衆議院

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第5号 平成14年4月4日(木曜日)

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平成十四年四月四日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 玉置 一弥君
   理事 大野 松茂君 理事 仲村 正治君
   理事 浜田 靖一君 理事 山口 泰明君
   理事 末松 義規君 理事 渡辺  周君
   理事 田端 正広君 理事 藤島 正之君
      石破  茂君    岩屋  毅君
      臼井日出男君    瓦   力君
      木村 太郎君    虎島 和夫君
      中山 利生君    西川 京子君
      野呂田芳成君    平沢 勝栄君
      山本 公一君    米田 建三君
      伊藤 英成君    江崎洋一郎君
      大出  彰君    今田 保典君
      前原 誠司君    赤松 正雄君
      赤嶺 政賢君    今川 正美君
      小池百合子君    粟屋 敏信君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   防衛庁副長官       萩山 教嚴君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君
   政府参考人
   (内閣府国際平和協力本部
   事務局次長)       野津 研二君
   政府参考人
   (警察庁刑事局捜査第二課
   長)           金高 雅仁君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛庁防衛参事官)   中村  薫君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   柳澤 協二君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君
   政府参考人
   (防衛庁管理局長)    山中 昭栄君
   政府参考人
   (公安調査庁次長)    栃木庄太郎君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (財務省主計局給与共済課
   長)           宮内  豊君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   安全保障委員会専門員   鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月四日
 辞任         補欠選任
  米田 建三君     西川 京子君
  川端 達夫君     今田 保典君
同日
 辞任         補欠選任
  西川 京子君     米田 建三君
  今田 保典君     川端 達夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)


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     ――――◇―――――
玉置委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府国際平和協力本部事務局次長野津研二君、警察庁刑事局捜査第二課長金高雅仁君、警察庁警備局長漆間巌君、防衛庁防衛参事官中村薫君、防衛庁長官官房長柳澤協二君、防衛庁運用局長北原巖男君、防衛庁管理局長山中昭栄君、公安調査庁次長栃木庄太郎君、外務省アジア大洋州局長田中均君、外務省中東アフリカ局長安藤裕康君、財務省主計局給与共済課長宮内豊君、海上保安庁長官縄野克彦君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
玉置委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
玉置委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。
田端委員 おはようございます。大臣、副大臣におかれましては、朝早くから、どうも御苦労さんでございます。与党に与えられた三十分の持ち時間、私の方で代表して使わせていただきます。
 最初に、防衛二法の改正案についてお尋ねしたいと思いますが、陸上自衛隊の常備自衛官の定数を四百五十四名減らしているようでありますが、これはどういう理由になっているんでしょうか。第四師団との関係でこういったことになっているというふうなことをお伺いしておりますが、その辺について、防衛庁長官または副長官、どちらでも結構です、お願いいたします。
中谷国務大臣 お尋ねの陸上自衛隊の常備自衛官の定数につきましては、防衛力の合理化、効率化、コンパクト化を進めることを定めた防衛計画大綱のもとに、中期防衛力整備計画において、計画的、段階的に平成十七年度までにおおむね十五万六千人程度とすることとされておりまして、平成十四年度におきましては、第四師団の改編を行うことに伴いまして四百五十四人削減するものでございます。
 この第四師団の改編ということにつきましては、九州北部に配備されている師団でありまして、他国に隣接をし、対馬海峡に対しての戦略上の要域でありまして、交通上のポイントになる関門海峡に面する防衛上の重要地域であることから、火力等を重視した編成、装備を有する師団に改編するということで、それぞれの装備等の変更を内容といたしております。
田端委員 即応予備自衛官の増員についてお尋ねいたしますけれども、今回は三名増員となっておりますが、これはどういうことでしょうか。
中谷国務大臣 これは、トータル、差し引き三名ということでありまして、逐次師団改編に合わせて導入をいたしております。平成十四年度は、平成九年度に即応予備自衛官を導入している第四師団の二度目の改編でございまして、普通科連隊の効率化、火力戦闘能力による各部隊の改編等に伴いまして、即応予備自衛官の員数について三名増加するということになったわけでございます。
田端委員 十四年度末で五千七百二十六名となる予定だと聞いておりますけれども、中期防、残り三年ですか、今後おおむね一万人を導入という方向とされているわけでありますけれども、そうすると、即応予備自衛官が今回三名ふえるだけであるというのは、余りにもスローペースといいますか、目標に向かってそういう程度でいいんだろうか、目標を達成できるんだろうか、こういう懸念がありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
中谷国務大臣 この整備につきましては、水準に向けて計画的かつ段階的に進めておりまして、今回は第四師団のみでございますけれども、来年以降は、四個師団、一個混成団等を改編し、即応予備自衛官を新たにこれらの部隊に導入する予定でありまして、平成十七年度末には中期防の目標である一万人に達することになるというふうに考えておりまして、計画どおりの予定をいたしております。
田端委員 自衛隊の合理化、効率化あるいはコンパクト化、こういう目標を掲げて整備されているということでありますけれども、即応予備自衛官をふやしていくという必要性はあるんですが、その場合に、予備自衛官が即応予備自衛官の方に流れてしまうんではないか、そうすると予備自衛官の充足率が低下するわけでありまして、そういった意味で矛盾は生じないんだろうか、こういう懸念をいたします。
 予備自衛官補について、今回、本年から新たに募集を開始した、そういうふうに承っております。予備自衛官は民間で元自衛官、それで訓練は年間五日程度、そして、即応予備自衛官は民間で元自衛官で、年間三十日の訓練。中身的には、そういう意味では、同じ民間の人であっても少し違うように思いますし、また日当等も違うようであります。今回採用される予備自衛官補、これをふやしていくということを議論するに際して、これは将来の徴兵制につながるんではないかとか、こういった危惧をする向きもなきにしもあらずであります。
 そういう意味で、即応予備自衛官、予備自衛官、それから予備自衛官補と、自衛隊員を補足する意味でのこの仕組みというものがうまく動いていけば非常に効率的だと思いますけれども、そういう国民の誤解や懸念が広がれば、そこのところがうまくいかないんではないかという心配がありますけれども、この点は大丈夫でしょうか。
中谷国務大臣 予備自衛官補という制度は今回新たに導入するわけでありますけれども、訓練期間も、一般は三年間に五十日、技能は二年間に十日間という期間でございますし、また、制度自体の目的につきましては、防衛基盤の育成、拡大を図るとの観点から、予備自衛官の勢力の安定的確保と民間のすぐれた技能を有効に活用するという趣旨でございますし、あくまでも個人の志願、意思に基づく制度でございまして、強制的に徴用をするような、徴兵制の呼び水とか、強制的に招集するというふうなものになることはないというふうに思っております。
田端委員 予備自衛官補が、これは民間で未経験者でもいい、例えば学生であってもいい、こういうことでありますね。そして、そういう今大臣おっしゃられた教育訓練によって自衛官補から予備自衛官になるとなれば、そこで私は少し心配なのは、例えば有事の際には防衛招集がされる、その防衛招集される対象に予備自衛官が入っているわけですから、そうすると、そういう未経験者でそういった人が、三年で五十日の訓練とおっしゃいましたが、そういう教育訓練で予備自衛官としてそれなりの機能といいますか、働きをできるんだろうか。また、予備自衛官補自身も、果たして安全の確保という観点からも、その程度の教育で大丈夫なんだろうか、こういう心配が出てくるわけであります。
 今後議論される武力攻撃事態法といいますか、いわゆる有事法制の問題の中でもこの防衛招集の問題が議論されることになると思いますが、そういった意味でも、この予備自衛官補の教育、期間がこれでいいのか、そしてそれを予備自衛官にして、そういうふうに対応していくということが果たしていいんだろうかということについて、これは長官ですか、副長官でしょうか、お願いいたします。
萩山副長官 ただいま田端先生御指摘の予備自衛官補の一般公募については、予備自衛官として任用後、例えば防衛招集が行われた場合、後方地域の警備等の職務に充てることが想定されるわけであります。
 一般公募については、このような職務を遂行する上で最低限必要な所要に基づいて新規隊員教育課程前期、この前期というのは自衛官としての基礎的知識及び技能を習得させるための陸上自衛隊の教育課程であります。これらの五十日の教育訓練を行うことによって、防衛出動等の場面においては、かかる教育訓練を通じて予備自衛官となった者が保有する職能により、かなり対応可能であろうというふうに考えて教育をいたしておる次第であります。
 以上であります。
田端委員 これから、武力攻撃事態が生じた場合における法案が提出されて議論が進んでいくわけでありますが、そういった意味で、いざというときに日本の安全保障をどうするか、その体制の中で、今御説明のあったことで、果たして防衛出動に対応できる、そういう要員としてそれでいいんだろうかという疑念は、私はまだ多少残ります。したがって、三年間で五十日の訓練という意味はしっかりとやっていただいて、また国民の理解もしっかりといただけるようにして頑張っていただきたい、こう思うわけであります。
 それで、今回、いわゆる有事法制の法案の提出の中の一つとして、自衛隊法における百三条の関係のところの改正案が出ることになるんだろうと思います。そこで、その問題についてお尋ねしたいと思いますが、この自衛隊法百三条における業務従事命令、それから物資の保管命令とこれに罰則をつけるという考え方、これは現在検討されているようでありますけれども、どういうふうに検討されているんでしょうか。
中谷国務大臣 自衛隊法百三条の物資の保管命令については、災害救助法の規定も参考にしつつ、罰則規定を整備する方向で検討いたしているところでございます。
 物資の保管命令というのは、自衛隊の任務に必要な物資を確保するために発するものでありますけれども、この命令の本質というのは、保管物資を転売するなどしてはならないという、いわゆる不作為の行為を命じるものであることから、罰則をもって物資の処分を禁じることにより物資を確保するという効果が十分に見込めるものと考えております。
 一方、従事命令につきましては、医療、土木建築工事または輸送業者等に対し発することができますけれども、この業務は当該業者の専門的な知識、経験や能力を用いて能動的かつ継続的に行うことを要するものでありまして、我が国の武力攻撃を受けているような事態において、自発的かつ積極的に協力していただけることを期待しており、逆に、罰則をもって強制的に業務に従事させたとしても十分な命令の効果が期待できないものと考えておりまして、罰則を設けないということでございます。
田端委員 従事命令に関しては罰則を設けない、保管命令については罰則を、災害救助法等を適用した形で設けたい、こういうお話でございますけれども、基本は、国民の理解と善意に基づいて態勢を組むわけですから、私は、片っ方に設けて片っ方に設けないというのはちょっとおかしいなという感じがします。それだったら、もう罰則はなくてもいいのではないか。善意というものをぜひお願いして、協力を求めていく、そういう態勢でいいのではないかと思いますが、その辺はどうでしょう。
中谷国務大臣 これは、国を守る上において人に着目をするという点につきましては、御指摘のように国民の理解と善意に基づくということでありますけれども、物の確保につきましては、これはやはり必要不可欠な物の確保という観点でございます。したがいまして、公共の福祉のため国民の権利を制限する場合には、必要最小限であるべきというふうに考えておりまして、この中でも、保管命令違反に対する罰則については、義務違反のうち、故意に保管物資を隠匿したり、毀棄したり搬出するという悪質な行為のみを罰則の対象とする方向で検討をいたしております。
 他方、義務違反のうち、保管に必要な積極的な行為を果たさないというような場合について罰しないということとする方向で検討しておりまして、そのような意味において、保管者の理解と善意に基づく自発的協力に期待するということにいたしております。
 今回の法案が国民の理解と善意を前提にして整備すべきことは御指摘のとおりでございまして、今後とも、この法案の整備に当たりまして、国民の皆様方にその内容を十分に説明いたしまして、御理解いただきたいというふうに思っております。
田端委員 まだその法案そのものが提出されていないので、詳細にはわからないわけですけれども、しかし今のお話を聞いていまして直接感じることは、つまり保管命令というのは食料とか燃料に当たると思います。例えばガソリンスタンドとかそういうことだと思うのですが、こっちは罰則規定がある。しかし、土木とか建設あるいは運送業ですね、ここには罰則規定を設けない。こうなりますと、つまり憲法十八条、二十二条、職業選択の自由とかこういう原則からして、どうも何かバランスといいますか、その罰則があるのとないのとの差は何だろう。どちらも、例えばこれは取引業者、商売人に対しての規定ではないのか。これは同じ商行為であって、また私権が絡んだ問題に対して、片方では罰則があり、片方はないという、こういう矛盾は生じないんだろうかという懸念がしているわけでありますが、今の時点でお答えできる点をお願いしたいと思います。
中谷国務大臣 この物資の保管命令につきましては、故意に保管物資を隠したり、また壊したり、またどこかに搬出するという悪質な行為のみを処罰の対象とする方向で検討いたしているわけでございます。
田端委員 これはまた法案が提出されてから議論させていただきたいと思いますが、武力攻撃事態安全確保法案の関係について、やはり基本的には、私は、しっかりとした原則をつくっていただくことが大事だろうと。例えば、憲法の枠内であるとか、集団的自衛権の行使は認めないとか、私的な権利の制限は最小限にとどめるとか、こういう幾つかの大きな問題点があると思いますが、そういう原則からどうぞ逸脱しないようにお願いしたい、こう思うわけであります。
 そこで、いわゆる有事法制に対する対応についてでありますけれども、幅広い危機に対応するということ、それから、武力攻撃に至らない緊急事態への対応についても整備を進める、こういったことが総理の方からお話があって、そして、同時多発テロとか不審船事件等の影響もあって、武力攻撃に至らない大規模なテロとかあるいは武装不審船とか、こういう事件に対しての対応、そこまで考慮に入れるような方向で検討が進んでいるということでありますが、これは今の段階でどういうふうになっているんでしょうか。
中谷国務大臣 国家の緊急事態といたしましては、外部からの武力攻撃を受ける場合だけではなくて、テロや武装不審船事案等、さまざまな事態がありまして、これらに対してすき間なく対応することが必要であるというふうに考えておりまして、現在法案の整備をいたしておりますけれども、武力攻撃事態だけではなくて、その他の場合の検討もあわせて検討されているというふうに考えております。
田端委員 そこで、つまり武力攻撃、その武力攻撃は、そのおそれのある場合も含む、こういうお考えのようであります。また、武力攻撃が予想されるに至った事態、こういうことも想定しているようでありますけれども、それらと防衛出動、そしてまた防衛出動待機命令、この関係がどうも非常にわかりづらい。
 したがって、これだけ大きな法律であり、大事な法律ですから、一番の基本である武力攻撃の事態、あるいは予想される事態、そして、防衛出動あるいは待機命令、この関係が国民に理解されないと、なかなかわかりづらい。そこはちょっと絵にかいて示してもらいたいような感じもするわけでありますが、ここのところ、今大臣の方で考えておられる色分けといいますか、そこのところはどういうふうな関係になっているんでしょうか。
中谷国務大臣 一般の図なんかで示しますと、基本的に、武力攻撃があって防衛出動がかかる場合と、武力攻撃があるおそれがある場合と、そして、それに対して備えるために待機命令をかける場合と、このような時程の区切りがあるわけであります。
 自衛隊法七十六条においては、防衛出動下令の条件として「外部からの武力攻撃に際して、」と規定をいたしております。この「外部からの武力攻撃に際して、」とは、侵略国が我が国に対する武力攻撃に着手した場合であります。
 また、同じ防衛出動下令の要件として規定している「外部からの武力攻撃のおそれのある場合」とは、いまだ武力攻撃の着手はないが、その時点における国際情勢、相手国の明示された意図、軍事的行動の態様などなどにより判断して、我が国に対する武力攻撃が生じる可能性が、我が国として客観的に十分認められる事態が生起している場合を示すものと解しております。
 そして、防衛出動がかかる前の段階でありますけれども、自衛隊法七十七条に規定する防衛出動待機命令や、同法七十条に規定する防衛招集命令下令の要件である防衛出動命令が発せられることが予測される場合とは、一般的には、さきに述べた外部から武力攻撃のおそれがある事態にはいまだ至っていないが、かかる事態に進展するというふうに思料される状況が発生しているときであります。
 なお、現実の事態において、我が国に対する武力攻撃がどのような時点で発生したか、あるいはそのおそれがある場合とはどのような場合なのかということにつきましては、そのときの国際情勢や相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様、さまざまにより、個別具体的に判断されるものであるために、仮定の事例において限られた要件のみに基づいて論ずることは適切でないというふうに考えておりますが、そういった武力攻撃のケースと、武力攻撃が予測される場合のケース等に分けてそれぞれの対応を定めているわけであります。
田端委員 大臣はそういう答弁をされますけれども、武力攻撃の事態というもの、あるいはおそれのある場合、あるいは予想される事態、その区分けすらなかなか国民には理解できないわけでありまして、それと防衛出動あるいは待機命令との関係というのは非常にもっとわかりづらいわけですから、もう少し国民がわかるように説明ができるように研究をしていただきたい。そして、どうせこの法案が提出されればそこのところは大きな問題になると思いますから、きょうはその辺にとどめたいと思いますが、ぜひ今後、国民の皆さんにわかるような議論をさせていただきたい、こう思います。
 それで、北朝鮮の問題についてお伺いいたします。
 外務大臣にお伺いしますが、先般、坂口厚生労働大臣が、シンガポールで非公式閣僚レベル会談ということで行われる予定だということであって、先週、ここでも私も質問させていただきましたが、しかし直前になってキャンセルになった、こういうことで非常に残念だと思いますが、その辺はどういう御見解なのか。
 そして、正直言って、直前にそういうことというのは、非常に残念というか、余りいい感じがしないわけでありますけれども、これは北朝鮮側からすれば、被爆者の救済の問題と支援の問題と、そして拉致疑惑問題と関係性を持たせたくない、どうもそういう感じがあったのかなという嫌いもあるわけです。
 大臣は、あらゆる機会をとらえて、拉致疑惑に対しては真剣に粘り強く対応していきたいと先週もお答えいただいておりますが、こういう流れの中でこうなったわけですけれども、今度、赤十字会からは、行方不明者の調査については行いたい、そういう意思表示があったようでありますので、ここはぜひ大事にしていただかなきゃならないな、こう思っております。もろもろ、そういうところについての経緯を踏まえて、大臣の御決意をお願いしたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃいましたように、坂口厚生労働大臣の非公式会談が、会談の前日の二十九日に先方から延期をしたいという申し入れがありまして、開催されなくなりました。このことについては私も残念だと思います。
 政府の立場は、いずれにいたしましても、今後とも引き続き日朝国交正常化交渉の進展に向けて粘り強く取り組んでいく中で、拉致問題を初めとする人道上、安全保障上の問題の解決に向けた努力を積み重ねていくということでございます。
 この会談がキャンセルになった理由につきましては、先方は準備が整っていないので延期をしたと言っているということでございまして、それ以上の背景はわかりませんが、日朝赤十字会談につきましては、これの影響が直ちに及ぶというふうには考えておりません。
田端委員 不審船の引き揚げの問題についてお尋ねしますが、先般の海上保安庁の水中テレビカメラによる調査で、自爆の裏づけになると思われるような節があるいろいろなことがわかったということが、新聞、テレビ等でいろいろ報じられております。そういう意味で、これはどの程度確証をつかんでいるのかということをお尋ねしたいことが一つであります。
 この問題に対しての、引き揚げについての中国側の反応もここに来て少し変わってきたと思います。昨日、川口大臣が李鵬全人代委員長と会談されて理解を求めたということも、けさの新聞で報道されておりますが、この問題について、海上保安庁の方は今月末にも潜水士を入れた引き揚げのための調査を行いたいというふうにおっしゃっておられますし、そういう意味では、今まさに大きな正念場といいますか山場を迎えている、こう思います。
 川口大臣の決意と、海上保安庁のこれからの方針についてお伺いしたいと思います。
縄野政府参考人 いろいろ報道されておりますが、二月末に行いました水中カメラ調査では、自爆であったのかどうかということを断定することはできておりません。国籍につきましても、いろいろうかがわせるものはありますが、断定するところまではいっておりません。
 いずれにしましても、私どもとしましては、今後、引き揚げが可能かどうかの潜水士調査、そして引き揚げによって船の中を調査いたしまして、仮に自爆であったとすればどのような自爆であったのか、なぜ自爆までしたのか、どのような犯罪事実を隠そうとしたのか、そういう点について国籍とあわせて解明をしたいというふうに思っております。
川口国務大臣 昨日、李鵬委員長との間でこのお話を私の方から触れさせていただきました。そして、この件を日中間の外交問題とすることなく、理性的な話し合いを通じて適切に処理をしていくというふうに申し上げまして、先方とその点についての認識は一致をしたと考えております。
田端委員 以上で終わります。ありがとうございました。
玉置委員長 次に、大出彰君。
大出委員 おはようございます。民主党の大出彰でございます。よろしくお願いいたします。
 先日、三月の二十六日に本会議場でこの法案についての代表質問をいたしましたので、その辺の再質問的なところからお願いしたいと思います。
 まず、有本恵子さんの拉致事件の問題ですが、私は、これは国家の主権を侵害する重大な犯罪である、つまり事件だという認識を持っております。本日は、参考人をお呼びしておりませんので、警察の方等にお聞きはいたしませんけれども、この点について報道等によりますと、福田官房長官と安倍官房副長官との対立があるように、言ってみますと、北朝鮮に対して拉致疑惑を徹底追及するというのと国交正常化の方を優先させる、そういう対立のようなことですが、私は対立ではなく両方やるべきだと思っておりますと同時に、主権というものをもっと敏感に考える外交をとらなければ日本の国益を害する、私はそんなふうに思っています。
 そこで、官房副長官が、本当は官房副長官をお呼びしたいぐらいなんです、御本人が話しているわけですから。「……とにかく槇田君を追い詰めるようなことだけはやめてくれ」、こういうふうに福田官房長官が文春で言っている。槙田さんというのは随分かばわれているんだなと思っているわけです。「九九年、阿南惟茂アジア局長が村山訪朝団の派遣前に拉致疑惑に触れ、「たった十人程度のことで交渉が滞っている」と発言。後任の槇田氏も同じ外交部会で「拉致疑惑が日朝交渉再開の障害になっている」」というふうなことが文春に書いてあるわけですが、ここでは二つに分けているわけですね。拉致疑惑が日朝交渉の再開の障害になっているという認識だけであれば、これはむしろ阿南さんの言っている方が問題があるわけですね。
 そこで、安倍副長官がおられないのですが、発言をなさっているのは、阿南さんの発言に基づいて発言をなさっている。つまりは、阿南さんが言ったということをどこかでお聞きになって、それを認識して言ったのではないか。安倍さんがおられないから非常に恐縮なんですが、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
川口国務大臣 安倍副長官がいらっしゃらないところでお話をさせていただくことになってしまうわけですが、私は、安倍官房副長官は、拉致問題について外務省とさまざまな議論を行ってきた過程で、当時のアジア局には拉致問題を軽んじていると受け取られるような雰囲気があった旨述べられたと承知をいたしております。
 当時、外務省では、拉致問題をいかに解決すべきかという点につきまして種々の議論が行われていたということでございます。こうした過程の中で、安倍官房副長官がおっしゃったような雰囲気があったという印象を持たれたのではないかと推測をするわけです。この点につきましては、外務省としては、そういう印象を持たれたとすれば、この点については謙虚に受けとめなければいけないと考えております。
 それで、政府としては、拉致問題は国民の生命にかかわる重大な問題でありまして、一刻も早い解決を必要とするという認識を持っております。日朝国交正常化に粘り強く取り組み、こうした努力を通じて拉致問題を初めとする人道上の問題、安全保障上の問題を解決するとの方針で、一貫して取り組んできております。
大出委員 どうも外務省が弱腰であるという気がするのですが、また文春に書いてあるのですね。「田中均アジア大洋州局長が安倍副長官に「ご説明」と称して頻繁に接触し、拉致問題PTの即時廃止を申し入れました。「安倍先生のようなタカ派路線では絶対に何も解決しない」と言い、」安倍副長官が怒ったと書いてあるわけですが、これは、タカ派だとかそういう問題じゃないと思うのですね。
 私が心配しているのは、どうも福田さんと安倍さんのことについては閣内不一致ではないかなと思いますし、こういうので拉致問題のプロジェクトが動かなくなっては困るのではないかと思うのですね。そういう意味で、これもまた御本人がいないので申しわけないのですが、外務大臣、どのようなお考えでしょうか。
杉浦副大臣 私が拉致問題PTのメンバーでございますので、私からお答えするのがよろしいかと思います。
 今、田中均局長のことが出ましたが、その記事が出た直後に第二回のPTを開催いたしております。過去二回行っておりますが、第三回目も状況を見て行おうということになっておりまして、私ども、副大臣会議は割合閣議と違って自由な議論をして、いろいろな問題について、省庁をまたがることはPTをつくって、私も三つ四つPTに出ておりますが、拉致問題も真剣に取り組むべきだという意見が前々からございまして、PTができたわけでございます。
 今後とも副大臣PTで拉致問題を取り上げて検討していこう。私どもとしては、第一回のPTをやった後、北朝鮮赤十字が調査を再開するという発表をしたわけです、拉致問題PTをやった効果が上がったかなと自負しておるわけですが、今後とも精力的にやってまいりたいと思っております。
大出委員 日本人全体として頑張らなきゃいけないと思っております。
 私が二十六日のときの質問に、官房長官は、「北朝鮮側に対し、このような断固たる立場をあらゆる機会に明確にいたしております。」と、立場を明確にとは言っているんですが、この有本さんの拉致事件にどうするかということは答えていないんです。
 また、外務大臣も、「日朝国交正常化交渉に粘り強く取り組み、」「一貫して取り組んできています。」、きていますということなんですね、と言っておりまして、この有本さんの拉致事件にどう取り組むかについては具体的に答えていただいていないんですね。
 まさかランボーみたいに「怒りのアフガン」といって、プロジェクトをつくって出かけていって取り返すわけにいかないわけでしょうから、事件と私申し上げましたけれども、どんなことをお考えなのか、お答えいただきます。
川口国務大臣 有本恵子さんの事案につきましては、政府としてもこれまで重大な関心を持って対処をしてきているわけでございまして、日朝国交正常化交渉等の場で、北朝鮮側に対して、その安否について調査の申し入れをしてきた経緯がございます。
 この件につきまして、先般、警察当局から北朝鮮による拉致の疑いがあると判断をされたわけでございますけれども、政府としては、今後とも引き続き、この件を含む拉致問題全体を日朝国交正常化交渉等の場で取り上げて、北朝鮮側の真剣な対応を粘り強く求めていきたいと考えております。(発言する者あり)
大出委員 後ろの方で今、ランボーみたいでもいいということを言っておりましたけれども、それも一つの手としてはあるでしょうね。
 そう考えたときに、国交がないというところが非常にやはりネックになっているということも明らかなことなんですね。そこで、北朝鮮と国交のある国というのはどんな国なのか、そして、国交を結ばなかった、結べなかったといいますか、それはどの辺に要因があるのかというところをお伺いしたいのです。
田中政府参考人 北朝鮮と国交を結んでいる国についてのお尋ねでございますけれども、現在までに北朝鮮と外交関係を有している国の数は百五十一カ国でございます。アジアの国、それからヨーロッパも、これは二〇〇〇年、二〇〇一年ということでございますが、ほとんどの国が国交を樹立したということでございます。
 それから、なぜ今まで国交樹立できていないんだというお尋ねだと思いますけれども、これは委員御案内のとおり、過去、国交正常化交渉をしてきた、その中で私どもとしては、これは大臣からも御答弁がありましたけれども、日朝間のいろいろな懸案事項、この拉致問題というのも非常に大きなことでございますし、やはり国交を結ぶということは両方にとって満足がいくことでないといけない、そういう観点から交渉してきたわけでございまして、その結果、いまだ国交正常化交渉がまとまっていない、こういうことでございます。
大出委員 なかなか悩ましい問題でございますが、やはり主権の問題がありまして、報道によりますと、三月十四、十五日に防衛庁とロシアの国防省の専門家の会合で話があって、領空侵犯についての話だったらしいんです。領空侵犯が行われているわけですね。それをロシア側に追及しても、その事実をロシアが認めなかったという報道があって、ロシアと防衛庁で会合を持っているということなんですが、いわゆる一つの領空侵犯、主権侵害の一つですが、こういった主権侵害、領空も領海もあるでしょうけれども、主権侵害に対処する手段というのはどんな方法があるのか。そしてまた、主権侵害法などというのがありませんので、諸外国はそういうときはどういう対応をしているのかをちょっとお伺いしたいんですが。
中谷国務大臣 領空侵犯につきましては、自衛隊法八十四条において、国際法上、国家が行い得る領空侵犯の取り締まり行為として、そのために必要な権限の行使を自衛隊が行うことを定めております。
 具体的には、同条に基づき、航空自衛隊の要撃機は、一、領空侵犯機の確認、二、領空侵犯機に対する領域外への退去または最寄りの飛行場への着陸の警告、三、領空侵犯機を着陸させる場合の飛行場への誘導、四、警告、誘導に従わず、発砲するなどの実力をもって抵抗するような場合、対抗措置をとることとしております。
 次に、領海侵犯等につきましては、御案内どおり、自衛隊が海上警備行動により対処することを可能といたしております。この場合、自衛隊法九十三条により、武器使用、海上自衛隊の三等海曹以上の自衛官については、付近の人、船舶への協力要請、船舶への立入検査、質問、船舶の進行停止、航路変更等といった措置をとることができます。
 諸外国の考え方でありますけれども、国際法上、完全かつ排他的な主権を有することが国家として認められておりまして、国家の意思としてゆだねられております。
 各国の例でありますけれども、米国の場合は、領空侵犯機と交信し、退去を求めるか着陸をさせるか、あるいは場合によっては交戦するなどの措置基準が定められております。
 スウェーデンの場合は、許可なくスウェーデン領域に侵入する外国機に対しては、領域外に退去するように命ぜられる、必要がある場合は武器を使用することができる。さらに、特別の事情がある場合には、また国籍不明機が敵対的意図を持つと推定される状況下で領空侵入の場合、上級指揮官の命令に基づき、前もって警告なしに武器を使用することを定めております。
 領海侵犯の場合も、国連海洋法条約は、すべての国の船舶は領海において無害通航権を有し、沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内で必要な措置をとることができるといたしております。
 各国、それに基づいて措置をされておりますが、米国の場合は、沿岸警備隊は、違法行為の防止のため、臨検、拿捕等ができ、応諾を強制するために必要なあらゆる強制力を使用することができる。
 なお、米国において、軍が違反行為の取り締まりを含め法執行を行うことは、議会が別途これを定める場合を除き、禁止をされております。
 韓国の場合も、関係当局が停船、検索、拿捕、その他必要な命令や措置をとることができる。
 なお、北朝鮮の工作船に対しては、停戦協定違反として韓国軍が対応することとされており、この場合は警察権の行使ではなく、自衛権の行使により対応することとされておりまして、各国それぞれ国際法を基準といたしまして対応いたしております。
大出委員 今みたいに、主権というのは大変重要なものですから、意識をしながらこの有本恵子さんの拉致事件解決、全力を尽くさなければいけないと思います。
 次の質問になりますが、金正男さんの事件で、この間平沢先生が御質問なさっていますが、外務省は適正な措置がとられたとおっしゃるんですが、私は適正ではないと実は思っておりまして、国外退去処分はしているんですけれども、犯罪立件が可能だったわけですよ、過去三回不法入国しているわけですから。極めて悪質なわけですね。旅券法も違反していますし、入管難民法の違反で、本来なら最大六十日間の身柄拘束が可能だったわけですよね、主権国家なんですから、法治国家ですから。それなのに帰してしまったというのは、これはミスであろうと私は思うんですね。
 争点は一つなんですね。北京に退去させられたときに、こう言っているんですね。法務省の寺脇一峰入国管理局の総務課長さんが、今の段階ではお話しできない、勘弁していただきたいと当時言っているわけですね。今の段階ではというんだから、後で話すのかな、つまりは、金正男であったということを認めるのかな、そういうとり方もできるわけなんですが、一年ぐらいたっています。
 そこで、焦点は、確認できなかったとおっしゃるんだと思いますが、金正男さんだったんだ、だったんであろうということを私はお尋ねしたいと思います。外務大臣。
田中政府参考人 お尋ねでございますけれども、御指摘の人物の特定につきましては、北朝鮮出身者であるということは認められましたが、本名等を含め、本人の確認ということはできなかったというふうに承知しております。
大出委員 確認できなかったと。こうなっているんですよ。四日午後、昨年の五月四日ですね、四人の身柄を北京に移す際、日本政府からは、佐藤重和外務省アジア大洋州局審議官ら外務当局者三人、入管当局者三人の計六人が同行しているんですよ。これでも違うというんでしょうかね。お聞きします。
田中政府参考人 委員御指摘のとおり、北京への強制退去に当たっては、外務省の職員が公務で同行をしたところでございます。これは当時の状況から見ましても、移送の混乱、あるいは中国政府、中国側に対する円滑な引き渡し、こういうものを担保する必要があると判断されたために公務で出張したわけでございます。
大出委員 普通の人をやるのにこんなことする必要はないですよね。
 こうですよ。全日空機で行ったんですね。全日空機内ではNHKニュース放送が中止になるなどぴりぴりした様子で、到着した北京空港や北朝鮮大使館前に多数の外国報道陣が押しかけた、こう言っているんですよ。これでも違うんですか。金正男じゃないんですか。
田中政府参考人 御答弁の繰り返しになって恐縮でございますけれども、特定はされていないということでございます。(大出委員「外務大臣、お願いします」と呼ぶ)
川口国務大臣 特定されていないと承知しています。
大出委員 本当に私は、法務省も含めて、本当はそうだったと言った方がいいんじゃないんですか。そう思いますけれども。
 こうなんですね。全日空機の中では、男性は落ちついた様子で、時折随行スタッフとも会話をしていたというんですからね。どなたか、六人の中にだれかいるんでしょう。会話をしていたんでしょう。だって、本当は、どこのだれかもわからないんだったら、こんなことあり得ないはずでしょう。金正男さんじゃないんですか。
川口国務大臣 北朝鮮出身者であると認められたものの、本名等について確認することはできなかったと承知をしております。
大出委員 北京の方の、日本の報道の方もこう言っているんですね。北京空港のVIP専用駐車場には、四日昼過ぎ、全日空機到着に合わせるように北朝鮮大使館の車両数台が慌ただしく到着した。こういう落ちまでついているんですよ。これでも金正男じゃないんですか。
川口国務大臣 入管当局で、これは関係法令等に基づいて退去強制手続に必要な範囲の調査を行ったということでございますが、御指摘の人物の人定については、北朝鮮出身者であるということは認められたわけですが、本名等につきまして確認することはできなかったと承知をしております。
大出委員 かくもいいかげんなわけでございまして、そういう外交のやり方といいますか、もうやめた方がいいと思うんですね。まず、いいかげん過ぎますよね。だから、やはりしっかり、現実的に国民が見ているわけですからね。そういうやり方をやっていては、だからいろいろな不祥事が出るんだと言われるわけですよ。
 じゃ、もう一個聞きますよ。その金正男と、おぼしきとおっしゃるんだろうから、おぼしき人の飛行機代はどこが払ったんですか。随行のスタッフは公用、先ほど公務と言っていましたね。通常はどういうふうに払うんですか、こういうのは。本人が払うんじゃないんですか。
田中政府参考人 先ほど申し上げましたように、当時の判断として、法律に基づいた処置をとったということでございますし、外務省の職員は公務として公費で出張をしております。これは、この事案についての円滑な移送ということを担保する必要があるという判断の中で、公務として出張をしているわけでございます。
大出委員 この問題、まず最初に、来たときの最初の瞬間の対応の仕方でも、北朝鮮は、日本というのはあんなものなんだ、こうなるわけでしょうからね。これは、今までずっと外務省がこういうやり方をしてきたことが、ひょっとすると拉致疑惑みたいなものが解決しない原因かもしれないので、本当は反省してもらわないと困るんですね。これからはそうではない、やはり外交であり、安全保障の問題等の解決の仕方をしないといけないのではないかと思っております。(発言する者あり)
 これ以上の具体的な資料がございませんから、同僚がもっとやれと言っておりますが、この問題はここでやめにします。
 続きまして、この事件に関連して質問します。
 まず最初に、金正男さんが来たというときには、どこかから事前情報が入っているわけですね。事前情報についてその当時も問題になりまして、当然質問が出るわけですね。
 それで、昨年の五月の四日に、先ほど言った法務省の入国管理局の寺脇一峰総務課長は当然聞かれるわけですよ。どうして知ったんだと。事前情報はあったのかと聞いたところ、当然、そんなものはない、こう言うんですね。存在を否定しているんです。
 しかし、五月十八日の衆議院の法務委員会では、中尾巧入管局長は、アジア系外国人が偽造旅券で入国するという程度の情報は入手していた、こう答えているわけですよ。当然、そう答えたら、それは金正男に関する情報かと聞きたくなるわけですね。そのとおり、金正男に関する情報かと聞いたんですが、それはそうではないと。要するに、先ほど言った北朝鮮系のだれかだというような意味でしょうね。
 そうすると、どこから情報がもたらされたのかということが気になるわけです。法務省なんかの幹部の方に聞きますと、当時は、はっきりさせることはできない、こう言っているんです。なぜかというと、二度と情報が入らなくなるからだと。いろいろな情報だ、一つではないんだ、いろいろな情報を総合した、こういう答え方をしているんです。
 北朝鮮の要人に関する情報というのは、各国いろいろな機関が収集しているわけですよ。例えば、英国のMI6、情報局秘密情報部ですか、米国は当然CIA、中央情報局、韓国のNIS、国家情報院などあるわけですね。
 要するに、私も代表質問のときに、ITを軽視した結果だということで、情報軽視はいかぬという話を質問しているわけです。
 そんなところで、今回、防衛情報通信基盤管理運営室というのを新設します。それもありますので、まず防衛庁は、情報をどこでどのように収集して、例えば今言った北朝鮮の要人に関する情報というようなものもどこでどのように収集して、詳しくはおっしゃれないと思いますが、そしてまた、そのような情報について、この防衛情報通信基盤管理運営室という長い名前の新設する機関はどのようなことをするのかを防衛庁にお伺いします。
中谷国務大臣 一般的に、公安等に関する情報収集につきましては、政府の内閣の方で一元的に集約して行っているというふうに思っております。
 防衛庁につきましては、日本の安全保障に関する情報の収集をするために、情報本部等を設けて活動いたしておりますけれども、この中に、最近、コンピューターとか通信技術が変化しておりまして、やはりこのシステムを近代化して、集約できる、また相互利用できるようなシステムにしなければならないということで、機材の更新を行う。この際、オープン系とクローズ系の二つの系列をつくりまして、オープン系をまず運用するに合わせて情報通信基盤管理運営室を新設することといたしました。
 この部屋は、ネットワークの稼働状況の常時監視及び障害対応、不正侵入の常時監視及び対処、それから、このシステムに関する陸海空自衛隊各種システムのセキュリティーの監査及び技術指導などの業務を行う情報通信知識、技術の中核となる部屋でございます。
大出委員 この情報のことに関して、通信団というのがあると思うんですね。これは長官の直属なのかどうかというところです。
 調べてみると、通信団は、アクティブ・シグB、こういうふうになっているんです。昔は、C―シグBというふうに言っていたというんですね。ですが、ホームページなんかを見ると、アクティブ・シグB、こうなっていまして、シギント施設であると言われているんです。それから、その通信団の系列で防衛庁の情報本部大井通信所というのがあって、これは専ら国内監視をしているのではないかと言われてきているんです。
 シギント施設で何をやっているかというと、ECHELONの絡みなんですが、時間がありませんから、そういうのはまたほかの日にしますけれども、問題なのは、前から言われていることなんですが、この大井通信所にアメリカ軍人が出入りをしているんじゃないかという、アメリカと協力しているからいいんだという言い方もあるのかもしれませんけれども、それも、第六九二〇電子保安群というところがここに出入りしているとか言われております。
 情報本部とかいろいろおかえになってきている中で、この通信団というのが長官の直属で、今どのようなことになっているかということについてお伺いをして、質問を終わりにしたいと思います。
中谷国務大臣 日米両国におきましては、それぞれ指揮系統が違っておりまして、組織においても明確に区分をして運営いたしております。情報入手等につきましては相互で協力を行っているというのは、申すまでもございません。
 情報本部の組織につきましては、計画部、分析部、緊急・動態部、画像部、電波部等がありまして活動いたしておりますし、また、通信所等で約千六十人の人員が情報の収集活動等に当たっているわけでございます。
大出委員 質問を終わります。
玉置委員長 次に、前原誠司君。
前原委員 前回に引き続いて、朝銀の問題について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、警察に質問をいたします。
 先般、理事会へ提出をされた回答の中で、この内容について少し御説明をいただく意味で質問をしたいんですが、回答の中で「本件捜査の結果、当該横領金の一部が朝鮮総連側の使途に充てられていた事実が明らかになっている。」と書かれています。これをひもとくとどういうことかということなんですが、つまりは、例えば、康永官総連元財政局長の個人の犯罪ではなくて、総連という組織のために行った犯罪と考えていいのか、そのことについて、警察、御答弁ください。
金高政府参考人 昨年十一月、警視庁において検挙いたしました、元朝鮮総連財政局長らによります朝銀東京の資金約八億四千万円の業務上横領事件につきましては、捜査の結果、被疑者らが個人的な目的のために犯行に及んだものではなく、朝鮮総連の使途に充てるという目的で横領したものであるということが認められるところであります。
前原委員 今の答弁でも明らかになったように、個人の犯罪というよりは、先般から申し上げているように、総連という組織のためにやった、つまりは、組織の命令がまだ解明をされていないということでありますが、いろいろな調査あるいはヒアリングによって、総連の組織のためにやった可能性というものが極めて高いということであります。
 そこで、きょうは、今後の問題も含めて少し議論したいと思うのでありますが、まず、政府は朝鮮総連の資産というものをどのように把握しているのか、その点についてお答えいただけますか。
漆間政府参考人 朝鮮総連は、その綱領等から見まして、北朝鮮と極めて密接な関係を有する団体でありまして、警察としては、公共の安全と秩序の維持を図るという責務を果たす観点から、総連の資産状況について情報収集もしているところであります。
 しかしながら、この情報収集の具体的な内容を申し上げることは、今後の警察活動に支障を及ぼすことになりかねませんので、答弁は控えさせていただきます。
前原委員 別の観点から質問したいと思います。
 関東興業という会社、これは資産を扱っていたと言った方がいいかもしれません。まだある程度資産を扱っているかもしれませんが、かなり分散をさせた、散らしたということが言われております。関東興業という会社について認識をしているか、また、これが朝鮮総連の資産管理を主に担っていたという認識はあるか、そのことについて御答弁ください。
漆間政府参考人 関東興業につきましては、ある程度公になっている部分がございまして、朝鮮総連が傘下事業体としては公表しておりませんけれども、関東興業という名称の企業が総連中央本部の土地及び建物を所有していたということは承知しております。
 ただ、当該土地及び建物は、平成十年に合名会社朝鮮中央会館管理会に所有権が移転されております。合名会社朝鮮中央会館管理会は、平成十三年に合資会社朝鮮中央会館管理会に名称を変更されております。
前原委員 私がなぜこういう質問をするかということなんですが、従来から指摘をしているように、朝銀の破綻処理に今まで六千二百三十一億円の税金が使われ、新たな四信組の平成十三年度三月時点での債務超過額というのが四千三百四十七億円ということで、この処理というものを合わせると、村田副大臣も御答弁をされているように、一兆円を超える税金が投入をされるということになります。
 それで、破綻をした朝銀に税金を入れるということの問題点と同時に、今後政府としてぜひ考えていただかなくてはいけないのは、債権の回収ということであります。後で質問をしますけれども、個人に対して、つまりは税金投入をしたその債権、要は穴埋めというものと同時に、これからいかに担保に入っていた不動産等々の売却等も含め債権回収を行っていくかということが重要になっていくわけです。
 ということは、先ほど金高捜査第二課長がお答えになったように、個人の目的というよりは総連のためにそういう犯罪を犯した、つまりは総連の組織としてこのような朝銀の焦げつきというものを起こしたということになれば、当然ながら債権回収の矛先は朝鮮総連に向けなくてはいけないし、そしてその資産管理団体に向けなければいけないということになろうかと私は思うんですが、その点、村田副大臣、いかがですか。
村田副大臣 個々のケース、これはさまざまでございましょうから、そういう意味で、どういう回収を図るか、こういうことについて一概に申し上げることは困難だと思いますけれども、一般論としてお答え申し上げれば、RCCは、譲り受けた債権の回収に当たりましては、債務者と接触をするということなどいたしまして事実関係を正確に把握した上で、債権の回収の極大化を図っていく、こういうことであろうかというふうに思っております。
前原委員 違う観点からもう一度同じ質問をしたいんですが、この朝銀の問題で明らかになっているのは、架空融資、それから仮名口座あるいは借名口座ということであります。
 それで、ぼちぼち例として出始めているのが、自分がお金を借りていないのに名義だけ使われて、そしてRCCから債権が送られて、そしてその回収を図って、初めて、自分の名前が使われていた、勝手に使われていたと。そして、自分がお金を借りていないのに、自分のところに取り立てが来る、こういうケースが出始めているということを聞いています。こういう場合はどうなんですか。
 つまりは、口座の名前を勝手に借りられた人にRCCから請求が行く、取り立てが行くということについて、だれが払う義務があるのか。
 そして、先ほど申し上げたように、個人の犯罪というよりもむしろ組織ぐるみの犯罪となった場合に、では、トータルとしてだれがその債務を負担する、あるいは返していく義務を負うのか、その点について御答弁をいただきたいと思います。
村田副大臣 前原委員が今具体例として挙げられたことにつきまして、具体例といいますかケースですよね、具体的なケースについて御指摘がありましたけれども、私どもとして、その具体の今挙げられたようなケースが、実際上事実関係がいかなるものかということについて把握して、ケース・バイ・ケースに適切に対応していくということに尽きるのではないかというふうに思います。
 いずれにしましても、回収に当たりましては、個々のケースの態様に応じて的確な対応をRCCでもとっていく、こういうふうに思っております。
前原委員 質問は極めて簡単なんです。借名口座で勝手に朝銀から融資をされて、そして、自分はお金を借りていない、自分の懐にも入っていない、それが勝手に、例えば引き出されて総連に持っていかれた、そしてその朝銀がつぶれた、そしてRCCに送られて、そしてRCCからその借名口座人に債権の回収の取り立てが行ったと。だれがその責任を負うのかという質問をしているわけです。
村田副大臣 これも、事実関係に応じて適切に対応すると言うしか、一般論というかケースなんですけれども、それに対して個々具体的に、こういうような、だれに責任あるかということ、それについて今お答えすることは大変難しいのではないかと思います。
前原委員 いや、全然難しくないんですよ。具体例が出始めているんです。つまりは、勝手に名義を使われて、ちょっと、ちゃんとレクを受けておいてください。要は、勝手に名義を使われて、借りていないのに、取り立てがRCCから来るというケースが出始めているわけですよ。もっと簡単に聞きましょう。その人は、その取り立てに応じる義務があるのかないのか、どうですか。
村田副大臣 いや、今の御指摘とて、やはりその人が全く知らなかったのかどうかということも詰めていかなければわからない、こういうことなので、個々具体的なケースを詰めて、それによって適切な対応をする、こういうふうにしかお答えできないのではないかと思います。
前原委員 では、一般論として答えてください。全く関係なかったということが明らかになった場合、だれが責任持つんですか。
村田副大臣 全くその債務者が関係なかったという場合には、実態を解明して、真正な債務者へ追及する努力をしていくということだと思います。
前原委員 ということは、借名口座人がみずから全く知らなかったということが証明された場合は、その借名口座人はRCCからの取り立てに応ずる必要はないということですね。
村田副大臣 全くという程度にもよりますしね。要するに、名前を借りられたということをその債務者が全く知らなかったということが突きとめられるか、そういうことでありますが、それが全くないということになれば、責任がないということになるのは当然のことだと思います。
前原委員 では、その借名された人が全く関係がなかった、その場合は、さっき副大臣が御答弁になったように、真に金を借りた人はだれか、どこに行ったのかというものを突き詰めて、RCCは債権の取り立てを行うんですね。
村田副大臣 可能な限りRCCはそういうふうな取り立てを努力する、こういうことだと。
前原委員 そしたら、これは、金融庁のみならず政府全体として取り組まなきゃいけない話になるわけです。つまりは、先ほど一番初めに捜査二課長がお答えになったように、個人の目的ではなかった、組織のためにお金が使われていたということが明らかになっているし、そしてその借名口座にしても、実際問題、総連に渡っていたと証言している方々も多いわけですよ。となると、そのお金の回収というものは、借名口座人ではなくて、総連に向けられてしかるべきじゃないですか。総連が組織でそういうものを行っているということになれば、総連に対してRCCが債権の回収を求めるということになるわけですよね。
村田副大臣 そういう可能性も否定できないというふうに思います。
前原委員 そのときに、先ほど警備局長がおっしゃった、朝鮮総連の資産の状況というものについては実態上明らかにできないということでありますが、ここは警備局長に御答弁いただきたいんですけれども、今村田副大臣がお答えになったように、朝鮮総連に対してRCCから債権の回収の可能性はあるといった場合に、総連の資産というものの実態把握を政府としてしておかなきゃいけない、そこのある程度の実態把握というか事実解明において警察が果たす能力も大きいわけで、そのときには、金融庁あるいはRCCに警察として協力してもらえますか。
漆間政府参考人 金融庁あるいはRCCの方から要請があるという場合には、将来の警察活動にとって支障のない範囲内で協力をさせていただきます。
前原委員 村田副大臣に、今の件ではもう一度、確認のための答弁をいただきたいわけでありますけれども、今まで使った六千三百二十一億円というお金も、債権回収によっていかに低減をしていくかということは必要だし、これから認可をする方向性で動いておられる四つの信用組合の債務超過額も四千億円を超えている、全部で一兆円を超える。できる限りこれについては回収していかなくてはいけない。
 総連の資産がどのぐらいあるかどうかは私もよくわかりません。わかりませんけれども、今警備局長が、金融庁あるいはRCCから要請があれば、捜査に支障のない範囲で警察庁は協力をするということでありますので、これは徹底的にやってもらいたい。つまりは、金融庁は、債権回収のために、警察に協力を求めながら真の債務者というものを突き詰めて、そして国民の税金負担をできるだけ軽減させるということで頑張るということをここで答弁をいただきたいと思います。
村田副大臣 RCCの使命として、債権回収に最大の努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
前原委員 いや、ですから、その中に含まれているのかもしれませんが、私が申し上げた質問に的確にお答えください。
 警察の協力も得て朝鮮総連の資産というものを把握する中で、その可能性も含めて、しっかりと政府一体となって、税金をより少なくするために努力をするかどうか、そういう御答弁をいただきたいわけです。
村田副大臣 今御発言があったようなことも踏まえて、最大限の努力をするということであります。
前原委員 お約束をされたわけですので、この点については厳しく今後も見させていただきたいと思いますので、また警察の協力というものも、もしそういう要請があればお願いをしたいと思います。
 さて、先般議論をし、そして金融庁も再調査をするということで理事会に御報告をいただいた案件でありますけれども、違った角度で質問をしたいと思います。
 ハナ、ミレ、京滋、兵庫ひまわりの各信組の理事長、常務理事で在日朝鮮人の方々がなっておられるケースがありますが、この間の金融庁の話だと、その人たちは朝鮮総連の組織内あるいは学習組というものには所属をしていないという、聞き取り調査の上でのお答えでありました。私がいろいろな方々に伺ったものとは違う回答だったので、ここで村田副大臣も、再調査の可能性も含めてという御答弁で、また理事会に再調査をお約束していただいたわけであります。
 警察、公安調査庁に伺いたいと思います。
 この四つの信組の理事長、常務理事で、在日朝鮮人の方で、総連とのつながりがあるかないか、そのことについて把握をしておられれば、それぞれお答えをいただきたいと思います。
漆間政府参考人 今お尋ねの理事長あるいは常務理事についてでございますが、その中には、過去において公刊物の中で自分の役職を明らかにしているというケースもございます。そういう部分についてはもちろん、当然これは本人のプライバシーの保護上も問題はありませんし、それは明らかにしているわけですからそれでいいわけですが、その人物は、現在はもうその役職から離れております。
 それも含めまして、全体につきまして、これは情報収集活動によって我々は把握していかなきゃならない部分でございますので、したがいまして、今後の警察活動に支障が生じるということがありますので、個人のプライバシーの保護ともあわせまして、お答えは差し控えさせていただきます。
栃木政府参考人 当庁といたしましても、朝鮮総連の活動につきましては、従来から重要な調査課題といたしまして調査を進めているところでございます。
 御指摘の問題につきましても、その調査の一環として情報の収集に努めておりますが、これらの調査の結果や調査の状況を公表いたしますことは、当庁の業務の遂行に支障が生じるおそれがございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
前原委員 どういう捜査を行っておられるのか。プライバシーといっても、さっきから何度も申し上げているように、各信組の新しい定款というものを決めて、その定款の中には、朝鮮総連に、いわゆる組織の人間としてかかわらない、あるいは過去にそういう経験のない者をということなんですよね。もう一度、金融庁からもらったものを言いますと、「朝銀信用組合、朝銀で構成される団体、在日本朝鮮人総連合会の役員経験者を役員としない」と。
 先ほど警備局長が、過去にそういう人がいたということは公表されているので、それはプライバシーの問題でも問題がないということでありますが、村田副大臣、今の極めて冷たい答弁の中でも、この一つにはもう違反しているじゃないですか、定款違反。つまりは、過去にそういう役職について、今はそうじゃないと警備局長答えましたけれども、この定款の中には「役員経験者を役員としない」ということですから、過去に役員だった人間も、新しい信用組合の役員にしちゃいけないんですよ。この間副大臣が御答弁されたことについては、もう既に事実関係がほころびが生じているじゃないですか。再調査をされるということですけれども、完全にもうそこで定款違反の問題が出てきているということです。
 ですから、今後の調査の問題も含めて、今警備局長の答えられたことからして、もう既に金融庁の言っていることはうそだ、つまりは、調査結果については間違いがあったということは素直に認めてください。
村田副大臣 警察庁からの御答弁にもかかわらず、おっしゃった過去役員という者が、経験者という者がだれであって、どこの新しい信組の役員についているのかということについて、はっきりとしたそういう御意見があった、御答弁があったというふうには、私は今お伺いをしなかったわけでございますが。
 それにもかかわらず、この委員会での御指摘もございまして、私ども、設立の認可のときに審査をいたしましたが、新設の組合に対しまして、定款違反の事実がないかどうかにつきまして改めて報告を徴求する、こういうことにしたわけでございますが、これは四月の二日に各信組に対しまして報告を出した、こういうことだけを報告させていただきたいというふうに思います。
前原委員 これは安保委員会でやる話じゃないかもしれません。予算委員会か財務金融委員会でやらなきゃいけないかもしれませんが、やはり金融庁の監督責任というのはかなり大きいと私は思いますよ。
 つまりは、新たな四信組に、努力をされて定款まで盛り込んだ、しかし実際の運用については、先ほど警備局長の答弁にもあったように、経験者がいたということがそれだけでも明らかになっているわけです。ということは、この間副大臣が答弁をされた、定款違反というものはないということについては、もうほころびが生じているということですよ。
 このことの責任問題については、私は留保をしておきます。ここで副大臣に問うても酷な部分もあるかもしれません。ここは総理あるいは金融担当大臣柳澤さんにしっかり問いかける中で、金融官庁としての責任問題というものは絶対あるということを私はここではっきりと申し上げて、この問題追及は場所を移したいというふうに思います。
 先ほど申し上げたように、理事長、常務理事の背景についてもし教えてほしいということがあれば、私、ぜひそういう資料は私の知る限りで御提示をしますので、その点についてはしっかりと、警察も表に出せない話があるでしょうけれども、警察とも連携をしながらしっかりやっていただきたいというふうに思います。
 今度出すものについては、今の政治家のスキャンダルで前は間違っていましたということはもう許されない。次に出す報告書は、一片の曇りもなく間違いのないものにするということを御宣言いただけますか。
村田副大臣 私どもとしては、今回の銀行法の準用に基づく報告の徴求というものが、これに違反した場合には一年以下の懲役に処せられる、こういうことを踏んまえまして、報告を請求いたしました新設の各朝銀が正しい回答を出してくるということを期待しているわけであります。
前原委員 この間の答弁で村田副大臣は、定款に抵触するような事態が出てきた場合は免許の取り消しを含めましてと、ここまでおっしゃっているんですよ。だから、この重さはぜひしっかりと受けとめてくださいよ。つまり、個人を処罰したらいいということじゃないですよ。金融機関そのものの免許取り消しまで含めてということをおっしゃったんですよ、この間。再答弁を。
村田副大臣 仮に、定款違反の事実が明らかになる場合には、協金法六条で準用いたします銀行法第二十七条によりまして役員の解任命令あるいは組合の解散命令等の行政処分ができることになっております。
前原委員 厳しく調べた上で対処していただきたいと思います。
 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 平時の自衛措置ということについてでございますが、これもきょうの理事会で、私の質問について政府の統一した見解をお示しいただいたということでございます。武装工作員などが我が国に侵入する事態に自衛隊が対処する場合の警職法を超える武器使用について、政府の統一見解をお聞かせいただきたいと思います。
中谷国務大臣 武装工作員や不審船が我が国に侵入するといった事態は、その事態が外部からの武力攻撃に該当すると判断され、自衛隊法第七十六条により自衛隊に防衛出動を命じた場合であって、自衛権発動の三要件に該当するときは、自衛隊法第八十八条の規定により、自衛権の発動として必要な武力を行使して対応することが憲法上可能である。
 他方、武装工作員等の侵入が、その態様等から外部からの武力攻撃に該当すると判断し得ない場合、我が国の公共の秩序の維持の観点から、第一義的には警察機関が対処するものであるが、一般の警察力をもっては対処することができないようなときには、自衛隊法に定めるところにより、自衛隊に治安出動や海上警備行動を命じることができる。
 このように、自衛隊による治安出動や海上警備行動は、必ずしも警察官職務執行法により認められる範囲に限定をされているわけではない。
 具体的には、治安出動を命ぜられた自衛隊の自衛官は、自衛隊法第八十九条の規定による警職法の準用により認められている権限のほか、自衛隊法第九十条の規定により、小銃、機関銃等の武器を所有した者による暴行、脅迫を鎮圧するのに他に適当な手段がない場合などの一定の場合に武器の使用が認められている。
 また、海上警備行動を命ぜられた自衛隊の自衛官は、自衛隊法第九十三条第一項の規定による警職法第七条の準用により認められる武器の使用のほか、自衛隊法第九十三条第三項の規定による海上保安庁法第二十条第二項の準用により、防衛庁長官が一定の要件に該当すると認めた場合には、船舶の進行を停止させるための武器の使用が認められております。
 上記のような自衛隊法第九十条や第九十三条第三項により準用される海上保安庁法第二十条第二項による武器の使用にあっては、その範囲内であれば、正当防衛または緊急避難等に該当しないような場合でも、人に危害を与え得るような形態での武器の使用が許容される。
 武装工作員等が我が国に侵入するといった事態が外部からの武力攻撃に該当するとは判断し得ない場合に、三及び四で述べた警職法を超える武器使用を含めて、自衛隊が武力の行使に当たらない範囲で武器を使用することは、憲法第九条との関係で問題を生じるものではなく、法律により可能である。
 以上です。
前原委員 今御答弁いただいた中で、少し細かい確認をさせていただきたいんですが、最後に長官が言われたところで、武装工作員等が我が国に侵入するといった事態が外部からの武力攻撃に該当するとは判断し得ない場合に、三、四で述べた警職法を超える武器使用を含めて、自衛隊が武力の行使に当たらない範囲で武器を使用することは憲法九条の関係で問題を生じるものではなく、法律により可能である、こういう御答弁でありました。
 ここで、じゃ実際これを部隊におろしていく場合に、実際に職務に当たる人たちにとって一番気になる点というのは、武力行使というものはどういうレベルで、武器使用というのはどこまで可能なのか。つまりは、武器使用と武力行使の境目というものはどこまで認められるのかというところが、現場の方々にとってはかなり重大な問題になると思うんですが、そこについて御答弁をいただきたいと思います。違いについて。
中谷国務大臣 私見でございますけれども、武力の行使というのは、国家の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいいます。また、武器使用というのは、武器を本来その用法に従って用いることでありまして、この武力行使というのは、国家防衛のために国家のもとに行う行為でありますが、信号でいえば、赤、青、黄色ということで、赤の段階だと思いますけれども、平常状態は警察権の行使ということで青の場合でありますが、黄色の場合にやはりいきなり赤になるというのは、対応する側にとっても、国民を守るという観点からも非常に無理のあるような事態であって、やはりその移行段階において武器の使用という観点で、いわゆる自然権的権利として、国家作用としても、こういった段階的な移行の場合の武器使用ということは必要ではないかというふうに私は思っております。
前原委員 済みません、ちょっとよくわからなかったんですが。
 私の解釈を申し上げて、大臣でもあるいは官房長でも運用局長でもどなたでも結構です、御答弁いただければと思いますが、つまりは、武力の行使というのは、自衛権発動という後が武力の行使であって、自衛権が発動される、つまりは防衛出動が下令するまでの間は必要な措置を講ずるということは武器使用に当たる、こういう判断で私はいいのではないかと思うんですが、いかがですか。
中谷国務大臣 おっしゃるとおり、自衛隊が行う武力の行使というのは自衛権の行使ということでございますが、これに至る前の段階の武器使用というのは、治安出動、警護出動、海警行動時などにおいて、自衛隊法で言う、準用する警職法七条に基づく行為、また在外邦人の輸送やPKO、テロ対策特措法に基づく活動時などにおいて、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものとして行っておりまして、いずれも自衛権行使としての武力の行使に当たるものではなく、また、憲法第九条で禁止されている武力の行使に当たるものではないという範囲での武器使用であるというふうに考えております。
前原委員 いずれにしても、もちろん法律にのっとってということでありますけれども、自衛権が発動される前の必要な措置を行うことは武器使用に当たるということで、その部隊に対して、そしてそれをコントロールするROEを含めて、しっかりとした体制をとっていただきたいというふうに思います。
 さて、次に質問させていただくのは、昨年の暮れの、奄美大島沖の武装工作船の話にかかわるわけでありますが、いろいろなシミュレーションをやはり考えていかなくてはいけないと思います。例えば、日本の法律の網をかいくぐってくる可能性があるわけです。
 例えば、武装した可能性がある工作船が、我々は政府の公船である、公の船ですね、公船であるという主張をした場合に、これは、軍艦とか公船というのは警察権が及ばないと私は理解しておりますけれども、どのように対処することができるのですか。
    〔委員長退席、末松委員長代理着席〕
北原政府参考人 御答弁申し上げます。
 今御指摘の点にかんがみまして、まず、自衛隊が行動する場合でございますけれども、海上警備行動が発令されて私ども自衛隊が、我が国の領海にあります武装の可能性のある不審船に対しましてとり得る措置でございますけれども、これはまず基本的には海上保安庁と、警察作用の一環でございますので、変わりはございません。
 それから、先生が今御質問されたケースにつきまして申し上げたいと思うのですが、まず先生御指摘のとおり、国際法上、我が国の領海にあります外国軍艦あるいは外国政府所属の非商業的目的のための船舶は、先生がおっしゃるとおり、我が国の管轄権は及びません。これらの船舶が我が国の領海を通航するに際しまして、我が国の法令を仮に遵守しない場合、あるいは遵守要求に従わない場合でございましても、我が国といたしましては領海外への退去を求め得るだけである、そのように解釈はしているところでございます。
 ただし、先生おっしゃいました、武装の可能性がある不審船が、自分たちは政府の公船だと主張したといたしましても、例えばその外観ですとか、あるいは行動の特徴などから、今申し上げましたような免除を享有すべき正当な、外国政府所属の非商業的目的のための船舶とは明らかに認められない場合ですとか、あるいは、当該不審船が外国の公船か否かにつきまして、当該国に私ども日本政府として問い合わせても、その確認ができなかったといったような場合につきましては、停船を求めて立入検査を行うことですとか、あるいはこれに従わない場合に、武器の使用を含めて必要な措置を行うことは可能である、そのように考えております。
前原委員 今の御答弁で一つ気になったのは、公船と主張した場合、相手国に確認をする、こういう話でありましたけれども、例えばの話ですけれども、北朝鮮に確認をした場合、北朝鮮船籍の公船であると主張して北朝鮮に確認をした場合、ナシのつぶてだった。そして、ナシのつぶてで対処した場合に、後で、北朝鮮の公船に何ということをするんだ、こういう話もあり得なくはないですね、可能性としては。そういった場合とかを考えると、今の法令として十分なのかどうか、これが一つの質問したいポイントです。
 もう一つは、国際法上はそれ以上、法令をつくりたくても無理なのかどうなのか、その点について御答弁いただけますか。
北原政府参考人 私どもといたしましては、現在の法令のもとで、でき得る限りの努力をしていかなければいけない、また、そのためにも常日ごろからの、政府全体といたしましての情報収集等の努力、横の連携等に努力していかなければならない、そのように考えております。
前原委員 質問でありますし、防衛庁長官にお答えをいただきたいと思うのです。
 事工作船の問題になったときには、対外的にもかなり、後で問題になってくる。つまりは、公船と主張して、例えば北朝鮮に確認をして、北朝鮮がナシのつぶて、そして日本が対処したときには、日本は国際法違反を行うということを言ってくる可能性はあるわけですね。そういう場合にも、国際法上はもう全く無理なのか、あるいは国際法上、日本の法律が不整備なだけで、法律を整備すれば対処できるのか、その点について私は質問しているわけです。
 ですから、その是非を含めて、できるのかできないのか、無理なのか無理でないのか、その点、もし防衛庁長官、あるいは運用局長、官房長、どちらでも結構ですけれども、その事実確認をちょっとしたいだけなのです。
中谷国務大臣 不審船という言葉がありますけれども、これは不審な場合の船でありまして、この場合にはやはり事実確認というものが必要であるというふうに思います。
 情報収集や事実確認をして、明らかに第三国の、我が国を侵略する目的を持って入ってくる船舶等につきましては、その事実を確認し、しかるべき対処が可能であるというふうに思っておりますが、海上警備行動の発令の要件に、海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のため特別な必要があるという場合にはこれの発令をいたしまして、この法律に定められた様式での対処が可能でありますので、よくこの事実を確認するという行為が非常に大事ではないかというふうに思っております。
    〔末松委員長代理退席、委員長着席〕
柳澤政府参考人 まず先ほどの、外国公船を主張している相手には国際法上、手が出せないのか、あるいは国内法を直せば何らかの対応ができるのかという点について申し上げれば、国際法上、先ほど運用局長から申し上げました、主権国の管轄に属さない、免除を享有すべき軍艦や外国の公船というのは、やはりこれに対しては我が国の主権に基づく各種の統制はできないということで、これは、退去を命じるという以上のことは国際法上、不可能であろうと思います。
 ただ、それが、外国公船を主張しながらもあえて不法行為をしてくる、あるいは今大臣から申し上げましたような、現実に我が国の国民の生命財産に、あるいは秩序に危害を及ぼすような、そういう行動をとっている場合に、これは、国際条約に基づく政府公船としての免除を享有するかどうかとはまた別の問題としての対応がおのずから出てくると思いますし、そこは状況によりまして、あるいは武力攻撃というような認定をすべきケースであるのか、あるいは治安事態として対応すべきケースであるのか、そこは状況によりさまざまであると思いますが、第一義的に申し上げれば、外国政府公船が外国政府公船として、その免除を享有すべきような形態でいる限りは、国際法的にもまた国内法的にも、それ以上の措置はとれないというふうに考えるべきであると思います。
前原委員 いろいろな状況を想定して、漏れのないような対応をとっていただきたいという意味で今の質問をいたしました。
 したがいまして、相手国がどういうスタンスで来ても、いろいろなシミュレーションをした上で、日本の安全保障、治安上問題のないような対応というものをしっかりととっていただきたいということを改めて要望しておきたいと思います。
 関連して、今度は排他的経済水域においてでありますが、先般の奄美大島沖の不審船事案、工作船事案というのは、漁業法違反ということが主な認定のよりどころであったわけでありますが、漁業法違反の認定が難しい場合、こういった場合はどのような法的根拠で取り締まりをするんですか。その点についてお答えをいただきたいと思います。
中谷国務大臣 この場合も、いろいろな状況がございますけれども、海上警備行動は、海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のため特別の必要がある場合には、自衛隊の部隊に対して命ぜられるものでありまして、海上警備行動が行われる地理的範囲は、我が国領海のみならず、我が国の排他的経済水域あるいは公海にも及び得るものであります。
 このため、海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のための特別の必要があるとの要件に該当する場合、例えば我が国の船舶がEEZにおいて武装した不審船から攻撃を受け、人命が危険にさらされており、海上保安庁ではかかる侵害を排除し得ないような場合には、海上警備行動を発令してかかる事態に対処することはあり得るものだというふうに考えております。
前原委員 人命に危害が及ぶという場合においてはおっしゃるような、対処することは可能だと思うんですが、しかし、そうでない場合、例えば覚せい剤を運んでいるとか工作活動を行っているとかいう場合においては、どういう法的根拠で取り締まりができるんですか、漁業法違反でなければ。
中谷国務大臣 これの取り締まり等につきましてでございますけれども、自衛隊が可能なケースとしては、人命に加えて財産の保護または治安の維持のため特別の必要がある場合等がございます。
前原委員 財産の保護は別にして、治安の維持のため必要がある場合というのはどういう法律なんですか。また、排他的経済水域においてはそれは可能なんですか、できるんですか。
北原政府参考人 まず自衛隊の行動でございますけれども、先生御承知のように、例えば、排他的経済水域内で取り締まり等は第一義的には海保が行います。海保が根拠とする関係法令に基づきまして海保が行動いたしまして、それが海保だけでは対応できないといった事態が生起いたしました場合に、先ほど大臣が御答弁申し上げました海上警備行動で自衛隊はこれに対しまして必要な行動に当たる、そういった枠組みになっているところでございます。
前原委員 いや、取り締まる根拠法令は漁業法違反でなければ何があるんだ、そういう質問をしているわけです。
北原政府参考人 先生が今ここでいろいろ御指摘、問題提起をされているようなものにつきましては、現在は漁業法でございます。
前原委員 つまりは、それ以外にないということなんですね。
 また同じような質問をします。
 漁業法以外に、国際海洋法条約の私の知識でいえば、排他的経済水域においては、地下資源の問題とか漁業資源の問題以外はかなりオープン、フリーなはずなんですね、排他的経済水域というのは。ですから、漁業法とか、勝手に地下埋蔵物を掘削するとか、そういうこと以外、仮に工作船、不審船と認定された場合も法的根拠はつくれないはずだと思うんですよ。そういう認識でいいんですか、悪いんですか。それをまずお答えください。
北原政府参考人 先生おっしゃいましたように、海洋法に関する国際連合条約、国際海洋法条約上は、EEZにつきましては、天然資源の探査、開発あるいは保存及び管理のための主権的権利云々ということに限られておりますので、EEZにおきましては、先生が今おっしゃったとおりでございます。
前原委員 となると、シミュレーションですよ、シミュレーションで、一緒に日本の安全保障について考えていきたいという思いで申し上げているんですが、漁船の格好をして来たから、偽装漁船の格好をして来たから、漁業法違反で法的根拠を持って前回は取り締まることができた。しかし、漁船の格好をしていずに、例えば、アメリカからそういう情報が入った、あるいは自衛隊みずからがそういう情報を得た、そして取り締まりたいけれどもという場合は、どういう法的根拠でやるんですか。漁船のような格好をしていない場合、漁業法違反でないわけでしょう。どういう法的根拠で取り締まりを行うんですか、あるいは行えるんですか。
中谷国務大臣 警察権とこういった国防的な話がありますけれども、警察権に基づいては海上保安庁が担当しておりますが、国内法の違反に対する取り締まりということで、先ほど御指摘のあった麻薬の取引について、経済水域というか公海上で行われた場合には、該当できる点においては海上保安庁が取り締まり可能だというふうに思っております。
 防衛庁のケースにおきますと、あくまでも国防上の観点で、海上における人命もしくは財産の保護または治安維持のための特別の必要がある場合ということで事実を確認して、対処は可能ではないかというふうに思っております。
前原委員 いや、ちょっと質問がずれていると思うんですね。
 海上警備行動が発令されても、基本的には、海上警備行動というのは警察権なんですね。ですから、警察法の職務執行法の準用が適用されているわけです、基本的に。一部例外はありますけれども。ということは、海上警備行動が発令されたからすぐに国防作用だということにならないわけです。つまりは、防衛出動以外は、基本的には警察権の延長線上でしか対処ができないわけですね。
 そこで、申し上げているのは、海上保安庁であれ、防衛庁であれ、漁業法違反でなかった場合に、そういうものが工作船として、情報として入った場合、取り締まれるかどうかということを聞いているわけです。
北原政府参考人 お答え申し上げます。
 いろいろのシミュレーション等を考えていかなければいけないんですが、基本といたしましては、我が国の国内法に該当する、あるいは国内法に違反するといった事態でない限り、取り締まり等は難しい。つまり、我が国に所要の国内法がない限りは、今現在、EEZで関係してまいりますのは漁業法でございまして、それ以外は現在存在しておりませんので、いろいろシミュレーションで御指摘の点につきまして、国内法違反がない限りは取り締まることはできない、そういうことでございます。
前原委員 今お答えになったところは、私は正直なところだと思うんですね。もちろん、いろいろな可能性にひっかけて初期の段階でしっかりと取り締まっていただくということ、また毅然とした対処をしていただくということは必要だとは思います。
 大臣、御答弁いただきたいんですが、例えばスパイ防止法ということもあり、例えば国連海洋法条約の中に無害通航でない通航というのが幾つかの例がありますけれども、日本の国内法令では、国連海洋法条約で無害通航じゃないから取り締まることができると言われるものについても、二つか三つぐらいその国内法令が欠如しているはずなんです。その一つが、今北原さんがおっしゃったような違法行為。それで、私が申し上げたようなスパイ防止法。つまりは、不法な情報収集活動というものを行っているということになれば、漁業法違反という何か靴の上から足をかくような法律じゃなくて、直接的に取り締まることができるわけです。
 スパイ防止法については、いろいろな今まで議論の経過があったということは私も承知をしていますけれども、安全保障上あるいは治安上極めて重要であり、また国連海洋法条約でも無害通航でないというものについて法整備が可能である、あるいは法整備が期待されているものについても穴があるわけで、それについては外務省と一緒に、やはりその部分については法整備をしていくということが必要だと思うのでありますが、防衛庁長官の御見解、決意を聞かせていただきたいと思います。
中谷国務大臣 御指摘の点につきましては、海洋法条約等を勘案いたしまして、可能な点において、我が国にとって重要な問題であるならば、整備するかしないかも含めまして、政府全体として検討すべき事項だというふうに思っております。
前原委員 少なくとも、私が先ほど申し上げましたように、国連海洋法条約で無害通航ではないという規定があるのに、その無害通航でないものを取り締まれない、そういう国内法制が整備されていないということが幾つもあるということは、これは私は極めてゆゆしき問題だと思いますので、ぜひ、一過性の問題として扱うことなく、極めて重要な、また今日本にある危機の管理としては重要なポイントだと思いますので、御答弁されたように、ぜひ法整備を含めて御検討いただきたいと思います。
 最後に、時間も迫ってまいりまして、対領空侵犯措置について少し質問させていただきたいと思います。
 私の最も根本的な問題意識は二つです。一つは、八十四条には必要な措置を講ずることができると言っているのに、内規では相変わらず警職法の準用ということで、警察権の延長線上になっているということであります。これは、海と空とはかなり違う労働環境と言ったらいいのか、あるいはミッションを与えられている航空自衛隊にとっては、内規で、警職法準用で縛るということについて、私は極めて問題ではないかと思っていますが、果たしてそれでいいのかどうかという点が一つ。
 もう一つは、対領空侵犯措置というのは、相手側が領域内に入ってこないといわゆる対処ができない、またそういうことをするスタートとしてできないということを私は聞いておりますが、かなりのスピードでありまして、領域内に入ってきてからしか必要な対処ができないということでは、私は十分なミッションが果たせないんではないかというふうに思います。
 この二つについて問題意識を私持っておりますが、その点、改善する必要性があると思っておられるかどうか、御答弁いただきたいと思います。
中谷国務大臣 その点の御指摘につきましても、私も同じ認識を有しております。
 航空機の運航等につきましては、一秒間に数百メートル移動するわけでありまして、瞬時瞬時の対応というものは隊員の生命や我が国の国民の人命等にも大きく影響するわけでありまして、その瞬時に、的確にパイロット等が判断し得るように今後検討してまいらなければならないというふうに思っております。
前原委員 これで終わりますが、一言だけ、簡単に大臣、御答弁ください。
 先ほど私が一番初めに申し上げた、武装工作員等が我が国に侵入する事態に自衛隊が対処する場合の警職法を超える武器使用について、大臣御答弁になりました。その一番最後のところで、つまりは、武力行使に当たらない範囲で武器を使用することは、憲法第九条との関係で問題を生じるものではないと。にもかかわらず、内規で、警職法準用で縛るということは、全く私はおかしいと思うんですね。
 ですから、このことも踏まえて、今のことをしっかりやっていただきたいというふうに思います。御答弁されたので、要望して、私の質問を終わります。
北原政府参考人 済みません、一点。
 先ほど前原先生、対領空侵犯措置につきまして、私どもの内訓といいますか、これがいわゆる警職法を準用しているという言い方をされたかと思うのでありますが、これは私ども準用をしているわけではございません。
 先生御指摘の隊法の八十四条、これは先生御指摘のように、必要な措置として武器を使用できるというように考えておりますが、その場合の判断基準と考えているものでございます。あくまでも判断基準として考えているものでございまして、すなわち言いかえれば、警職法七条のいわゆる正当防衛、緊急避難というのは、これによっていわば違法性阻却要件的な定めになっているわけでございますけれども、私どもといたしましては、準用ではなくて、こうした正当防衛あるいは緊急避難の場合につきましては、いわゆる法令に基づく正当な行為としてこれが実施できるんだということで、考え方としてこれを援用しているといいますか、そういうふうに考えております。
 だから、準用で違法性が阻却されるんだという考え方はとっておりません。正当な行為として行えるんだという一つの判断基準として考えております。以上です。
玉置委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず、PKO手当についてお伺いしたいと思います。今度行っております東ティモールですけれども、PKO事務局に伺いますが、これは予防注射はしなければいけないような、そういう場所でしょうか。
野津政府参考人 お答えいたします。
 御質問の予防注射の件でございますけれども、東ティモールにおきましては、隊員の健康を維持するという観点で必要だということで、派遣された隊員は必要な措置をしているということでございます。
藤島委員 要するに、非常に健康上問題がある、そういう地域であるということでありまして、かなり予防注射をやらないかぬ。全部打つには大体二、三カ月ぐらいかかる。そういう非常に厳しいところなんですね。毎日打つわけにいきませんので、二週間に一回ぐらいずつ予防注射をやるわけですけれども。大変肉体的な負担もある、そういう地域であるというふうなことであります。
 もう一つ伺いますけれども、カンボジア、これはもう私も行っておりますし、モザンビークも行っておるんですけれども、大体同等というか同じような地域、こういうふうな認識でいいですか。
野津政府参考人 派遣先国、カンボジア、モザンビークあるいはその他、過去いろいろございます。それぞれ勤務環境の厳しいところでございます。いろいろなファクターがございますので、同じ、同様というのはどういう尺度で言うかということがございますので一概に言えませんけれども、いずれにしても厳しい状況の地域であるということは言えるかと思います。
藤島委員 いろいろな要素はありますけれども、ほぼ同等と見ていいんじゃなかろうかというふうに思うわけであります。危険度その他もあるわけですけれども、私はその辺とほぼ同等じゃないかなと思っているわけです。
 そこで、PKO手当でありますけれども、今回の手当に当たって防衛庁が要求した金額は幾らでございますか、長官。
中谷国務大臣 今回の手当につきましては、派遣先における具体的な勤務環境及び業務の特質を考慮し、一日一万二千円から一万円を支給するということといたしております。
藤島委員 いや、それを言っているんじゃなくて、最初に防衛庁が要求して、これだけ欲しいと言った額が幾らであるかということを伺っているのです。
中谷国務大臣 要求としましては、カンボジアと同額の一万二千円をお願いしたわけであります。最高額ですけれども、話をしている過程におきまして、やはり治安の状況等で、カンボジアの場合は、まだゲリラが残っておって非常に政情不安定な状況でございましたけれども、今度のティモールの場合は、大統領選挙を控えて非常に治安が落ちついたということでございます。
 先ほど要求額を一万二千円と言いましたけれども、一万六千円でございます。
藤島委員 要するに、一万六千円で要求したものが一万円に削られたということなんですね。
 そこで財務省、これはどうしてこういうふうに削ったのですか。
宮内政府参考人 今般、東ティモールに派遣され、施設業務に従事することとなる自衛隊員に支給される国際平和協力手当は、派遣先における具体的な勤務環境及び業務の特質を考慮して、一日一万二千円から一万円が支給されるということになっております。
 この額は、平成十一年及び平成十三年に東ティモールで実施されました国際平和協力業務に対しまして支給された手当額に比べまして、二千円から四千円程度少ない額というふうになっておりますが、これは昨年八月に実施された憲法制定議会議員選挙後、同地におきます治安情勢に若干の安定が見られるようになったということを勘案したものでございまして、今回の手当額はこのようにして定めたということであります。
玉置委員長 ちょっとストップして。
    〔速記中止〕
玉置委員長 では、速記を起こしてください。
 藤島君。
藤島委員 今の説明では、なかなか私は納得できない。やはり危険もそんなに減っているということじゃなくて、それも変わるわけですからね。
 それで、今の説明程度で、防衛庁がきちっと責任を持って要求した額を四割ぐらいカットしている、こんなことでいいんですか。
野津政府参考人 協力手当の額につきましては、これは政令事項になっておりまして、政令で決めておるわけでございます。御指摘のように、個々の派遣の都度、その状況に見合う額ということで設定しているわけでございます。
 政令案を作成いたします過程での政府部内での具体的な協議のやりとりというところは、そういう政府部内の検討過程でございますので差し控えたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういったPKO活動等厳しい勤務状況の中で、長期間滞在して、さまざまな御苦労をいただきながら国際貢献活動をしていただくわけでございますので、そういった趣旨を踏まえまして、この手当というものを決めていく必要があるかと思います。
 今回の東ティモール、自衛隊の施設部隊につきましては、今御指摘の、金額が低過ぎるんじゃないかという御意見がございましたけれども、その考え方は、今財務省から御答弁がありましたようなこと、治安情勢等も勘案いたしまして、決定しているわけでございます。
 いずれにしましても、今後ともこの平和協力手当の設定に際しましては、制度の趣旨を十分勘案いたしまして適正に定めるということで内閣府としても努めてまいりたい、こんなふうに考えている次第でございます。
藤島委員 今の説明の中で、政府部内の調整だからそれはコメントできないと言うのですけれども、やはり要求官庁として防衛庁が必要だと認めて出しているわけですから、きちっとした理由で防衛庁が納得いくのならいいけれども、今回のような措置は非常に納得いかないと思うんですよ。
 やはり国際貢献ということで、自衛官も必死になって、北海道の部隊とか非常に寒いところから急に酷暑の地域に行って、しかも伝染病もあり、治安も不安定なところへ行って必死になってやるわけですから、それを財務省がそんな勝手に、大した理由もなくて切ると。大体、これを切っただけで執行上どれぐらい予算の差が出るんですか。
宮内政府参考人 通常の予算編成と違いまして、概算要求のようなものがあって、それを査定するというプロセスということではなく、国際平和協力法の政令をどのように定めるかということが今回の額を決めることになるわけであります。
 国際平和協力手当につきましては、平和協力法十六条に規定されておりまして、同条二項で、その手当に関して必要な事項は政令で定めるということになっております。
 そこで、政府部内において、そういう政令を策定する過程でさまざま議論しているわけであります。したがいまして、今回、政令作成時点におけるPKO手当の額というものがございますが、それを御紹介いたしますと、十三年度に四千四百万円、それから十四年度に七億八千七百万円、こういう額となっているところでございます。
藤島委員 金額を見ますと、財政状況が苦しいからといって、これを四割も当初要求からカットする。それほど財政状況として、きついことはきついのはわかりますけれども、ほかの部分を削ったっていいじゃないですか、実際。
 本当に隊員にしてみれば、大変な不満が残っていると思いますよ。それは、防衛庁の内局やPKO事務局は、議論した結果これで納得してくれ、こういう話かもわかりませんけれども、実際に行く隊員の身になってみれば、やはり頭の中では、カンボジアとかモザンビークぐらいの手当はもらえるんだろうなとこれは思っているに決まっていますよ。それが四割カットだ。これは政府部内の議論としても非常に不明朗というのか、財務省が、ほかの予算の関係もあるので、これはここでもうおりろ、こういう圧力をかけてカットしている。こんなことは、こういうことに関して私は許されないと思うんですよね。
 装備品とか何かでちょっとおくらせるとか、それはわかりますけれども、行く隊員から見れば、本当に期待していたものが四割もカットされる、こういうことですから、これは本当に十分、今後、行く自衛官の身になって、財務省の方は現地へ行ったことはないと思いますけれども、行った身になって少し考えてやっていただきたい、こう思います。今回のこの政令をすぐ変えるというわけにいかぬと思いますけれども、今後の問題としてきつく指摘しておきたいと思います。
 それから、次に不審船の問題でありますけれども、外務大臣をお願いしていたんですが、ちょっとおくれるようでありますので、前回、海上保安庁が調査したわけですけれども、どういう方法でどれぐらいの金額がかかったのか、また、どういう事実が判明したのか。時間がありませんので、簡単に御説明いただきたいと思います。
縄野政府参考人 二月の末でございますけれども、私どもの測量船が持っておりますサイドスキャンソナーと巡視船が持っております自航式、自分で動く水中カメラを使用しまして、目的は、あの不審船がそこに沈んでいるという船の特定、それから、わかる範囲で船がどのような状態、粉々に壊れているか、立っているか、そういうことを調査したところでございまして、私ども、結果としましては、不審船が、見る限りでは立っているということと、大きな損傷が見られないということと、船の名前から見てあの不審船であるということが確定できたということでございます。
 私どもの自前の船でやりましたので、部外には発注をしておりませんので、私どもの経費の中でやらせていただきました。
藤島委員 やはり不審船の構造とか武装形態、そういったものがわかると、その資料の価値というのかな、大変大きなものがある、こう思うわけです。引き揚げに関して海上保安庁、防衛庁はぜひと、こういうことを望んでいるわけでありますけれども、外務省は引き揚げは慎重にというようなことを考えておるようですけれども、大臣がおられないので萩山副大臣にお尋ね――これは外務省がいないとだめですね。
玉置委員長 今向かっています。
藤島委員 では、もう一つ、海上保安庁にちょっとお伺いしますけれども、先ほど前原委員のときも議論があったんですけれども、排他的経済水域と日本側の行動なんですけれども、そもそも、今回も漁業法違反ということでやっているわけですけれども、こういう案件については非常に限界があるんじゃないかなと思っておりますけれども、どういうふうに考えていますか。
縄野政府参考人 海洋法条約によりまして、沿岸国に認められております排他的経済水域にかかわる権限というのは、御承知のように、天然資源の探査、開発等に限定をされているところでございます。これに基づきまして沿岸国はそれぞれの国内法で法律を整備することもできるわけでございますけれども、日本の場合には、例えばEZ漁業法で漁業法の相当部分が適用されているわけでございます。
 そういう意味で、私どもとしましては、漁業法違反の疑いがあるということで、今回、立入検査、つまり停船命令をして、それを拒否したということで追跡をして、向こう側が射撃をしてきたことに対して正当防衛をしたわけでありますけれども、これ以外の権限行使ということについて、海洋法条約上、一般的にすべての国内法を権限行使ができるということにできるかどうかは、非常に簡単でないというふうに思いますし、外務省とも、そこは他の国の事例も含めて調べまして、検証しておるところでございます。
藤島委員 先ほど同僚議員からも質問があって、海外にどういうものがあるかということでアメリカの例とか何かありましたけれども、漁業法だけというケースは少ないんじゃないかと思うんですね。やはりこういう不審船のような対処については、もっといろいろな行動ができるように法的に措置されていると思うんですね。
 確かに、前回のテロ関係の法律で海上保安庁法二十条を改正しましたので、かなりよくはなってきている、こう思いますけれども、この点については、先ほど防衛庁長官も、全体の問題としてもう少し前向きに、問題があるという認識のもとに検討したいということでありますので、私も前原委員と同様、それを厳しく追及して、ぜひ何らかの法的対策をとっていただきたい、こう思います。
 外務大臣、申しわけありません。質問通告しておったつもりがちょっと手違いがあったようでございますけれども、不審船の引き揚げにつきまして、中国側がかつて強く牽制をしていたというふうに言われているんですが、その辺はどういうふうに認識されておりますか。
川口国務大臣 中国側との関係につきましては、この事案が発生以来、私どもは中国との連携を行っております。話をしております。
 それで、その件について、私は昨日、李鵬全人代委員長とお会いをいたしまして、その点についてこちらから申し上げさせていただきました。
 まず私の方から、不審船の問題について、この件を日中間の外交問題とすることなく、理性的な話し合いの中で適切に処理をしていくべき問題であるということを申し上げて、意見が全く一致をしている、そういうことでございます。
藤島委員 それに対して中国側は、今一致していると言いますが、どういうような表現があったんでしょうか。
川口国務大臣 委員長の方からは、日本が不審船の問題に関心を持っているということは理解をしていると。ちょっと全部細かくは申し上げませんけれども、今後とも適切に処理されるものと思う、日中関係の大局に影響をするまで拡大することはないと考える。これは不審船の問題一般についての御発言でございます。
 特に引き揚げの段階についてお話をなさっているということではないのですが、影響するまで拡大することはないと考える、沈没した場所は中国のEEZ内にあり、今後国連海洋法条約に従って対処していくべきである、もっとも国連海洋法条約は必ずしもすべての問題について詳細に規定しているとは限らないというようなことをおっしゃっていらっしゃいます。
 両国の外交部門の間で協議を行いということを言っていまして、認識は一致をしている、そういうことです。
藤島委員 要するに、私が伺いたいのは、引き揚げについて後ろ向きな方なのか、あるいは、我が国の意向はわかっているわけですから、前向きな方向だったのか、その感触を伺いたいということなんです。
川口国務大臣 不審船の引き揚げの局面についてお話をしていらっしゃったわけではないということでございますが、不審船問題に関する一般的な認識として、先ほど申し上げたようなことについて認識が一致をしたということでございます。
藤島委員 時間が参りましたのであれしますけれども、不審船一般の問題じゃなくて、今回、排他的経済水域の中でこの船を引き揚げるかどうか、そこがまさに問題なわけで、本当は外務大臣としては、そこを具体的な議論として、我が国の立場をきちっと要求して向こうの譲歩を引き出すのが外交の、本当に国益にかなう外務大臣としてやるべき仕事じゃないか、こう思ったわけでありまして、要するに、もう時間がありませんので、私はこの件については、中国がいかなる反対があろうとも、我が国の主権において実施すべきであるということでございます。
 質問は終わります。もし答弁があれば、お聞きします。
川口国務大臣 私の方からは、この不審船の問題が日本国民にとって非常に重大な問題であるということと、この不審船を引き揚げるべきであるということを考える人が非常に多いのであるということははっきり申し上げてあります。
藤島委員 終わります。
玉置委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社民党の今川正美です。
 まず最初に、これは防衛庁の方にお尋ねしたいんですが、九九年の三月の例の能登半島沖の不審船事案に関してでありますが、実は、海上自衛隊のP3Cの情報収集能力についてちょっと具体的にお伺いしたいんです。
 当時、軍事専門家などの間で少し話題になったのが、P3Cが装備をしていると言われるISAR、通称アイサー、パッシブ型合成開口レーダーを、P3C、実際今運用している機数が八十機ぐらいなんですか、その七、八機ぐらいに装備をしているのではないかということで、これが通常型のレーダーと違ってかなり性能が高いというふうに伺っているんですけれども、この通称アイサーに関して、その性能なりを具体的にちょっと説明を願えますか。
中村政府参考人 P3Cに搭載しておりますISAR、パッシブ型合成開口レーダーにつきまして御説明させていただきます。
 P3Cには、委員御指摘のように、従来のレーダーと異なるレーダーを装備しております。このレーダーは、従来は、艦艇の位置と、それからどのくらいの大きさかというのがいわば点滅しているような状態で出てくるものが、そうじゃなくて、大体艦橋がこういうふうな大きさであるとか、そういうのがレーダーを当ててぱっと浮かび出てくるという形のものでございます。この結果、ある程度外形、どういうタイプの、戦艦なのかどうかとか、そういうことがわかるようになっているものでございます。
 さらに言えば、先ほど機数を言われましたけれども、近年装備を拡張しておりまして、現在のところ、P3Cでは十五機、それからあと画像収集専用のものとして一機配備しておるところでございます。
 以上でございます。
今川委員 では、次に移りますが、実は、私の地元の佐世保に、先月の二十九日に新設配備をされた陸上自衛隊の西部方面隊普通科連隊についてお伺いをしたいと思うんです。
 まず最初に、大村の部隊ですと第四師団に所属をしていますが、この佐世保に新設配備された普通科連隊は六百人規模ということで、これも通常の普通科連隊ですと大体千人規模のはずなんですね。しかも、具体的な師団に所属をしていないというふうに伺っていますし、しかも、通常の普通科連隊と違って、装甲車なり機動ヘリコプターを所有しているというふうに一部報道等もあっていますが、この新しい部隊の位置づけなり性格なり目的をちょっと御説明をお願いしたいと思います。
中谷国務大臣 せんだって私も佐世保へ参りましたけれども、飛行機等から長崎県が大変島が多い県であるということを確認いたしましたけれども、この島の存在というのは、国防的に考えますと、やはりゲリラとか特殊部隊等の侵略行為、また災害派遣、また不審船とか難民の事態等がございますけれども、こういった緊急事態に迅速かつ機動的に展開し、初動対処を行う能力の充実強化を図るという目的で、相浦駐屯地に西部方面普通科連隊を新設したところであります。
 この連隊は六百六十名から成り、すべてヘリコプターに搭載可能な装備により編成され、島の地域におきまして活動するのに適した、高い情報収集能力や通信能力を有しております。また、我が国の島のあるところで他国に面している有人の島の割合が、九〇%が西部方面隊管区である九州・沖縄地方に所在しておりまして、これらの地域で迅速に事態に対処するため、師団に所属しない西部方面総監の直轄部隊として編成をしたわけであります。
 なお、西部方面隊の普通科連隊は、装甲車や輸送ヘリコプターを装備しているわけではございません。高機動車等の車両や小火器、通信機材等、陸上自衛隊の他の普通科連隊に準じた編成、装備となっておりまして、これらの移動に関しましては、西部方面航空隊の目達原駐屯地、高遊原分屯地が輸送ヘリコプター、多用途ヘリコプター等を使用して支援を行うということになるわけであります。
今川委員 あと一、二、ちょっともう一回確かめてみたいんですが、今、中谷長官は六百六十人というふうにおっしゃいました。当初の発表では六百六十人だったんですけれども、実際、先月二十九日に配備された段階で、地元紙はひとしく六百人という数字になっているんですが、六十人のその違いというのはどうなっていますか。
中谷国務大臣 六百六十人が正しいのではないかというふうに思います。
今川委員 ちょっと何かいいかげんですね。一番最初は、長官がおっしゃったとおり六百六十人規模ということで出ているんですよ、計画として。実際は、配備されたときには、定数が六百六十なのかどうか、そこもはっきりさせていただきたいんだけれども、実数としては六百人というふうに、地元紙はすべてひとしく同じ数字で出ているんですよ。
中谷国務大臣 定員は六百六十人でありますが、実員が何人いるかということは、通常公表はいたしておりませんが、地元でプレスには六百名と発表されたわけでありまして、実員等につきましてはもう一度確認をいたしたいというふうに思います。
今川委員 もう一つ、ちょっと私が聞き漏らしがありますので。
 装甲車とか機動ヘリコプターなどは所有はしていない、しかし実際的にいろいろな行動に移る場合には、今中谷長官がおっしゃったように、佐賀県の目達原であるとか、もう一つがちょっと聞き漏らしましたが、実際的には幾つかのタイプのヘリコプターを運用するんでしょう、この部隊は。
中谷国務大臣 この部隊が移動するための輸送ヘリコプターとしましては、CH47及び多用途ヘリコプターのUH1等が考えられます。
今川委員 今ヘリコプターの問題にちょっと入りましたので、もう少し具体的にお尋ねしたいんですが、今、地元の軍事問題研究会などで、具体的にどういうふうな運用状況が始まったのか、監視活動などもやっているんですが、現在、私の手元に届いているレポートによると、佐世保の上空で確認できたヘリコプターの種類が、一つはAH1、対戦車攻撃ヘリ、それからUH1、汎用ヘリ、それからCH47、輸送ヘリ、それにもう一つOH6、偵察観測用のヘリ、この少なくとも四タイプのヘリコプターが佐世保上空で確認されているんですが、今申し上げた四つの種類がそれぞれ、例えば佐賀県の目達原だけじゃなくて、どこから派遣されているのか、そこをちょっと説明ください。
中谷国務大臣 最近、佐世保上空で飛行したことが確認できた御指摘の四種のヘリコプターにつきましては、いずれも陸上自衛隊の部隊に所属するヘリコプターでありまして、佐賀県の目達原駐屯地第三対戦車ヘリコプター隊所属のAH1S、同駐屯地西部方面ヘリコプター隊所属のUH1、熊本県の高遊原分屯地西部方面ヘリコプター隊所属のCH47JA、そして目達原駐屯地の第四飛行隊及び高遊原分屯地第八飛行隊所属のOH6Dでございます。
今川委員 このヘリコプターに関してちょっと気になることがありまして、実は先月、三月七日の夜に、大分県の玖珠町の、これは万年山と言うんですか、上空で、陸自のヘリコプターOH6二機が訓練中に空中で衝突して墜落するという事故がございました。
 それで、これは夜間の偵察訓練中に起きた事故なんですが、訓練空域あるいは訓練場の上空ということではなくて、一般の民家の近くに墜落したということで、地元からも相当激しい抗議が出たんですね。
 今私が申し上げましたように、佐世保でも実際、先ほど申し上げたような幾つかのタイプのヘリコプターによって、佐世保上空での夜間飛行訓練がかなり頻繁に始まったというふうに聞いています。これまでヘリコプターの運用は、米海軍のものを除くと、通常、大村の方との間をたまに輸送ヘリが飛び交うという程度だったんですが、こういう新しい部隊が配備されたことで、相当ヘリの運用が頻繁になり始めた。
 これは、今申し上げた大分県でのような事故のケースもありますので、佐世保はすり鉢型の地形になっていまして、その上空で夜間訓練が行われるのは非常に好ましくない。これだけはちょっとやめてほしいなという気があるんですが、この点いかがですか。
中谷国務大臣 御指摘のような、佐世保上空において自衛隊機が夜間飛行訓練を実施したことについては、現在のところ確認できないわけでございますが、自衛隊は、厳しい状況下で適切に任務を遂行することを期待されておりまして、夜間における飛行訓練も含めまして、平素からさまざまな環境における訓練を実施することが必要でございます。
 緊急事態というのは昼間だけ起こるのではなくて、夜間も、災害やまた不法侵入等発生したら、やはり対処する必要がございますので、夜間の訓練も実施しているわけでございますが、夜間飛行訓練を含めて、航空機を運航する場合においては、地域住民の生活に与える影響に十分配慮するとともに、航空機の安全管理に細心の注意を払って行うなどによりまして、事故の防止に万全を期してまいりたいというふうに思っております。
今川委員 今、中谷長官の御答弁ですと、具体的な夜間訓練などの実情はまだ確認できていないというお話ですね。これはぜひ早急に事実確認をしていただいて、少なくとも市街地なりその上空じゃなくて海上方面とか、万が一そういう墜落事故とかということもこれは訓練中には、あってはならないけれども、ちょくちょくありますね。そうした場合に、直接民家の上にどさっといくと大変な被害者も出ますので、少なくとも、夜間訓練が必要だとおっしゃるんだったら、一般の民間人に万が一の場合でも被害が及ばないような、やはり地域の選定というのはきちっとやるということだけは約束していただけますか。
中谷国務大臣 訓練の実施に際しましては、地域の皆様方の生活に与える影響に十分配慮しまして、安全管理、事故防止に万全の注意を払って実施をいたしたいというふうに思っております。
今川委員 先ほど、この新しい普通科連隊の位置づけなり性格なり目的ということでお尋ねをしたんですが、問題なのは、新聞報道では、対馬から南は奄美大島あたりまで含めて、非常に広い地域に二千を超える有人、無人の離島がたくさんある。一つはそこの防衛に当たるんだという、報道ではそうなっているんです。
 問題なのは、この西部方面地域で具体的にそういう、これまでの普通科連隊と違って、いろいろな専門家の間では、いわゆる最近話題となっている対テロ特殊部隊だとか特殊作戦部隊だとか、あるいは即応対処部隊だといったような呼ばれ方もしています。そういう新しい部隊配置ということになってきますと、具体的にどういう脅威あるいは侵略といったものを想定してこの配備をしているのか。
 例えば冷戦時代には、仮想敵国ソ連というのを想定して、北海道から侵攻してくるのに備えるという形で、戦車部隊を初め部隊配置が相当大きく変わったと思うんですね。これが冷戦が終わってからまた相当な変更が行われてきて、どちらかというと西方重視というふうに部隊が移動していると思うんです。
 問題なのは、具体的にどういう事態が想定されるから、こういう新しい六百人規模の部隊が必要なんであるかということが、少なくとも、軍事問題に別に詳しくもない一般の国民に納得のいくような説明が欲しいんですよ。
中谷国務大臣 冷戦の時代は、やはり大規模上陸というような事態を念頭に、中心に防衛力の整備をしておりましたけれども、近年は新たな事態という観点で、ゲリラやコマンドー、また生物化学攻撃など、今まで念頭に置いてなかった事例も対象に、国の備えをしていく必要があるというふうに思っております。
 このような観点で、この西部の方面普通科連隊についても、現在不十分でありますゲリラや特殊部隊等による攻撃への対処を初めとした島の防衛や、島の地域の災害対処能力向上のためにも編成するものでございます。
今川委員 そうしますと、今度の新しい六百人規模の部隊というのは、佐世保でいいますと相浦駐屯地、ここは教育隊がございます。訓練生を除きますと、大体隊員は百二十人ぐらいなんですね。普通、佐世保で自衛隊といったら海上自衛隊を専ら想起するんですけれども、この相浦駐屯地に初めてこういう新たな実戦部隊が配備されるということによりまして、相浦駐屯地そのものの基地の性格といいますか、これはやはり当然変わってくるんですか。どうなんでしょう。
中谷国務大臣 通常、陸上自衛隊の駐屯地等を配置する場合には、国防上の必要性や、また地域の安全面、また地元の事情等を考慮して配置するわけでありますけれども、全国的な視点の中で、この地域において普通科部隊を配置するのが国防の観点で必要があるという結論によって配置したものでございます。
今川委員 今の説明、わかるんですが、この相浦駐屯地の教育隊、百二十人ぐらいしかいなかったわけで、その基地の基本的性格というのはやはり当然変化をしたというふうに理解していいんですかというふうにお聞きしているんです。
中谷国務大臣 当然、人員、装備がふえるわけでありますので、同地域におきまして、警備面での能力の向上もございますし、また島が多いということで、この地域の部隊がそれぞれの島の地域の安全対策上役に立つ部隊でありまして、そういう点におきましては、能力また役割が向上した部隊であるというふうに私は認識をいたしております。
今川委員 もう時間がほとんどありませんので、最後に一点だけ、これはちょっとお尋ねですが、冷戦終結宣言があったのは一九八九年の十二月ですね。その冷戦が終わる時点でのものと、それから約十年後の二〇〇〇年、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、今のロシア、中国、この主要国の軍備の、軍備といいましても兵員数それから国防費、国防費の方は比較の仕方が難しい面があるかもしれませんが、大方この八九年と二〇〇〇年でどのように軍備の削減ぐあいが進んでいるのかいないのか。その数字をちょっと教えてください。
山中政府参考人 お尋ねの主要六カ国でございますが、まず兵員数、これは概数で、ミリタリーバランスなどによりますと、まず八九年の数字を先に申し上げます。米国が二百十三万人、これが二〇〇〇年に百三十八万人。英国が三十一万人から二十一万人。フランスが四十五万人から二十九万人。ドイツ、これは旧西ドイツでございますが、四十八万人から統一後のドイツが三十二万人。ロシア、これは旧ソ連全体で、八九年が四百二十六万人、これが現在のロシアで百万人。中国が三百三万人が二百四十七万人ということでございます。
 また、国防費につきましては、今御指摘がございましたように、定義の違いとか、内訳が必ずしも明らかではないものがございまして、社会経済体制とか軍事制度の変化、物価水準の動向、そういったいろいろな要素を勘案して比較をする必要がございますので、単純に一九八九年と二〇〇〇年の数字を比較して推移を論ずることはできないわけでございますが、あえて公表されている国防費を申し上げますと、これも八九年を先に申し上げます。米国が、二千九百四十八億ドル、二〇〇〇年が二千八百十二億ドル。ただ、米国につきましては、二〇〇二年、約三千三百億ドル、八九年と比較いたしますと一二%程度ふえております。それから、英国が、二百一億ポンドが二〇〇〇年には二百三十五億ポンド。フランスが、一千八百二十三億フラン、二〇〇〇年が一千八百七十九億フラン。ドイツ、これは旧ドイツで、五百三十二億マルクが四百五十三億マルク。ロシアは、これは旧ソ連政府時代で、八九年が七百七十三億ルーブルでございまして、ただ、旧ソ連と今のロシアとルーブルの貨幣価値が違います。また、ロシアは九八年にデノミを実施しておりますので、これも単純に比較することはできませんが、二〇〇〇年には、今申し上げた数字が一千四百九億ルーブルということになっております。中国は、八九年が二百四十六億元、二〇〇〇年が一千二百五億元ということでございます。
今川委員 もう時間が参りましたので終わりたいと思いますが、今の国防費の方は非常に比較のしにくいところがありますけれども、兵員数からしますと、この約十年間で欧米の先進国の兵員数は相当やはり大胆に冷戦終結とともに削減されています。
 それからしますと、今回法案として出ていますけれども、日本においても、よその先進国から比べると極端に脅威が高いということじゃないわけでして、少なくとも欧米先進国並みに計画的、合理的に、もっと大胆にやはりこの削減をしても何ら差し支えもないというふうに思います。
 以上で私の質問を終わります。
    ―――――――――――――
玉置委員長 この際、お諮りします。
 政府参考人として内閣官房内閣審議官村田保史君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
玉置委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
玉置委員長 質疑を続行いたします。赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 法案について、まず、情報保全隊の新設について伺いますが、従来の調査隊を廃止して、組織面及び任務面から機能強化した情報保全隊を陸海空各自衛隊に新編するとしております。この部隊はどのような任務を持つことになるのか。調査隊と比較して、任務、調査対象をどのように拡大するのか。まず説明してください。
中谷国務大臣 そもそも、この情報保全隊を設立した理由といたしましては、平成十二年九月に秘密漏えい事件がありまして、その再発防止の一環として実施をするわけでございます。
 具体的には、組織面からの機能強化につきましては、現在、自衛隊の調査隊において、これまで中央、地方の別個の指揮系統の部隊であったものを、各自衛隊ごとに中央、地方を一つの指揮系統とした情報保全隊に統合することによって、状況の変化に迅速に対応するため、より機動的な運用が可能となるという点と、任務面においては、従前の調査隊の任務であった各自衛隊の部隊及び機関の保全のために必要な資料、情報の収集、整理強化、明確化に加えて、新たに、職員と各国駐在武官等との接触状況に係る情報収集、また、施設等の機関の長からの要請に基づき、施設等の機関等の組織保全業務の支援を行うということで、より中央でこの状況が把握をでき、また運用できるという点を強化して設置するわけでございます。
赤嶺委員 機密漏えい事件をきっかけにということでありますけれども、実際はまた、その漏えい事件ということを口実に、さきの臨時国会で防衛秘密の新設を盛り込んだ自衛隊法の一部改正が成立いたしました。これが施行されれば、当然この秘密保護というのも情報保全隊の活動目的の一つになると思います。
 防衛秘密は、昨年の議論の中でも、自衛隊員だけでなくて防衛産業労働者やマスコミ関係者など民間人も対象として、漏えいした場合には最高五年の懲役を科すというものです。だから当然、自衛隊員だけでなく民間人も情報保全隊による情報収集の対象になるわけですね。
中谷国務大臣 この対象につきましては、法律のときに議論をしたわけでございますけれども、あらかじめ防衛秘密を取り扱う者として指定をした関係者のみに限定するわけでございます。
赤嶺委員 その指定をした者の中に民間人がちゃんと入っていることが問題になったわけですね。
 それで、臨時国会の審議の中で、防衛秘密について、我が党の小池参議院議員が、防衛産業の従業員が防衛秘密に指定されている自分の業務内容を家庭で話してしまった場合、漏えい罪に当たるのかどうか、中谷長官にただされています。その際、長官は、個々具体的に判断されるべきものとして、可能性は全体として否定しなかったわけです。
 情報保全隊がこういうものを対象にして情報収集を行うということになれば、国民の私生活やプライバシー、そういう領域にまで国家が入り込むということになって、基本的人権を侵さないという保証はないと思うんです。いかがですか。
中谷国務大臣 自衛隊というのは国家防衛のために活動するわけでありまして、いわゆる国家防衛の手段の手のうちを侵略しようとする者が知り得る場合に、国民の生命財産を守り得ないわけであります。
 そういう観点で、この部隊の保全というものは必要でございますけれども、この部隊の保全のために必要な行為といたしましては、自衛隊に対して不当に秘密を探知しようとする行動、基地、施設等に対する襲撃、自衛隊の業務に対する妨害、職員を不法な目的に利用するための行動等がございまして、このような外部からの働きかけなどから部隊の秘密、規律、施設等を防護するために必要な資料及び情報を収集、整理し、所要の部隊に配付をいたしますけれども、そういった保全行為のための必要な活動に当たるわけでございます。
赤嶺委員 私が伺いましたのは、国防が大事だといって防衛秘密をつくり、その防衛秘密を保全するといって民間人にまで対象を広げている、あるいは、防衛産業従事者が家庭で家族の者にその仕事の中身を漏らしたときには、それも防衛秘密の保護になるということで、結局、私生活にまで国家が入り込む、プライバシーの侵害、基本的人権を侵すことになるのではないかということを先ほど聞いたわけです。
 それに対して、今長官は、防衛秘密を守ることがいかに大事かということをるる述べられたわけですが、人権を侵害するような活動は行わないということもはっきり言っておられないんですが、本当にそういうことでは、人権侵害をやらないという保証は全くないと思うんです。
 そもそも、この情報保全隊なる部隊がどういう活動を行っているか、国民には全く明らかにされないで、すべてはやみの中で情報保全隊が活動する。国民は、そういう私生活、プライバシーまで監視されているということになりはしませんか。
中谷国務大臣 国防の任に当たる者にとりましては、それなりの自覚と認識が必要でありまして、やはり自分一人の問題ではなくて、多くの人々に影響が及ぶこと、ひいては国の存続にも影響することであるという意識と自覚を持った者でなければならないというふうに思います。
 そういう意味におきまして、この防衛秘密に関連する人の指定につきましては、そのことも十分勘案をして検討した結果、そういう方に国防の任に当たっていただきたいというふうに思っております。
赤嶺委員 防衛秘密については近づくな、見るな、聞くな、話すな、そのためにしっかりした体制をとる、それが情報保全隊だ、こういうことになっていくわけです、今の答弁を素直に聞いていましたら。
 ですから、私は、やはり防衛秘密の新設というのは自衛隊の秘密の保護体制を法制面から抜本的に強化するものであったわけですが、今回の情報保全隊の新編というのは、この去年の法律を実行するために、体制面からの強化を図るものであると思います。これは私、たびたびこういう場でも指摘をしてきたわけですが、ガイドラインのもとで進められている日米間の情報協力、情報共有の強化、これを担保する役割を持つものだと言わざるを得ません。そういう点では、基本的人権を侵す重大な内容を含んだ部隊の新設と指摘しておきたいと思います。
 次に、有事法制について伺います。
 きのう三日、政府は、与党の安全保障プロジェクトチームに対して有事法制の法案の概要を示しました。先ほど、与党の方からも、中身がよくわからぬということがありましたので、与党にしてそうなのかという気持ちを改めて持ちました。ですから、これに基づいて、幾つか本当に国民が疑問に思っているようなことを伺っていきたいと思います。
 先ほどの質問とも重なりますが、今回のいわゆる包括法では、武力攻撃事態を、我が国に対する外部からの武力攻撃、武力攻撃のおそれのある場合も含むわけですが、外部からの武力攻撃が発生した事態、または事態が緊迫し、武力攻撃が予想されるに至った事態、このように定義しております。
 これは自衛隊法の七十六条、先ほど防衛庁長官、答弁に立っておられましたが、七十六条の「外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合」及び自衛隊法七十七条「事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合」というこの規定と概要の中の規定とどういう関係があるのか。それについて説明していただきたいと思います。
中谷国務大臣 現行の自衛隊におきましては、七十六条、防衛出動は、外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛するために必要があると認める場合、下令することができるとされております。また、七十七条で、防衛出動待機命令は、事態が緊迫し、防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するために必要があると認める場合に下令することができるとされております。
 現在検討されている法律につきましては、武力攻撃事態は、我が国に対する外部からの武力攻撃、これは武力攻撃のおそれがある場合も含む、この武力攻撃が発生した事態、または事態が緊迫をし、武力攻撃が予測されるに至った事態をいうとする方向で検討をされております。
 このような検討を前提といたしますと、武力攻撃事態とは、必要と認める場合には防衛出動または防衛出動待機命令を下令することができる事態と言うことができると考えておりますけれども、現在、各方面で検討が実施をされている段階でございます。
赤嶺委員 先ほどの与党議員も納得しておられなかったんですね、今の長官の説明で。
 私が聞きたいのは、七十六条、七十七条で定義されている事態と、きのう皆さんが説明をしましたその事態について、全く同じなのか、それとも幅の広さが違うところがあるのか、このことを聞いているんですけれども、それはいかがですか。全く同じ概念なんですか。
中谷国務大臣 今回の新しい法律でいえば、武力攻撃事態とは、必要と認める場合には、防衛出動または防衛出動待機命令を下令することができる事態と言うことができるのではないかと思います。
赤嶺委員 これは法案を作成した人たちの意図がどこにあるのか、説明を聞いても本当に理解しにくいという印象を持ちます。
 それで、周辺事態法では、周辺事態の定義として、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」、これを挙げていますけれども、今回の、事態が緊迫し、武力攻撃が予想されるに至った事態、これとどう違うんですか。
中谷国務大臣 まさにこの事態というのは、我が国にとって武力攻撃の事態が緊迫をし、武力攻撃が予測されるに至った事態でございます。
赤嶺委員 事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態という場合に、周辺事態が起こっているケースがあり得るということなんですね。
中谷国務大臣 当然、周辺事態のケースはこの一つではないかというふうに思います。
赤嶺委員 いろいろ問題点が明らかになっていくなという印象で答弁を聞いております。
 続いて、指定公共機関の問題について伺います。
 指定公共機関は、武力攻撃事態への対処に関し、その業務について必要な措置を実施する責務を有するとあります。指定公共機関とはどういう機関を言うのですか。災害対策基本法では約四十の機関が指定されておりますけれども、事態に応じてそれ以上になることも考えているのか、また、この指定は総理が政令で行うことになるのか、これについて説明をお願いします。
中谷国務大臣 現在、災対基本法におきまして指定公共機関という概念がありまして、それぞれ指定をされておりますが、今回の指定公共機関につきましては、現在、内閣官房で検討中であると承知をいたしておりまして、現段階で私の方から確たることを申し上げる段階というか、立場ではございません。
赤嶺委員 政府参考人も見えていると思うんですが、説明していただけますか。
村田政府参考人 武力攻撃事態に対する法制につきましては、現在、内閣官房において、いわゆる平和安全法案について作業中でございます。
 今の時点でその内容について明確なお答えをすることはできないわけですが、基本的な考え方として、武力攻撃事態に際しては、国、地方公共団体、また公共機関もそれぞれが適切な役割を果たすべきであると考えております。そうした中で、国の独立あるいは国民の安全が確保されるための措置が万全に講じられなければならない、そうした検討の中で、どのような機関が指定公共機関として指定されるべきかが決定されるものと考えております。
赤嶺委員 法案提出目前といいながら、指定公共機関については今の段階で明らかにできないというのは、これまた本当にひどい話だと思うんですよね。指定される公共機関の側にとってみれば、突然自分たちが有事法制の中で指定されていくということになるわけですが、現在、災害対策基本法の中では、赤十字社だとかNTT、日本銀行、日本放送協会、ガス、輸送、通信、その他の公益的事業というぐあいになっているわけですが、それらを含む法人ということで理解してよろしいでしょうか。
村田政府参考人 先ほどもお答えいたしましたとおり、武力攻撃事態に対して、国それから地方公共団体、または公共機関がそれぞれ自分が果たすべき役割をきちんと果たして、そうしたものが合わさって、国の安全なり国民の安全が確保されなければいけないというのが基本的な考え方であります。
 そうした中で、どの機関が指定公共機関として任務を全うすることが期待されるかということが具体的に決定されるものだということで、今、この時点で明確に申し上げることはできないということを御理解いただきたいと思います。
赤嶺委員 国民に国家が義務だけを押しつける、そういう法律の中身を国民に明らかにしないというのは、それ自身が本当にひどい。いわば、提出する資格さえ持っていないという感じをいたします。
 地方公共団体についても、必要な措置を実施する責務を有するとしておりますけれども、対策本部長たる総理は、総合調整に基づく所要の措置が実施されないときは、当然、措置の実施を指示することができるとあります。
 この指示することができるという規定は、どういう法的効果を意図したものか。地方公共団体が国の意向に沿わない行動をとるということは不可能になるということなのか、これはいかがですか。
村田政府参考人 お答えいたします。
 武力攻撃事態に際しての国と地方公共団体の関係についていかがかという御質問であります。
 先ほどの答弁でもお答えしましたが、法案について現時点で確定しておりませんので、明確な御説明はできないわけですが、基本的な考え方を申し上げますと、我が国に対するそうした事態が発生した場合に、国家と国民の安全と生存を確保するために、国と地方公共団体が相互に連携協力して万全の措置を講ずることが重要と考えております。このような観点から、そうした事態におきまして、国と地方公共団体の適切な関係について総合的に検討しているところであります。
 地方公共団体に対しては、武力攻撃の事態に対処するために必要となる措置を的確かつ迅速に実施するための総合調整を行う制度や、それから、国民の生命、身体、財産などの保護のために特に必要がある場合にはこの措置に関して適切な指示を行う制度などについて、その必要性について検討しているところであります。
赤嶺委員 時間になりました。
 今の答弁を聞いていても、地方公共団体が、第一義的任務である住民の福祉や暮らしや安全を守る上で、時には地方自治体の公共施設の軍事利用について反対する場合も多々ありました。そういう現状をも無視してこういう法律を提出することは絶対に許されないということを申し上げまして、私の質問を終わります。
玉置委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
玉置委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。
赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 本法案は、防衛大綱、日米ガイドラインのもと、周辺事態やゲリラ、特殊部隊による攻撃などの多様な事態や日本有事への発展にも対処し得る自衛隊への態勢づくりを進めるものであり、反対であります。
 第一に、陸上自衛隊西部方面隊の改編は、第四師団の火力、機動力を高め、沿岸配備師団への改編を進めるなど、より西方を重視した自衛隊の戦力態勢をつくり上げようとするものであります。米軍がアジアで起こす軍事介入に備え、有事法制を態勢面から先取りしようとするものであり、容認できません。
 第二に、情報保全隊の新編は、防衛秘密の新設を初めとする自衛隊の秘密保護体制強化の一環として、中央、地方に分割されていた調査隊の組織を統合し、任務、体制を拡大強化した新たな部隊を創設するものであります。
 自衛隊員のみならず、民間人をも対象とした情報収集、諜報活動による秘密保護の実行態勢をつくるとともに、ガイドラインのもとで進めている日米間の情報協力、情報共有の強化を秘密保護面から担保しようとするものであります。
 第三に、統合幕僚会議事務局、情報本部の増員は、情報通信技術の進展を取り入れた自衛隊内の情報統合を進めるとともに、電波傍受や衛星画像の入手、分析などによる自衛隊の情報収集能力、米軍との相互運用体制の強化を一層進めようとするものであり、認められません。
 以上、討論を終わります。
玉置委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
玉置委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
玉置委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
玉置委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
玉置委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十一分散会


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