第24号 平成27年12月10日(木曜日)
平成二十七年十二月十日(木曜日)午後一時開議
出席委員
委員長 江藤 拓君
理事 あべ 俊子君 理事 小里 泰弘君
理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君
理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君
理事 石田 祝稔君 理事 松木けんこう君
井野 俊郎君 伊藤信太郎君
池田 道孝君 今枝宗一郎君
大西 宏幸君 加藤 寛治君
勝沼 栄明君 小島 敏文君
小松 裕君 笹川 博義君
瀬戸 隆一君 田畑 裕明君
武井 俊輔君 武部 新君
谷 公一君 中川 郁子君
中谷 真一君 西川 公也君
橋本 英教君 古川 康君
前川 恵君 宮崎 謙介君
宮路 拓馬君 簗 和生君
山本 拓君 若狭 勝君
金子 恵美君 岸本 周平君
小山 展弘君 佐々木隆博君
篠原 孝君 福島 伸享君
稲津 久君 佐藤 英道君
井出 庸生君 斉藤 和子君
畠山 和也君 丸山 穂高君
仲里 利信君
…………………………………
農林水産大臣 森山 裕君
内閣府副大臣 高鳥 修一君
外務副大臣 武藤 容治君
農林水産副大臣 伊東 良孝君
農林水産副大臣 齋藤 健君
経済産業副大臣 鈴木 淳司君
内閣府大臣政務官 高木 宏壽君
農林水産大臣政務官 加藤 寛治君
農林水産大臣政務官 佐藤 英道君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 澁谷 和久君
政府参考人
(金融庁総務企画局審議官) 森田 宗男君
政府参考人
(消費者庁審議官) 吉井 巧君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 佐藤 達夫君
政府参考人
(財務省大臣官房審議官) 藤城 眞君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 佐藤 速水君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 大澤 誠君
政府参考人
(農林水産省大臣官房統計部長) 佐々木康雄君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 小風 茂君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 今城 健晴君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 奥原 正明君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 末松 広行君
政府参考人
(環境省大臣官房審議官) 亀澤 玲治君
農林水産委員会専門員 奥井 啓史君
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委員の異動
十二月九日
辞任 補欠選任
村岡 敏英君 丸山 穂高君
同月十日
辞任 補欠選任
勝沼 栄明君 笹川 博義君
武井 俊輔君 若狭 勝君
中谷 真一君 小松 裕君
橋本 英教君 小島 敏文君
古川 康君 大西 宏幸君
福島 伸享君 篠原 孝君
同日
辞任 補欠選任
大西 宏幸君 古川 康君
小島 敏文君 橋本 英教君
小松 裕君 宮崎 謙介君
笹川 博義君 勝沼 栄明君
若狭 勝君 武井 俊輔君
篠原 孝君 福島 伸享君
同日
辞任 補欠選任
宮崎 謙介君 田畑 裕明君
同日
辞任 補欠選任
田畑 裕明君 中谷 真一君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
農林水産関係の基本施策に関する件
平成二十八年度畜産物価格等に関する件
――――◇―――――
○江藤委員長 これより会議を開きます。
この際、農林水産大臣、農林水産副大臣及び農林水産大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。農林水産大臣森山裕君。
○森山国務大臣 去る十月七日に農林水産大臣を拝命いたしました森山裕です。
このたび、就任後初めて御挨拶の機会をいただきましたので、一言申し上げたいと思います。
申し上げるまでもなく、農林水産業は国の基であり、国民生活にとって最も基礎的な物資である食料品等を安定供給するという重大な使命を担っているほか、自然環境の維持など多面的機能の発揮といった重要な役割を担っております。
また、我が国の農林水産物は、営々と続いてきた農林漁業者の方々の御努力により、世界から安全、安心で高品質なものとの評価をいただくまでになりました。
他方、農業従事者の高齢化や耕作放棄地の増大など、我が国の農林水産業の課題は山積しており、農政を改革し、農林水産業の活性化を図っていくことは、待ったなしの課題であると認識をしております。
また、本年十月に大筋合意に至りました環太平洋パートナーシップ協定という新たな国際環境にも対応していかなければならず、日本の農政は、農政新時代ともいうべき新たなステージを迎えています。
先般、政府として、総合的なTPP関連政策大綱を取りまとめました。成長産業化に取り組む生産者を応援するため、競争力強化、体質強化対策を集中的に講じるとともに、協定発効に合わせて経営安定対策の充実等の措置を講じ、関税削減等に対する農林漁業者の懸念と不安を払拭し、TPP協定発効後の経営安定に万全を期してまいります。
あわせて、これまで進めてまいりました農林水産業・地域の活力創造プラン等に基づく農政改革を着実に実施することにより、新たな国際環境のもとでも、強くて豊かな農林水産業と美しく活力ある農山漁村を実現してまいります。
政策の実施に当たっては、現場の声に応えていくことが何よりも重要です。就任以来、私自身も機会あるごとに現場に足を運ばせていただきましたが、引き続き、私が先頭に立って、現場の声に寄り添って、両副大臣、両政務官、そして職員全員と一つのチームとなって諸課題に取り組んでまいります。
江藤委員長を初め委員各位におかれましては、今後とも一層の御指導、御鞭撻を賜りますようにお願いを申し上げます。(拍手)
○江藤委員長 次に、農林水産副大臣伊東良孝君。
○伊東副大臣 十月の九日、農林水産副大臣を拝命いたしました北海道選出の伊東良孝でございます。
森山大臣から、ただいま農林水産行政を取り巻く諸課題、難題をお話しいただきましたが、大臣を支え、齋藤副大臣、加藤政務官、佐藤政務官ともども、農林水産業発展のために尽くしてまいる所存でございます。
江藤委員長を初め委員各位の皆様の御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。(拍手)
○江藤委員長 次に、農林水産副大臣齋藤健君。
○齋藤副大臣 このたび農林水産副大臣を拝命いたしました齋藤健でございます。
森山大臣のもと、伊東副大臣、加藤政務官、佐藤政務官とともに、チーム森山、一丸となって、農林水産業の発展のため、微力ではありますが、全力を尽くしてまいります。
委員長を初め委員の皆様方の御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
○江藤委員長 次に、農林水産大臣政務官加藤寛治君。
○加藤大臣政務官 このたび農林水産大臣政務官を拝命いたしました加藤寛治でございます。
森山大臣のもとで、副大臣、政務官、事務方と力を合わせて、農林水産行政の推進のために一生懸命頑張ってまいります。
委員長を初め委員の先生方の御指導と御鞭撻を心からお願い申し上げて、就任の挨拶にかえさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○江藤委員長 次に、農林水産大臣政務官佐藤英道君。
○佐藤大臣政務官 引き続き農林水産大臣政務官を務めさせていただくことになりました佐藤英道でございます。
森山大臣のもと、伊東副大臣、齋藤副大臣、そして加藤政務官と一体となって、我が国の農林水産業発展のために身を粉にして働いてまいる決意でございます。
江藤委員長を初め委員の皆様方の御指導、御鞭撻、よろしくお願いいたします。(拍手)
――――◇―――――
○江藤委員長 次に、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤速水君、大臣官房総括審議官大澤誠君、大臣官房統計部長佐々木康雄君、消費・安全局長小風茂君、生産局長今城健晴君、経営局長奥原正明君、農村振興局長末松広行君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、金融庁総務企画局審議官森田宗男君、消費者庁審議官吉井巧君、外務省大臣官房審議官佐藤達夫君、財務省大臣官房審議官藤城眞君及び環境省大臣官房審議官亀澤玲治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○江藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。簗和生君。
○簗委員 自由民主党の簗和生でございます。
本日は、質問の機会を賜りまして、本当にありがとうございます。
まずは、森山大臣、御就任まことにおめでとうございます。そして、伊東副大臣、齋藤副大臣、加藤大臣政務官、そして佐藤大臣政務官、皆様方の御就任も心からお喜びを申し上げる次第でございます。
大変重要な局面にある我が国の農業、農政、皆様方のお力でしっかりと御牽引をいただいて、活力ある農山漁村のさらなる発展に向けて御尽力をいただければ、そのようにお願いを申し上げる次第でございます。
本日は、畜産、酪農関係について質問をさせていただきたいというふうに思っております。
今、酪農、そして肉用牛関係については、農家戸数、そして飼養頭数ともに減少傾向にあります。これを早期に歯どめをかける、そのための生産基盤の強化というものが大変重要な課題になっておるところでございます。今、農家の皆さんに直接お話を聞くと、やはり将来への不安、こういうものが大きく、後継者がいない、あるいは離農せざるを得ない、こういう状況があるというふうに聞いております。
まず、私は、経営安定対策、これをしっかりと確立して、農家の皆さんに将来への期待、希望というものを持っていただけることが重要だというふうに思っております。
まず最初の質問としましては、この畜産、酪農分野での経営安定対策として、今後どのような方策を具体的に打っていくのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いをいたします。
○森山国務大臣 簗委員にお答えをいたします。
どのような経営安定対策をとろうとしているのかということでございますが、先般決定をいたしました政策大綱において、関税削減等に対する農業者の懸念と不安を払拭して、TPP協定発効後の経営安定に万全を期すため、牛肉、豚肉については、協定発効とあわせて経営安定対策を講じようとしております。
その一つは、牛・豚マルキンを法制化させていただいて、補填率を引き上げるとともに、豚マルキンの国庫負担水準を引き上げるということが一つございます。
また、現在の黒毛和種の保証基準価格を見てみますと、ちょうど三十三万二千円でございまして、また、肉用牛の繁殖経営支援事業、いわゆる二階部分の発動基準についても四十二万円となっておりまして、実態にそぐわない形でございますので、ここは、黒毛和種あるいは短角、乳用種等々について、経営の実情に即したものに見直すということをさせていただきたいと考えております。
このほか、乳製品につきましては、生クリーム等向け生乳の取引価格や数量の調査等の準備をできるだけ急ぎまして、平成二十九年度からは、生クリーム等の液状乳製品を加工原料乳生産者補給金の対象に追加するとともに、補給金単価を一本化することができるような対応を進めさせていただきたいと考えております。
以上でございます。
○簗委員 どうもありがとうございました。
今、大臣から、加工原料乳の生産者補給金制度についてのお話が最後にありました。
畜産物価格等の決定を控えているということもありまして、先日、自民党の畜産・酪農小委員会の中で北海道を視察させていただいてまいりました。その中でございますけれども、生産現場、やはり将来への不安というものが大変強いという中で、大臣からもお話がありました、経営の実情というものを踏まえてこの単価を設定してほしい、そういう御要望を多く私も伺ってまいったところでございます。
こうしたことも踏まえまして、今度の平成二十八年度の単価設定に当たっての農林水産省としての見解、こういうものをお伺いしたいというふうに思います。
そして、北海道を視察した折に、十月に低気圧によってデントコーンが非常に大きく被害を受ける倒伏被害というものが生じているということでございました。飼料の供給に大変に影響があるということも懸念されますので、ぜひこうした面についても、別の形になるのかもしれませんけれども、手厚い支援をしていただければ、そんなことを思っております。
オホーツク地域が被害が非常に大きいということでございまして、御地元の武部先生も中心に大変一生懸命この問題にも取り組んでいただいております。北海道の先生方、皆さん一丸となってこの問題に取り組んでいただいておるところでございますので、ぜひ農林水産省としても対応をしっかりと行っていただきたい、そんなことを思っております。
以上の二点について、御見解をお伺いしたいと思います。
○今城政府参考人 お答えいたします。
二十八年度の加工原料乳生産者補給金単価ということでございます。
現在の酪農をめぐる情勢を見ますと、初妊牛価格が高水準で推移している一方、子牛価格あるいは廃用牛価格は前年度を大きく上回る水準ということで推移しております。
そのような中で、二十八年度、来年度の加工原料乳生産者補給金単価につきましては、算定ルールにのっとり、生産資材や副産物等の直近の動向を反映させ、審議会の意見を聞いた上で適切に決定してまいりたいというふうに考えております。
今委員御指摘のとおり、北海道はあの十月の爆弾低気圧でデントコーンが被害を受けているということで、特にオホーツク・根釧地方を中心とします影響が大きいということであるというふうに私も聞いております。
そのような中で、一応収穫はできているんだけれども、倒伏したものを収穫するときに土がまじってしまって、サイレージの品質低下ということが起こっているということでございますが、この被害の現状につきまして、これを補給金単価の形で織り込むということは、算定時までにその被害が果たして明らかにできるかという問題があって、なかなか難しいのかなというふうに考えております。
いずれにしましても、今回のデントコーンの被害の発生、それから、そういうことも踏まえた自給飼料の利用の安定ということを念頭に置きながら、今回の価格の議論の中で総合的に検討してまいりたいというふうに考えております。
○簗委員 どうもありがとうございます。
この補給金制度につきましては、先ほど大臣からありましたように、生クリーム等の液状乳製品もここに対象として加えて、そして一本化をしていくという制度設計を今進めていただいているということでございますので、万全な制度にするとともに、早期にこの制度が確立されるようにお願いを申し上げる次第でございます。
次の質問でございますけれども、今、北海道の酪農のお話をさせていただきました。今度は都府県酪農についてお話をさせていただきたいというふうに思います。
私の地元栃木県は本州で生乳の生産量が第一位という県でございまして、その中でも特に、私の選挙区である県北地域、ここで盛んに生乳を生産している、そういう状況がございます。
そこでお伺いをしたいんですが、先ほど言ったように、酪農関係、生産基盤が非常に弱体化しているという中で、本州はさらに、北海道にも増してこの生産基盤の弱体化の速度が速い、そういう状況があるわけでございます。先ほどの加工原料乳の生産者補給金制度というものでこのすみ分けを行って、間接的に都府県にも支援を行っていただいているということではございますけれども、地元の声を聞きますと、より直接的に都府県酪農を対象とした支援も講じてほしい、そういう御要望も多々いただいておる実情がございます。
まず、この点につきまして、都府県酪農をめぐる現状とそして今後の政策の方向性等について御見解をお伺いできればと思います。
○今城政府参考人 都府県酪農の現状ということのお尋ねでございます。
都府県酪農は、消費地への新鮮な飲用牛乳の供給ということを担っていただくとともに、地域の基幹的な産業として地域経済社会の維持に重要な役割を果たしているというふうに認識しております。
その一方で、現場では、高齢化による後継者不足、それから毎日の搾乳でなかなか休みがとれないということの労働過重による離農、そういうものが進展しているということなどによりまして、生産基盤が弱体化しているという状況にあるのではないかというふうに認識しております。
こうした状況を踏まえまして、農林水産省といたしましては、酪農経営の安定や生産基盤の維持強化が図られるよう、新規就農あるいは規模拡大に向けた地域的取り組みを支援いたします畜産クラスター事業、労働負担の軽減やコスト削減を図るための外部支援組織、酪農ヘルパーですとかTMRセンター等の活用への支援、乳用牛の飼養環境の改善や暑熱対策のための資材の導入等に対する支援といった施策を講じているということでございます。
今後とも、都府県の酪農家が主体性と創意工夫を発揮しながら経営を発展させることができるよう、対策の充実強化を図ってまいりたいというふうに考えております。
○簗委員 ありがとうございました。
畜産、酪農関係をめぐる厳しい状況という中で、飼料の価格がやはり高い。配合飼料、粗飼料もそうですが、輸入飼料が高くなっている、高どまりしているという状況が見受けられて、それが収益を圧迫しているという大きな要因になっております。
その中で、今、取り組みは進めていただいておりますけれども、やはり、この自給率を高めていく、この政策をもっと強力に推し進めていく必要があるというふうに思っております。現状でも、飼料生産型酪農経営支援事業というものがございまして、この拡充に向けて今検討もいただいているということでございますが、改めて、この事業も含めて、これからの飼料自給率の向上に向けた農林水産省の政策をお聞かせいただきたいと思います。
○加藤大臣政務官 簗議員の質問にお答えをいたします。
酪農経営における自給飼料の活用を後押しするために、平成二十三年度から、飼料生産型酪農経営支援事業により、飼料作付面積に応じた交付金、一ヘクタール当たり一万五千円、支援を行っておるところであります。
また、二十七年度からは、二期作、二毛作の二作目や、耕種農家との契約栽培を交付対象に追加するなど、本事業を拡充したところであります。
さらに、二十八年度予算においては、飼料作付面積を拡大し、輸入粗飼料の使用量を削減する取り組みに対して、面積拡大分について追加交付、一ヘクタール当たり三万円交付するべく、本事業の拡充要求を行っておるところでございます。
今後とも、飼料生産基盤に立脚した酪農家を支援することにより、自給飼料の生産、利用拡大を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
○簗委員 ありがとうございました。
制度をどんどんいいものにしていただいて、自給飼料をどんどん高めていただければ、そんなことを思っております。
次の質問に移りますが、先ほど御答弁をいただきましたけれども、今、畜産クラスター事業というものを大変に力を入れて農水省としても取り組みをしてもらっていて、さらに地域からもこの要望も非常に多く出ているという状況があります。
先般、先ほど申しました、北海道を視察させていただいたときに大変多く意見として出ていたのは、家族経営を対象としてやはり支援をもっと充実強化していただきたいという声でございました。家族経営がしっかりと存続することが地域コミュニティーを支えていくという意味でも大変重要だということでございまして、法人化する、あるいは規模を拡大するということではなくて、そもそもその規模を維持していくことが大変大切なんだというような御意見もいただいておるところでございます。
今、この畜産クラスター関連事業でございますけれども、三年以内に法人化をする、あるいは地域の平均規模以上に規模を拡大するといった要件がある中で、そうした家族経営に対する支援という意味では、今十分に応え切れていない面もあるのではないかな、そんな印象も私個人としては抱いておるところでございます。
例えば、こんなお話がありました。北海道で年間の生乳生産量五百トンを出している農家、これが十軒あること、そして一方で、その十倍である五千トンを年間生産する酪農家が一軒ある、このどちらがいいのかと言われたときには、前者の方、十分の一でもそれが十軒あって地域に点在している方が、地域コミュニティーを守るという意味では大変重要なんじゃないか、そんな示唆に富む意見を言っていただく方もいまして、私もなるほどなというふうに思ったところでございます。
そうした点から、先ほど労働負担が多いということが後継者不足という点に非常に重要に密接しているということでございますので、外部組織を使う、TMRセンターやコントラクター、そして酪農ヘルパーというものを入れて地域全体でやっていこうというのが畜産クラスターの試みであり、このもともとの趣旨自体はそういうものだと思うんですが、実態を見ると、施設整備あるいは機械の導入、こういったものにより予算が使われている部分があるのかなという実態もあるのかもしれません。
ですから、その辺も含めて、これから、家族経営、こういうものを守っていく、存続させていくという意味でのこれからの畜産クラスター関連事業のあり方、こういったところをぜひ模索していただければと思っておりますので、これから制度の検証等も含めて力を入れていただきたいと思います。これについての見解をお伺いできればと思います。
○江藤委員長 今城生産局長、簡潔にお願いします。
○今城政府参考人 お答えいたします。
おっしゃるとおり、畜産クラスター事業、これにつきまして、現場の方からそのような声が上がっているというのは認識しております。私ども、地域で連携をして収益を向上させるというのがこの事業の趣旨だということでございます。
そのような中で、中小家族経営というものの助成ということにつきまして、まさに地域で連携して地域の収益性を上げるという観点から、現在の実施状況を十分に踏まえながら、どのような観点で見直しが可能かというふうな検討を行ってまいりたいというふうに考えております。
○簗委員 この畜産クラスターについて言えば、先ほど家族農家の声というのを紹介しましたけれども、ほかには、全面的に施設設備を改修する、全面改築するということじゃなくて、部分的に補修、修繕するというニーズもあるということでございましたけれども、そういうところの支援も手厚くしていただければと思います。
それで、畜産クラスターについてもう一点伺いたいのは、養豚関係でも利用ニーズが高いという事情があります。養豚向けにもしっかりと予算を確保していただきたいと思うんですけれども、これについて、簡単で結構ですので、今後の方向性についてお話を聞かせてください。
○今城政府参考人 クラスター事業について、現場から、なかなか豚が対象になりにくいのではないかというような声があるのは承知しております。
ただ、現実にクラスター事業の対象となっている養豚経営の場合、例えば、餌米ですとかエコフィード、こういうものを起点にしまして、地域的な連携を図ってクラスターを組んでいただいているというような事例もございます。
現在、豚のクラスターが認められている予算の割合としては一三%ぐらい実績がございますけれども、そういう中で、今後とも、収益性を地域で連携して向上させていくという趣旨で、餌米、エコフィードなどを起点としたクラスターを組んでいただくということで、豚のクラスターも積極的に推進できればというふうに考えております。
○簗委員 ぜひよろしくお願いをいたします。
では、最後の質問をさせていただきます。
加工食品それから外食の分野にも原料原産地表示を適用拡大してほしいという声があります。これについて、消費者の選択に資する制度を構築していくという意味でも重要な点もあるかと思いますので、改めて、今後の取り組みについて、簡単で結構ですので、御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
○吉井政府参考人 お答えいたします。
加工食品の原料原産地につきましては、本年三月に閣議決定をされました消費者基本計画におきまして、順次実態を踏まえた検討を行う、そういうことになっております。
さらに、今回、総合的なTPP関連政策大綱におきましても、食の安全、安心に関する施策といたしまして、加工食品の原料原産地表示の拡大の検討が盛り込まれたこと、こうしたことも踏まえまして、早急に準備を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
また、本件につきましては、加工食品の生産、流通、消費、この実態を踏まえた検討が必要でございます。これらの施策を所管する農林水産省とも緊密な連携を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
○簗委員 どうもありがとうございました。
先ほど家族経営と地域コミュニティーの維持の話をさせていただきましたが、これからの農政、もちろん、農家の所得を上げる、産業政策の側面も重要ですけれども、地域政策、地域をしっかりと守る、多面的機能を守る、こういった意味での農政も車の両輪として推し進めていただければ、それをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
○江藤委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 公明党の稲津久でございます。
早速質問に入らせていただきたいと思いますが、まず、加工原料乳生産者補給金の単価及び限度数量の適切な決定についてということで伺ってまいりたいと思います。
先ほども議題になりました畜産、酪農における生産基盤の弱体化、これが大変大きな問題であるということ、ただ、生産基盤の弱体化といっても、北海道と都府県では若干その悪化の進行に差があるんじゃないだろうかなというふうに思っておりまして、そのことをまず触れておきたいと思います。
酪農では、十年前と本年の平成二十七年を比較すれば、飼養戸数では、北海道では十年前の七六%、都府県は十年前の五九%。経産牛の頭数では、北海道は十年前の九四%、都府県では十年前の七二%ということで、こういう状況があるということ。それから、北海道と都府県の経産牛の飼養頭数は、これは御存じの方も大勢いらっしゃると思うんですけれども、平成二十二年に逆転をしておりまして、北海道が多くなって、その後、その差が広がってきているというのがあります。
現段階では、北海道の生乳の生産量は、これは二十六年度ですけれども、全国の約五二%を占めているという状況であります。
このように、生乳生産における北海道の役割というのがだんだんとウエートを増しているということが言えるのではないかと思うんですね。
このことを踏まえた上で質問をさせていただきたいと思うんですけれども、農林水産省がことしの十一月二十四日に公表した平成二十六年度の牛乳生産費調査によりますと、飼料費が増加したこと等によりまして、搾乳牛の通年換算の一頭当たりの全算入生産費は前年度に比べて約一・六%増加しているということ。これは、前段私が述べましたように、生乳生産における北海道の役割、特に我が国の加工原料乳の生産の大部分を占めている北海道の酪農の将来のために、単価及び限度数量については、酪農の現状を適切に評価した水準、もっとはっきり言いますと、最低でも現行水準を維持するということの決定を希望いたしますけれども、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○齋藤副大臣 平成二十七年度の酪農をめぐる情勢を見てみますと、初妊牛価格が高水準で推移をいたしております一方、子牛価格や廃用牛価格は前年を大きく上回って推移しているところでございます。
また、生乳生産量は前年より増加をしておりまして、脱脂粉乳、バター等向け生乳処理量につきましても増加する見込みとなっていますが、交付対象数量百七十八万トンを十万トン以上下回る見込みということになっております。
いずれにいたしましても、二十八年度の加工原料乳生産者補給金は、算定ルールがございますので、この算定ルールにのっとりまして、単価については、生産資材や副産物等の直近の動向、先生がお話しになりましたように反映させていただいて、交付対象数量については、生乳の生産事情や乳製品の需要等を考慮いたしまして、食料・農業・農村政策審議会の意見も聞くということになっておりますので、意見をお聞きした上で、適切に今後決定してまいりたいと思っております。
○稲津委員 ありがとうございました。
現段階では当然そのような御答弁にならざるを得ないと思うんですけれども、一部に、この補給金の単価については、今、酪農家の副産物である子牛の価格が高騰しているがゆえに引き下げてもなんという声が聞こえてくるやにも聞いておりますけれども、とんでもない話でありまして、なぜかというと、特に配合飼料の高騰というのはもっと細かな分析をしなきゃいけないと思っているんです。これは相当今ダメージを受けています。
例えば、トウモロコシそれから大豆の油かす、これは相場でいうと下がってきている、これは事実ですね。それから、海上運賃の推移、これは輸入の関係、これも下がっているのは事実です。問題は、為替相場の推移をきっちり見なければそれは確証できないという話で、ここは円安でこういう状況ですから、もうはっきりわかっていますけれども。
一つだけつけ加えさせていただきますが、これは業界関連の喫緊のデータなんですけれども、特に北海道の関係で、乳牛用の配合飼料の工場渡し価格、これは二〇一二年六月以降、非常に高くて、高どまりしているということ、ことしの七月の乳牛用配合飼料の価格、これはトン当たり大体六万五千百円という北海道のデータが出てまいりまして、こういう状況ですと、やはり受けている影響というのは相当あるということ。
繰り返しですけれども、配合飼料のところは高どまりしているのが現実で、これが今やはりいろいろな角度から見ても生産者の大きな負担になっているということは否めないと私は思うんです。したがいまして、ぜひこの補給金の単価等については現状維持以上を確保していただきたい、このことを強く申し上げておきたいと思います。
次に移ります。
次は、酪農生産基盤確保・強化緊急支援事業の必要性についてということでお伺いしたいと思います。
生産基盤の強化、それから将来に希望を持てる、そういう経営を実現していくためには、加工原料乳の生産者補給金等の制度とともに酪農の経営安定対策のための補完対策が必要だ、こう思っております。
その中で、ALIC事業の酪農生産基盤確保・強化緊急支援事業は特に重要である、私はこのようにお話を申し上げたいと思いますけれども、ここにはいろいろなメニューがあります。なかなかこれは非常によろしいと思うんです。特に、乳房炎による生乳生産量の減少を防止するための搾乳機器の点検、この補助が現場ではすこぶる好評であるということ、まさにこれは生乳生産増に直結する事業である、生産者は異口同音にそのようにお答えいただいております。
このほか、後継者に対する初妊牛の導入の支援の効果も上がっている事例を現場ではよく聞きますけれども、このように、この事業については生乳生産基盤の確保強化に、繰り返しですけれども、大きな力を発揮している、このように思っておりまして、ぜひこの事業の充実強化をお願いしたいというふうに思っております。
そこでお伺いしますけれども、農林水産省として、この事業の効果をどのように見ているかということ、そして、特に来年度におけるこの事業の実施の見込み、はっきり言いますと事業の充実をどのように考えているのかということについて、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
○今城政府参考人 お答えいたします。
ALICで行われております酪農生産基盤確保・強化緊急支援事業ということでございまして、これはさまざまなメニューを行わせていただいておりますけれども、暑熱対策あるいは飼養管理の改善、簡易牛舎の整備、それから後継者に対する初妊牛の導入等の支援という幅広い支援を行っているということでございます。
今年度につきましては、今委員御指摘のとおり、生乳生産量の維持拡大、酪農経営の安定化を図るという観点から、搾乳機器の点検、補改修による乳房炎対策というものを追加させていただいて、生産者から非常に高い評価をいただいているというふうに認識しております。
ことしと申しますか平成二十八年度に向けて、本対策の内容につきましては、今御指摘いただいたとおり、非常に評判がいいということもございまして、そういうことも踏まえて、畜産物価格の決定とあわせて検討してまいりたいということでございます。
○稲津委員 現場のニーズは非常に大きいと思います。それから、今御答弁いただきまして、ぜひしっかり検討していただいて、進めていただくことをお願い申し上げたいと思います。
次に移ります。
次は、肉用子牛の保証基準価格それから合理化目標の価格の適正な決定についてということで伺っておきたいと思います。
今、私は酪農の生産基盤の話をしましたが、肉用牛の生産も、むしろそっちの方が非常に弱体化しているんじゃないだろうかなというふうに見受けられます。これももう皆様御案内のとおりですけれども、繁殖の雌牛の飼養頭数は減少基調で、子牛の価格も大変上昇している。
それから、農林水産省が十一月二十四日に公表した二十六年度の肉用牛の生産費によりますと、去勢の肥育牛の一頭当たりの全算入の生産費、それから、素牛の導入時期の価格上昇によりまして素畜費が増加したことによりまして、対前年度で五・七%も増加しているということ。
私、今週月曜日に沖縄北方問題に関する特別委員会の現地視察で石垣島に行ってまいりまして、そこの八重山の肥育センターを訪問して事情を聞く機会をいただきました。ここは、石垣牛といういわゆるブランド牛の肥育を行っておりまして、実情を聞きましたら、二年前に四十五万円程度で導入した子牛を肥育して、今、枝肉の価格の高騰に支えられて何とかそれなりの価格で販売できているということ、ただ、現段階では子牛の価格が六十五万とか七十万の状況ですから、将来、肥育二年後の枝肉の相場がこのような水準までずっと上昇を続けているかということについては、これは何とも言えないわけで、したがって、現場の不安は大きいという声もいただきました。
こんなことを少し踏まえてお話をさせていただきましたけれども、今般の総合的なTPP関連政策大綱では、牛マルキンを充実させて、「肉用子牛保証基準価格を現在の経営の実情に即したものに見直す。」こういうことでございますが、私は、これらの早急な実施を求めますとともに、二十八年度の肉用子牛の保証基準価格等がしっかり実情を反映して適切に決定されるということを強く希望しますけれども、大臣のお考えをお示しいただきたいと思います。
○加藤大臣政務官 お答えいたします。
平成二十八年度の保証基準価格については、現在のルールにのっとって、生産コストの変化率等を反映するとともに、合理化目標価格についても、肥育に要する合理的な費用等を考慮して、食料・農業・農村政策審議会の意見を踏まえた上で、適切に決定したいと考えておるところでございます。
一方、政策大綱については、関税削減等の影響に対応するものとして、TPP協定発効に合わせて、肉用子牛保証基準価格を現在の経営の実情に即したものに見直すとされておるところでありますので、所要の準備を進めてまいりたいと考えております。
○稲津委員 このことについて、これ以上詳しくまた質疑するようなことはございませんけれども、今御答弁いただいたことをしっかり踏まえた上で着実に決めていただきたい、このように思っております。
次は、本当は乳用牛のところの中でも、供用期間の延長ということを実はお聞きしたかったのですが、時間の関係上、一点だけ触れておきますけれども、廃用されるまでの乳用牛の産次の平均値、いわゆる供用期間、これは最近三・四産というデータがありまして、その理由は何かというと、先ほど私が申し上げましたような乳房炎の関係ですとか、それから繁殖障害とか、あるいは搾り過ぎによる牛のストレスとか、こんなことがあるというように言われていますが、それはきょうはお聞きしません。
もう一方で、現場で大きな問題になっているのが、子牛の死亡事故のことなんです。これをぜひ低減させていかなければならないという課題なんですが、これは、乳用牛の供用期間の延長と申し上げましたけれども、全くこれと同様に、子牛の死亡事故、実は非常に重要で、農林水産省のデータによりますと、子牛の下痢症などによりまして、生まれて一カ月未満の死亡率が約五%を少し超えているという状況、これはかなり高い水準じゃないかなというように思うんですね。この子牛の死亡事故の低減というのが、経産牛の増頭にもつながりますし、まさに生産基盤の強化につながっていく、貢献するんだと思っています。
そのための対策を講じていく必要があると思いますが、具体的に言うと、やはりワクチンの接種になると思うんですが、これが効果もありますし、ぜひこの子牛の死亡事故の低減対策としてしっかり用いていただきたい。そのために、ワクチンの供与についても支援策をここで検討してみるべきだろう、私はこのように強く思っていますが、この点についての見解をお伺いしておきたいと思います。
○齋藤副大臣 委員御指摘のように、特に一カ月未満での死亡率が高くなっているわけであります。
疾病を予防して子牛の事故率を減らすためには、御指摘のように適切な時期にきちんとワクチンを接種していくということのみならず、免疫力をつけるように免疫成分を豊富に含む初乳を確実に与えていくこと、あるいは子牛の体温が低下しないように温度管理をきちんと適切に行っていくこと等、ワクチンのみならず、総合的な対策が必要だろうと思っております。
これらの対応策につきましては、セミナーを開催したりマニュアルを配布したりして周知をしてきているところでございますけれども、今後とも実が上がるように、しっかりと取り組むことによりまして、子牛の死亡事故の低減につなげていきたいというふうに考えております。
○稲津委員 そうした今御答弁いただいたソフト事業と同時に、ぜひワクチンの接種費用についても重ねて検討をお願いしたいというふうに思っています。
最後になりますけれども、酪農の新規就農者と担い手の研修についてということをお伺いしておきたいんです。
私の地元の北海道の天塩町に、ことしの内閣総理大臣賞を受賞された酪農家の方がおられまして、もともと乳業メーカーの社員でしたけれども、十一年間勤めた会社をやめて、酪農経営はやはりおもしろい、したがって、ぜひ研修を受けて働きたいということで、それがかなって天塩町で就農して、大変特色のある経営をしています。
例えば、粗飼料自給率一〇〇%、草地更新が毎年六ヘクタール、全頭が同じ時期に分娩する季節繁殖を導入していて、一月、二月は搾乳休止、そして経産牛は人工授精ではなくて種牛の雄による自然授精、そういうことをやりながら、作業負担を軽減して、サラリーマン時代と同じぐらいの労働時間で高収益を得ているという大変特徴的なことをされています。
受賞理由は、季節繁殖を生かした集約放牧、こういうことなんですけれども、私が感心したのは、この方のコメントの中に、成功の要因の一つは地域の受け入れ体制があったと明確におっしゃっています。やる気、それから夢を持った、そうした方々がスムーズに入っていけたという受け入れ体制、これは天塩町の関係者の方々の御努力は本当にすごいと思うんですが、もう一方で、北海道の農業担い手育成センター、研修牧場、この研修体制の中でしっかり育てていただいたということも触れております。
私は、この地域の取り組み、とりわけ研修の充実強化ということが大事だと思っていまして、その支援についてどのような考えをお持ちか、大臣にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
○森山国務大臣 稲津委員の御指摘のとおり、酪農の新規就農者と担い手をどう育てていくかという課題は大変大事な課題だと思っております。
北海道におきましても、別海町、豊富町、新得町等々で積極的な取り組みをいただいております。
今後も、地域ぐるみで酪農の新規就農者や担い手の確保の取り組みはしっかりと支援をしてまいりたいと考えております。
○稲津委員 受賞者の方の声を聞きますと、田舎暮らしに憧れてとか、動物が好きだとかいうことではなくて、やはり、自分のやりたいことはこれだという明確な目標を持って新規就農をしたということ、それから、繰り返しになりますけれども、やはり何といっても地域の受け入れ体制、それから研修がしっかり、体制強化ができていたということが大きいと思います。
今大臣から御答弁いただきましたけれども、ぜひこの研修に対する支援強化をさらに詰めていただきたい、このことを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、篠原孝君。
○篠原(孝)委員 民主党の篠原孝でございます。
農林水産委員会のメンバーでもないにもかかわらず、こうして質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。新体制になってから初めての質問でございます。
森山大臣、同じく農林水産業に思いをはせて政治家をしておりまして、ずっと活動を一緒にしてきたかと思います。大臣御就任おめでとうございます。頑張っていただきたいと思います。
それでは、質問させていただきたいと思います。
この国会というか、閉会中審査ですが、本当はこの国会と言いたいところなんですね。臨時国会が開かれていなければいけないというのに開かれないということで、この農林水産委員会は開かせていただいております。TPP国会になるんだということをよく言われておりましたので、その延長線上でというか、それの趣旨に沿って、TPPについて質問させていただきたいと思います。
まず、ほかのところでもちょっと取り上げられたかと思いますけれども、TPP協定の言葉、言語の問題です。一体どうなっているのか。
九十七ページだけですけれども、日本文になっているTPP協定の全章の概要というのがあります。その一番最後の方の九十六ページに「最終規定章」というところがありまして、効力の発生というところがあります。そのところで、へえっ、こういういろいろな発効要件というのがあるんでしょうねということ。お金、お金、お金というのでやっているので、余りこういうのは私は趣味ではありません。GDPで国の序列をつくったりするのはよくないと思いますけれども、ここに、GDPでもって合計の八五%以上を占める少なくとも六カ国の原署名国が国内法の手続を完了した旨を通報することが効力発生の要件、二年の期間内に全ての原署名国が国内法の手続を完了した旨を通報しなかった場合というんですけれどもね。
GDPでもって縛りをかけているわけです。縛りをかけている。どうしてこういう規定があるのかわかりませんけれども、ともかくGDPを重視している。それから、全世界のGDPの四割だとかいうのも盛んに喧伝されています。こういう新しい仕組みがあるのかと。
その次のページの、本文ではもっとずっと離れているんですけれども、九十七ページに「正文」というところがある。第三十章八条のところ。本協定は、英語、スペイン語、フランス語をひとしく正文とする、及びこれらの本文の間に相違がある場合は、英語の本文によることを規定と。最後は、最近の協定、条約はほとんどそうなっていますよね、もめごとがあった場合は英語というのは、これはわかるんです。
しかし、何で、英語、スペイン語、フランス語と言いつつ、こういう国がGDPが多いのかなと思って、私、しようがないから計算してみました。資料をお配りしてありますので見てください。ちょっと間違いもあります、慌ててやったもので。下の、スペイン語は日本語の十分の一というのは、これはちょっとメキシコ抜きで計算してしまいまして、三八%です、スペイン語は。
それで、英語圏が一番多いんです。だから、英語は正々堂々正文になってもいいと思います。アメリカが圧倒的にでかいですから、十七兆ドル。全体で二十兆五千八百九十三億ドルで七三・五%。スペイン語圏は六・二%。カナダは、二分の一にして、ケベック州とかそういうけちなことは言いません、半分だと三・二%。
我が日本国は、いろいろなところに一八%とか書いたりしているのがありますが、この二〇一四年のGDPのものでいうと一六・四%です。何でパラレルにGDPのところを、日本語も正文にしなかったのか、甚だ不思議なんです。
一生懸命交渉した、こんなに言い込んだことはないと甘利担当大臣はいろいろなところで言っておられます。私はそうじゃないと思います。こんなところでもぼろが出ている。TPPの正体がここにあらわれているんじゃないかと私は思うんです。
何で日本語が入っていないんですかね。GDPでやるんだったら、正文もやはりGDP比でやっていただきたいと思います。そんな、うんと小さな国まで全部やるというのは手続上ややこしいと思いますけれども、日本がいろいろな意見を言ったとしたら、ややこしい表現は日本から言ったりしているんでしょうから、日本語も正文になっていなくちゃいけないと思うんですけれども、この点、高鳥内閣府副大臣、いかがでしょうか。
○高鳥副大臣 篠原委員にお答えをいたします。
日本がTPP交渉に参加した時点で、既に英語、フランス語及びスペイン語を正文とすることが決まっておりました。多数国間の通商関連条約では、英語以外ではフランス語、スペイン語が正文とされることが一般的であり、新たに日本語を正文として追加するよう交渉することは現実的ではなかったということでございます。
他方、委員御指摘のとおり、TPP協定の第三十章に最終規定がございまして、効力発生の規定は、協定の効果的な実施のため、効力の発生に当たっては、一定の経済規模を有する国及び交渉参加十二カ国の半数以上の参加が望ましいとの考えに基づき、要件が定められたものでございます。
正文をどの言語にするかということと効力発生要件は、直接的にはリンクをしていないということでございます。
○篠原(孝)委員 直接影響はないんですけれども、日本も大事な加盟国なんです。
ほかにどういう条約があるんだ、どういうのが正文になっているんだと外務省に聞きましたら、例を教えてくれと言いましたら、最近では、民生用の国際宇宙基地協定、これはでっかくて、いろいろな国、イタリア語までなっている。イタリア語、英語、ドイツ語、それから日本語、ロシア語、フランス語。
みなみまぐろの保存のための条約、これは日本が相当とっていますから、英語と日本語。日本が重要なプレーヤーの場合はなっているんですよ。
それで、北太平洋の溯河性魚類、サケだとか、遡上をしていく魚の系群の保存のための条約も、英語とフランス語と日本語と、ロシアがかかわっているんです。北太平洋にロシアがかかわっているんですね。おわかりになりますね。大国で、ロシアもかかわっているからですよ。
だから、TPPが大事だったら、私はこれは絶対やらなくちゃいけないと思いますよ。
僕は、高鳥副大臣が交渉をされたんじゃなくて、甘利さんにぜひ問いただしたいんですけれども、甘利さんはこの前の連合審査のとき、稲津委員の質問に対して大見えを切っておられました。十二月三日です。経済規模の大きさが発言力の大きさにつながっているんだ、だから、日本が入ってよかったとほかの国からもみんな感謝されたと。交渉相手に感謝されるような交渉官というのは余り立派だとは思わないんですね。憎たらしいと思われ続けるのが一番立派な交渉担当者だと思います。
それだったら、正文の関係も何で考慮されないのか。要するに、今後に向けて、過去は私はもうしようがないと思いますよ。これからもいろいろあるのを、やはり日本語というのを前面に立てて戦っていっていただきたいと思います。
私は、フランス大使館ではありませんけれども、フランスのパリのOECD代表部というところに三年いました。フランスは非常にフランス語という言語にこだわります。OECDの会合で英語とフランス語が正文になっているんです。当然いろいろなところから出向しているのは英語でやっていますから、原文が英語でできるんです。一刻も早くというので、英語は一週間ぐらい先に届くんです。そうすると、フランス語圏の人たちは、一週間の差がある、議論ができないといって、これをいつも、毎回やるんです。これで十五分か二十分費やすので、僕は手を挙げて、一度だけでしたが、こういう冗談は通じませんから、一度だけしかやりませんけれども、もうどっちでもいい、どっちかにしてくれ、僕にとっては英語もフランス語も似たようなものなんだ、日本語にしてほしい、日本語も平等の扱いでやってほしいと言ったら、そのときは、私の発言に敬意を表して、次の回にやらずに、フランス語圏側もやめて、では今回議論しようということになりました。それだけ言語というものにはこだわるんです。
これだけ大きな条約だと本当にそうなんです。それはやはり屈辱的ですよ。
英語化すると愚民化するという本を書いている方がおられます。結構読まれている本ですけれども、この方がどこかの新聞で、ちょっとどこだか忘れちゃいましたけれども、TPPで日本語が正文になっていないのはおかしい、こういうことをやっていたら日本はだんだんだめになっていく、みんな英語で済まそう、英語で済まそうというふうになっていくと言っているんです。
なぜこれを言うかというと、大体、政府調達が、地方政府の調達なんかのところにも、日本国でやっているのにもかかわらず、英語で入札のいろいろなものを出せとかいって、私はとんでもないことだと思います。アメリカの企業に、いろいろな政府や何かの調達の関係の紙をみんな日本語にしろと言うんですか。アリの一穴で、だんだんそうなっていっちゃうんですよ。だから僕は言っているんです。
この点について、今後どうするのかというのと、要求をなぜしないのか、わかりませんけれども。フランス語は、今ちょっと違う、私が内々にというか党の中で聞いたときは、フランス語というのは、カナダ独特の事情で、カナダは英語とフランス語を常に公用語としているから、英語だけというのはカナダ国内では認められないから、カナダは執拗にフランス語と言ったからなんだとかいって答えています。もしそれだったら、日本も同じように主張すべきなんです。
だから、主張したんでしょうか。日本語が正文になっては困ることがあるんでしょうか。特に将来についてちゃんと約束してください、外務省も来ているので。
済みません、これは外務省には通告していないのであれですけれども、答えてください。
○武藤副大臣 副大臣を仰せつかりました武藤です。よろしくお願いします。篠原先生にはいろいろお世話になります。
今の先生のお気持ちはよくわかります。日本語というものに対する思いというものは大変私も共通するものがありますけれども、今回のTPPの件でありますけれども、TPP交渉に参加した時点で、既に英語、フランス語及びスペイン語を正文とすることが決まっておりました。また、多数国間の通商関連条約、これは英語以外ではフランス語、スペイン語が正文とされることが一般的であります。新たに日本語を正文として追加する交渉をすることは、先ほど高鳥副大臣もおっしゃられましたけれども、現実的ではなかったということでもありますので、よろしくお願いいたします。
○篠原(孝)委員 将来に向けてですけれども、私はそんなことは当分あり得ないと思いますけれども、何かアメリカも日本も口をそろえて、中国にも入ってほしい、入ったらいいんだとか。中国が入ったら、中国は真っ先に中国語も正文にしろと言ってくると思いますよ。当然のことですよ。そのぐらいのかたい決意でもって臨んでいただきたいと思います。
次に、交渉は一体どうやってやっていったのか。
これも本当に、高鳥副大臣に聞くのはちょっと酷なんですけれども、今の言語の問題からしてそうなんですけれども、本当に最後の最後まで交渉したのかなというのがあるんですよ。行司役に徹するとか、そして日本代表団だけがぽつんと何もしていない。いろいろな交渉というのは、交渉が終わったというベルが鳴ってから決まるんだ、ラスト・ミニッツ・エフォート、最後の数分間のときにばたばたっと決まっていく。日本は全然違う交渉スタイルだったんじゃないかと思いますよ。
それで、もう抽象的なことはやめまして、経済産業副大臣にお伺いしたいと思います。
私の資料の二ページのところの下の表を見てください。農業のところなんかは山ほどあるんですが、先に、攻めるべき自動車とか自動車部品ですよ。米韓FTAと日米の協議の対照表をつくってみました。私はこうやって表をつくって頭の整理をするんです。よく見てください。乗用車、日韓の差を書いてあります。二十年、アメリカはしらばっくれるんですよ。韓国に対しては五年で撤廃しているんですよ。
それで、自動車部品は、正直言いまして、いろいろあるんでしょうけれども、まあマルですよ。マルというか、内実を見るとわからないんですけれども、品目数でも輸出額でもほぼとんとんで、即時撤廃率は品目数で四・四%、輸出額で三・八%日本の方が上ですから、これはまあいいとして、トラックも、三十年目に日本は撤廃なのに、韓国は十年目です。
全然財界からはそんな声はなかったはずなんです、TPPについては。TPPなんという名前すら知られていませんでした。だけれども、経産省と外務省がぎゃあぎゃあ言ってこういうふうになっていったんだろうと思いますけれども、そのときに、韓国とEUのFTAで自動車の一四%の関税がゼロになっていく。だから、自動車の方もさんざんわんわん言ったはずなんです。差がついたままですよ。まあ、今は物すごい円安になっているからいいんですが。
ここに書いてありませんけれども、また後からちょろちょろ出てくるわけですよね。日本語のペーパーのところにもあるんですけれども、附属書のところで、アメリカとカナダに日本車の輸入が急増した場合のセーフガードの強化を認める特例があるんですね。通常は、関税がある間、最長三年なのに、アメリカに対しては、関税撤廃後十年後までセーフガードを認めて、かつ、引き上げ期間も最長四年認める。カナダに対しては、ちょっとずつ優しくなっているんですね、十二年後まで、かつ五年だ。譲りに譲りまくっているんですよね。
何でこんなふうになるのか。私の知る限り、TPPは一体どうなるんだというときに、アメリカ側はいつも言っていました。少なくとも私の経験では、米韓FTAを見てくれ、あれが見本だ、あれと同じようになるというのを考えてくれと言っていたんです。
ずっと妥協していると思うんですけれども、この点、経済産業副大臣、これでいいんでしょうか。
○鈴木副大臣 お答えを申し上げます。
まず初めに、我が国は米国との間で、日本には一定の農産品、アメリカには一定の工業製品といったセンシティビティーがあること、それからまた、アメリカの自動車関税のTPP交渉における最長期間での関税撤廃と関税削減開始時期の最大限の後ろ倒しを確認した上でTPP交渉に参加したということを思い起こしていただければありがたいと思います。
しかし、その後の粘り強い交渉の結果として、乗用車の関税撤廃については最大限に後ろ倒しされることはなく、十五年目から開始され、二十年目で半減、二十二年目で〇・五%まで削減され、TPPにおける最長の関税撤廃期間である三十年よりも短い二十五年で完全撤廃されることで決着いたしました。
一方、トラックの関税でありますが、三十年目で撤廃されることになっておりますが、トラックのような重量の大きい完成車につきましては、我が国は、完成車の形で生産してアメリカに輸出するというよりは、むしろ部品をアメリカや近隣国であるメキシコなどに輸出をして完成車として組み立てた上で米国に輸出する、または販売する事業形態が一般的であります。
ちなみに、二〇一四年の時点では、完成車の輸出二百五台、米国や近隣国で完成車として組み立てて輸出するのは一万五千五百五十六台と圧倒的に差があるわけですね。
他方、自動車産業の実態を見ますと、我が国の自動車メーカーの北米での現地生産は大きく伸展しておりまして、米国で販売する完成車の実に七割強がもう現地生産となっているわけですね。
こうした産業実態を踏まえて交渉した結果、自動車部品については、輸出総額の八割以上の関税の即時撤廃という日本にとっては大きな成果を得たところでありますが、これは米韓FTAにおける即時撤廃率を上回るものであります。
完成車の関税撤廃という年次だけで見れば、一見韓国FTAにおくれをとっているように見えるかもしれませんけれども、部品の占める割合が多い日本が実質的に大きな成果を得たということははっきりと言えると思います。
以上です。
○篠原(孝)委員 鈴木副大臣は非常に大事な答弁をされているんですよ。私はそのとおりだと思います。
私はいろいろなところで申し上げているんですけれども、輸出なんか減らすべきだと思っている、貿易量も。環境に優しい世紀にしていかなくちゃいけないと思う。食べ物の世界でフードマイレージ、木でウッズマイレージ、物でグッズマイレージと言ってやっているわけですね。輸送コスト、輸送の距離をうんと少なくして生きていくべきだと思う。私はそう思っているんです。
だから、そんな空気を運ぶような完成品じゃなくて、部品を持っていって最終消費地で最終製品にするのが一番いいんです。一番この原則がわかるのが食べ物なんです。冷凍したり解凍したり、劣化したりするので、そこでつくってそこで食べる、その場所でつくってそのとき食べる、これが鉄則なんです。これは食べ物だけじゃなくて工業製品についても言えることなんです。だから、それは非常によくわかります。その精神でやっていただきたいと思いますよ。
それで、農業です。
今、農産物とそれから工業製品、センシティビティーというのがあったわけです。では、農業はどうかというのを、これはちょっと、全部というか重立ったものだけピックアップして、ちょっと正確性を欠いているかもしれませんが、三ページ、森山農林水産大臣、よく見ていただきたいんです。
これは、日韓比較のマル・バツは私の判定ですから、違うんじゃないかというのはあるかもしれませんけれども、日本の方が頑張ってというか守っていっているのはマルで、バツはずっと譲ってしまっているものなんです。
米は譲許をもう完全に除外しています、韓国の方が。麦は撤廃していないので、日本の方が守っていると思います。牛肉と豚肉はややこしいので省きますけれども、豚肉のところなんかを見てみますと、四〇%の牛肉、それから豚肉が二二・五%ぐらいなんですけれども、これはどっちもどっちだ。脱脂粉乳とかになると物すごい高関税なんですよね、韓国も。それで、関割りでやっている。これは私は韓国の方がちゃんと守っていると思う。オレンジとか。
今度何年で撤廃というのは非常にわかりやすいんです。リンゴだとかブドウだとか冷凍鶏肉とか蜂蜜とか、みんな日本の方が早々と撤廃しているんです。韓国の方が守っているんです。
数字はここには書きませんでしたけれども、韓国は立派ですよ。食用大豆、四八七%で守っているんです。日本もそうすべきだと思いますよ。みそ、しょうゆ、納豆、豆腐、この原材料は国産の原産地表示を厳密にして、そして国産でやっていくべきだと思います。それから、食用のジャガイモも三〇四%、高麗ニンジンとかいうのは七五四%。韓国の大事なもの、高麗ニンジンでもって体にいいというので、いろいろな栄養分があってというのをやっておるんです。
だけれども、農林水産省の交渉担当者、私は韓国と比べてなまくらだったんじゃないかと思う。いや、日本の方が先進国だから譲らなくちゃいけないと言っているんですけれども、私は、やはり農村、地方に思いをはせて交渉をやって、まあ、やってくれたんでしょうけれども、比べてみていただくとわかるんです。守り切っていないんですね。
僕は関税撤廃なんかしない方がいいと思うんですよ。食べ物は、そこでできたものはそこで食べる。輸送コスト、通関、いろいろな植物検疫の問題なんかもあるんです。どうしてこんなに差が開くんでしょうか。大臣も、交渉担当のときに森山大臣も大臣ではなかったので、私と同じような気持ちで交渉経緯を固唾をのんで見守っておられただろうと思います。この韓国と日本の比較をごらんになって、どう思われますでしょうか。
僕はこんなに譲るべきではなかったと。仕方がないんですよ。今後、日・EU・EPAもあったりしますけれども、韓国と比較しながら、よくやっていただきたいと思います。輸出の方だけ韓国と比較するんじゃないんです。輸入の方もちゃんとやってください。この点、いかがでしょうか、大臣。
○森山国務大臣 篠原委員にお答えをいたします。
TPPと米韓FTAは交渉の相手国が異なりますので、それぞれの交渉の結果を一概に比較することは無理があるかなと正直に思います。
しかしながら、TPPで我が国の合意内容と米韓FTAとを全体的に比較をいたしますと、我が国が獲得した関税非撤廃品目の割合の方が非常に大きいということは御理解をいただけるのではないかなというふうに思っておりまして、TPPの方が大きく譲歩しているというふうには言えないのではないかと思います。
先生がここにマル・バツでお示しをいただいているところでありますが、麦につきましては大麦のみの内容でございますから、小麦については即時撤廃、三年目になっておりますのでいかがなものかなと思いますが、牛肉、豚肉は、我々は関税を守りましたので、これは先生、三角じゃなくてマルで御評価をいただけるのではないでしょうか。
これは、それぞれ見てみますと、いろいろな考え方があると思いますけれども、二国間の交渉とTPPは少し違うのではないかということをコメントさせていただきたいと思います。
○篠原(孝)委員 私のは、ゆがんだ評価が多少あるということはお認めいたします。
次に、大事な再交渉問題です。
資料の二ページのところの上の「米韓FTAの概要」、外務省が余り解説なしにさっと書いた米韓FTAの概要ですけれども、ここのところをよく見ていただきたいんです。ぱっぱっぱとやったんですよ。これは、二〇〇四年ぐらいからわいわい言っていたんですよ。交渉開始を発表して、二国間ですからさっさと済んだんですね。一年間で八回やって交渉を妥結したんですけれども、そこからがすったもんだしているんですよ。
その辺も一年で済んだんですが、それから三年間、いろいろなことがあったんです。BSEのろうそくデモとかいうのもあったりしたんです。そして、米韓首脳会談で再交渉ですよ。こういうふうにならないようにというのを私は思っているんですけれども、何かこんなふうになりそうな変な雰囲気もあるんです。
これを見てください。二〇一一年になってやっと再交渉がまとまって、李明博大統領がアメリカに行ってオバマ大統領に大歓迎されて、そして我が日本がホノルルでTPPに国際的に参加表明をして、慌てて韓国議会で、大事なんですよ、韓国文ができていないのに強行採決したんですね。だから、皆さんはお忘れかと思いますけれども、韓国国会で催涙弾が飛び交ったんです。物すごく悲惨な国会です。アメリカは暴力国家ですけれども絶対国会ではああいうのはないんですね。不思議にちゃんと民主主義のルールを守っています。それで、一二年に発効している。何年もかかっているんです。二国間でもですよ。
だから、多国間でやっているからそんな勝手なことはできないといいますけれども、外務副大臣にお伺いしたいんですけれども、農業新聞が伝えていますし、共同のニュースで伝えられていました。十一月十九日に、マニラの首脳会談の折に、オバマ大統領から、養豚農家向けの経営安定対策、マルキンはおかしいと、フロマンからどうしても言ってくれと頼まれたからといって安倍総理に言って、さすがの安倍総理も嫌な顔をしておられたというような記事があるわけです。きょうの農業新聞の一面トップにもこれに類する記事があります。
これは事実なんでしょうか。事実だとしたら、こんなことはあってはならないんですね。保秘義務はもうTPP交渉の大筋合意で終わっているわけですから、そうじゃないんだから、会談の内容をきちんと公表してもらいたいと思います。どこまでこういうことを隠すのか。僕はけしからぬと思います。
事実だったんでしょうか。事実だったら事実と言っていただきたいですし、国民にちゃんと知らせていただきたいと思います。この点、どうなっているんでしょうか。
○武藤副大臣 御指摘の日米首脳会談の具体的なやりとりについてでございますけれども、この件につきましては、先方との関係もございますので、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
先生のおっしゃっているのは豚肉のマルキン制度の変更についてでございますけれども、米国政府から正式に見直し要求が出ている事実はございません。
○篠原(孝)委員 森山大臣にもお伺いするんですけれども、正式にあったらとんでもないと思いますよ、そんなものが。交渉が終わって署名の前に。そして、許せませんけれども、批准の手続のときにすったもんだしていて、どうしても通りそうもないし、ここを何とかというんだったら、私なんかは優しいですから、しようがないかなと、これは本当は絶対にしてはいけないと思いますけれどもね。だけれども、署名もしていない、これからいろいろやろうというときに、人の国の政策、輸入はするんだ、だけれども国内対策でこういう対策を講じていく、そんなことにまで干渉されたらたまらないと思います。アメリカというのはそういう国ですよ。
再三再四、甘利担当大臣は再交渉には応じないと言っています。それはそうなんでしょうね。それから、ビルサック農務長官も、十一月二十日ですか、来日されたときに、森山大臣とお会いになったときにもこのようなことに触れられたというふうに報じられています。こんなのはとんでもないと言って突っぱねるべきですし、公式な要求なんてあってはならないと僕は思いますよ。
この点について、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○森山国務大臣 篠原委員にお答えをいたします。
私は、十一月二十日、農林水産省におきまして、米国のビルサック農務長官と会談を行いました。先方との関係もございますので、個別具体的なやりとりについてお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、マルキン制度の変更について米国政府から正式に見直し要求が出ている事実はありません。
また、政策大綱に盛り込まれた豚のマルキン制度の改正といった国内農業施策は、篠原委員が一番御存じのとおり、何らTPPの合意に反するものではなくて、変更はあり得ないと考えております。
○篠原(孝)委員 ああいう報道がなされると、ますます農家は不安になります。畜産農家は冬だって餌をくれていろいろしなくちゃならないので、しょっちゅう働かなくちゃならないんですが、少なくとも畑仕事は、雪に覆われていますので、余計に冬の間は新聞をよく見て、テレビの予算委員会なんかも見るんです。だから、その不安を拭い去るようにきちんと説明していってください。みんな疑心暗鬼なんですよ。何で疑心暗鬼になるのかというと、情報公開の問題です。
次に、四ページを見ていただきたいんですが、一年半前、オバマ大統領が春に訪日されたときの報道ですよ。思い起こしてください。すぐ皆さんは忘れてしまわれるんですね。そのときの、全部じゃないですけれども、合意が成立した、成立していないという記事をちょっと時系列に追ってみたんです。
そうしたら、四月十八日、ほかのところも線を引きたかったんですが、日本農業新聞、非常に客観的な報道をしていると僕はいつも思っているんですけれども、びっくりしました。米国は自動車分野でも関税撤廃に三十年以上かける実質的除外扱いと、農産物がずっと書いてある最後の方にちらっと書いてあるんです。えっと思いました。
日経が、豚肉は関税五十円と牛肉九%を要求している、日本は慎重と書いてあるんです。どこからこういう情報をとるのかわかりませんけれども。
四月二十二日、これはちょっと順序が逆になっちゃって済みません。五月がもっと下にあるべきだったのに、時系列にしたつもりが、これだけちょっと違っちゃったですね。日本農業新聞で官房長官が九%を否定しているんです。
フロマンの記事、ごちゃごちゃあるのをすっ飛ばします。
四月二十五日あたりから読売とTBSが、大筋合意、大筋合意と報道するんです。ほかの新聞は合意に至らずと。全然違うことを書いてあるんです。二十七日に、森山大臣の近くの選挙区で補欠選挙がありました。鹿児島は、養豚農家数で一位、肥育牛の農家数で二位です。このため、余り言えなかったんじゃないかなと新聞に書いてあります。
それで、マル・バツは、また、済みませんけれども、正確に報じていたなというのと違うなというもの。
読売は、検証のところで明確に書いているんです。TBSも、日米が基本合意したと。だから、さっき言った、甘利さんはアトランタですることがなくなっているんです、行司役。みんな譲っちゃっていますから、終わっているんです、この日。だからだと思いますよ。
フロマン代表は、合意の節目にとか言って、ただ、その上の方で、一線を越えたとか実質合意だ、アメリカではそういうことを言いながら、そうじゃないと言ってもったいぶっている。官房長官はまた、大筋合意に至っていないと。それで、かわいそうに、澁谷審議官が、TPP日米協議合意報道を否定、進展はあったが、合意に至っていない、朝日新聞がこういうことを報じている。
次に、朝日新聞の興味ある記事があります。
線を引っ張ったところが大事でして、澁谷和久内閣審議官が二日、記者会見を開き、進展はあったが、合意に至っていないと。
僕は澁谷審議官を責めるつもりは全くありません。私も宮仕えしました。やはりそれは、こういうふうに言わざるを得ないです。私なんかは、ちょっとこらえ切れずについ本当のことを言っちゃったので、余り出世せずに国会議員になっちゃっています。
二段目。TBSも、牛肉と豚肉の関税の引き下げ幅で日米が基本合意したと流した。澁谷氏は会見で、それを隠しているということはないと明快に言いたいと。その下、三段目。二つだけ先に合意することは交渉現場では考えられない。甘利大臣は、大筋合意ではないと。一番下。甘利氏は、うそをついているような書かれ方は心外だと。
こういう報道とか、ずっとこういうことを、農家は、本当に新聞を隅から隅まで見て、テレビのニュースを神経をとがらせて見て、きりきりしているわけです。何でこういうことをさせているのか。ほとんど事実だったんじゃないんですか。少なくとも、九%、五十円というのは事実だったと思います。
これについて、これも高鳥副大臣、そのときは全然おられないのでかわいそうなんですが、組織としてお答えいただきたいと思います。
○高鳥副大臣 お答えをいたします。
TPP交渉は全体をパッケージとして交渉していたことから、TPP交渉が大筋合意に至るまでは何ら確定をしているものではなかったということでございます。そのため、過去の報道の際におきましても、その時点では何も確定したものではないとお答えをさせていただいたということでございます。
○篠原(孝)委員 秘密交渉、秘密外交というのは、それはよくわかるんです。みんなべらべらしゃべっていたら、後ろから鉄砲を撃たれて交渉になりません。しかし、物には限度があるんですね、限度が。
これは本当に、私から言うと、余りにもひど過ぎるんじゃないか、こういうことが。黙っているんだったらいいんですよ、知らんぷりしているとか。まあ、例は悪いかもしれませんけれども、法案に絶対反対なんだけれども、反対せずに退席するとかそういうのがあるでしょう。そうじゃないんです、全否定しているんですよ。これはやり過ぎだということなんです。こういうことをして、だましてやっちゃいけないということなんです。
今後もいろいろあるだろうと思いますけれども、今のビルサック、オバマ、それぞれ、安倍総理に、それから森山農林水産大臣にいろいろ言われている、こういうのはやはり正直に言って、日本国内からそんなばかなという大きな声を農民が出す、国民が出す、これが日本の立場を強くすることにもなるんです。理不尽なことについては理不尽だということをちゃんと明確に言っていただきたいと思います。やはり、大臣があれこれ言うのは、総理があれこれ言うのは見苦しいです。しかし、我々国民が、我々というか一般国民がおかしいと言うのはいいんだろうと思います。
ですから、そのように透明性を相当確保しながら交渉していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。
篠原さんに引き続き質問させていただきます。
ちょっと今の続きを少しやりたいんですが、森山大臣が、オバマ大統領から安倍総理、あるいはビルサック農務長官から森山大臣に対して、豚マルキンを初めとした国内対策に対して不満の意が示された、その見直しの要求だということの報道なんですけれども、正式にはないということをきのうもお答えになりましたし、先ほどもお答えになりましたけれども、では、裏からちょっと聞きますが、非公式にはそういう要請、要望、要求があるということでよろしいですね。
○森山国務大臣 お答えいたします。
公式にも非公式にも、見直しの要求が出ているという事実はありません。
○玉木委員 先ほど篠原さんがさんざん例を挙げて言いましたけれども、報道されたことが結果としては全部そのとおりになっているということは、大変不安を感じるわけですね。
今回のことについても、要請がない、公式にも非公式にもないし、大臣は変更はあり得ないということをおっしゃられましたけれども、いつもそうなんですが、結果、ふたをあけたら、そうではない、報道されたとおりだったということが多いわけですね。
これは大丈夫ですかね。本当に、これからいろいろな対策を打っていくに当たって、これは協定そのものというよりも、協定を前提にした上での国内対策にまで文句をつけられてしまうと、対策も打ちようがないし、対策も縛られるということでは、農家は協定内容そのものにも不安ですし、対策を打つから何とか納得しようと思っている方もいるかもしれませんが、その対策も十分打てない、それも、アメリカから要請があってそういったことは受けられないということになると、農家は長期に安定して営農継続するようなことは不可能だと思います。
改めて大臣の決意をお伺いしたいんですが、これは本当に国内対策をしっかりと、言えば、あえてアメリカの内政干渉と申し上げますが、はねのけてきちんとできますか、大臣、いかがでしょうか。
○森山国務大臣 国内の対策につきましては、TPPの合意に何ら反するものではありませんので、政策大綱で決められたことを着実に実施させていただきたいと考えております。
また、法制化しなければならない問題もありますので、どうか玉木議員を初め野党の皆さんの御理解もいただきたいと考えております。
万が一アメリカの政府が国内対策の変更を求めるということであれば、それはもう交渉そのものをやり直すようなことを意味するわけでありますから、それはほかの参加国も到底受け入れることのできる話ではありませんので、そういうことは絶対にあり得ないと考えておりますし、我々としてはそういう話があっても受け入れる気持ちは全くありません。
○玉木委員 ぜひお願いします。
マルキンの法制化については、我々も、私も当委員会で申し上げたことがあると思いますし、賛成です。内容によりますから、先んじて賛成というのはなかなか野党の立場で言いにくいんですが、ただ、方向性としてはいいと思います。
もともとマルキンというのは緊急対策のキンですから、恒久化、永続化するのであればそうした名称も含めて直した方がいいということも申し上げたことがあると思いますけれども、ぜひ、しっかりとした、長期に見通しが立つような対策を打っていただきたい、そのように改めてお願いしたいと思います。
なぜこんなに不安になるかということを申し上げると、資料の一を見てください。
そのきっかけ、不安になる材料があるので、あえて指摘をしたいと思いますが、これは先月末に出たアメリカの貿易専門誌の記事でありますけれども、ここに書いていますが、日本の政府高官が、再交渉ではなくてさすがにリネゴシエーションと英語で書いていますが、再交渉は厳しいと思いますね、これだけ十二カ国でまとめてきたわけですから。ただ、再交渉ではなくて、アメリカ議会の反対を抑えるための何らかの対応をする可能性が残っているというようなことを日本の外交の現場にいる政府高官が発言したということがアメリカの専門誌に報道されているんです。
そうすると、今答弁いただいたように再交渉はさすがにないけれども、ない分、いろいろなことをやって、アメリカ側の不満、不平を聞くようなことをクリエーティブな方法でいろいろやる、そういう余地があるんだという報道があるので、ますます不安になるわけですね。
そうした一環としてアメリカ側からの、今回、今否定されましたけれども、オバマ大統領自身そして農務長官からの要請もあったのかなと思いますけれども、これはまず外務省に伺います。
こうした政府高官の発言があったと報道されていますけれども、事実ですか。
○佐藤(達)政府参考人 お答えいたします。
御指摘の報道については承知してございます。
我が方の大使館関係者は、TPPの大筋合意についての再交渉はあり得ず、我が国としても再交渉に応じる考えはないという趣旨で発言を行ったものでございます。
したがいまして、御指摘の記事につきましては、同発言の趣旨を正確に反映しておらず、我が方大使館から同記事の発行元に対しまして抗議を行っているところでございます。
○玉木委員 抗議はいつ行いましたか。
○佐藤(達)政府参考人 速やかに行ったと承知しております。
○玉木委員 いつですか。
○佐藤(達)政府参考人 ちょっと確認させていただきます。
○江藤委員長 後に、日にちを確定して答弁させますので。
○玉木委員 はい。
今わかりますか。待ちますよ。時計とめてください。
○江藤委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○江藤委員長 速記を起こしてください。
佐藤審議官。
○佐藤(達)政府参考人 大変恐縮でございます。現地大使館で抗議を行ってございますので、現地大使館に確認することが必要になってございます。現時点で日にちが確認できません。恐縮でございます。
○玉木委員 では、抗議したことはどうやって確認されたんですか、本省で。
○佐藤(達)政府参考人 担当部局で現地と連絡をとったというふうに承知しております。
ただ、具体的な日にちにつきましては、ちょっと確認をして、また御連絡をさせていただきたいと思います。
○玉木委員 どのような形で抗議したと……
○江藤委員長 ちょっとお待ちください。
玉木委員の質問時間内に回答可能ですか。本委員会開会時間内に回答は可能ですか。
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○江藤委員長 速記を起こしてください。
委員の皆様方に申し上げます。
大変、日本国としても大切な案件であると判断いたしますので、最終質問者の質疑時間が終わるまでに、外務省においては、公電の有無も含めて、できる限りの努力をすることを要求いたします。
それでは、質問を続けてください。玉木君。
○玉木委員 それでは、抗議をしたということであれば、それはきちんとした文書として残っているはずですから、それは公電なのか、先方のインサイドUSトレード誌に出した英文のレターなのか、何らかが残っているはずですから、それを文書でお示しいただきたいということを改めてお願いして、次の質問に行きたいと思います。
問題は、要は、こういうことを譲る用意がある。ここも記事の中にも書いていますし、公使もおっしゃっているんですが、さすがに、交渉本体をいじくるのは、見直すのはパンドラの箱をあけるものだと、難しいことは御本人もおっしゃっています。それは我々もわかります。でも、それにもかかわらず、何らかの米国議会の反対に対応するための独創的な方法を見出すことは可能だとの見解を示したと公使がおっしゃっているというのは、しかもインタビューに答えているんです、インタビューに。それは非常に重い発言だし、このことが、過剰な期待をアメリカ側に与えることによって、押せばさらに何か譲る余地が出てくるのではないかと在米国日本大使館のしかるべき立場の人間が言うべきではありません。
誤解を与える表現だというふうに言いましたけれども、そこはきちんとどうやりとりがあったのか、しっかりとあわせて示していただきたいというふうに思います。
では、次に行きますが、影響試算についてであります。
これも、予算委員会等で私も質問しましたけれども、改めてお伺いしますが、年内に出すといった経済の影響試算、これはいつ出していただけますか。
○高木大臣政務官 お答えをいたします。
TPPの影響試算についてでありますが、TPPの経済効果につきましては、関税の削減効果にとどまらず、投資、サービスの自由化による効果、さらには、日本を含む十二カ国のグローバルバリューチェーンの創出がもたらす生産性向上効果等を含めた総合的な分析を行っているところでございます。
公表する際には、結果の数字だけではなく、TPPがどのような因果連鎖で経済成長に寄与するのかという分析を丁寧にお示ししたいと考えております。各国のデータ等も投入して作業を行っておりますので、若干時間がかかっておりますが、年内には公表できるようにしたいと考えております。
○玉木委員 年末、大変忙しいときに出すということなんですけれども、早目にこれは出すべきだと思います。そもそも、対策を講じるためには、どういう影響があるのかという分析があって対策があるべきですよ。分析もないのに対策を出すというのは順番として間違っているし、その分析に基づかないで打たれた対策は効果的な対策ではないと私は思いますよ。
農林水産省に聞きます。
自給率への影響試算もあわせて出される予定だと思いますが、かつてそれぞれ出していますから。自給率への影響については、現時点でどのように判断をされていますか。また、その試算についてはいつ出されますか。お答えください。
○佐藤(速)政府参考人 お答え申し上げます。
食料自給率へのTPPの影響でございますけれども、大筋合意の内容ですとか国内農業への影響、さらには政策大綱による国内対策の効果、こういったものを見きわめる必要があると考えておりまして、現時点で具体的に何%になるかという確定的な影響を見通すことは困難であると思っております。
ただ、他方、先ほど内閣官房からも御答弁ありましたように、TPP交渉結果を踏まえた経済効果分析については、年内には分析結果を示したいということでございます。
そこで、二年前に行いました二十五年三月の政府統一試算でございますが、全ての関税の即時撤廃、さらには置きかわるのがどのくらいか、価格低下がどのくらいか、こういったことについて、一定の前提を置いた上で経済効果分析を行いまして、その際には食料自給率への影響分析もあわせて公表したところでございます。今回の公表のあり方につきましても、よく検討してまいりたいというふうに考えております。
○玉木委員 では、あわせて年内に自給率への影響も出されるということでよろしいですね。
○佐藤(速)政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、そこにつきましては、今回の公表のあり方についてよく検討してまいりたいということでございます。
○玉木委員 では、内閣官房からは出すのに、自給率については同時に出さない可能性があるということですか。
○佐藤(速)政府参考人 その辺の公表のやり方につきまして、内閣官房と調整をして、年内にどういう形でお示しするかにつきましてよく検討してまいりたい、こういう趣旨でございます。
○玉木委員 なぜ出せないんですか。一緒に出すべきではないですか。要求します。これは出してください。
○佐藤(速)政府参考人 そういった御指摘があったことも含めまして、よく検討してまいりたいというふうに考えております。
○玉木委員 二年前の政府統一試算の話が今ありましたが、資料の二を見ていただきたいんですが、これは先般の合同審査の際も我が方の同僚議員から話がありました。全て即時撤廃が前提だったので、そこが変わっているものは確かにあろうかと思います。ただ、最終的に撤廃される、つまり同じ着地点になるようなものについては、同じ前提でやるべきだと思うんです。
一つ例を挙げますと、加工用トマトですけれども、二年前の政府統一試算は、「トマト加工品は品質格差がなく、すべて置き換わる。」とされていました。今回、合意後に出された農水省の影響分析、これは定性的なものですけれども、これはどう書いているかというと、一番目に、加工用トマトはそのほとんどがストレートジュースです、「ストレートジュースは高品質で輸入品の濃縮還元ジュースと差別化が図られている」、よってもって「TPP合意による影響は限定的と見込まれる。」ということになっていて、二年前は、品質格差がなくて全て置きかわるとなっているんですが、二年後には、差別化が図られているといって正反対になっているんですが、これは同じ前提で計算された方がいいんじゃないですか。いかがですか。
○佐藤(速)政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十五年三月の試算につきましては、委員御指摘のとおり、全ての関税が即時撤廃するという仮定のもとで、輸入品と競合する国産品は原則として輸入品と置きかわるという前提を置いたものでございます。その結果、ケチャップ等のトマト加工品は、全て輸入品と置きかわるといったことなどによりまして、生産額が二百七十億円減少するという試算を行いました。
他方、今回の大筋合意では、加工用トマトにつきましては、六年目または十一年目までという関税撤廃期間を確保したことから、即時撤廃という前回の試算とは前提が大きく異なるというふうに考えてございます。
それに加えまして、今回の影響分析におきましては、消費者の健康志向ですとか安心、安全志向の高まりから、国産ストレートトマトジュースの消費が増加に転じております。
これにあわせまして、国産のトマト加工メーカー、これは同じメーカーがケチャップとストレートジュースを両方製造しているという形態が大宗でございますが、その国産トマト加工メーカーが国内のトマト農家と契約栽培を増加させたことによりまして、加工用トマトの取引量もふえたことがございます。残りの固形部分、トマトジュースの原料にならない固形部分、これを原料といたしました国産ケチャップの生産が継続されるということが見込まれるようになりました。
また、さらに、国産トマト加工メーカーは、契約栽培を今後とも増加させるという意向にございます。そのために、加工用のトマト収穫機を新たに開発して販売されているといった、ここ数年のトマト加工品をめぐる状況の変化を踏まえて行ったところでございます。
○玉木委員 都合よくいろいろな説明を載せて、影響をなるべく少なくしようというのではなくて、客観的に、余り主観的な分析を入れないで、一旦きちんと分析をされた方がいいと思いますよ。いいことも悪いことも誠実に出していくことが正しい審議あるいは議論につながると思いますから、そこは余り余計な加工をせずに出すことをお願いしたいと思いますし、出てきたところはそういったところをきっちりと検証したいというふうに思います。
もう一つ、何度もこの委員会でも議論しましたが、農業・農村所得倍増計画、私はそもそも問題があると思っておりますし、余り過度な期待を抱かせるようなものはやめて、現実的な目標をきちんと掲げるべきだと思いますけれども、今回のTPPによって、この農業・農村所得の倍増計画への影響はどういうふうに考えているのか、見直す必要はないのか。
森山大臣はかつて、基本計画については少し見直す必要があるのではないのかというようなことも発言されたと思うんですが、所得の倍増方針についてはやはり見直さなきゃいけないと思うんですけれども、その際、余り無理な目標を掲げるのはこれを機に取り下げてやったらどうかと思うんですけれども、いかがですか。
○佐藤(速)政府参考人 今回のTPPの大筋合意を受けまして、将来にわたって意欲ある農林漁業者が確実に再生産可能となるよう、交渉で獲得した措置とあわせまして、今般定めました政策大綱に基づく国内対策を講じていくということでございます。再生産を確保し、所得を引き続きしっかりと確保していく、こういう考え方でございます。
したがいまして、所得倍増プランをどうするかにつきましては、そういった対策の効果等々も見きわめた上で検討していくということが必要ではないかというふうに考えております。
○玉木委員 影響そのものなので、これも、できれば年内に一緒に、自給率とともに出すべきだと思いますよ。
改定版の所得倍増計画については、審議会でもやはり倍増というのはどうかということを指摘する委員もいたわけですから、これはいい機会ですよ。この機会に、余り無理な倍増というような目標は取り下げて、現実的な所得目標にきちんとする、これはいい機会だと思いますから、あわせてそこも見直していただきたいなと思います。
最後に、ちょっとお伺いしますが、これは関税収入が減りますよね、マークアップも含めて減ると思うんですが。農業分野にあえて限定して聞きますけれども、農産物に関する、今回、時間はいろいろあると思いますが、最終的に、撤廃、半減、いろいろありますが、マークアップも含めた広い意味での関税収入ですね。つまり、農産物の対策にも回っていた関税収入ですけれども、全体の関税収入は、私の記憶が確かならば、たしか一兆強だったと思いますけれども、農林分野の財源として、これから議論になると思いますが、どれぐらい減ることを試算しておられますか。
○藤城政府参考人 お答えいたします。
マークアップにつきましては、これは農水省の方の関連だと思いますが、関税収入、こちらの方の減収額につきましては、現在試算作業を行っているところでございまして、年内にはお示しをいたしたいというふうに考えているところでございます。
○玉木委員 今、農林水産関係の現在の関税収入というのはどれぐらいですか、わかりますか。わからなければいいです。
○藤城政府参考人 今おっしゃっているのは、関税収入一兆円の中で農産物の関係が幾らか、こういうお尋ねでございますね。
ちょっと手元には正確なものはないんですが、約五千億円ぐらいではないかというふうに考えております。
○玉木委員 全てがTPP十二カ国か十一カ国ではないので、さらに対象国はそれより減ると思いますし、八一%撤廃で一九残っているということですから、ただ、数千億ぐらいの減収はあるのかなと思いますので、そういったことも踏まえて今後の対策も考えていかなければならないと思っております。これもあわせて年内に出していただけるようにお願いしたいと思います。
次に、米政策に行きます。
資料の三を見てください。
これはもう端的に私は聞きたいんですけれども、この前、新潟県にも行ったり、山形県にも行ったり、いろいろなところで今話を聞いていますが、TPPよりも安倍農政の方が心配だとよく言われるんです。特に、平成三十年にいわゆる戸別所得補償の半額分がなくなるし、生産調整も一応やめるということで宣伝したわけでありまして、この資料三に書いていますが、去年一月のダボス会議で総理はこういうふうにおっしゃっています。「作りたい作物を、需給の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってきます」、これをもって減反廃止と随分宣伝されたわけですね。
今回の合意を受けて、対策にも入っていますけれども、備蓄の運用を見直して、「市場に流通する米の総量は増やさない」。もう一回言いますね。右側、「需給の人為的コントロール抜きに作れる時代」というのと「市場に流通する米の総量は増やさない」というのは、これは矛盾するように聞こえるんですけれども、どうなんでしょう。人為的コントロールは続けるということでよろしいんでしょうか。
○森山国務大臣 米政策につきましては、今委員が御指摘のとおり、三十年産を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずに、生産者みずからの経営判断によって需要に応じた生産が行われるように環境の整備を進めることとしているところであります。
総理のダボス会議での御発言は、こうした国内政策の改革の方向についておっしゃったものと認識をしております。この方向性は、TPP大筋合意後も何ら変わることはないと思います。
一方、御指摘のTPP合意後の記者会見での総理の御発言は、国別枠の輸入量の増加が国産の主食用米の需給及び価格に与える影響を遮断していくとのTPP対策の考え方をお示しになったのではないかというふうに考えております。
このようなTPP対策により、外国産米の動向に左右されることなく、農業者が安心して需要に応じた生産に取り組めるようになることから、総理がダボス会議でおっしゃった国内政策の改革の方向と整合性がとれているのではないかと考えております。
○玉木委員 いや、よくわからないんですけれども、アメリカから入ってくるお米について七、八万トン隔離したとしても、自由につくれるようになるわけでしょう。減反廃止の本旨は、つくりたい人が幾らでもつくれるということでありますから、マーケットに対して国家が関与していって、どれだけつくりましょう、つくらないというんじゃなくて、マーケットを見ながら、需要を見ながらやっていくということになると、アメリカから入った分を幾ら隔離したって、国内でいっぱいつくる人が、例えば八万トンそれでふえてしまえばチャラですよね。ですから、私は、こういう政策はほとんど意味がないというか、この辺がよくわからないんです、正直。
何でもかんでも全く自由にするとは思えないんですけれども、ただ、総理がこういうふうにおっしゃったので、現場では、本当に生産調整がなくなって、それこそどんどんどんどん過剰供給も行われるんではないのかということで心配がありますので、この辺のメッセージの出し方は、農家に混乱がないようにやってもらいたいと思います。
一つだけ苦言を呈すると、備蓄米を食べる映像を流しておられましたけれども、私、今回の対策は、畜産に関しては方向性としては評価をしております。ただ、米の備蓄のところだけはちょっとどうかなと思って、しかも、食べるシーンを国民に見せるのは非常にミスリーディングだと思います。棚上げ備蓄になっていますから、原則は主食用米に出ていきませんからね。あくまで、何かそれは食べておいしいだ、まずいだという話じゃないはずなのに、食べるということは、主食用として出ていくということを農家も含めた多くの人にメッセージとして与えていますから、正直、あれはパフォーマンスにすぎないと私は思いましたね。ですから、ぜひ、農家に対して複雑なわかりにくいメッセージを出さないように気をつけてほしいと思います。
時間が来ましたので、最後に、土地改良事業、とりわけ、ため池についてちょっとお伺いしたいと思います。
我々が与党だったときに東日本大震災がありました。藤沼池という福島県の中通りのため池が決壊をして、亡くなる方が出るという非常に残念なことが起きました。それを受けて、平成二十三年度の三次補正予算で、ため池の対策の予算をかなり新たにつくったり拡充をしたりしましたけれども、最近、予算を見ておりますと、ちょっとその辺が関心が薄れているような気がするし、予算の対応も不十分じゃないかなと思うんですね。
これはソフト、ハード両方必要なんですけれども、一つ具体的にお伺いします。
地元の香川県でもため池は非常に多いんですが、原則、二十七年度採択分だというふうにされているため池の耐震化整備事業、これはハザードマップをつくったりする事業なんですけれども、これがなくなっちゃうんじゃないのかということで言われております。これは、耐震不足のため池というのはまだ全国にもありますから、ぜひ、二十七年度採択分とは言わないで期限を延ばしてもらいたい、補正でもあるいは当初予算でもしっかり対応していただきたいと思いますけれども、大臣、いかがですか。
○末松政府参考人 先生お話ありましたため池の防災、減災対策に当たりましては、お話しのように、東日本大震災により甚大な被害が生じたこともあり、ため池の一斉点検を行い、また、その結果を踏まえて、特に、下流に人家や公共施設などが存在して、決壊した場合に影響を与えるおそれがあるため池を重点的に詳細な調査を行った上で、おっしゃったハード対策とソフト対策を適切に組み合わせて耐震対策を進めていく方針でございます。
このため、今、農林水産省としては、地方公共団体などが計画的にため池の耐震対策に取り組めるよう、ため池整備を含む農村地域防災減災事業を実施しておりまして、これは継続分を含めて予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
○玉木委員 しっかり予算の確保をしてほしいのと、なぜこういうことを申し上げるかというと、鬼怒川の決壊もそうなんですが、行政としてもし耐震不足を把握しておいて、それで何か起こったときには、これは責任を問われますよ。
ですから、おかしいということを把握した以上は、予算制約がもちろんあるのはわかりますけれども、しっかりと対策を講じていただきたいと思いますし、その点ではしっかり応援していきたいと思いますので、ぜひ大臣、対策、ため池もお忘れなきようお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
○江藤委員長 この際、先ほどの玉木雄一郎君の質疑に関して、外務省より発言を求められておりますので、これを許します。外務省佐藤大臣官房審議官。
○佐藤(達)政府参考人 先ほどの件でございますが、抗議につきましては、米国時間十一月二十五日に、記事の翌日でございますが、在米大から先方に対しまして口頭で抗議を行っております。この点につきましては、在米大の方から外務省に対しまして、同日の夜、口頭で報告を受け取っているところでございます。
○玉木委員 口頭というのは本当ですかねという感じがしますけれども、きちんとこれは、本来、抗議をしていたら公電を打つのが通常ですよ。
私は、今答弁されましたけれども、甚だそれは信じがたいという思いでありますので、引き続きしっかりと、こういうことがないように気をつけていただくことを強く要請しておきたいと思います。
終わります。
○江藤委員長 次に、小山展弘君。
○小山委員 民主党の小山展弘でございます。
まず、大臣、副大臣、大臣政務官、御就任おめでとうございます。
この国の農業の振興、食料安全保障の確保、そしてまた食の安全、安心の確保といった同じ目的に向かって、立場とかアプローチは違っても、同じ目標、目的に向かって、この農林水産委員会あるいは国会議員全員がそういう姿勢で取り組んでいくべきと思います。これからもお取り組み、頑張っていただきたいと思います。
最初に、森山大臣と私はちょうどお茶産地の選出の議員ということで、お茶のことからお尋ねしたいと思っております。
TPPのお茶の輸出増大ということについては、先般の予算委員会でもちょうど玉木議員の質問にもありましたが、安倍さんのお話というのはやや誇大広告だったところもあるかなと思いますけれども、お茶は全国的に供給過剰で、価格がずっと下がっているという状況かと思います。大規模化をしても、お茶の値段が下がるものですから、規模を拡大しても、供給過剰、数量の過剰というものがなかなか解消されていかない。お茶の値段が下がる。
農家の収入というのは、大規模にして働けど働けどなかなか、どんなに頑張ってもせいぜい横ばい、あるいは大規模にしても下がっていってしまう。ここに補助金などで効率化するための大規模な施設、機械とかを買いかえてしまうと、かえってその設備投資をした借入金を返すのに経営が苦しくなってしまう、あるいは返し切れていないというようなところが結構、茶産地各地に見られるのかな。こういう価格が下がっていく中での過当競争というのは実に厳しくて、また皆が貧しくなっていくような状況になろうかと思っております。
そういった中で、お茶の作目転換、お茶の生産を中止して自分たちは撤退をするよ、あるいは茶園からほかの作物に、栗とか桃とかいろいろあるかと思いますが、転換をしていく。そういった際に、お茶は木ですから、普通に切っても根っこが残っているわけですけれども、こういった抜根作業に関する補助事業の創設を期待する声が大きいんですけれども、政府の方針について御見解を伺いたいと思います。
〔委員長退席、小里委員長代理着席〕
○森山国務大臣 小山委員にお答えをいたします。
先生もお感じになっているかと思いますが、私も、お茶農家を歩きますと二つの意見に分かれるなと思います。今は輸出もしているし、もっと自分たちは頑張れるんだという意欲を持っておられるお茶農家と、もう先生、だめです、だめですとおっしゃるお茶農家と、本当に二極分化されているなというふうに思います。
ちょうど月曜日の日には奈良に行ってまいりました。かぶせ茶を一生懸命やっておられて、フランスに輸出をしておられる若い方でしたけれども、ここの方々は非常に積極的に取り組んでおられまして、お茶という文化を我々は輸出するんだという意気込みでおられました。
いずれにしても、我々は、お茶は輸出の戦略品目に定めさせていただいておりますし、また、いろいろなところでお茶のブームが起きつつありますし、日本食とは非常に関連がありますから、国内需要あるいは輸出というのを頑張っていかなきゃいけないなというふうに思っておりますけれども、今先生が御指摘のように、ほかの作物にかえていきたい、そしてお茶園はもっと整理をしたいとおっしゃる方もおられるわけでございますので、このことにつきましては、来年度から、他の作物への転換による農業所得の確保や担い手への集積を目的とした茶園の整理についても新たな支援対策をできるように今予算要求をしておりまして、何としても予算を獲得して、お茶農家の皆さんに安心をしていただいて頑張っていただけるようにしなければいけないなというふうに考えております。
○小山委員 大臣の御発言にもありましたとおり、お茶を輸出の戦略作目として、また輸出自体も拡大をしていく、そしてまた、それには農薬の基準とか、あるいは中国に対しては原発の、放射能の基準の問題などもありますけれども、ぜひ粘り強く輸出拡大に向けてお取り組みいただきたい。
ちょっと私、先ほど嫌みを申し上げましたのは、TPPとの関連で、アメリカはもともと無税でございましたので、そういったところでぜひ、誠実に、正直にという姿勢をより求めていきたいなということでちょっと嫌みを申し上げたんです。
お茶については、一方で、輸出も拡大、あるいは日本の文化、日本の和食の普及ということとともに、ただ、国内向けには、そうはいっても二万トン近く需給ギャップがある。そういう中で、抜根作業に対して支援をしていく、作物を転換していくというようなことは、一種、言い方は悪いかもしれませんけれども、実際にこういう現場からの声もあるんですが、生産調整的な効果も結果として、結果としてですけれども、もたらすこともあろうかと思いますし、ぜひ、後ろ向きな話にはなりますけれども、人口減少の日本でもございますので、こういったこともしっかりと取り組んでいただいて、また再チャレンジできやすい環境を整えていくということも大事だと思います。
また、甘利大臣が、アジアに市場がある、打って出るべきだと。何か大日本主義的だともとられかねないような、そんなふうな印象も持ったんですけれども、なかなか、ベトナムとかそういった日本の和食文化そのものが広まっていないところに打って出るといっても、それは、人がいるからといってお茶の市場があるということではない。やはり品目、作物によってもいろいろTPPなりの効果というものは変わってくるのではないかと思いますので、まず、国内の市場ということ、そして国内の需給の状況ということもぜひ御検討いただいて政策を打っていっていただきたいと思います。
それともう一つは、収入の話で、農家の所得のことについてですけれども、今、お茶業についても継続に関して展望がなかなか厳しいなという農家も多い中で、お茶についても収入保険制度、セーフティーネットの構築を求める声もかなり聞こえるんですけれども、お茶の収入保険制度の確立、あるいは、逆に収入保険制度の中にお茶も品目として含めていくとか、そういったような対策が今講じられているか、検討されているかどうか、お尋ねしたいと思います。
○森山国務大臣 収入保険制度のお話でございます。
今その設計に向けて調査検討を進めているところでありますけれども、昨年の十一月から、お茶を含めまして、平成二十七年度の農産物全般を対象にして、農業者、農家の方々の協力を得まして制度の仕組みの検証等を行い、事業化調査を実施しているところでありまして、こうした事業化調査の結果を踏まえて制度を固めていきたいと考えております。
○小山委員 お茶も収入保険制度の中に含めていただけるということで大臣からの御答弁をいただいたというふうに思っております。
それでは、きょうは、もともとのこの閉会中審査が開かれるきっかけというのは畜産ということだったんですが、簗議員さんや稲津議員さん、篠原議員といろいろ先輩方の議員や同僚の玉木議員のお話もございまして、大分質問がかぶっているものですから、かぶっていない質問の方でぜひいかせていただきたいと思うんです。
農協法の改正、私は余り改正と言いたくなくて変更と言っているんですけれども、これのその後の制度の、附帯決議などでもあった配慮規定のことについて、その後、審議、あるいは配慮の政策、省令の準備というか、そういったものの進捗状況について、もしきょう答弁ができれば御答弁いただきたいと思っているんですけれども、特に、附帯決議の中でも、「全中監査から公認会計士監査への移行に当たっては、配慮事項が確実に実施されるよう、関係者の協議を踏まえ、万全の措置を講ずる」ということも書かれております。
いろいろと当時も議論がありましたけれども、監査法人の一人の公認会計士が担当として、信用事業、保険事業、商社的事業、製造事業、こういった多岐にわたるものを一人で担当するということが難しいんじゃないか、ではチームを組んで監査をしていくということになれば、当然チームを組むわけですからこれはコストもかかる、このコスト上昇分について配慮をやるというようなこともあったかと思います。
また一方で、理事要件についても、理事の半分を認定農業者等にするということでしたが、なかなか、各JAさんの地域によっては認定農業者の方の数が少ないようなところもある。こういったところで配慮するというような附則もございましたけれども、現在の検討状況についてお伺いしたいと思います。
〔小里委員長代理退席、委員長着席〕
○奥原政府参考人 農協法の施行に向けての準備状況ということでございます。
まず、一つ御指摘いただきましたのは、監査費用等の関係で、法律の附則には配慮事項というのが書かれております。監査費用の実質的な負担を増加させないようにする、これを配慮するということが書いてありまして、附帯決議でも、それを確実に実施するということが書かれていることも十分認識をしているところでございます。
この配慮規定を踏まえた対応につきましては、まずは、これまでの農協の負担がどのくらいであったかということを確認した上で、会計監査人となった場合の負担がどの程度になるかといったことを検証していく、そこからスタートする必要があるというふうに考えております。
その上で、例えば、公認会計士協会と連携した農協の組織、事業内容等についての監査法人への説明がどうできるかとか、それから農協の負担が実質的に増加しないように公認会計士協会等とも協議しながら、さまざまな方策を検討していくことになるものというふうに考えております。
既に法律の中にも書いてございました協議の場、これは、全中と公認会計士協会それから金融庁と農林省、これが入った協議の場をつくるというのも法律の中に書いてございまして、これは既に動き始めております。こういった協議の場を通じまして、あるいはいろいろな調査も通じて、この配慮規定をきちんとこなしていくようにやっていきたいというふうに考えております。
それから、もう一点いただきましたのは、農協の理事のところの要件でございます。
今回の農協改革の中では、農協の理事の過半数を原則として認定農業者や農産物の販売や経営のプロとする、これを求める規定を置いたところでございます。地域によりましては、認定農業者の数が少ないとか、原則どおりの役員構成にすることが困難な事情もございますので、あくまでも法律は原則ということになっておりまして、適切な例外を設けるということになってございます。
この例外は農林水産省令で決めるということになりますけれども、農業委員会の方についてはこれに関する政省令が既に出ておりますので、これも一つのモデルにはなりますけれども、農協については民間の組織ということもございます。そういう意味で、農協に対するアンケート調査もやっておりますし、そういったことを踏まえながら、関係者の意見を聞いて、現在、この省令の、例外をどういうふうにつくるかということを鋭意検討しているところでございます。
○小山委員 だんだん施行日も近づいてきておりますので、年明けにはいろいろ動きもあるのかなと思いますが、また鋭意進めていただきたいと思います。
さて、この監査のことについては九月のときにも質問をさせていただいて、そのときも調査中ということだったんですけれども、全国監査機構を廃止して、全国監査機構自体も監査法人になるわけですし、農協の監査というものは監査法人というシステム、仕組みの中で監査をするということに委ねるわけですけれども、その監査法人の監査で大丈夫かというような不祥事が起きているわけであります。
言うまでもなく、ずっと報道で出てきております東芝の不適切会計事件ですけれども、これはそろそろ、一時期、報道でも、何が原因だったかということが少しずつ出てきておりますけれども、特に、東芝の場合には新日本監査法人ですね、ここがなぜ東芝の粉飾を見抜けなかったのか、あるいは見逃したのか。
こういった要因については、九月から比べてかなり調査も進んできたと思います、もう三カ月ぐらいたっていますから。金融庁はこの点について、これは非常に農協の監査を委ねる上で大事なことだと思っておりますが、この原因についてどう考えているんでしょうか。
○森田政府参考人 お答え申し上げます。
先般、証券取引等監視委員会によりまして、東芝が提出した過年度の有価証券報告書等に重要な事項について虚偽の記載があると認められたとして、金融商品取引法に基づく課徴金納付命令を発出するように勧告が行われたところでございます。
当社の監査を担当いたしました監査法人に対しましては、金融庁における調査及び公認会計士・監査審査会における検査が着手されているところでございます。会計監査に問題が認められれば、適正かつ厳正に対応したいというふうに考えております。
○小山委員 多分、調査ももう終盤に来ているころではないかなと思うんですけれども、全国監査機構は、もちろん規模や数は違うんですけれども、しかし、それでも真面目にひたむきに取り組んできて、大きな粉飾を見抜けなかったとか、こういう見逃しというようなことは起こしてこなかったんですね。しかし、十分ではないというようなことで、今回解体を強いられているというようなところでございます。
ですから、そこ自体も今度、公認会計士の資格を持っている方々は監査法人になるわけですけれども、この監査法人の制度というものが揺らいでいたら、本当に何のための改正だったのかということになってしまいます。
これは本当に、今から、次の質問でも僕は話そうと思うんですけれども、どの公認会計士、金融機関の関係者、私自身も元銀行員ですけれども、聞いても見抜けないわけがないと言っているんですね。私も前回のときもお話ししましたけれども、これは粉飾の初歩的な、古典的な手口なんです。
こういったものがなぜ見抜けなかったのか。これは非常に重要だと思います。見抜けないわけがない。でも、見抜けなくて、見逃していたんだとすれば、もっと重大だと思うんですね。これはもし、理由によっては、やはり厳正に対処していかなきゃいけないというふうに思っております。
それと、その中で、本当はそろそろもう答えも出てきているんじゃないかと思っていたので、ちょっと臆測めいたことをお話しするかもしれないんですが、いろいろと税理士さんとか公認会計士さんなんかとお話しする中で、ある監査法人を経験した公認会計士の方が、今回のは氷山の一角だよ、どこでもあるんだ、こういうことはと。なぜかといえば、これは構造に問題があると。
どういうことかといえば、これもいろいろ議論が今までもあったところですけれども、やはり監査を受ける、検査を受ける対象者がお客さんなんですね。その方が報酬を支払う。ですから、監査法人にしてみますと、営業努力をすればするほど、もちろん、それでもちゃんと一定の緊張感があって、ほとんどのところはそんな癒着とか不正とかはないと思いますけれども、しかし、どうしても大口のところになると、いや、別の監査法人のところに監査を頼むよと。報酬が少なくなっちゃうということが、常にそのおそれというものがあるわけですね。
顧客がイコール監査の対象、検査の対象というこういった構造自体が、世界各国、地球上どこへ行ってもそうなんですけれども、やはりこの構造にどうしても無理があるんじゃないか。特に、何のために監査法人が監査するかといえば、これは投資家に対してちゃんとした情報を提供するということが目的なので、利益を受けるのは実は投資家なんですね。ですから、私なんかは、そういったことも含めて、監査費用、監査法人のコストの負担をどうするかということは考えていくべきじゃないかなと思います。
監査法人の顧客がイコール監査対象であるということが不祥事を招きやすい原因の一つだと私は思いますけれども、これについての金融庁の認識を尋ねたいと思います。
○森田政府参考人 お答え申し上げます。
公認会計士、監査法人は、財務情報の信頼性を確保することにより、先生御指摘のありました株主の保護などを図るために、独立した立場において、職業的懐疑心を保持しつつ、適正に監査を行わなければならないとされております。その上で、仮に不適正な監査が行われた場合には、刑事、行政、民事上の責任を問われ得るということになってございます。
また、日本公認会計士協会は、監査事務所、監査法人でございますけれども、による監査の品質管理の状況について、監査人の独立性が確保されているかを含めレビューを行っておりまして、こうしたレビュー結果を受け、公認会計士・監査審査会がモニタリングを行っているということでございます。
金融庁といたしましては、日本公認会計士協会、公認会計士・監査審査会と連携いたしまして、引き続き監査法人等の適切な監督に努めてまいりたいというふうに考えております。
○小山委員 また予算委員会の分科会で、このことはもっとしっかり質問したいと思います。
ただ、今お話を伺っていて、職業的懐疑心、本当に、日本人から、働くということのプライドとか職人的なモラルというものがどんどん失われているんじゃないかな。業績評価制度とか、とにかく給料が上がっていけばいいとか、ほかの人と、まあ我々政治の世界でも、誰々が役職についたとかつかないとかといって何となく気になっちゃうんですけれども、でも、それのモラルにのみ依存すると、やはりどこか限界があるんじゃないかな。
ですから、私は、ある会計士の方が、例えば社会保険みたいに保険料を徴収したり、あるいは株主からも、一番利益を受けるのは投資家ですから、投資家も何らかの形でコストを負担するとか、監査法人の収入の半分が公的なものから入ってくるということになれば、公認会計士の方が言うには、もうちょっとしっかり監査できる、こういう提案もありました。
でも、何のことはない、これはまさに全国監査機構のやり方なんですよ。ドイツの協同組合やフランスの協同組合の監査連合会のやり方をまねして輸入したのが日本の全国監査機構ですから、何のことはない、これは先駆的に取り組んでいたんじゃないかという側面もあるんじゃないかな。
これ以上はもう言いませんけれども、ただ、世界各国に先駆けて、日本だからこそ、問題が起きたときには独自の仕組みをつくってでも、公正公平に、またしっかり適正な監査ができるような仕組みの構築に向けて取り組んでいただきたいなと思います。
もう二十分過ぎてしまったので、次に、TPPのことに移りたいと思いますけれども、これは、用意してきた質問の幾つかが篠原議員等でもう既に答えがありますので。
甘利大臣が、平成二十七年十二月三日に、農林水産委員会内閣委員会の合同審査会の稲津委員への答弁の中でお話しになったことについて、まずお尋ねしていきたいと思います。
その答弁の中で、甘利大臣が、私宛てに礼状が来ました、日本が入ってくれたおかげでここまで持ってこれたという長い感謝状が書いてありました、これは議事録から抜き書きしてきたんですけれども。
篠原さんがさっき話していたとおりで、普通、交渉担当者というのは、相手から嫌がられるぐらいなことでぎりぎり交渉するものだと思うんです。私も、きょうの質問で嫌われているかもしれませんけれども。
それからすると、感謝状が来た、しかも長い感謝状が来たという発言を聞いたとき、私はあれっと思ったんですけれども、大体、感謝状というのは誰から来たのか。この感謝状というのは甘利大臣宛てに来たのか、それとも甘利明さんという個人に対して来たのか。私信なのか、そうではないのか。大臣という役職に対する公文であれば、これは公開も考えていいんじゃないかなということも思いますけれども、誰からの感謝状でどういう内容だったのか、お尋ねしたいと思います。
○澁谷政府参考人 御質問いただきました手紙でございますが、シンガポールのリム・フンキャン貿易産業大臣から甘利大臣宛て、個人宛ての書簡でございます。
日本とシンガポールとの経済関係等について含めての内容になっておりますが、その中で、リム大臣は、TPP交渉における日本の積極的な貢献についての感謝の意を表明されているところでございます。
なお、手紙自体は、甘利大臣個人宛てということでございますので、相手との関係もございますので、公表は控えさせていただきたいと思います。
○小山委員 私信ということであれば、それはおっしゃるとおりですけれども、ただ、普通、先ほども冒頭でお話し申し上げたとおり、余り相手から感謝されるというと、どういうプロセスだったのかということがこういったものからもあぶり出されるのではないかと思って、このことはお尋ねしたんです。
それと、TPPの関連政策大綱のことでお尋ねしたいと思います。
新輸出大国ということでございますが、輸出主導国家を目指すというようなスローガンが躍っております。これで、輸出というものは、将来、GDPにおいて輸出の比率というのをどのぐらいのパーセンテージまで持っていこうというような目標があるのか。
新輸出大国ということなので、韓国なんかはGDPの四割近くが輸出です。日本はGDPのうちの十数%ですね、一五%ぐらいだったと思います。ですから、これは大きな違いがあるわけです。新輸出大国と言っているわけですけれども、具体的にはどのぐらいのものの輸出大国、どういう国の構造を目指すのか。こういったやはりビジョンというものがあって、国民も、そういった将来像というものを描きながら対策を立てたり、あるいはどう過ごしていくかということを考えるかと思うんですけれども、そういったことにもつながることだと思います。
どのぐらいのGDPの比率を目指すのか、お答えいただければと思います。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
政策大綱におきます新輸出大国、「新」と書いてあるわけでございますが、新しいというのは、これまで大企業中心だった輸出から、中堅・中小企業による輸出も含めて積極的に支援をするということ、また、工業品中心の輸出から、農産品、コンテンツ、サービスなども含めた輸出を総合的に支援する、こういう政策の方向性をうたっているところでございます。
大綱におきましては、したがって、輸出全体のGDP比率の目標等は明示しておりませんが、放送コンテンツ関連の海外市場売上高、農林水産物・食品の輸出額等について目標を提示しているところでございます。
なお、大綱で示した政策の方向性を踏まえまして、各省庁で施策の具体化を図ることになっておりまして、成果目標につきましても、そうした施策の具体化とあわせて検討されていくものと考えております。
○小山委員 GDPのどのぐらいの比率かという目標までは書かないということですけれども、しかし、どういった国を目指していくのかということが私はこの論戦の中で一番大事なことではないかなと。
甘利大臣は、先日の合同審査の中で、日本の市場はどんどんシュリンクしていくんだと。これはたしか共産党の畠山議員への答弁の中でお話があって、畠山議員が家族農業、きょう簗議員からちょうどそのことが質問ありましたけれども、家族農業についての話を畠山議員がしたときに、打って出ていくんだ、打って出ていかないようだったら、国内だけを見ていったら、どんどん国内市場はシュリンクしていくから、だから、もう農業はだめになるんだ、一言で言うとそういうニュアンスのことを御答弁されていたのを今でも記憶しておりますけれども、そうじゃないんじゃないか。韓国のように輸出が四割も超えるような国だったら、確かに甘利大臣の言うような、そういう国を目指しているんだったら、それでいいんだと思うんです。だけれども、そうじゃないはずですね。
今あるこの現状維持のためには発展を志向していかなきゃいけないということであれば、やはり国内対策も大事だし、国内の市場も大事だし、国内の購買力を維持していく、こういうことも大事だと思うんですね。その観点から自民党さんも地方創生ということで多分お取り組みをされているんだと思いますけれども、ぜひそういった大きなビジョンというものも掲げていただきたいと思います。
ちょっと嫌みったらしいことを最後にもう一個お尋ねしたいと思います。
TPP関連政策大綱によりますと、TPPはアベノミクスの成長戦略の切り札と位置づけられております。玉木さんがちょうど用意した資料に、これも嫌みな資料ですけれども、「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」というのがあって、私も質問の中で、二〇一二年の選挙の際にはTPPは含まれていなかったと思うんですけれども、いつぐらいから成長戦略の切り札として位置づけられるようになったんでしょうか。
○高木大臣政務官 委員御指摘のとおり、TPP関連政策大綱の中で、TPPは成長戦略の切り札であるとうたっておりますけれども、二〇一三年の四月の二十日、交渉参加十一カ国が日本のTPP交渉参加に対する支持を表明いたしました。翌二十一日に甘利大臣は声明を出して、TPP交渉は我が国の成長戦略の柱である旨述べられております。
今般、TPP交渉は大筋合意に至ることになり、TPP協定は成長戦略の切り札であると言っているわけですが、前述のとおり、我が国は交渉に入ったときから、TPPは我が国の成長戦略にとって不可欠のものであると言い続けてきております。
○小山委員 質問時間も大分少なくなってまいりましたので、今経緯を伺いましたけれども、私ども民主党も、マニフェストを達成していなくて公約違反だ公約違反だと随分言われました。もちろん政権を運営しているとそういう変更というのはあるんですけれども、ただ、ちょうどこれは玉木さんがつくってきた資料なものですから、このポスターからするとやはり大きな政策の転換だったのではないかなということは言わざるを得ないんじゃないかなと思います。
そういった中で、もう足の引っ張り合いみたいな話はお互いにやめていって、もちろんTPPに対しての賛成、反対というのはそれぞれの党で違ってくるとは思うんですけれども、ただ、そのような足の引っ張り合い的な話というのはもうお互いにしていかないというようなことで、前向きな議論というものがこれからもっとなされるように私個人も努力していきたいと思っております。
きょうは、あと二十秒ほどでちょうど時間が終わりますので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。
○江藤委員長 次に、松木けんこう君。
○松木委員 維新の党の松木けんこうでございます。
質問の前に、江藤委員長がずっと頑張ってきていただいて、非常に適正な委員会運営をやっていただいたんじゃないかというふうに私は思っています。本当に御苦労さんでございました。今言うのはちょっと早いのかもしれないですけれども、これからもぜひまた御活躍していただきたいというふうに思います。
そして、新大臣、新副大臣、政務官の方も、佐藤さんは留任で、新しい政務官さんですよね。お三方とも本当におめでとうございます。
特に森山先生は、私も個人的に随分お世話になったことがあるなというふうに思っておりますけれども、非常に農政通でいらっしゃいますから、ぜひいい農政をしていただきたいし、齋藤さんは本当に頭のいい方で、大臣がちょっと困ったときに、さっといい答弁をしていただけるんでしょう。ぜひこれからも頑張ってください。そして、政務官の方も、私は今まで余りおつき合いがなかったですけれども、また今後ともよろしくお願いします。
ということで、大臣、本当だったら所信表明演説というのがあって始まるわけですよね。所信表明演説、やりたいでしょう。やりたいですよね。いや、まあそれ以上言わなくていいですよ。言わなくて結構ですけれども、ちょっと残念だなというふうに思うんですよ。
そして、憲法五十三条が云々とかいろいろなお話がありますけれども、やはり国会というのは基本的に、僕は昔から、うんと、もう三十年前は藤波孝生代議士の秘書をやっていたわけですから、国対委員長なんかの秘書もやらせていただきましたので、そのときに、野党の人たちは、活躍する場というのはやはり国会なんですよね。そして、政府の方々はそこをしっかり守っていかれるということだと思うんですよ。
まあ、時代も変わりましたので、いろいろと違うところもあるかもしれないけれども、基本はそうだろうなという中で、憲法五十三条という話はあるし、やはり僕は受けた方がよかったんじゃないかなとつくづく思うんですけれども、大臣はどういうふうに考えますか。
○森山国務大臣 松木委員にお答えを申し上げますが、やはり総理の外遊日程等の関係もこれあり、やむを得なかったのかなというふうに思っております。
○松木委員 どうですか、齋藤さんも、もしよかったら。
○齋藤副大臣 松木委員の松木節にひっかからないように慎重に答弁をしたいと思いますが、今大臣が申し上げたとおりだと思います。
○松木委員 なかなかガードがかたいですね。
お気持ちは、多分、やはりしっかり所信をやって、そして皆さんと対峙をしていきたいというふうにお思いだったんじゃないかなというふうに思いますけれども、そこはやはり本当に残念ですね。
いろいろな言い方がありますけれども、悪法も法なりとか、憲法が、今、例えばやはり自民党の皆さんは変えたいとかいうお気持ちもあると思うんですよ。でも、憲法は憲法で今あるんですから、やはりこういうことはしっかり守っていった方が私はいいんじゃないかなというふうに思いますので、ぜひ、大臣、総理に会ったらよろしくお伝えをいただきたいなというふうに思います。
それでは、質問をさせていただきますけれども、TPP大筋合意、いろいろなことが言われていますけれども、あと、本日議論されているのは畜産の分野ということなんですけれども、非常に大きな影響が予測されておりますし、同時に、畜産業全体としては、高齢化や離農による生産者の減少、飼料価格の高騰など多くの課題が山積みしているわけですけれども、どうやって強い畜産業を未来にわたって残していくことができるか、本委員会で議論を通じてしっかりと考えていく必要が私はあるというふうに思います。
我が国の食料生産を支え、文化を育む第一次産業、農業、水産業、畜産業といったものは、まさにこの国の根幹を支えているとても大切な存在であります。しっかりと守り立てていくために、政治は責任を持って必要な施策を進めていく必要が私はやはりあると思いますね。
特に、自給率については、先進国は一〇〇%近いというところが多いんですけれども、日本は大きく割っているわけです。こういう状態が続いているということがいいのかどうか、そういうこともありますし、いろいろとやらなきゃならないことがいっぱいありますから、ぜひ、私も一次産業を基幹産業とする北海道の議員の一人ですので、質問をこれからもしっかりしていきたいというふうに思っているわけでございます。
それでは、さっきもちょっとお話もあったんですけれども、TPPの問題が出たときに、随分、食料の自給率という話がありましたよね。ところが、何か余りこのごろその話が聞こえてこなくなっちゃったんですよね。これはどうなっているのかなと。
カロリーベースで、四〇%が二七%に落ちるとか、あるいは生産額ベースでも、七〇%ぐらいあるのが五五%ぐらいになるんじゃなかろうかというようないろいろな話があったわけですけれども、今回、大筋合意ということで、多分このときに言ったのは、ほとんど撤廃された場合という話だったと思うんですね。ある意味、日本国も、農林水産省も頑張ったんだと思いますよ、私は。ですから、全部が即時撤廃になったわけじゃありませんよね。
では、さっきも質問には出ていたんですけれども、一体どのぐらいの影響があるんだろうというのが、何かいまいちやはり見えてこないんですよね。ここら辺、ぜひちょっとわかりやすく説明をしていただけたらありがたいですね。お願いします。
○森山国務大臣 松木委員にお答えをいたします。
TPPと自給率の関係でございますが、委員がお話しされたとおり、平成二十五年三月の試算は公表いたしました。そのときの条件と現状は大きく変わっております。そのことをまず申し上げなければならないのだろうと思います。
また、TPPの結果を踏まえた経済効果分析につきましては、内閣官房から年内に分析結果をお示しになるというふうに伺っておりますし、この委員会でもそういう答弁がなされたところであります。
我々は、今回のTPP大筋合意に基づいて、どういうふうに自給率に影響があるのか、影響分析もあわせて、どういう形で公表をした方がいいのかということはよく検討してまいりたいと思っておりますし、一番大事なことは、TPPによって食料自給率で国民の皆さんに安心していただくということが大事なことでございますから、今回、対策等をやり、予算をしっかり積み上げていくことによって自給率がどうなるかということは、どういう形でお示しするかということを今検討しているところでございますので、御理解いただきたいと思います。
○松木委員 わかりました。
平成二十五年にはある意味で非常にわかりやすい数字が出てきたわけですので、なるべく同じような感じで一度やはりお出しになるのが私はいいんじゃないかなというふうに思います。例えばこれが、四〇%が実は三〇%で終わりましたとか三五%でしたとかということになると、皆さんがどれだけ頑張ったかということもある意味で証明されることにもなるのではないかなというふうに思います。
この食料の自給率、カロリーベース、生産額ベースという言葉があるわけですけれども、この言葉に関して、余り意味がないんだよということを言う人もいるんですけれども、私はやはりこれは非常にわかりやすい数字でいいなと思っているんです。これからもこの数字を大切にしていろいろな政策は打っていった方がいいと私は思うんですけれども、そこら辺、どう思われますか。
○森山国務大臣 やはり、食料の自給率がどういうふうに変遷していくかということは国民の皆さんにお示しをすることが大事だと思っておりますし、願わくば、自給率をお考えいただいて、お米をもう少し食べようという気持ちに国民の皆さんがなっていただければなおありがたいなというふうに思っています。
○松木委員 こういう自給率のことも大切だという御意見をいただいたというふうに思いましたけれども、それでよろしいですね。ぜひそれで頑張っていただきたいと思います。
それと、あと気になっているのは、アメリカの大統領選挙というのもあるわけですけれども、ここで民主党と共和党の両党の有力候補者からTPPについてかなり慎重論とか反対する声が相次いでいるというふうに私は聞いているんです。
アメリカの大統領選挙ですから皆さんに聞くのもちょっといかがかなというところもあるんだけれども、ひょっとしたら次期大統領がTPP参加に反対して、TPPそのものが発動できないという事態はあり得るのかなとか、あるいは、そんなことはないよというのならないよでも結構なんですけれども、どういう感じになっているのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。
○齋藤副大臣 TPP協定の発効ができないんじゃないかという懸念を表明されましたけれども、十一月にマニラで行われましたTPP首脳会合におきましては、今後できる限り早期の協定発効に向けて各国が国内の承認を得る取り組みを着実に実施することが確認をされております。これを受けて、現在、我が国を含めて、各国それぞれ協定を整備するための国内手続を進めていると認識しております。
今御指摘のアメリカの国内ではさまざまな意見があることは承知をしておりますし、私どもも情報を収集はしておりますけれども、そのことについて政府としてコメントするのは差し控えたいなと思っております。
○松木委員 はい、わかりました。大統領選のことですから余り我々がちょろちょろ物を言うのもいかがなものかとは思いますけれども、そういう心配もあるということでございます。
我が国というのは、主要貿易相手国と既にEPA、FTA協定をかなり精力的に結んできているんですね。
TPPというのは二国間協議ではなくて多国間協議ですから、それだけに合意形成というのは非常に難しい。しかも、アメリカ大統領の動きを見ると、大統領選が終わってからももう一波乱あるんじゃないかというぐらいの感じなんですけれども、一気にTPPということで何でも進めるより、EPAやFTAということを少しずつ進めるという方法があるように私は思っているんですけれども、そこら辺はどうでしょうか。
○齋藤副大臣 先ほど申し上げましたように、TPPにつきましてはもう既に十月五日に大筋合意に至っておりますし、マニラでも、TPP首脳会合で、各国それぞれ、協定発効に向けて努力をしていきましょうということになっているということであります。
一方、日・EU・EPAやRCEPあるいは日中韓FTAなど他の交渉についても、我が国国策上、非常に重要であるというふうに考えておりますので、同時並行的に戦略的かつスピード感を持って進めていきたいと思っております。
○松木委員 わかりました。ぜひ頑張っていただきたいと思います。
日豪のEPAのことでちょっとお話を聞きたいんですけれども、牛肉の問題についてお聞きします。
この合意内容では、冷凍牛肉の関税を三八・五%から十八年目に一九・五%まで、約五割削減するというふうになっているんですね。
自民党の農林水産戦略調査会、農林水産貿易対策委員会、農林部会は合同で、平成二十六年の四月十一日に、今後、TPP交渉に臨むに当たっては、さきの日豪EPA交渉の大筋合意がぎりぎりの越えられない一線、レッドラインというのですか、であったことを明確に認識した上で、さきの総選挙、参議院選挙での党公約及び衆参農林水産委員会におけるTPP対策に関する決議を遵守し、毅然とした姿勢を貫くよう政府に厳しく申し入れると決議しているわけですけれども、この決議は、自民党の農林関係のリーダーは森山大臣ですので、大臣が自民党の農林水産貿易対策委員会委員長を務めていたときの決議だというふうに聞いております。
この日豪EPAの合意内容がレッドラインであるとの認識ではなかったのかということなんですけれども、今回のTPP合意はレッドラインより後退しているんじゃないでしょうかという感じがあるんですけれども、そこら辺、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
○森山国務大臣 党の決議との関係でございますが、ちょうど平成二十六年の四月、日豪EPAが大筋合意できた時期というのは、一方、TPPの交渉はまさに真っ最中でありました。アメリカなど他の交渉参加国が我が国に対しまして農産物の関税撤廃を強硬に主張しているときでございましたから、このため、TPP交渉に一定の歯どめをかけて、バランスのとれた合意を目指したいとの思いから、日豪EPA交渉の大筋合意がぎりぎり越えられない一線であるというふうに自民党で決議をしたのではなかったかなというふうに今思い出しております。
TPP大筋合意では、農林水産品の総タリフラインのうち一九%を関税撤廃の例外とするなど、交渉結果としては最善のものとなったというふうに考えておりますし、このような結果を得る上で、各種の決議というのは非常に有効だったのではないか、こう理解をしているところであります。
○松木委員 そうですね。しかし、ちょっと日豪EPAの合意内容より後退はしちゃったのかなと思いますけれども、齋藤さん、どうですか。
○齋藤副大臣 日豪EPAでは、オーストラリアが対日輸出面において交渉相手国に先んじて貿易利益を得ようということで、当時、早期に交渉をまとめようというスタンスであったと認識しておりまして、そういう意味では、あのような結果になりました。
一方、TPPでは、各国とも包括的で高い水準の協定を目指して、関税撤廃だという極めて強い圧力の中で、国会決議を後ろ盾に粘り強く交渉を行ったというふうに認識をしております。
その結果、牛肉につきましては、米国等が近年締結しているFTAでは、アメリカは基本的に相手国の牛肉関税を撤廃しているんですね。そういう中で、我が国は、関税撤廃を回避し、長期の関税削減期間を確保するとともに、さらにセーフガードも措置することができたということでありますので、交渉結果としてはベストのものになったのではないかと認識をしております。
○松木委員 よくお気持ちはわからないでもないんだけれども、やはりこれは国会決議とかを見ると、ちょっと厳しい結果だったのかなというふうに思うところですよ。ぜひ、これからもいろいろとあるんでしょうから、頑張ってください。この質問はこれぐらいにしておきましょう。
では、食の安全についてお聞きしたいと思いますけれども、TPPによって外国産の肉の輸入がふえれば、我が国は安心、安全に対する考え方が異なる国からの輸入もふえることになるというふうに思います。
例えば、遺伝子組み換え食品なのかそうでないのか、日本の消費者にとっては非常に大きな関心事なんですね。TPP加盟後に、他の加盟国から、遺伝子組み換えの表示は非関税障壁に当たるから撤廃せよ、こういう要求があっても、我が国政府は断固としてこれを拒否するんでしょうか、それとも場合によっては受け入れていくのか、そこら辺、今すぐ全部答えが言えないのかもしれないですけれども、ぜひわかりやすくお答えをいただきたいと思います。
○小風政府参考人 お答えいたします。
遺伝子組み換え食品の表示義務についてお尋ねでございました。
これにつきましては、当衆議院の農林水産委員会におきましても、「食の安全・安心及び食料の安定生産を損なわないこと。」という御決議をいただいております。
TPP協定におきまして、遺伝子組み換え食品など食品の表示につきましては、第八章の貿易の技術的障害、いわゆるTBT章が適用されます。TPP協定におけるTBT章につきましては、透明性の向上など、WTOで定められたルールを強化するものでございます。
我が国の遺伝子組み換え食品の表示制度につきましては、消費者の商品選択のために必要な情報として、正当な目的のために差別的でない態様で適用されております。したがいまして、TBT章と矛盾するものではなく、TPP協定により、遺伝子組み換え食品表示を含めまして、食品の表示要件に関する我が国の制度の変更が必要となるという規定は設けられておりません。
なお、遺伝子組み換え食品の表示義務など、食品表示、この制度は食品表示法に基づきまして消費者庁が所管しておりますが、消費者庁におきましても同様の考えであるというふうに承知しております。
○松木委員 丁重にお答えいただいたんだと思うんですけれども、私は余り頭がよくないものだから、ちょっと言っていることがよくわからなくなってしまいまして、要するに、拒否する、こういうことでよろしいんですか。
○小風政府参考人 お答えいたします。
要求がございましても、それに応える必要はないというふうに考えております。
○松木委員 はい、わかりました。ぜひそうしていただきたいと思います。
それでは、畜産生産基盤整備のこともちょっと聞きたいんですけれども、政府は、この中で、畜産、酪農の収益性向上に向け、畜産クラスター構築事業など、産業基盤強化のための事業を予算計上されているわけでございますけれども、畜産分野の競争力向上には大規模化が不可欠であるというふうに考えております。
大規模化に伴って、情報通信技術分野などこれまでの畜産業界では少なかった新しい分野の高度な専門技術を兼ね備えた人材活用も重要になっていくというふうに私は思っているんですけれども、農林水産省としてこういった技術分野の人材育成に今後力を入れていくのかどうか、そこら辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○今城政府参考人 お答えします。
畜産分野におきまして、委員おっしゃるとおり、大規模化を進めるに当たりまして、生産関連情報を迅速に把握するということが極めて重要でございます。したがいまして、情報通信技術、ICT、そういうことはその一助となる、また、それを使いこなす人材というのは大切だというふうに考えております。
例えば、繁殖牛の発情を早期に発見する装置ですとか、それから、離れたところにおりましても牛の分娩状況を的確に把握する装置とか、そういうのは既に現場で使われ始めております。そういうことも含めまして、畜産クラスター事業やALICの畜産・酪農生産力強化緊急対策事業の中でも導入を支援しているというところでございます。
農林水産省といたしましては、これらの技術を生産現場へ普及していくということ、これが非常に大切であると考えておりますので、人材の育成の観点から、そういう研修、セミナー等の場を活用して進めてまいりたいというふうに考えております。
○松木委員 こういった人たちがどのぐらいの数の人たちが必要になるかというようなものを、大体何かそんなことは考えているんですか。
○今城政府参考人 人数がどれぐらい必要かというのはまだ具体的にはイメージできておりませんけれども、現場で必要とされているということは理解しております。
○松木委員 こういったことも大切だと思うので、ぜひ、役所の方でしっかりこの人材育成ということを考えて、頑張っていっていただきたいというふうに考えております。
国内畜産物の海外展開を考えるとき、生産地域から港へのアクセスをどう整えて流通コストを圧縮していくかという点で、交通インフラの整備がかなり重要になってくるというふうに私は思っております。国交省などとの調整が必要になってくると思いますけれども、政府として強い農業実現のための交通インフラ整備をどう進めていくおつもりなのか、ちょっとお聞かせをいただければありがたいと思います。
○今城政府参考人 委員御指摘のとおり、輸出畜産物をしっかり効率よく運んでいくということにつきまして、交通インフラの整備あるいは共同搬送というようなことを進めていくということでコスト削減を図っていくということは非常に重要なことだと考えております。
御指摘のとおり、ちょっと国交省とお話ししなければなりませんけれども、そういうことを活用させていただきながら、農林水産省としても、国産畜産物の高い品質を損なわない輸送技術の確立とかコールドチェーンの話とか、そういうことも含めてしっかりやっていきたいというふうに思っております。
いずれにしましても、農林水産省としましては、輸出促進に向けて、輸出関連の施設、特に牛肉等は、施設が相手国の検疫上、認められていないといけないものですから、そういうものをふやしていくですとか、そういうことも含めて対応してまいりたいというふうに考えております。
○松木委員 国土交通省の皆さんともしっかり話し合って、いい形をつくっていただくように頑張っていただきたいなというふうに思います。
いろいろとお話を聞きましたけれども、大臣、大変なときに大臣に御就任をされました。でも、私は本当に、お三方の顔を見ていると、非常に心強いな、こういうふうにも思いますし、何か今、輸出とか、強い、攻めの農政とかという言葉が非常に躍っていますよね。それはそれで僕はいいことだとは思うんですよ。いいことだと思うんだけれども、あるいは、世の中は何となく、とにかく大規模化する。大規模化するのももちろん悪くないんですよ。僕も必要だと思っているけれども、そうでない人たちもいるんですよね。だから、そうでない人たちが何か切り捨てられるというような、そういうイメージというのがどうもあるんですよ。
そこら辺、やはり心優しい森山大臣ですから、何かいいお考えをこれからぜひ政策として、細かいことは、数字を含めたら齋藤さんがまたきっちりやってくれて、政務官がそれを調べるなんて、そういうチーム森山でしっかり頑張っていっていただけるんだとは私は思います。
ぜひ本当に、大規模化、もちろん北海道なんかは大規模ですから、それはそれでありがたいことなんですけれども、やはり小さな農業、こういうものも、例えば景観だとか、そういうのを守っているだとか、里山とかがあるじゃないですか。やはりお金でかえられないものなんですよね。そういうものも含めて、私はあっていいんじゃないかなという気がするんですよ。ぜひ、そういうお気持ち、もちろんお三方はおありだと思いますけれども、そういうことをしっかり頭に入れて頑張っていっていただきたいというふうに思います。
そして、委員長、本当に長い間お疲れさまでございました。別に政治家をやめるわけじゃありませんから、これからまた活躍をされると思いますけれども、本当に御苦労さまでございました。
そういうことを申し上げまして、私の時間があと三十秒ぐらいあるので、大臣、何かお気持ちがあればお答えいただきたいと思います。
○森山国務大臣 今、松木委員がお話しのように、農林水産業を成長産業化するという産業政策と、農村、漁村を引き続き多面的な機能を果たしていけるようにどう維持発展させていくかという地域政策と、車の両輪でしっかりとやらせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
○松木委員 終わります。ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。
松木先生の松木節の後はいつも気が重いのですが、私も私なりの節でやってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
きょうは、まず、鹿、鳥獣被害のことを伺っていきたいのですが、今、鹿そしてイノシシと大変ふえていて、それを減らしていかなければいけない、そういうことで、国の方でも、鹿の頭数でいえば平成二十三年現在は推計で三百二十五万頭いるのではないか、これを平成三十五年までに百六十万頭にしていく。そういうことで、鹿を一頭捕獲したときに八千円の予算をつけるですとか、また猟友会、狩猟の免許を持っている人たちに対する支援をここまでやってきているところだと思います。
ただ、私、この数字を見ていて、例えばこれまでの全国的な調査で、二十五年前に比べれば、鹿の数は、全国の分布、これはメッシュで調査をされていると思うんですけれども、一・七倍になっている。推計していってもほっておけばふえていくよというような中で、果たして処分の半減目標というものがきちっと達成できるのか。
また、鹿、イノシシがふえていく中で、実際、専門家、これを研究されているような方の論文を見れば、出口が見えない、そういうようなことを言われている方もいるんですけれども、まず、対策の実現可能性も含めて、農水省の方から所感をいただきたいと思います。
○末松政府参考人 今お話しのとおり、鳥獣被害対策、なかなか課題がまだ残っているというふうに思っております。
今後、効果的な鳥獣被害対策の推進に当たって、鳥獣の捕獲が非常に重要でございますが、これに加えて、侵入防止柵の整備など、さまざまな方法で対応していくことが重要と思っております。また、地域の連携や新技術の活用などの取り組みも今後重要であるというふうに認識しております。
さらに、今、環境省とも連携しながら、政府一丸になって諸対策を進めていくということが重要な時期になっているというふうに認識しております。
○井出委員 鳥獣被害対策といいますと、やはり鹿やイノシシの頭数を減らしていくという部分に予算が割かれてきているかと思います。中心は主に農林水産省の方でそういう予算を組んでいただいてきましたが、環境省の方でも、鳥獣被害対策の都道府県がつくる計画、調査に対する支援とともに、また、捕獲に取り組む団体等への捕獲についての支援も行っている、そういう状況だと思うんです。
今、捕獲以外にもというようなお話がありましたが、私、ここのところ、予算に関して言えば、やはり鹿やイノシシをとる方の予算の議論、もう少し手厚くしてくれと私も地元で言われますが、そこの部分の議論は厚みが出てきているのかなと思います。
ただ、そこで伺いたいのは、やはり予算にも限界がありますので、それを、とらなきゃいけない鹿の頭数に応じて予算をふやしていけるのかどうか。あと、それに比して、地域全体の取り組みですとか、捕獲以外の部分の予算というものの重要性、そこの予算の確保というものについてしっかりなされているかどうか、そのあたりの認識も伺いたいと思います。
○末松政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、捕獲以外の面も非常に重要だと思っております。
このため、農林水産省といたしましては、市町村が主体となった地域ぐるみで取り組む被害防止の取り組みに対して支援する鳥獣被害防止総合対策交付金を設けておりまして、これにおいて、都道府県や複数の市町村が行う広域的な被害防止の取り組みとか、ICTを活用した捕獲技術など、そういうものの取り組みに対して重点的に支援を進めていこうというふうに考えております。
○井出委員 今お話のあった総合対策交付金の方ですが、平成二十三年に百十三億円と、二十二年の二十三億円に比べればかなり大きくふやしていただいたのですが、その後は、残念ながら、二十四、二十五、二十六、二十七年はいずれも九十五億円で推移をしておりまして、これは、現場からすれば、やはりもう少し支援をいただけないかなというところもあるんです。
今どうしても鹿の数を減らしていかなきゃいけないというところがあって、まず、そこの捕獲についてもう少し伺っていきたいんです。
捕獲の半減目標、三百二十五万頭と推計されるものを十年後に百六十万頭にできるのか。あと、それともう一つは、捕獲が効果を上げるときというのは、既に鹿がある一定の地域に相当な密度があって初めて、鉄砲を持って入っていった方が鹿と遭遇をする。実際、鹿がいろいろなところに拡散していないか、拡散を防ごうと思って対策を打つとき、その地域における鹿の密度が薄いときは狩猟というものはやはり効果が薄い、そういう捕獲の限界というところもあるかと思うんです。
そういったところも踏まえまして、今、捕獲頭数の半減目標というものを大きく掲げられておりますが、この道で果たしてこれが実現に至っていくのかどうか、そこのところの所感、意識を伺いたいと思います。
○末松政府参考人 お答え申し上げます。
政府でつくっている目標に向けては、先生御指摘のとおり、捕獲だけではなくてさまざまな対応が必要だというふうに考えております。
捕獲につきましては、農林水産省の事業に加えまして、環境省さんの事業など、総合的に政府全体で取り組めるところを総動員して対応していきたいと思いますし、また、密度が少ない場合、今お話ありましたように、侵入防止柵が重要な場合もあると思いますので、そのようなことも含めて取り組みを進めてまいりたいというふうに考えてございます。
○井出委員 もう一度念を押すというか、繰り返し伺うんですけれども、捕獲だけではやはり一定の限界がある、そういうことを考えられているかどうかというところはいかがでしょうか。
○末松政府参考人 お答え申し上げます。
捕獲が重要であるということは今後も当面変わらないと思いますが、捕獲以外の対策もあわせて進めていく、それによって地域の農業が守られていくということが大切だという認識でございます。
よろしくお願いします。
○井出委員 私の地元の長野県は、特に鳥獣被害に早くから苦難の時代を迎えておりまして、平成の最初には二十億円近い農業被害がありました。
ただ、ニホンジカの頭数がどれだけあるか、そのときのデータというものはないのですが、長野県のケースをちょっと分析していて、私は目にとまったことが一つあります。
長野県も全国と同様に鹿が増加傾向にあるんじゃないかと、こういう分布調査をやっていると出ているんですが、平成十五年の調査と平成二十二年の調査を見ますと、明らかに分布や密度というところでは増加の傾向がはっきり出ている。正確な頭数までは推計できませんが、鹿が増加傾向にあるのが平成十五年から平成二十二年となっています。その一方で、では、被害額はどうなのかというと、多少山あり谷ありではあるんですが、平成十九年から二十二年まで一定の減少傾向を示している。
私はこのデータを見ていて、やはり捕獲も大事だけれどもそれ以外のことも大事だというお話がありましたが、この長野県のデータを見ていると、むしろ捕獲以上にその他の対策の重きを考え直してみる一つの数値ではないかなと思って受けとめているんですが、いかがでしょうか。
○末松政府参考人 先生御指摘のとおり、近年、例えば長野県においては被害金額が少しずつ減少しているという傾向がございます。その間に頭数が激減しているということではございませんで、増加という、いろいろなお話もあります。おっしゃるとおり、捕獲以外の対応、営農する農地に有害鳥獣が入ってこない対策というのも同様に重要だと思います。
先ほどから繰り返しになって恐縮でございますが、捕獲とそれから捕獲以外の手段、地域に合っているものをうまく組み合わせて対策を進めていきたいというふうに考えてございます。
○井出委員 捕獲とそれ以外のということで繰り返しになりますがということでのお話だったんですが、狩猟の免許を持っている方もかつてに比べればもう半数以下になっておりますし、たしか昭和五十年代は五十万人近くいたと思いますが、今は二十万人を切っている、多くの方が高齢者である。
そうしたときに、私は、農水省それから環境省の鳥獣被害に対する取り組みのものをいろいろ読ませていただいて、捕獲とそれ以外というお話だと思うんですけれども、少し逆転の発想といいますか、長野県に関して言いますと、長野県も実際に鹿の頭数を平成二十三年には十万五千頭と推計されていて、それを二十七年までに三万五千頭にしたい。それで、毎年三万五千頭近い鹿を捕まえてきて、その捕まえる目標は達成しているんですけれども、では、実際、三万五千頭に近づいていますかと聞きますと、まさにその詰めの数字合わせをしているというのが今の段階なんです。ただ、大きく減っているとまではどうも言えないようで、減っていることを願うと。ただ、大分その目撃情報は減っているけれども、拡散をしてしまっているというような状況もあります。
平成十九年に特措法をつくっていただいてからいろいろな取り組みを捕獲を中心にやってきたかと思うんですけれども、そろそろ一度、捕獲重視という方向性がいいのか、それとも、発想を逆転させて、それ以外の見地でもう少し、環境省さんの御協力をいただきながら、地域性、全体的なものを含めたり、自然環境というものを考えてやっていくことがいいのではないか、そういう時期じゃないかなと思いますが、いかがでしょうか。
○末松政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘のとおり、地域によっていろいろな対策、どういう対策が功を奏するかということがあると思います。地域において今後どういう対応が効果があるのかということを検討していただき、国もそういう方向を支援していきたいというふうに考えてございます。
○井出委員 大臣にも一言いただきたいなと思うんですが、私なんぞよりもずっと農政にかかわってこられておりますので私から申し上げるまでもないかと思うんですけれども、やはり狩猟をやる人の人数も減っておりますし、財源、支援にも限りがありますし、財源を手当てしたときだけは数字が上がるというようなことを言う専門家の方もおります。
そういう中で、この半減目標というものが本当に自信を持って推進していけるかどうか、そこの所感、思いを聞かせてください。
○森山国務大臣 特に中山間地におきます鳥獣被害というのは想像を絶するものがあるなと思いますし、農家の皆さんの御苦労を考えるときに、半減目標というのは何としても達成をさせていただきたいと思っておりますし、そのための予算措置もしっかりやらせていただきたいと考えております。
○井出委員 その半減目標がきちっと達成できればという思いはあるんですけれども、長野県の状況を聞いておりましても、目標の頭数というものが確かな手応えとしてはまだどうも感じられていないようで、そこのところは私も大変心配をしております。
そういったときに、よく言われているのは、森林整備がなっていないから鹿やイノシシが人の住んでいるところまでおりてくるようになるとか、耕作放棄地もその一つだと言われております。
先ほど防止柵の話もありましたが、柵も、本来であれば、個々の農家さんが自分の畑だけをやるのに支援するよりは、農地の集約も含めて、もう少し広域的な取り組みも必要だと思います。
そのためには、市町村や個々の農家にという小さい枠組みでない、やはり環境省さんの自然環境整備といいますか、そちらの方からのアプローチ、対策というものをぜひ強めていってほしいと思いますが、環境省さんの方からもコメントをいただきたいと思います。
○亀澤政府参考人 鳥獣の半減対策につきましては、環境省と農林水産省で平成二十五年十二月に抜本的な鳥獣捕獲強化対策を策定しておりますが、その中では、半減という目標達成に向けては、捕獲の強化はもちろんですけれども、それだけでなくて、被害防除や生息環境管理対策、そういうものを含めた総合的な取り組みの推進が掲げられているところであります。
被害防除対策というのは、先ほどお話がありました柵の整備とか、あるいは追い払い活動というものが含まれると思います。
また、生息環境整備につきましては、耕作放棄地が隠れ場所にならないような刈り払いとか、そういうような形で、農地に出てこないような対策が含まれると思います。
それに加えて、より山の方、山から出てこないようなという意味で、広葉樹の植えつけ等、そういう意味での生息環境の整備も必要だというふうに思っております。
○井出委員 長野県では、指定して、計画を立てて管理をしなければいけない鳥獣というのが、鹿以外にも、イノシシ、ツキノワグマを含めて五種の生き物がそういう管理の対象、計画の対象になっていると聞いておりますが、長野県の鳥獣対策室に聞いておりますと、人手の問題、対応しなければいけない鳥獣の種類の多さの問題で、なかなか調査が、環境調査ですとかそういったものが数年に一回ですとか、現場で調査される人たちも人的な問題、予算の問題でもかなり苦しんでいる、そういう話も聞いております。
ぜひ、これを機会に、少し自然環境の方から、まあ、半減目標を達成できればいいのかもしれませんが、仮にそれが四分の一しか減らなかった、三分の二しか減らなかったとしても、共存し得るやり方というものは私は模索できると思いますし、鳥獣被害が存在することを前提にいろいろな営農計画というものを立てていくような、そういう状況に今置かれているのかな、そういうふうに思っております。
次の話題に移りますが、今、鹿が、イノシシが人里におりてくるところで、その一つに森林整備、それと耕作放棄地の問題が出てきました。
森林整備も、私はたまにボランティアでやぶ刈りというのに参加するんですが、大変な労力が要るので、もう少しそういう活動にも日が当たってくればいいなという思いでおります。
耕作放棄地の方は、私は課税の観点から前回もお聞きしたんですが、やはり自然環境という意味も含めても、この耕作放棄地という問題をもう少しクリアにしていきたい。
耕作放棄地というものは、繰り返しになりますが、農家の方の主観、農家の方の耕作をする意思があるかないかが基準で耕作放棄地というものが決まっていて、それが今四十二万、富山県ぐらいの分量がある。その課税が検証されているのは、この間の委員会では、耕作放棄地の一部にはなると思うんですけれども、遊休農地の一部を想定しているという話があって、遊休農地は、前にもお話しいただいたように、法律で厳密に定義がされております。
私は、耕作放棄地、遊休農地、あと荒廃農地という言葉も、使われていない農地の呼び名としてその三つがあるわけですけれども、本来であれば、やはり農家の意思を確認して、使うもの、使わないものをきちっと分けていく、使うもの、また貸していただけるもの、そういうものを分けていくのが望ましいと思っているんですけれども、耕作放棄地という言葉は、農業離れ、農業に対する一つの問題提起にはなってきたと思いますが、一方で、その言葉をずっと使い続けてきて、荒れた農地の現状を追認してしまうというか、そういう状況もまたつくり出してきたのではないかなと思っております。
これから課税が強化される部分が出てくる、自民党の方ではそうした案がかなり詰まっているように聞いておりますが、それを機に、耕作放棄地という言葉を使い続けるかどうかも含めて、局長にお考えをいただきたいと思います。
○奥原政府参考人 この問題は、確かにいろいろな用語がございまして、ちょっとわかりにくいところはあるかと思いますけれども、耕作放棄地という言葉は一般的によく使われている言葉でありますが、農業政策の中では、統計部のやっております五年に一回の農林業センサス、この中で農家の方に主観的に聞いている質問項目がこの耕作放棄地という言葉でございます。
それに対しまして、農地の政策として、農地を有効に使っていただく、使われていないところについてはきちんと使っていただいたり、あるいは人に貸していただく、こういう農地政策の観点は、あくまで農地法の中で言葉の定義もしているわけでございまして、農地法の中では遊休農地という言葉が定義をされているわけでございます。
この遊休農地かどうかについては、一年に一回、農業委員会がきちんと調査をして、客観的にその農地が遊休農地になっているかどうかということをまず判定をいたします。
判定をした上で、その遊休農地については、その農地の所有者に対して農業委員会の方から、あなたはこの遊休農地をどのように使う意向ですかという意向の確認の調査もいたします。そのときに、将来は自分がちゃんと耕作をするというお答えのこともありますし、将来、人に貸すんだ、あるいは中間管理機構に貸していくんだ、この意向について確認をする調査をさせていただきます。
この調査をした上で、半年たってもその回答されたとおりにやられていない、例えば、自分で耕作をするというふうに答えられたのにきちんと耕作をしていない、あるいは、人に貸すということを言われたのに六カ月たっても誰にも貸しておられない、こういうときには、さらに、農地法上、次のステップとして、その所有者の方に農業委員会の方から、では、中間管理機構の方と協議をしてくださいという勧告まで出す、こういう政策的な手法まで入っているわけでございます。
今回、税制について、農林省の方から総務省に税制の要望を出しておりまして、現在、政府・与党の中で調整がされている状況にございますけれども、この税制に関しても、あくまで農地法上の遊休農地の解消策、この措置との関係で、どこからを課税強化の対象にするか、こういう観点で現在調整が行われている、こういうことでございます。
したがって、あくまでも農地法上、どこが遊休農地で、それをどうやって解消していくかというプロセスの中で、税制の問題もセットでもって考えている、こういう状況でございます。
○井出委員 使っていない農地というものは、耕作放棄地が四十万少しありまして、その中に荒廃農地というものがその一部で二十七万、その中にもう再生困難なものが十四・四万ヘクタール。再生困難なものは恐らく非農地化されていく可能性が高いのかなと思うんですけれども、再生可能な十三万前後の遊休農地、このうちの恐らく一部がきちっと、きちっとというのもいろいろ議論はあるかと思いますけれども、課税の強化の対象になる。
ただ、もっと広い耕作放棄地というのは、農家の御意思、主観で決められていて、状態のよしあしを調査されているわけではない。
ですから、遊休農地で課税強化になったときに、どうしてあそこの農家さんは農業をしないと言っていて俺のところよりも状態がいいのに、あそこは課税しないでこっちは課税になるんだ、そういう問題が恐らく出てくると思います。
もし本当に課税の基準というものを明確に設けるのであれば、それは耕作放棄地を徹底的に見て、状態のいいものから課税の強化をしていくのが一つ、もしくは、耕作放棄地というその概念をこれから使用し続けることはむしろ混乱になる、混乱になるぐらいだったらやめた方がいい、そういう思いでこの問題にこだわっているんですけれども、局長、いかがでしょうか。
○奥原政府参考人 耕作放棄地は、センサス上、農家に対して主観的に聞いていることでございまして、それぞれの農家が答えられた耕作放棄地を合計して積み上げてどのくらいの面積になるか、こういう集計はあるわけですね。平成二十二年で三十九万六千ヘクタール、それから今回の二十七年のセンサスでいきますと四十二万四千ヘクタールということになります。
主観的に答えられた耕作放棄地がどこの圃場であるかという特定は、この作業の中では全くされていないんです。主観的に答えられた面積だけを合計したというだけの数字なんです。客観的に、それぞれの現場における、ここの農地が遊休農地かどうか、使われていないかどうかという判断には全くつながっていないわけでございます。
今回の税制を含めて、農地法上の政策としては、本当に現場で使われていない農地をどうするか、あるいはそういう状態にしないためにどうするか、こういう政策でございますので、あくまで政策としては、農地法上の遊休農地として客観的に農業委員会が調べて判定している、ここの圃場が遊休農地であるということがわかって、その上でいろいろな手続を踏んでおりますので、それを政策の対象としてやっていく、こういうことだと思います。
○井出委員 課税の公平性からいいましても、この問題は丁寧に向き合っていただきたいと思いますし、また、自然環境におきましても、やはり農地の状況というものをきちっと見ていくということは重要だと思いますので、また引き続き質問させていただきたいと思います。
きょうは終わります。ありがとうございました。
○江藤委員長 次に、畠山和也君。
○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
さきの連合審査のときにも要求をしましたが、臨時国会の開催の意義は消えていないと思います。重ねて要求をしたいと思います。
きょうは、畜産、酪農を中心とした論議が行われて、私の方からも、これまで政府が酪農を初め農業全般について、TPPがあろうがなかろうが、日本の農業は危機的だということを述べてきました。
そこで、きょうの審議の中で、二つのことを質問したいと思っています。一つは、日本の畜産、酪農が経営が苦しくなってきているのはなぜで、それではどうしたらいいのかということを検証したい、これが一つです。そして、もう一つがTPPにかかわってです。
この十年間だけを見ますと、全国の乳用牛の飼養戸数は二万六千六百戸から約一万七千七百戸へ約八千九百戸が減少しました。肉用牛の方を見れば、同じく飼養戸数は約八万五千六百戸から五万四千四百戸へ三万一千二百戸が減っています。北海道では毎年二百戸もの酪農家が離農、離脱してきたということは大臣も御存じのとおりだと思います。
そこで、農水省はことしの三月、新しい酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針、酪肉近を発表しました。その第一の「近年の情勢の変化」の中で生産基盤が弱体化している三つの要素を挙げていますが、これを確認のために答弁してください。
○今城政府参考人 お答えいたします。
本年三月に策定いたしましたいわゆる酪肉近におきましては、人、牛、飼料の視点から生産基盤を強化することが最優先の課題とされております。
この中で、弱体化ということの三つの要因は、一つは人手不足ということでございまして、厳しい経営環境などを背景に、担い手の高齢化、後継者不足等により離農が増加し、酪農及び肉用牛飼養戸数は減少が続いている。
二つ目、飼養頭数の減少。これにつきましては、飼養戸数の減少による飼養頭数の減少が規模の拡大では補い切れず、また、肉用牛資源の確保を優先し、乳用後継牛を確保、育成しない大規模経営も見られる、こういうこと。
三点目が飼料価格の上昇でございます。これにつきましては、畜産経営は相当部分を輸入飼料に依存してきておりますけれども、アジア諸国等の人口の増加やバイオ燃料の利用拡大等を背景として、穀物価格は高水準で推移している、こういう三点でございます。
○畠山委員 今ありましたように、人、それから飼養頭数、そして餌、飼料の三つの点を確認します。
その中で、きょうは私は飼養頭数の点から取り上げたいと思うんですね。人手不足についても、あるいは飼料不足からもそれぞれ政策のアプローチはあるかと思うんですが、きょうは飼養頭数のことから取り上げたい。
この十年間で、戸数は、先ほど私が述べたように、減少もし、頭数も減少してきています。しかし、一戸当たりの飼養頭数は、乳用牛で六十一・五頭から七十七・五頭へ約一・三倍、そして肉用牛は三十二・二頭から四十五・八頭へ約一・四倍です。
しかし、頭数がふえれば新たな問題が起きることをこの酪肉近でもきちんと書いていますよね。
例えばこう書いています。「酪農経営においては、」「乳用牛飼養頭数が減少している。その背景としては、飼養規模の拡大に伴う大型施設の投資負担に加え、飼料生産基盤や労働力が確保できないという実態がある。 規模の拡大に応じて深刻化する環境問題や、一頭ごとのきめ細かい飼養管理が難しくなるという事情も聞かれる。」とあります。
肉用牛は、加えて、この間、子牛価格の高騰が肥育経営を圧迫しています。
そこで、解決するための方針として書かれているのが、「生産構造の転換等による規模拡大」とあります。そこに、生産を効率化するだとか分業化するだとかなどの省力化も書かれていますよね。
そこで、純粋に疑問に思うんですが、規模を拡大することで本当に農家の経営基盤が強化されて、所得向上にどれだけ貢献しているのか、改めて確認して伺いたい。
○今城政府参考人 お答えいたします。
規模を拡大するということになりますれば、やはりスケールメリットというのは出てまいりますので、外部労働力に依存するということの裏腹ですけれども、家族労働費が減るとか、そういう面はありますけれども、ただ、規模拡大一辺倒だけではなく、やはり省力化ですとか、そういう問題をしっかり支援していくということも大切だというふうに考えております。
○畠山委員 規模拡大一辺倒だけではないというふうに今話をされました。
そうなんですね。規模拡大が行き過ぎたことであれば、先ほど酪肉近の文章を引用したように、大型設備の投資だとかさまざまな負担が生じることは今お認めになったと思うんです。つまり、行き過ぎれば経営を苦しめることになると思うんですね。
では、実際に所得はどういうふうに考えたらいいかは、きょうは資料を提出していますので、その一枚目をごらんになってください。これは、農水省の資料をもとに、搾乳牛の頭数の規模別農業所得率を調査室で作成し、それを編集したものです。
グラフを見れば、所得率が平均して高いのが三十から五十頭と五十から八十頭となっています。最近は率が上がっていますけれども、百頭以上というのは所得率が低い部類に入っています。
以前に農水省がさまざまな資料も出していますが、頭数が八十以上など、多い方が所得率は低いという傾向があると思うんです。なぜか。先ほど引用したように、施設の大型化で投資の負担が大きくなったり、労働力の確保も大変だし、ふん尿処理の費用も対策も大変になる。加えて、飼料高騰などが重なれば規模が大きいほど影響も大きくなる。
もう一度伺います。規模拡大、行き過ぎたものでなく、農家の経営基盤を強化する上で検討をさらに深める必要がありませんか。
○今城政府参考人 お答えいたします。
御提出いただいている資料、これは私どもの営農類型別経営統計をお使いになっておつくりになった資料というふうに理解しております。
この中で、数字にございますように、いわゆる農業所得率ですね、農業粗収益を分母にし、農業所得を分子にし、その比率だけで見れば、百頭以上のところが一二・七で低くなっており、八十から九十九ですとか五十から七十九のその上のところは一八%台で、それよりは高い。この率だけで見れば確かにそうでございます。
ただ、ここの率ということに限れば、飼養規模の拡大によって生産コストが削減されるという事実は、やはり一般論としてございます。したがいまして、例えば北海道の酪農経営における生産コストは、飼養頭数三十から四十九頭規模層では、同じ統計をもとに言えば、生産物である生乳一キログラム当たりは九十二・八円でございますが、これが百頭規模以上では七十九・八円。これは、一キログラムの生産にどれだけかかっているかということでは、百頭規模以上の方が低くなっているということになっております。
したがいまして、規模が拡大すれば生乳一キログラム当たりで見た場合の設備投資に係る償却費用を含む物財費が増大する、これはおっしゃるとおりでございますけれども、一方、先ほど申し上げましたとおり、家族労働費が減少する結果として、所得率という先生がお示しになった数字自体は低下するものの、生乳一キログラム当たりのコストそのものは減少するということになります。
いずれにしましても、生産コストを下げるということをどう表現するかということではないかと考えております。
○畠山委員 所得率を上げるということが大事な議論で言っているわけですから、今のでは違うと思いますよ。
それで、この間、さまざまな、経営基盤強化だとか経営支援の対策で畜産クラスターですとかやっていますけれども、その申し込みが多い背景ですとか、あるいは老朽施設の改築や効率化の必要性は私ももちろん理解はしています。
しかし、経営基盤を強化するといったときに、所得を支える安定的な仕組みがどうしても大事で、それで、きょう、本来、加工用の補給金の制度で、そこに大きな意義があるというふうに思うんですよ。
大規模な農家も、初めから大規模にしようと思っていた農家はそう多くなくて、農水省が言うような、頭数をふやして、あるいは施設も大きくした方がさまざまな効果もあるよということも受けて大きくしたところはあると思うんですよね。
しかし、そうなれば、十年、二十年かけて負債を返すことになりますので、安定的な価格や所得がどうしても必要になるし、それは大規模だけでなく中小家族経営ももちろん一緒の願いであろうと思います。
しかし、ことしは、先ほども議論がありましたが、子牛価格も高かったので、それで補給金を下げても大丈夫ではないかなどの報道や、さまざまな出どころもあります。
これは大臣に伺います。
今言ったように、補給金というのは、酪農家を大規模、家族経営ともども支えている重要な仕組みであることはもちろんですが、ことし、安心してさらにこういう経営を続けていくためにも、私は補給金を下げるべきでない、絶対に引き下げないということを求めます。いかがでしょうか。
○森山国務大臣 畠山委員にお答えをいたします。
加工原料乳の生産者補給金については、上げるとか下げるとかということを前提に金額を決めるわけではありません。先生御承知のとおり、ルールによって決めさせていただくということでございますので、ここはしっかり守らせていただきたいというふうに思っております。
いろいろな対策も含めて、酪農家の皆さんが意欲を持って再生産に取り組んでいただけるようにするということは当然のことであろうと考えております。
○畠山委員 算定式のことについても含めて、少しそれで提案したいと思うんですよね。
酪肉近の「まえがき」でも、「生産基盤の弱体化により、」中略ですが、「このような状態を放置すれば、今後の酪農及び肉用牛生産の持続的な発展に支障が生じかねない。」と書いています。農水省としても、生産基盤が崩壊寸前だという認識がありますよね。
そこで、算定式はもちろん承知はしているんですが、酪農、畜産をどう支えるかという点では、私は維持が必要だと思っていますし、率直な議論をし合いたいと思っています。
独立行政法人の農畜産業振興機構が出している年報畜産二〇一五というのをきょう私は持ってきたんですが、これを読んだんですよ。それで、外国の政策にも学び合いたいと思って、少し紹介します。
例えば、豪州は一戸当たりの経産牛飼養頭数は二〇一四年で二百六十八頭、ニュージーランドは一戸当たり同じく四百十三頭。一頭当たりの乳量は、豪州で年間五千四百六十七リットル、ニュージーランドでは四千百九十六リットルです。もちろん確かに大規模ですし、両国とも価格支持政策がないんですね。
しかし、広大な草地での放牧中心ということでコストが安く済んでいるということでもあり、輸出産業としての強みがあるということは理解ができます。
それで、この機構の年報畜産二〇一五は、それ以外にもEUですとか各国のものも載っています。
EUでは、国によってばらつきはもちろんありますが、最大のデンマークで一戸当たり飼養頭数は、二〇一〇年ですが、百九頭。平均では十三・四頭。そして、一頭当たりの乳量が、これは単位が違いますが、デンマークで八千六百六十キログラム。平均で六千五十七キログラムです。
日本が今大体一頭当たり八千から九千程度だと思いますから、豪州やニュージーランドほどEUは農地が広くなく、日本に近い規模ということは言えるだろうと思います。
そして、先ほど豪州やニュージーランドには価格支持政策はないと言いましたけれども、EUの価格や所得の下支えについてここに詳しく書いているんですね。
バター及び脱脂粉乳の介入買い入れ、あるいは大幅な価格下落があった場合の民間在庫の補助、肉牛などは、繁殖雌牛奨励金、屠畜奨励金、雄牛や去勢牛を飼養する生産者への特別奨励金などなどの直接支払いが数多くあります。
EUでも規模の拡大はもちろん進んでいますが、経営基盤を強化する独自の施策があります。ヨーロッパは、国民、消費者が自国の農産物を守り、食べるという風土があって、税金の投入にも寛容的といいますか国民的合意があるということは背景にはあろうかとは思います。
しかし、そこで、日本はどうするかですが、酪肉近でも放牧の推進は掲げています。それ自体は必要なことかもと思います。しかし、豪州やニュージーランドに比べたら、北海道とはいえ農地は少ないわけで、コスト低減にも限界が生じると思います。そこで補給金の制度が、当初は不足払い制度としての意義を持って、家族経営はもちろん、大規模経営も支える役割を果たしてきたのではなかったのでしょうか。ここ一、二年は、業界の懸命の努力の反映がありまして乳価もよくて、そして補給金の支えもあって一息ついているというのが実態だと思うんですよね。
そこで、大臣に伺います。
もちろん、EUに全てをまねる必要はないとは思っています。しかし、本当に経営基盤を強化するのであるならば、今例で挙げたような価格や所得を支えていくための仕組みの構築は必要ではないかと思うんです。その中に、補給金の算定式については、いろいろ変更などの議論も含めて、考える時期にあるのではないかというふうに思いますが、その検討について、大臣、どのようにお考えになりますか。
○森山国務大臣 酪農の施策というのは、それぞれの国の酪農の発展の歴史によって大きく違うんだろうなというふうに思っております。例えば、飲用主体なのか、あるいは乳製品が主体なのかということもあるでしょうし、そこの国が輸入国であるのか輸出国であるのかということ等もあるのだろうというふうに思っております。
日本においても、北海道と本州の方はまた少し違いますので、そういう意味では、加工原料乳補給金制度というのは、どちらかというと乳製品向けの生乳の主産地である北海道と、飲用向けの生乳の主産地である都府県の特徴を維持しつつ、全国の生乳需給の安定と酪農経営の安定を図るという、我が国の実情に適した制度であるということは、先生と私は意見が一致するのではないかなというふうに思います。
ただ、いろいろな変化がありますので、補給金制度についてどう考えるかというのは少し勉強をさせていただきたいというふうに思っておりますし、TPP対策におきましてもいろいろな対策を出してまいりましたし、生クリーム等についても対象にするということにいたしておりまして、これはいろいろなデータ等の関係もありまして二十八年からは無理でございますので、何とか二十九年には間に合わせて仕組みをつくっていって、酪農家の皆さんが安心をして再生産に取り組んでいただけるようなことを頑張っていかなきゃいけないな、こう考えております。
○畠山委員 TPPのことも含めて、とりわけ畜産、酪農にかかわる方々は非常に不安、心配をしていますし、本委員会も含めた議論を注視していると思うんですよね。先ほど私述べましたけれども、この間、子牛の価格や業界の努力などで一息ついているという状況がありつつも、しかし、ここで下がっていったらどうなるかということの不安は、もちろん畑作にしてもお米をつくっている方もそうなんですが、さらに心配や不安の度合いも大きいだろうというふうに思うんです。
先日、調査で北海道の別海町へ行きました。この十年間で百五十六戸が離農したといいます。町は酪農研修牧場をつくって新規就農者を育てる努力をしてきていますが、年三から四戸のペースで、離農数に全然追いついていないというお話を伺いました。
規模を拡大してきた農家も離農をされていますので、その後の農地をどう確保するかということでも苦労があるというお話だったんですね。適切な規模で適切な経営が進められるには、価格の安定や所得の保障ということがどうしても必要になると思いますし、その意味では、今、補給金にかかわる新たな検討なども含めて求めたいと思います。
加えて、酪農、畜産だけではありませんが、団塊世代以上の方が多くて、間もなく年金をもらう年となれば、このTPPを機に離農を考えるという方もいらっしゃると聞きます。
新規就農などの支援策や畜産クラスターを、規模拡大を要件としないで柔軟な対応をするということも重ねて要求したいと思います。
それで、後半に、TPPのことにかかわって質問します。
先日の連合審査で、私は、影響試算が出ていないもとで、何を根拠に対策と補正予算の検討をしたんですかと甘利大臣に質問しました。甘利大臣は、対策というよりは、いずれにしても待ったなしの必要な政策でありまして、いわゆる影響試算を前提にするものではないと答弁しました。政策大綱は影響試算を前提としていないと読める重要な答弁です。
私がその後に、政策大綱の中にある「経営安定・安定供給のための備え(重要五品目関連)」のことについて、これはTPP前提でないのかと森山大臣に質問したことに対して、大臣からは、米の備蓄やマルキン拡充はTPP協定の発効に合わせて措置することが適当と答弁されました。続けて、その後の答弁にも、TPP協定の発効に合わせて措置する対策を明らかにすることは政府として当然のことと答えています。
甘利大臣は、政策だから影響試算を前提としないと述べました。森山大臣の答弁を信じれば、対策ということであるならば、影響試算があるということになるのでしょうか。
先ほどからの議論の中で、年内に出すということを内閣府は言っておりましたし、農水省もそれに合わせてということは先ほどの答弁にもありましたが、私が前回に聞いたその質問で、大臣が何に基づいてそれでは対策を検討したのか、その影響試算というものがあるのかないのか、もう一度確認したい。
影響試算をもとにして対策をしたということなんでしょうか。
○森山国務大臣 甘利大臣と私が申し上げていることにはそごはないのだろうと思っております。
TPP大筋合意がなされましたので、どういう方向性になるなということはよくわかっているわけでございますから、農家の皆さんの、現場の皆さんの不安を取り除くために、急いでやらなければならない経営安定対策というのはこういうものですよ、こういうことをしっかりやるんですということをお示しさせていただいているわけでありますし、また、そのほかのことでも、どういうことをやるというのは、来年の秋までにも、またいろいろな議論をいただいて、決めさせていただくということでございまして、二段階になっておりまして、当面、はっきりしていることは急いでやろう、こういうふうに御理解をいただければいいのではないかと考えております。
○畠山委員 二段階というのは、先ほど影響試算のことについて質問したときに、これからまだ数字が動いているような答弁と私は理解したんですけれども、それとは前の段階に数字が一定確定したものに基づいて対策というふうなことを考えたと理解していいんでしょうか。
○森山国務大臣 全ての数字がコンクリートされてから対策をやるということでは、やはり現場の皆さんの不安というのは募るだろうというふうに思いますので、方向性としてははっきりしているわけですから、それに対応できる対策というのは政策大綱に基づいて方針を決めさせていただいて、補正予算で対応できるものはそれでしっかりやっていくことによって、現場の皆さんの不安というものを和らげることができるのではないか、そんな思いでおります。
○畠山委員 方向性で出したということであるならば、例えばマルキンについても、これは長年の関係する皆さんの要望が強く出されていたものでしたよね。そうであるならば、政策大綱に書いているようなTPP発効に合わせてとせずに措置をするべきなのではないのでしょうか。大臣、いかがですか。
○森山国務大臣 そういう御意見もあることは承知をいたしておりますが、まだTPPが発効しているわけではありませんので、発効を待ってやるというのが方針でございますので、その方針にのっとってやらせていただきたいと考えております。
○畠山委員 繰り返しで申しわけありませんけれども、政策として、方向性として必要なことだと先ほど御答弁がありました。ということは、TPPであろうがなかろうが、これは必要なことだと私は思うんですよ。
これまでこの委員会でも、酪農、畜産にかかわってはさまざまな議論があって、マルキンの必要性は、先ほど委員からありましたけれども、そもそも緊急のキンですから、それだけ求められてきた事業であるというならば、TPP発効を待たずして進めていく必要があると思いますが、もう一度答弁ください。
○森山国務大臣 今すぐ関税が下がるわけではありませんので、やはりTPPが発効した時点でしっかり対応ができる制度をつくっておくということが大事なことだというふうに思っておりますので、そこはぜひ御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員 ただ、影響試算などをもとにした対策ということの順番については、先ほど別の委員からも質問があったように、それでこそ対策の本来の意義があると思うんです。それとは別に、大臣が先ほど話されたように、これまでに必要なことを合わせた方向性の趣旨として出されたものだというのであるならば、TPP発効を待たずして実施する必要があるということを重ねて要求したいと思います。
それで、同じく先日の連合審査で、私は、TPPのテキストを甘利大臣は読んだんですかという質問をしたことに対し、内容については、それぞれ所管が英文で全部読んでおります、所管ごとに概要の説明を私が受けておると答弁しました。甘利大臣に聞きたいことはあるんですが、きょうは森山大臣に伺います。
確認ですけれども、森山大臣はTPPのテキストや交換文書はもちろん読まれていますね。
○森山国務大臣 一通り目を通しております。
○畠山委員 それでは、第二章の四条「関税の撤廃」と、十七条「物品の貿易に関する小委員会」については、これも御存じですね。
○森山国務大臣 承知をしているつもりでおります。
○畠山委員 今手元にないからすぐ出ないかと思いますが、それなら事務方でも結構ですが、この十七条の小委員会の機能について、アルファベット(a)、(b)、(c)とある(a)項で、何について協議すると書かれていますか。答えられる方はいますか。
○森山国務大臣 関税の撤廃時期の繰り上げについて協議をするという規定が二章の四条ではないかと思っております。それはどこでやるかということが二章の十七条で、小委員会で取り扱うということにつながりますので、撤廃時期の繰り上げについて協議をするということがこの小委員会の役割ではないかと理解しております。
○畠山委員 資料の二枚目を開いてごらんになってください。TPPはまだ正文の日本語訳がありませんので、私の事務所の責任のもとで翻訳したものが左側にあります。正文の翻訳がどうなるかわかりませんが、そういう趣旨のものと御理解ください。
そこでは、今大臣が答弁されたように、四条の「関税の撤廃」は、3のところで、線を引いているところですが、「附属文書2D(関税撤廃)に記載された関税撤廃時期の繰上げについて検討するため協議しなければならない。」同じく十七条の(a)は、「本協定の下での関税撤廃時期の繰上げについて、」「協議することなどを通じて、締約国間で物品に関する貿易を促進すること」とあります。
この小委員会で、関税撤廃の品目はさまざま重要五品目の中を含めてありましたけれども、それらどの物品もここで協議される可能性は排除されていませんね。いかがでしょうか。
○森山国務大臣 この協議規定は、協議の対象は関税を撤廃する品目だけで、関税を撤廃しない品目は対象外であるというふうに理解をしております。また、協議が調わなければ約束内容の変更は必要がないという性格のものであると思います。
○畠山委員 もちろん、関税が撤廃時期のということになりますので、撤廃がなっているものの前倒しというか繰り上げ、英文ではアクセルレーティングと書いていたかと思うんですけれども、そういうことになろうかと思うんです。
それで、協議が調わなければというふうに言いました。これは、これまでの日豪EPAですとか、さまざまな同じような議論が、EPA、FTAにも同じように小委員会の項目があるので、国会でも議論されていて、少し調べたんですけれども、今大臣がおっしゃったように、協議をしなければとか合意がなければしないということは一貫した話にはなっているわけですよ。もちろん、それは合意しなければ話が進まないのは当然でして、本当に合意しないで頑張れるのかどうかということが問われてくるわけです。
ただ、今回のTPPの小委員会というのは、例えば日豪EPAなどと比べても、この関税撤廃時期の繰り上げについては表現が異なる、極めて機能が明確に書かれた、目的のはっきりした小委員会だということを私はきょう取り上げたいんです。日豪EPA以上になっていると思います。
先ほどの資料の右側に、日豪EPAに同じく関係する項目をそれぞれ並べました。日豪EPAは、外務省のホームページですから、確定している和文のテキストとなります。
日豪EPAをごらんください。二十条の「市場アクセス及び競争力の保護に関する見直し」のところで、これも同じく線を引いている箇所の前後になりますが、「当該見直しは、例えば、より迅速な関税の引下げ又は撤廃、」云々かんぬんとなり、「への対処等の措置を通じて、市場アクセスの条件を改善する観点から行われる。」日豪EPAについては、関税撤廃の時期の、ここは「迅速な」という表現にしていますけれども、これについては「例えば、」という例示扱いになっているんですね。
小委員会について、二十一条をごらんください。その(b)項では、線を引いているところです、「両締約国間の物品の貿易を促進すること」、これが小委員会の任務として書かれています。その後の括弧書きで、「(この協定に基づく関税の更なる自由化及び関税の撤廃時期の繰上げに関する協議による促進を含む。)。」つまり、日豪EPAの小委員会は括弧づきで、それ以前の、前のものは一般的な規定にとどまっているということになるのではないか。
それに比べてTPPはどうか。そこで私が先ほど指摘した内容になるわけです。改めて見れば、四条「関税の撤廃」では、附属文書に記載された関税撤廃時期の繰り上げについて検討するため協議しなければならないと、例えばではなく、これがもう明確な目的となっています。そして、同じく小委員会についても、(a)項で、本協定のもとでの関税撤廃時期の繰り上げについて、協議することなどを通じて貿易を促進すると明確です。
このように、日豪EPAと比較しても、TPPというのは、関税撤廃された品目をさらに繰り上げて、早めていくことが盛り込まれている、そういうレールは敷かれているのではないかというふうに思うんです。
そこで、大臣は先ほどこの章のことを承知されていると答弁されました。この内容も含めて承知していたのか、承知した上で国会決議も守れたと認識しているのか。そうであるなら、守れたという根拠をぜひ示していただきたい。いかがでしょうか。
○森山国務大臣 私は、国会決議は過去に答弁をしたとおりでございますけれども、日豪EPAは日本と豪州の二国間のことであり、TPPは十二カ国、複数国家のことでありますから、それぞれ全く別の貿易交渉であるというふうに理解をいたしております。その結果、当然のこととして、内容が異なることはあると考えます。
○畠山委員 それは、もちろん違う条約ですから、違うことが生まれるのは当たり前の話でありまして、今言ったようなことを承知していたのかということは、それでは、いかがですか。改めて確認します。
○森山国務大臣 承知しております。
○畠山委員 それでは、これを承知した上で、国会決議は守られているという判断でよろしいんですね。
○森山国務大臣 私が今の立場で決議が守れたかどうかということを申し上げる立場にないことは御理解をいただいて、それは国会がお決めになることでございますから、そう御理解をいただきたいと思いますし、協議は、協議が調わなければ意味がないわけでございますので、そこはぜひ御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員 再協議などは七年後ということなども言われて、ただ、それ以前に、このようなレールが敷かれている事実のもとで対策をすると言って、農家が信用できるかどうか。
ある農協組合長から私は言われました。国会決議との整合性は徹底的に審議してくれ。当然の要求だろうというふうに思います。ですから、概要、本当にわずかなページですよ。概要だけではやはりだめなんですよ。全文を和文で、日本語文で出していただく。影響試算もちゃんと出す。今まで、交渉中だから情報が出せないと言ってきたわけですから、今必要な情報を出さずしていつ出すのかということだと思います。
重ねて、今、農家の不安がかき立てられている状況を払拭していくと重ねて言うのであるならば、これらの要求にも応えていただきたいことを述べて、質問を終わります。
――――◇―――――
○江藤委員長 この際、小里泰弘君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、維新の党及びおおさか維新の会の五派共同提案による平成二十八年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。玉木雄一郎君。
○玉木委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきたいと存じます。
平成二十八年度畜産物価格等に関する件(案)
我が国の畜産・酪農は、生産者の努力の積み重ねにより、飼養規模拡大と先進的な経営を実現させ、構造改革の先駆者とされてきた。しかし、近年、生産コストの相当部分を占める飼料価格は低下傾向にあるものの、依然として高水準で推移しているなど経営継続が厳しさを増す中、高齢化や飼養戸数の減少などによる生産基盤の弱体化に歯止めがかからず、危機的な状況にある。
特に、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉の大筋合意において、重要品目に位置付けられている牛肉・豚肉・乳製品の関税削減に加え、乳製品のうち、ホエイ、チーズについては関税撤廃が、ともに長期の経過期間を確保しつつも盛り込まれ、脱脂粉乳のTPP枠が設定されたことなどから、輸出国との間で厳しい競争を余儀なくされる生産者には、将来への懸念と不安が広まっている。
よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成二十八年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、生産者の懸念と不安を払拭し、将来への希望が持てるよう、左記事項の実現に万全を期すべきである。
記
一 我が国畜産・酪農の生産基盤の維持・拡大を図るため、地域農業・地域社会を支える多様な畜産・酪農について、生産物の付加価値の向上や飼料費等の生産費削減、効率化等の取組を通じて、将来に向けて魅力ある持続可能な経営が実現できるよう、十分な所得を確保するための実効ある対策を実施すること。
二 加工原料乳生産者補給金の単価及び交付対象数量については、酪農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定するとともに、液状乳製品の追加や補給金単価の一本化など加工原料乳生産者補給金制度の見直しを準備が整い次第行うこと。
また、需要の拡大が期待できる生クリーム等の生産拡大のため、乳業工場の再編整備を支援するとともに、担い手の労働負担を軽減する搾乳ロボット等の設備・技術の導入及び酪農ヘルパー・育成センター等の外部支援組織に対する支援を充実すること。
三 牛肉・豚肉の安定価格及び肉用子牛の保証基準価格等については、畜産農家の経営安定に資するよう、需給動向、価格の推移、子牛価格の高騰等を十分勘案し、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。
四 畜産農家の経営安定に万全を期し、国産牛肉・豚肉の安定供給を図るため、肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)及び養豚経営安定対策事業(豚マルキン)を法的制度へ移行し、その際、補填率引上げ、豚マルキンの肉用牛並みの国庫負担水準引上げ及び肉用子牛の保証基準価格について現在の経営の実情に即した見直しを行うこと。
五 畜産・酪農の国際競争力の強化を図るため、関係事業者が連携・結集した地域ぐるみの畜産クラスター事業を推進するとともに、規模のいかんにかかわらず多様な担い手が取り組みやすくするための必要な見直しを行うこと。また、畜産農家の既往負債の軽減について、十全な対応を図るとともに、離農農場等の既存施設の貸付け等による新規就農者の確保と担い手の育成を進めること。
さらに、繁殖基盤が年々ぜい弱化している現状に鑑み、和牛受精卵移植を活用した和子牛生産並びに繁殖雌牛の増頭や新規参入に対する支援、性判別技術と受精卵移植技術の活用による計画的な乳用後継牛の確保への支援を一層強化すること。
六 配合飼料価格安定制度については、配合飼料価格には、予測が困難な穀物の海外相場や為替の影響が避けられないことを踏まえ、畜産・酪農経営の安定に資するよう、安定的な運営を図ること。
七 輸入飼料依存から脱却し、国産飼料の一層の生産と利用を促進するため、飼料用米・稲発酵粗飼料等を活用した耕畜連携、コントラクター・TMRセンターの育成・活用、高栄養粗飼料の増産、草地改良の実施、放牧の推進、エコフィードの生産・利用の促進等への支援を充実・強化すること。特に、飼料用米については、畜産経営における需要の拡大、多収品種の種子の確保・普及、地域条件に応じた栽培技術の確立等を通じた収量の向上、流通・製造体制の整備と併せ、耕種側と畜産側の需給マッチングを進めるため、必要な予算を継続的に確保すること。
八 地産地消や食育、六次産業化の取組を進め、国産畜産物の消費拡大を更に推進すること。
また、原発事故等を要因とする各国の輸入規制の撤廃・緩和に向けた働きかけを強化するとともに、輸出拡大に向けた食肉処理施設の整備の促進、ジャパン・ブランドとして牛肉等畜産物の一元的な輸出に資する取組への支援、戦略的な動物検疫協議の実施など、輸出促進対策を一層進めること。
九 原発事故に伴う放射性物質により汚染された牧草地の除染対策と汚染された稲わら、牧草及び堆肥の処理を強力に推進するとともに、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。
十 畜産経営に大きな被害を及ぼす家畜疾病については、適切な飼養管理の徹底や予防対策が重要であり、畜産農家における飼養衛生管理基準の遵守に向けた指導や空港等における入国者に対する水際対策を徹底すること。
十一 TPP協定交渉の大筋合意については、平成二十五年四月の本委員会決議「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加に関する件」を踏まえその合意内容を検証すること。併せて、我が国の畜産・酪農に及ぼす影響を精査するとともに、その結果を踏まえ、畜産・酪農経営を持続し、発展させるための万全の措置を講ずること。
また、日本EU等の他の経済連携協定交渉については、交渉相手国・地域における畜産・酪農等をめぐる事情を十分勘案し、我が国の地域経済において重要な役割を果たしている畜産・酪農が今後とも安定的に発展できるよう、確固たる決意をもって臨むこと。
右決議する。
以上です。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○江藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○江藤委員長 起立多数。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。
この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣森山裕君。
○森山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従いまして、最近の畜産をめぐる事情を踏まえつつ、十分検討してまいる所存でございます。
○江藤委員長 お諮りいたします。
ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
本日は、これにて散会いたします。
午後五時二十二分散会