衆議院

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第7号 平成13年5月31日(木曜日)

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平成十三年五月三十一日(木曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 川端 達夫君

   理事 石破  茂君 理事 園田 博之君

   理事 浜田 靖一君 理事 水野 賢一君

   理事 高木 義明君 理事 渡辺  周君

   理事 田端 正広君

      岩屋  毅君    臼井日出男君

      嘉数 知賢君    金子 一義君

      瓦   力君    下地 幹郎君

      中山 利生君    平沢 勝栄君

      宮下 創平君    吉川 貴盛君

      米田 建三君    伊藤 英成君

      小林 憲司君    今野  東君

      首藤 信彦君    末松 義規君

      西  博義君    塩田  晋君

      赤嶺 政賢君    今川 正美君

      小池百合子君    粟屋 敏信君

    …………………………………

   外務大臣         田中眞紀子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   防衛庁副長官       萩山 教嚴君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   防衛庁長官政務官     平沢 勝栄君

   外務大臣政務官      小島 敏男君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    首藤 新悟君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   安全保障委員会専門員   鈴木 明夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  牧野 聖修君     末松 義規君

同月三十一日

 辞任         補欠選任

  河合 正智君     西  博義君

  藤島 正之君     塩田  晋君

同日

 辞任         補欠選任

  西  博義君     河合 正智君

  塩田  晋君     藤島 正之君

同日

 理事牧野聖修君同月二十八日委員辞任につき、その補欠として渡辺周君が理事に当選した。

同日

 理事藤島正之君同日委員辞任につき、その補欠として藤島正之君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件




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     ――――◇―――――

川端委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴いまして、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川端委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に渡辺周君を指名いたします。(拍手)

     ――――◇―――――

川端委員長 この際、新たに就任されました小島外務大臣政務官より、発言を求められておりますので、これを許します。小島外務大臣政務官。

小島大臣政務官 今般、外務大臣政務官に就任いたしました小島敏男でございます。川端委員長初め委員各位にごあいさつ申し上げます。

 外務大臣政務官としての責任を果たすべく、田中外務大臣の指導のもと、全力で努力してまいりたいと考えております。委員長初め本委員会の皆様の御指導と御協力をいただけますようよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

川端委員長 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛局長首藤新悟君及び防衛施設庁長官伊藤康成君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川端委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

川端委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤英成君。

伊藤(英)委員 伊藤英成でございます。民主党を代表して、質問をいたします。

 まず最初に、日米関係について伺いますけれども、米国の方もブッシュ新政権ができまして、日米の安全保障関係もいわば新しい時代に入ったんだ、こういうふうに私は思っているのです。もちろん日本側も小泉新内閣が生まれた、こういう状況であるわけであります。

 ブッシュ新政権も同盟ということを重視し、そしてまた、パウエル新国務長官も上院の公聴会でも、同盟諸国とりわけ日本と強固な関係がアジア太平洋戦略の基盤で、すべてそこから始まる、こういう発言もされているわけでありますが、日米同盟ということも今まで以上にいわば重要性を持つようになっているのではないかと私は思うのです。

 そこで伺うのですが、防衛庁長官それから外務大臣、お二人に、そもそも日米関係はどうあるべきかということについてその基本的な考え方、あるいは戦略的パートナーといいましょうか、そういうことであるんだと私は思うのですが、その辺のことについてどう思うかを伺います。

 なお、参考までにちょっと申し上げますけれども、実は私自身も、例えばアーミテージとは、彼がもちろん国務副長官になる前でございますけれども、彼のアーミテージ・アソシエーツの事務所で、まさに一対一で、本当に日米関係どうあるべきか、あるいは日本の基地問題についてもどうあるべきか、私はこう思いますよという意見等もいろいろ申し上げたりした経緯もあります。

 さらに、先般、この二月に宇和島水産高校の実習船がハワイ沖で衝突、沈没したあの事故の問題につきましても、ホノルルにも行きましたけれども、ワシントンに行って、そのときもホワイトハウスやらあるいは国務省、国防総省、それぞれの高官に対して、どういうふうに対処すべきことであるかということについて私からもいろいろと申し上げた。しかも、その中の幾つかは、例えば日米の首脳会談が行われないならば、特使も派遣したらどうですかとか、実際に特使も来られました。来て、東京で行方不明の家族の代表の方と会われたのですが、その前日に私はアメリカ大使館の方に電話をして、東京で会われるのも、会わないよりはいいんだけれども、そもそも宇和島の方に行っていただくことが重要ではないかということを私から申し上げたりいたしました。私の提案どおりに急遽予定を変更して、翌日だったでしょうか、宇和島の方に特使も行ってくださいました。

 私からすれば、いかに日米関係を本当によくするために日本としてどうするかということが、極めて重要な意味を持ちます、というようなことも申し上げながら、日米関係はどうあるべきかということについて、両大臣に見解を伺います。

中谷国務大臣 私も、伊藤英成委員の日ごろからの日米関係の協力、発展のために大変な御努力をされている点、またアーミテージさんとも非常に御懇意で、何でも話し合える間柄でありまして、米国政府からも大変評価をいただいている点、そして、今回えひめ丸の事故におきましても直接交渉されまして、その効果を得られた点につきましては、心から敬意を表しております。本当にありがとうございます。

 お尋ねの、日米間の認識についてですけれども、ことしは日米安保条約が締結されまして五十年にもなりますし、戦後の歴史、世界史の中でもこの日米関係の友好、発展というものは、歴史的に成功している最もすばらしいものでもあります。今のこの全世界、日米間で合計総GNPの四〇%を占めておりますけれども、世界全体におきましても、日米友好関係は最も大切なものでもございますし、我が国の安全保障、経済におきましても、日米安保なくして日本の安全もアジアの安全もないのではないかという私は信念を持っております。

 三月に森首相が首脳会談を行った際も、この日米間の友情と相互信頼、また民主主義という共通の価値観を再確認されておりまして、今後とも維持発展をさせていくんだというふうに思っておりますし、私もアーミテージさんにお会いしたときに、日米関係はもう五十年も安保をやって、大人と子供の関係でもない、兄弟の関係でもない、夫婦の関係でもない、もう成熟した大人の関係にあるべきであるというふうに言われました。

 そういう意味で、対等のパートナーシップという言葉が出てきておりますが、一月に行った当時にアーミテージさんが言われた言葉は、アメリカは、日本が嫌だと言うことはやりません、しかし、合意したことは対等の役割分担でやってもらいたいと。以前はバードンシェアリングで、負担の分担といったが、今後はパワーシェアリング、責任の分担で考えてもらいたいということで、私も防衛庁長官になっていない時期のお話、彼も政府の一員でないときのお話でありましたけれども、このように非常に新たな段階に立って、日本もしっかりとした自覚を持ちながら、今後とも日米安保を維持発展し、そして日米間を強化しなければならないという信念で考えていきたいというふうに思います。

田中国務大臣 日米関係が我が国の外交の基軸であるということは、もう申すまでもございませんし、民主主義であり、そして相互主義であり、そうした中でもって先生のおっしゃった、いわゆる戦略的なパートナーシップという面も成立するというふうに考えております。ただ、それも、今おっしゃったバードンシェアリングからパワーシェアリングになるという言葉がアメリカ側からあったそうですけれども、そういうことに非常に象徴的に、今後、今も含めて、将来の日米関係があらわれていると思います。

 要するに、もっとマチュアな関係、日本も、どこの国ともそうだと思いますけれども、一番正しい、楽な、そしてお互いがフリーに物を言えるような関係になるということは、やはりそれぞれいろいろ抱えているケース、今えひめ丸のこともおっしゃいましたけれども、そういう国益というものとかそれぞれの国の実情に照らした、本音ベースの話し合いをしながらそれを強化していくということが、いわゆるマチュアな、成熟した関係であるというふうに思いますので、そういうような視点、心組みを持ちながら、日米間は特に今後もパートナーシップを強化していくというふうにすることが理想というふうに考えます。

伊藤(英)委員 中谷防衛庁長官に伺いますけれども、先般、アーミテージ副長官が来られたときに、日本に来て、その後韓国に行かれ、そのときに、韓国の国防相に対して、アメリカが検討している新しい国防戦略四原則ということを伝えたようであるんですが、これは五月八日に中谷長官が会われたときにも、その話はあったんですか。

中谷国務大臣 委員のおっしゃる、韓国に対するアメリカの新国防政策に関連しまして、四原則というものは、まず第一点は、戦略の中心軸をアジアに移そうという点、第二点は、海外基地を含めた前方展開戦力への依存度を低めるかわりに迅速な展開能力を強化するということ、第三は、情報システムの絶対的な優位を維持する、第四点は、科学技術の急速な発展に伴って戦力の機動性を向上させて軽量化するという四原則を伝えたという報道があったということは、承知をしております。

 私との話の中では、ミサイル防衛構想の概要の説明が中心でありましたし、また、今後の米国の軍事改革というかRMA的なことが中心になりまして、米国の包括的国防の見直しのいわゆる四原則、おっしゃる四原則につきましては、話題になりませんでした。そういう原則についてのお話し合いはございませんでした。

伊藤(英)委員 ミサイルの話もまさに重要な話ですね。しかし、今の長官が話をされた四原則ということは、これからの軍事情勢、あるいはアメリカの戦略等々を考える意味においては非常に重要な話ですね。にもかかわらず、韓国に行ったときは話があったんだけれども、日本に来られたときに話がないというのは、私は非常に残念な話だと思います。

 さっき、それこそ責任の分担とか、あるいは対等なパートナーシップ云々という話がありましたよね。要するに、こういうのは私は、日本を軽視しているのか、頼りにならないのか、本当にパートナーをやっているのかしらんということを思うんですが、どうですか、そう思いませんか。

中谷国務大臣 私もアーミテージさんに会うのは四回目でありまして、非常に忌憚なく御意見も話す立場でありますが、今回国務副長官として日本に来られた目的は、同盟国として、アメリカが考えておられるミサイル構想に対して、真っ先にお話をしたいというのが一番のメーンでありまして、大変短い会談でもありますし、我々就任して一週間もたっていないぐらいのばたばた状態でもありましたので、その辺も配慮をして、ここまでの、その四原則の話には及ばなかったと思いますが、今後、私もこの重要性を認識いたしまして、早期に訪米をいたしまして、もっと詳しくアメリカの戦略についての話を聞いて、見ていきたいというふうに思います。

伊藤(英)委員 今の思いで、早く訪米したいという話は、ぜひ意味のあるようにしていただきたいと思うんです。じゃ、逆に聞くんですが、韓国の方でこういう話をされたということを聞いたときに、その内容について、すぐアメリカサイドに確認しようとかということはされたのですか。

中谷国務大臣 この戦略見直しの作業等につきましては、注目をいたしておりますが、公式的になかなかラムズフェルド長官もブッシュ大統領もこの話をいたしません。というのは、今、議会とのやりとりで非常に話し合い、構想をまとめる最中でありまして、情報の入手におきましては全力を挙げておりますけれども、その概要がまだ発表する状況にないというように承知しております。今後とも、さらにこの確認をいたしたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 実は、ことしの二月、私がワシントンへ行ったときに、ちょうどイギリスとアメリカがイラクに空爆をした。あの空爆をしたのが、あの日の十一時二十何分だと私は思うんですが、その十一時半から十二時半まで、当時の衛藤副大臣が国防総省で長官とか副長官と会っていたんですよ。しかし、そのときに空爆の話がなかったはずですね。そのとき、私は、なぜ日本側に説明しないのかということをアメリカ側に言ったんです。本当は事前に説明すべきではないかと。事前にできない理由等はいろいろと言っておりましたけれども、じゃ百歩譲って、事前にできなかったとしても、事後でも、即に日本になぜ説明しないんですかという話をしたんです。

 このことについてはもうこれ以上申し上げませんが、実はその後で、ワシントンのシンクタンクの人とかいろいろな人に会ったときに、日本側の私たちがアメリカに対して、こういうふうになぜしないんだというようなことを言うことは、どんなにかそれはいいことだと。要するに、日本とアメリカとはどういう関係なんだということで、何人かから、そのことについては非常に評価をしてくださったんですね。しかし、評価をしてくれたのはうれしいんですが、いかにも残念だという気がするんです。

 さっきの四原則も、現実に韓国には考え方を説明しているわけです。ならば、公式というか正式にどこまで話せるかは別にして、日本側としては即そのことについての意味とか等々について、私はすぐアクションをとるべきだと思うんですね。そういう重要なことについてすぐにアクションをとるということが必要だし、それが本当に日米間をよくすることでもあるし、日本としての位置づけを高からしめることにもなる。冒頭、長官やら大臣が言われたような日米関係を本当にやっていこうと思ったら、そういうことが必要というふうに私は思います。反省されているようですから、これ以上申し上げませんが。

 次に、さっき言われた、ブッシュ米大統領が今月の初めに言われたいわゆる新たなミサイル防衛構想、このことについて演説もされた。先ほど言われたように、アーミテージ副長官からもそのことについて話があったそうでありますが、今月、イギリスの国際戦略研究所が「戦略概観二〇〇〇―二〇〇一」という、それを発表したんですが、その中にこういうのが書いてあります。仮に日本が米国の主唱する戦略ミサイル防衛構想に参加すれば、日本の国防はより強化されるが、中国は反発し、日中関係は悪化する。そういうふうに述べ、そして、日本は米国と中国を含む東アジアのどちらとの関係を優先させるのか選択を迫られ、中国や北朝鮮との関係進展のため、米国をどの程度支持するのか注意する必要がある、とここでは述べているんです。

 その前に、外務大臣は米国に六月にも行かれる意向を述べていらっしゃいますが、この米国行きはいつごろになりそうでしょうか。

田中国務大臣 今、事務的に詰めております。

伊藤(英)委員 事務的に詰めておられて、行かれるということであれば余計になんですが、このミサイル防衛構想について日本側としてどういうふうに考えるかということはやはり重要なことですよね。さっき申し上げたように、もちろんアジア太平洋のことがある、アメリカのことがある、中国あるいは朝鮮半島のこともあるということ等もいろいろ考える、当然そういうことでありますし、これからのこの周辺の軍事情勢がどうなっていくかということは思いながら考えられる話なんですが、このミサイル防衛構想についてどういう態度でいらっしゃるのか、これはお二人に伺います。

田中国務大臣 ミサイル防衛構想につきましては、まず日米共同でその研究をするということは引き続き推進していくわけですけれども、ブッシュ大統領の声明の中で一番大事なことは、核兵器を一層削減していくというふうな大きな大前提があるわけでして、これが一番大切なポイントであるというふうに思います。そして、弾道ミサイルの拡散がもたらす脅威についてアメリカと認識を共有し、そして我が国もこのアメリカの計画を理解しているということに尽きると思うんですね。

 ですから、繰り返しになりますけれども、それに基づいて技術研究というものを引き続き推進する方向であるということを申し述べますが、さらに、まだ私はフェース・ツー・フェースでパウエルさんにお会いしていません。電話でしかお話ししていません。それも本当に短い時間でしたので、ぜひお目にかかって時間をいただいて、こちらの意見も申し述べ、どのような状態であるかということを伺ってまいります。

中谷国務大臣 昨日も、ミサイル構想についてNATOで会があって、第一回の会合が設けられる。また、ロシアにおいてもこの問題で交渉されて、新聞報道によると、ミサイルの一部をロシアから買いたいとアメリカから申し入れがあったそうなんですが、それに対してロシアもコメントをいたしております。このようにできるだけ多くの国とアメリカがこの構想をオープンに話し合いされているという点で、その点は評価をいたしております。

 我が国におきましても、ブッシュが演説をされたその概要をなぞるような形で話を聞いた以上の話がなかったものですから、まだそのさわりというか概要部分でありまして、今後どのようにさらに説明があるかということを注目いたしておりますけれども、その内容と各国の反応等を勘案しながら考えてまいりたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 さっき外務大臣が、TMDの技術協力の話が出ましたけれども、今、共同研究をやっていますね。それで、その後になるんですが、この研究を終了してから、アメリカが第三国、例えば韓国だとか台湾とか、そういうところにその供与をしようとする場合に、対米武器技術供与との関係から、供与するということについて、我が国としてはそのときは同意をする考えなのかどうか、いかがですか。

田中国務大臣 今おっしゃったように、現段階では技術の研究をやっているわけでございますけれども、今現在アメリカ側からは、この研究において我が国が供与した技術でありますとか、あるいはその研究の成果ないし結果を第三国に移転したいというような要請は一切なされておりません。

 したがって、供与した武器技術の第三国移転につきましては、具体的に事例が生じた際に、同意を行うかどうか、その時点で判断をしなければならないというふうに考えております。

伊藤(英)委員 本日はそういうことかもしれませんが、先ほど外務大臣が言われたように、日米関係というのは、まさに本音で話をし、そしてこうなった場合はどうするんだろうか、どういうふうに自分たちは考えるよというふうなことを述べることが、先ほどマチュアな関係と言われましたけれども、そういうことなんですよね。だから、本当に、こうならどうする、こうならどうするといういろいろなシナリオを考えて行動しないと、あるいは言動をそうしないといけないんだ、私はこう思います。

 そこで、外務大臣、実は、一時と比べますと、米中関係も今非常に厳しい状況になっておると思うんですね。台湾問題もある。そして、世界全体の中の軍事情勢といいましょうか、安全保障環境といいましょうか、そういうこともいろいろ動いたりしている。そして、中国自身の動きもある。

 そういう中で、日本から見ますと、日中関係もこれは極めて重要な柱ですよね。もう片一方の方は日米同盟ということになる。そういう中で、いわゆる日米中、この辺でいえば、主な国でいえば日米中の利害関係というものをどういうふうに調整させていくかということは、ほかならぬ我が日本が最も重要な責務を負う、日本がどう考えるかということになっていくわけですね。

 そういうアジアの平和と繁栄という意味でも、日米中の関係をどういうふうに考えていきたいというふうに大臣は思われますか。

田中国務大臣 その答えは、今、伊藤委員がおっしゃった中にもう如実にあらわれているというふうに思います。すなわち、二国間の関係が他の第三国との関係、それを阻害するようなものであってはいけないわけですから、それをトータルな意味でもって、相互に三者間で好影響を与えるようにお互いが努力をしていくということに尽きると存じます。

伊藤(英)委員 ちょっと先回、外務委員会のときに外務大臣に質問したことであるんですが、日本の外交ということを考えたときに、まずは日米関係、日米同盟というのがもちろん一つありますね。そして、もう一つのといいましょうか、日本の外交の大きな柱は国連外交ということでもあるんです。

 先般、私は、国連の常任理事国入りの問題について、小泉総理は若干消極的云々という話をいたしました。きょうは、どういうふうに言ったかということはわざわざもう申し上げませんが、そういう話をいたしました。そして、外務大臣に、どうですか、外務大臣はどう思われますかという話を私は質問いたしました。そのときに、総理とはまだ調整していないから、ちょっときょうは控えさせてほしいという話がありました。

 今伺いますが、外務大臣は常任理事国入りの問題についてどういうふうに考えますか。

田中国務大臣 総理と個人的にまだ意見のすり合わせをするような時間がとれておりませんが、どのような御発言をなさってきておられるかということは今の段階でよく承知をいたしておりまして、安保理入りのことをもちろん問題として伊藤委員はおっしゃっているわけだと思いますけれども、これは安保理を改革することを通じてその機能を強化するということ、これが急務であるということは言うまでもございません。そして、内外の理解を得つつ、常任理事国として一層、私たちの、国民として、日本国が責任を果たしていくということをいたしたいというふうに存じます。

伊藤(英)委員 今の話は、従来と同じように日本は常任理事国入りに積極的に取り組みますという意味ですか、外務大臣は。

田中国務大臣 従来どおり、そうは存じますが、ところが、小泉総理は、その中で、またさらにもう少し検討をあらゆる意味でしなければいけないというようなお考えも総理が持っていらっしゃるというふうにも承知しておりますので、もう少し時間、このタイムテーブルが大変タイトでございまして、きちっと話し合いの会議をもう一回持てるように、先延ばしではなくて、今おっしゃっているような御質問に答えるためにも、そのような時間を設けたいというふうに考えております。

伊藤(英)委員 私は、国連をどうするか、あるいは日本が常任理事国として入って、そこでその役割を果たそうとするということについて、今のようなお話はいかにも残念だという気がいたしますね、こんな重大な話が。しかも、大臣は積極的にやりたいんでしょう。小泉総理は、どうも必ずしもそうでもないかもしれないというんですよね。そういう意味ですよね。

 先回の予算委員会のときに、当時、うちの菅幹事長が、小泉総理は常任理事国入りについて、かねがね慎重ないし反対に近い立場を表明されておりましたが、総理になっても同じですかという質問をいたしました。小泉総理は、「変わっておりません。」と言って、あといろいろ武力行使だったかな、そういう話をしているんですよ。これは内閣不一致じゃないかと私は思うんですね。

 それから、さらにもう一つ言います。先般ASEMの会議に出られまして、あのときに国連改革の話もされたりしています。ああいうときには、日本としてはここをこういうふうに改革もしたい、そして同時に、日本としては常任理事国として入ってこういうふうにやりたいんだよという話をするんだろうと私は思った。ところが、日本の常任理事国入りの問題については、多分発言をされていないと思うんですね。外務省からいただいた資料はそうなっておりません。そして、では、英語で何と言ったんですか、英語の文章を示してくれと。でも、英語のものは出してくれないんですね、外務省は。大臣は英語でお話をされたんでしょう。ただ、英語のものは出してくれない。これはどういうことでしょうかね。

 まず、それを出さないということと、それから先ほど申し上げたように、総理と外務大臣がこんな重要なことについて、なぜ早くその打ち合わせをしないのか、もしも理解できないなら。どうですか。

田中国務大臣 総理と認識のそごがあるというふうに、もう断定的に伊藤委員は思っていらっしゃるようです。このいただきました質問書を見ましても、総理が常任理事国入りについて慎重ともとれる発言を行っているという文言が入っておりますけれども、ですから、そごを生じないように、極めてタイトなスケジュールでございますけれども、しっかりと、大事なマターでありますので、時間をとって、確認をする作業をしなければならないというふうに思っております。

 それから、二つ目ですけれども、ペーパーを当省が出さないということでございますけれども、それは多分、私の英語がつたないものでありますからかどうか知りませんけれども、それはまた、事務方によく確認をいたしておきます。

伊藤(英)委員 はい。それは、英文のものはぜひ出していただくように、見せていただくように、御指示ください。

 ではもう一回、安保理の常任理事国入りのことについて聞きますが、外務大臣は、日本が常任理事国として、もちろん現在の憲法下、のもとですよね、入って、日本としての役割を果たしたいというふうに思っていますか。

田中国務大臣 これは、総理が衆議院の予算委員会でも答弁なさっている政府の立場と私は全く同じでございまして、そういう意味では。憲法の禁ずる武力の行使を行わないことは当然でありながら、そのような基本的な考え方は、繰り返し総理が表明なさってきております。

 ですから、そういう意味では、総理のこの御趣旨を踏まえていくということには間違いありません。

伊藤(英)委員 いや、踏まえてというのは、日本の常任理事国入りについて、それについて、各国に日本の常任理事国入りについて賛成してくれるように働きかけをしますかと。

田中国務大臣 ですから、その前提は、小泉総理が五月十四日の衆議院の予算委員会でおっしゃっているとおりですけれども、我が国が安全保障常任理事国となっても、憲法の禁ずる武力の行使を行わないことは当然であり、そのような基本的な考え方は繰り返し表明するということでございますから、そのスタンスを踏まえての上でのことでございます。

伊藤(英)委員 いや、踏まえてと。今までも、日本の憲法の、あるいは日本の置かれているそういう制約を置いた上で、今日までいろいろな国に対して働きかけてきたと私は思っているんです。だから、それは当然の話じゃないかと私は思うんですよね。

田中国務大臣 ですから、総理ももうおわかりいただいているんだと思いますけれども、あえて申し上げると、従来の政府の立場を変更するという立場ではない、そういう意味の御発言ではないということを申し上げます。

伊藤(英)委員 ASEMの会議のときに、なぜ日本の常任理事国入りの問題について、日本もこういうふうにしたいんだということは言われなかったんですか。常任理事国として入って役割を果たしたいと言わなかったんですか。

田中国務大臣 ASEMでは、通訳も入らないでというときもありましたし、ワーキングランチ、ワーキングディナーという形で、もう繰り返し、継続的、終日、ちょっと通訳の機械が壊れたとき以外は休みなしにやっておりまして、そして、そういう中でもって、WTOの問題ですとか環境問題ですとか国連改革とかいろいろな話がありました。ですから、その中で、総理の発言と私がどうだとか、そんなふうなことではなくて、今までにも申し上げたようなことを、同じことを話をいたしております。

伊藤(英)委員 私なんかも、例えば国連事務総長に対してもそうですが、あるいは国連関係者でもほかの国の人たちでも、あるいはEUの関係でも、日本はこういうふうにしたいんだと言ったりするんですよ。

 だから、そういう意味では、今外務大臣は、通訳の人あるいは通訳の機械のどうのこうのという話がありましたけれども、そういうことが要因で言わなかったとするならば、非常に残念だと思いますし、今後、本当に国連外交というのを重視し、その中で日本が、いわゆる軍事力の行使については制約を置いた上での話として、日本もこれだけの大変な分担金を払って国連外交を展開しようとしているわけですね。その中で、本当に意味あるようにしようと思ったら、日本が常任理事国入りをしてというのは当然の話だと私は思うんですよ。そういう意味で、ぜひよろしくお願いをいたします。

 それから、沖縄の米軍基地の問題についてちょっと伺いたいんですが、防衛庁と外務大臣、特に外務大臣は、この間外務委員会で、同僚議員に対する答弁の中でいろいろな話をされているときに、沖縄の基地を本当に縮小したいのかどうかよくわからないなというのが実は私の印象でございました、いろいろなお話をされたんですけれども。

 というようなことも含めて、防衛庁長官並びに外務大臣に、沖縄の米軍基地の現状について、本当にどう思っているのか、これは整理縮小をしたいのか、その辺のことをお聞かせください。

中谷国務大臣 基本認識でございますが、全国の米軍施設の七五%が沖縄に集中をいたしておりますし、沖縄の面積の一〇%近くが米軍の施設内であるという点につきまして、沖縄の県民の方々、お住まいの方々に大変御迷惑と御負担をおかけしているということは、心から十分認識している所存でございます。

 いかにそれを軽減するかということにつきましては、橋本内閣以来、SACOの協議を締結しまして、地元の沖縄県並びに米国政府と密接に協議をしながら、殊に沖縄の地元の方々との話し合いを重視して進めてきているところでありまして、現在最も懸案となっているのは普天間の飛行場の問題でございますが、その他の問題につきましても、進捗は十分順調にいっているんではないかというふうに私は思っております。

田中国務大臣 沖縄県の方々の痛みは私たち日本人全員の痛みでなければいけないというふうに思っておりまして、今防衛庁長官が言われたような一極集中というふうなことは、沖縄県民の皆様に本当に多大な負担をおかけしているんだということを実感として私も感じております。でありますからこそ、SACOの最終報告の着実な実施に向けて最善の努力をするということに尽きると存じます。

伊藤(英)委員 ちょっと具体的に伺いますが、下地島空港を防衛庁も基地として使用することを検討しているような記事もちょっと見たんですが、航空自衛隊がこの空港を使用または訓練をする考え方はありますか。

中谷国務大臣 この空港は県が管理しておりまして、地元の県議会や前の経緯で、下地島空港を自衛隊等軍事目的には使用させない旨の決議がされているということは承知をいたしております。

 ただ、この海域は非常に石垣島等まだ先にあって、航空機の運用等を考えますと、一時間近く那覇からかかるところでありまして、自衛隊の沖縄における勤務の中で、病気になった方とか事故があった方の緊急搬送という事業もやっておりまして、医療施設が那覇にあるものですから、遠く宮古島、また石垣島の方も那覇の方に緊急搬送する必要がございます。また、その他沖縄の島々の方の救援もありまして、どれくらいの頻度があるかといいますと、この二カ月だけでも、石垣島、宮古島、西表島に関しては五件ございます。一年間のトータルでいきますと百六十件ほどのそういう患者の救急搬送がございます。

 仮に下地島から出発をすることができたら、宮古島や石垣島の方は今かかっている時間の半分で那覇の緊急病院等に搬送できるということで、そういう意味では地元の住民の方々にもメリットがあるということは考えておりますが、この使用につきましては、県の管理空港でございますので、沖縄県の御判断また地元の皆様方の御要望に沿って考えてまいりたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 そうすると、地元の方々との調整もあるんだけれども、基地として使用するか、あるいは訓練として使用することについても検討し、相談しようと思っているという意味ですか。

中谷国務大臣 まだその時点まで至っておりません。地元の町の議会の方が全会一致の決議で要請に来られたということを受けとめただけでございまして、この件につきましては、地元の県議会や沖縄県民の皆様方、そして下地島の住民の方々、そういう方々の御意見を聞かせていただいて判断をしてまいりたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 もう一つ、今後米軍がこの下地島空港を利用させてほしいということを言ってくる可能性はあると思いますか、どうですか。もしもあれば、そのときはどうしますか。

中谷国務大臣 恐らく米国のランド研究所の報告のお話ではないかというふうに思っておりますが、この報告書は、米国の大統領の指示の包括的見直しを今やっておりますけれども、これとは関係がないというコメントを米国防省がなされておられまして、どのように米国政府が考えるかということにつきましては皆目見当がつきませんので、我が国としては、それに対して言及するという立場にはございません。

伊藤(英)委員 こういうのも、さっき申し上げたけれども、いわゆるパートナー云々というときに、例えばランド研究所がどうのこうのということよりは、もしもそういうことがあったらどうするのかなということを考えることが必要なんだよ。そうでなければ、日本は、言ってこなきゃわからないからそのときに考えますとかいう話をしていたのでは、とてもとてもイコールじゃないな、外務大臣の言葉をかりれば、とてもそれはマチュアな関係ではないなということですよね。

 本当は、日本がいろいろなことを考えて、もっと例えばこの辺の状況をどうしようか、この辺の平和や安全を保つためにどうしようか、あるいは、日本はどうしよう、アメリカにはこうしてもらいたいというようなのがなければ、まさに従属外交と言われても仕方がないということだと私は思うんですよ。何も言ってこなきゃわからない、言ってきたらそれからというような話は、いかにも残念だという気がいたします。

 そこで、時間も余りありませんので、ちょっと具体的なことを伺いたいんですが、今沖縄で海兵隊の訓練をしています。そこをちょっと具体的に聞くんですが、まずは、今の海兵隊の訓練の仕方を見ると、私の感じでは、今一万五千人ぐらい、そのうちの五千人ぐらいは全く新しい若い米兵が来て入れかわり立ちかわり訓練して、こういう格好になっているんですね。それによっていろいろな事故とか事件が起こったりしているというふうにも言えるんです。そういう意味で、この辺の仕組みの見直しをしようとするかどうか。

 二つ目には、この海兵隊の訓練をグアムとかハワイとか、あるいはその他にもっと分散をしてもらうということ、この二点について米側に対して日本は要請しようという気持ちがありますか、どうですか。特に外務大臣は、来月ワシントンに行かれるかもしれないわけですから、この辺のことについてはどういうふうに言われますか。

田中国務大臣 海兵隊の問題ですけれども、六カ月のローテーションで展開をしてきているというふうに承知いたしておりますけれども、これは要するに、今おっしゃったグアムとかフィリピン、そういうところへの移転ということも、この前の委員会でたしか下地幹郎先生が、直接グアムとフィリピンも行かれたんでしたか、説明を具体的に、図も入れて、受け入れる方の体制も整うかもしれない、ほぼ整っているというふうなことで理解してよろしいんでしょうか、大変具体的で御示唆に富んだ説明がございました。

 ですから、そういうことも含めて、それから、ランド研究所も民間の機関でございますから、それについては公にはコメントできませんものの、やはり参考としてそういう意見も聴取しながら、今おっしゃったような海兵隊の動かし方といいますか、そういうことについてもやはり研究、検討はする余地があるというふうに私は理解しております。

伊藤(英)委員 じゃ、外務大臣は、今申し上げた訓練の仕方やら県外移転の問題についても研究したいというふうな意味ですね、今言われたのは。

田中国務大臣 そういうふうなことについて、アメリカに行きましたらばこちらからプロポーザルをして、先方の意見を聞いて、そして、結果がどうなるかわかりませんが、やはりアメリカにもそういう日本の意見とか、アメリカの中からランド研究所からそういう意見も出ているということをこちらからお話し申し上げてみます。

伊藤(英)委員 先回、外務委員会のときに下地さんが質問されたときには、大臣のお話は何となく、本当にどうしようとするのかよくわからないなと思ったものだから、きょう私はこの件について申し上げたんですが、ぜひ、まさに自立ある外交としても、非常に日本が主体的に取り組む話が必要だと私は思います。

 それから、中期防の問題について伺いますけれども、先般決まりました新中期防、新しく長官、大臣になられたお二人に改めて伺うんですが、今回の中期防は、現在の国際情勢やらあるいは軍事情勢、安保情勢、そうしたこと、あるいはこれから五年間の展望ということをしっかりと踏まえた、あるいは最近の米中関係の緊張状態といいましょうか、そうした状況も踏まえた中期防になっていると思われますか。あるいは、少し考えた方がいいなという感じを持ちますか。どうですか。

中谷国務大臣 現在行われております中期防につきましては、昨年の末決定をされてことしが初年度でございますが、おおむね国際情勢とか考え方におきましては、私は適切であると。むしろ、非常に先取りをして、積極的に防衛庁の改革をやっているんじゃないかというふうに思っております。

 この中期防で特に大きなことは、防衛力の合理化、効率化、コンパクト化を推進し、防衛大綱に定める体制への移行をおおむね達成するとともに、IT革命に象徴されますように、情報通信等の動きに対しても機敏に対応しようということでやっております。また、戦争の形態が大規模な侵略からゲリラとか、不測的な多様化した事象等の現象も大きくなってきておりますので、それへの対応、並びに、災害派遣等により敏速に対応できるようにということ、それから、高齢化社会を迎えまして、防衛力の人的基盤の維持充実といった日本の社会に抱える問題、国際情勢、そしてこれからの新しいことを勘案して立てた中期防でありまして、私は、よく考えてやっているというふうに思っております。

田中国務大臣 私たち国会議員もそうですし、一般国民も、世界が少しでも平和になって紛争がなくなるようにする、そのために外交努力もしなければならないという基本認識はどなたも持っていらっしゃると思います。しかし、残念ながら、我が国を取り巻く国際環境というものはまだまだ不確実性や不透明性があります。どの時代も、人間は愚かにしていろいろな問題をやはり過去から起こしてきていますし、将来に備えて、今のようなこの計画に基づいた着実な防衛力の整備、中期防、これが進められることは重要であるというふうに考えております。

伊藤(英)委員 防衛力の整備をしなきゃいけないことは重要なんですね。それこそ、大臣もちょっと言われましたけれども、私は、外交が九十数%、九九%は外交だと思っているんですね。最後の一%がいわゆる軍事力といいましょうか、そういう力の部分でどうしようかということ。実は、世界の動き等々について最も関心を持って見ているのは外務大臣でしょう。だから、外務大臣から見て、今回の中期防は本当にそういう今の動きをしっかりと踏まえたものになっているかどうかという意味で伺ったつもりでありました。それは結構でありますが。

 防衛庁長官、実は、今回の中期防の中身を見ますと、私はどうかなと思われるのが幾つもあるんですね。

 ちょっと具体的な話を聞きますと、例えば今度空中給油機、いろいろな経緯があって十三年度はどう、あるいは十四年度から云々という話になったりしているんですが、そもそもこれは一応四機調達する予定になっているんですね。これは、本当に四機調達するのかどうかということ。

 それからもう一つは、C1の後継輸送機も必要だということを書いていますね。私は、空中給油機は、実際に資料を見ますと、C1の後継機よりも貨物の搭載量も多い、しかも航続距離もほぼ同じ、たしか六千五百キロぐらいになっていると思うんですよ。そんなに幾つもあれしなくても、空中給油機でやればC1の後継機の開発は必要ないんじゃないか、こう思いますが、こういう考え方はどうですか。

中谷国務大臣 軍事情勢にお詳しい伊藤議員に御説明するのもなんでございますが、空中給油機につきましては整備規模は四機ということで、現在のところそれ以上整備することは考えておりません。

 なぜ四機かと申しますと、有事に際して一個ポイントのCAPを継続的に実施するということでありまして、CAPというのは前方の拠点みたいな、ガソリンスタンドみたいなところで常時そこにいるということですから、常時入れるための一機と、そこに向かうための一機と、それから、何か不測のことがあったら大変ですから、基地でいつでも飛び立てるための一機と、メンテナンスに入っている一機ということで四機を見込んだところでございます。

 なお、CXの開発と空中給油機の関係でございますが、空中給油機は燃料を保管するという目的でその機体の中央部分を仕切っておりまして、下の部分が燃料のタンクみたいになりますが、その仕切りがある構造の関係で非常に大きいものを中に積むことができません。CXの場合は、現在のC1のように非常に大きな貨物、例えば車両といった、器材といった空中給油機で運べない資材を運ぶことができる。いわゆる大型貨物、それに適しております。

 なお、確かに空中給油機で輸送もできますが、空中給油機は非常に距離が長いわけでありますので、災害とか邦人の救出とかすぐ行かなきゃいけないときには直ちに行けるというような利点もありまして、お互いの利点を使い分けていきたいという構想でございます。

伊藤(英)委員 私は、検討する価値がある、こういうふうに思っています。

 それから、ちょっとついでながらといいましょうか、電子戦のデータ収集機EP3の改善措置云々とか書いてあるんですが、先般、海南島のところで起こった米中の軍用機の接触事故がありました。あのときに、このEP3の内部がどうのこうのということがいろいろ言われたですね。もしも、あの事故がEP3の改善の必要性に影響があるという場合には、何をしなきゃいけないことになるんですか。あるいは、その必要性があるのかどうか。どういうふうに思いますか。

中谷国務大臣 EP3の改良につきましては、もともとIT化が非常に進んでおりますので、そのEP3の機体ではなくて、電子戦のデータ収集装置を全面改装して、システム自体を変えていこうということで計画をしておりました。その後、米軍機の海南島の事故がありましたけれども。米軍のそういう情報収集システムの器材と我が国のEP3の情報収集器材とは全然違うものでありまして、我が国は独自で情報収集器材を開発してつくっておりますので、米国がそこであったことにつきましての影響というものはないものだというふうに考えております。

伊藤(英)委員 今の話は時にこう言われたりしたんですが、あのときに中国側がその米軍のEP3の記録の内容なりあるいはシステムを把握したら、日本のEP3などいろいろと改善措置をかなり抜本的にしなきゃいけないんじゃないかと私なんかは思っていたんですが、そうではありませんという意味ですね。それは大丈夫ですね。

中谷国務大臣 米軍と海上自衛隊のEP3に搭載している電子戦のデータ情報装置は異なるようにしておりまして、同じ仕様ではございません。したがいまして、海自に対して直接的な影響を及ぼすと考えておらずに、この改良事業が影響を受けるということはないものと考えております。

伊藤(英)委員 実は、私は、自衛隊の幹部の話として、今の長官のようなお話では全然ないというふうに聞いたと思っているんです。だから、本当ですねということです。

中谷国務大臣 そういう御指摘があったというなら、なおもう一度確認をさせていただきます。

伊藤(英)委員 時間も余りないのでちょっと結論的に伺いたいんですが、この中期防の中に、例えば陸上自衛隊の地対空ミサイルのホーク云々とありますね。実はこのホークをいろいろ見てみますと、これは航空自衛隊のペトリオットを使ったらいいじゃないかとか、あるいは陸上自衛隊の中にも短SAMだとか近SAMだとかいっぱいありますね。いろいろな種類の似たような装備を持っているんですが、こういうのも本当はもっと整理をした方がいいんじゃないかと私は思うんですよ。

 さらに、さっき私は陸上自衛隊のホークと航空自衛隊のペトリオットの話をしたんですが、いわば陸海空三つがそれこそ本当に垣根をしっかりと守っているから、それぞれがそれぞれの装備を持つということが起こっていると私は思うんです。

 これは、今アメリカでもこの辺を随分いろいろ整理しようというふうに動いていると私は思っているんですが、日本の自衛隊も、そういう観点からもっと見直しをしたらどうかというふうに思いますが、どうですか。それこそ改革断行内閣と言って頑張っていらっしゃるわけだから、この辺は見直しをしようというふうに、当然していいと私は思うんですが、いかがですか。

中谷国務大臣 委員御指摘のとおり、もう陸海空それぞれの独自の防空作戦ではなくて、統合運用というか、それぞれ統合して考えて運用していこうということは非常に大事なことだというふうに思っております。

 ただ、ホークとペトリオットの使い分けの件でありますが、相手を前方の長射程からやっつける地対空誘導弾と、それから、地形が険しいわけでありまして、そういう中射程的にとらえる地対空誘導弾、そういう目的の火器を重層的に組み立てているというのがやはり今の防空作戦ということでございまして、ホークとペトリオットは機能的に、距離的にそれぞれ使い分けておりますので、そういう意味で、多重層に連携をとっているというふうに思料しております。

伊藤(英)委員 さっき申し上げた、陸海空あわせて見直しをする必要性については長官も言われたわけですが、ぜひそれはやってください。

 それから、それこそこの中期防も今回が四回目ですね。我が日本の中期防、四回目。四回のうちで、二回目の中期防も三年目に入る一年前に見直しをしていますね。これは宮澤内閣のときも見直しをする。だから、一年前倒しをしている。それから、その後の橋本内閣の三回目のときも一年前倒しで見直しをしています。

 今、今回の中期防を見たときに、私は、いろいろな問題があるなという気がしているんですよ、中身の問題を見ても。それに加えて、それこそ財政構造改革、それから国債を三十兆円以下にしようとかいうことでやっている日本の財政状況を見てもそうなんですが、この日本の今の中期防、新中期防について見直しを早める必要があると私は思うんですよ。このことについて防衛庁長官はどう思いますか。

中谷国務大臣 小泉首相が聖域なき構造改革というふうに言われている趣旨も理解をいたしておりますが、防衛費につきましては、非常に厳しい制約の中、かつまた厳しい予算委員会等の審議のもとに御議論いただいておりますけれども、我々としましては、経費の計上につきましては、必要最小限のつもりで、かつまた所要の必要経費として計上いたしておりまして、この件につきましても、我々の目的を達成するために必要な経費のあり方ということで、今後、節度ある防衛力の整備に向けまして、全力を挙げてそれを達成するように考えてまいりたいというふうに思っております。

伊藤(英)委員 終わります。ありがとうございました。

川端委員長 次に、高木義明君。

高木(義)委員 民主党の高木でございます。

 防衛庁長官並びに外務大臣にお尋ねをしてまいります。

 中谷防衛庁長官は、防衛問題には極めて専門的な御見識があることを承知いたしておりますし、いわゆる自衛隊出身ということで、これまでの我が国の防衛政策あるいは自衛隊の組織、運営等々については大変な御関心があると思っております。

 先ほどお話が出ておりますように、小泉内閣は、まさに聖域なき構造改革、こういうことを言っております。そういう意味では、最近、ややもしますと自衛隊の綱紀粛正という問題が話題になります。それぞれの部隊の中で不祥事なるものが新聞報道に出てくるような状況において、我が国の自衛隊への信頼回復は今大切な課題であろうと私は思っております。

 まずは、いわゆるこれまでの安全保障政策、先送りにされた課題、あるいはタブーと言われていた問題をむしろすべて堂々と切り込んでいくことに中谷防衛庁長官の使命があるのではないか、私はこのように思っておりますが、まず冒頭、今現在の自衛隊の改革についてどのような所見を持っておるか、お尋ねをしておきたい。

中谷国務大臣 高木委員の日ごろからの安全保障に対する御造詣と、この委員会におきましても野党筆頭理事として大変な御健闘をいただいている点につきまして、心から敬意を表する次第でございます。

 新しい時代の自衛隊の位置づけということでありますが、自衛隊も憲法の議論の中で育ってまいりました。最初は占領下の中で警察予備隊ができて、保安隊ができて、自衛隊に発展し、さまざまな国会の議論の中で、今や国民の皆さんに信頼され、お役に立てる組織になったのではないかというふうに思っております。

 特に国として、第一線で営々と訓練、努力をしている隊員の能力もそうですけれども、一般の国民の方々が、自衛隊の認識につきまして、もっと活用していただきたい。せっかくある国有財産でございますので、災害派遣とかそれぞれの行事はもとよりでございますが、日常時に防衛、安全保障以外の分野においても、もっともっと自衛隊の組織力を活用していただきたいというふうに思っております。

 国際貢献に際しましても、これだけ情報通信や交通が発達した、いわゆる文明化した二十一世紀世界と言われておりますけれども、依然として飢餓や難民に苦しむ国々、国民がたくさんいるわけであります。この点につきましても、国連等でそのあり方等をよく整備していただいて、外国に対しても、大いに他国に感謝され、そして喜んでもらえるような、我が国の貢献の一環として自衛隊が世界の国々に対しても貢献できるように、そういうふうなものになるべきだということを念頭に考えております。

高木(義)委員 この最近、特に、集団的自衛権のテーマが今ほど議論の高まることはないと私は感じております。もちろん、小泉総理が首相就任記者会見の中で、集団的自衛権の行使についての積極発言をされたこともその一つであります。

 すなわち、日本近海で日米が共同訓練なり共同活動をして、そのときに、一緒に共同活動をした米軍が攻撃を受けた場合、よその国の領土でも、領空でもない、でも、米軍が攻撃を受けた場合、日本が何もしないということができるのであろうか、こういうことを発言しておりまして、小泉総理としては、集団的自衛権の行使に対して踏み込んだ発言だと受けとめられたのであります。

 ここに来て各界からも集団的自衛権の行使について議論が高まっておりますが、この議論が高まった背景について、防衛庁長官としてはどのように認識をされておりますか。

中谷国務大臣 この背景につきましては、私もガイドラインの議論とかPKOの議論にも参加させていただきましたけれども、我が国の憲法の政府の解釈というか見解によりまして非常に抑制的に法案がつくられておりまして、憲法の中で、だれが見ても文句のつけようのないような法案になってきております。

 ところが、国際社会が非常に変わってきて、先ほども言いましたけれども、情報通信の変化とか交通の変化で、旧来のような個別的自衛権だけで物事を考えられるような時代ではなくて、やはり世界がお互いに連携して、安全保障の面でも協力して世界秩序を構築すべき時代に転換をしてきております。

 そういう中で、我が国は従来のように個別的自衛権で、我が国の防衛という視点でやっておりますけれども、ガイドラインに象徴されるように、周辺事態で、我が国の安全に重大な影響を与える事態において行動している米国もしくは第三国、また日常の訓練のときに、第三国と一緒に日本が並んで訓練しているときに、その第三国が攻撃を受けたときに全く知らんぷりをする、見て見ぬふりをするということは、成熟した国家としてはあるべきではない、また今後の信頼を考えてもそういうことは好ましいことではないと私は考えております。

 そういうときにどうするかといえば、友好国のためにその船の対処に、自分がやられているんだという個別的自衛権の解釈で対処すると思います、現場の指揮官は。しかし、そのように現場の指揮官が判断に迷ったり、一々政府に問い合わせをしたり、国会に問い合わせをする、そういうゆとりのないケースもございますので、その点につきましては、一般の国際常識に照らし合わせて一人前の国としてなすべきことをなしていくことをしなければ、日本の国の防衛のあり方にも今後、将来影響するのではないかなという気はいたしております。

高木(義)委員 この件について外務大臣にもお尋ねします。

 例えば、周辺事態法の後方支援活動、あるいはこれからPKOに対しての参加、あるいはミサイル防衛、また、先ほども議論がありました国連の常任理事国入り、そのほかシーレーン防衛等々、外交的にも集団的自衛権の行使について、やはり議論の高まりといいますか、むしろ私は、日本として国論の統一を図る時期にあるのではないか、このように思っておりますが、外務大臣として集団的自衛権の行使についてどのような御所見を持ちますか。

田中国務大臣 今、高木委員がおっしゃいましたように、個別には、PKOにしろシーレーンにしろ、安保理の問題とか後方支援の問題とか、いろいろテーマがありますけれども、集約的には、今おっしゃったとおり、要するに、日本は集団的自衛権を国際法理論上どうするのかということになると思いますが、なぜ最近とみにこれだけ問題が実は挙がってきたか、明確にポイントが明らかになったかということの背景が何かというお尋ねが一回目にございましたので、これは包括的にお答えしたいと思います。

 その答えは、やはり日本の国力が世界第二位の経済力を持つようになってきたということ、戦後直後の状態と非常に変わってきている。それに伴って国民の意識もあらゆる面で、安全保障についても、経済やら社会保障、教育、そのほかすべてですけれども、大変意識が高まってきているというふうに存じます。

 その中でもって果たして、では私たちはどういうふうにして、国家の安全保障というものがあって、世界にどのように貢献ができるかということを冷静に分析し、解析し、そして応分の責任をとらなければいけないというような、戦後直後に比べても数段大人になってきているというふうに思うのです。そういうバックグラウンドがあって、今日のような議論に来ているというふうに認識をしております。

 それに立脚した私の意見ですけれども、集団的自衛権の行使というものを容認することがどうかということですけれども、これはいつも言うように、国際法上はイエスであっても、日本は憲法がありますので、なかなかそれはし得ないというのが原則であります。

 でも、例えば国会の承認を得られた場合、例えば戦闘行動に具体的に踏み込んだ、例えばの話ですよ、やるとかやらないじゃないですけれども、要するに、結論は、研究をするというようなところまで前に出てきましたよということを申し上げたいんですけれども、例えば戦闘行動に参会することが可能かどうか、そういうふうになった場合、今まさしくそういうことについてみんなが自分の問題意識として議論をする、研究をする、討論をするというステージに進んできていいのではないかというふうなコンセンサスがあるんだと思うのです。

 したがって、国会でも衆参両院で憲法調査会があって、いろいろな御議論がされていることは大変喜ばしいと考えております。

高木(義)委員 防衛庁長官、これまで長官が集団的自衛権の行使の必要性を感じたことはありますか。

中谷国務大臣 非常にたくさんございます。

 一例を挙げますと、例えばPKOの現場の方に行った折に、日本の与えられた任務に対して、法律で定められておりますので、その定められたこと以外をやることはできません。というのは、集団的自衛権に触れるか触れないかという議論で抑制されておりますが、例えば、現場へ行きますと、ちょっとした荷物を運んでくれとか道路を直してくれとか、その現場でいったらもう当たり前のことをやってあげるべきなのに、それが定められていないということで、一々本国へ聞き直してやらなければならない。

 極端な例を言いますと、今ゴラン高原でUNDOFをやっておりますけれども、冬になったら、山の上ですから雪が降ります。雪が降りますと、雪かきをしないと道路が運べませんが、では各国でみんなで道路の雪かきをしようねということにおいても、ポーランドの国と日本が一緒に並んだら武力の一体化で集団的自衛権になるというようなことで、そういうこともあえてしないようにしておりまして、こういった、だれが考えてもおかしいようなことなんかも、憲法の制約によって、またそれに基づいた法律の組み立て方になっておりますので、できません。

 もう一点、おかしいなという例は、やはり何か不測の事態が発生したときに、それまで一緒に仕事をしている仲間の国の兵士がすぐ横にいて、彼が非常に危険な場合に、日本は彼を助けてあげたり守ってあげるために武器を使用することは許されておりません。すぐ彼の近くへ行って、自分も危ないんだという理由をつけて彼を守らなきゃいけませんけれども、これも、同じパートナーとして崇高な国際平和協力業務というその地域に平和をもたらす仕事をしながら、自分のことしか守れないという点につきましては、他国から見ますと非常に信頼感を損なうことでありまして、こういう点で非常におかしいなと思う点がたくさんございます。

高木(義)委員 ちなみに、私ども民主党は、集団的自衛権の行使はできない、また憲法解釈で変更すべきではない、このようなことを明記いたしております。

 ところで、今そのようなふぐあい、必要性を感じたと言っておられます。では、それを解消するために今すべきことは何だと思いますか。

中谷国務大臣 私もPKO法とかガイドライン法案の議論に参加しましたけれども、当時は社民党や共産党も入ってこういう委員会で真摯に議論をいたしておりますが、そのときの議論の前提は、現行の憲法の解釈、枠の中で法律をつくっていこう、憲法ができまして、それに基づいた法律でありますので、私といたしましては、現行の憲法の解釈を変更いたしますと、その前提が崩れてしまいますので、やはりそういう集団的自衛権をやる場合には、きちんと国民の皆さんとともに議論をした上において、はっきりと、集団的自衛権をやるのかやらないのか、それを憲法を変えていく、その方が国民にとっても安心できますし、実際に仕事をする自衛官にとりましても、国民の皆さんの合意のもとに行くわけですから、国際貢献につきましてもしっかりとした体制ができると思います。

 そういう意味では、国民の皆さんが参加した上できちんとした憲法議論をして、それで改正をしてやるべきではないかなというふうに思っております。

高木(義)委員 そういうふぐあいを感じつつ、憲法改正という話も出ましたが、これは現時点では非常に困難な話ではないかと私は思っておりますが、その辺のジレンマについて、防衛庁長官、もう一度。

中谷国務大臣 やはり戦後五十年以上たちまして、占領下でできた当時の憲法から、いろいろと大きな変遷に基づいて、現在の我が国の安全保障というものを考えられているわけでありますけれども、ここへ来て改めて、自分の国をどうやって守るのか、そして他国とどのようにつき合っていくのか、また国連を中心とした世界平和活動にどのような形でやるべきか。できることはできる、できないことはできないということをもっとはっきり書き直していただいて、中学生や小学生が読んでも、できること、できないことが明確に読み取れるように、まさに国民の皆さんで議論をしていただいて、日本の安全保障を憲法に明記すべきだ、そのことをもっともっと真剣に国民の皆さんも考えていただきたいというように考えております。

高木(義)委員 田中外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 これは、先ほども私は検討に値するということを申し上げましたけれども、要は、中谷長官もおっしゃったように、国民の皆様が参加するということがキーだというふうに思います。要するに、公開性と説明責任といいますか、アカウンタビリティーとトランスペアレンシーということだと思うんですね。

 そして、いろいろな世論を起こして研究をして、そしてベストというものはありません、いろいろな意見がこの国会を見てもあるわけですから。その中で、政治のイニシアチブで方向性をつけていく、そのための研究をするという段階であるというふうに思います。

高木(義)委員 自民党の山崎拓幹事長は、今国会の代表質問の中で、いわゆる周辺地域に限って、国会決議をもって集団的自衛権の行使を認めてはどうかという演説をされました。

 私は、山崎幹事長の書籍を読みました。その中の一つのくだりでありますが、今アーミテージさんの話はよく出てくるわけですが、ことしの一月、アーミテージさんと会ったときの話です。いわゆる日米同盟の関係ですが、「アーミテージ氏はその点、「これからは日本が嫌だということはやらない。しかし、合意したことは対等の役割分担でやってもらいたい。以前、バードン・シェアリングと言ったが、今後はパワー・シェアリングでやってもらいたい。そのためには、集団的自衛権の行使を認めることだ。それがいったい、可能だろうか」と聞いてきた。」こういうことが書かれております。

 そして、「この問いかけに真摯に答えようとすると、これまでの日本の安保・防衛政策を変えなければならない。その前提として憲法を改正し、自衛権があることを明記するしかない。集団的自衛権は、当然のことながら自衛権に含まれている。」こういうくだりでございます。

 また、今月の三日に、日米安保専門議員交流訪問団、いわゆる超党派の議員の皆さん方が訪米しておりまして、その中でアーミテージさんは、小泉首相の集団的自衛権についての発言を心強く思った、恐らく解釈変更によるものと感じた、そういう報道でありますけれども、こういうものが出ております。

 恐らく、いわゆるアメリカがブッシュ政権になって、安全保障政策をどのように変えていくのか、アジアでのプレゼンスをどのように変えていくのか、非常に重要な時期にあろうと私は思っております。また、小泉総理も来月末に訪米をするという調整がされておると聞いておりますが、そのときにも大きなテーマの一つになるんではなかろうかと私は思っております。

 そのときに、我が国としてどのようなメッセージを送るのか、その点について、極めて私は議論が必要であろうと考えておりますが、今私が申し上げた、いわゆる自民党の、与党の幹事長の一つの重い重いこの発言について、防衛庁長官、どのようにお考えですか。

中谷国務大臣 全く幹事長の意見に同感でございます。本で引用されましたけれども、日米関係は成熟した大人の関係で、責任を分担し合おうと言っているわけでございます。

 今、周辺事態のお話をされましたけれども、例え話は誤解を招くのでよくないんですけれども、例えば日本にとって周辺事態というのは何かというと、私は近所の火事だと思います。近所で火事が出た、二、三軒先に。その火事が、風向きによっては我が国に移るかもしれないし、移らないかもしれない。そういう事態において、消防団が駆けつけて、その火を必死で消そうとしているんですね。

 ところが、我が国は家の決まりがあって、そういった外国というか自分の家以外のところへ行って消火活動をしちゃいかぬよ。せめてできるのは、自分の家の庭の垣根に水をかけて、我が家に移らないようにしていくのが自衛権であるというような、例え話ではありますけれども、考え方で、では、その火消しに行っている消防団の人に何らかのお手伝いはできないのか。せめて水を運んだりタオルを運んだり、お手伝いはできませんかということで後方地域支援、つまり戦闘にかかわらないところで後方支援ぐらいはいたしましょうということで組み立てられたのが現在の憲法の許す範囲で言うガイドライン法でありまして、しかし、それによって、先ほども言いましたとおり、ぎりぎりの線で非常に危険な状態に遭っているときに助けに行くこと、こういうこともできないわけです。

 これでは、一般社会から見て、日本という国はどう考えているかという指摘も受けかねませんので、こういった点においては、山崎幹事長が言われているように、周辺事態に限って集団的自衛権の考え方を検討してみましょうと言っておられますので、私は、大いに国民の皆さんがどう考えるかということを検討していただきたいと思います。

高木(義)委員 時間も来ましたので、最後に外務大臣に一言お伺いしておきます。

 私は、外交はやはり安定性というのが一つの大きな柱であろうと思っております。そういう意味では、外務大臣就任以来今日まで、かなり大臣の発言がひっくり返っておる、そういう感がぬぐえません。

 例えば、日米関係については、五月二日のパウエル国務長官との電話会談で、来日するアーミテージさんにお目にかかるのを楽しみにしておると言っておきながら、五月の十五日の衆議院予算委員会では、とにかく心身ともにパニックであったのでということで会わなかった。私は、残念なことだ、いろいろあろうとも、こういう重要な時期に、しかもブッシュ政権の国務副長官が来られる、ぜひ会っていただきたかった、私はこのように今でも思っております。

 また、二つ目には、いわゆる日中問題、歴史教科書について、四月の新聞のインタビューには、事実をねじ曲げている人たちがいるんだと答えておりますが、中国で二十四日の発言では、文部科学省が真摯に受けとめて精査をしている、こういうことで発言をいたしております。

 また、同じ日中問題で、李登輝氏へのビザ発給問題。当初は、同じ申請があっても今度は無理と言わざるを得ない、こう言っておきながら、二十四日の唐外相との会談では、さまざまな要因を勘案しつつ冷静かつ慎重に判断をしたい、こういうことを言っておる。

 この例を見ても、やはり私は、大臣の発言というのは極めて重みがある発言ですから、首尾一貫することが望ましいのではないか、このように今でも思っておりますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 私も、国務大臣の発言も、それから一国会議員の発言も、社会的地位のある人の発言というものは首尾一貫しているのは当たり前だと思っております。

 ただし、先生は外務大臣に将来多分おなりになると思いますから、なられたらおわかりになると思いますが、大変過密なスケジュールでございまして、大変細かいことも全部知悉していなければいけない。走りながら、勉強しながら、寝ずに、あらゆる外交案件も、宮中に行ったり、こうした答弁も、あらゆる機会でもって答弁を求められます。

 ですから、今先生がおっしゃるようなことを、御自分がなさればおわかりでしょうけれども、完璧にやるには、だれか役人がつくったものを毎回毎回、自分の中でそしゃくもせず、自分の肉声もせずに言うのであればできるかと思いますけれども、やはり大臣になりますと、情報量もふえます。いろいろなチャンスもふえます。そのことによって、基本姿勢はぶれておりませんけれども、発言の仕方が、言葉が違ってくることはありますが、基本は日米同盟が大事でありますし、私は国務大臣を拝命した夜に官邸の記者会見で言っております、基本になりますのは、国益を守ること、そして世界の平和と安定のために、資するためにどれだけのことができるか、それが外交の要諦であることは何も狂っておりませんということを申し上げます。

高木(義)委員 時間が来ましたので、終わります。

川端委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺周でございます。民主党の時間帯の中で御質問をさせていただきます。

 今も高木委員から質問がございました。私は、田中外務大臣に、まず、訪米されるということについてお尋ねをするわけでございます。

 今、与党の三党の幹事長が訪米をされます。そして、六月の三十日からは小泉総理が訪米されるという中で、その合間に田中外務大臣訪米をされるということでございますが、この訪米は、御自身からのぜひとも行きたいという強い意向なのか、それともアメリカの方からぜひお会いしたいということなのか、それとも事務方からの行くべきだという要請なのか。まず、その点についてお尋ねをしたいと思います。

田中国務大臣 私自身の強い意思です。

渡辺(周)委員 そうしますと、与党の三党の幹事長が行かれる、そしてまた二週間後に外務大臣行かれまして、その二週間後にまた総理が行かれるということで、小泉新政権とアメリカの新政権、大変な緊密な関係を感じる、実感するわけでありますけれども、何を目的に行かれるのか、そしてどんなことをこの限られた時間の中でお話しされるか。その点について確認をさせていただきたいと思います。

田中国務大臣 それは、会話でございますから、こちらからテーマとして抱えていきたい問題もございますし、先方からおっしゃりたいこともあると思います。時間の制限等もあると思いますし、これが今回実現できるかどうか、こちらはアイドリングして待っている状態でございますので、まだ今は具体的に、これこれということを言っても、ほら言ったのにまた前言が翻ったなんと言われてもいけませんので、あえて申し上げません。

渡辺(周)委員 決して、前言が違うから次のどこかで、例えば外務委員会やこの安全保障委員会で、何月何日に言ったことと違うじゃないかということは、少なくとも私は申す気はなくて、その点について、私自身として、大臣にアメリカに行かれるときにぜひやっていただきたいことがございます。

 それは、北朝鮮問題でございます。

 この点について、当然、ブッシュ新政権になりまして、北朝鮮をテロ支援国家として再指定をしました。雪解けムードから、極めて厳しい対応をするという中でございます。この点について、日本の対北朝鮮外交について、何か変わることがあるかどうか、その点についてまずお尋ねをしたいと思います。

田中国務大臣 北朝鮮との問題では、もう御案内のとおり、二つ大きくテーマがあると思います。人道上の問題、それからもう一つは安全保障上の問題があります。殊に、人道上の問題、拉致問題は、決して絶対に避けて通ることはできない、譲ることのできない線でございます。

 ですから、このことも踏まえて、そして安全保障上の問題も、地政学上非常に近い関係にございますから、過去の経緯も踏まえながら対話というものを、必ずその糸をしっかり持ったまま、あらゆる知恵を収れんしていって、いい状態で取り組めるようにしておきたいというふうに思っております。

    〔委員長退席、高木(義)委員長代理着席〕

渡辺(周)委員 今、人道上の問題、安保上の問題ということでございまして、当然、背後に存在する国でありますから、これは表裏一体のものであろうと思いますし、また、決して大臣の選挙区がという物事を言うつもりはございませんけれども、やはり新潟県の御出身ということでございまして、かつての、これはたしか平成十一年のガイドライン特別委員会だったかと思いますが、横田めぐみさんのことにも触れられまして、この問題が一つ。それから、柏崎原発でありますとか、あるいは福井県の敦賀の部分にも触れまして、日本海の問題にも大変危機感を持っていらっしゃる。この点について触れられたわけであります。

 そんな中で、ぜひ北朝鮮に対応して、外務大臣みずからとしては非常に近いところで、また横田めぐみさんのような事件が御自身の郷里であったということを踏まえて、それでどう北朝鮮をとらえていらっしゃるのかと思ったのですが、私は、イソップの「北風と太陽」じゃないんですけれども、どちらの姿勢で日本は北朝鮮に臨むべきか、どうお考えになっていらっしゃるかというのを大臣にお尋ねしたい。

田中国務大臣 北風も太陽も、いずれも必要であろうというふうに思います。ちょっと一言加えさせていただきますと、私は、国会議員になりましたときに地元の方たちに申し上げたのは、もちろん今おっしゃった柏崎原発の問題とか、それから拉致事件の横田さんのこととか、たまたまこれは偶然新潟県、お米の支援も新潟の問題でありますから、私の県に、地元に関係はございますが、私は国会議員であって県会議員を目指すのではない、したがって、国政全般にわたって仕事をするんですよということを言いながら、多くの皆様の負託を得て、一回目から当選をしてきております。

 今回も前回も、閣僚になりますときには、特に外務大臣になりまして地元にすぐ行って発出した私のメッセージは、日本の国益と世界の平和と安定、世界じゅうの皆様に、今目の前にいる人だけではなくて、裏側におられる方たち、将来生まれてくる人たち、その幸せのために、過去も踏まえながら最善の努力をしなければならない立場にいますので、それを御理解くださいと言って、皆様から御理解をいただいて、外務大臣を拝命して一カ月が経過いたしました。

 したがって、原点として、地元の問題を忘れることは、忘れろといっても忘れるわけにはいきません。それは人間としてどなたもそうだと思います。ですけれども、繰り返しになりますが、北朝鮮との関係は極めてデリケートな問題でありまして、失敗が許されないと思いますので、はい北風です、はい太陽ですということではなくて、常にいつでもアベイラブルであるように、あらゆることを考えながら、アイドリングした状態で、いつでもどんとサーブできるような状態で心がけております。

渡辺(周)委員 アイドリングをされているということでございまして、もちろん横田めぐみさん、これは大変重要な問題ですが、新潟だけに限らず例えば鹿児島県の方でも、その前の年だったでしょうか、海岸線で若いアベックがいなくなった、行方不明になったというようなことがありまして、横田さんに限らず、日本の主権を侵すという意味で、もし問答無用でよその国が日本人を拉致しているということが現実であるならば、これはやはり、この間ハンセン病の問題がなかなか清算されなかった大きな政治課題として一つございましたけれども、まだ未解決の問題というのは、やはり私は領土問題とこの日本人拉致事件であろうなというふうに思うわけです。

 そんな中で、今、拉致された御家族の方々がアメリカに行き、そして今北朝鮮は、アメリカとの関係が民主党政権から共和党政権になって比較的厳しくなってきているという中で、今度はヨーロッパ諸国に、EUに対して非常に積極的に国交回復を目指しております。EU加盟の先進十五カ国の中で、フランスとアイルランドを除けばもう既に国交を樹立したという中で、非常に対ヨーロッパ政策を重視しているわけであります。そんな中で、この問題について、この御家族の方々の意見を報道等で見ますと、アメリカやヨーロッパは大変毅然とした態度で心強い姿勢を示してくれたと。なぜ日本へではなくてアメリカやヨーロッパに行かなければならないのか。

 ここで大臣は、過去の幾つかの発言の中で、毅然とした姿勢ということをインタビューの中等でおっしゃっておられます。相手の目を見てはっきりと物を言う、国内で言っていることも国外で言っていることも、とにかく同じこと、ぶれちゃいかぬのだと。特に感銘を受けました言葉の中には、やはりあいまいな姿勢というのは日本的な美学だけれども、それが時には外交戦略上は大変あいまいなものを残してよくない、不信感を募るというようなことを発言されておりましたけれども、この問題について、日本は今度の訪米に際しては、ぜひ北朝鮮との関係について日本の立場というものをはっきり申し上げていただきたいと思うのですが、再度どうでしょうか、そのことについてお伝えされるんでしょうか。

    〔高木(義)委員長代理退席、委員長着席〕

田中国務大臣 過去の私が発言してきております信念、哲学、政治家としての心構えをよく簡潔に御披瀝くださったと思って感動いたしました。なかなかこういうことはありませんので。さすが早稲田の御卒業で、いい教育をお互いに受けたのかいなと思っておりましたけれども、これは割愛いたしますが。

 私的なことは別といたしまして、この間のASEM、北京での会合におきましても、朝鮮半島問題というのは非常に大きなイシューでございまして、どこの国からも拉致事件というのはもちろん出ませんでしたので、私はあえて、このことは二度リピートしながら、こういうキッドナッピングという問題があるのです、非常にタッチーな、センシティブな問題があるということを言って、欧米や他のアジアの国の皆様から御理解を得るようにいたしました。

 したがって、これも、アメリカにいつ行って、パウエルさんがいつ御都合がよろしいのかわかりません、今待っている途中でございますけれども、ぜひ取り上げたいと私が心に畳み込んでいるイシューの一つであることははっきり申し上げます。

 その理由は、やはり日米韓のリンクの中で、そのトライアングルの中でなければこの北朝鮮問題というのはなかなか解決し得ないというふうな印象を、特にこのASEMでヨーロッパやほかのアジアの国々と話をした結果、そういうふうな感を非常に強く持ちましたので、アメリカに行ったら、この問題もぜひ取り上げたいと考えているという次第です。

渡辺(周)委員 もちろん、センシティブな問題でありますから、この場で、これだけテレビカメラの放列が並んでいるところで、また公の議事録が残るところでなかなかそれは、今どのような経過で、どのようなことを考えているかということをすべてお尋ねはできないかと思います。しかし、その思いというものは日米会談の中でぜひとも伝えていただきたいと思います。

 そしてまた、その後の小泉総理との首脳会談の中でも、新政権になってもこの問題がやはり横たわっている、このアジアにおいて、特に日本という国においては避けて通れない大きな問題である、これがない限りは日朝交渉の再開というものも暗礁に乗り上げたままだという姿勢については、ぜひとも繰り返し伝えていただきたいと思うわけであります。

 それで、一点、ちょっと具体的な問題でありますが、先ほど伊藤英成委員の質問の中で触れられずに過ぎた問題がございます。最初に私も申し上げましたが、米国の北朝鮮政策の見直しというものが日本にどのような影響を与えるかという点でございまして、この点について、米国からは何らかの形で説明がこれまで我が国にあったのかどうかという点が一つであります。これは、二十六日の日米韓三カ国の政府高官級会合、ハワイ・ホノルルで開かれたものでございますが、この点についてどうであったかということであります。

 そしてまた、もう一つは、防衛庁長官が外務大臣に対して、この北朝鮮に対する日米韓三カ国の政策協議について、協議の内容は安全保障政策にかかわる問題なのに、外務省から全く説明がなかったというようなことがあったというふうに、抗議をしたというふうに我々も報道で伝え聞いているわけであります。

 我が国の安全保障を所管する両大臣の連携が、また両省庁の関係がそういう意味では十分機能していないのではないかというような懸念を持つわけでありますけれども、この点につきまして、これは通告にございませんが、ぜひ、きょうは両大臣も、防衛庁長官もいらっしゃいますので、この点についてあわせてお尋ねをしておきたいと思います。

田中国務大臣 アメリカの北朝鮮政策の見直しですけれども、これは今、ほどなく終了する、すなわちオンゴーイングで、やっている最中だというふうに理解しておりますので、またその結果も踏まえまして、日米韓で、三国間で緊密な連携をとりながら、知恵を出し合っていきたいというふうに思います。

 それから、防衛庁と外務省の関係ですけれども、これは情報ミスがあるといけませんから、ちょっとゆっくり申し上げますけれども、北京に行きましたのが二十四、二十五、二十六でございまして、二十六日に成田に着いて、その足で外務省のアジア局長等が、北京から、成田でトランジットで乗り継いでホノルルに参りました。したがって、事務的に打ち合わせがどのぐらいできているかわかりませんけれども、そのまますぐに行っておりますので、ちょっと何か、違う飛行機で行かれたのかどうかと私はちらっと思ったんですが、私も、そのまますぐ空港を出ました。

 実際には、中谷長官から、その後の、翌日でしたか火曜日の閣議のときに、ああいうときには事前に打ち合わせをしてほしいし、また、今後ももっと緊密に連携をとって、報告が欲しいとおっしゃったので、その場で私は秘書官を通じて我が本省の方に話をいたしまして、すぐ、わかりましたということでもって、結果としては、帰ってきてからすぐに両省庁間で意見交換をしたというふうに報告を聞いております。

中谷国務大臣 この件につきましては、二十六日にホノルルで会合があったんですけれども、私もその次の日、テレビを見ていまして、画面に、北朝鮮問題に対してミサイル、大量破壊兵器、人道問題の話し合いで、日米韓三国の政府高官が集まって会合をしたということで、こういう会合があったという事実をそこで初めて知りました。

 それで、防衛庁としましても、北朝鮮のミサイル問題というのは我が国の安全保障に非常に重要な意味がありますので、当然、防衛庁に話があったものだと思っておりましたが、調べてみますと、二十八日にその会合の結果が共同プレス、一般向けのプレスとして防衛庁に来たということでありましたので、二十九日に外務大臣にその実態を話して、やはり今後、日米安保もあるし、北朝鮮問題についても常時もっと密接に連携、連絡をとらないといけないんじゃないかとお話をしたら、外務大臣の方から関係の方にお話をしていただきまして、その後、担当課長からも詳細な説明がありました。

 この会合には、アメリカも韓国も、国防省の人が参加しております。日本の代表には防衛庁はいなかったという点は、国家の問題にしましても非常に重要な問題だと思いますので、今後は、よく話、調整をして、できましたらこのメンバーにも入れていただきたいというふうに思っております。

渡辺(周)委員 御答弁いただきまして。

 よく言われるのは、省益なくして国益なしなんという言葉が本当に言われてまいりました。

 とにかく今まで、これはちょっと話がそれるかもしれませんけれども、かつて加藤政局と言われた時期に、田中外務大臣の何かやはりインタビューの中でありました。日本の大臣は何でこんなにしょっちゅうかわるのか、しょっちゅうかえちゃだめなんだというようなことが発言の中でありました。

 私も常々そう思っていまして、例えば、大臣というのは大体一年もいればどんどんかわる。私は野党しか知りませんけれども、与党の中にいますと一年間もいるとそわそわし始めて、次の大臣のポストがもう待ち受けている。だから、とにかくどんどこどんどこ、我々国会にいても、ひな壇に並んでいる方々、例えば前々政権のときの外務大臣はどなただったかなんというと、もうわからなくなるわけですよね。

 外交の交渉相手も、とにかく日本の国というのは大臣も防衛庁長官もどうせ、ことしのサミットは来るけれども来年のサミットは多分外務大臣はいないだろう、例えば日米の交渉をやったって、多分来年はあの人あたりが外務大臣か防衛庁長官になるんじゃないか、だから事務レベルさえ話をしておけば、あとはいいんだと。

 ここに、やはり大臣の発言の中にありますけれども、社外重役みたいなもので、どこからか来て、だから役人にしてみれば、とにかく飾りでいていただければいい、一年もいればどんどんかわるんだという中で、対米関係が新しくスタートしたといっても、アメリカの国務長官あるいは国防長官とどのような形で人間関係をつくっていくか。

 大臣のお言葉の中に出てくるのは、人を得てという言葉をよく言われています。とにかく人を得て、違うと言ったら違う、私の言うことを信じなさいと言えばそれでいいんだというようなことではなくて、まさにそのとおりでありまして、かつてソ連の時代に、グロムイコ外務大臣は二十八年間にもわたって外務大臣をやった。ところが、日本の場合はその間に一体何人、総理大臣と大臣がかわったんだか。

 外交の窓口が、去年のサミットに来た人とことしのサミットに来た人と来年のサミットに行く人は違うということになると、外交の交渉窓口は一体だれと話していいかわからないから、結果として、事務方とさえ話しておけばいいや、事務方さえ通じていれば、あとは大臣同士のある意味では連携などというのはもういいんじゃないかというふうな、結局は、我々日本の政治家ですら、どこかそういうものだと思っているわけです。この認識は改めなきゃいけません。これは内閣のあり方についての問題でありますが、外交を進めていく上で、やはり外交の窓口としての、とにかく人を得ていただくことをぜひやっていただきたいなと思うわけです。

 それで、できれば、これは私どもが言うことじゃありませんけれども、やはり長くやっていただかないと、一体だれと交渉していいのかわからない。この平成の十三年間だけで、たしか総理大臣が十二人なったんですよ。非常にころころとかわるという中で、ぜひ、そういう新たな日米関係の二十一世紀の幕あけの中で、人間関係も含めてつくっていただきたいなと思うわけであります。

 もし、何かその点につきまして御意見がございましたら。

田中国務大臣 ぜひ一言。

 また私の過去の発言を大変正確に覚えていらっしゃって、記録していらっしゃって、読売新聞は私のことを嫌っていて余り記事にしてくれておりませんでしたので、多分、読売新聞御出身の、母体の読売以外からスクラップなさったのかしらと思って感動して聞いておりました。

 いずれにしましても、グロムイコさんというのは、私もお会いしたことがありますけれども、長いことやっておられて、当時の首相やら書記長よりも経緯を知悉していまして、大変な知恵袋といいますか、背広を着た年鑑じゃないかと思うような感じでありました。必要なときのカードをぱっぱっと切るという感じが、実際に見たことがありまして、ああ、やっぱりこういうことは大事なんだな、それが悪く働くと困っちゃうんですけれども、よく働くといいし、やはり公開性と透明性だなというふうに思いました。

 したがって、今の防衛庁と外務省の話も、省益ということもあるかもしれないけれども、習慣的にこれはうちがやっちゃう、これはあっちがやっちゃう、それを今回のように指摘してくだすったから大変ありがたいのであって、それがないとまたそのままいっちゃうわけで、彼らに聞くと、役所の方は他意がないと。確かに他意がないみたいなんですね。それを、やはりそうじゃなくて、常に国益とか政治とか、国民の皆様の目線で物を考えるという意識を一人一人、役所の方たちも忙しいでしょうけれども、特に我々国会議員、特に閣僚はそういう視線を持つ必要があると思います。

 ですから、与党、野党を超えて本当に、自民党内にある意見もあるけれども、ないような意見を皆様がたくさん持っていらっしゃるし、知恵もおありになるし、経験もおありになるので、それが、小泉総理が本会議場で、民主党の皆さんともどなたでも日本をよくするためには一緒にやろうじゃないですかとおっしゃっている、私もまさしくそれがあります。自民党にももちろんいっぱいあるんですよ。だけれども、後でたたかれちゃいますから。自民党にもいっぱいあるんですが、さらに野党の皆様のいいお知恵も行動も、一緒に協力していただけるとありがたいというのが感想です。

渡辺(周)委員 外交とか安全保障の問題、あるいはエネルギーに関する問題というのは、ある意味では、党派を超えて議論すべき部分だろうなということは私も認識しております。

 かつて、フランスのシラク首相とミッテラン大統領の時代だったでしょうか、コアビタシオンという、大統領と首相は政党が違うんだけれども共存をするという形で、ただ、外交戦略だけは一つにしてやるというようなことが言われた時代がございます。この時代のことを思いますと、それに限らず、やはり外交問題あるいは安全保障の問題というのは、党派を超えて当然やるべき問題でもありましょうし、またその中で我々も、できるだけ具体的な提言をこうした場でもちろんお伝えをしていくつもりでおります。

 その中で、ちょっと数分ございますので、外務大臣におしまいに伺いたいんですが、有事立法についてお尋ねをしたいと思います。

 民主党も、今、緊急事態法制というものを検討しまして、中間報告の段階まで参りました。これは森政権のときに、所信表明演説の中で森前総理は、緊急事態、いわゆる有事法制についても着手をするというようなことを言われました。当然我々としても、今までどちらかというと有事法制というとタブーではないかと言われてきた部分について、民主党としても、さまざまな意見がありながらもここまで議論を続けてきて、今中間報告の段階まで来ているわけであります。

 これは御存じのとおりに、当然戦争などという不幸なことは、我々の人類の英知の中で絶対に起こしてはいけないことだと思いますけれども、しかし、不幸にして何らかのことが万が一起きた場合には、これに対して一体だれが対応をし、だれが緊急事態あるいは有事ということをそこで認定して、そして法の空白によって、基本的人権も含めてさまざまな行動の制約でありますとかさまざまな自由が奪われるようなことが超法規的にされてはならないということを、私どもは検討、議論を進めてきたわけでございます。

 その中で、大臣も先ほど透明性と説明責任をおっしゃいました。この点について過去の発言を何度も繰り返すわけではございませんけれども、その中で、いわゆる説明責任が必要なんだ、日本人に対してなぜ必要なのかと。

 ガイドラインの法案では、大臣は、いわゆる日米安全保障条約の不備な部分を補完する意味でのガイドラインがあるということを委員会でも発言をされました。そして、アメリカに対してできるだけの環境をつくってあげる、ある意味ではそれも必要なのかなという後に、しかしなぜこれが必要かということを日本人に対してもっとわかりやすく議論を起こさなきゃいけないということをおっしゃられていたわけであります。

 つまり、有事立法などと言いますと、戦争準備法案だみたいに思っている方々もいますし、もうそれだけで当然アレルギーというものが出てくる方々もいます。しかし、私たちは、憲法で保障された基本的人権すら侵害される可能性が生まれる、その危惧を持って、あえて、だからこそ緊急事態、いわゆる有事と言われる際にはどのような諸条件が起こるだろうかということを言ったわけであります。

 ぜひその点について、大臣も、必要とあらば、あるいは世論が許すのであれば、憲法を改正してでも有事立法というものをつくらなければいかぬというようなことも過去おっしゃられていたようでありますけれども、この有事法制についての考え方、どのように考えていらっしゃるか、お尋ねをします。

田中国務大臣 これはもうまさしく国の、国家の危機管理の根幹に触れる問題だと思います。そして、現在の認識におきましては、憲法の範囲内で行うということに尽きると思いますし、先ほど伊藤先生のお尋ねの中でもるる細かいことを申し上げましたので繰り返しませんけれども、聞いていらっしゃったでしょうか、渡辺委員も。では、後でビデオでも議事録でもごらんください、時間の節約で。

 ですけれども、私、公開性と透明感ということは大事ですけれども、やはり民主党さんもそうでしょうし、自民党もいろいろな右から左まで意見があります。ましてや、日本全体になりますともっといろいろな意見があります。ですから、これをある程度、憲法調査会で議論もやっているわけですけれども、私はもう初めから、一回目から憲法調査会は、無派閥ですけれどもどうしても入れてくださいと言って、各派閥、自民党内で走り回ってやっと入れていただいて、ずっと関心事でいます。これをもう少し議論を収れんして、そして公開性と透明性の最後は責任をとると。これは責任をとらないで先送りばかりしているのです。

 そのときに何かが、本当にこの有事法制を適用しなきゃいけなくなるような、危機管理をしなきゃいけないことが起こったときにどうするのかという私はすごい心配がありまして、議論は大事です、議論はしております、何年間。でも、これが起こった。そうすると、そこでまたもめごとが起こって犠牲が出るということは、もう文化国家じゃないんですね。日本人のメンタリティーはそんなにおくれていないんじゃないでしょうか。

 逆に言えば、もう少し早くに、もっと前送りでこの議論をしてもらっていればよかったのですが、あいにくこれが今の日本の現状でございますので、もう少しスピードアップして、そしてやはり責任をとる、人を得ると先ほど言いましたけれども、そのときにそこで展開していくのではないでしょうか。

 以上です。

渡辺(周)委員 時間がなくなりましたので、またいずれこの続きの議論をさせていただきたいと思いますけれども、外務大臣が就任されてから大変、最近は国会劇場なんて言われて、例えば、外交、安全保障という問題は余りお茶の間の話題にならなかったですね。私のおやじも昔議員をやっていますけれども、外交とか安保というのは票にならぬとか、よく言われる時期がございました。

 しかし、今、外務大臣が就任したことが原因だとは思いますけれども、例えば大変に支持率、外務大臣の支持率も六五%という何か調査が出ております。例えば、うちの女房が朝飯でパンにバターを塗りながら、集団的自衛権ってなあにという話になるわけです。これは今まで考えられなかったことでございます。

 そういう意味では、例えば今の有事立法の問題にしても、あるいは北朝鮮の問題にしても、あるいは日米関係にしても、今までお茶の間の話題からまずかき消えていた部分については、ぜひ大臣の存在の中で国民を啓発するような、また積極的な御発言と議論、また日本の立場を明確にするべく行動をしていただきたいと思いますので、ひとつ決意のほどを聞いて、終わりにします。

田中国務大臣 頑張ります。頑張ります、大きな声で言います。

渡辺(周)委員 ありがとうございました。

川端委員長 次に、塩田晋君。

塩田委員 自由党の塩田晋でございます。

 中谷防衛担当国務大臣、日夜大変御精励をされておりまして、敬意を表し、感謝を申し上げます。

 中谷大臣は、我が国初めての防衛庁・自衛隊出身のいわゆるユニフォーム、また防衛大学校の卒業生として初めて防衛担当の大臣になられたわけでございまして、自衛隊員を初め国民の多くの者が期待をし、注目をしているところでございます。一層頑張って、しっかりやっていただきたいと思います。

 そこで、中谷大臣にまずお聞きしたいと思いますのは、先般、金正男氏と見られるある人が日本に不法入国をした、これの取り扱いをめぐって関係省庁が協議をして、あたふたと四日間で、国賓待遇で、本人であるということを最終的には確認もしないうちに帰した、こういう事件がございました。

 この関係省庁の局長クラスの会合に防衛庁が出ていなかったということが報ぜられておりますが、その点はそうであるかどうかということをまずお伺いいたします。

 これは、実に我が国の主権を侵すような事件が、いわゆる拉致問題として警察が公式に認めたものだけでも、十名北朝鮮に拉致されている。我が国は、生命財産を守る、これが一番の国の任務であるし、防衛庁を初め各省庁が日夜憲法を守るために頑張っておるという中で、日本国民である平穏に生活をしている者が他の国の権力によって誘拐、拉致された、こういう事態でございます。しかも、その国らしき、その国の最高権力者である人の長男と見られる者が、確認もされないうちに帰された。

 これに対しまして、拉致をされた家族の皆さん方は大変な怒りで燃えております。大変な怒りを集会で述べておられるのを私は直接拝見いたしましたが、当局が把握している十名だけでなくして、数十名いるんじゃないかとさえ言われておるわけでございまして、これが鮮明になっていない状況の中で、本当に国の主権が侵されているんじゃないか、それを放置しておいていいのかと。

 国としてこれは責任を持って解決に当たるべき問題であるにかかわらず、これを金正男の事件について見ても、不測の事態が起こるかわからない、あるいは、どういうややこしい問題が起こるかわからぬから、さっさと帰すんだ、しかも、国賓待遇というか特別の扱いをして帰す。これに対して、本当に国民は怒っております。

 これに対して、不測の事態だとかその他というのは安全保障の問題も含めての問題だと思うんですけれども、これを協議する際に、防衛庁が参加されなかった、させられなかったということについて、防衛庁は本当にどう考えておられるか。

 それから、先ほども出ましたけれども、せんだっての日米韓高官会議、これも防衛庁は知らされていなかった、知らなかったと。大臣はテレビ報道等で見られた、知ったということでございますが、これなんかも、安全保障に関する重大な三国の会談に対して、防衛庁には全く連絡もないし、内容も言わない。今、そのような日本の防衛あるいは外交状態にあるのかどうか。防衛と外交は最も密接に連携をして、これは大臣のみならず官僚挙げて取り組むべき問題であるし、また、そうやっているものと我々は信じておったわけですが、このような事態が起こっておる。

 しかも、ある省庁におきましては、大臣と役人との間の意思疎通がなかなかない。お互いに非難し合っているというか、いざこざを起こしておるというふうな状況で、本当に日本の国益を推進することができるのか、あるいは、日本の安全防衛は大丈夫か、外交との関係において本当にやっていけるのか、やっていっているのか、このことを非常に心配しておりますが、この点につきまして、防衛庁長官の御所見をお伺いいたします。

中谷国務大臣 塩田先生から就任に対する激励いただきまして、大変ありがとうございました。また、塩田委員が委員長のときに当委員会に所属させていただきましたけれども、大変御指導いただきまして、本当にありがたく思っております。

 御指摘の点につきましては、本当に委員のおっしゃること、もっともでありまして、私も、長官に就任する前は、国が危機管理を考える意識を本当に十分持っているかどうか、防衛庁のみならず、外務省においても、他省庁においても、本当に国家の緊急事態を真剣に考えているのかなという疑問を持っておりまして、それで、就任して、おっしゃる二つの出来事が起こりました。

 有事法制すらまだできていない国家が本当にこの世界に存在するかと考えれば、これは日本だけでありまして、この有事法制も、もう検討して十五年以上になるのに法案がないという状況を考えますと、いかに防衛庁以外の官庁の危機管理意識と、それから危機管理の体制ができ上がっていないか。それを束ねる官邸も、もっと危機管理意識を持っていただきたいというふうに思っております。

 今回起こりました北朝鮮の重要人物と見られる事件にいたしましても、本件について、関係省庁からの連絡は防衛庁にございませんでした。この点は、もしそういう重要人物で、万が一のことがありましたら、安全保障上取り返しのつかないような大変な事態に発展する可能性もありますし、国内の治安におきましても、大変、国民が安心して生活できないような状況にもなる可能性もあるわけでありまして、非常に国の安全保障には重大にかかわるような出来事ではないかと私自身思っておりまして、今後は、緊密に情報、連絡、入手、調整ができますように、さらなる危機管理意識を持ってやっていただきたいと思います。

 それから、第二点の日米韓の連絡調整におきましても、北朝鮮のミサイル協議とか核の開発をどうするかといういわゆる専門的な会でありまして、国の安全保障をつかさどる防衛庁がその会に出席できなかった、また事前にも何のお話もいただいていなくて、事後に外務省に照会したら、何か共同通信に、プレス向けに発表するような紙が一枚ぽんと来たというような、本当にお粗末な実態でありまして、改めて外務官僚に対する不信感を募らせたわけでございますが、やはりそういう垣根がなくて、国全体が安全保障をどう考えていくかというその体制をもっともっと整備しなければならないと痛切に感じております。

 委員の御指摘はごもっともだというふうに思っております。

塩田委員 ありがとうございました。

 先ほど来の防衛庁長官の御答弁、あるいは意見につきまして、私は非常に同感するところが多いわけでございます。今も、有事法制のこと、日本がまだないということ、これは異常な状態である、外国の状況を考えれば、これは急がなければならない問題だという問題意識を持っておられるということを聞きまして、心強く思います。

 それからまた、先ほど来、いわゆるガイドライン法の関係で、隣の家が火事になったという例を引いてわかりやすく説明をされましたが、私もこれは従来から言っておることでございます。これを日本とアメリカとの日米同盟、安保条約の上から考えますと、本当にガイドライン法はこれでいいのかなという疑問を今なお持っております。

 例えば、日本とアメリカとを置きかえた場合、アメリカの若い青年、軍隊の隊員が命を的にして、日本の周辺で、日本を守るために軍事行動をしておる、撃ち込まれた。日本はそこから離脱をして、後方に下がらなければならない。後方で、できる限りの、戦闘に直接結びつかない支援活動をやる、こんなことで、アメリカの若い青年たち、血を流す覚悟で戦場に臨んでいるその人たちは本当に納得するんだろうか。日本人と立場をかえた場合に、本当にそういう危機感を感じます。危険な感じをいたします。本当にアメリカの青年がそういう立場で、日本を守るために血を流すんだろうか、日本人だったらどうなんだろうかということを考えると、本当に微妙なこの安保条約の問題が、そこに含まれていると思います。

 これにつきましては、今議論をする時間がございませんので、また別の機会にしたいと思いますが、そのような問題意識を持っておりますことを申し上げます。

 そこで、近年の中国、ロシア、北朝鮮といった日本の周辺の国の軍事情勢、軍事力の配備の状況等々につきまして、防衛庁は熱心に細かく分析をし、研究をしておられると思うんですが、どのように現在の各国の軍事事情を把握しておられるか、これにつきましてお伺いしたいと思います。大臣、総括的で結構ですから。

中谷国務大臣 中国につきましては、八〇年代前半のいわゆる大規模戦闘を念頭にゲリラ戦を重視した人民戦争の戦略から、八〇年代後半は、量から質へ転換をしておりまして、近代戦に対応できる正規戦主体の体制に移行しつつございます。現在、陸軍を中心とした兵力を削減し、弾道ミサイル、核戦力や海空軍を中心とした全軍の近代化を行いまして、ハイテク条件下で作戦能力の向上、また海洋における活動範囲の拡大を図っております。我が国近海の艦艇の活動も最近多くなっておりましたけれども、このような状況にございます。

 なお、国防費なんかも、経済が発展している関係もありますが、一〇%以上の国防費の増大を続けておりますし、ミサイルにおきましても、最新のIRBM東風21、これは射程が二千百五十キロですけれども、配備をされています。また、海軍においても、ロシアから駆逐艦や潜水艦を導入した模様でございます。

 それから、ロシアの方は冷戦時代、非常に質、量ともに増強を続けておりましたが、九〇年以降は縮小傾向にありまして、ピーク時に比べて大幅に削減された状態でございます。

 北朝鮮につきましては、非常に深刻な食料不足など経済困難に直面しておりますが、依然として、軍事面にその資源の配分を重点的に考えておりまして、即応態勢の維持強化に努めておりますし、また、大規模な特殊部隊を保持していると考えているところであります。なお、半島の軍事的対立状況は現在も基本的には変化しておらず、核開発疑惑もまだございますし、ミサイルの開発や配備の量等も依然そのレベルを保っているというふうに考えております。

 このような半島情勢並びに周辺の国々の情勢を見まして、日本を含む東アジアの安全保障にとりましては、引き続き重大に関心を払っていかなければならない状況でございます。

塩田委員 私は、実は昨年の九月に、衆参の超党派の議員団で中国に参りまして、朱鎔基総理と約一時間半にわたりまして意見交換をいたしました。その際、私は、日中の本当の友好をやらなければならない、そのためにはお互い率直に思っていることを言い合うべきだということを言いまして、私は朱鎔基総理に直接、日中間の感情がかつてのような友好関係でなくなってきておる、冷え込んできた、そして悪化しつつあると危惧するんだ、なぜか、それは五つの理由があるということを申し上げました。

 第一が、中国が毎年一七、八%も軍事費を増強している、増額している、これに中国周辺の各国が非常に恐れをなしているということ、日本もそれに対して危惧をしている。

 それから第二は、ミサイルの開発、配置、これをかなりの地域に配置をし、増強を図っておる、それは日本に対しても向かっている、非常に脅威であるということを申し上げました。

 第三点は、最新式の武器を輸入している、そしてまた、開発途上国を中心にして武器をどんどん輸出している、中国はそういう国になってしまっておる。

 第四点は、いわゆる戦争博物館、平和博物館と言われるようなところでいろいろな展示をしている、そして民衆にもそれを見せ、排日、反日といいますか、そういう感情が出てくるような宣伝をし、また学校でも教育をしている、こんなことをやっておって本当に子々孫々まで友好友好でいけるのか、本当に中国に対して危惧をしておるんだということを申し上げたわけでございます。

 第五点は、その当時問題になっておりました日本近海における中国艦艇の測量と称する遊よくがあったわけです。最近におきましては、これはお互いに通知をし合ってということで、言うならばお墨つきになったわけですが、海洋の調査のみならず、海底まで探査をしている。こんなことが起こっておる。これについても指摘したんです。

 これに対しまして朱鎔基総理の回答は、確かに軍事費は増強しているけれども、これは日本向けにやっているんじゃないんだという答弁でした。それから、海洋調査の艦船の日本近海への出没については、これは知らなかった、また、関係省庁にも聞いてみたけれどもそこでも知らなかった、出先、第一線でやっていることだ、よく調べます、それから、できたらこれはお互いに通知し合った方がいいですね、こんな話で終わったわけでございます。

 私は、非常に危惧をいたしておりますのは、先ほど大臣が言われましたように、中国は、外交の力を持つためにはやはり軍事力だ、これは毛沢東が政権をとって以来一貫してやってきておることなんですね。そして、最近におきましては、戦略的境界論というようなものも言い出しておる。これは言うならば、言葉をかえれば中国の覇権主義だ、地域覇権主義だというような議論をする方もあるわけでございます。また、台湾に対しても武力行使はするということを言っているわけですね。

 それから、先ほど言われましたように、人民戦争方式というものを当初はやっておって、私もかつて二十年ほど前に、中国の陸軍の演習を見てまいりました。確かに人海作戦、そして精神主義、百発百中主義の、日本でいえば戦前の陸軍のとったような方式でやっておりましたが、これはその間に、まず毛沢東戦略としては、ミサイルと核兵器の開発に集中したわけですね。もう経済力を顧みずにそこへ集中して、しかもそれが、六〇年には核兵器の実験に成功し、七〇年には人工衛星の打ち上げにも成功し、八〇年代にはもう既に大陸間弾道ミサイルの開発に成功する。それから、原子力潜水艦はもちろん持っておりますし、八八年からはそこからも弾道ミサイルの水中発射実験にも成功した。今や海空軍の増強に力を入れておる。そして、ハイテク関係に特に重点的に研究投資をしておるし、これがかなり進んできておるという状況にあるというふうに私は把握をしておるわけでございます。

 この毎年一七、八%の軍事費を増強していること、我が国のみならず周辺諸国が非常に心配をしておる、これが毎年積み上がっていった場合どんなことになるのか。そして、日本の場合は、本当に五兆円のところでずっと足踏みをしておりますね。こんな状況で本当に日本の安全防衛、特に中国を考えた場合に大丈夫なのかと思いますが、いかがでございますか。

中谷国務大臣 ありがとうございます。

 塩田先生の日ごろからの独自の外交によるいろいろな国際情勢の分析なり情報収集等、非常に貴重なものでございまして、心からありがたいなというふうに思っております。

 おっしゃりますとおり、非常に半島の方にとかく目が行きがちなんですけれども、私も、中台問題、台湾海峡の問題は、むしろ半島よりも余計に注目をしておかなければならないような気がいたしているわけであります。

 中国の軍事力の状況につきましても、まさに質的な転換が行われておりまして、先ほど言いました新型の弾道ミサイルの開発、キロ級の潜水艦、ソブレメンヌイ級の駆逐艦、SU27戦闘機等のロシアから輸入した装備や、J8II戦闘機等の自国で開発した装備による海空軍の近代化を進めて、ハイテク化に重点を移しておりますし、また、陸海空軍の共同演習や上陸演習などを含む大規模な演習を行っておりまして、海洋における活動等も含みまして、今後の中国等の動向におきましても、引き続き注目をしていく所存でございます。

塩田委員 非常に注目をして、中国の軍事力について研究をしておられるということはわかります。

 なお申し上げますと、空母を購入したとかあるいは建造する、あるいは、航空母艦を核とする対空、対艦、対潜水艦の機動艦隊の保有、そういった計画があるように聞いております。もちろん、空中給油の問題も、導入するということでございますが、その力を背景に、台湾海峡はもとより、南の方の南沙諸島、西沙諸島に対しましては、軍事占領をしていっている、そこにもう基地もつくっていっているという状況、これは余り注目されていないですけれども、そういう事実があるわけでございます。

 それから、中国の軍事費を見る場合に、非常に注目しておかないといけない、非常に難しい分析になると思うんですけれども、中国軍は自給自足でやっている、日本と違って人件費がかからない、衣食住についての自足をやっておる。私が行ったときも、軍隊の中で、将校あるいは下士官の奥さんたちが一生懸命作業をしているので、何をやっているのかといったら、漢方薬、薬をつくっているんですね、軍隊の中で。それから、昔から、人民戦争ですから、衣食住はみずからつくって調達するということをやっておりますね。

 今は、状況を見ますと、軍事費のもとになる固定費にしろ原材料費にしろ、公定価格で抑えてありますから、非常にインフレもないし、低価格で提供しておるということもありますから、そんなには、金額だけでは評価できない。

 それから、副業の収入を転用というか充当しているということもありますし、軍需産業にしましても、副業をして補てんをしているということも考えられますし、また、中央だけではなくして、地方の政府が軍事費を賄っているという面もある。

 いろいろな要素がありますので、これは簡単にはまたつかめないかもわからない。つかまなければいけないし、つかんでおられると思いますけれども、いろいろな面で、これは多角的に中国の軍事費については分析をしなければならない問題だと思うわけでございます。

 これはこれといたしまして、最後にお伺いしたいと思いますのは、我が国の自衛権の範囲、集団的自衛権も絡みますけれども、我が国の固有の自衛権の範囲内として憲法上許されるということで、ミサイル攻撃に対して、座して死を待つよりは、他の手段がなければ、敵基地をたたく、準備段階でもたたく、これは自衛権の範囲内である、憲法違反にならない、このことを言明してきておるのが政府の基本的態度であると私は今でも思っておるわけでございます。

 これは、御承知のとおり昭和三十一年二月二十九日、鳩山一郎総理がはっきりと答えられておることでございますし、また、三十四年の三月十九日、伊能防衛庁長官が同じく、同じような表現で、敵基地をたたく、これは自衛の範囲内である、このことを言明しておられますが、これは今なお防衛庁のハンドブック等には載せられておりますから、これは政府として現在もその見解に変わりないということをお認めになられますか、お伺いいたします。

中谷国務大臣 政府といたしましては、現在もこのような見解に変わりはございません。

 この内容を発言した方がよろしいですか。(塩田委員「結構です」と呼ぶ)

 変わりはございません。

川端委員長 時間が来ておりますので、よろしくお願いします。

塩田委員 終わりますが、今の見解で、基本的にはそういう見解でいいと思うんですけれども、実際にこれを実施する手段がない、またやりようがないという考えだと思いますが、日米安保の関係では、アメリカにやってもらうしかないということなのか、あるいは宇宙にある衛星、レーダーでもって探知する静止衛星がありますが、こういったものをアメリカから知らせてもらって、そういう手を打つしかないわけですが、その点について、本当に万全を期しておられるか、このことについて最後にお伺いいたしまして、終わります。

中谷国務大臣 我が国の憲法によりまして許される限り、その体制につきまして全力で万全を期したいというふうに思っております。

塩田委員 ありがとうございました。終わります。

川端委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私も、先ほど問題になりました下地島空港の問題と、それから集団的自衛権の問題についてお伺いをしたいと思います。

 その下地島空港というのは、一九七九年に国内唯一の民間ジェット機訓練飛行場として使われている空港であります。ランド報告などが出まして、ランド報告は極めてむき出しなんですが、下地島は台北から二百五十海里に満たない場所にあり、一万フィートの滑走路を持つ民間空港がある、この島はまた、日本の巡視艇の基地として使われる相当大きな港があることを特徴としている、琉球諸島南部の一つあるいはそれ以上の島に駐留できれば、台湾防衛にとって有利であることは明らかである、このように述べているわけですね。

 それで、そのランド報告が出た後に、アメリカの在沖の総領事ティモシー・A・ベッツ総領事は、その下地島を訪れて、総領事館の前任者から、下地島空港は大きな可能性を持つ空港との説明を受けていた、こういうような談話もしたりしているわけですね。

 それで、石垣島や宮古島、台湾、中国との関係というのは、沖縄との関係もそうですが、極めて友好的でありまして、石垣島には台湾の人も住んでおれば、それから中国大陸の福州と沖縄との文化的、経済的、人的交流というのは本当に平和的に行われている。

 この地域に突然アメリカが、中台危機と言われて、勢い下地島に空軍を持ってきたら台湾防衛のために便利になるんだということが言われて、非常に危機感を覚えているんです、あの地域の人たちは。このままだったら一体何が起きるんだろう、平和的な交流をしていたのに、それをぶち壊すようなことになるんじゃないかというような気分があるわけですね。

 そこで、そういう中で、下地島のあります伊良部町の町議会が、自衛隊の訓練機の誘致決議、自衛隊訓練誘致に関する決議を大臣にお渡ししたということなんです。大臣は、先ほどの答弁だと、急患輸送の上でもぜひ下地島空港には自衛隊機が常駐していた方が便利であるかもしれないという意欲を燃やされておりますが、私、伊良部町の町議会決議は、急患輸送上必要があるから自衛隊来てくれ、こういう要望になっているかどうか、このことをまず最初に確かめたいと思います。

中谷国務大臣 下地島の飛行場の使用につきましては、県の管轄下にございますし、これまでこの飛行場の使用につきましては、琉球政府から、同空港を民間航空訓練及び民間航空以外に使用させる意思はないということ等について日本政府として照会を受け、これに異存ないという旨を回答しておりますし、また、沖縄県議会が昭和五十四年に、下地島空港を自衛隊等軍事目的には絶対に使用させない旨の決議を行っているということは承知をいたしております。

 ですから、今後のものにつきましても、県の管理の空港でございますので、地元の町の皆さんの意見はもとより、沖縄県としての県民の皆様方の意見を踏まえて対応してまいりたいというふうに思っております。

 ただ、私が先ほど申しましたことにつきましては、宮古島と八重山地域は海域が非常に広いんですね。飛行機で飛ぶのにも那覇から一時間近くかかるというふうに聞いておりまして、実際の病気とか事故とかに対して、緊急に患者さんを送り迎えするときに、那覇から飛び立っていたら二時間かかってしまう。ところが、例えば宮古の人たちは、下地島にもし自衛隊機がいれば三十分で那覇に患者搬送できるというようなことで、実例といたしましても、年間に沖縄県全体で百六十件の患者さんを運んだという実績がございますので、そういう点ではメリットがあるのではないかという認識を述べたまででございます。

赤嶺委員 伊良部町議会の決議の中に、患者の搬送について必要だから自衛隊来てくれという要求が入っているかどうかを聞いているんです。

中谷国務大臣 決議の中にはそういう文言はございません。

赤嶺委員 つまり、地元からはそういう要望は出ていないんですね、誘致決議の中に。防衛庁長官がここで考えたら、海域も広いし遠いから、それはもう自衛隊が行った方が便利だろうという、防衛庁長官の思い込みなんですよ、これは。

 それで、現地に行きますと、例えば八重山病院で自衛隊が必要だったのは、潜水病の患者を那覇に搬送する時期だ。そういう時期がありました。今は、潜水病の患者は県立八重山病院で診られるようになっているので、自衛隊機の搬送というのは特に必要性を感じていない、向こうは海上保安庁がエリアにしているわけですけれども。宮古だって、下地島に自衛隊基地を置くぐらいの莫大な予算をかけるのであれば、宮古の県立病院を充実していただいた方が、宮古の人にとっては急患輸送の必要もなくなるし、この方が医療としては大事な体制じゃないか。これは私、宮古の県立病院の院長先生に聞いたんですよ。

 ですから、現場で出てもいない論議を防衛庁長官がこういう場で答弁するようなのは、やはり僕は軽率に過ぎるんじゃないかというぐあいに思います。

 それで、さっき防衛庁長官も引用しておりましたけれども、一九七九年三月二十六日の沖縄県議会の附帯決議の中には、「下地島空港は、民間航空機のパイロット訓練及び民間航空機に使用させることとし、自衛隊等軍事目的には絶対に使用させないこと。」こういう附帯決議が上がっているんですね。これに賛成したのは、自民党と公明党の県議の皆さんですよ。そういう人たちが賛成しているわけですね。

 それから、長官も引用されました琉球政府の屋良主席と政府との覚書の中にも、同事業の誘致に当たっては、「同飛行場は、パイロット訓練のためのものであるが、米軍、自衛隊等のパイロットの訓練のために利用されてはならないこと。」こういうぐあいに書かれているわけですね。

 つまり、軍事利用は絶対にさせないという琉球政府と日本政府の合意もあり、それは沖縄県にも引き継がれているという合意があり、そして、沖縄県議会でもそこの軍事利用は絶対にやらないという決議が上がっているわけです。そういう決議について、もし政府がそれを尊重する気がないというのであれば、過去に決めた決議というのであれば、例えば今から普天間基地の名護新基地についていろいろな使用協定を、十五年もアメリカは納得しないだろうから、日本政府と沖縄県の間で使用協定をやろうじゃないか、こういうような議論が持ち上がったりしておりますけれども、政府がこの下地島の過去の決議に背を向けるような態度をとられたら、どんな決議も、沖縄県と政府との間の合意や決議というのは信用できないということになってしまうと思うんです。

 ですから、下地島は、決議を尊重すれば、自衛隊機を配備するわけにはいかない、こういう立場にしっかりと立つべきだと思いますが、いかがですか。

中谷国務大臣 私は、沖縄県民の皆さんの御意見とか御要望を大切にしてまいりたいというふうに思っております。

 ただ、私は、自衛隊が少しでも国民の方々、また沖縄県民の方々にお役に立っていただきたいという気持ちでありますし、また、地元で働いている自衛隊員も、沖縄県民の皆さんのために少しでも役に立ちたい、少しでも使っていただきたいという気持ちで使命感を持って一生懸命やっておりますので、そういう時期に、実際に病気になったり、災害が起こったりした場合に少しでもお役に立てる体制をとりたい、そういう気持ちで発言をしたまででございます。

 基本的には、沖縄県の御要望また地元の住民の御要望に沿って対応してまいりますので、今後とも、自衛隊が皆様方に御理解いただけるようにさらに努力を続けてまいりたいというふうに思います。

赤嶺委員 軍事利用はさせないという政府と沖縄県との間の協定があり、そして地元伊良部町も、自衛隊の誘致決議の中には別に急患輸送なんというような要望は書いていない。地元の医療関係者もそれは必要ないと言っている。そういうときに、医療でお役に立ちませんかといって、軍事利用をさせないという協定を破るのは、政府として、それが大臣のやることであれば、それは見識のないやり方だということを申し上げておきたいと思うんですよ。

 次に、憲法九条と集団的自衛権について質問したいと思います。

 防衛庁長官は、就任直後の記者のインタビューに対して、集団自衛権について、仮に行使を認めるなら、憲法解釈の変更によってではなく、きちっと憲法を改正して実施すべきだと答えています。今、なぜ長官は、憲法九条の改憲を公然と打ち出して、そして集団的自衛権の行使が必要だと主張されるのか。集団的自衛権を認めることによってどのような行為の行使を考えているのか、これについてお答え願いたいと思います。

中谷国務大臣 私は、自衛隊の行動につきましては、この日本国憲法を大切にし、それにのっとって厳正に行っていかなければならないと考えておりますし、また、総理大臣の指揮監督のもと、また国会のシビリアンコントロールのもとに国民の皆さんに信頼される、お役に立てる自衛隊の運用に努めてまいりたいという気持ちでございます。

 この憲法の運用等につきましては、戦後五十年以上も国会の中で議論をされてまいりまして現在の姿があるわけでありますけれども、もともと、この文章をもう一度振り返って読んでみますと、非常に文言が難しくて、非常に拡大解釈的にも読めるし、非常に、軍隊の存在があってはなりませんが、自衛隊に対しても違憲の念を持って思っておられる方も現実におられます。しかし、このような状態がいつまでも続いていいわけではありませんので、やはり国会の機能を果たす意味でも、もうそろそろ、できることはできる、そしてやってはいけないことはやってはいけないということを仕分けして、整理して、小学生が読んでも中学生が読んでも、我が国の防衛について国はこういう体制をとる、そして、海外の武力行使等、侵略戦争はやってはいけないんだ、そういうきちっとみんなが納得して理解できるような文章に改めるべきでもあります。

 事集団的自衛権に関しましては、自衛隊発足時からもう五十年近く議論がされてまいりまして、一応政府の統一見解として、集団的自衛権の行使は憲法で許されるものではないというふうな認識が示されております。この点についてはこれから検討する余地はあるかもしれませんが、やはり自衛隊員が行動するにおいても、それから国民の皆さんがそれをどう認めるにしても、きちっとした公の場の議論でやっていただきたい。そのためには憲法をきちんと改正するのが最もわかりやすいのではないかなという意味で、そういう発言をしたわけでございます。

赤嶺委員 長官、私の質問には答えておられません。

 憲法九条の是非についていろいろおっしゃいましたけれども、世界でも憲法九条を広げていこうという大きな運動も広がっております。それで、私が伺いましたのは、そういう憲法九条を変えてまで集団的自衛権を行使するような体制をつくろうとしている、その集団的自衛権の行使によってやる行為とはどういうものを指しているのか。おぼれた人を助けるとかそういう話ではなくて、具体的にやはり示していただかないと困ると思うんです。

 それで、実は、ちょっと私の方から申し上げますけれども、一九九六年の八月のジス・イズ読売という雑誌の中で、山崎拓自民党幹事長が集団自衛権について論文を書いておられまして、そこで中谷元防衛庁長官が集団的自衛権についてケーススタディーをしているということで、幾つか分類をしているんですね。

 つまり、集団的自衛権がないために軍事行動が可能にならないという点で、一つは戦闘行動への参加、二つ目が目標の捜索、三つ目が戦闘海域の機雷掃海など米軍の戦闘行動と一体化した支援活動、四つ目が補給、整備、輸送など戦闘地域での米軍の後方支援、このように述べておられますが、それは今でもそういう御認識でしょうか。

中谷国務大臣 その当時は、日米安保条約はあるものの、緊急事態とか不測の事態に米軍がいかなる活動ができるのかというところが全く議論もされていなかったし、それまで法的な整備もされていなかったということで、では実際にどういうことが許されて、どういうことができないのかというようなことを実際に分類してみようという作業の一環でございまして、日本国憲法に照らしてこういう場合はいいんだ、こういう場合はいけないんだというような作業をすべきだというふうな趣旨で発言をし、報告をしたというふうに思っております。

赤嶺委員 つまり、集団的自衛権というのは、それが憲法を変えて明記されない限り、戦闘行動への参加その他はできないんだという立場でおられるわけです。

 そこで、その後ガイドライン法も成立をしたわけですね。それで、今回、ことしは日米安保五十年ということで、ガイドライン法をつくってもなおアメリカの側は、日米安保に高い壁があると。そして、皆さんの方も、その高い壁を越えなければいけない、こういうことをおっしゃっているわけですね。

 皆さんの自民党の国防部会の「わが国の安全保障政策の確立と日米同盟」。集団的自衛権の行使について、我が国が集団自衛権の行使を禁じていることで米軍の軍事作戦が極めて複雑なものになっていると、集団自衛権の行使を可能とすることを提言しています。それから、アーミテージ報告も、同盟関係である以上、対等なものでなければならないし、集団自衛権の行使ができなければ対等と言えない論理だ、このように言っているわけですね。

 ですから、自民党国防部会の報告といい、アーミテージのものといい、結局、今持ち出されている集団的自衛権は、日米同盟、日米安保の高い壁を越える、つまり、アメリカの軍事作戦が極めて複雑なものになっている状態を取り除いて、もっとすっきり米軍と自衛隊が軍事行動に参加できるようにしよう、そういうことになるのではないかと思いますが、いかがですか。

中谷国務大臣 この話の大前提といたしまして、私たちは日本の防衛に対して日米安保が必要でありますし、日本における米国のプレゼンスというものは必要であるという前提でお話をしております。

 また、周辺事態の議論においても、先ほど御近所の火事というお話をしましたけれども、実際に自分の身の回りで、二、三軒先が火事になったときに、自分の家のことばかり考えて消火活動をしなくても本当にいいんでしょうか。まして、憲法によってそれができないことになっていますけれども、ほかの国の人が来て消火活動をしているときに、何もしなくて許されるのかという一般の常識論から出ておりますが、これに基づいて、日米安保体制ができて五十年近くありまして全くこの話がされていなかった。それでは冷戦が終わってまずいんじゃないかということで、日米共同宣言もありましたし、いろいろと両国間で話をしまして、当時は自社さ政権で村山政権でありました。

 ですから、当時の社会党の代表の方も入っていただいて、前提は、従来の日本国憲法の解釈の枠を超えてはならない。つまり、集団的自衛権の行使はない範囲で何ができるかということであの法案をつくりまして、国会で議論をした結果、成立をして運用いたしておりますが、実際、そこがスタート地点であります。

 その後、現実の作業に入りますと、完璧なものではないためにいろいろと問題点も指摘されるようなケースも考えられるようになりまして、例えば、日本船と米艦船が一緒にいるときに米艦船が攻撃を受けたときに、本当に日本が何もしなくていいのか。今の法案は、自分が危ないときは自分で防御するという範囲でありますけれども、それで本当に共同作業ができるのかというようなケース等も出てきまして、この際、そういう問題を解決するにおいては、総理も大いに検討、研究をすべきだと。

 ですから、今の憲法解釈でできるという人もいればできないという人もいますし、私は、個人的にはそれは必要だと思っておりまして、やるならきちんと憲法で、改正してやるべきだという論者でありますが、そういう点も、反対の人も賛成の人もいろいろな意見を出して、大いに国民も一緒に参加して、これからの我が国の安全保障をどうするかという、まさに憲法調査会も開かれておりますし、論憲と申しますし、そういう議論をしなければいつまでたっても中途半端で、やる方も、また国民の方も安心して生活できる状況には完璧になれないというふうに考えております。

赤嶺委員 つまり、火事を消す手伝いというのは、防衛庁長官が山崎拓論文の中で引用されています集団自衛権の分類の第一、率直に言えば戦闘行動に参加すること、これが火事を消す、火を消す行動ですね。集団自衛権というのは突き詰めていけばそこになるんだと。おぼれている人を助けるだとか対岸の火事を見て見ぬふりはしないとかいろいろ例え話はなさるけれども、結局、戦闘行動への参加だから憲法も変えなければならないんだ、そして、私たちはその大前提としてアメリカの基地は日米安保のためには必要だと考えているからそうなっているんだというような見解、そういう理解でいいわけですね。

中谷国務大臣 集団的自衛権というのは非常に幅がありまして、ベトナム戦争とか湾岸戦争のように非常に大がかりな大戦争もありますし、小さな紛争とか小競り合いもあって、ケースによって一概に集団的自衛権ですべてが語られる状況ではございません。

 私が考えておりますのは、今までの個別的自衛権だけのケースを当てはめますと、事周辺事態、我が国周辺の安全保障に関して我が国は専守防衛をいたしますけれども、それに対して、周辺事態で協力をしてくれている国々が支障があったときに、その後方地域支援活動をするときにそごがないかと言われれば、二、三そういうケースもあるので、そういうケースぐらいは改善していこうという趣旨でございます。戦闘行動ではございません。

赤嶺委員 個別的自衛権の延長線上に集団的自衛権があるなんというような、そういう議論が成り立たないことは防衛庁長官の方がよく御存じだと思うんですね。集団的自衛権というのは国連憲章五十一条の中にも定められておりますし、これまでの政府の見解の中でも明らかになっておりまして、我が国が攻撃を受けていない場合でも、軍事同盟を結んでいる国と協力して戦争をするということになっているわけですね。これが集団的自衛権であるわけですよ。

 それで、小さな紛争、大きな紛争というのがありましたし、アメリカのプレゼンスというのがいろいろ言われましたが、私、アメリカの問題についてちょっと整理をしてみたんです。

 一九八三年十月にアメリカのグレナダ侵略が起こります。そのときの国連の総会決議は、国際法及びグレナダの独立、主権、領土保全への重大な侵害である、このように国連の総会決議が上がっておりますが、日本政府の対応は、総会決議に棄権をしています。アメリカは、集団的措置に援助を与えるよう要請されたから行動したんだという集団的自衛権の行動になっているわけですね。

 一九八六年四月のリビア爆撃も、国連憲章と国際法への違反として国連総会で決議が上がっています。我が日本は、その国連総会の決議に反対をしております。

 パナマ侵略、それからアフガン、スーダン爆撃、イラク爆撃、NATOによるユーゴ爆撃、また最近のイラク攻撃に至るまで、非常に典型的なのはベトナム侵略戦争ですが、あれもアメリカは集団的自衛権の行使ということで始めたわけです。

 今終わって、あのベトナムへのアメリカの侵略戦争が集団的自衛権の行使だというぐあいに当のアメリカでさえ正面切って言えないような状態で、アメリカの法律学者なんかも、あれは結局国内紛争への介入であった、ベトナムの国内紛争へのアメリカの侵略、介入であったということを言っているわけですね。

 それで、今、中台問題が起きています。日本の政府も一つの中国という立場です。一つの中国である以上、アメリカが中台危機に対して介入するということは、ベトナム侵略戦争へのあの介入の過ちを繰り返すことになります。結局は、皆さんが言っている集団的自衛権というのは、ベトナムの過ちを再びここで中台危機の名前で繰り返す危険につながるのではないか、このように考えますが、いかがですか。

中谷国務大臣 国際紛争というのはいろいろなケースがありまして、そのようなケースに対しましては、日本は毅然としてノーと言うか意思表示をすべきだと思います。やるべきではないということを明らかにするべきだと思います。

 しかし、集団的自衛権と呼ばれる中でも、我が国の安全保障に重大な影響が及びそうなときに、本当に個別的自衛権だけで対処できるのか。今のガイドラインは個別的自衛権の範囲内でやっておりまして、当面そういう体制でやりますけれども、先ほど言ったケースのように、日本の近海で一緒に訓練しているアメリカ軍とか第三国の船が攻撃を受けたときに、本当に何もせずに見ているだけでいいのか、そういう国際社会の中での常識論を言っているわけであります。

 ですから、個別自衛権が発動となりますと、いわゆる赤信号、日本に侵略があったということですけれども、それに至る前の、いわば信号でいえば黄色信号というのがあると思います。青信号は平常状態ですけれども、青からすぐ赤になるんじゃなくて途中黄色の状態がありますけれども、この黄色の状態の中でもすぐに日本に侵攻が及ばないように日本なりに努力もしなきゃいけないし、ましてこの東アジアで不安定な要素がありましたら世界全体の問題になってきますので、そういう関係で努力をしている国がありながら我が国が本当に知らぬ存ぜぬで済むのかといえば、やはりその黄色の信号の時代になすべきこともあるのではないかということも、国民の皆さんとともに研究、検討をしていく必要があるのではないかなというふうに思っております。

赤嶺委員 時間になりましたけれども、国際紛争、国際社会にはいろいろな紛争が起こり得るということをおっしゃっていますけれども、今アメリカから日本に集団的自衛権とともに提起されているのは中台紛争です。それに対してどう対応するかということはアメリカは一生懸命考えておられて、先ほどの下地島の空港の米軍の利用まで出てきている。ランド報告にはあります。

 そういう具体的な舞台で考えてみた場合に、国際常識と言いますけれども、国際社会の常識は、アメリカが集団的自衛権の名前でベトナムの国内紛争に介入したことは誤りであった、これが国際常識になっているわけです。米国のベトナム政策に関する法律家委員会の諮問協議会の分析の中でも、武力攻撃の存在は認められないということを言っているわけですから、今こういう時期に集団自衛権、憲法改正というのは世界の流れに反するということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

川端委員長 次に、今川正美君。

今川委員 社会民主党の今川正美です。

 まず、中谷防衛庁長官にお尋ねをしたいと思います。

 このたび、アメリカのブッシュ新政権の対外政策、特に、アジアに関する政策で非常に気になることがあるんですね。例えば、特に朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮に対するこれまでのクリントン時代の政策は、御承知のように枠組みの合意であるとか、あるいはペリー・プロセスというふうに呼ばれている、あくまでも話し合いの中で物事を解決していくということが基本であったと思います。また、中国に対しても、戦略的なパートナーという表現を使っていたと思うんですが、これも戦略的な競争相手だというふうな表現になっていますし、北朝鮮政策も抜本的に見直すというふうに言われています。

 特に、ブッシュ新大統領が、例えばワシントンの国防大学でミサイル防衛についてかなり熱っぽく演説をされているんですけれども、これまでは米本国のミサイル防衛、いわゆるNMDとか、海外の米軍基地あるいは同盟国を防衛すると称したTMDとかというのをある意味で統合して、ブッシュ大統領は、いわゆるミサイル防衛構想、ミサイル防衛計画ということを力説されています。

 先ほど、田中外務大臣の答弁のくだりの中で、このブッシュ新政権が出している政策の中で、例えば核兵器も大胆に削減をしていく、おっしゃるとおりなんですけれども、これは簡単に言うと、これまで老朽化した弾道ミサイルなどは当然廃棄をしていく、そこで浮いた予算をRMAと言われる、いわゆる軍事における革命と称されていますが、そうしたRMAの方に集中的に予算を編成し直していくということだと思うんですね。

 この間の集団的自衛権の問題でもそうなんですが、私が非常に気がかりなのは、このミサイル防衛構想に絡んで、これまであったいわゆるABM制限条約、これは冷戦時代のものなんですけれども、ブッシュ大統領は、このABM条約をいわば廃棄したいということをおっしゃっています。

 このことに関して、今月の二十九日、ブダペストで開幕したNATOの外相理事会において、結論的には継続協議にするというふうになっていますが、ロシアはロシアで欧州TMD構想みたいなものを持ち出してきているわけですね。

 その背景に、ブッシュ大統領の出身地はテキサス州ですけれども、御存じのように、アメリカ国内では軍需産業が集中する州としてはナンバースリーです。これは、アーミテージ氏だけではなくて、ライス国家安全保障担当の大統領補佐官にしましても、大統領の側近グループはことごとく軍需産業をバックにしてみたり、あるいはランド研究所などの出身者でもあります。

 この間、冷戦時代からこの方、アメリカの軍需産業は大編成がされていまして、少なくともクリントン政権第二期の中で、中国なり北朝鮮に対する政策がそのまま続くと、緊張緩和が続くと、一番そのあおりを受けるのは間違いなく米国内の軍需産業ではないのか。そういった意味で、ブッシュ政権の新しい政策の背後には、対北朝鮮あるいは対中国、東アジア方面で、戦争はしないけれどもそこそこの緊張感をもう一度つくり出すことでミサイル防衛計画なるものを売り込んでいく、そういう軍需産業の思惑もあるのではないかと私は思っているのです。

 そういった意味で、防衛庁の新しい中期防衛計画、中期防の中にもTMDに関して記載がありますけれども、今私が申し上げたようなことを踏まえて、防衛庁長官として、このアメリカのミサイル防衛計画なり、どのように受けとめておられるのか、まずお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 ミサイル防衛につきましては、まず基本認識といたしまして、米ソ冷戦の時代から冷戦後の時代になったということと、世界の核兵器及び弾道ミサイル、これの状況が変化をしてきているということであります。

 特に、弾道ミサイルの世界への拡散というものは大変驚くことでありまして、一九九六年には、アメリカとソ連の二カ国しか弾道ミサイルを持っておりませんでした。ところが、一九九九年には、四十四カ国の国が弾道ミサイルを持つという事態に至りまして、その点についてアメリカは、アメリカの本土防衛という見地で、今までのソ連、いわゆる今のロシアとの二国間だけのミサイル防衛体制から、全世界を視野に入れてアメリカ国民を守る体制に転換しなければならないというところで起こった構想であります。

 我が国といたしましては、米国がこのようなことを検討するということは理解をするわけでありますけれども、今後、このミサイル構想につきましては、我が国といたしましても、外務省や首相官邸やさまざまな方々と御意見等の交換もしながら、意見発表をしていきたいと思いますし、また、ロシアの動向、中国の動向、NATO諸国の動向、これらの国々の反応やら御意見等も十二分に参考にしながら、米国と協議をしてまいりたいというふうに思っております。

今川委員 これは御存じかと思うんですが、アメリカでは、レーガン政権時代にSDIと称するいわゆる戦略防衛構想というとてつもない構想が、しかし現実にありまして、これは、経費の上でも一兆ドルを超えるのではないかというふうな議論もあって、結局中止になった経過があるわけですね。いわゆる新たなミサイル防衛計画にしても、幾つかの説がありますが、少なくとも六百億ドルを超えるのではないかとすら言われています。

 これは二年前の十二月二十二日の朝日新聞の記事なんですが、アメリカのペリー前国防長官がこのようなことをおっしゃっています。

  北朝鮮の脅威への対処と、中国やロシアからのミサイル脅威とは区別して考えたい。米日安保同盟と核の傘は、中ロなど主要国からのミサイル攻撃に対し、十分な抑止力を提供しているから、TMDは必要ない。日本がミサイル防衛によって身を守ろうとTMDに行く道は、私は勧めない。軍拡競争を刺激するからだ。日本がTMDを配備すれば、中国はさらに多くのミサイルを展開する。

このように明確におっしゃっているわけですね。

 そういった意味では、日米関係を重視するのは当然ですけれども、かつて後藤田元副総理が事あるたびにおっしゃっていますように、二十一世紀においては、日米プラス特に中国、日米中の関係を間違いのないようにきちっとしていかないと、とんでもないことになるんだということをおっしゃっていまして、私もそう思います。

 そういった意味では、田中新外務大臣におべんちゃらではないんですけれども、七〇年代に、亡くなられた当時の田中総理が日中国交回復をして、アジアの大国、中国との関係の礎を築かれたというのは、今日に至ってますますその大事さというものを私は痛感しています。

 そういった意味では、防衛的な兵器体系だからTMDとかNMDはいいんだとかという議論も一部にありますけれども、今ペリー前長官が指摘をされているように、例えば中国に対して、いろいろなミサイルを撃ち込まれてもそれを防御する網を築くということになれば、その網をどうぶち破るかという形で、軍拡競争につながっていくということはもう明らかだと思うんですね。そういった意味では、そういうミサイルだとか、殊さら軍備に偏らない新たな発想をやはり持たなければならないと思います。

 ところで、新中期防にかかわっての質問ですが、この新しい中期防では、空中給油機を初め、私に言わせると、今国家財政が非常にピンチな中で、かなり高価な、しかもRMA、軍事の革命と言われるようなものに関する先端兵器の買い物が多過ぎるんじゃないか。

 この点、実は今から三年前の月刊誌の「論座」の五月号に出た記事なんですけれども、その中に、これはアメリカの外交問題評議会の研究グループのかなり長文にわたる報告の中に、これからの日本政府の課題と称して、長期的な兵器調達計画策定の日米協議、これはTMDへの参入も含めて、これが必要であるというふうな指摘があるわけですね。

 そうしますと、アメリカの軍需産業あるいは米国側からする、こうした中長期的な兵器の調達、こういうアメリカ側の計画に沿う形で、これからの中期防だって二十五兆円を超えるような、そういうふうなことが果たして許されるだろうか。

 そういった意味で、例えば一つの例として、こうした新中期防の中に盛られている、例えばことし二月七日の朝日新聞の夕刊の記事なんですが、空中給油機あるいは軽装甲機動車など、いろいろなものがありますけれども、殊さらに目立つのは、人道的支援であるとか災害救援。空中給油機も、どういう理由からかしら、空中給油・輸送機というふうに名称も変わっています。

 どこから考えても、いわゆる防衛庁・自衛隊として、軍事的な合理性という観点からのいろいろな兵器の調達というよりも、多分に米国の軍需産業の思惑あるいはそういう長期計画にのっとった調達計画じゃないかと思うんですが、この点、いかがですか。

中谷国務大臣 お答えの前に、一点訂正させていただきますが、弾道ミサイルの移転、拡散の数におきましては、一九六九年が米ソ二カ国で、一九九九年現在四十一カ国ということでございます。訂正させていただきます。

 それで、中期防における空中給油機等のことについての考え方でございますが、この空中給油機、輸送機としても使用をするわけでございますが、例えば邦人救出なんかも、インドネシア情勢において、非常にワヒド政権においてどうなるかということで、国民のデモが起こって、数年前は大暴動で、一万人以上の日本人を日本に帰国させることをしたわけであります。このように突発事故に際して邦人を救出する際に、現在日本が持っている自衛隊の飛行機は非常に足の幅が短くて、インドネシアまで行くのにも三度、四度給油をして行かなきゃいけない。つまり、帰ってくるときも三度、四度寄ってくるわけでございますが、やはりこういう緊急事態における邦人救出等の輸送に資するという効果もございます。

 また、事故を防止する、例えば、訓練空域が住民の方々に御迷惑にならないように非常に沖の方に設定されておりますが、航空自衛隊の飛行機が訓練するときには、ほとんど移動のために燃料、時間を使って、その空域で訓練して帰ってくるんですけれども、本当にぎりぎりの燃料で帰ってきておりまして、これまた周辺の住民の方々の安全等も考えますと、緊急事態にこの空中給油機があったら事故防止にもなる。

 また、たびたび離発着する回数が減って周辺の騒音が軽減されたり、また訓練が効率化されたり、このように非常に多用途な目的に使えるということと、また、本来の業務であります我が国の防空能力を向上するために必要なものというようなことで、必要であるという認識のもとに、中期防に盛り込んだところでございます。

 なお、これの計画等につきましては、先生も御指摘のように、財政構造改革を背景として、我々としましても真剣に、常に見直しをしていく努力はしていかなければなりません。このできた中期防におきましては、昨年の十二月に決定をされておりますけれども、コンパクト化とか合理化、効率化を念頭に、財政構造改革の先取りをして、現に組織もあれば人もいて、なかなか予算の額は減らないんですけれども、質的には変換をし、また事業に支障をかけないように、非常に検討に検討を重ねた計画でございます。今後とも努力を続けてまいりたいというふうに思っております。

今川委員 時間の関係もありますからこれ以上深入りしませんが、例えばこの新聞記事にありますように、幹部自衛官のある人は、輸送機があるのに救援にわざわざ空中給油機を使うことはないだろう、あるいは、攻めてくるから予算を下さいと言うだけで通る時代ではない、与党、財務省への説明でも、人道的支援あるいは国際協力は理解してもらいやすい。このことの方がよっぽどわかりやすいんですね。あるいは、災害派遣に使えるのは実は一部だけだ、兵器は戦争に使うものだからだ、これが本音だと思います。

 ところで、下地島の問題は先ほど共産党の議員からも詳しく質問がありまして、私も時間の関係で多くを触れませんが、しかしこれは、確かに、伊良部町で四月の十七日にこういう決議が行われて、今月の二十二日、二十三日伊良部町の皆さん方が陳情に来られておりますけれども、この問題だけじゃなくて、この種の陳情とか請願とか決議があるときに非常に私自身が警戒するのは、伊良部町長なり町議会が自発的に、自然発生的にこういうものを求めたのかなという疑念を私は抱きます。

 時期的にも、ランド研究所の報告書が出る、そして伊良部町議会でこういうことが決まる。先ほど共産党の議員の質問の中にもあったように、救急医療体制ということであれば別の手段があるじゃないですか。これは証拠があるわけじゃないから、私の一方的な寝言だと思って聞いてもらって結構なんですけれども、防衛庁の側からそういうふうな働きかけが果たしてなかったんだろうか。その点、いかがですか。

中谷国務大臣 その質問は、ぜひ地元の村長さんなり議員さんなり、地元の方に聞いていただきたいと思います。

 防衛庁からはそういう働きかけは一切行っておりません。

今川委員 次の質問に移ります。

 実は、昨年の十月、いわゆる海上自衛隊の横須賀通信隊における覚せい剤事件であります。この事件が発覚したのは昨年十月、そして自衛隊の警務隊がそのことを知ったのはことしの二月、そして、それにかかわった女性隊員が逮捕されたのがことしの四月なんですね。

 この事件のいきさつ、簡単でいいですから。それと、どういう原因であったのか。それから、その後一部処分をされていますけれども、再発防止という意味でどういうことを考えておられるのかをお聞きいたします。

中谷国務大臣 経緯といきさつ等につきましては、担当局長から説明させます。

萩山副長官 経緯は、平成十三年二月十八日、海上自衛隊下関基地隊所属の井上勝海士長三十歳、覚せい剤を使用した疑いで下関警察署に逮捕されました。四月二十日、覚せい剤取締法違反、懲役一年六カ月、執行猶予三年の判決が下されました。なお、井上元海士長を三月十三日、懲戒免職しました。

 そして、四月六日、元横須賀通信隊小池政子三等海曹二十八歳は、下関警察より逮捕された井上元海士長から覚せい剤を譲り受け、使用したとの疑いで逮捕されました。四月十八日起訴され、五月二十三日、第一回公判が行われ、検察側により懲役一年六月の求刑がなされました。そして、小池元三曹を懲戒免職といたしております。

 これが大体の経緯でございますが、その後の対応について今川先生から指摘されましたので、御報告申し上げます。

 まさに日本の国益を守る、生命と財産を守らなければならない自衛隊が何と忌まわしい事件にかかわったのかなという思いで、ざんきにたえない思いで私もおります。

 私自身もなぜこんなに身を震わせてざんきにたえないという言葉を使うかと申しますと、私は、平成七年に大蔵政務次官を拝命いたしました。そして、視察に行って、麻薬探知犬が不足していることを知りました。それから今日まで、私は九頭の麻薬犬を、毎年一頭ずつ寄附し続け、代議士在任中は家内の名前でこれを続けていこうと思って、ひそかに、私はだれにも知らせずにきょうまでやってまいりました。

 だけれども、私は、赴任して防衛庁に行ったときに、麻薬の問題が、覚せい剤の問題が提起されたときに、何たることかと。国民の信頼を真っ向から受けて、いやしくも希望と勇気を持って働いておられる方々、そうした方々の中に、こういった反行為的な自衛隊の行為をする者がいるということは、本当に私は怒り心頭に達しております。

 だからこそ、長官からも御指示がございました。副長官にその任に当たってもらいたい。幕僚長以下すべての幹部に大臣室に来ていただき、これから対処することについての真剣な討議をいたしました。二度とこういう問題があってはならない、国民の信頼を失墜してしまうということを私は申し上げ、こういうことは、幹部の諸兄が一生懸命になってこれに対処しなければ、また二度、三度と起こってくるであろう。それは子供を育てるものと全く同じだ。親の背中を見て子供は育つんだから、いわゆる班長から陸幕長に至るまですべて範とするような行動をとってもらいたい、厳しく律していかなければならないということを私は訓示いたしました。

 今、このようなことで、みずから、防衛庁長官の名において、そういう事態の再発防止を徹底させる、しないように、再び起こることのないように隊員の服務指導に当たっているわけでございます。

 今川先生、御指摘本当にありがとうございました。我々は意を決して、これが再発しないように努力することをここにお誓い申し上げて、感謝の言葉にかえさせていただきます。ありがとうございました。

今川委員 いや、別に感謝をされても困るんですが、ちょっと時間がもう余りございませんので。

 きょうは、中谷長官がいわば制服組出身として初めての長官でもございますので、ぜひこれはお聞きしておきたいのは、今覚せい剤事件のことを触れました。

 これは、昨年の委員会でも、例の護衛艦「さわぎり」事件にかかわるいろいろな隊内のいじめ問題、自殺問題に関してはもう質問いたしておりますので、繰り返しませんが、中谷長官、こういう覚せい剤事件だとか自殺の問題だとか、いじめだ、しごきだというのは、それは自衛隊の中で価値観が違いますから、それは適正に厳しく指導しておったといえばそれまでなのかもしれませんが、看過できないと思っているんです。

 問題なのは、警察の相次ぐ不祥事の場合もそうなんですけれども、自衛隊の中の警務隊とか幕僚がやると、事件にもよりますが、どうしても、今回の場合でもそうですが、組織ぐるみで隠ぺいしてみたり、かばってみたりということが起こりやすいでしょう。

 そういった意味で、私は虎島元長官のときにも申し上げたんですが、これは、現場のことをどの歴代長官よりも肌身を通して御存じのはずの中谷長官に提案なんです。

 外部からの監察制度、例えばドイツを例にとると、わかりやすく言うと軍事オンブズマンみたいな、国会のもとに強力な調査権限を持つような、外部から監察ができる、いろいろな調査ができる、そういうシステムをつくらないと、自衛隊の内部でいろいろな事件が起こったときに、やはり内部の警務隊が調べるには限度がある。ややもすれば、やはり部下をかばう、隠してしまうというふうなことが、これまでも実際に生じたわけですから、そういう制度を、中谷長官のときにぜひ具体的なものをつくっていただきたいと思うので、その点、いかがですか。

中谷国務大臣 まず、前提といたしまして、自衛官というものは国民に安心と安全を与えるべき存在でありまして、そういう面からいたしまして、普通の組織以上にモラルと規律の維持というものは求められる点でございます。

 それをいかにやり抜くか。自殺の問題、またいじめの問題はもう社会現象で、それの風潮で、自衛隊を取り巻く環境も厳しくなってきておりますが、まず使命感を持たせてやるということ、それからやる気の出る職場環境づくりをするということで、上司の信頼関係、人間関係、同僚とのつき合い等も、みんなでいい方向に向かうというふうにやっていくことは必要だと思っております。

 警務隊に関しましては、私の勤務した体験上、本当に恐ろしい、怖い存在で、警務隊が来るというだけで震え上がるような組織でありまして、運用につきましては、厳正に運営しているというふうに思っております。

 また、外部からは、警察の方も事件等につきましては警務隊と連携をとってやるということになっておりまして、部内から見ますと警察の存在であるという認識で位置づけておりますが、これほど不祥事が続いておりますし、内部からも厳しい目で見て組織を維持しなければならないという点はおっしゃるとおりだと思いますので、今後とも、諸外国の例を参考にして、いかなる警務隊の体制をとるかということにつきましては、鋭意検討をさせていただきたいと思います。

今川委員 もうほとんど時間がなくなりましたが、今度は防衛施設庁長官に一点だけお伺いいたします。

 例の沖縄のSACO合意に基づいて、普天間の代替施設と言われる問題でありますが、たしか六月の上旬にも代替施設協議会が開かれると聞いておるんですが、三つの工法が今明らかにされていますけれども、その工法の再確認なんです。それと、それぞれの工法によって予測される経費がどの程度のものになるのかをちょっと御説明ください。

伊藤政府参考人 普天間飛行場代替施設につきましては、平成十一年末の閣議決定に基づきまして、昨年八月に設置されましたところの代替施設協議会におきまして、現在、基本計画策定に向けまして鋭意協議が進められてきているところでございます。

 次回、第七回になるわけでございますが、この代替施設協議会におきまして、私どもが今部外団体に作業依頼をしておりますその結果をもとにいたしまして、私どもの方で作成いたします資料を説明いたしまして、代替施設の規模、工法、具体的建設場所等についての総合的、具体的な検討を実施するという日程になっておるところでございます。

 それで、いわゆる工法、幾つかという御質問でございますが、かねて申し上げておりますように、くい式桟橋工法、それからポンツーン工法、埋め立て工法といった三種類を考えておるわけでございます。

 この三種類につきましては、いずれも辺野古沖ということで、リーフ内、リーフ外、いろいろ設置条件がございます。したがいまして、三通りというわけではございませんが、幾つかの案について私どもで今検討をしているというところでございます。

 そして、どのくらいの価格かということでございますが、現段階でまだ作業中ということもございます。もう少し私どもよく検討いたしまして、この代替施設協議会で御報告をしたいと思っておる次第でございます。

今川委員 時間が参りましたので、これで終わります。

     ――――◇―――――

川端委員長 この際、理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川端委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に藤島正之君を指名いたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十一分散会




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