第19号 平成27年6月25日(木曜日)
平成二十七年六月二十五日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 江藤 拓君
理事 加藤 寛治君 理事 齋藤 健君
理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君
理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君
理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君
青山 周平君 井野 俊郎君
伊藤信太郎君 池田 道孝君
今枝宗一郎君 勝沼 栄明君
木内 均君 瀬戸 隆一君
武井 俊輔君 武部 新君
中川 俊直君 中川 郁子君
中谷 真一君 西川 公也君
橋本 英教君 古川 康君
前川 恵君 前田 一男君
宮路 拓馬君 森山 裕君
簗 和生君 山本 拓君
金子 恵美君 岸本 周平君
小山 展弘君 佐々木隆博君
篠原 孝君 福島 伸享君
井出 庸生君 松木けんこう君
稲津 久君 佐藤 英道君
斉藤 和子君 畠山 和也君
仲里 利信君
…………………………………
内閣総理大臣 安倍 晋三君
農林水産大臣 林 芳正君
内閣府副大臣 西村 康稔君
農林水産副大臣 あべ 俊子君
農林水産副大臣 小泉 昭男君
内閣府大臣政務官 小泉進次郎君
農林水産大臣政務官 佐藤 英道君
農林水産大臣政務官 中川 郁子君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 澁谷 和久君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 佐藤 達夫君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 奥原 正明君
政府参考人
(水産庁長官) 本川 一善君
農林水産委員会専門員 奥井 啓史君
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委員の異動
六月二十五日
辞任 補欠選任
伊東 良孝君 前田 一男君
勝沼 栄明君 青山 周平君
武部 新君 木内 均君
金子 恵美君 篠原 孝君
同日
辞任 補欠選任
青山 周平君 勝沼 栄明君
木内 均君 中川 俊直君
前田 一男君 伊東 良孝君
篠原 孝君 金子 恵美君
同日
辞任 補欠選任
中川 俊直君 武部 新君
―――――――――――――
六月十八日
農業改革の名による農業・農協潰しをやめ、地域を守ることに関する請願(畠山和也君紹介)(第二九九九号)
同(本村伸子君紹介)(第三〇〇〇号)
同(畠山和也君紹介)(第三二〇三号)
TPP参加反対、日本農業の再生に関する請願(藤野保史君紹介)(第三一一一号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七一号)
農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出、衆法第二一号)
農林水産関係の基本施策に関する件
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○江藤委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省経営局長奥原正明君、水産庁長官本川一善君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、外務省大臣官房審議官山上信吾君及び大臣官房審議官佐藤達夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○江藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺孝一君。
○渡辺(孝)委員 おはようございます。自由民主党の渡辺孝一と申します。
きょうは、十五分という大変貴重な時間をいただいたものですから、早速質問に入らないと消化不良に終わるんじゃないかと思いますので、質問をさせていただきたいと思います。
きょうは一般質疑でございます。今マスコミ等々で報道されているように、TPPの状況が非常に急展開しているような報道がされておりますが、TPPにつきましては、私、二回生の多くがこの二年半の経験の中で、当時は毎日のように議論をされていた、そんな記憶がございます。もちろん、保秘義務、守秘義務ですか、そんな約束の中で非常に情報不足が生じており、国民の皆さんはもちろんのこと、我々国会議員も非常に、報道の情報等々で振り回される日々を皆さん送っていたのではないかというふうに思います。
今回の米国議会におけるTPA法案をめぐる現在の状況は、恐らくTPPにおきましても大変大きな状況であり、私はまさしくピークの状況ではないかというふうに思います。しかしながら、マスコミ報道に右往左往する、そんな状況はいかがなものかというのがこの二年半の経験でございます。
一度、現段階で、制約はあろうかと思いますけれども、政府としての今までのTPPの法案に関連しての正式な見解を、現時点の状況でいいですから、御説明をお願いしたいと思います。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
アメリカ議会におきまして、貿易促進権限法と言っておりますが、TPA法案についての審議が今なされているところでございまして、TPPの参加各国は、交渉の進展、特に閣僚会議を開催して詰めの議論を行うにはこのTPA法案の成立が不可欠であるという認識のもと、各国ともアメリカ議会の状況を注視してきたところでございます。
ただ、御承知のように、アメリカの議会はこの法案の審議をめぐってはかなり二転三転をしておりまして、アメリカの新聞でも、ローラーコースター、ジェットコースターのような感じだという報道がされております。
まず上院で、TPAの法案と、それから民主党の強い主張で入れられたTAA法案、これは貿易調整支援法といいまして、自由貿易で職を失った労働者などに給付金を支給する、そういう法案でございます、これについて、これを一体化して、先月、五月に上院本会議で可決したわけでございますが、下院に送られてこれを分離採決したところ、TPAは通ったけれどもTAAは否決、そういう状況になったわけでございます。
それで、その後、TPAの部分だけを切り離しまして、全く別な法案、消防士が年金を五十歳から引き出せるようにするという全く関係ない法案があるんですけれども、これにTPAの部分をくっつけて、この法案について下院で審議をいたしまして、六月の十八日にこの法案が下院で可決、上院に送られまして、アメリカ時間の二十三日、上院の場合は、まず、クローチャーといいまして、長時間の討論を終結させるという動議を先に可決しないといけないんですけれども、これが六十票ぎりぎりで可決をいたしました。
つい先ほどですが、日本時間の朝の五時半ぐらいですけれども、上院の本会議でこのTPA法案自体が可決をされたところでございます。
TPA法案そのものは、アメリカの法案は、議会で可決されても、大統領が署名をして成立ということでございますので、大統領の署名を待って成立ということになっているわけでございます。
あわせて、TAAの部分、貿易調整支援法についても、つい先ほど上院の本会議で、これも余り関係のないアフリカ諸国に対する特恵関税の法案とTAAをくっつけたものを上院でつくりまして、これが先ほど上院で可決をされました。これは下院に送られまして、あす採決がなされると承知しているところでございます。
いずれにいたしましても、こうした状況を各国が注視しているところでございまして、TPA法案、大統領の署名で成立でございますけれども、我が国としては、動きがあった、前進があったということを歓迎した上で、引き続きTPPの早期妥結に向けて交渉に全力を尽くすということでございます。
○渡辺(孝)委員 現段階のことでは、今の御説明で米国議会の様子が少しうかがえたかと思います。
しかし、それであるならば、いわゆるアメリカの議会の状況だけではなく、いわゆるTPP全体の会議につきましても進展するであろうというのは我々でも察しがつくわけでございまして、一部報道では甘利大臣のお言葉も記事になっているようではございますけれども、今後のスケジュールというんでしょうか、方向性等々、今の段階で澁谷さんから、担当官からお話しできることについて御説明いただければと思います。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
先月、グアムで、首席交渉官会合が十日以上、かなり長い期間行われたわけでございますが、TPA法案がアメリカで成立をしていない状況で、各国ぎりぎりどこまで事務的に詰められるかということをグアムの首席交渉官会合でやったところでございます。
各国の共通認識は、今残っている課題、非常に重たい課題が多いわけでございますが、これを解決に向けて努力するには、TPA法案が成立をして、政治レベルの決着が必要だというのが共通認識でございます。
今回、TPA法案が、大統領の署名があれば成立するという状況になっているわけでございます。その後、恐らくどこかのタイミングで首席交渉官会合がセットされて、その後、閣僚会議が開催されるという運びになると思いますが、恐らくまだ大統領が署名をしていない状況の中で、こうした日程について調整できる状況ではないと思いますので、正式に法案が成立した後、日程についてのさまざまな調整がなされるというふうに承知しております。
現時点ではスケジュールは決まっておりませんが、いずれにしても、甘利大臣が昨日の会見でお話をされましたが、七月中に開催をして早期に決着を図るということを期待しているというのが、甘利大臣がきのうお話をされたところでございます。
○渡辺(孝)委員 そういうことであるのでしたら、恐らく大きな動きが今の段階でも推測される中、やはり昨年十二月のいわゆる解散・総選挙、また本年の統一地方選挙、恐らくきょうここにいらっしゃる議員を初め、特に農村を抱えている議員の皆さんは、いわゆるTPPについても何らかの形で、有権者の方々からいろいろな質問や、あるいは御意見等々を拝聴してきたのではないかというふうに思います。
もちろん、衆参両院の農林水産委員会の決議もありますし、私たち個々人が政治家として、ある意味公約としてしっかりと訴えてきたこともございます。私は、今の段階で、そのことについては二年半前と気持ちも変わっておりませんし、一貫性を持って有権者の方々に接してきたわけでございますけれども、改めて、この正式な場におきまして、今後交渉がいろいろと急展開する中で、大臣、ぜひ、今現在での決意をお聞かせいただければと思います。
○林国務大臣 TPP交渉におきましては、一昨年二月の日米共同声明で、全ての物品が交渉の対象とされること、それから、我が国の農産品にはセンシティビティーがあり、最終的な結果は交渉の中で決まっていくこと、これが確認をされております。
こういう経緯も踏まえて、衆参両院の農林水産委員会で、重要五品目などの再生産が可能となるよう、それらの品目の確保を最優先とすることなどが決議をされております。
今御説明があったTPPもしくはTPA法案の動向についていろいろ報道もございまして、先生のお地元の北海道、これは食料供給基地であるわけですが、北海道を初め全国の生産者の方々にいろいろな声があるということは、私も直接間接に聞いて十分承知をしておるつもりでございます。
交渉に当たっては、こういう方々の声に十分耳を傾けて、引き続き、衆参両院の農林水産委員会決議が守られたと評価をいただけるように、政府一体となって最後まで全力を尽くしてまいりたいと思っております。
○渡辺(孝)委員 ありがとうございます。
私は、この立場になる前、十年間、地方の九万人程度の市長をやっておりました。その際、首長というのは最終的には決断と責任をとることを教訓として市長を務めておりましたけれども、この二年半の国会議員の中で思うところは、やはり国会議員は、最終的には国益、さらには国民の生活のためにどういう決意と覚悟を持って議員として活動していくかということを、二年半で先輩たちからも教えていただきました。
今回のこのTPPにつきましては、いろいろな意見があるでしょうし、さらには相手国があることでもございます。決して、日本の言い分全てが通るなどということは、私のみならず、地元の農家の方々も、その辺のところの覚悟はある程度している方もいらっしゃいます。
ですが、私たちは、国民の皆さんにその決意をしっかりと示したわけでございますので、ぜひ、今後の交渉に当たっても、この決意を持ってしっかりと交渉に当たっていただき、最終ゴールを迎えていただくことを心からお願い申し上げたいというふうに思います。
これから、大変タイトなスケジュールの中、また重い課題の中で、非常に厳しいかと思われますけれども、日本の国益のため、国民のため、さらには日本の農業を守るために、ぜひ頑張っていただくことを心からお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。
けさの一般紙、それから朝のテレビ報道等で大きなニュースが二つ入ってまいりました。ただいま議論となりましたアメリカのTPA法案の可決のこと、それから、ロシアの二百海里のサケ・マスの流し網漁の禁止がロシアの上院で可決されたという、各地域や我が国全体の中でも大変注目すべきニュースでございましたけれども、きょうはこの二つについて、十五分間の時間ですから詳細については全て質問できませんけれども、今一番質問すべき要点に絞って伺っていきたいと思っています。
まず、アメリカのTPAの法案についてです。
きょうは外務省にも来ていただいておりますので、まず外務省に伺っておきたいと思うんですが、上院でTPA法案が可決されて、下院は十八日に既に可決ですから、あとはオバマ大統領の署名をもって成立する、このように認識していますが、ただ、オバマ大統領はこれまでも、このTPAの取得について、いわゆる貿易調整支援制度、TAAですか、この拡充法案の成立が欠かせないんだ、こういうことを繰り返し言っています。
これまでもアメリカ議会の中で、このTPAとTAAを、最初セットだったのを分けたりとかいろいろしていますけれども、大統領のこの部分の発言だけ捉えてみますと、やはりTAAが可決されないと最終的に大統領の署名まで行かないのではないか、そういう見方もできるわけなんです。このことについて、まず見解を伺いたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答えいたします。
現在、TPA法案とTAA法案、貿易調整支援の法案でございますが、これは切り離されて別個の法案となっておって、TPA法案につきましては、米国十八日の下院本会議での可決に続き、米国では二十四日、日本時間で本日、上院本会議において可決されたと承知しております。また、TAA法案につきましては同様に、米国の二十四日、日本時間本日、上院で可決されたところでございまして、これについては、今後下院でも可決される必要があると承知しております。
両法案の成立のためには、今後それぞれ大統領の署名を経る必要があるのでございますが、政府として、大統領による署名のタイミングを含めまして、他国の法案成立の見通しを予断する立場にはないわけでございます。
ただ、その上で申し上げれば、オバマ大統領は、六月十二日に発表したステートメントで、私は、下院に対し、可及的速やかにTAAを可決するよう求める、これにより、私が双方に署名し、米国の労働者及びビジネスがみずからの強みを生かせるよう、これまで以上に後押しできるようになるというふうに表明したと承知してございます。
○稲津委員 これまでのことを、報道ベースも含めてそのとおり説明されたというふうに思います。
ここで大事なことは、確認しておきたいと思うんですけれども、アメリカの議会というのは、今回私も驚いていますけれども、日本の国会と非常に違っていて、一旦出して、法律を途中で分けてみたり、あるいは一つにしてみたり、場合によってはまたもう一度、例えばTPAの法案の中身をさらに詰めたもので出してみたりとか、いわゆる議会の権限というのが非常に強いということが今回よくわかりました。
その意味では、当然、オバマ大統領もアメリカの議会のことを非常に注視しながら今回まで来たがゆえに、これだけの時間がかかっているということもありますので、私は、引き続きこのアメリカの議会の状況というのは注視していくべきだ、そうでなければ、いとも簡単に、署名、そしてTPPの交渉に行くというのはちょっとまだどうなのかな、そういう認識を持っております。
その上で、これは大臣に御決意をお伺いしたいと思うんですけれども、大臣も、これまでもTPPについて、衆参の国会での決議をしっかり守っていく趣旨の御答弁をされておられます。
けさの報道等を見ていますと、甘利大臣が、もう七月に一気に進むみたいな、そういう記者発表もされているんですけれども、大事なことは、日米の二国間交渉はお互いにセンシティブなものがしっかりあって、そこをどうするかということが飛んでしまえば、これは非常に大きな問題である。それから、全体交渉の中で、十二カ国、特に医薬品等については、日米以外の国々はここもまた相当センシティブであろうと思っています。
そういう意味で、この時点で七月に一気というのはどうなのかなというふうに思っておりますが、いずれにしても、やはりこの衆参の国会での決議をしっかり守っていくことが最も重要である、そのように私は思っていますし、大臣もこれまで答弁されていますので、もう一度そこのところの決意も含めて確認させてください。
○林国務大臣 まさに今、委員がお触れになっていただきましたけれども、先ほど渡辺先生にもお答えしたように、共同声明というのがやはりスタートでございまして、全ての物品が交渉の対象とされる、それから我が国の農産品にはセンシティビティーがある、これははっきりとこの共同声明にうたわれておりまして、ここがスタートであったということを再三私が申し上げているのもそういう意味でございます。その経緯を踏まえて農林水産委員会の決議がある、こういう基本的な認識を常に持っておらなければならない、こういうふうに思っております。
したがって、あらゆる外交交渉はそうだと思いますが、我が国の国益を最大限確保する、これがまさに我が国政府の基本方針でなければならない、こういうふうに思っておるわけでございまして、この決議が守られたという評価をいただけるように、最後まで全力を政府一体として尽くしていきたい、こういうふうに思っております。
○稲津委員 大臣からも、国益の話と、それから、しっかり守ったと評価をされるように最善の努力をしていきたいとお話がありましたので、また大臣としても、このTPPに関して、今お話しされたことをしっかり対応していただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。
次に移ります。
次は、ロシアの二百海里の水域の流し網漁の禁止法についてですけれども、これは、これまでも私も委員会で質問してまいりましたが、非常に残念なことに、ロシア上院で、このEEZ、排他的経済水域におけるサケ・マスの流し網漁、これを来年の一月から禁止するという法律が可決をされました。非常に残念であると同時に、北海道の根室を初めとした関係自治体や、あるいは漁業者、水産加工業者の方々のはかり知れない落胆の様子がうかがえる。そういう状況の中で、今後このことについてどうしていくのかという最大のテーマがあるわけなんです。
初めに、上院を通過したわけですから、今後はプーチン大統領の署名というところが最大のキーポイントになりますけれども、そこに行くまでの基本的な日程感というか、それが一つ。それからもう一つは、では、それに向かって、日本側としてどのような働きかけをこれから行っていくのか。これまでも大変粘り強いロシアとの交渉をしていただいたのはよく承知していますけれども、この点についてお伺いしておきたいと思います。
○本川政府参考人 御指摘のとおり、残念ながら、流し網を禁止する法案がロシア連邦議会を通過したわけでございます。
今後の手続でございますが、五日以内に大統領府に送付され、送付後十四日以内に大統領の署名に付されるという手続になると承知をしております。仮に、大統領が署名を拒否する場合には、下院及び上院、国家院、連邦院で再審議をされるということになっております。
これまでも非常に粘り強い働きかけを行ってまいったわけでございます。法案をめぐる状況は非常に厳しいものの、政府としては、引き続きロシア側に対して粘り強く働きかけを行っていくこととしておりまして、昨日も安倍総理から、再度プーチン大統領に対して働きかけを行っていただいたということになっております。
総理からは、昨年十一月九日の首脳会談において、それからことしの四月二十七日、プーチン大統領宛ての親書において、それから昨日の電話会談において、三度の働きかけを行っていただいておりまして、昨日も、日本の漁業関係者の懸念を伝えて、日ロの伝統的な協力を継続できるように働きかけを行っていただいたというところでございます。
今後とも、可能な限り対応してまいりたいと考えております。
○稲津委員 総理がプーチン大統領と電話会談をされて、その中でこのことについて触れていただいたというのは、私は非常に大事な点だと思っております。もちろん、どういうようなお答えがあったのか、その辺は不明ですけれども、しかしながら、このことについても、あとはもうプーチン大統領の署名しかないわけですから、その間の働きかけというのをさらに一層強めていただきたい、このことは強く申し上げておきたいと思います。
それで、先ほど私も、はかり知れない大きな打撃があるという話をさせていただいたんですけれども、報道では、漁業者あるいは水産加工業者等々含めて大体二百五十億ぐらいの影響が実はある、こう言われております。
特に、漁業者の方については、これはサンマ漁とリンクしているということが一つある。それから、水産加工業者の方は、私が聞いている範囲では、やはりベニザケが中心になっているので、それではどこからどうするか、そういうテーマがあるわけでございまして、こうした漁業者や水産加工業者に対してどのように今後対応していくのか。いろいろな懸念を持っていらっしゃいますので、ぜひそこを対応していただかなければいけないと思っています。
これは、これまでも漁業交渉の中で、毎年、どんどんこの交渉がおくれていく、漁獲の割り当て量も落ちていく、それから入漁の期間も短くなっていく、これまでも本当に関係者は胸を痛めてまいりました。そして、ここに来て、ついにこうなったのかということで、ぜひそういったことも酌み取っていただいた上で、大臣にこれらの対応についてお話しいただければと思います。
○林国務大臣 本件への対応につきましては、兼業されておられる秋のサンマの操業など現地の操業状況、それから何よりも現場の皆さんの要望を確認しながら検討していく必要があると思っております。
先週か先々週だったと思いますが、根室の皆さんがいらっしゃって、私も直接お話を聞く機会がございました。その後、今週の二十二日月曜日に担当官が現地に赴きまして、今回のサケ・マス交渉の経緯の説明や今後の対応につきまして意見交換を行ったところでございます。
その中で、サケ・マス流し網漁業にかわる漁法、流し網が禁止ということであれば、ほかの漁法がどういう可能性があるのか、また、最近の漁況を踏まえた将来の地域漁業の考え方、こういうことについて御意見をお聞きすることができたわけでございますが、関係者から具体的な御意見をさらにお伺いする必要がある、こういうふうに思っております。
こういう現場の皆様の御意見をよく聞きながら、必要な対応をしっかりと検討していきたいと思っております。
○稲津委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。
それで、このことに関連して、最後に一言触れて終わりたいと思うんです。
どういう漁の方法があるかということも今大臣からお話がありましたが、あわせて、これは直接ベニザケとは関連しませんけれども、サケ・マスの増殖事業、ここも、非常に予算が落ちてきているとか、施設関係も非常に老朽化している、漁獲量も落ちてきていますので、ぜひそれらに対する政策的な支援も必要か、このように思っておりますので、そのことを最後にお話しさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、村岡敏英君。
○村岡委員 おはようございます。維新の党、村岡敏英でございます。
きょうは、戦後最大の改革と言われる農協法の採決の日であり、しかしながら、アメリカでは上院でTPAが可決して、TPPが加速する日でもあります。そしてさらには、ロシアでは上院でサケ・マスの流し網が禁止というものが可決されました。
大変厳しい状況の中で、きょうは審議を進めるわけですけれども、まず最初に、TPAが可決し、そして甘利大臣は、七月に閣僚会合も開催されるだろうと。八月にずれ込むことはないということになれば、一挙にTPPが進むというスケジュールだと思いますが、先ほど澁谷審議官が、スケジュール感の中でまだ答えられない部分がある、こう申しておりました。
小泉政務官が来ていますので、スケジュール感として、七月に閣僚会議が行われ、そしてTPPは妥結に向けた交渉が一挙に加速するというスケジュール感でいいのかどうか、政務官にお伺いします。
○小泉大臣政務官 閣僚会合の日程は、具体的にはまだ決まっておりません。
ただ、最近の状況を見たとおり、あとは、大統領の署名を経てまずはTPA法案が成立をした後に、二国間で残された課題を処理して、そしてその後に、CN会合と言われる首席交渉官会合を開催して、それが終わり次第、閣僚会合を開催する、そういった流れで進むと思われますが、残された課題について各国がどこまでギャップを埋めることができるか、それにかかっていると思います。
七月中に閣僚会合が開催されることを期待しているというのは、大臣の御発言のとおりであります。
○村岡委員 そういうスケジュール感で進むと。
我々維新の党は、民主党と一緒に、情報開示というようなことをずっと申し入れてきました。しかしながら、情報開示は結局ないまま、もう可決して一挙に進むと。まあ、理事会での情報開示みたいな形はありますけれども、ただ、国民に広く知らしめるというのが決議の中にも入っています。
そういう意味では、期待をして一挙に進むという形ですけれども、結果、国民に対して、そして国会に対して、もう妥結しか開示することはないということでよろしいですか。
○小泉大臣政務官 最近の状況を言いますと、まだ大統領が署名をしておりませんので、署名をしないと成立はしないわけで、そこまで予断を持たずに注視をしていきたいと思っております。
情報開示につきましては、たびたび農水委員会の方で御審議をされて、また質問をいただいているとおり、決議に基づきまして、できる限りの情報提供、国民に対する説明責任を果たしてまいりたい、このあり方については継続的に努力を続けていきたい、そう考えております。
○村岡委員 やはり情報開示はないままに妥結して、あと国会に承認を求める形しかないのかな、そこは残念だと思っております。
林大臣、この情報開示に関して、農林大臣としてしっかりと国民に説明しながら情報開示をする、また、できないところの部分は別にしても、国会では説明をするということの部分を申し入れてきましたけれども、ここに来て、もう一カ月以内に交渉が妥結のような雰囲気になってきて、情報開示に関してはどう思っておられますか。
○林国務大臣 ただいま小泉政務官から答弁があったとおりだと思っておりますが、これまでもいろいろな説明会等々を開いて情報提供をしてきておりまして、これは、政府対策本部のもとで統一的に対応をしているということでございます。
内閣官房中心で引き続き、今御答弁があったように、最後まで努力をしていく、こういうことであろうかというふうに思っていますので、我々はそのもとでしっかりと協力をしていきたいと思っております。
○村岡委員 同じ答弁の繰り返しになってしまうわけですけれども、先ほど、一番で自民党の委員が質問をされていました。これは交渉事だから、与党の中でも説明はできないと思うんです。
振り返ると、やはり政治家というのは、衆議院選挙、それぞれの選挙でちゃんと公約したことが大切だと思うんですけれども、第四十六回、全中から推薦を受けるときに、TPP交渉への参加は、我が国の農業、農村の将来に壊滅的な打撃を与え、長い歴史と文化の上に培われた日本社会そのものを崩壊させかねない極めて重要な課題であり、TPP交渉には絶対に参加しないとの姿勢を貫いていただきたいと存じますと。これは絶対参加しないということではないですけれども、それに関して署名したり、また決意を表明した方々が、四十六回では、自民党、公明党を含めて当選しています。
そしてさらには、四十七回は、少しこれは弱まっているんですね。いろいろな、TPPに関していけば、最終局面を迎えつつ、TPP交渉及び日米二国間協議については、交渉期間を設けず、粘り強く交渉を続け、農林水産委員会のTPP交渉参加に関する決議の実現に最大限取り組むと、少し表現が弱くなった。しかしながら、相当な選挙での公約を言っているわけです。
その中で、情報開示もなく中身がわかりませんが、与党にも説明する責任があると思うんですけれども、そういうところに対しては、小泉政務官は、この妥結の前に与党に関しては説明をするおつもりですか。
○小泉大臣政務官 きょうは澁谷審議官も同席をさせていただいておりますが、今まで、交渉会合の後にも、ステークホルダー、また与野党双方の関係者の皆さんに対しても鋭意、説明会を設けるや、また個別にも御説明をさせていただいております。ですので、これからもそういった対応は変わらず続けさせていただきますし、できる限りの情報提供に努めてまいりたい。
ただ、やはり交渉事ですので、それぞれの交渉参加国の中で、秘密保持の契約、これをたがわずにしっかりと守っていく中での可能な限りの範囲を追求してまいりたい、そういうふうに考えております。
○村岡委員 なかなか開示はしていただけないということが改めてわかったという感じなんです。
これは林大臣に聞きます。
小泉政務官は全中から推薦を受けていないようなので、林大臣は参議院なので受けていないんですけれども、同僚の衆議院議員の人たちは全中からほとんどの人が、自民党の議員は受けているわけです、公明党の人たちも。
そのときに、このTPPの結果はわかりませんが、新聞報道のとおりになると、農林水産委員会で決議したことが守られたというようなことは、守ったと自分たちで言うのは幾らでもできますけれども、その交渉の妥結の間際になって、守ったと言える形になる自信はありますか。
○林国務大臣 TPP交渉は、先ほどTPA法案の動向等について説明があったとおりで、まだ妥結をしたわけではございません。まさに、これから最後の妥結に向けてやっていこう、こういう状況ではないかと思っておりますので、まさに、先ほど来私が申し上げておりますように、日米の首脳会談で共同声明を出されて、そこに明記をされておること、そして、そういう経緯を踏まえて衆参両院の決議がなされておりますので、その決議が守られたという評価をいただけるようにやっていく。
最後までというのは、スケジュールが決まって、もうこれで終わりということは決まっているわけではなくて、今から交渉していくということで、その結果として妥結を目指すということでありまして、その根底には、先ほど申し上げましたように、我々の国益を最大限実現する、これがなくてはならない、こういうふうに思っておるところでございますので、最後まで政府一体となって全力を尽くしていきたい、こういうふうに思っております。
○村岡委員 小泉政務官にお聞きしますけれども、TPAが可決され、TAAはまた後ででも、可決になるのかどうかわかりませんが、やるということですが、この今のアメリカの進みぐあいの状況からして、交渉事、日本の国益は守れるという自信がありますか。
○小泉大臣政務官 まず、最新の状況からお伝えしますと、今先生から御指摘のあったTAAの方ですけれども、けさの日本時間の未明ですか、上院での審議を打ち切る動議が採決に付されまして、賛成七十七、反対二十二で可決をされました。この後、下院の方にもう一回行くことになりますが、そういったアメリカでの議会手続の進捗の状況を見れば、その後の加速というのは高まっているというのは事実だと思います。
ただし、先ほど大臣もおっしゃったとおり、まだ大統領の署名を見ていない中でありますので、妥結ということになっていません。その後の状況は、その後に署名があって、そしてその後、それぞれの二国間でまた埋めるべきことを埋めなきゃいけないですし、その後のCN会合、そして閣僚会合となりますが、こういった中で進めていきまして、決議にもあるとおり、日本が守るべきものを守った、そういうふうに思っていただけなければ、その後各国で承認されることもないわけですから、いずれにしても、最後、国会で皆さんに承認いただけるような、そんな形に最後まで全力を尽くしていきたい、そういうふうに思っているところです。
○村岡委員 なかなか最後まで語れないでしょうし、大変厳しい結果にならないようにこれは期待していかなきゃいけない。
やはり、アメリカもこれだけ議会でもめて、そして、アメリカは大統領に一括しますけれども、世論では多分、まだまだ反対があると思うんです。
そういう意味で、日本も当然、政府にこの条約に関しては権限は与えられているわけですけれども、大変厳しい状況にならないことを期待したいですし、そして、日本の農業、農協の改革というのも、新たに農業が再生し成長していくというこの法案の審議ですから、TPPによって農業改革というのが全くストップしてしまうという可能性があるので、そこのところは、このTPP、農業だけでないですけれども、日本の自由貿易を進めていくためには必要ですけれども、これは厳しい交渉だということの認識でぜひ進めていただきたい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それにかかわって、林農林大臣にお聞きしたいと思います。
これまで日本は、MA米が輸入されたときも、米の価格を維持するために、需要と供給のバランスに鑑みて、減反とか生産調整とかいろいろな政策をとってきました。そのとき、一九七四年から七百四十万トンの米が余ってしまい、そしてまたさらに、一九七九年から一九八三年まで六百万トン、実に千三百四十万トン、その結果、かかったお金は三兆円です。三兆円もの巨額の経費が、処理をするために税金が投入されました。そして次に、WTOでミニマムアクセスということで六兆円、こういう対策をとってきた。
でも、このTPPで米をどのぐらい輸入するのか、また関税なのか、それは完全にははっきりしていませんが、これだけ大きいかどうかは別にして、このような財政負担は確実にしていかなければいけない。それは、大臣はどのように思っていますでしょうか。
○林国務大臣 先ほど申し上げましたように、交渉はまだ途中でございまして、日米のお話も今ありましたけれども、ほかの国とも交渉が続いている、こういうことでございます。
これはたびたび今までも申し上げてきたことですが、この段階で国内対策について私から言及をいたしますと相手国に予断を与える、こういうことになりまして、交渉上の不利益をこうむるおそれなしとしないわけでございますので、対策については言及を差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。
○村岡委員 日本的には、国内対策を言うことは相手に交渉のすきを与えるというんですけれども、アメリカは、TAAというのは、まさに影響があるということの認識の上に、雇用対策であったり、またその人たちの研修費用であったり、TAAというのでやっているわけです。それはもう影響の計算をしているわけですね。
一番最初に関税ゼロの場合の計算はしたでしょうけれども、その後、この影響というのは、公表しなくてもいいですよ、交渉している最中、こうなったらどうだというシミュレーションは当然やっていると思うんです。そういうのは全くやっていないということでよろしいんですか。
○林国務大臣 まさに最初の段階で、今お触れになっていただいた影響試算、これは、関税が全部即時撤廃、それから何らの対策もやらない、こういう極めて単純化された仮定を置いて計算をして、その結果が経済構造調整が終わった中長期的に安定した状況を予測した、こういうものを出したわけでございます。
したがって、先ほど申し上げましたように、今は交渉の途中の段階でございますから、途中段階でその都度その都度仮定の数字を置いて関税撤廃の条件を見直して試算を行う、こういうことになりますと、条件を置かなきゃいけなくなるわけでございまして、まさにその条件は、では、どうしてそういう条件を置いたのか、こういうふうになってしまいますので、途中段階で条件を変えて試算を行うということは考えていないということでございます。
○村岡委員 農産物の直接的な関税のパーセンテージなのか、それとも輸入米の量なのかセーフガードなのか、いろいろな対策があると思いますけれども、でも、交渉する以上、普通、ここまで行ったらどのぐらいの影響があるか、これだったら影響ないという計算をしていないで交渉していたとしたら、それは全く、交渉が終わってこうなってしまいましたから初めて計算する、それは農家にとって、この改革を受け入れたときに大変厳しい状況になってしまう。
やはり、それは別に中身を公表しろというわけじゃなく、計算はしているんでしょう。していないんですね、本当に。どうなんでしょう。
○林国務大臣 当然、交渉するときはいろいろなことを考えながら交渉をするわけでございます。ですから、全く頭の中でも何も考えずにやみくもにやっているということを申し上げているわけではなくて、正式な試算を交渉の途中段階でやるということは考えていない、こういうことでございます。
それから、ことしの一月から日豪のFTAが既にスタートをしておりますが、これも、私がここで申し上げてきたように、いろいろな影響というのは実は、関税率やFTAで決まったことももちろんなんですが、生産国の状況や我が国の経済状況、これが我が国の需要に関係をしてきますし、それからマクロの経済でいえば、為替というものも大きく影響いたしますので、なかなか単純化して数値化するというのが難しいという状況は、この豪州のFTA一つとってみても言えるのではないか、こういうふうに思っておりますので、しっかりとそういうことを踏まえて交渉をするということではないかというふうに思っております。
○村岡委員 アメリカの方でTAAの対象となるのを見てみますと、十九万人、二十万人程度のところでいろいろと、例えばFTAやEPAなんかで、製造業でそこから退出しなきゃいけない人たちに対して、給料の面や職業訓練の面でもう既に対策をとって、それを通そうとしています。
日本の場合、農業関連は二十万人どころじゃないんです。三百万人とも言われている状況です。ですから、この部分はしっかりと、影響があった場合にどのような対策をとるかは、中ではしていてください。中ではしておかないと、結局後手後手に回って、さっき言いました、米の余りやそういう形で三兆円使った、そして六兆円の対策をとった、その結果、今衰退しているわけですから、中では、交渉事がどう結論が出るかは別にしまして、しっかりとした交渉事の中でぎりぎり、交渉事があったときには、世間に公表する前に、農林省の中で対策をある程度立てていかなきゃいけない、こう思っていますが、それは立てるつもりですよね。
○林国務大臣 アメリカの仕組みと同一に論ずることはなかなか難しいと思いますが、アメリカは、もともと通商権限が議会にあって、それを一括承認権限ということで大統領府に持っていくということがTPAということであって、これは、例えばTPPとかTTIPとか、それごとにやるということではなくて、一般的にそういうことをやる、一般的にそれをやるときに、あわせて、今おっしゃったTAAがある、こういう整理ではないか、こういうふうに思っております。
先ほど先生から御指摘のあったのは、我々の方は、例えばウルグアイ・ラウンドであれば、ウルグアイ・ラウンドというものがあったので、それについて対策を行った、こういうことですから、そこが若干、同列に論じるのが難しいところがあるかな、こういうふうに思っておりますが、交渉するときは、いろいろな頭の体操はしながらやっていく、これは当然でございますので、決議がある以上、それを守ったと評価されるように交渉をやっていくというのが申し上げてきたところでございますし、その交渉に当たっては、いろいろなことは念頭に置いてやっていかなければならない、こういうふうに常々考えておるところでございます。
○村岡委員 もちろん交渉の、まだ妥結していないわけですけれども、新聞記事なんかで書いているところによれば、五万トン入った場合どのぐらいの赤字なのかと。一万トン当たり二十三億、一年間に百億ぐらいは、もし入った場合に、備蓄米にしても、そしてまたそれを何年か後に主食用米にするにしても、そのぐらいの赤字がある。
これは、財政的な部分の中ではその赤字だけで済むような試算なんですが、ところが、確実に備蓄米の今の政策にも影響してくる、そう予想されるわけですけれども、この米を仮にふやした場合に影響が出てきます。そういう意味では、交渉事ですから、全くまだわからないと言われれば何も答えがないと思いますが、この備蓄の政策とそれから飼料米の政策、ここに大きく影響を与える可能性があります。
そこで、備蓄米のことは今聞きません、交渉が決まっていませんから。飼料米というのは、変わらず継続的に飼料米政策は進めるということでよろしいんでしょうか。
○林国務大臣 これは、ここでも何度も御議論させていただいて、私からも申し上げているように、水田のフル活用というのは大事な施策でございまして、それに伴う奨励金等々をしっかりと確保していくというのも大事なことだ、こういうことでございますので、これを、昨年度末に決めさせていただきました基本計画にしっかりと位置づけて、これを閣議決定という形で決めさせていただいて、今後もしっかりとこの政策を推進していくということを明らかにしたところでございます。
○村岡委員 やはり過去の日本に、外圧の中で、交渉で農業というのは、なかなか後手後手の対策の中で農業が衰退していったということがあるわけですから、対策というのは、日本の仕組みとしては交渉が妥結してからだということはわかりますけれども、しかしながら、攻めの中で農業をやっていかなければ、後手後手の対策だけやっていくとまた同じ結果になる。
そこは大臣、歴史的な農業の改革を行っている最中ですので、外圧によってまた逆戻りして、対策的には成長のためじゃない対策に行くと、この農協法の改正、そしてこれまでやってきた改革というのはもとに戻ってしまうという状況になりますから、前に向けての対策をぜひお願いしたいと思いますが、御決意を。
○林国務大臣 まさにこの二年強、攻めの農政ということで、ここで御議論を賜りながらいろいろな農政の改革を進めてまいりましたので、対策が必要になるかどうか、これも含めて、交渉が今途中でございますので申し上げることは差し控えたいと思いますが、あらゆることは、この改革に沿った方向でやってまいらなければならない、こういうふうに考えております。
○村岡委員 TPPはこれからこの一カ月間に大きな動きがあるでしょうから、ここは、農林水産委員会並びに、これは農業だけじゃないので予算委員会でも集中とかいろいろなことがあると思いますけれども、これは本当に国益にとって大事なTPPですので、これからも質問させていただきたい、こういうふうに思っております。
話題をちょっとかえさせていただきます。
成長産業という中で、六次産業化。その中で一つ、私がこの前秋田に帰ったときに、現地にはまだ行けていないですし見てはいないんですけれども、いろいろな資料をもらいました。
その中の一つに、ジャパニーズ・スタイル・ルームということで、資料をお渡ししましたけれども、このジャパニーズ・スタイル・ルームというのは組み立て式です。誰でも日曜大工の道具を持っていれば組み立てられるということで、今回ウィーンの方に和室ということで販売することになって、今実際にオーストリアの方に行って、インテリアショールームで展示販売されています。一個が百二十万円。間口と奥行きはともに三・五メートル、高さ二・五メートルの八畳間。奈良県産のヒノキと秋田の杉を利用してつくった和室であります。
こういう動きというのは新しい試みで、ヨーロッパ各国は家が広いですから、部屋を組み立てたものを、自分の家の中にぽんと和室を置く、そういう形で日本の伝統文化、そして日本の木の香りというのを楽しむ人たちがふえつつあるというふうに聞いております。そこに、いろいろな木材加工業者なんかがつくった日本のたんすや置物なんかも置いたり、そして、ふすまは、例えばオランダですと風車をふすまに描いたり、それからフランスですとエッフェル塔を描いたり、いろいろな日本の和風だけじゃないことをやっているそうなんです。
ただし、なかなか大変なのが、一個が百二十万ですけれども、これはコンテナに載せていって売るとなると相当なロットがなきゃいけない。ショーウインドーに一個ぐらい持っていくのは、これは赤字を覚悟でもいいんですけれども、こういう取り組みに対して、農林省また林野庁の方でどんなふうにこういう試みをしているところに手伝っていけるかどうか、検討しているのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思っております。
○あべ副大臣 委員に配付をしていただきましたジャパニーズ・スタイル・ルーム、私は日本語のバージョンも持っておりますが、農林水産省の正面玄関にも、実はこの組み立て式の和室、杉を使っておりますが、ございます。
こういう形でジャパン・ブランドを売り込んでいくということは私は非常に重要だと思っておりますし、このブランド価値を高めるため、私ども農林水産省といたしましても、六次産業化の取り組みで高付加価値に加工していくことが重要だというふうに思っております。
また、日本の伝統、食文化とパッケージにすることによって付加価値を高めていくため、委員がおっしゃったような和室とセットにしたプロモーション活動、また、和食も含めた調理器具、食器をセットにした輸出も積極的に取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。
昨年六月、輸出拡大の取り組みといたしまして、この司令塔といたしまして輸出戦略実行委員会を創設いたしまして、品目別に輸出拡大方針の策定、また輸出団体の育成などを進めさせていただいているところでございます。
本年の一月から四月までの輸出額、これは非常に伸びておりまして、対前年比二六・八%増の二千三百四十六億と好調な伸びを見せているところでございまして、平成三十二年の一兆円を目標に、より早く、より大きく超えて達成できるよう、総体的に私ども取り組んでまいりたいと思っているところでございます。
○村岡委員 副大臣の方も、英語のコマーシャルといいますか解説を見ていらっしゃると思いますけれども、農林省に置くのもいいんです、農林省に置いても、これは日本人に売るためのものではありませんので、そういうときに、やはり考え方をもっと前に進めなきゃいけないのは、世界にどのぐらい日本の大使館がありますか。
大使館に置いて、来た人たちに、なるほどと、和室の中に日本の家具やいろいろなものがあり、先ほど言ったように食器があり、お米を炊く炊飯器があり、そして鍋なんかも下げたり、また掘りごたつのスタイル、しっかりと日本の食や日本の文化を売り込んでいこうということになれば、本気だったらやはり大使館に置かなきゃいけない。
置けるところと置けないところはあると思いますよ。しかし、私も、いろいろな大使館、主要国の大使館には行きましたけれども、十分これは置けます。そういう取り組みをするということが、本気になって農産物を売る、日本の伝統文化を売る、こういうことだと思うんです。
大臣、そのあたりは外務省とちょっと交渉して、こういう和室に、日本の食材も含めていろいろなものでやっていこうということを提案していただけないでしょうか。
○林国務大臣 先生御推薦のこの会社を売り込むというのはなかなか難しいかもしれませんが、木材をしっかりと出していくということは大変大事なことであります。
二〇二〇年のオリンピックに向けて、インバウンドも活用しながらしっかりとやっていかなければならないと思っておりますので、これは農水省だけでやるということではなくて、政府一体となってやっていかなければならないので、当然、在外公館を持つ外務省にも最大限の協力をお願いしていきたい、こういうふうに思っております。
○村岡委員 質問時間が終わりましたので終了しますけれども、私はここの社長さんにもお会いしたこともありませんし、資料をある人からもらっただけなので、この会社を推薦しているわけではないことを申し上げて、ぜひとも、日本の製品のためにいろいろな会社の和室というのも頑張っていただきたい、こういうふうに思っております。
ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、畠山和也君。
○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
私からも、TPPについて質問を行います。
先日、甘利大臣からは、妥結に向けて来月中にも一気に進むかとの交渉姿勢もかいま見られました。それで、先ほどからもありましたように、TPAについては上院での可決ということになりました。
農業者はもちろんですけれども、御存じのように、TPPはさまざまな分野に影響が及ぶわけでして、医療関係者などなどからも同じように不安が高まってきている状況にあると思います。そういう中で、一瀉千里に交渉を進めるべきではないというふうに思うわけです。
この間も一月余り、TPA法案をめぐって交渉が一旦とまるような形にはなっていましたが、その間にも、TPPの中身や交渉のあり方に疑問が示されていることが相次ぎました。例えば、六月八日付農業新聞ですが、「TPP人権に悪影響 国連専門家懸念を表明 秘密交渉も問題視」との記事が掲載されました。国連の専門家グループが、TPPを含む貿易協定について、人権への悪影響だけでなく、交渉の秘密性を懸念する声明を発表したとのことです。
まず外務省に伺いますが、この専門家グループというのはどういう方々であると理解していますか。
○山上政府参考人 お答えいたします。
まず、委員御指摘の国連の専門家ということでございます。
どういう制度かと申しますと、国連の人権理事会では、特定の国の状況または特定の人権テーマに関し調査報告を行うために、個人の資格として専門家を任命しておる、こういう制度がございます。
そこで、御指摘の声明でございますが、こうした専門家の十名が、ことしの六月二日に声明を発表したということでございます。具体的には、例えば、民主的国際秩序、こういった問題についての専門家が中心となりまして、国連の人権理事会から求められている報告書作成とは別に、自主的に発表したということでございます。
そこで、こうした見解の位置づけでございますが、これらの専門家の見解は、独立した個人としての資格によるものでございまして、出身国政府を代表するものではございません。また、公表された声明等に含まれる勧告には法的拘束力はないと理解しております。
○畠山委員 私は何も法的拘束力の話なんか聞いていません。どういう立場の方々がこの声明を出したかということを聞いたわけであって、もう一度きちんと正面から答えてください。
○江藤委員長 それぞれの立場について、明確な答弁をしてください。
○山上政府参考人 お答えいたします。
立場ということでいえば、私は十名の専門家ということで申し上げました。民主的国際秩序に関する独立専門家、それから障害者の特別報告者、健康の権利に関する特別報告者、文化的権利に関する特別報告者、法曹家の独立に関する特別報告者、食料の権利に関する特別報告者、対外債務に関する独立専門家、安全な水と衛生の権利についての特別報告者、先住民族の権利に関する特別報告者、国際的な団結に関する独立専門家、この十名でございます。
○畠山委員 時間が限られているんですから、きちんとした答弁を求めます。
今ありましたように、さまざまな立場の方々からの懸念であることを重く受けとめる必要があると思います。
今、そのような幅広い専門家の方々が、どのような中身だったかといいますと、食品安全や健康保護、労働条件の基準が引き下げられる可能性があるとの見方を示し、さらに、ISD条項についても懸念が特に示されたと記事には書かれています。
これは、内閣官房と農水省、それぞれに伺いますが、この声明について今承知しているのかどうか、そしてそれをどのように受けとめているか、それぞれお答えください。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
声明は承知しております。ホームページに掲載されたものを見ているところでございます。
TPPについてさまざまな御批判あるいは御懸念の声が国内外からあるのは承知しております。十二カ国で、特にルール部分について議論する際も、それを常に念頭に置いて今調整、議論をしているところでございます。
先生御指摘の声明の中で、例えば、指摘を受けた食の安全、労働水準、それからISDS、ISDSは国家の規制機能を危険にさらす、そういう指摘でございますが、五月一日、私どもが、「TPPの概要」というものを公表いたしました。
その中で、TPPの現在のテキストの中では、食の安全に関する我が国の制度変更を求められるようなことにはなっていない、それから、労働については、貿易や投資促進のために労働基準を緩和することのないように、そういう議論になっているということ、それから、ISDSについては、保健、安全、環境保護を含む公共の利益を保護する政府の権限に配慮した規定が、現行のテキストに、今の交渉テキストには明記されているという旨を紹介しているところでございます。
いずれにいたしましても、そうした懸念があることを十分踏まえて交渉を行っていきたいと思っております。
○林国務大臣 今説明のあった、人権問題を担当する専門家が、条文案について国会議員等に開示すべきであり、貿易協定が食品安全にも悪影響を及ぼし得るという声明を発出したことは承知をしております。
これまでの政府が行った情報提供の中において、食の安全に関する我が国の制度の変更を求められるような議論は行われていないということは明らかにされておるところでございますが、今後とも、秘密保持の制約の中で可能な限り情報を提供していくことが重要でありまして、どういう工夫をして情報提供していくのか、TPP政府対策本部のもとで引き続き検討してまいらなければならないと思っております。
○畠山委員 今、情報提供の話も大臣からありました。
この声明では、いろいろな懸念が表明されているんですけれども、その後に、幾つかの勧告というのがあるんですね。私も英文を読みましたけれども、そのうちの一つに、国会議員や市民団体が検討できるよう条文草案を公開することという勧告があります。国会議員だけでなく、国民にも示すべきだという意味は、それだけ国民生活全般に影響が大きいことを踏まえて検討した結果、その反映であるというふうに私は思うんですね。
それで、情報公開については、きょうも議論がありましたけれども、本委員会では何度も要求をしてきました。その必要性が、国連も通じて、このように証明された形でもあるというふうに思います。
情報公開のあり方については、検討するということは何度も答弁があったんですけれども、この段に及んで一体どうするのか、ここまで来て、情報公開について具体的にするのかしないのか、きちんと答弁していただきたいというふうに思います。
○澁谷政府参考人 お答えいたします。
御指摘の国連の専門家の御意見は、御紹介いただいたように、議員や市民が十分な時間を持ってレビューできるように、交渉テキストをパブリッシュするべきだ、こういう内容でございます。
アメリカにおいても同じような議論がされておりまして、一般に対して早くパブリッシュするべきだという議論がされております。オバマ大統領は、交渉中はできないけれども、しかし、これまで、一般的に、署名後、テキストをパブリッシュしてきたものを、今の新TPA法案が成立すれば、署名の二カ月前にテキストをパブリッシュするということになっているので、十分な時間的余裕を持ってレビューできるんだということをアメリカも言っているところでございます。
我が国も、これは仮に合意すればという話になるわけでございますが、仮に大筋合意された場合は、今御指摘いただいたようなさまざまな御懸念も含めて、合意内容をできるだけ詳細に、かつ丁寧に、国民の皆さん、議員の先生方に詳しく説明をする形で努力していきたいというふうに思っております。
○畠山委員 大筋合意した後に、ふたをあけたら何だこれはということになってはならないから、こういう形で国連の専門家からも懸念が表明されているわけです。そこはやはり改めて指摘をしておきたい。
情報公開だけではなく、勧告にはほかにもいろいろあるんですが、労働組合、消費者団体、環境保護団体、保健専門家など全ての関係者の協議や参加によって、透明性を持って交渉することとあります。そもそも、秘密交渉自体に疑義が投げかけられる形であって、交渉の時点から、ステークホルダー、利害関係者を交えるということも含まれています。
TPPは自由貿易だというふうに言うけれども、このように、実態が人権に悪影響を及ぼすのではないかという指摘は重要だというふうに思います。アメリカでTPA法案が成立したら一気に交渉が進んでいくようなことがあってはならないということを強く指摘しておきたいと思います。
残り時間がちょっとありませんが、バター不足と、酪農、畜産の支援についても一言伺っておきます。
農業の成長産業化については、酪農、畜産分野にも及んでいます。昨年四月二十四日の産業競争力会議農業分科会で主査を務めた新浪氏が、「「農業の産業化」に向けて」との提案文書を出していまして、その中に「北海道の酪農輸出拠点化」という項目があって、「「酪農」に焦点を当てた「北海道ブランドの確立」を核に、輸出拠点化のための具体的取組を強化・加速化することが必要」と述べています。
ですが、御存じのとおり、北海道の酪農家は年間二百戸のペースで離農、離脱が続いてきました。現場の実感からいえば、あしたの酪農経営をまず支えてほしいんだ、そういう話は机上の論理ではないかなどの声も私は聞いてきたところです。
バター不足の問題は、北海道を初め全国で、明らかに酪農家が経営に苦しんでいることの反映だと思いますが、今のこの酪農経営を支えるために、政策のかなめとして、農水省として何を進めてきているか、何だと考えているか、御答弁ください。
○林国務大臣 昨年来のバター不足については、乳用牛の飼養頭数の減少に伴いまして生乳の生産量が減少しまして、その結果、牛乳・乳製品の需給調整弁と言っていいと思いますが、バターの国内生産量が大きく減少した、これが背景にあると考えております。
ことし三月に、いわゆる酪肉近、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針を策定いたしましたが、これにおいても、生乳の生産基盤を強化する、これを最優先の課題としたところでございます。
我が省としては、酪肉近に即しまして、畜産クラスターの仕組みも活用して、地域全体で畜産の収益性向上を図るために、家族経営、法人経営を問わず、ともに地域の担い手として育成して、生乳生産基盤の強化を図っていきたい、こう考えております。
○畠山委員 緊急的なバター輸入はあるにせよ、やはり家族経営を含めて、広く地域全体を支えるということはどうしても大事だ、これは共通だと思うんですね。
私が一月の閉会中審査のときに質問したとき、畜産クラスターについても使い勝手のいい柔軟な対応をということを求めました。また、規模拡大だけを前提にした支援策でなく、今大臣から答弁もあったように、家族経営を含めた幅広い、後継者対策であったり新規就農者対策というのを、裾野を広げることを進める必要があると思うんですね。
そこで、きょうは資料を提出させていただきました。昨年七月九日付の日本農業新聞北海道版で、足寄町の新規就農のことを取り上げています。
足寄町で放牧している吉川友二さんが、九十六頭飼われていらっしゃいます。下から三段落目のところですが、一頭当たり年間六千キロの生乳生産量は、道内平均を二五%ほど下回っています。ただ、八十ヘクタールの草地を存分に活用し、高コストな濃厚飼料は極力使わないため、所得率は約四割と、道内平均の一三・六%を大幅に上回っている。そして、春先に分娩を集中させる季節繁殖を徹底し、一、二月は搾乳しないということが紹介されています。
酪農経営において、みずから規模拡大される方はもちろんいらっしゃるでしょうが、家族で牛を見るということであれば、百頭ぐらい、これぐらいがぎりぎりのところではないのかなと。ずっと休まず牛舎に詰めて働くのだし、新規就農するにしても、いきなり大規模を目指すということになるわけではないですから、家族経営をきちんと支えることが大事だということを具体的にこのように示しているというふうに思うんです。
時間もありませんので、こういう家族経営について、新規も含めた、総合的に支える必要についてということを、この例では自治体や元農協職員も含めて応援しているという中身なんですね。この大事さを示していると思いますが、最後に、この支援のあり方についてのさらなる拡充を求めたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○林国務大臣 先ほど申し上げました酪肉近でも、「法人経営、家族経営が共に地域の担い手として発展することを目指す。」こういうふうに書かせていただいておりまして、例えば畜産クラスター事業においても、規模の大小にかかわらず、地域の中心的な経営体と位置づけがなされますと、家族経営でも支援対象としておりますし、酪農ヘルパーやコントラクター、こういう支援組織の取り組みに対してもしっかりと支援をしていくということで、今取り上げられたこういういい例もしっかりとやっていけるように取り組んでいきたいと思っております。
○畠山委員 意欲を持って経営に臨んでも、TPPとなればその意欲が沈んでしまうわけですので、重ねて撤退を求めることも最後に述べて、質問を終わります。
○江藤委員長 次に、篠原孝君。
○篠原(孝)委員 おはようございます。民主党の篠原孝でございます。
合計一時間ほどいただきまして、質問をさせていただきたいと思います。
TPP絡みでは山ほど御質問したいことがあるんですが、農協法、農業委員会法、農地法を審議しておりますので、こちらの方に絞って質問させていただきたいと思います。
今回は、ちょっと延びたりしておりましたので、たっぷり時間がありまして、資料をたっぷりつくらせていただきました。資料をよくごらんいただきながら、早く質問しろとかいうやじは余り飛ばさないでいただきたいんですが、ぜひゆっくりお聞きいただきたいと思います。
それで、順序をちょっと変えさせていただきます。同僚の委員の皆さんから、順序を逆にしてこれを一番先にやってくれと言われましたので、資料を今お配りしていただいております、その一番最後の九ページを見ていただきたいんです。一番最後に余興で和やかにやる予定だったんですが、厳しくやってくれということで。
この審議時間、私は、玉木筆頭とやっておられることだろうと思いますけれども、どれだけ議論をするのかというのを、あちこちで審議が十分行われていない重要法案があると思いますけれども、どうやって審議時間が決まるかというのはわかりませんけれども、ちょっと考えてみたものがあるんです。
二月十二日の施政方針演説の関係部分の長さと審議時間の関係ですよ。
ちょっと見ていただきたいんですが、皆さん持っておられないので書いておきましたが、平和国家の歩みというのがあるんです。これは平和安全保障法制のことですよね。二十三ページ目に登場するんですが、九行です。遺骨収集のところを集めると十八行ですが、これが八十時間になっています。大事さと長さに相関関係があるという仮定のもとですけれどもね。
それから、柔軟かつ多様な働き方というのは、おわかりのとおり、労働者派遣法です。これは十四ページ目に登場しまして、十六行使われているんです。
それに対し、我々のこの今審議している法案、農家の視点に立った農政改革は、前代未聞だと思います、三ページ目に登場し、それから三ページ続くんですね、二十四行も続いているんです。それだけじゃなくて、日本の国会だけじゃなくて、アメリカの国会に行ってもこれは実は演説されているわけですね。だから、超重要案件じゃないかと思うんです。
ですから、そのページ数、行数に合わせて、八十時間をもとにすると、二百十三時間審議しなくちゃいけない。労働者派遣法になると、これはこういうふうになる。
それから、どうでもいい話ですが、六十年ぶりの大改正だ、六十年ぶりの大改正だといったら、一年一時間ぐらいというのも考えてもいいんじゃないかと思います。そうしたら、六十時間。どうもそうなっていないんじゃないかということ。審議をきちんとしていただきたいと思います。
それから、私は、農林水産委員会にたびたび質問に立たせていただいておるんですが、農林水産省の元同僚の皆さんに余り迷惑をかけてはいけない、まあ、迷惑をかけているんですけれどもね、質問の答弁確認で。だけれども、こういうところで恥をかかせてはいけないということで、事務方への質問は一切控えてまいりましたけれども、きょうは、多分この関係では最後の質問になると思います、そういうこともありますので、担当の奥原局長にもたくさん質問して、やりとりをさせていただきたいと思います。
奥原局長には、三十年、長いか短いかわからないんですが、農林水産省の生活で二度ほど同じ課でたっぷりお仕えさせていただきましたので、いろいろなことはわかっておりますので、しっかりお答えいただきたいと思います。そのときの、いろいろ議論しましたけれども、フランクな気持ちで、正直にお答えいただきたいと思います。
まず第一番目に、やたら認定農業者を強調しているんですね。
この場で申し上げたことがあります。我々国会議員を誰が判断して認定国会議員だ、非認定国会議員だと。私は五期やっているから認定国会議員で、小山さんはまだ二期だから非認定国会議員だなんて、それはちゃんと選ばれてきているわけだから、そういうのは余りやっちゃいけないですよね。それを、農協の理事も農業委員も、やたら認定農業者と言っています。
資料の一ページ目を見ていただきたいんですが、これはどうやって考えるかなんですよね。基幹的農業従事者というのはよく出てくるわけです。それの年齢別、性別割合をBのところに書きました。よく見ていただきたいんです。四十歳未満、少ないんですね。女性が四一・八%。それで、認定農業者はこれだけいます、二十三万人。農業委員数、平均年齢が六十四歳です。
まあ、農業委員だけじゃなくて、私の長野県中野市など、五十歳未満の市会議員、一人だけ女性がいるんですよね、それを除いてはみんな六十歳なんです。そういうふうになっちゃうんですね。
それで、農業委員の数とその割合、下の方のdの六です、それと比べてみていただきたいんです。おわかりになりますでしょうか。仮に、四十歳未満から、平等に、パラレルに委員を選ぶとすると、それが理想だというふうにすれば、もともと少ないのにもかかわらず、基幹的農業従事者では少ないながら四・九%いるのに、農業委員は〇・六%しかいない。当然ですけれども、五十から六十になると、オーバーリプレゼンターということになるわけですね。これは当然です。見識もある、経験も積んだ、これは当然のことだと思います。五十から六十歳未満が一八%で、六十歳以上が七八・三%。これでいいんだろうと私は思います。
国会だって、もうちょっと経験を積んだ人たちみたいな方がなった方がいいと思うんですよね。まあ、これはどうでもいい話ですけれども。
それで、だめなのが、やはり女性なんですね。女性は四一・八%も基幹的農業従事者を占めているのに、七・二%。
四十歳未満は約八分の一です、基幹的農業従事者の割合と比べて。女性の場合は六分の一になっている。
それで、条文の方はどうなっているかというと、やたら認定農業者、プロの販売の能力とかそういう経験がある人とかいって、女性や青年のところは抽象的な表現で、認定農業者だけ過半数になっているんですね。
私は、これはよくないんじゃないかと思うんですね。余り義務づけるのはよくないと思いますよ。認定農業者にこれだけしつこくかかずらわって義務づけるんだったら、女性や青年農業者、そのことこそ、そっちこそ義務づけるべきじゃないかと思うんですけれども、奥原局長、いかがでしょうか。
○奥原政府参考人 今回の農協改革におきましては、農協の理事につきまして、その過半数を認定農業者等とすることについては義務づけの規定を置いております。一方で、年齢と性別については、著しい偏りが生じないようにするという配慮規定という形で規定をしているところでございます。
まず、理事の過半数を認定農業者等とすることにつきましては、農協が地域の農業者と力を合わせて農業所得の増大に向けて適切に事業運営を行っていただく、これが今回の改革の一番大きい目的でございますので、そういう意味で、農業に積極的に取り組んでいる担い手の意見が農協の運営に的確に反映されることが必要不可欠ということで、担い手の中心的な存在であります認定農業者、それから販売等のプロの方、これを理事の過半とすることを義務づけているわけでございます。
一方で、理事の年齢それから性別につきましては、青年とか女性も農業生産や農産物の販売の現場で非常に大きな役割を果たしていただいております。したがって、こういう方々に理事になっていただいて、農協の事業活動に活力を与えていただきたいというふうに思っておりますけれども、こういった青年や女性の方々も担い手の一部でございます。それから、各農協によりまして、年齢や性別による組合員の構成、これが相当区々であるということもございますので、一律の対応を求めることは必ずしも適切ではないのではないかということで、こちらについては義務づけではなくて配慮規定で置いている、こういうことでございます。
○篠原(孝)委員 それではちょっと五ページを開いていただきたい。
五ページの前に四ページですけれども、タイトルは「本法の問題点と改善点」というもの、これはなかなか時間がかかったんですよ。農林水産省の係長時代を思い出してつくったんですけれどもね。
いろいろ皆さんが審議で問題点を指摘されていますが、質問者の皆さんの発言がほとんど入っています。それで、「政府答弁・見解」が右側で、「篠原意見」とありますけれども、やわらかく表現してありますけれども、私の修正意見、修正案です。
それで、五ページ、理事の過半数が認定農業者というところを見ていただきたい。
奥原局長も今答弁されましたけれども、年齢、性別については、この一番右側の括弧の中、第三十条第十三項、年齢、性別には著しい偏りが生じないように配慮すればいいんだ、私はこれで十分だと思います。専業農家なり農業をちゃんとやっている人を中心に選ぶんだよ、これで、あとは自主性に任せていればいいと思うんです。
それを認定農業者、認定農業者とやたら持ち上げているわけです。僕は、農民を分断するので非常によくないと思っているんです。
仮に認定農業者をこんなに法律の中できちんと位置づけるんだったら、農業経営基盤強化法の中に初めてできた認定農業者を引用してそれでやるんじゃなくて、ここできちんと定義をし直すべきだろうと思います。それが当然だと思います。
それはどういうことかというと、では、ほかの世界にこういうのが何かあって、資格でもってやっているのがあるかなと思うと、中小企業ですよ。
中小企業は、中小企業基本法の中で、よく覚えていますけれども、資本金三億円以下、従業員が三百人以下、それが何か製造業と小売業とサービス業でちょっとずつ違うんですよ、きちっと客観的な基準を設けています。
それを、市町村に経営改善計画を五年後のめどをつけて出してそれで認定された人、それに全て委ねている。これは、地方の実情に任せているというのは、これはこれでいいことだと思います。だけれども、こういった法律の資格要件のところにこれを引用してくるというのは、僕はよくないと思います。定義が不明確だと思います。この点、議論はきちんとしたんでしょうか。
○奥原政府参考人 先ほど申し上げましたように、今回の改革は、農協が地域の農業者と力を合わせて農業所得の増大に向けて適切に事業運営を行っていくためには、農業に積極的に取り組んでいる担い手の意見が農協の運営に的確に反映されることが重要である、こういう考え方に立っております。
一方で、食料・農業・農村基本法の第二十一条のところでは、効率的かつ安定的な農業経営を育成して、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するということが明記をされておりまして、まさに農業経営基盤強化促進法に基づきます認定農業者の制度といいますのは、効率的かつ安定的な農業経営を目指して農業経営改善計画をつくっていただいてこれを市町村が認定した、そういうものでございます。
したがって、こういう担い手を中心として農協が農業者と力を合わせてやっていくということを明記するために、認定農業者あるいは販売のプロの方が理事の過半、こういう規定を置いているところでございます。
それで、今回の農協法の中で認定農業者のようなものをきちんと定義すればというお話もございましたが、これは極めて法技術的な話になりますけれども、基盤強化法の方できちんと定義をされているわけでございますので、ほかにも、例えば担い手経営安定法、これはゲタ、ナラシを決めている法律でございますが、この中でも農業経営基盤強化促進法の認定農業者の制度をそのまま引いてこの対象者を決めております。それから、日本政策金融公庫法、これはスーパーL資金のところでございますが、これも認定農業者制度、基盤強化法のものを引用して決めている、こういったこともございますので、同様の取り扱いを今回もしている、こういうことでございます。
○篠原(孝)委員 大改革で、大法律なんですよね。他人のふんどしで相撲をとる、ふんどしというのがわからない人がいるんだったら、まあ他人の海水パンツで泳いでいるようなもんですよ。やっぱりよくないですよ。
ちゃんと自分で、自分できちんとやって、それは今、ほかの法律を引っ張ってくるんじゃなくて、食料・農業・農村基本法で認定農業者をちゃんと位置づける、そして食料・農業・農村基本計画できちんと位置づけているんだ、そういう根本のところがあってそれを明確に打ち出してくるんだったら、議論はあるでしょうけれども、仕方がないと思います。ちょろちょろとこんなふうにもったいぶって出しているというか、勝手に引用してくるのは、僕はよくないと思います。こういうのは改めてもらわなくちゃいけないと思います。
それで、資料の二ページ、三ページを見てください。
農業委員のところとダブっていますので、まず三ページ目のところ、農業委員と認定農業者、私の長野一区のところを見ていただきたいんです。農業委員のうち、認定農業者と女性です。
どこも人数は結構多いのに、女性は二人か三人でいいやみたいに、こういうのがあるんだと思います。大体二か三なんです、ゼロという封建的なところもありますけれども。
認定農業者はばらつきがあるんですよね。それで、長野県全体と全国合計でやると、結構差があるというのがわかりますね。これは同僚の福島委員が出した資料にありましたけれども、全国合計で二八・九%。私は長野県は多い方かと思ったら、長野県全体よりも私の長野一区内は少なくて、一六・三%です。ゼロのところもある。なかなか大変だと思います。
それで、右側、電話調査の際の先方のコメント。これは、それぞれの市の農業委員会事務局でわかるんですけれども、ここは意見を述べた人知らずにしてあります。透明性がちょっと欠けるんですが、どこの市だ、どこの村だというのがわからないように。
見てください。率直な意見がいっぱいありました。法定化して、そんな半分なんて言われたって困るというのが一番上です。切実なのは、何か四月一日から施行だけれども、時間がなさ過ぎて困る、選挙なんかが近づいてきたりすると。認定農業者になろうとする人がいない。今、奥原局長が触れられたL資金、そういったメリットがあるんだったらなるけれども、なかなかなる気がしない。半分というのは、農業委員を選ぶのが大変だ、嫌がる人がいると。これは、小山委員も福島委員もほかの委員も、それから参考人の意見陳述にもありましたけれども、認定農業者で一生懸命農業をやっていると、そんな、忙しくて農業委員なんてやっていられない、そういうのがある。
それから次は、ちょっとふざけたコメントですけれども、こういうコメントがあったので書いておきました。定数が減ると困る。それから、切実なのは、真面目に考えているんですよ、認定農業者を農業委員の半分にするとしたら、そもそも認定農業者が少ないので、農業委員を固定するしかない。
左側のCのところを見てください。二桁のところもいっぱいあるんですね。こういうところをどうするのか。もちろん例外を設けると言っていますけれども、これが一つです。
次に、農協。農協は、これはちょっとずつ違うんですが、二ページ。
農協はこれだけあるのですが、農協の全国のはわからなかったんですけれども、これは農協に全部資料を提供してもらいました。
それで、どうでもいいことですけれども、認定農業者の、農業委員と農協と、どっちがどっちかなというのをちょっと比べてみましたけれども、これは余り、こういうふうになっているというのはないんですね。右が多いのもあるし、左が多いのもある。
中野市農協、これは私の地元中の地元です。総販売高が二百億を超えている、でっかくないのに中野市一本でやっている立派な農協です。そこで生まれて、私は育ちました。これは余り関係ないんですけれどもね。ここは四八%で、クリアしているんですね。やはり農協の理事は認定農業者の方がいい、なってもらわなくちゃというのがあるんだろうと思います。
では、農業委員は、福島委員の例にありましたね、退職した校長先生とか、そういう見識のある人がなってもらっていいんじゃないかというのがある。それは、その人は農協の理事はちょっと無理だろうと、みんな現場が考えているんですよ。両方半分と言っていますけれども、それぞれ違うんじゃないかと私は思います。
中野市の場合は圧倒的に農協の理事の方が多いですけれども、ほかは、農業委員の方が認定農業者が多いところもあります。
女性が多いのは、こっちは意外と女性が多いのにはびっくりしました。農業委員の方は、任命制があるので、選挙で選ばれない人が女性で結構選ばれているんです。そっちの方が多いかと思ったら、そうでもないんです。
こういうのがあるんですけれども、穏当な規定は、配慮規定、年齢、性別に著しい偏りがないように、これが非常に美しい。私が法令審査官だったら、認定農業者についても同じ規定にします。
ほっておいたって、今、女性重用と言っていますから、三人の答弁者のうち二人女性で、ここも非常に優秀ですよ、農林水産省は。そうなるんですね、やっていると。
だけれども、そこにも、二〇三〇・三〇とかいう、国会議員も二〇三〇年までには三〇にというのは、それは法律じゃなくて目標としてある。
だから、法律にぎちぎち書いたりするというのは、私はよくないことだと思います。これこそ、規制改革と言いつつ、これは何度もいろいろなところで言っている、松木けんこう委員が言っていましたけれども、いや、構成員のことについてごたごた言うのはまさに規制そのもので、介入しているじゃないかと。本当にそうなんですよね。これこそ自由にしておかなくちゃいけないんです。
次に、理事、委員会の要件をいろいろ言って、やはりこれは大事だからなんです、どういう人がなるかというのは。
それで、地域に密着した、地域の農業、地域の実情がわかった人とか、農地利用最適化推進委員とかいうのも、みんないろいろ書いてあるんです。だけれども、ちょっと欠けているのは、心配なのは、販売のプロとか何か言っていると、何かどこかで住んでいて余りよく知らない人が勝手にいっぱい農業委員になったりするんじゃないかと。
我々は日本国の国会議員ですから居住要件というのはないですけれども、地方自治体の議員には三カ月の居住要件というのがあります。私は、農業関係こそそういうのがきちっとあってしかるべきだと思うんですが、そういうことは議論にならなかったんでしょうか。ないとしたらよくなくて、私は、ほっておいたら、市町村長がどこかのでかい不動産業者を農業委員に急に選任したりとか、誰かに推薦させて、あるいは公募させて、そういうことがあり得るんじゃないか、そういうのを排除する、いかがわしいことをするのを排除する規定というものこそ必要なような気がするんですけれども、そういうことは議論されたんでしょうか。
○奥原政府参考人 農協の理事ですとか、あるいは農業委員の居住要件のことかと思います。
まず、農協の理事につきましては、農協法上、その三分の二が正組合員でなければならないといった要件は現在もございますけれども、従来から、居住地に関する要件というのは特に課されておりません。
それから、一方で、農業委員の方につきましては、今回、公選制を廃止するということが一つございます。それともう一つは、近年、市町村域を超えて農業経営の大規模化あるいは法人化が進んでいるというケースが相当ふえております。出入り作の関係で、複数の市町村にまたがって経営している方々も相当ふえている。こういうことも踏まえまして、農業委員につきましても居住要件自身は課さないということにしておりますが、農業委員を選任するに当たりまして、地域からの推薦あるいは公募ということをやることになっておりますので、この制度によりまして、おのずから当該地域に居住する人が大宗を占める形になるものというふうに基本的に考えております。
それから、今御指摘がございました不動産業者、こういった方々をどういうふうに排除するかというお話もございましたけれども、今回、地域の推薦あるいは公募に応じた方々につきましては、これは、ガラス張りにしてきちんと公示をするということに制度的にしております。その過程で、その方が今どういう仕事をやっていらっしゃるかとか、農地の問題についてどういう考え方で取り組むかとか、そういったことを明示されることになりますので、この不動産業者のような方々につきましては、基本的にはなかなか選任されないという方向で働くのではないかというふうに考えております。
○篠原(孝)委員 大臣、今の議論を聞いておられたと思いますけれども、私は、認定農業者を異様に重用し過ぎていると思うんです。
国際交渉のときに、ウルグアイ・ラウンドやドーハ・ラウンドでも同じですけれども、我々はどう言ってきたかというと、いやいや、アメリカのばかでかい農業やオーストラリアのでかい農業、二百ヘクタールとか一千ヘクタールが平均規模だ、そんなものと日本の農業を一緒にできないんだ、それぞれの国にはそれぞれの国のいろいろな農業形態があるので、多様な農業の共存というのを常に枕言葉で言ってきたんです。それを認め合おうと言ってきているんです。
そう言っておきながら、日本国内では、多様な農業の存在を認めず、何か認定農業者にあらざれば農業者にあらずみたいに言っているんです。これは、外に言っていることと内で言っていることが違ってきているような気がするんですが、僕は大きな矛盾だと思います。大規模農家だけを相手にするというのはやはりよくないんです。全体を見なければいけない。多様な人たちがいるんです、多様な農家がいるんです。
これは、石川県の西沢参考人、地方公聴会のときも、多様な人材が農協の理事を務めた方がいいんだと言っていたはずです。それから、強者だけが残るようなのは協同組合の理念に反すると、小山委員が一番最初の質問のときに指摘しています。やはり一方的過ぎるとよくないと思うんです。大臣、いかがですか。
○林国務大臣 篠原先生がおっしゃるように、これまで、国際交渉の中で、多様な農業の存在を認め合うべきだ、こういうことを主張してきたのは事実でございますが、これは、規模、構造等大きく異なるので、それぞれの農業が共存できるようにすることが必要だ、今先生おっしゃったとおりであります。
したがって、国内においても多様な農業者がいて構わない、こういうふうに考えておりますが、これは農業者ということでありまして、農業に積極的に取り組んでいる、農業でやっていこうという方、これが地域農業を発展させていくために、いろいろな、農協であれ農業委員会であれ、そういう方々の意見が的確に反映されることが重要である、そういう基本的な考え方で与党の中でも議論をいたしまして、取りまとめをいたして、こういう形にさせていただいたということです。
認定農業者というのも、何か規模は、前はあったのかもしれませんが、今は規模要件というのはない、こういうことでございますから、まさに先生がおっしゃるように、日本は日本なりの農業のやり方があるだろう。しかし、農業をやっていただくという意味では、農業者、地域の農業を発展させていく、こういう方のそういう意見が的確に反映させられることが必要である、こういうふうに考えております。
○篠原(孝)委員 矛盾が生じてくるんですね。これはほかの委員もいっぱいいろいろなところで指摘していますけれども。
私の地元の方でちょっと言いますと、志賀高原に行くところにアップルラインというのがあるんです。そこは、前からそこで販売しているわけです、何々農園と言って。高速道路ができて余り通らなくなったんですけれども、自分でみずから売るということを覚えていますから、今はインターネットで固定客をつかんで、農協になんか全く出さずに、ほとんど全部宅急便でもってリンゴ、桃、ブドウを送っているんです。
この人たちは、農協を全然利用していないんです。ですけれども、認定農業者になっています。だから、そういう人たちにも農協経営に参加してほしい。農業委員はいいんでしょうけれども、農協の場合です。
今度、これをほっておくと、農協を余り利用しない人たちばかりが農協の理事になってきちゃう可能性もあるんです。これは地域で選定するので、そういうことにはならないと思います。
大臣がわかっているということをおっしゃいましたが、だから、おのずと認定農業者の声なんかが反映されるようになればいいのであって、半数だとかなんとかというのは余りやらない方がいいんだろうと思います。
例えば、これは前の段階のときに質問事項の中に加えておいたので、奥原局長にでも答えていただきたいと思いますけれども、でっかい農家というか、経営者が出てくるわけです。安愚楽牧場、宮崎県にも進出していて、口蹄疫のときにもいろいろ問題になりました。
小作がなくなって、農民の地位の向上というのは要らないという議論がありましたけれども、そこまでしている時間はないんですけれども、僕はびっくりしました。預託制度というので、現代の小作が畜産業界には広まっているんです。年とったなんて言っちゃ悪いんですけれども、お金もない、だから、安愚楽牧場から頼まれて牛を飼って、でっかくして、そしてそれをまた安愚楽牧場に返して、安愚楽牧場が経営責任をとる、自分たちは餌をくれて大きくするだけだと。どっちを支えればいいか。
農業経営者とかそんなのではなくて、安愚楽牧場で、そこでやっている人たちは農業の従業員みたいになっている。だけれども、違うんです。地域に生きて、地域を支えているのは、牛を飼って、せっせと毎朝毎晩餌をくれて飼っている年老いた老夫婦なわけです。ところが、そこに補償金が行かずに安愚楽牧場に行くのかと、これは大問題になったわけです。
僕は、圧倒的に、実際に牛を飼っている人のところに行くべきだと思います。だけれども、認定農業者にどっちがなるのか。こういう人たちが認定農業者になって農協の理事に、理事になったりはしていかないと思いますけれども。
私のところでは、農家がやり始めたんです。出稼ぎに行かなくたっていいようにというので、冬の労働力を生かしてということでエノキダケの栽培が始まりまして、信州シメジとかエリンギとか、大キノコ産業になっているわけです。
これは経済産業委員会でやったんですが、不正競争防止法とか特許の問題になるんですが、資材会社だったのが、こんなのだったら俺たちができる、これはおてんとうさまも関係ないですから、家の中でできますから、ホクトと雪国まいたけという二大キノコ産業ができ上がってきているんです。これが農家のキノコを圧迫しているんですよね。
では、ホクトや安愚楽牧場が認定農業者となり、多分そんな申請をしていないからなっていないと思いますけれども、こういう人たちが、一体、農協の理事になったり、農業委員になっていっていいのか。なっちゃいけないとは言いません。みんなが、いろいろな寄附をしたりして、いろいろなことをわかってくれている、自分の使っていたエノキ工場がだめになったらホクトが買い取って引き取ってやってくれるとか、そういう友好関係があれば別ですけれども、大体そういうふうになっていないんですよ。
こういうのをどういうふうに考えておられるのか。大規模農家、そこに根差していない大農業経営者、これが一体、認定農業者になれるのか、そして農協の理事になれるのか、農業委員になるべきなのか、この点についてはどう思われますでしょうか。大臣でも局長でもどうぞ。
○奥原政府参考人 今の認定農業者の方々もいろいろいらっしゃると思いますが、中には農協をほとんど利用していない方もいらっしゃいますけれども、その方々も、好きこのんで農協を利用していないということでは必ずしもないというふうに我々は思っております。農協に農産物を出荷しなかったり、あるいは資材を農協から買わなかったりする、それはやはり、コスト面あるいは販売価格の面で余り有利でないから農協を利用しない、そういったことがあるんだろうというふうに思っております。
多くの認定農業者の方々、特にこの委員会でも、参考人で質疑をされましたけれども、その中でも何人かの方が言っていらっしゃいましたが、やはり、メリットがあるのであれば農協を利用したいと思っておられる認定農業者の方々はいっぱいいらっしゃるというふうに思っております。
ですから、農協が農産物の有利販売あるいは生産資材の有利調達に積極的に取り組んでいただくということが、農協の発展にとっても、それから地域農業の発展にとっても必要なことではないかというふうに思っております。
今回、この役員について、理事の過半を認定農業者と販売のプロにするという規定が入っておりますけれども、これを一つの契機として、地域の認定農業者等の担い手の方々と農協の役職員の方々が徹底して話し合っていただく、こういうことが非常に重要だというふうに考えております。
いずれにいたしましても、具体的に誰を理事にするかというのはそれぞれの農協の判断でございますので、この人を必ず理事にしろとか、そういうことを法律の中で決めているわけではございません。
それから、どういう方が認定農業者になるかですけれども、これはそれぞれ、農業をやっていらっしゃる方が経営改善計画をつくっていただいて、自分が農業をやっている市町村に出していただいて認定を受けるということですので、今御指摘がございましたような企業的な経営でありましても、計画を出して市町村の認定を受ければ、当然、認定農家になることはあり得る、そういう制度でございます。
○篠原(孝)委員 池田議員が指摘されていましたけれども、農業から、土から離れた人が理事なんかに多くなり過ぎているという問題があると思います。ですけれども、大臣も奥原局長も、担い手の意向を、本当に農業をやっている人たちの意向を十分に反映しなくちゃいけないんだ、それはそのとおりだと思うんです。
だからといって、小さい農家、この人たちは農協に頼りっ切りですよ、資材の調達から販売から。この人たちの意見をそんなに酌まなくていいんでしょうか。この人たちの気持ちこそ酌んでやるのが協同組合なんです。そこを忘れているんです。協同組合まで効率、効率の一点張りでいくというのは、私はおかしいと思っているんです。
それで、大きな違いは、場所によって違うので、理事がどういう働きをしているかというのはそれぞれ違うと思いますけれども、私は、大臣あるいは局長が何回も言った有利販売、そちらの方にきちんと重点を置いていくんだ、だから監査なんというのもやらないということは、変なくっつけ方過ぎると思います。
だけれども、有利販売を誰がやるのかというと、農協の職員です。私のJA中野ではどうしているかというと、手数料の上に、ちゃんと農家の了解を得て、販売促進料というのを上乗せして取っているんです。そして、大阪や名古屋、東京の市場に行ってなるべく高く売ってくるということを認めて、その活動を職員が相当しているんです。
私なんかは中野を離れましたけれども、私の同僚の、小学校や中学校や高校の友達で家の後を継がなくちゃならないという人たちはどういうふうにしているかというと、農業だけじゃ食っていけないから、ではというので、農協を職場に選んでいるんです。私なんかより勉強はずっとできましたよ。そういう人たちが、勉強だけで農業はできないですけれども、立派な人たちが農協の職員になっているんです。だから、非常にいい農協というか、そういう人たちがやっているからうまくいっているんだろうと思います。
理事じゃないんですよ。どうも勘違いしておられる。だけれども、場所によっては農協の理事が第一線に立ってやっておられるところがあるかと思いますけれども、それは、理事はどちらかというと、どこでもそうですけれども、チェック機能を果たしているのであって、そんな、認定農業者だけとか販売のプロ、理事が先頭を切って、あれやれこれやれというのはないと思いますよ。たたき上げの農協の参事とか常務とか、そういう人たちのはずですよ。
どうもそこのところを勘違いしているような気がするんですけれども、この根本的なことについては、大臣でも局長でも、どういうふうに認識されておられますでしょうか。
○林国務大臣 会社であっても協同組織であっても、やはり組織の運営に責任を最終的に持つのは役員でありまして、職員でないわけです。
今委員がおっしゃっていただいたように、立派な職員がいて、その人たちにやっていただくというのは、これはとても大事なことだと思いますけれども、だからといって、そういう人がいるので、役員はそういうことには全くノウハウも知見もなくて人を見る目もない、こういう方でいいということにはやはりならないのではないかということでありまして、職員を、誰をどこに配属するのか、どういう人を雇っていくのかということも組織の運営の大事なところでございまして、やはり役員にそれだけのノウハウがなければ、なかなかはかばかしくそういうことが進んでいかないのであろう、こういうことでございます。
過半数でございますので、全員が認定農業者や販売のプロになる、こういうことではなくて、先ほどちょっとおっしゃったように、いろいろな方の意見を反映されるように、こういうことは当然必要だと思いますけれども、やはり今までそういうことが余りに弱いということが、いろいろなところで意見があって、今回、こういう形で取りまとめさせていただいて、それに対応した規定ぶりになっている、こういう考え方でございます。
○篠原(孝)委員 それはそのとおりです。だから、おのずとそうなっていけばいいんだろうと思います。
そうなっているんです。例えば、身近なところでいうと、ここは、私の隣の須高農協というところの組合長にどういう人が五、六年前になったかというと、共済連の役員をやめられた方が、やはり後を継がなくちゃいけないというので退職して地元に戻られて農業をやっている、理事に選ばれる、なかなか気のきいたことを言っているというので、立派な家でもあったんでしょう、六十九歳で農協の組合長になられるんです。
認定農業者でも何でもないですね。だけれども、共済連でもって、そういう組織の中で働いて農業問題に精通しておられた。周りの人たちがそういう人を発掘してというか、その人に農協を託すわけですよ。
だけれども、認定農業者だけになって、農業で本当に働いている人は、僕は矛盾しているようなことを言っていますけれども、いろいろな人の組み合わせでいいから、余りたがをはめる必要はないということ、これをよく頭の中に入れておいていただきたいと思います。
それから、これは玉木委員、小山委員が盛んに言っていましたけれども、地域の総合農協か職能組合なのかという、准組合員の問題があるわけです。私は、よくしたもので、予定調和ででき上がっていくんだなと思います。
ヨーロッパの農業はどうやって支えられているかというと、直接支払いです。それは、農業は農業生産だけじゃない、環境を守ってくれているんだ、この景色を守ってくれているんだと。今、インバウンドというので外国から観光客が来ていますけれども、皆さんお気づきになっていない。京都や奈良や東京ディズニーランドもいいんですけれども、日本の農村の景色そのものが観光になっているんです。多分これが相当広まっていくだろうと思います。落ちつくんです。そういうのがあるんです。そういったものを評価している。
だから、評価は、本当は国が、多面的機能です、多面的機能に対して支払いをするというのがあっていいんだろうと思いますが、なかなかこれは認められない。ではというので、どうしているかというと、結果的に、農協を地域の住民がみんな利用して、員外利用でもいいです、准組合員になってもいいです、利用して農家を助けている。だから、国がやらないことを、地域の住民が農業を助けることをしているんですよ。そういう目的意識を持っていないですけれども、結果的にそうなっているんです。私は美しい仕組みだと思います。
准組合員の皆さんからはクレームがついているんですかね。ついていないはずですよ。どこからもついていないのに、それを准組合員を五年後に何とかすると。また何とおせっかいなことをするのか。岸本さんがそれを言っていましたけれども、そのとおりですよ。
それとなくやるのはいいんですけれども、法律でぎちぎちやっていくということはよくない。だから、私は准組合員制度についてどういうふうにやったらいいのかわかりませんけれども、政府の怠慢を農協が、地域住民が補ってくれているんです。感謝しなくちゃいけないんです。大臣、そう思われませんか。
○林国務大臣 法律の審議でございますので、それとなくやる法律というのはなかなか難しいのかなと思って聞いておりましたが、今篠原先生がおっしゃったことは自民党の中で議論したときも随分出まして、ここでも私も何度か御披露申し上げたんです。
例えば、多面的機能支払いというのを今度入れて、担い手、若い人に集中していくけれども、その地域の水路の泥上げとか管理、草刈り等はみんなでやっていこう、そうすると、土地を貸し出して共同作業だけやっている方々は農業そのものはやらなくなる、しかし、こういう方々がまさに准組合員としてやっていただくというのはぴったりではないか、こういう意見はまさにあったわけでございます。
一方で、都会のサラリーマンの方が信用事業を利用するために准組合員になっておられるということもあるのではないか。
いずれも多分同じものを見ておっしゃっているというよりは、それぞれ自分が兼務をされた中でいろいろな意見をおっしゃっておられて、いろいろな意見を交換する中で、やはり同じものを見ていないのではないか、こういうことにだんだんなってきて、したがって、どういうところの地域でどういう事業をやっておられて、それがどういうふうな利用実態になっているかというのをしっかりと把握した上でこの議論はする必要があるだろうと。当然、一条に定められているように、農協は農業者の協同組織でありますが、事実上地域のインフラとしての側面を持っている、こういうことでございますから、そういうことを念頭に置いて、しっかりと実態調査を行った上で、あり方について検討して結論を得る、こういうことにしたところでございます。
○篠原(孝)委員 それでは次に、農業委員会が大分変質してきていると思うんです。農地の利用の最適化は非常に重要で、これをやるというのはわかるんですけれども、どうも矛盾しているような気がするんです。それはそれで大事なんですけれども、ほかのところも忘れちゃいけないというのがあるんですけれども、それが大事だということを認めて、ああ言えばこう言うの質問をさせていただきます。
認定農業者ばかりじゃないですけれども、半分が認定農業者になる、それは大体が農地の集積の受け手ですよね。だけれども、出し手の皆さんはどうなるのか。出し手と受け手と両方いなかったらうまくいかないですよ。男ばかりではうまくいかない、女ばかりではうまくいかないのと同じようなものだと思います。
それで、我々はそれをひっくり返しましたけれども、自民党政権時代を覚えておられると思いますが、農地利用加速化事業というので農地の出し手にお金を出す。そんなのはけしからぬと言って、民主党は事業仕分けで没にして、国庫に返納したはずです、出し手にお金を出すというのは。
それで、これから農地の集積をしていくときに、受け手の意見なんかはどうやって農業委員会なんかで議論をして進めていくんでしょうか。片方だけでやってどうやってうまくいくのかという気がするんです。
私は、自民党農政の方が、民主党のにけちをつけるみたいでよくないんですけれども、いろいろな考え方があっていいんです、出し手と受け手と両方考えてやっていくという方が現実的だと思うんですが、何か今度は、受け手ばかりでやっていくんだ、出し手のことなんか余り考えなくたっていいというふうになっているような気がするんですけれども、大臣、この矛盾についてはどうお考えでしょうか。
○林国務大臣 農地利用の最適化の推進、これは大事な農業委員会の仕事ですから、やはり受け手になるであろう担い手の意向を十分踏まえる必要があるということで、過半を原則として認定農業者にいたしましたけれども、先ほど申し上げましたように過半でございますので、認定農業者以外の方も農業委員となることが可能でございまして、出し手の方の意見が全く反映されないというのでは、なかなか、意思決定が適切になされない場合もあるでしょうから、こういうことで両者の意見が適切に反映されるということが非常に大事なことである、それはおっしゃるとおりだと思います。
――――◇―――――
○江藤委員長 次に、内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案及び岸本周平君外三名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省経営局長奥原正明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○江藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠原孝君。
○篠原(孝)委員 続けて質問させていただきます。
大臣は予定調和でやっていってほしいと言うんですが、農家の現場の皆さんとか農業委員会の事務局の人は真面目なんですよ。国が半分と言ったら、必死になって半分にしようとしますよ。本当に、何でそんなに真面目に考えるんだ、僕なんかはもう少しいいかげんに考えたっていいんだと言いたくなるんです。だから、今から戦々恐々としているわけです、どうやって農業委員に選んでもらおうというふうに。それは、法律できちっとしたら、そっちの方に、そっちの方に引っ張られていくんです。だから、余りこういう規定はしない方がいいというのをぜひ頭の中に入れておいていただきたいと思います。
そして、残された十五分間、まことに済みませんけれども、私、小さい字で、「本法の問題点と改善点」というのを見ながら、質問通告をきちんとはしていないんですけれども、奥原局長には、これをちゃんと見ておいてくれと言ってあります。大臣、お答えいただくんだったら、いや、局長に聞いているんだから大臣は要らない、そういうことは絶対言いませんから、答えていただきたいと思います、大臣にお答えいただけたらなおさらいいことなので。
触れましたのは省きますけれども、これだけいろいろ議論されているんだ。いろいろ問題点が物すごくあり過ぎると思いますよ、私の意見として聞いていただきたいんですけれども。
「中央会の社団法人化」というのは、これは何人も、これは岸本委員が言っておられましたけれども、余り、こんなことを言っちゃ悪いんですけれども、大したことないと大騒ぎして、これは井出委員が言っておられたんですね、六十年ぶりの大改革だ、大改革だと、余りそんなふうになっていないじゃないかと。これは余り意義のない改正だし、もとに戻した方がいいんじゃないかと思います。
それから「公認会計士による会計監査の義務付け」と「業務監査は任意」というのも、これは直さなくちゃいけないんですけれども、業務監査もやはりやらなくちゃ、連動しているわけですから、信用組合や信金とは違うんですから。それで、「政府答弁・見解」のところの、この部分の一番下に書いてありますけれども、「農産物の有利販売により農業者の所得向上に全力投球できる」と。何でこれとこれが関係するのかな。だから、全然わからないんですよね。両方一体でやっていく方がいい。
それで、いや、業務監査はみずからやれ、会計監査は外だと。何でも外にやったらいいという考え方がすぐ出てくるんですけれども、私はそうは思いません。その方がコストがかかります。ごちゃごちゃします。中できちんと律するのが私は一番いいと思うんです。だから、みずから律するというのが一番いいので、外にみんな見てもらえたら、外ばかりぎゃあぎゃあ言われることになるんです。
それから「全農・経済連の株式会社化」、これも私は、やはり本旨にもとりますし、実際は、「政府答弁・見解」にもありました、子会社にしやすいようにというのを、それはやっているんです。だから、わざわざそんなことを、やってもいいよというのを、追認でこういう規定をしなくたっていい。
やはり協同組合、小さな農家が地域全体を支えるんだという協同組合は民間の会社と違うんだということをきちんとしておくべきだと思うんです。ですから、全農や経済連を株式会社というのは、僕は反対ですね。
次のページの、五ページの上の方はもうやりました、農産物販売のプロとかというのはやりましたので、「営利目的を削除」というのを。
これも、何でこんなことをわざと、突っかかられるようなことをするのか。いろいろ答えておられますけれども、ここのところが一番苦し紛れだと私は思いますよ。農協はもうけを出してはいけないという誤った解釈があるというふうに言いますけれども、これは福島委員が、そんなの聞いたことがないと言われているんですね。いや、本当だと思いますよ、それは。利益を上げて組合員に返すというのは当たり前の話で、そんな誤解なんというのは聞いたことがないので、こんな波風を立てるようなことをしなくたっていいんです。幾ら、七条の二項で復活させて似たようなことを書いてあるとか言ったりしていますけれども、だめですね、これは。こんなのは要らない。
それから、その上の、「農産物販売のプロを理事に」なんというのも、これも、これは小山委員が指摘していましたように、バブル期に財テクに走った、これが気がきいているものだ、そのときは気がきいていると言われた、後からとんでもないことをしていたと。やはり、朝ドラの言葉をかりれば、地道にこつこつが一番ベストだと思いますよ。それでいいんですよ、農協の形態は。
奥原局長、今までのことについてどういうふうに思いますか。
○奥原政府参考人 余りに多岐にわたっておりますので、ちょっとお答えするのが難しいんですけれども、順次お答えさせていただきます。
まず中央会の部分でございますけれども、改革に余り効果がないのではないかというのが先生の御意見かと思います。これにつきましては、昭和二十九年に中央会制度が導入されたときと今と状況が大きく変わっている、そのことを踏まえて今回見直しをした、こういうことでございます。
昭和二十九年、この当時がどうであったかといいますと、ドッジ・ラインの後、日本経済が相当厳しい状態になりましたが、農協も当時一万を超えて存在をしておりまして、厳しい経営環境の中で、貯金の払い戻しができないというところが続出するという事態が起こりました。そこで、行政にかわって農協を指導して経営を再建するということで導入をしたのが中央会制度でございます。
それに対しまして現在どうなっているかといいますと、中央会が合併を進めてきた一つの成果だと思いますけれども、農協の数は現在七百程度に減っております。一つ一つの農協は相当大きくなって、経営基盤も相当しっかりする、そういう状態になっております。
それから、信用事業につきましては、既にJAバンク法という法律ができておりまして、これに基づいて、農林中金がまさに信用事業のプロの観点から、農協についても信連についてもきちんと指導する、こういう体系ができ上がっているわけでございまして、現時点でこの中央会制度を継続する必要があるのかと。
束ねる組織は当然あってしかるべきだと思っておりますけれども、行政にかわって指導する、あるいは監査をする、こういう強制力を伴ったような組織としては見直す必要があるんじゃないかということで、今回、自律的な組織に移行する、こういうことになっているわけでございます。これによりまして、個々の単位農協がさらに自主性を発揮して農産物の販売等に頑張っていただく、こういう趣旨でございます。
それから、次が監査の点でございますが、何でもかんでも外で監査を受ければいいというわけではないので、自分で律するのが筋ではないかというお話かと思いますけれども、これにつきましても、農協はまず信用事業をやっているわけでございます。信用事業も、これは組合員だけではなくて、員外の人からも預かっております。平均的に見ても相当貯金量は大きくなっておりまして、一千億を超えておりますし、中には一兆円を超える貯金量を持っている農協も出てきている、こういう状況の中で、やはり貯金をする方々が安心して貯金できるという体系にしておきませんと金融秩序が維持をできない、こういうことになります。
そういう意味では、ほかの金融機関、銀行ですとか信用金庫、信用組合、こういったところと同等の健全な経営を確保できるような体制はつくる必要がある、こういうことでございます。
従来も、全中の中に監査機構をつくったりして、監査のレベルを上げる努力はしておりますけれども、それでも純粋な外部監査とは言えないのではないかという指摘はこれまでも受けておりましたので、ここをきちんとした外部監査の体制をつくるというのが今回の眼目でございます。これによりまして、農協の信用事業をこれからも安定的に営めるようにする、これが一つの目的でございます。
それから、業務監査もこれとセットでというお話がございましたけれども、これは、民間組織につきまして業務監査が義務づけられているところというのは基本的にございません。これまで全中がやっておりました業務監査の中身を見ていましても、基本的には、内部監査あるいは内部統制の補完といったものにとどまっております。それぞれの農協には監事も置かれておりますし、監査をする担当部署も置かれているわけでございますので、基本的には、それぞれの組織の中でチェックをしていただくというのが基本だ、こういうことで、今回は、この業務監査につきましても義務づけは廃止をして、必要なときには必要なところに頼んでいただく、こういう体系に変えたわけでございます。
それから、全農、経済連の株式会社化の点でございます。ここは、全農、経済連につきましては、本当に日本農業の発展に資する、特に農業者の所得の向上に資するような活動を積極的にやっていただきたいというふうに思っているわけでございまして、従来やっていた仕事だけではなくて、もっと戦略的に企業と連携をして農産物をもっと有利に売る、あるいは海外に輸出をする、それから資材についても、いろいろなところから有利に調達をして、できるだけ国内で安く供給できるような体制をつくっていく、いろいろな新しい取り組みをやっていただきたいというふうに思っておりますけれども、そういったことをやる場合に、現在の農協法というのがネックになる場合が想定をされるということでございます。
全農も、現在は農協法上の組織でございますので、当然、員外利用制限はかかっております。それから、事業につきましても、農協法に書いていない事業は基本的にできないということになりますので、こういった制約のもとで新しい仕事がやりにくいということも当然出てくる可能性がございます。そういった場合には、まず戦略を立てていただいて、その上で、農協連合会のままでいるのと会社に転換するのとどちらが本当に有利になるか、そこを比較考量していただいて、考えていただく。そのための選択肢を今回追加している、こういうことでございます。
それから、あと、八条の改正の部分でございます。営利目的を削除するという、その部分でございますけれども、現在の八条の中に書いてあります、営利を目的として事業を行ってはならないという規定は、法律の趣旨からいたしますと、基本的に農協は会社とは違いますので、出資配当を主目的に仕事をするのではないということを規定したものでございます。利用高配当については制限がございませんが、出資配当につきましては、ほかのところで、農協法の五十二条というところで上限が決まっております。これは、ほかの協同組合の法律制度におきましても全て共通に、出資配当については上限の規制が置かれている。
それに対しまして、営利を目的として仕事を行ってはいけないという規定は、全ての協同組合に書いてあるわけではございません。趣旨としては、出資配当の上限でもってカバーをされておりますので、現在の営利を目的として仕事を行ってはいけないということが、先ほど先生は誤解されていないというふうにおっしゃいましたけれども、これはやはり一部誤解されている向きはあるというふうに思っておりまして、これがあるために、農産物をもっと高く売ろうとか、そういうことがやはりおろそかになっているという側面はあるというふうに思っております。
実際に、農産物の九六%が委託販売にとどまっている、なかなか有利に売れない。農家の方から見ても、もっと有利に売ってほしいという声が非常に多い、八割、九割の方がそういうふうにアンケートでお答えになるという状況からしますと、やはりもうけを出す、農家にとってメリットを出すようにきちんと仕事をするということを考えていただく上におきまして、営利を目的として仕事をしてはいけないという部分を削除して、農業所得の増大を真剣にやるんだということを書き加えるということは必要なことだというふうに思っているところでございます。
○篠原(孝)委員 今まで答弁されたことを答弁されています。
では、また再反論しますと、業務監査と会計監査のところでエンロン事件を例に出して、業務監査なんというのは別にやっているところはないと思いますけれども、農協は特殊なところで、経済事業が何かと密接に結びついているから、業務も一緒に監査して、そして、信用事業も共済事業もおかしくならないようにきちんとしようということでなっているんじゃないでしょうか。
それから、どんなでっかい監査法人が絡んでいたって、だめなものはだめだったんです、これは井出委員が指摘していましたけれども、それから岸本委員も触れておられますけれども。だから、農協のサイド、中央会も考えているんですね。でっかい監査法人のプロに来てもらって、一緒に監査業務をやり始めているんです。だから、こういうことでいいんじゃないかと私は思いますということですよ。
それから、では、せっかくですので、あとちょっとしか時間がないですけれども、見ていただきたいんですが、農業所得の向上に農協法改革がなるなんて、これは何かいろいろ言いわけを言っていましたけれども、ほとんどないですね。こんな議論は議論に値しないと思いますね。
それで、八ページ。
八ページで、「農業委員と農地利用最適化推進委員の役割分担」、これも皆さんわけがわからないので、ここをちょっと書きませんでしたけれども、地元も一番、何の意味かさっぱりわからないというのが多かったです、電話で聞いたところは。だから、もう農業委員が現場を見ないで議決権だけを行使する。それは、現場を知らないで、どうやって議決権を行使するんですか。
我々国会議員、金帰月来して、現場を見て、それで帰ってきているんです。お役人の皆さんはそんなに出張旅費もないし行きませんけれども、我々国会議員の方が現場をずっとよく知っていて、現場を見て、そしてそれを踏まえて議論しているからちゃんとした議論ができるんです。
何かそれを、農地利用最適化推進委員に現場を任せて、俺たちは議決権を行使するだけだ、そんなのは私は成り立たないと思います。これもおかしい。こんなのは、わざわざ屋上屋を重ねるんじゃなくて、佐々木議員が言っていましたけれども、農業委員一本でやっていくべきだと思います。
それから、農業委員と中間管理機構の重複というのも問題ですよ。僕は、県はいろいろ苦労されてやっていくのはいいと思いますけれども、農業委員がこれだけ一生懸命やってきたのに、また何か中間管理機構とかつくって、何か農業委員がろくに仕事をしていないみたいな感じの法律改正なんです。これは失礼だと思います、今まで汗水垂らしてやってきた人たちに対して。
それから、大事なのは、八ページ、「意見・建議廃止」ですよ。農業委員というのは農業委員会なんです、農業全般について建議したり意見したりして、みんなの声を吸い取るところなんです。これだけ農地にあれするんだったら、何で農地委員会に名前を変えなかったんですか。こういうのはやればできる。やってもいいんだと大臣も答えられた。そんなのだったら、農地利用の最適化についてだけ何で法律に新たに書き込むんですか。それだって、別に法律に書き込まなくたってできるんだから、余計なことを書かなくたっていいんです。それを、変なところを削っては、ぎちぎちと変なところだけ重要視するような形でやっているんです。
ですから、よく考えていただきたいんです。この法律改正、僕はもっときちんと議論していただきたいと思いますよ。きちんと議論しなかったらいけないと思う。皆さん、農民、農協関係者は怒ると思いますよ。
それで、施政方針演説では、安倍総理は農家の視点に立った農政改革と大見えを切っていますよ。しかし、聞いておられる人は、いや、違うんじゃないの、どこかの産業競争力会議とか規制改革会議、新浪剛史さんや金丸恭文さんの、そっちの方に相当引っ張られた改正になっているんじゃないか。これはやはり農家の視点に立っていないですね。
そこのところをきちんと考えていただいて、より議論を深めることをお願いいたしまして、私の質問にさせていただきます。
○江藤委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 民主党の福島伸享でございます。
もう篠原大先輩が全てを質問し尽くしてしまったので、質問することがないと言いたいところでありますが、やはり……(発言する者あり)何ですか、その言い方は。これから聞こうとするときに、そういうやじはやめてください。
週末にいろいろ地元の農業関係者と懇談してきまして、先ほど篠原さんのアンケートにありましたけれども、現場からいうとふざけた法律、そういう反応が非常に多いですよね。農業者の皆さんから見て、一体今回の改正は何なんだ、誰がこんな法改正を望んでいるんだという声が極めて多い。
今回の農協法とか農業委員会の改正を積極的に支持している方は、これまで農業委員や農協の理事をやった方の中にもいないし、今、六次産業化をやったり新しくチャレンジしている人の中にもほとんどいない。私は、これは哀れな改正法だなと思いますよ。参考人の皆さんだって、地方公聴会に行ったって誰も積極的に支持しない法案を、なぜこうやって、我々は国会で長い時間かかって議論しているのかというのは、非常なむなしさと憤りを覚えるのであります。
また、もう一点、今回全中の組織を大きく変えるのに、何度全中の会長を答弁に求めても出てこない。参考人でも来ない。私はこれはあり得ないと思いますよ。
この国会でも、JR法が改正されて、JR九州の完全民営化が議論されましたけれども、その審議のときには全回、JR九州の社長は毎回出てきております。私が一期目のときに、東電に公的資金を投入するスキームを導入する法案のときも、東電の社長は来て、火だるまになりながら答弁に応じているわけですよ。
全中の会長は、もう自民党、与党と握っているから、ほかはいいということなんですかね。国会の場できちんと全中の会長がみずから、なぜこのような決断をしたのか、そしてこの法案が通った後にどのように取り組むかということを言うのは義務でもあるし、それをこの場で議論しないのはおかしいと私は思うんですよ。
もし、きょう法案を採決するのだとしても、今選挙をやっているということでありますけれども、新旧会長、首を並べて、ぜひこの委員会に来て、今回の法案改正に関する所見と、今後どうなっていくのかということの答弁を求める場をぜひ設けていただきたいと思いますので、委員長、よろしく御配慮のほどお願いを申し上げます。よろしくお願いします。
○江藤委員長 たびたび理事会でもそのような御提案はこれまでいただいてまいりました。
私からも与党筆頭からも、玉木委員の意を受けて、働きかけもいたしてまいりました。しかし、強制力のある働きかけはできないことは委員も御承知のとおりであります。そのような事情は委員にも御理解いただき、玉木筆頭には御理解をいただいているものと理解をしております。
○福島委員 強制力はないにしても、まさに法案の制度改正の対象なわけですから、私は堂々と出てきて思いを述べるべきではないかというふうに思っております。
その上で、前回の続き、前回といっても六月九日の質疑なので半月ぐらい前なんですけれども、この中で、農協の今の篠原先生の議論があった理事要件、これは新しい三十条で「農林水産省令で定める場合は、この限りでない。」と言って、認定農家の要件の例外が農水省令で規定されております。
その中でいただいた資料がきょうお配りしている資料の一でありまして、農林水産省作成の資料の中に「農林水産省令のイメージ」というものがございます。
私は、省令に委ねるのであれば、ある程度明確に、こうした技術的な細かいことだから、法律で規定しないで、省令というのを定めるべきだと思うんですが、まだこれでも私は曖昧な部分があると思っております。
2の農水省令のイメージの(1)、「状況によって、過半数を満たすべき者に、」うんたらかんたら「を検討。」と書いてあります。省令も法律によって委任された法令でありますから、この「状況によって、」というのはどういう状況なのか、ぜひ具体的に教えていただきたいと思います。
次に、(2)も、「特別の事情がある場合」「定款に、過半数に代わる人数を定めることを検討。」とあります。「特別の事情」というのはどういう事情なのか。
この二点について御答弁をお願いいたします。
○奥原政府参考人 農協の理事のところの規定でございますが、法律の原則としては、理事の過半を認定農業者あるいは販売のプロとするということを置いた上で、ただし書きで、省令で例外を定めるようになっております。
その省令のイメージが、先ほど先生御指摘いただいたところでございますけれども、これは今後実態調査をやった上で決めていくことになりますので、現在の段階ではイメージでございますけれども、状況によってというのは、これはちょっと人数をどのくらいに見るかということがございますので、調査した上で、その地域の中の認定農業者がどのくらいかという、人数を決めることになると思いますが、その状況によって、過半数を満たすべき者に、認定農業者のOBですとか、あるいは集落営農の役員、あるいは公的な関与のある計画に位置づけられた地域の中心的な農業者、こういった方々をカウントできるようにすることを検討しているところでございます。
それから、2の(2)として書いてございますのは、定款に過半数にかわる人数を定める場合ということでございますけれども、これも実態調査をやりませんと具体的なケースが特定をされないことになりますが、この(1)の方に書いてあります、こういう工夫をしてもなおクリアすることはなかなか難しい状況にある場合、これは今の時点で調査を行っておりませんので、一つのイメージにすぎませんけれども、中山間地域で本当に大きい経営体が全くいない、全て小さい経営体だけのところでどうするかとか、そういったことを含めて、これを調査した上できちんと決めていきたいというふうに考えております。
○福島委員 いや、これは何か想定しているから、状況によってとか、特別の事情があってとやるんじゃないですか。これから調査をして決めますなんというのを省令で委ねるなんというのは、私は前代未聞で、言語道断な話だと思いますよ。
調査をやって、今の条件に満たないようなところがあるから、その現場の実態に合わせて省令を書くというんだったら、そもそもこんな条文は要らないじゃないですか。こんな条文を設けなくていいじゃないですか。私は、先ほど、篠原さんはいなくなっちゃいましたけれども、篠原さんがおっしゃるように、農業を主導的にやる人を、半分をやるように努めなければならない程度の努力義務でいいじゃないですか。
女性とか若者は努力義務のようにしながら、これだけぎちぎちに省令で細かい要件まで定めるようなことをやる意味というのが全然わからないんですよ。
ましてや、今後省令で幾らでもずる抜けにできるようなことをやって、しかも、それはこれから調査をやって決まるんです、現場の実態に応じて幾らでも柔軟にできるようにするんですという程度の話なのであれば、やはりここは、法律で認定農家を過半数なんとする要件を課す必要はないし、むしろこの省令をつくることによって意味をなくしてしまっているわけですから、女性や青年の例と同じように、努力規定にすればどうですか。
大臣、このことについてどう思いますか。こんないいかげんな法律の要件を定めて本当にいいんでしょうか。大臣の御所見をお願いいたします。
○林国務大臣 今局長から答弁いたしましたように、農協の理事については、過半数を認定農業者等とすることについては義務づけ、それから年齢や性別に著しい偏りが生じないようにすることについては配慮する、こういうことにしたわけでございますが、農協が地域の農業者と力を合わせて農業所得の増大に向けて適切に事業運営を行っていく、担い手の意見が反映されることが必要不可欠であるということで、この義務づけをいたしました。
一方で、年齢や性別については、青年層や女性の方、これは生産や販売で大きな役割を果たしておりますので、理事になって農協の事業活動に活力を与えていただきたい、こう考えておるんですが、青年や女性も担い手と重複する部分もあるわけですね、当然のことながら。それから、各農協の年齢や性別による組合員の構成も区々でありますので、一律の対応というのはなかなか適切ではないのではないかということで配慮規定、こういうふうにしたところでございます。
○福島委員 だから、それがよくわからない。
認定農業者になるかならないかも、それぞれの場合があるんですよ。前に茨城県のデータを見せましたけれども、茨城県というのは、農業生産高全国二位にもかかわらず、認定農業者が比較的少ない県だし、北海道は逆に言えば認定農業者の比率が高いですよ。それは、農家はみずからの経営判断として認定農家になるかならないかということを選んでいるのであって、それを、一々義務づけるのが余計なお世話なわけです。それぞれなんです。人生いろいろとおっしゃった総理大臣はいたけれども、農家だっていろいろなんですよ。
それを、わざわざ法律で義務的な要件としてかけるからおかしな話になるのであって、農協に農業のプロが入るのは非常に大事ですよ、若者や女性が入ることも大事ですよ。それを、片や配慮規定にして、片や認定農家という一つの法律に基づいて定義されるものの義務づけをするから、私は、この法律のおかしな面が出ているんだと思います。きょうは採決に至る道なのかもしれませんけれども、極めていびつな法律の改正であるということを指摘させていただきたいと思っております。
時間がないので先に行きますけれども、二点目は中央会制度です。
本来は、きょう、全中の会長と議論したかったんです。そのために私は資料を用意してきたんですよ。「米と人生」、荷見安という人です。実は、私は今、水戸の千波というところに住んでいるんですけれども、そこに生まれ育った、私の高校、大学の先輩でもあって、戦前、農林省の次官をやり、初代の全中の会長の方の本であります。
いろいろこれはいいことが書いてあるので、きょうは紹介だけで、後で読んでいただきたいんですけれども、めくっていただいた後の最後に、団体というのは理想と目標がないととかく沈滞してしまうものであるとか、協同組合は言うまでもなく事業体であるから経営を強化することは大切である、しかしそればかりを考えていたのではいけないというのは、まさに先ほどの七条の議論であります。一方、組合員の共同組織だからといって組合員の利益ばかりを考えていたのでは事業経営が弱体化してしまうとか、もう終戦直後に立派なことをおっしゃっているんですよ。組合は政党に対して中立でなければならない、初代の全中会長がこのようにおっしゃっていたりとか、最後のページのところを見ると、総合農協か専門農協かというような問題を出してどちらかに軍配を上げるというやり方は、いたずらに対立を引き起こすだけで誰の利益にもならないとか、極めて示唆に富む問題が、現代的な課題が全部ここに書かれていて、私は、こうやってスタートした全中というのは、本当は高邁な理想と理念に基づいた立派な全農民の運動を取りまとめる組織であったと思うんですね。
それに比べて、今回の法案に理想、理念はありやなしやということで、今回この法律の本則では、中央会の規定はばっさり切られているんですが、ただ、附則が異常に長くて、それはほとんど中央会の規定になっちゃっているんですよ。
例えば、一番私は不思議だなと思うのは、附則の第十八条で、「組織変更後の農業協同組合連合会は、」つまり県の中央会です。「附則第十三条第五項に規定する事業の全部又は一部のみを行うことその他の農林水産省令で定める要件に該当するものである間は、新農協法第三条一項の規定にかかわらず、その名称中に、農業協同組合連合会という文字に代えて、引き続き農業協同組合中央会という文字を用いることができる。」本則で連合会は連合会として名乗らなければならないという義務を抱えているにもかかわらず、附則で農協中央会という文字を用いることができるなんという、こんな法律は、本則でこっちを義務づけしておいて、附則で、にもかかわらず別の道があるなんというのは、私は、こんな法案は見たことないし、新しくできる県の中央会にとっても失礼だと思うんですよ。
また、ここでも省令が出てきているんです。「その他の農林水産省令で定める要件に該当するものである間」、つまり、省令で定める間は県の中央会の名前を用いることができる。
一体、「農林水産省令で定める要件」というのは何なんでしょうか。
○奥原政府参考人 附則の十八条で書いてございますのは、組織変更後の連合会につきまして、附則で書いてあります。
附則で、中央会から連合会に変わったときの事業がまず書いてございますが、その「事業の全部又は一部のみを行うことその他の農林水産省令で定める要件に該当するものである間は、」「引き続き農業協同組合中央会という文字を用いることができる。」こういうふうになっております。
ですから、今回、県の中央会が連合会に切りかわるということになります。そのときの事業として、これは附則の十三条のところで書いてございますけれども、経営相談ですとか、それから会員の求めに応じて監査をする、あるいは意見の代表をする、あるいは会員相互間の調整を行う、こういった業務をやるということで切りかわるわけですけれども、そういった事業が全然違ったものになってしまうというときには、同じ名前は使えないことになるかもしれませんので、そういったことをこの省令の中では決めるということになるかと思います。
基本的に、転換したその状態を維持している限りは中央会という名前を使える、こういう話だというふうに考えております。
○福島委員 いや、この規定はそうじゃないでしょう。その「全部又は一部」じゃなくても「行うことその他の」だから、ほかの要件があるわけでしょう。それだったら、そのまま、全部または一部を行うものについては中央会という名前を名乗れるでいいじゃないですか。それ以外の場合であっても中央会と名乗れる場合をここで規定する規定なのではないんですか、これは。
○奥原政府参考人 ここは法律の書き方ですけれども、「その他の農林水産省令で定める要件」というふうに書いてございますので、この「その他の」の言葉の前に書いてあるものももう一回省令の中で決めるということになります。
それ以外のことも当然あり得るかとは思います。例えばエリアが、県中から転換した場合にはエリアは当然その都道府県の範囲であるということになりますが、これを、例えば県の中の一部だけに限定するようなことをやる、あるいは県を超えるようなことをやる、この場合には、何とか県農協中央会と名前を使うのはふさわしくないということになりますので、そういったことは省令に書く可能性はあるというふうに思っております。
○福島委員 いずれにしても、私は余計な話だと思うんですよ。こういうふうに何でもかんでも省令におろして、例外をつくって変えられるようにしているというのも、今回の農協法改正の異常な姿なんじゃないかなと私は思うんです。
もう一つ疑問なのは、何で全中は一般社団法人で、何で県の中央会は連合会なんですか。県の中央会も一般社団法人でいいじゃないですか。一般社団法人になって、県の組合で連合体をつくったものは、県の中央会と名乗ることができないんですか。名乗れないのはなぜですか。ぜひお答えください。
○奥原政府参考人 都道府県の中央会も、それから全国の中央会も、従来の行政代行的な組織から自律的な組織に変わるということはまず共通でございます。その次に、今度は切りかわった後でどういう仕事をするかということになってまいります。
これにつきましては、昨年の十一月にJAグループの方で自分たちの自己改革案をまとめていただいた中に、これからの中央会の仕事としてどういうことをやるかというのが書いてございます。機能的に書いてございますのは、経営相談ですとか求めに応じた監査、代表機能、それから総合調整機能でございます。
これにつきまして、県の中央会につきましては、今後も、会員の求めに応じてこういった仕事を全部やることになります。特に経営相談ですとか、こういったものは、新しく切りかわった組織をその会員であるそれぞれの農協が利用する、こういった事業関係にもある、こういうことでございますので、農協連合会という実態がある程度あるという判断をしております。
一方で、全国の中央会の方でございますけれども、全国中央会につきましては、監査部門を切り離して外に出す、公認会計士法の監査法人をつくるということになりました。そうしますと、全中につきましては、残る仕事は代表機能と総合調整機能だけということになります。
この代表機能と総合調整機能だけの場合に、これが農協連合会、要するに事業をやる組織としてふさわしいのかということがございまして、この代表機能、総合調整機能をやるのにふさわしい自律的な組織は社団法人の方ではないかということで、今回はそういう整理をしているということでございます。
○福島委員 よくわからないですね。だって、皆さん方は、中央会が指導とか経営相談とかをやるのが望ましくないとおっしゃっているんじゃないですか。むしろ、先進的な県の中央会があって、我々は指導とか経営相談はプロの民間にお任せします、純粋に県の農協を束ねるものとしての中央会をつくります、それを一般社団法人でつくりますというのは、今後の県の中央会のあり方としてはふさわしくないということになるんでしょうか。
○奥原政府参考人 今後、連合会に切りかわった県の中央会がやっていく仕事というのは、経営相談あるいは会員の求めに応じた監査ということでございます。
従来の中央会という行政代行的な組織でやっていたときの会計監査、業務監査の義務づけとは違うものでございますので、あくまで任意で、会員からの求めに応じて経営相談に乗ってあげる、あるいは求めに応じて業務監査を中心に監査をする、こういうことでございますので、仕事の性格は大きく変わっているというふうに思っております。
○福島委員 だから、そういうものだったら、別に法律に規定しなくてもいいですよね。中央会によっては、そういうのは全部アウトソースするんです。ですから、我々は連合会じゃなくて、一般社団法人になるんですということはできるんですか。
○奥原政府参考人 現在の県の中央会が社団法人になることができるかというお尋ねでございましょうか。であるとすれば、今回の法律の中で、この附則でもって、転換する先としては、県の中央会につきましては連合会が書いてございます。ですけれども、この附則の規定を使わないで、一旦解散をして新しくつくるということであれば、そこについてはいろいろな選択肢があるかというふうに思います。
○福島委員 そういうのを聞けば聞くほど、一体何のための中央会改革なのかと。
この間、地方公聴会に行ったときに、石川県の中央会の会長は、私が問うて、今回の改正で、これまでの仕事とこれからの仕事、何か変わることがありますかと言ったら、何も変わることはありませんとおっしゃっていました。私は変わらなくていいと思っているんですよ。変わる必要もないと思っているんですよ。
でも、そうであるとするならば、この中央会の改革なるものは、何のための改革なのか。一体何のための改革なんですか。任意であれ強制であれ、経営指導とかそういうのは変わらずに、監査とかそういうことはやるわけですよ。今までと同じように農政運動もやるわけですよ。これだけ時間をかけて議論をして、一体、中央会改革というのは何をなし遂げるのか。
ぜひ説得力のある答弁を大臣にいただけませんか。中央会改革で今回こうなるんだ。今までの話は全然よくわからないんですよ。何も結局変わらない、いろいろ法律の条文は変えてみたけれども実質は変わらない、附則で今までどおり続けるんだということであれば、今回の中央会改革は何のためにあるんですか。
○林国務大臣 ヒアリングでいろいろな御意見があったというのは私も聞いておりますが、まさに今のままであれば、今は古い制度のもとでやっておられますので、今考えられるとそういう感触を持っておられる方も当然いらっしゃるだろうと思います。
我々がこの中央会の改革というのをやったのは、やはり広い意味で地方分権をやっていただこう、全国一律に、食料が足りないときにしっかりと供給をしていくという役割を果たしてきたところから、背景としては過剰基調になってきて、地域の特性に応じていろいろな工夫をして、よってもって農業者の所得向上につなげる、こういうことでございますから、まさにそのために地域農協がその地域の農家のためにあって、その地域農協のために、今度は県の連合会がある。それをサポートするために全国の組織がある、こういう位置づけをさらに推進していこう、こういうことでございます。
今までどおりの、農家の組合員の方が農協に対してそれでいいんだ、そしてそれで、それによって地域農協の方が県に対してそれでいいんだということであれば、あるいは、今までよかったのでそのとおりやっていくというのは、当然、ガバナンスですからあり得ると思います。
いろいろな意見をお聞きすると、農協に対してももう少しこうしてほしい、ああしてほしいという意見は、委員もお聞きになっていると思いますけれども、いろいろ聞こえてくるわけでございますので、まさにその地域農協の独自性というのをさらに発揮をしてもらえるように、一連の農政改革の一環として、この農協の改革の中でも中央会の改革を提案させていただいている、こういうことでございます。
○福島委員 提案はいいんですが、今の答弁を聞いてわかる人は多分いないですよ。なぜ中央会の改革をすることが単協の活性化につながるのか、何度もこれは議論している話であります。
私はある意味、幽霊を見たりと思ったら枯れ尾花という話であって、何か全中ががちがちに単協を縛って、そのもとに統制をとっているから農協がうまくいかないんじゃないかというのは、これはまさに幽霊だと見てみたら枯れたススキであるという、その事例と私はひたすら同じような気がするんですよ。だから、この改革に対してシンパシーを感じる現場の人がなかなかあらわれてこないんだと思うんですよ。
大臣は地方分権ということをおっしゃいました。別の観点からちょっと質問させていただきます。
日本農業新聞の五月三十日の記事を資料二として配らせていただいております。「飼料米三十五万トンに倍増」、「重点県にキャラバン」という小見出しで、「農水省は、」「飼料用米の取組計画書の提出期限を七月末に延ばしたことに伴い、JAグループと一体でキャラバン隊を組み、飼料用米のさらなる積み上げを知事やJA中央会長にも働き掛けることを明らかにした。」とあります。
こうしたことは今回の農協改革に照らして望ましい方向ですか、望ましくない方向ですか。明確にお答えください、大臣。
○林国務大臣 先ほど申し上げましたように、農協改革は、地域農協が自立をして自由に経済活動を行って、農産物の有利販売など農業者の所得向上に全力投球できるようにすること、これを中心に据えております。
中央会については、この地域農協の自立と自由な経済活動を促して、これを適切にサポートする、こういう観点から見直したと先ほど申し上げたとおりでございます。
飼料用米の推進については、国の米政策も踏まえつつ、生産者団体などが需要をしっかりつかみながら農業所得の増大につながるということが基本であろうか、こういうふうに思っておりまして、米政策の改革を初めとする個別施策の推進と中央会制度の見直しというのは矛盾するものではない、こういうふうに考えております。
○福島委員 いや、私はそれは全く理解できませんね。先ほど大臣は分権と言ったんですよ。分権というのは、単協の皆さんが飼料用米を植えるか、植えないか、作付するか、しないかということは、それはそれぞれの単協の判断に任せるということじゃないんですか。皆様方が政策の枠組みを決めた上で、あくまでも選択は現場にあるということを示すのが今回の改革の方向性なのではないんですか。
これは中央会の会長に働きかけて、生産拡大の余地が大きい県を重点県に指定して、主食用米からの切りかえを直談判する、これはマスコミの言葉だからちょっと過剰に書いてあるんですよ、直談判するといって、行政、JAのトップに旗振り役になってもらい、飼料用米の増産の機運を高めていく考えだ、こういうふうな上意下達の行政代行機能を改めると先ほど答弁していたじゃないですか。これが行政代行機能じゃなくして何になるんですか。
まだやるんです。今回の中央会の改革の後も、このようにJAの系統を使った飼料用米の増産、私はそれが悪いと言っているんじゃないですよ、飼料用米の転換は必要だと思っているんですよ。ただ、今回、改革をして、そういう上意下達だとか中央集権を改めるとか自主性を重んじるというんだったら、まず率先して農林水産省の皆さん方は、全中とか各県の中央会に対して飼料用米の増産なんて言うべきではないんじゃないですか。どうですか、大臣。
○林国務大臣 JAグループにおいて、主食用米の価格の安定のために主食用米の需給の改善が不可欠、こういう認識を持っておられるというふうに承知をしておりまして、JAグループとして自主的に二十七年産の飼料米の生産目標を六十万トンと設定して推進されておられる、こういうことでございまして、今お話があったように、農水省が全中に対して行政代行的に推進をさせているということではないということでございます。
○福島委員 では、この農業新聞の記事は間違いということですか。農水省が中央会の会長らに働きかけるとしているわけですから、働きかけをしている事実もなければ、今後、こういうこともやるつもりはないということでよろしいんですか。
○林国務大臣 主食用米の需給の改善、それから飼料米の推進というのは政策としてやっておりますので、この政策の御説明をするということは当然仕事としてあり得るのではないかと思いますが、先ほど申し上げましたように、JAグループとして自主的に目標の数字も設定してやろうとしておられる、こういうふうに承知をしております。
○福島委員 だから、私は本当にそれがけしからぬと思っているんです。
結局、農水省の皆さん方は、全中や農協、JAグループの系統に頼っているわけですよ。あるいは、これからも頼る必要があると私は思いますよ。農業に完全に個人主義を認めて、それぞれでやってくださいといったって、うまくいかないんです。やはりみんなで共同してやらなきゃならないときがあるし、そのためには、今までの系統組織というのはやはり役に立っていたんですよ。これからも農水省は役立てるべきだと私は思いますよ、ちゃんと表で、きれいな形で。
ただ、それを一方でやりながら、今回、六十年ぶりの改革だとかといって、中央会を潰すようなふりをして看板のかけかえだけをやるというのは、私は不誠実だと思いますし、現場のJAの皆さん方は、四の五のいろいろ言われながら、飼料用米を作付するために農家と議論をしながらやって、頑張っている人たちがいっぱいいらっしゃるわけですよ。その方たちの前で、これからの中央会は、もう今までの農協の自由な経営の妨げになるから要らないとか言ってやることこそが、私は、現場の創意工夫を妨げ、やる気をなくさせる一番の大きな原因になっていると思うんですよ。
格好つけのための、やったふりの改革のきわみが、この中央会の改革なるものの姿であり、私は、先ほど篠原さんがおっしゃったように、この部分は今までどおりに戻した方がいいと思いますよ。せいぜい、単協に対する強制的な指導みたいな、模範定款を定めるみたいなものは見直す余地はありますけれども、そのぐらいの程度で済む話を、中央会の廃止だとかといって大げさに言うのはぜひともやめていただきたいと思います。
次に、時間がなくなりましたけれども、組織分割、株式会社の話に行きます。
今回、協同組合が株式会社とか生活協同組合とか医療法人に変わる、そうした条文が長々とこの重い資料の中にありますけれども、一体このようなニーズはどこか現場から出ているものなのでしょうか。現場のニーズが一つでもあれば教えてください。
○奥原政府参考人 農協の事業、それから利用者が多様化する中で、事業を適切に運営する観点から、現在でも、農協や連合会が事業の一部をその子会社に行わせている実態があるというふうに考えております。
地域農協でいいますと、生活物資の供給に係る会社が百十八社、それから農産物の加工販売に係る会社が百十六社など、合計で六百九十五社ございます。それから、全農の方も、物流会社とか貿易会社など、全部で百十七社の子会社を持っているということでございます。
従来、組織を分割して、一部の組織を株式会社に組織変更するという方式がありませんでしたので、子会社とするしか方法はなかったわけですけれども、今回、分割と組織変更を可能とすれば、この方式を活用することも十分考えられるというふうに考えております。
○福島委員 今局長がおっしゃったように、現に必要な事業は子会社でやっているんですよ。わざわざ協同組合を組織分割してまで株式会社に転換しなければならない理由というのはどういう理由であり、それはどのようなニーズに基づくものなんですか。教えてください。
○奥原政府参考人 やはり、子会社でつくる場合と、組織を分割して会社に転換するという場合ではちょっと違ってくる部分がございます。
子会社の方式の場合には、その会社の株主は、当然、農協自身ということになります。したがって、農協がその子会社の運営方針を決定していくということになりますけれども、分割をして組織変更するということになりますと、農協であれば、正組合員あるいは准組合員の方がその新たにつくった会社の株主になるということになりますので、正組合員、准組合員を含めて、こういった株主の意思によってその会社を運営していくことも可能になるということでございます。
○福島委員 全然よくわからないですね。農協出資の子会社だって、その農協自身は組合員の意思によって運営されているんですから、組合員のコントロール、ガバナンスがきいているのであって、わざわざ組合員が株主になるために株式会社になろうなんという奇特なニーズは、私は日本のどこを探しても見つからないと思いますよ。
先ほど来、具体的なニーズについてお答えになっていませんけれども、具体的なニーズはないと考えてよろしいですね。
○奥原政府参考人 今子会社で持っているところは、あるいは今後子会社をつくる場合には、今後この方式ができれば、分割をして組織変更でやるということがあり得るというふうに考えております。
それから、もう一点ちょっと申し上げておきますけれども、先ほどの子会社方式の場合は、組合が、農協が株主ですから、子会社の運営方針も農協が決めます。農協が決めるというときには、議決権は正組合員しか持っておりませんので、准組合員の意思が反映しない形になります。
ですけれども、組織変更して会社になった場合、この正組合員、准組合員も株主になることはできますので、准組合員を含めて議決権を持った上でその会社を運営していくということは可能になるということでございます。
○福島委員 それこそ、まさに官僚の机上の空論というんですよ。
奥原局長がそれだけ准組合員に配慮を示していただいているのは非常にありがたいことなのでありますけれども、実際、株式会社になったら、組合員や准組合員が株主になりたいなんていないですよ。上場益をもらうためになりたいんですか。それこそ、まさに論理の遊び、議論の遊びであって、今の農協は柔軟に、営利事業でやったり、員外利用を進めるものは、子会社でやったり、あるいは、この間もJAの小松の方がいらっしゃいましたけれども、直売所を第三セクターの中に入ってやったりとか、いろいろな柔軟な形態はできるわけですよ。私は、今回、全然意味がないと思います。
しかも、今回、改正後の七十三条の二の条文を見てみると、「第十条第一項第三号又は第十号の事業を行う組合を除く。」としてあって、三号は信用事業、十号は共済組合でありますから、共済とか信用を行う農協は一体として株式会社になることはできないんですよね。どうしてですか。何で経済事業だけ分割して株式会社になって、むしろ株式会社になった方がいい信用とか共済は株式会社になれないんですか。
○奥原政府参考人 昨年六月の政府・与党の取りまとめの中では、この信用事業、共済事業につきましても組織変更して株式会社になることを検討するというのは入っております。
その後、金融当局、金融庁の方ともいろいろ調整をしてきておりますけれども、この部分につきましては、金融当局との調整がまだついておりません。中長期にかけて、さらに検討するということになっておりますので、ここの部分については今回の法律には盛り込まれていない、こういう経緯でございます。
○福島委員 だから、先ほどの省令の話も同じですけれども、普通、法律を出すというのは、政府の中でちゃんと調整をつけて、具体的な事例を調査した上で法律をつくり、そのもとの省令をつくるというのが当たり前じゃないですか。金融庁と調整しない、できていないからそこが引っ込むというんだったら、今回、この条文を全部削除してくださいよ。調整してもう一回出し直せばいいじゃないですか。
逆に言えば、今このような条文になっているということは、地域の総合農協は、やはり我々が言うように、株式会社なんかになりようがないんだから、総合農協として総合農協のままで、株式会社になることは望ましくないと考えているということでよろしいんでしょうか。
○奥原政府参考人 信用事業、共済事業の部分については切り離して株式会社にすることはできませんので、その部分は農協本体で今後もやっていくということになります。
ただ、中長期にわたってこれは検討することになっておりますので、いずれここについて結論が出るかもしれません。
○福島委員 だから、中長期にわたって変わるかもしれないというんだったら、ちゃんと中長期的に議論した上で法律を出すべきじゃないですか。今後、総合農協が株式会社になる可能性もあるし、そうしたいんだけれども、金融庁と調整がつかなかったからその部分だけ外したなどという、そういう一時的な、仮普請みたいな法案を出して国会で審議を求めるというのは、私は、国権の最高機関である国会に対して甚だ失礼なことだと思うし、前代未聞のことだと思いますよ。
しかも、そのもとになるニーズもないわけですよ。現に、今、子会社をつくればできるものを、それを、わざわざ分割して株式会社になるなどという誰も想定しないものをこの条文で入れている。私は、今回の法案のいびつさというものがここで明らかになっているんじゃないかなと思っているんです。
私は、この条文は、うがった見方をすれば、附則第五十一条の准組合員の利用状況の調査とか、あるいは農協法に基づく員外利用の調査結果を見ながら、あんたら、員外利用が多いとか、准組合員の比率が高いんだから株式会社なり医療法人になれという業務改善命令なんかをかけることを目的にしているものじゃないかというように思えるんですよ。
先ほど全農は、何か株式会社に転換した方がいいような話もありました。確かに与党の中では、全農、経済連は、経済界との連携を、連携先と対等の組織体制のもとで迅速かつ自由に行えるよう、農協出資の株式会社に転換することを可能とする、そうしたら、農協法に基づき、員外利用規制や事業範囲の制約を受けないからいいんですよと言っているんですけれども、そんなニーズは全農の中にあるんですか。どうですか。
○奥原政府参考人 この点は、基本的に、現在の全農の仕事のままでという話ではないと思っております。
これから先、全農が、あるいは経済連もそうですけれども、農業の発展あるいは農業所得の向上、こういったものにつながるような仕事としてどういうことをやっていくのか、これはきちんと戦略を立ててやっていただかなきゃいけないと思っておりますけれども、そういった新しい仕事に取り組むときに、従来の農協の枠組みのもとでやっていくことが本当にメリットがあるのか、あるいは会社になった方がよりやりやすいのか、そういったことをきちんと判断していただく、こういうことでございます。
○福島委員 それは、奥原局長の考えか、JAのニーズなのか、どちらでしょうか。
○奥原政府参考人 この法律案をつくる過程では、当然、全農を含めて、意見交換をしてまいりました。
最終的にこの骨格について御了解いただいておりますので、そういう意見はJAグループの中にもあるものと承知をしております。
○福島委員 今、重大な答弁をされました。JAグループの中にも全農を株式会社にしたいというニーズがあるからこの法律をつくったということでありますけれども、全農は協同組合の連合会でありますよね。それは、それぞれを構成する組合員、つまり全農のメンバーとなっているそれぞれの人たちの意思によって決められるものでありますよね。
農水省が相手をする全農の特定の人がそういうニーズがあるとか、あるいは、農水省が頭で考えてそちらがいいというのでは動かない世界が協同組合連合会としての全農なんですよ。
今の全農が問題がないとは言いませんよ。しかし、ほかにも同じような民間の商社とかなんとかがいろいろある中で、単協だってそこは使い分けをしているんです。協同組合的な事業が必要なときは全農を通せばいい、それじゃなければ民間と経営をすればいい。そういう意味では、協同組合と民間の企業は競争状況にもあるわけですよ。しかし、協同組合は協同組合としての意味があるから全農というのがあり、協同組合の連合体として存在しているわけですよ。
私は、さまざまな選択肢があっていいものの、その一つの選択肢を潰しかねないのがこの全農の株式会社化という話でもあるし、また、そのニーズがあるかもわからないような、陰口程度の話でやらないでほしいと思うんです。
そこで、もう一点。先ほどちらりと申し上げましたけれども、与党の取りまとめを見ますと、農業者の協同組織という農協法制のもとでは員外利用規制は本質的なもので、対応に限界があることに配慮する必要がある、必要な場合には、JAの組織分割や、組織の一部の株式会社、生活協同組合等への転換ができるようにする、このことを前提に、農協の農業者の協同組織としての性格を損なわないようにするため、准組合員の事業利用について、正組合員の事業利用との関係で一定のルールを導入する方向で検討するという取りまとめになっております。
これを見ると、まさに附則の五十一条、これは、要するに、員外利用とか准組合員の利用規制のために、場合によったら、組織分割や組織の一部の株式会社、生活協同組合への転換ができるような一里塚であって、それができるようにするために、今回の株式会社への転換や、生協やあるいは医療法人への転換の規定を設けたように誤解を受けがちだと思うんですけれども、大臣、今後、准組合員利用調査あるいは員外利用について厳しく調査を行って、その結果、例えば、農協法に認められている改善命令などの権限を使って特定の農協の組織を分割させたり、株式会社化させたり、そういう強権的なことをやる目的はないですよね。大臣、ないのであればないと明確にお答えください。
○林国務大臣 そこの与党の取りまとめのところは、右側を見ていただきますと「別紙」というふうになっておりまして、さらに議論を深めまして、この「別紙」にどう書いてあるかといいますと、「准組合員の利用量規制のあり方については、直ちには決めず、五年間正組合員及び准組合員の利用実態並びに農協改革の実行状況の調査を行い、慎重に決定する。」これが最終版でございまして、これの最終版を含めて、JAの皆さんと最終的に合意を見たということでございますので、この文言に忠実にやってまいりたいと思っております。
○福島委員 ちょっと正面から答えていただいていないので、もう一点言いますけれども、要は准組合員の利用調査とかあるいは農協法上認められている員外利用に関する調査というものを、それぞれの農協の組織分割や組織形態の変更を促すための手段としてこの調査を使うことはありませんよねという確認でございます。どうですか。
○林国務大臣 まさにここに書いてあるように、准組合員の利用量規制のあり方について議論をするために調査をする、こういうことでございますので、あくまで、准組合員の利用量規制をするかしないかも含めてあり方でございます。そのための実態調査をするということで、それ以外のことは何も書いておりませんので、それはそれでしっかりと書いてあるとおりにやりたいと思っております。
○福島委員 ありがとうございます。
一番ここが誤解を生む点だと思うんですよ。株式会社とか、例えば、今の厚生連の病院が医療法人化するなんというのは誰も望んでいないし、むしろ、現場では不安の声の方が大きいわけですよ。
この条文があるがゆえに、そして附則があるがゆえに、農林水産省はこれから五年かけて、一体何をやろうとしているのかという、大きな疑念が農協や農業関係者にあることは事実だと思うんですよ。
口では分権だとか単協の経営の自由を任せると言いながら、そこかしこに権力のやいばが見えている。別に、私は反権力を気取るつもりはないですよ。ただ、理事の要件にいきなり強権的に認定農業者過半数という要件を入れたりとか、准組合員の利用規制と株式会社のものをあたかもセットで読めるような与党の取りまとめの文書も含めて見ると、これが始まりの一歩で、これからさらにずたずたに農協組織がされるのではないか、農村の基本的なインフラが崩壊させられるんじゃないかという大きな危惧を持っているからこそ、先ほど来言っているように、農村や現場では、この法案を誰も積極的に応援しようとする人がいないという悲しい現状になっているんだと私は思うんですね。
ですから、今回の法改正は、始まりの一歩なのかもしれないけれども、私から見たら非常にいびつな法律。私自身、何本も法律を書いてきましたけれども、こんないびつで異常な法律というのはそうそう見たことはないですよ。また、後の反対討論でも申し上げますけれども、いろいろな面で、こう言ったら申しわけないけれども、美しくない法律であると言わざるを得ません。
かつての荷見安さんのように、みんな農水省の先輩方、昔の本を今読みあさっていますけれども、物すごい燃える思いを持って農政に取り組んでいたんです。夢があった、理想があった、理念があった。でも、今回の農協法や農業委員会の改正には、そのような理想とか理念というのは見当たらない。何か、改革をやったふりをして格好つけているだけの、言いわけのような法律にしか見えません。
私は、この問題を、今回、きょうで採決になってしまうのかもしれませんけれども、しっかりとチェックしていって、そもそも今の政権の農政のビジョンは何なのか、理念は何なのかということをしっかりと明らかにしてまいりたいと思っております。
時間が参りましたので質問を終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
○江藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時四分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。岸本周平君。
○岸本委員 民主党の岸本周平でございます。
三十分いただいておりますので、前回の続きをさせていただきたいと思います。
きょうは採決の段取りになっております。与党の同僚議員の諸君の中におかれても、決してこの法案がベストどころかセカンドベストでもないという点について、心の中ではひそかに御賛同いただけるものと思っております。せっかくの審議ですので、議事録にきっちりと残すために審議をしたいと思います。
今回の法案のように、与党推薦の意見陳述人の賛成すら得られず、現場からの反発を得、そして、野党の修正の提案に一顧だに耳を傾けることなく、本日採決をされていくわけでありますけれども、やはり、いかにこの法案が、先見の明がなく、愚かしいものであるかということは議事録に残しておかないといけませんので、五年後、十年後に私たちの後輩が立法府に籍を得たときに、この議事録を読んで、なるほどな、いかにその時点の行政府の読みが過ちであったかということを示す、そのために議事を進めていきたいと思います。大変情けない議事になりますが、おつき合いをいただきたいと思います。
この法案の中身について、先ほど来、篠原先輩の質問等もありました。本体の話はそこで尽きていると思います。私は、今回の法案の結果、被害者となったJA全国監査機構の問題についてお尋ねをしていきたいと思います。
組織いじりのための組織いじり、実際、農協の理事会あるいは農業委員会などの自主性を奪うこと以外に何ら大きな実態の変化のない、実は附則でいろいろなことが書いてありますので、結果的には大きな変化のない改革になるわけでありますけれども、唯一困るのはJA監査機構であります。全国監査機構はいけにえになったわけであります。そこで働く真面目な農協監査士の皆さん三百三十一人を切り捨てる、こういう判断を政府はされたわけであります。
もちろん、附則五十条、これからお聞きしますが、いろいろなことが書いてあります。そして、大臣も先日おっしゃいましたが、移行期間がある、その間は四者協議をするんだということでありました。
移行期間は結構です。しかし、移行期間が終わった後、JA全国監査機構が普通の監査法人になった途端、それは通常の監査法人として生き長らえてもらわなきゃいけない。それについて、言葉足らずでしたけれども、私が申し上げたのは、それは無理ですから、五年とか数年の、そこで言う、かぎ括弧つき経過措置みたいなものを四者協議で話し合っていただいたらどうですか、公認会計士協会の、彼ら自身が自治的に持っている大変厳しい規則を、JA監査機構が、経過期間を経たとはいえ、その後、直ちにクリアすることは絶対無理ですから、だからこそ経過期間的なものを置いて、その間、少しは時間の猶予をいただけないかというような議論を前回したつもりであります。
例えば独立性の原則、これは守ってもらわないといけないわけです。普通の監査法人になった、名前がわかりませんけれども、新JA監査法人といたしましょうか、新JA監査法人は、移行期間を経て普通の監査法人になられたら、公認会計士協会の倫理規則は守ってもらわなきゃいけない。そうすると、独立性の原則は守ってもらわなきゃいけない。一つのクライアントだけと契約を結んではいけない。例えば、現状では収入の半分以下にする、これが一つのセーフガードであります。
しかし、これをすぐには守れないでしょうから、五年なら五年かけて、独立性の原則を守るように目指していくということを私は前回の質問で提案したわけであります。
そこで、同じように、幾つか大変大変厳しいハードルがありますが、時間もありませんので、一つだけ取り上げます。
二重責任の原則というのがあります。経営者は財務諸表をつくる責任があります。そして、公認会計士、監査法人はその財務諸表をチェックするという責任があります。二重性、二つの責任なんです。もちろん、財務諸表というのは経営の結果でありますから、経営者が財務諸表をつくる責任の背景には経営そのものの責任もあります。
そうしますと、経営のコンサルタントをし、あるいは経営者が財務諸表をつくるお手伝いをする、いわゆる監査事業と、一方で、その結果として出てきた財務諸表をきちんと会計基準に基づいて監査する責任主体、これは当然でありますけれども、同じ人がやってはいけないわけであります。財務諸表をつくった人が財務諸表を監査することはあり得ないわけであります。
しかし、JA全国監査機構はこれまでそれが許されてきたわけであります。なぜかというならば、それは、協同組合である農協の成り立ちからして、いろいろな歴史的経緯の中で、業務監査もし、かついろいろな情報をとりながら会計監査もする、その中で、もちろん、ある程度のファイアウオールとかなんとかがあるわけでありますけれども、そこの情報共有効果があることのメリットがあって、それまでそのことがむしろメリットとして認識され、それが続けられてきたということだろうと思います。そもそも二重責任の原則に反することをしていたわけであります。
しかし、これが経過期間を経て、一般の監査法人になったときに、新JA監査法人が二重責任の原則から免れられるはずもありません。そして、都道府県の中央会が引き続き監査をする。これも後でお聞きしますが、この監査業務には会計監査といわゆるコンサルティング業務が入るんだろうと思いますけれども、そうすると大変難しい問題が起きると思います。
新JA監査法人がこの二重責任の原則を守るたてつけの中で、県の中央会が引き続き監査をするということが本当に併存できるのかということについて、林大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 監査法人及び公認会計士は、公認会計士法の規定に基づいて公認会計士協会の会則を遵守する義務がございますので、今お話のありました日本公認会計士協会が定める倫理規則は、日本公認会計士協会の会則に基づき定められておりますので、監査法人等はこれを遵守しなければならないわけでございます。
倫理規則第六条で監査法人等の守秘義務原則というのがございますが、全国監査機構が外出しして設立する監査法人も公認会計士法に基づく監査法人であるということですから、この守秘義務を初め、関連する規定は遵守しなければならない、こういうことでございます。
今、二重責任の原則ということをおっしゃっていただきましたが、まず、財務諸表の作成の責任は経営者にある、これが第一義の責任、これが大前提でございますが、さらに、監査人の責任は、独立の立場で、経営者が作成した財務諸表に対する意見を表明する、これが第二義の責任でございます。外出しして設立する監査法人もこれを遵守しなければならない、こういうふうなことになるわけでございます。
○岸本委員 そのとおりなんですけれども、新JA監査法人が経過期間を経て監査法人になりました、それで、例えば会計監査を担当します、それはそれで結構ですよね。
しかしながら、一方で、附則によって都道府県の中央会がコンサルティング業務が続けられることになっていて、仮にコンサルティング業務をしています、ここはもちろん法形式的には別なんですけれども、都道府県の中央会がコンサルティング業務をして、お姉さんかお兄さんか知りませんが、非常に縁の深かったところが会計監査をするということになると、二重責任の原則に対して違反するおそれが実質的にあるんじゃないかということを申し上げているわけです。
○林国務大臣 失礼いたしました。後でお聞きになると思って、後でお答えしようと思っておりました。
守秘義務は、これは本人の同意があれば、正当な理由ということで解除されるということになります。
したがって、都道府県中央会から組織変更した農協連合会、これが行う経営相談は、会員の求め、単協の求めに応じて行うものであるということですので、会員が、全国監査機構を外出しして設立する監査法人、また他の監査法人から指摘された内容等についても、会員から提供を受けて相談に応じることは可能である、こういうことでございます。
また、農協連合会が、農協に対して、監査法人から指摘された内容を提供することを加入の条件とする、こういうスキームをとれば、情報の共有や連携を図ることは、最初から、加入したときから想定されるということで、十分できる、こういうふうに考えております。
○岸本委員 厳密に言うと、そういうことで法律違反にはならないかもしれません。
しかし、私が申し上げているのは、そうなると、もともと非常に縁の濃かったJA全国監査機構が、外出しされた新JA監査法人が会計監査をする、それに対して、一方で、もともと縁の深かった都道府県の中央会がコンサルティング業務を行うということであればあるほど、独立性の原則にやはりすごく抵触してくるんですね。
ですから、もう一度言いますと、二重責任の原則をある程度クリアできるというたてつけは、その前提は、あくまでも独立性の原則が守られている、つまり、先ほどのセーフガードでいうと、新JA監査法人の収入はいわゆるJA関係以外から五割以上持っていないと、やはりそこは厳しい指弾を受けるし、そもそも監査業界では生きていけないんだろうと私は思います。これは指摘だけしておきます。そこはそうならざるを得ないと思います。仮に、今ここで国会審議をして、そうでない、ああでないと言っても、結果として、公認会計士業界の中ではそういうことになるんだろうということを申し上げておきたいと思います。
それからあと、附則の五十条、もちろん余り細かい話を申し上げるつもりはありませんが、この中の第一項四号で、いわゆる今の農協監査士さんが「監査の業務に従事することができること。」というのが書いてあります。
ここで言う「監査の業務に従事することができること。」という意味なんですけれども、農協監査士は公認会計士ではありませんので、公認会計士としての監査業務はできません。ここで書いてある監査の業務というのは、コンサルティングというところの監査なのか、あるいは、会計監査である場合には、あくまでも補助者としての業務に従事することができるということなのか、この点についてお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 まず、先ほどの、最初の部分でございます。実は、この間、先生はおられなかったかもしれませんが、ほかの方の御質問で同じことがございまして、独立性の話でございますが、監査法人等の特定の依頼人に対する報酬依存度が高いことは、おっしゃるように、独立性を阻害する、こういうふうにされております。
この場合の依頼人には関連企業等も含まれておりまして、関連企業等とは、依頼人が直接または間接的に支配している企業、こういうふうに書いておりますので、例えば、大企業の親会社、子会社を含めた企業グループというのはこういうことに当てはまるわけですが、個々の農協ということになりますと、ほかの農協や連合会を支配する関係、支配される関係にないということでございますので、ある農協が他の農協の関連企業等に該当することはないと考えておるわけでございます。
したがって、農協のみの監査になった場合でも、農協が複数、多数であれば、この独立性の保持の観点から直ちに問題になるものではないと考えております。
それから、今のお尋ねの件でございますが、まさに先生おっしゃったように、今度は公認会計士法上の監査法人ということでございますので、農協監査士の場合は監査の補助に当たっていただく、こういうことになろうかと思います。
○岸本委員 まさにそういうことであります。
もう時間もありませんので、例えば五号で、ここは、農協監査士の方で公認会計士の試験に受かられた方が、これは実務経験が二年ないといけないんですけれども、この実務経験については特別の配慮をすると書いてありますけれども、これも特別なことをするわけじゃないんです。あくまでも、財務諸表をつくる経験があればそれをカウントしてあげますという、現在行われている通常のルールが適用されますということしか書いていないわけなんですね。つまり、当たり前のことしか書いていないということであります。
やはり、農協監査士さんは全くこれまでとは違った補助者の地位になりますし、農協監査士さんが公認会計士の試験を通らない限りはきちんとした会計監査はできないわけでありますので、ここは、農協監査士さんにとっては、本当に、これまでやっていた仕事とは違う仕事をしていかなきゃいけないということになります。
これも、この前、委員長の御指示で年齢構成の資料を出していただきました。ありがとうございました。非常にバランスのとれた構成です。五十代の方が若干多くなっていますけれども、それより若い方は非常にバランスがとれていますので、それぞれの方が、これはもう農協や農水省を頼ることなく、みずからの人生を切り開いていくということになるんだろうと思いますけれども、そういうことが今明らかになったわけであります。
もう一つ同じことを聞きますけれども、「実質的な負担が増加することがないこと。」という規定も三号であります。
これは私には意味がよくわからないんですが、今の単位農協が受けている監査の、これは別に費用を払っているわけじゃありません、賦課金の中で賄われているということなので非常に不透明で、今農林省当局に聞いても、わかりませんということになると思いますので聞きませんが、そのかぎ括弧つき負担が実質的に増加することがないことということの意味がよくわからないんです。
もちろん、数字的には、中央会監査のコスト、ある程度の、賦課金のあれを単位農協当たりで割った数字とか、あるいは公認会計士が信金や信組の監査をしている規模別の報酬なんかはわかりますけれども、そういうことではなくて、実質的負担がふえないことというのをここで書いてみても意味がないわけであります。
これは、要するに、ちゃんとした監査を受けなきゃいけないわけです。ちゃんとした監査にはちゃんとした監査の費用が発生する。これが仮に、今お答えにならないかもしれないけれども、今払っている不透明な実質的負担を上回った場合に、どうやってこれはふやさないようにできるんですか。補助金でも渡すんですか。大臣、いかがですか。
○林国務大臣 会計監査については、農協の信用事業を、イコールフッティングでないといった批判を受けることなく、安定して継続できるようにするために、信用金庫、信用組合と同様の仕組みに移行していく、こういうことにしたわけでございますが、まさに今御指摘のあった附則の第五十条で、移行に関しての配慮事項ということで、実質的な負担が増加することがないこと等を規定しております。
この改正法の施行後、具体的な内容を検討していくことになりますが、現時点で、今おっしゃっていただいたように、監査も中央会の賦課金で賄われておりますので、監査コストが幾らか明確でないところがございます。
したがって、これまでの農協の負担がどれぐらいなのかということを確認した上で、会計監査人となった場合の負担がどの程度になるか検証していく、これをまずやって、そして、必要な場合には、公認会計士協会と連携した農協の組織、事業内容等についての監査法人への説明などなど、農協の負担が実質的に増加しないように、公認会計士協会等とも協議をしながらさまざまな方策を検討していくことになる、こういうふうに考えております。
○岸本委員 これだけじゃないんですけれども、この法案の審議を聞いてというか参加して、私自身、違和感があるのは、全てこれからなんですね。実質的負担が幾らかわからないのに、附則には実質的負担という言葉が書かれていたり、午前中の局長の御答弁にも、これから調査すると。
普通は、これから調査じゃなくて、私が役人をやっていたころは、調査をして立法事実が明らかになったら、その立法事実をもとに法案を提出する。そのためには、審議会を開いて、その審議会の場で立法事実を明らかにし、そこでいろいろな事実があって、役所が一年かけ、二年かけて調査した結果をそこに出して、審議をしていただいてつくっていくというのが普通のプロセスなんです。
何でもかんでもこれから調査しますというのは前代未聞でありまして、今、福島議員もわいわい言っていますけれども、いや、私たち真面目に生きてきた人間からすると、本当に信じられないんです。真面目に公務員をやってきた人間からすると、こんな仕事のやり方が許されるということ自体が許されない、あり得ない。まず調査して、その調査事実に基づいていろいろな法案をつくる。場合によったら、技術的なことはいいですよ、政省令へ落としたって。政省令に書くことをこれから調査しますというのは聞いたことないですよ。
だから、実質的負担がふえるのか減るのかもわからないわけですよ、現状では。たまたまふえたら何とかしますと書いてあるだけであって、こんな条文、我々はこの後もちろん反対しますけれども、与党の先生は賛成していいんですか、本当に。与党の先生、こういう法案に賛成したら、皆さんの議員の歴史に……(発言する者あり)いや、汚点とまでは言いませんけれども、今不規則発言がありましたから、それはちょっと言い過ぎですけれども、それは問題ですよ、わからないんですから。
仮に、例えば、新しくできた新JA監査法人がディスカウントしたっていいんですよ。ディスカウントしたって、そのこと自体はビジネスの世界ですから。ただ、これが長く続くようだと、これは公認会計士協会としては困りますねということになります。
それで、今大臣がお答えになりましたけれども、私が申し上げているのは、それは農協一つ一つは独立しているでしょう。しかし、国民はそうは見ませんよ。トータルの農協というのがあって、JA全中というのがあって、大きなのが少しかぎ括弧つき改革でばらけましたね。しかし、農協という大きな、これまで政治的なあるいは経済的な力を持っていた人たちの集団として見るわけです。
だから、独立性の原則も、厳密にどこまで見るか。それは形式論的にはそうかもしれない。しかし、実質的にはA農協もB農協も農協という、例えば中央会に入っている農協という一つの、同じ目的を持ち、同じようなことをしているグループだというふうに見たときには、厳密に言えば、独立性の原則の議論は十分成り立ち得ます。
それは、何度も言っていますように、移行期間を経た後、厳しい監査の業界に入って、仮にディスカウントすれば、値段は安いわ、この後言いますけれども、公認会計士はいないわ、人はいないわ、能力はないわ、レビューはしないわ、品質管理はしないわ、そして、独立性の原則も二重責任の原則も何となく逃げていますよねという、異質な、言葉を選ばなければいけませんけれども、三流の監査法人として細々と暗がりで生きていくんですか、そういうことはできませんよということを申し上げているんです。
公認会計士協会の中で、ここは全て日が当たっているんです。今までは法律がありましたから、JA全国監査機構は、一つの非常に守られた、それは理念があったから、協同組合という中の一つの法体系の中で、許されている中でかぎ括弧つき監査をされていたわけですよ。
これが、JA全国監査機構だけともかくいけにえにして、こいつをぽんと外へ出して一般の監査法人にするという、しかも、そこで働いている生身の人間の三百三十一人の農協監査士の人生の未来も考えることなく、血も涙もなく、すぱっと切り捨ててこの改正をなさるから、五年後、十年後、お困りになりますよということを申し上げているんです。
トータルで、大臣、どうですか。私、自民党は、本当に人情に厚くて、すばらしい政党だったんですよ、こんな血も涙もない改正なんかすることはなかったと思いますけれども、大臣、いかがですか。
○林国務大臣 今、括弧つきで監査、こういうふうにおっしゃっていただきましたが、まさに協同組合という中で、例えば先ほどの二重原則からいうと、全くそれと違うことをやっていた、こういう御指摘だというふうに思いますが、まさにそういう状況の中で、農協の信用事業はイコールフッティングなのかという批判が常にあったということは、岸本委員もよく御案内のとおりでございます。
今回、そういう批判を受けることなく、安定して継続的に信用事業をやっていけるようにということもあって、まさにお言葉をかりれば、日が当たるところにしっかりと出ていただいて、公認会計士法に基づくものをやっていこうということでございますので、間違っても、何かここだけまた違ったことをするということになれば、そもそもイコールフッティングでないという批判がまた出てくるということになりますので、そうならないように。
ただ、そういう理由で改革をやっていこうということでございますので、移行については今からできる限りの配慮をしていこうということで、私もまだ二十年足らずの経験でございますけれども、そういう人情に厚い自民党はまだ健在ではないかと思っておりますが、そういう意味でこういう配慮規定をたくさん設けてあるのではないか、それは、与党の取りまとめで、先ほども御紹介したように、そういうことがありまして、それをこの条文に落とし込んでいるというところもあるわけでございます。
○岸本委員 今の御答弁は非常にすっきりとされていました。大変明快な御答弁をいただいたと思います。
それはそれで理想の姿だと思いますが、私が申し上げているのは、少なくとも農協監査士の皆さんは大変ですよ。それから、一方で法改正があれば、現場ではそれに対応があるでしょうから、だからこそ、都道府県の中央会で勤務している農協監査士さんには、彼らなりの監査の仕事もあるでしょうし、それは多分コンサルティング業務的なものになっていくんだろうと思うんですね、どうしてもそこは。そうすると、余り批判的なことばかり言っていてもしようがありませんので、多分、農協監査士の三百三十一人の方は都道府県でコンサルティング業務的なことをしていって、生きがいを求めていっていただく、あるいは若くて元気のある人は公認会計士試験に挑戦していただく。
一方で、今度できるJAの新監査法人は、それこそ今大臣がおっしゃったように、正々堂々と公認会計士の業界で一流の監査法人として生きていけるように、いろいろなルールをこれから守っていく。
そのために、今三十人しかいない公認会計士は、お客様の数との比較ですから、今後どれだけの農協さんが選んでくれるのかはわかりませんが、少なくとも、これまでおつき合いがあった以上、これは公認会計士協会側から見れば、恐らく多くの農協は新JA監査法人をお選びになる蓋然性が高いとマーケットは見ています。そうだとすれば、三十人の公認会計士では少な過ぎます。余りにもそれでは品質管理ができませんので、これをどんどんふやしていかれることになるんだろうと思いますね。
今でも、JA全国監査機構のトップの方は、大変大きな監査法人のトップを経験されていた方で、人格、識見ともすばらしい方でありますから、彼なり、彼の後任の方がリーダーシップをとって、そこは全く新しい組織になっていただくんだろうと思います。
ぜひそこは、経過期間の間にも、今私が批判的に申し上げたことが起きないように、新しいJA監査法人が正々堂々と公認会計士の業界で一流の監査法人として活動ができるということを、農林水産省としてもバックアップしていただくようにお願いしますし、我々はそれをウオッチしていきたいと思います。これが、五年、十年後、本当にそうなっているのかいないのかについては、これは立法府としてしっかりと検証をしていきたいということを申し上げまして、質問を終わります。
どうもありがとうございました。
○江藤委員長 次に、小山展弘君。
○小山委員 民主党の小山展弘です。
きょうは、三十分と、岸本先生が少し早く終わっていただいたので、少しありますが、早速質問したいと思います。もし、質問し切れないものについては、また質問主意書のような形で、ちょっとお手間をかけますが、お願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
冒頭、社会的ないけにえを求める、とりあえず、悪くないけれども、たたいてしまおう、こういうような劇場型ポピュリズム政治というのは私はやめるべきだと思っているんです。二〇〇五年の郵政民営化はまさにこれだったと私は思っています。あの当時は、与党の自民党の先生方の中でもじくじたる思いの方もいらっしゃって、その後の劇場型の刺客騒動とかいろいろありましたけれども、結局、どうなったかというと、郵政民営化見直し法案が通って、行き過ぎた部分については修正が図られた。一体事業をやっていた当時には戻らなかったわけですけれども、相当な修正が図られたわけでございます。
そういう繰り返しは、私どもにとっては、ひょっとしたらプラスかもしれない。農協法改正法案見直し法案というのが将来出るかもしれない。だけれども、これは現場で働いている農家の皆さん、あるいは役職員の皆さんにとっては不幸だと思うんです。私は、今回の全中あるいは全中監査、一連の農業委員会のものも含めて、これとちょっと似たところがあるという印象を持っております。
全中、これは政府も、今までの答弁の中で、一定の役割を果たしてきたということは答弁がありました。認めておられます。
また、単協の経営の自由を制約したというような具体的な事例も、アンケートはありましたけれども、これは主観的なものですし、しかも、そのアンケートでも、全中が経営の自由を制約していたとは思わないという方が、組合長では九五%、読者モニターでもそちらの方が四割以上ということで多かったんです。
全中監査、今、岸本委員が大変この質問で話されていましたが、今まで一件の大きな破綻事例もなかった、未然防止という、この後、質問させていただきたいと思っていますが、私は全中はそれなりによくやってきたと思います。
こういうものを、今回、私は、どうしてなのか、やはり理由がわからない。社会的ないけにえ、まさに、劇場にはなっていないけれども、最初は劇場型というものも目指して、これをたたこうとしていたんじゃないか、私はちょっとそんな印象を持っておりまして、もうかなり時間的にせっぱ詰まっておりますが、参議院にも行きますが、これは今からでも、やはりもう一度見直していただきたい。そのことをまず申し上げたい。
信用金庫グループにおいても、国内の資金需要の低迷の中で預貸率は下がっております。農業金融についても、当然、現状については非常にいろいろと言いたいこともあるんですけれども、これはまた別の一般質疑の場でお話をさせていただきたい。質問も含めて、いろいろ資金需要のことについては誤解もこの委員会全体の中にひょっとしたらあるような気も私もするものですから、改めてそういった質問の場をつくらせていただきたい。
とにかく、悪者をつくろうとか、事実も議論も確かめもせずに、いけにえをつくろう、こういうことは、今回のことに限らず、政治の場からやめていきたい、私はこういうことを、おっこった選挙でも受かった選挙でも、ずっと言ってまいりました。まずそのことを申し上げた上で、質問に入りたいと思います。
一番最初に伺おうと思った質問が、ちょうど福島先生が十五分やった質問とかぶっておりまして、ですので、ちょっと角度を変えて、確認的にお尋ねしたいと思っているんです。
私も、福島さんと一緒で、何で株式会社、医療法人、消費生活協同組合への組織変更とか組織転換規定を入れたのか。何かニーズがあったのか、あるいは要望があったのか。ニーズとか要望がないんだとしたら、何のためにやるんですか。私は、先ほど答弁を伺っておりまして、具体的な要望やニーズもないのに、もし、奥原局長やあるいは政府が御答弁いただいたものを信用すれば、疑っているわけじゃないですけれども、やはりこれは相当な誤解と不安、不信を与えていると思うんです。
前回のときにも私は員外利用の話とか転換規定に近いことを質問して、そのときに林大臣が、六月十日の答弁で、員外利用規制については同じ法律でやる、同じようにやっていくことが法的安定性だということで答弁いたしております。
員外利用規制を適用して、業務改善命令を繰り返し出して、農協を追い込んで、事業を分離分割させて、だけれども、地域にとって役割を果たしているのは、厚生連であれば医療法人に転換しなさい、あるいは経済的な販売店舗、Aコープみたいな事業であれば消費生協に転換しなさい、あるいは販売事業をやっているものであれば株式会社に転換しなさい、こういうように事業分割をして追い込んでいくということではないですよねということ。
また、先ほど私も答弁を聞いてちょっとびっくりしたんですが、今回は金融庁さんとの間で余り話はついていないのでやめました、中長期的には信共分離の話も、信用事業の株式会社化と、あるいは共済事業のそういった転換規定、事業分離ということもあるんだというお話もあったものですから、そういうような、農協を生体解剖するような信共分離ということは、先ほどの林大臣の引用ではないですけれども、法的安定性を十分に御配慮いただいて、現場の実態を踏まえた監督行政を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
○奥原政府参考人 まず、員外利用規制の話ですけれども、これは准組合員と違いまして、今の法律制度の中で規制されていることでございます。これにつきましては、従来同様にきちんとやっていきたい、法的安定性を保った上でやっていきたいというふうに考えております。
それから、今のお話の中で、信用事業と共済事業の話についてございましたけれども、これは昨年六月の政府・与党の取りまとめのときから、これについて、株式会社化を選択肢としてできるようにするということを検討するというのが入っておりまして、これをどうするかは、昨年六月以降、金融庁とも相当濃密に調整をしてまいりました。
ですが、金融の話につきましては、やはり業態間の調整が相当あります。もう御案内のとおりだと思いますけれども、例えば、セーフティーネットの仕組みについても、一般の銀行や信金は預金保険、農協と漁協については貯金保険機構という別の組織になっている。今までも、いろいろな形で業態間の差がございますので、やはりここをどうするかをクリアしないと、選択肢といえども、この話について決着がつかないということで、これについては中長期、ある程度時間をかけて検討しましょうということでございます。
このことと信用事業の分離という話は別の話だと思っておりますので、あくまで仕事をうまく進める上で組織の形態としてはどちらがいいか、こういう話だというふうに理解をしております。
○小山委員 先ほどの福島議員のところにもありましたけれども、今の奥原局長の答弁、そしてまた、前回の六月十日の、林大臣の法的安定性ということで、今後、この准組合員の規制の調査をする間についても、員外利用規制については、今までと監督行政の方針、姿勢というものは特別変えないんだということを、ぜひ、ここは相当みんなが不安に思っていますので、確認をさせていただいたということで、次の質問に入りたいと思います。
きょうは、私も質問時間が少ないものですから、もともと質問しようと思っていたこともちょっと確認的にお話をしながらいきたいと思うんです。
農業委員会法の第八条四項の二号で、禁錮刑以上の者は農業委員になれないという規定がございます。「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」とあるんですけれども、何で執行猶予の者はいいんだということなんです。これは、ほかのものと平仄を合わせてこういう規定になっているということですが、余り具体的には申し上げられないんですけれども、執行猶予未満ということで、反社会的勢力あるいは反社会的勢力に近い人が実際にこういう組織の役員になっている事例がございます。
ですので、ここのところは、今後、こういう農地の判断にも加わってくるということで、今そういう事例はないんですけれども、反社会的勢力的な勢力も入ってくるということもあり得るので、ぜひここは今後も議論を深めていっていただきたいということを要望した上で、次の質問に入りたいと思います。
准組合員の規制導入の検討、調査についてですけれども、この准組合員に関する調査とか規制導入に当たっては、現状、農協が農業の発展を通じて地域社会の維持発展に役割を果たしていることや、あるいは農協に対する地域住民のニーズや評価といったことも調査対象として、もし規制導入ということになれば、十分にそういった点を考慮していただきたい、そのように私は考えますが、政府の認識を伺いたいと思います。
○奥原政府参考人 准組合員の利用規制の話につきましては、これまで規制がなかったこともありまして、正組合員と准組合員の利用実態が正確に把握できておりません。それから、今回の農協改革によって、農業者の所得向上に向けた成果がどの程度出るか見きわめる必要もあるということで、法律上は、附則で、五年間の調査を行った上で決定するということになっているわけでございます。
この調査の中身につきましては、今後検討していくことになりますので、現時点で具体的な内容を決め切っているわけではございませんけれども、特に、各地域ごとに、農協が行っている事業について、ほかに同種のサービスを提供する事業者がどの程度あるかといったことも調査対象にする必要があるのではないかというふうに思っております。仮に准組合員の事業利用規制をかけたとした場合に、地域住民の生活にどの程度支障を生じるかといったこともやはりきちんと見ていかなければいけませんので、そういったことも含めて調査の中身を決めていきたいと考えております。
○小山委員 ぜひ、繰り返しになりますけれども、こういうことを言うとまた怒られるかもしれないですけれども、職能組合原理主義というか、職能組合という理屈で割ったようにいくんじゃなくて、やはりそれぞれ地域農協なら農協で、職能以外の部分で果たしている役割とか、枠からはみ出している、だけれども、そこが地域で大きな役割を果たしている、そういう部分もあろうかと思います。ここを全部切り離していく、あるいは、先ほどの話じゃないですけれども、別事業体に転換していくとか、理屈に現状を合わせようとすることは、私はこれは大変な不幸になると思っております。
ですから、ぜひ、地域社会の維持発展に役割を果たしていることとか、あるいは地域住民のニーズや評価というのも調査の項目の中に入れていただきたいということを強く申し上げたいと思います。
ここから次のテーマに移っていきたいと思います。
六月十日の農水委員会の質疑で、きょうは名前を出して済みません、奥原局長が、准組合員の規制のあり方について、経済事業の中でも農産物の有利販売あるいは資材の有利調達がどこまで進んだか、これを考えないといけない、農業所得の増大に向けた改革がどの程度成果を生んだのかということも、准組合員の規制のあり方を検討する上で大きな要素という答弁をしております。
だから、経済事業がどうあるか、経済事業で取り組んでいることをどう評価するか、されるかということが、現場では大変注目を持っているわけでございます。ですから、私は経済事業のことについて、准組合員規制の際の調査にも関連するので、お伺いしたいんです。
地方公聴会でもこのことが参考人から話されたということですが、経済事業の定義というのは、私は、これははっきりしたものはないと。農業関連事業、生活その他事業、営農指導事業、この三事業を経済事業とくくって黒字確保ということは、これは私は非常に無理だと思います。
全国平均で部門別損益で見た場合に、営農指導事業は一億五千七百万の赤字。現在、購買、販売事業だけでも、全国平均では三千七百万の赤字。これは平均で見た場合ですけれども、この一億五千七百万の赤字を、現在でも三千七百万赤字がある購買、販売事業でさらにカバーをするというのは、数字だけ見ても、これは非常に困難だと思います。
これを無理して、いわゆる経済事業、今の三事業でやろうとすれば、どうするか。これは相当リスクの高い有利販売に手を出すということになります。そうしますと、非常に大きな赤字を出したり大穴をあける可能性も出てくると思うんです。
私は、リスク、ハードルの非常に高い有利販売に手を出しかねないんじゃないかということも含めて、この三事業、農業関連、生活その他、営農指導事業で黒字を確保するというのは困難だと思いますが、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 農協法は昭和二十二年に制定をされておりますが、やはりそのときと違いまして、どうやって売っていくか、いわゆる川下の消費者、実需者のニーズに対応する、これが大変大事だと思っております。
どちらから見るかということもあると思うんですが、現状は、九六%が委託販売ということになっておりまして、リスクをとらずに有利な販売もできていないということで、農協に出してもなかなか値段がつかないなということでシェアを落とす、それが農協の収支改善につながっていかない、こういう悪循環になっておりますので、何も買い取り販売をあしたから一〇〇%にしろということではなくて、段階的に拡大をしていくことで、徐々にそういうことをやっていってもらって、やはりいつも緊張感を持って拡大の努力を常にしていただくということであろうか、こういうふうに思っております。
収支の改善というのは、今おっしゃったように、農業関連事業、生活その他事業、それぞれで赤字の原因を明らかにした上でなるべく収支改善を図っていくことが必要だ、こういうふうに思っておりますが、営農指導事業の損失は総合事業全体として賄っていただいてもいいのではないか。これだけで必ず黒字を出すというのはなかなか難しいというのは我々も承知をしているつもりでございます。
○小山委員 大臣から答弁をいただいて、非常にほっとした農協の組合長さんもいるんじゃないかなと思っております。
北海道の話も大臣からも伺っていて、確かにこの三事業、いわゆる経済事業で黒字を出しているところもある。それはそのとおりなんですが、ただ、今までのこの委員会の議論でもあったとおり、北海道の基準で全国全てを用いていくというのは、非常に多様ですから、やはり困難もあると思いますし、また、この点、准組合員の規制の際にもという奥原局長の答弁もあったものですから、経済事業という定義が何か、経済事業の改革とは何をもってするのかというところが、非常にここが今まではっきりしていなかったところもありましたものですから、その点で、今回、必ずしも経済事業だけで、この三事業だけで黒字化ということではないと御答弁いただいたということで、大変これはよかったと思っております。
委託販売から買い取り販売ということですが、一番最初の質問のときに申し上げましたが、森林組合がこれで大きな赤字を出しております。大きな赤字を出した森林組合の財務改善を図る中で、どうしたかといいますと、組合員さんからすると委託販売ですけれども、組合からすると受託販売、こっちに切りかえていったんですね。
平成十五年当時、森林組合改革プランというものもつくって、私も作成に少しかかわりましたけれども、どうやって森林組合の財務を改善していくか、とにかくリスクの高い買い取り販売は避けていくんだということを、融資する立場から、そんなことをいろいろ、アドバイスが当たっていたかどうかはともかくとしまして、アドバイスさせていただいたことを覚えております。
ですから、とにかく、今、販売、購買だけでも非常に赤字ですから、まあ、販売、購買だけは黒字にしてもらわなきゃいけないですが、営農指導の分までカバーするということになりますと、非常にリスクが大きな取引に手を出しかねないので、ここの点はぜひ御留意をいただきたいと思います。
次に、ちょっと意地悪な質問をさせていただきたいと思います。
六月四日の答弁におきまして、これは局長答弁でしたが、指導機関ヒアリング、県連、全国連へのヒアリングなども行って、奥原局長が、かなり細かくそこについては対応してきている、全部書くと切りがないほど濃密な経営指導を行ってきたということでございました。
それほどの濃密な経営指導の結果として農協の販売、購買事業が赤字ということは、大変意地悪な言い方になりますが、農水省の指導が適切ではなかったためとも考えられますけれども、この点についてはどのように御認識でしょうか。
○奥原政府参考人 農林省では、農協の経営状況を把握することを目的といたしまして、毎年、監督指針に基づいて、農協の指導機関であります都道府県それから中央会等との意見交換を行ってきております。その際、個別の農協についてもいろいろな個票を持ってきていただいておりますので、各都道府県の中の農協のそれぞれの経営上の課題を共有して、必要な助言等を行っているところでございます。
この中で、例えば、経済事業が赤字となっている農協につきましては、その赤字原因の分析が的確に行われているかとか、その赤字額を段階的に縮減するための具体的な方策がきちんと検討されているのかとか、それから、赤字解消の目標年度がきちんと設定されているかとか、こういった点について意見交換を行いまして、毎年度、その進捗状況のフォローをしている、こういうことでございます。
ですが、行政機関でございますので、コンサルではございません。具体的に、手とり足とり、こうしろ、ああしろということではございませんので、そこについて、この指摘を踏まえた上で、やはりそれぞれの農協に取り組んでいただく必要があるというふうに考えております。
○小山委員 一部で農協の販売、購買事業の赤字の指導責任というのを全部全中になすりつけてしまったと言われないように、先ほど、午前中の質疑にもありましたけれども、全中やあるいは農協系統グループというものも、民間団体ではあるんですが、そこと一体となって農政というものが展開されてきたと思いますので、私もちょっと意地悪な、後ろ向きな質問をしてしまいましたけれども、過去のことは過去のこととして、これからも、こういった一体として、とにかく組合員さんあるいは農家のため、日本の農業のためという大きな目標のもとにぜひ取り組んでいただきたいということを申し上げて、また、お願いしたいと思います。
それと、今までの答弁の中で非常に感じましたのが、一方では、中央会、全中、県中あるいは農協というものを民間として競争にさらしていくんだ、それは自己責任、自主判断なんだという話がありながら、一方では、認定農家から選ばれない農協ではだめなんだとか、今の話じゃないですけれども、指導の一つのツールとしてこの系統組織を使っていくという部分もあったかと思っております。
でも、純粋な民間ということであれば、例えば認定農家とか、これは前にもお話ししましたが、大きな農家さんというのは、自分たちで何とかできるというところは別に協同組合を無理して使わなくてもいいと僕は思うんです。むしろ、協同組合は、自分たち個人個人では大きな企業とかあるいは大きな商系と対抗できないという人たちがみんなで集まって共同販売、共同購買をしているわけですから、協同組合の経営あるいは協同組合の活動というものはそっちの方を向いて仕事をしなきゃいけない。ところが、全部のニーズを含んでいくというのは難しいと思うんですけれども、時として、こういった全部のニーズをつかまえていないから、だから、今回、認定農業者の方を入れてきて、認定農家の、あるいは大規模な農家、あるいは農協を使っていない農家の方のニーズをどうやってつかまえてくるかという議論が多かったと思います。
でも、もともと、それこそ戦後間もないころと違ってニーズが多様化しているわけですから、むしろ、農協を必要とする人たちのための農協になっていくということが私はより必要ではないかと思いまして、今後、この点が政策と現場、実態でそごが出ないようにやっていっていただきたいと思うんです。済みません、私の演説をしてしまいました。
経営悪化JAが発生してしまった場合に、セーフティーネットはどうしていくのか。これは、今までは破綻未然防止で全中が指導し、信用事業については農林中金もモニタリング等もあって指導して、早期に合併をしたり、破綻未然防止ということで努めてまいりました。少なくとも、全中の経営改善指導とか破綻未然防止というものは今度なくなるものですから、任意として残るにしても強制力がなくなりますので、これは相当大きな違いは出てくると思います。
この点について、破綻未然防止システムというのはどこが肩がわりするのか、お答えいただきたいと思います。
○奥原政府参考人 この点につきましては、既にJAバンク法という法律ができております。信用事業を行う地域農協につきまして、JAバンク法に基づいて、経営破綻を防止するための農林中金の強力な指導権限、これが法的に措置をされているところでございます。仮に地域農協の経営が悪化した場合には、この権限に基づいて農林中金が必要な指導を行っていくということになるわけでございます。
具体的には、JAバンク法に基づきまして農林中金が自主ルールというのを決めております。これは基本的に自己資本比率その他でもってランクづけをしているわけでございますけれども、一番わかりやすい自己資本比率でいきますと、地域農協が経営の健全性の指標であります自己資本比率で八%、これは行政の基準は四%ですが、自主ルールですので高い基準の八%になっております、この八%を下回った場合には、農林中金が農協に対して資金の運用制限あるいは経営改善を行わせる、これによって健全性の回復を図るということになっております。これが六%を割る、四%を割るということになりますと、さらに強力な指導、規制がかかっていく、こういう仕組みが既にできているところでございます。
これに加えまして、地域農協については、その健全性を確保するために、監督当局であります都道府県においても、定期的な検査を行うとか、しっかりとモニタリングを行っているところでございますので、農林省といたしましては、農林中金なりあるいは都道府県と連携をして、破綻の未然防止には万全を期してまいりたいと考えております。
○小山委員 農林中金のJAバンクの方は信用事業ということが中心ですので、特に経済事業の、先ほど私が申し上げたような、森林組合で買い取り販売を行って大きな負債あるいは赤字を出してしまった、穴をあけてしまったというのは、こちらの方にまでは、人員体制の面から見ても、私はもうやめて久しいですから、今、ひょっとしたら相当人数がふえているということは、ネットなんかで見たら書いていないものですから、それはないと思うんですけれども、あくまでも銀行ですので、やはりこれは難しいと思います。信用事業のところで手いっぱいだと思うんですね。
それと、都道府県の方で経済事業の方のこういった固定化債権の発生がないだろうかとか赤字がないだろうかとかを検査していくというところなんですけれども、ただ、今まで全中がやってきたことは、これまでも評価をする御答弁もいっぱいございました。そういう中で、なぜこの全中をやめてしまうのかというのは、大規模な農協になったから経営も安定するからいいんだということですけれども、でも、大規模なところがおかしなことをやると本当に大きく破綻してしまうんですね。経営規模が大きければ安定するということはないと思います。その分、リスクも大きい。破綻したりおかしくなるときは一気におかしくなる。マグロ漁業なんかもそうでした。大きくやっているところの方が、何かあったときに、四隻、五隻やっているところが一気に全滅したこともありますので、そういったこともぜひ考慮に入れていただきたいと思っております。
もう一つ質問しようと思っておりましたが、岸本先生とちょうどかぶりましたものですから、コメントだけさせていただきますと、監査の報酬のところで、あるところによりますと、負担が二倍になるというところもありましたけれども、配慮というものがないまま法案提出となったというのは残念だと思っております。
最後に、高い収益性の実現のところで、これもたびたび議論をしてまいりました。今の政府のお考えが、高く農家の方から買う、仕入れる、そして高く売っていくということで収益性というものは追求するんだ、また、第七条に高い収益性の実現ということが入っているんですけれども、ただ、やはり究極的には矛盾するんじゃないかと私は思うんです。高く買って、高く売る。もし、もっと高く売れた場合には、もっと農家の方から高く買ってあげればいいじゃないか。
あくまでも、JAの収益性というものと農家の方の所得というものは、高く買って、高く売るということでお考えだと思うんですけれども、でも、高く売れるんだったら、もっと高く買ってあげればいいじゃないか。やはり、収益性を追求するというのは、どうしても、協同組合ということで考えると、論理的には矛盾するんじゃないかと思います。
そういうことから、やはり第七条の高い収益性の実現という文言は、営利目的ということ以上に削除すべきじゃないかなと僕は思っておりますけれども、この点についての大臣の認識を最後にお伺いしたいと思います。
○林国務大臣 今お話がありましたように、農協の利益と農業者の利益、必ずしも一致するということばかりではないかもしれませんけれども、農協の場合には、事業を利用する組合員である農業者の利益、これがやはり一番重要なことであろう、こういうふうに思っておりまして、新しい七条三項も、農協が高い収益を実現した上で、それを組合員に還元することによって農業者等の利益を拡大するという事業運営、これを規定させていただいております。
この場合、農協が農産物の販売先との関係において有利に販売する、生産資材の購入先との関係において有利に購入する、これがポイントでございまして、まさにこうした取り組みを通じて高い収益を実現すれば、結果として、農家からの買い取り価格を上げたり、一回決めた値段を、高く売れたからまたすぐ戻すというのはあれかもしれませんが、次には、もっと高く売れたから高く買いましょうということにつながってくるわけでございますし、また、事業利用分量配当ということで組合員にも還元する。
七条一項に、まずは組合員のためということが書いてありますので、これをもとに農家の所得向上に資する、こういうふうにしていきたいと思っております。
○小山委員 甘えを許してはいけない、しかし、痛みを共有する姿勢を持てということを私はよく上司から言われておりました。
これも、ある意味、協同組合の性格というものをあらわしているかと思いますが、利益のための利益という、営利性の追求ということに余りに過度にいってしまって、構成員の所得の向上やあるいは組合員さんの利益というものを考えないようなことにならないように、ぜひ、今後も、省令等でたくさんのものがありますので、監督行政を行っていっていただきたいと思います。
以上で終わります。
○江藤委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉木雄一郎君。
○玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。
農政、そして農業を取り巻く環境は激変をしております。
きょう、朝、日本時間の朝でございますが、アメリカで、大統領に一括交渉権限を与えるTPA法案が通過をいたしました。これによって、TPP交渉は加速していくものだと考えます。甘利担当大臣はこれを受けて、TPP交渉は、来月の合意は可能であるという発言をされておりますけれども、総理も、これは同じ認識でしょうか。
○安倍内閣総理大臣 TPA法案が可決をしたことは大きな前進であると思います。歓迎をしたい、このように考えます。この上は、日本とアメリカでリーダーシップをとって、早期妥結に向けて力を尽くしていきたい、このように思います。
当然、最終段階に至れば、閣僚が集まって議論をするという段階に至るだろう。この時期等については、甘利大臣が、いわば今までの経緯等も含めて発言をしておられるということは承知をしております。
いずれにいたしましても、早期妥結を目指して我々も力を尽くしていきたいと思います。
○玉木委員 今、総理は大きな前進というふうな言葉を使われましたけれども、中身がいいものであれば前進させればいいと思いますが、悪いものであれば前進させるべきではないと思います。問題は、今交渉が進んでおりますが、最終局面に至っています。いいものか悪いものか、我々は全く判断ができないんですね。
総理は、いい内容になっているという前提で前進させるべきだと今おっしゃったと思いますが、私は、これは総理のアメリカ議会での発言について少し確認をさせてもらいたいんです。
当時、私もワシントンにいました。ラジオで総理の演説を生で現地で聞いておりましたけれども、総理はこういうふうにおっしゃっています。二十年以上前の話をお話しになられて、「血気盛んな若手議員だった私は、農業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に、国会前で抗議活動をしました。 ところがこの二十年、日本の農業は衰えました。」こういう発言をアメリカの上下両院合同議会でされております。
総理にお伺いします。
この二十年、日本の農業が衰えてきた大きな原因は、農業の開放に反対したからでしょうか。総理の認識をお聞かせください。
○安倍内閣総理大臣 この二十年間、農業が衰えてきたということは、これはまさに、残念ながら、農業の分野に新しい人たちの参入がない、あるいはまた農家において、若い皆さんが農業を継いでいこうということにはなっていないということがあるわけでございまして、そこで、農業の分野において、自分たちの情熱や熱意で新しい地平線を切り開いていくことができる、このような思いに至ることを阻んでいるさまざまな要因があるのも事実であろう、このように思うわけでございます。
そこで、いわば、今まで農水産物の海外への輸出ということについては、この二十年間の多くの期間取り組んできていなかったのでございますが、我々は積極的に取り組む中において、四千億円そして六千億円と過去最高を更新し続けているわけでございます。まさにその分野においては新たな地平線が切り開かれつつある、このように思うわけでございまして、そこに私が言いたかったポイントがあるわけでございます。
二十年の間に農業人口は減少し、高齢化が進んでいる、これこそが私が言いたかった点でございまして、若い人たちがこの分野で頑張ろう、そういう分野ではなくなっていたところに大きな問題があった。
ひたすら、ひたすら守ることだけに力を注いでいればいいということではないということではないかと思います。
○玉木委員 全くわかりませんね。
総理、今総理がおっしゃった中で少し気になる発言がありました。若い人が入ってくる、私は入ってきていると思いますよ。結構、若い人たちは一生懸命農業に今も取り組んでいるし、これまでも私は取り組んできたと思います。全然やっていなくて、急に何か改革しないと取り組まないということではなくて、やはり再生産可能な所得が保障されないから、なかなか入ってこれない。そして、この間、再生産可能な所得が保障されないような仕組みをつくってきたんじゃないですか。
私はこのことを、もちろん保護するだけがいいとは限りません。それはわかります。ただ、開放するだけで全てが解決するものでもないと思うんですよ。
そこで、総理、お伺いしたいのは、今、さまざまなそういった若い人の挑戦を阻むような要因があるというふうにおっしゃいました。
資料の一に、同じく、これは総理のアメリカ議会での演説を抜き出して書いています。このように総理はおっしゃいました。「私たちは、長年続いた農業政策の大改革に立ち向かっています。六十年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます。」こういうふうにおっしゃっております。
端的にお伺いします。
きょうは、インターネットやいろいろなことを通じて、農家の皆さんも全国でごらんになっていると思うので、わかりやすく説明をいただきたいんですが、まず総理がおっしゃる前提として、この六十年間変わらずに来た農業協同組合の仕組みの何が問題ですか。端的にお答えください。
○安倍内閣総理大臣 我が国の農業の活性化は待ったなしであるということについては玉木委員も同感をしていただけるのではないか、このように思います。
そこで、私たちは、農地集積バンクの創設あるいは輸出の促進や六次産業化の推進など、農政全般にわたる改革を行っていきたいと考えているわけであります。
そして、さらに今般、意欲ある農業の担い手が、より活躍しやすい環境となるように、農協、そして農業委員会、あるいは農業生産法人、この三つの改革を一体的に行うこととしたところであります。
特に、農協については、昭和二十二年に農協法が制定をされまして、昭和二十九年に行政代行的に農協指導を行う中央会制度が創設されてから六十年以上が経過をしているわけでありまして、この改革は、六十年ぶりに中央会制度を含む農協システム全体の見直しを行うものであります。
そこで、地域農協について、農業者のメリットが最優先されるよう、理事の過半数を認定農業者にする、そしてまた連合会、中央会について、地域農協をサポートする観点から見直し、農中は一般社団法人とし、全中監査の義務づけも廃止することとしています。
これによって、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、地域ブランドの確立や海外展開など自由な経済活動を行うことなどによって、農業者の所得向上に全力投球できるようにしてまいります。
こうした改革を進め、消費者のニーズに応え、強い農業をつくり上げていけば、農業の可能性は広がり、まさに先ほど申し上げましたように、若者がみずからの情熱や能力で新たな地平線を切り開き、強い農業と美しく活力ある農村を実現することができるようになっていくと確信をしております。
○玉木委員 総理、我々はそういうふうな美辞麗句は要らないんです。もう何度も聞きました、それは。
もう二十数時間議論をしてきて、実は、きょう全く新しい質問を私はする気はありません。同じ質問を総理に聞きます、国家のトップとして。農家の皆さん、そしてJAの関係者、農業委員会の関係者の皆さんにわかりやすく、もうこれは最後ですから、説明をしていただきたいんです。
もう一度聞きます。
総理はダボス会議で、去年の一月ぐらいですか、こうおっしゃっています。今後二年間であらゆる岩盤規制を打ち砕く、いかなる既得権益といえども私のドリルからは無傷ではいられないと。
今回の六十年ぶりの農協改革、あえて農協に絞って聞きます。三つの改革が一緒になっているのはわかっています。ただ、農協について聞きますので、農協について答えてください。今回の農協改革のどの部分が六十年ぶりの改革であって、総理のおっしゃる岩盤に穴をあけた部分ですか。どのような岩盤にどのような穴をあけたのか、お答えください。
○安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、この六十年間、まさに昭和二十九年以来、農協の改革は全く行われてこなかったわけであります。その中において、今回の制度改革によって、中央会制度を含む農協システムの見直し、いわば全体的な見直しを行うわけであります。
そして、先ほど申し上げましたように、地域農協において、農業者のメリットが最優先されるべきである、これは、そもそもそういう声はずっとあったわけでございますが、そこに手はつけられてこなかったのは事実であります。
そして、今回、理事の過半数を認定農業者にするということでございまして、それは先ほど申し上げたとおりでありますし、そして、まさに、今まで監査法人としての全中監査が行われてきたわけでありますが、全中は一般社団法人として、今後、全中監査の義務づけも廃止することとしておりまして、そういう中におきまして、繰り返しになりますが、地域の農協が、その地域の特性や意欲を生かして、しっかりと地域の農家が所得をふやしていく、あるいは地域の農業を発展していくための施策をとれる、そういう農業が実現するのではないか、このように期待をしております。
○玉木委員 どうですか、皆さん、聞かれて、インターネットをごらんの皆さんも。私は、本当にわかりやすく総理に説明していただきたいんです。
TPPが、冒頭聞きましたけれども、やはりこれは農業をされている方にとっては不安の源になっていることは間違いありませんよ。その一方で、農協の改革をする、それがせめて腹に落ちる形で、ああ、こうやって農協が自分たちのために改革がされて、地域の農協も、そしてそこに属している組合員、農家の皆さんも所得がふえていくんだ、では、頑張ろうというメッセージを受け取ることができれば、仮にTPPが入ったとしても、何とか頑張ろうと踏ん張れるかもしれない。でも、今の総理の説明では不安だけが加速しますよ。ぜひ、お答えをいただきたいと思うんです。
改めてお伺いしますが、全中監査の義務づけを廃止するということを総理はおっしゃいました。林大臣も、いわゆる農協の地方分権を進めていくといったような言葉でも話されたことがあると思います。これも、二十時間ここの委員会で議論してきて、いまだに疑問が解消できないので、これは大臣に聞いても答えがなかったので、最後、安倍総理大臣に聞くしかないので、お伺いします。
強制監査権限と言われていた全中監査を廃止することによって、地域の農協、そして農家が、今までは縛られていたので、自由に活動ができるようになって、それで、よってもって所得がふえていく、こういうストーリーなんだと思いますし、そういう説明を何度かされていると思います。
お伺いします。
全中監査があることによって自由な活動が妨げられている具体的な例を、総理、一つでいいので挙げてください。
○安倍内閣総理大臣 中央会制度は、農協の数が一万を超え、経営的にも困難な状況であった昭和二十九年に発足して以来、経営悪化した農協の再建や合併の推進などに役割を果たしてきたのは事実であろうと思います。
今や、農業、農村をめぐる環境は大きく変わってきているわけでありまして、地域農協も約七百に集約をされて、個々の農協が自立をし、自由な活動をする環境が整ってきています。
今回の農協改革は、こうした状況の変化を踏まえて、地域農協が自立して自由な経済活動を行い、農業所得の向上に全力投球できるようにしていくわけでありまして、連合会や中央会は、地域農協の自由な経済活動を適切にサポートしていくことを基本的な考え方として行うものでありまして、結果として、地域の農協の自立や自由な経済活動がより一層促されるものと考えているところであります。
このように、今回の中央会制度の見直しは、昭和二十九年当時との状況の変化に基づいて行われるものであります。
なお、JAグループからも、中央会制度は統制的権限を撤廃し、JAの自由な経営展開を支援する制度に生まれ変わるとの意見が表明されているところでありまして、このように、まさにJA自身も、これによって自由な、さまざまなアイデアを生かした経営展開が可能である、こう考えているわけでございます。
今後は、まさに担い手の皆さんが地域農協の皆さんと一緒になって、ブランド化あるいは海外展開を進めていく、新しい農業により変わっていく、そういう状況はつくることができるのではないか、このように思います。
○玉木委員 私は安全保障法制の議論と少しデジャビュになったんですが、安全保障環境の変化があるので見直さなきゃいけないというような話を総理はよくおっしゃいますが、では、どういう具体的な変化があったんですか、どのように対応するんですかという話を聞くと、余り具体的にお答えにならない。
この農協改革についても、今、私は余り難しいことを聞いていません。中央会の監査制度が具体的に現場の地域農協や農家の自由な活動を妨げている例を一個でいいから示してくださいと極めてシンプルなことを聞きました。
資料二をごらんになってください。これは、総理、大臣やあるいは事務方から報告を受けているでしょうか。当農林水産委員会も、あえて書いたんです、憲法審査会状態ですよ。どういうことかというと、今回、与党の先生方の協力も得て、参考人質疑を都合三回やっているんです。つまり四人に来ていただいて、三回ということは十二人、地方は二カ所に行って、四人、四人、聞いていますから八人、合わせて二十人の与野党の推薦する参考人から話を聞きました。
しかし、これは、一部取り出してきましたけれども、まず野党推薦、でも、これは自民党員の人にお願いしたんです、私は。この自民党の、我々が推薦したJAの組合長さんはこうおっしゃっています。「説得力がない。私は自民党員だが、今回は厳しく言います。」まず、こうおっしゃっていました。でも、野党のことばかり挙げるのもあれなので、与党推薦の三人を書きましたが、JA梨北の仲沢常務、こうおっしゃっています。まさに監査の話を挙げて、「公認会計士監査に切り替えたときに、決してそれは生産者の所得向上にはつながらない。」とおっしゃっています。右の上、ブドウ農園の経営者である若い方ですけれども、「農協改革を農業者が本当に理解しているか。現地でのコミュニケーションが不足している。」次、右の下のJAの小松市の組合長さんですけれども、これは与党推薦です。「准組合員の利用を制限することは、むしろ地域農業振興や農業所得の向上には逆行する。」これは与党推薦の方もこうおっしゃっているわけですね。
私が安全保障法制の議論とダブるなと思ったのは、これは今回の改革で農家にとって本当にプラスになるのかどうか。この改革の目的、中身が現場に理解されているのか。全く理解されていないと思いますよ。
総理、もう一度伺います。
この法律を改正するに至った具体的な弊害の事例を教えてください。
○安倍内閣総理大臣 今、この四人の方々の例を挙げて、今までの農協の体制で、中央会の体制で問題ないではないかというふうにおっしゃっておられるわけでございますが、小池さんも、こういう発言をしておられるわけでありますが、同時に、農協改革は、農家、農協が時代の変化にフレキシブルに対応してこなかった結果、起こるべくして起こったものだということをはっきり言っておられますし、三森さんとお読みするんでしょうか、この方も、農協は組織が大きくなることで使いづらくなったということもおっしゃっておられるわけでありまして、また、仲沢さんも、農協改革は、旧態依然とした組織の中に大きな石が投じられたようなものであり、評価と、こういうふうにおっしゃっているわけでございまして、まさに、私たちが進めている農協改革の必要性についてはちゃんと評価をしていただいているわけであります。
もちろん、その中で、皆さん、それぞれ現場でさまざまな課題を抱えておられますから、そういう方々の声にも耳を傾けていく必要はあるんだろう、こう思うところでございまして、まさに、今申し上げましたように、六十年たつ中におきまして、時代の要請に応えられなくなっているというのが共通認識ではないか、このように思うところでございます。
○玉木委員 結局、全く具体例を答えていただけませんね。これは、ずっと聞いています。役所にも聞いている、大臣にも聞いた、そして、最後、これがもう最後のとりでだと思って、きょう安倍総理にお伺いするのを楽しみにしていた。例えば御地元の山口県でこういう例があったので、さすがに全中の監査については見直さないと、例えば輸出をしようと思うのに、あなたのところは輸出をすると経営が悪化するから輸出なんかに手を出すなと言われた例がある。こういうことがもしあれば、どんどんやったらいいと思うんです。
先ほど、仲沢さんの話を出しました。一石を投じたと確かにおっしゃっているんです。その後を読んでください。的が外れていると言っています。石は投げていますけれども、投げる場所が間違っていて、きちんとした改革になっていないんじゃないか。梨北の仲沢さんは何度も政府のヒアリングやいろいろなところに呼ばれている方ですよ。そういう方がおっしゃっていることについては重く受けとめるべき。いわば安保法制が違憲だと言われているに等しいと思うんですよ、私は、これは。だから、きちんとやはり国民に、そうでないのなら説明をする責任が、これは政府側に、法案提出者に私はあると思います。
それでは、総理、お伺いします。
これもずうっと二十時間以上聞いてきて、いまだに答えがいただけないので、総理の口から明確にお答えいただきたいんです。
資料二の下二人に共通するんですけれども、やはり今回の農協改革と農家の所得の向上との関係です。
資料四をごらんになってください。これは総理の言葉です。一月二十九日の予算委員会。「農業の成長産業化に全力投球」、情緒的な言葉が使われるのは今回の農協改革の特徴的なんですけれども、「全力投球できるようにしていく観点から、農業者の視点に立った農協の抜本改革を断行していきたい。こうしたことを行うことによって農業者の所得倍増を目指していきたい。」
今回の農協改革でどのように農家の所得がふえるのか。そのメカニズムについて、農家に向かってわかりやすく説明してください。
○安倍内閣総理大臣 まず、安倍内閣においては、農業を成長産業に変えていきたい、こう思っています。そのために、農地集積バンクを創設いたします。生産性を上げていく。生産性を上げていくことによって、当然それは収益につながっていくだろうと思います。
そしてまた、輸出促進を行っていく。これはまさに今まで取り組んでいなかったということでありまして、実際、安倍政権になって集中的に力を入れていることによって、四千億円、六千億円、この二年半ですよ。この二年半において過去最高を次々と更新しているのは事実でございます。やってこなければ、輸出促進について取り組まなければ、残念ながらそれは輸出額はふえない。しかし、取り組んでいれば、こうやって結果を出すことができる。それだけのものがまさに日本の農業の可能性として眠っているんだろう、こう思うわけであります。
輸出促進やまた六次産業化というのは、まさにこれは付加価値をつけていくものであります。六次産業化というのは付加価値をつけていくものでありますから、当然これは所得増につながっていく。付加価値をつけていく、あるいは生産性をふやしていくことによって、これは収益をふやしていくということであります。
当然、先ほど申し上げましたように、その中におきまして、今般の農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行うことにしているわけでございます。
特に、農協改革については、地域農協が意欲ある担い手と力を合わせて創意工夫を発揮して、自由な経済活動を行うことによって、農産物の有利販売に全力投球できるようにしていくわけでありまして、そのことによって農業所得の向上につなげていくことができる、こう思うところであります。
このため、改正法案では、責任ある経営体制を確立するため、理事の過半数を認定農業者などにする、そして農業所得の増大に最大限配慮する経営目的の明確化、そして農業者に事業利用を強制してはならないことを規定し、選ばれる農協とすることの徹底などを規定しているところであります。
また、農業委員会については、地域の農地利用の最適化を進めるために、地域農業のリーダーたる担い手が委員の主体となるよう、選出方法を公選制から市町村長の選任制に改めるとともに、各地域における農地利用の最適化等を行うわけでありまして、農地利用最適化推進委員を新設することにしているわけであります。
いずれにいたしましても、農業者と地域農協の役職員が、販売方式や役員体制等について徹底して話し合っていくことや、あるいは農地の利用調整による生産性向上を図っていくことが重要でありますが、こうした改革を通じて消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていくことが可能となってくるわけでありまして、そうしていけば、農業の可能性は広がり、農家の所得もふえていくものと確信をしているところでございます。
○玉木委員 全くわかりません。
総理、農家の人は心配しているんですよ。TPPは入るし、現場の農協の職員の皆さんだって、自分の職もどうなるのか、心配して毎日過ごしているんですよ。そういう人に寄り添った答弁をしてくださいよ。農家や農業に対する愛情が感じられない、土のにおいが感じられないんですよ、総理の言葉には。
私にはそれでいいですよ。でも、本当にそこで生活をしてなりわいを立てている人はたくさんいるんですよ。その声を与党の先生もいっぱい聞いてきているはず。そのことに少しでもいいから応えてもらいたいんですよ。
私は、余り感情的になるのは嫌いなんだけれども、いや、総理、本当にそうなんです。私は、安保のときでもそんなに言わないでしょう。でも、本当にこれは、農家の声はいっぱい皆さん聞いているはずですよ。少なくとも、農林水産委員会の皆さんは、与野党を超えて、そこは同じ思いだと思うんです。だから、この改革に確信を持ちたいんです。それだけなんです。
ちなみに、総理は輸出のことをおっしゃいましたけれども、御存じのとおり、輸出の半分は水産物ですよ。缶詰ですよ。
加えて、ユネスコの無形文化遺産の登録、和食ができましたね。あれを登録したのは誰ですか。安倍政権のときに確かにユネスコから承認が来ましたけれども、あの登録をしたのは、私は自分が担当したので覚えているんですけれども、民主党政権なんですよ。
だから、今まで全く何の取り組みもしていないというのも誤解で、そもそも、倍増の一兆円目標、四千八百億のときから我々はそれをやっていますし、そういう積み重ねの中でやはり今の一つの六千億レベルに来ているんだと思います。それはいいことだと思いますよ。ただ、お米の中で輸出に回っているのはまだわずかですよ。それで全てが解決するというのは、私はごまかしだと思いますよ。
今の総理の長い説明を聞いても、結局、農協改革と所得の向上の関係については全くわかりませんでした。それをもう一回端的に御説明できますか。もしまた三分、五分話すのだったらもう聞きませんけれども、今の答えだったらとても、なぜこの農協改革が自分たちの農家の所得につながるのかは、農家の人はわからないですよ。ですから、もう一度、これは数の力できょう通ってしまうんでしょう、ただ、やはりしっかりと現場に向き合った改革にぜひしてもらいたいということは、これは強くお願いをしたいと思います。
もう一つ、では、聞きます、最後に。
総理、中央会の見直しというのは確かに、法人形態を変えるというのは六十年ぶりの改革でしょう。ただ、監査制度の見直しは、たしか私の記憶だと、平成八年、平成十三年か四年、このあたりにもやってきています。ですから、中央会の改革、監査の見直しに全く手をつけてこなかったという今の総理の答弁は間違っていますよ、事実関係として。難しいけれどもいろいろなことを、これまで農林水産省も、それまでの政府・自民党もやってきたと思いますよ。
最後にお伺いしますけれども、これは資料の三に書いているんですが、中央会制度は、確かに農協法三章を全部削除して廃止になっています。でも、附則が今回百十五条もついていて、物すごい、いっぱい附則がついているんですよ。
そこで、資料の三に書いていますけれども、中央会制度は廃止、でも、今の中央会は存続して、かつ、意見を代表したり総合調整したりする目的の一般社団法人の場合は中央会と名乗れるとなって、中央会は廃止するけれども中央会は残る、本則で廃止と書いて附則で復活。ゾンビのように復活していて、改革も骨抜きになっているんじゃないですか。最後、お答えください。
○安倍内閣総理大臣 玉木委員、決めつけないでいただきたいと思いますし、我々は、輸出をすれば全部解決するとも言っておりませんし、中央会制度を解決すれば全部解決するとは全く言っていないわけであります。
そうしたことを全体的に変えていく、新たな農業に変えていくことによって、我々は農業・農村の所得倍増を図っていくわけでありまして、一つのことをやれば全てが解決をしていくということは全く言っていないわけであります。あらゆる努力をしていこう、今のままではだめじゃないかということを申し上げているわけでございまして、実際、なかなか、この六十年間、大きな改革ができなかったのは事実でありまして、まさにそのことに私たちは取り組んでいるわけでございます。
そして、今の御指摘の点でございますが、今回の改正では、行政代行的に農協指導を行ってきた農協中央会制度は廃止をされまして、法律の施行から三年六カ月を移行期間として、全国中央会は一般社団法人に、都道府県中央会は農協連合会に組織変更するわけであります。
変更後の組織はいずれも自主的な組織であり、強制力のある事業は行わないこととなることから、中央会制度の温存という指摘は当たらないと思います。
なお、中央会の名称については、組織の性格は変わるものの法人格の同一性は維持しており、従来、中央会と呼ばれてきた慣行があることに配慮して、実質的な改革を円滑に進める観点から、引き続き使用を認めることとしたものであります。
○玉木委員 改革のための改革と断じざるを得ないということがよくわかりましたので、しっかりと現場に寄り添う農政に戻っていただくことを強くお願いして、質問を終わりたいと思います。
○江藤委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いをいたします。
まず冒頭、通告しておりませんが、私もけさのニュースから一つ伺いたいのですが、ロシアの上院の関係のニュース、二百海里の排他的経済水域でサケ・マスの流し網漁を来年一月から禁止する法案が可決をされた。
新聞の報道によりますと、総理が二十四日の夕刻にプーチン大統領に電話をして法案成立の回避を求めた、しかし、その四時間後に可決をされたと報道されておりますが、安倍総理がプーチン大統領にどのような内容の電話をされて、どういうやりとりがあったのか、教えてください。
○安倍内閣総理大臣 詳細については、今ここでお話しすることはできないのでありますが、先方との関係もございますので。
この流し網漁につきましては、議会でそうした議決が行われる、こういうふうに承知をしているけれども、これは地域の漁民にとっては大変憂慮すべき事態であるので配慮していただきたい、こういうことを申し上げたわけであります。
○井出委員 プーチン大統領からはどのような。
○安倍内閣総理大臣 首脳会談のやりとりにおいては、こちら側の発言については証明できる範囲でお話しすることができますが、相手側の発言については、これは相手側の了解がなければお話しすることができないということでございます。
○井出委員 この農林水産委員会でも大変憂慮されてきた問題でありますし、また、これは特に安全保障にかかわるような話でもないと思いますので、そういった話の中身はいずれしっかりと明らかにしていただきたいと思いますし、ぜひ、引き続きこの問題に政府の一層の取り組みを求めたいと思います。
農業改革について伺います。
私は、この改革の議論をずっと見てきて、農業界と、一方、企業、経済界、規制改革会議、そうした対立軸でずっと話が進んできてしまったことが大変残念だと思っております。本来であれば、農業と経済、企業というものは、お互い、ウイン・ウインでなければいけない。私は、しっかりとやっていただける企業であれば、農家個人であろうと企業であろうと、そこを差別してはいけないとも思っております。
ただ、残念ながら、これまでの議論を見ますと、一番端的なのは、委員の皆様、毎日読んでおられる農業新聞を見ていただければそうかと思いますけれども、こういう対立の軸でずっと語られてきた。それは、政府が、今回の改正案をつくるに当たって、規制改革会議の案を全面的に取り入れた、そういうことも一因に挙げられるかと思います。
私は、この農業界と経済界、企業界との対立というものは、やはり解消していかなければいけないと思いますが、総理にその問題についてのお考え、今後の展望を伺います。
○安倍内閣総理大臣 農業と経済界というのは対立しているのではないか、そういう認識を持たれているのは事実なんだろうと思います。
農業界と経済界においては対立的な議論が行われたことがあったのも事実だろうと思いますが、平成二十一年のリースの解禁で、企業の農業参入が完全自由化となったことを契機として、経済界からの農業参入がふえまして、農地集積バンクとの組み合わせによって、さらに効率的に農業経営を展開できるようになったこと、そしてまた、生産、加工、流通各方面の連携によって我が国の農林水産物、食品の輸出促進が図られて、平成二十六年には過去最高の六千百億円の実績となったことなど、その構図も変わってきているのは事実であります。
さらに、今回の改正では、規制改革会議などでの議論を踏まえて、販売や加工の拡充といった六次産業化を行いやすくするため、農地を所有できる法人である農業生産法人の役員や議決権の要件の見直しを行うこととしています。
こうした一連の改革で、農業界と経済界の連携をさらに進め、他産業で蓄積された知識やノウハウを農業にも取り入れていくことが重要であろうと思います。
例えば、静岡県の三ケ日農協は、大手食品企業と連携して、規格外ミカンを加工したペーストやシロップを開発、そしてまた、高知県の新規参入企業は、農家と連携して、独自のトマトの品種改良を行い、幅広い販路を開拓するなどの取り組みを行っています。
これによって、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていくことができれば、農業の可能性はさらに広がっていくことができるであろう、このように思っております。
○井出委員 今、農業界、経済界との連携をさらに進める、そういうお話がありましたが、私は、今ある現状の対立、そういうものを修復していくところから始めなければいけないのではないか、そのぐらいの危機感を持っております。
今回の改革案は、規制改革会議が出された話をもとにつくられて、その後、農協との話し合いがあって、多くの附則がつくこととなりました。本来、農協の改革をするのであれば、やはり農協ともっと正面からぶつからなければいけない、話をしなければいけなかったと思います。
それができないのはなぜかといえば、やはり、先日記事にもなりました、自民党の参議院議員が、本人が不在という新手の形のパーティーで五億円という資金をもらってきた。このことは、農協の組合員の人も非常に怒っております。
農協の改革は、農協が反対しているからといって、全ての農業者が反対をしているといったら私は大きな間違いだと思っております。農協の上層部をしっかり改革してほしい、そういう声は、農家、一般、末端の組合員から私は数多く聞いてきております。
それがなぜできないのかといえば、やはりそのような、五億円のパーティーの話であったり、政治と業界のこれまでの関係が密接過ぎたということが挙げられると思います。
先ほど、岩盤に穴をあけるという話がありましたが、私は、この岩盤というものは、これまでの自民党政権と農業界がみずからつくり出してきたものであって、今回の改革案というものが到底その岩盤に穴をあけることができたとは思いませんが、このことについて答弁を総理に求めます。
○安倍内閣総理大臣 まさにこの六十年間、農業団体と自民党はお互いに力を合わせながら、地域の農業を守りつつ、農業者の所得を保障し、そして消費者の安全と安心を確保するべく努力を重ねてきたわけでございます。
しかし、この六十年の経過の中において、先ほど申し上げましたように、大きく農業をめぐる環境は変わったわけでございまして、このままでは農業が立ち行かなくなるのは事実という中において、我々は農協側と相当激しい議論を行ってきたわけでございます。自民党の中における議論も激しい議論が行われたということは御承知のとおりであろうと思います。その中におきまして、我々は、変えなければならないという大きな決断をしたところでございます。
先ほどは、農業者の方が不安になるような改革を何でやるんだという側面で御議論をいただいたわけでありますが、今回は、全然改革になっていないではないかという御議論をいただいているわけでありますが、まさに農家の方々のための改革であり、今立ちどまっていることは、もう余り時間がないわけでありますから、これは決して農家、農業のためにもならない、立ちどまるべきではないという中において、最終的には農協の方々とも話し合いがつき、我々は改革に向けて大きく歩みを進めていくことができる、こう確信をしているところでございます。
○井出委員 改革が足りない、今そういうことをおっしゃられましたけれども、私は、端的に申し上げれば、改革のポイントがずれてしまっているのではないか。
農協とのこれまでの関係から、農協の上層部との話し合いを見て、末端の農家の組合員の望む農協改革、これは端的に言えば、資材を安くしてくれとか、農薬を安くしてくれとか、そういうことだと思うんです。それが今回の改革ではなかなか見えてこない。
今回の改革案が、改革という言葉はいいんですけれども、やはりポイントを外しているというところでもう一つ申し上げれば、総理が先ほど来おっしゃられている農地集積バンクの問題であります。
六十年来の大改革と言われておりますが、戦後の農業改革、農地改革というものは、戦後、多くの農家が小作人だった、農業をやっていながらその土地を所有していなかった、そこに、そうした人たちに土地を与える、自立をさせていく、その明確な目的と、それを実行して、その後、経済の発展、人口の増加、そういったこともあって農業は一定の成長を果たしてきた。
この農地の問題に関して言えば、それが六十年間たって、今また、農地を所有している人と、これから耕したいという人の、そこのマッチングがうまくいっていない。これは、安倍総理がおっしゃった、法人が土地を所有できるようにすればいいというだけの問題ではありません。現に農家をやっている人だって、もう少し効率よく土地を集約したい、また、一生懸命育んできた畑のど真ん中を急に返せと言われるようなリスクをしょっている農家は非常に多い。ですから、今回農業改革をするというのであれば、農協の話よりも農業委員会、集積バンク、農地改革の方が私は本来の改革の趣旨ではないか。
そのことも議論は少なかったですし、何より申し上げたいのは、今回、農業委員会を改革しながらも存続をします、人数を減らして、最適化推進委員というものも設けます、その一方で、農地集約の、これからの日本の農地の未来のかじ取りをやっていくのは農地中間管理機構なんだ、そういうたてつけだと思うんですが、私は、今まで一貫して申し上げてきたのは、長年農業委員会の皆さんが地元で頑張ってきてくれた農地に対する詳しい知識がある、地元の人との人間関係がある、農地中間管理機構は各県に一つ組織をつくって、県の農政の幹部が天下って、現場の知見が全くない、それを一体化しなければこれからの農地改革というものは語れない。
私は農業委員会の方にはっきりと申し上げておりますが、今回、人数が減る、恐らく次はなくなるだろう、そういうことも申し上げました。私は今がチャンスだと思うんです。
これまで現場で農業委員会の人が培ってきた知見というものを、そのお知恵をおかりして農地集積バンクというものを進めていくというなら話はわかる。だけれども、異なる二つの制度を併存して、これから日本の農地というものの集積を一体どうやって進めていくのか、総理に考えを伺いたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 集積バンクと農業委員会の改革についての重要性については、まさに委員のおっしゃるとおりだろうと思います。
ただ、結論のところが少し違うわけでありますが、農地集積バンクは、担い手への農地の集積、集約を進めるための究極の手段として、バンクみずからが農地を借りて担い手にまとまった形で転貸するスキームとして、各都道府県に整備した法人であります。
他方で、農業委員会は、農地に関する市町村の独立行政委員会であり、担い手への農地の集積、集約に向けて関係者の調整を積極的に進めていくことが期待をされているわけでありまして、それぞれに重要な役割があるわけであります。
農地集積バンクと農業委員会は、その役割が異なっているため、統一することは適切ではないと考えておりますが、しかし、その目的は共通するところが多く、両者が的確に連携することで政策効果が大きくなっていくことが期待されます。
今回の改革で、農業委員会は、農地の担い手への集積、集約化という使命をよりよく果たすことになり、農地集積バンクと農業委員会との連携はより強化されるものになる、このように思っております。こうした改革を全体的に実行していくことこそ求められている、このように思います。
○井出委員 端的に伺いますが、戦後の農地改革に比べたら、今回の農地に関する改革というものは非常にぬるいと思いますが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 ぬるいというのはどういう意味で使っておられるか定かではないわけでございますが、我々は、改革のための改革を行う気持ちは全くないわけでありまして、結果を出さなければならない、こう考えているわけであります。
その中で、我々与党の中で大いに議論を重ねる、議論百出したわけでありますが、現場の声も聞きつつ、団体の声も聞きながら、最終的には、まさに農協もそうでありますし、また、今申し上げました農業委員会の改革もそうであります、全体的な改革を進めていく。結果は、まさに農家の方々の所得がふえていく、そして、消費者に安心、安全な、また消費者のニーズに合う農産物が出荷されていく、こういうことではないかと思います。
○井出委員 ぬるいという言葉がちょっと悪かったと思います。
六十年前の改革は、目的と実行手段は明確であったと思います。今回の改革は、農地の部分についても、また農協の部分についても、私は、目的と今やろうとしている改革案が一致していないと思いますが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 これはまさに一致をしているわけでありまして、最初に申し上げましたように、我々は目的を定めたわけであります。このままでは農業に携わる農家の方々の年齢はどんどん上がっていくわけでございます。まさにじり貧になる中において、大切な農業を守っていくために大きな改革が必要であろう。
そして、方向性としては、先ほど申し上げましたように、農業というのを若い皆さんがまさに自分たちの能力や情熱で新しい地平線を切り開いていくことができるような分野にしていくということでありまして、その結果として、所得や収入もふえていくし、地域が発展をしていくような農業に変わっていくということであります。
そしてまた、消費者の皆さんにとっては、ニーズに合うものが生産されていく、安心で安全なすばらしい品質のものが生産されていく、そういう農業に変わっていくという目的の中において、何が必要か、何を変えなければいけないかということについて徹底的に議論した中において、今申し上げているこの目的を達成するために今回の法改正は必要である、このように判断したところでございます。
○井出委員 改革のための改革ではないとおっしゃいましたが、私は、現時点では問題が幾つもあると言わざるを得ません。
そして、我々は、この法案に、徹底的に話し合いをする、そういう趣旨の修正を盛り込ませていただきましたが、規制改革会議ですとか農協の上層部ではなくて、まさに今現場で頑張っている、地域で頑張っている農業の現場のためになる改革というものをこれからしっかりと模索していきたい、そのように申し上げて、私の質問を終わります。
どうもありがとうございました。
○江藤委員長 次に、畠山和也君。
○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
短時間ですので、早速、本題の質問に入ります。
初めに、改めて総理の基本的認識を確認します。
全中、県中、単協など農協系統が日本の農業においてこれまで果たしてきた役割について、まず、首相はどのように認識しているかを伺います。
○安倍内閣総理大臣 我が国には、自立自助を基本として、誰かが困っていればみんながお互いに助け合っていくという共助の精神が生きている、こう思います。
農協は、こうした助け合いの理念のもとに設立をされました農業者の協同組合であり、昭和二十二年に農協法が制定されて以降、小規模で多数の農業者が共同して事業を行うことにより、農産物の流通や生産資材の供給などにおいて大きな役割を果たしてきたと思います。
また、全中及び県中の根拠となる中央会制度は、昭和二十九年に、経営的に困難な状況にあった農協組織の再建を目的に導入をされました。当時一万を超えていた農協は、合併の促進等によって約七百に集約をされ、地域農協の経営基盤の強化に成果を上げたと考えています。
このように、中央会制度は、それぞれの地域農協が自立できる環境を整備することに貢献してきたものと考えております。
○畠山委員 今、農業者の協同組織として大きな役割を果たしてきたということを答弁されたことをまず確認いたします。
そこで、総理は、この農協改革の目的について、強い農業をつくるための改革、また、農家の所得をふやすための改革と述べてきました。
しかし、先ほど委員からも出ているように、本委員会の参考人質疑や地方公聴会では、JA中央会や単協の総合農協としての役割や必要性が語られてきたわけです。先ほど総理が述べたように、役割をきちんと果たしてきたんだと。また、農業委員会の公選制の廃止や農業生産法人の要件緩和に対するさまざまな不安も語られました。この改革が農家の所得向上にどう結びつくのかわからないといった声も出されました。
今回のこの審議を通じて、現場の農業者が望んでいる改革ではないという思いが強まったというのが私の実感です。
そこで、もう中身については先ほどから総理が答弁していますけれども、私が聞きたいのは、総理は現場の農業者の理解が得られていると考えますか。
○安倍内閣総理大臣 これまで、政府や自民党の検討の場では、地域農協を初めとするJAグループの関係者のみならず、東北の米生産農家、九州の露地野菜中心の法人、都市近郊の畜産経営体など多様な農業者からヒアリングを行ってまいりました。本年二月には、最終的にJAグループの合意を得て改革の骨格を取りまとめたわけでございます。また、この四月には、JAグループの皆さんとお会いをし、同じ方向を向いて改革を進めていくことを確認したところであります。
当初は、例えば自民党の部会においても、そこに出席をしてきた農協を含め、農業関係者あるいは議員の皆さんからも、ほとんどは反対の意見でございました。その中において、お互いに議論を深めていく中においては、最終的に、今申し上げましたように、農協の皆さんにも、多くの生産農家の皆さんにも、あるいは農業を専門的に取り組んできた多くの議員の皆様からも賛成をいただく中において今回の法改正は行われた、このように認識をしております。
○畠山委員 いや、それなら、先ほども資料でありましたけれども、この間の地方公聴会などでは、いまだに疑念や不安の声が多く出されているわけですよ。
例えば、八日の山梨会場の地方公聴会で、法人化されて自社直売なども進めている方が、農業改革、何度も申しますが、実際の農業者が全く論外になっているのではないかというふうに思っているところも多くございますと述べています。これが実感だと私は思うんですよ。
それでは、何で論外という言葉が出てくるのか。私は、今回の法改正は、先ほど総理も述べられましたけれども、規制改革会議だとか産業競争力会議だとかからの議論が出発点となって、企業の農業参入に邪魔な規制をなくそうということが出発点だったからではないかと私は思っているんです。
例えば、農業生産法人の出資要件の緩和についても、農外からの出資要件を二分の一未満、半分ぎりぎりまで改正案では認めることとしています。
それで、総理が議長を務める国家戦略特区の諮問会議では、昨年来、企業の農地所有解禁が挙げられて、二〇一五年までの集中取り組み期間に特区でこれを実現しようとしています。特区で突破口を開いて、全国展開のために法改正で進めていく、押しつける。総理が議長となるこの会議から、いわば官邸主導のようなやり方で、現場の農業者の理解が得られないということになるのは私は当然だと思うんです。
また、改革の狙いの一つに、TPP反対の運動の封じ込めではないかというようなことも、これは三月五日付農業新聞でも指摘している学者もいらっしゃるわけです。そういう目が向けられている。
総理、今生産者が望んでいるのは何か。昨年、米価が大幅に下がりました。参考人質疑でも、七千円から八千円の水準では赤字だ、米をつくっている専業農家、大規模農家こそどんどんやめていくという危惧が示されたんですよ。一番の要求は、価格の安定で、所得の保障です。
それなのに、昨年、交付金の削減があって、減反廃止への不安もあるし、そして、TPP交渉で、国会決議がありながら、米についての新たな輸入枠や牛肉、豚肉の関税引き下げなども報じられて、今が潮どきかと感じている農家もいるというふうに聞くんですよ。
だから、農家の現状やこういう声を前にして、総理は、この改革が本当に農家のための改革と自信を持って言えるんですか、本当に農家の理解を得られると思っているんですか。もう一度答弁してください。
○安倍内閣総理大臣 今回の改革は、今委員がおっしゃったような目的では決してないわけでございまして、まさに先ほども申し上げたように、今や農業者の平均年齢は六十六歳以上になろうとしているわけでございまして、このままでは大切な農業を守り抜くことはできないだろう、こう思うわけでございます。そして、余り時間がないわけでありますから、ですから、我々は、全面的な改革を今こそ行わなければならない、こう決断をしたわけでございます。
その中において、まさに農業者の皆さんの創意工夫が生かされ、自由に能力が生かされていくような、そういう環境をつくっていく、ブランドをつくっていく、あるいは海外に展開をしていく、そういうことについて、担い手とあるいはまた地域の農協が一緒になって取り組んでいく、そういう農業に変えていきたい、こう考えているわけでございまして、その中におきましては、今回の改革が必要であろう、こう思っているところでございます。
○畠山委員 それで、繰り返しになりますけれども、先ほど言ったように、今農家が求めているのは価格の安定です。再生産可能な経営をきちんとやれるようにしてほしいというところで、それが今回の農協改革とどう結びつくのか、先ほどからあるように、ずっと、わからないという声が出てきているんですよ。
総理は、二月二十五日の予算委員会で、私の質問に、家族経営を大事にしてきたのは自民党という自負があるという答弁をされました。その家族経営というのは、総合農協のもとで支えられてきたんじゃないんでしょうか。
先ほど、冒頭に総理も答弁されたように、農業者の協同組織として農協は大きな役割を果たしてきたというふうに認めておられます。そして、今回の改革が一体本当に農業者のためになるのかどうかというのは、まだみんなわからない。先ほどからあったように、これでいいのかというさなかにあると思うんですね。
そして、私が最後に述べたいのは、この農協改革を含む全般の農政にかかわって、二〇一三年七月十七日の国家戦略特区ワーキンググループでこんな議論がされています。「減反廃止が安倍さん流に言えば農業改革の一丁目一番地で、減反をなくして、例えば三年後、十年後に向けて価格は国内の需給で見ればこれぐらいになってくる、需給均衡で見ればこれぐらい下がるということがわかる。さあ、あなたは農家を続けますか、やめますかと。三年以内にやめるのだったら、ある程度の退職金を出しますよという話。」だというような、そんな議論がされているんですよね。
これは総理も同じ考えですか。こういうあけすけに、いずれ米価は下がるんだ、今のうちにやめれば退職金を出すようなものに乗っていくような話ですか。家族経営をこれまで守ってきたんだということであるならば、こういうので一体どういうふうに家族経営を守るのか、最後に答弁してください。
○安倍内閣総理大臣 我々も、今おっしゃった米価についての価格安定についての対応というのは当然手当てをしているわけでございますが、私たちが進めている改革については、法人経営であれ家族経営であれ、幅広く我々は支援をしていくわけでございます。
また、今回の農協改革では、地域農協が意欲ある担い手と力を合わせて創意工夫を発揮して、自由な経済活動を行うことによって、農産物の有利販売に全力投球できるようにすることを基本的な考え方としておりまして、法人経営と家族経営の取り扱いについても何ら差を設けていないわけでございます。
いずれにしても、こうした改革を通じて、法人経営、家族経営のいかんにかかわらず、農業の担い手が消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、農業の可能性は広がっていくと考えているわけでございます。
最初御紹介をいただいたように、まさに日本の農業の主体というのは家族経営であったわけでございます。だんだん、この六十年の中におきまして、家族経営をしようにも息子が後を継がない、娘が後を継がないという現状が今あるわけでございます。その中において、新たな担い手が登場してくる必要があるわけでありますが、そういう新たな担い手の中におきましては、もちろん、家族で入ってくる、あるいはまた法人という形で入ってくる、そういう多様な担い手を私たちは必要としているし、そういう多様な担い手が登場してくることによって初めて農業は活性化していく、このように確信をしているところでございます。
○畠山委員 本改正は、家族経営を支えてきた総合農協の協同組合としての性格をゆがめて、全中監査の廃止や准組合員規制の検討など、農協の存立の根幹を崩す、農業組織の解体につながるようなものだというふうに思っています。
当事者、全中の意見表明も聞けませんでした。きょうの審議でも、午前中からさまざまな問題点も明らかになって、さらなる審議が本来必要であるということを最後に表明しまして、私の質問を終わります。
○江藤委員長 これにて内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。
内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。
これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○江藤委員長 この際、内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案に対し、村岡敏英君外二名から、維新の党提案による修正案が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。村岡敏英君。
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農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○村岡委員 維新の党、村岡敏英でございます。
農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案に対する修正案趣旨説明を行います。
ただいま議題となりました修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
修正案は、お手元に配付したとおりであります。
本修正案は、法律案の附則に、政府は、この法律に基づく農業協同組合及び農業委員会に関する制度の改革の趣旨及び内容の周知徹底を図るとともに、組合の事業及び組織のあり方についての当該組合の構成員と役職員との徹底した議論並びに農地等の利用の最適化の推進についての農業の担い手を初めとする農業者その他の関係者の間での徹底した議論を促すことにより、これらの関係者の意識の啓発を図り、当該改革の趣旨に沿った自主的な取り組みを促進するものとする旨の規定を追加するものであります。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○江藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○江藤委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。齋藤健君。
○齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健です。
私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております政府提出法案に賛成、維新の党提出の政府案に対する修正案に賛成、民主党提出法案に反対の立場から討論を行います。
政府提出法案については、立法事実がないという指摘が本委員会においてなされてきました。過去に目を向けるのではなく、人口減少時代を迎え、それぞれの地域農協が今までと違った活動を本気で展開していかないと日本の農業がじり貧になってしまうという将来に目を向ければ、政府提出法案は立法根拠に満ちていると確信しております。恐らくこの見解の相違は、六十年間問題がなかったではないかという過去に安住する立場に立つか、これからの六十年にどう備えるかという将来に責任を持つ立場に立つかの違いから生ずるものでございましょう。
農協と地域社会の関係も議論になりました。申し上げたいのは、農協が地域社会に貢献しているのは紛れもない事実ではあるものの、地域の農業が崩壊すれば地域社会も成り立ちません。つまり、突き詰めれば、農業あっての地域社会であり、地域社会あっての農業ではないということです。(発言する者あり)
○江藤委員長 静粛に願います。
○齋藤(健)委員 今回の政府提出法案は、その農業が今後厳しい状況に直面することが確実な状況においては、農業所得の向上に、より一層力を入れるべきとの趣旨の改正であり、極めて妥当なものだと思います。繰り返しますが、農業あっての地域社会であり、その逆ではありません。
系統組織が三角形なのか逆三角形なのかという議論がありました。現行農協法では、中央会組織の法的権限として、単協を指導するとか監査するといった権限が規定されているのであり、法律上は明確に三角形になっているんです。これを、政府提出法案では、地域農協の自由度を増し、真に逆三角形にしようというものであります。これのどこが上から目線なんでしょうか。
我が党が農協をたたいているといった指摘もありました。冗談ではありません。戦後これまで苦労をともにしてきた同志とも言える農協の皆さんを、我々自由民主党がたたいて何の得があるんでしょうか。そうではなくて、厳しい状況を迎える中で、嫌な薬でも飲みましょう、痛い手術でも受けましょうと長年の友に訴えているのであって、TPP反対運動への意趣返しではないかとか、アメリカに言われたからやっているんではないかといった批判は無礼千万であり、もっと志は高い。我が党を見損なわないでほしい。
結びに、本委員会での法案審議に当たり、果敢に議論を挑んでこられた一部野党の皆さんの真摯な姿勢には、内容はともかく、心からエールを送らせていただき、私の討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)
○江藤委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 ただいま議題となりました、政府提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案に対し、民主党・無所属クラブを代表し、内閣提出法案に反対の立場から討論をいたします。
今回の法案は、地域農協が自由な経済活動を行い、農業所得の向上に全力投球できるようにしたり、農地利用の最適化を促進するために、農協、農業委員会、農業生産法人の一体的な見直しを行うことを目的とするとのことであります。
しかしながら、なぜ中央会が地域農協の自由な経済活動を阻害しているのか、なぜこれまでの公選制による農業委員会が農地利用の最適化の阻害要因となっているのか、具体的な事例を示すことを何度求めても、政府は何らそれらを具体的に示すことができません。今回の法案には、そもそも立法事実そのものがないと言わざるを得ないのです。
これまで複数にわたって行われた参考人からの意見聴取や地方公聴会でも、大部分の参考人からの意見は今回の制度の見直しに懸念を表明するものであり、日本の農業が抱える困難な問題を解決するものとして積極的に支持する意見はほとんど見当たりません。現場の農業者や団体の関係者から、よし、政府案の法案に従ってこれから頑張ろう、そう思われるような法案じゃなくて、どうして農政の改革などなし遂げることができるのでしょうか。
今回の法案には、これらの点以外にも多くの問題点があります。
第一に、改正前の農協法第八条の「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」という規定を削除し、新第七条二項で「農業所得の増大に最大限の配慮」という規定を入れたことによって、協同組合原則に基づく地域インフラとしての総合農協の役割を専門農協に限定しようとしており、我が国の農協の理念そのものの転換を図ろうとしております。
第二に、地域農協の自由な経営を目指すとしながら、理事の過半数を認定農業者等にすることを義務づけるなどの規制強化を行い、現場の創意工夫や努力を無視しようとしております。
第三に、農協から株式会社や医療法人への組織変更の規定を設けておりますが、現場のどこにもそのような具体的なニーズはなく、附則に規定された准組合員の事業利用の状況調査の結果等によっては、将来、政策的に協同組合がそのまま、または分割されて営利企業等に転換させられる道を開いております。
第四に、農業委員に屋上屋を重ねる形で農地利用最適化推進委員を設置するものの、農業委員と別に新たな委員を置く合理的根拠は見出しがたく、その役割分担も不明確であります。
また、今回新たにできる農地利用最適化推進委員、農業委員会ネットワーク機構、農地所有適格法人などは、既存の農業委員、農業会議所、農業生産法人など、それぞれが誇りを持って名乗ることができた、簡にして要を得たネーミングと比べると、醜悪な日本語で、とても国民や農村で末永く愛される名称であるとは思われません。
法案策定段階で未定のものをこれから調査して決めるとして省令に委ねたり、本則以上に異常に長い附則で経過措置を定めたり、関係省庁と協議が調っていないから特定の分野を除外したりと、今回の改正法は、全てが不格好で、政府のひとりよがりによるものと言わざるを得ません。
これらの点以外も、ここで語り尽くせぬほどの問題がこの法案にはあります。
いずれにせよ、今回の制度の見直しは、総理が六十年ぶりの大改革と意気込むのに反して、農協や農業委員会に対する一部の人間の偏見や妄想、思い込みに基づいた、農村社会の現場を知らない組織いじり、改革ごっこにすぎません。
後世に改革をなし遂げたと胸を張って言えるものなのかどうか、与党の議員の皆様もじくじたる思いの方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
私たちは、政府案のような、これまでの農政の失敗に対して特定の組織をスケープゴートにするような、上から目線の冷たい農政ではなく、既に国会に提出をしているふるさと維持三法案などによる、現場目線に立った、温かい農政を実現し、改革のための改革ではなく、農村や現場を巻き込んでいく、本質的な改革の実現を目指してまいります。
こうした目線の違い、理念の違いを全国の農村、農業にかかわる皆様方にしっかりとごらんになっていただき、御理解いただくことを訴え、私の内閣提出法案に対する反対討論とさせていただきます。
ありがとうございます。(拍手)
○江藤委員長 次に、斉藤和子君。
○斉藤(和)委員 私は、日本共産党を代表して、農業協同組合等の一部改正案について反対討論を行います。
反対の第一の理由は、協同組合の改革は、自主自立が基本であり、政府が押しつけるものではないということです。
国際協同組合同盟、ICA理事会は、日本の農協運動の結束を解体する法改正に大きな懸念を表明し、こうした法改正は、日本の農協が農業者や地域社会に提供しているサービスを縮小し、最終的には国民経済にとって逆効果となるだろうとプレスリリースが発表されるほど、国際的な批判を受けている法改正であるということです。
本来、政府がやるべきことは、JA全中がみずからまとめた自主改革案を尊重することです。
さらに、農業協同組合の理事の過半数は認定農業者または販売、経営のプロとすると、理事の資格を導入することは、協同組合の自治と自立の原則を踏みにじるものであり、認められません。
第二の理由は、今回の法改正で、JA全中は、社団法人化され、監査、指導権限の剥奪、建議の法的根拠の撤廃などがされ、各単位農協、都道府県中央会への指導権限を失います。また、賦課金の徴収もできなくなり、活動資金が絶たれます。これらの動きは、JA全中が組合員である農家の利益を最大限に守る立場で行ってきたTPP反対運動の鎮静化を図るための解体とも言えるものであり、許すことはできません。
第三の理由は、全農、経済連の株式会社化を選択肢に導入することです。
株式会社化は、農協事業の独占禁止法適用や外資の株式所有を可能にするものです。これまでの「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」としていた規定を削除し、高い収益性を実現するに置きかえたことは、全農、経済連のみならず単位農協の株式会社化を進めるものです。地域のインフラを支えてきた農協の存立を脅かし、上げた利益を組合員である農家から株主に移行するものであり、認められません。
第四の理由は、農業委員会の公選制を廃止し、目的規定から「農民の地位の向上に寄与する」を削除し、農業、農民に関する意見の公表の権限を奪う点です。
農業委員会は、公選制のもと、農業者がみずから代表者を選ぶことで農地の守り手となり、役割を発揮してきました。それを市町村長が任命することは、農業者の自主性を奪い、農地の番人としての農業委員会制度を骨抜きにすることにほかなりません。認められません。
さらに、農地法の一部改正で農地所有の法人の要件緩和を進めることは、企業による農業、農地支配を一層進めるものであり、許すことはできません。
日本共産党は、以上のような農業組織の解体ともいうべき法案を、当事者、全中の意見表明もされないまま、審議で問題点が明らかになり、さらなる質疑が必要になるもとで採決することに強く抗議を表明して、反対討論とします。(拍手)
○江藤委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○江藤委員長 これより採決に入ります。
まず、岸本周平君外三名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○江藤委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、村岡敏英君外二名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○江藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○江藤委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○江藤委員長 ただいま議決いたしました内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案に対し、宮腰光寛君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。小山展弘君。
○小山委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
案文を朗読して趣旨の説明にかえさせていただきます。
農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議(案)
我が国の農業・農村の現場を取り巻く状況が厳しさを増す中、これを克服し、本来の活力を取り戻すべく、六次産業化等による高付加価値化、輸出も視野に入れた需要の開拓、担い手への農地の集積・集約化等を通じた農業の成長産業化を推進し、その成果を着実にあげていくことが喫緊の課題となっている。
そのためには、地域の農協が、地域の農業者と協力して農産物の有利販売・生産資材の有利調達等に創意工夫を活かして積極的に取り組むとともに、農業委員会が、その主たる使命である農地利用の最適化をより良く果たし、農業者の更なる経営発展を促すことができる環境を一体的に整備することが必要不可欠である。
よって政府は、本法の施行に当たっては、左記事項の実現を図り、農政改革の推進に万全を期すべきである。
記
一 農協改革の最大の目的である農業所得の増大のための農産物の有利販売・生産資材の有利調達が確実に達成されるよう、改革の趣旨に沿った自主的な取組を促進すること。
二 農協の理事構成及び農業委員の構成に係る農林水産省令の制定に当たっては、制度の趣旨を踏まえつつ、組織・運営の自主性・自律性を最大限尊重し、関係者の意向や地域の実態を踏まえた適切なものとなるように配慮すること。農協の理事構成の見直しが着実に行われるようにすること。
三 准組合員の利用の在り方の検討に当たっては、正組合員・准組合員の利用の実態などを適切に調査するとともに、地域のための重要なインフラとして農協が果たしている役割を十分踏まえること。農業生産法人の要件の見直し及び農協の准組合員の利用の在り方の検討については、速やかに進めること。
四 農協の組織変更は、選択であることを徹底するとともに、株式会社への組織変更については、省令において定款に株式譲渡制限ルールを明記するよう措置すること。
五 地区重複農協の設立については、今回の法改正で完全に自由となるが、これを踏まえて、農業者の選択により、複数の農協のサービスが利用できる状況が生まれるように配慮すること。
六 農協・全農等は、経済界との連携を強化し、農業・食品産業の発展に資する経済活動を積極的に行うようにすること。
七 農林中央金庫及び都道府県信用農業協同組合連合会は、担い手等の新しい資金需要に適切に応えられるよう農業融資に積極的に取り組むこと。
八 全中監査から公認会計士監査への移行に当たっては、配慮事項が確実に実施されるよう、関係者の協議を踏まえ、万全の措置を講ずること。
九 今回の農協改革に伴い、税制に関して万全の措置を講ずること。
十 農協系統組織は、その構成員のための組織であるという原点を踏まえ、協同組合に対する誤解を惹起することのないよう、その事業の実施に際しては、あらゆる面で公平・公正な運営に努めること。
十一 農業委員の任命、農地利用最適化推進委員の委嘱及びそのための推薦・公募等について、適正な手続により公正に行われるようにすること。また、農業委員及び新設される推進委員について、その業務を適切に遂行できるよう十分な定数を確保するとともに、農業委員及び推進委員の報酬について、業務に見合う適切な水準となるよう十分な予算の確保を図ること。
十二 公共性の高い農地の集約や権利移動に関する農業委員会の決定は、高い中立性と地域からの厚い信頼を必要とすることに鑑み、農業委員の公選制の廃止に当たっては、地域の代表性が堅持されるよう十分配慮すること。
十三 農業委員会の改革により、農業委員と農地利用最適化推進委員の役割分担の明確化を図った上で、農地中間管理機構との連携が強化され、担い手への農地利用の集積・集約化を加速するとともに、耕作放棄地の発生防止・解消等が効率的・効果的に推進されるようにすること。
十四 農業委員及び農地利用最適化推進委員の資質向上のため、研修の機会を確保するとともに、事務局体制の整備強化を図ること。
十五 市町村長と農業委員会は、密接に連絡し、人と農地の問題の解決など地域農業の発展に責任を持って取り組むようにすること。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○江藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○江藤委員長 起立多数。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣林芳正君。
○林国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。
附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
―――――――――――――
○江藤委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○江藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時二十五分散会