衆議院

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第2号 平成28年3月9日(水曜日)

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平成二十八年三月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小里 泰弘君

   理事 江藤  拓君 理事 小泉進次郎君

   理事 宮腰 光寛君 理事 簗  和生君

   理事 吉川 貴盛君 理事 岸本 周平君

   理事 横山 博幸君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    井野 俊郎君

      伊藤信太郎君    池田 道孝君

      今枝宗一郎君    加藤 寛治君

      勝沼 栄明君    木村 弥生君

      助田 重義君    瀬戸 隆一君

      田野瀬太道君    武井 俊輔君

      武部  新君    中川 郁子君

      中谷 真一君    西川 公也君

      根本 幸典君    橋本 英教君

      古川  康君    細田 健一君

      前川  恵君    宮路 拓馬君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      井出 庸生君    金子 恵美君

      小山 展弘君    佐々木隆博君

      田島 一成君    福島 伸享君

      升田世喜男君    稲津  久君

      佐藤 英道君    斉藤 和子君

      畠山 和也君    村岡 敏英君

      仲里 利信君

    …………………………………

   農林水産大臣       森山  裕君

   内閣府副大臣       高鳥 修一君

   農林水産副大臣      伊東 良孝君

   農林水産大臣政務官    加藤 寛治君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進室室長代理)         川上 尚貴君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 小野田 壮君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    吉井  巧君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       塩川 白良君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           小風  茂君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            櫻庭 英悦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            末松 広行君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (林野庁長官)      今井  敏君

   政府参考人

   (水産庁長官)      佐藤 一雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           保坂  伸君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 早水 輝好君

   農林水産委員会専門員   石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  鈴木 貴子君     田島 一成君

同月九日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     木村 弥生君

  古川  康君     根本 幸典君

  細田 健一君     武井 俊輔君

  井出 庸生君     升田世喜男君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     あべ 俊子君

  武井 俊輔君     細田 健一君

  根本 幸典君     田野瀬太道君

  升田世喜男君     井出 庸生君

同日

 辞任         補欠選任

  田野瀬太道君     助田 重義君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     古川  康君

    ―――――――――――――

三月三日

 国民食料の安定供給を確保するために農業予算を抜本的に増額し、食料自給率の向上を目指すことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六一四号)

 同(池内さおり君紹介)(第六一五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第六一六号)

 同(大平喜信君紹介)(第六一七号)

 同(笠井亮君紹介)(第六一八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六一九号)

 同(斉藤和子君紹介)(第六二〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第六二一号)

 同(清水忠史君紹介)(第六二二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六二三号)

 同(島津幸広君紹介)(第六二四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六二五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六二六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第六二七号)

 同(畠山和也君紹介)(第六二八号)

 同(藤野保史君紹介)(第六二九号)

 同(堀内照文君紹介)(第六三〇号)

 同(真島省三君紹介)(第六三一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六三二号)

 同(宮本徹君紹介)(第六三三号)

 同(本村伸子君紹介)(第六三四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

小里委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤速水君、大臣官房総括審議官大澤誠君、大臣官房政策評価審議官塩川白良君、消費・安全局長小風茂君、食料産業局長櫻庭英悦君、生産局長今城健晴君、経営局長奥原正明君、農村振興局長末松広行君、政策統括官柄澤彰君、林野庁長官今井敏君、水産庁長官佐藤一雄君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣府地方創生推進室室長代理川上尚貴君、大臣官房審議官小野田壮君、消費者庁審議官吉井巧君、経済産業省大臣官房審議官保坂伸君、環境省大臣官房審議官早水輝好君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小里委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小里委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小泉進次郎君。

小泉(進)委員 おはようございます。

 農水委員会で初めての質問となります。よろしくお願いします。

 きのう、政府はTPPの承認案、そして関連法案について閣議決定をして、国会に提出をするということがありました。自民党は、これを受けて、昨年にはTPPの対策「農政新時代」をまとめて、そういった意味を考えれば、まさに国会も農政新時代への議論を本格的にスタートするという段階になると思います。

 きょうは、その農政新時代についてということを主に質問させていただきたいと思いますが、その前に、二日後の三月十一日の東日本大震災から五年、そういったことを踏まえて、一点だけ大臣に、農林水産省における東日本大震災の農業に対する復興の取り組みについてお伺いをしたいと思います。

 今まで農水省挙げて、各省、また福島県、宮城県、岩手県、さまざまな現地と調整をしながら復興を進めてきたことは私も承知をしています。復興の兆しを感じるところもあれば、まだまだこれから大変なところもある中で、特にこれからもまだ大変だなと思うところは、やはり福島であります。

 今、福島の営農再開へ向けてという課題があります。そういった中で、現地では官民合同チームというのが立ち上がり、商工関係の立ち上げも、また、農家の皆さんの営農再開へ向けてもさまざま努力をしていただいているところでありますが、商工関係においていえば、約八千の戸別訪問をこの官民合同チームは行いました。

 一方で、農業に対してはそれだけきめ細かくやられているだろうか。福島県の今の避難地域等における市町村で農家の皆さんがどれぐらいいらっしゃるか。一例だけ数字を挙げると、販売農家数で七千九百三十一、主業農家数でいうと千百六十二、認定農業者でいうと七百九十二であります。そう考えると、商工関係の皆さんには八千の戸別訪問ができたけれども、七百九十二の認定農業者の方を含め、農業者の方にそれだけの戸別訪問が徹底的にできないという理屈は私は成り立たないのではないかな、そういうふうに思います。

 きめ細かい対応をこれから農水省としても現地と協力をしながらどのように進めていくか、お答えいただければと思います。

森山国務大臣 小泉委員にお答えをいたします。

 農林水産省では、福島県の避難指示区域等において、農地の除染の終了後に、営農再開に向けて、インフラの整備、あるいは作付の実証、大規模化や施設園芸の導入等、新たな農業への転換を支援してまいりました。

 また、農業は、地域のまとまりを持った取り組みが不可欠であるため、地域の農業の将来像の策定に向けて、集落の座談会に福島といわきにおります参事官室の職員を直接派遣するなどさせていただきまして、支援をしてきているところでございます。

 今後は、これまでの取り組みを着実に実施するとともに、福島県とも連携をさせていただきまして、委員御指摘のように、きめ細かく農業者や集落営農の御要望を直接伺う等の支援も検討してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

小泉(進)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、よりきめ細かく、県とも地元とも協力しながら、これからも復興に向けて歩みを後押ししていただきたいと思います。

 それでは、農政新時代、本題の方に移りたいと思います。

 昨年、私は十月に農林部会長に就任しました。その直後にTPP対策を取りまとめることになって、大変短い期間でありましたけれども、約四週間ぐらいでTPP対策「農政新時代」を取りまとめることになりました。

 農政新時代という言葉にどんな思いを込めたのか。私は、新時代という言葉の中に、TPPそれ自体だけではなくて、TPPそれ自体もこれから拡大する可能性がある、そして今、日・EUの交渉も鋭意進んでいる、RCEPの話もある、そういった日本の農業を取り巻く環境変化を見据えたときに、今本当に必要なのは、TPP対策だけではなくて、環境変化に耐え得る、強い、足腰のしっかりした農業をつくらなければいけない。その時代に向けた取り組みをするのが新時代という言葉に込めた思いであり、農政という言葉に、この政の字に込めた思いは、そのためにもまず変わらなければいけないのは政治であり、行政である。そういった思いから農政新時代という言葉をあの対策に込めたつもりです。

 そこで、大臣にお伺いをしたいのは、農政新時代というのは一体どういう農業を後押ししていく時代として大臣が御認識されているか。その上では、私はやはり今までの農政に対する真摯な評価というものが欠かせないと思います。

 例えば、二十年前のウルグアイ・ラウンドのときから比べると、農業の総産出額は十一兆から八兆へと約三兆円減りました。農業所得は五兆一千億から二兆八千億へと約二兆二千億円減りました。基幹的農業従事者の数も二百五十六万人から百七十七万人へと約七十万人減りました。高齢化率も、約四割から、今は六四・七%まで上がりました。耕地面積は五百万ヘクタールから四百五十万と約五十万減りました。この二十年間で数字の上で右肩下がりの状況ではあります。そして、役所としても、投じてきた予算は、この二十年間で補正予算も含めれば七十一兆円という予算を投じてきたわけであります。

 そういったことを受けて、今までの農政を大臣の中でどう捉えて評価し、そして、これからそれを踏まえた上でどんな農政を展開しようと考えておられるか、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

森山国務大臣 これまでの農政は、その時々の農業を取り巻く状況に応じて必要な施策を講じてきたと考えておりますが、近年、委員御指摘のように、農業総産出額が減少し、担い手の減少と高齢化が進展をしているという現実があります。また、耕作放棄地の増大も見られますなど、我が国の農業、農村をめぐる状況は厳しいものとなっているというふうに強く認識をしております。

 その背景には、バブル経済の崩壊によるデフレの進行など、日本経済をめぐる状況の変化や、高度成長期における農村から都市部への若年労働者の流出などの社会的事情の変化などがあった一方で、農政面においても、食生活が変化する中で、例えば米のように需要が減少する作物の生産転換が円滑に進まなかったこと、水田農業などにおける担い手への農地集積のおくれなどの面もあったのではないかというふうに考えております。

 こうした状況を一つ一つ克服し、我が国の農業活性化を図っていくために、平成二十五年に、農林水産業・地域の活力創造プランに基づきまして、産業政策と地域政策を車の両輪として農政改革に取り組んでいるところであります。

 これに加えて、今般のTPP大筋合意を受けまして、新たな国際環境に対応できるよう、生産現場の一部に残る懸念や不安をきっぱりと断ち切って、次世代を担う生産者が経営の発展に積極果敢に取り組めるようにすることが重要であると考えております。

 このため、これまで進めてきた農政改革に加え、昨年取りまとめた政策大綱に基づきまして、体質強化や経営安定対策の充実など、万全な対策を講じていくこととしております。

 生産者の方々が、安全、安心で高品質な、世界にも通用する農産物を生産しているとの自信を持っていただき、意識の転換が図られることで、新たな国際環境のもとでも夢と希望を持って経営発展に取り組んでもらえるような農政新時代を切り開いてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

小泉(進)委員 ありがとうございます。

 農政新時代の中で、今、自民党でも相当なエネルギーを入れて農林部会でも議論を進めています。

 その中で、私たちが常に胸にとめているのは、あのTPP大綱でもあるように、農業者、生産者の努力では対応できない分野の環境を整えるということです。一生産者の努力ではいかんともしがたい。

 そして、私が特に問題意識を持っているのは、昭和三十五年には、農業者の皆さんの中で一番大きかった年齢構成は三十代だったわけです。それが今では、年齢構成を見れば、最大のボリュームを占めるのが七十代になっているわけです。つまり、若い人が見向きをしない分野になった。それを変えて、若い人たちが農業をやりたい、女性も入りたい、そして、企業を含め新たなプレーヤーが農業にチャンスを感じて入ってきやすい環境を整えることが私は大切だと思っています。

 そういった中で、政治がやるべきことは何かというと、一つは、農政新時代という新たな環境に果敢に挑んでいる農業者の皆さんに武器を用意することだと思います。

 私は、その武器の一つが情報だと思います。生産者、農業団体、そしてメーカー、そういった中で、私は、今までは、圧倒的に農業者に与えられる情報は欠けていたと思います。その情報をしっかりと、経営感覚を持った農家の皆さんが手にすることができれば、より自由な農業経営が可能となり、透明な業界構造を確立することができて、より活力ある農林水産業を築くことができると思っています。

 そこで、情報の提供、そういった意味も込めて、きょうは一つ乳価についても伺いたいと思います。

 この乳価というのは、先週、自民党の畜産・酪農小委員会でも議論になりました。指定団体制度というのがあって、今、それが北海道から十のブロックに分かれている。今までであれば、その平均の乳価というのは発表していたけれども、ブロック別の乳価を公表することはなかった。しかし、酪農の課題は何かというと、一つに、後継ぎの皆さんがどうやって意欲を持って後を継いでくれるか、そして、新しい人も入ってこられるか。そういった方々の立場を考えれば、一体どの地域でどれぐらいの乳価なのか、そういったことを経営の中で想定することは当たり前のことだと思います。

 そこで、大臣、今までなかなか公表することはなかったと思いますけれども、こういった武器としての情報をしっかりと提供していくというお考えはございませんか。

森山国務大臣 農家の皆さんがいろいろな情報を共有していただくということは大変大事なことですし、そのための政策というものを農水省としても進めていくことは大事なことだと思っております。

 乳価のことについて少しお答えをさせていただきたいと思いますが、生産者に対しまして乳価に関する情報開示を行うことは、販売を委託した者としての指定団体が当然行うべき事柄であるというふうに考えております。したがって、各指定団体では、生産者に対し、乳価や集送乳経費等について、会報や各種会合等を通じて説明に努めているとは承知をいたしておりますが、さらに努力をしなければならないと思います。

 一方、実際の受取乳価は、飲用と乳製品向けの割合等によって差が生じることになります。例えば、平成二十六年度の集送乳経費等の控除前の生産者受取価格を税引きで見てみますと、ホクレンはキログラム当たり八十二円八十八銭、関東は百七円三十銭など、地域によって異なっております。

 農林水産省としては、昨年十月の生乳取引のあり方等検討会の報告を受けまして、乳価交渉結果や控除経費等について丁寧な情報公開を行うよう指定団体等へ指導を行っているところであります。

 委員の御指摘も踏まえまして、ブロック別の乳価等、さらなる情報公開には努めてまいりたいと考えております。

小泉(進)委員 それは、これからはブロック別の公表をするという方向で、今、省内で検討を進めているということでよろしいですか。

森山国務大臣 ブロック別でもそれぞれの農家の皆さんは御存じなのかもしれませんが、しっかりとした情報公開という形ではなされておりませんので、そこはしっかりと指導してまいりたいと考えます。

小泉(進)委員 ぜひそこは、はっきりとした形で正式に情報公開をしていただきたいと思います。

 私がなぜこれを言うかというと、これは十六年前から変わっていないんです。十団体となったのが平成十二年。そして、そのときに、中央酪農会議は、県単位だと、生乳を集める経費削減のネックで、酪農家の手取りに波及している、そう指摘していたわけです。

 だとすると、指定団体が、この十六年間、幾ら経費を削減して、酪農家の手取りは各地域で幾ら変わったのか、こういったこともこれからしっかりと議論しなければいけないと思います。

 農水省としても、平成十年の四月に「指定生乳生産者団体の広域化の推進について」という畜産局長の通達を出しています。この中で、生産者負担の削減と指定団体機能の強化、合理化を図るというのが骨子になっていて、では、生産者負担の削減は果たしてどこまで進んだんだろうか。

 そして、去年、自民党が取りまとめた指定団体の合理化の中でも、「今後の生乳流通・取引体制等のあり方について」でも、経費の透明性が低いという指摘や、手数料の見直しが明記されています。

 十六年たっても、余りそこの課題ははっきりと解消されていないという中で、まさに今やらなければいけないことだと思いますので、大臣からもこれから情報公開のあり方について省内でぜひ後押しをしていただきたいと思います。

 次に、情報をより明らかにするということがなぜ必要だと私が思っているかといえば、今、生産資材の価格の問題、そして流通の構造の問題に力を入れて取り組んでいます。この問題を強い問題意識で持っているのは、やはり生産者の皆さんが持っていると思います。

 大臣は、先週、官邸で行われた官民対話に御出席されて、参加された生産者の皆さんから、生産資材のコストに対する強い問題意識、そして流通の構造に対する問題意識をその場で直接お受けになったと思います。

 その生産者の皆さんの資材に対する意識、また流通に対する意識、この問題意識を受けて、大臣として、生産資材の価格の問題についてこれから省内でどのように進めていくという御認識を持っておられますか。

森山国務大臣 先日官邸で行われました官民対話で、生産者の皆さんの御意見も伺いましたし、またそれに対する全中の取り組みの姿勢についても伺うことができました。

 やはり、農家の所得をふやすということは、どうコストを下げるかということも非常に大事なことでございますので、情報をしっかりと公開させていただいて、自分の買っているものが市場の価格と比べて高いのか安いのかというところがしっかりわかるような仕組みというのは今後も考えていく必要があるのだろうというふうに思っておりますし、生産者の皆さんが賢く選択できる仕組みを考えてまいりたいと考えております。

小泉(進)委員 大臣がおっしゃったところは、とても大事なところだと思っています。農家の皆さん、生産者の皆さんが、果たして自分が買ったものがほかと比べて安いのか高いのか、そういった情報提供をして、一円でも安く、どこからでも必要な資材が手に入る環境をつくることが私は大事だと思っています。

 こういうことを言うと、よくいろいろな方からわかっていないと言われるんですけれども、全国に農協が約七百あります。その農協の七百ある中で、一体幾らでそれぞれ生産資材を農家の皆さんに卸しているのか、幾らの販売手数料を取っているのか、農協同士でわかるようになれば、それぞれの農協が競争し合い、官民対話でも全中の奥野会長がおっしゃったような、一円でも高く生産者の皆さんのものを売り、一円でも安く資材を卸すという原点に私は資すると思っているんですが、今後の農協の役割と、そういう一円でも安くということに対する農協のあり方について、これは経営局長の方がいいかもしれませんが、御答弁をいただきたいと思います。

奥原政府参考人 農協改革と生産資材の価格の関係でございます。

 昨年、農協改革法案を通していただきましたけれども、その基本的な考え方は、農協が農業者の協同組合であるということでございます。農業者の協同組合でございますので、農業者の所得向上に向けて、農産物の有利販売、それから生産資材の有利調達に最重点を置いて成果を上げていく、これが一番基本的な考え方でございます。

 特に、二十六年六月の農協改革に関します政府・与党の取りまとめの中におきましては、農協は、生産資材等につきまして、どこから仕入れるかについては、価格それから品質を徹底比較して最も有利なところから調達するということが明記をされているところでございます。

 農業者の方が少しでも有利に生産資材を調達できるようにするためには、各農協が仕入れ先を徹底比較するというだけではなくて、農業者が生産資材の価格等に関する情報を幅広く知って比較できるようにすることも重要であるというふうに考えております。

 先生御指摘いただきましたように、三月四日の未来投資に向けた官民対話におきまして、全中の会長、それから全農の会長の方からも、生産資材価格の低減に向けて取り組むという趣旨の発言があったところでございますので、資材価格などの情報提供のあり方についても農協系統とよく相談してまいりたいと考えております。

小泉(進)委員 全中の奥野会長の言葉、私はそのとおりだと思うんです。一円でも高く売り、一円でも安く仕入れる、これを全うしていただければ、農業にとっても大変いいことなので、それをどうやって後押しするかは政府も党も挙げてやらなければいけないと思います。

 そこで、政府も党もやらなければいけないのは、比較という中において、では、日本というのは、諸外国と比べたときに、今私たちの使っている資材の状況は果たして高いのか安いのか、そういったこともやっていかなきゃいけない。

 党の方では、日本と韓国の米の生産コストについての比較も行いました。その日韓の米の生産費の比較について、これは副大臣からでよろしいでしょうか、その御説明をいただきたいと思います。

伊東副大臣 ただいまの小泉委員からの御質問でございますが、日韓の米の生産費の比較でありますが、公表データに基づいて単純に日本と韓国を比較いたしますと、日本の兼業農家を含む全農家の米の生産費は韓国の約一・八倍になっております。また一方、日本の担い手層、これは十五ヘクタール以上を持つ層に限って見れば、韓国の一・三倍まで縮まっているところであります。

 以上でございます。

小泉(進)委員 その内訳として、肥料、農薬、機械、これらの比較というのはどうなっているか御紹介ください。

伊東副大臣 韓国におきましては、根本的に日本の状況と少し違いまして、作業の委託が浸透をしております。個人の農業者が保有する農業機械の台数が韓国は非常に少ないわけでありまして、これに加えまして、投下労働時間も短くなっていることから、生産費が安くなっていると考えられます。

 例えば日本では、一軒のうちで小さな農家でも機械をみんな持つというのが昔からの形でありまして、韓国では作業委託の割合が非常に高くて、これは田植えや収穫を含めて約六割から八割くらい作業委託をしております。日本はもう八%から十数%、収穫のときでも一六%ぐらいしか作業委託はしていないということでもありますし、持っている機械の台数も、日本は韓国の平均の倍以上の台数をそれぞれの農家が保有しているという形でございまして、その考え方の違いがここにあらわれてきているのかな、こう思う次第であります。

小泉(進)委員 私が御説明いただきたかったのは、これは自民党の方でも説明いただいたんですが、機械、農薬、肥料、さまざま比べると、機械でいうと、日本と韓国を比べれば五倍違う、そういったような形で、これはどれだけ違いますよという形でお答えいただきたかったんですが、そういう形でお答えいただけますか。

伊東副大臣 今、小泉委員から御指摘のとおりでございまして、機械の台数、持ち方、あるいは作業委託等々が、下地が全く違うわけでありまして、特に、韓国は生産効率あるいは原価等々を重要視する、日本はその製品の、いわゆる農作物のレベルを重視するというところの違いもあろうかというふうに思っております。

今城政府参考人 済みません、補足させていただきます。

 公表データによりますと、肥料費が二倍強、それから、農薬剤費が約三倍、農機具費が委員おっしゃられたとおり五倍というふうに、公表データについてはなっております。ただ、市場価格の比較とは若干ずれておりますので、その辺はちょっと検証する必要がございますけれども、公表データで比べる限りはそういう状況になっております。

小泉(進)委員 今、今城局長からお話があったとおり、肥料は二倍、機械は五倍、いろいろデータのとり方はあったとしても、今のところ、公表資料を見れば、それだけ差が出るわけです。

 例えば肥料などは、韓国とかから比べても日本は、銘柄数、メーカー数、工場数、こういったところもコストが違う大きな要因だというふうに言われていますが、この肥料について、今、日本はどういった状況で、コストの面でどういった問題、課題があると認識されているか、生産局長からお答えください。

今城政府参考人 お答えいたします。

 日本と韓国におきましては、例えば、銘柄数というもので比較をいたしますと、肥料登録制度が異なり単純比較はできませんけれども、日本は二万銘柄を超えるものがございますが、韓国はいわゆる種類数ということで五千七百種類というふうになっております。また、工場数につきましても、日本の四千六百に対し、韓国では千七百ということになっております。また、メーカー数については、ちょっと韓国の数字が法律制度で違うので把握できませんが、日本は肥料取締法により約三千業者というふうに把握しております。

 こういうこともございまして、まず、生産の体制というものが若干日本の方は小規模なものが多いというような状況、あと、やはり、具体的なブランドとか地域の生産者の求める肥料が細分化されているということで、そういう銘柄数が多いということにもつながっており、価格面で差が出てきている、こういうような問題があるというふうに認識しております。

小泉(進)委員 こういった構造の違いとかあり方の違いによって資材の価格にはね返ってくるということは、肥料の問題だけではありません。それぞれ品目を見ていると、これは本当に課題が多いなということを痛感しています。

 この業界のことを考えても、私は農水省は問題意識を強く持っていると思うんです。それがあらわれているのがこの前の補正予算で、役所としては初めて加工施設の再編事業について予算をつけたという、これは初めての事業だと思いますが、これを初めて予算化した理由、この狙いについてお答えいただけますでしょうか。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 政策大綱に即して、加工施設の再編や高度化等により、生産段階以降のコスト縮減を図ることで国内農業の競争力強化をさらに加速化するために、先日成立した平成二十七年度補正予算において、加工施設再編等緊急対策事業を措置したところでございます。

 本事業では、乳業工場においては、輸入品との競合の少ない生クリーム等の品目への製造ラインの転換を新たに支援対象としたこと、そしてまた、食肉処理施設については、補助率を二分の一に上げるなどとともに、施設廃棄を行う場合にも支援対象としたこと、それに、製粉工場及び精製糖工場においては、新たに施設の再編合理化を支援対象としたことなど、これまでの支援対策から大幅な強化を図ったところでございます。

 本事業を活用しながら、加工施設の再編合理化を今後とも加速化してまいりたい、このように考えておるところでございます。

小泉(進)委員 政務官、ありがとうございました。再編合理化を加速させたい、そういった狙い、理由、よくわかりました。

 だとすると、それを後押しするツールというのは農林水産省だけが用意しているわけではありません。きょうは経産省からお越しをいただいていますけれども、経産省も、さまざまな産業の合理化、再編、こういったものを後押しするツールとして、産業競争力強化法、これを用意しております。きょうは、経産省の方から、まずそこについて御説明をいただきたいと思います。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 産業競争力強化法の第五十条では、これまで事業再編が進みにくく、過剰供給構造や過当競争の問題が長期にわたって解消されていない事業分野につきまして、過剰供給構造あるいはその他の市場構造に関して客観的な調査を実施した上で、公表することとしてございます。

 当該調査は、事業再編の実施の円滑化のために政府が必要と認められれば、当該業界の市場構造を明らかにする手段として利用することも可能でございます。

 経済産業省としては、今後も各業所管官庁において五十条調査が有効に実施されることを期待しているところでございます。

小泉(進)委員 わかりやすい答弁で、ありがとうございました。

 つまり、この産業競争力強化法の五十条というのは、必ずしも再編合理化を行うためのツールということだけではなくて、今の市場構造がどうなっているのかというのを見える化するというツールとしてもこの五十条が活用できるということであります。

 今の経産省の話を聞いて、私は、これは役所が別だからというのではなくて、同じ業界をよりよい構造に持っていきたいという中では、使えるものは使って前向きに検討すべきことではないかと思うんですが、大臣、今の経産省の話も聞いて、この競争力強化法を含め、今後の検討としてはどういうふうに考えるか、お話しいただけますでしょうか。

森山国務大臣 農林水産省といたしましては、事業再編が進みにくく、過剰供給構造や過当競争が長期に解消されないと判断をする事業分野につきましては、五十条の調査も検討してまいりたいというふうに考えております。

 具体的には、配合飼料製造業について過剰供給構造や過当競争という面が考えられるのではないかなというふうにも思っておりますので、よく関係者の皆さんの御意見も聞かせていただきまして、五十条に基づく市場調査の実施に対応してまいりたいと考えております。

小泉(進)委員 今大臣から配合飼料という話が具体的にありましたけれども、党の方でヒアリングを行ったときにも、飼料工業会は確かにそのとおり、業界の再編合理化が必要だというのを、業界としても強い危機感を持っていました。

 一方で、ほかの業界、メーカーを見ると、変わらなきゃいけないのはわかっていても、そこまでまだまだ危機意識が醸成されていないような、そういったところも見られますので、ぜひ、今の分野にとどまらず、さまざまな検討をゼロベースでやっていただきたいと思います。

 そして、きょう、残りがもう五分ですので、最後にちょっと流通の関係でも少し触れたいと思いますが、市場の役割です。

 私は、PTのヒアリング、また現場への視察の中でも、東京の大田市場、そして羽田空港の輸出入の現場、こういったところも行きました。市場の役割というのは歴史的にも大変意義があって、これからも大切な部分は大きいと思います。一方で、果たして市場の役割というのは、かつて食料が足りない時代の市場の役割と、今のようにそうではない時代とでは、おのずとして変わらなければいけないことがあるのではないかと思います。

 そういった中で、今、プロダクトアウトからマーケットインの発想という中、市場は流通機能としては必要だけれども、今の市場がそのまま必要かというと、私は必ずしもそうじゃないのではないか。つまり、市場を担保している法律の一つに卸売市場法というのもありますが、この卸売市場法を初め、担うべき機能が果たせれば、その制度を守ることにきゅうきゅうとする必要はなくて、新しい農政新時代の中で、今の時代に、これからの時代に合ったさまざまな法や制度の廃止や修正や見直しや、また新たにつくるものはつくる、そういった発想がこういった分野でも必要ではないかと思うのですが、これは伊東副大臣、どうお考えですか。

伊東副大臣 卸売市場法でありますけれども、今、小泉委員おっしゃられたとおり、これは九十五年くらいたちますが、大正十二年に、物価が乱高下する社会的問題と食料がなる中で、安定を図るために制定されたものでありますが、昭和四十六年に卸売市場法へと改廃されました。

 このように、古くから存在したものでありますが、近年、量販店の伸長あるいは消費者ニーズの多様化に対応し、数次にわたる制度改正を行ってきたところであります。

 現在、国産青果物の市場経由率は八五%となっておりまして、国産青果物の主要な販路となっているところであります。

 また、大消費地での安定供給、あるいは指標価格の形成等の役割を引き続き果たしているところでありまして、時代が変化する中でも、生鮮食料品を安定供給する、あるいは国民の消費生活の安定を図るというこの卸売市場制度の意義は、委員おっしゃられるとおり、変わっていないもの、このように考えております。

 しかしながら、少子高齢化、人口減少といった社会状況の中であります。今後の卸売市場のあり方につきましては、自民党骨太方針策定PT、先生のPTを初めといたしまして、たくさんの貴重な御意見をいただいているところでございますので、農水省としても、消費者、生産者、市場関係者等から幅広く御意見を伺った上で、農政新時代にふさわしい新たな市場流通について議論を前向きに進めてまいりたい、このように考えております。

小里委員長 質疑時間が終了しましたので、まとめてください。

小泉(進)委員 はい。

 時間が来ましたので終わりますが、最後に、TPP対策の一番最後のページに、施策の効果検証という章を設けております。ウルグアイ・ラウンドの、あのときの効果検証がなかなかできなかったという反省も踏まえて、これから行われる施策がしっかりと効果検証できるように、さまざま、ほかの省のやり方等、この事業の中での制度設計があると思いますので、またそこもこれからも提案していきたいと思いますので、農水省を挙げて、農政新時代を一緒になって切り開いていきたいと思います。

 きょうは、質疑の方、ありがとうございました。

小里委員長 次に、上田勇君。

上田委員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。

 時間が限られておりますので、早速質疑に入らせていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 まず最初に、東日本大震災からの復興につきましてお伺いをしたいというふうに思います。

 明後日で、未曽有の被害をもたらしました東日本大震災の発災から五年が経過をいたします。犠牲となられた皆様方には改めて哀悼の意を表するとともに、今なお大変な困難に直面をしている被災者の皆様方に謹んでお見舞いを申し上げます。

 農林水産業につきましても、被害総額が二・四兆円に上るという甚大なものとなりました。

 農水省が三月一日に「東日本大震災からの農林水産業の復興支援のための取組」を公表しておりますけれども、その中では、平成二十七年度中に、津波被災農地、二万一千四百八十ヘクタールありましたけれども、そのうち七四%で営農再開が可能となるというふうに言われております。水産業につきましても、養殖施設、大型定置網、水産加工施設など、おおむね九割が復旧の見通しと伺っております。

 復旧は、このようにかなり進捗をしてきているんですけれども、残念ながら、まだまだ道半ばというのが現実でありますし、農林水産業の本格的な復興の道のりは依然として大変険しいのが現実であります。

 改めて、復旧復興の推進に向けての大臣の御決意を伺いたいというふうに思います。

森山国務大臣 上田委員にお答えをいたします。

 震災地を訪ねるたびに、本当に御苦労があるなというふうに実感をいたします。

 農水省といたしましては、この五年間、被災地の復旧復興に全力で取り組ませていただきまして、現場の方々の御努力もいただきまして、ほぼ全ての漁港の陸揚げ機能が回復をいたしました。また、来年には、八割の農地が作付可能となる予定であります。インフラの復旧には一定の見通しがつくところまでは来たのではないかと考えております。

 一方、福島県では、原発事故により、現在も、風評被害や営農再開支援策を引き続き講じていかなければならない状況であることも認識をしております。

 新年度からは復興・創生期間という新たなステージを迎えます。今後は、十年間の復興期間の総仕上げに向けて、被災地の自立につながり、地方創生のモデルになるような復興、創生を目指していくことが必要であるというふうに考えております。

 私も復興大臣であるとの覚悟のもとで、原子力災害に対する風評被害対策、輸入規制の緩和、撤廃への働きかけのほか、単なる復旧にとどまらない、将来を見据えた農林水産業の復興に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 今大臣からもお話がありましたとおり、五年間の復興集中期間が終わって、四月からは復興・創生期間が始まります。東北の復興の加速化、とりわけ農林水産業の復興に向けて、さらに全力で取り組んでいただくことを期待しているところでございます。

 今大臣のお話の中にもあったんですけれども、最大の課題がやはり福島県での復興であります。福島県では、多くの被災者が今なお大変不便な避難生活を余儀なくされております。

 先ほどお示しをした資料によっても、営農再開可能な農地というのは、全体では先ほど申し上げたとおりかなり進んできている、七四%でありますけれども、福島県でいうと三三%にとどまっている、それが現実であります。

 農林業の復旧も著しくおくれております。農林業の復旧復興を進めていくためには、やはり農地、森林などの除染を確実に実施し、住民の安全、安心を回復していくことがまずは重要だというふうに認識をしております。

 先日、私も、福島県内を訪問させていただいた際にも、避難が依然続いている地区での除染作業などの現場も視察をさせていただきました。作業条件にさまざまな制約があるし、それから、除去した土壌などの保管や貯蔵、課題も多い難しい作業であるのはよく理解をいたしました。

 しかし、ここの除染の作業が進まなければ帰還をすることもできないし、そこで営農を再開することもできないわけでありますので、これは環境省の方の所管でありますけれども、今後の取り組みをお伺いしたいというふうに思います。

早水政府参考人 お答えいたします。

 環境省では、避難指示区域の市町村を対象といたしまして、市町村と協議の上で除染実施計画を定めまして、これに基づきまして農地あるいは森林を含めた除染を進めているところでございます。

 この計画では宅地の除染を優先しているという内容となっておりますところが多いことから、現在、除染を実施している市町村につきましては、宅地に比べまして農地や森林の除染の進捗率が低いことが多くなっております。

 なお、農地の除染の工程につきましては、線量の比較的高い地域では、表土の削り取り、それから客土の搬入、敷きならし、それから土壌改良材の散布などの作業がございまして、これらの作業は全体として並行して進められております。これら一連の工程が終了した時点で初めて進捗率の数字としてあらわれますことから、全体的に、最後の工程に入ると進捗率が大きく上昇するということになります。

 いずれにいたしましても、今後は、宅地除染が終了しつつある市町村につきましては、作業員を農地除染に回していくとともに、農地除染に必要となる重機やオペレーターを十分に確保しながら、最大限の作業の加速化を図ってまいりたいと思います。

 また、森林につきましても、環境省はこれまで住居周辺の森林を中心に除染を行ってまいりましたが、福島県の森林全体の除染など放射性物質対策につきましてはプロジェクトチームにおきまして対応を検討しておるところでございますので、これを踏まえまして関係省庁によります総合的な取り組みを進めてまいる所存でございます。

上田委員 ありがとうございます。

 今お話がありましたように、これまで計画的に進めていただいているというのは理解をいたしますけれども、今五年がたって、これから帰還をし、復興していくという上では、これまで以上にやはりそこは加速化して進めていただきたいというふうにお願いを申し上げます。また、それと同時に、これから帰還をされる皆様に対する支援についても、国とそれから地方自治体が協力をして進めていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 そして、先ほど大臣の御答弁の中にもあったんですけれども、アジア諸国における食品等の輸入規制についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今お話があったとおり、原発事故に伴って、アジア諸国を含む世界各国で、我が国からの農産物、食品等の輸入に対して禁止措置や厳しい制限が加えられました。当初、わからないことでありますから、これはやむを得ないことであったというふうに思います。

 その後、政府からの働きかけもありまして順次緩和がされてまいりましたけれども、アジアの中国、韓国、香港、台湾では、福島県の地域だけではなくて、かなり広い地域で生産をされた農産物、食品等について輸入の停止あるいは規制措置が依然としてとられております。

 既に国内でさまざまな検査を実施し、安全性が十分確認をされている農林水産物、食品等についていまだそういう措置がとられているわけでありまして、これはやはり地域の復興にとっても大きな足かせになっていますし、特に、原発事故の現場からかなり離れた地域で生産されているものもその対象になっているのが現実であります。

 これから輸入規制措置の撤廃、緩和について、今も大変御努力をいただいているんですけれども、さらに強力に働きかけていただきたいというふうに思いますけれども、方針を伺いたいというふうに思います。

伊東副大臣 上田委員の御質問にお答えいたします。

 委員おっしゃられるとおり、我が国にとりましても、あるいは東北の各地域におきましても、これは非常に大きな課題であろうというふうに思うところであります。

 福島第一原子力発電所事故に伴いまして、諸外国・地域におきまして、我が国の国産の農林水産物、食品に対しまして、放射性物質に関する輸入規制が設けられてきたところであります。

 この規制に対しましては、さまざまな機会を捉えて、科学的データに基づいて撤廃、緩和するように求めておりまして、規制を設けている国・地域の数は、事故後は五十四の国・地域でありましたけれども、現在は三十七カ国・地域にまで減少をいたしているところであります。

 その一方で、我が国にとりまして主要な輸出先国であります香港、台湾、中国、韓国などにおきましては、輸入停止を含む輸入規制が今なお講じられているところでもございます。

 これまで、農林水産物、食品や海洋のモニタリングデータを提供しつつ、二国間あるいはWTOのSPS委員会等の場で再三にわたりまして規制の撤廃、緩和を働きかけてきたところであります。

 さらに、ことし一月にEUが一定期間基準値の超過がなかった産品を規制対象から除外したこと等の情報提供も、外交ルートを通じて各国に行っているところでもございます。

 引き続き、あらゆる機会を捉えて、科学的な根拠に基づき輸入規制の撤廃、緩和を行うよう粘り強く働きかけを行ってまいりたい、こう考えているところでございます。

上田委員 これまでの御努力に対しては評価をしたいというふうに思っております。

 大臣も、先日の所信の中で、我が国の農林水産物、食品の輸出拡大を、攻めの農林水産業への転換の柱の一つと述べられております。

 今申し上げた国々というのは、我が国からの輸出の実績も比較的大きい、そしてまた、これから輸出先として非常に有望な地域であるというふうに考えております。したがって、やはりこうした国々において依然としてそういう制限が設けられているということは、東北のみならず、関係する地域において、農林水産業の振興にとっても大変大きな足かせとなっておりますので、東北の復興のためにも、ぜひとも早期に、着実に成果が出るような交渉をこれからもしていただくように期待をしておりますので、よろしくお願いをいたします。

 以上、東日本大震災からの復旧復興につきまして、何点か質問をさせていただきました。明後日で丸五年を経過するわけでありますので、次の復興・創生期間に向けて、東北の農林水産業がしっかりと復興できるように、さらにまた力を入れて取り組んでいただけますよう、お願いを申し上げます。

 次に、先日来、若干議論が行われてきました、企業による農地所有の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今度、国会に提出予定であります国家戦略特別区域法の改正案では、企業等農地所有適格法人以外の法人について、地方公共団体を経由して農地所有権の取得が一定の条件のもとで認められるということになると理解をしております。

 企業が農地を購入した場合に、さまざまな懸念も示されています。当初は農地として適正に利用して事業を行っていたとしても、万が一、予定していた利益が上がらないとか、あるいは企業経営自体が悪化したりというような場合もあり得る。その際に、農地が耕作放棄地となって荒廃をしたり、また目的外に利用されることはないのか、そういった懸念が示されています。

 今回、考えられている措置では、農地所有者から一旦地方公共団体に所有権を移転した上で、今度はその地方公共団体から企業等に所有権を移転するというシステムになっております。その際には、さまざまな条件もつけることになります。

 こうした措置によって、先ほど申し上げた懸念が起きることが、そういう事態にならないように、農地の保全や有効利用に地方公共団体が責任を持って対処するという仕組みになっているというふうに考えておりますけれども、その辺、農林水産省の御見解を伺いたいというふうに思います。

奥原政府参考人 国家戦略特区の企業の農地所有の問題でございます。

 企業の農地所有につきましては、今先生から御指摘がございましたように、企業が農業から撤退して耕作放棄地にしたり、あるいは産廃置き場になるのではないか、こういった農業、農村の現場の懸念がございます。

 このために、今回の特区法案の中では、農地法の特例を設けることになっておりますけれども、この特例措置については、企業が耕作放棄をしたり産廃置き場にした場合に、確実に原状回復ができるようにするために、一つは、許可をするのは、企業が地方公共団体から農地の所有権を取得する場合にまず限定をしております。それから二番目として、企業が農地を適正に利用しない場合には、農地の所有権を企業から地方公共団体に移転する旨の書面契約の締結を義務づけるといったスキームを考えているところでございます。

 さらに、その実効性を確保する観点から、農業委員会が、農地法に基づきまして、毎年一回、農地の利用状況の調査をやっておりますけれども、この結果として企業が農地を適正に利用していないと判断した場合には、その旨を農業委員会から地方公共団体に通知するというスキームを入れることにしておるところでございます。

 このように、今回の特例措置は、仕組みとして、地方公共団体が責任を持って対処する形にしているところでございます。

上田委員 よろしくお願いしたいというふうに思います。

 最後に、季節柄、花粉症対策についてお伺いをしたいというふうに思います。

 この季節、花粉症というのは本当に国民病、国民の大きな悩みであります。花粉症は、医療費の支出増大の原因でありますけれども、それだけではなくて、労働生産性が低下をする、また、外出を控えることが多くなることによって消費が減少するなど、国民経済にとっても大きなマイナスだと考えております。

 その額について、さまざまな民間機関などでの推計がありますけれども、中には三千億円から五千億円の経済損失だというような推計値も出ております。こうなりますと、花粉症対策というのは、まさに国民経済対策につながるものだと認識をしています。

 私たち公明党においては、これまで、アレルギー疾患対策基本法の制定を推進するなど、こうした花粉症対策を含みますアレルギー疾患対策には力を入れて取り組んできております。もちろん、花粉症対策では、そうした発症した疾患に対してどう対応するかといったことも重要なんですけれども、同時に、杉の花粉の発生源についての対策もあわせて重要だというふうに考えております。

 今年度、平成二十八年度の予算では、花粉発生源対策として、林野庁の予算で四億二百万円と、対前年度では三・四倍の予算を計上しておりますけれども、この事業の目的、そして、どういうことを目指していくのか、その内容も含めてお伺いしたいというふうに思います。

小里委員長 今井林野庁長官、簡潔にお願いします。

今井政府参考人 お答えいたします。

 杉花粉症は国民の三割が罹患しているとも言われ、社会的、経済的にも大きな影響を及ぼしておりますので、花粉発生源対策は政府を挙げて対応すべき重要な課題だと認識しております。

 このため、林野庁といたしましては、花粉発生源となっている杉林を伐採、利用し、花粉の出ない杉へ植えかえていく、そういう方針でありまして、花粉の発生量の少ない少花粉杉などの花粉症対策苗木の生産増大を進めているところでございます。

 二十八年度予算案におきましては、花粉症対策苗木を低価格で大量に供給するコンテナ苗の生産施設の整備に対しまして二億二千万円、花粉症対策苗木への植えかえの促進に対しまして五千万円、これを含めまして、関係予算につきましては、前年度の一億一千七百万円に対しまして、二十八年度予算は四億二百万円を計上するなど、花粉発生源対策の強化を図ることとしておりまして、その活用により、しっかりと対策を進めていきたいと考えております。

上田委員 以上で終わります。

小里委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 民主党・維新の会、佐々木でございます。

 きょうは、大臣所信に対する質問の時間をいただきました。大臣が就任されてからもう半年になるわけでありますけれども、ようやく大臣のお考えを聞く機会をいただいて、大変うれしく思っております。大臣所信に対する質疑ですから、所信に沿って幾つか懸念、私にとっては懸念でありますが、課題について共有をさせていただければというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 最初に、今の農政の基本になっているのが、一三年十二月、一四年六月に改訂されておりますが、農林水産業・地域の活力創造プランというものに基づいて、言いようによっては攻めの農政という言い方もされていますが、農政改革が推進されているというふうに承知をしているわけであります。

 このプランの柱になっているのは、大ざっぱにくくって言いますと、一つには農地集積、二つ目には所得政策、そして三つ目には農業規制、この三つだろうというふうに思うんですね。

 農業規制については、前回の国会で、農協法あるいは農業委員会法あるいは生産法人等についての改革が行われたところでありますので、そこはきょうは論議をするつもりはありません。

 二つ目の柱であります所得政策ですが、この所得政策は、生産調整の見直し、それから水田フル活用、それと日本型直接支払い、この三つだと思うんですね。

 そこで、これについてお伺いをしたいのでありますが、農水省は、生産数量目標の配分を一八年度産をめどに見直しする、こう言っているわけであります。過日、分科会で鷲尾議員も同趣旨の質問があったようでありますけれども、三点ほどお伺いしたいと思います。

 一点は、需給見通しとか自給率向上というのは、これは国の責任においてつくっているわけですね。ところが、今度は、需給の見通しと在庫等情報提供、戦略作物の助成金は行うけれども、実際の作付については自治体の再生協議会あるいは自治体に委ねるというふうにしているわけであります。

 では、国はどこに責任を持つのかということになるわけですが、国は一体この一連の配分の中で、これから先、どこに責任を持っていこうとしているのかということが一点であります。

 二点目は、米価の下落対策として、いわゆるナラシというのを実施しているわけでありますが、去年産も恐らく発動されることになると思うんですが、一昨年産は昨年発動されているわけでありますが、これが、この低価格が続くとずっと発動され続ける懸念もあるわけであります。

 ここも同じですが、この後に収入保険というのが計画をされているというふうに承知をしているんですが、ほぼ仕組みとしては似たような仕組みでありますので、下がり始めているときの激変緩和対策でありますから、収入保険も同じような懸念があるわけですね、下がり続けていったときはどんどんどんどん下がっていってしまうという。

 収入保険という制度そのものは、これはアメリカがやっている制度であって、EUにはこういう制度はないわけですね。災害保険はありますけれども、収入保険という制度はありません。

 収入保険にかわるというか、所得政策としてあるのは、むしろ環境対策とか集落対策が中心になっているわけでありまして、そもそも、市場原理の激変緩和ということを目的にするのであれば、これは直接払いの方がより手っ取り早いという言い方は失礼でありますが、いわゆる消費者負担から納税者負担に切りかえていこうというのが今の農政の中心でありますから、それからすると、直接払いの方がはるかに効果的だと私は思うのでありますが、そこの考え方。

 三点目は、水田フル活用というのについてでありますが、水田フル活用は自給率を向上させるというのが目的だと思うんですね、本来の目的は。ところが、飼料米に過度に偏り過ぎているのではないかというふうに私は思うんです。いわゆる主要穀物と言われているものは、米のほかに麦とか大豆とかあるわけですが、これら全体の自給率をどう上げていくかというために水田のフル活用というのが本当はなけりゃいけないと思うんですが、何ゆえにそこに差をつけたのかということ。

 それぞれ三点について、大臣にお答えをいただきたいと思います。

森山国務大臣 佐々木委員にお答えをいたします。

 私も全国いろいろなところに行かせていただいておりますが、やはり現場の一番の不安は、TPPよりも、むしろ、飼料米の政策が本当に続くんだろうかとか、中山間地は本当に大丈夫なんだろうかとか、そういうところに現場の不安は大きいなということを実感をいたします。その意味でも、米政策等については、しっかりと見直しの方向について御説明を申し上げていくということは非常に大事なことだと思っております。

 米政策の見直しにおきましては、平成三十年度を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずに、生産者みずからの経営判断により、需要に応じた生産が行われるようにすることとしているわけでありますけれども、国としては、その環境整備として、全国の需要見通しに加えまして、各産地の販売、在庫をめぐる状況等についてきめ細かな情報を提供させていただく、あるいは、麦、大豆、飼料米等の戦略作物の生産に対する助成金の交付等の支援等を進めていくということにさせていただこうと思っております。

 御指摘の県段階あるいは市町村段階の農業再生協議会は、現在でも、生産数量目標の配分や、地域の作物振興の設計図となる水田フル活用ビジョンを策定するとともに、産地交付金の活用を通じて、特色のある魅力的な産品の産地づくりの推進を図っていくとしているところでございます。

 平成三十年産以降、行政による生産数量目標の配分が行われなくなった後においても、これら県や市町村が構成員となる農業再生協議会は存続することとなりますし、この中で、国が平成三十年度以降も示す米に関する情報提供を踏まえまして、当該協議会として当該地域における米の生産量等について主体的に判断をしていただくということを期待しているところでございます。

 あと、ナラシあるいは収入保険のことについては、副大臣の方から答弁をさせていただきます。

伊東副大臣 佐々木委員の御質問にお答えいたします。

 米価下落が継続すれば、ナラシの標準的収入額が年々減少するのではないかというお話でございました。

 このナラシ対策は、農産物の価格は市場に委ねつつ、収入減少による農業経営への影響を緩和しようとするものであります。対象農業者は、経営の維持発展に向けて、どのような農産物をどのくらい生産し、どのように販売するかといった経営判断を的確に行っていただくことを前提といたすものであります。

 そうした経営努力をしていただければ、標準的収入額、いわゆる五中三でありますけれども、これが下がり続けることにはならないものというふうに農水省は考えております。

 なお、もし市場の価格動向と関係なく標準的収入額を固定したといたしますと、逆に、市場ニーズに合わない農産物の生産を助長したり、投げ売りを助長する等のモラルハザードを発生させることとなる危惧があります。また、こうした農産物に対して財政支援を行うことは納税者の理解を得ることはできないこと等問題がありまして、この標準的収入額をしっかり固定してしまうというのはなかなか妥当ではない、このように考えております。

 また、収入保険について、どのような補填の仕組みを考えているのかということでありましたけれども、収入保険制度につきましては、現在、平成二十七年産を対象にいたしまして、農業者の協力を得て、制度の仕組みの検証を行う等、事業化調査を実施しているところであります。

 この調査におきましては、農業者ごとの過去の一定期間の平均収入に対しまして、当年の収入が下回った場合に補填を行うことを想定して検証等を行っているところであります。

 こうした事業化調査の結果を踏まえまして、補填の仕組みを含め、制度を固めてまいりたい、このように考えております。

柄澤政府参考人 水田フル活用を進めるに当たりまして、麦、大豆などと飼料用米とのバランスの関係のお尋ねがございました。

 我が国におきましては、主食用米の需要が毎年八万トンずつ減少しておりますけれども、こういった中で、水田のフル活用を図り、あるいは、食料自給率、自給力の向上を図る観点からは、麦、大豆など、固定的な国産需要がありながら、その多くを海外からの輸入に依存している品目について生産を拡大する必要があることは全く委員の御指摘のとおりだと考えております。

 一方、飼料用米について見てみますと、飼料自給率が低い我が国におきまして、飼料用米の生産が増加することは、飼料の安定供給につながる、あるいは主食用米と同様の栽培方法や農業機械で生産することができるというメリットのほか、我が国は畜産大国でございますので四百五十万トン程度の利用が可能であるというような試算もございます。毎年八万トンずつ減少する主食用米の需要減少を補うという観点からは、この飼料用米が不可欠のものだというふうに認識しております。

 こういった考えのもとで、昨年三月の食料・農業・農村基本計画におきましても、麦、大豆などとともに飼料用米を戦略作物として位置づけまして、その生産拡大を図ることとしているところでございます。

佐々木(隆)委員 大臣所信に沿って質問したいので、できるだけたくさんお聞きしたいので、簡潔にお願いしたいと思うんです。

 一つは、今のお話だと、情報提供や何かを行うというのは、それはそれとして、何で農業に計画生産が必要なのかというと、工業や何かとは違うわけですね、ある日突然ふやしたり、ある日突然減らしたりすることができないから、これは世界どこででもですけれども、計画というものを持って、それに沿ってやっていくという仕組みをとっているわけです。ただただ市場に委ねるというだけでは、私は国の責任を果たすことにはならないのではないかと思います。

 それと、私は価格を固定しろなどと言っているわけではありません。価格は市場に委ねるんです。委ねて、その不足分をどうやって補うかという話を今しているのであって、直接払いだって別に、価格が下がったときの対策としての話をしているわけで、価格を固定しろという話とは全然違いますので、そこは誤解のないようにしていただきたいなというふうに思っております。

 飼料米も戦略作物にしたというのは、それはそれでいいんですよ。ところが、麦や大豆と何で価格差をつけたのかということなんです。どちらも大切でしょうということを私は言っているので、価格差をつけたというのは政策誘導したということですよね。飼料が足りないというのだったら、今何か多収のトウモロコシとかいろいろあるわけですよ。だから、飼料米に何で固定したのかということの説明を聞きたかったんですが、そこの説明がなかったので、これは再質問するとちょっと時間がなくなりますので、またの機会にさせていただきます。

 次に、日本型直接支払い、車の両輪と先ほどお話がありましたが、それについてお伺いします。

 多面的機能の支払い、中山間地域の直接支払い、それから環境保全型農業直接支払いと三つあるわけですね、この日本型直接支払いの中には。

 私は、先の二つ、多面的機能と中山間は地域での取り組みですから、これはこれで理解します。しかし、環境保全型農業直接支払いは、農業直接支払いですから、これは業への支払いなんですね。これを三つ一緒にしちゃっているというところにちょっと無理があると思うんです。ですから、これは地域政策でなければならないという理由は私はないと思うんですけれども、むしろ、業にオンをして、付加をして、個人に支払った方がより効果が出るのではないかということ。

 それとあわせて、農山漁村対策ですが、産業政策と地域政策は先ほど車の両輪だというお話がありましたが、実は、UR対策のときには、これは集落排水や生活環境整備というのはあったんです。TPPは私どもはまだ認めておりませんから、TPPを認めるという前提でお話しするわけではありませんが、農村政策と農業政策を一体的に進めるというのが本来の農政でなければいけないのであって、切り離して考えるべきではない。

 車の両輪と言うのであれば、農業という車がとてつもなく大きくて、地域という車がとてつもなく小さかったら、そんなのは真っすぐ走らないことになっちゃうわけで、両輪と言うのであるならば、もう少しそこは一体的に進めるということと、先ほどの環境保全型農業直接支払いがなぜ地域政策なのかということについて、見直すべきではないかという視点からお伺いします。

今城政府参考人 まず、環境保全型農業直接支払いについてお答えいたします。

 この環境保全型農業直接支払交付金は、自然環境の保全を通じた多面的機能の発揮に貢献する施策ということで、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律に基づき実施させていただいております。

 本交付金の対象となります自然環境の保全に資する農業生産活動については、もちろん、消費者に対する、農産物を供給するということもございますけれども、やはり地域でまとまりを持って取り組まれるということで多面的機能がより効果的に発揮されるというところに着目してこの法律で実施しておりまして、地域政策として、農業者の組織する団体ということが面的に行われるということを基本に支援させていただいております。

 本交付金を推進することにより、今後とも多面的機能の発揮がより効果的に促進されるようということでございます。

 なお、農業者の組織する団体以外にも、面的にまとまりで効果を発揮できるという場合には、一定の条件を満たす農業者についても支援対象としておるところでございます。

佐々木(隆)委員 環境保全型農業直接支払いというのは、今、個人にも支払っているという話がありましたけれども、例えば有機農業みたいなのを目指しているんだとすれば、そういう人たちはネットワークはしっかり持っています。持っていますけれども、まとまって一地域でやるという仕掛けのものじゃないですよね、あれは。地域的に点在している横の連携をしっかりとっているというのが、大体、環境保全型農業に取り組む人たちなんです。その方が効果はより高くなると思うんです。

 地域でまとまらなければ環境保全、環境保全はほかの二つで守ればいいのであって、環境保全型農業というのは低農薬とかそういう農業を目指すという話の人たちですから、これは業の話なんですね。これを一つにしちゃったというのは私は少し無理があると思います。これについても、後日、機会があれば伺いたいと思います。

 次に、農地政策について伺います。

 先ほど、創造プランの一つ目の柱に農地政策ということを申し上げましたけれども、農業経営基盤強化法のもとで設置された農地保有合理化事業をなぜ中間管理機構に変えなければいけなかったのかということについて、いまだ私には理解ができないんですね。保有合理化事業では何がまずくて中間管理機構にしなければならなかったのか。この中間管理機構については、KPIの評価も極めて低い状況に今なっているわけであります。

 農業委員会や農地法を改正してまで、なぜ企業参入をさせるような仕組みをつくらなければいけないのかということ、それから、あわせて、現政権の推進の中で一番私が危惧していることは、農地を単なる生産手段として考え過ぎているのではないか。農地は、国土であったりコミュニティーであったり、あるいは環境という視点が同時に進まなければいけない。だから農政なんです。そこが欠落しているというふうに思えるわけであります。

 この中間管理機構の改善案の中に現場でのコーディネーターの増員ということが書いてあるんですけれども、そんなコーディネーターなんか農家にとって必要ないと私は思います。むしろ今必要なのは、集落を再生するためにどういうコーディネートをするかということの方がはるかに必要であって、農地を単なる生産手段とした一貫のこの動きというものについて私は疑問を持っているんですが、大臣の考え方を伺います。

奥原政府参考人 農地の中間管理機構の関係でございます。

 この法律につきましては、平成二十五年の臨時国会で成立をさせていただいたところでございますけれども、これをつくるときの大きな問題意識は、農地利用を担い手のところに集積していく、規模拡大していくということと、もう一つは集約化、この担い手の方がまとまった面積を使うことによって生産性を高めていく、この集積と集約化両方を図る上でどういう方式がいいか、こういうことで中間管理機構という構想になったわけでございます。

 御指摘のように、従来から、農地保有合理化法人というものはございました。ございましたが、このスキームは、基本的には、その法人が農地を買って売り渡すというスキームを中心にしておりまして、やはり売買を中心とするということで、北海道は売買でかなり動いておりますが、都府県を見ますと、売買ではなかなか土地が動かない。出し手の方についてはなかなか売りたくないということもありますし、受け手の方は買うための資金が必要になります。それから、間に入る農地保有合理化法人についても、一旦買って売るということになりますと、その間の資金をどうするか、それから売れなかった場合にどうするかという問題もありまして、三者とも消極的な姿勢であったという問題が一つございます。

 それから、合理化法人の場合には、どうしても出し手の方と受け手の方との相対協議を前提として進めるという形でございますので、地域全体として農地の流動化を進めようという機運にはなかなかなっておりませんでした。したがって、分散錯圃の解消にもなかなかつながらない、要するに集約化ができない、こういった問題もあったわけでございます。

 こういったことを考慮いたしまして、平成二十五年に法律をつくっていただきまして、二十六年から全都道府県で農地の中間管理機構を整備して動き出しているところでございます。

 この中間管理機構のスキームは、機構自身が農地を所有者の方から借り受けて、これを担い手の方々のニーズに応じる形でできるだけまとまった形で転貸をしていく、こういうスキームでございますので、これは一年、二年で十分な成果は出ませんけれども、長い目で見れば、集積だけではなくて集約化にもつながっていく、こういうスキームでございます。

 特に、この機構につきましては、人・農地プラン、地域での農地流動化に向けての話し合い、これと連動して進めるということになっておりますので、まとまって農地を借り受けて、担い手にまとまった形で転貸をする、この機構の方式が農地の集積と集約化を進める上で最も効率的なやり方であるというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 できるだけ簡潔に答弁をお願いしたいと思います。

 今のような問題があるのであれば、保有合理化事業を変えればよかったのであって、何で新しい機構をつくらなきゃいけないのかということを私は聞いたんですから、それは保有合理化事業を変えればいい話であって、それでは何がまずかったのかということを聞いているのに、それは改正すればそれでよかっただけの話だと思うんですね、中身を。少し違うと思います。

 時間がなくなりましたので、一つ飛ばします。

 違法伐採についてお伺いをいたします。

 違法伐採緊急対策事業として、補正あるいは二十八年度予算が計上されているわけでありますが、今、我々民主・維新も、それから自民、公明の方でも、違法伐採について議員立法を目指して論議中であります。

 アメリカ、欧州あるいはオーストラリアでは、いわゆる業者を中心にしたデューデリジェンスというんですが、念入りな確認というものを中心にした法律が既にでき上がっております。そういう国々で違法伐採の法律ができたことによって、違法伐採の木材が日本の方へ流入してくるのではないかという懸念が今広がっているわけですね。

 これはできるだけ早急に対策をしなきゃいけないということが今議員立法の動きになっているわけでありますが、グリーン購入法とか合法木材の普及という取り組みではこれは対処できない話でありますので、さらには、本年は伊勢志摩サミットも開催されるということもありますので、ぜひ日本から発信できるように、これは議員立法の方も協議を進めますけれども、ぜひ政府と一体となって進めたいと思うんですが、大臣の決意をお願いいたします。

森山国務大臣 佐々木委員にお答えをいたします。

 違法伐採問題は、やはり地球規模での環境保全や維持可能な森林経営の推進にとって極めて重要な課題であるというふうに認識をしております。我が国では、平成十八年に、グリーン購入法に基づいて、木材や木材製品の合法性証明の仕組みを導入したところであります。

 さらに、二月に署名をされましたTPP協定におきましても、各国における違法伐採の抑止に働く効果的な行政措置の実施等が規定をされております。

 また、平成二十七年度補正におきましては、生産地における木材流通実態や関係法令の運用状況の把握などのための予算を措置させていただきまして、違法伐採対策を強化していくとしております。

 また、現在、与党におきましても、民主党におきましても、議員立法の検討がなされていると伺っておりますので、こうした状況も踏まえながら、政府としては違法伐採対策が円滑に進むように取り組んでまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 大変これは急ぐ状況に今なっているというふうに思いますので、我々も鋭意議論させていただきますし、協議もさせていただきますので、一体として取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、日ロサケ・マス交渉についてお伺いをいたします。

 昨年六月二十九日ですが、ロシアの二百海里水域におけるサケ・マス流し網漁を禁止するという連邦法が成立をして、日本ではその区域で操業ができないということになってしまったわけであります。根室、釧路地域にとっては、まさに地域の主体的な産業でありますし、関連産業も非常に多いわけでありますし、もちろん副大臣の地元でもありますけれども、非常に影響が大きいわけであります。

 地元の対策本部あるいは北海道庁からそれぞれ要請が出されているというふうに思うんですけれども、例えば代替漁法、魚種の転換、加工施設の整備などについて、緊急対策と中長期対策とそれぞれの要望が出てきていたというふうに思うんですが、それについてどのように応えたのか。同時に、そのほかにも雇用対策とか地域対策とか、まだまだ農水省以外の分野もたくさんあるのでありますが、それら他省庁との連携もしっかりお願いをしたいということを申し上げながら、今日の対策についてお答えをいただきたいと思います。

森山国務大臣 お答えいたします。

 本年の一月一日からロシア水域におけますサケ・マス流し網漁が禁止をされたために、北海道知事を初め水産団体の皆さんから御要望がなされておりましたので、御要望に沿って、平成二十七年度補正予算等によりまして緊急対策を講じさせていただきました。

 この緊急対策につきましては、我が国二百海里水域、公海における代替漁業への転換支援のための漁業者の対策、あるいは種苗生産施設等の整備等に必要な経費として、平成二十七年度補正予算に百億円を計上いたしました。減船対策といたしましては、既存の基金による救済費交付金の交付として十三億円を予定させていただいているところでございます。

 特に水産加工業者向けの支援といたしましては、サケ・マスからの原料転換に当たって必要となる機器整備等の加工原料対策の予算を計上させていただきましたほか、TPP関連対策としてHACCP対応のための施設改修等の予算を講じたところでございます。

 準備が整ったものからスピード感を持って進めてまいりたいというふうに考えておりますし、雇用対策等、他の省庁ともしっかり連携をさせていただいて、万全を期してまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わりますが、根室、釧路地域におけるサケ・マスというのは年間操業で、サンマ、サケ・マス、タラですか、という年間操業をやっているので、そこの一つが抜けちゃうということは全体が回らなくなる、当然雇用も、そこに失業者も発生する、工場もストップしちゃうということになりますので、他省庁との関連もありますけれども、それはまた機会を見て私の方からも対策を求めたいと思いますけれども、ぜひ、地域にとって死活問題だということの認識をいただいてお取り組みをいただきたいということを申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小里委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 民主党の金子恵美でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 森山大臣が所信表明で五つ目に述べられました東日本大震災からの復旧復興について御質問させていただきたいというふうに思います。

 まずは、大臣は、御自身も「復興大臣であるとの覚悟のもと、原子力災害に対する風評被害対策、輸入規制の緩和、撤廃への働きかけのほか、単なる復旧にとどまらない、将来を見据えた農林水産業の復興に取り組みます。」というようなことを述べられているわけですけれども、大臣も就任後、岩手に一度、そしてまた宮城には二度、福島県には一度お入りになっていらっしゃるのではないかと思います。被災地の現状をごらんになって、実態も御理解いただいていることだと思いますけれども、改めてお伺いいたします。

 どのようなニーズがあり、それにどのように対応していかれるのでしょうか。

森山国務大臣 金子委員にお答えをいたします。

 私は、大臣就任直後の昨年十月に福島県と宮城県を、また、ことしの一月には岩手県と宮城県をそれぞれ訪ねさせていただきまして、復旧復興の現状を視察させていただきました。

 漁業にしても、農業にしても、畜産にしても、新しいやり方が芽出しができているなということも実感をいたしましたが、まだまだ厳しい状況にあるなというのが率直な気持ちでございますので、現場の皆さんの気持ちに寄り添ってしっかりと対応させていただかなければならないというふうに思っております。

 この五年間、現地の皆さんが御努力をされ、先ほど申し上げましたとおり、新しい農林水産業に向かってまさに復興、創生という気持ちで取り組んでいただいていると思いますし、その点は大変心強く感じたところでございます。

 新年度から五年間は復興・創生期間という新しいステージを迎えることになりますので、このために、農地の大区画化や利用集積等の推進、木材の需要拡大と安定供給確保の取り組みの支援、水産加工業における販路回復等への取り組みの支援、福島県における営農や漁業の本格的な再開に向けた取り組みの支援、風評被害や輸入規制の緩和、撤廃への働きかけの推進など、重点的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 ただ、先生も御承知だと思いますが、米をやはり全量まだ検査をしなきゃならないという状況もありますし、また、農地は、除染が終わっている地域もありますが、ここにいかに農家の皆さんが戻ってきていただけるかということが大変大事な課題だと思いますので、先ほどもお答えをいたしましたように、我々、参事官等を通じまして、しっかり農家の皆さんの御意見を伺って、できるだけの対応をさせていただきたい。漁業についても同じようなことが言えるのであろうと考えております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 被災地の声をしっかりとまずは聞いていただくということからスタートだということで、地方参事官の活用ということもしっかりとしていただくということだと思いますが、改めて、福島県は、今大臣の御認識の中でおっしゃっていただきましたように、特殊なといいますか、東日本大震災の震災ということだけではなく、原子力事故の影響を大きく受けて、さまざまな課題を持っているわけです。

 今もなお十万人の方々が避難を余儀なくされている状況にもありまして、営農再開をしたいと本当に心から願っている方々が避難指示解除後も本当に懸命に頑張っているという御様子も見ていただいているのではないかというふうに思っておりますが、改めて、放射性物質との戦いもしながら、そしてまた風評被害との戦いもしながら、本当に前進をしようとしている福島県の第一次産業に携わる人々をどのように支援していかれるというふうなお考えをお持ちか、お伺いしたいと思います。

森山国務大臣 委員御指摘のとおり、福島は原子力災害地域のまた別な問題を抱えておられることはよく承知をしておりますので、速やかに農林水産業の再生が図られるように取り組んでまいりましたし、今後もその取り組みを強化していきたいと思っております。

 具体的には、農業では、農地除染の終了後に、営農再開に向けたインフラの復旧、あるいは作付の実証、地域農業の将来像の策定等につきましてしっかり支援をさせていただきたいなというふうに思います。

 林業では、森林整備と土砂流出抑制等の放射性物質対策を一体的に実施する取り組みをさせていただきたいと考えております。

 また、水産業では、福島県沖における試験操業の対象魚種の拡大等、本格的な操業再開に向けた取り組み等を行ってまいりたいと思っておりますし、二十キロ圏内の問題をどうするかという課題もございますので、団体の皆さんともよく協議をさせていただきたいと思っております。

 これまでの取り組みを着実に実施させていただきまして、現場の皆さんの気持ちに寄り添って、単なる復旧にとどまらない福島の復興再生に農水省を挙げて全力で取り組んでまいりたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

金子(恵)委員 大臣、就任後初めて福島県を御視察されて、知事との意見交換をされておられます。そのときに、知事が避難区域解除後の営農再開や風評払拭などへの継続した支援を求めたのに対しまして、大臣は、新しい福島の農業をつくり、結果を出すために私たちも努力したいというふうに述べておられます。これは新聞報道がなされています。

 ここでおっしゃっている新しい福島の農業、これはどのようなものですか。

森山国務大臣 福島の農林水産業の再生に当たりましては、単なる復旧にとどまらない、将来を見据えた復興、創生に取り組むということが必要であるというふうに強く感じております。

 私自身、昨年の十月に福島市のフェリスラテという酪農家を訪問いたしました。これは会社になっておりますけれども、原発事故によって生産休止に追い込まれた浜通りの五人の酪農家が共同で牧場を経営しておられますけれども、このようなゼロからの復旧だったからこそ可能な大規模経営も一つの形になったんだなと思っておりますし、間違いなく日本の酪農のモデルになるような施設ではないかなというふうに思っておりまして、五人の方々が一緒にやろうとされていることも大変評価ができると思っております。

 いずれにせよ、新たな農業は、将来どのような農業に取り組むか、各地域や農業者みずからが地域農業の将来像を策定する中で明らかになってくると思っておりますし、そういう御相談に我々もしっかりと応じていきたいと思っております。

 新しい農業の実現に必要な経営の大規模化や施設園芸への転換等の支援も、その中で御相談をさせていただきたいと考えているところでございます。

金子(恵)委員 福島の声をまずは聞く、繰り返しになりますが、そういうことなんですけれども、そこで、福島県は新年度、過疎、中山間地域の農業を競争力と魅力ある基幹産業にするために、中山間地の営農グループなどと民間企業が連携した新たなアグリビジネス振興に向けた実証に乗り出そうとしているんです。

 これは、福島県のふくしま未来農業創出事業です。福島県独自の取り組みとなっているんですが、この事業において提案する実証モデルには、大規模稲作経営体による周年経営モデルの確立、実証等を行う先端技術等活用モデルや、農業と運送業等との連携による集出荷システムの構築と、生産、流通、販売の一貫経営モデルの確立、実証を行う地域内連携確立モデル等があります。

 ここで課題になるのは、やはり地域の農業団体等との連携に関心を持つ企業、あるいは、福島の農業団体あるいは福島の農業の再生に関心を持ってくれる企業を見つけるということでもあります。

 当然、福島県としても、ある程度の情報は持っていると思いますが、先ほどもほかの方の質問の中にありました、情報提供ということがすごく重要なんだということでありますが、改めて、このマッチングの部分で多分課題が出てくるのではないかと思います。中山間地をどのように救っていくか、過疎地域をどのように救っていくかということ、そして、やはりそれに関心を持ってくれる企業を見つけるというのには、恐らく汗をかかなくてはいけないというふうに思いますので、国の情報提供等も含めたバックアップをぜひお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

森山国務大臣 ふくしま未来農業創出事業というのは福島県の単独事業としておやりになっておられるわけでありますが、非常に積極的なお取り組みをいただいていることには敬意を表しております。これは、営農組織と企業等を核としたコンソーシアムの形成を図って、農業の新たなビジネスモデルを創出していこうということであろうと思います。

 農林水産省におきましても、平成二十六年から、農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業として、企業と農業者が共同で取り組む先端技術等の実証に対する支援を行っておりまして、農業者と企業のマッチングについてのノウハウは幾らか農水省も有していると考えておりますので、福島県と一緒になって、このふくしま未来農業創出事業が成功するように、農水省としてできることはお手伝いをさせていただきたいと考えております。

金子(恵)委員 しっかりと支援をしていただけるものと今の御答弁から感じておりますので、ぜひ期待したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そしてさらに、福島の農業者の方々が取り組んでいて、本当に一つの大きな課題だというふうになっておりますのが風評被害対策ということです。

 これも、大臣が福島での御視察で米の全量全袋検査の会場を訪問されているわけなんですけれども、感じられたと思いますが、福島県が本当に努力を積み重ねて、日本一安全なお米を市場に出しているということであります。ですので、それをしっかりとPRもしていっていただきたいというふうにも思いますし、当然、視察をされたときに、やはり大臣御自身も内堀知事との会談で県産品の国内外での風評払拭に全力を注ぐ考えを示されたということでありますので、改めてどのような取り組みを今後していただけるのかということを確認させていただきたいと思います。

 これまでも、農水省は「食べて応援しよう!」というキャッチフレーズで福島の農産品のPRもしていただいておりますし、予算措置のある事業としましては、風評被害対策として福島発農産物等戦略的情報発信事業、平成二十八年度の予算案では十六億円計上されているところでもありますが、何度いろいろなところでイベントを開催しても、それでもなかなか風評被害というのはおさまらない状況にもあります。

 そして、今申し上げましたように、このように検査体制をしっかりと整えて、そして安全だというようなことを申し上げていって、発信をしていっても、なかなか伝わらないという状況にもあります。いかがでしょうか、どのような今後の取り組みというのが必要でしょうか。

森山国務大臣 風評被害対策につきましては、復興庁におきまして取りまとめられております風評対策強化指針に基づきまして、関係省庁が一体となって取り組みを行っているところであります。

 農林水産省といたしましては、消費者庁等と連携をさせていただきまして、科学的なデータに基づいて正確でわかりやすい情報の提供を行うということが大事なことだと思いますし、また、福島県産農林水産物のPRのためのテレビコマーシャルの放映や、食品流通業等の関係者との交流会や商談会の開催等、福島県が行われます広報活動の支援もさせていただいております。

 また、「食べて応援しよう!」というキャッチフレーズのもとで、官民による被災地の食品の積極的利用の推進も図らせていただきまして、農林水産省内でもやらせていただきました。

 また、ことしの一月だったと思いますが、福島県が開催をされました交流会にも私も参加をさせていただいて、多くの皆さんが御出席をいただいておりましたので、こういうことを一つ一つ積み上げていくことが大事なことではないかなというふうに思っております。

 先生御指摘のとおり、風評被害というのは本当に難しいものだと思います。私は鹿児島でございますが、桜島が爆発をしたといってニュースになりますと、全く観光客に御迷惑をおかけすることもないし、心配はないんですけれども、必ず風評被害が出ます。

 しかし、我々はそういうことにめげずに、しっかりとした情報を皆さんにお伝えするということが大事なことではないかなというふうに思っておりますので、風評被害の払拭のために、今後とも関係省庁とも連携をさせていただきまして、取り組んでまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 私が申し上げていることは御理解いただき、そしてまた、今までのいろいろな取り組みもしていただいているというのはわかるんですが、なかなか具体的な策がないという状況なのかもしれません。

 しかし、例えば、森山大臣は福島県産品のものを毎日何か食べていただいていますでしょうか。

森山国務大臣 毎日は食べておりませんが、お米につきましても、全量検査の現場を見せていただきましてから、できるだけ福島県産の米を買うように家内にも娘にも話をしております。それから、やはり福島のお酒というのは焼酎に負けないぐらいおいしいなと思っておりまして、そういう面でもできるだけの努力をしていくということが大事なことだなと思っております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 ぜひ毎日福島県産のものを、これを食べているということを大臣みずから発信していただきたいんですよ。

 そうすると、やはり一番いいのは米だというふうに思います。先ほど申し上げましたように、日本一安全、安心な米ですので、ぜひ召し上がっていただきたいと思いますし、私の地元では、伊達市というところなんですけれども、あんぽ柿がとても有名なところでございまして、多分召し上がっていただいているとは思いますけれども、ぜひ応援をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。私自身もいつも発信させていただいております。

 次に参りますが、やはり原発事故により、人のいないふるさとも含めまして、福島県では鳥獣被害が本当に拡大してまいりました。実際に、震災以降、イノシシの捕獲対策を強化して、震災前の平成二十二年に比較して、平成二十五年は三倍強もの頭数を捕獲しています。しかし、イノシシによる農作物への被害は年々増加し続けているという状況にもなっております。

 福島県の浜通りというところがありますが、浜通りを中心とした阿武隈山系では、避難指示区域内で人の活動というのは行われていない状況でありますので、当然、山にも入らないという状況です。そして、捕獲しても食肉への利用というのができないということで、狩猟者の捕獲意欲も当然のことながら低下もしているという状況であったり、こういう本当に放射能との戦いということで、福島県の特殊事情があるということもあります。

 しかし、また一方では、浜通りだけではなく、中通り、会津地方というところもやはり同様の傾向がありまして、捕獲や被害防止対策が追いつかないという状況になっておりまして、大変深刻な事態となっているところでもあります。

 これまでも農水省としていろいろな取り組みをしていただいているんですけれども、例えば鳥獣被害防止総合対策交付金もありますし、また、福島の避難区域等に関して言えば、営農再開支援事業での取り組みもできます。

 ただ、福島県への今年度の鳥獣被害防止総合対策交付金の割り当て額は、要望額に対して八〇%でした。特に、侵入防止柵などの整備事業については補正では割り当てがなかったということでありまして、実際に要望額の七八%にとどまって、市町村から不満の声が大変出ているという状況であります。

 福島県内の市町村から来年度の鳥獣被害防止総合対策交付金要望額は、既に前年度比二八%増の状況になっているのが実情なんですが、農水省の平成二十八年度の鳥獣被害防止対策推進事業では、今年度、二十七年度と同額予算しか計上していないということであります。

 当初から要望に応え切れない状況にあるわけなんですが、今後、どのような方針でこの鳥獣被害対策を進めていかれるのでしょうか。

伊東副大臣 金子委員の御質問にお答えいたします。

 鳥獣被害防止総合対策交付金でありますが、御案内のとおり、新年度も本年度と同額の九十五億円が予定をされているところであります。

 鳥獣被害防止のための侵入防止柵の整備につきましては、全国の都道府県からの御要望に対しまして、各地域の被害状況や事業計画のポイント等の基準に基づきまして、それぞれの都道府県に配分をさせていただいております。

 二十八年度につきましては、今、都道府県からの要望を取りまとめているところでありますが、農水省といたしましては、限りある予算を活用しての効果的な被害防止、こうしたものにつなげることができるよう、計画的な柵の整備等、都道府県への助言、指導を行ってまいりたいと考えております。

 なかなか、これだけ、鹿、イノシシ、猿等々、ふえてまいっている状況でございますので、都道府県の要望に即座に満度に応えるだけの予算配分がないところが私どもとしても残念でございます。

 ただ、今委員がおっしゃられましたように、福島県に関しましては、福島県営農再開支援事業、また東日本大震災農業生産対策交付金というのが侵入防止柵の整備費として使えることにもなっておりますので、こうした点も御活用いただきますよう、これはまた特別交付税で措置されることになっているところでもございます。

 以上でございます。

金子(恵)委員 今おっしゃっていただきました営農再開支援事業は、対象になっているのが避難区域等ということで、避難区域だったところ、それと周辺地域等ということで、限られた範囲でありますので、対象にならない地域に対して、でも、この事業の対象にはならないけれども、先ほど来申し上げているように、やはり放射性物質との戦いがあったり、風評被害との戦いというようなこともあって、大変厳しい状況にある農業者の方々にとっては、この鳥獣被害というのは、本当に二重にも三重にも、大変大きな課題になってくるわけです。

 ですので、私はやはり今の交付金制度をもう少し予算確保していくというようなことが本来必要になってくるのではないかというふうに思いますし、福島県独自の対策はしていただけているということではありますけれども、繰り返しになりますが、それで対応できないものがあるということをぜひ御理解いただきたいというふうに思っております。私は応援団ですので、ぜひ予算獲得のために、またさらに頑張っていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 それで、ちょっと時間がありませんので、最後に福島の森林・林業の再生についてお伺いしたいというふうに思っております。

 さきに予算委員会の分科会でこのことについて御質問をさせていただきまして、ちょうどそのときは環境分科会だったものですから、伊東副大臣に御答弁をいただきました。

 これは、十二月の二十一日に環境省の環境回復検討会で森林における放射性物質対策の方向性を示し、そして、住宅など生活圏から二十メートルの範囲と日常的に人の出入りがある場所を除き、大半の森林では除染しない方針となっていたということから、これに対して林業関係者からは大変厳しい御指摘がありまして、除染しなければ林業の再開は難しいという声があったり、あるいは、県の森林組合連合会の関係者からは、除染をしない森林で働く作業員の精神的不安に配慮すべきだ、そういう指摘があったり、シイタケの原木については、除染しないと原木林の再生がさらにおくれてしまう、そういう声が上がったりということがありました。

 一月四日には福島県からの要望があり、そしてまた、一月の二十七日には飯舘村、飯舘村議会から農水大臣に要望書の提出がされているところでもあります。御存じのとおり、里山全体の除染実施を求めることや、放射性物質対策と森林整備を一体的に行う森林の再生を長期的に進めるための財源確保と森林内の作業員の安全確保のための被曝対策マニュアルの作成を求める内容というふうになっていました。

 これを受けて、二月の五日に、環境省、農水省、復興庁の三省庁によって、福島の森林・林業の再生のための関係省庁プロジェクトチームが設置されているわけです。第二回目がきょうの夕方五時半から開催されると伺いました。

 きのう質問通告をいたしまして、レクをしているときに、ということであれば、もう既に方向性など、案というものが出ているのではないかというふうにお伺いしましたところ、それがまだわからないということでありましたが、実際に、大臣、きょうの読売新聞の一面をごらんになっていらっしゃると思うんですが、中央紙の一面です、「森林除染 里山に拡大 政府方針 福島十カ所で検証」これが見出しでございます。

 それで、地元紙も一面で取り上げているわけなんですが、どうもこの発信源というのは、総理が被災地の地方紙の四紙の合同インタビューに応じた際にこのことをおっしゃったということでありますので、私は急遽質問の内容を変えなくてはいけなくなりましたが、本当であれば、改めてここでその方針をお伺いするというか、その成果、どういうものを目的としてこのプロジェクトチームでの協議がなされているかということをお伺いするところではありました。

 でも、今申し上げましたように、ここに書かれていることが事実なのか、今お答えいただきたいとは思いますけれども、実際には、里山約十カ所をモデル地区として選定し、そして、結果を検証した上で対象範囲を決定するという、基本は除染範囲を拡大する方針を固めたということでよろしいですか。

森山国務大臣 金子委員にお答えをいたします。

 本日の夕方からこのプロジェクトの会議をいたしますので、そのことにつきましてはコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、二月五日に第一回の会合が開催をされまして、私も出席をいたしました。県の御要望、あるいはそれぞれの自治体、団体の御要望も踏まえまして、今後の方向性について議論をしたところでございます。

 その中で、ちょっと酌み取っていただきたいと思うのでございますが、地域の安全、安心の確保ということが一つございます。それと、里山の再生に向けた取り組みということがございます。もう一つは、林業の再生に向けた取り組み等について検討を進めてきておりますので、きょう取りまとめをさせていただきたいと思っております。

 今後とも、福島の森林・林業の再生に向けた取り組みを一層進めてまいりたいと考えておりまして、福島につきましては森林・林業というのは非常に大きな産業でもございますので、しっかりやらせていただきたいと思います。

 きょうマスコミで報道されていることは私も承知をしておりますけれども、今申し上げたことで、この記事がどうかという御判断はぜひ金子委員の方でなさっていただければと思います。

小里委員長 金子恵美君、申し合わせの時間が経過しております。御協力をお願いします。

金子(恵)委員 はい。ありがとうございます。

 新聞報道がこれだけ大きくされていることについて、ではどう思うのかと本当は聞きたいところでありますけれども、本当に明確に方針を固めたというふうに書かれているわけですよね。それについてどうなのかと今お伺いしましたけれども、コメントは控えるということであります。

 実際に今後どうするのかということをお考えいただきたいと思います。私は、実は、農水大臣、森山大臣にこのPTでしっかりとリーダーシップをとっていただきたいと応援の言葉を、激励の言葉を申し上げたいと思っていたんです。そして、その上で、きょうの五時半のPTに臨んでいただきたい、ぜひ、福島の森林・林業の再生をしっかり目指していただきたい、そして、地域の皆様方の里山も含めての除染をしっかりして、生活を守っていただきたい、そういうことを申し上げさせていただきたかったんです。

 でも、新聞報道が先行してしまったのか、総理の発言が先行したのかよくわかりませんけれども、極めて残念で、森林組合からは、福島県の森林組合連合会の秋元組合長は、オブザーバーとしてでも会議に参加させてほしいというふうに言っていたんです。そして、要望書の中には、ぜひ自分たちの聞き取り調査を実施してほしいと言っていたんです。

 ですので、こういう状況では本当に地元の声が反映されているのかわからないということでありますので、もう時間がありませんのでここでやめますが、私は、もしPTがきょうで終了、たった二回でPTが解散ということになるのであれば、今後、PTにかわる、このような会議体というものをしっかりと設けて、これからの取り組みをしっかりとチェックできるような、そういう場を設けていただきたいということを強く求めまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

小里委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民主・維新・無所属クラブの福島伸享でございます。

 本日は、森山農林水産大臣と農政に関する議論をできることを本当にうれしく思っております。予算委員会では、ずっと前に座っていらっしゃったんですけれども、甘利大臣や総理にお聞きすることの方が多くてなかなか大臣にお聞きできなかったものですから、きょうは、ずっと農政に取り組んできた森山農水大臣に、特に現場の農家の皆様方に響くような答弁をお願いしたいと思っております。TPPのことは、恐らく特別委員会があるでしょうから、特別委員会の場でたっぷり議論をさせていただければと思っております。

 さて、所信表明を聞いておりまして、私はどうも違和感があるのは、攻めの農林水産業へ転換するというんですけれども、今までの農業政策というのは守りの農林水産業だったんですかね。攻めの農林水産業というのは一体何を意味するのか、恐らく現場の農家のほとんどの皆さんは何もぴんときていないと思います。そういうことを言えば言うほど、何か言葉だけが躍って、何やってんだっぺなというのが大体うちの地元の農家の皆さんの思いですよ。

 農林漁業者の将来への不安を断ち切り、経営発展に向けた投資意欲を後押しするという言葉も、いかにも役所的に見たらきれいな言葉ですけれども、農林漁業者の将来への不安というのは何にあるんでしょうかね。これは恐らく政治の姿勢とか、政策の方向性とか、TPPも含めて、そういうことだろうし、経営発展に向けた投資意欲を後押しするというのも、一見もっともらしいんですけれども、週刊ダイヤモンドとか日経ビジネスには出てきそうな言葉ですけれども、一体何を言っているんだというのが大体の生産者の思いだと思うんですよ。

 私は、日本の農林水産業が抱える問題は、もっと本質的な問題があって、その本質的な問題というのを今余り触れていないんじゃないかなというのが私の問題意識なんです。

 恐らく、森山大臣も、この所信表明演説を役所から渡されて読んだだけだと思うんですね。役所が考える以上に、森山大臣はずっと農政に取り組んでこられたし、我々が与党時代は一緒にTPP交渉に反対を、山田元農水大臣などとともにやってきたんですね。

 ですから、ぜひ、自分のお言葉で、新農水大臣につかれて、これをやっていきたいということを今ひとつお話しいただけませんでしょうか。

森山国務大臣 新しい農政をどう進めていくかということは、現状を見ていただいても、皆さんお互いに理解ができることではないかなというふうに思っております。高齢化をしているということもそうでありますし、耕作放棄地がふえてきたということもそのとおりであります。ですから、ここをどう我々は打破していくかということが大事なことだなというふうに思っています。

 ただ、福島委員、私は、日本の農業というのは、いいものをつくるということにおいては非常に評価をされてしかるべきではないかなというふうに思っています。安心、安全なものをつくる、それは世界的に評価をされる、そのことが日本食ブームにもつながっているということでありますから、ここは私は正しくやはり評価をしておかなければいけないのだと思います。

 こういう強みを生かして取り組んでいくということが攻めの農業ということになるのではないかなというふうに思っております。

 ただ、私の地元のことで大変恐縮でありますが、農村文化のいいところだと思うんですけれども、自分のところで育てた子牛を市場に持っていきますと、きょうは隣の子牛よりも二万円高く売れたといって非常に喜んで、一族郎党集まって焼き肉パーティーをやって喜ぶというのが農村の一つの文化だと思います。

 ただ、隣の子牛とうちの子牛の生産原価はどうだったのかなというところまではまだなかなか考えが及んでいない農家もあられるのではないかなというふうに思っておりまして、やはり、農業という業でございますから、どう所得につなげていくかというところもしっかりやらせていただかなければなりませんし、そのために我々がどういう政策をつくり、どういう情報を提供していくかということが大事なことではないかなというふうに思っています。

 もう一つは、やはり、農村といいますか、農村集落といいますか、多面的な機能を果たしているということは、これはもう国民の皆さんにひとしく御評価をいただかなければならないことでございますので、そういう多面的な機能を農村あるいはいろいろな地域が果たしているということに対しての政策というものもしっかりやらせていただくということが大事なことだと思っておりまして、それを産業政策と地域政策の車の両輪でしっかりやっていこうということであります。

 最も果たさなきゃいけないのは、やはり食料の自給率をどう高めていくか。食については、やはり、安心をしていただけるように、農業、水産業というところが頑張っていくということが大事なことだと思っています。

福島委員 答弁ありがとうございます。

 私も同じような思いでありまして、安心いたしました。森山農水大臣が、あっち側の人間に行っちゃったんじゃないかというような所信表明ではなくて、現場の感覚にしっかり根差した、私は今までの農家がみんなだめだったとか能力がなかったとか卑下する必要はなくて、今までも攻めてきたし頑張ってきたんですよ。それを殊さら改革だ何だと言って的外れの政策をやって踏ん張るよりは、今頑張っている人に寄り添ってあげるような地道な政策の積み重ねしか日本の農業を強くする道はないと思っておりますので、今の答弁に安心した次第であります。

 というのも、資料の一にありますけれども、「安倍内閣の農業政策をどう思いますか。」これは農業新聞のJAの組合長に対するアンケートですけれども、「高く評価する」、これは見えないぐらいの〇・六%なんですよね。もう見えません。「全く評価しない」が半分近くの四七・八%、「どちらかといえば評価しない」というのが四四・七%で、もうほぼ九割を超える、評価をしない評価を受けちゃっているわけですよね。

 それは、今の大臣の答弁であれば、うん、一緒に農政を進めていこうという気になるでしょうけれども、攻めの農業だとか、輸出だ何だというのを見ると、現場にいる人は、何か自分たちと違う人たちの話かなと思っちゃっているのが私はこの結果だと思います。

 感想を求めようと思ったんですけれども、今の答弁、しっかりいただきましたので、それは省きます。

 それは、いろいろな理由があると思います。一つは、不安だと思うんです。一番大きな不安は、言うまでもないですけれども、TPP。もう一つは、今、日・EUの交渉をやっていますよね。TPPや日豪EPAのときは、我々決議をして、その決議に従って交渉していただいた。その決議が守られたか守られないかという議論はありますけれども、この日・EUのEPAにはそのような決議がありません。例えば、EUから日本へ輸出している第三位のものは豚肉であります。チーズなどの乳製品も非常に強い競争力があります。当然、TPPの交渉の結果がこうなったならば、それと同レベルのものをEUは求めてくるはずと思っております。

 今、この日・EUのEPAというのは、どのような点を、特に農林水産分野に限って言えば要求され、論点になっているのか、御答弁いただけませんでしょうか。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 日・EU・EPA交渉につきましては、二〇一三年四月から開始されまして、これまで十五回、交渉会合が開催されました。最近におきましては、農林水産品の関税を含め、個別の品目の議論も行われているところでございます。

 ただ、交渉中でございますので、個別品目の具体的な相手の要求でありますとかということにつきましては、相手方の関係もありますし、交渉に影響を与えるおそれがありますので、お答えは差し控えたいというふうに思っております。これはほかのEPAでも同様でございます。ただし、お互いの関心分野については精力的な議論が行われている、先生の御指摘する品目も含めてでございます。

 一点だけ申し上げますと、方針につきましては、平成二十七年三月三十一日に閣議決定されました基本計画におきまして、EUも含めて、我が国の農林水産品がこれらの交渉において慎重に取り扱うべき事項であることに十分に配慮し、重要品目の再生産が引き続き可能となるよう交渉を行うというふうにされております。

福島委員 大臣、お聞きしたいんですけれども、例えば豚肉についてTPP並みの関税の水準までなったり、乳製品の拡大をTPP並みかそれ以上に求められるということは絶対あり得ないですね。どういう方針で臨んでおられますか。今の大澤審議官の話でなくて、大臣のお言葉として。これはみんな報道、隠れてわからないんですよ。

 もしTPP並みの開放になれば、これまで対策でいろいろな試算を出していますけれども、それ以上の壊滅的な影響があると思いますよ。でも、日・EU・EPAをTPP並みじゃない水準で抑えることなんて本当にできるんですか。ベースはTPPで、ここまであんたたちアメリカに開いているんだから、オーストラリアに開いているんだから、それと同水準へ開けという要求をするのは当たり前ですよね。それに応じることは絶対ないですね。どうですか。お答えください。

森山国務大臣 現在交渉中でありまして、そのことにつきまして直接お答えをすることは御遠慮したいと思いますが、日・EU・EPA交渉におきましては、我が国の農林水産品のセンシティビティーに十分配慮しながら、重要品目の再生産が引き続き可能となるようしっかりと取り組んでまいりたいと思いますし、そのことに尽きると思います。

福島委員 今の答弁を聞いて、畜産農家や酪農農家は大いに不安になったと思います。まさに同じ答弁をしてTPPのこの結果になったからこそ、九割以上の人が安倍農政を評価しないと言っているんですよ。再生産可能な水準といって今のTPPの水準まで開放したんだから、日・EUも当然そこまでは応じる覚悟があるという答弁だというふうに受けとめさせていただきました。

 これは予算委員会でも議論しましたけれども、対策を講じるから日本の畜産や酪農製品の生産量は一トンたりとも減らないという試算結果を今政府は出しております。それでいいですよね。それを出しております。その対策の中心は、今補正予算や予算で講じております畜産クラスターという制度が一番の根幹にある。それ以外にも草地の基盤整備とか幾つかありますけれども、それが一番の中心なものだと思っております。

 全国に今五百六十六の畜産クラスターがあって、でもこれ、地元で聞いて、畜産クラスターがTPP対策になるなんて言っている人はほとんどいないですね。私、いろいろな人に聞いてまいりまして、団体の人にも聞きましたし、実際、生産現場で頑張っておられる若手の人や、多少大きくやっている人にも聞いてきました。

 これは実際は、七割の四百二十四事業が機械リース事業なんですよ。何をやっているかといったら、本来、クラスターというのは、地域で耕畜連携を進めたり、複数の家族経営の農家の皆さん方でいろいろ施設を共有化したりすることによって効率化をしようという趣旨だと思うんですね。その趣旨は私は決して間違えていないと思うんです。でも、実際はどうなっているかというと、農機具屋さんが補助金の申請書を持って回って、形だけのクラスターをつくって機械のリース事業の適用を受けているというのが、私が地元で回ってきた多くのところの実態なんですよ。

 施設整備にも出ますけれども、これは二分の一補助です。数千万円あるいは億単位する施設整備をするときに、今でさえひいひい言って大変で借金を抱えているのに、新たに借金を抱えて残りの二分の一の施設整備費の負担をする農家は、家族経営の農家でほとんどいません。大体、大規模なところはこれが使える、でも、僕らは施設整備なんというのは縁のない話だから、結局、農機具屋さんに言われるまま、形だけのクラスターを市町村とともにつくって、機械のリースだけやって新しく機械を買いかえましょうという程度の人が多いんですよ。

 こうした実態、把握されていますか。どうですか。

森山国務大臣 福島委員の言われたようなことを私も耳にすることもあります。しかし、今は、クラスターにつきましても、効率的にやっていただかなければなかなか適用にならないような仕組みになっておりますので、そのことはかなり是正をされてきていると思いますし、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。

福島委員 私がここで何を言いたいかというと、先ほど農政の本質的な問題に気づいていないんじゃないかというお話をしました。クラスターをやりたくてもやれないんですよ。なぜなら、畜産農家は、北海道とかならわかりませんけれども、私の地元の茨城県のような農業生産高が二位の農業県であっても、地域では結構肩身狭くやらざるを得ないんですよ。においの話とか、あるいは、農機具を移動するときに土が落ちてそれがちょっと汚くするとか、いろいろ言われる中でやらざるを得なくて、地域の中でそうした畜産農家を餌の飼料用米の生産農家も含めてつないでいってまとめるという地域コミュニティーをつくることすら今できなくなっています。

 私の地元の市町村で農業生産があるところでも、農政課があるところがないんです。昔は農政課というのがありましたよ。今は、経済課の中の農政係として、数人が国からの補助金申請の窓口をやっているだけであって、現場に出向いて複数の畜産農家やそれにかかわるいろいろな人をまとめてコーディネートする力なんというのは今自治体にはなくなっちゃっているんですよ。

 ここが実は一番の農政の目に見えないけれども問題であり、お金は決して、補助金で解決するような問題じゃないかもしれませんけれども、地域コーディネート能力がないということが問題で、私は畜産クラスターの理念そのものは間違えていないと思いますよ。畜産農家を取り巻くいろいろな人で共通して合理化をしていき、みんなで支え合って効率的な経営を目指すという方向は決して間違えてはいないと思うけれども、幾らそれをやろうとしても、やりたくてもできないという現状の方がもっと重い農村が抱えている問題だと思うんです。

 いろいろ、補助金の申請のときに、どのぐらい生産費が減ったかとか飼育頭数がふえたかとかという効果を評価する評価の仕方があります。しかし、それは、形どおりの、補助金が適正に執行されているかどうかというのをチェックするためのものであって、もっと私は、その地域のコーディネートの組織をつくるところから、行政なり、行政ができないのであったら別なものでもいいんですけれども、何かが寄り添ってしっかり面倒を見てパッケージで財政資金を投じるんだったら投じないと、絵に描いた餅に終わると思います。

 そして、多くの今回畜産クラスターのお金を受け取っている人たちは、今回が最後かなとか、この機械が壊れちゃったらもうやめっぺと言っているところが多いんです。決して政府の、畜産クラスターをやって対策を講じれば生産量が一トンたりとも減らないなんというのは、全く信じられている状況じゃないということはぜひ御認識をいただきたいというふうに思っています。

 二点目は、よく何かというと輸出、輸出と言うんですよ。輸出、輸出と皆さんが言う。

 安倍総理も、一月二十二日の施政方針演説で、二〇二〇年までに農林水産物の輸出を一兆円にふやします、この目標を三年前に掲げたとき、無理だという声が上がりました、できないとも言われました。誰が言ったのかは知りません。我々はこんなことは言っていません、我々のときもやっていたから。しかし、輸出額は昨年七千億円規模に達し、その結果、過去最高を三年連続で更新いたしました、こういうことを自慢げに言うのはちょっと恥ずかしいし、日本人の美徳に私は反すると思うんですね。

 資料三というのをごらんになっていただきたいと思います。

 平成二十六年から平成二十七年までで、確かに農林水産物の輸出は六千百億円から七千四百億円に二割ぐらいふえております。しかし、ふえた多くは、例えば加工食品、アルコール飲料、調味料、清涼飲料水等が二六%ふえた。あるいは水産物、水産物がふえるのはいいことなんですけれども、二〇%。林産物、製材、合板等が二四%。果実とか野菜も四割とかなりふえているのは事実です。それはすばらしいと思います。

 しかし、生産額に対して見れば、例えば米は、輸出は米の日本国内の生産量の〇・一%にすぎません。ここに書いてある畜産物のうちの牛肉、これも一・八%にすぎません。今輸出が盛んになっているリンゴでも九%。国内の生産量に占める輸出の割合なんというのは微々たるものなんですね。額でいえば、水産物とか加工食品が圧倒的でありますし、今回の一年の増加の寄与率で見ても、加工食品が三割、水産物が三割。農産物の寄与度、例えば果実、野菜なんというのは輸出増加に対する寄与度は八%であって、ほとんどが加工品なんですね。

 平成二十七年の農林水産物、食品の輸出額のうちの上位五位というのは一体何でしょうか。お答えいただけませんでしょうか。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 一位がホタテガイ、二位がアルコール飲料、三位が真珠、四位がソース混合調味料、五位がたばことなっております。

福島委員 ありがとうございます。

 だから、総理が七千億に農林水産物がふえたと言うから、静岡の茶とかが劇的にふえたと思いきや、ホタテガイは中国の爆買い。北海道で頑張っている村があります。それで伸びている。これは一つのいい例だと思います。あとはアルコール飲料、真珠、ソース混合調味料、たばこですから、純粋な農林水産物で農家の所得がふえるというような輸出ではないわけです。

 ここで大臣にお聞きします。

 そもそも、輸出を強化することで日本の農業にどういう効果があることを大臣は期待されているんでしょうか。

森山国務大臣 農林水産物、食品の輸出を通じて生産者の所得向上を図るということは大変大事なことだと思っております。例えばリンゴとか長芋とかいった、これまでも先進的な取り組みによって大きく輸出を伸ばしている品目についてはそのことが言えると思いますし、今後は米とか牛肉とかお茶などの輸出を伸ばしていくということが大事なことだと思っております。

 他方、今、福島委員が御指摘をされていましたように、輸出金額の約三割を占めている加工食品については、生産者の所得拡大につながらないとの御指摘があることも承知をしております。例えば、みそ、しょうゆの原料である大豆とか、菓子の原料である小麦とか、清涼飲料水に含まれる砂糖などは、原料の輸入比率が高い状況にあります。このままでは、それらの品目の輸出を伸ばしましても、国内農産品の生産額の増加には直接はつながりにくい面があるということは理解をしております。

 一方で、ちょっとうれしいことがあったんですが、一月にシンガポールに出張させていただきまして、シンガポールの百貨店に参りましたら、滋賀県のタマネギを原料としたドレッシングの加工品が売られていたり、地元のことを言って恐縮ですが、私は鹿児島でも見たことのない、鹿児島のサツマイモを原料とした煎餅が売られていたりいたしましたので、こういう国産品を原料とした加工食品の輸出拡大というのもしっかりと見ていかなきゃいけないなというふうに思っております。

 こういうことも踏まえまして、製造業が国産原料を活用しやすい環境を整えるということが大事なことだと思いますし、六次産業化の推進等によってこのようなことをしっかりと図っていくということが大事なことではないかなというふうに思っております。

福島委員 非常に公平な御答弁ではないかなと思っております。

 所得向上につながると言いますけれども、輸出するには、売り上げもあるかもしれないけれども、売り上げるためのコストや手間もかかるわけですね。私は、輸出をすれば何か農家の所得が向上して立派な家を建てられるみたいな幻想を振りまくのは大げさだと思うんです。

 ただ、輸出は必要です。それは一つは何かというと、輸出を目指して、さっきおっしゃったようなタマネギのドレッシングのような、新しい商品をつくるために工夫をしたり、あるいは輸出をしたことによって、それが輸出にもたえ得るような高品質なものだとしてブランド化されて、逆に日本で売り上げがふえたり、輸出をちょっと考えることで生産者の経営マインドが向上したりという効果はあると思います。

 しかし、私は、日本の国内で、自動車産業のような輸出の四番バッターに農業はなり得ないと思っております。なるべきでもないと思っております。

 いろいろな輸出のチャンネルを開くことは必要ですよ。ただ、余りにも輸出に大きな期待をかけて、農業再生の四番バッターにするのは間違いだ。言ってみたら、あえて言えば、代走のようなものだと思うんです。局面を変えるために、スペシャリストとして輸出を持ってくるのはいいけれども、四番バッターではないと思うんですよね。

 その点をぜひ認識されて、輸出の政策というのを取り組んでいただきたいと思います。

 比較優位という概念が経済学ではあります。絶対優位ではなくて、その国の産業の中で比較して優位のものに特化した方がGDPがふえるという考えが乱暴に言えば比較優位の考えで、農業は残念ながら日本の産業の中で、比較優位のものもあります、さっき言ったホタテとか、そういうものは比較優位なんだと思います。しかし、そうじゃないものもあるわけでありますから、決して幻想を振りまくことなく、むしろ大事なのは、輸出相手国の検疫の規制とか食品安全の規制とかを変えるための粘り強い交渉を政府が前面に立ってやることであって、何か輸出農家のところに後からちゃらちゃら視察に行って、頑張っていますなんという宣伝等をやったことで政策をやったふりをするということは、あってはいけないんじゃないかなと思っております。

 ほかにいっぱい聞きたいことがあったんですけれども、時間がないので、もう一点だけ、今の政策で、これはどうかなというものをお話ししたいと思っております。

 それは、これも安倍総理が一月二十二日の施政方針演説で、意欲ある担い手への農地集約を加速します、そのため、農地集積バンクに貸し付けられた農地への固定資産税を半減する一方、耕作放棄地への課税を強化します、大規模化、大区画化を進めて、国際競争力を強化しますと。これは、本当に税を変えてどのぐらい効果があるのか、私は非常にナンセンスな話だと思っております。

 まず、これは温かい太陽政策のお話でありますけれども、所有する全ての農地を農地中間管理機構に十年以上の期間で貸し付けた場合は、固定資産課税を二分の一に軽減するという税制改革であります。これは、所有する全ての農地を貸さなきゃならないわけですから、この人は離農する、もう農業をやめちゃうという判断をすることが条件です。

 これは、固定資産税を二分の一に減免して、十アールあたりどれぐらい減税効果があるんでしょうか。

奥原政府参考人 現在の農地の固定資産税の全国平均でございますけれども、十アール当たり約千円でございます。

福島委員 十アール当たり千円だから、それを二分の一に軽減すると、十アール当たり五百円ですよ。十アール当たり五百円の固定資産税が軽減されるから農業をやめて農地中間管理機構に出す人なんて、私はいるとはとても思えませんね。

 こういうまやかしの政策を堂々と施政方針演説で言う内閣そのものが、私は、さっき言った、九割以上、安倍農政を評価しないという根本になっていると思うんです。

 もう一つ、遊休農地への課税強化というものがあります。

 資料の二というものをごらんになっていただきたいと思います。

 これは、農業委員会が農地法に基づいて、中間管理機構に農地を出しなさい、その協議をしなさいということをやって、応じない農地に課税を強化するというものであります。

 平成二十七年に、農地中間管理機構へ協議しなさいと農業委員会が勧告をした状況というのがここにございます。

 岩手県は一件で三ヘクタール、これは、農地を相続して、実際にはそこにいない不在地主の人がほったらかしにしていたという例で、これはまさにこの勧告に当たるものだと思っておりますけれども、あと、あるのは四県だけ。愛知県が三十件で四ヘクタール、滋賀県が、田島さんがいますけれども、一件で〇・二ヘクタール、福岡県は百四十件もあるけれども、合わせると十四ヘクタール。

 大体〇・一ヘクタールぐらいの土地なんですよ。つまり、端切れ地。ため池の横にちょっと不格好になった土地とか、そういうものが中心であって、実際にこの勧告を受けた者に課税を強化したからといって、優良な、別の新しく耕作するような人が出てくるような農地が出てくるとは限らないんですよ。

 大臣、この実績を見て、果たしてこの税制改悪が、課税強化ですけれども、大規模化とか大区画化の有効な手段になり得ると本当に思われますか。どうですか。

森山国務大臣 農地中間管理機構を活用させていただいて、遊休農地の解消と担い手への農地集積、集約化というのは、農業を成長産業化させていく上で極めて重要な課題だと思っております。

 十年間で担い手の農地利用面積のシェアを八割に引き上げるという目標を達成するために、機構を早期に軌道に乗せていく必要があります。

 機構の初年度の実績から見た問題点の一つは、農地の所有者がみずから耕作できない農地についてもなかなか貸し付けに踏み切れないということもあり、税の仕組みも使って所有者の機構への貸し付けインセンティブを強化するという考え方でございますので御理解をいただきたいと思います。

福島委員 いや、これは〇・一ヘクタールなら端切れ地しかないんですよ。そんなところを耕作したいと思って借りる人がいるとは思えません。でも、今の大臣の答弁をお聞きして不安になってきました。

 農地法三十六条「農地中間管理権の取得に関する協議の勧告」というところは、農業上の利用の増進が図られないことが確実であると認められたときは、農業委員会は農地中間管理機構に協議の勧告をできることになっている。

 今はこのような端切れ地を勧告するにとどまっておりますけれども、これから農水省として、課税強化をもっとやっていけ、各地の農業委員会は積極的に、今耕作している人であっても、この人は余り草もむしっていないし真面目にやっていないようだから課税強化しろといって通達を出して、農業委員会に、ばしばしと不良農家取り締まりキャンペーンみたいなことをやって協議の勧告に応じさせるような、そういうことをやるおつもりはあるんですか。今の答弁を聞いているとそのように見えましたけれども、どうですか。

小里委員長 時間が経過しておりますが、簡潔に答弁願います。

 奥原経営局長。(福島委員「大臣、大臣の方です。局長はいいです。もう時間がないので、大臣、お願いします」と呼ぶ)

奥原政府参考人 委員長の御指示でございますので、私から答弁させていただきます。

 我々、課税の強化を目的にやっているわけではございません。あくまでも農地をきちんと使って、農地は農地として効率的に使う、これが目的でございますので、適正にやっていくつもりでございます。

小里委員長 恐縮ですが、既に相当経過しております。以上で質疑は終了したいと思いますので、よろしくお願いします。

福島委員 はい。

 課税の強化じゃないというんだったら効果がないんですよ。

 私は、余りちゃらちゃらした農政はやらない方がいいと思うんですよ。なぜ評価されていないかというのを真摯に見詰めた上で、言葉だけが躍って効果のない政策をさも改革のように言いふらす農政ではなくて、地道な農政をやっていただく、そのことを望みまして、質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小里委員長 次に、升田世喜男君。

升田委員 民主・維新・無所属クラブの升田世喜男です。

 本日は、質問の機会をいただきました。感謝申し上げたいと思います。

 大臣の所信の演説を受けて、一般質疑でありますので、我が農水行政について質問をさせていただきたいと思います。

 今、福島委員から格調高い御質疑があったわけでありますが、私は地域密着型で参っていきたい、こう思っております。

 ホタテ養殖のかごにつく残渣の問題を一番目に取り上げていきたいと思うんです。

 まず、このことをお伺いしたいという背景は、もう既にこの問題点は大臣が御存じだと思うんですけれども、いわゆるホタテの養殖かごについている残渣を船の上から機械を使って海に投棄するのは、国交省の通達によってこれは可能になったわけでありますが、依然として、一旦陸に揚げるといっても、いわゆる海のすぐそばなんですね、船ですから。目の前が、五メーター、六メーター先になると海ですから。しかし、一旦これを陸に揚げると、今度は産業廃棄物ということで捨てることができないということなんですね。これが漁師にとってはなぜなんだということなんです。

 もちろん、海洋投棄処分を規制するロンドン条約でしょうか、これに我が国が加盟しているので、この関係でそういうことが不可能になっているというふうに私は理解をしているんですが、しかし、現場、実態論からいきますと、実は、選挙区で平舘という地区がありまして、これは相当今困っているんですが、一トン当たり処理費が一万八千円ぐらいかかっちゃうんですね。二トン水揚げすると一トンが残渣ですから。

 ここで誤解があるのは、ホタテガイの残渣というんですから、あのホタテの貝をどんと捨てているように勘違いされますけれども、そうじゃないんですね。これはかごにつくものですから、ワカメの変わったようなものですよ。あるいは、地元用語で言ったらゴモなんですね。それは海のものなんです。海のものを海に捨てるのがどうしてだめなんだということなんですね。

 その結果、漁師では何が起きているか。その平舘という地区は、もっとたくさんあったんですが、今、七十五から八十業者しかない。しかし、ここ数年間は毎年三つの業者がやめているんです、漁師が。その原因は全て残渣費用なんです。こういう現状を考えてきますと、これはもういいじゃないかというふうな政治判断といいましょうか、知恵を絞るということが私は必要だと思うんです。

 まず、このことに対して、どうして廃棄物というそこに縛られていかなきゃいけないのか。同じ海洋投棄、いわゆる船の上から捨てるのも、陸といったって、しぶきが飛ぶような、もう海とほぼ同じなんですから。こういう御判断ができないでしょうかと思います。大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 お答えいたします。

 ホタテ養殖業において、ホタテガイを陸上で処理する際に発生する残渣の処理が漁業者等の負担になっているということは認識をしております。

 また、陸上で処理する際に発生する残渣を海洋投棄することにつきましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等に基づきまして、原則禁止されているものと認識をしております。

 農林水産省といたしましては、漁業者等の負担の軽減のために、強い水産業づくり交付金を活用していただきまして、処理施設等の整備に支援を行っているところでありますし、今後とも、漁業者等の要望を踏まえて支援を行ってまいりたいと考えております。

升田委員 委員長、私は興奮するたちでありますので、後ほど興奮したらいさめてほしいと思うんですが。

 支援措置というのはわかるんですね。残渣を使って農地の肥料をつくったりとかこういうことをやっているんですが、私は、困り事を解決するために生産者から負担を求める解決は、本当の解決策ではないと思うんです。例えば、先ほど国交省の通達で船の上からオーケーですと言いました。これは、助かっている業者というのは、同じホタテ漁師でも、船が大きい、所得のある人なんです。その機械が四百万円以上かかりますから、本人の自己負担はいろいろ、国半分、自治体云々で百万程度になります。これは、お金がまず払える漁師はやれる。そして、あともう一つは、大きい船だと可能なんです。

 私も、朝一時ごろ起きて、私の応援者のところに、現場を俺も知りたいからと行きましたよ。やりました、かっぱを着て。そうしましたら、船の上でやりますと、もう最後帰るときには足のつき場がないぐらいその養殖かごを置かないといけない。そこにこれだけ、この二倍、三倍ぐらいの機械を置いたら、その分、養殖かごを積むスペースがなくなる。そうなりますと、労働の時間が長くなるんです。

 言いたいことは、これだけでなくていろいろな分野に共通することは、割かしお金があって割かし順調にいっている方はそういう支援策には乗れるけれども、ぎりぎりようやくやっている人は、さらに五十万だ、年間百万出せと言ったら、これはたまったものじゃないんですね。

 ですから、そういう支援策をやるよりも、いいじゃないかと決めたらそれが解決策なんですから。もう一度お訴えして、もう一度大臣の見解をお伺いしたいと思うんですが、貝殻を捨てるというのではないんです。つくもの、海から発生するものを海に捨てる。山にあるものやビルの残骸を捨てるというわけじゃないんですよ。

 現場の漁師の声を聞くと、このことで、ナマコ、ヒラメ、カニ、こういうのがだんだんいなくなったというんです。多分、どんどん捨てるとバランスが崩れるとか海が汚れるとか、こう科学者あるいは学者的な人は言うかもしれませんけれども、漁師さんのお話を聞くと、むしろそれが栄養になっていったという実態があるんですね。

 ですから、私は、ここは政治判断でもって、知恵を絞って、何とかいい方向にしていただきたいなと思うんですが、大臣、済みませんが、もう一回御答弁をお願いします。

森山国務大臣 委員のお気持ちもよくわかりますし、また漁業者の方々のお気持ちもよく理解ができます。

 ただ、私どもが関係法令を所管しているわけではありませんので、関係法令を所管いたします環境省とも相談をしてみたいと思います。

升田委員 これは環境省なんですね。きょうは環境省の関係も御出席いただいていると思います。

 環境省にも同じことなんですよ。今まで私のこのやりとりを聞いて、環境省、何とか緩和策、知恵を絞ることはできませんか。いかがでしょうか。

早水政府参考人 お答えいたします。

 海洋汚染等防止法は環境省と国土交通省の共管の法律でございますけれども、廃棄物の海洋投入処分につきましては、議員御指摘のとおり、ロンドン条約九六年議定書を担保いたします海洋汚染等防止法によりまして、原則として禁止をされております。

 御質問の、付着した海藻などの残渣の陸揚げしたものというものについては、海洋汚染防止法の廃棄物に該当しまして、原則として、船舶を用いて海洋投入処分を行ってはならないとされております。また、陸上から直接海洋投入処分することにつきましては、原則として、廃棄物処理法における適正な処理とは認められず、これを行うことはできないということでございます。

升田委員 今、答弁で原則、原則という話が出たということは、原則ということは、すき間があるという理解でいいんですか、これは。いろいろお話を聞くと、決してそうじゃないんですね。原則があるということは、可能性はできる、こういう理解でよろしいんでしょうか。

早水政府参考人 お答えいたします。

 ロンドン議定書、それから海洋汚染等防止法におきまして、例外的に海洋投入処分が認められる場合というものがございますけれども、これは例えば、災害時など国家の緊急事態におきまして、環境大臣が緊急に処分する必要があると認める場合ということと、それから、例外的に環境大臣の許可を受けて行う場合がございます。

 前者は、東日本大震災のときに事例がございます。ただ、これは今回の件については該当しないと思います。それから、例外的な環境大臣の許可でございますけれども、これは海洋汚染等防止法において許可基準が定められておりまして、海洋投入処分以外に適切な処分の方法がないこと、これはコストとかは考慮せず、陸上処分ができないということが要件となっておりまして、御質問の付着した残渣につきましては、これは陸上処分ができないとは言いがたいということで、大臣許可基準を満たすことは困難と考えております。

升田委員 環境省に再度またお伺いしたいんですけれども、先ほど私は大臣とのやりとりの中で、カニ、ヒラメ、ナマコ、こういうものがだんだん育たなくなっていると。そして、漁師の七十五業者に対して毎年三業者というのは、相当これは率からいえば大きいんです。そして、売り上げの三割は残渣処理なんです。百万やったら三十万、一千万だと三百万です。こういう実態を考えると、助けてあげたいなという気持ちになりませんですか。

 しかも、地方は人口減少ですよ。海と山のところには食料関係の作業しか存在しないんです。あとどこに行けばいいんですか。あと何ができるんですか。

 環境省、あなた方が柔軟に知恵を絞って、海のものを海に返して何が悪いんだと。

 しかも、作業している場は、ぜひ行ってほしいんです、ちょっと風が吹いて波が高いと海しぶきが来るんですよ。そこでやったものを産業廃棄物といってだめだというんです。

 昨年でしょうか、おととしになるかわかりませんが、逮捕者が出ている、逮捕者が。警察に。それを覚悟してまでもやらないと生活が立たないから。誰でも犯罪者になりたくありませんよ、これは。にもかかわらず、生きるためにこれをやらないかぬ、こういうことで漁師は必死なんです。

 環境省、御感想を下さい。

早水政府参考人 お答えいたします。

 漁民の方のいろいろな実態があるということは、大変、きょうお伺いしたところで感じるところはございます。

 しかしながら、法律所管の立場から申し上げますと、また、もともと条約もございまして、ロンドン条約九六年議定書が廃棄物による海洋汚染の防止を目的としていて、これを原則として陸上処分することを求めているということでございますので、これを受けまして、海洋汚染等防止法におきましては、船舶からの廃棄物の海洋投入処分については原則として禁止ということでございまして、なかなか規制緩和措置を講ずるということは難しいと考えております。

升田委員 私も、これはまだ細かく勉強しておりませんので、論破できる議論ができない自分が悲しいんですが、次のテーマに行きたいと思います。

 次のテーマというのは、また環境省なんですけれども、規制緩和、規制緩和という言葉が出ます。でしたら、せめて、一年じゅうでなくてもいいので、四月から七月までの四カ月間だけ特別それを認めるというようなことはできませんか。いかがでしょうか。

早水政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、ロンドン条約九六年議定書及び海洋汚染等防止法の趣旨に照らしますれば、時期を限定して海洋投入処分を認めるなどの措置というのは困難と考えております。

升田委員 私も、この論点の肝というのは、残渣を捨てると海が汚れるというところに一つの議論があるのであろうと思います。ですから、明らかに一旦陸に揚げたものとあれど、海から発生したものだから、これは環境を悪くしないねという科学的な裏づけが出てくれば、私は議論を突破できるすき間が出てくるのかなというのはずっと感じていました。

 自分もその辺のことをこれから懸命に勉強させていただきたいと思っていますので、環境省並びに御関係のところも、科学的な見地を入れて、ロンドン条約の中で一つの整合性がとれないかどうかは今後努力していっていただきたいということで、きょうはこれを延々と続けるわけにはいきませんので、この辺でとどめさせていただきたいと思います。

 さて、それでも思いとしては残るものがあるものですから、もう一度大臣に。

 私のさらなるやりとりを聞いて、やはりこれは農水行政ですから、漁師さんから見たり、一般国民から見れば。環境問題であるかもしれないけれども、死活問題にこれは直結していることであります。

 あと、実態論をちょっと申し上げさせていただければ、ただ漁師が朝早く行って片づけているだけではないんです。まあそうなんですけれども、言いたいことは、朝二時、三時に近所の奥さん方が待ち構えているんです。時給幾らで雇われているかわかりませんけれども。皆さん、普通に考えて、朝の二時、三時ですよ、三十代、四十代、五十代、六十代の奥さん方が。それを小さな地域の中でどうやって確保するんですか。

 みんな漁師さんは、ふだん、どこかに旅行に行くとお土産を買ってきたり、あるいは多くとれたものをお手伝いしている奥さん方に分けたりして、来年もまた頼むねということで懸命に心をつないできている。でも、一方では、人口減少ですから、そういう手伝う人もだんだん減っていくんですよ。その上で、漁師さんが、なかなか手伝う人も来ない、多くもお金をかけられない、残渣にお金がかかる、ある意味ではもうだんだんやる気がなくなっているのが実態なんです。

 ですから、もう一度言います。逮捕されるのも覚悟でやらざるを得ない。今やっている人でも、俺は、いつやめるか、それだけ考えているというんですから。私に直接言いますから。もういつやめるかな、ことしやめるかな、来年にしようかな、こういう状況なんです。

 大臣、リーダーシップをとれないでしょうか。もう一度御見解をお願いします。

森山国務大臣 升田委員に申し上げますが、升田委員も同じ御認識だろうと思いますけれども、法律や条約は我々は何としても守らなきゃなりません。ただ、適切な処理が行われて漁場の造成用の資材とする場合は、廃棄物には該当しない、有用物として海洋投棄が認められている場合もございますので、それは漁民の皆さんにとっては大変な課題だろうと思いますので、農林水産省といたしましても、できるだけ急いで現場に職員を派遣いたしまして、よく御意見を伺いまして、環境省ともしっかり協議をさせていただきたいと思っています。

升田委員 現場の声を受けとめていただいて、感謝申し上げたいと思います。

 地方は、食料関係に関する加工品も含めて、これで頑張るしか道がないと思っているんです。今になって製造業、しかも東北、青森県、雪の降るところでは、これはなかなか来ないわけでありますから。本当に、今の答弁を聞いて、きょうはよく眠れるかな、こんなふうに思いますけれども、どうか今後も、私はこれは追いかけてまいりたいテーマだと思っていますので、大臣の御努力にこれから御期待を申し上げ、今の答弁に敬意を表したいと思います。

 あと残された時間が八分ぐらいございます。

 次は、農産物の輸出関係について、先ほど福島委員の方から、余り過度の期待をするな、大げさに言うな、そういうお話がありました。私も半分ぐらいは賛同であるんですが、半分はやはり、高齢化で人口が減ると、ことし生まれた子供が二十になるころには六百万人減るわけですから、さらに三十年、四十年たつと、東北、北海道がぽっかりとなくなる人口減少がもう明らかな路線なわけでありますので、海外にも物を売って、そして国内の価格の安定を図っていくということはやはりやっていかないといけないんだろうな、こんなふうに思います。

 そこで、よく攻めの農業と言います。本当に攻めてもらいたいなと思うんですが、輸出強化をするために官民一体となった推進体制というのができた、こう伺っておるんですが、その内容についてお知らせいただきたいと思います。

伊東副大臣 ただいま升田委員から、官民一体となった輸出促進体制の内容ということでお尋ねがありました。

 農林水産物、食品の輸出に当たりましては、平成二十五年に初めて国別、品目別の戦略を定め、各産地や官民の主体が連携いたしましたオール・ジャパンの体制で取り組んでいるところであります。

 具体的には、平成二十六年に、関係省庁、生産者団体、商社、輸出関係団体等をメンバーとする輸出戦略実行委員会を設置いたしまして、各重点品目ごとの部会におきまして、効果的な輸出拡大の取り組みについて議論を行ってきたところであります。この結果、オール・ジャパンで輸出に取り組む七つの品目別輸出団体が設立され、それらの団体が実施いたします各般の輸出促進の取り組みをPDCAサイクルによりまして検証、実践しているところであります。

 今後とも、あらゆる政策を動員し、関係省庁、関係団体、民間企業と連携し、官民一体で輸出拡大に取り組んでまいりたいと思うところであります。

 以上でございます。

升田委員 昨年でしょうか、七千五百億ぐらいもうクリアして、一兆円の目標というのは、目標よりも早く前倒しでクリアできるような状況であるわけでありますけれども、取り組んでみて、現状分析、さらにまたこれを拡大していくための課題はどんなところにあるんでしょうか。

伊東副大臣 農林水産物、食品の輸出促進につきましては、課題となっておりますHACCPなど輸出対応型施設の整備に加えまして、オール・ジャパンでの輸出促進や地域間で連携した輸出の取り組み、また海外見本市への出展等々、さまざまな取り組みを推進しているところであります。

 この結果、昨年の農林水産物、食品の輸出額が、今委員御指摘のとおり、七千四百五十二億円となりまして、三年連続で過去最高額を更新したところであります。また、升田委員の御地元青森県でも、リンゴの輸出が着実に伸びていると聞いているところでもございます。

 今後は、TPP交渉の合意を受けまして策定いたしました政策大綱に基づきまして、米、牛肉、青果物、水産物等の重点品目ごとの輸出促進対策の推進をし、あわせてまた検疫手続の円滑化など輸出阻害要因の解消、さらに訪日外国人旅行者への地域農林水産物の販売促進、また地理的表示の活用等によりますブランド化の推進など、多様な取り組みを行っていくこととしております。

 今お話しのごとく、一層の輸出促進を図り、一兆円の目標の前倒し達成を目指してまいりたいと考えているところでございます。

升田委員 課題というのは恐らく、貿易でありますから、国際品質に対応できる、その品質管理がしっかりいくかどうかと、あとは、国内の物流コストが高いという御指摘がありますので、そこも課題のクリアをぜひしてもらいたい、こう思います。

 残された時間で、青森県は世界に誇れるリンゴの生産地だと私は自負させていただいています。三十億円から始まった輸出額も、昨年なんかは九十億円。三倍ぐらいになっている。まだまだこれは拡大ができるのじゃないかな、こう思っているんですね。

 ただ、一方で、先ほど福島委員も御指摘あったように、輸出という言葉で踊らされて、一番大事なのは、生産者、農家の方の所得がふえないといけません。ここが一番大事です。結果的には数字は高くなったけれども、途中の、農家よりもほかの部分のところが所得をどんと取って、農家が全然変わらないとなると、これはやはり、何のための、誰のための輸出なんですかということになってしまいますので、その辺に対する森山大臣の御見解を最後にお伺いしたい。

森山国務大臣 我々が農林水産物あるいは食品の輸出に積極的に取り組もうとしておりますのは、今委員がおっしゃいますとおり、農家の皆さんの所得をどう上げるかということでございますので、輸出でしっかりと所得を上げられるということが大事なことだと思っておりますので、そのことを常に念頭に置きながら、政策を進めてまいりたいと考えております。

升田委員 とにかく生産者目線というのを忘れないで取り組んでもらいたい。

 以上申し上げて、終わります。

小里委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小里委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小山展弘君。

小山委員 民主党の小山展弘でございます。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 大臣所信に対する質問ということですので、森山大臣の政治姿勢、農政に対する思いについてまず伺っていきたいと思っております。

 森山大臣は、保守とか保守政治、保守主義というものについて、どのような定義や認識をお持ちでしょうか。これは揚げ足をとるようなクイズ質問ではありません。私も、保守とか保守主義という言葉、これはよく使われる言葉ですけれども、人によって定義とか使い方、使われ方も違いますし、内容も異なると思っております。正解はないと思うんです。だからこそお伺いしたいと思っております。

 森山大臣が農林水産大臣として、あるいは政治家として、農政の守るべき価値、保守すべき価値というものがどのようなものだとお考えでしょうか。お願いします。

森山国務大臣 お答えいたします。

 農は国の礎と言われておりますし、日本の美しい田園風景、あるいはふるさと、また助け合いの農村文化などをしっかり守っていくことが私は政治の責任であるというふうに考えております。

 また、日本の農林水産物が世界で最も安心、安全なものであると世界から評価をされていることは誇るべきことであると考えております。

 こうした農林水産物を生み出すことができる、先人が心血を注いで育んできた我が国の農業、農村を、若者たちが夢と希望を持って引き継いでいけるようにしていくことが農林水産大臣としての私の責任であるというふうに心得ているところであります。

小山委員 本当にクイズ質問ではありませんので、ぜひ率直にお答えいただいて、また少しお尋ねしたいと思うんですが、森山大臣御自身は保守の政治家だというふうに自負していらっしゃいますか。

森山国務大臣 保守という意味をどう捉えるかということでありますが、正常な状態などをしっかり維持していくということであるとすれば、私は保守なのだろうなと思います。

小山委員 ありがとうございます。

 最初に私も申し上げたとおり、保守といってもさまざまな定義や認識というものがあって、人によって異なると思うんですね。私も、良識ある保守、あるいは健全なリアリズムに基づいた保守というのはすばらしい政治姿勢だと思っております。

 ある人は、市場原理や競争といった価値を、政府の介入とか、あるいは、かつては社会主義、共産主義、社会民主主義から守るというような意味で保守、自由保守主義ということを名乗っておられる方もいる。ある方は、歴史や文化、伝統といったものを守るという意味で保守というものを名乗る。

 余りここで哲学論争とか政治思想論争をするつもりは全くないんですけれども、自民党さん御出身の大島議長が、保守にはイデオロギーの保守と土着の保守、現場の保守というものがあるんだということをおっしゃっておられます。私もこれは非常にいいお話だなと思っているんです。

 この土着の保守、現場からの保守というのは、まさに現場主義であって、イデオロギーとか理論とか理屈といったものにとらわれずに、現場を見て、理屈に合わなくても、これが現場にとって一番いいんだというような政策を行っていく、これが土着の保守、現場からの保守だと私は思うんです。その際には、伝統とか文化といったことも要素に取り入れて、あるいは、今行っている、うまくいっている制度というものを維持していくというようなことも土着の保守、現場からの保守であり、リアリズムの政治姿勢だと思っております。

 ただ、森山大臣がそうだというわけではないんですけれども、こういった土着の保守とか現場からの保守という姿勢が最近ちょっと失われつつあるんじゃないか。

 例えば、昨年の農協法の改正でも、全国監査機構を組織とする全中は、一度も業務改善命令、必要措置命令を監査について受けたことはないんですね。林大臣も、役割をよく果たしてきたと評価する答弁をしているのに、監査法人という形にすれば大丈夫、公認会計士という肩書を持った人たちに任せれば大丈夫と、うまくいっている制度を変えてしまう。

 一方で、その後に出てきたんですが、東芝の粉飾決算を見抜けなかった新日本監査法人、これは先日、予算委員会の分科会で、極めて質の低い監査であったと金融副大臣から言われ、また、その原因が、職業的懐疑心に乏しく、東芝へのガバナンスの過信があって見抜けなかったということであります。

 これはまさに、形だけ変えても僕はだめだと思うんですね。中身とか、あるいはそこに従事している人たちのモラルとか、職業的懐疑心ということがありましたけれども、私は、そういった理論とか理屈に現実を合わせ過ぎるということではなくて、むしろ今のこの現場、現在のうまくいっている制度というのは維持していくべきだと思います。

 そういった観点から、今回、事実上の企業の農地所有、この国家戦略特区の議論についても同じようなものを私は感じております。変えるために変える、変えること自体を目的にはしてはいけないと思うんですね。

 対案を出せ、対案を出せ、よく安倍総理はそんなお話をされますし、我が党の中でもそれに悪い意味で乗っかってしまう人がいるんですけれども、そもそも変える必要がない、うまくいっているものに私は対案を出す必要はないと思っています。現状がうまくいっているならば、それをしっかり評価するということもあわせて大事だと思います。

 そんな中で、企業の農地所有についてですが、日本農業新聞の企業へのアンケートでは、企業の農地所有について、自分たちが農地所有したい、こういう要望は少なくて、七割の企業さんは農地所有の必要がないというふうに回答しているんですね。これは現状のリース方式が十分に機能しているということの証左だと思います。

 今回、養父市以外で、全国的に企業さんから農地所有に対する要望というのはあったんでしょうか、あるいは、あったとすれば、それはどういうような要望があったんでしょうか。

川上政府参考人 お答えいたします。

 企業の農地所有のための特例措置につきましては、これまで国家戦略特区の提案募集等におきまして、これまでの三年間に二十件に上る企業の農業生産法人への出資、事業要件の緩和に関する提案をいただいているところでございます。

 具体的には、養父市以外に新潟市や大阪府、茨城県、佐賀県等、特区内外の自治体や民間事業者の方から提案をいただいているところでございます。

小山委員 今聞いてびっくりしました。三年間でわずか二十件なんですね。ここまでは質問で通告しておりませんのでお答えということではないんですが、件数でおっしゃいましたから、同じ会社が出しているかもしれない。ここはちょっと、そこまでうがって見ませんけれども、三年間でわずか二十件しかないんですね。

 養父市でも、十の企業が参画する農業生産法人、現状においても土地、農地を所有はしていないということで、現在の農業生産法人は、御承知のとおり、土地所有できるわけですが、この特例も活用できていない。

 石破大臣は、この特区については、PDCAサイクルを回転させて、状況を見て今後の特区の規制緩和とか検討をしていきたいというふうに発言されているそうですけれども、そもそもこのPDCAサイクルが動いていないんじゃないか、そんなふうにも思うわけでございます。

 そこで、これは事前通告してありますが、現在、養父市の中で特区で農地を所有したい、そういうふうにやっている企業さん、あるいは希望していなくても養父市の中で活動している企業あるいは農業生産法人、今、農地は幾らで借りているんでしょうか。

川上政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの点でございますけれども、個別企業が締結している契約の内容については私ども具体的には承知をしていないところでございます。

 ただ、企業が大規模経営や六次産業化に取り組むには大規模投資が必要となる中、リース方式では中途解約や契約が更新されない等のリスクがありまして、思い切った事業展開のためには安定、長期経営が可能な所有の方式ということも一つの選択肢にしたいということで御要望いただいているというふうに承知をしてございます。

 以上でございます。

小山委員 かなり低い金額で農地を借りているか、あるいはただで借りているというようなことも報道等で出ております。

 本当に農地を所有するというニーズ、必要性というものがどこにあるのかということも、逆に、農業の中で、農業を営んでいく中で、農地所有ということが採算がとれないということが言われておりますけれども、そうだとすれば、別の目的があるんじゃないかということも、当然これはそういう疑念が出てくるというものだと思っております。

 内閣府は、今回の法改正に当たって、リース方式で対応できず、企業が農地を所有しなければ解決できない問題というものは現実に存在すると認識しているんでしょうか。どのようなニーズで緩和が必要と言っているのか。それと、企業が農地所有をすることで農業がどのように発展して変わっていくと内閣府では見込んでいるんでしょうか。

川上政府参考人 お答え申し上げます。

 若干繰り返しになりますけれども、企業が、大規模経営や六次産業化の促進等により、スケールメリットを生かしながら高い収益を見込む場合など、より安定的、長期的な経営を行うためには農地を所有することが選択肢の一つであるという認識でございます。

 一方、リース方式におきましては、中途解約のほか、例えば所有者の代がわりにより契約が更新されない等のリスクもあるということで、思い切った事業展開ができないという具体的な声があるのも事実でございます。

 このため、提案者である養父市からは、同市に農業参入している企業から農地所有に関する具体的なニーズが上がっており、さらには地元経済団体からも前向きな声が上がっているというふうに私ども伺ってございます。

 そういう意味では、リース方式を決して否定しているわけではございませんけれども、企業参入の促進には経営判断の選択肢を広げることが必要というふうに私ども考えているところでございます。

 また、農地所有についての、農業をどういうふうに発展させるのかというお尋ねでございます。

 我が国の農業につきまして、これは私が申し上げるのはおこがましいのでございますけれども、担い手不足あるいは耕作放棄地の増加等が喫緊の課題ということでございまして、一刻の猶予もないというところを、私ども、石破大臣以下、内閣府としても認識をしているところでございます。

 これもまた繰り返しになってまいりますけれども、企業が、大規模経営や六次産業化の促進等により、スケールメリットを生かしながら高い収益を見込む場合などにつきましては、より安定的、長期的な経営を行うために農地を所有することが選択肢の一つであるというふうに考えておりまして、これにより、担い手の拡大による農地の有効活用につながることになるのではないかというふうに認識してございます。

 したがいまして、まとめますと、企業の農地所有が認められれば、大規模経営や六次産業化の促進、さらには担い手不足や耕作放棄地増加の問題を解決し、強い農業の実現に資することになるのではないかというのが内閣府の認識でございます。

 以上でございます。

小山委員 とてもそうは思えないわけですね。

 今、長期的、安定的に農地を所有して経営ができるということですけれども、農業新聞にも掲載されているんですが、現在、一反当たりの農地は全国平均で百二十万円、畑は九十四万円である。それに対して、賃料は一反当たり一万二千円、畑は九千円。農地価格はリース契約料の百年分なんですね。

 これは全国平均ということですから、先ほど、三年間で二十件の要望があったという中に大阪府があるということでしたけれども、都市部に行けば非常に高いわけです、農地を買うのに。農地を買っても、買った代金を農業を経営して回収できるまでに物すごい時間がかかる。採算が成り立たない。だから、リース方式の方が経営にも合っているというんですね。

 養父市では、一体、養父市の農地の価格、あるいは買いたいと思っている価格は幾らなんでしょうか。それで、その企業というのは収支、採算がとれるというような見込みが、あらあらでもいいので、これはお金を貸すわけじゃないですから、細かく収支計画が出ているんだというわけではないんですけれども、あらあらでもそういうものは、見込みというものはあるんでしょうか。

川上政府参考人 お答え申し上げます。

 今、手元に具体的な計数を持っているわけではございませんけれども、やはり、大規模経営あるいは六次産業化の促進等により、スケールメリットを生かしながら高い収益を見込むというようなビジネスモデルの場合に、より安定的、長期的な経営を行うためには農地を所有することが必要であるという御要望をいただいているところでございます。

 具体的に若干ニーズを申し上げますと、例えば、今回、農地の所有意向を示しておられる企業におきましては、休耕田を取得、所有した上で、これを農地として開発するというようなことを検討されているというふうに伺っておりまして、これらの事業を行うためには、事業規模拡大に伴う大規模投資が必要となる、その中で安定的、長期的な経営を行うために農地所有を求めていらっしゃるというふうに承知をしてございます。

 以上でございます。

小山委員 きょうの最初の話じゃないですけれども、大規模所有で、株式会社、企業の形でやって、企業が農業生産法人を二分の一以上取得して企業経営でやればうまくいく、形を整える、こういうことに思えてしようがないんですね。

 結構マスコミなんかで取り上げて、大規模にやっているところでも、潰れたところもたくさんあるんですね。漁業の話ですけれども、マグロ漁業なんか、大規模にやっていたところの方がリスクが大きくて大変な、大臣、鹿児島ですから、そういったお話を多分たくさん聞かれていると思うんですけれども、かえってそちらの方がリスクが大きくて、小回りがきかなくて潰れた、こういうところもたくさんあるわけです。大きけりゃいいというものじゃないんですね。

 私は、そういうところ、もう少し現場の実態というものを見ていただきたい、そして、何のための農政であるのか、何のための日本の農業であるのかということをもう少し原点に戻って御認識いただきたいと思うんです。

 今の内閣府の答弁に対して、農水省は、企業が事実上農地所有をするというようなことについて、どのような必要性があると認識していらっしゃるでしょうか。

 ちなみに、養父市は、中間管理機構すら十分に活用できておらず、農地集積もままならないとの声も聞きます。やることをやっていないんですね。

 リース方式で十分であって立法事実がないと思いますけれども、農水省の奥原局長の御見解を伺いたいと思います。

奥原政府参考人 今回の特区の話は、農地法本体を変えるという話ではございません。あくまでも国家戦略特区における農地法の特例を講じるという話でありますので、一般的に企業が農地を所有する必要があるという前提で講じるものではないわけでございます。

 今回の措置は、あくまでも試験的、実験的に行うというものでありまして、地域それから期間も限定しておりますし、それから、特に、個々の企業が所有権の取得を必要とする理由、これを公表していただくということもスキームの中に入っているところでございます。

 したがいまして、各企業に具体的にどういった所有のニーズがあるのかを見きわめる、これも今回の試験的な事業の一つの目的であるというふうに考えております。

小山委員 農地法を変えるわけではない、今回は特区に限定したものなんだということで答弁がございましたが、今のリース方式でも、産業廃棄物置き場になってしまって、紛争中、解決途中の問題も発生してしまっているんですね。

 農業生産法人に対する企業の出資比率を二分の一以下に引き下げるという法改正、去年議論のあった法改正が四月一日から始まって、その制度変更の成果すら検証がなされていない状態で、この新たな国家戦略特区の法案改正ということになります。いろいろ今後のことについて問題の発生も懸念されているわけでございます。

 こういった現状を踏まえて、いろいろな記者会見等でのお話もあろうかと思いますが、森山大臣に、養父市の国家戦略特区における企業の農地所有を今後全国に展開するとか、そのために農地法をさらに改正すべきというお考えはあるのでしょうか、あるいはないのでしょうか。ぜひその点を明確に御答弁をいただきたいと思います。

森山国務大臣 お答えいたします。

 企業の農業参入につきましては、平成二十一年の農地法改正により、リース方式での参入は全面解禁をされており、農地中間管理機構との組み合わせにより、さらに参入しやすくなっております。

 また、所有方式につきましても、昨年の農地法改正で、農業者以外の議決権比率を四分の一以下から二分の一未満にまで拡大したところであり、本年四月から施行されることとなっております。

 したがいまして、全国レベルの制度として、企業の農地所有についてのさらなる要件緩和を検討する段階ではないと考えております。

 しかしながら、地域を限定して試験的に実施することは、それとは別の問題でございますので、やり方によっては、農業、農村の現場に不安が生じず、また、その実施状況が今後の検討の参考になることもあり得るというふうに考えておりまして、こうした観点から、どのようなやり方があるか検討した結果、企業が農地として利用しなくなった場合の確実な原状回復措置を講じた上で、国家戦略特区の中でも一定の要件を満たす地方公共団体に限定をさせていただいて、また、期間も五年間を限定して試験的な事業を行うこととして、法案に盛り込むこととさせていただきました。

 法案が成立いたしましても、五年間の期間が経過した後はこの特例もなくなるわけでございますが、その後の取り扱いについては現時点で何も決めているわけではありません。

小山委員 先ほど全国で、もちろん全てのところで問題が発生しているわけではないですけれども、やはりいろいろな、産業廃棄物の置き場になってしまったとか、現時点のリース方式でも、まあ、これはどんなことをやっても問題は出るんですけれども、あるという中で、全国の農家の方々も、今回の特区の法案については、これがアリの一穴になって、全国にあるいは農地法の改正にまたつながっていくのではないかという不安の声も大きいものですから、ぜひ、ここは今ある農家の皆様の声にも十分に耳を傾けて農政を力強く推進していただきたいと思っております。

 ここからは、大臣の御地元でも盛んですけれども、お茶について伺ってまいりたいと思います。

 二〇一五年の家計調査によりますと、これは二月の中旬ぐらいに報道等でも少し出ておりましたが、年間の緑茶購入量が四年連続で九百グラムを割り込む、お茶っ葉を急須に入れて飲むリーフ茶の消費不振が一段と鮮明になってきております。また、全国の荒茶生産量は七万九千五百トンということで、五十年ぶりに八万トンを割り込んでしまったということであります。

 まず最初に、これは大臣に対する質問ではありませんけれども、去年、私もいろいろ議論させていただいたんですが、去年策定の食料・農業・農村基本計画においては、価格はずっと変わらない、生産量も変わらないんだ、そういう計画だったんですけれども、去年の実績もかなり下回っていたんですけれども、それを初年度から下回る、下振れをしているわけですけれども、その原因は何だったのか。見通しにおいて甘いところがあったのではないかと考えられるわけなんですけれども、それについて政府の見解を伺いたいと思います。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 平成二十七年産の荒茶生産量は七万九千五百トンとなり、御指摘のように、前年度に比べて四千百トン減少をいたしております。

 このことは、主に九州地域において、生育期間全般を通じた天候不順により、茶の生育が抑制されたこと等によるものと考えておるところでございます。

 特に、鹿児島県では低温傾向や六月の局地的豪雨による影響から作柄が対前年比九二%となっており、福岡県では低温傾向から対前年比八九%となっておるところでございます。また、熊本県では阿蘇山の噴火活動の影響から対前年比八八%の生産量にとどまったところでございます。

 平成二十八年産については、今のところ、主要産地では比較的順調な生育が見られるということで承知をいたしておるところでございます。

 今後とも、生産性の向上等の取り組みとあわせて、多様な品種の導入等による作期の分散などを通じて、天候の影響を極力緩和できるような足腰の強い茶産地の育成を推進してまいりたいと考えておるところでございます。

小山委員 きのうの質問通告のときにもちょっと感じたんですけれども、生産量とか生産の側の見通し、その見通しが下振れたということのお話とか説明というのはあるんですけれども、やはりこれからは、次のところでちょっとお尋ねしようと思っていますが、もっと需要の見通しというものもあわせてやはり考えていかなきゃいけない、認識をしていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。

 この需要の見通しに合わせてもちろん農家の方々も生産量を全体としては見るわけですし、また、供給過剰ということになれば価格が下がっていく、そうなれば廃業する方なんかもいて、当然これは生産量は下がってくると思うんですね。この部分で、やはり人口の減少というような問題、こういったものがもう少し入っていてもいいんじゃないかなと思うんですね。家計調査で四年連続で九百グラムを割り込んだということですから、これは生産側の天候不順とかそういうことの要因だけではなくて、こういった需要の要因というものも当然あったと思うんです。

 それと、これ以上細かくねちねちとは聞きませんけれども、去年の食料・農業・農村基本計画の、価格が十年間変わらない、それで生産量も変わらないというのは、やはりあの見通しの立て方というものは、そろそろ、生産中心、生産だけしか見ないというような考え方から変えていかなきゃいけないんじゃないかなということも私は今感じた次第であります。

 それで、この需要のところでちょっともう少し突っ込んだお尋ねをしたいんですが、抹茶とか碾茶、加工用生産、ドリンクとかティーバッグ、こういったものは堅調なんですね。主力のリーフ茶の消費が低迷をしている。全体としてもやはり主力が少ないわけですから低迷をしているということなんですが、この需要低迷の原因というのはどういうふうに農水省では認識しているんでしょうか。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 先ほど御指摘ございましたように、総務省の家計調査等によりますと、ペットボトル入りの緑茶の消費は増加傾向で推移はしておるわけでありますけれども、リーフ茶の消費については減少傾向となっておるのが現況でございます。

 その原因といたしましては、茶がらを片づけるのが面倒だからといったこと、そしてまた、そうしたことから急須を持たない家庭がふえてきているということ、そしてまた、職場等におきましても急須でお茶を入れる習慣が少なくなってきたというようなことなどから、緑茶の飲み方がリーフ茶からティーバッグやペットボトル入りの緑茶など簡易な形態に置きかわってきているものが大きいのではないかと考えられております。

小山委員 先ほどちょっと私もアドリブでお話ししようかなと思って、そう思っていて言い忘れたんですけれども、天候不順で量が少なかったということであれば、本来は価格は上がるはずなんですね。ところが、価格が上がらないというのは、やはり需要不足なんだと思うんです。そういったことも含めて、いかに需要を拡大していくかということで考えていかなければならないと思っております。

 例えば、静岡県の川勝平太県知事などは、お茶は大体最初の初取引で高値をつけて、どんどんどんどん下がっていく、そういう傾向なんですけれども、お茶は八十八夜と言われていますけれども、八十八夜にもう一つ山をつくっていく、こういったような、八十八夜に摘んだお茶はおいしいんだというようなキャンペーンとか、これはもちろん県とか各企業、各生産者の努力というところもあろうかと思いますけれども、このように、お茶の価格を上げていく、需要も発掘していくとともに価格を上げる、価格が維持できれば、農家の方々の収入というものも、生産量が減っていっても、ふえないまでも維持はできるんじゃないか、こういったことも頑張っている県域もあるわけでございます。

 そこで、大臣にぜひ力強い答弁をお願いしたいんですが、政府は今後のお茶の需要拡大に向けて今年度どのような取り組みを検討しているのか、ぜひ答弁をいただきたいと思います。

森山国務大臣 お答えいたします。

 お茶の国内外における需要の拡大に向けては、先ほどもお話がありましたが、急須を使わない新しい飲み方をどう普及していくか、あるいは、お茶の機能性のPR、緑茶以外のいわゆる茶葉の生産、輸出拡大等に取り組むことが重要だと考えております。

 平成二十八年度予算におきましては、国内の市場の調査や、カテキンなど茶の機能性の分析等を支援させていただきたいと考えています。また、水出し緑茶などのリーフ茶の新しい飲み方の提案とか、国産茶葉を活用したいわゆる紅茶とかウーロン茶の生産等を積極的に進めていこうということが大事なことではないかなというふうに思っております。

 また、二十七年度補正予算におきましても、外食産業や加工業者と連携した国産茶葉を活用した新商品の開発、輸出拡大に向けた減農薬栽培技術等の導入や輸出相手国における新たな残留農薬基準の設定申請なども今支援をしているところであり、これらの取り組みを通じて、一層の茶の需要拡大に向けた取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えております。

 ただ、やはり、日本にはお茶一杯といういい文化がありまして、ウーロン茶はお金を取りますけれども、お茶はお金を取らないでお茶一杯という文化があるものですから、ここもそろそろ考えて、いいお茶はやはり、お茶一杯ということではなくて、お金を払って飲んでいただくという文化もつくり上げていくことが必要かなと思っております。少しずつそういう店が出てきておりますので少し安堵しているところでありますが、そういうことも考えておかなきゃいけないのではないかなと思っています。

小山委員 喫茶店という言葉もありますけれども、喫茶店に入って出てくる飲み物は大体コーヒーで、本当はお茶がもっとあってもいいんじゃないか。おいしいお茶、あるいは抹茶とかですね。そういったことも、これはもちろん民間の努力というところがほとんどですけれども、何かそれも政府の方で後押しできるような、そういったこともぜひこれからも力強く進めていただきたいと思います。

 もう一つ、ちょっとお茶について聞かせていただきたいんですが、静岡県では、昨年度、二番茶の生産、製造というのを断念した人もおりまして、これはお茶の価格がかなり下がっていたということが原因であります。人口減少でリーフ茶の需要も低迷という中で農家の収入は減少傾向にあって、ことしの茶価の見通しはどうかなというのは、大変不安に思っている方も多いわけです。

 これからいよいよお茶のシーズンになっていくわけですけれども、政府は本年度の茶価の見通しについてどのような認識を持っているのか、お尋ねします。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 茶の価格につきましては、先ほども申し上げましたけれども、近年、急須で飲まれるリーフ茶の消費量が減少傾向にあることから、低下傾向にあると承知をしておるわけでございます。

 一方で、茶の価格は、高温や低温、大雨、日照不足等の気象条件、火山降灰などによる収量変動や品質低下の影響を受ける場合もあることから、現時点での平成二十八年の茶の価格見通しを申し上げるというのは大変困難であるわけでございますけれども、今後とも各産地の価格動向を十分注視してまいりたいと考えておるところでございます。

小山委員 嫌みっぽく言うわけじゃないんですが、食料・農業・農村基本計画では十年間価格が変わらないというような見通しも出されていますし、これはなるべく価格が上がっていくような動きというものも、農水省としてもぜひ後押ししていただきたいというふうに申し上げたいと思います。

 それで、次に、少しTPPのことをお尋ねしたいと思っております。

 このTPPで最初にいろいろ物議を醸したところですけれども、TPP協定の第二の四条二項において、ここがいろいろ議論があったところです。「各締約国は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、原産品について、附属書二―D(関税に係る約束)の自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃する。」というふうにございます。

 政府は、この附属書二―Dの関税の数値をずっと維持する記載を行うということをもって関税の維持をしたというふうに説明をしております。私はそのように受けております。

 ここも、文章で言うと、二―Dに、この関税の維持をするから、だから、残りの原産品について、附属書二―Dの自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃するという、何かここに、別段の定めが二―Dの中にあるというのもちょっと文章としてもどうなのかということも感じるんです。

 そこで、この別段の定めというものがどういうものがあるのか、ほかにもあるのか、この別段の定めの中身について明示をしていただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の別段の定めでございますが、各国の関税率表というものがついているわけでございまして、その中で、我が国が一番多いんですけれども、関税撤廃に至らない品目が品目ごとに列挙されているところでございます。

 例えば、関税削減にとどまるもの、あるいは関税割り当てを行うもの、また、WTO税率をそのまま適用すると書いてあってTPPでは税率をいじらないということにしているような、そういうカテゴリーがあるわけでございまして、我が国の関税率表でも、重要五品目を含む多くの産品に関して、そのような関税撤廃の例外となる措置が規定されております。これが別段の定めということでございます。

小山委員 この附属書二―Dで、この表の中に書いてあるというようなものはずっと関税撤廃をしないということが別段の定めの中に明記をされているんですか。

澁谷政府参考人 関税率表の中に、即時撤廃をするもの、それから例えば何年後に撤廃をするもの、そういうものがざあっと列挙されているわけでございます。その中に、撤廃をせずに削減をするというマークをつけているもの、あるいは関税割り当てを適用するというマークをつけているもの、あるいはWTO税率を適用するとしてTPPではいじらない、そういうマークをつけているものがございます。

 今申し上げたような種類が品目ごとに全部列挙されておりまして、その中で関税撤廃に至らないものが関税率表における別段の定め、そういう理解でございます。

小山委員 それでは、別段の定めということで、別の表があるわけではないんですね。あくまでもこの二―Dの表の中で処理されている。

 もしそうだとすれば、これは二―Dの表に従ってということでいいんじゃないですか。

澁谷政府参考人 関税率表もTPP協定そのものなので、「この協定に別段の定め」というのは関税率表に書いてあるということで、この協定に書いてある別段の定め、こういう理解でございます。

小山委員 そうしたら、もう一点だけよろしいですか。

 別段の定めには、この関税率表以外のことは定めとして書いてあるものはないんですね。

澁谷政府参考人 御指摘の本則で原則撤廃ということが書いてありまして、附属書であるタリフスケジュール、関税率表、譲許表の中で撤廃でないというふうに約束しているものにつきましては、これが別段の定め、そういう理解でございます。

小山委員 何か、この別段の定めというところでほかの定めもあるのかとか、あるいは中身として別の表があるのかということもちょっときょうはお尋ねをした次第ですけれども、ここでは政府の今のお話というものをそのまま、そのとおりということで信じたいと思うんです。

 これまでも、関税については、ほかのWTOとかほかのFTAとは違って、除外という二文字がない、七年後の再協議というものが義務づけられているということがございます。

 ここで、質問する側としては、関税維持というものは担保されていないんじゃないかという質問がなされてきました。一方で、政府からは、関税率を最後まで記載した譲許表がある、だから関税維持をかち取ったんだと。七年後の再協議でも、石原大臣なんかはガラス細工という表現を使っていましたけれども、さまざまな利害関係が錯綜する中で微妙なバランスの上に成り立っているので、七年後、どこか協議で変えると言ってもバランスが崩れるため困難だ、こういう答弁がなされてきて、現時点においては、関税維持ということをかち取ったとは言えないということも、関税維持の品目があるんだということでかち取ったんだということも、現時点で考えればどちらも一理あるのかなと思います。

 しかしながら、これは棚上げ、先送りをした決着だったんじゃないか、私はそんなような認識をしているんです。これについては、棚上げ、先送りだったんじゃないか、結論はやはり七年後に出る、七年後、全部撤廃になるとか、七年後、全部維持ができるとも、どちらとも言えないんじゃないかと思いますけれども、その点について認識はいかがでしょうか。

森山国務大臣 関税撤廃の例外につきましては、今委員御指摘のとおり、TPP協定の二の四条で、特別の定めという形で明文化されております。条文上の、漸進的に関税を撤廃するという原則の例外となっているというところでございます。

 また、御指摘の七年後の再協議規定につきましては、協議が調わなければ約束内容の変更の必要はなくなるわけでございますし、また、全品目が対象となりますので、守りと攻めを一体とした交渉が可能であるということになると思います。

 また、TPP交渉は、全体の分野を通じたバランスを配慮したぎりぎりのところで合意に至ったものでありますので、関税撤廃例外部分の規定も、まさにぎりぎりの合意であるというふうに考えております。このため、協定発効後に何らかの協議を行う場合であっても、そのような経緯、バランスを十分踏まえて、慎重な対応が必要であると考えております。

 また、七日の日の参議院の予算委員会において、総理の方からも、合意は全体のバランスで成り立っている、再協議をしても、日本の国益を害するものについては合意をしない旨答弁をしておられることも付言させていただきます。

小山委員 今後、バランスというものが、七年間の間で、それぞれの国の経済状態とか、あるいは貿易の状態なんかで変わってくるかもしれない。ですから、ここは大変多くの方が懸念されているところかと思います。

 時間も残り少なくなってきましたので、もう一点お尋ねしたいと思うんですが、TPP協定発効後の離農者の見込みについてであります。

 韓国でも、TPPではないですが、米韓FTAで、かなりTPPに近いFTA協定を米国との間では結びました。被害補填金支払い制度を創設して、できる限りの対策を韓国もとったんですね。しかしながら、畜産関係においては全体の一割が離農するということになっております。

 政府の影響試算というのは、これまでの審議上、根拠がないに等しいとわかっている人は、いろいろな政府の影響試算というのは出ているんですが、かなりこれは数字のところで、最終的には、根拠をずっと聞いていくと、どこかでえいやとこの数字をつくらなきゃいけないというものがあったということであります。

 かなり影響は少ないというふうに政府はおっしゃっているんですけれども、ただ、こういう状況を受けて、農業をやめようというような農家の方々もいることは事実です。心理的な要因もここにはあるのかもしれない。自分の子供、子息に農業を継がせるかどうかを迷っている人は、自分の代で農業をやめようというようなことを決断するということも、このTPPをきっかけにして十分考えられるんじゃないかと思っております。

 農水省として、離農者の見込みということを私は調査すべきではないかということも思いますけれども、政府の見解、離農者見込みの調査をするかどうかということで、私はぜひこういった面も調査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小里委員長 佐藤大臣官房総括審議官、時間が参りましたので、簡潔にお願いします。

佐藤(速)政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、大筋合意をめぐる現場の懸念と不安を断ち切る、次世代を担う生産者がしっかりと経営発展に取り組めるようにすることが大事だと考えております。

 そういう意味で、現場の皆様にTPPの合意内容や影響、国内対策の内容などにつきまして理解を深めていただくために、ブロックごと、都道府県ごとに品目別の説明会を開催してまいりました。二月十日に一巡したところでございますが、全体としては理解が一定程度進んだと感じております。ただ、引き続き、市町村ごと、集落ごと、よりきめ細かく丁寧に説明を現在もしているところでございます。

 そういった取り組みによりまして、現場と農林水産省が大きな方向感を共有した上で、意欲的な農業者が経営発展にしっかりと取り組めるように、政策大綱に掲げられた施策を着実に実行してまいりたいというふうに考えてございます。

小里委員長 小山展弘君、まとめてください。

小山委員 はい。

 これで終わりますけれども、影響額の試算については予算委員会でさまざまな議論もあったとおりで、これは一〇〇%完全に見通すことはできないというところもありつつも、それでも、この影響度合いについては、もっと影響は甚大じゃないかと思っている農家の方はいらっしゃいます。ぜひ離農者見込みの調査というのは御検討いただきたいと思います。

 以上で終わります。

小里委員長 次に、斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。

 森山大臣に質問をさせていただきます。

 まず、TPPの影響試算についてお聞きします。本格的な論戦はTPPの特別委員会で行われることになると思いますが、試算の前提について聞きたいと思います。

 今、日本の農業、農村は、先ほど来話に出ていますとおり、農業者の高齢化に直面しています。後継者がいない中で、離農予備軍とも言われるような農家の方々が多くいる、そうした大臣の御認識はいかがでしょうか。

森山国務大臣 やはり高齢化している面もありますし、若い後継者が頑張っているということもそのとおりだと思います。ただ、これは、お互いに年を一年に一つずつとってまいりますから、いつまでも続けられるものではありませんが、農業の場合は、比較的御高齢の方も頑張っていただいているのが現状ではないかと思います。

斉藤(和)委員 まさにやはり農業は今現実問題として高齢化しているけれども、高齢の方が頑張っているから今何とか日本の農業は成り立っているというふうにも私は言えると思っております。

 二〇一五年の農業センサスによりますと、農業就業者の三分の一が七十五歳以上、農業就業者の六三・五%が六十五歳以上です。平均年齢は六十六・三歳。こうした状況の中で、農業後継者がいない販売農家は六十六万二千戸で、約四六%後継者がいないという状態です。この間、米価がなかなか上がらず、六十キロ、一俵当たり一万円以下というような価格低迷の中で、毎年四万戸の販売農家が離農しているということが続いています。

 米の生産には、当たり前のように、コンバインだとかトラクターだとか田植え機だとか乾燥機だとかが必要になります。それぞれ一千万とか四百万円ほどの価格がかかるわけですけれども、これには当然、償還するための期間が必要になります。そして、農業機械の買いかえ時期が来れば、後継者がいない高齢の農業者は、高価な農業機械を仮に購入したとしても、返済のめどが立たなければ結局購入を控える。さらに、ここに来て、TPPでこのまま農業は成り立っていくのかという先の見通しがなかなか持てない、こうした中で、農業を本当に続けていくのか、それともやめるのかという判断がこういう機械の買いかえ時期に迫られている。こういうことが米の生産者だけではなくてさまざまな分野でも起こっていると思います。

 例えば酪農家でも、六十頭規模の乳牛を飼育している場合、牛舎の建てかえが必要になりますけれども、一億円ぐらいかかるわけです。更新時期に、そろそろ牛舎も四十年、五十年たって、かえたいけれどもという方もいらっしゃいます。畑作農家にしても野菜農家にしても、トラクターは必要。園芸作物農家にすれば、ビニールハウスだとかガラスハウス、これもやはり更新期が来るわけです。

 そもそも、TPPは、先ほど来あるように、基本的に関税は撤廃をするということが原則の協定ですから、将来的に経営環境がよくなるという見通しはなかなか農家の方は持てない。そうなれば、やはりここで機械が壊れたら離農するしかないかなというふうに思われている方はたくさんいるというふうに私も話を聞きましたし、容易に推測できるわけです。

 こうしたTPPによる将来不安、後継者不足、高齢化による離農に起因する生産量の減少、こうした問題はTPPの影響試算の対象になっているんでしょうか。

森山国務大臣 今回のTPPの農林水産省の試算は、あくまでもTPPによる関税削減の影響等を分析したものでございますので、高齢化の進展などの要素というのは考慮しておりません。

斉藤(和)委員 高齢化などのこうした問題は考慮していないという答弁でした。

 私は北海道に伺いまして、中堅の酪農家の方々に離農が相次いでいるという問題を次にちょっとお聞きしたいと思っているんですけれども、酪農家の方々がなぜ離農しているかというと、経営に問題があるというよりは、どちらかというと先の見通しが持てない、そして、ここに来てやはりTPPだと。こうなると、先ほど来言ったように、借金をさらにして設備投資をするということを断念して、苦渋の思いで早期に撤退を選択しているという方がいらっしゃるということがわかっています。

 北海道の酪農中心地である別海町にも伺いました。七百戸の酪農家がEUに匹敵する規模の酪農経営を営んでいます。びっくりしたのは、そのうち百戸が高齢化や後継者がいないために離農を待機しているというお話が出てきました。今は限定的でも、来年、五年後、十年後はどうなるのか、全く先の見通しが見えない、いつ離農しようかという方々がたくさんいるんだというお話をお聞きしました。

 当然、TPPによる将来不安が出れば、離農待機、要は、いつやめようか、更新はできないしという方が離農を決断するということは容易にやはり想像できるわけです。それでも酪農生産が、私は低下すると思いますけれども、TPPの影響試算には、こうした離農による酪農の生産の大幅低下、こういうものも対象になっているんでしょうか。

森山国務大臣 乳製品につきましては、政策大綱に基づきまして、体質強化対策として、省力化機械の整備等による生産コストの削減や品質向上などの収益力、生産基盤の強化を図ることとしているわけでございます。

 具体的には、畜産クラスター事業等の活用によりまして生産コストを削減していく。また、規模拡大による生産効率の向上、また、性判別の技術あるいは受精卵移植等を活用した優良後継牛の確保、省力化機械の導入等々を図ってまいりまして、品質向上、付加価値につきましても、国産の生乳を利用した商品開発を可能とする製造加工技術の開発とか、あるいは乳製品の製造や直接販売、観光牧場の推進等の六次産業化の取り組みを進めているところであります。

 さらに、経営安定対策といたしまして、加工原料乳生産者補給金制度の対象に生クリーム等の液状乳製品を追加するとともに、補給金単価を一本化することとして、その単価については関税削減の影響など将来的な経済状況の変化を踏まえて適切に見直すなど、より万全の対策をとることとしております。

 このような対策に加えて、長期にわたる関税削減期間において生産者みずからによる創意工夫に基づく取り組みも期待をされるということでございますので、今回の試算におきましては、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産が維持されると見込んだところでございまして、いろいろな政策を打ってまいりますので、そこでカバーができると理解をしております。

斉藤(和)委員 対策を打つから大丈夫だろうと。畜産クラスターにしても、生産基盤の強化、規模拡大というお話がありました。これはこれで、畜産クラスターも非常に喜ばれていて、要望も高いというお話も聞いています。しかし、先ほど言った、六十頭ぐらい、五十頭、六十頭、でも設備更新には一億かかる、こういう人たちは、こぼれてしまって対象になっていないんですよね。

 そうなれば、やはり、今政府が掲げている対策だけで本当に酪農は生産が維持できるんだという見通し自体が非常に私は甘いのではないかというふうに思っています。

 こういうふうにも言っていました。離農が波を打ってこれからやってくるんじゃないか、波を打って離農する方々がぶわっとふえていくんじゃないか、これが別海町の町役場の方の実感です。ぜひ、これは、ちょっと現場の実感というかそういうものをやはりきちんと反映した試算にしていかないと納得が得られないんじゃないかというふうに思うわけです。

 現に、農業センサスを見ましても、農家数の推移はこの間ずっと落ちています。一九九五年、三百四十四万四千戸、これが二〇〇〇年には三百十二万戸、二〇〇五年には二百八十四万八千戸、二〇一〇年には二百五十二万八千戸、そして直近では二百十五万三千戸、この二十年間で百二十九万戸の農家が離農している。

 そして、離農のスピードを見ると、五年間で二十七万二千戸から三十二万戸、これが一気に、この二〇一〇年から二〇一五年の五年間では三十七万五千戸と加速をしてふえているわけです。

 私の地元は千葉県ですけれども、ここでも、中堅の米どころだとか、二十ヘクタールを周りから委託を受け家族でやっていた米農家の方が、もうこの低米価で、とてもじゃないけれどもやっていけないということで離農されたというお話もお聞きするわけです。

 やはり、TPPによる経営不安によって、酪農にしても米生産にしても離農がとまる要因には私はどうしてもならないと思うんです。どっちかといえば加速をする。それでも生産減少はないんだと大臣はお考えなんでしょうか。

森山国務大臣 先生のお話を聞いておりますと、非常に悲観的なお話をお聞かせいただくわけでありますが、そういう声が現場にあることは私も理解をしております。

 私もいろいろなところを歩かせていただきまして、例えば北海道の十勝の加藤牧場というところに参りました。非常にいい酪農経営をしておられるところでありますが、この加藤さんなんかの話を聞きますと、本当に今から日本の酪農は伸びていけるんだなというふうにも思います。

 また、新潟で、八人の若い人たち、異業種から入ってきた人たち、集落営農を百ヘクタールやっている人たちと懇談をいたしましたが、この人たちは、TPPが始まったときにどの国にどの品種の米を輸出するのが一番有利なのかということを今研究しているという話を聞かせていただいております。

 ですから、現場にしっかり明るい話と今先生の言われるような厳しい見方と両方あるなということは私もよくわかりますけれども、我々は、やはり政策をしっかり実施させていただいて、何としても皆さんが再生産に意欲を持っていただいて、若い人たちが農業に参入をしていただけるという世界をつくっていくということが大事なことではないかなというふうに思っておるところであります。

斉藤(和)委員 意欲を持ってやっている方たちがいるのもよく知っています。やはり、一番最初に言った、現実問題として日本の農業は高齢化をしていて六十六歳が平均になっている、お年寄りが頑張っているから日本の農業は一定支えられている、ここをしっかりと見ていかないと、もちろん若い方が新規参入して頑張ることを応援することも大事ですが、踏ん張ってくださっている方々をしっかりと支えていく、ここを抜かしてしまうとやはり土台が崩れるというふうに私は見ているわけです。

 悲観的というふうにおっしゃいましたけれども、こういう声がありました。なぜ生産量が減らないと断言できるのか、農水省が言っていることは全く理解できない、現場の実態をわかっているのかというふうに感じるという声もお聞きしました。

 先ほど各地で説明をしているというお話がありましたけれども、その場で農家の方が職員の方に、本当にあんたたちはこれで生産量も落ちないと思っているのか、本当にこのとおりだと思っているのかというふうに詰め寄ったら、何も言えなくなってしまったと。私は、これは当然だと思うんです。

 現場に近ければ近いほど、今の、生産がなかなか苦しい、成り立たない現状、そして将来の見通しが立たない状況というのはよくわかりますし、周りの農家の方々がやはり現実として次々離農していっているわけですね。その一方で、代々やってきたじいちゃんの土地、父ちゃんの土地をやはり自分の代で終わらせちゃいけないということで、新たに仕事をやめて入ってきている若い方が例えば千葉県にもいます。

 しかし、全体の流れとして見た場合、そういう意欲があって頑張っている人たちもいる一方で、もう機械は買いかえられないし、TPPでこれからどうなるかもわからないし、米の価格が再生産可能な一万六千円に上がるような見通しも持てない。そうした状況の中で、やはり現場の方たちは相当な悲壮感を持っている。先ほど大臣もおっしゃられました、悲壮感があるのはわかっていると。

 やはり、そういう人たちの思いにも応えるような、対策を打つから大丈夫なんだではなくて、TPPによってこれだけ影響が起こるんだ、対策を入れずにしっかりと日本の現状から出発をしたTPPの影響試算を出すことが、今現場で踏ん張っている農家の方々を励ます一番の力になると私は思うんです。

 そうした点で、今の現状を反映していない試算は撤回をしてしっかりとやり直す必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。

森山国務大臣 たびたび申し上げておりますが、前回、平成二十五年三月の政府統一試算につきましては、米、麦の国家貿易がなくなるなど全ての関税が撤廃をされる、国内対策も何も行われないという極めて単純化した前提を置きまして試算をしてきたところであります。この結果、米の国内生産量が三割輸入に置きかわり、生産額が一兆円減少するなど、全体の農林水産物の生産額が約三兆円減少するというのが前回の試算でございます。

 今回は、TPP交渉の結果、多くの品目で関税撤廃の例外や長期の関税削減期間も措置できましたし、また米、麦、砂糖などは今後も輸入が大きく拡大する状況にはないと考えております。また、政策大綱に基づきまして、重要五品目については、畜産などにおいては、マルキンの法制化や補填率の引き上げなど、TPPの協定発効後の経営安定を万全に期するための措置を講ずることとしておりますので、今回の試算では、前回と異なり、再生産が確保されるよう、交渉で得られた措置とあわせて国内対策を確実に実施するということを踏まえて試算を行っているところでございますので、この試算を再度するということは今は考えておりません。

斉藤(和)委員 そういう、やはり現場の納得が得られない試算を出して、対策を打つから大丈夫なんだというのは、現場の方にとってみると、本気で俺らのことを考えてくれているのかよという思いになるわけです。

 この問題は、引き続き特別委員会でも、やはりTPPを考える上で非常に大事な土台になると思いますし、今後の農業政策のあり方、対策の打ち方にも大きく影響する問題だと思いますので、審議をさせていただきたいと思います。

 次に、米の備蓄問題についてお聞きします。

 TPPで義務づけられた米の別枠輸入、これは七万八千四百トンになります。政府は、国内の米需給に影響を与えないために、別途国産米を、同量の七万八千四百トンを備蓄米として買い上げることにしています。

 これまで、一万円を割る、まさに赤字覚悟でなければ米はつくれない、つくるよりも買った方が安いという低米価の中で、何度も農業団体の方と私も交渉をして、米価暴落を食いとめるために備蓄米として買い上げをやってほしいと何度も求めてきましたけれども、頑として政府は受け付けず、米価暴落は放置をされ、現状になっているわけです。

 しかし、ここに来て、TPPで一転、七万八千四百トンを別枠輸入するとなると、頑として受け付けなかった備蓄米を、七万八千四百トン、同量を買い上げるというふうに決めたわけですけれども、だったら、今後やはり国産米の需給バランスが崩れたときには備蓄米としてしっかりと国産米を買い支えるんだというふうに理解してよろしいでしょうか。

森山国務大臣 斉藤委員もよくおわかりになって御質問いただいているのかと思いますが、備蓄米の百万トンという数量は変わらないわけでございます。

 それで、五年のサイクルでやっておりますけれども、やはり五年もたった古米を、有事のときといえども、国民の皆さんに提供することがどうなのかなと考えますと、それはもう少しやはり短いものであってほしいというのが国民の皆さんの願いではないかなというふうに思っておりますので、そこを少し短くさせていただくことで、それぞれの国に割り当ててあります米を吸収していこうというのが今度の政策であることを御理解いただきたいと思います。

斉藤(和)委員 つまり、TPPの別枠輸入で七万八千四百トンは買い上げるけれども、需給調整として国産米が例えば米価が暴落しても、備蓄米として買い上げることは今後もやらないという理解でよろしいでしょうか。

森山国務大臣 買い上げるということは今後もやらないと思います。

 ただ、政策については、いろいろそのときそのときで対応しなきゃならないことは出てくるかもしれませんが、そのために特別買い上げるということはやめるということが政府の方針でございますので御理解いただきたいと思います。

斉藤(和)委員 本当に全く筋が通らないなというふうに思うわけですね。要は、国内で米価が下がって、もう生産が成り立たない、何とか支えてくれ、備蓄米を買い上げてくれと言っても頑としてやらなかったけれども、TPPで七万八千四百トン新たに買うとなったら、その頑としてやらなかった枠を変える、そして回転を短くするというお話でした。

 私は、今でも備蓄米というのは経費がかなりかかっているというふうに思うわけですけれども、さらに問題だと思うのが、今大臣がおっしゃられた、現在備蓄米というのは五年の棚上げ方式です。要は、五年間保管するわけですから、主食用米として買い上げて、五年後には飼料用米、つまり、主食としては販売していないわけです。しかし、このTPPの七万八千四百トンを買い上げ、備蓄するというふうになれば、報道ベースですけれども、三年保管に変更するというようなことも報道がされています。先ほども短縮をされるというお話が大臣からありました。

 五年間であれば主食用米としては出ないで飼料米として出るけれども、例えば三年にすれば、主食用米として、回転備蓄という形で市場に出ていくことになると思うんですけれども、そうなると、私はこれこそ米価に影響が出るというふうに思うわけです。

 百万トンを維持するというお話だったんですけれども、私は五年間を維持しろとは言いませんが、主食用米として出ていけばやはり市場の価格に影響するわけですよね。それを抑える意味で、やはり主食用以外で備蓄米は回転させるんだ、棚上げ方式でやるんだという、五年間を維持すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

森山国務大臣 新しい方式でも、主食米として備蓄米が市場に出ていくことはありません。

斉藤(和)委員 主食用米として出ていかないということは、どういうふうにやるというお考えなんでしょうか。

森山国務大臣 今から制度はつくらなきゃなりませんが、一定の期間を過ぎたものは、今までと同じように、飼料米とかあるいは加工用とかそういうところで出てまいりますので、主食用として市場に出ていくことはありません。

斉藤(和)委員 主食用として出ていくことはないという御答弁でしたので、これはしっかりと飼料に回すだとかしていただいて、主食に必ず影響が出ないようにするということは絶対に必要だというふうに思っております。それでなくても、米価は、農水省のものでも再生産可能なのは一万六千円、しかし今はもう一万円を切っているわけですから、やはりここを本気で変えるということを、支えるということをやっていかないと、米づくりは危機的な状況なわけですので、やはりここはしっかりと絶対に揺るがずにやっていただきたいということを強調したいというふうに思います。

 次に移ります。

 昨年の十二月に在日米国商工会議所が意見書を出しました。それは「共済等と金融庁監督下の保険会社の間に平等な競争環境の確立を」というもので、その中で、JAグループの改革を進めるべきとの内容が含まれています。

 大臣は、この意見書、どのような御見解を持っていらっしゃるでしょうか。

森山国務大臣 在日米商工会議所が意見書を発せられたことは承知をいたしております。

 農協の共済事業につきましては、経営の健全性の確保や契約者保護に関し、農協法で保険業法と同等の規制を行った上で、他の協同組合による共済事業と同様、農林水産省が単独で監督をしております。この体制につきましては、昨年の農協法改正でも何ら変更をしていないところであります。

 また、准組合員の利用規制のあり方につきましては、五年間の調査を行った上で決定する旨が改正農協法の附則で明定されているところであり、この規定に従って対応していくという考え方でございます。

斉藤(和)委員 この在日米国商工会議所が出した意見書の中には、農協法の改正案の可決を歓迎し、一九五四年に農協法が制定されて以降、安倍政権が初めて大規模な農協の改革を実行したことを高く評価している。この改革は、有意義な構造改革の達成に向け、大きく前進していることを示しているというふうに、農協法改正が構造改革の前進だと絶賛しています。

 さらに、二〇一四年の規制改革会議農業ワーキンググループの提言の中にはあった、准組合員の事業利用が正組合員の事業利用の二分の一を超えてはならないなどの規定が法案には入らなかったということに対して不満を示した上で、金融庁監督下の保険会社に厳しい規制を課す必要があるのであれば、同様の商品を販売する全ての競合会社にも同じく厳しい規制を課すべきであり、共済等も例外ではないというふうに言い切っています。

 さらに、共済等の優遇措置は、WTOのサービスの貿易に関する一般協定のもとで、保険、保険関連サービスを含む金融サービスに関する合意事項に反しているというふうに言及しているわけですけれども、大臣はこの指摘をどう受けとめていらっしゃるでしょうか。

森山国務大臣 いろいろな御指摘があることは承知をいたしておりますが、私どもは別に間違ったことをしているとは思っておりませんし、また、農協の共済につきましても、ほかの事業協同組合の共済につきましても、それぞれ歴史を重ねてきた事業でございますので、そのことも在日のアメリカ商工会議所の皆様にも御理解をいただかなければならないと思っております。

斉藤(和)委員 御理解を求めるというお話だったんですけれども、問題は極めて重大なことを指摘しているというふうに思うわけです。

 農協共済の問題が、WTOのサービス貿易に関する一般協定上の、国際通商上の義務に抵触しているというふうにこの意見書は言っているわけです。これはTPPにも関連してくることは明確だというふうに思うわけですけれども、TPPの金融サービスの問題では金融サービスの紛争処理規定が明記されていて、ある意味、そこにこの抵触している問題を持ち込むぞ、訴えるぞというふうに言っているにも等しいぐらいの痛烈な意見書だというふうに私は受けとめました。

 当然、大臣、先ほど来答弁されていますけれども、こうした不当な要求に対しては絶対に受け入れることはない、断固拒否するんだ、その立場にお変わりはないでしょうか。

森山国務大臣 林前大臣も答弁をしておられますけれども、「見直し規定でございますから、これは一般的に法律には大体付されているものでございまして、何か方向性を持って見直すときには、こういう方向で見直すとかそういうことが普通は書かれるわけでございますが、そういうことも付しておりませんので、単純な見直し規定だ、こういうふうに考えております。」という答弁でございますので、いずれにいたしましても、いろいろ御意見があるのは、それぞれ御意見があるのは私も承知をいたしておりますが、私どもは、そのことを見直すという気持ちはありません。

斉藤(和)委員 今のは違うと思います。見直しというのは、多分、農協法の中での見直し規定の話ではないかというふうに思うので、今の話とはちょっと違うと思うんですけれども。

 TPPがこれから審議になります。やはり、この農業共済の問題、さまざまな共済の問題というのは、私は必ずTPPとも直結してくる問題だというふうに思っております。そうした点で、やはりTPPというのは、農業だけではなくて、共済だとか金融だとか、さまざまな幅広い分野に非常に影響をしてくる、こういう問題ですので、私はTPPの批准は決して認められないというふうに強調をしたいわけです。

 本当は国家戦略特区の話をしたかったんですけれども、多分時間だと思いますので、引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小里委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 昨日、TPP承認案と関連法案が閣議決定をされました。本委員会は、TPPに対して決議を上げた委員会です。この決議を守れたかどうかの論証は本委員会で行うべきと思い、きょうはその点を、短時間ですが、質問を行います。

 高鳥副大臣にきょうはお越しいただいております。TPP本体では、TPP委員会のもとで、協定発効の日から三年以内に締約国間の経済上の関係を見直すことや、改正または修正の提案を検討することが明記されています。第二章の物品市場アクセスでは、小委員会のもとで、協定発効後最初の五年間、少なくとも年一回会合するとされています。発効後直ちに見直しが始まるということだと理解します。

 一方、米に関する関税割り当ての運用に関する米国との交換公文がありますね。これによれば、米国からの米輸入は、三年度中二年度で数量が消化されなかった場合に、SBS方式における最低マークアップを一時的に一五%引き下げることで合意をしています。

 このような二国間の合意内容、いわゆるサイドレターですが、これはTPP本体の方にある見直し協議の対象となるのかどうか。確認ですので、副大臣にお伺いします。

高鳥副大臣 畠山委員にお答えをいたします。

 交換公文でございますが、TPP協定とは別個の国際約束であるために、TPP協定の規定の対象とはならず、再協議の対象とはなりません。

畠山委員 別物であることを確認します。

 TPP本体は、先ほど確認したように、発効後直ちに見直す規定があり、それに対して政府は、この間、日本の国益を害するものについては合意しないと答弁をしてきました。先ほども森山大臣から紹介がありました。

 では、仮に交換公文でもその内容を見直すとなった場合、同様なのでしょうか。副大臣、お答えください。通告していますよ。

高鳥副大臣 お答えいたします。

 我が国といたしましては、交換公文の再交渉に応じる考えはございません。

畠山委員 では、さらに具体的にお聞きします。

 今度は、本体の方の附属書二―Dの日本国の関税率表、一般的注釈9の(a)についてですが、次のように書いてあります。オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランドまたはアメリカ合衆国の要請に基づき、途中略しますが、関税、関税割り当て及びセーフガードなどの検討をするために、締約国について効力を生ずる日の後七年を経過する日以後に協議する。この間随分議論された、七年後の再協議の規定です。

 これは事務方で結構ですが、この同じ項目で、日本文は今のように書いてあるんですが、では、オーストラリアは日本以外のほかの国と協議することになっていますか。

澁谷政府参考人 豪州の関税率表では、協議の相手国となっているのは日本のみでございます。

畠山委員 同じように、ここの日本の文書に書かれている、ほかのカナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカについても同様に、日本以外のほかの国と協議することは書かれていますか。

澁谷政府参考人 御指摘の四カ国につきましても、豪州と同様、協議の相手国となっているのは日本のみでございます。

畠山委員 つまり、この項目というのは、七年後の再協議という期間の問題だけでなく、日本を含めて六カ国の名前が出てくるわけですが、マルチの再協議ではないんですよ。日本と五カ国それぞれの個別協議というのがこの項目です。

 農産物関税撤廃率が日本に次いで低いのはカナダ、九四・一%ですが、そこも含めて、日本のような複数国と見直しの要請を約束している国というのはほかにないんですね。何で日本だけこんな個別協議をすることになったんですか。どんな交渉をした結果か。これは高鳥副大臣、答弁してください。

高鳥副大臣 お答えいたします。

 相手国との関係もございまして、交渉経緯の詳細については申し上げられませんけれども、全体の分野を通じたバランスに配慮したぎりぎりの交渉の結果、相互主義のもとで、相手国からの要請に基づき協議を行うとの規定を、当該内容に合意した国との間で相互に設けることにしたということでございます。

畠山委員 いや、相互主義になっていないんですよ。先ほど言ったように、これはマルチの問題ではなくてバイの交渉になっていて、当時の報道にもありましたけれども、米豪とか米・ニュージーランドとか、さまざまな問題があったかと思うんですが、それでも結局、七年後の再協議のこの規定は日本とそれぞれの国だけの規定になっているんです。おかしいじゃありませんか。

 こんなことだから、国益を害するものについては合意しないと政府が答弁をされても、農家の不安が消えないわけです。議論だって、こうやって秘密だとなったら進んでいかない。

 五カ国いずれも農産品輸出大国です。政府は関税撤廃等で例外を確保したと盛んに言いますが、関税が残った四百四十三ラインというのは全て農林水産物ですね。確保した部分が相手からすれば交渉のターゲットに文字どおりならざるを得ません。日本へさらなる関税削減や撤廃を迫る以外にあり得ません。

 そこで、最後、森山大臣に伺います。

 日本の農林水産業に責任を負う大臣として、本委員会での決議についての情報公開にかかわって認識を伺います。

 このように決議には書かれています。「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」これが本委員会の決議です。

 交渉の経過が答えられないという答弁が先ほどありました。決議に反していると私は思いますが、大臣は今この間のやりとりを聞いて、決議に反していないかどうか、認識をお答えください。

森山国務大臣 TPPに関する説明につきましては、交渉中も秘密保持の制約がある中で国会等における丁寧な説明を心がけてきたところでありますが、大筋合意後は、その直後から、関税交渉の結果や協定本体及び附属書、さらには交換文書の概要資料などを公表してまいりました。

 御指摘の交換文書につきましては、大筋合意した直後の昨年十月六日に内閣官房が案件一覧を公表いたしましたし、また十月八日には農林水産省が農林水産分野の内容を公表しました。また十一月五日には内閣官房がより詳細な内容を公表させていただき、ことしの二月の四日に内閣官房が全文を公表しているところであります。

 また、公表した資料に基づき、現在まで四十六回にわたりまして、大筋合意の内容についても説明会を各地で開催させていただきまして、国民の皆さんへの丁寧な説明に努めてきたところであります。

 今後とも、現場からの要請を踏まえつつ、全国各地においてきめ細かく丁寧な説明を行っていく考え方であり、国会決議に沿ってしっかりと対応してまいりたいと考えております。

畠山委員 時間ですのでもう終わりますけれども、私は情報は明確に公開されていないというふうに思います。批准を求める審議の大前提がこの交渉経過も含めた情報公開であるからこそ、このような委員会の決議が上がったのではなかったでしょうか。

 改めてその点を強く指摘して、私の質問を終わります。

小里委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時三十分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二十一分開議

小里委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。村岡敏英君。

村岡委員 改革結集の会、村岡敏英でございます。

 きょうは農水委員会は変則で、休憩が二回ありまして、何か最後は私だけ質問で、私のためにやっているわけじゃないでしょうけれども、本当に恐縮に感じております。

 きょうは日本農業新聞の中でちょっと注目することがありました。小泉政務官も載っておりましたけれども、政務官じゃなかったですね、農林部会長、済みません、元政務官でした。もやしを食べて骨太になる、その後、苦手なトマトも試食した、農政でどんなストレスがあっても、より強く大きくなりたいと。相当ストレスを感じているんでしょうね。答弁は聞けないので、これは一つ紹介だけですけれども。

 そして、森山大臣はフーデックスに行かれて、六次産業化、海外の戦略ということで、いろいろ視察されてきたということが新聞記事に載っておりました。

 私も、ちょうど農林委員長のときに、一緒にHACCPなんかも行きましたけれども、この海外展開、六次産業化というのをどのように進めていくか、大臣からもう一度お聞きしたいと思います。

森山国務大臣 きのう、ちょっとフーデックスの会場に行かせていただきましたが、本当に多くの国が出展をしていただいておりまして、フランスなんかはやはりワインに相当力を入れているんだなというのがわかるぐらいの状況でございました。

 また、国内の企業も、自治体が中心になって取りまとめて出展をされたり、いろいろなグループで出展をされたりでしたけれども、恥ずかしい話、こんなものも国内でつくっているのかなと思うようなものもたくさんありまして、六次化ということにも本当に現場の皆さんがよく御理解をいただきつつあるんだなというふうに思っておりまして、きのうは大変いい機会をいただけたと考えております。

村岡委員 私もフーデックスに行かせていただいたことがありますけれども、六次産業化というのは各県でどんどん取り組んでいる人がたくさんいます、これはぜひ進めていただきたい。そこには農林省のバックアップも必ず必要になってきますので、そこはお願いしたいと思っております。

 それでは、大臣所信の方に移りたいと思いますけれども、質問させていただきます。

 大臣の所信の中で、「大区画化を進めます。」このように述べられております。

 大区画化、昔なら、十五、二十ヘクタール、その程度が大規模農業と言われたわけですけれども、今、百ヘクタールというような大区画も二つから三つぐらい各県にできてきた。これは、そのような百ヘクタールをこれからも各県に広げていきたいという大区画化なのかどうか、大臣のお考えをお聞かせ願えればと思います。

森山国務大臣 百ヘクタールということを決めているわけではありませんが、できるだけ大区画化をさせていただくということが、規模の拡大にもつながりますし、コストも下がってまいりますから、大事なことではないかなというふうに思っております。できるだけ大区画化されたものを担い手の方に集積率を高めさせていただくということも大事なことではないかなというふうに考えております。

 ただ、農家の負担の軽減も図っていくということが大事なことでございますので、そのことと並行しながら農業農村整備事業については事業を進めさせていただきたいと思っておりますし、無駄な事業だと批判を受けることのないように、しっかりとやらせていただきたいと思います。

村岡委員 私も大区画化の方向というのはもちろん賛成なんですが、その陰で、二、三ヘクタールの人たちがどんどん離農している、そういう状況があると思います。それでは地方創生とか農村社会がもたなくなる。

 例えば、全国で千七百四十一市町村あるわけですけれども、五万人以下の市町村で千百八十三市町村。もう七割も、この五万人以下というのは農業地帯に多い市町村ですけれども、そういうところの人口がどんどん減っていく。その一つの要因に、離農していって新しい働く場所があればいいわけですけれども、なかなか現実にないという中、都会に出てしまう。その点が、大区画で雇用をしていけばいいわけですけれども、そこがなかなか進んでいかない。効率化を進めれば、当然、そこには機械化が進んでくる、人手が要らなくなる、そういう状況があります。

 これに対して、農林省は、地方創生の観点で、農村社会を守るという観点で、どのようにそこの離農していく人たちがその地域に住んでいくかということを、先ほどの六次化ももちろんあるでしょうけれども、その辺の大臣のお考えを。

森山国務大臣 村岡委員もよく現場に出ておられますからおわかりをいただけると思いますが、大区画化できるところはそのとおりやらせていただかなければなりませんし、効率よくやることが大事だなと思っております。

 しかし、中山間地においてはなかなかそのことのかなわないところもありますから、ここは、日本型直接支払いを含めて、農村集落をどう維持していくかという地域政策も並行してやっていくということが大事なことだなというふうに思っております。

 現場を歩きますと、むしろ、我々の中山間地は本当に取り残されるんじゃないかなという御心配が非常に多いなということは感じております。ですから、ここのところも御安心をいただけるように、我々はしっかりと説明をして、政策を実行させていただくということが大事なことであろうというふうに考えております。

村岡委員 私は地方創生委員でもあるんですけれども、その中でも提案しているんです。中山間地はもちろんですけれども、県境のところというのが、だんだん人口が減ってきている、なかなか不便な、インフラ整備から何からおくれている。

 そういう中で、農協の方々にも話しているんですが、県を越えて、例えば、土質が同じ、同じような作物をつくっている、そういう場合は、果樹でも、ブランド化というのは、非常に限定された地域で高品質なものというのはあるんですけれども、ただ県を越えただけで、量が少なくて価格勝負ができない。やはり、ロットをそろえるという中でいけば、農協が県を飛び越えて協力していくということも必要だ、こう思っているんです。

 例えば、秋田なんかでいくと、湯沢という地域とそれから山形はサクランボをお互いつくっています。品質も非常にいいです。その中でいくと、ある程度の品質のものは一緒になってロットをそろえて、ロットがなければやはり価格勝負に負けるというところがあったり、また、米なんかも、県内の米ということで頑張ることも大切なんですが、実は、県境近くだともうほとんど気候も何も同じ、そういう場合もあるんですね。

 そういういろいろな作物の組み合わせも、農業の場合ですと、これは作物ですから、農協を越えてもやるというような対策も少しずつ進んではいるんです。そういうことにも農林省は少し取り組んでいただきたいと思っているんです。

 よく笑い話になっているのが、秋田では秋田杉というのが有名です。しかし、山に生えている杉、そこに境界線で、ここまでが秋田でここが岩手だというときに、これは秋田杉じゃないとか、そういう変な話があるんです。それはいろいろな農地のところでもつながっていて、そういう場合があるんです。

 そういうのは、むしろブランドで、ロットをそろえるために県を越えてもやっていく。その場合は農協が協力したり生産者が協力しなきゃいけない。そういう方策を農林省も少し考えていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

奥原政府参考人 現在の農協法のもとでも、農協は県のエリアを越えて、そういう区域を決めてやることもできるわけでございます。この場合は監督するのが県庁ではなくて国ということになりますけれども、そういう方式もとり得ますし、それから、県を越えて農協間で連携を図るということも当然あり得ることでございます。

 特に、同じ作物、同じものでブランドをきちんとつくることができれば、県を越えての連携も当然あり得ますし、昨年の農協改革法の精神からいえば、一円でも高く売っていくということですから、ブランドをつくることによって高く売れるのであれば、そういう連携は積極的に我々も支援していきたいと思っております。

村岡委員 先ほど午前中でも話が出ましたけれども、資材価格という部分もそうなんですが、これは、例えばトラクターでも何でも、機械を買うとき、資材を買うとき、農協を越えて、県も越えて、やはり一円でも安くとなったら、もう少し大きい単位で考えていかないと、決して海外より物すごく高いわけじゃないという試算も出ております。

 そういう意味では、そういう協力関係がなきゃいけない。農業界全体で協力していくという体制をとっていくことによって、品質をそろえて一円でも高く、そして、コストダウンは大きく、機械化も、県だけじゃない、農協一つだけじゃない、しっかりとそれで買っていってコストを下げていく、こういう考えはどうでしょうか、大臣。

奥原政府参考人 農協の生産資材の関係でございますが、午前中も質疑にございましたけれども、やはりJAグループ全体として、どうやれば農家にとってメリットがあるような生産資材の調達ができるか、これはきちんと考えるべきテーマだと思っております。

 昨年の法改正、それから、その前の年、二十六年の六月に政府・与党の農協改革の取りまとめが行われておりますが、この中では、それぞれのJA、単位農協がどこから仕入れるかについては、これはもう徹底比較をして、一番安いところから仕入れるようにしよう、品質も当然ございますが、品質面を考慮して、安いところから仕入れるという方針を出しておりますけれども、JAグループ全体として、そういうことができるためにどうするか、これは全農を含めてきちんと考えて答えを出すべきテーマだと思っております。

村岡委員 ぜひ、その意識というのは、小さな単位でやっていると、どうしてもコストが下がってこない。やはり大きな単位で、一緒になって、機械化を進めていくときには、またリースとかレンタルとか、いろいろなものを組み合わせて効率よくやっていくことによって農業者の所得を上げていく、それには、農協も垣根を越えて協力関係をしていく、この姿勢が大事だ、こう思っています。

 昨年の農協改革もそういう思想だと思っていますけれども、大臣、その点について。

森山国務大臣 今、村岡委員のおっしゃるように、そういう方向で農業団体も考えていただいていると思いますし、そういう改革は的確に進めていくということが大事であろうというふうに考えております。

村岡委員 実際にはなかなか、自分の一農協を、これまでそこを守り、そこの中の成長だけ考えていたので、実はこれは簡単にはいかないと思うんです。しかしながら、そのぐらいの思い切った協力関係がなければ農村の所得も上がらない、こう思っておりますので、そこは農林省もバックアップしていただきたい、こういうふうに思っております。

 それは、私なんかはよく県境のところで言うのは、何で協力関係がなかなか進まないかというと、県を越えると、行政単位がもちろん違うので、指導するところがないんです。もちろん予算のつき方も、何々県に来る、何々市町村に来ますから、そこの協力をしようとしたときに司令塔がいないわけですね。この司令塔がいないというところは国がやらなきゃいけない。

 また、政治も、首長さんとか国会議員だとか全部、選挙区が二つに分かれてやっていると、なかなかそれをまとめてという司令塔がいないんです。そこが問題で実はなかなか進まないんです、一緒にやろうと思っても。

 だから、そこに農林省がしっかりと、県を越えても一緒にやっているところで、また、作物によっては県を越えてやっているところに協力していく、司令塔になるぐらいの気持ちで農業の改革を進めていく、こういう体制が大事だと思っているんです。

 そこは農林省しかできない指導していく役だと思うんですが、どう思いますでしょうか。

森山国務大臣 行政が二つにまたがっておりますと、今、交付金事業が随分ふえてきておりますので、こちらの県はこの事業をやる、しかし、こちらの県はこの事業はない、そうすると、またがっている組合員はどうするかとかいろいろな課題はありますけれども、ただ、地域の特産品をどうつくっていくか、あるいはどう地域として一体になって物を売っていくかということを考えますと、また連携は必要なことであろうと思います。

 ケース・バイ・ケースになると思いますが、農水省でできることはしっかりやらせていただきたいと思っておりますし、今、地方に参事官がおりますので、そういう役割も担っているわけでございますから、しっかりやらせていただきたいと思います。

村岡委員 次の質問に移らせていただきます。

 TPP、二月四日の予算委員会でも、総理、そして森山大臣にお聞きいたしましたけれども、あのときに、TPPの七万トンの話は、備蓄米でしっかりとそこは押さえていく、ですから、価格とかいろいろなものは心配ありませんという大臣の発言でありました。

 しかし、農業者も心配しているし、私も心配しています。それは、まず一番は何かというと、備蓄米で囲うもの、例えば十万トン囲います、これは一体どのぐらい費用がかかりますか、一年間に。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 備蓄につきましては、買い入れ価格が毎年変動いたしますので一概に確定的に申し上げることは難しゅうございますが、仮に、二十四年度から二十六年度における決算ベースの平均的な買い入れ価格と売り渡し価格を用いて計算しますと、一万トン当たり約二十億円の財政負担でございます。

村岡委員 一万トン当たり二十億円ですから、十万トンというのは二百億なんです、年間。保管料も含めますし、そういうのでいくと、変動はあるんですけれども、実は、二〇〇九年度は二百二十四億、二〇一〇年度は六百十四億、一一年度は三百二十七億、一二年度百二十四億、一三年度二百三十二億、五年間累計千五百二十一億、備蓄で赤字になっているんです。

 これが、備蓄で安心だといって、財政が大丈夫ですか。そこが心配なんです、ずっと囲い込みをするなら別ですけれども。実際に相当なお金をかけなきゃいけない、そこができるかできないか。ただ単に、八万トンずつ減ってくる、でも、七万トンは入ってきて、これはSBS方式でやるので、その分だけはしっかりと備蓄する。でも、これは百万トンを超えてどんどん備蓄するわけで、大体百万トンぐらいで売って歩くわけですから、そのときに保管料と赤字が出ているわけです。そうすると、五年で千五百億出るときもある、それは二千億出るときもあるかもしれない。

 そういう状況のこの予算措置は、農林省で、安心していい、こういうことでしょうか。

柄澤政府参考人 御指摘の米に係るTPP対策につきましては、昨年十一月の政府全体として決定いたしました政策大綱で対策の内容を決定いたしておるとともに、御指摘の対策に必要な財源につきましては、「既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する」ということを明確に記載しているところでございます。

村岡委員 大臣、今官僚の方が答えましたけれども、大臣も、もうこれは安心なんだ、財政負担はきちんとできるんだ、こういう認識でしょうか。

森山国務大臣 米の飼料米の政策につきましては閣議決定をされているわけでございますし、また、TPPの政策大綱の中でも、先ほど申し上げましたとおり、各年度の予算編成の段階で政府全体で責任を持つということになっておりますから、しっかりそこは確保ができると思っております。

 ただ、できるだけ飼料米の生産には今後も合理化の努力というのは必要であることは申し上げるまでもありません。

村岡委員 実は、なかなかこれだけの財政の負担がかかっているということが出てこないんです。今大臣が言われるように、そこはしっかりと支えていくということであればこの政策が続いてはいくと思うんですけれども、なかなか、世の中、この赤字をどう説明していくのか。基本的には日本の米は余っているわけですから、余っているところに、そこに入れて、それを囲い込みしなければ市場が乱れるということで囲い込みして、必要のないといえば必要のないお米をそういうふうな形にしている。この財政負担のところはしっかりと予算がなければ今後続けられない対策だと思うので、そこは大臣の言った言葉で、政策はそこは閣議決定してしっかりやるんだ、こういうことで、わかりました。

 そして、TPP対策なんですけれども、影響調査というのが、あのときの予算委員会でも聞きましたけれども、農林省の二千三百億とか、そのぐらいの影響なんでしょうか。

 その中で、我が秋田県の農協がTPPの対策を東京大学の先生にお聞きしたところ、TPPの影響というのは政府とは違って二百八十七億打撃、それは幾らからかというと、千七百十六億円を秋田県で生産額基準にすると、二百八十七億の減少が生じる。特に、米は六十八億の減少を見込んでいる、こういう試算を出しているんです。

 この試算に関して、農林省と全然違うんですが、農林省はどんな認識でしょうか。

森山国務大臣 JA秋田県グループが影響額を公表されたことは承知をしておりますが、村岡委員御承知のとおり、試算というのは前提条件、分析手法やデータの取り扱い方によって結果は変わるものでございますけれども、この試算について申し上げますと、米については、備蓄の買い入れ数量をふやしても、その後、備蓄米を国が主食米として販売することから米の価格が下がるという前提で計算しておられますけれども、これは先ほど申し上げたとおり、そういうことはないわけでございますから、ちょっと前提が違うということだと思います。

 また、リンゴについては、生果、果汁にかかわらず関税撤廃により価格が低下、生産量に減少が生じて、約四割の生産額が減少するとしておられますけれども、実際こういうことは予測をしていないわけでございますので、少し国の試算とは違うなというふうに思っております。

 また、秋田県が試算をされたのを見ますと、また随分数字が違いまして、農産物で七億一千万から十四億二千万というふうに計算をしておられますし、JAの場合は二百十七億円から二百八十七億円というふうに試算をしておられますので、こういう数字の違いがあるということを御認識いただきたいと思います。

村岡委員 これは数字ですから前提条件が違えば違うのは当然ですけれども、これだけ違うという認識ですと、秋田県に限らず、多分、各農協がやれば大変不安な要素を加味して影響度が高くなると思う。

 それは、農林省の試算を、そのぐらいで済むだろうという形のものが全国の県に、農協に行っていないということですよね。だから、農林省の試算を信じていないから、それはもう一回試算し直しているわけで、そこはやはりそごがないように、農林省が、例えば我々はこういう試算でこのぐらいの影響しかないから対策をとってやっていくんだというんだったら、やはりそこはちゃんと説明していかなきゃいけないですよね。これは、これだけの影響があったら、もうやめていこうというネガティブな雰囲気になるのは当然です。

 ですから、そこはもし前提条件が違うとすれば、こういう前提があります、こういう対策はしますと細かい説明がなければ、それはあなた方の試算が違うんだから間違いだよと言っても、この数字は必ずひとり歩きしますよ。

 ですから、農林省が出した試算が確かなものであれば、しっかりと説明することが大事だと思いますけれども、大臣、どう思われますか。

森山国務大臣 このことにつきましては、各県に計算をしていただけるように、資料を配付してございます。それをずっと計算してもらえば、各県のものは、国はこういうデータに基づいてやっていますというのは出てまいります。

 ただ、国と違って別な考え方で試算をされますと、当然のこととして数字は違ってくるということだと思いまして、いわゆる秋田県の数字とJA秋田の数字が違うということはそういうことを意味しているんだろうと思います。

村岡委員 第三者的に見ないで、しっかり説明していただくことです。ただ前提が違うからそうだろうというんじゃ、それはもう数字はひとり歩きします。悪い数字の方がひとり歩きするんですよ。本当にそこの対策をやって、政府の数字だとすれば、それの説明を丁寧にするということが必要だということだけは申し述べておきます。

 そして、大規模化の大区画化にしていって法人にしていったときのもう一つの問題が、社会保険の加入ということがあります。

 その中で、社会保険で、これは農林省が調べた資料、農業法人等の社会保険の加入状況ということで、雇用就農者の確保、定着を図るためにということで、これは雇用事業を実施した法人二千三百で調べています。この調べた結果によれば、社会保険は、健康保険八八%、それから厚生年金保険八七%と入っています。

 しかし、実際には、法人が一万以上あります。この一万ぐらいはまずほぼ入っていないという認識ですか。

奥原政府参考人 農業界に若い優秀な方に来ていただくということを考えますと、やはり雇用の形での就農は極めて重要でございます。

 そういう意味では、この雇用の受け皿になる農業法人の方で社会保険を含めて他産業並みの就業環境をきちんと整えていく、これが非常に重要なテーマだと思っております。

 先生からも昨年からこの御指摘をいただいていまして、昨年の時点では全国農業会議所の調査しかございませんでしたので、その後、我々の方で、農林省の方で調査をいたしました。

 今御指摘ございましたように、昨年の七月に、これは農の雇用事業を実施しているところにちょっと限定をいたしましたけれども、全部で三千五百九十六の法人に対してアンケート調査を行いまして、その結果、回答があったところが二千三百でございます。これによりますと、この回答のあったところのうち九割が既に社会保険に加入をしていて、約一割も今後加入する意向というのは示されております。

 確かに、農の雇用をやっているところだけに限定した調査ですから、それをやっていないところも含めて法人全体についての調査をさらに我々もやっていくつもりでございますけれども、やはり農の雇用事業を含めて、若い方が雇用就農の形で入っていくということを促進するために、社会保険の整備、雇用環境の整備についてはさらに意を用いてやっていきたいと考えております。

村岡委員 大臣、ここは大事で、法人になっていっても、社会保険とかそういうのは費用がかかりますし、また実はコストにもなるんです、経営の中で。

 しかしながら、やはり優秀な方々が、そして雇用として安定していくためには、この社会保険の調査とともに、社会保険の負担という部分は、やはり農業が会社として、法人として所得が上がっていかなければそれも掛ける余裕もない、ですから社会保険がかからないような働き方で雇ってしまうということがありますので、ここは重要なところです、先ほど言った人口減にも、それから雇用の問題にもつながりますので、今後ともこの社会保険の調査はしていくべきだと思います。

 ぜひ進めていただきたいと思っていますが、どう考えていますか、大臣。

森山国務大臣 農業界に優秀な人材を安定的に確保し、定着させていくためには、農業法人において社会保険を含めて他産業並みの就業環境を整備していくということは大変重要なことだと考えております。

 社会保険の加入状況につきましては、議員からの御指摘を踏まえて、農林水産省として、平成二十七年七月に、三千五百九十六法人を対象にアンケート調査を改めて行いました。

 その結果によって、回答のあった二千三百法人のうち約九割が既に社会保険に加入しており、残りの一割も今後加入する意向を示しているところでございます。

 農林水産省といたしましては、農の雇用事業において社会保険に加入していない法人を助成対象から除外すること、また、厚労省とも連携をさせていただきまして、農の雇用事業を活用していない法人も含めて社会保険制度等を整理した啓発パンフレットを配布することといった取り組みによりまして、農業法人における社会保険の加入を促進して、就業環境の整備には今後も努めてまいりたいと考えております。

村岡委員 もう時間がないので最後ですけれども、資材価格、小泉農林部会長がいろいろ取り組まれているようですけれども、産業競争力会議の資料をいろいろ見てみると、日本はそんなに機械は高くないし、そして、そんなに流通費が高くないという調べが出ています。

 しかし、ここももう一度やはりコストダウンするために、この資料だと余り手をつけるところがないような感じの資料が出ています。ただし、農業機械なんかは海外向けのモデルだと非常に安くやっているので、そういう意味では、クーラーをつけたり、音楽のCDとかをつけたり、何かいろいろな附属的なものをつけていて高くなっているのかどうかわかりませんけれども、そういう意味では、データだけじゃなく、詳しい内容をぜひ、大臣、これを調べていただいて、ただ価格だけで見るとそんなに違いはないような、流通費もそんなに日本だけが高いわけじゃないようなデータが出ていますけれども、この中身を詳しく調べていただいて、コストダウンに努めていただきたい、こう思っておりますが、最後に。

森山国務大臣 正しいデータに基づいていろいろな対策は打たなきゃなりませんので、今も調べておりますが、さらにその努力をさせていただきたいと思います。

村岡委員 どうもありがとうございました。

小里委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十二分散会


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