衆議院

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第4号 平成28年4月21日(木曜日)

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平成二十八年四月二十一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小里 泰弘君

   理事 江藤  拓君 理事 小泉進次郎君

   理事 武部  新君 理事 宮腰 光寛君

   理事 簗  和生君 理事 岸本 周平君

   理事 小山 展弘君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    井野 俊郎君

      伊藤信太郎君    池田 道孝君

      今枝宗一郎君    大串 正樹君

      岡下 昌平君    加藤 寛治君

      勝沼 栄明君    神山 佐市君

      木村 弥生君    瀬戸 隆一君

      田畑 裕明君    中谷 真一君

      西川 公也君    橋本 英教君

      福山  守君    藤原  崇君

      古川  康君    古田 圭一君

      前川  恵君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    山本  拓君

      吉川 貴盛君    渡辺 孝一君

      井出 庸生君    金子 恵美君

      田島 一成君    福島 伸享君

      村岡 敏英君    横山 博幸君

      稲津  久君    佐藤 英道君

      斉藤 和子君    畠山 和也君

      仲里 利信君

    …………………………………

   農林水産大臣       森山  裕君

   農林水産副大臣      伊東 良孝君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    豊田真由子君

   農林水産大臣政務官    加藤 寛治君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           刀禰 俊哉君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       塩川 白良君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           丸山 雅章君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           小風  茂君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            末松 広行君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (林野庁長官)      今井  敏君

   政府参考人

   (水産庁長官)      佐藤 一雄君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 亀澤 玲治君

   農林水産委員会専門員   石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     木村 弥生君

  中川 郁子君     岡下 昌平君

  橋本 英教君     神山 佐市君

  古川  康君     古田 圭一君

  細田 健一君     藤原  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     福山  守君

  神山 佐市君     橋本 英教君

  木村 弥生君     大串 正樹君

  藤原  崇君     田畑 裕明君

  古田 圭一君     古川  康君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     あべ 俊子君

  田畑 裕明君     宮川 典子君

  福山  守君     中川 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     細田 健一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

小里委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ちまして、委員会を代表して一言申し上げます。

 このたびの平成二十八年熊本地震によりお亡くなりになられた方々とその御遺族の方々に深く哀悼の意を表します。

 また、被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 これより、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、黙祷をささげたいと思います。

 全員御起立をお願いいたします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

小里委員長 黙祷を終わります。御着席願います。

     ――――◇―――――

小里委員長 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤速水君、大臣官房政策評価審議官塩川白良君、大臣官房審議官丸山雅章君、消費・安全局長小風茂君、生産局長今城健晴君、経営局長奥原正明君、農村振興局長末松広行君、政策統括官柄澤彰君、林野庁長官今井敏君、水産庁長官佐藤一雄君、内閣府規制改革推進室次長刀禰俊哉君、環境省大臣官房審議官亀澤玲治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小里委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小里委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部新君。

武部委員 おはようございます。自由民主党の武部新です。

 まず、冒頭、黙祷をささげましたけれども、十四日より熊本、大分を中心に発生しております地震によって亡くなられた方々に御冥福をお祈りするとともに、被災者の皆様方に心よりお見舞いを申し上げます。

 熊本、大分につきましては、畜産県でございまして、被災地では牛舎の倒壊ですとか生乳の廃棄などが行われているという報道が聞こえております。現時点における地震による畜産関係の被害状況について、農水省から御説明をお願いいたします。

塩川政府参考人 まず、農業全体の被害の状況からお答えさせていただきたいと思います。

 今回の地震では、震度七の地震が二回発生したほか、震度六強、六弱の余震も多数発生しておりまして、道路や鉄道、電気やガス、水道といったライフラインにも大きな影響が生じております。

 このような中、農業関係の被害状況につきましては、九州農政局等を通じまして情報収集に努めているところでありますが、現時点で、農地の地割れや液状化、選果場の破損、農業ハウスの損傷、乳業工場の操業停止、畜舎等の損壊、一部ため池の変状、ひび割れでございますが、などの被害が生じているところでございます。

 農林水産省といたしましては、引き続き関係自治体とも連携いたしまして、速やかに被害状況の全容を把握するとともに、一日も早い営農再開に向けまして、迅速かつ的確な復旧を図ってまいりたいと考えております。

今城政府参考人 畜産関係についてお答えいたします。

 今回の地震によりまして、畜舎等の施設設備が全壊または一部損壊した酪農家、肉用牛農家の方々がおられるということでございます。

 被害状況そのものにつきましては、現在把握に努めておりますが、その正確な把握、早期の復旧に向けた対応のため、十七日から職員を現地に派遣しております。

 また、生乳につきましては、発生直後、集乳できない地域というものが熊本県で生じておりました。農家段階での生乳の廃棄というのも発生したというふうに聞いておりますけれども、十七日以降は、阿蘇地域の一部を除き、集乳が再開されているということでございます。

 また、昨日二十日時点で、熊本県内では五カ所の主な乳業工場のうち二カ所が操業停止ということでございますが、生乳の廃棄が発生しないよう、九州全域の生乳の需給調整を担う指定生乳生産者団体の調整のもとで、県外の乳業工場への生乳の移出というものが行われている、こういうところでございます。

武部委員 ありがとうございます。

 これから被害状況は状況把握していただけると思いますけれども、先ほども局長からお話がありましたとおり、きょうは私、指定生乳生産者団体制度について御質問させていただこうと思うんですけれども、指定団体の皆様方が大変御協力いただいて、今回の地震でも対応していただいているとお聞きしております。まさにこういったときに、需給調整の機能を担っていただいている指定団体の役割を改めて感じざるを得ないと思っております。

 私の地元北海道は、我が国の生乳の半分以上を生産している酪農の主産地でありますけれども、今般、規制改革会議農業ワーキンググループから、現行の指定生乳生産者団体制度を廃止するというような意見が唐突に公表されまして、私の地元もそうでありますけれども、生産現場から大変不安といいますか、大混乱をしている状況にあります。

 そこで、我が党におきましても、規制改革に関する指定生乳生産者団体制度について廃止することは受け入れられないという決議を行いまして、森山大臣、それから昨日は規制改革担当大臣の河野大臣にも申し入れを行ってまいりました。

 そこで、改めて森山大臣にお聞きしたいと思いますけれども、この指定団体制度が誕生した背景と、そしてその指定団体制度が果たしている機能について、認識をお伺いさせていただきます。

森山国務大臣 武部委員にお答えを申し上げます。

 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法が施行されましたのは昭和四十一年でございますが、その以前にどういう状況であったかということを少し御説明申し上げたいと思います。

 非常に小規模な生産者団体が乱立をしているという状況が一つございました。また、個別団体ごとに取引乳業者ごとの集乳が行われて、効率的な問題がございました。また、混合乳価取引による不透明な取引価格形成が行われていたのではないかということも予測をされるところであります。生産者と乳業者の間の乳価紛争が多発するなど、生乳取引、流通に多くの課題を抱えていたと思います。

 このような中で、同法は、指定団体が集乳して乳業メーカーに一元的に販売する体制を構築し、生乳の価格形成の合理化と牛乳・乳製品の価格の安定を図り、もって酪農及びその関連産業の健全な発展を促進し、あわせて国民の食生活の改善に資することを目的として制定をされた法律であります。

 これによりまして、地域の酪農家を代表して乳業メーカーとの対等な価格交渉ができる仕組みができたと思います。また、効率的な集送乳を行うことによってコストの削減につなげることができたと思います。飲用牛乳向けと乳製品向けを調整すること等により、消費者への牛乳・乳製品の安定供給といった機能が発揮をされて、我が国の酪農の発展に大きく寄与し、消費者の皆さんへの安定供給につなげてきたのではないかと考えております。

武部委員 ありがとうございます。

 今お話しになったとおり、生産者の弱い立場を、乳業メーカーとの価格交渉力を強くするために指定団体制度が生まれまして、そしてまた、北海道なんかも大変広域でございますので、条件不利地も含めた集送乳の役割も担っていただいていますし、日々もそうですし、季節もそうですけれども、牛乳というのは需給が大変ぶれが大きいですから、生ものでもありますし、そういった需給調整の役割も担っていただいております。

 そこで、規制改革会議で議論されている中身なんですけれども、そもそも、バター不足について、流通構造に大きな問題があるというふうに指摘されておりますけれども、仮に指定団体がなくなった場合、需給調整する者がいなくなるんですよ。そうすると、飲料は高いですから、多くの生産者の皆さんが飲料に売りたいという形になるわけです。そうすると、加工原料乳が足りなくなる、バター不足ももっと進んでしまう。逆のことが起こるんじゃないかと思うんです、普通に考えれば。それで、指定団体の担っている機能についてですとか、あるいは廃止した場合、どうやって需給調整を担うですとか、これは規制改革会議の中で、ワーキンググループの中でどのように議論されたのか。

 それから、本提言を検討するに当たって、当然、農林水産省ともヒアリングしたり、アドバイスをもらったりしながら進めるべきだと思うんですよ。これまでの、この提言を出すまでの間、ワーキンググループはどのような政府内で連携をとられたかについて、内閣府にお聞きしたいと思います。

刀禰政府参考人 お答えいたします。

 昨年九月以降、規制改革会議の農業ワーキンググループにおきましては、農水省より指定生乳生産者団体制度の機能を含め御説明をいただいたほか、酪農家、指定生乳生産者団体など、幅広く生乳の生産、流通に関して御意見をいただいてきたところでございます。今月八日に規制改革会議が意見を出しましたが、これにつきましては、これらの幅広い声をもとに取りまとめられたものと承知をしております。

 この意見におきましては、指定生乳生産者団体制度を廃止しても、既存の団体を通じた共同販売をみずからの意思で望む酪農家はこれまでどおりの取引を選択でき、その上で、ほかのやり方を志向する生産者は、制度面の制約、ハンディキャップなくその道を選べるようになるとしております。このため、いずれの販売ルートを選択する酪農家にとりましても、また乳業メーカー等の関連産業にとりましてもメリットが生じるものであり、消費者にとっても望ましいものであると提言をされているところでございます。

 いずれにいたしましても、今後、内閣府といたしましては、この意見を踏まえまして、今後の規制改革会議の答申や規制改革実施計画の閣議決定に向けまして、農水省を初め関係の方々と幅広く御議論をさせていただきながら調整を進めてまいりたいと考えているところでございます。

武部委員 幅広くヒアリングしたというのであれば、どうしてこれだけ生産者の団体の皆様方や多くの方々から、この指定団体制度の廃止について反対意見が出るんですか。これは手続としても問題があるんですよ。

 憲法第六十六条三項には、政府は、行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負うとあるんですけれども、今の回答の中に、どうやって農水省と相談してやりましたかということ、答えがないじゃないですか。

 今提言を行うに当たっては、やはりしっかりと、農水省もそうでありますし、一部の優秀な生産者の話だけじゃなくて、例えば条件の不利で大変苦労されている、酪農というのは大変家族経営が多くて、零細経営をやっている方が多いですから、そういった方々にどういう影響が出るかということもしっかりと議論するべきだというふうに思います。

 そこで、必ずしも、指定団体制度があるから消費者のニーズにかなわないですとか、生産者の創意工夫ができないですとかということにならないと思うんです。

 例えば、私の地元に豊富牛乳公社というのがあります。これは指定団体、ホクレンを利用して、大手コンビニ、北海道でいうセイコーマートさんです。これは資本参加もしていただいて、そこのコンビニエンスストアに、牛乳もそうですし、乳製品も卸しているんです。大変事業としては小さいですけれども、成功しています。六十億ぐらいの年商があります。

 指定団体制度が品質向上、ブランド化を妨げているわけでは私はないと思います。農水省はこの点についてどうお考えですか。

今城政府参考人 お答えいたします。

 現行の指定生乳生産者団体制度におきましては、取引において、まず、乳脂肪分などによります生乳の品質に応じた乳価設定ということがされており、生産者の品質向上、あるいは、消費者の求めるニーズ、そういうものにそぐっていくということができるという状態で運営されているという理解でございます。

 また、それに加えまして、現行制度のもとでも、今委員がおっしゃられたとおり、指定団体に出荷しつつ、一部生乳について、例えば酪農家が牛乳・乳製品をみずから製造して販売する、あるいは酪農家が特色ある生乳を乳業者に直接販売する、特色ある生乳を指定団体を通じて出荷する際に、価格の上乗せ部分を出荷する酪農家が利益を得るというやり方、あるいは酪農家が乳業者と直接交渉する、こういう道も開かれておるということでございます。

 このような仕組みにより、地域として、ブランド牛乳の販売などを通じて、個人、地域全体での品質向上の努力を酪農家みずからが利益として得るということが可能である制度だというふうに考えております。

武部委員 そのとおりなんです。指定団体制度があるから創意工夫ができないわけじゃなくて、需給調整機能等々を含めた今までの役割をしっかりと担っていただきながら、それぞれ、生産地あるいは農協団体を含めて、いろいろな工夫をしていくということが一番大事なことだと思います。

 それから、ワーキンググループの提言に、制度面の制約、ハンディキャップをなくし、指定団体とその他の販売ルートのイコールフッティングを行えばメリットがあるというふうにおっしゃられていますけれども、これをやると、都合のいいところだけ集乳して、そして飲料から余った分を補給金をもらう、そういう本当に御都合主義的な商売になっちゃう可能性があるんです。

 先ほども言いましたが、北海道の遠隔地ですとか中山間ですとか、条件不利地にある生産者に大きな影響が出ると思います。その点について農水省はどうお考えでありますか。

今城政府参考人 お答えいたします。

 酪農は、例えば北海道において、気温が低い、日照時間が少ない、土壌条件が悪いなど耕種農業に適さない地域、あるいは、北海道に限らず離島等のような条件不利地域におきまして、主要な農業部門となっているというふうに理解しております。

 このような条件不利地域におきまして、例えば飲用工場は都市部に立地しているという状況でございます。したがって、結果的に、これらの都市部から離れた、いわゆる条件不利地域の多くの生乳は、価格の高い飲用乳よりも乳製品原料に向けられるということになるのではないか。したがって、乳製品工場に出荷するに当たっても、遠隔地ということもございまして、酪農家からの輸送に長時間を要するということ、あるいは北海道でございますと、大雪等により道路の通行どめで出荷停止が起こるというようなこともあるかと思います。

 このため、単純に補給金の交付を指定団体以外に認めるということとした場合には、飲用工場に近いなど立地条件がよく、独自で飲用向け生乳の販売が可能な酪農家は現行の指定団体から離れて、条件不利地域の酪農家がほとんどということで指定団体に残るということも想定されるわけでございます。

 この結果、残った条件不利地域の酪農家におきましては、価格の高い飲用向けの割合が大幅に減少するということによります手取りの低下、それから平均集乳コストというものが指定団体全体で増加しますので、全体的に酪農家の所得の減少、経営の悪化が懸念されるということになると考えております。

小里委員長 武部新君、締めてください。

武部委員 はい。

 時間が来ましたので終わりますけれども、今言ったとおり、大変大きな影響が出ます。農林水産省が頑張らなきゃだめだと思います。

 最後に一言だけ大臣から意気込みを言っていただいて、質問を終わりたいと思います。

小里委員長 時間ですが、簡潔にお願いします。

森山国務大臣 指定団体制度が果たしている役割をしっかり検証しながら、答申に向けて御相談があるということでございますので、我々は、現場を一番よく知っているというふうに自負しておりますので、そのことをしっかりと反映させてまいりたいと考えております。

武部委員 ありがとうございました。

小里委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 まず初めに、このたびの熊本県を初めとする地震により、多くの今避難をされていらっしゃる方々に対して心からお見舞いを申し上げます。

 また、連日の余震が続く中で大変な思いをされているということを察すると、本当にその方々は大変な状況であるということを思っておりますけれども、中でも、亡くなられた方々に対して心からお悔やみを申し上げますとともに、御家族の方々に対して衷心から哀悼の意を表させていただきます。

 公明党も、この発災から直ちに党本部に対策本部、また現地にも同じものを置きまして、連日、救援、またさまざまな支援活動をしているところでございますが、政府とまたよく連携をとりながらさらに対応をさせていただきたい、このように思っております。

 初めに、実は、きょうは大臣に、通告はしておりませんけれども、この熊本の地震、この被災に関連して質問させていただきたいと思うんです。

 きのうも、実は大臣に申し入れをさせていただきました。

 一点は、この震災に対する農業被害の調査を早急にやっていただきたいということ。それとあわせて、指定団体制度について、私どもの決議もお渡しをさせていただきながら、考え方を述べさせていただきました。

 まず、この地震災害のことについてなんですけれども、武部委員からも質問がありましたが、けさの農業新聞の一面にも、搾乳できていないので乳房炎になって、大変な状況にある、あるいは、牛舎がもう壊れてしまった、畜産クラスター事業を始めたばかりなのに、この状況だと借金だけ残ってしまうとか、そのほかにも、例えば、ため池がどうなっているのかとか、あるいは、さまざまな農業施設や、これからいよいよこの春、夏に向けて営農を開始する、そういうところもありますし、そういったことを含めて、その調査をこれからどう進めていくのか、できるだけしっかり迅速にということをお願いしたいと思うんです。

 それとあわせて、ぜひ、今、被災を受けている方々の中でも、農業者の方々に特にそれらの支援を万全を期してやっていくんだ、そういう大臣の決意を述べていただきたいと思います。

森山国務大臣 熊本県、大分県を中心とする地震に際しまして、とうとい多くの人命が失われる結果を招いてしまいました。また、多くの方々が不安な中で日々の生活を過ごさざるを得ない状況が続いておりますこと、本当にお見舞いを申し上げ、お悔やみを申し上げるところであります。

 今委員から御指摘をいただきました農林関係の問題につきましては、幸いにして、我々は、九州農政局と九州営林局を熊本に置いておりますので、マンパワーとしては十分に足りていると思っております。

 ただ、専門的なところは、これだけの大きな被害になりますと、やはり専門職員は不足をいたしますので、今、全国から少しずつ割愛をお願いいたしまして、激甚災害への備え、あるいは今後の復旧への備えというものをしっかりとやらせていただいております。

 また、畜産におきましては、やはり飼料がどうなるのかというところが大変気になるところでございますので、そのことも、課長を派遣いたしまして、今努力をしているところでございます。

 また、一番心配をいたしましたのは、ため池が崩壊するのではないかというニュースがあったものですから、下流に多くの方がお住まいでございましたので、大変心配をいたしましたが、ここは、熊本県と私どもで、両方で現場を見させていただいて、今のところ心配はないということでございますが、引き続きしっかりと監視を続けていくということは大事なことだと思っております。

 また、農業の水利施設等についても被害が非常に出ておりますので、そこはどう復旧をしていくかということをできるだけ急いで計画を進めるようにさせていただきたいと思っております。

 また、どうしようもなかったのが実は酪農の分野でございまして、当初は十三戸ぐらいの農家の生乳を輸送することがかないませんでした。あと、いろいろ道路の復旧も進んでまいりましたので、今たしか五戸か三戸ぐらいまで生乳の輸送ができない農家は減ってきていると思います。

 これはもう、酪農家の皆さんにしてみると、搾った生乳を破棄することほどつらいことはないと思いますので、その気持ちにしっかりと我々は寄り添って、万全の体制をとらせていただきたいと考えておりますので、またいろいろな御意見をお寄せいただいて、お力を賜りますようにお願いを申し上げます。

稲津委員 ぜひ万全の対策を講じていただきたいということを申し上げておきます。

 それで、きょうは、先般の規制改革会議の提言で言われている補給金のことですとか、あるいは指定団体制度のことについて質問させていただきたいと思います。

 お断りさせていただきますが、先ほど武部委員からも大変重要な御指摘を踏まえた質問がございました。私の質問もかなり重複しておりますけれども、そこは確認の意味で、党としての立場も踏まえて質問させていただきたいと思います。

 最初は、規制改革会議の提言についての大臣の考え方について意見をいただきたいと思っているんですが、この補給金の交付を含めたイコールフッティングの確保を前提とした競争条件を整備するんだというのが規制改革会議の意見だと思いますけれども、その上で、さらに指定団体の制度の廃止を求めているわけでございます。

 このことについて大臣も、記者会見等においても基本的な考え方を示されております。例えば、端的な言葉として、生産者や乳業メーカーなど幅広い酪農関係者の意見も十分に聞いた上で、慎重に対応していくことが必要である、このように述べておられますけれども、改めて大臣の考え方についてお示しいただきたいと思います。

森山国務大臣 指定団体制度が果たしている役割というのは、先ほども申し上げたところでありますけれども、一つは乳業メーカーとの対等な価格交渉があると思いますし、もう一つはコストの削減ということが集送乳の関係ではあると思います。また、非常に大事なことは、飲用牛乳と乳製品向けの調整をするというところが非常に大事な課題だと思っておりまして、九州は大体、飲用乳が九割、乳製品向けが一割でございますが、北海道は飲用向けが二割で乳製品向けが八割ぐらいだと思います。そうしますと、どうしても、補給金をもらっても、やはり飲用乳の方が高うございますから、そこの調整というのは非常に大事な役割だと思っております。

 この指定団体制度が果たしてきた機能というのは大変重要なことでありますので、今後とも、生産者の方々、条件の不利なところでやっておられる生産者、比較的条件のいいところでやっておられる生産者、また乳業メーカーなど、幅広い関係者の意見を十分にお聞かせいただいて検討を進めていくということが大事なことだというふうに考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 もう早くも残り五分になってしまいましたので、質問の通告の順番を変えまして、加工原料乳の生産者補給金制度についてお伺いしておきたいと思います。

 端的に、この加工原料乳の補給金制度の果たしてきた役割は何なのか。仮に、指定団体を通さない場合でも補給金を交付する制度にした場合、これはそういうことが提言で書かれているんですけれども、どうなのかということなんです。

 基本的なことなんですけれども、私は、この生産者補給金制度を現状の形をしっかり維持していかなければ大変なことになる。どうなるかというと、特に北海道は八割が加工です。これをもし北海道がやめてしまうと、府県の方に大変大きな影響を与えてしまう。飲む牛乳の方が値段は高いですからね。そうなるとどうなるかというと、北海道の生産者が打撃を受けるということもあるかもしれませんけれども、むしろそれ以上に、府県の酪農業の方々に大変な影響を与えてしまうということ。全国のバランスが崩れてしまうんですよ。これが一番の根源の問題だと私は思っていまして、このことについて、その影響性についてお伺いしたいと思います。

今城政府参考人 お答えいたします。

 この加工原料乳生産者補給金制度は、委員おっしゃるとおり、原料として安価に取引される乳製品向けの生乳というものに補給金を交付するということによりまして、乳製品向け主体の、マクロで申し上げますと北海道、それと飲用向け主体の都府県を合わせた生乳全体の需給と価格の安定を図るという大切な役割を果たしており、これにより、酪農経営の安定が図られているということであると考えております。

 この制度につきましては、現在の指定団体が果たしている乳業メーカーとの対等な乳価交渉、集乳コストの削減、それから、飲用乳、加工乳のバランスということを踏まえた重要な機能に着目して、それを行っている指定団体に販売委託する生産者に対し交付する、こういう制度になっているということでございます。

 このような指定団体の有する機能を果たさないで、要するに、通常は価格の高い飲用向けを中心に販売するというような業者様、そういう方が、例えば需給が緩和した際にのみ乳製品の加工原料乳として供給するというところに単純に補給金を交付するというような形にした場合には、今申し上げましたとおり、飲用向けとそれから乳製品向けの短期的、季節的変動を踏まえた需給調整というものが一体図られるのかという大きな問題。

 さらには、集乳コスト面で条件のよい地域のみから集乳するというような出荷団体にもその補給金が交付されますので、指定団体には、結局、工場から遠い離島ですとか山間部、そういう条件不利地域の集乳経費の高い酪農家ばかり集まるということになりまして、イコールフッティングと申しますか、公平な補給金支払い制度にはならないのではないかなというふうに考えております。

稲津委員 今答弁いただいたとおりだと思うんです。

 したがいまして、結論から申し上げますと、現状の制度のその仕組みをしっかり維持していくことが私は極めて大事だということを申し上げている。

 それで、この加工原料乳の生産者補給金の制度と、それから指定団体制度というのは、まさにこれは、過去に歴史的に大変な生産者の思いの中で、関係者が知恵に知恵を振り絞って、また農水省も本当に骨身を削っていただいて、この制度ができてきたというふうに私は承知しています。

 かつては、本当に、生産者団体も小規模でたくさんあって、しかし、そのことによって、例えば乳価の交渉力に随分大きな影響があって、残念ながら交渉力のないところはやめていかなきゃいけないとか、そういうことがあった。

 その中で、この不足払いのことができてきて、そして、やがて平成十三年に、この今の制度になってきて、ある意味、さまざまな知恵を振り絞って、重ねて重ねてつくってきたのが今の制度であって、私はこれは大変すばらしい制度だというふうに思っております。

 それで、時間も参りましたが、最後に、農水大臣に、改めて、先ほどの質問とも一部かぶりますけれども、指定団体が果たしてきた役割と、そのことについて今後どう考えていらっしゃるのか、答弁いただきたいと思います。

森山国務大臣 先ほども申し上げておりますが、指定団体制度が果たしてきた役割、そして指定団体制度が持っている機能というのは非常に大事なものでございますので、そのことをしっかりと受けとめて、今後も対応してまいりたいというふうに考えております。

小里委員長 では、締めてください。

稲津委員 ありがとうございました。

 これからも私どもはこのことにしっかり関心を持ち、また、そのことに関してしっかり取り組ませていただきますことをお話しさせていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小里委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民進党の田島一成でございます。

 先ほども大臣が、現場を一番よく知っているのは農水省だと大変心強い御答弁をいただきましたので、答弁にも期待をして質問をさせていただきたいと思います。

 きょう、私からは、鳥獣被害防止対策について、環境省にもお越しをいただいて、あわせて、かぶっているところがありますので、そこを整理させていただくつもりで質問させていただきたいと思います。

 まず、抜本的な鳥獣捕獲強化対策が立ち上がって四半期をいよいよ終えようという、その状況の中での進捗状況についてお伺いをしていきたいと思います。

 平成二十五年八月、環境省が行った全国レベルの個体数推計結果をもとに、ニホンジカ、イノシシについては、まず当面の目標ということで、十年後、平成三十五年度には個体数を半減させることを目指すとしました。抜本的な鳥獣捕獲強化対策が、環境省だけではなく農水省とそろっておまとめになられました。二十五年の十二月二十六日付だったと思います。

 この目標達成、いわゆる十年後には個体数を半減させるという目標達成のために、本州以南のニホンジカについては、平成二十三年度実績二十七万頭の二倍以上の捕獲を全国で行うことを目標としています。

 この捕獲強化対策がまとめられて二年四カ月でありますが、もう十年の目標の四分の一が既にたったわけであります。現段階でのこの捕獲強化対策の進捗について、環境省からはまず全体の数についてどのようになっているのか、また、農水省の方からは有害鳥獣対策の分野で、まずそれぞれ御報告をいただきたいと思います。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘がありましたとおり、ニホンジカやイノシシの被害が深刻化していることを踏まえまして、環境省と農林水産省は、平成二十五年十二月に抜本的な鳥獣捕獲強化対策を策定いたしまして、ニホンジカや……(田島(一)委員「数字だけ」と呼ぶ)はい。

 強化対策策定の最初の年度であります平成二十六年度における狩猟を含む全体の捕獲数は、速報値ではありますけれども、ニホンジカが全国で五十八万頭、これは対前年度比一二%増、イノシシにつきましては約五十二万頭で、これは対前年度比一五%増と、それぞれ前年度に比べ一割以上増加をしております。

 その後、二十七年五月に、改正した鳥獣保護管理法が施行されましたけれども、それに基づく指定管理鳥獣捕獲等事業を創設いたしまして、交付金により支援を行っておりますが、二十七年度の狩猟を含む全体の捕獲数については、現在、都道府県で取りまとめ中でございます。

末松政府参考人 環境省に引き続きお答えさせていただきます。

 まず、野生鳥獣による農作物被害の方でございますが、中山間地域を初めとして年間約二百億円にも及んでございます。また、被害によって営農意欲の減退とか耕作放棄地の発生につながるなど、被害額として数字にあらわれる以上に深刻な状況であると認識してございます。

 このような状況のもと、農林水産省としては、鳥獣被害防止総合対策交付金により捕獲鳥獣一頭当たり八千円までの定額支援を行うなど、捕獲対策を進めているところでございます。

 定額支援を開始した初年度の二十五年度には、捕獲実績がイノシシでは十三万七千頭、シカ十九万五千頭でございました。二十七年度は、イノシシ二十四万八千頭、シカ三十一万三千頭と、増加する見込みというふうに思っております。

田島(一)委員 四分の一、四半期がたったからといって、この目標値半減の四分の一を達成しなければならないなんというような乱暴なことは言うつもりはありません。

 ただ、この見込みが今後も継続して続いていけば、立てられている、十年後には半減をさせるという目標も決して夢物語ではないんだというふうに、今、数字的には思ったところでもあります。

 どうぞ、その意味からも、予算の確保というのが非常にやはり重要になってくるわけですね。

 次に、平成二十八年度の予算における鳥獣被害対策交付金についてお尋ねをしたいと思います。

 これまで、二十六年度まで約二年間実施をされてきました鳥獣被害防止緊急捕獲等対策事業が二十六年度で廃止をされまして、そのメニューにつきましては、先ほど申し上げた鳥獣被害防止総合対策交付金に引き継がれたということになっております。

 しかしながら、このもともとの対策事業につけられていた予算までもが同じように引き継がれたのかといえば、予算は全く引き継がれてはおりません。個体数調整事業の交付金が大幅に減額されたという結果になりました。

 全国各地で獣害対策に当たろうとしている自治体から、今、この交付額決定に悲鳴が上がっていることは、恐らく御承知のことだと思います。

 一例として、私の住む滋賀県で、琵琶湖の湖魚の食害対策にカワウの個体数調整事業というのを引き出させていただきます。

 この滋賀県のカワウ個体数調整事業は、二十八年度の交付金要望額が一千三百三十万円でしたが、それに対して、決定されたのは八百六十九万六千円。何と三五%もカットされるということになりました。これは滋賀県だけの特異的な例ではなく、全国的にもよく似たような数字が出ているというふうに仄聞しています。

 当初の捕獲見込み数は、交付金要望額一千三百三十万円に相当する六千四百羽だったのが、この減額でいきますと三五%減、四千二百羽程度になりまして、これまでの捕獲の成果が台なしになってしまう。言いかえれば、十分にとれずに、かえってふやしてしまうきっかけにもなりかねないという嘆きの声が届いております。

 これまで、全国各地の都道府県等からの要望に応えて、補正予算等々でも補ってこられた経緯は承知をしています。しかしながら、補正が組まれるかどうかまだ言及もできる状況にはないことは承知をしておりますし、実際に補正予算が組まれる時期はカワウの繁殖期が既に終わってしまう時期になるわけですから、補正で対応するにも余りに厳しい状況がございます。こうした状況に対してどのように応えていくのか、自治体に対してどのような対応をしようと考えているのか。三五%の予算をカットして捕獲目標数を達成させる秘策があればお示しいただきたいと思います。

末松政府参考人 お答えします。

 滋賀県におきましてカワウに関して野心的な取り組みをされていることを承知しております。平成二十四年に生産局長賞もとられて、前向きな、すばらしい取り組みだと思っております。

 野生鳥獣の捕獲には、農林水産省の予算を活用した捕獲だけではなく、環境省や都道府県の事業による捕獲、狩猟による捕獲などがございます。このため、農林水産省の予算のみで全部が対応できるということではないということはございます。

 農林水産省につきましては、野生鳥獣の捕獲について、鳥獣被害防止総合対策交付金において、先ほど申し上げた一頭八千円を支援するなど、捕獲活動への支援を行っております。

 先生御指摘のとおり、平成二十七年度は、当初予算が不足したため、補正予算におきまして、捕獲活動を支援する予算として十二億円を追加措置して、強化を図らせていただきました。

 平成二十八年度は、予算額は平成二十七年度と同額でございますが、捕獲活動に重点化したメニュー構成としているところでございます。

 また、市町村が負担した捕獲経費につきましては、鳥獣特措法に基づく被害防止計画を作成していただければ八割が特別交付税措置をされているということ、これをきちんと周知させていただいたり、さらには、都道府県が行うイノシシ及び鹿の捕獲事業を支援する環境省の予算、指定管理鳥獣捕獲等事業交付金も活用が可能となっております。

 農林水産省としては、関係省庁と協力しながら、限りある予算を活用して効果的に被害防止につなげられるよう、しっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。

田島(一)委員 末松さん、私が申し上げたのは、環境省のことも全部織り込み済みで申し上げているんです。二十八年度の予算は、環境省の方はちゃんと要望額に沿った形でつけられていますよね。しかしながら、農水省の方だけが三五%カットという状況なんですよ。よその役所でついているもの、人の財布に手を突っ込むような発言というのはやはりよろしくないと私は思うんですね。

 だったら、二十六年度までに行われていた鳥獣被害防止緊急捕獲等対策事業の予算というのは、これはどこへ消えたんですか。

末松政府参考人 お答え申し上げます。

 二十六年度まで二年間実施されていた鳥獣被害防止緊急捕獲対策事業は平成二十六年度で廃止されて、それが先生御案内のとおり鳥獣被害防止総合対策交付金に引き継がれております。予算額につきましては、平成二十七年度から九十五億円ということで、その前の年と基本的には同額確保することができたというふうに思っております。

 しかしながら、各県におきましていろいろな御要望がありまして、その御要望に対してどれだけ各県に配分できたかということについては、今回、当初、予算ができましてから要望を聞いて、その中で各県ごとにどういう状況かというのをお伺いし、また前年度、例えば不用が出たりとか、あとは、また被害の状況でどういう御要望があるかということで配分させていただいたというのが前提でございます。

 滋賀県の場合、先ほど申し上げたとおり、野心的な取り組みをしていただいているということは十分認識しておりまして、そういうことで、ソフト系の予算については一億円ほど多分配分できたんじゃないかというふうに記憶しておりますが、そういう我々の予算と、またほかの、今回環境省も予算をつくっていただいて、先生の御案内のとおりのことをうまく組み合わせて対応していきたいというふうに考えております。

田島(一)委員 何度も申し上げますが、例えば、予算がなくなったら、その分とれる捕獲数が減るということは単純明快な方程式であります。予算が減額されて二千二百羽とれなくなった、だから来年二千二百羽余分にとりましょうというわけにはいかない。これは、繁殖期という大切な時期にいかに抑えるかどうかで、継続的にずっとこれをやり続けていかなきゃならないものなんですね。

 予算がもう命と言わざるを得ない。予算がしっかりつかなければ鳥獣被害は一向に減らないんだということ、このことをやはり肝に銘じていただかないと、予算を減額し、何とかよその省で頑張ってやってくれというのでは、余りに農水省、本当に現場を御存じなんですかと改めてここで聞かなきゃいけないと思うんですね。

 大臣、せっかく現場を御存じだというふうにたんかを切られましたので、このように現場で起こっている事態、予算がなかなかそれに伴ってついていないということについてどのようにお考えか、お聞かせいただけませんか。

森山国務大臣 田島委員にお答え申し上げます。

 鳥獣被害というのは、農作物への直接的な被害に限らず、生産意欲の減退を招き、離農や水産業の撤退の要因にもなると考えておりますので、農山漁村の暮らしにかかわる緊急の大事な課題だというふうに認識をしております。

 また、生産者が安心して農林漁業に取り組んでいただく環境をつくることは、農林水産省として基本的な責務であるというふうに考えているところでございます。

 今後とも、農林水産省と環境省と地方自治体が一体となって、予算の獲得にも努力をさせていただきますし、また、きょう先生の話を聞きながら、私の選挙区ではカワウの話というものはないものですから、よくわかりました。所によって、猿が多かったり、イノシシが多かったり、鹿が多かったり、いろいろ地域の事情もございますので、そういうことをしっかり検証させていただいて、地方自治体ともよく連携させていただいて、農林水産業の皆さんが意欲を持って再生産に取り組んでいただける環境を今後ともつくり上げてまいりたいと思っております。

田島(一)委員 ありがとうございます。その言葉、確と聞かせていただきました。

 環境省の方にも、実は生物多様性保全推進支援事業の継続についてお尋ねをしたかったんですが、これはまた環境委員会の方で引き続き聞かせていただきたいと思います。

 次に、鳥獣被害対策の実効性を高めるためにどのような取り組みをしていくべきかということについて、私の考えも披露させていただきながらお尋ねをさせてもらいたいと思います。

 先ほど引用させていただいたカワウ捕獲については、滋賀県においては、琵琶湖の湖魚、アユ等々の高級魚の食害が非常に大きく、対策に取り組み出したのが一九九〇年でありました。一九九〇年から約十八年間にわたってカワウの捕獲を委託したのは、大日本猟友会、滋賀県の猟友会の皆さんでありました。銃器によるカワウ捕獲の実施を行ってきた滋賀県でありましたけれども、残念ながら、この十八年間、カワウの生息数を低減させるという効果はほとんど出ず、手詰まり状態にありました。

 その中で、ついに二〇〇四年度には四万羽の生息数を記録することになってしまって、そこではたと出会ったのが民間組織への委託でありました。二〇〇九年からの捕獲事業の一部を民間組織に委託し、シャープシューティングという高効率捕獲を実施してまいりました。シャープシューティング、聞きなれない方々もいらっしゃるかと思いますけれども、これは非常に捕獲率も高く、コロニーと化した琵琶湖に浮かんでいる竹生島では、二、三万羽いたカワウが、二〇一〇年には一万四千百五十五羽、二〇一一年には何と千十五羽にまで顕著な減少の結果を導いたということであります。

 これだけの実績を上げていくには、スポーツハンティングの域にとどまっていては不可能であります。ましてや、射手の都合のいい日や時間帯を射手が選んで撃っていては、到底これだけの数字は獲得できません。加えて、個体数削減効果のない幼鳥であるとかひなよりも、成鳥、大人の鳥を的確にしとめる、そのためには、カワウの行動力、警戒行動や観察力というものを十分に認識し、対応していかなければならない。いわば趣味の域だけでは到底この数字は得られなかったということを、皆さんにもぜひ御理解と御認識をいただきたいのであります。

 そこで、大人数で不特定の狩猟者を今までのように無計画に投入しても捕獲成果は上がらないということは、さまざまな結果が示していると思います。このカワウの行動を予測できる科学的な野生生物管理の素養を持ち備え、高いモチベーションを持って精密なエアライフルの取り扱い技術も持ち備え、射手の技術、カワウの成鳥の発見、識別する技術、能力を、全国で駆除を依頼していらっしゃる全ての猟友会の皆さんが兼ね備えていらっしゃるという御認識でいらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。

末松政府参考人 今、先生のお話を伺って、また、これまで滋賀県などからお話を伺っていて、一層効率的な捕獲を推進するためには、これまでの、これまでというか従来型の考え方にとらわれず、捕獲技術の向上とか民間事業者の擁するノウハウや専門技術の活用が重要であるというふうに思いましたし、考えております。

 そういうことで、今先生からお話のあったことを参考にしながら、捕獲の担い手の狩猟免許取得のための講習会の開催とか、捕獲技術向上のための射撃場の整備への支援とか、また、省力的な捕獲を進めるためのICTを活用した捕獲機材の導入とか、そういう新しい観点での支援を重点的にしていければというふうに思っております。

 さらに、優良事例の紹介とか顕彰を通じて、大量捕獲技術を有する民間事業者の活用も進めていますし、さらに進めていきたいというふうに考えております。

田島(一)委員 そもそもスポーツハンティングからスタートした猟友会の皆さんが、決してその攻撃の対象にされることは私も望んではおりません。

 そもそもその当時、被害に遭っている事態を打開するには、狩猟免許を持っている方々といえば猟友会の方々しかいらっしゃらなかったわけですから、そこは、歴史的な経緯を見ても、皆さんがやりたくないことを無理して行政からお願いをしてやっていただいたんだという、その感謝の念は私も絶えず持っております。

 しかし、今これだけ被害が拡大してくると、これまでの狩猟免許を持っているというだけではなかなか対応し切れないという認識に立たなければ、この劇的にふえている鳥獣被害を減少させるということはできない。ですからこそ、今、その具体的な対策というのが求められているんだと思います。

 次にお尋ねしたい認定鳥獣捕獲等事業者は、鳥獣保護法が改正されて、新たに設けられたところでもあります。もう既に全国で認定された団体が誕生してきており、平成二十八年四月十四日現在で、全国で五十四の団体が認定をされているというふうに仄聞しております。しかしながら、地方でその認定事業者の活躍ぶりを見てみますと、やはり、地元での狩猟団体と衝突したり、あつれきがあったりと、余りいいニュースは聞こえてきてはおりません。

 実際に、認定事業者が認定資格を取得して、やる気満々であるにもかかわらず、五十四あるうち、実際に事業委託を受けている団体は、ニホンジカで二十、イノシシで六と、半数にも満たっていない事態にあります。もちろん、この認定事業者の中には、猟友会の皆さんが認定取得をされていらっしゃる事例も承知をしております。

 認定はされたものの、事業の主体として待ちぼうけを食らっているような事例、これはやはり、認定しっ放しで終わっているのではないか、つくりっ放し、法律改正しっ放しで終わっているのではないかというような心配を私は持ちます。

 環境省は今後、認定事業者を設置されて、どのように彼らを活用していこうと考えているのか。もっと大げさに言うと、必要とされている捕獲圧を確保しようというふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたい。

 さらに、農水省にあっても、この認定鳥獣捕獲等事業者の活用についての御認識、どのようにお持ちなのか。さらには、地域でさまざまな、同じ団体と衝突やあつれきをしているけれども、これを自治体だけに押しつけておけばいいとお考えなのか、まさかとは思いますけれども、どのように対応しようとお考えなのか、お答えください。

亀澤政府参考人 まず最初に、認定鳥獣捕獲等事業者の数でございますが、事前にお届けした資料の後、昨日、二件の連絡がありましたので、四月二十日現在で五十六団体ということになります。

 それから、先ほど御指摘がありました認定鳥獣捕獲等事業者への委託二十六件のうち、猟友会以外の団体の受託は九件でございますけれども、今後、徐々に多様な団体による捕獲事業への参画が進むことを期待しております。

 さらに、鳥獣保護管理法に基づく基本指針におきましては、指定管理鳥獣捕獲等事業の実施に当たって、その地域に従来から活動してきた狩猟者団体等がある場合には、都道府県が地域の実情等を踏まえて適切に役割分担が図られるよう調整を行うこととしておりまして、例えば、群馬県では、これまで捕獲圧のかかっていなかった高標高域、高いところで認定鳥獣捕獲等事業者が捕獲を行うような調整を行っている例がありますし、岩手県では、狩猟期に指定管理鳥獣捕獲等事業を行い、それ以外の時期には有害鳥獣捕獲を行うという形で、同じ場所で時期を分けるように調整する等、従来から行われている捕獲との役割分担を図りながら捕獲が進められつつあるところでございます。

 さらに、環境省では、今年度から、認定鳥獣捕獲等事業者に対しまして、効果的な捕獲手法や他の都道府県における事例等の情報提供を行い、その能力向上を図っているところでございます。

 今後とも、こういうような取り組みを通じまして、認定事業者がより活躍できるよう、必要な取り組みを行ってまいりたいと思います。

末松政府参考人 環境省の今のお答えに加えまして、民間事業者が認定鳥獣捕獲等事業者となり、都道府県の捕獲事業を行おうとする場合、先生御指摘のとおり、従来から市町村の捕獲事業を実施していた狩猟団体と捕獲場所や時期の調整などが難しいと現場の声があることは承知しております。

 捕獲事業に係る自治体や狩猟団体の意向は地域によってさまざまでございます。一般的なお願いをするとともに、それだけではなく、農林水産省としても、直接本省の職員が現場に赴いて、都道府県や狩猟団体と意見交換をする場をつくって、必要な助言や情報提供を行っております。

 昨年は、北海道、岩手、栃木、岐阜、長野、和歌山、山口、鹿児島、八道県延べ十回、直接現地でそういう何とか解決ができないかというお話し合いをさせていただきましたし、今年度、四月に入ってからは京都に行っております。

 現地で鳥獣被害が待ったなしであること、さまざまな方々が協力することが重要であるということを御説明するとともに、そこの地域の状況をよく聞いて、どういう解決策があるのか。若干ほかの県とか幾つかの例を知っているということが別の県に役立つということもありますので、私ども、現場に赴いて助言とか情報提供をやっておりまして、また、今後とも現場の課題をきめ細かく把握して、環境省と連携してしっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 大臣、今まで御就任されてから、結構全国各地、いろいろな現場へいらっしゃったと思うんですね。私は、そのことは非常にいいことだと思うんです。ただ、自分でここへ行きたいと言って選んだところにはなかなか行けないんですね。役所が、変なことは見せられないからというので、先進事例だとか、本当にとりわけやはり特筆すべき事例のところばかり抽出して大臣に御紹介をされて、大臣をうならせるというのが現地視察等々の常套手段みたいなものなんですね。

 私も経験があります。でも、その経験を踏まえて言うならば、実際に現場で衝突しているところの仲裁に入るぐらいの覚悟で、もっともっとどろどろしたところがいっぱい全国にあるんですね、本当に。何でけんかなんかしているんだ、けんかしている時間があるんだったら一羽でも一頭でも撃ってくれよと一般の方々はみんなそう思っているんですね。

 地元の自治体にあっても、昔からお世話になってきたから、なかなかそこに対して文句は言えない、結局そっちの肩を持たなきゃいけない。新しいところは新しいところで、技術も向上、しっかり頑張ってきているのに全く仕事をもらえない。こういう板挟みにずっと悩んでいる自治体がまだまだ多分幾つも幾つもあるんですね。多分、そういうところには大臣をお連れにはなっていらっしゃらないと思います。

 でも、いいところばかり見せたって全然よくならないですよ。しっかりと恥ずかしい部分も見て、農水省が本腰を上げてやらなければ、このふえ過ぎた鳥獣被害対策には絶対に効果を発揮しませんよ。そこを命がけでやっていただきたいと私は思っているところであります。

 時間も限られました。これは質問として用意していたわけではありませんけれども、御紹介をさせていただきたいと思います。古い事例を御紹介いたします。

 二〇一一年、和歌山県で、六十歳の猟友会の会員が、ヤマモモをとっていらっしゃった男性を猿と見間違って、頭に命中させて死亡させた。二〇一三年五月、宮城県女川町の山林で六十四歳の同じく猟友会会員が、ニホンジカの駆除をしていた仲間が撃った散弾銃の弾を胸に被弾して死亡。同年十一月には、静岡県長泉町の雑木林で鹿を駆除していた七十三歳の猟友会会員が、鹿と間違えて六十六歳の男性の頭を撃ち抜いて死亡。

 こうしたハンターによる死亡事故は、実は後を絶ちません。今でも二十名近い方々の死傷者が毎年出てきています。

 こうしたハンターによる死傷事故等々は、ハンターの数を示す狩猟者免許の交付者数と同様、微増か横ばいの状態ではありますが、ハンターの数も、一九七〇年代の五十万人でピークを迎えてから右肩下がりの状況がずっと続いています。

 今、狩猟免許の交付者数は二十万人程度。しかし、その大半が六十代以上の高齢者であることが何より問題ではないかと思っています。科学的根拠は私は示せません。しかし、高齢化に伴って交通事故がふえるのと同じように狩猟事故が連動しているのも、おおよそ一般の方でもうなずけるのではないかと思います。

 反面、若年層は伸び悩んでおり、近い将来にハンターが大幅減になっていくのではないかと思います。環境省でも今、若いハンターを獲得しようと、各大学を回って若い方々にスポーツハンティングの楽しみなんというのをPRされたりしている様子は私も承知をしています。

 しかし、一過性のイベントだけで終わらせてほしくない。そして、趣味の域だけではなく、強い使命感と責任感を持ってこの鳥獣被害対策に当たっていただける方々を発掘する、そして広げていく、そういう深掘りした取り組みを、ぜひ、環境省だけ、農水省だけではなく、この際、本当に一緒にやってください。もうそれしかないと思うんです。だからこそ、きょうは農水委員会で環境省にも来ていただいて、大臣の前でこういう質問をさせていただきました。

 時間が参りました。どうぞ、これからも引き続き各地域の声をしっかりと聞いていただきながら被害対策に当たっていただきますようお願いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小里委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 民進党の岸本周平でございます。

 冒頭、熊本の地震でお亡くなりになられた方の御冥福をお祈りするとともに、御遺族にお悔やみを申し上げ、被災されている皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。

 その上で、きょうは、国際認証の重要性について、三十分という限られた時間の中ですけれども、御議論をさせていただきたいと思います。

 実は、TPPの特別委員会でも少し話題になりましたけれども、農産物の輸出、これはとても大事なことだと思います。これはもう民主党政権のときであってもそうでありましたし、今も安倍政権のもとで農産物の輸出を進めておられる。大賛成であります。

 ところが、いかにも農産物の輸出がふえれば農家の所得が向上するかのような誤解を一般的に受けるわけなんですけれども、これはなかなか必ずしもイメージとは違う実態がございます。つまり、農産物という統計上のくくりでいろいろなものが入っております。例えば清涼飲料水ですとか、それから当然水産物も入っておりますし、缶詰なんかも全て農産物の輸出にカウントされるわけであります。

 そこで、事実関係だけお聞きしたいわけですけれども、大臣政務官にお聞きします。

 農林水産物、食品の輸出額上位十品目というのを挙げていただけませんでしょうか。

加藤大臣政務官 岸本委員の御質問にお答えをいたします。

 平成二十七年の農林水産物、食品の輸出額の上位十品目を挙げますと、一番にホタテガイ五百九十一億円、二番に日本酒、ウイスキー等のアルコール飲料三百九十億円、三番に真珠三百十九億円、四番にソース、たれ、ドレッシング等のソース混合調味料が二百六十四億円、五番目にたばこの二百三十六億円、六番目に炭酸飲料等の清涼飲料水が百九十七億円、七番目にサバの百七十九億円、八番目に貝柱調製品が百七十七億円、九番目にお菓子の百七十七億円、十番目が播種用の種が百五十一億円となっておるところでございます。

岸本委員 今大臣政務官にお答えいただいたとおりでありまして、なかなか我々のイメージする農産物は入っていないわけであります。

 清涼飲料水なんかがかなり多いわけですけれども、清涼飲料水の輸出先で一番多いのは、同僚議員の皆さん、どこだと思われますでしょうか。アラブ首長国連邦なんですね。ここ向けの清涼飲料水、製品名を言っていいのかどうかわかりませんが、申し上げますと、オロナミンCなんです。オロナミンCがアラブ首長国連邦で物すごく売れているんですね。この御努力は多としますが、オロナミンCが売れても農家の所得は向上いたしません、残念ながら。

 あと、インドネシア向けなんかではポカリスエットが大変出ていますけれども、そういうものも実はカウントされているということでありますし、金額的には、国別にいうとアメリカが一番多いんですけれども、アメリカでも、上位三品目を言いますと、昨年ですと、ホタテガイ、ブリ、アルコール飲料。これは数年続いています。

 ホタテガイが上位を占めている理由は、後でも言いますけれども、ホタテガイだけはMSC認証が取れているんですね。国際認証が取れているという意味で輸出が上位に来ているということであります。

 それで、念のためですけれども、大臣政務官、今言ったトータルの農林水産物、食品の輸出額のうち、リンゴとか牛肉が実は比較的多いんですけれども、そういう生鮮の農産物の占める割合というのはどの程度でございましょうか。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 貿易統計上の生鮮農産物という区分はないわけでありますけれども、仮に食肉、野菜、果実としますというと、平成二十七年の農林水産物、食品の輸出額に占める生鮮農産物の割合は三百八十三億で五%程度となっておるところでございます。

岸本委員 つまり、私たちが、これから農家の所得をふやすために、輸出をどんどんふやしていきたいということなんですが、直接関連する生鮮の農産物は全体の統計の五%なんです。それは輸出振興をしなくてもいいということを申し上げるつもりは全くありません。しなきゃいけないんです。しかし、過大なイメージだけを国民や農家に与えることだけは慎まなければいけないと思います。

 と同時に、その五%をもっともっとふやしていかなければいけないわけであります。では、そのためにはどうすればいいのか。

 もともと、日本の農産物、食品は非常に品質がいいわけです。安全、安心という意味からも、各産地、先生方、同僚議員の皆さんの選挙区、胸を張って外国にお勧めできる農産物がたくさんあると思います。

 ですが、実は、輸出をしようとするときには、本当に私たちが品質がいいよ、安全、安心だよと思っているだけでは売れないんですね。これはどこの国もそうなんですけれども、いわゆる国際認証というものを取らないと買ってももらえないということであります。

 食品であれば、HACCPというのが一つ皆さんも御存じのとおりでありますけれども、農産物でいいますと、世界的にはGFSI、グローバル・フード・セーフティー・イニシアチブというのがありまして、ここが食品安全のグローバル規格というのを設定しておりまして、いろいろな食品安全認証スキームをGFSIが承認するということで、それぞれの認証機関が認証したものでないとなかなか海外のものは買ってもらえないということなんであります。

 そういうことについて、どうも私たち日本人は、国内のマーケットが大き過ぎて、一億二千万人の人口の中で、つい最近まではGDP世界第二位、今でも世界第三位の大国でありますから、どうも国内のマーケットに固定観念が縛られてしまいますものですから、そういう国際認証を取らないと買ってもらえないということに対しての感覚が、私も含めて、国民の皆さんも、役所の皆さんも、あるいは生産者の皆さんも薄かったのではないか。それではこれから輸出を伸ばすことはできませんので、それで、きょうは、農水大臣にお伺いしたいと思うんです。

 農産物でいいますと、今、グローバルGAPというものがデファクトスタンダードになっております。これはもうどうしようもないぐらい大きな認証団体になっておりまして、現在、グローバルGAPの認証件数は、世界百三十カ国で十五万件を超えております。世界最大であります。したがって、基本的には、グローバルGAPというのがデファクトスタンダードになっておりますので、これにクリアしないと買ってもらえない、これは厳然たる事実であります。

 したがいまして、私たちはこれからグローバルGAPや、もともと今進めていただいていますけれども、HACCPの認証取得を進めなければいけないということだと思いますが、森山大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 岸本委員にお答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今後、貿易上の要件として、GAPやHACCPに基づく認証の取得というのは大変大事な課題だというふうに思っておりますし、国際的に通用する認証の取得を推進するということは農水省にとりましても大変重要な課題だと認識をしております。

 このため、国際的に通用する生産工程管理規格であるグローバルGAP等の取得支援を行うとともに、新たに、国際的に通用する日本発のGAPやHACCPに基づく規格・認証の仕組みを構築するための支援を行っているところでございます。

 このように、生産者や食品事業者が国際的に通用する認証の取得を進めることで、我が国農林水産物や食品の品質の向上や輸出の促進にも貢献をしていくということが大事なことではないかというふうに考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、大臣と私どもの認識は全く同じなのでありますが、これまた大臣政務官に現状を説明していただきたいんですけれども、一方で、日本国内において、では、グローバルGAPというのはどの程度普及しているのか、件数とか、あるいは、大変少ないわけでありますけれども、それを前提として、政府としてはグローバルGAPを取得しやすくするためにどのような政策を展開されているのか、お伺いしたいと思います。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 我が国におけるグローバルGAPの認証取得数というのは、平成二十五年十二月時点では百四十二件であったわけでありますが、本年一月時点では二百八十二件となっておりまして、二年間で約二倍に増加をしておるところでございます。

 こうした認証の推進を図るためにも、農水省といたしましては、平成二十七年度以降の補助事業の中で、グローバルGAPの認証取得を推進するために、原本が英語でありますところから、日本語版の基準文書や解釈ガイドラインの作成に対する支援を行ったり、認証取得における負担の軽減などを現在行っておるところでございます。

岸本委員 倍になったとおっしゃいますけれども、根っこが三桁の件数でありますので、百件か二百件でやっていた日には何百年かかっても日本の農産物は輸出されないわけでありまして、そこはもう少し農水省として真剣にお取り組みをいただきたいと思います。

 もう一つ、事実関係ですので、あわせてお聞きしますけれども、HACCP、これは食品関係でありますけれども、HACCPについても、大企業は比較的HACCPの認証を進めておられますが、残念ながら、中小零細企業はなかなかそうもいかない現状があるんですけれども、HACCPについても今の現状と農水省の施策について御報告をお願いしたいと思います。

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 食品製造業におけますHACCPの導入率は、平成二十二年度の約二割から、平成二十六年度には約三割に伸びておるところでございます。

 また、このうちで、年間の食品販売金額が五十億円以上の大規模層におきましては二十六年度で九割弱という状況でございますけれども、一方、一億円から五十億円以下の中小規模層におきましては約三割にとどまっておるというのが現状でございます。

 中小規模層におけるHACCPの導入が進みにくい要因としては、施設の整備などで初期の投資に多額の資金が必要なものがあることと、そしてまた、記録の管理などの導入後のランニングコストが大きいということに加えまして、研修の機会や指導できる人材が不足しておること等が挙げられるのではないか、このように考えております。

 一方、HACCPは工程管理のシステムであるわけでありますから、必ずしも施設の整備を求めるものではないにもかかわらず、必ず施設の整備が必要となるのではなかろうかというような誤解があることも一因ではないかなという思いでおります。

 このため、農林水産省といたしましては、HACCPの導入を担う人材の養成研修等への支援を行うほかに、導入に要する資金が確保できない事業者に対しましては、HACCP支援法による施設整備に対する金融の支援、水産加工流通施設の改修や農畜産物の共同利用施設の整備等への支援を行い、そしてまた、中小事業者に使いやすい認証の仕組みの構築に向けた支援等を実施いたしておるところでございます。

岸本委員 今お話がありましたように、全体でHACCPの取得も大変低いわけでありますし、中小企業は三割ということでありますから、これは本当に急いでいかなければなりません。

 これは、一つ輸出の話になるんですけれども、東京オリンピックが二〇二〇年に行われます。オリンピックですから、東京オリンピックで、できるだけ日本の、例えば、選手村のお料理はすばらしい日本の料理を食べていただきたいじゃないですか。ところが、これはロンドン・オリンピックもそうですし、リオ・オリンピックもそうなんですけれども、こういうオリンピックで使う食材は、原則として国際認証というのが必要になってくるんですね。決め方としていろいろ例外はあるんですけれども、考え方としては、国際認証を取れないものは提供できないという考え方で原則行われております。

 今のような、日本の農産物のグローバルGAPを取っている件数が二百件では、実は東京オリンピックで日本の農産物を提供できないんですよ。これは本当に致命的な問題でありまして、こんな悔しいことはないですよね。

 今、二〇一六年でありますから、これはもう党派は関係ないので、我が農林水産委員会としては本当に心を一つにして、いい機会だと思うんですね、何としてでも東京オリンピックで日本の食材を海外から来た選手に食べてもらおうじゃないですかということで、政府を挙げて、国際認証は大事ですよと、みんなで取りましょうと、今、農林水産省さんもいろいろな施策をされているわけですから、それを進めたいという思いできょうは質問をさせていただいているんです。

 その上で、もう一つ身近なことを言うと、木材もそうですね。木材につきましてもいろいろな認証がありますけれども、一番大きいのがFSC、フォレスト・スチュワードシップ・カウンシルの森林認証があります。ロンドン・オリンピックでは、FSCの認証のない木材は使用できないというような形で運用がなされています。

 新国立競技場は木材が大変多く使われるようでありますけれども、これは多分、FSCの認証のない木材は使えない、当然使っちゃいけないですよね、新国立競技場なんですから、オリンピックの競技場なんですから。

 ただ、これは皆さん御安心ください。あの国立競技場の木材分ぐらいは日本に認証を取っている木材はあるようでありますので、新国立はできる。新国立はできるんですけれども、しかし、いろいろな木材を使いますので、これを機会に、やはりFSC認証も取っていただかなきゃいけない。

 そこで、またもう一つ、これは大臣にも聞きたいんですが、私ども日本人のあれとして、やはり独自のものをつくりたい、こういうものもあるんですね。私もわかります。やはり日本独自のものをつくりたい。

 だけれども、例えば森林認証のことでいいますと、日本の全国木材組合連合会が母体となった組織が一応合法証明を出していますが、これは残念ながら国際的には認められておりません。要するに、内輪の、自分たちだけでやっている認証なんですね。第三者認証とは認めてもらっていないわけです。だとすると、何の意味もないとは言いませんけれども、これから国際的に活動する、それは打って出る場合もそうですし、国内で使う場合ですら、身内だけの認証では何の意味もないんですね。やはり、グローバルスタンダードの認証を取っていかないといけない。

 となると、実は日本でも、さっき言いました農産物のグローバルGAPの向こうを張って、一般財団法人食品安全マネジメント協会というのがつくられました。ここで、いろいろな業界の方が総力を結集して、日本型のグローバルGAPをつくろうじゃないかという動きをされています。事務局長には農林水産省のOBが、まあ、天下りとは言いませんけれども、天下っておられるわけでありますが、天下りなんですね。大体、役所は天下り団体をつくりたがるんですよ。今でもせっせとつくっておられます。そろそろおやめになったらどうかと思いますけれども、それはおいておいて。

 ロジカルに申し上げますと、日本で仮に何か認証制度をつくったとしても、これは、さっき言いましたように、GFSIの認証を取らないと国際的なものとは認められないわけです。国際的なものと認められるための要件は大変厳しいものです。それは、例えばグローバルGAPのような要件を整えないと、日本でつくろうとしたって、同じような要件でないと絶対国際認証は取れないんですね。

 だとするならば、日本独自の新しいそういう団体をつくるのではなくて、早いところ、このデファクト、全世界百三十カ国でやっているグローバルGAPを一日も早く日本で認証数をふやしていく、あるいはグローバルGAPに対して働きかけをしていく。日本独自のものがありますから、日本独自のものについてはこちらから働きかけていって国際的なスタンダードに逆に認めさせるということをやった方が、時間が早いんじゃないかと私は考えるわけでありますけれども、これについて農水大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 お答えいたします。

 我が国の農林水産物、食品の輸出に当たりましては、取引先の求めに応じて、国際的に通用する認証を取得することが有効であるというふうに、先生御指摘のとおり、私どもも考えております。

 このため、日本発の規格・認証スキームがGFSIなどの国際的な機関から、他の国際的な認証と同等であると認められるよう、スキームの運営主体が中心になって働きかけていくということにしております。

 こうした取り組みには困難も予想されますけれども、日本発の規格・認証スキームをつくり運営するということは、一つは、国内においてGAPやHACCPの普及に大きく貢献をすることに加えまして、日本発の安全管理が認められることによって、和食が海外でも評価されることにつながるというふうに考えております。

 さらに、世界の知見と地域の実情の双方を理解して、国内外でのルールメーキングに参画する人材の育成にもつながることから、我が国の国際競争力の向上にも寄与するのではないかというふうに考えて、努力をしているところでございます。

岸本委員 大臣としての御答弁ということではそういうことなのかもしれませんが、本当に、グローバルGAPの、これは結構難しいように思われますけれども、実は日本の農家が一生懸命やっていることで、かなりの部分、ちょっと工夫すればクリアできるんですね。

 いわゆるマニュアル的なものも多いし、文書で記録を残さなきゃいけないというようなところが少し大変なんですけれども、そんなものは、今はスマホを使って、いわゆるアルバイトの方だってぴょんぴょん、ぴょんぴょんというのはいいかどうかわかりませんが、入力すれば、ITを使えば、実は文書保存というのはそんなに難しいことではなくて、今おっしゃったグローバルGAPを取っている二百ぐらいの団体は皆それでやっています。スマホでやっています。スマホで管理できるんです。

 そういう意味でいうと、グローバルGAPは日本の農家にとって実はそんなに高いハードルではないんです。もちろん費用はかかりますけれども、さっき大臣政務官がおっしゃったように、設備投資は要らないわけで、そういうやり方とか、HACCPもそうですけれども、GAPだって、やり方なんですね、ハウツーですので、実はそんなに大きな問題はないということですから、悔しいですけれども、この際、デファクトスタンダードを取り込んでいく、それに対して、取り込んだ上でそっちを変えていくというようなこともあっていいのではないかと思います。

 その上で、きょうは豊田大臣政務官においでいただいていますので、正式な日本政府としてのお話をきちんと議事録に残したいと思います。

 ロンドンのオリンピック・パラリンピック、そしてことし開かれるリオのオリンピック・パラリンピックについての食材、農産物ですとか畜産品あるいは水産品、さらに木材についても、どのような調達基準になっているのか、お答えをいただければと思います。

豊田大臣政務官 お答え申し上げます。

 ロンドン大会、リオデジャネイロ大会ともに、食材の調達基準につきましては、それぞれの組織委員会においてベンチマーク水準、意欲的水準などが定められていると承知しております。

 このうち、ロンドン大会におきましては、例えば農産物につきましては、ベンチマーク水準として、英国の農業者団体が運営する国内農畜産物認証制度の遵守などが求められ、また、意欲的水準として、国際認証であるグローバルGAPを満たすことなどが定められたと承知しております。

 また、リオデジャネイロ大会におきましては、一般原則として、持続可能な生産工程管理を行う生産者からの調達などが求められる一方、努力目標として、ブラジル有機基準の認証を受けたオーガニック産品の優先購入などが定められていると承知しております。

 次に、木材につきましては、ロンドン、リオデジャネイロ大会とも、先ほど申し上げましたようなベンチマーク水準や意欲的水準などの区分は設けられておらず、ロンドン大会では、仮設施設を整備する大会組織委員会と、恒久施設を整備するオリンピック開発公社がそれぞれ調達基準を設けておりましたが、大会組織委員会では、原則として、国際認証でありますFSC認証を受けること、オリンピック開発公社では、FSC認証、または、同じく国際認証でありますPEFC認証を受けることが求められたと承知しております。

 また、リオデジャネイロ大会では、FSC認証のほか、ブラジル森林認証などを受けた木材も認められたと承知しております。

岸本委員 そうなんですね。もちろん例外はありますけれども、基本的には非常に意欲的な水準になっていて、ロンドン、リオ、そして東京ですから、私たちは本当に食品の安心、安全に心を配る先進国として、やはりロンドン、リオ以上の、当然、スタンダードをつくるべきだと思います。

 さっきおっしゃいましたけれども、イギリスのときの、ロンドンの水産品はFAOという認証、責任のある漁業のための行動規範に合致していないといけないんですけれども、日本でFAOに合致しているのは二種類しかないんですね。ホタテとカレイしかないんですね。ということは、ホタテとカレイ以外、東京オリンピックでは魚を出せないんです、日本の魚は。とんでもないことなんですね。

 そこで、もう一度、豊田大臣政務官に、これは内閣府としての大臣政務官にお聞きいたしますけれども、では、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック、この食材及び木材の調達基準、どうなさるおつもりですか。お答えいただけますか。

豊田大臣政務官 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会におきまして、組織委員会が調達する食材や木材の調達基準は組織委員会が決定することとなっておりますが、現在、組織委員会におきましては、食材や木材も含めました物品・サービス全般に係る調達の基準を検討していると聞いておりまして、その基準の担保を確認する手段として、先生御指摘の国際認証を含めた認証制度をどう活用するかということにつきましても検討を進めることと聞いております。

 政府といたしましては、この調達の基準の検討に当たりまして、関係団体の意見などをよく踏まえながら、幅広い視点から検討されるように組織委員会に働きかけてまいりたいと考えております。

岸本委員 私の尊敬する豊田大臣政務官とも思えない、官僚答弁を棒読みされましたので大変残念でありますが。

 森山大臣に政治家としての御答弁をお伺いしたいと思うんです。

 もちろん、オリンピックの組織委員会が決めるんですけれども、それは文科省であり、内閣官房にあるオリパラ室であり、そしてまた、国際認証に深く関係する農水省として、農水大臣として、せっかくの機会ですから、非常に意欲的な国際認証をあえて東京オリンピック・パラリンピックでは取り入れていただいた上で、官民を挙げて、みんなで国際認証、農産物、食品、木材の分野で取りに行こうということをぜひお願いしたいと思うのですが、御決意のほどをお伺いしたいと存じます。

森山国務大臣 お答えいたします。

 今回、東京オリンピックでも、木材が国立競技場におきましても多く使っていただけるという方向が示されてまいりましたので、林業関係者の中でも認証材というものがいかに大事なものであるかという認識が高まってきておりますので、この機会に、木材あるいは農産物、水産物を含めて、国際認証に値するものをしっかりと取得していくということが本当に大事なことだと思っておりますので、さらにその努力をさせていただきたいと思っております。

 東京オリンピックにおきましては、組織委員会で調達基準を検討していただいているようでございますので、我々農林水産省といたしましても、ここで国内の食材や木材を最大限利用していただけるように、よく御説明を申し上げて、御理解をいただく努力をさせていただきたいと考えております。

小里委員長 岸本君、締めてください。

岸本委員 ありがとうございます。

 農水委員会として決議でもしたいぐらいでありますので、ぜひ同僚議員の皆さんにも御協力をお願いして、国際認証の機運を高めたいとお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小里委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 きょうは、農産物のブランド化、最近話題になっております地理的表示ですとかさまざまなものがありますが、農産物のブランド化というものは、一方で品質の評価、また相対的に言えばランキングということにもなるのかと思います。そういう側面も強く持っていると思いますので、きょうはそのことについて伺っていきます。

 まず、大変話題となっております地理的表示法について伺いたいのですが、これはもう言うまでもなく、農産物の産地とその品質、ここでつくられたこの果物、このお肉だったらブランドだ、有名だ、そういうものが選ばれてきておりまして、幾つか既に指定はされております。食品ではありませんが、熊本のイグサも入っていると聞いておりますし、そういう意味では、これからの農林水産業において、この地理的表示というものは大変大切だと思っております。

 そこで、改めて伺いたいのですが、農産物のブランド化、品質の評価の際に、その地域、どこどこでつくったというものに大変重きを置かれております。今申し上げましたように、それは極めて自然なことなのかもしれませんが、改めて、農産物のブランド化や品質の評価において、その産地、地域が重要であるというところの見解を農水省からいただきたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 地域で生産され、高い品質評価を得た農林水産物や食品につきましては、農産物のブランド化として非常に重要であるということでございまして、そうしたものを保護する制度として地理的表示保護制度というのが極めて重要であるというふうに考えております。

井出委員 済みません、私の質問が余りよくなかったみたいなので、もう少しかみ砕いて質問をします。

 極めて大変なブランド品を擁する産地でも、中にはブランド品の水準に至らないような水準の、例えばお肉でいいますと、そのブランドの品質を満たすものもあれば、恐らくそうでないものもありますし、また逆に、そのブランド品の地域でない、たまたま隣接はしているんだけれども違う、でも品質は負けない、そういうものもあるかと思うんです。

 ですから、もう少し根本的なところで、農産物の評価、ブランド化において、なぜ地域というものが重要であるのかということをもう一度教えてください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 地理的表示法におきましては、その商品の特性が特定の地域に結びついているかどうか、その名称から当該産地を特定できるかどうか、それから、その商品の品質等の確立した特性が当該産地に結びついているかどうかということを、それが特定できるかどうかということを審査に当たっては重視しているところでございます。

井出委員 では、この地理的表示保護制度の大枠に沿って、同じ観点からもう少し質問をします。

 地理的表示保護制度は、まず、生産者は、登録をされた団体への加入をすることによってその地理的表示を使用することができる。ただ、その一方で、販路の問題ですとか価格の問題ですとか、いろいろな事情があって、同じ地域で同じ品質の農産物をつくっていても、団体に入っていないような方もいらっしゃると思うんですが、そういう方というのは一体どうしたらいいのか、そのあたりについてのお考えを伺いたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 地理的表示法で保護された、申請を行った団体以外であっても、申請を行った団体と同程度の品質、生産管理を行っていれば表示を使用することができるということでございます。

森山国務大臣 私の方から少し補足をさせていただきますが、地理的表示の生産地というのがなぜ必要なのかということでありますが、一つは、人的な特性というのがあるのではないかと思っております。伝統的な製法とか、あるいは地域伝統の文化や行事につながるものとか、一番はやはり自然的な特性ではないかなというふうに思っております。気候、風土、土壌というものが非常に大事なんじゃないかなと思っております。

 例えば、先生、私の選挙区で安納芋というのが非常に有名な芋になったんですけれども、これは種子島の安納地区というところでできた安納芋の味と、ほかの地域でつくった同じ安納芋でありましても、やはり味が違いますので、そういう意味においては、やはり農業というのは土壌との関係というものも非常に深いのだと考えます。

 そういうことで、生産地あるいは地域ということも一つの大事な要件になっているのではないかと考えています。

井出委員 今お話しいただいたこと、私もそのとおりだなと思うんですが、済みません、審議官に一点確認したかったんですが、団体に入っていない個人の方でも、品質の水準を満たしていればこの表示を使ってよいのか悪いのか。もう一度、済みません。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 個人では認められなくて、何らかの団体に加入していなければならないということでございます。

井出委員 今、そういうお話がありまして、ただ、大枠の話としては、先ほど大臣がおっしゃったように、やはり地域性、地域の自然、そういうものと品質というものが大きなかかわりがあるというのは、それは極めて自然な農産物の一つの重要な評価だと思います。

 もう一つ農産物の重要な評価だと私は思っているものがありまして、それは生産者の顔であります。

 最近これもまた話題なんですが、農業女子プロジェクトというものがありまして、私の地元、信州長野においても、今さまざまなところで農業女子の方が活躍をされていて、たまたま農業関係のところで会って、そういえば、何かテレビに出ていた人だなみたいなことでお会いすることもあるんです。

 これは、農業に取り組む女性と、また企業のタイアップ等で、いろいろな商品の開発とか、大変前向きな取り組みが多数あると聞いておりますが、生産者の顔が農産物の評価の一つ大事なものであるというのは、これまでも、どこの誰々さんがつくりましたと顔写真入りで野菜が店頭に並んでいたりとか、そういうこともございましたが、この農業女子プロジェクトというものは、大変顕著に生産者の顔というものが、特定の個人ではないんですけれども、女性全体で農業で活躍している人がたくさんいる。このプロジェクトで、私は強く、農業生産者の顔というものが農産物の品質評価という上で極めて大切であると改めて考えたんです。

 大臣にお伺いしたいんですが、やはり農産物のブランド、品質の評価というものについて、生産者の顔というものが、私は、地域と同等、それ以上に重要ではないかと思っているんですが、大臣のお考えをいただきたいと思います。

森山国務大臣 今、井出委員おっしゃいますとおり、生産者の顔が見えるということが消費者には本当に安心感を与えているんだなと思うことが多々ございます。

 先日伺いました道の駅での話を聞きますと、生産者の顔写真と名前が入っているものが一番先に売れるそうです。その次に、生産者の名前だけのものが売れるそうです。何々農協と書いたものは誰がつくったかがなかなかわかりにくいものですから最後に売れるという話を伺いましたけれども、消費者というのはそういうことは非常に敏感なんだなということを改めて思いました。

 女子プロジェクトの話でございますけれども、このプロジェクトは、平成二十五年十一月に、農業女子メンバー三十七名、参画企業が九社でスタートいたしましたけれども、おかげさまで、四月現在では、メンバーが全ての都道府県で四百三十一名になりました。また、参画企業は二十五社ということでございまして、これを確実に伸ばしていくということが大事なことではないかなというふうに思っております。

 また、女性の管理職がおられる経営体というのは、これは日本政策金融公庫の調査でございますけれども、融資後三年後の売上高の増加率が、いない経営体に比べて一三・六ポイント高いという調査結果も出ておりますので、やはり女性の目線というのは農業にとっては非常に大事なんだろうなというふうに思いますし、特に六次化に向けては大事なことなのだろうと思っておりまして、今後もこういうことを背景に頑張っていかなきゃならぬと思っているところであります。

井出委員 今大臣からお話をいただきまして、農産物のブランド化で、地域とそれから生産者の顔、その二つが極めて大事であるということを大臣からの答弁からもお話をいただきました。

 そこで、お米の品質の評価というものについて少しお考えを伺いたいんです。

 言うまでもなく、米には等級の一、二、三、水分の含まれている割合ですとか、色のつきぐあいですとか、そういうものによって評価がありまして、長野県でも、一等級の比率が一番高いとか、ことしはどのぐらいだった、そういうことが大変大きくニュースになるんです。

 もう一つ、お米の評価というもの、ランキングというものの中に、米の食味ランキングというものがありまして、これは一般財団法人日本穀物検定協会がやっているんですが、この食味ランキングというものは、原則として、検査等級一等のものを対象に、これはおもしろいんですね、炊飯器もきちっと、平成二十七年度はパナソニックのIH何とかかんとかを使いましたとか出ておるんですが、専門の評価員、エキスパートパネル二十名が、御飯の外観、香り、味、粘り、かたさ、総合評価の六項目において評価をする。

 ランクづけとしては、特A、A、Aダッシュ、B、Bダッシュとありまして、その穀物検定協会のホームページを見ますと、平成元年から特Aをとってきたお米なども一覧として出ているんですが、新潟県の魚沼コシヒカリは平成元年から一度も欠かすことなく特Aのランクをいただいているようです。

 私の長野県はどうかといいますと、長野県は産地を、東信、南信、北信。お隣の岐阜ですと、美濃、飛騨。また、もう少し、例えば熊本を見てみますと、城北、城南。そうやってある程度地域分けをしてこのランキングをしてきている。

 残念ながら、長野県は、平成元年からのこの状況を見ますと、やはりまだ新潟には至らないのかな、そういう状況なんですが、この穀物検定協会のやっている米の食味ランキング、こうやって地域分けをしてやっている、恐らくそれは、冒頭の議論でやらせていただきました、その地域性が非常に大事であるというところだと思うんです。

 穀物検定協会とこのことについてお話をさせていただいたところ、どうも個人や法人でこのランキングに申し込むことが通常はできない。そして、できるんだけれども、都道府県単位のJAや都道府県の農政局を通じて検査料を払って、四万円払うと聞きましたが、それをやったとしても特A扱い、全ての基準を評価されても特A扱いだと。なかなか純然に特Aだというものを個人や農業生産法人が受けることは難しいというような話を聞いたんですが、ちょっとそのあたりについての御説明をいただきたいと思います。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のありました日本穀物検定協会がやっております米の食味ランキングにつきましては、基本的に、産地全体の良質米生産とか米の消費拡大を推進することを目的としております。

 したがいまして、まず原則としては、都道府県の奨励品種であって、作付面積が一定規模以上である品種から、都道府県などと協議をされまして対象品種を選定するということでございます。

 ただ、今御指摘ございました個々の生産者あるいは法人の方であっても、この穀物検定協会に御依頼になれば、全く同じ基準、同じグレードで食味ランキングと同様の評価を受けることが可能でございます。

 例えば、ある県のコシヒカリが仮にAという評価であっても、その方の個人のつくられたお米が特A相当というような評価を受けてPRすることは十分可能でございますし、現実、実態を見てみましても、そういう個々の生産者で御依頼になって評価を受けている例、最近ではどんどんふえておりまして千三百例以上ございますし、例えば、そういう方のホームページで、自分の米は特A相当だというようなことでアピールして販売されている例があるものと承知しております。

井出委員 この穀物検定協会のホームページにも断り書きというような形で書いてあるんですが、例えば、お米の袋に特A評価を表示するときは、商品そのものの評価ではないと。これは不当景品類及び不当表示防止法などとの関係で、少し慎重を期すようにということでそういう告知をしているのかと思うんです。

 今、個人のホームページの御紹介もありましたが、個人でお金を払って検査を受けて特A相当の評価をいただく、そうしたら、もう特Aとして個人のホームページに掲載をできるのか、それとも特A相当としてまず書かなければいけないのか、それはきちっと認められているものなのかどうかを教えてください。

柄澤政府参考人 厳密に言いますと、穀物検定協会としては、その方からいただいたサンプル自体を評価しているわけでございます。

 しかし、通常であれば、現実の例を見ましても、私のお米は特A評価をいただきましたというふうな形で表記をされて販売されているというふうに承知しております。

井出委員 大事なところなので再度伺いますが、個人が特A相当の評価を受けていれば、相当の二文字を取って特A評価を受けていますと書くことは、農水省としても協会としてもきちっと認めてもらえるということでいいんですか、承知をしているというところなんですけれども。

柄澤政府参考人 先ほど申し上げましたように、サンプルの評価ではございますけれども、消費者に誤解を与えるおそれがないような形で表示をすれば、不当表示防止法等に触れない形で表示すればいいというふうに承知をしております。

井出委員 今、そういうようなお話をいただきました。

 この日本穀物検定協会の食味ランキングなんですが、まず、先ほど長野県の例を申し上げましたが、東信、南信、北信、長野県にはもう少し、例えば中信でありますとか、東信だけを見ましても、私の選挙区でもありますが、東信の中にさらに細かな区分けがあるんですが、この区分けと、先ほどの答弁の中で、まず、地域の米が特Aでなくても、個人の方が特Aを、申請をしてきちっとその評価を受けることができる、そのことがまずそもそも知られておりませんし、個人の申請ができるというところは、件数がふえてきているということですので、そこは了としたいと思うんです。

 この米の検定協会の食味ランキングで、私が大臣に申し上げたいのは、これは昭和四十六年からされている大変歴史のある評価だと思いますし、私の地元の農家でも、こういうものをやりたい、ただ、農協に入っていないとできないんじゃないかとか、いろいろな問い合わせもいただいているんです。

 これは、個人の生産者の顔が見える、冒頭申し上げましたが、個人でも申請ができて、きちっと検定協会の言うような表示の仕方に従えば個人としても活用できますよ、そういうことをもっと広く言っていただけるような、そういう形の運用にしていくことが、これからの農業、六次産業、ブランド化、また輸出というような、輸出を拡大していくというような話も最近はずっと言われておりますが、これは米の本当に基本的な、重要なランキングになっていると思いますので、ぜひ個人の方にも使い勝手のいいと申しますか、そういう形でこれから使われるべきだと考えておりますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

森山国務大臣 一般財団法人日本穀物検定協会で実施をしていただいておりますもので、一定の条件があろうかと思いますが、産地におきましても、この産地でも自分の米はこういうつくり方をしているからおいしいんだという話はよく聞きますので、井出委員おっしゃるとおり、個人で検査をしてほしいというお気持ちはよく理解ができますので、検定協会の方ともよく協議をさせていただきたいと思います。

井出委員 米の評価ですね、この食味ランキングもそうですし、その前提となっている一等、二等、それも地域性が非常に密接でありまして、自分が農業をやっている地域はずっと米が二等だと言われてきた、それが悔しくて頑張っているんだ、そういうような農家の方もいらっしゃいます。

 ですから、これからの農業、地域性も大事、生産者の顔が見えることも非常に大事、そのことを考えていっていただいたときに、先ほど、協議をしていただける、そういうお話をいただきましたが、ぜひ、この穀物検定協会の米の食味ランキング、農家の皆さんにとってより一層使い勝手のいいものに、また、消費者が米を選ぶときの一つの基準として広がっていくことをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小里委員長 次に、横山博幸君。

横山委員 おはようございます。

 海外で高い評価を受けておりますミカンジュースの生産地、愛媛県から参りました横山でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 先ほどから質疑応答を聞いておりますと、鳥獣被害のことが出ておりました。この件に関して一つ見解をお伺いしたいと思いますけれども、この鳥獣被害、先ほどから出ていますように、ハンターが高齢化しているということで、私も地元の猟友会の方とよく話をしますけれども、実際、鳥獣に対応できない体力でしかないということと、目も悪くなったからなかなか的に当たらないということが現実だということを、よくお話を聞きます。

 そこで私は、一方、建設業界に助けを求めたらいいのではないかというふうな見解を持っております。

 これは、建設業界は今、人手不足と言われておりますけれども、地方に行きますと、確かに技術者不足ではありますけれども、単純作業をしている方々というのはまだいます。仕事がないぐらいなんですね、地方では。そういう方々に、先ほど答弁にもありましたけれども、射撃場をつくるとか狩猟免許の補助をするとかいう話がありましたから、そういうことを考え合わせていけばいいと思いますし、林業の世界では、既に、林業の専従者の人手が足りないということで、建設業界に助けを求めて、建設業界からかなり参入しているということもあります。

 一方、高齢者福祉を見てみましても、今まで厚労省が専門でやっておりましたけれども、国交省がサ高住というサービス型の高齢者住宅に参入されて、助成をされて、省庁横断でこの問題に対処しているということもありますので、ここは国交省とも協議をされて、ひとつ建設業界の方へも少し投げかけてみたらどうかというふうに私は思いますけれども、いきなりの質問でございますけれども、大臣、見解がございましたら、よろしくお願い申し上げます。

森山国務大臣 狩猟をされる方々が非常に高齢化しておりますし、また数も減ってきておりますので、それにどう対応するかというのは非常に大事な課題でございまして、農林水産省としても、今まで自衛隊のOBの団体の皆さんに御協力を要請してまいりました。一部の県においては進んでいるところもございます。

 今先生の言われます建設業の実態もよく把握させていただいて、もし御理解と御協力をいただけるような余裕があるとすれば、積極的な働きかけを続けていくべきであろうというふうに考えております。

横山委員 大変ありがとうございます。

 建設業界は、通常四月から六月までは閑散期です。実際に仕事を始めるのは九月ごろから、準備をして施工段階に入るのは九月ごろからですから、その期間があいています。しかし、本年は前倒しで発注するということですから、本年に限って言えばいきなり忙しくなるかもしれませんけれども、そういった閑散期があるということと、それから、受注の波がありますから、その間に人出を動かせるということもありますし、冬場は現場で仕事をしにくいものですから、鳥獣被害対策が可能だと思いますので、ぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。

 続きまして、林業関係について質問をさせていただきます。

 私は非常に林業に関心を持っている。名前も横山ですから非常に関心が高いということもありますし、愛媛県は、参考までに、森林率が七一%で全国十九位であります。それから、人工林率は六一%、全国第六位。さらには、全国有数の素材、丸太生産量、杉、ヒノキですけれども、愛媛県は媛すぎ、媛ひのきというブランド化をして販売させていただいておりますけれども、これは、ヒノキは全国四位、杉は十一位ということで、非常に高い林業への就業率もあるということでございます。特に私の出身地の久万高原町は、全国に誇れる林業の町でもございますし、私の親族も現実に林業の従業者がおります。

 そうした中で、現実に即して考えてみますと、木材自給率は今非常に低いんですね。二九・八%、三〇%以下でございます。国産材を利用していく手法、各自治体で積極的に、公共建築物、福祉の施設あるいは学校等に木材を使っておられる。ちなみに、私の地元の愛媛銀行は、新しい支店を全部木造でつくりました。全国にも数少ない事例だと思います。ただし、金庫は鉄筋でございましたけれども。

 そういうことで、木質バイオマス、非常にこの道にも材木が使われております。ただ、間伐材でバイオマスに出す価格と、愛媛県に紙の生産地がありますけれども、紙のパルプ側で出す方が実は高いんですね。バイオマスの方は安いんですよ。ですから、バイオマスの方には行かない。四国管内でバイオマスの施設をつくって採算性が合うのは、四国全体でいってたった一カ所しかありません、木材の自給率からいいましてね。そのぐらい木材の使われ方というのはいろいろな課題があります。

 そういう厳しい状況の中で、林業家がどうやって経営していくのかということは非常に難しい問題でありますし、後継者の問題も含めて多々問題があると思いますけれども、農林省としてこの問題についてどのようにお考えか、まず見解をお聞かせいただきたいと思います。

森山国務大臣 横山委員にお答えをいたします。

 今先生御紹介いただきましたが、愛媛銀行さんの取り組みというのは私は大変ありがたい取り組みだなと思っておりまして、森林を育てる活動に取り組んでいただいて、今は支店を木造にしておられるようでありますが、私も一遍これを見させていただきたいなと思っております。久米支店とかというのは、写真も今もらったんですけれども、非常にデザイン的にもすばらしいし、こういうことを企業が御支援いただくというのは大変ありがたいことだと考えております。

 ただ、森林業の問題というのは、やはり川上、川中、川下をどううまく循環させるかということが大事な課題だなというふうに思っておりまして、川上の方ではいかにコストを下げて伐採をするか、そしてまた植林をしていくかということが一つの課題だろうと思います。最も大事なことは、やはり川下でどう需要をつくっていくかということが大変大事な課題でございまして、今でもいろいろな取り組みがなされているところでありますけれども、その努力というのはさらに続けていかなきゃなりません。

 最近、いろいろな動きが出てきておりまして、CLTも一つの明るい材料であったと思いますけれども、実は、セルロースナノファイバーの話が随分進んでまいりまして、中越パルプの薩摩川内工場に新しいプラントを建設されるということになりました。セルロースナノファイバーというのはまだ先の話だという意識が強かったと思いますけれども、そうではなくて、富山県の本社でサンプルをつくってこられたみたいですけれども、そのサンプルの販売先がかなりの数になりまして、市場拡大が予想されるので量産の工場をおつくりいただくようであります。

 こういう新しい分野に向けるということもしっかり考えながら、また、バイオマスの利用促進ということも考えながら、本来の木材の利用というのもさらに拡大をしていくということが大事なことだと思っておりますので、しっかりと、この木材、森林の問題は取り組みをさせていただきたいと考えています。

横山委員 大変ありがとうございます。ぜひ愛媛銀行の支店を視察していただきたいと思います。

 ちなみに、そこの材は、私の出身地の久万高原町の材を会長にお願いして全部使っていただきましたので、ぜひ参考にしていただければと思います。

 それで、今大臣の方からCLTのお話が出ましたので、少し順番を入れかえさせていただいて、CLTについてお伺いしたいと思います。

 CLTは直交の集成板ということで、先ほどの銀行の建設費も、RC、鉄筋か鉄骨で建てたときの約二倍ぐらいかかっております。CLTも、非常にコストの面で対応ができるのかどうか、量産しなければいけないということで、量産でコストを下げるということになると思いますけれども、愛媛県におきましても、西条市にCLTの製造拠点ができます。この総事業費は七十七億三千八百万円、非常に膨大な投資額でもありますから、事業としては非常にリスクの伴う事業であると思います。

 このCLTの普及促進について、建築基準法の絡みもあります。二時間以上の耐火であれば、かなり高いものが建てられるということで、三井でしたか、都内に、一階がRCで、四階か五階ぐらい木造で組み立てた福祉施設が間もなくでき上がるということで、方向性としては大変喜ばしいことでございますけれども、このCLTの考え方、方向性について御見解を求めたいと思います。

今井政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、CLTは、既にヨーロッパにおきましては、中高層建築物の構造材にも使用されておりまして、我が国でも国産材の新たな需要先として大いに期待されているものでございます。

 これまで、CLTを構造材に用いることにつきましては、基準がなかったものですから、個別に国交大臣の認定が必要でしたけれども、本年の三月、四月に、CLTを用いた建築物の一般的な設計法等に関する告示が公布、施行されまして、これにより、これからは個別に大臣認定を受けることなく建築が可能となったところでございます。

 そういうことで、これからは、この新しい告示に基づく基準に沿って、いかにCLTが実際の建築物に積極的に活用されていくようにするかということが課題になってまいりますので、我々林野庁といたしましても、国交省とも連携しながら、一つは、新しい告示に基づきますCLTの設計の仕方、使い方、そういったものをマニュアルとしてつくりまして、それを設計者等にわかりやすく伝えるための講習会などをまず開く。

 さらには、施工業者等に対しましては、コンクリートと比べて軽くて、基礎が軽減できるですとか、工期が短縮できるだとか、そういった施工性のよさを住宅メーカーの方々等に実証、展示して、使ってみたいと思ってもらえるような環境づくり、そういうことを進める。

 一方で、先ほど地元の取り組みの御紹介もありましたけれども、これからはCLTの国内における生産能力を増強していかなければいけないというふうに考えておりまして、現時点で日本国内には年間約五万立方の製造能力がありますけれども、十年後、五十万立方ぐらいの製造能力を持てるように生産ラインの増強にも努めていきたい、それに対して支援をしていきたいというようなことも考えておりまして、そういった各方面にわたった取り組みによりまして、CLTの普及、実用化を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

横山委員 大変前向きな考え方ですばらしいことだと思います。

 私の多少の記憶で、国内の地方自治体の中に公営住宅を既につくられて、入居させて、そこの入居後の調査を細かく詳細にわたってしておられるという情報を聞いておりますけれども、そういったことの報告はございますか。

今井政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、CLTの建築物というのはこれまで国内になかったものですから、国交省と林野庁で協力し合いまして、CLTを使った実証的な建築物というのをつくってまいりました。

 その中には住宅もございまして、住宅も、福島県の住宅ですとか、岡山県の住宅ですとか、その補助によってつくりました住宅につきましては、例えば外気の気温と室内の気温がどんな感じになるんだとか、湿度の変化がどういうふうになっているんだとか、居住性ですとか強度の問題ですとか、そういうものはデータをとらせてもらうということを前提に補助をしておりまして、それはずっと継続的にデータをとっております。

 先ほど申し上げましたように、これからは普及をしていく段階になりますので、施工業者等にそういったデータも提供しながら、こういうことであればぜひ使ってみたいというようなものに用いられるように、データの提供等についても考えていきたいと思います。

横山委員 大変ありがとうございます。ぜひ情報公開を積極的にしていただいて、広めていただきたいと思います。

 それでは、林業の方にもう一度帰らせていただきますけれども、林業家はほぼ家族でやっている、小規模単位で林業をやっているという方が大半だと思います。その中で、後継者もいなくて、高齢化をして、もう山へも行けないというふうな状況の中で、森林組合に預けて管理をしてもらっているというところも多々あると思います。

 そういった中で、問題は、境界査定の問題がありますね。市街地と違って、そんなに小さな細かい境界までは査定はしませんけれども、相続の問題とかになりますと、この境界の問題が大変問題になってくるというふうに思います。

 組合によっては、最先端機器を使ってそれを管理しているということもございますけれども、実態を踏まえて、こういった境界確認の問題、所有権の確定の問題についての見解を求めたいと思います。

今井政府参考人 お答えいたします。

 先生から御指摘がありましたように、今本格的な利用期を迎えている我が国の森林ですけれども、一方では、所有者がわからない森林だとか、所有者がわかっても境界がはっきりしない、そういった山がふえておりまして、それが利用を阻んでいる大きな原因にもなっております。

 そういうことに対処するために、農林水産省といたしましては、従来から森林整備地域活動支援交付金、そういう補助のお金がございますけれども、これによりまして、森林組合がこの山は誰が森林所有者なのかという森林所有者の所在を確認する、そういった取り組み、あるいはGPSなども活用して境界を明確化する取り組み、そういったものに対する支援を行っております。

 また、都道府県、市町村の林務部局と地籍調査をする地籍部局、そことの間で情報を共有して、森林の境界の明確化をする活動と地籍調査との情報の連携などもとれるような、そんな取り組みをしているところでございます。

 さらに、今般の森林法等の改正法案におきましては、市町村が森林の所有者等の情報を一元的に取りまとめて林地台帳として整備をする、そういう制度を創設することを提案させていただいております。

 さらには、平成二十八年度の地方財政措置におきましては、林地台帳の整備、所有者や境界の明確化を含む森林・林業対策に新たに五百億円が総務省の方から計上されたところでございますので、今後、こうした取り組みを総動員いたしまして、また関係機関とも連携をいたしまして、森林の所有者や森林の境界の明確化、そういったものを進めていきたいと考えております。

横山委員 ありがとうございます。

 所有者の明確化というのはこれから大変重要であると思います。今、北海道を中心にして、海外の資本、あるいはあたかも日本法人のようにしたところが所有権移転をしているということもございますので、自然を守る、水を守る、環境を守るという点でも、所有者の明確化というのは非常に重大な関心事であると思いますので、そこのところをしっかりとやっていただきたいと思います。

 続きまして、人材育成の面での質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどからいろいろな場面で、人材不足、後継者不足ということで、農業も含めて大変な問題になっておりますけれども、農業は既に六次産業化が進んで、大変いい結果を出しておると思います。林業も六次産業化を目指していく必要があると思いますから、この点において人材教育というのは非常に重要になってくると思います。

 そういった面では、今、全国に、林業の研修、教育施設として林業大学校というものが各県にございますけれども、この林業大学校の現状と課題、方向性、愛媛県におきましてもこの林業大学校を具体化したいというふうに考えておるところもございますから、ぜひこの点について御答弁をお願いしたいと思います。

今井政府参考人 林業大学校についてのお尋ねでございますが、平成二十八年四月現在、学校教育法に基づく林業大学校が全国に七校、学校教育法に基づかない教育・研修機関が七校、合計十四校が都道府県に設置されていると把握をしております。

 特に、平成二十三年度以前は全国に六校だったんですけれども、平成二十四年に京都に一校、平成二十七年度に秋田、高知に二校、さらには平成二十八年度、本年四月から、山形、福井、徳島、大分、宮崎に合計五校、最近立て続けに林業大学校が開校するなど大変数がふえてきており、林野庁としても大変心強く感じているところでございます。

 ただ、この林業大学校のカリキュラムにおきましては、基本的には、森林の管理ですとか森林の技術に関する講義、さらには実習を中心とする、そういうものとしてカリキュラムが組まれているわけでございまして、そういう意味では、先生から御提案のありました六次産業化等に対応できるカリキュラム、そういう面から見たらどうかというような点については課題もあろうかと思います。

 今回いろいろ問い合わせ等もしてみましたところ、県の方の各林業大学校におきましては、今後は、御指摘のような林業の六次産業化というような視点で、企業的な経営感覚にすぐれた人材を育成していくという視点も大変重要だという認識も広がっておりまして、例えば経営だとかマネジメントだとか、そういった面でのカリキュラムの充実が図れないのかというような検討も進められていたり、カリキュラムの中にはまだ入れられないんだけれども、特別講師のような形で先進的な経営の取り組みを行っている人を招聘した講演会を林業大学校でやってみたりだとか、いろいろそんな模索も進められていると承知しております。

 林野庁といたしましては、こうした各林業大学校の取り組みが円滑に進みますように、林野庁と林業大学校との連絡協議の場等を通じまして、指導助言、支援等を行っていきたいというふうに考えております。

横山委員 ありがとうございます。

 それで、林業大学校で学ぶ方というのは、これは緑の青年就業準備給付金事業ということで、人材に対して資金を供給する制度がございますけれども、たしか記憶では年間千二百時間を超えないとこの給付金を受けられないんじゃないかというふうに判断しておりますけれども、これを受けられないということになると、先ほどから言っていますように、人材育成の面で少しおくれをとってしまうんじゃないかというふうに思います。そうすれば、逆に、今御答弁でありましたように、全国に十四しかまだ林業大学校はありませんけれども、全国各地にこの林業大学校をつくっていくという方策を持つ方がいいんじゃないかと思いますが、この点について見解を求めたいと思います。

今井政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、都道府県が設置する林業大学校がふえてきているということを申し上げましたけれども、それは、各都道府県における森林資源が充実して利用期を迎えているという中で、地域の実情に応じた林業労働力、人材の確保、そういう必要性の観点から、各都道府県の判断で設置が進められているということだと思います。

 調べてみますと、現在、ある県の林業大学校に、その県の若者だけではなくて全国から、自分は何々県の林業大学校で学んでみたいというようなことで、ある程度の交流等も進められているようですので、全ての県に全部一律に置くということがいいかどうかというのはさらに検討する必要があろうかと思いますけれども、我々といたしましては、そういった動きがある中で、設置に際しましては、設置したいという県があった場合には、先行している林業大学校のカリキュラムはこういうふうになっていますよというようなことを情報提供したり、設置後におきましては、我々の方からも、講師の紹介だとか、あるいは林野庁の人間が講師となって行くだとか、そういう支援、さらには、緑の青年就業準備給付金ということで林業大学校等の研修生に研修資金を交付する、そういった支援もしておりまして、そういうものを組み合わせながら、求めに応じた支援をやっていきたいというふうに考えております。

横山委員 ありがとうございます。

 確かに、交流をして、希望する各県の大学、農林の学校に行けばいいんですけれども、要は、学生に生活費がかかるということで一つ歯どめがありますよね。ですから、できれば、大きくなくても地域にできる方がいいというふうに私は思います。

 それから、できるだけそのカリキュラムの中では、零細の事業家がこれからまだふえていくと思いますから、先ほどお話がありましたように、経営面での学習をしていただくということ。

 もう一方、もう時間がありませんので、ぜひ農林省にお願いしたいのは、先般、毎日新聞にすばらしい記事が出ておりました。「林業新時代の予感」ということで、三月二十七日の新聞でございましたけれども、林業に期待する若者たちへのアピールということで、この点でいうと、もう少し農林水産省としての広報戦略が重要ではないかと思うんですね。この記事を読むだけでも非常に興味をそそっていく、そして林業に目を向けてみようかという方々が少しでもふえれば将来が明るいのではないかと思います。

 最後に、大臣、いきなりのまた質問でございますけれども、よければ見解をお聞かせいただきたいと思います。

森山国務大臣 お答え申し上げます。

 森林が果たしている役割は、材としての活用はもちろんでありますけれども、森林そのものが多面的な機能を果たしているというところにもしっかりと着目をさせていただいて、森林行政を進めさせていただきたいと考えております。

横山委員 どうももう一問だけ時間がありそうなので。

 最後に、不動産業界では宅地建物取引主任者というのが略称宅建士になって、士業になったということで、非常に資格者の士気が上がっております。

 林業も、マイスター制度というのがありますけれども、こういった若者に資格を与えて意欲を増していくということも一つ必要ではないかと思いますので、学習後にこういう資格制度をつくって意欲をさらに喚起するということを検討していただきたいと思いますけれども、この点についてどなたか見解をお聞かせいただきたいと思います。

小里委員長 今井林野庁長官、簡潔にお願いします。

今井政府参考人 先ほど答弁の中でも申し上げましたけれども、緑の雇用事業の中で、体系的なカリキュラムに基づきまして研修を行っておりますけれども、その研修の中では、フォレストワーカー研修、フォレストリーダー研修、フォレストマネージャー研修ということで段階的に知識、技能が高度化していく、そういう研修体系をつくるとともに、研修を修了した修了者には、農林水産大臣名で研修の修了証を交付するとともに、三区分に応じました名簿に登録をする、こういうことをしております。さらには、研修生が習得した知識、技能が雇用されている林業事業体から適切に評価されるように、林野庁から林業事業体への働きかけ等も行っております。

 先生からも指摘されましたように、若い林業従事者をこれから確保していこうとするときには、若者が林業を誇りを持って働ける魅力ある職業、職場として実感できるようにしていくということがとても大切だと考えておりますので、そういったことを考えながら、さらに進めていきたいというふうに考えております。

横山委員 大変ありがとうございました。ぜひ積極的にお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わります。

小里委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 森山大臣とは、連日TPP特別委員会で顔を合わせていまして、毎日厳しい質問をお答えになって、森山大臣もお疲れかなと思っていたんですが、お元気そうなので、きょうも安心して厳しく質問をさせていただきたいと思っています。

 きょうは朝から質問がありましたが、規制改革会議のワーキンググループが提言した指定生乳生産者団体制度の廃止問題について、まず初めに質問をさせていただきます。

 森山農水大臣が、今月八日の閣議後の会見で、指定団体制度の大きな機能を大体三つぐらいにまとめてお話をされているんですけれども、まず、その三つの大きな機能について確認したいと思います。

森山国務大臣 畠山委員にお答えを申し上げます。

 指定団体制度が果たしている大きく三つの機能があると思いますけれども、一つは、地域の酪農家を代表して乳業メーカーとの対等な価格交渉ができるということが一つあると思います。また、効率的な集送乳を行うことによってコスト削減ができるということが一つあると思います。もう一つは、飲用牛乳向けと乳製品向けの調整をすること等により、消費者の皆さんへ牛乳・乳製品の安定的な供給を図るといったところ、この三つが機能としては非常に重要であると申し上げたところであります。

畠山委員 一つに乳価交渉の面、二つに集送乳の面、そして三つ目に需給調整ということで確認をさせていただきます。

 このような機能があるということについては、もちろん私も異論がありません。家族経営の多い日本の酪農経営ですから、価格交渉力を強めて、メーカーと交渉できるようにしなければなりませんし、きょうも朝から北海道の議員が話されているように、遠隔地から早く引き受けていく、品質保持も図り、需給調整もするということにおいては、団体が果たしている非常に重要な機能だというふうに私も思います。

 そこで、規制改革会議のワーキンググループによる廃止の理由を見ると、バター不足云々というのはあるんですが、先ほどの大臣が閣議後会見をされた同じ今月八日に、規制改革会議の岡議長が会見を行って、五十年間続く制度のもとで酪農家と乳牛が減少したことが見直しの理由だということも述べました。したがって、生産者に多様な選択肢を用意するとか、中小メーカーが価格交渉に参加できるようにするなどとしているわけです。

 そこで、内閣府に今度は伺います。

 仮に、選択肢をふやしたり、価格交渉に参加する機会をつくったにしても、でも、それは今ある指定団体制度を廃止するという理由にはならないんじゃないんでしょうか。今ある酪農家の、岡議長が言うような苦労というのは指定団体制度のせいだという認識なんでしょうか。

刀禰政府参考人 お答えいたします。

 近年、年率四から五%で酪農家の数が減少し、生乳の生産量も約二十年間にわたり低下傾向となっているなど、我が国酪農業は非常に厳しい状況にあると認識をしております。

 このような状況を踏まえ、規制改革会議におきましては、酪農家の所得向上を図るとの観点から、消費者ニーズにきめ細かく的確に対応できるよう、より柔軟な生産、流通システムとし、また、意欲ある酪農家が、量的な制約なく、みずからの経営判断で投資を実行できるようにしていくことが重要であるとの認識に至ったところでございます。

 このような認識のもとで、規制改革会議におきましては、今月八日に、委員からも御指摘がございました意見を取りまとめたわけでございますけれども、全ての生産者が生産数量、販売ルートをみずからの経営判断で選択できるよう、補給金交付を含めた制度面の制約、ハンディキャップをなくすとともに、イコールフッティングの確保を前提とした競争条件を整備するため、現行の指定生乳生産者団体制度については廃止をすることなどを提言したところでございます。

 内閣府といたしましては、この意見を踏まえまして、今後の規制改革会議の答申や規制改革実施計画の閣議決定に向けまして、農水省を含めた関係府省との調整を図ってまいりたいと考えているところでございます。

畠山委員 やはり、何度聞いてもそれはわかりませんね。

 選択肢が広がればいいとか、だからといって、廃止する理由が今論理的に何もつながっていないんですよ。

 問題の本質は、酪農家の生産基盤が安定しているかどうかではないかと思います。

 酪農家の減少の要因は、私たちからすれば、乳製品の輸入拡大とか、生産者価格の抑制とか、飼料価格の上昇とか、規模拡大によって負債も多くなっているなどがあるというふうに思っています。

 この点については農水省としての反論もあるかもしれませんが、しかし、問題の本質は団体制度の廃止ではないことを現場の酪農家は肌でわかっているはずです。全く机上の空論だということを言っておきたい。

 酪農家の合意もなく、根本的な問題にメスも入れないで、重要な役割を果たしている指定団体制度を廃止するということは乱暴だ。

 そこで、農水省にも改めて伺います。

 これは、国や指定団体としても、より積極的な役割が求められている状況下にあるという私は認識があるんです。

 ほかの国を見てみますと、例えば、アメリカなんかは地域別のメーカーの最低支払い義務の飲用乳価を毎月公定しているといいます。また、カナダでは同じく国の乳製品管理制度があって、これはTPPのときにも交渉では主張されたというのも報じられて、見ています。

 そこで、農水省としても、中小乳業メーカーや小売との協力促進とか、加工原料乳補給金制度の充実、これは一貫して我が党も主張してきましたけれども、また、多様な経営体も生まれている現実を踏まえて、指定団体制度としての自主的な改革ですとか、そういうことなどは必要性があるのかないのか、ここは農水省としての考えを伺っておきます。

森山国務大臣 お答え申し上げます。

 指定団体におきまして、酪農家の所得向上に向けて、乳価交渉力の強化、中間コストの削減、流通コストの削減等を計画的に進めていくことは大変必要なことだと考えております。

 このために、農林水産省におきましては、昨年七月に生乳取引のあり方等検討会を設置させていただきまして、今後の生乳取引に反映すべき事項を取りまとめたところでございます。これに基づきまして、本日二十一日から乳製品向けの試行的な入札が開始されているところでもあります。

 また、多層にわたっている組織体制の簡素化やさらなる情報開示の推進など、指定団体の合理化や生乳流通の効率化を計画的に進めるように指定団体等に対する指導も行ってきており、また、団体でも御検討いただいているところでございます。

 今後も引き続き、消費者ニーズに的確に応えつつ、酪農家の所得向上につながるように、経費削減や集送乳の効率化によるさらなる合理化などに向けた見直しを行い、我が国酪農が長期的に発展をして、酪農家が安心して経営を継続できるように対応していくことが大事なことではないかというふうに考えております。

畠山委員 今回のワーキンググループが出した提言において、朝からありましたように、現場では大変な混乱あるいは不安などの声が広がっています。根本的なところをやはり改めて捉えなければいけないと思いますし、繰り返しになりますが、酪農家の合意もなく、重要な役割を果たしているこの制度を廃止するということは乱暴であって認められないということをつけ加えておきたい、強調したいと思います。

 次に、TPP特別委員会は開かれているんですが、論点がたくさんあり過ぎる問題でもありますので、改めて本委員会でも若干質問をしておきたいと思います。

 きょうは、政府試算の中でも生産額の減少が大きい牛肉について伺います。

 牛肉の関税撤廃率は、今、この間、ラインのことは、いろいろ数が動いているということでありますので、きょうは数については問いませんが、とりあえず私の数え方でいくと、五十一ライン中三十七ラインで関税撤廃がされていると思っています。これは七二・五%ぐらいになります。

 詳しい内訳で見れば、牛タンとか牛臓器、あるいは牛くず肉、調製品などがほぼ全部撤廃され、残ったのは牛肉、頬肉という、通称本体というふうにとりあえず言いますけれども、そこの部分だけというふうに思います。

 この本体以外、関税撤廃になった理由をまずお答えください。

今城政府参考人 お答えいたします。

 牛肉につきましては、いわゆる本体以外、調製品、内臓等の三十九ライン、これが段階的に関税撤廃ということになっております。

 これにつきましては、基本的に、ミートボール等の調製品、これは二十八ラインございますけれども、輸入量が、牛肉全体が五十二万トンに対しまして、七千トンということでわずかでございます。

 また、タン、ハラミ等の内臓、これは七ラインございますけれども、輸入品と国産品に鮮度の差があります上、タンについては全体の需要量の国産が約三%、それからハラミにつきましては全体の需要量に対しまして国産が約一割ということで、国産のシェアが少ないということでございまして、したがって、国内供給量だけでは需要に対応できていないということでございますので、国産牛肉への影響がそう見込まれないということ。

 そのほかに、また、生きた牛というのが四ラインございますけれども、これにつきましては、国内の肉用種の出生頭数、これは年間約五十万頭ですが、輸入されているのは一万頭ぐらいということでございます。

 そういうことから、関税撤廃による影響はそう大きくないというふうに判断した、そういうことでございます。

畠山委員 この間、委員会でも、この撤廃する選んだ基準というのが大体三つぐらいあるんですよね。輸入実績が少ないこととか、輸入依存度が高くて国産から置きかわりにくいとか、あるいは関税を撤廃した方が農家のメリットになるということも、この間、答弁ではありました。ですから、今、いろいろな数字なども含めて出されたのはその範疇に入っているものだというふうに思うんですね。

 その結果、牛肉は、重要五品目の中で、ほかと比べたら突出して高い関税撤廃率になっていると思うんです。ラインの数え方は、先ほど言ったように、前提はありますけれども、私の数え方によれば、米二五・九%、麦二三・九%、豚肉六七・三%、乳製品一六・五%、甘味資源作物二四・四%に対して、牛肉でいえば七割以上の関税撤廃率になるだろうというふうに思います。

 牛肉だけがこのような差がついた理由は、今言ったように、多くが、輸入実績が少ない等によるものなんでしょうか。

森山国務大臣 今委員の御指摘のとおり、牛肉につきましては、タリフライン数が五十三でございますが、撤廃したライン数が三十九でございますので、委員の御指摘のとおりでございます。

 これは、牛肉を含む重要五品目のうち関税撤廃したものについては、先ほども局長が御答弁を申し上げましたが、調製品等の貿易の実態等を踏まえまして、一つ一つのタリフラインを精査して、全体として影響が出ないものを措置したという結果がこういうことになっていると御理解をいただきたいと思います。

畠山委員 全体として影響の出ないものを積み上げたらこういう数字になったというふうに理解をします。

 牛肉の分野は全体として影響が少ないということではあるんですけれども、そもそも、オレンジも含めた自由化の流れの中で大変苦しまれてきた実態は一方にあるわけでした。

 牛肉関税を改めて振り返って調べてみたんですけれども、さかのぼれば七五%のときもありました。その後、ウルグアイ・ラウンドで五〇%、三八・五%。そして今回、TPPで最大というのか、九%ということになるわけです。それ以外にも、BSEですとか口蹄疫とか、さまざまな震災などで御苦労をされて、先日も伺ってきたんですが、そのときそのときで、今頑張ればよくなるという思いや希望を持ってやってきたけれども、今回のTPPはなかなか希望を見出せないという声を伺いました。そこで、今回、七二%ぐらいが関税撤廃をされ、残りの本体も九%まで下がることになれば、また同じような苦しみが繰り返されるのかと農家が思うのも当然だと思います。

 そこで、伺いたいことがあります。

 こういう話をしたら、畠山さん、ところで、何で九%なんだと聞かれたんですね。切りのいい一〇だとか、末広がりの八だとかいう数字じゃなくて、何で九なんだろうと。いや、秘密交渉というんですから、交渉の中で何か決まったんじゃないんですかねということぐらいは話したんですけれども、でも、現場の農家からすれば、一つ一つやはりこういう素朴な疑問があるんですよね。

 私たちもそうですけれども、生産額が何億円減少するとか、大きな数字で議論をしがちなんですけれども、やはりお一人お一人、農家からすれば、こういう、何でなんだろうという素朴な疑問があるし、政府からすれば、説明責任はこういう農家に向けて行うということが大事だと思います。

 そこで、何で九%なんでしょうか。

森山国務大臣 牛肉につきましては、輸入牛肉の大半を占めるTPP諸国との厳しい交渉の結果でございまして、最終税率を九%とさせていただき、十六年という長期の関税削減期間を確保したところでございます。

 どういう交渉の経過であったかということにつきましては、外交交渉という性格上、御理解をいただきたいと思っております。

 畠山委員、ちょっと私は今非常に心配をしておりますのは、アジアにおける牛肉の需要というのが非常に伸びるという予測になっておりまして、今、アジアにおける牛肉の需要というのは二百十四万トンぐらいだと言われております。十年前に比べますと、これは一五八%伸びておりますから、これも十年前からすると大変な伸びなんですけれども、今後十年間でどれぐらい伸びるかといいますと、アジアにおいて三百三十四万トンぐらいになるんだろうと言われております。今よりもまだ五六%ぐらい伸びるということなものですから、ここは本当に国内生産をしっかりやっておかないとえらいことになるなと思っております。

 先生御承知のとおり、中国がアメリカにあるパッカーを買ったりニュージーランドにあるパッカーを買ったりしておりますので、それぞれの国は長期の見通しに立ったいろいろな対応をしております。我々も、やはり国内対策をしっかりやらせていただいて、再生産を確保していくということが非常に大事なことだなというふうに考えております。

畠山委員 国内対策は、TPPの有無はともかくとして、しなければいけないということはもちろんだと思います。ただ、私が聞きました、なぜ九%かということについては、やはり結論は、交渉過程におけることなので答えられないので御理解いただきたいという旨だったと思うんですね。

 それで、いろいろ考えたんですよ。いろいろな本を読んだりしましたけれども、よくわからないんですが、そのヒントは政府の影響試算にあったのかなとちょっと先日思ったんです。

 確認します。試算は関税率一〇%以上の品目や十億円を線引きとしてしているわけですよね。関税率一〇%と、一〇で線を引いた理由はなぜなんですか。

佐藤(速)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の農林水産物の試算につきましては、農林水産物全体への影響度合いを考慮しながら、前回、三年前でございますが、平成二十五年三月の試算とも比較できるようにするために、前回と同様に、関税率一〇%以上かつ国内生産額十億円以上ということで、三十三品目を試算対象といたしました。

 関税率が一〇%よりも低い農産物につきましては、為替の影響も大きい、また、この影響試算に先立ちまして昨年十一月に行いました定性的な影響分析におきましても、関税撤廃の影響は限定的あるいは見込みがたいというふうに分析をしておりますことから、関税率一〇%ということで対象品目を画するというふうにいたしたところでございます。

畠山委員 つまり、一〇%で線を引いて、それより低いというのは大体為替の影響の範囲だ、したがって影響も限定的で見込みがたいというのが今の答弁でした。

 確かに、一桁台の関税率が撤廃されたときには、為替の影響で余り今と変わらないみたいな答弁は、この間、さまざまな品目においてされてきました。つまり、一桁台、九%というのはあってなきがごとしと言ったらちょっと言い過ぎでしょうか、ほぼ関税撤廃に匹敵するものという理解になるのかと思ったんですよね。

 つまり、関税撤廃というTPPの大原則と、日本政府としては交渉によってかち取ったよという名目とを、ちょうど九%で折り合ったというふうに考えたんです。邪推だというなら邪推でも結構なんですが、一体、この九%という数字の真実は、そういうことなんですか。

森山国務大臣 そういうことではないと思います。

 農林水産省の影響試算の対象を関税が一〇%以上のものとしているのは、あくまでも現状の関税率のことであって、関税削減の期間等の要素を考慮する必要があると考えております。

 牛肉の関税につきましては、実際に関税が九%になるのは十六年目であり、長期にわたって体質強化を図ることが可能であるというふうに考えております。加えて、生産者の不安に寄り添い、確実に再生産が可能となるように、牛マルキン制度の充実と法制化を図ることとしておりますし、またさらに、TPP交渉の結果、アメリカ等への輸出の機会が拡大をするということもあるわけでございますから、将来にわたって生産者が未来に希望を持って生産を継続するということが可能になるというふうに考えているところでございます。

畠山委員 本来でしたら、これはTPP特別委員会で石原大臣も交えて質問したいところなんですけれども、先ほど言ったように、論点がたくさんあり過ぎて、またの機会には、ちょっとこの問題も含めて、交渉経過はこの間さまざまな議論もされてきましたので、追及したいというふうには思っています。

 ただ、途中で述べましたように、多くの農家の心配に対して、中身はいろいろ不安はありますけれども、素朴に、一体この数字は何で生まれてきた数字なのか。政府は、その後、経営安定対策や体質強化策をやるから大丈夫と言われても、それは農家としても不安は払拭されないですよね。特別委員会で私も紹介しましたが、この間、不安が払拭されていないと、アンケートの調査は、含めれば九割以上という現実があることを、改めて政府として受けとめるべきであることを強調しておきたいと思います。

 最後に、セーフガードについても一言伺います。

 関税は下がるけれどもセーフガードはかち取ったということがこの間の話です。セーフガードは、簡単に言えば、基準を超えて急激に輸入量がふえたときに関税を戻す仕組みであります。

 まず、これは事務方で結構ですが、今回の牛肉セーフガードの発動基準についてお答えください。

今城政府参考人 お答えいたします。

 現行の牛肉関税緊急措置、これは、発動水準が、前年比、数量で一七%増と現行の制度はなっておりますが、一方、今回TPPにより合意された牛肉セーフガードの発動基準数量、これはあらかじめ数量が合意で決まっておりまして、発効一年目は、近年の輸入量の約一割増に相当する五十九万トンという数量を超えたときに発動する。

 二年目から十年目までは毎年二%、これは年で、数量でいいますと一万一千八百トンずつこの枠が増加いたしまして、十年目には六十九万六千トン。

 それから、十一年目から十五年目までは毎年一%ずつ、これは毎年に直しますと五千九百トンですけれども、増加しまして、十五年目に七十二万六千トン。

 十六年目、七十三万八千トンになりますけれども、それ以降は毎年二%、一万一千八百トンずつ増加していく、かような仕組みになっております。

畠山委員 ひとまず、十六年目までで七十三・八万トンということは確認しておきます。

 それで、現在の牛肉の輸入数量及び国内生産というんですか、自給率ということになるでしょうが、その数字もあわせて答弁してください。

今城政府参考人 お答えいたします。

 まず輸入量でございます。これは部分肉ベースでございますが、過去、BSEの前の二〇〇〇年度の七十三万八千トンというのが過去最大でございますけれども、その後、BSEの影響により減りましたという事実がございます。近年では、二〇一三年度は五十三万六千トン、二〇一四年度は、米国、豪州等の主な輸入先国の干ばつ等の影響により一時的に減少したため、五十一万七千トンという数字でございます。

 生産量、これも部分肉ベースでございます。国内生産量でございますけれども、二〇一四年度は三十五万二千トンとなっておりまして、大体、近年はおおむね三十五万トン前後で横ばいで推移しております。

 自給率は、二〇一四年度は四二%、これは重量ベース。カロリーベース、これは餌をカウントしますので一二%というふうになっておりまして、近年、それぞれおおむね四〇%強、それから一〇%強で推移しているという状況でございます。

畠山委員 重量ベースで四一、二%ぐらいということで、輸入量と合わせると、つまり、国内で消費される需要でいえば八十七万トンぐらいということになろうかと思います。

 それで、今後なんですけれども、これは、日本が人口減少になると総理みずから述べているわけですから、仮に牛肉の需要、消費が変わらないとして、十六年目発動基準の七十三・八万トンまで仮に輸入が進んだとすれば、国内消費を今の消費の段階が変わらないとすれば、八五%を輸入で占める規模だということに計算上はなります。つまり、裏を返せば、自給率はそのときはもう一五%ということに計算上はなります。

 ということは、もうこの時点では既に畜産農家が経営ができない状況が広がっているという中でセーフガードが発動されるということになるのではないでしょうか。こんな条件のもとでセーフガードを発動することに一体何の意味があるのかと素朴に思います。

 そういうことにならないんでしょうか。発動したときにはもう遅いということになりはしませんか、大臣。

森山国務大臣 お答え申し上げます。

 関税撤廃が原則というTPP交渉の中で、特に農業分野につきましては、国会決議を後ろ盾に粘り強く交渉をさせていただいて、その結果、牛肉については、十六年目に九%という関税撤廃の例外をしっかりと確保したところであります。

 また、先ほど申し上げましたとおり、アジアにおける牛肉の需要が急激に伸びてきております。他の牛肉輸入国との買い付け競争が激しくなる可能性を踏まえますと、当面、牛肉の輸入急増というのは見込みがたいというふうに考えております。

 このような中で、万が一の輸入急増に備えるために、今回のTPP交渉におきましては、これまで米国が主要国とのEPAで関税撤廃をする場合にしか認めてこなかった品目別のセーフガード措置を牛肉については獲得できたということでございます。

 これにつきまして申し上げますと、先ほども御答弁したかと思いますが、初年度の発動水準が五十九万トンと、近年の輸入量の約一割増となっております。また、前年比一七%の牛肉輸入増で発動する現行制度に比べて発動しやすくなっていると考えております。

 また、関税削減の最終年度である十六年目まで、発動水準が過去最大輸入量の七十三・八万トン以下に抑えられておりますから、輸入急増を抑制する効果というのはあるのではないかと考えているところでございます。

畠山委員 時間ですので終わりますが、今、畜産クラスターも含めてさまざまな支援策をやっていますけれども、投資が過大になれば、十年、二十年単位で返済するということの見通しから、農家は考えるんですよね。そのときに、実際、今、十六年目の話ですけれども、セーフガードを発動されるときには、そうはいっても自給率一五%の状況だとなれば、不安が強まるのは私は当然だと思います。

 申しわけありませんが、今の答弁でも不安は払拭されていないということを強調して、私の質問を終わります。

小里委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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