衆議院

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第1号 平成14年10月29日(火曜日)

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本国会召集日(平成十四年十月十八日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。
   委員長 玉置 一弥君
   理事 仲村 正治君 理事 浜田 靖一君
   理事 山口 泰明君 理事 末松 義規君
   理事 渡辺  周君 理事 田端 正広君
      逢沢 一郎君    岩倉 博文君
      岩屋  毅君    臼井日出男君
      木村 太郎君    北村 誠吾君
      小島 敏男君    杉山 憲夫君
      虎島 和夫君    中山 利生君
      野呂田芳成君    平沢 勝栄君
      町村 信孝君    伊藤 英成君
      大出  彰君    川端 達夫君
      田並 胤明君    前原 誠司君
      赤松 正雄君    樋高  剛君
      赤嶺 政賢君    今川 正美君
      粟屋 敏信君
    ―――――――――――――
十月十八日
 玉置一弥君委員長辞任につき、その補欠として田並胤明君が議院において、委員長に選任された。
平成十四年十月二十九日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 田並 胤明君
   理事 岩屋  毅君 理事 木村 太郎君
   理事 仲村 正治君 理事 浜田 靖一君
   理事 山口 泰明君 理事 末松 義規君
   理事 渡辺  周君 理事 田端 正広君
   理事 樋高  剛君
      岩倉 博文君    臼井日出男君
      北村 誠吾君    小島 敏男君
      杉山 憲夫君    虎島 和夫君
      中山 利生君    野呂田芳成君
      平沢 勝栄君    町村 信孝君
      伊藤 英成君    江崎洋一郎君
      大出  彰君    川端 達夫君
      前田 雄吉君    前原 誠司君
      赤松 正雄君    赤嶺 政賢君
      今川 正美君    粟屋 敏信君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務副大臣        矢野 哲朗君
   経済産業副大臣      高市 早苗君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   防衛庁長官政務官     佐藤 昭郎君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   外務大臣政務官      日出 英輔君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  村田 保史君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  井上  進君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   岩田 一政君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君
   政府参考人
   (警察庁刑事局暴力団対策
   部長)          近石 康宏君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    奥村萬壽雄君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (防衛施設庁長官)    嶋口 武彦君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鶴田 康則君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君
   安全保障委員会専門員   小倉 敏正君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月十八日
 辞任         補欠選任
  玉置 一弥君     江崎洋一郎君
同月二十九日
 辞任         補欠選任
  江崎洋一郎君     前田 雄吉君
同日
 辞任         補欠選任
  前田 雄吉君     江崎洋一郎君
同日
 理事大野松茂君同月四日委員辞任につき、その補欠として木村太郎君が理事に当選した。
同日
 理事藤島正之君同月十七日委員辞任につき、その補欠として樋高剛君が理事に当選した。
同日
 理事仲村正治君同日理事辞任につき、その補欠として岩屋毅君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 国政調査承認要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――
田並委員長 これより会議を開きます。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 このたび、安全保障委員長に就任いたしました田並胤明でございます。まことに光栄に存じますとともに、その職責の重大さを痛感している次第であります。
 今日も依然として不透明な国際情勢のもと、我が国の平和と安全を確保するため、当委員会に課せられた使命は重大であります。
 ここに、委員各位の御協力を賜りまして、公正かつ円満なる委員会運営に努めてまいる所存でございますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
田並委員長 理事辞任の件についてお諮りいたします。
 理事仲村正治君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 ただいまの理事辞任並びに委員の異動に伴いまして、現在理事が三名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に
      岩屋  毅君    木村 太郎君
   及び 樋高  剛君
を指名いたします。
     ――――◇―――――
田並委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 国政に関する調査を行うため、本会期中、国の安全保障に関する事項について、衆議院規則第九十四条の規定により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
田並委員長 この際、国務大臣、副大臣及び大臣政務官より、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。石破防衛庁長官。
石破国務大臣 このたび、防衛庁長官を拝命いたしました石破茂でございます。田並委員長を初めとされます委員の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
 冷戦の終結により、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性が低下いたします一方、複雑で多様な地域紛争が発生し、大量破壊兵器等の移転、拡散の危険が増大しております。また、昨年米国において発生いたしました同時多発テロは、想像を超える態様と規模の事態が現実に起こり得ることを示すとともに、国際社会に対し、テロを新たな脅威として改めて強烈に意識させました。
 我が国周辺に目を向ければ、現在も朝鮮半島の軍事的対峙が継続をいたしております。日朝間におきましても、拉致、不審船、核開発及びミサイル問題等、我が国の国民の生命と安全や、北東アジア地域、ひいては国際社会の平和と安定にかかわる重大な問題が存在しております。
 とりわけ、核開発問題に関し、今般、北朝鮮が自国における濃縮ウランを使用する核開発計画を認めたことは、我が国にとって重い意味を持つものであります。先日のケリー国務次官補との会談におきましても、先方より、北朝鮮のウラン濃縮計画等をやめさせる必要性等につき言及があったところであります。
 今後、かかる問題に対しましては、日米韓の連携のもと、日朝平壌宣言の精神に基づき、日朝国交正常化交渉及び日朝安保協議の場で北朝鮮に対して強い働きかけを行っていくことが重要であり、防衛庁といたしましても、重大な関心を持って積極的に対応していく所存でございます。
 このように予断を許さない情勢におきまして、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保ちますため、私は、防衛力の本質であります抑止力を最大限発揮すべく、各種事態に適切に対応できる自衛隊を構築いたしますとともに、日米安全保障体制の実効性を向上させてまいります。加えまして、国際社会における平和への取り組みに積極的に寄与し、内外の期待にこたえてまいります。
 各種事態に適切に対応できる自衛隊の構築のためには、法制面や運用面におきます十分な体制の整備が不可欠であります。かかる観点から、政府として、武力攻撃事態対処関連三法案の成立を急務と考え、さきの通常国会での議論を踏まえて、国民の一層の理解を得るとの観点から、国民の保護のための法制等個別の議題につきまして、その内容を深める作業を進めておるところでございます。今後は、法案の成立に向け、国会における審議を通じて、幅広い国民の理解と協力が得られますよう全力を尽くす所存であります。
 これと並行して、テロ、不審船対策等の武力攻撃事態以外の緊急事態への対処体制につきましても、総点検を行い、必要な検討を進めてまいります。また、自衛隊が任務を迅速かつ効果的に遂行するためには統合的見地に基づく有機的運用が必要との考えのもと、統合運用につきましても検討を精力的に行ってまいります。
 また、我が国が種々の緊急事態に適切に対処するためには、みずからの防衛努力に加え、日米安保体制をより緊密かつ実効性のあるものとする必要があります。我が国といたしましても、日米防衛協力のための指針の実効性を確保するための施策の推進、テロとの闘いにおける協力等を通じ、日米安保体制がより有効に機能するよう引き続き努めてまいります。また、沖縄県民の御負担を軽減するため、SACO最終報告の着実な実施に全力で取り組んでまいります。
 昨年以降、国際社会の焦点となりましたテロとの闘いにおきましては、現在、自衛隊は、テロ対策特別措置法に基づき、米軍等に対する給油活動や物資輸送などの協力支援活動等を行っておりますが、これは、国際的なテロリズムの防止、根絶のための国際社会の取り組み及び我が国を含む国際社会の平和と安全の確保に大きく貢献しておると確信いたしております。しかし、残存するアルカーイダによる国際テロの脅威は今なお除去されておらず、現在も多くの国々がアフガニスタン周辺に部隊や艦船等を派遣してテロとの戦いを継続いたしておるところでございます。このような状況におきまして、今後とも、我が国としても国際テロ根絶への取り組みに積極的かつ主体的に寄与してまいります。さらに、これまで自衛隊は世界各地におきまして多様な国際平和協力業務を実施し、現在も中東のゴラン高原と東ティモールに部隊等を派遣しております。今後とも、国連を中心といたしました国際平和のための努力に積極的に貢献をいたしてまいります。
 また、国政における防衛の重要性が増大する中、昨年の通常国会に議員提出されました防衛省設置法案につきまして、ぜひとも一日も早く成立いたしますことを期待しております。
 最後に、国民の信頼を得ることが自衛隊にとっては喫緊の課題であります。信頼は、ただ口で唱えるだけではなく、懸命に諸課題に取り組んでいくことで初めて得ることができると私は考えております。私は、防衛庁・自衛隊は国民の生命、安全を守る最後のとりでであるがゆえに最も信頼を集める組織でなければならない、かような考えのもと、信頼の確立に取り組んでまいります。
 一分一秒が真剣勝負である、かような思いのもとに全力で職務に邁進する所存でございます。委員長を初め委員各位におかれましては、一層の御指導、御鞭撻を賜りますようよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
田並委員長 次に、川口外務大臣。
川口国務大臣 今般、引き続き外務大臣を拝命いたしました川口順子でございます。田並委員長を初め委員各位に謹んでごあいさつを申し上げます。
 我が国を取り巻く現下の国際情勢は、北朝鮮の核開発問題、大規模テロの発生、イラクの大量破壊兵器開発問題に見られるように、依然として不透明、不確実な要素をはらんでいます。
 日朝国交正常化交渉は、本日、再開いたします。日朝平壌宣言に基づき、引き続き韓国及び米国と緊密に連携しつつ、交渉に粘り強く取り組みます。拉致問題については、被害者の方々及び御家族の御意向も踏まえながら、事実解明に全力を挙げるとともに、被害者の御家族の帰国を実現するよう取り組んでまいります。また、米朝間で合意された枠組みを初めとする諸合意の重大な違反である核開発の中止を初め、安全保障上の諸問題の解決に向け、総力を挙げて取り組んでいきます。
 去る十二日には、バリ島において数百名が死傷する爆弾テロ事件が発生し、日本人も事件に巻き込まれました。さらにその後、モスクワでも大規模な人質事件が勃発しました。国民の安全に万全を期するためにも、テロと闘う国際社会の取り組みへの積極的参画を通じ、世界の平和と安定に貢献してまいります。
 イラクの大量破壊兵器開発問題は、国際社会全体の懸念であります。重要なことは、イラクが実際に査察を即時、無条件、無制限に受け入れ、大量破壊兵器の廃棄を含むすべての関連する国連安保理決議を履行することであり、このため、必要かつ適切な安保理決議が早急に採択されるべきです。我が国は、国際社会と協調しつつ、引き続き外交努力を行ってまいります。
 このように世界が不透明、不確実な問題を抱える状況のもと、我が国の安全と繁栄を確保するため、日本外交の基軸となるのは、引き続き日米同盟関係であります。引き続き日米同盟関係の信頼性の向上に努め、その強化を図ってまいります。
 さらに、沖縄県民の負担を軽減するため、普天間飛行場の移設、返還を初めとするSACO最終報告の着実な実施に努める等、誠心誠意努力してまいります。
 中国、韓国との間では、重要な隣国として、相互の理解をさらに深める努力を継続するとともに、今後とも未来志向の協力関係をさらに推進していきたいと考えております。
 ロシアとの関係については、来年一月に予定されている小泉総理訪ロに向けて、平和条約締結問題を含む幅広い分野で関係を進展させるよう引き続き努めてまいります。
 また、近隣諸国との友好関係の促進に加えて、多国間の対話、協力の枠組みを重層的に発展させ、アジア太平洋地域の信頼醸成を促進することや、軍縮、不拡散を中心とするグローバルな平和への取り組みにも積極的に努めてまいります。
 これらの諸課題に取り組むためには、国民の皆様の理解と支持が不可欠です。国民の皆様の期待に沿った外交を推進するためにも、最重要課題の一つである外務省改革の実施に引き続き努めてまいる所存です。田並委員長を初め本委員会の皆様の御指導と御鞭撻を賜りながら全力で努力する決意であることを申し上げまして、私の所信とさせていただきます。(拍手)
田並委員長 次に、赤城防衛庁副長官。
赤城副長官 このたび、防衛庁副長官を拝命いたしました赤城徳彦でございます。
 今日、防衛庁・自衛隊の任務は、我が国の防衛に加え、災害派遣、国際貢献等、多岐にわたっております。とりわけ、テロや不審船事案を含めた各種の緊急事態に対する法制面、運用面の十分な対処体制の整備が急務であります。
 私といたしましては、このような国民の期待にこたえ、我が国の平和と独立を守るという任務を全うすべく、小島、佐藤両政務官ともども、全身全霊をもって石破長官を補佐し、防衛政策の一層の推進に向けて全力を尽くしてまいる所存でございます。
 田並委員長初め委員の皆様の御指導と御鞭撻を心からお願い申し上げ、ごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)
田並委員長 次に、茂木外務副大臣。
茂木副大臣 このたび、外務副大臣に就任をさせていただきました茂木敏充でございます。
 国際社会には、北朝鮮の問題、そして中東情勢等々、いまだ未解決の問題が存在をいたしております。川口大臣を補佐し、我が国が直面する安全保障、外交上の諸課題に全力で取り組んでまいる所存であります。
 田並委員長初め安全保障委員会の先生方よりの、委員の皆様よりの御指導、御鞭撻、御協力をお願い申し上げ、就任のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
田並委員長 次に、矢野外務副大臣。
矢野副大臣 このたび、外務副大臣を拝命いたしました矢野哲朗でございます。謹んでごあいさつを申し上げたいと思います。
 外交をめぐる問題、山積をしている中でありますけれども、川口大臣を補佐させていただきながら、精いっぱい頑張っていきたいと存じます。
 田並委員長初め本委員会の先生方の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げます。(拍手)
田並委員長 次に、小島防衛庁長官政務官。
小島長官政務官 このたび、防衛庁長官政務官を拝命いたしました小島敏男でございます。
 防衛政策の一層の推進を図るため、石破長官並びに赤城副長官の御指導のもと、一生懸命に政務に邁進していきたいと思っています。
 田並委員長さんを初めといたしまして委員各位の御指導、御協力をお願いいたします。よろしくお願いします。(拍手)
田並委員長 次に、佐藤防衛庁長官政務官。
佐藤長官政務官 このたび、防衛庁長官政務官を拝命いたしました佐藤昭郎でございます。
 石破長官を補佐し、政務官の職務に全力で取り組む所存でございますので、田並委員長初め委員の諸先生方の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
田並委員長 次に、新藤外務大臣政務官。
新藤大臣政務官 今般、外務大臣政務官を拝命いたしました新藤義孝でございます。
 我が国の安全と繁栄を確保し、国民の皆様の生命と財産を守ることが外交の最優先課題、このように考えております。外務大臣政務官としての責任を果たすべく、川口外務大臣の御指導のもとで、外交政策上、そして安全保障上の政策の課題の解決に向けて全力で取り組んでまいりたいと思っております。
 田並委員長を初めとして委員の皆様方の御指導をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
田並委員長 次に、土屋外務大臣政務官。
土屋大臣政務官 このたび、外務大臣政務官に就任いたしました土屋品子でございます。田並委員長初め委員各位にごあいさつを申し上げます。
 外務大臣政務官としての責任を果たすべく、川口外務大臣のもと、外務省改革と外交政策の推進に全力で努力してまいります。
 なお、三人の政務官の中では、私が特にこの委員会を担当することになっております。委員長初め本委員会の皆様の御指導と御協力をいただきますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)
田並委員長 次に、日出外務大臣政務官。
日出大臣政務官 このたび、外務大臣政務官を拝命いたしました日出英輔でございます。田並委員長を初め委員各位の皆様方、一言ごあいさつ申し上げます。
 外務大臣政務官としての職務を全ういたしますために、川口大臣のもと、外務省改革と我が国外交、それから安全保障の諸課題につきまして全力で取り組むつもりでございます。
 委員長初め本委員会の皆様方の温かい御指導と御協力をよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
田並委員長 以上でそれぞれのごあいさつは終わりました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午前十時十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十五分開議
田並委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 国の安全保障に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官村田保史君、内閣官房内閣参事官井上進君、内閣府政策統括官岩田一政君、警察庁生活安全局長瀬川勝久君、警察庁刑事局長栗本英雄君、警察庁刑事局暴力団対策部長近石康宏君、警察庁警備局長奥村萬壽雄君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛施設庁長官嶋口武彦君、法務省入国管理局長増田暢也君、外務省アジア大洋州局長田中均君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長安藤裕康君、厚生労働省大臣官房審議官鶴田康則君及び海上保安庁長官深谷憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
田並委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村誠吾君。
北村(誠)委員 自由民主党長崎四区選出の北村誠吾であります。
 通告に従いまして質問をさせていただきます。
 私が知り得ました情報によりますと、既に一定の結論が出たというふうに聞いてはおるんですけれども、やはり大事なことでありますから、お尋ねを改めてさせていただくわけでありますけれども、外務省の方にまずお尋ねをいたします。
 長崎県は五島列島にございます、一番五島列島で大きな福江島、ここに福江空港という民間機が利用する飛行場がございます。この飛行場に在韓国米陸軍のヘリコプターが慣熟訓練のために飛来して寄りたいというふうなことで、在日米軍司令部、横田の方から長崎県に対しまして、直接通報があったということが報じられておりました。
 こういった場合、地位協定に基づいて、これらの通報の仕組み、これはどのようになっておるのであろうか。あるいは、政府側からも長崎県に対して説明等があってしかるべきではなかったろうかというふうに考えるわけでありますけれども、外務省において、このあたりについてどのように認識、把握しておられるか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
海老原政府参考人 お答えいたします。
 地位協定の第五条によりまして米軍が日本の民間空港を使用する場合の通報手続でございますけれども、これは従来より、その空港を管理いたしております地方公共団体に対しまして、米軍の方から直接通報が行くということになっております。
 したがいまして、今回、米軍の方から二十四日に福江空港の管理者である長崎県の方に対しまして通報がございまして、二十九日に離着陸のための慣熟飛行を行うという通知があったというふうに承知しております。それを受けまして、長崎県の方から外務省の方に、そのような通報があったという連絡があったというふうに承知いたしております。
北村(誠)委員 今、仕組みとしては、県営の空港でありますので、空港管理者である県に直接通報がある仕組みになっておるという御説明であります。
 今回、今局長の方からもそういうお話がありまして、管理者であります長崎県は、その通報を受けて外務省の方に連絡をし、この在韓米軍のヘリ訓練について、二十五日付で長崎県知事の方から外務大臣に対して、この訓練を回避してほしいという要請を行っております。
 この要請につき、県知事の回避要請の気持ちが実って、いかなる理由によるかは私が知るところではありませんが、既に報じられるところ、回避されるというふうな見込みであることを聞いておりますけれども、その間、いろいろな努力や配慮があったかなというふうに私なりに察するわけであります。
 一応の結論のようなものが出ておることとはいえ、外務大臣に回避要請が長崎県知事からなされたということは事実であります。これが事実であるということの確認をまずしたいし、それに対して、外務省としてどのように行動されたか、どのようなことをなさったかということをお聞かせいただきたいと思います。
海老原政府参考人 今、北村委員のおっしゃったとおりでございまして、長崎県の方から正式に外務大臣の方に懸念が表明されたということで、これは、私どもの方から直ちに外務大臣にも連絡をいたしました。それを受けまして、アメリカ側、米軍側に対しましても事実関係の照会等を行った次第でございます。
 やりとりの詳細につきましては差し控えさせていただきますけれども、けさの八時半、在日米軍の方から、私どもの方、外務省に対しまして、予定されていた福江空港での慣熟飛行は行わないことになったという連絡がございました。また、その三十分前に、在日米軍の方から長崎県の方に対しましても同様の連絡があったというふうに承知をいたしております。
北村(誠)委員 私は、基本的な自分の考え方として、長崎県知事から回避要請がなされるということ、長崎県知事の立場では回避要請をするということは、長崎の実情から見たとき、佐世保に米海軍及び海上自衛隊あるいは陸上自衛隊等の基地を持ち、また一方、長崎市は被爆地というふうなことで、大変難しい平和についての取り組みというものをしなければならない長崎県であります、と日ごろより私は考えております。
 そういう中で、この米陸軍からのヘリコプターの飛来あるいは訓練というふうなものの要請が、先ほど局長申されたとおり、地位協定上は空港管理者に対して直接通報をして使用が認められる、訓練をすることができるというふうに考えるべきであろうかと思います。確かに、長崎県内に県の管理する空港はまだほかにもございます。例えば、対馬にあります対馬空港、あるいは壱岐の島にあります壱岐空港、これらの島の空港には、既に米軍の飛行機あるいはヘリコプターが飛来し着陸をしたという実績もございます。
 ただ、今回、米陸軍が望まれた福江空港は初めての米軍の利用あるいは使用ということでありまして、私も県民の一人として、日米安保条約、また我が国と米国との同盟関係、あるいは安全保障の立場から、両国が提携をして、そしてそのことが日本国民あるいは長崎県民に対して、安全保障上、また日本の国防上の利益にかなうという考え方をするものであります。そういう中で、県知事が回避要請をせざるを得ないという状況であった、状況になったということも、また一方理解をしなければならぬのではないかというふうに私は思うのです。
 この間、ではなぜ長崎県知事が米陸軍に対して回避要請をせなければいけないか、いけなくなったかということを考えてみますとき、やはり私たちの素人の考えでは、初めてこの空港をそういう形で、確かに、私が知り得た情報では、ヘリ三機がきょうの午後六時半から七時半の約一時間ぐらいの間で福江空港の上空で一回だけ旋回をするというふうなことで米軍側からの要請であったというふうに、これが正しいかどうかはわかりませんが、私が知り得た情報ではそういうことになっております。
 初めてこの福江空港を使用させてくれ、使用するぞという申し出であれば、私は、いま少し米軍側が丁寧な申し出、先ほど局長、いきなり二十四日に福江空港の管理者である長崎県に対して要請があったと。二十四日は木曜日、二十五日は金曜日、次は土日というふうなことであります。確かに安全保障、国防、そういったものに土曜、日曜もあるはずもない、その認識は私も持ちます。しかしながら、平時、私ども日常の生活をやっております者に、軍の運用あるいは勤務体制というものについてはなかなかにわかに理解をする、あるいは熟知をするというふうなことは非常に難しいということがあると思います。
 したがいまして、いま少し丁寧な空港管理者である県に対する要請の仕方というものができないものだろうか。本来、先ほど申しましたように、安全保障条約あるいは地位協定、そういったものに基づいて、日本国、あるいは国民、あるいは地方公共団体の安寧を図るということのためにこのような訓練を計画するということであると私は認識しますから、そういうところから考えたときに、より丁寧な使用の申し出、あるいは理解を管理者である県に得られるような形でのお申し出、あるいはそういう手順というものを踏む必要があるという認識はございませんか。いかがですか。
海老原政府参考人 今、北村委員のおっしゃったとおりであると私も考えております。地位協定五条によりまして、米軍による民間の空港が認められる、これも、そもそも我が国を守るという日米安保体制を堅持していく上で規定されていることでございまして、そのこと自体は必要であるというふうに考えております。
 他方、今のお話のように、空港を初めて使うというようなときに、単に通常と同じような手続で済ますということではなくて、地元の方々、この場合は長崎県の方々が不必要な不安をお持ちになるということのないように、もう少しきめ細かい通報あるいは連絡の仕方があったのではないかというふうに思っておりまして、これは、少なくとも長崎県に通報すると同時に、外務省の方にも通報があってしかるべきであったというようなことは米軍の方にも私の方から申した次第でございます。
 今後は、こういうような例につきましては、より米軍と外務省との間でも密接に連絡をしながら対処してまいりたいというふうに考えております。
北村(誠)委員 今、局長に御答弁いただきましたとおり、米軍に対してぜひ密接な連絡をとっていただきたい。我々地方にある者にとっては、やはり外務省、特に安全保障担当の部局というものが頼りである。
 例えば、恥ずかしい話ですけれども、横田の米軍の基地の方から直接、福江島にあります、福江空港にあります空港管理事務所、あるいは県庁にあります、空港を管理する港湾課に電話連絡が行きます。英語でいきなり話しかけてこられる。それで、それをとっさに電話をとった者は、べらべらと英語で言われて、そして、それを受け答えできるような常々の体制にはありません。ですから、そういった場合に必ず通訳を挟まなければいけない。
 県庁側がここで通訳を用意するという、必然性と言えばオーバーですけれども、当然に私は横田の側が、日本語がわかる通訳がいらっしゃるはずですから、そういう形で往来を、通報をするというふうな、細かいことですけれども、そういったところから始まって、いろいろな行き違い、あるいは余分な手順や説明、あるいは曲解が生じる、誤解が生じるというふうなことで、せっかく貴重な二十四日の連絡というものがやはり日をずっと経てしまう、時間を経てしまう、むだにしてしまうというふうなこともあったやに承知しております。
 ですから、米軍、別に横田に限らず陸軍、海軍、空軍、それらの米軍の各部隊が、例えば空港使用については管理者に対して直接申し入れをするというふうなことであれば、日本全国、空港を管理する都道府県庁の担当の部課に英語がわかる者が常時おるという、国際化の時代ですからあるかもしれませんが、しかし、いきなりの話にはなかなか応ずることができないだろうというふうに思いますので、そのあたりについても、大変細かい話ですけれども、米軍側に対してきちっとした、先ほど局長、お話をなさるときに一緒に含めて詰めていただきたいなというふうに私は願います。
 それと、いま一つは、米軍の方から県の方に対して通知、通報があったとき、通報をなさった方の所属、官職名などをはっきりと聞き取ることができなかったという細かい話もあります。ですから、そこら辺は、細か過ぎますのであれですけれども、しかしお互いに、これは軍の仕事でありますから、まさに正確に、しかも短い時間で理解ができて、その次の対応に瞬時に臨めるようにしておくというのが心得ではないかと思います。
 私は、米軍の運用や訓練に対して、けちをつけたりくちばしを挟むほどの勉強も研究もしておりませんけれども、実態としてそのような、受信した者がそういうふうな感じを受け、その後の仕事に多少なりとも県側が支障があったというふうなことも聞いておりますので、そこら辺も含めて、ぜひ外務省として米軍に対してきちっとした申し入れなりお願いなりをして、実のある成果を上げて、この安全保障条約及び地位協定が、我々、例えば佐世保、この基地にあっても頼りでありますから、ぜひその運用が、まさに条約の精神あるいは地位協定の目指すところに沿った運用が正確にできるような御配慮というものを重ねて米軍側に対しても要請をし、また、先ほど局長が申されましたけれども、外務省の安全保障所管の部局というものに対する国民あるいは県民の期待と頼りにしておるということは非常に重いものがあるわけですから、そこら辺も十二分に認識をしていただきたい。
 と申しますのも、今後、有事法制を整備し、そして我が国の安全保障体制を確立していく、あるいは、幅広い国民の理解と協力が得られるように全力を尽くすと先ほど防衛庁長官もおっしゃられました。武力攻撃事態対処関連三法案の成立に向けて、国民の保護のための法制等、個別の議題についての内容を深める作業を進めておる、幅広い国民の理解と協力、さらに、テロや不審船対策など武力攻撃事態以外の緊急事態への対処体制についても総点検を行い、必要な検討を推進していくというふうなことも防衛庁長官は先ほどごあいさつの中で丁寧に申されました。
 そういった中で、まさに私どもは、都道府県あるいは各県民の理解というものをしっかり得て、これから必要な法の整備をしていくという状況にあると思います。
 そういう中において、小さなことであるかもしれませんけれども、このヘリの飛来を回避してくれというふうな要請を県知事がしなければいけなかった。蛇足でありますけれども、長崎県知事は県の防衛協会の会長でもあります。そういう立場から見たときに、私は、回避要請をするというその県知事の立場というものは、ある意味でつらいものがあったのではないかというふうに感じるわけでありまして、そこら辺をおもんぱかったとき、やはりぜひぜひ、外務省の仕事、役割というものに対する期待が重ねて大きいというふうに思っておりますから、お願いを申し上げるわけであります。
 さて、防衛庁長官にお尋ねをいたします。
 今、外務省にお尋ねをいたしました。私の基本的な考え方、あるいは願いというものはお聞きとめいただいたというふうに存ずるわけでありますけれども、これから日本国の安全と国民の生命財産を守り、そしてきちんとした抑止力を備えて国の安全保障体制を形づくっていく努力というものを進められる中で、防衛庁長官として、今私が局長にお尋ねしたことなどをトータルにお考えいただいて、どのような所感をお持ちか、お聞かせをいただければと思います。
石破国務大臣 いわゆる有事法制についてどう取り組むかという御質問でもあろうかと存じます。
 先国会でいろいろな議論がございました。衆議院で継続という状況にございます。
 つい数年前までというんでしょうか、はっきり言っちゃえばついこの間まで、有事法制とは何ですかといいますと、いわゆる一分類、二分類、既に研究が終わった一分類、二分類をまずやりましょうと、こういう話でした。
 何でこういう議論が起こったかといえば、もう先生御案内のとおりで、昭和五十年代の前半に、福田赳夫総理大臣、三原朝雄防衛庁長官のもとで研究が始まった。ところが、一分類、二分類だと思っていたところへ、いや、それだけでは足りないんだと。いわゆる国民保護法制という名で言ってもよろしいのですが、どの所管か決まっていない第三分類も議論をしましょう、あるいは米軍に対する法制というものも議論をしましょうということになってきたわけですね。
 そこにおいて必要なことは、一つは、まさしく今先生が御指摘になった、地方の意見というものをどのように踏まえてこれを法制に生かしていくかということなんだろうと思っております。この有事法制を議論します中において、地方と中央との関係をどうするかというのはかなり根幹的な部分をなしておりまして、しかしそこに迅速性というものも求められるわけでありますから、そこのところをどのようにしてきちんと確立をしていくかということなんだろうと思います。いやしくも地方の実情というものを無視したような有事法制というものであってはならないということかと存じます。
 機会をいただきましたので申し上げますと、何のための有事法制なんだということであります。これは、佐世保の皆様方、本当にいつも御理解いただいておるところであります。何のための有事法制なのかということを考えましたときに、例えば、有事法制をつくると戦争になっちゃうよとか、これは戦争協力法なんだよ、こういうような御議論も一部にはあるやに承知をいたしております。
 しかし、私の理解といたしましては、戦争しないためのまさしく抑止力としての有事法制であると。いざ有事ということになったときに、では超法規で動くのかねといえば、そんなのは私は法治国家の名に値しないと思っております。きちんとした法制度のもとで動くんだということ、そしてまた、何よりも肝要なことは、我々の民主主義国家を守るためにこそこの法制はあるんですよということ、そういうことを広く国民の皆様方に御理解をいただくということが肝要なことであろうと思っております。
 いずれにいたしましても、佐世保を初めといたしまして、いろいろなところに自衛隊の基地があり、そしてまた米軍の基地があるわけであります。そこに御在住の皆様方は、日本の平和と安全あるいは極東の平和と安全のためにいろいろな御負担をいただいておるわけでありまして、そういう方々の御理解をきちんと得ながら、どうすれば戦争にならないかということでもって有事法制というものを考えてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
北村(誠)委員 ありがとうございます。
 ちょっといきなり大きな問題に移りますけれども、実は、きょう、インド洋に護衛で行っておりました「あさかぜ」が帰ってきます。午後もう帰ってくるということでありましたから、もし許されるものなら、私も、その都度、出迎えに行ったり、見送りに行ったりしておりますので、帰港を迎えに行きたいという気持ちはあったんですけれども、幸い、この質問の機会をお与えいただきましたので、皆様方にその旨、僣越ですが御披露をさせていただきたいというふうに思います。
 さて、その護衛艦「あさかぜ」の任務を立派に果たしての帰港でありますけれども、それに関連いたしまして、私ども、地域にありましても、また、私の同志の中での常日ごろからの話でありますが、仮に、イラクの状況に対応して、アメリカ側から、米国政府から、いろいろな日本政府に対する要請というものが、いろいろな場面、いろいろなときにあっておるように報道はなされており、新聞等印刷物などで見てはおります。
 しかし、今日までの間、このテロ特措法に基づいて基本計画をつくって我々が実施しております支援と協力というものに対して、米国政府から日本政府に対して正式に、たしか十一月の十九日で基本計画というものの期限が来るというふうに承知しておりますけれども、まあ十九日といえば日にちがあるようでないようで、何か妙な感じもいたしますけれども、当然に、政府とされてはいろいろな計画や準備等をされておると思いますけれども、少なくとも、米国政府から日本国政府に対してどのような、この間、アフガニスタンの情勢に対応し、まだ続くであろうアルカイダに対する制圧というものに対する行動というものは続くであろう、しかしイラクもひょっとしたら動きがあるかもしれないという中での十一月十九日という日を迎えるのでありますから、基本計画についていろいろ考えをし、備えておかなければならぬ、そういう中にあって、米国政府から正式にはどのような要請が日本国政府に対してあっておるかという点について確認をしたいと思いますので、御答弁を願いたいと思います。
海老原政府参考人 十一月十九日でテロ特措法の基本計画に基づきます自衛隊の派遣期間の期限が来るわけでございます。その後どうするかということにつきましては、これは、内閣全体といたしまして、主体的にこれから検討がなされていくということであろうと思います。
 米側からどのような要請があったのかというお尋ねでございますけれども、ここにもいらっしゃいますけれども、茂木外務副大臣が先般訪米されまして、アーミテージ国務副長官と会談されました際に、アーミテージ副長官の方から、このテロ特措法に基づく支援の継続をしてほしいという、これは要請というよりも一般的な期待というものが表明されたというふうに承知はいたしておりますが、具体的にこういうものを続けてほしいというような形でのいわゆる要請といったものは、これまで我が方にはなされていないというふうに承知をいたしております。
北村(誠)委員 これといってきちんとした要請というようなものはなされていないと。しかし、いろいろな機会をとらえて米国政府の考え方というものは示されておるというふうなこととして承知をしておきます。
 一番最後に、これは委員長に対してお願いでありますけれども、昨年の通常国会に議員提出されました防衛省設置法案につきまして、一日も早く審議に入り、成案になりますよう願っておりますので、委員長の特別の御配慮と委員会の運営をよろしくお願い申し上げます。
 これをもって、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
田並委員長 答弁が必要でしょうか。内閣委員会にかかっているものですから。
北村(誠)委員 失礼しました。御配慮をよろしくお願いします。
田並委員長 はい、わかりました。
北村(誠)委員 どうもありがとうございました。
田並委員長 次に、伊藤英成君。
伊藤(英)委員 民主党の伊藤英成でございます。
 私は、いつも日本にとってのいわゆる安全保障問題ということを考えたときに、常に考えなきゃならないのは、やはり朝鮮半島であり、台湾海峡だと。私はいつもこう思っているんですね。
 そして、この朝鮮半島問題について、先般の外務委員会でも議論いたしましたし、もう国会の中でも私も何度もこの朝鮮半島の問題について議論もしたりしてきているわけですが、ちょうどきょう、あすとクアラルンプールで日朝国交正常化交渉が再開されることになっております。私自身は、先回も申し上げましたけれども、やはり今、日本政府がこの正常化交渉、まず正常化交渉ありきということで急ぎ過ぎてやしないだろうか、焦ってやしないだろうか、こういう印象を今もやはり持ちます。
 そういう意味で、しっかりと腰を据えてといいましょうか、取り組んでいくことがどんなに重要か、こんなことを思っているわけでありますが、きょうはもうちょっと具体的に、日本の外交のあり方といいましょうか、そんな視点も含めて伺いたいと思います。
 まず、拉致の被害者の問題についてなんですが、今、五人の方が日本に来ていらっしゃいます。一時帰国という話をされたりしますが、私自身は、一時帰国という言葉はやはり問題じゃないかと。日本の主権が侵されて、拉致されていって、その人たちが今日本に来るのに、一時帰国とは何だ、こういう感じを持つわけでありますが、それにも関連して、よく、原状回復すべしと。私もそう思います。原状回復をするということは、この五人の方々について言えば、どういうことを意味しているのか、外務大臣に伺います。
川口国務大臣 今、政府が言っておりますことは、この間官房長官から発表がありましたように、五人の拉致被害者の方々が、家族を含めて、自由な意思決定を行うための環境の設定、特に家族全員の日本への帰国が不可欠かつ急務であるということを考えておりまして、この五人の方々については今後とも日本にいていただく、そして、現地に残っていらっしゃるこの五人の方の家族についてはその安全の確保及び早期帰国と帰国日程の確定を北朝鮮に対して強く求めていく、そういうものでございます。
 委員がおっしゃった、この原状回復というのが、拉致事件に関して何をもって原状回復というふうに定義づけるかということは必ずしも明らかでないと思いますけれども、一般的に言えば、結果として生じている現在の状態を、それを生じさせた原因以前の状態に戻すということを意味していると思います。
 いずれにいたしましても、政府としては、先ほど申し上げたような観点から、早期の帰国、現地に残っていらっしゃる家族について早期の帰国、そして帰国の日程の確定、これを実現すべく、現在、国交正常化交渉において、北朝鮮に対して働きかけを行っているということでございます。
伊藤(英)委員 そうすると、五人の方について言いますと、まず子供さん、子供は日本に帰国といいましょうか、日本に帰させるということですね。それは、御主人はどうなるんですか。御主人、例えば伴侶の方は。
川口国務大臣 これは日本政府が、この前、官房長官が発表した中にはこういった方も含まれているということですけれども、それを行うということは、まさに被害者の方々とその子供たちあるいは関係者の方が自由な意思決定ができる、そういう環境に彼らがいるようにということ、そのために日本への帰国が重要である、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 いずれにしても、本人及び子供について言えば、日本に来てもらうということですよね。原状回復というのはそういうことになりますね。
 それで、今回、五人の方が日本に帰ってくるときに、当初、例えば一週間とか二週間とかいろいろな話がありました。具体的にはどういう内容で、これは合意なのか、決まったのか、希望なのか、これはどういうことになっていたんでしょうか。
川口国務大臣 九月十七日に日朝首脳会談がございましたけれども、そこにおいて、金正日国防委員会委員長から、生存者とその家族との面会及び帰国への便宜を保証するという発言がありました。また、北朝鮮外務省から、本人たちが希望する場合には日本への帰国または一時帰国を実現するような必要な措置をとる用意があるということが明らかにされています。
 今回の五人の方々の帰国は、このような北朝鮮側の立場の表明を受けて、日朝間で調整を行った結果、実現をしたということでございまして、本邦滞在期間については一、二週間程度とするということとされておりました。
伊藤(英)委員 では、一、二週間たったら一たん帰っていただくというふうに、これははっきりとなっていたんですか。
川口国務大臣 そもそもそのはっきりした合意ということではございませんで、そのような打ち合わせがあった、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 だれとだれの間でそういう、今、口合わせと言いましたか、何と言われましたか。(川口国務大臣「打ち合わせ」と呼ぶ)打ち合わせ。では、だれとだれの間で打ち合わせがされ、結果はどういうことですか。一、二週間程度、あるいは帰さなくてもいいよ、どういう内容なんでしょうか。だれとだれが打ち合わせをして、その中身は厳密に言うとどういうことなんでしょうか。
田中政府参考人 外務省間の打ち合わせでございますけれども、こういうものでございますから、日朝間で具体的な書いたものの合意とかそういうものはございません。
 まさに今大臣が御答弁になりましたように、基本的に、金正日総書記あるいは外務省の声明を受けて、それで帰国ないし一時帰国ということについて便宜を供与する用意があるということでございましたから、私どもとしては、できるだけ早く帰国を実現するのが大事であるということで、一、二週間ということでございました。具体的には、本人の意向に従って日程をつくる、こういう了解でございました。
伊藤(英)委員 では、一応は一、二週間という打ち合わせはしたんだけれども、どれだけいることになるのか、あるいは日本に永住することになるのかということについては、本人の意向次第だというふうに考えていいんですね。
田中政府参考人 基本的には、一、二週間という範囲内で本人の意向に従って日程等を調整するということでございました。
 ただ、先般、官房長官が発表されたときにも明らかにされたわけでございますが、なかなか本人の意向というものは今の状況下においては難しい。ですから、本人の状況であるとか、あるいは家族の御意向というものを踏まえた上で、総合的に、政府として引き続き日本にとどまってもらうのがいい、こういう結論に達したものでございます。
伊藤(英)委員 私自身は、冒頭お話ししたように、まさに原状回復。私は、本人も家族の方もまず一たん日本に来てもらって、そして、真に御本人たちの意思に基づいて、それによってどうするかというのはその後選択するという話が本来の姿だと思っているんです。
 それで、若干心配するのは、いろいろ報道されているところ等によってもそうなんですが、日本がひょっとして、こういうふうにするんだよというふうに約束をして、しかし、その後、ずるずると、違う形で日本が要求をしていくというようなことになっているとするならば、それは問題かもしれない。ただ、それは、そもそも双方でどういう話をし、どういう決定をして動いているかということにこれはよるわけですよね。そういう意味で、さっき、あるいは最近新聞やテレビでも一部心配されている声というのが私はあるんだと思うんですが、そういうことは全然ないんですね。
田中政府参考人 こういうことと申しますのは、さっき申し上げましたように、一時帰国であるとか帰国ということで、基本的には本人の意思が尊重されるべきものであろうという前提がございましたけれども、ですから、そういう形で、明確な合意というよりは、要するに日本に帰ってもらうという具体的なアレンジメントをつくるときにそういう了解があったということは事実でございます。
 ただ、この問題につきましては、根底に拉致という問題があるわけでございますし、いろいろな状況を見ましたときに、御家族の御意向もそうでございますし、政府としての考え方もそうですが、やはり家族が強い御意向を示しておられるときにこれをお帰りいただくということにはならない、したがって、そういう説明を北朝鮮側にはしている。まさに国交正常化交渉においてもそういう議論をさせていただいている。交渉、できるだけ早く北朝鮮に残っておられる家族の帰国、これを強く求めているというのが現在の状況でございます。
伊藤(英)委員 では、政府としては永住帰国をさせるということを決定したということですね。
 それで、今、きょう、あすといわゆる正常化交渉が行われるということなんですが、この永住帰国ということは、向こうに許可を求めるとかいうたぐいの話じゃないんでしょうね。これは、日本はこう決めました、その部分については、いわば、このこと自身だけについて言うと、そういうふうに日本は決定したから通告しますというたぐいの話になると考えればいいんですか。
田中政府参考人 日本の政府の方針として決めておりますのは、日本人でございますから、どこに居住を定められるかというのは、自由な環境の中で被害者御本人と家族とが御相談をされて自由な意思として決められるものであろうと。したがって、政府の役割として、そういう自由な環境をつくる。それは、日本で、被害者の方々及びその子供さんたち、家族の方々、そういう形でよくお話をされるというのが必要であろうという結論に立ち至ったものであります。
 ただ、今残っておられるお子さんの方々は、これは報道もされておりますが、どういう経緯でこうなったかということについては御存じがないということなので、お子さんたちとの意思疎通も今後図ってもらえるようにしていかなければいけないというふうに考えております。
伊藤(英)委員 今、子供さんたちに日本に来てもらうべく働きかけている、あるいはきょうも主張されるんだと思うんですが、子供さんたちが日本に来るのを今望まないというような話になったらどうするんでしょうかね。
川口国務大臣 まず、政府としてこの間福田官房長官が発表になったことというのは、まさにその自由な意思決定をしてもらうためにまず日本に来ていただくということでして、そして、その上で、自由な環境のもとで、どうしたいかということはまさに御本人あるいは関係者の方が決めていくということでございますので、我々としては、北朝鮮に対して国交正常化交渉の中で、もともと北朝鮮が約束をしていますことではありますけれども、家族の方の、要するにお子さん方の帰国、その早期帰国、これを強く求めていく、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 私は、本件は本当にますます重大な話に、重要かつなかなか大変な話かなという気がしているんです。もうこれ以上そこについては申し上げませんが、必ずお子さんたちに日本に一たん来ていただくというふうにぜひしていただきたい、こう思っているんです。それは大丈夫でしょうね、大臣。
川口国務大臣 今おっしゃった問題も含めて、拉致問題というのはこの正常化交渉の中での最優先課題でございます。そういったことでございますので、政府としては北朝鮮に対してこれを強く強く求めていく、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 今、大臣もまさに最優先課題だと言われました。総理も全面的な解決なくしてという話をされました。この最優先課題たる拉致問題について、その解決というのはどういう状態になったら解決、あるいは全面的な解決というふうに言われるんですね、総理も言っているんですが、全面的な解決というのは、どこまでどうすることを、どういうふうになる状況を考えていらっしゃるんでしょうか。
川口国務大臣 拉致問題につきましては、事実関係の解明とともに、生存者とその家族の帰国など、御家族を初めとする関係者が納得をなさる形で問題が解決されるということが重要だと考えています。
 現在行っている交渉の中で、被害者の方々の御家族の御意向も踏まえながら、北朝鮮に対しては事実解明を引き続き強く求めるということと、それから、御家族の帰国の日程を早期に決めて、早期にこの帰国を実現させるということが大事でございますので、これに取り組んでいくということでございます。ということで、北朝鮮側に対してはこれを、先ほども言いましたように、強く求めていくということでございます。
伊藤(英)委員 強く求めるだけでは解決はないんだと思うんですよ。だから、どういう状態までなったらそれは解決ということになるんでしょうかという話を質問したわけです。
 だから、十五人の問題もある。さらに、何十人という方のこともあるでしょう。それから、責任者に対するいわば責任追及、処罰の問題もあるでしょう。あるいは、補償の問題もあるかもしれない。再発防止という話もあるかもしれない。
 私は、ざっといろいろ私が申し上げたようなことはクリアしないと全面的な解決にはとてもならないんだ、こう思うんですが、いかがですか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、まずこの事実の解明、これは、死亡されたとされている方々の御家族の方のお気持ちからしても、事実について、何が起こったのかということを知りたいというのは強く思っていらっしゃると思います。そういうことを現在、国交正常化交渉の中で行っておりますし、これを行いながら、そして生存者の方々の北朝鮮にいる御家族の方の早期の帰国を実現するということを求めながら、そういったことを行いながら、その中で、どのようなほかの部分についての対応を求めていくかということは、交渉の中で総合的に考えていくということでございます。
伊藤(英)委員 では、伺いますが、死亡されたとされる方八人のことについて言われているんですか。あるいは、その他十五人もあるよ、あるいはさらに何十人、七十人、八十人、百人ぐらいかもしれませんということまで考えるんですか、考えないんですか。まずそこはどうですか。
川口国務大臣 事実の解明については、おっしゃった八人の、生存者の方、それから死亡されたとされている方、そして新たに拉致というふうに考えられる方々、これらについて事実の解明については求めていく、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 では、その責任の追及並びに補償の問題はどうですか。
川口国務大臣 事実の解明を行う中で、国交正常化交渉の中で、そういった問題については総合的に今後の対応について考えていく、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 では、それはやりますということですね。
 その次なんですが、では、最優先課題と言ったときに、拉致問題以外、もっと言えば拉致問題と核の問題が最優先課題、こう言っていると私は思うんですね。ただ、今の拉致の問題が、今大臣が言われたような形で全面解決ということが行われないうちに、全面的に解決を見るということがない段階で、ほかの議題というか、そういうことを議論することになるんですか。これは、拉致問題あるいは核の問題は片づけてからということになるんですか。どういうふうになるんですか。
川口国務大臣 平壌宣言に盛り込まれている、国交正常化に向けての話し合いの中で解決をしていかなければいけない問題というのは非常に多くあるわけですけれども、その中で、政府としては拉致問題と、そして核の問題を含む安全保障の問題については最優先課題であるということを今言っているわけでございます。そうしたことを行いながら、まさにそれらを最優先の課題として国交正常化交渉を進めていくということでございまして、平壌宣言を守っていないということであれば、正常化のための交渉というのは前に動いていかない、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 ちょっとよくわかりにくいんですが、では、拉致問題について別に言いますと、拉致問題について片づかないうちにほかのことをやるんですか。その平壌宣言の中にいろいろあるとしても、それをやるんですか。あるいは、それは、まずは拉致問題を片づけてからというふうに考えるんですか。
川口国務大臣 会議の中で、会議をどのように進めていくか、あるいはそれが進んでいくことになるかということも、相手があることでございますので、これから話し合っていかなければいけないということでございますけれども、日本政府としては、先ほど申し上げた拉致の問題、そして核の問題を含む安全保障の問題、これが最優先課題であるというふうに考えています。
伊藤(英)委員 では、伺います。
 拉致の問題と核の問題を最優先で扱う、一応その二つが片づいてからほかの議題にというふうに考えていいんですか。そういうふうにすると考えていいんですか。
川口国務大臣 先ほど言いましたように、いろいろな問題があるわけでございます。そして、国交正常化交渉の中ではこういった問題を包括的に協議をするという考えでおりますけれども、その中で、拉致問題、そして核問題を含む安全保障問題、これは最優先課題として取り上げていく、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 同じ言葉を繰り返しますけれども、最優先課題にするという意味は、何をどうすることになるんだろうか。議題の優先順位、処理していく順位ということについて、議題で処理していく順番について、まず拉致と核の問題をやりますという意味じゃないんですか。ほかのことをやるんですか。
川口国務大臣 大事なことは、平壌宣言に書かれているような諸問題が解決をするということでございます。それで、そういった問題を包括的に協議をするということで、その中で、特に拉致と核問題を含む安全保障の問題については最優先課題としてやっていくということでございます。
 繰り返しますが、大事なことは、この諸問題が解決をして、そして国交正常化につながっていく、そういうことであると思っています。
伊藤(英)委員 いや、大事なことは、正常化云々というのは、それはそういうことのためにどうするかというんですが、だから私は最優先課題、最優先課題と言うんだけれども、本当にどういうふうにすることが最優先課題になるんだろうかという意味です。
 では、核のことを伺います、核のことを。
 きのうもAPECの首脳会議の首脳声明で、北朝鮮に対して、核兵器計画を放棄するとの合意を目に見える形で守るように求めるとなっていますが、目に見える形というのは、どういうふうにすることをこれは決めているんでしょうか。
田中政府参考人 当面、今問題になっておりますのは濃縮ウラニウムの問題でございますけれども、これは日米韓で議論をしているときもそうでございますけれども、検証が可能な形で廃棄がされるということが大事であると。要するに、検証の仕方はいろいろあり得ると思いますけれども、具体的に検証がされる形で廃棄がされるということが重要であるということについては認識の一致がございます。
伊藤(英)委員 検証をさせるんですね。そのときには、日朝交渉の中でそういうことをやっていくんですか。米朝の交渉あるいは米朝の話し合いということを関与させるんですか。あるいは、もうちょっと最初の日朝交渉の中でも、別の、日朝交渉の、本交渉の下に何か分科会みたいなものをつくって何かするんですか。そこにアメリカは入るんですか、入らないんですか。そういうのをどういうふうにこれから進めるんでしょうか。
川口国務大臣 交渉がきょう再開をしたばかりでございますので、これからどのような状況で交渉が進展をしているかということを、今の時点で予測をして、こうなりますというふうに申し上げるのは非常に難しいことでございますけれども、先般のAPECの際に行われた、日米韓、この三カ国の首脳の会談の中でも、三カ国の首脳の意見、立場というのは一致をしているわけでございまして、したがいまして、緊密に連携をしながらこの問題の解決を図っていく、そういうことでございます。
伊藤(英)委員 連携はすればいいんです、すればいいというか、連携をする人は必要なんです。具体的にどうやって交渉をやるんでしょうかと。日本が全権大使みたいな感じで、日米韓の中の、日本が最前線で、日本が窓口で交渉をやるんですよ、そこでこの核の問題についても解決をしたという状況まで持っていって、例えば次の議題をやるとかいうふうな話になるんですか。
 だから私は、アメリカとか、あるいはIAEAなんかもあるかもしれません、韓国との関係もあるかもしれません。それを本当に、どういうふうに具体的に進めようと外務大臣は思っているんですか。
川口国務大臣 この核の問題について、先ほど言いましたように、三人の、三つの国の首脳というのは立場が一致をしているわけでして、先ほど田中局長が言いましたように、これを検証可能な形で廃棄する、そういうことでございまして、それがうまく進まないような状況であれば、これはこの交渉が妥結をするということはないわけでございます。したがいまして、まさに三つの国の考え方はこの点については一緒である、同じである。
 これをどういう形で獲得していくかということについては、これは先ほど言いましたように、いろいろな事態の進展が今後あると思いますし、アメリカと北朝鮮との関係がどのようになっていくかということ、さまざまな状況が、展開があり得ると思いますので、今の時点で、これはこういうふうになります、こういうふうにいたしますということは申し上げられないということですが、その中で、日本及び韓国の役割というのは、まさに南北対話、そして日朝国交正常化交渉が具体的なチャンネルとしてあるということですから、この三つの国の首脳の会談でも、この重要なチャンネルが、北朝鮮に解決を求めていく上でこの三つのチャンネルがそれに資するであろうということが言われているということです。
伊藤(英)委員 最後に一つ質問いたします。
 外務大臣、平壌宣言、九月十七日に宣言を署名されました。このときに、北朝鮮が核開発をしているということは前提になってしていますか、知らなくてサインしていますか。
川口国務大臣 核開発をしているという言葉が適切かどうかはわかりませんけれども、濃縮ウラン、核兵器用の濃縮ウランの開発のプログラムを持っているということについては、情報に接していました。
伊藤(英)委員 その情報を把握していて、こういうふうに、このサインをしたんだということを確認して、終わります。
 ありがとうございました。
田並委員長 次に、末松義規君。
末松委員 民主党の末松でございます。
 きょうは、ロシアのテロの問題、それから対イラク攻撃、さらに、ちょっと時間があれば北朝鮮の核開発の問題についてもお伺いしたいと思います。
 まず、ロシアの劇場でのテロの関係で私が感じますのは、あれが日本で起こったらどうなんだろうという気になるわけです。まずは、では、日本の場合はテロの第一次的な対応は警察庁だろうと思いますから、警察がやって当然しかるべきなんですけれども、ロシアの場合も、あれはロシア軍の特殊部隊ですか、携行する武器が、例えばロケット砲とか、今回あったかどうかは別として、通常の小銃とかライフルとかそういったものを超える武器がテロリスト側の手にあって、それでテロが行われる、あるいは人質にとられた、人質が脅かされるという場合には、これは警察と同時に自衛隊という、そういったテロの特殊部隊、我が国にあるんだろうと思うんですけれども、それと共同して事に当たらなきゃいけない。当然内閣としては、何とかテロ対策本部というのができるんでしょうけれども。
 そういった我が国の対応を考える上で、もしロシアのような事件が起こった場合、警察と自衛隊のテロ部隊ですか、これはどういうデマーケーションといいますか、割り振りといいますか、と同時に、共同で対処するような素地が日本にあるのかどうか。これをまず警察庁、そして、あと防衛庁長官の方にもお伺いしたいと思います。
奥村政府参考人 お答えをいたします。
 ロシアでああいう事件が起きたわけでありますけれども、一般に、この種の人質立てこもり事件が発生いたしました場合には、国内の治安維持に第一義的な責任を持っております私ども警察におきまして全力を挙げてその解決を図ってまいりたいと考えております。
 具体的には、こういった事件に備えまして、全国約二百名の特殊部隊、SATを編成しておりまして、テロリストの制圧あるいは人質救出の特別の訓練を行ってきておりますほか、所要の警察官にテロリストとの交渉等に関する訓練を積ませてきているところでありまして、事件への対応に当たりましては、これらを含めました警察の総力を発揮して解決を図ってまいりたいと考えております。
 なお、一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる場合には、内閣総理大臣が自衛隊に治安出動を命ずることができることとされております。その場合にも、警察と自衛隊が円滑かつ緊密に連携して対処をすることができるように、治安出動に関する協定に基づきまして連絡会議を開催しておりますし、また、共同図上訓練の実施を現在検討いたしておるところであります。
石破国務大臣 今、警備局長から御答弁があったとおりかと思いますが、要は、私も、委員もそうだと思いますが、あの事件を見ていて、これが日本で起こったら一体どうなるんだ、こういう話であります。それが治安出動の要件に当たるかどうかということですが、一体何を持っているのか、警察ではとても対抗できないような武器を持っているかどうか、また、そういうような状況であるのかどうかという判断をどうやって適宜適切に行うかという点が一番大事なんだろうと思っています。
 こういうような密閉空間でどうなのかということを子細に、詳細に議論を詰めたことは私の記憶では余りないのですけれども、昨年、自衛隊法を改正いたしまして、情報収集出動というのを入れましたよね。つまり、相手がどんなものを持っているのか、自衛隊が自分を守る武器を持って情報収集に行く、そして治安出動を下令すべきかどうかということの判断に資するというものです。これをどういうふうに使えるのかということも、あわせて判断をしていかねばならぬのであろうというふうに思っています。
 また、市街戦というものも考えられるわけで、何も原野でそういうことが行われるとは限らないわけで、市街戦にどう対応するかという訓練も始めておるところでありますし、かてて加えまして、十五年度からゲリラや特殊部隊に対処するための専門部隊というものを習志野駐屯地に新編すべく、概算要求を行っておるところでございます。
末松委員 この問題についてはうまく調整しながらやってねというのが私のメッセージなんです。
 特に自衛隊の方が、やはり警察は極めてさまざまなノウハウを持っていると思うんですけれども、それが、これから共同訓練に当たると言われましたよね、検討していると。そこを何回も繰り返していかないと、いざ対策本部ができて、総理大臣が、じゃ、これは治安出動だと言ったってうまくいくわけはないので、まさしくそこのところの共同訓練をきちんとやっていく中で、自由自在に、うまく、スムーズに、警察そして自衛隊の活動が対応できるようにお願いしたいと思います。
 時間がありませんので、アメリカの対イラク攻撃問題についてちょっと話を進めます。
 私、ちょっとこの問題について疑問なんですけれども、一カ月ほど前、アメリカを訪問しまして、ゴア前副大統領と会談をしたわけなんですけれども、そのときに、ゴアさんが政治生命をかけてアメリカの対イラク攻撃については反対をするという立場を表明された、ちょうどその時期でありました。私自身も、アメリカの町並みで人にいろいろとインタビューして聞いたら、ブッシュ大統領はどうも、米国の安全保障にあるいは米国人の安全保障にこれは非常に大きなかかわりがあるんだと言う割には、一般の市民の人はそういうふうに感じておりませんでした。
 といいますのは、彼らが言っていたのは、イラクが米国及び米国人をテロとして、あるいは戦争をしかけるんですか、核兵器あるいは大量破壊兵器をアメリカまで飛ばす輸送機みたいなのがあるのかとか、あるいはミサイルなんて持っていないよな、当然そう思うわけですし、また、特に、大量破壊兵器といっても、核兵器も数年たったら開発されるかもしれないというようなことで、なぜ今イラクをアメリカが攻撃しなければならないのか、必ずしもわかっていない。特に、今回の場合は、政権を交代させる、つまりサダム・フセインという政権を転覆させるということをアメリカ大統領も言っているわけですから、これは程度としては非常にすさまじいレベルなんじゃないかなと思うわけであります。
 こういうことを考えますと、じゃ、アメリカが言っているのは、まさしくイラクが湾岸戦争以来本当は守ると言っていた安保理の決議をきちんと受け入れろ、実際は何回も何回も違反をして、そのたびに決議を出して、けしからぬじゃないかということを言うわけです。私が今申し上げたようにどうもアメリカの、本当の意味でイラクに対して単独でも攻撃をやるような姿勢を見せているわけなんですけれども、それについてアメリカのこの攻撃、意思決定ですよね、上院、下院、それぞれ武力行使容認決議というものを可決しましたけれども、その意図、背景について、外務大臣の御認識をお伺いします。
川口国務大臣 アメリカは、ブッシュ大統領は、この紛争に行かないということで大事なことは、イラクが国連の決議に従ってこれを守るということが大事であるということを言っているわけでございまして、戦争が不可避であるということを言っているわけでは全くないというふうに私は理解をいたしております。
 今のこの時点では、イラクが国連の安保理の決議に従って無条件、そして即時、また無制限の査察を受け入れるということが何よりも大事でありまして、このための努力が安保理で、アメリカその他常任理事国を中心として行われているわけでございます。
 我が国としても、こういった決議がつくられるということが大事であると思っていますので、そのために外交的な努力をしていきたいというふうに考えておりますが、最初に戻りまして、アメリカが戦争が不可避であるということを言っているわけではない、平和的にできるだけ解決をしたい、そういうふうに考えていると思います。
末松委員 今の外務大臣の答弁というのはすきのない答弁ですから、それはそれでいいわけなんですけれども。
 それでは、今、安保理がやっている決議、この内容と、どういう状況なのか、それを示してくれますか。
川口国務大臣 国連で、まさにP5、そして非常任理事国の間でこれが今熱心に議論をされている、妥協に向けて議論をされていると私は承知をいたしております。
 先ほど申しましたのを繰り返しになりますけれども、イラクが実際に即時、無条件、無制限に査察を受け入れることが行われるように、必要でかつ適正な決議が行われるということが大事だというふうに思っております。努力が引き続き続いていると認識をしております。(末松委員「その内容を紹介してください、今やられている決議の」と呼ぶ)
 内容については幾つか、この即時、無条件、無制限ということについて、どのようなことで確保するかということが大事な要素となっていると思いますけれども、私ども日本は、安保理の理事国では現在ございませんので、それについて具体的にどこまで情報を把握しているかということについては、直ちにはお答えはできないということでございます。
末松委員 安保理理事国じゃないから一切わかりませんという話、今おっしゃったんですか。それについて外務省というのは、では、安保理理事国じゃなければほとんどわからないということですか。ちょっとまじめに答えてくださいよ。特に、武力行使の容認に関して、どこまで話が出てきているのか、それは答えられる範囲で答えてください。
川口国務大臣 これは、まさに安保理の理事国の間で議論をされている話でございまして、当然外務省としてもできる範囲での情報収集は行っておりますけれども、これは事柄の性格上、今理事国の間で外に出さない形で議論をされているということでございますので、事柄の性格上、どこまで、その内容について御説明を申し上げるということは差し控えさせていただきたい、そういう意味でございます。
末松委員 そういう意味だったら、初めからそういう形で言ってください。
 それで、安保理決議、世間の関心は、国民の関心は武力容認決議が、どこまで武力ということが容認されるかどうか、そこがポイントになっているわけですよね。そのために今報道等も一番焦点になっているわけなんですけれども。
 時間がないので、これについて別途またお伺いをしますけれども、きょうは淡々と、ちょっと質問の前段階ということでいろいろ話をさせていただきます。
 内閣法制局長官、来られていますよね。日本の場合、自衛隊を使った協力をアメリカにする、仮にそういう前提に立った場合、湾岸危機のときに、安保理で武力行使の容認決議というものがなければ日本として自衛隊を使った協力は私はできないんじゃないかなと思っているんですけれども、その点についてお考えいただけますか。
秋山政府特別補佐人 具体的にアメリカの行動、その他決まっている状況ではございませんので、あくまで一般論として申し上げますけれども、憲法論からいいましても、我が国が他国の武力の行使に何らかの形で協力するという場合におきましては、当該外国の行動が何らか国際法上の正当な根拠を有することということは当然の前提であろうと考えます。
 それが安保理決議であるかどうかというのは、いろいろ状況に応じて異なると思いますし、それは具体の状況に応じ判断されるべきものだと考えます。
末松委員 そうすると、今の法制局長官の話によると、アメリカは武力行使の容認決議まで出したわけなんですけれども、お伺いしますけれども、これは外務大臣の認識の中で、では、アメリカはどういう法的根拠でもって、確かに口ではブッシュ大統領は戦争を回避すべきであり、最大限、武力行使を行わないかもしれないし、あるいは行うかもしれないというところまで彼は言っているわけなんですけれども、攻撃をする場合、あくまでも仮定として、そのときのアメリカの法的な根拠というものをどういうふうに認識されていますか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、アメリカは軍事力を使うということを決めたわけではございませんし、まさに今それを避けるために安保理の場で決議を採択する努力がなされているわけでございます。
 そうした中で、米国が軍事力を使うということを前提にした御質問にこういうことであるとお答えするというのは、今の時点で不適当であるというふうに思っております。
末松委員 では、法制局長官にお伺いしますが、安保理の中で武力行使の容認決議が採択されたとしましょう。そういった場合に、我が国でその武力行使をする国の、あるいは国際法的なきちんとした根拠がなきゃいけないというお話でしたけれども、我が国の法律に照らして、例えばアメリカの対イラク攻撃が行われた、安保理決議のもとで。そうなった場合、多国籍軍という形が考えやすいのかもしれません、湾岸戦争と同じように。そうした場合に、我が国として、周辺事態法あるいはテロ特措法、そういったことでこれは対応ができるのかどうか。まあ一般論になると思います。
 また、テロ特措法に関しては、アルカーイダとかあるいはタリバンとかそういったものとの関連が、当然きちんとした関連性がないとだめだろうと思いますけれども、一般的な認識で結構ですから、おっしゃってください。
秋山政府特別補佐人 今、御質問の中で、テロ特措法とそれから周辺事態法を引いて御質問がありましたけれども、それぞれ申し上げますと、まずテロ特措法につきましては、これは一般論でございますけれども、我が国がテロ特措法に基づき行うことができますいわゆる協力支援活動は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する諸外国の軍隊等の活動に対して行うものでありまして、これはこの法律の一条に書いてございますけれども、したがいまして、これにこの法律を適用して支援できるかどうかは、その外国の軍隊の活動が今申しましたような要件に該当するかどうかで判断されることになるわけでございます。
 それから、周辺事態法でございますが、これまた一般論でございますけれども、周辺事態法で支援を行うには、当該事態が周辺事態、これはこの法律の一条に書いてございますが、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」に当たることが必要となります。この周辺事態につきましては、地理的概念ではないが、周辺事態が我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である以上、現実の問題としては、このような事態が生起する地域にはおのずから限界があるという趣旨の政府答弁がこれまで何度か行われているものと承知しております。
末松委員 ちょっと一般論的に過ぎて余り議論がなかなか進みにくい状況なんですけれども、そういった該当事由がなければ、もし協力するということであれば、新法をつくるしかないというような認識に立ちますか。
秋山政府特別補佐人 ちょっと御質問に仮定の前提が入っておりますし、それから新規立法が必要かどうかというのは、すぐれて立法政策の問題でございますので、私からそれに確たる返事を申し上げることは適当でないのではないかと考えます。
末松委員 これは、またちょっと一般論になりますけれども、やはりちまたでは、一月の末とかいろいろと対イラク攻撃がなされるとかいう報道がなされているわけですよ。外務大臣は、これは平和的にとそれ一辺倒で、それ以上のことは一切おっしゃっていただけないので、議論の進めようがない。
 私としては、日本の立場として、こういう形でアメリカから、もし要請等が陰に、あるいは陽に来た場合にどうしますかということに対して、当然外務省の内部でも考えておられるかもしれませんが、特に、例えば費用の問題一つとっても、今外務省からも資料をいただきましたけれども、米議会の予算局が出した見積もりなんかは、ペルシャ湾への兵力の派遣は最低でも九十億ドルから百三十億ドルかかる。戦争の遂行で毎月六十億ドルから九十億ドルかかる。さらに、戦争の終了後の米軍の帰還に五十億ドルから七十億ドルかかる。そして、戦争終了後の占領に毎月十億ドルから四十億ドルかかる。こういうことで、私は、半年間占領が続いた場合となると、大体六兆円から九兆円ぐらいの費用がかかって、これをだれが負担するのか、こういうことも当然考えていかなきゃいけない問題なんですね。
 加えて、各国の反応も、イギリスを除いては非常に冷ややかな対応になっている中で、我が国としてどういう対応をするか極めて重要な問題になってきますので、そこは、ある時点から、何か泥縄式にやっていくような形にはせずに、前広に対応を御検討いただきたいと思います。
 せっかく来ていただいたので、もし対イラク攻撃というものが始まった場合に、この経済的な影響、特に世界経済、日本経済にわたる影響がどういうふうに推測されるかということについて、可能な範囲でおっしゃっていただきたいと思います。
 それと同時に、むしろアメリカがそういうふうな対イラク攻撃をやるということであれば、アメリカを含めて、そういった原油価格とか、あるいは経済的な悪影響をきちんと抑えられるような手段を事前にアメリカ等と話し合うなど、そういうふうな対応も必要となってくるわけですから、それについても抜かりのないようにお願いしたいと思うんですが、とりあえずその影響について、簡単にお願いします。
岩田政府参考人 簡単にお答えいたしたいと思います。
 イラクの攻撃が起こりました場合には、前回、一九九〇年に、今のブッシュ大統領のお父さんがやはり湾岸戦争を起こしたことがございますが、そのときには、世界経済に直接起こった影響といいますのは、直接的には原油価格が高騰するということでありまして、十八ドルから約三十ドルぐらいに、一バレル十ドル以上の原油価格の上昇が起こっております。
 アメリカ経済ではどういうことが起こったかといいますと、一方では軍需支出の拡大、今御指摘ございましたけれども、かなりの軍需支出の拡大がある。それから、ドル安というのが実は起こりまして、これは短期的には経済にはプラスの要因であります。ところが、原油価格の上昇だけではなくて、実は株価がそのとき大幅に下落するということが起こっておりまして、消費者のマインドも冷え込んで消費が落ちるということが起こっております。同時に、長期金利も上がるというようなことがございまして、この湾岸戦争は七カ月続いたわけでありますが、ちょうど始めました九〇年の第三・四半期からアメリカはリセッションに陥りました。それまで経済成長していたわけですが、マイナス成長に転じたということであります。
 日本経済もその影響を受けまして、やはり原油価格が上がる、あるいは円高の方に振れるということがございまして、あるいはアメリカの経済が減速するということで、私の大ざっぱな推測では、あの湾岸戦争のときには日本のGDPが〇・五%程度引き下げられたんじゃないかというふうに考えております。
 以上でございます。
高市副大臣 それでは、原油価格の観点からお答えさせていただきたいと思います。
 確かに、仮にイラクに対する攻撃がありまして石油の需給が逼迫するようなことになりますと、それによって原油価格は高騰する可能性はあると思いますが、ただ、直ちにそれが起こるかといえば、その可能性は低いと私どもは考えております。これは、世界的な需給体制というものを見ますと、イラクを除くOPECの十カ国だけでもかなりの供給余力があるということと、それから、IEA諸国の石油備蓄の合計がかなり高い水準にあるということで、世界的に直ちに需給が逼迫する可能性は低い。
 日本の場合でしたら、石油備蓄の確保とかそれから自主開発、これも推進しておりますし、あと産油国との関係、こういったものも強化いたしておりますので、一応その需給を逼迫させないための万全の体制はとっていると考えております。
 ただ、不幸にして市場がヒートしたりいたしまして価格の高騰が起こりましたような場合には、今答弁もありましたけれども、一般的には、コストの上昇によりまして企業の収益、これは減少いたします。そうなりますと、設備投資、これも減ってしまいますし、それから物価上昇によって消費マインドというものも低下いたします。ですから、今後ともこれはきちっと注視をしてまいりたいと考えております。
末松委員 ちょっと時間がなくなってあれですけれども、最後に一つだけ質問させていただきたいんですが、アメリカというのは、イラクに対して、安保理決議をもとにして非常に厳しい対応をしてきている。その合意の中で、ああいうしたたかなイラクに対して圧力を加えながら、安保理決議を守らせよう、あるいは大量破壊兵器を保有させまいとしている。こういう状況は、北朝鮮に対しても、したたかな国ですから、我が国としてこれは極めて有効な手として考えているし、アメリカも当然考えているからこそアクシス・オブ・イーブル、悪の枢軸国というような概念を使っているんだと思うんですね。
 ですから、最後に一点ですけれども、北朝鮮に対して、私の方は、やはりアメリカ等と相談して、安保理決議できちんと北朝鮮の核については、地域の脅威になってこれを除去しなきゃいけない、APECの首脳声明が言ったようなものをさらに飛躍させて、拡大させて、安保理決議でやるべきだと思いますが、最後にその御意見をお伺いして、私の質問を終わります。
川口国務大臣 先般行われましたAPECの場で、この首脳会談で、通常の首脳会談の声明とは別に、北朝鮮に関する声明が発表されたわけでございます。そして、これによって、日米韓の三カ国だけではなくて、APECの参加国が全部一緒になって、北朝鮮に対して、核の開発の計画をやめるようにというメッセージを出したということでございます。
 これは、今回のAPECの非常に大きな成果であったと私は思いますし、今後、北朝鮮と交渉していくときに、日米韓の連携を非常に大事にして物事を進めていくことが大事ですけれども、同時に、それだけではなくて、国際社会が一致をして北朝鮮に核の開発計画をやめさせるように働きかけるということが大事だと思います。
 具体的にそのためにどういうことが必要かということにつきましては、これは、今後引き続き関係国と連携をとりながら検討をしていきたいというふうに考えています。
末松委員 どうもありがとうございました。
田並委員長 次に、前原誠司君。
前原委員 民主党の前原でございます。私は、日朝正常化交渉に関連をして幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
 まず、外務大臣にお伺いをしたいわけでございますが、九月の十七日に日朝首脳会談が行われました。そのときに私が一番奇異に思ったこと、そしてまた、それが余り議論されていないことに対して極めておかしいと思う事柄があります。それは、日朝首脳会談で金正日総書記が、拉致というものはみずからが指示をしたのではない、軍の特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に陥って行ったことである、みずからは知らなかった、こういうことを言っております。
 さて、この金正日総書記の見解について、これはこのとおりであるという是認をする立場をとるのか、あるいは、そうじゃないだろうという立場をとるのか、その点について外務大臣のお答えをお聞かせください。
川口国務大臣 九月十七日の場で、今、前原委員がおっしゃったようなことを金正日国防委員会委員長が言ったということでございます。
 これが本当にそうなのか、そうでないかということについては、これは日本の中でも、いろいろな考え方あるいは見方がマスコミの中でも取りざたされているわけでございますけれども、政府としては、この拉致問題を含むさまざまな活動が指示のもとで行われたかどうかということについて、現在、詳細を判断する情報がないということでございます。
 いずれにしても、この問題については、日朝国交正常化交渉の中で最優先課題ということで取り上げていく考えでおりますので、その中で事実の解明については強く求めていきたいと考えています。
前原委員 情報がないということでありましたけれども、事実の解明ということは、今の金正日総書記の言葉、つまりは、自分は知らなかった、特殊機関の一部がやったことだということの是非も含めて事実の解明を行うということでよろしいんですね。
川口国務大臣 今、我々にわかっている金正日総書記といいますか国防委員長の説明で、まだそれで十分であるというふうには思っていないということでございますので、事実の解明について、北朝鮮との国交正常化交渉の中で強くこれを求めていく、そういう考えでおります。
前原委員 マスコミで報道されているという言い方を大臣はされましたけれども、マスコミで報道される以前に、亡命者の方々、かなり工作員として中核の役割を担っておられた方々の手記あるいは本、そういうものを見ましても、こういった拉致活動について、軍の一部がやれるような話ではない、これは必ずトップの命令がなければやれないことだ、こういうような話があります。
 今の話ですと、別に金正日総書記の言をそのままうのみにしているわけではない、事実解明を行っていくということでありましたので、それは努力をしていただきたいんですが、私は、これから質問するすべてのことが、国が組織的に行ったことなのか、あるいは個人がというか一部が行ってきたものなのか、どう判断するかによってかなり大きく対応が異なってくる問題があると思いますので、それは政府の立場でぜひ真剣にお取り組みをいただきたいと思いますし、ゆめゆめおろそかというかいいかげんにその辺を扱うことのないようにお願いしたいと思います。
 また、委員長にお願いをいたしますけれども、この安保委員会の場でも、いろいろな証言をされている方々が日本あるいは韓国にもおられますので、政府に任せるのみではなくて、院としても、今申し上げたことの是非についてしっかり探求をするということで、参考人招致を含めて積極的にお取り組みをいただきたいと思いますので、お願いをしたいと思います。
田並委員長 後刻、理事会を開いて、協議をさせていただきたいと思います。
前原委員 では、次に移らせていただきますが、先ほど伊藤英成議員に対する答弁の中で少し出ておりましたけれども、きょう、あしたとクアラルンプールで行われております日朝国交正常化交渉の中で、拉致そして核の問題というものが優先課題である、こういうことでございますけれども、もう一度私の方から、その拉致にはどういう範疇まで入るのかということについてお伺いをさせていただきたいと思います。
 まず、曽我ひとみさんというのは政府が言っていた八件十一名に入っていなかったわけですね。つまりは、日本政府が現在認めているのは十件十五名でありますけれども、それ以外に、一説には七十人とか八十人とかいう数が言われております。政府が認定している以外にも拉致被害者が存在すると考えられるわけでありますけれども、その予想というか、あるいは今、どういう捜査当局としての考え方あるいは前提をもって調べているのか、警察にお伺いをしたいと思います。
奥村政府参考人 警察といたしましては、この拉致容疑事案につきまして、その一件一件ごとに一つ一つ証拠を積み重ね、また情報を集めるという捜査をこれまで営々と行ってきたところであります。その結果、北朝鮮による日本人拉致容疑事案というのは、現在のところ、十件十五名と判断しているものでございます。
 一方、これら十件十五名以外の事案はどうかということでございますけれども、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案はあるものと見て、今捜査や調査を鋭意行っているところでございます。
 ただ、拉致の可能性を排除できないという捜査途中の段階でこの件数を申し上げますことは、事案の究明に当たりまして一つの予断を与えることになりますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
前原委員 今、警察がお答えをいただきましたように、政府が認定した以外にもその可能性のある案件というものはある、こういうことでございます。
 したがいまして、今クアラルンプールで行われております国交正常化交渉、拉致が優先課題の一つであるということでありますけれども、もう一度、外務大臣、認定をされている以外のものについても、しっかりとその中に含めて、北朝鮮に対しても協力を求めるという姿勢で臨んでいただきたいんですが、お答えはいかがですか。
川口国務大臣 今認定をされているもの以外、その他のものについて、これが拉致の疑いがあるということを捜査当局で判断されるということでございましたら、当然、外務省はこれを国交正常化交渉の中で強く働きかけていくということでございます。
前原委員 次に、国交正常化交渉の前提の問題でありますけれども、少し違った質問をさせていただきたいと思います。
 日本に密輸されている覚せい剤につきまして少しお話をお伺いしたいと思うわけでありますが、警察からいただいた、生活安全局薬物対策課からいただいた資料でありますと、近年、北朝鮮ルートと言われる覚せい剤密輸事件がかなり頻発をしております。この事案につきまして警察にお答えをいただきたいのでありますが、これはどういうところが北朝鮮からの覚せい剤と認定できたのか、その背景についてお話をいただきたいと思います。
瀬川政府参考人 平成九年以降でありますが、北朝鮮を仕出し地とする覚せい剤の密輸入事件等六件検挙しているところであります。
 仕出し地といいますのは、覚せい剤が積み出されたと判断される国または地域を指して言っておりますけれども、警察としましては、これら事件捜査の過程で、被疑者の供述でありますとか、それから密輸入の態様でありますとか、事案ごとによりますけれども、そういったものを総合的に判断をいたしまして、これらは北朝鮮を仕出し地とするものであるというふうに判断をしているところであります。
前原委員 まず、出し側と受け入れ側についてお話を伺いたいと思うのでありますが、北朝鮮が出どころであるということでございますけれども、その背景、つまり、どういう組織がやっているのか。つまりは、一般人が勝手にやっているのか、あるいは違う組織がやっているのか、あるいはまたは国家がやっているのか、その辺はどう警察としては判断されていますか。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 こういった北朝鮮を仕出し地とする覚せい剤事件、総じて見てみますと、特徴が幾つかございます。一つは、大量であるということでございます。押収量が非常に大量である。それから、純度が非常に高いということがございます。それから三つ目には、そういった覚せい剤の包装、これが非常に規格が整った包装がなされているというような特徴がございます。
 これらから判断いたしまして、高度の技術水準を有する、また、相当の資金を有する組織が関与しているもの、そういう可能性が高いというふうに私ども推測をしておりますけれども、ただ、現在まで私どもが捜査を通じて得られた証拠に基づきまして判断する限り、これらの覚せい剤が北朝鮮において製造された、あるいは北朝鮮が、お尋ねでございますが、国家として覚せい剤の密輸入やその製造に関与しているというところまで断定するまでの材料はございません。
前原委員 よく言われているのは、北朝鮮の北東部の羅南地域と言われるところで覚せい剤が栽培をされていて、工場などもある、精製されている、こういう話でありまして、今局長がお答えになったように、かなり資金力を持って組織的にやらない限りは、大量、高純度、そして統一の規格というものがなかなか難しいだろうというのは、おっしゃるとおりだというふうに思います。ここは、幾つかの外交的なルートを、警察に頼むだけではなくて、やはり努力をしていかなくてはいけないと思うわけであります。
 私もしばしば、そんなによくというほどではありませんけれども、アメリカの高官ともお話をさせていただきますけれども、工作船の問題なんかではかなり情報は持っていますね。なぜ情報を持っているかというと、我々は、北朝鮮を悪の枢軸という指定をしているんだ、二十四時間衛星を飛ばして、そして東海岸からどういうものが出ていってどういうものが帰ってきたか、あるいは西海岸からどういうものが出ていってどういうものが帰ってきたかということについては逐一チェックをしていると。政府はお認めにならないかもしれませんが、昨年暮れの奄美大島沖の工作船事案も、第一報はアメリカから海上自衛隊に寄せられたものというふうに私は聞いております。
 それをきょう問いただすのが趣旨ではございませんで、つまり、かなりの情報収集能力を持ったアメリカと同盟関係というところから、この覚せい剤の仕出しといいますか、製造、精製過程をしっかりと把握するということが極めて重要だろうというふうに私は思います。独自でやっていただくことも必要でありますけれども、自国の警察能力、捜査能力で限界がある場合は、そういった外交ルートも使うということが必要だと私は思いますけれども、外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
川口国務大臣 我が国がどのように情報収集をしているかということについてお話をすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしても、委員がおっしゃるように、現在の世界にあって、情報というのが非常に大事であるということは十分に認識をしております。
前原委員 認識をしていただいた上で、つまり、私がなぜこの覚せい剤の話をするかといいますと、国家が関与している可能性が高いわけです。先ほどの拉致の問題もしかりですけれども、あのように軍事独裁国家で、このような統一的な規格で、高純度で、覚せい剤を栽培そして精製して輸出をしているなんというのは、国家以外に北朝鮮では考えられないわけですよ、北朝鮮のような国では、軍事独裁国家では。
 それについては今の段階では明言できないというのはそのとおりだと思いますけれども、やはりそういう問題も含めて国交正常化交渉で議論をしていただかないと、明らかでないことはほおかむり、しかし問題は垂れ流しということで、国交正常化交渉を拉致とそれから核の問題を最優先にということでありますけれども、今警察の方から、かなり組織的な背景があって北朝鮮からも来ている、こういう話ですから、国交正常化交渉にこの覚せい剤の問題も入れていただきたいと思いますが、いかがですか。
川口国務大臣 この問題については、政府としても重大な懸念を持っております。八月に日朝の局長レベルの会議がございましたけれども、その場でも取り上げております。まさに日朝国交正常化交渉の中で、この問題も含め、さまざまな諸懸案についてはこれをきちんと解明をしていかなければいけないということで、懸案については取り上げるということで考えております。
前原委員 それで、さらにこの問題で伺いたいんですけれども、一つ、我々に明らかにされていないのが、昨年の五月の一日に金正日総書記の息子である金正男が入国をしたのではないかということが言われておりますけれども、そのことについては、いまだ国会の場で明らかにされておりません。しかし、いろいろな証言あるいは写真等の分析も含めて、金正男であることは間違いないということでありますが、ここで接触したのは法務省ですよね、入管。もう一度、このときの状況を少しお話しをいただきたいと思います。金正男なのかどうなのか。
増田政府参考人 お尋ねの男性につきましては、違反調査等において氏名その他の身分事項について聴取いたしましたが、本人が金正男なる人物であるかどうかについては、確認できませんでした。
前原委員 何度もその答弁は伺っていますし、また、やりとりの中で、それだったらなぜ外務省がわざわざ護衛までつけて北京までついていって送り返すのかということになるわけですね。
 私は、やはりこの国会の場で確認できなかったということは、これはうそだと思います。つまりは、国会の場でうその答弁をする、あるいは事実を隠ぺいするというのはよくないと私は思います。覚せい剤の問題をこれから議論していく中で、昨年の五月一日に来た、成田に着いた人間は金正男であると認めるところから、また私は、いろいろな問題の、これから解明が明らかになっていくと思います。
 そこで、事務方に聞いても同じ答弁しか出てこないと思いますけれども、また委員長にこれはお願いしたいと思いますけれども、国会でうそあるいは隠ぺいをして言わないということ、つまりは、例えば警察で捜査上の観点からそれは言えないという答弁ではなくて、確認できなかったというのは、これは確実にうそだというふうに思うんですね。うその答弁は絶対によくない。これは国会議員をばかにする話だと私は思います。
 この点について、安全保障委員会がしっかりと調査をする、そして真相の解明を行うということを委員会で取り上げていただきたいとお願いしたいと思います。
田並委員長 後日、これも理事会で別途協議をさせてもらいますが、よろしゅうございますか。
前原委員 それでは、よろしくお願いいたします。
 あと、警察にもう一つお話を伺いたいんですが、朝鮮総連の非公然組織と言われていました学習組が解散されたかどうかというような話があります。解散されたのではないかという言い方がなされているわけでありますが、私が在日の方に話を伺うと、どうもそれは具体的には違うみたいだということなんですが、学習組あるいは学習組と言ってもいいのかもしれませんけれども、この学習組の解散命令というのは、朝鮮総連から出たのか、あるいはその上部団体の朝鮮労働党組織部から出ているのかどうか、あるいは統一戦線部から出ているのかどうか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
奥村政府参考人 議員お尋ねの点につきまして、先般、学習組に解散命令が出されたという報道がなされたことは、私ども承知をしております。
 この学習組は、朝鮮総連とその関係団体の中に組織をされておりまして、北朝鮮に絶対の忠誠を誓う非公然組織であります。
 警察といたしましては、公共の安全と秩序の維持という責務を果たす観点から、この学習組につきましても、重大な関心を持って情報収集を行っております。
 ただ、委員お尋ねの、実際に学習組が解散されたかどうか、また、だれが命令を出したのか、そして別の地下組織などに改組されているのかどうかということにつきましては、まさに私ども警察の情報活動の中身でありますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
前原委員 私が聞いた中では、それは警察も十分に調査をされていると思いますけれども、やはりまだ日本国内に工作員が数百の単位で存在をするし、また、何か暗号放送もまだ続いているらしいですね。そういうことも含めて、私の聞いた範囲の中では、別組織、もちろん非公然組織だったものがさらに非公然になるということで改組されたのではないかということですので、ぜひ、これは引き続き厳しく調査をしていただきたいと要望させていただきます。
 次に、朝銀の問題につきまして質問させていただきたいと思います。
 十月二十二日に東京地裁で判決がございました。朝銀にかかわる判決でありますけれども、資金不正流用事件で元理事長らに有罪判決を言い渡したということであります。
 この判決が今までの判決よりもより画期的だったのは、今までは、この朝銀関係の資金不正流用の問題とかは個人の問題として片づけられておりました。しかし今回の東京地裁の判決は、朝鮮総連の指示による、そしてまた朝鮮総連に送金がなされていたということで、組織ぐるみであったということがこの判決の中で明らかになっているわけであります。
 もちろん、第一審でありますので、まだこれから第二審、第三審と続くのかもしれません。したがって、この東京地裁の判決をもって事実が確定したということは申し上げませんけれども、朝銀の問題というのは、もし、組織ぐるみであるというこの東京地裁の判決が固まった場合は、捜査当局としては、今までは個人の判決であった、一度朝鮮総連の家宅捜索はされていますけれども、一回きり。総連の組織ぐるみの犯行だということになれば、さらに朝鮮総連の家宅捜索、あるいは朝鮮総連の組織のトップ、やはり実質責任者の捜査というところまでいかないといけないというふうに私は思うんですが、その点についてお答えをいただきたいと思います。
栗本政府参考人 お尋ねの朝銀東京にかかわります事件につきましては、警視庁におきまして、当時の朝銀東京の理事長らと朝鮮総連財政局長らが共謀の上、個人的な目的のためではなく、朝鮮総連の使途に充てる目的で敢行した、約八億四千万に上ります組織的かつ計画的な業務上横領事件として摘発したものでございます。
 委員御指摘の、東京地方裁判所におきます有罪判決につきましては承知をいたしておりますが、お尋ねの事件につきましては、これまでのところ、警察といたしまして厳正な捜査をした結果、法と証拠に基づき刑事事件として取り上げるべきものにつきましてはすべて立件したものと承知をしております。
前原委員 今後の追加的な、組織ぐるみとしての捜査ということはもうしないということですか。刑事事件として立件したということは、もう立件済みという意味ですか、今のは。
栗本政府参考人 ただいま答弁いたしましたとおり、これまでの捜査の中で得た証拠等に基づきまして、我々として、刑事事件として立件すべきものは立件いたしたということで御理解を賜りたいと思います。
前原委員 もちろん、皆さん方の努力があったからこそ、判決の中身で組織ぐるみというものにまで至っているのはそのとおりだと私は思います。私も話を聞きましたら、時効の問題とか、いろいろ難しい問題があるということを伺いましたけれども、組織ぐるみの犯罪であるということが明らかになって、しかし、それが総連に、本丸に及ばないというのもこれまたおかしな話ではないかというふうに思うわけですね。ですから、ここはぜひ、もう終わったということではなくて、私はさらなる、どういう形でその可能性があるかということも含めて努力をしていただきたい、要望させていただきます。
 それから、金融庁、伊藤副大臣お越しでございますが、簡単に二つ御質問したいと思います。
 一つは、私が質問主意書を出させていただいたんですが、質問主意書の中身というのは、朝鮮総連と密接に関連のある傘下団体の役員というものは定款の朝鮮総連の役員には含まれない、元役員にも含まれないということなんですが、これはやはり、密接な関連のあるということにもかかわらず定款違反でないという質問主意書の答弁が来ているということは納得できない。これについて改めて御答弁いただきたいことと、あと、定款に直接かかわらないかもしれませんが、新たに出発した関西の兵庫ひまわり、ミレ、二つの信組の中に役員、北と合弁事業をやっている人がいますが、これは定款違反にならないんですか。この二点について御答弁いただきたいと思います。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 破綻朝銀の新設受け皿組合の定款においては、朝鮮総連の役員経験者は役員としないという規定が設けられており、その趣旨は、定款にも規定されているとおり、組合の経営の独立性を阻害するおそれのある者を排除することと承知しております。
 朝鮮総連の中央本部、地方組織の役員であった者は、基本的に朝鮮総連の役員経験者に該当すると解されるが、いわゆる傘下団体の役員経験者については、定款の趣旨である経営の独立性を阻害するおそれのある者に該当するかどうかという観点から、実態を踏まえて判断することとなっております。
 こうしたことを踏まえ、いわゆる傘下団体の役員経験者であることのみをもって定款に違反するものではないと考えております。
 それから、もう一つの御質問でございますけれども、破綻した朝銀近畿の新設受け皿組合の定款において、先ほどからお話をさせていただいているように、朝鮮総連の役員経験者は役員としないとの規定が設けられており、その趣旨は、定款にも規定されているとおり、組合の経営の独立性を阻害するおそれのある者を排除することであると承知をいたしております。
 兵庫ひまわり信組及びミレ信組は、みずから事業を営む商工業者が中心となって、組合員の相互扶助を目的に設立されたものであることから、前原議員が御指摘の、北朝鮮と合併事業をしていることのみをもって、定款に規定する経営の独立性を阻害するおそれがある者に該当するとは考えておりません。
 いずれにせよ、当局としては、近畿三組合の役員体制について、定款に違反しているという事実は承知をいたしておりません。
前原委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、今副大臣が御答弁のように、しゃくし定規に、言ってみれば、独立性を阻害することにはならないので、傘下団体の役員だからといって定款違反には当たらない、しかし、傘下団体の役員であっても独立性を阻害する人がいれば、それについては定款違反だ、今の説明だとこういうことだと思います。
 そして、また具体的に北との合弁の話は、きょうは名前を出しませんでしたけれども、具体的な事例をもって言った場合には、また具体的なことでお答えをしていただきたいというふうに思います。
 終わります。
田並委員長 次に、田端正広君。
    〔委員長退席、末松委員長代理着席〕
田端委員 公明党の田端でございます。
 本日からクアラルンプールで日朝正常化交渉が再開されたという意味では、大変きょうは時を得たといいますか、タイミングのいいときに委員会を開かせていただいていると思いますが、この北朝鮮の問題についてはここ一カ月半、本当に大きな変化があったと思うわけであります。
 九月十七日に小泉総理が訪朝されて、そして今月の十月十五日に五人の方が帰国をされた。こういう流れの中で、今回また、十月の二十四日にこの被害者五人の永住帰国ということを政府として決定されたという流れの中で正常化交渉、こういう段階になっているわけでありまして、そういう意味では、今は大変大きな、大事な時期を迎えている、こういう思いがいたします。
 それで、まず最初にお伺いしたいんですが、きょうの日朝正常化交渉の中で、日朝双方で拉致事件真相解明のための拉致解明専門チームをつくるというふうなことが合意されたというニュースがちょっと入ってまいりましたが、もし政府の方でそういうふうなニュースをつかんでいれば、ちょっと御報告いただきたいと思います。
田中政府参考人 私どもが承知いたしますところ、まだ最初の日でございまして、交渉そのものは継続をしているということでございます。
 日本側から非常に強く求めているのは、まさに拉致問題と核の問題でございますし、拉致の問題につきましては、今、北朝鮮におられるお子さんたち、家族の日本への帰国ということを強く求めているということでございます。
 今後、この拉致問題自身はまさに国交正常化交渉の最優先課題の一つとしてやっていくということでございますし、それを具体的にどういう形でやっていくかということも含めて、まさに今回の正常化交渉の中で議論がされるというふうに考えております。まだ、何ら決まったものはございません。
田端委員 まだ決まっていないということでありますが、それでは、具体的にこの拉致問題の解明についてお尋ねしたいと思います。
 今回のこの五人の方の永住帰国、そして家族の方を日本に一日も早く呼び寄せるといいますか、早期帰国を要請する、この決定というのは大変大事だと私は思いますし、また、拉致という事件のあった、原状回復という意味において、この政府の決定というものは私は評価したい、こう思っております。
 ただ、問題は、やはり人間というのは、親子の情といいますか、そういうものがあると思います。そして、子供さんが北朝鮮にいるために物も言えないようなこととか、微妙なことがたくさんあるんだろう、こう思います。それだけに、どういう形で今後この家族の方、子供さんたちを日本に帰国させるのかというその手だてがまだ見えていないわけでありますが、その交渉を外務省としてはどういう決意でされているのか。家族の早期帰国の実現についての大臣の御決意をお尋ねしたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃいましたように、二十四日に官房長官が発表いたしまして、この五人の被害者の方々については今後とも日本に滞在をしていただくということで、自由な環境の中で家族全員の今後の方針についても決めていただくということが大事である、そういう考え方でおります。
 先ほど来申し上げていますが、拉致の問題については、これは今始まっている国交正常化交渉の中の最優先課題ということでございますので、これを最優先課題として、北朝鮮側にこの事実関係の解明等々につきまして強く求めていきたいと考えております。
田端委員 先日、北朝鮮外務省アジア局の朴龍淵副局長、日本担当の責任者の方でありますが、家族訪問、あるいは一時帰国、永住帰国を初め、本人の希望によってすべて保証することを表明しているというふうに言っているわけでありますが、このことが本当に担保されているのかどうかという点が、まさに子供さん、家族の方が北朝鮮にいるだけに、そこのところがどうなるのかということが大きな問題だと思うわけであります。特に、蓮池さんとか地村さんなんかは子供さんには日本に行くということは言っていないということでありますから、そういった点がまた非常に大きな問題と思いますし、また、曽我ひとみさんは、おとついですか、言っておられることに、家族の方から私たちを捨ててしまったと誤解されることが心配だということを涙ながらに語ったということであって、まさにこうしたことは、人間の情愛といいますか、そこのところはやはり、外交問題ではあるけれども、しっかりと踏まえなければならない大事な点だ、こういう思いがします。
 したがって、五人の方の北朝鮮に残された家族の安全とか言動とか、そういったいろいろなことが心配されますから、そういう細心の配慮をして外務省は今後この家族の方の帰国ということについての実現に当たらなきゃならないと思いますが、もう一度そこのところを確認したいと思います。
川口国務大臣 今、田端委員がおっしゃった点はまことに重要な点だと私も考えております。そういう点をきちんと踏まえて、官房長官が二十四日に発表なさいました方針、これを基本として北朝鮮側に、事実解明、あるいは家族の安全の確保、早期の帰国といったことを目指して交渉していきたいと考えています。
田端委員 内閣官房の方にお尋ねしたいと思います。
 蓮池さんなんかは婚姻届も出されて、お子さんの出生届も出されたということを伺っておりますが、そういう意味では、法律的といいますか、法的には日本人であるということははっきりしているんだと思います。しかし、これから日本の社会にどう溶け込んでいくかということがこれからの経過措置として大変大事だろう、そう思います。
 それで、拉致事件に関する専門幹事会というのが安倍官房副長官のもとに開かれているということでありますが、家族の永住帰国という方向に向けて、例えば教育問題とか住居とか就職とか、いろいろなことがこれから起こってくるんだと思いますが、自治体との問題、あるいは心のケアとか、あるいは社会保険といいますか、そういったことも含めて、そういう一つ一つの日本社会に溶け込んでいただくための状況づくりというもの、不安を取り除くということ、こういった点についてどう対応されているのか。中山参与の方でいろいろと御心配いただいているようですが、その辺のところ、もし御報告していただくことがあれば、お願いしたいと思います。
井上政府参考人 お答えいたします。
 今委員の方から御指摘がありましたとおり、被害者の方々及びその家族が我が国の社会に溶け込み、安んじて生活のできる環境をつくっていくことが急務であり、政府や関係地方自治体が密接に連携協力しながら一体となって支援を行っていく、そういうことが必要であると考えております。
 かかる認識に基づきまして、今般、拉致問題に関する専門幹事会において、総合的な支援策を検討し、取りまとめることを決定したところでございますが、今後、関係地方自治体と密接に連携協力しながら、きめの細かい支援について検討を行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
田端委員 曽我ひとみさんの子供さんのことでお尋ねしたいと思いますが、旧国籍法でいけば、一九八四年以前に出生している長女の方は日本国籍がどういうふうになるのかということが一つあろうかと思います。
 それからもう一点は、御主人の元米軍兵士のチャールズ・ロバート・ジェンキンスという方の問題でありますが、この人が兵役中に北朝鮮に入国したと言われていることでもあり、米国における軍法上の罰則というのは大変厳しいものがあろうと思いますから、ここのところは米国と外務省がどういう接触をされているのか、日本はどういう形で受け入れるのか、その辺の問題について、もし御報告していただければお願いしたいと思います。
田中政府参考人 委員お尋ねがございましたジェンキンス氏の訪日に際しての取り扱いということでございますけれども、委員御指摘のとおり、米国との関係があるわけでございまして、私どもは既にアメリカ側との間で意見の交換を行っているということでございますけれども、まさにその事実の認識、どういう事実の認識かということも含めて、本件、いろいろ影響があり得る問題でございますので、現段階について、具体的な内容について、いまだお答えができる状況ではないということでございます。
田端委員 横田めぐみさんのお子さんと言われるキム・ヘギョンさんのことでお尋ねしたいと思いますが、新聞記事等の写真を見ていても、大変愛くるしくて、横田めぐみさんにそっくりといいますか、非常によく似た美人だと思います。そういった意味で、横田めぐみさんの御両親の気持ちを察すれば大変複雑なものがあろうかという思いもいたすわけでありますが、DNA鑑定でも明らかになったわけでありますが、しかし、まだ十五歳ということでありますから、このキム・ヘギョンさんはどういう形でどうなるのかということが大変心配でもあります。
 それで、一つは国籍がどうなるのかということ、それから、この間マスコミの会見の中で、おじいさん、おばあちゃんに北朝鮮に来てほしい、こういうことを言っておられるところが映っておりましたが、そういう意味で、今後このキム・ヘギョンさんを、国籍とかということよりも、まず実質的にどうするのかということが大事だと思いますので、御本人の意向もあると思いますが、また横田めぐみさんの御両親の気持ちもあろうと思いますし、そういったところをよく勘案されて、そして本人を、例えば日本に移住するのか、留学するのか、どうするのか、いろいろなことが考えられると思いますが、そこは慎重に、しかし本当に素直に皆さんも納得できるような、国民の皆さんからも理解できるような、そういう対応をすべきじゃないかと思います。非常に難しい問題だと思いますが、外務省はどういうふうなお考えなんでしょうか。
田中政府参考人 まさに委員御指摘のとおりの複雑な問題があるということでございます。横田めぐみさんの御両親の御意向というのもございます。また、この方のお父さんが朝鮮人であるという実態もあるようでございます。本人が未成年であるということもございます。
 ですから、まさに委員が指摘されたように、できるだけ自然な形で、本人の気持ちであるとか、それから横田めぐみさんの御両親のお気持ちであるとか、そういうことを十分勘案しながら、できるだけ早く再会ができるように努力をしてまいりたいというふうに考えています。
田端委員 それからもう一方では、亡くなったとされる方々のことについてでありますが、その間、増元さんのお父さんも、先般力尽きてお亡くなりになったわけでありまして、亡くなったとされる方々の前回の政府調査団の報告の中を見てみても、いろいろな矛盾があるようでございまして、家族会の方からは、書類等に二十五の矛盾点がある、こういう指摘がされています。
 それで、例えば、横田めぐみさんを除く七人の方の死亡確認書はすべて六九五病院から発行されているわけでありますが、死亡した場所はばらばらなのに同じ病院から証明書が出ているという点では、非常に納得できないという御家族の思いはそのとおりだ、こう思うわけであります。
 それから、横田めぐみさんの入退院の台帳も、通し番号の三―二三九というその番号が次の行の男性にも同じ番号がある、こういうことでありまして、これも非常に不可解な点であります。
 それから、市川さんと増元さんの結婚登録申請書の生年月日に誤りがあるという点もおかしいことだと思います。
 だから、そういう意味では、偽造されているんじゃないかというその思いはやはり疑問点として残るわけでありまして、そういう意味では徹底した事実解明という点は今後も必要だと思いますが、政府の方としては、第二次調査団のようなものを出す用意はあるのかどうか。本日、正常化交渉の中でも議題になっているかもわかりませんが、やはり現地調査が私は必要だ、こういう思いをしているんですが、その点についてはどうでしょうか。
田中政府参考人 生存が確認されていない拉致被害者の方々にかかわる事実究明、これに関して、種々の疑問点あるいは矛盾点といったものを家族会の方から出していただいたわけでございまして、私どもとしても、これを北朝鮮側に示す、これは政府交渉の中でもそういう疑問点、矛盾点というのを示すというふうに考えておりますし、その中で議論をすることもさることでございますけれども、北朝鮮側の反応というものも踏まえました上で、それから、今までの第一次の調査団の結果というものもございますし、鑑定結果ということもございますし、そういうものを総合的に検討して、当然のことながら、現地調査の必要が出てくる場合にはしかるべく対処したいと思います。当面は、今回の正常化交渉の中で結果的にどういう結論が出るかということを見きわめたいというふうに考えております。
田端委員 この拉致問題というのは、私は、そういう意味では大変、国際法を踏みにじっている行為でありますから、国際的な問題としてしっかりと取り上げる必要がある、つまり国連という場に議題にのせる必要があるんじゃないか、こういう思いがいたします。
 例えば、韓国においても五百人近い方が拉致問題として上ると言われているわけでありますから、そういう意味で、北朝鮮をこの国際社会の中にやはりどう引っ張り出すかという問題でもあろうかと思いますから、ぜひ、国連の場で何らかの形でこの問題を、例えば委員会を設置していただくように努力していただいて議論をするとか、その解決に向けて、そういう国際世論喚起というものをする必要を痛切に感じているんですが、川口大臣、いかがでしょうか。
川口国務大臣 拉致の問題については、最優先課題として、現在、国交正常化交渉の中で取り上げているわけでございます。
 また同時に、委員がおっしゃるように、国際世論にこれを訴えていくということも非常に重要なことでございまして、私も、外国の外務大臣とお話をする際、あるいは国際会議等の場で、この問題については随分取り上げましたけれども、そういった形で国際社会の理解と協力を得て解決をするという考え方も、これも大事だと思います。
 具体的に、それでは、委員のおっしゃるような、国連の場で委員会をつくる、あるいはほかにもあるかもしれませんけれども、どういう方法がいいかということにつきましては、今まさにこの問題について北朝鮮と二国間の交渉の中で取り上げているということでございますので、今後の進展あるいは北朝鮮の対応等を踏まえながら、何が一番効果的な方法かということについて考えていきたいと思います。
田端委員 次に、北朝鮮の核開発の問題についてお尋ねしたいと思いますが、昨日、APECで北朝鮮に対しての特別声明が出されるということで、参加二十一カ国が国際約束を遵守しろ、そういうことを求めたということは大変時を得ていると思います。
 この北朝鮮の核開発をめぐる国際合意というのは、一つは核拡散防止条約があり、そして二つは国際原子力機関、IAEAとの保障措置協定というのがあり、三つ目には米朝枠組み合意というものもあり、さらには南北非核化共同宣言というもの等々があるわけでありますから、こうした合意があって初めて国際社会からの援助というものが成り立っていたわけでありますが、この前提が崩れてきたわけでありますから、ここは北朝鮮に対して国際合意違反ということで明確に責任を求めていかなきゃならない、こう思うわけであります。
 それで、この正常化交渉の中で、拉致問題とあわせてこの核の問題、全面的な中止ということも迫っていく必要があろうかと思いますが、今この問題に対しての大臣の御決意はどういうふうにお持ちでしょうか。
 あわせて、防衛庁長官にお尋ねしたいと思いますが、これは先般、ケリー国務次官補とも会談されたようでありますが、アメリカとそれから韓国と、これは密接な連携をとり、また、お互いの役割もしっかりしてやっていかないと、この問題はなかなか難しいと思います。
 そして、例えばIAEAの特別査察とかということも、これは大きなテーマになっていくんだと思いますが、まず日本がこの問題に対してリーダーシップをとっていく、そして、北東アジアの安全ということに、防衛庁としても、長官としても、しっかりとした認識を持っていただいて世論を引っ張っていく、こういうことが大事ではないか、こう思いますので、両大臣に御所見をお尋ねしたいと思います。
    〔末松委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 この核開発の問題も、日朝国交正常化交渉の中での最優先課題と考えています。
 先般行われました日米韓の三カ国のAPECの際における共同声明で、ここでも、これが迅速かつ検証可能な方法でプログラムを撤廃するべきであるということでもう合意をしているわけでございますし、また、核問題を含む安全保障上の問題及び拉致問題に関して、日朝平壌宣言の完全な遵守なくして妥結することはないというふうにされているわけでございます。
 我が国としても日米韓の緊密な連携を行いながら、また、我が国としては韓国と並んで、日朝国交正常化交渉を行っている、そういう重要なチャンネルを、北朝鮮を説得するための重要なチャンネルを持っているということでございますので、その中でこれを最優先課題として取り上げて、北朝鮮に対して核開発のプログラムをやめるということをきちんと言っていきたいと思っています。これがありませんと、正常化交渉は妥結しないというふうに私も考えております。
石破国務大臣 日米韓の三国の意識が一致することが大事なんだろうと思っていますが、ただ、アメリカは、北朝鮮をいわゆる悪の枢軸、こう言っているわけですね。韓国は包容政策、太陽政策というのを継続しておるわけで、それで、日本はきょうから国交正常化交渉を再開した。それぞれ微妙に差はあるんだろうと思っています。
 しかし、先生御指摘のように、まさしくノドンというのは全日本を射程に入れているわけであって、これは、テポドンはまだ実戦配備ということになっていないわけですよね、相当技術が進んだと言われるが。とにかく全日本が射程に入っている、ということは、まさしく我が日本がイニシアチブをとっていって、日本、アメリカ、韓国三カ国の連携のもとに、北朝鮮に核開発をやめさせる、あるいはミサイルの技術、このことについてもやめさせるということが大事なのではないだろうか。
 ただ、そこにおいて、恐らく、なぜ核をつくっているのか、なぜミサイルを開発しておるのかというところまで結局は行くんだろうと思っています。そういうものをつくることによっておどかすことによって、経済的な支援が得られる、だからやるんだということで今まで来たのかもしれない。それを今外務大臣御答弁のように、そのことについての、つまりそういう核であるとか拉致であるとか、そういうことの懸念が払拭されない限り経済支援はあり得ないということを我が国としてはきちんと確認した上で、三国間の連携のもと、交渉に臨むべきだというふうに考えておる次第でございます。
田端委員 石破大臣のけさの所信の中にも、「重大な関心を持って積極的に対応していく」、こういうことをおっしゃっておりますので、ぜひそういう決意でお願いしたいと思います。
 私、大阪西成区というところに住んでおりますが、正直言って、非常に残念なんですが、覚せい剤の密売が大変多い地元であります。
 この問題、先ほど前原さんからもございましたが、私は、北朝鮮の密造、密輸による覚せい剤が日本にこの五年間大量に入っているというこの現実は、非常に関心を持っております。これも大変また大きな問題がある、大事な問題だろうと思いますので、ぜひ大臣、さっきもお話ございました、私も正常化交渉の議題にこれは取り上げるべき大きなテーマではないかと。
 一回一回の摘発されたキロ数を見ていても、大変なキロ数が出ておりますし、これは、摘発したのがこれであって、摘発されないで入ってきた量なんというのはこの何倍もあるんだろう、そういうふうに感ずるわけです。したがって、この薬物という問題に対しては、我が国は厳格にやるべきだと思いますので、ぜひ正常化交渉の議論にのせていただきたい。
 それから、海上保安庁、警察、協力して、ぜひ水際で何としてもこれは防いでいただきたい。私は現場でそういうことをいろいろ見聞きしてきている人間でありますので、薬物に対しては本当に厳しくやっていただきたい、こんな思いでございます。
深谷政府参考人 委員御指摘の覚せい剤の関係でございますけれども、御指摘のように、覚せい剤が現在我が国で最も乱用されている薬物というふうに言われておるわけですが、推計によれば、年間数トンから十数トン流入している、乱用者は数十万人から百万人規模というふうにも言われておりまして、現在は第三次覚せい剤乱用期というふうな深刻な状況だと私ども認識いたしております。
 御指摘のように、北朝鮮仕出しのものも含めまして、覚せい剤などの不正薬物、これは相当部分が海外からの海上ルートによって密輸入されたものであるというふうにも考えておりまして、これらの流入を水際で阻止する、これが極めて大事なことだというふうに思っております。
 このために、密輸入に関与している疑いのある船舶あるいは人物、こういうことに対する情報収集、それから分析活動、こういったものを推進する一方で、私どもは、巡視船艇、航空機、それから陸上からの監視機能、こういうものを強化しながら、警察や税関などの国内あるいは海外の関係取り締まり機関とも密接に連絡をとりながら、不正薬物の水際阻止に全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えております。
田中政府参考人 国交正常化交渉との関係でございますが、これは前原委員の御質問に対して外務大臣がお答えしたとおりでございます。国交正常化交渉の場においてしかるべく取り上げ、北朝鮮側の誠実な対応を求めてまいりたい、かように考えております。
田端委員 以上で終わります。ありがとうございました。
田並委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうも質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。まず、私の基本的な考え方を申し述べさせていただきたいというふうに思います。
 日本の外交、防衛、安全保障、まさしく正念場を迎えている。にもかかわらず、日本政府の対応は失望の連続、政府の基本姿勢がなっていない、弱腰外交、覚悟がないというふうに申し上げたい。日本政府の危機感覚は麻痺してしまっているのではないかというふうに申し上げたいと思います。
 まず、日朝首脳会談でありますけれども、北朝鮮を国際社会の一員にするという努力、これは特にアジアの近隣国として常に行っていかなくてはいけない、これは当たり前の話でありますけれども、先月の日朝首脳会談は、初めから終わりまで北朝鮮のペースにすっかりはまり、日本の外交の甘さを世界にさらけ出す結果となった印象を強く持っているわけであります。私は残念でならない。
 それは、会談に臨むに当たりまして、我が国及び北東アジアの平和と安定についての政府の基本方針、原則がはっきりと確立されていないまま、専ら初めに国交正常化交渉の再開ありき、もしくは平壌宣言への署名先にありきという交渉姿勢、前のめりの姿勢で行われたとの感が否めないからであります。
 重要な懸案問題をたくさん抱えた北朝鮮相手の交渉の場の首脳会談ですから、場当たり的な対応ではなく、しっかりとした日本政府としての原則を打ち出すべきでありました。戦略的見地が私には見受けられない。総理大臣が、国の最高指導者として断固たる気迫も感じられない。拉致問題を初めとする国家主権の侵害、日本国民の人権侵害に対する激しい憤りや独裁国家に対する厳しい認識も極めて欠如していたというふうに言わざるを得ないわけであります。
 合意した日朝平壌宣言には、日本の植民地支配に関する謝罪あるいは北朝鮮への経済協力の約束という文言が明確に記されておりますけれども、北朝鮮が約束すべき、日本国として約束されるべき肝心の我が国及び日本国民の平和と安全に関する重要問題については一切書かれていない。拉致、工作船、また核兵器開発を認める言葉は書かれておりません。
 総理は、会談の中で、それらについて合意したというふうにおっしゃっておいででありますけれども、これだけ重要な外交交渉で、しかも相手が平気でうそをつく国家である、合意したことはやはりすべて文書でその場合は残して、宣言に盛り込まなくてはいけない。公式な記録に残らない場所で幾ら謝罪や口約束をされても、私は仕方がない。
 案の定、北朝鮮の国内での報道では、日朝平壌宣言の合意についての宣伝はなされておりますけれども、その宣言の中に拉致や不審船の文言がないがために、北朝鮮の国内の人々が、自分の国が行った拉致や不審船についてのその事実、ましてや会談の中での日本に対する謝罪などは知る由もないわけであります。
 また北朝鮮は、一九九四年の米国との米朝枠組み合意を結びました。しかしながら、国際原子力機関、IAEAの核査察を受け入れることに合意しましたけれども、その後、米国の査察要求をこうかつに避け続けている。そのような独裁国家とこれほどの大事な交渉をするのに緊張感がない。こんな一方的、不平等な宣言に署名し、国交正常化を再開するというのは到底考えられないと思います。相手は、世界第四位の軍事大国とも言われております。百万の兵を率い、そして十万のゲリラの専門部隊を擁しているという説もあるわけであります。
 このたびの日朝首脳会談、そして今後正常化交渉の成否については、また今後歴史が評価されることでありますけれども、我が国の外交、安全保障の原則と基本方針をきちんと確立しないまま交渉を進めていくこととなりますと、ますます国益を損ない、歴史に大きな禍根を残すことになるのではないかと私は懸念をいたしております。
 そこで、まず外務大臣に伺いたいと思います。
 まず、宣言の中に、拉致、工作船、核開発を認めるという文言をなぜわざわざ外したのか、それについての外務大臣としての評価、私は日本側のこれは明らかな譲歩だというふうに思います。言葉が入っていないから、きょう国交正常化交渉が始まりましたけれども、その問題については解決済みと言われてしまうのではありませんか。世界の笑い物になっている。いかがでしょうか。
川口国務大臣 今、マレーシアで国交正常化交渉が行われているわけでございます。日朝の平壌宣言に署名をすべきではなかったという御意見をお持ちの方がいらっしゃるということは承知をしておりますけれども、もしあのときに署名をしていなかったら、本日のこの交渉というのはないわけでございまして、そして、その交渉の中で、拉致問題や核問題を含む安全保障問題、それは委員のおっしゃった工作船の問題とかいろいろな問題を含むわけでございますけれども、そういうことを北朝鮮に対して話をしていくということにはなっていなかったということでございますので、ここで九月十七日に総理が宣言に署名をなさったというのは、問題の解決に向けて非常に重要なステップであったと私は思っております。
 そして、委員がおっしゃった、なぜ拉致あるいは工作船について、これを具体的に書いていないのかということでありますけれども、この平壌宣言、これはきちんと日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題について、北朝鮮側が、「このような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとる」という文言があるわけでございまして、拉致問題、工作船問題も当然この中に含まれているということでございます。含まれているからこそ、今これから取り上げていくということでございます。
 国交正常化を行うということ自体が北朝鮮にとっては非常にメリットのあることであります。こういった国交正常化をてことして我々はこれらの問題に対して北朝鮮側に対応を強く迫っていく、そういう考え方でおります。
樋高委員 防衛庁長官に伺いたいと思いますけれども、この宣言の中に、今外務大臣の言葉では、そこに意味として入っているからいいじゃないかという話なんですけれども、でも、国家間の公文書でありますから、やはりきちんとした言葉として入れておくべきであった、入れておかないよりは入れておいた方がはるかにいいと私は考えます。
 それと同時に、この国交正常化交渉というのは、もちろん拉致の問題、そして核の問題を含んでおりますので、やはりこれは外交問題であると同時に、私は、立派な防衛問題であるというふうに思うわけであります。そんな中において、この平壌宣言の中にやはりきちんとした言葉として盛り込むべきであったというふうに思います。
 防衛の観点からも、拉致、工作船、核開発、入れておくべきであったと私は思いますけれども、長官、いかがお考えになりますか。
石破国務大臣 その点は認識の相違なんだろうと思いますね。今外務大臣から答弁がありましたように、あるいは総理が答弁なさっておられますように、このことがすべて包括的に入っておるわけです。そして、拉致の問題、そして工作船の問題、昨年の東シナ海ですか、奄美沖の工作船を引き揚げたりということもこれあり、明白な証拠というものは出てきているわけですね。北朝鮮がどのようにその場で、文章に入っていないからといって言い逃れをしようとも、我が政府としては、その問題が解決しない限り国交正常化をするつもりがない。
 あわせて、我が国は、先生が先ほど来御指摘のように、独裁専制国家ではないわけですよ。我が国の外交というのはすべて国民世論の支持と理解のもとに成り立っておるわけであって、国民世論、そしてその支持のもとに、そういうような拉致、工作船、ミサイル、核、そういうような問題が解決しない限り国交正常化はあり得ないということであって、先生の御懸念は結果としては当たらないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
樋高委員 それでは、外務大臣に伺いますけれども、この国交正常化交渉ですが、これは何を第一の目的としてこの交渉を行っているのか。拉致問題の解決なのか、核問題なのか。先ほど来、議論の中で、最優先課題で拉致と核問題という話もありますけれども、何を目的として、何を目指して交渉しているんですか。
川口国務大臣 日朝国交正常化、これは、第二次大戦以降不正常な状態が続いている我が国と北朝鮮の関係を正常なものにしていくということでございまして、日本の平和と安全、そしてこの地域の平和と安全、さらに世界の平和と安全を増すような形で、それに資する形でこれを実現していくということがこの交渉の目的であるわけです。したがいまして、そのような観点から、拉致問題、そして核の開発の問題を含む安全保障問題を最優先課題としてこれを取り上げていくというふうに考えています。
樋高委員 最優先課題ということは、それは順番を意味するんでしょうか。つまり、北朝鮮の方は経済協力を求めてくる、日本の方は拉致の問題と核の問題を最優先課題と言っている。これは、まず先に議論の順番として、いわゆる段階を踏んで段階方式でやるのか、同時並行方式でやるのか、いかがでしょうか。
川口国務大臣 これは平壌宣言にも書いてありますけれども、経済協力、これについては正常化があった後で行うというふうに書いているわけでございます。
 交渉の過程では、この拉致の問題、そして核問題を含む安全保障問題を最優先課題として取り上げ、日朝間にさまざまな問題がございますので、その問題を包括的に協議して、国交正常化といいますか、その交渉の妥結をする、そして、その後で経済協力が行われる、そういうことでございます。
樋高委員 国交正常化になってから経済協力するのは、それは当たり前なんですけれども、経済協力の中身についての議論もスタートするのですかどうですかということなんです。
川口国務大臣 二国間で行う交渉でございますから、何をどういう順番でどのように取り上げていくかということについても、二国間の話し合いの対象になることでございます。
 我が国の立場としては、先ほど申しましたように、拉致の問題と核の問題を含む安全保障問題を最優先課題とする、そして、さまざまな日朝間の問題、懸案について、これを包括的に協議していくということでございます。そして、平壌宣言を北朝鮮側が遵守する、守るということがなければこの国交正常化の交渉は妥結をしない、そういうことでございます。
樋高委員 では、お尋ねの仕方を変えますけれども、拉致問題の解決なくして国交正常化なしということでありますが、何をもって拉致問題の解決というふうに今考えていらっしゃるんでしょうか。
川口国務大臣 先般、官房長官が、この問題については、生存者の御家族の方についてその安全が確保される、そして早期の帰国が行われる、そしてその日程が早く確定をされるということが大事で、その結果として、その御本人、生存者の方々及び御家族が自由な意思決定ができる環境のもとで意思の決定をなさるということを確保するということでお話しになられましたけれども、この拉致問題の解決ということについては、まさに被害者の方々に対して、及びその御家族の御意向も十分に踏まえながら、北朝鮮側に対して強く事実の解明を求めていくということで、また、被害者の御家族の方の帰国についても早期に実現をするようにしたい。そして、その上で、事実の解明を行いながら、その上で北朝鮮に対してどのような対応を求めていくかということについては、国交正常化に向けた過程の中で総合的に検討していく、そういうふうに考えています。
樋高委員 要するに、この方針すらはっきりしてないんですね。要するに、拉致問題の解決、そのゴールは交渉の過程の中で総合的に考えていく。つまり、例えて言うならば、百メーター競走を始めた、しかしながら、その百メーター先のゴールをどこか適当に前にしたり後ろにしたりしますよと。もちろん、交渉の段階ですから、さまざまなことをいろいろ勘案しながらやらなくちゃいけないのも十分理解しています。しかしながら、日本政府としてのきちんとした、もちろん明かせない部分もあるでしょう、それも理解しています。しかしながら、きちんとした原則を持たなくてはいけないですよということを申し上げたいわけであります。
 例えば、八十名とも言われておりますけれども、拉致された方々の人数がはっきりしたらそれが解決に当たるのか。では、拉致された方々の現状把握がなされた段階で解決とするのか。帰国がなされたり、もしくは拉致された方々が復帰なさったら解決されたとするのか。もしくは、責任の所在がはっきりして、そして補償問題がきちんと解決をし、きちんと補償したお金が振り込まれて、そして犯罪者が引き渡しをされ、そして裁判まで終わった段階で、その時点で解決されたと見るのか。どこの段階ですか。
川口国務大臣 まさに今、事実解明に向けて北朝鮮側と交渉を始めたということでございます。小泉総理との会談の中で金正日国防委員長は、これについて謝罪をし、これを行った人を処罰したと言い、そして再発を防止するということを言ったわけでございますけれども、北朝鮮側に対してどのような対応を求めていくか、その結果として何をもって解決とするか、北朝鮮にどのような対応を求めていくかということについては、まさに今事実解明を行って、その上でこれを総合的に考えていく、そういうことでございます。
樋高委員 事実解明を行ってから、それはもう当然でありますけれども、方針がないということであります。
 では、同時に、核問題の解決なくして国交正常化はあり得ないということだと思いますけれども、核問題の解決、これは具体的にどういうことですか。どういう状況が満たされたら核問題は解決されたというふうに政府として認定をなさるんですか。はっきりと答えてください。
川口国務大臣 北朝鮮のように近いところに核の開発のプログラムがあるというのは、我が国にとって本当に恐るべきことでございまして、この間の日米韓三カ国の首脳会談がAPECの際にありましたけれども、その中でも北朝鮮に対して、迅速かつ検証可能な方法でウラン濃縮プログラムを廃棄するということを言っているわけです。そして、日朝平壌宣言において、北朝鮮が最近行ったコミットメントに従って、査察の受け入れを含むすべての国際的な義務を完全に遵守をするということ、これを求めていく、そういうことでございます。
樋高委員 北朝鮮の核の脅威について伺いたいというふうに思います。
 私は、核はもう完成している、でき上がった可能性も高いのではないかと思っております。自由党、小沢一郎党首は大分以前からそのことを指摘させていただいてまいりました。核開発問題、開発という二文字が入っているから、もちろんずっと、常に開発を続けるものなのかもしれませんけれども、まだあたかも、この開発という言葉が入っているがゆえに、全然その開発は終了していないかのごとく私は錯覚に陥っている部分もある。
 やはり安全保障、危機管理ということを考えたときに、安全保障は常に最悪のことを想定しなくてはいけませんから、もう既に二、三発、アメリカの情報によりますと核を保有しているというふうにも分析なさってありますけれども、核の問題、これは現実をきちんと見た上で手を打っていかなくちゃいけない、備えていかなくちゃいけないというふうに思うのでありますが、まず外務大臣、私は、核はもう既に保有をしているというふうに思いますけれども、いかがお考えになりますか。
川口国務大臣 核その他の大量破壊兵器が近くの国に存在をしている可能性があるということは、これは国際社会としてももちろん懸念を持っている問題ですけれども、何よりも我が国の安全保障という観点から非常に重大な問題である、非常に重大な懸念を持っている問題であるわけです。
 そして、具体的に、北朝鮮が今核を持っているかどうかということについては、これはアメリカと緊密な連携を、連絡をとってきているということもございまして、一定の情報は持っておりますけれども、何を具体的な情報として持っているかということは、アメリカとの信頼関係もございますので、これについては説明を差し控えさせていただきたいと思います。
樋高委員 では、防衛庁長官、どういうふうに防衛庁としては分析なさっておいででしょうか。
石破国務大臣 これは、見たわけじゃないからわからないというのが一番正しいお答えだろうと思いますね。ただ、アメリカで出しております、例えば「拡散―脅威と対応二〇〇一」でありますとか、ラムズフェルド国防長官の本年十月十七日の記者会見、先生よく御案内のとおりであろうと思っております。
 そこで、今回、ウラン型という話が出てきたわけですね。今までプルトニウム型という話だったのがウラン型という話になった。ウラン型は広島型とも言われるわけですが、これは実験などをやらなくても爆発をする。実際、広島はそうであった。しかし、それを持っておったとして、では果たして運搬手段はどうなるんだというようないろいろな議論を詰めていかねばならないことなんだろうと思っています。
 しかしながら、開発という言葉に惑わされて、脅威というものをいやしくも軽視してはならない、御指摘は先生のおっしゃるとおりであろうというふうに思っております。であらばこそ、きちんとした査察を受けるということを国際社会できちんと言っていかねばならぬのではないか。私どもは、これを軽視しておるつもりはいささかもございません。
樋高委員 防衛庁長官、別に責めているわけではございませんで、きちんとした認識をお話しいただければ結構です。この核の問題もまた引き続き回を追って議論させていただきたいと思っております。
 不審船の話でありますけれども、同じく防衛庁長官に伺いますが、去年、平成十三年十二月二十二日に事案が発生をいたしましてから、引き揚げられましたのが九月の中旬、この間約九カ月かかっている。政府で閣議決定、引き揚げが正式決定したのが六月二十一日と伺っております。
 やはりこういう日本の安全を脅かす、日本人の生命、財産、自由、人権、文化に危害を与えるという案件につきましては、速やかに、スピーディーに対応しなくちゃいけない。世界が、例えばこういう事案が発生してから日本は一体どの程度の危機意識を持っているのかということで見ているわけであります。そんな中にあって引き揚げるのにそれだけ時間がかかった。
 私は、もっともっと、こういうときこそ、もちろん、あそこは外海ですから波が荒いとか、またその燃料が漏れて環境問題があるとか、そういうことも伺っておりますけれども、こういうときこそ国が率先してきちんと引き揚げをする。もちろん所管は国交省ですから、保安庁ですから違いますけれども、同じく危機管理をつかさどる防衛庁長官として、やはり私はもっと早く引き揚げるべきであったと思いますけれども、いかがお考えになりますか。
石破国務大臣 おっしゃるとおり所管外でございますから私は軽々なことは申し上げられませんが、私も、大臣になる前ですから、先生が御指摘のような、同じような疑問を持ちました。そういうような船を引き揚げた経験のある方にも随分聞いてみました、何でこんなに時間がかかるんですかと。しかし、まさしく政府が言っておる、海が荒れるということ、そして、あれを揚げるのはそんなに容易なことではないんだということは本当だということを聞いてみました。
 私は、いずれにいたしましても、総理が御訪朝になる前にあの船が揚がったということ、ここに大きな意味があるだろうというふうには認識をいたしておる次第でございます。
樋高委員 時間がありませんので、今度はちょっと基地の問題に移らせていただきたいと思います。
 石破長官に伺いますけれども、厚木基地の問題をめぐりまして、今大きな問題となっております。十月十六日、第三次厚木基地騒音訴訟の一審判決が出まして、国に二十七億円の賠償命令が出ました。
 私は、そもそも、日本とその周辺の安全のためには日米安保を維持すべきであると考えますし、日本も率先して世界の平和と安定に取り組んでいかなきゃならないとはもちろん思っております。しかしながら、きょうの長官の所信の中にもありましたとおり、やはり自衛隊が、もしくは日本に駐留する軍が地域の方々の理解を少しでも得る、そして信頼を得るということは私はとても重要な問題、重要なことであるというふうに思いますけれども、住民の皆さんは何年間も騒音に悩まされ続けまして、ストレスを感じたり、人によっては、精神的ではなくて身体的に支障を来している方もいらっしゃるということであります。
 ここに、年度別の苦情件数の一覧がございます。平成十二年度五千四百八件、平成十三年度五千二百七十一件、平成十四年度は九月までの集計で三千五百十一件。もちろんこれは苦情件数だけですから、この件数をもって一概にはかれない部分もありますけれども、やはりこういったまず身近なところ、騒音対策にきちんと努力をしていかなくてはいけないと思うんですけれども、この件数が一向に減っていかない。
 この十六日に出ました一審判決では、こういう判決です。地元自治体が騒音解消に向けた努力をしているにもかかわらず、国は日米合同委員会など米側との交渉の場を生かして十分に努力していないというふうに、厳しく国の対応を批判しております。
 まず、この判決を長官はいかに受けとめていらっしゃるか、伺いたいと思います。
石破国務大臣 これは既に委員御案内のことかと思いますが、私ども、きょう控訴状を提出させていただきました。その裁判所の判決の言わんとすることは私どもは真摯に受けとめていかねばならないだろうと思っております。
 ただ、控訴いたしましたのは、例えばうるささ指数というのを御案内かと思いますが、八〇までの地域しか認めていないということでありましたが、今回七五までこれが拡大をされたということ、あるいは危険への接近というものについて、そういうような考え方を認めていただけなかったということがありまして、控訴いたした次第であります。
 しかし、その裁判所の判決の意味というものは真摯に受けとめねばならないと思っている。しかし、恐らく、委員が最初御指摘になりましたように、さればとて、では、NLPの必要性というものもこれはあるのだろう。そして、訓練の回数というのは、それは気象の条件にも左右をされるだろう、あるいは周囲の安全保障環境にも左右されるだろうということだろうと思っています。
 そうしますと、騒音対策は、私ども万全を期してまいります、万全を期してまいりますが、問題は、どのようにしたら抜本的な解決が図れるかということなんだろうと思っています。では、今、硫黄島でナイト・ランディング・プラクティスというのをやっているわけですが、ここは台風常襲地帯で、非常に厳しいということがございます。そういうような非常に難しい環境の中で、これをどういうふうに解決を図っていくか。
 私どもは、控訴をしたからといって、裁判所の判決に異を唱えるとかそういうことで申し上げておるのではありません。国の責任を認めないとか、そんなことを申し上げているのではありません。先ほど申し上げましたうるささ指数の問題であり、危険への接近の理論について、そこはいかがなものでしょうかということで控訴したのでありまして、騒音対策に万全を期すとともに、国の責任というものについて真摯に受けとめるということはいささかも変わりはございません。
樋高委員 石破長官にかわって、騒音対策しっかりやってくださったと地元の方々が、それは別に厚木に限ったことではございません。嘉手納、小松等々、横田もございます。あちこちに、やはりすぐ身近に住んでいらっしゃる方がおいででありますので、私自身はそもそも、例えば自衛隊については理解をしている立場をずっと貫かせていただいておりますけれども、やはり同時に、そういった方々の思いをきちんと酌んでいただきたいし、大臣がかわったから、長官がかわったからやはりここは変わったんだというふうに、きちっと実感が持てるようにしていただきたい。
 騒音被害に関しましては、また過去の賠償、私は、ただ単に現実を見ないで申し上げているわけではございません。やはり国としてしっかりとした責任を持って行動していただきたいということを申し上げているわけであります。
 原告団は、話を聞きますと、大分高齢化をなさって、政府、国の方は控訴をしたということでありますけれども、いわゆる原告側は、判決の一部には不満はあるけれども、早期結審を図るために控訴を断念したということでありますので、そういった気持ちも十二分に酌んでいただきたいというふうに思います。
 やはり日本と周辺地域の安全を守るためにも、日米安保を維持していくことはもちろん重要でありますけれども、基地周辺住民の生活がそのために犠牲になるようでは、なかなか国民の理解は得られていかないと思いますけれども、今後も対策にきちんと力を注いでいただきたいと思います。最後にその決意をもう一度お聞かせ願いたいと思います。
石破国務大臣 おっしゃるとおりであろうと思います。ですから、騒音対策というものにどのようなことができるか、これは防衛施設庁長官のもとに私的懇談会を設けまして、いろいろな御指摘も受けております。できればそういうことを来年度からでも実現をしていきたいというふうに考えております。
 他方、日米安保の必要性あるいは自衛隊の訓練の必要性等につきましては、委員と私と全く考え方は一緒なんだろうと思います。国がきちんと負うべき責任は負ってまいりますし、そして、基地の周辺の皆様方の大変な苦労の上に日本の安全が成り立っておる、あるいは極東の安全が成り立っておると思います。だから甘受をせよということではなくて、要は、どうすれば本当に抜本的な解決策になるんだろうかということを、このことに必要性を、認識を共有する者同士で本当に真摯な議論をさせていただければありがたいと思っておる次第でございます。
樋高委員 しっかりお願いいたしたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
 ありがとうございました。
田並委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 私は、新しく就任されました石破防衛庁長官、そして川口外務大臣に質問を行いたいと思います。
 まず最初に、私も米軍基地の問題です。
 先ほどの質問にもありましたが、長崎県の福江空港に、在韓米陸軍所属の特殊作戦用ヘリコプターMH47三機がきょう実は低空飛行訓練をする予定でしたが、米軍の側から中止になった、こういう報道がありました。
 先ほどの説明だと、外務省は、この低空飛行訓練をあたかも日米地位協定第五条に基づいて許されている訓練であるかのように答弁をしておりましたが、これは全く違うんじゃないかと思いますけれども、外務大臣、いかがですか。
川口国務大臣 これにつきましては、今委員がおっしゃられましたように、この訓練は行わないということが決定をされたということでございます。
 日米の地位協定とそれから米軍の活動との関係というのは、具体的なケースに基づいて議論をされる、そして判断をすべき問題であるというふうに考えておりまして、これは今回実施をしないということに決まったわけでございますので、実施をしないと決まったものについて、それと日米地位協定との関係を議論するということは適当ではないというふうに考えています。
赤嶺委員 実施しないという説明の中で、先ほどは地位協定五条に基づく訓練という答弁があったんです。それじゃ、その答弁は訂正するわけですね。いかがですか。
川口国務大臣 その答弁は、多分、私がここにいないときに行われた、最初の質問者についての答弁だと思います。そういう答弁があったかどうかということについて、ちょっと確認をいたしたいと思います。
赤嶺委員 ちょっと休憩して確認をさせてください。きょうの委員会ですよ。きょうの委員会で外務省が答弁したことを、私がいなかったときの答弁だから知りませんということになったら、私の質問、前に進められませんから。これはちゃんと確認させてください。
田並委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
田並委員長 速記を起こしてください。
 川口外務大臣。
川口国務大臣 ただいま北米局長の答弁について確認をいたしましたけれども、北米局長が申し上げたことは、地位協定の五条に基づいて民間の空港にアクセスできるということは大事なことである、必要なことであるということを申し上げた、そういうことでございます。この訓練に関連して申し上げたということではないということでございます。
赤嶺委員 五条に基づいて民間空港にアクセスできるということで、沖縄の下地島空港、石垣空港、波照間空港、離島の空港はそういう外務省の見解に大変な怒りを持っています。
 きょうはそういう議論はさておいて、五条に基づくアクセスではないわけですね。韓国から沖縄に行く途中のアメリカのヘリコプターの部隊が、夜間の訓練をする特殊部隊ですよ、民間空港を使って、そして訓練をするというようなことが許されるんですか。外務省は、そういう民間空港を使っての米軍の訓練はできるものだというぐあいに認識しているんですか。これから訓練を求められてきたらとめるべきじゃないですか。いかがですか。
川口国務大臣 先ほど申し上げましたように、米軍の活動とそれから地位協定の関係、これにつきましては、個別具体的なケースについて判断をすべきであると考えております。
 この訓練については行われなかったということでございますので、実際に行われなかった活動と地位協定の関係について確定的にお答えをするということができないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
赤嶺委員 これは長崎県知事や福江市長も中止を求めていたわけです。中止になった理由についてはあいまいにしたまま、そして、これ以上外務省としては立ち入るようなことはしないという今の答弁は、本当に米軍の日本の国での横暴な訓練に道をあけるものとして厳しく御指摘をしておきたいと思います。
 また、そういう態度が沖縄県では事件、事故を繰り返し引き起こしております。皆さん、日米間で事件、事故の再発防止、こういうことをたびたび合意しておられるようですが、十月二十五日に伊江島、伊江村で民間の牧草地に重さ七十五キロのポリタンクが落下をいたしました。落下地点から五十メートルのところで畜産農家が作業をしていたわけです。まさに、今度の事故は人命にかかわる重大な事故です。
 伊江島の島袋村長は、この訓練部隊はSACO合意で受け入れた、皆さんがいつもSACO合意とは沖縄県民の基地の負担を軽減し基地の整理縮小につながると言っている、そのSACO合意で伊江島が受け入れたものです。村長は、このパラシュート降下訓練を受け入れる際の話し合いで、物資の投下訓練は危険なので行わないように、こういうことを申し入れてまいりました。こういう申し入れも無視して、今度のような人命にかかわるような重大な事故を起こしているわけです。
 村長は、今度の事故をきっかけにして、きょう、いろいろな関係団体に申し入れをしておりますが、その一つが、米軍に対して原因究明まですべての伊江島での訓練を中止すること、二つ目に、すべての物資投下訓練を廃止せよ、この二つの申し入れを行っております。この二点について、外務省もアメリカに対して、そういう村長の意を酌んで、被害者の意を酌んで交渉する気持ちがあるかどうか、この点についてもお答えください。
川口国務大臣 今月二十八日の午前中に、午前でしたけれども、東京にある米国大使館から北米局の日米地位協定室に対しまして、二十五日の午後六時三十分ごろ、MC130輸送機から伊江島補助飛行場に水タンク容器三個、これは一個五ガロン、十八・九リットル入ったものだそうですが、それが入ったこん包物をパラシュートを用いて投下しようとした際に、このこん包物が何らかのふぐあいによって予定地点に投下できなかったことから、地上の安全を確認して伊江村内の牧草地に投下をした、この落下による人的な被害はなかったという通報を受けております。新聞によりますと、百メートルでしょうか、離れたところに農作業中の人がいたというふうに記事にはございましたけれども、下に人がいたらと思うということは、非常に私も理解できます。
 この発生を受けまして二十八日の午前中に、外務省の北米局で在京のアメリカ大使館に対しまして、この件が発生をしたということはまことに遺憾であるということを伝えました。そして、再発防止の徹底、原因の究明、これにつきまして申し入れました。これに対しまして先方からは、この件はまことに遺憾であって、再発防止の徹底及び原因究明に努めたいという回答があったということでございます。そういうことの応答があったということでございます。
 それから、二十八日の午後に、この件に関しまして橋本沖縄担当大使から沖縄のラーセン四軍調整官代理に対しまして、遺憾の意を表明すると言うとともに、事実の関係を求めたということでございます。
 以上でございます。
 いずれにいたしましても、米軍の訓練、活動に当たりまして安全性の確保について万全を期すべきであるということについては、さまざまなレベルで機会があるごとに申し入れを行っているところでございまして、今後とも、必要に応じましてしかるべくアメリカ側に対しては申し入れを行っていく考えでおります。
赤嶺委員 今の外務大臣の答弁を聞いていましたら、訓練はしてもいいけれども、安全に気をつけてくださいよということにしか聞こえません。再発防止ということを確実にするために、原因が究明されるまでは訓練の中止、そしてあの狭い伊江島で物資の投下訓練は今後やめてほしい、この二点が大事な要求です。この二点を満たすことなくして、どんな再発防止の申し入れもまた同じような事件、事故を繰り返すことになります。この二点について外務大臣、しっかり申し入れるつもりがあるのかないのか、端的に答えてください。
川口国務大臣 橋本沖縄担当大使からは、この件につきまして事案の原因究明と再発防止が発表される前に米軍がMC130機を使用するパラシュート降下訓練を再開することになると、県民感情を著しく傷つけることになるということを述べ、迅速な調査の結果の説明と再発防止策の徹底を求めるということを述べたわけでございます。
 いずれにいたしましても、こういった申し入れについては、必要に応じしかるべくアメリカに、米側に対しては申し入れを行っていく、米軍の訓練、活動に当たっての安全性の確保に万全を期すべきことは、これは大変に重要なことでございますので、これは必要に応じやっていく、そういうことでございます。
赤嶺委員 物資投下訓練の廃止、これを求めるかどうかを聞いているのです。求めるかどうかだけ端的に答えてください。
川口国務大臣 沖縄におきます米軍がさまざまな訓練を行っていくということは、必要なことであると考えております。
赤嶺委員 物資投下訓練は今後も必要だという立場なんですね。これではどんなに皆さん方が事件、事故の再発防止を言っても繰り返されるばかりで、本当に情けない答弁、どこの国の外務大臣の答弁かと。今まで何度も歴代の外務大臣が言われてまいりましたが、やはり沖縄ではあなたに対してもどこの国の外務大臣かということになるだろうということを指摘しまして、次の質問に移りたいと思います。
 次は、石破防衛庁長官に質問をいたします。
 先週の二十五日の参議院の予算委員会の場で長官は、集団的自衛権の行使について、今の憲法解釈の中でどこまで一体できるんだろうかという作業は実際にやってみる必要があるだろうと思っている、本当にそれで日本の国の安全が、平和が保たれるかどうか、それを憲法の解釈の範囲内で精いっぱいやっていく、これは必要なことであろうと考えている、このように答弁されております。
 具体的にどういう問題意識を持って、そしてどういう内容について検討することを念頭に置いてああいう答弁をされたんでしょうか。
石破国務大臣 具体的にどういう例があるかということでございますが、これは集団的自衛権に触れる、つまり、武力行使の一体化になった場合には当然集団的自衛権に触れるということであります。それでは何をもって武力行使の一体化と言うのかということについて、もう一度これは考えてみたいというふうに思っている。
 そして、例えば情報の提供等々というのがあります。これもイージス艦を出す出さないのときに議論をされたことでありますが、これについてはどうなのだと。情報の提供というものと集団的自衛権、このことについても、何が集団的自衛権に触れるのか、何が武力行使の一体化になるのかということをもう一度私なりに検証してみたいという意味で申し上げたことでございます。
 委員御案内かと思いますが、集団的自衛権というものを、これは我が国の政府の考え方としてこうですね。
 従来から我が国が国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然である。しかしながら、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限の範囲にとどまるべきものであると解しておる。集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない。
 これが政府の考え方であり、私はこれに従うというふうに申し上げておるわけでありますが、それでは、何をもって集団的自衛権の行使と言うかということについてきちんとした検証を行わないまま、集団的自衛権の行使は違憲であるとか合憲であるとか、そういうような議論には意味はなくて、何が集団的自衛権の行使に当たって、このような解釈から許されないものであるかということをきちんと検証したい、そういう意味で申し上げました。
赤嶺委員 そうすると、内閣法制局のこれまでの一体化論、いろいろありましたが、こういうものについて、法制局の見解について検討を加えていきたいという理解でよろしいですか。
石破国務大臣 それは政府の中でどう考えるかというお話でございます。法制局の権能というものはどういうものであるか、委員御案内のとおりでございますが、これはいわゆる内閣の弁護士、弁護人というふうに言われるわけですね。ですから、それについて検討を加えるということが、結果としてはそういうことなのかもしれません。もう一度そのことを、集団的自衛権というものはとにかく使えないんだ、だからだめなんだというお話ではなくて、何が本当にその中身なのかということをきちんきちんと検証していきましょう。そして現場に混乱が生じないか、そしてまたそれが、参議院の答弁でも申し上げましたように、本当に日本の平和を守るためにプラスになるものであるのかということを検証していきたい。
 いずれにいたしましても、政府の解釈に従うことには何ら変更はございません。
赤嶺委員 もう少し、何が日本の安全に役立つかという長官の見解をお伺いしたいのです。
 ことしの二月の外務委員会で長官は、いわゆる周辺事態法の場合の、攻撃を受けた場合に活動を中断することになっている問題を批判しておられます。そのときにこうおっしゃっているんですね。「実際に補給しているときに、自分を守る、そしてアメリカに対する補給というものをきちんとやるということが重要なことであって、このことは集団的自衛権の議論とも何とも関係ないと私は思っている」「集団的自衛権の議論と武力行使の一体化の議論というのは分けないとおかしなことになる」、このように発言されているわけです。
 長官の認識では、米軍と一体化した活動というのはまさに憲法の解釈の範囲内でやっていくことになり許されるんだ、そういうことを考えている、それを今後政府の中で議論していきたい、こういうことになるんでしょうか。
石破国務大臣 いずれにいたしましても、集団的自衛権というものの行使は憲法上許されないということになっておるわけです。
 私が、それは外務委員会の発言であったかと記憶をいたしますが、申し上げましたのは、周辺事態法に基づきまして、戦闘が行われていない、もしくは行われることが予想されない地域においてアメリカの船に補給をしておった。そこへミサイルが一発飛んできました。そうしたら、給油を中断してそこから離脱しなさいということは、これは集団的自衛権の議論から当然に論理的に導き出されるものではないであろうということですね。武力行使の一体化という概念からは少し外れてくるのではないだろうか。そこへミサイルが一発飛んできた、そこでもう補給を中断し、そこから離脱をするということと集団的自衛権の議論は論理必然ではないであろうということを申し上げただけのことであります。
 そのことが私の議員としての見解でありますけれども、政府の一員といたしまして、それが集団的自衛権の議論になるのかどうか、私自身、政府の一員としてそれをもう一度考えてみたいということですが、とにかくそういうことを、武力行使の一体化というお話と集団的自衛権という議論がどうもすれ違っているところがある。かえって、集団的自衛権は認められない、そちらの方が政策的に平和の構築に資するという概念があったとして、そういう価値判断があるかどうかは別にして、政府が言っておるのは、必要最小限度の範囲を超えるものである。
 すなわち、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきであると解しており、それを行使することは範囲を超えるということですから、それがいかにして平和に資するものなのかという考え方もあるでしょう。そしてまた、その概念を混同してはいかぬということがあるでしょう。何にしても、そういうものを全部一緒くたにして議論をすることは、事の本質から目をそらしてきたことになるのではないかということを申し上げたいだけのことです。
赤嶺委員 そうすると、長官は、米軍の武力行使の一体化の問題で、私たちが政府から受けてきた説明、周辺事態法の中で、それが憲法で禁止されている武力行使に当たらない。なぜならば、戦闘地域から離れたところで給油をやり、そしてそれが危険な状態になったらそこから立ち去るんだ、これが現行憲法の枠内で許されているんだから、今までの周辺事態法も憲法違反ではないんだといった、この政府の説明をこれから検討し、変更していきたいということになるんですか。
石破国務大臣 そのような願望を私は申し上げておるわけではありません。政府の一員として、その解釈を変更していきたいというようなことは私は一度も申し上げたことはございません。
赤嶺委員 非常に、衣の下からよろいが見えるというか、やはりこれまで長官は、集団的自衛権の行使を憲法上容認するために明文改憲を求める主張に対して、改正には衆参両議院の三分の二の発議と国民投票の過半数の賛成が必要との困難性を知っての主張なのであろうか、困難だから憲法解釈の変更で対処するんだということをはっきり、集団的自衛権の問題でこの間おっしゃってまいりました。
 私は、解釈次第で憲法の問題を軽く扱っていくようなやり方をとる、そういう人が今回防衛庁長官になられたということについて非常に危険性を覚えます。そのような解釈の変更は行うべきではないと思いますし、今後防衛庁長官の発言を注視していきたいというぐあいに思います。
 それで、もう時間がありませんので、次に、ちょっとイラク問題について移りますけれども、外務大臣に伺います。
 緊迫するイラク情勢について、現在国連安保理で新たな決議案の採択に向けた折衝が行われているわけですが、その焦点になっているのが加盟国による武力行使に道を開く決議とするかどうかという問題です。報道によれば、アメリカが提案している決議には、イラクが安保理決議の履行に違反した場合深刻な結果に直面するとの文言が織り込まれており、これがアメリカによる武力行使にお墨つきを与えることになるとして、批判、懸念の声が上がっています。
 そこで、川口外務大臣に伺いますが、この深刻な結果に直面するという文言について、大臣はどのような見方、評価を持っていらっしゃいますか。
田並委員長 先ほどの、赤嶺先生、石破防衛庁長官の答弁は要らないですか。
赤嶺委員 はい。ちょっともう時間が……。
 今後議論していきましょう。
田並委員長 それでは、川口外務大臣。
川口国務大臣 イラクに関する安保理での協議というのが、赤嶺委員もおっしゃったように、今ニューヨークで続けられているわけでございますけれども、これについて、もちろん我が国としては、どういうような協議かということについては関心を持って情報の収集に努めておりますけれども、これにつきまして、これは安保理の理事国の間で議論をされているということで、表に出ている議論ではございませんので、この内容についてコメントをするということについては差し控えさせていただきたいと思います。
赤嶺委員 一番国民が知りたいところなんです。
 それで、小泉首相も所信表明演説の中で、「私は、ブッシュ大統領に、イラク問題に対処する上で国際協調が重要であることを明確に伝えました。」、こうおっしゃっているわけですが、川口外務大臣もまた国際協調が重要だということを強調されています。では、この九月から十月にかけて続けられてきた新たな決議案の採択に向けた折衝、この経過におけるアメリカの対応というのは日本政府の言う国際協調に見合うものだったという評価ですか。
川口国務大臣 安保理で協議がされているということの背景にある問題といいますか、根本のそもそもの問題というのは、イラクが四年にわたって国連の決議を無視し続けたということでございます。我が国としても、イラクが無条件、無制限そして即時国連の査察を受け入れる、国連の今までの決議を守っていくということが重要であるということは言ってきているわけでして、私も、この点についてはイラクの外務大臣とニューヨークで会談をしました折にきちんと伝えてあります。こういったことをイラクに守らせるために国連が必要かつ適切な決議をするということは重要なことだと我が国は考えているわけです。
 アメリカは、今の時点で直ちに戦争が目の前に迫っているのが、それが不可避である、武力行使が不可避であるということを言っているわけではございませんで、まさに、国際社会としての共通の意思としての国連安保理の決議について合意ができるように努力をしているというふうに私は考えています。
赤嶺委員 私も、イラクは無条件に国連の査察を受けるべきだと考えていますし、我が党は国際部長がイラクに行きまして、そして無条件に査察を受け入れよということで申し入れもしてまいりました。そういう活動も続けております。
 ただ、今私が問題にしていますのは、アメリカは今直ちに武力行使不可避の状況ではないという御答弁でしたが、武力行使も選択肢の中に入れているわけですね。選択肢の中に入っている武力行使をやめるべきだ、そして国際社会が協調してイラクにそういう査察を受け入れさせる、こういう努力が今政府に求められているんじゃないかと思うんです。この点、いかがなんですか。
川口国務大臣 米国を初めとする安保理の理事国は、今決議を採択するための努力をしているわけでございまして、米国がイラクに対して軍事力を行使するということを前提にした御質問にお答えをするということは適当ではないと私は考えております。
赤嶺委員 今、国連の中でも、そして世界各国でも、アメリカの武力行使をやめる、そしてイラクの問題については政治的に解決するという声を上げているときです。この点についても、日本の政府が、選択肢として持っているアメリカの武力行使に声を上げられない、こういう態度は何のための国際協調かと言わざるを得ないと思います。
 最後に伺いたいんですが、イラク情勢の推移とも密接に絡む問題として、テロ特措法に基づく基本計画の延長問題があります。報道では、臨検を行っているドイツやフランス、カナダにも補給の対象を拡大することや、新たにP3Cを派遣することなどについてアメリカ側から要請があると言われておりますが、こういう事実があるのか。
 そして、中谷前防衛庁長官は、九月二十七日の記者会見で、要請の形での意見や正式な文書はないとしつつ、日米間で緊密に協議していると発言されています。何らかの打診も含めて、そういう事実があるのかどうか。これは防衛庁長官、お願いします。
石破国務大臣 そのような報道があることは承知をいたしておりますけれども、実際にそのような具体的な要請があったということは、私は事実として承知をいたしておりません。米国及び英国以外の国の軍隊等に協力支援活動として補給活動を行うことは制度上可能ではございますけれども、これは先生御案内のとおりです、そんなような方針を固めたということも承知をいたしておりません。
 また、この後どうしていくかという話でございますけれども、そのことは、向こうから要請があったからどうのこうのというお話では基本的にないのだろうと思っております。向こう側のニーズというものをそんたくしながら我が国が、当然のことでございますけれども、法の趣旨にのっとって主体的に決定をすべきものというふうに考えておりまして、あくまでも重要なものは法の趣旨であり、法の目的、それにかなうものであるか、そしてまた、先方にどのようなニーズがあるかということをきちんとそんたくするということであろうかと存じます。
赤嶺委員 そこに関連して、私、さきの通常国会でインド洋上での自衛艦のオーストラリアへの給油の問題を取り上げたときに、それは安保理決議に基づく対イラク制裁として行っているので、オーストラリアには給油はできないという答弁をいただきました。この点は今回も、今日なお変わらない立場であるのかどうか、法律で定められていないような支援はできないということをはっきりアメリカ側にも伝えているのかどうか、最後にこれを伺いまして、質問を終わります。
石破国務大臣 そのことはおっしゃるとおりでございます。
 法の趣旨に合わないことはいたしません。そのような観点からオーストラリアの艦船に対する補給はいたさなかったということは、先生の御認識のとおりであります。今後とも、テロ特措法の法の趣旨、目的、そのことを十分に踏まえてやってまいりたいと思っております。
 なお、先ほどの先生の御質問でございますが、その後、私、少し考えを変えておりますので、私のホームページ等々ごらんいただければ幸いでございます。
赤嶺委員 終わります。
田並委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。
 私は、まず最初に、先ほど他の委員からも同じような質問があっていますが、韓国の米陸軍の大型ヘリが長崎県の福江空港を使って低空飛行訓練をするということでありましたが、本日、これは午前八時過ぎに連絡が入って、この訓練計画は中止をされたようであります。
 そこで、まず外務省にお尋ねしたいんですが、この訓練計画の内容をどの程度承知されているのか、そのことをちょっと御説明ください。
海老原政府参考人 お答え申し上げます。
 外務省に対しましては、二十四日に長崎県の方から、在日米軍から福江空港を二十九日の六時半から七時半までの間ヘリコプター三機の離着陸のための慣熟飛行を行いたいという通報があったという連絡を受けております。
今川委員 今私は手元に、長崎県に当初二十四日の午後三時に米軍横田基地から、司令部より連絡があったそのペーパーを持っております。
 外務省にいま一度お尋ねしたいんですが、米軍が訓練をやろうとしたその目的をどのように認識されていますか。
海老原政府参考人 先ほど申し上げましたとおりでございまして、当方が承知しておりますのは、ヘリコプター三機の離着陸のための慣熟飛行を行うために福江空港の管理者である長崎市、県に対して通報があったというふうに承知しておりまして、今委員の方からは訓練というお言葉がありましたけれども、我々は、米軍の方からは特に訓練を行うというような形で通報があったというふうには認識しておりません。
今川委員 本来ですと、きょうの午後六時過ぎから約一時間程度、これはこのペーパーによりますと、ローパスと呼ばれる低空飛行訓練をやる予定であったというんですね。そうしますと、きょうは、御承知のように、非常に我が国にとっても大事な日朝間の国交正常化交渉が始まった日なんですね。
 過去の例を見てみますと、例えば、冷戦時代にチームスピリットという米韓の合同演習が何度も毎年繰り返されていましたが、朝鮮半島の南北間の非常に重要な協議があったり会談があったりするときには、このチームスピリット演習の規模を縮小してみたり、あるときには中止をしたこともありました。少なくとも、米国もそれくらいやはり朝鮮半島に関心を抱き、そういう政治的ないろいろな配慮をしたものであります。
 今回、韓国から、大邱基地から沖縄まで飛んでいくのに、わざわざ、福江空港におり立ちはしませんが、福江空港の上空でいわゆる降下をした後着地をせずに上昇する飛行訓練を計画していた。単なる偶然とは思えないんですね。私は、非常に大きな危惧を抱くんです。幸い、これは金子長崎県知事あるいは福江の市長さんあるいは長崎県内のいろいろな市民団体などが、福岡のアメリカ領事館や外務省に訓練を回避してくれという働きかけをして、米側も訓練を中止したんだろうというふうに理解をしております。
 今後長崎県は、福江だけではなくて、壱岐、対馬、非常に離島が多いし、離島の空港もございます。そういった意味では、やはり住民のためにそういう空港があるわけですから、米軍であれ自衛隊であれ、そういう訓練等で使ってほしくないということをはっきり申し上げておきたいと思います。
 それから二点目に、今月の十六日、例の厚木基地の爆音訴訟のことに関してお伺いをしたいと思います。
 これは防衛施設庁の方にお伺いしますが、御存じのように、つい先般、厚木の爆音訴訟同盟の皆さん方に議員会館に来ていただいて、そこに外務省と防衛施設庁の皆さん方も来ていただいて、この訴訟同盟の皆さん方が、どれくらい騒音というのがひどいのかぜひ知ってほしいということで、今月に入ってからビデオテープにそれを撮りまして、現地の臨場感にはちょっとかけ離れるんですが、それでも大変な騒音の状態ということをぜひ防衛庁あるいは外務省の皆さん方にも知ってほしかったということで、申し入れもさせていただきました。
 四十年来、この厚木基地周辺の住民の皆さん方は騒音、爆音に悩まされ続けてきました。そして、その十六日の横浜地裁では、簡潔に言いますと、過去二回の裁判で示された騒音受忍限度の範囲を拡大してもらった、あるいは国側が主張した危険への接近論を退けた、あるいは騒音被害は違法とされているのに政府は騒音を低減する努力を怠ってきたという趣旨の判断が下されたということで、原告団の皆さんは、これで十分満足するわけじゃないけれども、やはり一日も早く騒音を減らしてほしい、なくしてほしいという思いからこの地裁判決を率直に評価して、あえて控訴はせずに早期決着を目指したいという態度を決められました。
 実は、あしたが国が控訴をするかしないかの期限だから、きょうはこの委員会で、ぜひ国に対して控訴を何とか断念をお願いしたいと言うつもりで私はここに立ったんですけれども、先ほど政府から答弁がありましたように、本日付で控訴をされたようであります。私は、強く抗議をしたいと思います。
 これは、例えば地元の住民の皆さん方がおっしゃっているのは、騒音対策と称して防音工事などをやっているけれども、大切な国民の税金、国の予算を使ってみても、いわば十分な防音対策になっていない。そういった意味では、やはり音源対策なんだということを言われているわけです。それともう一つは、やはりNLP、夜間の離発着訓練だけじゃなくて、むしろ回数としては、午前、午後、昼間の方が多いんです。そこに大変悩んでおられる。
 私は、この厚木の問題にとどまらず、やはりまず、国の平和と安全、大事です。その大前提となるのは、安保条約であれ基地の問題であれ、とりわけ地元の住民の皆さん方のそこそこの理解と協力がないことには成り立っていかないと思うんですね。
 これは防衛施設庁の方に改めてお尋ねをしますけれども、御意見を伺いますが、控訴をされた。原告団の皆さん方の切実な思いをどう考えておられますか。防衛施設庁の方にお尋ねします。
嶋口政府参考人 十月十六日の厚木基地判決におきまして、受忍限度につきまして私どもの考え方と合わない部分があるということで、先生御案内のとおり、本日横浜地裁に控訴状を提出いたしました。
 その理由は、第一番目といたしましては、これまで、うるささ指数、WECPNL八〇までが受忍限度だということでございましたけれども、今回は七五まで拡大されたということ。第二点は、いわゆる危険への接近の法理でございますけれども、これは全面的に否定されているということで、私どもとしては承服しがたいということでありまして、関係機関と調整の上、控訴審の判断を仰ぎたいということでございます。
 もちろん、訴訟は訴訟でございますけれども、騒音被害につきましては、私自身もNLPを実地体験しております。ひどい音だと思います。それから、大変深刻な問題となっていることも十分承知しております。
 そういうことで、今先生おっしゃったとおり、音源対策が大事だろう。特に一番ひどいのがNLPでございますので、そのために私ども本格的な代替飛行場、三宅島でございましたけれども、いろいろな事情があってとんざしたということで、やむを得ず暫定的ではありますけれども、厚木から一千二百キロ離れている硫黄島で暫定的にやってくださいということで米側に強く申し入れ、所要の整備を図りました。
 しかし、米軍の運用上の諸事情もこれありということで、特に天候が悪い場合は非常に困ります。というのは、空母の運用上、いろいろな形態があるわけですけれども、大体、着陸訓練の資格を得るためには十日間しか有効がない。そうしますと、非常にスケジュールもタイトになるということで、やむを得ずということになりますけれども、それでも私どもは米軍に対して累次申し上げまして、できるだけ硫黄島でやってほしいということでありまして、最近は、天候が悪い場合は別といたしまして、低騒音機、E2だとかS3などに限定して厚木で、戦闘機については硫黄島でということで、音源対策について最大限努めております。
 また、やはり音源対策だけでは不十分でございますので、当然、住宅防音工事、学校防音工事等についても懸命な努力をいたしてきております。二十九年度から始まったわけでありますけれども、これまで五千億を超える費用を費やし、さらに、まだこれでは不十分だと認識しておりまして、有識者の方に集まっていただきまして、飛行場周辺における騒音問題につきましてレポートをいただき、これを踏まえて今後さらに騒音対策を強化していこうと考えています。特に八五W、これは一番うるさいところですけれども、これ以上につきましては、従来の防音工事では不十分だろうということで、これまでは各室を単位にやっておりましたけれども、建物全体をくるんで、完全なる、十分なる防音対策を講じていこう。さらに、さきほど申しました有識者懇談会の提言に基づきまして、さらなる騒音対策、軽減対策を図っていきたいと考えております。
 いずれにいたしましても、深刻であることは承知しておりますので、懸命な努力を続けて、いささかでも、少しでも住民の皆様方に対する騒音被害が軽減するよう努力してまいりたいと思っております。
今川委員 私は当委員会で、先月上旬でしたか、アメリカ、カナダ、ハワイへ海外視察に行ってまいったのですが、改めて思いますのは、アメリカとかは、あれだけ広大な土地があれば、この厚木であれ嘉手納とは違って、さほど住民にこんな痛みを押しつけずに訓練などはできるんだろうかなと思いました。ところが、日本のこの狭い国土で、例えばこの厚木がそうです、こんな人口が密集しているところで、そもそもこの種の訓練をやるということ自体に僕は無理があると思うんです。
 だから、私は、率直にそういう訓練はやめてほしいと思いますよ。しかし、厚木の皆さん方は、御承知のように第一次訴訟、第二次訴訟のときには飛行を差しとめてほしいということを、あえてこの第三次訴訟では取り下げています。それくらい切実に何とか解決をしてほしい、そういう思いがあるからです。
 この件に関しては、きょうは時間の関係でこれ以上申し上げませんが、これは防衛庁長官、外務大臣、防衛施設庁長官、いずれにも申し上げたいんだけれども、この間、議員会館に来られた訴訟団の皆さん方が口をそろえておられたのは、一度でいいから大臣クラスの人が、長官クラスの人が厚木で生の音を聞いてほしい、足を運んでほしい、切実にそう訴えておられましたが、お三方どなたでも結構です。一度は足を運んで聞いていただきたい、どうですか。
石破国務大臣 それは必要なことだと思っております。私は、施設庁の方にも、とにかく実際ナイト・ランディング・プラクティスをやっているとき、あるいは昼間でもいいです、それを実際に体感をした上で判断をしませんと、これは、きょういろいろな御議論の中にありますように、国民の皆様方、地区の住民の皆様方に御理解いただいての防衛政策でございますから、そのことは機会を見てやらせていただきたいというふうに思っております。
今川委員 今の石破防衛庁長官の御答弁をしっかりと受けとめて、地元の皆さん方にもお伝えをしたいというふうに思います。ぜひそうなさってください。
 さて、三点目に、テロ対策特措法とイラク攻撃の問題についてお伺いをしたいと思いますが、まず、昨年の九・一一米国同時多発テロ事件から既に一年以上経過をしておりますし、テロ対策、米軍支援ということを理由に自衛艦を派遣してから約一年近くを経ました。そこで、これは簡潔に答弁をお願いしたいと思うんですが、海上自衛隊あるいは航空自衛隊がこの約一年間の間に、例えば燃料は何万キロリットル、費用は幾らだったという程度の報告でいいですから、その実績と、かかった費用は幾らなのかをお答え願いたいと思います。
赤城副長官 お答えをいたします。
 テロ特措法に基づく自衛隊の協力支援活動の成果、内容でございますけれども、海上自衛隊につきましては、護衛艦「ひえい」、「さみだれ」、「ゆうだち」、補給艦は「はまな」、「とわだ」が活動中で、これらを含めまして、これまで延べ十七隻が活動いたしました。
 既に、米軍の補給艦、駆逐艦等に対し百二十八回、イギリスの補給艦等に対して六回の合計百三十四回、二十二万六千キロリットルを提供し、その総額は約八十二億円でございます。
 航空自衛隊においては、C130型機、C1、U4によりまして、国内輸送では九十二回、国外輸送は十五回実施しておりまして、これらの活動はいずれも、我が国が国際的なテロリズムと、みずからの問題として認識し、取り組むという大変重要な意義を有していると存じております。
 以上でございます。
今川委員 次に、先ほど政府の答弁の中で、アメリカのアーミテージ国務副長官に外務副大臣がアメリカで会われた折に、いわゆるイージス艦であるとかP3Cをインド洋方面に派遣してほしいという、要請ではなくて期待を申されたというふうな答弁がございました。
 これは外務省の方にお尋ねしたいんですけれども、この事実関係です。期日、どなたがアメリカに行かれてアーミテージさんと会われてそういうお話をされたのか。それと、私が記憶をしますのは、ことしに入ってから、アーミテージ副長官が日本に見えられたときも同趣旨のことを申されているように記憶をしているんですが、そこを外務省、ちょっと尋ねたいと思います。
茂木副大臣 私、先週の月曜日二十一日、ワシントンの方に行ってまいりまして、アーミテージ国務副長官とお会いしました。
 限られた時間でありまして、大半の意見交換、議論は、北朝鮮の問題そしてイラクの問題に割かれたわけでありますけれども、そこの中で一点、御指摘いただきましたテロ対策特措法の関連で、アーミテージ副長官の方から、基本計画の再延長についてリマインドしたい、こういうお話がありました。恐らく日本語にするとよろしくということで、延長についてよろしくというふうな理解でよろしいのかと思うんですが、そういう一般的な表現でありまして、具体的に何をどうしてくれ、こういう要請はその場では受けておりません。
 なお、我が国に対しまして、御指摘いただきましたような形の米側よりの要請を受けた、こういうことも私は聞いておりません。
今川委員 もう一点、外務省の方にお尋ねしますが、今私が手にしているのは、先月の二十七日付の長崎新聞、地元紙なんですが、そこで、「米政府が日本に対し、米英艦船に給油している海上自衛隊の艦船活動地域を、現在のアラビア海からソマリア沖まで拡大するとともに、給油対象を現在の米英に加え、強制措置を伴う臨船検査を実施しているドイツなど他国軍にも拡大するよう文書で打診していることが分かった。日米両政府筋が二十六日、明らかにした。」とあるんですけれども、この文書の確認をしたいんですが、外務省、いかがですか。
海老原政府参考人 今委員がおっしゃいましたような具体的な要請を、文書の形で米側が我が方に対して行っているという事実はございません。
今川委員 いや、あえて公文書であるか否かを問いません。
 この中では、日米「両政府筋によると、文書は「極秘」扱いで、ロッドマン国防次官補名で」、九月二十七日の記事ですから「数日前、加藤良三駐米大使へ送られ、日本政府へ伝達された。」というふうにはっきりと書かれておるんですけれども、これでも、この極秘扱いの文書というのは承知しないということなんですか、どうですか。
海老原政府参考人 先ほど答弁申し上げたとおりでございます。
今川委員 今私が申し上げたようなことは、何も、国会はもとより、国民に隠すことじゃないと思いますよ。この新聞だって、確かにこの文書はロッドマン国防次官補名であり、極秘扱いとはなっていますけれどもね。
 先ほど私が読み上げたように、これから米政府として、日本に対して、例えば給油活動の対象国をもっと広げてほしいとか、あるいは活動のエリアをもう少し広げてほしいとかということですから、少なくとも我が国の国民に対して、アメリカ政府からそういう要請がありましたということを隠す何か理由があるんですか。
茂木副大臣 日米間のいろいろな話し合いと申しますか、テロに対する闘いについては当然緊密な連携をとっているわけでありますが、当然、政策判断をお願いする段階では必要な情報を提供する、こういうことは必要だと思っておりますけれども、その過程におきまして、この段階で逐一コメントさせていただくことは、差し控えさせていただきたいと思っております。
今川委員 これは内閣官房あるいは防衛庁長官、どちらでもいいんですが、今申し上げましたように、来月の十九日に基本計画に基づく期限がもう一度切れますので、当然、テロ対策特別委員会がなくなりましたから当委員会なのかなと思いますが、いずれにしても、これから、例えば米政府が公式、非公式を問わず、P3Cやイージス艦の派遣、あるいは先ほど申し上げたように活動範囲の拡大だとかということを、我が国政府として現時点でどのように判断をし、要請にこたえるのか、こたえないのか、そこら辺はどうなんでしょうか。
村田政府参考人 お答えいたします。
 現在行っておりますテロ対策特措法に基づく自衛隊部隊等の派遣につきましては、現在の基本計画上は、その派遣期間が十一月の十九日までとされております。
 そこで、御質問の十一月二十日以降の自衛隊の活動や基本計画の変更などの可能性につきましては、我が国として、法の趣旨あるいは諸情勢、それらを踏まえて主体的に判断していくこととなります。この点について、現在検討中でございまして、現段階で確たることを申し上げるのは困難でございます。
今川委員 ちょっともう時間が余りありませんので、次に移りたいと思いますが、実は、ことしに入って、六月十六日付の朝日新聞で、いわゆる見出しに、「また海幕の現場暴走」とか「米軍の指揮下「容認」」という記事に対して、防衛庁は朝日新聞社に抗議したということが報道されていました。
 このことに関して、改めてちょっと確認の意味でお尋ねをしたいと思うのでありますが、今アラビア海方面に派遣をしている海上自衛隊のいわば派遣チームですか、これと、いわゆるバーレーンにある米中央軍第五艦隊との指揮関係というのはどのようになっているんでしょうか。
 新しいガイドラインでは、日米共同調整所という共通のいわば司令部というのかが準備されていますね。しかし、テロ対策特措法ではそういう規定がないはずです。ですから、今現に自衛隊を派遣されているわけですから、米側との調整なり、そういう指揮関係というのは、具体的に、現実的にどうなっているのか、これをお答えください。
赤城副長官 お答えいたします。
 お尋ねのテロ特措法に基づく協力の指揮関係あるいはその調整についてでありますけれども、現在、海自派遣部隊が米軍艦艇への補給を行っておりますが、インド洋北部を担当する米第五艦隊司令部等から、補給の時期、場所、対象部隊、補給量など、補給の概要について自衛艦隊司令部等に対し調整があり、個々の補給の実施に際しては、さらにその日時や具体的な場所の細部について、派遣部隊司令部間で調整が行われるということになっております。
 一方、テロ特措法に基づき補給を行う海自艦艇は、基本計画及び実施要領に基づきこれを実施すべき旨の防衛庁長官の命令のもと編成され活動しているものでありまして、補給の実施に当たっても、自衛艦隊司令部または現地部隊司令官の判断によりこれを行う、こういうことでございますので、補給に当たって米軍のニーズや支援の可能性等についての緊密な相互調整を行って決定しておりますが、あくまで海自の艦艇が米軍の指揮監督のもとで活動している、こういうことではございません。
 なお、御指摘のように、朝日新聞の記事については、事実と反する報道でありますので、六月十七日に朝日新聞に対して抗議を行ったところでございます。
今川委員 これは防衛庁長官にちょっとお尋ねをしておきたいのですが、御存じのように、作戦指揮統制という場合と戦術指揮統制というのは概念的に違いますね。任務の内容や目的、部隊の編成など大枠についての権限を持つ作戦指揮統制は、この報道にもありますように、独自に維持することが必要だが、部隊を具体的に動かす権限である戦術指揮統制はそのもとにあるわけですね。そうしたら、いわゆる戦術指揮統制とテロ対策特措法のもとでのいわゆる日米の調整委員会、ここの関係はどうなっているんでしょうか。
石破国務大臣 これはかえって先生の方がお詳しいので、またお教えをいただきたい点でもあるのですが、私の認識では、米海軍における認識というものと私ども海上自衛隊における認識というものは少し違うんだろうと。
 つまり、私どもの海上自衛隊においては、作戦指揮統制ですとか戦術指揮統制といったそういう考え方そのものが存在をしないんだろうというふうに思っています。つまり、作戦統制というのはオペレーショナルコントロールという話であって、作戦及び訓練の実施に関し、計画、部隊編成を含むすべての面を統制することをいうんですと。そしてまた、戦術統制というのは、これはよく言われていることでございますが、タクティカルコントロール、つまり各種活動等の実施に当たり、任務達成のために現場において一次的、局地的に部隊の移動等を統制する、こういうふうに概念が分かれているわけでございますが、私どもの中にはそういう考え方はない。
 今、副長官から答弁を申し上げましたとおりでありまして、それが指揮統制というよりも調整が行われる。そして、調整に基づきまして、現場において実際に行動が行われるということでありまして、先生御指摘の指揮統制、つまり、米軍の指揮統制下に入って海上自衛隊が行動したという概念は、どうも私の感じからすれば当たらないのではないかというふうに考えております。
 そのような概念を私どもとしては保有をしておるものではございません。
今川委員 もう時間が参りました。防衛庁長官、この件に関しましては、また日を改めて少し具体的にやりとりをさせてください。
 きょうはこれで終わります。
田並委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時散会


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