衆議院

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第4号 平成13年4月10日(火曜日)

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平成十三年四月十日(火曜日)

    午前十時十一分開議

 出席委員

   委員長 川端 達夫君

   理事 中谷  元君 理事 浜田 靖一君

   理事 水野 賢一君 理事 山口 泰明君

   理事 高木 義明君 理事 牧野 聖修君

   理事 田端 正広君 理事 藤島 正之君

      岩屋  毅君    臼井日出男君

      嘉数 知賢君    下地 幹郎君

      中山 利生君    宮下 創平君

      山崎  拓君    吉川 貴盛君

      米田 建三君    石井 紘基君

      小林 憲司君    首藤 信彦君

      楢崎 欣弥君    渡辺  周君

      河合 正智君    赤嶺 政賢君

      今川 正美君    小池百合子君

      粟屋 敏信君

    …………………………………

   外務大臣         河野 洋平君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      斉藤斗志二君

   防衛庁副長官       石破  茂君

   防衛庁長官政務官     岩屋  毅君

   防衛庁長官政務官     米田 建三君

   会計検査院事務総局第二局

   長            関本 匡邦君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   中村  薫君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   守屋 武昌君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    首藤 新悟君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  柳澤 協二君

   政府参考人

   (防衛庁契約本部長)   西村 市郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    田中  均君

   安全保障委員会専門員   鈴木 明夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  伊藤 英成君     石井 紘基君

  今野  東君     楢崎 欣弥君

同日

 辞任         補欠選任

  石井 紘基君     伊藤 英成君

  楢崎 欣弥君     今野  東君

    ―――――――――――――

四月五日

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)

 国の安全保障に関する件




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     ――――◇―――――

川端委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛参事官中村薫君、防衛庁長官官房長守屋武昌君、防衛庁防衛局長首藤新悟君、防衛庁運用局長北原巖男君、防衛庁人事教育局長柳澤協二君、防衛庁契約本部長西村市郎君、防衛施設庁長官伊藤康成君、外務省北米局長藤崎一郎君及び外務省経済局長田中均君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長関本匡邦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川端委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

川端委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木義明君。

高木(義)委員 民主党の高木義明でございます。

 限られた時間でありますが、当面する諸問題についてお尋ねをしてまいります。大臣の勇気ある、また元気な答弁を期待しております。

 まず冒頭、どうしてもお尋ねをしておきたいのは、米海軍の偵察機と中国軍戦闘機の南シナ海上空での接触事故についてでございます。

 私は、この問題は米中双方の冷静な対応をもって米中関係の悪化を避けてほしいと強く希望するのでございます。この米中関係の悪化とか南シナ海周辺あるいは両国の緊張の事態は、我が国日本にとっても決して人ごとではない、まさに我が国の平和と安全に重要なかかわり合いがあると私は思います。同時に、米国とは当然、日米安保条約という同盟国でもあるわけであります。直接、当事者ではなくとも、日本もこれにはそのようなかかわり合いを持っておるという現実を私たちは知らなくてはなりません。

 したがって、今、日米中の関係をこれからも安定させ、そのために日本は何ができるのか、その役割、協力、そういう意味で何かメッセージを持っておるのか、我が国がとるべき対応としてはどのようなものがあるのか、この点について、今日現在、いわゆる我が国の安全保障の担当責任者としての防衛庁長官のこの問題に対する考え方なり、そして今後どう行動をとっていくのか、この点についてぜひお考えを明らかにしておいていただきたい。

斉藤国務大臣 お答えを申し上げます。

 御案内のように、今回の接触事故、これは去る四月一日に発生をいたしたわけでありますが、米軍のEP3と中国戦闘機の接触事故でございます。

 事故原因を含め、事実関係の詳細は十分にいまだ明らかになっておりません。防衛庁としても関係情報の収集に努めているところでございますが、私は、良好な米中関係はアジア太平洋地域の平和と安全にとって非常に重要であり、防衛庁としては、乗員の安全確保を含め、本件が速やかかつ円滑に解決されることを希望しております。

 そして、高木委員御指摘のように、米中関係の悪化というのは何としても避けたいと私も念じておりまして、双方の交渉が決裂するというような事態はぜひとも避けていただきたい、私はその都度メッセージを発してきたところでございまして、引き続き、両国政府の最大の円満解決へ向けての努力を期待いたしているところでございます。

高木(義)委員 こういう場面でも日本はただじっと黙ってその交渉を見守っておる。何か主体性のあるメッセージを送るとかあるいは行動をとるとか、そしてまた、我が国の安全について重要なかかわりがあるとか、その辺の心構えというのは、まさにこれは米中交渉の推移を見守るとしてもきっちりとしたものを持っておくべきだ、このように私は思います。今の答弁では私は大きく不満です。

 この点について、外交責任者であります外務大臣の御所見を同時にお聞きしておきたいと思います。

河野国務大臣 米中関係が良好な関係で推移するということは我が国にとっても極めて重要なことでございまして、今回の事故に際しまして、私は先般アメリカのパウエル国務長官に電話をいたしまして、電話でやりとりをしたわけでございますが、その中でも私は、今回の事故はできるだけ速やかに円満な解決を図ってもらいたい、そのことがもちろん米中両国にとっても、さらには周辺国にとっても極めて重要なことである、そういうことを申した次第でございます。

高木(義)委員 今後、この問題が米中の冷静な対応をもって早く解決することを私は希望しております。

 さて、次の問題に行きますけれども、この四月二日に、午前十時四十六分、米海軍第七艦隊の潜水艦部隊所属の原子力潜水艦シカゴが佐世保港に無通報で入港をいたしました。そして、二十分停泊をし、米軍佐世保基地から来た小型船と合流をし、物資や人員を搬入して出港をした、こういう事実経過でございます。

 この問題については、さきのハワイにおけるえひめ丸の衝突事故がありまして、アメリカ海軍の規律がより問われておったわけでございますので、特に地元の周辺地域としては大変大きな問題としてとらえざるを得ないのでございます。

 この通報がなかった原因についてまた後ほど求めますけれども、この通報制度は、昭和三十九年、一九六四年八月にアメリカ政府が、米軍の原子力艦船の日本寄港について、入港時刻の少なくとも二十四時間前に通報するという声明を出して以来、ずっと事前通報をされてきたわけであります。通報のおくれは何度か過去にもあっておりますけれども、今回のこのような事態は、私は異例の事態だ、このように大変重要に考えております。特に、我が国と同盟関係にあり、しかも日米安保条約を基軸とする我が国として、その信頼関係は極めて重大でございます。

 そういった中で、今回こういう事態が起きたということについて、まず私は、我が国の防衛、安全保障の観点から、そして日米の信頼関係を一番大事にしなければならない防衛庁長官としてのこの問題についての御所見を賜っておきたい。

斉藤国務大臣 最近、米海軍に係る事故等が発生しているのは、御指摘のように事実でございます。このような事故等につきましては、適宜、米側に遺憾の意の表明や再発防止の申し入れを行ってきたところでもございます。

 二月十日でございますか、えひめ丸事件、米原潜グリーンビルの接触による転覆事故があって、私は、その後しばらくしていろいろなことが詳細にわかるようになって、記者団からのぶら下がりの質問の中で、ぶったるんでいるという言葉を使わせていただきました。そういう点では、もっと慎重にいろいろなことを対応してほしいという気持ちが本心でございます。

 特に、日米安全保障体制というのは、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定のために極めて重要な役割を果たしてきておりますので、我が国の安全保障政策の柱の一つでもございますので、お互いの信頼性向上に努めながら、まして信頼性に影響が出ないような、そのような努力を米側にも求めていきたいというふうに思っております。

高木(義)委員 外務大臣、この問題について、既に地元の光武佐世保市長は厳しく、納得いく説明と再発防止策が示されない限りにおいては入港を遠慮願いたい、いわゆる入港拒否という厳しい態度を持っておられます。

 この問題が起きまして、大臣は、四月の三日、閣議後の記者会見でありますが、米国からきちんとした報告があるまで入港に協力できない、こういう厳しい意思表示をしたのでございました。

 ところが、四月三日、同じ日に、フォスター駐日公使が陳謝に参りました。それを受けて、外務省としては、米国原子力艦船の入港に協力できる状況になった、このような趣旨のことを述べておりますが、この事実経過と考え方についてお示しをいただきたい。

河野国務大臣 今、まさに議員がお話しになりましたように、私は、四月の三日だったと思いますが、この事件を受けまして、記者会見におきまして、なぜこういうことになったのか、原因をはっきり確認して報告してほしいということを申しまして、その報告が来るまでは、自分としては原潜の入港には協力できないということを言ったわけでございます。これは今議員が御指摘になったとおりでございます。

 若干のいきさつを少し御説明させていただきますが、この件、すなわち四月の二日午前十時過ぎに、原子力潜水艦シカゴが通報なしで佐世保港へ入港して、十一時過ぎに同港を出発、出港したという件でございますが、この件につきましては、直ちにアメリカに対しまして、なぜこれまでと違う無通報の入港をしたのかという原因をはっきり確認するように指示をいたしました。北米局長から、ラフルアー在京米国大使館臨時代理大使に対しまして遺憾の意と再発防止を申し入れ、抗議をさせました。

 抗議をいたしましたところ、米側は遺憾の意を表明したわけでございますが、私としては、それでは十分ではないということで、今申し上げましたように三日の記者会見におきまして、再度米側よりしかるべき報告が来るまでは、私としては入港について協力できないということを発言したわけでございます。

 これを受けまして、外務省の北米局長が改めて在京米大のラフルアー臨時代理大使に対しまして原因究明を申し入れましたところ、その後、米側からの説明がございまして、佐世保港への無通報入港は、米海軍内部での連絡過程において十分な確認が行われなかったために生じた行き違いによるものであったという報告と謝罪がございました。無通報入港の原因について米側においてまさに確認をされ、日本側に報告があったわけでございます。

 したがいまして、原因が確認をされて日本側に報告をされた以上は、私としては、三日の記者会見で私が指摘をした条件は満たされたわけでございますから、そこで、協力しないという発言は条件が満たされたということになる、こう考えたわけでございます。

 しかしながら、こうした事態の発生はまことに遺憾なことでございますから、五日に開催をされました日米合同委員会におきまして、原子力艦船入港にかかわる通報手続が今後より円滑に遵守されることを確保するために協議していくことにしたわけでございます。

 この協議につきましては、米側よりも同意を既に得ておりまして、今後、早急に具体策を得られるよう協議をしてまいりたい、こう考えているところでございます。

高木(義)委員 そもそも、この通報は何のために必要なのか。それは、昭和三十九年八月二十四日、米国の声明の中に次のように書いております。

 「外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明」、その中で、通報は何のために必要なのか。いわゆる「寄港期間中、原子力軍艦の乗組員は、同軍艦上の放射線管理及び同軍艦の直接の近傍における環境放射能のモニタリングについて責任を負う。もちろん、受入国政府は、寄港する軍艦に放射能汚染をもたらす危険がないことを確認するため、当該軍艦の近傍において、同政府の希望する測定を行なうことができる。」

 まさに、当時から原子力艦艇の放射能による汚染という環境上極めて大きな影響のあるそういうものをアメリカも認識をして、このようなことがあったわけであります。

 したがって、その後段として「合衆国海軍は、通常、受入国政府の当局に対し、少なくとも二十四時間前に、その原子力軍艦の到着予定時刻及びてい泊又は投錨の予定位置につき通報する。」こういうことになっておるわけであります。

 今お話の中に、これは単純ミスであった、連絡の通報ミスであった、こういうことが言われておりますが、考えられない単純ミスがなぜ起きるのか。作戦行動にかかわるものです、これは。こういう作戦行動にかかわるものが、こんないいかげんな連絡ミス、単純ミスといって処理をされていいものか。佐世保市長にとってみると、今まで日米関係に協力をしながら、そして市民の信頼をつなぎとめて、今日まで地方自治体の長としての仕事をやっております。そういう意味では、今後このようなことが二度と起こってはならない、ダブルチェックの具体的な改善策を示せ、これを言っておるわけであります。したがって、そういうものがまとまらない以上、入港は拒否をする、こういう今日現在強い姿勢をとっておるのでございます。

 そこで、時間もありません、アメリカ軍の一部には、これは儀礼的なものだ、こういう発言をしておる人もおります。また、こういう制度はもうやめた方がいいんじゃないか、一部に潜在的にそういう意識があるやに聞き及んでおりますが、決してそういうことはあってはならない、私はそのように思います。

 したがって、今回の教訓を踏まえて、今後どのような対応が考えられるのか。日米地位協定第五条第三項には、米軍の艦船が日本の港に入る場合は、通常においては、日本の当局に適当な通告をしなければならないとしておりますが、これは民間港に想定をしたものでありまして、米軍施設のある佐世保港は対象になっておりません。したがって、まず一つ、原子力艦船入港の事前通報を日米地位協定に盛り込むのか。また、声明を二国間の共同声明もしくは交換公文とするのか。また、声明はそのままにして、新たな制度として文書化するのか。また、具体的な合意事項を取りまとめて運用で対処するのか。

 このような具体的な方策が協議をされて決められなければ、とても単純なミスとしてこの場をしのぐわけにはいかない、これが私は佐世保市長としての気持ちではないかと思っておりますが、今私が申し上げたことに対して、防衛庁長官あるいは外務大臣、それぞれ明確な御答弁をいただきたいと思います。

河野国務大臣 幾つかお尋ねがございましたけれども、まず、米側から二十四時間前の通報は儀礼的なものだという発言があったということをお話しになりました。私も、そうした発言があったということは報道で承知をいたしましたが、これらにつきましては、米側は、これはアメリカを代表する発言ではないということをはっきり言っておりまして、儀礼上のものなどではないということは、もうこれははっきりしているというふうに思います。

 それから、アメリカ側のメモワールといいますかステートメントといいますか、そういう形で、一方的にアメリカが二十四時間前の事前通報と申しますか、そういうことを言っている、このことがもう少し日米双方で確認がされるべきではないかというお話でございますが、私は、米側の一方的なステートメントもそれなりに極めて重いものだというふうに思います。アメリカもこれを軽々しく見ておりませんし、我々としても、信頼すべき同盟国のこうした発言、文書というものは十分重みのあるものだというふうに思います。思いますが、今回の事態にかんがみまして、私は、さらに日米合同委員会において、こうした単純なミスがとにかく起こったわけですから、こうしたミスが起こらないためにどういうことをするか。

 今、議員がおっしゃったように、ダブルチェックでございますとか、あるいは通報のシステムについての新しい考え方を取り入れるとか何かミスが起きない、特に今回の場合には連絡ミス、こう言っているわけでございますから、そういった連絡ミスが起きない具体的な方策について、日米合同委員会できちっと検討をし、その具体策を両国で確認する、そして実行するということが必要だというふうに私は考えている次第でございまして、必ず私は、具体策をつくり上げるための努力に最善を尽くしたいと思っています。

高木(義)委員 私は、宇和島水産高校のえひめ丸の事故とこの問題を一緒に扱うつもりはさらさらありませんけれども、しかし、それにしても、このようなミスが続くことによって日米の信頼関係に少なからずの影響を与える、私はそれを危惧するわけであります。

 したがって、そのときにやはり日本国としてきっちり物を言って、具体的な対応策を出させなければ、つくらせなければという、毅然とした対応をお願いしておきたいと思います。その場しのぎの対応では決してだめです。私はそのことを強く申し上げまして、終わりたいと思います。

川端委員長 次に、楢崎欣弥君。

楢崎委員 民主党の楢崎欣弥です。当委員会において質問の機会をいただきました関係委員の御配慮に感謝を申し上げます。

 私は、本年二月六日、今後の日本外交・防衛問題及び有事法制に関する質問主意書を提出いたしました。その中で、まず、冷戦終了後の外交環境の変化について私の考えを述べました。

 一つは、ソ連の崩壊によって、アメリカの世界覇権は確立した。言いかえれば、今やアメリカの軍事力に対抗できる軍事力は世界から消滅した時代になった。今も出ましたえひめ丸事件のときに、軍事評論家の方々が、そのおごりが出たのではないかと言われたことは耳に新しいところであります。二つ目に、もちろんロシアは現在も依然として核大国ではありますが、核兵器の発動は人類の滅亡を意味するものですから、それは抑止力として働いている。三つ目に、中国も北朝鮮もロシアも、今や日本にとって敵性国家ではない。つまり、それらの国々と戦争をもって解決しなければならない係争点は存在しない。また、日本国内には、外国勢力の介入を招きかねない政治的分裂もない。要するに、日本ほど周辺に危険な要素を持たない国はない。だから、冷戦の終えんは、日本外交にとって大転換のときであったろうと思います。

 日米関係で言えば、三月二十日の新聞紙上で後藤田正晴先生が言われていますように、日米安保体制からの自立、日米安保体制という軍事同盟から、より総合的な経済協力、日米安保体制からの自立、相互平和条約へと発展させることを目指すべきであった。しかし、それはなされないで、日本はアメリカの新国際戦略の一方的なリーダーシップのもとに組み入れられてしまった。それが、いわゆる新しいガイドライン法であったと思います。

 このように述べた上で、本年度からの新中期防、このような外交環境を分析、そしてまた議論された上で決定されたのかどうか、私は問いました。

 それに対して、三月三十日に出されました政府答弁書では、まず外交環境について、冷戦終了後の国際社会の全般的状況については、主要国間の関係は種々の問題ははらんでいるが基本的には安定している。二つ目に、地球規模の武力紛争発生の可能性は低くなっているが、一方で、複雑、多様な要因を背景にした地域紛争の発生、大量破壊兵器等の拡散の進行等さまざまな不安定要因が存在しているが、国際社会による安定化のための努力が継続している。そして三つ目に、朝鮮半島においては南北首脳会談等の前向きな動きも見られるが、冷戦終結後も軍事力の拡充、近代化が見られるなど、依然として不透明、不確実な要素が残されている、以上のような政府としての分析がなされた上で、日米安保体制が果たしてきた役割、さらなる向上に努めることが述べられていました。

 そして、以上の国際情勢を新中期防の前提として、「平成十二年十二月十五日付けの内閣官房長官談話に示したとおり、大綱に定められた防衛力の役割や我が国が保有すべき防衛力の内容等の基本的枠組みを見直さなければならないような諸情勢の基本的な変化はないと考えたところである。」との答弁をいただきました。

 外務大臣、政府の一員として、大臣の認識も同じでありますか。

河野国務大臣 内閣答弁書のとおりと認識しております。

楢崎委員 防衛庁長官にお伺いします。

 「基本的枠組みを見直さなければならないような諸情勢の基本的な変化はない」と言いながら、過去国会で論議されてきました空中給油機が今なぜ新中期防で装備することになったんでしょうか、お伺いします。

斉藤国務大臣 御案内のように、昨年十二月に次期防ということで新中期防衛力整備計画を策定させていただきました。これは、防衛大綱というものに従いまして、その時代時代に合わせながら策定をしていくものでございます。その中で空中給油機というのが導入されたわけでございますが、それが御質問でございます。

 基本的に、我が国は専守防衛に徹するということだと思います。他国に影響を与えるような軍事大国にならない、そういった基本理念に従いまして防衛力を整備していくということだと思います。

 専守防衛という受動的な防衛戦略のもとで今後我が国の防衛を全うしていくにはどういうふうにしたらいいんだろうか、その中の一つとして、空中給油機能による要撃機の滞空時間を伸延し、また、空中警戒待機、これはCAPともいうんでありますが、その態勢をとることが必要不可欠になると考えておりまして、空中給油機能の保有は専守防衛の趣旨にかなうものと私どもは判断をいたしたところでございます。

 今いろいろな御指摘があるかなと思いますが、そのような趣旨でこのたび導入をさせていただいたわけでございます。

楢崎委員 空中給油機というのは他国に脅威を与えるものだから持たない、訓練しないという田中内閣当時の見解との整合性はどうなるのか、そのことをお伺いしようと思ったんですが、昨年十一月十六日の参議院外交・防衛委員会で、当時の虎島防衛庁長官が、同様の質問に対しまして、田中総理大臣の答弁は昭和四十八年のものである。さらに、五十二年十一月、参議院の内閣委員会においては、現在のところは空中給油機を保有する考えはない、未来永劫保有しないということは言えない。さらに昭和五十九年二月の衆議院予算委員会において、空中給油機に関して将来の可能性は否定していない、現内閣も将来の可能性は否定していないという政府答弁があるわけであります。このように答弁されております。

 これは去年の十一月ですか、その将来というのが今なのですか。その根拠は何ですか。

首藤政府参考人 田中内閣当時の四十八年の四月に、田中総理は、空中給油機は保持しない、それから空中給油に対する訓練もしないこと等を答弁しておられますけれども、これは、空中給油機導入が他国に脅威を与える理由からではないというふうに私ども承知しておるわけでございまして、その後、F15の導入に当たりましては、航空軍事技術の著しい進歩によりまして航空機の侵入能力が高まる趨勢から見まして、F15が主力戦闘機になるであろう時期、これは一九八〇年代中期以降と置いておりますが、ここにおきましてはCAPのため空中給油装置が必要となることが十分予想されたために本装置を残置したところでございまして、また、開発いたしましたF2につきましても、同様の理由で本装置を置いているところでございます。

 そこで、今先生お聞きになりました、将来というのが今かという点でございます。

 累次申し上げておりますとおり、現在におきます航空軍事技術の中の特徴といたしましては、一つには、航空機のステルス性が非常に進んでおる、これによってレーダーに映りにくい、したがって、我が方のレーダーで見つけた時点では、以前に比べて非常に相手航空機が領土の手前に来てしまっているというのが一つ。それからもう一つは、戦闘機や爆撃機に搭載されます空対地ミサイルの射程が非常に延びておる、したがって、向こうは我が方の領土に近接する前に、かなり遠方から発射して逃げていくことが可能になっている。

 そういうことを防いで我が国の防空を全うするためには空中警戒待機、CAPが必要になっているということからいたしまして、現在においてはそのような時代に入っているという認識でございます。

楢崎委員 もう一度言いますけれども、答弁書は、「基本的枠組みを見直さなければならないような諸情勢の基本的な変化はない」と言っているんですよ。矛盾するんじゃないですか。

石破副長官 私どもとしては、いっかな矛盾するとは思っておりません。今局長から答弁を申し上げましたように、それは、相手が保有をしております戦闘機の能力が上がった、それに対応しなければいけない、能力が上がったということを申し上げておる、向こうの能力に対応するものをこちらも持たねばならない、そういうふうに申し上げておるわけであります。想定されるように、向こうの意図が変わったとか諸情勢が変わったとか、そういうような判断に基づいてこのような決定をしたのではございません。

楢崎委員 では、これは専守防衛には逸脱しないと思われますか。

石破副長官 いささかたりとも反するものではございません。

楢崎委員 私自身は納得できないんですが、何と答弁されようと、常識的に言って、空中給油機というのは、攻撃機の足を延ばす、そのために編み出された攻撃的な性格を持っているものと思うんですね。時間の関係上、この問題はきょうはこれでやめますけれども、私は、やはり専守防衛に逸脱する、そして今装備しなければならない状況にはないという思いがいたします。

 次に、有事法制についてお伺いします。

 私は、有事とは、自衛隊法七十六条下令、すなわち戦時における自衛隊の行動をどのように自由化するか、他方、国民に対してはいかに基本的人権を制約して義務、負担を課すか、その立法問題であると認識しているんですが、外務大臣は、私はあなたを平和と軍縮の推進論者だと評価しておるんですが、有事法制は憲法の平和理念を超えるものになるとは思われませんか。

河野国務大臣 これはもう申し上げるまでもないと思いますけれども、有事法制の検討はおっしゃるように憲法の範囲内で行うものである、これはもう言うまでもないことだと私は思っております。

 そういう前提といいますか、そういう考え方をまず申し上げた上で、有事法制というものは、自衛隊が文民統制のもとで国家国民の安全を確保するため必要なものであると考えておりまして、我が国が外部から武力攻撃を受けた場合に国家国民の安全を確保することは、これは公共の福祉を確保することにほかならないと思います。

 したがいまして、まさに国家国民の安全を確保するために必要であるときは、質問主意書に対してお答えを申し上げましたとおり「合理的な範囲内において法律で国民の権利を制限し、又は国民に特定の義務を課すことも憲法上許されるもの」というふうに考えているわけでございます。

 もちろん、そうした場合におきましても、可能な限り国民の権利を尊重するということは、言うまでもないことであると思っております。

楢崎委員 政府答弁書の中で、これは有事の際ですが、「そのため必要があるときは、合理的な範囲内において法律で国民の権利を制限し、」とありますけれども、「合理的な範囲内」とはどういう範囲をいうんですか。

石破副長官 こういう場合が合理的な範囲内ということをここでそれぞれ場合を設定してお答えすることは極めて困難なことでございますが、あえて申し上げれば、それは法益の均衡ということなのだろうと思っております。利益をどのように考量していくかということだろうと思っています。

 委員御指摘のように、有事法制というのはシビリアンコントロールのもとでは当然必要なものであります。ないことの方がよほどおかしい。そしてまた、有事法制というのは民主主義国家における属性であるというふうに私は思っております。

 そうしますと、国の独立でありますとかそういうようなものが片一方にあります、公共の福祉でありますとかそういうことがあります。それで、一時的にせよ、国民の権利が制限をされるということだといたしますと、結局、国民の権利が制限される基本的な権利というのは何であるか、それによって守っていかねばならない法益とは何であるか、その比較考量の問題であろうというふうには認識をいたしておるところでございます。

楢崎委員 ちょっとよく理解できなかったんですが、その「合理的な範囲内」、これは基準としては非常にあいまいであろうと私は思います。

 なぜ憲法の許容する範囲と言えないのか。つまりこれは、武力のさなかにあっては法は沈黙するということですか。

石破副長官 先ほどの答弁でも申し上げましたが、私は、武力のさなかにあって法が沈黙するとは思っておりません。法が沈黙をしてはいけないからこそ有事法制が必要なのだというふうに思っておりますし、であらばこそ、民主主義の属性だというふうに申し上げたつもりでございます。

 それで、あいまいだというふうにおっしゃいましたが、それは公共の福祉という概念をどのようにとらえるかということであろうと思います。

 それは最大多数の最大幸福という考え方もありましょうし、いろいろな考え方が公共の福祉という考え方の中には包含をされておろうかと思います。しかしながら、国防の基本方針にもありますように、民主主義を基調とする我が国の独立を守るということが国防の目的であります。すなわち、国が独立をする、私どもの民主主義、自由、そういうものを基調とする我々の国の独立が守られるということ、それも私は公共の福祉だろうというふうに考えております。

 そのような概念から、一々それを、合理的にこれが範囲内であるということをここで個々具体的に申し上げることは困難であろうというふうに思っておる次第でございます。

楢崎委員 委員長にお願いがあります。

 一九五八年に防衛研究所から発行された「自衛隊と基本的法理論」、この第六章、再軍備に伴う国内法制の整備というところの二百四十九ページ、ここには、有事とは武力のさなかにあって法は沈黙する事態、このように指摘してあるはずです。

 この防衛研究所の研究成果「自衛隊と基本的法理論」を資料として当委員会に提出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

川端委員長 ただいまの資料要求について、政府において提出願えるでしょうか。

 防衛局長。

首藤政府参考人 今先生おっしゃられました資料でございますが、これは既に廃棄されて、すべて存在しておりませんので、申しわけございませんが、お出しすることができないということでございます。

楢崎委員 廃棄ですか。

 この答弁書の中では、「自衛隊と基本的法理論」は、執筆者個人の学術論文であって、政府の見解を述べたものではない、このようにしてあるんですね。

 厳格な組織体制である自衛隊で、個人が勝手に超法規的な法制の研究ができるとは私は思いませんよ。やはり上級指導部の指導なり許可があって、つまり、組織としてこのような研究がなされたのではないですか。

守屋政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の資料は、先ほども申し上げましたとおり、政府、防衛庁としての見解を述べたものではございません。

 なお、御指摘の資料には種々の性質のものが含まれておりますけれども、一般的に申し上げれば、個人としての学術論文等についてまで、政府の見解と必ず一致していなければいけないというものでないことは御理解いただけるものと考えております。

 以上でございます。

楢崎委員 では、ちょっと視点を変えたいと思います。

 この種の研究に国費は使われていないんですか。すべて私費で研究がなされているということですか。どうですか。

守屋政府参考人 防衛庁でいろいろな作業をいたします。防衛大学校も防衛医科大学校も防衛研究所もございます、幹部学校もございまして、そういうところでいろいろな研究をして、いろいろな考え方で意見交換していくというのは、国の防衛を担う役所といたしまして、そういう研究を怠らないでいろいろな意見を交換することは、必要な作業だと認識いたしております。

 そして、それが政府の見解とするかどうかということは、それは役所としての判断が別途あるものと考えております。

楢崎委員 防衛研究所は国費で運営されているんじゃないですか。

守屋政府参考人 当然、防衛研究所は国費で運用されていることは間違いございません。

 ただ、そこで行われる研究というのは、国の行政に必要な研究をいろいろな方向から、民間の方の意見、あるいは異なった人の見解とかそういうものを研究調査するというのは、防衛庁の行政任務を全うする観点から必要な行為でございまして、では、それをどういうふうにして防衛庁の見解あるいは政府の見解にまとめ上げていくかということとは別の作業であると私は認識いたしております。

楢崎委員 国費で運用される施設でなされる研究というのは、つまり、組織として研究がなされているということじゃないですか。大体、このような研究が法制化の下敷きになっていくものでしょう。政府の見解を述べたものではない、そんなちょっと無責任な答弁をしてもらっちゃ困ると私は思います。

 そこで、次に移りますけれども、森総理は所信表明で、有事法制の整備に着手すると述べられました。私は質問主意書で、航空自衛隊の警戒態勢、防空態勢、さらには防空警報について政府に問いました。答弁書では、警戒態勢、防空態勢ともに、状況によって1から5までの段階に分かれていることを認められました。そして、防空警報は三段階に区分されていることも認められました。

 そこで、かつて、昭和四十五年二月の衆議院予算委員会において、先輩議員が、そういうことが決まっているのに国民には何も知らされていない、どういう手段で国民に知らせるのかと質問されたときに、当時の佐藤総理、それから中曽根防衛庁長官ともに、今国民は平和な生活を営んでいる、そういう刺激的なことを知らせる段階ではない、ただいまの状況では、そういう点まで心配して国民に知らせる必要はない、このように答弁をされています。

 しかし、森総理が言われたところの有事立法の準備というのは、そういうことを国民に周知させることが必須要件となるんじゃないでしょうか。いかがですか。

斉藤国務大臣 今、国民にどのように知らせるのかという御質問でございます。

 航空自衛隊の防空警報というのは、防衛出動命令が下令をされた場合、空からの攻撃に対して有効に対処するために、事態に応じまして航空自衛隊の部隊等に伝達されるものであって、国民に伝達することを目的としたものではないわけでございます。他方、防衛出動命令下令時の空からの攻撃に対する警報の国民への伝達につきましては、検討を進めることが重要な安全保障上の課題の一つであるということについては認識をいたしているところでございます。

楢崎委員 ちょっと具体的にお聞きしますけれども、防空警報が鳴ったときに、国民は地下ごうに避難するんですか、それとも地下鉄構内に避難するんですか、それともそれぞれがシェルターをつくって準備するのか、どう指導されるおつもりですか。

石破副長官 お答え申し上げます。

 防空警報をだれが発するか、そしてまたどのように鳴らしていくかということにつきましても、今大臣からお答えを申し上げましたように、どうするのが一番有効であるかということ、これを議論していかねばならぬと思っているところであります。

 したがいまして、委員御指摘のように、さて地下鉄なのか、シェルターなのか、そういう民間防衛的な面がまだ我が国においては検討が不足をしておるということは、過去の防衛白書におきましても指摘があるとおりでございます。

楢崎委員 そういう準備をすることが有事立法に着手するということだろうと私は思いますよ。

 つまり、私が申し上げたいのは、超憲法的立場に立たないと有効な有事立法は成立しない。だから、警戒警報、防空警報の準備は完了していながら内容は国民に知らせられない、そういうことじゃないでしょうか。知らされない国民は右往左往することになりますよ。常々国民の安全を守るためと言っていることと矛盾するんではないだろうかと思います。

 きょうは時間の制約上、ほんのはしりしか質問できませんでしたけれども、政府が国民の知らざるところでどんな超憲法的な作業を行っているか、今後、順次具体的な資料をもとに明らかにしていきたいと思います。

 これで質問を終わります。

川端委員長 次に、石井紘基君。

石井(紘)委員 防衛庁、空自の新初等練習機の発注契約につきまして、大変中身が膨大で複雑でありますので、先日来、決算行政監視委員会でも質問をいたしておるところでございますが、続きをさせていただきたいと思います。

 御案内のように、防衛庁の空自で使う初等練習機、自衛隊の皆さんが練習のために使う飛行機でございますから、戦闘機のように巨額というか莫大なお金がかかるというものでもない。一機三億円とか四億円とか、また、それのランニングコストというものが相当かかる。これを八年間、最初の契約と二回目以降の契約が七回毎年ありまして、八年間にわたって四十九機を買おうというものでございました。

 大変これはいわくつきのものでして、平成十年に実はまず最初の入札が行われたんですが、この入札が非常に問題になりました。同時にまた、その年の秋に中島元議員が逮捕されるとか、あるいは富士重工の社長、専務等が逮捕されるという事態があって、その契約が白紙になりました。一刻も早く次のといいますか、その初等練習機の契約をしなければならない、こういうふうに急がれていた状況の中で、平成十一年の二月に、野呂田元防衛庁長官は、その年の春にも入札の準備に取りかかりたい、こういうふうに明言をされたにもかかわらず、その年中には行われずに、とうとう翌年の、つまり一年半以上たった平成の十二年、昨年に入札の手続が行われて、そして、契約が富士重工との間になされた。

 ところが、お手元にお配りをさせていただきました資料のように、概略説明を申し上げますと、この一番左の赤い四角で囲んであるところ、これが最初の二機分の契約ということで、これは入札にかけられたわけでございます。そして、残る四十七機については、これは順次平成十三年度以降毎年それぞれ随意契約でもって契約がなされていく、そういうやり方でございました。

 ところが、この最初の二機、これは競争入札でございますから入札をするわけでありますが、いわば入札というのは、通常は箱の中に価格を入れて安い方で決めるわけでありますが、そのときは、黄色い枠の中にありますように、富士重工が二機分で四億八千九百万、スイスのピラタス社が三億五千五百万ということで、相当にピラタス社の方が安かった。にもかかわらず、落札をしたのは富士重工であった。大変これは大きな疑惑に満ちた問題なんです。

 なぜそうしたかという防衛庁側の説明は、その後に、プラス二一二〇、二二六九、こういう数字がございますが、これは、この上の青い枠の中の、つまりライフサイクルコストという将来すべてを含めた機体の価格、購入経費というのがこれは機体の価格でございます。それから、その次の維持経費、関連経費、こういうものを計算すると、ピラタス社の方がこの部分は高いんだということで、結局、トータルは二百十六億九千万と二百三十億ということで、約十三億の差があるということで富士重工に決めた。ところが、二回目契約以降は随意契約で行うものでありますし、また、この価格はそれぞれ箱の中に入れるんでなくて、別枠で、いわば資料的に提出をさせた、こういうもので、いつでもこの価格は差しかえることができるという状態で行われたものであるということは、先日来の質問の中でも明らかになったところなんですね。

 そこで、差しかえた、もともとのオリジナルの数字と修正後の数字というものがあったということはお認めになったわけでございますが、このもともとの数字について、私は先日来から提出をするようにということを要求しているわけでございますが、それは提出していただけるんでしょうか。

首藤政府参考人 先日も申し上げましたけれども、この新初等練習機の総合評価落札方式に基づく入札手続を進めるに当たりましては、防衛庁としては、一般の政府調達と同様に、透明かつ公正な枠組みの中で調達手続を実施したいと考えて、政府調達に関する種々の運用方針等を参考といたしまして、入札説明書に、公開、使用の制限を希望する場合はその内容、理由を明記する旨規定することによりまして、供給者側の営業上の秘密等に関する情報の保護を図ったということがございました。

 この規定に基づきまして、富士重の方から、提出した書類につきましては公開、使用の制限がある旨の申し出を受けておりまして、十二年の九月二十五日に公表したデータ以外の細部内訳データの開示につきまして、防衛庁側から富士重に対して、御指摘の入札回答書中の修正前の価格、その他の費用を含めて開示の可否について照会したところ、これまでは承諾は得られなかったところでございます。その旨、前回申し上げたわけでございます。

 このために、石井先生の方からの質問主意書におきます本件の開示要請の後、改めて契約本部を通じまして富士重に対して開示の可否について照会いたしましたところ、国会において公開することについての承諾が得られましたことから、この質問主意書に対する回答の中に盛り込むこととさせていただきたいと存じております。

 なお、念のため申し上げさせていただきますと、今回落札されました富士重のT3改の価格、その他の費用でございますが、これは今まで申し上げていなかったわけですが、修正前が二百十・七億円、修正後が、既に公表されております二百十二・〇億円でございまして、丸紅の提案いたしましたPC7の同様のものについては、修正前が二百二十二・四億円、修正後が二百二十七・〇億円でございました。

石井(紘)委員 何か延々としゃべらないで、私が聞いたことだけに答えてくれればいいんだけれども。

 それで、それは今出してもらえるんですか、どうなんですか。

首藤政府参考人 ちょっと今手元に部数持っておりません。後ほど、すぐにお出ししたいと存じております。(石井(紘)委員「一部でもいいからくれ」と呼ぶ)

川端委員長 今述べられた中身のものですか。

首藤政府参考人 私どものお持ちしておるのは、総額以外にも項目についての内訳もございますが、この場でお出ししていいかどうかはちょっと迷います。

石井(紘)委員 これはもう繰り返し要求しているところで、今、具体的なものは出せないけれども、総額的なものは出せるというようなことでございましたが、それだけでもとりあえず出していただきたいと思います。お願いします。

首藤政府参考人 後ほどお出しできるのは、総額だけじゃなくて、それの内訳もお出しできる趣旨でございます。

石井(紘)委員 だから、それを後ほどじゃなくて、今出してくれと言っているんですよ。今質問しているんだから、今出してくださいよ。

川端委員長 あるんですか、資料が。

首藤政府参考人 ございます。

川端委員長 よろしいですか。一部しかないと。

石井(紘)委員 今聞いているんだから。後ほど聞いているんじゃないんだから。

川端委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

川端委員長 それでは、速記を起こして。

 資料を委員会に、質問者にという部分でございますが、口頭でお答えいただいた部分で、きちっとした資料は後刻、質問者にお渡しいただきたいというふうに思います。

石井(紘)委員 そのオリジナル、確認しますけれども、いいですか、入札というのは、普通、箱の中に入れて密封して、そこに金額が入っていて、その金額を一気に広げて、そこで出してみて安い方を決めるんです。ところが、ここで防衛庁がやったのは、決めるべきその箱に入っていた、封しておった数字というのは富士重工の方がはるかに高かった、高い方に決めた。では何でかというと、その説明は、箱の中に入れていない、密封も何もしていない、いわば資料的な数字、これをもって決めたんだ、こう言っているわけです。これはまさしくだれが見ても、違法、不正な入札に間違いないんですよ。その決めた根拠になる数字を、さんざん嫌がって出さない。

 私は、これは何も富士重工にとかピラタスとかどっちに肩を持つとかというのじゃなしに、これは実は国に莫大な損害を与える。

 私が、一昨々年から一昨年、約一年間かかって、この安全保障委員会で例の防衛装備品の過払い、百億あるいは百何十億という払い過ぎ、さんざんこの問題を追及してきたところが、ずうっとうそばかりついて、答弁してこなかった。一年後に強制捜査が入ったら、その一年間の答弁は全部うそでした、間違いでした、お許しください、こういうことで、防衛庁長官も当時おやめになった。そういうようなことを繰り返さないようにしてもらいたい。

 これは国に莫大な損害を与える。つまり、T3改という富士重工に契約したこの機種というものは、野呂田防衛庁長官の答弁にもあるとおり、海上自衛隊で使っている練習機のT5というものと同型機種なんですね。ほとんど同じ。ところが、海上自衛隊の方では、こんな値段ではとてもやれないと言っているわけですよ。そうすると、また、無理やりこの富士重工に落としたけれども、将来の、二年度以降の契約というものをどんどん、ここに出させた数字よりもはるかに高い数字で、随意契約ですから、やっていって帳じりを合わせるのか、あるいは、あのときやったように、ほかのまた天下りとかその他のことでもって帳じりを合わせるのか。そういうことが今まで防衛庁で行われてきたわけですから。これは、国に莫大な損害を与える可能性のある、計算では恐らく百五十億から二百億ぐらい国に損害を与える可能性がある問題です。

 では、聞きますけれども、このT3改と同型機種であったという海自で使っている練習機のT5、これのLCCについて、ことし、つい先日もIRANの契約があったんじゃありませんか。あったかないかちょっと教えてください。IRANというのは定期機体整備ですね。定期整備のことをちょっと簡単に。

首藤政府参考人 ライフサイクルコストの方につきましては、近くお出しする予定の、質問主意書でも御質問いただいているわけでございますけれども、LCCにつきましては現在調査中でございますので、きょう時点では……

石井(紘)委員 ことしIRANの契約をしたんじゃないですかと聞いたんです。したか、しないか。

中村政府参考人 お答えいたします。

 海自のT5については、三月の二十八日ですか、IRANの契約をいたしております。

 ただ、これにつきましては、ライフサイクルコストの計算等ということではなくて、単にIRANを行うということで、修理を契約したわけです。

石井(紘)委員 その単価は幾らですか。それからIRAN、IRANというのは定期機体整備ですから、それは何カ月ごとに行う整備ですか。

中村政府参考人 金額については五千七百一万五千円です。これが二月の二十八日納期ということで、先ほどちょっと言い間違えました。

石井(紘)委員 単価が、一機につき機体整備が五千七百一万円ということでした。これは、従来の海自のT5もその値段でやっているようでございます。

 そういたしますと、私が先ほど申し上げましたように、海自のT5という練習機と空自の今回契約をしたT3改、これは同型機種である、胴体も主翼も尾翼もほとんど同じもの、そういうことでよろしいですね。そこをまずちょっと確認しておきましょう。同型機種ですね。

首藤政府参考人 両機種の型式でございますが、T3改の方は二人乗りでございますのに対してT5は四人乗りでございまして、機体設計が異なるということからいたしまして、T3改とT5の価格につきまして単純に比較を行うことは適切ではないのではないかと私どもとしては考えているわけでございます。

石井(紘)委員 それは大変重大な答弁になりますね。

 そうすると、T5とT3改の機体の同じ部分と違う部分を言ってください。これは前の野呂田長官の答弁と食い違わないようにしてくださいよ。

首藤政府参考人 一つには、T5の胴体の後部、それから主翼、胴体前部と後翼、このうち胴体後部と水平尾翼はT3と共通でございますが、それをそのまま利用いたしますとともに、T3の方の胴体中部の設計を活用しまして、新規開発部分を胴体前部と胴体中部の接合部分に限定したということでございます。

石井(紘)委員 胴体前部と中部の接合したところ、つなぎ合わせたところだということですね。

 いずれにしても、そういうことですから、これはもうほとんど同じ、同型機種ということは、価格もほとんど変わらない、そういうことなんですよ。

 それで、今、定期整備の単価が五千七百万円。そうすると、参事官、富士重工と昨年契約をしたT3改のこの定期整備、IRANの単価は幾らだったんですか。

中村政府参考人 お答えいたします。

 まず、IRANについての考え方でございますけれども、先ほど委員が御指摘されたのは、T5の方は三十三カ月ごとにIRANをやるということ、今度のT3改については四十五カ月ごとにIRANをやるということで、当然そのトータルコストは短くなります。それと、IRANの価格については、IRANはまだ始まっておらないということですので、まだ契約はしておりません。

石井(紘)委員 大変いろいろな問題がここの中に含まれているわけですが、IRANを五千七百万でやって、今四十六カ月と言ったけれども、実はジャパン・テクニカル・オーダーという防衛庁が承認した基準によると、三十六カ月から四十五カ月の間というふうになっているわけですね。富士重工と契約する際には四十五カ月で計算したというんですね。ところが一方の、さっきのピラタス社の方は三十六カ月でやっているわけですね。

 技術、性能については同じ評価点が出た。そして、ピラタス社の飛行機は世界じゅうにさんざん売りまくっておる、実績も経験も十分わかっておる、そういう飛行機。富士重工のT3改というのは、T5をもとに今度初めてつくった、まだできていない、机上の、設計図だけの飛行機だ。それを四十五カ月で定期整備をする。さっき言ったジャパン・テクニカル・オーダーには三十六カ月から四十五カ月、この間にしなさいよと。四十五カ月になると危ないんだというところですね。これはまた大きな問題になりますから、後でまた別途取り上げます。

 仮に四十五カ月で五千七百万円で計算したらどうなるかということでございますが、五千七百万円の四十五カ月で計算すると八十九億円ぐらいになります。そうすると、お配りしてあるこれを見ても、それは今どこを言っているかというと、この青い部分の「維持経費」という中の「維持役務費」という中に定期整備というのが入っているわけです。この右に点々を引いて矢印してありますが、「維持役務費」というのは、支援整備、機体定期修理、これがIRANというやつですね。機体定期整備の金額です。これを五千七百万円で四十五カ月ごとにやりますと、たしか百五十一回やることになると思うんですね。そうすると、これだけでも今言った八十九億円になる。にもかかわらず、これらを全部含めて、富士重工、六十三億八千万というふうに書いてある。これはどう考えてもおかしい。この数字は大きく書きかえたんじゃありませんか。失礼、八十九億円じゃない、百五十一回で計算すると八十六億。

 本来は、三十六カ月、三年に一度やらなければいけない。ピラタス社の方は三十六カ月で提案書を出しているんです。これは、同じ性能であるにもかかわらず、どうして片方を三十六カ月で計算し、片方を四十五カ月で計算するのか。しかも、四十五カ月で計算しても全然この数字にならない。これは明らかに不正ではないか。

 もとへ戻って伺いますが、契約の入札の提案書を出させた日付はいつですか。ピラタス社と富士重工から入札の提案書を出させたのはいつですか。

首藤政府参考人 平成十二年の八月三十日でございます。

石井(紘)委員 開札したのはいつですか。

首藤政府参考人 同年九月二十五日でございます。

石井(紘)委員 そうすると、八月三十日に両社から、ピラタス社と富士重工からそれぞれこの数字の入った書類を受け取った。その八月三十日に、片方は、二機分の最初の分は封をした。そして、あと残りの決定的な決め手となったこの数字が入っている二回目以降の契約、本体価格の値段が入ったものとライフサイクルコスト全体、つまり維持経費や関連経費の入った書類、これは封をしなかったですね。これはどこへ持っていったんですか。

首藤政府参考人 支出負担行為担当官でございます調達実施本部長において検討をしていただいたところでございます。

石井(紘)委員 当時の調達実施本部長西村さん、いらっしゃいますか。それはずっと西村さんの手元で管理をし、だれも見ることがありませんでしたか。調本以外のところでは、西村さん、あなたは現場の責任者だと今言われたわけですから、あなたは調達実施本部の本部長だった。そして、その書類を八月三十日から九月二十五日までの間、調本のあなたの管理の届く範囲内に置いて、部外者には一切触れさせない、あるいは、入れかえたりなんかする機会がないように、公正を十分に期すような状態に置いておきましたか。どうですか。西村さん、どうぞ。

西村政府参考人 お答えいたします。

 八月三十日に入札回答書を受領いたしまして、私どもといたしましては、調達実施本部内においてはしまっておいたわけでございますが、次官通達の「総合評価落札方式により航空機の調達を行う場合の手続について」というのがございまして、それに基づきまして、航空幕僚長へ入札回答書に記載されている技術的事項等の検討を依頼いたしております。その際、その書類も送付いたしております。

石井(紘)委員 送付したというんですか。そうすると、その際、空幕へ持っていったということですか。どうですか。

西村政府参考人 そういうことでございます。

石井(紘)委員 そうすると、今度は、この先は空幕でどういうことが起こったかということを解明しなければなりません。

 これは西村さん、同じ書類が何部かコピーがございましたでしょう。御記憶ありませんか。コピーが幾つかございましたでしょう。それはどういう扱いになりましたか。

西村政府参考人 部数を今正確に覚えておりませんが、複数部数、提出会社から提出いただいて、空幕の方にもその中から渡した。コピーではございませんでした、ということでございます。

石井(紘)委員 そうすると、西村さんの手元に厳然と残っておった、そういうものもございますか。それこそまさに全くオリジナルだと思うんですが、そういうものもございましたか。それとの整合性は後でどういうふうにいたしましたか。

西村政府参考人 オリジナルも残ってございます。

川端委員長 石井君、時間が来ておりますので、おまとめをいただきたいと思います。

石井(紘)委員 時間が来たようでございます。途中、大分休みがありましたからまだあるのではないかと思いましたが、それでは時間が来ましたからまた、きょうはここでとめておきますが、ひとつ西村さん、十分思い出して、そして空幕へ行ってどんなふうにその姿を変えて戻ってきたか、そこのところをよく解明していただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

川端委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時開議

川端委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤島正之君。

藤島委員 自由党の藤島正之でございます。

 きょうは一般質疑ということで、防衛庁長官及び外務大臣に、まず、我が国の防衛のあり方についてお尋ねしたいと思います。

 かつて我が国が独立したてのころは、何といっても米軍が主体であったわけでありまして、自衛隊の装備につきましても、私が防衛庁に入りました四十年代初期というのは、まず米軍の供与品がほとんどで、自前の武器はほとんどなかった。あるいは、旧大戦に使ったお古みたいなものでできておったわけで、そのころは、確かに米軍に我が国の安全を頼っている、これは当然のことであったわけでありますが、その後、四十年、五十年、その間に、幸いにも日本の経済の発展と軌を同じくして、自衛隊もそれなりの装備を持ち、人員もついてきたわけであります。

 したがいまして、私は、我が国の防衛というか安全保障は、まず我が国自身で守る、これが基本だろう、こう思うわけであります。したがいまして、まず自衛隊が基本になって守る、こうでなければならないと思うわけであります。今申し上げましたように、過去においては、そうしようとしてもできなかったわけであります。

 これまでも自衛隊と日米安保は両輪のごとく言われてきたわけでありますが、私は、基本はまず自分の国は自分で守る、こういう気概がなければいけない、こういうふうに思っておるわけでございますが、防衛庁長官の御所見をまずお伺いしたいと思います。

斉藤国務大臣 藤島委員は防衛関係、大変お詳しゅうございます。その中で、我が国の防衛力の主体は自衛隊、それから独力でという御意見でございますが、今日の国際社会において考えてみますと、自国の意思と力だけで国の平和と独立を確保しよう、そういった考え方でやろうとすれば、核兵器の使用を含む戦争から、また、さまざまな態様の侵略戦争、侵略事態、さらには軍事力による示威、恫喝といったものまで、幅広くあらゆる事態に対応できる、すきのない防衛体制を構築する必要があろうかというふうに考えるわけでございます。

 しかしながら、我が国が独力でこのような体制を保持するということは、経済的にも容易ではございませんし、また、何よりも我が国の政治姿勢、要するに軍事大国にならないということを誓っているわけでございますので、そういうような政治姿勢としても適切なものとは言えないのではないかと思っております。このため、我が国の場合、みずから適切な防衛力を保有するとともに、米国との安全保障体制を堅持することにより、すきのない体制を構築しまして、我が国の安全を確保することとしているわけでございます。

 在日米軍の駐留は、このような日米安保体制の中核をなすものであるというふうに考えておりまして、自衛隊と在日米軍は、我が国の安全を確保する上で、いずれも欠くことのできないものであり、一方が主体で一方が補完、そういった性格のものではないというふうに考えております。

藤島委員 私は、我が国だけで我が国を守ると言っているわけじゃありませんで、そんな国は、まあアメリカがそういう力があるかどうかわかりませんけれども、ほかには世界のどこにもないわけでありまして、当然、どこかと組んで自国を守らないかぬ。

 それは当然なんですが、時代とともに、どちらを基軸にしていくかという点が変わってきておる。さっき申し上げたように、戦後初期の時代は、自衛隊だけで守るわけにいきませんので、米軍の助けをかりないかぬ。しかし、だんだん我が国も力がついてきておるわけですから、まず自衛隊で、我が国は我が国が守るということを基本に、基軸に据えた上で、一応両輪でも同じ両輪じゃなくて、片方が非常に大きな輪になって、片方が小さくなる、これは時代とともに変わってきておるんじゃないか。それを私は申し上げたかったわけでありまして、その点については長官もほぼ同じようなお考え、こう考えてよろしゅうございますか。

斉藤国務大臣 委員は今車の両輪のごとくというお話をされました。その輪っかの大きさが大きいか小さいか、そういった議論は幾つかあるかなというふうに思っておりますが、それを固定的に考えるということは難しいことでもあるのかなというふうには思っているところでございますし、単に防衛、軍事力のみならず、経済問題もありますし、文化交流もございます。そういった総合的見地からの検討も必要ではないかというふうには思っております。

藤島委員 それでは、私は、在日米軍の性格が変わってきておるということを、るるこれからちょっと検証していきたいわけですけれども、外務省、これは説明員で結構ですけれども、二十年前のころの米国とヨーロッパにおける取引と米国とアジアの取引、これが最近ではそれぞれどのように変わってきているか、これを御説明願いたいと思います。

田中政府参考人 お答えを申し上げます。

 果たしてどこまでをヨーロッパと言い、どこまでをアジアと言うかというのはなかなか難しい問題でございますので、先生の御質問の趣旨にかんがみまして、ヨーロッパというのをECを中心にする、それからアジアというのをASEANプラス日中韓、台湾、香港ということで、東アジアを中心にした統計ということで米国の統計を当たってみますと、これは米国から見た貿易の総額でございますけれども、一九八一年の対欧諸国、これは一千二百三十一億ドル、同年の対東アジア諸国は、一千五百五十八億ドルということで、ほぼ拮抗していたわけでございます。これが二〇〇〇年ということになりますと、対欧ということでは三千八百五十一億ドル、それから対アジアということでは六千二百二十六億ドルということでございまして、対アジアの貿易総額というのが飛躍的に拡大している。同時期に、対欧の場合には約三倍、対アジアの場合には約四倍ということになっております。

 これは幾つか理由があると思いますけれども、多分最大の理由というのは、過去二十年間をとれば、東アジアにおける経済成長に基づく経済活動というのが非常に活発であったということが最大の要因であろうと思いますし、アメリカの中でも、経済活動の主体というのが、太平洋岸、西海岸の方に移ってきているということも言えると思います。

藤島委員 今説明がありましたように、米国のアジアにおける権益、これが飛躍的に増大しておる。これと、米軍のアジアにおける駐留、この意味合いが微妙に変わってきているということを私は申し上げたかったわけでありますが、これは後の方で申し上げるとしまして、いろいろな件が米中にあるわけでありますが、その中で、中国の台頭に対する米国の対応という問題がかなり重要な問題だろう、こう思うわけであります。

 二十一世紀の潜在的超大国中国、こういう言葉がぴしゃりいいのかどうかわかりませんけれども、そういうことについて、防衛庁長官はどのように認識しておられますか。

斉藤国務大臣 委員御指摘の中国の状況でございますが、私ども手持ちの公表国防費、中国の場合ですが、八九年以来、十三年連続で対前年度比一〇%以上の伸びを示しております。本年は一千四百十億四百万元とされておりまして、ここ数年では最高の前年度比一七・〇%の伸びをしているところでございます。ちなみに、これを円換算いたしますと、約一兆八千億円から九千億円程度ではないかと思っております。

 中国は軍事力を従来の量から質へ転換を図っておりまして、近代戦に対応できる正規軍主体の体制へ移行しつつあると見ております。その将来の軍事力については、今後の軍事力の整備動向に大きく依存しますことから、現時点で確たることを申し上げることは困難であるということについては御理解賜りたいというふうに思います。

 いずれにしろ、中国は、核戦力や海空軍力を中心とした軍事力の近代化に努めておりまして、海洋における活動範囲を拡大する動きも見せております。

 防衛庁としては、その動向に注目していく必要があると考えておりますし、また、中国の国防費や軍事費につきまして、非常に伸びが大きいということを考えますと、今後とも各種の機会をとらえてその透明性の向上を働きかけていきたいというふうに思っております。

藤島委員 今、防衛庁長官から御説明ありましたように、大変な防衛予算の伸びを示してもおりまして、ここの国防費の中に出てくるだけではなくて、恐らくいろいろな費目がある、それが非常に不透明だ、こういうのが先ほどの防衛庁長官の不透明という意味も含まれているんだろうと思うんですけれども。

 私、昨年暮れに実は中国に行く機会がありまして、向こうの方といろいろ話して、長官の今お話しになったようなことを実は言いましたら、そもそも随分おくれている、日本に比べれば、今のようなあれですので、防衛費だけ比べると日本よりぐっと少ないということとか、あるいはインフレ率が非常に高いので実質はそんなんじゃないとかいろいろ言っておりますけれども、長官おっしゃいましたけれども、かなり実は近代化が進んでいる、これに対してやはり米国も非常に神経をとがらせている、こういうことだろうと私は思うわけであります。

 それとの絡みで、最近、台湾に対する米国のイージス艦売却問題というのがいろいろあるわけですけれども、これに関しては防衛庁長官はどのようにとらえておりましょうか。

石破副長官 お答えを申し上げます。

 これは、台湾と米国との間で進められていることでございますので、私どもがあれこれ言及する筋合いにはなかろうとは思っております。

 ただ、これがイージス艦ということになりますと、これは委員御案内のとおり大変な防空能力を持った船ですね。今までのものとは全く違う船であります。それが台湾の対空、防空能力というものを非常に高めることになるだろう、そしてまた、これは一種のTMDの一環として考えられるということもあるのではないかというふうには思っております。

 そんないろいろな問題があって事が複雑なのではなかろうかというふうには推量いたすところでありますけれども、いずれにしても、これが米中間、そしてまた中国・台湾間、そこの緊張を高めるようなことにならないように、両国間、両国間といいますか米中間、そしてまた中国・台湾、その関係が良好に推移するように、私どもはそのような期待を持ちながら見守っておるところでございます。

藤島委員 これはなかなか難しい問題だと思うわけでありますけれども、私が申し上げたいのは、そういう動きになるということは、要するに、中国サイドのそういった近代化といいますか国防力の増強、こういうのがやはり背景にあるということを見落としてはならない、それが米側の対応にあらわれてきているということだと私は思うわけであります。

 さらに、それではもう一つお伺いしますけれども、四月一日の南シナ海における米軍機と中国軍機との接触事故についてでございますが、これは石破副長官は公海上空で起こったんだろうというようなことをおっしゃっていますが、これについてはどう考えておりますか。

石破副長官 中国側の発言におきましても、その後領空に侵入したというような発言がございます。また、指摘されております地域は公海上である、このような認識を持っておるところでございます。

藤島委員 公海の上空でありますと、偵察機が飛んでいるところにスクランブルをした戦闘機が来て接触事故を起こす。何か、聞いておるところによりますと、このパイロットは、相当果敢といいますか乱暴といいますか、かなりそういう相手方機に触れぬばかりに飛行する癖のある操縦士だったようでございますけれども、まあ、墜落して亡くなったのは非常に残念だといいますか、職務でそうなったのは残念なんですけれども。

 それはそれとして、そういうことを基本にして、あるいは海南島に着陸してこれが中国領土だということもあって、いろいろ外交上の駆け引きになっているわけでありますが、中国側が公海上空にあってこういう接触事故を、どちらかといえば自分の方から起こしていると私は思うわけですね。EP3の情報収集機というのはプロペラ機でありまして、そんなに運動性能がいいわけじゃありませんから、みずから戦闘機にぶつかっていくようなそんなばかな操縦ができるわけがありませんので、もう間違いなく向こう側が一方的にぶつかってきているというふうに思うわけでありまして、これがまさに公海上で起こった、こういうことであります。

 そうなりますと、中国側が何か理不尽とも言えるような、米側に公式謝罪、これは偵察機の方が一応無事着陸して保護下にあるものですから、揺さぶりに使っているようなんですけれども、こういう中国の姿勢について、これは防衛庁長官がいいのか外務大臣がよろしいのか、どのようにお考えですか。

河野国務大臣 このたびの接触事故につきましては、中国は責任は完全にアメリカ側にあるとして謝罪を求めているものと承知しておりますが、事故原因を含めて事実関係というものの詳細が明らかになっていない現在、我が国としてはさらに関連情報の収集にまず努めることが重要だと思います。

 そうした関連情報というものが十分に収集されないうちに、予測、予断を持ってどちらが悪いとかどちらがいいとかということを言うよりも、いずれにせよ、我が国にとって大事なことは、米中関係が良好に推移することがアジア太平洋地域の平和と安定にとって重要なわけでございますから、乗員の安全確保を含めて、速やかに、かつ円滑に本件が解決されることを希望するということを中国側にも伝えると同時に、私自身アメリカにも伝えているところでございます。

藤島委員 これが穏便に解決することを望むわけでありますが、先ほど外務大臣おっしゃったように、今原因がはっきりしていない。これは恐らく永久にはっきりしないかもわかりませんですけれども、ただ、偵察機が返されれば、そこに傷跡とかいろいろなものもあるわけですから、それをある程度分析することによって多少は原因は究明されるかもわかりませんが。

 それはそれとして、自衛隊は同種の偵察機を持っておりましょうか。

石破副長官 同種という意味がなかなかちょっとわかりかねるところではございますが、電波情報を収集するため、こういう意味で申し上げますと、岩国にEP3という名前の電子戦データ収集機、これを五機保有しておるところでございます。

藤島委員 それでは、防衛庁長官にお伺いしますが、もし、このように我が国の公海上空というか中国の近くでもいいんですが、要するに公海上空で同種の事故があった場合、長官はどのように対応されますか。

斉藤国務大臣 同様な事故並びに事案が発生した場合どうなるかという御質問でございますが、一概に申し上げられないんじゃないかというふうに思っております。

 ただ、一般的には、当該接触事故等々が起きた場合は、状況把握等にまず最初に努めなきゃならない。そして、その後、外交ルートを通ずるなり、また当該国に対し、まず乗員の安全確保、それから機体の回収等を速やかに求めていくのではないかというふうに推察はいたします。

藤島委員 戦闘機同士の接触とか情報収集機同士の接触ならまだ話はわかるんですが、一方が公海上空で整々と情報収集している、これは合法的な行為ですね。どうですか。

石破副長官 御指摘のとおりだと思います。

藤島委員 それにスクランブルをした相手方機が、いずれにしても衝突してくる。これはやはり、どう見てもぶつかってくる方が悪い、飛行機の形態からいっても、そういうことが言えると思うんですね。

 したがって、私は、これに対してはむしろこちらからの猛烈な抗議みたいなものがあって、日本の場合ですよ、もし我が海上自衛隊、あるいは航空自衛隊でもいいんですけれども、こういう事態になった場合は、当然猛烈に抗議をしてしかるべき、そういった問題じゃないか、こういうふうに思うからでございますが、お答えは結構でございます。

 それでは、私の本当に伺いたいことはこれからなんですけれども、在日米軍は、この四十年くらいの間に相当に変質してきているんじゃないかと思うわけであります。

 というのは、先ほど外務省の説明員にお聞きしたように、要するに、アジアにおける米国の経済権益、これは大変なものになって、膨れ上がってきているわけですね。米国というのは、軍隊を無用にあちこちに配置するわけじゃないので、まず自分の国益だけを、ほとんどそれを第一に考えて配置している。そういう意味において、アジアにおける米軍というのは、今や大変重要な意味がある。特に、フィリピンのスービックとかクラーク基地がなくなっちゃったわけでありまして、あとは韓国と日本、これを除くと、もうグアムとハワイまで行ってしまいますので、日本の米軍というのは大変重要なものがあると思うんですね。

 これは、最初申し上げたように、最初置かれたときは、確かに、アジアの安定もしかりですけれども、日本の防衛をかなり念頭に置いておったというふうに思うわけですけれども、現在の在日米軍は、日本自身が有事のときに、本当に日本のために血を流すというふうなものなのか、あるいは、アジアにおける米国の権益、これを主として守るために置かれている、こういうふうに変質をしてきている、私はこう思うわけでありますが、防衛庁長官はどのようにお考えですか。

斉藤国務大臣 委員の御指摘は、変質をしているのではないかという御質問でございますが、御案内のように、冷戦終結後におきましても、我が国周辺地域においては、依然として不透明、不確実な要素が存在しているわけでございます。このような認識のもとで、日米両国において、日米安全保障条約に基づく米国の抑止力が我が国の安全保障にとって必要でございまして、また、在日米軍を含む米軍の軍事的プレゼンスがアジア太平洋地域の平和と安定に大きく寄与して、また不可欠のものであるということでございます。

 これは、一九九六年の日米安全保障共同宣言を初め、累次の機会において確認をされているところでございまして、米国のアジアの経済権益を守るためだけのものであるという委員の御指摘は当たらないのではないかというふうに思っております。

藤島委員 私は、もちろん米国のアジアにおける権益を守るためだけと言っているわけじゃございませんで、最初に置かれたときと今ではかなり性格が変わってきているんじゃないかということを申し上げているわけですね。古い時代の答弁資料であれば今のような答弁で結構なんですけれども、大分変わってきているんじゃないかということを申し上げたいんです。

 というのは、最近、やはり我が国に、集団的自衛権を認めてきちっとやるべきだとか、こういう話が米国内にも既に出てきておる。これは、日本に置かれている在日米軍の性格もかなり変わってきている。要するに、アジア全体の平和、これは大事なことでありまして、アジアの平和があってこそ我が国の平和があるわけですから、これは大変大事なんですけれども、アメリカの中の考え方も徐々に変わってきている。こういうものを見据えて我々も考えていく必要があるんじゃないかと思うわけであります。

 これから申し上げるのはちょっと聞いていただくだけでいいんですけれども、集団的自衛権の問題、これが今までの政府の考え方で、持ってはいるけれども行使できないというようなことでありまして、今の日米安保もまさに片務的な契約になっているわけですね。日本が攻撃されたときは米国が日本を守る義務はあるけれども、米国が攻撃されたとき、日本は守る義務はない。これが、その代償として、基地の提供、それでホスト・ネーション・サポートをしっかりやれ、こういうふうなところに来ておるわけであります。

 このホスト・ネーション・サポートにつきましては、十年ぐらい前、日本がバブルでアメリカが経済がよくなかったときにもう至れり尽くせりをやったわけですが、私も実はその中にいた人間なんですけれども、今、逆転してきているわけですね。こういう中にあって、本当に至れり尽くせりのホスト・ネーション・サポートをする必要があるのかどうか。

 これは、先ほど申し上げたように、在日米軍の性格もそういうふうに変わってきているということを踏まえまして、私は、ホスト・ネーション・サポートは大幅に減らす。実はことしの四月から、ごく一部協定を改定して、ごく一部ですけれども負担を変えているわけですけれども、私は実は反対でした。それは規模が小さ過ぎるからなんですね。ただ、最終的には、協定案としては賛成したわけです。それはやらないよりはいい、反対するという意味じゃなくて、やらないよりはいいという意味で賛成にしたんですけれども、これは実は五年間また縛られるということになりますので、ここはそういった米軍の地位の移り変わり、あるいは経済だけじゃないんですけれども、アメリカでの我が国に対する、自衛隊への期待、こういったものを踏まえて大幅に減らすべきだ、こういうふうに私は思うわけであります。

 時間がもうなくなりますのであれですが、最初に戻りまして、そういうことで、私は、まず我が国を守る、これには自衛隊がまずあって、国民が、自分の国は自分で守る、こういうことから、やはり防衛庁は国防省にきちっと昇格をして、国民の意識をはっきり、国防は自分でやるという意識をきちっとすべきだ。そして、今申し上げたように米軍は徐々に減らしていき、もちろんゼロというわけにいきませんけれども、徐々に減らしていく、そういうふうに持っていくべきだ、こういうふうに実は考えておるものですから、議論させていただいたわけであります。

 時間がありません。最後に、前回の委員会のときに、実は、駐在武官の処遇について検討をお願いしておったわけですけれども、これについて、どういうふうになっておりましょうか。

河野国務大臣 先般も御説明を申し上げましたとおり、防衛駐在官の処遇につきましては、もう議員御承知のとおり、かつて外務省と防衛庁との間で協議の上、大幅な改善が行われたわけでございます。

 防衛駐在官は、在外公館に出向した後に再び防衛庁に戻られる方々であることを考えまして、その処遇については、まず防衛庁側の考え方を十分に聴取する必要があると考えるわけでございますが、外務省としては、外務公務員1種職員及び国家公務員1種職員と自衛官の採用形態の相違及び外務専門職員の処遇との関係を踏まえて検討する必要があると考えているわけでございます。

 また、現在、能力本位で適材適所の任用の実現を含めて、公務員制度の改革に関する検討が行われておりますので、そうした内容にも留意する必要があると思われます。

 なお、防衛駐在官がその専門知識を駆使して十分に勤務できますように、例えば語学を含めた研修のあり方等についても検討をしてまいりたいと考えております。

藤島委員 私が聞いていますには、各大使館、駐在武官、自衛官が非常に活躍しており、皆さんの仕事で非常に助かっている、非常に貴重な存在になっている。これは外務省の方どなたもそういうふうに言うわけでありますが、その割に処遇はとなると、私は非常に問題があると。早急に防衛庁の方も結論を出していただいて、改善をしていただきたい、こう申し上げまして、私の質問を終わります。

 もし長官、答弁がございましたら。

斉藤国務大臣 先日も委員から御質問を賜りました。

 私ども防衛庁としては、防衛駐在官の人事管理のあり方についても検討を行うよう指示いたしたところでございます。

藤島委員 終わります。

川端委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 四月四日の外務委員会でも議論したわけですが、最初に、原潜の無通報入港問題についてお伺いしたいと思います。

 四日の議論のときには、私は、外務大臣が入港の条件について、条件が整備されたということで、一たん入港に協力できないとしていたものを、態度を変えて、入港を受け入れる態度をとったときに、ルール違反はまだまだ続いているじゃないか、そういう問題が整理されるまでは入港を少なくとも受け入れるべきではない、このように申し上げました。

 それで、一たんは外務省としてはこの問題を連絡ミスということで一件落着させているわけですけれども、午前中の議論もありましたけれども、アメリカ海軍の現場指揮官の中には、二十四時間前の通報制度に対する認識について根本的にギャップがあると考えるわけですね。私は、単なる連絡ミスでは済まされないという問題があると考えています。

 そこで、外務省に改めて確認をしたいわけですが、米軍の準機関紙である「星条旗」の報道によると、在日米海軍のグレイビール報道官は、通報は米海軍と日本の外務省との間の儀礼上の合意であり、作戦上の理由で無視されることもあり得る、このように発言して、それが報道されているわけですね。同報道官は、この発言について改めてマスコミから問い合わせたところ、発言を撤回する必要はない、このように答えているようです。

 改めて確認いたしますけれども、この二十四時間前の通報制度について、アメリカ海軍が説明しているように、作戦上の理由で無視されることもあり得るという性格のものなのかどうか、外務省の見解をお願いします。

河野国務大臣 議員が御発言になりました、私の四月三日におきます発言が態度を変えたかのようにおっしゃいますが、私は態度を変えたことはございません。きちんと、前段でまず発言をいたしましたのは、原因を究明し、それを確認して通報をしてくるまで入港に協力できないということを前段言ったのであって、きちんと原因が確認をされて通報をしてくれば、それは協力できないと言った発言と一貫している、私の行動は一貫しているわけでございまして、何か急に私が態度を変えたような御指摘は正しくないのでございますので、御理解をいただきたいと思います。

 それから、後段お尋ねの、在日海軍司令部の報道官が、事前通報は儀礼上のもので、作戦上必要ならば通報しないこともあるという発言をしたということでございますが、昭和三十九年の合衆国政府の声明の中で、米国政府は、アメリカ海軍が日本政府に対し、アメリカ原子力艦船の日本の港への入港の少なくとも二十四時間前までに通報する方針を示しております。この声明は、原子力艦船の入港に当たってのアメリカ政府の基本的方針を宣明した十分な重みを有するものでありまして、実際、アメリカ側も長年この声明には従って、日本側に入港の事前通報を行ってきているわけでございます。

 報道されております在日米海軍司令部報道部長の発言につきましては、既に在京米国大使館も、当該発言は米海軍の立場を代表するものではない旨述べておりまして、昭和三十九年の合衆国政府の声明の重みにつきましては、日米両国政府の立場に相違はございません。

赤嶺委員 私、ですから、前回の外務委員会で申し上げたのは、そういう重みのある発言だということをおっしゃって、それを守られていないのはけしからぬということで、外務大臣が一たん入港に協力できる条件はないという態度をとられた。その後、いろいろ原因が究明されたのでそういう条件は解除されたというわけですけれども、そういう認識の甘さについて、その日以外にもルール違反があるじゃないか、このルール違反を整理しないで協力できる条件が整ったとすること自身がやはりおかしいんじゃないかということで申し上げたわけであります。

 それで、その点が今、公式の発言ではないと言われても、米軍の準機関紙である「星条旗」紙にこういう報道が繰り返されて、問い合わせについても、不適切な発言であったと思うけれども、しかしそれを撤回する必要はないというぐあいに言っているわけですからね。この問題に対する米軍の認識そのものが非常にばらばら。日本政府が考えていることと大きなギャップがあるというぐあいに思うんです。

 それで、今、二十四時間前の事前通報制度について、外務大臣もその重みについて言われたわけですけれども、やはりこういうルール違反が起こるのは、あるいはルール違反をしてもそれに対する反省のない言動が起こるのは、この制度がいわば米軍の考慮というのが前提になって成り立っているわけでして、日米のきちんとした取り決めにはなっていないわけですね。

 その点で、今回の問題を契機として、日米合同委員会で通報手続徹底のための協議に着手をすると述べているわけですけれども、日米協議の中でこの制度を日米間の正式な取り決めとして文書にするという、そういうしっかりしたルールを確立する必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 私、こだわるわけではございませんけれども、四月三日の私の発言は、アメリカ原子力潜水艦シカゴの無通報入港について原因を究明して通報をしてこいということを言ったのであって、一般論を述べているわけではないわけでございますから、そのシカゴの無通報入港について、先方が、連絡上のミスであったという向こう側の調査の結果をこちらに通報してくれば、私が先方に申し入れた部分が満たされたと考えるのは当然のことであって、それを甘いとか甘くないとかおっしゃられるのは、それは議員が一般論として、どうもこの外務大臣は甘いなとおっしゃられるなら、それは私がそういうところも、反省をしなければならぬところがあるいはあるのだろうと思いますけれども、個別の問題については間違った発言をされないように、そこはひとつ御理解をいただきたいと思うのです。

 まだ答弁していませんからちょっと待ってください。それで、議員がお話しになりましたように、先方からのそうした返事を受けまして、私どもとしても検討をして、しかしこのままではよくないということも考えて、日米合同委員会でこの問題を取り上げようということをこちらから申し入れをして、アメリカ側もそれを受けているわけでございます。これから合同委員会において協議を行うわけで、その協議の結果についてはまだ申し上げられる段階ではございませんが、こうした連絡上のミスでこういうことが起こるなどということが今後起きないような手だてをそこで十分協議をしたい、こう考えているわけでございます。

赤嶺委員 日米間でしっかりこの正式な取り決め、文書化ということを進めない限り、やはりこの問題の決着はつかないと思いますので、そこはきちんと求めていっていただきたいということを申し上げて、なお、外務大臣に甘いところがあるかどうかという議論ではなくて、実際上の話として、例えば四月九日に沖縄の勝連町の町議会が、米合衆国原子力軍艦のホワイトビーチ寄港に反対する抗議決議と意見書を上げているんですよね。

 この意見書などを見ますと、こう書いてあるんです。「過去においては平成九年七月二十二日ホワイトビーチに原子力潜水艦インディアナポリスが通告なしの寄港をし、」ということで書いているんですね。通告なしというのは今回の佐世保だけではなくて勝連でも起こっていたんだというぐらい、原潜寄港については非常に乱れた、いわばルールのないやり方というのがまかり通っていた。

 このことについて、やはり外務省の認識が問われる事態が起きている。それはこの間も、私、それ以外にもルール違反があるじゃないかということで、私たちの党の機関紙の赤旗の資料にもあるぞということで言ったわけですけれども。

 やはりここが本当に、単なる連絡ミスで一件落着という姿勢ではこの問題は決着がつかないし、私は改めて、そういうルール違反の事態が解決されていない以上、少なくともこの制度がしっかりした日米の取り決めとして合意されるまでは入港を認めるべきではないと改めて考えるわけですが、いかがですか。

河野国務大臣 御指摘の、平成九年七月でございましょうか、ホワイトビーチに原潜が入港したという記録は議員お持ちなのだろうと思いますが、その記録はさらに、記録の中につけ加わっているかもわかりませんが、その折の問題は、原潜が出港後、乗組員にけが人が発生して急遽再入港をした、こういうことが私どもの記録には残っております。

 確かに事前通報がなかったという点では問題だと思いますが、けが人の移送という人道上の理由によってこういうことになったということでございまして、基本的にそうした問題、つまり人道上の理由という問題というものをどういうふうに見るかということであろうと思います。人道上であろうと何であろうとだめなものは絶対だめだとお思いになるのか、あるいはやはりそうした人道上の問題であればそういうこともあり得るかなというふうに議員が御判断なさるか、そこは判断の難しいところだと思いますが、そうした例があったということを私どもは承知しております。

赤嶺委員 やはり入港を受け入れないという態度は示されないわけですね、さっきの私の質問ですけれども。

 それで、今の問題で言いますと、人道上の理由で入港したけれども、入港後も連絡がないんですよ。入港後も連絡がないんですよ、この原潜は。つまり、入港前にも連絡はしていませんが、入港した後もなくて、そして、そのときの報道で、在沖海軍報道部は問い合わせに対して「緊急寄港の連絡は受けていない。演習との連絡も特にない」ということになっているわけですね。ルール全体が乱れているという証拠でありまして、やはり入港を認めるべきではないというぐあいに思いますけれども、いかがですか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、今般、合同委員会で、円滑な手続の履行ということについて日米で協議をするということとなったわけでございまして、私どもといたしましては、できるだけ今後かかるミスが生じないようにということで万全を期して、改めて見直しを行いたい、かように思っております。

赤嶺委員 やはりそういう外務省の態度では、再び三たび事故は起こり得るということを指摘して、次の質問に移りたいと思います。

 今度は、防衛庁長官、名護市で起きている問題について、既に御承知だと思うんですが、二カ月余りにわたって訓練空域外で米軍のFA18戦闘機が名護市上空を、昼夜を問わず訓練飛行を実施していたという問題で、山崎那覇防衛施設局長は、実弾射撃を伴わなければ沖縄の空域や本土でも訓練はできるんだ、このように発言をして、県民の抗議を受けました。それに対して山崎那覇防衛施設局長は、六日に、米軍機が自由に訓練飛行していいという趣旨ではなかった、このように釈明して、防衛庁長官も、米軍機には国内法遵守の義務がある、局長の説明が不十分だった、このように発言しているわけですけれども、名護の人たちは、あの訓練空域外での米軍の戦闘機の訓練が国内法を遵守していたとかしていなかったとかというような話ではなくて、訓練空域外で訓練が行われていたという問題を重視しているわけですね。

 それで、防衛庁長官は、米軍機の訓練の航行は、住宅密集地あるいは公共の安全にかかわる建物がある上空では訓練はしてはいけない、公共の安全を害するおそれがあるということであのような訓練はいけないという考えですか。

伊藤政府参考人 米軍の訓練飛行ということでございますが、いわゆる射撃等あるいは曲技飛行と申しますか、そういった危険な飛行につきましては、一定の指定された訓練空域で行う定めになっております。そのほか、一般的にも、先ほど来御指摘のように、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものということは申すまでもないことでございます。

 ただいま御指摘の公共の施設あるいは人家密集地ということでございますが、これにつきましては、平成十一年に日米合同委員会の合意というものがございまして、低空飛行訓練に関しましては、そのような人口密集地あるいは公共の安全にかかわる他の建造物、例えば学校とか病院等ということでございますが、こういったものに対して妥当な考慮を払うという約束をしておるところでございます。

赤嶺委員 私が聞いているのは、今回の名護の訓練は低空飛行訓練ではありませんよ。そうですよね。防衛庁長官、御存じですよね。どんな訓練だったかは御存じですよね。ああいう訓練は公共の安全を阻害するものとして認められていない訓練であるんですかと。いろいろ釈明もし、謝罪もしているわけですけれども、ああいう訓練はできないんですねということですよ。

伊藤政府参考人 名護市の上空におきます米軍機の飛行につきまして、米軍機がいかなる目的でどのような飛行を行ったかということにつきまして、すべて承知しているわけではございませんけれども、現地米軍によりますと、名護市上空を飛行しました米軍機は岩国基地所属のFA18という機種であるということでございまして、当時、キャンプ・ハンセン等におきまして海兵隊の訓練が実施されていた、それにかかわるものだと承知しております。

 米軍機がそのような、いわば訓練地に向かう通過飛行として飛ぶということはあり得ることだと思いますが、先ほど来申し上げていますように、騒音その他の問題に対して妥当な考慮を払うべきことは当然のことでございます。

赤嶺委員 それでは、そういう通過訓練は認められているということですね、今の御答弁で。しっかり答弁していただきたいと思います。

伊藤政府参考人 ただいま申し上げましたように、今御指摘の名護上空におきます米軍の訓練飛行と言われるものの詳細につきまして、私どもすべて承知しているわけではございませんので、今先生の御質問に対しまして直ちにお答えをすることはなかなか難しいと存じますけれども、一般論として、訓練の途次、その上空を飛ぶということはあり得ることでございます。

 ただ、その場合に、再々申し上げますように、当然地上に対しても妥当な考慮を払うべきであるということでございます。

赤嶺委員 一般論としてはああいう訓練を名護市上空でもできるんだというような御答弁だったと思います。

 外務省に、地位協定の基本的な認識についてこの問題で伺いたいのです。

 一九八八年の予算委員会では、米軍による実弾射撃を伴わない通常の飛行訓練は、地位協定上必ずしも施設・区域に限定しているものでない、条約上の特段の定めがないので施設・区域の上空外でこれを行うことは認められている、このような答弁をしております。

 住宅密集地あるいは公共の安全にかかわる建物がある上空、こういう上空でも米軍機の飛行訓練を制限することは可能でしょうか。外務省にお伺いします。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の一九八八年の国会答弁を私、ここに手元に持っておりませんけれども、米軍による通常の飛行訓練は、実弾射撃訓練等を伴う飛行訓練とは異なるものでございまして、施設・区域の上空に限って行うことが想定されているわけではございませんけれども、同時に、米軍は、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであるということは言うまでもないわけでございまして、先ほど施設庁長官が御答弁申し上げたとおりでございます。

赤嶺委員 米軍が国民の安全に配慮をするというお話なんですが、そうすると、当然そういうことは定められているんだということなんですが、そういう立場で見たときに、今度の名護の上空を飛行訓練したことについて、あれだけ市民が、安全が脅かされたということで、一致して名護の市議会で決議も上がって抗議もしているわけですから、外務省として、この訓練は日米地位協定違反だの、あるいは日米間の合意に違反しているということで抗議できる筋合いの問題ですか、いかがですか。

藤崎政府参考人 今回の飛行という御指摘の点につきまして詳細を承知しておりませんので、具体的な答弁は困難でございますが、私どもが米側に聞いておりますところでは、危険を伴うような飛行は行っておらないということでございます。

 私どもとして、当然のことながら、米軍としては我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動しているということが必要であると考えておりますし、この点は米側としても承知しているところでございます。

赤嶺委員 国民の安全に妥当な考慮を払って米軍が厳守した結果が、この間、那覇の防衛施設局長が釈明をせざるを得ないというような訓練の中身であったわけですね。

 沖縄というのは、沖縄本島の二割が米軍基地に囲われて、訓練空域を抱え、訓練海域を抱え、無数の訓練場を身近に置いて、さらに、訓練空域外でも訓練ができるということについての大変な怒りが今回はわいてきたと思うんですよ。その怒りはどこと結びついているかというと、名護市に新しい基地をつくるときに名護市民が一番心配をしていた、米軍の飛行コースになって騒音で苦しむことになる、こういう疑問について、ヘリポートにおきます飛行経路については場周経路を外洋側に設定するとか、夜十時以降の飛行を自粛するとか、あるいは集落や学校、幼稚園の上空の飛行は極力避ける措置を講ずると説明をしていたわけですね。

 ところが、今回の名護上空におけるああいう訓練に抗議もできない、そしてそれをアメリカに是正を求めることもできないのであれば、今までの、名護新基地をつくる上で措置を講ずるとした中身は全く無意味になるじゃないか、守られる保証はないんじゃないか。そういう意味でも、私は、今回の問題を大変重視しているわけですけれども、いかがですか。

伊藤政府参考人 ただいま委員御指摘のように、普天間の移設に関しまして、名護市当局からいわゆる使用協定というものを結ぶ必要があるということで、この件につきましては、私どもも、現在、いわゆる実務者協議というものにおきまして名護市当局ともいろいろと御相談を重ねているところでございます。

 そして、御指摘のように、例えば場周経路の問題等々につきまして、これは実際に新しい施設ができて運用を開始するときでなければ正式な協定というものはできないと思いますけれども、基本計画あるいは着工前にそういったことの大筋についての話はまとめていきたいと思っております。そして、それは当然、日米間でも合意を必要とするものでございますので、米側ともよく話し合ってまいりたいと思っておる次第でございます。そして、日米間のお約束である以上、それは米側も当然守るということでございます。

 なお、再々、訓練飛行という御指摘でございますが、訓練飛行というものの中にもいろいろあるんだろうと思います。いわゆる通過というような場合にどうするか。それも訓練だと言われれば訓練かもしれませんけれども、それまでもすべて規制するということはなかなか難しいわけでございます。一方、この使用協定に関しましては、そういう名護市の皆様方の騒音に対する非常に御心配というものも私どもわかるわけでございますので、使用協定というものについて、引き続き可能な限りの努力をしてまいりたいと思っている次第でございます。

赤嶺委員 ということは、今後も通過による今回のような事件はまた起こり得る、防ぐ手だてはないと。だって、通過というのは認めたじゃないですか。通過は起こり得るんだと言って、通過を禁止するんですか。防衛庁副長官、首をかしげていますけれども、通過は禁止できないはずですよ、やると言っているわけですから。ですから、皆さん方が、基地をつくっても騒音は住宅街にまき散らしませんと言ってきた、だから基地をつくらせてくださいと言ってきた根拠そのものが、今回で崩れたわけですよ。本気になってこういう公共の安全や騒音に対して迷惑をかけないというのであれば、日米地位協定そのものをやはり見直していくというような立場に立たなければ、全く信用できない話をやっているということにしか思えません。

 それで、防衛庁長官、防衛庁長官はそういうことをいろいろ言ったんですが、あの名護のような訓練は、防衛庁長官として、政治的にはともかく、いわば法的には何らとがめ立てする手段を持たないような訓練であったのかどうか、防衛庁長官の見解もお聞きしたいと思います。

斉藤国務大臣 御指摘の件は、四月五日の名護市議会における決議書の申し入れのために那覇防衛施設局長を訪れた際での発言等々だったと思います。

 私としては、この那覇局長の発言が、一つはどこまでも自由に訓練ができると受けとめられたことを大変遺憾に思いますし、また、普天間飛行場代替施設の使用協定につきましても、あたかも普天間飛行場の代替施設の飛行機の運航にかかわるものではないとの誤解を与えたということでは、遺憾であったというふうに思っております。

 この点につきましては、山崎局長が、翌日の四月六日でございますが、名護市並びに沖縄県等の関係先に対しまして説明不足についておわびするとともに真意を説明申し上げ、また地元報道機関に対しても説明したところだというふうに報告を受けてございまして、御理解を賜ればというふうに思っているところでございます。

 米軍に対しましても、その活動に当たっては我が国の公共の安全に妥当な配慮を払ってもらわなきゃならぬ、また、地域住民への影響を最小限にとどめるよう、我が国国内法の精神をきちっと尊重してもらいたい、そういう気持ちでおりますので、御理解を賜りたいと思います。

赤嶺委員 終わります。

川端委員長 次に、今川正美君。

今川委員 私は、社会民主党・市民連合の今川正美です。

 まず外務大臣なり北米局長に具体的にお聞きしたいのでありますが、米海軍の原潜シカゴの無通告寄港の問題に関しましては、実は私の地元佐世保で起こりました。大変重大な問題であると思いますので、具体的にお聞きしたいと思うわけであります。

 まず、今月の二日に原潜シカゴが無通告で入ってきて、地元自治体はもちろんですが、外務大臣を初め外務省でもしかるべく米政府には申し入れをされたと思うんですけれども、しかし、その三日後の四月五日には、佐世保の港内には入っていませんけれども、港の入り口、港外に同じような形で入ってきているんですね。ここら辺に非常に憤りを感じるわけであります。

 そこで、まずこれは外務大臣にお尋ねをしたいと思うんですけれども、日米安保条約があり、地位協定に基づいて、アメリカの軍艦は自由に出入りできるというふうにみんな思いがちなんですけれども、しかし、この長い安保の歴史の中で、原子力潜水艦、いわゆる原潜というものの存在は、佐世保や横須賀や沖縄のホワイトビーチ、そういったところに住む人間でないとそれほど詳しく知りませんでしたし、関心はなかったはずであります。しかし、日本時間にして二月十日の、同じく米原潜グリーンビルのあの大変な事件によって、原子力潜水艦、いわゆる原潜というものの存在が日本国民の中に知れ渡るようになったのではないかと思うわけですね。

 そこで、少し古くなりますけれども、米国の原潜が初めて日本に入ってきたのは、言うまでもなく三十八年前、一九六四年の十一月十二日、シードラゴンという原潜でした。詳しくは言いませんけれども、当時は日本国じゅうを巻き込むような大変な問題になったと思います。

 このことは二月の安全保障委員会や予算委員会の分科会でも同じことを申し上げておりますので繰り返しませんが、そのときに、いわゆる米政府から口上書あるいは声明及びエードメモワールというものが示されまして、米本国におけるような原子炉の安全性だとか運航に関する安全性に関しては、わかりやすく言うと、心配しないでいいという趣旨のことが盛り込まれております。その中に、いわゆる少なくとも二十四時間前には原子力軍艦が入る場合には日本政府に通告をするということが記されているわけであります。

 いま一つは、これは原潜ではありませんが、その四年後、一九六八年には世界初めての原子力空母エンタープライズが同じく佐世保に入りました。しかも、入った日にちは一月十九日。これは、一九六〇年一月十九日に日米安保条約が改定をされた、調印されたその日であります。ですから、米国は非常にそういう象徴的な形で、いわば日米安保を象徴するような形でこの原子力潜水艦を日本に寄港させたことから始まると思います。

 既に、佐世保には初回から現時点まで通算百六十三回、横須賀にはもう六百回を超えていますし、沖縄も含めますと通算千回を超える、こういう形で米原潜が出入りをしているわけであります。

 そういった意味で、この三十八年間に及ぶ原子力潜水艦の日本における寄港に関して、その歴史的意味合いということに関しまして、河野外務大臣はどのように認識をされているのか、そのお考えを率直にお聞きしたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 米国は、日米安保条約及びその関連取り決めにより、我が国の安全並びに極東における平和及び安全のために我が国の施設及び区域を使用することを認められておりまして、御指摘の米原子力潜水艦につきましても、その寄港が昭和三十九年以来行われてきているということで、今委員御指摘のとおり、一九六四年のシードラゴン以来の寄港開始でございました。

 政府としては、日米安保条約が、米軍のプレゼンスを確保いたしまして、そしてその抑止力をもって我が国及びアジア太平洋地域の平和と安全を維持していく上で重要な役割を果たしており、この地域における安定と発展のための基本的な枠組みとして有効に機能していると認識しておりまして、原子力潜水艦を含みます米国の軍艦の寄港はこの一環であるというふうに認識しております。

今川委員 いや、私が今お聞きしたかったのは、河野外務大臣の率直な認識をお聞きしたかったんです。今のような北米局のそういう見解は、もうとうに承知しています。

 つまり、今回、米側は、少なくとも全く単純な連絡ミスだったというふうな見解をお持ちのようだけれども、果たしてそうであろうか。後ほど具体的に申し上げますが、そういうものではなくて、原潜は、少なくとも一九六四年のときは、さきの委員会でも申し上げたけれども、本当は横須賀に入れたかった。しかし、当時の政府なり外務省なりは、それはまずいという判断で佐世保に入れたという歴史的経緯もございます。

 ですから、非常に重い意味があると思うので、ぜひ外務大臣の率直な御見解を、短くて結構ですから、お聞きしたいと思うんです。

河野国務大臣 佐世保にエンタープライズが入港したときのことを、私は非常に強い印象を持って、今でも記憶をいたしております。私も当日佐世保におりまして、相当激しい入港反対運動があったのを目の当たりで見ていたからでございます。

 それはそれといたしまして、原潜につきましては、米ソの冷戦、そしてソ連及びアメリカがいずれも海軍に非常に力を注いでおった時期がございまして、その時期に、アメリカも原潜というものを非常に多く活用するという実態がありました。

 一方でまた、原子力を推進力にするということについてのアレルギーといいますか、それに対する一種の恐怖心といいますか、そういうものが日本の世論の中に大変強くあった、そういう時期でもございまして、その当時、その安全性というものに対する非常に強い関心があったという時期でもあったというふうに私は記憶をいたしております。また、学生運動の大変強い盛り上がりという時期でもございました。

 私は、議員がおっしゃるように、横須賀に当初入れようと思っていたのを佐世保に、あるいはそれ以外の場所にということにしたかどうかというのは、私は、まだその当時、そうした政策の機微に触れるような情報も持っておりませんでしたから、十分私には分析力がございませんでしたけれども、いずれにしても、米海軍が日本の基地というものを非常に重視すると同時に、原潜を非常に活用して安全というものを確保したいという強い希望があった、そういう時期でございました。

 それに対して日本側がどういう対応をしてきたかということについては、これは私がここですぐに申し上げられるほど私に知識はございませんけれども、印象を申し上げれば、今申し上げたような幾つかの問題をはらんだ時期であったという記憶が残っております。

今川委員 それでは、少し具体的なことをお尋ねしますが、これまで、例えば佐世保のことを例にとりますが、三十八年間、米側が声明なりエードメモワールで出されている少なくとも二十四時間前に通告をするということが、今回のケースは別にしまして、これまできちんと守られてきておったのかどうかということはどうでしょうか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカ側の声明に基づきまして、基本的には二十四時間のルール、二十四時間の事前通報というものは守られてきたと存じますけれども、幾つかの例外があったことは事実でございます。

今川委員 私も三十二年間、佐世保で原潜を初めアメリカの軍艦の出入りというのはずっと監視をしてきましたけれども、冷戦が終わる一九八九年まではきちっと守られておったんですね。翌九〇年は佐世保には入ってきていません。翌九一年からは寄港回数もふえましたし、たびたび二十四時間前に入ってくることが出てきました。一々は申し上げませんが、これは横須賀においても沖縄においても同じです。

 ですから、先ほど申し上げるように、単なる連絡ミスとか、何かの都合でということでは済まされない性格のものがあるのではないかというふうに思うんです。

 ちなみに、これは九七年の七月、原潜ポーツマスが、これは出港するときの問題ですけれども、何の連絡もなしに出港したというケースがありましたし、あるいは七月一日には三隻の原潜が、原潜の出港通知が何度も訂正される。そうしますと、やはり市の職員さんとか大変な御苦労があるわけですね。当然、当時の科学技術庁からも二名ほどの職員さんがわざわざ駆けつけて放射能モニタリングなどもなさるわけですから、現場は大変混乱するわけであります。

 そういうことも冷戦時代にはありませんでした。九七年、九八年、同じような事態が出てきているんです。ほとんど理由というのは運用上の理由という一言なんですね。

 こういう事態というのは、その都度地元の首長も外務省に申し入れがあったと思いますし、その都度外務省の方からも米側には是正するように伝えられていたはずなんですが、なかなか、これが何度も起こってくるということは、これからも運用上の理由ということでこういうことが繰り返されていくのかどうか、その点をはっきりさせてください。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 この二十四時間の事前通報というのが行われないということにつきまして、これが例外的なケースであったといたしましても、私どもとしては遺憾なことであると考えておりまして、これまでの行ってまいりました以上に、より円滑にかかる通報が行われますように、このたび合同委員会におきまして、米側とどのような具体的な施策が可能かについて協議をしてまいりたい、かように考えております。

今川委員 今回の原潜シカゴの無通告入港に関しましては、少なくとも地元の新聞各紙は一面トップで大きく報じています。初めての出来事である。

 ところが、私は本当に初めてかどうかということを調べてみますと、実はどうも違うようなんですね。北米局長、これはどうですか。今回初めてなんですか、無通告寄港というのは。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 過去にも例があったというふうに私も承知しております。

今川委員 それはいつでしょう。北米局長、お願いします。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 過去のすべての例を今ここで私持っておりませんけれども、私の承知している限りでは、九五年及び九七年にそれぞれ一回ずつあったというふうに承知しております。

今川委員 ちょっと驚きましたね。

 九七年は、私の調査によると、これは調査するほどのことじゃないんですが、沖縄タイムスに出ています。九七年の七月二十二日に原潜インディアナポリスが全く無通告で今回みたいに入って、沖縄では激しい抗議があっているんです。しかし、どういう事情かは知りませんが、今回みたいな形で大きな報道にはなっていません。

 北米局長、もう一度聞きますが、その九五年というのは何月で、原潜の名前は何ですか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 九五年につきましては、十一月に連絡ミスが一回あったというふうに承知しておりますけれども、これにつきまして、今、私、原潜の名前を持っておりません。

今川委員 原潜が寄港するときには、寄港の目的、入港目的というのが必ず外務省経由で佐世保の市役所にも入ってくるわけですが、佐世保の経験からいきますと、これも冷戦が終わるまでは、ほとんどと言っていいと思いますが、補給と休養及び艦の維持というふうにきていたんですね。これが、冷戦後は、急病人の搬送であるとか運用上の理由とか、随分そこら辺も態様が変わってきましたが、これは少なくとも外務省として、この寄港目的に関してはどのような認識を持たれているかお聞かせください。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 通常の原子力潜水艦の寄港目的は、今委員御指摘のとおり、乗務員の休養及びレクリエーション並びに兵たんの補給及び維持にあるものと承知しております。このほか、先ほど御指摘のような急病人の移送等の理由で短時間寄港したこともあるというふうに承知しております。

今川委員 次は、原潜の原子炉の安全性にかかわる問題です。

 これは二月二十七日の当安全保障委員会であるとか、あるいは予算委員会の第一分科会でも私はお尋ねをしていますが、アメリカは、一九六四年の八月二十八日付の口上書なりあるいはエードメモワールで、原子炉の安全性は大丈夫だという趣旨のことを記載してあるわけですけれども、しかし、実際には、一九五〇年代から今日まで、さまざまな原子炉に関する事故が起こっております。

 これはもちろんアメリカの原潜だけではありません。当時、ソ連の原潜でもそうでありますし、イギリスの原潜でもそうです。原子炉にかかわらない事故ももちろん結構な数起こっています。それを一々ここでは申し上げませんが、何度も申しますように、日本政府として、日米安保があり、いわゆる日米同盟を基軸としていくという以上、佐世保や沖縄や横須賀に入る原子力潜水艦の原子炉の安全性に関して、少なくとも出力がどれくらいだということは、この米政府の声明の中ではそういうことは公にしないと言われつつも、冷戦が終わってから横須賀に入った原潜の艦長が、百万キロワットの約四分の一というふうなことを既に記者団にはっきり語っているわけです。

 いま一つは、さきの委員会でも申し上げたんですが、少なくとも住宅地域から原子力潜水艦は五百メーター以上離れていなければならないということが、米国の中でははっきりと約束をされていて、これが海外基地にもきちんと適用されるということは、一九七八年、当時のマクパードン佐世保基地司令官がはっきりおっしゃっているわけです。これが、さきの委員会では、外務省側の答弁としては承知をしないということで終わっています。

 私はそのときに、少なくとも外務省として責任を持って調査をして、後ほど提出をしていただきたいということを申し上げたわけでありますが、この点は再度確認したいと思いますので、御答弁をお願いしたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員御指摘の米原子力潜水艦長の原子炉の出力についての発言の報道については私どもも承知しておりますけれども、他方、米国政府は、潜水艦に関する国内規則並びに原子炉を含む軍艦の設計上、運行に関する技術上の情報等については軍事上の機密に関する事項であるということで、公表しないとの方針をとっているというふうに承知しているわけでございます。

 また、原潜の係留地に関する、委員御指摘のマクパードン司令官の発言ということでございますが、これにつきましては、私どもも関心をもちろん持つべきであると考えまして、これは米側に確認したわけでございますけれども、米側によれば、マクパードン司令官がそのような発言をしたことは承知していないというふうな回答を得ております。

今川委員 実は、今回の問題に関しては、既に外務大臣も御承知でしょうが、佐世保の光武市長が、これまでになく厳しい姿勢で日米両政府に求められていると思います。

 ここに、外務省が佐世保にお見えになったときの今月四日の市長コメントがございますが、その中でこういうくだりがあります。「今回の事件の原因究明が進み、その改善策が日米両政府間で確立をされ、佐世保市に対し説明が行われてそのことについて一定の評価ができるまでは、佐世保市としては米国原潜の入港については遠慮されたい、との考えを示したところである。」これまで、このように厳しい姿勢を示されたことはありません。

 この光武市長は、かつて自民党の国会議員の経験もございますので、日米安保というのをだれよりも大事にされてきた方なんです。その彼をしてこう言わしめざるを得ない、ここをやはり外務省としてもしっかり受けとめていただきたいと思うんです。

 今回、地元のいろいろな新聞を見てみますと、「米原潜の無通告入港問題 制度改善で一致」という見出しで、日米合同委員会が既にこの問題で開かれたように聞いておりますが、制度化をする、あるいは制度改善を行うということの具体的中身を、外務大臣、ちょっと具体的に教えてください。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の、光武市長は外務大臣にも会われて、また、私ども事務レベルでもお話を承りました。

 私どもとしても、本件、今回起こりました事前通報なき入港につきましては、極めて遺憾な事態であるというふうに認識しておりまして、この点を米側に指摘したわけでございますし、また、現行の手続につきまして、これを改善する必要ということを痛感した次第でございます。

 そこで、私どもといたしましては、今月五日に開催されました日米合同委員会において、この原子力艦船入港に関する通報手続というものをより円滑に遵守されるということを確保いたしますために、協議をするということを米側と合意した次第でございます。

 この内容につきましての御質問でございますが、これについては、今、協議をするということを合意したところでございまして、今後、早急に具体策を得られるように進めてまいりたい。私どもとしても、これが非常に重要なことであると考えておりますので、鋭意努力してまいりたい、かように考えております。

今川委員 今の件につきましては私も非常に大事な問題だと思いますので、私の意見を申し上げますと、入港だけではなくて出港も、いわば慣例として、少なくとも二十四時間前にはこれまで通告があっていたわけですね。ですから、原潜の出入港に関してきちっと協定書を取り交わす、それくらいのことをやはりやっていただきたいと思うのであります。

 その次に、原潜の運航マニュアルの公開に関してであります。

 実は、原潜グリーンビルの事件があってから新聞などでも報道されておりますが、原潜の日本周辺海域での訓練海域、相模湾ははっきり新聞にも出ておりました。ところが、これは原潜に限りませんけれども、地位協定等により米軍が使用している水域、いろいろな水域がありますけれども、訓練用に使う水域が本土周辺で十二水域、それから沖縄では十六水域が地位協定に基づいて提供されているというふうになっております。

 このことに関して、例えば佐世保でいいますとどのあたりから浮上して航行してくるのか、これは民間船舶の航行の安全上からも私たちは非常に関心があるわけであります。よく佐世保では、港外で釣りをしている人たちから、五島の海域あたりで既に浮上をしていたとかという話もちょくちょく聞きますし、そういうことを軍事機密の一言でベールに包むのではなくて、少なくとも、こういう海域を航行しているんだとか、あるいはこういう海域で訓練をしているんだとか、沖縄や佐世保や横須賀に寄港するときには大体このあたりから浮上してくる、そういったことをぜひ公表してほしいと思うんだけれども、この点はいかがですか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のこの運航マニュアルということでございましたけれども、米原潜の運航訓練あるいは運航中の浮上地点等につきましては、米軍の運用にかかわる事項でございます。そういうことで、公表できないというふうに承知しております。

 他方、米原潜の我が国への寄港に当たりましては、これまで以上に安全面の配慮が払われるということが必要であるということで、これは先般、えひめ丸の際に、二月二十七日に米海軍のファロン大将が特使として来日いたしました際、河野大臣から、原潜を含める米軍艦船が日本の港に入港しているけれども、これらの艦船について改めて安全確認を徹底するよう指導願いたいというふうな申し入れをいたしまして、ファロン特使から、再発防止のため必要な措置をとるという発言がございました。

 また、今月四日にパウエル国務長官との電話会談の際に、河野大臣から、国内でも関心が高い原子力潜水艦について、その運航についての安全確保を要請されまして、パウエル長官から、今後手続の厳格化について努めたいという発言があった次第でございます。

今川委員 もう時間が参りましたが、最後に一点だけ、これは外務大臣に強く申し上げておきたいのであります。

 たび重なる連絡ミスとかがあったので、それを改善する、善処するということでは済まない問題が隠されているんではないかという疑念を持たざるを得ません。それは、例えば、九九年に米太平洋軍から在日大使館に向けて、ある連絡があったことを私はさる新聞社から入手しているんですけれども、表現としては、いわゆる米海軍の艦艇の、あるいは原潜の運用の弾力化を図る、そういう表現があるんです。

 平たく言うと、例えば日本でも周辺事態法等の新しい法律もできたわけですが、冷戦期とはまた違って、これまで以上に、いざというときに二十四時間前の事前通告抜きに自由にやはり出入りをしたい、そういう軍事上の必要性というのがあって、なし崩し的にこの冷戦後十一年間、こういうことが、口約束とは裏腹に既成事実が積み重ねられているんではないかという疑念を強く持つのです。そういったことも踏まえて、米政府とのいろいろな交渉事に当たっては、より厳しく臨んでいただきたいというふうに思います。

 冒頭に申し上げたように、少なくとも、四月二日にこういう不見識なといいますか、ルール違反で入ってきて、少しは自重するのかなと思っていたら、三日後には同じ原潜が港外に姿をあらわすというふうな米軍の行動を見てみますと、非常に私は、これまで以上に不信感を抱くのです。

 そういったことを最後に申し上げまして、時間が来ましたので、質問を終わります。

河野国務大臣 議員の御指摘は十分心して、アメリカとの話し合いをいたしたいと思っております。

 今回の問題につきましても、パウエル国務長官に私、たしか四月の四日だったと思いますが、電話をいたしましたときに、既にパウエル長官のところにはこの問題については報告が上がっておりまして、単なる報告ではなくて、連絡上の問題があったということについても長官は認識しておられて、厳格な連絡上の問題についてのルールといいますか、そういうものをきちっとつくらなければならぬというふうにも考えるということを長官は言っておられました。

 私は、アメリカもそうした点についてきちっと上げるものはちゃんと上がっているなというふうに実は感じたわけでございますけれども、それはただ単に報告が上がっているというだけでは意味がないわけでございまして、そのことから、一方で日米合同委員会に我々は問題を提起するという作業をしておりましたから、パウエル長官からもそうした日米合同委員会にも何らかの指示がおりてきていれば、さらにこの問題は実効の上がる、具体性の強いものになるであろうという期待を持って私は見ているところでございます。

     ――――◇―――――

川端委員長 次に、内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を求めます。斉藤防衛庁長官。

    ―――――――――――――

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁設置法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 この法律案は、防衛庁設置法、自衛隊法、防衛庁の職員の給与等に関する法律及び自衛隊員倫理法の一部改正を内容としております。

 自衛官であった者以外の者から採用され、予備自衛官として必要な知識及び技能を修得するための教育訓練を修了した場合に予備自衛官となる予備自衛官補の制度を導入し、及び予備自衛官を災害招集命令により招集することができることとするとともに、自衛官以外の隊員について任期を定めた採用及び任期を定めて採用された隊員の給与の特例に関する事項を定め、あわせて、自衛官の定数及び即応予備自衛官の員数を改める等の必要があります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、防衛計画の大綱で定められた新たな体制への移行の一環として、陸上自衛隊の合理化、効率化、コンパクト化を推進するため、第一師団を災害対応やゲリラ、特殊部隊による攻撃への対処等を念頭に置き、都市部での対処能力を強化した師団に改編すること等に伴い、自衛官の定数及び即応予備自衛官の員数を改めるものでございます。

 第二に、国民に広く自衛隊に接する機会を設け、防衛基盤の育成、拡大を図るとの視点に立って、将来にわたり、予備自衛官の勢力を安定的に確保し、さらに、IT革命や自衛隊の役割の多様化等を受け、民間のすぐれた専門技能を有効に活用し得るよう、元自衛官に加え元自衛官以外の者を予備自衛官に任用するため、元自衛官以外の者を予備自衛官補に採用し、予備自衛官として必要な知識及び技能を修得するための教育訓練を修了した場合に予備自衛官となる予備自衛官補の制度を導入し、予備自衛官補が教育訓練招集に応じた場合に教育訓練招集手当を支給すること等を行うものでございます。

 第三に、国民の自衛隊に対する災害派遣への期待の高まり等を踏まえ、災害対処能力の向上を図るため、予備自衛官に対して災害招集命令を発することにより、予備自衛官が自衛官となって災害派遣活動に従事することができることとするものであります。

 第四に、自衛官以外の隊員について、専門的な知識経験またはすぐれた識見を有する者の採用の一層の円滑化を図るため、任期を定めた採用をすることができることとし、任期付隊員のうち高度の専門的知識経験またはすぐれた識見を有する者の給与の特例を定めるとともに、当該給与の特例が適用される任期付隊員に係る自衛隊員倫理法の規定の整備を行うものであります。

 以上が、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

川端委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十三分散会




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