第6号 平成28年5月10日(火曜日)
平成二十八年五月十日(火曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 小里 泰弘君
理事 江藤 拓君 理事 小泉進次郎君
理事 武部 新君 理事 宮腰 光寛君
理事 簗 和生君 理事 岸本 周平君
理事 小山 展弘君 理事 上田 勇君
あべ 俊子君 青山 周平君
井野 俊郎君 伊藤信太郎君
今枝宗一郎君 加藤 寛治君
勝沼 栄明君 金子万寿夫君
瀬戸 隆一君 中川 郁子君
中谷 真一君 西川 公也君
橋本 英教君 古川 康君
細田 健一君 前川 恵君
宮路 拓馬君 山本 拓君
吉川 貴盛君 渡辺 孝一君
井出 庸生君 金子 恵美君
佐々木隆博君 田島 一成君
福島 伸享君 村岡 敏英君
横山 博幸君 稲津 久君
佐藤 英道君 斉藤 和子君
畠山 和也君 仲里 利信君
…………………………………
農林水産大臣 森山 裕君
外務副大臣 木原 誠二君
農林水産副大臣 伊東 良孝君
農林水産大臣政務官 加藤 寛治君
農林水産大臣政務官 佐藤 英道君
政府参考人
(消費者庁審議官) 吉井 巧君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 内藤 尚志君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君
政府参考人
(厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長) 福田 祐典君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 佐藤 速水君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 大澤 誠君
政府参考人
(農林水産省消費・安全局長) 小風 茂君
政府参考人
(農林水産省食料産業局長) 櫻庭 英悦君
政府参考人
(農林水産省生産局長) 今城 健晴君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 奥原 正明君
政府参考人
(農林水産省農村振興局長) 末松 広行君
政府参考人
(農林水産省政策統括官) 柄澤 彰君
政府参考人
(農林水産技術会議事務局長) 西郷 正道君
政府参考人
(林野庁長官) 今井 敏君
政府参考人
(水産庁長官) 佐藤 一雄君
農林水産委員会専門員 石上 智君
―――――――――――――
委員の異動
五月十日
辞任 補欠選任
井野 俊郎君 青山 周平君
池田 道孝君 金子万寿夫君
同日
辞任 補欠選任
青山 周平君 井野 俊郎君
金子万寿夫君 池田 道孝君
―――――――――――――
五月九日
漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第三六号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第三六号)(参議院送付)
農林水産関係の基本施策に関する件
――――◇―――――
○小里委員長 これより会議を開きます。
農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤速水君、大臣官房総括審議官大澤誠君、消費・安全局長小風茂君、食料産業局長櫻庭英悦君、生産局長今城健晴君、経営局長奥原正明君、農村振興局長末松広行君、政策統括官柄澤彰君、農林水産技術会議事務局長西郷正道君、林野庁長官今井敏君、水産庁長官佐藤一雄君、消費者庁審議官吉井巧君、総務省大臣官房審議官内藤尚志君、外務省大臣官房審議官大菅岳史君、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長福田祐典君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小里委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○小里委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺孝一君。
○渡辺(孝)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の渡辺孝一でございます。
きょうは、質問の機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。
冒頭、まず先に言わなければいけないのは、やはり、九州・熊本、大分を襲った震災、これに関しましては、まだ地震活動が続いている中で、とうとい命、あるいは今なお避難所生活を強いられている方々のことを思いますと、皆さんも心が痛むのではないかと思います。
日本全国からボランティア活動という形で温かい手が差し伸べられているということは、これは日本人の誇りではないかというような思いもします。やはり、国としては、少しでも、今被災に遭った方々に安心できるような材料を一つでも迅速に講ずることが、今やらなければいけないことではないかというふうに私は思います。
特に、今はまだ本格的な震災の結果が出ておりませんのであれでしょうけれども、農業に至ってもかなりの被害があるのではないかと思います。森山大臣には、まずは人命、あるいは避難の方々のそういうことを第一前提でやるべきだと思いますけれども、今後起こり得る農業被害等々につきましても、ぜひ、政府一丸となって、農水省の役人の皆さんも一丸となって対応していただくことを心からお願い申し上げたいというふうに思います。
さて、十五分間しかございませんので、早速質問に入らせていただきます。
昨年の十月三十日に、稲田政調会長が私の選挙区に入っていただき、どこでも政調会という会を実は開いていただきまして、長沼町という町で行われたんですが、大変多くの参加者、そして多くの農業関係者が参加して、大変盛況に終わらせていただきまして、本当に稲田政調会長には感謝を申し上げたいというふうに思っております。
ただ、そこでいろいろと、TPPの話が中心でございましたので、その際、農水省から御提示された対策について、言うなれば、今現在の段階ではTPPの影響はさほど大きくないだろう、ただ、中期的、長期的に考えたときにはしっかりと対策を打たなければいけない、さらに体質強化を図らなければいけないという、大体、総括でいえばそのような、いわゆる品目ごとにそういう対策という形でお話をいただきました。
その後、関係者の方々あるいは参加してくれた方々といろいろな話をするに至っては、確かに言っている意味はわかります、ただ、この体質強化という言葉に少し、参加された方あるいは関係者の方々からは、ちょっとこう首をかしげるというか、なかなか意味がわからないと。
言葉そのものはわかるんですけれども、農水省として、この体質強化というのをどのように捉まえているのか、ぜひちょっと教えていただきたいなと思うんです。
○森山国務大臣 渡辺委員にお答えを申し上げます。
我が国の農業は、渡辺委員御承知のとおり、農業従事者の高齢化や耕作放棄地の増大等課題が山積をしておりますし、農業の活性化というのは待ったなしの課題であるというふうに認識をしております。
そのため、これまでの我が国の農業、農村が有する潜在力を最大限に引き出して、経営マインドを持って農業の生産性向上や付加価値化を行うことによって所得の向上を図っていくため、農林水産業・地域の活力創造プラン等に基づき、攻めの農業を目指して農政改革を進めてきたところであります。
具体的には、農地中間管理機構を創設して、担い手への農地集積、集約化を加速し、土地利用型農業を中心として農業経営の規模拡大を図っていくほか、耕地面積の小さな経営であっても農業所得の向上が図れるように、農産物の付加価値化や農業の六次産業化を推進してきたところであります。
私も、大臣就任以来、いろいろな現場を見させていただいておりますが、条件不利地域と言われる地域でも、非常に頑張っていただいている地域がありますし、高所得な農業を続けておられるところもございます。また、新潟県では、用途別に多品種の米を生産して、シンガポールや香港に輸出をしておられる集落営農の方々もおられます。
これらすぐれた事例というのは、生産性の向上等を通じて競争力強化を図って、次世代を担う生産者があすの農林水産業に夢と希望を持って経営の発展に積極果敢に取り組んでいることから、今後の目指すべき日本の農業の姿を先取りしていただいているのではないかなというふうに考えております。
こうした取り組みを積極的に後押しすることで、農業の体質強化を図らせていただき、また、こういう先行事例を横展開させていただくということも大事なことだというふうに考えております。農業の体質強化を図って、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村をつくり上げてまいりたいと考えております。
以上であります。
○渡辺(孝)委員 ありがとうございます。
二番目の質問は、私のこの三年半の経験の中で、大変数多くの農政改革、例えば農協法等の一部の改革、これに関しましては、農業委員会あるいはJAの組織そのものに対しての改革等々もうたわれました。さらには、中間管理機構によって、農地の集積等々の制度も新たにできました。そして、米政策等々につきましても、政府が一生懸命手を打っていただいていることも重々理解しております。
その中で、やはり農家の方々の受けとめ方というのは、これだけの改革をしたことが最終的に自分たちの営農に今どういう影響が出るかということに関しては、政府を信頼している、また、国の方を信頼しているという気持ちもありつつも、自分たちがその制度の一つ一つによって何か振り回されているのではないかという感じを持っているのが、非常に農家の方々が今不満やあるいは疑問に思っているところではないのかなと思います。
今大臣の答弁を聞いたときに、ぜひ、今国が行おうとしているこの農業政策の中で、しっかりと、おっしゃったように所得向上につながっていくんだ、そして未来を見据えた農業にしていくんだということを、もっともっと農水省や国の方からアナウンスというかPRをしていただきたい。そのことで農家の方々がやる気を起こしていただく材料になればいいんではないかというふうに思いますので、二番目の質問は飛ばさせていただきたいというふうに思います。
さて、稲田政調会長が来てくれた地域というのは、長沼地域と申しまして、そこは非常に低地でございますがゆえに、どうしても水田に頼らざるを得ないという地域でございました。
しかし、国のいわゆる基盤整備事業のおかげで排水がかなり効果的になりまして、昔は九千ヘクタールの農地のうち大体七千ヘクタールが実は水田でございました。しかし、歴代町長あるいは町民の、あるいは農家の方々の努力によりまして、今やその七千ヘクタールの水田が逆に畑作に変わりまして、実に二千ヘクタールしかいわゆる水田がないという、私の地区でも、水田を基調とする地域が非常に多い中で、非常に珍しい地域にもなっております。これもそれも皆さんの努力だというふうに思います。
ここで、そこから一時間ぐらい上がりますと、逆にほぼお米に依存している地域というのが多数ございます。そんな中で、米の、いわゆる三十年度産米より民間に委託した中で販売が行われるということに関しては、これは非常に農家の方々が疑問に思うことと不安に思っていることが多数ございました。
私は思うんですけれども、そうはいいながらも、まだまだこれについては国会の方でも余り大きな話になっていないのかなと。ただ、三十年度ということを考えますと、もうことしは二十八年度になっております。そろそろ大きな議論をしながら、国として、ただ単に民間に委ねるという簡単な話ではなく、ぜひ政府としてしっかりとこのことについて今から議論をし、さらに農業者の方々にしっかりとお伝えしなければ、間近になってから大騒ぎになるような形だけは起こしちゃいけないのかなというふうに思っております。
今、この三十年度産米からの措置に関しまして、どこまで農水省では話が進んでいらっしゃるんでしょうか。
○柄澤政府参考人 お答え申し上げます。
米政策の見直しにつきましては、三十年産を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、生産者みずからがマーケットの動向を見ながら需要に応じた生産が行えるようにするということでございます。
このために、国といたしましては、まず、全国の需要見通しに加えまして、各産地における販売や在庫の状況などに関するきめ細かな情報提供をやる。それから、麦、大豆、飼料用米等の戦略作物の生産に対する支援を行うというような環境整備を進めております。三十年産以降の米政策につきまして、あらゆる機会を通じまして、現場の関係者に丁寧に説明してきているところであります。
こういった中で、現状を見ますと、昨年の二十七年産につきましては、いわば三十年産以降の予行演習ということで、各産地における農業者の自主的な御判断によりまして、主食用米から飼料用米等への転換が非常に大きく進みました。生産数量目標の配分、現行の仕組みが始まって以来初めて全国的な過剰作付が解消するということで、需要に応じた生産が定着しつつあるというふうに認識しております。
今度の二十八年産につきましても、引き続き需要に応じた生産が進められるよう、現在、いわゆるキャラバンというようなことで各産地にお伺いしております。こういった中でも、三十年産以降の需給調整のあり方も含めまして、例えば単位農協の役員の方なども交えまして、現場の関係者と丁寧に意見交換を進めております。
国といたしましては、引き続き、現場の関係者の意見もお伺いしながら、きめ細かな情報提供や戦略作物に対する支援などを行うことによりまして、三十年産以降も農業者の方が安心して需要に応じた生産に取り組めるよう、引き続き努めてまいりたいと存じます。
○渡辺(孝)委員 もう時間がありませんので、今の答弁で、米政策等々についても重々理解をするところでもございます。ぜひ、しっかりと説明のもと、三十年度、混乱を招かないような対応をよろしくお願い申し上げたいと思います。
最後の質問になります。ちょっとくくって言わせていただきますけれども、私も、市長時代、農業関係者の方々とはよく懇談をさせていただきましたけれども、どうも、いまいち、国に依存する体質というのがなかなかまだ抜け切れないというような感想を持っております。
今後、いわゆるこういう形で民に対してシフトしていくということは私も決して反対ではございませんけれども、この中間に位置する地方自治体、都道府県あるいは市町村が、今後どういうような連携を図って農業振興策を、責任を分担し合いながらやっていかなければいけないかという時代に、私はもう既に十年、二十年前からなっているとは思うんですけれども、今ここで農水省が地方自治体に求める、ぜひお考えをお聞かせいただければと思います。
○小里委員長 伊東副大臣、簡潔にお願いします。
○伊東副大臣 お答え申し上げます。
農業の体質強化に向けました農政改革は、国のみでもちろんなし得るものではありません。地方公共団体あるいはまた生産者の理解を得て、地域や生産者がみずから創意工夫を凝らして、攻めの農業をつくり上げていくことが重要であります。
このため、農水省といたしましては、地域の自主性を重視し、これまでも地域の将来像を描く人・農地プランの策定を促進し、支援を重点化するとともに、今般のTPP対策におきましても、産地パワーアップ事業や畜産クラスター事業など、地域一丸となって収益力強化に積極的に取り組む地域を支援していくことといたしております。
地方公共団体が生産者に寄り添い、現場により近い立場から地域の創意工夫を牽引、また後押ししていくことが重要であると考えております。これらのすぐれた地域の取り組みを横展開していくことによりまして、生産者みずからが自分にもできるという意欲を持つことができるようになると考えているところであります。
今後とも、地方公共団体と密接に連携を図りながら、地域の前向きな取り組みを支援し、生産性向上あるいは高付加価値化といった体質強化への意欲の向上を図ることを通じて、農業所得の向上に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○渡辺(孝)委員 もう時間ですのでやめますけれども、最終的には、農家の方々、あるいは関係の団体、さらには市町村、ここにやる気を起こさせることが私は最も大事かと思います。そのやる気が私は夢につながり、そして地域の活性化、あるいは人口増にも私は必ずやつながっていくと思いますので、これからも温かい気持ちと予算措置等々に目配り、気配りをよろしくお願い申し上げまして、質問にかえさせていただきます。
本当に皆さんありがとうございました。
○小里委員長 次に、稲津久君。
○稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。
通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
初めに、熊本、大分の地震災害につきまして質問させていただきたいと思いますが、間もなく発災から一カ月を迎えようとしている状況で、私どもも、日を追うごとに、現地の被害が甚大であるということが明らかになっていくことを実感するわけなんですね。家屋や公共施設の破壊、道路、橋梁の崩壊等、当初の想像をはるかに超えるような状況であるということ。改めて、一日も早いこの被害からの復旧を望みますとともに、亡くなられた方々に哀悼の意をささげますと同時に、今なお余震が続く中で避難生活を余儀なくされている方々に心からのお見舞いを申し上げる次第でございます。
そこで、こうした中で、五月六日に大臣は熊本市を初め現地の農林水産業の被害調査に行かれたことを知りました。被害の全容の把握と、それから農林水産業者の経営再開支援策を講じていきたいということ、そのことを検討するのが目的だったというふうに承知をしておりますが、テレビ報道でもございました。大臣がアサリの漁場のところに行かれたり、あるいは園芸施設等を視察されたり。
そうした中で、現地を視察されて、調査されて、被害の状況、また今後の復旧支援策に対する大臣の率直な所感を伺いたいと思います。
○森山国務大臣 稲津委員にお答えを申し上げます。
五月二日と六日、二回にわたりまして現地に伺いました。
熊本地震による農林水産業の被害額というのは、昨日現在で約千百億円になろうとしておりますし、まだ余震が続いておりますので、さらに被害額はふえるのではないかなというふうに考えております。
まず、いろいろなことを心配しながら現地に伺ったのでありますが、一つは、熊本は非常に麦の生産に積極的に取り組んでいただいているところでございます。ちょうど刈り入れどきが目前に迫っておりますので、カントリーエレベーター等設備がどうなっているかなというのが大変気になりましたが、何とか応急的な復旧によって稼働させられるということがわかってまいりましたので、麦の刈り取りについては何とかうまくいくのではないかなというふうに考えております。
また、ちょうど田植えの時期を迎えておりますけれども、農業者にとって田植えというのは特別な農作業でありますし、また、地域にとっても田植えというのは大きな意味を持つものでありますから、これができるかどうかというのは非常に農家の皆さんにとっても関心事だろうと思って伺いました。
まず、田植えのできる面積がどれぐらいあるのか、どうしても田植えができないところに何を植えてもらうのかということが大変大事なことでございますので、五日の日に、水田農業の再開に向けて、熊本県とJAと私ども農政局が三者で連絡会議を立ち上げさせていただきまして、いろいろな議論をさせていただき、大豆をしっかりやろうという方向が明確になってまいりましたので、大豆の種子等についても遺漏なきように対応をさせていただいているところであります。
また、菊池台地というのは二千ヘクタールぐらいの面積がありますけれども、ここが断水をしていたわけでございますが、土地改良区、熊本県、農政局が一丸となって迅速な応急工事に取り組みましたので、五月中旬には全面的に通水ができる見込みとなってきております。
また、ため池等、非常に農業土木の技術的な面から検討しなければいけない課題も多いものですから、全国の農政局あるいは土地改良団体から二十名ぐらいの農業土木技術者を追加派遣させていただいて、今後の復旧に向けて、スピーディーにやろうというふうに考えております。
総理からも、前例にとらわれずスピーディーにやれることは何でもやるようにという御指示を受けておりますので、昨日、農林水産省といたしましては、既存の事業の運用を工夫することなどによって、補正予算を待たずに実行できる対策を取りまとめまして、公表をさせていただき、農家の皆さんにお知らせをさせていただくということといたしました。
引き続き、補正予算で措置される復旧予備費などを活用して、被災をされた農林漁業者の皆さんの速やかな経営再開を図るように、また、熊本県としては創造的な復興を目指しておられますので、これは非常に大事なことだと思いますので、必要な対策について検討を進めているところでございます。
以上でございます。
○稲津委員 ありがとうございました。
そこで、一つお伺いしたいのは、けさの閣議におきまして、平成二十八年熊本地震による災害についての非常災害の指定に関する政令ということで、いわゆる非常災害に指定されるということを閣議決定されたということを伺いました。
大臣も、けさ記者発表もあったかと思うんですが、もう少し踏み込んで触れていただきたいと思うんです。いわゆる大規模災害復興法による非常災害に指定されると、御案内のとおり、例えば道路とか漁港とか、その復旧については自治体や県にかわって国が代行して行うということになる。そうなりますと、特に農林水産業分野ではどういうことが考えられるのか、あるいはまた行っていかなければならないのか、このことについて大臣にお伺いしたいと思います。
○森山国務大臣 お答え申し上げます。
熊本県知事からの要請を受けまして、本日の閣議におきまして、平成二十八年熊本地震による災害を大規模災害からの復興に関する法津に基づきまして非常災害として指定する政令が決定をされたところでございます。
農林水産関係事業につきましては、この政令指定によりまして、漁業施設、海岸保全施設の災害復旧事業及び地すべり防止工事について直轄代行が可能となってまいりましたので、現在、熊本県からは海岸保全施設の災害復旧事業の直轄代行について要請を受けておりますので、直轄代行をさせていただく方向で検討を進めているところでございます。
あと、地すべり等につきましては、まだ災害現場が少しわからないところもございますので、今後また追加の要望があれば、それに対しても真摯に応えてまいりたいと考えております。
○稲津委員 ぜひ、この指定になっていく中で、今のところはお話があったように要望のある海岸等についての対策ということでございますけれども、できる限り幅広く対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
次に、復旧に向けた農水省の対応、あるいは農林漁業経営再開に向けた支援についてということを伺っておきたいと思います。
先ほど大臣も触れていただきました熊本、大分の県からの報告によりますと、被害状況は農林水産業で一千億円を超えるということ。一つ一つ申し上げるまでもないですけれども、荷さばき所、あるいは林地被害、農地の地割れ、沈下、水利施設の崩壊等々、そのほかにも地域の牛、豚、鶏、それから特産のスイカ、ナス、トマトということで、漁業でもアサリもそうですけれども、直接被害もこれからふえていくのだろうというふうに思っております。
そこで伺いますけれども、まず農水省として、職員などの現地派遣などの震災対応は承知をしておりますが、今後どうするのかということなんです。
先ほど大臣からも一言触れていただきましたが、政府は補正予算の編成方針というのを明らかにしてきている。激甚災害に指定した。今後は、農地等のいわゆる崩壊復旧等はやはり相当の期間を要するだろう、またもう一方では、園芸それから加工など、人手あるいは施設の改築等が待たれるものはある程度の期間で復旧できていくんだろう、こう思うわけですね。
先ほども話にありましたように、迅速かつ柔軟な対応が求められるわけでございますけれども、中でも、これは一部報道でもありましたが、例えばイチゴなどの生産農家が園芸の施設の整備に借金をして経営してきた、そしてまだ借金を払い終わっていない、そこにさらに今回こういうダメージを受けて、再度再開するためにはやはり相当の資金も必要になってくる、いわゆる二重ローンになってしまうということもあるということで、こうしたことも踏まえた上で、この経営再開に向けた支援についてお伺いします。
○奥原政府参考人 今回の地震で被災されました農業者の方々が一日も早く円滑に経営が再開できるように支援していくことが重要であるというふうに考えております。
このための対策、幾つか既にやっておりますけれども、一つは、農業共済に加入をされている農業者に対しましては、迅速かつ適切な損害評価の上に立って共済金の早期の支払い、これを実施するように農業共済団体に既に要請をしているところでございます。
それから融資の関係でございますけれども、融資は、既往の融資の問題と、それから今後の新規の融資の問題と両面ございます。
まず、既往の融資の分につきまして、これは既に償還猶予などの措置を適切に講じるように金融機関に要請を出しているところでございます。
それから、新たな資金の方でございますけれども、一つは運転資金、資金繰りの運転資金というのが必要になりますけれども、これにつきましては、日本政策金融公庫のセーフティーネット資金、こういうものがございますけれども、従来、貸付限度額が年間の経営費の三カ月分または六百万円となっておりますが、昨日発表させていただきましたけれども、これを引き上げまして、年間の経営費一年分または一千二百万円までということで引き上げを行っております。さらに、貸し付け当初五年間を無利子にいたしましたり、実質無担保、無保証人での貸し付けができるように措置をしているところでございます。
さらに、施設資金の関係では、これも日本政策金融公庫のスーパーL資金等の災害関連資金の融資が可能でございますが、これも貸し付け当初五年間を無利子にしたり、実質無担保、無保証人での貸し付けができるように措置をしております。
それから農林漁業施設資金、これにつきましても、貸付限度額を負担額の八〇%または三百万円から、負担額の一〇〇%または千二百万円まで引き上げを行っているところでございます。
さらに、これに加えまして、これも昨日発表させていただきましたけれども、被災農業者向けの経営体育成支援事業を発動いたしまして、畜舎ですとか農業用のハウス、あるいは農業用機械等の再建、修繕に要する経費を助成するということにしたところでございます。
こういった措置によりまして、被災農業者の経営の継続と再建が図れるようにしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○稲津委員 まさに今、地震災害の復旧のさなかにあるわけでございますけれども、とにかく生活の糧である農地あるいは施設を失って大変な被害を受けているわけでございまして、全力の支援策を求めておきたいと思います。
最後になりますが、農業、水産加工業における外国人技能実習制度の現場からの要望について伺いたいと思います。
この外国人の技能実習制度、今、一年間の技能実習一号と二年間の技能実習二号を受けることが可能であって、したがって、受け入れ側から見ると、実習の実施期間は最長三年間、雇用関係を結ぶことができるとなっています。
現在、農業分野で約二万四千人、水産加工分野で一万五千人となっていますが、現場では、座学講習のあり方や四年目以降の技能実習の実施などの声も大きく、あるいは関係法律も、法務、厚生の両省の共同提出案で現在継続審議になっていますが、この外国人技能実習制度に関して、農水省に寄せられている要望と対応状況についてお伺いします。
○小里委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○奥原政府参考人 外国人の技能実習制度、これは開発途上国・地域へ技術を移転するという国際協力の一環でございます。
この制度につきまして、農業それから水産業の現場からはいろいろな要請をいただいておりますが、今先生から御指摘ございましたように、一つは技能実習期間、現在最長三年でございますけれども、これを延長するということ、それから、実習実施機関一つ当たりの受け入れ人数の枠というのがございますが、これを拡大するということ、それから、六次産業化に対応いたしまして複数の職種の実習をできるようにする、こういったような要望があるというふうに承知をしております。
こういったことを踏まえまして、二十六年六月に、法務大臣の出入国管理政策懇談会の分科会で検討結果が取りまとめられまして、日本再興戦略の改訂二〇一四にも載っております。これを受けて、既に国会の方に関連の法案が提出をされておりまして、現在、今国会で審議をされているというふうに承知をしております。
農林水産省といたしましては、引き続き、法務省それから厚生労働省と連携をいたしまして、本制度の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
○稲津委員 終わります。
○小里委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 民進党の福島伸享でございます。
まず、熊本と大分で大きな農林水産業の被害を受けておりまして、被災された方、被害を受けた方にお見舞いを申し上げたいと思います。
本来であればそのことに関して質問すべきでありますが、来週から予算委員会で補正予算の審議が始まるというので、そちらの方に譲るといたしまして、きょうは、TPPと再生可能エネルギーの農山漁村への導入の二点について質問させていただきます。
五月のゴールデンウイーク、私は毎年ずっと街宣車で田んぼの中を回るようにしておりまして、そうすると、ふだんお世話になっているいろいろな人たちが家族で弁当を持ち寄って田植えをしているというのが、私、十三年政治活動をやっておりますけれども、これまでの通例なんですけれども、この一、二年、ゴールデンウイークに行っても、田植えをやっていなかったり、家族で田んぼに出ている人が少ないんですね。
何か田植えの時期が遅くなったのかなとかいろいろ考えたんですけれども、ある人から言われてはたと気がついたのは、この一、二年で家族で田植えをする人が少なくなった。家族経営でやっている人はみんな大きなところに田んぼを貸しちゃったり売っちゃったりしていて、もう家族で、都会に出ている子供たちを呼び寄せて田植えするのなんてなくなっちゃったよという話をして、はたと気がつきました。ああ、農村の構造は大分変わったなと。みんな、ここら辺の人はもうTPPを受けて田んぼを売ったり貸したりしたがっていて、もうこのままだったら、うちの集落で一人か二人しか田植えなんてやる人はいなくなっちゃうよなんていう、そういう話を聞きました。TPPは、加盟しなくても、もう既にいろいろな影響があるんだと思いますね。
いろいろな話をTPPの特別委員会でしたくて、先ほどまで西川委員長がいらっしゃいましたけれども、いらっしゃらなくなっちゃったので。多少時間ができて、いろいろな国民的議論ができる状況になっていると思います。
農村を歩いていて一番不安なのは、政府の試算は全く信用されていないんですよ。あんな試算ならない方がいいぐらいで、あの試算自身が不安をかき立てているところがあると思うんですね。これまで農家の皆さんは何回も自由化の荒波をくぐってきていますから、それごとに苦労した経験があるんですよ。その中で、生産量が一%たりとも減らないというのは、私は信じられていないと思うんですね。
代表的なものが米ですよ。政府は、国別枠の輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れるから、国産主食用米のこれまでの生産量や農家所得に影響は見込みがたいとしています。
確かに、市場に流通する米の量は変わらないかもしれないけれども、SBSを通じて確実に日本より安い輸入米はふえるわけですよ。日々、農協だけじゃなくて実需者と相対の取引をしていて、値下げのプレッシャーを受けている人から見たら、値段が下がらないなんてあり得ないじゃないと思うわけですよ。だから、先日、毎日新聞の五月七日の記事のように、八府県で米に影響と書いてあるんですね。
私は、ちゃんとしたものを出した方がいいと思うんですね。
東大の鈴木宣弘先生は、私のゼミの先輩なんですけれども、実証的な研究を出して、米の在庫が一万トンふえると、六十キログラム当たり四十一円米価が下落する、一%米価が下落すれば生産量は一・一六二減少する、その結果、米の生産額が千百九十七億円減少するというデータを出しているんです。
私、今回の試算はいろいろあると思うんですよ。仮定によっていろいろな試算はあるけれども、少なくとも、鈴木先生は私のゼミの先輩だし、私も農業経済学を学んだ立場とすれば、今、いろいろな先生方が試算を行っていますよ。秋まで審議がないのだとすれば、TPPに関する影響試算、もう一回やり直したらどうでしょうかね。いろいろな学者の先生を入れていろいろな議論をした方がいいと思うんですよ。どうでしょうか、大臣。
○森山国務大臣 福島委員にお答えいたします。
たびたび答弁をしてきているところでございますが、今回の試算では、あくまでもTPPによる関税削減等の措置が国内生産に与える影響を分析したものであり、例えば長期的な米の需要の減少など、TPP以外の要因は考慮しておりません。
また、今回の試算は、交渉で獲得した措置とあわせて、昨年十一月に行った、国内価格や国際価格、輸入量などの客観的なデータをもとにした品目ごとの影響分析及び政策大綱に基づく国内対策の実施を前提として、輸入品と競合する国産品がどの程度置きかわるかという点などを精査して、影響を試算したものであります。
したがいまして、今回の試算は、TPPが国内生産に与える影響を試算するといった目的からすれば、客観的なデータを用いた合理的な試算であると考えておりまして、試算をやり直すという考えは持ち合わせておりません。
○福島委員 いや、でも、それが今、物すごく信じられていないんですよ。
農業経済学者にいっぱい聞いた方がいいんです。私、農業経済をやったから言うわけじゃないですけれども。その人にもうちょっと学術的にちゃんと試算をしてもらった方がいいと思いますよ。
政府は、体質強化対策や経営安定対策を適切に実施することにより、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるといいますけれども、これも全く信じられていないんですよ。先ほどの渡辺先生の質問のとおりで、じゃ、俺たちはどうなるのというのに答えていないんですよ。対策を打った結果、自分たちのやっている産業がどんな産業構造になるかというのがわからないんです。
代表的なのが養豚でありまして、うちの地元には、大企業で、企業的にやっている人もいれば、家族経営の養豚農家もいます。家族経営の養豚農家は物すごい怒っていますよ。業界の団体にも、自分たちはだまされているんじゃないかと言っている人だっているんですよ。結局、生き残るのは大規模だけで、家族経営は生き残らないんじゃないか、構造改革とか競争力をつけるというのは、自分たちが淘汰されることを意味するんじゃないか。
豚肉の差額関税が維持されたといったって、ちっちゃな競泳パンツみたいな三角形しかないんですよ。定率の関税はない、定額の関税は五分の一以下に減っている。これで影響がないなんて言えるわけないんですね。必ずそこで何かが起きるんですよ。
マルキンをやりますといったって、マルキンは大きくやっている人にはメリットがあるけれども、平均の価格ですから、平均点以下の人は淘汰される効果もあるわけです。それでいいといえばそれでいいのかもしれないけれども、日本国全体で見たら。だとするならば、もうちょっと正直に、この対策を打った結果どういう産業構造になるかというのは言うべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○森山国務大臣 お答えいたします。
豚肉の話でございますけれども、このこともたびたび御答弁を申し上げてまいりましたが、一つは、やはりアジアを中心に、我が国以外の豚肉の需要が急激に伸びるということだと思います。そのことを見越して、中国企業がアメリカやニュージーランドの大手食品パッカーを買収するなどのいろいろな動きも出ております。
そういうことを考えまして、我々は、畜産クラスター等の事業を入れさせていただきまして、家族経営の方々もしっかり生産コストの削減に取り組んでいただけるように支援をしておりますし、また、優良な種豚の導入を図る等々の生産向上に対する支援もさせていただいているところでございます。
また、マルキンの法制化につきましても、今御審議をお願いしているところでございますので、今後とも、引き続き生産農家の皆さんの所得が確保されて、国内生産が維持されていくというふうに見込んでおります。
○福島委員 今のような答弁を何度も繰り返して、もう既に審議を何度もやって、私、地元へ回って、そういう説明をしているよとみんなわかっているわけです、農業新聞も読んでいるし。それがきちんとまともに信じてもらっていないということを私は謙虚に受けとめるべきだと思いますよ。
コストが下がるというのは、二つあると思うんです。みんながコストが下がれば、それはハッピーですよ。そうじゃなくて、コストが低い人だけが生き残って、コストが高い人が淘汰されるというのもあるんです。国で見たらどっちでも同じですよ。
どっちを目指しているんですかというのは、私は正直に言うべきだと思うし、それによって講じる対策の中身というのは変わると思います。少なくともマルキンは、全部を残す効果につながるよりは、むしろコストの安い人の方に有利に働く制度だと私は思いますよ。だから、それをどうするかというのは私は正直に言うべきだと思います。
そして、マルキンの法制化もおっしゃいました。恐らく、あとの国会の会期を考えれば、マルキンの法案をほかの法案とともに通すのは、今国会は無理だと思いますよ。
でも、これも何度も我々議論しましたけれども、何であれは施行日がTPPの発効の日なんですか。オバマの後の大統領がトランプになるかヒラリーになるかわかりませんけれども、仮にどっちになっても、漂流したり、アメリカの批准まで京都議定書のように長くかかったり、あれは結局批准しませんでしたけれども、かかる可能性があるんですよ。それまで農家はなぜマルキンの法制化を待たなければならないのか、明確に御説明ください。
○森山国務大臣 福島委員にお答えいたします。
現場に早期のマルキンの実施を求める声があることは私も承知をしております。
一方、牛・豚マルキンの法制化は、TPPの協定による関税削減等の影響に対応するものである以上、実際にその影響があらわれる協定発効日から実施することが適当であるというふうに考えております。このため、政策大綱においてもTPP協定発効に合わせて実施するとされたところでございます。
こうしたことから、牛・豚マルキンの法制化については、政府が今国会に提出しているとおり、一括法として、他の法案や協定案とともに総合的、一体的に御審議、御判断をいただくことが適当ではないかというふうに考えています。
○福島委員 その答弁では畜産農家がかわいそうですよね。状況は変わったんです。この国会でTPPの関連法案が通るんだったらその答弁でいいですよ。ゴールデンウイークで、もう会期末まで一カ月もない、その状況でその答弁をするのが本当に誠実なんですかね。TPP対策だと言うけれども、もう既にマルキン制度はあるわけじゃないですか。あるのを法制化するだけなのに、なぜTPPが発効しなければこれは施行できないんですか。
我々は、この資料二にあるように、TPP関連法案から切り離しをしてこれだけを先にやり、しかも、公布の日即施行するという法案を用意しております。
これは、ここにいる人で反対をする人は誰もいないと思いますよ。あとこれだけ通すんだったら、残りの会期でもできるんです。委員長提案でもできるんですよ。森山大臣、これはやった方がいいと思いませんか、どうですか。いいと思いませんか。
○森山国務大臣 先ほども御答弁を申し上げたとおり、政策大綱においても協定発効に合わせて実施をするということになっておりますので、ぜひ、今国会に提出をしております一括法として、法律案や協定案とともに総合的、一体的に御審議、御判断をいただくことが適当であると考えております。
○福島委員 農家の気持ちに寄り添う大臣らしくない答弁です。これは大臣の判断でできるんですよ、本当に。あるいは、我々委員全部がそうしようと言ったらできる話ですよ。誰も困らないじゃないですか。何でできないんですかね。本当に私は残念でなりません。
せっかく我々も法案を提出しているんですよ。野党に手柄を立てられるのが嫌だというんだったら委員長提案だっていいし、政府が同じ法案を出してきたら、そのまま審議しないで賛成しますよ。みんなそうだと思いますよ。もうちょっとそういうのに寄り添ってやった方がいいと思います。
次の再生可能エネルギーの話に行きます。
農村が稼ぐのは、農業であるとともに、これからはエネルギーが一番大事になってくると思います。
それは、一つは、FIT制度というのができた。FIT制度というのは、二十年間、ある程度の利益が出ることが予見可能なわけでありますから、この事業は金融の対象になる、ファイナンスの対象になることもできるという意味では、民間のお金がぼんと入って開発することができるという効果があります。
また、発送電分離というのがこれから行われますから、送電線というのは、ある意味、今までの公共用の道路のように、いろいろな人がその送電網を使ってさまざまなビジネスができるという意味では、大いなる可能性があります。
ただし、今までFITでやってきたのは、メガソーラーのように、農家の皆さんや森を持っている皆さんが自分の土地を売って、その売却益を得るだけで終わっちゃっているんですよ。それを自分たちで発電してビジネスをやれば、二十年間にわたって収入が得られる、その収入を使って農業に投資をすれば農村も活性化する、林業も活性化する、そういうすばらしい仕組みであるということはもう皆さん御承知のとおりだと思います。
農水省も農山漁村再生可能エネルギー法というのをつくりましてやっていますけれども、私はこれはまだまだ不十分だというふうに思っております。
そこで、まず最初に、FIT法とか農山漁村再生可能エネルギー法施行以降、今現在の農山漁村における再生可能エネルギーの導入状況というのをどのように評価されているか、大臣にお答えいただけますでしょうか。
○末松政府参考人 お答えいたします。
農山漁村における再生可能エネルギーにつきましては、先生御案内のとおり、まず太陽光、それから小水力、それからあと木質バイオマス、三点あるかというふうに思っております。
太陽光につきましては、各地でいろいろな取り組みが進んでおります。それは、農地を活用してのもの、それからそれ以外のものもあって、その数は、御案内のとおり、どこまでを農地がやるかというので数字が違いますが、かなり進んでいるというふうに承知しております。小水力につきましても、百を超える実例が出ているというふうに承知しております。あと、木質バイオマスについても、発電所が数十カ所できているというふうに認識しております。
このようなものについては、今後の農山漁村の資源を活用した、先生おっしゃるような、有力な経済的な活動になると思うので、諸般の政策を動員して進めていきたいというふうに考えているところでございます。
○福島委員 この問題にずっと取り組んでこられている末松局長が答弁に立たれましたので、関連のことをお聞きします。
地元を回っていて、土地改良区の役員さんがみんなおっしゃるのは賦課金。水利費をみんな払ってもらえなくて、この徴収で大変なんだよという話をよくお伺いします。
うちの地元は茨城県でありますので、三・一一の原発の事故以降、電気代が上がっていますから余計大変になっていて、私も総会などにも出させていただきますけれども、経費のうちの電気代というのは物すごく高いんですよ。もっとその電気代を払うなんてばからしいじゃないですか、水路の上に太陽光パネルをばあっと張っちゃって、電気を買うんじゃなくてむしろ売って、その売った金で賦課金を減らせばいいじゃないですかというようなことをよく言います。
先進事例で、鳥取県の倉吉市の天神野土地改良区というのがそういうのをやっているという話で、私も地元の土地改良区にいろいろ話をするんですけれども、皆さん、半信半疑でやってくれないんですよ。そんなうまい話、あるのかねというのと、あと、誰と組んだらいいのかねと。
農村で、今まで太陽光とかは、一方的に土地を売ってくれとか、よその業者が入ってきて、売却益はあるけれども、その後二十年間発電を続けて、利益を得て何をやろうという発想はなかなかないんですよね。こういうのはどこに原因があると思われますか、末松局長。
○末松政府参考人 的確な御答弁ができるか心もとないところでありますが。
今、小水力発電とか太陽光発電、いろいろなものについて得た売電収益について、例えば土地改良施設においては、平成二十二年度までは、土地改良施設の操作に必要な電力料金、発電施設の運営経費、発電施設が設置されたダムの共用施設の維持管理費、そういうものに限定されて充当するということになっていました。売電利益が出た場合、それを使えるものがこういうものだというふうに決まっていたわけでございます。しかし、平成二十三年度からは、これらに加えて、土地改良施設全体の人件費を含む維持管理費に充当可能というふうになっております。
こういうことを認識していただいて、であれば、土地改良施設全体の人件費を含む維持管理費に使えるということであれば、そういう発電をすることによって、土地改良区の運営そのものにかなりプラスになるという御認識をされて、それを進めるというようなところが出てきているということだというふうに思います。
一方で、こういう事実についての御認識がまだ十分ないというか、我々の周知も足りないところがあるのではないかというふうに思っていますので、売電収入があった場合、こういうものに使えるというようなことをきちんと御説明していくのが大切じゃないかというふうに思っております。
○福島委員 ありがとうございます。
私は、もっと大事な点がもう一点あると思うんですよ。
FITができてから、先ほども申し上げましたように、これはファイナンスの対象にもなって、ビジネスとして成り立つんですよ。だから、みんな太陽光をやりたいという事業者はいっぱいおります。でも、一方、農山漁村に住む人にとってみたら、よそからやってきたそういう金融マンみたいな人と交渉するのは苦手だし、何かだまされるような気がして先に進めないとなるんですね。
土地改良の今までの運営費の部分に充てるというのはいいんですけれども、さらに利益が出た分をそういう人にどのぐらいだけ分け与えますよというような例えばガイドラインとかルールがあって、民間の人と土地改良区の人とかが利益をシェアできるような仕組みがあればもっと進むと思うんです。いきなり土地改良区の理事長さんや理事さんたちが、太陽光発電をやりましょうと準備するのはなかなかできません。民間の人が提案をして、では、あなたたちと組んで、アライアンスを組んでやりましょうと言うんだったら進むようになるんですよ。
ただ、そこは残念ながら今びくびくしていて、例えば小水力発電でも、交付金の中でありますけれども、利益が上がったら、その分の一定部分は国庫に返しなさいとなっているんですね。それじゃ民間の人は入れません。民間の人は入れない。だから、補助金を使って小水力発電所をつくるところまでいくけれども、そこから出た利益を使って何かをしようというのはないんですよ。私は、そこをぜひ農水省に整備してほしいんです。
あるいは、今、余剰の余り使っていないような農地は転用できるとありますけれども、私の地元でこういうのがあるんですね。国道沿いで優良な田んぼを広く持っています。でも、水田農業だけじゃだめだから、施設園芸もやりたい。しかも、それを使った加工施設もやりたい。その加工施設のそばには直売所とかレストランも置きたい。ただ、どうも黒字にはなりそうもない。だから、農地の、農振地域なんだけれども、そこを一部太陽光を張って、その得た利益で加工施設とか直売所とかレストランのランニングコストを出したいというビジネスモデルを持ったとしても、今、農地は転用できません。
全てを転用したらだめですよ。だめだけれども、農家がみずからの発意に基づいて、その利益を自分たちの農業振興のために使うんだったら、それこそ特区って、私、自分でやって余り好きじゃない政策で、この間も農地の株式会社保有で、があがあ言いましたけれども、例えばこういう特区ならいいと思うんですよ。農水省がちゃんと認定をして、みずからが太陽光発電をやって、その利益を農業に投資して農業の振興を図るというんだったら、やればいいと思うんですよ。これはやはり法律改正が必要だと思うんですよ。
こういう何か思い切ったことをやるおつもりはございませんか。どちらでもいいですけれども。
○末松政府参考人 今先生はFITに関するビジネスモデルとして例示をされました。確かに地域において、FITによる売電、それと農業振興をあわせてやるというのは、これから重要になってくると思います。
一方、農地との関係でございますが、農地転用許可制度や農業振興地域制度は、優良農地の確保を図りながら、転用を農業上の利用に支障が少ない農地に誘導することによって、地域で発生する転用需要にも適切に対応するという仕組みになってございます。
太陽光パネルにつきましては、まず、小集団で生産力が低いなど、そういう農地については既に転用が可能である。また、おおむね十ヘクタール以上のまとまりを有するなどの優良農地についても、再生利用が困難な荒廃農地等については、農山漁村再生可能エネルギー法を活用することによって転用が可能になっているという状況でございます。
これらによって、地域農業の健全な発展と調和のとれた形で太陽光発電の導入の促進を図っているということでございます。
先生がおっしゃられるのは、これに一歩また越えて、一定のまとまりがあるようなところということでございますが、現行においては、一定のまとまりがあり、利用可能な農地にまで太陽光パネルの設置を可能とすることは、優良農地を確保しつつ食料自給率の向上を図るという現在の食料・農業・農村基本法の目標達成に支障を来すおそれがあるから適切じゃないというのが現在の整理でございます。
○福島委員 局長の立場だとそう答弁するしかないのかと思って、本心は違うと私は信じたいんですけれども。
逆に、優良農地を持っている人がプロの農家が多いんですよ。これから耕作される見込みのないような農地を持っているところは、そういうことをやる体力すらもない方が多くて、むしろ、今元気に何十町歩も田んぼをやっていて、それからさらにステップアップしようとする人が、太陽光パネルを張ってというビジネス的なことを考えるんですよ。そういう人にとって非常に今制度的に不備が起きて、やりづらい問題になっているんですね。
林野庁長官もいらっしゃったので、バイオマスもお聞きします。
うちの地元も補助金を使ってバイオマス発電をやっているんですが、今、残念ながら、国産はボイラーがでかいのしかないんですよ。タクマとか石川島播磨とかいうような大きいのしかなくて、補助金である地域にバイオマス発電を一個つくっちゃうと、みんな燃料をそこでとっちゃって、本当はやりたいちっちゃな村みたいなところはできないんですね。
私は、このバイオマスを進めるのは、一番のポイントは、どれだけ小規模で発電を行い、数件でいいから、熱と電気と両方売るようなビジネスモデルで、しかも、一つの森林組合とかで抱えられるような規模でやることが、実は一番山村にとってはメリットがあるんだけれども、農水省さんの補助金を得たでっかい何とか組合がつくったようなもの、特定のところを言っているわけじゃないですが、それができると、ほかがそれをできなくなっちゃって、山村振興にならないんですよ。
そういう意味では、農水省さんの主導で、FITの木質バイオマスの小規模のところの単価を上げた、これはすばらしい目のつけどころだと私は思うんですけれども、もうちょっとこの小規模バイオマスを推進するような施策を講じた方がいいんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○今井政府参考人 お答えいたします。
木質バイオマスのエネルギー利用につきましては、本格的な利用期を迎えております我が国国産材の新たな需要先となる、そういう観点だけではなくて、地域の活性化ですとか雇用創出ですとか、そういう地方創生の面でも貢献できる分野であるというふうに考えております。
そういった意味で、固定価格買い取り制度の木質バイオマスの発電の買い取り区分におきまして、平成二十七年度から新たに二千キロワット未満の小規模区分の高い価格の区分設定がなされたことは、地域の未利用間伐材等の利用に弾みがつき、かつ、それを通じて地域の活性化にも資するというふうに歓迎しております。
今後、さらにこうした小規模区分の活用を促していきたいと考えておりますけれども、さらに、固定価格買い取り制度の対象にはなりませんが、木質バイオマスボイラーなど小規模な熱利用の施設につきましても、平成十九年度には約五百程度しかなかったものが平成二十六年度には二千カ所以上になるなど、木質バイオマスの熱利用が広がり、かつ、それが地域の活性化に貢献している事例も増加してきていると承知しております。
今後とも、未利用間伐材等の木質バイオマスにつきましては、発電だけでなく熱利用も含めまして、地域の活性化に結びつける観点を重視しながら、その推進に当たっていきたいと考えております。
○福島委員 きのうも事務方から話を聞いたら、熱の話ばかりするんですよ。
でも、FIT制度があって二十年間は利益が上がるわけだから、やはり熱電、熱と電気と両方のタイプがいいと思うんです。しかも、ちっちゃな単位ですね。
これには、ボイラーをつくっているところを見たら、オーストリアとかドイツの会社で、日本のがなかったりするんですよ。そういう意味では、ちっちゃなボイラーを開発するような促進もメーカー側にやる必要があると思うし、そうすると、役所も超えたさまざまな対応になるんですよ。
小水力も進まないのは、この再生エネ法があったとしても、許認可を得るのはやはり大変なんです、不透明なんですよ。今まで前例もないから、県とかに申請してもなかなかおりない、それでやりたがらない。事業リスクが多いんですね。
でも、私は、この話は宝の山だと思っていまして、農林水産省のもう一つの大きな柱になるべきものだと思うんです。でも、きのう説明してきた人に聞いたら、名刺には食料産業局再生可能エネルギーグループといって、課でも室でも何でもないんですよ。機構・定員要求もしていないわけですよ、この再生可能エネルギーのものは。誰がいるんですかと、課長級以下九人と言うんです。
私は、審議官も置いて、でっかい部にしてもいいぐらいだと思うし、さらに言えば、水利権の話であれば国交省とか経産省も絡むであろうし、産業政策的な、さっきのボイラーの話でいけば今度はメーカーも絡むだろうし、法律を改正して、さっき言った優良農地であっても農業に資するものについてはエネルギー、食料両方の基地みたいなものをつくっていって、やることはいっぱいあるんですよ。きちんと機構・定員要求もした上で、再生可能エネルギーの導入に向けた実施体制をしっかりとつくるべきだと思います。
最後に、大臣、これは本当に大事だと思うんです。僕らは、ここの後ろで、分散型エネルギー導入四法案というのをつくって、私自身はエネルギー協同組合というのをつくって、利益が外部の市町に流れないように、協同組合内で循環するような仕組みというのも議員立法で提案して、衆議院にもう提出しております。一番、TPP対策でわけのわからない対策をやるよりも、こっちの方が効果があると思うんですよ。
農水省として、しっかり体制を組んで、各省の縦割りを超えて強力に推進する体制をつくるべきだと思いますけれども、大臣、どうでしょうか。これからの推進に関する決意も含めてお聞かせください。
○小里委員長 森山農林水産大臣、簡潔にお願いします。
○森山国務大臣 お答え申し上げます。
農山漁村に豊富に存在をするバイオマス、水、土地等の資源を活用する再生可能エネルギーの導入促進というのは、地域の活性化につながる取り組みとして重要であると思っておりますし、そこは委員と全く同じ認識でございます。
今、農林水産省といたしましては、食料産業局に課に準じた再生可能エネルギーグループを設置をして、努力をしております。審議官も置いているところでありますが、今言われましたようにさらに拡大をしていかなければなりませんので、組織のあり方等についても検討を進めさせていただき、現場の皆さんにしっかりと御説明ができて、なるほど、我々の地域にはこういう資源があるんだなということを御理解いただいて、活用していただけるような対応をしっかりと進めてまいりたいと考えております。
○福島委員 ありがとうございます。
補助金とかを出すだけじゃなくて、民間の資金を入れるというのが大事ですから、その民間の資金が入りやすい環境を整備していくという観点から、ぜひこれから進めていただいて、やらなければ我々がやるという決意を示させていただいて質問とさせていただきます。
ありがとうございます。
○小里委員長 次に、金子恵美君。
○金子(恵)委員 民進党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。
冒頭、熊本地震で被災されている皆様方の早期の生活再建を心からお祈りしたいというふうに思いますし、私たちも、党派を超えて心を一つにして、被災地の皆さんの命とそして生活を守らなくてはいけないというふうに思っております。
恐らく、今後、私も、福島の被災地の人間としては、熊本でもやはり子供たちの心のケアということも必要になってくると思いますし、そしてまた、第一次産業を再開することなく本当に苦しんでいる人たちが今もなお多くいらっしゃる福島の現状でありますけれども、熊本でも心が折れないような対応をしていかなくてはいけないというふうに思っているところでもあります。
そこで、まず最初に、今回の熊本地震の発生を受けて、四月十五日、森山大臣を本部長とする緊急自然災害対策本部が設置されまして、そこで被害状況の速やかな把握に力を入れるということで進めてこられたわけでありますけれども、もう既に先ほど御答弁もありまして、一千百億円の被害状況であるということではあります。
少しそれを質問しようとしましたけれども、今の現状の額は出ているということではありますので、ちょっと切り口を変えさせていただきますと、当然のことながら、今後被害はもっと出るかもしれない、そしてまた、農業者の方々、あるいは第一次産業の方々にとにかく寄り添う形で、しっかりと地元に足を運びながら、本当に細かい点にも配慮をしながらの被害状況の把握ということをしていかなくてはいけないと思うんです。
それについてどのようなお考えで取り組まれるのか、御答弁いただきたいと思います。
○森山国務大臣 金子委員にお答え申し上げます。
金子委員も東日本大震災で非常に厳しい状況の現場を見ておられますから、熊本にお寄せいただくお気持ちというのは本当によく理解ができますし、ありがたいことだと思っています。
私も現場を二回見させていただいて、農家の皆さんや漁業者の皆さんが、どうしても頑張ろうという気持ちになっていただく対応というのをスピーディーにやらなきゃいけないなという強い思いをいたしましたし、また、幸いにして九州農政局というのは熊本に置いているものですから、我々としてはマンパワーについては非常にスピーディーな対応ができるところでございまして、その九州農政局の皆さんも本当によく頑張っていただいております。
また、最初は食料の供給というのが我々の責任でございましたので、ここをまずしっかりやろうということでやってまいりました。
おかげさまで、民間の方々の御理解もいただき、また自衛隊等々の配送等の御協力もいただいて、一定の御評価をいただけるというところまで参りましたので、食料の供給というところは一つの見通しが立ったのではないかと思っておりまして、今からは、どう復旧復興を図っていくかというところに重点を移して取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○金子(恵)委員 大臣が今おっしゃった、スピーディーに取り組んでいくということで、一番最初に被災地に足を運ばれたのは五月の二日だったというふうに聞いておりますけれども、そのときにも熊本県知事と面会をされて、まさに先ほどもおっしゃっておられましたけれども、前例にとらわれず、スピード感を持ってしっかりと第一次産業の復旧復興に取り組んでいくということをおっしゃっていたということであります。
もう既に、支援対策についてということで昨日発表がされたところでもありまして、たくさんのメニューがこれからも必要になってくるんだと思います。現段階で使えるこの対策、しかし、前例にとらわれないという部分については、やはりしっかりと、繰り返しになりますが、地元の現状、被災地の現状というのを把握して、丁寧な対応をしていただきたいというふうに思っています。
繰り返しになりますが、東日本大震災から五年たってもまだ再開できない多くの第一次産業の方々がいらっしゃるということを御理解いただきたいと思いますし、そうならないでほしい。いつも申し上げていることですけれども、特に福島の教訓をとにかく生かしていただきたいというふうに思っているところでもありまして、お願いをしたいというふうに思います。
そこで、水田営農再開連絡会議、これも既に五月の五日の段階で新しい組織として立ち上げたということでございます。水稲、ことしはもうできない、米づくりができないという方々の転作も含めて、いろいろな相談を受けるというようなことで、いろいろな検討をこの連絡会議で行っていくということで理解をしているところでありますが、メニューをたくさん見せられても、やはりどこかで心のよりどころというのは必要になってくるんだというふうに思うんです。
九州農政局の皆さんは本当に頑張っていただいているというふうに思います。私はいつも申し上げていますけれども、農水省が本当に一番地方を知っている、地域をよく知っている人たちの集団だというふうに、霞が関の中では一番だというふうに私はいつも思っているんですけれども、そういった点でも、相談の窓口というのは十分に強化をしていかなくてはいけないというふうに思っておりまして、大臣も先ほど寄り添うという言葉をおっしゃっていただいたというふうに思うんですが、まさにそういう窓口が必要になってきます。
そこで、九州農政局の地方参事官ホットライン、これも設置されたというふうに聞いています。その機能を十分に生かしていただきたいというふうに思うんですけれども、残念ながら、もしかすると、この地方参事官ホットラインというものの存在すらまだ被災地では理解をされていないのではないかと思います。今後の取り組みはどうなさいますでしょうか。
○森山国務大臣 お答え申し上げます。
先ほども申し上げましたけれども、やはり農家にとって田植えができないというのはかなりのショックだと思っております。ですから、そこをどう寄り添っていくかということは大事なことでございまして、JAさん、県、そして我々農政局と、三者が一緒になりまして水田営農再開連絡会議を設置させていただいて、自分たちの地域ではどれぐらいのところは田植えができるかな、あとは、では大豆をどうするか、大豆も無理だとすれば、ではソバをどうするかとかという、いろいろな協議をしていただくということでございます。
いろいろなことが、大豆を植えるといっても、種子の問題もあったり、いろいろな品種がありますので、その準備もさせていただかなければなりませんが、そういうところは割と順調に進めさせていただいていると思っております。
ただ、まだ麦を刈り取ってみないと農地がどうなっているかわからないところもあるものですから、そのことも頭に入れながら対応をさせていただきたいというふうに思っておりますし、やはり農家の皆さんが再生産に意欲を持っていただけるように我々はしっかりと支えさせていただきたい、そういうふうに考えております。
また、先生御指摘のとおり、いろいろなシステムがありましても、制度がありましても、なかなか現場にそれがおりていかないということもありますので、これは地方自治体あるいは農業団体等を通じて我々も徹底してPRに努めてまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 それで、情報が現場にもおりていかないかもしれない、そういうみずからの御指摘もあったんですけれども、今ほど私も申し上げましたように、九州農政局の地方参事官ホットラインをどのように機能させていくか、これは私はすごく重要な部分だと思うんです。
それで、当然、さまざまな情報を的確に、被災者の方々、被災農業者の方々も含め、とにかくしっかりと届けるという仕組みをつくっていかなくてはいけないというふうに思いますし、もう一点申し上げますと、先ほど、心が折れないような対応をしていただきたいということを申し上げました。第一次産業の方々が生産活動等ができない状況にあって、本当にお苦しみになっていらっしゃると思います。もちろん、生活の再建というものがまず第一であろうとは思いますけれども、生活とそして自分たちの仕事、誇りを持ってやってきた第一次産業に従事するということは一体なんだと思います。そこを御理解いただきながらどのような対応を窓口でできるかということだと思うんです。
東日本大震災の原発事故で、私たちの福島では、避難を余儀なくされた地域の中で、酪農家がみずからの命を絶った、そういう本当に悲しい出来事もございました。そういうことを決して起こしてはいけないというふうに思うんですが、心のよりどころともなるようなそういう相談窓口をしっかりと設置しているのかどうか、もう一度確認させてください。
○加藤大臣政務官 金子委員の御質問にお答えいたします。
先ほど委員の方からも御指摘ございましたけれども、全くそのとおりだという思いから、農林水産省といたしましては、四月二十八日に、平成二十八年熊本地震で被災をされた方々の相談に応じるための窓口を、熊本県だけでなく、その他九州各県の支局、駐在所に設置したところでございます。
支局等の地方参事官は、くまなく各地域に出向きまして、農政を現場にしっかりと伝えながら、そしてまた現場の声をしっかりと酌み上げて、現場とともに解決をする機能を持っておるところでございます。
この地方参事官の機能を生かして、被災された農林漁業者が一刻も早く経営再開できるように、今般取りまとめて公表した対策の周知に努めるとともに、被災された農林漁業者からの要望や相談を積極的に聞き取ることによりまして、きめ細かな対策の実施に努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
〔委員長退席、簗委員長代理着席〕
○金子(恵)委員 情報を提供する、そしてまたニーズを把握する、そういう窓口なんですが、繰り返しになりますが、ぜひ、農林水産業に携わってこられた方々の心のよりどころになるようなそういう窓口であってほしいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、ここからは、私の地元の福島のこと、福島の再生についてまたおただししたいというふうに思います。
前回、私も、森林法の改正案の審議のときに、森林法の改正では、森林所有者に対して伐採後の造林の状況報告の義務づけをする、そして再造林を確保するというような内容がありましたので、それについてもいろいろと質問させていただきました。その質疑を進めながら、やはり私は、あの福島の美しい森林を本来の形に戻したいな、そういう思いを持ちました。しかしながら、残念ながら、福島県内では、原発事故による原子力災害の被害によって、これまで伐採できない地域がございました。
それで、福島県は、指定廃棄物となる一キロ当たり八千ベクレルを超える樹皮の発生を抑制するために、平成二十六年十二月に民有林伐採・搬出指針を出し、木材業者らに通達をいたしました。
県の調査では、空間放射線量が毎時〇・五マイクロシーベルト以下の森林では八千ベクレルを超える樹皮が確認されなかったということから、伐採地が〇・五マイクロシーベルト以下であれば伐採、搬出を認めているということです。また、〇・五マイクロシーベルトを超えた場所でも、樹皮が一キロ当たり六千四百ベクレルを下回った場合に限って伐採、搬出を可能としているということであります。こういう状況です。
ですので、もちろん、国が皆伐、再造林という施策を進めようとしたとしても、福島ではなかなか現状難しいということもあります。しかし、やはりさまざまな支援を得て、ふるさとの森林を再生したいという思いの事業者の方々が今立ち上がっているところでもあります。
このたび、県の木材協同組合連合会が原子力規制委員会のモニタリングによる空間線量データを分析し、伐採可能な範囲を推定し、原木伐採・搬出基準を下回った地点のデータを発表したところでもあります。今回のデータでは、田村市の都路、楢葉町、川内村、広野町の地点で基準を下回ったのは全体の六〇・八%となっていたというふうにも示されるようなところでもあります。これらの区域というのは、もう御存じのとおり、避難区域であったところで、解除あるいは一部解除されているような地域であります。
先ほども申し上げましたように、国の施策が皆伐、再造林を進めようとする、だからこそ、今回の森林法等の一部改正だったということであっても、このように大変厳しい状況の中にある福島県であります。
しかし、やはり林業をとにかく再開したいということで、このように基準を下回った地点というのが全体として六割以上、この地域の中での話ですけれども、六割にもふえているということでありますので、ぜひここで、やはり国として、再開を目指している事業体をしっかりと支援していくということをしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○今井政府参考人 お答えいたします。
福島の森林・林業の再生につきましては、福島県が大森林県でもありますので、非常に重要な課題だと認識をしております。
そうした観点もありまして、本年三月九日に、復興庁、農林水産省、環境省の三省庁によりますプロジェクトチームが開催されまして、福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組が取りまとめられたところでございます。
その内容といたしましては、御案内のことと思いますけれども、里山再生モデル事業の実施というのが中心的に位置づけられておりまして、そこにおきまして、林野庁としてもさまざまな対策を講じていくこととしております。
現在、先ほど先生から御指摘がありましたように、個別の事業体への支援として実施しておりますものは、例えば、原木の加工段階で発生する汚染された樹皮の処理についての支援ですとか、あるいは、避難指示区域等において被災した木材加工流通施設の復旧ですとか、それはどれも復旧復興あるいは放射線対策として実施しているものでございますけれども、今後、線量等が低下する中で、福島の森林・林業の再生に向けて、川上から川下への事業体への本格的な支援をしていくことが重要になってくると思います。
そのためには、まず、今後具体化いたします里山再生モデル事業の成果を踏まえまして、空間線量の低下状況あるいは林業事業体の要望、そうしたものも勘案しながら総合的な対策のあり方について検討していく、そういうふうに考えております。
〔簗委員長代理退席、委員長着席〕
○金子(恵)委員 PTの中で、二回の開催だったんですけれども、そこで基本方針が示され、里山再生モデル事業が存在しているということも承知はしているのですけれども、それだけではない仕組みというのをさらに進めていかなくてはいけないというふうに思っておりまして、それで、前回、PTはこれからも必要に応じて開催されるということであったというふうに思いますが、繰り返しになりますが、たった二回のPTの開催で全て決めてしまって進めるということではないというふうに思っておりますので、ぜひそこはよろしくお願いいたします。
そしてさらに、高性能林業機械についてなんですけれども、これの導入というのは今まさに重要な課題になっていると思いまして、作業員の被曝を低減させるというためにも、この導入の事業というのを本当であればさらに拡大すべきだというふうに思っておりました。
ところが、平成二十七年度までの三年間で、この震災復興林業作業システム導入支援事業、これは三年間でとりあえず終わるということで、この事業自体は五年間の機械のリースの支援でありますので、二十八年度以降ももちろん続いてはいるんですけれども、二十八年度以降というのはもう新規採択はしないというようなことで理解をしています。
実際に三年間で二百の事業体も採択されているということで、大変活用されている事業で、国の補助率が二分の一でありまして、随分事業体にとっては本当にメリットのあるものでした。ぜひ、こういう事業をしっかり継続していくということで検討すべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○伊東副大臣 金子委員の質問にお答えいたします。
福島の森林・林業の再生に向けましては、林業の低コスト化を進めることが重要でありまして、施業の集約化や路網整備の加速化とともに、ただいまお話にございました高性能な林業機械の導入、こうした機械操作にも対応できる若い担い手の確保、育成を進めていくことが必要である、このように思う次第であります。
高性能林業機械の導入につきましては、これまでは購入補助を主体に支援をし、平成二十五年度末時点での保有台数は六千二百二十八台となっているところでありますが、今後の導入に当たりましては、購入補助に加えまして、リース方式による支援の充実を図ることも必要と考えているところでございます。
また、若い担い手の育成に関しましては、緑の青年就業準備給付金事業による林業大学校等で林業就業を目指す青年への給付金の支給、また、緑の雇用事業によります新規就業者を対象とする三年間の技術研修等の実施を通じ、効率的な作業を主導する現場技能者としてステップアップを図っていくことが重要と考えております。
今後とも、こうした取り組みを通じ、福島の林業を魅力あるものとし、福島の森林・林業の再生の実現を図ってまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
まず、高性能林業機械の導入をしっかりと支えていただきたいということと、もちろん、それを活用するためにも、若手の林業従事者の育成ということもしっかりとお支えいただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
時間がちょっと限られておりますので、質問を幾つか飛ばさせていただきまして、今度は、福島の農業の復興再生について質問させていただきたいというふうに思います。
三月の二十五日に、避難地域がある十二市町村を中心に、農業の復興再生を技術面で支える浜地域農業再生研究センター、福島県地域農業再生拠点整備事業と復興交付金の活用によりこれが開所したわけですが、センター開設の事業というのは本当に明るい話題でございました。
実際に、営農再開に向けて、農業者の方々を支えるためにしっかりと技術研究が進められるということを期待しているところでありますけれども、これまでも、農業・食品産業技術総合研究機構、農研機構、それと環境創造センターや、ほかの普及機関との連携もなされていたところでもあります。
そこで、実際に目標となるのは、農業者が安全な農産物を収益性を損なうことなく安心して生産し、そして農業者が将来に夢と希望を持って農業に従事するようになるということでありますが、それをするためには、長期的な研究とそして長期的な計画をしっかりと持ちながらそれを進めるということだと思っています。
今後、このセンターの研究、運営について、長期的な支援というものを国としてもしっかりと継続していくべきだというふうに思っているのですが、国の責務としてこのような支援をしていただけるのか、お伺いしたいと思います。
○森山国務大臣 お答えいたします。
避難地域等における営農再開に必要な試験研究を行うために、農林水産省といたしましては、福島県による浜地域農業再生研究センターの整備に対して支援を行ってまいりました。本年三月に開所を迎えられたことは何よりだったと考えております。
今後は、本センターを拠点としつつ、平成二十五年四月に国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が福島県と締結をいたしました基本協定書に沿って、被災地域における営農再開に向けた共同研究や人的交流を通じた連携協力をしっかりと実施してまいりたいと考えております。
○金子(恵)委員 そうしますと、連携という形での支援ということだと思います。
私は、長期的な支援というのは、人だけではなくて、今後維持をしていくため、あるいは運営という意味での支援をしっかりとやるべきだというふうに思うんです。やはり、原発の事故によって被害を受けた地域の再生であります。原発は国が推進をしてきた。国の責任というのは大変重いものだというふうに思っておりますので、ぜひしっかりとそこも取り組みをしていただきたいというふうに思っております。
福島県も実は、原発事故被害を受けた浜通りで、園芸農業再開に向けて、施設整備費の半額を補助するという仕組みをつくって頑張ってはいるんです。補助を受ける認定農業者が水稲からの転作を望む場合には、浜地域農業再生研究センター、ここから助言そして指導を受けることができるというような仕組みで頑張るということであります。
そうすると、ますますこのセンターの役目というのは重要になってくるというふうに思いますし、実際には、実はセンター開所に先行してリンドウやトルコギキョウなどの栽培の実証研究が行われていたということでありますけれども、県外に出荷されたその切り花というのは、市場関係者から見ますと、風評被害もないと評価されていたり、品質がすぐれている、日持ち日数が小売店の求めを超えたということであったり、大変評価されているものになっておりまして、浜通りは、御存じのとおり、冬は温暖で積雪が少ない、日照時間が長いということで、花の栽培は農業再生の選択肢の一つというふうになっているということで、県の取り組みもなされようとしているところであります。
その取り組みの中で、今申し上げましたこの浜地域農業再生研究センターの役割は大変重要になってきています。そこと、先ほどおっしゃっていただきました農研機構との連携は、さらに強化をしていくということではありますけれども、繰り返しになりますが、やはり、今ほど申し上げました浜地域農業再生研究センターの運営自体もしっかりと支える仕組みというのをつくっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○西郷政府参考人 お答えいたします。
先生おっしゃるとおり、いろいろな再生のための取り組みが浜通り地区で行われているということでございます。
農研機構といたしましても、先生御承知のとおり、これまでもいろいろな共同研究などさせていただきまして、一部成果が出てきているところでございます。
今回この浜通りセンターができまして、県の方では四つの柱を考えていろいろ研究を考えてございますけれども、そのうちの幾つかにつきまして協力をしてまいりたいと存じておりますし、現に、特にセシウムの吸収がどうなって、それからどういうふうに挙動していくかといったことにつきましては、国のプロジェクトでセンターにも参画をいただいて進めていくというふうな取り組みを続けて、協力をしてやってまいりたいというふうに存じております。
○金子(恵)委員 ありがとうございます。
そろそろ時間が参りましたので、ここで終了させていただきたいと思うんですが、農と福祉の連携の部分を残しました。そして、風評被害対策の部分も残してしまいました。
前々回でしょうか、三月の九日のときでしょうか、委員会で大臣に対しまして、私は、ぜひ福島の米を毎日でも食べていただきたいということを申し上げさせていただきました。福島県でも、風評被害対策をしようとして、福島県の農産物の安全性をPRする、そういう動画をユーチューブに載せたり、本当に懸命に頑張っていらっしゃいます。ですけれども、なかなか動画サイトを見てくださる人たちの数も少ないということもあって、いろいろな懸命の努力はしているけれども、この風評被害というのはなくならない状況にあります。
最後に、もし大臣から一言あるのであれば、私は国際会議等でしっかりと福島の農産物等を食材として利用していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○小里委員長 では、簡単に。
○森山国務大臣 先日、新潟でG7の農林大臣会合をいたしましたが、そこでも福島の食材も利用させていただきましたし、また新潟宣言でも風評被害等についての考え方についてはきちっと宣言の中にまとめさせていただいておりますので、やはり今後とも努力をさせていただいて、福島はすばらしい農産物があるわけですが、それが正しく評価をされるように、一日も早い実現に向けて頑張らなきゃいけないなというふうに考えておりますので、引き続き努力をさせていただきたいと思います。
○小里委員長 では、終了してください。
○金子(恵)委員 これで終わります。ありがとうございます。
○小里委員長 次に、村岡敏英君。
○村岡委員 おはようございます。民進党の村岡敏英でございます。
初めに、熊本を中心とする九州地方の地震で亡くなられた方にお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。
さらに、農水の被害も大変あるようですけれども、昨日の記者会見でも、農林大臣が、しっかりと、営農再開のためには幾らかかってもやるという力強いお言葉をいただいたので、ぜひそこは熊本を中心とする農水被害には対応していただきたい、こう思っております。
さて、質問に移らせていただきますけれども、私もこの連休中はずっと秋田を回って歩きました。その中で、今ちょうど田植えの前の代かきであったり、苗をつくっていたり、また山菜をとって、ゼンマイを玄関前に干していたり、そういう作業の最中です。そういう方々に話を聞きますと、やはりTPPに関して、全くわからない、そしてどんな状況になるのかという不安を述べます。
そして、農家の方々で、二十キロの肥料を入れたものを背負ってまいている御夫婦がおりました。八十歳と七十五歳のお母さん、その二人で、お母さんはあぜでお父さんの肥料をまいている姿を見ながら、そこに尋ねに行きまして話を聞いたら、これから田植えなので本当は浮き浮きしているんだ、またいい米をつくるんだ、こう張り切っておりましたけれども、今のTPPの問題であったり農政をどう思いますか、村岡さん、もう諦めたよ、いいよ、どうでもいいから、もうそんなのいいから、まず全体のことで若い人のためにやってくれ、もう農業はだめなんだ、大規模しかだめなんだ、我々のようなところはもうだめなんだと諦めの声を言っていました。
それからまた、ゼンマイをもんでいるお母さんたち、五、六人いましたけれども、ゼンマイをもみながら、村岡さん、もう投票に行かないから、行ったって変わるはずがない、農業地帯なんかもうだめになるんだ、こういうようなお話をされます。
本当に農村社会が壊れそうになっているんです。その部分がやはり伝わっていない。よく予算委員会やTPPの委員会なんかでも総理に言うと、農業は国の基だ、そして美しい田園風景、これを守っていくんだ、これが大切なんだと言っていますけれども、その言葉が伝わっていない。
それから、いろいろな対策をとっていただいているのはわかります。しかしながら、高齢者の人たちがその対策に追いついていけない。だから、それを担い手の人にも引き継ぐことができない。
そして、書類なんかも、大臣に聞きますと、簡素化していますと。ところが、実際の現場へ行って聞くと、そんなのわからないよと言う。我々、今までやってきたものの中で、そんな書類がいっぱいあって、そして老眼になって目も見えなくなってきて、その中で、その書類が簡素化した、どこが簡素化したんですかと。それで、見せられます、その書類を。やはり面倒くさいです。やはり、そういう細かい配慮がない。
そして、特に言われるのが、私は自民党の秘書をやっていましたので、昔の自民党、政府は農家にもう少し優しかった、しかし、今はわかっていないし冷たい、こういう意見が非常に多いです。その現場のことが実際政府に届いているのかどうか不安なんです。
私も連休中、五月三日、ちょっといらっしゃらないですけれども、小泉農林部会長が大潟村に来ました。確かに大潟村は先端的な農業をやっています。五百八十人が最初に入植して、三十八都道府県から意欲を持った、フロンティア精神を持った人たちが入植して、十五ヘクタールの農地を、これは排水も悪くて、大潟村の人は非常に努力しました。その努力の成果もあるんですけれども、その方々は、米だけじゃなくて多品目をつくり、そしてみずから販売をする、そして三千人の人口の中で千人が農協の正組合員、そういう状況です。そして、一家の貯金額が五千万円。
これは農業の先端の、国がしっかりと支えながらやった農業です。しかし、現実には秋田県内でそんな農家はほとんどいません。全国でもほとんどいません。そういう状況の中で、例えば先ほど言った、大潟村に視察に来ていただくのはありがたいです、私も何回も行っています。大潟村の人たちも頑張っています。しかし、それによって、大潟村の例を出して、国際的に売れるんだ、農業にチャンスがわかったと言っていますけれども、逆にそれはマイナス面になっているんです。
今困っているところで、担い手に引き継ぐところのものをもっと視察しなきゃいけない。批判があるところを視察してこそ、それは農業の対策になる、そういう思いなんですけれども、大臣はどう思われますか。
○森山国務大臣 村岡委員にお答えいたします。
村岡委員のおっしゃる面があることは、私も現場を歩いておりますので、よく理解ができます。しかし一方、非常に意欲を持って頑張っていただいている皆さんもおられます。我々は、やはりそういうところに、皆さんが一緒に頑張っていただけるような農政というのを続けていくということが大事なことではないかなというふうに思っております。
ただ、条件のいいところばかりではありませんので、条件が悪い地域であっても、やはり多面的な機能もしっかり果たしているわけでありますから、農村の集落の維持をどうしていくのか等々については、日本型直接支払制度をさらに充実していくという努力もしながら、農業に頑張っていただけるようにしなければいけないなというふうに思っております。
特に、米の産地のところの皆さんの御心配というのはまた格別だなというのはよくわかります。ですから、米政策をどう我々は御理解いただけるように努力をするかというのはまた非常に大事なことだと思っておりますし、また、農家の皆さんにしてみますと、やはり米というのはちょっと意味が違いますので、そのこともよく理解をしながら努力をさせていただきたいというふうに思っておりますが、おかげさまで、飼料米のところが少し新しいステージに入ってきたのではないかなというふうに思っております。
また、新潟に参りましたときに、集落営農で百ヘクタールぐらい頑張っておられる皆さんがおられまして、ここが実は香港やシンガポールに米の輸出をしておられるんですけれども、輸出用の米はこれがいい、ちょっと多収穫米の方がいいという選択もしておられて、非常に前向きに取り組んでおられます。
こういうこともしっかり横展開をさせていただきながら、やはり農家が老いても元気に頑張っていただけるような農村社会というものをつくることにも我々は努力をしなければいけないというふうに考えております。
○村岡委員 私も、大規模で成功している方々は、どんどん伸びて、国際的に日本の農産物を、また加工品を広めていただくのは、これは結構なことなんです。しかし、その事例は比較的出尽くしているんですよ。
そこにいくと、農家の方々が、農業を政争の具にしないでくれ、与野党関係なく一緒にやってくれ、成功事例の人たちはどんどん伸ばしてくれ、しかしながら、農村社会が崩壊するようなところは、与野党別にして、一緒に現実を見てくれ、非難をしっかりと聞いてくれ、そういうところが足りないと。
やはり、先端事例のところに行って、国際市場に出ていくみたいな、八億人市場に出ていくみたいな、格好いいですけれども、それは、その人たちの成長産業として、大規模化した人たちはどんどん行ってくれ、こう思っていますよ。
しかし、大きいところに聞くと、大体大きいところは余り政府の言うことを聞かない方が伸びていると言うんですね。余りそんな補助金だとかそういうのを使わずに、規制緩和だけしてくれればどんどん出ていけると。
だから、その意味では、農村社会を守るという意味は、規制緩和をしながら国際的に出やすいようにするのは大規模農家、しかし、小規模農家の農村社会を守っているところに関しては、やはりしっかりとした目配りが必要だ、この二つの側面がなければ農地はどんどん荒れていく、その認識をしっかり持っていただきたい、こう思っております。
次の質問にかえさせていただきます。
その中で、今、私もこの農水委員会にいた中で、資材だとか農機具だとか、やはりこれは高いんじゃないか、各国で。見える化ということで、自民党の方で小泉農林部会長がやられていますけれども、農林省もいよいよこの取り組みをするということで聞いておりますけれども、この取り組みはどのようにしていくのかお答え願いたい、こういうふうに思っています。
○森山国務大臣 お答え申し上げます。
農業者の所得の向上に向けて、農業者が少しでも有利に農業生産資材の調達をするということは非常に大事な課題だと思っております。
農業者が農業生産資材の価格等に関するさまざまな情報に容易に触れることができて、比較検討の上でまず資材を選択できる仕組みをどうつくっていくかということは、非常に取り組まなければならない課題であると思っております。
このため、現在、農林水産省では、農薬や肥料、農業機械など各資材について、メーカーや農協系統、商系の販売業者、ホームセンター等を対象とした販売価格の調査を進めているところでございます。
今後、このような調査の結果も踏まえ、農業者の皆さんがより幅広く資材価格等を比較検討した上で購入できるよう、具体的な方策について検討することとしております。農業者団体や資材メーカー、流通業者等の関係者ともよく相談をしながら検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○村岡委員 確かに、コスト削減という中で、農業者の方々がいろいろな商品の値段を見ながら、それで選ぶということの中でコスト削減していくことは、これは経営努力の中で必要なことだ、こう思っています。
しかし、価格だけ見て調べると問題が起きてきます。例えば、量とか成分量だとかそういうこともありますけれども、もう一つ、サービスというのがあるんです。
農協なんかで買うと、例えば秋田なんかは広大ですから、一つの農協でも非常に大きな面積です。買う量が少なくても、個々の家にきちんと配送してくれるわけです。ところが、ホームセンターは買いに行かなきゃいけない。そういう意味では、そこは、サービスでやっているという中の、コストにはかかっていないところなんですね。それによって人も雇っていますから。そういうことも十分加味しながら、ただ単に消費者のところで、また、農業地帯じゃない出身の方は、はい、価格で幾らですかということだけで、あそこは高いから農協はだめだ、ここの農協はだめだ、こういうんじゃなくて、そこにはいろいろなサービスがあるわけです。
だから、配送するだけじゃなくて、その配送をしたときに、農協の人たちが、ことしの気候はどうだとか、それから種のぐあいはどうだとか、いろいろな会話をしているんです。そういうことの会話の大事さが、この農業者と触れ合うということにある。
ホームセンターが安ければいいというだけじゃなく、そこを加味してこれを調べなければ、結局これは、農業地帯の中でただ単に商品を安く買って、何のコミュニケーションもない、配送もない、そういうことになるとこれはおかしな結果になると思うので、そこは大臣、加味していただけますでしょうか。
○森山国務大臣 それは今委員がおっしゃるとおりでございまして、例えば、鹿児島と宮崎の焼酎の値段は少し違います。だから、宮崎の方が焼酎が安いと勘違いをしがちなんですが、実は、鹿児島の焼酎は二十五度でございまして、宮崎の焼酎は二十度なものですから値段が違うんです。
今おっしゃったように、農薬等につきましてもそういうことは言えるんだろうと思います。ですから、どう比べるかというところもよく工夫をして、農家の皆さんが選択をしていただけるようにしないと、配送してくれるとかくれないとかいろいろありますし、また、出来高払いで払えるとか払えないとかいろいろなことがあると思いますので、いろいろなことを総合的に判断していただいて、一番コストの安いところから購入をできるという選択ができるように考えていくということは大事なことだと思っております。
委員御指摘のことはよく承知をしておりますので、そういう間違いが起きないようにさせていただきたいと思います。
○村岡委員 ぜひそこは配慮しながら、そして農業者が選択でき、また農協やいろいろなところの販売業者がしっかり努力していただく、そういうことの公表をしていただきたい、こういうふうに思っています。
それと、鹿児島も宮崎も、焼酎は私は好きなので、大丈夫ですので、それは。
あと、見える化の中で一つ問題になってくるのが、やはり高齢化しているわけですよね。その中で、古い農機具を使っている人が、新しい農機具にかえられない人もいるし、かえた人もいる。その中で忘れちゃいけないのが、いろいろな附属品がつき過ぎて高いということもありますけれども、安全性を怠ったらいけない。実際には、もう一年間に三百人以上の人が農作業の中で亡くなっている、この現実もあるわけです。今度は、先ほど言った会話とか配送とかというものじゃない、命にかかわる問題もあるんです。
トラクターを安全にしようとしたら、それはある程度お金がかかるわけです。例えば、今、普通の乗用車というのは相当安全性を高めています。そして、安全基準がなければ売れない。ただ、農機具の場合、基本的に自分の農地の中でやるということの中で、これが余り安くなると安全性が損なわれる。
この点の部分は、もう一つ、大臣、この安全性に関しては値段で買えないものもありますので、そこもちょっとチェックしていただきたいと思っていますけれども、どうでしょう。
○森山国務大臣 一番優先されるべきは安全性であろうというふうに思いますので、その装置がどういうことになっているかというのは当然考慮されるべきものであると考えております。
○村岡委員 そこはぜひ、この見える化という作業の中で、しっかりといろいろなところに目配りしながら公表をしていただきたい、こういうふうに思っております。
そして、これは厚生労働省ですか、これからTPPがもし成ることによって、輸入がどんどん入ってきます。しかし、この中で大きな問題が、遺伝子組み換えやゲノム編集などいろいろなものが、今でもちゃんとやっているとは思いますが、相当な量がふえたとき、実際にそれに対応できるだけの検疫の能力があるのかどうかが非常に不安なんです。
入ってしまってから、後で事故が起きたというようなことが、そういう部分は、厚生労働省は、もし輸入がどんどんふえたときの対応というのは、できるという準備はしておりますでしょうか。
○福田政府参考人 お答えいたします。
食品衛生法におきましては、食品安全委員会のリスク評価を経ていない遺伝子組み換え食品などの輸入、販売等を禁止いたしてございます。
厚生労働省の国立医薬品食品衛生研究所の方では、我が国でリスク評価を経ていない遺伝子組み換え食品などの輸入を防止するため、輸出国における遺伝子組み換え食品などの承認情報でございますとか、海外での検出情報なども踏まえた検査法の開発を行ってございます。
検疫所では、この国立医薬品食品衛生研究所が開発しました検査法を用いまして輸入時の検査を現在行っているところでございます。
具体的には、サンプルを抜き出して行うモニタリング検査を実施するとともに、食品衛生法違反の可能性が高いと判断された食品に関しましては全量検査を実施している、そういう状況でございます。
厚生労働省といたしましては、こうした検査体制を的確に実施することによりまして、我が国でリスク評価を経ていない遺伝子組み換え食品を含めた輸入食品の安全性を確保していく所存でございます。
以上でございます。
○村岡委員 それに関連して、輸入食品がどんどん入ってきているわけですけれども、原産地表示というのが日本の場合はほとんどされていない。韓国は、海外からの輸入ということぐらいですけれども、全製品をほとんどやっている。
消費者庁の方では、河野消費者庁担当大臣もこれを検討すると言っていますけれども、やはり輸入品に関して消費者にしっかりと安心をいただくために、この取り組みはどのようにする予定でしょうか。
○吉井政府参考人 お答えいたします。
加工食品の原料原産地表示につきましては、総合的なTPP関連政策大綱におきまして、実行可能性を確保しつつ、拡大に向けた検討を行うことが、食の安全、安心に関する施策として盛り込まれたところでございます。
このことを踏まえまして、農林水産省と消費者庁の共催で、本年一月より、加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会を開催いたしまして、今後の対応方策について幅広く検討しているところでございます。
消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保するためには、表示の対象を拡大することが望ましいというふうに考えているところでございます。具体的にどこまで広げるのか、あるいはどのように広げていくのかにつきましては、検討会でしっかりと御議論をいただいた上で、事業者の実行可能性を踏まえつつ、具体的な方向性を出してまいりたいというふうに考えております。
○村岡委員 これは消費者に対する責任でもありますし、やはり輸入食品に対して、遺伝子組み換えだとか日本で許されていないものに関してはきちんと消費者庁も取り組んでいただきたい、こういうふうに思っております。
それでは、地域ブランドのことでちょっと大臣にお聞きしたいんです。
各地域で地域ブランドということで言っておりますけれども、例えば、この前、日本経済新聞に夕張メロンの記事が載っていましたけれども、確かに、夕張メロンが地域ブランドとして日本全国に売れている。しかしながら、それが担い手がどんどんふえてくるという状況になっていない。それは夕張市全体の財政状況とかがあると思いますけれども、その書いている中でいきますと、夕張メロンは残っても、夕張市がなくなっちゃう。ということは、夕張メロンをつくっている農家は残るけれども、農村社会や市はなくなっちゃう。
だから、この地域ブランドというのも、それは一つの売れる材料にはなるんですけれども、限定品になりますから、余り量をふやすと安くなるという矛盾が出てきます。そういったときに、多品目で取り組んでいくんだということを言われると思いますけれども、こういう地域ブランドをやって、意図しない部分が出てき始めているのをどうお考えでいらっしゃるか。
○森山国務大臣 村岡委員にお答えいたします。
まず、地理的表示保護制度というのは、地域で生産をされ、高い品質と評価を得た農林水産物や食品について、その名称を知的財産として保護するというものであることは御承知のとおりでございますが、我が国では、昨年六月に、地理的表示法に基づきまして、夕張メロンや、地元のことで恐縮でございますが、鹿児島の黒酢など、これまで十二産品の登録を行ったところでございます。また、現在六産品が登録申請公示中でございまして、審査中のものが四十八ございます。
当面、平成三十二年までに、各都道府県において最低一産品の地理的表示の登録を目指して、登録申請に係る窓口、GIサポートデスクを設けまして、申請の支援を行っているところでございます。
GI産品登録の一層の推進を図るためには、GI制度をより魅力あるものにすることが必要であるというふうに考えておりまして、全国のGI産地関係者を集めまして、GIの普及啓発と産地間のネットワークを構築するGIサミットの開催等によるビジネス化の支援、国内における模倣品の不正使用取り締まりの強化、海外でのGI登録を通じた輸出促進等に取り組んでまいりたいというふうに考えておりまして、GI制度というものは、やはり非常に今からしっかり取り組んでいかなければならない大事な課題であるというふうに考えております。
○村岡委員 このGIとともに、成長産業という分野で考えると、スマート農業ということでロボット化。私も、宮城県の園芸のところで、イチゴやトマトをとるところのロボット化したところを見てきましたけれども、またこれも日経新聞に載っていた中で、今度は二十四時間イチゴをとるロボットとか、そういう実証実験をやっていたり、また自走のトラクターとかそういうのをやっていたりしますけれども、こういう実験はいいんです。
ところが、実験をやっていて一番大事なのは、担い手の人、それから前から言っていますけれども農業高校の人、こういうところのこれから担い手になる人が、今すぐ投資するのは大変です、今実証実験中でしょうから。そういうところに農業高校の生徒やまた担い手の人たちに積極的に見に行ってもらう、こういうところを何か農林省で考えていただけないかな。
先ほど言った大潟村というのは、実は全国三十八都道府県から集まってきて、みんなフロンティア精神を持っていますので、あの大規模農業をするのは日本では初のことなわけですね。それで、どこに勉強しに行ったかというと、アメリカにたくさん行ったり、ヨーロッパに行ったり、秋田県のトータルで、大潟村のパスポートの人口千人当たりの発行数というのが、県庁所在地は秋田市ですけれども、五倍ぐらいなんです。それだけ海外へ行って農業視察とかをやっているんです。
それは、高校生や担い手の人たちも海外視察もやっていくことは大切ですけれども、日本の中でも新しいスマート農業を目指していろいろな実証実験をやっていると思うんです。そういうところに積極的に行って見てもらう。将来、自分が農業者となって、経営者となっていくときに、それが使えるかどうか、また金額的にも、使うところがあればそれはコストが下がってくるはずなので、そういうことを教育や担い手の人たちに考えていらっしゃるかどうか。せっかく農林省がお金をかけてスマート農業の実証実験をやっているはずなので、どうでしょうか、その辺。
○森山国務大臣 大変いい御指摘をいただいたと思います。
実は、つくばに農林水産省の関係する研究施設があるものですから、私も出かけてまいりました。本当に、ああ、なるほど、将来はこういう農業になっていくんだろうなということを見せていただきました。自動走行のトラクターというのがどういうものであるのか、ドローンで農地を管理するということがどういうことなのかということもよくわかりました。
こういう施設につきましては、今、できるだけ多くの皆さんにごらんいただけるようにはなっておりますけれども、さらに、今委員御指摘のとおり、若い農業者の皆さんや地域の農業のリーダーの人たちにこういうところを見ていただく機会というのをできるだけつくっていくということが大事なことだなというふうに考えておりまして、申し込みをしていただければ、いつなら御案内できますとかという案内もしっかりできるように、少しシステムを考えていきたいと考えております。
○村岡委員 農業高校の修学旅行のときに、ちょっと東京に来たらそこに寄ってみませんかということで、全国の農業高校に大臣から、今のスマート農業でどんなことを実験でやっているのか、また自分の住んでいる近くにもある場合もありますし、そういうことをぜひ宣伝していただく。
せっかく将来のそういう担い手のためにいろいろ実験をやっていることが、たまたま見に行きたい、私を含めて、年代が上の人が、ああ、すごいな、二、三十年後はこうなるんだななんといったって、その人たちはやらないわけです。やはり若い人たちに見せるということが大切なので、そこはぜひやっていただきたい、こう思っております。
その中で、もう一つ、先ほど米のことをちょっと大臣に言っていただきましたけれども、今、我が国の米の輸出量の推移というのは、過去五年間で三倍ぐらいになっている。ただ、単位が余りにも小さくて、七千六百四十トンですか。例えば、考えたら、日本全体で八百万トンぐらいつくっている。その上、海外から入ってくるのはMA米で七十七万トン。七十七万トン入ってきて、その中で考えると、日本はまだ七千六百四十トン。
これは、米を本格的に輸出するときに、どのような取り組みをして輸出をしていきたいと考えているのか、そこが余り見えてこない。MA米は自動的に買わなきゃいけないものですから、その数が多いのはわかっていますけれども、五万トンだ、十万トンだと外に売るための方策は、どんな政策で日本の米を売っていこうと思っているのか。そこがなきゃ、米だって売れるんだとか、そういう希望的観測ではもう全然それは信用されないということですので、その点はどう考えていますか。
○柄澤政府参考人 お答えいたします。
今御指摘ございましたように、国内の米の需要が毎年減少している中で、やはりパイを広げていくという意味で、海外のマーケットを的確に捉えて輸出していくということは大変重要な政策課題だと考えております。
今、政府としましては、いろいろな仕組みの中で推進を図っております中で、今御指摘ございましたように、平成二十七年七千六百四十トンということで、前年から六九%増、五年前から比べれば三倍以上ということでございます。
今、政府全体としては、お煎餅や何かのお菓子、それから日本酒も含めまして、二〇二〇年までに六百億円という目標を明確に掲げましていろいろな政策を打っております。
政策の中で、例えば、相手国の検疫等の問題にアプローチする、あるいは、全国団体を立ち上げて統一ロゴマークをつくる、オール・ジャパンでプロモーションをする、また、二十七年度補正予算で措置しましたような事業の中で、新たなビジネスモデルの構築、輸出先マーケットのニーズを踏まえたプロモーション、いろいろなことをやっております。
また、国内の政策の中におきましては、輸出用に向けられる米につきましては、農林水産大臣による計画の認定を受ければ、生産数量目標にとらわれることなく、その外数として自由におつくりいただくというようないろいろな政策を打っております。
こういった中で、できるだけ早く輸出目標六百億円にたどり着くように、引き続き努力を重ねてまいりたいと存じます。
○小里委員長 では、締めてください。
○村岡委員 ありがとうございました。
TPP、秋に承認ということで大島議長がアメリカで言っているらしいですけれども、やはりここはしっかりと、TPPに不安があるところを議論し合い、対策も現場に配慮してやっていくということで、これからも農林水産委員会でも議論をしたいと思っていますので、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
○小里委員長 次に、岸本周平君。
○岸本委員 民進党の岸本周平です。
質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。
あした、漁業共済の関連の法案の審議に入りますので、きょう、あしたと、政策の話ではなくて、水産庁の皆さんの現場のお話について、少し大臣と議論をさせていただきたいと思います。
何より、私どもの国日本は、世界第六位の排他的な経済水域を持っております。大変大きな面積であります。しかも、日本周辺の、日本列島がある太平洋北西地域の海域といいますか、北西の海域は世界の三大漁場の一つと言われております。
この中で、実は、水産庁の職員の皆さんが現場で大変な御苦労をされております。水産庁本庁がございますけれども、全国六カ所に漁業調整事務所があります。それから、沖縄は沖縄総合事務局に基地がございまして、漁業取り締まり船、それから取り締まりの航空機までお持ちで、現場で活動されているわけです。
我が国の周辺水域、特に東シナ海、ここでは、皆さん御存じのとおり、中国の漁船、台湾の漁船、違法な操業を行っているケースが後を絶ちません。当然、遠洋水域の漁業の取り締まりについても、水産庁の皆さんが御努力をされているわけであります。
そういう意味で、政務官にお聞きしたいんですが、最近の外国漁船による違法操業の関係で、外国漁船の拿捕件数ですとか、あるいは外国漁船によるものと見られる密漁漁具の押収件数など、実態について数字をお聞かせ願いたいと思います。
○加藤大臣政務官 岸本委員の御質問にお答えをいたします。
水産庁によります平成二十七年の外国漁船の年間拿捕件数は十二件でございます。内訳は、韓国が六件、中国が三件、台湾が三件となっておるところでございます。
また、外国漁船に対する立入検査の件数は、平成二十七年で百十一件でございます。
我が国の排他的経済水域に違法に設置された外国船によるものと見られる密漁漁具の押収件数は、平成二十七年は二十一件で、内容は、刺し網が約四十キロメートル、かご漁具が千七百八十三個となっておるところでございます。
○岸本委員 そういう結構な件数ですよね。こういう件数をきちんと水産庁の職員が現場で監視をしているわけですけれども、では、どのような体制で監視されているのか、現状をまた御報告いただきたいのと、最近ふえているわけですから、ちゃんと充実した体制ができているのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
○加藤大臣政務官 お答えいたします。
水産庁の取り締まりにつきましては、国内の操業実態や外国との漁業協定などの知見を有する漁業監督官が行っております。漁業関係法令の違反事案だけではなくて、我が国と外国漁船との操業トラブルの未然防止や、操業秩序維持のための指導にも重点を置いておるところでございます。具体的には、洋上における監視、指導や、漁船への立入検査による操業ルールの履行状況確認等を行っておるところでございます。
また、漁業取り締まり船の勢力につきましては、平成二十三年度、官船六隻、用船三十二隻の合計三十八隻でございましたけれども、平成二十六年度以降は官船七隻、用船三十七隻の合計四十四隻に体制を強化いたしておるところでございます。
なお、用船もあらゆる取り締まり活動を実施することが可能ではございますけれども、官船は乗組員全員が公務員であるだけでなく、機器類等の装備もすぐれておりますことから、取り締まり活動の中核を担っておるところでございます。用船はこれを支援いたしておるというところでございます。
○岸本委員 私も最初勉強してびっくりしたんですけれども、四十四隻もの船が、水産庁の職員を中心として、非常に広い水域の中で取り締まりをしていただいている。本当に御苦労だと思います。
大臣にお伺いしたいんですけれども、漁業監督官と呼ばれる水産庁の職員が当たっているわけですけれども、彼らの、彼女たちの職務権限、どんな職務権限でやっていらっしゃるのか。あるいは装備、これが本当にしっかりとしたものがあるのかどうか。大変危険な外国漁船等への立入検査もやっていらっしゃるわけですし、違法設置漁具の回収などもやっていらっしゃるわけですけれども、本当に今の現行の法律や体制で十分とお考えなんでしょうか。よろしくお願いします。
○森山国務大臣 岸本委員にお答えいたします。
漁業取り締まり船で頑張っている職員に対しまして御評価をいただきますこと、まず厚くお礼を申し上げます。
お尋ねでございますが、漁業監督官は、漁業法等の法律に基づき、我が国国民及び我が国周辺海域で操業する外国人の行う漁業に関し、立入検査や違法に設置された漁具等の取り締まり権限を有しております。さらに、司法警察職員として指名された者は、逮捕状執行や送致などの司法手続を執行することができることとなっております。
なお、立入検査に臨みます漁業監督官は、ヘルメットやプロテクター、防刃ライフジャケット等の防具を着用するなど、安全性を確保しながら業務に臨んでいるところでございます。
○岸本委員 十分かどうかというお答えがなかったんですけれども、恐らく、大臣は十分じゃないと思っていらっしゃるから十分だという表現をわざとお使いにならなかったんだろうと思います。防具しか持っていらっしゃらないんですよ、防具しか。
それで、実は、初めて外国の漁船を拿捕したのが平成二十五年なんです。平成二十五年の二月に、排他的水域で無許可操業を行っていた中国の船を拿捕しています。このときに、決死の思いで、停船命令に従わない被疑船に着船して、乗組員が移乗したそうです。乗り込んだ瞬間にまた逃げて、それを追いかけるということでありまして、大変悪質で危険な行為に及んだわけであります。
こういう状況の中で、ごく一部の方は警察権に近いものはあるでしょうけれども、基本的には警察権はないわけですね。そういう意味で、本当に危険な勤務に命がけで、ある意味丸腰ですよね、武器を持たずに丸腰で違法な操業の船に単独で乗り込んで、それがまた逃走する、それを追いかける、そういう状況が実際あるわけです。
現実に、もう尖閣諸島周辺では、漁船なのか、公船もそうですけれども、どんどん入ってきています。あるいは、皆さん御記憶に新しいと思いますが、小笠原のあのサンゴの密漁、ひどかったですよね、去年。あのサンゴの密漁、あれを水産庁の皆さんは、ある意味、十分な権限も装備も持たされずになさっているわけです。
これはやはり海上保安庁と密接な連携をしていただくとともに、現行の制度、体制、どうでしょうか、大臣、考えていただけないでしょうか。
○森山国務大臣 漁業に関する法令の違反は、金銭的利益を目的とした経済犯であるということが建前であろうと思います。特に、外国人の排他的経済水域における違反に対する刑罰は罰金のみとなっております。
このような実態を踏まえれば、漁業関係法令違反については、人に危害を与え得る銃器の使用が社会通念的に許容されるような犯罪には当たらないのではないかというふうに考えているところでございますが、今委員御指摘のとおり、現場においては非常に厳しい状況もありますので、海上犯罪一般について取り締まり権限を有する海上保安庁と常時意思疎通を図っているところであり、今後も引き続き、適切に連携をして対応してまいりたいと考えております。
○岸本委員 大臣、今のは官僚が机の上で書いた答弁で、その答弁を書いた官僚は、船の上で外国の漁船を取り締まっているわけじゃないんですよ。彼らは、ネクタイを締めて、今ノーネクタイかもしれませんが、机の上で想定問答を書いているだけなんですよ。本当に現場は、もちろん経済事犯であることはわかった上で御質問しているんです、別に拳銃を持てと言っているわけではないんですけれども、現場の皆さんの、そういう意味で、御苦労をよく御理解いただいた上で、海上保安庁とできるだけ密接に連携していただきたいのはやまやまでありますけれども、それは今御答弁いただきましたので、ともかく現場の職員の皆さんの気持ちになって、水産庁の幹部の諸君もぜひ現場にしっかりと行っていただいて、彼らの声を酌み取っていただきたいと思います。
その上で申し上げますけれども、やはり漁業監督官の定員、人数、これは現実に相当少ないと思います。
それから、やはりその予算ですね。要するに、農林省というのは予算が結構でかいんです。農業土木もあります。いろいろな補助金もあります。でも、水産庁とか林野庁とかそういう出先の人たちのところの予算というのは、これは庁費というんですけれども、庁費は削られるんですよ、主計局に。主査が削るんです。本当にけしからぬ。いや、まあ随分削りました、済みません、私も削りましたけれども。
ぜひ、大臣、ともかく、今の現状でできる限りのことをやっていただきたい。もちろん制度を変える、法律も変えていただきたいですけれども、少なくとも来年度の予算要求に向けて、水産庁の現場の皆さんの定員そして予算、これをぜひふやしていただきますようにお願い申し上げますが、いかがでしょうか。
○森山国務大臣 主計官としての経験をお持ちになっておられる委員の御質問でございますので、現場を本当によくわかっていただいているなと思いますが、今後とも、予算、人員の充実を図り、漁業取り締まり体制をさらに強化してまいりたいというふうに考えておりますので、しっかり頑張ってまいりたいと考えます。
○岸本委員 それでは、超党派で、この委員会のメンバーみんなで応援いたしますので、よろしくお願いしまして質問を終わります。
ありがとうございました。
○小里委員長 次に、斉藤和子君。
○斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。
まず、熊本地震について質問します。
熊本県、大分県地方を中心に今も余震が続いています。避難生活を余儀なくされるなど、被害に遭われた皆さんの生活再建は待ったなしだと考えております。
昨日、熊本地震による農林水産関係の被害額が千八十五億円と発表されました。しかし、これには、養殖施設の被害額や、水田の亀裂、排水路の損害などによる米の作付ができないなどの額は含まれていない。用水路の被害が深刻な御船町の七滝土地改良区では今期の田植えを見送る方針であるという新聞報道もありました。田植えができなければ、当たり前のことですが収穫はできず、収入が途絶えることになります。今後、引き続き調査が行われることになりますけれども、この被害額というのはさらに膨らむことが容易に想像できるわけです。
こうした状況の中で、国としてはどのような支援を考えているのか、端的にお示しいただきたいと思います。
○森山国務大臣 斉藤委員にお答えいたします。
昨日、農林水産省といたしましては、既存の事業の運用を工夫することなどによって、補正予算を待たずに実行できる対策を取りまとめて公表いたしました。
例えば、畜産の方々も、畜舎が全部倒れているものですから、こういうことに対してどういう制度があるんだろうかということがわからないと、なかなか再生産をしようという気持ちになっていただけないものですから、できるだけ早くお示しできるものはお示ししようということでございます。
また、引き続き、補正予算で措置をされます復旧予備費なども活用させていただきまして、被災された農林漁業者の皆さんが速やかに経営再建が図られるように、また、創造的な復興にも資するように、必要な対策について検討し、対応してまいりたいと考えております。
○斉藤(和)委員 今の制度でできることを早急にやりながら、さらに創造的にという御答弁がありました。非常に私は大事だと思うんです。
熊本県が、十一項目に及んだ緊急要望を初めとして、さらに国に対して具体的な要望がこの間出されています。これはどれも私は現場からの切実な声であり、要望だというふうに感じました。
この要望に対して積極的かつ迅速に対応する必要があると考えますが、国として、この県の要望に対してどのように対応しようと考えているのか、その認識をお伺いいたします。
○森山国務大臣 お答えいたします。
昨日、熊本県知事からは、被災農林漁業者の経営再建に向けた支援をしっかりやってくれ、また、農地、農業用施設の早期復旧への支援をやってほしい、共同施設及び卸売市場の早期復旧復興への支援をやってほしいということでございまして、ちょっとこの市場が余り全国に例がないものですから、民設民営なものですから、といいながら、かなりの取扱量をやっている市場なものですから、そのことへの御心配も大きいのだろうと思います。あと、森林・林業、木材産業の復旧復興への支援、水産基盤の早期復旧及び水産業に対する支援、県が管理する農地海岸保全施設の直轄権限代行による早期復旧について要望をいただきました。
きのう公表させていただきました内容でも幾らかお応えができると思いますが、本日の閣議におきまして、非常災害として指定をする政令が決定をいたしましたので、これによりまして、海岸保全施設の災害復旧事業の直轄代行が可能となりましたので、直轄代行させていただく方向で検討を進めておるところでございます。
引き続き、補正予算で措置されます復旧予備費などを活用して、被災された農林漁業者の皆さんの速やかな経営再建を図るとともに、創造的な復興にも資するように、必要な対策について検討し、実施をしてまいりたいと考えております。
○斉藤(和)委員 確認なんですけれども、県から出てきた要望に応える立場で頑張るという認識でよろしいでしょうか。
○森山国務大臣 県からの要望にはできるだけお応えする方向で努力をさせていただきたいと考えております。
○斉藤(和)委員 できるだけを本当に全てにおいて県の要望に応えるという立場でぜひ取り組んでいただきたいというふうに感じております。
次に、先ほど大臣からありましたとおり、熊本県知事が昨日九日に政府に提出した、復旧・復興に係る特別の措置を求める要望の中で、特別要望事項として、「復旧・復興に係る特別な財政措置等のための特別立法措置」が挙げられています。その中には、「地方自治体が財政面で安心感をもって復旧・復興に取り組んでいくためには、国による財政支援への明確な担保と長期的な支援が必要である。」というふうにした上で、新たな補助制度の創設や補助率のかさ上げなどの財政措置及び地方負担分の全額を特別交付税で賄う特別枠など、特別の立法措置を講じていただきたいというふうに書かれています。
これは総務省の方にお聞きしますけれども、私は、この要望に思い切って応える、そういう決断をすべきではないかというふうに思うわけです。それからもう一つ、県がもし独自に農林水産業に対する対策を打つような条例を制定した場合、被害を受けた方々に補助金を出すことを県が決めた、それに対する交付税措置をすることは可能なのかどうか。この二点をお聞きします。
○内藤政府参考人 お答えいたします。
今回の熊本地震を受けまして、先ほど来お話ございますような要望が提出されているものと承知をいたしております。
まずは、関係省庁におきまして、こうした要望を十分に踏まえて、国庫補助制度等の充実によりできる限り地方負担の軽減を図る、これが重要かと存じます。
その上で、総務省といたしましても、地方単独事業として対応せざるを得ないものも含めまして、なお残る地方負担につきましては、特別交付税を含め、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じまして、被災団体の財政運営に支障を生じることがないよう適切に対処してまいりたいと考えております。
○斉藤(和)委員 もう既に町の予算の一年分を超えているだとか、一割負担もできないという声が自治体の方から上がっているということもお聞きしています。ぜひ、本当に、できる限りというよりも、地方負担が最大限ないように取り組みを強化していただきたいというふうに求めます。
次に質問を進めたいと思います。
全然テーマがかわりまして、杉の非赤枯性溝腐病という問題について質問をいたします。
この杉の非赤枯性溝腐病というのは、一九六〇年に茨城県で初めて確認をされた後、一九六四年には千葉県でも確認をされます。
非赤枯性溝腐病というのは、かかってしまうと幹の側面に縦長の溝が形成されて、腐朽が進むと溝の中央部は樹皮が剥げ、腐朽部を露出するような状態になる。植栽後約二十年経過してから特徴的な溝が確認されるといったような病気です。この非赤枯性溝腐病にかかってしまった杉というのは、伐採をして、この病気にかかりにくい苗木に植えかえる事業が今行われています。
千葉県は、昭和初期に全国的に蔓延した赤枯病に強いということで「サンブスギ」を奨励し、一九九六年に、千葉県の調査によると、杉林全体の一七・八%を占める七千七百三十四ヘクタールにこのサンブスギが植えられているんです。しかし、この赤枯病には強かったサンブスギが、非赤枯性溝腐病にはかかりやすいという弱点がありました。
九六年の時点で半分以上のサンブスギが感染されるという調査が出ているんですが、調査から二十年たった今では、この病気にかかってしまった被害林というのはさらにふえて、被害が全くない林というのは五%ぐらいしかないのではないかという話になっています。しかも、伐採、植えかえには当たり前のようにお金も人手も必要です。しかし、伐採した杉は、本来一万円ぐらいで値がついて取引されるものが、二、三千円の木質バイオマスの原料にしか今現在なりません。
こうした状況の中で、千葉県は、平成九年から本格的に対策を始めるんですが、二十年で、七千ヘクタールあると言われている被害林のうち、やっと千ヘクタールまで伐採対策ができた段階、今年度の伐採対策は十六ヘクタールなんです。
自治体任せにしないで、この被害林を早急に解決していく必要があるというふうに私は考えるわけですが、国として思い切った支援をする必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○森山国務大臣 お答え申し上げます。
杉の非赤枯性溝腐病につきましては、昭和三十年代から被害が確認をされており、現在、千葉県において集中的な被害が発生をしており、その被害面積は四千ヘクタールに及んでいるのではないかと承知をしております。
この病気につきましては、これまでも国の試験機関の課題として取り組んでまいりました。昭和三十九年に、当時の農林省林業試験場において原因となる病原菌を突きとめたほか、サンブスギが他の杉の品種に比べて被害が発生しやすいこと等を明らかにしてきたところでございます。
その後、林業試験場が国立研究開発法人等へ移行した後も、国立の試験研究機関が中心となりまして、原因となる病原菌に対処する技術開発、苗木段階での抵抗性の評価等について試験研究を行っているところでございます。
農林水産省としましては、今後とも、国立研究開発法人森林総合研究所の運営費交付金の確保等を通じまして、杉の非赤枯性溝腐病対策については積極的に支援をしていく考えでございます。
○斉藤(和)委員 この非赤枯性溝腐病はサンブスギがかかりやすい。それは千葉県に多いので、これまで千葉県の問題だというふうにされてきました。しかし、このサンブスギの苗木というのは、昭和三十年から四十年代にかけて広く流通をし、最盛期では年間四百万本生産されていた。福島や関東一円、愛知や愛媛にも植栽されていたというふうにもされています。
さらに、二〇一四年に千葉県の森林総研が、非赤枯性溝腐病と病原菌、今発見されたというお話がありましたけれども、この病原菌がチャアナタケモドキというキノコの一種なんですが、に関する最近の知見という報告を発表しています。そこには、関西でもこの罹病が報告されたと。「千葉県以外の地域では、初めて「サンブスギ」とは異なるクローンのスギで罹病が確認された。以上から、本病の発生は「サンブスギ」や千葉県に限定されるものではなく、他のクローン及び地域においても問題となる可能性が示された。」とこの報告書には書かれています。
これ以上の病気の拡大を防ぐために、研究機関として研究を進めることと同時に、私は、森林の再生事業において補助金を増額するだとか、やはりその担い手を一方で育成する必要がありますので継続的な支援を国としてしっかり行っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○今井政府参考人 お答えいたします。
林野庁では、毎年、各都道府県に対しまして、森林病害虫等に係る森林被害について、県からの報告を求めるという形の調査を行っております。
杉の非赤枯性溝腐病につきましては、これまで千葉県からのみ被害報告がなされておりましたけれども、先生御指摘のとおり平成二十四年に京都でも発生が確認をされたところでございます。
林野庁といたしましては、京都のように新たに病害虫の発生が確認されたところには、森林総合研究所による現地調査も行いましたけれども、今後とも各都道府県に対する森林病害虫等調査を引き続き毎年継続して実施するほか、こうした報告結果や現地の調査結果につきましては各都道府県及び試験研究機関と情報を共有していく、そういった取り組みを徹底していく考えでございます。
○伊東副大臣 私からは、補助金の増額、あるいは事業を継続的に取り組む点についての国の支援策についてお話をさせていただきます。
この非赤枯性溝腐病による被害を抑え、森林の多面的機能の発揮を図るためには、この病気の早期解消に向けまして、委員御指摘のとおり被害木の伐採、除去と植えかえを促進することが何よりも重要であります。
このため、環境林整備事業におきまして、植栽や保育に加え、被害木の伐採についても支援の対象としているほか、公的森林整備事業によりまして、市町村等が実施主体となる場合には通常六八%の補助率を九〇%にかさ上げして支援することといたしております。
今後とも、千葉県ほか関係県と緊密に連携しつつ、これらの対策を継続的に進め、この溝腐病による被害の早期解消に努めてまいりたいと考えております。
○斉藤(和)委員 本当に対策が待たれているんです。
ただ、千葉県の要は森林の一筆の面積が平均〇・三ヘクタールと非常に小規模で、所有者や境界が不明な山林も非常に多い。これは森林法の改正にもかかわるんですけれども、今後、市町村が林地台帳を整備する、自治体の作業負担の軽減だとか、そもそも、やはり境界が確定されていないために、伐採をしようと思ってもなかなかそれが進まないという現状がある。そうした不在村地主の明確化だとか、そもそも境界をはっきりさせるための地籍調査を、こういう被害林を優先してやるということが必要ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○伊東副大臣 御指摘のとおりでございます。伐採するためにはその林地の所有者の了解が必要なところであります。小規模な森林所有者が多いこと、あるいはまた森林の境界がわからないということがあって、この伐採、改植が進まないわけでございます。
こうした中で、農水省といたしましては、今国会に森林法改正法案を提出し、先般、衆議院におきまして可決いただきましたが、この法案におきましては、市町村が森林所有者や林地の境界に係る情報等を一元的に取りまとめて林地台帳として整備する制度を創設することといたしております。
市町村が林地台帳を整備するに当たりましては、既に都道府県側が整備している森林簿の情報や、約半数の市町村で既に整備しております森林GISの活用ができること、また、法施行から二年間の準備期間を設けること、さらに、平成二十八年度の地方財政計画におきまして、林地台帳の整備を含む森林・林業対策に新たに五百億円が計上されたことなどによりまして、市町村に対する過度の負担とならないようにしながら整備を急ぎたい、このように考えているところでございます。
○斉藤(和)委員 ぜひ、被害林を優先するという形で推進していただきたいというふうに思います。
実は、この非赤枯性溝腐病の病原菌チャアナタケモドキ、これは杉だけの問題ではありません。コウヤマキの枝枯れだとか、サワラやヒノキの材質腐朽の原因菌もチャアナタケモドキだと言われています。
さらに深刻なのは、森林だけではなくて果樹にも影響し、梨の萎縮病の原因菌もこのチャアナタケモドキであることが近年発表されました。梨の萎縮病にかかると、春先に出る芽の葉っぱの発育がおくれて、葉が波打ったり、葉の縁が黒くなる、最終的には木全体が枯れてしまう。もちろん実がつかない、実がついたとしてもピンポン球程度。生産農家にとっては、この萎縮病にかかってしまうということは大きな損害になる病気なわけです。
ここでお聞きしますが、この梨の萎縮病は全国でどのような発生状況になっているか、お答えいただけますか。
○小風政府参考人 お答えいたします。
梨の萎縮病は、糸状菌によって引き起こされまして、感染すると葉に萎縮症状があらわれ、ひどくなると枝や木全体が枯れる病気でございます。樹勢が弱い老木で発生が顕著でございます。
日本各地で古くから発生が報告されておりましたけれども、長い間その病原菌は明らかになっておらず、平成二十三年になって初めて病原菌チャアナタケモドキが特定されまして、診断が可能となりました。
これまで本病の発生状況につきましては全国規模での調査を行っておりませんでしたけれども、平成二十四年に独法の農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所が実施しました梨の萎縮病のワークショップにおきまして、少なくとも二十四県で広く本病が発生している、あるいは幸水という品種で発生している、そういうことが報告されております。
○斉藤(和)委員 つまり、調査されていないんです。
私は、先ほども紹介しましたけれども、この梨の萎縮病というのは、秋田、福島以南、本州各県、四国、九州に至るまで、日本各地で発生していると。梨というのはそもそも沖縄県以外全ての都道府県で栽培されていますので、早急にこの梨の萎縮病について全国調査を行うということが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○森山国務大臣 お答えをいたします。
梨の萎縮病につきましては、平成二十三年に農業・食品産業技術研究機構の果樹研究所におきまして診断方法が確立をされました。これを受けまして、平成二十四年の五月から六月にかけまして全国四カ所で梨の萎縮病の診断ワークショップを開催させていただきまして、情報の徹底を図りました。
その結果、大体わかってまいりましたのは、太平洋側での発生が非常に多い傾向にあるなということもわかりましたし、また、梨では幸水という品種が極めて発生が多いということもわかりました。
今後も、梨産地を有する各県の病害虫防除所や農協等においてこの診断方法を活用していただきまして、発生状況の適時適切な把握に努めていくことが必要であるというふうに考えておりまして、国としては、梨の主産県の意向も踏まえながら被害状況の調査等に取り組んでまいりたいと考えております。
○斉藤(和)委員 ぜひ、被害状況をつかむという立場で取り組んでいただきたいと思います。
それと同時に、やはり農業者の皆さんは、防除方法、どうやったらこの梨の萎縮病を防げるのかということも非常に求めていますので、プロジェクトチームをつくるなどして、林業だけではなくて果樹にも広がっていますので、分野を超えて、このチャアナタケモドキによる病気がどんなものなのか、どうやったら防げるのか、これをぜひ原因究明していただきたいということをお願いします。
○森山国務大臣 この病害につきましては、同じ病原菌の感染により発症するなど、共通のところがあります。
今後は、林業と農業の分野を超えて、関係する機関が研究成果に関する情報の交換を行うなど連携した取り組みが必要であると考えておりますので、そのことをしっかりやらせていただきたいと考えております。
○小里委員長 終了してください。
○斉藤(和)委員 はい。
ぜひ連携して原因究明を進めていただきたいということをお願いして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○小里委員長 次に、仲里利信君。
○仲里委員 ハイサイ グスーヨー ウクタンデーネーミソーラニ。長い時間大変御苦労さまでございます。紹介いただきました沖縄四区の仲里でございます。
きょうは、民進党さんと共産党さんの御好意によりまして質問をする時間を与えていただきまして、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。
さて、質問をする前に、熊本、大分の大震災におきまして犠牲になられたみたまに対し哀悼の誠をささげますと同時に、被災に遭われた皆さんの一日も早い復興を心から祈念いたしまして、質問に入りたいと思います。
私は実は、現役の国会議員で恐らく私一人だと思いますけれども、現在でも農業従事者であります。二十数年間やっております。サトウキビを約二分の一ヘクタール、千五百五十坪つくっております。
そういう意味で、きょうはサトウキビの振興策についてまず質問をさせていただきたいと思います。
サトウキビは、台風や干ばつ、病害虫等、沖縄の厳しい自然、気象環境においても比較的安定した生産が可能な作物であることから、県内のほぼ全域で栽培され、全耕地面積の約五割、全農家数の七割、農業産出額の一・七割を占め、関連産業まで含めた経済波及効果が生産額の四倍に達する基幹作物として、地場産業である製糖業とともに地域の経済や雇用を支えております。
しかし、近年は、収穫面積や農家数、単収、産出額の減少や低迷が続いております。その理由は、第一に、高齢化の進展や担い手不足の解決策として考えられた刈り取りや耕うん等の機械化への移行が円滑に進まなかったことであり、第二に、頻発する気象災害や病害虫による被害への対応が万全でなかったことであります。
それでは、第一の理由の、サトウキビ作の中で最も労力を要する管理、収穫作業の機械化についてお尋ねをいたします。
これまで、サトウキビの収穫作業は全て人力による手刈り方式で行われてまいりました。しかし、近年の後継者と労働力不足、さらには、沖縄県内にいまだに数多く残っている分散した小規模な圃場に対応できる機械化を進めることが必要であります。
このため、沖縄県では、サトウキビ収穫機械導入基本構想を策定し、また、新機種の開発、導入等に対応するため、構想の見直し等を適宜行って、各地域の実情に即した高性能機械の整備を積極的かつ計画的に進めてまいりました。
なお、サトウキビの刈り取りを行うハーベスターや沖縄の粘土質のかたい土を深く掘り起こすバックホー等の機械化に当たっては、農畜産業機械等リース支援事業等により対応してきたところでありますが、沖縄県ではいまだ十分に機械化が進んでいないことから、政府におかれましては、今後も同事業の予算額並びに補助対象となる事業内容の継続等に配慮をいただきたいと考えております。
つきましては、農林水産大臣から、一言、前向きな答弁をお願いしたいと思います。
○加藤大臣政務官 仲里委員の御質問にお答えをいたします。
サトウキビにつきましては、台風常襲地帯であります沖縄県及び鹿児島県南西諸島における、ほかに代替不可能な基幹作物であり、産地の製糖工場や関連産業と相まって、地域の雇用、経済を支える重要な作物でございます。
高齢化の進展等により担い手が減少する中で、将来にわたるサトウキビの安定的な生産を確保していくためには、サトウキビ生産の省力化、効率化を進めていくことが必要であると考えております。
このため、これまでも、生産構造の安定化を図るため、機械リースに対する支援を行ってきたところでございますし、直近では、平成二十七年度補正予算におきまして、ハーベスターや株出し管理機等の導入支援を行ってきたところでございます。
今後も引き続きまして、産地の要望を踏まえながら、サトウキビの安定生産の確保に向けた取り組みへの支援に努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
○仲里委員 次に、第二の理由の、気象災害や病害虫発生等による被害への万全な対応策についてお尋ねをいたします。
サトウキビは、本来、沖縄の厳しい気候風土に最も適した強い作物であります。しかし、近年の大型台風の相次ぐ襲来や干ばつの継続、病害虫、イネヨトウ虫、メイ虫類等の大量発生等により、除塩やかん水、防除等の対策を迅速かつ的確に講じることができなかったため、サトウキビ農家は甚大な被害をこうむり、いまだに持続的な再生産や安定的な生産の維持を行うまでには至っておりません。
このため、政府の理解をいただいて、平成二十四年度のさとうきび等安定生産体制緊急確立事業等により造成したさとうきび増産基金を活用して、サトウキビの生産段階において、気象災害等の発生状況に応じたさまざまな対策を講じ、さらに、平成二十七年度にはセーフティーネットの内容の付与と予算の継続措置を図っていただいたところであります。
しかし、いまだに気象災害等による不作の被害から完全に回復していないことや、気象災害等が今後も見込まれることから、引き続き万全の対策を講じるためには、今後も同基金の予算額の確保が必要でございます。
また、同基金の発動要件が、注意報の発令や降水量、台風被害率、単収率等の条件が付されており、また、その判定に一定の時間を要することから、時期を逸する可能性があるため、見直しを行うことが必要であると考えております。
つきましては、このさとうきび増産基金の引き続きの予算額の確保と発動要件の見直しにつきまして、農林大臣からお言葉を頂戴したいと思います。
○森山国務大臣 仲里委員にお答えを申し上げます。
さとうきび増産基金につきましては、産地である沖縄県及び鹿児島県の南西諸島が台風の常襲地帯であること等を考慮いたしまして、平成二十七年度から、自然災害からの生産回復のためのセーフティーネット基金として位置づけられたところであります。
こうした中、二十七年度におきましては、例えば、沖縄県においては、全島で病害虫発生に対する防除等につきまして本基金を発動させていただきまして対策に取り組んでまいりましたし、適切に実施をされてきていると考えています。
また、二十八年度につきましても、病害虫防除等必要な対策に取り組めるように、本基金について必要な予算措置をしております。
これまでも自然災害の発生に対する機動的な対応をしてきたところでありますが、産地の状況も踏まえつつ、引き続き適切に本基金の運用に努めてまいりたいというふうに考えておりまして、基金の発動要件、基金による対策等々については、現地の意見もよく聞かせていただきまして、しっかりと対応させていただきたいと考えております。
○仲里委員 前向きな意見だと捉えておりますけれども、サトウキビは、沖縄県におきまして、三十八ある有人離島の中でほとんど栽培をされているんです。これは私がずっとこれまでも言ってきているんですけれども、このサトウキビこそがいわゆる国土防衛上も大きな要因になっているというふうなことで、単なる農林水産だけにとどまらない大変重要な作物であるということを御認識いただきまして、今後ともよろしく対応をお願いしたいと思います。
続きまして、日台民間漁業取り決めについて質疑を行います。
皆様のお手元には、ただいま本員の手元に掲示しておりますパネルと同じ資料が配付されているものと思います。どうぞ御参照ください。
日台間では、一九九六年以降、十七回にわたり漁業協議が行われてまいりました。しかし、尖閣周辺水域を伝統的な漁場とみなす台湾漁業者の要求水準が高く、操業水域やルール等で主張が対立し、交渉が折り合うことができなかったため、無秩序状態が続いていました。
そのような中、二〇〇八年の尖閣諸島沖での船舶衝突事故や、二〇一二年の尖閣諸島国有化等に伴う関係悪化と中台の共闘の可能性等を受け、政府は、沖縄の漁業者等が国連海洋法条約にのっとり、日本が主張する地理的中間線、図面では赤の実線を基本に協議、交渉するよう繰り返し求めたことを無視して、沖縄の漁業者の了解を得ないまま、官邸主導で、突然、水域の提供という政治決着を見ております。
それは、台湾が一方的に主張している台湾暫定執法線、図面では黒色の実線より外側の、我が国の排他的経済水域内の八重山北方三角水域と久米島西方三角水域、図面では赤色で塗った範囲を一方的に台湾側に提供したことや、我が国の排他的経済水域内に法令適用除外水域、図面では緑色の実線で囲まれた範囲を設定して台湾漁船の自由な操業を認めたこと、さらに、その中でも最も好漁場である特別協力水域、図面では赤色で塗った範囲も操業可能水域としたことでありました。
これらの水域は、市場価格の高い回遊性魚類であるクロマグロやキハダマグロ、カツオ、アジ、サバ、ヤリイカ等の産卵や生育の場であり、好漁場であります。しかし、これらの海域は、ほぼ台湾漁船の独占状態となり、沖縄の漁業者は締め出されて、宮古、八重山の先島諸島の南方海域での操業を余儀なくされております。
この結果、取り決め発効後のクロマグロ漁獲量は、何と台湾側が三・六倍と大幅に増加したことに対し、沖縄県側は二割減となっております。
一体、我が国の海洋政策や漁業政策の基本はどうなっているのか、疑問を持たざるを得ません。このような政府のやり方は、沖縄の思いや要望を無視し、沖縄の権益を切り捨てたことにほかなりません。沖縄は、辺野古の海だけでなく、海の好漁場においても政府によって差別をされ、無視をされ、踏みにじられているのです。
政府は、なぜ沖縄の漁業者の声や要望を無視するのでしょうか。なぜ台湾との協定を急いで結ぶ必要があったのでしょうか。
また、日台漁業取り決めに対しては、沖縄側からの要求に基づき、東経百二十五度三十分以東の水域と八重山北方三角水域の撤廃を求め、場合によっては取り決めの撤廃も辞さないという強い決意で臨むべきではないでしょうか。
それでは、海洋政策について外務省から、あるいは漁業政策について水産庁から答弁を願います。
○木原副大臣 お答え申し上げます。
今委員からるる御説明いただきましたこの日台民間漁業取り決めにつきましては、御指摘いただいたように、十七年の長きにわたりまして協議を重ねた結果として、海洋生物資源の保存、利用や操業秩序等について共通認識に至り、署名に至ったものだというふうに承知をしております。
本取り決めの交渉過程におきましては、沖縄の漁業関係者からの陳情をもちろん受けておりますし、私ども外務省の幹部も沖縄、現地を訪問させていただきまして、漁協の組合長の皆様とも膝詰めでお話をさせていただいております。また、水産庁の幹部の皆さんも複数回沖縄を訪問して、地元の声に真摯に耳を傾けてきたと承知をしております。
そして、相手がいることでありますが、そういう相手がいる中で、我々の主張、また沖縄の漁業関係者の皆様の声が反映されるよう最大限の努力を行い、最終的に合意に至ったということであります。
一方で、今御指摘いただきましたように、沖縄の漁業関係者の方々がこの日台民間漁業取り決めにこれまで累次にわたりまして不満を表明されていること、また改善を求められていることを真摯に受けとめております。
今後とも、操業ルールについて日台双方の漁船の操業状況に応じた必要な見直しが行われ、また、この取り決めが円滑に実施されていくよう、政府としても、特に現場の皆様の声にしっかり耳を傾けながら、引き続き適切に対応また支援を行ってまいりたいと考えております。
○佐藤(一)政府参考人 お答えいたします。
日台民間漁業取り決めにつきましては、漁業実態が複雑で日台双方の漁船が関心を有する水域につきまして操業秩序を構築すること、これが長年の課題となっていたところでございまして、協議を重ねてきた結果、平成二十五年四月に署名されるに至ったところでございます。
この取り決めの成立によりまして日台漁業委員会という協議の場が設けられたことから、この枠組みを活用いたしまして、日台間で操業ルールづくりなどが図られるようになったところでございます。
この日台漁業委員会は漁業関係者も正式な委員でございまして、これまで同委員会において、水産庁は、沖縄の漁業者等とともに台湾との交渉に臨みまして、操業ルールの確立に全力を尽くしてきたところでございます。
本取り決めにつきましては、沖縄漁業関係者の間に依然として不満があることは水産庁としても重く受けとめておりまして、今後とも、沖縄等の漁業者の声にしっかりと耳を傾けながら、沖縄の我が国漁業者が、台湾漁船とのトラブルがなく、安心して操業できるよう全力を尽くしていきたい、このように考えているところでございます。
○仲里委員 次に、資材価格及び製作費で約八百万円もかかる沖縄のマグロはえ縄漁具が、台湾漁船により切断をされたり持ち去られたりした場合の損害を救済するため創設された沖縄漁業基金について、沖縄側から、平成二十九年度以降の継続的な予算措置と制度の運用等の改善を求める要請があったはずですが、政府はどのように対応なさるでしょうか。農林水産大臣の答弁を求めます。
○森山国務大臣 お答え申し上げます。
沖縄漁業基金事業につきましては、平成二十五年度から平成二十八年度までとなっているところでございますが、本年二月に、沖縄県漁業関係者や沖縄県から事業の延長について要請を受けております。
平成二十九年度以降の取り扱いにつきましては、沖縄県漁業関係者ともよく相談をさせていただきつつ、検討をさせていただきたいと考えております。
○小里委員長 仲里利信君、締めてください。時間が参りました。
○仲里委員 今申し上げましたように、沖縄の漁業をなさっている皆さんは、一番好漁場である黒潮が、黄色い線でやっておりますけれども、そこが、台湾漁船にも、あるいは中国の漁船にも、いわゆる占用されるというんでしょうか、やられて、大変な目に遭っているんですよ。
我が国が尖閣諸島は日本固有の領土であるというふうにやっている以上は、断固とした決意でもって、水産庁を初め関係省庁のお力添えをいただいて、沖縄県の、あるいは九州各地から参ります漁業者の安定操業のために御尽力を賜りますようお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
イッペーニフェーデービル。ありがとうございました。
――――◇―――――
○小里委員長 次に、内閣提出、参議院送付、漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。
これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣森山裕君。
―――――――――――――
漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○森山国務大臣 漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
近年、漁業就業者の減少及び高齢化の進行、養殖業における配合飼料価格の高騰等、我が国の漁業を取り巻く環境は厳しいものとなっており、自然環境に左右されやすい漁業の再生産を確保し、漁業経営の安定を図ることがますます重要となっております。
こうした観点から、漁船損害等補償制度及び漁業災害補償制度という二つの補償制度の改善を図り、今後ともこれらの制度が漁業経営の安定に資する役割を着実に果たしていくことができるよう、この法律案を提出することとした次第であります。
次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、漁船損害等補償法の一部改正であります。
さきの東日本大震災において、一部の漁船保険組合では、巨額の保険金支払いが発生したことにより保険金支払いの財源が不足する事態となったところです。
こうした中で、今後、漁業者の減少や南海トラフ地震に備える必要があることから、漁船保険組合の事業基盤の強化が急務となっております。
このため、漁船保険組合の区域制限を廃止することで、全国を区域とする漁船保険組合の設立を可能とし、また、その設立に当たっては十分な保険金支払い能力を有する者のみを認可することとし、これにより事業基盤の強固な新たな漁船保険組合による安定的な保険を漁業者が享受できることとしております。
加えて、近年においても、拿捕、抑留等の事案が依然として発生しているところですが、現行の保険制度ではこれらの事案による損害の填補が十分にできないため、現行の保険の填補対象を拡大し、拿捕、抑留等を原因とする油濁損害、給与損害、人命損害及び漁獲物等の積み荷に係る損害等も填補可能とすることとしております。
なお、これまで、抑留された漁船乗組員の給与支払いについては漁船乗組員給与保険で保障を行ってきたところですが、今般の法改正により、拿捕、抑留等に填補対象を拡大した漁船船主責任保険において保障可能となることから、漁船乗組員給与保険は廃止することとしております。
第二に、漁業災害補償法の一部改正であります。
養殖共済については、地区内の養殖業者のうち一人でも共済契約の申し込みをしなかった場合、意欲ある漁業者が共済に加入できないといった問題が生じていることから、このような全員加入制度を撤廃し、個々の漁業者が個別に共済に加入できるようにすることとしております。
さらに、養殖共済の対象魚種については、これまで海面養殖業のみを対象としてきたところですが、ウナギ養殖業の共済ニーズが高まってきていることを踏まえ、内水面養殖業も養殖共済の対象とすることとしております。
加えて、特定養殖共済における掛金補助制度については、地区内の特定養殖業者の全員が共済に加入すれば、通常よりも高率の掛金補助が受けられる仕組みとなっております。
しかしながら、近年、漁業依存度の低い者が共済に加入しないことにより、意欲ある漁業者が高率の掛金補助のメリットを享受できない問題が生じていることを踏まえ、漁業依存度の低い者を除く全員が加入すれば高率の掛金補助を可能とすることで、漁業を主たる生活基盤とする漁業者へのメリットを保障することとしております。
以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○小里委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、明十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十三分散会