限会社新福青果代表取締役社長新福秀秋君及び北海道大学名誉教授太田原高昭君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、笠原参考人、川上参考人、新福参考人、太田原参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
それでは、初めに、笠原参考人、お願いいたします。
○笠原参考人 紹介をいただきました笠原と申します。
私は、神奈川県に本社を有しまして、茨城県、千葉県で養鶏場の採卵鶏二百万羽を飼養しており、卵の生産と販売をしております。
本日は、現場の農業者の一人として意見をさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
最初に、今回の農協法の改正について発言させていただきます。
今般の農協法の改正案につきましては、全国約七百ある単位農協の自由度や競争力の強化をすることを目的としており、その考え方に賛同いたしております。
地域によって生産作物も違いますし、マーケットも異なる中で、各単位農協が特徴を出した取り組みを行うことが望ましいと思います。
これまでのJAは、系統システムに依存して、みずからの力で農産物の販売などを積極的に行ってこなかったのが実態だと思います。そうした実態が今回の改革につながったんだと考えております。
担い手である農業者のためにも、農産物の有利販売や資材価格の引き下げによるコスト削減を全力で取り組んでもらい、農業所得の向上に寄与する取り組みをこれまで以上に実施してもらうことが単位農協には求められるものだと考えております。
単位農協が創意工夫して、積極的に農産物販売をやってほしいというのが私の考え方です。平成二十六年産の米の仮渡金の状況からわかるように、集荷して出荷するだけの委託販売では、なかなか価格を引き上げることは難しいと思います。
このような状況の農協を活性化するために、どこの部分を変えていくべきかが重要なポイントではないでしょうか。
地域における単位農協は、農業の核となる組織です。一方で、農村地域を中心に高齢化が進んでおり、基幹的農業従事者の平均年齢も六十六・八歳と、担い手の育成は待ったなしの状況です。担い手の所得を向上させていかなければ、農業界、農協自体もシュリンクしていかざるを得ないと思います。
そうした問題意識を持って考えると、やはり、単位農協の改革についてスピードを上げる必要があり、そのためには、組合長や役員が経営者として自覚と責任感を持って改革を進めていくことが必要だと思います。
今回の法案においては、担い手を中心とした組織になることが目指されているので、担い手の意見がもっと農協の組織運営に反映されるようになってもらえればと考えています。ぜひ地域の担い手に単位農協の理事となってもらい、単位農協の競争力を強化してもらえるようにすることが必要だと思います。
また、単位農協には、地域の担い手と積極的に接してもらい、事業の提案などを今まで以上に行っていただきたいと思います。農協から離れた担い手であっても、農協の事業を利用することにメリットがあると感じれば農協を利用すると思います。農協を離れた経営者も、もともとは地域で一緒に農業をやってきた仲間です。時には意見が対立することがあるかと思いますが、互いに膝を交えて、本音で議論できれば解決策は見えてくるのではないでしょうか。これまでは腫れ物にさわらないように、そうした議論をお互いが敬遠しているような気がします。
そうした農協を離れた担い手にこそ、積極的に農協が営業をかけて、農協を利用してもらうような提案や事業を行うことが必要だと思います。
効率だけが全てではありませんけれども、例えば、稲作三ヘクタール規模の農業者十人に声をかけるよりも、三十ヘクタール規模の経営者一人に営業をかけることの方が効率よいのは間違いありません。現に、飼料会社等はそうした営業をかけているのが現実であります。
今後、法人化や規模拡大が進むことは間違いありません。そのときに、農協がこれまでと同じような事業戦略を行っても通じないと思います。農協には、担い手の経営が発展するような事業提案を行うことが必要であり、そうした取り組みが地域の活性化にも寄与をすると思います。
このような発言を農業法人の経営者が言うと、農業法人と農協が対立しているような誤解をされていると思いますが、我々もそういうことは望んでおりません。農業界全体をともに発展させるという意識については、農協も農業法人も変わりはないと思います。
今回の法改正を契機として、現場で農協と農業法人が積極的に議論して、農業界全体の発展に寄与するように切に望みます。
農業界は非常に厳しい経済状況にあるのは事実です。そうした農業界において、農協にも競争力をつけてもらうことは、業界全体の底上げにもつながると思います。
次に、農業委員会等に関する法律の改正について発言させていただきます。
農業委員会は、農地の番人として、これまで地域でさまざまな業務をしてきたと考えております。
今回の法改正では、農地等の利用の最適化の推進に熱意ある方を農地利用最適化推進委員とすることが盛り込まれております。ぜひとも、農業委員会の下で、推進委員には、法案に記されているとおり、熱意ある方を選任してもらい、農地中間管理機構とも連携し、地域での農地の利用調整や農地集積のコーディネーターとしての役割を担ってもらいたいと考えています。
農地の利用調整や集積化を図ることは、農地所有者に私有財産である農地を出してもらうことが必要となります。現場で熱意を持ってきめ細かに農地の出し手などに農地中間管理機構の制度などを説明して、農地の利用調整等を図ることが必要です。そのためにも、推進委員を設置することは有効だと考えております。
この推進委員をきちんと機能させるためにも、十分な人員配置とすることが必要であり、予算的な面でもきちんとバックアップすることが必要だと考えております。
また、今回の法案には、都道府県段階と全国段階に農業委員会をサポートする農業委員会ネットワーク機構を指定することが盛り込まれています。この農業委員会ネットワーク機構の業務として、法案には、法人化や経営の合理化に向けた支援と認定農業者など農業担い手の組織化、組織の運営の支援という二つが明記されております。これまで農業法人協会など担い手組織の事務局の多くを全国農業会議所や都道府県の農業会議が担ってまいりましたが、その部分が既存の法律には明記されていませんでした。そこを今回の法案に明文化していただいたことは、業務として明確にそうした活動をできるよりどころとなります。
政府は農業法人を五万法人とするという政策目標を挙げております。こうした政策目標を達成するためにも、都道府県の農業法人協会などの事務局を担う農業会議などが法人化等の支援や担い手の組織化などの業務を強力に推進する体制を整備することが必要であります。そのためにも、十分な財政的、人的な支援が必要になりますので、その部分もきちんと支援をしてもらえればと考えております。
次に、農業生産法人の要件の見直しについてです。
農業生産法人の構成員要件などを緩和することは、農外からの資金調達手段がふえるという意味では有益だと思います。また、出資などの形で資本が入ってくれば、必然的に経済界などの技術やノウハウといったものが入ってくる可能性も有しております。
ただ、農地というのは、経営資源という側面も持っておりますが、農地法にも明記されているとおり、国民のための限られた資源であり、地域における貴重な資源でもあります。そうした公共性を考慮すれば、あくまでも経営の主体は農業者であるべきで、今回の法案で明記されているとおり、農業者が議決権の過半数を有することが望ましいと考えております。また、生産あっての農業経営ですので、余り所有という部分に注目されることのないように、地域との調和に配慮した上で、農地を農地として活用し、農業生産を行うことをきちんと担保できる仕組みをつくっていただくことが必要だと思っています。
以上、私の意見を述べました。
最後に、農業政策はさまざまな制度が存在しておりますが、それぞれの法律、制度の主役はやはり担い手たる農業者であります。今回の法改正により、担い手たる農業者の所得向上を達成するために、農協や農業委員会組織には、担い手の農業者を育て、支える活動をこれまで以上に進めていただく契機となることを願っております。
以上、私のお願いのコメントとさせていただきます。ありがとうございます。(拍手)
○江藤委員長 ありがとうございました。
次に、川上参考人、お願いいたします。
○川上参考人 御紹介にあずかりました川上でございます。
私は県職員のOBでございます。その前半は農業改良普及員、後半は行政業務に携わりました。県を退職後は、JA中央会の専務理事として二期六年間、そして、食農教育支援センターを立ち上げまして、理事長として四年間務めさせていただきました。続いて、今の農業会議会長の任を仰せつかりまして、現在四期九年目となっております。
この間、資料の一ページ目の意見の概要にも述べておりますが、農業振興に当たって、一番難しい問題であり、鍵としておりますことは、重視しておりますことは、地域調和ということでございます。それは、地域の持つ等質性とかあるいは統一性といった、一体性のある機能、そういうものをどう引き出すかということでございます。
しかしながら、昨今の地域は、集落間それから農家間、これの格差が広がっておりますし、まして物の見方や考え方、こういった点での価値観が多様化しております。地域の大切さとか、それに伴って難しさ、こういうものを今本当に痛感しておるところでございます。
そういった観点から考えますと、今回の制度のあり方というのをどういうふうに考えるかといいますと、やはり意識改革を伴うような教育的な手法を基本ベースに置くべきだ、こういうふうに思っております。
本日は、そういう考え方のもとで、御審議中の法案の中での、特に農業委員会法を中心に、私の意見を三点に絞って述べさせていただきます。
この下に図を挙げておりますけれども、これは、今申し上げたような観点から、運動論を展開し、さらにステップアップ戦略というようなことで整理しておるものでございますが、下に挙げておりますように、最後は人である、こういうふうに認識しております。
二ページ目をごらんいただきたいと思いますが、まず、意見の第一は、農業委員の選出方法あるいは定数のあり方でございます。
まず、これを考える前に、地域の概念というものを明確にしておく必要があります。地域の設定は、とかく便宜的に、市町村行政区域を単位にすることが一般的であります。本来、農業委員会活動をする上では、実効性とか、あるいは地域の機能性を引き出すという観点から、やはり、実質地域、一つの限られた効果的な地域を活動拠点にすることが必要だと思っております。
そういう意味で、地域とは、まず基本地域は集落である。広げても数集落。そして、昭和合併が行われましたときの前の段階の旧市町村区域、これが望ましい、こういうふうに思っております。
図の二にそのイメージを描いておりますけれども、右側に描いておる矢印でちょっとミスプリントがありまして、基本地域と小地域というところまでが実質地域というふうに考えておるところでございます。
このような考え方から、農業委員の選出方法というのは、実質地域を念頭に置いて選ぶことが大事だというふうに思っておりますし、同時に、選ばれた後も、実質地域を中心に活動することが望ましい、このように思っております。
つまり、選ばれる側、選ぶ側も、互いに責任と緊張感を持って、そして、それ以上に実質地域というものを考える必要がある。したがって、実質地域から最低でも一人は選ばれるということが望ましいと思っております。
いずれにしましても、農業委員会制度の委員というのは、人の力に依拠するものでありまして、これの概念なくして成果を得ることは非常に難しいと思っております。
以上のことから、農業委員の選出方法や定数の規定につきましては原則論にとどめていただきまして、あとは各地域の弾力的な運用を可能にするようなことにしていただけたらと思っております。
次に、下に挙げておりますように、意見の二つ目は、農業委員と農地利用最適化推進委員の関係であります。一言で言えば、これは人間関係論であります。
ここで危惧することがございまして、この連携をどう進めるかということになりますと、大切さ、難しさがあるわけですが、何といっても、連携という言葉がありますけれども、これは本当に難しい問題だと思っております。
そういうことから、今回、推進委員の身分について、特別職の非常勤地方公務員というふうにされておりますが、結構だと思いますけれども、職務において、縦列なのか横列なのか非常にわかりづらいものになっております。
いっとき、農業委員会の指揮のもとというような言葉が報道されたこともありまして、今、現場では戸惑いと不安が根深く広がっております。さらに、農業委員会は市町村の任命、それから農業推進委員は農業委員会の委嘱、こういった差も人間関係をぎくしゃくすることになりはしないか、こういうふうなことを懸念しております。
法律案には、推進委員について、農地等の利用の最適化の推進に熱意と識見を有する者というふうにありますように、推進委員は極めてレベルの高い、そして重要な職責を担うものであります。この任務はプライド、それから誇り、これによって支えられて果たせるものでありまして、また連携も、これを認め合うことでうまくいく、このように考えております。
以上のことから、地域から常に尊敬と信頼が得られるような、そして快く推進委員に就任していただけるような、そういう環境づくりをすることが必要でありまして、いま一度、このことについての確たるメッセージをお願いする次第でございます。
次に、意見の公表についてでございます。
これも極めて重要なことでございまして、法律案では、新たな条文を起こして、農地利用の最適化業務に関することに特化して、関係行政機関に対する意見の提出、このように規定されておりますけれども、農業、農村の問題というのは複雑に絡み合った要因から成り立っておりますので、これを解決するには、農業、農村の全般の問題について意見の公表をすることは必要だというふうに考えます。
したがって、農業委員会の意見公表の内容をさらに充実するということと、これを重く受けとめていただけるような裏づけの整備をお願いしたい、このように思っております。
最後に三番目、三つ目でございます。
まずは、都道府県の農業会議の問題であります。
ネットワークに組織変更ということになりますが、これに当たって、一つは農業委員会活動の支援ということと、もう一つは財政基盤の維持強化、この二つが課題になります。
ネットワークでの農業委員会に対する活動の支援というのは、諮問に関するチェックと判断の助言、これが大きく挙がります。
改正農地法では、三十アールを一つの基準にして、ここで線引きされておりますけれども、私としては釈然といたしません。なぜなら、三十アール未満を積み上げていきますとそれを超えるわけでありまして、現実に、今までの諮問におきましても、大半は三十アール未満でございます。
そういうことから、こうした機構が行う意見聴取というのは、これは全ての農地ということでさせていただきたい、このように考えております。できる規定になっていますから、そのようにさせていただきたいと思っております。
もう一つの支援は、特に委員の資質向上でございます。私はこれをスーパー農委と名づけまして、見分けて知る、見抜いて解く、見きわめてなすという三つのプロセスを大切に、図の八で一番下に描いておりますように、プロジェクトやセミナーといった方式を導入、実践するとともに、全国に呼びかけてこれの確立に努めているものでございます。
こうした研修のあり方といった点で、国段階におかれましても、指導支援を特に切望するものでございます。
最後に、財源の確保についてであります。
農業会議を設立して以来、今日に至るまで、国や都道府県はもとより、関係賛助員の理解と多大な支援によりまして、支障なく今日まで運営してまいりました。これが、今回の新たな法人への移行ということになりまして、法令業務、そういった関係の経費や、あるいは賛助員からの援助の仕組みが変わるようなことになりますと、これは大変でございます。
どうかこの仕組みが継承されますように、格段の御配慮をお願い申し上げまして、私の意見陳述にかえさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)
○江藤委員長 ありがとうございました。
次に、新福参考人、お願いいたします。
○新福参考人 宮崎から参りました農業生産法人有限会社新福青果の新福と申します。
まず、脱サラから四十年ぐらい、農業界に入りまして従事させていただいておりますが、その中で、この四十年間の経験で得たこと、また、そういう一つの問題、課題を私なりに述べさせていただきたいと思っております。そして、次の代を担う若い人たちが、明るく、楽しく、元気よくできるような農業の姿というのを私なりにも感じております。よろしくお願いいたします。
まず、現在の農協の問題点、これは、私なりにおさらいすれば、戦後当時の日本で農協を必要とした背景と歴史の中で、主に米を中核とした食料生産、流通方式、そういう中で、当時から、資本主義経済の中での地方農業、農村は、食料生産とあわせて、片一方では人材供給基地として位置づけられた。そして、時代変革とともに、近年、必然的に高齢化、過疎化で地方農業、農村の衰退となってきたのではないかなと思っております。
また、私が、大先輩である地方の農家の人たちに言われた言葉を心に痛切に感じておりますが、戦後、家族が生きるために食料生産に励み、気がつけば、残ったものは老人のしわと借金だけだ、これは私たちも経験しております。
そういう中で、全部の農協が悪いとは思っておりません。中には地域農協でしっかりと腰を据えて頑張っている元気な農協も存在するということをもう一回考える必要があるんじゃないかなと思っております。
ただし、一部の地域農協では、軸足が、農業経営から、いつの間にか、営農指導から金融事業まで含めた農協経営になってしまっているものもあるということなんです。
地域農協は、農家、地域を守ることをアイデンティティーにしておりますが、そのためには組織自体も守らざるを得ず、組織の生き残りと農家利益の間でのジレンマが発生してきている。
一番大切なことは、国民及び消費者、生活者視点から、農業者が安心、安全な食料及び国土環境保全、地域社会基盤整備等にその地域で継続的に価値を発揮及び貢献できるのかであって、国が産業政策と地域政策を分けて取り組む中、農協はその中間点に置いていかれ、議論が混沌としているんじゃないかなと感じております。
そして、農協にはそういう中でどうなってもらいたいのか。
以前、組合員であったころ、規模拡大の中で、当然、人、物、金、情報の中で、お金という投資がかかってきます。時間の制約上、割愛をさせていただきますけれども、断られた、撃沈させられた経験もありまして、本当に、農業者及び組合員の意欲をそぐものであってはいけない、やる気を起こすものであってほしいんだ。これは、今の農業系政策金融機関でも同じことをされております。そうした中で、私たちは、平成七年から、素人の県内外の若手の農家さんを積極的に採用しております。そういう中で、こういう農業系の一つの金融機関にしろ、なかなか投資として見てもらえないというのも農業の一つの問題ではないかなと思っております。
そして、まず、立法、行政にも言えることでありますが、現地、現物、現状、現場の視点に立ち返り、これからその地域で存在価値の立ち位置と方向性をはっきりとつくり、民間では当然やっておりますが、スピード感のあるPDCAを実行してもらいたい。
そして、農業者が求めるものと系統農協が求めるものが、近年、ミスマッチが大きくなってきているのではないかなと思っております。特に、人、物、金、情報等の整備のおくれが顕著化しております。
時代の変化を先取りする自己改革を進め、県連及び各地域農協が新しい取り組みや多様な取り組みにより、より農家の所得向上につながるような営農指導や販売事業を再構築していただき、法人としても取引相手先としても魅力的な農協になっていただきたいと思っております。
農協と連合会、中央会の関係について述べさせていただきます。
本来、協同組合の原則は、利用者である組合員がコントロールしなければならないのに、地域を守るためには組織を守らなければいけないというジレンマから、いつの間にか、負の面でのトップダウン機能優先、組織優先になってしまっている。系統農協の政治的、経済的利益も、高い価格維持を生んでしまっているのではないかなと思っております。
農協は、農家が安く資材を購入するためにつくった組織なのに、農家が農協を通じて肥料などの農業資材を購入すると高くつくという批判がなされてきております。高い資材価格は、最終的には高い食料品価格となって、消費者の負担をふやす結果となっていっているのではないかなと思っております。
私たち企業経営からすると、さまざまな優遇措置をもってしても、一般企業と同じ条件で対応できていないのではないかなと思っております。戸別所得補償制度の矛盾と疑問というのは、これこそが農業者と地域を分断する諸問題になっていると感じております。
そういう中で、政党及び政治が農村での支持を維持拡大しようと競い合う状況では、核心の問題、課題はぼけてきてしまい、本末転倒しているような気さえしております。
しっかりと頑張っている地域農協もある中で、今回の農協改革で国民が負のイメージを持っていることは不幸なことであります。全中、県連、地域農協、それぞれの役割があり、地域農協は独自性を出せばよいし、地域農協間の力量格差是正のため、県レベルの中央会の営農指導等における役割は私は重要だと思っております。スケールメリットを出すということをもう一回再構築していただきたいなと思っております。
今の農協を改革するには何をすればよいか。
今日、現在のままで、組合員になってもメリットを見出せていない。今の地域農協では、主業農家も零細兼業農家も高齢農家も同じく一票の議決権を与えられている。私は、そういうところが問題ではないかなと思っております。欧米の農協では、利用高に応じて議決権を認めるという未来志向型の開かれた発展的農協が出現してきております。
そういう中で、農協と行政、政治の立場から、長年、慣習的なアウトソーシング先として行政側も重宝して使ってきたというものもある。そして、現在でも、私たち法人組織及び法人経営者には、地方行政の中では、末端行政からは今でもさまざまな情報はなかなか伝わらない。
食料生産活動と地方農業、農村の問題は、私は別のものとして捉えております。縦軸系統の事情から出現しているような気さえ感じております。
今後、農協を改革するには、そういう中でリスクを負って戦略的な販売に取り組める環境を醸成するということ。
また、原点、現地、現物、現状、現場に立ち返り、農家の所得向上と営農を継続する体制の早急な構築をしないと、残された時間はない。
そういう中で、新事業にスピード感を持って取り組む実績重視の組織になれるように意識改革を実行すること。他産業では、報酬、給与、昇進等に実績は反映されております。
そういう中で、現在は、法人として経済連と一部取引はありますが、対等な関係での取引先として、私たちも有望と感じております。
次に、農業委員会改革に進めさせていただきたいと思います。
現在の農業委員会の問題点というのは、農地法の思想では、今でも自作農主義であるということ。耕作は従業員が行い、所有は株主に帰属するという株式会社のような農地の所有形態は法律では原則認められておりません。
また、農業委員会の方も、農業に興味及び魅力を感じて就農しようとする非農家出身の人たちのよりどころである農業委員会の敷居の高い対応の仕方では、離れるばかりではないかなと感じております。それこそ、平等と公平を履き違えているような感じさえしております。
次に、配付させていただいているのは、農業センサスの中での、農業委員会のアンケートをとったものの結果でございます。
それはまたごらんになり、判断していただければいいと思いますが、ただ、本音で言えば、農業委員会より、顔見知りの近くの農家を信頼して農地を委託するというのが農家の心情でございます。弊社も、間作を含め、個人対個人の借地、通称、行政用語では闇小作と言われております、そういうものを百筆ほど、信頼関係の中で実際借地をさせていただいております。
今後、農業者が加速的に減少する中で、果たして農業委員会を市町村に基本的に一個置くメリットはあるのか。個人的には、私たちも二つの市で百二十五ヘクタール、筆数で約四百筆弱つくらせていただいておりますが、これも、両方とも農業委員会からの情報はなかなか低調でございます。
そういう中で、農業委員会の今後の方向をどう改善したらいいのか。
地域農業者に公平性を持って、双方向性を持った農地等の情報を提供できる仕組みを構築、整備してもらいたい。そんな難しいことではないと思うんです。例えば、私たち法人組織及び法人経営者には、地方行政の中でも現場に近い市町村や農業委員会からの情報も少なく、これらの情報は、長年の組織の慣習で、流しやすいところにしか流されていないように感じております。
やはり、委員会、委員のスキルとモチベーションアップに加えて、中長期的な行動計画、展望を持った活動が私は必要ではないかなと思っております。
このためには、農業委員、また新設される最適化推進委員に求められる定数、質を確保できる報酬を支えられる恒久的な予算の確保が私は必要だと思っております。
今の農業委員会を改革するにはとありますが、農地の相続については、農地法ではなく民法で規定されております。相続は現農業者でなくても可能だということ、ここに矛盾を持っている。
農業委員の構成は、認定農業者を過半とするだけでなく、農業を支えている地域の他産業の人たち、また消費者等の一定数の参加を求める仕組みも私は必要じゃないかなと思っております。
農地の所有者のための農業委員会なのか、農地を利用する利用者のための農業委員会なのか。時代が変わる中で、六十年基本的に運営が変わらないこと自体が問題であると思っております。
民間では常識的でありますが、中長期的な計画、展望に対する工程策定及び関係部署による実績評価法が私は有効じゃないかなと思っております。
農業委員の能力向上や資格の付与、これは国の責任で実施するべきだと思っております。市町村長の推薦と議会承認では、人柄は評価できても実力ははかれない。
弊社の分散農場を以前分析したところ、この分散農場にしろ、経常純益で三パーから五パー前後損失しております。そういう中では、今般のこの農業委員会、農地法の一つの改正のつけどころは私たちも評価しておりますが、こういうものを全国的にしたとき、相当な国の損失になっているんじゃないかな、私はそちらの方を危惧しております。
最後になりましたが、農地は所有者からすれば資産であります、使わなくても。農地として利活用されて初めて財産となり得る。使われなくなった農地は、国民からすれば負債であり、ある視点でいえば、国土利用と保全の公共性、公共財でもあるということをもう一回冒頭お話しさせていただいて、終わりにさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)
○江藤委員長 ありがとうございました。
次に、太田原参考人、お願いいたします。
○太田原参考人 北海道から参りました太田原でございます。
〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕
私は、長年、農協問題を専門に研究してまいりましたが、なぜ、今、農協や農業委員会の改革が政府から出てくるのかがわかりません。提出されている政府案のベースになっている規制改革会議の農業改革への意見の書き出しは、我が国の農業を取り巻く環境は厳しい状況にあり、農業者の高齢化や次世代の後継者問題、受け手を必要とする遊休農地や耕作放棄地の増加など、農業をめぐる環境は危機的状況にあると言えるというふうになっております。
そのとおりだと思いますが、そうなったのはなぜでしょうか。素直に考えれば、食料自給率三九%というところまで追い込んだ農産物貿易自由化を初め、これまでの農政に原因があるのですから、この状況を変えるためには農政の転換が必要だというのが普通の人の考えではないでしょうか。
ところが、規制改革会議は、農政の責任には全く触れず、農協や農業委員会の改革が必要だとしている。これは責任の転嫁ではありませんか。国会議員の皆さんに徹底して議論していただきたいのは、まずここのところでございます。
恐らく、こうした認識の根底には、我が国の農業が零細で非効率であり、これを思い切って大規模化し、企業化することが解決の道なのだから、零細な農家を守っている農協や農業委員会を変えなければならないという考え方があるのだと思います。
しかし、アメリカやオーストラリアと比較して零細だというのは間違いです。世界農業センサスという農業統計がありますが、それを実施している八十一カ国の農業経営規模を合算すると、一ヘクタール以下が七三%、二ヘクタール以下で八五%、五ヘクタール以下では実に九五%となります。日本の農家の平均は一・六ヘクタールですから、これは世界標準規模であります。
国連は、昨年、二〇一四年を国際家族農業年とすることを決議したことは御存じだと思いますが、その問題意識は、今世紀半ばにも九十億に達すると見られる人口爆発、このふえ続ける人口を誰が養うのかというところにあります。アメリカやオーストラリアの大規模農業の生産力は限界に達しておりますから、人口爆発の中心となっているアジア、アフリカの農業を近代化し、生産力を高めるしかない。そのためには、この地域に圧倒的に多い小規模な家族経営に思い切った投資をしなければならないというのが国連決議の趣旨であります。
そうした問題状況の中で、日本の農業はどのような位置づけにあるのでしょうか。
この問題について、国連の世界食料保障委員会の報告書、これは農文協から訳本が出ておりますが、この報告書には、日本は小規模農業部門の経験を世界に提供できる存在であるというふうに述べております。どういうことかといいますと、日本は、小規模家族経営が小規模のままで近代化に成功し、生産力を高めた唯一の国なのであります。
ごく大ざっぱに申し上げると、日本の農業は、江戸時代までは恐らく他の稲作国と同じような技術水準にありましたが、明治維新後にいわゆる明治農法で単位面積当たり収量を倍加させ、戦後の農地改革によってそれをさらに倍加させました。そして、農業基本法下の構造改善事業によって、集中的な農業投資を行い、圃場を大型化し、機械を入れて、労働生産性を飛躍的に引き上げました。
アジア、アフリカの小規模家族農業にとって、これは将来の可能性を示すものであり、その意味で、日本の農業は世界の希望の星となっているのであります。
このような成果が得られたのはなぜでしょうか。政府による農業投資とともに、農協制度、農業委員会制度、農業共済制度、農業改良普及制度など、農家への支援体制が大きな力となってきたことは明らかであります。特に農協が、農家の生産と生活を両面から守る総合農協という我が国独自の組織、事業形態を創造的に発展させてきたことが重要であるというふうに思っております。
この日本型総合農協は国際的にも高い評価を得ております。
お手元にあるブックレットは、私が規制改革会議の農業改革への意見の逐条批判を試みたものでありますが、ぜひ先生方の参考にしていただきたいと思っております。
この本の四十七ページをちょっとあけてください。四十七ページの上段に、一九八〇年のICA、国際協同組合同盟でありますが、その世界大会における当時のレイドロー会長の報告の引用がございます。真ん中あたりから、ちょっと読んでみます。
典型的な日本の状況のなかで総合農協が何をし、どんなサービスを提供しているかを考えてみたい。それは生産資材の供給、農産物の販売をしている。貯蓄信用組織であり、保険の取り扱い店であり、生活物資の供給センターである。さらに医療サービスやある地域では病院での診療や治療も提供している。農民に対しては営農指導もし、文化活動のためのコミュニティセンターも運営している。要するにこの種の協同組合はできるだけ広範な経済的、社会的サービスを提供している。総合農協がなければ、農民の生活や地域社会全体は、まったく異なったものとなろう。
これは、世界の協同組合の大会で報告されていることであります。
その下段には、ICAのテキストと言われるジョンストン・バーチャルという人の本がありますが、その中でも、後ろの方に、「日本の農協は、国際協同組合運動にとって「アジア・環太平洋地域における最大のサクセス・ストーリー」であると高い評価を与えている。」と評価していることも紹介しております。
こうした評価があるからこそ、ICAは、今回の日本の農協改革に対していち早く関心を持って調査団を派遣しました。そして、その報告書の中で、日本政府が立ち上げたこのプロセスは、どんな言葉を政府から語られようと、脱協同組合化にほかならないという大変強い批判を行っております。このような批判を受けること自体、反論はもちろんあるでしょうけれども、先進国として極めて恥ずかしいことなんだということを言っておく必要があるだろうと思います。
国民の代表である先生方にお願いしたいことは、このような実績を築き上げてきた国内の農業者と彼らがつくる協同組合を壊すことではなくて、その努力を正当に評価し、政治の力でそれを守っていっていただくということであります。よろしくお願いします。
次に、規制改革会議の提言は、余りに過激で乱暴なものだったために、自民党のプロジェクトチームの先生方の努力で、これがそのまま実施されるということはなくなったようであります。そのことは大変よかったと思っておりますが、提案されている法案を見ると、焦点となっていた中央会の扱いのほかにも、多くの点でやはりこの提言がベースになっていると思われるところがあって、これでいいのかと心配しております。
例えば、農業協同組合及び連合会は、その選択により、新設分割や株式会社、一般社団法人、生協、社会医療法人への組織変更ができるとの規定がありますが、これは、選択制とはいえ、総合農協の解体に通じるものではないでしょうか。
総合農協は、農業面での事業とともに多くの生活関連事業を行っており、農家の営農と生活のよりどころとなっております。それだけでなく、地域住民が准組合員となってこれらの事業を利用することにより、地域における生活の支えにもなっております。
特に、北海道などは過疎地が多いわけでありますが、こういうところでは金融機関や商店が次々と撤退し、ガソリンスタンドは農協のものしかない、生鮮食品もAコープでしか売っていないというような地域がどんどんふえております。農協はまさに地域のライフラインとなっているのでありますが、これは総合農協の一体経営の中で初めてできることであります。
総合農協を解体させるならば、地域は生活を守る最後のとりでを失って、まさに地方消滅の道をたどることになるでしょう。このこと一つとっても、政府案では現場に混乱をもたらすだけでありまして、私は到底賛成することはできません。廃案が適当かと思っております。
それでは、農協は改革しなくてよいのかというと、そんなことはありません。今までの参考人もるる申し上げていたように、いろいろな問題がございます。しかし、それは法律を変えたからできるというものではないと思います。むしろ農協の自己改革に期待しなければならないわけでありまして、今まで農協は何の改革もしてこなかったかのようなことを言う論説もありますけれども、そうではない。
この一枚の、これは農林中金で出している農林金融という雑誌に私が書いたものでありますが、これは後からごらんになってください。これまでの戦後農協の歩みは自己改革の連続であり、その中で大きなエポックが三つあったということが書いてあります。
第一は、戦後間もなくのころの再建整備の時代であって、これは農林省主導で行われたもので、とても自主改革と言えるものではありませんが、農家がみずからの出資で農協を再建させたことで、農業会の看板かけかえと言われた戦後農協が、おらが農協になったという意味で、大変重要な転換点であったと思います。
二番目が、一九六〇年代から七〇年代にかけて、総合農協と専門農協の合併が進んだ時期であります。
それまで、食管依存の米麦農協と言われた総合農協が、専門農協の施設、人材を引き継ぐことで、営農指導やマーケティングの力をつけ、農業の総合的発展に寄与するようになりました。私は、これ以降の農協を新総合農協と言ってよいという論文を書いたことがあります。
三つ目が現在でありまして、これは一九九一年の全国農協大会で決定された組織、事業改革であります。
それまでの農協の組織は、行政組織に対応した一町村一農協、それから、全国、都道府県、市町村という三段階組織であったわけでありますけれども、それを広域農協と二段階組織に改め、つまり、それまでの農協が農政の下請機関という一面を持っていたわけでありますが、そこから脱却しようとするという非常に重要な内容を含んでおります。これは二十年以上前に出た方針でありますけれども、いまだ未完の、改革途上の課題でありまして、最近出されているJA自己改革要綱もこの線上に位置づけられているものであります。
最後になりますが、今政治がやるべきことは、法律で上から改革を押しつけるのではなく、農協の自己改革を後押しして、それが大きな成果を上げることができるよう、農業をめぐる環境を整えていくことではないかということを申し上げて、私の陳述を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕
○江藤委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○江藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部新君。
○武部委員 自由民主党の武部新です。
参考人の皆様方、本日は、大変貴重なお話をありがとうございました。
今回のJA改革というのは、地域の農協が地域の農業者の皆さんと協力して、農業所得の向上に力を発揮してもらいたいというのが目的でありまして、きょうは、午前中は、生産現場から、主に家族経営、法人の方もいらっしゃいましたけれども、どちらかというと規模の小さい農家の方、そして午後は、農業法人でも、大型経営をされている笠原さんと新福さんにお越しいただきました。
先ほど、新福さんのお話の中で、今、農業者と農協の間で求めるもののミスマッチが起きているというお話がございました。まさにそのミスマッチをどう解消していくかというのが、今回、この農協改革を進める上で重要になってくると思うんですけれども、担い手を初め農業者の方々が地域の農協に最も期待している役割というのは、新福さんはその役割についてどうお考えになっているか、所見を聞きたいと思います。
○新福参考人 四十年と先ほども申しましたが、私も一時期、組合員でございました。その当時を振り返れば、営農指導、例えばこういう害虫が出たが見に来てくれぬか、現場までお越しになって指導等をしていただきました。今、そういうものがどんどんとなくなって、先ほども述べたと思いますが、やはりそういう信用、金融事業、これは時代の変化の中で、やはりJAさんの組織を守るためにという一つの、結果的には組合員を守るためにもあったと私は思うんですね。
私は組合員ではなくなりましたけれども、私はそれを、先ほどの話の中では、農協を潰せと言っているんじゃなくて、農協はその地域で必要でないか必要であるか、やれるのかやれないのか、そういうことを大切にしたとき、やはり現場というものが原点で、もう一回農協に頑張ってもらいたいという中で営農指導というのを描いたつもりでございます。
それが一つのミスマッチのスタートでございまして、あとは、先ほども言いましたが、資金の相談、販売の相談をしたとき、どうしても淡泊になり出したのかなと思っております。よろしいでしょうか。
○武部委員 新福参考人、ありがとうございました。
要するに、本来JAがやるべき営農指導とか、それを親身に生産者の方々と計画的に進めていく体制をつくることが大事だというお話だったと思います。
その上で、新福さんのお話の中に、笠原さんも経営感覚が大事だというお話、新福さんも同じお話だったと思いますけれども、中でも、農協経営ではなくて農業経営だ、今のお話につながるところだと思うんです。
まさに、農業経営を進めていく上で、なおかつ、我々は今までいいものをつくるということを、生産者の方々は非常に頑張ってきていただいて、技術も高くなってきたんですけれども、これを消費者ニーズに合わせてどう高く売っていくかということがこれから地域農協に求められてくるんだというふうに思います。
その上では、やはり農協も経営感覚が必要になってくる。農業経営感覚もそうですし、農協をやっていく上でも、本来の仕事をしながら経営をうまくやっていくというのが必要になってくるというふうに思います。
今回の改正案の中で、理事の過半を、認定農業者、または、農産物販売、法人経営に関し実践的能力を有する者でなければならないということにしています。もちろん、農業経営もそうでありますけれども、しっかりと農協も、物、人、それから情報、こういったものをうまく活用して経営していくことが大事なんだと思います。
農協の経営感覚について、笠原参考人と新福参考人にお聞きしたいんですけれども、今の農協の経営感覚についてはどう評価されているか、それから、どうすれば農協が経営感覚を発揮して、有利販売、コスト削減に積極的に取り組んでいけるか、御所見があれば伺いたいと思います。
○笠原参考人 今は皆さんも御存じのとおり、地方へ行きますと、DIYホームセンターが農村の中に大変できています。あのお客さんは、まさしく農協の組合員なんですね。これを農協が放置していくという感覚がわからない。これが経営感覚ですね。一つがそういうことであります。
それから、もう一つは、今のマーケットの変化を、三十年間、私は鶏卵の販売をしておりますけれども、商店街から始まりまして、棚売り販売、ボランタリーチェーン、それからチェーンストア協会とだんだん変わってきています。特に、チェーンストア協会、日本に幾つかありました。今はほとんど単独の集まりですけれども、店舗はございません。今は系列化して、大きなスーパーさんが日本の何十%ものシェアを持っています。これに対する対応をきちんとしておかなければ、幾らいいものをつくっても対応できないんですね。
私の業界を申し上げますと、一億五千万羽、私が養鶏業界を父親から譲ってもらったのは約四十年前ですが、当時の養鶏家登録は、多分、正確には覚えていませんけれども、三十万軒あったと思います。今は二千三百軒強だと思います。これが今の、物価のエリートとなっている卵を我々の業界が支えてきた。それで、物価のエリートになっています。これは、マーケットに準じて対応してきた。大変苦しい経営をしましたけれども、今現在も世界に冠たる競争力を持っております。
唯一、我々が危惧していることは、これを維持して発展させるためにはどうしたらいいかということ。それは、原料です。農業生産者にいっぱいつくっていただく穀物、飼料、こういうものが我々の畜産業界と融合してコラボすれば、本当に強い誇りを持てる農業政策になるんだろう、私はそういう誇りで鶏を飼っていますし、また、日本の農業人はそういうつもりでやっている方が多くいます。それを酌み取りながら、地域地域の農協さんが肌で接して改革をしていく、こういうことが非常に大事だと思います。
経営感覚でいけば、もう議論している時間がないんですね。先ほど申しましたとおり、就農年齢が六十六・八です。待ったなしです。そういう意味で、少しきついお言葉になりますけれども、そういう感覚で、農協には経営感覚を議論する前に、実践で数字を上げてもらいたい、こういうふうに思っています。
以上です。
○新福参考人 笠原さんも言われたように、私たち民間でいえば、実績評価なんですね。先ほどもお話ししたように、私たちも四年前に、口蹄疫、鳥インフル、新燃岳と、宮崎県では大変な被害を受けました。売り上げも、数字でいえば二億五千万ほど一年で落ちました。これは畜産ではございません。野菜です。これは、風評被害というので、実際は起こり得ることなんですね、危機管理の中では。そういう中で、農協も同じことが私は言えるんだろうと思うんですね。
そういう中で、先ほども申しましたように、もうちょっと農協は頑張らないかぬがな、そういう熱い思いを私は持ちながら、組合員ではないけれども。
しかしながら、農協を潰したとき、私たち企業農業が発展、継続できるのか。私は、できないと思う。そういう歴史の中でのノウハウ、信頼関係、ブランド、そういう地域だからこそ、つながりが出てきたと思うんです。
宮崎県は、信連、経済連、私たち社団法人宮崎県農業法人経営者協会、総会員数で百五十社ちょっとありますが、そういう中で、お互いの強みと弱み、お互いの強みと強み、弱みと弱み、これを持ち合いましょうということで、去年からスタートしております。そういうものが、今後の地方農業、農村の中で、生産、販売まで、今まで点でございましたが、一つの線として生かせればなと私なりに思っております。
回答にはなったでしょうか。よろしくお願いいたします。
○武部委員 ありがとうございます。大変いいお話をお伺いさせていただきました。
今、新福参考人は、今は組合員じゃないとおっしゃっていましたけれども、笠原参考人もお話の中で、今回のJA改革が、JAと農業法人がこれを契機に協力関係、ともに発展する機会になる可能性があるというお話をされていて、大変これは興味深いなと思って聞いておりました。
それで、今もお話があったとおり、マーケットのこと、笠原さんや新福さんが培われてきた情報網ですとかネットワークですとか、そういったことが、恐らくこれから地域農協にも必要になってくるんだと思うんですよね。そういった協力関係で、地域の農協も発展させることができるようになるということだと思います。
もう一つ、笠原さんのお話の中で、担い手を育成していかなきゃいけないんだ、新福さんもそうですけれども、会社の中でも若い人たちを雇って、そしてそれを、また次の担い手として出すというようなことも、これはやらなきゃいけないけれども、これも大変な作業だと思うんです。
そういったいろいろな意味で、具体的に地域の農協と農業法人が協力していける分野といいますか、期待している分野といいますか、そのことについて、笠原さんと新福さんにお話しいただければと思います。
○笠原参考人 私の一例で申し上げますと、私は今、餌の関係で全農さんと大きい取引をしています。これは二十五年前まではゼロでした。それを三段方式で、農協さん、系統、全農、こういう流れの中で、なかなか原価が見えなかったということがございまして、今は全農さんと大きなパイプを結んでおります。
それは、先ほど申し上げましたけれども、我々の業界が寡占化になったという流れの中に入っていることも事実です。
しかし、先ほど申したとおり、今現在を考えますと、マーケットから見ますと、農協だとか農業法人だとかという、いわば対立構造ではなくて、一つの作物、いわば需要と供給のバランスを、今現在一番いいタイミングでやればいいのか、誰がどこでやればいいのか、こういうことが非常に問われます。
買う側のスーパーさんから見ても、一年間安定的に供給できるのは誰だ、こういう質問も来ます。逆に、生産側からすれば、この地域はこの何月に生産はできるけれども、これは、供給は安定できるのは三カ月ですよ、こういうようなアンバランスが出ているわけです。
ここに、もともと持っている系統さんの、先ほどの系統システムではなくて、やはり市場ともきちんとした仕組みを持っているわけです。また力もあります。そこに、我々のいわば農業法人、そういうものをきちんと取り込んだ中で、市場に評価される仕組みを一緒につくる、こういうことは一番短い時間でできるのではないかな、私はこう思います。
これは、理屈ではなくて、もう求められています。御存じのとおり、スーパーへ行ってみると、顔の見える野菜とか、顔の見える畜産となっています。スーパーさんにずっと農家の写真、おらがつくったと。私も息子の写真が出ています。こういう形は、まさしく地元の農協さんの経営感覚を直していただいて、もう少し改善をしてもらえば、私は、共同してやることが短い時間でいくんじゃないかな、そんな思いを持っています。
以上でございます。
○新福参考人 先ほどの補足になりますけれども、私が脱サラした四十年前というのは、淡い夢というのがございました。それは個人の農業で田舎暮らしができること、これは今でもその半分は消えておりません。しかしながら、この時代の変化の中で、周りが、四十年近く前から、後継者がいないよ、高齢化していくというのを見てきました。その中で、農協の一つの衰退というのも寂しいながら見てまいりました。
その中で、私たち新福青果のブランドというのも確かにあります、小さいながら。しかし、その地域の農協を通せば、やはりブランドという信用の中で高く売れている。先ほども述べましたが、そういう相当な経費と信頼関係のつくり方に農協というのは投資をしてきたはずなんですね。
そういう中で、私たちもそういう地域の一員として、組合員ではございませんが、新たなつながり、連携、こういうものが私は必要ではないかなと。
もう一つ、宮崎県都城市でございますが、ここには約一万二、三千ヘクタール、広大な農地がございます。その中で、当然ながら耕作放棄地というのもありますけれども、私たちが求めている農地を、農協さんと情報をつなぎながら、総合的な分合とか分割とか、そういうものができないかなと。本来はこれは農業委員会がしなければいけないことなんですね。それを私たちが、そういう一つの人にしろ、そういう農地のものとしても、技術としても、情報がないから、ばらばらにコストをかけてやっているのが現状でございます。
私が言いたいのは、そういう時代の変化の時流に合わせなければ、農協とて、私たち個人農業経営者とて、その地域では生活できないし、事業としてまず成り立たないということを確認していただきたい。
そういう中で、私たちは、新福青果グループ会社として、約七十名の雇用がございます。その中で、生産現場というのは、先ほどもちょっと述べさせていただきましたが、二十年前から先行投資という形で、若い人たちが農業に打ち込めるような環境整備、例えば日曜、祭日を休むとか、福利厚生で社会保険に加入するとか、退職金制度を入れるとか、そういうところをやれば、正直、私たち、百二十五ヘクタールの中で、生産現場の平均年齢は二十六・五歳前後でございます、それは描いたものじゃなくて、そういう農協さん、地域と同じような取り組みをすれば若い人たちは興味を示しているんだ、そういうところを、新福青果が地域にある限り、そういう農協さんと手を組んで連携を持ってやっていけば一つのモデルになるんじゃないかなと私は思っております。
よろしくお願いいたします。
○武部委員 ありがとうございます。
最後の質問になると思いますけれども、川上参考人にお聞きしたいと思います。
川上参考人から、農業委員と推進委員、この信頼関係が大事だということと、連携協力が何よりも必要で、それが農業委員会の仕事をさらに力を発揮されるというお話を伺いました。
連携強化も大切だと思うんですけれども、これからの制度でありますから、農業委員と推進委員の役割分担といいますか、農業委員は何をするんだ、推進委員は何をするんだ、笠原参考人からも、推進委員には熱意を持った人になってほしいというような御要請もありましたけれども、これについて、川上参考人のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
○川上参考人 農業委員と推進委員の役割分担では、示されておりますように、推進委員は農地利用の最適化と。これは今の課題でありますから、かなりウエートも高いわけですし、当然のこと、一人でするよりも手分けをして、あるいは専門的にという点では理解できると思います。
ただ、いろいろな問題が絡んでくるわけでありまして、当然、農業委員会の業務である農業委員の業務、このこととの関連なくして推進委員は役割を果たすことはできません。
そこに連携ということが起きてくるわけでありまして、その連携の中で、ただ役割を分けておるからそれぞれでやってくださいといいましても、地域の担当が別々であればこれもまたマッチできませんし、それから何よりも、人間関係を申し上げましたけれども、そこのところで上下が生じますと気持ちがうまくいきません。
そういう意味で、私の個人的な感覚ですけれども、役割を分けることはいいわけですが、まず名称において、対等的な表現が欲しい。
それは、例えば農業委員に対して、特任農業委員は農地利用最適化担当というような推進担当、こういうような形で名前から始めて役割分担をすれば、後々いろいろな形で連携がとりやすくなりますし、それから、農業委員の方では地域担当ということは示されておりません。それは現行もそうであります。ですが、現実はほとんどのところが農業委員さんは地域担当をしております。そこが拠点でならねば、広域な観点から、大所高所といいますけれども、それではやはりきめ細かく行き届いたことにならない。
そういう意味で、職務上の地位もあわせて、そして役割分担はさらに明確にしてということをお願いしておるものであります。
以上でございます。
○武部委員 大変ありがとうございました。
質問を終わります。
○江藤委員長 次に、石田祝稔君。
○石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。
四人の参考人の先生、ありがとうございました。それぞれに貴重な御意見を賜りまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
私から何点か、今後の質疑の参考ということでお聞かせをいただきたいと思います。
まず、今回の法律は、六十年ぶりの農協の大改革、こういうことでもございますけれども、端的に二点、それぞれの先生にお伺いしたいんですけれども、一つは、農協はこれからも必要なのかどうか。そしてもう一つは、どなたも今のままでいいということはおっしゃっていなかったと思いますから、どこを変えればいいのか。この二点について、笠原参考人から順次、せっかく来ていただいておりますから、四名の参考人に御意見をお伺いいたします。
○笠原参考人 大変答えにくいんですけれども、先ほどから申し上げていると思いますけれども、農協が必要かどうかというと、今のままでは価値がない。ということは、今の組織をどうやって生かすか、これに限ると思います。
それで、やはり我々事業をやっているもので、これだけ長い間後継者が育たなかったというのは、若い人から見て魅力がなかったということだと思います。そういう意味では、今のままでは必要ない、改善をスピードアップして変えることであれば、今まで持っているノウハウもありますし、やはり地域地域の問題でもありますから、スピード感の改革によるということに限ると思います。
変え方ですけれども、私は、今まで農協さん同士の競争があったかどうかというのは、なかったと思うんですね。どこの商売でも、業界内で競争感があって、初めて農協のいい悪いが出てくると思います。その中で、やはり農協さんの質の改善ができたと思います。
その農協間の競争が今までなかったということは、今のままでは必要ないのかな、競争があってこそ、必要な農協が出てくるし、必要ではない農協が出てくるんだろう、その責任を持つのはトップである組合長、あるいは役員の考え方だ、こんなような思いです。
それ以上、なかなか、今すぐに答えることはできませんけれども、以上でございます。
○川上参考人 まず、農協が必要かどうかということですが、私は、総合農協として必要だというふうに考えております。
それは、まずは一番の根本にありますのは家庭であります。そして、地域であります。それを受けて農協がいろいろな形で対応するわけですから、総合農協でならねばなりません。ただ、農協は、もうからないことも、大事なことはやらなきゃならぬ。そこに総合農協としての意味があると思っております。
どこを変えればいいかということでございますが、これは一言で言って、私は営農主体型のJA改革と名づけておりますが、このことに尽きると思っております。
それは、やり方としましては、まず、生産部会、ここをきちんと強くしなきゃなりません。個人個人で自己完結できない部分というのはたくさんございまして、それが共同販売であり共同生産ということにつながっていきます。あるいは加工もそうであります。そういうことを実質的に実践できるのは、生産部会であります。
その生産部会を強いものにするためには、当然、指導段階におります営農指導員、これの資質は問われてきます。営農指導員は、従来は技術指導中心でございました。続いて経営指導に移りました。今度は加工、販売までというところに、一連した流れの中で対応しなきゃなりません。この営農指導員の資質、ここが一番問われてきておると思っております。
同時に、理事会であります執行部の考え方、これが営農主体型のJA改革ということをスローガンに置かなければ実行に移せません。
ただ、運営の方では、営農主体型になればなるほど経費がかかってまいります。そういう面で、どうしても赤字を出しちゃならぬというのが執行部の考え方になるわけでありますから、ここは、損をしてもならず、もうけてもならずという非常に際どいところを今運営しておるというのが事実でありまして、やはりそういう面から見て、第一に生産部会を基点にして運営するということを総会も含めて全体的に認め合って、協力し合っていく、そこには総合農協の力しかないだろう、このように考えております。
以上でございます。
○新福参考人 粗っぽい意見ですけれども、必要であるか必要でないか、私は大局的には、将来的には必要だと思いますね。ただ、現時点ではメリットを感じないから利用しない、それが正直な話でございます。
そういう改革というのが組織内でされれば、スケールメリットが出てくるだろうし、先ほども述べましたが、そういう農協のブランドというのは、信用力は、私たちが一経営者として弱いところなんですから、そういうものを早急に是正もしくは改革をしていただければ、農協というのは、私たちが経営で一番コアになり得る一つの団体であるんじゃないかなと思っております。
また、ある面では六次産業化という、六次産業化法で今どんどん進めておりますが、私たち一農業者が六次産業化を進めるのは限界が来ます。そういう中で、地域のリーダーといいますか、まとめる人が、六次産業化法でも農協が引っ張っていってくだされば、私たちもそういう中で協力できるところは協力しながら、また私たちの経営にもそれを反映させていけるんじゃないかなと思っております。
以上です。
○太田原参考人 農協は今後必要かどうか。
質問なさった石田委員の問題意識とはちょっと違うかもしれませんが、実はこれは農水省にとって結構深刻な問題でありまして、農水省は、もう十年くらい前になりますか、農協のあり方研究会というものをつくって、まさにこれから農協は必要かどうかという議論をやったわけであります。
それはどういうことかというと、それまで農水省、農林行政にとって農協は絶対に必要だったわけですね。なぜならば、食管制度があったから。食管制度がある限り、農協の協力なしにはできない。しかも、農協の主要業務はほとんど食管制度に基づく国の業務の代行である、こういう時代がありました。しかし、食管制度がなくなる、この時点で農協と行政はどういう関係を結ぶべきか。要するに、安易な農協依存はやめようという脱農協宣言を農水はしたわけであります。
しかし、食管制度はなくなったんですけれども、減反政策がある限り、減反政策は農協の協力なしには絶対にできません。しかし、その減反政策も間もなくやめる。そうすると、いよいよ農水自身が農協から卒業できるのではないか。農協は今後も必要かというのはそこから出てくる一つの問題なのでありますが、農家組合員にとっては、今後ますます必要であるということは明確であります。
農協は、農家組合員の共同販売、共同購入ということをこれからまさにみずからの任務としてやっていかなければならないわけでありますから、そこで、今、大型法人と農協との協力関係という大変いいお話が出ておりましたけれども、これからの行政と農協の関係にも同じことが言えるわけでありまして、これは今までのような下請関係とかそういうことではなくて、まさに対等なパートナーとして日本農業を支えていく、そういう関係でいくべきではないだろうか、そういうふうに思っております。
それから、これもちょっと外れるかもしれませんが、協同組合というのは仲よしクラブで競争がない、だから進歩がないという、結構言い古されたフレーズがありますけれども、そんなことはなくて、先生方はよく御存じのように、各県、各産地で激烈な産地間競争をやっているわけでありますね。この産地間競争を通じて、米を見ても、どんどんおいしい米ができてくるし、イチゴなんかを見ても、すばらしいイチゴが出てくる。
ですから、今後も競争というのは続くし、協同組合は競争と無縁だなんてことはありません。ただ、協同組合の産地間競争というのは、これはスポーツの、いわば団体競争なんですね。団体競争で、競争をすればするほど中はしっかりまとまらなきゃならない、切磋琢磨しなければならない。そういうことをしながら常に競争していく。
農業の産地間競争というのは……(石田(祝)委員「聞いたことに答えていただいて、余り時間がないんです」と呼ぶ)よろしいですか。
終わります。
○石田(祝)委員 参考人に来ていただいて、発言に注文をつけて申しわけなかったんですが、二十分という中でできるだけお聞きしたいと思いましたので。
今、私は直接的に農協について、今後を含めて必要かという、これは農協にとって失礼な質問だったかもしれませんけれども、四人の方は、必要だという方が現時点で二人、あと、改革すればというお答えだったというふうに思います。
私も、去年からずっとこの問題に携わってまいりまして、今回、法案という形で与党として提出をさせていただいた、こういうことでございます。ですから、我々も、私個人としても、農協には地域での大事な役割があると。
実は、私の本籍地も大変な田舎でございまして、そこにはもうほとんど何もない、こういう状況なんですね。もちろん金融機関、銀行なんかもございません。そういうところで、地域に住んでいる方をどう支えていくかという意味で、私は、農協は社会のインフラとしてはどうしてもこれからも頑張っていただかなきゃならない、しかし改革は必要だ。こういうことで、今回の法律は、我々としても責任を持って出した以上は成立をさせていただいて、そういう中での改革にぜひ取り組んでいただきたいというふうに思っております。
それで、今回、それぞれ与党、野党の御推薦で来ていただいておりますので、私は与党の立場でありますけれども、来ていただいた以上は、やはり野党の御推薦の方にも意見をお伺いしようということで、今お伺いをしたところでございます。
笠原参考人と新福参考人にお伺いしたいんですけれども、これまで御自身で、私から見ると、本当に企業的経営者マインドを持って進めてこられたというふうに思います。
私の地元でもミョウガをつくっている産地がありまして、そこは後継者がいないというよりも、後継者をやりたいという人が多くて、私が直接聞いた中では、今やっている経営者、お父さんですね、お父さんが、もう後継者は俺が決めるんだ、子供が二人も三人もやりたいやりたいと言っているんだけれども、全員にやらせないんだと。ですから、極端なことを言うと、後継者対策なんて要らないんだ、もうかればみんなやるんだ、こういうふうに私は思ってきたんです。
今度はお二人に、いわゆるもうかる農業としてどういう点を心がけてこられたのか、時間も余りありませんので、端的にお答えをお願いしたいと思います。
○笠原参考人 私は、四十年前、千葉に行って何をしたかというと、自分の卵を自分の価格で売りたい、こういうことでやってきました。
当時、父親の財産を盾に設備投資をしたんですけれども、鶏卵相場というのが日経新聞に出まして、その相場で事業計画を立てるんですが、当時の銀行さんは、この相場は本当かというと、私にもわからないんですね、需要と供給ですから。これはもう事業計画にならない、そういうことで、三十五年前に販売会社をつくりまして、自分の卵は自分の値段で売りたい、今でいえばNB商品ですね、こういうことをやってきました。
そのときに、当時、同じようなことを今言われておりますけれども、どんな商品でも、やはり必ず生産に特徴がありますね、その商品に。私の時代は、卵は大きい方がいいとか中くらいがいいとかという、サイズ別に値段がついていました。私はそれをミックスして、卵は一緒じゃないかということで、差別商品というのをやりまして、そういう自分の持っている商品の特徴をつけて、差別商品ができた。この差が、一キロ当たり、大体年間平均で、今現在二百円ぐらいの相場なんですが、当時、相場が波打ちしますけれども、大体七%から八%ぐらい手取りがふえたわけですね。これは我々にとっては、数ですから、装置産業ですから、大変なボリュームになった。
こういうことで、自分の商品は自分の価格で売る、こういうことでやってきました。
以上でございます。
○新福参考人 経験から申しますと、不安の中に、農業というのは選択肢の中に入らないと思うんです。これはほかの産業でも一緒だと思うんですね。
ということは、社長でも一つの人生でございます。また、若い人たちが農業をやりたいという中でも、そういう興味を示した段階で、そこに目を向けているということはありがたいことなんです。そういう中で、最低限の労働環境整備、先ほども申しましたから、割愛させていただきます。
そして、販売。これは、笠原さんが言われたように、その当時、組合員であったころ、やはり共同仕入れ、共同販売という限定がございます、組合には。その中で、私たちがつくった商品というのは一つ一つが愛情の塊であって、誰がそれを欲しがっているか、今で言うマーケット・インというのが、その当時、組合になかったと思うんですね。指定された市場に流通を促して、その中で平均的に割って、口座へ落とされる。そういうところの矛盾があったわけですから、そういう物流まで含めた販売方法、そういうものを変えていけば、先ほども述べさせていただきましたけれども、お互いにその地域で本当に手をとり合っていけるんじゃないかなと私は思っております。
以上でございます。
○石田(祝)委員 四人の参考人に大変貴重な御意見を賜りました。
今まで委員会は、ややもすると、参考人の話を聞いたらもう質疑は終わり、こういうことも間々ありましたけれども、今回は、大変早い段階で大変重要な意見を聞かせていただいて、私は、これからの大いに、本当の参考に私たちもさせていただけるんじゃないかな、こういうふうに思っております。
しかし、質疑が進めば採決をするのは当然でございますので、それはしっかりと採決までやらせていただきたいと思いますが、私は、公明党としても、農業は生命維持産業だと。これは、ほかの、産業と言って一くくりにするイメージとはちょっと違う、産業と言っていいのかという、ちょっとちゅうちょするところもありますけれども、やはりそれで食べている人もいるわけですから、もうけなきゃいけないということも事実だろうと思います。
そういう意味では、きょう、四人の参考人の方、ちょっとそれぞれ意見が違うところがあって非常によかったなというふうに私は思っておりますので、きょうのことを参考にさせていただいて、充実した審議をしっかりとさせていただきたいことをお約束いたしまして、終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、佐々木隆博君。
○佐々木(隆)委員 民主党の佐々木でございます。
参考人の皆さん方には、それぞれお忙しい中をこうして我々に貴重な御意見をいただけますことを、大変感謝申し上げます。
今、石田委員からもありましたが、参考人質疑を先にやれるというのは私は大変よかったというふうに思っておりまして、大変参考になる意見をそれこそたくさんいただいて、それから我々が審議をしていくということになりますので、前もって御意見をいただいたことは大変貴重だったというふうに思っております。
同じ農業者としての立場でも質問をさせていただきたいというふうに思うんですが、農業経営者のお二人はほぼ私と同世代でございますので、言っていることの時代背景はよくわかりますので、そうして聞かせていただきました。
太田原さんには、北海道でもいろいろ御指導いただいてまいりました。
午前中の質疑も聞いていて、少し何か我々の頭の中で整理をしなきゃいけないなということが幾つか出てきたというふうに思っておりまして、先ほど来ちょっとテーマになっておりますが、非営利についてやはり相当勘違いがあるというふうに思っております。
農協が利益を上げるなというふうに勘違いをしている皆さん方がたくさんいて、それは、上げた利益を配分しろという意味であって、農協がストックしちゃいけないという意味ですから、農協がもうけちゃいけないという意味とは全然違うんだということは、午前中の論議も、それから今ほどの参考人のお話からもある程度整理がされてきたのかなというふうに思うのと、もう一つは、農業といってもいろいろな職種があって、耕種農業のようなものがベースで農政というのはつくられてきていますが、今の鶏卵のようなものとか肉牛とか野菜とか、非常にスパンの短いものと、一年以上スパンがあるものと、これを一つに論議するというのもこれもまた非常に難しいものだなということを感じてまいりました。
スパンが短ければ短いほど、一般の企業経営と同じ感覚でやっていかなきゃいけないというふうに思うんですが、スパンの長いものを一カ月ごとに経理しろと言われたって経理できないわけですから、これを同じ感覚で整理していくというのもこれもまた非常に難しい話だなというふうに思ったところであります。
最初に、午前中も含めて農業委員のお話をしっかり伺うというのはきょうの川上参考人だけでございまして、先ほど農協の話を聞いたらすばらしい理論を展開されて、それも聞きたいところでありますが、農業委員会について川上参考人にお願い申し上げたいと思います。
それで、地域調和ということを大変重視されて意見を述べられておりました。農地の番人として、まさにその最前線で御苦労いただいてきたわけですが、そこで、まず、二つお伺いをしたいと思います。
それは、近年になって特になんですが、農地に関していろいろなものができ過ぎ、つくり過ぎだというふうに私は思っているんです。それは、農業委員会というのはもとからありますけれども、そのほかに、農地利用集積円滑化協議会とか、農地中間管理機構とか、あるいは今度は推進委員とか、何で農地一つにかかわるのにこんなに幾つもの組織が必要なのかということについて、現場でずっと見てこられた川上さんにぜひその点をお伺いしたいなというふうに思っております。
もう一つは、今度の新しく考えられているその推進委員がなければ本当に農地というのは動いていかないのかということについて、どういうふうに思っておられるのか。農地に関して、その二つです。
もう一つは、先ほど来お話がありましたが、地域ということの観点から、地域から一人はどうしても必要なんだ、そうしなきゃ地域の実情を反映できないんだ、私も全くそのとおりだというふうに思っております。それは選挙で選ぶ方がよりいいというふうに私は思っておりますが、もう一つ、今度、建議が法的根拠がなくなるわけでありますが、これは、参考人自身が言われていたように、全般に対するしっかりとした意見ということで、川上参考人の場合は白書をみずから地域で出しておられたりして、大変そこら辺も重要視されておられたんですが、それらについてまずお伺いしたいと思います。
○川上参考人 まずは農地の問題で、あの手この手でいろいろな形の方策がとられておるということであります。
それぞれに特色はあろうかと思いますが、目的は一つであります。時間的な経過の中でふえておるものもありましょうし、それから、内容的に、そこでなければ機能的に発揮できない、そういう制度もあろうかと思います。
ただ、一つ言えることは、一番の問題は、利用する側の受け手側と、出し手の方、地権者ですね、個人ということに限定をいたしますと、これは仲を取り持つ、調整する役割は非常に大変でございます。それがために推進委員があったり、いろいろな角度から助言してもらったりということがありますし、さらに、それをどうするかという面で、出し手の希望も受け手の希望も、受けたはいいが、ただ農地を荒らさないように維持管理するだけか、あるいは何かをつくってもうけるのか、利用の形態もそれぞれありますよね。
今回の機構がスタートしたときにも、前段は、一旦預けて維持してもらうだけでもいい、こんなことが最初にあったものですから大いに期待しておったんですけれども、これが、利用するものがなかったらお返しということになりましたので、またこれが、中山間地域の方に対する受け手の希望というのは、具体的に入れば入るほど明確に少なくなります。ですから、出し手と受け手の方のマッチングができない。
それからもう一つは、当然のこと、面的にまとまらなきゃいけません。それが、今、個人がいわゆる意向調査をしましたけれども、それを利用側に使ってもらえるようにするとすれば、もう少し面的にまとめなきゃならぬ。
したがって、結論は、それぞれの地域、集落といったようなところで話し合って、出し手がグループになって出す、いわゆる地縁的集団ですね、そういう形をまずとらないと、地権者でない者があそことこことをくっつけてこうだということの調整に入ろうとしても、とても大変であります。地権者同士が話し合って、それをもって面的にして使ってもらえるようにする。
ところが、この仕組みは、今、中山間地直接支払いの団体ができ上がっておりますが、ここしかありません。当然のこと、地域にはリーダーもおりませんし、それから協議会のようなものもないわけであります。そのことなくして周りからこうだああだと言いましても、現実的なものに結びついてこないというところが欠陥であります。
ですから、マッチングできない部分というのはいろいろそういうものがあってでございまして、農家の方の気持ちも、顔が見えて信頼が置ける人でないと出さないという人もありますし、きちんとした公的な組織でないとだめだという人もありますから、そういう選択肢を設ける意味では、種類がたくさんあった方がいいということも言えるかもしれません。
いずれにしましても、それぞれの特色を生かした形が必要だというふうに思います。
それから、推進委員の方につきましては、人という見方と、それから役割という面がございます。
推進委員が必要だということは、役割が必要でありまして、役割が必要だからということで推進委員ができておるわけでして、農業委員が全部かけ持ちでできるということであれば推進委員は要らないわけです。そこらあたりが、どれだけのウエートでどれだけ専門的にやるべきか、ここのところでいわゆる役割分担ということが起きてきますから、一概に推進委員が絶対いなけりゃいけないということにはならないというふうな見解を持っております。
それから、建議の問題でありますが、これは非常に大事なことでありまして、通常の農業委員会活動をしておれば、必ず、これはこうしてほしいとか、ここが問題だというのが出ます。それを行政施策に反映するために意見を申し上げるわけでありまして、これはいつでもどこでもできることではありますが、きちんとした法的な裏づけの中でこれを受けとめるよということになりますと、何らかの形で回答する義務が働きます。そのことを我々は期待しておるわけでありまして、したがって、何らかの形で重く受けとめてもらえる体制というか裏づけが欲しいと申し上げましたのは、そこにあるわけであります。
したがって、農業委員会や推進委員が活動して、延長線上で気づいたこと、あるいは考えられたことは何らかの形で行政施策に反映できるような、このことは非常に大事だと思いますので、ぜひ続けていただけたらと思っております。
以上でございます。
○佐々木(隆)委員 限られた時間で四人の皆さん方にお伺いするのはなかなか大変なんですが、頑張りたいと思います。
太田原先生、何度か本も読ませていただいていますし、いろいろなところへ投稿されているのも読ませていただいておりますが、先生がずっとおっしゃっておられる、総合農協でなけりゃいけない、私もそう思っています。恐らく、これは分割すると九〇%以上の農協は潰れるんじゃないかと僕は思っているんです。
総合農協でなけりゃいけないという、先ほどちょっと歴史的経過もお話をいただきましたが、先生がずっと言っておられるそこのところを、もう一度、なぜ総合農協でなけりゃいけないのかということについてお伺いしたいと思います。
○太田原参考人 私もずっと総合農協、総合農協と言っているものですから、改めてそう聞かれると、さて何と答えたらいいのか。
総合農協でないのは専門農協でありますけれども、一時、専門農協が華やかな時代があったんですね、特にミカン地帯なんかを中心にして。しかし、その時期は短くて、やがてそれは、オレンジ・牛肉の自由化が始まって、貿易自由化が進むとともに潰れてしまったわけであります。ただ潰れたのではなくて、先ほど言いましたように、総合農協に吸収されたのであります。
そこで、なぜあれだけの栄華を誇った専門農協が経営的に弱かったのかといいますと、これは明らかに信用事業と共済事業、特に信用事業を欠いていたために資金力が乏しくて、伸びているときはいいけれども、非常に耐久力がないということが、これは歴史的な教訓としてあると思いますね。したがって、総合農協の強靱さというようなことがそこで実証されたと思うんです。
しかし、それはあくまでも農協経営についてであります。日本では、大型法人の皆さんは違いますけれども、日本の代表的な普通の農家は、日常的には経営と生活が未分離である、そういう状況の中で、やはり経営と生活と両面から支える、これが総合農協の特徴でありますし、その必要性はしばらく変わらないのではないか、そういうふうに思っております。
○佐々木(隆)委員 あと四分ほどもありませんが、ここで二人にちょっとお伺いをしたいんです。
新福参考人が、一番最初の書き出しのところで、農業委員会の改革のところで耕作者主義というあの懐かしい言葉を聞かせていただきましたが、ずっと農地は耕作者主義をとってまいりました。私が初めて国会に来たときに、農地制度の改革、農地法の改革があって、そのとき担当しておりまして、それはそのときに外されました。
でも、何で耕作者主義にずっとこだわってきたのかというと、それは新福参考人もおっしゃっておられるように、地域というものと農地が一体だからですよね。だから、耕作者でないと地域も守っていけないというところに、ずっとそこにこだわってきた理由があったわけでありますが、時代の背景とともに、ちょっとそこは、それほど厳しくすることはないのではないかというので緩めたわけであります。
今、法人経営をやっておられる中で、だからといって地域とかかわりなく生産をしているわけではないというふうに思うんですが、そこのところをできれば端的に聞かせていただきたいんです。
申しわけありません、もう時間がありませんので、笠原参考人にも聞かせていただきたいと思います。
担い手ということを随分強調しておられました。実は、農政をやっていく中で、担い手という定義は非常に難しい定義なんですね。我々が政権をとっていたときも担い手というものについて随分論議しましたけれども、結果、販売農家の全てというところでやってきたんですが、これをどう考えておられるか。
これは、変に絞ると、そこにだけ農政の政策が行っちゃうということにもなっちゃうわけで、担い手という言葉をおっしゃっておられたので、その辺をどう考えておられるのかということを笠原参考人の方にお伺いしたいと思います。それぞれお願いします。
○新福参考人 最後の担い手の方からさせていただきますけれども、私は、基本的には、地域には、個人の農業者、また、集落営農、私たちみたいな企業農業、これはバランスが一番大切だと思うんですね。今後も私はそれが大切だと思います。企業農業で全部賄えるか、私は、これはリスクがあるだろう。私がその業界におって言うのは変でございますが、そういうリスクがあるということをやりながら、基本的には個人の農業を私は理想としているんだ。ただ、そこで生活できるかできないかだと思うんですよ。そういう点を、所有から借地という農法でやっていたわけでございます。
さかのぼること二十年前は、畑で、十アール二百五十万まで農地が上がりました。そのころは引く手あまたで農地が足りなかった。それから急に、いろいろなオイルショック等を考えて、時代の変化の中でどんどん整備されて、今、十アール五十万ですよ。そうしたら、所有より借地の方がいいわけですね。例えば、十アールを一年間一万円で借地したときに、五十年は賄えるわけですから。
そういう点でいったとき、今、鳥獣害とか、そういう限界集落のところに土地の買い手がいない、使い手がいない。そうなっていったときに、地域の問題ですから、そういう中で、私たちは企業農業として、その地域を一括的に包括的にお借りして、その雇用創出も含めながら、地域保全で利益を上げていく、そういう形態で私たちは地域に貢献できるんじゃないかなと思っております。
以上でございます。
○笠原参考人 私は、担い手という、私自身の認識は、次の時代を担う農業生産者で、これは法人だろうが個人だろうが全て次の時代を担う、そういうふうに思っております。
以上です。
○佐々木(隆)委員 時間が参りましたので。
きょうはどうもありがとうございました。
○江藤委員長 次に、村岡敏英君。
○村岡委員 維新の党の村岡敏英でございます。
午前、午後と、八人の参考人の皆さんの御意見、本当に勉強になりました。お忙しい中、ありがとうございます。
そこで、もう大分農協法の一部の改正に関しては皆様にお聞きいたしましたので、私はちょっと違う視点からお聞きしたい、こう思っております。
私は、予算委員会で、国会議事堂の前が芋畑の昭和二十一年の写真を見てもらって、総理に質問しました。
農業というのは、この国にとって、食料が不足になったら本当に国民は困るんだ。その現実はたった七十年前にある。そして、歴史を振り返れば、政治で一番大切なのは、農業の政策が成功するかどうか、これが歴史上ずっと大切なことであり、全世界を見れば、日本のように、輸入できるような国ならば別ですけれども、この食料飢餓というのは政治の一番大切なことなんだということの認識を述べさせていただきました。
その上で、ただし、食料が不足しているときから、食料が余り始め、減反政策をとり、そして農業のそれぞれの生産高も落ちてきて、また所得も落ちてきている。そして、今の現状が、平均年齢も六十六歳以上、さらには所得も低い、そして担い手がいない、大変厳しい状況になっています。
そこで、農林省も、また政府も、ここにいる農水委のメンバーも、農業を何とかもう一回再生したい、そして、それは農村社会もしっかりと再生したいという思いで審議してきております。
そこで、そもそも論なんですが、この農協法の改正が一番最初に手をつける問題だったのか。それとも、農業を再生させるためには、ほかのことで手をつけた方がいいのか。農業界にいて、それぞれの立場で大変御見識を持った、また、実際に農業をやられている方もおりますので、本当は、農業は何から手をつけたらいいとお思いなのか、お一人ずつ参考人の方からお聞きしたいと思います。
○笠原参考人 私は、全体のことはよくわかりませんけれども、農業人として事業ベースからお話ししますと、農地の集積、農地を休耕地にしないことということになりますと、やはり農地の集積が一丁目一番地だと思っています。このことをやることによって、土地利用型の方々の労働生産性は向上する。そのことによって大型化になればなるほど、いわば日本が今持っているいろいろな業界の技術、そういうものも駆使できる。かつ、いろいろな横持ち、エネルギー問題の解決も大きくなることによってできる。
そういうことで、私は、自分の養鶏産業を見て、一段の平飼いから、今はマンションの経営になっています。土地利用型は横にどうしても広げなきゃいかぬということになれば、この農地の集積が一丁目一番地だと思っています。それに人的、資金的に集中することが、多分、日本の農業の再生になるんだろう、私個人はそう認識しています。
以上です。
○川上参考人 目標をどこに置くかということでございますが、私は、食料安全保障だと思います。
食料安全保障の場合は、今言われておりますように、食料自給率という物差しがございますが、これでは十分でないということで、食料自給力ということが加えられました。力というのは、生産力であったり供給力ということになります。しかし、これを数値にすることは難しいわけですから、結局は、食料供給という大目標にかけて国民が必要なものを満たしていくということになります。
そこには、企業的な農業だけでは供給できません。小さい農家でも全部供給につながっておるわけであります。したがって、地域でも農協でもそうでありますが、目標に置くのは、やはり国民への食料供給という使命感が一つあると思います。
そのところを土台に置いた政策になっていかなきゃならぬと思いますが、ただ、今の政策の中では、産業政策と地域政策という大きな二つの柱で走っておりますけれども、私に言わせますと、その中間的なところの部分が一つの抜け穴になっておるのではないかというふうに思います。
そういうものを支えていき、元気をつけていくというのは、やはり農協に力が必要でありますし、農業委員会の方も、そこが母体になってくる、このように思っております。そういう考え方で進めたらと思っております。
以上でございます。
○新福参考人 中長期での展望というのが、そういう食料政策、それから地方農業、農村の別な分野の政策、これをはっきりしなければだめだと私は思っております。
また、そういう中で、あのイギリスでさえ、農地をあれだけ整備するのに三百年かかっているんですね。そういう一世紀、百年、中長期展望を、日本もやはりいいところを研究して学んだ方が私はいいと思います。
また、これからの農業人、勝手に農業をして勝手にやめるようでは困ります。そういう中で、地域に対して農業人は責任と義務を負うんだ、それぐらいの自覚を持った農業人になってもらいたいし、また、そこに対しては、国の方もそういう農業人を育てられるような、例えば所得政策とかそういうものがあっていいんじゃないかなと思っております。
以上でございます。
○太田原参考人 大変大事な質問をしていただいたと思います。
私は、今までの参考人の御意見ともダブるかと思いますが、やはり、生産者、担い手に将来展望を与える所得、価格安定政策、これが最優先されるべきだというふうに思っております。
とにかく、今それがないと、TPPが大変だというけれども、まだTPPが実施されているわけじゃないですよね。だけれども、北海道の先生方は御存じだと思うんですが、去年、北海道で、酪農家だけで二百戸離農しております。これは高齢化とか借金じゃないんですよね。ばりばりの現役の優良経営の人がやめていく。その理由を聞くと、要するに将来不安なんです。
ですから、それを食いとめるための所得、価格安定政策、まずそれが必要だろうということでございます。
○村岡委員 大変ありがとうございます。それぞれに農業の一番解決しなきゃいけないことを聞かせていただきました。
私は、実は、戦後の農政で、減反があったりいろいろなことがあったわけですけれども、一つ大きく解決しなきゃいけない問題は米問題だと思っているんです。ここが、農業の予算をほとんどつぎ込みながら、なかなか解決してこなかった。そこで、先ほど言ったような、自給力にしても、六次産業化にしても、いろいろなものに投資ができなかった。
そこの問題をどう解決していくかという中で、今は転作の中に飼料米というのが入ってきたわけですけれども、この米問題というのが、例えば集積していくことを笠原先生はおっしゃっていましたけれども、集積していったときに、しかし、余っているものをどうするのか、こういうときに、飼料米という政策を掲げている。
先生のおっしゃった集積とともに、この米問題というのをどう考えているか、お聞かせ願えればと思います。
○笠原参考人 私は今度の飼料米の話を最もしたいと思っているんですが、今、日本の畜産業界が世界から、特にアメリカ中心に、穀物を千二百万トン買っています。その中で、今回、政府がこういうふうに飼料米ということをやっていただきました。
食料米として、多分、生産額は、私は正確には覚えていませんが、九百万トン前後だと思うんですが、その中の国民が使用している米の需要が約五百万トン弱。残りの約四百万トン前後、数字は正確ではありませんけれども、これが我々畜産業者に餌として入っているわけですね。
これは、我々にとっても、いわば国にとっても、先ほど言った安全保障問題においても、この二百万トン、三百万トンは黙って我々の畜産業者が吸収できるわけです。いわば、今まで、かつてないんですが、日本が穀物政策としてこれを取り上げた場合、お米政策はどう変わるのか、こういうものをやはり一度先生方で議論していただきたい。
今、お米の先物も出ていますけれども、供給過剰な食料米で、先物が値が上がるわけがありません。しかし、我々の畜産業界は千二百万トン買っていますから、国内の生産で千二百万トンあれば吸収できるわけです。それも、できませんけれども、その中で数百万トンできれば、我々は、為替に変動なく、シカゴ相場に変動なく、安定した穀物価格で入る。いわば国内自給率が相当上がるわけです。これには私は国民の方にも非常に評価をいただけると。
その一つは、食品の安全、安心です。もう一つは、将来どういう状況になるかわかりませんけれども、世界人口が七十二億以上になってきたときに、果たして食料として今までどおり金を出せば買えるのか、こういう不安もある。
そういう中で、やはり我々としては、国内の飼料米をいわば適正価格で我々に供給してもらえるような仕組みをつくっていただきたい。結果、耕畜連携として日本の大事な水田がフル活用できるんだろう、こういうふうに思っています。
以上です。
○村岡委員 大変参考になる御意見、ありがとうございました。
米政策の中で飼料米というのがどういうふうな形で継続できるかどうかというのもしっかりとやっていきたい、こういうふうに思っております。
そこで、川上参考人にお聞きしたいんですが、先ほど、推進委員だとかいろいろな委員があって、たくさんいる、その役割分担もしなきゃいけないと。
本当に思うんですけれども、私は秋田県なので、農業委員の方々もいろいろ知っております。三万円から五万円ぐらいの非常に報酬が少ない中で努力して、地域の土地を動かすということにはいろいろな感情が入りますし、地域の方たちは大変な努力をされていると思うんです。
そこで、先ほどもお話がありましたけれども、農地中間管理機構、そして農業委員、この中で、特に農業委員は、今回の改革で、選挙じゃなく市町村長が選ぶ。この部分の中で、選挙のとき、それから選挙じゃなくなったとき、このメリット、デメリットというのはどのように受けとめているか、お聞きしたいと思っております。
○川上参考人 選挙かどうかという点では、結果的に地域から選ばれるというプロセスが大事でありまして、選挙は手段になります。したがって、プロセスが大事にしてあれば大きな問題はないかと思っております。
現に、今現在、選挙はごく少ないわけでありまして、それはなぜかといえば、先ほどから申し上げておりますように、実質、地域の中で一番大事な人、お願いしたい人にお願いしておるわけです。なった人に聞きますと、とてもこんな大変な仕事は本当は受けたくない、特に忙しい認定農業者の方はそう言われます。でも、地域の方から頼まれれば何とかしてあげなきゃならぬ、そういうことで、報酬を抜きに頑張っていただいております。
そういう意味におきまして、地域から選ばれるというプロセスは非常に大事だと思いますし、最終的に、今掲げてありますように、性別だとか年齢だとかいろいろなバランスのことを考えたりするときには調整ということが必要になりますので、その意味では、もう少し上の段階で調整するような機能といいますか、それがあっていいかなと思いますので、それがメリットといえばメリットかな、このように考えております。
○村岡委員 制度を変えるわけですから、メリットを求めて変えていかなきゃいけない、こう思っております。
ただ、いろいろ現場に行って、心配されている農業委員会の方々は、首長によってどういう方を指名するのかというのを非常に心配されている。そういう意味では、この制度がスタートして、やはり様子を見なきゃいけない部分もあるのかな、こう思っております。
参考になりましたので、ありがとうございました。
そして、新福参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど、今の農協では使うことはない、そしてまた、なかなか農協のメリットを感じられない、こうおっしゃいました。御自分で法人経営してやられているわけですから、当然そういうお答えになると思いますが、私なんかも、現場でも、普通に農協に入っていながら農協に対してのいろいろな苦情もあるわけです。
しかし、私が思うには、やはり、今まで国の方針を、先ほど代行していたということもありますけれども、それを忠実にやったことがなかなか個々の農業の方々にメリットを与えられなかった、こういうふうに思っているんです。
そこで、先ほど、農協が変わるときに営農指導だとかそういうのを言っておりましたけれども、農協が根本的に行政の下請じゃなくなっていくということをやはり望んでいるのかどうか、ちょっとお聞かせ願えればと思います。
○新福参考人 私たち企業農業からすれば、開かれた農協、これからの農協経営の中で組合員にどういう利益を積み上げられるのか、もしくは足せるのか、そこが問題だと思うんですね。
とりあえず、そういう中で、私たちは二、三年前から東南アジアから肥料と資材は入れております。それは農協にも相談に行きました。しかし、今の系統ではその価格には対応できないと。しかし、そういうスケールメリットは相当なものを持っているはずなんだと、私はそういう疑問と矛盾を感じているんですね。そこを私は叱咤激励しているわけなんです。そういう中で、地域の農協というのを潰してはならないと先ほども述べました。
やはり、一つの意識改革、もしくはそういう是々非々というものをはっきりして、先ほど言いました農業版のPDCAは、すなわち農協のPDCAを実行する時期だと思うんです。そういうものをやっていただけたらなと思っております。
以上です。
○村岡委員 ありがとうございました。
私も、開かれた農協になっていかなきゃいけない、協同組合というのは、組合員だけというのじゃなくて地域を考える、やはり開かれていかなきゃいけないと思っています。
そして、我々の党は、企業とのコラボもしなきゃいけないということを言っています。
それは何かというと、やはり企業を排除して六次産業化というのはなかなか進まない、だから、ここはいつも言っているんですが、企業が農村社会、農業界に入ってきた場合には新入社員のつもりで入ってくれ、そして、農業者の方が経営のノウハウを学ぶということを考えなきゃいけない、ここで対立していては所得も上がってこない、こう思っているんです。
そこで、最後に太田原参考人にお聞きしたいんですが、私らは、コラボをしっかりできるようにしなきゃいけない、こう思っているんですけれども、どのようにお思いでしょうか。
○太田原参考人 六次産業と民間企業との関係ですが、おっしゃるとおりだと思っています。
それで、これはいろいろな問題があるんですけれども、北海道ではかなりその問題はクリアされてきていると思っておりまして、ホクレン自体がかなり大きな加工、販売の機能を果たしておりますし、それから、北海道の製造業の四十数%が農業、漁業を基盤とする食品加工業であります。おのずから、そういう関係は以前から強いつながりを持ってきておりまして、ですから、今言われている、民主党政権以来言われている六次産業というのは、私はちょっと、それは大事だと思っているんですが、これは農水省の政策ですよね。
本来の六次化というと、もっと、二次産業、三次産業を含めて社会的分業というのがあるわけですから、委員がおっしゃるようなコラボ関係で分厚い地域経済をつくっていくというものが本当だろうと思うんですよね。
それは、実際に地域で、農家がつくるのもやれ、加工もやれ、販売もやれというようなことを短絡的に言われて、もう大変困っている農家やJAの女性部をたくさん聞いております。やはり社会的分業というものはあるわけですから、そういう中で十分なコラボ関係をつくっていくことが地域全体にとっても大事だ、こういうふうに考えております。
○村岡委員 四人の参考人の先生方、どうもありがとうございました。
○江藤委員長 次に、斉藤和子君。
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
本日は本当にありがとうございます。参考人の先生方、本当に貴重な御意見をお聞かせいただきました。私が最後になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに、笠原参考人の方にお聞きしたいんですけれども、生産法人の要件緩和にかかわって、やはりあくまでも主体は農業者というふうに発言の中で強調されたんですけれども、逆に、この要件緩和によってどのような懸念があるというふうにお考えに、感じていらっしゃる件などありましたら、お答えいただければと思うのですが。
○笠原参考人 全く私の私見ですけれども、私、四十年の中で、大手商社ですとか大手企業と一緒にやってきました。しかし、そういう方は、損益分岐点が、だめだということになると引き揚げますよね。このことを私は危惧しているということなんですね。
農業人というのは、経営コストだけではなくて、情熱を持って国民の命を支えている、やはりこういう誇りとプライドを持っています。そういう意味では、大変利益が薄い事業かもわかりませんけれども、これを粘り強くやって、それで付加価値をつけていく、こういうことが我々の求められていることなので、緩和は、金融だとかそういう意味では非常に結構ですけれども、最終的にはそういう誇りを持った方に、農業人にやってもらいたい、そういう意味です。
以上です。
○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
続いて、新福参考人にも同じように、生産法人の緩和について、農業は他産業と同じく考えてはいけないんだというふうに発言されていたという資料がありまして、それに関してどのようにお考えか、お聞かせいただければと思います。
○新福参考人 経験から申し上げますと、やはり農業というのは、通常言われる企業は人なりでございます。農業人ほど、農家ほど、今、人材に投資をする時期でもあるわけなんですよね。
しかし、金融機関にしろ、そういう人材投資というのは、短期的には見られても、私たちは二十年かかりました、この二十六・五歳にするまで。そういう中長期的なものが、今後、農業生産法人の要件緩和にしろ、はっきり申しまして、今の現時点では、過半はその地域の農業人が守るべきだ。また、それが二十年後、三十年後、時代が来たときにまた考えればいいんじゃないかな、私はそういう考えでおります。
以上です。
○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
次に、川上参考人にお聞きしたいと思うんですが、先ほどもありましたけれども、農業委員会の公選制がなくなるということで、私は、地域の代表としてやはり選挙で選ばれている、選挙をしないとしても、代表として地域から推薦をされて出てきているというところに大きな責任と意味があったのではないかと思うんですが、その辺、いかがお感じになっていらっしゃるでしょうか。
○川上参考人 今までのお答えでちょっと誤解があったかもしれませんけれども、私は、公選制が第一義でありまして、それがあって初めて選ばれておるわけであります。ただ、その中身が、趣旨が、地域から選ばれる、そして、みんなから選ばれた、このプロセスを言っておるわけでありまして、それができるのは公選ということがあって初めて可能になります。
したがって、その趣旨を無視しては成り立たないと思っておりますので、そのことだけはつけ加えさせていただきます。
○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
私も、やはり公選制であってこそ地域の代表だというふうに思うんです。
私は、その地域の代表という点でもう一つ川上参考人にお聞きしたいのが、意見の公表、建議の規定の削除で、これは年間でいうと千六百件ぐらい各地方から上がっているというふうに聞いているんですけれども、やはり地域の代表であるがゆえに意見を言える。
逆に言えば、公選制もなくし、この意見の規定も、限定的なものは残りましたけれども、大枠は削除するということは、農業者の皆さんの声が逆に届かなくなるのではないかという非常に私は懸念を持っているんですが、いかがでしょうか。
○川上参考人 御質問のとおりでございまして、この意見の公表、建議というのはきちんとしたものの中で行うことが必要だと思っております。ただ、その中身の問題と、それから、出された意見や建議がきちんと反映できる、そういう流れになっていく必要があると思っております。
そういう意味で、私どもは、中身の充実ということで、農地白書あたりも工夫して、鳥取県は十九市町村ございますけれども、どの市町村も全部そろって、同じような視点から項目を検討しながら、それを図表化し、数値化して、さらにそれにつけ加えて意見を述べてということにいたしました。そこまで持っていきますと、各首長さん方は、ああ、これが欲しかったと、ほとんどの市町村長さんがおっしゃっておられました。
したがって、もっともっと我々も工夫しなきゃならぬと思いますけれども、より掘り下げた意見を出す必要がある、これは私どもの方の責務になります。
ただ、その流れの中で、先ほども申し上げましたように、聞きおく程度のことにとどめられてしまうと困りますので、ぜひとも、どういう形であろうと、きちんと重く受けとめてもらえるような、そういう体制整備をしていただきたいということをお願いしておるわけであります。
○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
最後に、太田原参考人にお聞きしたいんですけれども、この農協法が改定をされる、その大もとの根本的な認識なんですけれども、農協法ができたときは食料が不足基調だった、しかし、今は食料が過剰基調にあるんだということが根底に置かれて、さまざま改革が必要だということが言われているんですけれども、食料が過剰基調にあるというこの認識、私は、ちょっと、こういう認識でいいのかなという、非常に疑問を持っているんですが、太田原先生はどのようにお感じになっているのかということと、あわせて、日本の農業が小農、零細農家で担われている、この食料の過剰基調という認識とあわせて、日本の農業の担い手としての小農の役割というのをお聞かせいただければと思います。
○太田原参考人 ありがとうございます。
かつては不足していて、今は過剰だから農協を改革しなければならないという問題設定が私にはよくわからないんですが、恐らく、そういうことを言う人は、食管制度のことが背景にあると思うんですね。
戦前から、食料が足りないとき、まさに食糧管理制度で乗り切ってきたわけですね、いろいろな犠牲を出しながら。そういう中で、農協というのは、まさに供出と配給のための機関として、きれいに言えば、農政とタイアップしながら、事実上は農政の下請をしながらそれを支えてきた。だから、過剰になって食管制度もなくなった、したがって農協も要らない、多分、こういう図式が頭の中にあるんだろうと思うんですね。
ですから、それはやはり大間違いですよ。食管制度のときに大いに役に立ったというのは大変重要な公共的役割だったと思うんですが、食管制度がなくなっても減反がなくなっても、つまり、行政の下請の必要がなくなっても、これは先ほど言いましたが、農協には協同組合としてやらなければならない重要な役割があるわけですね。それは、こういう情勢の中ではますます必要になってくるわけで、先ほどの御質問とも関係いたしますけれども、それも組合員のためというだけではなくて、今まさに農協が地域のインフラになっておりますから、地方消滅と言われるような厳しい状況の中で、ますます農協は総合農協としてその役割を発揮していかなければならない、こういうふうに考えております。
○斉藤(和)委員 ありがとうございます。
引き続き、太田原先生に質問したいんですけれども、今、総合農協だからというお話があったんですが、私も農協の方とお話をして、やはり、今、農家の方が一番求めている営農指導、これは総合農協だったからこそできたんだという趣旨のことを発言されていたんです。営農指導だけではもうとても、赤字になるのは目に見えていると。
そうした点で、営農指導だとか、総合農協だからできた農家の皆さんへの利益の供与というところと、今回の改定によって株式会社を、選択制ですが、選べる、そうなったときに、独占禁止法の適用外だった協同組合から、要は適用されることになる、それによって農業者の皆さんの期待に本当に応えられるのかどうかというところをお答えいただければ。
○太田原参考人 営農指導そのものはなかなか事業として付加価値を生まないので、ほかの事業からの繰り合わせでもっている。本来はきちんと賦課金を取るべきだという議論もあるんですが、なかなかそうはいかなくて、ほかの事業の収益で賄っているというのが実情でありまして、そういう点でも、総合農協でなければならないというのはおっしゃるとおりであります。
ちなみに、台湾の農協法、あそこでは農会と言うんですが、農会法では、金融事業の収益の何%を営農指導に使わなければならない、そういう法律がありまして、こういうこともちょっと調べて参考にしていただければと思っております。
それと、おっしゃるように、私も字面しか読んでおりませんが、今回の農協法改正で、営利を目的としないという協同組合の一番の肝のところが削られて、大いにもうけなければならないみたいなものになっていくと、たしかこれは独占禁止法の対象になるのではないか。小さい農協なら別ですけれども、全農くらいのことになるとそういう心配が現に出てまいります。
ですから、その点は、やはり協同組合というのは何ぞやと。協同組合に対する独占禁止法の適用除外というのは、これは経済民主主義の大原則でありますから、そのことについてはきちっと守っていただけるようにお願いしたいと思います。
○斉藤(和)委員 最後に、また太田原先生にお聞きしたいんですけれども、今の総合農協とのかかわりや独占禁止法とのかかわりにもなるんですけれども、やはり監査のあり方が大もとから根本的に変わる。
これは、先ほど来、参考人質疑の中でも出ていたんですけれども、農協が農協として、農家の皆さんのための農協というのではなくなり、今のお話と重なるんですが、やはり利益を求めていく、要は、そうでなければ会計監査に耐えられないというふうになった場合、中山間地なんかは特に、経営が成り立たなくなってやめざるを得ないというような、地域崩壊につながるのではないかというふうに私はちょっと感じるんです。
やはり、農協がなぜ監査をきちんと自分たちでやってきたのかというところの、その意味の大きさというんでしょうか、その辺をぜひお聞かせいただければと思います。
○太田原参考人 今回の農協法改正の最大の論点ですね。
今まで全中がやっていた監査を外出しして、しかも、それと一般の公認会計士とを選べる、そういうふうに変えるようでありますが、私は、おっしゃるような心配の前に、一般の公認会計士の方が総合農協の監査というのは果たしてできるんだろうかと非常に危惧しております。
これは大変ですよ。私も生協の監事を何年かやったことがあるんですが、そこで公認会計士の方たちが大変だとおっしゃっていて、総合農協となるとさらに大変だろうと思うんですね。そこで果たして正確な監査ができるのか。もしそういう法律が成立したとしても、私は、各単協は従来どおりの外出しした監査法人の監査を選択すべきだというふうに考えております。
それで、これまでの全中の監査というのは、何か仲間内の監査だとかいろいろな言い方がありますけれども、私は決定的に重要だと思っているのは、農協というのは金融機関ですから、これがほかの企業と違うところですね。金融機関というのは絶対に潰せないわけです。そのために、農協の監査は、単なる会計監査だけじゃなくて、業務監査、それから経営指導と結びついて、危ない農協は事前に察知して、合併させて、とにかくパニックを起こさないようにしてきた、この実績は非常に大きい。
当たり前じゃないかと言われるかもしれませんが、他方、銀行も合併に合併を重ねてきたんですけれども、これは膨大な公的資金を投入せざるを得なかったわけですね。ただ、これだって監査法人のあれを通っているわけだから、何をやっていたんだろうと思うんですけれども、そういうことを、膨大な公的資金を投入せざるを得なかった銀行の合併、一切そういうものは使わずに自力更生した農協の合併、これを比較すれば、従来の全中による監査の役割というのは非常に明快なんじゃないでしょうか。それを外す必要は全くないというふうに私は考えております。
○斉藤(和)委員 参考人の皆さん、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。
以上で質問を終わります。
○江藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
次回は、来る六月二日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十八分散会